衆議院

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第12号 平成16年4月6日(火曜日)

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平成十六年四月六日(火曜日)

    午前十時二十六分開議

 出席委員

   委員長 佐田玄一郎君

   理事 左藤  章君 理事 佐藤  勉君

   理事 滝   実君 理事 野田 聖子君

   理事 桝屋 敬悟君

      今井  宏君    岩崎 忠夫君

      岡本 芳郎君    奥野 信亮君

      亀井 久興君    自見庄三郎君

      田中 英夫君    谷  公一君

      谷本 龍哉君    萩生田光一君

      蓮実  進君    平沢 勝栄君

      松本  純君    三ッ矢憲生君

      山下 貴史君    河合 正智君

      長沢 広明君    塩川 鉄也君

    …………………………………

   総務大臣         麻生 太郎君

   総務副大臣        田端 正広君

   総務大臣政務官      松本  純君

   政府参考人

   (総務省情報通信政策局長)            武智 健二君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局長)            有冨寛一郎君

   政府参考人

   (総務省政策統括官)   鈴木 康雄君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           岩田 悟志君

   政府参考人

   (国土交通省政策統括官) 金井 照久君

   総務委員会専門員     石田 俊彦君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月六日

 辞任         補欠選任

  西田  猛君     蓮実  進君

  平沢 勝栄君     小西  理君

同日

 辞任         補欠選任

  蓮実  進君     宮下 一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  宮下 一郎君     西田  猛君

    ―――――――――――――

四月五日

 シベリア抑留・未払い賃金問題の早期解決に関する請願(前原誠司君紹介)(第一三〇四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 電波法及び有線電気通信法の一部を改正する法律案(内閣提出第四四号)

 電波法及び有線電気通信法の一部を改正する法律案(武正公一君外四名提出、衆法第二一号)

 通信・放送委員会設置法案(武正公一君外四名提出、衆法第二二号)


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     ――――◇―――――

佐田委員長 これより会議を開きます。

 開会に先立ちまして、民主党・無所属クラブ及び社会民主党・市民連合所属委員並びに衆法の提出者に御出席を要請いたしましたが、御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。

 内閣提出、電波法及び有線電気通信法の一部を改正する法律案並びに武正公一君外四名提出、電波法及び有線電気通信法の一部を改正する法律案及び通信・放送委員会設置法案の各案を一括して議題といたします。

 この際、麻生総務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。麻生総務大臣。

麻生国務大臣 四月一日の本委員会におきまして、電波法及び有線電気通信法の一部を改正する法律案の提案理由について御説明させていただいたところでありますが、審議に先立ち、追加的に御説明を申し上げさせていただきたいと存じます。

 今回の改正の一部には、技術基準適合証明を行う登録機関の業務規程につきまして、認可制を届け出制に改めることなど、本来、昨年の通常国会で成立させていただきました電波法の一部を改正する法律案において行うべきであったものが含まれております。法案作成時の確認が不十分であったことから整備漏れとなっておりますため、遺憾ながら、今回、改めて、電波法及び有線電気通信法の一部を改正する法律案の中に組み入れて、御審議をお願いすることといたした次第であります。

 ここにおわびを申し上げ、よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。

    ―――――――――――――

佐田委員長 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として総務省情報通信政策局長武智健二君、総合通信基盤局長有冨寛一郎君、政策統括官鈴木康雄君、経済産業省大臣官房審議官岩田悟志君及び国土交通省政策統括官金井照久君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

佐田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。今井宏君。

今井委員 おはようございます。自由民主党の今井宏でございます。

 ITの世界では、最近まで、いつでもどこでもだれとでも、こう言われておりましたけれども、ユビキタスネット社会ではもう一歩前進いたしまして、いつでもどこでもだれとでもに加えて、何とでもつながることがその基本になるものだと思っております。こうしたユビキタスネット社会を実現するためには、世界最先端のワイヤレスブロードバンド環境を構築する、このことがまず必要なことであります。

 電波利用のニーズの高まりに対応した電波政策のあり方も変わってくると考えているわけであります。今回の周波数割り当ての見直し、周波数の迅速な再配分、割り当て制度の整備のための法改正は、ユビキタス社会の実現には必要不可欠であると思っております。

 そこで、今後のユビキタスネット社会の実現に重要な役割を果たす電波政策のかじ取りをなさる、私の尊敬する麻生大臣に改めてその決意のほどをお伺いさせていただきたい、かように思います。

麻生国務大臣 今、今井委員から御質問がありましたように、ITというものはコミュニケーションが入っておりますので、多分、今はICTと言うのが正しい時代になったと思いますけれども、この戦略は日本の国家戦略としても最も重要なものであり、かつ、成長分野としても極めて大きなものだと思っております。

 いつでもどこでもだれとでも、さらに何とでもという話が今あっておりましたけれども、これは非常に大事なところでして、これから日本において高齢化社会は避けられない。高齢化に加えまして、必然的に、身体障害者、また心身障害者、外国人等々、従来余り我々として重きを置いてこなかったと言うと語弊があるかもしれませんが、いろいろな形で片隅に置かれておられた部分の、大多数ではなかった人たちでもこの社会に参加できるような形、ユニバーサルにだれでも参加できてくるようなものを技術的に可能にしているのは、多分、いわゆるICTの技術の進歩だと思っております。

 国交省も、たしか先月末、大石さんのところで、自律的な移動支援システムというのをスタートさせておられると思います。すばらしいことだと思っております。

 私どもといたしましては、こういったユビキタスという、多分これは日本が世界に発信した最初のラテン語だと思いますけれども、このユビキタス社会という言葉が、少なくともICTの先進国家では普通に使われる言葉になりつつあろうと思います。二〇〇五年までに、世界で最も進んだ電子化された政府というのでe―Japan2を達成することはほぼ確実と思っておりますけれども、その次にはu―Japanになる。

 そういった方向で事を進めていって、仮に、今申し上げたような技術が多く浸透し、だれでもが社会に参加できるような状況というものがもし実現するとするならば、高齢化は避けて通れぬ世の中にあって、活力ある高齢化社会というものの実現を本当に日本ができたら、間違いなく世界が日本を見習うということになる非常に大きな糧になるんだと思っておりますので、このユビキタス社会の実現には全力を挙げて取り組むべき問題だと思っております。

今井委員 大臣から強い決意とコミュニケーションの大切さ、また後ほど移動支援システムにつきまして簡単ですが御質問をさせていただきたい、こういうふうに思っております。

 現在、無線を利用しているICタグ、総務省によると、経済波及効果は、二〇一〇年には最低でも九兆円、最大三十一兆円にも上る、こういうふうにシミュレーションもされているわけであります。

 昨年の情報通信白書によりますと、社会の高齢化とそれに伴う、私はこれが一番大切なことだと思っておりますが、健康や医療に対する不安、食品の安全や治安への不安、今の日本の社会に対する不安が挙げられているわけでありますけれども、こうした社会の課題を克服するためのICタグやデジタルテレビの果たす役割というのはますます大きくなるものだと思っておるわけであります。

 例えば、法律改正も伴うとは思いますけれども、顔色のわかるハイビジョンなどにより、救急車による搬送時において患者の顔色を遠隔で判断できる、あるいは、投薬ミスを防ぐためのICタグの活用、医療現場での取り組み、テロを防止するための電子パスポート、あるいは、通信サミットで大臣が、しゃべるICタグということで大変話題になりましたが、食の安全を確保するためのICタグの活用、これらを考えてみますと、社会が劇的に変化する、劇的に生活環境を変えるのではないか。いわゆる産業革命どころではない、ユビキタス革命が進行するという時代認識を私も共有している一人でございます。

 ですから、冒頭申し述べましたように、ユビキタス社会の実現には周波数の割り当ての見直し、周波数の迅速な再配分、割り当て制度の整備のための法改正は当然である、このように私も考え、そういう時代認識の中で賛成をしているわけであります。

 こうした認識を持つ私としては、電波利用制度において民主党から対案が提案されている電波オークション、つまり周波数を使用する権利または無線免許の申請を行う権利の取得者をオークションにより決定する制度、これにつきましてはいかがなものであるか、私は反対の考えを持っているわけであります。

 このような対案が示されている電波オークション制度を日本に導入した場合、免許料の高騰を招き、また、高額の免許料を徴収した場合、一年が七年にも匹敵するドッグイヤーどころではなくて、二十倍速、マウスイヤーと言われているITの社会におきまして、免許の有効期間がおおむね十五年から二十年と長期になるなど免許を所有している人の権利が強くなり過ぎて、将来の電波の再配分が困難になることが考えられる、このように考えておりますけれども、総務省の御見解をお伺いしたい、かように思っております。

有冨政府参考人 電波のオークション制度でございますが、外国の例でございます。二〇〇〇年の四月と八月に、イギリスとドイツにおきまして、第三世代の携帯電話につきましてオークションが実施をされました。その結果、イギリスでは、五つの事業者を選定しておりますが、落札総額は約四・五兆円、ドイツでは、六つの事業者を選定しておりますが、落札総額は約五・八兆円というような結果が出ております。

 こういった結果を受けまして、既に免許取得から四年たっているわけでありますが、現在、その免許を受けました十一事業者のうち、大部分の事業者がまだサービスは実施できておりませんし、開始できたサービスも限定的な状況にございます。特にドイツを見ますと、二つの事業者が落札後事業を撤退するというようなことも出ております。

 また、電気通信事業者や電気通信メーカーの経営基盤も著しく悪化をしておりまして、国家の成長、戦略産業たるIT産業には非常に大きな悪影響を与えているというふうに受けとめております。

 こうした事例を踏まえますと、オークション制度を我が国に導入するということにつきましては、免許料が高騰する結果、電気通信事業者等の経営基盤が悪化をし、現在、世界最高水準の速さあるいは安さを実現しております我が国のブロードバンド環境に悪影響を及ぼすおそれがあるということのほか、電波利用の既得権益化を招くおそれもありまして、将来の再配分の妨げにもなるというようなこと等、電波の有効利用を損なうものと考えられますので、私どもとしては適当ではないというふうに考えておるところでございます。

今井委員 また後ほどいろいろと民主党とも議論をしていきたい、こういうふうに思っております。

 さて、ユビキタスという言葉を最近よく耳にするわけでありますが、その具体的なイメージということになりますと、どうもはっきりしていないような気がいたします。

 総務省では、二〇一〇年ごろのユビキタスネット社会の本格化をにらみまして懇談会を開催している、こういうふうに聞いております。ユビキタスネット社会について、どのようなイメージとなるのか、具体的にお聞かせいただければと思います。

鈴木政府参考人 先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、私ども、ユビキタスネットワーク社会というのは、二〇一〇年に実現する新たな社会の姿であり、一番先に先生御指摘のとおり、いつでもどこでも何でも、そしてだれでもネットワークに簡単につながる社会というものを考えております。

 現在、ブロードバンド、携帯電話、デジタルテレビ、情報家電の普及、あるいは防犯のための見守りサービスの利用拡大など、既にユビキタスネットワーク社会の胎動が始まっているものと考えております。

 今後、音声入力で高齢者が遠隔地の家族と大画面テレビで会話できるなど、機器やシステムがだれにとっても簡単なものになると考えておりまして、こうした高齢化が進む中で、経済の活性化、地域の再生、安全、安心な生活が実現され、活力のある未来の日本が創造されるものと期待いたしております。

 しかしながら、ユビキタスネットワーク社会実現に向けましては、例えば、過疎地や離島におけるインフラの整備でございますとか、規格化によるコストダウン、あるいは個人情報保護の充実といったさまざまな課題がございますので、今後、今先生御指摘のu―Japan政策懇談会などを活用いたしまして、幅広くかつ具体的な計画を作成して、各分野での協力を得て政策を実行してまいりたいと考えております。

 以上でございます。

今井委員 ありがとうございました。

 まさに安心、安全な活力ある日本を構築するために、どうぞ前向きな研究とその実現を期待していきたい、このように思っております。

 ところで、三月二十四日には、国交省によりまして、すべての人が持てる力を発揮し、支え合って構築するユニバーサル社会、先ほど麻生大臣からも御指摘がありましたが、この実現に向けましての取り組みといたしまして、社会参画や就労などに当たっての移動経路、交通手段、目的地などの情報について、これも、いつでもどこでもだれでもがアクセスできる環境をつくっていくための支援プロジェクトが始動したわけであります。これもユビキタス社会実現のために大きな要素になると期待をしております。

 このプロジェクトにおきまして、スーパーアドバイザーといたしまして、坂村先生とともに、ハンディキャップを抱えた方々をチャレンジドと名づけて運動を積極的に展開されております竹中ナミさんが起用されたことなど、国土交通省のユニバーサル社会の実現への意気込みを私は非常に感じているわけであります。大変歓迎をするべきことだと思っております。

 総務省が描くユビキタスネット社会においても、ユニバーサル社会の形成が一つのかぎとなってくると思われますが、総務省では、ユニバーサル社会に向けてどのような施策に取り組んでいらっしゃるのか。そして国土交通省では、自律的移動支援プロジェクトのような施策を推進するに当たって、どのような点に留意して取り組まれているのでしょうか。両省から御答弁をお願い申し上げます。

    〔委員長退席、滝委員長代理着席〕

松本大臣政務官 御指摘のとおり、ユビキタス社会におきましても、だれもがITの恩恵を享受できるユニバーサル社会を実現することが必要であり重要なことであることは言うまでもありません。

 このため、総務省では、ユニバーサルデザインの考え方に基づき、電話、ファクス等、これらの機器に求められる機能に関する指針を策定し、公表しております。この指針を通じて、見やすい文字の表示や音声読み上げを実装する携帯電話等の開発普及を促進し、さらに、独立行政法人情報通信研究機構を通じて、高齢者、障害者の利用に配慮した機器の開発や、字幕放送、解説放送などの制作に対する助成を行っているところでございます。

 今後も、高齢者、障害者を初め、だれもが容易にITを利用できるユニバーサル社会実現のため、関連施策に積極的に取り組んでまいる所存でございます。

金井政府参考人 お答えいたします。

 先生の御質問にございましたこのプロジェクトの推進に当たりまして、私ども国土交通省におきましては、本年の三月二十四日に、自律的移動支援プロジェクト推進委員会というものを設置したところでございます。

 委員長には、お話がございましたように、東京大学大学院の坂村健教授、委員には、竹中ナミ様を初めといたしまして、本件に造詣の深い学識経験者に御就任をいただいておりまして、総務省など関係省庁からも委員会への御参画をいただいておるところでございます。

 本プロジェクトを円滑に進めてまいりますためには、情報通信技術の急速な進展を見据えつつ、人々の自律的な移動を支援する情報提供システム、これを構築していくことが重要であると考えておるところでございます。なお、その際には、総務省などの関係省庁を初めとする産学官の連携を十分に図るということが必要と考えておるところでございます。

 どうかよろしくお願いいたします。

今井委員 ありがとうございます。期待をしております。しっかりと社会で支え合っていくということが大切なことだと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。

 さて、これからが私のきょうのある意味での主題の御質問をさせていただきたい、かように思っているわけであります。

 成田空港とかあるいは品川、羽田空港など、限定された空間ではユビキタスネットのスポットができているわけでありますけれども、成田空港以外は特定の企業のサービスで、利用するにはその企業のプロバイダーに加入していなければならない。政府も、ユニバーサル社会の実現、ビジット・ジャパンなどを国家政策として掲げるならば、思い切って国でインフラを構築して提供するべきではないかというのが私の考えであり、提案でございます。

 総務省の資料の、二〇一〇年ユビキタスネット社会の具体的イメージを、真の意味でのユビキタスネット社会を実現するには、こうした特定企業によるいわゆる囲い込みは排除しなければならない、このように考えております。基本的なインフラは公共が提供し、インターネットサービスプロバイダー、ISPフリーの環境を実現するべきではないんだろうか、このように考えているわけであります。

 これはアメリカの例ですが、アメリカでは、例えば軍の関係者が海外に派遣されましても、戦車やヘリコプターそのものがルーターとなりまして、その役割を果たして、どんなところであっても、砂漠であってもメールやインターネットを利用できる。つまり、軍の方で基本的なインフラを用意しているので、ふだんと同じように、自分の国で契約しているISP、パスワードだけで簡単にお互いのやりとりができる。

 日本でいえば、震災でもあった場合に、公共のバスにそうした基本インフラがあれば一気に通信ができる、連絡がとれる、そういう基盤というものの考え方であります。

 そういうことを考えますと、通信インフラの構築をISPなどの企業に求めますと、結局は資本力のある企業しか生き残れない。外資企業の参入の壁を低くし、知恵のあるベンチャー企業を育成するためにも、インフラやプラットホームはなるべく安価に、できるだけ無償にしていく努力をするべきではないんでしょうか。

 ユビキタスネット革命を実現するためには、ICタグなど個を識別する技術、それを読み取る技術、そして基盤となるインフラ、ネットワークが整備されることが課題だと考えておるわけであります。新産業の育成のためにも、通信インフラの構築に行政、いわゆる基盤整備に公がかかわっていくことが必要だ、このように考えておりますが、麻生大臣にお考えをお尋ねしたい、かように思う次第であります。

麻生国務大臣 今、今井議員御質問のありましたように、これは民間の視点からやる部分というのはすごく大事なところであることはもう間違いないんだと思います。

 先ほど、国土交通省の話で竹中さんの話が出ていましたけれども、少なくとも国土交通省とかいわゆる役所が、総務省を含めまして、竹中ナミという人を知っておられる方も多いと思いますが、普通の役人のセンスじゃとても引っかかってくるようなレベルの人じゃないんです。しかし、その人のやっている事業、これまでの経歴を見て、その人の意見を採用したというのは、やはり国土交通省やら総務省としては、これは結構なことだったと思いますよ。僕は、これはだれが推薦したんだか知らないけれども、個人的に知っているから言うわけじゃありませんけれども。

 こういったことは従来じゃ考えられなかったんだと思いますが、そういった人たちもこのユビキタスの社会の中では、こういった人たちから見た目というのと健常者から見た目とはかなり違いますので、そういったところに目をつけたところは、僕は、国土交通省というのは大したものだと思うんです。

 そういった目で見る話と、今、今井議員の言われましたように、全体として、民間でやるところの部分と、これは国家政策として、国としてのインフラ、社会基盤としてこういったものを、今、ギガビットに上がり、さらにペタビットに上がって、いろいろなものにどんどん進んでいくんだろうと思いますし、多分、DVDなんてものはあと十年もすればなくなっていてチップにかわっていると思いますが、そういった物すごい勢いで進んでいく今の時代の中にあって、それをきちんとして、補っておくというのは大切なことだと思っております。

 ちなみに、電力の消費量というのは多分爆発的に伸びる可能性があるのであって、この間もIT戦略本部で話が出ておりましたが、六本木タワーのあの高いビルの中での全電力消費量の七八%はたったワンフロアで消費しておるという実態を知るときに、それをバックアップをちゃんとしていくだけの電力がきちんと確保されているかと言われれば、これはえっというような電力消費量ですから、そういったものが急激にわあっと伸びてきた場合の電力のバックアップなんというのは最も基本的なところだと思います。

 そういうものを含めまして、こういった情報通信の基盤整備というのは、国としてきちんと対応していくということをやっていかないと、どんどん進んだはいいけれども、肝心なところは追いつかなくなったということになりかねぬ。

 また、いろいろな国で、日本が世界一を目指す、二〇〇五年には世界一になりますということを宣言しております部分は、これは韓国初め世界じゅう、アメリカを初め皆その宣言を知っていますから、そんなことはさせぬ、おれたちも世界一になるという猛烈な勢いで、今、戦略を立て、予算をつけ、進んできているというのが今の状況でありますので、私どもとしては明らかにみんなから追われる立場になった部分もあります。

 そういった意味では、私どもは、二〇〇六年以降も大いに頑張ってやっていくためには、きちんとした整備ができておらぬと、幾ら民間がいろいろなアイデアをつくっても、追いつく部分と、そのバックアップをする社会基盤のところが高過ぎるとか規制がやかまし過ぎるとか、いろいろなことがあるためにできないというのであれば、これは問題であろうと思います。そういったことのないようにきちんとした対応をしていく必要があろうと存じますので、いろいろ教えていただければと存じます。

    〔滝委員長代理退席、委員長着席〕

今井委員 ありがとうございます。

 経産省におきましても、情報家電の市場化のための七つの行動計画を取りまとめられておりまして、機器を相互に、互換性を持たせるためのソフトウエアの研究、あるいは高齢者を初めだれでも手軽に利用できるような機器の開発をしていると、先日の私の予算委員会の質問に対しまして、経産省の中川大臣が答弁されておりました。この中川大臣の答弁から、情報家電のハブになるのは、だれでもが簡単に利用しやすい、互換性のあるものであることが必要だ、こういうことだと思うわけであります。

 そうなってまいりますと、茶の間のハブはテレビだ、このように思います。テレビが家庭のユビキタスハブになることによって、生活の必需品となって、あわせて、国民が地上波デジタルの恩恵をみんなが受けやすくなる、ひいては、地上デジタルテレビの全国展開の普及を促進することにもなるのではないか。そのことが、アメリカ優位にならざるを得ないパソコンの世界から、脱パソコン、ポストパソコン、日本発のいわゆる新しいIT社会の創造につながってくる、こういうふうに考えておるわけでございます。

 経済産業省ではこの件に関しましてどのようにお考えになっているのか、御答弁をお願い申し上げたいと思います。

岩田政府参考人 お答えいたします。

 情報家電のハブとしてのテレビの位置づけ等々についてのお尋ねでございますけれども、まず、私どもの基本的な認識といたしまして、情報家電の普及あるいは家庭内の情報化、こういうものを図っていくためには、どんな方でもいろいろな機器を簡単にかつ安心して利用できる、その便利さを実感できる、そういう環境を家庭の中に整えていくというのが重要であるというふうに考えてございます。

 特に、テレビという家電機器でございますけれども、現在既に、家庭の中で映像情報を提供するという意味で、いわば情報の窓、こういう機能を果たしておるわけでございますし、さらに家電機器としても、非常に使い勝手がいい、使いやすい機器というものの代表例でございます。これが今後さらに、IT技術あるいはICT技術を駆使して進化していくということが現に予想されております。したがいまして、委員御指摘のとおり、こういった進化していくテレビ、恐らく家庭内の情報化、ホームネットワーク、こういったものの中心となり得る有力な候補の一つであるというような認識で私どもおります。

 当省といたしましては、こうした新しい機器、進化していくテレビ等々を含めまして、それらを構成する重要な技術、半導体でございますとかパネルでございますとか、あるいは相互接続のためのソフトウエアでありますとか、ミドルウエア、こういったものにつきまして、他の機器との相互接続性というものに十分配慮しながら技術開発に現在取り組んでいるところでございます。

 今後も、現在策定を予定してございますけれども、新産業創造戦略というものを検討中でございますが、こうした中でも、情報家電分野、あるいはこうした進化していくテレビ、情報機器といったようなものを重要な柱の一つとして位置づけておりまして、さらに力を入れて取り組んでまいりたい、かように考えてございます。

今井委員 ありがとうございます。

 今後の日本のIT技術発展のために何が必要であるか、それには日本発の世界をリードする技術をつくる必要があるのではないか、このように考えております。

 日本はテレビに関する技術が非常に高いわけであります。テレビを中心に情報家電あるいは情報機器をネットワークに接続する技術を開発し、なおかつ標準化することが何よりも重要だと考えているわけであります。

 経産省の産業総合研究所が研究開発から商品化そして標準化した光触媒の技術のように、私は、日本のIT社会も、デジタルテレビを基盤にして、それに付随する技術や商品開発の研究を標準化を視野に入れて確立していくことがとても大切であり、それに特化するべきではないかと考えますが、麻生大臣のお考えをお聞かせいただければと思います。

麻生国務大臣 今御指摘がありましたように、テレビというのはやはり最も身近な家電、白物と言われるものだと思いますが、基本的には、御存じのように、つなぎっ放しのものというのは、一番は冷蔵庫なんです。電気がつなぎっ放しで途中で切ったりする人はいませんから、あれが一番なんですが、今、テレビというものの中に蓄積型のものが出てきたり、いろいろ技術の進歩で変わってきております。テレビも、いない間、そのテレビの画像を蓄積するいろいろな技術というものが進んでまいりましたので、冷蔵庫と同じように、つけっ放しになり得る分野としては非常に大きなものだろうとも思います。そういった意味では、最も身近な家電でありますので、テレビを使うというのは非常に大きな方向だろうと思っております。

 加えて、昨年の十二月一日からデジタルハイビジョンとかデジタルテレビというものが出てきて、二〇一一年までには日本じゅうこれをということで今目指してやっておりますので、いろいろな意味で、あれをキーステーションというか、一番の核にしながら、その他のものに対して、家庭内というか、一つのうちの中だけで家電同士が通信し合えるというようなものがまた出てくる。

 そういった意味では、情報としては家庭内のLANというか、家庭内がつながっていくということに関しましては、これは、買ったのは日立だけれども、こっちのものはナショナルで、あっちのものが何とかで、つながらないというのじゃちょっと困りますので、それをつながるようにしてやるというのは、ある程度、あらかじめ基本的なことをきちんとやっておきさえすれば、かつてのベータとVHSみたいな話で、両方ともというようなことにならないように、いろいろな意味で、設備関係からいったら基本的なところだけはきちんとしておくというのは大事なことだと思います。あらゆる家電製品が相互に通信し合えるようなものにしておく、一番根っこのところだけきちんと押さえておいてやるというのが一つの方法かなという感じがいたします。

 私どもといたしましては、この重要性というものは十分に認識をいたしております。そういった意味では、ホームネットワークというんですか、そういったようなものの発展が大事なところではありますし、日本人の最も得意な分野であろうと思いますので、コンピューターで残念ながらおくれをとりましたけれども、少なくともコミュニケーションという部分でおくれをとるということであってはならぬと思って、この一点につきましては重要性を認識しつつ頑張りたいと思っております。

今井委員 私の持ち時間が少なくなってまいりましたので、私の考え方も含めまして一気に話をさせていただき、麻生大臣の政治家としての決意をお述べいただければということで御質問をさせていただくわけであります。

 総務省やNHKの出す資料の中にも、今大臣からお話がございましたホームサーバー、サーバー型放送などの言葉もよく見かけるようになってまいりました。技術も開発されてまいりました。デジタルテレビがハブ、家庭内のネットワーク、いわゆるホームネットワークと言ってもいいんでしょうが、この中核になる理由を私も申し上げたい、こういうように思っているわけであります。

 家庭内の電化製品はテレビを中心に通信を行う、そしてインターネットへ出るゲートウエーもテレビにすれば、家庭内にファイアウオールが一つで済み、経済的であると思っておるわけであります。テレビをファイアウオールで壁をしっかりつくる、いわゆる読み取り機、PDAや携帯電話を利用する場合はテレビを経由して家電機器と通信すればよい、このようにも考えるわけです。

 詳しく申し上げますと、放送と通信の融合した機器をつくるべきではないんだろうか。つまり、放送、ホームネットワーク、インターネット、ファイアウオール、無線の機能を有する、すべての基盤となるデジタルテレビを開発する、このことが必要ではないか。IPv6とネットワーク機能を持ったオープンソースのトロン、また、ソースコードを公開しているリナックスを搭載したデジタルテレビを開発するべきではないかと提案をしていきたいと思うわけであります。

 標準化については、事実上の標準でありますデファクトスタンダードと、制度化された標準であるデジュールスタンダードが御案内のようにあるわけでありますが、日本のユビキタスネット社会では、IPv6、ソースが公開されているトロン、リナックスを搭載したデジタルテレビでデジュールスタンダードをとりにいくべきではないか、そして、それ以外のもの、付随する機器についてはデファクトをとりにいけばよいのではないか、このように提案をしたいと思っています。

 こうした研究は民間企業では無理ですけれども、企業を超えた国家プロジェクトとして、例えば、新年度、今月一日に発足いたしました独立行政法人情報通信研究機構に、産官学の情報通信に関する人材を結集して、研究費も思い切ってどんとつけて研究開発を行わせていくべきではないかと考えておるわけです。

 そこで伺いたいのでございますけれども、総務省といたしましても、民間における標準化の取り組みを支援することに加えて、情報通信研究機構を活用して標準化に役立つための基礎づくり、研究開発を積極的に進めていくべき、これが第一点の質問でございます。

 次に、総務省のデジタル情報家電のネットワーク化に関する調査研究会普及促進ワーキンググループの「韓国におけるデジタル情報家電の普及動向」という野村総研の報告書を読ませていただきましたが、隣の韓国では大変な投資をするわけであります。

 ちなみに、二〇〇三年度の企業利益は、韓国のサムスンは何と五千九百五十九億円、日本の大企業と言われるソニーは五百五十億円、松下が三百五十億円、全くけたが違うわけですから、それだけ投資開発余力がある、こういう実態でありますし、これからの投資につきましても、ポストパソコンなどに二〇〇七年までに二兆四千億ウォンを投資するんだと韓国は言っています。デジタルホームでは、やはり二〇〇七年までに一千万世帯を目標にこれまた二兆ウォンを投資していくんだ、そして世界全体の情報家電市場の一七%、ホームネットワークの一三%のシェアを目標にしている、これが韓国の基本的な姿勢であります。

 そうした中で私たちは、ユビキタスネットワークのオーソリティーである坂村先生もいただいているわけであります。韓国の後塵を拝するわけにはいきません。私たち日本人は途上国ではないかと思っている方が圧倒的に多いんですが、実は全く違うのであります。

 私は、かつて堺屋太一大臣のもとで政務次官をさせていただきました。経企庁の中で、金融界、物流、デパート、銀行、そのトップとヒアリングをよくやるわけですが、実は堺屋大臣が、昔から日本は四大財閥があって、銀行があって商社があって全部系列があるというけれども、もうそんな時代ではないのではないか、日本のメガバンクが統合する時代がやってくるのではないかということを、私も同席の席で言いましたら、みんな笑ったのであります、銀行のトップが。それがあっという間に、コマーシャルじゃありませんけれども、三井住友VISAカード、こういう時代になってまいりました。

 そこで、麻生大臣、私は、今求められている一番のことはスピードだと思っております。国が責任を持つ範囲、企業が自由に競争する分野を明確にしながら、これからしっかりと取り組んでいく、その判断は政治家しかない、国家の意思を決める、これは政治しかない、このように考えているわけであります。今こそ政治家がこの決断をするときだと考えております。

 麻生大臣、大いに期待しておりますが、政治家、大臣としての御見解をお聞きいたしまして、本日の質問を終了させていただきます。

田端副大臣 先生の御質問の前半の部分をお答えさせていただきます。

 情報通信研究機構は、御指摘のとおり、ことしの四月に、基礎研究を実施してきた通信総合研究所と、実用化に資する研究をやってきた通信・放送機構、これが統合されましてスタートいたしました。

 おっしゃるように、ユビキタス社会の実現に向けては、その標準化というのは一番大事なところだと思いますので、そういう研究開発について、産学官協同して、そして、この情報通信研究機構が軸になることが大変大事だと考えております。

 それで、実は私は関西なんですが、関西の学研都市の中に、けいはんなのところにこの情報通信研究機構の下部機関といいますか、それのオープンラボが整備されております。そこで今これらのことが研究されておりまして、昨年からスタートしたけいはんなのこのオープンラボで、これから産学官の連携のもとで、おっしゃるような標準化に向けての研究開発が進んでいくものと我々も期待しているところでございます。

 以上でございます。

麻生国務大臣 今、サムスンの御指摘があっておりましたが、韓国の情報通信大臣は、サムスンの常務取締役でありましたし、スタンフォード大学の電気工学を出た人なので、いわゆるこの道のプロと思って間違いない人だと思います。

 私ども、三年前に、e―Japan計画に基づきましてe―Japanの特命委員会を党の中で立ち上げましたときに、約三年おくれた、三周韓国におくれているんだということだったんですが、以来、約三年弱がたって、昨年の十二月にジュネーブでこの陳という通信大臣に会ったときに、我々の方として、タグの話やトロンの話やユビキタスの話やらいろいろさせてもらって、向こうの言ったせりふが、ちょうど日本に対して韓国は三年おくれたと言った。

 この三年間、日本の役所を含め、行政手続オンライン化法などという希有の法律が通ったりして、猛烈な勢いでやはり変わった。また、それを補うだけの技術も、坂村先生のトロンを初め、これはやはり蒸気機関車が内燃機関にかわっていったあの騒ぎに匹敵するほどの大きな変化が今起きているんだという意識が少なくともかなりのレベルで広がった等々は、非常に大きな意識の変化だと思います。

 これに合わせて、小泉内閣のもとで、いわゆる総合科学技術会議とかIT戦略本部等々において、少なくともこのITの部門に関しましては、予算配分は、従来の大蔵省独特のヒラメの目みたいな、枝ぶりの話ばかりするレベルから、重点政策としてかなり重要なものと位置づけられるところまで来た。

 これはやはり従来なかった大きな変化だと思っております。いろいろな意味で、その方向に向かって事が進み始めております。この国は、進み始めたらわっと動きますので、なかなか動きにくいところだとは思いますが、少なくともその方向に足を踏み出したことは確かだと思います。こういった国際技術を獲得するとかデファクトスタンダードにしちゃうとか、いろいろな意味でそういったものの方向に向かって事は進み始めております。

 特に、このコミュニケーションの部分においては、いわゆるリナックスを初め、いろいろな形のオープンソースのものに人がどんどん参加して新しいものができ上がっていくというようなものがこれだけ普及するということは、数年前では考えられなかったような話ができ上がることになりつつあります。

 政府としては、こういったものにきちんと方向を出しておりますという姿勢と、それに対する規制の緩和と、それに対して税制の優遇と、そして最後に、多分、研究投資に当たりましての予算の配分ということの四つがきちんと絡み合っていく方向が私としては一番大事だと思います。

 少なくとも、この一年ぐらいの間、そういった方向に事は動き始めたかなという感じがいたしております。さらに、これは、三年したらまた追い越されているかもしれませんので、少なくとも、二〇〇五年までに世界で最も進んだIT社会をつくり上げた以降、二〇〇六年以降もその地位を維持し続けていくためには、e―Japanにかわって、ユビキタスのu―Japanとか、いろいろな方向というものをきちんと示して進めていくのが大切なことだと思っております。

 一省庁のやるような話とはとても思っておりませんので、全体としてやっていく。先ほど国交省の話もあっておりましたけれども、ユニバーサルにすれば、歩道に埋め込んでやる、何となく歩きにくいあの黄色の板も、少なくともタグにかわると全然変わったものになるかもしらぬ。見ている風景も変わる。いろいろな人がもっと道路に出てきやすくなるというようなことまで含めまして、日本という国は、すさまじくこの面においては進んだ社会として、世界の高齢者にとって羨望の的になり得る。

 そういったものは、いずれも基準がきちんとしておりませんと、民間もなかなか、いつまた変わるかもしれぬのじゃとてもやれませんので、きちんとした基準だけは示しておく必要があると思います。

 この基準とか、あの基準というには、いろいろまだまだ不足している部分もあろうかと思いますので、民間が競争する部分と、不必要な競争ではなくて、基準としてきちんとしたものを持っておく、両方必要だと思って整理をいたしたいと存じます。

今井委員 ありがとうございました。

 時間が超過しました。失礼をいたします。

佐田委員長 次に、長沢広明君。

長沢委員 公明党の長沢広明でございます。

 電波法及び有線電気通信法の一部を改正する法律案につきまして、きょうは審議をさせていただきます。

 本委員会におきましては、この内閣提出の法案と同時に、民主党の委員から独自案が提出をされておりまして、その両案につきましてきょうは審議をする委員会として開かれておりますが、この場に、その提出者も含めまして野党の一部の方が出席をされておらないことは、大変残念に思います。

 それはさておきまして、私の方からは、内閣提出法案の基本的な構造に基づきまして質問をさせていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 初めに、今回の法案の大きな前提というか背景ですけれども、電波利用の環境変化と今後の電波行政について質問をさせていただきたいというふうに思います。

 地上デジタル放送が、開始に向けて、いわゆるアナ・アナ変換という形で放送電波の移動が行われておりますし、このデジタル化のうねりは、ある意味では、高度な情報通信ネットワーク社会の形成に向けまして、電子政府や電子自治体の推進あるいは地域の活性化、新たな産業振興というような、さまざまな面で大きな波及効果を生み出そうとしております。

 その一方で、これまでの電波利用の環境と違う大きな変化の一つは、固定局から移動局へというふうに局が変化をしている。これまでは、固定局中心の電波行政という考え方ができた。しかし、これからは、移動局、極端に言えば、国民一人が幾つもその局に接する、そして、その電波局が常に動いているという状態が続くわけです。

 携帯電話の急速な普及や多角的なIT革命の進展ということに伴いまして、電波利用は、その意味で、質的な変化とともに量的にも大きく拡大しているというふうに見ていいと思います。

 総務省は、今まで、e―Japan戦略及びe―Japan戦略2というふうに戦略を組みまして、世界最先端のIT国家という議論を進めておりますし、今、さまざまな議論もありましたユビキタス社会の実現へ向けてのu―Japan政策の議論も進められております。

 高度な技術革新とこれに伴う電波利用の質、量ともの拡大というのは、二十一世紀の情報通信の流れとも言えますし、これは同時に、これまでの電波行政に大きな転換を迫っているというふうに言っていいと思います。

 それは、例えば、ユビキタス社会へ向けてのu―Japan政策あるいはe―Japan戦略2におきましても、これまで目標にしてきた基盤整備から、基盤整備はほぼ目標を達してきた、これからはそれをどう利用し活用するかという利活用へ向けて流れを変えている、目標を変えているということを見てもそれはうかがえるわけです。

 その一方で、特に、電波という面におきましては、電波というのは大変に有限、希少な国民共通の資源である、これが日本の電波政策の基本認識だと私は思っておりますが、この電波の有効活用をどう進めていくか、同時に、さまざまな分野で行われている電波利用についてその公益的な価値をどう高めていくか、それを非常に考えなきゃいけない時代に入ったと思います。

 電波利用の質と量の変化、それから電波のもともと持っている公共性、そして限界があるという有限性、このバランスをどうとるか。また、経済面の可能性もこれから広がる、それをどう見るかということも含めまして、こうした電波利用の環境変化に対し、今後の電波行政のあり方をどのように認識しておられるか、総務大臣のお考えを伺いたいと思います。

麻生国務大臣 今、長沢委員御指摘のように、電波利用の社会というのは激変をしております。これは、質、量ともに大激変をしておると思っております。

 この電波行政というものは、これは電波利用者が独占することになりますので、そういった意味では、独占をされている以上は、波長は決まっていますので、その分を非常に多く利用していただくのが大切。したがって、かつては使っていたけれども今は使っていないというようなもの、もしくは、かつては使っていたけれども今は別のものでやれるようになったというようなものに関しては、少なくともそこは、ちょっと済みません、かわってください、どいてくださいということを、今、無線ネットワークという世界でいけば、四・九ギガヘルツから五・〇ギガヘルツぐらいのところ、いわゆる大容量で送っていた分は光ファイバーでやってもらえることになりましたので、その分は、済みません、光ファイバーでやってください、そして、その分についてはあけてもらうというようなことを積極的にやらせていただいておりますのが電波政策ビジョンと言われるものであります。

 そういった意味で、これはかなり戦略的かつ大胆にやらないかぬところでもありますので、ある程度、既得権益みたいになっている分は、どいてくださいと言う以上、いろいろなちょっと抵抗もあることは覚悟せないかぬところだとは思っております。これは、免許制から登録制へとか、いろいろな形で猛烈な勢いで今ふえていっている部分でもあります。

 そういった意味では、電波政策ビジョンというのを、情報通信審議会に出して、昨年七月に答申をいただいたところでもありますので、今後この答申に基づきまして、きちんとした、新しい時代にあって今いろいろな意味で変化しておるという御指摘のとおりでありますので、電波行政のかじ取りというのは大変難しいところだと思いますが、少なくとも、利用される部分にはより利用しやすいようにする、利用されなくなった部分については交代してもらう、基本的にはこれだと思っておりますので、その方向で事を進めてまいりたいと存じます。

長沢委員 今、戦略的かつ大胆にというふうに言われました。本当にそのとおり。今、この電波の利用について、ある意味で大なたを振るわなければいけないような局面に達しているというふうに思います。今回の法案の基本的な立場は、そこに立っているというふうに思います。

 この世界最先端のワイヤレスブロードバンド環境をつくっていくという意味で、現状どうなっているかといいますと、電波利用は、無線局の数が現在八千六百六万局、このうちのほとんど、八千五十四万局が携帯電話関係が占めている。ちなみに、去年の同時期、二月の段階で、携帯電話関係の局数は七千四百三十七万局、その前の年は六千八百万局。つまり、六千八百万から七千四百万、そして今八千万。このように、電波利用の進む方向性として、いわゆる移動局の数がどんどんふえている。

 これをしっかりと我々も受けとめなければなりませんし、あるいは、CATVのインターネット加入数は、去年の一月で百九十九万件、ことし一月には二百五十一万件。あるいは、ADSLなどの高速通信の加入数も、六百十二万件から一気に飛躍して一千六十一万件、こういうふうに進んでおります。

 さらに進んでまいりますと、情報家電の拡大と言われるように、さまざまな身の回りの家電が電波を介してインターネットと接続していくというふうになってまいります。こうすると、これらの数はさらに今後拡大することは間違いありませんし、ブロードバンド環境というものが今までとは比べようもない勢いで広がり、かつ変化をしている。このスピードに行政としても追いついていかなければならないという問題があります。

 一方、このユビキタス社会を展望しますと、象徴的なパターンとしてよく言われるのは、外出先にいるときには外出先として家の中をコントロールでき、家に帰ると帰宅のコントロールの状態に返って、既に食事や空調や給湯というものが在宅のモードに変わって自動的に動作を開始する、そういうような環境というものがこれから、先ほど大臣もおっしゃったとおり、家の中あるいは道路、いろいろな形で私たちの社会の中に出てくる。

 例えば、私たちの位置情報、周辺情報も把握できるというような形で、バリアフリー環境という意味でも前進をしていくわけです。これは、障害者だけではなく高齢者の生活向上にも非常に大きな可能性を開くという意味で、生活をよりよくしていくという意味でも、ユビキタス社会の前進、そしてその前提となるワイヤレスブロードバンド環境の構築ということは、今非常に大事な課題になっているわけです。

 その点を考えますと、現在の電波利用のありようを見直す必要があるというのは当然でございまして、今、大臣も、利用状況、活用状況を見て必要であれば別のところに移ってもらう、あるいは退席をしていただくというような、戦略的かつ大胆な見直しというものが必要だというふうにおっしゃいました。

 これは、例えば、パソコン上ではよく行われていることでございまして、ディスククリーンアップとかデフラグという操作があります。使っていくとディスクの中にいろいろなソフトあるいはファイルがどんどん入っていく。それが、すき間が非常に少なくなっていって、あるいはすき間があちこちに分散をしているという状態になっていく。ディスククリーンアップをすると、ふだんの利用状況を見て、利用頻度の少ないファイルは圧縮したり、あるいは時によっては削除するという形でディスクをまずきれいにする。きれいにした上でデフラグという操作をしますと、断片化したファイルをそれぞれ整理しまして、一つにつなげられるものは連続する、あるいは場所を移動するというような形で、ディスクの中のすき間を整理して、ファイルの固まりあるいはすき間の固まり、こういうものをつくっていくという操作をやります。こうやって、パソコンの場合は全体の動作環境を向上させるというような作業をよくします。

 利用状況を、このファイルはどのぐらい使っているのか、このファイルはしばらく使われていないのかというのを見た上で全体を整理する、こういうやり方をパソコン上でもするわけですが、この点でも、電波の利用状況、電波行政の上では電波の利用状況調査ということが大事になってまいります。

 平成十五年度に総務省としても電波の利用状況の調査をしておりまして、無線局の分布の状況とか使用技術、利用状況、あるいは有効利用の程度という観点からこれを調査して、その上でほかの通信手段への代替可能性を調べる、それをもとにして今回、いわゆる整理をするという作業に入るわけでございます。

 このように、使用帯の圧縮あるいは光ファイバーへの転換が適当と評価された電波帯も少なくありませんで、こういうような調査、利用頻度の少ないものについて圧縮したり削除したりする作業が必要だと思います。このような有効利用という課題について、今後この調査に基づいてどのように取り組んでいかれるか、そのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

田端副大臣 御指摘のとおり、電波の有効利用というのはこれから大変大事な課題になってくると思いますが、有効かつ効率的にどう利用されているかということが、またあるいは、御指摘のように光ファイバー等に代替することが可能かどうか、そういったことの把握が今必要だということでございます。

 そして、平成十四年に、電波法の改正に従って電波の利用状況調査・公表制度というものが導入されました。そして十五年十月には、移動通信等の導入に必要な周波数を確保する方針として周波数の再編方針というものが策定され、その再編方針を踏まえて、現在、電波の利用状況調査を実施し、また具体的な周波数の再編を推進しているところでございます。

 電波の利用状況調査については、御承知のとおり、今、三年ごとに区切りまして実施されているところでありまして、圧縮とか転換とか削除とか、こういったことがこれからもまた進められていくことと思います。

 例えば、平成十四年は五ギガヘルツ等の電波の利用状況について調査したとか、そして平成十五年には三・四ギガヘルツを超える周波数とか、こういった形で今やっているところでございます。そして、光ファイバーへの代替とかデジタル化といった周波数の有効利用技術を導入することが今検討されているところでございます。

 そして、今後、これらの評価に基づきまして、無線LAN等無線アクセスシステムの周波数割り当ての拡大ということ、そしてまた情報家電への周波数の割り当ての拡大、こういう世界最先端のワイヤレスブロードバンド環境というものをユビキタス社会実現のために構築、そういうことを今推進しているところでございますが、平成十六年度以降についても引き続きまた調査を実施して有効利用に取り組んでまいりたい、こう考えているところでございます。

長沢委員 そのような利用調査の結果を受けて、物によっては光ファイバーに移動していただく、あいたスペースを無線LAN、情報家電あるいはICカード、ICタグ等ワイヤレスブロードバンドの環境整備のために開放していくということでございます。その際、今回、電波利用を促すために新たな場所を開放して、また新たに参入するわけですけれども、その中には今回から登録制度を導入する、いわゆる認可にするということです。

 そこで、これは簡潔にお答えいただければ結構なんですが、これまでの電波監理形態はずっと免許制度をとってきた、この免許制度を中心にとってきた理由はどうしてか。そして、今回新たに登録制度、いわゆる認可、登録の形で導入しようとしている、その理由は何か。そして、この登録制度で新規登録を簡素化するということになるわけですが、その場合の今後の課題をどのように考えているか。三点まとめて簡潔にお答えいただければと思います。

有冨政府参考人 お答えをいたします。

 今、電波の利用でございますが、例えば、家庭内使用など、極めて弱い電波を使用しない限りは、同じ周波数の電波を同時に使いますと混信が発生して通信としての利用ができなくなる、こういうようなことでございます。このため、ちょうど道路における交通整理と同じように、総務大臣が電波の利用につきまして事前に交通整理を行う、そういう観点で免許制が必要とされてきているものでございます。

 それから、登録制でございますが、例えば、今回、登録制の対象として高出力の無線LANというものを想定しておりますけれども、これは、高出力、電力が強いということで、他に影響を及ぼす範囲が広範囲にわたる。したがって、無線局の所在を正確に把握するということのためには一定の電波の監理が必要であります。必要ではありますが、この高出力の無線LANは、キャリアセンス機能と呼ばれるものでございまして、非常に短時間で電波を発射して情報伝達する、いわば混信というものが非常に技術的に避けやすいものでございます。

 したがって、こういった高出力の無線LANで事前に免許制で緻密な混信計算をして交通整理をしなくてもいいようなもの、これについてまでわざわざ免許制というものの必要はないだろう。したがって、その免許制を少し緩和して、より利用しやすいような登録制度というものを導入してはどうかというのが今回お願いしている制度でございます。

 それから、こういったものでございますが、これは一般の免許のものと違いまして、免許の場合は特定の電波を一人の者に使用させるわけでございますが、この無線LANのようなものは多数の者が利用することになります。そういたしますと、俗にベストエフォートと言いますけれども、たくさんの人が利用しますと速度が低下するということがございます。したがって、こういった逼迫対策としましては、新たに電波を追加的に割り当てるとか、あるいは利用者への詳細な無線局情報を提供するとか、当事者間で円滑に利用調整ができるようなルール化、こういったものの検討が必要というふうに考えておるところでございます。

長沢委員 時間がなくなりましたので最後になると思いますが、電波利用料の考え方でございます。

 我が国の電波利用料の考え方は、制度ができて以来、必要と見込まれる電波利用の事務費、いわゆる全体の共益費用、無線局全体のために共益的に使われる行政事務の費用をその期間に合わせて無線局で公平に負担するという考え方でこの電波利用料が算出されているというふうに理解をしております。

 ある意味では大変リーズナブルな金額なわけですけれども、今回、この利用料の考え方をもう一度整理するに当たって、総務省としても、数年前からいわゆるオークション制度の導入を視野に入れて検討されていたというふうに私も聞いております。数年前からこのオークション制度も検討した上で、今回そのオークション制度を見送ったという、その導入を見送った根拠、その理由について御意見をお伺いしたいと思います。

田端副大臣 御指摘のとおり、我が国では、電波の手数料、利用料として、共益事務経費に充てるということで手数料を徴収しているところでございます。例えば、携帯一端末当たり年間五百四十円ということで、月にすると四十五円ということですから、安いか高いかということになれば安いなという感じもいたしますが、平成十六年の歳入としては、総額で五百五十億、そういう手数料になっているわけでございます。

 しかし、この電波というものは、これは国民共有の資源である、そういう考え方が非常に大事だと思っております。そして、そういう意味での電波の使用に対する対価を徴収する、こういうことが国民の納得できる形ということになるんだろうと考えるわけであります。

 そういう中で、電波の有効利用についての研究会が電波利用について検討してまいりました。そして、経済的価値の導入の適否も含めて総合的な観点から検討を今行っているところでございますが、さらに電波利用のあり方について深めていく必要があると思います。

 今御指摘のあったように、オークション方式はどうなんだという御意見でございますが、ちなみに、ヨーロッパにおけるオークションの今までの実施状況を見てみますと、非常に好ましくなかったということが指摘されています。

 例えば、英国では、二〇〇〇年四月から実施されておりますが、五事業者を選定して落札総額が四・五兆円、ドイツでは、二〇〇〇年八月実施でございますが、六事業者を選定して落札総額が五・八兆円、大変に高騰した形になりました。そのために、サービスの開始がおくれ、あるいは、ドイツにおいては二事業者が事業を撤退する、こういった事態にまで波及いたしまして、国家的戦略であるこのIT産業が逆にこのことによって衰退してしまった、こういう非常に悪循環の例がヨーロッパで起こったわけでございます。

 したがって、我が国にこのオークション制度を導入するかどうかということについては、そういうこともよく検討した上で考えなければならないテーマだと思っております。特にこの免許料が高騰する結果、電気通信事業者等の経営基盤が悪化して、ブロードバンド環境、安い、速いという日本のこの今の状況に悪影響をもたらすんではないか、電気通信事業者あるいはメーカー、そういったところに悪循環をもたらすんではないかということが懸念されます。

 それから、御指摘のとおり、電波利用の既得権益化ということになってくれば、例えば二次売買とか三次売買とか、こういったことも想定されるわけでありまして、国家の有効な資源である電波がそういうことで既得権益化されてしまうということは、有効利用というものを損なうことになってしまいますので、今、我々としては、オークション制度というものはそういうことを踏まえた上で考えなければならない問題だ、こういうふうに思っております。

長沢委員 私としても、オークション方式は、資本力によっては一部の業者の独占になり、また、その一部の業者からの転売を生ずることになり、転売されていけば、その後のいわゆる電波の再分配をまた困難にするということもありますし、地域間の格差を広げる危険性もあるということで、時期尚早ではないかというふうに思っております。

 その意見を申し上げて、質疑を終了させていただきます。

佐田委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前十一時四十一分休憩

     ――――◇―――――

    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕


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