衆議院

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第25号 平成19年6月12日(火曜日)

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平成十九年六月十二日(火曜日)

    午後一時三十七分開議

 出席委員

   委員長 佐藤  勉君

   理事 岡本 芳郎君 理事 鈴木 淳司君

   理事 谷  公一君 理事 葉梨 康弘君

   理事 林  幹雄君 理事 武正 公一君

   理事 寺田  学君 理事 谷口 隆義君

      あかま二郎君    新井 悦二君

      井澤 京子君    石田 真敏君

      今井  宏君    大塚  拓君

      岡部 英明君    鍵田忠兵衛君

      川崎 二郎君    木原 誠二君

      木挽  司君    坂井  学君

      実川 幸夫君    杉田 元司君

      薗浦健太郎君    田中 良生君

      土屋 正忠君    土井  亨君

      丹羽 秀樹君    西本 勝子君

      萩生田光一君    萩原 誠司君

      橋本  岳君    福田 良彦君

      渡部  篤君    逢坂 誠二君

      楠田 大蔵君    後藤  斎君

      田嶋  要君    西村智奈美君

      福田 昭夫君    森本 哲生君

      山井 和則君    江田 康幸君

      谷口 和史君    丸谷 佳織君

      吉井 英勝君    重野 安正君

      亀井 久興君

    …………………………………

   総務大臣         菅  義偉君

   内閣官房副長官      下村 博文君

   総務大臣政務官      谷口 和史君

   総務大臣政務官      土屋 正忠君

   政府参考人

   (総務省行政評価局長)  熊谷  敏君

   政府参考人

   (総務省情報通信政策局長)            鈴木 康雄君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局長)            森   清君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 草賀 純男君

   総務委員会専門員     太田 和宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十二日

 辞任         補欠選任

  井澤 京子君     大塚  拓君

  木挽  司君     坂井  学君

  実川 幸夫君     薗浦健太郎君

  関  芳弘君     西本 勝子君

  萩生田光一君     木原 誠二君

  萩原 誠司君     新井 悦二君

  福田 康夫君     杉田 元司君

  安住  淳君     山井 和則君

  江田 康幸君     丸谷 佳織君

同日

 辞任         補欠選任

  新井 悦二君     萩原 誠司君

  大塚  拓君     井澤 京子君

  木原 誠二君     萩生田光一君

  坂井  学君     木挽  司君

  杉田 元司君     福田 康夫君

  薗浦健太郎君     実川 幸夫君

  西本 勝子君     丹羽 秀樹君

  山井 和則君     楠田 大蔵君

  丸谷 佳織君     江田 康幸君

同日

 辞任         補欠選任

  丹羽 秀樹君     関  芳弘君

  楠田 大蔵君     安住  淳君

    ―――――――――――――

六月十二日

 消防法の一部を改正する法律案(内閣提出第六三号)(参議院送付)

同日

 シベリア抑留問題の早期解決に関する請願(笠井亮君紹介)(第一七一二号)

 同(長妻昭君紹介)(第一七一三号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一七一四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 特定機器に係る適合性評価の欧州共同体及びシンガポール共和国との相互承認の実施に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第六二号)(参議院送付)

 消防法の一部を改正する法律案(内閣提出第六三号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

佐藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、特定機器に係る適合性評価の欧州共同体及びシンガポール共和国との相互承認の実施に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省行政評価局長熊谷敏君、情報通信政策局長鈴木康雄君、総合通信基盤局長森清君及び外務省大臣官房審議官草賀純男君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森本哲生君。

森本委員 民主党の森本哲生でございます。よろしくお願いいたします。

 大臣、通告をしておらないのですが、きょうは第三者委員会が華々しく総務省にというようなことでマスコミをにぎわしておるわけであります。年金問題については、皆さんが大変心配されておる中に、千四百万件の問題とか、そして三千件に四件ミスがあるとか、次から次に問題が出てくる中で、極めて重要な第三者委員会が総務大臣の管轄になっていく。そんな中で、今は年金を照合していく。それは安心していただけるということに尽きると思うんですが、その整理ができつつある、順番に進んでまいりますと、今度はこの第三者機関が認めるか認めないかということが非常に重要な問題になってまいります。

 総務大臣としては、今の年金のどんどんまだ出てきておる数々の不信感の中で、この第三者委員会をお引き受けする立場として、どのような所見、お考えを持っていただいておるのか。あと詳しいことについては、質問がきょうは三十分ですからやめますが、そのことについて少しお伺いをさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

菅国務大臣 まず、この年金問題でありますけれども、この問題に対しましては、政府としてはできる限りの対策を速やかにやるべき必要があるというふうに私は思っています。そういう中で、国民の皆さんの不安を解消し信頼を取り戻す、このことが極めて大事だというふうに考えています。

 そういう中で、きのう、実は総理がサミットから帰ってこられまして、この第三者委員会について、総務省に設置をするようにという指示がありました。そして、総理からは、御本人、申請者の立場に立って、申し立てを十分酌み取り公正な判断をする、そうした委員会を立ち上げるようにということでありました。

 今、厚生労働省そして社会保険庁が、このような状態の中で、連日、国民の皆さんへの対応に追われております。私は、やはり一つ一つ丁寧に適切に対応すべきだというふうに思っています。

 そういう中で、私ども、行政評価局、全国に行政相談所というのがありますので、そうしたことも含めて、国民の皆さんの不安を解消し信頼を回復することができるように、その第三者委員会という中で、年金を納めた方は必ず給付がされるような、そういう観点に立って、誠心誠意、全力を挙げて取り組んでいきたい、こう考えております。

森本委員 今回の年金問題については、社会保険庁だけでなしに、やはりそれの監督官庁そして国会が真摯な対応をすることが信頼を回復していくことにつながっていくというふうに私は思っております。それと、この第三者委員会のあり方、中身、決定の仕方は、さらにこれはまた損得の問題の中で、厳しい状況の中でやっていただかなければならないということを私自身も感じておりますので、大変な任務でありますが、どうぞ、その点についてしっかり受けとめていただいて、お願いをさせていただきます。

 それでは、きょうの私の質疑の内容であります、MRAに対する日本の取り組みの姿勢についてお伺いをさせていただきます。特定機器に係る相互承認協定についての本法律案でございますが、これは非常に名前が長いということで、MRA法案とも呼ばせていただきます。

 今回の改正によって個別法形式から一般法になり、これによりまして、今後、同様のMRA協定を結んだ際に、一件一件個別に法案審議をする必要がなくなり、MRA協定を国会承認するだけで、あとは政省令にゆだねるということになります。つまり、今後、MRA協定を結びやすくなる、あるいはどんどん結んでいこうというのが政府の意思であろうと思うのでありますが、いろいろと事前に説明をお伺いする中で、また参議院での審議、また会議録を拝見する中で、若干懸念も感じております。

 そこで、まずお伺いいたしますが、既に締結されているMRAとしては、欧州とシンガポール、それと現在進行中のアメリカがあります。そしてさらには、電気製品の分野でタイとフィリピンとの間のMRA協定があります。このことは後でもう少し詳しく質疑をさせていただきますが、現在交渉中の国があるのかどうか、外務省にお伺いします。

草賀政府参考人 お答え申し上げます。

 アメリカ合衆国との間の相互承認協定と同様の、いわば独立した単独の協定といたしましては、現在交渉中の国、あるいは今後交渉が予定されている国といったものはいずれもございません。

 他方で、経済連携協定、EPAと呼んでおりますが、これの中に相互承認の章を置くケースもございます。その観点で見ました場合、現在交渉中または交渉が予定されているEPAの中で、韓国との間でEPA交渉が中断しているわけですが、その中断するまでの間、相互承認の可能性について議論が行われていたという事例がございます。それ以外に、現時点では予定はございません。

森本委員 それでは、現在ない、現在交渉予定になっているところもないということでよろしいですか。現在がないということですね。今後の交渉予定はないということでよろしいですか。それでよろしいね。

 総務省に同じ質問をさせていただきますが、電気通信機器の分野で現在交渉中、それから、これから交渉予定の国はございますか。

森政府参考人 電気通信分野のMRAにつきましては、現時点で交渉中の国はございませんし、今後交渉予定が具体的に立っているという国も現時点ではございません。

森本委員 ちょっとそれはおかしいなというふうに私は一般的に思うんです。せっかく個別法が一般法になった、さあこれからどんどんMRAの協定を結びやすくなる、既にいろいろ進んでいるのかなと思っていたら、どうやらそうではない。

 総務省にお聞きしますが、電気通信機器の分野において外国とMRA協定を結ぼうとする場合の考え方といいますか、今後どのような国と結んでいこうとするのか、今はないということなんですが、その方針をお聞きいたします。実際、交渉は外務省が行うとしても、総務省としても何らかの方針があると思うんですが、いかがですか。

森政府参考人 電気通信分野につきましての今後の相互承認協定の締結の大きな方針でございますが、一つは、相手国との貿易状況等を踏まえた産業界の要望というのがどの程度あるのかということと、もう一つは、相手の国の基準認証制度の内容、運用状況がどのようなものになっているのかということが中心的な観点でございます。

 それから、具体的な観点といたしましては、今と繰り返しになりますけれども、産業界のニーズがあって、基準の同等性が確保される場合にその可能性を検討していくほかに、これは単独で検討するということでございますが、先ほど外務省から御答弁ありましたように、EPAの締結交渉が行われる場合、その候補の一つとして可能かどうかという点も考慮に入れてまいりたいというふうに考えております。

森本委員 産業界の状況、それはよくわかります。

 それでは次なんですが、そもそも、MRA法案の目的ですが、これは法案には、「特定機器に係る製造、輸出入、販売その他の事業活動の円滑化に資する」とあります。ただ、その考え方の背景には、MRA制度が認証に要する期間や費用の縮減、新製品の迅速な市場への投入に寄与するものであることから、情報通信産業、つまりICT産業の国際競争力の向上のために行うということでよろしいのでしょうか。実際、そうした考え方が、四月二十三日公表されたICT国際競争力懇談会の最終取りまとめにおきましても、その中の資料でうたわれておりますが、いま一度、本法案の目的をお聞かせください。

森政府参考人 ただいま御指摘ございましたように、本法案の目的は、具体的にわかりやすく言いますと、認証に要する期間とか費用の縮減、あるいは新製品の迅速な市場への投入を可能とするという形でもって、このことはひいては我が国のICT産業の国際競争力の強化の観点にも資するということで推進するものでございます。

森本委員 この制度によって企業側の負担も減るということはよくわかります。

 一方で、これまで輸出の場合に相手国で認証を行っていたものを、こちら側で認証手続をすることで、日本の行政コストなどは逆にふえるような気がするわけです。

 企業コストと行政コストをトータルで見た場合、やはりメリットの方が多いと考えられますか。

森政府参考人 相互承認の制度を運用してまいりますためには、行政コストという観点からしますと、日本国におきまして相手国向けの認証業務を行う認証機関の認定それから監督を行うための人件費とか、あるいは法令の翻訳等の経費がかかるほかに、私どもとしましては、外国の製品が果たして十分な機能を持っているかどうかというのを、事後的に、製品を買い上げて調査するようなことも実施をしておりまして、そういった面で一定の行政コストがかかることは事実でございます。

 他方で、委員も御指摘いただきましたように、相互承認協定を用いて外国向けの認証を国内で取得できるようになりますと、製造業者にとりまして、輸出する際に要する期間とか費用が短縮される、あるいは、それによって新製品の迅速なマーケット投入が可能になる、あるいは、今後国が拡大していけば、一つの認証機関においてワンストップで複数国向けの認証を取得することができるといったメリットがございますので、トータルとして考えれば、相互承認協定の締結によるメリットの方が大きいというふうに理解しております。

森本委員 このことについては後でもう少し詳しくお話をさせていただきますので、お願いします。

 MRAをICT産業の国際競争力の向上のために活用していこうという考え方には賛同をします。その割には、情報通信機器の分野でMRAを積極的に活用しようとする姿勢が少し弱いのではないかという印象を、私は受けるわけです。

 ここで、外務省の方にお教えいただきたいんですが、例えば欧州などは多くの国、日本以外に、豪州、ニュージーランド、米国、カナダなどと、多くの分野、自動車、機械などまでこのMRAを結んでおり、日本と比べましても非常に積極的な印象を受けるわけでありますが、そうした欧州の取り組みの背景にはどのような戦略と申しますか考え方があるのか、外務省が把握されている限りでお教えをいただきたいと存じます。

草賀政府参考人 欧州共同体、ECと呼ばれておりますけれども、先生御承知のとおり、これは多数の加盟国から成ります。このECが、EC域内の市場統合を実現していく過程で、物品、物の自由移動を確保するための手段といたしましてこの相互承認を導入した、こういう経緯があると思っています。その域内市場統合の中での経験をもとに、一九九四年ごろから、域外の主要国との間におきましても協定交渉を進めてきたもの、こういうふうに考えてございます。

 委員御指摘のとおり、ECは、現在までのところ、アメリカ、カナダ、日本、スイス、豪州、ニュージーランドといったところと相互承認協定を締結してきておりますが、このような考え方に基づいて締結してきたのではないかと考えてございます。

森本委員 ありがとうございました。

 それでは、ここでちょっと視点をかえまして、MRA協定と本MRA法案の関係についてお聞きをいたします。

 欧州との間では、本法案でカバーしている電気通信機器と電気製品のほかに、化学品と医薬品が対象になっていたかと思いますが、この化学品と医薬品についてはどのような法律によって担保されたのか、お伺いします。

草賀政府参考人 日本とECの間のMRAにおきましては、化学品分野の関係法といたしまして、薬事法それから農薬取締法などがございます。さらに、医薬品分野におきましては薬事法がございます。これらの二分野におきまして、輸出側の国におきまして、その自国の領域内にある製造施設あるいは試験施設といったものを自国の法令に従いまして監督するということになってございます。

 したがいまして、既存の国内法令によりまして協定を実施することが可能でございますので、新たな立法を要しなかったというふうに理解しています。

森本委員 ということは、この法案は、一般法といいましても、MRA協定全体をカバーするものではないということでよろしいんでしょうか。

 さらにお聞きをしますが、電気製品の分野で、フィリピンとはさきの百六十五国会において、タイとは今国会において、EPA条約と、その一部としてMRA協定が、参議院の方はまだですが、衆議院で五月十七日国会承認をされました。

 では、これらのフィリピンとタイとの間のMRAと今回の法案とは、どのような関係にあるのでしょうか。

草賀政府参考人 今回のMRA法の改正でございますけれども、これは、アメリカとの間のMRA協定、それから、今後締結される、日米のタイプと同じような相互承認協定につきましては、これを円滑かつ迅速に実施するために、個別の協定名などにつきましてMRA法で引用する個別法形式から、政令で規定する一般法形式に改めるためというふうに承知してございます。

 他方で、先生御承知のとおり、フィリピンとのEPA、それからタイとのEPAでございますが、このEPAの中の相互承認の対象でございます電気製品の分野におきましては、それぞれ自国の登録当局あるいは指定当局が、相手国の適合性評価機関の登録または指定を、これは自国法令に従って行うとなっております。

 したがいまして、例えばこの場合、日本の電気用品安全法というものが適用できますものですから、今回のMRA法案の対象とされてはいないというふうに承知しております。

森本委員 そうしますと、フィリピン及びタイとの間で結んだMRAと、今回の法案が想定しているMRAとは、形式が異なるということなんですね。

 前者は、域外指定型の相互承認ということで、先ほど言われた、輸入国政府が、輸出国にある適合性評価機関を自国の関係法令に基づいて直接指定して、輸出国側の評価機関が、輸入国政府の技術基準や手続に基づいて行った適合性評価の結果を相互に受け入れる仕組みになるわけです。

 この場合には、わざわざ相手国の基準を調べるという手間がかからないわけで、双方にとってメリットがある気がするんですが、どうして、欧州やシンガポールや米国の間では今回の形式をとって、先ほど国内法とかいろいろお話しいただいたようですが、フィリピンやタイとの間では新たな域外指定型という形式をとったのか、そのことについてお聞かせください。

草賀政府参考人 委員御指摘いただきましたとおり、フィリピンとのEPA、それからタイとのEPAということにおきましては、自国の登録当局または指定当局が相手国の適合性評価機関の登録ないし指定を行うという形での相互承認が規定されてございます。

 これに対しまして、ECとのMRA協定、それからシンガポールとのMRA協定、それからアメリカとのそれにおきましては、自国の当局が自国の適合性評価機関を指定いたしまして、それでもって両締約国でつくる合同委員会による登録手続を通じまして、それが実施いたします適合性評価手続の結果について相手国に受け入れ義務を発生させる、こういう異なる方式をとってございます。

 では、なぜこのように異なる方式をとっているのかということでございますけれども、これはおのおのの協定の交渉過程におきまして、我が国と相手国との間で、双方の基準認証制度について議論したり、あるいはその運用実態、あるいは相手国との間におきます技術的な同等性ですとか、そういういろいろなものにつきまして情報交換をまず行いまして、その結果としてそれぞれのスキームで実施するということで合意をしているわけでございます。

 相手国との関係もございますので、交渉経緯の詳細はちょっとお答えしにくいところがございますが、一般論として申し上げれば、両国の間におきます制度の差異が大きいとか、あるいは体制、能力の差異が大きいとか、そういう状況でございますと、自国の指定当局の指定を受けた機関が実施する評価手続の結果について相手国に受け入れ義務を課する方式といったものは運用上の困難が伴う可能性が大きいと考えてございます。

 以上でございます。

森本委員 これは局長、なかなか、説明を聞いておっても、どれがどれに入っていくんやということが非常に難しい、政省令にきちっと照らして精査しないとこの問題はなかなか難しいと思うんですが、単純に域外指定型の方が非常に有利なんだろうな、お互いにメリットは大きい、しかし距離が遠いところでは非常にロスだということも少し勉強させていただいたんです。

 こうしたことは、政治的というよりも、むしろ行政の中で細かいところの打ち合わせの中から決まっていくという解釈でよろしいんですね。外国の状況、製品の質それからレベルといったことを勘案してやっていくということでよろしいんですか。もう、よろしかったらうなずいても結構です。

草賀政府参考人 先ほど私、申し上げさせていただきましたとおり、いろいろな要素、先ほど委員もおっしゃったような要素も含めて、そういう状況に応じて決定しているということであると思います。

森本委員 それと、これも通告にないんですが、この法案は経済産業省と外務省と総務省が担当されておるんですけれども、一番中心になってまとめられる省はどの省なんですか。

草賀政府参考人 日本が行っておりますEPA交渉につきましては、政府一体となって、関係省庁がよく連携をとりながら対応してございます。

 そういうことで、どの省が必ず中心であるということはございませんで、対処方針というものを事前に政府部内で取りまとめまして、大体それは外務省が取りまとめることが多いわけですが、その際に、総務省あるいは経産省、いろいろなところから重要なインプットをいただきまして、全体としてオール・ジャパンとしての方針を確立している、それでもって対応していく、こういうふうにしてございます。

森本委員 その点に対するコメントは後からさせていただきます。

 次に行きますが、これは参議院の芝議員もかなり強く言われておったところなんですが、私の方はまた違った視点から。

 電気通信機器の分野で日本のメーカーなどがどの程度の国際影響力を持っているのか、お聞きしたいというふうに思います。

 例えば、携帯電話端末の分野で世界市場のシェアを見てみますと、最大シェアを有しているのはフィンランドのノキアが三五・四、次に米国のモトローラが二二・二、そして韓国のサムスンが一二と続いています。日本のメーカーのシェアといいますと、十社合計で一〇%弱しかないなど非常に弱いのが現状であります。

 大臣としては、日本の携帯電話端末の国際競争力は、これをもって弱いとお考えなのか強いとお考えなのか、いかがですか。

菅国務大臣 率直に言わせていただくならば、日本の携帯端末というのは機器的には極めてすぐれている、さまざまな機能が入っていることは、日本だけでなく世界の技術部門の人たちも、日本の携帯電話の技術力というのは最先端を行っている、そう言う人が約六割以上いるということであります。しかし、現実的に、今言われたように、国際競争力においては非常に低迷をしているというふうに私は思っております。

 私自身、こうした日本のICT産業、これがやはり、今後の日本の発展を考えるときに最大の成長分野であるというふうに認識をいたしております。今も、現に経済成長分野の部分だけで見てみますと、四〇%がこの分野でありますから、そして、アジアの発展を考えたときに、まだまだこれからは、今委員御指摘の携帯端末というのは伸びる可能性は極めて大きいわけであります。特にワンセグ機能、これは世界で日本が今最先端を行っておりますので、こうしたものも含めて、アジアを中心とする海外に日本が活躍をできるような、そういうことを私ども支援していきたい、こう思っているところであります。

森本委員 どうも日本の場合は、まだ国内で十分そうした、もうけができると言ったらおかしいんですが、そこにとどまっておるというような気がいたしておりますので、大臣の力強いお言葉も今いただきましたので、ぜひそういう意味で世界戦略の中で頑張っていただくようにお願いを申し上げます。

 それで、きょうはいろいろ質問を用意したわけでございますが、少し最後に、きょうの質問でも十分言い尽くしておりませんいろいろな分野で、MRAについては他国の方がまだ今のところ優勢で展開しておるという認識を私自身が持っております。

 今、担当はどこなんだという話もさせていただきましたが、このことについて、今も大臣お言葉いただきましたが、日本が携帯電話などIT産業の国際競争力を向上させていくために政府全体で有機的に連携して戦略を立てているのかという点についてお聞きしたいと思います。

 事前に事務の方からもいろいろお聞きする中で、MRAにしましても、EPA、FTAにしましても、各省庁がきちっと連携をとって戦略を推進しているのかというと、大きな危惧があるというふうに私は思っております。そんな中で、大臣、役所の縦横、きょうもみんながばらばらにやっていただいておるというようなこともありますので、そうした観点で、もたれ合いにもなってしまうんじゃないかというように私自身は思っております。

 時間が参りましたので、あとは大臣のお言葉を聞かせていただいて終わりますが、そうした観点から、大臣、このMRAを含めて、ICT産業の国際競争力を高めていくために、政府全体としてどのような技術外交や経済外交の戦略展開を図っていかれるのか、聞かせていただきたい。

 「自由と繁栄の弧」の麻生大臣が、グローバルスタンダードとWTOの関係、EPAを迅速に、それをスピードを上げなければ国民の理解を得られないというような、そうした書き方もされておりますから、そのお言葉も大臣の気持ちもあわせて、最後に、簡単で結構でございます。えらい時間をかけました、申しわけありません。

菅国務大臣 今、MRA全体の問題でいろいろな御質問をいただきました。やはり、日本という国は資源のない島国でありますから、こうした分野において海外で活躍することが、日本の将来が安定した発展をすることのできる非常に大きな要因であるというふうに私は思っています。

 先ほど来、森本委員の指摘で、あれはどこが主体だという話、これは端的に、率直に言わせていただくならば、携帯端末は私どもで、電気製品は多分経産省だとか、そして窓口は外務省、こういうことに現実はなっております。しかし、政府を挙げて取り組まなければならない問題でありますので、そういう御指摘を十分に私ども受けとめさせていただいて、今も頑張っていますけれども、これからも政府一体となって取り組んでいきたいと思います。

森本委員 ありがとうございました。終わります。

佐藤委員長 次に、西村智奈美君。

西村(智)委員 民主党の西村智奈美です。

 きょう案件となっております法案についてまず数点伺いたいと思います。

 先ほどの森本議員の質問に大方尽くされているという思いもいたしますけれども、基本的なところに立ち返りまして何点か伺いたいと思っております。

 情報通信産業の国際競争力強化という点については、総理も、また総務大臣も言及されておられるとおりですし、私もその点については強化していく必要があるというふうに考えています。もちろん日本として明確な戦略を持つことが必要だということで、ICT国際競争力懇談会が開催されたりですとか、また、このたびはICT国際展開対策本部が設置されるなどなど、あと、後ほど質問いたしますが、局の再編も考えておられるということでありますけれども、それなりに取り組みが内部的には進んでいるのかという感じがいたしますが、実際にこの法案の中身をそういう目線で見ましたときに、本当に十分なのかという思いはやはりするわけであります。

 例えば、今回の日米間のMRAの実施に伴いまして、日本から電子通信機器の輸出の手続が簡素化されるわけでありますけれども、これはまた逆に、米国からも我が国、日本への輸出手続が簡素化されるということになるわけでありますけれども、現状、日本の情報通信産業における国際競争力というのは、競争力そのものは余り強くない。先ほど大臣がおっしゃったとおり、技術的には非常に高いものがあるというふうにも私は思っておりますが、この状況の中でMRAの実施がどういう影響を与えることになると考えておられるのか。

森政府参考人 MRAと貿易との関係ということでちょっと絞ってお答えすればよろしいのかと思いますけれども、一般論として、MRAの制度が入りますと、認証が容易になったり、期間が短縮されたり、費用が縮減されたりということで、輸出入の促進に資するのではないかというふうに期待するわけでございますけれども、現実には、欧州との間の例をとって見てみますと、平成十五年二月から認証業務が向こうで始まっております。それ以降の電気通信機器の貿易額を見ますと、大体三百億前後で横ばいで推移しておりまして、MRAが入ったから貿易額が急速に伸びるというものではどうもなさそうだ。

 もう一つの理由は、最近の企業活動というのは非常にグローバル化しておりまして、第三国に生産拠点を置いてそこから製品を出荷するということになりますと、MRAのそれぞれの国のカウントに入らないという問題も一面の要素としてございまして、日米間につきまして、現在、相互で大体九百億円前後のそれぞれ輸出、輸入の構造になっておりますが、これがMRAによって促進されることは期待するものの、どのように数字に反映できるのかというのは、少し長い目で見させていただいて分析をさせていただく必要があるのではないかというふうに現状は見ております。

西村(智)委員 MRAを使わずに認証しているケースがかなりあるわけでありますよね。ですので今の局長の答弁ということになるんだと思いますけれども、ただ、MRAがきっかけとなって貿易が活性化するということも期待されるということでありました。

 安倍総理がこの通常国会の冒頭の施政方針演説で、イノベーションにあわせてICT産業の国際競争力を強化するというふうに発言をされております。また、MRAの活用が必要だというふうにICT国際競争力懇談会の最終取りまとめにもあるわけでありますけれども、やはりその活用を図っていかなければならないということであります。

 先ほどの森本委員の話にも出てきたんですけれども、現在、タイですとかフィリピンですとか、そういう一部の国との交渉は行われているんだけれども、それ以外にMRAの交渉を行っている国はないということであります。これはやはり、今局長が答弁された、このMRAを活用していきたい、そういう気持ちといいますか方向性と少し合わないんじゃないか。やはりここは、IT先進国とも言われる例えばインドですとか、市場が急速に拡大すると予想されるロシアなどとの交渉を重点的に行っていく必要があるのではないかと考えておりますけれども、この点はいかがでしょうか。

森政府参考人 今、三つの国を御指摘いただきましたので、その間の事情をちょっと申し上げますと、インドとロシアにつきましては、現時点で、電気通信機器の貿易額は、合わせて、インドですと八十五億円、ロシアですと百十六億円という程度にとどまっております。また、中国につきましては、貿易額の総額は二千三百三十七億円と大きいのでございますが、中国からの日本への輸出、日本としての輸入額が大体九六%、二千二百四十二億円を占めておりますので、国内の関係業界からの要望というのが、今の時点ではこの三カ国については上っていない、現状ではメリットが小さいという問題がございますので、これらの国についてはもう少し時間がかかるのかなというふうに理解しております。

西村(智)委員 総務大臣、ちょっとお伺いをしたいと思います。

 今回、こうやってMRAが一般法になるわけでありますけれども、局としては、今交渉を行っている国以外とでMRAの交渉を行っていく上では余りメリットは大きくないのではないかというふうなお話でありました。ただ、これは大臣も同意してくださる、やはり国際競争力というのは総合的に日本として強化をしていく必要があるというふうに考えています。

 そういう中で、先日、大臣が、旧郵政省関係の三つある局を再編するというふうな御発言をされました。国際戦略局ですか、そんな名前だというふうに拝見をしたんですけれども、どういう局を設置して、それぞれにどういう仕事を分担するというふうにお考えなのか、イメージだけでもお聞かせいただきたいと思いますが、どうでしょう。

菅国務大臣 私、昨年に副大臣、そして今回総務大臣になって感じていますのは、このICT分野がどんどんと広がっているということであります。それは、地域はもちろんですけれども、海外においても広がっている。そして、先ほど申し上げましたけれども、我が国経済成長分野の四〇%がこの分野である。そういう中で、例えば私自身が地方に出ても、地方でも、携帯電話の問題だとか、あるいはブロードバンドの問題だとか、あるいは地上デジタルテレビ化など、そういう問題が非常に多く、私自身、地元の皆さんからも要請を受けるようになりました。

 そして、国際戦略というのを考えたときに、今、私ども三つの局があるわけでありますけれども、その中を、いわゆる国際競争力の強化、情報通信の将来を考えたときに、私は、この分野に充てるべきじゃないかなというふうに実は考えまして、この八月末、平成二十年度の機構の要求に向けて、現在検討をいたしているところであります。

 まさにICT産業の国際競争力の強化というのは、先ほど申し上げましたけれども、携帯電話の技術力があるにもかかわらず、海外に行くと、ノキアやモトローラ、あるいは韓国のサムスンに私どもははるかにおくれている。どこにそういう原因があるのか、そういうことも含めて、全体として情報通信の国際戦略を考える局があってもいいじゃないか、そういう形で、今の郵政の行政郵政局をそういう方向にしていきたい。ちょうど十月一日から郵政も民営化するものでありますから、そういうことも見据えた中で、そのような方向というものを八月の末に機構要求していきたい、こう考えているところであります。

西村(智)委員 情報通信産業の国際競争力強化の前提は、やはり国内に住む一人一人の国民が安心して、将来への不安感なく暮らせることだというふうに考えます。

 そこで、今般問題になっております年金記録問題について伺いたいと思います。

 六月の四日に、厚生労働省と社会保険庁が「年金記録問題への新対応策の進め方」ということでペーパーを出されました。ここで、納付記録がない場合の第三者委員会及び検証委員会を設置するという旨がありまして、六月の八日に、総務省に年金記録問題検証委員会というのを発足させましたというふうに通知が出ました。

 それで、年金の納付記録の問題を議論しているときに、やはり極めて拙速に過ぎるのではないかと私は思うのですけれども、これは後ほど質問に立ちます山井委員からも指摘があると思いますが、昨日の夕方になって、第三者委員会を設置するということになって記者発表があったということなんですけれども、これはいずれも総務省に置かれるということであります。

 振り返って考えてみますと、党首討論で安倍総理が第三者委員会を設置するという考えをあらわされた。その後、最初に出てきたのは年金記録問題検証委員会でありまして、私も地元に帰って何人かと話をしましたら、第三者委員会を検証委員会と勘違いされている方がいらっしゃったんです。これで政府が対応をとったねというふうに思っている人もたくさんいらっしゃったわけでありますけれども、私は、検証委員会で責任追及というのももちろんやるべきことではあろうけれども、本来やるべきことというのは、年金の保険料を払ったという人たち、しかしその納付記録が残っていない人たち、こういう人たちの救済が先なのではないかというふうに考えているんですね。それで、今週になって第三者委員会が設置されるということになったようなんですけれども、これもやはり私はかなり問題点があるのではないかというふうに考えております。

 まず最初に伺いたいのは、下村官房副長官にお答えいただくことになるんでしょうか、先週末の検証委員会の立ち上げの方が第三者委員会の設置よりも時期的には早かったわけでありますけれども、私は、これはやはり政府の対応としては順序が逆だったのではないかというふうに考えています。この第三者委員会も非常に問題はありますけれども、検証委員会の方をなぜ先に設置されたのか、この点について伺います。

下村内閣官房副長官 お答えいたします。

 今お話ございましたように、六月四日付で「年金記録問題への新対応策の進め方」が厚労省、社保庁連名で発表となりました。その中で、納付記録がない場合の第三者委員会それから検証委員会を設置するということを決めたわけでございます。

 今御指摘がございましたように、検証委員会は、年金記録の管理、事務処理に関して今回問題化した諸事項について、その経緯、原因、責任等の検証を行う、そして第三者委員会は、領収書等の証拠がない方であっても第三者委員会によって客観的な状況を把握しながら総合的に判断できるような、そういうものとしてつくることになったわけでございます。そして、検証委員会は、六月五日に総務大臣のもとに設置することにしたところであり、委員七人の人選を終えて、明後日、十四日から発足することになりました。

 御指摘の、第三者委員会、こちらの方が早くすべきではないかということについては、御指摘のとおりだというふうに思います。

 ただ、両方とにかく急いでつくって、年金についての不安感を国民の皆さんから払拭する努力をするということが必要でございまして、第三者委員会については、申し立てをされる方のできるだけ住所地に近いところに設置をして事案に対応することが望ましい、また、数もかなりの数になるだろうということで、中央だけでなく地方における仕組みも含めて準備をしているところでございまして、検証委員会に比べますと規模的にもかなりの規模になる、人選も含めますと、その準備で今、時間が検証委員会に比べてちょっとかかっているところでございます。

 いずれにしても、今回の年金記録の問題については、国民の皆さんの不安を一日も早く解消することが求められており、第三者委員会それから検証委員会を早急に立ち上げて、国民の皆さんの信頼を回復するように努めてまいりたいと考えております。

西村(智)委員 中身が非常に膨大になって、多少人選にも時間がかかったので検証委員会と比べると設置の時間が少し先延ばしになったということでありますけれども、その割には余りにも何も決まってないんじゃないですか、第三者委員会。余りにも何も決まってないと思います、時間をかけた割には。八日からですから、十四日に設置すると六日ですよね。六日という時間、これも短いと思うんですけれども、例えば、どういうメンバーで構成されるのか、どういう手順で審査というのが行われるのか、どういう基準で、いわゆる年金の保険料を払っていた、払っていないということを判断するのか、こういった判断基準も全く示されていない。こういう状況の中で、私は本当に、総理からの指令だけでスタートすることができないんじゃないかというふうに考えているんです。

 そもそも、この第三者委員会を総務省に置くことになるときに、何らかの法令上の措置、法的な根拠が必要になるのではないかというふうに思いますけれども、この国会、残り会期もあと二週間です。どういうふうに取り組むつもりですか。法的根拠が必要になるんじゃないですか。

下村内閣官房副長官 第三者委員会を総務省に設置することにおきましては、総務省設置法第四条第二十一号の中で、総務省は各行政機関の業務に関する苦情の申し出についての必要なあっせんに関することを所掌しているというのがございます。そういう観点から、総理が総務大臣に、総務省の中に第三者委員会をつくることを指示したわけでございます。

 特に、都道府県には管区行政評価局それから行政評価事務所がありまして、また、各市町村には行政相談員約五千人の方々が配置をされているということからも、申立人に身近な場所に多様な窓口があるということも含めまして、総務省に設置するということにしたものでございます。

西村(智)委員 苦情の申し出ですよね。総務省設置法、この第四条第二十一号ですか。苦情の申し出は、それは当然総務省の仕事だと思いますけれども、果たしてそれで年金の受給権についての裁定まで行えるんですか。どうですか。総務省の方から答えていただきたいんですけれども。

熊谷政府参考人 お答えいたします。

 第三者委員会の判断に基づきまして、総務省が厚労省にあっせんするということでございます。要は意見を提示するということでございます。裁定そのものはあくまでも厚労省、社会保険庁の権限というふうに理解しております。

西村(智)委員 あっせんを行うというのは、ちょっと違うんじゃないですか。では、報道が間違っているんですか。「年金支給の是非を判断する第三者委員会」と書いてありますよ。これは、六月四日に出された厚生労働省と社会保険庁のペーパーにもそういうふうに書いてありますよ。では、判断しないんですか。

 五千人の行政評価員が全国にいらっしゃるとさっき下村官房副長官がおっしゃった。では、どっちが正しいんですか。その人たちが判断するんですか、あっせんするだけなんですか、どっちですか。

菅国務大臣 先ほど私どもの局長からもお話し申し上げましたけれども、この苦情の申し出についての必要なあっせんに関することというのは私どもの業務にもなっておりますので、私どもは、このことを厚労省、社会保険庁にあっせんをする、最終判断はそこでしていただく、そういうことであります。(西村(智)委員「そことはどこですか」と呼ぶ)社会保険庁でしていただくということであります。

西村(智)委員 いや、おかしいな。柳澤厚生労働大臣も、これまで委員会の答弁で、社会保険庁はもう既にこういう問題を起こしている機関なので、そこで判断するということになると信頼されないだろうから、それ以外のところに第三者委員会を設置して、そこで判断してもらう、こういうふうに答えていたはずですよ。下村さん、どちらなんですか。

下村内閣官房副長官 行政機関たる厚生労働省、社会保険庁の年金に関する業務についての苦情の申し出があった場合に、第三者委員会における有識者としての公正な判断を踏まえて、総務省が厚労省に対して記録の訂正に関してのあっせんを行うものでございます。

 そういう意味でこの第三者機関は総務大臣のもとに置かれているわけであり、これについては、厚生労働省、社保庁もこのあっせんに対して謙虚に対応するということが求められると思います。

西村(智)委員 二つ伺います。その謙虚というのは何ですか。それを、まず第一点、お答えください。

 それからもう一つ。これ、おかしいんですよ。柳澤大臣は、今まで、例えば、社会保険庁に私は年金保険料を払っていると思っていますと、ところが、領収書がなかったりということで門前払いになっている人たちが約二万人、件数が約二万件ですか、あると。その二万件ないし二万人、ちょっとこの辺は記憶があやふやなんですけれども、そういう人たちは、では、新しく設置される第三者委員会に行くことになるのでしょうかという質問に対して、そうだというふうに答弁をされています。

 社会保険庁に行く、そこでだめだった、第三者委員会に行く。そこで、総務省のこの行政評価員の人たちが本当にそういうことを判断するんですかね。そういうふうな判断をする。それでまた社会保険庁の方にあっせんをされる。また社会保険庁の方に戻る。これはたらい回しじゃないですか。何の根本的解決策にもならないと思いますけれども、そんなずさんなやり方で、本当にこれで救済できるんですか。

菅国務大臣 いわゆる第三者機関というのは、例えば社会保険庁の中に、厚労省の中に設けたとしても、そこで審査したことについて尊重をして、最終的な判断というのは社会保険庁になるわけでありますから、私ども総務省において、そうした苦情の申し出、あるいはその必要なあっせんというものを第三者委員会の中で方向性を出して、そのことについて社会保険庁の中で私どもは尊重してほしいということであります。

西村(智)委員 謙虚についてお願いします。

下村内閣官房副長官 先ほど御指摘がございましたように、六月四日の「年金記録問題への新対応策の進め方」の中で、第三者委員会の位置づけでございますけれども、「社会保険庁や市町村に記録がなく、ご本人にも領収書等の証拠がない場合であっても、銀行通帳の出金記録、元雇用主の証言など周辺の状況に見られる事実を基に、第三者委員会によって、総合的に判断を示していただく。」それで、この総合的に判断を示していただいたことに対して、厚労省、社保庁が対応していただくということであります。

西村(智)委員 謙虚の意味を答えてください。

下村内閣官房副長官 これは、第三者委員会によって総合的な判断をされたことに対して、基本的にはそれに対応していただくという意味で、謙虚と申し上げました。

西村(智)委員 いや、これはちょっとまずいですよ。(発言する者あり)いや、先ほど申し上げましたけれども、国際競争力の確保のためには、国内で暮らす一人一人の国民の社会保障制度は重要ですから、私は質問をしております。

 そういうあいまいなやり方でこの年金の納付記録の問題に幕引きを図ろうとするのはやめていただきたいんですよ。

 では、最終判断は一体どこがするんですか。本当にこれでは解決策にならないじゃないですか。本当に判断が行ったり来たりですよ、第三者委員会、社保庁。それで、その第三者委員会の総合的判断で、それを基本的に踏まえてもらおうといったって、基本があれば例外がある。行政相談窓口のあっせんがどこまで法的拘束力、法的効果を持つかというのは、これはわからないわけですよね。

 どの程度拘束力を持つわけですか。これは、あっせんされたらきちんとそれに従って社保庁は仕事をしなければならない、そういう厳しい拘束力まで持つものなんですか。

熊谷政府参考人 お答えいたします。

 あっせんにつきましては、法的強制力というものはございません。ただ、この第三者委員会の意見に基づいて総務省が厚労省、社会保険庁にあっせんした内容については十分尊重されるというふうに考えております。

西村(智)委員 そんな、善意で仕事してくれるはずだという局長の答弁で、今この年金記録の問題で本当に心配している人たちが納得できますか。できないでしょう。

菅国務大臣 私どもの第三者委員会であっせんをしたことについては、当然私は社会保険庁で尊重してくれるものと思っていますし、それは私どもは社会保険庁から権限を奪うわけではないわけですから、あくまでも権限というのは社会保険庁にあることは法的にも当然のことであります。

 これは何も私どもに置くとか社会保険庁の内部に置くということではなくて、そういう形の苦情申し出について私どもはあっせんの権限があるわけでありますから、そうしたものについては当然社会保険庁において尊重してくれる、そういうふうに考えます。

西村(智)委員 苦情を受け取るだけだったら、今の行政評価局だけでいいでしょう。わざわざ第三者委員会を設置することはないでしょう。

 これで年金問題に終止符を打つなんという考えはやめていただきたいということを申し上げまして、時間になりましたので終わります。

佐藤委員長 次に、山井和則君。

山井委員 これから三十分間質問をさせていただきます。総務委員会で質問をさせていただき、本当に感謝しております。

 まず、MRAに関してお伺いしたいと思います。

 日本は、社会保障に関して複数の国と協定を結び、年金の二重払いを避ける方法をとってきたわけであります。特に、欧州、EUについてはドイツ、イギリスなど、また、韓国、アメリカ、ベルギー、フランス、カナダなどと協定を結んでおります。この相互協定に係る国内法は、厚生年金保険法等の特例等に関する法律案として今議論されておるわけであります。一つ一つの協定のたびに法改正をしなくてもよい、そういう趣旨であります。

 今回のMRA法は、これまでの個別法として協定を結ぶたびの法改正であったものをその必要のない一般法に改正するわけだが、そのことによって、協定を結ぶに際して、外務委員会のみならず法律改正と関連して各委員会で審議をするというようなことをせずに、MRAはほかの委員会で個別に審議するのではなくて外務委員会だけの審議でやればいいということになれば国会のチェック力が落ちるのではないかと思うわけであります。

 もともとはもう少しMRAの基本的なことを御質問したいと思っておりましたが、先ほどの森本委員、西村委員の質問でもうそれが出てしまいましたので、少しこのことについてまずお伺いしたいと思います。国会のチェック力が落ちると思うがいかがかという点に関して、いかがでしょうか。

菅国務大臣 この法案を成立させた後でも、条約ごとにそれぞれの外務委員会に条約でかかるということでありますから、その国会のチェック機能というのは私は果たすことができるというふうに思います。

山井委員 またこのMRAのことについては後ほど戻りたいと思いますが、少し西村議員の質問に関連して、先ほどの第三者委員会のことをお伺いしたいと思います。きょうは資料をお配りしております。

 私も厚生労働委員会からやってまいったんですが、実は、厚生労働委員会で審議をしていたところ、ある日突然この第三者委員会だけが総務委員会だということになってしまって、恐らく総務委員会の方もびっくりされているのではないかと思います。

 それで、ちょっと具体例で、この資料に基づいてお話ししたいと思いますが、例えばどういうことかというと、金曜日の参考人で来られた中村正見さんは七年八カ月記録が消えている、中村美津子さんは四年四カ月記録が消えている。それで、毎日のように、消えた年金一一〇番ということで、今まで三百通ぐらい相談が来ているんですが、その方々から、消えたという訴えがございまして、この週末に来たU夫妻も、夫の分が十一年八カ月、妻の分が九年六カ月消えてしまった。Mさんは、二カ月六十歳のときに払ったら二十五年を満たして年金がもらえるということで二カ月払ったところ、いざ六十五歳でもらおうと思ったら、その二カ月分もらっていませんよとけられて、結局一銭も年金をもらっていない。Tさんも、一銭も年金をもらっていないんだけれども、最近、三十年は払っていたということがわかったわけであります。

 それで、第三者委員会の議論をする前提として、この方々が幾らぐらい損害になるかということを菅大臣にぜひ御理解いただきたいんですけれども、例えば、中村正見さんの場合は、平均余命まで生きれば二百七十七万円、中村美津子さんの場合は二百万円、U夫妻の場合は御夫婦で八百五十八万円、Mさんの場合は、何と一銭も年金をもらえていないから一千百五十二万円の不払い、何とTさんにおいては、もしこの方の訴えが正しければ、三千七百六十七万円の年金の不払い。

 なぜこんな話をするかといいますと、今、西村委員の質問にもありましたが、それぞれの方の人生、老後を決定づける、天国か地獄かを判断するのがこの第三者委員会なんですよね。これは半端じゃないけただということを申し上げたいんです。

 まず、菅総務大臣、ここでオーケーと判断されるか却下されるかによってこの方々の老後の天国か地獄か大きく分かれると思うんですが、こういう判断を第三者委員会がするということについて、いかが御認識でしょうか。

菅国務大臣 今、山井委員から年金の実際の額を一例として示していただきました。

 この第三者委員会というのは、それぞれの申請をされた人の年金の受給額に直接かかわるものでありますから、私は極めて大事な委員会であるというふうに認識をいたしております。

 それと同時に、私ども政府の役割というのは、国民の皆さんに年金を納めていただいた、そうした皆さんはやはり給付を受ける権利があるわけでありますから、そうした申立人の立場に立って、私どもは、第三者委員会の中でしっかりと、そして公平公正に審査をして、国民の皆さんの不安の解消や信頼回復に努めていきたい、そういう委員会運営をしたい、こう思っています。

山井委員 今、審査をしてということをおっしゃいましたが、やはりここは審査をするんですよね、この第三者委員会で。

 それで、昨日、私、質問取り、レクのときに、総務省の担当の方に、私も急なことでわからないので第三者委員会のペーパーをぜひ持ってきてほしいということをお願いしました。そうしましたら、担当の方がおっしゃるには、きょうの昼に安倍総理から指示が下ったところなのでペーパーがまだ一枚もないということをおっしゃっておられたんですね。ところが、御存じのように、安倍総理は、昨日の参議院の決算委員会でも、今月中に設置をされるということをおっしゃっておられます。六月二十九日金曜日、あと十七日しかありません。十七日しかありませんが、まだペーパーが一枚もありません。

 それで、まず、西村議員がおっしゃっていましたように、何百万、何千万、そして今、領収書がないというだけで却下された方がこの半年間で二万六百五十人おられますから、柳澤厚生労働大臣の答弁では、この二万六百五十人はすぐにこの第三者委員会に来るだろうということをおっしゃっていました。ということは、これは、けたとしても何十億、何百億のことを決定というか扱うんですね。そういう一人一人の人生の天国か地獄か、そして何百億、何十億もの予算を扱う。一人当たりが何百万、何千万ですからね、これは二万件とか掛けてもらったら、一千万掛ける二万件で、もうそれで二千億になるわけですからね。そういう大きなけたなり人生を左右することを、法的根拠なくして、これはあっせんなりできるのか。

 例えば、このお一人のMさんという方は、今がんで苦しんでいられて、本当に余命幾ばくもないという中で、二カ月未納だとはねられているだけで一銭も年金をもらっておられないんですよね。この訴えも、娘さんががんであるお母さんにかわってメールでやってこられています。例えばこのTさんは、この訴えが本当に認められるかどうかわかりませんが、この三千万程度の年金をもらわずしてもう他界をされてしまっております。

 もう一刻の猶予もならないことなんです。こういうことが法的根拠なくして総務省にできるんですか。

菅国務大臣 先ほども申し上げていますけれども、私ども総務省の設置法の中で、各行政機関の業務に関する苦情の申し出についての必要なあっせんに関することというのが明記されております。

 そして、この第三者委員会でありますが、きのう私どもの事務方が、きのうのことでということでペーパーを出し切れていないようですけれども、少なくとも、今まで社会保険庁で研究をしてきました。私どももここについて事務方で検討してきました。しかし、それなりのしっかりした体制でなければ、やはり国民の皆さんにいたずらに不安を醸し出すというおそれもありますので、しかし、今委員御指摘がありましたように、時間も限られています。

 そういう中で、私どもは、その第三者機関の立ち上げというものにしっかりと、例えば裁判官の方だとか、弁護士の方だとか、社労士の方だとか、税理士の方だとか、あるいは行政相談の代表の方だとか学識経験者、そうした方たちにおいて、きのうも総理が申し上げていますけれども、今月中に立ち上げて、そうしたさまざまな申し立てをされておられます国民の皆さん、その不安を解消し、そして信頼を回復できるような、そうした委員会を立ち上げてまいりたい、こう思っているところであります。

山井委員 今月中に立ち上げるということは、今月中から申請を受け付けてもらえると理解をしてよろしいですか。

菅国務大臣 山井委員は厚労委員会で十分承知の上で質問されておりますけれども、まず一義的には当然社会保険庁で審査、そこで不満な方をいわゆるこの第三者委員会で取り上げる、そういう仕組みになっていますから、私ども、立ち上げたと同時に、そうした方たちの審査ができる体制というものをつくっていきたいというふうに思います。

山井委員 ということは、確認をしますが、今もう二万六百三十五人の方が、領収書がないという理由で社会保険庁で却下されて、待っておられるわけですけれども、六月末までに立ち上げられた段階でその方々の申請を受理してもらえるということですね、六月中に。

菅国務大臣 考え方は、実はこのように考えています。

 六月下旬までの間に中央で立ち上げをさせていただいて、そこでプロジェクトチームを何チームかつくって、それと同時に、ある程度この方向性というのが私は出てくると思います。そういう審議をしている中で、どういう問題が一番多いだとか、類型というのが私は出てくるというふうに思いますから、そういうものが出てきた段階で全国にそうした第三者委員会を立ち上げていきたい、こう思っております。

山井委員 ということは、第三者委員会は一カ所でないんですか。四十七都道府県に設置するんですか。一カ所なんですか、何カ所ですか。

菅国務大臣 まず中央に先に立ち上げて、それから四十七都道府県、それも人口によって多いところ、少ないところはあると思いますけれども、基本的に一県に一つは立ち上げていきたい、こう考えます。

山井委員 被害者は、その第三者委員会でみずから発言することはできるんですか。

菅国務大臣 それについては第三者委員会が判断をすることだというふうに思いますけれども、ただ、私は、そうした申請された皆さんの立場に立ってこの委員会を運営させていただきたいというふうに思っていますので、いずれにしろ、まず中央に立ち上げたそれぞれの学識経験者の皆さんの考え方を聞いた上で、その方向性については決定をしていくだろうというふうに思います。

山井委員 そこは一番大事なところで、被害者の方々のお便り、例えば二ページ目に先週参考人で来られた中村さん御夫妻のがありますが、多くの消えた年金の被害者の方が今一番心配しているのが、第三者委員会の中身なんですよね。中身の第一歩が、もちろん自分たちもその場で証言をできるんでしょうね、まさか紙の書類審査だけじゃないでしょうねということをおっしゃっているんですが、それがまだわからないということをおっしゃっているんですね。

 そこで、西村議員の質問の続きになりますが、安倍総理は、昨日の決算委員会で、領収書がない場合の支払いの有無を第三者委員会で判断するということを明確におっしゃっておられます。ということは、第三者委員会で支払いの有無を判断するということですね、菅大臣。

菅国務大臣 先ほど来申し上げていますけれども、私どもは、国民の皆さんが納められた、そうした年金を納められた方については全員給付できる、それはある意味で政府の当然の役割だというふうに思っていますので、そうした申請をされた皆さんの立場に立って、当然審査をさせていただきたいというふうに思いますし、そこで、先ほどありましたけれども、直接そこの中でできるのかどうか、その委員会に出席できるのかどうかということも含めて、そうした皆さんの立場に立った形で、私どもはこのことをなし遂げたい。そして、この国民の皆さんの不安を解消して、信頼を得るものにしたい、そういうものにさせていただくつもりであります。

山井委員 菅大臣、わざと私の聞いていることに答えておられませんね。審査を聞いているんじゃないんです。判断をすると総理はおっしゃっているんですから、第三者委員会で領収書がない方の支払いの有無を判断するんですね。菅大臣、お答えください。

菅国務大臣 それは、先ほど来私申し上げていますけれども、そういう申し出をされた方の意というものを十分に酌み取る形で、私どもは、この第三者機関が機能するようになるわけでありますから、当然そういう判断もそこの中に含まれてくるというふうに私は考えています。

山井委員 判断をするんですね、そうしたら。

 もう一回確認します。ここは非常に重要ですよ。第三者委員会が判断するんですね。お答えください。

菅国務大臣 ですから、第三者委員会でそういうさまざまな事例が出てくると思いますから、そういうことも含めて第三者委員会で判断をして、そのことについて、私どもは社会保険庁にその第三者委員会の結果をあっせんするということであります。

山井委員 これは過去に支払いがあったかどうかを最終的に判断するというふうに安倍総理もおっしゃっていますが、最終的に判断ということでよろしいんですね。

菅国務大臣 ですから、第三者委員会はそういう意味のことについて判断をして、それについて私どもは社会保険庁にあっせんをするわけでありますし、当然、社会保険庁というのはそのことは尊重してくれるものと私は考えています。

山井委員 尊重と最終判断と違うんです。

 では、質問の仕方を変えます。

 第三者委員会の判断と社会保険庁の判断が違う可能性はあるんですか、ないんですか。

菅国務大臣 私はないと考えています。

山井委員 ないと考えているということは、最終判断を第三者委員会がするということでいいんですね。

菅国務大臣 今も最終決定というのは社会保険庁にあるわけですから。ただ、社会保険庁で判断できない分を私ども第三者委員会で判断をするわけでありますから、当然そのことについては社会保険庁は私どもの判断に基づいて判断をしてくれるというふうに考えています。

山井委員 社会保険庁に戻すという話になったら、これは宙に浮いた年金のみならず、宙に浮いた第三者委員会になるじゃないですか。結局どっちなんですか。社会保険庁や厚生労働大臣は第三者委員会だと言うし、総務大臣は社会保険庁が最終だと言う。どういうことですか。これは一番肝心なところなんですよ。

 先ほどあっせんをするとおっしゃったんですけれども、そうしたら、あっせんをするという法的根拠で事実上最終判断できるということですね、菅大臣。

菅国務大臣 ぜひ冷静に聞いていただきたいと思いますけれども、私ども、この第三者委員会というのは、裁判官とか弁護士とか社労士だとか、そういう法律の専門家の皆さんになっていただきたいと思っていますから、そこでその申し出をされた方の立場に立って判断をしていただいて、その結果を私どもは社会保険庁に、当然社会保険庁が支給する機関でありますから、そこのことについて私どもは申し上げるということであります。

山井委員 改めてお聞きします。最終判断は社会保険庁がするのか第三者委員会がするのか、菅大臣、どちらですか。菅大臣、どちらが最終判断をするんですか。領収書がない場合の支払いの有無の最終判断は社会保険庁か第三者委員会か、どちらがするんですか、菅大臣。

菅国務大臣 私どもは、領収書があるないという問題も含めて、領収書の問題でない場合も含めて、第三者委員会で判断をし、そしてそれについて私どもは社会保険庁にそのことを申し上げますから、そこによって社会保険庁が給付の決裁をする、そういうふうに考えています。

山井委員 そこをぼかさないでください。最終判断はどちらか一つなんですよ、最終判断は。このままじゃ、社会保険庁なのか第三者委員会なのか、最終判断が宙に浮いているわけですよ。宙に浮いた第三者委員会じゃないですか。

 最終判断はどちらがするんですか。どちらか、二者択一でお答えください。

菅国務大臣 私どもが第三者委員会で判断することと給付をすることは別物だというふうに私は思っていますから、私どもが判断したことについては、同じ政府でありますから、それは当然社会保険庁でもそういう方向にしてくれるだろうと。これは当然のことだと私は思いますよ。

山井委員 いや、だから、シンプルな質問をしているんですよ。これは、「可否を判断」とか、新聞にも「判断」と出ていますし、安倍総理も最終判断を第三者委員会ですると言っているわけですから。支払うかどうかの最終判断をするのは社保庁なんですか第三者委員会なんですか、どちらですか。

菅国務大臣 方向性というのは私どもが責任を持って第三者委員会で決定をしていただいて、支払うかどうかは、これはやはり社会保険庁に今法的になっていますから、当然私どもの決定に基づいて社会保険庁が支払ってくれるだろうと考えるのが自然じゃないでしょうか。

佐藤委員長 山井君に申し上げます。議題の範囲内での質疑をお願いいたします。

山井委員 ということは、最終判断は社会保険庁ということですか、今の答弁は。

 菅大臣、ちょっと確認します。払うかどうかは社会保険庁ということになったら昨日の安倍総理の答弁と違ってきますが、よろしいですか。

菅国務大臣 それは第三者委員会の判断が当然尊重されるべきだと思いますよ。それで……(山井委員「尊重じゃない」と呼ぶ)いやいや、それで判断を私どもが社会保険庁に申し上げるわけですから、その結果に基づいて社会保険庁が支給するということになる、こう思いますよ。

山井委員 これは、昨日の安倍総理の委員会の答弁と違いますよ。安倍総理は第三者委員会で判断すると言っているんですから。その判断を尊重とかそんなことは言っていませんよ。大丈夫ですか。

佐藤委員長 再度申し上げます。山井和則君に申し上げたいと思います。議題の範囲内での質疑をお願いいたします。

山井委員 第三者委員会の詳細はいつまでに、例えば、何カ所つくるか、そしてメンバーは、六月末にスタートするということですが、いつまでに決めますか。というのは、あともうこれ十七日しかありませんからね。委員の方への依頼も、三日前に依頼するとかそんなんじゃ無理だと思うんです。普通こういう委員というのは二週間前ぐらいからお願いするのが当然だと思うんですが、あともう十七日しかないんですよ。いつまでにメンバーはお決めになるんですか、そして何カ所かもいつまでにお決めになりますか。

菅国務大臣 メンバーについては、私どもは速やかに決定をしたいと思っています。それぞれメンバーの委員の皆さんも当然仕事を持っていますから、いつ立ち上げるかということは、そういう皆さんの日程調整というのもかなり大変なことです。そういうものも含めて、きちっとした形で私は立ち上げたいと思います。

 そして、立ち上げた暁には、申し出された皆さんの側に立って、私どもはそこの第三者委員会で、先ほど領収書のお話もありました、ない方も含めて最終的な判断は第三者委員会でして、そしてそのことに……(発言する者あり)いや、第三者委員会で判断をして、そのことについて社保庁に申し上げる。第三者委員会は支給する権限もないわけですから、あくまでも社会保険庁が支給するわけでありますから、そこに対しての判断は第三者委員会でして、社会保険庁に申し上げるということです。

山井委員 支払いが社会保険庁だということはわかっているんですよ。問題は、最終判断はどこかということと、あっせんという法的根拠で最終判断までできるのか。これは非常に本質的なことを聞いているわけです。

 少し違う質問に行きます。

 行政相談員には、不動産屋さんとか、専門が年金でない人もたくさんいるわけですが、行政相談員の役割ということについてどのように御認識されていますか。

菅国務大臣 行政相談員は全国に五千人おりまして、それぞれの行政のさまざまな苦情等の相談を受けているというのが今の行政相談員の役割であります。

 そしてまた、今、この年金についての審査のこと、第三者委員会に対しての質問かなというふうに思いますけれども、行政相談員の人たちも、代表の方もそのメンバーに入っていただきたいと私は今考えています。

山井委員 第三者委員会で今一番ポイントになっているのは、領収書がない人、裏返せば証言だけしかない方というのが非常に多くて、民主党に寄せられている相談でも、証拠がなくて却下されたという方が圧倒的に多いんですよね。この方々に関して支払いがオーケーなのか否か、その判断基準はいつまでにお決めになりますか。

菅国務大臣 先ほど申し上げましたけれども、第三者委員会のメンバーというのは、私が考えていますのは、裁判官だとか弁護士だとか、あるいは社労士の皆さんだとか税理士だとか、そういう専門家の皆さんを中心に、学識経験者そして相談員の皆さん、あるいは行政の窓口にいた人、そういう方たちを考えておりまして、そういう人たちがその委員会の中で判断をする中で、まず最初は中央の中でその判断というものをし、ある程度、当然分類ができてくると思いますから、どういう分野の問題が多いだとか、そういう方向性をきちっとした形で全国にそういう体制をつくっていこうということであります。

山井委員 要は、領収書がない人をどう救うかというのが消えた年金問題の本質ですよ、核心ですよ。そのことをもしかして委員会のメンバーが決めるんですか。そうじゃないでしょう。判断基準は総務大臣なり総務委員会で議論して決めないと、そんな委員会に決める権限はないと思うんですが、判断基準はだれが決めるんですか。

菅国務大臣 それはそれぞれの委員会にゆだねたいと私は思います。第三者委員会にゆだねたいと思います。

山井委員 ということは、四十七都道府県にもし第三者委員会をつくったら、その判断基準は多少地域によってばらつく可能性があるということですか。

菅国務大臣 ぜひ先ほど来から私が言っていることを御理解いただきたいのですけれども、まず、中央に最初にその委員会をつくって、中央でいろいろな方の申請を受ける。そこで分類ごとに方向性というのはある程度できてくると思いますから、その段階で全国に立ち上げるということを私は申し上げているわけであります。

山井委員 時間が来ましたので終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

佐藤委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 私は、最初に、今回の法案には法案の改正漏れに対応する改正が行われているというふうに聞いておりますが、ところが、衆議院でも参議院でも、趣旨説明の中で一切そのことについては触れられておりませんでした。

 それで、改正漏れに係る改正部分と、改正漏れが起きた原因、そして大臣の所見、これを伺っておきたいと思うんです。

菅国務大臣 現行の相互承認実施法における改正の不備は、平成十五年の電気通信事業法改正による関係条項の条ずれにより発生をしたものであります。しかしながら、改正不備は定義規定のみであって、実際の効力には影響なかったというふうに考えております。

 今回御審議をいただいております相互承認実施法案において過去の改正の不備を是正することとなることについては甚だ遺憾でありまして、今後このような改正漏れのないよう適切に対応させていただきたいと思います。

吉井委員 この間、条ずれに伴う実害はなかったとしても、実際はもう全然いいかげんな法律がそのままずっと施行されてきたということになるわけです。それについて、その部分の条ずれ改正をやりながら、大臣の趣旨説明のときにはきちんとそれは今おっしゃったおわびをするという話をして、そしてどこがどういうふうに条ずれが起こったのかとか、それをどういうふうに是正しなきゃいけないところへ来ているんだとか、これはきちんとやはり、本来、経読みというのはそれをやるべきだと思うんです。これは、この前もこういうことがあったんですよね。

 私は、今後の問題がありますから、法律改正というものについて、つまり法律というものをどれぐらいきちんととらえるかということにかかわってきますから、改めて大臣の所見というものを伺っておきたいと思うんです。

菅国務大臣 御指摘をされる中で、私自身も大変申しわけないと思いますし、恥ずかしいと思いますので、今後こうしたことのないように気をつけさせていただきたいと思います。

吉井委員 実は、これは条ずれの話なんですが、言ってみれば法ずれといいますか、法律ずれみたいな、これは実際の法律の執行の中でそういうことがちょくちょくありますので、私はきょうは、この第三節の電波法の特例というところで電波法のことを挙げておりますから、少しこの問題について伺っておきたいと思います。

 第三節の電波法にかかわって、そもそもこの電気通信機器の端末が問題を起こして混信など起こしたら大変なことになるわけですが、電波法では、総務大臣は無線局の免許人に対して報告を求める権限が規定されています。電波法八十一条は、「総務大臣は、無線通信の秩序の維持その他無線局の適正な運用を確保するため必要があると認めるときは、免許人等に対し、無線局に関し報告を求めることができる。」と規定しているわけですね。

 総務大臣、この電波法八十一条によってどのような報告を無線局の免許人に対して求めてきているのか、また、放送局に対して報告を求めた事例としてはどういうものがあるのか伺います。

菅国務大臣 電波法第八十一条は、無線局の適正な運用を確保するために、放送局を含む無線局に関し報告を求めるものであります。過去五年間においては、電波法第八十一条に基づく報告を求めた事例としては、五件あります。

 第一といたしまして、全一般放送事業者に対し、第三者名義による株式の保有状況等。二番目といたしまして、地上系全民間テレビジョン放送事業者に対し、番組基準に抵触する映像手法を用いた放送実施の有無等であります。三番目としまして、NHKに対して、「アニメーション等の映像手法に関するガイドライン」に抵触する映像手法に関する事実関係であります。そして四番目としまして、株式会社東京放送の「イブニング・ファイブ」について、放送番組内容とは関係のない映像が放送されたことに関し、その事実関係及び原因等であります。五番目といたしまして、つい先般の関西テレビ放送株式会社の「発掘!あるある大事典」について、放送番組内容に事実とは異なる内容が含まれていることが判明したことに関し、番組制作及び番組編集に関する事実関係及び原因等についてであります。

吉井委員 ですから、今のお話では放送局に対して五件あったということですが、電波法八十一条で、無線局に関して報告を求めるんですが、要するに、無線局免許人については実際にこの条項は使われていない、こういうことが今の御報告でわかるわけです。

 今の報告にありましたこの五つの件ですが、最初におっしゃったのは、要するに経営にかかわる話ですね。つまり、株主の株式独占などに係っては、それは無線通信の秩序の維持とかそこにかかわってくるから八十一条でと。それから、いわゆる次の二つは、パカパカの話ですね。点滅番組の問題で、これは映像の技術上の問題ですよね、視聴者の健康にもかかわるという問題で。最後の二つというのは、これは放送内容にかかわってくるんですね。

 今のこの事案に対して、では総務省はその後どういう行政指導を行ってきたのかを、これは政府参考人で結構ですから、伺っておきます。

鈴木政府参考人 お答えを申し上げます。

 ただいま大臣が申し上げました、最初の第三者名義による株式保有状況につきましては、程度の差に応じまして、警告から厳重注意までの行政指導を行いました。二番目の民間テレビジョン放送会社に対する光点滅信号の問題につきましては、これも厳重注意という行政処分を民放二十七社及び、その後、NHKに対しまして同様の行政指導をいたしました。また、東京放送の件につきましては、昨年、厳重注意という行政指導を行いました。また、最後の関西テレビの件につきましては、本年三月、警告という形での行政指導を行っております。

吉井委員 まず、電波法八十一条で報告を求める、そして放送法に基づいて厳重注意の処分を行っていく、措置をとる、こういうことが行われておりますが、総務省は、このほかの事案についても、例えば、ことし四月二十七日にTBSに対しては、ことし二月三日放送の「人間!これでいいのだ」という番組の中で仮説を断定的に表現したという問題、これが放送法第三条の三で厳重注意という処分ですね。それから、ことし一月二十二日の「朝ズバッ!」で不二家の問題を取り上げたことについては、TBSで四月十八日におわびの放送があったんですけれども、四月二十七日に放送法三条の三、厳重注意と。

 放送内容にかかわって行政指導を行ってきているというこの事実を確認しておきたいと思います。

鈴木政府参考人 まず最初に御指摘の点ですが、電波法八十一条は、放送局を含む無線局に関して、その適正な運用を確保するために報告を求めることができるというものでございますので、この条項を使っているわけでございます。

 また、行政指導を行っている事例といたしまして、過去五年間、二十三件の行政指導を行ってきておりますが、その放送法上の問題は類型的に申し上げますと次の三つになると思います。一つの類型は、放送法三条の二、いわゆる番組準則の中に定められております政治的公平、これらの放送法及び有線テレビジョン放送法第十七条にも同様の規定がございますが、これに違反したものが三件、同じく番組準則の中で「報道は事実をまげない」という部分に違反したものが九件、また、放送法第三条の三、いわゆる番組基準に違反したものが十一件、合計二十三件でございます。

吉井委員 放送法違反ということで認定するには、放送局からの報告を受けるとかヒアリングを行うとか、そういうことはあるんだろうと思うんですが、総務省としてそれはやっての上なんですね。

鈴木政府参考人 事案の発覚の端緒は幾つかございますが、内容につきましては私どもが放送事業者から報告を受け、あるいは状況の説明を聞いた上で何らかの指導を行っているものでございます。

吉井委員 そこで、放送法三条の三とかこういうので注意をする場合に、放送法上のどういう権限で放送局に対して番組内容についてのヒアリングを行っているのか、伺います。

鈴木政府参考人 ヒアリングあるいは報告を求めている権限ということでございますが、先ほど申し上げた電波法八十一条に基づく場合と、それに基づかず事実上の行為として行っている場合とございます。

吉井委員 これは総務省としてちゃんと法律上の根拠がないといろいろできないわけですよ。大臣、私、さっき法ずれという表現をしましたけれども、本来、放送法違反だったら放送法に基づいていろいろ調査をするわけですね。ところが、電波法八十一条を使って調査をしたりヒアリングをやったりいろいろやっておいて、それで放送法三条の三とか二に基づく処分をするというのは、これは法律の執行において、やはりどう考えても少しおかしいと思うんですね。

 放送法五十三条の八によれば、「総務大臣は、この法律の施行に必要な限度において、政令の定めるところにより、放送事業者に対しその業務に関し資料の提出を求めることができる。」とありますね。放送法三条の二や三条の三などに違反しているかどうかを解釈する権限について、さっきの答弁というのは、私は、総務省の権限がみずからあるみたいに言っているおかしい考え方だと思いますが、総務省が番組内容について放送法三条の二や三に違反していないかどうかを調査するときにどうして放送法五十三条の八を使わなかったのか、なぜこれが電波法八十一条なのか、ここのところを伺いたいんですよ。

鈴木政府参考人 今の直接の御質問は、放送法五十三条の八の規定に基づく場合と電波法八十一条に基づく場合とどう違うのかということと、放送法に基づいて行えということかと思います。

 放送法五十三条の八が定めております場合は、具体的にはその中身、報告を求めることができるあるいは提出を求めることができる資料は放送法施行令第七条に具体的な内容が記載されておりますが、資料の提出を行わなかった場合あるいはその内容に虚偽があった場合に過料を科すことができるという、強制力を伴った報告の徴収でございまして、私どもとしては、その強制力を伴う報告の徴収のほかに、そこまで至らない場合の報告を受けているところでございまして、それが電波法八十一条によるものであったり、事実上の行政指導として行っているものでございます。

 なお、行政指導、状況を聞いたからといってそれがすべて放送法違反に当たるかどうか、それは内容を確認した上で判断するものでございますので、すべてが放送法違反になるというものではございません。

吉井委員 私、電波法八十一条というのは、無線通信局が変な電波を出してしまう、きちんとコントロールして電波を出すんじゃなくて、その結果混信が起こるとかあるいは技術的能力が欠けているとか、これは八十一条を使うのは当たり前だと思うんですよ。しかし、放送局が電波そのものはまともに出しているときに、それに対して電波法八十一条を使うというのはそもそもが筋違いだと思うんですね。

 放送法五十三条の八については、もともとこの法律が五十三条の八に資料提出条項が盛り込まれたのは一九五九年ですから、もう半世紀前の話なんですが、その改正で、当初提出された法案では「報告をさせることができる。」となっていたんですね。しかし、ここは「資料の提出を求めることができる。」と改められたんですね。なぜ改められたんですか。

鈴木政府参考人 ただいまその経緯をつまびらかにすることはできませんが、今委員御指摘のとおりの条項、原案がそのように改められたということでございます。

吉井委員 私の質問に対する答えに全然なっていないんですけれども、あなたはおわかりでないのか、わかっていて答えようとしないのかわかりませんが、例えばNHKの「放送五十年史」の中でもこういうふうにその部分のことが書いていますね。「報告をさせることができる」とあるのを「資料の提出を求めることができる」と改める修正は、「業務報告に名を借りて政府が放送番組の内容や局の編集方針その他に不当な干渉をすることができないよう規定の趣旨を明確にしたもので、重要な意味を持つ修正であった。」と。これはそのほかの文献を見ても書いてあるんですよ、立法趣旨はどこにあるかと。

 総務大臣に伺いますが、これが放送法五十三条の八を含む、つまり、業務報告などに名をかりて政府が放送番組の内容や局の編集方針に不当に介入してはならない、放送の不偏不党とか中立とか、それを権力の側からかかわりを持たない、そのことを定めたのがこの部分であり、放送法全体を貫く大事な立法趣旨の中身だと思うんですが、大臣、どうなんですか。

鈴木政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、放送法五十三条の八の規定に基づく資料提出につきましては、過料という意味での強制力が伴うものであるがために、そのような緩和した表現に改められたものと思われております。

 一方、先ほどから申し上げておりましたとおり、強制力を伴わない報告の求めというのがまた一方でございます。

吉井委員 電波法八十一条では、放送局に対して報告を求めるとかヒアリングを行うとか、そういう放送法によってできないとしているものを電波法八十一条を使ってやろうなどということはそもそも想定していないんですよ。この法律は、もともとそういう法律じゃないんですよ。総務省設置法の権限で、番組内容について放送局に対してヒアリングを行ったというのは、これを使ってやるなどということは、これは放送法五十三条の八に照らしても脱法的な行為と言わなきゃならないと思うんです。

 では、そうしたヒアリングはやったが行政指導には至らなかったという番組はありますか。これは参考人、どうですか。

鈴木政府参考人 今御指摘のような例は多数ございますが、最近の例でいいますと、例えば、テレビ朝日の報道におきまして、長崎市長が銃撃された事案というのがございまして、犯人から送付された文書を犯行声明だというふうな表現をして、それに対して事件を未然に防げなかったのかといった批判その他もございまして、事実関係についてのヒアリングを行いました。また、もう一つ、最近の例として、フジテレビが行いましたいわゆる情報系番組で、雑種犬の習性を調べるという企画のコーナーがございましたが、この中で、飼い主でない者が飼い主であるような形で登場して、それが放送法違反に当たるかどうかということを事情聴取いたしましたが、ともに放送法に違反するものとは私どもは判断いたしませんでした。

吉井委員 ヒアリングを尽くしたり報告を求めたけれども行政指導したものもあるし、行政指導はしていないが、照会をする、ヒアリングを行う、報告を求める、こういうものもあるというのが今のお話だったと思うんですが、総務省がこれまでどのような番組について放送局に事実関係をヒアリングしてきたかとか、これはきちっと記録はしてあるんですね。

鈴木政府参考人 記録はしてございますが、文書そのものは文書保存期間の範囲で残っております。

吉井委員 記録はしてある、記録はあるということですから、これは委員長に私はお願いしたいんですが、そういう記録をもとにして、どれがどのように脱法的なやり方でやられたのかとか、なるほど、これならば八十一条もあり得るかというものとか、これは放送法によらないとやはりおかしいとか、これはきちっと、やはり総務委員会がこうした問題を考えていく上で大事な課題になりますから、委員長におかれましては、ぜひ、当局において資料をきちっと整理して作成し提出するように、お取り計らいいただきたいと思います。

佐藤委員長 理事会で協議をさせていただきます。

吉井委員 それで、あわせて伺いますが、東京新聞の昨年九月二十三日付では、あるテレビ局の社員の話として、次のような話を報じていました。「総務省がすぐ「○○日に放送した番組のリポートを出せ」などと言ってくる。なぜ、と問いつめると「○○先生に聞かれて」とポロっと明かす」と。政治家の要求で総務省が番組のチェックをしているという指摘だ、これは重大な問題だと思うんですが、総務省、どうなんですか。

鈴木政府参考人 具体的にどのような事例か、私もつまびらかにいたしませんが、何々先生が云々ということでは全く記憶にございません。

 なお、議員であっても一般の視聴者であっても、あるいは週刊誌あるいは新聞その他であっても、何らかの形で放送法違反ではないかという指摘があれば、私どもとしては、一応事情を、話を聞く、あるいは新聞紙面を読む限り放送法違反のおそれありと思えば、聞くことはございます。

吉井委員 ○○先生から問い合わせがあれば照会するという今のお話ですが、これは総務省の方で報道資料でも出ておりますが、昨年七月二十一日の「イブニング・ファイブ」の事案です。

 TBSの昨年七月二十一日の「イブニング・ファイブ」について、TBSは七月二十六日に、意図的ではないがおわび申し上げますと謝罪の発表をした件ですが、総務省資料によれば、報道に関係ない写真パネルを放送したことは放送番組の適正な編集を図る上で遺漏があったとして、厳重注意の行政指導を行ったということになっています。

 そこで、この行政指導について、放送局に報告を要請した記録は残っておりますが、電波法八十一条による報告要請ですね。この番組が特筆されるのは、放送番組の適正な編集を図る上で遺漏があったために報道と関係なく放送されたパネルが、当時の安倍官房長官、現在の安倍総理だったことがあります。

 この案件がこれまでと違って法律上の権限で放送局に要請を行ったというのは、これは安倍さんの、当時、官房長官記者会見が七月二十六日で、総務省の調査の結果を待つという発言もありましたが、安倍総理の案件だったから法律上の権限で放送局に要請を行ったというものではないのか、伺います。

鈴木政府参考人 ただいま御指摘の事例は昨年七月に発生した事案でございますが、その一カ月前、平成十八年の六月に、白インゲンマメを用いたダイエット方法という紹介番組がございまして、その中で実際の健康被害が発生いたしまして、総務大臣から警告という最も程度の高いといいますか重い行政指導を行って、再発防止を強く要請したところでございます。

 にもかかわらず、わずか一カ月後に御指摘の番組で同様の事例が起きたわけでございまして、その会社の番組問題への真摯な取り組みに疑義があるということで、電波法八十一条に基づいて報告を求めたものでございます。

吉井委員 放送の問題なんでしょう。だから、放送法五十三条の八で資料の提出を求めるという話ならわかるんですが、さっきから言っておりますように、電波法八十一条を使って、放送番組内容に報告要請を行ったというのが私は問題の中心点だと思うんです。

 放送法で行政指導あるいは処分をするのに、電波法八十一条、これはだれが考えてもおかしいんですよ。放送法にも資料提出の権限が規定されているのに、なぜ放送法にかかわる問題なのにこれを使わないで電波法なのか。重ねて伺います。

鈴木政府参考人 先ほど来お答え申し上げておりますとおり、電波法八十一条も放送局を含む無線局の適正運用について確保するためのものでございまして、あわせて、先ほど来申し上げておりますように、放送法に基づくものは強制力を伴う資料提出ということでございますので、あえてこの場では強制力を伴わない電波法に基づく報告を求めたものでございます。

吉井委員 そんな曲解を言っちゃだめなんですよ。だから、さっきNHK五十年史でも書かれていることを紹介しましたが、もともと半世紀前の立法趣旨は、「業務報告に名を借りて政府が放送番組の内容や局の編集方針その他に不当な干渉をすることができないよう規定の趣旨を明確にした」として、「資料の提出」に変えたんですよ。最初は「報告をさせること」だったんです。しかし、この法文を「資料の提出を求めることができる。」と変えたんですよ。だから、その点ではあなたの言っている話は全く違う話なんです。

 大臣、放送法の資料提出権限というのは今言ったとおりのことなんですが、報告という名で「政府が放送番組の内容や局の編集方針その他に不当な干渉をすることができないよう規定の趣旨を明確にした」というのが放送法のこの部分の趣旨なんです。それを電波法の報告請求で放送番組内容についての報告を求めるというのは、これはまさに放送に政府が圧力を加える脱法的手法ということになってくるんじゃないですか。

菅国務大臣 先ほど来の委員の御指摘となかなかかみ合わない部分というのは、電波法の中でも放送局に対して当然報告を求めることができるということになっていますので、そこについてやはり私どもと委員との間でなかなか意見のかみ合わないところかなというふうに思っています。

吉井委員 電波法で言っているというのは、無線免許を与えているわけですよ、その趣旨から反していることについての内容であって、混信が起こるとか違法な電波の発出とか、そういうことを規制するために必要な報告を求めるんです。

 放送法の方は、放送の内容について資料提出を求めるんだが、報告を求めることにしなかったのは、政府権力の介入を阻止するということから、これは当時の自民党の幹部の方がちゃんとそれを趣旨説明してやっておられるんですよ。

 安倍官房長官が当時の記者会見で、総務省の調査結果を待ちたいと発言して総務省調査を求めたので、電波法八十一条に基づく法律上の調査が必要になってきた。しかし、放送法上では資料要請できないので、脱法的に電波法の報告要請、これを使ったというのが結局考えられる経過なんですよ。

 私、この間の総務委員会で、OECD諸国のほとんどが独立規制委員会で放送行政を所管しており、放送局への政治介入を防ぐための工夫としてそうした形態を整えているということを指摘しました。日本では、政党人である総務大臣が、総務大臣の独任制のもとで放送局の番組チェックは日常化している事態、冒頭に参考人からも報告がありましたように、随分たくさんのチェックが行われているんですよ。

 やはりこういうことは国民の放送に対する信頼が失われていくことになりますし、また法文上も、大臣が放送番組の内容を判断する条項を加えるような、そういう今回の放送法の改正案などは、これはまず衆議院段階でやはり撤回をされる、そういうところへ本来考えていくべきものだということもあわせて申し上げまして、時間が参りましたので、質問を終わります。

佐藤委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正です。

 最後になりますが、ひとつよろしくお願いします。

 まず最初に、財団法人テレコムエンジニアリングセンター、いわゆるTELECなるものについて聞いておきたいと思います。

 TELECは昭和五十三年に設立されております。当時の名称は財団法人無線設備検査検定協会というふうに聞いておりますが、この財団の設立以降、今日までの沿革について、まず説明願いたい。

森政府参考人 財団法人のテレコムエンジニアリングセンターは、昭和五十三年六月、無線機器の検定等を行うことによって、電波の有効利用と電波利用秩序の維持、確立に寄与することを目的として設立されました公益法人でございまして、設立当時は財団法人無線設備検査検定協会と称しておりました。

 同法人は、増大する電波利用のニーズに対応し、利用者利便の向上を図るため、当時、郵政省で行われておりました電波の型式検定業務などを国にかわり行う法人として業務を開始したところでございます。その後、昭和五十六年でございますが、国は、今後、携帯電話などの急速な発展が見込まれることから、無線局の増大に対しまして、一々の落成検査を要する免許手続では限界が見えてきたということで、免許手続の簡素合理化、利用者利便の確保、民間能力の活用という観点から、国の事務代行として指定証明機関が認証業務を行う指定証明機関制度を設けたところでございますが、当時の考え方といたしまして、この指定基準として、公正中立性を担保するためには公益法人要件が課されておりますので、このテレコムエンジニアリングセンターの前身が本制度の受け皿となって業務を開始いたしました。

 その後、平成十年には、財団の名称を現在のテレコムエンジニアリングセンターに改めておりますが、さらに、平成十三年になりまして、制度が変わりまして、指定証明機関の指定基準における公益法人要件が撤廃されまして、この認証業務への民間参入が可能になりましたので、テレコムエンジニアリングセンターはほかの民間企業と並んで、公益法人ではありますが、認証業務を継続したということでございます。そして、平成十六年、さらに制度が変わりまして、国の事務の代行としての指定証明機関制度から、さらに国の事務代行性のない登録証明機関制度に変わりましたわけでございますが、その段階でもこのTELECは民間企業と競争しながら認証業務を継続して実施をしております。

 現在、これらの長い経験と実績を生かしまして、利用者ニーズに対応する点も踏まえまして、同法人は約五〇%の認証業務のシェアを確保しておりますほか、年間の認証件数が非常に少ない、すなわち認証にコストを要するような無線設備についてはこの法人のみが実施しているという実態もございます。また、同法人は認証業務の経験、設備を生かして、新たな無線設備の測定技術、試験技術の研究開発業務なども実施しておりますし、本日御審議いただいておりますMRA法に関しましては、平成十八年九月、欧州向けの認証機関として登録を行っておりまして、現在、二社登録を行っている中の一社として認証機関としての活動を継続している、そして今日に至っているというのが現状でございます。

重野委員 そこで、このテレコムエンジニアリングセンターが発足をして、昭和五十三年から平成十七年まで、どういう歩みをしているかというのを見たんですが、私はちょっと、何でこうなったのかなと思ったことがあります。それは、例えば、昭和五十六年に大阪出張所が開かれた、昭和五十八年に札幌支所、小金井試験所、岩岡試験所、昭和五十九年に仙台、名古屋、新潟、福岡支所、こういうふうにあるんですね。ところが、そういう開かれた出張所あるいは支所が、そう時間もたたないのに、次々に廃止をされるんですね。そして、調べていきましたら、大阪出張所は開かれて、まだ廃止されたという記述はないのでありますが、松戸試験所と大阪出張所だけが廃止されていなくて、その他は、開かれたけれども、みんな平成十五年までに廃止される。これは一体どういうことなのかな。

 専従の役員さんがどうなっているのか調べてみましたら、昭和五十三年当時の役員を見ますと、常勤役員は一人なんですね。ところが、平成十八年九月十六日現在になりますと、常勤役員が四名にふえているんですね。これはもちろん、いずれも当時の郵政省の方々がみんななっておるので、一体どういうことなのかなというふうに思うんですが、どういうふうに説明いたしますか。

森政府参考人 三点ほどあったと思います。一点目は、事務所の開設あるいは廃止ということでございますが、これは、認証業務のニーズに応じてどんどん開設する、昭和五十三年にこの財団ができておりますけれども、昭和五十六年、先ほど申しましたように、これから携帯電話を含めて無線のニーズが非常に高まっていくだろうということで、全国的にもこういった業務を開かなきゃいかぬということでニーズに応じて開設をしていって、後、統合等も繰り返していったということのように理解をしてございます。

 それから、もう一つの役員でございますが、設立当時は十名の役員でございまして、当時の郵政省からの常勤者といいましょうか、残りは全部兼職でございますけれども、参っておりますのは一名でございました。現在は理事十二名のうち四名が当時の郵政省からの退職者でございまして、一応三分の一以内という基準は満たしておるわけでございますけれども、数としてはそのようなことになっております。どうしてそうなっているかということにつきましては、やはり非常に無線の専門性を要する公益法人でございますので、そうした経験、知識を非常に有効に活用する必要があったということからでございます。

重野委員 出張所とか支所とかがニーズに応じて開設されていった。では、逆に、そういう支所あるいは試験所というものが廃止をされていったということは、ニーズが減少したというふうに単純にとらえていいんでしょうか。

 今、電波というのは、限られた資源、電波の有効活用、こういうふうな形で、多様な、あるいは多彩な活用の仕方がむしろ広がっておるという中で、こういうふうに次から次にそういう施設が廃止されていくというのはどうも合点がいかないんですね。もっとわかりやすく説明してくれませんか。

森政府参考人 一方では、高まる電波利用ニーズに適切に対応するという観点と、他方では、財団法人としての業務の効率化、合理化を促進するということの上のバランスに立って、一つの経営判断として、利用者の利便を阻害しない形を確保しながら業務の存続、発展を図る上で、このような形態になったのではないかと理解しております。

重野委員 そういうふうな説明をしますと、いわゆる常勤役員が設立当時一名から現在四名、これはちょっとつり合わないんじゃないですか。

森政府参考人 つり合わないという意味合いをいまいち理解していないかもしれませんけれども、当時はトータル十名の理事で発足して一名、現在は十二名のうち四名ということで、割合からすると十分の一から十二分の四ということでございますけれども、業務が非常に拡大しておりますために理事の必要性が増して理事の数をふやしたという中で、特に専門性を要する分野のニーズが高かったので郵政省OBを迎えた、このように御理解をいただければ御納得いただけるのではないかと考えております。

重野委員 支所だとか出張所だとか試験所だとか、そういうものが平成一年ごろまではずっとふえていくわけですよ。業務がふえるからそういう施設がふえていくんだろう、納得しますね。しかし、今の局長の説明では、業務がふえているんだけれども、施設は平成八年からはずっと廃止廃止廃止じゃないですか。そこのところの説明がつかないんじゃないですか。

森政府参考人 業務はふえておりますけれども、一方で、先ほど経緯のところで申しましたように、昔はここがほとんど独占的にやっていたような業務につきまして、民間参入がどんどん認められたということになりますと、トータルの業務が拡大するとしても、ここの財団がとる分は減っていったりするかもしれませんけれども、拡大するとしても、やはりそれなりの合理化、効率化を図っていく、近代化していくという中で、支所は廃止しても、あとはマンパワーで乗り切っていく、こういうことではなかったんだろうかというふうに理解しております。

重野委員 どうもそこら辺が整合性が欠けていると思うんですね。

 今言うように、常勤の理事さんが四名おられますよ。理事長と専務、常務、理事、これが四名専従ですね。仕事がどんどん勃興していくというかふえる段階では、常勤の方は一名だった。そこのところをどう説明するんですかということを僕は聞いているんですね。

 だから、民間が参入してきて、民間がやると言えば、それだけ協会の守備範囲というのは狭まるわけですね。そうすると、役員体制とふつり合いな形になっているじゃないかという私の指摘は的外れな指摘になるんでしょうか。

森政府参考人 御趣旨が理解できないわけでもございませんけれども、設立当時はここの団体がほぼ独占的にやるということであっても郵政省から一人しか行っていなかったということとの矛盾を御指摘かもしれませんが、その後、たびたびの制度の変遷を経て、競争も入り、公益法人要件も外れ等々の過程の中で、現在、十二名中四名が入っておるわけです。

 しかし、今後はどうなるかわからないと言うとちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、この認証業務については非常に変化が激しく、先ほどの法案の審議の中にもございましたように、外国からの認証機関がどんどん入ってきております。この電波関係では九社ございまして、一社がことし三月に撤退いたしました。現在、八社残っている中の一つとしてございますが、半分ぐらいが外資系でございます。非常に競争が厳しくなるという中で戦っていかなければいけないという状況にもございますので、単なる理事の数云々を超えた問題にも直面しておりまして、今後予断を許さない状況にもあろうかと思いますけれども、それぞれの理事は結構頑張ってくれていると思っておりまして、要は、この法人が与えられた職務をしっかり果たしていくことが重要ではないかというふうに考えております。

重野委員 まだ聞きたいんですが、まだほかに質問を準備していますので、そこら辺でとめておきます。

 次に、一九七八年設立当時、郵政省には飯倉分館なる施設がありました。まず、それを確認しておきたいと思うんです。また、現在、この飯倉分館なる施設の所有あるいは管理形態はどのようになっているのか、お知らせください。

森政府参考人 昭和五十三年当時、郵政省の飯倉分館は存在しておりましたが、現在、この施設の管理運営は日本郵政公社が行っております。

重野委員 この郵政省の飯倉分館内、つまり、この財団が設立したときに事務所は郵政省の飯倉分館内にあったんですね。

 財団がそういうところに事務所を持つということは、その背景に何があるのか、いろいろなことをやはり考えさせられるわけですよね。財団設置を許可する行政行為の中に、そういうことまで含んで許可をするというようなことではないんだろうと私は思うんですね。なぜこういうふうなことになったのかという点については、この際明らかにしていただかないと困るんです。これについて、大臣、事をよく承知しておりますか。

菅国務大臣 財団法人テレコムエンジニアリングセンターの前身であります財団法人無線設備検査検定協会は、無線機器の試験、検査、検定、性能証明等を行うことにより、無線機器の性能、品質の向上を図る公益性の高い法人であることから、昭和五十三年から五十八年までの五年間、飯倉分館の使用許可を与えたものである、このように聞いております。

重野委員 調べてみますと、この財団法人は、設立後十二年間、飯倉分館内に事務所を置いていたというふうに私は理解をしました。間違っていたら指摘をしてください。

 公益法人とはいえ、民法上は民間法人であるこの法人が、そういう期間そこに存在をするということは、私はやはりいかがなものかと思わざるを得ないんですね。

 一体どういう仕組みならこういうことが許されるのか、あるいは、これは随分昔の話でありますけれども、今後こういう設立許可があり得るのか、その点についてお聞かせください。

森政府参考人 まず、事実関係でございますけれども、飯倉分館に入居しておりましたのは、昭和五十三年六月から昭和五十八年八月までの五年間でございます。これが一つでございます。

 当時、どうしてそのようなことで入居したのかということでございますが、当時の入居形態といたしましては、所有者が国でございますので、国有財産法の適用がございます。国有財産法に基づきまして、国有財産使用許可書の発行を受け、さらに使用物件の国有財産使用料を払った上で、いわば適法、適正に入居したということではございます。当時の財団については、このような形態が当時の状況として非常に多かったというふうには理解をしております。

 では、現時点において、今後も含めましてそのようなことが可能だろうかということにつきましては、昨今の公益法人改革の議論等々を踏まえれば、あるいは官から民への流れということを踏まえれば、役所の建物の中に、幾ら似通った業務であっても、あるいは適正な料金、対価を払っていても、優先的に入るというような疑いが生じることであれば、これはできないことになるんではないかというふうに考えております。

重野委員 では、ちょっと視点をかえまして、この法人が設立許可を受けた当時、役員の構成はどうなっていたのか、あるいは役職の兼任状況はどうなっていたのか、あるいは常勤役員となる方のその前の役職状況がどうであったのか、そこら辺をひとつ明らかにしてください。

森政府参考人 設立当時につきましては、先ほど申しましたように、会長一名、専務理事一名、理事は八名ということでございます。

 そのうちの前職、兼職の状況でございますけれども、専務理事一名を除きまして、ほかの方は全部兼職でございます。

 兼職の業務の内容は、会長は、当時の宇宙開発委員会の委員長代理の方でございました。ほかの理事の方について簡単に申しますと、電電公社の監事、民放連の専務理事、電子機械工業会の専務理事、NHKの技術本部長、東芝の電気通信事業部長、電気事業連合会の理事、KDDの常務取締役、電電公社の施設局長という方々でございまして、これらの方がすべて兼職ということでございます。

 専任の専務理事の前職は、郵政省電波監理局監視部監視技術課長でございます。

重野委員 それが設立当時ですね。

 そこで、今度は、現在の役員中、国家公務員退職時の官職がいかなるものであったのか。私も調べてみたんですが、退職時に郵政官僚であった方が五人いるということであります。その点をひとつ明らかにしてください。

森政府参考人 理事十二名中四名をまず先に申し上げますと、理事長につきましては郵政省技術総括審議官、専務理事につきましては郵政省関東電気通信監理局長、常務理事につきましては郵政省通信政策局総務課調査官、常勤理事一名につきましては郵政省通信総合研究所標準測定部測定技術課長でございます。

 残り一名の監事、非常勤でございますが、監事につきましては、郵政省近畿電気通信監理局長でございます。

重野委員 先ほど局長の説明では、この財団だけが仕事をやっているんじゃなくて、外国の進出もあって、仕事の幅、ボリュームは減っておるということ。そういう一方の状況があって、一方では、結成時が一名だったのが現在こういうふうになっているというのは、これはちょっと説明がつきにくいのではないのかなというふうに思います。

 今、郵政省だけじゃありませんよ、もろもろの各省において、そのあたりが非常に厳しく問われているという客観的な条件がある中でこういうことがあるということは、これは私はやはりいかがなものかというような感じがするんですが、局長、そこら辺はどうですか。

森政府参考人 前職を生かしながら、その経験、知識を十分活用するということは、世の中的に大変求められているということも言えるのではないかと考えております。

重野委員 局長としてはそう言うんでしょうけれども、ちょっとやはりこの流れからして、私のきょうの質問の趣旨からしてぴたっとくる答弁じゃありませんね。そこら辺は、やはり私はもっと慎重に対応していくべきだということを指摘しておきたいと思います。

 そこで、内容ですが、本案のもととなっております相互承認に関する日本国と欧州共同体との間の協定、これは二〇〇一年四月に署名されております。そして、二〇〇二年の一月に発効している。そこで、このときの相互承認国、これは何カ国だったんでしょうか。

草賀政府参考人 お答えいたします。

 二〇〇二年一月に発効いたしました時点で、ECの加盟国数は十五カ国でございます。これが対象でございました。

重野委員 二〇〇四年の五月一日、中東欧十カ国が欧州連合に加盟しました。欧州共同体は現在二十五カ国となっております。また、この一月から二十七カ国となるわけですね。

 そうなりますと、本案に言う欧州共同体とは何カ国を指すのかということが一つです。つまり、我が国から欧州に対する輸出に関する協定上の対象国、それは二十五カ国と見ていいのか。また、その反対に、日本に対する輸出国、これは同様と見ていいのか。そこのところの説明をお願いします。

草賀政府参考人 日本からECに対しまして輸出を行う際の日・EC・MRAの対象国は現在二十七カ国でございまして、現在のECの加盟国数と同じでございます。

 他方で、日本が輸入を行う際の日・EC・MRAのEC側の国の数につきましては、対象国としては十五カ国ということで、日・EC・MRAが発効したときと同じでございます。

重野委員 それはどういう理屈でそういうふうになるんでしょうか。ちょっと説明してくれませんか。

草賀政府参考人 日・ECのMRAの協定の第十二条におきましてその地理的適用範囲を定めておりますが、これによりますと、欧州共同体を設立する条約に定める条件のもとに適用される領域である、こうなっております。したがいまして、現在、二十七カ国がその適用範囲でございますので、そのとおりということだろうと思います。

 そのもとで、日本からの輸出に際しましては、したがいまして、新規加盟国を含む二十七カ国すべてにつきまして、日本における適合性の評価結果につき、受け入れる義務が生じてまいります。

 他方におきまして、日本へのECからの輸出でございますが、これは、この協定上の相互承認を認めるためには、相手国におきます基準認証制度及び技術水準が日本と同等であるということが確認されることが必要でございます。さらに具体的に申し上げますと、新規加盟国の指定当局などについては、EC側からの要請を受けてそのような確認がなされて、そしてその上で協定の附属書に記載される必要がございます。

 そういう状況下で、現在までのところ、EC側から附属書の改正の正式な要請がなされておりません。したがいまして、日本への輸入につきましては、いまだに十五カ国のみが対象となっている、こういう状況でございます。

重野委員 以上で終わります。

佐藤委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 特定機器に係る適合性評価の欧州共同体及びシンガポール共和国との相互承認の実施に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

佐藤委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 この際、ただいま議決いたしました法律案に対し、鈴木淳司君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。鈴木淳司君。

鈴木(淳)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 なお、案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。

    特定機器に係る適合性評価の欧州共同体及びシンガポール共和国との相互承認の実施に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。

 一 情報通信分野を始めとする我が国の国際競争力の拡充強化に向けて、相互承認協定の締結の拡大を図るとともに、産学官連携して国際標準化の策定、情報通信分野等の技術者の育成に積極的に取り組むこと。

 二 今回の改正により、今後締結される相互承認協定への対応が政令にゆだねられることから、利用者のニーズに十分配慮しつつ、適合性評価手続の円滑化等に努めること。

 三 現在行われている相互承認の実施状況を十分に踏まえ、認証に係るコストの低減、認証サービスの質的充実等利用者の利便性の向上を図り、国際的にも信頼される認証機関の育成に努めること。

 四 電気通信機器に関するシンガポール共和国との相互承認協定の運用がいまだに実施されていないことから、相手国の関係当局と協力して早期の運用開始に努めること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

佐藤委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

佐藤委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、総務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。菅総務大臣。

菅国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重してまいります。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

佐藤委員長 次に、本日付託になりました内閣提出、参議院送付、消防法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。菅総務大臣。

    ―――――――――――――

 消防法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

菅国務大臣 消防法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 大規模な建築物その他の工作物における地震等の災害の防止を図るため、当該工作物における自衛消防組織の設置及び地震等の災害による被害の軽減のための管理体制の整備を義務づける等の必要があります。

 次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、多数の者が出入りするものであり、かつ、大規模な防火対象物の管理について権原を有する者は、災害発生時の応急活動を実施する自衛消防組織を置かなければならないこととしております。

 第二に、地震等の災害による被害の軽減のため特に必要がある建築物その他の工作物の管理について権原を有する者は、防災に関する知識を有する者に、当該工作物における災害による被害を軽減するため必要な事項を定める消防計画の作成、当該消防計画に基づく避難の訓練の実施その他防災管理上必要な業務を行わせなければならないこととしております。

 以上が、この法律案の提案理由及び内容の概要であります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。

佐藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十九分散会


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