衆議院

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第16号 平成21年4月21日(火曜日)

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平成二十一年四月二十一日(火曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 赤松 正雄君

   理事 秋葉 賢也君 理事 実川 幸夫君

   理事 玉沢徳一郎君 理事 林田  彪君

   理事 森山  裕君 理事 黄川田 徹君

   理事 原口 一博君 理事 谷口 隆義君

      今井  宏君    小川 友一君

      坂本 哲志君    鈴木 淳司君

      関  芳弘君    田中 良生君

      谷  公一君    土屋 正忠君

      土井  亨君    葉梨 康弘君

      萩原 誠司君    橋本  岳君

      平口  洋君    福井  照君

      古屋 圭司君    松本 文明君

      渡部  篤君    小川 淳也君

      逢坂 誠二君    小平 忠正君

      田嶋  要君    寺田  学君

      福田 昭夫君    森本 哲生君

      伊藤  渉君    塩川 鉄也君

      重野 安正君    亀井 久興君

    …………………………………

   総務大臣政務官      坂本 哲志君

   総務大臣政務官      鈴木 淳司君

   参考人     

   (埼玉県知事)      上田 清司君

   参考人     

   (関西学院大学大学院人間福祉研究科教授)     神野 直彦君

   参考人     

   (全国知事会直轄事業負担金問題プロジェクトチーム座長)

   (山口県知事)      二井 関成君

   参考人     

   (大阪府知事)      橋下  徹君

   総務委員会専門員     伊藤 孝一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 地方自治及び地方税財政に関する件(直轄事業負担金問題)


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     ――――◇―――――

赤松委員長 これより会議を開きます。

 地方自治及び地方税財政に関する件、特に直轄事業負担金問題について調査を進めます。

 本日は、参考人として、埼玉県知事上田清司君、関西学院大学大学院人間福祉研究科教授神野直彦君、全国知事会直轄事業負担金問題プロジェクトチーム座長・山口県知事二井関成君及び大阪府知事橋下徹君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ当委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、各参考人の方々からそれぞれ十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、上田参考人、お願いいたします。

上田参考人 埼玉県知事の上田清司でございます。

 どちらかといえば前の方に座っていた方が楽なような感じがいたしますが、きょうは、お招きをいただき、感激をしております。地方の我々の方にも発言の機会をいただきましたこと、委員長初め委員の皆様方に心から感謝を申し上げます。

 それでは、まず直轄事業に対します私、また県としての基本的な立場を述べた後に、埼玉県で行われております直轄事業を例に、負担事業の問題点について御説明をしたいと思っております。

 まず、直轄事業でありますが、地方分権の立場からすれば、国と地方の関係において非常に複雑になっておるということを申し上げたいと思っております。例えば、県で行う事業に補助金が出される、そして国の直轄事業に対して県が負担をしなければならない法律事項ができている。両方でそれぞれ負担を分かち合うような形になっているので、本格的な全国ネットワークみたいな高速道路であれば国がきちっとすべて事業として面倒を見、県や市町村にかかわるような地方の事業に関しては一切その財源と権限を地方に任せる、そういう簡単な、簡素な仕組みにするのが大事じゃないかというふうに思っております。

 資料の一ページをごらんいただければ大変ありがたいと思っています。直轄事業の負担金制度についても簡単ではありません。国が三分の二を負担し、都道府県が三分の一というふうになっておりますが、財政力の弱い県なんかではこれが六分の一になるというような形で、同じ直轄事業負担金制度においても、原則はあるけれども、その原則も場合によっては変えられるというような仕組みになっております。また、維持修繕についても、新規建設事業以上に都道府県の負担が大きいという形になっております。

 二ページを見ていただきたいんですが、これは埼玉県の実情でございます。このように、例えば道路事業に関しては、総額で四百三十五億円の事業でありますが、県は三分の一強の百五十一億円を負担しております。

 代表的な事業としては、三ページをごらんいただければありがたいんですけれども、首都の外郭を囲む形で圏央道の事業というのが、平成二十四年度までに完成させることを前提に進んでおります。これなどはまさに地域の活性化と道路の混雑を防ぐ極めて重要な国家プロジェクトだというふうに受けとめ、我々は甘んじて直轄事業負担金についても応分の負担をすることについて理解をしております。

 資料二ページにまた戻っていただきたいんですが、同じように、河川事業においても、総額で三百三十八億の事業で、県は百二十一億の負担をしております。

 四ページを見ていただければありがたいんですが、利根川、江戸川という大変重要な川がございます。首都圏氾濫区域堤防強化対策事業というのがありまして、四ページの右下、加須市、埼玉県のより北側の方でありますけれども、実は、平成十三年の台風のときに、反対側、つまり利根川の反対側の水田から水が噴き出してくるというような形になっております。時と場合によっては、これから亀裂が生じて堤防が決壊するというような可能性もありますので、より堤防を強化する事業についても、これはもし決壊すればほとんど東京都まで水が流れるという形になりまして、昭和二十二年のカスリーン台風と同じような状況が起こり得るということで、我々は、重要な河川堤防事業だという形で応分の負担をしてきたつもりでございます。

 ところが、香川県で見られましたように、まさか、事業に係るプレハブか何かの工事事務所ならいざ知らず、恒久的な事務所にもこの直轄事業負担金が使われていたということが判明いたしました。大体、ゴキブリは一匹出てくると何匹もいるというのが世の中の通例でありますので、埼玉県でも、その内訳について、国土交通省関東地方整備局に事例を開示していただくように早速お願いをいたしました。

 資料五ページを見ていただきたいんですが、今までは、直轄事業負担金の納付についてはこの一枚の表紙と、そして六ページ、その内訳については極めて簡単な、国の負担と地方の負担の総額を書かれるという形で通知をされて、我々は、今申し上げましたように、圏央道、それから江戸川、利根川の堤防については、本県の安心、安全や地域の活性化、あるいは国のプロジェクトとしての意味づけを考えながら、こうした内訳について全面的に信頼して納付をすることにしておりました。

 しかし、繰り返しますけれども、ああした香川県のような事情がございましたので、これはほかにも例があるのかなという形で、地方の負担金の積算根拠、内訳について関東地方整備局に申し入れをしました。九ページと十ページを見ていただきたいんですが、この内訳の中に事務所の費用等も含まれていることもわかりました。

 そうしたことも含めて、これは直轄事業負担金制度の見直しそのもの以前に、本来こうした建設機械整備費や庁舎営繕費などが含まれていることそのものが極めて問題ではないかという形で、資料十一ページを見ていただければありがたいんですが、早速、四月十日付で関東地方整備局を通じて金子国土交通大臣あてに、問題点を列記しまして緊急要望いたしました。

 この要望書を見れば内容がすっきりすると思いますが、申し上げれば、直轄事業負担金に係るさらなる情報の提供ということで、予算の段階においても雑駁な資料しか提供されておりませんので、より適切な時期に事業並びに負担金額の内訳について詳細な情報を都道府県に提供していただきたい。

 それから、建設機械整備費や庁舎営繕費等の問題については、国が恒常的に使うもの、我々もそうしたところを訪ねないわけではありませんが、お茶一杯で何億とかという世界は考えられない世界でありますので、確かにお茶ぐらい出ますが、ケーキなど出たことはないんですが、お茶一杯で何億というお金を負担する、こういう理不尽なことはできませんので、今後は直轄事業負担金の対象から除外していただきたい。

 そして、維持管理負担金については、そもそも管理主体である国が負担する性格のものでありますから、早急に廃止していただきたい。

 また、地方公共団体による監査も、できましたらお願いをしたい。我々は監査請求などを受けチェックされておりますが、直轄事業負担金については何のチェックもございませんので、我々にもそうしたチェックをさせていただきたい。

 こういう緊急要望を出しております。これが埼玉県としての主張でございます。

 これまで、全国知事会などを通じて直轄事業負担金の廃止を大きく挙げておりましたが、なかなか実現しておりませんでした。熱心さに欠けていたのではないかという地方側に対する御批判も甘んじて受けますが、同時に、こうした細かい内訳が出ないこと、そして内訳が一たんわかったら関係のない事業費までその費用が含まれていたことについて、大変我々は怒りを感じております。

 この部分については、早急に国と地方の関係の見直しの中で直轄事業負担金の廃止をお願いしたいところですが、最小限度こうした不要不急の、本来我々が負担しなくても済む分については、もう次年度から、あるいは今年度から、返還も含めて是正をしていただきたいということを委員会の皆様方にお願い申し上げたいと思います。

 いずれにしましても、地方分権改革の一環の中に大きく浮かび上がりましたこうした国と地方との関係の中での異常な状況について御理解を賜りますことを心からお願い申し上げまして、陳述とさせていただきます。

 本日はありがとうございました。(拍手)

赤松委員長 ありがとうございました。

 次に、神野参考人、お願いいたします。

神野参考人 関西学院大学の神野でございます。よろしくお願いいたします。

 私のお話は、委員会の皆様方にとっては釈迦に説法の愚を犯すことになってしまうかもしれませんが、財政学の立場から、直轄事業負担金制度の改革について意見を述べさせていただきたいと思います。

 お手元に「直轄事業負担金制度改革のアジェンダ」と書きましたレジュメが行っているかと思います。最後の三で書きました「改革へのシナリオ」というところは、後で意見を述べられます二井参考人、知事会の意見とそう大きく変わりませんので、主として私は一、二について意見を述べさせていただければと考えております。

 問題が起きてきたとき、改革すべき状況では、表面的な現象の背後に潜んでいる物事の本質を見きわめることが重要だと思います。物事には点のようなものがございまして、点というのは、長さも面積もなければ、ただ位置だけを示すものですね。物事には必ず位置だけを示すようなものがある、それを見きわめていくということが重要ではないかと思います。

 それで、レジュメの一のところに「地方自治の原点への回帰」と書いておりますけれども、ここは、直轄事業負担金制度というのは地方自治の原則に反していて、戦後の民主主義改革のやり残した課題だ、こういうふうに申し上げていいのではないかと思います。

 一の一のところに「行政責任明確化の原則の確立」というふうに書きましたけれども、お手元のレジュメを一枚おめくりいただきまして、二ページにシャウプ勧告の内容をそのまま引用しておきました。上から二行目を読んでいただければと思いますけれども、三段階にわたる統治機関に対する事務の配分は複雑で、かつ数個の理由から、下に掲げてある理由から地方自治及び地方的責任にとって有害である、こういうふうに述べております。

 そして、シャウプ勧告は、そうした有害である状況を解消するにはどうしたらいいのかということで、有名な三つの原則を掲げています。それは、一枚おめくりいただきまして、三ページでございます。

 シャウプ勧告が掲げている三つの原則の第一は、あとう限りまたは実行できる限り、三段階の行政機関の事務は明確に区別して、一段階の行政機関には一つの特定の事務が専ら割り当てられるべきである、この原則を掲げております。これは行政責任明確化の原則と言われているものでございまして、地方自治を行う場合、地方自治を実現していく前提条件だ、こういうふうに言われております。

 それから、二番目でございますけれども、それぞれの事務は能率的に遂行できるところに割り当てなさいという原則で、これは能率の原則と言われているところでございまして、地方自治を実現していくことを保障する条件だ、こういうふうに言われております。

 それから、三番目の原則でございますが、これは、仕事を割り当てるときにはまず市町村を優先して、市町村でできないことを道府県に、そしてさらに国にという原則でございまして、市町村優先の原則と言われております。これはもう世界的に認められた、皆様御存じの補完性の原則ですね。個人でできないことを家族が、家族ができないことをコミュニティーが、コミュニティーができないことを市町村が、市町村ができないことを道府県が、道府県ができないことを国が、国ができないことをEUがというふうに、補完していく原則をうたっていると理解していただければと思います。

 これは、地方自治を実現していくことを具体化するときの基本原則だというふうに普通言われている原則でございます。このいずれの原則にも直轄事業負担金制度は抵触いたしますけれども、一番問題になるのは、最初の行政責任明確化の原則に背反するということではないかと思います。

 国が決定をして実行していくけれども、その費用負担については、国と地方でもっていわば割り勘にする、利益に応じて負担をするというやり方でございますけれども、このやり方で一番大きな問題点は、国と地方の責任を混乱させるということです。

 さらにもう一つ重要な点は、国民が税負担をするときに、どういう機関のために税負担をするのかというのがわからなくなる。

 もう一度シャウプ勧告、二ページ目をごらんいただければと思います。一、二、三、四と書いてありますが、一のところの最後の行を見ていただければ、「行政機関のどの単位に責任があるかを知ることが難しい。」それから二番目、「現在の事務配分の複雑性は国民がその行政機関、特に、かれの支払う税金が如何にして有益且つ貴重な行政の形をなしてかれに帰つて来るかを理解することを不可能にしている。」ということになるのではないか。つまり、責任を混乱させてしまう。

 さらに重要な点は、シャウプ勧告が負担金で指摘している事実でございますけれども、国と地方の利益に応じて、利害に応じて負担をするというときの、利益を算定する客観的な根拠がないということです。客観的な根拠がない重要な証拠は、二分の一などの、たまたま概数で決めている、客観的な根拠がないからこそ二分の一とか三分の一とかという負担率で決めている、そのことが明確に物語っているというふうに言っております。さらに、負担の対象とか負担の範囲とかが恣意的に決められてしまうということが生じてしまう欠陥を持っているのではないかと思います。

 この原則論をもとにして、現在、直轄事業負担金をめぐってどのような問題点が生じているのかということを考えてみますと、レジュメの一枚目の二のところに書きました、フォーストライダー、「「強制された乗客」の悲劇」が起きているというふうに理解できるのではないかと思います。

 これは、経済学の方では、フリーライダーという皆さん御存じの議論がございます。ただ乗りですね。負担すべき負担をしないで、ただ乗りで利益だけを受けている、それぞれの地方は直轄事業によって利益を受けているのに、ただ乗りをするということは許されないので負担しなさいという議論だと思いますが、経済学ではもう一つ事実を指摘しておりまして、それは、強制された乗客、乗りたくもないのに乗らされた乗客、この悲劇が生じているのではないかということでございます。

 強制された乗客ということから起きている問題点は、一つは、地域社会に必要な公共サービス、地域社会が優先度が高いと思っている必要な公共サービスを提供することを阻害している。地方自治体の方は直轄事業を遂行するために貴重な財源をそちらに向けなければなりませんので、真にその地域社会が必要な公共サービスに財源が向けられない事態が生じているというのが一つの問題点であります。

 シャウプ勧告が負担金で説明しているところをもう一つつけ加えて言えば、結果として財政力の弱い地方自治体に過重な負担を強いることになるという事実です。ところが、皆さんも御存じのとおり、そういう意見に対しては、いや、そんなことはありませんよ、これについては後進特例法によって、財政力の貧しい地方自治体に対しては負担率を引き下げるようなことをやっていますよというふうな反論が返ってくるかもしれませんが、そのことは矛盾です。なぜなら、利益に応じて負担しろというふうに言っていたのを今度は違った論理を入れてきていますから、最初の論理を否定するということになるのではないかと思われます。そうした問題点が生じるということですね。

 それから、強制されて乗ってはみたんですけれども、支払わされる、つまり要求される乗車料、料金、この中身や何かについて事前に説明を受けずに強制的に乗せられていて、内容もわからずに支払わされている、負担対象や負担内容についての説明や参加がないまま請求書が回ってくるという事態が生じている。これが現在起きている、強制された、フリーライダーではなくてフォーストライダーとしての悲劇が生じているということが言えるのではないかと思います。

 最後に、そうした状況を踏まえて、「改革へのシナリオ」でございます。直轄事業負担金をどのように改革していったらいいかということですけれども、改革ということで一番重要な点は、まず、方向性を明確に示すこと、目的を示すことです。

 道に迷った人に道を教えるときに一番重要な点は、あなたの目的地はこちらですということを示してあげて、そして、まずこの道を左に曲がって右に曲がってというふうに教えないと、途中でその道が通れなくなったりすると直ちに道に迷ってしまうということになりますので、まず方向性を明確にすること。

 一番重要な方向性は、一番最初に申し上げました行政責任明確化の原則に基づいて、直轄事業、何を国が直轄でやるのかということを決めることです。これはヨーロッパ、ほかの国では直轄事業負担金というような制度はありませんけれども、どこの国でも、国が、国民が共同負担、国税を払って共同事業をやるのは国民全体の利害にかかわる、この事業は国民全体の共同事業としてやらなければならない事業なのか、道府県民が道府県民の共同の事業としてやらなければならない事業なのか、市町村民が市町村民の共同の事業としてやらなければならない事業なのか、まず明確に区分しなくちゃだめですね。

 そうした区分を明確にした上で、直轄事業について言えば、どこの国でもそうですけれども、国がやっている事業については国が金を出し国が管理をし、地方自治体がやっている事業については地方自治体がお金を出して地方自治体が管理をするという原則からいって、直轄事業負担金制度を廃止していくという目的が最終的な目標になるのではないかと思います。

 その上で、とりあえず緊急にやらなければならない制度、後で二井参考人が詳しく御説明していただけるかと思いますけれども、まず、事前協議を制度化していくということですね。支払うべき強制された乗客がどういう料金を支払われるのかということについて言えば、事前に話し合って了解を取りつけるというのは当然のことだろうと思います。

 それから、維持管理費については、決定権、責任のあるところが負担をする。決定権なくして責任もないのと同じように、維持管理については、維持管理をする責任のある行政機関がこれを行うのが当然でございますので、これについては廃止をする。

 そして、最終的には、直轄事業負担金制度そのものを、直轄事業のあり方を今申し上げました行政責任明確化の原則に基づいて見直した上で、廃止をしていくという手順で進めるべきではないかというふうに思います。

 以上で私の意見の陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

赤松委員長 ありがとうございました。

 次に、二井参考人、お願いいたします。

二井参考人 ただいま御紹介いただきました、全国知事会の直轄事業負担金問題PTの座長をしております山口県知事の二井と申します。

 きょうは、直轄事業制度につきまして、地方の立場から意見を申し上げさせていただく機会をいただきまして、ありがとうございました。

 全国知事会におきましては、直轄事業制度につきまして、改めてその課題を明確化し、国との協議等を進めていくために、十八道府県から成りますプロジェクトチームを立ち上げまして、三月十六日の初会合以来、精力的に検討を重ねてまいりました。そして、全国知事会としての課題を取りまとめ、去る四月八日には、金子国土交通大臣、鳩山総務大臣、石破農林水産大臣御同席のもとで、直轄事業に係る意見交換会を行ったところであります。

 本日は、そのときの資料に沿いまして、直轄事業制度の見直しに向けた課題等について意見を述べさせていただきます。

 まず、資料の一ページから三ページにかけてでありますが、直轄事業制度の見直しに向けた知事会の考え方につきまして、大きく四点ほど整理をさせていただいております。

 一点目として、直轄事業負担金に係る速やかな情報開示、二つ目として、現行制度の早急な改善、三点目として、三ページになりますが、維持管理費負担金の早急な廃止、こうした三点の当面の対応と並行いたしまして、四点目として、直轄事業制度の根幹の見直しを課題として掲げております。

 これにつきましては後ほどごらんいただきたいと思いますが、きょうは、時間の関係もありますので、その次の四ページのフロー図をごらんいただきながら説明をさせていただきます。

 まずは、速やかな情報開示についてであります。

 国の直轄事業は、私ども地方にとりまして、地方の発展を左右する重要な社会基盤となるものであります。これまでも、国に対しましてその整備促進もお願いし、そして多額の地方負担金を支出してまいりました。

 しかしながら、今回、地方負担金に、その対象としてはどうかと思われるような、先ほど上田知事からも話がありましたが、出先機関の庁舎の移転改築費や職員の退職金までもが含まれていることが明らかになりました。果たして、地方にとって大きな財政負担となっている地方負担金が適正な形で使われているのかどうかということが大きな問題になっていると思います。

 こうしたことから、知事会としては、まずは、地方負担金に係る積算や使途の明細などの情報開示を速やかに、そして的確に行っていただくことが重要であると考えております。

 具体的な情報開示の内容につきましては、五ページに、補助事業と直轄事業に係る情報開示の比較を掲げております。

 国庫補助事業の申請手続等を見ていただきますと、新規採択から事業実施、完了の各段階において、地方は詳細な書類提出を求められております。まさにはしの上げおろしまで、微に入り細に入り、国から指導を受けております。一方で、国の直轄事業では、国からは地方負担金の明細内訳ですらほとんど示されないままに、義務的に負担金を課されているというのが現状であります。

 こうした問題につきまして、これまでも旧自治省から関係省庁に対して、直轄事業負担金の通知の際には、国庫補助金の手続との均衡に配慮して、経費明細を示すように申し入れがなされておりますし、第一期地方分権改革の際の総理の諮問機関である地方分権改革推進会議やこれまでの骨太方針にも、直轄事業と国庫補助事業の執行のあり方等も踏まえつつ、対象となる経費の内訳や範囲等について均衡のとれたものになるようにとの意見が出されております。

 地方としては、これまで内訳明細を強く求めずに来たことについては反省すべき点があるわけでありますが、依然として、地方負担の内容は、地方に十分な情報提供がなされないままの不透明な状況にあります。私ども地方は、現状のままでは地方負担金の使途を住民や議会に説明することはできませんし、その説明に根拠がなければ、予算の計上さえ危ぶまれるということになります。

 こうしたことから、国におきましては、まずは、これまでの負担金の根拠となる内訳明細に関して速やかに情報開示を実施し、事業主体としての説明責任をしっかりと果たしていただくことが何よりも必要であると考えております。

 こうした情報開示は、直轄事業制度の対象経費の見直し協議の前提となるものでもあります。現行制度の改善や合理的な制度設計の出発点になるものでもあるわけです。さきの国交大臣等との意見交換の場では、五月を目途に情報開示を行うとの基本的な了承をいただきましたが、私ども地方としては、補助事業と同程度の内容の情報開示をぜひともお願いしたいと思っております。そして、資料の提出がなされたならば、地方としても、その内容を十分に精査した上で、国と協議を重ねながら、住民に対しても説明責任がしっかりと果たせるように、負担金の対象経費の見直し、対象範囲の合理的な基準づくりもしていかなければならないと考えております。

 次に、こうした地方負担金の対象となる経費の内訳や範囲等の問題にも関連をしますが、現行制度の改善について申し上げさせていただきます。恐れ入りますが、四ページにお戻りをいただきたいと思います。

 現行制度では、建設事業の採択、着手段階から進行管理段階に至るまでの各段階におきましては、その事業内容や対象範囲、負担金の積算内訳など、情報提供が十分になされているとはとても言いがたい状況にあります。建設事業の計画策定時には、早い段階から事業内容や事業費等に関して詳細な説明を行うべきであり、また、事業の進行管理段階では、地方の予算編成等に支障が生じないように毎年度の事業内容、事業費などについて早い時期に詳細な情報提供を行っていただきますとともに、計画に変更が生じた場合には、事前に十分な調整ができるようにしていただくことが必要であると思います。

 こうしたこともありまして、全国知事会としては、これまで事前協議の必要性を訴え、制度の導入を求めてまいりました。これを受けて、例えば国交省では、当該年度の実施事業や翌年度の予定事業について、国と地方の調整会議という会議を設けられるなどの改善に努めてこられました。しかし、実態としては、事業概要等の説明時には既に事業内容等も固まっておりまして、調整、協議をする余地というのはほとんどないという状況であります。

 したがいまして、直轄事業の採択や実施等に当たりましては、国と地方が対等の立場に立って、地方の意見が反映できるような仕組みが必要であると思います。先ほど神野先生からお話があったとおりであります。そして、国と地方の間で、事業実施の必要性、事業内容等について十分に協議を行いまして、合意に達したものについてのみ実施に移していくべきであります。

 そのほか、直轄事業につきましては、補助事業と比べて事務費の割合が大きいということや、地方負担金に関して、その負担実績と地方交付税の措置額が大きく乖離をしているということなど、現行制度については早急に改善すべき課題を抱えております。

 次に、維持管理費負担金の早急な廃止についてであります。

 これまで、維持管理費負担金は、建設費と同様に、地方に受益があることを名目に課されておりますが、例えば道路の維持管理につきましては、都道府県道は都道府県が、市町村道は市町村が全額負担をいたしております。また、県が管理をしております国道につきましては維持管理費に係る国の負担はありません。一方で、国が管理する国道の維持管理費については県が負担金を出しているというように、国庫補助事業と直轄事業では著しく均衡を欠いております。

 本来、維持管理については、建設事業とは性格が異なるものであります。国が管理する施設については、施設の管理水準を決定する管理主体である国が当然に負担をすべきであると考えております。さらに、建設費に比べてその負担割合も高くなっております。また、維持管理費は将来にわたって継続するものでありますから、地方財政にも大きな負担となるものであります。したがいまして、地方といたしましては、維持管理費に係る地方負担金は直ちに廃止をしていただきたいと願っております。

 こうした当面の対応と並行して、直轄事業制度の根幹の見直しを進めていくことが必要であります。

 制度そのものの見直しに当たりましては、例えば全国的な交通ネットワークの基幹をなす道路、国土保全上特に重要な河川など、直轄事業は国が責任を持つべき事業に縮小し、その他の事業については地方に拡大して任せるという観点に立って、事業区分ごとに国と地方の役割分担の徹底した見直しを行うことが重要であります。

 そして、その役割分担に基づいて、国の担うべき事業は国の責任において着実に進め、地方が担うべき事業は、権限と財源を一体的に移譲し、地方の判断で自主的、主体的に実施できるようにしていくことによって、最終的には地方負担金制度の廃止につなげていくべきであると考えているところでございます。

 直轄事業制度につきましては、全国知事会は昭和三十四年からずっと地方負担金の廃止を求めてきました。今回、ようやく国交大臣との意見交換会ができましたし、きょう、こうしてお呼びをいただきましたことについては、大変意義があることだと考えているところでございます。

 今、地方は大変厳しい財政運営を強いられております。さらに、このたびの急激な景気悪化に伴いまして、これまでの財政再建の懸命な努力の成果を一瞬に消し去るほどの深刻な打撃を今受けているところであります。こうしたときだからこそ、効率的な社会資本整備に向けて、国、地方が役割分担をしっかりとしながら実施していかなければならない、そのように思っております。

 そのためには、政治的なリーダーシップが必要でございますから、どうか皆様方には、来るべき総選挙におきましては、ぜひマニフェストに直轄事業制度の見直しを入れていただきますように心からお願い申し上げまして、私からの説明とさせていただきます。

 きょうはありがとうございました。(拍手)

赤松委員長 ありがとうございました。

 次に、橋下参考人、お願いいたします。

橋下参考人 大阪府知事の橋下徹です。

 僕は、去年一年間、まだ行政の経験は一年間しかありませんので、行政の長についた素直な感想といいますか、感覚といいますか、難しい話は全部前の三人の先生方、知事さんと神野先生がお話になっていただきましたので、僕は行政の長として感じたことを話させてもらいたいと思います。

 まず、行政の長につきまして、国は一体どういう方向に向いていっているのか、どうしたいのかというのが全くわかりません。地方の行政の長につきまして、国家戦略、偉そうに言わせてもらいますと、国の方向性、また国の形、国のあり方、これが今後どうなるのか、全く今見えない状況であります。

 僕は、明治維新から近代国家が成立するときには、一部の勉強していた人たちが、知識の蓄積については一般の庶民とはいろいろな格差があって、一部の者ががんがん国を引っ張っていく、また、近代国家成立に向けて、中央が号令をかけて、一つの目標に向かってみんなで走っていくということはそれなりに合理性があったのかなというふうに思うんですが、今や、何も一部のテクノクラートといいますか、霞が関にいる官僚だけが知識を蓄積しているわけではありません。地方の自治体の公務員組織も知識は蓄積しております。

 また、これだけ複雑化した現代社会において、国民全体が一つの目標に向かうなんということはあり得ません。北は北海道から南は沖縄まで、みんなそれぞれ地域の実情が違いますし、目指すべき方向性も違いますし、また、重視すべき価値観とか優先順位とか、そういうものもみんな違う中で、今、大阪府は、埼玉の上田知事もいらっしゃいますが、首都圏と関西というツインエンジンの一翼を担う大阪府という組織においても、それでもまだ何もできません。僕の判断で何もできません。

 今回の追加経済対策についても何にしても、とにかく天を仰いで降ってくるものを待つだけ。大阪の実情に応じてやりたいことはいろいろありますし、府の職員もいろいろ考えているところもあるんですが、すべて上から降ってくるものを待つだけ。また、何かをやろうと思っても、財源もありませんし、何よりも、借金について総務省がぴしゃっと財政指標を厳しく引いておりますので、その範囲内でということになりますと、とてもとても、大都市圏の日々の行政需要、行政サービスを賄うだけで手いっぱいとなりまして、何か新しいことをやっていくというような余裕も全くないような状況であります。

 もう一つは、僕は、一年間公務員組織に身を置いて仕事をしたんですが、公務員の皆さんと価値観が合わないところがたくさんあります。大きな判断を下すときに、組織で右と言えば、大体僕は左に行く、組織が左に行くべきだと言えば、僕は大体右に行くと、反対することばかりやってきたんですが、それでも府民の皆さんからは、ふわっとした民意ではありますけれども、まだ反対意見もいろいろ受けますけれども、多くは、頑張れと言っていただけるというような状況でもあります。

 仕事のやり方にしても、何を優先すべきかにしても、とにかく公務員組織というのは大きい組織になってしまっていますし、過去をずっと継続して、引き継いでいかなきゃいけないということもありますので、やはり大きな方向転換もできません。それから、目の前の利害関係者のところにどうしても目が行ってしまいますので、これは大阪府という、国から考えればちっぽけな組織ですけれども、それでも、大阪府の組織の公務員の担当者は目の前のことで精いっぱいになってしまいまして、大きな方向性を打ち出すことが府の組織ではなかなかできない状況であります。

 こういう中で、政治主導とかいろいろ言われているところでもありますが、先生方を目の前にしてこう言うことは大変恐縮ですけれども、国会議員の先生方、衆議院で四百八十、参議院で二百四十二名の先生方が、三十何万人を擁する巨大な公務員組織を本当にコントロールできるのかどうかというところは、申しわけないんですけれども、大阪府の行政の長をやらせてもらいまして、非常に疑問であります。

 地方分権、地方分権ということで、これは何も僕が権限や財源をもらって好き勝手なことをやらせてほしいということではなくて、やはりここは国会議員の先生方と地方の議員ないしは選挙で選ばれた我々知事とで、役割分担をきちんとさせていただいて、役所をコントロールしていくということが必要な時代になったのではないかというふうに思っております。

 いろいろな先生方と議論をさせてもらうと、国は親、地方は子、まだそういう関係だとか、上下の関係だとか、いろいろなことを耳にするんですが、今の行政の仕組みのままでいきますと、霞が関の役所が全国津々浦々のことを仕切っていくようなことをこれからもやっていくのかと思うと、僕はもううんざりですし、そんな日本に将来はないというふうに思っております。

 色で例えれば、今の日本はネズミ色一色。これは、霞が関や永田町や、僕も大阪府庁のあの執務室に入るとどうも、慣行だったり文化だったり、職員からいろいろな意見を聞くと、ああ、やはりそういうものなのかななんということで流されそうになるんですが、やはりそこはまずい、まずいと思って、できる限り外に軸足を置いて、府庁の組織だったり国だったり、そういうものを客観的に見ようというふうに心がけているんです。そうすると、どうしても今の日本というものはネズミ色一色といいますか、ネズミ色というのはちょっと僕の感情的な面もあるんですが、でも、一色の色。僕は本当に、やはり今ここでこそ、この日本の国を、八色、九色、色とりどりの、色のある国にしたいという思いもありますし、そうならなければ日本の発展はないものというふうに思っております。

 そういうことをいろいろ考えている中で、じゃ、どうやってそういう国のあり方を、地方の行政の長として、国会議員の先生のように国の制度を変えるような権限がない僕がどうやって国を八色、九色、色とりどりの国にしようか、また、役所というものを政治主導でコントロールしていく、そういう行政の仕組み、国の仕組みになるきっかけを、知事という立場で何かそういうきっかけを起こすことができないかなということをいろいろ考えたところ、僕はこの直轄事業の負担金という問題にたどり着きました。

 地方分権という問題は、いろいろ勉強してもやはり難しいところが山ほどあって、府民の皆さん、国民の皆さんにはなかなか伝わらないところがあります。そこで、直轄事業というもの、真正面からこの制度にぶつかると、これはもう本当に国の言いなり。知事会は四十年、五十年、ずっとこの直轄事業の負担金の問題を、問題提起されていたというふうに言ってきているんですけれども、なぜ全く何もこの制度が動かなかったのか。

 これはやはり地方の責任もあると思っています。言われたままの請求書を何のチェックもせずに払っていた。とてもじゃありませんが、僕みたいに中小企業のおやじ感覚といいますか、自分も法律事務所を経営していますので、細かく細かく請求書をチェックするような細かい性格の者からすれば、あんな請求書で何百億というお金を払うなんということは信じられない。

 また、このお金を払うに際して、こちら側が何か主体的にこういう事業をやってほしいということや決定権が基本的にはないという中で、言われるがままに払っていく。

 国の直轄事業負担金という形で国で取られる内訳の中には、これもまたびっくりしたんですけれども、国家公務員の職員の退職金が入っていたり、逆に、地方が国からもらう補助金の中には地方公務員の退職金は当然含まれておりません。また、地方が国からもらう補助金には、事務経費についてはいろいろパーセンテージで上限の設定があるにもかかわらず、国が地方から取っていくお金には事務経費の上限設定が全くなかったり、庁舎についても、地方が国からもらう補助金については現場の土木事務所等についての分しかもらえないにもかかわらず、国が地方からお金を取っていく場合には、ありとあらゆる、土木事務所に限らず、総合事務所についてもお金を取っていく。

 こんな不公平なことをよくもまあ許していたなと。やはりこれは地方と今の国の関係というものが端的にあらわれている事例なのかなというように思っております。

 僕は、昔の制度を全部否定しているわけではありません。国がどんどん国土全体を引っ張っていくような国のあり方というものは、今の近代国家成立までにおいては非常に合理性があったというふうに思っておりますけれども、やはりこれからの将来はそうではないという思いがどうしても僕は強いです。

 そこで、税財源の問題や補助金の問題、知事会が言われているいろいろな細々とした問題はあるんですけれども、やはり府民、国民の皆さんが一番わかりやすい問題、国から一方的にお金を支払わされるこの直轄事業の負担金ということを一つ突破口として、国民の皆さんに問題提起をして、もはや霞が関一極集中で全国津々浦々を仕切るような国ではなく、色とりどりの日本のありようを目指していく。もちろん、それは住民の責任というものも問われます。地方分権ということになれば住民の自己責任も問われることになるんですけれども、それはそれで今後の日本のあるべき姿かなというふうに僕は思い、国民に問題提起をさせてもらいました。

 その中で、いろいろ国交省とも協議をさせてもらっていますが、ただ、非常に危険な問題といいますか、このままいくと、国交省、国との事前協議をやるかどうか、それから資料の詳細なものを開示してもらうかどうか、また維持管理費についての負担を廃止するかどうか、そこだけの問題に何か収れんしてしまうのであれば、非常に危険だなと僕は思っております。

 直轄事業の負担金をもし廃止ということになれば、当然補助金も廃止の方向にならざるを得ないと思っております。そうなってきますと、読売新聞の社説等、また、これは国交省が多分プロパガンダしているのかなというふうには思うんですが、やはり一部の負担金は必要ではないかというような議論も今出てきております。猪瀬さんも、どこかのコラムに、この負担金をなくしてしまうと陳情合戦が始まる、道路の必要性が吟味されず、国が好き勝手をする、負担があることで地方が吟味できるなどと言われて、地方分権改革推進委員会も、直轄事業の負担金ゼロというのはまずいんじゃないかというふうに言われていますけれども、僕は、これは制度論といいますか、鳩山総務大臣が言われていましたとおり、国の直轄事業というものは、国全体の利益のためにということであれば、今の事業量、国の事業はずっと縮小するものになるのかなというふうに思っております。

 地方の利益になるようなものは、地方に権限と財源をゆだねていただければ地方がきちんとやりますので、陳情合戦なんということはしなくても済むのかなと。僕は、直轄事業負担金の問題で金子大臣にわあわあ騒いでいたにもかかわらず、きのうは高速道路の問題で陳情に来ました。非常にばつが悪かった思いもありますけれども、やはりこういうことも、地方の利益になるようなことであれば、地方に任せていただければ、陳情合戦にもならないというふうに思っております。

 国会議員の先生方におかれましては、そうなってくると、みずからの権限と財源が少なくなってしまうのではないかというようなことも考えられる方もいらっしゃるかもわかりませんが、やはりここは役割分担ということで、大きな国家戦略といいますか、国土全体のことに集中していただいて、住民生活のことは地方できっちりと担う。こちらが、我々がきっちりとそれは責任を持ってやりますので、国会議員の先生方には、国のあり方、国家戦略、外交、防衛、道路についても国土軸を貫くような基幹道路、空港戦略、そういうものに集中をしていただければ、僕は、国の方向性というものがはっきりと国民にわかるのではないかというふうに思っております。

 今回、直轄事業の負担金について、追加経済対策等でこの負担分を軽減するというような話が国から出ております。これは地方にとっては非常にありがたい話なんですが、何かこの辺でうやむやに終わってしまうような気がしてなりません。

 金子大臣は、追加経済対策と制度論というものは全く別物だというふうにおっしゃってくださっております。今、地方は非常に財政が厳しいものでありますから、経済対策というものを政府が打っても、この負担金があるとなかなかそれに乗っかっていけない。ですから、その部分については負担を軽減していただいて、経済対策というものを実効性あるものとするという方向性には僕は乗っかっていきたいと思うんです。

 しかし、やはり根本の制度論といいますか、国のあり方、国家観、そういうところで地方分権という問題にはいろいろと賛否両論あるかと思うんですけれども、国会議員の先生方と地方の役割分担ということで、役所をコントロールしながら、一色のこの国を何とか八色、九色、僕はもっと色とりどりの日本にしていきたいと思っているんです。そういうような国を目指していきたいという思いで、この直轄事業の負担金については、ぜひ廃止というような方向で議論を進めていただきたいなというふうに思っております。

 繰り返しになりますけれども、地方の財政負担を軽減させるというような問題に矮小化することなく、国と地方のあり方を根本的に変える。これは大変な問題になるということも周囲から言われております。補助金をなくす、それに伴って税財源を移譲する。そうなってきますと、今、国が借金を無制限にして、それを交付税や補助金で配っていくというような構図がもし変わっていくということになれば、地方が借金をする主体になってくるということになってくるので、本当に国家の根本的なあり方を議論しなければ、この直轄事業の負担金の廃止というような問題は解決されないんだというふうに思っています。

 これまた政治家の先輩でいらっしゃる先生方には大変恐縮ですが、やはり地方は住民の顔が目の前に見えていますので、借金をするにしても、非常にシビアに借金をしていきます。また、借金をするぐらいであればというようなことで、職員の人件費を真っ先に切りにかかりますし、議会の先生方の報酬も、大阪府は一五%削減。大阪府は、職員の退職金についても五%のカットということに踏み込みました。

 また、庁舎についても、大阪府庁は今日本で一番古い庁舎で、ぼろぼろの状態で、耐震化についても、Is値がとんでもない低いレベルでいつ崩れてもおかしくないような状況であるにもかかわらず、やはり、小学校、中学校が耐震補強されていない、住民の顔が見えているような状況で、建てかえなんというような議論は、今の大阪府の財政状況からは全く出てこない。国は、一方で莫大な借金を負っているにもかかわらず、庁舎の建てかえという問題が簡単に出てくるような状況であります。

 霞が関の役人さんと話をして、国のお金、国のお金ということをすごく言うんですけれども、僕は、国のお金なんというものはない、これはもともと住民のお金で、預かり金だと。まずは地方が預かって、それを国に必要な分だけ、国がやるべきことについては地方から納めるというのが本来の姿であって、やはりお金はできる限り自分たちの近くに置いておく、住民の近くに置いておく。

 僕らは住民訴訟やそういうことで厳しいチェックを受けます。いざとなれば何十億、何百億というような賠償責任も負わされるような行政責任を持って税金の使い道を決めております。それが国になるとどんどん離れていって、霞が関の役人は、そういう賠償責任も何にも負わないところで、平気でお金を使っていきます。

 根本的に、今の国の財政状況も、とにかく我々の将来世代にきれいな日本を引き渡すということを考えていこうと思えば、やはりお金はできる限り住民の近くに置いて、そこで責任を持ってお金の使い道を決めていくというところが本来のあるべき姿かなと思います。

 非常に抽象的な話ではあるんですけれども、直轄事業の負担金の問題を地方財政の軽減の問題に矮小化することなく、ぜひ本当に先生方に、明治維新に匹敵するような、平成維新というようなことで、国のあり方を根本的に変えていただいて、我々地方にも、また住民にも、この国の将来のあるべき姿、子供を産んで本当によかったな、また子供を産んでいこうというような、そういう日本の国をつくっていただきたいなというふうに思っております。

 以上です。(拍手)

赤松委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福井照君。

福井委員 おはようございます。自由民主党の福井照でございます。

 四人の参考人の先生方には、早朝から大変ありがとうございました。

 今伺いまして、お一人も今の制度でいいという先生がいらっしゃらなかったので、本当に大変に重い宿題を我々としては負わせていただきました。

 同時に、今までひょっとすると惰性に流されてきたのではないかと、深く深く反省をしなければならないというふうに思いました。事実関係ですけれども、例えば道路ですと、大正十一年からこの直轄事業負担金というのはございます。河川事業でも明治二十九年、砂防で明治三十年ということで、古いから、伝統だから、文化だから正しいというのじゃなくて、ひょっとしたら惰性に流されているということで、地方にも住民にも御迷惑をかけているんじゃないかと反省をしなければならないということでございます。

 まず、二井知事にお伺いしたいんですけれども、しかし、今までの制度でずっとやってきた立場から言いますと、ちょっとミスリーディングなんじゃないかなということで、二、三分しゃべらせていただいた上で二井知事から御答弁いただきたいと思うんです。

 まず、問題の立て方として、四人の先生方が共通しておっしゃっていた、例えば国道とか直轄河川について、事業のプライオリティー、ことしやる、来年やる、近未来にしても中期にしても長期にしても、その事業の意思決定に知事さんが、指定市の市長さんが関与していないのではないかというような印象を与えるような皆さんの御陳述でございましたので、これは違うということで、ちょっと事実関係だけ整理させていただきます。

 例えば、中国地方整備局長なんかは、毎年毎年五月、六月に、各県知事、当然山口県知事さんにも島根県知事さんにも鳥取県知事さんにもお会いして、五月、六月ですからもう来年度の概算要求に向けて、こういう仕事をしたらどうでしょうか、知事さんとしてはどういう重要性、プライオリティーをお持ちですかという会議をまずさせていただきます。そして、概算要求が終わった後、十月、十二月、その後、来年度になって四月、少なくとも三回以上は事業計画について、そして後ほど御議論する明細について情報交換が行われているというのが事実関係でございます。

 言った言わないの話ですから、説明が不足していたということは多分事実なんだと思いますので、そこのところは反省をさせていただきますけれども、全く、事業について国が勝手にやっている、建設省や農水省が勝手にやっているということではないということをぜひ国民の皆さん方には認識していただきたいと思います。

 それから、直轄事業負担金は、きょう橋下知事がぼったくりとおっしゃらなかったのでほっとしたんですけれども、とにかくそれに近い明細書というか請求書が紙っぺら一枚で何億円、何十億円、何百億円と来るという、これも事実ですから、これは国民の皆様ひとしくびっくりされたことなんだろうと思います。

 そんなことが絶対にないように、明細については情報不足にならないようにさせていただきたいし、今、役所の方でも知事会と綿密に打ち合わせをさせていただいて、営繕宿舎費の問題、そして車両費の問題、人件費の問題、いろいろ、道路ごとに、河川ごとに、お互いに理解し合えるところまで細かく細かく情報が公開され、そして共通認識になるようにということで努力をしている最中でございますので、間接費は根こそぎ不合理である、道路をつくるんだったらアスファルトだけ、河川をつくるんだったら護岸のブロックだけということではなくて、やはりそれを支える職員の人件費、そしてその職員が働く場所、事務所も合理的に経費として付随をしているということもぜひ国民の皆さん方にわかっていただきたいなというふうに思います。

 なおかつ、裏負担、直轄事業負担金についても総務省の方で地方交付税交付金の財政需要としてカウントはされています。ここのところもテレビ、新聞で一切報道されないところなので、あえてきょうは御紹介をさせていただきました。

 そこで、議論の出口として、確かに退職金を、例えば中国地建の職員だったら、ずっと広島にいて、ちょっと鳥取にいて、最後、退職するときだけ山口県の山口河川国道事務所でやめるというときに、何で山口県の県民税で、直轄事業負担金で三分の一の退職金を払わないかぬのか、これは当然の議論だと思います。

 間接費について、今までいろいろなカットはしてきたんです。赴任旅費とか失業者対策手当とか休職者給与とか、ちょっとおかしいなと思うのはカットして一般会計に持っていっているんですけれども、根こそぎこの直轄事業負担金を廃止するという議論の前に、現実にことしできること、来年できることで、退職金を入れるのか入れないのかという議論でまずスタートをさせていただきたいなというふうに個人的には私は思っているんです。

 それも含めて、今後の地方分権の進め方も視野に入れながら、二井プロジェクトチーム座長・知事としてはどう考えておられるか、ちょっと御紹介していただきたいと思います。

二井参考人 ただいまの御質問に対してお答えをさせていただきます。

 私は先ほど、早急な情報開示と現行制度の改善、それから維持管理費の負担金の廃止、この三つを当面の対策として申し上げました。したがって、この三つについては直ちに実施をしていただきたい、これが我々の願いであります。

 そして、直轄事業負担金の廃止問題も当然並行的には議論をしていただきたいと思いますけれども、やはり私どもの考え方は、直轄事業負担金については、国と地方のあり方全体を議論して、その中で直轄事業を絞って、そしてその中で廃止をしていただくのが一番理想的ではないか、そのように考えております。

 したがって、私が先ほど御説明しましたように、一応大きく二つに分けて議論すべきであるというふうに思いますけれども、最終的には直轄事業負担金を全面的に廃止していただければということで、直ちにそれを廃止していただければこの問題はすべて解決をすることになるというふうに考えております。

 以上でございます。

福井委員 ありがとうございました。

 次に、大阪府の橋下知事にお伺いしたいんですけれども、個人的な話で恐縮ですが、私は大阪市阿倍野の生まれで、浪国の所長もしておりました。当時、関空に行く空連道の担当、それから第二京阪の用地買収なんかをしておりまして、この前、第二京阪の土地収用の関連で体を張っていただきまして、本当にありがとうございました。

 なおかつ、知事が当選されるまでは高知県知事が最年少だったんですけれども、最年少をすぐ追い越していただいて、ありがとうございました。

 それで、コストカットして、リストラして、大変敬意を表しているんですけれども、なおかつ、この直轄事業負担金について大変刺激的なワーディングでマスコミの耳目を集めて、こうやって参考人質疑にまで持ってきていただいて、ありがとうございました。

 ただし、先ほどからこの一枚のレジュメでもおっしゃっておりました、直轄事業負担金は義務的に、何の意思決定にも参加せず嫌々支出をしているということについては、多分知事は無意識の中ではそう思っていらっしゃらないと思うんですけれども、近畿地方整備局長が知事に何にも説明していないということはおよそ考えられないし、そうやって体を張って第二京阪の収用までしていただいたということもありますし、それから空連道、関空に行く道路の、橋の負担金ももう知事の中では解決していただいたということでございます。

 一つ質問は、先ほどから伺っていて、国の最後に残る事務は確かに外交、防衛だと思います。例えば、アメリカなんかはインターステート・ディフェンス・ハイウエーですね。ですから、専ら外交、防衛に資するような高速道路でもあれば、これはもちろん一〇〇%国の支出、支弁でやるべきだと思うんですけれども、先ほどから言いましたように、明治、大正からずっと河川も道路もやってきているということは、ひたすら民生をやってきたということなんですね。

 ですから、今、神野先生から御指摘あったように、ええころかげんなんです。維持は半々、それからつくるときは三分の二、三分の一ということで、ふわっとした話ですよ、それは確かに。しかし、日本人の知恵として、維持は半々、つくるときは三分の二と三分の一ということで差をつけて、しかし地方公共団体が地方の住民を代表して御負担をしていただいているということについては、数十年やってきたので、これはいわば日本の行政の文化といいましょうか、歴史、伝統ということで、農耕民族としての生きざま、平等な市民主義社会をつくるというようなことで、いわば成功物語ではなかったのかなということなのです。

 情報不足だったり、それから意思決定にもうちょっと早くから関与させろというような御議論はあろうかと思いますけれども、根こそぎ直轄事業負担金を廃止するということについては、まだ地方分権が、道州制をやるかやらないか、そのもっと前に基礎自治体をもっと充実させなきゃなりませんし、その後は県庁、府庁は要るか要らないかという議論になって、それから道州制が要るか要らないか、そして国が基礎自治体をいかに支援するかという議論が地方分権の主流だと思います。

 そんな中で、先ほどから陳述もしていただきましたけれども、直轄事業がいかにあるべきか、直轄事業負担金はあるべきかないべきかということで、私の私見ですけれども、今、百年に一回のすごい国家の危機なので、こういう危機はやはり、昭和十五年体制じゃないですけれども、国家が全体として、国民総ぐるみ、国家総動員でやらなければならない。今度第一次補正で地方の負担金の九割を交付税で負担するということになりますから、一割府民負担で府道ができるということになるわけですけれども、そういう機動性、それから一〇〇%国費の直轄事業もあっていい、そして今のままの直轄事業もあっていいということで、今後の話の出口として、一〇〇%国費の事業をぜひ検討してくれ、そういうふうにおっしゃっていただければ、出口としては可能だと思います。というのは、危機だからです。

 一〇〇%国費で、そういう一次補正の交付金と関係なく、これから国家が外交、防衛に匹敵するような国家戦略としてやるべき河川だったり道路だったりというのをぜひ考えろ、大阪府の中だったら例えばこんな道路だったり河川だったりするんだというようなことを考えてはいただけないでしょうか。ぜひ御答弁をいただきたいと思います。

橋下参考人 これは、国家の姿に関する国家観の違いかと思うんです。

 例えば負担金について、これは廃止どうのこうのということではなく、また、先生は、協議にも参加しているんだから意思決定に全く参加していないわけじゃない、また義務的ではないだろう、嫌々なわけじゃないだろうということをいろいろ言われますけれども、根本は嫌々です。

 どういうことかといいますと、自分たちで決めさせてもらえるのであれば、僕は全く構わないと思っています、お金の出どころはどこであっても。

 例えば、大戸川ダムの問題については、国は必要だ必要だというふうに言ってきました。だけれども、これは知事として僕は、医療費は削るわ、私学助成は削るわ、障害福祉のサービスは削るわとやっているところで、いきなりダムと言われても、それも百年に一度の洪水対策とか二百年に一度とか、何かそんな大きな話で、今それはできませんよと言うんですけれども、国交省の出先機関は、先ほど言いましたように役所というものは目の前のことしか考えていませんので、大阪府の全体のことを見ていませんから、ダムが必要だ必要だと言ってくる。僕はそれは要らない、今回は京都とか滋賀、また三重の知事で要らないと言ってきました。

 今度は逆に、新名神については、これはもうみんなが、自治体の知事が、必要だ、これをつくってくれと。しかも、これは民間会社の経営判断でも、道路公団が民営化して、高速道路会社もつくりたいと言っているにもかかわらず、国交省がそれをゴーしてくれないんですね。僕らが要らないというものをつくれつくれ、ダムをつくれつくれと言ってくる。そして、必要だと言っているこの高速道路については、今はこれは国幹会議で凍結解除はできないと。ここがもどかしくて仕方がありません。

 ですから、負担金の廃止がどうのこうの、また、例えば経済対策で国が主導で、僕は経済対策も必要だと思っていますけれども、その最終的な決定権をまさに国会議員の先生方と我々で役割分担させていただけるのであれば、もし言わせていただけるのであれば、今の近畿地方整備局を僕や関西の近畿ブロックの知事のコントロール下に置いていただけるのであれば、僕は大阪府でやったことと同じようなことを近畿整備局や国の出先機関に対してもやるだけの自信はあります。

 基本的に形だけの説明は受けますし、意見交換という形はやりますけれども、しかし、我々に決定権がありませんから、結局、あの第二京阪の問題も、陳情、陳情をして、お願いをしてやっております。あれは嫌々でないと言われれば嫌々ではないんですけれども、でも、本当は自分たちで決めたいのに、陳情なんかしてやる必要はないじゃないかという意味では、嫌々です。

 ですから、大きく国土軸を貫くような道路、そこの役割分担をどうやって整理するかは、これはもう国会議員の先生方に国のあり方ということで議論していただいて、僕は外交、防衛だけではないと思っていますので、医療制度の問題だったり年金制度の問題だったり、本当に国の大きな制度の問題をしっかりと国で築いていただいて、いわゆる生活道路だったり、第二京阪も、僕はあれはバイパス道路だと思っていますから、あれは国土軸を貫くような道路ではないので、大阪府か、ないしは近畿の知事にゆだねていただければ、もっと道路についてもいろいろ知事なりの優先順位をつけた計画を立てられるんじゃないか。

 今回、六月の近畿ブロックの知事会に向けて、近畿地方整備局が立てる計画とは別に、知事みずからが今必要な道路のインフラについて調整をしてつくろうというようなことで声をかけまして、今取り組んでおります。これは近畿地方整備局の計画とは多分かなり異なると思いますし、今までは近畿の知事が集まると、細かい道路まで、ここも載せてくれ、あそこも載せてくれという話になったんですが、いや、そんなことをやっていたらやはり国の調整が必要だということを言われるので、できる限りそぎ落として、本当に必要なものだけを近畿としてまとめ上げましょうということで今努力をしています。

 ですから、近畿地方整備局が我々知事がつくったこの計画案に乗っかって、あとは執行してくれるということであれば、僕は問題はないのかなというふうに思うんですけれども、今の直轄事業の負担金というものがある以上はそうはならないのかなと。また、一〇〇%の国負担ということでやってしまうと、ますます国が決定権やそういうものを持って、我々は陳情ばかりをしていかなければいけないというような思いがあります。

 この直轄事業の負担金の問題は、地方行政のガバナンスの問題、意思決定の主体の問題、それをどこに置くかというような問題、コインの表裏のような問題だと思っていますので、僕は、ぜひ、この直轄事業の負担金の問題とガバナンスの問題をあわせて、国のあり方を国会議員の先生方に組みかえていただきたいなというふうに思っております。

赤松委員長 福井君、時間が来ていますので。

福井委員 もう終わりますけれども、本質的な御議論を本当にありがとうございました。重く重く受けとめさせていただきまして、今後議論をさせていただきたいと思います。

 きょうは本当にありがとうございました。

赤松委員長 次に、原口一博君。

原口委員 おはようございます。民主党の原口一博でございます。

 四人の参考人の先生方、本当にお忙しい中、ありがとうございます。そしてまた、時宜を得た的確な御陳述をいただきまして、心から感謝を申し上げたいと思います。

 限られた時間ですので、まず、上田知事にお伺いをします。

 当時の塩川財務大臣の母屋でおかゆをすすってという答弁の方が今有名になっていますが、あの質問は上田知事でいらっしゃいましたか。上田知事が、当時、特別会計の予算を、あれは九百ページぐらいでしたか、全部ごらんになって、情報開示を国会でやって、きつく官僚機構と闘っておられた。そのお姿を私は後ろから見ていました。

 今回の直轄事業負担金の問題も、四人の参考人の先生方がお話しになったとおり、まず情報が表に出てくること、国民が真実を知ること、そのことによってこんなことが行われていたのかと。知事がお配りになったこの八ページを拝見しても、「うち事務費分」という丸めた数字は書いてありますが、この中の幾らが退職金で、幾らが庁舎に使われているかなんというのはわかりません。ここの数字からは出てきていません。

 知事にまずお伺いしたいのは、知事がどのようなことで特別会計を開示されたのか、そして、地方が主役の分権を進めていく上で、どのようにこれからこの直轄事業負担金の開示を迫っていこうとされているのか。実際に金子大臣には要望書を早速出されておりますが、その辺の情報開示と改革という観点から知事の御所見を伺いたいと思います。

上田参考人 いろいろな仕事をしている中で、日々、発見することがたくさんあります。

 例えば、たまたま埼玉県は、圏央道、あるいは利根川、江戸川の堤防強化事業はいずれも埼玉県益にとっても重要な事業ということで、例年、関東地方整備局長が説明もされますし、その意義についてそれなりの理解をして、協力したいまたは協力しなければという思いを持っておりますが、そういう雰囲気が長年できていたのは、麻生総理の言葉を使えば、国の役人の矜持、国家公務員としての使命感、あるいはそれなりの決意、そういうものを地方の公務員も感じて一定程度の信頼関係の中でこの事業が進められ、制度として定着していた、私はこのように思っております。

 少なくとも社保庁のようなああいうことがあり得るのか。単純な事務を重ねてきちっと管理しなければならないことが管理されていない、企画力が弱いとか融通がきかないという批判は甘んじて受けども、事務でミスがあるというようなことはあってはならない、これは埼玉県庁の考え方であります。

 しかし、今回、香川県で起きた事件を見て、我々がいかにまだまだそうした情報公開や細かい点について信頼し過ぎている部分があるということがよくわかりました。これから、国の事業に関してはいろいろな意味で細かい説明や情報公開を求めなければ危ないなと思わざるを得ないような状況が今回出てきました。

 それは言うまでもなく、先ほども申し上げましたが、我々は、国の事業の中でもとりわけ埼玉県益としては重要なことでございましたから、一方的に強要されていたというような思いじゃなくて、県益としても必要だ、あるいは首都圏の国家プロジェクトとしても必要だという思いで協力をしておりました。しかし、実際問題、まさか事業を運営する庁舎の建設費まで入っているとか工作機械等の負担の詳細までは、正直なところ県の職員も余り知らなかったのではないか。

 こういう状況でございましたので、そういう意味で、これからは内訳について細かく御説明いただくような徹底した情報公開を国にしていただきたいと考えております。

原口委員 逆転国会になりまして、命のリストも出てきました。あるいは、今知事がお話しの年金の隠された部分、特に知事がおっしゃっていた運用のところも出てきました。当委員会では、赤松委員長の御指導のもと、情報開示を与野党問わず大変頑張っています。ぜひ知事会や多くの皆様からも、こういうことがわからないということを私たちにおっしゃっていただきたいというふうに思います。

 そこで、橋下知事にお伺いをします。

 橋下知事とは大阪のたかじんさんの番組でも大変お世話になりまして、ありがとうございます。本当に言葉の天才ですね。国民、府民が感じていらっしゃることを言葉にして、大きく国の形という理念でそれをあらわすことができる。ぼったくり云々とお話しになった、あれは私は悪い言葉じゃないと思います。

 まさにそういう状況で、今も少し反論らしきものがありましたが、知事がお話しになっているのは、そこの整備局の人が説明に来たかどうかという話じゃないんですよね。みずからの決定で、みずからの財源で、みずからの責任で事業をやらせろという話だと思います。

 今知事がお話しになったような、今のような議論のスピードだと、矮小化して、ちょっと地方の頭をなでて……。直轄事業負担金というのは、先ほど二井知事がお話しになったように、昭和三十四年ですから、五十年。私が生まれた年ですから、私の一生分を言い続けてもまだ直っていない。

 このことは、まずは期限を決めて、私たちはマニフェストでこれを全廃するということを言っているわけです。それはなぜかといったら、私たち国会議員は、本当に必要な世界とのルール・オブ・ゲーム、安全保障あるいは外交、そういったものに特化すべきで、箇所づけや分配に国会がいつまで携わっているのかという思いがあるわけであります。

 これは、国と地方、党派を超えて、いついつまでにぜひ全廃するんだ、そのために何をやればいいかと、まず全廃ありきで、その前に、ちまちましたとは言いませんが、情報開示だの何をなくすだのとやっていたのでは進まないという、先ほどの知事のお話と同じ認識を私は持っているんですが、知事の御決意と御所見を伺えればというふうに思います。

橋下参考人 原口先生の質問に真正面からお答えできているかわからないんですけれども、プロセスについては、二井知事初めプロジェクトチームの知事さんがはるかに行政経験が豊富ですから、直轄事業の負担金の廃止の前の段階で情報公開、協議をする、維持管理費の負担の廃止、これ以上に何ができるのかというのは、正直思いつかないところがあるんです。

 ただ、制度を変えようと思えば、選挙で、国民の皆さんの一票によって地方分権というものを推進していただける国会議員の先生を選んでもらう、きちんと我々が国民に争点を提示して、これは国の根本的なあり方の問題ですということを提示して、その選挙で国民の皆さんに判断を仰ぐということしか僕は今のところ思いつきません。

 二井知事ともいろいろとお話をさせてもらっているんですが、大阪府は、やはりこれは根拠のあるきちんとした請求書を……。

 しかも、本当に不可思議なことに、大阪府庁内に財政課というものがありますが、都市整備部というところがいろいろ事業をやるために予算要求をやったときには物すごい細かな資料を財政課がチェックするんですが、国の直轄事業の負担金の請求書については財政課は全くスルーで払っていました。

 ですから、僕が今府庁の職員に、財政課に指示を出しているのは、大阪府の都市整備部が予算要求をしてきたときに求める資料だったり根拠だったり説明だったり、そういうものがはっきりと国から示されない限りは負担金は払えない、これは府議会に対する説明責任はもちろんのこと、府民に対する説明責任を果たせないということで、これは払えないということを僕はきちんと宣言して、後は国交省が根拠をどれだけ出してくるかにかかってくるのかなというふうに思うんです。

 近畿地方整備局との意見交換会でも、整備局サイドはファイルで何冊分もあるので幾らでも研究してくださいなんということを言われるわけなんですね。全く自分たちで根拠を示そうというような意気込みを感じません。見るならどうぞというような姿勢なので、僕は、向こうがきちんとした根拠を示さない限りは、これは税ですから、府民から預かった税なので、払えないということで対応しようかなと思っているんですが、多分、国のあり方は、本当に国会議員の先生方にどうしても国と地方の役割分担を争点にしていただいて、選挙で問うていただきたいなというふうに思っております。

原口委員 ありがとうございます。

 やはりいろいろな慣例をまず言うんですね。私も二十七で県会議員をさせていただいたときに何を言われたかというと、おまえがそんなことを言ったってできやしない、自分のところの慣例は長くあるんだと。では、我が県の慣例が大阪で通用するか、あるいはヨーロッパで通用するかというと、通用しないわけです。ぜひ常識を常識としない政治を進めていただきたい。心からエールを送りたいと思います。

 そこで、上田知事と神野先生にお伺いをしたいんですが、やはり補助金をなくす、そして、地方の財政にとっては借金もできない、借金をしようと思っても標準財政だ何だということで決まっている。つまり、議会というのはもともと国民を代表し、市民を代表して増減税の権利を実現するにもかかわらず、地方議会では地方議員が増減税の提案もできない。これはもともと財政法上おかしなことではないかというふうに思います。

 もっと言えば、この直轄事業負担金で、先ほど橋下知事がお話しになったように、説明できないということはガバナンスをきかすことができない。それは、説明のつかない予算をつくっているということは、財政そのものの基本をないがしろにすることですし、幾らコストがかかるかわからない、幾ら国から降ってくるかわからないということは、地方にとっては財政の予見可能性さえも奪っているということではないかというふうに思います。

 財政学の観点から、今の現状についてどのような認識をお持ちなのか。私たちは、税源も財源も地方にお任せし、そして、増減税をする権利もそれぞれ地方が持つべきだというふうに考えておりますが、まずは神野先生のお答えをいただきたいと思います。

神野参考人 お答えさせていただきます。

 まず、日本の地方財政と国の財政との関係というのは、国が租税の多くの部分を握って、それを配分して地方自治体に政策をやらせる仕組みになっているわけですね。したがって、地方自治体に自己決定権がない。地方財政、つまり地域住民の共同の財布である地方財政に、住民あるいは住民の代表たる議会が決定できる権限がないというのが現在の日本の地方財政の状態だと思います。

 これを突破するには、しかも、現在、経済的な危機が深刻になってくると、国民の生活に必要な公共サービスを出すのは、しょせん地方自治体が出さざるを得ないわけですね。そうしますと、地域の生活にマッチした公共サービスを出そうとすれば、国と地方自治体とで国税と地方税を分け合う。この分け合う原則は、基幹税、主要な税金を国と地方自治体とでどのように分け合うかということを考えた方がいいと思います。

 それは、基幹税というのは、所得税と付加価値税、日本でいうと消費税ですね、この二つの税金を、例えばスウェーデンのように所得税は地方、付加価値税は国、アメリカのように所得税は国、一般消費税は地方というふうに分けるのか、それとも半々で分けるのかということになるのではないかと思いますけれども、まず国税と地方税を半々に分ける、そのことを日本では実現して、歳入の自治といいましょうか、議員が先ほど御指摘になったように歳入面での自己決定権が地方自治体になければ、地方財政そのものを必要なところに自分の決定権で決定できないだろう。つまり、いつまでも親からの仕送りで生活をしていたのでは、本当に住民に合ったサービスを提供できないので、基本的には、私は、税源配分を直す、さらにそれを一般補助金、日本でいうと交付税に当たりますか、それでもって補完をして是正するという制度を実質的に早く確立するということが重要だと思っております。

原口委員 もう時間が参りましたので、二井知事にお聞きすることができませんで、残念でございました。

 依存と分配の政治を一刻も早くやめなきゃいけないと思います。自立と創造の政治。そして、先ほど橋下知事が官僚を食べさせるために負担しているんじゃないかと、まさに地方支分部局の問題についても思いっ切り検討をしなきゃいけない。中央政府から一番遠いところで、国会のチェックも甘い、ましてや地方議会のチェックも甘い、そういう機関は改廃も含めて議論をしていくべきだということを申し上げて、感謝をささげたいと思います。

 私たちも頑張りますので、御指導をよろしくお願いいたします。

赤松委員長 次に、谷口隆義君。

谷口(隆)委員 公明党の谷口隆義でございます。

 本日は、上田知事、神野先生、二井知事、橋下知事、本当に御苦労さまでございます。ありがとうございます。

 もう御存じだと思いますが、当総務委員会は地方自治を経験されていらっしゃる委員の方も多いわけでございます。基本的に、今回、知事会の中でいろいろ議論されておられます国の直轄負担金の問題については、そんなに違和感がないという委員の先生が多分多いと思います。ですから、思いのたけを本日この参考人質疑の中でおっしゃっていただければというように思う次第でございます。

 今は、御存じのとおり、百年に一回の大不況だということでございます。今、がけから落ちるような不況になっております。国の税収もこのところ急激に少なくなってまいりました。地方の税収も、特に都道府県は所得を課税標準とする税体系が中心でございますから、今大変な状況になっているんだろうと思うわけでございます。

 そんな状況の中で、つまびらかに国の領収書を見ていくと、まさに橋下知事がおっしゃった、ぼったくりやないかと言われるようなものがあって、今その問題が大きくクローズアップされておるわけでございます。

 先ほど二井知事のお話をお聞きしますと、昭和三十四年から国の直轄事業負担金の問題についてはいろいろ知事会でも議論があったというようなお話をお聞きいたしておるわけでございます。

 まず、私の方の疑問は、どうして今に至るまで大きな行動と申しますか発言といいますか、起こらなかったのか、三人の知事の皆さんにそのことをお伺いいたしたいと思います。

上田参考人 それぞれ都道府県の知事も、問題意識の深いところ、浅いところ、いろいろあると思っております。たまたま埼玉県は、先ほど申し上げましたように、国の直轄事業と県益が一致しておりましたので、比較的私も問題点があるかないかというような意味での強い関心を持っておりませんでした。香川県の事例を見て、初めて、これは埼玉県にもあるだろうということで職員に調べさせて、あることが判明いたしました。

 そもそも一番重要なのは、埼玉県はGDP五番目、人口五番目の県でも、地方交付税なしに食えないという制度が一番問題だというふうに思っております。歳入の構造が非常に不安定でありまして、例えば固定資産税、地方消費税についてだけ見ると、四十七都道府県の開きが二倍程度におさまっているんです。さほど差がないんです。ところが、法人二税などが入ってくると、東京都と沖縄県では六倍も開いてしまうとか、こういう問題が出ております。

 あるいは、この六年間ぐらいの地方の行革では一〇%人員の削減を行っておりますが、国は五%しかできていない。あるいは、この六年間で地方が歳出の削減を一〇%やっているのに、国は三%しかしていない。このように地方では、幾つかありますから競争の原理が働いております。しかし、国はそういう意味での競争の原理が働いておりませんから、どうしてもスリムになるのが遅いし、極めて下手だ。

 したがいまして、極力地方に税源、権限を渡すことで、競争原理の働く地方でいろいろな実験をしていただくことで、より住民に近い行政、公共サービスができる。そういうことを真摯に、やはりこれは国会の場で法律としてきちっと制度を確立していただきたい。

 今は言いわけができます。例えば地方自治体の職員の数だって、たまたま埼玉県は今一番少ないです。多いところは埼玉県の四倍あるんです、対一万人の県民に対して。こんなにあって本当にいいのかと。しかし、交付税で守られていますから、その補てんができますから、ある意味では競争が働かない。したがって、基礎的な収入をきちっと地方に与えていただければ何の言いわけもできませんから、文字どおり首長あるいは議会の才能、才覚が評価されるというような事態になると思っておりますので、ぜひそうした制度に組みかえていただきたいということを申し上げたいと思います。

二井参考人 山口県の場合を申し上げますと、直轄事業については、やはり県の要望に沿って国の方はやっていただいているというふうに理解をしております。したがって、法律に基づいて、当然のルールとして、請求があれば払わなければいけないだろうというふうに考えておったわけであります。

 しかしながら、今思いますと、今回の負担金の中で庁舎の移転経費やら職員の退職金の支払いまでされていたということが明らかになりましたので、私どもとしても、国に払っている負担金について、内訳がないと県民の皆さんあるいは県議会で説明ができないというふうに考えて、とりあえずの措置としては情報公開をしていただきたい、そして、対等の立場で協議をしていただきたいというお願いをしておるということです。

 しかしながら、先ほどから話がありますように、この直轄事業問題というのは、単なる負担金の問題ではなくて、やはり国と地方のあり方を考える問題であるというふうに理解しておりますから、知事会としてはぜひ早く負担金を廃止してもらいたいという気持ちはありますけれども、先ほどから申し上げておりますように役割分担をしっかりした上でやっていただきたい。そうすると、少しは時間がかかるであろう。したがって、当面は、先ほど申し上げました維持管理費の負担金の廃止まではぜひやっていただきたいというのが私どもの思いでございます。

 以上でございます。

橋下参考人 なぜ今まで負担金の問題が大きく知事会側の方から声が上がらなかったのか、地方から上がらなかったのかということなんですが、まず一点は、これは循環論法だと思うんですけれども、こういう負担金制度であるからこそ声が上がらなかった。まさに国と地方が奴隷関係にありまして、奴隷は御主人に文句は言えません。補助金制度や負担金制度が全部うまく組み合わさって、本当に職員は知事の方を向くのではなくて省庁の方を向いています。知事は任期で次の選挙でころっとかわるかもわかりませんから、省庁との関係というものを自治体の職員はずっと重視していますので、やはり御主人である霞が関の本省には逆らえない、文句を言えない。

 また、何か異を唱えると、今回は本当に知事がみんな結束してこういう動きが出せましたけれども、これは一つの都道府県だけでやっていれば確実に国から嫌がらせを受けます。大阪府もいろいろと事務レベルではあるみたいです。この補助金はつけない、この予算はつけないとかいうような話があるみたいです。ですから、そういうことで声を上げられなかった。

 ですから、一刻も早く、本当にこれだけ多くの自治体の職員が日本全国にみんな散らばっている中で、今のこの補助金制度、直轄事業負担金の制度、税財源の問題を本当に抜本的に改めないと、霞が関だけのところで決定されて、みんなそれに従うというような、そんな国の仕組みが改まらないと思いますので、僕は、今のこの制度があるからこそ声を上げられなかったということがあるかというふうに思います。

 もう一つは、地方の責任なんですが、直轄事業の負担金のこの制度のままの方が楽だというようなこともあります。今度、これは地方側で、知事側できちんと議論しなければいけないんですが、単なる税財源の移譲の話をしてしまうと、東国原知事が言われるように、都市部は税財源を移譲してもらえれば全部賄えますけれども、地方になればどうしても賄えない部分が出てきます。そこの水平調整をだれがやるかというところで、それを国がやるのか、それとも道州という別の主体がやるのかどうか、そこは本当に国の根本的なあり方を議論しなければいけないんですが、水平調整が必要であることは僕も十分理解しております。

 そこに国が全部権限を握ってしまうのか、そうではないところが、僕は、知事の協議会か、何か別の道州みたいな主体が決めるべきだとは思っているんですけれども、そこは制度のあり方ですけれども、知事側の方もこのままの方が楽だというような甘い感覚は捨てて、しっかりと責任を持って声を上げていかなければいけない時代に突入したと思いますので、我々地方も覚悟を持ってこれから地方分権を主張していきたいと思っております。

谷口(隆)委員 ありがとうございました。

 各知事からお考えを述べていただいたわけでありますが、まさに、これは先ほど橋下知事もおっしゃったように、世界全体が今大混乱、経済的に混乱しております。我が国も、財政が非常に逼迫しておりますし、地方団体の皆さんも大変な状況でございます。こんなときにこそピンチをチャンスに変えるというところがございますので、今までのいわば惰性で流れてきたこのような制度も見直さなければならないような状態になるんだろうと。そういうような芽も出てきておりますので、国の方でも、私どもの方も、またこの議論を進めていきたいというように思っておる次第であります。

 そこで、次の問題として、これは神野先生にお伺いしたいわけでありますが、先ほど非常にわかりやすいお話をいただいて納得できたんですが、知事会の協議項目の中に国と地方の役割分担の明確化ということがございます。これは先ほどから出ておりますけれども、国では、例えば国土の基幹ネットワークを形成する道路、国土保全上または国民経済上特に重要な河川など、国が責任を持つべき事業に縮減し、その他は地方に移譲すべきだ、こういうようにおっしゃっておるわけでございますが、具体的な問題として、本来、この道路が国土の基幹ネットワーク道路なのか、国土保全または国民経済に大きく資するものなのか、このようなところが議論をしないとわからないといいますか、非常に恣意性が入るといいますか、こういう部分もあるんだろうと思うんです。

 まあ、事前協議ということでおっしゃっておられるわけでございますが、このような観点で、今、いわば非常に簡略化された形で、国が三分の二、地方が三分の一というような負担関係を決めておるわけでありますが、こういうような形になったときに事前協議がどのように有効に働き、住民の目線から見て恣意性のないような形になるのかというようなことの御意見がございましたら、神野先生にお伺いいたしたいと思います。

神野参考人 どうもありがとうございました。

 私は、どれを直轄事業でやるのかを選定するということは、事前協議でやる事項ではなく、これは国会といいますか、国民の総意として意思決定をすべきものだと思います。

 すべての道はローマに通じると言いますが、これはローマ帝国を統合していくためには全国的な道路網が必要だということを意味しているわけですね。もちろん枝葉の道路もありますけれども、基幹的に日本国民が全部統合して共同の事業としてやるべき事業は何か、これは事前協議ではないというふうに思います。

 ただ、これが直轄事業だと決まったときに、現在の制度を残すのであれば、つまり、地方に利益があるのだから幾ばくか負担しろというのであれば、そこについては事前協議をすべきではないかというふうに考えている次第でございます。

谷口(隆)委員 わかりました。

 次に、先ほども出ておりましたが、今回、国の直轄負担金の問題で、香川県の知事の方から、香川では、四国地方整備局が香川河川国道事務所の改修費の三六%、七億円を県に説明せず工事費に紛れ込ませていた、また、国交省の出先機関で使っていたマッサージチェア購入費まで我々の払う負担金の中に含めていたのかと。このような問題の指摘があって、その後、橋下知事がぼったくりバーだとか、また、北海道の知事は議会に説明ができないと。当然だと思います。このようなことがきっかけで、これは国民の皆様にも大変大きな関心が持たれたわけでございます。

 あとは、維持管理費、工事単価の高さ、このようなことが今大変問題になっておりまして、実は、私、このことも聞こうと思ったんですが、質問時間がもうないようでございます。

 きょうおいでいただきました三人の知事さん、また知事会の皆様は、全般的にこんな問題意識を持っていらっしゃるわけでございます。こういうときに、それこそいろいろな協議をしていただきまして、行動に移していただいて、私どもも、私どもと申しますか、私個人も全く違和感はないわけで、私どももそういう方向でさせていただきたいというように思っておりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

 以上でございます。

赤松委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 きょうはお忙しい中、各参考人に貴重な御意見を賜り、本当にありがとうございます。

 この直轄事業負担金の問題をめぐりましては、やはり国民の目線からこの問題をどう考えるかということがございます。それぞれ皆さんからお話がありましたように、直轄事業負担金をめぐって情報開示や事前協議については当然の要求であり、維持管理の負担金などは直ちに廃止をする、そして、直轄事業負担金制度の廃止を含めた抜本的な見直しが必要だ、その点で国と地方のそれぞれ何が必要な事業なのか、こういう問題についても首肯できるものであります。

 その上で、国民の目線からといった場合に、国が出そうが地方が出そうが同じ税金で、そういう点ではそれがどういう目的にどのように使われているのかということについての説明責任は、国も求められているし地方も求められている。今回、香川県でこのような直轄負担金の明細を要求して退職金なども入っていたということがわかるきっかけは、県会議員の方が前年に比べて今回ふえている理由が何なのか改めて地方整備局の方に問い合わせをしたら、そういう中身がわかったというふうに承知をしているわけですけれども、いわば国民、県民に答える立場で調べていけば、おのずと明らかになってきたことなのかなと思っています。

 二井知事がお話しになりましたように、もともと直轄負担金の明細については以前から知事会でも要望が出されておりましたし、旧自治省の時代から明細を明らかにするようにと各省に求めてきたこともありますし、地方分権改革推進会議でもそういう要望があったわけです。

 そういう点で、それがなかなかできなかったということについて、各知事において問題意識の差があったというお話も、直轄負担金の中身が県の要望と同じ方向だったということで出なかったということもありましたけれども、二井知事にぜひ伺いたいんですが、もともと以前から明細の要求があったわけですけれども、何か統一的に明細を求めるようなルール化とか、そういうことは知事会の方から出されなかったのか。出されなかったのであれば、それはなぜなのかなというのが率直な疑問でありますので、その点をお示しいただけないでしょうか。

二井参考人 知事会としては、先ほど御答弁申し上げましたように、昭和三十四年以来、直轄事業負担金の廃止、そしてその後、何年かたちましてから、特に維持管理費の負担金の廃止の問題を中心にずっと要望をしてきました。したがいまして、手続の方については、はっきり申し上げまして、余り関心がなかったというような形になってしまったというふうに思っております。

 確かに、旧自治省時代から国の方に具体的なものを出しなさい、出してくださいという要請はいろいろありましたが、知事会といいますか、知事の立場からはそのことについて統一的な要請を関係省庁にしなかった、後は事務的に任せてしまったというのが今の反省点であるというふうに考えております。

 したがいまして、今のような状況でありますから、知事としても、当然、具体的な説明責任を果たさなければならないという中で、今回、ぜひ情報開示をしてもらいたいというのが強い願いであります。そうしませんと、私どもも、今年度、直轄事業負担金を払わなければならないという時期がいずれ来るわけであります。八月から九月ごろ請求が来ますので、その際は必ず明細を出していただかなければ、今のような状況の中ではお支払いができないということになりますので、全国知事会としては、国の方で早く、五月中に情報開示をしてもらいたいということをお願いしておりますので、ぜひそういう方向にしていただきたいと願っております。

 以上です。

塩川委員 先ほど橋下知事のお話にもありましたし、泉田新潟県知事も、地方には二人の上司がいるという話がありました、霞が関に顔を向けているという職員の話がありました。その点で、県の職員の中に国交省など国からの出向があるという問題があります。

 その点が人事の面でもこういった開示についても妨げとなるような実態が生まれていないだろうか、そういう懸念というのを覚えるんですけれども、地方自治のあり方として、こういう国からの出向のあり方の問題についてどのようにお考えか、皆さんに一言ずつ短く、いかがでしょうか。

上田参考人 人事交流という立場では、新鮮な感覚をそれぞれが味わう。例えば霞が関の皆さんは現場を味わう、また、県から国の方に行くときには全体の流れを知るとか。県と市町村との関係の中でも、市町村から県に派遣があると、全体のことを学んで役に立ったという意見も多く聞いています。

 私も感想文を読んでおりますけれども、例えば市町村から七十人から県に来ておりまして、そういう感想文を読んでおりますが、大方は勉強になったと。そして、県の立場からは、市町村から副市長などを求められることもありますが、とにかく実家のことは考えないで市町村のためにだけやれという訓令だけは出しております。大方は勉強になったという形で帰ってきております。

 問題は、首長のリーダーシップではないかというふうに思っております。甘んじて受け入れているのか、それとも求めて受け入れているんでしょうか。私の場合は、何人か求めております。

二井参考人 山口県の場合も、国から来ていただいている職員は数名いるわけでありますけれども、これは人事交流という立場の中で来ていただいていると私は理解しております。

 私自身も旧自治省の採用でありましたし、鹿児島県とか長崎県で勤務をさせていただきました。このことを通じて地方自治のあり方等々についても大変勉強になった、それが今も生きているというふうに理解をしておりますから、そういう意味での人事交流をお互いにしているわけであります。

 したがいまして、国の方から、例えば私どものところは土木建築部長が来ておりますけれども、来ておるから国に対して遠慮するとかいうことは一切ありません。

 以上でございます。

橋下参考人 大阪府も国から出向していただいております。適材適所ということで、非常によく頑張ってくれています。

 ですから、国の出向者がどうのこうのよりも、それは自治体のプロパーの職員の意識といいますか、直轄事業の負担金の話ではないんですが、例えば国所管法人の、いわゆる天下り先の所管法人に対して自治体は分担金を出しておりまして、僕はその天下りの役員報酬が自分の報酬よりも高いこともあって頭に来たので、分担金はもう払わなくていいんじゃないかという話をしたら、各担当課が、百幾つぐらい所管法人があって、僕は一切払うなと指示を出したんですが、僕の前に一斉に行列ができて、各部局部局がこの所管法人は必要なんです、この事業は必要なんですとみんなが言うんですね。僕は職員に、自分らの給料を、僕が切ったわけなんですけれども、退職金まで切られて、人件費まで切られて、天下りの報酬は何千万ももらっていて悔しくないんですかと言っても、だれもそれに対して悔しさを出さないというのが今の現状であります。

 だから、これは出向者がどうのこうのというよりも、これは直轄事業の負担金や補助金制度によって完全に主従関係に操られている。この現状が根本にありますので、国の出向者がどうのこうのという問題とはまた別の根本的な問題だと思っています。

神野参考人 私は三知事の御意見とほぼ同じなのですけれども、違った観点から行政を見直したり、公務員そのものの能力を引き上げていくということでローテーションをさせるということ自身、必要というよりも、あってもいいのではないかと思っております。

 ただ、問題は、出向をした人間であろうとなかろうと、中央官庁の方を向いて仕事をせざるを得ないような仕組み、つまり、総合行政ができないような仕組みにあるというふうに考えています。いわゆる縦割り行政と言われている現象ですね。この現象をつくり上げているシステムの改革が必要なのではないかというふうに考えます。

塩川委員 ありがとうございます。

 次に、都道府県と市町村との関係でも負担金がございます。これは、日本経済新聞の社説でも、「都道府県が実施する公共事業における市町村の負担金にもそのまま当てはまる。国を批判するなら、市町村の声もしっかりと受け止め、早急に改善すべき」とありますし、時事日報でもそういうコラムがございました。

 この点について、県の事業において市町村に対し情報開示を行うとか県との協議のルール化というのはどのようになっているのか、その点について三知事にお答えいただけないでしょうか。

上田参考人 県と市町村との関係では、一般に言えば、下水道事業が大半であります。各市町村別に利益を受けるという形の中で一定の負担をしていただいているという形になっていますので、この考え方が正しいかどうかはわかりません。

 国との関係でいえば、私は、県益だったから圏央道あるいは利根川、江戸川の堤防強化について負担をしていたつもりでありますが、市町村が、これは市町村の利益ではなくて県民全体の利益だという判断でそういう御要望があれば、そうした要望を私たちは率直に受けて何らかの形での改善をしなきゃいけないというふうに思っています。多分に国と県との関係が県と市町村との関係に投影しやすいことだけは間違いないというふうに思っておりますので、しっかり検討したいと思います。

二井参考人 山口県の例で申し上げますと、私どもは、直轄事業負担金は今年度予算で約百十六億円国の方に払うという形になっておりまして、一方、市町村からは、例年、大体六十億円ぐらいいただいておるという形になっています。

 しかしながら、今、直轄事業負担金の見直し問題が出てきておりますから、私どもは、市町村には説明はしているというふうに理解をしておりますけれども、やはり、この機会にそのあり方については見直さなければならない、市町村からの負担金についても見直さなければならない、そのように考えております。

 したがいまして、直轄事業負担金の見直しと並行しながら、市町村の負担金についても検討をしていきたいと考えております。

橋下参考人 塩川先生がおっしゃるとおり、府も反省しなければなりません。大阪府域内のある市から、水道料金の料金決定について、これは大阪府もえげつないぼったくりの請求書じゃないかというような声が上がりまして、すぐに値下げの検討指示を幹部に出しました。

 やはりこれは行政マンの長年のあしき慣行といいますか、そういうものだと。国からの請求書は根拠がなくても払う、都道府県からの請求書については市町村が根拠なくして払う。

 ですから、今回の直轄事業の負担金の問題は、国と都道府県の問題だけでなく、都道府県と基礎自治体との関係もきちんと見直すきっかけとなる非常に重要な、日本国全体の行政組織、行政システムのあり方全般を根本的に見直すきっかけとなる重要な問題だというふうに思っておりまして、大阪府庁も、これは厳しく、市町村に対する説明やそういうものを果たしていくようにこれから取り組んでいこうと思っております。

塩川委員 ありがとうございます。

 公共工事のあり方をめぐってということで……。

 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。

赤松委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正です。

 参考人の皆様方には、大変お忙しい中、わざわざ時間を割いて本委員会に御出席をいただき、本当にありがとうございました。

 限られた時間でありますので、簡潔明快に答弁の方をお願いしたいと思います。

 我が党もかねがねこの問題について強い関心を持ってまいりました。端緒を開いたのは、香川県議会においてこの問題が取り上げられて、大阪の橋下知事が、新聞によりますと、早速そういう県に対して賛意を表し、やるぞという決意を表明されたというふうに聞いておるんですが。

 こういうふうに、この制度というのは長い長い歴史があるんですけれども、なぜ今日までこの問題が今のように顕在化してこなかったのかという点について、私もなぜかなというふうな感じを持っているんですが、まずその点について三知事にそれぞれお答えいただきたいと思います。

上田参考人 先ほども申し上げましたが、私もいろいろ旧来の慣習について異議を申し立てております。例えば、埼玉県が主体になりまして、一都三県で戸倉ダムという事業中のダムを中止に追い込んだ例などがあります。これは、八ツ場ダムという大きなダムをつくる過程の中で、要するにその枠の中に入ってしまうダムをまた改めてつくっているというのもおかしな話だという形で。

 そのように課題が問題意識の中にあるときには顕在化しやすいんですが、先ほど二井知事も言われましたように、いわば直轄事業の中でも、全面的に廃止する過程の中で、維持管理費なんというのは不思議な話だ、当然国が持つべきではないかというようなところに関心が強く行っていたところで、こうした流れの中で発見できなかった部分があったというふうに思っていますし、先ほど申し上げましたように、埼玉県にとってみれば極めて県益でありましたので、そちらの方まで問題意識が行かなかったというふうに思っております。

二井参考人 全国知事会は、毎年度、大変多数にわたる要望事項をまとめて各省庁に要望してきております。したがいまして、この直轄事業負担金の廃止問題もその多数ある要望の中の一つというふうな位置づけがされておりましたために、今日までこの問題について具体的に今回のような形で御説明をし、あるいは国の方に要望するという機会がなかなかなかったという形になってしまったというふうに考えております。

 今回、この負担金の使途をめぐってこういう問題が起きましたので、私どもとしては、この機会が一つの大きなチャンスである、そのように考えておりますので、この機会に長年の懸案事項についての解決をぜひ皆様方のお力でもお願いしたいというのが現在の私の心境でございます。

 以上でございます。

橋下参考人 補助金制度という今の国と地方の関係で、地方は声を上げられなかった、声を上げてしまうと補助金をとめられるなり、ほかの予算で仕打ちを受けますので、そういう意味でとにかく国に対して声を上げられないという現状と、地方側も国民に関心を持っていただくというような意識が足りなかったというふうに思っております。議論をしたりとか要望をするだけであって、国民はどういうことを言えば関心を持ってもらえるのか、国民の目を引くというようなところの意識が足りなかったことも、こういう形で大きく取り上げられなかったことの要因かなというふうに思っております。

重野委員 非常に情緒的な答弁でして、そうか、そういうことで今日までずるずる来たのかと。

 今の論点に照らしてみれば、この間地方がこうむった、物的なというか質的なというか、その損失というのは大変大きいものがあったんだろうと私は思うんですね。そういう意味では、地方自治体の責任者として頑張っておられる皆さんにおいては、心意気としては過去の失ったものを取り返すというぐらいの迫力を持ってこの問題については本当に粘り強く取り組んでほしい、このように念じております。

 次に入りますが、直轄事業という事業が、地方自治体という視点でとらえて、果たして地方自治体の重みに合致をする事業であったかどうかという点についても検証をしていかなければならないと思うんですね。特に財務省等々は、地方自治体に対しては、あるいは国民に対しては、受益者負担ということをにしきの御旗のように言うわけです。それで説き伏せるという形になっているんですが、先ほどのお話を聞いておりますと、必ずしも国の計画と地元の要望というものが合致していない局面もたくさんあるんじゃないか、こういう感じがするわけです。

 そこで、直轄事業という事業そのものが、県政を預かる知事という立場にとってどういうものととらえておるのか、その点について同じように三人の知事の皆さんの御意見を拝聴したい。

上田参考人 先ほどちょっと触れましたが、戸倉ダムというのが事業中でございました。これは一都三県で国の直轄事業の建設費の負担をしております。これまでダムの廃止だとか事業中止というのはすべてまだ工事していない話でありますが、この戸倉ダムに関してはもう既に工事が進んでおりました。そこで、県の水の需給関係やリスク管理、いろいろ計算したあげく、私は一都二県を説き伏せて廃止をさせていただきました。

 これはまさに直轄事業といえども県益に反することであれば物を申すということでありますが、先ほどの視点の中で申し上げれば、全部が全部知事としてわからない部分もあるかもしれませんから、橋下知事が言われますように、注意深い知事、注意深い議会がいなければ問題が顕在化しないというようなことではいけない、システムとして国と地方のあり方というものをきちっと築き上げるというのが一番大事だというふうに思っております。

二井参考人 先ほどお話し申し上げましたように、基本的には、山口県の場合は、直轄事業につきましても県の要望を踏まえて今日まで対応してきていただいたというふうに理解をしております。したがって、山口県の発展のために、さらには山口県の道路が整備されなければ九州の方に行けなくて困るわけですから、そういう意味では広域的な観点で、山口県の場合は直轄事業の中で整備をしていただいたというふうに考えているわけであります。

 しかしながら、今直轄事業の事業の数が余りにも多い、したがって、どうしても受益者負担という問題が出てくると思うんですけれども、直轄事業を本当に国の基幹的な施設等に絞っていただければ、別に受益者負担ではなくて、もっと国としてのネットワークづくりの中で必要な透明性のある基準というものができるわけでしょうから、まずは直轄事業の範囲を非常に絞っていただいて、そしてできるだけ地域の自由度を高めていただくことが大変大事ではないかと思います。

 道路についても、県の管理の国道ももちろんあるわけですけれども、それらについてもきめ細かく基準がつくられているわけですから、そういうものについて、あるいは県道もそうですけれども、基準をできるだけ自由度を増すような形にしていただければ、もっと実情に合った県の社会資本の整備ができるというふうに理解をしております。

橋下参考人 受益者負担の話はよく言われるんですけれども、本当に地方の利益ということでありましたら、地方に権限と財源をもし譲ってもらえるのであれば、それは地方の権限と財源でやりますので、受益者負担とかいう話にはならないのかなというように思います。ただ、ここは抜本的な制度の話なので、まだちょっと遠い話なのかもわかりません。

 ただ、一番問題なのは、ガバナンスといいますか、負担金の額とか割合ということよりも、だれがその事業に対して最終の決定と責任を持つのか。事業そのものについては、地方にとって道路事業にしても河川整備事業についても必要なものはあります。ただ、その決定権と責任が地方にないことが一番重要でして、これもまた国会議員の先生には申しわけないんですけれども、直轄事業の負担金の各出先機関の整備局の請求書のチェックは本来だれがやらなきゃいけないのかというと、今の仕組みのままだと、国会議員の先生がチェックをする話になってこざるを得ないのかなというように思っています。

 ですから、地方は白紙の請求書が来ますが、その請求の中身が地方にとって過酷なのか、地方の補助金制度とバランスを欠いているのかどうなのかということは、今の仕組みでいけば、国会議員の先生がチェックをすべきということになるんでしょうけれども、それは僕は無理だと思っています。

 だからこそ、これは地方のガバナンスに、我々知事のコントロール下に置いていただきましたら、国会議員の先生がチェックすべきところを、我々も選挙で受かっていますので、そこをきちんと厳しい視点でチェックにかかる。ですから、負担金の割合が、もし本当に決定権、ガバナンスをきちんと地方に譲ってもらえるのであれば、財源ももらえるのであれば、これはその地域の中の受益者負担という観点から、一定の割合のお金と国からのお金というような、ミックスというようなやり方もあるのかもわかりませんけれども、でも、そこよりも一番の問題点はやはりガバナンスで、我々知事のもとに出先機関を置いてもらえれば、国会議員の先生のかわりにきちんと厳しくチェックする。

 それができない今のシステムが一番問題でありまして、そこを変えなければいけないというふうに思っております。

重野委員 次に、山口県知事に重ねて聞きますけれども、今知事会の方でプロジェクトチームがスタートしたというふうに聞いております。実は、全国知事会は五十年前にもこの制度の廃止ということを決めているわけですね。政府も、二〇〇三年以降、制度の見直しを閣議決定しているんですね。だけれども、今の状態ですね。これはやはり知事のリーダーシップが求められておると思うんですが、今度こそは、これは言いっ放しで終わるんじゃなくて、きちっとやらせるという決意を持ってやっていただきたいということが一つ。それについて意見を聞きたい。

 それから、神野先生、私は、先生が自治体への不十分な権限移譲という根源的な問題を指摘されておりますが、今後、この問題は制度の運用の改善とか補正予算での交付金の手当てという次元で終わるんじゃなくて、これを契機に徹底した地方分権を確立していくということが求められていると思うんです。その点についても見解をお願いいたします。

 知事からお願いします。

二井参考人 今お話がありましたように、今度こそこの直轄事業負担金問題について私どもの望む方向で解決をしなければならない、そのような強い決意を持っております。

 国と地方のあり方を変える問題です。単なる負担金という財源の問題ではなくて、国と地方のあり方を考える上での非常に大きな問題の一つだというふうに理解をしておりますから、私どももそういう決意を持ちますけれども、国会議員の皆様方も、国と地方のあり方を変えるということにつながっていくわけですから、その辺については皆様方の覚悟、決意もぜひよろしくお願いを申し上げたいと思います。

神野参考人 どうもありがとうございました。

 イギリスの首相チャーチルが、第二次世界大戦が始まったときに、この戦争は勝っても負けても残るのは悲惨だけだ、そこで、議会内に委員会をつくらせて、戦後の荒廃した経済状況からどうやって復興するのかという、復興計画を立てろというふうに言います。一九四二年、戦争中に、ベバリッジを委員長とするベバリッジ報告という有名な報告が出ます。その合い言葉は揺りかごから墓場までです。悲惨な戦争からいかに経済を復興させるのかというのは、揺りかごから墓場までなんですね。

 私たちは、今非常に困難な悲惨な状態を迎えようとしているわけですね。これはこの委員会の委員の皆様方共通の認識になっていると思いますけれども、今国民が心配しているのは、どの世論調査を見ても、大体順番は医療、雇用、福祉、教育の順で、生活を支える公共サービスが出てきていない。これを出すのは地方自治体だけなんですね。

 先ほど二井知事がお話しになりましたけれども、この直轄負担金の廃止問題は、私の理解が間違いなければ、昭和四十四年とおっしゃいましたけれども、四十四年、つまり、昭和四十五年度の予算編成から問題になっています。ずっと問題になってきて、今なぜ問題になったのかといえば、今こそ地方自治体の財政が破綻状態になる。しかし、橋下知事がおっしゃったように、住民を目の前にしている地方自治体は、住民の生活を支えるサービスを出していかなくちゃいけないんですね。

 そういうときこそ、不必要なとは言いませんけれども、住民のニーズに応じたサービスをきちんと出せるような方向にさせていただかないと。直轄事業をやるため、これは昭和三十五年から、ありていに言ってしまえば、恐らく重化学工業の時代で、全国的に整備する道路網や港湾網とか必要だったからだと思いますけれども、現在ではそのニーズよりも生活を支えるサービスの需要の方が高まっていて、今こそ分権をして国民の不安にこたえることが重要になってきているから問題になってきているのではないかというふうに思います。

重野委員 終わります。

赤松委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 皆様におかれましては、貴重な御意見を賜りまして、本当にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十四分散会


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