衆議院

メインへスキップ



第18号 平成19年5月8日(火曜日)

会議録本文へ
平成十九年五月八日(火曜日)

    午前九時三十七分開議

 出席委員

   委員長 佐藤  勉君

   理事 岡本 芳郎君 理事 鈴木 淳司君

   理事 谷  公一君 理事 林  幹雄君

   理事 森山  裕君 理事 武正 公一君

   理事 寺田  学君 理事 谷口 隆義君

      あかま二郎君    井澤 京子君

      石田 真敏君    今井  宏君

      岡部 英明君    鍵田忠兵衛君

      川崎 二郎君    木挽  司君

      実川 幸夫君    関  芳弘君

      田中 良生君    土屋 正忠君

      土井  亨君    萩生田光一君

      萩原 誠司君    橋本  岳君

      福田 康夫君    福田 良彦君

      馬渡 龍治君    安住  淳君

      逢坂 誠二君    後藤  斎君

      田嶋  要君    西村智奈美君

      福田 昭夫君    村井 宗明君

      森本 哲生君    江田 康幸君

      谷口 和史君    吉井 英勝君

      菅野 哲雄君    亀井 久興君

    …………………………………

   総務大臣         菅  義偉君

   内閣府副大臣       林  芳正君

   総務大臣政務官      谷口 和史君

   総務大臣政務官      土屋 正忠君

   財務大臣政務官      椎名 一保君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            畑中龍太郎君

   政府参考人

   (総務省大臣官房総括審議官)           久保 信保君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 榮畑  潤君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  藤井 昭夫君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  岡本  保君

   政府参考人

   (総務省自治税務局長)  河野  栄君

   政府参考人

   (総務省情報通信政策局長)            鈴木 康雄君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 佐々木豊成君

   総務委員会専門員     太田 和宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月八日

 辞任         補欠選任

  渡部  篤君     馬渡 龍治君

  田嶋  要君     村井 宗明君

  重野 安正君     菅野 哲雄君

同日

 辞任         補欠選任

  馬渡 龍治君     渡部  篤君

  村井 宗明君     田嶋  要君

  菅野 哲雄君     重野 安正君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 地方公営企業等金融機構法案(内閣提出第四四号)

 行政機構及びその運営、公務員の制度及び給与並びに恩給、地方自治及び地方税財政、情報通信及び電波、郵政事業並びに消防に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

佐藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、地方公営企業等金融機構法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局審議官畑中龍太郎君、総務省大臣官房審議官榮畑潤君及び自治財政局長岡本保君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武正公一君。

武正委員 民主党の武正公一です。新機構法案の質疑を行わせていただきます。

 総務大臣もヨーロッパに行かれたようで、フランスでしたか、何か地方自治体に民間金融機関最大の融資を行っている代表者と会っておられた映像が出ておりましたけれども、この法案を踏まえてそうした予定も組まれたのかなというふうに拝察をしたところであります。その成果についても別途お聞きをしたいというふうに思いますし、また御披瀝もいただければと思います。

 さて、まず本法案でございますが、融資対象が縮小していくという法案の設計。しかし、債券借換損失引当金として積み上げてきた三兆四千億円の自己資本が新機構に丸々引き継がれる際、総務相と財務相が交わした覚書はどういう内容なのかお答えをいただきたいのが一点目。それから、新機構が基金や引当金を継承する妥当性はどこにあるのか。しかも、その配分が、三分の二の資金が新勘定に移管される、この二対一の割合、その理由。

 以上三点、まとめてお答えをいただけますでしょうか。

菅国務大臣 公庫の債券借換損失引当金の承継につきましては、私と財務大臣の間で覚書を交わしました。平成二十年十月の新組織移行時に見込まれる債券借換損失引当金、おおむね三・四兆円程度の全額を新組織に承継することとし、そのために必要な法的措置を講ずるとの申し合わせを行ったところであります。

 また、将来にわたる経営の持続可能性を確保するために、一定の金利変動シナリオによるリスク分析を行って、一般勘定及び管理勘定に必要な資産を精査した結果、組織移行時におけるおおむね三・四兆円の債券借換損失引当金を承継することとなったところであります。このリスク分析のもとに、一般勘定においては、おおむね二・二兆円程度の金利変動準備金があれば長期間にわたり経営の持続可能性は確保できるものと判断をいたしました。

 また、公営企業健全化基金は、公営競技収益の均てん化を図る観点から、収益の一部を公営企業金融公庫に積み立てて、その運用益をもって公庫貸し付けの利下げ財源とするためのものであります。

 こうした制度の必要性等について、今回の政策金融改革によって変わるものでないことから、基金は公庫の解散時において、公庫から機構に現在と全く同じ形で全額承継をすることとしたものであります。

武正委員 民主党はかねてより、省庁間の覚書というものは、立法府が審議をするに当たっては、やはり法律に書き込むべきであろう、こういった主張をしてまいりました。

 そこで、今、覚書の内容は御披瀝をいただいたんですが、ぜひ覚書を委員会に提出いただきたいというのが一点と、やはり法律に書き込むということで立法府への説明責任、国民への説明責任を御対応いただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

佐藤委員長 理事会で協議をさせていただいて、お願いしたいと思います。

武正委員 三分の二が新勘定ということで、これからのそうした金利変動に対応ということの理由にされましたが、こういう意見があるわけですね、地方公共団体が高い金利でも必死になってそれを手当てしてきた、だからやはりこれは当然機構が全額承継をすべきであると。そういった論拠にもし立てば、どちらかというとやはり旧勘定の方に多く手厚くすべきだったのではないのかな、なぜ三分の二が新勘定なのかなというところはどのように御説明されますでしょうか。

菅国務大臣 これについては、出資をした、国の出資者との問題もありますので、そういう承継の中で三分の二という形にさせていただきました。

武正委員 地方公共団体は、おれたちが出したんだというふうに言われるんですが、よくよく考えれば、それは地方の市民、県民が納税をしているんですよね。だから、ここはやはり間違えちゃいけないというふうに思います。この後、またその辺についても指摘をさせていただきたいというふうに思います。

 そこで、今回の提案理由説明で、いわゆる行革法に基づいて機構を廃止する、地方公共団体の資本市場からの資金調達を補完するため、新機構を設立すると。これは理由説明で述べられておりますが、いわゆるこの政府系金融機関の今回の見直し、百兆円近くのそうした政府系金融機関の融資を削減するんだ、その中に二十五兆円の旧公庫も含まれている。ただ、新しい地方共同法人に衣がえなので、結局は看板のかけかえじゃないのか。これは同僚委員からも指摘があったわけでございます。

 そこで、民業補完が原則の地方共同法人、いわゆる民営化の五類型の一つと政府が仕分けをしておりますが、その納税義務は現公庫と比べて変化はあるのかどうか、お答えをいただきたいと思います。

菅国務大臣 機構は、相対的に財政力の弱い市町村を中心として、自己調達に限界がある長期さらに低利の安定的な資金を供給するために、地方公共団体が共同して設立するものであります。このため、現公庫や地方公共団体と同等の公共性を有しているものだろう。そういう中で、課税上の取り扱いについては現公庫と同じく公共法人等に位置づけられ、現公庫に講じられているものと同様、法人税等の非課税措置を講じることとしたところであります。

武正委員 官から民へといいながら、また民営化の五類型の一つといいながら、納税義務は現公庫を引き継ぐといったところ、これもやはり何のための政府系金融機関の見直しなのかと指摘をせざるを得ないわけでございます。

 そこで、ちょっと観点をかえて、既に報道されております件を取り上げたいと思うんです。

 政府が二〇〇三年度以降、いわゆる独法五十四を四十九に移行する過程で、総額十二兆円の繰越欠損金などを政府出資金で穴埋めしていたことがわかった。新法人に移行する際、過去の損失を民間企業の資本金に当たる政府出資金で相殺、減資をした。こういったことが報じられております。

 例えば、雇用・能力開発機構は、〇四年二月末、九千九百七十九億円の繰越欠損金があった。利用者が少なく無駄遣いとされた勤労者福祉施設の売却損などが大きな原因。〇四年三月に独法に移行すると、繰越欠損金の穴埋めのほか、資産を時価評価した際の目減り分を相殺し、政府出資金は約二兆一千六百億円から約八千億円に減少した。こう報じられております。

 独法を所管する総務省、担当大臣として、特殊法人からこの独立行政法人化、そして簿価から時価への評価がえ、あわせて繰越欠損金を政府出資金で減殺をする、こういったことによって十二兆円が減資をしているわけでございますが、これはやはり税金投入と言ってもいいわけでありまして、いわゆる大手銀行に資本注入した同額に匹敵するわけなんですね、十二兆円。

 こういったことを行っていることについて、担当大臣としての御認識。私はやはり、十二兆円をなぜ、どのように減資をしたのか、相殺をしたのかの理由とその説明、これをしっかり果たすべきというふうに考えますが、以上二点、御認識を伺いたいと思います。

菅国務大臣 特殊法人が独立行政法人に移行する過程の中で、総額十二兆円の繰越欠損金などを政府出資金で穴埋めをしている、そうした報道がなされたことについては私も承知しております。

 その詳細な内容については承知をしておりませんけれども、一般論で申し上げれば、特殊法人等の独立行政法人化に伴う政府出資金の取り扱いについては、各独立行政法人の個別法に置かれた資産、債務の承継規定に基づいて適切に処理をされているものと承知をいたしております。

 各法人に対する出資金の減少の大宗は、財務諸表上、研究開発費の使用分を欠損金として取り扱っていたものを整理したことや、施設の経年劣化による減価償却によって生じるものであるというふうに思っております。

 いずれにせよ、今後それぞれの独立行政法人においては、効率的な業務運営に努めるとともに、財務諸表の適切な開示によって透明性を確保していくことが極めて大事であるというふうに考えています。

武正委員 簿価から時価への評価がえ、これもあわせて減資をしているわけなんですね。そうした繰越欠損金も政府出資金で減資をするという、その説明をきちっと行うことが、やはり十二兆円もの巨額な税金が減資をされたことに対する説明責任になろうかというふうに思いますし、今言われた根拠法、設置法、資産から負債を差し引いた額を政府出資とすると設置法が規定をしている、やはりここは見直しが必要ではないかなというふうに考えるわけでございます。

 あわせて、今回の公営企業金融公庫から新機構への見直しの際に同じ手続がとられる可能性があるという指摘がございます。これは、政投銀あるいは一つにまとめた新しい金融公庫、それもあわせて、政府系金融機関の見直しの際に、この独法と同じことが行われるんではないかという指摘があるんですが、まずは、当新機構発足に当たって、政府出資金を減資して累積損失を相殺することはないのか、確認をしたいと思います。

菅国務大臣 まず、現在の公営企業金融公庫に、今委員から御指摘されたような累積損失は生じておりませんので、政府出資を減資する必要はないというふうに考えています。

 なお、新機構発足に当たり、既往の政府出資は国庫へ返還をすることといたしております。

武正委員 この間も、簿価か時価かということでの財務諸表の作成についても、時価を基本とするという総務大臣の御答弁もいただいたわけでありまして、新機構への衣がえに当たって、やはり時価ということでの評価がえをきちっとやっていただく。

 あわせて、これは民主党が今回の公務員制度の法案への対案の一つとして、独法の統合、あるいは、こうした政府系金融機関の統合に当たってもそうですが、やはり資産を再評価だけではなくて再鑑定させる。不動産鑑定が、過去の鑑定に基づいて、単に評価だけ、再評価だけに終わっておりますので、私は、やはり再鑑定ということで、国民の税金を投じて蓄えられた、つくられた資産が、時価でどういう評価なのか、鑑定をきちっとやるべしというふうに考えるわけでございます。

 そこで、質問を移らせていただきますが、郵政公社化、民営化の議論の際に、自治体への郵貯・簡保資金融資の可能性というものも議論の中で上がったというふうに記憶をしておりますが、今回、二〇一〇年でしょうか、ゆうちょ銀行の貯金残高百六十四兆円、かんぽ生命総資産残高九十一兆円、こういうような計画が郵政公社から総務大臣に提出されたと報じられておりますが、こうしたゆうちょ銀行あるいはかんぽ生命から自治体が融資を受けるということが考えられるのかどうか、あるいは新機構が融資を受ける可能性、あるいは新機構が発行する財投機関債をゆうちょ銀行やかんぽ生命が引き受ける可能性があるのかどうか、お答えをいただきたいと思います。

菅国務大臣 日本郵政公社は、本年の十月一日に民営化した時点で、一般的な民間の金融機関としての地位が付与されるわけであります。地方公共団体に対する融資についても、民間金融機関と同様に可能になります。

 その上で、個別の地方公共団体に対して個別の融資をするかどうかというのは、ゆうちょ銀行とか、あるいは郵便保険会社それぞれが経営判断をするものと考えております。

 また、新機構の資金調達は、基本的には債券発行を基本とするものでありますから、郵便貯金銀行や郵便保険会社にかかわらず、金融機関からの融資による資金調達は想定しておりませんけれども、新機構が発行する債券については、それぞれの経営判断によって適切な判断がされるものと考えております。

武正委員 新しい銀行あるいはかんぽ生命が考えることだ、ただ可能性はあるという御示唆がありましたし、また、そうであれば、郵政民営化あるいは財投改革、いわゆる出口論がまだ見えない中で、郵貯・簡保資金が自治体、あるいは今回の公営企業金融公庫が生まれ変わった新機構に債券の引き受けのような形で流れていくとすると、一体何のための郵政民営化だったのか、そして、財投改革の出口というのは結局前と変わっていないんじゃないのか、こういうふうに指摘がされると思うんですが、この指摘についてはどのように考えますか。

菅国務大臣 今後は、それぞれの会社が経営判断として行うものであって、私は従来とは全く違うような体系になってくるだろうと思っています。

武正委員 ただ、今の制度設計では、政府保証などもあわせて、あるいは、もちろん株式も政府が保有をして、全額民間に株を放出するのはいつなんでしょうかということもあって、かなり政府の関与が強い中での民営化がスタートするわけですから、そうした、あくまでも自主的に民間企業の判断というふうな形で突き放すことがいかがなものかと思うんですが、いかがでしょうか。

菅国務大臣 三、四年以内に完全上場をするという方向で今詰めておりますので、ですから、そういう過程の中で、私は、当然経営者による判断が行われるだろうと考えています。

武正委員 預かり限度額一千万円の撤廃とか、今の四年を前倒しで三年とか、非常に威勢がいいんですが、非常に民業圧迫の危惧も強まってまいりました中で、いや、上場すればいいのかというと、上場したって株式は政府が保有しているわけですから、やはり政府の関与というのは相変わらずあるわけなんです。

 そのときに、資金がまた新機構の債券を引き受ける、あるいはそうした可能性があるとすれば、結局、郵政民営化、財投改革は見せかけだったんじゃないのか、こういうふうに指摘をされると思うんですが、この点はいかがでしょうか。

菅国務大臣 そのような方向にならないようにこれは当然努力することでありますし、十年間で完全売却する方向になっていますから、それは確かに経緯というのはあるかと思いますけれども、基本的にはまさに民営化、経営者の判断、そこが極めて大きくなってくるだろうと考えています。

武正委員 郵政民営化は、あくまで財投改革のために行ったはずなんですね。でも、財投改革の出口が見えないまま、郵政民営化だけが自己目的化しているんじゃないのか。しかも、十年以内に完全売却だといいますけれども、それだけ、市場からお金を調達することが目的になってしまって、そして民業圧迫を引き起こしていくということであれば、では財投改革は一体どこに行ってしまったのかということだというふうに言わざるを得ないのでございます。

 そこで、質問を次に移らせていただきます。

 これは日本経済新聞が五月二日に、独自に算出をして、地方公営企業のうち少なくとも七十二事業が二〇〇五年度末で実質債務超過に陥っていたことがわかったと報じられております。政府の分析では債務超過十七なんですけれども、地方公営企業年鑑で調べますと、設備の建設のための借入金は、地方公営企業では借入資本金と呼んで資本の部に含める独特の会計処理をしておりますが、借金には変わりないということで、それを資本合計から除いて独自に算出しますと七十二事業が債務超過に当たっている、こういうことが報じられたわけなんですね。

 今回の新しい機構は、当然、貸出先を絞って、公営企業の新機構からの融資を縮減していく、こういう制度設計と胸を張られますが、現公庫がこの五年間、二〇〇七年度までに二九%貸出融資を削減したことと比較しますと、年間三%ですから、五年間でいうと一五%、一四%、つまり今の公庫の削減ペースよりも半分になってしまう、こういうことも今回の法案の問題点として指摘されているわけなんですね。

 一方、地方公営企業自体の問題点、これについては、政府として方向性をしっかり出しているのかどうか。出しているとすれば、それを明示していただきたいと思いますし、実質債務超過が、政府が言っている十七ではなくて七十二である、この指摘についての御見解を伺いたいと思います。

菅国務大臣 地方公営企業の経営については、平成十七年に地方公共団体に通知をした新地方行革指針において、民間への事業譲渡についての検討、民間的経営手法の導入、中期経営計画の策定、経営評価あるいは情報開示、給与、定員の適正化など留意しながら経営の総点検を行い、さらなる経営の健全化に積極的に取り組むことである、こういうことを実は要請いたしております。さらに、本年においても、平成十九年度の財政運営通知等によって、地方公営企業の経営改革に積極的に取り組むよう求められております。

 今後とも、地方公営企業においてより一層の経営改革と経営基盤の強化に取り組んで、経営の健全化に努めていきたいというふうに考えております。

武正委員 十七が七十二である、この報道について、御認識はいかがでしょうか。

菅国務大臣 今の委員の指摘の方法で行うならば、七十事業というのはそのとおりだということを認めさせていただきます。

武正委員 企業会計原則を初めこの公営企業自体の会計処理が独特の方式にあるというのも、やはりこれも合わせなきゃいけないというふうに思うんですね。まして地方公営企業改革をやるという政府であれば、これが当然必要だと思いますので、お願いをしたいというふうに思います。

 また、この地方公営企業改革、また第三セクターの改革を含めて、このときに、先ほど、独法で使った十二兆円の欠損穴埋め金、政府出資金で減殺、こういうことをまたやってしまうと、結局また地方でも同じようなモラルハザードというか、責任の所在も明らかにならないまま行われてしまうと思うんですが、公営企業改革において、やはり、そうした累損などをしっかりと明らかにして、責任の所在をきちっと明らかにしていくということが必要だと思います。

 先ほどの公営企業金融公庫全体の会計原則の見直し等を含めて、大臣の御認識をお答えいただきたいと思います。

菅国務大臣 基本的には私は、委員の指摘のように、やはりできるだけオープンに、わかりやすい、そのことがまず大事だというふうに思っております。やはり国民の皆さんにそうした点をしっかり示す中で、私どもは、そうした負債を負うことがないようにこれは全力で取り組んでいきたいというふうに考えています。

武正委員 以前、行政訴訟法ですか、市長、知事、首長の訴訟を二段階でということで、民主党はそれに対して、やはり責任の所在が不明確になるということで反対をいたしまして、国会をまたいで成立をした経緯もございます。やはり、公営企業あるいは第三セクター、そして独法、すべからく企業会計原則できちっと説明責任を国民に対して果たしていくということをお願いして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

佐藤委員長 次に、後藤斎君。

後藤(斎)委員 先週に引き続いて質問させていただきます、民主党の後藤でございます。

 きょうは金融庁にも来ていただいております。大臣、先週来この新機構法の議論をこの委員会でさせていただいていますが、幾つかやはり、納得というか、すとんと落ちない点があるんですね。政令にいろいろな部分でゆだねているものも多いですし、また、これからの地方共同法人としての新機構が、今と同じような形で地方自治体の長期かつ低利という融資が受けられるというものに本当に資するかどうかということを考えると、なぜ今というような感じもしながら、ちょっと金融庁に二点だけ、冒頭簡単に、事実関係も含めてお尋ねをしたいと思います。

 よく金融機関というふうな部分で、これは民間とそうでない政府系というものがあるというのはよくわかっていますが、通常の金融機関という性格は、お金を余っているところから集めて足りないところに融通する、融資するというのが基本的な形だと思うんですが、金融庁の認識としては、金融機関という定義をどんな形でされているのか、まず冒頭ちょっと、簡潔で結構ですからお尋ねをしたいと思います。

畑中政府参考人 お答えを申し上げます。

 金融機関の定義、これは預金保険法でございますとか偽造キャッシュカード防止法ですとか、多々法令がございまして、法令によってそれぞれ定義が異なっている部分がございます。

 ただ、通常、一般的には、金融機関と申します場合には、預金取扱金融機関ということで、一般大衆から預金を受け入れてそれを運用していく、こういうものを指すというふうに認識をしております。

後藤(斎)委員 新しいこの機構は、今お答えになった金融機関には当たるんでしょうか。

畑中政府参考人 ただいま御指摘の地方公営企業等金融機構は、預金を受け入れて業務を行う、そういう団体ではないというふうに承知しておりますので、先ほど申し上げました定義からしますと、金融機関には当たらないということでございます。

後藤(斎)委員 金融機関に当たらないということは以前の委員会で総務省からもお答えをいただきましたが、国の関与、特に金融庁の関与としては、検査監督はしないという対象になるということでよろしいんでしょうか。

畑中政府参考人 通常、私どもが金融機関を検査監督いたします場合、その目的でございますが、これは、その主体が預金を受け入れているということに着目をしております。逆に申しますと、預金者を保護し信用秩序を維持するということで、その点にかんがみて金融庁の監督検査をさせていただいているということでございますので、御指摘の地方公営企業等金融機構は、先ほど申し上げましたように預金の受け入れという機能がございませんので、私どもが所管をするということにはなっておらないと承知しております。

後藤(斎)委員 大臣、先ほど武正委員の質疑の中でもお答えをいただきましたが、要するに、今回の新機構は現行公庫と同様に法人税の納付義務はないというお答えを先ほどいただきました。これは今でも金融機関ではないという前提の中で、もう一度、この新機構はなぜ税金を払わない対象になるのかということをちょっと簡潔にお答えいただけますか。

菅国務大臣 先ほども武正委員に申し上げましたけれども、機構は、相対的に財政力の弱い市町村を中心に、自己調達に限界がある長期、低利の安定的な資金を供給するために地方公共団体が共同で出資をする、そのために現公庫や地方公共団体と同等の公共性を有しているものだ、そういう観点から、課税上の取り扱いについては現公庫と同じく公共法人等に位置づけられるだろう、そう考えているところであります。

後藤(斎)委員 大臣、きのうもいろいろな形で総務省の方とお話をさせていただいたんですが、多分私なりに解釈するのは、要するに今回のこの新機構法の入り口の部分の、定款であるとか、この法律ももちろんそうなんですが、最後の本当にちょっと問題だなということに関しての部分を残して、地方共同法人として代表者会議を中心に運営をしろということで、あとはどうぞと投げておく。丸投げと言うと大変失礼な言い方かもしれませんが、地方自治体の自主的な判断に任せながらやる。

 ただ、前回も指摘をさせていただいたように、さっきの行政改革推進法も含めて、いろいろな形で新しい政府系金融機関が民営化をされたり、また今回、この新機構のように、運営主体が変わりながら、ただ枠組みは残すということで、内容的には現行のままにするから心配ないよといいながら、こうやって非常にわかりにくいところが多々あるんです。

 特に、前回も指摘をさせていただいたんですが、いわゆる管理勘定という現在の公庫が持っている資金、今二十四兆円ほど残がございますけれども、これをどういうふうに縮減していくのか。当然、二十八年債とか二十年債とかいろいろな部分があって、平成四十七年にはゼロになるという資料を、きのう夜遅くまで対応していただいて、出していただきました。これは償還額ですから、これは決定額だというふうに思うんですよね。逆に言えば、四十七年までこの機構が本当に現行のままでいくのかどうかというのも、大臣、以前ほかの委員のお話で、大臣は地方分権担当大臣としても、道州制の議論は直接関与していないけれども、内閣府の方でなさっていると。いろいろな枠組みの中で、これから地方分権というか地方自治のあり方が、今の部分よりも少し分権型を推進するというのが大臣のもちろんお考えですし、私どももそう思っています。

 管理勘定が四十七年までに計画どおり予定額が確実に減少していくということは、これは一〇〇%事実なんでしょうか。これが仮に、減少できない、計画どおり削減できないということはあるんですか。

菅国務大臣 管理勘定というのは、現公庫が保有する債権債務を承継して、貸付債権の管理、回収などの業務を行う、そういう勘定になっておりまして、このため、貸付債権の回収が進むにつれて管理勘定の規模というのは徐々に縮小していくだろうというふうに考えております。今委員から指摘がありましたように、現公庫においては最も長いもので二十八年でありますから、管理勘定は最長で二十八年間、今言われました四十七年ですか、そういう形になるわけでありますので、それは当然、今の計画であれば返し切れるというふうに考えております。

後藤(斎)委員 逆に言えば、大臣、これは回収が終了するまでの間というふうに書かれて、ほかのところには明示の規定が附則で書いてある法律案もあるんですけれども、これは平成四十七年までという明示はできなかったんでしょうか。

岡本政府参考人 機構の管理勘定につきましては、公庫が保有する債権を回収、管理するという役目を担っているわけでございます。したがいまして、最長でございますと二十八年間の期間がございます。

 ただ、これからどういう貸し付けを行っていくか、また、今いろいろ委員御指摘ございますように、旧勘定と新勘定との関係をどういうふうに考えるかということについていろいろ御指摘ございますので、法律の、基本法案の中には十年後における見直し規定というのを設けておりますので、その十年後の見直しというような趣旨の議論の中で、今委員御指摘のようないろいろな議論も含めて、管理勘定のあり方ということも議論がされていくということになろうと思います。

後藤(斎)委員 十年後というのは一つの区切りではありますけれども、では、もうちょっと違った観点からお話をさせていただきます。

 今の現行公庫は、ある格付機関の格付だとトリプルAになっています。一番本当に信用度が高いという、これは簡単に言えば、取りっぱぐれがないということも含めて対応なさっているようなんです。

 地方公営企業等金融機構、この新しい機構について見解というのが三月三十日に出されています。その中で、幾つか、これは大変重要な視点なんですが、閣議決定をするまでの間、いろいろな、地方六団体の意見を聞いたり制度設計を法律案にする際、信用力をどういうふうに見るかという視点の中で、これから大きな対応が二つ求められているというふうな記述がございます。

 一つは、最終的に信用力を決定するためには、運営主体である地方自治体が実際に一体となってこの組織を運営することができるかどうか、その運営方針を見きわめる必要があるというのが一点。これは定款に具体的にどう書かれるかということであります。これは前回も指摘をさせてもらいましたが、資本金の出資割合、すべての自治体とは書いてありませんが、各自治体がコミットメントをどうするか。さらには三点目で、どのような人材でこの新機構が運営されるか。この三点を大変注目しているというふうなことになっています。

 この関係からちょっとお話をさせていただきますと、大臣、この間はできるだけ全自治体が望ましいという趣旨の御発言をなさいましたが、全自治体になるかどうかというのは地方六団体のこれからの意見集約にかかっているという話があります。昨年の十月に六団体がまとめた骨子案という中には、既に全自治体出資という明確に規定があるんですが、大臣が、少なくとも御自身の意思として、やはり全部の自治体が出資をすることが必要だということは、改めてお尋ねをしますが、どんなお考えでしょうか。

菅国務大臣 私は、基本的には六団体を中心にこれは考えるべきだというふうに思っておりまして、多ければ多いほどいいだろうというふうには考えております。

後藤(斎)委員 いや、大臣、ですから、先ほど、昨年の十月に六団体がおまとめになった骨子案では、少なくとも全自治体出資の新機構を設立というのがありますので、少なくとも大臣は、先ほど言った入り口と出口の部分で、少なくとも中は地方自治体の自主的な運営というのをこれからこの法律が通ればなさるんでしょうけれども、今入り口の、現時点の大臣の意思というものはきちっと発言をしていただく必要があると思うんです。

 私は、百六十六億をどう、人口で割るのか面積なのかは別としても、少なくとも、例えば人口で割っても、市町村千八百だけでも、大臣、一千万弱くらいの出資金額になりますから、これはやはり全自治体が出すべきだというメッセージを大臣が出すべきだと私は思うんですけれども、ぜひそういうふうにお答えをいただきたいと思うんですけれども。

菅国務大臣 今申し上げましたように、六団体を中心に、やはり多ければ多いほどいいと私は思いますけれども、しかし、すべてに私どもから強制すべきものではないのかなというふうに実は思っております。

後藤(斎)委員 では、大臣、別の方にちょっと移りますけれども、もう一度戻ります。

 大臣、せんだってもお話をさせていただいたんですが、先ほども御指摘した新機構の人材ということで、少なくとも現在、役員が五名、職員が七十九名、うち総務省からの出向者が五十二、財務省から三、国交省から一という、現職の五十五名の職員の方も含めて、今公庫の運営がされています。

 大臣は、先週の議論の中では、新しく機構ができて、要請があれば検討したいというお話をされておりましたが、ここが要するにパラレルで、職員の方が平行移動をするのか、そうではなく、新たに公募も含めてやるのかという、やはりこれは入り口の議論で大臣が定款を承認することになっていますから、そこの意思というものはやはり、今大臣がお考えになっている部分をきちっと披瀝していただく必要があると思うんです。その点についてはいかがでしょうか。

菅国務大臣 機構の人員のあり方については、今後、設立者であり出資者である地方サイドにおいて検討されるべきものであるというふうに、これはやはりそう思います。今後、機構は地方が主体的に運営する組織でありますから、そこで検討されていくだろうと思います。しかしながら、機構が行う業務に関しては、金融やあるいは地方財政などの高度な知識が求められるものであることから、業務の円滑な実施のために、民間の金融実務経験者などを含めて幅広い人材を活用していただきたい。私どもとすれば、うまく円滑にスタートすればいいなというふうに思っているところであります。

後藤(斎)委員 大臣、すべてこれからできる新しい代表者会議も含めてお預けをするというのはわかるんですけれども、大臣、この法律の中にも、政府保証という保証の仕方、要するに政府の関与の仕方が、少なくともこの機構債券借りかえの際にはまだ認めているわけですよね。政府保証があるかどうかというのが、少なくとも現行の公庫でいえば、トリプルAという最高の信用度を得ているこの公庫がこれからどうなるかという、少なくとも、この担保をつけたということは、大臣、政府という国の関与はあるわけじゃないですか。

 だから、大臣が先ほども何度も、これで最後にしますけれども、少なくとも今、入り口の議論を、この制度設計全体をして、最後の監督権も少なくとも大臣はお持ちなわけです、ですから、そこの中身は自由にして当然結構なんですが、やはりその入り口の議論で、いや、もうこれから代表者会議を含めて検討させるから勘弁してくれという話ではなくて、これは、政府保証が実際、法律の体系の中にもまだ入っているということを考えるときに、もう一度お尋ねをしますが、出向者の問題は、大臣、どういうふうにお考えになりますか。

菅国務大臣 とにかく円滑にここが移行することが一番私どもは関心のあるところでありまして、もし必要であれば、それは私どもとすれば、要請にこたえたいということでありますけれども、それについても、新しい主体でやはり私は判断をすべきだというふうに考えております。

後藤(斎)委員 でも、大臣、普通に考えれば、今まで仕事をしてきた方をそのまま使っていく方が、人材育成や研修とかいろいろなものを考えれば、それは短期的に見ればいいに決まっているんです。ただ、管理勘定も含めて、平成四十七年ですから、あと二十八年間少なくとも続いていくわけですよね、そこの管理も含めて。だから、いろいろなもろもろを長期的に見るのか短期的に見るか、少なくとも大臣としての御意思をこの場で言っていただかないと、すべて代表者会議等にお預けだよというふうに言っても、やはり政令に委任する事項も、先ほども何人かの議員からも御指摘があったように多いわけですよね。であれば、これを本当にフレーム法みたいな形で、これから財政再建法とかいろいろな法律の、地方自治のいろいろなこれからのあり方を決めていく、そういうものにも影響をすると思うんですが、大臣、もう一度お尋ねします。

 人材ではなく出資については、全自治体が出資を、少なくとも応分の負担ということですべきだと私は思いますが、大臣、もう一度それについてお伺いします。

菅国務大臣 先ほどと繰り返しになってしまいますけれども、私は、地方六団体が設計をする中で、多ければ多いほどこれは確かにいいと思いますけれども、ただ、強制はすべきものじゃないということの考え方であります。このことはぜひ御理解をいただきたいと思います。

後藤(斎)委員 大臣、ちょっと全然違うお話をします。

 大臣、先ほどの武正議員がパリでの発言ということでちょっと触れられました。これは、大臣がいわゆるふるさと納税というものを提唱されて、私も実は同じような思いがあります。

 ただ、専門家や、多分同僚議員の中にもいろいろな意見があるという大前提でお話をさせていただきますと、大臣はもちろん自由民主党ですし、私どもは民主党に所属をする議員としての活動ということも含めて、もちろん選挙というものがあって、それに少しでもプラスになればということがあるんですが、それ以前に大臣、私は、総務大臣として確かに、地方消費税の部分の引き上げというか、一%を地方分に上げていく、そういう発想も後押しをしたいと思いますし、このふるさと納税についても、私は、選挙云々ということがなければ、この制度設計というものがこれからどうあるべきか、本当に議論をすべきだというふうに思うんです。

 思うんですが、大臣が何かパリに行って、パリの豊かな田園風景を見ながら、横浜だけじゃなくてふるさとの秋田もいいなという思いでおっしゃられたかどうかは知りませんが、課題が多いということは前提条件として当然あって、でも、この時点で大臣がこのいわゆるふるさと納税について打ち上げられて、なおかつ一部の報道では、もう住民税一割の税源の移譲で調整みたいなことまで書かれているんですが、大臣、その点について、大臣の本旨というのはどのようなお考えなんでしょうか。

菅国務大臣 私は、総務大臣になる以前から、やはり、私はたまたま秋田県出身ですけれども、自分が高校まで育ったところ、高校まで育つためにはそれなり、教育なり福祉なり、それは多くの地方自治体の出費のもとで育てられていました。全国、今東京に来ていらっしゃる方もたくさんそういう方がいらっしゃると思います。そして、総務大臣になってからも、地方自治体の長と言われる皆さんから同じようなことを何回となく言われました。いよいよこれから税金を払ってもらうときには全部東京、都会に出てしまう、そこについて何とか考えられないか、そういうことを言われました。また、私、そういう地方自治体の皆さん、あるいはまた都会に実際に住んでいる人たちも、やはり自分が育ててもらったふるさとに貢献をしたい、そういう方もたくさんいらっしゃる、そういう意見も聞きました。あるいは、自分の赴任地ですか、非常に思い出に残るところ、そういうところにも何とかしたい、いろいろな方からの意見を、何とかできないかなということを聞きました。

 そういうことの中で私どもはやはり、国全体を考えたときに、そうしたことを実行することを前提に研究会というものを立ち上げる必要性があるというふうに私は思いました。また、このことについては総理からも、全体として考える中で検討するようにとも言われておりましたので、私自身の、ある意味で率直な意見を申し上げたということであります。

後藤(斎)委員 大臣、今までの税体系等含めて、いろいろなそごというか、クリアしなければいけない課題があるというのは当然のことなんですが、ぜひ大臣、七月の云々という日付ではなくて、やはりじっくり腰を据えて、将来に向けて、私は正しい発想だというふうには個人的には思いますが、拙速ではなく、税体系全体を見ながら私はぜひ議論を進めていきたいと思います。

 大臣、最後なんです。いろいろな議論をこの新機構についてさせていただいてきたんですが、これからこの新機構というものが本当に、その信用度も今までのトリプルAのように依存できるかどうかというのは、ある意味では、例えば今、財投機関債も海外の方にも買っていただくような時代にもう入るという、いろいろな今度民営化される機関もいろいろ考えているようであります。あわせて、これは、公的な部分、先ほど金融庁の方からもお話があったように、ある意味では、民間ではなく公の部分が強いから、政府の関与も、少なくとも金融庁の検査なんてもうないというお話だったんですが、やはり多様性をもって考えなければ、本当にこの新機構というものが将来にわたって存続するかどうかというのは、私は、この信用度も含めて、若干クエスチョンマークがつくんです。

 なぜならば、ちょうど今の公庫ができたのは私が生まれた昭和三十二年、ちょうど五十周年を迎えるんですが、五十年後にこの新機構が同じような形で、もちろん、受け皿というか、借り手である地方自治体の役割とか規模というものは変わるのかもしれませんけれども、やはり長期にわたって安定的に推移をさせるというその一点というものが、先ほど武正議員からも話があったように、これから公営企業というものをどういうふうに考えていくんだとか、地方債計画にはどんな形で位置づけをするんだとか、地財計画の中にどんな位置づけにするのかということを前提で、先週も議論をさせていただきましたが、それを全体をパッケージとして考えて、やはり私は末永く、地方自治体が主体的に運営をするには当然それは前提で結構なんですが、この新機構というものを考える必要があると思うんです。

 もう時間が来ましたけれども、簡潔で結構ですから、大臣の、私が今最後にお話をしたことに対して御見解をぜひお伺いしたいと思います。

菅国務大臣 今の後藤委員のことは、私も当然だと、そのことは思っております。

後藤(斎)委員 時間が来ましたので、以上で終わります。ありがとうございました。

佐藤委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 私は、最初に、地方公営企業の一つである公立病院の問題について、政府参考人に幾つか伺っておきたいと思います。

 兵庫県但馬地域では、公立九病院のうち七病院、約三百床の病床削減が進められ、三病院は診療所に、二病院は病床を半減するということで、地域医療を切り捨てるのかという怒りの声が地域で広がっておりますが、実は、こうしたことは別に今御紹介した兵庫県の但馬だけじゃなくて、全国各地域で公立病院の危機というものが今広がっております。

 そこで、最初に政府参考人に伺っておきますが、自治体病院の果たしている役割というものについてどういうふうに考えているのか、伺います。

岡本政府参考人 自治体病院の役割についてのお尋ねでございます。

 自治体病院は、当然、他の医療機関と同じような役割を果たしている中で、その地域の公的な基幹病院という位置づけを持っているというふうに考えております。具体的には、小児医療、救急医療など不採算部門であっても地域において必要な機能を担うという役割、がんセンターなど県内の高度な医療を担うという役割、また、僻地の医療という意味での地域の医療というものを担っている役割など、民間ではなかなか担うことが困難な採算性確保の上で難しい医療という役割も民間とあわせて担っているというふうに考えております。

 そういう意味で、近年、自治体病院というものの赤字が増加をしているということから、自治体病院の経営が非常に厳しい状況になっているというふうに認識をしておりまして、また、抜本的な経営改善の取り組みというのを私どもとしても各自治体にお願いをしているところでございます。

吉井委員 もともと病院がその地域で経営して成り立てば、採算がとれれば、民間の方はとっくの昔に進出してやっているわけですよ。しかし、その地域では経営をするということはなかなか大変だ、しかし、仮に採算性が悪くても、地域住民の生命、健康にとっては欠かせないものだということとか、それから、必ずしも民間ではもうけにつながらないからということで進出しない高度専門医療とか、そういう分野を引き受けてきたのが国公立の病院であったというふうに思うわけです。

 それが今、例えば奈良県の町立大淀病院で昨年八月に脳内出血を起こした産婦の方が十九病院たらい回しされて、結局、奈良じゃなくて大阪の吹田の国立循環器病センターでようやく出産されたのですが、子供は無事だったけれどもお母さんが亡くなられるという大変不幸な事態が起こりました。しかし、こういう事態というのは今全国各地で現実に広がっており、また懸念されている問題でもあります。

 小児科、産婦人科の医師不足の解消と、それから自治体病院の機能・体制強化にどういう対策をとっていくのかということ、この点についても政府参考人に伺います。

岡本政府参考人 現在、先ほど申し上げましたように、自治体病院の経営確保というのは大きな課題になっております。その中で特に、一定の地域でありますとか、特定の診療科、今お話ございましたような産科、小児科などにおきまして深刻な医師不足の状況にあって、医師確保の対策といったものが喫緊の課題であるというふうに考えております。

 昨年八月、厚生労働省、文部科学省と私どもで新医師確保総合対策というのを取りまとめまして、都道府県が行います医師確保対策に対します一層の支援を重点的に推進しているところでございます。

 特に、本年度からは、新たな措置といたしまして、例えば、卒後一定期間地元の医療機関で医療に従事することを条件とする、都道府県の奨学金貸付事業に要する経費でございますとか、あるいは、現在の医師のいわば過重な労働といったものが一つの課題になっておりますので、開業医との連携対策のための経費でございますとか、あるいは、女性医師、看護師さん等の確保の観点から、院内保育所の運営に要する経費でございますとか、それぞれについて地方財政措置を講ずるというようなこともさせていただいております。

 また、それぞれの病院が再編、ネットワーク化を推進して真に必要な医療を確保するという観点も必要でございますので、小児科、産科医の広く薄い配置を改善いたしまして、勤務医の勤務環境の改善、医療安全の確保という観点から、集約化、重点化の推進ということも課題であると考えております。

 都道府県の主体的な調整といったものがこのような改革の中においては重要であるというふうに考えておりますので、積極的な参加に期待をしまして、また関係省庁と連携をしまして、必要な体制の整備を進めてまいりたいというふうに考えております。

吉井委員 この五年間で見ても、六つの自治体病院が閉院、十七病院が民間に移譲されたのが現実ですが、民間移譲ということを経由して縮小、廃止への道とか、そういう流れもあるわけですね。ですから、地域医療をどうして守り拡充していくかということが今非常に大きな課題になっているというふうに思うわけです。

 中でも、周産期医療体制の後退というのは深刻で、先ほど挙げました奈良県だけじゃないんですね。私は、もうちょっと範囲を広げて近畿圏で見てみたら、近畿二府四県を見ても、医師不足が深刻で、出産取り扱い病院は、二〇〇四年十月の二百六十七から二〇〇六年四月の二百四十四医院へ、一年半で、二十三施設、八・六%、一割近く減っているんですね。国立病院の産婦人科は、九六年の十四病院から二〇〇四年の七病院へ、八年間で半減してしまったんですよ。だから、本来だったら、国立で、国がもっと役割を果たしてもらわなきゃ困るんだけれども、国立が逃げ出してしまっている、後退する。そういう中で、自治体病院が役割を果たす上で何とか食いとめてきたのが、その自治体病院自体が危機にあるというのが今の深刻な実態だと思うんです。

 大阪府の忠岡町立病院は、医師が不足しますと患者がさらに来なくなる、その悪循環の中で、二〇〇四年度以降は収支が急激に悪化して、その上、三位一体改革で交付税が削減されましたから町本体の財政も悪化して、病院を支える一般会計からの繰り出しは簡単にいかない、こういうことになって、結局、病院は閉院ということになりました。

 地方公営企業金融機構が、このような重要な役割を果たしている地域医療機関の拡充のために、医療の拡充のために、自治体病院の新増設であるとかあるいは設備の強化を融資の面から支えて、地方住民の生命、健康を守る役割を本当に果たしていくものになるのかどうか、伺っておきたいと思います。

岡本政府参考人 今委員御指摘のように、自治体病院の経営の確保、そういう意味でのまた体制の強化といったことが課題になっているわけでございます。

 そういう中で、できるだけ自治体病院の経営の安定を図りますとともに、また効率的な経営を促して、必要な医療の確保を図っていくために必要ないろいろな設備投資などがあるわけでございます。このために、今回お願いいたしております公営企業等金融機構におきましても、病院事業といったものは、今後、その全体の事業が重点化していく中でも、まさにその重点の対象の一つだという位置づけの中で、自治体病院の整備といった中でこの機構が大きな役割を果たしていただきたいというふうに考えております。

吉井委員 機構への期待の言葉は今お聞きいたしました。

 そこで、大臣、採算がとれないということで統合してどこかへ行ってしまうと、ますます地域の人にとって医療、健康は大変になるし、統合された側に患者が来ないと必ずしも採算がよくなるというわけのものでもないんですよ。もともとそういうところですから、民間に移譲といったって、民間が引き受けたって、民間はもうかるんだったら引き受ける前からさっさと進出しているわけですから、簡単にいく話でもないわけですね。

 しかし、そういう中で三位一体で本体も大変になってくる、病院経営も大変だ、医師不足の問題もあるという中で、本当に今、緊急に対策をとらないことには、全国各地で地域医療の拠点が崩れていく、国民の生命、安全が守れないという深刻な事態が広がっているということをやはり深刻に受けとめて、その上に立って、総務大臣として、地域医療に大きな役割を果たしているこの自治体病院はどのようにして拡充していくのか。

 これまでは、官から民へとか簡単な言葉で、実際には切り捨てという状態が続いてきたわけですし、現実に閉院に追い込まれたりしているわけですが、どうしてこの自治体病院の拡充、地域医療の拡充というものに取り組んでいくのか、このことについての大臣の考えを伺っておきたいと思います。

菅国務大臣 医療というのは、それぞれの地域の中で生活をする住民にとって極めて大事なものであるというふうに私どもは考えております。

 そういう中で、医師不足対策も言われている中で、昨年の八月に、厚労省と文部科学省、私どもとの間で新医師確保総合対策、こういうものを決定し、都道府県が行うそうしたものに対して一定の支援をする、こういうことを決めたところであります。

 また、新しい措置として、一定期間は地元の医療機関で働くのであれば奨学金の貸付事業に要する経費だとか、あるいは女性医師確保の観点から、自治体病院の院内保育所の運営に関する経費だとか、そういうものについて地方交付税措置を講じる、こういうことも実は本年度から行いました。

 そういう中で、まだまだ地域の病院が大変な厳しい状況にあるということも私どもは十分に承知をいたしております。その病院を民間にするところ、あるいはさらなる改革を行っていく、そういうことを講じながらも、しかし、地域にとって必要なものであれば、それはしっかりと残して支援をしていかなければならない、このように考えています。

吉井委員 次に、機構についての質問に入ります。

 第一条で「地方公共団体による資本市場からの資金調達を効率的かつ効果的に補完するため、」としておりますが、現行法にはこうした文言はないわけですね。この文言を入れた意図はどこにあるのか、こちらは政府参考人に伺っておきます。

岡本政府参考人 今回の政策金融改革の目的は、政策金融の役割を縮小し、地方公共団体におきます資金調達も自己調達を基本としていく中で、相対的に財政力の弱い市町村や、あるいは自己調達に限界がある長期、低利の安定的な資金を供給する役割が必要だろうということから、そういう意味で、地方公共団体の自己調達を補完する組織として、今回、地方公営企業等金融機構という新しい地方共同法人が必要だという観点から、先ほど御指摘の文言を入れたものでございます。

吉井委員 それは、要するに地方債資金などの調達は民間調達を推進すべきとする総務省方針から出ているわけであって、別に地方が求めてというものじゃないわけですから、総務省の方針でそれを自治体に強制するというふうなやり方というのは考えるべきじゃないということを申し上げておきたいと思うんです。

 ところで、この金融機構法案というのは、政策金融法案という性格のものになりますか。

岡本政府参考人 今回の政策金融改革は、資金の流れを官から民に変えるという改革の一環でございまして、現在の政府系の政策金融機関が担っている機能をそれぞれ抜本的に見直すという考え方から、一連の法案として現在審議をお願いしているわけでございます。

 公営企業金融公庫につきましては、行革推進法、さらには政策金融改革の制度設計におきまして、公営企業金融公庫は来年の秋に廃止をするということ、また、廃止後の新たな仕組みとして、地方公共団体が共同して資金調達のための新組織をみずから設立するとされたことを踏まえまして、本法案の提出をいたしたところでございます。

 こういう意味で、本法案は、政策金融機関でございます公営企業金融公庫を廃止するという意味では政策金融に関連する法案であるというふうには考えております。

吉井委員 政策金融改革の基本方針には、公庫の改革は「政策金融スキームで行う必要はなく、撤退する。」とあるわけですね。ですから、地方公営金融機構は政策金融ではない、そういう立場であるならば、財投改革の方針や政策金融改革の方針に縛られなくてもいいというものになってくると思うんですね。

 ですから、要するに、金融機構法案は政策金融法案なのか、そうではないものなのか、そのことをもう少しきっちり答えていただきたいと思うんです。

岡本政府参考人 今回の政策金融改革に係ります基本的な考え方といたしまして、国が行っております政策金融としての地方公営企業金融公庫は、既に、政策金融スキームで行う必要はなく、撤退をするということにいたしているわけでございます。

 また、その考え方として、地方公共団体の資金は基本的に自己調達が望ましいという考え方の中で、しかし、財政力の弱い市町村を中心として自己調達になかなか難しい面があるということ、また独自では長期、低利の資金を安定的に確保するというような役割が確保できない、そういう意味で、地方公共団体は共同して資金調達のための新組織をみずから設立するということが、政策金融改革に係る制度設計として、一連のものとして整理をされているわけでございます。

 そういう一連の行革推進法、政策金融改革に係る制度設計といったような基本的な考え方を踏まえまして、今回の、公庫の廃止を含め、また新しい地方共同法人の設立といったものを内容とする公営企業等金融機構法をお願いしているというものでございますので、この一連の政策金融改革の一環としての法案ではあるということでございます。

吉井委員 要するに、公庫の改革は政策金融スキームで行う必要はなく、撤退するという立場なんですよね。ですから、そうすると、機構というのは政策金融ではないというわけですから、地方公営金融機構は政策金融ではないという立場であれば、財投改革の方針とか政策金融改革の方針にこれは縛られなくてもいいということになってくるんじゃありませんか。

岡本政府参考人 政策金融に係ります制度設計で基本的な考え方を整理させていただいておりますが、その際、「地方公共団体の資金調達については、個々に創意工夫を行い、資本市場等を活用することとし、共同して資金調達する方法等を活用し財政力の弱い地方公共団体が必要とする資金調達に支障がないように配慮する」というふうに考え方を整理させていただいております。

 また、その一連の中で、公営企業金融公庫につきましても平成二十年度に廃止をして、廃止後は、地方公共団体の資金調達は資本市場からの資金調達その他の金融取引を活用して行う仕組みとするというふうに整理をいたしているわけでございまして、この仕組みのために必要な法案が現在審議をお願いしている法案というふうに考えております。

吉井委員 政策金融ではないということも言いながら政策金融改革の方針に縛られているというのはおかしいところだと思うんです。

 次に、現行公庫法第一条に「地方公共団体の公営企業を推進し、」という文言があります。ところが、この機構法案にはこの文言が欠落しているわけですね。これはどういう理由ですか。

岡本政府参考人 機構の業務は、現在の公庫が行っております公営企業に係ります地方債資金への貸し付けのほか、地方公共団体の資金調達全般に係ります調査、情報、事務の受託、助言その他の支援を行うということにいたしております。そういう意味で、機構は地方公共団体の自己調達の推進にも寄与するという面も持っているわけでございます。

 このため、機構法案は、地方公共団体の公営企業の推進だけではなく、より広く地方公共団体の財政の健全な運営に寄与するといったことを目的としているものというふうに考えております。

吉井委員 要するに、今もお話がありましたけれども、現行の公庫法の場合は、「地方公共団体の公営企業を推進し、住民の福祉の増進に寄与すること」、これが目的ですね。今度の機構法案では、「地方公共団体の財政の健全な運営及び」と、ここが変わってくるわけですね。「公営企業を推進し、」というのは抜けるわけですね。一方、一昨年の地方団体に示した新行革指針では、「公共性の確保等の意義が薄れている場合には、民間への事業譲渡等について検討すること」と。要するに、地方公営企業からの撤退を指導しているわけですね。

 法律の文言上、「公営企業を推進し、」というのが抜けてしまい、そして、一方ではそういう新行革指針でやっているわけですから、結局、自治体は公営企業から撤退しなさい、撤退しようというのがこの法律のねらいだというふうに読み取ることができるかと思うんですが、この点はどうなんですか。

岡本政府参考人 公営企業が、例えば上下水道でございますとか、先ほど来御議論ございます病院でございますとか、地域の住民に必要なサービスあるいは必要なインフラとしての役割を担っているということは論をまたないわけでございますので、その運営の中でできるだけ効率的に行っていく。その場合に、民間で行ってもそのサービスの供給ができるというような公営企業の分野、業務、業種といったものがあれば、それについてできるだけ民間に譲渡、あるいはそういうものの手法を導入するという意味での経営効率化を求めるという姿勢で行革指針の考え方は整理をしているものでございます。

 今回のこの機構法は、必要な公営企業を行っていく上でその事業の展開に必要な長期、低利の安定的な資金を供給するという役割がこの金融機構であるという位置づけを持っているものというふうに考えております。

吉井委員 しかし、法案そのものの仕組みが公営企業から自治体は撤退していくという構図にやはりなっていますよ。現行公庫法は、公営企業金融公庫が資金を融通する公営企業については基本的には政令に任されている。ところが、機構法案では、水道、交通など五つの事業が法律に明記なんですね。それ以外は政令で定めるものとしているんですが、この政令で定められた公営企業については、第三十条の方で段階的縮減を図るものとするとありますね。

 だから、今までは技術的な助言で指導していたんですが、今度は法律で撤退を強制していく、こういう形になってくるんじゃありませんか。

岡本政府参考人 今回の政策金融改革の目的は、政策金融の役割を縮小して、地方債の資金といったものをそれぞれの地方団体が自己調達を基本として行っていただこうという政策金融改革の基本的な考え方の中で設計されているものでございます。そういう中で、機構は、相対的に財政力の弱い市町村を中心として、自己調達では限界のある長期、低利の安定的な資金を供給する組織として設立をするというものでございます。

 そういう意味で、機構の貸付対象事業については、民間からの調達では限界のある、また住民生活に密着した社会資本整備に重点的に限定をしていくという基本的な考え方を整理しているというものでございます。

 したがいまして、先ほど来申し上げておりますように、地方公営企業として行うべき必要な事業については、これをきちんと安定的に行っていく観点から、必要な資金といったものを確保するのが今回の地方公営企業等金融機構の役割であるというふうに考えておりますし、なお、民間事業等に譲渡しても住民に必要なサービスが提供できるということであれば、その意味での民間への譲渡、あるいはそういう効率的な民間的手法の導入といった意味でのさらなる効率といったものは必要であろうと思っております。

吉井委員 政令で定められた公営企業については、第三十条で段階的縮減を図るということになっているんですね。

 そこで、大臣に伺っておきますが、新行革指針には「現在地方公営企業が供給しているサービス自体の必要性について検討すること。」「サービス自体が必要な場合であっても、地方公営企業として実施する必要性について十分検討し、特に公共性の確保等の意義が薄れている場合には、民間への事業譲渡等について検討すること。」とあるわけです。今政府参考人からもその趣旨のことはお話があったわけですが、こういう指針が出ても、現行法のもとでは、公営企業のサービスが必要かどうか、サービスが必要な場合、公でやるのか民間がやるのかというのは、その判断は自治体に任されているわけなんですよ。

 ある公営企業を続けるかどうか、総務省は財政的に厳しいから廃止または民間移譲を主張するかもしれないわけですけれども、しかし地元の自治体は存続を希望するということもあり得るんですね。そういう場合は自治体の意向が尊重されるというのが現行法のもとでですが、ところが、この政令にゆだねられた事業の場合は、低利かつ安定した資金が蛇口の段階でとめられてしまうということになるんですね。

 自治体はその事業を存続しようと思っても、今度は、政令の方で貸付対象から事業が除外されれば低利で安定した資金の調達そのものが難しくなってくる、そうすると財政的に厳しくなっていってやむなく公営企業から撤退ということにもなりかねない。つまり、そういう方向へ行き着かざるを得ない仕組みというものがつくられてきている、そういう力が働くのではないかと思うんですが、この点、大臣、どうなんですか。

菅国務大臣 確かに縮減は図りますけれども、しかし、どこまでということは決定をしないわけでありまして、それについてはやはり自治体の判断にゆだねるということが当然のことであると思います。

吉井委員 法律できちんとまず段階的縮減というのがかかってきて、これまでのような技術的助言の枠を超えて進んでくるというところが自治体の方からすれば大変心配な問題を抱えているところだと思います。

 次に、政府参考人に伺います。

 法律で撤退を強要される、結局私はこういう力が働いて撤退を強要されることになっていくと思うんですが、機構法案では、貸付対象として水道、交通など五つの事業が明記され、それ以外は政令で定めるとされたわけですが、現行公庫法の貸付対象となっているものはすべて政令に盛り込まれることになりますか。

岡本政府参考人 先ほど申し上げましたように、今回の政策金融改革の目的は、政策金融の役割を縮小して、地方団体が自己調達として地方債の資金を調達していくことを基本とする中で、限界のある長期、低利の安定的な資金といったもののいわば補完的な役割を担っているというものでございます。

 そういう趣旨で、今回の対象事業につきましては、水道、交通など五つの事業を重点的なものとし、残りの事業については段階的に縮小していくという中で政令という仕分けをさせていただいているわけでございます。

 この政令の対象事業としてどういうものを書くかということにつきましては、これから地方団体の御意見も伺いますとともに、また、それぞれの事業に係ります資金需要といったものについても十分伺っていくということをしながら、一定期間かけて絞り込んでいくということといたしたいと思っておりますが、その際にも、地方公共団体の資金調達に配慮しながら適切に対処したいというふうに考えております。

吉井委員 現行法のもとでは、公営事業には電気、ガスも入っているわけですよ。だから、私伺ったのは、現行法の貸付対象となっているもの、その中で五つのものは二十八条二項一号から五号に皆書き込むわけですね。六号の政令で定めるものなんですが、残りのものは全部政令で定めるんですかということを聞いているのはそういうことなんですね。

 つまり、電気、ガスは政令に書き込まれないという話も耳にしているんですが、これは政令に書き込むんですか、書き込まないんですか。

岡本政府参考人 先ほどお答えいたしましたように、現在審議をお願いしております五つのもの、水道、交通、病院、下水、公営住宅につきましては、重点化を図るということからこれを列挙させていただき、その他のものは政令で定めていくということにさせていただいております。

 今御指摘ございました電気、ガスを初め、工業用水道、市場、駐車場など、それぞれ現在の公庫の貸付対象事業でございますので、このいわば差に当たります事業をどこまで政令に書き込むかといったことにつきましては、先ほど申し上げましたように、地方公共団体の御意見も伺いながら、またその資金需要を踏まえながら判断をしてまいりたいというふうに考えております。

吉井委員 今まで入っていた公営企業なんですが、要するに、今のお話ですと、電気、ガスは除く、こういうふうになってこようかと思うんですね。

 ですから、水道など五事業が法律に明記され、それ以外は政令にゆだねられるというわけですが、五事業以外は政令で定める、片方は法律に明記、片方は政令と、その違いはどこにあるんですか、何なんですか。

岡本政府参考人 今回の法律案の中で、対象事業を政策金融改革の基本的目的として重点化を図っていくということが今回の設計の基本方針なわけでございます。

 その際、対象事業を重点化していくという際に、いわば住民生活に密着した社会資本整備、また公営企業としてそれを果たしていく必要性といったものが五事業については非常に強いという考え方から、この五事業といったものを重点化しているわけでございまして、残りのものにつきましても、それぞれその必要性を勘案しながら政令において規定をしてまいるという考え方でございます。

吉井委員 要するに、電気、ガス等は政令から外していく、その意図が透けて見えるなというふうに思います。

 次に、公営住宅の償還期限二十年と、それから駐車場、有料道路も償還期限は同じ二十年なんですが、一方は住宅ですから法律に明記されるんですね、一方は政令に落とされるわけなんですが、この場合、その違いはどこにあるんですか。

岡本政府参考人 先ほど申し上げましたように、機構の設立の趣旨にかんがみまして、その貸付対象事業の重点化を図っていくという考え方から、五事業とそれ以外の事業についての体系の整理をしているわけでございます。

 一方、それぞれの事業に係ります地方債の必要な償還期限といったものにつきましては、それぞれの事業の特性に応じた償還期間を設定するということが必要なわけでございますから、五事業、それ以外という区分というよりは、それぞれの事業の特性に応じた償還期限を定めるというものでございます。

吉井委員 事業の特性だとか貸付額の大きさがかなり基準になってくるのかなという感じですが、ここで大臣に伺っておきます。政令にゆだねられた公営企業については機構の貸付対象から外される可能性があるわけですね。法定された事業についてはずっと貸付対象として継続されるということでいいのかどうか。これは大臣に確認しておきます。

菅国務大臣 当然、そのようになると思います。

吉井委員 次に、大臣にまた伺いますが、法三十条第二項に「財政融資資金の地方公共団体に対する貸付けの縮減に併せて、その地方債の資金の貸付け及び地方債の応募について段階的に適切な縮減を図る」とあります。

 公営企業債券は、九七年の二兆六千七百八十四億円をピークに減り続けておりますが、今年度の計画額は一兆三千五百億円と、ピーク時の半分になっています。これをさらに縮減ということで、一体どこまで縮減していくのかということが問題になってくると思うんですね。

 この縮減については、何か下限はありますか。

菅国務大臣 機構の貸付規模については、政策金融の役割を縮小して、自己調達を基本とするものという政策金融改革の趣旨を踏まえる中で、財政融資資金等の縮減とあわせて段階的に適切な縮減を図る、そういうことで法律上規定をしたところであります。しかし、機構は地方が自主的そして主体的に運営する法人であって、業務のあり方については機構が自主的に決定をしていく、そういうことが基本になっております。

 将来の資金需要は不明確であり、現時点で資金需要を特定することは機構の活動の弾力性というものを損なわせることなどから、具体的な貸付額の縮減について、その目標だとか下限だとか、そうした数値を示すことは好ましくないというふうに考えております。

吉井委員 これは、この議論がある過程でも、例えば総務省審議官が、貸付規模については、財投の段階的縮減、それとあわせて縮減をしていくんだという発言等、要するに、どんどんどんどん縮減という話は出てくるんですが、今もおっしゃったように、下限はない。

 だから、この点では、地方債というものについてはどんどんどんどん縮減の方向だというふうに考えておかなきゃいけないものだということを今の御答弁で理解しました、考え方に立っておられるということがわかりました。

 あわせて大臣に伺いますが、せんだっての委員会でも大臣は、総務省として地方債資金の民間調達を推進していくべきである、こういう立場をとっておると答えておりましたが、加えて、機構法第一条に「地方公共団体による資本市場からの資金調達を効率的かつ効果的に補完するため」との文言があり、地方債資金の調達は民間資金が中心となることが明確になりました。

 今年度の計画では、民間資金の割合は六三・〇%と、既に民間資金が中心となっておりますが、この割合をどこまで持っていく考えなのか、あわせて伺っておきたいと思います。

菅国務大臣 資金の流れというのは、官から民へ、そういうことが重要な課題となっておりまして、地方債についても、今委員が御指摘のとおり、民間資金を必要な場合に限って公的資金が補完していく、そういう方向で私どもは行っております。

 一方、地方公共団体の建設投資というのは、小中学校など住民生活に不可欠なものが多いこと、また財政力が弱い市町村もこうした仕事を担っている等の事情があるために、公的資金というものを一定程度確保する必要があるというふうに考えています。

 地方債計画における民間資金の割合については、ナショナルミニマムを担う小中学校等の事業量、あるいはそれ以外の裁量的建設投資の事業量、地方債計画の総額との関係などを踏まえた結果によるものであり、現時点で具体的な数値を挙げて目標のようなものを申し上げるということは困難である、このことについては御理解をいただきたいと思います。

吉井委員 もう時間ですから、最後に一問だけ大臣に伺って質問を終わりたいと思います。

 要するに、民間資金中心ということなんですが、一方で、今年度から三年間で五兆円規模の公的資金の補償金なしの繰り上げ償還を行う。これは高金利の負担軽減ということでいっておられるんですが、繰り上げ償還は金利五%以上の政府保証債が対象となっています。現行公庫の金利は一・六〇から二・〇〇ですから、金利負担をそれでも軽減しようというわけですが、説明書にもあるように、将来的な国民負担を軽減するためとあります。一方では負担軽減だということで繰り上げ償還とかいろいろ言いながら、一方では金利の比較的高い民間資金に地方債資金全体をなぜシフトさせていこうとするのか。これはどう考えても平仄が合わない、つじつまが合わない問題だと思いますが、これを最後に質問しておきます。

菅国務大臣 非常に厳しい地方財政の中で、多くの地方公共団体から、公債費負担軽減のために、公的資金に係る高金利の地方債については、補償金を免除する繰り上げ償還等の要望がかねてから出ておりました。そういう中で、委員御指摘のとおり、十兆円の中の半分、五兆円について繰り上げ償還を行うことにしたところであります。

 また、この間、歴史的な低金利の中で、財政融資資金に関する政策の変更として、貸付規模の大幅な縮小、特殊法人等への補償金なし繰り上げ償還の容認、十二兆円の金利変動準備金の国庫納付が行われた。こういうことの均衡も踏まえて、十九年度、総務省としては、地方債計画案において要求を行って実現をしてきたというところであります。

吉井委員 時間が参りましたので、終わります。

佐藤委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。後藤斎君。

後藤(斎)委員 民主党の後藤斎でございます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました地方公営企業等金融機構法案に対し、賛成の立場から討論いたします。

 地方公営企業等によって住民サービスの充実が図られている側面がある以上、当該事業の運営のため、地方自治体が円滑かつ安定的に資金調達する仕組みは不可欠です。昨年の行政改革推進法民主党案では、本法案と同様に現公庫を廃止し新組織を提案いたしました。しかし、本法案により生まれる新機構を手放しで評価できるかといえば、残念ながらそうではありません。

 そもそも、財投改革の出口が見えないままの政府系金融機関の再編です。この秋誕生するゆうちょ銀行などから資金が新機構に流れるとすれば、結局何も変わらないことになりかねません。二百兆円を超える地方債残高の解消の絵もかかれていません。また、七十二事業が実質債務超過に陥っているとされている地方公営企業自体の改革の方針も何ら示されておりません。

 新機構は民営化の一類型である地方共同法人になるとされています。納税義務、会計処理方法、人材登用など、官民イコールフッティングが担保される必要がありますが、条文を読んでも肝心なことは何もわからないようにできています。全自治体が出資するかどうかの新機構の根幹にかかわる部分についても具体的な規定を避け、地方六団体の検討に丸投げをしています。地方共同法人ゆえですが、不明な点が多く、質疑を通じてもなかなか懸念を払拭することができませんでした。

 一方、国の関与が残っているものとして、新機構が貸し付けを認める公営企業の種類の一部については、国が政令によって定めることができるとしております。さらに、現在の公営企業金融公庫の役員三人が中央省庁からの天下り、職員の七十九名中五十五人が総務省等からの現役出向という実態にかんがみると、新たな機構も天下り、出向の受け皿になりかねません。

 本法案が規定している内容についても、問題が山積しております。

 まず、従来の政府保証から地方自治体の保証に変わるため、信用度が落ち、現在よりも資金調達が難しくなるおそれもあります。また、貸し手と借り手が同じ地方となるため融資の際の審査が甘くなるといったモラルハザードが起こることも懸念されています。

 以上のように、官から民の民営化の一類型として、市場から資金を自治体などが調達する補完としての新機構を設計しつつも、中途半端なものになっております。問題点を指摘しつつ、新たな機構が、真に地方自治体の水道、交通、病院等の社会インフラの整備のため、円滑な資金調達が可能になり、適正な業務運営が執行できるよう、附則第二十五条に基づき、政府が平成二十九年度末の見直し期限まで最大限努力することを条件に、本法案に賛成することを申し述べ、私の討論を終わります。(拍手)

佐藤委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 私は、日本共産党を代表して、地方公営企業等金融機構法案に対し、反対の討論を行います。

 反対の第一の理由は、自治体に長期かつ低利の資金を融通してきた公営企業金融公庫を民間金融機関を補完する範囲内で資金を融通する機関に変質させることになるからです。

 昨年成立した行革推進法第七条には、「地方公共団体のための資金調達を公営企業金融公庫により行う仕組みは、資本市場からの資金調達その他金融取引を活用して行う仕組みに移行させるものとする。」との規定がありました。この規定を受けて、現行公庫法の「地方公共団体の公営企業を推進し、」という規定を放棄した上で、法案第一条では、公営企業金融公庫を継承する地方公営企業等金融機構の役割は、自治体が行う資本市場からの資金調達を側面から補完するものとされました。

 第二は、融資枠と貸付対象事業の縮減であります。

 機構の役割が自治体の資本市場からの資金調達の補完とされたことによって、自治体への財政融資資金の貸し付けの縮減とあわせて、機構の自治体への資金の貸付額は段階的に縮減するものとされました。また、業務の重点化と称して、貸付対象も段階的に縮減するものとされました。既に、電気やガス事業が貸付対象から外されることが明らかになっています。

 この間、公営住宅の投資実績は年々減少しており、一方、入居競争率は年々上昇するという、公営住宅の供給不足は一層深刻さを増しています。また、交通や病院など、安くて安全な住民サービスを提供してきた公営企業の財政基盤は依然として厳しく、公営企業に対する長期かつ低利の資金の融通は不可欠であります。そうした資金の総額と貸付対象を縮減する法案は容認できません。

 第三は、この法案が大銀行の利益を最優先する財界戦略に沿った政府系金融機関改革の一環であるからであります。

 財界、大銀行が主張する民業圧迫論を口実に、住宅金融公庫の廃止、郵政民営化が行われ、今また政策金融改革と称して、中小企業分野への参入を内容とする大銀行の新たなもうけ口獲得のために政策金融の縮小が行われようとしています。本法案は、国民や中小企業向け融資の縮小、廃止をねらった株式会社日本政策金融公庫法案など、一連の政策金融改革関連法案の一つであり、地方財政の悪化が顕在する中で、国民や自治体よりも大銀行の意向を優先し、長期かつ低利の資金を融通してきた公営企業金融公庫の業務の縮小は断じて認められない、このことを指摘して、討論を終わります。

佐藤委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 これより採決に入ります。

 地方公営企業等金融機構法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

佐藤委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 この際、ただいま議決いたしました法律案に対し、谷公一君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。西村智奈美君。

西村(智)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。

    地方公営企業等金融機構法案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の具体的運用が、政省令や発起人、代表者会議等の決定に委ねられていることを踏まえ、本法施行に当たり、次の事項に十分配慮すべきである。

 一 地方公共団体の自主財源の充実強化に最大限の努力を行うとともに、地方債依存度の低下が図られるよう、広範な施策を講ずること。

 二 地方財政計画及び地方債計画の策定に当たっては、地方公営企業等金融機構(以下「機構」という。)の業務の安定的な運営と市場の機構に対する信頼の確保に留意し、機構資金を公的資金の一環として位置付けること。また、機構の財務基盤については、市場の信認が得られるよう、その充実強化に努め、出資については、原則全ての地方公共団体が分担するよう、適切な助言に努めること。

 三 機構の貸付対象となる公営企業の範囲を定める政令の制定、業務の重点化、平成二十九年度末を目途とする業務のあり方全般に係る検討に当たっては、機構が地方債資金の共同調達の機能を担う地方共同法人であることにかんがみ、地方公共団体のニーズを十分踏まえ、これを行うこと。また、検討結果に基づく措置を講ずるに当たっては、地方六団体の意見を最大限尊重するとともに、地方分権改革の方向性との整合性を確保すること。

 四 機構の理事長の選任に当たっては、公募の活用等代表者会議が広く人材を求め選任するよう、適切な助言に努めること。併せて、機構に対する国家公務員の現役出向については、機構の要請を踏まえ、必要最小限とすること。

 五 機構の貸付けに当たり、貸し手と借り手の同一性に基づくモラル・ハザードが生ずることを防止するため、審査体制を確立するとともに、企業会計原則に沿って財務諸表の作成・開示、貸付け等の業務運営に係る透明性・公平性・公正性を確保し、リスク管理に万全を期すよう、適切な助言に努めること。

 六 公庫債権金利変動準備金等の額が公庫債権管理業務を将来にわたり円滑に運営するために必要な額を上回る金額の国への帰属、管理勘定廃止時の残余財産の国への帰属及び機構が解散した場合の残余財産の処分と国への帰属の取扱いについては、機構の財産が地方公共団体の寄与により形成された経緯を踏まえ、機構及び地方公共団体の意見を十分聴取して慎重に対処すること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

佐藤委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

佐藤委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、総務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。菅総務大臣。

菅国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、その御趣旨を十分尊重してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

佐藤委員長 次に、行政機構及びその運営に関する件、公務員の制度及び給与並びに恩給に関する件、地方自治及び地方税財政に関する件、情報通信及び電波に関する件、郵政事業に関する件及び消防に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りをいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として総務省大臣官房総括審議官久保信保君、自治行政局長藤井昭夫君、自治税務局長河野栄君、情報通信政策局長鈴木康雄君及び財務省大臣官房審議官佐々木豊成君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森本哲生君。

森本委員 民主党の森本哲生でございます。よろしくお願いいたします。

 きょうは、まず初めに政令指定都市について質問をさせていただきます。

 まず、政令指定都市の問題についてお聞きいたしますが、先日、二十四日の委員会におきまして、市町村合併の現状と今後の方向性について実は質問させていただきました。その際、人口要件の緩和などもあって政令指定都市がふえていることを指摘させていただいたわけであります。先ごろ新潟市また浜松市が加わりまして、政令指定都市の数は十七というふうにさせていただいておりますが、今後、市町村合併が進んでいく中で、政令指定都市の数はさらにふえていくことが見込まれておるわけであります。都道府県の事務の相当程度を行うことになる政令指定都市がこのままふえ続けていくことがいいのかどうか、また都道府県のあり方を含めて、まず、政令指定都市というものに対する基本的な認識と方向性について、大臣からお伺いをいたしたいと存じます。

菅国務大臣 委員から御指摘がありましたように、政令指定都市というのは、大都市特有の課題を一元的に処理することによって行政運営というものを合理化し、規模、能力に応じて住民に身近なところで事務を処理できるようになる、そういう意味では、社会福祉、保健衛生、都市計画、道路など市民生活に密着したものについては、都道府県から政令指定都市へ権限が移譲されて、そこで実行されるというのが実態であります。

 市町村合併支援プランにおいて、大規模な合併が行われ、合併関係市町村及び関係都道府県の要望がある場合においては、市町村合併の推進の観点や、あるいは地方分権の推進という時代の要請などを踏まえ、弾力的に指定をしているということが現状であります。

 今後、地方分権や市町村合併の進展等により都市の姿も多様化してくるだろうと予測をされております。権限移譲の一層の推進、そしてまた都道府県との関係など、政令指定都市のあり方というものについて十分に検討していく必要があるだろうというふうに私は思っています。

 例えば、神奈川県の場合は、横浜、川崎、そして相模原が指定都市になりますから、そういう意味で、人口の半分以上が政令指定都市でありますので、さまざまな問題が生じてくるのも事実でありますので、将来的に検討していく必要があるということを考えております。

森本委員 大臣、今おっしゃられました都道府県との関連については少し後で議論をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 今のように、こうした政令指定都市が、巨大な基礎的自治体が出てまいりますと、先ほど言われたさまざまな課題も生まれてくるわけであります。

 例えば、県の調整機能の低下もその一つでございますが、いわゆる行政区の問題がございます。例えば、大臣今おっしゃいました地元の横浜市などもたくさんの行政区があるわけでございまして、このままで果たしてよいのかどうか。大臣自身が先般の委員会で、果たしてこの三百六十五万というのはいいのかどうか、これもまたある意味では私は問題点と思っている者の一人でありますというふうにお答えをいただいております。

 この点についてお聞きしたいわけでございますが、聞くところによりますと、自分は横浜市の住民なんだという意識よりは、例えば緑区というところがありますが、自分はそこの住民、また港北区の住民だというように、住んでいるところ、行政区ごとのアイデンティティーがかなり強まっていると聞かせていただいております。そうした意識の変化とも関係をいたしますが、行政区ではなくて自治区にしたらどうかというニーズや要望も出てきているのではないかというふうに思っております。あるいは、別の考え方として、分割、分解すべきだという意見もあるかもしれません。

 そこで、政令指定都市の行政区、例えば三十万人程度の行政区などは一定の権限を持った自治区にすべきという考え方に関して、大臣はどのようにお考えか、お聞かせください。

菅国務大臣 現実問題として、人口が三百六十五万人の市というのは、これは統治するのが非常に難しい状況であります。それぞれ、政令指定になることによって、区単位にさまざまなきめ細かいことを今行っていますけれども、果たして今のままでいいのかどうかというのは、常に多くの市民が疑問を感じているところであるというふうに思っております。

 ただ、今委員から御指摘のありました自治区ということでありますけれども、ここにいくにはさまざまな問題というのがあるだろうというふうに私は思っております。

 いずれにしろ、地域の住民の皆さんの意見を聞く中で、そうした意見をどういう形で反映させていくか。行政と住民の連携ということを考えたときに、さまざまな問題というのがこれから出てくるだろうというふうに私は思っていますし、現実的に、余りにも大き過ぎるんじゃないかなという、巨大過ぎることに対しての弊害も実はあるわけでありますので、こうした問題については、やはりさまざまな角度から検討をしていく必要があるだろうというふうに思っております。

森本委員 大臣、そこで、例えば横浜市ですと、県、市、私の今申し上げた自治区になると、二層が三層制になっていくということになるんですが、逆に、鳥取県の人口が六十一万ですと、むしろ県にしていっても、それの方がすっきりするんじゃないか、私はそういう考え方も同時に持っておるんです。

 今、自民党の検討会の中で、かなりすっきりした、そうしたお話がされているようでございますが、これはまた道州制の問題の中での議論がこれからも出てくるというふうに考えております。そうしたことを考えると、道州制、今の自治区の関係、今回の合併で、七十万人で特例的に政令指定都市になれるという関係が出てきましたから、それを考えると、もう少しすっきり方向づけをされていった方がむしろ地域の住民の皆さんにはわかりやすい。今の状況では、一体何を考えているんやという話の疑問点がかなり残ると私は思うんです。そうした私の意見も含めて、大臣の所見をお伺いできたらと思うんです。

菅国務大臣 例えば七十万で政令指定都市になる、政令指定になることによって区役所が設置をされる、そして、県からさまざまな権限とかそうしたものが政令指定都市の場合おりてきますから、地域住民にとってはきめ細かな住民サービスができるようになるだろうというふうに私は思っています。そういう意味におきましては、地域の皆さんにとっては、これはある意味では歓迎をされることだろうというふうに思います。

 しかし、国全体の形から考えたときに、果たして一つの県にそうしたものが三つあることがいいのかどうか。これは非常にいびつな状況にもあるわけでありますから、先ほど来申し上げていますけれども、これはさまざまな観点から検討していく必要性があるだろうというふうに思います。

 そしてまた、地方分権改革推進委員会、四月一日からスタートしましたけれども、あるいは地制調、私は今国会中にスタートさせたいという話をさせていただきました、こうした中でもやはりこういう問題というのは検討していく必要性があるだろうというふうに考えています。

森本委員 これについては、もうこれ以上は議論をいたしませんが、大臣、都道府県と政令指定都市をつくっていくことによって余りにも無駄がふえる、無駄なことをやっているという感覚はございませんか。むしろ県として離した方がわかりやすいし、無駄もない。もちろん、後から質問させていただきますが、やはり議員の数、いろいろなものもすっきりしていくというふうに私は考えております。そのことについてお伺いさせていただきます。

 片や、二層ということじゃなく、一層を認めてもいい、多段階的に認めてもいいのではないかという考えも示しましたが、自治体によっては、小さなところに限られてくると思うんですが、シティーマネジャー制度や、行政を監視するためのコミッション制度など、自治体の事情に応じたさまざまな自治形態や制度を認めてもいいのではないか、一方ではそういう考え方もしておるんです。そのことについてはいかがでございますか。

菅国務大臣 確かに、政令指定都市の中に市会議員がいて県会議員がいる、無駄じゃないかなということも、これはよく言われます。また、政令指定都市になって権限が県から移譲されるわけですから、しかし県の職員の数が変わらないんじゃないかとか、いろいろな御指摘がありますので、この問題については、私、先ほど来申し上げますけれども、これはやはり早急に検討する大きな課題だというふうに思っております。

 それとまた逆に、人口の少ない町村になるんですかね、そういう中に、今委員の御提案がありましたけれども、私は、それは一つの見識かなというふうに考えております。ただ、現在は、たしか町ですと総会でしたか、何かそういう形では認められておりますけれども、市町村のあり方というものも、これからさまざまな角度から論じられるべきだというふうに思います。

森本委員 時間がありましたら、最後のところで少しまたそのお話をさせていただきたいというふうに思っております。

 次に、地方議会の役割について少し質問をさせていただきます。

 昨年、相次いで明るみに出ました知事による不祥事や、夕張市での財政破綻などを見ましても、本来、地方行政に対して監視をしなければならないはずの地方議会というものがその役割を十分果たしていなかったという問題があるわけです。

 私自身、地方議会の出身者として、地方議会のあり方につきましてはいろいろと改革すべき点があるだろう、そのように考えている一人であります。

 御承知のように、地方自治におきましては、国政と異なりまして、首長と議会議員をそれぞれ選挙で選ぶという二元代表制、今、三重県議会がこれについていろいろ議論をしておるところでありますが、首長と議会が抑制と均衡を図りながら地方自治が行われることが期待されてのことであります。しかしながら、実態はなかなかそうはなっておりません。かなりの程度、首長が優位に立っているのではないかというふうに私は思っています。

 現在の地方自治法では、第百一条におきまして、議会の招集権は首長にあるとなっています。素朴に考えて、どうして議会の招集権が議長ではなく首長になっているのだろうかと疑問に思ったところであります。また、臨時会の招集につきましても、議長が議会運営委員会の議決を経た場合や、議員の定数の四分の一以上の者が首長に対して会議に付議する案件を示して臨時会の招集を請求することができるとなっておるわけであります。議会側が請求する立場にあって、招集権はあくまで首長にあります。

 そこでお聞きをいたしますが、地方議会の招集権が議長ではなく首長になっている理由、根拠を教えていただきたいと存じます。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 確かに、地方自治法第百一条第一項におきましては、議会は、普通地方公共団体の長がこれを招集するとされているところでございます。

 その趣旨についてでございますが、やはり、長が地方公共団体を統括しているとか、あるいは代表する立場にある、また、長が事実上議案の大半を提案している、そういうことを勘案してこういう仕組みになったというふうに承知しているところでございます。

森本委員 そうすると、あくまでも、今の考え方の中では、すべて提案側の意向によって議会が開催されるのがごく当たり前というような、そういう判断でよろしいですか。

藤井政府参考人 議会側からの招集につきましては、先生が先ほど御案内されましたけれども、第二十八次地制調でも十分議論されていたところでございます。

 それで、さまざまな議論があった結果、これも御案内のとおりでございますけれども、議運の議決を経て議長が請求するだとか、あるいは議員さんの四分の一以上の発議で請求するとか、そういう仕組みが設けられたわけですが、これは、ちなみに、そういう要請を受けた場合、首長側は招集することが義務づけられておるわけで、議会側のイニシアチブというものもある程度確保されているということでございます。

 問題は、招集権という権能そのものを議会側に移すかどうかということであろうかと思いますが、これも先生、冒頭に御指摘がありましたけれども、やはり抑制と均衡ですか、そういうバランス感が非常に大きな問題になってくるということで、慎重に考えるべきだという意見もあって、こういうことになったというふうに承知しております。

森本委員 それでは大臣、今の議論の中で、地方議会の招集権を議長にすべきであるという提言もあると思うんです。そのことについて大臣はどのように認識をされておりますか。少しお聞かせいただけませんでしょうか。

菅国務大臣 私も地方議会を経験していますから、私の考え方は、当初から、これは議長にあってもいいのかなという思いでありました。

 しかし、現実的に、今のように、提案権が首長に数多くありますから、そういう中で、今回の二十八次の答申を受けて、議長に臨時会招集請求権というものを付与して、長は一定期間内に招集しなきゃならない、こういうことが行われたというふうに理解をしております。

森本委員 非常にこれはいろいろ議論をされたというふうに、私もそれはよくわかるんですが、緊急事態とか、議会側が議会を招集しなければならないというふうに、だれしもが議会が当然招集すべきだというところでも招集ができないというような制度は、やはり特例的にも認めていくべきではないかという、これ以上の議論は法的なものになりますから、そうしたことについての検討というのは今後どのようにお考えでございますか。

藤井政府参考人 要は、そういう場合が具体的にどういう場合があって、その必要性がどういうことか、そういう判断だと思います。実際どういう場合があるか。ですから、やはりそういう必要性というものを今後十分私どもとしても踏まえながら、今後のやはり検討ということになろうかと思っております。

森本委員 それでは、念を押しておきますが、そうした具体的な事例の中で、明らかにこれは必要だということがあればそうした方向に進むことも可能だということで理解をさせていただいて次に進みますが、一方的ですけれども、よろしいですね。

 それでは、地方議会にもいろいろそうしたお話をさせていただいて、今後に対処したいというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、地方議員の位置づけについてお聞かせください。

 現在、地方自治法において、地方議員についてどのような規定がされているかといいますと、実は、独立した項目というのではなく、「給与その他の給付」の項目の条文の中に書かれているわけであります。しかも、その書かれ方はとてもあいまいであると言わざるを得ません。二百三条の中に、委員会の委員、監査委員、審議会の委員、専門委員、選挙立会人といった主に非常勤の職員と同列のところに地方議員は並べられており、支払われるのも、給与でなく報酬になっております。一方、二百四条では、首長や常勤の職員に対しては給料及び旅費が支払われるとなっております。

 報酬というのは、常勤職員に対する生活給としての給料とは異なって、一般には非常勤職員に対する役務の対価として支払われるものと考えますし、地方自治法上の規定のされ方を見ましても、地方議員は非常勤的な位置づけを有しているように思われます。

 しかしながら、一方で、現状ではすべての自治体で月額支給制をとっていること、また、一般的には、主に常勤職員に対し支給される期末手当、つまりボーナスが地方議員に支給されておりますように、二百三条四項、常勤的な位置づけもされておるわけであります。

 地方議会での定例会の会期日数を都道府県別に見ますと、資料では、平均が八十七・何ぼという数字をいただいておりますが、市町村では大体約四十日という開きがあります。決して多いとは思われませんが、議員報酬というのが、年間五十日とか百日とかの議員活動に対する対価なのか、日常的な地元活動も含めた生活給的なものなのか、その位置づけがはっきりいたしません。

 そこで、地方議員の報酬というものの性格をどのようにとらえていけばいいのか、よろしくお願いします。

藤井政府参考人 給料と報酬の関係でございますが、御指摘のとおり、地方公共団体の長については、地方自治法第二百四条第一項において給料の支給という使われ方をしておりまして、一方、地方議員については、二百三条第一項において報酬ということになっています。

 それで、問題は、給料とか報酬という言葉遣いの問題が一つあるということと、もう一つは、給料なり報酬というものの個々の法律上の性格、意義づけの問題があろうかと思います。

 前者からいきますと、よく似た言葉で、報酬とか給料とか給与とかいろいろあるわけですが、これは必ずしも一般概念として確立しているわけではなくて、やはり個々の法律によって内容が決まっているという使われ方をしております。この場合、地方自治法は、給料というのは常勤的な労務に対する対価という形になっております。報酬はそれ以外のものという形になっております。実は、いずれも、報酬も給料も、労務ないし役務に対する対価という意味では同じなのでございますが、常勤的な労務かどうかで使い分けているということでございます。

 ただ、これも今先生の御指摘の中にありましたが、報酬の中でも、議員については、特段、報酬の基準とか条件みたいなものは法律で決めておりません。それ以外のものについては勤務日数に応じてやるという形になっておりまして、実際の支給内容、支給方法とか額というのは条例で定めるということになっているところでございます。

森本委員 条例で定めているものであれば国の方は関与はしない、地方分権の流れの中で、そうしたことはますます国の方から指導すべきでないというお考えですか。

藤井政府参考人 私どもの立場は、あくまで地方公共団体も法律の枠内で、それぞれ地域の実情に応じて自主的、自律的に立派な仕組みをつくっていただきたいということでございます。

森本委員 それでは、例えば県議会、市町村議会、その議会の定例日以外にもかなり出勤されることが多い、そういう場合には給料として扱ってもいいんではないかといったときには、地方自治体はそうした扱いが条例上できるというふうに解釈してよろしいんですね。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 報酬の対価の対象としていかなるものを入れるかということについては、法律は特段決めておりませんし、また、支給方法、これも先ほどちょっと言いましたが、普通の非常勤職員なんかは勤務日数に応じてということになっていますが、議員についてはそういうことは特に法律で定められておりません。現実に、支給の仕方も、年俸的なもの、あるいは月ごとのものとか、いろいろなやり方があるわけでございますし、また、額も、御承知のように、市町村によって非常にさまざまでございます。そこはまさに、各地方公共団体の実情に即して適切な方法なり額を決めていただくべきであるということを申し上げているところでございます。

森本委員 念を押しますが、局長、そうした条例をつくる場合に国は関与しないという解釈でよろしいですね。

 それと、私は、どちらかといえば、そうした仕事をしっかりする方々にはしっかりと位置づけをしてほしいということの願いを含めて今の質問に入っておるわけですが、一方、地方公共団体も、先ほどの質問ではありませんが、さまざまです。ですから、ある程度、地域事情によって多様なものを認めるべきではないか、認めてはどうかという提案でもあります。例えば、小さな自治体などでは議員もボランティア的に議会での活動日数に応じて支給してもいいのではないか。これは給料とはまた一方違う観点から、いろいろな、先ほど局長の言われた話は、そうしたことを十分加味して条例をつくって独自でやっていってもいいという解釈でよろしいんですね。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 私どもとしては、報酬とは何かというところ、そこはやはり押さえていただきたいと思います。すなわち、報酬というのは、冒頭申し上げましたように、ある人が地方公共団体に対して行った役務、それに対する対価である。例えば、そういう役務と認められないものについてまで報酬の中に入れるということになるとそれは法律の枠を超えるということでありますが、地方公共団体のためになされた役務に対する対価という限りにおいては、地方自治法上の趣旨に反するものではないというふうに考えております。

森本委員 それでは、最後の質問に移らせていただきますが、地方議会が首長及び首長部局に対して十分な監視機能を果たしたり、議会みずから条例案などを積極的に提案したりしていくためには、これも三重県の議会でもかなり話題になっておることでございますが、調査機能を含めて議会事務局の拡充が不可欠だと私個人的にも思っております。

 地方自治法の百三十八条では、議会事務局の職員は議長が任免することになっておりますが、首長が事務局職員の人事を行っており、首長部局の職員の異動先となっているのが実態であります。議会が独自に職員を採用しているところもほとんどございません。

 地方議員の政策能力及び行政監視能力を高めるためには、事務局職員に独自の人事システムを確立すべきだというふうに私は考えます。現状認識を含めてどのようなお考えでございましょうか、お伺いをいたします。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 議会事務局の職員についての御質問でございますが、これも御指摘のとおり、現行法上は、議会事務局職員も議長が任命する、これは地方自治法第百三十八条第五項でございますので、独自に採用するということは制度上は可能となっております。

 また一方、議会事務局の特に専門能力のある職員を養成するとか確保するとか、そういうことの重要性、これは我々も非常に大事だというふうに認識しておりまして、このことはまた第二十八次地方制度調査会の答申においても指摘されているところでございます。

 ただ、現実問題といたしまして、少ない職員定数のもとで優秀な人材を確保しつつ、また円滑な人事運営をするという意味で、各地方公共団体では非常に御苦労をなさっておられるということも承知しておりまして、またこういう厳しい行政改革の時代でございます。あるいは、地方財政の状況を踏まえると、なかなか現実には独自にゆとりある人材を確保するということはできないという状況にあろうかと思っております。

 いずれにしても、私どもとしては、今は、そういう職員の確保も大事でございますが、むしろ、いかに専門能力がある職員を育てるか、そういう養成面、こういったものを充実していかなければいけないということは十分認識しているところでございます。

森本委員 私どもには政策スタッフ一名はいただいておりますし、そうした面から、たくさんのそうした優秀な方々がどううまく活用できるか、地方議会ともあわせて、ぜひ今後そうした方向に動いていけば非常にいいのかな、そのような思いもさせていただいております。

 地方分権については、時間がございませんので、大変準備もしていただいておったと思うのですが、これで終わらせていただきますので、よろしくお願いします。どうもありがとうございました。

佐藤委員長 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 民主党の逢坂誠二でございます。

 きょうは多少いつもと違った毛色の質問を若干したいと思うんですけれども、地域振興と酒税法の関係について若干お伺いをしたいと思っております。

 まず最初に、大臣、大臣は果実酒というのを御存じでしょうか。果実酒、例えば、野山に咲いているコクワだとかそういうものを、こんな大きな瓶に入れて、主には氷砂糖を入れて、あと三十五度のしょうちゅうなんかでがっと漬け込むようなもの、こういう果実酒なんというものを、大臣、試されたことはございますか。

菅国務大臣 私は、酒は全く飲めないんですけれども、そういうものがあることはよく承知しております。

逢坂委員 それは予想外の、お酒が飲めない、それは残念ですね。残念ですねというのは、実は、お酒というのは、やはり人生を非常に楽しくするといいましょうか、お酒で人生失敗するケースもたくさんあるようでございますけれども、大臣、ゴールデンウイーク中、フランスにも行かれたということでありますけれども、やはり旅行とお酒、食べ物とお酒というのは、これはやはり非常に重要なファクターだというふうに思うんですね。

 今の果実酒なんというものも、私は正直言いますと、ちょっと個人的なことを申し上げてなんですが、私はどっちかというと辛い方の酒が好きなんです。果実酒は甘過ぎてちょっとどうかと思う方の口ではあるんですが、やはり食を楽しくしたり、その地域ならではのものを味わうという点では、お酒というのは結構重要なものですので。大臣の顔を見ているとお酒が飲めないとは全然思わなかったんですが、予想外でございました。大変恐縮でございます。

 それで、大臣にこれをちょっとお伺いしたいんですけれども、もし仮に、私が、ニセコの野山でとれたコクワだとか野イチゴなんかを使った果実酒をつくって、大臣がお酒飲めないのはわからないんだけれども、それを大臣にプレゼントした、そうしたらこれは違法だということを御存じでしたか。

菅国務大臣 今初めて聞いた話ですけれども、私は知りませんでした。

逢坂委員 実は、個人で果実酒をつくるということ、それは法の範囲で許されるようなんですね。イチゴを入れたり、あるいはコクワを入れたり、梅を入れたりと。ところが、それを家庭内、自己消費ではなくて、仮によその方に無料でお上げしても、これは酒税法違反なんだそうですね。これはなかなか、そんな規定があるのかということで、私もちょっと不勉強でございました。

 ところが、日本のさまざまな観光地、私の住んでいるニセコもそうですが、宿や旅館などで、その地域ならではの山の実や薬草などをとって果実酒をつくって、その宿でお客様に提供しているケースというのは実は結構あるように私は思っております。現に、テレビの旅番組などでも、ここのオーナー自慢の手づくりの果実酒みたいなものを、宿へ来ているお客さんにウエルカムドリンクみたいな形で提供しているなんというものも見るわけですね。ところが、厳密に見るとこれは違法なんだということでありまして、ちょっと何となく私のイメージからすると奇異な感じがするわけですね。

 例えば、お米を発酵させてアルコールを醸造する、いわゆるどぶろくをつくるとか、あるいは、ブドウから、全くゼロの中からアルコール発酵をさせてワインをつくる、これは違法だなというふうには何となく直観的には思うんですが、そもそも、三十五度のしょうちゅうの中に梅を入れたもの、それを他人に、どうぞ私がつくったものですから飲んでくださいということが違法だというのは、ちょっと奇異な感じが私はしているわけです。きょうは、このあたりについて、少し皆さんと議論させていただきたいと思っております。

 きょうは政府参考人もお呼びしておりますけれども、まず財務省の方にお伺いしたいんです。酒税法の第四十三条には、「酒類に水以外の物品を混和した場合において、混和後のものが酒類であるときは、新たに酒類を製造したものとみなす。」との規定があるようでございますけれども、なぜこの規定を設けているのか。あるいは、特に果実酒と言われるものとの関係において、この規定はどんな意味を持つのか、お知らせいただきたいと思います。

椎名大臣政務官 ただいま先生お尋ねの酒税法第四十三条の第十一項の件でございますけれども、御承知のとおり、酒税法におきましては、酒税の保全の観点から、酒類の製造について免許制を採用しております。また、各酒類の担税力に応じた負担を求めるため、酒類を製造方法等により分類し、異なった税率を適用することとしております。

 このため、酒税負担の公平性や酒税の確保の観点から、原則として、酒類に他の物品を混和する行為も酒類の製造とみなして、酒類の製造免許を受けなければならないということになっております。

逢坂委員 今の規定を設けているのは酒税保全の観点からだ、すなわち、お酒の税金をちゃんと守るためだということでありますけれども、民間の方が、例えば私が家庭でつくる果実酒、三十五度のしょうちゅうを買ってくる。これは市販されているもので、既に酒税がかかっている。そこに梅を漬け込む。それを他人に渡す場合、これは果たして、酒税保全の観点から免許制にする意味というのは、今の説明からは推測できるでしょうか。

佐々木政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど政務官御説明ございましたように、酒税法の仕組みが、お酒を幾つかの酒類に分類いたしまして、それぞれ異なった税率を張っているということでございます。そうしますと、混和いたしますと新たな酒類、原料であるお酒とは違った酒類に分類される場合があるわけでございます。例えば、しょうちゅうを原料としました場合には、しょうちゅうという酒類から、それに加えることによってリキュールという酒類に変化する。すると税率がまた異なってくる。それは、もともと酒税法がいろいろな酒類を区分して税率を定めているところから来ているわけでございます。

 そういうわけでして、前もってしょうちゅうで酒税が負担されているからいいではないかという御指摘だと思いますけれども、混和という行為によって新たな税率、新たな酒類が生ずることがあるということでございます。

逢坂委員 なかなか一般国民にはわかりにくいことだというふうには思うんです。

 それでは、これも政府参考人がいいのか政務官がいいのかそちらでお決めいただきたいと思いますが、いわゆる混和をすることによるみなし醸造というのがあるわけですが、無免許のみなし醸造、この十年余りの間にどの程度の違反事案が発生しているんでしょうか。件数だとか、その代表的事例内容だとか、違反の醸造量なんかをお知らせいただきたい。

 それから、違反件数のうち、いわゆる果実酒というようなものを消費者みずからが消費をしない違反事案というのは年間どの程度発生しているのか、これもあわせて、件数などをお知らせいただければと思います。

佐々木政府参考人 御質問は、無免許のみなし醸造によってこの十年余りの間に違反事案がどの程度発生しているかという第一点でございますけれども、製造免許を受けていないで酒類等の製造を行った者につきまして、酒税法第五十四条に基づいて検挙した事例は、平成八年から平成十七年までの十年間で合計十三件、数量にしまして十キロリットル、酒税相当額で三百二十一万一千円でございます。

 それから、そのうち、みなし製造によるいわゆる果実酒を、リキュールでございますが、消費者がみずから消費しない違反事案というものはどのくらい発生しているかということでございますけれども、これにつきましては、先ほどの検挙した事案につきまして、内訳については把握しておりません。

逢坂委員 内訳についてまだ把握していないということでありますけれども、私が問題にしたいのは、実はそこのところなんですよね。

 要するに、四十三条の第十一項で言われている、本来酒税法でいえば無免許のお酒づくりだとされているものだけれども、自分で消費をすればそれはいいよと例外的に十一項で認めている、その件数がどれぐらいかということをお聞きしたかったんですが、それは示されていないということですので、把握していないということですので、これ以上聞いても仕方がないです。

 きょう、お手元に資料を配付させていただいております。これは、五月五日の日刊スポーツに載った記事をホームページ上から引用したものでございます。内容については細かく言いませんが、これは、ニセコにございます宿のオーナーが趣味でやっていた果実酒をお客様に提供するということが実は自家消費ではないということで、近々税務当局によって何らかの対応がされるというような内容の記事でございます。

 こういう案件、これもこの十年余りで結構なんですけれども、すなわち、酒税法第五十四条第四項の規定によって酒類、器具、容器などを没収した違反事案件数と、その違反醸造量というんですか、違反した酒の量というのはどの程度あるのか、しかもそれは果実酒に限ってということで、おわかりになりますでしょうか。

佐々木政府参考人 先ほど申し上げましたように、違反事案で検挙した事案につきましての数量全体は統計上わかるのでございますけれども、その内訳の態様ごとのものを把握しておりません。

逢坂委員 十年にたった十三件しかないものの内訳を把握していないというのは、なかなか有能な日本の官僚としては悠長な仕事をしておるなという感じがするわけです、調べる気があるのかないのかよくわかりませんが。

 ただ、今私が示したこの記事は、結構これは当人にとって、あるいは地域にとって、あるいは日本全体の関係者にとって重要なことではないかなというふうに思うわけですね。多分、先ほど菅総務大臣も話されましたけれども、これが要するに酒税法違反だというふうに強く認識をしてやっている人というのは余りいないんじゃないかという気がするわけですね。みんなが、何か当たり前の、昔からやっているようなことをやっている、そういう気持ちでやられているのではないかなという気がするわけですが、この点についても後ほどまた議論したいと思います。

 そこで、きょうは内閣府の林副大臣にもお越しをいただいております。構造改革特区制度において、いわゆるどぶろく特区というのが既に七十四件認定されているということでございます。どぶろく特区に関しては、年間の最低製造数量基準、それを年間六キロリットルの規定を適用しないというのが一つの内容になっているわけですが、この最低製造数量基準を特区によって緩和した意味、理由というのは何なんでしょうか。

林副大臣 今、逢坂先生からお話のありましたどぶろく特区、濁酒というそうでございますが、特区内で農家の民宿等をあわせて営む農業者が、みずから生産した米などを用いてどぶろくを製造する場合に、規制緩和の特例として、今委員が御指摘になった、六キロリットルに満たなくても濁酒の製造免許を受けられるようにするものでございます。これは、そういうことをやることによりまして、地域に密着した農村滞在型観光の振興を期待するという目的で特例をつくっておるところでございまして、いわゆるグリーンツーリズムと言っておりますけれども、そういう観点から農家民宿等をあわせ営む農業者が認められている、こういうことでございます。

逢坂委員 あわせて林副大臣にお伺いをしたいんですけれども、どぶろく特区では、いわゆる農業者みずからが生産した米を原料にしている特例ということでありますけれども、野山に自生する木の実や薬草を利用した、いわゆる先ほどから私が言っている果実酒ですね、これに関する特区申請というのは何件あって、そのうち認定されたものは何件か、あるいは、認定されていないものがあるとすればその理由は何かをお知らせいただけますか。

林副大臣 今先生がおっしゃった果実酒などにつきましても、この最低製造数量要件を緩和してほしいという提案が出ております。第七次提案以降六件出ておりますが、いずれも認定までこぎつけていないというのが現在の状況でございまして、私どものところの構造改革特区推進室からは検討の要請を行ってきているところでございます。

 これは、財務省もおられますけれども、酒税の滞納の発生や密造の横行など、酒税制度の根幹に影響を与えかねないこと、また、濁酒、どぶろくは、その性質上長期間の保存が困難である、すぐだめになってしまうということで、特区外で流通する可能性も低いだろうということから、濁酒、どぶろくに限り特例を認められたものという財務省からの回答がありまして、そういうことで、やりとりはしておるけれどもまだ認定にこぎつけていないということでございます。

 今後、同様の提案があった場合には、先ほど冒頭に申し上げましたように、地域の活性化にどうやってつながっていくのか、また、今、財務省から御回答のあった懸念事項については、では、どういうふうにしたら解決できるのかということなどを勘案しながら、さらに実現ができますように検討を深めていきたいというふうに考えておるところでございます。

逢坂委員 今林副大臣からあったとおり、やはり地域振興の上では結構この辺は重要だ、いろいろな宿やなんかで果実酒が出ている、どぶろくも似たようなことでやられた。ただ、どぶろくの方は、他地域へ流通しづらい、それから、保存がきかないだろうというようなこと、果実酒の方は、保存がきいて他地域へ行くからというようなニュアンスの発言がありましたけれども、なぜ、他地域へ流通することはまずいんですか。財務省の方でどうですか。

佐々木政府参考人 お答え申し上げます。

 酒税の全体の建前からいきますと、保全をするためにいかにその仕組みをつくってあるかということでございまして、基本的に、そのために免許制があり、税を払えるような最低数量制限というのがあるということでございます。

 どぶろく特区の場合に、どぶろくは長くもたないので転々流通しないので認めた。それはなぜそうなのかという御質問でございますけれども、酒類が広範囲に転々流通することになりますと、先ほど申し上げたような酒税の保全上、製造過程から流通経路を把握するための税務執行コストというのが相当ふえるということになります。その結果、税務当局による実態把握が困難になりますと、先ほど申し上げましたようないろいろな弊害が出てまいりまして、酒税制度の根幹に影響しかねないということでございます。

逢坂委員 酒税というのは、それは流通する先で納めるのでしょうかね。酒税というのは製造のところで納めているんじゃなかったでしょうか。私の認識が違っていれば教えていただきたいのと、それから、特区によって、六キロリットルの規制を、小さなものでも認めるということにしている。小さな量でいいということになれば、それは広範囲に流通しないということになるのではないでしょうか。六キロリットルという大きな量でなければ認めない、たくさんの量でなければつくらせないんだといえば、そちらの方が他地域へ流通していく可能性が高いのではないでしょうか。言っていることが矛盾しているような気がするんですが、いかがでしょうか。

佐々木政府参考人 御指摘のように、税は蔵出しでございますので、製造場から出るときに課税をされるということでございます。ただ、税のいろいろな還付とか、流通過程における全体を把握していないと、税の全体の把握ができないという性格のものでございます。

 そのほかに、先ほど、数量が少なければ転々流通しないのではないかという御指摘でございますが、確かに、数量が少なければ大量には転々流通しないということになるとは存じますけれども、その数量制限をもともと設けられている意味といいますのが、採算がとれる数量を定型化しているということでございます。税が納められるだけの製造をしているという趣旨でございますので、その点は、転々流通という点とはまた違うかと存じます。

逢坂委員 それでは、ちょっと議論を先へ進めたいと思うんですけれども、今私が例に示したような、宿や何かで自家製、半自家製的な果実酒を提供する宿のオーナーが、いわゆる、それじゃちゃんと免許を取ってやろうとした場合に、最低製造数量基準というのは幾らになりますか。

佐々木政府参考人 最低製造数量につきましては、酒類ごとに定めがございますが、先ほど来御議論されていますリキュール類について申し上げますと、六キロリットルでございます。

逢坂委員 六キロリットルということは六千リットルですね。ということは、四合瓶換算で八千本を軽く超える。四合瓶換算で八千三百本以上になるわけですね。これは、四合瓶換算で八千本ですから、宿屋で一日四合瓶を二十本消費しても、まだ千本近くが消費し切れない量だということになりますね。

 となりますと、先ほど私が新聞記事を例に出して示したような宿屋の場合、例えば、宿屋の定員が二十名だ、オーナーが半分趣味のような形で提供するというようなもの、ちゃんと法にのっとってやりたいということで、遵法精神を持って、それじゃ申請しようとした、でも、これは現実に無理なんじゃないでしょうか。先ほど、六キロリットルの制限というのは採算性を合うようにしてやっているんだという話でしたが、六キロリットルを小さなオーナーが守ろうとすることによって、逆に採算がとれなくなる可能性があるのではないでしょうか。すなわち、真正面から酒税法にのっとって申請をしたいと思っても、小さなオーナーは、それはできないわけであります。

 それから、林副大臣にお願いをして頑張っていただいて、特区で何とかしたいというふうに言っても、財務省は特区も認めないと言っている。となれば、事実上、こういった日本の各地に随分前からある、いわゆる家庭的な果実酒をつくって来訪者に提供するというようなことというのはやっちゃいけない、これは守れないことになるような気がするのでありますけれども、いかがでしょうか。

 この点、椎名政務官と林副大臣、いかがでしょうか。お二人に。

林副大臣 別途椎名政務官からもお答えがあるかもしれませんが、実は、今逢坂委員が御質問されている内容は、我々特区室の方で財務省と折衝しておりますときにこちらが言っていることとかなり近い内容でございまして、まさにおっしゃるとおりだなと思って聞いておったわけでございます。

 一部であっても、財務省の方から御懸念があるようなことがありますと、今度は、この特区を悪用して酒税法を逸脱したような行為があった、これがまた新聞をにぎわすということになってもいけないと思いますので、先ほど申し上げましたように、その懸念される事項に対して、一定の歯どめをかけるというようなことをきちっとやはり制度的に担保した上で、そのことをやっていただいた上で、地域振興に役立つという本来の目的に資するようなものをきちっとつくり上げていく、このことが大事だというふうに考えておるところでございます。

椎名大臣政務官 先生御指摘の地域振興の重要性、また食の多様性を広めるという観点から、大変重要な御指摘だとは思います。

 しかし、御承知のとおり、酒税は国の大変重要な財源の一つでございますので、今の酒税法の体系の中で対応することがなかなか難しいということもあわせて御理解をいただきたいと思います。

逢坂委員 実は、この果実酒の問題、ニセコの問題ですが、五月の三日に地元のSTVという、札幌テレビ放送という会社で何か報道されたようです。それから、私が今皆さんに資料で出したのが、五月五日日刊スポーツで報道された。そして、本日は毎日新聞、北海道新聞でも北海道内では報道されている。それからテレビ局も、さらにTBS系のHBCという放送局でありますとかフジテレビ系の放送局も何か取り扱ったということであります。

 これは私は、酒税法違反だからマスコミがこうやってこぞって取り扱っているのではないような気がするんですね。なぜこんなにマスコミは一生懸命この問題を取り扱うんでしょうか。私は、この酒税法の今適用している規定、それそのものが社会通念上からいってちょっとおかしいんじゃないの、そういう意図を含んでの報道ではないかというふうに思うんですが、このあたり、椎名政務官、いかがでしょうか。

椎名大臣政務官 御指摘のとおり、あくまでも法はやはり生きた法でなければいけないという重要な御指摘だと承っておきます。

逢坂委員 法は生きた法でなければならない、すなわち、不都合があれば、それは生きているわけだから成長し、あるいは場合によっては変化をしていくということだというふうに理解をするわけですが、そういう観点からすると、椎名政務官、林副大臣の思いを受け入れるということは非常に重要ではないかと思うわけですが、いかがでしょうか。

椎名大臣政務官 内閣府の担当と十分協議をしていきたいと思っております。

逢坂委員 菅総務大臣、今までの話を聞いていて、冒頭に、大臣自身もまさか果実酒みたいな自家製のものを譲り受けることも酒税法に違反するとは存じ上げなかったという話でありました。私自身もそこまでは知りませんでした。しかし、社会一般的にはそういうことは随分行われているのが現実ではないかと思います。

 実は、私の実家は酒屋、酒の小売をやっておりまして、先ほど佐々木政府参考人が言われた酒税の体系を全部押さえるということの最末端にいて、首根っこを押さえられていた口であります。だから、どういう仕組みでどんなになってやっているかということは、私自身もよう知っておるつもりです。

 実は、北海道なんかでは、梅の季節になるとか秋の木の実が熟す季節になると、私の店でも、口広のガラス瓶、それと氷砂糖、それから三十五度のしょうちゅう、いわゆる果実酒の三点セットというのは非常によく売れるんですよ。売れて、近所の農家の方とかが買っていって、それで今度、でき上がったものを私の家へ持ってきて、いやあ、ことしもいいのができたからまあ飲んでやなんということで持ってくるわけですね。これはみんな、どぶろくをつくる、発酵させてアルコールを醸造するとなるとそれは違法だというふうに思っている。だけれども、しょうちゅうに物を漬け込む、それが違法だと思っている人は私は極めて少ないような気がするんですね。

 私は子供のころ、近所のうちに、またこれは民間療法の好きなうちがありまして、しょうちゅうの中にニンニクを漬け込んだものを、そこは毎シーズン持ってきてくれるんですね。それは何をするかというと、子供が風邪を引いて熱を出したときに、杯一杯ニンニク酒だといって飲まされるわけであります。それはまことに強烈なもので、先ほど冒頭に私が言った、おいしくて食事が進むなどという代物ではないんですけれども、そういうことも地域ではあるわけですね。

 でも、今の酒税法からいったら、そういう地域の文化みたいなものをみんな否定することになるわけで、果たしてそんなことでいいんでしょうか。それぞれもう少し踏み込んだことが必要なんじゃないかというあたり、まず椎名大臣政務官、それから対決する林副大臣、そして最後に地域振興の観点から菅総務大臣に一言ずつお伺いして質問を終わりたいと思うんですけれども、どうでしょうか。

椎名大臣政務官 御指摘いただきましたこと、改めて大変重要なことだと再認識をする次第でございます。内閣府、また総務省と十分協議をしていきたいと思っております。

林副大臣 ただいま椎名政務官から大変前向きな御答弁がございましたので、それを頼りに一生懸命折衝してまいりたいと思っております。

菅国務大臣 今までの議論を聞いている中で、やはり地域振興、地域のまちづくり、そうしたことを考えたときに、そういう議論の中で、結論は椎名政務官が答弁したことに尽きるのではないかなというふうに思いますので、私も未来は明るいのかなと思いました。

逢坂委員 未来が明るいという言葉を聞いて、私も明るく質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

佐藤委員長 次に、西村智奈美君。

西村(智)委員 民主党の西村智奈美でございます。

 大臣、この連休中は外遊お疲れさまでございました。四月の二十八日に出発されて、帰ってこられたのが六日の日曜日ということで、昨日、教育再生の特別委員会で御一緒させていただいていたんですけれども、お疲れの様子も見せずに、非常にタフな大臣だなと拝見をしておりました。非常に中身の濃い日程だったというふうに伺っております。イギリスからフランス、そしてドイツですか、いろいろ回ってこられたようでありますけれども、今回の外遊の感想などについて伺いたいと思います。

菅国務大臣 これから放送法の改正だとか、あるいは地方分権、また地方の財政再建、そうしたさまざまな問題を抱える中で、それぞれの先進的な国と言われる三カ国を視察してくる中で貴重な体験をすることができたというふうに思っております。

 そうしたことをぜひこれからの議論の中にも、また政策の中にも反映していきたい、こう思っています。

西村(智)委員 大臣がヨーロッパに行かれている間、私は地元におりまして、毎日新聞報道を見ておりました。テレビも見ました。大臣が何だかあちこちでいろいろなことを、しかも非常に重要なことを発言されておるというふうに見ておりまして、きょうはその点について伺っていきたいと思っております。

 記者懇談会を二度ほどやられたんでしょうか。その一番最初の記者懇談会のときに、これはパリで行ったものだというふうに伺っておりますけれども、いわゆるふるさと納税について、大臣はそれをぜひ研究したいということで御発言になられたようであります。非常に唐突な印象を受けました。恐らく多くの方々にとっても唐突な大臣の意思表明だったのではないかというふうに思いますけれども、まず、大臣がふるさと納税ということに言及をされた、どういう目的でこのふるさと納税ということをお考えになられたのか、その目的を伺いたいと思います。

菅国務大臣 唐突ではないというふうに私は思います。この意見については、地方自治体の長の皆さんからも、ありとあらゆる機会の中で、こうした制度ができないかということを私ども強く陳情を受けていたことも事実であります。特に、地方の長の皆さんから異口同音に私ども言われたことは、地方で育って、税金を納めるころになると都会に行ってしまう、地方が負担をした福祉だとか教育だとか、そうしたコストを何とか還元できる仕組みはないのかな、このことを実は強く言われました。

 また、都会で生活をしている人たちの中にも、やはり、自分が生まれ育ったふるさとに何らかの形で還元することはできないのかな、そういう意見も数多くあったということも事実でありますし、そういう中で、ふるさと納税というものについて、私は、研究するんじゃなくて、実現をするための研究会を開いていく、そういうことでありますので、御理解いただきたいと思います。

西村(智)委員 還元というふうに大臣はおっしゃいました。その発想は私も理解をいたします。

 多くの農村部、あるいは山間部の方では、離島などもそうだろうと思いますけれども、学齢期、あるいは社会人として社会に出る年齢になった人たちが、それまで育ててもらった地域を離れて都市部に出るということは往々にしてあるわけでして、そして、出ていった先の都市部で働き、そこで税金を払う。そういった人たちにとっても、恐らくふるさとを思う気持ちというのは常にあるんだと思いますし、やはり、何がしかの恩返しがしたい、そういう気持ちがあるということは私も十分理解をいたしますし、その発想は悪いものじゃないなというふうに思うんですね。ですけれども、これはやはり制度として考えたときにかなり問題があるのではないかというふうに考えております。

 大臣、先ほど、研究会を設置するということについては、明確に、できるかどうかを検討、研究するための研究会ではなくて、実現をするための研究会だというふうにおっしゃいました。ですので、大臣の意向としては、やるということを前提に研究会の中で具体的な制度設計をしてほしいということなんだろうと思うんですけれども、私は、そういったところに持っていくまでには、大臣が今おっしゃった目的という面ではやはりいささか弱いのではないかというふうに思います。

 つまり、そういった若い人たち、あるいは自分のふるさとを離れて都市部に行っている人たちの思いや、あるいはいろいろな首長さんたちからの声があったということは承知をいたしますけれども、しかし、それが今回の制度、ふるさと納税というものの目的たり得るのでしょうか。これは税制を動かすわけでありますから、本来もう少し明確な目的があってしかるべきだと思いますけれども、大臣はいかがお考えですか。

菅国務大臣 確かに、さまざまな課題があるということも私は承知をいたしております。しかし、研究会を開くというのは、やはり実現をするために開くわけであります。研究のための研究会ではないというふうに私は思っています。私どもは、議論を整理して、暮れの与党の税調だとかの中で議論をして、実現をできるようにしたいというふうに考えております。

 具体的に、今委員から御指摘をされましたけれども、さまざまな問題、例えば住所地の地方公共団体の提供するサービスに対応して負担することが基本的な住民税の性格の関係はどうするのだとか、あるいは納税先の地方団体を納税義務者が自由に選択できるような仕組み、租税としての住民税の関係だとか、さまざまな検討する課題があるというふうに私ももちろん承知をしておりますけれども、私は、方向性としては多くの国民の皆さんに御理解をいただけるのではないかなと思います。

西村(智)委員 いや、明確に目的は何かと伺いたいんですけれども、そういった人たちの思いをかなえるための制度であるということなんですか。

 この間、総務省の議論の中心は、いわゆる地方分権改革をいかにスピーディーに進めていくか。しかも、この間の三位一体改革で、かなり地方自治体の間の地域財政力も広がってきているというふうに指摘をされておりますし、大臣もそのような御認識でいらっしゃるんでしょうから、そういったことについても、このふるさと納税というものが一定に寄与するのではないか、そういう大臣のお考えがあるのではないですか、どうでしょうか。

菅国務大臣 冒頭申し上げましたけれども、高校を卒業するまでの間に、福祉だとか教育だとかそういう中で、それぞれの地域の中で負担をしてきている。そうしたものについて、いざ税を負担するようになると、もともとの負担をさせたところでなく、都会に出ていってしまう。

 そういう中で、そうしたふるさとに対して税を何らかの形で納めることができないかな、そういうことというのは私は当然のことで、多くの国民の理解を得られると思いますし、そしてまた、もっと言うならば、今地方が非常に財政力が厳しくなっている中で、そうした地方の活力のためにも、やはり私は意義があることではないかなとも思っています。

西村(智)委員 いや、多くの国民の理解が得られるとか、それから地方の活性化にもつながるのではないか、それは全般的な環境として言えることだと思いますが、明確な目的はやはり聞けなかったというふうに私は理解をいたします。

 ちょっと具体的に伺っていきたいと思うんですけれども、このふるさと納税、大臣は既に、住民税の一割ぐらいを、別の自治体を選んでそこに納税する仕組みだ、そういうアイデアを述べておられるようなんですけれども、このように、住民税を納める自治体を選んで払う仕組みが存在する他の国というのは、一体あるのでしょうか。

菅国務大臣 現時点においては承知をしておりませんけれども、研究会の中で当然そういうことも課題になってくると思います。

西村(智)委員 存在していないということであります。

 次に、出身地に対して払うということでありますけれども、一体どこを指して出身地と呼ぶのでしょうか。生まれたところなのか。人によっては、各地いろいろなところを転勤していて、ここは私の第二の心のふるさとですなどというようなこともいろいろあるかと思うんですね。一体、出身地というのはどういう定義になりますか。大臣は、親が住んでいるところなども含むのではないかとおっしゃっておられるようですが、いかがでしょうか。

菅国務大臣 まず、存在をしていないということじゃなくて、外国の例としては他を承知していないということですから。それをまず決めつけないでいただきたいというふうに思いますし、それでまた、これは考え方をこれから研究会の中で整理していくわけでありますから、それはさまざまな考え方があるというふうに思っております。

西村(智)委員 この出身地というのは何を指すかというのは、これはもう相当難しい定義になると思います。

 研究会の中でどういうふうに議論がされていくのか。これからだということなんですけれども、例えば、今住民税を払っていない人、払えない人、いろいろな方がいらっしゃいますよね。普通に払っている方はいいと思います。払っていない方のところには、恐らく、払ってください、そういう督促が行くと思うんですね。住民税のうち一割をほかの自治体に納めるということになって、遠く離れたところに住んでいる人がその一割払うと言った住民税を払っていないというときには、一体だれがどういう形でいわゆる督促などをすることになるのでしょうか。

菅国務大臣 いずれにしろ、研究会でこうしたものを整理して、そして暮れの税の中で結論を出して、当然これは地方税法の改正になるわけでありますから、詳細等については国会の中で法案として議論していく、そういう形になるだろうというふうに思っています。

西村(智)委員 あり方については今後研究会の中で議論されていくということでありますので、それでは、もともとの税制の基本的な考え方に立ち戻って伺いたいと思うんです。

 そもそも住民税というのは、いわゆる当該自治体に暮らしている中で受けている基本的なサービスに対する対価的な要素が強いんだろうと思います。そういう意味では受益と負担の関係はかなり明確であるというふうに考えておりますけれども、今回、例えばふるさと納税ということになりますと、自分が住んでいずに、住民サービスを受けることもない自治体に対して税金を払うということになります。

 これは受益と負担のいわゆる基本原則から逸脱するものになるのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

菅国務大臣 現在の仕組みは確かに、地域社会の会費として、行政サービス経費を補うために、基本的に住所地を置いている地方公共団体に納めるという形になっていることはそのとおりであります。

 しかし、例えば、週末いつも自分で行く場所だとか、あるいは赴任地で自分が気に入った場所に年に何回か行くとか、いろいろな考え方というのはあるというふうに思っています。そしてまた、高校を卒業するぐらいまで育ててきてもらった、そんな場所もあると思いますので、そうしたことも含めて、住民税の性格とこうした制度、こうしたものについても研究会で検討することになっていくだろうと思います。

西村(智)委員 その原則すらも研究会で検討するということになると、これはやはりおかしな性質になるんじゃないかなと思います。つまり、ふるさと納税を実現するための研究会でいわゆる受益と負担の原則も議論するということになると、これは全部お手盛りということになりませんか。私は大いに疑問だというふうに考えております。

 そういう、大臣がおっしゃるように、自分が選択して、例えばここの自治体に何がしかの志を贈りたいということであれば、私はこれは寄附金的な性格になるんじゃないかなというふうに考えています。こういった寄附金というような仕組みでは大臣はお考えにならなかったのでしょうか。住民税の基本的な性格を変えるおそれがあるということからすると、むしろ寄附金などの方でより研究を進めていった方がずっと効率的だというふうに考えるんですが、いかがでしょうか。

菅国務大臣 現在も、寄附金で、そうしたことは仕組みとしてあります。しかし、なかなかこのことがインセンティブとして働いていないということも事実であります。

 私は、やはりわかりやすく、そして簡潔な仕組みというのが必要かなというふうに思ってこの研究会を立ち上げるということです。

西村(智)委員 だとすると、寄附がもっと進むようにインセンティブをもっとつける、そういう方向での議論を進めるべきではないんでしょうか。

 いろいろな報道を見ておりますと、このふるさと納税がいわゆる地域間格差の是正にも資するというふうな、そういった書かれ方をしているものが幾つかあります。

 その地域間格差ということについて、総務大臣とそれから財務大臣が四月の二十五日に経済財政諮問会議に連名で提出した資料があります。「地域間の財政力差の縮小について」ということで、「財政力に関する現状」で書かれておりますのは、「近年、地方法人二税の税収が急速に回復していること等を背景に、地域間の税収の差が広がり、財政力の差が拡大する傾向。 この問題については、早急に対応すべき課題。」ということで、現状認識は一致をしているんですね。

 その具体策については、いわゆる実務者会合というのを設置して、そこで作業するということになっているんですけれども、私、この一週間、二週間の大臣の海外での発言、そしてこのふるさと納税というものが言葉として出るようになってきてからの財務省あるいは官邸サイドからの発言、いろいろ見ておりまして、一つどうしてもぬぐい去れない懸念が出てきたんです。

 それは何かといいますと、つまり、総務大臣はこの間ずっと、地方消費税の拡大ということについて前向きな発言をされてこられた。この委員会の中でも、地方消費税は偏在性の少ない税であるからというふうに答弁を下さったこと、私はよく記憶をしております。しかし、財務省の方はそれに対してずっと、もちろんでしょうが、抵抗をし続けてきている。

 それで、このふるさと納税という言葉が出た瞬間に官房長官が、安倍総理もこのことについては指示をされておられるようだから、ぜひ前向きに進めたいと発言をし、そして財務省の事務次官が、この経済財政諮問会議の提出資料で出した、いわゆる設置するという実務者会合の中でふるさと納税について議論することになるのではないか、こういうふうに発言をされておられるんですね。

 ですが、本来、この実務者会合というところで議論されるべきテーマというのは、地方税制上の構造的な原因や論点であります。そこのところにこのような、言ってみれば異質なふるさと納税というようなものが議論のテーブルにのせられたときに、本来、本質的に議論しなければならない地方税財政の議論がいわば棚上げにされて、このように、夏を目がけてなのか何なのかわかりませんけれども、極めて唐突な印象で、しかも、もう来月にはこの研究会が立ち上がるという話です。

 非常に急いで、議論されようとするテーマがわきから滑り込んできた。これはいわゆる地方分権にとってはまた遠回りをしてしまうことになるのではないかというふうに考えておるんですけれども、大臣は、この間の財務省とのこういった合同のペーパーを踏まえて、今後どのようにこの実務者会合を行っていきたいというふうに考えておられるんでしょうか。

菅国務大臣 ぜひ御理解をいただきたいんですけれども、私自身が東京の法人二税問題について言及したのは昨年のことです。そして、私自身は、大臣に就任をして以来、国と地方の税の比率、地方は仕事が六で国は四、そういう中で、税は逆でありますから、少なくとも一対一に持っていきたいと。それと同時に、基幹税源としては地方消費税が望ましい、このことについて私は当初から申し上げてきました。そしてまた、東京問題につきましても、先ほど申し上げましたけれども、昨年にはこのことについて私は経済財政諮問会議の中でも発言をしてきました。しかし、残念ながら、当時はマスコミもこのことについては取り上げてくれませんでした。しかし、昨今、ある新聞のインタビューで同じことを私が発言したら大きく取り上げてくれて、そのことからさまざまな議論が出てきたということも事実でありますけれども、このことについては私は昨年からやっていることをまず御理解いただきたいというふうに思います。

 そして、財務省、財務大臣も、この基本的な方向、東京の法人二税については私に賛同してくれております。そのことについて、今実務者レベルで会合を開いているところであります。

 そして、住民税の問題というのは、どちらかといえばこれは私ども総務省の問題になりますので、いろいろな方がいろいろなことを言っておるようですけれども、基本は、私自身はやはり、真摯に地方を思うというものを何らかの形でかなえることができないかなという、また、地方自治体の皆さんからのそうした思いというものにもこたえることができないかなという発想の中で出てきたものであります。

西村(智)委員 しかし、制度をつくったはいいけれども、それは、先ほど大臣が、寄附金という仕組みはありますけれどもちゃんと生かされていないとおっしゃいましたが、これはやはり非常に問題が多いです。

 例えば都市部などでは、実際にふるさと納税が始まったときに、一体都市部に住んでいるどのくらいの都市住民の方々がいわゆるふるさとというところに住民税一割を贈るようになるのかわかりませんけれども、都市部の自治体からすれば、明らかにこれは税収の減少になるわけですね。しかし、その自治体だって、予算があるでしょうから、その予算分はきちんと税収を確保しなければならない。想定していたよりも税収が少なくなったというときに、一体これはだれが責任をとるのか。そういったことで、いわゆる住民に対する基本的なサービスが滞ったときに、国がつくった仕組み、ふるさと納税によって都市部の自治体の住民税が減ったから、では、それは国が面倒を見ますということになるんですか。ならないですよね。

 ですから、そういったこともいろいろ考えますと、お気持ちは非常によくわかります、また、夏に向けて急いでアイデアを出したということも非常によくわかりますが、やはりこれは性格が違うんじゃないか。本来的な、本筋的な地方行財政、地方税制改革というところからは少し筋が違うんではないか。

 私は、やはりもう一度寄附金ということについて改めて考える、もしやるのであれば考える必要があるし、また、本来的に言えば、そのような都市部に住んでいる納税者の善意に頼るのではなくて、ここはやはり国がきちんとスキームをつくるべきだというふうに思います。財政力の弱い自治体の問題というのはもう既に浮上しているわけですから、そこをどうカバーしていくかということを筋論に戻って議論していくべきだというふうに私は考えます。

 地方消費税の拡充については、まだお答えをいただいておりません。実務者会議の中で、地方消費税の拡充について、大臣は真剣に議論されていく決意がおありですか。

菅国務大臣 先ほど来申し上げていますけれども、基本はここにあるということを、昨年の大臣就任以来、私はありとあらゆる機会の中で実は申し上げてきているわけであります。そういう中で、法人二税の問題も、昨年から私はこれは指摘しているところなんです。

 毎年毎年、これから景気上昇、私は数年間は景気はいいと思います。そういう中で、五年間で東京は今まで一・四兆円ぐらい実はふえていますから、これを全部足すと東北六県の地方税収入一・二兆円をはるかに超える分が増加をしているわけでありますから、こうしたことに私は、地方全体を所管する総務大臣として問題提起するというのは、ある意味では当然の役割だというふうに思っております。

 それと同時に、ふるさと納税につきましても、これは昨年からもさまざまな県知事の皆さんからも指摘をされておりますし、私自身も地方出身でありますから、私は、そうしたことをかなえることができればいいなというふうに実際思っています。地方の活性化にも必ず寄与するものというふうに私は思っています。私の選挙区は都会ですから、人口三百六十万いる横浜市でありますから、これは都会とか地方ということじゃなくて、そうしたそれぞれの地域に住んでいる一人の人間として、こうした仕組みがあったらいいだろうという、そうした方からも私に対しても意見もいただいていますので、そうしたものを何とか実現したいということで研究会を立ち上げるということであります。

西村(智)委員 繰り返しになってしまいますし、どうもやはり議論がかみ合わないような気がするんですけれども。

 大臣、総合的な分権に向けた地方税制改革、これをやはり進めるんだと。わき見をしている余裕はないと思います。次のいわゆる地方分権一括法的なものが今後三年間でできるということでしょうが、この三年間で本筋に向けての税財政改革、それが進んでいくべきだというふうに思っているんですけれども、どうもふるさと納税というのは、少しわき道にそれた、本筋から離れているような、そういうものであるように私には思えてならないんですね。非常に大きなコストもかかるだろうというふうに思います。そのコストとのバランスはどうなのか、そしてまた税収が実際に減った自治体に対してはどうするのか、あるいは受益と負担の関係はどうするのか。例えば今まで十の税金を払っていた人が、今度は九の税金を払って同じ行政サービスを受けることができるというわけですから、そこにはいわゆるコストの格差というものも生じてきてしまいます。

 こういった非常にいろいろな、さまざまな問題がありますので、ぜひここは立ちどまってよくよく考えていただきたい。研究会では、ふるさと納税を実現するということを前提とせずに、やる、やらないという入り口のところから含めて、ぜひ議論してくださるようにお願いをして、私の質問を終わります。

佐藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時五十七分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.