衆議院

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第10号 平成17年3月15日(火曜日)

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平成十七年三月十五日(火曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 実川 幸夫君

   理事 左藤  章君 理事 佐藤  勉君

   理事 野田 聖子君 理事 森山  裕君

   理事 安住  淳君 理事 大出  彰君

   理事 松野 頼久君 理事 桝屋 敬悟君

      岡本 芳郎君    奥野 信亮君

      亀井 久興君    小西  理君

      佐田玄一郎君    自見庄三郎君

      田中 英夫君    谷  公一君

      谷本 龍哉君    西田  猛君

      萩生田光一君    平井 卓也君

      増原 義剛君    松本  純君

      三ッ矢憲生君    山下 貴史君

      五十嵐文彦君    伊藤 忠治君

      稲見 哲男君    楠田 大蔵君

      小宮山泰子君    田嶋  要君

      高井 美穂君    津村 啓介君

      寺田  学君    中村 哲治君

      西村智奈美君    馬淵 澄夫君

      松崎 公昭君    山花 郁夫君

      吉田  治君    河合 正智君

      長沢 広明君    塩川 鉄也君

      横光 克彦君

    …………………………………

   総務大臣         麻生 太郎君

   総務副大臣        山本 公一君

   総務大臣政務官      増原 義剛君

   総務大臣政務官      松本  純君

   政府参考人

   (総務省行政管理局長)  藤井 昭夫君

   政府参考人

   (総務省情報通信政策局長)            堀江 正弘君

   参考人

   (日本放送協会経営委員会委員長)         石原 邦夫君

   参考人

   (日本放送協会会長)   橋本 元一君

   参考人

   (日本放送協会副会長)  永井多惠子君

   参考人

   (日本放送協会理事)   安岡 裕幸君

   参考人

   (日本放送協会理事)   宮下 宣裕君

   参考人

   (日本放送協会理事)   和崎 信哉君

   参考人

   (日本放送協会理事)   野島 直樹君

   参考人

   (日本放送協会理事)   中山 壮介君

   参考人

   (日本放送協会理事)   諸星  衛君

   参考人

   (日本放送協会理事)   出田 幸彦君

   総務委員会専門員     石田 俊彦君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十五日

 辞任         補欠選任

  谷  公一君     山下 貴史君

  伊藤 忠治君     吉田  治君

  楠田 大蔵君     津村 啓介君

同日

 辞任         補欠選任

  山下 貴史君     谷  公一君

  津村 啓介君     馬淵 澄夫君

  吉田  治君     伊藤 忠治君

同日

 辞任         補欠選任

  馬淵 澄夫君     楠田 大蔵君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件(内閣提出、承認第三号)


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     ――――◇―――――

実川委員長 これより会議を開きます。

 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件を議題とし、審査に入ります。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本件審査のため、本日、参考人として日本放送協会の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

実川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として総務省行政管理局長藤井昭夫君及び情報通信政策局長堀江正弘君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

実川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

実川委員長 まず、趣旨の説明を聴取いたします。麻生総務大臣。

    ―――――――――――――

 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

麻生国務大臣 日本放送協会の平成十七年度の収支予算、事業計画及び資金計画につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 この収支予算、事業計画及び資金計画は、放送法第三十七条第二項の規定に基づきまして、総務大臣の意見を付して国会に提出するものであります。

 まず、収支予算について、その概要を御説明申し上げます。

 一般勘定事業収支につきましては、事業収入が六千七百二十四億円、事業支出が六千六百八十七億円となっており、事業収支差金三十七億円の全額を債務償還に使用することといたしております。

 一般勘定資本収支につきましては、資本収入、資本支出がともに八百二十六億円となっております。また、建設費が七百八十九億円となっております。

 次に、事業計画につきましては、特に、国民・視聴者の信頼回復に向けて、経営委員会の強化を図りつつ、再生に向けた体制・組織の改革等を柱とした抜本的改革に取り組むことのほか、地上デジタル放送の推進と普及発達等が盛り込まれているところです。

 資金計画につきましては、収支予算及び事業計画に対応する年度中の資金の需要及び調達に関する計画を立てたものであります。

 総務大臣の意見につきましては、一連の不祥事に係る信頼回復に向けた取り組みの途上にあって、十七年度収支予算等は、受信料収入が前年度予算を下回る厳しい状況となり、また、引き続き、受信料の公平負担等の観点から将来に向けて改善されるべき点がありますが、再生・改革に向けた各種措置を盛り込むとともに、収支均衡予算を堅持しており、やむを得ないと認めるといたしております。また、公共放送の原点に立ち返った一層豊かで質の高い放送番組の充実、災害・緊急報道体制の強化、放送のデジタル化に関する取り組み等についてはおおむね適当なものと認めるとしておるところです。

 その上で、特に、一連の不祥事及びこれに伴い受信料の支払い保留等の状況が生じていることについて、憂慮すべきことであり、まことに遺憾、再生・改革に向けてあらゆる取り組みを組織を挙げて全力で推進し、国民・視聴者の信頼の早期回復に努める必要があるとの見解を付し、さらに、収支予算等の実施に当たり、受信契約の締結の徹底等特に配意すべき八点を付記しているものであります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。

実川委員長 次に、補足説明を聴取いたします。日本放送協会会長橋本元一君。

橋本参考人 ただいま議題となっております日本放送協会の平成十七年度収支予算、事業計画及び資金計画につきまして、御説明申し上げます。

 平成十七年度の事業運営に当たりましては、一連の不祥事を深く反省し、視聴者の皆様の信頼回復に向け、全組織を挙げて再生・改革に取り組んでいく所存でございます。

 事業運営の基本となる放送サービスにおきましては、公共放送の原点に立ち返り、公正で迅速なニュースや、心を和らげ、だれもが安心して見ることのできる質の高い番組を放送するとともに、デジタル放送の普及発展に先導的な役割を果たしてまいります。

 また、視聴者の皆様の声に真摯に耳を傾け、業務運営に的確に反映するとともに、コンプライアンス活動の強化と業務全般にわたる抜本的な見直しにより、効率的で透明性の高い業務運営を徹底し、視聴者の皆様に理解され、信頼される公共放送を実現してまいります。

 あわせて、公共放送の自主自立を支える受信料制度への理解促進を図るとともに、受信契約の増加と収入の確保に努めてまいります。

 次に、建設計画におきましては、地上デジタルテレビジョン放送やハイビジョン放送のための設備などを積極的に実施いたします。

 以上の事業計画に対応する収支予算につきましては、一般勘定の事業収支におきまして、受信料などの収入六千七百二十四億四千万円、国内放送費などの支出六千六百八十七億二千万円を計上しております。事業収支差金三十七億一千万円につきましては、債務償還に使用することとしております。また、資本収支につきましては、支出において、建設費など総額八百二十六億一千万円を計上し、収入には、それに必要な財源として、減価償却資金など総額八百二十六億一千万円を計上しております。

 最後に、資金計画につきましては、収支予算及び事業計画に基づいて、資金の需要及び調達を見込んだものであります。

 以上、平成十七年度収支予算、事業計画及び資金計画につきまして、そのあらましを申し述べましたが、今後の事業運営に当たりましては、再生・改革に向けたこれらの施策を一つ一つ誠実かつ着実に実行し、一日も早く視聴者の皆様の信頼を回復していく所存でございます。

 委員各位の変わらざる御協力と御支援をお願いし、あわせて何とぞよろしく御審議の上、御承認賜りますようお願い申し上げます。

実川委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

実川委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。野田聖子君。

野田(聖)委員 おはようございます。自由民主党の野田聖子でございます。早速ですけれども、質問に入りたいと思います。

 今、大臣の方からもお話がありましたように、昨年の七月以来、NHKは不祥事続きでございます。一連の不祥事といって片づけてしまえばそれまでかもしれませんけれども、とにかく数が余りに多い。次から次へと不祥事が出てまいります。つい最近も、記事で新たな不祥事についての指摘がございました。

 実は、私を含めて国民の多くが、これはいつまで続くんだろうか、まるでパンドラの箱をあけたように次から次へとNHKからは不祥事しか出てこないと。そういう状況に至って、公共放送というのは、何よりも守らなければならないのが信用であり信頼だと思います。

 その上に立って、国民が自発的に受信料を払ってくれている、そういう意識の欠如を非常に強く感じておりますけれども、こうした事態をどう認識し、そして視聴者に対してもうこれで終わりです、もう不祥事は出てきませんということをいつ宣言できるのか、こういうことについても会長に伺いたいと思います。

 あわせて、これらの不祥事については、一部、プロデューサーが犯罪を犯したのではなくて犯罪者がプロデューサーをやっていたんだ、そんなような笑えぬ評価も実際あるようですけれども、どちらにしても、それぞれの職員がやったことは悪いけれども、その悪いことを見抜けなかったNHKの組織のずさんさ、管理責任というのを、大変厳しく追及させていただかなければならないわけです。

 これは、いろいろ一連の不祥事の中身を拝見したけれども、大概は猫ばばみたいな話ですね。きちっと管理されていれば、そこできちっとつかまえることができたわけです、未然に防ぐことができたけれども、こういう極めて基本的なこと、基礎的なことができてこなかったNHKの組織というのはどういうものなのか、非常に不思議でなりませんし、腹立たしい気持ちでいっぱいです。

 こういう実態が起きたことについての現状認識、そして、今お話がありましたように、いろいろ取り組んでいる、こういうことが起きないように取り組んでいるという話がありましたけれども、いま一つわかりづらい点があります。こういうことをするので不正が起きなくなりますということをきちっと明言していただきたいと思います。

橋本参考人 先生御指摘のとおり、昨年夏以来、一連の不祥事につきまして、視聴者の皆様の信用、信頼を大きく損なってまいりました。改めて、ここに深くおわび申し上げます。

 一連の不祥事を深く我々反省しまして、考え得る限りの有効な適正化対策を講じてまいります。不正の把握、究明にも取り組んでおります。

 まず、法令などに違反していると思われる行為を見聞きした場合には、職員などが通報する窓口をNHKの内部あるいは外部の両方に設置しまして、不正の早期発見に努めております。また、不正の疑いがある場合には、これを徹底的に調査していくということにしております。内部調査では限界があるもの、これについては警察の捜査に協力することで解明に努めております。いかなる不正も見逃さず、これを明らかにしようと取り組んでいるところでございます。

 透明性をより高めることが視聴者の皆様の信頼を回復する第一歩であると考えております。まだ隠していると思われることは極めて残念なことでございますが、私は、この際、うみは出し切るという強い決意で適正化に臨んでいます。不正があればこれを隠すことなく公表し、あわせて、不正を起こさないための適正化施策を講じてまいります。こうした取り組みを全力で行うことで視聴者の御理解を得たいと考えているところでございます。

 それから、プロデューサーの犯罪というふうなことでございます。

 番組制作の現場では、できるだけ創造性、主体性を持って業務に取り組めるよう、番組の制作責任者であるチーフプロデューサーに一定の権限を与えております。今回の不祥事は、このチーフプロデューサーみずからが、その権限を悪用し、公金である受信料を不正支出させたもので、痛恨のきわみでございます。

 今回の不正では、出演者や放送作家などに放送料を支払ういわゆる放送料システム、これが悪用されたことから、現在、手続の適正化と再発防止に取り組みました。例えば、業務を終えた後は、請求書と成果物を確実に確認するほか、経理審査の体制を強化する中央審査センター等を設置しまして、全国の経理審査の指導、支援強化等経理処理の適正化を推進しております。

 透明性の高い経理処理、説明責任を果たせる業務運営を実現することが視聴者の皆様の信頼を回復する道であると考えておりまして、今後も、業務の適正化と職員の公金意識の徹底に不断の努力を加えてまいりたいと思います。よろしくお願いします。

野田(聖)委員 いろいろと、今までどうしてやってこなかったのかしらと思うような話ばかりなんですけれども、徹底的にやっていただくことと、普通、日常においてもやはり、だんだん生活が派手になっているようだなというのは伝わるものがあるんですね。そういうところをやはり敏感にキャッチしていただいて、ただただ事務的な経理処理だけではなくて、NHKの職員というのは公共放送を担う職員で、やはり、見識があって、そしてだれよりも正義感が強い人たちでNHKというのは構成されなきゃいけないんだ、そういうさらなる自覚を厳しく促していただきたいと思っています。

 ところが、残念なことに、NHKの信頼というのはもう全く国民の中ではないに等しい状況ではなかろうかと思います。そのあかしに、次々といわゆる受信料の不払いというのが発生しているところであります。この予算の前提になっている受信料の見込みですけれども、これすら、本当に今出していただいた資料でいいのかしらという不安すら感じています。

 そこで、事実関係を確認したいんですけれども、現在、三月末現在での見込みでいいですから、どのくらいの不払いになっているのかについて教えていただきたいと思います。

中山参考人 お答えいたします。

 受信料の現場、大変厳しい状況になっておりまして、受信料につきましては、一年を六期に分けまして、二カ月単位で営業活動を行っておりますけれども、不祥事などを理由に受信料支払い拒否または保留の意向を表明された方は、五期末、一月末で三十九万七千件でありました。二月末現在につきましては、現在第六期の活動中でありまして正確な数字ということではありませんが、あくまで暫定的な集計ということで見ますと、約五十六万件に上るというふうに見ております。

 また、三月時点の状況についてですが、これも現在懸命な活動をしておりまして確定的なことは言えませんが、現時点であえて見込むということであると、七十万件程度になる可能性もあるというふうに今考えております。

野田(聖)委員 つまり、一連の不祥事に対してNHKはいろいろ取り組みを始めた、そして個別の活動をしている、にもかかわらず不払いの件数というのはどんどんふえてしまっている、そういうことだと思います。

 実は、そもそも確信犯的に払わない人というのはいらしたわけですね。これは、罰則がない、努力義務みたいなものですから、受信料は。ところが、今回の不祥事でNHKを許せない、そういう義憤の念から受信料を払われない方が急速にふえている。さらに輪をかけて、隣の人が払っていないのに何で自分が払わなくちゃいけないのという雰囲気まで醸し出してきているのが現在の受信料に対する状況ではないかと思っています。

 かつては、信頼があったからこそ、国民の善意の部分、自発的な部分で支えられてきた受信料のこの制度ですけれども、あえて口座の振替をやめてまで、そういう事務手続をしてまでやめたくなっている国民・視聴者の心理、心境というのを十分受けとめていただきたいと思うんですが、これについてはどうでしょうか。

中山参考人 お答えいたします。

 受信料の口座振替を中止されるというお申し出の方は、ことしに入って増加をしているということであります。十六年の第五期、一月末までに申し出られた方の数は約五十六万件というふうになっておりまして、この中には住所変更に伴う口座の解約なども含まれておりまして、さまざまな理由による支払い方法の変更も含まれているということで、すべてが不祥事による口座振替ではないということであります。

 こうした事態を受けまして、今、私ども営業現場では、営業職員と地域スタッフが不払いを表明された方々のお宅を一軒一軒回って支払いをお願いするという活動を続けておりますし、さらに、全国のNHKで、一般職を含めたNHKの全部門の職員が信頼活動を全国的に展開しております。

 それから、来週から四月末まで、当面、電話と手紙等々による理解促進、これを集中的に行おうという活動をしております。それから、外部のさまざまな業務委託をお願いしている会社がございますので、こういう会社と協力などの活動を集中的に進めて、何とか不払いの増加、これをおさめていきたいというふうに努力をしているところであります。

野田(聖)委員 NHKを支える受信料の制度というのは、昭和二十五年ですか、そこから始まって五十年以上たっている。その間、日本は大きく、国民生活も、または放送にかかわる業界のありさまも、今インターネットが入ってくる中ですから、激変しているわけですね。

 そもそもとして、この受信料の今の制度のあり方については、より税金的なものにしたらどうだとか、または支払いがなかった人に対して罰則をつけたらどうだというような意見も最近時々拝見することがあります。

 受信料システムが、かつては人々の自発とか善意とか、要するに国に対する信頼のもとで成り立ってきたけれども、今こうやって揺らいでいる、不祥事なんかで揺らいでいる。それに対して総務大臣としては、この受信料について、国民に対してどういう思いを持っておられるのか、そして今後はどういうふうにあるべきかということについてお伺いしたいと思います。

 例えば、一例を挙げますと、白黒のテレビ受像機が製造されなくなって久しいわけですね。ですから、現実問題、ほとんどの家庭はカラー受像機のはずなんですけれども、NHKはいまだやはり白黒の受像機用の受信料という制度も持っている、こういう何かあいまいもことしているところにやはり私も若干の不信を感じざるを得ないわけです。

 そういうすべて網羅した中で、これからの受信料のあり方について、まずは国民の今の現状に対して総務大臣はどういう思いを持っておられるのか、そして今後のあり方についての御意見を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 今御指摘のあったように、こういうものはもともと公共放送としてスタートしております関係、しかも受信料によって賄うという形でやってきた生い立ちというものが昔から続いている制度でありますが、テレビが入ってきたとき、カラーテレビが始まったとき、衛星放送が始まったとき、それなりにいろいろやり方を変えてきたという歴史でもあります。

 しかし、今はやはり技術が発達しましたから、いろいろやり方を激しくやろうと思ったら、技術的にできないわけではありません。特に、時代は変わっておりますので、一家に一台のテレビどころか、一家に何台もテレビがあって、車で見られて、携帯で見られてということになっております。テレビというものの持っております可能性の範囲は物すごく広がっているという現状、これにデジタルハイビジョンときましたから、いろいろなやり方がもっとできるということは事実だと思いますけれども、基本的には、今やっておりますように、不信感というものが出てきたというところは、これは厳しく反省をせないかぬところだと思いますので、まずはその信頼回復に努めていただくのが第一。

 その結果、今言われましたように、さらに、別に不信感はなくても、隣のやつが払わないで何でおれが払わなくちゃいかぬのかというような意識というのは、モラルの問題としては、これは契約義務が支払い義務を伴っていないからというような話で、どんどん自分の都合のいいようにやっていく風潮というのは、これは問題な心理状態であるとは思いますよ。

 ただ、しかし、基本的には、支払うということでやっていただくところから取り組んでいただいて、それでもということになればまた別の方法も考えないかぬ事態になるかもしれませんけれども、基本としてはそういった信頼回復に努めていただく、これにまずは全力を挙げてやっていただいて、その上での話だと存じます。

野田(聖)委員 いずれにしても、受信料のあり方については、これからまた、この新しい時代の中で、今大臣がお話しになったように、家にあるテレビだけではなくなった時代にあって、どういう受信料のあり方にするべきかというのは、やはりきちっと議論するべきではないかと思います。

 最後に、先ほど会長の方から、信用、信頼回復のためにいろいろなことをやっていますと。一軒一軒回っておわびもされているそうですけれども、やはり、本来NHKというのは公共放送ですから、公共放送として、一軒一軒回るのではなくて、その番組並び放送している姿勢を通じて大きくさま変わりしたということをアピールしていただきたいと思うわけですね。では、民放ができなくて公共放送ができることは何かといえば、全国あまねく放送を受信できるようにするとか、さらには障害者に対しての施策をやはり先駆けて先駆けて、字幕放送も含めてですけれども、取り組んでいく。

 しかし、私が今一番望んでいるのは、日本において子供を取り巻くテレビというかメディアの環境の劣化がいろいろ各方面から指摘されているにもかかわらず、他の先進国に比べて極めてその取り組みが遅い、遅いというか、ないような状況になっているわけであります。

 私は、実は、別件で、十年間ぐらい、NHKや他の民放の皆さんに、やはり青少年の健全育成のために、テレビの与える影響は大変大きいから、やはり子供が起きている時間帯には、暴力とかポルノグラフィーとかドラッグとか、悪い影響を受けやすいような番組については自粛してほしいということを願ってきておりますけれども、いまだ聞き入れてもらっていませんし、せめて、それでは格付のような形で、親がその番組に対して判断できるような、そういうガイドラインをつくってほしいと申し入れても、NHKもそうですし、他の民放の方もずっと拒絶、拒否をしてこられているわけであります。

 私は、ぜひ、やはりこれからの時代、少子化というのは単に数だけの話じゃありません、その質も問われる中にあって、民放ができない、教育に特化してきたNHKの公共放送としての自負があるとするならば、自分の手がける番組だけではなくて、やはりテレビを通じて子供たちがしっかりと自立した大人となっていけるような方向性をつくり上げていけるような、放送業界のリーダーとしての取り組みをしていただきたい、こういうことで子供を持つ親の信頼回復等々していただき、将来に向けての夢や希望を与えていただきたいなと強く願っているところですが、いかがでしょうか。

橋本参考人 仰せのとおり、NHKの信頼回復につきましては、良質の番組を提供するということで、これが基本だと思っています。

 その中で、幸いにもNHKは、いわゆる質のよい子供番組というものに大変いい評価をいただいています。例えば「にほんごであそぼ」あるいは「ピタゴラスイッチ」、「ドレミノテレビ」、こういうふうなものも評判がよろしいわけですが、新しい年度から、また「からだであそぼ」とか、新しい幼児向け番組を新設するなど、内容を強化してまいりたいと思っています。

 そういう中で、現在、NHKの放送文化研究所でございますけれども、こちらの方を中心としまして、子どもによい放送というプロジェクト、これを立ち上げて取り組んでございます。このプロジェクトは、教育、心理、医学、こういう関連分野の第一線の研究者と共同で進めているものでございますけれども、千人の子供たちをゼロ歳児から十二年間、子供たちが小学校を卒業するまで追跡調査しまして、その子供を取り巻く環境において保護者や社会が果たすべき役割や、映像が子供の発育にどう役立つかを検証しようとするものであります。

 こういうふうな調査研究の成果も交えまして、公共放送として子供と放送の関係がよりよいものになりますように積極的に貢献してまいりたいというふうに思っております。

野田(聖)委員 終わります。

実川委員長 次に、長沢広明君。

長沢委員 公明党の長沢広明でございます。

 本日は、NHKの平成十七年度の収支予算、事業計画及び資金計画についてお伺いするわけでございますが、先ほど来お話がありますとおり、現在のNHKを取り巻く状況は、昨年相次いだ不祥事により、大変厳しい状況が続いてまいりました。NHKの本来持っている役割は大きいわけで、何よりも視聴率に左右されない、そういう大きな利点をもとに、良質な番組放送を提供し、災害や緊急時の報道、そういうもので国民の利益に資するという公共放送としての原点を不断に確認しながら、新生NHKを目指す改革を着実に進めていただきたいというふうに強く念願をしております。

 そこで、昨年九月にも、本委員会におきまして集中審議が行われました。その際、当時の海老沢会長を中心にNHKの執行部の皆様に対して、私は、経費の不正支出、私的流用の事件に関連して、視聴者からの信頼を回復する道のりは大変厳しくなる、けれども、誠実に、一生懸命信頼回復の道を歩むべきだと訴えさせていただきました。

 その上で、そのときに三点、私は指摘をさせていただきました。特に、この不正流用の問題。第一は、不祥事の根っこになるようなずさんな経理処理の体制というものがありました。あのとき問題になりましたのは、事件を起こしたチーフプロデューサーの例で言いますと、いわゆる経理、要求する側とそれを決裁する側が同一人物になるという代理請求の手法、これでは全くチェックシステムが働かないというずさんな経理システムの問題がありました。その抜本的な改善をその際まず求めたというのが一点でございました。

 さらに、この事件は、元チーフプロデューサーだけの問題ではなくて、既にその前から、何かお金の流れがおかしいですよ、巨額に赤字がこの番組は出ていますよという指摘がありながら、その当時の上司が、その指摘を受けてきちんとした調査をしなかった、決着をそのときにつけなかった。これは、チーフプロデューサーだけではなくてその上司の意識、ここには、視聴者の皆様から自発的に納めていただいているいわゆる受信料というものに対する、いわば公金に対する意識というものが欠如していた、自覚が欠如していたのではないか、公金意識に対する問題が不祥事の温床になっていたのではないかということも指摘をさせていただきました。

 さらにもう一点。さまざまな不祥事に対するNHKの情報公開のあり方、それも非常にあいまいで、しかも小出しな情報の出し方をしてきたということで、情報公開のあり方というものも見直すべきだということをあわせて厳しく指摘をさせていただきました。

 そこで、新体制にNHKもなられたわけですけれども、昨年指摘させていただきましたこの代理請求などの経理システムの改革、それから職員の公金意識の徹底、それから情報公開のあり方、この三点について、その後NHKとしてはどのように改善策を講じてきたのかということを、これは視聴者の皆様にわかりやすく端的に報告をお願いしたいと思います。

橋本参考人 御指摘の三点につきまして申し上げます。

 代理請求につきましては、昨年九月の十四日に廃止しました。そして、番組制作部局に経理審査を担当する専任の管理職を配置するなどして、経理審査、監査体制の強化を図っております。

 それから二点目、公金意識の徹底でございます。これも昨年九月末に制定しましたけれども、NHK倫理・行動憲章、行動指針等、こういうものの遵守に向けて、職員研修の充実あるいは受信料の重みを実感する営業現場研修というものを行っております。

 三点目の情報公開の点につきましては、金品にかかわる懲戒処分、これにつきましては、原則としましてすべて公表するなど、具体的に改めてございます。

 以上です。

長沢委員 さまざまに今御説明がありましたけれども、大事なことは、本当に職員の皆さん、頑張ってやっていらっしゃる皆さんもいる。そういう意識がどこまで視聴者の皆様に伝わるか。

 私は、この再生・改革を真剣に進めていこうといったときに、本当に大事なことは、責任ある幹部が現場に出ていってしっかりその説明をする、どこか違うところにいて、書類だけつくって、方針だけ出してよし、あとは職員頑張れということではなくて、やはり幹部が前面に出て責任を背負う、こういう強い意識というものが必要ではないかということを訴えさせていただきたいというふうに思います。

 本年、海老沢前会長が退任をされまして、新たに橋本会長が就任をされました。今お話もありましたとおり、受信料の支払い拒否は依然として続いているというふうに伺っております。さまざまな対策をとられているとは思われますが、今私申し上げたとおり、一般の視聴者のもとに届いていないというのが現実ではないか。

 不祥事の発覚から前会長の退任までのNHKの一連の対応につきまして、NHKとしてどのような反省をし、どのように対応しているのかということを、胸襟を開いて、視聴者の目線に立って、視聴者の暮らしの現場に行ってその点をきちんと説明する必要があるというふうに思っております。

 そういう観点からさらに何点かお伺いしますが、まず、受信料の支払い拒否の問題ですけれども、今、野田聖子委員の質疑の中でもありましたとおり、二月末で支払い拒否は五十六万件という話がございました。この五十六万件、三月末の見通しは七十万件ぐらいになるという今見通しでございましたが、二月末での五十六万件という現在のこの暫定値、この数字というのは全体の契約件数の中でどのぐらいの割合を占めるのかという割合の問題が第一点。

 それが一つと、もう一点あわせてお伺いします。懸念されているとおり、今、三月末、つまり年度末で七十万件に達するかもしれない。これは、場合によってはさらにそれを超えることも可能性としてはあるわけです。既に、今回のこの予算は、五十万件受信料拒否が続くという想定のもとで、いわゆる七十二億円のマイナス予算を組まれているわけでございます。それが、この三月末の年度末においてそれをさらに超えるということになりますと、受信料収入の予算見込み額をさらに下回ってしまうということになってしまいます。

 NHKはこれまで収支均衡ということを旨として予算を組んでこられたわけですけれども、収入見込みがさらに下回った場合、それに対してどのように対応されるおつもりなのか、この二点についてお答えいただきたいと思います。

和崎参考人 それでは、お答えいたします。

 一点目の何%になるかということでございますが、これは、有料契約世帯数三千六百九十万の一・五%に当たるというぐあいに承知しております。その上で、先生二点目の御指摘の、七十万件というような見通しに対してどうなのかということでございますが、私どもは、いわゆる十七年度の予算を組むに当たりまして、十六年度の着地を四十五万から五十万というマイナスで予算を組み、それが受信料収入で七十二億のマイナスになるということでございましたが、もし、この七十万ということが来年度の予算に影響する、すなわちこれが全然回収できないとすると、予算への影響はマイナス四十億程度になろうか、大変厳しい数字だというぐあいに理解をしております。

 こうした、さらに四十億のマイナスということになれば、現在進めております視聴者に対する信頼回復活動をより一層強化していく必要がございますし、当然、訪問だけではなくて、電話による説明等、そしてもう一点は放送による説明等、そうした信頼回復活動を着実にする中で、十七年度、何とか収支均衡予算というものを実現したいと思っています。

 ただ、どうしても、十七年度の予算執行の中で受信料収入が予算を下回るというような状況が見えてまいりましたら、予算執行段階で経費の節減ということは、これはどうしてもやらざるを得ないということで、十七年度の予算管理は相当しっかりとした厳しい体制で臨みたいというぐあいに考えております。

長沢委員 今、二月末の段階で見込まれている受信料の支払い拒否が五十六万件、それは全体の契約件数の一・五%という説明がございました。ということは、残りの九八・五%の方はきちんと払っていただいているということで、とはいえ、その九八・五%の方が払ってくださっているということに絶対に甘えてはならないというふうに思います。この一・五%の方が支払いを拒否されているということに重きを置いて、その対策をきちっと打っていくということが大事であるというふうに言わせていただきたいと思います。

 同時に、三月末に七十万件にもし達した場合、四十億円というマイナスがさらに予算の中から出るという話でございまして、これは、今さまざまに言われましたが、やはり経営をどう効率化していくかという角度をきちっと打ち出していくことが非常に大事なことだというふうに思っております。

 その際、NHKが本来持つ役割としての良質な番組を提供する、良質な情報を提供する、つまり放送としてのサービス、この質を落とさずに経営の効率化を図っていくという真剣な努力が必要になってくると思いますし、その真剣な努力なくして受信料収納の確保はあり得ないというふうに思いますので、その点は強く訴えさせていただきたいというふうに思います。

 それで、この間、NHKの改革の策としてとられてきた中で、もう一点、NHK業務点検・経理適正化委員会というのを会長の諮問機関として発足をさせているというふうに伺っております。この業務点検・経理適正化委員会は、公認会計士の方、弁護士の方、計四名によって構成されているということでございます。業務点検、経理適正化というのは非常に大事なNHKの今後のテーマでございますが、そのテーマに対して、この委員会を設置した目的、そしてこの委員会に期待する役割、働きというものは一体どういうふうに位置づけられているのか、確認させていただきたいと思います。

橋本参考人 この経理適正化委員会に対する期待でございますが、やはり、我々がこれから行う改革を実効あるものにしたいという思いでございます。

 これまでにNHKが公表しました報告書等に対する助言、提言を既にいただいております。それからまた、NHK倫理・行動憲章あるいは行動指針につきましても答申をいただいております。このように、現在進めております再生に向けた改革、これに対する御提言をいただいております。この委員会は、今後も継続して、常にこれからの改革に取り込んでまいりたいというふうに考えております。

長沢委員 何か不祥事が起きて、それに対して委員会を設けて外部の方のお声を聞くというのは、非常によくある一つのやり方でありますが、大切なことは、業務点検・経理適正化委員会を設置して、会長御自身は、この委員の皆様から例えばどのような助言を受けて、その助言をどのように具体的に運営に生かそうとしているか。委員会を設けて御意見をいただきました、やっておりますということだけでは、それはやはりまた同じように経費のむだになるわけですから、どれだけ生かしていくか、どういう助言を受けてそれをどのように生かそうとしているか、その具体的な仕組みが大事だと思いますし、それを生かしているという事実が大切になるというふうに思っております。

 これは、NHKの執行部だけではなく経営委員会の方々も含めて、NHK全体で真摯に受けとめて、そういう外部の声を生かしていくという仕組みが大事であるというふうに思いますが、この点も含めてもう一度御答弁いただきたいと思います。

橋本参考人 日常的にこういうふうな改革を行う、その基本となる改善点についていろいろ御意見をいただくわけなんですが、やはり私だけでなく、関係役員あるいは現場の責任者も含めてこの委員会には参加しまして、すぐ現場の改革に導入するというやり方をとっております。そういう形で、これからも、まずは私、責任を持って、積極的にこの委員会の内容につきましては導入してまいりたいというふうに思っております。

長沢委員 大切なことは、信頼回復に向けて、NHKがこれまでの不祥事を踏まえてどのように頑張っているか、あるいは頑張っていないのかということ、頑張っていなきゃ困るわけですけれども、だから、視聴者の多くの方からの御批判を踏まえて、どのように反省して、どう対処しているかということを伝える努力、また伝わっていくということが大事であるというふうに思っております。

 今、海老沢会長の体制から橋本会長を中心とした新しい体制にNHKはなりまして、これをチャンスに、新たな気持ちで、例えば三カ月間なり半年間なり期間を決めて、視聴者の皆様からさまざまなまた御意見をいただく、意見公募をする、パブリックコメントといいますか意見公募を受ける、それに対して誠実に答えるということを日常的な作業としてきちっとやっていくということが必要じゃないかと思います。

 ある民放のテレビでは、日曜日の早朝の時間帯などに、視聴者からいただいたファクスやメールやそういう御意見に対して、あるいは苦情に対して、編成局長のコメントですとかいう形でお答えするというような番組を定例的に持っているという例もございます。

 NHKとして、公共放送として、受信料をいただいて運営をしているNHKこそが、番組の中であるいは定期的に視聴者の御意見を伺って、それに対してきちんと誠実にお答えをするという場を設けていくということが大事ではないかというふうに思っておりまして、こういう考えについての御意見を伺いたいと思います。

永井参考人 まず冒頭に、長年受信料をお払いいただいております多くの視聴者の皆様の信頼を損ない、まことに申しわけなく思っております。一日も早くこの信頼を回復するよう努めてまいりたいというふうに思っております。

 委員御提言の、視聴者の声を聞くという番組をつくれというお話でございますけれども、実は平成十一年以来、土曜日に、「土曜スタジオパーク」という番組がございまして、そこで視聴者の意見を聞く、あるいは質問に答えるというような番組を既につくっております。これも改めまして、もう少し充実を図りたいと存じております。

 また、新年度にはさらに、「日曜スタジオパーク」というのがございますけれども、そのサブタイトルを「あなたの声に答えます」というように変更いたしまして、一層充実してまいりたいというふうに考えております。

 このような番組を通じまして、視聴者の声に真摯に耳を傾け、開かれた放送局として、また一層自由で濶達なNHKにしたいと存じております。

 それから、直接御意見を聞くということに関しましては、やはり御意見を言ってくださる方も大事でございますけれども、御意見をおっしゃらないサイレントマジョリティーというものの声なき声に耳を傾けるということも大事かと存じております。

 先月、私、就任いたしまして間もなかったのでございますけれども、東京ドームで開かれました世界らん展の会場に私自身向かいまして、視聴者の声を聞かせていただき、それを経営広報として、短い番組でございましたけれども、二回にわたって放送をさせていただきました。

 このように、こちらから出向いて視聴者の声を伺うということもこれから新年度始めたいと思っておりますし、今年度中にも、いろいろな放送局がもう立ち上がってそれを行ってくれております。私自身も、これから両国に出かけ、あるいは北海道に出かけ、そのような視聴者の声を聞き、放送にしたいというふうに考えております。

長沢委員 本当に、NHKの受信料という皆様の信頼によって支えられているというこの今の立場、NHKの立場をもう一度確認しながら、公共放送としての使命を不断に確認しつつ、改革を進めるという努力を続けていただきたいことを要望しまして、時間が来ましたので終了させていただきます。

 ありがとうございました。

実川委員長 次に、伊藤忠治君。

伊藤(忠)委員 民主党の伊藤忠治でございます。

 私は、こういう認識で審議に臨みたいと思っているんです。NHKの今日の事業運営、これは極めて厳しい状況にあると私は認識をしております。そういう状況認識に立って、質問をしたいと思います。

 まず、新会長に就任された橋本会長さんから順次行きますが、あなたは放送法第二十七条に定めます経営委員会の任命によって就任なさった。なぜここで会長交代が行われたのかということなんですが、海老沢前会長の辞任といいますのは、今まで議論に出ていましたとおり、一連の不祥事件あるいは不正事件に端を発しているわけです。これらに対する世論の批判が、受信料の巨額の未納問題に発展をするというNHK始まって以来の異常事態を引き起こしたわけです。それの事業運営の責任をとって海老沢会長が辞任なさって、その後、橋本会長が放送法第二十七条に基づいて経営委員会の任命によって就任された、このように理解してよろしゅうございますか、橋本会長さん。

橋本参考人 そのとおりでございます。

伊藤(忠)委員 ということで、あなたの会長就任といいますのは、こういう始まって以来の重大な局面をどう乗り切っていくのか、その重責を担った人事なんです。ローテーションの人事じゃないんです。一連のこの不祥事件がなぜ起こったのか、その原因分析をきちっとやらないと、これの改善策とか克服策が出てこないじゃないですか。

 巷間言われておりますが、NHKというのは風通しの悪い組織だ、あるいは、人事が非常に偏重しておって上意下達の組織体制を持っていると。言うならば風通しが悪いということなんですが、そういうことが巷間言われてきましたよね。私たちの知らない部分もあったと思います。

 ところが、聞くところによると、事件の発端になった磯野プロデューサー、これは芸能担当だったと思うんですが、この人は年間十二回も海外へ出ていっている、しかも同伴で行かれている。これは上の人が判こを押しているんですよ。CPが押すのか、その上の部長さんが押すのか。結局、決裁というのは上へ行くじゃないですか。こんなことが平気で通っているんですよ。いかにもこれは組織がずさんな管理だと思いますよ。きちっと組織管理が行われて、相互牽制の組織があればこんなことはあり得ない。私は常識論でそう思うんですが、そういう体質、事業運営が行われていたわけです。

 このことについては後で御答弁いただきますが、私が言いたいのは、そういう一連の不祥事、組織管理、こういう中で、会長の交代劇があって、現場では五千七百人の営業の人が戸別訪問で汗をかいて回っているわけです。嫌なことを言われるでしょう。門前払いを食らうこともあるでしょう。ところが、積もり積もって、今も同僚議員のお話にありましたけれども、三月末現在五十万件ですか、後でまた申し上げますが、これは換算すると、百三十億を超えるじゃないですか。一生懸命に汗をかいてやっている、そういう努力でもって収入があって、それでNHKは成り立っているわけですよ。そうですよね。皆さんの、上層部で成り立っているわけじゃないんです。収入があって初めてNHKは存立するわけです。

 そういう事業なんだ、NHKの置かれている条件はそうなんだということをしっかり意識する。上から下まで意識改革を行う。現場で働いている人たちは毎日それをやられているわけですよ。そういう意識改革と口で言いますけれども、とにかく受信料が納まってこなかったらNHKの事業は成り立たないんだというこの原理、原点をきちっと踏まえて会長さんは認識をされているのか。どのような所信をお持ちなのか、基本姿勢をお持ちなのか、あるいは放送事業者としての見識をお持ちなのか、この点を伺いたいと思います。

橋本参考人 私は、今回の昨年夏以来の不祥事あるいはその後の一連の対応の仕方等にかんがみまして、しかも、視聴者の方々の大変大きな御批判を身にしみて感じました。

 この中で、やはり視聴者の方々あってのNHKの経営だというふうなことを痛感しておりますし、これからの改革の視点としましては、やはり視聴者の方々の目線で物を考え、しかも信頼をいただいて、その上で受信料をしっかりと納得してお支払いいただく、そういう体制にこれから変えてまいりたいと思います。

 それから、そのためにはやはり、先ほど風通しということもありましたけれども、組織内につきましても、いろいろもう既に営業現場ほか、いろいろ組織の中の声を聞く、そういう活動もしております。視聴者の声もいただく、そういう活動もしております。

 そういう形で、今後とも、身を挺して、NHKとしての原点に立って、これから改革に取り組んでまいりたいというふうに思っております。

伊藤(忠)委員 会長さんにもう一点お伺いします。

 あなたは、会長就任直後に、海老沢前会長に顧問になってくれぬかと就任を要請されましたね。これは私は日付を資料で把握しておりますが、一月の二十五日ですか、そうですね、それで二十八日に辞退なさったわけです。これは世論が反発したからまずいと思って、就任はいっときオーケーというような感じだったんですが、辞退されるということで、あなたも撤回されたということだと思っておるんです。

 この言動を見ますと、やはりNHKの中で物事を判断するという体質が抜け切っていないと私は思うんですよ。あのときの状況というのは批判が国民全体に相当広がっていたわけですよ。それは受信料の未納問題、数字で見たっておわかりだと思いますよ。にもかかわらず、海老沢前会長がやめられたら今度は顧問就任。顧問の人事権というのはあなたが握っておられるわけですね、経営委員会は関係ありませんから。あなたができる範囲なものですから、顧問に就任してくれないかと。海老沢さんが顧問に就任なさったら、もっとこれは批判は広がっていたんじゃないでしょうか。結果はよかったんですけれども、そういうことをやられるというのがあなたの体質の中にもあるんじゃないですか、内々でおさめていこうと。

 海老沢さんはドンでしたから、海老沢さんがおってもらった方がやりやすいと思ったんでしょう。ところが、全然違うんですよ。そういう発想でやっていくとやはりだめです。本当の改革はできません。改革というのはそれではできないんです。私はそのような立場に立ちますから苦言を呈しているわけです。

 やめられましたけれども、退職金問題は片がついたんですか。その辺どうですか。それだけに絞ってお聞きします。

橋本参考人 顧問問題につきましては、私も大変反省しております。これからそういう点がないように気をつけてまいります。

 退職金の問題につきましては、これは経営委員会の御議決もいただくというふうなことがございますので、今後、経営委員会の御意向も尊重しながら、慎重に対応してまいりたいと思っております。

伊藤(忠)委員 私が一番気にしますのは、受信料を納めている人は物を余り言いません。それはきちっと言わない人が多いと思うのです。納めたくないという人は、これはいろいろさまざまありますよ。これは現業の人が一番よく知っていますよ。営業の人が一番よくわかっていると思うのです。

 問題は、若い皆さん。これは会長さんは技術畑だから私申し上げるんですが、今のライブドアとそれからフジの話じゃありませんけれども、とにかくネット、これがテレビと、これは放送と通信の融合なんですよ。この融合がこれからはドラスチックに進むんです。これは避けて通れない。デジタルの技術の進歩はそういう事態を招来するわけです。時間がどれだけかかるかは別ですが、そういう流れに行くことは間違いがないんですよ。若い皆さんは、放送というものも、やはり使う手段、ツールが違いますから、今のようなじっと見ているということにならぬわけです。これは技術畑の会長さんは御承知のとおりです。だから、そういうふうに、ユーザーも非常に変化が激しいということになると思いますので、その辺はきちっと踏まえてやっていただきたい、私はこう思います。

 次に、経営委員会に行きます。

 経営委員長さんはお見えですか。お名前は何とおっしゃいましたか。石原委員長さん、初めてお目にかかります。きょうの委員会の審議の時間割り、バッターが決まったのが三月の十日夕刻でありました。それで、私がやるんだということが決まりましたので、三月の十日の夕刻だったですか、理事に対して、経営委員長さんに出てきてほしい、私は聞きたいことがございますというので通告したんです。そうしましたら、翌日の午前に、都合が悪くて行けないと言われたわけですね。どういう都合なんですかと言ったら、会社の出張で行けませんということでしたから、それではしようがないよな、会社の仕事を優先させるんだったら、経営委員長さんとしての立場はどうかということを問う前に、そういう事情だったら、ああ、そういうことですか、来られぬのだったら、予算の審議はどうなるかわからぬよと僕は言ったんです。

 そこでお聞きするんです。経営委員長さんは、これは国会の同意人事に基づいて総理大臣が任命をなさる、こういう位置づけになっております、放送法第十六条。そういう手続を経て経営委員長さんに就任をなさっているわけです。そんじょそこらの審議会と違うんですよ。何百ある審議会の委員と違うんです。仕事の合間に兼職でちょこちょこっとやって済んでいくような立場じゃないんですよ。言葉は適切じゃないので、何か俗な言葉を使って失礼ですけれども、そういう軽い話じゃないんです。

 経営委員会は、みずからの権限と責任の重大なことを、そういう放送法の規定からしても、認識をなさっているのかどうか、このことをまずお聞かせいただきたいと思います。

石原参考人 経営委員会委員長の石原でございます。

 ただいまの伊藤先生の御質問でございます。私ども経営委員会メンバーは、先ほどお話ございましたように、NHKの経営方針、その他業務の運営に関する重要事項を決定する権限と責任を有しておるわけでございまして、極めて重い責任を負っておると感じておる次第でございます。

伊藤(忠)委員 いみじくも御本人が言われましたそういう運営方針、事業運営、資金も含めて決められているわけです。一番のこの基本が決められているわけです。その定めに従って執行されているのが橋本会長さんなんですよ。だから、経営委員会が、言うたら経営委員長さんがその代表者でございますが、ここが、放送法第二十七条によれば、経営委員会が会長を任命しているんです。あなたたちがあって橋本会長は存在しているわけですよ。橋本会長が勝手に存在しているんじゃないんですよ。

 だから、事業の問題点や克服策やこれからどうやっていくのかという改善策を議論する場合には、まず最初に経営委員会が何を決めるかによって、そこから出発するんですよ。あと執行責任を問われるのが、橋本会長以下の皆さんなんですよ。そういう仕組みじゃないですか。にもかかわらず、あなたは出張があるから来れませんと一たん断られた。これはどういう了見ですか。その辺、もう一遍聞かせてください。

石原参考人 お答えいたします。

 先ほど先生おっしゃいましたように、今委員会が極めて重要な委員会であるということは、私も十分承知しておるつもりでございます。したがいまして、先ほど先生おっしゃいましたように、いろいろ予定等もございましたが、それらにつきましては万障繰り合わせまして、本委員会に出席させていただいている次第でございます。

伊藤(忠)委員 私はあえてきつく申し上げますが、当たり前の話なんです。経営委員長というのはここに出席なさって当たり前の話なんですよ。都合がついたから来るという話じゃないんです。放送法の仕組みに従って私は言っているんです。あなたから始まるんですよ、物事の責任とかいろいろな決定の話は。そこのところ、順序を間違わないように、きちっと私は申し上げておきます。

 そこで聞きます。時間がございませんのではしょって聞きますが、顧問の人事とか退職金の話は会長さんのマターでやられるという権限になっているわけですが、経営委員会というのは全然関知しないんですか、それとも関知されているんですか。簡単に答えてください。

石原参考人 顧問の人事については、経営委員会は関知しておりません。ただし、退職金につきましては、経営委員会で議決することとなっております。

伊藤(忠)委員 経営委員会に一点提起をさせていただきます。実は年間一回しかこれは決算はございませんし、予算も一年間分組むわけですよ。ところが、今申し上げましたように、未納が百三十億超えますよ、このままいけば。これが半年先になったらもっと出るかもわかりません。予算書でいいますと、不足額が七十二億円なんですが、明らかにこれは上回っているじゃないですか。百三十億ぐらいいっていますよ、三月時点で。私はそう判断しています。そうすると、この予算そのものは、収支差金だってマイナス三十三・九ということでは済みません。収支差金を債務償還に充てるというんですが、これも充てられないようになるかもわかりません。

 そうすると、積立金を崩すんですか、借金は返さないかぬわといったら。積立金ございますよね。これが大体、どうですか、三百か四百億程度じゃないですか。この積立金を食っていく。積立金を食うということは、その先赤字に転落するかもわからぬというところまでいっちゃうわけですよ。私は会計学では素人ですけれども、そこまで心配しているわけです。そうなると、これは大変なことだという危機感がなければ事業運営はできませんよ。言うならば、そういう重大な状況の中での今回の審議なんですよね。これは御理解ください。私はそう思っておりますよ。

 そうなると、今、年一回しかやっておりませんが、中間決算の報告を、経営委員会として、これは法律の話をしているんじゃありません、国会に、中間で締め切ったらこういうことが、今財務状況はこうでございますということが、検討の結果やる気があるのかないのか、私はそれが一番大事だと思っていますよ。民間では、あなた御承知のように、月次決算だってやっているじゃないですか。半年に一回、中間ぐらいできるでしょうということを一遍検討する用意があるのかないのかということについてお答えをいただきたいと思います。

石原参考人 ただいまの決算の件でございますけれども、経営委員会に当然のことながら報告がございます。したがいまして、先ほど先生おっしゃいました形の中で、今後の検討材料の中で、どういう仕組みがいいのかということも考えてまいる必要があるのではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。

伊藤(忠)委員 私の持ち時間二十分でございますので、最後に、総務大臣に二点お伺いします。

 一点目は、NHKに対する意見書の中で、非常に厳しい状況なので所要の検討を行うという項目がございますね。非常に未納が多い、十分に期待されると認められない場合は所要の検討を行うという項がございます。十三分で私終わりますので、どういうお考えなのか、これの中身について簡単にお伺いしたいのが一点。

 二点目は、外資の集中排除の話であります。これも手短にポイントだけ申し上げます。

 直接支配は、これは二〇%以内の議決権で規制をされておりまして、それを超えることがあってはならぬというのが電波法で決められております。問題は、間接支配の場合の集中排除。これは、諸外国の、特に先進主要国で見ますと、大体二〇%未満ということになっています。この点について、私は早急に検討してほしいと思いますが、どうお考えなのか、大臣の簡潔な答弁をお願いいたします。

麻生国務大臣 最初の御質問の、未契約世帯等の解消が十分に期待されると認められない場合の話ですけれども、認められないということになったときにどうするかということですけれども、現時点で何か特定な、具体的な案を直ちに実行するというようなことを考えているわけではありませんので、当面の間、少なくとも視聴者の理解を得られるように努力されるべきものだと思っております。

 二つ目の、いわゆる外資の規制につきましては、御存じのように電波法の第五条というのがありますけれども、これは昭和二十五年にできた法律でして、その当時と今とはかなり情勢が違っているのでありますが、いわゆる間接出資の件につきましては、少なくとも、今間接出資をそのまま認めているのは日本とイギリスだけかな。あとはアメリカ、フランス、オーストラリア、韓国、いずれも間接出資は認められていないという状況にもあります。

 私どもとしては、この諸外国の制度もちょっと参考にさせていただかないかぬところだと思っておりますけれども、少なくとも検討してみる必要ありということで、事務方には既にそう指示をいたしております。

伊藤(忠)委員 終わります。

実川委員長 この際、中村哲治君から関連質疑の申し出があります。伊藤君の持ち時間の範囲内でこれを許します。中村哲治君。

中村(哲)委員 民主党・無所属クラブの中村哲治でございます。

 昨年、二〇〇四年の九月九日、総務委員会の質疑において私は、当時の海老沢会長に対してこのような趣旨のことを最後に申し上げました。経営責任をとることにおいて一番大切なことは、視聴者の皆さんに対して御理解をいただくということです。そのためには目に見える方法が必要です。一つの方法は、海老沢会長以下経営陣全員がおやめになって、目に見える形で経営責任をとる姿勢をお示しいただくことです。もう一つの方法は、見える形で徹底的にうみを出し切って新しい形をつくることです。

 しかし、残念ながら、NHKの経営陣の皆さんが本気でうみを出し切ってNHKの新しい姿勢を見せようとする努力は不十分だと感じました。海老沢会長におかれましても、最後の会社人生、厳しい判断をしながら自分の歩む道を決めていただくことをお願い申し上げます、こういった苦しいことをさきの質疑の最後に申し上げたわけです。その後今日までの半年間というのは、受信料の不払いが不払いを呼び、私がその質疑で懸念を申し上げたとおりになってしまいました。

 受信料制度に支えられる公共放送としてのNHK、私はこのNHKが大好きです。「NHKスペシャル」も非常にいい番組だと思います。道路公団の巨大債務の問題や中国の都市と農村の現状についての番組は、公共放送であるNHKでしかつくれない、そんないい番組であったと思っております。

 しかし、このまま受信料の不払いが拡大していけば、公共放送としてのNHKは維持できなくなります。国営化か民営化かどちらかしかない、そんな状況に追い込まれます。先ほどのお話にもありましたように、受信料の強制徴収という手段もないわけではありませんが、今の国民の状況であったら、これは認めていただけないと思います。民主党のほかの議員に伺っても、もうNHKは国営化か民営化だろう、そういう意見が強いです。私のように、受信料制度を維持できるように信頼回復の努力をすべきだという立場は、残念ながら我が党の中でも少数派です。

 私のきょうの質問も、今まで不払いをされていた視聴者の皆様がたとえ少しでもお考えを変えていただいて受信料をお支払いしていただけるような質問をさせていただきたいと思います。

 それでは、まず橋本会長にお尋ねいたします。

 海老沢会長の辞任について、橋本会長としては、前会長はどのような理由でおやめになったとお考えでしょうか。経営責任をおとりになったということでしょうか。その場合、何に対する経営責任をおとりになったとお考えでしょうか。

橋本参考人 受信料の支払い拒否あるいは保留の件数が大幅にふえまして、十七年度予算において受信料収入が前の年度を下回るという予算編成を初めて行わなければならないという、この点につきまして経営責任をとられたものというふうに私は理解しております。

中村(哲)委員 今のお話、未払い件数がふえて予算に対する影響が出てきたからおやめになった、そういったお考えですか。それだったら、その奥にある未払いの理由は何なのか、そこについての反省などがどのように認識されているのかということも問題なわけです。

 まず、それであるのならば、未払いがこれだけふえてきたというのであれば、辞任の時期について、現会長として、海老沢前会長がおやめになった時期は遅きに失したとお考えになっているのでしょうか。もしそうであるのならば、いつごろやめるべきであったとお考えになっているでしょうか。

橋本参考人 やはりそういうふうな予算編成、受信料収入が前年度を下回るという予算編成を行うということ、この点については、やはり不祥事以降の経営対応、こういうふうな対応の仕方に問題があった、その結果、視聴者からの不払い、保留がふえたというふうなことでございます。

 私は、やはりそういうふうな中で前会長が、十七年度の予算、計画を総務大臣に提出されました一月二十五日にやめられた、こういうところを一つの総合的な判断としてやめられたものというふうに理解しております。

中村(哲)委員 橋本会長の説明は、目に見える形でNHKが変わったということを示せていないんですよ。

 日経ビジネスの昨年十月二十五日の「敗軍の将、兵を語る」で、海老沢会長はこのようにおっしゃっております。「辞任する考えはありません。残り一年半の任期を全うしたいと思っています。無責任に放り出して、敵前逃亡みたいなことはしたくありません。」さらに、「安易に辞任することなく、自分の力でもう一度NHKを立て直す。それが私なりの責任の取り方です。」このように十月二十五日号の時点でははっきりおっしゃっているわけです。

 そこがどういうふうになって一月の二十五日の辞任に変わったのか、それを現会長としてどういうふうに認識しているのか、その点が重要なんです。そこではっきりしたメッセージを視聴者の皆さんにお伝えしていただかなければ、NHKのオーナーでありお客様である視聴者の皆さんは納得されないんです。明確なメッセージをお願いいたします。

橋本参考人 やはり前会長が辞任されたということは大変重く受けとめなければならないというふうに思っています。

 私は、この十七年度予算が経営委員会の議決をいただきまして総務大臣に提出された、これを機に前会長がやめられた、この重みを受けまして、さらに、これを、NHK改革のいわゆる原点に戻るというふうなことで視聴者の方々に改革を伝える、そういう気持ちでこれから改革、業務改善に向かってまいりたいというふうに思っております。

中村(哲)委員 橋本会長、きょうずっと御説明いただいている改革の方針、これは九月七日のこの報告書、NHKが出された報告書に書いてある以上のものが何かありますか。ないじゃないですか。九月七日にお示しされた方針できょうも答弁なさっているわけですよ。だけれども、この半年間、未払いがどんどんふえてきているわけです。あなたがどういう認識で、今回の辞任のあり方、今後の人事のあり方、していくんだということをお示ししていただかなければ、これも浸透しないわけですよ。そこがわかっていないんじゃないですかということを申し上げているんです。それについて、明確な答弁がなぜできないんですか。

 今後、海老沢会長の辞任をどのような形で生かしていかれようとしているのか、具体的にお答えください。

橋本参考人 この十七年度予算の中には、やはり、昨年夏以来の不祥事あるいはその後取り組むべき重要な改革案が盛り込まれてまいります。これを、やはり、前会長辞任という事態を受けまして、視聴者の目線からしっかりと実行していくことが私の最大の役目というふうに考えまして、このためには、役職員一同、NHKが一丸となって改革に取り組む必要があるということで、組織内の風通しもよくし、あるいは視聴者の方々の御意見等も真摯に伺いながら、具体的な改革案に取り組もうというふうな所存でございます。

中村(哲)委員 今の御答弁で視聴者の皆様が納得されるというふうにお思いになっているのであれば、それは一つの認識だと思います。

 海老沢前会長の退職金について、その額と支払い時期についてお答えください。

橋本参考人 前会長の退職金につきましては、これは経営委員会の決定事項というふうなことでございまして、我々としては、やはり経営委員会の御意向を尊重しながら、この意向を十分踏まえながら、扱いについて今後慎重に対応してまいりたいというふうに思っております。

中村(哲)委員 ということは、未定であるということで理解させていただいてよろしいですね。それだったら、平成十七年度予算には退職金の額は入っていないと理解してよろしいですね。

橋本参考人 現在のところ未定というふうに伺っております。

 それから、経費につきましては、現在、前会長の分ということで切り出しては計上されていません。これは通例、役員のそういうふうな退職事例があった場合には人件費枠等の中で処理されるということで処理しております。

中村(哲)委員 つまり、人件費等の中には海老沢さんの退職金は含まれているという御答弁ですよね。具体的に幾らということは含まれていないけれども、全部の人件費の中には海老沢会長の退職金は含まれている、そういった御答弁で理解させていただいてよろしいですね。

和崎参考人 今の先生の御質問にお答えいたします。

 退職金というのは予算の中には入っております。ただ、額とかそういうことについては計算はしておりません。

中村(哲)委員 予算の中には入っているんだけれども額等については積算していないというのは、人件費としてそんなのがあり得るんですか。どんぶり勘定で、これぐらいことし人件費がかかりますということが予算書に載っている、そういうふうに考えてよろしいですか。今の答弁は信じられませんよ。

和崎参考人 先生のおっしゃった人件費の中には、役職員の退職費用というものは積んでおりますということです。ただ、それが幾らかということについては、例えば、これからの、会長だけではなくていろいろな役員の退任もあるわけですから、そういうことを含めて積んでおりますということと額を決定しているということとは違うということを御説明させていただきます。

中村(哲)委員 全く今の答弁はわからないと思うんです、聞いている人は。視聴者の皆さんが今の御答弁で理解されているというふうにお考えですか。

 それでは、役職員全体の退職金は幾ら積んであるんですか。

和崎参考人 役職員の退職金というものは毎年積んではあるわけですけれども、それをいつ幾らという形にはなっていないということだけで、積んでいないということを言っておるわけじゃありません。積んでおって、それを人件費の予算の中に含んでおるということでございます。

中村(哲)委員 それでは、海老沢会長の役職員としての今まで積算して積んできた額は幾らになるんですか。

和崎参考人 今先生の御指摘の会長の退職金ですね、これは経営委員会が決めるわけで、我々の方から幾らという形で今積んでいないわけです。

中村(哲)委員 私は退職金の額を聞いているわけじゃないんですよ。あなたが引き当てを積んでいますと言ってきたから、それでは、海老沢さんの退職金分の引き当てとして今まで積んできた分があるんでしょう、そこは幾らなんですかということを聞いているんですよ。その答弁逃れ、経営委員会が退職金を決めるんです、そんな逃れるような言い方をしちゃだめじゃないですか。積んできた額は幾らなんですか。これは法令上決まっているでしょう。幾らなんですか。

実川委員長 和崎日本放送協会理事、わかりやすく説明してください。

和崎参考人 済みません。大変申しわけございません。今調べてあれいたしますが、正確な数字ということでございますので、今手元にございませんので、大変申しわけございません。

中村(哲)委員 私はこの質疑の事前通告を金曜日にやっているんですよ。普通なら月曜日の夕方にやる、しかし、そんなことじゃ十分に調べる時間がないかもしれないから、金曜日、それも原稿を全部打ち出して渡しているんですよ。そんなこと、事前通告ではほとんどない形ですよ。充実した質疑をするためにそこまでやっているんです。なのにデータがないというのはどういうことですか。水かけ論になりますから次に行きますけれども、これで視聴者の皆さんの理解が得られると思ったら大間違いです。

 前回の質問の最後にも申し述べましたように、私は、経営陣の皆様がやめればそれで済むという問題ではないと思っています。しかし、NHKのオーナーである視聴者の皆さんの御理解をいただくためには、目に見える形で経営責任を示す必要があるということを繰り返し申し上げているわけでございます。残念ながら、この間の不払いの件数の増加というのは、今までのNHKの経営陣の皆様がお示しなさってきた、そういった策というのが視聴者の皆様の御理解をいただけなかったことのあらわれであると言うしかありません。

 私たち政治家がNHKの経営陣の人事についてやめるべきやめないべきと申し上げることは、政治介入になりかねませんから、不適切であると思います。そのため、あくまで確認のレベルにとどめて質問をさせていただきます。

 海老沢会長のもとで理事をなさっていた方々が今日まで経営陣に残っていらっしゃいます。四月二十四日で任期が切れるということですが、この方々について今後どうなさるおつもりでしょうか。

橋本参考人 現在、最重要課題と考えていますのは、やはりこの改革施策が、どれもゆるがせにできない改革施策が盛り込まれた十七年度の予算を着実に実行してまいることが大事だと思っています。そのために、私のもとでこれを着実に実行できる体制、新体制が必要だと思っておりますし、慎重に検討してまいりたいと思います。

中村(哲)委員 新体制という意味がよくわかりません。一新されるということでしょうか。

橋本参考人 前回、経営委員長から、やはりこの新体制を検討するに当たっては、人心一新、刷新を求めるという御意向をいただいておりますし、私としてはその意向も尊重しながら、しかし、私として改革実行できる体制を、私なりの体制を考えてまいりたいというふうに思っております。

中村(哲)委員 私は、事前に党の会議等ではすべて入れかえるということをお聞きしていたんですけれども、かなり後退したような印象を受けます。

 私自身は、もしかえるのであれば、質疑の前に新しいメンバーの顔を見せていただいて、こうかわるとはっきりわかる、この顔ぶれなんですと目に見えた方が視聴者の皆さんの御理解を得られると思いますよということは、二月の頭の方では申し上げておりました。それはあくまでNHKの御判断ですけれども、そうされる方が視聴者の皆さんにとっては理解がしやすいですよという趣旨で申し上げたわけでございます。

 しかし、今のような御答弁ですから、果たしてきょうの質疑をお聞きになって視聴者の皆さんがどういうふうにお考えになられるか、それは私は少し疑問だなと感じておるところでございます。

 先ほどの引当金の金額については、午後の民主党の大出委員の質問のときに答えていただくようにお願いしたいのですが、委員長、御判断をいただきたいと思います。

実川委員長 ただいまの要求につきましては、NHKにおいて適切に対処を願います。

中村(哲)委員 非常に残念な答弁が続いておるように感じておりますが、党の方で議論になったことを少しお聞きしたいと思います。

 総務省には、今何台のテレビ受像機がありますか。また、中央省庁全体についてはいかがでしょうか。

山本副大臣 総務省本省におきまして、二百三十六台のテレビが設置をされております。各省を合わせますと、全体で四千四十一台のテレビが設置をされております。

中村(哲)委員 その二百三十六台、中央省庁全体で四千四十一台という数の分だけ、受信料はお支払いになっているということでよろしいですね。

山本副大臣 総務省本省におきましては、受信料は適正に支払っております。その額は、二百三十六台で平成十六年度五百十四万五千八十円支払っております。

中村(哲)委員 霞が関全体ではわからないけれどもということですね。

山本副大臣 総務省が直接聞くわけにいきませんけれども、内々に聞いたところによると、当方と同じように支払っておるというふうに聞いております。

中村(哲)委員 政府が受信料を払っていないと言ったら国民の皆さんにお支払いくださいと言うこともできませんから、きちんと払っているということで確認をさせていただいたと思っております。

 さて、受信料の未払いの問題なんですけれども、最後にお聞かせをいただきます。

 野田委員の質問にありましたように、今現在、五十六万件の未払いが二月末までにある、未払い見込みが七十万件ということですけれども、口座振り込みの解約の件数というのは、今、実は十六年度一月末で五十六・六万件に上っている。

実川委員長 時間が来ておりますので、簡潔にお願いいたします。

中村(哲)委員 はい。例年に比べると四十八万件もふえている。それを足すと現時点で七十万件ぐらいなんです。

 最後にお聞きします。平成十七年度予算では、支払い決算見込みでは三千六百七十二万件から二十万件増で予算を組まれております。しかし、最悪の場合ではどれだけの件数減で予算が回っていく、そのようにお考えでしょうか。

和崎参考人 七十万件という三月末の数字については、これが一銭も取り返せないとすると四十億ぐらいの影響が、マイナスが出てまいります。これについては十七年度、全力で取り返したいと思っておりますが、万一そういう状況に至らない非常に厳しい状況になれば、経費節減という形でやはり対応せざるを得ないということなので、十七年度の中の執行管理を厳しくやりたいというぐあいに考えております。

中村(哲)委員 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。

実川委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 私は、まず橋本新会長にNHKの基本的な姿勢についてお尋ねをいたします。

 放送法の第三条は、「放送番組は、法律に定める権限に基く場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。」と定めております。

 橋本新会長はこの放送法第三条をどのように理解されておられるのか、お答えください。

橋本参考人 やはり、放送機関として自律主体ということを最大限尊重することが根幹だと思っております。

塩川委員 放送の根幹というお話をいただきました。

 放送法の第三条は、放送局が放送局として成り立つための最も基本的な規律、いわば放送局の命ともいえる放送番組編集の自由を規定しております。この放送局として最も基本的な問題が問われたのが、二〇〇一年一月三十日に放映をされた「ETV2001」「問われる戦時性暴力」番組での政治家への事前説明問題であります。

 そこで、事実関係についてお聞きをしたいと思っております。この番組放送前日の一月二十九日、当時官房副長官だった安倍氏と面会をしたNHKの幹部に、当時の松尾放送総局長と総合企画室の国会担当の野島担当局長がいたということはNHKも認めておられます。

 そこで、きょうおいでいただいている野島理事にお伺いいたします。松尾氏、野島氏が安倍氏と面会した後の夕方、「ETV2001」「問われる戦時性暴力」番組第一次版編集VTRの試写が行われました。その試写の場に松尾放送総局長、当時の肩書で言いますが、伊東律子番組制作担当局長とともに野島直樹総合企画室担当局長も同席しておりましたね。その点をお聞きします。

野島参考人 同席しておりました。間違いございません。

塩川委員 放送前の番組試写の場に出席するというのは、野島さんの場合、たびたびあるのでしょうか。国会担当の担当局長としてお仕事をされている中で、放送前の番組の試写の場に出席するというのはたびたびあることなんでしょうか。

野島参考人 たびたびあることではございません。ただ、この場合につきましては、事前に、番組の制作の途中でいろいろインターネットにその話が流れたり、それから、いろいろな各方面から抗議があったり、非常に注目を集めていたという事情がございまして、国会等でこの問題について質問を受けたときに、番組の趣旨、そういったものを説明できるようにしておいた方がいいだろうということで、試写に同席したということでございます。

塩川委員 NHKの記者会見では、この試写の場を含めて、松尾氏と伊東氏は試写をした際に番組に意見を述べておられます。野島さんはこの番組編集について意見を述べられましたか。

野島参考人 はっきり覚えておりませんが、感想のようなことは申したかもしれませんけれども、意見というようなものについては私は申し上げておりません。

塩川委員 どのような感想をおっしゃられたんでしょうか。

野島参考人 四年前のことでありますので、つまびらかには覚えておりません。

塩川委員 そもそも番組編集と関係のない国会担当の野島氏が、安倍氏と面会をした直後に編集の現場に同席していることが極めて異常だ、私もそう思いますし、多くの国民・視聴者も受けとめておられます。

 実際、二十九日夜の編集作業で幾つかの部分が削除され、挿入をされた部分がある。従軍慰安婦制度に対する日本政府と昭和天皇の責任を削除する、スタジオ出演者のカリフォルニア大学の米山リサ準教授のコメントを数カ所削除する、女性国際戦犯法廷に批判的な日本大学の秦教授のインタビューを挿入するということが行われたとされております。

 この内容については、出席をされた野島さんは、事実であるかどうか御確認いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

野島参考人 どういう編集をするかということは、松尾放送総局長、それから伊東番組制作局長、あるいはその下にいる番組の責任者の判断でございますので、私は、どういうふうに削除してどういうものを入れたかということについては、覚えておりません。

塩川委員 この番組編集過程の内容は、内部告発をしたプロデューサーが指摘をしているものであります。そのプロデューサーは、我々が立ち会った試写、終始、野島さんがリードする形でつくりかえが行われたと述べております。先ほどの三点の編集作業をリードしたのは、国会担当の野島局長だったのではありませんか。

野島参考人 放送総局長や番組制作局長がいるところでそのようなことはあり得ません。

塩川委員 重大な疑問があります。この点については、今後、経過の中で明らかになっていくことだと思います。

 橋本新会長にお聞きしますが、この「問われる戦時性暴力」番組を偏っていると主張している政治家に放送前日に事前説明を行い、その直後に国会担当の局長が試写に立ち会って、感想という形ですが発言をしております。さらに、当時の番組制作局長は、この時期にはNHKは政治と闘えないのよと発言をしていると現場のプロデューサーからの告発が行われております。政治家の要求に従って番組改ざんが行われたと国民・視聴者が受けとめるのは当然のことじゃないでしょうか。

 放送法第三条にかかわる基本問題が問われたこの問題で、会長は、放送前日にNHK内部で行われた一連の事実経過について、国民・視聴者に事実経過を十分明らかにして説明責任を果たしているとお考えなんでしょうか。お尋ねいたします。

橋本参考人 この問題につきましては、やはり介入があったかなかったかという事実が一番大事なことだと思っておりますし、私は事実はなかったというふうに考えております。しかし、マスコミ、新聞にあたかも介入があったというふうな書き方がされておりますし、その辺の誤解につきましては視聴者の方々にも説明していく必要があるというふうに考えております。

塩川委員 番組放映の直前に政治家と面会をし、番組内容を事前説明している。その直後、試写が行われた場に同席をし、その後、番組内容が大幅に変更されました。その編集作業につながる番組試写の場に、編集作業とは直接関係のない国会担当の幹部がいた。重大な疑問であります。

 基本的な事実経過すらNHKはこれまで説明してこなかったけれども、会長のこういう認識では視聴者の信頼を回復するどころか不信を拡大することにならざるを得ない、このことを指摘して、時間が参りましたので、終わります。

実川委員長 次に、横光克彦君。

横光委員 社民党の横光克彦でございます。

 受信料で成り立っているNHKで、受信料の不払い件数が一月末で三十九万七千件、そしてまた三月末これが五十万件に達するであろうとNHKみずから見通しを立てておりました。しかし現実には、先ほど会長の御答弁にございましたように、既に二月末現在で五十六万件、三月末には七十万件に達するという見通しさえ立てております。依然として、このように受信料不払いの流れはとまっていないわけでございます。このままいくと、大げさではなく百万件を超えるという異常な事態に今陥っていると言ってもいいでしょう。

 NHK受信料のダムというのが今決壊を始めているという状況にあると私は思うんですね。なぜ、このような危機的な状況になってしまったのか。これはもう問いません、経営の皆様方の方が重々御承知のことでございますから。しかし、今問われていることは、このなぜということをしっかりと確認した上で、そしてそのためには何をしなければならないかということであろうと思っております。今やらなければならないことは、この決壊しつつあるダムを一日も早く食いとめることだと思っております。

 そのために、NHKの改革案が示されております。この改革を実行することがまず第一であり、言わずもがなのことだと思っております。しかし肝心なことは、今までの経営の体制あるいは体質で、つまりこれまでと同じ顔ぶれで、改革を断行します、信頼をしてください、こう言っても、果たして視聴者の皆様方が、はい、わかりましたと納得してくれるでしょうか、信頼してくれるでしょうか。

 今受信料不払いあるいは保留をしている人たちがNHKに何を求めているのか。本当に視聴者の声に耳を傾けることがなければ、今のこの受信料不払いの流れを食いとめることは難しい、私はこのように思っているわけでございます。先ほどから質問がございますように、NHKがどう変わったのか、せめてどう変わろうとしているのか、これを視聴者の皆様方に見せるしかありません。

 そのためにはただ一点、私はNHKの構造改革を断行するしかないと思っております。示された改革を実行するための新しい経営は、新しい顔ぶれでなければなりません。人心の一新、これが今多くの視聴者の声ではなかろうか、私はこのように思っております。これを断行して、橋本新会長が公共放送NHKを立て直すために本気になったな、そういった姿勢を視聴者に見せることが今第一だと私は思うんですね。NHKが変わったな、そういった思いを視聴者が感じたときに、初めてNHKの信頼の回復の道が開け、そしてそのときに、よし、もう一回受信料を払おうじゃないか、そういう気になってくれるんではなかろうかと私は思っております。

 今のNHKは、正直言ってどん底でございます。これをもとに戻すことができるのも、さらに逆に奈落の底に落とすことができるのも、私は橋本会長の決断にかかっていると言ってもいいと思うんです。今のNHKを救うことができるただ一人の人は、橋本新会長であると言ってもいいと思うんです。今多くの国民がこの番組を注視している。そして、会長の答弁次第で大きくこの流れをとめることができる、このように私は思っている。

 ですからお尋ねいたしますが、これからやろうとしている改革は、人心を一新して、新しい理事とともに取り組む、そして信頼回復に向けて全力で取り組む、これでよろしいんでしょうか、お聞かせください。

橋本参考人 御指摘ございましたように、やはり今のNHKの状況はどん底というふうな大変厳しい状況だと判断しております。これをやはり盛り返していくためには、視聴者の視点から改革に取り組まないといけないというふうに考えております。

 この十七年度予算案の中には、そういうふうな改革案も当然盛り込まれているわけですし、これを強力に着実に実行していかなきゃならない。おっしゃるとおり、私の下でこれを着実にやれる体制というものをやはり私なりに考えてまいりたいというふうに思っております。

横光委員 はっきりとした御答弁ではございませんが、かなりの思いが今聞けました。本当に、皆様のNHKというところに戻るために、新会長の私は果敢なる決断を期待いたしております。

 終わります。

実川委員長 この際、休憩いたします。

    午前十一時五十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時二分開議

実川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、日本放送協会から発言を求められておりますので、これを許します。日本放送協会会長橋本元一君。(発言する者あり)

 静粛に願います。

橋本参考人 冒頭、お時間をいただきましてありがとうございます。

 まず、午前中の審議の中で、前会長の退職金にかかわる中村哲治議員の御質問に改めてお答えさせていただきます。

 役員の退職金の予算については、十七年度に任期が満了する役員につきまして予算に計上しておりますが、前会長は任期途中の一月二十五日に退任されたため、十七年度予算には計上しておりません。また、会長の退職金は経営委員会の議決事項なので、そこで退職金を支払うと決定されれば、予算の退職手当・厚生費の項目で措置いたします。また、退職金の基本的な計算式は、各役職ごとの報酬月額掛ける在任月数掛ける百分の二十八として算出いたしますが、総合的な判断のもとに、経営委員会の議決により決定されるということでございます。

 また、二点目でございます。昼のニュースの映像において配慮に欠ける点があったことをおわび申し上げます。まことに申しわけありません。今後は慎重に対応してまいります。

 以上です。

実川委員長 質疑を続行いたします。森山裕君。

森山(裕)委員 自由民主党の森山裕でございます。

 ただいま議題となっております日本放送協会の平成十七年度収支予算、事業計画及び資金計画に関連をしてお尋ねしてまいります。

 二月の十九日、橋本会長も御出席のもとに、NHK鹿児島放送局の新会館の起工式が行われました。NHKにとっては久しぶりの慶事ではなかったかなと思うことでございました。

 会長、あの場所は非常に歴史的に大事な場所だと思います。一八三〇年前後だと思いますけれども、第二十七代島津藩主は、中国、琉球との貿易をさらに進めるために、肥後の名石工と言われた岩永三五郎に三五郎波止場の建設を命じました。ちょうどそこの場所であります。まさに薩摩の人は、あそこの場所で海外へ目を向けてきましたし、進取の気概を培ってきたのだろうと思います。非常にいい場所に新しい鹿児島放送会館ができることを地元の一人として大変うれしく思っています。どうか、そのような場所に新しい会館ができることをぜひ御認識いただいて、今後の対応方をお願いしたいなというふうに思います。

 また、平成十五年から鹿児島県は、官民一体となりましてNHK大河ドラマを誘致する会をつくりまして、鹿児島の歴史を題材にした大河ドラマをつくっていただきたいという運動も続けております。新しい建設の会館と時期を合わせて放映されると、大変すばらしいことだなというふうに思うところであります。

 ちょうどその起工式に出席をいたしましたときに、二〇〇六年末にはもう新会館からデジタル放送が開始されるというふうに伺いましたし、鹿児島でもアナログ周波数の変更作業も順調に進んでいるようでございます。

 日本のこの地形を考え、離島の多い国であることを考えますときに、デジタル放送を始めていくためにはかなりの予算が要るんだろうなというふうに思いますし、また、技術的にもかなりの問題があるんだろうというふうに思いますけれども、まず、デジタル化の予定というのが今後おくれることはないのかどうかを含めて、少しお聞かせをいただきたいというふうに思います。

 もう一点でありますが、ハイビジョン放送、デジタル化、こっちの分野もしっかり進めなければいけないと思いますけれども、私は、奄美に参りましたときに奄美の皆さんからこんな陳情を受けました。我々は台風のときに一番頼りになるのはラジオ放送なんだけれども、外国の電波の妨害等でほとんど聞き取れない、停電になってしまうとテレビは映らないしラジオは聞こえないし、何とかならぬのかという陳情を受けたことがあります。

 日本のラジオ放送というのは、伺いますと、大正十二年九月の関東大震災で大きな被害を受けて、あのときに、ラジオがあればという反省からラジオ放送が随分進んできたというふうに聞いております。デジタル化、ハイビジョン化という新しい技術を追求し、いい映像を国民に届けることも大事なことでありますが、ラジオを頼りに生活をしている国民が多くいることもぜひ御認識をいただいて、聞きづらい地域についての対応方を今後どうしていこうと思っておられるのか。

 まず、その二点についてお聞かせをいただきたいと思います。

和崎参考人 先生の一点目の御質問にお答えいたします。

 いわゆる二〇一一年のアナログ放送の終了までに全国のテレビをデジタル化するということで、あまねく今デジタル化へ向けての作業をNHKでは行っております。

 そういう意味では、先生の御指摘のとおり、我が国は非常に山間部が多い、また離島も多いというようなことで、視聴が非常に困難な地域がたくさんございます。そのような地域の中で、現在、アナログで放送をしている地域をすべてデジタルでカバーする、こういう方針の中で、NHKでは全国二千三百の送信所をデジタル化するための準備を進めております。

 そして、二千三百の送信所をデジタル化するためには、約二千億の設備投資が必要かと思っておりますけれども、現在までに二百億近い投資を行い、さらに千八百億をこれから投資していく。しかし、二〇一一年という大変短い期間でございます。さらに、財政の非常に厳しい中でのデジタル投資でございますので、各地域の民放などと御一緒になりながら、できるだけコストを削減し、中継局のコスト削減等を踏まえながらデジタル化を推進していきたい。

 さらに、最後のあまねくのためには、補完的な措置として、自治体、国等が設置されております光ファイバー等の利用なども検討し、あまねくデジタル化を実現するために準備を進めているところでございます。

野島参考人 ラジオの難聴のところについてお答え申し上げます。

 私どももラジオの重要性というのは十分認識しておりまして、夜間、外国電波の混信等によって聞きづらいというところが、全国で奄美諸島も含めまして十五カ所ございます。それで、世帯にすると三万世帯ぐらいということでございます。

 そういうところに対しましては、NHKといたしましては、受信者の方に適切なといいますか、よく入る放送局の方にアンテナを向けていただくとか、あるいは高機能アンテナを使っていただくとか、そういう御協力をお願いしております。また、必要に応じまして補完的な放送局を置局したり、あるいは既設局の周波数の増力、変更といったことも行っているところでございます。

 ただ、この置局する場合には、周波数の国際的な調整あるいはその置局のための場所の確保といったことも必要でございますので、そういう条件が整ったところから順次対策を実施しているところでございます。

 以上でございます。

森山(裕)委員 どうか、ラジオはいい番組をつくっておられるわけでございますので、難聴地域については特段の御配慮をお願いしたいと思います。

 次の質問に入らせていただきますが、委員の皆さんのお手元にも資料をお配りいたしておりますけれども、まずこのフリップをごらんいただきたいと思います。

 平成十七年の一月十二日付の朝日新聞の記事であります。一面に四段抜きで「NHK「慰安婦」番組改変 中川昭・安倍氏「内容偏り」 前日、幹部呼び指摘」という見出しがあり、続いて、「〇一年一月、旧日本軍慰安婦制度の責任者を裁く民衆法廷を扱ったNHKの特集番組で、中川昭一・現経産相、安倍晋三・現自民党幹事長代理が放送前日にNHK幹部を呼んで「偏った内容だ」などと指摘していたことが分かった。」という記事が掲載をされております。この記事では、放送前日の二十九日の午後、当時の放送総局長、国会対策担当の野島局長らNHK幹部が、「中川、安倍両氏に呼ばれ、議員会館などでそれぞれ面会した。」とあります。続いて、「中川氏はやりとりの中で「それができないならやめてしまえ」などと放送中止を求める発言もした」とも報道されています。

 しかし、この記事の内容について、我が党の調査によれば、NHK幹部が実際に中川氏を訪れて面談をしたのは放送三日後の平成十三年二月二日であって、中川議員が放送済みの番組に放送中止を求めるということは何だか奇妙な話になります。

 そこで伺いますけれども、朝日新聞の記事の、両氏に呼ばれて議員会館などそれぞれ面会したというのは事実なのでしょうか。NHKが面会を求め面談をしたのであれば、どのような目的で面談をされたのかお伺いをいたします。

 またさらに、「NHK幹部の一人は「教養番組で事前に呼び出されたのは初めて。圧力と感じた」と話す。」とありますが、NHKの調査でそのような事実があったのかどうか、まず、このことについて明確にしていただきたいと思います。

出田参考人 お答えいたします。

 まず、松尾放送総局長と野島担当局長が中川議員と放送前にお会いしたことはございません。さらにまた、呼ばれたという事実もございません。それから、お会いしたのは、放送から三日後にお会いしておりますけれども、それは松尾ではありません。当時の伊東番組制作局長と野島でございまして、松尾は、放送前だけでなく放送後も中川議員にはお会いしておりません。

 それから、安倍議員につきましては、放送の前日に松尾と野島がお会いしておりますけれども、これは呼び出されたというものではございません。

 したがいまして、これらの点で私どもは、朝日新聞の記事につきましては事実誤認があるというふうに考えております。

 それから、面会の目的でございますけれども、ちょうど翌年度の収支予算、事業計画の説明をすることで伺いまして、それにあわせて、この番組につきましてきちんと御理解いただく、理解してもらうという必要があるというふうに判断して説明をいたしたものであります。ただ、この説明の内容につきましては、NHKが番組広報のために通常マスコミなどに事前に番組の趣旨とかねらいを公表しておりますけれども、その範囲の中で行ったというふうに考えております。

 それと、記事にありますNHKの幹部が圧力を感じたと話したというふうにございますけれども、NHKといたしまして松尾元放送総局長本人から事情を聞きましたけれども、そのような証言をした覚えはないというふうに話しております。

森山(裕)委員 事実と随分違う報道がなされたんだなというふうに思います。

 次に伺いますが、委員の皆さんのお手元に配付いたしております資料二をごらんいただきたいと思いますけれども、これは、NHKが作成をしておりますホームページ上で公開されている報道資料です。シリーズ「戦争をどう裁くか 第二回 問われる戦時性暴力」の番組について一月十九日から三十日まで番組の編成をしたようでありますが、なぜこのような編集過程になったのかを伺いたいと思います。

 私は、今回の問題は、番組編集に当たって外部からの干渉があったかどうかが問われているだろうと思います。中川議員は放送後の面談であったことがはっきりしました。安倍議員の場合は、面談後にも編集作業がなされております。先ほどの安倍議員との面談の答弁を聞きますと、編集に何ら影響を与えていないというふうに私は考えますけれども、このあたりについて明確な答弁をお願いいたします。

出田参考人 番組の編集過程について若干御説明いたしますが、この番組の制作につきましては、NHKの編集責任のもとで、子会社でありますNHKエンタープライズ21を通じて、ドキュメンタリージャパンという制作プロダクションに番組制作を委託しております。しかし、番組の編集段階で大幅な手直しが必要となりましたものですから、最終的にはNHK本体が手直しを行い、放送をいたしております。

 もうちょっと具体的に申し上げますと、制作の最終段階の編集作業、これは一月の十九日、放送日の十一日前でございますけれども、当時の教養番組部長が試写を行いました。この内容を見たところで、大幅な手直しが必要だというふうに判断いたしました。さらに、放送の四日前でございますが、一月の二十六日の段階で、当時の松尾放送総局長と伊東番組制作局長も加わりまして、番組の素材の一つであります女性国際戦犯法廷、これに対する批判的といいますか、距離を置いた歴史学者の意見なども入れるということで、この時点で公平公正な内容を保つようにということで議論を重ねて制作してきたものであります。

 こうした中で、松尾放送総局長も加わって行われました一月二十九日の、放送日の前の日ですけれども、ここの試写につきましては、ここの段階では、従来、制作プロダクションが行ってきた編集ではなくて、NHKの手で行った編集の最初の、第一次のバージョンをここで初めて試写を行っております。そういう意味では、この試写を見た上でさらに編集を重ねて公平公正を保つ、そういう努力を重ねてきたということで、そこでの議論は当然のことだったというふうに考えております。

 なお、二十九日にNHK版の最初の試写というのをしておりますけれども、安倍議員にお会いする前から、お会いするということが決まる前からこの予定は既に決まっておりました。したがいまして、安倍議員にお会いしたから番組を変えたというものではございませんし、番組の編集過程と安倍議員との面会というものは全く関係ないものであったというふうに考えております。

 したがいまして、政治的圧力を受けて番組内容を変更したという事実は全くなかったということを改めて申し上げておきたいと思います。

森山(裕)委員 時間が参りましたので、終わります。

実川委員長 次に、岡本芳郎君。

岡本(芳)委員 自由民主党の岡本芳郎でございます。

 きょうは、まず、番組制作及び外注に関しまして御質問いたします。

 NHKの予算及び決算を近年五年分ぐらいについて見たところ、大まかな傾向といたしまして、毎年の収入、予算の大部分を占める受信料収入、これは、前年あるいは前年の決算額におおむね百億円ぐらい上乗せした額となっております。この収入に見合った形で事業費、制作費が計上されておるようでございます。それで、決算で受信料収入が減額になれば、それに見合った分だけ制作費が減額される、そういう傾向でございます。

 つまり、大まかに見ましたら、番組制作に必要な額は収入によって変動するという格好でございます。収入あっての制作、わかりますけれども、余りにも制作の見込み方がずさんなのではないかなというふうに思うわけでございます。公共事業等につきましては、当然、道路や建築物については単価からぴしっと積み上げまして、そこに余り動かす余地はございません。しかし、番組の制作は、確かに特殊な分野ではあろうとは思いますが、余りにも変動が大きくて、これはずさんと言うしかないんじゃないかと思うところでございます。

 さらに、その発注形態を見ますと、かなり多くのものが今でも随意契約で行われておりますが、このような随意契約というのは、今や公共事業の世界では全くないと言っていいぐらい減っております。そういった制作の仕方あるいは発注の仕方、こういったところで先般のような不正事件が生じるのではないかというふうに感ずるところであります。そういう観点から橋本新会長の御意見をお伺いいたしたいと思います。

 また、あわせて、架空発注、こういったものも非常にやりやすい分野であるというふうに感じるわけでございますが、そういう点についてどういうふうな注意を払うのか、教えていただきたいと思います。

橋本参考人 過去五年ぐらいの収支を見ますと、おっしゃるとおり、受信料がふえることによって番組経費というものもふえる傾向にございます。ただし、この期間でありましても、いわゆる番組の単価そのものはスリム化しているという努力をしてございます。といいますと、結果は、単価は削減努力によって行いますけれども、いわゆる新規番組の開発、こういうところに経費を充てているというようなことでございます。

 いずれにせよ、番組単価をルーズにするということは、不正が起こる、そういう点につながりますので、我々これからも厳しくこの点についてはチェックしてまいりますけれども、これまでも、番組単価につきましては、放送総局長を委員とする番組単価検討委員会というものをずっと持ってこの中で決定してまいりますし、これからも、一層このチェックは厳しくやっていきたいと思っています。

 それから、やはり不正経理の発生防止につきましては、これはいわゆるCOSOフレームワークと申しますけれども、この不正経理のポイントとなりそうなところを排除するシステム、こういうふうなものを、弁護士さん等も含めて、公認会計士等を含めてチェックして、これから通常の経理処理の中に取り込む、いわゆる適正化ということで改善してまいりたいと思っております。

岡本(芳)委員 特に随契関係については、十分な注意を払っていただきたいと思います。NHKのやり方は一般的にどうも性善説に立ったような感じでございますので、その辺はよく注意していただきたいと思うところでございます。

 次に、視聴率と番組編成についてお伺いしたいわけでございますが、昨年の本委員会におきまして私が視聴率についてお伺いいたしました。海老沢前会長は、番組編成のあり方として、NHKとしては、公共放送の立場から、「あくまでも、視聴率にかかわりなく、伝えるべきものを伝える、視聴者に情報を提供すべきものはすべきだ」と明快に答えられたわけでございます。

 NHKが公共放送である以上、伝えるべきものは伝える、これは正しいわけでございますが、しかし、その上で、やはり見てもらえるような番組にすることの方がもっと大切じゃないかと思うところでございます。民間放送で一%未満の視聴率の番組があれば、スポンサーは逃げます、あるいは怒ります。文句を言うでしょう。そうならないためには、やはり民放の方々は相当な努力をすると思うんですね。そういう点をNHKもやはり同じような態度で臨むべきではないかと思うわけであります。

 私は、何も番組をおもしろくおかしくせいと言っているわけではございません。みんなが見るようにうまく制作していただきたい。内容はすばらしいものがあるのはよくわかっております。しかし、見られないのでは意味がございません。そういった点について、技術屋出身でございます、どういうふうにお考えになるのか、御意見をお伺いいたしたいと思います。

橋本参考人 お答えします。

 いわゆる視聴者の満足を、納得を得る番組ということでいいますと、視聴者の意向をさまざまな形で酌み取る必要がございます。

 そういう点で、現在、NHKでは、NHK独自で行っています全国個人視聴率調査、これを、従来の年二回から、十六年度から年五回にふやしているというふうなことがございますし、それから、電話、メール、こういう中でおよそ年間四百万件ぐらいの反響、こういうものも吸収してまいります。それから、番組モニターによる番組に対する評価、感想、こういうものも大事にしてまいりますし、定常的に持っています番組審議会、視聴者会議での意見など、こういうものをもとに多角的に番組を評価してまいりたいと思います。

 これからも、よりよい番組を多くの人たちに見ていただくよう努力を重ねてまいりたいと思います。

岡本(芳)委員 最後に、受信料についてお伺いしたいと思います。

 午前中からも大分話に出てまいりましたけれども、放送法第三十二条によりますと、「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。」というふうに規定されております。

 一方、現在の契約率をNHKの資料から見ましたら、世帯契約率で約八〇%、事業所契約率で約七七%、つまり、約二〇%強の人たちが払っていないということになるわけでございます。先ほどの、ことしは何か七十万人ほどふえまして一・五%ふえるというふうに言っておりますが、そういう感じでございます。これは、一般的に見まして大変不公平な問題なんですね。これをこのまま放置することは非常に問題だと思っておるところでございます。

 さらに、この契約率を出す場合の分子と分母、特に分母の方が私は問題があるのではないかというふうに思っております。例えば事業所契約の方で見ますと、事業所の契約対象数は二百八十六万件あるそうでございます。これもNHKの資料でございます。分子の事業所契約数が二百十九で七七%というふうになるわけでございますが、この分母には、ホテルの場合、一室ごとに全部入っているそうでございます。病院の場合には、入院室一部屋ごと入るという格好で積算されておるそうでございます。

 そこで、別の国土交通省なり厚生労働省の調査結果によりますと、ホテルの部屋数だけで百五十六万室あります。さらに、病院の病室でも五十万あるわけです。両方足すと二百万を超すわけでございます。そのほかにも医院等の入院室もありますし、等々を加えますと相当大きな数になるわけですね。したがって私は、どうもこの分母の見方が非常に甘いのではないかというふうな感じもしております。

 そこで、全体的に二割以上の人が払っていないということ、あるいはさらに、分母が多少おかしいのではないかと思う点を含めまして、今後、法律なりあるいは契約率のとり方なりでいろいろ改革せないけないことがあるのではないかと思うところでございます。

 そこで、それに関しまして、総務大臣並びに橋本会長の御意見をお伺いしたいと思います。

橋本参考人 受信料にかかわる、契約にかかわる統計情報につきましては、やはり、調査手法というものを今日的に一層見直して工夫する必要があろうかと思います。こうしたことによりまして受信料の公平負担を徹底していくことを考えたいと思います。

麻生国務大臣 これは、岡本先生、契約は基本的には世帯単位であるというのが今の時代に合わぬのじゃないかというところがおっしゃりたいところなのかなと思って伺っていたんですが、基本的には、先ほど野田先生の御質問も同じような質問だと思いますけれども、NHKは車で見られる、パソコンでも見られる、携帯電話でも見られるという時代に今はなってきておりますので、それからいきますと、その数は百五十六万のホテルの部屋数ぐらいのものじゃなくて、膨大なものになるだろうと思われます。

 多分、そういう時代になるんだと思いますが、そうすると、分母が全然違ってくる形になりますので、それは、考え方によっては全然別の受信料の徴収方法というのは時代に合って考えられてもちっともおかしくないと思いますが、ただ、目下のところでいきます、いわゆるこの十七年度の予算でいきますと、これは基本的には、今は、受信料の未払いの起きておる理由にされているのが不信感ということになっておりますので、本当は払わなくてもおれも捕まらないのなら、ではおれも払うのをやめようという別の意図がないと一概に否定もできないんだと思うんですね。性善説という言葉を使いましたから、性悪説に基づけばそういう考え方も見られないわけではない。私は、岡本先生の御指摘はそれなりに正しいんだと思いますけれども。

 しかし、今、この十七年度の予算を審議するというときに当たりましては、やはりこれは、大臣の意見として「効果があがると見込まれる措置について抜本的に検討し、組織を挙げて全力で取り組むこと。」ということをNHK側に要求いたしておりますけれども、いずれにしても、当面、この信頼回復ということに全力を挙げて、本来、このものは広く国民・視聴者全体に負担をお願いするというのがもともとの趣旨でございますので、その趣旨に沿って対応していただくというのが当面大事なところだと存じます。

岡本(芳)委員 終わります。

実川委員長 次に、三ッ矢憲生君。

三ッ矢委員 自由民主党の三ッ矢憲生でございます。

 既に、ここまでの質問の中でもいろいろと御指摘があったわけでございます。私は、どの組織にもその組織なりのよって立つ基本的な理念といいますか役割があると思いますし、これを忘れてしまうと道を外れてしまうということになるんだと思います。

 繰り返しになるかもしれませんけれども、NHKには、公共放送機関として民放とは違った使命があるはずでございます。国民から受信料を徴収して運営していくという形態をとっている以上、NHKとその職員にきちんとした理念と精神を自覚し再認識していただく必要があるんじゃないかなというふうに思うわけでございます。

 昨年七月の芸能プロデューサーの不正経理事件の発覚以来、次から次へと金銭にまつわる不祥事が明らかになりました。この背景には、言葉が適切ではないかもしれませんけれども、NHKの身内に対する甘さ、あるいは金銭感覚の麻痺、さらにもっと申し上げますと、世間に対するおごり、あるいは、どうも誤ったエリート意識とか、NHK臭さと言うと失礼かもしれませんが、そういうこともあったと言われても仕方がないんではないかというふうに思うわけでございます。私は、NHKの一連の不祥事は、まさにこの基本理念の自覚の欠如が原因で生じたものだと思いますし、国民の目から見ますと、NHKというのはまるで伏魔殿かブラックボックスのように映っているんではないかと思うわけです。

 そこで、NHKにとりまして極めて厳しい状況の中でかじ取りをゆだねられました橋本会長には、改革への意気込みを具体的に国民にわかりやすく伝える努力がなお一層必要ではないかというふうに思うわけでございます。午前中の答弁で、緊張されていたのか、もう一つその気迫が私に伝わってこなかったんでありますが、改めまして、公共放送を預かるNHKの組織としての基本理念それから役割についてどう考えておられるのか、また、改革への意気込みを会長御自身の言葉でお話しいただきたいと思います。

橋本参考人 今お話がございましたとおり、やはり、NHKの体質というものが大変視聴者の意識からかけ離れたものであったというふうに痛感しております。

 そのために、今回、信頼回復活動の基本として考えますのが、主に私は大きく分けると二つあるというふうに思っております。一つは、やはり、放送事業者として視聴者の方々に納得されるいい番組をつくっていく、それから、これまでのような不正経理、いわゆる不祥事を発生しないようなメカニズムをやはり経営の中に持ち込むこと、この二つだと思っております。

 それで、この回復の努力というのは大変地道なものかと思います。これを具体的に、やはり視聴者の方々に触れ合うこと、あるいは、組織の中に風通しよく透明性といいますか、いずれにせよ、説明を尽くして納得していただくということを地道に、しかし着実にやっていきたいというふうに思っております。あらゆる機会を見て視聴者の方々と接し、また組織内も、この改革を打って一丸となって行うような意識改革、こういうものをやっていきたいと思っております。

三ッ矢委員 ぜひこの際、徹底的にうみを出す覚悟で、会長御自身も気迫を持って取り組んでいただきたいというふうに思うわけでございます。

 そこで、次に総務省にお伺いしたいと思いますが、今お話があったとおり、厳しい環境の中にあって、橋本会長以下NHK職員が一丸となって信頼回復に努めていかなければならないのは当然でございますが、監督官庁である総務省として、今後、NHKの再生・改革に向けたどのような取り組みを期待しておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。

山本副大臣 何よりも重要なポイントというのは、不祥事の再発防止の徹底ということはもとよりでございますけれども、公共放送の原点に立ち返った一層豊かで質の高い放送番組の充実等を図るのと一緒に、視聴者との結びつきの強化等を推進して、早期にその信頼を回復することだというふうに思っております。

 総務省といたしましては、この十七年度予算案にNHK御自身が盛り込まれた各種措置にとどまらず、NHKの再生・改革に向けてさらなる効果的な措置を検討し、全力で推進することが肝要であると思っておりまして、その旨、今回の予算、事業計画の大臣意見に厳しく書き添えているところでございます。

 今、NHKが置かれている状況というのは、私自身も生半可な状況じゃないと思っております。今、橋本会長おっしゃいましたけれども、相当な覚悟を持って、相当な覚悟を持って信頼回復に努めていただきたい、かように思っております。

三ッ矢委員 総務省としましても、ここはひとつ国民の目線といいますか立場に立って、しっかりとNHKの改革の状況を、監視と言うと言葉はあれかもしれませんが、ウオッチしていただきますようにお願いしておきたいと思います。

 次に、少し視点を変えてお伺いしたいと思います。

 今回の一連の不祥事を通じての対応の甘さあるいは不手際など経営側の落ち度、責任は大変大きいわけでございますが、その点についてはもちろん深く反省していただかないといけないわけでございます。ところが一方で、NHKの組合サイドが、昨年の秋には前の会長の辞任要求を出したり、さらに、今でも現在の役員の交代を求めたりしておるというふうに聞いておるわけでございます。

 私は、こうした組織全体の改革・再生という問題は、労使一丸となって取り組まなければ本当の意味での改革の実は上がらないんじゃないかというふうに思うわけでございまして、ただ、一般の職員の方はもちろん現場で大変苦労をされているとは思うんですけれども、これまでの動きを見ておりますと、どうも、組合の皆さんが今回の不祥事を自分たちの問題というふうに自覚されておるのかどうか、甚だちょっと疑問に思う点もございます。

 いずれにしましても、経営側と組合側の連携がうまくいっていないんじゃないかなという印象を持つわけでございますが、国民の目から見ますと、経営側も組合側もNHKの一員であることに変わりはないわけでございまして、その辺、この件に関してNHKとしてどういうふうに認識されておるのか、お伺いしたいと思います。

宮下参考人 お答えいたします。

 視聴者の信頼回復に向けましては、組合員であるなしにかかわらず、全職員が一丸となって取り組まなければならないというふうに考えております。経営といたしましては、組合に対してこのような考えを既に表明しているということでございます。

三ッ矢委員 繰り返しになりますけれども、意識の徹底を末端の職員まで図っていただくということが私は大変重要だと思っておりまして、労使が対立しているようではその改革もおぼつかないというふうに思うわけでございますので、ぜひその点、気合いを入れてやっていただきたいというふうに思うわけでございます。

 最後に、結局、NHKが国民の信頼を回復するためには、私は、国民が本当に見たいあるいは聞きたい番組づくりを通じてその信頼の負託にこたえるしかないんじゃないかなというふうに思うわけでございます。

 私ども、少なくとも中年の男性にとりましては、たまに家に早く帰りましても、テレビをつけるとどうもわけのわからないバラエティー番組ばかりで、余り見たい番組がないというような状況で実はうんざりしておるところでございます。もちろん世代も趣味も違いますから、国民のニーズにこたえていくというのは大変難しい面もあろうと思いますけれども、少なくともNHKに対しては受信料を払っているわけですから、我々のニーズに対してちゃんとこたえてほしいというふうに思うわけでございます。

 そういう意味で、国民の期待にこたえる番組づくりという点について、会長のお考えをお聞かせいただければというふうに思います。

出田参考人 私どもNHKは、信頼回復に向けた改革の取り組みの柱として、視聴者とともに歩む公共放送サービスの充実というのを挙げております。先生今御指摘のとおり、NHKらしい番組、一層豊かで質の高いニュース、番組をこれからも放送していくことこそ視聴者の皆様の信頼を回復する道であるというふうに私も考えております。

 そういう意味では、視聴者の御要望あるいは御意見に謙虚に耳を傾け、暮らしに役立ち、心を豊かにする放送というものを引き続き目指していきたいというふうに思っております。

三ッ矢委員 繰り返しになりますけれども、ぜひ国民のニーズを的確に把握していただいて、国民が望むようなサービスをきちんと提供していただき、一日も早く国民の信頼を回復して、新生NHKとして国民の期待にこたえていただきますように要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。

実川委員長 次に、河合正智君。

河合委員 公明党の河合正智でございます。

 一連のNHKの不祥事に対しまして、まず、私は、抜本的な内部改革が必要であると考えておりますけれども、中途半端な改革は許されない、そういう状況にありまして、NHKの取り組みをまず最初にお伺いさせていただきます。

橋本参考人 今回の不祥事等、このような不正経理に伴う業務システムというものを抜本的に変えなければいけないということで、我々、特に番組制作、取材、こういうところの経費処理の適正化あるいは経理審査、監査体制の強化ということに臨んでおります。

 具体的に言いますと、業務点検・経理適正化委員会、これは、外部の弁護士、公認会計士の委員の先生方によって御意見をいただき、これを具体的な適正化に反映するということ。あるいは、当然ながら、公金意識の向上あるいはコンプライアンス活動の推進ということで、職員の倫理観を高めるということを研修等も含めて具体的に行いながら抜本的な内部改革を進めてまいりたい。しかも、その内容を、情報公開ということで、できるだけ透明性を高めるため公開してまいりたいという仕組みをもう既に進行させている途上でございます。

河合委員 海老沢前会長の同期で、同じ政治部に籍を置いていらっしゃいました椙山女学園大学の教授の川崎教授は次のように述べています。一連の不祥事につきまして、構造的とまでは言わないまでも、わかっていて防げなかったと述べています。

 これは、ただいまのコンプライアンス制度ですとかNHK倫理・行動憲章の策定ですとか、ある意味で、他人がつくったものを守る、そのことによって改革するということで、私は、もう既にそういったことでは改革できないというところまでいっておるのではないかと思います。

 ミシガン大学のジェフリー・ライカー教授は、「ザ・トヨタウェイ」で次のように述べております。「絶え間ない改善こそ、トヨタのシステムに生命を吹き込む原動力である。」「従業員に考えさせるようになっている。」「ある工程で発生した問題が次の工程をより早く止め、それによって問題解決を促す。これが、トヨタウェイと呼ばれる幅広い経営思想」である。「トヨタの継続的学習システムでは、問題点の根本原因を探し出し、再発を防止することを重視する。」ということはこのジェフリー・ライカー教授の指摘でございますけれども、同じトヨタのケンタッキーの社長、ゲーリー・コンビス氏は次のように言っております。

 「トヨタウェイは、それを支える二本の柱、「継続的改善」と「個人の尊重」に要約できる。」「継続的改善の真の価値は、継続的学習の雰囲気をつくり、変化を受け入れる環境」、それは「個人の尊重なしにはつくり上げることができない。だから、個人の尊重がトヨタウェイの第二の柱になっているのだ。」という指摘でございますが、私は、こういった、例えばトヨタのカイゼン方式の導入など、社員一人一人の意識改革からこの改革に参加していくというシステムが必要なのではないかと考えますが、いかがでしょうか。

宮下参考人 お答えいたします。

 トヨタがカイゼン方式で大変成果を上げているということは私どもも承知しております。こういう考え方を私どもも今後の改革に取り入れていきたいというふうに思いますが、先生がおっしゃるように、改革というのは、結局のところ、その職員一人一人の意識改革ということでございますので、NHKにとりましては、受信料というのが国民の皆様からいただいた非常に大切なものだということを職員一人一人が肝に銘ずるということがまず基本になると思うんですね。

 そういう面での研修を今後強化して、改革に取り組んでいきたいというふうに考えております。

河合委員 今御指摘のように、受信料の不払いという問題につきましては、やはりこれは、一連の不祥事に端を発していることは紛れもない事実でございます。まことに深刻な問題でございますけれども、この受信料不払いの現状と将来に対する認識についてお伺いさせていただきます。

中山参考人 お答えいたします。

 不祥事などを理由に受信料の支払い拒否または保留の意向を表明された方は、第五期、ことしの一月末で三十九万七千件に上っております。また、二月末ですが、これは第六期の活動の途中でありまして、あくまでも暫定的な集計でありますが、累計で約五十六万件というふうに見ております。

 今、この不祥事の解消のために、営業の現場それから職員、そしてさまざまな電話とかお手紙、こういう活動を集中的に行っておりまして、一件でも少なくするという活動をこの三月末にかけて全国で展開をしているということを御理解いただきたいというふうに思います。

河合委員 もっとも、この受信料の不払い問題は今回に限ったことではございません。支払う方々にとりましては、素朴な感情、先ほどからも指摘されておりますように、種々の国民の感情もございます。

 例えば、受信料として月千三百円の対価は妥当なのかどうか。また、受信料を支払わなければ放送法違反になるわけでございますが、罰則規定がない。強制が伴わないゆえに感ずる払わされているという感覚、これは多くの国民が持っている。ほかにも、受信料方式は制度疲労を来しているのではないか。また、今後も受信料方式のままで国民は素直に受け入れることができるか。受信料制度をNHKはどのように考えてきて、今後どのように考えているのか。受信料というものにあぐらをかいているのではないかといった国民の素朴な感情が底流にございますが、この点についてのNHKの考えをお聞かせいただきたいと思います。

橋本参考人 御指摘のように、受信料の方式につきましてはいろいろな御意見がございます。

 やはり我々、この受信料について、非常にNHKが放送していく放送番組というものの基本になっていることを御理解いただくこと、あるいは番組そのものが納得いただく、そういうふうな活動が必要なんじゃないかな、いわゆるあぐらをかいてはいけないというふうに考えておりますし、やはりこの受信料制度のよさというもの、あるいは、NHK、公共放送としての放送と民法さんとの二元体制、そういう中での受信料のよさといいますか公共放送の必要性、そういうものをこれからも説明してまいりたいというふうに思っております。

河合委員 そこで、受信料の支払い方に関する議論に入らせていただきたいと思いますが、先ほど総務大臣もその御認識を披瀝されておりましたように、世帯単位で払っていただく。しかし、時代は、例えば、地上波デジタル放送も受信できる携帯電話を年内にも開発したいというメーカーもある。そういった方たちに対しては、世帯単位ということはむしろ適用が難しいという時代でもございます。

 そこで、例えばお隣の韓国では、電力会社が徴収を代行している。これは、電源を入れなければテレビは映らないわけですから、論理的ともいえます。それから、例えばペーパービュー方式、これは、CSテレビのように自分が見た番組についてだけ代金を払うといった方式ですとか、地上波デジタルが今後普及していくその時代の進捗に応じまして、例えば地上波デジタルにおきまして、スクランブルを解除する装置をつける段階で課金をしていくといった、時代の進歩と国民感情とを両にらみでにらんだいろいろな形態が考えられると思いますけれども、NHKの見解はいかがでございましょうか。

橋本参考人 将来に向けて多様な受信料の徴収方法が考えられると思います。デジタル時代になりますと、やはりいろいろな方法が考えられると思っております。

 現在、我々NHKが抱えておりますこの視聴者の御批判の中での財政的な状況、あるいは、これからのデジタル技術の進展等を踏まえた多様なこの徴収方法等につきましても、これから新たな視点で検討してまいりたいと考えております。

河合委員 一方で、もう公共放送はなくしてしまえ、この世の中に要らない、この国に要らない、こういう不要論もございます。しかし、私は、公共放送は必要であると考えます。しかし、公共放送というのは、文字どおり、国民の信頼に基礎を置きます。国民の信頼がない限り公共放送というのは成り立ちません。したがいまして、私は、NHKは国民との信頼を取り戻すためにはもう本当に必死の取り組みをしていただきたい、このことを強く要望するものでございます。

 さて、私が公共放送としてのNHKの存在を、必要性を感じます一つに、緊急時の公共放送の役割といったことを考えるからでございます。緊急時、特に、先日の津波、それから台風、豪雨災害におきましても、これは国民の期待、信頼はかなり高いものを感じております。

 デジタル放送を機に、携帯電話などの端末を利用した緊急時の防災機能に関する研究がNHKでなされていると聞いております。それらの概要をごく短く御説明いただきたいと思いますし、また、次に質問申し上げたいのは、首都圏の直下型地震それから東海、東南海地震への対応、地震発生後、緊急を要する津波情報の提供など、放送を代表する指定公共機関としてどのような責任を果たしていくおつもりなのか、あわせてお伺いしたいと思います。

 ちなみに、首都直下型地震に関する被害想定がこの平成十七年二月二十五日に公表されておりますので、御案内とは思いますけれども、申し上げさせていただきたいと思います。

 死者数の想定でございますが、朝五時、風速十五メートルの状況におきましては五千六百人の死者が予想され、十八時、風速十五メートル下では約一万一千人の死者が想定されております。ちなみに、これとは別に、自力脱出困難者、この数は五万六千人から四万三千人を想定しております。しかし、数字でこれを置くことは簡単ではございますが、この事態をどのように打開するかというのは、政治と行政に課せられた、最も現下での重い責任であると考えております。

 ちなみに、東海大地震それから東南海・南海地震に関する専門調査会の数字も出ておりますけれども、時間の都合で割愛させていただきますが、以上二点につきましてNHKの見解をお伺いさせていただきます。

諸星参考人 お答えいたします。

 緊急災害報道につきましては、先生御案内のように、私ども公共放送の最も重視すべき課題であるというふうに考えております。

 地上デジタル放送におきましては、その最も大きな特徴の一つが携帯端末向けのサービスであろうというふうに考えております。携帯電話でテレビが見られるという機能であります。私どもは、この問題につきましては、来年春の放送開始に向けまして準備を進めているところであります。

 このサービスの特徴でありますけれども、その機能の一つとしまして、災害との関係でいいますと、緊急災害時などで自動的に受信機を起動させて一斉にその情報をお伝えするという、これはテレビでもやっておりますけれども、緊急警報放送というものがあります。これも防災面では非常に重要な機能だろうということで、この活用についても、どういうふうにできるかということで今研究を進めているところであります。

 ただ、この携帯端末はまだ十分とは申せません。例えば電力が物すごくかかるというような問題、あるいは、地下に入りますとなかなか通じないというような問題があります。こうした技術的な課題も、さらに民放局あるいは国などと協力しながら解決を図っていきたいというふうに考えております。

 それから、地震災害への私どもの責任でありますけれども、先生御案内のように、私どもは指定公共機関に指定されております。大規模な災害を守る最大の責務を負っているというふうに考えております。

 私どもは、震度六弱以上の地震、あるいは、津波警報あるいは大津波警報等がありましたら、放送全波、つまりはテレビ五波あるいはラジオ三波を一斉に切ります。そして緊急放送に切りかえます。この中でいろいろなサービスを実施しております。時間が経過しますと安否情報などについても放送をしていきます。

 いずれにしましても、緊急報道を円滑に行うために、大きな被害が出ると見られております東海地震あるいは東南海地震、南海地震等につきましてはこれはかなりの対応ができていると思いますけれども、ただ、遺憾ながら、まだ東京直下型あるいはそれ以外のところにつきましては私どももまだ整備が必ずしも十分ではないというふうに考えておりまして、これらにつきましても鋭意整備を強化していきたいというふうに考えております。また、大地震に備えました計画の策定あるいは訓練などにつきましても、これまで以上にやっていこうというふうに考えております。

 全体といたしまして、この災害緊急報道につきましては私どもの最大の使命であるということで、公共放送としての責任をきちっと果たしていきたいというふうに考えております。

河合委員 時間でございますので、最後に総務大臣にお伺いする予定でございましたけれども、放送を所管する麻生総務大臣として格別のお取り組みをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

実川委員長 次に、大出彰君。

大出委員 民主党の大出彰でございます。受信料を払っております。

 深夜十二時半を過ぎておりますので、とっとと質問をいたしますので、簡潔にお答えをいただきたいと思います。時間がかかるようでありましたら、速記をとめていただきますので、各理事の皆さん、そして委員長、よろしくお願いいたします。

 冒頭、先ほどから出ておりますが、退職した職員の方の話なんですが、NHKには懲戒免職になった職員の退職金に関する規定というのはございますか。

宮下参考人 規定がございます。

大出委員 ないという話をお伺いしたものですから今話しましたが、あると言うなら結構でございます。

 それで、先ほどから実は、午前中の審議でございますけれども、理事の方が覚えていないというのを繰り返しているんですね。だけれども、NHKニュースでは紹介されていないという報告が外野の方からございまして、橋本会長が透明度を高めると言っているそばから理事が覚えていないを二回連発しているというのはどういうことなんだということでございまして、これでは国民の信頼回復にはほど遠いのではないかと思いますが、会長、どうでしょうか。

橋本参考人 これは、本人が記憶にないということであればいたし方ないというふうに、私からコメントできるものではありません。

大出委員 覚えていないというのは、昔、ロッキード事件のときに私の父が質問いたしたりしていましたけれども、記憶にありませんということと同じなんですね。記憶にありませんというのと同じでございまして、これ自体で偽証罪になるんですよ、言っておきますけれども、覚えているのに覚えていなかったりすることになれば。ですから、これから質問いたしますので、くれぐれも覚えていないということのないようにお願いいたします。

 まず最初に、時間の関係もありますから、基本的にはいわゆる「ETV2001」、先ほど森山先生が御質問なさいましたことなんです。第二回目の一月三十日の「問われる戦時性暴力」というところで、これが二〇〇一年の一月三十日なんですが、この後、私が二〇〇一年の三月十六日にこの総務委員会で質問をしておりまして、どうも私からすると虚偽答弁をされたというふうに思っておりますので、そのことも詰めながら質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、その中で出てまいります、政治家の皆さんとお会いをしたということの、事前説明というのがありまして、その事前説明についてちょっとお伺いをしたいと思います。

 橋本会長は、事前説明について、一般論として個々の番組内容を事前に細かく説明するのは好ましくないと述べられたんですけれども、自民党の方の総務会では少しトーンダウンをしておりまして、誤解を与えている、説明自体悪いことではないが、お伺いを立てるようなやり方は問題だという意味だ、こんなことを話しておられるんですね。

 そこで、事前説明といってもあれですよ、ことしの大河ドラマは何をやりますとか、そういうのは我々議員にも日常的に話したりはしますけれども、そういうことを言っているのではなく、番組等が国内のさまざまな論争のあるような問題で今回みたいに問題になったときの話で、そういうときに事前説明というのを行うべきなんでしょうか。会長、お答えください。

橋本参考人 この問題につきまして、私、つまるところ、やはり報道機関として番組編集の自由を守ることができるか、外部からの介入を受ける余地があってはならないというところだと思っております。いろいろ番組の説明を事前に行う、説明を行う中で、当方から伺いを立てるような形でのそういう姿勢は好ましくないというふうに思っております。

大出委員 放送の命というのは真実の報道なんですね。そして、真実の報道をゆがめようとする勢力とは闘うということです。そして、真実の報道を貫こうとするメディアが自由と民主主義を守るし、育てていく、こんなふうに思っております。

 今度のこと、実はいろいろ考えました。検閲になるんだろうか、あるいは政治圧力なんだろうか、あるいは自主規制なんだろうか、こう考えまして、それは、そのことが起こった日時が放映の前なのか後なのかによって大きく違ってきますので、その辺をお尋ねしたいと思っています。

 今、なぜこのことで疑いを持つかといいますと、実は一つ気になっておりまして、これはおかしいのではないかなと思うのは、例の四十四分で放送するはずのが四十分になった映像なんですけれども、その中で、慰安婦の存在について証言した元日本軍兵士の証言がカットされているんですね。もう一つは、中国人慰安婦の証言がカットされているんですね。なぜ問題にしているかといいますと、宮澤内閣のときに、従軍慰安婦の存在を認めて、政府の関与を認め、調査結果を発表しているんですね、平成四年の七月六日。ですから、これはカットするのはおかしいのではないかなと実は思ったものですから。

 この辺はどうでしょうか、会長。編集権の自由はわかりますよ。どうぞ。

宮下参考人 今先生が御指摘した部分は、最終的にはカットされたんですが、個別にそこに登場する方が、ある種の信憑性といいますか、そういうものの裏づけが取材してもとれなかったんですね。それで、信憑性が危ういということでカットしたということでございます。

大出委員 私、現場にいたわけじゃありませんから、そうおっしゃられると、編集権の自由であるということだろうと思います。

 そこで、資料などをお配りしております。一番最初の方からまいりますが、実は、松尾さんをここにお呼びしたいということを――当時、私が松尾放送総局長さんにお尋ねをしたんですね。当時は、大物政治家ということはわかりましたが、中川さんと安倍さんの名前は出てこなかったんです。そのときに、一番最初に質問をいたしましたところ、松尾さんは「番制局長がこの件で呼び出されたという事実はございません。」というお答えをしたんですね。

 これは、NHKの主張からすると、呼び出されたのではないから呼び出されたのではないと形式的には言えるんでしょうけれども、実は、おかしいのは、このとき問題にしたのは、政治家の圧力があったのではないだろうかという、政治家に会ったかどうか、呼び出されたのではない、お会いしたけれども別に圧力じゃありませんでしたよ、だれだれさんに会いましたよ、そういうお答えが欲しかったわけですね。そうはお答えになっていただけなくて、それで最後に、この間の二〇〇五年の一月十九日に、NHKの記者会見等では、どうも、松尾さん、野島さんでしょうかね、安倍さんにはお会いしているというような話なんですね。

 それで、安倍さんの方がわかりやすいので、安倍さんの方の話をお聞きしたいんですが、松尾参考人はここにおられませんよね。というのは、理事会で私たちは与党の側に、お呼びしてくださいと申し上げたんですね。そうしたら、だめですと言うんですね。理由は何かといいますと、民間人であるからと言うんです。

 しかし、おかしくありませんか。今、NHKの出版のところの社長さんをやっておられるんでしょう。その方が、ファミリー企業に行っておられる方が、私が質問したことにそごをするようなことをお答えになっていて参考人にならない、そしてそれを、与党の、特に自民党さんとお話をしたわけですが、お断りになった、拒否されたというところが、これは幾らなんでもおかしいんじゃないでしょうか。そう思っております。まず抗議をしておきます。

 本日、もう十二時半を過ぎているわけですからね、現実。放送自体も、半分だけ生中継をして、残りは後ろであって、夜中の十二時半というと私の支持者もなかなか見てくれないだろうという思いで今質問しております。

 そこで、松尾参考人の話でございますが、安倍さんと一月二十九日にお会いになっているんですが、これは松尾さんと野島さんでしょうか。

出田参考人 一月二十九日にお会いしたのは松尾と野島でございます。

大出委員 そこで、安倍さんとお会いになったときはアポをとりましたか。

野島参考人 総合企画室の職員がアポをとったとは思いますが、アポをとったのはいつかということについては記憶も残っておりません。

大出委員 どこでお会いになったんですか。

野島参考人 当時、安倍議員が官房副長官をやっておられましたので、官邸の官房副長官室だと記憶しております。

大出委員 官房副長官室、要するに行政の側にお会いに行ったということになりますね。ただ、個人の資格もございますから、それはそうでないとおっしゃるかもしれません。

 それで、何をしに出かけたんでしょうか。

野島参考人 次の年度の予算、それから事業計画についての説明でございます。

大出委員 それはあれですか、今回の予算も官房副長官のところに説明に行かれましたか。いつも行かれるんでしょう。ですから、今回も行きましたか。

野島参考人 申しわけありません。ことしどこどこを回ったかというのを私ちょっと詳細報告を受けていないので、私の経験で申し上げますと、過去、官房長官室等へ、あるいは閣僚の部屋へ予算の説明に行ったということは何回かございます。

大出委員 おかしいですね。そのときだけ予算の説明に行って、普通は行かないんだというんだとすると、予算にかこつけて違う説明をするということではないんですか。(発言する者あり)行ったんですか。今回も行ったんですか。済みません、聞き間違えました。今回は行っていないんでしょう。行くときも行かないときもあるということですか。

野島参考人 今回については私行っておりませんけれども、放送関係について、官房長官であれあるいは閣僚であれ、御説明する必要があれば行って御説明するということでございます。

大出委員 おかしいですね。しょっちゅう行くのかなと思ったら、そうではないんですね。

 では、聞きますが、一月二十九日に、中川さんのところは留守だったと思いますが、中川さんのところには行きませんでしたか。

野島参考人 私は行っておりません。

大出委員 伊東さん、松尾さん、野島さんは、だから、あなた以外の方は行きませんでしたか。

野島参考人 行ったというふうには聞いておりません。

大出委員 いろいろな情報では、三人の方が公用車に乗って行かれている、それで留守だった、それで二月二日に、だれが行ったかわかりませんが、行っているということなんですが、これは誤報ですか。

野島参考人 事実ではございません。

大出委員 これは、実は文芸春秋に載っている話なんですが、そうすると、この誤報については、朝日新聞と同じように、間違っているぞと抗議をなさいますか。

野島参考人 抗議はしていないと聞いております。

大出委員 朝日新聞に抗議をしているのですから、今後抗議をする気はありますか。

野島参考人 文芸春秋の記事も発端が朝日新聞の記事でございますので、朝日新聞に対して誤報の訂正を求めているということでございます。

大出委員 朝日新聞には、公用車で三人乗って中川さんのところに出かけたけれども留守だった、そしてまた、安倍さんのところにそのかわりに行ったというようなことを書いていませんよね。ですから、別の話じゃないんでしょうか。抗議する気はありませんか。

宮下参考人 今先生の御指摘の部分は、私どもの調査では明らかに間違いなんですが、実はいろいろな雑誌がいろいろな記事を書いているんですね。それで、私ども全部読んでいるわけではございませんし、一つ一つ抗議するということは、なかなか実際問題として大変なんですね。

 それで、私どもとしては、私どもが調査した事実はこういうことでございますということを記者会見を開いて公表しておりますし、それからインターネットにも載っけておりまして、私どもとしては、私どもの調査はこれが事実ですということを明らかにしておりますので、一つ一つ、いろいろな記事が出ておりますので、それに抗議をするというようなことは実際上は難しいというふうに御理解ください。

大出委員 だとすると、何でこんなことを聞いているかというと、またほかの報道の中に、昨年の暮れでしょうか、芥川賞、直木賞の受賞者発表を内部の方が語っておられるわけですが、発表するなと上から指示を受けた、それはまずいということで結局発表するんですが、その理由が、文芸春秋がNHKについて書いているから、芥川賞、直木賞は文芸春秋でございますから、書いているからというのがありました。内部でそういう事実はありましたか。

諸星参考人 お答えいたします。

 芥川賞と直木賞につきましては、夜の七時のニュースの直前か、あるいはその後ということで、いつもニュースの扱いが非常にぎりぎりのところでありました。今回も相当ぎりぎりになるということで、場合によっては七時のニュースを見送ってもいいんじゃないかということでありました。ただ、現場の方から、やはりどうしても入れたい、たとえ短くてもいいから入れたいということで入れたということであります。

大出委員 今の理由は、時間的な理由だということですね。そういう意味ですね。しかし、内部の方がいろいろなところで発言をしているということは、かなりそういうものがあるのかなと思わざるを得ないようなところがあるんですね。そういう意味で質問したんですね。

 そこで、もう一つは、二番目のところでございますが、放送時間を短縮した話でございます。

 そのときに、当時は、松尾さん、何て答えているかというと、私が質問したら、「今回、現場からは短いという情報を得たので、編成は、それでいいですよ、それでは、違う広報番組をそこにちょうど入れるのがあるから、どうぞその範囲で結構ですという返事をしたということが事実でございます。」こう言っているんですね。

 それに対して、後になって、二〇〇五年の一月十九日になってきますと、傍線が引いてありますが、「三日後の二十九日に四十四分の編集VTRが出来ました。その日の夕方に放送総局長に対する初めての試写が行われ、協議の結果、深夜に再度試写が行われ、四十三分になりました。」先ほどから言われている話ですが。「そして放送当日の三十日に放送総局長と番組制作局長、それに教養番組部長で協議を行い、さらに編集をして四十分にしたうえで放送されました。」と言うんですね。

 私に答えたときは、何か現場に任せてあって、あいたものがあるからいいよと言ったというように言っているんですね。ところが、現実には全面参加していたんではないかというふうに思いますね。ですから、これは私に対してうそを言っているんではないかということでございますが、どうでしょうか。

出田参考人 まず、当時の松尾総局長は、最終的な編集判断にかかわっておりました。これは事実でございます。その上で、先生御指摘の二〇〇一年の委員会での答弁でございますが、当時の松尾総局長の答弁につきましては、編集の結果として放送時間が短くなるという大まかな方向性は当然認識していたというふうに思いますが、短くなった後の、具体的に何分短くなるか、これは編成との関係がございます。そういう何分短くなるかにつきましては、実際に編集作業に携わっている現場の担当者から報告を受けたものだというふうに思います。そういう意味では、当時の松尾総局長がそうした状況をこの委員会の席で答弁申し上げたというふうに私たち考えております。

大出委員 これは、だから、松尾さんが私に答えたんだから、松尾さんがここへ来て私に答えるべきでしょう。こういう答え方をしていたんですよ、現実に。だからこそ参考人招致を要求しているのに、自民党さんがけられる。そうすると、他人に話しても本当らしくないでしょう。だって、わからないじゃないですか、それは。

 ですから、これは重大ですよ。私は腹立っていますよ、本当に。こういうやり方はやめていただきたいですよ。今度、だったら決算のときに来ていただけますか。委員長、どうでしょうか。

実川委員長 理事会で協議をいたします。

大出委員 一々抗議はしないんだとおっしゃっていますが、前回の私が質問したときも、三番目ですね、海老沢会長について、私は、海老沢さんは気配りをする人だから直接指示したのではないかという話から始まって、「正論」の二〇〇一年四月号の「NHKウオッチング」というところの、二枚目の一番右の方でございますが、放送総局長は自分ではないと言っていたわけですね。ですから、指示を出したのは海老沢さんではないかということで私は質問したんですね。

 そうしたところ、「正論」にはこんなことが書いてあるんですね。傍線のところだけ読みます。NHK海老沢会長もほうってはおけず、ビデオを視聴した、早速、担当者を呼びつけて内容の修正を厳命した、こんな番組をつくっていたとは知らなかった、しかも、大事な予算の時期に。こういうことで、さも指示したかのごとくなっていまして、これについても事実が違うんだとすれば抗議をしたか、そのことについてお伺いしたいんです。

出田参考人 私たちが承知しているのは、そうした雑誌の記事とは事実が違うというふうに認識しております。ただ、抗議はしていないというふうに聞いております。

大出委員 これについても一々抗議はしないんだということで、抗議をする気はないんですね。

宮下参考人 「正論」の、先生も御存じかもしれませんが、ウオッチというのはシリーズでずっと掲載されて、NHKのことがいろいろ書かれることが多いんです、中村先生という方が書かれていることが多いんですが。NHKの視聴者センターに直接おいでになったりすることがありまして、そういうときには私どもの考え方をはっきり申し上げるというようなことはしておりますが、その件については抗議はしておりません。過去のことでございますので、これから抗議するということも今は考えておりません。

大出委員 いろいろ書かれるからと言いますが、朝日新聞と我々から見ると醜い合戦をやっているようなことがありますから、こういうところを抗議しないとかなると、言っていることが本当なのかなというふうに思えてくるんですね。

 時間がなくなってきますから質問しますが、安倍さんのところに行かれたというのはいいんですが、その説明に、日本の前途と歴史教育を考える議員の会の幹部だったからということなんですね。どうも安倍さんと中川さんのところだけ行ったのではなくて、ほかの方々にも行っておられますね。どなたのところにお行きになったんでしょうか、説明に。

野島参考人 私の記憶に残っているのは、当時の事務局長であった下村衆議院議員のところに予算説明に行った折に番組の話をしたというふうに記憶しております。

大出委員 これも文芸春秋でございますが、古屋さんとか下村さんだとか平沢勝栄さんとか名前が出ていますが、この方のところには行かなかったですか。

野島参考人 私自身の、行ったというか、記憶に残っているのは下村議員だけでございます。

大出委員 下村さんのところね。

 松尾さんも来ておられないわけでしょう、海老沢さんもお呼びしたけれども来ていないですよね。ですから、これはやはり松尾さんにだって聞かなきゃいけないはずなんですね。あるいは、どこへ行ったかということは、NHK、調べてありますか。

宮下参考人 私どもがコンプライアンス室で調べた限りにおきましては、今、具体的な名前を記憶されていたのは、下村議員について野島が記憶しておりましたが、ほかの関係者については、まず、松尾総局長それから伊東番制局長はそういうところには行っておりません。それは確かですが、ほかの職員がだれに予算説明に行って、そのときにこの番組の話をしたかについては記録がございません。記憶もございません。

大出委員 その次の質問に先に答えておられるんですね。

 いわゆる幹部と言われている方以外の方で、中川さんや安倍さんに、一月三十日、放映の前にお訪ねをした方はだれもいませんか、あるいは電話をした人とかはありませんか。

野島参考人 中川議員のところに伺うに先立ってアポイントをとったということはございますでしょうけれども、ほかの職員が中川議員のところに行って説明したということはございません。

大出委員 この部分が、中川さんが報道等でこういう言葉を吐いたというようなことが書いてあるわけですが、それを見ていると、二月二日に、放送が終わってから言うような言葉じゃないんですよね。ですから、何らかの接触がなければおかしいな、こんな言葉を吐くわけがないなという、当然疑いが出るわけですよ。

 そこで、今、幹部でない方々でお会いした人、あるいは中川さんの方から何か電話があったりしていないのかなと聞いたんですが、もう一回、どうですか。

野島参考人 そういう事実もございません。

大出委員 三十日の前にそういう話があったのかなかったのかということが非常に重要だというのは、検閲というのは、自己統治や自己実現に必要な情報を市場に流通する前に公権力が妨害する行為ですよね。ですから、呼ばれたのではなくて出かけていって説明をしたりするのだとすれば、これは過度な自主規制なのかもしれないわけですね。そういう意味で、非常に重要なので、ここがポイントなので、みんな、何日、何日という日にちの質問をするわけですね。

 それは、余りにも見ていて、本来受信料をもらうのは何のためかといったらば、御存じのように、国家権力から干渉されないために言っているのに、与党の側にすり寄っているようなことになったら、まさに国家権力に干渉してくれと言うようなものでございますから、事前説明というのは当然やめるべきですし、こういう問題を、真実を報道するのが報道の役目です、公共放送の役目ですから、しっかりと事実関係を明らかにしなければいけないということを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

実川委員長 次に、山花郁夫君。

山花委員 民主党・無所属クラブの山花郁夫でございます。

 通告をしていた話とは違うんですけれども、今の大出委員とのやりとりの中で少々気になったのが、会長にお尋ねをしたいんですけれども、事前の説明というのが好ましくないというふうな言い方でしたけれども、個別の番組について、中身を、内容をこれでいかがでしょうかというようなお伺いを立てるようなことがあってはいけない、そういうことであるということで理解をさせていただいてよろしいでしょうか。

橋本参考人 おっしゃるとおり、やはり、個別の番組を左右するような形で、いわゆる放送の番組の自主自律、そういうものを左右するような、言ってみれば介入を許すような、そういう伺いを立てる事前説明というのは好ましくない、絶対これはやってはいけないというふうに思います。

山花委員 ちょっと最後の方がよく聞き取れなかったんですけれども、つまり、報道の自由ということを言う前提として、自分から検閲をしてくださいなんというようなお伺いを立てるなんて、こんな話はあり得ないと思うわけで、好ましくないというか、それは絶対にやっちゃいけないことだという趣旨であるということで理解をさせていただいてよろしいですね。

橋本参考人 言論機関としまして、やはりみずから、番組をどのように左右するというふうなことを含めて、介入を許すようなことはやってはいけないという趣旨でございます。

山花委員 その点は確認をさせていただきたいと思います。

 その上で、きょう、予算の審議の中で、随分と不払いがふえているという話が出てきておりまして、額についてもかなり巨額になっております。これほどまでにはまだ広がっていない時期でありましたが、昨年の十一月のことですけれども、副会長が記者会見で、予算全体の規模から見ればこれぐらいの額であれば吸収できるというような発言をされておりました。

 私は大変驚いたのでありますけれども、内部でそろばんをはじいているときに、内輪で話をしていることであればそういう発言もあり得るでしょうが、しかし、対外的にこういったことを言ったということは非常に懸念をいたしております。現在でもそういう認識なのかどうか、また、その発言の真意についてお尋ねをしたいと思います。

和崎参考人 お答えいたします。

 御指摘の発言は、昨年の十二月たしか二日のNHKの会長定例会見で副会長が発言したことを指しておられるんだと思いますが、当時の資料を確認いたしましたところ、NHKの予算規模などからすると、何とか吸収できる範囲ですが、これは金額の問題ではなく、NHKへの信頼の問題であり、支払い拒否や保留されている方々にお支払いいただけるよう、全組織を挙げて努力していきたい、こうした趣旨の発言を当時副会長はいたしております。

 そういう意味で、しかしながら、この発言が受信料を払ってくださっている視聴者の皆様に誤解を与えるような形で切り取られ、報道されたということは大変残念であると同時に、申しわけなく思っております。

山花委員 大変厳しい状況であるという認識だと承ります。

 その上で、きょうは、商業主義との距離感をどう考えるかということ、そういったテーマで質問させていただきたいと思います。

 昨年、当委員会で質疑をさせていただきました問題です。「プロジェクトX」展という展覧会ですけれども、七月二十五日から八月二十五日まで東京ドームのプリズムホールで開かれていたものであります。これについて、特別協賛金、マックスで三千百五十万円の協賛金の協力要請を、NHKプロモーションだけではなくて、その場に関根専務理事なども同席をしておられたということが質疑の中で明らかになりました。

 なぜこのことを問題にしたかといいますと、つまりは、ケースによっては放送法に抵触するおそれがあるような話にもなりかねないということだと思いましたし、また、展覧会そのものをやるなと申し上げるつもりは全くありません。文化事業など、あるいは芸術事業など、N響が演奏会をやることもあるでしょうし、それは大いにやっていただいて結構なんですが、そのやり方についてはしっかりと配慮をしてほしいという趣旨で申し上げました。

 ただ、そのときに、この展覧会について、一部報道では随分と黒字が出るのではないかという観測が報じられておりましたけれども、当時の時点では、収支はまだ計算中であるという御報告しかいただいておりません。この「プロジェクトX」展、特別展「プロジェクトX21」については、収支はどうだったんでしょうか。

出田参考人 御指摘の展覧会につきましての収支ですが、収入が四億五千八百六十八万円、支出が四億六千十四万円となりました。これを精算いたしますと、百四十六万円の赤字ということになっております。

山花委員 どういうそろばんをはじかれたのかちょっとよくわかりませんけれども、四億からのイベントで百四十六万という、大変微妙な赤字を出されたということですけれども、赤字についてはどこで精算するんですか。どこかが持たなければいけないことになろうかと思うんですけれども。

出田参考人 この赤字の負担でございますが、NHKそれから一緒にやっておりましたNHKプロモーションが負担をすることにしておりました。両方で折半という形になっております。

山花委員 そういったことが私はまさに問題だと思うわけであります。

 今後のあり方も含めてなんですけれども、この「プロジェクトX」展なんですけれども、主催者が、特別展「プロジェクトX21」実行委員会という形で、NHKとNHKプロモーション、そして読売新聞社、社団法人発明協会、東京商工会議所、この団体が主催者という形になっているわけです。

 そこで、これは赤字だったということなので、NHKとNHKプロモーションが持つことになったと。結局、お金を出すという以上、それは受信料から賄うということになるでしょうし、本来の、つまりは放送事業そのものではないことに対して赤字で受信料をそこから補てんしなければいけないということになってしまうわけであります。

 今後のあり方と申しましょうか、これは本当によくよく気をつけていただきたいんですけれども、NHKとNHKプロモーションが何で別の会社でやっているかということで言うと、本来、NHK本体はそういったイベントをやるべき団体ではなくて、イベント活動についてはプロモーションに任せているというか、それは切り分けをやっているから別の会社なはずなわけでありまして、このようにNHKとNHKプロモーション、もっと言えばほかの営利企業と同じ形で主催ということになると、結局、黒字になっても赤字になっても、どっちにしてもおかしなことが起こるわけですよ。

 つまり、赤字になったときには受信料から結局補てんしなきゃいけない、本来事業でないことに対して。もし黒字になったとすると、本来的な放送事業でないことに対してもうけてしまう、収益が上がってしまうという、二律背反といいましょうか、そもそも成り立ち得ない命題が出てきてしまうわけであります。

 本来であれば、主催者は、もし読売新聞社とか発明協会とか東京商工会議所とやるのであれば、主催はNHKプロモーションという形でやって、NHK本体は後援なりなんなりというような持ち方をしないと、似たようなケースというのは今後もあり得るでしょう。

 また、やはり、私も完全には疑念を払拭しているわけではありませんけれども、NHKの専務理事の人が一緒に協賛金を集めるのに回っているということになれば、当時の質疑の中で本人は、いや、そういうことではなくて、番組の意義だとかそういうことについての説明のために行ったんですという関根さんの答弁でしたけれども、それは、御本人はそう思っていても、受けとめる側は、イベント会社とNHKさん一緒に来れば、NHKから言われているんだろうというふうに受けとめても無理なからぬところでありますので、今後こういった展覧会なりなんなりイベントについてのやり方、気をつけていただきたいと思います。

 もう終わった話について、だれに責任とれとかそういう話をしているのではなくて、今後こういったイベントをやるに当たって、私は本来NHKがプロモーションと並んだ形で主催者になるのは好ましくないと思いますけれども、方針なりなんなりというものがあればお聞かせいただきたいと思います。

出田参考人 NHKが関連いたしますイベントの形態ですが、NHKが主催に入る場合もあれば、後援に回る場合もあります。そういう意味ではいろいろなケースがございます。ただ、NHKのイベントというのは、基本的にはやはりあくまで文化事業というふうに私思っております。

 ただ、全体、入場していただく方の御負担をできるだけ少なくするとか、あるいは質の高いイベントを提供するということでいえば、企業あるいは団体から協賛あるいは御協力をいただくという場合もあるかと思いますけれども、今後につきまして、こういった御協力をいただく企業に対しまして、企業の宣伝にはならないことをきちんと御説明を十分にして御理解いただくということと、もう一つは、やはりイベントを制作する上で企業の宣伝の手助けというふうに誤解が生じないようにきちんと注意を払い、細心の注意でやっていきたいというふうに思っております。

山花委員 ちょっとまだ詰めたいところもあるんですけれども、もう一点の問題について質問をいたします。

 企業との関係ということが今答弁の中で出てきましたけれども、先日、ラグビーの日本選手権、二月十二日の準々決勝ですけれども、大学選手権を物すごい成績で制しました早稲田大学と社会人のトヨタとの準々決勝の試合が生で放送されるはずだったものが、一たん録画になると報じられまして、その後また生でというような形で、少しばたばたとしたことが報じられておりました。この点について、最終的には生中継に戻ったようですけれども、どういう経緯でこういうことが起きたのかということについて、説明をお願いいたします。

諸星参考人 お答えいたします。

 生中継を録画に変えた理由といたしましては、今回問題となりました、日本ラグビー協会がNHKとの間で結んでいる協定に違反したということ、それからまた、もう一つは、公平中立であるべきレフェリーのジャージーに企業名が入ったということであります。

 つまり、私どもは、日本ラグビー協会といわゆる共催協定を結んでおります。これは、大会会場に広告等を出す企業を募る場合には、事前にNHKの意見を尊重するという内容であります。今回、これが全く事前の連絡もなく無視されたということであります。レフェリーのウエアにもこれは適用されるものであります。

 私どもは、これを撤回するように申し入れましたけれども、これが聞き入れられないということで、二月十日に、これは生放送ではなくて、企業名が過度な露出をしないような形で映像を編集した上で、録画で放送しようということを決めました。しかし、その後、たくさんのラグビーファンからの生中継の要望、それから、ラグビー協会も非を認めて直前に記者会見するというようなことがありまして、生中継に戻すということにいたしました。いずれの場合も、放送総局として検討して決定したものであります。

 いずれにしましても、ファンの皆さん、それから視聴者に、大変お騒がせいたしまして、大変申しわけなく遺憾に思っております。

山花委員 今の説明なんですけれども、事前にこちらも議論させていただいて、中正公立であるべき審判に企業広告がなじまないというのは、こういうことを言われるとちょっと変じゃないですかということで言っていたんですけれども、そうやって答弁されましたから。

 こちらもラグビーフットボール協会に確認をさせていただいておりますけれども、協定書の恐らく第九条のことを指されているんだと思いますが、大会の会場に看板を掲示する際には事前にNHKの意向を聴取し、これを十分尊重するという中身でありまして、必ずしもジャージーのが看板に当たるのかどうかというのは明確に規定されているわけではないのではないでしょうか。

 また、九八年から二〇〇二年までの日本選手権の主要試合では、審判にオムロンの名称が入っていますし、二〇〇三年の大学選手権ではマイクロソフトのロゴが審判員の胸に入っております。また、ロゴの面積は朝日新聞と同じであるということもラグビー協会から確認をとっております。

 つまり、そういうふうに言われますけれども、例えばラグビー協会が陳謝したところで、コマーシャリズムとの関係で問題があるという指摘だとすると、それは切りがないじゃないですか。もっと言えば、今アマチュアの世界にもコマーシャリズムが入ってきていまして、何せオリンピックにプロの選手が出るぐらいの時代でありますから、そういう距離をとることが非常に難しくなってきているのも事実だと思います。例えば大相撲なんかでも、懸賞金が出るときには画面を引いて対戦成績を映したりとかして、気を使っているのかなと思っております。あれについては、ただ、ずっと過去からの蓄積があってああいう形をとっているんだと思います。

 ただ、今のような説明をいただきますと、公正中立であるべき審判に企業広告が入っていたからということであれば、それはラグビー協会が陳謝しようが何しようが映すべきでないという判断が優先されるべきではないかと。私は映すなと言っているつもりはありませんけれども、余り明快な話ではないような気がします。

 例えば、BSでメジャーリーグの中継をやっています。あれで、例えば松井選手が出るヤンキースタジアムに、後ろに読売新聞というふうに広告が出ていて、私はてっきりあれはヤンキースタジアムに書いてあるのかなと思ったら、あれは実在しないバーチャルだそうじゃないですか。

 つまりは、そういうことを、技術的にはバーチャルなんですから、取り除こうと思えば取り除けるものについても平気で流していながら、ラグビーのジャージーにロゴが入っていることを問題にするというのは、個別の、朝日新聞とどういう背景があったかということを聞いているのではなくて、そういった企業と放送協会との間の距離、あるいは、コマーシャリズムに対してどういう距離を持っていくかということについて、もっと明確なガイドラインがあって、それに従っていただく必要があるのではないかと思います。

 もう一点言わせていただければ、教育テレビで「メジャー」というアニメーション番組を土曜日の六時からやっております。週刊少年サンデーに連載されている漫画ですけれども、最近話題になっております。ミズノという会社とアニメのキャラクターが専属契約を結びまして、茂野吾郎選手というキャラクターですけれども、その選手が使うグローブとかバットはその企業のロゴが入るというような契約が結ばれたことが話題になっています。ああいうものが今度、いや、そちらの著作権の関係もありますからということでアニメの中にも登場するのかしらとか、いろいろそういったことも、今後どうするのかしらということは当然気になるところであります。

 この点、ガイドラインとか、こういうことについて、今あるものがあったらそれをきっちり守るということと、それと、今後こういった問題についてどういう形で取り組んでいくおつもりなのかということについて、御答弁をいただきたいと思います。

諸星参考人 お答えいたします。

 審判のロゴにつきましては、私どもは、確かに時代とともにこれはかなり変わっていくものだと思います。ただ、現状では、まだ視聴者にも必ずしもなじんでいないのではないかという気がいたします。多くのスポーツでも審判にロゴは入っておりません。

 それから、オムロンの件でありますけれども、これは、私どもが契約する前からそういう契約になっておりまして、その契約が切れた平成十五年以降は入っておりません。

 それから、私ども、ガイドラインを持っておりまして、放送ガイドラインあるいは番組基準ハンドブックなどで、広告放送をしないということでやっておりますけれども、先生言われましたように、これは恐らく時代の変遷とともに変わっていくものだと思います。その点につきましては、世論の動き、視聴者の動き、あるいはスポーツ業界の動きなどを見ながら、場合によっては変えていくことも必要だろうというふうに考えております。

山花委員 時間が来たので、終わります。

実川委員長 次に、西村智奈美君。

西村(智)委員 民主党の西村智奈美でございます。

 私の選挙区は新潟県第一区でございまして、今回、災害報道では、大きな国民の関心を呼ぶのにNHKの公共放送の役割が果たしてくださったものは本当に大きかったと心から感謝を申し上げたいと思います。

 が、しかしでございます。今回の続く不祥事には、本当に私も失望をいたしましたし、国民の皆さんからは受信料の支払い拒否ということで、本当に大きな影響を生み出しております。このことを踏まえて、今回をきっかけにNHKが生まれ変わるという姿勢をぜひとも見せていただきたいと思っております。

 さて、最初の質問なんですけれども、少し通告の順序とは違うんですが、先ほど山花委員が言及しておられたことについて、一点お伺いをしたいと思っております。

 先ほど、答弁の中で、番組基準ハンドブックですとか放送ガイドラインというようなお話がございました。これ、実は私も見せていただけませんかというふうにお願いをいたしましたら、公表していないんだそうでございますね。情報開示の請求によっては開示をしないということで、見せていただくことはできなかったわけでございますけれども、実は、そのハンドブックあるいはガイドラインの中に、例えば今ほど山花委員が言及された放送と商業主義との関係ですとか、午前中、野田委員が言及された子供向けの番組はいかにあるべきかということが事細かに書かれているのではないかというふうに想像いたしておりますけれども、これは公開できないんでしょうか。

 私、この間、ずっとBBCを調査研究の対象として見させていただきました。BBCのホームページを見ますと、プロデューサーズ・ガイドラインといいまして、数百ページにも上るガイドラインが全部、丸々公開されております。時代とともに変遷していくものであればあるほど公開をして、一般視聴者の皆さんの目で見ていただいて、そうしてまたNHKの自律につなげていくということが必要ではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

出田参考人 お答えいたします。

 まず、私どもNHKといたしましては、公共放送としてのいわば客観性とか公平性、これを確保するためのよりどころとして、国内番組基準あるいは国際番組基準というのを自主的に制定しております。これにつきましては公表をいたしております。

 それから、先生お尋ねの番組基準ハンドブックでございますけれども、これは実はあくまでも部内用の資料ということで編集しております。と申しますのは、このハンドブックに書かれています内容は、非常に個別事例が書かれております。過去の事例、特に具体的な事例を例示しながら、取材上あるいは放送上の諸注意を書いてございますけれども、編集の自由にかかわる内容も含まれておりますものですから、そういう意味ではNHKのノウハウというところもありまして、NHKの情報公開規程でも、放送番組の全般または一分野について、内容、制作工程等を規律する目的で作成した文書、これにつきましては開示の求めの対象外とさせていただいていますので、この番組基準ハンドブックについても部内用の資料という形で編集しております。

西村(智)委員 個人が特定されるという理由で公開されないのであれば、その事例の部分だけ除いて公開するということは考えられないんでしょうか。

 今回、夏の不正支出の後に、NHK倫理・行動憲章、それから行動指針が策定されました。これがNHKのホームページには公開されておるわけですけれども、これもまた職員の皆さんがみんなそれにサインをしたということだそうですけれども、内容を見てみましたら本当に精神論に終始している、具体的な事柄というのはほとんど見られないわけでございますね。

 どうですか、公開について。

出田参考人 この番組基準ハンドブックの内容、先ほど申し上げましたとおり、非常に具体例を書いてございまして、これを外すとほとんど内容がなくなってしまうぐらい、具体例がすべてでございます。

 ただ、申し上げましたとおり、番組基準そのものは私ども自主的に制定したものがございますし、これは公表しておりますので、そういう意味では、基準という考え方でいえば、既に公表してあるというふうに御理解いただきたいと思います。

西村(智)委員 私もその実物を見せていただいたことがないわけですから、よくわからないんですけれども、実際にBBCのホームページを見ていただきたいと思うんです。恐らくそこに書かれている程度のものなのではないでしょうか。NHKは、公共放送のあり方をつくり上げるときに、BBCのあり方を非常に参考にしたというふうに聞いております。

 いろいろな政治的な関係があって、今回、BBCも随分揺れているそうでございますけれども、それでも高い独立性と公平性を今まで維持してこれたのは、そういうふうにBBCが番組制作のときに、一般ユーザー、視聴者の方をしっかりと見続けてきたからだ、こういうふうに思うわけでございまして、内部のことだけではなくて、視聴者の目に番組制作のガイドラインなどを明らかにすること、これはぜひともやっていただきたいと思います。さらに伺います。

    〔委員長退席、左藤委員長代理着席〕

出田参考人 BBCの例を御指摘になりました。私も詳細は承知しておりませんけれども、BBCの場合、プロデューサーズ・ガイドラインというのを公表しております。ただ、これは私どもが持っております放送ガイドライン、もう一つございますが、そちらに近いものだというふうに受けとめております。

 そういう意味では、先ほどからあります番組基準ハンドブックは、非常に詳細な、具体例でございますので、現段階では公表するという考えではございません。

西村(智)委員 それでは、次の質問に移りつつ、先ほどの関連なんですけれども、今回の不祥事の後にコンプライアンス推進室というものが新しく設置されたというふうに伺っております。政治的圧力があったかどうかということについて調査をしてまとめた調査結果報告書、これがことしの一月十九日に出されたそうでございまして、報道資料でございますので見せていただきましたけれども、これを見て私は実は大変驚きました。

 先ほどの話を蒸し返すようで大変恐縮なんですが、一点確認をさせていただきたいと思っております。

 二枚目、(三)でございます。黒丸の三つ目、こういうふうに書かれておるんです。「事業計画の説明等に付随して今後放送される放送番組についての説明を行うことも通常行われていること」。「通常行われている」、つまりNHKの新年度の事業計画の説明に合わせて今後放送される放送番組の説明を行うことは通常行われていることだ、こういうふうに記載されておりまして、私、これは実は大変驚いたんです。

 先ほどの質問の中で、事前説明はやらない方がよろしいんだというふうな答弁で理解したけれども、では、一体これはどういうふうに理解したらよろしいんでしょうか。また、事前に説明を行うということは通常本当に行われているんでしょうか。私は一期生だからかもしれませんが、一度も受けたことはありません。どうでしょうか。

宮下参考人 その調査報告書をまとめたのは私でございますので、私がお答えいたします。

 まず、通常という意味の中には二つございますが、予算、事業計画を国会議員に事前に説明するということは通常行われているわけですね。そのときに、番組に関して、私ども実は、番組の趣旨とかねらいなどは、番組が放送される前に、国会議員だけではなくて視聴者の皆さんに、大体一週間ぐらい前になりますとほとんど公開しているんですね。それは、そういう広報資料をつくりまして、新聞社とか雑誌社に配りまして、問い合わせがあればお答えしております。つまり、番組の事前の説明というのは、一般視聴者に対して通常行われていることなんですね。それで、そういう事業計画とか予算の説明のときに、その範囲の説明をすることは、あったとしてもそれは通常のことだということをそこでは申し上げていることでございます。

西村(智)委員 そのことは放送ガイドラインあるいは番組基準ハンドブックなどに記載されておりますでしょうか。

 つまり、いろいろな疑問を生んでおるとおり、この番組の事前説明ということは、事前検閲につながりかねない非常にセンシティブなことだというふうに思うんですね。ですから、私は、つまり、編集権の独立というものをしっかりと確保するために、ここまではやる、ここから先はやらないというふうな明確な基準、ガイドラインをはっきりと示して、こういう基準でNHKは事前の説明を行っていくんだということをやるべきではないかというふうに思って、それで先ほどからガイドラインの公表ですとか事前説明のことについてお伺いをしているんですけれども、いかがでしょうか。

 あわせて、つけ加えてもう一点、これは提案も兼ねて質問させていただきます。

 そういう事前の説明をするというとき、あるいは政治家にそういった番組の事前の説明をするというときに、報告を必ず義務づけるということはいかがですか。上司、理事会あるいは経営委員会、こういったところにきちんと報告をする、それもまたその説明を受ける政治家の方にはきっちりと伝える。これはルール化していただきたいと思いますが、いかがですか。

宮下参考人 先ほどから申し上げておりますが、事前説明というのは番組を事前に説明することなんですが、それは国会議員の皆様方だけではなくて、視聴者の皆様にもやっていることなんですね。その範囲の中のことを国会議員に説明することもあるということを申し上げているのであって、もちろん、おっしゃるように、編集の自主自律とか、そういうものにかかわるような説明の仕方があってはならないと思いますし、そういうことが今まであったということはございません。

 それで、今のようなことはもともと放送法にも定められておりますし、それから、我々の倫理・行動憲章にも定められておりますので、何人にも影響されずに放送の、編集の自主自律を守るということは基本でございますので、それは倫理・行動憲章などにもきっちり書いてございます。

 それで、報告ということでございますが、それは、先ほど申し上げましたように、事前説明というのは広報範囲の、こういうねらいのこういう番組ですということは、もう既に、言ってみれば周知のことでございますので、その範囲の事前説明ということについて、一々それを何かルールを決めて報告するというようなことは今考えておりません。

西村(智)委員 私は、これをきっかけにNHKが視聴者の皆さんから信頼をかち得ることができるかどうか、今本当に重要な岐路に立っていると思っているから伺っているんです。本当にやる気があるんですか。NHKが視聴者の方を見ているのか、それともどちらかほかの方を向いているのか、見ていますよ、しっかり皆さんは。だから、その数字が受信料の支払い拒否の数字になってあらわれてきているんじゃないですか。

 次の質問に移ります。

 コンプライアンス推進室が設置をされました。内部にコンプライアンスの窓口がそこに置かれるということになって、外部にそれを補完する窓口も置かれるということでございますけれども、実は、この外部の窓口としてお願いをした、その窓口となったところは、これまでNHKの法務部が法律案件、訴訟ですとか、そういったことをいろいろ相談してきた、その法律事務所であるというふうにお伺いをいたしましたけれども、これまでNHKが協会としてかかわりがあったところにコンプライアンスの外部の補完窓口を頼むということについては、どういう判断で行ったんでしょうか。

    〔左藤委員長代理退席、委員長着席〕

宮下参考人 御質問の御趣旨は、NHKと前からつき合いのある法律事務所が外部の通報窓口であっては、通報者にとって必ずしも公正ではないんじゃないかというふうな御質問だというふうに思いますが、この弁護士事務所の通報窓口というのは、通報をただ受けて、それを調査したり、それから何か判断したりするということは一切いたしません。そこで受け付けた内容をそのままコンプライアンス室に伝えるという役目だけを負っているわけでございまして、そういう意味では、NHKが以前からつき合いがあった法律事務所が窓口をしていることで、通報者が不利益になるあるいは公平性を保てないというようなことはございません。

西村(智)委員 外から見ると、でも、やはり一つの法律事務所の中に二つの役割をお願いしているということですから、これは余計な疑義を招かないために、外部の窓口は別のところにすべきだったのではないかというふうに私は思っております。

 監査の関係で一点伺いたいと思います。

 現在、内部監査とそれから会計検査院の検査が行われておりますけれども、それでもこの間の不正経理などは見抜けなかったわけでございますね。国内外の支局などは数年に一度の監査であったということですし、やはりこれからは、内部統制がどこまできちんとできているのか、外部からきちんと入ってもらって、その外部監査人もお手盛りにならないように選んで、その結果はきちんと国民に公表されて、さらにその延長線として、NHKに対する信頼を取り戻せる、国際社会の中でも国際報道のNHKここにありと言えるような信用を得られる、そういうふうにならなければいけないと思っておりますけれども、内部統制を確保するための今後の外部監査のあり方についてお伺いします。

 これについては、ぜひ総務大臣からも所見を伺いたいと思います。

和崎参考人 お答えいたします。

 先生の御指摘の監査の問題でございますが、昨年のいわゆる芸能番組のプロデューサーの不正発覚以来、内部監査のあり方について相当見直しを行ってまいりました。

 まず、基本的には、予算規模の大きな番組については、随時、機動的に、しかも集中的に監査ができる専任チームを設け、まず内部監査の強化ということを行っております。それとあわせて、十七年度からは、その内部監査に連動させる形で、外部の監査法人との連携をまず強化していきたいというぐあいに考えております。

 さらに、こうした監査につきましては、NHKの場合は、今御指摘の国際報道の問題もありますので、海外の総支局についても、これまでの内部の実地監査だけではなく、外部の監査法人にも実地監査をお願いするというような外部の監査法人との連携、それによる監査の強化ということを図っていきたいと思っております。

 さらに、海外につきましては、経理のアタッシェ等の配置、増員を含めて、監査の強化ということを行っていきたいと考えております。

麻生国務大臣 具体的には、昨年七月だったと記憶しますが、業務総点検本部を設置、業務の総点検というものを実施して、不正な経理処理に悪用された例の放送料の代理請求、一人で両方できる、意味はわかりますね、代理請求の制度を昨年九月に廃止することにしておられますので、業務や経理の適正化に向けた措置を実施しておられるという点が一つ。

 平成十七年度の収支予算で、不正の再発防止のための、いわゆる今御指摘の審査、監査体制の強化ということが大事ということから、中央審査センターの設置というのを通じた経理審査の指導を強化されたり、今御指摘のあった外部監査法人と連帯した内部監査の強化などの取り組みが盛り込まれていると承知をいたしております。

 私としては、会計検査院や監事などの機関がいわゆる期待をされております監視機能というものをきちんと果たすとともに、今般の大臣の意見として示しておりますように、平成十七年度収支予算等に盛り込まれた各種のいわゆる措置にとどまらず、再生・改革に向けてあらゆる取り組みを組織を挙げて全力で推進してもらいたい、信頼回復というのがぜひともここで一番優先順位としては高いところだという点を申し上げております。

西村(智)委員 時間ですので、終わります。

実川委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 午前中に引き続いて、二〇〇一年一月三十日に放映をされました「ETV2001」「問われる戦時性暴力」の番組への政治家への事前説明について質問をいたします。

 最初に、橋本会長にお尋ねをいたします。

 この「ETV2001」「問われる戦時性暴力」番組への政治家への事前説明について、コンプライアンス推進委員会の調査結果報告書は、通常の業務の範囲内と述べております。その後、NHKの責任者となった橋本会長も、この事前説明を通常の業務の範囲内と理解をされておられるのか、その点を確認したいと思います。

橋本参考人 先ほどから話題になっていますこの事前説明という言葉は、二通りの意味のとり方があろうと思います。

 私なりの言い方で言えば、やはり、伺いを立てるような説明のしぶりということを意味した事前説明と、そうでなく、単に物理的に、時間的に説明する、もっと言えば、一般公表する範囲での番組の企画、ねらい等を説明する範囲というふうな二つの考え方、受け取り方があろうかと思います。

 そういう意味で、伺いを立てるような意味での事前説明というのは、これは言論報道機関として決してしてはならないことだというふうなことで考えておりますし、それから、我がNHKの予算等で説明する、番組の一般的なそういう企画内容の説明をする、あるいは視聴者、マスコミに対して事前に広報、周知する意味での事前説明、こういうものは通常の範囲だというふうにこう区切って考えております。

塩川委員 先ほどの同僚議員の質問への答弁でも、伺いを立てるような事前説明をやってはいけないという話でした。今回の場合がそれに当たるのかどうかということについて、経過を踏まえてお聞きしたいと思っています。

 そういう点では、政治家への事前説明とあと事後説明、事後報告と言ってもいいんでしょうか、この点についてお聞きしたいと思うんですが、当時国会担当の局長だった野島理事にお伺いいたします。

 安倍官房副長官、当時は、一月二十九日にNHKと面会をした事実を認められております。そのほかにも、日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会の幹部も事前にNHKから説明を受けたと言われることを報道されております。

 先ほどの答弁にもありましたように、野島担当局長がこの番組についての事前説明に行かれた国会議員は安倍議員と下村議員のお二人なのか、それから、事後に報告をされたのは中川議員だけなのか、それ以外にもいるのか、その点を確認したいと思います。

野島参考人 私が今確実に記憶しておりますのは、今先生のおっしゃったお二人でございますが、お二人とも、たしか放送の終わった後だというふうに記憶しております。

塩川委員 下村議員についてはいつお会いになったんですか。中川議員は二月の二日ということでしょうけれども、下村議員にはいつお会いしたんですか。

野島参考人 正確な日時については覚えておりませんが、たしか中川議員よりは後だったような記憶があります。

塩川委員 下村議員については中川議員より後だという説明ですか。その点、もう一回確認で。

野島参考人 下村議員については中川議員より後だったような記憶がございます。

塩川委員 松尾氏と伊東氏についてですが、松尾氏は安倍議員に面会をされておられます。それを除いて松尾氏と伊東氏は議員に対する事前説明は行っていない、事前の説明には行っていないという先ほどの答弁がありましたけれども、事後の説明ではどなたのところに行っているんでしょうか。コンプラの報告書があるでしょうから確認したいと思いますけれども、いかがでしょうか。

野島参考人 当時の伊東番組制作局長は安倍議員のところには行っておりません。放送後にたしか中川議員のところへ行っていると思います。

塩川委員 中川氏以外で松尾氏、伊東氏が足を運んだ議員というのはありませんか。

野島参考人 二人についてはちょっと定かに覚えておりません。

塩川委員 報告書をまとめた宮下理事ですか、その点はいかがですか。

宮下参考人 今の御質問は、放送後に松尾前総局長と伊東前番組制作局長が中川議員以外の議員に説明に行ったことがあるかどうかということですね。

 それで、伊東局長につきましては、中川議員に説明した以外は行ったことがございません。

 それから、松尾総局長につきましては、松尾総局長は、その後、事業計画とか予算の説明に同行することがありましたので、その際に番組のことが話題になって説明したことがあるかもしれないという記憶ですが、これは特定できませんでした。私どもの調査ではそうなっております。

塩川委員 いや、でも、ちゃんと報告書をまとめたんでしょう。経過については当然のことながら聞いているんじゃないですか。そんなずさんな調査なんですか。

宮下参考人 いや、私どもが調べた結果は以上です。それはずさんというわけではなくて、当時の関係者のヒアリングがもとでございますので、ヒアリングを複数重ねましてそのように特定いたしました。

 つまり、松尾氏については、放送後に事業計画とか予算の説明に同行したことがあるので、そのときにこの番組について話した可能性があるんだけれども、だれにどう説明をしたかは、記録もありませんし記憶もないということです。

塩川委員 その際にいろいろヒアリングをしたということですから、ほかの役職員の方がこの時期にこの番組の事前説明で回った議員はだれなのか、その点をもう一回確認、お聞きしたいと思います。

宮下参考人 つまり事前ということですか、放送前ということですか。

 放送前につきましては、経営改革の職員が予算、事業計画の説明というのはたくさんの議員にしておりましたので、そのときに話題になって、この番組のことを説明した可能性がありますが、だれにその予算、事業計画の説明に行ったかという記録もありませんし記憶もありませんので、特定できませんでした。

塩川委員 記憶がないというのはどこかで聞いたようなせりふですから、そこまで政治家との一体化が進んだのかと思わざるを得ません。

 私、中川議員についてもう一回お聞きしますが、事前に中川議員の事務所にNHKの役職員がアポをとった、事前説明のために、そういう事実はありますね。

宮下参考人 アポをとったということはございます。

塩川委員 本人はもしかするといなかったかもしれないけれども、放映前にNHKの役職員が中川事務所に足を運んだという事実はありますね。

宮下参考人 ございません。

塩川委員 事前説明の問題について、通常の業務の範囲内ということですけれども、あわせてお聞きしたいのが、事後の報告というのは目立つんじゃないでしょうか。番組について事前説明は当然の業務の範囲内なのかもしれないけれども、事後報告になると、また特別に意味が出てくるんじゃないですか。

 私、その点では、この会の幹部にそういう事後報告を重ねているということ自身が問題じゃないですか。

宮下参考人 若干の誤解があると思いますが、放送後に中川議員のところにわざわざこの番組の説明に行ったわけではございません。予算、事業計画の説明に行った際にこの番組についてお話ししたということで、事後報告というような形でこの番組について報告したということではございません。

塩川委員 いや、問題となっているのは、予算案に伴って今後放送される予定の番組についての一般的な説明ではないわけです。この特定の番組について、政府・与党の国会議員が偏っていると主張している番組についての事前説明であり事後報告なんだ、そこがやはり問われているわけです。

 そこで、橋本会長に改めて伺いますが、先ほど会長は、伺いを立てるような事前説明はやってはいけないと言うわけですけれども、でも、まさにやってはいけないようなこういう事前説明、事後報告に現状ではなっているんじゃないですか。特定の政治家の会のメンバーに、幹部を中心に事前ないし事後、この番組についての報告をしているのは事実なんですから、それ自身が問われているんじゃないですか。改めていかがでしょうか。

橋本参考人 私が承知していますのは、介入を受けていないということでございます。

塩川委員 こんなのでは納得しませんよ。国民の批判というのは、不祥事、不正経理の問題だけではなくて、特定の与党政治家への事前説明の問題についておかしいと、まじめにNHKを支えようと思っている方が今不信に陥って、これが雪だるま式に受信料の不払いにつながっているんだ、こういう認識が全く欠けていると思わざるを得ません。

 その点で、不払いの問題について最後何点か伺います。

 先ほどの説明の中で、NHK受信料の不払い件数が二月末で五十六万件、三月末の見込みで七十万件という数字をお示しになりました。極めて重大であります。それについて、幾ら受信料収入が落ち込むのかということについて、たしか四十億円のマイナスという答弁があったと思います。その点を確認したいのと、これは、当初、予算上で予定をしていた四十五万から五十万件の不払い、これは半分回復するということを前提に成り立っている予算案ですけれども、七十万件の見込みの際に、では、何件回収する見込みで今お話をされておられるんですか。その二点をお聞きします。

和崎参考人 お答え申し上げます。

 今回のあの七十万件という数字については、これの十七年度への予算の影響というのは、全額回収ができないという前提でマイナス四十億というシミュレーションをしております。

塩川委員 そうなれば経費を削減しなければいけないわけですが、どこを削るということで今考えているんですか、予算案にはそれが出ていませんけれども。

和崎参考人 今回の十七年度の予算におきましては、七十万というような数字がそのまま出るようでしたら四十億と今御説明したような数字が出るわけですが、我々といたしましては、これから十七年度に、これまで御説明いたしましたような改革の姿を視聴者の方にお見せし、そして全力で信頼回復をすると同時に、この予算の収納に努めたいということがまず前提でございます。

 ただ、そうはいいながらも、十七年度の予算の執行の中で受信料収入が予想を上回って停滞するというようなことがあれば、今御指摘のようなシビアな予算管理をその段階で行っていきたい、こう考えております。

塩川委員 予算案審議の段階で実際に想定した以上の不払いが出るということが明らかになったのに、それについて盛り込んでいない予算案が行われている。極めて甘い見通しでのこういう予算案で、どうして我々これに対してまともな議論ができるんでしょうか。基本的な数値も示されていない、そういう点ではもう予算書のていをなしていないと言わざるを得ない、このことを強く指摘をして、このままでは視聴者の信頼はかち得られない、このことを述べて質問を終わります。

実川委員長 次に、横光克彦君。

横光委員 社民党の横光克彦でございます。質問をいたします。

 一般家庭の受信契約数は、全国で三千四百七十五万世帯、二〇〇三年度末で。契約率は、先ほどお話がございましたように、八一・三%。善意で成り立っているにもかかわらず、これだけの視聴者が受信料を払ってくれている。なぜですか。NHKを信頼してくれているからじゃないんですか。戦後の日本の放送界においてNHKの果たしてきた役割は極めて大きい。このことも国民はよく知っている。そして、視聴率にとらわれることなく、あらゆるジャンルで、豊かでよい番組を放送してくれている。多くの視聴者がそのように受け取っているんですよ。

 それがどうなんですか。現在の、そしてこれからの、不払いそれから保留のこの状況は。七十万件にも達するかもしれないと言われた。この七十万件の人たちを、NHKの皆様方は永久不払い者にするつもりなんですか。NHKの対応によっては、これは永久不払いになりますよ。本当に危機感を持っていただかなければなりません。きょうの一日の審議で、私は、NHKの改革あるいは信頼回復に向けた姿勢というものが、誠意が余り感じられない、必死さというものも感じられない。それは、私だけでしょうか。

 きょう、午前中の審議が終わって事務所に帰りましたら、多くの電話やファクスが入っておりました。その中の一つを紹介させていただきます。会長、聞いてください。北海道にお住まいの八十歳の男性です。

 毎日テレビを見るのが楽しみである。NHKはいい番組が多い。安心できる。信頼できる。NHKを一日のうち七割見ている。見ている番組の中で七割はNHKを見ている。その方が、ある月刊誌の中で、番組に政治家介入の記事を読みまして、あってはならないことなので真実かどうかを札幌中央局に問い合わせをしました。局側は、調査をして後ほど御連絡をしますと低姿勢に対応してくれました。しかし、即答はしてくれませんでした。一カ月千三百九十五円、一日に換算すると五十円足らず。これほどの信頼の置ける代償にしては安いと思っておりますが、納得のいく回答を得るまでは、心を鬼にして受信料は払わないとその旨を伝えました。解約の手続等を聞きましたところ、局側で手続をしてくれるとのこと。ちゃんと先月末に銀行振り込みが停止していました。決してお金を惜しむものではありませんが、あえて、NHKに立ち直ってもらい、これまでどおりよい番組をつくってもらいたいとの一心で、不払いをしております。そういう思いで不払いをしている視聴者もいるということをお知らせしたくて、連絡をいたしました。

 この視聴者に、会長は、どうお答えいたしますか。

橋本参考人 お答えします。

 視聴者の方々がNHKの番組を大変頼りにしてくださる点、これは、大変ありがたく感じております。そういう信頼を損なうことはあってはならないと思っております。

 その御意見の中で、いろいろな面で誤った情報等がもしあるとすれば、それは正して、説明してまいらなければならないかなというふうに思っております。

 いずれにせよ、こういうふうなお客様を大事にして、これからやはり目線をお客さん本意にして、説明してまいりたいと思います。

横光委員 今、不払いの方たちが急増しておりますが、いろいろな問題点で、そういった理由で拒否している人があるわけですが、今述べられたのは、政治とNHKのあり方について意見を、疑問を感じてこういった行動をとっておるわけですね。やはり、先ほどからお話ございますように、NHKと政治との距離、これに視聴者は非常に不信感を持っておるんではないか、余りにも距離が近いんではないか、そういった思いを持っておるんですね。

 番組改編問題に対してちょっとお尋ねいたしますが、経営側が今回のように編集現場に立ち会った、こんな事例は過去にあるんでしょうか。

宮下参考人 経営側というのは、放送総局長というようなことでしょうか。

 放送総局長は放送の全責任を負っておりますので、今までも非常に重要な番組のときに編集に立ち会うということはございました。

横光委員 しかし、まず普通ではあり得ないでしょう。異例中の異例なんでしょう。異例中の異例だと私は思いますよ、放送総局長が編集現場に入って番組の改編の指揮をとるというのは。

 NHKは、自主的に判断して編集したものであるとこれまでずっとおっしゃっておられます。私も昔、仕事柄、編集現場に実は立ち会ったことがありますから。それは、編集する場合、いろいろな意見を集約して修正することはあるでしょう。しかし、今回の場合、何と四十四分番組を四十分に短縮する、これはどこから見ても、私から見ると自主的判断に基づいた編集と言えないんですね。その四十四分の中でいろいろな意見を加味して修正することは、自主的な判断の編集でしょう。しかし、四分もカットするということが何で自主的判断になるんですか。どうぞ。

宮下参考人 放送日当日にそういう編集が行われるということは確かに異例なんですが、この番組につきましては、先ほど出田の方から説明いたしましたが、外部のプロダクションで一時編集していたんですが、それをNHKが引き取った時期が、非常に放送日が近づいていたわけですね。それで、NHKの実質的な編集が始まったのが非常に短期間で、ぎりぎりまで編集作業が行われたということがございまして、そういう中で、特にこの問題は非常にいろいろな意見が対立している問題でございましたので、最後の最後まで、放送時間の迫るぎりぎりまで編集をしたというふうに御理解いただきたいと思います。

横光委員 今のような説明では全然納得できませんね。第一、一分一秒貴重な番組を四分切るということは、大変な問題なんです。それを自主的な判断でやったなんということは到底信じられない。このことは申し上げておきます。

 そして、こういったことの現実の後に、現場が現在果たして萎縮せずにちゃんとやっているのかどうか、非常に心配になってくるんですね。本当に自由な番組制作に影響を与えたり、あるいは支障を来すようなことは、絶対に今回のことであってはならない。つまり、豊かなよい番組を放送するというのが、NHKの主務業務なんでしょう。そのことに今回のようなことで現場に影響を与えるということは、絶対にあってはならない。

 ですから、私は、経営サイドの人と現場の編集権とは分けるべきであると。このことにすれば、どのようないろいろな意見を言われても、団体からあるいは政治家から言われても、現場にちゃんと編集権が与えられていれば、一切そういうことがまさに拒否できて、編集権はしっかりと守ることができるわけです。

 この経営と編集現場を分けるという考えには、どうお考えですか。

宮下参考人 今現在の私どもの編集体制というのは、執行役員、事実上、執行部の役員の、放送の最終責任者は放送総局長ということになっておりまして、放送総局長が最終判断をすることになっているわけですね。

 もちろん、おっしゃるように、放送総局長がいろいろな番組をその都度判断しているわけではありませんが、最終的に非常に重要な判断をしなければいけないときは、やはり放送総局長が、もちろん現場の意見を尊重しながらですが、最終的な判断はしなければいけないというシステムに、組織になっているということでございます。

横光委員 しかし、今回は、その放送総局長が編集現場に入る前に、いわゆる政治家と会ったということの後ということで、大きな疑念を抱かれたわけです。そういうことがないように、私は、これからは編集現場はあくまでも自由に自主権を与えて、編集権を与えるべきだという気がしてなりません。

 いずれにしても、私は、きょうのこの委員会審議は、NHKにとってはもう本当に起死回生の場であったと思うんです。ピンチをチャンスに変える最大の場であったと思うんです。しかし、どうですか、結果は。これは視聴者の方が判断するでしょうが、私は、NHKはこの委員会、本当にチャンスを逸してしまったな、そういった気がしてなりません。

 終わります。

実川委員長 これにて本件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

実川委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤勉君。

佐藤(勉)委員 私は、自由民主党及び公明党を代表いたしまして、日本放送協会の平成十七年度収支予算、事業計画及び資金計画に対し、賛成の討論を行うものであります。

 この収支予算、事業計画及び資金計画は、一連の不祥事に係る信頼回復の途上にあって、受信料収入が前年度予算を下回る厳しいものとなっております。このような深刻な事態を招いたことは、まことに遺憾であります。NHKに猛省を促すものであります。

 しかしながら、NHKにおいては、この事態を踏まえ、一、再生・改革に向けた各種措置を盛り込んでいること、二、公共放送の原点に立ち返った一層豊かで質の高い放送番組の充実、災害・緊急報道体制の強化や、放送のデジタル化に関する取り組み等を進めることとしているところであります。

 NHKにおいては、これらの措置にとどまらず、再生・改革に向けて、さらにあらゆる取り組みを組織を挙げて全力で推進し、国民・視聴者の信頼の早期回復に努めることを強く要請いたします。

 以上のような前提のもと、賛成の意を表するものであります。

 つきましては、新年度が始まる前に、一日も早くこの収支予算等の承認が得られることを要望して、私の賛成討論を終わります。(拍手)

実川委員長 次に、高井美穂君。

高井委員 私は、民主党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件に対し、不承認の立場より討論を行います。

 反対の理由は、昨年の不祥事発覚以来、受信料の不払いが五十万件を上回り、さらに不払いが続いているにもかかわらず、経営陣は危機感に乏しく、こうした不払いの広がりに歯どめをかける明確な改善策を示すことができずにいることであります。

 言うまでもなく、NHKは受信料収入を基盤として成り立つ公共放送であり、この制度を支えているのは視聴者からの信頼です。その信頼を、一連の不祥事とそれに対する経営陣の不誠実な対応により、NHKがみずから裏切ってしまったのです。

 番組改編問題においても、NHKは、政治家への番組内容の事前説明を通常業務の範囲内であると繰り返し述べ、公平中立な公共放送の存在に疑問符がつくような対応を行いました。

 放送に一番求められているのは、一党一派に偏らない不偏不党の姿勢であり、改めてこの姿勢を貫くことが強く求められています。受信料の不払いは、もはや一時的なものではなく、受信料制度の根幹そのものを揺るがす事態にまで至っています。

 民主党は、NHKの信頼回復への取り組み姿勢を見きわめるため、賛否を白紙のまま、本日の審議に臨みました。しかし、審議を振り返れば、経営改革の動きは鈍くあいまいであると言わざるを得ず、これで国民の信頼をかち得られるとは到底思えません。

 民主党は、日本放送協会に対して、国民の立場に立ち警鐘を鳴らすためにも、放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件に対しては、あえて不承認の立場をとることを申し上げ、討論を終わります。(拍手)

実川委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました二〇〇五年度NHK予算案を承認する件に不承認の討論を行います。

 反対する第一の理由は、受信料不払い見込み件数が〇四年度末で七十万件と、当初の予想を大幅に上回り、予算案の受信料収入を大幅に下方修正する必要があるということです。

 この減収予想に基づいて、改めて、どの経費を削減するのかも明確になっていません。予算案のていをなしておらず、とても承認できるものではありません。

 反対する第二の理由は、放送法を踏みにじる政治介入で番組を改ざんし、その事実を認めていないこと。

 第三の理由は、プロデューサーによる不正経理をNHK幹部が隠ぺいした疑惑が持たれ、全容解明に背を向けていることであります。

 NHKがこうした姿勢を改めない限り、受信料不払いは七十万件でとまる保証はありません。一月末に発表した年度末の受信料不払い見込み件数を、わずか二カ月弱後の本日、大幅に修正せざるを得なかったことからも明らかであります。下方修正した予算案さえ達成できる状況にないと言わざるを得ません。

 視聴者の不信を招いている根本の原因をNHKが心から反省をし、再出発することを希望して、不承認の討論を終わります。(拍手)

実川委員長 次に、横光克彦君。

横光委員 私は、社会民主党・市民連合を代表して、放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件について、不承認の立場から討論を行います。

 NHKは、国民・視聴者の負担する受信料により維持運営される公共放送でありながら、協会職員による経費の不正支出、私的流用、不適切な経理処理等の不祥事が相次いで発覚するとともに、番組改編問題では、報道の中立性、独立性に疑問を抱かせる大きな問題が発生しました。受信料不払いは二月末で五十六万件、三月末には七十万件を超えようとしており、予算の前提である二〇〇五年度の新たな受信契約数二十万件増の達成は非常に危ういと言わざるを得ません。この受信料不払いの激増にあらわれている国民・視聴者の怒り、失望をNHKは本当に真摯に受けとめ、再起の糧とすべきではないでしょうか。NHKの再生には国民・視聴者からの信頼回復が必要であり、そのためにはNHKは変わったという明確なメッセージが必要です。

 私は、NHKの構造改革の断行、役員体制の一新、不偏不党と言論、放送の自由の確保、良質な番組づくりが不可欠であると考えます。しかし、残念ながらNHKの答弁は誠意も熱意も危機感も感じられないものと言わざるを得ません。まるでナマズのほおかむりのようです。ナマズにほおかむりすると何が見えますか。口だけしか見えません。立派な改革案を出されておりますが、口ばかりじゃないかと視聴者は受け取りかねません。今の経営陣で本当に国民・視聴者が望む改革ができるのか。本当にNHKが変わったなと言われるためには、強く人心一新を図った上での改革の断行を求めます。

 国民・視聴者の受信料で成り立っているNHKの運営は、国民の代表者たる議会の監視のもとに置かれ、放送法に基づき、NHK予算、事業計画については国会承認事項とされております。

 しかし、今回、NHKの対応について警鐘を鳴らす意味で、断腸の思いで、予算案については不承認とするものであります。

 NHKが視聴者の負託にこたえる公共放送の担い手として、真の再生をするよう強く求めて、討論を終わります。(拍手)

実川委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

実川委員長 これより採決に入ります。

 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件について採決いたします。

 本件を承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

実川委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

実川委員長 この際、ただいま議決いたしました本件に対し、森山裕君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び社会民主党・市民連合の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。安住淳君。

安住委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。

    放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件に対する附帯決議(案)

  昨年、発覚したNHK内部の一連の不祥事は、公共放送に携わる職員にとっては、あってはならない事態であり、その後の対応を含めて国民の信頼を著しく損ねた。

  かかる事態を受けて、NHKでは、前会長が辞任するなど経営陣の責任問題にまで発展し、今年に入り新体制を発足させたが、受信料の不払いは依然として続いており、事態は深刻の度を深めている。

  本来、NHKは広く国民の受信料の支払いによって、その経営基盤が成り立っているが、このところの不払い世帯の増加は、単に、一時的なものに留まらず、このまま推移すれば、NHKの存立基盤にも影響を及ぼす事態にもなりかねない。

  NHKは、今こそ全職員をあげて出直す決意をし、真に生まれ変わった姿を国民・視聴者に示さない限り、受信料制度の根幹をも揺るがしかねない事態に発展するおそれのあることを謙虚に受け止めなければならない。

  今後、NHKは、受信料の不払いに歯止めをかけるため、国民・視聴者の信頼回復に最善を尽くすべきである。

  いうまでもなく、NHKは、放送が社会に及ぼす影響の重大性を深く認識し、放送の不偏不党と表現の自由をしっかり確保して、公共放送の使命を全うしなければならない。

  現在、デジタル放送への全面移行に向け、全国でデジタル化の推進事業が積極的に行われ、放送は新時代を迎えつつある。こうした中、新しい放送時代の担い手として、引き続きNHKが国民・視聴者の信頼を得る放送事業者として成り立つことを、ここに強く望むものである。

以上であります。

 何とぞ、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

実川委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

実川委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、麻生総務大臣及び日本放送協会会長橋本元一君から発言を求められておりますので、これを許します。麻生総務大臣。

麻生国務大臣 今日NHKの置かれている状況につきましては、まことに遺憾であり、一日も早く国民の信頼を得られるよう、NHKとしてさらに尽力されることを期待しております。

 政府としても、ただいまの附帯決議につきましては、その趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。

実川委員長 次に、日本放送協会会長橋本元一君。

橋本参考人 ただいま日本放送協会の平成十七年度収支予算、事業計画及び資金計画につきまして、御承認を賜り、厚く御礼を申し上げます。

 本予算を執行するに当たりましては、御審議の過程でいただきました御意見並びに総務大臣の意見書の御趣旨を十分生かしてまいりたいと考えております。

 また、ただいまの附帯決議につきましては、協会運営の根幹をなすものでございますので、これを十分踏まえて、視聴者の皆様の信頼回復を速やかに果たし、業務執行に万全を期すことで公共放送の使命を全うしたいと考えている次第でございます。

 まことにありがとうございました。

    ―――――――――――――

実川委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

実川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

実川委員長 次回は、来る十七日木曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五十九分散会


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