衆議院

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第10号 平成19年3月22日(木曜日)

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平成十九年三月二十二日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 佐藤  勉君

   理事 鈴木 淳司君 理事 谷  公一君

   理事 葉梨 康弘君 理事 林  幹雄君

   理事 武正 公一君 理事 寺田  学君

      あかま二郎君    井澤 京子君

      石田 真敏君    今井  宏君

      岡部 英明君    川崎 二郎君

      木挽  司君    実川 幸夫君

      杉田 元司君    関  芳弘君

      薗浦健太郎君    田中 良生君

      土屋 正忠君    土井  亨君

      萩原 誠司君    橋本  岳君

      原田 憲治君    福田 康夫君

      宮下 一郎君    渡部  篤君

      安住  淳君    逢坂 誠二君

      後藤  斎君    田嶋  要君

      西村智奈美君    福田 昭夫君

      森本 哲生君    伊藤  渉君

      江田 康幸君    谷口 和史君

      吉井 英勝君    重野 安正君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   総務大臣         菅  義偉君

   総務大臣政務官      谷口 和史君

   総務大臣政務官      土屋 正忠君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   高橋  進君

   政府参考人

   (内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部長)   後藤 正之君

   政府参考人

   (総務省大臣官房総括審議官)           久保 信保君

   政府参考人

   (総務省人事・恩給局長) 戸谷 好秀君

   政府参考人

   (総務省行政評価局長)  熊谷  敏君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  藤井 昭夫君

   政府参考人

   (総務省自治行政局公務員部長)          上田 紘士君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  岡本  保君

   政府参考人

   (総務省自治税務局長)  河野  栄君

   政府参考人

   (総務省情報通信政策局長)            鈴木 康雄君

   総務委員会専門員     太田 和宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十二日

 辞任         補欠選任

  鍵田忠兵衛君     薗浦健太郎君

  萩生田光一君     宮下 一郎君

  萩原 誠司君     原田 憲治君

  福田 良彦君     杉田 元司君

  谷口 和史君     伊藤  渉君

  亀井 久興君     糸川 正晃君

同日

 辞任         補欠選任

  杉田 元司君     福田 良彦君

  薗浦健太郎君     鍵田忠兵衛君

  原田 憲治君     萩原 誠司君

  宮下 一郎君     萩生田光一君

  伊藤  渉君     谷口 和史君

  糸川 正晃君     亀井 久興君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 恩給法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇号)

 地方自治及び地方税財政に関する件(地方税法及び地方交付税法)


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     ――――◇―――――

佐藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、恩給法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省人事・恩給局長戸谷好秀君及び情報通信政策局長鈴木康雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。寺田学君。

寺田(学)委員 民主党の寺田と申します。よろしくお願いいたします。

 きょうは恩給法の法案の審議をさせていただきます。

 今回の法案の改正が、ある意味、今まで一歩一歩改善していた部分を、ある種、五年間の計画というもとで、総務省のお言葉をかりると最終的な法改正というようなことを言われているとおり、大きな改正でもありますので、そもそも論にのっとって、大臣の戦争観も含めてお伺いする中で、恩給法の質疑もさせていただきたいと思います。

 その前にですけれども、新聞報道等でNHKのことに関してもさまざま議論されておりますし、この間行われた総務委員会で総務大臣が途中で退席されたものですから、その積み残しの部分も含めてちょっと質疑をさせていただきたいと思っております。

 これは通告をしていないんですが、休みの前の日に、自民党さんの方で一つ結論が出たと報道がありましたので、大臣にもちょっとお答えをいただきたいんです。

 報道によりますと、いわゆる大臣が提案をしておりました受信料の義務づけに関しまして、自民党の中の方で一つの結論、今回は法案の中に盛り込むのは見送ろうというような結論が出たというふうに報道では伺いました。そのことに関しまして、大臣としてどのようにお感じになられているか、通告をしておりませんけれども、ぜひ御答弁いただけたらと思います。

菅国務大臣 自民党の通信・放送の高度化小委員会というのがありまして、そこで、二十日の会合において、今国会に提出予定の放送法改正案には受信料支払い義務を盛り込まない、こういう方針を決めたということ、私、報告も受けていますし、そしてまた新聞等でも報道されております。

 私がかねてから申し上げていたのは、政府・与党が合意をした点でありますけれども、NHKの内部の改革、義務化、受信料の値下げ、これについて早急に検討して結果を得るという形に実はなっておりました。ですから、それに基づいて、私はこの三点がある意味でセットだということを申し上げてきておりますので、この受信料支払いの義務化を含め、放送法改正全般については近いうちに結論を出そうというふうに考えております。

寺田(学)委員 これから議論を最終的に詰められるんでしょうけれども、基本的に、自民党さんが出されたお答えのとおりに事を進めていこうという基本路線をお持ちなのかどうか、はたまた、自民党で、政府・与党、与党の中で決められたことに関して、余り重く考えないというのもあれでしょうけれども、一つの意見として参考にしたいという程度なのか。今、どのようなニュアンスなのか、いかがでしょうか。

菅国務大臣 私とすれば首尾一貫していますけれども、内部改革と義務化と値下げというのは、これはセットでなければ国民の理解も得られないというふうに思っていますので、そうした方針が党内で出た、そういうことも踏まえて近いうちに結論を出したいということです。

寺田(学)委員 その点に関しては了解いたしました。

 一点、この間行われましたNHKの予算の中で、私自身、問題提起をさせていただいた部分があります。あれが夜の十二時過ぎ、一時ぐらいに放送されたみたいですけれども、十五分間だけ質疑をさせていただいたんですが、正直、自分の予想をはるかに超える方々から反響がありました。ですので、今度、参議院の方の予算も行われるということで、ひとつ、ちょっとこの間の積み残しをやりたいんです。

 繰り返し申し上げますと、今売られているテレビの中には、三波共有の、BSと地デジとCSのチップが入っていて、かつ集合住宅では三波共同アンテナがほとんど主流になっていて、アンテナ線にケーブルを入れると衛星放送が見られてしまうと。そういうことによって、いわゆるモアサービスであった衛星放送の付加的な受信料九百四十五円を払わなきゃいけないような環境になっているということを問題提起させていただきました。

 そうしたら、意外なことに、NHKの徴収員の方からも実名でメールをいただいて、正直、現場が困っていると。ある種、あくどい人はあくどいやり方をしていると。CSのパラボラアンテナがついていることを理由に、どんどんどんと入っていって、あなた、衛星見られるでしょう、だから払ってくださいというような一方的な言い方をして、要は契約を結ぶ方もいる。逆に視聴者の方から来たんですけれども、ピンポンと来て、あけたらNHKの徴収員の方だったと。そうしたら、テレビのリモコンを持ってきてくださいと言うそうなんですよ。テレビのリモコンを持ってきてくださいと言って、リモコンを持っていくと、BSというボタンがついていると、ほら映るじゃないですか、九百四十五円、衛星が映るということは払わなきゃいけないんですよということで、無理やり契約を結ぼうとしたとか。

 あともう一個御紹介すべきことは、行政の方からもメールが来ました。どういう形かというと、いわば難視聴の地域に対して、今ケーブルで、大きいアンテナを行政側が第三セクターで立てて、それを伝送している形をとっていると。僕、専門的なことはわからないので間違っているかもしれません、その伝送線を地デジに対応するように、今入れかえようとしている。その入れかえるときに、何か二つぐらい方式があるそうで、高い方式をとると、いわば視聴者側で新たに機器を買わない限りBSは見られない、ただ、安い形で伝送線を再施工すると、ある種、テレビにチップが入っていれば自動的に見られるような形になってしまうと。

 そこで行政の方が考えたのは、その安い方式で勝手に見られる方式にすると、行政側が衛星放送を見させるような環境にある種引いてしまうんじゃないかと。離島なのか僻地なのかわかりませんけれども、そういう地域の方々に行政側が衛星放送を受信するような環境をつくってしまうということに今疑問を感じていて、私にメールをくださった方は、おじいちゃんとかおばあちゃんとか所得が本当に低い方々を行政側が苦しい立場に追い込むような形になるんじゃないかなと。九百四十五円でも月々の支払いではやはり重いものがあるだろうということで、どうしたらいいんだろうという話がありました。そういう意味において、ちょっと、少しだけ大臣にも問題意識を持っていただきたいと思いますし、私は早急な改善が必要だと思うんです。

 局長でも結構ですけれども、まず、今の放送法の受信料を規定している三十二条で「受信設備を設置した者」、この「設置した者」のとらえ方ですけれども、これは、自分からの意思によって設置した者のみならず、今のような技術的な、そして住環境的な変化によって設置されてしまった者は含むのか含まないのか、これはいかがでしょうか。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員御指摘の、放送法三十二条一項の「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者」といいますのは、BSも含め受信が可能な設備を設置した者は、個別受信であるかあるいは共同受信であるかを問わず、また、BS放送を視聴する意思があるか否かにかかわらず、付随的に視聴可能な場合については受信契約の締結を行う義務があるということでございまして、これは地上デジタル放送であろうがBSデジタル放送であろうが同様だと述べております。

寺田(学)委員 では、繰り返しになるかもしれませんが、今具体的に例示した、いわば勝手にそういう環境に置かれた者も、この「設置した者」に入るということでよろしいですね。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 そのとおりでございます。

寺田(学)委員 それでは、条文の方の中段の「放送の受信を目的としない受信設備」という中に、みずからの意思で衛星放送を受信する環境を設置しようとしていない方々が買ってしまったテレビに勝手に入っていることによっていわば環境がつくられる受信設備ですけれども、そのことは含まれるのかどうなのか、いかがですか。

鈴木政府参考人 お答えを申し上げます。

 ただいま御指摘の、条文の中にあります「放送の受信を目的としない受信設備」と申しますのは、外形的、客観的にその設置目的が番組の視聴ではないと認められるものでございまして、例えば、電波監視用の受信設備、あるいは受信画質の確認を行うための設備、あるいは、それと同様でございますが、電器店の店頭に陳列されているものもいわば画質確認を行うものと考えられますので、そういった受信設備がこれに該当するものでございまして、個人の意思に係らしめているものではないというふうに解釈しております。

寺田(学)委員 今お答えいただいたように、第三十二条の法律によれば、ある種、その環境に置かれた方は自分の意思があるないを問わず払わなきゃいけないということになっているということだと判断いたしました。

 大臣自身に単刀直入にお伺いしたいんですが、今のようなケース、いわばモアサービスと言われていた衛星放送に関して、昔とは違って、今は勝手に見られる環境がつくられてしまって、それがゆえに自分の意思を飛び越して払わなきゃいけないような環境に置かれる人が多数生まれてきていて、これからもどんどんふえることが予想されていると思います。この点に関して、まずは、問題点だととらえているのか、それはもうやむを得ないことだと考えているのか、大臣、いかがですか。

鈴木政府参考人 お答えを申し上げます。

 これは以前大臣が御答弁をさせていただきましたこともございますが、NHKを受信できる受信設備を設置した者は法律上契約義務があるということになっております。この理由は、公共放送の使命を果たすために必要な財源を広く国民全体で負担していただくというものでございまして、大臣がかつて御答弁させていただきましたように、公共的性格を持つNHK、その放送を国民全体で負担するという意図でございます。

菅国務大臣 この前も、私は、今局長の答弁と同じように、実は答弁をさせていただきました。しかし、寺田委員からいろいろなこの問題についての指摘をされまして、私は、もう一度、役所内、さらには私が放送問題で相談する方にもいろいろな意見を聞きました。

 そういう中で、やはり今まで指摘をいただいていますこの受信料のあり方の中で、視聴者の主観的な意思によらないで、外形的、客観的な基準、これを策定することが可能かどうかということも含めて、私は、これは問題意識を持って研究する必要があるのではないかなという、今私自身考えておりますことを伝えさせていただきたいと思います。

寺田(学)委員 問題意識は持っていただいているというふうに判断しました。受信料の値下げどうこうというのはこれから始まるかどうかということで、それも問題意識を持っていろいろ考えられているんですけれども、今、もう現行に払わなきゃいけない方々がいて、先ほど例示したとおり、NHKのたちの悪い人は、リモコン持ってこい、衛星が映るじゃないか、払えというような言い方をしているということは、私のところに寄せられたぐらいでこれぐらいあるんですから、結構全国的にもやられている可能性はあると思うんですよね。だから、悠長なことは言っていられないんだと思うんです。

 結論として、NHKそして総務省側が、公共放送というすべての枠なんだ、付加サービス、モアサービスという概念はやめるんだということでやるのであれば、またそれは一つの結論ではあるでしょうけれども、そうならない限り、自分の意思とは関係ないところで九百四十五円を払わなきゃいけない方々がいっぱいふえてきていることは、早急に対応すべきことだと思うんです。

 今、大臣自身問題と感じているということで検討するということだったんですけれども、では、いつぐらいまでにその検討の結果を、ある程度、中間報告でも結構ですので、提示されるような時間軸を持たれているのか、いかがですか。

菅国務大臣 受信料全体のあり方ともかかわるわけでありますけれども、しかし、今委員から指摘をされたような受信者の方は、なかなか自分で納得ができないという方も実はたくさんいることも事実だというふうに思いますので、このまま放置しておくことは私はできないというふうに思いまして、検討を、研究会というんですかね、立ち上げなきゃということを今考えているところであります。

寺田(学)委員 受信料のあり方という根本的な部分にはかかわるんですが、ある種、モアサービスという付加価値的なところのサービスをどう受けるかという、もう少しミクロな部分で考えられることでもあると思うんですよね。

 それで、どうなんでしょう。モアサービスという概念はそのままでよろしいんですよね。局長でも結構です。

鈴木政府参考人 現行の放送法体系あるいはそれに基づく受信料体系の中では、いわゆる付加サービスということではなくて、NHKが本来行うべきサービスと考えております。

寺田(学)委員 だとすれば、衛星放送だけを受信する、本体契約を抜きにして衛星放送だけを契約するということは可能なんですか。

鈴木政府参考人 もちろん、物理的には可能でございますが、そういった家庭はほとんどないということで、実際の契約の種別の中ではそういう契約は設けておりません。

寺田(学)委員 衛星放送だけを受信契約するということは物理的に可能ということなんですか。その点に関して、以前いろいろレクチャーしていただいた部分とちょっと違うものですから、そこら辺はどうなんですか。

鈴木政府参考人 ただいまお答え申し上げましたとおり、物理的には可能でございますが、そういったものはほとんどないと考えられますので、契約種別上、そういうものはございません。

寺田(学)委員 恐らく、今の法律にのっとってやっていらっしゃるので、局長としてもそれ以上の御答弁はできないのかもしれませんけれども、大臣、本当に早急にやられた方がいいと思います。

 二割値下げだどうこうとかということよりも、本当に実質的に値上げをされている方がたくさんおりますし、大臣自身も、この間の答弁でいくと、集合住宅で、入れたら見られるような形だったのでということを言われたので、ある種、大臣も値上げされているんですよ。ですので、ここら辺は早急にやっていただきたいと思います。

菅国務大臣 これは、地上波と衛星と、多分導入する時点でしっかりとした議論をしなきゃならなかったことだったというふうに、私は今、思っています。そういう中で、先ほど申し上げましたけれども、いろいろな意見、私もいろいろな方に相談した場合も、その辺のことをやはりある程度方向性を出す必要があるのではないかなという方もたくさんいらしたことも事実であります。

 しかし、といって、これは全体にもかかわることでありますので、長引かせるつもりは全くありません。できるだけこの研究をまずとにかく始めたい、こう思っています。

寺田(学)委員 菅大臣は、今までの麻生大臣、竹中大臣に比べて、尋常じゃないほど決断のスピードが速い大臣だなというふうに思っていますので、この点も相当早急な結論を出していただきたいなというふうに思っております。

 恩給法の方に移りますけれども、冒頭申し上げたとおり、今回の法律というものは、恩給受給者の方々の要望を、ある種、五年間という長期的なスパンの中で解決していこう、取り入れていこうという意味での最終的な部分の政策であるというふうに伺っております。

 そういう部分で、戦争観についてまずはお伺いしたいなと思っているんです。戦争観をはかる一つのリトマス試験紙としてもよく言われるんですが、靖国神社の取り扱いというものと、靖国神社に対してどのような態度を示されているかということは、一つの戦争観をはかるものだと思っております。

 まずは、大臣自身、大臣になられる前でも結構ですけれども、まだなられてから余りたっていないと思うので、国会議員になられてからですけれども、大臣になられる前に靖国神社に御参拝されたという御経験はありますか。

菅国務大臣 私は、大学がすぐ近くでありましたので、年に何回か、通ったときに参拝するとか、そういう形では参拝しておりました。

寺田(学)委員 大学時代の話は結構ですけれども、国会議員になられてからも行かれたということですか。

菅国務大臣 ですから、そのことが習慣的な形で参拝をしています。

寺田(学)委員 戦争観についてもお伺いしたい理由は、恩給に対して、国家補償的な性格もあるということも含めてありますので、その根源としてお伺いしているんですが、それに加えて、最近の報道を見ていますと、やれ内閣改造だどうこうという話になると、菅大臣のお話が筆頭に上がってきて、今度は官房長官じゃないかという話までちまたではされていることをかんがみますと、その前に政権はとりたいと思っていますけれども、今のうちに戦争観についてもいろいろ聞いておく方が、攻める側としては非常に重要だなと思っています。

 大臣として参拝されたのであれば、された御経験、そしてこれから参拝されるおつもりというものは、大臣自身はおありですか。

菅国務大臣 今までどおり、自然に対応していきたいというふうに思っています。

寺田(学)委員 自然というものがどういうものであるかは各人それぞれですので。

 御参拝されたことはまだないですよね、いかがですか。

菅国務大臣 大臣になって参拝するしないというのは、余り表明もしないで自然にという形で今申し上げたのは、自然な気持ちがやはり大事だというふうに思っておりますので、そういうことを申し上げました。

寺田(学)委員 では、大臣自身これから行かれるということですね、行かれるおつもりが自然な形であるということでよろしいですか。

菅国務大臣 行く行かないということではなくて、先ほど申し上げましたけれども、今まで年に何回か自然な形で参拝をしておりましたのでということであります。

寺田(学)委員 それを御継続されるということのえんきょく的な御答弁だと思います。

 戦後に関して、恩給法ということに関しては国内的なことですが、国外に対してどのように映るかということも含めた上で、まさしく戦後、戦争というものをある種一つ一つ糸を解きほぐして解決していくということだと思います。

 一つ、靖国の話をしていますのでお話し申し上げますけれども、遊就館の展示内容に関しては、各国からいろいろと、あれはまずいんじゃないかとかどうだという話もされています。大臣自身幾度となく行かれているということですので、遊就館に行かれた御経験があるかどうかということと、そこの展示内容に関して、大臣自身どのようにお考えになられているか、いかがですか。

菅国務大臣 新しくなってからは行ったことがないです。

寺田(学)委員 いつ新しくなったのか、ちょっと私の記憶の中でないですけれども、一度ごらんになられてみてはいかがでしょうかということをお勧めしておきます。

 安倍総理自身が靖国に参拝するかどうかということに関して、前総理大臣の小泉総理とは違って、行くか行かないかは言うことではないというような態度をとられております。物理的に行ったかどうかということ、そしてそれを明らかにするかどうかということ、二段階、いろいろあるんでしょうけれども、大臣自身として、国の行政のトップたる総理大臣が靖国に参拝するということは非常に重要なことである、平たく言うと、参拝すべきであろうというふうにお考えになられているのか、いや、それはやめた方がいいとお考えになられているのか、いかがでしょうか。

菅国務大臣 参拝するしないは、やはりこれは総理大臣個人が決めることだというふうに私は思っていますので、私は、その閣僚の一員でありますから、そのことについては発言を控えさせていただきたいと思います。

寺田(学)委員 それでは、中国ないしは韓国が主ですけれども、参拝してくれるな、総理大臣が参拝すべきじゃないというふうに言われている海外の態度に関しては、大臣自身どのようにお考えですか。

菅国務大臣 いろいろな国があるわけでありますから、それはそれぞれの国の判断だというふうに思います。

寺田(学)委員 それに加えて、今一つ話題になっているのが、いわゆる慰安婦がいたかどうか等々が、米国議会によって可決される等々という話が出ていると思います。この一連の動きに対して、大臣自身どのようにお考えになられていますか。

菅国務大臣 それも、ほかの国のことでありますので、私から答弁は、これは差し控えさせていただきたいと思います。

寺田(学)委員 わかりました。

 本当に大きな大戦というものがありまして、国内においては、戦争で命を落とされた方、負傷された方、また御家族を失われた方、さまざまがいらっしゃると思います。そういう意味で、年金制度として始まった恩給制度というものに、軍人恩給という形で今大半を占める形ですけれども、国家として補償しているという法律ができていると思います。

 今までの時代の変遷、この法律の改正の変遷を十年ぐらい前からの議事録を読んで勉強させていただきましたけれども、いろいろな、主に主要三団体のところから、恩給法のここの部分、額をそろえてくれとか、どうこうしてくれ、制度を改正してくれということをおっしゃられる中で、少しずつ改正していっている部分がお見受けできました。

 それで、大臣にまず冒頭だけお伺いしたいんですが、今回、額をそろえる、不均衡と言われていた部分の恩給額をそろえていくこと、最終的な改正であると総務省自身うたっていますけれども、まずは、今までのような暫定的なことではなくて、今回は最終的な改正に踏み切ったということの背景、御意思というものがどこら辺にあるのか、大臣としていかがですか。

菅国務大臣 恩給の改定については、従来から毎年、公務員の給与あるいは物価などを総合勘案して翌年度の年金水準について検討し、あわせて受給者からの個別的な制度改善要望についても逐次改善を図ってきたところであります。

 しかし、近年の公務員給与や物価が下落をしている、それから財政事情も大変厳しいという状況の中では、恩給について、年額水準据え置きを確保することにまず努めてきました。個別的な制度改善に至らず推移をしてきたところであります。

 しかしながら、この間に、受給者の平均年齢でありますけれども、全体で八十四・九歳、公務扶助料は八十八・三歳でありますから、こうした受給者から、残っている懸案事項である扶助料制度等の不均衡是正の問題を早急に改正してほしい、こういう要望が強まっておりました。

 政府としては、こうした要望に早急にこたえることが適当と考えまして、今般、個別的な制度改善として、全体として五年間で実施する最終の措置を講じることとしたところであります。

 また、あわせて、毎年度の年額水準の改定方式についても見直しを行って、今後は公的年金の引き上げ率により自動的な改定をする方式をとらせていただく、こういうことにさせていただいたところであります。

寺田(学)委員 今回、主に扶助料制度間の不均衡是正ということが法改正の目玉の一つだと思います。不均衡を是正するという意味では、ある種前向きな発展だとは思いますけれども、ここはあえて客観的に考えて、不均衡が生まれた、格差をどうとらえるかという議論にもなるんでしょうけれども、今まで政策的な理由をもってある種差をつけていたものに関して、今回是正するという形になりました。

 時代の流れによっていろいろな要望は変わってくるのかもしれませんけれども、局長で結構ですけれども、いわば不均衡があったものを、これは何かしらの理由があって差がついていたものだと思っています、この差をつけていたものを今回是正するということ、この辺の背景の変化というものがあったのかどうか。今回、不均衡を是正する、政策的な格差というものをなしにしてしまうということの合理的な理由というのはどこら辺にあるのか、いかがでしょうか。

戸谷政府参考人 お答えいたします。

 まず、扶助料制度間の不均衡がどうして生じたかということでございますが、概略を考えてみますと、まず、恩給制度の中で、非常にこういう方々に手当てをすべきであるということで、後からできた制度がございます。この制度につきましては、高い額で出発できればよかったんですが、やはり最初は相当少ない額で出発してきております。これまでそれについて改善をしてきたわけでございますが、まだまだその方々の中では、もう少し伸ばしてほしいという形での不均衡をおっしゃられている、そういう形のものが一つございます。

 それから、もともと同額で動いてきたわけでございますが、いろいろな個別要望に配慮をしながら推移してきた結果、ずれが生じまして、後で、ここの額はやはり一緒にしてほしいという強い希望をいただいているものがございます。

 従来、こうした不均衡を背景として受給者から寄せられます個別的な改善につきましては、各年度、予算編成過程におきまして、可能な限り逐次改善を私ども図ってきたところでございますが、近年はなかなかそこまでには至らなかったということでございます。

 先ほど大臣が申し上げましたように、受給者の平均年齢も相当に上がっております。早急にこの辺のところについては解決してほしいという要望が強く寄せられておりますので、今回の措置を講じたいということで御提案申し上げた次第でございます。

寺田(学)委員 恩給法の改正に関しては、いわゆる関係団体の方々の御意見というものを非常に組み入れるような形で改正をしてきている性格の法律だとは思っています。

 そういう意味で、総務省が言われるとおり、今回、最終的な改正であるということをうたっておられます、それは、もう一つの目玉であります恩給の受給額に関して、今まで総合勘案の形をとっておりましたけれども、年金とスライドさせるような形で恩給額を自動的に決定していこうということで、毎年毎年決めていく必要性がないということで最終的ということも含まれていると思います。

 どうなんでしょう。最終的という言葉を使われていますので、今後は何かない限り法改正というものを行っていくつもりはないという意味での最終的ということだと思いますけれども、今総務省の方では積み残った懸案等々はないと考えられているのか、いかがでしょうか。

戸谷政府参考人 お答えいたします。

 今回、五年間の時間の中でいろいろなものを解消するように御提案申し上げておりますので、今後、新しい個別の改善とか、公的年金の今回のベア方式以上に恩給を引き上げるというような法改正を現在のところ想定しておりません。

寺田(学)委員 積み残った懸案というものはないということでいいんですよね。法改正の予定はないということですけれども、法改正に至らないまでも改正しなきゃいけない問題点があるなと御省の方でとらえられているのかどうか、積み残った懸案等はあるのかどうか、いかがですか。

戸谷政府参考人 補足させていただきますが、今後の年額水準の改定につきましても、公的年金の引き上げ率により自動的に改定を行う方式としております。

 したがいまして、物価の下落等により公的年金が引き下げられる場合で特段の事情が生じたとき、あるいは公的年金に大きな制度改革があって恩給にも影響が及ぶ場合、こういう大きな動きがあればひとつ恩給法の改正はあるかと思いますが、これまで行ってきたような毎年度の年額改定、個別的な制度改善を内容とする法改正は想定していないところであります。

 それから、法律事項ではございませんが、私どもが支給事務をやっておりますので、支給事務につきまして、これはいろいろな形で、今回も少し法案の中に改正を入れさせていただいていますが、これについては、受給者の負担が減るように、あるいは私どもとして少しでも効率的にやれるようにというようなことは、私どもの規則レベルとか、そういうところで直していくということはあろうかとは思っております。

寺田(学)委員 いろいろな方から聞くところによりますと、今の生活実態において、恩給額というものが適正な額とは思えないという方であったり、自身が今もらっている恩給額というものが、自分が今まで受けた、及び自分が今まで国家に尽くしたものに関して言うと足りないであるとか、もらえる立場にないけれども本当はもらえてしかるべきだと思っているとか、さまざまそういう意味で恩給受給者の範囲とか額面に対しての議論というものはまだ持っている方はたくさんいらっしゃるというふうに判断しております。

 そのようなことに関して、今後、自動的にスライドしていくような形をとられますけれども、法改正という形には最終的にはなるんでしょうけれども、何かしらそういう方々の意見を組み入れるようなことは総務省としてお考えになられていないのかどうか、いかがでしょうか。

戸谷政府参考人 私ども実施してきています恩給受給者生活状況調査という形の中で、恩給が受給者にとって生活の支えという考え方、あるいは国に貢献したことに対する補償、二つの考え方を持って受けとめられて、物心両面の支えになっているというふうに思っています。

 この調査によりますと、これまで逐次行ってきた改善によりまして、受給者の過半数がある程度満足していただいているのではないかというふうに考えております。さらに、幾つかの個別的な改善を今回加えさせていただいておりますので、ある程度この満足度は高まるのではないかというふうに思っています。

 個々の方々には、これで十分かと言われれば、そんなことは言えないよとおっしゃる方があろうかと思っていますけれども、一般的に、そうはいっても、水準としてはある程度のものにいっているのではないかという方々が多いというふうに私どもとしては考えています。

 今度、いろいろな御意見がまた出てくるかもしれません。現時点で私どもとして組み入れられるものはできるだけ組み入れたというふうに考えております。

寺田(学)委員 過去の議事録等を見てみても、今本当に御高齢になられて、八十四歳、八十八歳と、項目によって平均年齢が非常に高齢な方々になられているというところで、生活の実態を踏まえた恩給額なのかということは過去も議論されてきている経緯があると思います。

 総務省としても、生活実態等、さまざまな形で調査をされていらっしゃって、そしてまた恩給額を決めていらっしゃるとは思うんですけれども、今恩給受給者の方々の生活実態と恩給額というものが適当な形になっているかどうか。法律として今決めている以上、適当ではないとは言い切れないでしょうけれども、そこの部分に関して、本当に適当と思ってこの額にしているのか、はたまた国家として財政的なもの、いろいろな部分にこれから使われる部分が多いでしょうから、やはり財政的な理由でここにとどまっているという形なのか、生活実態に対して、今の恩給額というものはどのような形で総務省として考えられているのか、そしてまたその背景というのはどのようになっているのかということを御答弁いただきたいと思います。

戸谷政府参考人 恩給のそれぞれの金額につきましては、過去いろいろなバランスあるいは予算的な問題、いろいろな中で決められてきているというふうに承知しておりますが、先ほど申し上げました恩給受給者生活状況調査というもので、私ども、額の満足度について御質問をいたさせていただいております。その中では、旧軍人の方々で、満足、どちらかといえば満足というふうにお答えいただいている方が六割ぐらいございまして、それ以外の方は、不満、どちらかといえば不満は三九・四%ということでございます。

 こういう数字の中でございますが、私どもとしてできる限りのことを続けさせていただいてきた結果ではないかというふうに思っております。

寺田(学)委員 そういう受給者の範囲であるとか受給額という大きなことのみならず、今現在、受給されている方々の諸手続において、また行政のサービスという意味において、十分ではないという意見も寄せられていると思います。

 先ほど、御答弁の中で、そういうことに関しては規則を変えていくという形で対応されたいということでしたけれども、今、現時点において、総務省として、こういう部分の行政サービスを対応しなければいけない懸案として抱えているという部分ありましたら、どうぞ御答弁いただいて、また、それをどのような形で改善していくのかという具体例も示していただければと思います。

戸谷政府参考人 現時点といいますか、まず、これまで行ってきたものでは、受給権調査ということで、二年に一回でございますが、それぞれはがきを差し上げまして、役場において、こういう方がいらっしゃいますということの判こをもって返していた、こんなことをやっておりました。これにつきましては、もう何年かたちますが、住民基本台帳のネットワークの中で私どもとして確認をさせていただく。

 それから、各回で、これは相当にお年を召しておられますので、御本人が亡くなられる、そういうようなことがございます。それについても届けを出していただくという形をとっておりますが、これについては相当簡便な形をしておりますし、そういう意味で、相当にできるだけ受給者の方々のお手間を省かせるということをやっております。

 それから、相当高齢化されまして、かなりいろいろな手続について電話のお問い合わせという形がふえてきておりますので、これについては、できるだけお待たせしないように、体制を強化してできるだけ待たせない方法で受給者の方々の問い合わせに応じたいというようなことで努力いたしております。

寺田(学)委員 今までの改正等々眺めておりますと、たびたび出てくるのが、国家補償的な性格を有するものであるからという言葉遣いをされております。総合勘案方式のときにおいても、物価が下がったとか国家公務員の給与が下がったという場合においても、国家補償的な性格があるからということで、その部分、勘案せずに、下げずにとどめたという経緯もあると思います。

 そもそもこの国家補償的な性格というのは何であるのか。その議事録を眺めていますと、何か合理的に説明できない部分があると、国家補償的な性格があるからということで、ある種、ごまかすとは言いませんけれども、そういう答弁に立っている節がありますので、そもそもこの国家補償的な性格というものは何であるのかということを御説明いただければと思います。

戸谷政府参考人 恩給でございます。軍人でありますとか公務員でありますとか、国家との特別な関係を持っている方々、身体、生命をささげて国家のために尽くされた方々に対して、年金数理ではない国家補償、補償という基本的性格を持つものとして編成をいたしております。

寺田(学)委員 今、年金数理ではない部分がやはり国家補償的な性格によってケアされておるということですけれども、今回の法改正の中で、恩給額に関しては、公的年金、いわば保険料を払って、それに対して相互扶助の関係の中で年金をいただくという、その年金額とスライドさせる形にするんだという形になりました。総合勘案方式であれば、ある種そういう、お言葉をかりて言うと、年金数理にはとらわれないような形の発想という意味で国家補償的なものはあると思いますが、今回完全に公的年金とスライドさせる形になりましたので、そこら辺、論理的に考えると、国家補償的な性格が相当希薄になっているということになりますので、今までの審議との整合性という意味においてやや疑念も感じざるを得ないと思っています。

 どうなんでしょう、この公的年金とスライドさせることによって、国家補償的な性格というものは希薄化するんでしょうか。考え方を変えていく方向にあるのかどうか、御答弁いただきたいと思います。

戸谷政府参考人 公的年金あるいは年金数理ということになりますと、掛金という考え方がございます。ただ、恩給につきましてはそういう数理的ではないものとして、旧軍人につきましてある一定時期は掛金もないという状況でございます。

 恩給の考え方と、年額という考え方とございます。年額につきましてはいろいろなもののバランスの中でこれは決めていくべきであると思いますし、恩給の予算そのものが国家予算の中で支弁されるという形でございますので、年額水準についてはいろいろなバランスがなければならないというふうに思っておりますし、その年額水準の改定ということになりますと、いろいろな状況の中で考え方を決めていくべきではないかというふうに考えております。

 私ども、近年、御案内のとおり、公務員給与や物価が下落傾向を示すという中で年額を据え置かせていただいておりますが、やはりこういう状況になってまいりますと、これまでのように毎年度検討の上、翌年度恩給の水準についていろいろ法改正をお願いするというのではなく、より安定した年額水準の改定方式をとることが望ましい、とってほしいという形の考え方が、私どもも受給者にもございますので、いろいろ検討いたしまして、平成十六年の公的年金の制度改革という大きな改革がございましたので、これを踏まえて、今後は公的年金の引き上げ率により改定を行っていくという形の方がよろしかろうということで今回提案させていただいたところでございます。

寺田(学)委員 直接的に質問に対しての答弁ではなかったと思いますが、後半にいろいろ答えられているんですけれども、総合勘案方式が何がだめであったのかというところは、端的にどういうところなんですか。

戸谷政府参考人 まず、総合勘案方式でございますが、毎年恩給の水準についていろいろな議論を行った上で法改正をお願いするという形でございますので、翌年度以降についてこれがある程度大きな形で決定をなされておるという状況にはないということでございます。より安定した形が望ましいというふうに私どもは考えたわけでございます。

寺田(学)委員 予見可能性が低いということなんでしょうか。公的年金制度と一緒にするということがある種安定的であるかのように見えますけれども、さまざま政治的な理由または法案自体の著しい先見性のなさということで、年金額というものも制度として変えていく余地というものはこれから多分にあるというふうに思っておりますので、一元化をする、要は三つあるうちの二つから最初にやるんだとか、三つ一緒にやるんだとか、さまざまな議論が国会の中ではされておりますので、公的年金制度とリンクさせることが果たして、御想像されているとおり予見可能性を著しく高めるのかということにおいては、まだまだはっきりと言える段階ではないのではないかなというふうにも思っております。

 もう一問しますけれども、その総合勘案方式によって毎年本当に恩給額がどれぐらいがいいかということをまさしく総合的に勘案していくやり方と、公的年金とリンクさせるやり方では、これからの恩給額の見通し、国家として支払っていかなきゃいけないという見通しも多少変わってくるのではないかなと思いますけれども、これからの恩給予算に関しての推移というものを、総合勘案でやったらどれぐらいであったかとか、あとは、新しい今の公的年金と同時にスライドさせるような形でやればどれぐらいであるのかということの推移というものは、どのように今計算されているのか、いかがですか。

戸谷政府参考人 私ども、恩給予算ということでございますが、一つ、推計ということになりますと、受給者の平均余命をどのように見込むかというところがございます。やや寿命が延びている中でどういうふうに計算するかというのは私ども難しいところがあると思っておりますが、仮に今回の予算でお願いしております人員等を基礎として、いわゆる厚生労働省作成の簡易生命表の年齢別死亡率等を用いて機械的に試算すれば、五年後には約七十万人の方々が受給者というふうに考えております。

 それから金額につきましては、公的年金、物価上昇率とか、給与の伸び率等を私どもがどう読み込むかというところはなかなか難しいところがございますので、私ども、その人数だけを基礎といたしまして、公的年金の上昇率は見込まない形で考えてみますと、五年後で約六千億円程度の所要見込みという形になろうかと思います。

寺田(学)委員 時間が参りましたので、大臣、最後に。

 最終的な改正ということであります。今回、ある種、国家補償的な性格というものが十二分に反映されていた総合勘案方式から、自動的に決まっていく、ある種、予見可能性が高いとおっしゃられていますけれども、人々の、恩給団体の方々の意見というものが一つの制度において入りにくい、相対的に考えると入りにくい制度になっていると思います。

 最終的な改正ということを言われていますけれども、これからも柔軟に御対応されるようなお気持ちがあるのかどうか。また、これからも恩給制度に関して、最終的とは言わずに、幅広く柔軟にいろいろ意見を酌み取っていくという御表明をいただければありがたいなというか、恩給受給者の方々のお気持ちも落ちつくのではないかなと思いますので、最終的な改正でもありますので、最後に御所見等をいただいて終わりたいと思います。

菅国務大臣 先ほど申し上げましたけれども、対象の皆さんが非常に高齢化を迎えておる中で、実はそうした要望も踏まえて、今回このような改正をさせていただくことにしたわけであります。

 ただ、今御指摘がありましたように、そうした特別のものがあったら、それについてはやはり柔軟に対応するのが当然のことだというふうに私は思っていますので、すべて門前払いというものにはならない、こうも考えております。

寺田(学)委員 以上で終わります。

佐藤委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 私、最初に政府参考人の方に伺っておきますが、二〇〇六年度の恩給受給者生活状況調査報告書というのを見ると、恩給額の満足度という点で、一般文官恩給受給者、それから旧軍人恩給受給者のどちらにおいても、全体としては満足しているという方が大体六割ということですね。超えているんですが、ただ、唯一、満足できない、不満があるという方が過半数を超えている受給者層、それが傷病者遺族特別年金の受給者ですが、満足できないという、そこにはやはり理由があると思うんですね。どういう理由からですか。

戸谷政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、平成十八年度生活状況調査、恩給額の満足度につきましては、傷病者遺族特別年金で、どちらかといえば不満三七・四、不満一八・五、合わせまして五割を超えるという形になっています。

 これにつきましては、傷病者遺族特別年金は、御案内のとおり、昭和五十一年に他の制度におくれて設けられました。障害の中でも、公務に伴いまして、割とこの中では軽い方につきましての遺族に対する年金ということで、おくれて設けられております。支給額がかなり低い額からスタートをさせていただきまして、その後徐々に増額を図ってきておりますが、総額としては全体の中で最も低額という形のものになっています。基本年額につきまして普通扶助料の最低保障額を四千八百円上回るところでございますが、遺族加算につきましては普通扶助料の寡婦加算よりも五万三千八百五十円低い、下回る額となっておりまして、この辺の事情が数字にあらわれたのではないかというふうに思っております。

吉井委員 そこで、不満とか要望を受けて今度引き上げるわけですが、その引き上げ額が五万三千八百五十円ですね。なぜそれが寡婦加算と同じなのかというのは、やはりこの寡婦加算と同じにする理由があると思うんですけれども、その理由、根拠を伺いたいと思うんです。

戸谷政府参考人 これは御主人を亡くされた奥様に対する加算という形のものでございますので、私どもとしては、同額がふさわしいのではないかということで、同額に持っていきたいと考えております。

吉井委員 次に、傷病者遺族特別年金受給者について見ると、普通扶助料を受給していないわけですから、傷病年金の方が亡くなって、その遺族の方が傷病者遺族特別年金受給者として生まれてくるわけですね。

 その場合、もとの傷病年金受給者で普通恩給を受給していない方がやはり多いわけですよね。ですから、そうすると、傷病年金受給者で普通恩給を受給していない方がどれぐらいいらっしゃるかということが今度その遺族特別年金の場合にかかわってきますから、これから新たに発生する場合、大体どれぐらいになってきますか。

戸谷政府参考人 私、ちょっと間違えました。傷病者遺族特別年金でございますが、比較的軽症の方を対象とする傷病年金の受給者、この方々が公務に関係のないけがや病気のために死亡された、この遺族でございますが、どの程度の遺族特別年金の請求が行われるかということを推計するということでございますが、過去の実績で見る以外ないわけでございます。現在の傷病年金の受給者数が約二万人いらっしゃいます。これで、十七年度のこの方々が傷病者遺族特別年金という形で請求をされた割合が約四割でございますので、二万人の四割というと八千でございますが、約一万とかそういう形の数字でないかというふうに考えております。

吉井委員 今おっしゃった、この傷病年金受給者の方が約二万人ですね、二万百五十七名。それで、普通恩給受給者がその中で五千五百八十名ですから、そうすると、その割合二八%。逆に言いますと、約七割の方は普通恩給はないわけですから、そうするとかなりの方が、もちろん、どちらが先にお亡くなりになるかというのは、それは簡単な話、人の人生はいろいろですが、しかし、普通に考えると、七割の方は、普通恩給受給者でない方の方が遺族年金になられるわけですから、これはなかなか大変な問題じゃないかなというふうに思います。傷病年金受給者は普通恩給を受けていない方が多数ですから、そういう方たちが今後、七割になるかどうかは別として、かなり生まれてくるんだということを見ておかなきゃいけないと思うんです。

 それで、傷病者遺族特別年金受給者の平均年額は五十万三千円ですね。傷病者遺族特別年金受給者では、九三%の方が公的年金を受けているとされているんですが、しかし、公的年金を受けていない方も七%いらっしゃるわけですね。受けていても国民年金の方が多数だと。そうなりますと、傷病者遺族特別年金受給者の平均年齢は八十三歳ですが、八十三歳の方の国民年金の平均月額四万七百八十九円、年額で四十八万九千四百六十八円ですが、傷病者遺族特別年金受給者の三六%が大体一人世帯、こういうふうに見ていきますと、傷病者遺族特別年金受給者の生活が成り立つよう支援をするということ、そこがこの遺族特別年金というものについては非常に大事なことになってこようかと私は思います。

 今回の改正で傷病者遺族特別年金者の生活が成り立つことになっていくというふうに見ておられるのかどうかを次に伺っておきます。

戸谷政府参考人 この金額につきましては、恩給制度の中でいろいろなバランスをとって考えますとこういう形の数字ということになろうかと思います。

 それぞれの方々の生活をどう支えるかということでございますが、私どもとして、恩給の中でできる限りの配慮をしていくという形でございます。

吉井委員 恩給制度というのはうんと古い時代につくられた制度ですから、制度そのものにいろいろな問題があって、高いものを受けていらっしゃる方もおられれば、遺族で大変な方もいらっしゃるとか、いろいろなことがあるんですが、戦後職業を持って働き続けてきた方もおられるし、そういう中では、厚生年金などを受給されている方もいらっしゃるわけですね。

 総務省の調査において見てみますと、普通恩給の受給者の九一・五%が公的年金を受給しているとされておりますが、一方で、恩給法五十八条ノ四で、多額・高額所得者の停止ということがありますが、今その状況はどういうふうになっていますか。

戸谷政府参考人 多額停止でございますが、年額百七十万円以上の普通恩給受給者につきまして、恩給外の所得が七百万円を超える場合には、その所得の合計額に応じ支給額を停止する、こういう形になっています。

 対象者についての状況でございますが、普通恩給年額が百七十万円以上の方は二百七十人いらっしゃいまして、このうち、七百万円以上の恩給外所得があって実際に支給額が停止されているという方は十一人でございます。

吉井委員 多額所得者で停止となるのは、普通恩給で年額百七十万以上で他の課税総所得が七百万以上と。

 課税総所得が七百万以上ですから、給与収入などで考えたら一千万を超えるということになってくるわけですが、恩給受給者の中には、もちろん年度によって違いがあるんですが、比較的高い所得を得た年度のある方もいらっしゃるわけですね。

 この多額所得者の停止の条件が、普通恩給の年額は百七十万円以上で前年の恩給以外の課税総所得が七百万を超える受給者に対して、恩給年額は百七十万円を下回らない範囲で恩給額の五〇%までということになっておりますが、この水準は他の年金制度と比べるとかなり高いという意見がありますね。この点についてはどういう検討を行っていますか。

戸谷政府参考人 お答えいたします。

 公的年金には老齢給付及び障害給付に係る在職中の所得額による支給額の減額制度があるというふうに私ども承知しておりますが、恩給と公的年金の性格の違いを考えますと、普通恩給の多額停止制度と公的年金における在職中の支給停止制度とを単純に比較することは適当ではないというふうに考えております。

吉井委員 ここで大臣に伺っておきたいと思うんですけれども、今、恩給にしろ年金にしろ制度はいろいろあるわけですけれども、やはり基準がきちっとしてくることが大事な点だと思うんです。

 昨年、地方議員年金の改正案をこの委員会で審議しましたが、地方議員年金の場合、年金額は百九十万四千円で前年の他の所得金額が五百万を超える場合と改正したわけですね。厚生年金では、年金と他の所得を合わせて月額四十八万、年間で五百七十六万円を超えると、そこから高額停止というのが始まるわけですね。廃止された国会議員年金の方ですが、今受給している人の場合は、議員年金が二百七十二万円以上で前年の他の所得金額は七百万以上から停止というのが始まるわけです。

 国会議員年金額は二百七十二万と七百万を合わせますと九百七十二万円から、恩給の方は百七十万と七百万ですから八百七十万から、地方議員年金の場合ですと、これは合計しますと六百九十万四千円から高額停止、厚生年金は五百七十六万円から高額停止と、一部停止が始まるわけですね。これは非常にばらばらなんですね。

 少なくともこの高額停止については、高額というのは、その所得はいろいろなありようがあるわけですから、ふぞろいとなっている公的年金制度のつり合いのとれたといいますか、そういう各年金のばらばらを整理するという観点から、整理していくことをやはり考える必要があるんじゃないかと思うんですが、これは大臣に聞いておきたいと思います。

菅国務大臣 公的年金には老齢給付及び障害給付に係る在職中の所得額による支給額の減額制度があるということについては承知をしておりますけれども、普通恩給の多額停止制度と公的年金制度における在職中の支給停止とを単純に比較することは適当じゃないというふうに考えています。

吉井委員 私、だから、今大臣に言いましたように、単純比較の問題じゃなくて、やはり高額停止というのは、限られた財源の中で、これは厚生年金にしろその他の年金にしても、きちんと制度をつくりながら、同時に、年金を受給していて他に特別な審議会の委員なりなんなりで年収二千万ぐらいあるとか、あるいは企業の役員を務めて報酬があるとか、そういう高額の人も同じようにというのでは、それは少し考えてもらおうということで、この高額の停止というのはあるんですね。ところが、同じ高額停止なのに制度によってばらばら。それはやはり整理をしていくという観点が必要じゃないかということを私は申し上げているわけであります。

 いずれにしても、年金制度にはそれぞれ性格の違いがあるわけです。それは当然なんですが、今回の恩給法改正に当たっての学識経験者などを含めた研究会や検討会などで、今回の改正分についてもそうですし、今私が申し上げましたような高額停止の問題とかほかのものとのつり合いとかを考えた、そういう幅広い検討が行われたのかどうか。これは政府参考人の方に伺っておきます。

戸谷政府参考人 今回の改正は、私どもの恩給制度の中という形でございますので、いろいろな私どもとしての考え方のもとでさせていただきました。特別なそういう意見を聞く場を設けるようなことはいたしておりません。

吉井委員 実は、二〇〇二年の総務委員会の附帯決議でですが、「恩給制度については、国民の意識の変化及び社会経済情勢の変化に対応した制度として、公的年金制度との連携をも視野に入れつつ、その役割を果たすべきである。」というふうにしたわけですね。

 この附帯決議からすれば、例えば私一例として今高額の一部停止の話などを提起したわけですが、やはり、国民の意識の変化とか社会情勢の変化、それから公的年金制度との連携、これは、地方議員年金もそうですけれども、国会議員年金の場合もそうなんですが、それらの公的年金制度との連携を検討していくには、総務の担当部局の検討だけじゃなしに、他の省庁の部局とかかわるものもありますし、それから第三者や専門家などを含めて、やはり全体として検討していくということが当然のことじゃないかと思うんですね。

 ですから、私は、この附帯決議を受けてのそういう検討というものについては、決議の後にはいつも大臣は決意表明をしておられるんですが、ここは大臣の方に伺っておきたいと思います。

菅国務大臣 先ほど委員がいみじくも言っていましたけれども、年金にはそれぞれの生い立ちがあるからという話もありました。

 そういう中で、恩給はさきの大戦の中で命を国のためにささげてくれた方に対しての国家補償的なものである。そういう中で、公的年金制度との均衡というのも当然考慮する必要があると思いますけれども、私、やはり大事なのは、受給者の方々に対して国として誠意を尽くしていく、このことの方が大事ではないかなというふうに考えております。

 そういう中で、この附帯決議、それぞれの法案の際についております、それについて私どもも十分配慮させていただきたいということを申し上げておりますので、私も誠意を持って対応させていただいたということであります。

吉井委員 戦後六十年たった今も戦後補償という問題は終わっておりません。恩給の分野では恩給欠格者問題もありますし、昨年法改正となったシベリア抑留者問題とか、従軍慰安婦問題とか、中国人、朝鮮人の強制連行、強制労働問題とか、中国残留孤児問題とか民間被災者問題、とりわけ、せんだって東京大空襲の被災者らの百十二人の方が、戦争の後始末をきちんとせよと、謝罪と損害補償を求めての集団訴訟が全国で初めて起こりましたけれども、どの方たちもみんな高齢になってきているわけですから、戦後補償の問題を国としてきちんと解決していく、こういう立場で臨むべきだということを申し上げまして、時間が参りましたので、質問を終わります。

佐藤委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正です。

 恩給法等の一部を改正する法律案に対する質問を行います。

 あらかじめ通告をしておるわけですけれども、時間の都合で最後まで行き着かないおそれもありますので、その点は御容赦いただきたいと思います。

 まず、今回の法改正の中心が現行の総合勘案方式からスライド方式に変わるということでありますが、こうした改正に転換する積極的理由をまず大臣にお伺いいたします。

菅国務大臣 二つありまして、一つは、高齢化が著しい恩給受給者の皆さんの要望を踏まえまして、公務関係扶助料の遺族加算の年額を普通扶助料の寡婦加算の年額と同額に引き上げる。これは長年の間要請を受けていたものであります。また、個別的な制度改善の最終の措置として、扶助料制度間の不均衡是正の措置を講ずることとしたところであります。

 二つ目は、恩給の年額改定方式について見直しを行って、毎年度公務員給与、物価などを総合勘案して検討する総合勘案方式を変更し、公的年金の引き上げ率により自動的に改定を行う方式を導入するほか、事務の合理化のための規定整備等を図ることとした。

 この二点であります。

重野委員 まず、具体的な改正内容に入ります前に、恩給とは何なのか、この定義について大臣の見解を聞いておきたい。

菅国務大臣 恩給は、もともと明治初期に軍人を対象とする年金制度として発足をしたものでありまして、公務のために死亡したとき、公務のために傷病を負ったとき及び長年忠実に勤務した後退職したときに、公務員の国に対する貢献、奉仕に報いるため、国が公務員及びその遺族に対し給付を行う年金制度であります。

 こうした点から、恩給は基本的性格として国家補償の性格を持つ、このように考えております。

重野委員 それでは、具体的に改正内容について聞いていきたいと思います。

 現行恩給法第二条ノ二の規定、年金たる恩給の額については云々というものがあるわけですけれども、そこでいわゆる総合勘案方式ということがきちっと定義づけられております。

 そこで、この総合勘案方式という規定の意味あるいは定義についてお伺いいたします。

戸谷政府参考人 恩給法第二条ノ二でございます。昭和四十一年の法改正により設けられた条でございます。

 内容でございますが、年金恩給の年額については、国民の生活水準、国家公務員の給与、物価その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情を総合勘案し、速やかに改定の措置を講ずるということでございます。

 いわば、社会経済情勢に対応いたしまして恩給年額の改定を行っていく、こういう基本的な考え方と申しますか、原則を定めたものであるというふうに理解しております。

重野委員 いや、私が聞いたのは、条文を聞いたんじゃありません。この条文の持つ意味、あるいは、なぜこういう条文をつくらなければならなかったのか、その背景、そこについてはどのように考えておられますか。

戸谷政府参考人 恩給法の第二条ノ二、先ほどお話ございましたように、社会経済情勢に適応して改定を行っていくという基本的な大きな考え方を定めていただいたというふうに考えております。

 また、この基本的な考え方のもとで、毎年度の年額水準の具体的な改定方式として、毎年法案の中で改定させていただいておりますが、この改定方式は幾つか過去にも変わってきております。物価上昇率と公務員給与と物価の上昇率の差を勘案したとか、あるいは公務員給与、物価を基本指標としていわゆる総合勘案という名前をとってきたというような、いろいろな改定方式をとっております。

 今回の改正においても、やはり社会経済情勢に対応して年額を変えていくという基本的な考え方は残しまして、その具体的な方策として、公的年金の引き上げ率による自動スライド改定方式ということを考えているところでございます。

重野委員 それでは聞きますけれども、本法改正案で新たに第六十六条ノ二を新設しております。国民年金法第二十七条云々と定めているわけですけれども、つまり意味するところは、今後の恩給年額の改定は公的年金の引き上げ率に自動化するということと私は理解しております。

 そこで、そうした規定を新設するならば、恩給法第二条ノ二、これはもう要らないということになるんではないかと思うんですが、しかし、削除しておりません。それはどういうことでしょうか。

戸谷政府参考人 恩給法二条ノ二は、大きな考え方を示されております。私ども、その考え方のもとに、過去にも幾つかの年額水準の改定の具体的な方式というのは決められてきたというふうに思っています。

 今回の私どもの考えておりますのも、恩給法第二条ノ二の大きな考え方に基づきまして、今後、毎年度年額水準の具体的な改定方式として、公的年金の引き上げ率による自動スライド改定方式をとっていくと、大きな考え方の中に入っているというふうに考えております。

重野委員 局長の今の説明はちょっと理解できないんですけれども、いわゆる総合勘案方式、つまり二条ノ二ですが、これは、賃金、物価、その他の諸事情、そういうものを総合勘案するということなんですね。これに対し、公的年金スライド、これは全く性格が違うと私は思います。

 例えば、公的年金スライドとは、言ってみれば、いわゆるマクロスライド、そのことの裏返しの言葉だと思うんです。そうなりますと、保険料、あるいは保険料の率の固定化、あるいは、年金給付額は例えば所得の五〇%以上とか、そういうのがありますね。そういうものに結局固定される。出生率であるとか、あるいは寿命によって自動的に決められていくということになるわけですね。これは、いわゆる総合勘案というイメージとは全く違うと私は思います。

 そこをあえて、総合勘案方式の一方式、こういうふうに言っているわけであって、そこのところはそういう説明は妥当でない、私はこのように思います。根本的に異なる考え方なんだというところを明確にすべきだと私は思うんですが、いかがですか。

戸谷政府参考人 これまでの恩給の中で、総合勘案方式という考え方を近年とっております。この総合勘案方式と申しますのは、物価と公務員給与の伸びというものをある一定割合で加重平均して伸び率をつくっているという状況でございます。

 今回、公的年金の伸び率という形で考えていますのは、確かに、恩給という別の制度でございますが、これまで、金額あるいはベアあるいは物価のスライドという形につきましては、やはり公的年金とのいろいろなバランスというものは私どももとってきて、これまで推移してきているというふうに考えておりますので、私ども今回考えております恩給法二条ノ二というものにつきましては、先生御案内のとおり、公的年金でも、かなり早い条のところで、いろいろな賃金その他の諸事情を勘案すると、大きな考え方を書いた条文がございます。その上でいろいろな方式が書いてございますので、それについては、私どもとしては、その大きな枠の中で今回こういう形のものを提案させていただいたというふうに考えております。

重野委員 私は、このスライド方式と総合勘案方式というのは、今の説明で、そういうふうな同じ線の中で論ずることはやはりできないと言わなければなりません。

 つまり、いわゆる恩給という性格は、さっきも説明がありましたけれども、これは、本人の意思にかかわりなく、あの時代、応召あるいは徴兵されて戦場に赴くわけですね。これは本人の意思じゃありませんよ。しかし、今の年金というのは、国民年金、これはあまねくすべてですが、しかし、その他の共済年金とか厚生年金なんというのは、それぞれの意思が働いてその境遇の中に入っていくわけですね。

 だから、そこのところはやはり決定的に違うのであって、しかも、この該当者は間違いなくある時期ゼロになるんですよね。しかし、その他の今ある年金等々については、そんなことはあり得ない。その違いが決定的にあるわけだから、いや、このマクロスライド方式は総合勘案方式の一方式、こういうふうに言いくるめるというのは、そもそもこの制度に対する消却を考えているのかと言いたくなる大きな変更だと私は思うんですよ。その点については、大臣、どうですか。

菅国務大臣 現在の総合勘案方式は、毎年、翌年度の年額水準の改定について検討する方式でありますけれども、将来の年額水準がどうなるかが定まらない方式であります。受給者の高齢化を考えたときに、今後は毎年毎年受給者の方に御心配をおかけするのではなくて、より安定的な改定方式を定め、かつ、法律にも今回は明記する必要があるというふうに考えています。

 こうした観点から検討した結果、今後は公的年金の引き上げ率によって自動改定していくことが、恩給受給者、納税者である国民、両者の理解を得る意味でも最も適当と考えたところであります。

重野委員 言葉でそういうふうに言いますけれども、いわゆる年金法の改正にスライドしてこの恩給の改正をする、わかりやすく言えばそういうことでしょう。そうすると、この間、年金はスライドをするたびに必ずしも上がるという保証はありません。現に下がっているわけですからね。

 そういうふうな性格の上からいっても、私は、このスライド方式というのは問題があると言わなければなりません。つまり、恩給は国家補償である、その国家補償たる性格を非常にあいまいなものにしたと私は思うんですが、改めてその点について聞いておきたい。

菅国務大臣 恩給制度が国家補償の性格を持っていることは、過去にも、総務大臣がこの委員会の答弁でも申し上げてきており、今回の改正案を検討する際にも、その前提としたところであります。今回の自動スライド改定方式の導入に当たっても、恩給が持つ国家補償の性格が変わる、そうしたものではないということは申し上げさせていただきたいというふうに思います。

 今回の改正案において、公的年金が下がる場合でも恩給は自動的に下げることとはしていない点についても、国家補償の性格を尊重する趣旨というものが御理解をいただけるのではないかと思います。

重野委員 それなら聞きますけれども、今後、対象者は減っていきますが、自然減に伴う恩給費が一つ、それから言うところのマクロスライドに伴う恩給費、それぞれどういう額が出てくるのでしょうか。人員と見込み額についてお聞かせください。

戸谷政府参考人 まず、先ほど申しました恩給受給者の長期的推計でございます。受給者の平均余命をどのように見込むかというところは、私どもとしてなかなか難しいところがございます。仮に厚生労働省の統計情報部の簡易生命表の数字を用いて計算いたしますと、五年後の平成二十四年には、現在の百五万人余から約七十万人という形が見込まれております。

 恩給費でございます。スライドの関係につきましては、物価上昇あるいは現在の形で賃金上昇をどう見込むかということで、これはなかなか私どもとしては荷が重い形でございます。人数の形で、先ほどの人数に機械的な計算をいたしますと、予算につきましては平成二十四年度で約六千億円程度という数字が見込まれております。

重野委員 今局長がいみじくも申しましたように、額については非常にアバウトですね。的確ではないと言えます。

 特に、マクロスライドという形にした場合、給付額のアップがあるのかどうなのか、これが非常に判然といたしません。そうでない国家補償的な意味合いでこの間やってきた総合勘案方式というのは、アバウトなんだけれども総合的に勘案をして、そして給付額をアップするということがこの間やられてきたわけですから、そういうものが担保されない今回の新しい方式、私はそのように思えてならないんですね。その点について、くどいようですが、もう一度明確にお答えいただきたい。

戸谷政府参考人 先ほど以来、スライドの考え方でございますが、今回のスライドの考え方でやってまいります際に、公的年金が下がる場合、これについては、今回特別な規定を設けまして、恩給は、その場合にはいろいろ検討をしなければならないという形で、私どもとしては、まず下がる場合についての一つの考え方を示しておるというところでございます。

 また、先ほどから申しましたように、毎年度予算の中で決めて法案を提出させていただくという形のものにつきましては、これは毎年度毎年度の形のものでございますので、今回からは、そういう形でなく、スライドの形でございますが、法の中で決定いただきまして安定的に動かしていけるのではないかというふうに考えております。

重野委員 現行よりも下がらないということは確認されましたが、上がるという言葉はありませんでしたね。そこのところが問題。

 恩給です。我々がもらう年金とは違います。私は、その点は今後間違いなく問題になってくると思うんです。対象者が減ってくるからいいというふうに安易に考えるべきものではない。その点は、局長、やはりしっかり検討しなきゃならぬ問題だと私は思います。

 以上を申し上げまして、私の質問を終わります。

佐藤委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 恩給法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

佐藤委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

佐藤委員長 次に、地方自治及び地方税財政に関する件、特に地方税法及び地方交付税法について集中的に調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官高橋進君、経済社会総合研究所国民経済計算部長後藤正之君、総務省大臣官房総括審議官久保信保君、行政評価局長熊谷敏君、自治行政局長藤井昭夫君、自治行政局公務員部長上田紘士君、自治財政局長岡本保君及び自治税務局長河野栄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

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佐藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田嶋要君。

田嶋(要)委員 民主党の田嶋要です。四十五分、よろしくお願いいたします。

 きょうは、質問の冒頭、二テーマ、質問通告にないことを大臣にお伺いしたいと思います。

 きょうは十三カ所の知事選挙の告示がなされました。だんだん忙しくなってくるわけでございますが、それと同時に、昨今、公務員の天下りの関係の新聞報道があちこちで見られております。天下りの問題、私もいろいろ思うところはございますが、地位、立場を利用した圧力ということに関しては、やはり本当に政治家は戒めていかなければいけない、そのように考えております。

 そして、その関係で、私は、まず大臣にお伺いしたいのは、同じ知事選でございますが、もう既に終わりましたが宮崎県の知事選挙がございました。そのまんま知事がテレビによく出ておられます。その関係で、告示後に総務大臣御自身が宮崎に入られたということは事実でございますか。

菅国務大臣 そのとおりです。

田嶋(要)委員 どういう懇談会だったか。一説によると「頑張る地方応援プログラム」の関係の懇談会だったという話もありますが、現地の首長さんを大勢集めた懇談会を持たれたということでございますが、そのことに関しまして、告示後に御自身の現職閣僚のお立場を利用して無言の圧力をかけているというようなことが、御存じかどうか、ネット上では相当批判されておるということは御存じですか、大臣。

菅国務大臣 まず、この経緯をぜひ御理解いただきたいんですけれども、自民党の宮崎県連の会合に要請を受けて私自身が出席して講演したということでありまして、「頑張る地方応援プログラム」とは全く関係ありません。

田嶋(要)委員 ネット上でいろいろ書かれているのは御存じですかという質問です。

菅国務大臣 いろいろなことがあるということは私も聞いています。

田嶋(要)委員 私は、菅大臣あるいは菅衆議院議員とは、おれおれ詐欺の防止法案を一緒に議員立法させていただいたり、以来、バランス感覚というか、その御見識に尊敬申し上げている一人でございますけれども、以前に、同僚の寺田委員の方からも、御地元での看板の件の御指摘があったかと思います、私は、いわゆる李下に冠を正さずということは、やはりきつ目にやっていかないとだめなんじゃないかなというふうに思っておるんですね。

 実際、この会合、言葉を非常に選びながらという発言を大臣はその後の記者会見か何かでされていたようでございますが、しかし、実際にお招きを要請された首長のほとんどは、これはまずいという判断で出席をしなかったというふうに私は聞いておるんですね。要するに、それは非常にグレーだということです。だから、どういう経緯か、宮崎県連の方からという話もあると思うんですが、やはりお立場を考えると、ちょっとどうかなと思うことは行かない方がいい。

 今回、十三知事選挙が告示されましたけれども、常に、特に現職閣僚でございます、そして、地域、地方に一番ある意味影響力のあるお立場でございますから、やったことが悪かったかどうかは別といたしましても、今後はそういうことは控えていきたいというふうにお考えなのか、いや、今後もそういうことは積極的にやっていきたいというふうにお考えなのか、その点、御明言をいただきたいと思います。

菅国務大臣 いずれにしろ、私も自民党所属の衆議院議員でありますので、そういう範囲の中では適切に対応させていただきたいと思います。

田嶋(要)委員 両方の立場があるのは、線引きが難しいというのはあるんですが、やはり原理原則は李下に冠を正さず。冠を正すどころか、何かそこで背伸びをして体操をしていたような感じがするようなことをしちゃいけないと私は思っておるわけでございます。

 第二のテーマ、これも質問通告していませんが、先ほどの天下りの関係なんです。

 私も十九年間民間におりまして、私は、今いよいよ天下りの関係が新聞の一面を飾るようになってきたのは大変いいことだというふうに思っておる。今、人材バンクとか、それとは区別した新人材バンクとか、いろいろあって、民間に委託するだのしないだのいろいろ議論はございますが、私は、いずれにしても、ぜひ中身がしっかりとある、実効性のある実現ができればなと。私自身、民間に十九年いて、社会人になってしばらくすると、天下りということが世の中にあることを知って、本当に暗たんたる思いでございました。

 正直申し上げて、私は、天下りというのはもちろん全廃しなきゃいけないと思っている一人ですが、その大きな理由は、官製談合とかいろいろなことがあると思うんですが、それよりももう一つ手前に、多くの日本人の閉塞感の原因だと思っているんですね。それともう一つは、やはり不幸の原因だと思っています。多くの人が、この制度があるがゆえに不幸になっていると思っています。幸せをつくらない。特に民間にいる方々にとって、天下りの制度というのは、私は、功罪を比較すれば余りにも罪の方が多い、そのように考えています。いや、優秀な役人がその後いろいろやっていくのはいいことだ、そういう意見は私も賛成です。しかし、それは天下りというやり方をとらずとも功の部分は引き出せるわけでありまして、私は、功罪考えれば、一対百、罪が重い制度であり、これは全廃していかなきゃいけないというふうに思っておるんですね。

 何よりも、国民を不幸にしている、そして社会の閉塞感をつくっている元凶の一つが私は天下りだというふうに思っておるんですが、大臣はその点、どのようにお考えになっておるか。所管大臣は渡辺大臣かもしれませんけれども、近接部分ということで、菅大臣の方から、この天下りをどのようにごらんになって、そしてどのように取り組んでいきたいかという御決意をいただきたいというふうに思います。

菅国務大臣 総理がいろいろ国会で答弁をしていますけれども、予算や権限を背景にした天下りは根絶する、そういうことを言っています。

 そういう中で、私自身も、やはりせっかく公務員になられる方も、優秀な方がたくさん来られますから、天下りしたいと思って来る人はほとんどいないというふうに思っています。そうした人たちが自由に安心して働ける、そうした仕組みづくりというものを、私ども公務員制度を所管しているものとして必要だというふうに思っております。

 それと同時に、やはり国民の皆さんの視点に立つことも私は必要だと思いますし、今委員は、民間のお立場から十九年の話をされました。そうしたことも含めて、まさに何回となく今までこの問題については政権が挑戦をしてきたという歴史もありますけれども、安倍政権としてしっかり、国民の皆さんからこの問題についてはよくやったと言われる形の中に決着をつけたいというふうに私自身も考えています。

 いずれにしろ、所管大臣は渡辺大臣でありますけれども、私とも非常に関連をしますので、連携をとりながらしっかりと対応させていただきたいと思います。

田嶋(要)委員 私は、大臣のお考えに全く賛成でございます。おっしゃった中で、公務員になって頑張っていこうと考える方々の中に、将来天下りができるからと思ってなる人はゼロですよ。そんな人はいないと私は思います、少なくとも最初は。

 ただ、私も、大学の仲間は公務員は大変多いのでございますけれども、話をしていると、一つのターニングポイントが大体課長補佐なんですね。よく言う話で、課長補佐が役所の、霞が関の一番の仕事、やりがいがある中心的な部分だ、そこから上はだんだん肩書という世界になってくるわけです。最初、学生から志を持って霞が関に入って、課長補佐になるまでは大体やはり、私たちがという強い思い、あふれるような熱意で仕事。ところが、先の出世が見えてくる、同期が先に出世する、そうなってくるとだんだん、自分も家族があるからな、退職金の話、どこまで出世できるか。そうすると、天下りが現実問題として、まあ、おれも天下りを選ぶか、そんなように、私はやはり人間のマインドというのは、長いこと役所の世界にいると、そういった理想に燃えた状況から徐々に、より現実的なマインドにシフトしていくのではないかなというふうに思うんですね。

 だから、そういう若いときの公務員の志が本当に持続するように、そして、まさか天下りを将来望んで役人の世界に入ってくる人というのはほとんどいないわけですから、そういう人たちのマインドがずっと続くような仕組みというのをぜひ考えていただきたいというふうに思っておりますが、大臣、もう一言、何かいただけますか。

菅国務大臣 ここにいる幹部衆、職員も、やはり国のために一生懸命に頑張っているという形で今控えているというふうに実は思っています。

 ただ、いずれにしろ、私は、形だけではだめだと思うんです。機能する人材バンクでなきゃならないというふうに私は思っています。そして、やはりこの中に公務員になって自由に働ける仕組みというものを私どもつくらなきゃならないというふうに思っています。そういう意味では、総合的な形で、しかし時間も限られていますので、それはやはり見える形でしっかりとしたものをつくっていきたいと思います。

田嶋(要)委員 時間との闘いだと思います、行政改革、財政改革。ぜひいい結果の、天下りに対する政策が実現することを私も本当に望んで、大いに期待しております。

 続きまして、質問通告をした内容に入ってまいりますが、まず最初に、退職手当債の関係を質問させていただきたいというふうに思います。

 これも、公務員が団塊の世代の退職ということで、これから十年間、特例として退職手当債を認めるということでございます。これは新聞でもいろいろと大きく記事になっていますけれども、お金がなきゃ最後は仕方がないという話で、いろいろな自治体が債券を発行するわけでございます。

 しかし、なぜ借金をするのかということをそもそも考えるときに、例えば国の借金、地方の借金。基本原則は、借金というのは、今支払うかわりに将来払うわけですから、将来世代も要するにその便益を受ける場合、そういう場合にやはり借金をもってしてお金を支出していくことが正当化されるということが大原則としてあるというふうに私は思っておるわけでございますが、退職というのは、当然ながら、その方が三十年、三十五年勤務をした給与の後払いという性格を考えれば、どう考えても、借金をして将来世代がその負担を負うということは理屈に合わないというふうに考えるんですが、大臣は、そこら辺をどう考えておられますか。

菅国務大臣 田嶋委員が今指摘されましたように、大原則については、私も全く一緒であります。

 市町村間で、近年の財政運営の中でなかなか厳しい状況にある、そういう中で、団塊の世代の大量退職に伴って急増したということで、将来の人件費の削減を進めるため、十八年度から十年間の特例措置として、退職手当債の発行を拡充する措置を今現在講じています。

 しかし、その際に、地方公共団体において、今後の定員管理だとか、あるいは給与の適正化についての計画を作成してもらって、総人件費の削減によって退職手当債の償還ができるように、そういう範囲内で許可をさせていただいているということでありますので、これからの世代に負担を先送りすることにならないように配慮させていただいていることはぜひ御理解いただきたいと思います。

田嶋(要)委員 これは私も、お金がないからもう最後は仕方がない、だから、借金はするなとは言えないと思うんですよ。しかし、世の中の、まさしく民の世界、普通の民間で働いている方や自営業をやられている方が、新聞でそういう記事を見ると、何でそういうお金を用意しておかなかったのかというふうなことを素朴に思うと思うんですよ。入ったときから大体退職する人の数は見えるわけですよね、途中でやめる人を除けば。だから、官の世界には計画性が全くないんじゃないか、そういうふうに思うと思うんですよ。

 そこで、民間企業は、当然ながら引き当て制度というものがあるわけですが、これはなぜできないんですか。

菅国務大臣 退職手当の基本的性格というのは、職員の長期勤務または在職中の功績ないし貢献に対する報償であって、このような性格から、民間においても勤務期間に応じて引き当ても積んである、これは民間は一般的である、このことは今委員の指摘したとおりだというふうに思います。

 また、地方公共団体においても、年度間の増減に備えて必要に応じて基金等を積み立てること、このことは望ましいことであるというふうに思いますし、しかし、市町村の中には、負担の平準化等の観点から退職手当組合を設置している地方団体もあります。

 しかしながら、一般的には、そこでさっきの話に戻るわけでありますけれども、近年の財政運営は、給与カットなどの歳出の徹底した抑制を図っても、なお、税収の低迷だとか交付税の抑制によって基金を取り崩しているような状況でありますので、退職手当の急増に備えて基金を積み上げるような余裕はなかったというのが現実であろうというふうに思います。

田嶋(要)委員 苦しい答弁だと思うんですけれども、余裕はなかったといってもこれは給与の後払いなんですね。だから、本来だったら、その年その年に、日本じゃない国だったら退職金なんという概念が余りなくて、そのときそのときの給料がもうちょっと多いわけですよ。それが後でどんともらえるのが日本の制度なわけで、余裕があろうがなかろうが払う、それは経常経費の一部ですよ。そういう発想でやっていくというのは、どこの国でも民間は当たり前ですよね。同じ人間が働いている組織ですよ。役人の世界だけそれができないという、私、そういう理屈は本当にわからないわけでございます。やはりこれはおかしいんですよね、大臣。変えなきゃいけない。

 要するに、十年なんて、特例といったって、十年ということは、今いる人から見ればほとんど永久的なそういう制度をつくったということですよ。これから二年とか三年じゃないですよ、これから十年間そういう債務を、住民負担をさせていいなんというのはほとんど半永久的な制度化ですよ。こんなことはやめなきゃいけない。大臣、どうですか。

菅国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、そのことの条件というのか知りませんけれども、人件費の削減だとかそういう計画をつくったところについて認めるということであります。

 ただ、現実問題として、先ほど言いましたけれども、非常に厳しい状況の中で、これだけのものを措置せざるを得ないという現実も理解をいただきたいと思いますし、もっと言うならば、やはり地方分権というものをしっかりと推進をし、責任を持って行えるようなそういう仕組みをつくることが物すごく大事だというふうに思います。

田嶋(要)委員 だから、私も、現実に今お金が足らないんだから仕方がないと申し上げていますし、そして、発行するそれぞれの自治体が悪いということではないと。この問題は、まさにこういう問題こそ、総務省がもうちょっと予見性を持って動かなきゃいけないと思うんですよ。

 それで、この話に関連して、私は公会計の話をちょっとさせていただきたいわけでございます。

 これは、引き当てというのは発生主義、民間のいわゆる複式会計の概念であるわけでございますが、国もそれから自治体も、ようやくそういう方向で今いろいろな試みが試行的になされているというふうに考えておりますけれども、こういう公会計の制度が、いわゆる発生主義ではなくて、現金ベース、しかも単年度ということでやってきたことが、将来予見性を全く要請しない仕組みが既にでき上がっているその一因がそこにあるのではないかなというふうにも私は考えておるわけですけれども、大臣はどのように御認識されていますか。

菅国務大臣 バランスシートにおいては、退職給与引当金を負債計上することになるため、その所要額が明らかになるというメリットがあります。このため、地方団体に対しては現行の会計制度を踏まえた財政分析に加え、このバランスシートを作成、公表するなど、企業会計的な手法に基づく財政分析というものを、私は副大臣になってからも強く実は要請をしてきました。

 しかしながら、先ほど申し上げましたけれども、現実問題、財政運営というのは、給与カットだとか徹底した抑制を図っても、税収が低迷、交付税の抑制によって、基金を取り崩しているような状況でありますので、会計制度にかかわらず、この地方債を増加させない限り、退職手当の急増に備えての基金を積み上げるということは困難であったというふうに考えております。

田嶋(要)委員 民間でやっている複式簿記が絶対正しくて、公会計のやり方はおかしいということではないと僕は思うんですよ。ただ、まさに今おっしゃったバランスシートのところが見えないんです。つまり、フローじゃなくて、ストックの部分が全く表に出ないのが、やはり五年後、十年後、二十年後、あるいは団塊の世代が退職するときの退職金払いをどのぐらい早くからきちんと準備しておかなきゃいけないかというところの思考が全く停止してしまう一つの原因じゃないかなというふうに僕は思うんです。

 公会計をどんぶり勘定というふうにやゆする向きもございますけれども、まさに、もう少しそういった時間軸を延ばした形で、安心できる制度としての一つの形として、いわゆる民間の会計方法、発生主義というものを検討していく必要が私はあると思っておるんですね。

 そういう意味では、昨今の動きは結構だと思います。財務省も、これは国の方、二カ年、バランスシートと損益計算書をつくったわけでございますけれども、今までの仕組みを変えたわけでは全然ございませんで、今までと同じやり方をしている上で、参考の数字として計算をして、そういう財務諸表をはじいて見せておるということでございます。

 その点に関して少し懸念されるのは、方向性としては間違っていない、そして、細かい点で言えば、国民からの税金を売り上げに見立てるのがいいのか資本勘定に入れるのがいいのかとか、いろいろな議論があります、しかし、ちょっと私、気になるのは、今申し上げたその点において、総務省主導の動きと、片や東京都が中心になってやっている動き、これは両方とも動いているのは、動かないよりはいいんですけれども、ちょっとばらばら感が見えまして、これからの国そして地方自治体の財政に関する、言ってみれば制度的インフラですよ、このインフラをこれから今つくっていこうとしている、そういう初期のステージにおいて、違う方向を向いて、何か縄張り争いじゃないですけれども、こっちがいいあっちがいいとやっている感じもちょっとするわけですね。

 そういう争いがあるとはちょっと思えませんけれども、むしろ、やはりこれは、総務省から働きかけて、どちらかの仕組みを押しつけるということではなくて、早目に調整する必要があると私は思うんですが、いかがですか、大臣。

菅国務大臣 いずれにしろ、私どもも、このことが必要だということで、各地方公共団体に指導をしてきました。現在バランスシートにおいて、退職給与の引当金が計上されておるところであります。ようやくそういう方向になりつつあるということも、これはぜひ御理解をいただきたいなというふうに思います。

 その後に、東京都の問題について、今答えさせます。

岡本政府参考人 お答えさせていただきます。

 今委員御指摘のように、普通会計のバランスシートにつきまして、各団体に、昨年の行革新指針等、期間を定めて取り組んでいただくようにお願いをいたしております。現在既にバランスシートを作成されている団体におきましては、十二年、十三年にいわゆる旧自治省の総務省方式と言われている方法で作成している団体がほとんどでございますが、一部、東京都を初め独自の方式で作成されている団体もおられます。

 そういう現状も踏まえまして、今回の公会計の研究会、昨年五月に研究会で報告を出していただきまして、それを踏まえて八月の行革新指針でお願いをしました際に、できるだけ早期に取り組んでいただくということと同時に、その後、実務の研究会も設けまして、すべての地方団体で財務書類の整備を作成していただいているということと、その際、独自方式で作成している団体につきましてもできる限り整合性を図っていただくようにということで、実務的なその両方の方式についてのいわば評価の方法を統一させるなどの研究もさせていただいておりますので、今委員御指摘のように、私どもはどちらということを強制することはできませんけれども、できるだけ両方の方式で比較が可能なような形になるように努めてまいりたいというふうに思っております。

田嶋(要)委員 これは民間の世界でも、例えば国際的な会計基準を採用している日本の企業は多くはございません。例えばソニーのような会社はやっていますけれども、そういう会社ばかりじゃない。そこで一種の読みかえというものが必要にはなってきますけれども、これから始まろうとしているわけですね。それで、本来であれば、連結するとどうなるか、そして隣の役所、隣の行政と比較するとどうなるかという比較性、そういうことを考えると、やはり同一基準でやれた方がいいに決まっているわけですよ。

 だから、これは、どっちがよりすぐれているかという議論もあるかもしれませんけれども、ぜひ私は、今のこういう状況で話し合いをちゃんと持っていただいて、それぞれのいいところを取り入れてやるのかどうか、一本化してやっていただきたいと思います。また後になって、いや、こっちはこういう仕組みなので、ちょっと向こうとは比較ができませんとか、そういう言いわけに使われても困りますから、ぜひ一本化して取り組んでいただきたいということをお願いしたいと思います。

 それで、私、今のような総務省の、総務省だけじゃないですけれども、行政を見ておりまして、二種類あると思うんです。一つは、やるべきことをやらない不作為行政、今のが典型だと僕は思うんですね。やってほしい、そういうところが不作為、余りにも遅過ぎるという側面が片っ方であるんですが、もう片っ方で、やらなくていいことのおせっかい行政があると思うんですよ。この両方が見事にブレンドしているような感じがするわけでございまして、次のポイントに関しましては、私は後者のおせっかい行政の典型ではないかなと思っているんですが、地方債に関してお伺いをいたしたいというふうに思っております。

 最近、これまたちょっとたまげるような話ですけれども、海外の日本食のレストランを、正式な日本食レストランを認証するという制度を、これは役所が違いますけれども、農林省がやろうとして、見事に断念をしたわけでございます。それはもう最初から見えているわけでございますけれども、よくそういう発想が出てくるなと思うわけでございます。要するに、国が、何が正しい日本食かを認定しようとしているということですね。それがまさに典型的なおせっかい行政だと思うんですが、水道水を飲んでいる人はほとんどいないという感覚で大臣がやっておられるわけだから、食べ物に関してもそういう発想が出てくるのかなと私は思うわけでございます。

 総務省に関して言えば、この地方債、これは昨今の新聞なんかでも、フランスの大手が山形県に大きな貸し付けを行ったとか、かなり民の部分での資金調達ができるようになってきた。一方で、官の部分の資金調達はだんだん縮小していく方向になってくる。これは私は望ましい方向だろうというふうに思うわけでございますが、ことしからですか、許可制から、合意を要しない事前の協議制に変わったということでございます。

 これは、許可制を廃止して、それでいいんじゃないかなと私は思うんですけれども、合意を要件としない事前協議制というふうになったということ、この制度の切りかえには一体どういう意味があるのでございましょうか。

岡本政府参考人 十八年度から、地方債につきましては、分権一括法に基づきまして、従来の許可制度を廃止して協議制に移行をさせていただきました。

 この協議制に移行することによりまして、これまで地方団体は都道府県知事あるいは総務大臣の許可を得なければ地方債を発行できませんでしたが、原則的に自由になるわけでございます。したがいまして、合意がなくても自由に、地方団体は一定の手続を経て地方債を発行することができることになります。

 ただ、現在の地方財政制度のもとでは、当然、地方団体と国とで公共投資を初めとして各種の事業を共同的に担っているわけでございますので、その全体を地方財政計画という形で、全体としての地方団体の行政執行を確保するという観点から財源のマクロの保障をいたしております。

 そういう中で、その役割分担に基づいて認められる事業については、地方財政計画や地方交付税制度を通じて財源措置を行っておりますので、どの団体がどういうようなものを行う、それが全般的な各地方団体の規律の中で行われているものであるのか、あるいは、そういう地方団体が独自に判断をされたものであるのかというようなことを協議いただいて、私どもとすれば、その中から当然、同意をしたものについては地方財政計画の公債費に算入をするということはさせていただきますし、また、財政投融資資金等の公的資金を充当するという措置を行う必要がございますので、協議は行わせていただいているというものでございます。

田嶋(要)委員 大臣、どこまでいろいろな制度を変えていくかということで、大きくは分権社会という、本当に明治以来の中央集権国家を、国の形をすごく変えていくわけですから、前例のない未知な挑戦という感じがするわけでございますが、こういう一個一個の制度をどこまで変えていくかということを考えるときに、目指すべき分権社会ということを遠くにイメージを持ちながら、ほかの国はどうなっているのかということは常に御関心を持たれておるんですよね、大臣。どうでしょうか。

菅国務大臣 私も、いろいろな制度についてはそれなりに研究をさせていただいています。

田嶋(要)委員 だとしますと、どのぐらい私たちが目指す分権社会が実現していくかは、結局、各論の、こういうところの制度がどの程度思い切って地方の自己責任あるいは自分たちで考える、そういう仕組みに変えていけるか。それによって、一年で済むところが十年かかるというようなことも私は当然あると思うんですが、この関係に関して言えば、少なくとも都道府県あるいは政令市に関して、こういった今回のような制度の切りかえということをやめてはどうかなと。要するに、歳入の自治をもっともっと高めていく必要がある、あるいは自己責任の強化ということから、私は、合意は伴わないということですが、事前の協議そのものもなくていいんじゃないかなと思います。

 これは、ほかの国を見ても、連邦制の国のそれぞれの州、そういうところに関しては、もちろんそういった事前の規制はありませんよ。日本は連邦制ではございませんけれども、その規模を見て、やはり都道府県あるいは政令市ぐらいの権限を今持っている自治体に関しては、まずは事前協議と言わずに自由化をしていけばどうかなと私は思うわけでございます。それが、ほかの国々と制度を比較すると、少し追いつくかなという感じを私は持っておるわけでございますが、大臣、いかがでしょうか。

菅国務大臣 まず、新たな協議制度へ円滑な移行ができるよう、この定着というものを図っていきたいと思いますし、地方公共団体の自主性がより発揮できるよう、手続の簡素化、これについては努めていきたいというふうに思っています。

 それで、今のままでいいのかどうかという話は、常に私も疑問を抱きながらこれに取り組んでいます。結果的には、昨年の臨時国会で成立をさせていただきました地方分権改革推進法、あの中で、三年以内に一括法ということもうたっております。そこで、やはり私は、国と地方の役割というものをまさに明確に分担をして、権限、税源、財源を移譲させる、そういう仕組みの中でこれはしっかりと対応していきたいというふうに考えています。

田嶋(要)委員 それと、今私は大きな自治体、都道府県等に関してはということを申しましたが、それ以外に関しても、ほかの国の例を見ますと、ほかの国といっても先進国、五、六カ国ですよ、基本的には総量規制なんですよ。一個一個協議だとか、そういうことをやめて、ちゃんと総量で責任を持たせる。特にイギリスなんかは、それを自分たちで、自治体それぞれがその総量を自分で設定するんですよ。

 そういうような、主客を逆転するような、何か親が子のことをいつまでも干渉し、ある現職の知事さんなんかは、禁治産者みたいなものだというような、今はそういう言葉は使われていませんが、そういう言い方ですよ。要するに、一人前として扱われていない、そういうことを言われるわけですよ。

 これはやめたらどうですか。少なくとも総量規制、なるべく事後規制、そして自分たちで考える仕組みをつくっていかないと、いつまでも思考停止してしまう、いつまでも国の顔色をうかがっちゃうということになると僕は思うんですけれども、いかがですか。

菅国務大臣 私もそのことは物すごく大事だと思っていますので、昨年、大臣に就任をしたときに、翌日、総理に、この推進をこの国会でやりましょう、臨時国会で成立させましょうということを、非常にタイトな国会でしたけれども、総理は日ごろから地方の活力なくして国の活力なしということを言っていますので、そういう意味で、実は総理に私自身がこの法案をやりましょうという形で総理の了解をいただいて、あの法律を成立させたという経緯があります。

 日本は、明治以降、中央集権体制で今日まで来ています。しかし、その以前というのは、日本という国は、それぞれの藩が独自でさまざまなことを、産業育成をし繁栄をしてきたわけでありますし、イギリスと戦争までするという、それぐらいの力があったことも事実であります。

 私は、この現在の中央集権体制、これがまだ百三十年弱ですか、今日の日本の一つの発展を支えてきたというのは間違いないと思いますけれども、しかし、ここの中でもうそろそろ地方分権を実行していかないと、この国そのものが非常に立ち行かなくなる、そういう危機感も覚えておるところでありまして、そういう意味におきましては、地方がやはり自分で責任を持って行う、そういう仕組みというものをできるだけ早い機会につくりたいというその思いはぜひ理解いただきたいと思います。

田嶋(要)委員 私は、さっき天下りのときに、本当に社会を不幸にする制度だというふうに申しましたけれども、同様のことをこの分権のことでも思っていまして、中央集権を分権化する意味というのは、人間をハッピーにする改革だと思っているんですよ。要するに、責任を渡す、リスクをとらせるということは、知恵が出てくる、創意工夫。僕は、それが本当に地域社会の活性化につながっていく重要な改革だと思うんです。それを、いつまでも何か親が子をというようなことをやっていると、本来五年で終わることが十年かかる。結局は、ほかの先進国に比べたら全然進んでいないということが至るところに日本は見られているような気が私はしますので、それは大臣の決断が本当に重要だと思います。

 もう一つ。資料をおつけしたので、参考、これはここまではとてもいかないだろうと思いますけれども。これはアメリカなんですけれども、アメリカの地方債というのは住民投票を基本的に行ってやるわけでございますが、こういう状況になっているのかということを私も最近知りました。これは、自治体のそれぞれのレベル、一番大きい州、それからカウンティー、市町、特別区、こうやって自治体それぞれが、こういう借金をしていいですかと住民に問う、そして、住民がいいかいけないかを投票する。こういうことで、オーケーをされた借り入れが、場所によっては六割、場所によっては九割、そういう状況にあるわけでございます。

 日本も最近、市町村の合併に関しまして、条例に基づく住民投票ということが全国かなり、数百カ所ですか、行われたというふうに理解をいたしておりますが、このアメリカの制度のように、これはやはり本筋だと思いますよ。本筋は、国に向かって顔色をうかがうんじゃなくて、自分のところの住民に向かって顔色をうかがわなきゃいけない。住民がオーケーしてくれるかどうか。

 まさに地方自治体の統一地方選が始まりますけれども、どこの自治体でも、大きな課題は財政ですよ。千葉市は一兆円を超える借金がありますとか、そういうことをやはり候補者はみんなそれぞれ見てやるわけですね。住民の関心というのは、個別の政策もありますけれども、自分の自治体は大丈夫か。そうすると、やはり、借金をする、将来世代に負担を先送りする、そういう、どういう個別政策にも関係してくるような共通の政策課題、すなわち自治体が追加で借金をするかどうかに関しては、大変住民に問う価値のある、しかも住民の政治参加の意識を高める上では極めて重要だと私は思うんですね。

 一足飛びにはここまでいかないかと思うんですが、今後こういうことも検討していきたいという前向きな御答弁を大臣からいただきたいと思います。

菅国務大臣 日本とアメリカの国の形というのはまるっきり違うと思いますね、日本の集権に対し、アメリカはそれぞれの州がみずから憲法を持つような国でありますから。そういう中で、日本の中央集権体制のよさというのもこれはやはりあったと思いますね、明治から今日の日本が発展をする中で。

 しかし、今委員から指摘されましたように、地方の、地域の人たちがどうしても国依存になってきているという今、そういう中でこれからの日本の将来を考えたときには、当然、分権また地域主権というんですか、そういう時代にもうなってきているというふうに私は思っていますので、仕組みというものをぜひ変えたいというふうに思っていますので、ぜひまた御協力と御支援を賜りたいと思います。

田嶋(要)委員 肝心なところは素通りした答弁でございますけれども、やはりこれはやってみなきゃわからないですよ。本当に、一段跳びじゃなくて二段、三段跳びもやってもらいたいと思います。かなりこれは地域の意識が変わってくると思いますよ。

 今、市町村が、村までいかないですかね、発行する公募債ですか、何とかのために使う債券、結構人気が出たりしますよね。それによって、自分はこの地域のこういうまちづくりへお金を貸しているんだ、投資をしているんだという参加意識も出てくるわけですから、ぜひこういう、やはり本来の主であるところの住民を向いた政治、行政ができるように私は挑戦をしていただきたいと思います。

 この関連でもう一つ、これも私、最近まで知らなかったんですけれども、いわゆる外部監査の話をさせていただきたいんです。

 これは、企業であれば、監査というのは、この企業の出してきた財務諸表の数字は間違いございませんという、その信用性を高める、お墨つきを与える役割を持っていまして、それは、さまざまなステークホルダー、典型的には債権者とそれから株主に対して、大丈夫ですよということを、それでもいろいろ怪しいケースが事件になっているわけでございますが、それが外部監査の役割ということなんです。

 今、公的団体、いわゆる自治体に関しては、こういう意味での外部監査は存在をしないということなんですが、私は、まさにこういうところこそ、数千万もかけてやる監査ばかりじゃないわけですから、私たちの民主党の支部でも監査はやっていますからね、そういう意味ではお金のかけ方はいろいろあると思うんですが、ちゃんとした、この財務諸表はしっかり正しいですよということを、やはり監査を外部で義務づけるという方向にしていかなきゃいけない。これはアメリカやイギリスなんかはそうなっていると思いますけれども、そういうことをしていただきたいと思うんですが、その点、大臣、お考えはいかがですか。

菅国務大臣 実情においては、都道府県とかあるいは中核市以上の市に包括外部監査というものを義務づけております。その他の市町村においても、条例で定めればできるような仕組みになっています。個別の財務内容については個別の外部監査を行うことができる、そういうことにはさせていただいています。

 ただ、いずれにしろ、今度法案を提出させていただきます健全化の法案、この中では、やはり早期健全化が必要なものについてはそういうものをきちっと義務づけるとか、そういう方向で考えていきたいというふうに思っていますので、その際にまたいろいろ議論させていただきます。

田嶋(要)委員 大臣、包括外部監査とおっしゃいましたけれども、問題は、その包括外部監査の言う監査が民間で言うところの外部監査とは全然違うということを私も最近知ったということなんですよ。だから、監査という名前があるから監査をやっているんだろうなと思ったら、監査じゃなかったということなんですね。

 だから、これは車の両輪だと思うんですけれども、公会計の制度の改革ということと、それから、外部でしっかりと、民間企業の外部監査と同じ意味での監査を行っていくということ、それを両輪として私は改革を進めていただきたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。

 もう残り少しですけれども、地方税に関してもお伺いしたいんです。

 これは法律は通ってしまいましたけれども、日本の町が金太郎あめというふうな言い方もされるわけですけれども、これはいろいろな理由があると思うんです。私、その中でも税制というのは、やはり、こうあるべき社会をつくっていきたいということでいろいろな仕組みを講じていくわけで、私は、税制がまちづくり等あるいは社会に与えていく影響というのは少なくないと思うのでございますが、そこでお伺いします。

 今回、法律は通ってしまいましたが、地方税の改革、中でも、例えばバリアフリーの問題とかテレワークに関する改革、それからハイブリッド車とか、いろいろございました。私、話を聞いていて、これは国でやる仕事かなと本当に思うわけですよ。いただいた冊子の頭書きにも、これは何か、次の大改革の手前の端境期の改革だみたいな書き方がしてあったので、それは若干御認識はあるような感じもいたします。

 どういうバリアフリーをしたらどういうような税制的な優遇を与えるかとか、あるいはテレワークも、そういったことに関して権限を移譲して、それぞれの地域で判断していけるようにしていかなきゃいけない、まさにそういうことを決めるのが私は国の仕事ではないかなと思うわけでありますけれども、大臣、どうですか。

菅国務大臣 地方税法では、地方団体の判断での課税自主権、そういうものの活用が図られるよう、法定外税や超過課税を可能にしています。地方団体でもそれぞれ、このところそういうものが出始めてきているというふうに思っています。

 今御指摘のバリアフリーの問題でありますけれども、政策的な必要性に基づいて設けられ、全国を通じて実施をする特例措置については、法令においてその内容や要件などを定めておるところであります。

 このほか、地方団体が独自の判断に基づいて政策的な税制措置を講ずるような場合には、地方団体の条例に基づいて課税免除や不均一の課税などによって実施することも可能である、そこのところは残しておりますけれども、いずれにしろ、これは全国的な特例措置でありますので、定めさせていただいたということです。

田嶋(要)委員 だから、こういうやり方は絶対だめとは言いませんけれども、おっしゃるとおり、超過課税とか法定外税の話ございますけれども、課税自主権というのはあってないようなものですよ、実際には。ほとんど何の自主権もないわけです。大半のところは地方税法という法律で決まっているわけですね。

 だから、私は、標準的なラインとしてこういうものを国がつくってもいいけれども、例えば、こういうバリアフリーはこのぐらいのメリットを上げようとか、そういう細部はもっともっと自由にして、地方で見つけてもらうようにしたらいいんじゃないですか。この地域をよくするためにはこういうところで減税をしたらいいとか、こういうところの何か特典を与えた方がいいとかいうことも含めて、これはまさに、私が冒頭申し上げたおせっかい行政の典型ではないかなというふうに思うんですね。だから、何を国でやるべきか、何を地方に任せていくかというところ、これは難しい問題だとは思うんですが、私は、そこはどうも、いろいろばらばらな感じがいたしてなりません。

 きょうはちょっと、半分ぐらいしか終わりませんでしたけれども、以上で私の質問を終わりにさせていただきます。ありがとうございました。

佐藤委員長 次に、福田昭夫君。

福田(昭)委員 民主党の福田昭夫でございます。

 前回は大臣に質問できませんでしたけれども、きょうは大臣にお願いいたしますので、簡潔にお答えいただければというふうに思います。

 初めに、地方財政の現状についてお伺いをいたします。

 一つ目は、地方の財源不足についてであります。

 地方の財源不足は平成十五年度の十七・四兆円をピークに大幅に減少してきており、平成十九年度は通常収支分約四・四兆円とのことでございますけれども、地方の財源不足額発生の原因と今後の見通し、並びに財源不足が生じた場合の対応方針について教えていただければと思います。

菅国務大臣 委員の御指摘のとおり、四・四兆円不足であります。

 こうした財源不足に至った要因でありますけれども、景気低迷による税収の落ち込み、それに、減税や公共投資の追加等の景気対策を行ってきたということであります。さらに、少子高齢化の進展に伴って社会保障費関係というのが非常に増加をいたしております。

 そうした状況の中で、地方団体の人件費を削減するあるいは公共事業を削減する、そういう結果から、十九年度の財源不足というのは、十八年度は八・七兆円だったのですけれども四・四兆円になったということであります。

 財源不足というものはできるだけ早く縮小、解消することが望ましいことでありますけれども、引き続き、そうしたことに努力をしながら一般財源総額を確保して、地方財政の健全化に努めていきたい、こう考えております。

福田(昭)委員 そうした中で、十九年度の地方財政対策では、不足分については国と地方で折半をするということを決めてくれたようでございますが、こうしたことは今後とも続けていく、そういう考え方でございますか。

菅国務大臣 御指摘のとおりです。

福田(昭)委員 地方の努力不足もあるかもしれませんけれども、それだけではない財源不足でございますので、ぜひそこはしっかり対応していただきたい、こう思っております。

 二つ目は、地方の長期債務についてであります。

 地方の長期債務は、平成十九年度末においては百九十九兆円と見込まれているようでございますが、平成十八年度末の二百一兆円程度に比べるとやや減少しているということでございますが、依然極めて高い水準にあります。国と地方との重複分を除いた国、地方の長期債務の合計額が七百七十三兆円ということで、対GDP比一四八・一%、拡大をしているようでございまして、主要先進国と比較して極めて深刻な状況にある。

 そうした中で、地方の長期債務の償還の見通し、及びその元利償還金相当額の全額を後年度の基準財政需要額に算入することとしております臨時財政対策債、いわゆる赤字地方債に対する交付税措置、これがよく地方の方からは、見えない、見えない、こう言われるわけでございますが、この交付税措置の見通しについて教えていただければと思います。

岡本政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘のように、十九年度末見込みで、地方財政は百九十九兆円という債務残高を抱えております。

 これを踏まえまして、十九年度の地方財政対策におきましては、人件費や公共投資の地方歳出を抑制しますとともに、景気回復に伴います地方税収の増があったことなどによりまして、財源不足が縮小いたしまして、前年度と比較いたしまして新発の地方債は一・二兆円縮減をするということ、さらに、地方債残高も十八年度末に比べて一・五兆円の減というふうになる見込みでございますし、また、交付税特別会計の借入金につきましても、新規借り入れを廃止して、十八年度補正から計画的な償還を行うということにいたしました。これらの措置を引き続き行っていくことによりまして、今委員御指摘のように、地方の長期債務の残高を確実に縮減していくということが必要であるというふうに考えております。

 しかし、また同時に、その過程の中におきまして、今御質問のございました、赤字地方債でございます臨時財政対策債につきましても、その元利償還費をきちんと一〇〇%地方財政計画の中に組み込んで、その財源保障を図っていくということを行いながら、財源措置を行ってまいりたいというふうに考えております。

福田(昭)委員 ぜひそれをしっかりお願いしたいと思いますが、国と地方の借金は性格が違うと思うんですよね。国の場合は、極端なことを言いますと徳政令も可能ですけれども、地方の場合はそれはちょっと不可能な話でございますので、ぜひとも、この対応をしっかりお願いしたいなというふうに思っております。

 それから、三つ目でございますが、三つ目は地方債の繰り上げ償還についてでございます。

 今回、公債費負担の軽減を図るということで、平成十九年度から三年間で、約五兆円規模の公的資金を補償金なしで繰り上げ償還を認めるということでございますが、これは、どうも菅大臣が随分頑張って財務省とも交渉した、こういう話でございますが、この際、免除される補償金がどれぐらいあるのか、また、その恩恵に浴する自治体がどれぐらいあるのか、教えていただければと思います。特に、今回、普通会計債と公営企業債で、それぞれ、金利が五%以上、六%以上、七%以上、こうあるわけですが、これでどれぐらいの自治体がその恩恵にあずかるのか、教えていただければと思います。

菅国務大臣 総体的なことは私が申し上げたいというふうに思います。

 この補償金相当分については、財投の会計、あるいは、私ども、郵便貯金・簡易生命保険機構、公営企業金融公庫、この三点があるわけであります。全体としては約八千億円が免除されました。

 私、実は、総務大臣であると同時に郵政民営化担当も兼ねておりますので、このことについて、郵政公社あるいは日本郵政株式会社からも、それについては困るという、それぞれ、社長、総裁から私のところに強くそういう要請があったということも事実であります。

 しかし、地方公共団体の皆さんにとっては、これは数年前から、こんなに金利が安いのに、最大でたしか八・五%だったと思います、これはおかしいということをずっと私も言われていましたし、私自身も、地方議員をやっていましてそのことをよくわかっていましたので、このことについては、非常にいい機会なので、日本郵政に対しても、ぜひ何とか私どももこれは説得をする、理解をしてもらう、そういうことで財務省にもという形で実現をした経緯があるということを御理解いただきたいと思います。

岡本政府参考人 今回の補償金なしの繰り上げ償還の措置によって免除される補償金の総額は約八千億円程度というふうに見込んでおります。

 また、今回の五兆円という規模でございますが、私どもの推計では、十九年度末見込みで五%を超える地方債は約十兆円程度と見込まれると考えておりますので、その大体半分程度が補償金なしの繰り上げ償還の措置を受ける、マクロでいえばそういう措置になると考えております。

 また、個々の団体につきましては、財務省等とのこれまでの折衝経緯等、また、当然のことでございますが、行政改革あるいは公営企業でいいますと経営改革に取り組んでいただくという団体であること、またさらに、公営企業でございますと、優先順位としましては、やはり上水道等のいわば資本費のコストが高いような団体でございますとかというようないろいろな要件につきまして、現在、地方団体のいろいろな御意見も伺いながら調整を図っているところでございます。

 したがいまして、現時点で何団体がその対象になるというふうな確たることを申し上げるわけにはまいりませんが、大体、私どもが今ある程度見込んでおりますのでいきますと、金利七%以上のものにつきましては七、八割の団体が受けられるように、また、六%以上、五%以上につきましては半分前後といったものを目安にしながら、できるだけ多くの団体が今回の措置の対象になり得るように今後調整をしてまいりたいというふうに考えております。

福田(昭)委員 私も以前、市長とか知事時代にこういったことで要求したことがございましたが、なかなか実現できない話だったので、今回の菅大臣の頑張りは私も大変よかったなと思っているところでございます。

 そうした中で、実際に始まったらどうも返せなかったという団体が続出するようでは困るなと思って実は質問をさせていただいているところでございまして、実際にこの効果があらわれるように、第二の夕張が生まれないように、ぜひここのところはしっかり対応していただければと思います。

 次に、四点目でございますが、地方交付税特別会計の借り入れの廃止についてお伺いをいたします。

 このこと自体は私も賛成でございますけれども、しかし、今回の返し方ですね、償還の方法でございますが、地方の方は約三十四兆円ということでございますが、これを二十年で償還するというのはいかにも無理があるんじゃないか。一方、国の方は十九兆円を六十年かけて償還するというんですね。これは、国と地方の違いが出たのはどこにあるのか、ちょっと教えていただきたいと思います。

岡本政府参考人 今のを答えます前に、先ほど私、八割とか五割という数字を申し上げました。団体数と申し上げましたが、残債の額の八割とか五割というものを目安に今いろいろ考えているということでございます。済みません、訂正をさせていただきます。

 今の交付税特別会計の借り入れのお話がございまして、二十年ということでございます。従来から、交付税特別会計の借り入れの償還といったものを計画ベースでお願いをいたしてまいりました。これを二十年という形で従来からやってまいりました。国の方は御案内のように三十年ないし六十年ということでございますが、地方財政の一つの規律として償還を確実に行っていくという意味でこの二十年といったものを踏襲させていただいたということでございますし、また、内閣府の現在行っております経済見通しといったものを前提といたしますと、償還額の毎年の増加額と交付税の法定率分の増加額といったものをその試算のもとで推計をいたしてまいりますと、これが二十年のうちでは可能であるという前提で行っているというものでございます。

福田(昭)委員 お答えですけれども、我が党の質問にあったと思いますが、二十年の償還表を見ますと、もう最後のころになりますと、とてもとても返せないような、二兆円とか三兆円とか、そういう数字になっておりまして、そういう償還の仕方をするということになると、これは交付税総額を減らすほかない、地方に配る分をそれこそ減らすほかないんじゃないか、そう思うような金額になっておりますが、それはいかがですか。

岡本政府参考人 今お答えをさせていただきましたように、内閣府の「進路と戦略」の成長率を前提といたしました場合には、毎年の償還額の増加額、例えば二十年、後半の方の時期におきましても、償還額の増加額と法定率分の増加額といったものを見合わせますと、法定率分の増加額の方でそれは賄えるという計算になっておりますので、そういう計算をいたしております。

福田(昭)委員 法定率でも引き上げれば別ですけれども、それは何か絵にかいたもちになりそうな気がいたしますので、これはしっかりもう一度検討し直してほしいというふうに思います。

 それでは五つ目でございますが、国と地方を通じた基礎的財政収支についてであります。

 国は、平成七年度からずっと赤字で、平成十九年度においても約四・四兆円の赤字の見込みということでございます。一方、地方は、平成十二年度からずっと黒字で、平成十九年度においても約五・四兆円の黒字の見込みということでございますが、国と地方を通した基礎的財政収支の黒字化を図るという名目で国の赤字分を地方に今までずっと負担させてきた、そういうわけでございますけれども、このやり方を二〇一一年度まで続けていくつもりなのかどうか、お伺いをいたします。

菅国務大臣 二〇〇七年度のプライマリーバランス、国はマイナス九兆円、しかし地方は五・九兆円の黒字である。しかしこれは、なぜこうしたことになったかといえば、地方がそれぞれ大変な歳出削減に努めてきた結果であると思いますし、特に財政力の弱い団体においてはぎりぎりの判断でこうした削減を行ってきた結果として地方は黒字になってきました。

 しかし、地方が今日まで頑張ってきたことをまた国が取り上げるということはあってはならないというふうに私も思っておりますので、やはり、地方が取り組んできた成果というのは地方の財政の健全化に使うべきだというふうに考えています。

福田(昭)委員 総務大臣としてはぜひそう努力していただきたいと思っています。

 先日、読売新聞が、全国の知事、市区町村長、計千八百八十二人に、全国自治体首長アンケートということで調査をいたしたんですね。その調査結果によりますと、実は、小泉総理が進めた三位一体の改革で地方の地域間格差が拡大した、こう感じている人が約九割いるんですね。

 これは大変な数字ですね。本当に、ただ交付税を減らせばいいという話じゃなくて、交付税を減らせばもう地域間格差はどんどん拡大をする、そうした結果があらわれているわけでございますが、こんなことを考えると、やはり国と地方を通じたプライマリーバランスの黒字化というのが非常に私は問題だと思っているんですね。

 それは、国全体を考えれば、国と地方を通じたプライマリーバランスの黒字化というのは大切な点でございますけれども、国がもう少し努力をしたらどうだ、地方がこんなに努力をしているのに国の方の努力が足りないんじゃないか。例えば特別会計の改革であったり、特殊法人や公益法人の改革であったり、そうしたことに非常に私は不十分さを感じるわけですが、いかがでしょうか。

菅国務大臣 当然、そういう意識の中でしっかりと対応させていただきたいと思います。

福田(昭)委員 ぜひそういう考えで頑張っていただきたいと思います。

 次に、六つ目でありますが、六つ目は、地方公務員の給与についてであります。

 私も、市町村合併や事務事業の見直し、そうしたことによって総人件費を削減していく、そうした考えについては賛成でございますけれども、地方公務員のやる気を失わせるような給与の削減は慎重にやるべきだ、そのように考えております。

 そこで、地方公務員の給与についてでありますけれども、既に国家公務員の給与の構造改革に準じて平均四・八%の引き下げを行いました。さらには、企業規模の見直しということで、五十人以上の企業規模に官民比較をする際の企業規模の見直しも行った。それから、加えて、財政状態の非常に厳しい自治体においては独自に給与のカットもしている。そうしたことが既に行われているわけであります。

 したがって、今まで国に比べて高いと言われていた地方公務員のラスパイレス指数も、全自治体で考えると既に九八と実は一〇〇を下回っている。そのように地方公務員の給与は国家公務員の給与をもう既に下回っているわけでございますが、これ以上どこをどのようにして減らして地方公務員の給与を下げようとしているのか、そのお考えをお伺いしたいと思います。

菅国務大臣 私は、地方によって非常にばらつきがあるというふうに実感として思っています。

 福田委員のおっしゃるように、大変努力をしている地方も数多くあるということも私は理解をします。しかし、数字を見てもまだまだ理解に苦しむ、そうしたことも多くあるということも、これはぜひ御理解をいただきたいというふうに思っております。

 いずれにしろ、地方公務員の給与については、国民、住民の理解と納得が得られるよう、不適切な制度とか運用、こういうものについてはさらに適正化というものを図っていきたいと思いますし、地域の民間企業の給与水準を適切に反映していく、そういうものにしていきたいと思います。

 正直言って、総理からも私に指示がありまして、十九年度のできるだけ早い時期に給与構造改革というものをすべての公共団体で実施されるように徹底をしていきたいということでありますので、すべてというか、それこそ物すごく格差があるというのも事実だと思います。

福田(昭)委員 そういった意味では地域の実態を踏まえた給与の改定ということになるのかなと思いますけれども、ぜひ、全国一律ということじゃなくて、そこはよく考えていただきたい、こう思っております。

 それでは次に、既になされておりますが、地方税法の一部改正をお伺いいたしたいと思います。

 一つ目は、格差社会の原因についてであります。

 いわゆる所得格差とか、大企業と中小企業の格差とか、あるいは都市と地方の格差とか、さまざまな格差があるわけでありますが、こうした格差はなぜ拡大するのか、その原因を大臣はどうお考えになっているか、お聞かせいただければと思います。

菅国務大臣 非常に難しい質問だなというふうに実は思っています。

 ただ、所得格差だとか資産格差だとか消費格差、いろいろあろうと思いますけれども、例えば有効求人倍率で見た場合、五年前というのは、今低いと言われるところは〇・四二とか三でした。しかし、今高いと言われるところも〇・八ぐらいだったんですよね。当時は二倍の格差があった。しかし、高いと言われた〇・八台のところが一・八とか二近くになっていますね。愛知県なんかはそうなっていますから。しかし、〇・四幾らのところはなかなかそこから上がることができない。数字ではそういうふうになっている。日本全体とすれば有効求人は一・〇を超えることができましたから、それなりには私はよかったというふうに思っていますけれども、ただ、〇・八から二に二倍になったところと、〇・四幾らのそのままなっているところの格差が広がっているということであります。

 その要因は何か。いろいろ分析して、やはり企業の誘致をできたところとそうでないところの格差というのが、有効求人倍率であれば、これは当然のことながら物すごくできていますので、そういう中で、日本全体から見れば、いろいろなばらつきはありますけれども、底上げは間違いなく成っているというふうに思っています。

 ただ、そこで、政府として大事なところは、たとえ有効求人倍率〇・四幾らのところであっても、どこの地域であっても、やはり一定水準の行政サービスができるような仕組みをつくるというのが実は私どもの一番大事な仕事だというふうに思っています。そういう意味においては、地方税だとか一般財源総額、交付税総額を確保して、保障機能、調整機能というものをしっかりと行うのが私どもの仕事だというふうに思います。

福田(昭)委員 私は、格差が拡大する原因、大きなものは三つあるかなと思っているんです。

 一つは、やはり雇用のあり方ですよね。正規雇用と非正規雇用、こういう雇用のあり方、これがやはり所得格差をどんどん拡大しているというふうに考えております。御案内のとおり、正規雇用と非正規雇用の社員の給与の格差は、一番あるところで四分の一ですね。もらっているところで六割。これだけの格差があるということになると、どんどんどんどん所得格差が開いていくだろうというふうに思っております。

 それから、二つ目は、やはり税制のあり方、税金のあり方だと思います。今度も、所得税法、住民税も一部改正がなされたわけでございますけれども、そうした中で、小渕内閣のときにやりました最高税率、特に所得税について三千万以上の最高税率は下げられたままなんですね。これも、五〇%とかですね、やはりしっかりもとに戻すということを、今回やっていないんですね。こういうことでありますから、給料がだんだんだんだん差が開く中で、税金をいただく方も、たくさん取っている人からはいただかない、これですから、当然、格差がどんどん拡大するのは当たり前なんですね。ですから、こうした税制というのはやはり改めなくちゃならない、私はそう思うんですね。

 「ハリー・ポッター」の翻訳者が何かスイスの方へ逃げた話もありますけれども、そういった人はどんどん国外へ行ってもらえばいいんですよ。やはり日本を愛する人に日本に残ってもらえばいいんですから、そういうことをやはりしっかりやるべきだと思うんです。逃げていく人は逃げていっていいんです。やはり日本に残る人がしっかり日本をつくっていけばいいんですよ。

 それから、三つ目ですね。三つ目は、やはり税金の使い方ですね。あるいは制度のあり方。これでどんどん格差が開いているのは、教育とか医療とか福祉とか介護とかですね。こういった分がどんどん格差が開く原因になっております。それから、地方交付税やあるいは国庫補助負担金のあり方、これがやはり都市と地方の格差、特に地方交付税が都市と地方の格差をどんどん拡大している。そういう税金の使い方、あるいは制度のあり方、この大きな三つが格差をどんどんどんどん拡大している大きな原因だと私は思っています。

 こうしたものをやはり是正して、それこそ、日本人がつくってきた福祉社会をもう一度やはりつくり直す必要があると私は思っているんですね。お互いの助け合い。先日ある先生がおっしゃっていましたけれども、日本がすばらしいのは、自由資本主義を基本としながら社会主義のいいところを取り入れて福祉社会をつくってきた、先進諸国ではどこもできなかったやり方を日本が独自にやってきた。このすばらしいことをやってきたのは実は自民党だったんですね、今までは。それをぶち壊しちゃったのが、残念ながら小泉内閣なんです。そして、それを受け継ぐ安倍内閣なんです、残念ながら。ここをやはりしっかり直していく、それが大事なことだと思っております。(発言する者あり)そう、そのためにはぜひ政権をかえたい、こう思っております。

 次に、公平公正な税制についてということで、これは時間の関係で自分の考えだけ申し上げますけれども、やはり公平公正な税制をしくべきだと思うんですね。そのためには、やはり所得税とか消費税については累進税率にする、累進制を入れるということが大事なことだと思いますし、さらには、汗水垂らさないでもうけるお金、不労所得に対してはそれなりの税金をいただくということが大事だと思っています。それが例えば株取引のお金とかそういったお金になるわけでございますけれども、そうしたお金からはそれ相当の税金をいただく、それがやはりより公平公正な税制だと思っております。そうしたことをつくっていくのが政治だというふうに思っております。

 それから三つ目は、税源移譲に伴う広報についてでありますが、先日は我が党の代表からも質問がありましたけれども、今回の所得税法と住民税法の一部改正に伴って、一月に所得税が下がって、六月に住民税が上がるわけでございますが、これは実は同額ですというPRを今政府と自治体が一体になってやっておりますけれども、これはタウンミーティングと一緒で、これはまさに国民をだますやり方なんですね。こういうのはやはりやめた方がいいと思うんですね。定率減税がなくなって、税額そのもの、総額はふえます、しかし所得税と住民税の出入りは同じです、こういう宣伝をすべきだと思うんですね。

 本当に、そういった意味では、国民の理解を得るためにはやはり適切な方法ではない、こう感じておりますので、こうしたことについても今後ともしっかり対応していただきたい、そう思っております。

 次に、地方交付税法等の一部改正についてお伺いをいたします。

 一つ目は、地方交付税の機能についてであります。

 地方交付税については、今までどおり、財源保障機能と財源調整機能を維持する考えだと伺っておりますが、改めて菅大臣の考えをお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、谷委員長代理着席〕

菅国務大臣 現在、我が国においては、法令基準の設定などを通じて一定水準の行政運営というのを確保する、このことを求めております。これは、どんな時代になっても地域間によって税源というのは偏在があるというふうに私は考えています。そういう中で、地方税の収入のみでそうした行政サービスができないということについての財源保障と調整機能、これについてはしっかりと私どもは確保していくということが、先ほど委員から指摘がありましたけれども、日本の古きよき伝統といいますか、助け合いですか、そういうものを支えていく重要なものだと思っています。

福田(昭)委員 菅大臣は、出身地は私と同じで田舎だと聞いておりますので、ぜひともこの機能をしっかり守っていっていただきたい、こう思っております。

 二つ目は、新型交付税についてであります。

 人口と面積を中心とする新型交付税でございますけれども、どうも新型交付税と宣伝した割には何か大した変わりがない、むしろ変えたのがおかしいなというような思いがあるわけでございます。それは、今回の交付税の算定費目の統合ですか、見直し、それをやったのを見てみますと、今までの経常的経費と投資的経費、こう分けた方が私は行政需要を把握しやすいんじゃないかと思うんですね。

 ところが今回は、個別算定経費、これが従来型なんだ、そして新型が包括算定経費だ、こういう区分けをしたんですが、しかし新型の方も、人口については段階補正を導入しなくちゃちょっと無理だ、それから面積については種別補正を入れないととても無理だ、さらには、条件不利地域を考えればやはり地域振興費を入れなきゃだめだと。

 ということになると、人口と面積と大々的に銘打った割には何の変わりもない。これでは、何で変えたのか、むしろわかりにくくなったんじゃないか。ただ単に算定費目がちょっと数が減りました、それだけの話で、これだったら、今までのように経常的経費と投資的経費で、その中でもう少し実態に合ったように見直しをした方がもっとすばらしい交付税の見直しになったんじゃないか、こう私は考えているわけですが、いかがでしょうか。

菅国務大臣 委員は、市長、県知事も経験をされて、多分、今の交付税の算定項目が非常に多過ぎて複雑であるということは御理解いただけるというふうに思っています。そういう中で、私自身も議員として全国に行く中で、交付税の算定の仕方がわからない、それと、予見可能性、来年は幾らになるかわからない、行政の長の皆さんからそういう声を多く聞きました。

 そういう中で、とにかく余り影響のない人口だとか面積、そういう面でできる限りの簡素化をすることが必要じゃないかなというふうに実は思いまして、全体の一割ですけれども、そういう意味で芽を出させていただいたということで御理解をいただきたいと思いますし、地方分権改革推進法に基づいて、地方分権の三年以内の一括法の中でこういうものをしっかりとふやして、わかるような形にしていきたいということであります。

福田(昭)委員 そういうことであれば、ぜひ私は提案したいのは、特別交付税は災害だけに絞って、全部普通交付税に財源を回した方がいいと思います。その方が地方自治体はわかりやすくなると思います。

 実は、特別交付税ほどわからないものはありません、あれほどわからないものはありません。普通交付税の方はまだしっかり算定費目が決まっておりますから、こちらの方がわかりやすいんですね。ですから、交付税を本当にわかりやすくするんだったら、特別交付税は災害対応だけ、それ以外はすべて普通交付税で対応する、そういうやり方をぜひやっていただければと思いますが、いかがですか。

菅国務大臣 特別交付税というのは、今指摘されましたけれども、もちろん災害とかそういうものでありますけれども、さらに普通交付税の算定に用いる基準財政需要額の算定方法では補足し切れない災害援助の特別な財政需要、そういうものも実は計算をその中にさせていただいていることも理解をいただきたいと思います。

福田(昭)委員 大臣のおっしゃるとおりなんです。しかし、特別交付税ほど算定がわからないんです、実は。もう完全に、それこそ総務省の役人の筆一本で変わってしまうんです、これは。だから、これは絶対にだめなんです。

 だから、予見可能性をちゃんとはっきりさせるためには、特別交付税は本当に限定されたものにして、その原資はすべて普通交付税に回す、この方がやはりしっかり交付税が見えやすくなると思いますので、ぜひ御検討をいただければと思います。

 次に、三つ目は、「頑張る地方応援プログラム」についてであります。

 この頑張りの成果というのは、財源保障機能なのか、それとも財源調整機能なのか、どういう役割を果たすものなんでしょうか。お伺いをできればというふうに思います。

岡本政府参考人 「頑張る地方応援プログラム」の交付税の算定でございますが、各地方でそれぞれ地域振興とかいろいろなプロジェクトに取り組んでおられるわけでございまして、そういういろいろな魅力ある地方を目指した各取り組みといったものは、それぞれの単独施策としてのまさに共通的な課題であるというふうに考えております。

 したがいまして、そういう共通的な課題を補足するに際し、これを基準財政需要額に参入するに際しまして、標準的なものは単位費用で入れていくわけでございますが、その際に、例えば行革の努力といったものをやる場合に、例えば徴収率が高いとかいうような場合には、そういうための割り増しの経費がかかっているであろう、それから、各種の環境施策、例えばごみの排出量の削減等に取り組んでおられる場合には、標準的なものよりもそういう取り組みの費用がかかっているであろうというような、そういうかかり増しの経費といったものがそれに対応して考えられるということをとらえまして行っているものでございます。

 これ自体を取り上げて財源保障なのか財政調整なのかということではございませんが、そういう意味では、それぞれの需要に着目をして、そういう財政需要があるだろうという形で算定をいたしているものでございます。

    〔谷委員長代理退席、委員長着席〕

福田(昭)委員 局長の話ですと、言葉上は理屈が通っていると思いますが、しかし、しっかり努力をしても成果が出てこない自治体があるんですね。そうした自治体はどうやって評価をするんでしょうか。

岡本政府参考人 地方団体におきましていろいろな努力を、まさに千八百の市町村であればいろいろな取り組みがされておられるわけでございます。そういう中で、今回、九つの共通的な指標という形で、いわば頑張りの度合いといったものを成果の指標ととらえて、その成果指標と一定の財政需要が連動しているという考え方に立って措置をしているというものでございます。

福田(昭)委員 例えば、企業誘致をしようと思って頑張っていない自治体はないと思います。しかし、その立地条件によって、幾ら頑張ったって企業誘致がなかなかいかない地域があるんです。こんなところは、それこそ全然算定されないわけですよ。

 ですから、こんなことをやるんだったら、私はさっきも話をしましたが、これは単位費用をアップしてもらった方が何ぼいいかわからないですよ。全体を底上げするためですよ。それこそ政府としては経済成長戦略、底上げ戦略と言っているんですから、やはり自治体の力を底上げするために単位費用そのものを底上げする、これが基本じゃないでしょうかね。ぜひそんな検討もしていただければというふうに思います。

 次に行きます。

佐藤委員長 総務大臣から発言があります。

菅国務大臣 ぜひこれは委員に御理解をいただきたいんですけれども、今、地方自治体、非常に元気がないということをいろいろなところで言われます。そういう中で、私は何が原因なのかなということも実は考えてみました。よく言われたのが、例えば同じような財政力、〇・五とか四、数ありますけれども、そこで行政改革を幾ら頑張ってもその分だけ全く反映されない、そうした声もよく聞きました。そういうところへやはり何らかの形で支援をする必要があるのではないかなというふうに私は思いました。

 そういう意味において、企業誘致のお話ありましたけれども、それは、企業誘致ができるところというのはやはりそれなりの環境がなければなかなかこれはできないと思います。しかし、企業誘致ができなくても、例えば過疎なりの、その特徴を生かしての産業をつくることというのは可能だというふうに私は思います。

 例えば、私は徳島県の上勝というところに行ってきました。田舎の本当に山の中でありましたけれども、そこで、高齢者の皆さんが、つま物ですか、自然を利用してそういうものをつくって、そして、八十を超えた人が年収五百万ぐらいのものを得るような事業を行うことがあったんですね。

 それはやはり地域の特徴を生かして頑張ってきたというふうに思っていますから、そういうものに対してやはり何らかの客観的指標をつくって頑張ってもらうということ、それは私は物すごく大事だと思って、こうしたことを一律じゃなくて始めさせていただいたということは、このことはぜひ御理解をいただきたいと思います。

福田(昭)委員 大臣の気持ちはよくわかるんですよ。でも、やるなら、それこそ地方分権の時代に反しますけれども、それはやはり補助金ですよ、交付税じゃないですよ、基本的に。

 そこで、では、順序が逆になりますが、ちょっと私の方の提案をさせていただきます。

 これは質問で聞くことになっているんですが、後で答えていただければと思いますが、交付税総額を、普通交付税、特別交付税、それぞれ都道府県と市町村の配分割合がどうなっているのか、これを一つお聞きしたいと思います。私の考えとすれば、都道府県よりも市町村に配分割合を高くしてほしいというのが私の考えでございます。

 それからもう一つ、頑張る自治体を応援するとするならば、留保財源率で、ぜひ財政力指数に応じて調整することを考えてほしいと思います。

 今、都道府県も二五までになりましたけれども、この留保財源比率を、頑張ったら少しその分逆に認めてやる、留保財源率のものに含めてやる、そういうやり方も一つあるんじゃないかということもぜひ検討していただければというふうに思っていますが、いかがでしょうか。

岡本政府参考人 お答えをさせていただきます。

 まず、普通交付税、特別交付税におきます都道府県と市町村のシェアでございます。

 普通交付税の平成十八年度の算定結果によりますと、総額十五兆円のうち、都道府県分約八兆五千億円、市町村分約六兆五千億円ということで、都道府県分のシェアは約五七%、市町村分のシェアは約四三%でございます。

 特別交付税の十八年度の算定でございますが、総額約九千億円に対しまして、都道府県分約一千億円、市町村分約八千億円ということでございまして、都道府県分のシェアは一三%、市町村分のシェアは約八七%というふうになっております。

 委員御案内のように、普通交付税は、それぞれ県、市町村別につきましても、基準財政需要額から基準財政収入額を引くという形で普通交付税の算定をするということになるわけでございまして、一定の行政を行っていく上で、税収等が変動する場合には、いわば都道府県の場合には、景気等に左右されやすいような税を抱えているというような状況の中で、普通交付税の額といったものが税収の多寡によってかなり動いている。市町村の場合は、逆に言えば、相対的に安定的な税収があるという中で、そういうシェアなり基盤は決まってくるというものでございますので、そういうことなしに、先に自動的に市町村分を高めるということを決めてしまうような算定といったものは、交付税の今の性格上それは難しいものというふうに考えております。

 また、留保財源率の議論がございましたけれども、御案内のように、留保財源率を単純に動かします場合には、当然、企業誘致等で税収増を努力された場合に、その団体等のものが七五%は収入額で引くということになりますので、その頑張りが反映されないのかというような議論がございますが、一方で留保財源率を変動させた場合には、財政力の現に高い団体の方が全体として大きな収入を得るということになりますので、現在の財政力の格差をより広げるということに結果としてはなります。

 そういう意味で、今回、私どもが検討させていただきましたのは、そういう企業誘致等によって、頑張りによって税収等が増加をするという場合には、これの一定の額に着目して、特別交付税の算定においてこれを反映するというふうにしてはいかがかというふうに考えているところでございます。

 都道府県の都市の規模や財政力等で留保財源率を変えるという御議論でございますが、この留保財源率は、御案内のように、当然そういう税収等の努力、企業誘致等の努力について、税収確保へのインセンティブという意味でも設けられている制度でございますので、例えば都市の規模や財政力でそのインセンティブといったものに差をつけていいのかといったような議論がございますし、また、都市といいましても、指定都市、中核市の中でも財政力が相対的に非常に低いという団体もございますので、そういういろいろな問題を解決しなければいけないというふうに考えております。

福田(昭)委員 局長の言うとおり、いろいろ難しい課題もあると思いますけれども、例えば、それぞれの自治体の中で、自主財源で実は職員の人件費も賄えないような自治体もあると思うんですね。そういったところについては、やはり留保財源比率みたいなものをしっかり努力をすれば上げるみたいな、そういうものが必要なんじゃないかな、私はこう思うんですね。

 そういった意味で、頑張る地方をどういうふうに応援するかというのは、やはりこれはしっかりいろいろこれからさらに勉強していかなくちゃならない課題なのかなというふうに思いますが、そんな点を御指摘させていただきます。

 時間が来ましたので終わりにしたいと思いますが、先ほどの読売新聞の全国自治体首長アンケートによりますと、小泉改革で地域間格差拡大が九割、その原因は交付税の減額が八五%、そしてその方たちが、分権の条件、それは税財源の充実だという方が八六%おりました。

佐藤委員長 質疑時間を経過しておりますので、御協力をお願いいたします。

福田(昭)委員 ぜひそうした点を踏まえて、大臣には頑張っていただきたいと思います。

 以上で終わります。

佐藤委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正です。

 それでは、質問いたします。

 まず、地方財政と県民経済との関連についてお伺いいたします。

 先般、内閣府より、二〇〇四年度県民経済計算が公表されました。それによりますと、県内総生産が対前年度マイナスとなっている道県は十三ございます。これは、前年度の二十一からは減少しているわけであります。これら県内総生産の実質成長率、これを県別に見ていきますと、青森、高知がマイナス、他はすべてプラスとなっております。十一年から十六年の県別シェアというのがありますが、これを見てみますと、東京、愛知などごく一部の都県が圧倒しておりまして、他はほとんどマイナスとなっております。つまり、二県を除き、実質経済成長率は、多少拡大しているとは申しますものの、東京、愛知を中心とした一部の都県との間で格差がございます。

 これは、先般内閣府が明らかにした県民経済計算の特徴だというふうに私は認識いたしますが、この点について、内閣府の見解をお聞かせください。

高橋政府参考人 御指摘のとおり、平成十六年度の県民経済計算によりますと、一人当たり県民所得で見ますと、上位五県あるいは下位五県の平均の差というものは、二〇〇一年を底に上昇傾向にございます。ただし、下位五県も、二〇〇二年度以降、失業率や有効求人倍率がおおむね改善しております。

 また、別のはかり方でございますけれども、一人当たり県民所得につきまして、変動係数ということで求めますと、これも二〇〇一年度以降は上昇しております。ただし、一人当たり県民所得の変動係数といいますのは、景気回復局面においては上昇する傾向にあるということは言えるんだろうと思います。

 地域間の格差というのは、指標のとり方によってさまざまな解釈が可能となります上に、それぞれの人によって感じ方も異なります。経済指標に限らず幅広くさまざまな指標を見た上で、全体をきめ細かく見て判断することが重要だというふうに考えております。

重野委員 十五年から十六年、この県民経済計算で、一人当たり県民所得が二十県で対前年比プラスとなっていますが、問題は、マイナスの道県が二十七に及んでいるということであります。

 神奈川を除いた関東ブロック、愛知、三重の東海、滋賀、京都の近畿を除いた道府県で一人当たり所得がマイナスであることは、実質経済成長率が二つの県を除いて軒並み伸びているにもかかわらずマイナスとなっている、これは問題でありまして、そのことは、実質経済成長の伸びが県民所得に影響を与えていない、こういうことになるんではないか。そればかりか、秋田、高知など、マイナス一・〇から三・一%の範囲内にずっと点在しているわけですね。県民生活の地域間格差の拡大、それが今広がっているということをこの数字は示していると思うんです。

 そこで、実質経済成長率はぐっと伸びながら一人当たり県民所得がマイナス、こういう傾向になっている。これは一体何に原因があるのか。単に人口が多い、少ないの問題ではないと私は推測するのでありますが、この点について、内閣府の御見解をお聞かせください。

後藤政府参考人 お答え申し上げます。

 実質成長率がプラスになった県、それから一人当たり県民所得がプラスになった県、この数の違いについてお尋ねをいただきました。

 この両者の差に関しましては、先生御指摘のように、人口変動という要因もございますし、これ以外に、名目値で見るか、物価変動の影響を除去した実質値で見るかという点で大きく異なっております。すなわち、平成十六年度には総合的な物価変動指数でありますデフレーターがほとんどの県で下落しております。物価が下落したときには名目値の伸びよりも実質値の伸びの方が高くなりますので、一人当たりの県民所得がプラスとなった県の数よりも実質成長率がプラスとなった県の数の方が多くなっているところでございます。また、県民総生産と県民所得の間では幾つかの点で統計上の概念が異なっておることも、両者の動きに差が生じている要因となっておるところでございます。

重野委員 そこで、県民経済計算と地方財政との関係、これについて聞いていきますが、二〇〇四年度の数字でちょっと古いんですが、地方財政の歳出決算額は約九十一兆二千五百億、このうち、補助事業が六兆六千五百億、単独事業が八兆四千三百億となっております。これらはなべて最盛期に比べまして大きく減となっているわけです。

 こういう年々この間マイナス、マイナスと続く地方の歳出と投資的経費のこうした抑制が県民経済に与えた影響は大きいと私は考えますが、こういう認識について、総務大臣並びに内閣府の見解を聞いておきたい。

菅国務大臣 私は、そのことは委員の指摘するとおりだというふうに思います。

 地方財政というのは非常に大幅な財源不足であって、投資的経費を中心に抑制をしてきました。この五年間でいえば、地方財政計画の投資的経費五・五兆円抑制をしてきています。

 このことが、先ほど例に出されました地方の県にとって経済に与える影響というのが少なくないというふうに私も思っています。しかし、現在の財政状況をこのまま放置しておいた場合、持続可能性がある社会を構築していく、そのものが崩れてしまう、そういう中で、やはり国、地方を合わせた基礎的な財政収支の黒字化を考えるということもやはり責任ある立場として必要だというふうにも思っていますので、このこともぜひ御理解いただきたいと思います。

高橋政府参考人 御指摘のとおり、投資的経費は全都道府県で抑制されてきたわけでございますけれども、一方、今回の景気回復は、政府支出に頼ることなく、民間需要主導の回復でございました。そのために、産業構成などを背景にして、地域経済の回復状況は、一様ではなくてばらつきが見られるところでございます。

 しかしながら、今回の景気回復が長期にわたって続いている中で、失業率あるいは有効求人倍率、こういった指標を見てみますと、例えば、全国を十一地域に分けた場合、あるいは都道府県ごとに分けた場合、どちらで見ましても、おおむね全地域、全都道府県で改善しております。

 また、各地域におきまして、新工場の建設など設備投資の動きが活発でございまして、例えば、特に好調な自動車産業などを例にとってみますと、東海地域から北海道や東北、九州、こういったところへの進出の動きも見られるわけでございまして、全体としては少し明るい兆しが出てきているのではないかというふうに考えております。

重野委員 そこで、経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇六との関連で、今後の地方財政の展望についてお伺いいたします。

 いわゆる骨太方針において、まず歳出については、人件費の五・七%削減、地方単独事業の現行水準への抑制、地方交付税の現行法定率の堅持と現行水準への適切な対処、そして算定の簡素化、不交付団体の人口二十万人以上の市への拡大、こういうものが骨太方針において方針化されております。

 いわゆる骨太方針では、歳出にしても歳入にしても、示しているのは当面の、それもごく特定の費目でありまして、今後の地方財政全体の姿となると、これからは類推することができません。

 そこで、まず歳出の基本的なあり方について聞きますが、歳出構成を地方財政計画ベースで見ると、一般行政経費三一・五%、給与関係経費二七・一%とずっと書いておりますが、一体、こうした構成比について、今後どの程度が理想と総務大臣は考えておられるか、お聞かせください。

菅国務大臣 一般論で言わせていただくならば、財政の弾力性を確保するためには、人件費だとか公債費という義務的経費は低ければ低いほどいいというふうに思っています。しかし、実際の歳出の構成比というのは、社会経済情勢の変化だとか、あるいは、それぞれ地方団体の仕事のどこに重点を置くかによっても変わってくると思いますので、ある意味では、望ましい数値を設けるというのはなかなか困難なのかなというふうに思います。

 いずれにしても、二〇〇六に定めた歳出抑制、この方針に基づいて、国、地方が歩調を合わせて歳出削減に取り組んで、健全な財政のために全力で取り組んでいきたいと思います。

重野委員 といいますと、具体的にどういうのが理想なんだという、固まったものはないということですか。

菅国務大臣 具体的にというのはなかなか困難じゃないかなというふうに思います。

重野委員 同様なことは歳入についても言えるんじゃないかと思うんです。

 地方分権改革推進委員会で財源移譲について審議、勧告されるんでしょうけれども、今後の財源構成のあり方について具体的展望を示すべきではないかということが一つ。それから、歳入歳出の一体改革、これを述べておられますけれども、それを言う以上、具体的中期展望を示さないと、自治体は抑制ばかりが求められることになるんですね。この間、一貫して自治体は抑制を求められてきました。それじゃ展望は切り開けない。

 そこで、総務省として具体的な中期展望というものを持っておるのか、あるいは、持っていないとすれば、今後これについては必要である、示さなければならぬという認識を持っておられるか、お聞かせください。

菅国務大臣 地方交付税について、その機能というものをしっかり維持して予見可能性を高めていくということは、私どもにとって極めて大事なことだというふうに思っています。

 そのためにも、地方財政の中期的なビジョンを示すこと、このことが大事であるということは、私、認識をさせていただいています。ただし、歳出の抑制方針はこの二〇〇六においても明らかにされておりますが、歳入面での措置、すなわち税制改革については結論がまだ出ていない状況でありますので、地方財政の収支というのを明らかにすることは困難であるというふうに思います。

 しかしながら、私、税制改革の検討状況も踏まえた中で、中期地方財政ビジョン、これを作成することはやはり大事だという観点から、このことを検討させていただきたいというふうに思っております。

重野委員 よろしくお願いいたします。

 次に、地方交付税について聞きます。

 地方分権推進委員会は、地方交付税の算定に関しまして、その簡素化、明確化を求めております。これを踏まえて、従来、補正係数で措置していたものを単位費用化したものが一定数あると考えます。

 そこで、都道府県及び市町村別の整理状況、どういうふうに整理されておるのか、それについて具体的にお示しください。

岡本政府参考人 都道府県、市町村の別に今回単位費用化した算定項目を申し上げますと、都道府県分におきましては、高齢者保健福祉費の七十五歳以上人口、それから、その他の教育費につきましては公立大学等の学生数及び私立学校等の生徒数、港湾費につきまして漁港における係留施設の延長などをそれぞれ測定単位といたしまして、従来の補正係数から単位費用として法律に定めております。

 また、市町村分におきましては、高齢者保健福祉費の七十五歳以上人口、その他の教育費で幼稚園の幼児数、公園費で都市公園の面積、港湾費で漁港における係留施設の延長などを同じようにそれぞれ測定単位とした単位費用を法律に定めております。

重野委員 どれぐらい合理化されたんですか。

岡本政府参考人 今年度行おうとしておりますのは、今申し上げましたそれぞれの補正係数を単位費用として改正しようというものでございます。

重野委員 私がいろいろ調べてみますと、都道府県に比べて、市町村の簡素化というんですか、それがおくれているという認識を持っているんですが、それはそれでいいんでしょうか。であるとすれば、なぜそうなったのか、今後の見通しはどうなるのか、それについてお聞かせください。

岡本政府参考人 お答えいたします。

 分権推進計画や累次の骨太方針におきまして、交付税の算定方法を簡素化すべきというふうな指摘が行われましたことを踏まえまして、これまで、都道府県分を中心に、補正係数の削減や算定項目の統合というものに取り組んでまいりました。

 市町村分につきましては、委員御案内のように、都道府県と比較しまして自然的、社会的条件が非常に多様であるということ、また、行っております業務が、今申し上げましたようなそれぞれの条件によって左右される要素が非常に大きく、また財政力の格差が大きいといったことから、都道府県分の見直しの状況も踏まえながら取り組みを検討してきたというものでございます。

 また、今回の新型交付税を導入いたします際に、国の基準づけがない、あるいは弱い行政分野について算定方法の抜本的な簡素化を図るという観点から導入を図ったわけでございますが、これにつきましては、都道府県分、市町村分のいずれも、投資的経費を中心としてその算定方法を簡素化したということでございます。

 今後も、財政運営に及ぼす影響に留意しつつ、算定方法の簡素化に努めてまいりたいというふうに考えております。

重野委員 新型交付税で、算定項目、つまり単位費用でありますが、これが約三割の削減となっていると書いております。それをまず確認いたします。

 そこで、その三割削減というものが間違いないとすれば、この単位費用の削減も算定の簡素化の一環をなす、そういうものになるんだろうと思うんですが、見解をお聞かせください。

岡本政府参考人 今回の新型交付税の導入に当たりまして、今まさに委員御指摘のように、抜本的な算定法の簡素化ということで、従来の算定項目数九十五から六十八、約三割、二八・四%減少するということにいたしておりまして、この導入が抜本的な算定方法の簡素化の一環であるというふうに考えております。

重野委員 そこで、ちょっと聞いておきたいんですが、交付税算定の簡素化あるいは明確化の本来の意味、行き着くところは法定化にあるはずだ。もともと法定化されていたものを削減したところで簡素化ということになるのかなという私の理解があるわけですけれども、その点についてはどうですか。

岡本政府参考人 お答えいたします。

 従来、交付税の算定が複雑であるということのいろいろな御指摘、御意見の一つには、やはり算定項目数が非常に多くにわたっていて、それが非常に複雑であるという一つの御批判があったと思っております。

 簡素化といったものの中身、簡素化、透明化といったもので、補正係数で計算していたものを単位費用に明らかにしていくということで、それも簡素化であり、また同時に透明化でもあろうと思いますが、また同時に、算定項目数を大幅に削減するということも簡素化の一環であるというふうに私どもは考えております。

重野委員 簡素化という視点からもう一つ聞いておきたいんですが、新型交付税として、道府県、市町村とも、投資的経費について人口規模と土地の利用形態に応じて算定、配分するということになっております。その際、いろいろあるんですが、コスト差による算定を行うということがあるんです。これは言葉で言えば簡単ですが、相当複雑な算定になるんじゃないかと思うんです。

 このコスト差による算定を行うということはどういうことなのか、そして具体的にどういうふうなことをするのかお聞きしたいんですが。

岡本政府参考人 新型交付税の制度設計に当たりましては、地方団体の標準的な行政運営に必要な財政需要を適切に算定するという観点に立ちまして、また、現実の財政運営の確保に支障を及ぼさないという観点も非常に重要な視点でございましたので、その変動額を極力最小化するということから、地方団体の御意見をあらゆる機会をつかまえてお聞きしながら、やってまいりました。

 その際、御指摘のように、過疎団体と例えば普通の十万人の団体あるいは大都市といったものでは、人口一人当たりの行政コストといったものが変わってくるわけでございますので、算式は一本でございますが、その中でそれぞれの一人当たり行政コストが割高になるという考え方を反映できるように、そこで段階補正を適用するというような形をとっております。

 また、面積につきましても、今申し上げました基本的な思想の上に立った上で、宅地、農地といったものについては面積当たりの行政コストが異なるということを踏まえまして、種別補正を適用するという形にしたわけでございます。

 いずれにしましても、基本の考え方は、地方団体の標準的な行政運営に必要な財政需要を算定するということでありますと同時に、現実の十八年度の基準財政需要額に算定されている各市町村の財政需要額の変動を最小限にとどめるという観点で設計をしているものでございます。

重野委員 次に、また同じ新型交付税に関することですけれども、ちょっと違う視点で、人口を測定単位として地域振興費なるものが今度新しく創設されているんですが、一体なぜこういうふうなものを創設したのかについて。

岡本政府参考人 お答えをいたします。

 新型交付税の設計に当たりましては、先ほども申し上げさせていただきましたように、まず基本的には、人口と面積という簡素な算式でその新型交付税の一定額を計算できるようにするという、簡素化それから予見可能性を高めるという観点からの要請にきちんとこたえるということが必要であります。また同時に、その導入に伴います変動額を最小限にとどめるということも、その制度設計として必要な要素であったわけでございます。

 そういうことを考えますと、例えば、離島におきます移動・通信経費でございますとか寒冷地におきます除排雪の経費といったものを現在でも普通交付税の算定において行っておるわけでございますが、人口と面積だけでやってしまいますと、こういうものを算定することができなくなってしまうということから、条件不利地域などの地方公共団体の財政運営に支障が生ずるということが見込まれたわけでございます。

 そういう点等につきまして、私どももそういうふうに考えましたし、また地方団体等からも強い御要請等もございまして、それらの意見交換をした上で、条件不利地域等に対する従来行ってまいりました算定を保障する仕組みとして地域振興費といったものを創設したわけでございます。

重野委員 私は、これはちょっとうがった見方をしておったんですが、意図的にこういうものをつくって、そして言うならば国による交付税配分の調整機能を持つというためにこういうふうな表現になったのではないか。これはうがった見方かもしれませんよ、私はそういうふうに考えたんですが、そうではないということを確認いたします。

岡本政府参考人 先ほど申し上げましたような趣旨で創設したものでございますので、今委員の御指摘のような趣旨ではございません。

重野委員 はい。しっかり今後の推移を見て、また問題があればただしたいと思います。

 次に、地方債の借りかえ対策について聞きますが、借りかえそのものを私は否定するものではありません。

 そこで、まず、金利五%以上の地方債が対象とされている、なぜ五%かということですね。それから、そうした場合に対象となる地方債残高はいかほどになるのか。この二つを聞きます。

岡本政府参考人 今回の対象利率、金利の範囲につきましては、貸し手であります財務省ともいろいろな議論をしながら設定させていただきました。

 その際、五%とさせていただきましたのは、従来の、公的資金の代表でございます政府資金の過去三十年間の金利の平均を見ますとおおむね約五%程度であるというようなこと、それから、これらの融資の特別会計の将来収支といったものをいろいろな会計で行っておりますが、財政融資資金等でも、行う前提としては二ないし八%の変動幅。ですから、大体平均いたしますと五%程度でございますが、そういうようなもので収支予測といったものを想定されているということを参考にいたしまして、五%以上を今回の措置の基準といたしたところでございます。

 また、残債の見込みでございますが、十九年度末におきます金利五%以上の地方債残高は十・五兆円となるというふうに私ども見込んでおりまして、五兆円はその約二分の一を対象とするというふうな考え方でございます。

重野委員 あと二項目ほど通告をしておりましたけれども、もう時間が来ましたので、以上で終わりますけれども、今局長の説明を聞いておれば、ああそうかそうかというふうな感じなんですが、どうも私は、その背景にやはり何かがあるな、こういう感じをぬぐい切れなかった。今後、また時間があれば、その点について話をしていきたいと思います。ありがとうございました。

佐藤委員長 次回は、来る二十九日木曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四十二分散会


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