衆議院

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第4号 平成18年11月2日(木曜日)

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平成十八年十一月二日(木曜日)

    午前九時三十四分開議

 出席委員

   委員長 佐藤  勉君

   理事 岡本 芳郎君 理事 谷  公一君

   理事 谷畑  孝君 理事 葉梨 康弘君

   理事 林  幹雄君 理事 武正 公一君

   理事 寺田  学君 理事 谷口 隆義君

      あかま二郎君    井澤 京子君

      飯島 夕雁君    石田 真敏君

      今井  宏君    岡部 英明君

      鍵田忠兵衛君    川崎 二郎君

      木挽  司君    実川 幸夫君

      関  芳弘君    田中 良生君

      土屋 正忠君    土井  亨君

      西本 勝子君    萩原 誠司君

      橋本  岳君    福田 康夫君

      福田 良彦君    松本 洋平君

      山本ともひろ君    安住  淳君

      逢坂 誠二君    後藤  斎君

      鈴木 克昌君    田嶋  要君

      西村智奈美君    福田 昭夫君

      三日月大造君    森本 哲生君

      谷口 和史君    古屋 範子君

      吉井 英勝君    重野 安正君

      亀井 久興君

    …………………………………

   総務大臣         菅  義偉君

   内閣府副大臣       林  芳正君

   総務大臣政務官      谷口 和史君

   総務大臣政務官      土屋 正忠君

   厚生労働大臣政務官    松野 博一君

   政府特別補佐人

   (人事院総裁)      谷  公士君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  株丹 達也君

   政府参考人

   (人事院事務総局総括審議官)           出合  均君

   政府参考人

   (人事院事務総局職員福祉局長)          吉田 耕三君

   政府参考人

   (人事院事務総局人材局長)            鈴木 明裕君

   政府参考人

   (人事院事務総局給与局長)            関戸 秀明君

   政府参考人

   (総務省大臣官房長)   荒木 慶司君

   政府参考人

   (総務省人事・恩給局長) 戸谷 好秀君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  藤井 昭夫君

   政府参考人

   (総務省自治行政局公務員部長)          上田 紘士君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  岡本  保君

   政府参考人

   (総務省情報通信政策局長)            鈴木 康雄君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局長)            森   清君

   政府参考人

   (総務省郵政行政局長)  須田 和博君

   政府参考人

   (総務省政策統括官)   寺崎  明君

   政府参考人

   (消防庁長官)      高部 正男君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   松元  崇君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           村木 厚子君

   参考人

   (日本放送協会理事)   石村英二郎君

   参考人

   (日本郵政公社理事)   佐々木英治君

   総務委員会専門員     太田 和宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二日

 辞任         補欠選任

  萩生田光一君     山本ともひろ君

  渡部  篤君     西本 勝子君

  安住  淳君     鈴木 克昌君

  西村智奈美君     三日月大造君

  江田 康幸君     古屋 範子君

同日

 辞任         補欠選任

  西本 勝子君     飯島 夕雁君

  山本ともひろ君    松本 洋平君

  鈴木 克昌君     安住  淳君

  三日月大造君     西村智奈美君

  古屋 範子君     江田 康幸君

同日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     渡部  篤君

  松本 洋平君     萩生田光一君

    ―――――――――――――

十一月二日

 地方分権改革推進法案(内閣提出第九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第六号)

 特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)

 地方分権改革推進法案(内閣提出第九号)

 行政機構及びその運営、公務員の制度及び給与並びに恩給、地方自治及び地方税財政、情報通信及び電波、郵政事業並びに消防に関する件


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     ――――◇―――――

佐藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案及び特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官株丹達也君、人事院事務総局総括審議官出合均君、事務総局職員福祉局長吉田耕三君、事務総局人材局長鈴木明裕君、事務総局給与局長関戸秀明君、総務省人事・恩給局長戸谷好秀君、自治行政局公務員部長上田紘士君、財務省主計局次長松元崇君及び厚生労働省大臣官房審議官村木厚子君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。あかま二郎君。

あかま委員 おはようございます。自民党のあかまでございます。

 きょうは、先輩、同僚の御配慮、御理解で質問をさせていただきます。

 まず、総務大臣、菅先生におかれましては、同じ神奈川ということで大変親近感を持っております。ぜひ、率直な御意見、御感想、また御決意を賜れればと思っております。

 十五分という限られた時間でございますので、早速質疑の方に入らせていただきます。

 今回、一般職並びに特別職の職員の給与法、この改正についてでございますけれども、公務員の給与、給料といったものについては、さまざまな視点から議論がなされるというふうに思っております。しかし、最終的に国民の理解、納得、これが得られる形というものが一番肝要な部分であろうというふうに思っております。もちろんその理解、納得といった部分とあわせて、いわゆる給与水準、給与構造といったものの妥当性、客観性が求められる部分もあろうかと思っておりますので、そういった点を踏まえて質問をさせていただきます。

 まず、人事院は、政府の方から、民間企業におけるいわゆる給与の実態、こういったものを十分に踏まえて、官民格差を解消、是正すべきだよという方針を伝えたところで、これを是正するために、いわゆる対象企業となる民間の事業規模について、百人から五十人、いわゆる中小企業をよりカバーできる形に、官民格差の比較、この見直しに方向性を出したわけでございます。

 こういった比較方法の見直しを受けて今回の給与法が出てきたわけでございますけれども、今回は改定を見送る、据え置くということになりましたけれども、まず、この点についてどう評価をされているのか、お尋ねをいたします。

戸谷政府参考人 お答えいたします。

 お話のとおり、本年度の給与改定につきましては、人事院勧告におきまして官民給与比較の方法の見直しが行われた結果、官民の給与がほぼ均衡しているということで、俸給及び期末手当等の改定を見送ることとしております。民間賃金の実態をより反映することができた、あるいは総人件費の抑制に資するものになっているというふうに承知しております。

 また、改正事項でございますが、本年四月から実施している給与構造改革の一環としての俸給の特別調整額の定額化等のほか、扶養手当の額の見直しを盛り込むということになりました。民間企業における賃金体系の改革の動向等を踏まえるとともに、少子化対策にも対応するものと認識しております。

あかま委員 今御答弁ございましたけれども、官民のバランス、均衡をよりとれるようになった、民間の実態をさらにとらえることができるようになったということ。さらには、給与の構造改革、水準とは別に構造についても、少子化に向けて取り組んでいるというお話がございました。

 もちろん、給与水準、給与構造といったものは、そういった官民という部分とともに、いわゆる歳出削減といったものにも影響をするんだというふうにも理解していますし、歳出削減また総人件費の抑制といったものは政府・与党の基本的な立場でございますので、そういった意味からすれば、今回のいわゆる官民格差の是正、いわゆる比較の見直し、これについてはどうとらえているのか、また歳出削減にどの程度資するものだったのか、お聞かせいただければと思います。

戸谷政府参考人 先ほど総人件費の抑制に資すると申し上げたわけでございますが、仮に給与比較方法の見直しを行わなければ、月例給は一・一二%の引き上げ、ボーナスは〇・〇五月分の引き上げという計算がされております。

 このような計算をもとに考えますと、この見直しによる歳出削減効果は、国家公務員等で、国庫負担分としてマイナスの九百四十億円程度、地方公務員として、地方負担分でございますが、マイナスの二千四百九十億円程度という試算が出ておりまして、こういう面でも大きな効果があったというふうに考えております。

あかま委員 今回のいわゆる官民の比較の見直し、これによって、今お話を伺うと、国で九百四十、地方で二千四百九十、歳出削減に効果があったというお話。先ほど前段に御答弁いただきましたけれども、官民の格差の是正にも寄与しているというお話がございました。もちろん、そういった意味では、いわゆる格差の是正に向けた方向に歩み出したといって、理解、評価はするところであります。

 大方、さまざまな論評等も踏まえるならば、その方向性についておおむね理解する、さらには、一歩前進だというような評価がなされているようにも見えますし、しかしながら一方で、官民の格差、これについてはまだまだ十分な是正がされ切っていないんじゃないかというような見方もあるようでございます。

 そういった意味からするならば、例えば、他のいわゆる民間企業の給与の実態調査と官の給与の比較では、相変わらず官民の格差が埋まっていない。例えば国税庁の民間給与実態調査では、いわゆる一般職、一般行政職の平均は六百三十万、民間では四百三十八万というような数字も出ておりますけれども、そういったことが喧伝される中では、冒頭お話し申し上げましたように、国民の理解、納得といった部分が十分にされ得ていないのではないかなと思います。

 そういった意味では、そういった別の数字が出ている、また官民の格差がまだまだというような評価がされる中では、この比較の見直し方法について、これらがどうだったのかということを考えるならば、いわば百人から五十人にしました、その妥当性、これらについて御見解を賜れればと思います。

戸谷政府参考人 お答えいたします。

 官民給与の比較ということでございます。

 いろいろな比較方法があるわけでございますが、人事院勧告におきましては、月例給における同種同等の者同士を比較するという原則のもとで、同種同等の業務を行う民間企業の従業員の給与をできる限り広く把握し、公務員給与に反映させる、こういうことを基本として勧告をいただいております。

 今回の比較対象企業規模の見直しについては、やはり企業規模五十人以上の民間企業の多くは、公務と比べられるような役職段階を有しているということで、この役職段階をもって、公務と同種同等の者同士による比較が可能である、あるいは、企業規模五十人以上の民間企業であれば、これまでと同様の精緻な実地調査が可能であるので、調査の正確性も維持することができる、このような考えから、人事院の方で五十人以上に変更されたところでございます。

 私どもといたしましては、これにより民間賃金の実態をより反映するものとなったということで、妥当であるというふうに考えております。

あかま委員 いろいろな比較がある中で、その妥当性については、一定の妥当性、客観性があるという御答弁だと思います。

 また先ほど、国レベルでは、地方では、これぐらいの歳出削減効果がありましたという話がございました。地方の公務員の給与の構造改革についても二、三質問をさせていただきたいと思います。

 もちろん、国の方針として、地方公共団体についても、国に準拠した形で、公務員の給与水準は民間の実態に合わせるようにというような話になっていようかと思います。

 それでは、地方における公務員の給与の実態といったものをどう把握していらっしゃるのか、お聞かせいただければと思います。

上田政府参考人 お答えいたします。

 地方公務員の給与の実態、切り口は幾つもあると思うんですけれども、従来から、一番わかりやすい指標としては、国家公務員の平均的な水準と比較してどうであるかということを用いております。

 国家公務員と地方公務員とを経験年数それから学歴の区分によって突き合わせをしてはじき出したラスパイレス指数というものを使っておりますが、これによりますと、直近のデータは、平成十七年四月一日でございますけれども、国家公務員を一〇〇とした場合に、全国平均で地方公務員九八・〇ということでございます。要するに、平均すると若干低い数字になる、こういうことでございます。

 それから、地方公共団体はたくさんございますので、団体別に見てまいりますと、もちろん東京都のように大きいところもありますけれども、中小のところもたくさんございますので、団体別の分布状況を見ますと、全体の約九二%の団体で一〇〇未満、こういう水準になっているところでございます。

あかま委員 全体で九二%が一〇〇未満というふうなお答えをいただきました。逆に言えば、まだ幾らかは、地方においても民間の実態にそぐっていない、格差が多少まだ残っているというようなお答えだと思います。

 それではそこで、菅大臣におかれては、地方をよく知っていらっしゃる、秋田出身というお話が既にございましたけれども、実際、いわゆる地方の民間企業の実態と、地方公務員の給与の水準、またさらには構造といったもの、それについてさまざまな見方があろうと思います。

 ここに来て、地方公共団体のいわゆる特殊勤務手当であるとかさまざまな問題が出されておりますし、さらには、国家公務員と地方公務員で、ある職種においては地方の方が割高であるというような報道もなされておりますけれども、地方の実態はどうなのか、総務大臣にお伺いをしたいと思います。

 あわせて、時間もございませんので、公務員の給与改革、それは、給与水準であり給与の構造、こういったものをこれからも進めなければならないと思っておりますけれども、冒頭申し上げたとおり、国民の理解、納得、客観性、そういったものが極めて重要であろうと思っています。そういった意味で、給与の適正化というのはこれからもより一層進めなければならない。そういった意味で、大臣の御決意をあわせてお聞かせいただければと思います。

菅国務大臣 お答えをいたします。

 地方公務員の給与につきましては、国民、住民の理解と納得が得られるよう、不適切な制度や運用についてはさらに適正化を進めていくとともに、地域の民間企業の給与水準をより適切に反映していく、このことが重要であるというふうに思っています。

 こうした観点から、給与情報の徹底した開示などによって特殊勤務手当や技能労務職給与等の適正化を推進するとともに、給与構造の見直しを着実に進め、人事委員会機能の強化などを通じて、地域の民間企業の給与水準のより的確な反映について徹底を図ってまいりたいというふうに思っています。

 また、国家公務員等の給与を含めての全体の件でありますけれども、今後とも、民間給与を的確に反映するなど給与制度改革に全力で取り組んでまいりたいと思います。

あかま委員 今大臣から決意を賜りましたけれども、国民の理解、納得といった部分は、十二分に得られるというのはなかなか難しいんだと思っております。

 そういった意味では、より一層、引き続きといったことが必要であろうし、例えば、国家公務員の給与水準といった中でも特殊法人の方はどうなのか、さらには、比較といった部分ではいわゆる生涯賃金という形で見ることができるんじゃないかというような指摘もございます。さらにさらに比較方法の見直しといったものにぜひ取り組んでいただければと思います。

 以上で、私の質問を終わらせていただきます。

佐藤委員長 次に、橋本岳君。

橋本委員 おはようございます。自由民主党の橋本岳でございます。

 きょうは、お時間をいただきまして質問させていただきます。ありがとうございます。私も余り質問時間、持ち時間は多くありませんので、できるだけ簡潔に御答弁をいただければ幸いでございます。

 きょうは、一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案、あと、特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案についてということできょうの審議があるわけですけれども、今、あかま先生の方から今回の改正の要点となる質問がございました。私の方からは、関連をする質問、あるいは職員の給与という話と将来的につながってくる問題として、国家公務員の方々の人事評価の制度についてお伺いをしたいと思っております。まだしばらく試行の段階ということで時間がかかると思いますけれども、いずれは給与にどう反映していくかという問題にも発展をするということでありまして、これは大変密接にきょうのテーマと関連をしておりますので、この機会に確認をさせていただきたいと思っております。

 ということで、もう既に試行されているという話も伺っておりますけれども、改めまして、今、公務員制度改革の一環として、新たな人事評価制度がどのような趣旨で、あるいはどのような経緯で取り上げられているのか、まずお示しをいただきたいと思います。

    〔委員長退席、谷委員長代理着席〕

戸谷政府参考人 お答えいたします。

 お話がございましたように、公務員の人事管理につきまして、能力、実績をより重視したものとしていくということが各方面から求められているところでございます。そのために、職員一人一人の職務遂行能力や勤務実績をできる限り客観的に把握し、適切に評価する、こういう仕組みをつくることが必要であるというふうに考えているわけでございます。

 この新たな人事評価制度につきましては、公務員制度改革の全体の中で、一つのパーツでございますが重要なパーツとして、平成十三年の公務員制度改革大綱においてその導入が掲げられております。その後、平成十六年の今後の行政改革の方針におきまして、現行制度のもとにおける取り組みとして評価の試行を行うというふうに決めていただきまして、本年の一月から六月まで、その第一次試行を実施したところでございます。現在、その検証結果を踏まえまして、今年度中に第二次試行を開始すべく準備を進めているという状況にございます。

橋本委員 ありがとうございました。

 一人一人の能力それから実績を客観的に把握する人事評価制度、すばらしいことというか、これまで一体何だったんだろうという気もいたしますが、そういうものを目指していくというのはいいことだろうと思います。

 今、ことしから試行を行っているというお話がありました。では、その試行について、どういう方を対象にされて試行しているのか、あるいは具体的にどういう内容の評価をしているのか、どういった手順で行われているか、ここで御紹介をお願いしたいと思います。

戸谷政府参考人 第一次試行でございますが、本府省一般行政部門の課長級、課長補佐級を対象といたしまして、被評価者、評価される者として約二千名、評価者としてはそれぞれの上司である職員約五百名が参加しております。対象職位の二割弱という数字になっております。

 評価の内容は、職務遂行能力を見る職務行動評価と、勤務実績を見る役割達成度評価の二つのパーツで構成して、評価をすることにしております。

 実施手順でございますが、期首に、評価者と被評価者が面談し、業務の目標等を設定いたします。期中には、被評価者は業務目標や評価項目を踏まえ業務を遂行する、評価者は日常の業務管理の中で被評価者の行動を観察していただくということになります。期末には、まず被評価者がみずからの業務遂行状況を振り返り、自己評価をいただき、その後、評価者との面談を行い、評価者から被評価者に指導助言を行うなど評価内容のフィードバックを実施していただく。また評価の確定に当たりましては、評価の公正性を確保するため、評価者の上位者が調整を行う。こういった手順で行っております。

橋本委員 ありがとうございました。

 例えば、期首の、目標設定について面談を行う、あるいは終わった後も、まず自分で見直してみて、それから上司の方と面談をして、指導助言を行うということで、評価する人、される人の間のコミュニケーションを大変重要視された手順で行っているのかなというふうに伺いました。そういうことはとてもいいことだろう。やはり一方的に評価をされるということは必ずしもプラスに働くとは限りませんから、むしろそういう機会として使っていただくというのはいいことなんだろうと思っております。

 では、その試行をやってみまして、参加をされた方々にアンケートをされたというふうに承っております。実際にやってみた方々、本人たちがどのように感じられたかということを御紹介をお願いします。

戸谷政府参考人 試行参加者に実施したアンケートでございますが、アンケートでお答えいただいた中では、評価手法につきまして、役割達成度評価、職務行動評価とも、約半数が有益と回答いただいています。ただ、一部に、業務が目標設定になじまない、評価項目が職場にマッチしない、こういう御回答もいただいております。それから、自己評価や面談については、有益とする意見が多数でございましたが、一部には、負担感が大きい、このような意見も見られたところでございます。それから、評価内容のフィードバックにつきまして、不満足とした回答をいただいた被評価者の状況を見ますと、期末面談等の場での指導助言がなかなか行われていないというようなことが多い、そういう方に不満足という回答があったというふうに思っております。

 おおむね肯定的に受けとめられているわけでございますが、やはり幾つか我々も克服すべき課題があるというふうに認識しております。

橋本委員 ありがとうございます。

 半数が有益ということで、半数というのをどう考えるかというのはあるんですけれども、まず第一次の試行ということで、今後改善を積み重ねていって、評価する人、される人、それぞれ満足をする、やる気がわいてくるような制度というものを目指す、今そのプロセスなんだろうと思います。

 今のアンケートに基づく結果、それを受けて、改善というのも含めまして、今後この人事評価の試行についてどのように取り組んでいかれるか、総務大臣からぜひ御決意のほどをお伺いしたいと思います。

菅国務大臣 新たなこの人事評価制度は、能力・実績主義の人事管理を行うための基盤的なツールとして極めて重要なことであるというふうに思っております。

 当面の取り組みとしましては、今局長が答弁しましたように、第一次試行の結果を踏まえた改善を図りつつ、対象範囲をさらに府省の係長・係員級まで拡大した第二次試行を本年度中に開始する予定であります。

 さらにその後、地方支分部局、専門職種等への試行の対象範囲を拡大した上で、これらの結果を踏まえ、公務員にふさわしく、実際の人事管理に活用可能な評価システムの構築というものを、ぜひつくってまいりたい、こう思っております。

橋本委員 ありがとうございます。

 今、極めて重要というお言葉をいただきました。元公務員だった同僚の方に伺うと、やはり公務員の方というのは、何のために働いているかというときに、給料を求めているのだというわけでは多分必ずしもないんだろうというお話がありました。最初から高い給料が欲しいんだという人は多分別の会社に行くんだと思います。そうではなくて、きちんと国のため、公のために自分の力を尽くしていく、その使命感あるいは達成感というものを公務員の方々は働きがいとされているのではないかと思います。

 したがいまして、人事評価制度というものがそういったやる気というのをどう引き出していくのかというのが本当に大事なことなんだろうと思うわけでありまして、文章的には、例えば、能力主義、実績主義による評価を行い、給与、処遇に反映をさせていくのだといったことも出ておりますし、それはそれで大事な役目だろうと思いますけれども、問題は、頑張って働けば給料がたくさんもらえる、それは多分悪いことではないけれども、一生懸命働いた人がまず周りから評価をされる、よく頑張ったねと言ってもらえる。あるいは、頑張ろうとしているんだけれどもうまく成果が上がらなかったという人に対して、例えば上司の人と目標設定あるいは期後の評価のときに面談を行うことで、いや、もうちょっとこうすればよかったんじゃないの、もともと上司としてあなたにしてほしかったのはこういうことなんだよ、こういうことをコミュニケーションする機会としてとらえていただくことで、細かい改善の積み重ねをしていくきっかけになる、そういうツールなんだろうというふうにも思うわけであります。

 したがいまして、能力主義、実績主義、これを客観的になどというと少し怖いような気もするわけですけれども、そうではなくて、面談があった人、助言指導があった人となかった人で満足感に差が出ているというのは、きっと今私が申し上げたようなことを示しているのだろう、実際に参加された方もそういうふうに思っていらっしゃるんだろうと思うわけであります。

 しかしながら、例えば、評価の制度というのは重要だなと。きのう私は経済産業委員会で質問をさせていただきました。それは、パロマのガス湯沸かし器の事故、もう十何年にもわたって何件も事故が起こり、二十一人の死者が出る、それでやっとこの間経産省が対応を始めた。その間、報告というのが経産省に何件かは届いていたはずなのに、それをすべて結びつけて一個の事故として考えることができなかった。これについて、経産大臣初め率直に反省をされて、今回新たな法改正をされているわけです。

 例えば、そうしたときに、その一個一個の報告書をきちんと処理しました、きちんと処理をしましたというのは、自分の机に置いておきましたということではなくて、必要がある部署にきちんと連絡をしました、どういうアクションをとりました、消費者の方に伝えました、そういったことをちゃんとやっているかどうかということを人事の面でもきちんとチェックする機会があれば、多少なりとも結果は違ったのではないかというふうにも、私はきのうの審議を聞いて思いました。

 あるいは、そうはいっても、仕事をしているのか、していないかということで、では実績主義だということに極端に走ると、文部科学省さんの統計で、ここ数年いじめによる自殺者はゼロだという話があったというような、これは報道で聞いてちょっと不確かな記憶ですけれども、そういうことがありました。

 人事の話ではないですけれども、逆に、いじめによる自殺者を減らすのが目的なんだ、それが実績なんだ、それに向けて頑張ろうといって、報告だけ自殺者がゼロだと、実態を無視して。それは目標設定が誤っているのであって、本来は、文部科学省が達成すべき目標というのは、自殺の報告があった、それについてきちんと対応する、対処する、手を打つ、そのアクションをとったかどうか、そしてアクションをとったものが成果に結びついているかどうか、そういう段階に分けて例えば目標設定をすべきであったんだろう。そうすることで、ただ単に自殺者がなくなればいいんだ、では、来たものに目をつぶろう、もしくはこうじゃないものだと解釈をしよう、そういったものを防ぐということも大事なことであります。

 そういった目標設定というもの、公務員だから難しい、なじまないとアンケートの声にもあった。でも、きちんとアクションをとったかどうかは少なくとも評価できるはずですし、そのアクションが結果に結びついたかどうかということも分けて目標設定をすれば、できるはずだと思います。

 昔、しばらく前に信賞必罰ということを申し上げた行政改革担当大臣がおりましたけれども、これは、必罰というところだけをとると大変怖いことを言っているような感じがするわけですが、そうではなくて、きちんと意識を持って仕事を毎日されている公務員の方がきちんと報われる評価をされる、そして伸び伸びと気持ちを持って働いていただくという公務員制度をつくりたいということだったのではないかと私は思っておりますし、そのために、新たな人事評価制度というのは、大臣がおっしゃったように極めて重要なことだと思っておりますので、今後そういったものが、簡単にできることではないので、速やかにというのは難しいですけれども、きちんと改善を積み重ねていって、できるだけ早く実用化の段階を迎えることをお願い申し上げまして、質問を終わります。

 以上です。

    〔谷委員長代理退席、委員長着席〕

佐藤委員長 次に、西村智奈美さん。

西村(智)委員 民主党の西村智奈美でございます。菅大臣、どうぞよろしくお願いいたします。

 きょうは、給与法についての質疑ということで、民主党はこの後、もと現場におられた森本委員も質問されますので、二人で何とかうまく役割分担ができればというふうに思っております。しっかりとこの法案の疑問に思われている点などについて明らかにしていただければというふうに思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、今回の給与法、やはり一番大きな変化であったのは、官民比較の対象企業を従業員百人以上という規模から五十人以上へというふうに変更したことであると承知をしております。このよしあしといいますか、社会経済的に見てといいますか、国民感情から見てということはとりあえず置いておきまして、これが制度としてあるいは経過として合理性が十分だったかどうかということについてまず伺っていきたいと思います。

 人事院勧告が、八月の八日でしたか、出されまして、その後にも質疑が行われたわけでありますけれども、その後の経過を踏まえての立法ということでもありますし、改めて、人事院の認識といいますか、それを質問していきたいと思います。

 まず、経過の面から申しますと、対象事業規模が常勤の従業員百人以上ということについては、いわゆる池田・太田会談ですか、政労トップ会談で合意したものであるというふうに承知をしております。ところが、今回の変更につきましてはそういったことがなされたという形跡がありません。

 まず、人事院に、今回五十人以上へと変更した経緯について伺いたいと思います。

谷政府特別補佐人 先生御指摘のとおり、昭和三十九年に、当時の池田総理と太田総評議長の会談を受けまして、三公社五現業の職員について、当時の公共企業体等労働委員会が行った仲裁裁定におきまして、新たに企業規模百人以上の民間給与との比較検討を行うという建前が採用されまして、その仲裁裁定が実施されたところでございます。

 当時、非現業国家公務員につきましてはこのことと直接関係はなかったわけでございますけれども、現業職員に対するこういった決定を受けまして、同年における人事院勧告を行います際に、人事院みずからの判断といたしまして、官民給与の比較対象を百人以上の企業規模に改めることと決定いたしました。

 自来、官民比較に当たりましては、企業規模百人以上の民間企業を対象としてきたところでございますけれども、最近の国会における御議論や閣議決定による人事院への検討要請などを見ますと、比較対象企業規模を含めたこれまでの官民給与の比較方法については、社会的なコンセンサスが得られているとは必ずしも言いがたい状況にあると判断されたところでございます。

 その中で、人事院といたしまして、学識経験者による研究会や各界の有識者によります給与懇話会を設置いたしましてその御意見をお聞きいたしますとともに、各府省人事当局や職員団体の意見も聞きながら慎重に検討いたしまして、比較対象企業規模を見直すこととしたところでございます。

 したがいまして、今回のこの規模の見直しにつきましても、昭和三十九年における見直しと同様に、人事院が、中立第三者の機関として、その責任において判断をいたしたものでございます。

西村(智)委員 中立な人事院という立場から決定をしたということなんですけれども、ただ、今の経緯を伺っておりますと、国会での議論ですとか閣議決定などもあったということを伺いますと、私は、ここに、人事院の中立性だけではなくて、いわゆる政治性がやはりかかわってきたのではないかというふうに指摘をしなければならないわけであります。

 それでは、人事院に重ねてお伺いをいたしますけれども、なぜ五十人以上という規模になったのでしょうか。その理由を明確に伺いたいと思います。

 勧告には三つのポイントが指摘されておりますけれども、その二つ目には、例えば、民間従業員の給与をより広く把握し反映する、こういうふうに書かれているわけでありますけれども、より広く把握して反映するということであれば、もっと小さい規模であってもこれは論理的にいいわけですよね。例えば三十人という規模です。三十人という規模については人事院も検討された形跡があるようでありますけれども、なぜ五十人ということになったんですか。

谷政府特別補佐人 今回の比較対象企業規模の見直しも、従来と同様、同種同等の者同士を比較するということが私どもの比較の大原則でございます。この同種同等の業務を行う民間企業の従業員の給与をできる限り広く把握いたしまして、公務員の給与に反映させていくということが適当であるという基本的な考え方のもとに今回の見直しも行ったわけでございますが、その際に、企業規模百人未満の民間企業のうち企業規模五十人以上の民間企業につきましては、多くの民間企業において、公務と同様の役職段階、私どもは同種同等の比較をいたしますので、部長、課長、係長、そういった職制がどのように配置されているかということは非常に重要な要素でございます。そういった役職段階を有しているということから、役職の責任の大きさを基本といたしまして、公務と同種同等の者同士による比較ということが可能であるということが一つございます。

 それからもう一つは、きちっとした調査を、正確な調査を行えなければならないという問題があるわけでございますが、企業規模五十人以上の民間企業であれば、これまで私どもが百人以上について行ってきましたものとほぼ同等の精緻な実地調査による対応が可能である、調査の正確性を維持することができるということがもう一つございます。

 それからまた、本年の職種別の民間給与実態調査におきまして、企業規模五十人以上の民間事業所を含めて調査いたしました結果、企業規模五十人以上百人未満の民間事業所におきましても八四・三%の事業所において調査を完了することができまして、官民の給与比較の対象となります役職段階別の調査の実人員も十分に確保することができました。

 そういうことがございましたので、この企業規模の見直しを行った次第でございます。

西村(智)委員 私は、なぜ五十人という規模になったのか、このことを明確にお答えいただきたいということで質問をいたしたわけでありますけれども、これでいいんです、これで実際の把握はできますというような漠とした御答弁でした。同等の役職段階を有しているのが五十人以上だ、そういう御答弁もありましたけれども、私はこれは説得性はさほどないのではないかと思っています。

 つまり、どういうことかと申しますと、例えば五十人以上の規模、五十人以上百人未満の事業所規模では、例えば部長、課長、このあたりは百人以上と占める比率は余り変わりないんですけれども、係長、主任クラスになりますと五〇%前後ということになってしまうわけです。では、五〇%前後の数字でいいんだということになりますと、部長、課長のレベルでいうと、三十人以上五十人未満の企業でも五〇%以上の数字は確保されているわけですね。ですので、これをもってして五十人以上が説得的なものであるというふうには私は言えないのではないかと思います。

 また、五十人以上の企業が対象になるとしても、実際に調査の対象になるのは役職段階の調査実人員ということです。これは、全体に占める割合でいいますと、六・二%。これでしたら、二番目におっしゃった理由のように調査の正確性は恐らく確保されるでしょう。逆に言いますと、六・二%しかないということなんですね。

 つまり、何かと申しますと、百人から五十人に変えるということは、これはやはり政治がリードしてきた一つの数字であって、それを説得的に裏づけるために人事院の方が御苦労なさっていろいろな理由をこうやってつけられたんではないかな、こういうふうに考えるわけなんです。

 総務大臣、今回の人事院勧告を受けての法制化は、このように合理性が余りないものだったんじゃないかという懸念は私はぬぐい去れませんけれども、いずれにいたしましても、先ほど人事院総裁が述べられたように、いわゆる労働団体との会談がこれまで行われたということはありません。今まで百人以上の企業規模がこれまで長きにわたって維持され、熟成されてきたのは、やはり政労トップ会談でみんなが合意したということで続いてきたんだと思うんですね。法案化をされたわけでありますけれども、政労トップ会談を改めて行う、そういうお考えはありませんでしょうか。

菅国務大臣 政府としては、人事院勧告制度を尊重するという基本的姿勢に立って、国の財政状況や民間の経済情勢など国政全般と関連を考慮しつつ、国民の理解を得られる適切な結論を出すべく検討してきた結果、勧告どおり実施することを決定し、去る二十七日に法案を国会に提出したところであります。

 そして、先ほど来御指摘のございます池田元総理と太田総評議長との会談、これは、公共企業体組合によるストライキを回避するために実施をされ、その会談の結果、公労委の決定を尊重することが確認されたものであって、人事院勧告制度について行われたものではない、このように理解をしています。

西村(智)委員 今の御答弁は、トップ会談はされるおつもりはないという御答弁でしょうか。

菅国務大臣 そうでございます。

西村(智)委員 そこは強く要請をさせていただきたいと思います。

 人事院の方からは、どうもことしになって急に五十人という提案が出されてきた。昨年までは、これは仄聞でありますけれども、百人以上の企業規模が、従業員のおよそ五五%、半数を確保しているので、これは十分に民間の実態を把握していると人事院は見ている、そういうふうに発言をされてきたというふうにも聞いております。

 そういう経過からいたしましても、今回の変更は余りに唐突で、やはりきちんと議論を踏まえていく必要があるというふうに思っておりますので、改めてそこは会談を行ってくださるように強く要請をしたいと思います。

 ちょっと飛ばすことにいたします。次に、広域異動手当について伺いたいと思います。

 今回の広域異動手当というのも、初めて創設をされたものだそうであります。俸給表が五年間で見直しをされる、ことしから四・八%段階的に減るということ、それを原資にして、地域手当もここからということらしいんですけれども、広域異動手当が創設をされたということです。

 実際にどのくらいの国家公務員の方がいわゆる広域に異動されるのかとちょっとお伺いをいたしましたら、年間で大体、推計で三万人ぐらいですと。三万人ぐらいの方で、ざっと概算、これも推計ですけれども、おおよそ月二・七億円の広域異動手当が必要になるということでございました。地域手当と合わせて俸給表の見直し分は大体カバーできるということなんだそうですけれども、問題は、また細かい話で恐縮なんですが、広域異動手当が、異動距離といいますか、異動前後の官署間の距離区分に応じて、六十キロ以上三百キロ未満、このように異動した人が俸給などの三%、三百キロ以上の人が俸給などの六%の異動手当を支給されるということなんです。

 まず、三%と六%、このようになっているその根拠は何か、お伺いをしたいと思います。公務員の給与というのは、民間準拠と申しますか、ラスパイレス方式によって算定をされているものでありますので、官民比較ということになりますけれども、この三%や六%という数字は官民比較の結果によるものなのでしょうか。それともほかの方法なのか。具体的な比較の方法について、人事院にお伺いいたします。

谷政府特別補佐人 この支給区分につきましては、公務員の異動のパターンを考慮いたしまして、ブロックをまたぐ全国的な異動、それから、県は越えましてもブロック内の異動、こういうことを念頭に置きまして二つの区分を設けました。

 この距離につきましては、六十キロと申しますのは、おおむね転居を伴っての異動というのが通例でございまして、単身赴任手当についてもこのような基準を設けております。また、三百キロと申しますのは、管区機関所在都市間の距離が大体三百キロということでございます。

 そこで、パーセンテージの三%、六%の問題でございますけれども、基本的には、昨年の勧告、報告で、給与構造の見直しを行います際に、地域別の給与水準の差を反映させるということを基本といたしまして全体の給与を引き下げたわけでございますので、それに伴いましていろいろな給与間の調整が必要となります。

 公務員の中には、平均給与の高い地域で勤務する者もおりますし、また、全国的に異動する者もおれば、ブロック内の異動をする者、あるいはほとんど異動しない者等さまざまあるわけでございます。それらについて、どのような給与の種類を設けて、組み合わせて、できる限り合理的な給与の制度をつくっていくかということが基本にあるわけでございますが、その中で、参考として民間の調査もいたします。

 しかし、民間におきまして公務と全く同じようなものが存在するわけではございませんので、配分につきましては部分的な参考ということでございますが、例えば私どもの調査によりますと、広域的に転勤のある民間企業、つまり他県に支店のあるような企業における賃金水準が、それ以外の民間企業の賃金水準と比較いたしますと三・五%上回っているという事実がございまして、やはり、異動を行うような、全国的に展開しているような企業の賃金水準は高いということがございました。しかし、この数字そのものをということではございません。

 こういったことも考え、それからまた、地域手当につきましては、最低の支給割合が、制度が完成いたしました際には三%となりますし、その上の段階が六%でございます。こういったことも考慮し、先ほど申し上げましたように、今回の構造改革全体の中でできる限り合理的な給与制度をつくろうということで設けた次第でございます。

西村(智)委員 民間の賃金水準などは参考程度にという御答弁でしたけれども、実際、この人事院勧告のポイントのところでは、公務員給与の広域異動手当について説明する表のところで、ちゃんと民間の賃金水準というものが横に並んで出ているわけでございます。

 参考程度に見てくれというふうに言われましても、実際にはやはり人事院としてはこの数字を決めるときの大きな参考にしたんだろうというふうに思わなければいけないわけでありまして、この表を見ますと、実際のところは官民比較にはなっていないわけです。それは人事院総裁もおっしゃいました。広域に展開している民間企業の賃金水準と、それをしていない民間の賃金水準をまず比較している。これは、いわゆる官民比較でなくて民民比較ですよね。公務員給与の中で、広域異動しない公務員、広域異動する公務員、それも六十キロ、三百キロというふうに区分を分けて、官官比較ですよね。こういうやり方が、ラスパイレス方式をとっている今の給与決定のあり方に本当になじむのかどうかということは、私はやはり大きな疑問だと受けとめております。

 加えて言うならば、これは私の中の価値基準としては改善すべきことだと思っていることですけれども、民間の広域異動展開があるとされている企業では、もうそもそも転勤があるということを含めての賃金体系、賃金テーブルになっていることが多いです。採用のときに、転勤できますか、転勤できませんかと聞いて、転勤できませんと言われた人たちは、コース別で自動的に低い賃金テーブルの方にやられてしまいます。転勤できますと言った人は、もうそれだけで賃金テーブルの高いところに入っていくということからいたしましても、なじまない広域異動手当だというふうに思うんです。

 質問は、民民比較の方です。民間地場企業の賃金水準と、転勤のある民間企業の賃金水準を比較しているんですけれども、これは、従業員何人以上の企業について比較をしているのでしょうか。

関戸政府参考人 お答えいたします。

 本年の勧告の資料の中に載っている図であろうかと思いますけれども、十七年の調査でございまして、企業規模百人以上の企業について調査をしたものでございます。

西村(智)委員 百人以上だということなんですね。これは五十人ではない。

 ことしは、勧告も見直して、百人以上規模から五十人以上規模にするということになっているわけなんですけれども、ここでもやはり、まずこういう結果があって、それに合わせて調査をやっているのではないか、そういう疑いを生じかねません。ここは、今回の人事院勧告がそういう意味でも非常に問題のある、そういう一面をあらわしているのではないかというふうに思いますけれども、総務大臣に、ここは通告をしていなかったかもしれませんが、お伺いをいたしたいと思います。

 今回の広域異動手当の創設については、ラスパイレス方式、民間準拠という点からしても、制度的になじまないところがあるのではないかと思いますが、この法案化に当たってどういう認識で法案化をされたのか、見解を伺います。

菅国務大臣 人事院勧告を基本的に尊重いたしました。

西村(智)委員 人事院勧告を基本的に尊重いたしましたと。そのとおりだと思います。現在の人事院勧告制度は、その勧告を尊重して法制化するということになっておりますけれども、そういたしますと、ちょっと飛びますが、私はお伺いをしなければならないことがあるわけです。

 八月八日の人事院勧告には、今回の比較企業規模の見直し、あるいは私が今言っております広域異動手当のことなども含めて、例えば育児のための短時間勤務の制度の導入等についての意見も出されておりますし、また自己啓発等休業に関する法律の制定についての意見も出されているところであります。

 人事院制度、人事院勧告を尊重したということであれば、この二つの取り扱いは一体どういうふうになったんでしょうか。これもやはり早期に法案化してこの臨時国会で同時にしっかりと出すべきだったと思いますけれども、総務大臣、いかがですか。

戸谷政府参考人 作業の状況につきまして、若干私の方から御説明したいと思います。

 人事院からのこの二つの意見の申し出でございますが、私ども、これを踏まえまして今作業を行っています。ただ、人事院の意見の申し出は一般職でございますので、国家公務員の中には特別職もございます。現在、その意見の申し出の対象外となっている防衛庁職員等の特別職の取り扱いの検討、あるいは、これはかなり私どもも人事院と詰めながらやってきておりますけれども、やはり、いただくときにまだ議論し切れなかった、例えば一つの職に二人の方が仕事をされる、その二人の職員の職務の関係とか、その辺のところを今私ども鋭意整理しておりますが、もう少し時間をいただきたいというふうに思っております。

菅国務大臣 今の答弁のとおり、事務方で鋭意努力をしておりますので、私は必要なことであるというふうに思っていますので、次期通常国会へ提出をさせていただきたい、このように思っています。

西村(智)委員 人事院勧告が例えば一から十出されて、人事院勧告を尊重するということであれば、やはり総務省として、法制化の担当者としては、一から十まできっちりと法案化に向けて努力するということは、これは何はなくともとらなければいけない責任だろうと思います。しかし、一から十まで勧告が出ている中で、例えば一から八までは詰めて法案化したけれども九と十は残ってしまった、そうすると、これは痛くない腹を探るということになるのかもしれませんけれども、やはり恣意的な、一から八の部分だけはどうしても急がなければいけない事情があったというふうにそこは指摘をしなければいけないわけでございます。次の通常国会へこの育児時短制度と自己啓発休業についてきちんと法案が早期に出てくることを要望いたします。

 それで、ちょっと戻りますけれども、こういうふうに人事院の勧告を受けて法案化するという人事院制度、日本では定着をしてきましたし、私は、一定の成果はあったと思っております。しかし、きょうの議論、質疑を通じても感じるんですけれども、かなり勧告が政治に引っ張られている、そういう感じが強まってきているのではないか、そういうふうにも感じます。そろそろやはりこの人事院制度も見直すべきではないかというふうに感じます。それがいわゆる新しい時代の要請ではないかということなんです。

 まず、その話の初めに、ことしの公務員の採用試験、この受験者の状況について伺いたいと思います。

 実は、きのうちょっとレクの中で雑談をしておりますときに、いい要員を確保することが難しくなってきているなどという、ちょっと本音に近い話もぽろっと出てまいりました。給与制度改革も含めて公務員制度改革が行われているわけでありますけれども、その公務員制度改革が行われている中でよい人材が集まってこないということであれば、やはりそれは大きな問題である。

 私は、公務サービスというのは非常に重要だと思っておりますし、OECD諸国の中でも、日本の公務サービスにかける例えば人件費あるいは公務員の人数は決して多くはありません。相対で見ますと、日本はOECDの中では既に小さい政府になっている。この中でよりよい人材をいかに多く登用して、いかに活躍してもらうか、いかにいい仕事をしてもらえる制度にしていくか、ここが公務員制度の根幹であるべきだというふうに考えておりまして、総人件費の抑制が公務員制度改革の幹であるというような発想はやはりそろそろ変えるべきではないかというふうに考えております。

 まず受験者の状況と、それから私が後段述べた公務員制度改革についての御認識について、総務大臣それから行革担当の方にそれぞれお伺いをいたします。

林副大臣 行革担当の副大臣でございます。

 今お話がありました後段の方のお話で、公務員制度改革の方向性ということで、いい人材をもっと採っていくべきではないか、こういう御指摘でございまして、まさにごもっともな御指摘であります。

 キャリアと言われる人たちに優秀な人材が集まりにくくなっているのではないかという御指摘は常々あるわけでございますが、一方で、人件費の削減というのは、もう御案内のような財政状況で、何とか削れるところは、節約できるところは節約していこう、こういう方向性があるわけでございまして、公務員の総人件費についても例外にはできない、こういうふうには思うわけでございますが、一方、御指摘がありましたように、だからこそこの限られた財源の中でどうやっていい人材を引き続き確保していくのかということが大変大きな課題になるわけでございます。

 そういう観点から、この間通していただきました行政改革推進法にも、職員の意欲と仕事の成果を引き出すような能力・実績主義の人事管理の徹底、また、行政及び公務員への国民の信頼を確保するための退職管理の適正化、また、官民の人事交流を促進することを重要に考えているということを位置づけていただいたわけでございまして、こういう方向性でできるだけ早期に具体化を図るべく調整を進めてまいりたい、こういうふうに思っているところでございます。

菅国務大臣 私も、今林副大臣が答弁されましたけれども、お互いに連携をしながら、このことについてはしっかり取り組んでいきたいと思っています。総務省としては、官民人事交流の推進や新たな人事評価の試行等の取り組みを進めて、皆さんの、国民の期待にこたえられるような取り組みをぜひ行っていきたいと思います。

 また、受験者等については事務当局より答えさせていただきます。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 1種試験で申し上げますと、ことしの申込者が二万六千二百六十八人、昨年度が三万一千百十二人ということで、十数%の減少ということになっております。

西村(智)委員 十数%の減少とおっしゃいました。

 昨年が三万一千百十二人で、ことしが二万六千二百六十八人ですから、ざっと申し上げておよそ五千人、受験者数でいいますと、三万人いたところから五千人減っているわけでありますね。

 短絡的に、だからいい人材が集まってこないというふうに私は申し上げるつもりは毛頭ありません。しかし、そういうふうに頑張ろう、1種で頑張りたいという志を持っている人が減る傾向にあるということは、少なくともこのデータからは言えるのではないかと思います。

 そこで、制度の見直しというものにもやはり入っていかなければいけない時代じゃないかと私は思っております。

 既に、ILOがたびたび勧告をしております。ことしの三月にILOの方から中間報告が出された中でもいろいろ勧告されております。強く督励すると。これは仮の訳ですので英文原典を当たっているわけではないですけれども、強く督励するというその表現の中に、公務員に労働基本権を付与することというのが第一の項目に上がってきております。二番目には、消防職員及び刑務所職員に団結権を付与すること等々と、少し具体的な項目が続くわけでありますけれども、公務員に労働基本権を付与する、これはILOからも強く勧告がされている。これはことしに始まったことではなくて、もう何度も、何回も勧告がされていることであると思います。

 この勧告を踏まえて、それにこたえるためにも、この労働基本権の付与については早急に議論を深めて結論を出すべきと思いますけれども、総務大臣に見解を伺います。

菅国務大臣 公務員の労働基本権につきましては、公務員の地位の特殊性と職務の公共性にかんがみて、国民全体の共同利益の見地から一定の制約を免れないものと認識しており、そのあり方については、国民意識を踏まえつつ、幅広い観点からの検討が必要であるというふうに思っています。

 現在、この問題につきましては、専門調査会でさまざまな角度から検討を始めており、その方向性というものを見きわめてまいりたいと思います。

西村(智)委員 いや、しかし、勧告は出されているわけですよね。ILOから勧告、しかも強くその勧告が出されていて、議論の行方を見ていきたいというのでは、いかにものんびりしているんではないか。

 行革担当の方にお伺いをいたします。骨太方針二〇〇六、ここに「人事院・人事委員会制度の在り方を含む公務員制度全体の改革の検討を早期に開始する。」とあります。それを受けて、今、菅大臣が答弁された専門調査会ですか、それも設置をされて議論がされていることと思いますけれども、その議論はどういう状況になっておりますか。

林副大臣 先生御指摘がありましたように、骨太には「早期に開始する。」ということが入っておりまして、それを受ける形で、行革推進法に基づきまして、政令で、行革推進本部というのが政府にございますが、その下に専門調査会を設置しまして、七月より検討を開始したところであります。

 大まかに申しますと、まず三つのことをやろうと。簡素で効率的な政府における公務の範囲、二十一世紀の公務員とはどういうことをカバーするのか。そして二番目が、それを担う従事者の類型化とそれぞれのあり方。そして、その二つを踏まえた労働基本権を含む労使関係のあり方ということで、三本柱を立てて議論をスタートしていただいているところでございます。

 既に、公務の範囲や公務員の法制などにつきましては事務局より説明を行っていただきまして、委員の皆様方で、何を中心に議論をしていくべきか、重要と思われるテーマは何か等についてフリートーキングを行っておりまして、今後の本格的な議論の進め方や論点について年内に整理ができるというめどで、今進めておるところでございます。

西村(智)委員 年内に論点がまとめられるということでしょうか。それは、公務の範囲ですとか、今大臣が、行革担当副大臣が御説明くださった中身も含めてということなんだろうと思うんですけれども、労働基本権のあり方についてその議論が結びついていくような、そういう整理が年内になされるということですか。

林副大臣 そのうち大臣にもなりたいと思っておりますが、今お話がありましたように、順序立てて、公務の範囲というのが今までどおりでいいのかということをまずやって、先ほどキャリアのお話がありましたけれども、キャリアとかノンキャリとかそういう分類をした上で、キャリアにいる人やノンキャリの人、また、現場でいわゆる現業的なお仕事をされておられる方で、公務の労使関係については違ったことがあり得るだろう、こういうことを考えましてこういう論点立てにしております。

 そういう三つの大きな柱の中で、ではどこを具体的に議論していけばより早く委員がおっしゃるように答えに到達できるのか、そういうことで今やっていただいていまして、より詳しい論点整理をこの年末には出したいということで、実は第三回の会議で、十月でございましたが、私も出席しておりましたけれども、座長からは、次回の会議、十一月に予定しておりますが、論点の柱立てのたたき台について議論していきたいと。このたたき台を議論していただいて、十二月には論点整理ということでまとめたい、こういうことになっておるわけでございます。

西村(智)委員 ぜひ早急に議論をしてくださるように、また、そのときにはぜひ関係者の意見をより多く聞いて、しっかりとそれを取り入れるということをぜひ確認させていただきたいと思います。それはよろしいですね。

林副大臣 関係者で、特に委員が御興味のある方だと思いますけれども、労働組合の関係の方も実はこのメンバーに入っております。古賀さんが連合の事務局長であられますが、それから、ずっと公務労協の委員長をされておられました丸山さんという方ももう委員に入っていただいて、この場で議論をしようと。

 この専門調査会がそもそも立ち上がったのは、御指摘のあった政労協議というのをやりまして、それぞれの方に入っていただいてここで議論をしようということで、最初からこの委員に入っていただいて議論をしておるということでございます。

西村(智)委員 ほかにも、育児休業の短時間勤務の話ですとか、まだ質問したかったんですが、時間になりましたので終わります。厚労の政務官、済みません、また次回、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

佐藤委員長 次に、森本哲生君。

森本委員 民主党の森本哲生でございます。

 大臣におかれましては、このたび御就任、まことにおめでとうございます。おくればせながらお祝いを申し上げる次第でございます。

 質問に入らせていただく前に、きょうも若い命が失われていきました。命の大切さと申しますか、特にみずから命を絶つ、そのことを何としても防いでいかないかぬ、そういうことを思っております。これは若い方だけでなしに、特に公務員の関係、防衛庁の関係の資料もいただいておるわけでございますが、ここまで追い込んでいく社会、これは政治の役割が非常に大きいし、責任も重い、そのことを私自身、昨夜から痛感をさせていただいておった次第でございます。

 きょうは、ゆうべ思いついた質問も途中飛び出すかもわかりませんが、通告については、かねがね余り余分なことは言わないよという約束をしておりましたけれども、途中飛び出すかわかりませんので、どうぞ部下を余りしからないようにお願いをさせていただきます。

 そのことについて、命の関係について、大臣、もし何か御意見がございましたらお伺いをして、ないということでございましたら結構でございますが、よろしくお願いします。

菅国務大臣 非常に痛ましいことであって、また、こうしたことが連鎖的な形で起きていることを大変憂慮いたしております。

森本委員 どうもありがとうございました。

 どうぞ政府も、マスコミ等でもこの命の大切さをしっかりPRしていただきたい、そのことをお願い申し上げておきます。

 ところで、大臣、ちょっとまた個人的なことで申しわけない話でございますが、あす大臣が福島へ行くという情報を、今非常に福島は政治的に動きの激しいところでございますので、どうも首長を集められておるというようなことを聞かせていただいておるんですが、これについては事実でございますか。

菅国務大臣 自民党本部の選対本部から要請があって、あす福島に入ることにはなっております。

 内容については、把握していません。

森本委員 こういうことは、大臣が動かれるということはかなり重い。しかも、総務大臣が動かれて首長ということは、地位利用とかそういった問題には発展しない問題でございますか。そのことについて、よろしくお願いします。

菅国務大臣 もしそういうことであっても、そのことには十分配慮しながら行ってまいりたいと思います。

森本委員 私の質問前にかなり時間をとっておりますので、このことについてはまた後でいろいろお話があろうかと思うんですが、それでは、通告に従いまして、質問に入らせていただきます。

 労働基本権が制約されております公務員の給与、勤務条件の決定システムのもとで、給与勧告制度はどのように定義され、あるいはどのような役割を果たしているのか、その件についてお伺いをいたします。

谷政府特別補佐人 給与勧告制度は、職員に対しまして、社会一般の情勢に適応した適正な給与を確保することにより、労働基本権制約の代償措置としての機能を果たしていると考えております。

 また、公務員の給与につきましては、納税者でございます国民の御理解をいただく必要がありますことから、人事院が労使当事者以外の第三者の立場に立ちまして、官民給与の正確な比較をもとに給与勧告を行うことによりまして、適正な公務員給与が確保されていると考えております。

 さらにまた、私どもは、従来より、国家公務員の適正な給与水準の確保についてのみならず、給与制度の見直しについても勧告を行っておりますが、人事院が行う勧告が実施され、適正な処遇が確保されるということは、人材の確保それから労使関係の安定を図ることによって、能率的な行政運営を維持する上でも重要な役割を果たしているものと考えております。

森本委員 ありがとうございました。

 それでは、代償措置としての給与勧告制度について、ILOから、関係者の信頼を得ているかどうかについて疑問だという、そんな指摘があるというふうに聞いておりますが、その見解についてお伺いをいたします。

戸谷政府参考人 私の方から御報告申し上げます。

 人事院勧告制度は、労働基本権制約の代償措置として適切に機能してきたところで、私ども、いろいろな場面でILOにも情報も送っておりますが、これまでILOもこれに理解を示してきていただいているというふうに思っております。

 給与について見ますと、政府は、人事院の勧告を踏まえて給与法の改正案を国会に提出しております。人事院並びに政府につきましては、これに先立って、職員団体と会見を行い、その意見をいろいろな場面で聞いているところでございます。また、一般職員につきましては、昭和六十一年以降、人事院勧告を完全に実施してきているところでございます。

 今後とも、人事院勧告制度につきましては、労働基本権制約の代償措置として十分機能するよう最大限の努力を行っていく、こういうことが必要だというふうに考えております。

森本委員 ILOから理解を示しているというふうに解釈してよろしいんですね。

 それでは次に、ことしの人事院勧告についてでございますが、関係者である政府は、経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇六において、骨太方針に当たりますが、「更なる改革」と題して、これは西村議員から今も質問があったのと関連していきますが、比較対象企業規模の拡大を人事院に要請して、結果として、政府の要請どおりの勧告となっております。

 一方、同じく関係者である職員及び関係団体は、一方的な比較対象企業規模の拡大に基づく勧告であると考えています。このことは、給与勧告制度における使用者たる政府の意向を尊重したもので、職員側の信頼をさらに損なうものになったのではないかというふうに考えますが、いかがでございますか。

谷政府特別補佐人 政府の方から閣議決定に基づき幾たびか御要請があったことは事実でございますけれども、しかし、私どもといたしましては、それに先立ちます昨年の勧告時の報告におきまして既にこの検討を行うことを表明いたしまして、その後の各方面の意見、要請等を踏まえて、学識経験者による研究会でございますとか各界の有識者による給与懇話会というものを設置いたしまして、その御意見をお聞きし、さらにまた、各府省の人事当局や職員団体の方々の御意見も繰り返しお聞きしながら、人事院として、慎重に検討を進めてまいりまして、今回の結論に至ったところでございます。

 いろいろな御意見がある、特に国会での御意見、政府の御意見、それを私どもは十分に尊重して、耳を傾けていくのは当然だと思います。しかし、その上に立って最終的に判断をするのは人事院としての責任において行うべきでございまして、その結果の勧告については、最終的にはまた国会で御審議をいただくという仕組みだろうと思います。

 先ほど申し上げましたけれども、関係者の御理解をいただくということは、この制度をその目的に沿って運用していくためにも非常に重要なことであると考えておりまして、その努力は私どもとしても尽くしてきたつもりでございますが、しかし、基本的に、労働条件は労働者、使用者双方が対立したところから始まるものでございまして、それを私ども中立第三者として行いました際に、両者の御納得を完全に得られるということはなかなか難しいものである、しかし、その御理解を得るための努力は常に続けなければならないと思っております。

森本委員 先ほどのお話からもよくわかりますが、二〇〇六年八月二十四日の衆議院総務委員会で示された、本年の人事院勧告はこの骨太方針に沿ったものという見解、そのことは、財政運営という観点から、人件費の抑制、削減という政府の考え方に人事院が従ったものか。これはくどい聞き方なんですけれども、あるいは、中立第三者機関としての人事院の権限に政府が財政運営という立場から規制介入したものか。いずれにしても、見過ごせない重大な問題であると考えますが、その点についてお伺いします。

谷政府特別補佐人 財政運営との関係という御質問かと思いますが、私ども人事院といたしましては、政府の財政事情について承知する立場でもございませんし、また、その財政事情を考慮して官民給与の比較調査に基づく勧告を行うという立場でもございません。したがいまして、その件とは勧告の内容は関係はございません。

森本委員 それ以上の回答は無理だと思うんですが、それでは、少し地方公務員の関係についてお伺いをさせていただきます。

 給与勧告制度が労働基本権制約の代償措置をなすというものであれば、地方公務員について、自治体の規模によりこの制度の適用関係が異なっているのはどのような理由によるものなのか。

 また、地方公務員法第七条第二項で人口十五万人とされております、その根拠をお聞かせいただきたいと存じます。

上田政府参考人 お答えいたします。

 御質問は、地方公共団体における第三者機関、人事行政機関が、大きいところでは人事委員会があるけれども、小さいところには公平委員会しかないということについての御指摘だと思います。わけても、市の場合には、十五万以上の市というような基準になっております。

 これは、基本的には、地方行政組織の制度経済というか、余り小さな行政組織の中に重たい機関を置くことは、そこまでは必要がないだろう。行政の効率化という観点から、特に町村にまで人事委員会を置こうという考えは多分ないと思うんですけれども、一定規模以上のところでなければ、人事委員が三人置かれるとか、事務局も十人とか二十人とか最低要るわけですけれども、そういうものが要るかどうかということを考えると、やはり地方公共団体の規模について若干違いがあるので、区別して論じた方がいいのじゃないかということであると思います。

 ちなみに、当時、十五万人ということをどういうふうに立法時に説明しているかといいますと、「おおむね人口十五万前後の市におきましては、職員数が千五百人前後になるようでございますが、その程度の職員を擁する地方団体におきましては、人事委員会を設けまして、それによつて任命権者と事務行政に関する機能を分担させることの実益と、それに要する経費等をにらみ合せまして、その必要性が肯定されるのではないかと考えたのでございます。」十五万以上であれば、効率性を考えて置いてもいいのではないかというふうに判断しました、こういうふうにお答えしているところでございます。

森本委員 部長、ありがとうございます。

 三重県では副知事で就任いただいて、一度も県議会では質問をさせていただかなかった分、きょうはしっかりさせていただきたい。かげんはいたしませんので、よろしくお願いします。

 しかし、十五万人、現実はほとんどないんですね。このあたりは課題であると思うんですが、この議論は細部にわたりますので控えさせていただきます。

 それでは次に、それにも関連いたしますが、先ほどお話がありました、地方公務員法が人事委員会及び公平委員会の権限を明示しておりますが、これらは自治体の他の機関に対して高度の独立性のもとで強い権限を保障しているものと考えますが、いかがですか。

 また、給与における第三者機関の情勢適応原則のもとでの勧告権限と、自治体の長が有する勤務条件に係る予算等についての権限とは、別個独立したものであると考えますが、いかがでございますか。

上田政府参考人 お答えいたします。

 人事委員会の権能は、当然、法律に基づいて独立に設けられているものでありますから、それなりの権限があり、この行政委員会というか人事委員会としての権能は、議会あるいは市長部局とは別々の権能でございますから、独立性という点におきましては御指摘のとおりだというふうに考えます。

森本委員 近年、自治体において、窮迫する財政状況のもとで、人事委員会勧告等に基づくことができない独自の給与削減措置が深刻化しているということです。現状、どのように実態としてつかまれているのか、また財政窮迫の要因はどのようなことが原因と考えられておるのか、お聞かせをいただきたい。

上田政府参考人 まず、いわゆる独自の給与抑制措置の状況でございますが、平成十八年四月一日現在の状況によりますと、特別職にかかわるものも含みますけれども、千百四十九団体、額にするとざっと千六百五十億円程度の独自の給与抑制を行っているというふうに把握をしております。

 それから次に、こういった抑制措置を行わざるを得ない要因についてどう考えるかということでございますが、要は、歳入歳出のギャップがある、財政状況が厳しいということでございます。歳入面につきましては、当然ながら、税収の全般的な水準が低いということが一般的な要因であります。歳出の面におきましては、都道府県と市町村で違いますけれども、都道府県でいえば、例えば教員の人件費が非常に大きなウエートを占めているということがございますし、それから、県、市町村共通でいうと、地方債の元利償還、いわゆる公債費の支出が高い水準にとどまっている、こういったことが主な要因ではなかろうかというふうに考えます。

森本委員 特別職を含めて千百四十九団体が多い少ないという議論は、もう少し精査しないと。一般職に及ぶ部分につきましては、これのどのぐらいに当たるのか。

 それと、独自の給与削減措置について、自治体によって、これが複数回に及ぶ深刻な事態となっておるとも思っておるんですが、その状況と今後の見通し、その点についてお聞かせいただきたいと思います。

上田政府参考人 お答えいたします。

 一般職についてだけの調査によりますと、一般職に対する給与抑制措置をやっている団体は、同じ時点でございますけれども、七百八十二団体、金額では千六百十億円程度というふうに把握をしております。

 今後の動きがどうなるかということにつきまして、大変恐縮でございますけれども、財政状況の推移も私もいま一つわかりませんし、また個別の団体のいろいろな事情があるかと思いますので、私がここで論評することは遠慮させていただきたいというふうに思います。

森本委員 私の想像しておった件数よりも少し多いな、そんな思いをさせていただいておりますが、この点については、一番最後のところでまたいろいろな意見を申し上げさせていただきたいというふうに考えます。

 少しかわりまして、先ほどの話なんですが、ILO結社の自由委員会第三百二十九次報告にかかわって、政府が同委員会に提出した見解では、独自の給与削減措置は全体として極めてまれであり、ごく一部にとどまっているのではという、現状を踏まえればこの指摘は既に当てはまらないというふうに思うんですが、このあたりは先ほどの人事院総裁の答弁と少し違ってくるんじゃないかなという気持ちを私自身は持っておるんですが、いかがですか。

上田政府参考人 お答えいたします。

 御質問にある政府の見解につきましては、平成十四年当時の、引き上げ勧告に際しての一部の地方公共団体の取り扱いを述べたものと認識しております。

 確かに、その後、給与抑制措置をとっている団体が増加していることは事実だと思いますけれども、この政府見解におきましては、そういう団体がごく一部であるということと同時に、これは見解の引用になりますが、「給与改定が人事委員会勧告どおりに実施されなかったとしても、それが県当局の財政事情の下で真にやむを得ない事由による場合には、人事委員会が本来の代償機能を果たしていないと即断すべきではない」という最高裁判例も引用しているところでございまして、人事委員会制度が機能していないわけではないという全体の主張については、私は変わらないのではないかというふうに思っております。

森本委員 きょうのところはそのように承っておきます。

 それで、独自の給与削減措置について、多くの自治体においては、給与勧告制度が尊重できないことから、労使間の苦渋の判断を踏まえて実施しているというふうに聞いております。独自の給与削減措置、これは条例化等の手続と考えますが、まず、総務省はそのことについてはどのようにお考えでございますか。

上田政府参考人 お答えいたします。

 人事委員会が置かれております地方公共団体における給与決定に当たりましては、当然、給与決定のシステムが、人事委員会の勧告を受けてということが想定されておりますので、これを尊重して改定をするということが基本であるというふうに考えております。

 ただ、独自の給与抑制措置というのは、やはりその地方公共団体ごとの事情、それからその地方公共団体の住民の皆様方がどう考えているかということを首長なり議会なりが慎重に判断なさって、それから、多分大抵の場合はそうなっていると思いますけれども、職員団体の皆さんとも十分議論をした上で、まさに苦渋の決断であるかもしれませんけれども、抑制措置をとっているというふうに考えておりますので、それはそれぞれの自治体がその実情を踏まえて必要な判断をされているものというふうに私どもとしては受けとめております。

森本委員 あと、お答えにくい質問だとは思うんですが、今回の地方の、安倍総理のお話の中で、筋肉質の政府をつくっていくんだというようなお話の中に、三重県知事がよく言われるんですけれども、筋肉質の政府というよりも、もう我が県は骨と皮になりつつあるというような、そういう表現をされているんですね。ですから、これからの地方財政とこれからの公務員給与の問題、このことについては、かなり厳しく私は現状認識をしておるわけでございます。

 三重県は今、二百億ぐらい、企業誘致関係でむしろ収入はふえておるんですね。しかし、毎年、ここ三年間、減額の予算で予算編成せざるを得ないような状況の中で、比較的企業立地が進んで、ハイテク産業が元気にしておられますから、南北格差はありますが、まだ恵まれて、しかし、恵まれた環境の中ですら知事がそのような発言をして引き締めをやっておるというような状況の中で、これからかなり、それより少ない人口の町、村はほとんど少なくなりましたが、このあたりに対しては、政府の動きが随分影響を及ぼすと思うんです。

 これは部長にお答えしていただくのがいいのかどうか、大臣の方がいいのかわかりませんが、そのあたりのコメント、これは全く通告もいたしておりませんので、大臣と、副知事を経験された上田部長にじっくりとお話を聞かせていただければありがたいと思うんですが、よろしくお願いします。

菅国務大臣 私、大臣になる前に副大臣も務めておりました。そういうことで、地方の自治体にも何カ所かお邪魔して、自治体の長の皆さんからいろいろな御意見も伺っています。非常に地方そのものが厳しい財政状況である、そういう認識は持っております。

 私は、大臣に就任して思いましたのは、とにかく地方の皆さんにまず安心感を与えることが一番大事なのかなというふうに実は思っています。例えば、交付税も十六年度以降削減をされていますから、それと、予見ができない、来年どうなるかわからない、地方の皆さんからそういうお話がありましたので、まず安心感を与えることができるように、地方の中でも一定水準以上の行政サービスができるような、そういう財源は確保しなきゃならないと、大臣になって改めて実は決意をしたところであります。

 今委員は三重県の話をされました。三重県は、まさに亀山工場で全国に名が売れているところで、そこでもそういう状況ということでありますけれども、私が聞いている限りにおいては、かなり税収はふえているというふうに伺っています。しかし、その分だけ交付税も減っているということも聞いておりますので、そうしたインセンティブも含めて検討する余地があるのかなというふうに私は思っております。

上田政府参考人 大臣の後にこちらが話すこともあれですけれども、給与の決定の仕組みについて申し上げますと、基本的に、当該地域、例えば三重県の区域が非常に景気がよいというのであれば、そういった状況は公務員の給与にも基本的には反映されるべき要素であると思います。

 しかし、従来私どもが国家公務員に準拠するとか基本にしてとか言っておりますが、やはり公務員の給与については、例えば遠くの県であっても遠くの市であっても、たまたまそこが景気がいいからどんと上げるというのも、やはり国民全体の理解という観点からするとどうかと思いますので、もちろん各地域の人事行政機関が適正な勧告をしていただくことがまず原則でございますが、それに加えて、各地域で諸般の事情をよくお考えになって、県であれ市町村であれ、当該自治体の公務員の給与水準を慎重な審議の上決めていただくべきものというふうに考えております。

森本委員 ありがとうございました。

 景気がいいからそこを確保するとか、そういう理論ではなしに、ほとんどの地域がかなり厳しい現実の中で、どんと下がっていくところを、やはりそういうことのないように私は配慮をしていかないかぬ、そんな思いでお話をさせていただきましたので、よろしく理解をください。

 では、また戻りますが、今、西村議員からもこのことについてはお話がありましたが、私は、人事委員会勧告等が、日本国じゅうを見ていくと、これから正常に機能していかないというような現状になっていくと思うんです。

 その理由は、背景である自治体財政の窮迫に係ることになると思うのですが、これは総務省の責任と申し上げましてもなかなか難しい問題だと思うのですけれども、そのことについて、くどいですが、どのように認識されておるのかということと、労働基本権の制約政策と自治体の財政政策の両立について、考え方をお聞かせ願えますか。

菅国務大臣 人事委員会が行う給与勧告は、第三者機関であるという中立性の見地や、民間給与の実態調査を行いこれに準拠して勧告を行うという専門性の見地からも重要なことであると考えております。

 さらに、各地方公共団体が財政上の必要性から独自の給与抑制措置を講じる場合においても、勧告の内容を踏まえ必要最低限のものとされており、人事委員会勧告の機能の重要性は、現在の厳しい財政状況にあっても変わるものではないと思っております。人事委員会勧告制度は地方公務員の給与決定システムとして定着している、このように考えております。

森本委員 労働基本権の制約がされておる政策と自治体の財政政策の両立についてのお考えはいかがですか。

上田政府参考人 ただいま大臣から申し上げたことに内容としては尽きると思いますけれども、基本権の問題と、それから公務員給与の決定の仕組みの問題、それはそれとして一つの一貫した理屈で設計をする必要があると思います。それから、財政構造といいますか財政運営の状況、これは、制度設計の理屈の問題というよりは経済情勢に影響を受けた実態の問題がありますので、これを論理的に両立させる云々という議論はちょっとなかなか難しいと思いますけれども、財政が厳しいから給与決定システムを変えるとか、そういう便宜的なことではないと思うので、やはり基本は、大臣から申し上げたとおり、現在の人事委員会制度というもの、勧告制度というものをバックボーンにしっかり置いて、財政状況も影響を与えますけれども、決定システムとしてはこれを堅持していくのが適当なのではないかというふうに考えているところでございます。

森本委員 例えば、人事委員会勧告がなされても、その人事委員会勧告よりもさらにカットカットで、それが尊重されないようなところがかなり大部分出てくると、人事委員会勧告というのはあくまでも形骸化していくような形になるんじゃないかと思うんですが、その点については、部長でよろしいですか。

上田政府参考人 それは、先ほど申し上げたとおり、今後の動向が余り決めたことが言えないので難しいのですけれども、おっしゃるとおり、最近そういう団体がふえている、あるいは単年度だけじゃなくて、二年、三年という団体がふえていることは事実としてございますけれども、私としては、こうしたものが恒久的なものであるというふうに理解するよりは、やはりこうした経済情勢下の一時的なものだというふうに認識をしております。したがって、人事委員会制度が形骸化をしたというふうには思っておりません。

 また、もう一つつけ加えさせていただくならば、いろいろな給与抑制措置がありますけれども、抑制措置がどういう形で抑制されているかというと、人事院勧告とか人事委員会勧告で勧告された給料表をベースにして、一定の期間、何%我慢しようや、こういうことをされているわけです。勝手に当局が給料表を変えてやっているわけじゃない。そういった意味で、人事委員会制度がおっしゃるほど形骸化しているというふうには私は思っておりません。

森本委員 きょうは、かなり通告よりもいろいろな質問をさせていただきまして、本当にありがとうございます。

 最後に、私は、五千人、今はもう六千人を切った小さな町の役場の職員でございました。ですから、昭和四十三年ごろですと、ほとんど競争相手がいないんですね。ですから、我々の仲間は、少し待っておれば、だれでも役所に入れていただいた時代です。給料は一日四百五十円でございましたから、大体、私の連れは、月三万、四万いただいて、おまえ、ようそこで頑張っておるなという話、二十年間何とかそこでまじめにしておったら生活は人並みにできるというような、そんな現実がありました。これは、終身雇用、恩給の問題もあって、そこそこいくぞというようなことで入れていただいて、三十年たって退職したんですけれども、友達は、いいときにやめるなと言う、これからやないかということで、今の生活がいいか悪いかは、これはいつ危ないというような世界でございますので、そういうことを言われた。

 ですから、終身雇用の中で、そういうシステムがこれまでつくられてきたんですが、私は、今の社会構造の変化で、これは大きく変化してきて、これからそのシステム全体をやらないといかぬという思いをさせていただいております。

 ですから、先般、中川幹事長が代表質問の際に、地域によっては三割も四割もという発言をされました。これは、隣におっていただく逢坂ニセコ町長の時代でも、ラスパイレス八〇台、私の町なんかでも九〇台、九〇そこそこです。ですから、おのずからもう雲泥の差がついておる町。そこへ、こういう発言の中でやっていくと、本当に地域の中で支えていく人材がますますいなくなっていくというような現実があるんです。

 今、地域を支えるメンバーとしては、役所とかJAとか郵便局の皆さんとか、そういう方が地域を支えて、総理の言われる、歴史、文化、伝統を地方で守ってきたメンバーなんですよね。そこが既に全部解体されていくような方向になりますと、まさにこれからの地域がどのように存在していけばいいのか、私は非常に心配をしております。

 ですから、橋本議員が言われた、私自身は、生きがいとして、評価でやらせていただく、そういう人生を歩んできましたが、しかし、それは、そこそこの給料をいただけないと限界があるということもありますから、これは極端な発言をされたと。総理はそれに対してそれほど厳しい発言はされておりませんから、私は安心もしておるんですけれども。

 時代を見るということと、大きく変わってきたということ、そして新しい形で地域が、これは三重県知事では、新しい公という、協働してやっていこうというその動きを新しい公ということで表現しておりますが、そういう中に入ってもがいておる一人の人間として、このことをぜひ訴えさせていただいて、余り極端な方向に国の形が動いていって格差につながらないような、そういう政治をぜひお願いしたいということ。

 そして、もう一点だけお願いして、コメントをいただけたらいただきたいんですが、育児のための短時間勤務制度、自己啓発等の休業、今までも言われましたが、これについても真剣にお取り組みをいただきたい。

 正直な話、少子化対策として、私は四人子供がおるんですけれども、三人目に千円もらっても、そんなのはほかへ回していただいた方が効果があるということを、私は、これで少子化対策、とんでもないという気持ちを持っております。

 それと、時間が来ましたので、続けざまでえらい申しわけございません。大臣、最後に、しつこいですけれども、あすの福島入りについて、午後の委員会で御報告をしていただけないでしょうか。

 以上、よろしくお願いします。

菅国務大臣 今委員のお話を伺っていまして、実は私も高校まで育ったところが人口一万人弱でありまして、世代も同じで、ただ、当時役場に入れる人はエリートでありましたので、優秀だったなと思いながら、今お伺いをさせていただきました。

 いずれにしろ、地方がそういう心配をしないような形をぜひ取り組んでいきたいと思いますし、また、育児のための短時間勤務制、これは私も絶対必要である、こう思っておりますので、来年にはぜひ通常国会で成立をさせたい、こう思いますので、御協力いただきたいと思います。

森本委員 ありがとうございました。終わります。

佐藤委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 私は、給与二法案について、まず人事院の方に伺いたいと思います。

 本年の人事院勧告の基礎となっている民間給与実態調査では、対象企業規模を、五十人以上百人未満の事業所を新たに加えているわけですね。対象企業規模の変更というのは、一九六四年以来の四十二年ぶりのことということになりますが、八月の総裁答弁では、人事院は一九六四年に仲裁裁定を勘案して、人事院みずからの判断として比較の対象規模を百人以上の企業規模に改めることを決定したというのが、六四年当時の百人という規模が適当であるとした理由だという、また勘案した内容などについてお話があったわけですが、改めて伺っておきたいのは、この百人規模が適当だとした理由、そして、そのとき勘案した内容、それをまず最初に伺いたいと思うんです。

谷政府特別補佐人 かなり以前のことでございまして、当時の状況をつぶさに承知することはできないのでございますが、現業職員における仲裁裁定の決定、それから政労の会談の内容を受けまして、人事院といたしましては、現業職員も非現業職員もともに政府の被用者であるという立場については同じであるということを考えて、みずからの判断でこの企業規模の変更を決定したものと承知しております。

吉井委員 いや、六四年当時、百人という規模が適当だとしたわけですからね。適当とするには、適当とした理由があるわけですね。そこに、こういうことを勘案してということがあった内容があるはずですね。古い話だからということじゃなくて、よくそこは調べて臨んでおられると思うので伺っておるんです。

谷政府特別補佐人 先ほどもちょっと御答弁を申し上げましたけれども、私ども人事院の基本的な考え方は、同種同等の民間企業の方々、従業員の方々との比較を行うということが基本でございまして、その中で対象をどのような企業規模のものとして選んでいくかということがあるわけでございますが、その点につきましては、当時、現業職員について百人以上の企業規模に改めるということがございましたので、これにつきましては、ともに政府の被用者であるということを勘案してこの企業規模を採用することとしたということでございます。

吉井委員 公務員の場合ですから、何千人、何万人という規模ですからね。同種同等といったって、それはやはり百人以上といっても実際はもっと大きいところを調べてこられたんですが、それを今度五十人以上ということに変えたわけですね。そうすると、変えたなら変えたで、百人が適当じゃなかったということにもなってくるわけですが、そこのところが、同種同等といいながら、まずおかしいと思うんです。

 六四年のときは、池田総理と太田総評議長との会談による政労合意を受けてだったんですね。そして、三公社五現業の仲裁裁定の際に、百人以上との比較、これを建前として採用するということを言ったわけです。そうすると、百人規模に決めたときには政労合意をやったわけですが、今回の企業規模引き下げに当たっては労働組合との合意があったのかどうかということですね。いろいろ話はしましたというお話は八月にも伺っておりますが、合意というのはあったのかどうかを伺います。

谷政府特別補佐人 現業職員の問題について御答弁申し上げる立場ではないかとは思いますが、そのようなものがあったとは承知しておりません。

吉井委員 だから、合意もなく、とにかく切り下げたというやり方ということ自体がまず不当と言わなきゃいけないと思うんです。

 見直しを行わなかったら月例給で一・一二%引き上げということなんですが、公務員を一〇〇とすると、百人の民間事業所は一〇一・一二と。それでは、五十人以上百人未満の民間事業所の方の指数はどうなっているのかということを伺っておきたいと思います。

関戸政府参考人 これは従来から同じでございますけれども、昨年までは企業規模百人以上のところの調査を行っておりました。そのときも同じでございますけれども、その間の企業規模別の民間給与の水準とか格差というものは算出いたしておりません。今回もそういうものは算出しておりません。

 ただ、今回の勧告に当たりましては、官民給与の比較方法について抜本的な見直しを行わせていただきました。そのことから、参考のために、比較対象企業規模だけではございません、比較方法全体の見直しを行わなかった場合について試算を行った。それが、先生今御指摘の一・一二%という数字でございます。

吉井委員 ですから、もともと百人規模という話を一九六四年当時に決めて、それでいけば一〇一・一二になっているところですが、まず物差しを変えてしまって、上がらないんだ、一〇〇なんだということにしているわけですね。

 次に伺っておきますが、官民比較においても企業規模での格差があることは明確ですが、仕事の種類、役職段階、勤務地域、学歴、年齢を同じくする者同士を比較するというラスパイレス方式においてもそういう格差が出てくるということは、同一の労働であっても同一の給与でなく、企業規模によって格差があるということですが、人事院が対象の企業規模を引き下げたのは、結局賃金水準の引き下げというのがねらいであったのではないかというふうに思うんですが、総裁、ここはどうなんですか。

谷政府特別補佐人 昭和三十九年以来、勧告に当たりましては、官民比較の手法として企業規模百人以上で推移してきたわけでございますけれども、最近の国会における御議論や閣議決定による人事院への検討要請などを見ますと、これまでの比較方法につきましては社会的なコンセンサスが必ずしも得られていないのではないかという疑義を生じました。

 このような状況のもとで、人事院といたしましては、常に、国会、政府はもとより各方面の御意見を聞きながら、みずからのとってまいりました施策の内容について検討を加えていくというのは当然のことでございますので、そういう意味で、学識経験者による研究会あるいは有識者による懇話会等を設置し、その御意見を聞きますとともに、各府省の人事当局あるいは職員団体の御意見も聞きながら検討を重ねてまいりました。

 その結果、先ほども申し上げましたけれども、私どもの一番の基本は同種同等の者同士を比較するということでございまして、その対象者をどの範囲の企業に求めるかというその対象企業の問題でございますが、これにつきましては同種同等の者の比較が可能であれば広いほどよいということにもなるわけでございます。しかし、余り小さな企業まで持ってきますと今度は実効性が失われてまいるわけでございまして、その辺のことをあわせ考えまして、今回の企業規模の変更を決定した次第でございます。

吉井委員 やはり企業規模による格差というのはあるわけですね。

 それで、百人未満の事業所では、百人以上の事業所と比較して、仕事の種類、役職段階、勤務地域、学歴、年齢を同じくする者同士を比較してみても、同一労働でも同一の給与でなくて、企業規模が小さくなるほど格差が生まれてくる。これは現実にあるわけですね。

 この格差というのは、これは数年前、かつて商工委員会などでも取り上げましたけれども、大企業による中小企業への単価の切り下げとか、あるいは買いたたきなど、下請いじめなど不公正な商取引によるゆがみというのはやはり出ているわけですね。だからこそ、公正取引委員会とかあるいは経済産業省の下請代金検査官などが下請いじめや格差の是正に努めているわけでしょう。努めているんだけれども、もちろん不十分なんです。うまくいっていないんです。

 官民格差の是正というのは、本来まず民間の中小企業の低賃金を是正して、そして民間企業の中で大小にかかわらず同一労働については同一賃金に近づけていく、そして賃金格差が解消されるようにする、その上で、私などがサラリーマンになったころは民間の方がずっとよかったですから、官民格差を是正するということで官を引き上げる。

 本来、まず民間企業の中で大と小で極端な格差があるというこの格差を是正する。そのためには、公取や経産省などの検査官に頑張ってもらっていますけれども、やはり国のあらゆる取り組みを通じて格差社会のゆがみを是正するということが、これは大臣、この話は公取がやっておいたらいいとか、これは経産省だというふうな話じゃなくて、まずこの格差社会のゆがみを、大臣が先頭に立って、内閣を挙げて取り組んでいくことをやらないことには、本来の官民格差の前に、まず民間の中にすさまじい格差があるわけですから、そのつくられた格差を引き上げて民の中で格差の是正を図る、その上で官民の是正を図るということをやらなきゃいけないわけです。

 私は、そういう格差社会のゆがみの是正に、これは内閣を挙げて取り組んでいくように、大臣としても頑張ってもらわないかぬと思うんです。これは大臣に伺っておきます。

菅国務大臣 一流と言われる大学に入って、大企業に入った人、中小企業に入った人、その中で給与格差が非常に大きいということは、私は健全な社会でないというふうに思っています。大企業であっても中小企業であっても、やはり能力によって評価される、そういう社会であるべきだと思いますし、格差は固定をされるべきじゃないというふうに思っております。

 そういう中で、再チャレンジ可能な社会、私は、まさに極めて大事なことであるというふうに思っておりますので、このことに全力で取り組んでいきたいと思います。

吉井委員 その再チャレンジの前に、要するに民間の間で、大企業の下請いじめその他不公正取引によってうんと低い賃金水準に置かれているところを引き上げることをやらないと、これは本来の官民の格差是正、本来の姿になっていかないんですね。そのことをやはり内閣を挙げて取り組んでいくのがまず本筋だ、まずそれをやらなきゃいかぬということを言っておきたいと思うんです。

 そこで、人事院として、今回の民間給与調査に百名未満五十名以上の事業を加えることを決めたのは、これはいつのことですか。

関戸政府参考人 先ほど総裁から御答弁申し上げましたとおり、今回の見直しの検討に当たっては、研究会を設けてずっと検証もやっていただきました。その後、研究会の中間取りまとめが三月二十日に出されました。その三月二十日の中間取りまとめの中に、実際に本年の勧告においてどのような規模の企業と比較をするかということについては研究会としても引き続き検討するけれども、そういうことを前提としながらも、民間給与実態調査については、調査もしておかなければ検討もできませんので、企業規模五十人以上の事業所に拡大することが適当であるという指摘が三月二十日の時点で行われました。

 これを踏まえまして、三月の下旬に、調査をどうするかということを決めなければいけない時期でございます、企業規模五十人以上の小規模企業を調査の対象に加える、そういう必要があると判断をして、職員団体にもその旨表明をしたところでございます。

吉井委員 人事院報告の十ページにもありますが、昨年九月、十二月、本年七月の三回にわたって、閣議決定において、比較対象企業規模の見直し等についての要請が行われたわけですね。三度目の閣議決定は七月七日の基本方針二〇〇六なんですが、それ以前に既に調査しているわけですよ。その時点では、既に人事院は比較対象規模を見直してしまって、五十人以上でやっているわけですね。つまり、態度を早々と変更して政府方針に従っていたわけですから、先ほど来議論がありましたけれども、これは、人事院総裁も、本来極めて政府から独立性の強い行政機関だとおっしゃったけれども、独立性を失ってしまっている。

 そもそも争議権など労働基本権を奪っていることへの代償措置として人事院制度があるから、これは政府方針じゃなくて人事院は動かなきゃいけないのに、態度を早々と変更して政府方針に従っていたということは、私は、これは重大な問題だと思うんですよ。総裁、どうなんですか、これは。

谷政府特別補佐人 お言葉ではございますが、方針に従っていたわけではございませんで、昨年、国会を初め各方面でのそういう御議論が出てきたことを承知いたしまして、私どもとしては、みずからとってまいりました施策の内容について改めて検討を加える必要があると考え、昨年の秋から研究会や懇話会も設置をいたしまして検討を始めておったわけでございます。

 その研究会の中間の御示唆といたしまして、民調を始めなきゃならぬわけでございますから、それについては五十人で調査をすることが適当だという御意見をいただきました。それより以前に既に研究会を、昨年の秋から設置して検討を始めているわけでございます。

吉井委員 今、昨年秋とおっしゃったけれども、人事院報告でも書いているように、昨年九月に閣議決定でこのことを出していたわけですから、そして、ことしの七月の二〇〇六の前にこれをやってきたわけですから、態度を早々と変更して政府方針に従っていたというのは、これは事実の問題としてあると思うんです。人事院の独立性をきちんと貫くという点で、これはやはり大きな問題を犯してしまっているというふうに私は思います。

 現在、偽装請負とかサービス残業などで、労働局から是正命令や勧告を受けている企業が多いんですが、正社員をリストラして、派遣、パート、アルバイトにかえて賃金を半分ぐらいに切り下げるというところがある。連日報道されているとおりですが、こうした事業所の賃金水準、超過勤務手当は、これは本来適正なものではないわけですね。少なくとも、こういう労働局などから勧告を受けるような偽装請負その他不正、違法な行為が行われている事業所は、これは調査対象から除外して考えるということもまず行っておかなきゃいけないと思うんですが、これは除外していますか。

関戸政府参考人 現在人事院が行っております民間給与の実態調査というのは、常勤従業員につきまして、調査対象事業所において四月分の給与の計算期間を正常に勤務した者すべてについて調査をしております。実際に支給された額が賃金台帳に記載された者についてはすべて把握をしております。

吉井委員 私が言っていますのは、偽装請負とかサービス残業とか不正なことをやって、あるいは違法なことをやって賃金を下げている、その賃金水準でカウントしたら全体が下がるばかりでおかしいじゃないかということを言っているんです。それは除外してきちんと調査をしていかなきゃ筋が通らないということを申し上げておきたいと思います。

 人事院が、政府の言いなり、方針で、比較企業規模を百人以上から五十人以上へと一方的に変更して賃金抑制につながる勧告を出したことは、私はこれは許されないことだと思います。勧告がない部分について、勧告がないから政府の方はそちらはないんですけれども、勧告にかかわる方で広域異動手当の新設とか扶養手当の一部拡充などだけの法案を出してきたわけですから、私は改正部分については賛成しますが、本来、人事院がやはり百人以上の同じ規模の民間企業との比較を行って勧告を出し直す、政府はそれに沿った給与法を新たに提出するというのが本来の筋なんだということを申し上げまして、時間が来たという通知が来ましたので、質問を終わります。

佐藤委員長 次に、重野安正君。

重野委員 最後になりますが、最後になりますと、前にやられた方々の質問と重複する部分も出てまいります。重複する部分については、可能な限りこちらの方で整理をして、質問しないようにいたしますので、通告しておりますけれども、その点はひとつ答弁者は御理解をいただきたいと思います。

 まず、公務員の労働基本権問題について触れますが、現在、この公務員の労働基本権付与問題はどういう状況に到達しておるのか、まずそれを聞きます。

株丹政府参考人 お答えいたします。

 専門調査会というものがございまして、これは、行政改革推進法に基づきます政令によりまして、行政改革推進本部のもとに設置をされてございます。

 専門調査会におきましては、本年七月以降、三つ柱立てがございまして、一つには、簡素で効率的な政府における公務の範囲、二つ目に、それを担う従業者の類型化とそれぞれのあり方、三つ目といたしまして、以上の二つの点を踏まえました労働基本権を含む労使関係のあり方、以上の三つにつきまして検討を開始したところでございます。

 これまでの議論の状況でございますけれども、公務の範囲あるいは公務員に関します法制度等につきまして事務局より説明を行ってございますけれども、委員の皆様方におかれましては、何を中心に議論すべきか、重要と思われるテーマは何か等につきましてフリートーキングを行ってございまして、これによりまして、今後の本格的な議論の進め方に資するように、論点の柱立てにつきまして年内に整理できるように検討を進めておられるというところでございます。

重野委員 年内にということでありますから、年内にその結論というか考え方が出されて、公務員の労働基本権問題の議論のステージというのか、それが前に一つ転がるというふうな理解でいいんでしょうか。

株丹政府参考人 お答えをいたします。

 フリートーキングを行うことによりまして整理をされる論点の柱立てといいますのは、さらにその後本格的に議論を進められる際の、いわば土俵づくりのような部分があろうかと存じております。十月の会議におかれまして座長から、次回会議において論点の柱立てのたたき台を出していって議論をしていきたいというお話がございまして、各委員からその点について特段の異論がなかったという状況でございます。

重野委員 そうすると、端的に申して、いつごろその結論というか方向というかが出るんですか。

株丹政府参考人 専門調査会につきましては、あらかじめいつまでに議論を取りまとめる等の締め切りといいましょうか、期限が設けられておるわけではございません。

 ただ、当然のことながら、専門調査会におかれまして議論をされて、適宜取りまとめを行うというふうになると承知をしてございます。長い期間、延々と検討を行うというのではなくて、当然のことながら、合理的な期間の中で検討を行われるというふうに承知してございます。

重野委員 それは、そういう言い方もあるけれども、聞いていますと、際限なくずるずると進行していくということになりますよ。そうじゃないんですか。先ほど来質問もありましたけれども、やはり、いつという目標を設定して、それに向かって努力していく、それがILO勧告に対し政府として対処する態度ではないかと私は思うんですよね。だから、あるべき結論をいつまでに出すんだ、そういう縛りがないとこの問題はなかなか到達しないんじゃないかと私は思うので、その点はひとつ強く申し入れておきます。

 次に、これは一部報道でかいま見たのでありますが、労働基本権を付与すれば、現在の手厚く保護されている公務員の身分保障を改めることができるんだ、場合によっては、乱暴な話ですが、簡単に首を切ることもできるんだ、こういう大変な発言も出たというふうなことが書かれておりました。

 大事なことは、この身分保障と労働基本権問題というのは全くステージが違う、そこのところを明確に峻別しておかないと誤ったイメージを与える。この点についてどういうふうに押さえておるのか、認識しているのか、その点について聞かせてください。

株丹政府参考人 先ほど申し上げましたように、専門調査会におかれましては、現在、論点の柱立てに向けた議論を行っておる状況でございます。

 ただ、それとは別に、公務員の身分保障ということに関しましては、公務員につきましては、情実人事を排しまして成績主義で任用を行うということとしてございまして、公務の中立性、安定性の確保のために、職員が恣意的にその職を免ぜられないよう規定が設けられておるというものでございます。他方で、公務員の労働基本権につきましては、地位の特殊性、職務の公共性から一定の制約がなされておるということでございまして、それぞれ、こういうことで成り立ってございまして、基本権の制約と身分保障とは対比をして論ぜられるべき事項ではないとされていると理解してございます。

重野委員 次に、これもちょっと重複するんですが、違った視点で質問したいと思うんです。

 自民党の中川幹事長発言でありますが、十月二日の代表質問の中で、財務省の調査によると云々と、従業員百人以上の民間企業で働く人よりも公務員の給与は平均で二一%高い、そういう発言。高い地域では、三割から四割近くも高い給与をもらっている自治体が目立っている、こういうふうに述べた。こういう官民給与格差はアンフェア格差であり、早急に是正しなければならないと。

 まず、この財務省の調査の中身について聞きたいのであります。平面的な調査だと私は私なりに理解をするんですが、この民間の賃金には、公務にない職種を含むすべての職種、また、非正規従業員もその調査の対象に入っているのではないかというふうに見ているんですが、その調査のやり方について、私のそういう認識が間違っているか間違っていないか、この点についてお聞かせください。

松元政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の資料におきまして地方公務員の給与水準と比較しております厚生労働省の賃金構造基本統計調査でございますが、この賃金構造基本統計調査は、民間企業の水準につきまして、常勤のいわゆる正社員以外の従業員も含めました全産業、全職種の男子従業員の給与水準を比較いたしております。

 両者の比較におきましては、職種や男女の違いは考慮されておらないというものでございますが、地方公務員給与の水準と地域の民間企業の水準を大まかに比較するデータの一つと考えておりまして、平成十四年度より毎年財政制度等審議会の場にも提出いたしているところでございます。

重野委員 だから、非常に乱暴な調査だ、いわゆる調査の手法に科学性がないというふうに言っていいと思うんです。私は、せっかく人事院という機関がある、そこが専門に給与問題について調査をしているという現実がある一方で、そういう委員会に使う資料が、違うところの、今の場合は厚生労働省と申しましたけれども、そういうふうな形で調査したものが使われるというところにやはり問題があるんじゃないかと思うんですね。

 こういう比較になりますと、常勤の公務員と異なる職種の民間企業の従業員あるいは非正規従業員まで加えた民間の賃金、こういうものと比較することになりますから、したがって、役職段階、年齢、学歴等の人員構成の違いというものは出てこないんですね。そういう単純な平均賃金比較をするということ、それをもって方向を定めるということはちょっと乱暴ではないか、不適切ではないか、私はこういうふうに言わなければなりません。

 そこで、地方公務員の給与について総務大臣、国家公務員の給与について人事院の見解、出してください。

谷政府特別補佐人 最初に国家公務員についてお答えさせていただきます。

 人事院といたしましては、国家公務員における官民給与の比較方法につきましては、従前より、公務員と民間企業従業員の同種同等の者同士を比較するということを基本といたしまして、公務の常勤職員に相当する民間の常勤従業員を対象といたしまして、公務におきましては行政職俸給表(一)、民間におきましては公務の行政職俸給表(一)と類似すると認められます事務・技術関係職種の者について、主な給与決定要素でございます役職段階、年齢、学歴、勤務地域を同じくする者同士を比較させ、精密な比較を行っているところでございます。

菅国務大臣 地方公務員の給与決定に当たっては、国家公務員と同様に、同種同等比較の原則に基づき、年齢、学歴等を勘案した、いわゆるラスパイレス方式により対比して公民比較を行うことが適当である、こう思います。

重野委員 そうだと思います。それがやはり基本だというふうに考えます。

 次に、新評価制度について聞きます。

 給与構造改革として、本年四月から新たな給与表、地域手当等が実施されております。ことしの勧告では広域異動手当等が盛り込まれました。

 公務員給与について、職員の勤務成績を把握し、めり張りをつける、それ自体私は否定するものではありません。しかし、それが意味あるものとして機能するためには、職員の理解と納得、職員が受け入れることのできる評価制度、そういうものが私は不可欠だと。

 そういう点に立ちまして、勤務成績の給与への反映の推進、これについて現在どういう進捗状況にあるのか、また新評価制度についての試行の状況と今後の見通しについて、人事院総裁。

谷政府特別補佐人 私どもが取り組んでおります給与構造の改革は、地域の民間賃金をより適切に反映させるための地域間配分の見直し、それから、年功的な給与上昇を抑制し、職務、職責に応じた給与構造への転換、勤務実績の給与への反映の推進などを目的といたしておりまして、俸給制度、諸手当制度全般にわたって改革を行うことといたしております。

 勤務実績の給与への反映の推進につきましては、この改革の重要な柱の一つとなっているものでございます。

 具体的に申しますと、ほとんどの職員が一年に一号俸昇給しておりました普通昇給と持ち回り的な運用になりがちであるという御指摘のあった特別昇給につきまして、従来の俸給表の号俸を四分割することによりまして、より弾力的な昇給幅を確保した上で、勤務実績に基づくいわゆる査定昇給を可能とする仕組みに改めたほか、勤勉手当につきましても、勤務実績の支給額への反映を拡大するための人員分布率の設定等を行ったところでございます。

 その上で、勤務成績の判定に係る改善措置といたしまして、成績上位者の判定の尺度や標準的な勤務成績に達しないとされる場合の判定基準を示して、本年四月から管理職層につきまして先行して実施しているところでございます。さらに、現在、一般職員への活用につきましても、平成十九年度からの実施に向けて必要な準備を進めているところでございます。その際、御指摘のように、これらの措置が意味あるものとして十分機能するためには職員の理解を得ることが必要だと考えておりまして、御意見も聞きながら検討を進めております。

 新たな人事評価の第一次試行でございますけれども、これにつきましては、人事院と総務省が共同で、本年一月から六月にかけまして本府省の課長級及び課長補佐級の一部を対象に実施して、大きな問題もなく終了したところでございます。第二次試行につきましては、第一次試行の結果を踏まえまして、評価基準等について必要な見直しを行い、本府省の係長級、係員級についても対象を拡大いたしまして、明年の一月より開始をする予定となっております。

重野委員 もう時間も来たようであります。そこで、通告しておりました幾つかはもう飛ばします。ひとつお許しください。

 育児休業制度の見直しがうたわれております。男性職員が積極的に育児休業を取得するよう促進することは重要なことであると私も認識しておりますが、問題は、そのためにこれまでどのような措置を講じ、また今後いかなる措置を講じようとしているのか。男性職員が積極的に育児休業制度を活用するための具体的な仕組みというか方策、これをひとつお聞かせください。人事院。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 平成十七年度におきます男性職員の育児休業の取得率は一%ということで、女性が九割以上行っているのに比べて非常に低い状態になっております。このような状況になっている背景といたしましては、これまでの職場慣行の中で、男性職員の育児に対する意識が必ずしも高くない、あるいは職場の中で休みづらいというようなことが考えられますので、各府省において職員サイドあるいは当局サイドともに意識改革を図っていく必要があるというふうに考えております。

 人事院といたしましては、これまで、例えば昨年から、妻の産前産後中に五日間取得できる育児参加休暇を導入する、あるいは育児、介護のために早出遅出勤務ができるような仕組みをつくるというようなことをやって対処してきたところでございます。さらに、ことしの八月の給与勧告に合わせまして、育児のための短時間勤務制度というものの意見の申し出を行ったところでございまして、これによって仕事から完全に離れることなく育児が行えるという仕組みができるところでございます。

 積極的に男性職員がこの制度を活用することによって男性職員の育児参加が拡大すればというふうに考えているところでございます。

重野委員 使用者である総務大臣、今の点について。

菅国務大臣 私は、委員御指摘のように、男性の育児休暇というのは極めて重要なことと考えております。

 今答弁されましたけれども、私どもはそうした環境をつくることができるように全力で取り組んでいきたいと思います。

重野委員 以上で終わります。

佐藤委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 これより両案について討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

佐藤委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

佐藤委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 この際、ただいま議決いたしました両法律案中、一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案に対し、谷公一君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、社会民主党・市民連合及び国民新党・無所属の会の五会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。谷公一君。

谷委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。

    一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び人事院は、次の事項について、十分配慮すべきである。

 一 人事院は、俸給の特別調整額の定額化について、民間の役職手当の動向などを十分踏まえ、管理職員の職務・職責が的確に反映されたものとなるよう努めること。

 二 政府は、育児のための短時間勤務制度及び自己啓発等の休業制度について、人事院の意見を踏まえ、検討を行い、関係法案の早期提出に努めること。

 三 公務員制度改革を検討するにあたっては、労働基本権の在り方も含め、職員団体等の意見を十分聴取し、理解を得るよう最大限努力すること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

佐藤委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

佐藤委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、総務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。菅総務大臣。

菅国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨に沿い、努力してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

佐藤委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時五十六分開議

佐藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 行政機構及びその運営に関する件、公務員の制度及び給与並びに恩給に関する件、地方自治及び地方税財政に関する件、情報通信及び電波に関する件、郵政事業に関する件及び消防に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、参考人として日本放送協会理事石村英二郎君及び日本郵政公社理事佐々木英治君の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として総務省大臣官房長荒木慶司君、自治行政局長藤井昭夫君、自治財政局長岡本保君、情報通信政策局長鈴木康雄君、総合通信基盤局長森清君、郵政行政局長須田和博君、政策統括官寺崎明君及び消防庁長官高部正男君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武正公一君。

武正委員 一般質疑ということで、移らせていただきます。

 まず、午前中、我が党の森本委員も大臣に尋ねました件でございますが、聞くところによりますと、明日四時から四時四十五分、福島テルサにおきまして、市町村長各位ということで、自民党福島県連幹事長名で、菅総務大臣との懇談会開催の御案内ということで出ているようでございます。地位利用に当たらないように適切にやるんだと先ほど大臣言われましたけれども、そもそも選挙を所管する総務省、その所管大臣でありますので、選挙中にこうした形で、当該知事選挙が行われている地区に入って、市町村長を集めた場に懇談会ということで出ること、これはやはりいろいろな疑義が生じる可能性がある、こういうふうに考えるわけですが、選挙を所管する担当大臣として、改めてこれに対する考えを伺いたいと思います。

菅国務大臣 私は、大臣に就任してから、これは毎週日曜日、地方のそうした会合に出させていただいております。しかし、私自身も、地位利用、先ほど森本議員からお話がありましたけれども、あるいは公選法違反、そうしたものに十分に注意しながらそうした発言をいたしておりますので、あすも、自民党本部の要請に従いまして福島県に午後から入る、そして向こうの県連の会合に出席する、そういうことであります。

武正委員 まだ御予定が立っていないかもしれませんが、きょう沖縄知事選も告示をされておりますが、沖縄の方にもまた行かれる御予定があるんでしょうか。

菅国務大臣 まだ沖縄からは、党本部からはありません。

武正委員 重ね重ね、所管大臣として地方を見て回る、大変大事なことだと思いますが、選挙中に何もそこの当該自治体に行く必要はないわけでありまして、それについてはやはり慎重な対応が必要だというふうに思っております。

 過日、テレビ朝日ですかね、「スーパーモーニング」で、これは習志野市ですか、選挙開票風景で、ウエストポーチを持ったりポケットに投票券らしきものを出したり入れたりする、こういう報道も流れております。まあ、遠目でありますからそれが投票券かどうかわかりませんが、来年は統一自治体選挙、参議院選挙があるわけでありますので、総務省の手引が実は全国各地の開票所で遵守されていない、こういった疑義もありまして、やはり所管大臣としては慎重な御対応をお願いしたいと思います。

 さて、質問に移らせていただきますが、命令放送について、先ほど本会議でも、我が党の逢坂議員からも総理への質問もありました。適切にということで総理の答弁もありましたが、NHKにおいでいただいておりますので、お聞きをしたいと思います。

 三問一緒にお聞きをしたいと思いますが、まず、四月一日、命令放送書伝達時に、当時の統括官から、今は審議官になられたようですが、口頭で留意事項の要請を受けたことで番組編集に何らかの影響が全くなかったと考えるか、これが一点。総務大臣が命令放送を電監審に諮問しようとしているが、そのことをどのように受けとめているか。仮に電監審が命令放送について答申で認め、総務大臣の命令放送に、拉致問題に留意することという項目がつけ加えられた場合、番組編集に与える影響は全くないと考えるか。以上三点、NHKから伺いたいと思います。

石村参考人 NHKとしましては、拉致問題を含めまして、これまで報道というのは、ニュースだと判断したものは国際放送のニュース番組でしっかり取り上げてきた、今後も当然取り上げていく方針であります。

 四月の時点での口頭での命令ですが、大規模災害、それからテロ、拉致問題。大規模災害といいますと、もう最近皆さんの記憶にもあると思いますけれども、スマトラの大津波、それからパキスタンの地震、それからテロといえば、もうイラクは当然ですけれども、いろいろな形で、ヨーロッパでもロンドンとか、それからエジプトのシナイ半島とか起きました。それから、拉致問題もさまざまな動きがあります。

 当然、報道機関として、これはもうニュースだと思った時点でいち早く伝えているというのは、これは自信を持って言えることでありますので、口頭で言われたということに関係なく、当初からニュースであるものはすべて報道を、ニュースとして判断して大きく取り扱ってきたという自負を持っております。

 それで、仮にこれから諮問があってということがあれば、これはまだこれからの話なんでしょうけれども、この部分についても、NHKとしては、これまでの自主的な編集判断のもと、報道機関として自主自律の立場を堅持して、これまでどおり自主編成を貫いてしっかり放送していくという立場に何ら変わりはありません。

武正委員 一点確認したいんですが、四月一日の文書伝達時の統括官からの発言でありますが、先ほどこれも命令というふうに言われたんですが、口頭で命令を受けたというふうに先ほど言われましたけれども、我々は口頭での要請というふうに理解しているんですが、その点の確認を。

石村参考人 私、大変失礼しました。口頭で要請を受けましたということでありました。ちょっと発言の訂正を。

武正委員 事ほどさように、NHKからすると、総務大臣に呼び出されて統括官から命令文書を渡されて一言言われても、それが命令というふうに承る。やはり所管省庁、しかも予算は国が出す、国会がそれを判断、そういうような関係があるということですから、やはりNHKに対する命令放送、しかも放送法三十三条にのっとってということの持つ意味は、単にこれまでの口頭の要請とは違う大変重い意味を持つ。しかも、法律にのっとれば何でもできることはやりたい、総務大臣の意気込みはわかるんですが、しかし、やはり法三条の番組編集の自由、これを侵害するとすれば、三十三条にのっとってやれるんだというのは、やはり越権、法律ののりを越えていると言わざるを得ないのでございます。

 そこで、二十四日閣議後記者会見、大臣は、家族の皆さんから現状を実は聞きました、先週ということでございますが、重ねて、このことはいつだれと会って家族の皆さんから話を聞いたというふうに述べておられるのか。

 それから、二十六日の当委員会の質疑でも、これは社民党重野委員の質問に答えて、私はこの放送を決断するに当たって被害者の方からもいろいろお話を聞きましたというようなことを述べておられますが、先ほどの、先週どなたと会ったのか、そしてまた、被害者の方からいろいろお話を聞きましたという答弁は、例えば拉致家族の皆さんから具体的に命令放送の要望を受けたことがあるのか、あるとすればそれはいつなのか、以上、あわせてお答えをいただきたいと思います。

菅国務大臣 まず十月二十四日の閣議後の記者会見でありますけれども、このチェックにまず不備があったことはおわび申し上げたいと思います。正確には、「先週、拉致問題対策本部と私ども総務省も入りまして、「しおかぜ」の担当者から現状を実は聞きました。」そうするところでありました。このことは総務省のホームページでも訂正してあります。

 ただ、私は二〇〇〇年から、あの万景峰入港禁止の特定船舶禁止法案、あるいは輸出、輸入、送金をとめることのできる外為法改正など、自民党の中で責任者として、議員立法をつくるために取り組んできました。その段階から、家族会の皆さんやあるいは救う会の皆さんとも何回となくお会いをさせていただいて、さまざまな要望を受けているということも事実であります。また、私が大臣に就任してから、家族会の方、私の大臣室にもお見えになった方もいらっしゃいます。

 そして、私がこのことを検討する、そうしたことが報道で流れた際に、北朝鮮による拉致被害者家族連絡会及び北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会は緊急声明を実は発していただいています。

 その中で、「放送法には、「命令放送」の規定があり、総務大臣は、NHKに政府の重要政策等の放送を命令できる。脱北者の証言等によると、」云々という中で、「総務省、NHK等関係者は、拉致被害者の安全確保のために、為し得る事はすべて行なうという姿勢をとっていただきたい。ここに強く求める。」家族会の横田めぐみさんのお父さんの滋さん、それと救う会の佐藤会長の連名でこのことを支持するということを、私にその場でも、私のことが報道された後、電話がかかってまいりました。

 また、先ほども申し上げましたけれども、それ以前からこうしたことについて要請があったことも事実です。

武正委員 今のは、電話がかかってきたということでよろしいんでしょうか。

菅国務大臣 私の発言が、検討するということを言ったときに、表に出たときに、こういう声明を出すということで電話がかかってきました。それ以前からも、これはもっと言うとかなり以前から、私が大臣になる以前からもこうしたことについて要望があったということは事実です。

武正委員 この間も取り上げましたが、十月十日の予算委員会で大臣が述べたのは、「しおかぜ」への支援ということでございました。十月十三日閣議後記者会見で命令放送ということが出まして、この間も大臣は答弁で、「しおかぜ」支援と命令放送は別な観点である、これも認めておられます。

 私は、お手元には資料で、三ページ目には、「「しおかぜ」の今後について」、当初、特定失踪者問題調査会荒木代表が二十五日付で流したメール、この間も取り上げましたが、命令放送で「しおかぜ」を流してもらいたいとは思いませんと、(2)に書いてありますことをこの間も挙げております。私は、やはりこの命令放送の対応というのは慎重であるべきということを重ねて申し上げたいと思います。

 そこで、アジア放送研究会というのがことしフォーラムを開きまして、NHKの短波ラジオ放送縮小、そしてまた、テレビに軸足を移すことへの危惧ということが参加者から出されたということが報道で流れております。趣旨とすれば、アジアなりでいろいろと流れている外国語放送、これを聴取している皆さんが集まっての研究会、そしてまた、当然、短波放送が北朝鮮の拉致事件の解決に有効であるということは重々承知をして、それについてはやはり強化をすべし、こういう意見を持っておられます皆さんでありますが、ただ、そのときに、NHKの短波ラジオ放送が縮小してテレビに軸足を移すということが危惧であると。この間、大臣言われたように、北朝鮮ではテレビはハンダづけというお話もありました。こういったことがこのときの報道ではあったんですけれども、今、NHKとして、海外向けの短波放送を縮小してテレビに軸足を移す、こういうお考えがあるのかどうか、伺いたいと思います。

石村参考人 ラジオの短波放送というのは、かつては唯一の国際放送の情報の発信手段だったんですが、今、世界を見てみますと、その有効性がちょっと低くなっているということで、例えばイギリスのBBCなんかも使用言語を大幅に削減して、短波によるサービスを世界的には縮小する傾向にあるというのが一つです。それからもう一つは、インターネットなどの普及で非常に放送・通信技術が急速に多様化してきている、これが二つ目です。それから三つ目は、加えて、八俣から送信しているんですが、これの設備そのものが非常にもう老朽化しておりまして、これの更新、補修というのに、十年ぐらいの計画ですけれども、百億近いやはりお金が必要になってきている。

 そういういろいろなことがありまして、NHKとしては、インターネットなどの普及が十分でないところは短波放送をやっていこう、ただ、限られた資源というか予算というか、そういう中でやるので、やはり発信力として力が出るテレビの方へ段階的にその軸足を動かしていこう、そういう方針で今準備を進めているところです。

武正委員 総務大臣、今のを聞かれて、当然、参加者からは、先ほどの事件の解決のために有効であること、あるいは、海外に渡航する日本人が当然ラジオを携帯して旅行されている、テレビをどれだけ持ち歩いているのか、日本で今始まっているワンセグなどが、では海外でどこまでできるのか、こういったこともあります。そういったことから、やはり海外向けの短波ラジオ放送が縮小するという、こういったことに対して懸念が出されたんですが、このことを総務大臣としてどのようにお感じになりますか。

菅国務大臣 ラジオの国際放送につきましては、重要な役割があるというふうに私は思っておりますので、そういうことに留意しながら、検討すべき点は検討していきたい、こう思います。

武正委員 私が言いたいのは、「しおかぜ」への支援はぜひやっていただきたい、やりましょう、ただ、命令放送はやはり放送法三条の懸念がありますと。

 そこで、実は大事なのは、このNHKの短波ラジオ放送などが縮小することを避ける、こういうことにまず総務省として手を尽くすべきではないのか、こういうことで伺ったんですが、この点はいかがでしょうか。

菅国務大臣 先ほど申し上げましたけれども、重要性をかんがみながら検討したいと思います。

武正委員 重要性はお感じになっておられますか。

菅国務大臣 私は、十分に感じております。

武正委員 そこで、BBC放送のことを伺いたいんですけれども、先日、BBCにも英国政府は命令放送をやっているんだ、こういうようなお話でございました。

 そこで、またちょっと調べてみたんですけれども、政府の命令放送というのが、防衛及び緊急事態の取り決めということで、BBCは政府の閣僚から要請される告知事項を放送しなければならない、八条一項があるわけなんです。ただ、具体的には、北アイルランド紛争に関しサッチャー政権が第八条第二項に基づいて、第八条第二項というのは、国務大臣は何らかの事項の放送を差し控えるようBBCに要求ができると。さっきの一項は、閣僚からの要請があれば放送しなければならないと。二項は、逆に放送を差し控えるよう要求できると。具体的には、八条二項に基づいて、北アイルランドのテロ活動関係者の声明の放送を禁止した事例が八八年十月から六年間あったのみである、こういうように指摘をされているんですけれども、この事実を把握されておられますでしょうか。防衛及び緊急事態の取り決めということで、あったとしてもこの一件のみである、こうした指摘があるんですけれども、いかがでしょうか。

菅国務大臣 そうしたことについては把握をいたしております。

武正委員 ですから、日本政府は四分の一の予算をNHKに出しておられますが、この間大臣は、英国政府は半分出しているんだよと。でも、何々を放送しなければならないということは言ったことがなくて、放送してはだめだよということが、この防衛及び緊急事態の取り決めということで、北アイルランド紛争に関し、北アイルランドのテロ活動関係者の声明の放送を禁止した事例、これ一件のみということなんですね。

 先ほどのNHKの、それこそ海外向けの短波放送を縮小というようなことからかんがみれば、やはりそうした面を総務省としてしっかりと支援をしていくということがあっても、やはり、このBBCを参考に命令放送ができるんだということは当たらないというふうに考えますが、この点はいかがでしょうか。

菅国務大臣 私も、前の委員会で武正委員からその御指摘をいただきましたので、このことについては、私も役所に指示しましていろいろ調べました。

 ただ、見出しについては防衛及び緊急時の取り決めとされているが、条文上は、いつでも要請ができる、こういうことになっているようでありますし、全体の制度設計というのがこれは異なると思っていますので、単純な比較ができるものではないと思いますけれども、イギリスにおいて、我が国の命令放送に類似する制度として、特許状に基づく政府との間の協定書において、国内放送、国際放送問わず、いずれの国務大臣もBBCに対し告知の放送の要請をすることができ、BBCはそれに従わなきゃならない、また、メディア・文化相はBBCに対し特定の事項等を放送しないように指示することができることとされている。

 また、このラジオ国際放送について、特許状においてBBCに提供義務があるとされており、具体的な実施方法は政府との間の協定書で規定をされている。具体的には、BBCは、外務大臣が事前に承認した地域に対し、また言語により、外務大臣等の同意を得て設定される目標及び優先順位に従って放送しなきゃならない。また、BBCはワールドサービスが高水準の編集上の自律性を維持することを確保しなければならない、こうなっていることも承知をいたしております。

 いずれにしろ、日本との制度が違いまして、単純的な比較はできないと思いますけれども、こうなっていることも御理解をいただきたいというふうに思います。

武正委員 この間、BBCのことを例に挙げられましたので、やはりそうした慎重な政府とそれから放送の関係があるということを指摘したいわけでございます。後ほど触れますNHKの番組の独立性、中立性、これを担保するために、BBCと英国政府はそうした関係を築いている、これはやはり参考にすべきだというふうに思うわけであります。

 そこで、先ほどちょっとテレビの話がありましたが、NHKが国際放送テレビを来年進めていく、概算要求も三億円、総務省はつけたということでありますが、この目的というのはどういうことでございましょうか、総務大臣に伺いたいと思います。

菅国務大臣 国内のことをできる限り海外に発信したい、そういう内容で概算要求三億円いたします。

武正委員 いわゆるCNNではありませんが、海外に向けて日本のさまざまな主張を伝えていく、そういったことが昨年来、外務省を初めいろいろなところで、政府で議論されておりますが、この趣旨にのっとったということでよろしいんでしょうか。

菅国務大臣 海外への情報発信の強化というのが政府・与党合意とされた、そういうことに基づいて日本のことを発信していこう、そういうことです。

武正委員 そういうことをやるのは大いに結構でございますが、先ほど触れましたように、そのことが、やはり放送の独立性、中立性というものが担保されて初めて海外に対する影響力が出るということと、それによって、今度逆に、北朝鮮の拉致被害者の救出のための短波放送が削減されては何のことはないというふうに考えるので、このことを改めて申しておきたいと思います。

 そこで、総務大臣は、八日に電監審に諮問するんだ、このように既に述べておられます。過去の答申を見ますと、即日答申が出ているわけでございます。

 私は、これだけ議論になっている命令放送でありますので、慎重に慎重を重ねて、諮問についても思いとどまっていただきたいと再三申し上げているんですが、もし仮に諮問されても、これは総務大臣からゆっくりやるようにとかはなかなか言えないのかもしれませんけれども、私は、きちっと時間をかけて審議をしていただきたいというふうに思うわけです。

 放送法にも、三十三条の命令放送について電監審に諮問を命じた場合、放送法では五十三条ですか、電波監理審議会への諮問、先ほどの命令放送は三十三条、諮問を命じた場合の五十三条については意見の聴取。この意見の聴取を「電波監理審議会は、」「諮問を受けた場合において必要があると認めるときは、意見の聴取を行うことができる。」利害関係者から、そういうことでありますので、私は、当該NHK関係者あるいは当然民放各局にも大変影響力のある今回の命令放送だと思っております。民放各局のそれぞれ社長さんたちが、そろって今回の命令放送は慎重にということも述べております。私は、やはりそのぐらい大変大きな決定だというふうに思っております。

 先ほどの拉致家族の皆さんからのそうした御要請というものは重く重く受けとめますが、それよりもまず先に、海外短波放送が縮小されないように、こういったところ、やるべきことがたくさんあるんじゃないかということでありますので、仮に万が一諮問しても、そうした関係者からの意見の聴取を含めて、私は、電監審は慎重な諮問への議論を進めていただきたいと思いますが、これについて総務大臣としての御所見。直接そうすべきだとは言えない立場はよくわかっておりますが、私のこうした考え、電監審のあり方、そもそも電監審は公正、中立である、そういった成り立ちもあります。総務大臣にも勧告できる、そういう立場でもありますので、私の考えについてどのように考えられますでしょうか。

菅国務大臣 前段の国際短波放送については、私先ほど申し上げたとおりで、極めて重要だということを私は認識いたしております。そのもとに戻って検討したいということであります。

 この電波監理審議会がいつ答申するかについては、やはり審議会が判断されることであると思っていまして、行政としてはその判断にあくまでもゆだねるべきであって、私がここでいろいろなことを言うことは差し控えるべきである、こう思います。

武正委員 ぜひ、そうした放送法で認められている権能が幅広く活用されて、仮に諮問された場合、電監審が慎重な議論を進めていただくよう私からお願いをしたいというふうに思います。

 さて、最後の質問ですが、こういうような議論の中で、NHKさんは今改革を進めておられますが、その準備ができたということで、この間も聞きましたように、それこそ四十八件でしたでしょうか、督促状も出し、そして九百万件近い未契約者に対しては民事訴訟も行う、こういうようなことを既に発表されております。私は、こうしたNHKの番組の独立性、中立性、これをNHK改革の柱の一つとして実現をしていく、このことが実はやはり聴視者から、受信者から求められていることではないかと思うんですね。

 ですから、今回の命令放送が実現すれば、NHKにとってもこれは大変なことだというふうに思います。それぞれの番組編集が侵されることはないと言いますが、担当大臣が法律にのっとって命令をして、それが影響を与えないということは普通考えられない。それこそ、新聞でいえば新聞の編集権、これと同様に番組の編集権、これを担当大臣が指図する、こういったことでありまして、私は、今NHKにとっても大変大事な時期を迎えていると思うんですね。ぜひNHKとして毅然たる対応をしていただきたいと思います。

 私はやはり、そうした独立性、中立性への信頼がNHKの海外向けの短波放送あるいは国際放送で確保されることがひいては拉致事件の解決につながるもの、BBCの報道の中立性、公平性がそれこそ世界に与える影響力が大きいということもありますので、このように考えますが、NHKとしての御所見を伺います。

石村参考人 NHKの改革のまず第一というのは、やはりNHKだからできる質の高いニュースや番組を出すことだということで、今、全国を含めて一丸となってその体制を築いているところです。

 それで、NHKが放送しています今のラジオ国際放送ですけれども、ラジオ・ジャパンというブランドは非常に知れ渡っていまして、諸外国の方々からも大変高い信頼を得ております。海外、国内の各地で、例えばイラクのあの内乱状況の中、それから災害が起きたら一番に駆けつける第一線の取材者たちは、千数百人、海外と国内にいますけれども、高い志を持って取材活動に当たっています。こうした気持ちは、我々は今後も、報道機関として自主的な編集のもとで放送を行うという確固たる基本姿勢で臨みたいと思っております。

武正委員 以上で終わります。ありがとうございました。

佐藤委員長 次に、田嶋要君。

田嶋(要)委員 民主党の田嶋要です。菅大臣、よろしくお願いいたします。

 大臣、もう二年も前ですか、大臣とは一緒に、おれおれ詐欺の関係で他人名義の携帯電話の防止の法律をつくらせていただきました。それまでは、自民党にも菅(かん)さんがいるのかなというぐらいの知識しかなかったんですが、法案を一緒につくらせていただいて、大変誠実な、まじめな人柄に接することができました。ぜひ、大臣になられてからも、まさにそういったお人柄で責務を果たしていただきたいというふうに思っております。

 きょうは、所信表明に対する質問ということで三十分いただきましたが、若干いろいろ話が飛ぶかもしれませんけれども、幾つか質問させていただきたいと思います。

 まず最初にでございますが、先日、総務委員会で、今、武正委員の言われたNHKの命令放送に関する話がございましたが、きょう私は命令放送に関する質問ではございませんが、そこの部分の答弁の中で印象強くあったのは、いわゆる行政指導という言葉に大臣は触れられまして、行政指導という形ではなくして法律という形にのっとってということをおっしゃいました。その背景には、これも二度言われていますが、やはりオープンな形でということで、これは一つの政治家としての御見識のあらわれだろうというふうに私は理解をしたわけでございます。

 そういう大臣であるからこそ、直接それとは関係のない話でございますが、一つ確認をさせていただきたいことは、竹中大臣のときに、放送と通信の融合ということに関するいわゆる竹中懇というのがございました。それと、今、委員会は違いますけれども、教育に関係いたしました教育再生会議というのがございまして、これはいろいろな議論がされて、大変重要な会議であるわけですが、両方に共通をしておる問題点として指摘されることの一つに、両方ともいわゆる議事録、会議が基本的に非公開であるということであったというふうに私は思っております。まあ、それ以外もいろいろあるかと思うんですが。

 せんだっての大臣の御所見、すなわち、やはり国民の前にわかりやすく、説明責任を果たす、オープンな形でということを命令放送の関係でおっしゃったその大臣が、これから大臣として恐らく同じような懇談会とかそういうことをつくっていく可能性もあるかと思いますが、こういった有識者会議等を開く場合に菅大臣としてはどのようにお考えになられているか、その方針をお聞かせいただきたいというふうに思います。

菅国務大臣 私、NHK問題については、田嶋委員がおっしゃるように、口頭だとか要請ではなくて、やはり法律に基づいてオープンにした方がいいだろう、そういうことをたしか申し述べています。そしてまた、竹中大臣のもとでのいわゆる竹中懇、これも実は副大臣として通信・放送の在り方に関する懇談会に私は出席もしておりました。

 この懇談会でありますけれども、議事内容については、会合終了後に竹中大臣と座長が、松原さんでありますけれども、記者会見を行うとともに、議事要旨、会見概要及び配付資料を作成し、公表し、透明性を確保していた、これについてはこのように思っています。今後も、この有識者会合を開催する場合には、やはり透明性というものは物すごく大事だと思っていますので、このことは私はさらに広げていきたいというふうに思います。

 ただ、討論の現場でありますけれども、有識者の方は、やはり自由闊達な討論ができないからそこに入れることは勘弁してほしい、参加者からそういう要請が委員会の中にはあることも、これは御理解をいただきたいと思います。

田嶋(要)委員 いろいろなそういう有識者会議、性格が異なるものもあるかと思うんですが、しかし、そこで議論される中身が政府の方針に直結をするような大変重要な会議、そしてメンバーも非常に限られている中でどういったことが議論をされているのかということは、議員それぞれ、あるいは国民の皆様がやはり大変関心のあるところだと私は思うんですね。

 したがって、特にオープンなということを強調された大臣でございますから、任期の間、そういったものは極力、議事録の要旨というのではなくて、会議そのものをオープンな形でやっていっていただきたい、そういう原則を貫いていただきたいなというふうに私は思っております。よろしいですか。

菅国務大臣 懇談会は、座長とか構成員の方々が相談されて、それぞれ会社や団体のトップに今後の経営戦略、国際戦略など忌憚のない意見をお願いしたい、これは実は私がお願いしたICTの国際競争でありますけれども、そういう中で、皆さんの中で実は非公開にされました。

 ただ、先ほど申し上げましたように、会合後に座長から記者ブリーフを行うとともに、議事要旨を総務省ホームページで公開するなど、情報公開にはこれ努めていきたい。そして、さらに最終まとめのパブリックコメントも、私のこの懇談会では行っていきたいというふうに考えています。

田嶋(要)委員 次の質問に移りますけれども、地方自治体をめぐるさまざまな事件というのが今出てきております。きょうの新聞でも、福島の方と和歌山の方に関しまして、収賄を認めた、それから起訴をされたという話が出ておりました。そういったことに関連をいたしましての質問でございます。

 前回の委員会でも出ました多選にかかわる問題でございますが、これはかつて何度も法案ということで試みがあり、憲法との関係とかでなかなか難しい問題があるということがあったわけでございますが、そういった中で、今回のこの福島の一件を契機に少し流れが変わってくるのかな、そのような予感を感じさせる、私はそれは大変結構なことだというふうに思っておるわけでございます。そういった中で、岩手県知事の発言とか、あるいは与党の方でもやはり多選はまずいという空気がだんだん広がっているというふうに聞いておりますので、私はそれ自身大変いいことだろうというふうに思っておるわけです。前回の委員会でも、大臣も、個人的にというふうに一言添えながら、そういった方向性に関しては反対をされていない印象の答弁をされておったわけでございます。

 しかし、もちろん、多選を禁止するというか多選がなくなることによって今さまざまな自治体で起きている問題のすべてがなくなるとはとても思えないわけでありまして、そういったことをこれから少しでも起きないようにしていくために、独禁法とか官製談合の防止法とか、そういったものの強化、あるいは入札改革、そういったものも行っていかなければいけないと私も思っております。

 組織論として、一番のトップである首長の多選がなくなっていくということと同時に、大臣の方から、もしそのほかにこういうところを変えていくべきではないかというような御意見がありましたら、行政の組織の中の組織論として御所見をいただければと思います。

 特に、やはりこういった問題は多くの場合公共事業に絡む場合が多いということで、和歌山の場合でもそうでございました。福島もそうです。トンネルだ、ダムだと、どこも似たような構図で、多くの国民は氷山の一角じゃないかなというふうに、不安というかそういうふうに思っている方も大変多いんではないかというふうに思うんですが、特にそういう自治体の公共事業に絡む部署とか、そういったところの組織あるいは人事、そういったことに関して、首長の多選の問題以外に、何らかの対策というか、あるいはこういったことも検討してほしいという大臣としてのお考えがあったらお知らせいただきたいと思います。

菅国務大臣 今まで公共事業に関する不祥事というのは多くの場合不透明さの中から出てきているというふうに思っています。ですから、入札の仕組みを透明にするということは極めて大事なことであるというふうに思います。

 それぞれの地方自治体で、その入札基準について、一般競争入札だとか、指名競争をやめるとか、今いろいろな制度をつくり、試行錯誤をしているというふうに思っています。

 いずれにしても、一番必要なのは、やはり透明性を担保することがこの問題については一番大事だと思います。

田嶋(要)委員 組織のあり方という観点からは、何かアイデアというか、お考えはございませんか。

菅国務大臣 今までの不祥事を見てみますと、本来であれば議会や監査委員会がチェックしていて起きないようなことが実は起きておるわけでありますので、そういう意味で、実効性のチェック機能というのをどういう形で組織としてつくるかということ、これはそれぞれの地方団体も今模索をしているというふうに実は思っています。必ずしもこれをやればこうなるということはないのかなというふうに思います。というのは、これは何回となくこうしたことは今まで繰り返され続けておりますので、そういう意味で、やはり私は、もちろん組織もそうですけれども、職員の意識改革だとかそうしたことも物すごく大事なことであって、透明性だとか意識改革だとか組織だとか、そういうものが相まってこのような不祥事がなくなっていく、そういうふうに思います。

 いずれにしろ、議会だとか地方の問題は地方でできるのが理想的だというふうに、私はチェック体制が働くのが理想的だと思いますけれども、残念ながらこうしたことが出てくるのには、今私が申し上げましたけれども、透明性だとかチェック体制だとか組織のあり方、そういうものが相まってこれをなくすことができるのかなというふうに思います。

田嶋(要)委員 トップだけは選挙で選ばれるわけでございますが、しかしやはりいろいろな一連の出来事を見ておりますと、私、個人的にはもちろん存じ上げない、どういう方かわかりませんけれども、本当に最初からそういう悪いことをする方なのか、それとも、ポストが徐々に、そういうふうに長くそこにいることによってそういう環境になっていくのか、そんなようなことをいろいろ考えるわけであります。つまり、最初は極めてわきをしっかりと締めて、そういったことに身ぎれいにということで信念で始まった方であっても、長い時間がたつうちにという、いわゆる権力は腐敗するということであれば、選挙で選ばれる首長の部分の多選の問題だけではなくして、やはり公共事業に絡む、いってみれば似たような、権力がお金という意味で集まってきている部分の担当の部署に関しての何らかの人事的な工夫ということも必要ではないかなと。

 私は、これは官の世界だけではなくて、やはり同じようなことが民間でもあると思います。調達部門というのは何かにつけいろいろ問題が起きる部分だというふうに思いますので、そういったところをぜひこれから、先ほどの官製談合防止法とかそういうこと以外の側面として、組織論としてアプローチをしていく必要があるんではないかというふうに思っております。

 それから次に、報道に関する質問をさせていただきます。

 これは、実はきのうテレビを夜見ておりましたら、あるニュース報道番組で司会の方がこういうようなことをおっしゃっておりました。これはいじめとか自殺の関係ですけれども、皆さん、テレビを今ごらんになっていて、微に入り細に入り私たちの番組がそういった問題を報道していないことをお気づきだと思います、そういうような話を司会者の方がされたんですね。それは要するに、非常にそういうことを慎重に、放送の良心というか、報道の良心というか、そういうことに関して御指摘を本人がされていたわけでございますが、その中で、私も初めて知った言葉で、群発自殺という言葉があるようですね。これは、先ほどの午前中の答弁で大臣は連鎖的とおっしゃったんですが、まさにそのことを指しているようでございまして、実際そういう専門用語があるそうでございます。きのうのそのテレビでも、群発というふうな言葉が画面に出ながら、司会者の方がそのような説明をされておりました。

 私、地元を歩いていても、もちろん悲惨な事件が後を絶たないということですが、一方で、夕飯どきは勘弁してほしいとか、そういう意見の方もかなりいらっしゃるのも事実でございます。そういったことで、いわゆる群発自殺、つまり似たような事件をテレビで見、新聞で見ということがさらなる類似の事件を誘発しているという可能性というか、そういった考え方ですが、その現象、これに関しては私も詳しくはわかりませんが、WHOの勧告というものもあるということでございますけれども、きのうの夜のマスコミの方の発言というのはある意味で私にとっては非常に新鮮に聞こえたわけでございます。昨今のこういった事件、連発するこういう事件に関するマスコミの今の報道のあり方ということに関して、大臣、どのような見方を今されているかということをお伺いしたいと思います。

菅国務大臣 今委員から御指摘のありましたWHOの勧告等において、自殺報道についてはマスメディアの報道の仕方によっては自殺予防に十分寄与する可能性がある反面、センセーショナルな報道等が特に若者に影響が強く、複数の自殺を誘発する危険性がある、こういうことが実は指摘をされております。

 放送分野において、放送事業者におきましては、自殺を肯定したり賛美したりしないことだとか、あるいは自殺関係を含むプライバシーの侵害に配慮することなどを規定はいたしております。放送された番組に対する苦情、特に人権等の問題についてNHKと民放連が共同で設置した第三者機関が対応など、放送分野、放送事業者についてはそうしたことには留意はしているというふうには思っていますけれども、しかし、続発自殺ですか、こうしたことが続く中で、やはり引き続きこうしたことに十分放送事業者は配慮をしていく必要があるというふうに私は思っています。

田嶋(要)委員 もちろん報道の自由、知る権利ということが大変重要なわけでございますが、しかしこれだけ連発をしていると、少しそういうことを感じる方もふえてきている。そういう中で、昨晩のニュースの解説者御自身がそういうことをわざわざ言われておる。私たちも悩みながらやっていますというようなこともおっしゃっておりました。大変難しい問題だとは思いますが、まさに、むしろ生きる力を何とか引き出すような部分のニュース報道なんかもふえてくるといいなというふうな感じがいたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、全くまた分野が変わった質問をさせていただきます。テレワークということに関して質問をさせていただきます。

 これは、安倍内閣総理大臣が所信表明の中でテレワークということに触れられました。委員会では余り、これまでどなたからも質問がなかった分野だというふうに理解をいたしておりますが、いってみれば、ブロードバンドの環境が広がってくる中で、職場に集まって仕事をするというライフスタイルじゃないものを指すというふうに私は理解をしておりますが、大臣、このテレワークということに関して、まず一般的などういう御理解をされているかということを教えていただきたいと思います。

菅国務大臣 さまざまな人たちが、育児なりを抱えた場合でも自分の自宅で仕事をできる、そういうこと、あるいは、ほかの方でも会社に来なくても同じような仕事を自宅でできる、そういうふうに思っています。

田嶋(要)委員 このテレワークがどのぐらい普及をしているか、企業においてどのぐらい実践されているかということの各国の比較があるかと思うんですが、今、例えば日本とアメリカと韓国はどのぐらいの普及率になっているんでしょうか。

寺崎政府参考人 お答えいたします。

 平成十七年版の情報通信白書によれば、企業におけるテレワークの実施率は、米国が六八・九%、韓国が二一・二%、日本が一四・七%、こういう数字があります。

田嶋(要)委員 私がやはり変だなと思うのは、ブロードバンドで結構世界でも有数の環境ができたという話をよく耳にします。それは料金が下がったとか、ネットワークが広がったとか、速度が速くなったというんですが、ハードだけ幾ら整ってもそれを利用しなければやはり宝の持ち腐れになるという感じがするわけですが、まさに総理自身の所信表明の中にも出てきているテレワークがどちらかというとまだ非常にマイナーな感じがして、総務省として、あるいは大臣として本当に力を入れていこうとされておるのかということが私には何となくまだ伝わってきていないわけでございます。

 今の数字を見ても、アメリカなんかはブロードバンドは日本ほど充実はしていないと理解していますし、お隣の韓国はかなり進んでいるかもしれませんが、かなり大きな開きがあるというような印象を受けます。

 午前中の御答弁の中でも、育児のための短時間労働ということなども大変重要視をされておるということですが、まさにツールとしてこのテレワークということがもっともっと生かされるように旗振りをやってもらわないといけないなというふうに私は思っておるわけです。

 そこで、もう一つ質問させていただきたいんですが、まず隗より始めよではございませんが、総務省自身におけるテレワークの取り組みというのは今どういう状況にあるのかということを御答弁いただけますでしょうか。

菅国務大臣 テレワークについては御指摘のとおりであるというふうに思っていますので、私も、所信の中でテレワークという言葉は使わなかったんですが、u―Japanの中にこのことを私ども入れて、これから極めて大事なことである、そう考えて、これは全力で頑張っていきたいというふうにまず思っています。

 さらに、総務省はどうなんだ、こういうことでありますけれども、総務省では、政府が率先してテレワークを実施する観点から、育児、介護に携わる職員を対象に、中央省庁で初めて、恥ずかしい話ですが先月末からテレワークを開始いたしました。育児、介護に携わる職員のうち希望する職員を募集し、現時点では六名がテレワーク実施者として登録をされております。

 まだテレワークを開始したばかりであり、評価する段階には至っておりませんが、今後、システム改善や対象業務の拡大などを検討して、目的を達成できるように頑張っていきたいと思いますし、他の省庁にもこれをどんどんと広げていきたいと思います。

田嶋(要)委員 テレワークというのは、言葉だけは大昔のマルチメディアとかISDNなんという時代からあったんですね。言葉はあったけれども、その環境が整っていなかったから当時は絵にかいたもちだった。今は逆に、ブロードバンド環境はできているのに、制度がどうのとかいろいろな理由で全然進んでいないというのが今の数字でもわかるんですが、霞が関の総務省というのは何人いるんですか、職員は。

菅国務大臣 二千二十七人です。

田嶋(要)委員 ちょっと大きい数字だと思いますが、大体二千名以上ですね。だから、二千名とか二千五百名とかいう数字の中で六名というのは、はっきり言って余りやる気がないというふうに言わざるを得ない。

 テレワークというのは本当に重要だと私は思うんです。環境もそろっているんですから、少なくとも、旗振りの、所管の大臣の担当の総務省でもっともっと大きい数字になっていかなきゃいけないと思うんです。日本の民間企業ももう少し取り組んでいるところは取り組んでいますし、先ほどのアメリカとかでは、私自身も経験していますが、すごく利用されていると思うんですね。

 職種によってテレワークが難しい職種は多くあるんですが、私は、基本的に霞が関のホワイトカラーの仕事というのは多くの方々がむしろテレワークにはなじむ仕事だというふうに思っておるんですね。

 だから、二千名もいたら、せめて週に一回ぐらいは半分ぐらいの職員がテレワークをする、そのぐらいやっていかないと、例の電子政府とか電子自治体が目標の五〇%に対して一%とか、そういう世界と似たような話がここにもある、数字だけ掲げているという感じがするわけでございます。

 ぜひ、この際にその重要性を御認識いただいて、もう少し強力に旗振りをしていただきたいということをお願いいたしたいんですが、最後にもう一度御決意をいただきたいと思います。

菅国務大臣 先ほど六名と申し上げましたけれども、育児休業取得者の方が十人いて、そのうち六人ということで御理解をいただきたいと思います。

 ただ、委員が今言われましたように、私どもは、ここで胸を張って答えられるように、総務省としてテレワークをこれを機にさらに推奨していきたい、このことを申し述べます。

田嶋(要)委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 最後に、残り五分を切っておりますけれども、夕張の関係といいますか、財政再建のことをお伺いさせていただきたいと思います。

 夕張は、御案内のとおり、初めての例ではございませんで、これまでも多くの自治体が同じような状況に追い込まれたということは前回の委員会でもございました。まず最初にお伺いしたいのは、昭和三十年代あるいは五十年代に言ってみれば財政再建団体のラッシュが起きたわけでございますが、私は、高度経済成長後のそういったラッシュの時代、それから今回はバブル崩壊後最初の事例としてこういったものが久しぶりに出てきたわけでございますが、過去の教訓が本当に生きているのかというような印象がいたします。

 これから、より早い段階でそういった破綻が起きないような制度を今検討を開始しているというふうにおっしゃっておるわけですけれども、かつての、一番最近であれば昭和五十年代のラッシュのときの経験から十年ぐらいアクションをとるのが遅いのではないかなという印象を私は持っているわけでございますが、大臣、いかがお考えですか。

菅国務大臣 私も、遅い、同じ意見であると考えております。

 平成四年度以降の再建団体は、福岡県の旧赤池町、委員御承知のとおりだと思いますけれども、平成十三年度以降はありませんけれども、赤字団体数の割合や財政指標から見ても、バブル経済期以降、地方公共団体の財政は非常に悪化をしているということも事実でありまして、財政健全化を進める必要性というのは極めて大きくなってきております。

 現行の再建法制においては、予防的措置やストックレベルの指標がなく、これまでにも見直すべきであったというふうに思っておりますが、地方分権、きょう推進法を上程させていただきました、そういう中でやはり地方の自己規律による財政健全化というのは避けて通れませんし、しっかりとした再生制度を整備しなきゃならないということで今研究会をやっているという状況であります。これも、できる限り早くこうしたものに対応できるものにしていきたいと思います。

田嶋(要)委員 遅過ぎるということに関しては同じ意見だということが確認されたわけでございます。

 一つ、質問通告はない点ですが、きょうの朝刊には、その夕張市に関しまして赤字債を認めていく方向だみたいな記事が、事実かどうか知りませんが、そういうふうに書いてございましたけれども、前回の委員会で後藤委員の質問に対しましては、昭和五十年の、夕張の前に起きた、直近の、今御指摘ございました福岡県の赤池町のケースと夕張のケースで国の関与の仕方は変わらない、同じであるというふうな御答弁があったと理解をいたしております。今回、この記事の中身がもし事実であれば、その答弁とは異なって、赤池町ではやらなかったことをやろうとしておる、そういう意味でございましょうか、大臣。

菅国務大臣 後藤委員に答えたときと状況は変わっておりません。ですから、赤字公債の発行というものは考えておりません。

田嶋(要)委員 じゃ、新聞記事は根拠がないということですね。

菅国務大臣 どういう根拠で報道したか知りませんけれども、私が今答弁したとおりです。

田嶋(要)委員 最後にもう一点だけ。

 債務調整に関しても少し前に記事がございました。債務調整という考え方に関して大臣が大変関心を持っておる、これも根拠がないことでしょうか、大臣。

菅国務大臣 これは私が申し述べたことです。

田嶋(要)委員 じゃあ、これは今後やっていきたい、実現に向けて頑張っていきたいということでしょうか。

菅国務大臣 今、新しい地方財政再生制度研究会の委員の皆様にお願いをして行っていただいています。その中で、債務調整に私は関心があるので、今までの概念を解き放ってさまざまなことから検討してほしい、そういうことを実はあいさつの中で申し述べたということであります。やるやらないということでなくて、今までの概念を解き放った中で、こうしたことも含めて検討していくのがこれからの地方財政の規律のためにもいい、私はこう思っています。

田嶋(要)委員 最後の質問ですが、その詳細はこれからということですが、その方向性として、これまで護送船団方式で、言ってみれば、銀行から見れば自治体に金を貸していても実際に見えている顔は国の顔だというようなところがあったとすれば、この債務調整という考え方が入ってくれば、当然、銀行側も貸し手側のリスクを負うわけでございますから、今まで仮に一〇〇国がおんぶにだっこに肩車をしていたとしたら、一〇〇の状態を、ゼロにはならないでしょうけれども、一〇〇が五〇とか、そのように国の関与を下げて、そして借り手と貸し手の両方に、言ってみれば財政規律というか、貸し手と借り手の間の緊張感というか、そういったものをつくっていこうというような考え方をお持ちということは、その点だけは大臣は明確にお持ちですか。

菅国務大臣 これについては、憲法上いろいろな問題があるとかいろいろな意見がありますので、そうしたものを整理してほしい、そういうことです。

田嶋(要)委員 では、以上で質問を終わります。ありがとうございます。

佐藤委員長 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 民主党の鈴木克昌でございます。

 委員長のお許しをいただきまして、私、本委員会で三十分ほどお時間をいただき、平成電電に関して御質問をさせていただきたい、このように思っております。昨年の十月三日に民事再生手続を申し立てた平成電電株式会社、このことに関連をして質問させていただきたい、このように思っております。

 同社は、御案内のように、有名俳優を起用して大々的にテレビコマーシャルを打ちました。そしてまた、日経、朝日、読売等、大手新聞社に広告を出して出資を募っていたということは委員の皆様方も記憶に新しいことではないかな、このように思っております。

 そして、その結果として、一万九千人もの一般市民の皆さん、これらの方々が平成電電設備株式会社、平成電電システム株式会社の匿名組合契約に出資をし、その額は何と四百九十億円であったわけであります。

 平成電電株式会社としては、平成電電設備そして平成電電システムに出資をしたものであって、当社、平成電電株式会社とは関係なく、勝手にお金を集めたんだ、このような言い方をしておるわけであります。そして、最大の被害者である匿名組合員の皆さんは平成電電株式会社に対する直接の債権者ではないというふうにされておるわけでありますが、実質的には計画倒産ではなかったのかという声も上がっているわけであります。

 そこで、なぜ一万九千人もの国民の皆さんが出資をしてしまったのか。私は、その理由をつかむためにいろいろと調査をさせていただきました。すると、次のような結果が出てきたわけであります。

 このボードをごらんになっていただくとわかるんですが、いわゆる総務大臣の許可、そして新聞出資募集広告、それから平成電電本体のテレビのコマーシャルということであります。そして、一万九千人もの国民の皆さんは、総務省のお墨つきである平成電電である、このことを新聞やテレビ等で見て、そういったことがいわゆる強い動機になったということはもう明らかだというふうに私は思うわけであります。

 そこで、順次お伺いをしていきたいんですが、きょう私の質問を多くの出資者そして関係者がごらんになっておる、聞いていただいておるというふうに思うんですけれども、まず、一番上の総務大臣の許可、つまり、第一種通信事業の許可を受けているということで一万九千人の国民の皆さん方はこの投資スキームに大きな信頼を寄せられたわけでありますが、当時、第一種通信事業者を許可する際の基準について、まずお伺いをしたいと思います。

    〔委員長退席、岡本(芳)委員長代理着席〕

森政府参考人 お答えさせていただきます。

 第一種電気通信事業の許可の基準でございますが、旧電気通信事業法第十条の第一号から三号に記載がございます。第一号は、その事業を適確に遂行するに足りる経理的基礎及び技術的能力があること。第二号は、その事業の計画が確実かつ合理的であること。第三号は、その他その事業の開始が電気通信の健全な発達のために適切であることというふうに記載されております。

 さらに、第十一条でございますが、欠格事由といたしまして、第十一条第一号、旧法でございますが、電気通信事業法または有線電気通信法もしくは電波法の規定により罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、またはその執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者、それから第二号といたしまして、許可の取り消しを受け、その取り消しの日から二年を経過しない者に対しては許可をしてはならないというふうに規定されております。

 この両方、第十条と第十一条がいわゆる許可の基準ということでございます。

鈴木(克)委員 局長がおっしゃりたいのは、法に準じてというか、のっとって許可を出したんだということでありますが、実質的な基準がよくわからないので、私の方でも調べてみようと思いました。

 そこで、平成電電株式会社が総務省に申請した第一種電気通信事業許可申請書の情報開示について、開示要求をいたしました。そうしたら、こういう書類が出てくるわけですね、まさに大部分が黒塗りです。私は先ほど総務省のお墨つきでというふうに言ったんですけれども、私がいただいた資料もお墨つきで戻ってきた。本当に話にならないわけですね。

 もう一度、先ほどの資料を見ていただきますと、ここにありますように、五十一歳で一千五百万円出された出資者は、平成電電の株主名それから第一種電気通信事業者免許から社会的信用が高いと判断して投資をした、それから下の方、四十一歳の一千万出資をされた方は、総務省から免許を受けて営業しているから信用した、こういうことなんですね。

 にもかかわらず、出されたものがまさに黒塗り、墨塗り。一体全体どうしてこんなものが返されてきたのか、御答弁いただきたいと思います。

森政府参考人 お答えさせていただきます。

 御指摘の各申請書を不開示とした理由は、次の三点でございます。

 一つは、競争環境下にある電気通信分野における経営戦略上の重要な情報につきましては、これらの情報から競争事業者等は当該事業者の経営状態、信用度合い、将来の経営戦略等々に係るさまざまな内容を分析することが可能でございますので、これらの情報を公にすることにより当該事業者の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると認められたこと。

 二つ目に、設備の設置の場所、それからネットワーク構成に係る情報も不開示にしておりますが、これを公にすることにより、特定の建造物またはシステムへの不法な侵入、破壊を招くおそれがあるなど犯罪を誘発し、または犯罪の実行を容易にするおそれがあり、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあることでございます。

 それから三点目に、印影、判この部分を不開示にしておりますが、これを公にいたしますと偽造等による当該法人の不利益を生ずるおそれがあるということから、不開示にさせていただいている次第でございます。

鈴木(克)委員 今、三点の理由をお示しいただいたわけでありますが、委員長や委員の皆さん方も本当にお考えいただきたいと思うんですが、この会社のどこを守ろうとしておるのかということであります。

 冒頭申し上げました、一万九千人もの方々から四百九十億円という巨額な金を集めたこのスキームを解明しようとしておる、それに対して、このようなまさに真っ黒に塗られた書面を出してきて、今も言われたように、三つの理由だということであります。

 しかし、もうこの会社は既に破綻している会社じゃないですか、死んでいる会社じゃないですか。その会社をなぜ守ろうとするのか、私には理解できません。それは、そうじゃなくて、守るのは違うんですよ、あなた方自身を守ろうとしておるんじゃないですか。そうとしか思えないですよ。今回は民主党の鈴木克昌だったからこんな程度の資料でいいというふうに思われるのかもしれませんけれども、もしそうじゃなかったら、与党の議員が資料請求したらどういう形になって出るんですか。同じなんですか。

 そういうことも含めて、何を守っておるのかということをはっきり答えてくださいよ。

森政府参考人 お答えいたします。

 平成電電が行っておりました事業につきましては、その後転々といろいろ譲渡されておりまして、ある会社に、現在も行われておるわけでございますが、不開示とさせていただきました先ほどの情報を公開した場合には、その事業を承継した現在でも行っている会社の、先ほどのような各種の観点の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるということが不開示の理由でございます。

 いずれにいたしましても、私どもとしては、最終的に、国民、利用者、電気通信事業の利用者の利益が守られるということが最大限であると考えております。

鈴木(克)委員 もちろん最終的には利用者の利益が守られるということは大前提です。しかし現実に、くどくなりますけれども、一万九千人の方々が、本当にある意味では家庭破壊をしたり、路頭に迷ったり、大変な状況になっておるわけですよ。四百九十億円ですよ。

 今、転々と事業譲渡をされておるというふうに局長おっしゃったわけでありますが、現在生きておるということなんですけれども、では事業譲渡をどこの会社にしておるんでしょうか。お答えいただきたいと思います。

森政府参考人 お答えいたします。

 現在の最終的な事業を行っている会社の名前はソフトバンクテレコムでございます。

鈴木(克)委員 もう少し詳しく私も調べてきたことを申し上げるといいんですけれども、時間の関係もございますので、また話が非常に複雑になりますので、ここでは申し上げるのをちょっと割愛いたしますが、登記簿を追っていきますと、平成電電株式会社という名称の会社が二つあるということがわかってまいりました。

 私は、先ほどの第一種電気通信事業の申請書とともに事業譲渡譲受認可申請書の情報開示も求めたわけでありますが、やはりこちらの方も黒塗りでありました。

 今、局長がおっしゃった情報開示ができない平成電電株式会社は事業譲渡前の平成電電株式会社であるわけですが、事業譲渡した後の平成電電株式会社、こちらは要するに平成電電株式会社により被害が出た会社でありますけれども、こちらの方は破産をしておるわけですよ。だから、破産をした会社を守るという必要はないわけですよね。情報開示してもいいんじゃないかというふうに思うんですが、そのところはいかがですか。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、事態が非常に複雑でございますけれども、平成電電という会社の名前が二回出てまいります。これは、一回目に許可を受けた会社が、名前を変えた最初の会社が平成電電、そこから譲渡された会社がさらに名前を変えたのが同じく平成電電、そこからさらに譲渡をされたのが日本テレコム、そしてその社名が変わったのがソフトバンクテレコムということでございます。

 確かに二回目の平成電電は破産しているわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、事業というか設備はそのままずっと承継されておりますので、したがって、同じように開示はいたしかねる、こういうことでございます。

鈴木(克)委員 ちょっとここだけではなかなか委員の皆さん方も瞬間的には御理解をいただけないわけですが、本当に複雑怪奇な状況なんです。要するに、私が冒頭申し上げましたように、これは明らかに詐欺、だまし、ごまかしということでありますから、うその上にさらにうそを塗りたくったような状況になってきておりますので、簡単にはちょっと御説明できないわけであります。

 しかし、私はもう一遍申し上げますが、総額四百九十億円、そして一万九千人もの被害を出したこの事業譲渡後の平成電電株式会社の事業計画がどのようなものであったのか、資金調達計画はどのようなものであったのか。ここについて情報開示がないということは、ちょっと極端なことを言いますと、だれも総務省の許可申請過程をチェックできないということになるんじゃないですか。だれもできないんですよ、総務省しか持っていないわけですから。これは、先ほども言われましたが、まさに国家インフラだと。そして、最終的には国民の通信を守らなければならない、それは当然そうなんですけれども、いわゆる通信事業の許可申請についてチェック機能が本当に働いておるんだろうか。ここを私は一番知りたいわけですし、そこを今お尋ねしておるわけですよ。

 これは、黒塗りで開示できないということでは、結局このことは、だれが聞いても、いつ聞いても、永久にわからないということですよ。本当にこんなことでいいんですか。四百九十億、一万九千人の方々の被害が現実に出ておるにもかかわらず、いや、それは開示できませんと。本当にこの真っ黒の、墨塗りでいいんですか。

 僕は、きょう委員長を初め皆さん方からも資料請求してもらいたいと思いますよ。どういうものが出てくるのか。余りにも、これじゃどうやってチェックするのか。ちょっと興奮していますけれども、本当にチェックのしようがないじゃないですか。

 私は、第一種電気通信事業の申請書、それから事業譲渡譲受認可申請書、この二つの開示を改めて強く申し上げますけれども、いかがでしょうか。

森政府参考人 お答えさせていただきます。

 内容は重複いたしますけれども、先ほどの不開示とした理由をもう一回申し述べさせていただくことになりますが、このことは行政機関の保有する情報の公開に関する法律の規定にもかなうものでございまして、不開示にさせていただくのが法律上の要請であることを御理解いただきたいと思います。

鈴木(克)委員 役所の体質というか、本当に変わっていかないものだなということをまざまざと私は今感じておるわけでありますが、同じことを何遍繰り返しても、恐らく繰り返しの御答弁になりますがということになると思いますので、視点を変えさせていただきます。

 では、第一種電気通信事業の許可を受けた法人の総計、私が伺ったところだと五百四十九法人というふうに聞いておるんですが、そのうち、平成電電株式会社のように倒産に至った法人というのはどれくらいあるんでしょうか。

森政府参考人 お答えさせていただきます。

 第一種電気通信事業の許可をしたものの中で、これまで倒産という形での数の把握はいたしておりませんけれども、電気通信事業の廃止の手続をとった事業者は四十五社でございます。

鈴木(克)委員 五百四十九法人の中で四十五社が廃止の手続をとった、倒産かどうかわからないということであります。

 いずれにしましても、その中に平成電電が入っておったということなんですね。多いのか少ないのか、ちょっと判断が、倒産であるかどうかということがわからないものですから、私も判断のしようがないんですが、例えば、平成電電に対して、他の認可事業者と比べて審査過程が甘かった、こういうようなことは考えられませんか。

森政府参考人 お答えさせていただきます。

 先ほど四十五の会社が廃止の手続をとったというふうに申し上げさせていただきましたが、例えばほかにどういう会社があるかといいますと、ポケットベルのような会社でございますね。これは当時非常にはやりましたけれども、その後の技術の進歩が非常に激しいということで休止に至ったりしておりまして、いろいろな例があるわけでございます。

 いずれにいたしましても、旧法当時、情報通信審議会の諮問、答申も受けながらこの許可の手続をしておりまして、私どもといたしまして、特定の会社について審査が甘いということはないものと考えております。

鈴木(克)委員 審査は甘くないということをおっしゃったわけでありますが、もう一度、私、くどくなりますが、資料の件につきまして、ぜひ委員長、この資料が出てこないとわからないんですよ。要するに、許可が甘かったのか、適正であったのか、それから資産内容というかそういった計画が間違っていなかったのかどうかということは全くわからないわけです。ぜひひとつ委員長に計らっていただきたいというふうに思いますが、その点どうでしょうか。

岡本(芳)委員長代理 理事会で協議いたしたいと思います。

鈴木(克)委員 よろしくお願いいたします。

 それでは、次に進ませていただきます。

 まず、第一種電気通信事業許可申請書、墨塗りがしていないところだけで見ていきますと、申請事業者名がトライネットテレコムというふうになっておるわけですね。実は、平成電電とは違う会社なんです。

 こちらも、先ほど申し上げましたように、登記簿を追って調べていきました。トライネットテレコムは、平成十二年一月三十一日に設立した通信ベンチャー会社、申請日は十三年四月二日、十三年四月二十六日に許可がおりておるわけですね。いわば設立後一年ちょっと、非常に新しいベンチャーだったわけですよね。

 この非常に新しいベンチャーであるトライネットテレコムに許可が出たということなんですが、その理由はいかがでしょうか。

森政府参考人 お答えいたします。

 トライネットテレコムは、委員御指摘のとおり、平成十二年に会社を設立いたしまして、平成十三年に第一種電気通信事業の許可を受けております。

 事業の参入に関しましては、旧電気通信事業法に基づき、総務大臣の許可が必要であって、その際は、先ほど申し上げましたように、各種の観点から基準についての審査をし、許可を与えたということでございます。

 ポイントだけ申し上げますと、先ほどの第十条第一項の経理的基礎及び技術的能力の関係といたしましては、トライネットテレコムは、事業に係る所要資金は自己資金により賄うというふうにされておりましたし、また同社は電気通信主任技術者を有しておりました。また、第二項の事業計画の確実かつ合理性につきましては、収支見積もりにつきましては、適正かつ明確な算出根拠に基づいており、合理的に作成されているものと認められたことがございます。それから、第三項の電気通信事業の健全な発達のために適切であることという項目につきましても、事業の開始によって電気通信市場が一層活性化することが期待され、公正競争を阻害せず、また利用者の利益、国民の利便の確保に反せず、電気通信の健全な発達のために適切であるというふうに認められたことからでございます。また、当然ながら、十一条の欠格事由にも該当しなかったということでございます。

 なお、会社として一年しかたっていないとか、そういう経過年数は参入の審査の基準とはいたしておりません。

 以上でございます。

鈴木(克)委員 時間も押してまいりました。登記簿をずっとまた追っていきますと、トライネットテレコムに一〇〇%出資をしておるいわば親会社、トライネットインターナショナルという会社があった。このトライネットインターナショナルは、もともとはトライという会社で、いわゆる不動産、土木会社。このトライネットインターナショナルが一〇〇%出資したトライネットテレコムが通信事業の許可を受けるに当たって、事業計画が円滑に遂行されるであろうと判断された理由は何か、これがまず一つ。要するに、トライネットテレコムが通信事業の専門家であると判断された理由は何か、これが一つ。

 時間の関係で続けてお伺いしますが、土木会社を親会社に持つトライネットインターナショナル一〇〇%出資のトライネットテレコムが通信の専門家であった、今局長はそうお答えになったんですが、私はそのようには到底思えないんですね。このことをあわせて御答弁いただきたいと思います。

    〔岡本(芳)委員長代理退席、委員長着席〕

森政府参考人 お答えいたします。

 事実関係をまず申し上げますと、最初に許可を受けたのがトライネットテレコムという会社でございまして、そこが後に平成電電に名前を変えた。そして次に、その親会社の、今先生御指摘ございましたトライネットインターナショナルという会社にその事業を譲渡した。そして、そのトライネットインターナショナル社がさらに平成電電というふうに名前を変えたというのが前提になるわけでございますが、今の御質問は、譲り渡された方のトライネットインターナショナル社の適格性ということでよろしゅうございましょうか。

 それについて申し上げますと、この第一種電気通信事業の譲り渡しとか譲り受けにつきましては、旧電気通信事業法の第十六条三項でございますが、総務大臣の認可が必要であるということになっておりまして、その際は、先ほどの第一種電気通信事業への参入の許可の際の基準、第十条と第十一条が準用されております。

 それで、今の、トライネットテレコムからトライネットワークインターナショナルに譲渡された際、同様に審査をいたしたわけでございますけれども、各項目につきまして、それぞれ基準に合致している、あるいは欠格事由にも該当しないということから、認可がなされたものでございます。

 なお、親会社の、譲り渡された方のトライネットワークインターナショナルは、平成八年から第二種電気通信事業の資格を有していたことを申し添えたいと思います。

 以上でございます。

鈴木(克)委員 時間が参りましたので、最後に大臣にちょっとお尋ねしたいんですが、今、いわゆる通信事業における規制緩和というのが進んでおるわけですけれども、何がどう変わっていったかというと、チェック機関が総務省からNTTに変わっただけじゃないか、極端なことを言うとそんなような気がしてならないわけですよね。規制緩和によって参入しやすくなったがゆえに、今回のような事件が起きるというふうに私は思います。

 今懸念されておる、社名を出していいかどうかわかりませんけれども、近未來通信社のケースも全く同様のスキームですよ。現在の通信事業の規制緩和政策の負の効果といいますか、私はやはり問題があったというふうに思うんですけれども、大臣はどのような御見解なのか、御答弁いただきたいと思います。

菅国務大臣 電気通信事業分野におきましても、市場構造の変化に柔軟に対応するために、平成十六年度から第一種、二種の事業区分を廃止するとともに、事業参入を許可制から原則届け出制に改める等の規制緩和を行ってまいりました。その結果としては、料金の低廉化やサービスの多様化が一層進んでいる、このことは御理解をいただけるというふうに思います。

 一方で、こうした電気通信市場における競争の進展に伴って、事業者が市場から退出する等により事業を休廃止することになる場合は、休廃止の届け出を出させているところであります。

 総務省としては、市場における競争の結果、電気通信事業者が市場から退出せざるを得ない事案が起これば、電気通信事業法の規定にのっとって、利用者利益の保護の観点から適切に対応していきたいというふうに思います。

鈴木(克)委員 これで終わりますが、ぜひひとつ、情報開示、本当にこの部分がなければ次から次へとこういう問題が起きていく、私は、このことを強く申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

佐藤委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 最初、大臣に伺っておきたいんですが、小泉構造改革のもとで、さまざまな格差の拡大というのが生まれました。これは政治問題となっているわけですが、地方団体についても例外ではなく、都道府県相互の間それから市町村相互の間で格差拡大の傾向が見られます。大臣にそこで聞いておきたいんですけれども、現状をごらんになって、自治体間での格差拡大があるという認識を持っていらっしゃるのかどうか、これを最初に伺っておきます。

菅国務大臣 最近の地域経済の状況については、まず、地域ごとの状況にばらつきがあるものの、全体としては回復基調にあるというふうに考えています。

 しかし、地域間で経済力に差があることは事実であり、そして、都市と地方の不均衡は、解決をしていくべき重要な問題であるというふうに思っております。

 このため、私は、「頑張る地方応援プログラム」を来年度からスタートさせて、地方の頑張りを支援して、地方の活力を高めていきたいと考えております。またその際、同時に、地方税、交付税等の一般財源総額を確保するということで、どのような地域であっても一定水準以上の行政サービスが確保できるように、このことには努めていきたいというふうに思います。

吉井委員 まず、地方の格差は、これはあるわけですから、認めておられるわけですが、財務体質の判断のメルクマールとしては歳入に占める一般財源の割合が使われますけれども、その一般財源の人口一人当たりの額がこの間どうなっておるのか。

 これを少し見てみると、都道府県決算でいきますと、財政力指数が〇・七から一というAランク、比較的裕福とされるグループの人口一人当たりの一般財源の平均というのは、二〇〇一年度が十三万七千四百十六円、これが二〇〇四年度では十二万九千三百四十三円で、減少率が五・九%なんです。つまり、Aクラスのところは五・九%減っておるわけですね。

 財政力が低い、指数〇・三未満のDクラス、そのグループでは、二〇〇一年度が二十七万八千二百六十三円、これが二〇〇四年度には二十四万六千二百二十一円に減少ですから、減少率は一一・五%と非常に大きいわけです。

 では、真ん中ぐらいのところはどうか。ちょっとその数字を見ておくと、財政力指数〇・五から〇・七のB1のグループで減少率は一四・八、S2の〇・四から〇・五のグループになりますと一三・六%、Cグループ、〇・三から〇・四のグループでは一四・二%という結果が、これは皆さんの方でまとめていらっしゃる資料で出てくるわけです。

 要するに、全体として一般財源の落ち込みがあるわけですが、東京を除いた、財政力の高さからいうと二番目のグループに当たる、すなわちB1、ここのグループから下が落ち込んでいる、これがやはり特徴として見ることができるわけですね。具体的な県名でいいますと、愛知、神奈川のグループとそれ以外の府県との間で、一人当たりの一般財源の差が拡大しているという状況を読み取ることができます。

 この間、交付税、特例交付金、譲与税、国庫支出金といった、国から地方への財政支出の合計額、地方財政費は、二〇〇一年度の三十六兆五千十一億から二〇〇四年度で三十一兆七千四百八十八億円へと、四兆七千五百二十三億円、四兆七千億円を超えるマイナスなんですね。だから、財源がどんどん減ってきて地方も大変、そういう中での格差の問題はあるんですが、この地方財政費四兆七千五百億余りのマイナスの要因は何なのか。私はやはり交付税の減額というのが大きいと思うんですが、大臣は交付税の減額が大きいという点についてはどう見ておられるかを伺います。

岡本政府参考人 お答えをいたします。

 平成十五年から十八年の間で、地方の一般歳出は六十九・七兆円から六十五・六兆円と、約四・一兆円、一般歳出が減少いたしております。また、これを受けまして、地方交付税、臨時財政対策債を含みました地方交付税の総額も、二十三・九兆円から十八・八兆円というふうに落ち込んでおります。

 これは、その一つの要素は、国、地方を通じました財政のスリム化、プライマリーバランスの黒字化ということで、歳出の抑制に向けてやってまいったということもございますが、一方で、地方交付税が減っている分だけ、あるいは、留保財源等一定の要素はございますが、地方税等がこの間一定の伸びを来しているということも含めまして、先ほど申し上げました、地方交付税が減少しているということだと思います。

吉井委員 どの年度をとるかによっての違いはあるにしても、あなたと私と同じ資料を使っておれば同じように、要するに、今四兆二千億ほどの話ですが、年度によっては四兆七千億円の減で、私、大臣に聞いておりましたが、数字の方はお互いわかった数字なので、またあなたも大臣におなりになったらお答えいただいたらいいんですが、私、大臣に聞いたのは、この要因はこの間の交付税の減額があると思うがということだったんです。大臣に成りかわって認められたので、その辺にしておきます。

 地方交付税は、財源保障機能とともに財源調整機能を持つものなんですね。交付税というのは、二〇〇一年度の二十兆三千四百九十八億から二〇〇四年度の十六兆八千八百六十一億円へと、三年間で三兆四千六百三十七億円、つまり一七・〇%の大幅なマイナスなんです。これだけの交付税の減額があるんですから、交付税が本来果たすべき財源調整機能の後退が生まれてくるのは当然だと思うんですね。

 それでは、国庫補助金の方はどうだったのか。国庫補助金も九兆五千六百三十三億円から七兆一千三百三十六億円へと、全国平均では二五・〇%のマイナスなんです。ところが、愛知、神奈川のような裕福な団体の平均はどうかといったら、この間のマイナス幅は二三・二%で平均以下ということです。一方、青森、秋田、高知なんかは、要するに財政力指数が〇・三未満のDグループ、これは千六百三十億円から千百八十一億円へ、減少幅は二七・五%、つまり全国平均の二五%を上回っているわけですね。国庫補助金でも財政力のある県の方が減り方が少ない。本当は財政力の弱いところは応援してあげなきゃいけないと思うんですが、そっちがぐんと減っておる。

 これは二〇〇四年度の決算までの数字なんですけれども、それ以降はどうなっているかというのは、交付税について見れば、二〇〇五年度でわずか百十八億ふえたことはありますが、二〇〇六年度には二〇〇四年度から比べて九千八百億円の減、一兆円近い減ですよ。国庫補助金も一兆九千億円減です。ですから、現状、格差拡大がさらに進んできているというのは、こういう数字を見れば、地方財政の上では私は明白だと思うんです。

 加えて、さっき少しおっしゃった経済の問題ですね。完全失業率を見れば、神奈川県は四・六%から三・九%、愛知は四・四から三・四%と改善されているんですね。そして有効求人倍率でも、神奈川は〇・五四から〇・九九へ、愛知は〇・七九から一・六七へ、うんと改善されているわけですね。財政力指数の高いところでは雇用情勢も改善されているんです。雇用情勢が改善されるということは、所得がふえますから、地方税収もふえてくるわけですね。

 ところが、財政力の弱い団体はどうか。青森県は完全失業率は五・五%から六・九%、山形県は三・九から四・四、鹿児島は四・七から五・三。だから、雇用情勢は、幾分景気はよくなったみたいなお話がありましたけれども、改善どころか悪化しているんですよね。有効求人倍率で見ても、青森は〇・三三から〇・四〇、山形は〇・六二から〇・九六、鹿児島は〇・四九から〇・五四と、回復の足取りは極めて重いというのが現状です。

 ですから、こういう状況の中で、財政力の強い県ほど改善傾向が強く、弱い県ほど置いてきぼり、だから格差がますます拡大していく、これが現状だと思うんです。

 そうすると、地方間にこれだけ差があるわけですから、総務大臣として、こういう事態に対してどういう手だてを講じていくのか、私はこれが今非常に問われてきているときだと思うんです。大臣はどういう手だてをとろうとしているんですか。

菅国務大臣 確かに、税収が回復傾向にありますけれども、まだそれぞれの地方によってそれだけ差があるということも事実であろうというふうに思っています。

 これまでも、税源移譲に当たっては、個人住民税の税率を比例税率化するとか、あるいは法人事業税の分割基準を見直すとか、あるいは交付税の調整機能を発揮させることなど、格差拡大への対応にはできる限り努めてまいりました。

 今後も、歳出削減とあわせて、地方団体の安定的な財政運営に必要な地方税、交付税の一般財源の総額を確保し、弱い団体であっても一定水準の行政を行うことができるように取り組んでいきたいと思います。

 また、地方消費税などの偏在の少ない税を中心に地方税の充実を図っていく、このことも必要である、こう思います。

吉井委員 総額確保は当然のこととして、大臣の記者会見で、頑張る地方応援室を総務省内に設置するという発表がありましたね。しかし、頑張る地方だけを応援するというのは、私は、言ってみれば総務省としては職務放棄に近いと思うんですよ。頑張ってもうまくいかない自治体をどう応援するか、これが総務省の仕事だと思うんですね。

 大臣、頑張ってもうまくいかぬところをどうするかという、その基本について、どうなんですか。

菅国務大臣 私も副大臣当時から地方に行っていろいろなお話を伺ってきました。そして、なかなか、財政力指数の低いところはしようがない、先が見えない、そういう声もよく聞きました。そういう中で、しかし、財政力指数が少ない地方団体でも、私は、行政改革なりあるいはUターンをふやすなり、いろいろなやり方というのはあると思うんですね。そういう中でやることにはぜひ応援をしていきたいというふうに思いますし、先ほど来申し上げていますけれども、地域の活性化について、なかなか具体的な成果の望めない地域、例えば離島だとか過疎だとか豪雪地帯についても、一定水準の行政サービスができるように、特別な財政事情について的確に算定することによって財政運営に支障がないように努めていきたいと思います。

吉井委員 いろいろなお話はあるんだけれども、これは非常に抽象的なんですね。

 新聞報道によりますと、一定の成果を上げた自治体に交付税の上乗せ配分を行うとされているんですが、交付税の財政調整機能というのは、努力しているんだけれども成果が上がらない、そういうところの財政が大変な自治体であっても、国民生活を一定レベルに保てるように配分するということでしょう。何を指標とする成果なのか、まずわからないんです。

 ですから、一つは、何を指標とするのかを伺っておきたいんです。それからもう一つは、一定の成果を上げた自治体に上乗せ配分するというわけですが、それをやったら調整機能の後退ということになるんじゃないですか。

岡本政府参考人 算定の事務的なことを先に申し上げさせていただきますが、交付税の算定で、委員御案内のように、義務教育でありますとか、保健でございますとか、福祉でございますとか、一定の法令等によって行政水準がきちんと決められているもの、そういうものにつきましては、それぞれの団体の事情を踏まえて、またその条件が、先ほど大臣からもお答えしていますような離島でございますとか豪雪地でございますとか、そういうそれぞれの条件の不利に伴う特別な財政事情が割り増しになるものとか、そういうものについてはきちんと交付税の算定を通じて財源保障していくということは、当然この頑張る地方団体を応援するという場合においても同じことが起こるわけでございます。

 その前提の上で、頑張る地方を応援という意味で、頑張っている地方団体についてどのような頑張りがあるのかということは、前の委員会でもいろいろな御議論がございましたが、地方団体からいろいろどのような取り組みがあるかということをお聞きした上で、今後どのような指標を使うかということも事務的には検討してまいりたいというふうに思っております。

吉井委員 だから、あなた、前段長々おっしゃった話はみんなわかっての議論だから、それはやったってしようがないのよね。何を指標とする成果なのか。指標が結局、いろいろあちこち自治体から聞くと言うけれども、ないということですね。一定の成果を上げた自治体に上乗せ配分するというわけでしょう。指標はないんだけれども上乗せ配分する。何を上乗せ配分するかわからないけれども、それをやればやるほど、結局、地方交付税の調整機能の後退につながっていくんじゃないか、この根本の問題について大臣に伺ったわけです。

 時間が来たということですから、最後のここだけ大臣に伺って、終わるようにしたいと思います。

菅国務大臣 この「頑張る地方応援プログラム」による交付税の支援措置は、魅力ある地方を目指した取り組みが全国的に求められている政策課題である、こうしたことを踏まえての判断でありまして、これによって交付税の財源調整機能が後退するとは思っていません。

 ただ、これについて、前の委員会で申し上げましたけれども、年内、そうしたことについて今私どもが検討しているということで御理解をいただきたいと思います。

吉井委員 スローガンはあるが中身がない、これでは地方にとっては大変な話ですから、改めてまた議論するようにしたいと思います。

 終わります。

佐藤委員長 次に、重野安正君。

重野委員 それでは、最後になりますが、郵政に絞って質問したいと思います。

 まず第一に、完全郵政民営化もあと一年に迫ってまいりました。先般、継承計画等々も示されましたけれども、依然、郵貯、簡保の巨大性について、民営化の趣旨に反するとの指摘がたびたびなされております。まず、これについての見解をお聞かせください。

菅国務大臣 郵便貯金銀行及び郵便保険会社の当初の業務範囲は、現在の公社と基本的に同様ということになっています。

 また、移行期における業務範囲については、郵政民営化委員会の意見を聴取の上、他の金融機関とのイコールフッティングの状況や両社の経営状況等を勘案しながら、内閣総理大臣及び総務大臣の認可により段階的に緩和していくという枠組みにもなっております。

 総務大臣としては、業務の範囲の拡大に当たり、この枠組みによって、郵政民営化委員会の意見を踏まえつつ、適切に対応していきたいと思います。

重野委員 四事業に分割されたわけですが、最大の職員を擁するのが郵便事業株式会社であります。その継承すべき職員数、約十二万人とされておりますけれども、現在、職員の各事業への振り分け状況、これについて説明をお願いいたします。

佐々木参考人 お答えいたします。

 職員の帰属会社の決定につきましては、日本郵政株式会社が決定するものでございますけれども、帰属会社決定の基本的な考え方といたしましては、平成十八年九月一日を帰属決定基準日といたしまして、この日に所属している局所において担当している業務を民営・分社化時も担当するように帰属会社を決定するという方針で考えております。なお、担当している業務によりまして帰属会社が明確でない場合、あるいは異なる会社を希望する者につきましては、希望等を聴取して調整するということにしております。

 具体的に申しますと、帰属決定基準日、これは九月一日と先ほど申し上げましたが、これまでに、今申し上げました帰属会社決定の基本的な考え方を職員に周知したところでございます。それから、帰属決定基準日以降、帰属会社が明確でない者、具体的に言いますと、郵便局の総務課の職員の方なんかは、郵便事業会社あるいは郵便局会社とか分かれるものですから、そういう方々、あるいは異なる会社を希望する者の希望を聴取して帰属会社を調整するということでございまして、現在、この段階でございます。

 今後の予定といたしましては、平成十九年の一月ごろに全職員に帰属会社の内定を通知いたしまして、来年の三月ごろまでに、内定通知されました帰属会社について苦情を有している者に対しましてはその苦情処理を実施する。その後、四月末までに日本郵政株式会社が実施計画を作成しまして、政府に認可申請を行いまして、計画が認可された段階で職員の帰属会社が最終的に決定するということになっております。

 今申し上げましたように、現在、職員からの希望状況を踏まえて帰属会社の調整を実施しているところでございます。

重野委員 そういう民営化に向けての作業が進んでいるわけですけれども、どうも、郵政公社になりまして、職員の退職が目立っているというふうに、私の調べた数字を見てもそういう感じがするんです。この間、具体的に、各年度の定年前退職者、この状況はどうなっていますか。

佐々木参考人 各年度の定年前退職者の状況でございますが、日本郵政公社発足以降、各年度の定年前退職者のうち、いわゆる自己都合退職というジャンルの方につきましては、平成十五年度は三千二百三十二人、平成十六年度は三千六百二十六人、平成十七年度におきましては三千六百九十八人でございます。

重野委員 今説明がありましたように、年を追って定年前退職者がふえているということが明らかになりました。

 今、雇用情勢は極めて厳しい状況が一方にある中で、定年前退職者がふえる。しかも、私の調査によっても、定年直前の職員よりも五十歳以下の職員の退職率が際立って高いですね。これはどういうことなんですか。定年前、はるかに遠い五十歳以下の方が退職者のうちの七割を占めるという、この原因をどのように把握しておられますか。

佐々木参考人 今、重野先生御指摘がありましたが、確かに、今お答えいたしました平成十五、十六、十七年度におきまして、各年度とも五十歳以下の退職率が八〇%となっておりまして、先生のおっしゃる傾向にあろうかと思います。

 ただ、申し上げさせていただきますと、事前に資料請求をいただいた時点では、自己都合退職者の状況ということでお聞きいただいたものですから、私どもはその数字をお出ししたんですが、実は、この自己都合退職のほかに勧奨退職というジャンルの退職がございまして、この数を入れて考えてみますと、必ずしも五十歳以下の退職者が多い状況というふうには認識しておりません。

 具体的に申しますと、平成十五年度はこの勧奨退職者の数が一万二千百七十四人、平成十六年度が六千五百三十二人、平成十七年度が六千八百五十九人ということで、この自己都合退職者と勧奨退職者を合わせてみますと、先ほど申し上げましたように、五十歳以下の退職者の割合というのが約三〇%ということでございまして、必ずしも五十歳以下の退職者が非常に多い状況という認識ではございません。

重野委員 退職勧奨というのは、年齢は関係なしにやっているんですか。

佐々木参考人 原則としては五十歳以上でございます。

重野委員 私が強調したのは、例えば、平成十五年、五十歳以下、二千七百三十三名、十六年が三千九十三名、十七年が三千百二十名というふうに、五十歳以下のこの数字をどう評価するかということなんですね。

佐々木参考人 確かに数としては多いかというふうにも思いますけれども、郵政部内の退職者の事情等を聞いてみますと、他の職業につかれる場合等が半分近くあるということでございまして、この数字が他の一般の企業と比べて非常に多いというふうな認識には立っておりません。

重野委員 そこで、こういう方々というのは、私も郵政の現場はもう十分熟知しているつもりであります、いろいろな坂道、坂をバイクで郵便を配達して歩くわけですね、体力が要りますよ。やはり郵政の最前線の、戦力的に見ても、こういう方々というのは最も強い戦力、そういう方々が退職者の中の圧倒的多数を占めている、そこを私は問題だというふうに感じるんです。今後、現役の方々が後から入ってくる方々に現場の仕事のノウハウを教え込んでいくわけですけれども、このまま放置しておけばそういうパワーが細っていくのではないかという懸念を私は持っています。

 そこで、今、郵政が取り入れていますいわゆるトヨタ式事業システム、かんばん方式そのものが果たして現場にマッチしているのか。自動車工場と郵便局の現場というものがフィットするのかなと。どうも、トヨタから送り込まれた方々が各郵便局を回って、その報告を見ると、もうけちょんけちょんにけなされておるわけですね、だめだと。一つ一つ具体的に申し上げませんが、そういうふうに総括的に社に報告されている、こういう記事も見るわけです。

 ですから、私は、黙っておってもどんどんやめていって、人の首を切るのに苦労せぬ、結果よし、こんなことまで思っているんじゃないかな、皮肉な言い方ですが、そんなことを思っているんじゃないかというふうに思うのですが、このトヨタ方式というのは今、郵政の中でどういう評価を受けているんですか。

佐々木参考人 先生ただいま御指摘ありましたが、まず、熟練あるいはベテランの職員が退職した場合には、その職員が蓄積してきた高度なスキルを失うということで、マンパワーの不足を来す面があるものですから、私どもとしては定年まで勤務していただくことを基本としているものでございまして、そういうスキルを持ったベテランの方の退職というのは事業にとって非常に損失だと考えております。

 そこで、今先生御指摘ありましたトヨタ生産方式の関係でございますが、私ども、十五年の一月から、トヨタ生産方式を郵便事業に応用した郵便業務の改善手法、ジャパン・ポスト・システムと私どもは名づけておりまして、略称JPSと呼んでおりますが、それを導入しているところでございます。

 このJPSにつきましては、郵便物の引き受け、取り集めから配達までの全作業工程を見直しまして、無理、無駄、むらを徹底的に排除して、全体としての生産性向上を図るものでございまして、具体的には、例えば作業場のレイアウトを見直しましたり、あるいは基本に立ち返って標準作業方法を徹底するなどしているところでございます。そういう意味では、古い方を排除していくという発想は毛頭ございません。

重野委員 そこで、この退職者、都市部はボリュームが違いますから比較になりませんが、北海道、東北、中国、九州の退職状況というのが際立っているような感じがします。例えば、平成十七年度でありますが、四国が七十三人、ところが九州は三百九人、中国は二百十七人、北陸は百二人とか、こういう数字が出ているんですが、これの分析はどのようにされているんですか。

佐々木参考人 ただいま御指摘ございました数でございますが、私どもといたしましては、その管内の職員数に占める退職者の割合ということで申し上げますと、実はほとんど各管内とも差がございません。そういう状況でございます。

重野委員 もう時間も来ましたけれども、最後に、民営化前にこのように職員が、しかも五十歳になってやめていく、そういうふうな状況というのは決して歓迎すべきことではないというふうに思います。重要な人的資源を失うということは、郵政会社の今後にとってもプラスにはならない、そのことが結果的に、配達業務で国民の期待を裏切るような事象が時々出てくる、国民の信頼低下につながっていく、このように考えますが、そこら辺について、どういう決意で今後対処していくのか、それをひとつお聞かせください。

佐々木参考人 御指摘いただきましたように、民営化前に職員が多数やめることになりますと、その職員の高度のスキルを失うということで、マンパワーに不足を来す面がございます。そういうことから、誤配あるいは遅配の発生によりまして国民の信頼性が失われるということも懸念されるところでありまして、私どもとしては、そういう事態に至らないように、新規採用による補充あるいは非常勤職員の確保、訓練、適切な労働力の配置に努めてまいりたいということでございます。

重野委員 以上で終わります。

     ――――◇―――――

佐藤委員長 次に、本日付託になりました内閣提出、地方分権改革推進法案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。菅総務大臣。

    ―――――――――――――

 地方分権改革推進法案

    〔本号末尾に掲載〕

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菅国務大臣 地方分権改革推進法案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 この法律案は、地方分権改革を総合的かつ計画的に推進するため、地方分権改革の推進に関する基本理念並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、地方分権改革の推進に関する施策の基本となる事項を定め、並びに必要な体制を整備するものです。

 次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一は、地方分権改革の推進に関する基本理念であります。

 地方分権改革の推進は、国及び地方公共団体が共通の目的である国民福祉の増進に向かって相互に協力する関係にあることを踏まえ、それぞれが分担すべき役割を明確にし、地方公共団体の自主性及び自立性を高めることによって、地方公共団体がみずからの判断と責任において行政を運営することを促進し、もって個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現を図ることを基本として行われるものとしております。

 第二は、国及び地方公共団体の責務であります。

 国は、地方分権改革を集中的かつ一体的に推進するために必要な体制を整備するとともに、地方分権改革の推進に関する施策を総合的に策定し、及びこれを実施する責務を有し、地方公共団体は、その行政運営の改善及び充実に係る施策を推進する責務を有することとしております。さらに、国及び地方公共団体は、国及び地方公共団体を通じた行政の簡素化及び効率化を推進する責務を有することとしております。

 第三は、地方分権改革の推進に関する基本方針であります。

 国は、国が本来果たすべき役割を重点的に担い、住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねることを基本として、地方公共団体への権限移譲の推進、地方公共団体に対する事務の処理またはその方法の義務づけの整理合理化、地方公共団体に対する国または都道府県の関与の整理合理化その他所要の措置を講ずるものとし、さらに、当該措置に応じ、国庫補助負担金、地方交付税、国と地方公共団体の税源配分等の財政上の措置のあり方について検討を行うものとしております。また、地方公共団体は、行政及び財政の改革を推進するとともに、行政の公正の確保及び透明性の向上並びに住民参加の充実のための措置その他の必要な措置を講ずることにより、地方公共団体の行政体制の整備及び確立を図るものとしております。

 第四は、地方分権改革推進計画であります。

 政府は、地方分権改革の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、講ずべき必要な法制上または財政上の措置その他の措置を定めた地方分権改革推進計画を作成し、当該計画を国会に報告するとともに、その要旨を公表しなければならないこととしております。

 第五は、地方分権改革推進委員会であります。

 内閣府に、地方分権改革推進委員会を設置することとしております。当該委員会は、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する委員七人をもって組織し、地方分権改革推進計画の作成のための具体的な指針を内閣総理大臣に勧告するものとしております。

 なお、この法律は、政令で定める施行の日から起算して三年を経過した日にその効力を失うこととしております。

 以上が、この法律案の提案理由及び内容の概要であります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。

佐藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る七日火曜日午前十時二十分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十分散会


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