衆議院

メインへスキップ



第7号 平成19年12月4日(火曜日)

会議録本文へ
平成十九年十二月四日(火曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 渡辺 博道君

   理事 石田 真敏君 理事 今井  宏君

   理事 馳   浩君 理事 林田  彪君

   理事 山口 俊一君 理事 黄川田 徹君

   理事 原口 一博君 理事 桝屋 敬悟君

      秋葉 賢也君    新井 悦二君

      井澤 京子君    石崎  岳君

      岡本 芳郎君    鍵田忠兵衛君

      亀岡 偉民君    木挽  司君

      実川 幸夫君    関  芳弘君

      田中 良生君    土屋 正忠君

      土井  亨君    葉梨 康弘君

      萩生田光一君    萩原 誠司君

      橋本  岳君    福田 良彦君

      古屋 圭司君    松本 文明君

      安井潤一郎君    小川 淳也君

      逢坂 誠二君    北神 圭朗君

      玄葉光一郎君    田嶋  要君

      寺田  学君    福田 昭夫君

      森本 哲生君    谷口 和史君

      塩川 鉄也君    重野 安正君

      亀井 久興君

    …………………………………

   総務大臣         増田 寛也君

   総務大臣政務官      秋葉 賢也君

   総務大臣政務官      岡本 芳郎君

   政府参考人

   (内閣官房郵政民営化推進室長)          木下 信行君

   政府参考人

   (総務省情報通信政策局長)            小笠原倫明君

   参考人

   (桐蔭横浜大学法科大学院教授・コンプライアンス研究センター長)      郷原 信郎君

   参考人

   (日本放送協会経営委員会委員長)         古森 重隆君

   参考人

   (日本放送協会会長)   橋本 元一君

   参考人

   (社団法人日本民間放送連盟会長)         広瀬 道貞君

   参考人

   (放送倫理・番組向上機構理事長)         飽戸  弘君

   総務委員会専門員     太田 和宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月四日

 辞任         補欠選任

  関  芳弘君     安井潤一郎君

  土屋 正忠君     亀岡 偉民君

  萩原 誠司君     新井 悦二君

  小川 淳也君     北神 圭朗君

同日

 辞任         補欠選任

  新井 悦二君     萩原 誠司君

  亀岡 偉民君     土屋 正忠君

  安井潤一郎君     関  芳弘君

  北神 圭朗君     小川 淳也君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 放送法等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百六十六回国会閣法第九四号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

渡辺委員長 これより会議を開きます。

 第百六十六回国会、内閣提出、放送法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、桐蔭横浜大学法科大学院教授・コンプライアンス研究センター長郷原信郎君、日本放送協会経営委員会委員長古森重隆君、日本放送協会会長橋本元一君、社団法人日本民間放送連盟会長広瀬道貞君及び放送倫理・番組向上機構理事長飽戸弘君、以上五名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと思います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、各参考人の方々からそれぞれ十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず郷原参考人、お願いいたします。

郷原参考人 桐蔭横浜大学の郷原でございます。

 今回、放送法の改正が審議されておりますが、この問題に関して重要な題材となると思われますTBS「朝ズバッ!」の不二家関連報道の問題について経過を御説明した上で、私の放送法の改正に関する意見を申し述べさせていただきたいと思います。

 まず、このTBS「朝ズバッ!」の問題、一月二十二日に不二家賞味期限切れチョコレート再利用疑惑をこの番組で放送し、そして翌日、この問題で、みのもんた氏が、古くなったチョコを集めてきて溶かしてつくり直すような会社は廃業してもらいたいというふうに発言した、ここに端を発しております。

 私は、一月二十八日に不二家信頼回復対策会議が立ち上げられて、その議長としてこの問題にかかわるようになりました。

 そして、この会議の活動の中で、この資料をごらんいただきたいのですが、資料一としてつけております、「朝ズバッ!」における捏造疑惑というのを私どもで把握したわけです。この別紙資料二の最後のところに手書きのメモがあります。発端は、このメモです。

 TBSの「朝ズバッ!」の方から不二家に対して事実確認を求めてきた内容の中に、カントリーマアムについて、賞味期限が切れていたので捨てようとしたら上司に怒られた、それを再度新しいパッケージに入れて製品化していたという証言についての事実確認を求めるというようなことがありました。

 それに関して、実際に「朝ズバッ!」で放映された内容と比較いたしますと、全く同じような言葉が、その証言そのものが放映されている。それがチョコレートに関する再利用疑惑として放映されている。そこのところから、これはカントリーマアムに関する証言をチョコレートに関する証言とすりかえたのではないかという疑惑が表面化したわけです。

 そして三月二十五日に、この件に関してTBS側の担当者との間で会談を持ちました。この中で、実際にカントリーマアムに関するそのような証言が存在する、証言ビデオが存在するということを確認しました。そしてその後、三月三十日に信頼回復対策会議の報告書を公表いたしまして、この中で捏造疑惑の存在を指摘したわけです。そして、その後の経過はここに書いてあるとおりであります。

 その後、私の方で、この問題に関して、TBSの方に公開質問状を送って回答を求めたり、そして、BPOの検証委員会が五月に立ち上げられて、このような捏造問題に関して放送業界の方で自主的に審理を行う、そういうスキームがつくられました、そこで、このBPOの検証委員会に対して、この「朝ズバッ!」問題についての審理をしていただきたいという申し立て、審理要請をいたしました。この審理の要請についても、ここに資料を添付しております。

 そして、この問題に関しては、六月の二十日、衆議院の決算行政監視委員会で、広瀬民放連会長そして私も含めて参考人質疑が行われ、この中で、資料番号四なんですが、この捏造の有無の問題だけではなくて、事後的にTBSの方できちんとコンプライアンスが行われたのか、検証が行われたのかという点を審理していただきたいということを申し上げた。そして、それについて枝野議員の方から、そういうことについてBPOの任務の中にそれが入っているのかということが質問されました。それに対して広瀬参考人の方からは、そういったことも任務の中に入っているという趣旨の発言が行われました。

 ということで、私は、この問題については、TBSの「朝ズバッ!」の放送の中に捏造があったかなかったかという点ももちろん重要な問題ではありますが、それに加えて、その問題が指摘された後に、放送事業者としてきちんとその事実に向き合ったのか、検証が行われたのかという点が極めて重要な問題だというふうに認識してまいりました。

 そして、この問題については、八月の六日にBPOの検証委員会の見解が出されまして、この中で、捏造の有無については否定する結論、その上で、放送倫理上重大な問題があるということが、その他の点について幾つか指摘されました。

 その中で、この検証委員会の方では、私の方から指摘しておりました、このカントリーマアムの証言のチョコレートの証言へのすりかえの問題に関して、TBSのディレクターがカントリーマアムをチョコレートと誤解していた、ですから、実際に、そのカントリーマアムに関する証言がチョコレートに関する証言であるかのように使われた事実はあるけれども、それは意図的なものではない、このような認定が行われました。

 そして、それを受けた形でTBSの検証委員会が立ち上げられまして、十一月十六日にその報告書が公表されました。この中でも、このBPOの検証委員会と同じように、カントリーマアムの証言ビデオをチョコレートの証言ビデオとすりかえた事実はあるけれども、これはカントリーマアムをチョコレートと誤解していたことによるものだ、意図的なものではないという認定が行われております。

 そこで、このTBSの検証委員会の報告書の内容について私の方で精査いたしました。そうしたところ、先ほど申しましたように、三月二十五日にTBS側と不二家側との間で会談が行われております。この会談の際にTBS側が発言した内容が、TBSの検証委員会の認定事実と明らかに矛盾するということが発見されました。

 そこで、十一月二十八日に再度、公開質問状という形でその事実を指摘して、TBSの方に回答を求めたものです。その回答期限がきょうということになっております。

 要するに、その矛盾と申しますのは、三月二十五日の会談の中では、TBS側は、カントリーマアムに関して、なぜチョコレート工場なのにクッキーが戻ってくるんだろうという証言をその証言者が行っているということを明確に述べております。ということは、そこで、その証言の中でカントリーマアムはチョコレートではないということが明確に示されているということになります。そうだとすると、そのテープを編集したTBSの担当ディレクターがカントリーマアムをチョコレートと誤解していたということはあり得ないということになります。ということは、すりかえが意図的なものではないという最終的な認定か、あるいは三月二十五日のTBS側の会談における発言か、どっちかがうそだということになります。

 私は、この問題、捏造の有無も極めて重要な問題だと思いますけれども、このように社会的にも非常に関心を集めた重大な、重要な問題に関して放送事業者の対応の中でうそがあったということが、それ以上に重要な問題ではないかと考えております。

 そして、もう一つ大きな問題は、この問題がBPOの検証委員会が立ち上げられて初めて審理の対象とされた事案です。BPOの検証委員会で審理が行われたにもかかわらず、このようなTBS側の説明のうそが全く見抜けなかったということでは、放送業界の自浄作用を発揮させるために設置されたBPOの検証委員会に、現状では十分な期待ができないのではないかと言わざるを得ないと思います。

 私は、放送法の改正の問題に関しては、行政の放送事業に対する介入は極力避けるべきだと思っておりますし、この改正案の中の再発防止計画の提出の求めに関する部分、これをそのまま成立させることには反対です。しかし、だからといって何もしなくてもいいというわけではない、やはり放送事業者の自浄機能を発揮させるためにもっとBPOの検証委員会が機能しなければいけない。機能させるための方策を十分に講じた上で、このような行政の介入を認めるような内容の法案は削除するという方向が望ましいのではないかと思います。

 とりわけ、過去にいろいろ、放送事業者の不祥事と申しますか、いろいろな問題が発生しております。例えば、同じTBSでは、オウム事件の際の、オウム側に坂本弁護士の証言ビデオを見せたという問題、これがその後、坂本一家殺害事件の一つの原因になったというふうにも言われております。この事件に関しても、最大の問題は、そういうような事実があるんじゃないかという疑いが向けられた後も、一切そのことを明らかにしようとしなかった、それについて事実の解明に協力しなかったということが問題にされたわけです。今回の問題に関しても、捏造の部分も非常に重要な問題ですが、それに加えて、問題が提起された、指摘されたときには、きちんと正直に話す、正直に事実を明らかにするという態度を貫いていただきたいと思います。

 今、いろいろな業界で、いろいろな企業不祥事が表面化しております。そして、最近では、データの捏造とか隠ぺいとか、そういったこと自体が、被害を生じさせたこと以上に重大な社会問題になります。そういう追及を行っているマスコミの側が、自分たちが何か問題があると指摘されたときに事実にきちんと向き合うということでなければ、社会的な信頼は確保できないのではないかと思います。そういった点を、ぜひ、この放送法の改正の審議の中で御考慮いただきたいと思います。

 以上です。(拍手)

渡辺委員長 ありがとうございました。

 次に、古森参考人、お願いいたします。

古森参考人 おはようございます。NHK経営委員会委員長の古森でございます。

 本日は、経営委員会の委員長として意見陳述の場を与えていただき、まことにありがとうございます。

 NHKの経営委員は、国会の同意を得た上で、内閣総理大臣より任命される重職であります。経営委員会は、公共放送であるNHKの最高意思決定機関であり、委員各自は、その職責の重要性、公共性を深く認識した上で、一連の不祥事により失われた国民・視聴者の皆様からの信頼回復、さらにはNHK改革の推進に全力で取り組んでいるところでございます。

 現在、国会で審議されております放送法改正案には、NHKのガバナンス強化を初め、NHKに関係する事項が多数盛り込まれていることを承知しております。以下、放送法改正案につきまして、私の意見を申し述べさせていただきたいと思います。

 まずはガバナンスの強化でございますが、NHKにおいては、三年前の不祥事以来、視聴者の信頼回復とNHK改革を最重要課題として取り組んでまいりました。しかしながら、現状はなお道半ばであると言わざるを得ません。

 かかる中、今回の改正案において経営委員会についてさまざまな機能の充実が盛り込まれましたことは、コンプライアンス体制を確立し、業務運営の健全化を図る上で大変有意義なものと考えます。また、経営委員の一部常勤化が図られましたことは、経営委員会の機能強化に資するものと思料しております。さらに、監査委員会を設けるとされていることにつきましては、より機動的監査の実現が可能になるのではないかと期待しております。加えて、外部監査の導入により、客観的な監査も担保されることと思料いたします。ほかにも、一層の情報公開や視聴者の意見を聴取するなど、新たな責務を課されていると理解しております。

 本改正により経営委員会の職責は一層重いものになると認識しており、改めて、経営委員としては気持ちを引き締めて法に定められた職責を果たしていかなければならないと決意を新たにしております。

 なお、経営委員会の機能をより一層発揮するためには、事務局の強化も必要であると思料しております。改正法に基づき、事務局強化のための規定整備が行われることを期待しております。

 番組アーカイブスのブロードバンドによる提供につきましては、アーカイブスが過去の受信料によって創出され蓄積された成果であり、いわば国民共有の財産であると認識しております。これを将来に継承し、利活用することで放送文化の発展に役立たせることは、公共放送の重要な役割の一つと理解しております。加えまして、二〇一一年以降のフルデジタル時代に向けて、NHKがどのような事業体を目指すかは新たな中長期計画の重要なポイントであり、ブロードバンドを通じてアーカイブス番組を直接国民・視聴者に提供することが可能となれば、将来のNHKの構想にも展望を開くものと期待しております。

 法改正が実現された後には、国民・視聴者のニーズを的確にとらえつつ、適切かつ積極的な取り組みがなされるよう、経営委員としても十分関心を払って努力してまいりたいと思っております。

 新たな国際放送の制度化については、グローバル化が進む中で、在外邦人への情報伝達にとどまらず、NHKの国際放送を充実し、対外情報発信力を強化していくことは、公共放送が担うべき重要な役割と認識しております。経営委員会といたしましても、さきに、NHKの国際放送は海外放送局と比べて大幅に立ちおくれている、この立ちおくれを挽回し、国民・視聴者の期待にこたえるべく、国際放送を強化するための具体的施策を示すべきとの見解を表明したところであります。今回の改正案により、外国人に向けた新たな映像国際放送を実施することは、こうした経営委員会の問題意識とも共通するものがあり、対外情報発信力の強化につながるものと思料しております。

 命令放送制度の見直しにつきましては、NHKの番組編集の自由により配慮した規定となっていると承知しております。NHKとしても、自主的な編集による放送実績を積み重ねてきておりますが、さらに視聴者の信頼を得るよう努力することが求められていると認識しております。

 また、再発防止計画の提出に係る行政処分につきましては、まず、番組の捏造は、放送の果たすべき使命、役割に照らして、あってはならない重大な問題であると認識しております。再発防止に向けては、放送界全体でBPOの機能強化による自主的な再発防止策に取り組んでいるところであり、行政処分の新設につきましては、本国会の場での十分なる御審議をお願い申し上げる次第でございます。

 以上、放送法改正案のうち、特にNHKに直接的に関係すると思われる部分について所見を述べさせていただきました。全体としていえば、基本的には今回の放送法改正の方向は妥当なものではないかというふうに思料しております。

 いずれにしましても、経営委員会は放送法に基づいて活動する組織であり、国会での審議を経て法が改正された暁には、その内容を踏まえ、公共放送の発展のため、NHKが国民・視聴者の皆様に信頼され、支持いただけるような組織になるよう、これまでにも増して全力で経営改革に取り組んでまいりたい所存でございます。

 現在、NHKにおきましては、来年度の収支予算、事業計画及び再来年度から始まる新たな中長期計画について検討を行っている段階でございます。いずれもNHKにとって極めて重要な計画であり、経営委員会といたしましても、執行部と緊密にコミュニケーションを図りながら、一致協力して、国民・視聴者の期待に沿えるよう、よりよい計画を策定すべく取り組んでまいる所存でございます。

 今後とも委員各位の格段の御指導をお願い申し上げます。

 以上であります。(拍手)

渡辺委員長 ありがとうございました。

 次に、橋本参考人、お願いいたします。

橋本参考人 おはようございます。NHK会長の橋本でございます。

 本日は、放送法改正案につきまして、NHKの意見を申し述べる機会を賜り、まことにありがとうございます。

 早速でございますが、放送法改正案のうち、NHKに関する事項につきまして、意見を申し述べさせていただきます。

 まず、NHKのガバナンスの強化についてでございますが、事業運営を健全でまた効果的なものにするよう律していくことは、あらゆる事業体にとって常に大切なことだと認識しております。今回の改正案に、NHKのガバナンスの強化のための施策としまして、経営委員会の監督権限の明確化や、一部経営委員の常勤化や監査委員会の設置等が盛り込まれているのも、こうした趣旨だと受けとめております。

 受信料を基本財源とする公共放送機関であるNHKの事業運営に当たりましても、効果的で効率的な経営を行うことはもちろん、国民の知る権利に奉仕するとともに、放送を通じた豊かな文化の発展に寄与する観点から、自主自律の姿勢を堅持し、公平公正な放送を実現していくことが不可欠であります。

 こうした観点からも十分に御議論をいただきまして、改正法が成立した上でも、経営委員会と執行部のそれぞれの役割と責任を十分に踏まえ、公共放送機関であるNHKにふさわしい、健全で効果的な事業運営を行ってまいる所存でございます。

 次に、テレビ国際放送の強化について申し上げます。

 改正法案では、外国人向けのテレビ国際放送の強化に向け、NHKの行う国際放送を外国人向けと邦人向けに分けることとされております。

 NHKでは、これまでも外国人向けのテレビ国際放送の強化に取り組んでおり、現在九一%の英語化率を来年度中には一〇〇%とするよう、取り組みを進めております。

 改正法のもとでのさらなる強化に当たりましては、番組内容の充実とともに、日本の国際放送として、海外の視聴者が放送を簡便に受けられる環境の整備が重要な課題であり、このために世界各地のメディア状況に応じたふさわしいやり方を考える必要があろうと思います。

 NHKはこの課題に積極的に取り組んでまいりたいと考えておりますが、このためには継続的、安定的な財源が不可欠であり、財源の確保が実施上の課題であると受けとめております。国内受信者からいただいている受信料は、海外の外国人のための放送に使うことにはおのずと限度があろうと考えております。今後、財源のあり方につきまして、幅広い視点から検討されなくてはならないと考えております。

 次に、命令放送制度の見直しについて申し上げます。

 現行の命令放送制度は、国の必要により設けられている制度であります。NHKは、日本で唯一の国際放送の実施主体として、従来から、命令部分も含め、自主的な編集のもとで国際放送を行ってまいりました。

 今回の改正案では、総務大臣の命令が要請となり、NHKの自主自律の姿勢に、より配慮された形になっているものと受けとめております。

 改正案が成立した場合には、総務大臣の要請について、その趣旨、内容をよく吟味させていただいた上でNHKとして判断していくことになりますが、自主自律の姿勢には基本的に変わりはございません。

 次に、NHKのアーカイブス番組の活用についてでございます。

 改正案には、NHKがアーカイブス番組をインターネットを通じ直接視聴者に提供することができるようにするなどが盛り込まれております。

 NHKはかねてから、これまでに放送して保存している番組等について、幅広く社会に還元していく考えを持ってまいりました。改正案の内容は、通信と放送の融合時代に合った適切な措置だと考えております。改正案が成立すれば、来年度中にサービスを開始できるよう、直ちに準備を開始する考えです。

 最後に、いわゆる再発防止計画の提出の求めにかかわる問題でございます。

 今回の改正案に盛り込まれた内容につきましては、行政機関が取材、制作の仕方に踏み込んでその是非を判断することで、編集過程そのものに関与することになりかねず、表現の自由が損なわれる懸念があると考えております。

 一方で、我々放送事業者は現実に発生するさまざまな事態にどう対処していくのか、これも放送界として厳しく問われていることも十分認識しております。

 ことし三月、BPOとNHK、民放連は、虚偽の内容の放送により視聴者に著しい誤解を与えた場合に、取材、制作のあり方や番組内容に関する放送倫理上の問題を放送事業者が自主的、自律的に解決し、再発を防止するための措置をとることで合意しまして、五月、そのための組織として、BPO内に放送倫理検証委員会が設けられました。

 NHKは、同委員会の活動に積極的に協力することによって、BPOの機能強化を図り、放送界全体としての自主的な責任の果たし方をさらに明確にしてまいりたいと考えております。

 以上、放送法改正案について意見を申し述べさせていただきました。

 三年前の不祥事以来、NHKでは、信頼の回復に役職員が一丸となって取り組んでおります。信頼の重要なバロメーターであります受信料収入も回復基調にございます。NHKでは、さらにみずからを律し、公共放送の使命達成に一層邁進してまいります。委員各位の御理解をお願い申し上げます。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

渡辺委員長 ありがとうございました。

 次に、広瀬参考人、お願いいたします。

広瀬参考人 民間放送連盟の広瀬でございます。

 今回、放送法の改正案が審議されることになりましたけれども、現在放送界は、デジタル化に象徴されますように、大変大きな変革期にございます。今の法律が現状に合わなくなっている部分が幾つかございます。

 例えば、デジタルでワンセグ放送というのが始まりましたけれども、ワンセグ放送を放送と位置づけた法律にはなっておりません。今回、これをはっきり位置づける部分が入っております。

 もう一つ、一般企業では早くから持ち株会社の制度ができております。しかし、放送局の場合には、大変影響力が大きいということもありまして、マスメディア集中排除原則との兼ね合いなど難しい問題があって、今のところ、そうしたシステムはございません。しかし、この問題も早急に解決すべきだと思います。

 この国会、決して長い会期じゃありませんけれども、忙しい中にこの放送法改正問題を取り上げていただいたこと、大変敬意を表したいと思います。

 まず、持ち株会社の問題ですけれども、現在、我が国では地上民放テレビが百二十七局ございます。大変小さな範囲の免許しか持っておりません。こうした放送局が多いために、例えばアナログをやめてデジタル化の準備をする、アンテナも立てていくというような場面になりますと、激しい競争を展開しながら結果として作業が進むということで、一年前に一斉に始まったデジタル化が既に世帯の九〇%をカバーするまでになっております。

 そうした地域密着の放送制度というのは大変長所も多いんですけれども、一方、経営基盤が弱いために、地域の報道だとか情報収集の活動だとか、思うに任せず、結果としてキー局に頼る部分が大きくなっております。持ち株会社の制度をつくって各ブロックで協力できるようにしていくことで、経営資源を生み出し、それで地域密着の番組をつくっていけるのじゃないか、これが今回の持ち株会社を導入する大きな動機じゃないかと思いますが、私たちはもろ手を挙げて賛成したいと思います。もちろん、これを機会にキー局が支配力を強めるということはあってはならないわけで、おのずからキー局の持ち株には制限があって妥当だと思います。

 ワンセグ放送でございますが、ワンセグ放送は思わぬ効果を発揮しております。すなわち、大変よくデジタル波が届くということで、フルのハイビジョンのデジタル放送はまだ比較的範囲がちっちゃいのでございますけれども、ワンセグにしますと遠くまで届きます。すなわち、災害時にはこれが一番役に立つんじゃないかという気がしております。早く制度化する必要があろう、制度化の場合には、サイマル放送を義務づけるんじゃなくて、独立編成をも認めていくべきじゃなかろうかという気がしております。

 そういう放送法改正ですけれども、民放連としては、ただ一点、賛成しかねるのが、行政処分の導入でございます。何ゆえこういう制度が出てきたか。一〇〇%、民放の番組づくりの不始末から出てきておりまして、私たちの責任であるわけでございますけれども、事は民主政治のインフラに関することでございまして、この点については反対せざるを得ません。

 私たちは、反省するだけじゃなくて、どうすれば再発を防止できるかということで、BPOの抜本的強化を図りました。これがきちっと定着していけば、総務大臣と電波監理審議会で行政処分を決めていくという改正法の中身よりも、もっと適切な、かつ民主主義のインフラを守っていく、そういうシステムができるんじゃなかろうかというふうに思っております。この問題は、この後も御説明する機会があるかと思います。

 最後に、NHKの問題について触れますならば、私たちは、NHKと民放の二元体制が、日本の放送文化を守り向上していく上で大変有効なシステムだと思っております。そういう意味で、今回の経営委員会の強化策についても、私たちは大変大きな関心を持って見ております。この二元体制を損なうことのないような改正ができますよう祈念しております。

 ありがとうございました。(拍手)

渡辺委員長 ありがとうございました。

 次に、飽戸参考人、お願いいたします。

飽戸参考人 BPOの理事長を拝命いたしております飽戸と申します。きょうは、発言の機会を与えていただきましてありがとうございます。

 私は、本来、社会調査を専門としております研究者として、テレビについても三十数年にわたって研究をしてまいりました。そうした御縁で、BPOの中にあります放送と人権等権利に関する委員会、BRCの委員を創設当初から昨年の三月まで九年間にわたって務めさせていただきました。また、ことしの四月からBPOの理事長を務めております。

 さて、総務省が国会に提出されました放送法の改正案において、虚偽の番組が放送され、視聴者に著しい誤解を与え、国民生活に大きな影響を与えた場合に、総務大臣が放送事業者に再発防止計画の提出を求めることができるという新しい条項があることを承知しております。私自身は、放送の内容にかかわる問題に総務大臣が大きな権限を持つことは、憲法二十一条に定められた表現の自由の観点から大きな問題があると考えております。

 その一方で、現在のテレビを中心とする放送にさまざまな問題があり、また、誤りも生じがちであることは否定できません。放送で生じた問題は個々の放送事業者がみずからの責任において解決することを第一義とすべきですが、みずからを律するといっても、簡単なことではなく、独善に陥りがちであります。これを防ぐためには、社会からの批判を謙虚に受け入れる回路が開かれているということが極めて大切であります。

 BPOの最も重要な役割はこの点にあります。社会からの批判を受けとめ、これを放送局に伝えること、そして批判の背景にある問題点を調査し、BPO自身の判断として放送局に示すことであります。

 お手元にBPOのこのようなパンフレットが行っているかと思いますが、これをごらんいただきたいと思います。BPOには三つの委員会があります。

 まず、放送倫理検証委員会。これはことし五月に設置したもので、虚偽や捏造番組の審理を行うとともに、放送番組の向上のための審議を行う。この委員会については、後ほど少し詳しく説明させていただきます。

 次のページに、放送と人権等権利に関する委員会、BRCの説明があります。これは、放送によって名誉やプライバシーなどの人権を侵害された人からの苦情を受け付け、その内容を審理し、権利侵害があった場合には、放送事業者に訂正などを行う勧告を行うほか、見解を明らかにします。BRCは設立十年を迎えますが、これまでに二十五事案三十四放送局に対する決定を行ってまいりました。このうち、勧告が六事案、放送倫理上問題ありが十八事案、問題なしとしたものが十事案、計三十四事案であります。このうち、本年に入ってからの決定は、例年はBRCの決定は年に三、四件でありますが、本日通知する事案を含めまして、既にことしは五件を数えております。

 放送と青少年に関する委員会は二〇〇〇年に設立され、主としてテレビ番組が子供たちに与える影響について議論して、見解などを発表してまいりました。これまでに、バラエティー系番組に対する見解、消費者金融CMに関する見解、血液型を扱う番組に対する要望など、九件の見解、要望を発表してまいりました。このうち、消費者金融については、最近改めて社会問題化しておりますが、BPOの青少年委員会はいち早く、子供たちがよくテレビを見る時間帯である午後五時から九時に消費者金融CMの放送をすることについては自粛するよう五年前に求めました。民放テレビ各局には、営業上の影響もあるのではないかと思われますが、これを受け入れていただいたという実績もございます。

 BPOには、これら三委員会の委員の選任を行うための機関として、評議員会が設置されております。この評議員には、議長に慶応義塾大学名誉教授生田正輝先生、元文化庁長官の三浦朱門先生、首都大学東京の学長西澤潤一先生など、六人の先生にお願いして、三つの委員会の委員の選任をお願いしております。中立性を保つためのお目付役としてお願いをしております。

 そして、委員会の運営をサポートし、視聴者からの苦情を受けるために、理事会及び事務局が置かれております。この事務局で受けている視聴者からの意見は、昨年度は初めて年間一万件を超えました。ことしに入っても、去年の同じ時期を大幅に上回る件数を受け付けております。

 さて、先週金曜日のこの委員会におきまして、放送法改正案の審議の一環として、BPOが機能している限り総務大臣は放送事業者に対して再発防止計画の提出を求めない旨の御答弁があり、この条項を削除すべきという御議論も行われていることと伺っております。そこで、御出席の議員の皆様が最も関心をお持ちと思われる放送倫理検証委員会について少し説明させていただきます。

 放送倫理検証委員会は、ことし一月に関西テレビ放送の「発掘!あるある大事典2」でデータの捏造などが行われていたとして問題が発覚したことを受け、三月に、BPO、民放連、NHK、三者が設置の合意をしたものであります。委員会は、法律の専門家である弁護士三名、このうち一名は裁判官御出身です、表現の領域に詳しい作家や脚本家五名、放送メディアの研究者である大学教授二名、計十名で構成されております。

 委員会は、虚偽放送が疑われる事案が発生し、その真偽を調査する必要がある場合には、事案の複雑性や規模に応じて専門家から成る特別調査チームを設置したり、当該放送事業者に対し第三者から成る外部調査委員会の設置を勧告するなどの権限を持っております。民放、NHKの御協力を得て、虚偽や捏造などの放送が行われた場合には、十分な調査と判断ができる体制が整えられた、こう自負しております。

 放送倫理検証委員会は、まだ設置から半年しかたっておりませんが、既に一件の審理を行っております。TBSの情報番組「みのもんたの朝ズバッ!」における不二家関連報道に関するものです。先ほど郷原先生の御説明がありました。

 委員会は、当該番組の視聴、制作担当者へのヒアリング、関連資料の精査を行いまして、八月に見解を発表いたしました。見解では、TBSの番組制作体制の不備を厳しく指摘しております。TBSからは、この見解を受けて制作体制の見直しなどを図っている旨、放送倫理検証委員会に報告されております。

 放送倫理検証委員会は、虚偽放送事案の審理だけでなく、毎月、新聞、雑誌等で指摘された放送番組にかかわる問題や視聴者から寄せられた意見をもとに、広く放送倫理を向上させるための議論をしております。最近では、番組で予告なく霊能者と称する人にメッセージなるものを伝えられ傷つけられたと出演した人が主張している番組についても議論を始めております。これらの審議等については、すべてホームページを通じて一般の皆さんにもわかりやすく公表をしております。

 放送で起きた問題は放送局が自主的に解決することが基本でありますが、中には、表現の自由と基本的人権という、憲法に定められた重要な権利の調整について判断を求められる問題があります。BPOは、放送倫理検証委員会の設置により、これらの問題を解決するための独立した第三者機関として十分な機能を果たすことができるようになったと考えております。今後も、そのような努力を続けていきたいと思っております。

 どうもありがとうございました。(拍手)

渡辺委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山口俊一君。

山口(俊)委員 久しぶりに質問させていただくわけでありますが、きょうは、参考人の皆さん方、それぞれ大変な重要な御所用がある中、お差し繰りをいただきまして、わざわざ御出席をいただいたわけでありますが、改めてお礼を申し上げたいと思います。同時に、先ほど来、今回の放送法の改正にかかわるさまざまな、本当に参考になるお話をいただきまして、これもお礼を申し上げたいと思う次第でございます。

 いろいろ御質問いたしたいんですが、十五分という限られた時間でございますので、テーマを絞ってお聞きをいたしたいと思っております。

 まず最初に、先ほど来、参考人の方からもお話がございましたが、今回の放送法の改正案、NHKのガバナンスの件がございます。これにつきましては、お話もございましたが、三年前からというか、ちょいちょいあったわけでありますが、さまざまな不祥事が続発したという中で、受信料の徴収も停滞してきたというか、率が大変下がってきたという中で、いろいろな御努力はいただいたんですが、結果としてはなかなか見えてこない。同時に、私も実はよくNHKを拝見するんですが、明らかに、番組の質が落ちてきたのかな、ちょっと再放送がふえたのかな、BSでやっているのを総合放送でやっているなと、何かそういった、劣化とまでは言いませんが、気になる面が多々ありました。

 そういう中での今回のガバナンス強化でありますが、先ほども経営委員長の方からもお話がございましたので、もうこれ以上はお伺いはしませんが、しかし、どうしてもお伺いしておきたいのが、橋本参考人、これまでも国会の中で、経営計画、九月までにということで、NHK予算の審議のときから何度となくお答えになっておられた。今回、経営委員会の方で議決をいただけなかったというふうなことでありますけれども、そうした一連の問題といいますか、やはり会長としての責任がおありになるんだろうと思うんです。今後の問題も含めて、そこら辺をまずお伺いしておきたいと思います。

橋本参考人 御指摘のとおり、この中長期計画につきましては、経営委員会から、執行部案がいまだ十分なものとは言えないということで議決を得られませんでした。また、私がお約束してまいりました、九月末にはお示しするということについても、これも果たせず、まことに申しわけなく思っております。おわび申し上げます。

 私どもとしましては、今後の中期計画に接続する来年度事業計画、予算計画の策定に全力でしっかりと取り組んで、視聴者・国民の期待にこたえ、経営としての責任を果たしてまいりたいと思います。その上で、次の中期計画にも道筋をつけてまいりたいと存じております。

山口(俊)委員 ある意味で、予算審議のときにやはりそうした計画をしっかりお示しになる、あるいは改革への道筋をしっかりお示しになるというのが、少なくとも我々として予算に賛成をする条件でもあったわけですね。そこら辺を踏まえてしっかりと対応していただきたい、せっかく放送法も改正になるわけですから。先ほどもお話がありましたように、経営委員会としっかり意思疎通を図りながら、これからのあるべき公共放送の姿というのをしっかりお示しいただきたい。お願いをしておきたいと思います。

 それと、今回、実はいわゆる修正協議をさせていただいておりまして、おおむね修正案というのを私どもまとめておるわけでありますが、その中で、私どもとしては一番問題というか大きな課題だと思っておりますのが、いわゆる再発防止計画、行政処分の部分ですね。これは、さっき、広瀬参考人あるいは飽戸参考人の方からもお話がございました。

 これは、振り返ってみますと、ダイオキシン報道だったかと思いますが、しょっちゅういろいろな問題が起こって、国会もしくはさまざまな場所で議論になって、それに何とか対応して、また起こす、イタチごっこのような状況が実は続いておるんですね。

 かつて、私どもいろいろ議論させていただいて、ようやくBRCというのが立ち上がりました。その後いろいろな改組、改革を踏まえて今のBPOがあるわけなんですが、今回のいわゆる業務改善報告の行政処分でありますが、さっき郷原参考人もおっしゃっておられました。やはりしっかりと自主規制が機能しておる、つまり、BPOがちゃんと機能して、そのBPOの機能がまた各放送局に対していろいろな意味での支えといいますか、歯どめといいますか、そういった効果があらわれておるということが何よりも大事なんだろうと思います。

 お話しのとおり、大臣答弁では、いわゆる自主規制機能、BPOの機能がしっかり果たされておる限りはこの行政処分は発動しませんというふうな答弁でありますので、しっかり機能しておれば、削除してもある意味でやむを得ないのかなというふうな感じもするわけでありますが、そこら辺について、先ほどもお話をいただきましたが、民放連の広瀬参考人の方から決意のほどをぜひともお伺いさせていただきたい。

広瀬参考人 おっしゃるとおり、これまで、この種のことは二度と起こさないというようなことを表明しつつ今日に至ったことは、非常に残念でございます。

 今回の放送倫理検証委員会設立で、一番大きな前進は何かといえば、NHKを含めますと、テレビ関係百二十八社、ラジオも含めますと二百一社になると思いますけれども、全社の社長が、BPOから出てきます勧告、意見はすべて守りますという契約書を出していただきました。

 つまり、そういうことをまた起こしましてBPOから厳しい譴責を受ける、これで、それをきちっと守らなければ民放連から除名、なかなか自立できていけないようなそういう状況になろうかと思います。幸い、この放送倫理検証委員会ができました後、ちょっとひどいじゃないかというような放送、あるいは、勧告、見解が出た後のテレビ局側の対応で、非常に残念な件というのは今のところありません。何とかこのまま定着させていきたい。

 それで、総務大臣が趣旨説明に当たって、BPOが機能している間はこれは適用しませんよという趣旨説明をいただいたこと、大変私たちは評価しております。しかしながら、趣旨説明というのが法文そのものじゃありませんために、いつまで有効なのか。例えば、新しい政権になったらばそれは忘れられるようなことはないのかとか、私もお役所との交渉の中で、この趣旨をきちっと法文の中に書いていただければあえて反対はいたしませんと申したこともありますが、その辺をやはり、今回はあの条文は取り下げていただきたいという感じがしております。

 以上でございます。

山口(俊)委員 我々、放送業界に期待をしておるだけに、本当に歯がゆい思いをしばしばさせられるわけであります。

 もともとBRCも、いわゆる人権ということからスタートをしたんですが、お話しのとおり、さまざまな問題も扱えるというふうになってきたわけであります。しかし、一方において、いわゆる行政処分の問題が起こって、ようやくそういうふうな改革をなさったという部分もあるわけです。

 同時に、結局はBPOというのは、民放連とNHKさんが協力をしてやっておられるということでありますので、本当に真の意味でこれは第三者機関なんだろうかという思いもあるわけですね。そこら辺も含めて、もう時間もありませんのでこれ以上申し上げませんけれども、しっかりと対応していただきたい。また同じことの繰り返しにならないように、心からお願いをしておきたいと思います。

 同時に、これからメディアの多様化という中で、ケーブルテレビとか衛星、これはBPOに入っていませんね。ですから、これは相手のある話でありますから、これからお話し合いもしていただきたい。やはりこれからは、そういった面も含めてこういった放送に関するものはBPOに任せてください、しっかりやりますという体制を一日も早くつくっていただきたいというふうに強くお願いをしておきたいと思います。

 もう時間もありませんので最後になろうかと思いますが、先ほどもお話がありましたが、いわゆる持ち株会社の件であります。これもお話しのとおり、デジタル化等々の中でローカル局も大変困っておる状況等もあります。あるいは、一時期いろいろ騒がしました株の問題等もございます。

 そういった中で、この問題が、今回法律としてこの件が出ておるわけでありますが、同時に、これをやるということは、やはりマスメディアの集中排除原則を緩和するということもありますね。お話しのとおり、ローカル局の独自性ということもあります。あるいは、さまざまなメディアがある一人の、ある特定の者に牛耳られるということはぜひとも避けたいというふうな思いも私は持っておるわけであります。

 そこら辺に対するお考えを広瀬参考人からお伺いしたいのと、もう一点、今回、実は修正ということで、持ち株の比率を二分の一というふうなことから三分の一未満というふうなことを考えておるわけでありますが、それに対する御意見もあわせてお伺いをしたいと思います。

広瀬参考人 最初に、再発防止の決意につきましてはまさにそのとおりで、この種のことをもう一度起こせば、これは法改正に真っすぐ結びつくんじゃないかというぐらい心配しております。

 それから、CS等、地上波以外の放送についてはどうかという点につきましては、各団体と十分相談して、できればBPOの活動の中に入っていただくのがいいんじゃないかという気がしております。

 最後の持ち株会社の問題ですけれども、この改正案の原文は、恐らく、電波監理審議会の議を経て、各関係方面のパブリックコメントを受けたその結果が十分の一ないし二分の一というところに来たんじゃないかと思います。

 しかし、さっきもちょっと申しましたけれども、ある一社、例えばキー局が五〇%の株を持つ必要があるかといいますと、仮に持ったとすれば、やはりコントロールが強くなり過ぎるのかなという懸念もございます。これは十分議論していただいて、例えば三分の一がめどかということならば、それはそれで通る話かなという気がしております。

 以上でございます。

山口(俊)委員 もう時間が来てしまいました。それぞれ参考人の皆さん方からお話をお伺いしたかったんですが、御質問できなかった御無礼、お許しをいただきたいと思います。改めて感謝を申し上げて、質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 民主党の寺田と申します。

 まずは、参考人各位の皆様におきましては、本当に御多忙のところ、当委員会に足を運んでいただき、私どもの審議にお力をかしていただけますことを、一委員として御礼申し上げたいというふうに思っております。

 私に与えられた時間が十五分という短い時間でもありますので、今回の放送法に関して特に注目をされております、虚偽報道等があった場合においてのこれからの対応のあり方、法案の中では、行政の方が、再発防止の策を出すようにという行政指導をするという法案になっていますけれども、そういうあり方がいいかどうか。そしてまた、放送業界の方々が自主的におつくりになられたBPOの役割、現状と、そして今後のことについても、参考人の皆様に御意見を伺いたいというふうに思っております。

 まず、今回の改正法でありますが、虚偽報道、「あるある大事典」のところに端を発しておりますけれども、虚偽報道があった場合に、視聴者の方々の放送に対する信頼等、そしてまた再発を防止するという観点から、行政側が強く指導していくようなスキームになっておりますが、私ども民主党といたしましては、これには反対をしております。

 もちろん、放送業界、特にテレビ等が与える影響というものは、政治という立場の一員としては非常に大きいものがありまして、テレビのコメンテーターの方がどのような発言をするか、その一言によって本当に党の趨勢が変わって大きく左右されるかのような、今、大きな力を放送業界の方々は持っていらっしゃると思います。

 そういう意味におきましても、本当に正しい報道がされる、そして、誤った報道がされないためにどうしていくかということは非常に関心の高いところでありますが、その具体的な方法として、行政がかかわるべきかどうか、自主的に行える部分で果たしていくべきかどうかということは、意見が分かれているところだと思います。

 BPOのことに関して、特に検証委員会に関してもお伺いしたいと思います。

 まず飽戸参考人の方にお伺いしたいと思うんですが、まず、そもそもこのBPO、そしてまたこの検証委というものは、だれのために設置されているものであるのか。例えば虚偽の報道があった。それを放送した側、それとも放送された側のためにあるのか、はたまたそれを見ている一般視聴者のためにあるのか、どのようにお考えになられているのか、御意見を伺いたいと思います。

飽戸参考人 ただいまの御指摘でありますが、BPOの役割は、視聴者の意向、それからさまざまな関係者の人たちの意見を集約して、それを問題があれば調査を行って、放送局に対して見解または勧告を行うということが任務であります。

 しかし、その基本は、放送事業者自身が自分たちの自助努力によって問題を解決していくというのが本来の姿でありまして、BPOはそのためにさまざまな資料を集めたり審議をしたり勧告を行ったりするという形で、その自助努力を援助する、応援するというのが我々の役目と考えております。

 したがって、視聴者の希望をできるだけ速やかに放送事業者に対して伝える、これは視聴者の皆さんの信頼を回復するために非常に重要な第一歩でありまして、それに対して放送事業者がどの程度、どのような対応をしたかということもきちんと把握しておくということであります。

 したがって、視聴者のためか放送局のためかということになりますと、これは両方のためであるということであります。

 幸い、今回の検証委員会では、今までなかったかなり強力な調査権とでもいうべきものが与えられております。そういう意味で、より詳細な調査を行って、より厳しい勧告を行うということも可能になったわけでありますが、しかし、余りにも厳しい勧告が続くことによって、放送事業者が萎縮してしまう、そして本当にいい番組がつくれないというような状態になっては本末転倒でありますので、その辺の、報道の自由と視聴者、人権とのバランスをどのように考えていくかということが一番重要な役割というふうに考えております。

寺田(学)委員 今、参考人の方からの御答弁の中で、もちろん放送局のためにもあるんだろうけれども、一般の視聴者の方のためにもあるんだという御答弁、お話がありました。

 その中において、放送倫理検証委員会の議事録というものを読み返してみますと、二〇〇七年の六月八日の議事録でありますが、委員の中からの発言は以下のとおりだという御紹介の中で、今回、郷原参考人も取り上げておられました「みのもんたの朝ズバッ!」、TBSの番組のことに関して、審理入りをするかどうかという話の中で、どなたかはわかりませんけれども、発言ということで記されているのは、これは終わった事例だ、放送で問題を起こし、放送で謝り、不二家もそれを一応了としたということで、終わっているのではないかと思うと。また、その前後するような形で開かれた委員会の中でも、同様の発言が議事録の中には記されております。

 この発言の内容を見てみますと、当事者間の中で謝った、それを一応了としているんじゃないかというような話で、もういいじゃないかというような委員が現実にいらっしゃるということは、皆様が出されたこの議事録の中で明らかになっていると思います。この発言というものを一個一個取り上げて、正しいかどうかということまでするべきではないと思いますが、今、飽戸参考人が言われたこととは反する発言が出ているなというふうに私は思っております。

 そういう意味では、これからも視聴者のためにあるんだということを念頭に置いて委員会の方を運営していただきたい、BPOを運営していただきたいというふうに思っております。

 その中で、もう少し具体的な部分に踏み込んでいきますけれども、今回の「朝ズバッ!」の対応、「朝ズバッ!」というかTBSの対応ということに関しまして、本当に視聴者の観点から十分であったかということの検証というのが必要だと思っております。

 そういう意味におきましても、BPOから出されました報告書の「結論」の中で、番組1、番組2というのは、さまざま前段ある中で記されている言葉ですが、「番組1において視聴者に誤解を与えた部分は、番組2によって訂正とお詫びがなされ、視聴者に与えた誤解の多くは修正された。」というふうに断定し切っております。「とはいえ、」という言葉でつないで、「番組1と番組2のあいだに三カ月近い時日がかかったこと、訂正とお詫びの主語や範囲が曖昧であったことなど、今後に課題を残している。」と。

 御自身の結論の中でTBSの今回の対応は課題が多かったということを言っておきながら、結論としては誤解の多くは修正されたという、私は正直、納得しがたいような発言が載っております。

 そしてまた、「おわりに」という中で、今回の不二家と「朝ズバッ!」の間の相互不信は一応は収束しているという断定をされた後に、「だが、視聴者と一般消費者は、賞味期限切れ製品の再利用があったか否かを判断するための材料を、どちらからも提示されないまま、置き去りにされている。」と。

 事実のほどは、さまざまの当事者の方々に御意見あると思いますが、いずれにせよ、今飽戸参考人が言われた視聴者、その中には一般消費者が多く含まれているわけですけれども、その方々の利益というものは置き去りにされているんだということを明示しておきながら、今回の場合は、二つある見解と勧告の間の見解にとどまっているということは、まさしく、飽戸参考人がお話の中で放送局の自主自律というものを高めなきゃいけないんだということをお話しされていながらも、その役割である、本当に正しい報道がされたのか、そしてそのような問題が起きた後に正しいアフターフォローがされているのかどうかということに対しては、非常に役割を薄く見られている。もっともっと強く出ていいのではないかというふうに、私は逆に思っております。

 そういう意味を含めて、このTBSの「朝ズバッ!」の問題に対して、今回のBPOの設置者たる民放連の広瀬会長と、そしてBPOの理事長の飽戸参考人の方から、そしてまた問題を提起されている郷原参考人の方から、今回の件に関しての御意見を、手短にお願いしたいと思いますけれども、いただけたらと思います。

広瀬参考人 BPOの強化、すなわち、放送倫理検証委員会が発足した直後にみのもんたさんの問題が発生いたしました。私たち放送事業者も、放送倫理検証委員会がどういうふうに反応していくかというのを大変関心を持って見守りました。見解という格好で出ましたけれども、中身は相当厳しいものだなという気が私はいたしまして、これだけ厳しければ、恐らく世間でも一つのいい方法じゃないかというような評価をしてくれるんじゃないかというふうに見ておりました。

 世間の評価というのは、新聞その他のメディアの評価になってあらわれていると思うんですけれども、TBSは検証的な番組も放送しておりますけれども、もう少し、それこそずばっとおわびするとかそういう面があってよかったんじゃないか、役員関係者の処分が行われましたけれども、その処分も公表する形で行われるべきではなかったかとか、その対応についていろいろ批判が出ておりました。

 それで、このBPOの活動、これを見解にすべきか勧告にすべきかとか、そのあたりは恐らく徐々に定着していくんじゃないか、試行錯誤を重ねつつ定着していくんじゃないかというふうに考えております。

 したがいまして、きょうみたいな、あるいは郷原先生みたいないろいろな批判が出てくる、BPOの対応がまた出てくるという、そういうことを非常に貴重なことだと私は考えております。

飽戸参考人 御指摘の点ですが、おっしゃるとおりに、両方が納得していればいいのではないかという発言があったということは私も承知しております。

 しかし、我々の委員会は三委員会とも、いろいろな専門の先生方、いろいろな立場の先生方が自由活発に議論をして、最終的には全員一致の結論に到達する、そういう経緯でいつも審議をしております。今回の問題も、そのような委員もいたわけでありますが、最終的には、これはきちんと審議しようということが結論になりまして、そして詳細な調査を行った上で、さらに十分な審議を重ねた上で委員会としての結論をまとめて公表した、そういう経緯であります。

 私は、委員会が、初めての事例でもありますし、かなり困難な状況の中で非常に慎重な議論をしていただいた結論であるというふうに承知しております。内容に関しては、BPOの理事長である私がコメントすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、制度としてそのような形で誠心誠意審議を尽くした結果であるということだけは御報告させていただきたいと思います。

郷原参考人 私は、この「朝ズバッ!」問題に対する検証委員会の見解というのは全く不十分だと考えております。

 一つだけ、これだけは頭に入れていただきたいのは、今回の捏造疑惑というのは極めて希有な形で表面化したということです。通常は、証言の捏造問題というのは、その証言者が特定され、その証言者がうそを言った、あるいは存在していなかったということでなければ明らかになりません。なぜ今回この捏造疑惑が表面化したかといえば、あの不二家に対しての激しいバッシング報道が行われ、その中で、不二家の方で、いろいろなところから女性社員がかき集められて、毎日毎日、連日山のようにかかってくる電話に対して本当に丁寧に対応し丁寧にメモを残していた、その手書きのメモ、これが正確に記載されていたので、この内容と「朝ズバッ!」で放映された証言とがぴったり一致している、これは捏造だということに私は気づいたわけです。

 こういう希有な例についてきちんと事実を明らかにするという努力を行っていかなければ、今後、いかなる事案に対してもきちんとした対応はできないと思います。

 そして、先ほど申しましたように、何といっても、それに対して放送事業者がどういう対応をしたのか、どうやって事実に向き合ったかというところが一番重要なわけですが、この「見解」に、ここに資料として添付しておりますが、この中には、TBSの対応について目次の中では書いてあります。しかし、そのTBSの対応にどういう問題があったかということは一切書かれておりません。

 三月二十五日の会談でうそをついたかどうかということも、全く検討すらなされておりません。この三月二十五日の会談の模様は、これをDVDとして検証委員会の方にも提出しております。ですから、丁寧な審理がなされたら、必ずこの点には気づいたはずです。

 そういう意味で、一番重要なところが何一つ検証されていないという意味で、私は、全く評価できないと考えております。

寺田(学)委員 私の持ち時間が終わりましたので、最後に、設置者たる民放連の広瀬会長に端的にお伺いして終わりたいと思います。

 今、郷原参考人からもお話がありましたけれども、まさしく、捏造報道、また捏造と疑わしき報道があった後に、それが本当に捏造だったかどうかを調べることも大事ですが、それに対して、どう一般視聴者に対して説明をしたかということが、信頼回復という意味でも非常に大事なことだと思っております。

 私どもも誤報をされるときは時々ありますけれども、それの十分の一ぐらいの訂正記事が出されても全く信頼は回復されないということは、皆さん、身にしみて感じていることだと思います。

 確認をしておきますけれども、BPOを設置し、検証委員会を設置した役割の大きな柱として、問題が起きた後の放送局の活動のあり方、対応のあり方についてもきっちりと検証し、勧告していくということが役割として備わっているかどうかを、設置者の一員たる広瀬会長の方に御見解を求めて、終わりたいと思います。

広瀬参考人 放送倫理検証委員会が出した勧告ないし見解をどういうふうに放送局がフォローしていったか、そのあたりも含めて、今後、放送倫理検証委員会にある種の見解を出してもらうようなことがあっていいんじゃないかというふうに私も思います。

 貴重な御意見でございます。

寺田(学)委員 以上で終わります。

渡辺委員長 次に、谷口和史君。

谷口(和)委員 公明党の谷口でございます。

 まず、参考人の皆様方には、御多用のところ御出席をいただきまして、大変ありがとうございます。御礼を申し上げます。

 冒頭から質問にも出ておりますとおり、私はBPOの役割についてお伺いをしてまいりたいというふうにまずは思います。

 大臣も今回のこの放送法の趣旨説明の中で、BPOが機能している間は再発防止計画の提出を求めることはしないというふうにおっしゃられているわけでありますけれども、そういう意味で、BPOがどれだけ頑張っているか、ちゃんとやっているかということが、今回の放送法の審議の中で一番重要な問題だというふうに思っております。

 まず、広瀬会長にお伺いしたいと思うんですけれども、六月二十日に決算行政監視委員会が開かれて、その場で、参考人として御出席をされて、放送倫理検証委員会についてこういうふうにおっしゃられております。機能を強化されたBPOはスタートしたばかりですけれども、国民の信頼を得て、BPOが厳しいことを言ってくれるのでこれはもう安心して任せられるんだ、そういう形に早くなっていくことを期待しているというふうに発言をされておりますけれども、スタートから約半年がたちました。

 それに関して、報道の中にはその間審理をされたのが一件ということで、これが少ないのか、それとも、そういう問題が出てこなかったから一件で、これはいいのか、この判断は非常に難しいとは思うんですけれども、会長に、スタートして半年、きちっと機能しているのかどうか、この辺の評価をまずお伺いしておきたいと思います。

広瀬参考人 飽戸さんの説明にもありましたように、三つの委員会がありますが、合計しますとやはり年間一万何千件というような問題の提起がございます。三つの委員会で、これはどの委員会に付与するというようなことを決めまして、月に一回委員会を開いて次々審議していくわけですけれども、放送倫理検証委員会でも恐らく毎月一、二件はやっていると思います。審理に至って実際に調査に踏み切ったのは、あのTBSの問題一件だけだったということです。

 問題があれば、視聴者からは放送局にも必ず苦情なりなんなりの電話がございます。それだけじゃなくて、BPOに最近は直接行くものもございます。放送局に来たものも、相当問題だと感じられるものはBPOに必ず通報するようにというシステムもできております。恐らく、今後、放送で非常に不愉快、不快感あるいは人権侵害とか公平を欠くと思ったような案件については連絡があるだろうというふうに思います。

 私たちも、BPOというのはそういうものですよということを機会あるごとに宣伝していきたいと思っております。

谷口(和)委員 今会長から、BPOの検証委員会の手続というか審理に上がっていく経過について少し御説明があったんですけれども、二問目は広瀬会長とまたBPOの飽戸理事長にお願いしたいと思うんです。

 広瀬会長は四月六日に放送法に関するコメントを出されております。その中で、検証委員会について、「今後は、番組内容に関わる審理は放送局関係者を一切排除した委員会によって行われるようにする。」というふうにコメントの中でおっしゃられております。確かに、委員の方々を見ると、放送局の直接の関係者はいらっしゃいません。ですけれども、いろいろな委員会を私も見てまいりましたけれども、いろいろなクレーム、意見、上がってきたもの、それを具体的に委員会の場に上げていく、その事務局の機能というのは非常に大きな役割を果たしていると思うんです。

 運営規則の中の第十一条に事務局の機能ということで役割が書かれているわけでありますけれども、事務局はどういったメンバーで構成されているのか。また、検証委員会を本当の意味で、コメントの中に書かれているように、放送局関係者を一切排除した委員会、それを実のあるものに、実質的にそういうものにしていくためにどうされているのか。この辺のことを広瀬会長と飽戸理事長にお伺いしたいと思います。

広瀬参考人 BPOで一番私たちが工夫しましたのは、この運営費は年間約四億円強になりますけれども放送事業者が負担する、これはいいんですが、放送事業者が負担してつくったものだから放送事業者に近いんじゃないか、放送事業者向きになるんじゃないかというような、そういう点をきちっと遮断しなくちゃいかぬというふうに考えました。

 したがいまして、普通の法人と違いまして、理事会のところはまだNHKとか民放の現役の人が入っておりますけれども、評議員会という別の組織をつくりまして、ここが、放送倫理検証委員会だとか三つの委員会の委員を選ぶというふうにしております。つまり、理事会は財務上の責任を持つというだけで、あとの運営は評議員会が一番大きなところになります。

 先ほど谷口さんのおっしゃったところは、この問題に関して一番重要な事務局というのは調査役のことだと思うんですね。では、放送倫理検証委員会に所属する調査役はどういう人たちかといいますと、今のところ結構放送関係のOBの人が主力を占めております。行く行くはそこは変わっていくと思いますけれども、つくった直後でもあったということもあって、結構そういう経験者を集めております。ただし、そこには弁護士さんも入ってくれております。それで、TBSの問題をやるときにはTBSは排除して別の調査役がそこにつくとか、そういう工夫はしております。

 今後、さっき申しました理事会のあり方も含めて、事務局の、特に調査役の人たちについては改善の余地もあろうかと考えております。

飽戸参考人 ただいまの質問についてですが、現在BPOには十三人の調査役がおります。そのうち四名は放送局及び民放連からの出向、それから九名は放送局で働いた経験のある退職者であります。

 そこで、放送局に対して偏った考え、支援するような考えがあるのではないかという御指摘でありますが、現在の事務局の仕事というのは、三つの委員会が円滑に審議を進めることができるように、いろいろな資料を収集したり、会合の準備をしたり、結果の公表のお手伝いをするというようなことで、審議の内容そのものは委員会がすべて起草し、決定しております。その審議内容に事務局の局員が関与するというようなことは、私もBRCで九年の経験をしておりますが、一度もないというふうに確信しております。

 それからもう一つは、その審議を続けていく上で、放送局との連絡業務が依然重要な役割を果たしますが、その点で、放送局についての業務に詳しい方がそのような事務に当たるということは非常に有効であります。そういう意味で、私は、現在の事務局は中立性を保てる形で行われているというふうに考えております。

谷口(和)委員 この検証委員会につきましては、事務局に関する御説明も今ありましたけれども、一丸となって、国民の信頼にこたえられる、本当に、広瀬会長がおっしゃられたように、もう安心して任せられる、そういうところに目に見える形でぜひ持っていっていただきたいと思います。

 十五分ですので、だんだんもう時間がなくなってまいりました。

 次に、郷原参考人にお伺いしたいと思います。

 郷原参考人、六月二十日のこれも決算行政監視委員会で、この放送法の内容に関して、放送内容に対する国家の介入の問題は、民主主義ないし社会の根幹にかかわる問題で、別途慎重に考えるべきだと思う、虚偽、捏造の問題に対してもっと別の枠組みできちんと正すことを考えていくべきだと思っているというふうにおっしゃられているんですけれども、具体的にどういった枠組みが考えられるのか。

 また、もう一方、BPOの機能の強化、まだまだやらなきゃいけないと先ほどおっしゃられていましたけれども、具体的にどうすれば機能が強化されていくのか、お伺いしたいと思います。

郷原参考人 その点につきましては、ちょっと資料番号がついていなくて恐縮なんですが、資料の中の真ん中よりちょっと後の方に、メディアコンプライアンス研究会の緊急メッセージというのを添付しております。この中に詳しく書いておりますが、私は、せっかくこういう形でBPO検証委員会が立ち上げられたわけですから、この検証委員会の機能をもっともっと高めていくことが望ましいと考えております。

 ただ、今回の「朝ズバッ!」問題に関する対応などを見ておりますと、今のままでは到底その機能が期待できない。そういったことで、今後改善すべき点、まず第一に、どういう場合に勧告、どういう場合に見解なのかというその違いを明確にすること、それから、どのような根拠に基づいて責任を問うのかというその考え方を明確にすること、そういう基本的な考え方が明示されていないところに現在の検証委員会の根本的な問題があると思います。

 ですから、先ほど来、内容についても指摘されておりましたが、何かいろいろな委員の意見をぐしゃぐしゃにして、間をとって何となくおさめたというような感じの報告書になっています。やはり、広瀬会長もこの前、委員会の際にも言われました、放送業界にとって最高裁のようなものだという機能を発揮していくためには、そういう根拠を明確にして考え方を明確にする、そして、どういう場合に弁護士も含めた調査委員会をつくるのか、その要件も明確にすることが重要ではないかと考えております。

 以上です。

谷口(和)委員 ありがとうございます。

 もう時間がなくなりました。最後に一点だけ、古森委員長にお伺いしたいと思います。

 橋本会長は来年の一月で任期が満了になるわけでありますけれども、先日の経営委員会の後に、次期会長の後任資格ということで、一連の不祥事が発覚したときに会長や理事の職にあった人は対象にしないというふうにおっしゃられています。また、できればNHK内部の人がいいが必ずしもこだわらないという発言も、メディア等でされております。

 あともう一カ月半ぐらいしかないわけでありますけれども、改めて、その後任の人事の考え方、また、もう一カ月半ですので、具体的な人選、どういうふうに進んでいるのか、ちょっと確認をさせていただきたいと思います。

古森参考人 ただいまの質問でございますけれども、確かに先回、三年前の不祥事のときの執行部の要職にあった人たちは対象外にしたいと、これはやはりいろいろ問題が多かろうということで判断しております。

 現在、経営委員会では、この前に指名委員会というのもございますけれども、指名委員会は経営委員で構成されております、指名委員会、経営委員会通じまして、ただいままで二回程度、次期の会長につきまして検討いたしました。現在、資格要件をまとめ、先日新聞にも発表させていただきました。当然のことでありますけれども、構想力がある、リーダーシップがある、業務執行力がある、あるいは公共放送の何たるものかというのを理解している人、いろいろな条件、当然の条件がございます。こういう資格要件に基づきまして、現在人選を進めている最中でございます。

 おっしゃるとおり、社内外を問わず最適な方をお選びしたい。できれば内部の方からが望ましいわけでありますけれども、業務に精通しているということで望ましいわけでありますけれども、一面、なかなか進んでいかない改革を進めるということであれば、外部の人も、かえってやりやすい面もあるのではないかという側面もございます。この点もあわせ考えまして検討して進めてまいりたいと思います。

 一月の二十四日でございますか、ただいまの会長の任期が終わりますので、それまでに間に合わせたいというふうに考えております。

 以上でございます。

谷口(和)委員 ありがとうございます。

 時間が参りました。

 私も学生時代、ジャーナリズムを専攻しておりまして、その中で、かつて信濃毎日の主筆を振るった桐生悠々、偉大なジャーナリストがいらっしゃいますけれども、あの「関東防空大演習を嗤う」という有名な社説を書かれた方ですけれども、桐生悠々がこう言われています。言いたいことと言わなければならないことを区別すべきである、言いたいことを好き放題に言っていれば、これは愉快に違いない、だが、言わなければならないことを言うのは愉快ではなくて苦痛であるという、コメントというか、そういう社説を残されております。

 私は、このことが今もう一度問われているのではないかなというふうに思っております。言いたいことを言うのではなくて、言わなければならないことを言う。もう一度このことを肝に銘じて、我々政治家もそうでありますけれども、やはり、言いたいことではなくて、言わなければいけないことを言うという原点にもう一度立ち返ってやっていただきたいとお願いして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 きょうは、参考人の皆さん、それぞれ貴重な御意見を賜り、本当にありがとうございます。

 私は、最初に郷原参考人に、今回の法案で出ております一つの大きな改正点でもありますNHKのガバナンス強化に関係してお尋ねしたいと思っております。

 このガバナンスの強化ということで、一部の常勤化ですとか、監査委員会を経営委員会の中に置く、これなどは、会社法の委員会等設置会社、このスキームを参考にということで、監査委員会のところの法文なんかは丸々会社法のを写していますから、まさにそのとおりだと思うんですけれども、監査役設置会社という形態もあり、一方で委員会等設置会社もある、そういう中で、こちらを選んだという形になっております。

 公共放送を担う公法人としてのNHKの経営委員会として、こういうのが、メリット、デメリットといいますか、経営委員会というのは非常勤で構成をされている中で、合議機関としていわば社外取締役的な意味を持って監督をするということで来たんだと思うんですけれども、一部の人が監査委員という形で特別な強い権限を持つようなことが、合議機関としての経営委員会のあり方に対して影響を与えはしないかということを率直に思うわけですけれども、参考人の御意見を賜りたいと思います。

郷原参考人 私は、株式会社、事業法人の場合と、NHKのような公共放送事業者の場合と、ガバナンスのあり方とかコンプライアンスのあり方がかなり違うのじゃないかと考えております。

 事業法人であれば、まず需要にこたえていくことで利益を上げていくということを目指す一方で、法も守っていかないといけない、きちんと法を守っていかないといけないということの中で、ガバナンスを考えないといけない、いろいろなチェックをしないといけないということになります。

 そういう面で、今、会社法が取り入れている制度が、先ほどおっしゃったような、監査委員会をどのように機能させていくかという問題だと思うんですが、公益的な使命を担った放送事業の場合、そういった自由競争的なものと法令遵守的なもので解決できるかといったら、そうじゃありません。やはり基本的には、その構成員、NHKの役職員それぞれがその使命を十分に自覚して、社会の要請にこたえていくという方向でやっていくことが一番重要であって、それをガバナンスの仕組みによってコントロールしようということは、私は、ちょっとそういうやり方には限界があるのではないかと思っております。

 NHKのコンプライアンスに関して私は講演を頼まれまして、コンプライアンス推進者の方々にこの前、講演をしました。そういうコンプライアンスの考え方を取り入れて、前向きに努力していこうという意欲は、私は非常に感じました。そういった個々の職員の方々のそういう努力をもっともっと生かしていくようなガバナンスのあり方を考えるべきであって、ガバナンスによって悪いことをしないようにしていこうというような考え方だけでは限界があるんじゃないかと考えております。

 以上です。

塩川委員 ありがとうございます。

 続けて、古森参考人にお伺いいたします。

 冒頭の御発言の中でも、ガバナンスの強化について、これは評価をされるという話で、その中で、一部常勤化につきましても、機能強化に資するという話がございました。今まで非常勤の中に常勤を置くということについて、機能強化に資するとおっしゃるその具体的な中身といいますか、その理由というのをぜひお聞かせいただきたいんです。

古森参考人 今、監事という方がいまして、これは独立した機関でございますけれども、監査をしております。今回、監査委員会ということで、経営委員三人がそれに当たります。その中の一人は常勤になるというようなことでございます。

 そうしますと、経営委員会が持っております本来のガバナンスの機能、重要事項を議決してその執行を管理監督する、会長以下が行う執行を管理監督するというこの立場に非常に近づいてというか、一体化するわけであります。そういう意味では、きちんとした管理監督ができるというふうに思いますし、ガバナンスあるいはコンプライアンスの観点からも強化される。それからさらに、経営委員の持っております経営的観点からの監視、監査というのも強化されるという意味で、大変いいことだろうというふうに考えております。

 以上であります。

塩川委員 ありがとうございます。

 もう一点、古森参考人に伺います。

 九月十一日の経営委員会の中の発言で、古森委員長から、選挙期間中の放送については、歴史物など微妙な政治問題に結びつく可能性もあるため、いつも以上に御注意願いたいという趣旨の発言があったと承知をしております。これについて、後で古森委員長として、一般論だ、あるいは、番組基準を議論する機能がある以上ある程度の意見を言うことは必要だということもおっしゃられているということは承知をしております。

 お尋ねしたいんですが、経営委員会の権限として、番組全般の編集方針を定めた番組基準などを議決する権限はありますが、具体的な番組内容に対する審議は、放送法三条で定められた放送番組審議会にあり、経営委員会の権限と言えないのではないかという指摘がありますけれども、この点についてはどのようにお考えでしょうか。

古森参考人 私の当時の発言が誤解を招いておると私は思って、甚だ残念でございます。

 私は、放送法にのっとり、政治的に中立公正であると放送法にございます、第三条の二でございますか、明記されております、その観点から。それからもう一つは、今おっしゃいましたように、経営委員という委員、あるいは経営委員会というのは、番組の基準あるいは番組の基本的な編成方針について決議するという機能を持っております。責任も持っております。そういう観点から、経営委員として、それに照らし合わせて意見を申し述べるということは、これは許されていることであろうというふうに考えます。

 私は、一般論として、特にどの政党がどうだということではなくて、特に選挙期間中は御注意願いたいというふうなことを申し上げたわけでございまして、あくまでも個別の番組を指して言っているわけではない、一般論でございます。一般論につきましては、先生がおっしゃいますように、私どもあるいは私といたしましても、介入する意向はございません。

 以上であります。

塩川委員 ありがとうございます。

 次に、広瀬参考人にお伺いいたします。

 今回の「あるある大事典」の捏造問題を機に新たな行政処分を設ける、それについては、きょう午後、お昼の段階で修正案が出されて、その部分は削除という話となっておりますけれども、もともと根っこにあります、この捏造が生まれるような問題について、どうこれを解消していくのかというのは放送業界としても問われている点だろうと思います。ですから、BPO、倫理検証委員会の方の機能強化、活動の取り組みを強めるという点と同時に、やはり捏造を生み出すような、私ども、下請いじめにつながるような業界としての課題があるのではないか、このことを思っております。

 もともと、関西テレビの第三者委員会の報告の中でも、下請事業者、孫請構造の中で、下請法違反のような実態がまかり通っている、また、独禁法違反に当たるような優越的地位の濫用に当たるようなおそれのある行為なども行われているという具体的な指摘もございました。

 こういった下請いじめの実態について、率直にどのように受けとめておられるのか、その認識について、ぜひまずお聞きしたいと思っております。

広瀬参考人 一般企業の下請関係を律します法令がだんだん整備されてきて、放送局もその対象になり、公取委などから事情調査なども受けたことがございます。確かに番組制作会社は小さな、時には個人企業と言ってもいいようなケースも随分ございますけれども、私たちは、そうした番組制作会社の本当の意味での成長がなければ番組の向上はないということを切実に感じております。

 各テレビ局でどういう条件で下請にお願いするか、制作会社にお願いするか、番組の点検はどういうふうに我々が入っていくか、そういう細かいことを相談しつつ、かつ契約の形で書いて、お互いに守っていこうということになっております。「あるある」の事件の後、そうしたプロダクションとの関係の透明化だとか、それから、一体となって仕事をしていく、決してでき上がったものにイエス、ノーを言うだけじゃないよ、あるいは予算管理だけ厳しく言うわけじゃないよというような、そういう姿勢に随分変わってきたというふうに認識しております。

塩川委員 まず、契約の透明化とか丸投げはしない、そういう点での改善の努力は結構なんですけれども、現状の認識ということでぜひお聞かせいただきたかったんです。「あるある」の第三者委員会の報告の中で、下請法違反の支払い代金の支払い遅延のような実態があるという問題ですとか、独禁法の優越的地位の濫用に当たるようなことが行われているという現状について、人ごとではないとお感じなのかどうか。その点、お聞かせいただけますか。

広瀬参考人 そういう、プロダクションの責任分野が大きいというような指摘があった一方、いやいや、プロダクションに対して、えらく予算を削るとか非常に過酷なことを要求するとか、視聴率のとれないようなものをつくってくれば拒否するとか、そうした発注側の方に問題があったんじゃないかという指摘も同時に出てまいりました。

 私は、あの後、そうしたプロダクションの方々と懇談の機会を持ったり、インタビューを民放関係の機関紙に出させてもらったりということで、下請の責任もさることながら、それはもう発注する側の責任の方がむしろ大きいんじゃないかということは力説してきたつもりでございます。

 今も、決してプロダクションの責任には、この種のことが起きたときに、プロダクションが悪いというようなことは絶対に言えないよという気持ちでおります。

塩川委員 ありがとうございます。

 最後に、広瀬参考人に、持ち株会社の点で一点お伺いします。

 マスメディア集中排除原則の適用緩和ということで、持ち株会社が可能となる。そういう中で、御指摘にもありましたけれども、ローカル局に対するキー局の支配力を強めることがあってはならないという話がございました。地方局の子会社化が進んで、地域性が後退するんじゃないかなんという懸念も出ているわけです。

 その点で、どういう形で支配力を強めることがあってはならないということを担保するのか。その点で、業界としてお考えのところをお聞かせいただけますか。

広瀬参考人 早い話が、アメリカの場合には、メジャーと言われる放送局は、直営局を全国に出しているわけです。日本の場合にはそうじゃなくて、ネットワーク協定に基づく、いわば系列局でございます。極端なことを言えば、キー局のもとに全国の系列局、二十ないし二十七、八ございますが、それを全部一つの持ち株会社でくくってしまえば、実質的にはそうした直営局と変わらないことになってしまいます。それは明らかに私は行き過ぎだろうと思いますし、そうすべきだという意見は今のところテレビ局の中にはございません。

 そういう意味で、持ち株会社に対するある会社の、例えばキー局の持ち株比率をどの辺までにしたらいいのか。それが一〇%以上、二分の一というのも一つの案でございますけれども、もうちょっと下でもいいんじゃないか。経営というのは、株で、株式を保有することで支配していく、コントロールしていくんじゃなくて、やはり、そうしたマスメディア集中排除原則というのが一方にあるわけですから、それを尊重しつつ、放送局の場合にはやっていくべきではないか。そのためには何も二分の一までにこだわることはないんじゃないか、もうちょっと低くてもいいのではないかなという気がしております。そういう意味でさっき申し上げました。

塩川委員 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正です。

 きょうは、参考人の皆様には、貴重な時間を割いて、また、貴重な御意見を拝聴することができました。心から感謝申し上げたいと存じます。

 すべての皆さんに質問するべきなのかもしれませんけれども、時間の制約これあり、皆さんに行き渡らない部分が出るかもしれませんが、あらかじめお断りしておきたいと思います。

 まず、私は、古森参考人に何点か聞かなければなりません。

 まず、NHK改革については、二〇〇八年度からの五カ年計画、こういうものが今内部で検討されているやに承知をいたしております。この五カ年計画に対する経営委員会の見解等々も、直接聞いたわけじゃありませんが、新聞等々を通じて聞くわけでありますが、言うならば、会長率いる執行部の側が経営委員会に提案をした、ところがそれが否決をされる、そして、二〇〇八年度からという五カ年計画を一年おくらせてでも出し直してこい、こういうふうな形になっているというふうに私は理解しております。その理解が間違っておれば、ひとつ訂正していただきたいと思うんです。

 また、受信料について、執行部の側は、一律五十円、口座振替等々した場合にはさらに五十円の引き下げ、これを提案した、こういうふうに新聞に書かれておりました。それに対して、経営委員会の側は、値下げの前にまずやるべきことがあるだろう、肥大化した組織のスリム化だ、あるいは不祥事の再発防止策だ、公共放送としてどう役割を果たしていくのか、そういうビジョンを明確にしろ、こういうふうに注文をつけたと。加えて、経営委員会の側が、経営効率化など抜本的な改革を盛り込んだ計画を新しく、第三者を交えた新たな枠組みの中で練り直せ、こういうふうに執行部側に求めた、こういうふうに言われています。

 まず、そういうふうなことが、私が今申し上げたことが間違っておるかどうか確認をしたいんですが、同時に、古森委員長率いる委員の側が、この経営計画を一年先送りしてでもつくり直してこい、そういうふうに申したというそのバックグラウンド、なぜそういうふうなことをあえて言わなければならなかったのか。その点について、まず最初に聞いておきたい。

古森参考人 お答え申し上げます。

 まず、その理由でございます。一年先送りしたという理由でございますけれども、これは、ただいま委員自身もおっしゃいましたように、NHKはいろいろな問題がございます。

 一つは、不祥事以来の健全経営、フェアな経営、そういう経営が望まれているという状況がございます。それから、もう一つは、技術の進歩に伴いまして、放送と通信の融合等々の問題が出る。こういう環境にどういうふうに対応するのか。さらには、老齢少子化とか、人口の構成がいろいろ変わってきている。こういう中でどういうふうにしていくのか。

 あるいは、さらにもっと言いますと、一番大事なことは、公共放送としてNHKは何をもっと充実していくのか、何をアピールして情報として発信していくのか、こういうことをもう一回根本的に見直すということも必要だろうと思います。

 それから、受信料の不公正があります。約三割の人がまだ払っていないというこの社会的不公正をどうするのか。国際放送の強化をどうするのか。あるいは、委員自身もおっしゃった、肥大した組織をどうするのか。

 こういうふうな問題等々があることは明白であります。

 その五カ年計画が出てまいりまして、執行部案として出てまいりました案、これに数回、私ども経営委員も意見を申し述べまして、やりとりしたわけでございますけれども、そのもともとの原案が私どもの目から見て、あるいは国民から間接的に選ばれた、国会議員の、国会での承認を経ての人事でございますから、私ども経営委員はいわば国民の代表だろうというふうに思います。視聴者の代表だろうと思う。その目から見て不十分であるという、これは全会一致で判断いたしました。全部の委員が、これでは今後のNHKを五カ年やっていく中心の計画としては不十分である、やりとりを通じても十分に改善されず、そういう結論に達した、こういうことでございました。それが九月でございました。

 それで、否決といいますか、先送りしましたのが九月でございましたけれども、来年の予算は、今までの三カ年計画、もう一年残っておりますから、それに基づいてやる。そして、来年の九月ぐらいまでに新五カ年経営計画を、これは、執行部と経営委員とよくコミュニケーションをとりながら新しく練り直そうじゃないか、その中で、今言ったようないろいろな問題に対しての課題、NHKの課題というのをきちっととらえ直した計画にしていこう、こういう趣旨でございます。

 以上であります。

重野委員 今の委員長の話を聞いていますと、私は、NHKの仕組みそのものについて、今まで我々が常識として持っていたそういう仕組みではない、全く新しい仕組みを考えているのかな、こういうふうな感じがするんです。

 私は、常識的には、そういう計画等々についてどうするというのを執行部の側が経営委員会に提案をする。それに基づいて、経営委員会が経営委員会としての、委員としての意見をそれぞれ開陳しながら、正すべきところは正していく、了とするところは了とする、そういうやりとりがなされて、そして成案ができ上がっていくんだろう、これが私は常識ではないかと思うんです。

 そして、でき上がった計画に基づいて執行部の側が実行する、仕事をするわけですね。そして、その仕事ぶり、あるいは計画と仕事の実態がどう整合性があるのか、どこが乖離しているのか、こういう点について、新しくできた監査委員会が評価をするといいますか監査をする。常識的に考えて、そういう仕組みが新しい仕組みではないのかな。

 しかし、私は、今申しましたように、この間の経営委員会に事務局の側が提案をしたその内容について、一年先送りしてでもいいから出し直してこい、これはちょっと常識的に考えて穏やかでない、私はそう思うんです。今の委員長の発言は、部分的にはそういうことはあると思いますよ。しかし、経営を一年先送りしてでも新しいものを持ち出してこい、これはちょっと私は、正常な関係なのかなと言わざるを得ませんね。だから、今言ったように、今委員長が言った内容では、それは説明になりません。

 何でそうなったのかということをやはり我々は知りたい。その点、もう一度、わかりやすく説明してください。

古森参考人 同じことを繰り返しますけれども、出てきました計画というのは、五カ年計画をなぜ部分改正で、そういうやりとりをして改正しなかったかということに尽きるというふうに思いますけれども、それはいろいろ意見を申し述べました。

 七月の二十四日でございますか、私どもに原案、考え方というのを執行部が提示されて、その後、九月の末まで四、五回、我々は定例の経営委員会以外にも、特別な経営委員会を開きまして何回もやりました。いろいろその間、執行部にも我々は意見を申し述べました。しかし、結果として何一つ反映されなかったということを、最終的に九月の二十五日に確認いたしました。

 その五カ年計画というのは、はっきり言えば、前の三カ年計画とほとんど変わっていない、受信料が下がるということだけが新しい新味の計画である。先ほど申し上げましたように、環境は激変している中で、NHKの使命というのをもう一回、あり方を見直さなきゃいけない。そのあり方を見直さなきゃいけないこの大事なときに、この五カ年計画が前とほとんど変わらない計画でいいのだろうか、これは国民に対して我々は義務を果たしたことにならないという考え方で、我々は、もう一回考え直しなさい、一年かけてやりましょうよ、こう申し上げたわけであります。

 以上であります。

重野委員 私が言っているのは、委員長はそう言うんだけれども、執行部と経営委員会の間で、本当にそれぞれの案を出し合って、そして、ここがいいここが悪い、そういうふうな、いわゆる審議というか合議というか、そういうものをやったのかどうかということですね。

 私が承知しておりますのは、今委員長が言いましたけれども、執行部が出した計画案に対する経営委員会の見解なるものが、執行部に見解というものを知らせる前に、先に新聞で報道された、こういうふうに書いた新聞があるんです。その事実があるんですか。まずその点を確認しますが。

古森参考人 その事実はございません。会長も出席しておりました経営委員会で、我々がこれを認めることはできないということを決めた後、新聞に発表したわけであります。

 それからさらに、前もって、我々は経営委員といたしまして、執行部に対しましていろいろなシグナルは送っている。ここは問題があるんじゃないか、ここはどうだと指摘もしている。ところが、先ほどから何回も言っていますけれども、改良をねらった改善あるいは計画変更というのはございませんでした。それで私は、このままではこの計画を経営委員は認めることができませんよというふうなことを事前にも申し上げておりました。

 それから、委員がおっしゃったように、経営委員も計画を出したらどうか。それは、そういうことじゃありません。これは、執行部が出した経営計画を、我々がそれを承認するかどうかということでございますから、これはおのずから機能が違うわけであります。

 そういう意味で、なぜそんなことになったかというと、そういういきさつで、確かに、執行部の考え方を生かして何とかならないかということは我々も考えたわけでありますけれども、本当に経営で大事なこと、NHKの経営で今大事なことは何か。それは五カ年計画を、しっかりしたものをつくることであります。それで、何をやらなければいけないか、何が一番大事かという観点で、我々はあえてそういうふうに判断させていただいたということを御理解いただきたいというふうに思います。

重野委員 もう時間が来ましたので、最後に、今委員長の話、経営計画は執行部がつくるんだ、それはそのとおりですね。ところが、経営委員会が新たに経営改革ステアリングチームというのを立ち上げた。一貫して言っているのは、第三者を交えた新たな枠組みで練り直せ、こういうふうに言っている。

 これは、今委員長が、いや、計画をつくるのは執行部だということと私は食い違いがあるんじゃないかなと。しかも、具体的にこういう経営改革ステアリングチームというのをつくって、そこで計画の再検討をさせる。つまり、こういう新たな組織をつくってそこに検討させて、そこで委員会が案を発議する、こういうふうなことを考えているんじゃないか、私は個人的にそういうふうに受けとめるんですが、その点についてはどうですか。

古森参考人 私は、経営計画を経営委員がつくるのではないと申し上げました。そのとおりであります。

 では、なぜステアリングチームをつくったかといいますと、先ほど来申し上げておりますように、最終段階に至りまして執行部が経営計画の案をつくってくる、二カ月ぐらいの間、限られたやりとりの中で、我々の意見を十分に盛り込む、あるいはその意向を盛り込む、討議の理由をいろいろ申し上げるという時間が十分ではありませんでした。これは実際に体験したことであります。分厚い資料を読みながら、一回二時間ぐらいの検討会で、それを月に二回ぐらいで、そんな簡単にこんなものは決まるものではありません。

 したがいまして、ステアリングチームというのは、最後に我々は経営委員として意見を述べるわけでございますから、執行部がつくりました経営計画に対してこの計画はどうであるという意見を申し述べるわけでありますから、では最初から申し上げましょうと。そうしたら合理的ですよね、時間の節約になりますよね。ですから、こういう重点項目は入れていただきたい、こういう問題認識はいただきたい、こういうことを我々が経営委員としての今の考え方を執行部に申し上げましょうと。執行部はそれを受けとめていただいて、みずからの案をつくっていただきたいというふうなことでございます。

 第三者を入れてというのは、場合によってはステアリングチームに第三者を呼びまして意見を聞くということもあり得るという程度のことでございまして、第三者と一緒につくりなさいと申し上げたことは一度もございません。

 以上であります。

重野委員 まだまだ認識には相当乖離したものがあります。今後ともこの問題についてはしっかり取り組んでいきたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、亀井久興君。

亀井(久)委員 国民新党の亀井久興でございます。

 きょうは、参考人の皆様方には、大変お忙しいところ御出席をいただき、貴重な御意見を拝聴しましたことを心から感謝申し上げます。時間の関係ですべての方々に御質問できませんので、その点はお許しをいただきたいと思います。

 まず、NHKのお二人にお伺いしたいと思いますけれども、今の重野委員とのやりとりを聞いておりまして、感じるところがございました。それは、以前にこの委員会でNHKの問題を取り上げるたびに私は申し上げておりますけれども、やはり公共放送であるNHKというものは、視聴者・国民の信頼というものの上に初めて成り立っているわけでございますから、そこが揺らいだのではNHKそのものが成り立たなくなる。不祥事のダメージからどうやって信頼を回復していくかということはNHK全体として真剣に取り組んでおられることだろうと思っておりますが、その中で、経営委員会の機能強化をどうしてもやるべきだということは、私も意見として再三申し上げてまいりました。

 よくイギリスのBBCとNHKが比較されるわけですが、そのBBCとの比較においても私はいろいろなことを申し上げたわけでございます。やはりBBCの経営委員長というものの評価、国民の間での信頼が非常に強い。経営委員長がこういう人であるからこそBBCは大丈夫なんだ、それだけの信頼感が私はイギリスにおいてはあると思っております。

 その意味で、NHKの経営委員会の機能強化をしていくということは大変大事でございまして、経営陣との間で一種の緊張関係が生まれてきているということは大変結構なことだと私は思っております。やはり今までのように、ただ執行部が決められたことを自動的に承認するというような経営委員会であってはならない。やはり国民の立場にあって、NHKをいかにしていくのか、そういう高度な見識というものがそこに発揮されなくてはいけないというように思っております。

 事務局の強化も必要でありましょうし、また、経営委員の方の常勤化を進めるということも大事だと思いますけれども、私は、やはりトップの経営委員長さんこそが、兼職ということではなく、もう堂々と専任で、常勤で、そして、NHKの会長が橋本さんであるということ以上に経営委員長が古森さんだということが国民にしっかり認識をされる、やはりそのぐらいのしっかりした立場をつくっていただきたいというように思っております。

 そのNHKの経営委員会と執行部との間の緊張関係ということについてどのようにお考えなのか、古森委員長そして橋本会長にお伺いします。

古森参考人 先生のおっしゃったとおりでございまして、ある意味での緊張関係がございました。あった方がよろしいかというふうに思います。

 もう一度言いますけれども、経営委員は重要事項を議決する、それを会長以下の執行部が執行していく、またそれを経営委員の方は監視する、こういうことが公共放送の仕組みとしてはあるわけでございます。そういう意味では、ある意味で緊張関係があった方がそれはいいということだろうというふうに思います。

 ただし、信頼関係というのはまた別問題でございまして、一部のマスコミがあおるわけですね。けんかしている、対立していると、おもしろおかしくやるわけです。それから、五十円下げるというのを、委員長が百円下げろと言ったと、これは受信料の問題だというふうにあおるメディアもございます。

 そういう意味で、本当の真の問題は、先ほど言った公共放送としてのNHKはどうあるべきかという問題の論議が少しおろそかになって、受信料だけの問題、あるいは二人がけんかしている、対立しているということに問題が矮小化されるというのは非常に残念でございます。

 そういう意味では、NHKの問題も、国民あるいは視聴者の皆さんに正しく状況を発信していく必要があろうかというふうに思いますし、私は、緊張関係が必要でございますけれども、あえて対立する、何でも反対する、何でも言いたいことを言うということではなくて、できれば信頼関係で、それぞれ違う機能の中でお互いに切磋琢磨していいNHKにしていくということが非常に大事なことだというふうに思います。

 私も、政治的に全く中立でございます。一部のこともいろいろ言われまして、安倍さんとどうだこうだと言われておりますけれども、ちょっといい機会なので申し上げますけれども、安倍さんとの会は、これは政治家と経済人の会でございまして、思想を同一にする人が集まった同志の会というよりも、経済情報とそれから政治情報とをお互いに交換し合うというような親睦会でございまして、安倍先生とも特に関係があるわけではございません。

 私もNHKの経営委員長として、中立公正、NHKとして真に何が正しいかということで行動しているつもりでございますし、今後もそういうふうにしたいと考えております。

 以上でございます。

橋本参考人 公共放送NHKの経営、運営というものが健全でなければならない、そのために、経営委員会と執行部がしっかりとコミュニケーションをとりながら、しかしいい意味での緊張関係に立ってその行為を行っていく、そして視聴者の方々の信頼を取りつけるということは、もう本当に根幹のこととして大事なことと思っております。

 当然のことながら、これからの経営案件というものも、我々執行部は、日常の執行の中から、将来も見ながら経営委員会の方に提案申し上げていきたいと思っておりますし、そういうものについて、公共放送NHKあるいは報道機関NHKというものを、視聴者の信頼をとり、しっかりとその役割を果たせるよう、経営委員会、執行部が一体となって経営を行っていくことが一番肝要なことかと考えております。そういうふうに努力してまいりたいと思います。

亀井(久)委員 次に、民放の関係を少し伺いたいと思います。

 以前に、この総務委員会で民放連の日枝前会長をお招きしてお話を伺ったときに、私よく覚えておりますけれども、民間放送というものを支えるのに二つの柱がある、一本はニュースとか情報提供を中心とする報道である、もう一方がエンターテインメント、娯楽であるということでした。その二本の柱を両立させるためには経営者の高い公共性、公益性の自覚が必要だ、そういうお話でございました。私、まさにそのとおりだと思うんですね。

 ところが、民間放送というのは、コマーシャリズムのど真ん中で、国民の共有の財産である電波を使ってやっておられるわけでございますが、いかに利潤を追求するかということが、民間会社でございますから当然のことだと思いますけれども、やはり現状は、大変な視聴率競争の中で、それこそ熾烈な競争をやっておられるということでございますが、視聴率、視聴率ということにどうしても目を奪われる、いかに収益を上げるかということにどうしてもそのスタンスを置きがちでございますから、公共性とか公益性とかいう認識がどの程度おありになるのかな、現実にそういうように見えるわけでございます。

 メーカーにしてみれば、当然、自社がつくった製品に対して最終責任というのはトップが持っておりますね、欠陥商品を出せば必ずそれはトップが最終責任をとる。民放においては、商品というのは放送の中身でございますから、どういう番組を現実にやっているのかということについてトップが常にしっかりと掌握をしておられるというのは当たり前の話だと思います。

 ところが、広瀬さんの場合にはそういうことはないと思いますけれども、いろいろな民放の経営者の方々で、自分のところの放送番組をすべて見ておられるというような方ばかりではない。深夜にどんな番組をやっているかというようなことをほとんどごらんになってもいない。そういうことで経営責任というものが私は果たせるとは思わないわけでございます。

 公共性、公益性というものの自覚を民放連の会長としてどのように認識をされ、また民放各社に対してどのように指導をされていくのか、その基本的なお考えをまず伺いたいと思います。

広瀬参考人 関西テレビの「あるある大事典」の問題が起きました後、先ほどもちょっと話題になりましたけれども、プロダクションの責任も相当大きいとか、いろいろ責任を他に押しつけるような言動もございました。

 私が最初に申したのは、番組というのは例えばメーカーにとっての最大の商品であって、商品に瑕疵があればそれは社長の責任だよということです。

 BPOと大変厳しい契約を結ぶ、つまり、BPOから勧告が出て、その勧告に仮に何か言いたいことがあっても、それはもう社長が責任を負うべきことで、守れないならばそれは社長の引退を意味するようなそういうものだと思うんですけれども、社長の責任を明らかにするということから改革は始まったというふうに思っております。

 公共性という点について言いますと、一般に、視聴率をねらうために公共性を犠牲にすると思われがちですけれども、日本の視聴者というのは相当賢いと思うのは、テレビ局が社を挙げて頑張ってつくる放送番組、これはエンターテインメントに限らずニュース番組もそうですけれども、あるいはドキュメンタリーがそうですけれども、そうしたものはやはり相当の視聴率がとれております。

 確かに、深夜に限っていえば、おっしゃいますとおり、ちょっとひどいなというのも、今でもないわけじゃありませんけれども、十二時を過ぎたあたりの、若い人たちが会社から疲れて帰ってきて気を紛らせるにはとか、そういう若干のゆとりもあっていいのかなというのを私自身も感じております。しかしながら、全体を通じて、特に青少年が視聴できるような時間帯でその種のことというのは絶対に許されないだろうし、そういうのをきちっと守っていくのがつまりは公共性だというふうに思っております。

 今後も、そういう意味で、公共性について最大限の責任を持つのが地上波放送の第一の条件だということを力説していきたいと思っております。

亀井(久)委員 もう時間がなくなりましたので最後の質問にしたいと思いますが、とにかく、報道機関として、憲法に保障された表現の自由というものを守っていかなくてはいけない。これは当然のことで、政治権力、行政からの介入を排除しなくてはいかぬ、それは当然のことだと思っております。しかし、一方において、今申し上げた公益性というものがなおざりにされる、そういう懸念が出てくれば、国民・視聴者の間から、何をやっているんだという批判が必ず出てくる。

 また、本来であれば、それぞれの放送会社が番組向上のための機関とか苦情処理機関をつくっておられるけれども、しかし、それで十分にたえられないから、処理できないからBROをつくり、それをBPOに持っていったということで、これはみずからの責任においてつくられた機関でございますから、そこをもっともっと権威のあるものにして、国民・視聴者からBPOに対する信頼というものが非常に強くなってくる、BPOがあるから民放は大丈夫だな、放送は大丈夫だなと思われるような、そういう御努力をいただきたいということを申し上げたい。

 それから、最後でございますけれども、飽戸参考人に、先ほどは、放送事業者の立場と国民の立場と両方考えなくちゃいけないということをおっしゃられた。確かにそれはそのとおりなんですけれども、今の状況からいきますと、BPOに対する国民の信頼というものは、放送事業者の立場に余り立ってほしくないということだと思うんですよ。やはり国民の立場に立って、おかしいところはおかしい、そして、民放が自主的につくられた機関だからこそ、その勧告、見解というものを重く受けとめるという関係になるわけですから、やはりBPOと放送会社との間の緊張関係というものも私絶対必要なことだと思いますが、そのことの御見解を最後に伺いたいと思います。

飽戸参考人 御指摘のとおりでありまして、BPOの中の三つの委員会の中でいろいろな意見があります。ただ、一番重要なことは、やはり国民の意見をいかに効率よく集約的に放送事業者に伝えるか、そして、具体的にその改善を求め、その改善がどのような形で行われたかを国民に知っていただくということでありますが、まだ、BPOそのものの活動を国民の皆さんに知っていただくという努力が非常に足りないということは痛感しております。BPOの中に三つの委員会があるということも御存じない方は多いですし、それから混同しておられる方もいらっしゃいますし、具体的に、BPOの役割は、番組を監視して罰するところではないということもやはり国民の皆さんにしっかりと、あくまでも放送事業者自身が自主的にさまざまな問題を解決していく、そのためにBPOは応援していく、視聴者と放送局の仲介をするところであるということを国民の皆さんにも周知して知っていただくということが必要だと思います。そのような努力がまだ足らないというふうに思っておりますので、その点についても、具体的にこのように改善がなされたということをもっと皆さんに知っていただけるような、そういう活動を強化していきたいというふうに考えております。

広瀬参考人 BPOのもとに放送局が自浄機能を発揮していくというのは世界に例のないそうした虚偽放送防止策になりますが、ぜひともこの形で国民の皆さんの信頼にこたえていきたいと思います。その点では、NHKとも常々相談しておりますけれども、全く意見は一致しております。

亀井(久)委員 終わります。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様方には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時開議

渡辺委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、第百六十六回国会、内閣提出、放送法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房郵政民営化推進室長木下信行君及び総務省情報通信政策局長小笠原倫明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 この際、本案に対し、山口俊一君外四名から、自由民主党・無所属会、民主党・無所属クラブ及び公明党の三会派共同提案による修正案が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を求めます。馳浩君。

    ―――――――――――――

 放送法等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

馳委員 ただいま議題となりました修正案につきまして、提出者を代表いたしまして、その提出の趣旨及び内容について御説明申し上げます。

 この修正案は、委員会における審査等を通じて明らかになった政府原案の問題点を踏まえ、理事会等における各党間の協議により、取りまとめたものであります。

 その内容は、第一に、日本放送協会の経営委員会に関する事項であります。

 政府原案では、協会のガバナンスを強化するため、経営委員会について、監督権限の明確化、議決事項の見直しを行っております。

 本修正案では、放送法第十四条第一項第一号の改正規定中「決定」を「議決」に修正するとともに、経営委員会の権限を定めた規定のうち総務省令等に委任している事項について、法律に列挙しようとするものであります。また、経営委員会は、その職務の執行を経営委員に委任することができないこととしております。

 さらに、経営委員が個別の放送番組の編集を行うことができないこととするとともに、個別の放送番組の編集について放送法第三条に規定する放送番組の編集の自由に抵触する行為をしてはならないこととしております。

 第二に、要請放送制度に関する事項であります。

 政府原案では、国際放送の命令放送制度を要請放送制度に改めることとしております。

 本修正案では、総務大臣が協会に対して国際放送の実施を要請する際、指定する放送事項等について、邦人の生命、身体及び財産の保護に係る事項、国の重要な政策に係る事項、国の文化、伝統及び社会経済に係る重要事項その他の国の重要事項に限定するとともに、協会の放送番組の編集の自由に配慮しなければならないこととしております。

 第三に、認定放送持ち株会社制度に関する事項であります。

 政府原案では、認定放送持ち株会社の議決権の保有基準割合の範囲を「十分の一以上二分の一以下の範囲内で総務省令で定める割合」としております。

 本修正案では、保有基準割合の範囲を「十分の一以上三分の一未満の範囲内で総務省令で定める割合」に修正するものであります。

 第四に、再発防止計画の提出の求めに係る制度に関する事項であります。

 政府原案では、虚偽の説明により事実でない事項を事実であると誤解させるような放送により、国民生活に悪影響を及ぼすおそれ等がある場合、総務大臣は、放送事業者に対し再発防止計画の提出を求めることができる制度を導入することとしております。

 本修正案では、再発防止計画の提出の求めに係る制度に関する規定を削除しようとするものであります。

 以上が、本修正案の趣旨及び内容であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

渡辺委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 これより原案及び修正案を一括して質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土屋正忠君。

土屋(正)委員 修正案並びに原案に関連して質問をいたします。

 私は、まず最初に、今回の放送法の改正の趣旨は主として三点ある、このように考えております。地上デジタル放送への対応や持ち株制度等による放送会社の効率化、資金強化が第一点でありますし、二点目はNHKの一連の不祥事への対応、第三が「発掘!あるある大事典」に代表される放送番組の虚偽・捏造放送への対応ということが主要な三点ではなかろうかと存じます。これらに対して、二番目、三番目について質疑をさせていただきます。

 まず最初に修正案についてでありますが、虚偽・捏造放送への対応を、政府案は、第五十三条の八の二といたしまして、再発防止計画などの提出を求め、防止策を行政処分として決めているわけであります。現在は、電波法による停波かあるいは一般的な行政指導しかないわけでありまして、その中間がない。こういうことにかんがみて、再発を防止するためにこのような政府案をつくったと理解をいたしております。

 確かに、「あるある大事典」のようなああいった捏造番組は、もしこれが他の分野だったら、詐欺罪とか公正取引委員会による摘発とか、こういう性格のものだと思います。報道の自由のもとに、表現の自由のもとに何でも放送すればいいというものではなく、基本的には、有限な電波を割り当てられている放送事業者であるということから考えれば、当然のことながら、行政の枠の中に入って、しかるべき牽制を受ける、こういうことは当然だと思っております。

 こういう観点から、私は政府案について評価をしているところでございますが、今回、各党の皆様方の修正案が出されたわけであります。この修正案については、再発防止策が法律上ない、専らBPOに任せる、こういうことになっているわけでありますが、これで十分な再発防止策がとれるかどうか、これらについてお尋ねをいたしたいと思います。

 また、もし防げない場合には行政手続法上の行政指導かあるいは停波しかないわけでありますから、これらに対して停波なんかやったら、これは内閣がすっ飛ぶような話ですから、こんなことは到底発動できるわけはないわけでありますので、こういうことについて……(発言する者あり)普通の状態では。普通の状態では、発動できると考えているとすればそれは大胆なお考えですが、私は、常識的にはあり得ないというふうに思っております。

 したがって、こういった事件に対して具体的な担保としてどういう担保があるのか、山口先生、提案者にお尋ねしたいと思います。

山口(俊)委員 御答弁をさせていただきます。

 今の土屋先生の御指摘あるいは御心配、まことにごもっともであろうと思います。

 午前中の参考人質疑でも申し上げたんですが、私も、国政に出させていただいて以来、もう常にこの議論を実はやっております。かつては椿報道だとかあるいはダイオキシンだとかもういろいろあって、その都度大議論をやってきた。そういう中で、本来、自主規制、そこら辺はみずからがしっかりやっていただきたいというのが思いであったものですから、その中でBROとかあるいは今のBPOというのができたわけでありますが、にもかかわらず、今回はとりわけ明らかに捏造だという番組が出てまいりました。

 私も、実はあの番組の視聴者でございまして、子供に、絶対納豆はいいぞと言った手前、けしからぬ、こう思ったんです。そういった中で政府案というのが出てきたわけでありますが、一方において、これは後追いといえば後追いなんですが、五月の十二日に、NHKあるいは民放連等で、いわゆるそういった自主規制をもっとちゃんとやろうということで、BPOの強化策。これまでも、訴えなければ扱わないとか、人権以外だめだよとか、係争中のものはだめだ、いろいろなことがあったんですが、ようやくBPOが動き出したのかなというふうな感じが実はいたしておるところであります。

 BPOも、再発防止策の提出を求める等々、いろいろな新しい動きが出てきております。同時に、実は、後ほどまた御答弁あるかもわかりませんが、総務大臣の提案理由の説明の中で、本来はやはり自主規制でしょう、その機能が働いておる限りいわゆる新たな法的措置はやりませんというふうなお話もございました。そういった中で、何とかBPOの強化の中でしっかりやっていただきたいというのがその思いでございます。

 ただ、さっき停波等のお話もありました。あるいは、免許取り消しというのもございます。停波も実はいろいろありまして、もう一日とめるとか、あるいはそこのところをとめるとか、いろいろあります。今回、これだけの議論をして、かつ修正ということになっておるわけですから、今後我々の期待をあるいは国民の皆さん方の期待を大きく裏切るようなことがあれば、そこら辺も含めてしっかり対応していただきたいというのが実は私どもの思いでございまして、そういった中で、今回、削除というふうなことでやらせていただきたいということでございます。

土屋(正)委員 午前中の参考人の御意見の中にもありましたように、大臣の答弁について、これは法的に担保されたものではない、だからというような御意見もありました。そういう意味では、政府案の第五十三条の八の二の、二項までしかないんですが、三項の中にBPOなどの前置機関を規定するという方向もあったんではないかということを御意見として申し上げ、今後、再発防止のために我々はやるべきことをやる、表現の自由や報道の自由を尊重しながらも、他の世界では詐欺罪に当たるようなもの、あるいは公正取引委員会から摘発されるようなケース、こういうケースについては、当然国家の秩序としてこういった法的な対策もとり得るんだという方向でまた御論議をいただきたい、このように要請をいたしておきます。

 次に、NHKのガバナンスについて橋本会長にお尋ねをさせていただきたいと存じます。

 橋本会長、御就任以来、後ろ向きな話題が多くて、心の休まるいとまもないような、なかなか御苦労があると思います。本来なら、もっともっと前向きな話をたくさんされていくべきことではなかろうかと思っております。

 今までの議論で、私、たまたま総務委員でもあり、また自民党の中の部会でもいろいろ御議論してきたわけでございますが、一番感じておりますのは、公共放送としての、いろいろな表現の自由とかいわゆる自律とか、そういうことはあるけれども、もっと根本的なことは、日本国の法律に基づいて受信料を義務的に徴収できるという制度であると。その前提としては、広い意味の国益、国家と国民の利益に供する。もっとも、今のような時代は国民の利益ということが国際的な環境問題のようにつながっている問題がありますから、狭い意味ではなくて、広い意味で日本国の国益のために資するんだという使命感ではなかろうかと私は思います。

 そういうものがないと、それから、抽象的な表現の自由とか、あるいはどういう番組をつくっていくかとかという番組の編成権にしても、価値基準がなければ編成できないわけでありますから、私は、NHKには極めて優秀な方が大勢いらっしゃるわけだから、NHKの存在価値、日本国における公共放送、こういうことについてしっかりとしたものを会長はお持ちになっていらっしゃると思いますけれども、こういう角度の議論というのがNHKでは、幹部の中ではなされているのかどうか、この辺について念のため最初にお尋ねいたしたいと思います。

 時間がないので、続けて申し上げます。

 それを前提にして、経営委員会、先ほど午前中にいろいろありましたが、前の経営委員会とちょっと違ったなと思いますのは、前は、各地域から出てこられている方が各地域の実情のようなものをお述べになるような機能が強かったように思いますけれども、今度は、経営という立場で、対立してはいけないけれども、緊張の上での信頼関係、こういう言葉が出ましたが、こういうことについて、今、従来の経営委員会との違いはどうか、そしてそのことをどう受けとめていらっしゃるか、お尋ねいたしたいと存じます。

 最後に、NHKの受信料についてであります。

 受信料の義務化ということがずっとこの法案の提出の前に問題となってきたわけでありますが、今も義務化されているわけでありますが、さらにBBCのような形の義務化についてどうお考えになるか。仮に義務化した場合に、菅前大臣が示唆していたような受信料二〇%の引き下げが可能なのか、こういうことも含めて御答弁をいただきたいと存じます。

 さらに、これに関連して、ホテル業者などの中には、ホテルの部屋の数だけきちっと納めている人もいれば、そうじゃない、仮に五百室あるとそのうちの五十室ぐらいしか納めていない、こういう業者もあるわけですね。こういうことを放置しておくということは、やはり不平等感とかいろいろな問題が出てくるので、これらに対する現行の中でもできる受信料強化策についてどうお考えになるか。

 以上、三点をお尋ねいたします。

橋本参考人 お答え申し上げます。

 幾つかございます。

 まず、国益の視点を公共放送NHKがどう考えているかという点であります。当然、これは放送法にもございますが、国益という言葉自体ではありませんが、国民の福祉向上、あるいは、当然ながら生命財産を守るという本当に根本の、国民を守る、放送を通じてそういう役割を果たすということがうたわれております。この点については、もう本当に常日ごろからそこの強化にどういうふうに役立つのかということを考えて運営をしておりますし、いろいろ計画をつくるときにもそういうことに留意して、当然そこに力を置いて、民放さんではできないNHKの役割として考えて、いろいろ議論しながら進めております。

 それから、二点目、経営委員会との関係でございます。今回、経営委員会が大変監督機能の強化ということで力を注いで改善もされてきておりますし、その中で、大変緊張感を持ちながらも連携を深める、信頼感というものを保ってお互いに役割を果たしていこうということに力を注いでございます。

 それから、三点目、義務化でございますけれども、土屋先生御指摘のように、今でも義務化、あるわけであります。その中で、支払いの明確化というふうなことになろうと思いますが、そういうふうなことについては、やはりNHKのいわゆる公平負担あるいは支払い者率を広げていく、こういう活動にとって大変わかりやすい構造かと思います。現在、実際には、条文そのものを変えることだけでなく、現実的な実際の改善の方向というものを現実的に考えてまいりたいというふうに思っております。

 それから、四点目、ホテル等の事業所の問題であります。これも、やはり公平負担をいかにして徹底していくかということでございます。これも、現実的な基準というものを定めながら、その中でより一層不公平感がないような努力をさらに一層続けてまいりたいと思っております。

土屋(正)委員 NHKには、長い間蓄積されたノウハウと、文化、風土、そして人材が大勢いらっしゃると思います。その人材を生かして、士気を高めて前へ前へと進んでほしいと思っております。

 国民の感情や意識を醸成する共通の器というもの、これは一つが公共放送でもあると思います。もちろんこれは民放の使命でもありますが、どうぞ、そういう角度で、引き続き気合いを入れて、国民の批判に謙虚にこたえながら努力してほしいということを申し上げて、質問を終わらせていただきます。

渡辺委員長 次に、桝屋敬悟君。

桝屋委員 公明党の桝屋敬悟でございます。

 今回、民主党の修正案提案に対しまして、与野党の筆頭の大変な御努力をいただきまして修正案がまとめられたわけであります。国民からは、この国会はねじれ国会と言われておりまして、大変な政治の緊張感の中で国会が今運営されているわけでありますが、そんな中で、両筆頭の御努力に敬意を表したいというふうに思います。

 私の思っておりますのは、この国会、あの被災者生活再建支援法であるとか、政治と金の問題、ねじれ国会の中ではありますが、与野党の合意形成に向けて懸命な努力がされているな、その一つだな、こう思って、敬意を表する次第であります。願わくば補給支援特措法もこの調子でいっていただきたいな、こう思うわけでありますけれども、わがままな欲望かもしれません。

 ただ、我が党も、与党の一員として政府原案をまとめるについては、党内で議案を作成する中で大変苦労してきた経緯があります。相当の議論を行ってまいりました。したがいまして、今回の修正案については大変に対応に苦慮したところでございます。

 そこで、御努力いただいた両提案者に伺いたいというふうに思います。修正を発議されて、そして合意された最大の理由を端的に、自民党、民主党筆頭からお話を最初に承りたいと思います。

山口(俊)委員 お答えいたします。

 今、桝屋先生の方からもお話がございましたように、まず、参議院選挙の結果、私どもの国会は明らかないわゆるねじれ現象にある。私も、総務委員会の筆頭理事を仰せつかって、継続の法案が幾つかございまして、これは果たしてどうなるんだろうと。衆議院で可決をしても参議院で否決というふうなことになります。

 そういった中で、この放送法も、NHKのガバナンスの問題初め、時代の流れの中で、どうしても今やっておくべきだろうというふうな強い思いも実はございまして、いろいろな方々とも相談をしながら、いわゆるこうしたねじれ国会のあるべき姿、恐らく国民の皆さん方のお考えというのは、参議院等々の与野党はしっかり協議をしなさい、話し合いをして結論を出しなさいということなんだろうと思いまして、野党の原口筆頭さんにもお話を申し上げました。そうだろうというふうなことで、ではお互い努力をしてみようというふうなことから実は始まったわけでございます。

 しかし、同時に、これまでの修正のような形じゃなくて、理事会あるいは理事懇等、できるだけオープンな形で、極力国民の皆さん方にもわかっていただけるような形で積み上げていきたいというふうなことで、今回このような形になったわけでありますが、しかし、基本的には、やはり原口筆頭とこの放送法の中身に関しての共通の思いがあった。私としても、基本的な考え方を外さない格好で何とかできないかというふうな思いもございました。そこら辺で、お互いの信頼関係の中で、皆さん方の御協力を得ながら何とかここまでやってこられたんだというふうに思っております。

原口委員 お答え申し上げます。

 冒頭、委員長を初め、桝屋理事、多くの委員の皆様に心からお礼を申し上げたいと思います。

 こういう前向きに、まさに放送法の問題は民主主義のインフラ、報道の自由、放送の自由、表現の自由というのは国民の権利にかかわる大変重要な問題でございます。ここで共通の基盤を持って、そしてしっかりと国民の権利を保障するということは、とりもなおさず大事なことであるというふうに思います。そこに向けて多くの御努力をいただいたお一人お一人の皆さんに感謝を申し上げたい、これがまず第一です。

 そして、ねじれ国会と委員がおっしゃいますように、本来、二院制でございますから、二院の意思が一つであるとは限らない、二つある場合もある。しかし、そういう場合においても、先ほど山口筆頭がお話しになりましたように、この間、NHKのガバナンスあるいは民放で起きた捏造疑惑、そういったものについては早急に解決策を国民に提示する必要がある、そして、より安心でより正確な情報、より国民の側に立った放送インフラを築いていく、そういう責務が私たちすべての委員にある、こういう認識のもとで協議を進めさせていただきました。

 もうこれでおしまいにしますが、山口筆頭からお話しいただきましたように、これは平たんな道のりではなかったし、桝屋理事にも大変御努力をいただきましたけれども、やはりその中で、修正協議もすべてオープンにしよう、論点もきっちり明らかにしようと。今回、例の「あるある大事典」に発した行政指導のところは削除という話をしましたが、しかし、それでいいとは、先ほどの委員の御質問にもありましたように、私たちは思っていません。それですべてが済んだとは思っていません。放送もやはり権力を持っています。その権力を持つ人たちがみずからの権力を律する、また、公権力がむき出しの介入を放送にしない、このことをきっちりと担保できるように共通の基盤をつくれたものだと思います。

 本当に、御努力いただいた桝屋理事に改めて敬意とお礼を申し上げたいと思います。

 以上でございます。

桝屋委員 両者の思いを今吐露していただきました。

 当初、最初に申し上げたように、私どもも原案をまとめるのに大変苦労したものですから、とりわけ、報道の自由、そして政府の責任、このバランスをどうとるのかというのは大変に悩ましい思いをしてまとめたものですから、山口先生と原口先生がお二人で相談されている雰囲気を見ながら、大丈夫かな、うちとちょっと違うような雰囲気もあるな、こう思ったりしたわけでありますが、よくまとめていただいたな、こう思っているわけであります。

 時間もありませんので、もう一点。実は、我が党内で、修正案を御提示いただきまして議論いたしました。その中で一点だけ。

 一つは、もう飛ばしますけれども、三十三条のところであります。国際放送の実施の「命令」が「要請」ということになり、今回、その要請の内容がより具体的になった。結構なことだと思っているわけでありますが、その上で、三項には今までどおり、「協会は、総務大臣から第一項の要請があつたときは、これに応じるよう努めるものとする。」と。その間に、二項として、「総務大臣は、前項の要請をする場合には、協会の放送番組の編集の自由に配慮しなければならない。」、こう入れていただいたわけであります。

 私も当初この規定を見て、言わずもがなかな、まあ当たり前のことだな、大いに結構だ、こう思ったわけでありますが、党内で議論をしましたときに、三項は、この要請があったときはこれに応じるよう努めると、応諾の努力義務が規定されているわけでありまして、そう考えますときに、そこまで考えるのかな、こう思ったのでありますが、二項が入りますと、前項の要請をする場合には放送番組の編集の自由に配慮しなきゃならぬと入れられると、やはり三項がどうしても目につくわけで、そこはやはり、要請として、放送の自由を侵すリスクがあるということを明示するような規定ではないのかという指摘をいただいて、なるほど、そこまでやはり報道の自由ということは考えなきゃならぬのかな、こう思ったりした次第であります。

 こうしたことは、ある意味では考え過ぎということなのかと私は思っているんですが、ここは素直に、やはり放送番組の編集の自由ということはどこまでも尊重されなきゃならぬ、こういうことで整理していいのかな、こう思っているところでありますが、今のような、我が党内の本当に深く考える人の意見について、山口先生はどのようにお考えなのか、一言お話しをいただきたいと思います。

山口(俊)委員 もう先生も御案内のとおり、もともと放送法に編集の自由というのがございます。それで、あえてこの項目をつけ加えたというのは、応諾の努力義務があるというふうなこともございまして、さまざまな議論の中で、より編集の自由というものを侵さないようにという意味でやらせていただいたといいますか、ですから、お話しのとおりで、そういった意図は全くございませんので、御心配ないようにお願いいたしたいと思います。

桝屋委員 山口筆頭が大臣ならば安心なんでありますけれども、もともとこの議論が始まった動機といいましょうか、前の大臣が大変に一生懸命言われたわけであります。増田大臣ならまず大丈夫かなと思うんですけれども、私が言いたいのは、大臣によって心配だったり心配でなかったりするのは全く変でありまして、ここはやはり額面どおりとらなきゃならぬ。放送番組編成の自由というのはどこまでも尊重されるということだろうと思っておりますが、大臣の顔を見ると一言聞きたいのですが、そのとおりだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

増田国務大臣 お答え申し上げます。

 放送の自由、これはもちろん最大限尊重しなければいけないものでございまして、こういった規定があるわけでございますが、これは常に、私どももそういうことを大前提に考えていきたい、こういうふうに思っております。

桝屋委員 今回、国際放送の議論が始まった起点からきょうの一つの結論に至る過程ということを、大臣、どうぞ深くお考えいただいて、よろしくお願いをしたいというふうに思います。

 最後に、我が党の提案者にお伺いしたいと思います。

 谷口委員におかれては、政務官の時代からずっとこの放送法改正について取り組まれてきたわけであります。今回、民主党さんが提案をされて、民主党さんの提案を全部合意できたわけではない、まだまだ課題が残っているわけであります。放送行政の公正性あるいは中立性の確保ということはなお議論を続けなきゃならぬと私は思いますし、午前中の参考人の質疑を聞いていましても、BPOについては本当に大丈夫かなと。基本的な考え方、あるいは見解と勧告、この違いの基準というようなものは、国民の前に事前に考え方、基準が明示されているということは絶対に必要でありますし、参考人の意見も本当に大事な視点だと思っているわけであります。

 このようにさまざまな課題が今後も残っていくのではないか、こう思っているわけでありますが、公明党の提案者、谷口委員におかれては、今後の放送法のあり方を考える場合にどのような課題を認識されておられるのか、お考えがあればお聞かせいただきたいと思います。

谷口(和)委員 お答え申し上げます。

 桝屋理事から今御指摘ありましたように、この放送法、原案をまとめるに当たっては、我が党も相当、部会も十何回も開いて、かなりの時間と労力をかけてやっとまとめ上げた議案でございました。

 今回、民主党さんから幾つかの点について修正案をいただいたわけでありますけれども、私どもとしては、基本的には、この原案に示された政策が基本的にきちっと維持をされるという観点から、さまざま検討をさせていただきまして、そして対応をいたしました。

 今後の放送法のあり方についてでありますけれども、御指摘のように、やはりBPOがしっかりと機能していかなければいけません。そういう点もございます。

 いずれにしましても、放送法のあり方については、今後、社会情勢もさまざま変わってくるでしょうし、また、技術の進展も我々の想像を超えるような進展をすることもあると思います。そういう中で、放送法の持たなければいけない役割をしっかりと考えて、そして常に、不断にチェックをしていく、また検討していく、こういう姿勢で臨んでまいりたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

桝屋委員 ありがとうございました。

 午前中の審議を聞きながら、あるいは各委員の議論を聞いておりながら、放送における公益性、公益という言葉が随分出ましたけれども、この公益という言葉ほど不確かな、定義のはっきりしないものはないわけでありまして、きょう御出席の各党派、各委員さん、協力をしながら、こうした点をさらに議論を続けていきたいというふうに思っておる次第でございます。

 ありがとうございました。以上で終わります。

渡辺委員長 次に、田嶋要君。

田嶋(要)委員 民主党の田嶋要です。

 きょうは、放送法等の改正とその修正案に関する質疑の時間でございますが、まず冒頭に、前回の関連の別件で少し時間をとらせていただきたいというふうに思います。

 十月三十日に私自身も質問させていただきました件でございます。郵政民営化に関係をいたしまして、アメリカと十八回に及ぶ会議を行ったという関係の質問をさせていただきました。

 それに関しましては、そのときの大臣からの御答弁で、増田大臣から、「この問題については早急に私の方で精査をして出せるものをお出しする、これは誠実に皆様方の御要望におこたえしたいと思います。」という御答弁をいただいたわけで、私も、ぜひ早急によろしくお願いしますということで結んだわけでございますが、その関係の資料が二枚出てまいりました。大臣ももちろんそれはお手元にあるかと思うんですけれども。

 まず最初の質問は、民営化準備室による対応状況に関しまして、これまでは、日にちだけを表示した一枚紙、十八回の会議の日にちだけが入った資料をいただきましたけれども、今回、例によって墨塗りがいっぱいでございますが、少なくとも、民営化準備室側が渡辺室長を初めとする方々によって対応されたという点、そして、米国大使館あるいは在日米国商工会議所、米国財務省あるいは生命保険協会等、どういう相手との会議だったかというところまでは情報を出していただいたわけでございます。

 前回の引き続きでございますので、まず大臣の方から、このアウトプット、誠実に調査をしていただいて、大臣が指揮をとっていただいたんだろうと思うんですけれども、その結果、およそ一カ月たって出てきたこの墨塗りの一枚紙と、それからもう一枚、説明内容という紙も私手元にございますけれども、この中身に関して、大臣の方から総括をしていただきたいというふうに思います。

増田国務大臣 お答え申し上げます。

 十月三十日の委員会で、今先生からお話があったように、御質問いただいたわけでございますが、どうも、やはり、私もそのときのやりとりを聞いておりまして、十分な国会審議をしていただく観点からは、私どもの方から常にでき得る限り十分な情報提供を行っていくということが前提になるんだろうと思いますけれども、そうした点においてやはり欠けているところがあったのではないか、こういうふうに思ったわけであります。

 特に、この関係についてはいろいろそこで指示をいたしまして、どういう経緯だったのか、やはり、まず文書をいろいろ探して、それから相手方のどういう人間とこちら側の準備室のだれが会ったのかというのをできる限り明らかにするように、そういうことを指示しまして、今先生がお話ございました、墨塗りにはなっておりますが、そういう状況が判明をしてまいりました。

 ただ、肝心の協議の内容等がわからない、こういうことがございまして、これは理由をいろいろ聞いてみますと、組織が、体制が縮小して、そして職員も入れかわっていく中で、どうも、軽微な内容のメモだったために引き継がなかった、こういうような報告がありました。これは、そういうことでいいのかどうかということがあって、とにかく物がないということでありますので、こちらの民営化準備室の当時の担当のところ、これはさまざま役職がございますが、そこに行って、内容をやはりきちんと聞き取って、どういうことであったかを明らかにする必要があるのではないか、こういうことがありまして、その後、指示をいたしまして、推進室の事務方の方に、当時の担当者のところに聞き取りに行かせました。その模様がもう一枚の概略の紙のところに書かれておりますが、行って、どういう内容であったのか記憶している限り明らかにしてくるように、こういうことを指示したところでございます。

 お手元に、その様子などについてまとめまして、そして木下推進室長から理事会において概要を説明させたところでございますが、こうした一連の経緯を見ておりますと、田嶋先生と事務方の間で十月三十日のあのいろいろ質疑をする中でも、私自身も当時のやりとりを聞いていて、やはりどうも国会審議の重要性とか重みというものを事務方の方で十分に理解していないような、そういう様子が見えましたので、今後十分ここは注意しなければいけないというふうに思いましたのと、その点はよく推進室長の方にも私から指摘をしておいたところでございます。

 一連の経緯がそういうことでございますけれども、今後、こうした国会の御審議には十分な情報提供を行う、常に私どもこういう姿勢で臨んでいかなければならないと改めて認識をしているところでございます。

田嶋(要)委員 存在しない情報と存在する情報があると思います。そして、存在する情報の中に、出せる情報と出せないものというのは区別されると思いますが、事務方の説明、調査の結果、大臣はこのアウトプットで納得された、もうこれがすべてである、今後これ以上一切何も出てこない、そういう御理解でよろしいですか。

増田国務大臣 当時の関係者のところに行って、記憶している限りのことをすべて聞かせてきたところでございますので、その点は、ここに概略記載しておりますけれども、こういうことであるというふうに私も理解してございます。

 それから文書の関係でございますが、それ以前に、文書が本当にないのかどうかということでございましたが、いろいろ私の方で、事務方にもこの点は随分繰り返し聞きました。それから当時の状況も、部屋の状況とか人員の様子等も聞きました。

 そういうことも踏まえて、ここのペーパーに書いてございますとおり、軽微な内容のメモであったため、極めて残念なことでありますが、行政文書として引き継がれていなかったということでございますので、私としては、そういう事務方が私の指示を受けて誠実に調査をして、それに応じて、結果としては私も十分でないというふうに思いますけれども、今、調査についてはこれに尽きている、このように判断したところでございます。

田嶋(要)委員 以前私の方から何度も情報提供を依頼したときに事務方から言われていたのは、議論の中身に関する議事録やそのメモ等は存在しない、もうないんだという説明を受けておりましたけれども、いただいた資料の中身を拝読しますと、要するに、これは廃棄をされたというふうに書いてありますね。

 要するに、存在しないというニュアンスも両方あるのかもしれませんけれども、もともとは、実際メモをつくっていたけれどもその重要性等の判断で廃棄をしたというのが事実である、そういうことでよろしゅうございますか。裏を返せば、その十八回のミーティングそれぞれに関する議事録ないしはそのメモ等は、一応は用意されたのが通例であるけれども、どなたかの判断によって廃棄されたということでよろしゅうございますか。

増田国務大臣 これは、公式な記録というよりも、当事者が軽微な内容としてメモで記していたものだった、こういうふうに報告を受けております。そこが非常に、どういうものであったのかということは、残念ながら記憶に頼るしかないということでありますが、そういう軽微な内容のメモであったため行政文書として引き継がれていなかった、こういうふうに考えております。

田嶋(要)委員 にわかに信じがたいわけでございます。大臣、本当に信じられておるのかどうかわかりませんが、私にはにわかに信じがたいものがございます。

 これは、日米間の規制改革イニシアチブという政府間の合意に基づいて、要請に基づいてこういった場を設けるということが小泉総理の時代から行われてきて、第四回目だったということでございます。そういう中での会合なわけですが、証拠というものが一切残っていない、どういう中身に関して議論されたか一切残っていないというのは、大変不思議な感じがするわけですね。しかも、いただいた資料の中身は、どのぐらいの長い時間の会議であったかという情報も提供されていないわけでございます。やはり、情報開示という意味では、いよいよ疑念を強くするような中身であると言わざるを得ません。

 一点確認させていただきたいんですが、「現在の郵政民営化推進室の日米関係の資料ファイルを改めて探してみますと、」というふうに記述があるわけでございますが、要するにこれは、推進室の日米関係の資料ファイルというものは存在するということですね。

木下政府参考人 そういう名前でファイルをつくっているわけではございませんが、日米関係についての資料ファイルを見てみましたということでございます。

田嶋(要)委員 きょうはこれぐらいにいたしますけれども、これ以上出てこないということで確認をしたと理解いたします。

 それで、やはり心配なのは、こういうことを今後も繰り返していてはいけないということで、例えば、アメリカは郵政の次には医療に大変強い関心を持っているというようなことも言われております。日本の医療市場への参入等に関して強い関心を持っているとも言われておりますけれども、相手方の申し出に応じてそういった場を設けなければいけないというのも、これは程度問題だと私は思うんですね。例えば、十八回もやらなきゃいけなかったのか。例えば、郵政だけであれば、金融の分野、保険の分野、郵便の分野と、一回ずつぐらいのミーティングの場を設ければそれでよかったのではないか、そういうような印象も持つわけでございます。

 こういった大変国民から不安感を持たれるような十八回もの会合を持つようなことをあしき先例として残すことのないように、今後の教訓としてこのことをどのように生かしていきたいかということを、大臣から改めて御答弁いただきたいと思います。

増田国務大臣 お答えいたします。

 まず、今回のことを教訓としてどう生かすかということで、一つは、いずれにしても、そういうものについてはやはりきちんと記録をとって、当たり前のことでありますが保管をして、こういった場に対応させること、これは当たり前過ぎる話でありますが、このことを徹底しなければいけない。それで、総務省の中に、こうした文書の取り扱いについて、官房長の方からきちんとそのことを省内に指示する文書を出させました。徹底を先日いたしました。

 それから二つ目ですが、今十八回の会合ということで、それだけのものを設けるかどうか。

 これは相手方の要請の内容によると思います。もちろん、今回の十八回までの数に及んだ中には、聞いておりますと、単なる儀礼的に、本当に表敬で来た、そういうものも含まれているというふうに言っています。そういったものについて、あいさつを受けないというわけにもなかなかいかないので、そういうものも含めての十八回になっているというふうに思っておりますが、それは除いて、実質的な意味での会合、これもやはり、その時々でケース・バイ・ケースだと思います。

 相手方に対して何かこちらの方で協議をしなければいけないというルールになっているときに、きちんとした形でやれば、同じような話であればもちろん一回で済むわけでありますし、そういった内容に応じて私どもが適切に判断をして、そしてきちんと、例えば、対外的な関係から会合を受けるものも、国益を損なわないようにしていかなければならない。同じようなことであれば、それはもう、一回で、前回でおしまいということも当然主張してしかるべきだろうというふうに思っています。

 今回のさまざまな先生の方からの御指摘を十分踏まえて今後の対応に生かしたいというふうに思います。

田嶋(要)委員 ルールがあってないような世界だとは思うんですけれども、ぜひ、国民の目から見て奇異に映るような形での、こういった会合を繰り返すというのはやはり今後避けられるべきであるというふうに思います。

 それと、情報が存在しないという意味が二通りあって、もともとないというのと、破棄をしたから今存在しないという二種類の意味があるということを理解して、明確に、そこをはっきりとさせていただきたいというふうに思っております。

 次に、本論に入らせていただきます。放送法等の改正でございますが、NHKの経営委員会の開催、経営委員会等に関しまして、まず質問をさせていただきます。

 きょうはNHKの会長もおいででございます。午前中のあの議論を聞いておりまして、NHKの会長、ちょっと質問通告にありませんけれどもお伺いしたいんですが、ガバナンスの強化という言葉、会長はあえてそれを避けられてガバナンスの明確化というような言葉を使われたような、私の聞き間違いかもしれませんが、理解をいたしたんですが、今回、さまざまな不祥事があって、ガバナンスの強化をする、その方向に関してはNHKの会長としても納得されている、そういうことでよろしゅうございますか。

橋本参考人 お答え申し上げます。

 経営委員会を含め、NHK全体のガバナンス強化ということについては、当然ながら、経営委員会の今回の改革案というものを含み込んで、そういう方向で我々はしっかりやっていきたいというふうに思っております。

田嶋(要)委員 そのガバナンスの強化でございますけれども、経営委員会の機能、役割を強化することがイコール、ガバナンスの強化である、そういうふうな理解でよろしゅうございますか。大臣、いかがでしょう。

増田国務大臣 経営委員会の機能を十二分に発揮させること、すなわち、経営委員会の機能を強化すること、これはガバナンスを強化する上で非常に重要なことであるというふうに思っていますので、今回の改正もそこの部分が柱であるというふうに思っております。そうしたことを具体的に経営の中にいろいろな関係で生かしていただくということでございまして、それが全体として、NHKに対してのガバナンスを強めるということになるんだろうというふうに思っております。

    〔委員長退席、馳委員長代理着席〕

田嶋(要)委員 これまでの経営委員会と執行部の関係と今後大分変わってくるんではないかな、そういう印象を持っております。率直に言って会長も大変やりづらいのかなというような印象を私も持っておるわけですが、しかし、そのいい意味での緊張関係というのは、多分にそれぞれの、会長さんと委員長の個性とか、そういった部分にも影響される部分が大変強いかなというふうに思っておるわけですね。

 今回、さまざまな不祥事の結果として、こういった方向での改革が行われることに関しては、これはやむを得ない側面が十分あるとは思っておるわけでございますが、今度はまた逆に行き過ぎてはいけないというような、ある意味では非常に難しいバランス、かじ取りを、綱渡りのようなバランスが求められるのではないかというふうに私も思います。

 そこで、今後どういうふうになっていくかという点で確認をさせていただきたいんですが、まず経営委員会、午前中の議論ですと、委員長さんは、二週間に一度、二時間程度の委員会が開かれていたということをおっしゃっておりましたけれども、今後、この経営委員会というのはどのぐらいの頻度で行われていくことになるんでしょうか。大臣、御答弁いただけますか。事務方でも結構です。これまでと変わってくるんでしょうか。

小笠原政府参考人 お答え申し上げます。

 経営委員会の開催頻度等につきましては、今回の改正法案で、総務省令で定めるというようなことになっております。具体的には、今回法案をお認めいただきましたら、省令を検討する中でどのような形を検討していくかになりますけれども、現在、先生もおっしゃいましたが、月に二回ほど経営委員会が開催されております。したがいまして、基本的には現行程度の開催頻度というものは今後とも必要ではないかと私ども考えている次第でございます。

田嶋(要)委員 そういうことであれば、従来どおりの頻度で経営委員会が行われるという中で、一方で、今回、常勤の経営委員というのが設けられることになりました。ちょっと私も、常勤の経営委員会を設けることに関して方向的に正しいというふうに思っておるわけでございますが、しかし、よく考えてみますと、NHKの場合には、執行とこちらの経営委員会を両方ということはないわけでございますね。

 そうなってくると、私が素朴に思いますのは、例えば、普通の企業において、いわゆるCEOとかCFO、執行役員ですが、そういった方々が取締役会のメンバーにも入っているケース、これはよくあることだと思うんですが、執行のトップでありながらボードメンバーに入っているというような形のイメージとは少し違う状況なのかなというふうに理解をいたしております。そういたしますと、NHKの常勤の経営委員というのは、二週間に一度の会合に出席する以外、どういう活動を日々行うんでしょうか。

小笠原政府参考人 今回の改正法案では、現在の監査業務といいますのを、経営委員から構成される監査委員会に行わせることとしております。その他、経営委員会の機能の強化に伴い業務量の増大が見込まれることから、一部委員の常勤化というものを行うこととした経緯がございます。

 まず、経営委員会の機能の強化そのものに伴いまして、議決事項の追加、例えばコンプライアンス体制とか、そういったことについての追加がございます。そのほか、実効的な監督の手段と申しますか、会長による経営委員会への報告義務等も行うこととしておりまして、その意味では、経営委員会の仕事というのも拡充されるものと思っております。

 そして、今先生が御指摘になりました、しからば常勤の経営委員というものについてどのような業務が想定されるかということでございますが、まず、監査委員につきましては一名以上が常勤であることというのが法律に明記されております。監査委員となる常勤の委員につきましては、当然のことながら、監査に関する業務、それは監査計画をつくり監査を実施しその結果を取りまとめるといったようなものがございます。

 今現在、そうした仕事は現行法では監事が行うこととしておりますけれども、監事は一名が常勤でございます。したがいまして、監査委員となる常勤の経営委員につきましては、そうした相応の、常勤の委員としての、今監事が果たしている仕事、業務量があるものと考えております。

 それでは、監査委員となる委員以外の経営委員はどのようなことを行うのかということでございますけれども、先ほど申し上げました、まず、経営委員会の業務が活性化され充実されるということがございますけれども、そうした経営委員会の職務につきまして、例えば、常勤となる経営委員の方は、経営委員会の議題となる事項につきまして、経営委員会の会議を効率的に有益なものとするためにあらかじめ行う調査、あるいはその資料の作成その他、そういったことによって議論をより深いものにするといったことから、例えば、経営委員会事務局の行う事務を指揮するとか、あるいは経営委員会の議論の結果、課題として提起された問題について深く検討し調査をし、次回の経営委員会に向けて準備を行うといったようなことにつきましての職務といったものが発生すると考える次第でございます。

田嶋(要)委員 二週間に一度、二時間の経営委員会のために、常勤の経営委員は、次の二週間後の会議までの間ずっとそういうことを準備するという仕事をするということでしょうか。執行には入らないわけですね。執行には入らないけれども、毎日NHKに通勤をして、社内でそういった活動をする、そういう理解ですか。

小笠原政府参考人 常勤の委員であります以上、先生今お話しになりましたように、基本的には、いわゆるウイークデーにおいてしかるべき場所に出勤をしてその責務を果たすということが期待されているというふうに考えております。

田嶋(要)委員 私はどうも、先ほど例を出しました企業の場合のCFO、CEOがボードメンバーにも入るというケースであれば、当然、会社のCFOやCEOは普通の常勤の役員さんであるわけでございますからイメージがわくわけですけれども、このNHKの、執行には一切入れない形での常勤というイメージがよくわかないのが、一点、懸念としてございます。

 それから、午前中にも出ておりました点でございますが、経営委員長自身が常勤になる可能性というのは今どのようにお考えになっておるんでしょうか。

小笠原政府参考人 経営委員会の委員長といいますのは、現行法でも改正法でもそうでございますが、委員の互選によって定めることとされております。したがいまして、委員長に常勤の職員を充てるか否かということにつきましては、経営委員会の御判断にゆだねられているというふうになっております。

田嶋(要)委員 そういうことでは、可能性はあるということでございますね。

 そうなってくると、常勤の経営委員長と、そして執行部の会長の役割というのが、ある意味、どちらも毎日NHKにおいでだということになると、一体だれがトップなんだろうというふうに、よくわからないような現実が出てくるかなというふうな懸念を私は持つわけでございますけれども、NHKの会長、その点、何かコメントはございますか。

橋本参考人 お答え申し上げます。

 経営委員会と執行部のあり方というのは、これからまた経営委員会そのものが、経営委員さんがその内容といいますか立場等も含めてお考えいただければありがたいというふうに考えております。

田嶋(要)委員 それからもう一点、今回新たに入った法でございますけれども、株式保有の禁止、これは会長らに関しまして、放送事業等に対する投資、株保有の禁止ということがうたわれておるわけでございます。具体的にはこれは三十条の二項でございますけれども、これが十六条の三項の規定の関係と法文上若干ダブるように私には読めるわけでございますが、この規定がなぜここに入っているかという点に関して、まず御答弁をいただきたいと思います。

小笠原政府参考人 お答え申し上げます。

 会長、副会長及び理事につきましては、先生御指摘のとおり、法三十条第二項の規定によりまして放送事業等に対する投資が禁止されております。これは、協会、NHKの中立性が損なわれることがないようにするための規定でございます。

田嶋(要)委員 十六条の第三項、そしてその準用がある二十七条の第四項との関係において、法律上さらに厳格なルールを適用されている。一〇%未満ということではなくて一切の投資が禁止されている、そういう理解でよろしいですか。

小笠原政府参考人 先生御指摘の件は、会長、副会長、理事につきましては、その運用がそこでしないことになりまして、ダブりの規定はないというふうに現行法で整理されております。

田嶋(要)委員 今のでよろしゅうございますか。いいですか。

 では、常勤の経営委員に関しては同じルールが適用されない理由はどうしてですか。

小笠原政府参考人 経営委員会の委員につきましては、これは現行法でもそうなっておりますけれども、広く公共の福祉に関し公正な判断をすることができ、広い知識と経験を有する者から適切に選任するため、そういう配慮もございまして、直接的に投資を禁止する規定の対象とはしておりません。

 そして、先生今御指摘の常勤の経営委員についてはということでございますが、今回の改正法におきましても、常勤の経営委員と非常勤の経営委員とでは、特に権限について差が設けられておりません。したがいまして、いわゆる投資の制限につきましても差異を設けることは適当でないということから、改正法案を提案しているものでございます。

田嶋(要)委員 しかし、実態として常勤化をすれば、先ほどの二週間に一度二時間という形での関与の仕方とはまるっきり変わってくるというふうに私は思うんですね。そういう意味で、実態に照らし合わせれば、やはり会長、役員さんに課せられたそういった制約、制限と同じものが常勤の経営委員に関して適用されるべきではないかなというふうに私は思います。

 続きまして、最後の質問でございますが、新たな国際放送に関して一点お伺いしたいと思います。

 この国際放送に関してはわずかなルールしか法文上はないわけでございますけれども、この財源の問題に関しまして、受信料をベースにする国際放送にしていく考えなのかどうかということに関して、大臣からお伺いをしたいと思います。

 これは、かつてこういう御答弁をいただきました。NHKが本来行う業務であり、その経費が受信料によって負担されることは妥当であるというような御答弁を以前いただいておるわけでございますけれども、私は、基本的には全く別個の事業として、国策的な国際放送のための財源というのは基本的に国庫からNHKに交付金として出されたものをベースとしてやっていく、子会社であればそれと同額が子会社に出資をされるような形をとるべきであるというふうに考えておりますけれども、大臣、いかがでしょうか。

    〔馳委員長代理退席、委員長着席〕

増田国務大臣 この関係については私は二点あると思っておりまして、国際放送は、確かに、受信料を負担していない外国人を対象にする、そういう性格を持っておりますけれども、全体として見ますと、国際親善の増進ですとか、諸外国の我が国に対する向こうからの理解を促進するということで、まさに国民全体の利益に通ずるということからは、国民が負担している受信料をその中に充てるということについて、そうした考え方、取り扱いは適当だと思っています。

 それと同時に、もう一つ、対外情報発信強化ということから、これはまさに国策に当たるものでございますので、そういう観点からいいますと、全部が全部受信料ということではなくて、国費も投入をして、そして、国が費用負担するということについての理屈が立つものについて、きちんと国費もこれに充てて、内容を充実させる。

 こういう二つのことをこの制作費などに充てるということが適当ではないか、このように考えます。

田嶋(要)委員 午前中、橋本会長の方からは、受信料を充てることにおのずと限界があるという御答弁がございましたけれども、これはどちらが柱かということがやはり重要になってくると思うんですね。

 今の大臣の言い方ですとそこがはっきりはしないわけでございますが、私は、前段で言われたような理由で国民が本当に納得するだろうかということを考えると、やはり基本は国庫ではないかなというふうに思うわけですが、その点、もう少し踏み込んだ御答弁をいただけないでしょうか。例えば国からの交付金が九割ぐらいを考えているとか、そういう御答弁はございませんか、大臣。

増田国務大臣 具体的にまだ、率をどういうふうにするかとか、柱をどちらにするかということについて、なかなか、国費を入れることは確かにぜひ実現したいというふうに思っておりますが、国費の関係では、やはりどうしても予算の関係になってまいりますので、いろいろ財政事情等も勘案しながらそうしたものを決めていかなければならないというふうに思っておりますが、したがって、だからこそ国会承認ということなんだろうと思います。

 この点は、どういうところまで国としてきちんと責任を持てるかということについては、またよく今後検討していきたいというふうに思っておりますけれども、やはり、今御趣旨がございましたとおり、国費もしっかりと充当して責任を果たしていくということは総務省として行っていきたいと考えております。

田嶋(要)委員 ぜひ、金はしっかり出すけれども口は一切出さない、そういうスタンスで、大変重要な国際的な日本の対外発信力の強化をこれから行っていただきたい。

 しかし、料金値下げの問題にも当然絡んでくると思います。どれだけ受信料がこっちの新しい事業に流れていくか、私は大変そこを懸念いたしておりますので、ぜひ国庫中心に、オール・ジャパンとして日本の発信力強化の新事業を立ち上げていただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。

渡辺委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 民主党の寺田と申します。午前中に引き続き、放送法に関して質疑をさせていただきたいと思います。

 まずは冒頭、今回修正案を出すに当たり本当に御尽力された各党理事の方々、委員長を含めて、本当に深甚なる敬意の思いを表明させていただきたいと思います。

 それで、放送法を審議するに当たり、やはり自分自身として気にしなければならないことは、まさしく報道の自由という大きな大原則がある中で、それをいかにして法律で守っていくかという観点と、その中で、守られた中で、間違った方向に行かないようにとか、焼け太りしないようにどのようにしていくかということを両にらみで議論していかなければならないというふうに思っております。

 今回修正された部分に関しましては、党内でも議論されたことでもありますので、限られた質疑時間の中では触れませんけれども、修正に当たらなかった、もともとあった部分のところに関して、より具体的に詰めていきたいというふうに思っております。

 いわゆる命令放送について、非常にこの放送法自体が前大臣の菅大臣の残り香が漂う放送法ではありますが、その中で本当に大きな一つの話題となりました命令放送というものが要請放送という形になるということに今回の改正案の中でなっております。

 その中で、この間、菅前大臣で話題になったのは、命令事項、その事項の具体性をどこまで許されるのかというところが議論になったと思います。拉致問題は大事だということはだれしもが認めつつも、命令放送の中で事項を具体化して拉致問題とすることは編集の自由を侵害しないかということが議論になったと思います。

 その点を踏まえてお聞きしたいんですけれども、今回、命令放送から要請放送に変わりましたが、今度は命令じゃなくて要請なんだから具体性を上げてもいい、例えば郵政の問題であるとか新テロの問題であるとか、はたまた医療の問題だとか、政府・与党が大事だと思うことをより具体化させて要請するということを考えられているのか。それとともに、それは許されると解釈しているのかどうか。命令から要請に変わったことによって事項の具体性がどう変わるのか、御答弁いただけたらと思います。

小笠原政府参考人 国際放送につきましては、その目的は、我が国の見解あるいは国情を正しく外国に伝えること、それから、海外同胞に災害、事件等を迅速に伝えることといったような使命を有するものと考えております。

 命令放送を今回要請放送に変更するという改正法を御提案しているわけでございますけれども、国として実施することが必要な放送について確実な実施を担保する仕組み、必要性については変わりはないものというふうに考えております。

 現行制度におきましても、大臣が要請する場合、番組編集の自由に配慮する運用を行ってきたところでございますけれども、今後ともこれを十分に配慮しつつ、具体的には、その時々の情勢を踏まえて、適切に事項を指定してまいりたいと考えております。

寺田(学)委員 私がお伺いしたいのは、命令から要請に変わったことによって、今一般論を述べられましたけれども、その一般論に変化は起きるのか起きないのかということをお伺いしたいんです。どちらですか。

小笠原政府参考人 ただいま御説明申し上げました考え方につきまして、基本的には改正法案後も変更はないというふうに考えておるところでございます。

寺田(学)委員 今まで、命令放送という規定がありつつも、各総務大臣、郵政大臣がこの命令放送の規定を使って具体的に命令することがなかったので何の問題もなかったんですけれども、前回、菅大臣が拉致問題で踏み込んだことによって話題になり、そして今回、これが要請に変わったということなんだと思います。

 増田大臣にお伺いしたいんですけれども、どうでしょうか、増田大臣自身も、今回、命令から要請に変わることにはなるんでしょうけれども、菅大臣が行ったような、より具体化させた、具体的な重要事項を要請するということはお考えですか。

増田国務大臣 お答え申し上げます。

 具体的にどういうことを要請するか、それは、今後、それぞれの状況に応じて、その時々で判断しなければならないというふうに思いますが、今、政府参考人、局長の方から申し上げましたけれども、今回の法が命令から要請に変わりましたけれども、その前後で、こうした事情、何か今後より具体化をするとか、考え方が変わったわけでは全くありませんので、そこは、前後同じような考え方に私ども立っておりますので、NHKの持っております放送の自由とかいったようなことを最大限尊重しつつこうしたものを運用していく、こういうことでございます。

寺田(学)委員 菅大臣のようなやり方をされることも、本当に議論の喚起ということにはなるでしょうけれども、私は、NHKの報道の自由を守るという意味では、少々踏み込み過ぎているのではないかなというふうな意見を述べさせていただきたいと思います。

 それと半ば同じような性質を持つ部分の国際放送、国際放送の中でも、海外に対して発信していく新しいスキームが今回できていますけれども、そのことについてお伺いしたいと思います。

 まず、一般的なことをお伺いしますけれども、今回法改正を行うということは、その原因として、海外発信、特に外国人の方に対しての日本の情報発信が乏しいという問題意識にのっとって今回の具体的な方法を提示されているんだと思います。私自身は、海外の方に日本のことを知ってもらうということに関しては全くもって賛成しますけれども、この具体策に関しては、さまざまな抽象的な部分があると思いますので、それを具体的に質問したいと思っています。

 そもそも国際放送、外国人向けですけれども、外国人向け放送が現状のように乏しい状態にあるのはどのような原因があるとお考えになられていますか。

小笠原政府参考人 近年、諸外国、例えばヨーロッパ、あるいはアジアでも中国、韓国といった諸外国の放送局は、国際的な映像情報の発信を強化するという取り組みを行っております。そうした取り組みに比較いたしまして、我が国の取り組みというのは必ずしも十分とは言えないという状況にあるとされているところでございます。

 先生の御質問は、その原因は何かということでございますが、現在、そうした国際放送の中心的なものというのは、NHK、協会でございますけれども、現在のNHKの映像国際放送、NHKワールドといった番組を分析いたしますと、一つ大きな要素として、在外の日本人向けの放送それから外国の方向けの放送といったものが十分区別されずに、NHKワールドというチャンネルの中である意味では混然一体となって放送されている。したがいまして、外国人の方に、日本のプレゼンスといいますか、日本の魅力といいますか、そういったものをお伝えするという観点から見ますと、必ずしも、例えば単に日本のニュースに英語の字幕をつけたとか、そういうことで、外国人の方の関心を得るという観点から見ますと十分なものになっていないのではないかということが一つの原因として挙げられると思います。

寺田(学)委員 今御答弁いただいた理由というのは、在外の日本人と外国人向けの番組が明確に分けられていないことが海外発信力が弱い原因だと御答弁されましたけれども、では、なぜ在外日本人と外国人向けが分けられない状態がNHKの中で続いていたのか。どのように分析をされていますか。

小笠原政府参考人 そこはもちろん、方針といいますか戦略と申しますか、そういったものをまず明確に立てるというようなことが、そういう動機と申しますか、そういったことがまずは一番重要かと思います。

 私ども、今回、法案を提出するに当たりまして、情報通信審議会というところに諮問をいたしまして、そういった面の基本的な日本の国際情報戦略といったものを検討して、その考え方に基づきまして今回の法案を提出させていただいたものでございます。

寺田(学)委員 もう少し具体的に御答弁いただきたいんですけれども、予算が足りていなさそうだとか、国から投入しているお金が足りなさそうだとか、そもそもNHKにやる気が見られないだとか、さまざまな具体的な理由があると思うんですね、審議会がどう議論したとかではなくて。

 今回、結論としては、予算額をふやして、NHKの子会社に一部番組制作と送信を委託することを義務づけるような仕組みを二つつくったということは、それを裏返したのが原因なんだと思いますけれども、私自身としては、これからいろいろ質問させていただきますけれども、この方法自体が本当に海外発信力を高めていくのかどうかということは、相当注意深くウオッチしなければいけないものだと思っています。

 この国際放送というものを新しいスキームにおいてはいつから放送されることを御予定されているのかということと、それから、放送がスタートしてから数年間、どういう予算規模で、国が国策として考えている国際放送の充実というものを果たしていくためにどのような予算をつけていくのか。どのようにお考えになっていますか。

小笠原政府参考人 まず、先生御質問の開始時期ということでございますが、これは、私どもとして、ぜひ改正法案を早期に成立させていただきたいと思っておりますけれども、私ども、できれば平成二十年度中、といいましても、恐らくは実際の放送開始時期は第四・四半期ということになるかと思いますけれども、平成二十年度中には新しい映像国際放送を開始したいというふうに考えております。

 それから、予算、資金の額ということでございますけれども、先ほど申し上げました情報通信審議会の答申というものにおきましては、諸外国の例を見ますと、いろいろこれから精査によって変動はし得ますが、ひとまず百億円程度といったような規模が必要になるのではないかというような試算、これは試算の一つでございまして、もちろん変動し得ますが、そういうことをおっしゃっています。

 それから、もちろん百億円という規模につきましては、最初からというわけではございませんで、国際放送といいますのは、受け手側、つまり、例えばアメリカでケーブルテレビとか、そういった受け手がございますので、そう一気に拡大するわけではないということもちょっとお含みおきいただきたいと思います。

 それで、予算をどういうふうに考えるかということでございますが、まずは、先ほど大臣の答弁によりましても国の支援というものも充実する必要があるということで、私ども、来年度予算に向けて予算要求をしております。それから、もちろん受信料の活用もございます。それから、今回の改正法案の一つの考え方として、NHKのみならず、できれば民間のノウハウ、蓄積といったものをぜひ活用したいということで、その子会社の独自放送分につきましては、広告放送も導入するということになっております。

 したがいまして、そうした民間企業からの広告出稿、あるいは政府広報ということもあるかもしれませんけれども、そういったことも含めて、先ほど申し上げました財源を確保したいというふうに考えている次第でございます。

寺田(学)委員 来年から放送が始まるにもかかわらず、ではどれぐらいの規模でやっていくんですかというのを、まあ将来の試算として百億とかという話をするのであれば、全く事業性がないと思うんですよね。来年から始まるんですよ。来年度から始まるということなんでしょうけれども、恐らく再来年の一月一日とか、そういうあたりから始まるんだと思います。

 そのときに、今のところ、ことしの予算要求でしょうか、国費が十六億円とか十七億円というように聞いていますけれども、では、百億円が最終的なゴールだとか、最終的なある程度の目標だということとして、来年どれぐらいでやるのかということは、どのように御想像されているんですか。来年というか再来年、始まる当初のときにどういう規模でやるというふうに考えられているんですか。もう一年後の話ですよ。

小笠原政府参考人 来年度の予算要求の考え方でございますけれども、来年度は、先ほど申し上げましたように、第四・四半期の開始を前提として予算要求を考えておりますけれども、現行、今年度のテレビ国際放送への国からの資金の出資は三億円でございます。三億円の例えば四分の三、第四・四半期分につきましては、現在予算要求におきましては約六億円、それと立ち上げ経費として約八億円、そういったような予算を前提に予算要求いたしておりまして、現在、財政当局と折衝中でございます。

寺田(学)委員 余り触れられていないんでしょうけれども、受信料をNHKから出していただいてという話を軽々にされますけれども、基本的に、NHKがどういうお金を出すかということは、法律で決められた枠の中で、自主自律の中で予算を組んでいくわけで、最初から総務省は、国際放送を国策としてやっていくということを考えて、将来百億円までだというような話をしておきながら、自分自身のところでは十数億ぐらいしか出していかない、残りはまあ民間なのかNHKなのか受信料なのかで出してもらおうという腹づもりだとしたら、ちょっとそれは勝手が過ぎますし、もっと言うと、どれぐらいお金を出すのかということまで間接的に総務省がある程度形をつくっていくのは編集権の侵害に近いようなものがあるのではないかなというふうにも思っております。

 その中において、例えの話ですけれども、来年度から始まった国際放送の中で、NHKが、国費で出している部分の半分ぐらいしか私たちは出さない、例えば、在外邦人のためだけにもっと充実した国際放送をするんだ、外国人のための国際放送というのはとりあえずおいておいて、在外の邦人のための国際放送にお金を使いたいので、政府が出してきている国費よりももっと少ない額で私たちはやるんだと。もっと言うと、もっともっと少ない額にして、ほぼゼロに近いような額で予算をつくることも、可能なことは可能なんですよね。いかがですか。

小笠原政府参考人 これは映像国際放送でもラジオでも同じ考え方でございますが、基本的に政府の交付金の考え方は、国として必要な放送については国が負担して支出するということでございます。

 したがいまして、当然、国が必要と判断、これは何としても確保しなければいけないとして判断するもの以外の部分、それは現行のラジオでもテレビでも同じでございますが、それにつきましては現下の放送法でNHKの業務とされておりますけれども、その業務は、受信料を財源として、放送の経費をそこから充てるということでございます。

 それから、先ほども広告放送云々ということを申し上げましたが、それは、今回考えている映像国際放送のスキームは、NHKが責任を持って行う部分と、それからNHKの子会社が独自に編集権を持って行う部分とがございます。そこにつきましては、受信料も国費もそこには充てることはなくて、独自の財源、例えば、先ほど申しました広告というのでやるという考え方でございます。その上でどのぐらいやれるかというのは、もちろん子会社の努力ということも相当程度影響してまいることになると思います。

寺田(学)委員 今回、外国人向けの国際放送を充実させようという国策の中でやられているわけですから、そこで国費が投入された分しか外国人に対しての放送をやらないということも自由だということでもよろしいんですよね、NHKとしては。NHKが実際どう出るかはNHKが判断されることですけれども。

 仕組みとしてですけれども、まさしく国が、こういう放送をしてくださいと。この、こういう放送をしてくださいということも、さっきの命令放送とかかわるんですけれども、物すごく概括的なお願いになると思うんです。二十四時間放送のニュース番組をやってくれということは、編集権の侵害に当たると思うので言えないと思いますけれども、いずれにせよ、国としては、十六億円だったら十六億円、出した分自分たちのやってほしいことをやってもらう、それも非常に概括的なお願いをするんだ、NHKがその十六億円に対してどれぐらいを足して外国人向けの放送をつくり上げるかどうかは全くの自由だということでよろしいですよね。

小笠原政府参考人 もちろん、大臣が再々答弁しておりますように、NHKの編集の自由というのは私ども政府として当然配慮しなければいけませんけれども、国際放送といいますのは、NHKが放送法上の責務として行わなければいけない業務でございますし、先ほど来申し上げていますように、映像国際放送の充実というのは我が国としても重要な課題であるというふうに考えておりますので、ぜひNHKとしてもそういったような期待にこたえて映像国際放送の充実に力を入れて取り組んでいただきたいと考えております。

寺田(学)委員 ともするとNHKというのが、私の友人とかも多いんですが、国営放送と勘違いされている方も結構多くて、あれは全く国が、法律という形で守ったりはしていますけれども、公共の放送だということで設立しているところですので、確かに私自身も、冒頭申し上げましたけれども、海外に情報発信をしていく、外国人に向けてやっていくことは大事とは思いつつも、その国策の方向性がNHKの予算編成に過度なほど影響を与えるようなやり方というのは私はふさわしくないと思っているので、こういう質問をさせていただきました。

 ですので、NHKとしては、NHK自身の編集の考え方の中で、国費が入れられた分の中で、そして、それにどれぐらい上乗せをするか、いろいろ考えた上で国際放送をやっていくんだと思いますけれども、なかなかジレンマがあるんですけれども、そういうところを考えますと、今まで審議会等々でいろいろ考えた、こういうような国際放送がいいんじゃないかということをどのように担保していくのかというのは非常に難しい問題があると思いますので、きょうは時間がないので、また今度させていただきたいと思います。

 今回の法律改正のもう一つの、国際放送を充実させるという意味でのやり方である、一部をNHKの新子会社に委託義務を課すという仕組みができていますけれども、今までのNHKの議論の大原則の中からは著しく逆行する話でもあると思っています。今までNHKは法律で守られてきたことをいいことに焼け太りしてきたんじゃないかという批判も、やはり他方からいろいろ寄せられるところがあります。できる限り子会社を減らしていこうという話も、以前の大臣もしていただきました。

 そしてまた、一部義務で委託するということは、これは随契ですよね。随契というのもやはりよろしくないんじゃないかと今まで言ってきた部分の中で、なぜかしらNHKの新子会社に随契で一部を出さなきゃいけないという話に今回の法案はなっています。もちろんさまざまな意図があってやられていると思うんですが、なぜNHKの子会社にわざわざ一部強制的に義務として随契を与えなきゃいけないのかというのは、どうもはっきりしない部分があります。

 冒頭お伺いさせていただきましたけれども、何で国際放送が充実しないのかという話のときに、何らこの施策に対応するような問題点というのは出てこなかったと思うんですが、何でこういうような仕組みをつくるんですか。いかがですか。

小笠原政府参考人 今回、NHKの子会社というものを主体といいますか中心に新たな映像国際放送のスキームを考えました理由ということでございますけれども、基本的には、先ほどもちょっと御説明したかもわかりませんけれども、NHKのみならず、広く民間のノウハウ、識見を新たな映像国際放送の充実に活用したいということがございまして、NHKとは独立した存在ということを考えているわけであります。

 ただ、現実、これまで国際放送を行ってまいりましたのはNHKがほとんどを占めておりますので、NHKのそうしたこれまでの蓄積というものから全く離れた形で開始するのも、それもまた効率性という面からいかがかということで、NHKの子会社というスキームを考えたものでございます。

 そして、一に限ってということでございますけれども、それは、そうしたNHKの子会社といいますものが、今後どんどん独自のノウハウを蓄積し、自律といいますか自主的に、まず編成の部分を拡大していくことが期待されます。そういう意味からしますと、多数の会社に分散してやるよりは、できる限りそのノウハウの蓄積というのは集中して行われるようにするのが望ましいという観点から、一に限り保有というような改正法案を御提案しているところでございます。

寺田(学)委員 海外にどのような情報を発信するかというところの議論も非常にあると思いますが、現在でも、例えば昔でいえば「おしん」でもそうでしょうし「料理の鉄人」でもそうでしょうし、最近のドラマもそうでしょうし、ドラマとかいろいろな番組を通じて日本の文化というのは十二分に伝わっていると思うんですよね。「おしん」はまず別として、「料理の鉄人」や何かは民放がつくっていますよ。特別、わざわざNHKの子会社を、新会社と資料にも書いていますから、新会社を指定して一部義務でつけることをノウハウの育成だというような理由だけでやるのは、どうも乏しいような気がするんですよね。

 そこら辺の議論というのは、質疑時間がもう終わってしまいましたから、今後も、法が改正された後も注目していきたいと思いますけれども、そこら辺のNHKの大きな改革方針と逆行するようなことをわざわざ政府の方が法案として出してくるのも多少いぶかしいなということを申し上げて、質疑を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、森本哲生君。

森本委員 民主党の森本哲生でございます。よろしくお願いします。

 きょうは三点に分けて質疑をさせていただきます。

 まず、行政指導の問題点についてお願いをいたします。

 放送法の改正案につきましては、先週来さまざまな観点から議論がされておるわけですが、中でも、放送に対する規制のあり方をどう考えるのか、しかも、メディアの環境が大きく変化する中で放送と行政の関係はいかにあるべきか、非常に重要な課題であると考えております。本日は、主にそうした観点から幾つか質問させていただきます。

 まず、事実の確認ですが、放送事業者による番組内容に関しては、それに何らかの問題があった場合、総務省は行政指導を行っているわけですが、その行政指導の件数の推移が近年どのようになっておられるのか、お聞かせください。

小笠原政府参考人 放送番組に関しまして、放送法の規定に基づき行政指導を行った件数は、近年、過去五年間で二十三件でございます。年度別の件数の推移につきましては、平成十五年度が一件、十六年度が六件、平成十七年度が二件、十八年度が八件、十九年度がこれまで六件となっております。

森本委員 そうすると、この過去五年間以前は、局長、ございませんか。

小笠原政府参考人 ちょっと手元に数字がございません。

森本委員 手元というよりも、戻ったらあるんですか。――それでは、時間が余りありませんから、もしあるようでしたら、後でお知らせいただきたい。

 とにかく五年間ということで、しかし、順番に聞かせていただいておりますと、近年、これは大きく、大きくというのは一件が五件ふえたら大きくなるんですが、明らかにふえております。問題はその原因がどういうところにあるかということなんです。

 ケーブルテレビ、CS、BS、それで番組が近年急速にふえているからなのか、それとも視聴率至上主義と番組の娯楽化の傾向が強まっているからなのでしょうか、それともほかに理由があるのか。総務省はどのような御見解ですか。

小笠原政府参考人 原因につきましては、さまざまな見方があろうかと思いますが、政府としてこれという形で特定するのは大変難しいことだと考えております。ただ、いずれにいたしましても、近年、先生がおっしゃいますように、放送法に違反した等の指摘が行われまして、結果として、先ほど申し上げました数字で、行政指導に至った事件が多く起こっているということは事実でございまして、大変残念に思っている次第でございます。

 私どもとしては、大臣が再三申し上げていますように、放送番組に関しては放送事業者の自主自律というふうなものを基本としておりますけれども、不幸にしてこうした違反する番組が出た場合には、今後とも再発防止を促してまいりたいと思います。

 放送事業者におきましては、職責と申しますか、みずからの社会的影響力を十分自覚して、国民の信頼にこたえる放送番組をぜひ作成していただきたいと考えております。

森本委員 なかなか分析はできないと。私の想像をある程度認めていただいたような格好になるんですが、この背景は、やはりチャンネル数それから番組数の増加や視聴率至上主義の蔓延などもあるとは思いますが、私が少し懸念をしておりますのは、番組に対する行政の対応姿勢が変化しているのではないか、それもコントロールが強くなる方向に変化しているのではないかということです。

 従来、行政指導の理由として最も多かったのは、放送法第三条の二第一項によります番組編集準則の中で、第二号の「政治的に公平であること。」や第三号の「報道は事実をまげないですること。」への抵触でした。こうした理由に関しましては、放送行政が独任制の大臣の権限とされている限りは、極めて例外的な場合を除いては放送事業者の自律にゆだねるべきであるとの指摘をされてきたわけです。ところが、気になりますのは、行政指導の理由として近年ふえておりますのが、放送法第三条の三、すなわち、番組基準を定め、これに従って編集をすることへの抵触でございます。

 番組基準というのは放送事業者が自主的に細かく定めたものですが、これに反しているからという理由で行政指導が、指導できる範囲、威嚇できる範囲が極めて広くなってしまい、問題があるのではないかということでございますが、いかがですか。

小笠原政府参考人 先ほども申し上げましたように、近年、放送法に違反した等の指摘が行われて、結果として事案が多く起こっていることは大変残念に思っている次第でございます。

 放送法違反の事由でございますけれども、具体的に申しますと、先生おっしゃいましたように、放送事業者におきましては、まず放送法三条の二の準則にたがわないように放送していただきたい、そして、かつ放送法三条の三というところで、みずから番組基準を策定して公表し、それに従って番組をやる、これがまさに自律というところでございますけれども、こうした仕組みの中で私ども政府としては良質な番組提供が行われることを期待しておるわけです。したがいまして、先生御指摘の三条の三、つまり、みずから定めた番組基準というものを遵守できないという場合につきましては、私ども放送法を所管する立場としては、必要な行政指導も場合によっては行わざるを得ないというふうに考えている次第でございます。

 ただ、なお申し上げますと、最近、三条の三というものについて行政指導を行った事例としても、例えば、番組内において紹介したダイエット方法を実践した結果多くの視聴者が健康被害を訴えて入院されるというようなこともございまして、こうした社会的に非常に大きなおそれがあるというふうな分野につきましては、やはり再発防止を我々として促すことが必要だというふうに考えているところでございます。

森本委員 局長、例えば昨年、一秒間に三回を超えて光を点滅させる手法を使った通販番組に関して、民放、衛星事業者に対して、民放連が作成しているガイドラインなどに抵触したとして注意をされました。しかし、同じ番組を放送したケーブルテレビ事業に対しては、業界にガイドラインがなかったために行政指導は行われなかった。

 その後、日本ケーブルテレビ連盟にガイドラインの作成が要請され、既に作成されているとのことですが、ガイドラインがあると指導され、ガイドラインがないと指導されない、まあこれは当然かもしれませんが、これは少し不公平な感じがします。また、自主的に作成すべきガイドラインの作成を行政が押しつけていくような方向に進んでいくような気がするんですが、いかがですか。

小笠原政府参考人 放送法の考え方は、先ほど申し上げたとおりでございます。したがいまして、自律という観点から申しますと、番組基準といいますのは、基本的には放送事業者におきまして、社会情勢、あるいは先生お取り上げになりましたような技術的な事項も含めて、適時にその見直しを行うことが期待されておるところでございます。

 先生もお取り上げになりましたケーブルテレビにつきまして私どもが行った要請でございますが、これは日本ケーブルテレビ連盟という業界団体に対して、番組基準のあり方につきまして業界として検討するようお願いしたものでございまして、それを踏まえて、では具体的な番組基準をどう策定するかということにつきましては、その個々の事業者みずからが判断すべきものと考えているところでございます。

森本委員 それと、大臣、さらに気になりますのが、きょうは確認の意味でもさせていただきますが、行政指導の際に、放送事業者が再発防止のための具体的措置やその実施状況についての報告を求められることがあります。「あるある」の事案についてもそうでございました。こうした措置は実質的に、今回の改正案、これは今修正がされましたから、この再発防止計画のニュアンスが少し違ってくると思うんですが、再発防止計画の提出や改善命令と異ならない効果を持ち得ると考えますが、この点についてはいかがですか。

増田国務大臣 お答え申し上げます。

 これはあくまでも私どもの行政指導ということで、今先生のお話にございましたとおり、政府案には規定を盛り込んでございましたが、今回それを落とすということでございますけれども、そうした形でない行政指導ということで、今先生御指摘のように、私ども行ってまいりました。

 これは、放送番組が放送法に違反した等の事案が生じた場合に、そういったものの与える社会的な影響は大変大きいものですから、そういうことをかんがみて、やはり同様の事態が再発をしては困る、こういうことがございます。そして、その再発防止策を放送事業者の自主的な取り組みとして行っていただきたい、やはりそれを何らかの形で促していく必要があるのではないか、こういう考え方で、私ども、放送事業者の皆さん方の方に要請をしているわけでございます。

 ちょっと、一つ事例を申し上げますと、例の「あるある大事典」の場合なんですけれども、これを例にいたしますと、放送法違反の事案が八件、それから放送法違反が疑われる事案が八件ありまして、繰り返し放送法に違反した番組が放送されて、社会的にも大きな問題になった。こういうことがあって、私ども、やはり再発防止に向けた具体的な措置が必要だな、こう判断をいたしまして行政指導を行ったということでございます。

 したがいまして、私どもとしても、できるだけ放送事業者の自主的な取り組みを促していく、こういう観点でこの問題を取り扱っていきたいと考えております。

森本委員 なぜこのようなことを申し上げるかといいますと、やはり総務省は放送事業者に対する免許権限を持ちながら行政指導を行っているわけです。免許権限を背景にした行政指導は絶大な規制的効果があると私自身は思っています。

 行政手続法の第三十二条第一項には「行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるもの」とありますが、放送事業者に対する行政指導は、これは桝屋議員も触れられましたが、放送の自由という観点もありますので、さらにより一層の慎重さが求められるというふうに考えておりますが、いかがですか。

増田国務大臣 お答え申し上げます。

 今、放送法の関係について改めて申し上げますと、放送法が、放送の自律のもとで表現の自由を確保し、放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする、こういうことに立っていますので、やはり今お話ございましたとおり、放送事業者の自主自律を基本とする制度だ、これは改めて言うまでもないわけでございますが、これが大前提であるというふうに思います。

 したがいまして、放送事業者の自主自律を基本ということで、放送事業者にしっかりと番組基準をつくっていただいて、その中で取り組んでいただければよろしいかと思うんですが、確かに、現実の社会に与える影響という意味で、放送というのは大変大きな影響がある、この点がやはり非常に大きな課題でございます。

 したがいまして、先ほど言いました放送事業者の自主自律だけでは必ずしも是正が期待できない、先ほど言いましたように、「あるある」の場合には、本当に繰り返し繰り返し、八回にわたってそうした違反があったということもありましたものですから、私ども、行政指導を行ったということでございます。

 したがいまして、放送事業者に対しての行政指導は、これまでも慎重に行ってきたものでございますし、今後も、行政指導の発動に当たっては、十分慎重な上にも慎重に、よく事案ごとに考えていくべき、このように考えております。

森本委員 大臣、この件につきましては、確かに、自主自律だけでは是正ができないということもよくわかります。あくまでも法律に定めたルール、私は倫理というふうに置きかえておきたいんですが、その中での放送の自由ということも大事な観点だということは認識をしながらこのような質問をさせていただきますので、御理解をいただきたい。

 それと、次、大きな二つ目でございますが、規制監督機関の独立性についてお伺いをしていきます。

 我が国の放送の規制監督は、かつては郵政省、そして現在は総務省でございますが、大臣を長とする独任制の組織が担っているわけであります。放送行政には政治的中立性や公平性の確保が重要でありますが、そうした観点から、放送の規制監督は政府から独立した合議制の組織、例えば独立行政委員会が担うべきであるということは、これまでもたびたび指摘がなされてまいりましたし、私どもの党もそのように主張をさせていただいております。今回の改正案には総務大臣の権限強化を盛り込まれていることから、改めて規制監督機関のあり方を考える必要が高まっているのではないかというふうに思っております。

 こうした指摘に対してこれまで総務省は回答されてきたと思いますが、いま一度、現在の独任制の形態の方が適当であるとする理由を教えてください。

増田国務大臣 お答え申し上げます。

 まず、考え方でございますが、改めて申し上げますが、放送の規制監督について、いろいろな各国の事情もあると思いますが、その大前提として、行政組織の形態がどのようになっているかというものも大きく影響してございます。我が国では議院内閣制というものを採用しておりまして、内閣の一員である各省大臣が責任を持って行政を執行する、分担管理の原則でございますが、こういうことが我が国の行政組織の原則である、こういうことでございます。

 戦後、独立行政委員会というものが幾つか置かれましたけれども、順次廃止をされて、今ほとんどなくなっているということ、そして、今申し上げましたように、議院内閣制のもとで執行している。

 こういう中で、情報通信分野ということでございますけれども、これは、非常に技術革新が激しいということがございます。

 現在の制度のもとで、放送の完全デジタル化に向けた取り組みでございますとか、さまざまな環境変化に対応するために、マスメディアの集中排除原則の適時適切の緩和ですとか、通信・放送の融合への対応、それから世界に先駆けた衛星放送の開始といったようなことで、大臣のもとでこうしたことをタイムリーに行ってきたということがございます。

 それから、今後も、例えば国際競争力の維持向上に向けて国家戦略的な対応が強く求められる分野である、こういうふうにも思いますので、今後も引き続き機動的な行政判断が必要になるのではないか、こういうことでございます。

 したがいまして、こうした経緯と、それから今後の放送・通信などの課題ということを考えますと、機動的、一体的、総合的な課題への対応を可能とする独任制の省、今は総務省でございますが、この形態で大臣が全般の責任を持って迅速に行政を執行する制度、こういうことが適当ではないか、これが今の制度をとっている理由でございます。

森本委員 大臣、国家戦略のための独任制は、議院内閣制も触れられましたが、大事なんだと。

 ただ、主要国におきましては、放送の規制監督については、政府から一定のやはり独立性を持った組織が担うのが、これは前の小川議員の質問で各国の情勢が述べられたわけですが、それが一般的になっておるわけです。それぞれ合議制の委員会で意思決定がなされて、委員の構成にも配慮が図られて、これが世界の潮流だというふうに思うわけです。大統領制のアメリカ、そして議院内閣制の国のイギリス、ドイツであってもそのようにされておるわけです。

 大臣がお答えになった理由では、主要国の中で日本だけが異なった規制監督のやり方をとっている理由としては、いささか説得力に欠けるんじゃないかと私は思いますが、いかがですか。

増田国務大臣 この関係については、やはり今までの我が国の歴史的な経緯とか変遷を十分理解して考えなければいけないというふうに思っております。

 確かに、先生がお話しございましたとおり、主要国におきましてはさまざまなあり方があって、行政委員会のようなところが所管しているということが多いようでございますけれども、もちろん主要国の法制度全部網羅的に私ども把握しているわけではございませんが、主要国でそうした例が多いというふうに聞いておりますけれども、我が国自身がそうした形態を一時期さまざまな分野で内閣の形態としてとった歴史もございましたけれども、どうも責任の所在がはっきりしない等の理由によって変わってきたという歴史がございます。

 今、一般的には、そういう各省の大臣のもとで、今まさに御審議いただいております放送法で、その中にさまざまな規定を置きまして、政治的な場面からの中立性ですとか、そういったことを前提に番組準則がいろいろつくられまして、それを放送事業者が守りながら、自主自律を基本として放送をしている。こういう歴史がございますので、私は、こういった放送法の考え方、それから、それをきちんと守りつつ今まで放送が行われてきたというこの現行の制度のもとでさらに放送の中立性を確保していくということに我々努力していくべきではないか、このように考えているものでございます。

森本委員 もう少しお聞きしたいことがありますので前へ進みますが、それならば、放送法全体の問題について質問をさせていただきます。

 ちょっと急ぎますが、放送法第二条の二において、総務大臣は放送普及基本計画を定めることになっています。また、放送事業者はその放送があまねく受信できるよう努めることが求められております。

 従来、基本的には、テレビは、NHKの受信契約にもあるように、設置するものでありました。アンテナで受信できない地域、難視聴地域などではケーブルテレビによってあまねく受信できることを補完してまいりました。また、BS放送でも補完をしてきたわけです。しかし、これらは、家庭や職場でテレビを設置して、アンテナもしくはケーブルで受信することが常識であったわけです。昨今、カーナビによる自家用車等の移動体による直接受信や、携帯電話によるいわゆるワンセグ放送が普及をしてまいりました。このことによって、テレビやアンテナを設置しなくてもテレビが見られるようになってまいったわけです。テレビは家族みんなで見るという使い方から、個人、パーソナルで、何かをしながら、移動しながら見ることが生活習慣となりつつあります。

 このことは、一方で再び難視聴地域をつくり出しつつあるわけです。つまり、難視聴地域ではカーナビやワンセグによる受信は不可能になるわけです。そこで、受信形態の変化に対応した新たな普及計画が私は必要であるというふうに考えますが、いかがですか。

増田国務大臣 お答え申し上げます。

 確かに、カーナビですとかワンセグの携帯、これが見られない、この問題もやはり解消しなければいけないというふうに思います。まず、家庭の中でこうした地上デジタル放送が見られない、これが一番大きな課題でございますので、二〇一一年の七月に向けて、こういった各家庭で受信できないという地域を徹底的になくすということに今全力を挙げているわけでございますが、その後、生活形態も随分今多様化しておりまして、こうしたワンセグですとか、あるいは車などでカーナビを通じて見るという方も今後ますますふえていくだろう、そのニーズも高まっていくだろうというふうに思いますので、こうしたものの普及状況を考えながら、今お話しのカーナビやワンセグ携帯への対応についてもきちんと検討を行っていきたい、このように考えております。

森本委員 大臣、今では六十万世帯がこうした対象になるわけでございまして、六メガで六チャンネル、ワンセグの実験を今開始されておるというようなことも聞いておりますので、この点についてはぜひよろしくお願いを申し上げます。

 一つ、もう時間がございませんので飛ばさせていただいて、これはイエスかノーかで結構でございますが、今後、通信と放送の融合がされた時代を迎えるに当たって、そもそも行政による放送への規制について根拠や考え方を整理しなければいけないというふうに私は思っています。

 放送には、番組編集の規律を初めとして、他のメディア、例えば新聞などの出版メディア、プリントメディアに見られない規制が設けられています。どうして放送だけを規制する理由があるかといえば、一つには有限希少な電波を排他的に使用するものであること、もう一つは、直接かつ即時に全国の視聴者に届くといったように、社会的に強い影響力を有していること、主にこの二つが理由と言われてきたわけでございますが、これはイエス、放送への規制の根拠はそういう認識でよろしいですか。

増田国務大臣 御指摘のとおり、電波の有限希少性、それから放送の社会的影響力の大きさ、こういったところがあるというふうに考えております。

森本委員 そうしますと、大臣、放送を規制する理由のうち少なくとも電波の有限希少性については近年大きく変化をしてきたというふうに私は思っています。多メディア化、多チャンネル化が進んで、情報の伝送路及び伝送される情報の種類が飛躍的に拡大し、多様化を増しております。さらに、地上波、衛星波、デジタル化の進行を考えますと、電波の有限希少性はかつてと比べますと大きく減りつつあるのではないかと私は考えます。また、放送法第二条では、「「放送」とは、公衆によつて直接受信されることを目的とする無線通信の送信をいう。」といたしておりますが、近年、有線、無線にかかわらず、ブロードバンドを活用した番組で、放送なのか通信なのか明確でないものが提供され始めております。となりますと、放送事業者に対する規制のあり方というものは、放送の定義を含めて変わっていかざるを得ないのではないかというふうに思います。

 ただ、どのように変えていくかはなかなか難しいものがあると思いますが、総務省としては、そうした資源としての電波の位置づけの変化に対応して、放送に対する規制のあり方、放送の定義の仕方を今後見直していくおつもりはあるのかどうか、その際にはどのような方向で見直されていくのか、お聞かせください。

増田国務大臣 今御指摘いただきましたとおり、技術的な進歩もございますし、それから社会的な環境というのも随分変わっていく、あるいは今後ますますそうしたところが大きく変化をしていくだろう、そして多様な形態のものが今後ますます出てくるだろう、こういうふうに思うわけであります。

 そこで、今後の放送のあり方ですとか、それから、今お話にございましたとおり、伝送路として電波が有する意義、それから放送事業者の規律のあり方、こういったことについて、今申し上げましたような状況の変化というものもありますし、それから、放送が有限希少な電波を用いるということや、地上放送を初めとして大きな社会的影響力を持つということも十分に踏まえながら、あるいは十分に配慮しながら、私どもとしても、通信あるいは放送の法体系のあり方を議論する中でこうした問題を総合的にやはり考えていかなければならない、今後いろいろな形態のものが出てまいりますので、こうした通信・放送の法体系のあり方を議論する中で総合的に検討していくことが必要だ、このように認識をしております。

森本委員 時間が来ましたのでこれで終わりますが、さっき大臣言われましたように、放送法とか電波法とか四つの法律でこうした放送関係が法的に整理されておる。これでは、今申し上げたように、私はなかなか対応できない時代に入っていくということを申し上げて、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 最初に、NHKのガバナンスの強化の問題について質問をいたします。

 改正案の中で、第十四条に「経営委員会は、次に掲げる職務を行う。」とありまして、「役員の職務の執行の監督」という規定がございます。それから、二十三条の四に「監査委員会は、役員の職務の執行を監査する。」とありますけれども、この監督と監査の違いについてお示しください。

小笠原政府参考人 放送法におきまして、現行もそうでございますけれども、経営委員会は、会長、副会長及び理事の任免権等の決定権限を有しております。これらの権限の行使を通じまして、役員、会長、副会長、理事の適正妥当な職務執行を担保するようにするという役割を担っておりますが、これを監督と称しているところでございます。

 他方、監査でございますが、監査委員会につきましては、経営委員会が有するこのような権限はございません。そのかわりに、例えば報告徴収権とか調査権とか、そういったような権限が与えられておりまして、これらの権限を活用して、役員の職務執行について調査し、違法行為を発見したときには経営委員会に報告してその監督権限の行使のきっかけをつくったり、違法行為の差しとめを請求するという役割も担っております。これを称して監査と言っているところでございます。

塩川委員 現行法では、「監事は、会長、副会長及び理事の行う業務を監査する。」とあります。今回の改正は、監査業務を担う監事を廃止して、新たに経営委員会から任命される監査委員会に監査業務を担わせるということでよろしいでしょうか。

小笠原政府参考人 基本的にはそのとおりでございます。

塩川委員 監事の機能と体制の強化を図るのではなくて、経営委員会の中に監査委員会を設置することにした、その趣旨について御説明ください。

小笠原政府参考人 今回、改正法案に盛り込んでおります監査委員会による監査制度につきましては、これまでの監事による監査と比べまして、監査委員会は経営委員により構成されるわけでございますので、経営委員としての業務執行を通じて得た知見といいますかそれを監査に生かすことができることになるというメリットがございます。こうした仕組みといいますのは、NHKのように、意思決定機関である経営委員会と、それから業務執行を担当するいわゆる会長等の執行部を分離した現在の組織になじむものと考えているところでございます。

 また、今回の放送法改正にあわせまして、これまで監事が持っていた機能に加えまして、監査委員会が役員の非違行為に差しとめ権を行使できるとかというような措置を講じております。

 加えまして、協会に著しい損害を及ぼすおそれのある事実を発見したときには、会長等の役員は監査委員に報告しなければならないというような義務も課しておりまして、こうした措置をあわせて講ずることによりまして、これまでから一層改善した監査機能の強化を図っておるところでございます。

塩川委員 この監査委員会が現行の監事よりもより強い権限、機能を持つことになり、その監査委員が経営委員の中から選ばれることによって、経営委員としての業務執行で得た知見を生かせるということであります。監査委員という、いわばより強化をされた監事の仕事を兼ねることとなる経営委員が、新たに監督と監査を担うことになり、一部の経営委員が強い権限を持つことになります。

 加えてお尋ねしますが、二十三条の四で「監査委員会は、役員の職務の執行を監査する。」とありますけれども、その役員には経営委員も入るということでよろしいでしょうか。

小笠原政府参考人 経営委員も含まれます。

塩川委員 そうしますと、監査委員は経営委員の職務の執行も監査をするということでよろしいですね。うなずいておられたからそういうことであります。現行では、監事は経営委員の業務の監査はできないということになっております。それはよろしいですね。

小笠原政府参考人 おっしゃるとおり、現在の監事にはそういった権限はございません。

塩川委員 ですから、監査委員となる経営委員は、経営委員の職務の執行を監査することにもなりますし、他の経営委員に比較をし大変強い権限を持つことになります。それに加えて、常勤の監査委員も生まれることになるということになりますと、現行全員が非常勤で構成されております経営委員会のあり方も大きく変わってくるのではないのか。

 そこで大臣に伺いますが、今回のように経営委員の中から監査委員を選ぶ、その中で一部常勤化をする、そういう形を通じて合議機関としての経営委員会としてのあり方がゆがめられるのではないかと考えますけれども、その点についてはいかがでしょうか。

増田国務大臣 確かに、監査委員になる経営委員についてはその部分について機能が強くなるわけですけれども、しかし、こういった問題についてやはり合議制で議論をしていくということになっております。その合議制で経営委員会を進めていくということについて、十二名の委員の皆さん方が本当にきちんとした議論をしていけばそういったことがないわけで、そういうふうな実のある合議が行われるようにということを考えて、さまざまなその材料を提供するためにこうした経営委員会全体の権限強化をしているということでございます。

 確かに、監査委員としての部分について、よりNHKのそうした面からの規律等を高めたいというふうに思っておりますが、それ以外の部分については全く、他の経営委員と監査委員になった経営委員との間に特別の権限の違い、権限の異同というものはございませんので、これはそれぞれの皆さん方が経営委員会の中できちんとした役割を果たしていけばこの合議制というのは十分に機能していく、このように考えているところでございます。

塩川委員 合議制の機関だから機能し得るというお話ですけれども、現行の古森経営委員会の前の体制の経営委員会が、ことしの三月一日に、「放送法の改正に対する経営委員会委員の見解」を出しておられます。

 その中で、経営委員会委員の一部常勤化について、常勤委員と非常勤委員との間で情報量の格差が生じ、合議機関である経営委員会の独立性と多様性を損なうとの懸念も否定し切れない、常勤だからといって他の委員に比べて特別な権限が生じないようにすることが必要だという指摘をしておられます。

 実際には、常勤で特別な権限を持つ監査委員というのが生まれるということになってしまうわけで、合議機関としての性格が変わってしまうという懸念というのは私は首肯できる見解だと思います。

 そこで、加えてお尋ねしますが、法文上「監査委員は、経営委員会の委員の中から、経営委員会が任命し、そのうち少なくとも一人以上は、常勤としなければならない。」とあります。

 一方で、政府の説明資料では、委員の常勤化について、三人程度ということが記述をされておられます。法文上は常勤三人程度というのはないわけですけれども、その常勤化三人程度の内訳はどういうものなのか。

 その点、先ほどの田嶋委員の質問への答弁もございましたけれども、監査委員が二名でその他事務局の仕事を指揮する人が一名ということでよろしいでしょうか。

小笠原政府参考人 先生御指摘になりました常勤委員三名程度ということは、あくまでも新たな経営委員会のイメージを持っていただくための例示でございまして、法律、制度としては少なくとも一名は常勤であることが必要となっておりますけれども、そのほかに常勤を何名置くかということについては制度上は制約はございません。

 ただ、具体的にあり得る内容として、例えば今先生が例としてお挙げになりました監査委員二人、そして監査委員でない経営委員一名といったような構成もまた考えられるところではないかと思います。

 その場合であれば、先生今例示で挙げられた場合であれば、例えば、監査委員お二人に関していいますと、NHKの業務を業務内容に応じて監査の対象を分担するとか、監査委員でない経営委員につきましては、先ほど御説明いたしましたように、経営委員会の運営を効率的、効果的にならしめるためのさまざまな調査、資料の準備その他事前の検討といったようなお仕事、役割を担うといったことも想定されるわけです。

 ただ、いずれにいたしましても、常勤の委員が実際にどういうふうに分担されるかというのは必ずしも固定的なものではございませんで、経営委員会の判断の中で決まっていくものと考えられます。

塩川委員 経営委員会の判断というお話がございました。

 そこで、重ねてお尋ねしますが、内閣総理大臣は国会同意人事の際に、経営委員の任命に当たって、常勤か非常勤かを特定して提案をして任命することになっておりますね。確認です。

小笠原政府参考人 御指摘のとおり、経営委員の任命権者は総理大臣でございますが、任命の際に常勤あるいは非常勤を指定ということになると思います。

塩川委員 国会で人事案件がありますと、その一覧表の中に常勤、非常勤というのは打ってあるわけですね。今まで経営委員会は全員非常勤でしたからはっきりしていたわけですけれども、今度、常勤、非常勤というのが入って提案がされるということになります。ですから、常勤について、経営委員会の判断とはいいながら、実際には政府、内閣総理大臣がその点をも指定をして、常勤はこの人ねと指定して提案をし任命をするということになります。

 ですから、監査委員として大変強い権限を持つ経営委員を常勤として政府・与党が任命することができるような仕組みになっている。この枠組みを利用して、政府・与党の意を酌んだ人物を監査委員に送り込めるということになるんじゃないんでしょうか。こういう仕組みは本当に適当なのか。増田大臣、いかがですか。

増田国務大臣 お答えを申し上げます。

 私どもが経営委員を人選するときは、当然のことながら、その方の識見ですとか、それからこれまでの経歴等を十分判断して提案をするということでございます。私どもは法律にのっとって提案をいたすわけでございますが、何か私どもの意にかなう、そういうことで提案をするということではなくて、法律の規定にのっとってあくまでも判断をする。そしてまた、そのことについて国会の方で御同意いただくときに大変厳しい審査をいただくわけでございますので、その結果が経営委員会のいろいろな判断に、政府の方に都合のいいようにとかそんなことには決してならないというふうに考えております。

塩川委員 常勤の監査委員を政府が指定するという仕組みになっているわけですから、この枠組みを利用して、政府・与党の介入の仕組みとならざるを得ないという点について極めて重大だと思います。政治介入を一層強めることになりかねないわけで、経営委員の中から常勤の監査委員を選ぶというのはやめるべきだ。

 とるべきなのは、やはり経営委員会の事務局体制の強化であります。実際に経営委員会の事務局は現行七人だそうですけれども、その中に事務局長もいるわけですから、そういう機能というのはさらに強め大きくしていくということが必要だと思いますし、もともと、委員会等設置会社のスキームにのせて監査委員会を経営委員会の中に置くということを最善というのかどうかというのがそもそも問われているわけですから、監事の機能強化という点について大いに力を尽くすということであってこそ必要な体制の強化、ガバナンスの強化につながるということを強調しておくものです。

 次に、認定放送持ち株会社制度の導入について質問をいたします。

 提案理由説明に、この認定放送持ち株会社制度の導入について、「経営の効率化、資金調達等のメリットを有する持ち株会社によるグループ経営を経営の選択肢とするため、複数の地上放送事業者の子会社化を可能とするマスメディア集中排除原則の適用緩和」を行うものと述べております。

 そこで質問いたしますが、この認定持ち株会社制度導入によって適用緩和をされるマスメディア集中排除原則というのは何なのか、持ち株会社の導入によって緩和される部分は具体的にはどういうことなのかという点について、まず確認で質問させてもらいます。

小笠原政府参考人 今回の認定持ち株会社導入の趣旨は、先ほど先生も引用されましたけれども、提案理由説明にありましたように、放送事業者の経営基盤の強化を理由とするものでございますけれども、経営基盤の強化をするためのグループ経営というものを可能とするために認定放送持ち株会社を導入するということでございます。

 したがいまして、今回導入する認定放送持ち株会社につきましては、現在、マスメディア集中排除原則の中で、放送局は支配というのは一社に限られるという原則がございますが、それを緩和いたしまして、認定放送持ち株会社は複数の放送会社を支配できるといいますか、グループ経営を実現することは当然そういうことになるわけでございますけれども、そういう内容のマスメディア集中排除原則の緩和を検討しております。

塩川委員 マスメディア集中排除原則の適用緩和ということになるわけですけれども、五十二条の三十三、電波法の特例のところで読みかえ規定がございます。「認定放送持株会社の子会社であることの特性を勘案しつつ、」必要な事項を定めるということで、現行の放送事業者と区別して、持ち株会社の子会社については別な基準を定めましょうねというダブルスタンダードになるということだと思うんです。法文上は、グループ経営を可能とするということに限定していることは何も記述がされていないわけですね。それはそういうことですね。

小笠原政府参考人 認定放送持ち株会社の定義といいますか性格は今回の改正法案の条文に書かれておりまして、一以上の地上放送事業者を含む二以上の一般放送事業者を子会社とするという定義が今回の放送法改正法案には書かれてございます。その認定放送持ち株会社の子会社については別のマスメディア集中排除基準といいますか、そういうのを適用するということでございます。

 したがいまして、その定義からいたしますと、グループ経営といいますか、そういったことを可能とする、平たく、わかりやすく言いますとそういうことになるということでございます。

塩川委員 グループ経営を可能とするということの中身として、放送対象地域の異なる場合についてその出資規制を緩和するという点があるわけですけれども、その点でのグループ経営を可能とするというふうに法文上で書かれているわけですか。

小笠原政府参考人 先生御指摘の件でございますけれども、私どもは、さまざまな放送会社をめぐる環境変化に、例えばデジタル化の進展とかそういったものに対応するため、経営基盤の強化を図るためにはそういったグループ経営の導入というのが選択肢として必要ではないかという考え方なんでございますが、そうした認定放送持ち株会社を導入するに当たって、これまでの放送制度の原則であります多元性、多様性、地域性の確保といったものと調整、バランスをとらなきゃいけないと考えております。

 先生が今お話しになりました同じ放送対象地域、例えば同じ県の中での複数会社の支配を認めるということは、先ほど申し上げました放送事業の多元性に直接影響するということになりますので、そうしたことは今回の認定放送持ち株会社でも避けるべきだというふうに考えております。

塩川委員 私がちょっと聞き方が違ったのかな。放送対象地域が異なる場合のものについて可能とするんですねという趣旨で聞いたんですけれども、今、放送対象地域が重複をする場合について、これは多元性について抵触をするから認めないというお話ですね。

 いずれにしても、それについては法文上は書かれておりませんね。

小笠原政府参考人 先ほどちょっと裏から申し上げた格好になりますけれども、先生お話しのとおりでございます。

 それにつきましては、総務省令の中で記述したいと考えておるところでございます。具体的には、今後、法改正をお認めいただきましたら、パブリックコメント等の手続を経て、しかるべく適切に措置したいと考えておるところでございます。

塩川委員 いわば根幹にかかわる制度の枠組みのところについて省令に落としていく。従来も省令だったといえばそうなのかもしれないけれども、今回、マスメディア集中排除原則という規定を法文上明記するわけですから、それについての具体的な枠組みそのものについても法定化をするということが本来求められているというふうに思います。

 認定持ち株会社は、異なる地域であれば、幾つもの地上放送局を子会社にすることが可能となる、もちろん、省令で幾つと定めるという話があるでしょうけれども。この認定放送持ち株会社制度導入によって懸念されるのが、キー局中心の集中寡占が進んで、キー局中心の放送内容が拡大することになり、マスメディア集中排除原則で掲げる多元性、多様性、地域性が空洞化するんじゃないのか、こういう心配であります。

 そこで、増田大臣にお伺いします。

 特に、ローカル局に対するキー局の支配が強まって、地域性が喪失することになりはしないのか、そういう強い懸念を覚えますが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。

増田国務大臣 お答え申し上げます。

 今回のこの部分の改正ですけれども、経営基盤を強化するという大前提がございますので、そうしたことをしないと、本当に今、地域のローカル局も経営が難しい時代に入っておりますので、ぜひその点は御理解いただきたい。

 ただ、一方で、そうした中で、地域性が低下されるということは懸念をされることで、そういったことがあってはやはりいかぬ。できるだけローカル放送はローカル放送として独自性を発揮して、地域のさまざまな情報ニーズを取り出して放送につなげていっていただきたい、こういう思いでございます。

 したがいまして、このマスメディア集中排除原則の中の省令を策定するに当たっても、地域性にもいろいろ十分配慮するとともに、その上で、存続するローカル局につきましては、今回の改正案では、認定持ち株会社の子会社であるローカルの放送事業者に対して、地域情報の確保の努力義務ということを改めて課す規定を設けてございます。

 当然、こうした趣旨というものはローカルの皆さん方も十分理解をしていただけるというふうに思いますので、経営基盤が崩れてしまってそもそも局の存立がなくなってしまって、そういった地域情報も出せない、そんなことになったら大変なことになりますので、経営基盤を強化しつつ、ぜひ、この努力義務を十分に受けとめていただいて、ローカルの放送局の皆さん方にはこうした地域番組の提供の確保ということに全力を尽くしていただきたい、このように考えております。

塩川委員 この地域放送確保の努力義務というのは、何らかの基準なり枠組みというのを示すということになるんでしょうか。

小笠原政府参考人 具体的な数量的目標を設定するということは考えておりません。

塩川委員 もともと、放送局に対するこういった行為規制については、やはり、表現の自由の直接的な制約にもつながるものですから、放送事業者への規制手法としてはなじまない、慎重であるべきであるわけです。

 ですから、本来は構造規制という形で出資規制などを通じて地域性の確保ということを求められてきたわけですから、そちらの構造規制の方を外して、一方で、では行為規制についてはよろしくお願いしますという話ですから、そういうやり方では、本当に地域性の確保ができるのかという懸念というのが出てくると思います。

 なぜ持ち株を導入するのかということについて、提案理由説明でも、持ち株会社は「経営の効率化、資金調達等のメリットを有する」というふうに言っておりますし、この法案をつくる上での準備作業を行ってきたデジタル化の進展と放送政策に関する調査研究会の最終報告では、「持株会社の活用によるメリット」として、持ち株会社を通じてグループ全体の資金調達を行うことによりデジタル化に伴う傘下の放送事業者の資金調達が容易になると指摘をしております。

 結局、持ち株会社制度導入の直接の動機というのが、二〇一一年の地上波デジタル放送の全面実施に向けて、過大な負担で経営が大変となっているローカル局に対して、キー局からの資金援助が行えるようなスキームにするということがねらいだということです。

 ですから、そうであるならば、放送局を資金不足に追い込んで、業界再編とか持ち株会社化を加速させるようなやり方というのはおかしいわけで、実情に合わない地上波デジタル放送の完全実施の時期そのものを見直すということが必要じゃないでしょうか。日程だけ決めて事業者を追い込むようなやり方というのは本来とるべきじゃない、そういうふうに率直に思いますけれども、大臣、いかがですか。

増田国務大臣 デジタル化に向けての経営基盤を強化する、これはもう大変大きな今回の法改正に至る原因であるわけですけれども、必ずしもそれだけではございませんで、この場合に、縦系列で、キー局とローカル局との関係だけを見て経営基盤とか資金の流れというのを想定しているわけではございません。

 当然、ローカル局同士の横の連携ということもこの法律では想定をしているものでございまして、今、縦系列で各地域にテレビ局が放送を流してございますけれども、例えば、ある地域、県境を越えて複数のローカル局が、例えば、東北なら東北、あるいは九州なら九州エリア全体で横に連携をして、地域のそういうローカルの情報をしっかりと強く発信していくということも今後大いに考えられる、そういうこともこの法律の規定では可能にするものでございます。

 ですから、今後、そうしたことも含めて、私どもは決して放送局にいろいろな自主性を損なうようなことは考えてございませんが、先ほど言いましたようなそういった努力義務規定を十分受けて、ローカル局にも努力をしていただきたいというふうに思いますのと、それから、一方で地上波のデジタル化の問題ですね、これはこれとして大変重要な課題でございますので、期日をきちんと定めてございますが、それに向けて着々と準備を進めていく考えでございます。

塩川委員 地方分権、地域再生と言う総務省において、経営基盤の強化が必要というのも、地域経済が疲弊しているというのが大きいわけで、その点での政府の施策がどうだったのかということがそもそも問われておりますし、地上波デジタル放送の完全実施というのも、先にありきというやり方ではなくて、実情に即した形での対策こそ必要だ、持ち株会社による地方局の子会社化で地域性を損なうやり方というのは認められないということを述べて、質問を終わります。

渡辺委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正です。

 それでは、まず第一に、放送法の改正に関連した質問になりますけれども、放送事業者に対する行政処分の新設に関連をして質問をしたいと思います。

 事の発端は、いわゆる関西テレビの「あるある大事典」の番組捏造、これを受けて、放送業界に大変大きな混乱と申しますか、課題を投げかけられました。

 総務大臣は、放送事業者が、虚偽の説明により事実でない事項を事実であると誤解させるような放送によって国民生活に悪影響を及ぼすおそれがある、そういうふうなものを行ったと認めるときは、放送事業者に対し再発防止計画の提出を求めることができる、こういうふうな内容でありますが、それに関連をしまして、まず番組編集に対する問題であります。

 放送法第三条の二第一項、四点書いてありますが、公安及び良俗、政治的公平、報道の真実性、多角的論点の解明、これは倫理規定と解されておりまして、その遵守は放送事業者の自律にゆだねられるべき、こういうふうにされてきました。

 それに照らして、今回の行政処分の新設は、今まで言われてきた、いわゆる倫理規定と解されるこの編集準則の遵守、事業者の自律性に基づいて遵守をするという今までのありようが、ある種の罰則規定というものがつけられ、求められてくる、こういうふうに大きく内容が変わってくるのではないか、こういうふうに私は解釈、理解をするわけでありますが、まずその点について大臣の見解をお聞かせください。

増田国務大臣 お答え申し上げます。

 政府案で今回、新たな再発防止計画を提出していただこうと考えましたこの考え方ですが、前提として、従来も、放送事業者の自主自律の取り組みを促していく、この考え方に立っておりました。しかし、現行法では、注意などを放送事業者に促すことから電波の停波をするような大変重たい行政処分に至るまでの間に余りにも大きく差があり過ぎましたので、今回、こうした政府案での再発防止計画を出していただくということを提案したものでございます。

 したがって、前提としてございます、放送事業者の自主自律の取り組みを促すというそこの認識は、今回の放送法の改正法を提案する前後で私ども変えているわけではございませんで、政府案、今回の改正法の考え方も、従来と同じように、放送事業者の自主自律の取り組みを促すもの、そこは変えずに、その中のものとして再発防止計画をお出しいただく、こういう考え方に立っているものでございます。

重野委員 政府の放送番組への介入というか指導というか、いろいろ言い方があると思うんですが、そういう事象というのは古くからあっているわけですね。言うところの番組編集準則違反というふうなことを理由としながら、そういう行政指導がしばしば行われてきた、これが経過であります。

 ここ十数年来、そういう傾向が顕著になってきた、こういうふうに言われるんですが、その辺は、言われるようにそういう頻度が増してきたということなのか。であるとすれば、その背景、なぜにそういうふうな方向がとられてきたのかという点についてお伺いします。

小笠原政府参考人 最近の放送法違反で私どもが行政指導をした件数については先ほど御答弁申し上げましたけれども、改めて申し上げますと、平成十五年度が一件、平成十六年度が六件、十七年度が二件、十八年度が八件、十九年度がこれまで六件で、これまでの五年間で合計二十三件でございます。

 それの原因といいますのは、先ほども申し上げたとおり、いろいろな見方があると思いますので、政府としてこれといって特定することはなかなか難しいと考えております。ただ、いずれにしても、結果的に多くの事案が起こっておりまして、我々としても行政指導を行わざるを得ないというふうに申し上げた方がいいと思うんですけれども、そういったことが起こったのは事実でございまして、大変残念に考えているところでございます。

 ただ、いずれにしましても、先ほど来大臣が御答弁申し上げておりますように、我々としては、まずもって放送事業者の自主的な努力により健全な番組を提供していただくということが基本であると考えておりまして、私どもが行政として再発の防止を要請する、そういった内容のことも含めて行政指導を行うというのは、やむを得ずといいますか、行われるものだというふうに考えております。

 いずれにしましても、放送事業者の方々におきましては、今後とも引き続き、国民の信頼にこたえられるような番組づくりというものに真摯に取り組んでいただきたいと考えておる次第でございます。

重野委員 今、五年間で二十三件という説明がありました。

 そこで、もう一歩進めて、二十三件といいますが、その行政指導の中身、どういう行政指導をやったのかということで、共通項があるんでしょうか。どういう基準に照らして行政指導をやったというふうに分類したときに、こういう基準でやったものが何件、こういう基準でやったものが何件、それが説明できればお願いしたいんです。

小笠原政府参考人 まず、先生の御質問でありました、いわゆる四つの番組準則に違反したということで指導を行ったものが、先ほどの二十三件のうち十二件、それから、放送事業者がみずから定めました番組基準に従うことができなかった、沿って行うことができなかったというものが十一件でございます。合わせて二十三件でございます。

重野委員 そこで、政府は、今回の場合も、放送事業者がみずから認めた場合という前提があるわけですが、改正案の条項を適用する、このように説明されております。しかし、政府が番組の内容を判断するということを認める条項は、今度は受ける側、放送事業者、そういう側から見れば、そこをきちっとそういうふうに言われれば、それは表現の自由を萎縮させることにつながる、こういう批判があるんですが、これに対してどのようにお答えになりますか。

小笠原政府参考人 今回御提案申し上げました再発防止計画の提出を求める制度の考え方について御説明いたしますと、その対象となる放送といいますのは、虚偽の説明により事実でない事項を事実であると誤解させるようなもの、これはすなわち、現行の放送法三条の二、一項三号に掲げられておるところの「報道は事実をまげないですること。」と同義でございまして、この制度の導入によりまして、違法とされる放送の範囲が拡大するものではございません。

 また、今回政府の提案しております再発防止計画につきまして、措置内容ということから見ましても、例えば放送の停止を求めるとか、放送番組の内容変更を求めるとかいった、放送事業者の表現行為それ自体を制約するものではございませんで、あくまで放送事業者が再発を防止するという措置を講ずることを促すといいますか、いわばその自主性を尊重したものとしているところでございます。

 また、求める再発防止計画の内容自体につきましても、一切の制約が設けられておりませんで、どのような事項を記載するかはすべて放送事業者にゆだねられているところでございます。

 したがいまして、先生の御指摘されました、今回の私どもが御提案いたしました再発防止計画の提出を求める制度といいますのが、放送事業者の表現行為を必要以上に制約するということにはつながるものではないと考えまして、改正法案を作成したものでございます。

重野委員 そこで、放送の規制監督は総務省、こういうことになっているわけです。

 諸外国の状況がどうなっているかということを調べてみますと、必ずしも、諸外国、先進諸国ですね、こういうふうな形をとっていない。逆に、独立性を持った組織が担うというのが一般的だ、こういうふうに言われている。そこについては当然総務省も承知をしていると思うんですが、諸外国のこの種の問題に対する現状はどういうふうになっているのか、また、そういう諸外国の状況を受けとめて、我が国において今後この辺の形を検討する、そういうふうな考えはないのかどうか、その辺をひとつ明らかにしてください。

小笠原政府参考人 先ほども大臣から御答弁申し上げたところでございますけれども、各国の放送分野にかかわる行政機関のあり方といいますのは、国によってさまざまでございます。大臣を長とする省の形態の組織、あるいは大臣等に任命される委員によって構成される組織がございます。

 例えば、アメリカの例を申し上げますと、大統領が任命する委員から構成される合議制の機関である連邦通信委員会というものが放送行政を担っております。

 イギリスではどうかと申しますと、法案の作成、それからBBCへの特許状の付与、そういったことにつきましては、大臣を長とする文化・メディア・スポーツ省が担当しております。番組基準の制定、放送事業者への免許付与などについては、大臣が任命する委員から構成される通信庁が、OFCOMという略称でございますが、担当しているものと承知しております。

 いずれにしましても、先ほど申し上げましたように、行政組織のあり方は各国の事情に応じてさまざまでございます。また、日本においても戦後、委員会制度というのが大量に導入され、しかし、いろいろな経験も踏まえて、ある程度短期間のうちに現在の独任制の組織によるものがほとんどということになったということも踏まえまして、現時点で考えてみますと、我が国におきましては、現行制度のもとで放送の独立性とか表現の自由が確保されていると私どもとしては認識しておりまして、先生御指摘のような新たな組織を設けることは基本的には考えておりません。

重野委員 それでは次に、認定放送持ち株会社制度の導入について質問いたします。

 政府の説明は、持ち株会社制度の導入によってデジタル化投資に苦しむローカル局が救済される、そういう期待を持ってこの法案を出している、それだけじゃありませんが、そういうところが強く強調されております。

 持ち株会社を設立する場合は総務大臣の認定を受けることとしておって、放送局みずからが持ち株会社になることは禁じておる、こういうふうなことです。したがって、持ち株会社の支配のもとに複数の放送局が並列するということになるわけです。

 そこで、まず最初に確認したいのは、出資比率の上限は一〇%から五〇%の間で総務省令で定めるというふうにしておりますが、これはなぜ総務省令で定めるんですか。まず最初にそれを確認します。

小笠原政府参考人 特定の者の保有する議決権の制限について、なぜ省令で定めることとしているのかという御質問でございますけれども、実際にその比率をどのように定めるかにつきましては、現行のマスメディア集中排除原則の比率がどうなっているかということも十分に勘案して定める必要がございます。

 マスメディア集中排除原則の基準そのものは総務省令で定めておりまして、これも先日の御審議で答弁したところでございますけれども、技術進歩あるいはさまざまな環境変化によりまして相当程度期間が短い、例えば一年間の間に複数回マスメディア集中排除原則を変更することもたびたびでございます。したがいまして、そうしたようなマスメディア集中排除原則が省令によって機動的に設定されることを考え合わせますと、特定の者に係る議決権保有制限比率につきましても省令で定めることが適当という考え方に基づいているものでございます。

重野委員 例えば、私は九州ですが、九州でこういうふうな形ができたとしますね、そのときに、九州で誕生したその形で持ち株会社が、例えば二〇%、それに参加する者、一人じゃないと思うんですね、それぞれがそういうような形で、だから、地域によってできる持ち株会社によって、その持つ株の比率が変わる、一律じゃなくて、地域によって持つ株の比率が変わるというようなことがあり得るんですか。

小笠原政府参考人 実際に、省令によってどの程度の比率を定めるかといいますのは、パブリックコメント等の手続も含めて、幅広い関係者の御意見を含めて検討することになろうかと思います。

 ただ、先生おっしゃるように、比率を株主の属性によって変えるということも、全く不可能ではないと思いますけれども、そういうことをするに当たっては相当慎重な検討が必要ではないかというふうに考えております。

重野委員 そこで、ちょっと視点を変えまして、こういうことが言われているんですね。

 持ち株会社制度が導入されます。そうしますと、その傘下に入る放送局が幾つか出てくるわけですね。その傘下に入った場合、今までその三つの放送局はそれぞれのカラーがあるわけですね。そういうカラー、自律性と申しますか、あるいは地域性と申しますか、そういうふうなものに支障が生じてくるんじゃないか、ある種の一律性というふうな形に集約されていくのではないか、そういう声もあります。

 我が国の場合、地方のローカル局がありまして東京のキー局がありますね。その系列が今でもありますね。その地方のローカル局の自主制作番組というんですか、その地方の風景の入った、そういうローカル局の自社制作番組の比率というのは、ある資料を見ますと、平均すると十数%というんですね。私は、やはり今でもその程度かな、そういうふうな感じがするんですが、新しい制度の導入によって、その傾向がさらに増幅するんじゃないか、こういうふうな点を私は危惧するのでありますが、そういう視点から見て、この問題はどういうふうに説明するんですか。

小笠原政府参考人 先生御指摘のとおり、認定持ち株会社制度の導入につきましては、さまざまな御懸念ができるだけ緩和されるような配慮が必要だと考えております。

 したがいまして、今御指摘の、自主制作番組の比率が低下するのではないかといった御指摘につきましては、今回の改正案におきまして、認定放送持ち株会社の子会社である地上放送事業者につきましては、地域情報の確保の努力義務、法文で見ますと「その放送対象地域における多様な放送番組に対する需要を満たすため、当該放送対象地域向けに自らが制作する放送番組を有するように努めるものとする。」といった規定を設けていまして、その地域番組の提供の確保を図ることとしている次第でございます。

重野委員 同時に、マスメディアの支配の集中が進むことによって、情報の多元性の確保、こういう点についても支障が生じるのではないか。地域性の確保とそれから情報の多元性の確保についても懸念が示されている。そういう点については、どういうふうに受けとめておられるか。

小笠原政府参考人 情報の多元性と申しますか、放送の多元性の確保というのも大変重要な課題であると考えておるところでございます。

 今回の認定放送持ち株会社制度を検討するにつきましては、そういう意味での周辺の環境といいますか、放送をめぐる環境の変化、地上波以外にも、例えば衛星放送とかケーブルテレビを初めとして、多チャンネル化が進展している。視聴者から見ますと、多様なメディアを通じた放送の機会も拡大しているということも考慮に入れて制度を考えたものでございます。

 放送の多元性ということを確保することについて、この認定放送持ち株会社制度のメリットと御指摘の多元性の確保のバランスをどうやって図るのかということにつきましては、この認定放送持ち株会社が子会社とし得る放送事業者の数に一定の制限を設けるということを検討する予定でございます。

 具体的に幾つまでとするかにつきましては、今後、幅広く関係者の意見を聞きながら関係省令で規定することとしております。

重野委員 次に、がらっと変わりまして、この放送法の改正によって視聴者との回路がどう確保されるかという点についてお伺いいたします。

 視聴者に開かれた経営の確保ということを言いながら、経営委員会が受信者の意見を聴取する仕組みというものを新たに設ける、その具体的な方法については総務省令で定める、こういうことになっております。

 この具体的な方法について総務省令で定めるということにしたことの意味と、およそ予想される具体的な方法とはどういうものがあるのか、それをひとつお聞かせいただきたい。

小笠原政府参考人 まず、省令で定める内容、もちろんこれから法律をお認めいただいた後に検討することでございますが、現在、私どもで考えている内容でございますけれども、経営委員会が直接視聴者の御意見を聞くという法律の趣旨を踏まえまして、例えば意見聴取をどういう方法で行うか。例えば東京のみならず全国各地方で行うといったこととか、意見聴取をどの程度行うのか。例えば一年に何回ぐらい行うのか。あるいは、意見聴取を行う方々をどうやって公平に選ぶのか。また、公開をどうしていくのか。つまり、意見聴取の結果を速やかに、例えば議事録を作成し、あるいはインターネットで公表する、そういったようなことを定めることを考えております。

 いずれにいたしましても、今申し上げた内容は技術的な事項でございますので、省令で定めることとしたものでございます。

重野委員 もう時間が来ましたから終わりますけれども、いずれにいたしましても、今この放送に対する国民の期待がある一方、また疑念と申しますか、そういうものもたくさんある。ここをどう整理していくか、大変重要だと思います。そういう問題意識を持ってこの放送それから通信、そこら辺の時代に合った形を追求する努力を要請して、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 これにて原案及び修正案に対する質疑は終局いたしました。

 次回は、来る六日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時七分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.