衆議院

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第9号 平成21年3月17日(火曜日)

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平成二十一年三月十七日(火曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 赤松 正雄君

   理事 秋葉 賢也君 理事 実川 幸夫君

   理事 玉沢徳一郎君 理事 林田  彪君

   理事 森山  裕君 理事 黄川田 徹君

   理事 原口 一博君 理事 谷口 隆義君

      今井  宏君    遠藤 宣彦君

      小川 友一君    坂本 哲志君

      鈴木 淳司君    関  芳弘君

      田中 良生君    谷  公一君

      土屋 正忠君    土井  亨君

      葉梨 康弘君    萩原 誠司君

      橋本  岳君    平口  洋君

      福井  照君    松本 文明君

      渡部  篤君    小川 淳也君

      逢坂 誠二君    小平 忠正君

      高井 美穂君    寺田  学君

      福田 昭夫君    森本 哲生君

      伊藤  渉君    塩川 鉄也君

      重野 安正君    亀井 久興君

    …………………………………

   総務大臣政務官      坂本 哲志君

   総務大臣政務官      鈴木 淳司君

   参考人

   (慶應義塾大学商学部教授)            井手 秀樹君

   参考人

   (東京国際大学理事・経済学部長)         田尻 嗣夫君

   参考人

   (経済ジャーナリスト)  町田  徹君

   総務委員会専門員     伊藤 孝一君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十七日

 辞任         補欠選任

  田嶋  要君     高井 美穂君

同日

 辞任         補欠選任

  高井 美穂君     田嶋  要君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 郵政事業に関する件(「かんぽの宿」等問題)


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     ――――◇―――――

赤松委員長 これより会議を開きます。

 郵政事業に関する件、特にかんぽの宿等問題について調査を進めます。

 本日は、参考人として、慶應義塾大学商学部教授井手秀樹君、東京国際大学理事・経済学部長田尻嗣夫君及び経済ジャーナリスト町田徹君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人のお三方に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ当委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、各参考人の方々からそれぞれ十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、井手参考人、お願いいたします。

井手参考人 慶応大学の井手と申します。

 時間が限られておりますので、早速私の意見を述べさせていただきたいと思います。

 私は、郵政事業全般について研究していますけれども、特に今回のかんぽの宿という問題について発言を求められておりますので、その点を中心に意見を述べさせていただきたいと思います。

 御承知のとおり、かんぽの宿というのは、日本郵政株式会社法の附則第二条で、平成二十四年九月三十日までに譲渡または廃止するということが定められております。一方で、なるべく早く上場するということが日本郵政の方からも念願としてあるわけです。

 そういった、期限が限られた中で今回のような処分ということが出されたわけですけれども、いろいろな新聞報道にもありますように、取得価格と売却価格とがかなり乖離しているという点も一つの批判としてある。しかしながら、やはり民営化というものを成功させるためには、どうしても、いわゆる不良債権的なものを処分する、あるいは、中央郵便局の再開発という問題がまたマスコミ等で騒がれておりますけれども、こういったもので収益を上げることで民営化を成功させるということが一方で命題としてあるわけです。

 こういった民営化で資産を処分するというときに、国鉄の場合というのを一つ考えていただきたいと思っております。

 国鉄の場合、二十八兆円という膨大な債務残高というものがありまして、これを減らす努力をしなければいけない。株式を売却する、あるいは土地を売却するということで債務を減らすわけですけれども、なおかつ二十兆円の債務がある。これを一般会計に組み入れて、最終的には国民が負担をする。こういう仕組みというのが国鉄の場合にはされたわけであります。そういう中で、やはり資産の売却というのは積極的に行わなければいけない、それから、有効な土地というのがあればこれを活用するということが至上命題として多分あったわけです。

 お配りの資料に書いておりますけれども、二十八兆円が六十年間にわたって国民の負担で償還されるということがあったわけですけれども、このコンセンサスが得られた中には、鉄道網を活性化する、そして、よりよいサービス、最終的には利用者の利便を向上させるという国民的な期待と表裏一体であったということで、こういったシステムというのが受け入れられたんだと思います。

 翻って、今回の郵政の民営化に関して、かんぽの宿等の資産の売却というのは、私個人的には、五年以内に処分をしなければいけない、これは法律で定められておりますけれども、それほどこの資産を早急に売却しなければ債務がどんどん膨れるというものでもないわけです。郵政事業というのは民営化当時から独立採算制で行われてきたわけで、国鉄の場合とは性格が異なるということに一つ注意していただきたいということであります。

 私のお配りしたメモの中に書いておりますけれども、かんぽの宿に関する意見としては、まず、経済情勢が悪化して地価が下落しているという悪条件の中でどうしてこういった資産を売却しなければいけないかという中に、やはり雇用を維持する、あるいは、先ほど申しましたように期限が限られているという中での経営判断であったということであります。

 しかしながら、やはりこういったことが一つの問題になっておりますので、私の一つの提案として、譲渡または廃止の期限を定めた日本郵政株式会社法の附則第二条というのを改正するということも一つの検討課題であろう。そういった中で、不動産売却のスキームを検討する、一括売却がいいのか、あるいは個別売却がいいのかというのを含めて売却のスキームを検討することも日本郵政の経営判断に任せるということが一つの提案として考えられるのではないだろうか。

 それから、もう一つ考えられるのは、そもそもかんぽの宿というのは加入者の福利厚生を目的として運営されたものでありますから、本来、民営化したときとは性格が異なってくるわけです。したがって、一つの考え方としては、持ち株会社の中に宿泊事業として、別個の事業として位置づける、そして、採算性を高めるという経営判断の中でいろいろな戦略をとり、経営努力をした上で、もし不採算な部門があれば、不採算な箇所があればそれを売却する、そういった選択肢もあり得るのではないだろうか。これはあくまでも日本郵政の持ち株会社のもとでやるということを前提にして、こういった選択肢もあり得るんだろうという私の提案でございます。

 一方で、ドイツのドイツ・ポストというのは民営化が成功したというふうにずっと言われております。しかしながら、ドイツ・ポストの所有する資産というのは、日本郵政が所有する資産とは比べ物になりません。こういった資産を売却することによって新規事業に進出し、そして国際戦略というのを打ってきた、それがドイツ・ポストの民営化の成功の理由の一つであったわけですけれども、日本郵政の場合には、例えばかんぽの宿を資産売却したとしても、とても新規事業への投資の原資となり得るようなものではないということであります。

 なぜこういうことを言うかというと、最後に書いておりますけれども、民営化を成功させるためにはできるだけ早く上場させるということも一方で命題としてあるわけですけれども、そのときにどういう措置を講ずるべきかという観点から、かんぽの宿というのは一つの非常に小さな論点にすぎないというふうに私は考えているわけです。

 やはり民営化によって変えてはならない価値というのは、郵政ネットワークを通じたいわゆる公共性であります。一方で、郵便局数というのはどんどん減少しておりますけれども、民営化前のネットワークを維持しなければいけないという枠組みの中で郵便局の経営戦略というのが立てられているわけで、そういった経営の柔軟性あるいは自由度というものを今後より拡大することが必要だろうと思います。

 最後に、こういったかんぽの問題とは直接関係はしておりませんけれども、私は、郵政事業の関係として、郵政事業全般を研究している者として、インフラの会社、いわゆる郵便局の窓口ネットワーク会社ですけれども、これとオペレーション会社というものを切り離すということ、それから、郵便局窓口ネットワーク会社というものが委託手数料によって経営が成り立つ、こういうビジネスモデルというのはいずれは大きな問題を引き起こす可能性があるということを一言申し添えたいと思います。

 それは、イギリスの鉄道事業の例、インフラを持った会社が結局は破綻をして国有化されました。それからアメリカの電力事業についても、インフラを持った会社というのは投資をするインセンティブがないということで、いずれも大きな問題となっております。これは経済学の教えるところであります。

 全般的に民営化の成果を評価するというのは非常に難しいわけですけれども、やはり民営化を成功させるということが非常に重要なことであるわけです。民営化の本来の意義であった、例えば郵便事業の国際的な物流に出ていく、あるいは提携とか業務統合といったことについて、将来展望というのは非常に不透明な部分が多いということで、かんぽの宿という一つの問題に限らず、民営化を成功させ、なるべく早く上場できるようにする、そのためにどういう措置を講じればいいかということ、そういう全体像の中でこういった問題を論じるべきだろうというふうに思います。

 以上でございます。(拍手)

赤松委員長 ありがとうございました。

 次に、田尻参考人、お願いいたします。

田尻参考人 本日は、私の意見を述べる機会を与えていただきましたことを、本委員会にまず心から御礼申し上げたいと存じます。

 人間は利己心のみでは行動しない、人間はコミュニティーを求めると、かの経営学者ピーター・ドラッカーは申しました。私は、市場経済論者ではありますけれども、市場原理主義者ではございません。日本の郵便事業がスタートいたしました明治四年から今日まで百三十八年の歴史を数えておりますけれども、今ほど〒マークが利用者、国民、地域住民から遠い存在に見えたことがかつてありましたでしょうか。

 郵政民営化法から三年、民営・分社化から一年半が経過いたしましたが、いまだその成果も、またそのための工程表も示されないままに、国民負担だけが先行する形で、株式上場に向かって郵政民営化は進行中でございます。

 これまでだれが利益を得たかと申しますと、申すまでもなく、それは政府でございます。国民、利用者、加入者はマイナスからスタートしていることをぜひ御認識いただきたいと存じます。

 具体的に申しますと、民営・分社化の三カ月前に、政府は日本郵政公社から約一兆円の国庫納付金を徴収されました。さらに、これまでの間に、民営・分社化のための看板の書きかえ等の費用が約六千億円も費消されております。

 加えまして、利用者の立場から申し上げますと、送金・決済サービスの値上げ、あるいは郵便局での一元的対応ができなくなったことによる待ち時間の増加、サービスの廃止、拠点の閉鎖、さらには、かんぽの宿という年間二百万人から二百五十万人も利用している施設が無造作に売却されようとしたという事実があるわけでございます。いわゆるラストワンマイルの最も重要な拠点である郵便局のイメージが大きく傷ついていると言わざるを得ないわけでございます。

 先日、郵政民営化委員会は、見直しの意見書で、四分社のまま放置すれば不幸になるということがない以上この法律で定めた枠組みでいくのが当然だという委員長発言のもとで、四分社化問題に言及されることなく、グループ間の連携強化あるいは新規業務への進出という形で利用者利便を図っていくんだという報告書をお出しになりました。しかし、単なる私企業ではなく公共性の極めて高いこの日本郵政グループが、業容の拡大だけで国民福祉に貢献する企業の目的を達成できるかどうか、疑問の多いところでございます。

 また、収益面でも、金融二子会社に専ら依存をいたしておるわけでございますけれども、御承知のように、これは今後八年以内に完全にグループとは資本関係を絶ちまして離脱していく立場にあるわけでございます。

 経営形態とか組織というのは、申すまでもなく、これは手段でございまして、決して目的ではございません。株式上場が自己目的化することがあってはならないわけでございます。

 日本郵政グループ民営・分社化の最大の目的は何か。それは、国民に安心と信頼、交流の場を今後も提供していくこと、そしてもう一つは、官から民へお金を流すことでございます。そのために描かれるべき設計図が、郵政民営化法ではいきなり経営形態論、組織論に飛んでしまったこと、並びに、その後三年間、議会や政府によるグループ全体の方向づけないしルールづくり、あるいは監視体制等が整備されないまま日本郵政グループに半ば丸投げ状態になっていたことのとがめが、今日いろいろな形で表面化しているものと私は受けとめております。

 かんぽの宿問題で問われましたのは、入札の公正さそのものよりも、むしろ、先ほど申しましたように、国民二百万人以上が毎年利用しております施設が単に不良資産という言葉のもとにお金にかえられようとした、そのことに対する国民の、グループの経営理念と申しますか、あるいは組織の行動原理そのものへの不信感を強めたことに最大の問題があろうかと思います。

 郵政民営化法が成立いたしました二〇〇五年の当時でございますが、一方で、政府は、年金あるいは健康保険の施設売却問題の反省を受けまして、独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構を五年間の時限立法で設立されました。以来、この機構は、地元の自治体と協議しながら一件ずつ競争入札を通じて、官業を地元密着型の民業へ橋渡しする役割を果たしてこられたわけであります。なぜ、郵政民営化だけが一括売却であり、ルールも定められないままに五年間という期限がついたのでございましょうか。

 郵政民営化委員会の先般の見直し報告書におきましては、株主の目線からの市場規律の貫徹を目指すということを前面に打ち出しておられるわけでございます。しかし、今日、株主への配当を最優先するような株主資本主義のあり方そのものが問われておるわけでございますし、日本郵政グループに問われております本質的な問題は、実はこういう問題ではないと私は思います。

 しかしながら、私は株式上場に反対しているわけではございません。株式上場もさせない、何もさせないということでは、民間企業としては生殺しになってしまうわけでございますので、やはりそこに方向づけが必要だと私は考えます。

 株式上場に当たっては、その株主構成の中に、地方自治体の首長さんを初めとする地域代表の声が反映されるような株主構成上の工夫、さらには、個人株主が恐らく百万人単位で誕生いたすと思いますけれども、そのままでは物言わぬ集団になってしまうわけでございますので、この個人株主の方々は長期保有されればされるほど議決権だけはふえていくという、フランスが法律で導入をいたしました期間対応型の議決権制度を導入するといった資本政策面での工夫をぜひなさった上で、株式上場の具体的な検討に入っていただきたいとお願いする次第でございます。

 また、売却で得られました資金を一体何に使うのかということについては、これまで政府は何も国民に説明をなさってこられなかったわけでございます。その点についても、これまでNTTを初めとする国有企業の民営化資金がどこへ行ったのかを振り返っていただきますと、半分ないし三分の一は赤字国債の償還資金として雲散霧消してしまったわけでございます。日本郵政グループを本当に育てるための戦略、成長資金としてどう活用されていくのか、国民にどう還元されるのかという道筋を示した上で、売却資金を支出されるべきであると考えております。

 最後に、資金運用面で申し上げたいわけでございますけれども、国から地方へというかけ声とは別に、現行の郵政民営化法は、資金還流についての方策を全く述べていないわけでございます。今日の条文では、第百八十二条におきまして、国は地方自治体の借り入れもしくは地方債の発行に支障が生じないように配慮をするということのみ書かれております。そこには、主体的、積極的に地方へお金を流すという姿勢は全く書かれていないわけでございます。

 このまままいりますと、ゆうちょ銀行の場合、既に八三%が国債に投入をされ、官から官へさらにお金が流れる仕組みができ上がりつつあるわけでございます。すなわち、郵便局は、地方からお金を吸い上げ、それを国と海外へ持っていく、そういう意味では地域格差をますます助長するという機関になりかねない状況にあると私は懸念をいたしております。

 現行の法制のもとでも、その気になりますと、日本郵政グループは直ちにお金を流すことが可能でございます。三百兆円になんなんといたします資金のたとえ一%でも回しますと、それは三兆円でございます。そのお金を現実にどう流すかと申しますと、例えば、地方債への投資の拡大あるいは投資対象の市町村の拡大、地域をテーマとしたそれぞれ地域別のファンドへの投資、地域金融機関が組成いたしますさまざまの公共的な目的を持った証券化商品への資金の供給と市場の育成、さらには、現在問題になっております地域金融機関への資本性資金の供給といったことも当然検討されるべきであろうかと思います。

 もう一つだけ申し上げておきますが、資金運用に関しては、国民に最もわかりやすい、広く多くの支持を得る方策がございます。いわゆる住宅担保年金と申すものでございます。

 通称リバースモーゲージと呼んでおりますが、これは、現在高齢者の八八%が持ち家を持っております。しかしながら、年金や医療費の問題の不安を抱えておるわけでございますので、持ち家を担保に一定額を毎年受け取れていくような一種の融資制度、あるいは売却制度でございますが、居住権は保障されるというところで、大変な普及をアメリカ及びヨーロッパで見ておるわけでございます。

 もちろん、これには金利変動リスクや価格変動リスク、長生きリスクというのがございますけれども、こうしたリスクをカバーする保険制度を、アメリカ政府がみずから公的保険制度を運営することによって、このリバースモーゲージの普及が進みつつあるわけでございます。

 我が国におきましても、ぜひこうした取り組みに郵貯・簡保資金を活用していく方策を考えられるべきであるというふうに考えております。

 ありがとうございました。(拍手)

赤松委員長 ありがとうございました。

 次に、町田参考人、お願いいたします。

町田参考人 おはようございます。経済ジャーナリストの町田徹でございます。

 本日は、このような場を設けていただきまして、委員長並びに総務委員会の皆様、ありがとうございます。

 きょうはかんぽの宿について意見を述べよということでございますが、国会の方でも連日この問題について審議もされていますし、調査もされております。私の日ごろの取材と問題意識等を含めてかなり重なる部分もあると思いますが、どぶ板を踏むような取材をやってきて感じているところを申し上げたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 早速ですが、皆様にお配りしています資料でいいますと、二枚目の一番最後のところにいきなり飛んでしまうんですが、時間の節約のためにまずここへ行きたいと思います。

 そもそも、このかんぽの宿というものはどのように売るということを規定してあるのかということでございます。皆様御承知のとおりかと思いますけれども、日本郵政株式会社法の、わざわざ附則というものの第二条に書かれております。なぜ本則でなくて附則なのか、本当に必要なことだと自信を持っていたのなら、何でこの附則なんというわからぬところに書いてあるのかなというのが、ジャーナリストとして最初に持つ疑問でございます。

 さらにこれを読んでいきますと、条文の中には、日本郵政株式会社について、「平成二十四年九月三十日までの間、」「次に掲げる業務を行う」となっていて、さらに細かく、「一 次に掲げる施設の譲渡又は廃止」とあって、その次にイだのロだのと出てくるんですが、イで、実はメルパルク、旧郵便貯金会館が出てくるんですが、郵便貯金会館という明示はございません。先生方、皆さん、今回改めてお読みになっていると思いますが、これは旧法の郵便貯金法、既に廃止された法律を読まないとメルパルクのことを指しているのがわからない仕組みになっています。さらにロの方も、ここにかんぽの宿が書いてあるわけですが、これもかんぽの宿という明示はありません。もしくは旧簡易生命保険の加入者施設という明示もありません。廃止になった法律の条文の何条なりを読んでいくと、ああ、なるほど、かんぽの宿のことを言っているんだなというのが初めてわかるような仕組みになっています。

 本当にこのものを廃止しなきゃいけない、譲渡しなきゃいけないと感じていたのなら、何でこんなこそくな書き方をしているんでしょうか。この法律を読んでいると、これは売らなきゃいけないんだということが書かれているようには思えないです。

 それで、少し戻っていただいて、一枚目の一番下のグラフを見ていただきたいんですが、私、ジャーナリストで物を書くのが仕事なので、ふだんワープロしか使っていない人間がグラフをつくるエクセルというソフトを使ったもので、つたないグラフになっていて見にくいかと思うんですが、実は、日本郵政公社の時代のかんぽの宿宿泊事業部門の業績の推移をグラフにしてあります。それが棒グラフです。

 見ていただくと、二〇〇三年度の百七十九億九千五百万円の赤字が、二〇〇五年度は九十一億六千八百万円の赤字。これは上になっていますけれども、赤字です。赤字がほぼ半分に激減しています、わずか二年で。さらに行きますと、公社の最後の年、これは半年決算でございますけれども、三十三億三千万円まで赤字が減っております。年換算しても六十億ぐらいの赤字という計算になると思います。ですから、わずか四年の間に赤字が三分の一、あるいは二年の間に赤字が半分になっているわけです。

 かんぽの宿というものについて見ていきますと、先ほど申し上げましたように、郵政民営化六法の中で売却が規定されているわけですけれども、民営化六法というのは、二〇〇五年の十月十四日に法律として成立しています。基本方針の発表ということでいいますと前年の九月十日、二〇〇四年の九月十日ですね。法案の閣議決定ということになりますと四月の二十七日でございます。ということは、このグラフで見ていただくと、真ん中の二〇〇五年度の途中になります。ですから、もともと営利事業でなくて赤字でよかった事業を、公社化して、こういう赤字はなくそうという議論を始めて、わずか二年で赤字額を半分に激減させている。

 こういう実績とか、いずれ黒字化できるのではないかとか、劇的な改善ができるのではないかという実情をよく踏まえた上でこの事業が不要だという判断をされたんでしょうか。冒頭の、いかにもこそくな、かんぽの宿を売れということが法律で示されているということがわからない上に、この時期の判断であったとすれば、かんぽの宿というのはどういう事業で、どういう収益力を持っているかということがきちんと判断されたとは、ジャーナリストとして考える場合には、非常に考えにくいなという印象を受けております。

 これが、そもそもの、かんぽの宿の譲渡、廃止に関する部分でございます。

 次いで、一番冒頭のところへ戻ります。

 時間の制約がございますので一々全部読み上げませんが、今回のオリックスに対する全国の約七十の施設の譲渡の問題ですけれども、応募した二十七社の一社から、二週間ほど前ですが、どうしてもお話ししたい、オフレコで聞いてほしいと言われて、行ってまいりました。要するに、今回、既知の事実というのですが、既に知られている事実以外のことは公表するなというふうに日本郵政の方からかんぬきをかけられているという話を聞かされてまいりました。

 何が言いたいかといいますと、現時点ですら、この一連の売却手続でどういうことがあったのか、まだ隠れている事実があるんじゃないかということを申し上げたいんです。連日、国会の方でいろいろな調査をされて、いろいろなことが出てきていますけれども、応募した企業の方は実はまだ言いたいことを何も言っていない、言えていない。

 さらに言いますと、このbのところになりますが、ある企業です、その企業が秘密保持協定のもとに見せられたという資料によりますと、二〇一〇年の三月期から郵政のかんぽの宿事業は十億円の黒字に転換する、そういう見通しがこの資料には書かれていました。翌年は二十億円に黒字が拡大するとなっています。こういう事実も表には出ていなくて、単に、郵政民営化の段階でいうと、竹中平蔵さん、当時の担当大臣の著作を読みますと、これは本業でないから、コア事業でないから競争力がないとか、それから国会での西川社長、現在の社長の発言を聞いていると、毎年四十億ぐらいの赤字を出していて、持てば持つほど赤字だから売却を急がなければならなかったというふうに説明されています。

 ですが、丹念に二十七社を回って取材していくと、実際には十億円の黒字になると言われている企業があったり、どういう交渉過程があったか明らかにするなと言われる企業があったり、この入札過程が一体どういうことだったのか、まだまだ明らかになっていないというのが実情だと思います。この不透明な点についても、ぜひこちらの国会の方で追及していただけるといいなというのがジャーナリストの感想でございます。

 さらに進めますが、なぜこのようなことが起きてきたのかということです。

 皆様のお手元の三枚目の資料に関係するところで、なぜこれが起きたかという問題の前にもう一つ申し上げておきたいのは、日本郵政というものについては、このかんぽの宿だけでなくて、メルパルク、旧郵便貯金会館の賃貸契約においても、当初かんぽの宿でやったんだと言っていたような一般競争入札はやはりここでもやられておりません。

 随意契約で、具体的に申し上げますと、競争入札をやるのであれば参加したいと言った企業が、企業体がと申し上げた方がいいかもしれません、拒否されているとか、一般競争入札はやらないからといって断られて、不透明な形でこのワタベウェディングというところに賃貸されているわけですね。しかも、このあたりも別の委員会の質疑の中で一部オープンになってきておりますけれども、東京とか京都の施設に関しては、ほかの施設と賃貸期間が違っていて、極端に短い。

 実は私、数カ月前にメルパルクについて取材を始めていたわけですけれども、メルパルクについては、実は大手の不動産会社が既に購入することが決まっている、だから入札手続もないから不透明な形でいっちゃうんだということをあるソースから伝えられて、取材に入ったわけです。ところが、当時、日本郵政が私に言ったのは、長期の賃貸契約をしているから、そんな売却なんかできるわけがないという話でした。

 これもやはり、何かおかしなことがあるんじゃないか、大手の不動産会社に転売するという前提が先にあって、このよくわからない賃貸を将来売りやすいためにかませているんじゃないかという疑問が残っています。

 さらに、横山さんという方が日本郵政の専務執行役ですが、この方がどういう方かというのが先日来参議院の質疑の方でも随分注目されているんじゃないかと思うんですが、参議院で出たのは、いまだに出身母体の三井住友銀行の社宅に住んでいるというお話でした。

 実はこの方、私が取材したところ、退職出向という表現をされています。これは厳密な定義がよくわからない言葉なんですけれども、要するに、出向扱いであって、いずれ、民営化にめどがついた段階で三井住友銀行に戻ってくるんだ、そういう扱いになっているんだというふうに三井住友銀行の広報から説明を受けました。この方が、平社員じゃないんですよ、専務執行役という物すごく責任ある立場にいて、それで日本郵政でグループ戦略を決めている。

 申し上げたいのは、このかんぽの宿でも実質的な責任者じゃないかと言われたんですが、ほかでも二つ大きなディールを事実上決めたとされております。

 その一つが、もともとの郵貯はクレジットカード業務を、提携カードという表現で四十数社のクレジット会社と提携して発行していたわけですが、これを民営化に当たって単独進出に切りかえるということで提携関係を全部解消しまして、ゆうちょ銀行は、新たに自分たちで発行するという形で提携関係を変えたんですが、これに選ばれたのが三井住友カードでございます、提携先として。もう名前からおわかりのとおりで、三井住友銀行のグループの会社です。

 もともと三井住友銀行御出身の方が、それまで四〇何%シェアを持っていたクレディセゾンですとか、そういう会社を次々に外して、それまでの実績がわずか〇・二%しかなかった会社を強引に提携先にして、それまでは、クレジットカードの発行業務に係る手数料というのは提携会社の方に負担してもらっていましたから、日本郵政の方では負担していなかったものを、三井住友カードに発行事務を委託しているからということで、この手数料を払う仕組みに変えているんですね。これを判断されているのが、三井住友銀行御出身で、現在も籍のある専務執行役なわけです。

 こういうのはどうしても不透明な利益誘導という印象を持つんですが、違いますでしょうか。そのあたりもぜひ一度国会において調べていただけるといいなというのが私の感じでございます。

 あわせて申し上げますと、三井住友グループなり、三井住友に友好的な企業に対する便宜が図られているのではないかというケースとして、郵便局で配る文房具だとか日用品、ティッシュペーパーとか、そういうものがあると思うんですが、そういうものを購入する会社を、もともと郵政ファミリーの会社だったんですが、民営化するに当たって一般の企業に変えた。これ自体は、長年の利権のうみのようなものが発生している可能性があるから、変えるというのはすごくいいことだと思うんですが、変えた結果、もとのファミリー企業から買うよりも値段が上がっちゃったと言っている郵便局長さんが何人もおられるんですね。この会社が、都内に本社を置いている会社なんですけれども、これがまた三井住友銀行がメーンバンクの会社という仕組みになっています。

 ですから、日本郵政という会社を見ますと、一応立派な体裁で、委員会等設置会社のような体裁になっているんですけれども、これは取締役会がきちんとワークしているんでしょうか、ガバナンスがきっちりしているんでしょうか。

 一番チェックしていただきたいのは、会社の中でどういう意思決定をして、どういうフェアな形で、株主、利用者にどう利益があるからこの企業を選んで、こういう設定をしているんです、この説明が今のところ何一つなされていないと思うんですね。このあたりを含めて、ぜひ調査いただければいいなと思っています。

 では、なぜこういうことが横行しているかという部分なんですけれども、皆さんのお手元にお配りしたものでいうと四ページ目の真ん中辺から、いろいろな法律を例示させていただいていますけれども、要するに、過去の民営化企業、NTT、日本電信電話にしろ、JRグループにしろ、日本たばこにしろ、重要な資産の売却であるとかいうものに関しては、所管大臣がきちんとチェックする仕組みがございます。ここにお示ししたのがその条文でございます。それに対して日本郵政の方は、今回たまたま、会社の売却にしたいということで、かんぽの宿部門を別会社化して株式分割するのがありましたから、ここで鳩山大臣のチェックが入ったわけですけれども、そうでなければ入らなかった。資産の売却はチェック対象じゃありません。

 それから、郵便局と郵便事業については資産売却に関して大臣認可が伴いますが、これはNTTや日本たばこではすべての重要資産になっている。JRでは三億円になっているものが、十億円以上でいい。さらに、ゆうちょとかんぽには売却に関する規制はございません。

 こういうところが、ガバナンスがどうなっているか今わからない状態の会社で、かつ外部からのチェックもない。さらに言えば、ディスクロージャー誌というのを日本郵政が公社時代から出していますけれども、これの厚み一つ見ていただけばいいんですが、民営化してからの方が、財務データ、経営データの公表が激減しております。

赤松委員長 町田参考人、そろそろまとめに入ってください。

町田参考人 はい。

 そのあたりも含めて、ディスクロージャーはこれでいいのか、法規制はこれでいいのか、現状チェックの後、それを御議論いただければよいのではないかなと思っております。

 どうもありがとうございました。(拍手)

赤松委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。遠藤宣彦君。

遠藤(宣)委員 おはようございます。自由民主党の遠藤宣彦でございます。

 きょうは、参考人の皆様方、お忙しい中ありがとうございます。また、こういった機会をいただきましたことを感謝申し上げたいと思います。

 いただいた時間が十五分ということでございますので、今回のこの問題がなぜ出てきたのか、旧郵政の体質論、そしてまたそれをどう克服していけばいいか、こういった観点から私の考えを述べさせていただいて、そしてそれに対して皆様方からコメントをいただくという形で質問させていただきたいと思います。

 私自身の経歴でありますけれども、私は郵政省の出身であります。長野県の六万二千人の人口の郵便局長をやりました。また、郵政研究所というところで、郵便局がどういう形で残らなければいけないのか、あるいは残せるのかということを詳細に検討させていただいた。また、退官のときには、まさに郵政省の財務部の課長補佐を最後にやめさせていただきました。あの橋本行革のときの反論ペーパーなども、いろいろ今も手元に、家のどこかにありますけれども。そういった意味で、今回の問題というのは、郵政省の先輩方はいろいろないい方がいっぱいいらっしゃるんですけれども、組織的に、構造的な体質から生じてきたものじゃないかという気持ちがすごく私自身はございます。こういった点において、ちょっとお話をさせていただきたいと思います。

 郵政の民営化がなぜ必要だったかという話は、皆さん、さんざんしたと思いますけれども、今、携帯でメールをやりとりするときに郵便がこれ以上ふえるわけがないとか、個人情報保護法がきついときに年賀状が売れるわけがないとか、あるいは、簡保と貯金のお金を集めて、運用先がローリスク・ローリターンでは、こんなときにはもう回らない、そんなようなことがありました。

 しかし、郵政省という組織は、民営化に対して労使一体となっていろいろな理屈を考えてきた。私自身もその仕事もやりましたけれども、三つの呪文というのがあったんですね。一つは国営維持、もう一つは独立採算、そしてもう一つは三事業一体、これが民営化をしてはいけない呪文のようにずっと唱えられてきた。まず国営維持、ネットワークを維持するには国営じゃなきゃだめなんだという話。そして独立採算、税金を投入していない、みんなに迷惑をかけていないからいいじゃないかという話。そして三事業一体、三つ一緒にやっているからこそ採算が合うんです、こういう話なんですね。

 しかし、よくよく見ていくと、国営じゃなければネットワークが維持できないというのは、これは実は余り証明できない、ほかの民間企業でもやっていますから。

 そして、独立採算。ここのところが実は今回の一つのポイントだと思うんですけれども、自分たちは税金を使ってやっていないから、自分たちの裁量で使っていいんだということが、これは郵政事業だけではなくて、あらゆる特別会計というのはそういう傾向があると思うんですけれども、おれたちが稼いだ金なんだから、あるいは、おれたちがそのために集めた金なんだから多少緩めに使ってもいいじゃないかという体質が、どうもここの部分で強く出てくる。

 余談になりますけれども、ある郵政省の有名な元局長は、自分の俳句集を出すのにお金を使ったとか使わないとかという話があった。あるいは、うま年生まれだから馬の切手をつくったとか、そんな話が私が現役のときにはありました。

 ですから、独立採算といっても、まずここのところで体質的に考えなきゃいけないのは、もとは国民のお金を預かっているというところを民営化に際してもう一回確認しなきゃいけない。つまり、この体質というものが、今回、民営化になったけれども、郵政省の組織の中に残っていたものが、このかんぽの宿問題を初めとして、逆に民営化がスムーズにいくことの阻害要因になっているんじゃないかということが、実は私には感じられて仕方がありません。

 そして、三事業一体ですけれども、よくよく見ていくと、郵便と貯金と保険というのは、サービスが始まった時期というのは全然違うんですね。逆にそれにこだわり過ぎると、不採算のものを抱えたまま、そしてまた、役所ですから、あの商品は何々局長のときにつくったものだからなかなか廃止されないとか、そういうような話がある。

 つまり、国営を維持するという話はもちろんですけれども、独立採算と三事業一体という話から、非常に内部のクローズな体質というものが醸成されてきた。ここら辺ぐらいまでは大体多くの方々が気がついているんですけれども、この三つの呪文を支える、今度は政治的なマインドといいますか、コンプレックスというのが実は郵政省の中にはございました。

 一つは、NTTコンプレックスというのがあって、監督官庁なんだけれども、NTTはなかなか言うことを聞かない、このNTTを弱めようというものが自己目的化していった。つまり、ある部分で大義を持つと、どんどん歯どめなく行っちゃうというところがあるんですね。

 そして二番目が、通産省コンプレックスというのがあって、隣の通産省と争う、そういった中で、とにかく全部……(発言する者あり)いや、まとめて最後にコメントをいただくという形になっていますので。協力すべきところはしなきゃいけないんですが、なかなかそうはいかない。

 そして、三番目が、これは労働組合コンプレックスということなんですけれども、今まで労使が激しくぶつかっていた職場ですから、労使の中でうまくまとまった話というものは、割と自分のいいように解釈をしちゃうところがあるんですね。私は人事部にもいたんですけれども、今回、自浄能力が下がった一つは、郵政の中で……

赤松委員長 遠藤君、十五分以内ですからね。参考人の答弁が聞けなくなっちゃうので。

遠藤(宣)委員 はい。ここが最後のポイントなんですが。労使のなれ合いの中でやるという体質がすごく残っていたと思います。そういう意味で、事業ごとに、要するに雇用を守らなきゃいけないという形でやったために相当安くなってしまった。

 こういった部分において、郵政の中での労使のなれ合い、あるいは自浄能力の低下、いたずらに外に敵をつくって、上下で活発な議論が起きないということが色濃く反映されていると思うんですが、ジャーナリストの立場からこのあたりについてどう思われるか、町田参考人にお伺いしたいと思います。

町田参考人 お答えします。

 遠藤先生御指摘のとおり、雇用に対して過剰にこだわっていたということで、もっと高く売れるものが売れなかったのではないかなと思います。

 二十何万人の組織ですから、非正規を含めて四千人の社員を配置転換して、不動産として売れば、幾らでも高く売れて、加入者なり国民なりの資産として有効活用されたのではないかと思います。

遠藤(宣)委員 郵政というところは、非常に政治的に守られておりました。局長会、全逓、全郵政、郵産労。そういった意味で、今申し上げたような体質も含めて、外からなかなか干渉がされない。猪口邦子さんのだんなの猪口孝さんという政治学者がいるんですけれども、郵政の場合には族議員がいっぱいいると。要するに、中についてはタッチしない、中では自由にやっていいから、そのかわりちゃんとやっておいてくれというような体質があったんですね。

 時間が本当に短いですから先に進みたいと思いますけれども、そんな中で、今回、雇用をとにかく仲よく労使で維持しなきゃいけないという足かせ。世の中では、品川駅前のホテルでも随分もめていましたけれども、どうしてそういうようなところまで面倒を見なきゃいけないんだろうかということが、私の周りからも随分聞こえてきます。資産を売却するというところと雇用をセットしなきゃいけないという話、この辺のところがどうか、ちょっと考えなきゃいけないんじゃないかという話が一つあります。

 それから、資産の売却については、かんぽだけじゃなくて、実は郵政省というのはいっぱいいろいろな資産を持っていまして、白金台の官舎とか、赤坂の官舎とか、あるいは表参道の官舎とか、いっぱいあります。そういった中で、このまま郵政民営化がかなりいかがわしげなものになってしまうという話になると、どうも、今申し上げたような郵政の私物感覚が残ったまま、国民財産が散逸してしまうという結果になってしまいます。

 こういう中で、民営化するに当たって、普通の企業であれば、背任にはなるかどうかわかりませんけれども、現社員の給与や退職金なんかに対して目減りというものを反映させないとおかしいんじゃないか。それから、特に、明治以来ありますけれども、官営の払い下げというのは、昔からどうしても、李下に冠を正さず、瓜田にくつを入れずという、疑いが持たれないような形にしなきゃいけない。

 こんな中で、郵政民営化、ぜひとも必要な改革であったとは思うんですけれども、東京駅前の中央郵便局の話にしても、せっかく民営化されたのに、今申し上げたような郵政の体質というものが克服されないままいくと、どういう損失が生じて、そしてまた、もしこれをとめることができるとすれば、先ほどガバナンスという言葉を参考人の方が使われましたけれども、これからどういった形でこれを担保していくかという点について、それぞれの参考人の方からお話を伺えればなというふうに思います。この体質から生じる問題と、それを克服するための担保、そこについてお伺いできればと思います。

井手参考人 ただいまの質問について、やはり民営化というときに、NTTの問題、あるいは国鉄の民営化が成功であったかどうかという検証をするというのが、我々、経済学ではよく計量的にはやることであります。

 民営化にこういった体質があるということは、それを即座に解消するというのは大変難しい。しかしながら、我々は、民営化によってサービスが向上する、あるいは価格が低下する、こういったところを常に監視していく、やはりNTTもそうでありますし、国鉄の場合でもそうですが、民営化の成功というものを、民営化の検証というものを常にウオッチしていくということが求められている。

 そういう意味では、郵政の民営化というのは、まだまだ一年半ですけれども、評価するのは非常に難しいわけですけれども、今後とも、そういう監視、あるいは透明性というのを確保していくことが必要だろうというふうに私は思います。

田尻参考人 まず、基本的に御認識いただきたいのは、現在の日本郵政グループというのは、法人格で申しますと、純粋の私企業でもなければ、上場会社でもございません、公社でもございません。何かと申しますと、これは郵政民営化法が定めました特殊会社という形態でございます。

 なぜ特殊会社になさったか。私なりの理解では、これは、資産処分が極めて容易であること、そして公共性の担保が可能であること、事業法等による規制が極めてやりやすいこと、さらに、ガバナンスの面で多様な形態を持ち込むことができるということでございます。

 すなわち、一つの法律によって、国民共有の資産をすべて握った日本郵政グループは、いわゆる民間企業ではございません。ここのところを基本に置いて日本郵政グループの発言等を見ておりますと、私企業の論理を振り回しておられる。決してそうではないわけでありまして、国策会社であるということは、国が株主権を行使する、監督権限をフルに活用するという立場に置かれているグループであるという基本認識を欠いておるということが基本的な問題であろうかと私は思います。

 次に、体質的な問題はいかがかという御質問がございました。

 最近の国民的な不信を呼んでおります事態を見ておりますと、あるいはその後の事後対応ぶりを見ておりますと、明らかに、現在の経営陣は、時代を先取りする、あるいは時代の変化を読み切れない経営感覚の限度、限界というものを露呈しておられるように思うわけでございます。

 第二の問題点といたしましては、この日本郵政グループというのは、紛れもなく典型的なサービス業でございます。サービス業は、製造業と異なりまして在庫もききません。そして、提供したサービスはその場で消えてしまう。しかも、標準化されたサービスでは顧客は納得しない、個別の対応が必要であるというようなことから、これは、いわゆる製販分離といったような四つの子会社に分離するという形では、極めて運営もしにくい、ガバナンスもききにくいという難点を持っておる仕組みでございます。

 そういう意味では、人と組織の有機的な連携を切断してしまいました四分社化の基本的な、構造的な問題が現在表面化しておるわけでございまして、これは、いわゆる立ち上がり期の過渡期的な現象ではなく、構造的な問題だというふうに私は考えております。

 では、このままいったらどうなるかという次の御質問がございました。

 私は、まず、資金運用面では、このまままいりますと、ますます国債の塩漬け機関になってしまう、つまり、官業時代よりもさらに悪い状態になってしまうということは明確な方向性ではないかと思われます。さらに、国民サービスという点になりますと、今のような経営感覚と、四分社化体制のもとになりますと、ユニバーサルサービスの維持は到底不可能でございます。

 郵便局会社の収益のうち、何と八三%までが金融二子会社からの手数料収入でございます。これがグループから離脱いたしました後には、残されました郵便事業会社と郵便局会社をたとえ統合いたしましても、これは収益基盤は全く不安定な状態が続くわけでございます。

赤松委員長 参考人、恐縮ですが、時間が来ましたので。

田尻参考人 そういう意味では、郵政三事業が百三十数年間にわたって築いてまいりましたユニバーサルサービスそのものが崩壊してしまうというふうに言わざるを得ないかと存じます。

赤松委員長 時間が来ましたので、これで遠藤宣彦君の質問は終わりにします。

遠藤(宣)委員 ありがとうございました。

赤松委員長 次に、小川淳也君。

小川(淳)委員 民主党の小川淳也でございます。

 参考人の先生方には、きょうは、本当にお忙しい中、貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。

 私は、二〇〇五年の郵政解散で初当選させていただきまして、きょう、いろいろなお話をいただきながら、あのときの熱狂を思い返しておりました。あの熱病とも言えるような民営化に向けた機運が一体何だったのか。それが三年半たっていろいろな形であらわれ出て、その一つが、今回のかんぽ問題なんだろうと思います。

 先生方のお話をきょうお聞きしていて、大中小、三つのことについてお聞きをする必要があるなと改めて思いました。

 小とは、まさに井手先生がおっしゃいました、今回のかんぽ問題、かんぽ施設の売却問題だろうと思います。中は、その背景でもあります、郵政の民営化そのものに対する評価。そして、大は、一番大きな話は、そもそも、民営化とか市場原理とか、あるいは競争社会とかいったような価値観そのものをどうとらえ、どう修正していくのか。この大中小にそれぞれスケールを分けてお尋ねをさせていただく必要を感じた次第でございます。

 そこで、まず、田尻先生、きょうは我が党の要請に応じていただきまして、ありがとうございました。先生は、日経新聞社にお勤めになられて、その後、世界の通貨、銀行、金融市場等に関して大変な造詣を深めておられる。その知見からいただいたきょうのお話、株主に地域代表を入れてはどうか、あるいは長期の株主には特別に議決権を割り増してはどうか、大変、目からうろこのような思いでお聞きをいたしました。

 といいますのも、この間、これは私の持論なんですけれども、資本主義と社会主義が百年戦争を繰り返したのが二十世紀ではなかったかと思います。ベルリンの壁の崩壊と同時に社会主義との百年戦争に勝利した資本主義が、まさに暴走しておごり高ぶったのが、八〇年代後半からこの二〇〇〇年代後半にかけての二十年ではなかったかと思います。それが象徴的にあらわれたのが去年の秋の世界的な金融危機。大きな歴史でいきますと、そういった位置づけができるのではないかと思います。

 そこで、田尻先生にまず大きな話をお伺いしたいんですが、先生のある寄稿を拝見しました。人類社会が株式会社を生み出して以来の進化の過程の到着地点としての社会的企業、これは、事業の規模、運営形態を問わず、ビジネスとして採算性を確保しながら、なおかつ公共性の追求と社会的使命を果たしていこうとする事業体。非常にすばらしい定義だと思います。

 では、これをどうやって具体的に制度に落とすのか。おっしゃった、株主に地域代表、長期の議決権の割り増し、そしてリバースモーゲージ、さまざまなお話をいただきましたが、この点、さらに具体的に補強する手段があるのかないのか。利益を極大化することのみに血眼になってきたこれまでの資本主義社会に対して、公益性、社会性を追求するには、具体的な制度設計として、既におっしゃったものも含めてほかにどういう考え方があり得るのか、ぜひ御示唆をいただきたいと思います。

田尻参考人 まず、規制緩和とか自由化という問題が、二〇〇五年当時は、経済のシステムには二つの側面があることを全く無視して議論されたように感じております。

 つまり、経済というのは、物をつくって販売するという実体経済のサイドと、もう一つは、その決済、もしくはお金がお金を生むという金融経済という二つの側面を持って、表裏一体として機能しておるものでございます。ところが、これまでの市場原理主義者は、それを一緒くたにいたしまして、すべて自由化する市場原理が機能するものだというとらえ方をしてきたわけでございます。

 しかしながら、経済学におきましては、この金融経済と実体経済の違いというのは、これは伝統的にきちんと理解されていたことでございます。すなわち、金融自由化と国際貿易の自由化等の、いわゆる物とマネーの世界では、自由化の度合いとか進め方というのは全く違った取り組みが必要だというふうに考えられてきたわけでございます。

 それが、一九八〇年代に、新古典派と呼ばれる人たちのグループによりまして、それが同じであるかのように言われたわけでございます。アメリカの経済学者の間でも、金融システムの自由化問題は、これまでガットを中心とする自由貿易体制を強く推進してこられた学者グループの中でも、金融システムだけは別だというとらえ方をしている論文も多く見られるわけでございます。その点が、日本国内におきましては、不幸にも一緒くたにされてしまったという思いを持っております。

 先ほどの御質問の中で、どのように公益性を私企業の中に反映させていくかと。これは、政府による直接介入、補助金等による誘導政策、公的規制、あるいは、政府による直接のライバル企業、かつては官業としての郵貯がございましたが、そうしたものと私企業を競争させることによって私企業の行動を牽制するという、大きく分けますと四つぐらいの方策がございました。

 しかし、今日では、市場のメカニズムを通じてどうコントロールしていくかという方策で、先ほど申し上げました方策に加えまして、例えば外資の比率についても、日本郵政グループを市場公開いたしましたときにどこまで認めるのかということについては、現在何のガイドラインも客観的なものも示しておられないわけでございます。これはぜひ国会において御議論をいただきたい点でございます。

 さらに、外資が敵対的買収をいたしました際に、日本郵政グループは、ライツプランと申しまして、新株予約権を与えるという方策も検討されておられるようでありますけれども、こうした敵対的TOBに対する防衛策のあり方ということについても、本委員会でぜひ御議論いただければと願っております。

小川(淳)委員 ありがとうございます。

 これまでは、多分、収益は絶対の正義という価値観が続いたんだと思うんですが、これはどなたの言葉だったかあれなんですが、「売り手よし、買い手よし、世間よし」。今までの、収益を最大化するということは、つまり売り上げを最大化して経費を最小化するという二次元的な物の考え方。このXとYに対して、もう一つZ軸といいますか、三次元的な考え方を入れていけるかどうか、恐らくこれから、それこそ次の百年をにらんだときに、思想的なことも含めて価値観の大きな転換が必要なんだと思います。

 そこへ、やはりこの場は国会でありますし、法制度を扱うわけですから、具体的にこれから制度設計を考えないといけないわけですけれども、きょう先生から御示唆いただいたような点はぜひ大いに参考にさせていただきたいと思いますし、これからもさまざまな研究成果に御期待を申し上げたいと思います。

 次に、中ぐらいの話を井手先生にお尋ねしたいと思うんですが、井手先生まさにおっしゃいました、かんぽの施設の売却問題というのは小さな問題だと。いただいた資料の中にも、民営化そのものについて疑念や反対の意見はあるが、踏み出した以上、きっちり進めないといけないと。

 郵政の民営化を前提にした中での御議論をきょういただいたと思うんですが、一歩さかのぼりまして、そもそもこの郵政三事業、金融二事業と全国あまねく同一料金でやっている郵便事業を一括して民営化するというところに、私は非常に無理もあったんじゃないかなという気もしているんですが、一歩さかのぼって、この郵政の民営化そのものについての先生の御見解をお聞きしたいと思います。

井手参考人 本来、そういうことを議論するつもりはなかったんですけれども。

 民営化というのは、競争原理を導入するということで一方では評価されるわけですけれども、やはりイギリスもあるいはアメリカも、特にイギリスは民営化をいたしましたけれども、これは壮大な実験でありまして、そういう試行錯誤の中で、もし悪い点があれば直す。それから、アメリカの場合にはまだ公社化のままで、しかしながら、郵便について、あるいはイギリスの場合でもそうですけれども、ユニバーサルサービスをどうやって維持するかということは、これは民営化する、なしにかかわらず、国民の利便性を向上するという意味では非常に重要な点であるということです。

 民営化がどうだったかということについて、これはこの場ではなかなか一言で申し上げるのは難しいんですけれども、民営化にも民営化のやり方があるということであります。

 したがって、一たん踏み出したけれどもやはり問題があればそこで修正をしていくということが非常に重要だろう。これは私の研究分野で、電力でもガスでも通信でも運輸でもそうですけれども、諸外国、あるいはそういったいろいろな事業においても、市場原理を入れるということはある意味では反対ではない。しかしながら、やり方の問題であるということであります。

 お答えになっていないかもしれませんけれども、市場原理で一つの問題としては、例えばモラルハザードというのはたまさか起こるものではなくて、こういった民営化によって頻繁に起こるものだという認識を持たなければいけない。あるいは、競争原理を導入することによって既存企業というのは常に悪いことをする、新規参入企業はいいことをする、そういった対立構造の中で我々は議論をするといったことも、経済学者の責任でもあるわけですけれども、改めないといけない点であろう。

 結論的に申しますと、民営化の是非については、やり方ということを考えながら、もし悪い点があれば修正をしていくということが必要だろうというふうに思います。

小川(淳)委員 ありがとうございます。

 きょう、井手先生のお話をお伺いしながら、これもどなたの言葉だったでしょうか、「本を忘れず、末を乱さず」という言葉を思い返しておりました。確かに、三十万人で三百兆円の資産を運用していますから、今回のかんぽ問題というのは、それからいいますと百億で、三百兆円との比較でいえば非常に末端の話かもしれません。

 しかし、今回の一連の経過の中で明らかになってきた売却の過程であるとか、あるいは売却先、そして、場合によってはそれで多額の利益を上げかねない方々の存在、一見末端でありますが、ここに信頼性のある取り扱いが本当にされているかどうかは、実は、三百兆円全体の郵政事業に対する信頼にかかわるという意味で、民営化だからしようがないんだということにはなかなかならないんでしょうし、根本のところはしっかりと忘れず、しかし、末端の、靴の泥といいますか、末のところを乱したのでは全体の信頼性にかかわるという、バランスのとれた議論をぜひこれからも先生の御指導をいただきながら国会で続けていきたいと思います。

 最後に町田先生、小さなところで、このかんぽ問題、きょういただいた御報告は、他のお二方と比べますと非常に現場の、場合によっては不祥事的な材料もたくさん御報告をいただきました。

 これは私どもとしても非常にジレンマなんですが、郵政の民営化がこれから順調に進めば進むほど、政府なり国会から遠い存在になってまいります。いろいろな情報の開示あるいは説明責任を国会としてもどんどん求めづらくなっていくわけでありまして、そうなればなるほど、町田先生のジャーナリストとしてのいろいろな調査ですとか、あるいは世間に対するメッセージの発し方というのは非常に重要になってこようかと思います。

 その観点から、これからもぜひ御活躍を祈念申し上げる立場から、非常に御苦心の多いことと思いますが、日ごろの取材の御苦心なり国会に対する御期待なりがございましたら一言いただいて、質疑を終えたいと思います。

町田参考人 お答え申し上げます。

 枠組みの問題自体は、法律で規定していますから、ディスクロージャーの義務であるとか、それは一般に対するディスクロージャーもあるでしょうし、国や国会、もしくは株主の国に対するディスクロージャーもあると思います。

 それから、株主権は今一〇〇%財務大臣が保有していますから、株主にとってメリットのあるかんぽの宿の売り方であったのかとか、そういう観点からも追及していただくといいのではないかなと思っております。

 よろしくお願いします。

小川(淳)委員 ありがとうございました。

赤松委員長 次に、谷口隆義君。

谷口(隆)委員 公明党の谷口隆義でございます。

 三人の参考人の先生方、本当に御多用の中、出席をいただきましてありがとうございます。

 先日、私、総務委員会の理事ということもありまして、有馬のかんぽの宿を視察してまいりましたが、今のかんぽの宿のグループの中では一番古くて、昭和三十八年にスタートしたところでございます。それで、黒字が出ておる数少ないところなんですね、有馬というのは。ロケーションもいいということもありますし、施設も見せていただき、また、従業員の皆さんのやる気みたいなものもお話を聞かせていただいて、非常に参考になったわけであります。

 私自身も、郵政民営化の委員会にも入っておりまして、その中でいろいろな意見を表明させていただいたことがあるわけでございますが、きょうは特に事前に質問を想定しておったわけではなくて、先ほど三人の参考人の皆様方がおっしゃったことを念頭に入れてお伺いをいたしたいと思います。

 まず初めに、先ほどの質問にもありましたけれども、郵政民営化、またその分社化、これに対する評価が一体どうなのかということをお聞きしたいと思うんです。

 今お聞きしておりますと、井手参考人の方は、英国では壮大な実験が行われたみたいなこともおっしゃっておられまして、やり方が問題だ、もし悪ければ修正する必要があるだろうと。

 しかし、基本的には、郵政民営化というのは一つ避けられない方法なんだというように私は考えたわけでありますが、民営化するかどうかというのは、おっしゃったような国民の利便性と、あとは継続可能性というのがあるんだろうと思うんですね。幾ら国民が評価したものであっても、出血しながらずっと生き続けるというのはなかなか難しい話でありますから、そのことが二つの重要なポイントになるんだろうと思うんです。

 そういうことを念頭に入れていただいて、今、井手参考人はもうお伺いをいたしましたので、田尻参考人、町田参考人から、この郵政民営化、また分社化の評価についてお話をいただきたいと思います。

田尻参考人 分社化そのものにつきましては、先ほど私も申し上げましたが、いわゆる日本郵政グループというのは典型的なサービス業でございます。したがいまして、サービス業の分社化というのは、製販分離というのはそもそも自己矛盾的な部分を持っておりますがゆえに、その分社化の方法についてはより深い検討、見直しが必要であるというふうに考えております。

 さらに、金融二子会社と郵便事業会社、郵便局ネットワーク会社との立場は、ビジネスモデルだけではなくて、ユニバーサルサービスのあり方そのものでもやはりやり方を変えないといけない。必ずしもこの四つの子会社が、今は並立した形で存在をしておりますけれども、この間の利害相反という問題が既にこのグループの中でも表面化しつつあるわけでございます。

 そういう点で先生の御質問に答えるといたしますと、やはり四社が並立で並んでいる状況というのは変えるべきであると私は思います。郵便事業会社と郵便局会社を分離しておくことの必然性というのは、私は、感じないどころか、むしろ今害の方が表面化してしまっているということで、これは一体運用であるべきだと思います。

 では、一体運用すればいいかというと、問題は何も解決しないわけでございますので、まず、郵便の最低限のユニバーサルサービスは維持しなければなりません。

 私は、持論といたしまして、ベーシックな、基礎的な金融サービスについても、ユニバーサルサービスを保障するのは国家の責務だと考えておりますので、その両者の間で利害相反が表面化しないようにするためには、郵便事業会社なりネットワーク会社を一体化したものの子会社として金融二社を位置づける。つまり、ドイツも当初は並立しておりましたけれども、それをポスト会社の下に郵貯会社を持っていったわけでございます。やはり、そういう方式に基本的には変えていくべきだと私は考えております。

町田参考人 お答えします。

 民営化が必要であったかどうかという点ですが、必要であったし、遅かったぐらいだと思っております。

 実は、私、日本経済新聞の記者をやっていまして、一九九四年と五年に郵政クラブにおりまして、当時、郵便事業等を取材しておりました。当時は信書の独占というものが強かったんですけれども、それがメール便なんかの形でどんどん崩されておりますので、ある意味ではその競争力も失われてきていまして、民営化のタイミングとしてはむしろ遅かったぐらいだと思っています。

 それから、四分社化についてでございますが、我々が公開資料で持っているのは中間決算のデータですけれども、日本郵政グループ全体で、中間決算で二千二百億ぐらいの最終利益が出ていますけれども、千五百億以上をゆうちょ銀行で稼いでおりまして、その他はかなり厳しい状況になっています。

 申し上げましたように、郵便事業は既に赤字に転落していまして、先の展望があるのかどうか、これは非常に難しい問題があります。それから、一見利益が出ているように見えます郵便局会社ですけれども、実は、中間期直前の八月、九月にゆうちょ銀行から特別な手数料の支払いが、通常月八十億ぐらいのものを、八、九月だけ百八十億強それぞれ払い込んでもらって、辛うじて二百億の黒字を維持していますから、この中身を見ていきますと、実態的には郵便局会社も赤字であったと見るべきだと思います。

 ですから、この四分社がワークしているかということでありますと、かなり際どいし、ワークしていない。四社中二社は実質赤字、一社は完全な赤字だし、もう一社は実質赤字に転落しているのではないか。この状態ではユニバーサルサービスの維持も非常に難しいのではないかと思っております。

谷口(隆)委員 ありがとうございました。

 先ほど町田参考人は非常に的確にいろいろおっしゃったわけでありますが、お話を聞いておりましたら、かんぽの宿の経常赤字のことを言及されていましたね。二年で半分ですか、このところ急激に経常赤字が減少してきたではないかということをおっしゃられたんですね。

 それと、最近のディスクロ誌のことをおっしゃいましたね。民営化後のディスクロ誌が、ページ数から見ても非常に薄くなったんじゃないかという話を参考人はされたわけでありますが、これは一体どういうことなのか。その原因ですね。

 いろいろあるんだろうと思うんです。一つは、民営化して、将来上場しようとすれば、やはり物を言う株主が出てきますよね。今までであれば国が所管していましたから、国の所管のもとでやっておりましたから、一般的にどの程度それが経営に緊張感を与えたのかというのがあるんだろうと思うんですね。ところが、民営化が進んでまいりますと、どうしても物を言う株主が出てまいりますから、そうなってまいりますと、オーバーディスクローズというのはなかなかやっていかないということになりますね。

 ところが、先ほど申し上げた、かんぽの宿の経常収支のトレンドでいいますと、経常赤字のトレンドでいいますと、やはり経営に緊張感を持たなきゃいかぬのじゃないかというように持ってこられたんじゃないかというところもあるんだろうと思うんですね。僕は分析も何もしていませんが。

 このところ急激に経常赤字が減ってきたというのは、どのようにお考えですか。

町田参考人 実は、細部について、先ほど時間がなかったので申し上げておりませんでして、赤字が急激に減っているのは公社時代でございます。

 ベースが変わってしまいまして、民営化後は営業収益段階の赤字、黒字の収支しかとれないんですが、それだけ見ますと、民営化後の半年を含めた二〇〇七年通期は、民営化後の初年度は通年で四億一千九百万の赤字です。ところが、二年目のことしは、どうも四十六億円ぐらいの赤字になっている模様です。

 つまり、西川さんになって、民営化になってからの方が、再び悪化しているというのがかんぽの宿の収支ではないかと思っています。

 以上でございます。

谷口(隆)委員 わかりました。

 私は、根底的に、経営というのは緊張感が必要ですから、周りから常に見られているというのは、過度の緊張感はよくないですが、ある程度の緊張感というのは非常に重要なんだろうと思うところがあります。

 それと、井手参考人が、国鉄の民営化は今回の郵政の民営化とは若干質的に違うんじゃないかというようなことをおっしゃったと思うんですね。国鉄の場合は二十八兆円の債務があって、二十兆円を六十年間一般会計で払い続けているというようなお話があったわけでございますが、そうしますと、先ほどおっしゃったので私は聞かなかったんですが、もう一度、そういう観点からの民営化、分社化について、わかりやすく、郵政民営化についてどういうようにお考えなのか、お伺いいたしたい。

井手参考人 JRの件ですけれども、巨大な債務残高があったという中で民営化を実施しなければいけない。したがって、そういう意味では郵政の民営化というのとは質的に違うものである。

 というのはどういうことかというと、先ほど自民党の遠藤議員からもありましたけれども、郵政の場合には独立採算制でやっていて、もしそこで巨額な赤字が出ていて、その中で民営化し、効率化をし、そしてサービスを向上させるという目的で民営化をしなければいけないというのとは状況が違うという点で、国鉄の場合の例を引き合いに出したのであります。

 したがって、そのときに、JRの場合には旅客会社と貨物会社に分ける、そして、貨物会社については非常に赤字体質であったものをどうするかということが議論された。

 それと同じように、郵政の場合には、四事業に分けて、そして郵便局会社というインフラを持たせる、そのインフラの会社というのは、先ほど発言のときに申しましたけれども、手数料でやるというビジネスモデルではなかなか将来的には非常に厳しいというのが、これはイギリスあるいはアメリカの経験が教えるところであるということで、その民営化の説明をしたわけであります。

谷口(隆)委員 次に、田尻参考人がおっしゃったことなんですが、かんぽの宿を売却して、その売却資金が一体どうなるのか、赤字の会社のために使われておるじゃないか、こういうことは本来好ましくなくて、特定の目的、例えば地方に流すとか、資金管理の問題も考えていかなきゃいかぬのじゃないかとおっしゃったわけであります。

 一つは、今、膨大な国の赤字がございますので、例えば国家公務員の宿舎をどうしようかというような議論がありました。稼働しておらないような国の資産は処分した方がいいんじゃないかと。国民の皆様に負担をお願いするということより、むしろ削れるところは徹底して削っていくというようなことがあったわけであります。そういう観点で、今回のかんぽの宿といいますか、もし不採算のところがあればこれを処分して、国の財政の不足のところにこれを充当していくということも一つの方法なんだろうと思うんです、そこでとどまるということじゃなくて。

 まあ、いろいろなことをおっしゃったことは私自身もよく理解するところもありまして、株主資本主義というのは、私も賛成しておりません。会社法は変わりましたけれども、従来のいわゆる商法の時代の法体系の方が私はすばらしいと思っておるんですが、最近、株主資本主義とおっしゃったんですけれども、ちょっと行き過ぎた傾向があることはありますが、この財源の問題でそこまで考えなきゃいかぬのかということをちょっと御答弁お願いしたいのです。

赤松委員長 田尻参考人、恐縮ですが、簡潔にお願いします。

田尻参考人 売却そのものに私は反対しておるわけではございません。しかしながら、その売却の動機が、いわゆる資本回転率を上げる、市場の評価を得んがためにかんぽの宿を無造作に売却するという、その発想そのものが今問われているんだということを申し上げたわけでございます。

 それから、御承知のように、日本郵政グループは二兆八千億円の不動産を所有しておる巨大な企業グループでございます。これはすべて国民の資産でございます。したがいまして、これを彼らに勝手気ままに処分させることがあってはならないわけでございまして、私どもは、審議会の場におきましても、繰り返し、監督当局に対して国有資産の売却プロセスについては忠実に、着実にフォローをしていただきたいと。

 それから、現在、日本郵政グループ全体をだれがトータルで見ておるかと申しますと、監督官庁は実はどこなのかがわかりません。七つないし八つの官庁がそれぞれの権限で関与なさっているだけでございまして、そういう意味でも、トータルで日本郵政グループのあり方を考える当局というものもぜひお考えをいただければと願っております。

谷口(隆)委員 どうもありがとうございました。

赤松委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 お三方から郵政事業に関連しての貴重な御意見を賜り、ありがとうございます。早速質問させていただきます。

 最初に、井手参考人と田尻参考人にお伺いをいたします。

 私は、郵政民営化法案の審議の際にも、この郵政民営化によってサービスが後退をするということを申し上げました。小泉首相や竹中大臣は、民営化でサービスがよくなるということを繰り返しておりましたけれども、先ほど井手参考人からも簡易郵便局の一時閉鎖は依然高水準というお話もございましたし、田尻参考人からも送金・決済サービスについての手数料の値上げの話などもございました。

 私も、例えば病院や学校などに置かれておりました局外ATMの数も、この間で大幅に減少しておりまして、二〇〇五年三月に二千八百六十九カ所だったものが、直近の〇八年九月では二千百五十一カ所という形で、四分の三に減少しているわけであります。

 そこで、井手参考人、田尻参考人に伺いますが、この郵政民営化、四分社・民営化が国民の利便性を損なったものになっているのではないか、この点についてのお考えをお聞かせください。

井手参考人 四分社化というのは、そもそも経済学では範囲の経済性、四つの事業あるいは三つの事業を一体的にやることによって利益が得られるというのがありますけれども、国民の側からすると、四分社化というのは非常にわかりづらいですね。郵便局会社、あるいは郵便事業会社というのが分かれているということが、国民に周知徹底されていないということが一つはあろうかと思います。

 その中で、先ほども申しましたけれども、郵便局会社を維持していくためには手数料というもので、全体的に、郵便事業会社、それからかんぽ、ゆうちょ、売り上げが減っているわけですから、手数料も当然減ってまいります。そのことを全然、右肩上がりの経営の中で、こういった四分社化の中で、手数料というのは上がっていくというふうに想定されたかどうかわかりませんけれども、現実には、手数料というのが年々減っていくことを想定して考えないといけない。そういう意味では、四分社化というのは一つ問題があっただろうというふうに思っています。

 そして、さらにもう一つは、利用者の立場から利便性が損なわれている。これは、例えば電気の自由化でもそうですけれども、自由化すれば料金は下がるというふうに思っている国民、利用者が多いわけですけれども、現実にアメリカ等を見てみますと、自由化されたことによって料金は上がるということ、これを消費者あるいは利用者が認識しておかなければいけない。その上で、自由化なり民営化というのを考えないといけないということが重要な視点だろうというふうに思っております。

 以上でございます。

田尻参考人 四分社化の中で、当時議論を思い起こしてみますと、郵便事業会社と郵便局会社は上場しないので、政府のコントロールのもとにやっていくから安心しなさい、金融二社は完全民営化し、上場いたします、こういうふうに分けて説明されて、一見もっともらしく聞こえたわけでございますが、私は大変不思議な説明の仕方だなと思いました。

 具体的に申し上げますと、現在、日本郵政グループは、上場準備のために、東京証券取引所とさまざまの体制整備、帳票類等の整備も含めまして協議を進めておられるわけでございますが、私が知り得たところによりますと、東証側が上場審査に当たって四つの実質基準というものを示しておられます。それは、事業の継続性・収益性、健全性、コーポレートガバナンス、そして情報開示という四つでございます。

 このあたりは問題ないように思われるわけでありますが、次に、この企業経営の健全性という第二項目について実質基準というのを示されております。これをちょっとお読みいたしますと、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険会社にとっての郵便局会社との取引に関しては、窓口業務の委託先として郵便局会社との取引を行うことに合理性、必然性を有していること、取引条件については市場の実勢価格など一般の取引条件と比較し適正であることというふうに書いてあるわけでございます。

 つまり、金融二社と日本郵政という持ち株会社が上場いたします過程では、この郵便事業会社と郵便局会社は上場審査の対象に入っておるわけでございます。

 先ほど問題になりました手数料収入についても、いまだにどのような基準で計算され、いつどのような形で流れているのかということは全く公開されていないわけでございます。東京証券取引所の上場審査で合理性、必然性を挙げられ、さらに、市場の実勢価格等一般の取引条件と比較して適正であることというのを満たすためには、その中身も当然公表されなければならないと存じます。

 そういう意味で、私どもは、郵便事業会社と郵便局会社を分離して、これだけは一〇〇%日本郵政グループの子会社として維持していくんだ、だから市場の圧力はかからないんだという言い方は、全く正しくないと考えております。

 仮に、親子同時上場が成功いたしました後にも、常に非金融二子会社のあり方、経営の合理化については、投資家の論理、市場の圧力がかかり続けるというふうに想定されるわけでございます。

塩川委員 ありがとうございます。

 続けて田尻参考人にお尋ねいたします。

 二〇〇五年六月の郵政民営化の特別委員会で、田尻参考人は当時参考人として御出席いただきまして、私も質問をさせていただきました。その際にも、周回おくれの市場原理主義を強行するものとこの法案を指摘し、政府の責任を放棄し、市場メカニズムに丸投げすれば何とかなるという法案は絶対に受け入れられないと述べておられ、大変印象に残っております。

 そこでお尋ねしたいのが、その際にもおっしゃっておられましたけれども、郵政民営化によって金融排除が生まれるのではないか、小口、個人の金融サービスが保証されなくなるのではないかというお話がございました。これについて、郵政民営化の現状を踏まえて今どのようにお考えなのか。私どもは、金融のユニバーサルサービスの義務づけが必要だと考えておりますけれども、その点について参考人の御意見をお願いいたします。

田尻参考人 最初に、私の方で、自由化政策として実体経済と金融経済は別々に考えていかなければならないということを申し上げました。その最大の理由は、金融の世界というのはお金のない人はお呼びでございません。そして、お金の大小によって与えられる情報、与えられる機会が全く違うわけでございます。

 今御指摘の金融排除でございますが、これは一九九〇年代前半にヨーロッパで大変社会問題化いたしました。さらにアメリカでも問題化いたしまして、現在、アメリカでは低所得層の約四割が既に銀行口座を持てなくなっております。イギリスでは五世帯に一世帯が銀行口座を失っております。それは、口座を維持する手数料が高くなったり、さまざまの差別化が行われているわけでございます。

 そういう点からいきますと、今、欧米ともに、小口、個人金融の基礎的なサービスをどう提供していくかということが国家の責務だという取り組みがさまざまの形で行われているさなかでございます。

 日本では、現在、排除するのではなくて、お金持ちあるいは中産階級以上を優遇するという形で差別化が進行中でございますけれども、国際競争の中でリテールバンキングというのは八割のお客様が常に赤字なんです。これは不思議なニッパチのルールというのがございまして、二割しかもうからない、その収益を八割の人に回すことによって成り立っているというのが、国際的なリテールバンキングの経験則でございます。自由化いたしますと、競争が激しくなりますと、必ずこの八割をどう切るかというメカニズムが働いてくるというのが金融の特徴でございます。

 したがいまして、我が国におきましても、ゆうちょ銀行を含めた金融産業全体が金融排除の方向に進みつつあるということは間違いないわけでございまして、そういう意味で、この郵政民営化論議の中で金融を、簡単にとは申しませんけれどもユニバーサルサービスの対象外にされたということについては、私はこれは世界の潮流に逆行するものだというふうに受けとめておった次第でございます。

塩川委員 ありがとうございます。

 町田参考人にお尋ねいたします。

 参考人が書かれた著作で「日本郵政」というのを拝見いたしました。きょうのかんぽの宿に関連してのお話でも、その著作を踏まえての指摘がございました。興味深く拝見した次第ですけれども、その中で、これまで政治家や官僚が構成する郵政一家が食い物にしてきた利権が、今度は民間企業に食い荒らされる可能性が高いと指摘をされておられます。

 そこでお尋ねしますけれども、この郵政民営化によって民間企業による新たな利権が生まれているのではないのか、こういうことについて現状どのようにお考えなのか、お聞かせください。

町田参考人 お答えします。

 冒頭の中で申し上げましたけれども、特定の銀行のグループの系列会社にカード発行に伴う新しい手数料が支払われる仕組みがつくられたり、従来郵政ファミリーの会社が納めていた備品とか文房具を別の会社が納めるようになったけれども、それが、ある銀行がメーンバンクを務める企業であったりということで、単に利権が置きかわっただけという構図は既に存在しているんだと思っています。

塩川委員 三井住友グループが新利権派の本丸じゃないかという指摘などがあるわけでございます。

 あわせて、かんぽの宿ではなくて、公社時代の一括売却、バルク売却の不動産売却について問題となっております。私も、当委員会で、三回のバルク売却がいずれもリクルートコスモス、コスモスイニシアグループというのは、これはできレースではないかというお話をしたわけですけれども、こういった不動産売却をめぐる利権構造みたいなものがあるのではないかという指摘については、参考人はどのようにお考えでしょうか。

町田参考人 御指摘いただきました私の本の中に書いたことでございますけれども、天上がりという表現で、不動産に限らず、いろいろな分野からいろいろな方が日本郵政の公社の方に民間企業から出向されていて、その御専門の分野についてアドバイスするという形で、実際には御出身の会社に都合のいいことが行われているケースというのは、実は公社時代から散見されていると思っています。これは不動産についても、その他の金融サービスについてもそのようなことがあったと思っています。

塩川委員 横山専務執行役の話などの紹介もございましたけれども、三井住友銀行と特別な関係になっているのではないかという指摘もありました。

 この「日本郵政」の著作の中でも、郵政公社時代に民間企業から公社へ出向する天上がりが急増していると指摘をされて、〇五年七月段階で十四人に上るというお話がございました。関係者の言葉を紹介して、天上がりの者たちはいずれ戻る予定の出身元企業にとって有利な行動をとりがちだ、そういう声もあるんだということを紹介されていました。

 現状、特に民営化スタートの時点でどのぐらいこの天上がりがあったのか、それがどのような形で影響を与えているや否や、その件について、これ以降の状況について御認識のところがありましたらお聞かせください。

町田参考人 申しわけありません、その新しい数字はとれておりません。

塩川委員 終わります。ありがとうございました。

赤松委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正です。

 参考人の皆さんにおかれましては、大変お忙しい中、わざわざ時間を割いて本委員会に御出席をいただき、本当にありがとうございました。

 それに比して、竹中さんには強く出席をお願いしたのでありますけれども、なぜか自民党本部の聖域なき構造改革を推進する会に行って大演説をぶっておるようでありますし、週刊誌あるいは新聞にはさまざまな意見、思いを述べられております。私は、やはりこの委員会に出てきてほしかった、このように思いますし、委員長におかれては、今後とも機会があれば出てくるようにぜひ要請をしていただきたいと思います。

 そこで、まず、井手参考人にお伺いいたします。

 郵便ネットワークが果たしてきた役割というのは、非常に大きなものがあったと私は思います。私は、九州は大分県のそれこそ山の中に住んでいるわけでありますが、特にそういう地域に住んでおる者にとって、郵便局というのは、本当に貴重な、そしてありがたい存在だったというふうに思います。

 民営化以降、簡易郵便局が閉鎖になる。今まで、郵便物を配達していた方々に、地域のおじいさん、おばあさんがいろいろ頼み事をすると、はい、いいよというふうな形で気軽にそういう生活弱者の期待にこたえることができていた。それがこの民営化以降できなくなったという現実がございます。

 ユニバーサルサービスという建前は民営化以降もたびあるごとに申しておりますが、実際はそうでなくなりつつあるという流れがあるんですが、そういうふうな事象に対して井手参考人はどのように受けとめておられるか、お聞きしたいと思います。

井手参考人 郵便事業のユニバーサルサービスというのは、世界共通した課題であるということは事実であります。

 イギリスも昨年の十二月、そしてアメリカではことしの一月に郵便事業についての改革の報告書が出されております。その中で、ユニバーサルサービスをどうするか、定義と内容と、どうやってこれに対応していくかということが大変な議論をされております。

 日本においてもそれは当然重要な問題であり、日本の場合には、郵便のユニバーサルサービスを維持していくために、郵便局の場合には社会貢献基金というのがございますけれども、しかしながら、郵便のユニバーサルサービスを維持するために基金をつくるのか、NTTのユニバーサルサービス基金のような基金をつくるのか、あるいは税金で補助するのか。これは民営化の趣旨からすると大変難題でありまして、日本の場合には補助金という選択肢が考えられないんですけれども、諸外国では補助金という形で郵便事業のネットワークを維持するということが考えられております。

 したがって、こういうユニバーサルサービスをどうやって維持するかということについては、民営化後において大変議論しなければいけない課題が山積しているというのも事実であります。それは諸外国において集中的に議論されているということであります。

 日本の場合には民営化ということに焦点が当てられていますけれども、こういったユニバーサルサービスの維持についてはこれからの議論だということで、今、議員さんの御指摘の点というのは十分認識はしております。

重野委員 ありがとうございました。

 次に、田尻参考人にお伺いします。

 今回、かんぽの宿問題が非常にクローズアップされています。私たちも、おかしいということで、郵政に資料請求をしてきました。また、委員会の質疑の中でそれぞれ質問等々を行ってきたわけですが、その中で特徴的なことは、資料が見つからないというふうな答弁です。今探しているんですと。その理由は、分割されたことによって資料が散逸をした、こういうことなんですね。私は、皮肉にも、この郵政の民営化、分割というものがそういう弊害をもたらしているのかな、こういうふうな感じを持ったわけです。

 また、資料についても出せないと。このごろ、しつこく委員会の側から資料要求をする中で、徐々にそういう資料が出てくるようになった。だから、基本的な姿勢に問題がある、こういうふうに私は思うんです。

 そういう説明責任という点において、私は、今の日本郵政は我々の期待にこたえていない、こういう認識を持つんですが、田尻参考人におかれましては、そういう点についてどういうふうに認識されておるか、お伺いいたします。

田尻参考人 審議会の委員といたしまして、あるいは一研究者の立場から申しましても、公社時代に比べましても、現在の情報開示量というのは極端に少なくなったというふうに思います。

 私ども問題にしておりますのは、特に本質的な部分にかかわる、先ほど申しました郵便局会社に対する手数料の算定方式等、客観的なルールすら示さないということでございます。あるいは、これはかねてから私どもも求めておるわけでございますけれども、公社時代には、三百兆円の資金運用のうち、リスク資産を運用するために金銭信託等で投資顧問会社あるいは信託銀行に運用を委託しておるわけでございますけれども、その委託先、あるいは委託金額、委託手数料等はすべて公開されておりました。私どものヒアリングに対しても、丁寧に答えていただきました。

 しかし、現在は、どこでどういう形でこの運用が行われ、手数料が払われているのか、あるいはそのパフォーマンスが悪かったときに、この手数料の変動があるのかないのか、そうした客観的な契約内容ですら説明されないという状況でございます。

重野委員 もう一度、田尻参考人に伺います。

 私どもは、民主党、国民新党とともに民営化凍結法案を提出いたしました。その中で、株式の売却を凍結すべし、こういうふうに主張しているわけでありますが、この株式の売却についてどうなっているのかということを聞きたいと思うんです。

 先ほどのお話の中でも、民営化された企業の株式売却との相違点、例えば日本電信電話株式会社、日本たばこ産業、旅客鉄道株式会社、日本貨物鉄道株式会社、そういう一連の民営化された企業の株式売却と今度の郵政の株式売却の手法等々について相違点があるのかどうか、お聞かせいただきたい。

田尻参考人 まず、株式上場の凍結でございますが、これによってどのような影響があるかということもやはり考えないといけないと思います。

 まず、政府は財政資金の調達手段として国有企業の売却予定を既に織り込んでおられるわけでありまして、御承知のように、八・四兆円の資金調達をするうちの五兆円は、日本郵政グループの株式売却資金として当て込んでおられるわけでございます。日本郵政グループ御自身も、一一年度に既に七千億円の株式売却資金を収入として見込んでおられるわけでございます。そういたしますと、単に凍結いたしますだけでは、政府サイドも日本郵政グループも資金的に非常に苦しいところに追い込まれかねないという問題が一方にございます。

 しかしながら、その上場に当たっては、それなりのやはり国民的な納得を得る措置が講じられるべきだと思います。

 私は、サッチャー政権の最初から現地でジャーナリストとして取材をいたしましたけれども、英国の国有企業の民営化に当たっては、どのようにしてだれに株券を渡すのか、そして、広く一般市民がそれを手にするために例えば給料天引きでその資金を積み立てさせるとか、いろいろな方策が講じられたわけでございます。市場に高く売りつければよろしいということでは決してなかった。

 そういう、民営化、株式売却の哲学というものをやはり財政当局は持っていただく必要があろうかと存じます。

重野委員 ありがとうございました。

 次に、町田参考人に伺います。

 今回のかんぽの宿売却問題で、資産の五年以内の売却というものが附則の中に入っているわけです。竹中元大臣は、売却について企業の経営判断ということを盛んに強調されています。そもそもの出発点であらかじめ経営を縛る法律を書き込んでいるというのは、私は大きな問題であるというふうに思います。

 そこで、他の民営化されたJRやNTT、たばこなどでの資産売却はどのように行われてきたのか、そのことと、郵政との違いがあればお聞かせいただきたいと思います。

町田参考人 お答え申し上げます。

 違いということですが、冒頭で申し上げましたように、規制する対象金額ですとか資産売却すること自体に対しては許認可を厳しく過去の民営化は課しております。ですが、一方で何々については五年以内に売れというような、委員御指摘のような、最初の段階で経営に指図するようなことはなかったと思います。

 補足しますと、二〇〇八年度上期のかんぽの営業赤字というのは、公表されているバランスシートで営業損益段階で計算しますと、二十六億三千六百万ぐらいの赤字なんですね。営業収益自体が今度発表されていないので、経常収益でしか比較できないんですが、かんぽ生命の中間期の経常利益は一千六十三億円ございまして、もし二十億円ぐらいのものを、かんぽの宿を広告だ、あるいは加入者に対するサービスだと割り切れば、全然しょい切れないほど大きなコストとは考えられないんですね。

 つまり、強引に日本郵政の持ち株会社に移すのではなくて、かんぽ生命が、これをむしろコストとしてでも加入者を集めていく材料としたい、広告のような形で使っていきたいと判断すれば、十分やれるだけの体力はあると私は見ます。そういう自由度を、五年以内に売却しろといって日本郵政という持ち株会社に移すことで、むしろ経営の自由度を束縛しているのが今回の制度ではないかと理解しております。

重野委員 終わりに、もう一点、町田参考人に伺います。

 今回の問題を通じて、財界の一部の人たちとの癒着があるのではないかという疑惑の目を私は持っている。先ほど来、るる話がありますように、社長の西川さんは三井住友出身ですね。資産売却の責任者の方も同じく三井住友の出身者。郵政と特定民間企業との関係、これは正常なのかなというふうな疑問を持つのが当たり前だと思うんですね。そのあたりについて町田参考人の見解をお聞かせください。

町田参考人 お答え申し上げます。

 全く御指摘のとおりだろうと思っております。特に三井住友のケースで申し上げますと、ゆうちょ銀行に、かつて三井住友カードの副社長をされた人物が常務として常駐されております。この方が恐らく意思決定にかかわったことは間違いないと思います。

 部長クラスでも、三井住友カードからとJCBカードからそれぞれ出向者が入っておりました。この二社が昨年のカード会社の新たな提携先選定のときに選ばれた会社ですから、これは明らかに出向してきた人が自分の出身母体に対して便宜を図っているんじゃないか。そうでないのならば、きちんと取締役会で説明しているでしょうから、そういうものを出してくださいということを追及したいなという感じがしております。

重野委員 ありがとうございました。

 以上で終わります。

赤松委員長 次に、亀井久興君。

亀井(久)委員 国民新党の亀井久興でございます。

 お三方の参考人の方々、大変貴重な御意見をお述べいただきましたこと、心から感謝を申し上げます。

 最初に井手参考人にお聞きいたします。

 先ほどドイツ・ポストのことに触れられましたけれども、民営化を推進した竹中平蔵さん、そして小泉総理も、ドイツ・ポストがうまくいったと、民営化が成功した例としてよく挙げられておりました。

 そして、あの当時を思い返してみますと、ツムヴィンケルという当時のドイツ・ポストの総裁を日本に呼んで、その成功が、こういうやり方をやっていかにうまくいったかというようなことも言われたわけですけれども、そのときに注意深くあの方の発言を聞いておりましたらば、郵便局のネットワークを今までどおりきちっと維持していこうとすれば、財政支援がなければこれはできませんということも言われておったわけですね。

 民営化は成功したと言われるけれども、実際には多くの郵便局が閉鎖、廃止に追い込まれた。ですから、郵便局を利用しているドイツの国民、地域の住民からすれば、決して成功とは言えないだろう。利便性が落ちたことは間違いないわけでございますから。ですから、ドイツ・ポストが成功したということは、本当にそうなのかなと、私はいつでもそう思っております。

 また、先ほど来、民営化についての新たな利権という話が出てきましたけれども、ツムヴィンケルさんも、民営化の中で私腹を肥やしたということで逮捕されたわけですね。そういうことが現実に起きている。

 ですから、そのことと日本の郵政の民営化とを比較して、うまくいったお手本として取り上げるということはいかがなものなのかな、そういう思いを持っておりますが、その辺の御所見をちょっと伺いたいと思います。

井手参考人 今の御指摘は、確かに的を得た点ではあると思います。

 というのは、ドイツ・ポストの場合は、成功例というふうに言っておりますけれども、これは先ほど申しましたように、資産を売却して新規事業あるいは国際的な展開に出ていくという、これが一つの戦略としてあったわけです。したがって、国内でマーケットシェアというのが奪われても、その分を国際的な事業で獲得するという戦略をとったということでは、これは成功している。

 翻って、日本の場合は、国際的な事業あるいは物流に出ていくという原資もございませんし、郵便の場合には制度的には完全自由化という、小泉元総理のとき完全自由化がされております。

 ドイツの場合には、郵便事業については二〇〇九年に初めて完全自由化されて、独占というのをずっと維持しながら、その独占による利益というものも新規事業あるいは国際的な事業に投資できるという仕組みがされた。そういう意味では、制度改革が成功しているというふうにとらえていいと思います。

 もう一つは、過疎地、ユニバーサルサービスはどうやって維持するかという点についても、基金というものを制度的には考えておりますけれども、実際にはまだ運用されておりません。したがって、ドイツ・ポストがそれをすべて事業の効率化の中でカバーするということが実際にはやられているわけで、その点で、日本の場合には制度的に完全な自由化というふうにされておりますけれども、一方で宅配事業者との競争ということで制度的には少しあいまいな部分、いわゆる信書というところではあいまいな部分がありつつ完全自由化をしたというところで、ドイツの例が成功しているというのは、制度的に非常にある意味ではいろいろ工夫がされた形でやられていた、それに学ぶべきだということであります。

 それともう一つは、ドイツの改革というのはゆっくりやられたということが日本と大きな違いだろうというふうに思っています。

 以上です。

亀井(久)委員 ありがとうございました。

 次に、町田参考人にお伺いいたします。

 先ほど来、かんぽの宿を初めとする資産の売却に極めて不明朗、不適切なものがあるという御指摘、そのとおりだと思います。

 そもそも、先ほどお話がありました、会社法の附則に、専門家が読んでもよくわからないような文章がこそっと入った。これは、あの当時の準備室の責任のある人に聞きましたらば、当時の竹中平蔵担当大臣の指示でそれを入れたということは明言をしておりますから、竹中さんの思いだったということははっきりしております。

 そういう中で、一方においてコアな仕事ではないからそういうお荷物になるものは売却するんだ、そういう言い方もされておりましたけれども、かんぽの宿は、これはまさに簡保に入っている加入者の共有の資産でありますし、もともとが福利厚生施設ということですから、民間の利益を求めるようなホテルや旅館などとは競合しないようなやり方でやってきたわけで、だから、赤字、赤字と言うけれども、利益を生み出すような経営をやってこなかったということだと思うんですね。

 それを、本来であれば、かんぽ会社の資産でありますから、そこに帰属させるべきものを、わざわざ親会社の日本郵政の方に移してしまって、もうからないから売却と。これは明らかに最初から売却することをねらっていたということは、先生もおっしゃったとおりだと思います。

 そのことと、一方ではコアな仕事じゃないからそういうものは売るんだと言いながら、これから日本郵政はどういう方向に向かっていくかということを私なりに推測してみますと、今はまだ全株政府保有でありますけれども、いずれ株式を上場して、三分の二近くは売却をするということになっている。

 日本郵政が今の状況で株式を上場したとき、もし市場価値を持つとすれば、それは明らかに、その傘下にある貯金銀行と保険会社、その金融二社の市場価値というもので親会社の市場価値が維持されていると思いますね。ところが、そこが完全に分離して売却をされるということになれば、本体は郵便事業会社と郵便局会社という二つの、言ってみれば構造的に赤字体質を持っているようなところを抱える会社が上場価値なんか持つわけないですね。

 だから、今、西川さんたちが考えていることは、まさに全国の主要都市の中央郵便局を中心にする、そういう物すごい資産を生かした巨大な不動産会社を目指しているということではないかと思うんですね。だから、竹中さん自身が言っておられることが全然矛盾している。片っ方では不動産を売却しろと言っておきながら、片っ方ではそういうものを目指しておられる。

 そういうことについてどのように思っておられるか、お聞かせいただきたいと思います。

町田参考人 全く御指摘のとおりでございまして、そもそもの制度設計、この四分社化を含めて業務の割り方に問題があったんだと思うんですね。

 中間決算で、先ほどちょっと指摘しましたように、全体で見て二千二百億の中間純利益でございますけれども、千五百億ぐらいを稼いでいるのはゆうちょでございますし、次いでかんぽ、持ち株が利益を出していますけれども、それ以外は、郵便を見ますと、既にもう二百億近い赤字を出していて、郵便局も、実質、田尻先生が公開されていない数字だとおっしゃっていましたけれども、八月、九月に、通常月八十億ぐらいだった手数料を、先ほど申し上げましたように百八十億ずつぐらい出して二百億ぐらいの手数料をつけることで表向き黒字に見せかけているだけでございますから、おっしゃるように、そこからゆうちょとかんぽを取り出してしまうと、絶対上場なんかできないであろう。そもそも、この四社の割り方自体が間違っているのではないかというふうに思います。

 ちょっと飛びますけれども、実はJRにしてもNTTにしても、民営化するに当たって、NTTはおくれてですけれども、従来のNTTグループ、JRグループの中でも競争を起こして、それが消費者に役立つとか経営の刺激になるとかということが制度として入っていると思うんですね。JRでいえば、東であり、東海であり、西ですね。NTTでいえば、東西の地域会社、あるいはNTTドコモが携帯電話と固定電話で競争していると思うんですね。

 そういう枠組みが実は今回の郵政民営化では全然なくて、単に業務ごとに貯金と簡保と郵便を割って、さらに強引に、当時の銀行法改正みたいな、銀行窓口会社みたいなものをつくる流れの中で郵便局会社というのをつくったけれども、実際にはその手数料がなくなるとどうしようもないので、不動産に活路を求めるしかないという状況になっていると思うんですね。

 だから、そうじゃなくて、むしろ本当は、暴論に聞こえるかもしれませんけれども、三事業一体のままで複数の会社に割って、それでユニバーサルサービスも含めてどう残すかを競争するとか、競争の入れ方のスキームが発想として間違ったのではないかなというふうに私は思っております。

 以上でございます。

亀井(久)委員 時間がなくなってしまいましたが、最後に田尻先生にお伺いしたいと思います。

 郵政民営化の目的は何ですかということをかつて小泉総理に伺ったときに、貯金、保険という二つの金融会社を、株式を全株市場で売却することが目的だといみじくも言われたんですね。ああ、なるほど、それが目的なんだなというように思った。

 ですから、民営化、民営化というけれども、実際に、先ほど先生も御指摘になりましたけれども、最終的に事業会社と郵便局会社は、これは株式売却しないわけですから、特殊会社ですよね。日本郵政もまだ今は特殊会社という状況にある。

 そういう中で、金融というものを分離していこうということなんですが、あのとき竹中さんは、当時の三百五十兆という大きなお金が公的セクターで利用されているだけで、民間の経済に、市場に出ていない、それを市場に出すことが目的だということを言われたんですけれども、ところが、今、金融市場がそれだけ大きなお金を果たして求めているんですかということをあの当時言ったんです。

 今、特に金融市場はずっと金余りですよね、量的緩和というようなこともやって。ところが、実際、日本経済の一番の問題は、資金需要が出てこないことが問題で、経済が力がなくなっているわけですから、幾ら金融だけをしっかりさせたって何の意味もないということだと思うんです。

 そういう中で、またさらに大きなお金を金融市場に出していくことになれば、国債を安定的に消化しなくちゃいけないというのは国策として必要だと思いますけれども、しかし、民間会社の経営判断で国債よりももっと有利な運用があるということになれば、当然そちらの方に向かう。これが海外にどんどん出ていくというようなことだって考えられないことではない。

 特に、今、アメリカは大変な経済状況ですから、国債を物すごい勢いで出すことは目に見えておりますけれども、その国債の引受先はということになると、また中国と日本ということになる。そういう要請が来る。そういう中で、日本の場合、国債というものをこれからどのように安定的に消化していくか。

 そういうことも考えておかないと、国債が売れなくなってきて、長期金利に連動して長期金利がばんと上がるというようなことになったら、それこそ住宅ローンや何かにもすぐ影響が出てくるわけですから、そういう中でただ単に金融市場にそれだけ巨額のお金を出していくということにどういう意味があるのか、その辺の御見解をちょっと伺いたいと思います。

田尻参考人 今、亀井先生御指摘のとおりでございまして、だからこそ国策会社であることに意味がある。私は、金融も含めて国策会社であるべきだと考えております。

 今御指摘の国債の消化ということは大変な国策でございまして、御承知のように、現在、国債発行残高の三分の一は郵貯、簡保が抱いておるわけでございます。したがいまして、マーケット状況から考えましても、あるいはマーケットのさまざまな動きに対してカウンターパワーとしての動き方をするという点でも、これは重要な政策目的に使われる可能性を持った資金だという意味で、国策会社であるべきだと思います。

 その一方で、マイクロ金融だとか、あるいは環境金融だとか、あるいは市民バンク、NPOへの極めて小口の融資、これらはすべて市場メカニズムで絶対にお金が流れないものでございます。それに向かってこのお金をどう流していくかということが、やはり国策会社の目的であろうかと思います。

 先ほどおっしゃった、国債の利回りと、こうしたマイクロ金融等国民生活に直結するようなお金の流し方というのは、金利は国債の利回りよりも低くても、今、ミニ公募債を初めとして、市民は募集額の三倍、四倍という募集に応じる現象が広がってきておるわけでございます。つまり、お金の上に心を乗っける、あるいはその目的が生活圏の中で使われるということが明確である場合には、国債よりも利回りが悪く、かつ、流通性がなくてもお金を差し出すという成熟した市民意識が育ちつつあるわけでございますから、それの呼び水としての郵貯、簡保資金の使い方を考えるのが、私は日本郵政グループの今の役割ではないかと考えております。

亀井(久)委員 ありがとうございます。

 終わります。

赤松委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 お三方におきましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十八分散会


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