衆議院

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第11号 平成23年4月19日(火曜日)

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平成二十三年四月十九日(火曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 原口 一博君

   理事 稲見 哲男君 理事 小川 淳也君

   理事 黄川田 徹君 理事 古賀 敬章君

   理事 福田 昭夫君 理事 石田 真敏君

   理事 坂本 哲志君 理事 西  博義君

      石井  章君    石津 政雄君

      内山  晃君    打越あかし君

      大谷  啓君    大西 孝典君

      逢坂 誠二君    奥野総一郎君

      笠原多見子君    後藤 祐一君

      鈴木 克昌君    高井 崇志君

      玉城デニー君    中後  淳君

      中屋 大介君    永江 孝子君

      花咲 宏基君    平岡 秀夫君

      藤田 憲彦君    松崎 公昭君

      皆吉 稲生君    湯原 俊二君

      赤澤 亮正君    小里 泰弘君

      加藤 紘一君    川崎 二郎君

      橘 慶一郎君    谷  公一君

      中谷  元君    森山  裕君

      稲津  久君    塩川 鉄也君

      重野 安正君    柿澤 未途君

    …………………………………

   総務大臣

   国務大臣

   (地域主権推進担当)   片山 善博君

   内閣府副大臣       東  祥三君

   総務副大臣        鈴木 克昌君

   総務副大臣        平岡 秀夫君

   総務大臣政務官      内山  晃君

   総務大臣政務官      逢坂 誠二君

   厚生労働大臣政務官    小林 正夫君

   政府参考人

   (内閣法制局第三部長)  外山 秀行君

   政府参考人

   (国家公務員制度改革推進本部事務局長)      藤巻 正志君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  久元 喜造君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           尾崎 春樹君

   総務委員会専門員     白井  誠君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十九日

 辞任         補欠選任

  小室 寿明君     玉城デニー君

  後藤 祐一君     花咲 宏基君

  佐藤  勉君     小里 泰弘君

同日

 辞任         補欠選任

  玉城デニー君     打越あかし君

  花咲 宏基君     後藤 祐一君

  小里 泰弘君     佐藤  勉君

同日

 辞任         補欠選任

  打越あかし君     中屋 大介君

同日

 辞任         補欠選任

  中屋 大介君     小室 寿明君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案(第百七十四回国会内閣提出第五六号、参議院送付)

 国と地方の協議の場に関する法律案(第百七十四回国会内閣提出第五七号、参議院送付)

 地方自治法の一部を改正する法律案(第百七十四回国会内閣提出第五八号、参議院送付)


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     ――――◇―――――

原口委員長 これより会議を開きます。

 第百七十四回国会、内閣提出、参議院送付、地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案、国と地方の協議の場に関する法律案及び地方自治法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として内閣法制局第三部長外山秀行君、国家公務員制度改革推進本部事務局長藤巻正志君、総務省自治行政局長久元喜造君及び文部科学省大臣官房審議官尾崎春樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

原口委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。橘慶一郎君。

橘(慶)委員 それでは、地方三法の質疑をさせていただくわけですが、桜が少しずつ散りかけております。桜の歌、大伴家持で始めたいと思っております。

 少し気持ちがあります。大伴家持卿の終えんの地は宮城県の多賀城市でありました。そしてまた、この被災の後にも元気に桜が咲いたという話題もあちこちから出ております。そんな思いを込めて詠ませていただいて、質問に入らせていただきます。

 巻十九、四千百五十一番。

  今日のためと思ひて標めしあしひきの峰(を)の上の桜かく咲きにけり

 ありがとうございます。(拍手)

 そういう思いを込めながら、きょうの役割は法案の審査であります。ちょっと形式的になる部分もあるかもしれませんが、順次、この三法のいろいろな部分について、提案された菅内閣としての見解をここで質問させていただいて、議事録に残してまいりたいと思っております。

 一つだけ、後半の方で私なりの思いがございます。それはひょっとしたら委員の皆様方と少し違うかもしれませんが、国と地方の協議の場というものをこういう法定化して余り形式的にがちっと決めてしまうと、運用のところで大変御苦労されることになるんじゃないか、そういう心配を私は個人的に強くしております。ここは皆様方と多少違うかもしれませんが、せっかく質問の機会でありますので、後半はその問題を特に取り上げさせていただきたいと思います。

 それでは、地方自治法の方から始めてまいります。

 最初に、今回、いろいろな地方からの要請あるいはいろいろな御議論の末、いわゆる義務づけ・枠づけを弾力化するということで、幾つかの枠を取り外しておられます。その中で、まず、地方議会の議員定数の上限数に係る制限というものを廃止することとされております。

 各議会では、地方では、今、議員定数の削減に取り組んでいるという現状が多く見られるところであります。上限数を外すということで、例えば逆に、今の取り組みからいうと、そんなに減らさなくてもいいよとか、そういう違ったメッセージにとられても困る。恐らくそういうメッセージではないような気がいたします。

 改めてここで、この規定の廃止の理由、あるいは廃止を求めるいろいろな団体からの要望の有無について、お伺いをしておきたいと思います。

片山国務大臣 議員定数の上限を廃止する改正案でありますけれども、決して、上限を取っ払ったからといって、どんどんふやしてくださいというメッセージではありません。

 幾つか理由がありますけれども、一つはやはり、自治体の政治の根幹である議会の構成について、できるだけ規律といいますか国の規制は少なくした方がいいというのが背景にあります。これが一つであります。

 それからもう一つは、現実の問題として、上限数がいわば実質的には定数化してきたわけです。ですから、先ほど議員がおっしゃったような議員数の削減というのも、上限数を前提にして三人削減したとか四人削減したということを皆さん考えておられるわけで、考えてみればおかしいわけで、上限数の内輪で決めているのに削減したというのは本来語義矛盾なわけです。

 事ほどさように、上限数が事実上定数化している、これはやはりやめた方がいいだろうと。本当に何人必要かというのはそれぞれの自治体で考えることがいいだろうというようなことがあります。

 ぜひ、この上限数を撤廃することによって、今までのような人口に比例して議員数が決まるというワンパターンではなくて、それぞれの自治体で何人必要かということをよく住民の皆さんに説明しながら決めていただく、これが本来の趣旨であります。

橘(慶)委員 ありがとうございます。

 そう聞くとちょっと安心するわけですが、ただ、今現在、地方自治の現場では、それぞれいろいろな分野でちょっと例外的なというか、想定できないいろいろな事柄が起こっているという事象もございます。お気持ちとすればそういう気持ちですよといって、だけれども、今度また全然違う形で、どれだけでもふやしちゃおうと思えばできないわけでもないという、ちょっとそれは余りにもSF小説みたいなというお話もあるかもしれませんが、何か最近はそういうことも常に一面頭に置かなきゃいけないようなところもあるので、あえて聞かせていただいているわけであります。

 二つ目であります。

 法定受託事務に係る事件でありましても、今回新たに、地方議会で議決事件とすることが可能になっております。しかし、そこから政令で定めるものは除くという形になっております。政令で定めることを予定しておられる事項について伺います。

片山国務大臣 今回、法定受託事務に係る事件でありましても、新たに、条例で地方議会のいわゆる議決事件とすることができるという改正案にしております。

 これは、御質問にはありませんでしたけれども、私は画期的なことだと思います。私も首長をやっておりまして、法定受託事務については今まで制約がありましたけれども、これが議会で審議の対象になるということになりますと、地方自治にとっては大変大きな前進だと思います。

 ただ、何でもかんでも地方議会で議決することがいいのかというと、それは疑問なしとしないということで、一定のものについては議会の議決の対象としないということがあってもいいということで、政令で定めるということになったわけであります。これは具体的には国の安全に関することなどでありまして、例えば非常時における国民の生命身体の保護にかかわるものでありますとか、国の安全に関するものなどを一般論としては想定しているわけであります。

 これから、主として各省との間で意見交換をしながら、具体的な政令の内容というのは詰めていくことになるだろうと思います。

橘(慶)委員 やはり国には国の役割が、地方には地方の役割がということかと思います。ここはしっかり、国としてしなきゃいけないことについては政令でお定めいただきたいと思います。

 続いて、基本構想の策定義務を廃止ということになっておりますけれども、このことと、その次の予算、決算の報告義務を順番に聞きます。

 このあたりはちょっと、考え方なんだろうなと思うんですが、しかし、現実に基本構想の策定業務を廃止すると言われても、では実際、例えば選挙で市長さんなり知事さんになられた、どんな県にしましょうか、どんな市にしましょうかということになれば、当然、何らかの方向性というものは定めるのが普通だし、そういうものだと思っております。だから、逆に言えば、法律でそれを義務づけなくたってそれぞれの地域でやるということになるのかな、そんなふうにも思うわけであります。

 ただ、ここで確認しておかなきゃいけないのは、よく、しかしそういうものをつくらないと例えば支援措置がありませんとか、そういうものも世の中多いわけで、そういったものを策定しないという自治体はそんなにないと思いますけれども、そういうことをもって交付税とか地方債のいわゆる総務省さんの取り扱いというものに不利益を生じることは当然ないんだろうということで、これは確認をさせていただきます。

久元政府参考人 今委員が御指摘になりましたように、今回の改正は、市町村が基本構想を策定するということを別に否定しているものではありません。これを一律に義務づけているということが地方公共団体の自主性、自立性という観点からいかがなものかという観点から、策定義務を廃止するものでございます。

 市町村構想の策定と地方交付税の算定あるいは地方債の取り扱いとは別に連動しているものではありませんので、今回策定義務を廃止したからといって、そういう地方財政措置に影響することは全くないというふうに考えております。

橘(慶)委員 そこで、その次は予算、決算の報告義務の廃止ということなんですが、それも、今ほど来の御答弁にもありますように、あえて義務づける必要はないと。

 それは一つの考え方なんですが、今度、逆にここになりますと、この間も地方財政の現況ということで二十一年度の取りまとめなどを総務省さんは出されておりますし、現実、要するに地方のそういう実情を把握しないと交付税だって組んでいけないということを考えますと、結局、予算、決算の報告義務を廃止しても、実務上は、報告してください、こういうフォーマットでこういうものを教えてくださいということになってしまうんじゃないかと思うんですよ。

 そうすると、それを廃止するということにどんな実益があるのかなという感じがするんですが、ここは大臣の方のお考えをお伺いしておきます。

片山国務大臣 交付税の算定に必要な基礎数値といいますか資料はこれからもとり続けます、それがないと交付税の算定はできませんから。

 しかし、予算、決算というものについては、私も知事を八年間やりましたけれども、市町村の予算、決算の報告を受けるということに、全くと言っていいかどうかわかりませんけれども、意味を感じませんでした。確かに報告はあったのだと思いますけれども、八年間、その報告書を一回も見たことはありません。

 これが必要な場面というのは、統計上必要になるということはあると思います。しかし、これらは市町村でそれぞれ公表されておりますので、特に今はインターネットでホームページに掲載されていますので、必要なところはそれを拾えばすぐわかるわけであります。ですから、あえて報告を義務づけることはないと私も思います。いわば必要な基礎資料の公表手段の高度化、多様化によって、この種の文書で届ける、報告をする、そういう必要性がなくなったということだと思います。

橘(慶)委員 そこは私も理解をするわけですけれども、ただ、今回、この分野ではないんですが、例えば過疎の振興法なんかもそうですが、計画を今まで義務づけていたもの、計画をつくることができるものとするとか、そういう改正をいろいろ一律にやられたわけですね。だけれども、考えてみたら、ではそれをつくらないのかといえばそうでもないということを考えると、要は、このことによって実益的にどれくらい変わるのかというところをやはり、これはこれでそれなりに意味があると私は思っております。そういう白パンみたいなものをもう県庁へ持っていかなくていいとか、そういうことでしょうから。

 ただ、そのことでどれくらい本当の意味での事務の合理化とか、変わっていくのか。実際は、予算、決算の報告はなくなるけれども、恐らく、いろいろなデータをとるためのそういうものについては、随時担当者同士ではお願いをし、報告をいただくということにならざるを得ないんだと思うので、あえてちょっと問題提起的に聞かせていただいたわけであります。

 続きまして、一部事務組合によらずに機関、職員等の共同設置ができる、その範囲を広げていくということになっているわけです。ここは、私、たまたま自分の出身県がそういったものはほとんど広域圏の事務組合とか県全部の総合事務組合でやっていて、ちょっと認識が薄かったものですから、こういう一部事務組合によらずに共同で自治体が機関とか職員などを共同設置している事例というのがどの程度あるのか、ここを確認させていただきたいと思います。

久元政府参考人 地方自治法で定められております共同処理の手法は、今委員御指摘がありましたように、一部事務組合あるいは広域連合といったようなものがあるわけですけれども、全体の件数は七千五百六十三件。これは平成二十二年七月一日現在の数字ですけれども、その内訳で一番多いのは事務の委託でありまして、これが五千二百六十四件あります。それで、御指摘がありました機関等の共同設置でありますけれども、この時点で三百九十五件活用されているという状況になっております。

橘(慶)委員 ありがとうございます。

 七千五百件、五千二百件の委託事務、そのうちの三百九十五件、そういう形で活用されているということは理解いたしました。

 そこで、今回は、議会事務局とか監査委員会事務局とか、そういったものを例えばA町とB村で一緒につくってもいい、こういうことになってくるわけであります。これも確認的なお話なのですが、そういった場合、例えばその議会事務局に対するA町、B村の指揮命令権というのはどんなふうになっていくのかな。あるいは、そこに所属される職員という方は、この場合は共同設置ですからそこに新しい法人格はないわけで、帰属団体というのはどういうふうになるのかな。これも今運用されているわけですが、一応確認をさせていただきたいと思います。

久元政府参考人 今回、議会事務局、委員会、委員などの事務局、それから内部組織の共同設置という新しい手法で、事務を複数の地方公共団体が共同して行うという手法を拡充させていただきたいというお願いでございます。

 そういった場合の指揮命令ですけれども、これはそれぞれの地方公共団体の長が指揮命令を行うということになります。例えば、A市とB市が共同して税務課を設置した場合には、A市の職員とB市の職員が混在することになりますので、それぞれが指揮命令を行うということになります。

 したがいまして、今回、こういうようなものが活用される分野というのは、それぞれの首長が日常的に指揮命令を行うという分野よりは、包括的な方針を示しまして、あとはその方針に沿って日常的な事務が行われていく、そういうような分野になじむのではないかというふうに考えているところでございます。

橘(慶)委員 そんな意味では、やはり監査委員会事務局とか議会事務局とかが事例に挙がるというのは理解をするわけであります。

 地方自治法は以上にさせていただいて、次は、地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案。ここは、地域主権戦略会議の分野と義務づけ・枠づけの緩和といいますか廃止の部分と二つのパートに分かれるわけですが、先に地域主権関係について幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 内閣府設置法第四条第一項第三号の三に、地域主権改革ということで新しい条文を置こうとされておるわけであります。そこの定義におきましては、「地域住民が自らの判断と責任において地域の諸課題に取り組むことができるようにするための改革」、こういうものを今度推し進めるんだという文言になっているわけであります。

 そこで、まず冒頭、それでは、こういった改革のために何が今問題であって、何を改革しなければならないか、非常に教科書的なことから始めますが、そこをどのようにお考えになっているか、まず確認をしておきたいと思います。

片山国務大臣 地域のことは地域に住む住民の皆さんが責任を持って決める、これが地域主権改革のいわば一番基本的な考え方、理念だろうと思います。

 これを何が阻害しているかということでありますが、地域のことを地域の住民の皆さんはこうしたいということで合意が得られたのに、その合意だけでは物事が決まらない。なぜか。それは、そのことを実現しようと思ったら、改めて国の方にお伺いを立てたり、許可をもらったり、承認、認可をもらったりしなければいけない。こういうことが多いと、やはり地域のことは地域の住民の皆さんがみずからの判断と責任で決めるということにならないわけであります。したがって、できるだけ地域のことに関する国の関与を減らすということが制度的には必要だろうと思いまして、その一環としてこの法律を提案しているわけであります。

 ただ、それだけではなくて、私もみずからの経験を振り返ってみますと、もう一つは、制度面以外に、やはり意識の問題というのはかなり大きな要素を占めていると思います。これは国側にも自治体の側にもありますけれども、何となく上意下達といいますか、国の顔色をうかがうような意識がないわけではないし、国の方は、法律外の手法によって意思を貫徹する、実現させる、そういう思い込みがないわけではないわけでありまして、潜在意識といいますか、こういうものを払拭するということも非常に重要なことだと思っております。

橘(慶)委員 今、言ってみれば二つの論旨ということで挙げていただきましたが、なかなか大事な、そこがやはりある意味で議論していく糸口だと私も思います。

 というのは、国の関与をなくしていくという分野については、ある意味で今までも取り組んできた分野であります。

 意識づけをどうしていくか。これはやはり時代によって移ろっていく部分は当然あるわけでして、今大臣は答弁でも、総務省から各自治体へ出しているものは技術的助言であって、それは昔で言う通達ではない、こういう話もよくされるわけですけれども、しかし、そういったことをどう推し進めるかについて、今度は、法文上それをどのように記述していくか。我が国には我が国の日本国憲法から始まった一つの法体系があって、その法体系をどういうふうに維持発展させていくかという論理の中で、それをどう位置づけていくかということも大変大事な立法作業であろうと思っておるわけであります。

 そこで、そのことに入っていくために、一つ、今回の法案の前に、こういう地方と国との関係を規定する法案としては、平成十八年の地方分権改革推進法というものがあったわけであります。そこの第二条にまた、地方分権改革推進の基本理念というものが書いてあったわけであります。その理念と今回の内閣府設置法での書きぶりとの主たる違いというのは、先ほど私が例に引きました「地域住民が」云々という、地域住民に関する文言の部分が今度は加わっている、このように見てとれるわけですが、この辺にかけている思いというのは何かございますか。

片山国務大臣 先ほど私申し上げましたけれども、これは昨年の一月の下旬だったと思いますが、当時の鳩山総理が所信表明を述べられた中に、地域主権改革というのは、地域のことは地域に住む住民の皆さんが責任を持って決めることだ、こういうことをおっしゃっておられまして、私もそのとおりだと思って、当時は外野におりましたけれども、聞いておりました。

 そのことに象徴されるように、地域主権改革というのは、あくまでも住民が主役であって、住民の皆さんの意思と責任でもって地域のことを決めていくという、ここに一番の心髄があると思っております。

 もちろん、従来の地方分権改革という文脈の中に住民が登場しないわけではありません。ありませんが、どちらかというと主眼は自治体に置かれていて、自治体の権限を強化する、自治体の自由度を高めるという、そこにやはりポイントがあったように思います。もちろん程度の差ではありますけれども。

 そういう意味で、地域主権改革の中においては住民が主役として躍り出たといいますか、そういう印象を私は持っております。

橘(慶)委員 そういう思いであるということは理解をしながら、ただ、地方自治の本旨という言葉もあったり、今までも住民自治というような言葉もあったりして、いろいろなことがあったわけですけれども、その中で、今回、こういったものを一つ理念として打ち出す。それをどういう文言であらわしていくかということについては、先ほど申し上げたように、ずっと今までの立法のいろいろな積み重ねの中で、言ってみればどういう文言をこの法体系の中に取り入れていくかということについては、一面、しっかり審査をするといいますか、慎重に取り組んでいってもいいのではないか、このように思うわけであります。

 そこで、ここは一つ確認ですけれども、世の中が変われば、どうしたって法令にもいろいろな用語が出てきます。インターネットという言葉も出ているでしょうし、今のコンピューターという言葉は、昔は電子計算機と言っていたと思うんです。昔は、私の経験でいえば、いい悪いは別として、リゾートという言葉があったときに、それはだめだ、総合保養地域と言え、そういうこともあったわけであります。今、内閣法制局は、グリーンツーリズムというのは漢字で書きなさいとおっしゃるし、議員立法のエコツーリズムはちゃんと法案として通っているわけであります。

 それぞれの施策は大事なんです。要は、施策の問題じゃなくて、日本の法体系というのはこうなんですよ、法文化というのはこうなんですよ、法令用語というのはこうなんですよということについては、やはりだれかが守っていかなきゃいけない。それはひょっとしたら立法府も守っていかなきゃいけない。そういう責務が本当はあるんじゃないかという問題意識を私は持っております。

 そこで、こういう法令用語に新しい用語を持ち込む等について、法令解釈上、どのように内閣の法案というのは作成されているのか、そこの基本的見解を一応ここで確認をさせていただきたいと思います。

外山政府参考人 お答えいたします。

 ただいま、内閣提出法案における法令用語の使い方に関するお尋ねをちょうだいいたしました。

 この点に関する私どもの従来からの基本的な考え方を申し上げさせていただきますと、法令で用いる用語につきましては、内容を表現するためのものでございますので、規定すべき内容に照らして、立法意図を正確に、かつできる限りわかりやすく表現するために適切なものかどうかという観点から審査を行ってまいっているところでございます。こうした基本的な考え方は現在においても変わりはございません。

 以上でございます。

橘(慶)委員 今の部分というのは、当分の間、世の中がどう変わろうと、どんな方が内閣総理大臣になろうと変えてはいけない分野だろう、そのように私も思っております。

 そんな観点から、ここの分野は、今またいろいろな議論が各委員同士でもされているというふうに伺ってもおりますし、ぜひ、どんな用語でどういうふうに示していくかということについてはよく御議論いただきたいと思っております。

 大分時間が減ってまいりましたので、この地域主権の問題について、もう一つだけ一応聞いておきたいと思います。

 重要政策に関する会議ということで、地域主権戦略会議というのを今回設けるという法文立てになっているわけでありますが、この会議は、内閣府設置法十八条第一項に規定する重要政策に関する会議ということであります。現在、経済財政諮問会議、今これは言ってみれば休止していますが、総合科学技術会議、中央防災会議、男女共同参画会議と、四つの会議があるわけです。そこにまた一つこれをふやしていきたいということです。

 それぞれの会議が大事なのはわかるんですが、会議がだんだんふえて内閣府がだんだん大きくなったらお守りが大変じゃないですかと私はいつも申し上げていることなんですが、こういったところはスクラップ・アンド・ビルドして組み立ててみようという考えはなかったのか、伺っておきたいと思います。

片山国務大臣 橘議員がかねておっしゃっておられますように、内閣府の組織や機能や権限がだんだん強化される、肥大化するということは、やはりこれはよく注意しなきゃいけない、避けなければいけないと私も思います。

 そういう中で、重要な会議というものが一つふえるのではないかということでありますが、会議ということではありませんけれども、先ほどからもちょっと出ておりましたけれども、地方分権改革推進委員会というものが従来ありまして、これは昨年期限切れになっておりますけれども、いわばこれの後継組織と言うと変ですけれども、そういう面もないわけではありませんので、そういう面で見ると、自公政権のときからずっと時系列で見ますと、一種の代替機関といいますか、スクラップ・アンド・ビルドになっていると言えなくもないと思います。

橘(慶)委員 この辺は大分認識を共通されているから、もう少し時間があればゆっくりやりたいところですが、大臣も御存じのように、スクラップ・アンド・ビルドと言いますけれども、行政管理局的に言うと、財源にしてワンランクアップした会議をつくるわけですから、それは余りいいことではないんじゃないか、重要政策の会議という意味では四が五になるわけですから。本当は、そうではなくて、やはり抑制的にしていかないと、結局どんどん肥大化していくだけではないか。昔、何とか審議室長とかいっていた人はみんな今、内閣官房副長官補ということで、どんどんランクアップして、下に政策統括官とかいろいろなものをつくっておられますけれども、それで内閣府が前より機能がよくなっているかということについては、またよく議論させていただきたいと思います。

 少し先へ飛ばします。

 今度は義務づけ・枠づけですが、地方分権改革推進委員会の第三次勧告におきまして、百四条項のうち四十二項目七十条項につきまして、勧告どおりないし一部実施とされてこの法案になっているわけですが、一項目検討とされ、六項目は実施困難となったわけであります。実施困難な六項目も聞けば幾らでも聞けるんですけれども、この一項目、実施を検討するとなっていたのは、実は学級編制基準の市町村への条例委任等ということで、この法案をつくった昨年の段階ではこれは検討ということになっておりました。しかし、きのうもいろいろと事前の打ち合わせをさせていただくと、例の三十五人学級ということの中である程度の措置はされた、こういうふうに聞いております。

 そこで、一応、総務委員会としての確認ということで、去年はなぜそれが検討で、何が困難であって、それがなぜ乗り越えられて今解決したのかということについて、ここで御説明をいただきたいと思います。

尾崎政府参考人 お答えを申し上げます。

 今御指摘ございましたとおり、学級編制基準の市町村への条例委任ということについて、閣議決定では検討とされたわけでございますけれども、その理由は、地域主権改革の観点とあわせまして、教育条件整備全体の観点を踏まえて検討する必要があるという観点から、そういう検討という位置づけにされたところでございます。

 文部科学省としては、この閣議決定を受けまして、今お話がございましたとおり、小学校一年生からの三十五人以下学級の導入という条件整備の点とあわせまして、地域主権改革の実現ということで、実際に市町村教育委員会が行います学級編制に当たりまして、従来、都道府県教育委員会が基準を設けまして、これに市町村教育委員会が従わなければならない、拘束力の強い基準という位置づけになっておったわけでございますけれども、この基準につきまして、標準としての基準という緩やかなものに改めるということと、手続的にも、従来は、学級編制に当たりまして、市町村教育委員会から都道府県教育委員会に対して事前協議を必要としておったわけでございますけれども、これについても事後の届け出で結構だというふうな形で地域主権改革を実現しようということで、この二つの条件整備と地域主権改革の内容を盛り込みました義務標準法改正案をこの国会に提出したわけでございます。

 この改正案につきましては、衆議院におきまして、さらに市町村の自主性を担保しようということで、実際に都道府県教育委員会が市町村別の教員定数を定める際に、市町村の意見を十分に尊重することを義務づけるという修正が行われまして、先週の四月十五日に参議院の本会議で全会一致で成立をしたところでございます。

橘(慶)委員 六と一の一がなくなってそこがすっきりした、こういうことだと思います。

 もう一つ聞いておきます。

 これはいい見直しだと私は思うんですが、道路や河川の構造基準について、今まで、道路構造令とか、こうでなければならないというのを弾力化されました。例えば、余り人通りの少ないところだと、道路の横に二つの歩道をつくらなくても片歩道でも多分いいとか、そういったところの弾力化がある程度進んだのだと思います。ただ、そういうことが弾力化されても、補助要綱とかそういうところでこういうものじゃないと補助しないと言われたら、結局弾力化にならないということになってしまいます。

 ここは確認です。そういったことはない、これである程度自由にできますということについて、一応ここで御答弁をいただいておきたいと思います。

片山国務大臣 そこは、確認とおっしゃいましたけれども、実はよく注意しなきゃいけない領域だと私は思います。

 今までの分権改革といいますか地域主権改革の中で、各省が自治体に対して今まで持っている関与というものをなくしたり減らしたりするということで、恐らく各省にとっては、必ずしもみずから進んでというものばかりではないと思います。そういうことの結果、見直しはなされたけれども、別の手法でもって事実上同じような関与を維持していくということは、一般論として想定されないわけではありませんので、そこはよく注意をしたい。もしその改革の趣旨を阻害するようなことがありましたら、補助要綱自体を見直していただくということも政府としてはやらなければいけないと思います。

 ですから、ぜひこれからアフターケアといいますか点検を地域主権改革担当大臣としてはやっていきたいと思います。

橘(慶)委員 最後に大変いいお話をいただいて、やはりこの問題はアフターケアとか点検が大事だと思っております。多分出先機関の改革とか、もちろんこれからまだまだいろいろなことに取り組まなきゃいけないのは理解しているんですが、一面、やってきたことの点検と、きちっとやり遂げていくということもやはり大事なので、そんな意味では、これは質問しませんでしたが、地方分権推進計画もつくって、今さっき何条項、何条項と言いましたが、その後のフォローアップはどうなっているのか、あるいは地域主権戦略大綱にしたけれども、それはどうフォローアップされていくのか、前の行革推進大綱のときと一緒なんですが、それをやはり一年に一回ぐらいはきちっと点検していくということはぜひお勧めをしたい、このことを申し上げておきたいと思います。

 それでは、きょう私が一番聞きたかった、最後の国と地方の協議の場。大変心配をしております。そんなに心配しなくてもいいよと言われるかもしれないけれども、心配しています。

 そこで、心配していることを前提にしながら、順番に聞きます。

 協議の場というのがまた、法令用語としては云々と思ったら、何か厚生労働関係で一、二、例はあるということは聞いたんですが、これは会議とはやはり性格が違う、協議の場というくらいですから。一応確認ですが、これは何かそういう事例があるんですか。

片山国務大臣 例えば医療法に、都道府県は一定の医療関係者との間で協議の場を設け云々というのがあります。それから、救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法という中にも、都道府県が一定の関係者との間で協議の場を設け、関係者の連携に関して必要な措置を講ずるとか、幾つか協議の場は実定法の中に盛り込まれているところであります。

橘(慶)委員 今のはどちらかというとある専門分野において、それは都道府県の中で、国としてはお初になるということも今聞いて思ったわけであります。

 そして、私は、最初に誤解のないように、協議の場を設けちゃいけないという意味じゃなくて、それは、例えば別に法定化しないで、国と六団体で言ってみれば合意すればできるんじゃないかという思いを持っているということはつけ加えさせていただきたいと思います。

 そこで、この協議の場の運営とか国会への報告書作成等の庶務というものの担当部署は法案には何も書いていないんですが、そういうものは特定されなくてよろしいんですか。

片山国務大臣 事実として、国の重要政策に係る総合調整権を持っております内閣官房、それから地域主権改革を担っております内閣府の地域主権戦略室が中心となってこの庶務は担うことになると思います。

橘(慶)委員 そうすると、またいろいろなことで仕事がふえていきまして、これも聞きませんでしたけれども、今、地域主権担当のスタッフの方は、昨年この法案が出たときは五十六名、現在は六十名と伺っております。一年一年ふえていく。協議の場ができればまたふえていく。何か肥大化していくような心配をしてしまうわけです。

 そうすると、協議の場は内閣官房なり内閣の地域主権担当のところでされるということでありますけれども、今度は協議の対象ということなんです。ここはなかなか難しいですね。協議の対象というものはどういうものになるのか。

 法三条で総括的には書いてあるわけですが、例えば今話題にしました地域主権戦略大綱、あるいはせんだってから議論がありました地域自主戦略交付金制度というのは該当するんでしょうか。あるいは、毎年度地方財政計画というものをつくられる、地方税制だって毎年毎年変えられる、そういったものも対象となるのでしょうか。この辺はどのように今想定されているんでしょうか。

片山国務大臣 これは、これから、議員といいますか関係者の間でよく相談をしながら意見調整をして決めるのが私はふさわしいと思います。あらかじめ、これとこれとこれは協議の場で議論する、それ以外はしないというような、そういう硬直的な考え方ではなくて、そのときそのときの状況に応じて、必要性の高いものとそうでないものというのは変わってくると思うんです。

 例えば、今引き合いに出された地方税法の改正についても、通常の年であったらそんなに協議をする必要がないようなときが多い。しかし、ある場面においては、例えば税制の抜本改革をするというようなときには当然協議の対象にしていいと私は思いますので、そのときそのときの状況によって、いわば常識的に誠意を持って決めていくということの方がいいだろうと思います。

橘(慶)委員 今いみじくもおっしゃった、常識的に誠意を持ってというところが、やはり立場が違ったときに、お互い常識は常識なんだけれども、その辺を一番心配するわけです。それは何かというと、結局、開催回数の問題とか、お互いの汗のかきようはどれくらいというところにつながるから聞いているわけです。それは後から聞きます。

 その前にもう一つ、「社会資本整備に関する政策」というものも法文上明記されているわけであります。これは明記されていることですから、何かをイメージしなきゃいけない。どんなことをイメージされるんですか。

片山国務大臣 これも、具体的に何か固定されたイメージがあるわけではありません。御批判があるかもしれませんけれども、これから弾力的に柔軟に、常識的に決めていく。行き当たりばったりということではないんです、私が申し上げているのは。積み重ねていきますと、おのずから、裁判でいいますと判例が積み重なるように、一つのルールとして決まってきます。そういうやり方の方がいいのではないかという考えであります。

橘(慶)委員 ですから、今のは私の思いと同じなわけですよ。最初からリジッドに物事を決めずに、ある程度積み重ねて、判例法が確立した段階で実定法に移した方がいいんじゃないかということを言いたいわけですよ。そうすると、練習はこれで何回かされているわけだから、今慌ててまだ固まっていないものをあえて法定化して、法定化してから決めていこうとされることが大丈夫かなという心配を橘はしている、こういうことであります。

 そこで、この問題の核心はここなんですよ。毎年度の開催回数だと僕は思うんです。どれくらいあるのというところだと思うんですよ。これはどれくらいを考えておられるんですか。一カ月に一回やれば十二回になるし、四半期に一回なら四回になるし、どんなふうに思っておられますか。

片山国務大臣 現在、私が総務大臣になりましてから、これはもちろん法定の協議の場ではなくて事実上の協議の場でありますけれども、数回やりました。地震があってからは全然できておりませんけれども。その経験からいいますと、特に年末が多かったんですけれども、なかなか一般論で申し上げるのは難しいですけれども、年に四、五回ぐらいはやっていいのではないか、必要があればもっとやってもいいのではないか、こんな考え方を私はイメージとして持っております。

橘(慶)委員 ありがとうございます。

 私も、多分、年に四、五回だと思うんですよね。年に十二回なんて、きのう担当者の方と問答していたんですが、年に十二回と言ったら、担当者の方の顔が曇りました。だって、十二回やったら、毎回議事録をつくって報告書を国会に出して、大変ですよ。

 ただ、そこがまた問題なんです。年に四、五回ということになると、おのずと今度は、先ほどの常識ですよ、その会議でできることというのは決まってきますよね。というのは、その会議はしゃんしゃんの会議をイメージされているわけじゃなくて、多分、その会議でやはり議論しようと。議論しようということになれば、テーマが三つも四つもあればいいわけじゃないですよね。せいぜい一つか二つかけながら、あるいは一つに絞って、一回でまとまらなきゃ二回やる、こういうことですよね。

 ちなみに、ことしも、まあ今こういう震災があって、地方税の改正というのはちょっとどうなるか、今つなぎ法案でストップしていますけれども。どうですか、地方税の今回の改正も、いろいろなことをやったわけですけれども、それは協議の場にかけられたんですか。

片山国務大臣 今回の震災対応の地方税法の改正案については、その種の協議の場は持っておりません。

橘(慶)委員 これは大変そこが難しくて、やはり回数によって随分イメージが違ってきて、以前、これのはしりで、三位一体の改革のとき、どうあれ、そのときもいろいろな協議を何回もされました。そういうことがあれば確かに何回も何回もやるんですが、きょう最後に聞こうと思っている例えば子ども手当あたりでも、二回やったけれども、それでも納得した方と納得されない方があるというのも、そんな形になっているわけです。

 そういうときにこの会議というのを法定化した場合に、本当に心配するのは、その次の第四条第三項あたりは、この構成員である議員のお一人お一人だれでも、単独でこの協議の場の招集を求めることができるようになるのかなと心配をしちゃっているんです。「内閣総理大臣は、協議の必要があると認めるときは、臨時に協議の場を招集することができる。」ということで、議員は、協議する必要があると思料するときは、具体的事項を示して求めることができる。だから、一人でも、きょうやりましょうよ、今度やりましょうよと言えちゃう。そういうときに、内閣総理大臣の判断はどのようにされるんだろうかという心配をしているわけです。お願いします。

片山国務大臣 法案では特に内閣総理大臣の判断基準というのは書いておりませんけれども、これも常識的に判断するということになると思います。

 時間的な余裕がどうなのかとか、この協議の場でなければ物事が進捗しない、解決しないのか、他に事実上この問題を解決するための手法はないのかとか、いろいろなことがあると思います。常識的かつ柔軟的に対応せざるを得ないと思います。

橘(慶)委員 すべてが常識ということに持っていかれてしまうわけですけれども、法八条には、今度は、協議結果の尊重ということがあるわけですね。ここでもし協議がまとまったとすれば、それは尊重しなきゃいけないと。しかし、あくまで、この第八条の趣旨は、議員個人に課せられたものであります。内閣というものはある意味では一体としてお仕事をされていますから、そういう意味ではある程度内閣が拘束されるようなことになるんでしょうけれども、果たして、地方側の場合は、市長会、町村長会、知事会、全国的連合組織を拘束するというものにはどうしてもなり得ないんだろうと思うんです。

 その辺、協議結果というものの担保ということについてはどのようにお考えになっているのか、提案者のお考えとしてお伺いいたします。

片山国務大臣 もともと、地方六団体といいましても、それだけでも六つあるわけでありまして、それぞれ利害が対立することが数多くあります。早い話が、県と市町村というのは、実は、国と自治体という構図と同等ないしそれ以上の立場の違いとか利害があります。何やら地方は一体みたいな印象がありますけれども、市町村にとっては、国よりも県の方が疎ましいという人もいないわけではありません。ですから、もともと六団体が一つというわけではありません。

 首長と議会とは、そもそも二元代表制で、対立する構造にあるわけで、これが一つにまとまるというのも、フィクションとしてはあり得ても、いささか妙な感じがします。

 知事会の中でも、私は日本で一番小さい貧乏県の知事をやっておりましたけれども、東京都と鳥取県ではかなり利害が対立をします。交付税をもらっている県ともらっていない県の利害の対立もあります。

 そういう多様性のある中で、しかし、代表を選んで、その代表が協議の場に出てくるわけでありますから、一身に全部を担っているというのはやはり無理があるんです。したがって、その代表が協議の場に出て何か意見を述べて、そこで合意が得られて、それで東京都から鳥取県まで、全国の自治体も全部それで拘束されるということは無理があると思います。

 そういうことを背景にして、しかし、そうはいっても協議の場で一応合意したことについては前進させるということが必要ですから、そこで、連合組織を縛るのではなくて、協議の場に出ている人が、個人的にとまでは言いませんけれども、誠意を持ってその後のことを処理する、尊重しなければいけない、こういうことになっているのだと思います。

橘(慶)委員 丁寧にお答えをいただいて、それは議論を深めていく上では大変ありがたいんですが、そういうお話を聞いていると、これはそういう質問は書いていませんけれども、今本当に法定化しなきゃいけないのか。今、要は、お互いの意思の一致、誤解をされてきた、そういうことを積み重ねてこられた。それを、ある意味で法定化しなきゃいけない、その実益というか、あるいは法定化しないとこういうことができないという部分については、何か差し迫ったものをお感じになっておられるんでしょうか。いかがですか。

片山国務大臣 これは、私も知事をやっていましたときに少なからず感じたことがあるんですけれども、少なくとも法定化をすれば、国の側、各省の側が自治体側を全く無視した形で重要な政策を決めることができなくなる、こういう担保があるんだろうと思います。

橘(慶)委員 しかし、それはもう少し違ったレベルで、行政と行政のレベルでもできないわけではないような気もいたしますし、私が言っているのは、何か合意事項を国と六団体でされてもいいだろうという気もするんです。

 やはり心配なのは、協議が調わない場合の取り扱いではないかと思います。先般、今言われた法定化されていない任意の地方との協議の場ということで、子ども手当に関する協議が行われました。二回されたというふうに理解しております。しかし、その後、御存じのように、神奈川県知事を初め幾つかの地方財政法に基づく意見書というのがこの委員会にも出されているわけですけれども、ああいった形でまとまらない場合、法定化された協議の場でまとまらないとなると、そこに違った御苦労も出てくるんじゃないかという心配もいたしますが、このことを踏まえて、いかがでしょうか。

片山国務大臣 協議でありますから、理論的にはまとまらないケースも考えられます。できるだけ合意に達するように誠心誠意協議をするということが原則だと思いますけれども、どうしてもまとまらないケースというのはないわけではないと思います。

 そのときにどうするのかということでありますけれども、それは、国権の最高機関である、国民の代表であるこの国会において責任を持って決めていただく、立法措置その他によって責任を持って決めていただくということにならざるを得ないと思います。

橘(慶)委員 要は、常識的な運営がされていけばそれは問題はないと。ただ、物事というのは、今の震災対策もそうなんですが、ある意味で、いろいろなことを想定しながら、そういうことがないということを確認しながら進んでいくことも大事だと思うんですね。

 今、ずっとお伺いしていると、法定化するにしては、一つ一つの文言の解釈、いろいろな意味についても、余りきちっと定まっていないような印象も受けているわけであります。

 何回も言いますけれども、協議を行うことはすごく大事なことだと私は思っているんです。ぜひ実効性のある協議の場にしていきたい。その場合に、本当にこういう枠にはめてしまって進めていくということが結果として幸せなことになるのかどうか、そこを心配している、こういうことであります。

 これは答弁をもうこれ以上は求めませんし、皆様方とちょっと意見は異にしているかもしれませんが、もしこの法案が通っていくとすれば、いや、こんなこと想定外だったねという運用にならないように、ぜひそこは皆さんでうまく運用していただきたいということを申し述べて、私の質問を終わらせていただきます。

 きょうは、どうもありがとうございました。

原口委員長 次に、坂本哲志君。

坂本委員 自由民主党の坂本哲志でございます。

 きょうは、地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案を中心に質問させていただきたいと思います。

 その前に、今回の東日本大震災の関連につきまして質問をさせていただきます。

 震災からもう一カ月以上が過ぎました。原発の問題につきましては、私たちは、国民全体あるいは世界のすべての人たちが、どういうふうに今後なっていくだろうかという不安をまだ抱えているような状況でありますし、瓦れきの処理を初めさまざまな復旧あるいは復興がなかなか遅々として進まないという状況にあるように受けとめられます。

 こういった一たん緩急あるときは、組織はできるだけシンプルな方がいい。そして、シンプルであり、その中に有能な人材を投入して、そして責任の所在をはっきりさせる、指揮命令系統をはっきりさせるということが最も大切なことであると思いますが、今の政府の震災対応は、全く逆の方に行っているようにしか思えません。

 皆さんのお手元に震災のための対応組織というものをお配りさせていただきましたけれども、これだけの会議や組織をつくって、果たして、どういう指揮命令系統になっているんだろうか、だれがどういう責任をとられているんだろうか。ボランティア連携室なんというのは、本当に官邸の中に必要であるんだろうか。節電啓発担当大臣なんか設けて、これが一体どういう意味を果たすんだろうか。

 役所できちんとやるべきことをやるということをやっておけば、このような複雑怪奇な組織にする必要もない。こういった非常に複雑な会議になっていること、仕組みになっていること自体が、震災の復興をおくらせている大きな原因になっているのではないか。責任の所在も、そして指揮命令系統もわからないというような状況にあると私は思います。

 何か官邸が、まるでお祭り広場か派遣村のような状態になって、そして、いろいろな情報は入ってくるけれども、いろいろな意見は出るけれども、それを一つの方向にだれが取りまとめていくのか、どう実行に移していくのか、こういうのが全く見えないと私は思います。もしこれが非常事態に手なれた諸外国であったならば、多分、一部の政治家と政府官僚と軍とさらには非常に有能な専門家、こういった人たちでシンプルな組織をつくって、そして、まず何をやるべきか、その第二弾として次に何をやるべきかということをきちんと整理しながら進めていかれると思いますが、この組織図を見る限り、どうも野党時代のパフォーマンスをそのまま持ち込んでいるとしか私は思えません。

 片山大臣は、その中におかれまして、緊急災害対策本部の副本部長もされておられます。それから、被災者生活支援特別対策本部の本部長代理もされておられます。大臣としてでも、あるいは一個人としてでも結構ですけれども、今のような状態あるいは組織の多さ、これをどう思われますか、お答えいただきたいと思います。

    〔委員長退席、稲見委員長代理着席〕

片山国務大臣 私が関与しておりますものについて少し感想めいたことを申し上げますと、必ずしも、議員がおっしゃったような見方とは違っております。むしろ、必要に応じてつくっているという実感を持っております。

 例えば、私が関与しておりますものに、今お触れになられました被災者生活支援特別対策本部というのがあります、私が本部長代理をやっているのでありますけれども。これは実は、本来、緊急災害対策本部のもとにあります危機管理のセンターでもってこの種の仕事というのはやることになっていたんですけれども、被災直後から原子力発電所の災害がだんだん深刻になりまして、その政府のチームがそちらの方に忙殺されるというか専念せざるを得ないことになりまして、率直に申し上げまして津波災害の方の被災者の皆さんの生活支援というものが少しおくれがちになるという傾向が見られたものですから、これではいけないということで、あえて被災者生活支援特別対策本部というものを立ち上げたわけでありまして、私もみずからこの副本部長になって、毎日内閣府の方で、私も出席して進行管理をしているわけであります。

 これは、単に本部を立ち上げて会議をやっているというわけじゃなくて、各省の関係する部門を駆使しまして被災者の皆さんの生活支援に当たっているわけでありまして、私は、ちょっと手前みそだと思われるかもしれませんけれども、大変うまく機能していると考えております。

 それから、その一環として例えば災害廃棄物処理の法的問題検討会議というのを設けたのですけれども、これは、被災者生活支援特別対策本部で物事を決めていく中で、瓦れきの処理というのが非常に重要な被災地での関心事項になっておりまして、財政措置、負担の問題というのは比較的すぐ決められたんですけれども、法的な問題、例えばその中に、財産価値のあるものがある、思い出の品、一般的な価値としてはないかもしれないけれども当事者の皆さんにとってはかけがえのないものがある、こういうものを瓦れきとして処理していいのかどうか、そういう問題を少し法的に検討しなきゃいけないということで、小川法務副大臣を座長にしてつくっていただいたりしたんです。

 ですから、私が関与していないものはちょっと言及することは差し控えたいと思いますけれども、私が関与したものについては、当然の必要性に応じてつくっていて、それなりにちゃんと機能しているという印象を持っております。

坂本委員 みずから関与したものについての御答弁だったわけですけれども、関与されていないものもたくさんあると思います。

 私は、今言われた瓦れきの処理にしても農業の風評被害にしても、あるいは食料の問題にしても、こんなに大仰な会議を設けなくても、淡々と各省の中でいろいろな整理をして進めることができる、そういう組織をつくるべき、そういうような手順でやるべきであるというふうに思っておりますので、改めて、この震災対応のおくれは、やはり菅総理のリーダーシップの欠如といったものにあるというふうに思います。

 それから、ちょっと質問通告をしていなかったものですので、この問題は確認していただくかどうかで結構なんです。

 きのうもテレビで報道があっていましたが、瓦れきの処理その他に当たって映像が流されますけれども、ユンボやクレーンとか、こういった重機類の数が非常に少ない。二台とか三台とか、あれだけ大きな被害をもたらしながら、それだけの重機しかない。これはやはり、被災県だけでまずやるからと、よその方からいろいろな重機を持ち込む、あるいはクレーンを持ち込む、そういう要望があるようですけれども、それをまず被災県でというようなことで、何らかのストップがかかっているんじゃないか、それを仕切っているような団体や政治団体、そういうものがあるのではないか、これは非常に異常な光景であるというような報道もされておられました。

 もしそうであるならば、地方の、その地域の業界、団体だけを優先する余りに全体の被災の復旧がおくれると大変なことになっていくと思いますので、そこは総務大臣として確認をしていただきたいと思いますけれども、よろしいですか。

片山国務大臣 ぜひ実態を確認してみたいと思います。

 もちろん、復旧の過程においても、地元の雇用でありますとか地元の被災した企業の再生を念頭に置くということは重要なことだと思いますけれども、一番大事なことは何かといいますと、一日も早く被災者の皆さんの生活を安定させるということであります。それを念頭に、それを一番の目的としながら、その過程でできるだけ地元の雇用に結びつくような施策を打っていくということだろうと思いますので、主客が転倒しないようにしなければいけないと思います。

 そういう観点から、現状がどうなっているのか、関係省の大臣とも相談をして、確認をしてみたいと思います。

坂本委員 本論に移りますが、私が、今回の東日本大震災で、非常に会議が多い、頭でっかちである、指揮命令系統がはっきりしない、責任の所在がわからないというふうに言いましたのも、今回の地域主権に関する法律もこれに似たところがあるのではないかというふうに思うからであります。

 この法律をよく読んでいくと、地域主権という言葉が躍るだけで、あるいは地域主権改革という言葉が躍るだけで、いたずらに会議の場とその所掌事務だけが多いというようなことになっております。

 中身についても、関係各法律にその精神が遠慮がちに盛り込まれているだけで、本当に、主体性を持った姿勢がどこにあるんだろうかというようなことを私は感じます。もちろん、義務づけ・枠づけの撤廃、改善、このことについては私は評価をしますが、これにつきましても、何もわざわざ大仰な法律でなくても、粛々と政省令やあるいはその他のさまざまな通知、通達でできる部分があると私は思います。

 つまり、先ほど橘議員の質問にもありましたけれども、組織だけ数多く林立し、十分な機能あるいは指揮命令が見えないということの典型であると私は思いますけれども、もっとシンプルに、例えば地方自治法を見直して、そして地方自治の基本法をまずつくって、自治法そのものをもう少し整理する、そういう方向からでも地域の自主自立の強化ということは達成できるというふうに私は思いますけれども、いかがですか。

片山国務大臣 おっしゃるような面がないわけではないと思います。地方自治法の見直しによって自治体の自立度を高める、自治体における住民の皆さんの意思の反映の仕方を変えていくということはあり得るだろうと思います。

 ただ、これも私の経験則でありますけれども、それだけではなかなか物事が解決しない面もないわけではありません。といいますのは、今まで何が問題だったかといいますと、やはり自治体の自主性を高めるということは、反面でいいますと、政府の各省の自治体に対するグリップ、関与というものをできるだけなくしていくということが同時並行的に行われなければいけないわけでありまして、その面からいいますと、単に自治法を改善しただけでは物事はうまくいかないと思います。

 それを実現するために、各省の関与というものをなくすのが今回の法案の中の一つの大きな要素でありますし、それから、各省に対してきちっと自治体の側から公に物が言える、それが法定協議の場だと思いますし、それから、地方分権といいますか地域主権改革に関する政策を決めていくときに、各省の反対などをきちっと抑えていく、政府の中で合意を形成していく、その手段として地域主権戦略会議というものが位置づけられるというふうに私はこの法案の中身を理解しているところであります。

坂本委員 私は地方交付税のときも言いましたけれども、やはり各府省の力は非常に強い。先ほどから言われておりますように、いろいろなみずからの権益を守ろうとする。しかし、それは、外部から守ることと、あるいは地方の立場に立って、総務省と各府省の中で十分論議をすること、そして府省全体の考え方というものを少しずつ変えていくこと、このことが私は一番大事だというふうに思っております。

 そこで、国家のあり方、あるいは地方と国の役割について、基本的なところで質問をさせていただきます。

 自民党の場合は、住民の皆さんたちが自立し、そして充実した生活をそれぞれの地域でしていただくためにはどういう仕組みが一番いいのかというようなことを考えました。その一方で、国際競争の時代であります、国家間の競争であります、それを乗り越えていく、あるいはそれに打ちかっていくための国力の高揚、あるいはさまざまな頭脳の結集、そして技術の結集、こういったものを同時にやっていく。国家としての力と地域としての力を効果的、効率的に発揮させていく仕組みはどういうものがあるかということを自民党では論議してまいりました。

 その結果、もし今後改革をしていくということであるならば、やはりそれは道州制である。道州制の中で、州の力あるいは基礎自治体の力を結集しながら、それそのものが国家の力になるというようなことで、これまで自民党としては、道州制の導入ということを前提にいろいろな話し合いをしてきたところであります。

 平成十六年十一月に、自民党では道州制調査会を立ち上げました。十八年四月までに十一回の会合を重ね、五月に道州制特区法案を国会に提出し、そして十二月に成立をさせたことは御承知のとおりであります。さらにその後、道州制の推進、道州と国の役割、道州の組織と権限、道州と基礎自治体、道州と税財政制度というような五つの小委員会を立ち上げまして、十回の会合を重ね、第二次の中間報告を作成し、我々自民党のマニフェストに反映したところであります。

 そして、平成十九年からは、道州制推進本部として総裁直属の本部に格上げし、二十年に第三次中間報告を提出いたしました。その後、道州制基本法制定委員会を設置いたしまして、二十一年六月、一昨年の六月でございますけれども、道州制基本法を提案するということで、それに盛り込む事項を検討し、自民党の中ではそれが了承されているところであります。

 私たちの計画では、二〇一八年、平成でいえば三十年前後を目途に道州制の導入を考えていました。つまり、地方に大幅な権限を移すという作業は、単に今の枠組みの中で移譲さえすればいいということではなくて、将来の国のあり方全体を考え、国のエネルギーを最大限に発揮させるために、精緻な制度設計が必要であるということであります。

 国家間の競争が非常に激しい中で、また、今回のように大震災あるいは大災害が起きたときに、どうやってそれに対応するかということは、やはり国の力と地方の力、それぞれの協力、それぞれの集合体を考えていかなくてはなりません。

 そこで、お尋ねしたいんですが、提案理由の説明の中に、「この国のあり方を大きく転換する改革」であるという文言が入っております。「この国のあり方を大きく転換する改革」である、私は、この言葉は、非常にあいまいで、中身がよくわかりません。この転換する改革ということは、国も地方も含めて、この改革が全体の国力を最大限に発揮させるための改革ということであるのか。それとも、国力というよりも、国のあり方として、国民のライフスタイルや、あるいは日本がこれから世界の中で生きていく上での方針の転換、そのための改革というものを意味しているのか。どういう転換なのか、どういう改革なのか、この基本的なところをお答えいただきたいと思います。

片山国務大臣 地域のことをだれがどうやって決めていくかということでありますけれども、従来は、地域のことであっても専ら国が決めていく、全国一律に決めるということが専らでありました。したがって、国発の政策で、国から県、県から市町村、市町村から地域の住民の皆さん、そういうベクトルといいますか矢印でありました。したがって、住民の皆さんというのは、地域のことであっても末端ということになるわけであります。

 絵をかきますと、大体、中央政府が一番上にあって、住民は一番下に位置づけられる。私なども、大学で地方自治の講義をしているとき、黒板に絵をかきますと、ついついやはり住民が一番下になってしまって、これではいけないとよく思ったものでありますけれども、これが従来であります。

 これからは、地域のことについてはだれが一番中心になって発想して決めていくのかということになりますと、やはり住民であるべきであります。住民の皆さんが発想して、それができるだけ具現化できるように、かなえられるような、そういう制度なり環境を整えるというのが地域主権改革だと思います。

 したがって、住民が第一義に来て、それを市町村が酌み上げて、市町村でできることは市町村でやる、そこでできないことは補完的に都道府県がやる、それでもできないことは国でやる、こういうベクトルが逆転することが転換という言葉に象徴される意味合いだと私は考えております。もちろん、外国との関係、国家の主権にかかわることとか、そういう問題は別の考え方に基づきますけれども、事地域のあり方に関しては、私が申し上げたような、そういう転換が行われるべきだという考え方であります。

坂本委員 そこは、私たちが考える地域の自主自立と次元的に違うと思います。私たちは、地域が決めること、住民が決めること、それは大事だと思います。しかし、最終的には、その決めることが、やはりその地域にとって最も充実した生活や地域の活力につながっていくんだというようなものでなくてはなりません。そして、それそのものが集合体として日本全体に満ちあふれて、そして国力そのものがやはり増強されていく、向上していく、そういうものでなくてはなりません。

 ただ単に、決め事を中央が決めるのか、地方が決めるのかということではなくて、言ってみれば、決めることはどっちが決めてもいいといいますか、どっちが決めた方がよりよい方向に進んでいくか、それは国にとってもあるいは地方にとっても、地域にとってもよい方向に進んでいくか、こういう非常に複合的な発想の中でこの制度というものをつくり上げなければ、権限が右から左に移った、あるいは中央から地方に移った、そのことでやはり一部混乱も起きてくる、あるいは国力の低下ということも招きかねないようなことになると私たちは心配をしております。

 ですから、ただ単なる権限だけの移譲ではなくて、もっと精緻な制度、そして将来を見越した、見通したさまざまな制度が必要であるというふうに私自身は考えておりますので、やはりこれは非常に大きな問題として、国の形の問題として取り扱うべきことであると思っております。

 そういうことで、少し歴史の勉強をしたいと思います。国と地方、あるいは中央と地方、我が国がどのような変遷をこれまでたどってきたのか。

 私が解釈するなりに申し述べますと、歴史をずらずらずらっと並べますけれども、紀元三世紀ごろまでは、中国あたりから倭と呼ばれる地域連合集団でありました。その後、六百四十五年に大化の改新があり、天皇が最高権力者ということになって国らしき形になります。七百一年に大宝律令ができて、文武天皇がそれを制定し、そして公地公民制の仕組みが導入をされます。土地はすべて天皇のものである、だから、そこで出た収益あるいは農作物については税として中央政府の方に納めなさいと。その地方官として、徴収者として、国司が各地方に派遣をされます。しかし、結局、地方の豪族、地方の有力者と一緒になる形で、だんだん公地公民制が崩れて、そして荘園ができ上がってまいります。

 武家の社会になります。武士の社会になりますと、さらに、その荘園を取り仕切るために守護や地頭を配置し、そして治めようとします。しかし、その地域、地方では、有力者と結びつきながら、みずからの勢力を広げようというようなことになります。守護大名というのが出てまいります。そして、少しでもみずからの領分や領地をふやしたいがために、隣国との騒乱状態、動乱状態、戦争状態に入ります。長い長い戦国時代が百年間続くんです。そして、豊臣あるいは織田や徳川によって、改めて武力によって統制されるということになります。

 江戸の幕藩体制というのは、こういった動乱状態、戦乱状態が百年続いたことを十分身にしみて知っておりましたので、非常に強力な幕府の権限を持ちます。そして、お互いの地域間、各藩、三百藩の交流、あるいは三百藩同士のさまざまな争いを防ぐために、強力な藩の自治権、治外法権、こういったものをつくります。版籍を持っていれば、それですべてが擁護されるというようなことであります。ですから、不穏な動きがあれば、それは幕府の方で転封や改易あるいはお取りつぶしになるというようなことであります。そういうことで、百年の戦国時代の教訓から、この幕藩体制を築いて、国と地方の体制を築いて、そして二百五十年間の言ってみれば平和な日本国が続くわけです。

 その後、明治維新になって、強力な中央集権体制になって、そして欧米の列強に仲間入りする。中央集権体制になったことで、約三十年とちょっとでその仲間入りを果たします。その証明は、日露戦争に、あの大きな国に辛勝したということであります。それから、軍部が非常に力を持ち出して、ごらんのとおりの大戦の状況であります。

 その後、アメリカから導入されました民主主義というのが、いろいろな形で、シャウプ勧告あるいはその他のもの、教育改革も含めて、戦後の日本の時代を迎え、昭和二十二年には地方自治法が制定をされ施行され、そして自治の概念というのが生まれて今に至っているということであります。

 これが、私が考えます、これまでの中央と地方、あるいは日本の国の姿、そういうものであると思っております。

 なぜ今、長々と何か講釈めいたこういった歴史的な話をしたかといいますと、これも提案理由の説明の中に、「国と地方自治体の関係を国が地方に優越する上下の関係から根本的に転換し、地域のことは地域に住む住民が責任を持って決めることのできる、活気に満ちた地域社会をつくっていかなければなりません。」というような文言があるからであります。

 この説明は間違っていません。そのとおりであります。しかし、「国が地方に優越する上下関係を根本的に転換し、」というのは、今の時代はそうでありますけれども、そうでない時代も来るかもしれない、絶対ではないということであります。時代によって、国がリーダーシップを発揮しなければならない時代があります。また、今回のように、大震災の中で、地方の要望は十分尊重しながら、地方の意見を尊重しながら、それでも、財源や復興計画あるいは将来像は国が責任を持って進めるというような非常時もあります。

 また、もう一つ、「地域のことは地域に住む住民が責任を持って決めることのできる、活気に満ちた地域社会をつくっていかなければなりません。」と、提案理由の説明の文言が書かれております。これもそのとおりであります。地域が責任を持って決めること、これは大切であります。

 しかし、責任を持って決めることが活気に満ちた社会を必ずしもつくり上げると言えない場合もあります。守護大名も、あるいは国司も荘園を守る者も、地域のことは地域で自信を持って決めていったと思いますが、結果としてあの戦乱状態を招いたということであります。窮屈な律令制度から逃れた者たちが責任を持って決めたけれども、結果として長い戦乱になった。中央のくびきから解放することが必ずしもよい地方をつくり上げるかというと、そうではないということも考えておかなければいけないというふうに思います。

 すべて地方に決定権をゆだねることがその地域や国全体の活力を促すと受けとめられるような考え方は非常に短絡的であり、やはりもう少しきめ細かなメッセージを送ることがこの法律あるいは私たちの役割であるというふうに私は思います。非常に抽象的なことになりますけれども、もっと普遍的な、自治権や、国と地方との関係、あり方、これを国民の方々に十分理解していただくためのベストメッセージというものを、私たちは今、根気強く何回も何回も送らなければいけないというふうに思います。

 そういう点では、この法律というのは非常に単純でわかりやすいのはわかりやすいんですけれども、私は誤ったメッセージを与えてしまうことにつながるというふうに思いますが、いかがですか。

片山国務大臣 誤ったメッセージにならないようにしなければいけないというのは、重要な御指摘、視点だろうと思います。何か、国と自治体が対等だからといって、あたかも独立国であるような印象を与えるようなことがあってはならないと私も思います。

 ただ、現状からいいますと、これも私の経験則からいいますと、二〇〇〇年から地方分権改革一括法というのが施行されたわけでありまして、実はその時点で、国と自治体とは対等の立場になっているんです。いるんですけれども、法律を改正したにもかかわらず、その内容とかメッセージが国民の皆さんにも自治体にも、それから霞が関の政府の各省の皆さんにもなかなか伝わっていないというもどかしさがあるのが実態であります。

 行き過ぎたメッセージを与える危険性はやはり避けなきゃいけませんけれども、せっかくの法改正がちゃんと熟知されていないという嫌いもあるわけでありまして、そういう中で、あえて、提案理由の中にありますような、これは提案理由だけではありませんけれども、いろいろなところで私も、地域のことは地域に住む住民の皆さんが責任を持って決めることなんですよというメッセージを発信しているわけであります。

 御懸念の、地域のことは地域に住む住民が責任を持って決めることで、これを手放しで喜ぶことはできないんじゃないかとおっしゃいますけれども、その際に、戦国時代の勝手主義といいますか、地域の割拠の危険性というものもお触れになられましたけれども、当時と違いますのは、現在は中央政府がちゃんとあって、国法がきちっと決められて、それを遵守してもらう権力機構というものも健全にあるわけであります。地域のことを地域が決める、だからといって、得手勝手にして何でもやっていくんだ、ばらばらになるんだということはありません。

 あくまでも国が律することはちゃんと国法で律して、それは国民にも自治体にも守っていただく、その前提で、でも、できる限り、国家にとってそんなに関与しなくていいことはもう自治体に任せたらいいんじゃないか、その程度と言うとちょっと語弊があるかもしれませんけれども、そういう領域での地域主権改革だというふうに共通認識をしていただければと思います。

坂本委員 今言われた行き過ぎたメッセージというのが地域主権というこの用語の中にあると私は言っているんです。これがやはり一番の問題であるというふうに思います。

 それで、その主権という概念がどこからどうやって出てきたのかというのをちょっと調べてみましたけれども、これはキリスト教でいう宗教の世界からスタートしているようであります。絶対的な権力を持っていたローマ法王に対して、それまで服従、従属をしていた各国の中で、フランスが君主による主権というものをつくり上げて、そしてローマ法王と対等性を持つものであるというふうに主張した。いわば、もともと政治用語であります。政治的に対抗するための用語として生まれたのが主権という言葉のようであります。それが、数々の戦争や動乱を経て、民主主義という体制の中で、その主権が国家にある、あるいは国民にあるというようなことでうたわれるようになりました。

 釈迦に説法でございますけれども、我が日本国憲法もこの思想を取り入れております。冒頭に書かれてあるものを読みます。「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」とあります。

 これを読みますと、主権という言葉が、いかに歴史を経て、そして荘厳な言葉であるかということがわかります。この前文を読んだだけで、我々国会議員は、身の引き締まる思いと責務の大きさをやはり感じざるを得ないと思います。

 そして、それは次のように続きます。「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。」とあります。

 ここまで読んでくると、主権という言葉を軽々しく使うべきでないという緊張感を覚えますし、権力を握ったからといって、それを不用意にいろいろな形でパフォーマンスとして使うことに恐ろしさを感じます。ですから、私は、主権あるいは権力という言葉の持つ重さや荘厳さや魔性性を感じない政治家は政治家たり得ないというふうに改めて感じるわけです。

 ですから、そのような荘厳な言葉、また歴史的にさまざまな意味を含んだ言葉が、いとも簡単に地域という言葉にくっつけられて地域主権というふうな用語になってしまうことに、この政権の危うさ、軽さ、哲学のなさを感じざるを得ません。そしてそれを、地域主権だったら少し問題があるので、地域主権改革の六文字熟語だったらいいだろうというこのすりかえも、菅政権特有のごまかし、すりかえの論理であると私は思います。

 大臣、あなたはバッジをはめていらっしゃいませんけれども、やはり一国の大臣であります。その責任は非常に大きいと思います。歴史的に見て、政治的に見て、本当にこの地域主権という言葉が正しい使い方だと思われますか。そして、元官僚として、この用語を法律の中に盛り込むことが適切だと考えられますか。そして、あなたは大学の教授もされておられました。この地域主権という言葉を、これから日本の未来を担う学生に自信を持って教えることができますか。お答えください。

片山国務大臣 地域主権というのは、率直に申し上げて、必ずしも人口に膾炙した用語ではないと思います。それから、今日まで、万人がこの言葉から共通したイメージを抱くということには必ずしもなっていないと思います。

 そんなこともあって、恐らく、これは私が大臣に就任する前のことでありますけれども、この法案を政府内で議論、検討している中で、地域主権改革という六文字の用語に凝縮させて、それをかぎ括弧にして法案の中に盛り込んだという経緯があるんだろうと私は思います。

 もっと前の経緯からいいますと、これは私も外から眺めておりましたけれども、地域主権というのはそもそも、先ほど坂本議員がお触れになった道州制の議論の延長といいますか、付随して出てきたものだと私は認識しております。

 道州制を論ずるときに、中央集権型道州制、すなわち国家の行政機構をこの際整理しようという一つの手段として道州制を導入しようという考え方と、それから、そうではなくて、地域主権型道州制と言われている人がおられましたけれども、もともと地域の方に内政の多くの権限というのは備わっているので、それを改めて整理しようという地域主権型道州制、この二つの対立構造があって、その用語が結果として民主党のマニフェストの中に盛り込まれたのではないかと思います。

 民主党のマニフェストでは、途中で道州制が消えましたので、地域主権型道州制という中で道州制が消えましたから地域主権がそのまま残ったというのが、当時私は外におりまして、そういう経緯があるのかなと思っておりました。

 それはともあれ、いずれにしても、冒頭申し上げましたように、必ずしも人口に膾炙していないということで、わざわざ地域主権改革という造語をすることによって定義を明確にしている、そういうことだろうと思います。

坂本委員 やはり、そういった造語を法案の中に法律用語として盛り込むこと、私はこのことについて非常に無定見さというものを感じざるを得ません。

 それから、私は文字を書く会社に長年勤めておりましたので、言葉というのは非常に恐ろしい、ひとり歩きし出したときは恐ろしいということをつくづく感じます。

 また戦争の話になりますが、大東亜共栄圏というのがありました。そして、満州国をつくるときに、八紘一宇の精神で五族が協和して王道楽土をつくるんだというようなフレーズがございました。今私たちはこれに何の関心も持たない、何の魅力も感じませんけれども、これを今風に言えば、やはり世界は一つである、一つの家族である、家である、だから、その精神に基づいて国民あるいは各民族が協調して新しい国際国家をつくり上げようじゃないか、その国家は覇権、覇道の道ではなくて堂々とした王道の道を歩く楽園である、こういうようなうたい文句であの国家がつくられていったわけです。

 ですから、地域主権という言葉に当てはめた場合に、こういったことがひとり歩きすることの恐ろしさというのを私は感じます。

 どういうことが考えられるか。例えば、名古屋の市長さんが、減税をするという。そして、議会を廃止して、各地域に民意から成る協議会をつくるという。そして、自分たちが自分たちの手で、みんなで政策を決める、そしてそれが、名古屋市も愛知県も一緒になった中京都をつくるというふうに考えられ、そして新しい地方自治のシステムをつくろうとされるときに、多分、この法律がこのままの形で成立したら、私は、次のように言われると思います。

 我が国は地域主権の時代に入った、法律にも地域主権が明記をされた、憲法でうたわれた国民主権を基本に、さらに地域が主権を持って物事のすべてを決めてよい時代に入ったのだ、私たちは自分たちの手で、新しい仕組みをつくろう、新しい物事を決めよう、中京都をつくろうではないか、これは国が保障していることであるというふうな訴え方をされると思います。

 それに対して、国が、そこまで減税するぐらいに余裕があるならば、地方交付税を少し減らしますよ、補正係数を変えますよ、基準財政収入額を少し変えますよということで交付税を減らしたとする。そうすると、それに対して、それは違う、あなたたちは一方で地域主権ということで地域を擁護しておきながら、地域を守りながら、一方では地方交付税法に守られた、法律があるんだ、それは地方の財政調整機能やあるいは財源保障機能を保障しているんだ、だからその両方の法律を守るべきである、私たちは行政訴訟を起こしますというようなことを言われれば、私は、国としてはやはり非常につらい立場になるだろうなと思います。

 そういうものに触発をされて、各地域から市町村からあるいは県から、いろいろなところから行政訴訟がどんどん出てくる。それに対してどう国は対応していくのか。本当に、この地域主権という言葉を盛り込んだ法律をつくることで、そういう裁判が起きたときに、もちますか。どうでしょうか。

片山国務大臣 地域主権改革という用語があるからといって、それが何か他の個別法を凌駕するような、そういう効力があるわけではありません。地域主権改革というのは、あくまでもこの法案の中に定義している範囲内にとどまるわけでありまして、それを出ることはありません。

 我が国は法治国家でありますから、自治体の方でいろいろなことをやられるときに、国法に抵触することはできないわけであります。仮に、いろいろな地域で国法に抵触するようなことを、例えば地域主権改革だとか地方分権改革だとか、そういうにしきの御旗のもとに提唱されたとしても、それは司法の場では何ら力にはならないわけでありまして、特に国が被告になったとき、訴訟指揮上困難をきわめるというようなことはないだろうと私は思います。

坂本委員 私は、それは甘いと思います。やはり、これが一たん法律用語になった、そしてその文言、用語が明記された法律ができれば、さまざまな法の解釈が出てくるというふうに私は思います。ですから、このことは非常に危険であるということだけは申し添えておきたいと思います。

 最後に、地方制度調査会のことについてお伺いします。

 地方制度調査会は、一昨年の七月以来、委員が任命されておりません。一昨年までは、多分、これは片山大臣が副会長をされていたんですよね。

 昨年の本会議で、我が党の石田議員がこのことについて質問をされました。当時の平野官房長官は、当面開催の予定はない、廃止を含め所要の見直しを検討しているというふうに答弁をされております。

 昭和二十七年、地方制度調査会設置法によって、その規定に基づき設置された地方制度調査会、廃止を含めて今後検討されていくんですか、お答えください。

片山国務大臣 これから先どうなるかというのは予断を持ってお答えすることはできませんけれども、現在、総務大臣を拝命しております私の考えでこれを廃止の方向に向けて検討しようということは、念頭にはありません。

 少し振り返ってみますと、私は、二十九次の地方制度調査会の委員に任命をいただきまして、副会長の役を務めておりました。二十九次の任期が終わって、さて次どうなるのかなと思っておりましたら、委員が任命されなかったということでありまして、私が任命されなかったという意味じゃなくて、三十次が任命されなかったということに、当時、違和感を通り過ごして、少し落胆したことを今でもよく覚えております。

 そんな個人的なことも踏まえて、これからの地方制度調査会のあり方、活用の仕方については、担当大臣として考えていきたいと考えております。

坂本委員 それは、以前、本会議でお答えになった官房長官の意見と違います。私は、この地方制度調査会、今度どうするのか、やはり政府でしっかりとした統一見解を出していただきたいと思います。

 そして、総務大臣を議長といたします地方行財政会議、これも非常に怪しげなものと私たちは思います。地方制度調査会は総理の諮問機関です。そして、片や総務大臣が議長を務める。これは、政治主導でスピーディーにというようなことで答弁されておりますけれども、私たちからすれば、非常にあやふやで、軽率で、そして拙速であるというふうに感じざるを得ません。

 地方制度調査会、これは識者も経済人も官僚もすべて入った制度であり、やはり戦後の地方自治を担ってきた制度であると思いますので、私は、この地方制度調査会を改めて活用していただくことを要望いたしまして、質問を終わります。

稲見委員長代理 次に、谷公一君。

谷委員 自由民主党の谷公一でございます。

 五十分、時間をいただきました。朝、我が党の橘委員が、提出されている三法について、地方自治の実情を踏まえ精緻な議論を展開していただきました。また、坂本委員からは大きな国の姿、歴史を踏まえて、大変高い理念で質問を行いました。私は、それらを踏まえてではなくて当面急ぐべき災害関連を中心に、大臣以下、お尋ねをしたいと思います。

 三・一一からもう大分過ぎました。二週間前、四月五日に、被災自治体への人的支援について総務大臣にいろいろとお尋ねをいたしました。さまざまな被災者支援が滞るのではないか、本当に大丈夫か。結局、それは、自治体支援ではなくて、しっかり基礎的自治体たる市町村がやるべきことをスピーディーにやらないと被災者にくる、そういう危機意識からであります。

 お手元に資料を配付させていただいております。たくさん記事が出ておりますけれども、これはたまたま見つけたといいますか、ありました四月九日付の読売新聞であります。「義援金給付手回らず 職員足りない」。

 義援金については、我が党を初め各党から、与党も含めて一刻も早くということで、本来、日赤、NHKなど、あるいは被災自治体も入った義援金配分委員会が決めるべきことでございますけれども、大変広範囲ということで、この前、全体の基準というのを、お手元の資料の一ページの左側にありますように、義援金配分基準というのを合意して、あとは都道府県ごとにそれぞれの配分委員会で具体的に決めて、現実には市町村で配付する、そういうことがあるわけでございます。

 さて、片山大臣、人的支援は大丈夫ですか。その後、強化されましたか。お尋ねします。

片山国務大臣 先般、議員からの御質問で、人的支援を求める上で市町村の方に遠慮があるのではないかという御指摘もありまして、遠慮していただく必要は一切ありませんし、それから、追加で随時また要望していただいたら構いませんので、特に問題があるという認識はありませんでしたけれども、せっかくの御指摘でありましたので、念のため、改めて各県の方に追加の派遣要請がないかどうかを確認しております。

 それだけではありませんけれども、それも含めて、その後の状況の変化もありまして、三月二十九日の段階では五百四十五人の要請があったんですけれども、現在では六百七十三人というふうに、その後、増加をしております。これは、これからも新しい業務が生じたり、やってみて足らないということでありましたら追加をしていただいたら結構なわけですから、柔軟に対応していきたいと思っております。

 供給の方はどうかということになりますと、これは本当にありがたいことなんですけれども、全国の方に、被災地から六百数十人の要請がありますよ、こういう職種でいつからいつまでですよという情報をお届けするんですけれども、それに対して、全国から派遣の申し出が二千五百六十二人あります。したがって、今は六百七十三人の要請でありますけれども、これが少々ふえても、かなりふえても、人数的にはちゃんと対応できる。もちろん、きめ細かい、職種とか派遣期間なんかのすり合わせは必要になりますけれども、量的には心配ないと思っております。

谷委員 これは後の問題にも絡みますけれども、大変大事で、義援金の配分にしても、要は末端といいますか、実際に被災者に配る市町村の人手が足りないと配れないわけですから、ぜひ、待ちの姿勢ではなくて、しっかりと要望にこたえていただくよう、引き続き努力の方をお願いしたいと思います。

 全国の自治体で二千五百人余りという数字を今お聞きいたしましたが、私は、全国の自治体は本当に仲間意識で、少々いろいろな条件が悪くても、あすは我が身という思いでいると思うんですよ。ですから、もっともっと強いリーダーシップで、被災自治体にしっかりと人的な支援を、応援をしていただくように御要望しておきます。

 さて、原発が立地している八つの町村への支援です。

 前回も質問させていただきました。過去に例のない事態です。東京電力から工程表が出ましたけれども、そのとおりいくとは限りません。また、たとえ工程表どおりいっても、実際、住民の方がまたもとのところに帰れるという保証は、政府の方はまだ何も言われておりません。こういうときに、そもそも基礎的な行政サービスをどういうやり方でやるのか、本当にいろいろな難しい問題があるかと思います。

 四月五日の質問のときに、やはり答えは現場にあるのではないか、とにかく現場に出向いていって、いろいろなことをよく聞いていただくよう要望をいたしましたが、その後どうでしょうか、その後の対応。半月過ぎました。お尋ねします。

    〔稲見委員長代理退席、委員長着席〕

片山国務大臣 双葉郡の八カ町村は域外に役場機能の移転を余儀なくされておりまして、これは本当に難渋をされております。時折私の方に来られたりする町村長さん、議長さんもおられましたし、昨日も浪江町の町長さんとお会いしてお話をする機会がありましたけれども、本当に、自分自身が町長であったらどんな気持ちだろうかと身につまされる思いであります。とにかく寄り添うといいますか、親身になって相談に応じたり、助言をしたり、手助けをする、そういう機能が私は必要だろうと思います。

 そんなこともありまして、例えば、四月六日から七日、二日間にわたりまして、逢坂政務官が相当数の関係の町村、これは避難している町村だけではなくて、いわきでありますとかそういうところも含めているんですけれども、回っていただいて、市町村長さんにお会いをしてもらいました。そこで率直に実情を伺ってきております。それから七日には、平岡副大臣が埼玉県の加須市に行きまして、双葉町の避難先で、町長さんを初めとした関係者に話を伺っております。

 そういう過程でいろいろな話が出てまいります。報告を私も受けまして、私が本部長代理をしております被災者生活支援特別対策本部で、必要なことは、それを提供いたしまして、関係省でこれを解決してくれということを提示して、そのフォローをする、こんなことをやってきているところであります。

 今後は、一昨日、東電の今後の見通しについてあらかたのスキームが発表されましたので、そうなりますと、これまでのように短期間の一時避難で体育館などにいる、そういう状況ではなくなりますので、ある程度腰を据えた、住民の皆さんの生活空間の確保でありますとか役場機能の維持というものが必要になりますので、そのステージに対応した支援が必要になってくるだろうと考えております。

谷委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 これは、大臣、先ほど坂本委員が配付した資料の中のどこでやるんですか。つまり政府の方は、いわば二つの、原発関係と、それ以外の地震、津波の被災者関係を分けていますね。坂本委員は、この表でいかにたくさんあるかということを指摘したわけでありますけれども、私もそのとおりだと思います。実は、これには「原発事故等関係」で、四月十一日に設置した原子力経済被害対応本部が抜けているのじゃないかと思いますけれども、もっとふえているということなんです。

 これは、被災者生活支援特別対策本部でこの問題をやっていただけるんですか。それとも、原発地域の問題だから、経産省が中心になった原子力発電所事故対策総合本部でやるんですか。どちらがやるんですか。

片山国務大臣 これは、基本的には原子力被災者生活支援チームの方で所管することになります。

 例えば、最近の出来事でいいますと、飯舘村の村民の皆さんに移転をしていただく、そういうプログラムを今始めているところでありますけれども、これなども原子力被災者生活支援チームの仕事の一環としてやっているわけであります。八カ町村の問題も、基本的にはこの原子力被災者生活支援チームになります。

 ただ、これは峻別することはできませんので、例えば役場の機能の問題でありますとか、先ほど言いました役場に寄り添うという話になりますと、当然、私が担当しております総務省の仕事にもなってくるわけであります。それから、被災者の生活支援ということになりますと、これも峻別はできませんので、被災者一般として被災者生活支援特別対策本部でケアしなきゃいけない問題もありますので、この辺は有機的に、お互い連携をしながらやっていくということになります。

 率直に申し上げますと、これは本当に率直に申し上げるんですけれども、被災者生活支援チームの方でもっと踏ん張って積極的にやってもらいたいとか、もっと丁寧に八カ町村の町村長さんたちに情報提供してもらいたいと思うこともありますので、そんなこともあって、実は今、被災者生活支援特別対策本部と原子力被災者生活支援チームの合同会議というのもやっておりまして、その場で私たちが気のつくことを申し上げることによって、また、それの進捗を確認することによって、被災者の皆さん、それから避難を余儀なくされた町村長さんの切実な問題が実現されるように担保するというようなことも取り組んでいるところであります。

谷委員 今、片山大臣は率直なところを、私流に受けとめれば、二つの縦系列の連携がいま一つなので、連携を図るよう努めているという趣旨ではないかと思いますけれども、私もそのとおりだと思いますよ。各党・政府実務者会議に毎回私は自民党を代表して出ていますけれども、やはり原子力関係の生活支援なりフォローが弱いです。ここが気になるんです。

 そこで、大臣にお願いしたいのは、原発の八つの町村の役場機能といいますか市町村機能、これは総務省でなければ無理です。経産省に任せても無理。地方自治のことを知らない、端的に言うて。ですから、そこはしっかり責任を持って、主体的にぜひやっていただきたい。そうしないと八つの町村が余りにもかわいそうです。これは、先ほどの坂本委員のペーパーで「原発事故等関係」だから、経産省が中心。経産省が中心ではできるはずがないですよ、こんなもの。ぜひそこのところをお願いしたいと思います。その答弁といいますか決意をお願いします。

片山国務大臣 私もそのつもりでやっておりますし、これからもやっていきたいと思います。

 どうしても経産省の方は、悪気はないんでしょうけれども、一つはプラントの方に目が向きます。今、プラントの封じ込めが一番重要でありますから、そちらの方に重点を置くというのは当然だろうと思います。その結果、本当はそれではいけないんですけれども、関係町村に対するケアが手薄くなるという傾向と実態があったことは否めないと思います。

 特に、私なんかが少しパーセプションギャップを感じましたのは、なかなか町村長さんたちの立場とか苦渋が理解してもらえていないのではないかと思いました。それは、経産省といいますか政府の方で、原発の三十キロ圏内なりのことについて発表をする、例えば一時帰宅といいますか、一時立ち寄りといいますか、そのときに現場で何が起こるかということの想像力であります。大体、役場、町村長さんたちに、どうなるんだろうかという問い合わせが殺到するわけであります。

 そのときに、いや、何も聞いていない、皆さんと同じで、テレビでさっき知っただけですというのでは町村の機能は務まらないわけであります。また、住民の皆さんも、政府が発表するのならば、それは町村にちゃんと事前に連絡が来ているはずだ、隠しているだろうというふうに疑われてもやむを得ないのが我が国のこれまでの慣行であります、よしあしは別にしまして。

 ところが、途中までずっとフォローしておりますと、町村長さんたちはほとんど住民の皆さんと同じ内容のものを、同じ時期に報道を通じて知る、そういう実態でありました。これでは、私も元首長をやっていた者としては、立場がないというだけにとどまらないで、仕事ができないし、住民の皆さんにこれからいろいろな協力を求めたりしていく過程でそのポジションが保てないだろうな、こう思っておりまして、少なくとも、そういう窮地に陥らせないように配慮してもらいたいということは厳しく政府内で申し上げてまいりまして、最近かなり改善をされてきました。

 そんなことも含めて、総務省が自治体の立場を一番よく知っているはずでありますので、これからも自治体に、町村長さんたちに、先ほどの用語で言いますと寄り添っていきたいと考えております。

谷委員 ぜひ、大臣、さまざまなことをしっかり市町村長に連絡してから対外的に公表するということを徹底していただきたいと思います。それは、先ほどお話しさせていただいた各党・政府実務者会議でも何度も我々は言っています。

 私は片山大臣と思いは一緒ですけれども、認識は若干違います。よくなっていないですよ。計画的避難区域の問題なんかでも、全然そういうことも手当てしていない。ですから何度もその辺を、そういう徹底を、いろいろな場で総務大臣の方も強く厳しく主張していただきたいと要望しておきます。

 さて、きょうは東副大臣にも来ていただいております。

 先ほど少し話がありました義援金、なかなかめどが立たないですね。あるいは、不幸にして亡くなられた方が世帯主であれば、五百万円の弔慰金もあります。また、被災者生活再建支援法に基づく、基礎の一世帯当たり百万円もあります。こういう仕組みは、阪神・淡路大震災以降、それなりに充実してきました。制度は充実したけれども、全く手元に入らない。被災者生活再建支援法の支給時期は、副大臣、いつぐらいになりますか。お尋ねします。

東副大臣 被災者生活再建支援金につきましては、都道府県の委託を受けて支援金の支給を行う財団法人都道府県会館において、別の委員会でも申し上げさせていただきましたが、できるだけ早いうちにということで、ゴールデンウイーク前には、早く手続をされた方々から順次支給を開始することを目指しているところです。

谷委員 資料にありますように、現場の市町村はなかなか手が回らないというのは、あの新聞記事だけではなくて私もいろいろ耳にしています。また、そういう声もいろいろなルートから聞こえてきます。

 本当に大丈夫ですか。ゴールデンウイーク明けに、被災者の手元に確実に行く態勢にあると断言できますか、副大臣。

東副大臣 ちょっと正確な資料を持ってきておりませんが、一昨々日ぐらいまでの間に、現在までのところ、百八十五の申請が届いております。もうちょっとふえているかもわかりません。最初の申請というのは三月三十日だったというふうに記憶いたしております。

 今までの過去の場合ですと、種々の手続で二カ月以上時間がかかってしまうわけでありますが、その事務処理の手続の煩雑さをできるだけ改善すると同時に、事務処理能力の態勢を強化することによって、これをとにかく一カ月以内ぐらいにできるようにということで、先ほど申し上げましたとおり、ゴールデンウイーク前にはこの支援金をいただける方が出る、このように確信しておりますし、また、そのように努めてまいりたいというふうに思います。

谷委員 義援金、弔慰金については聞いておられますか、支給のめど。

東副大臣 この点については、いつ出るかということは今申し上げることができませんが、委員は常に被災者の立場で物をおっしゃってくださっており、まさに喫緊の問題だというふうに、私も全く問題意識、思いを共有しているところです。

 ただ、今回の大震災、先生に言うまでもなく、不明者がまだまだたくさんいらっしゃいます。きょう現在においても一万三千七百名ぐらいいらっしゃいます。そういうことをおもんぱからなくてはいけないのも、私は政治の配慮なんだろうというふうに思います。

 一方において確認されている御遺体がある、それに基づいて、先生おっしゃられるとおり、当然それをいただける立場にあるわけでありますが、他方においてはまだ不明者を抱えている御家族の方々も、同じ避難所で、同じ生活空間の中にいらっしゃる。そういう意味におきまして、時期というのもそれなりにきちんと考えていかなくちゃいけない、このように私は思います。

 義援金については、これは民間の善意に基づいているわけでありますから、一概に政府としてこうしなさいということは言えないわけでありますが、基本的に同じ課題に直面するんだろうというふうに思います。

谷委員 義援金は全国からの善意のお金ですからおいておきまして、災害弔慰金あるいは被災者生活再建支援法はそれぞれの予算を通じてということになろうかと思います。

 それでは、被災者生活再建支援法は、一次補正、五百億とも言われておりますけれども、おおむね五百億、その程度ですか。またその根拠は、なぜ五百億なんですか。お尋ねします。

東副大臣 これはもう先生御案内のとおり、都道府県が拠出した基金を活用して、基金が支給する支援金の二分の一を国が補助、そしてまた災害弔慰金の費用負担は、国が二分の一、都道府県が四分の一、市町村が四分の一、こういうふうになっていて、なぜそれが、生活維持者が死亡された場合五百万円なのか。それは……

谷委員 いえ、副大臣、災害弔慰金ではなくて被災者生活再建支援法。

 基本的に、世帯で百万でしょう。それを五百億分、一次補正に計上するやに言われていますので、その確認と、なぜ五百億なのですか。その問いです。

東副大臣 現在積み立てられているのが五百三十八億円でございます。そして、それに見合った部分を国として支給する、こういう枠組みになっております。

 そして、この被災者生活再建支援金に関しては、まず初めに基礎支援金として、全壊の場合また長期避難をされている場合、そのときに百万円を支給させていただく。当然、自分自身の住んでいた家屋が全壊し、それに対して、それを新たに購入する、新たにまた建て直す、そういう場合には二百万円が追加加算されていくわけであります。

 そうすると、最終的な額がどれだけになるかということは今後の状況をすべて把握してから出てくるわけでありますが、五百三十八億円、それに見合った形での五百三十八億円を足したとしても一千七十六億円でありますから、当分の間はこれに対して支給できる。しかし、これでは当然足りなくなってくる可能性がありますから、そのときにまた、それをどうするかという問題に遭遇するというふうに思います。

谷委員 ちょっと副大臣、あれですね。今、被災者生活再建支援法に基づく残高が五百三十八億。これは、今の仕組みからいえば、国と都道府県は一対一だ。だから、それに見合う五百三十八億を計上すれば、おおむね一千億強。基礎の支援金が百万であれば、十万世帯で一千億ですね。当面はそれ。でも、それだけではもちろんだめですね。今の仕組みでも、住宅再建の場合はプラス二百万、三百万という仕組みがある。そういう仕組みは最低保障するということをやはり政府は明確に言わなきゃならないんじゃないですか、明確に。

 そして、では同じように、都道府県に一対一でお願いするのか。それは実際問題、無理でしょう、正直なところ。だから、その分は国が責任を持って、それこそほかの、今回の瓦れき処理なり、さまざまな災害の特例で阪神・淡路以上に手厚く見ると言っているにもかかわらず、被災者生活再建支援金は、少なくても今の制度の分はしっかり額は保障する、足らずばみんな国がやるんだ、そういうことをなぜはっきりと言われないのか、言えないのか。御答弁をお願いします。

東副大臣 谷先生の思い、それは僕はよくわかります。その上で、この被災者生活再建支援制度そのものは、全国の都道府県が相互扶助の観点から基金を拠出して運営している都道府県主体の制度であります。国が全額を負担することは、基本的には本制度の趣旨にそぐわないと考えている。しかし、先生がおっしゃられるとおり、一つの政策論として、法改正として新たな提起をしていくということであるならば、それは徹底的に議論していかなくちゃいけない、そういう問題なんだろうというふうに思います。

 御指摘になっているとおり、今回の災害では、住宅被害の全容は依然としてまだ明らかになっていないんですが、現在の被災者生活再建支援基金の基金総額では対処できない、そのこともほぼわかっているわけであります。そうであればこそ、制度そのものはそういうふうになっている、それを踏まえた上でどのようにしていくのかというのが、まさに政治家としての課題になってくるんだろうというふうに思います。

谷委員 大変歯がゆい答弁ですね。副大臣も、本音は違うかもわかりませんけれども。

 要は、現行の仕組みで支払われるということは、みんなそれを前提に考えています。我々は、自民党なり各野党は、先ほどの各党・政府実務者会議でもこれを五百万円と強く主張し、唯一、岡田幹事長が、そこまではということで、充実強化を検討するという文言で各党まとめさせていただいたわけでありますけれども、その前提は、今の仕組みでしっかり払ってもらうというのは当たり前だ、財源は何とか国の方で手当てする、そういう前提だということを、副大臣はよく御存じですけれども、再度御指摘させていただきたいと思います。

 お手元の資料の二ページ目に、片山大臣の写真もございます。片山大臣は前向きというふうに、井戸兵庫県知事に姿勢を示した。大臣、今の副大臣の答弁よりももう少し前向きな答弁をいただけるかと思うんですけれども、この問題、どう考えておられますか。

片山国務大臣 これは、いろいろな経緯を経まして、当初、阪神・淡路の後に百万円という支援金の額でスタートしたわけでありますけれども、その後、紆余曲折、経緯を経まして、最大三百万円支給する、住宅の再建に使ってもいいというところまでこの制度は進化してきたわけでありまして、これはやはり、私は今回の被災者の皆さんに対してもきちっと保障されるべきだと思います。ただ、現実には、先ほど来東副大臣が答弁しておりますように、現在、知事会側で積み立てているのが五百三十八億円しかないということで、これでは到底足らないわけであります。

 さて、それをどうするかということでありますが、先ほど言いましたように、被災者の皆さんにきちっとこの枠組みを保障するという前提でその財源のあり方は考えなければいけない。ただし、その際に、都道府県の負担額というものもおのずから限度がありますので、そこは基本的には政府の方でその大宗を見る、負担をする、そういう基本的な考え方に立たなければいけないと私は考えております。

 ただ、現時点ではまだ、一次補正では五百三十八億円に見合う相応の金額のみを計上するということになっておりますので、残余のことは別途ということになるんだろうと思います。その際には、全体を含めた財源のあり方というものも当然議論になるわけでありまして、そういう議論を経て、きちっと住宅再建のための追加の二百万円というものが交付される、それを担保しなければいけない、これが政治の責任だと私は思っております。

谷委員 片山大臣の御答弁では、今の仕組みは保障されなければならない、財源の不足分は国が大宗を確保しなければならない、そういう答弁だったかと思いますけれども、私は、予算は後でも、この分はしっかり国が責任を持って払いますよというメッセージを早く出すことが、それこそ政治の責任だと思いますよ。ですから、一次補正でたとえ五百億だけにしても、最終的に今の制度を国がしっかり保障するんだ、だから、被災された皆さん、これだけは国が最低保障するから、また再建に向かって頑張ってください、そういうメッセージを強く発していただくよう要望をしておきます。

 さて、東副大臣がおられますので、復興の話です。復興基金です。

 復興基金は阪神・淡路の前に、雲仙・普賢岳の災害で、義援金の残余、あと税金などで基金をつくって、それをベースに阪神・淡路で最終的に九千億の基金をつくり、その運用益でさまざまな、三千億近くの事業だったかと思いますけれども、十年間で行いました。新潟中越地震にも、それを見習って復興基金をつくったわけであります。

 いろいろなところから、我が党からの提案も含めて、名称はともかく、こういう復興基金的なものをというのは共通しているかと思うんです。ただ、今回の災害が大変広い範囲にわたっている。そうなると、従来の阪神・淡路なり新潟中越、あるいは少し違うかもわかりませんけれども、昨年の宮崎の口蹄疫、これも我が党が強く主張しまして、特別措置法で基金をつくったわけでありますけれども、そういう一つではなくて広域型、被災地全体をカバーするものと被災県ごとにつくるもの、いろいろな考え方があろうかと思います。また、今はこういう低金利でありますので、たとえ大きなファンド、数千億、あるいは極端な話、一兆円の基金をつくったとしても、その運用益は、年一%であればわずか百億しか出ない。

 そういうことでありますので、では、そういう基金をどうするか。運用型にするのか取り崩し型にするのか、また、財源は国費にするのか、あるいは過去の例のように交付税措置で手当てするのか、いろいろな考え方があろうかと思いますが、全般を所管されている東副大臣、考え方はどうでしょう。

東副大臣 谷先生御指摘のとおり、復興基金というのはこれまで、阪神・淡路大震災復興基金、あるいはまた新潟県中越大震災復興基金等の例があるところでございます。

 これらの基金は、いずれも被災自治体による自立的また主体的な動きにより運用型の基金として設立され、国はその財源として地方団体が発行する地方債の金利負担に交付税措置を行ってきたところであります。

 先生が既に御指摘のとおり、そういう復興基金なるものをつくることによって、これだけ低利の状況の中で果たして運用益が得られるのかどうか。そうではなくて、基金はつくるけれども、それを取り崩していくということになるのではないのか。さまざまな議論があると思います。

 ただ、私はいつも一貫して申し上げさせていただいているんですが、被災地の方々とお話をさせていただいておりましても、自分たちは座してただ支援だけを待っているのではなくて、いろいろなことをやっていきたい、こういう息吹が今出てきているところであります。そういう意味で、本来、政府というのは結局、国民の主体的な意思をどれだけバックアップできるか、またバックアップしていかなくちゃいけないんだと思うんです。

 そういう意味で、まずもって被災地域における地方自治体、被災民の方々のニーズ、こういうものをちゃんと把握していく必要があるんだろうというふうに思います。そして、その上で国としても、基金により対応が必要な事業としてどのようなものがあるのか、被災自治体のニーズを十分伺いながら、どのような財政措置を講ずることが適当か、そういう順番になっていくんじゃないのかというふうに思います。そのように考えております。

谷委員 基金を考えるときに、今副大臣から答弁がありましたように、従来型の運用型であれば、なかなか今の金利からして難しい。しかし一方で、全額国費ということであれば、また補助金適化法の適用を受けるのか、こうなれば使い勝手が大変悪い。

 片山大臣、その辺、総務大臣としての考え方、総務省というよりも総務大臣として、この問題をどう考えておられますか。今度の震災、津波について、復興のための基金のこれからのあり方をお尋ねします。

片山国務大臣 被災地の復興のための財政措置をどうするかということだと思いますが、ポイントは幾つかあると思います。

 お金の問題でありますから、必要な額が被災地の自治体に届けばいいわけでありますけれども、その際に基金をつくられたのは、いろいろな理由があると思いますけれども、一つは、末永く政府の方がちゃんと被災地に対して配慮する、ケアするという一種の安心感を担保するということもあったと思います。それはそれで私は非常にいい制度だと思いますけれども、いかんせん、先ほど来議論がありますように、昨今のような低金利では余り経済的な価値を生み出せないということもあります。あと、例えば補助金といいますか交付金でありますと、補助金適化法の問題もあるということも指摘のあったとおりであります。

 率直に申し上げますと、私などは特別交付税をきちっと配分してもらう、私が被災地の首長であると、特別交付税を十分配分してもらうというのが一番いいのではないかと当時思いました。それは、交付税でありますから自由に使える、使途の制限がない、繰り越しをしてもいい、会計検査もない、別に会計検査が悪いとは言いませんけれども、自治体が自由にお金を使えるということで、特別交付税が一番いいのではないかと思います。

 ただ、これは単年度、単年度で措置していきますので、数年後までの将来にわたっての担保が脆弱であるという問題があります。仮に特別交付税でやるということになりましたら、何らかの法的な担保を設ける、そういうことも、手法としては容易にできますので、一つの選択肢に入れることが妥当ではないかなと私は今思っております。

谷委員 もう間もなく時間でございますので、最後に、今の絡みで、片山大臣は特別交付税と言われますけれども、私はやや首をひねります。というのは、やはり復興には時間がかかるんですね。十年は優にかかりますよ。十年間特別交付税で、別枠で地方財政措置がなされるかということなんです。

 一次補正で、特別交付税を一千二百億増額するやにいろいろお聞きしておりますけれども、それでも正直なところ、一千二百億で十分かどうかは大臣も自信がないと思うんです、財政需要がよくわからないですから。

 ですから、これから復興の間、しっかりとした財源手当て。確かに特別交付税の場合は、使い勝手は極めていい。しかし阪神・淡路の例からいうと、特別交付税を増額したのはその年だけですよ、阪神・淡路でも。三百億でした。私は兵庫県庁でそういうセクションにいましたので、よく覚えています。値切られました。実際、三百億じゃないけれども、半分は兵庫県が見ろということで、わずか三百億しか総額を増額しなかったんです。あとはみんな全体の中で、翌年度以降吸収されました。今回もそうだとは言いませんけれども、それほど別枠で保障するということは難しいということかと思います。

 一千二百億を一次補正で措置予定と聞いていますが、仮に精査をして不十分ということであれば、さらなる別枠の増額を求められますか。最後にお尋ねしたいと思います。

片山国務大臣 これから、その被害の状況というものが、行方不明者の皆さんがどうなるのかということなどを含めて被害の全貌が明らかになった段階で、それではとても足らないということにもし万が一なりましたら、当然、さらなる増額を要求することになります。

 ただ、今回、補正予算で一千二百億円措置するということにしておりますし、それから、例の交付税法の改正の中で、特別交付税の割合を段階的に下げていくということを私の方であえて提案しておりましたけれども、これが修正によって、六%をそのまま当面維持するということになりましたので、我々からしますと、一般の特別交付税で想定していたものよりは一%分ふえております。そういうものもあるということを前提にして考えれば、今の段階では補正の必要性までまだ実感できるわけではありません。

谷委員 ありがとうございました。でき得れば、まだまだとるんだ、そういう決意を言っていただきたかったわけでございますけれども、ともに頑張りたいと思います。

 ありがとうございました。

原口委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

原口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正です。

 限られた時間でありますが、きょうは、特に福祉に限って各面から議論をしたいと思います。

 まず、地域主権改革関連三法は、昨年の通常国会に提出をされて、その後、衆議院で継続審議となっていました。この一年余りの間に、政治、社会は激変に見舞われていると言っても過言ではないと思います。そうした中で、改めてこの法案を審議するわけであります。

 昨年の法案提出以来、さまざまな声が私のところにも届いております。地域のことは地域に住む住民が決めるという考え方、これは大いに賛成であります。しかし、寄せられた声の中には、必ずしもそうでない、逆に地域主権改革への危惧の念を表明する、そういう話も多くございました。特に、社会福祉に携わっておられる方からの不安の声が多かったように感じています。

 そこで、まず、地域主権改革に関連して、福祉に関係する団体、そういう皆さんとの意見交換あるいは意見の聴取、そういうふうなものは目的意識的に行われてきたのかどうなのか、そこ辺を具体的にお答えいただければありがたい。

片山国務大臣 法律の仕組みとして、地方分権改革推進委員会というものが立ち上がって、これは法律上の機関でありますけれども、ここが勧告したものについて、基本的にそれを受け入れて順次政府の方で法案化していく、こういうことをやってきておりますので、法律案をつくる段階で、これは福祉に限りませんけれども、いろいろな各般の関係団体との間で協議をするという作業はやっておりません。むしろ、勧告するまでの段階で地方分権改革推進委員会がいろいろな潜在的な意見とか所管をする省庁から十分に意見を酌み取って、それを踏まえた上で勧告が出てきたものと理解しております。

重野委員 そうすると、ここに至るプロセスの中で、そういう仕事に携わっている方、あるいはそういう施設を経営している方、そこで働いている皆さん、そういう皆さんの意見というのはどの段階で集約されているというか、あるいは反映されているというのか、そういうふうなものがあったのかということを聞きたいんですね。

 今回の整備法案では、関係法律について、施設の設置管理基準は条例に委任する、こういうふうになっておるわけです。私が先ほど申し上げましたように、福祉関係の関係者あるいはそこに働いている皆さんからの不安や危惧というのはその部分にあるように私は受けとめるわけです。

 委任に際して、自治体が条例によるべき国の三つの段階の基準が設けられている。もっと詳しく言うと、従うべき基準、標準、参酌すべき基準、こういう三つに分けられているわけですが、それぞれの基準にこの設置管理基準というのはどのように振り分けられたのか、私はちょっとわかりにくい。そこ辺の説明をお願いいたします。

片山国務大臣 これは一般論で言いますと、コアとなるような要素といいますか、一番重要な要素というのは従うべき基準になっている。それから、逆に、必ずしもコアでないという部分については参酌すべき基準になっている。これが一般論だろうと思います。

 例えば、具体的に障害者の皆さんの福祉施設の基準などをとってみますと、従うべき基準の中には一人当たりの居室の床面積というのが入っているわけであります。確かに、一定の居住水準を保とうと思いましたら必要な床面積ということが求められますので、これを従うべき基準にするというのは妥当だろうと思います。

 他方、居室定員というのは参酌すべき基準になっております、四人以下という。これは、大きな居室でありますと、一定の一人当たりの床面積を確保しながら、多少人をふやすことも可能である。生活水準といいますか、居室の水準を落とすことなく多少人数をふやすことは可能であるというような意味合いが多分あるんだろうと思いますけれども、そこは、必ずしも従うべき基準ではなくて、参酌すべき基準にしている。

 いずれにしても、従うべき基準として一人当たりの床面積が確保してあればそれ相応の水準が維持される、こんな考え方だろうと思います。具体例で申し上げましたけれども、一番コアとなる部分について従うべき基準にしているというふうに私は理解をしております。

重野委員 もっと具体的にお聞きしますけれども、これに関連して、児童福祉法、老人福祉法、介護保険法、障害者自立支援法等々の法律が関連するわけですね。その中で、今言った、従うべき基準、標準、参酌すべき基準、この三つの使い分けがされるわけです。例えば、養護老人ホームの入所定員等々については「省令で定める基準を標準として定める」、こういうふうに明確に書いているんですが、そういうふうな「省令で定める基準を標準として定める」という書きぶりのない部分もあるんですね。

 例えば、障害者自立支援法に関連をして、指定障害者支援施設という項目がございます。これについて今のような形で比較してみると、この施設についても、三つの分け方の中で、全部が書かれていない。例えば、ある部分は従うべき基準、それから標準的な基準、あるものは参酌すべき基準というふうに使い分けがされているんですが、その三つのうち二つが書かれているけれども一つはないというふうなものがあるわけですね。何でそんなことになるんだろうか。

 養護老人ホームの入所定員であるとか基準該当居宅サービス、基準該当介護予防サービス、相当な数があるわけですけれども、それを一個一個見ていくと、中身は必ずしも同じじゃないんですね。つまり、三つの条件の中の二つの条件を満たすもの、三つの条件を満たすもの、こういうふうに使い分けされているんですね。何でそんなことになるんだろうか。これは私の疑問なんですね。そこ辺の説明をしてください。

片山国務大臣 三つの基準に分類はしておりますけれども、個々の法律において、三つを記述する必要がある場合と、必ずしもそうでない場合があると思います。

 極端な話を言いますと、従うべき基準だけ書いておけばそれで事足りる、そういう分野もあるはずでありますし、すべてが参酌すべき基準でいいというような分野もあるかもしれない。それは、それぞれの法律の内容がカバーする領域の状況によって異なるんだろうと思います。

 最終的には自治体が条例で決めるということになりますから、そこにおいて必要なことを、ある場合には法律によって従うべき基準を使うということだし、ある場合には標準とか参酌すべき基準をそれぞれ標準としたり参酌をしたりしながら、自治体の議会においてよく審議をしながら妥当な結論を得ていく、これが法律の仕組みと期待するところだろうと思います。

重野委員 具体的に聞きますけれども、例えば指定介護老人福祉施設というのがあるんですね。この場合は、(イ)、(ロ)、(ハ)とありまして、サービスに従事する従業者及びその員数、居室の床面積、入所する要介護者のサービスの適切な利用、適切な処遇及び安全の確保並びに秘密の保持に密接に関連するものとして厚生労働省で定めるもの、こういう三つが書かれている。これについては、厚生労働省令で定める基準に従い定めるものとしている。これはそのとおりですね。その他については厚生労働省令で定める基準を参酌する、こうなっている。

 次に、介護老人保健施設については、(イ)、(ロ)は同じでありますが、これについても省令で定める基準に従い定めるものとし、その他については厚生労働省令で定める基準を参酌するものとする。これは同じですね。

 ところが、指定地域密着型サービスというサービスがあるんですが、それについては、(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)という四項目があって、従事する従業者に係る基準及び当該従業員の員数、あるいは地域密着型サービスの事業に係る居室の床面積、小規模多機能型居宅介護及び認知症対応型通所介護の事業に係る利用定員というふうにあって、加えて五つ目に、指定地域密着型サービスの事業に係る利用定員、これは省令で定める基準を標準として定める、こういうふうになっている。その他の事項については、厚生労働省令で定める基準を参酌するものとするというふうに、その仕事の内容によって対応する義務づけが違うんですね。それに共通する、なぜそうなるのかというその分類、なぜそういうふうに分けられるのかというところについて、なぜかという私の疑問がある。それはなぜかということをお答えください。

片山国務大臣 その各論の詳細については、ぜひ厚生労働省の方にお尋ねいただくのがよろしかろうと思います、そこまで細かく主管大臣として掌握しておりませんので。

 ただ、一般論として申し上げますと、先ほど来御答弁申し上げておりますように、それぞれの法律のカバーする領域にはやはり違いがあります。当事者の皆さんの態様も違いますし、深刻度も違いますし、例えば意思表示だとか、そういうことも違う場合があります。その態様の違いに応じて、規制の仕方といいますか、どの基準をどう使うかということが決まってくる、これが一般論であります。

 各論については、必要がありましたら、それぞれの所管の省にお尋ねをいただく方がより正確ではないかと思います。

重野委員 それでは角度を変えて、それだったら僕は厚生労働省を呼ぶべきだったと今反省しているんですが、例えばこれについてはどう答えますか。

 障害者自立支援法の改正で、従うべき基準として人権に直結する運営基準というのが挙げられているんです。他方、その他の運営基準は参酌基準となっている。しかし、この参酌基準の中には、居室定員四人以下などの項目も含まれているわけですね。この基準が引き下げられれば、当該者にとってみれば劣悪な処遇が発生する可能性が増してくる。

 そこで、居住の条件は人権に直結する問題ではないのか。障害者自立支援法の中では、従うべき基準として人権に直結する運営基準が挙げられている。そこでは人権に直結するという言葉が使われているけれども、実態論として、居室定員についてその基準が引き下げられるということは、これは人権という点から見れば後ろ向きの話ではないのかという指摘を私はするんですが、大臣、そこ辺についてはどうですか。

片山国務大臣 その点については、私も非常に重要だと思います。

 そこで、先ほどもちょっと触れましたけれども、一方で、一人当たりの居室の床面積は例えば九・九平米以上というふうに、従うべき基準として定めているわけです。したがって、最低限と言うと語弊があるかもしれませんけれども、居住空間として必要な面積の最小基準というのは、自治体が従わなければならないというふうになっているわけです。

 その上で、あわせて、一室当たりの居室定員をどうするか。四人以下というのは、参酌すべき基準として、必ずしもリジッドな、厳格な規則として定められていないということだろうと思います。仮に、居室定員を参酌すべき基準として、それだけで終わり、それ以外何もないということになりましたら、御懸念のようなことはあると私も思いますけれども、一人当たりの床面積が別途定められておりますので、そこは、仮に自治体が変なことをしようとしたとしてもできないような仕組みになっていると思います。

重野委員 私は、参酌基準の中に入れるところが問題だという指摘をしているんですね。これは当然、障害者自立支援法の改正の中でも、いわゆる人権という問題が非常に重視されているわけです。人権に直結する運営基準というものが取り上げられているわけですね。

 ですから、その流れと、今、この定員の問題について、参酌基準ということは幅があるんですね。幅があるんです。ところが、幅があるということは、いうところの従うべき基準、そういうイメージと逆なイメージがあるんですね。そこのところはやはりそごがあるのではないかという指摘を僕はしているんですが、それについて改めて答弁してください。

片山国務大臣 もし、おっしゃるとおり、すべてこの参酌基準をやめて、もう従うべき基準にせよということでありましたら、地方分権も地域主権改革も根っこから否定することになるわけであります。やはり基本的には自治体で自主的に判断をしてそれで決めてくださいということが、基本的方向として私は正しいと思うんです。

 ただし、そのことによって本当に弱い立場の人たちに劣悪な環境しか提供できないということになりましたらそれは大きな問題でありますので、必要最小限の部分に限って、具体的には従うべき基準という形で遵守を要請しているという、このバランスだろうと思うんです。

 もちろん、できるだけ従うべき基準を多くすることによって、弱者、弱い立場の人たちを守るべきだという議論もあると思います。他方、できるだけ地域のことは地域で決めるという地域主権改革、地方分権改革の精神というものを大事にすべきだという考え方もあろうかと思います。それのバランスといいますか兼ね合いのもとにこういう三つの基準が設けられたものだと私は理解しております。

重野委員 自治とか分権という言葉は、私も全く否定するつもりはない。しかし、自治体といいましても、やはり裕福な自治体と財政が厳しい自治体があるわけですね。

 そうすると、例えばこういう施設の一部屋の定員、四人なら四人、そういう国の定めがある、国がそれをやれというのと、いや、それは自治体にお任せします、どうぞ御自由に判断してください、そうなったときに、受ける側からすれば、豊かな自治体の施設に入った人はそれなりの対応がされる。ところが、自治体財政の厳しいところにおいては厳しいなりの判断をするから、四人のところを五人にするとか六人にする、そのことをやっていいですよということにこれはつながるんじゃないかないかという危惧の念を持つから、私はこれについて執拗に言っているわけです。そこのところはどうなんですか。

片山国務大臣 それは、幾つかのポイントがあると思います。

 参酌基準としてある程度の幅を持たせるというのは、確かに財政の裕福度合いといいますか懐ぐあいによっても変わってくるという考え方もあろうかと思いますが、一つは、例えば居室が大きな部屋だとある程度余裕があるわけですね。四人以下といっても、大きな部屋の四人以下と小さな部屋の四人以下では異なるわけでありまして、一人当たりの床面積九・九平米を確保しているという前提のもとに、これは従うべき基準ですから、ある程度大きな部屋だったら、四人が五人になるということも理論上はあり得るんだろうと思います。どんなに大きい部屋でも四人以下というのは、これはこれでかえって実情に合わない結果を招来することになるんだろうと思います。その辺を、九・九平米を守りながら実態に即して考えてくださいというのがこの法律の趣旨だろうと思います。

 もう一つは、財政の豊かなところ、そうでないところというのは、現実の問題としては、もちろんこれを平等にするわけには決していきませんけれども、しかし、できるだけその格差を是正するという地方財政の仕組みがあるわけであります。少なくとも、こういう参酌基準も含めて、標準的な福祉行政が行えるだけの財源は自治体にとって確保されているはずでありまして、あとは、きちっとその自治体の議会でもって条例を制定する際に審議をしていただいて、それで妥当な結論を導く。その妥当な結論を導くだけの力量と資質は自治体にあると私は考えております。何やら、自治体に幅を持たせるとみんな悪い方に悪い方に勢ぞろいしてしまうのではないかという不信感というものが巷間ないわけではありませんけれども、決してそうではないと私は思います。もっと自治体の良識というものを信頼していいと考えております。

重野委員 なかなかかみ合いませんけれども、実際にそういう施設を運営している方々、あるいはそこに入っている、利用している方々から入ってくる意見は、残念ながら、私が言ったような同じ脈絡の話が多いんです。そのことは、大臣、それは厚生労働省というふうに峻別するんじゃなくて、やはり大臣もそこ辺はしっかり受けとめておく必要があるのではないか、このように思います。

 以上で終わります。

原口委員長 次に、西博義君。

西委員 公明党の西博義でございます。

 まず、先日、総務委員会が開会されまして参考人質疑をやらせていただきました。それぞれ、知事さん、市長さんそれから学識経験者、大変有意義な質疑が行われたというふうに思っております。

 その質疑の中で、私は残念ながら質問し損ねたんですが、新潟大学から来ていただきました井ノ口参考人から、被災者台帳を用いた生活再建支援システムの重要性についてお話がありました。大変示唆に富んだお話でございまして、感心したのです。

 一方、先日、総務省は、東日本大震災で各地に避難をされている住民の皆さん方の所在を把握するために、避難者情報を集めて県や市町村にデータを提供する、こういう報道がなされておりました。しかし、総務省の避難者把握は、単に避難先の連絡先を把握するというところから、さらに次の応用ということをどうやら余り考えておられないように私には見受けられました。

 こうしたデータは、例えば西宮市の被災者支援システム、これは阪神・淡路を経験された西宮が独自に構築されたものと聞いておりますが、そういうものや、京大の防災研究所生活再建支援システム、これは実は井ノ口先生も同じところに所属もされているようですが、このように被災者を支援するさまざまな業務に連動していないと効果的ではないんじゃないか、こういうふうに思うんです。そうした視点でデータを収集し、提供しようとしているのかということをまずお尋ねしたいと思います。

片山国務大臣 被災者の皆さんを一元的に把握するということは必要なことだと思います。被災者の皆さんの被害の実態でありますとか、家族構成でありますとか、それからどういう支援が得られるのか、得たのかということを台帳などで把握するということは必要なことだと思います。

 ただ、これをやるのは市町村でありまして、市町村が、例えば、おっしゃったような西宮で開発をして、今、財団法人地方自治情報センターがソフトを管理して無償提供しておりますけれども、こういうソフトを使って管理をするということ、これはぜひやっていただきたいといいますか、必要に応じて使っていただくようお勧めしたいと思っております。

 それはそれとして、今回総務省が始めましたのは、市町村がそういう台帳管理を仮にしようとした場合でも、まず一番重要なのは、住民の皆さんの所在を確認しなきゃいけない。特に今回は、津波被害を受けて、地元を離れて避難をしている方がある程度おられる。それから福島の場合には、双葉郡の八町村を中心にして、多くの皆さんが県外に移転をされている、しかも、その所在が不明である。こういう状態ですと、ちゃんとした被災者の皆さんの情報管理というのはできないわけでありまして、まずはその前段階として、市町村が、被災者の皆さんが今どこにどうしておられるのかということを把握するための仕組みが必要だろうということで、全国の自治体に呼びかけて、全国の自治体の協力を得て、ネットワークシステムを今構築しつつあるところであります。

 きのうからこれが一部作動し始めまして、近々、全国で作動することになると思いますが、ぜひ、このネットワークを通じて、市町村が住民の皆さんの所在など必要な情報をきちっと把握できるようになることを今期待しているところであります。

西委員 と申しますのは、今後のデータ利用の枠組みがきちっと定まっていないと、他のシステムとの互換性がなかなかうまくいきにくいのではないかということを心配しているわけです。データを共有して相互に取り込んだりという作業の手間など、統一したシステムだと簡単にできると思うんですが、そういう意味では、今後の有効利用のために支障が生じるような設計になっていないのかということをやりようによっては心配しなければいけないというふうなことを思っているわけです。

 さて、総務省の説明では、提供されたデータをもとに、もともと住んでいた自治体が見舞金、生活再建支援金を給付したり、税や保険料の減免措置を通知したりということなど、災害関連情報を避難者に提供できるようになる、これは非常に大事なことだと思います。それでないとすべての人に通知が行き渡らない、また支援が行き渡らない、こういうふうになるわけですから、これは大事なことです。

 さらに、見舞金などの給付や税、保険料の手続などは現在住んでいる場所で行えるように、各自治体に対応していただきたい。この連携がとれるということの先には、一々地元の自治体に行って手続をするというようなことのないように、即座に現地、現地、つまり避難先のところで対応できるようにぜひともしていただきたい、こういうふうに思うんですが、このような対応をとることをお考えでいらっしゃるかどうか、お答えいただきたいと思います。

久元政府参考人 ただいま大臣から御答弁がありました全国避難者情報システムによりまして、避難先の所在情報などが避難元の市町村に伝わるということになります。これによりまして、さまざまな給付あるいは税の減免などの通知を行う責任は避難元の市町村にあるというふうに考えられますので、避難元の市町村から実際に所在がわかった個々の被災者の方に通知をするということが基本でありますし、現実的であると考えられますけれども、しかし、避難元の市町村が置かれている状況などはさまざまでありますし、現実にいろいろな支障が生じている場合もありますので、これを避難先の市町村に委託するということは制度上可能であります。

 いずれにいたしましても、どういうような形でそういう行政サービスが提供できるかということについて、よく私どもも相談に乗らせていただきたいというふうに考えております。

西委員 今回の避難がさまざまな形で行われていますが、遠距離で避難されている方、また、相当長期にわたりそうな避難の形態も考えられます。そういう意味で、連絡をいただくのはいいんですが、さまざまな手続上、そのたびに避難元のところに行って手続をするということの苦労ができるだけ軽減されるように、その先まできちっとつながっていくわけですから、ぜひともこの工夫をお願いしたいと思います。

 では、次の内容に行きます。

 先日の総務委員会で、各都道府県ごとに被災県の担当を決めて支援したらどうかということを私は申し上げました、大臣は否定的でしたが。

 先日も紹介しましたけれども、関西広域連合、初動段階からすごく頑張って今支援をしていただいておりますが、この広域連合は、二〇〇八年の中国四川大地震のときに、中国政府が大きな分担をして支援した対口支援、タイコウというのは、対策の対に口ですね、中国語でぴったり合うという意味だそうですが、こういう支援を採用しているというふうに言われております。たしか私の質問のときも、大臣にそういうふうなお答えもいただいたかと思いますが、その支援が効果的に機能して注目を浴びているというふうに言われておりました。

 現在、本格的な復興に向けて重要な局面であるというふうに思いますので、先ほどから、地元の自治体職員がなかなか人手も足りない、仕事も大変多いという議論がありましたけれども、私も同様に考えておりまして、知事会や自治体任せにしないで、国が対口支援の形を全体的に整えるように、一カ月たちましたので、今の段階で、本格的な次のステップに向けておやりになるように提案をしたいと思います。

 また、総務省から県レベルにさまざまな人材の派遣をされていると聞いておりますが、ぜひ市町村レベルにまで総務省の担当を派遣して、そして、市町村全体の復興の支援のために大きな立場から、県や国と連携をとれるような仕組みをぜひともつくるべきだと思いますが、見解をお願いいたします。

片山国務大臣 被災自治体をどうやって支援していくのかということでありますが、わけても自治体の支援になりますと、同じような仕事をしている人材の豊富な他の自治体が支援するということが非常に有効になるわけでありまして、それをどういうふうにいわゆるマッチングをさせていくかということだろうと思います。

 一般論として、例えば自治体による任意の支援などがおよそない国柄、地方自治がない国柄、民間の有志によるボランティアもほとんど期待できない国柄、そういう国柄でありますと、中央政府が地方公共団体にいわば強制的な割り当てをして、どこそこに行きなさいということはあり得るだろうと思います。恐らく、何もしないよりは、それが有効に機能するということは容易に想像できるところであります。

 他方、自治体が、例えば姉妹交流でありますとか、いろいろなえにしでもって自主的に支援をする、住民の皆さんの賛意を得て、みずからの負担も含めて他の自治体を支援するということがかなり期待できる国柄、民間のボランティアの皆さんも相当程度駆けつけるという習慣のある国柄でありますと、そこに国が強権でもってどうしろこうしろという手法は、恐らく余り有効ではないと私は思います。そういうところでありますと、自治体の自主的な支援を前提にしながら過不足を調整する、足らないところを国の方が一定の役割を果たしてその不足を補う、そういうソフトなやり方の方が私はいいだろうと思います。

 現在は、いわばそういうやり方をやっておりまして、政府は何もしていないわけではなくて、今は主として、全国市長会と協力をしながら、被災自治体から必要な職種、派遣期間の要望を受け取りまして、これを全国市長会を通じて全国の自治体に照会をかけて、その上で、それに対応する職員の派遣を募ったわけであります。現時点で六百七十数人の被災地からの要請に対して、これはまだふえる可能性はもちろんあります、ふえていただいて結構なんですけれども、現時点では六百七十数名の要請に対して二千人を超える応募があるわけでありまして、私は、この方がいわば強制割り当てよりは、より任意性、自主性、積極性を涵養しながら被災地の皆さんの支援に立ち向かえるものだと思っております。

西委員 と申しますのは、県は比較的国とは近いんですが、やはり市町村のレベルになりますと、国の意向とか、国と直接話をするということについては非常に落差といいますか、そういう思いがあるというのを、さまざまな要望事項なんかを聞いていますと、こちらの思いと全く違うレベルのことがたまたまたくさんありましたので、国が出張っていくというよりも、国が出ていってお世話をさせていただく、国との連絡係をさせていただく、そういう人がいた方がスムーズではないか、そういうつもりで後段のことは申し上げたつもりです。どうこう差配をしていただくということを考えているわけではございません。

 続いて、今回の法案の中身について少し入っていきたいと思います。

 昨年十一月二十五日の参議院の総務委員会で、国と地方の協議の場について、大臣は、「実際にやってみますとなかなか難しい面もあります。」と率直に述べられております。政策をまとめていく上で、各省庁間、与党との調整を行う中で、地方との協議をどのようなタイミングで行えばいいのか、これは判断が難しいというのはよく理解できるところでございます。しかし一方、地方側には、国と地方の協議の場は大変高い期待感があります。総務大臣は、ぜひ、その難しさを乗り越えて実現、実施に努力をしていただきたい、さらに充実のために努力をしていただきたいと思います。

 まだ法律は成立しておりませんけれども、実際に行われている国と地方の協議の場について、二月十八日、衆議院予算委員会の参考人質疑に出席された大阪府池田市の倉田薫市長がこのように述べられております。地方の意見を聞きながら、それ以上のことはなかったということで形骸化しているという旨の指摘だと思うんですが、こんな話もございました。

 このことについて何が問題なのか、そして国と地方の協議の場を生かすために、今後どう解決していく必要があるのか、大臣の御所見をお願いしたいと思います。

片山国務大臣 最初にちょっと申し上げておきたいのは、国と地方の協議の場を設けたからといって、あらゆる問題が快刀乱麻のごとく解決するという期待は抱かない方がいいと私は思うんです。

 いろいろ運用に当たって問題点があると申しましたのは、地方六団体というものが、先ほどもちょっと触れましたけれども、決して一枚岩ではないということ。都道府県なら都道府県の中にも、財政力の問題とか、それから都市型なのか、それともそうでない非都市型なのかという違いもあるということ。それから最近感じますのは、首長さんの間に、非常に見解に個人差があるということであります。

 例えば子ども手当などをめぐっても、何回も国と地方は協議をしてきておりまして、市長会の多くの皆さんは、まあ、いろいろ問題はあるけれども、国が考えてきた子ども手当について、当面やむを得ないかな、そういう考え方だったと認識しているんですけれども、しかし、中には、決して賛成しない、断固反対という人もおられるわけであります。そうしますと、国と地方の協議の場を設けてこれからやっていこうと思いますけれども、その前提として、自治体側自体が、ばらばらとは言いませんけれども、決して一枚岩ではないということは念頭に置いておかなきゃいけないわけでありまして、そういう構造的な問題を抱えているわけであります。

 ですから、あらゆることというか、重要なことのすべてがこの協議の場で決まるという期待は持たない方がいいと私は思うんです。むしろ、異論、反論、いろいろな多様な意見があることがこの場で明らかになる、それに対して国がどれほど説明責任をきちっと果たせて、大方の皆さんの了解を得ることにこぎつけることができるか、そういう認識でいた方がいいんだろうと考えております。

西委員 結局そういうことなんですが、政党にしたって、賛否を決めますけれども、全員が素直に賛成というわけではありません。しかし、一つ一つのプロセスの中で、一つの政党なり一つのグループ、一つの会議の中でできるだけの合意を得て、その上で、それぞれ立場の違うそういう人たちが国と協議をするということは、法律なら法律をつくるプロセスとしては一つの重要な役割を今後果たしていくんだというふうに私は思いますので、頭から、余り冷静に、おもしろくないというお顔をなさらないで、情熱を傾けていただければというふうな趣旨で申し上げた次第でございます。

 次に、地域主権改革の基本方針やプランを決めるのは地域主権戦略会議ということになっております。それから、国と地方の協議の場の法律案では、国の政策の企画及び立案についても協議するというふうに目的に規定されております。政策立案に関して、地域主権戦略会議と国と地方の協議の場の関係性について説明をいただきたい。

 それから、地域主権戦略会議が決めた内容について、国と地方の協議の場で地方に、また国と地方の協議の場における政策立案作業は、何を対象に、どのように行うのかということについて具体的に示されたい。それから、不毛な場にしないためにも、協議の場の運営ルールなどについて明確にしていくべきではないかと思いますが、この点についてお答えをいただきたいと思います。

片山国務大臣 国と地方の協議の場は、これは名前があらわしておりますとおり、国と地方とが対等の立場に立って重要な政策課題について議論をする、できるだけ合意に達する、了解を得る、これが本分だろうと思います。

 従来、ともすれば、国の方がさっさとみずからの手続を形式的に進めてしまって地方の声が反映されない、決まったことを通告されるということが多かったものですから、事前にちゃんと言うべきことが言える、そういう場を設けるということは、私はこれは非常に重要なことだと思っております。専ら、霞が関の各省に対して、自治体がきちっと対等の立場で物が言える機会を保障するということだと思います。

 地域主権戦略会議は、国策としていろいろなことを決めていく場合に、地域主権ということを念頭に置いて物事を決めようとしますと、実態としては各省からかなり強い反対に遭います。それを総理を議長とする地域主権戦略会議の場で、そういう各省の俗に言う抵抗などをきちっと整理して、国策として地域主権改革を進めていく、国の政策形成プロセスの重要な要素だと思います。

 戻りまして、協議の場の運営のルールでありますけれども、これは、法律で決まっていることは最低限必要なことでありますけれども、あとはだんだんとこれを積み重ねていくことが必要だろうと思います。最初から全部がちがちっと決めてしまって、対象にしても運営のやり方にしても、それから一年間の回数にしても、形式的に決めることよりは、お互いに関係者が相談をしながら順次決めていく。それが、先ほどもちょっと触れましたけれども、あたかも判例法のごとく、皆さんが守らなければいけないルールとして定着をしていくという、このことが私は大切なのではないかと考えております。

西委員 次に、地域主権改革の基本方針やプランを決める地域主権戦略会議には、地方の長や議会の議長の連合組織の代表が今のところ参加しておりません。政府は、地域主権戦略会議と国と地方の協議の場の関係があいまいになるから、構成員を同じにしないというふうに説明をしてこられました。

 しかし、問題は構成員という形式的なことにあるのではなくて、地方との意思疎通をどのように図っていくか、信頼できる関係をいかに築いていくか、対等の立場でいかに議論を闘わせるかということが大事というふうに思います。そうしないと、結局、地方の納得を得られる政策の実現が難しくなる、こういうことでしょう。その意味で、地域主権戦略会議において、地方の意見が的確に反映される場をつくるということが重要であります。

 公明党は、参議院では、地域主権戦略会議の構成人数を十五人から二十人にふやし、地方の長や議会の議長の連合組織から推薦した者をも加えるという修正案を提出いたしました。地域主権戦略会議の構成には、自治体の長が含まれていますが、議会関係者は残念ながら含まれておりません。地方の意見が的確に反映されるような構成にした方がいいのではないか、このように思いますが、いかがでしょうか。

片山国務大臣 私も、おっしゃるとおりだと思います。

 自治体は二元代表制になっていて、決して首長がすべてを代表するわけではありません。むしろ、地方自治法の規定によりますと、大事なことは議会が決めるということでありますから、国会が国権の最高機関であると同じような文脈で、自治体の政策形成には議会が最も重要であると私も考えております。

 その議会の意見というものがこうした地域主権戦略会議などの国の政策形成過程に反映されるということはとても重要なことだと思いますので、適当な折を見て、議会の代表も加わるような、そういうことを検討してみたいと思います。

西委員 私どもも、やはりこれからの時代、二元代表制を本当の意味で真剣に築き上げていく努力をもう一度していくことが地方の自治にとって大事なことだというふうに思っておりまして、公明党としても、このために各議会で活発な意見を展開していきたい、このように思っているところでございます。その上に立って、やはり国と地方の協議の場の充実ということにしていただきたいと思います。

 続きまして、東日本大震災への支援活動などでは、関西広域連合は主体的な対応を積極的に行っておられます。各紙等によりましても、そういう評価が出ております。

 地域主権三法案が提出された時点では関西広域連合は設立されていなかったために、国と地方の協議の場に関する法律案では、広域連合の存在を前提とした内容にはなっておりません。原案のままだと、臨時参加の規定を使って参加してもらう、こんなことも方法としては考えられるかと思うんですが、それでは不十分かな、私はこんな感想を持っておりますが、この点についての御見解をお伺いしたいと思います。

片山国務大臣 一般論で言いますと、地方自治の担い手としては自治体ということになりまして、地方公共団体ということで、その中でも普通地方公共団体、都道府県と市町村がやはり基本になる、これは確かなことだろうと思います。関西広域連合などの広域連合も、これは一般論で言いますと一部事務組合の変形でありまして、一部事務組合は特別地方公共団体でありますけれども、普通地方公共団体の組み合わせということになりますから、主たる存在としては、あくまでも都道府県と市町村だと思います。

 ただ、最近は、やはりある程度実態が変わってきたような印象を私は持っております。それは関西広域連合の活動もその一つでありますし、それから、別途、地方出先機関改革の中で論じられるようになりました九州広域行政機構、これはまだでき上がっておりませんけれども、いずれ成立すると思いますけれども、これなどは九州七県で一つのブロックを形成して、国の広域ブロック機関を引き受けたいということになります。そうしますと、単なる普通地方公共団体の組み合わせというよりは、やはり一つの実体として存在感が出てくるわけでありまして、こういうものをこれから国の政策形成過程の中にどう位置づけるかというのは、私は非常に大切なポイントだと思います。

 既に、別途、地方出先機関改革などを論じる場にはこれらの代表に来ていただきまして、私を含めた政府の代表と活発な議論なんかも行ってきているところであります。さらに、これらをどういう場できちっと位置づけるかということは、これからの一つの検討課題にぜひしたいと考えております。

西委員 積極的な、いわゆる分権体制の流れをつくろうとされているということに私は賛意を表したいと思います。さらにしっかり頑張っていただきたいと思います。

 政府は、基礎自治体の権限や財源を充実強化する方向性を今打ち出しております。一方で、広域自治体については、そのあるべき姿がまだ明らかにされておりません。委員長のいわゆる原口プランにおいても、自治体間の連携の自発的な形成というふうにされているだけでございます。

 しかしながら、権限や財源の移譲や国の出先機関改革を進めるに当たっては、その前提として、国、広域自治体、基礎的自治体の役割分担が必要となることは当然のことでございます。政府は広域自治体のあり方についてさらに検討をすべきではないかというふうに思いますが、この点について大臣の御所見をお伺いします。

片山国務大臣 広域自治体のあり方について検討するということは重要なことだと思います。

 広域自治体といったときにどういうとらえ方をするかでありますけれども、一つは、自治体の連合組織、連合体のことを広域自治体というふうな言い方をする場合もありますし、それから、現実の問題としては、都道府県は広域自治体であります。

 都道府県は都道府県で、きちっとした地方自治の担い手でありますし、それから、自治体の組み合わせによる広域的な取り組みもだんだん現実味が出てきておりますので、いずれにしても、これをどういうふうに評価して、これからどう位置づけていくのかというのは、基礎的自治体の検討とあわせて、十分検討しなければならない課題だと思います。

西委員 続いて、地方分権改革推進委員会は、第三次勧告で「義務付け・枠付けの見直し」という考え方を提言いたしております。法令による義務づけ・枠づけを見直して、条例で自主的に定める余地を認めて、条例制定権の拡大を図ろうという考え方でございます。地方分権改革推進委員会で勧告されて、現在、国が法律案を作成する場合には、この義務づけ・枠づけを安易に行わないことは法制上の原則と言ってもいいぐらいの流れに今なってきていると思います。

 さらに、条例制定権を拡大するために、私は、例えば法律で政省令に委任する際、できる限り条例にも同時に委任できるようにというぐらいの流れをつくってはどうかというふうに考えていますが、この条例への同時委任について大臣のお考えをお伝えいただきたいと思います。

片山国務大臣 一つのアイデアだと思います。ただ、現場から見ますと、やはり戸惑いが生じるのではないかと思います。

 といいますのは、法律でもって細部を委任するときに、一方のルートは政省令に委任する。そうすると、政府各省がその委任された内容を具体化するためにいろいろ検討して定めようとします。同時に、条例に委任するということになりますと、議会で議論をしてということになりまして、違う場で一つの事柄をめぐって判断をして決定していくということになりまして、いささか混乱を招く可能性があると思います。もちろん早い者勝ちとか、そうすれば、それはそれなりに機能するんでしょうけれども、それも何か変な気もします。

 そうであれば、むしろこの際、今までのやり方だったら法律から政省令に委任するという、その流儀を改めて、できる限り法律から条例に委任するという一つのルートをこれからだんだん確立していく、そのための努力と取り組みに力を入れる、その方がより賢明ではないかと私は思います。

西委員 本来は、その流れが確立すれば一番いいと思います。ただ、さまざまなお考えがあって、先ほどの重野先生の御議論もあって、なかなか一筋縄ではいかないのかなという印象も、先ほどの議論を聞きながらお伺いをいたしました。

 現在、政府から、総合特区ですね、総合特別区域法案が提出されております。これも地方自治体の政策的裁量を拡大する取り組みでありますが、予算枠や政策的な裁量が主に政省令というふうになっているところの制限などがまだ残っております。

 同様の取り組みには、北欧などで行われているフリーコミューンプログラムというのがございます。フリーコミューンプログラムでは、国の財政支援がないかわりに、法令の適用除外を大幅に認めようというところが特徴だというふうに伺っております。このフリーコミューンプログラムについて導入を検討したらいかがか、こう思いますが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

片山国務大臣 私も詳しく承知しているわけではありませんが、お触れになられましたフリーコミューンプログラムというものと、今政府で進めようとしている総合特区というのは、恐らく基本的な理念とか精神というのは共通しているんだろうと思います。もちろん、補助金でもって政策誘導する度合いがどうかとか、税制上の措置をどうするこうするというのは、細部をきわめますといろいろな違いがあるんだろうと思いますけれども、基本的には、自治体を自由にする、自治体に対する政府の規制をなくする、ないしは緩和する、ここが一番重要なんだろうと思います。そういう意味では、基本はそんなに違うものではないと私は思います。

 でも、我が国の問題ではありますけれども、外国にありますこういう先進的な仕組みや事例というものも私はこれから大いに参考にすべきだろうと思いますので、よくこれから勉強してみたいと思います。

西委員 私も、大幅に規制を外して自由にやらせる、予算が多いとか少ないとかいう以上にそのことを重視した考え方であろうというふうに思っておりまして、さまざまな先進的な事例をまた日本にも適用できる可能性をつくっていただければと思います。

 時間がだんだんと迫ってきました。あと二問です。

 先日行われました統一地方選挙に関してです。千葉県議会の浦安市選挙区において、選挙が執行できないという異例の事態が起こりました。こうした問題は、地方自治のあり方の根幹にかかわる問題を含んでいると考えます。

 そこで、まず、こうした事態について、法律的にどのような事態になっているのかという認識をお伺いしたいと思います。

片山国務大臣 これは経緯をお話ししますと、本来は、法律でもって、千葉県議会議員選挙というのは統一地方選挙の期日に合わせて選挙を行うということになっていたわけであります。

 これに対して、今回の地震被害がありまして、新しい法律が国会で制定されまして、被害が大きかった自治体において選挙が執行できないという自治体にあっては、総務大臣が指定をすることによって選挙を延期することができる、こういう法律になったわけです。その際には、県の選挙管理委員会の意見というものを踏まえてということでありました。浦安市の場合も、液状化現象などの被害がありまして、いろいろ選挙の実施に困難を来すというふうな声が地元からは直接聞こえてまいりました。

 ただ、千葉県の選挙管理委員会は、この実情も踏まえた上で、しかし予定どおり選挙を実行することに大きな支障はない、幾つかの支障があれば、それは県の方で全面的に浦安市を支援するということでありました。これは、総務省の方で数度にわたって千葉県の選挙管理委員会に確認をしまして、直接副大臣が赴いて選挙管理委員会の委員の皆さんと意見交換をした上で、そういう結論に達しました。要するに、予定どおり実施する。

 これで法的には確定いたしまして、選挙は当初の予定どおり、法律に従って統一地方選挙の期日に合わせて行うということになったわけであります。そこから先は、この法律にのっとって、浦安市選挙管理委員会は着実に選挙管理事務を執行しなければいけないということであります。

 確かに、液状化等によっていろいろ支障はあったかもしれませんけれども、それらを勘案した上で法律上やるということになったのですから、やってもらわなければ困るわけであります。それを実施しなかったということは、私は、いろいろ言いわけとか、るる事情を述べておられるかもしれませんけれども、それは決して説得力のあることではない。違法は違法であります。

 特に、私が今回一番気になりましたのは、選挙を管理、執行するのは選挙管理委員会であります。ところが、専ら前面に出て、選挙をやらないとか、やれないとか言っておられたのは市長さんでありました。

 首長を選挙管理の事務に当たらせないというのが我が国の地方自治法と公職選挙法の仕組みであります。権力の座にある者が選挙を差配することは、あってはならないことであります。ところが、今回、ちゃんと所定の手続を経た上で実施すると決まったにもかかわらず、それに対して、職員の提供、職員の事務従事を認めないとか、投開票所は公共施設が充てられることが多いのでありますけれども、その公共施設を使わせないとか、財産管理をしている市長として、それから職員の人事管理をしている市長として、そういうことを言ったということが報じられておりますけれども、これは言語道断であります。そんなことは決してあってはならないと思います。

 そんなことはないということが前提で今の我が国の選挙制度というのはできているんですけれども、こんなことがあるということになりましたらというか、なりましたので、今後こういうことがないように、やはり何らかの法的措置が要るのかどうかということもあわせて、私は早急に検討しなければならない問題だと考えております。

西委員 ちょっと今思いついたんですが、今の大臣の答弁で、国と県との間は何回もやりとりをして、そこの間に間違いはなかったと私は思うんですが、県と浦安市選管との間に見解のそごというのは、国から見て、なかったと考えてよろしいんでしょうか。

 といいますのは、市の意見を聞いた上で県が判断するという前提がありますね。それで、やるというふうに県が決めて国との最終の結論を出したわけですが、この市と県との間には見解のそごがもともとなかったんだというふうに国のサイドでは見ていると考えてよろしいんでしょうか。

片山国務大臣 法律によりますと、総務大臣が指定するとした場合には、これは都道府県の選挙管理委員会の意見を聞く。都道府県の選挙管理委員会は、総務大臣に意見を提出するに当たっては、市の選挙管理委員会の意見を聞く。こういうことになっておりまして、その手続は踏んでおられます。

 ただ、その場合に、市町村の選挙管理委員会が言っておられる意見をそのまま郵便配達のごとく取り次ぐというものではないわけでありまして、やはり県の選挙管理委員会は県の選挙管理委員会の立場として、市町村の選挙管理委員会の意見が妥当であるかどうかを吟味する、そしてみずから判断するということだろうと思います。その上で、選挙は実施できると、千葉県の選挙管理委員会は総務省の方に意見を出されたわけであります。

 以上が経緯でありまして、私たちも、県と市の間に考え方の相違があるものですから、いささかの懸念がありまして、これは本当に、県と市の関係についても慎重に問い合わせをしたりしました。県の選挙管理委員会は選挙管理事務の執行に大きな支障はないと言われておりましたので、決して疑うわけじゃありませんけれども、総務省の職員をして浦安市に派遣をしまして、実際に投開票所として使われる施設を実地に検証させたりもしました。その上で、県の選挙管理委員会の判断はおおむね妥当だという認識を持ちました。

 一方で、先ほどもちょっと申しましたけれども、鈴木副大臣が県の選挙管理委員会を訪ねて、チェックをするというわけではありませんけれども、市との関係とかやりとりとか、市の実情をどういうふうに把握しておられるのかということの問い合わせもいたしました。その上で、県の選挙管理委員会は非常に冷静に、かつ誠実に現状を把握して判断をしておられるという認識に至ったわけであります。

 私は、今回、県と市というものを両方見ておりまして、県の選挙管理委員会の判断は妥当であったというふうに考えております。

西委員 よくわかりました。

 今後、地方分権、地域主権、地域を大切にしていくということは大変大事なことなんですが、こういうことが頻繁に起こってまいりますと信頼が崩れるということを私は大変危惧しております。国の決めたこと、もしくは県の決めたことがそのとおり実践されないということで、何らの措置もなくずるずるといっちゃうということで果たしていいんだろうかという気持ちを持っております。

 片山総務大臣はこの問題に関して、先日の参議院の総務委員会で、こういうことがないようにするにはどうすればいいか、法的な問題として検討する必要がある、こういうふうに述べたと議事録には載っております。現在、地方自治法改正案の検討が政府の方で行われておりますが、その中で、国等による違法確認訴訟制度を創設するという提案があるというふうに聞いております。インターネット等でも既に掲載をされております。

 法的な問題として検討するというのは、こうした違法確認訴訟という考え方と関連しているのかどうか、それとも何かほかの方法もお考えなのかどうか、お伺いをしたいと思います。

片山国務大臣 私が先般、法的な問題として検討する必要があると言いましたのは、地方自治法の改正案、今検討している中に盛り込まれようとしております国からの違法確認訴訟制度とは関係ありません。今回の浦安のようなケースが仮に生じたとして、別途、国からの違法確認訴訟制度ができていたとして、タイミングとしても多分間に合わないだろうと思います。そういう現実的な問題もあります。

 むしろ、私が申し上げたかった法的な問題というのは、さっきもちょっと触れましたけれども、実施主体は選挙管理委員会ということで、しかも法的な独立性はかなり強いんです。他のいわゆる独立行政委員会と違いまして、選挙管理委員会の委員の任命権は首長にはありません。教育委員会の委員とか公安委員会の委員はすべて首長が議会の同意を得て任命するわけでありますから、首長との間に従属性が強いんですけれども、選挙管理委員会は議会が選挙をするということになっておりますから、独立性が一番強いんです。ところが、実態としては職員はほとんど兼務であって、現実の問題としては、独立性は強くないとか予算編成権がありません。したがって、予算も執行機関に左右されるということがあります。

 それから、投開票の事務を行うには職員を使わなきゃいけない。これは自治体の首長の配下にある職員を使うわけです。それから、投開票所は公民館を使ったり学校を使ったりしますから、首長の配下にある財産を使うわけです。徒手空拳で事務を執行しなきゃいけない、名目だけの独立性というのが現状であります。

 これを、名実ともに独立性がより強い存在にするにはどうすればいいのかということが私の抱いている問題点でありまして、これを何らかの形で法的にある程度前進させるような解決策を講じることが必要ではないかというのが、るる申し上げましたけれども、私の問題意識であります。

西委員 時間が来ましたので終わりますが、何らかの形で、こういうことについて、どこが悪いというようなことがはっきりできないのかなというのが私の思いでございまして、なあなあで、次々とこういうことになってしまうということは、地方の自主性を一方で言いながら、逆の意味で地方の横暴といいますか、行き過ぎを許してしまうことになりはしないかという問題意識でございました。

 終わります。

原口委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 地域主権推進一括法案について質問をいたします。

 今回の法案について、障害者の権利を後退させる重大な内容が含まれているとの指摘が障害当事者の方から出されております。

 例えば、二〇一〇年七月二十二日の朝日新聞「私の視点」の欄に「地域主権法案 障害者福祉に格差出ないか」、日本障害者協議会理事太田修平氏の意見が出されております。ここでは、「地域主権推進一括法案は」「障害者の権利を後退させる、という重大な問題をはらんでいる。私たちが勝ち取ってきた改革が台なしにされようとしており、このまま成立させてはならないと考える。」このように述べておられます。ここで例示をしておりますのが、身体障害者療護施設等の設置基準として定められているものの中にあります居室定員四人以下という規定であります。

 厚生労働省にお尋ねをいたします。

 今回の地域主権推進一括法案において、指定障害者支援施設の基準の一つであります居室定員四人以下は条例委任の対象となりますが、従うべき基準、標準、参酌すべき基準の扱いについて、厚生労働省は、もちろん法案が成立して以降に、省令を定める際に検討していくというお話だと思うんですけれども、しかしながら、昨年の段階でこの法案が既に出されている。

 法案提出後に障害者団体に厚生労働省から示されたペーパーにおいては、指定障害者支援施設等の基準に係る条例委任の考え方というペーパーで、居室定員四人以下について、厚労省はそもそもどのように整理をされておられるんでしょうか。

小林大臣政務官 お答えいたします。

 この法案では、地域のことは地域に住む住民が責任を持って決めるという考え方に基づいて、現行法では障害者自立支援法に基づき厚生労働省令で定めている指定障害福祉サービスの事業等に係る基準を条例に委任することとしております。

 その際、国が定める基準が条例の内容をどの程度拘束するのかという点については、地方分権改革推進委員会による第三次勧告において、条例の内容を直接的に拘束する条例制定の基準等を設定することは厳に差し控えるべきとされているため、従うべき基準とするものについては、人員配置基準や居室面積基準等に限定することとしております。

 こうした考え方から、お尋ねの居室定員については、従うべき基準ではありませんけれども、自治体がこの基準と異なる判断をする場合には説明責任を負うことになる参酌すべき基準とすべきものと考えております。

塩川委員 居室定員四人以下について、参酌すべき基準ということであります。もちろん、自治体の説明責任というのはつくわけですけれども、従来のように拘束されるものではない。つまり、自治体が参考にはするけれども、拘束はされないというのが参酌すべき基準となります。

 そうなれば、財政力の違いですとか、あるいは障害者福祉の理解度によって自治体間の格差が生まれることになりはしないか、そういう懸念を強く持つわけですが、厚生労働省としてはどのようにお考えでしょうか。

小林大臣政務官 条例の制定に当たっては、各自治体において、地方議会における議論も含めて、障害福祉サービス等の質の確保という観点も十分に踏まえながら、適切な基準を定めていただけるもの、このように考えております。

 厚生労働省としては、各自治体に対して適宜必要な助言を行うとともに、障害福祉サービス等に係る費用負担や障害者支援施設等の整備に係る補助など必要な支援を行ってまいりたい、このように考えています。

塩川委員 適切な基準を定めるということであれば、別にこれは参酌すべき基準にする必要はないと私は思います。これはまた障害者の皆さんの声でもあります。

 一九八〇年代ぐらいまでは、入所施設というのは大部屋で、そこで何人もの利用者の方が生活をするということが当たり前だったわけですが、それではプライバシーも守れない、夜中においても、いびきとか歯ぎしりとか、あるいはトイレに行くのにも同室の人の介護をするとか、そういうことを含めて、やはり複数の、大人数の部屋というのは本当に大変だ、そういう中で、プライバシー保護といった人権を保障する観点から、そういう大部屋を解消していこうということの中で生まれたのが、この居室定員の四人以下という基準であります。

 厚生労働省としても、一人部屋とか二人部屋が望ましい、推奨するということもこの間とってきているわけですから、このように、施設入所者であってもプライバシー保護が重大事項である、重大な内容であるということが認識をされて居室定員四人以下という制度改正に至ったわけであります。私は、これこそしっかりと尊重すべきだと。

 そういう立場で片山大臣にお尋ねしますが、今回の法案によって、こういった居室定員の四人以下を条例委任で、参酌すべき基準ということで、結果として、従来確保されてきたこういう水準が後退することになりかねない、障害者の権利を後退させることになる、このように思いますが、大臣、いかがでしょうか。

片山国務大臣 理論上といいますか一般論で言いますと、これも一種の規制緩和でありますから、規制緩和をするということは、水準を下げる自由を付与するということになります、一般論で言いますと。しかし、自治体にその実施をゆだねたら、すべて何か悪い方に悪い方に行くと考えるのは、これはやはり一種の偏見ではないかと私は思います。

 私も自治体の首長をやっておりまして、毎回議会で福祉や教育をめぐっては議論を重ねて、その上で自治体の中での基準を決めたり、それから政策を予算を通じて決定したりしてきましたけれども、誠実にやってきたつもりであります。多くの自治体が多分同様だと思います。自治体に自由を与えたら何でも悪いことをするという考え方はぜひやめていただきたい。それから、自治体に判断をゆだねたら考えなしに全部下げてしまう、そういう認識も改めていただきたいと私は思います。

 自治体で大いに議論をすることによって、その地域で一番妥当な水準が導き出される、そのための環境づくりの一環だというふうにとらえていただきたいと考えております。

塩川委員 いや、障害者の皆さんが人権保障の立場から改善を求めて運動してきた到達点が、居室定員四人以下という形であらわれているんです。ですから、これは人権保障の観点で考えるべき問題だ。そういう点で、それを今、一般論で、規制緩和で水準を下げることにもなるという選択肢を、そもそも障害者の皆さんが取り組んでこられた中で引き上げたものを引き下げるかのような中身になっていること自身が極めて重大だと言わざるを得ません。

 障害者運動の成果により厳格になった居室定員に関する国の基準が、今回の法案により、まさに規制緩和された基準で定められ得ることになるわけで、そのため、障害当事者の人権侵害のおそれも大きい。私は、この点でも、国のナショナルミニマム保障を投げ捨てるものだと言わざるを得ません。そういった重大な内容を含む法案の作成過程において、障害者の声がどのように反映されていたのか、いなかったのかという問題であります。

 障害者自立支援法違憲訴訟が行われ、この違憲訴訟を踏まえて、昨年、二〇一〇年の一月七日に、国と原告団、弁護団との間で基本合意文書が交わされました。その中では、立法過程で障害当事者の意見を踏まえずに制度をつくったことに、国として反省を述べているわけであります。

 合意文書の中では、「国(厚生労働省)は、障害者自立支援法を、立法過程において十分な実態調査の実施や、障害者の意見を十分に踏まえることなく、拙速に制度を施行するとともに、応益負担の導入等を行ったことにより、障害者、家族、関係者に対する多大な混乱と生活への悪影響を招き、障害者の人間としての尊厳を深く傷つけたことに対し、原告らをはじめとする障害者及びその家族に心から反省の意を表明するとともに、この反省を踏まえ、今後の施策の立案・実施に当たる。」としております。

 この反省というのが、今後の障害者施策の立案、実施に生かされるべきものだったはずであります。

 そこで、厚生労働省にお尋ねをしますが、今回の地域主権推進一括法案、一次の法案ですね、この一次の法案の閣議決定の前に障害当事者の意見を聞いたんでしょうか。

小林大臣政務官 障害福祉計画の策定時に当たっての住民の意見聴取義務について、これは昨年六月……(塩川委員「それは二次の方ですか」と呼ぶ)はい、二次の方です。(塩川委員「一次の方について。居室定員四人以下とかの一次の法案をつくる、閣議決定をする過程で、閣議決定の前に意見を聞いたか」と呼ぶ)ちょっとお待ちください。

 大変失礼しました。閣議決定前には当事者の意見を聞いている、このような状況でございます。

塩川委員 聞いている。もう一回ちょっと確認で。

小林大臣政務官 済みません。訂正いたします。

 聞いておりません。

塩川委員 ですから今回の、今審議をしている法案について、障害者の人権にかかわる規定について、障害当事者の意見を聞いていないんですよ。自治体関係はもちろん聞いているでしょうけれども、障害者団体の方の意見というのは聞いていないで提出されているわけですね。

 私は、これは、障害者自立支援法の廃止を前提にした原告団、弁護団と国との基本合意文書にもあるように、反省があるのであれば、障害者の声を聞くということを今後に生かすべきといった趣旨が全く生かされていないということを言わざるを得ません。

 重ねてお尋ねしますけれども、障害者権利条約の制定のスローガンでありました、障害者のことは障害者抜きで決めないで、このスローガン、これが障害者の方の共通の要望だったんじゃないでしょうか。今回のように、法案を出す際に障害者の声を聞いていないというのは、まさにこの、障害者のことは障害者抜きで決めないで、これを全く踏み破るものだと言わざるを得ないと思いますが、いかがですか。

小林大臣政務官 もう少し詳しく私の方から答弁をさせていただきます。

 障害者団体からのヒアリングとしては先ほど言ったように実施しておりませんけれども、地域の実情を知る地方自治体の首長等の有識者が参画して、障害者福祉行政の所管府省である厚生労働省からも意見聴取を行った上で勧告がなされたもの、このように承知をしております。

塩川委員 ですから、そもそも障害当事者の意見を踏まえて施策を成り立たせるべきだというのが、自立支援法をめぐる、国に問われた一番の問題だったわけですから、自治体の意見を聞きました、厚生労働省の意見を聞きましたというのでは、全く障害者の声を反映させるということにならないわけであります。大体、厚生労働省が障害者自立支援法も出してきた、それがまずかったと言っているわけですから、厚労省の話を聞いたからそれでいいとならないのは、はっきりしているわけです。

 障害者自立支援法違憲訴訟全国弁護団と、障害者自立支援法訴訟の基本合意の完全実現をめざす会が政府に提出した意見書、昨年の五月ですけれども、この意見書にも、地域主権推進一括法案が成立することは「基本合意に反するものといわざるを得ず、極めて重大な問題」、「本法案は、何ら調査も実施されず、障害者の意見を十分に踏まえることなく、拙速になされるものであり、反省を踏まえ、今後の施策の立案・実施に当たっているとは到底いえない」と述べているわけであります。

 法案提出者の片山大臣にお尋ねしますが、そもそも、今回の法案を障害当事者の意見も聞かずに決めたこと自身が問われるんじゃありませんか。

片山国務大臣 理想論を言えば、この分野に限らず、これはいろいろな分野、万般にわたる法案でありますから、その前提となった地方分権改革推進委員会の勧告前の段階で、万般にわたって広く意見を聞いておくということが私は望まれただろうと思います。ただ、当時の時間的な制約とか物理的な制約があって、必ずしもすべての分野について意見を聞くことができなかった、そういう嫌いはあったのではないかと思います。

 ただ、先ほど来申し上げておりますとおり、これは、国がすべてを決めるというやり方から、自治体単位で条例でもって決めていただくという方針の変換でありまして、そうなりますと、今度は、自治体の条例を決めるときには当然議会で審議しますから、この議会には国と同じで参考人質疑でありますとか公聴会などもあるわけであります。そうしますと、国の場合に衆参二つで公聴会、参考人質疑を開くわけですけれども、自治体になりますとこれが千七百数十になって、そこでそれぞれ、そういう関係者の意見を聞く機会は得られるわけです。機会だけとらえますと、膨大に機会はふえるわけであります。

 ぜひそういう面に着目していただいて、自治体においてよりこうした民意を、特に関係者の意見というものを把握する、そういう機会を、単に機会で終わらせるのではなくて、実地にそれが実現できるようにしていただきたい。そうしますと、御懸念のようなことではなくて、むしろ、参酌すべき基準などを参酌した結果、当事者の意見も踏まえて、より手厚い方向に施策が進んでいくということは当然考えられるわけでありまして、そういう面の方にもぜひ着眼をしていただければと考えております。

塩川委員 いや、国の法改正の議論ですから、国が法改正をやろうというときに、そのために関係する方の意見を聴取することをやっていないということが問題だと聞いているわけなんですよ。分権改革推進委員会でどうだったか。数年間にわたって、百数十回の会合を開いているわけですよね。それなのに障害者団体から全く意見を聞いていないんですよ。これで決めていいのかということが問われているんじゃないですか。

 障害者権利条約でも、「障害者が、政策及び計画に係る意思決定の過程に積極的に関与する機会を有すべきであることを考慮」することとしているわけであります。そういう点でも、障害者権利条約の立場でも、この間の障害者自立支援法の違憲訴訟において、国と原告団、弁護団で交わされた基本合意文書を踏まえても、障害者のことは障害者抜きで決めないで、この立場でこそ行政が、政治が対応すべきだ。これを欠いた法案というのは、私はこのまま成立をさせるわけにいかないと言わざるを得ません。

 しかも、今国会に提出をされました第二次の法案ですね、名称も地域主権がつかないそうですけれども、この第二次法案では、計画等の策定及びその手続の見直しにおいて、計画策定への当事者参画となる住民の意見聴取の義務規定を、努力規定にしているわけであります。

 障害者自立支援法の市町村障害福祉計画の策定において、「市町村は、市町村障害福祉計画を定め、又は変更しようとするときは、あらかじめ、住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。」とあるのを「必要な措置を講ずるよう努めるものとする。」と努力規定に改めているわけであります。

 大臣、厚生労働省の小林大臣政務官でも結構ですが、この二次法案の閣議決定前に障害当事者の意見というのは聞いているんでしょうか。

小林大臣政務官 一次法案と同様の関係でございます。

 ヒアリングとしては実施していないけれども、地域の実情を知るために、地方自治体の首長などの有識者からいろいろ御意見を聞いている。さらに、同委員会の勧告を受けて地方分権改革推進会議など、こういう閣議決定の中にも、政府の中で必要な調整を行ってきた、このように認識をしております。

塩川委員 二次法案の閣議決定前にも障害当事者、障害者団体の意見を聞いていないんですよ。

 これは一次のときは、昨年の三月でしたか、法案提出でしたけれども、その中身に問題があるということで、昨年の五月、六月段階で障害者団体からは、問題があると、意見は国の方にも出されているわけですよね。国の方は障害者団体から、一次法案に問題ありということは承知していたにもかかわらず、今国会に二次法案を出すときにも、二次法案の閣議決定の前に障害者団体、障害当事者の方から意見も聞いていないんですよ。

 お尋ねしますけれども、そもそも、住民の意見聴取を義務規定としているというのはなぜなんですか。

小林大臣政務官 今回の法律、地域のことは地域の住民が責任を持って決めることができる、こういう地域主権の推進に向けて取り組む必要がある、こういう考え方のもとで考えてきておりますので、今先生が御指摘されたことは当たらない、このように考えております。

塩川委員 いや、当たらないというんじゃなくて、なぜ義務規定となっているかという質問をしただけなんです。私が何か意見を言っているわけじゃないんです。仕組みがどうなっているかと聞いている。

 要するに、住民の意見聴取、計画をつくる際には関係者の声をしっかり聞いてくださいねというのが仕組みなわけですよね。この義務規定を今回、努力義務規定に改めるわけですけれども、では、この義務規定をなぜ努力義務規定に改めるのかということをお聞きしますが、いかがですか。

小林大臣政務官 障害福祉計画の策定時に当たっての住民の意見聴取義務については、昨年六月二十二日に閣議決定した地域主権戦略大綱に基づき、社会福祉法に基づく地域福祉計画と同様に努力義務化することとしたものでございます。

 これは、先ほど言ったとおりでございまして、地域のことは地域の住民が責任を持って、地域主権の推進に向けて取り組む必要があるという考え方のもとで、地方自治体と住民との関係について、一律に義務づけるのではなく努力義務としたものでございます。

 厚生労働省としては、できる限り住民や障害者当事者の意見についても反映する機会を設けていただくよう、必要に応じて、通知だとか各種会議等の場を通じて助言などを行ってまいりたい、このように考えております。

塩川委員 大臣にお尋ねします。

 こういった障害当事者の方の意見を施策に反映するということは、国も、先ほど言った基本合意文書の中でも尊重するとなっているわけです。今回のように障害者に係る法改正が行われる際に、そもそも障害当事者の方の声を聞かないで決めるというやり方でいいのか、おかしいんじゃないかと思うんですが、大臣の御見解はいかがですか。

片山国務大臣 先ほど来のやりとりを伺っていまして考えますのは、自治体が障害者福祉に関する計画を定めるときに当事者の意見を聞かないということは、私はそんなことはあり得ないと思うんです。私の経験からいっても、当然、障害者に関する福祉計画をつくるときは障害者の皆さんの意見を聞きます。これを従来、法律で義務づけていたということ自体が私なんかは違和感があります、義務として聞いていたのかと。では、義務規定がなくなったら聞かないのか、こういう反対解釈になるわけでありますけれども、決してそんなことはないと思います。わざわざ義務づけるようなことは私は必要ないと思います。

 むしろ、義務だからやるというような生活習慣があったとすればそれを払拭してもらって、当然のことを自治体がやるという、そっちの方に持っていく方がやはり素直なことではないかと私は思います。決して悪いようにとらまえないでいただきたい。何か、義務づけから努力義務に変えたから、自治体の方が耳を傾ける度合いがぐんと少なくなるし、少なくなってもいいんだというふうなメッセージとして受け取るべきではないと思います。

塩川委員 いや、住民の意見聴取の規定というのは、国が地方に押しつけるという話じゃないんですよ。そもそも、主権者である国民の声を、意見を施策に反映させるために、意見聴取というのを国と地方に義務づけているということなんじゃないですか。主権者国民の立場から、国と地方に意見をきちんと聞きなさいということを定めているということなんじゃないですか。それを変えるのはおかしいというのが私の意見なんですが、大臣、そう思いませんか。

片山国務大臣 住民に一番身近な自治体が、その住民の皆さんの中の、障害者の皆さんの福祉の計画をつくるときに、当事者の皆さんから意見を聞くというのは当たり前のことだと思います。国法によって定められているから意見を聞く、そういう形式的なものではないと私は思います。

小林大臣政務官 先ほど少し言葉が足りませんでした。

 常日ごろ、厚生労働省の方には、障害者団体を初めとして多くの皆様からいろいろな御意見が寄せられております。そういうことがあるものですから、先ほど言ったように、ヒアリングという形では実施をしておりませんが、それぞれの皆さんの状況については十分把握できている、このように認識をしております。

塩川委員 いや、納得していないという声があるわけですから、そもそも聞いていないわけですから。このこと自身が大問題であるわけで、計画策定に当たっての障害当事者の参画を私は制度的に後退させるものだと言わざるを得ませんし、障害者の権利を侵害するおそれがあり、認められないと言わざるを得ません。

 ぜひ、この審議に当たって、障害者団体、障害当事者の声を聞く。参考人質疑をぜひやっていただきたい。委員長、お取り計らいをお願いします。

原口委員長 理事会で協議をいたします。

塩川委員 国の地方に対する縛りをなくすというのであれば、私、今回の震災を踏まえても、災害対策の施策においての国の不必要な縛りそのものを改めるべきだということを申し上げたい。

 東副大臣においでいただきましたが、知事会から三月三十一日付で緊急要請が出されていますけれども、被災者生活再建支援制度の関係であります。「これまで住宅の損壊の程度に着目していた被災者生活再建支援制度を、被災した世帯がどのように生活再建していくかに着目して支援していくことも可能な制度として組み替える。」ことを要望しております。

 そこで、お尋ねしたいのは、住宅が損壊した人を被災者として支援する現行制度を改めて、被災した住民を支援対象とする被災者支援制度へと見直していく必要があるんじゃないのか、この点についてのお考えをお聞かせください。

東副大臣 委員の御提言そのものに対しては、意見としてお伺いさせていただきたいというふうに思いますが、今回の被災地をいろいろと訪問させていただいて、何とか命が助かって避難所に避難された方々、さらにまたその避難所の周りで、自宅で頑張られている方々の生活をどのように支援して生活の再建を図っていくか、まずこれが最重要な課題と認識しています。

 このため、政府としては、被災者生活再建支援制度に基づく住宅の再建への支援だけではありません、生活福祉資金制度による無利子貸し付け、あるいはまた政策金融機関による低利融資、公営住宅の提供といった既存の制度の活用や、あるいはまた固定資産税や不動産取得税などの税制における減免措置といった特例措置を検討するなど、さまざまな政策手段の活用によって、被災者の生活再建が円滑に進むよう後押しをしたいと考えているところです。

塩川委員 今お話がありましたように、被災者支援のために、金融や財政や税制などのいろいろなスキームがあります。でも、その多くが住家の損壊状況に着目した、被害認定を踏まえた罹災証明書に基づいて行われるわけですよ。その被災の状況は、住家の損壊状況だけでいいのかということなんです。

 実際には、地盤被害で家が傾いても上の建物が壊れていなければ、これは罹災証明が出ないなんという事態があるわけですから、地盤被害に着目するということも必要ですし、住家の損壊状況にかかわらず長期避難が求められるような場合もあるわけですから、そういうのをひっくるめて、住家の損壊状況に着目した被害認定ではなく、被災者そのものに着目をした被災者支援制度に改めるべきだということを強く申し上げ、国の縛りを見直すというのであれば、こういう点こそ見直すべきということを申し上げて、質問を終わります。

原口委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 きょうのラストバッターでありますが、片山大臣はこの後参議院の総務委員会もあるということで、本当にお疲れさまでございます。

 先日、四月十二日に総務委員会の参考人質疑がありました。ここで、全国知事会の災害特別委員長の泉田新潟県知事がお見えになって、中越地震からの復興は資金使途制限との闘いだった、こういうふうにおっしゃったんですね。要するに、国からいろいろな予算や財源がおりてくるけれども、ことごとく国からのさまざまな使途制限がかかっている、仮設住宅に床屋を入れる、集会室をつくる、こういうのはことごとく国との協議が必要となって物すごく苦労した、こういうお話をされておりました。

 泉田知事は、被災地について、現地で法規制を、柔軟かつ弾力的に運用を任せる特別立法であるとか、あるいは特区のようなものを提案されておられます。また、使途制限のない基金が災害復旧、復興の際に県として大変役に立った、こういうふうにも言っておられます。

 今回も、被災地に入りますと、さまざまな法規制の壁というものが見受けられます。

 例えば薬事法の壁というのがあります。薬局が流されてしまって調剤ができない。では、処方せんをファクスで送って、調剤したものを東京から送ってもらった方がこの際早いじゃないか、こういうことになるわけですけれども、ファクスによる処方せんというのは、処方せんの原本でないのでいけない、こういう薬事法の壁があるそうなんです、平時は。

 目の前に困っている人がいるのに、法律に書いていないからできないというのはなぜなんだ、こういう声が起きて、調べてみたところ、これは割と早い段階で厚生労働省から通達が出ていて、ファクスによる処方せんで大丈夫ですということになったんですけれども、やはり周知をされていない、こういう状況になっておりました。

 被災地では、例えば仮設住宅の用地についても、国から、ここはだめだとかあそこはだめだといって却下をされる、こういうことがいろいろと聞こえてまいります。

 岩手県の大槌町に四月の初旬の段階で伺って聞いたところ、当初、仮設住宅二千軒分の用地をここでということで提出したら、ここはだめ、ここはだめということで千五百軒分却下をされてしまって、五百軒分しか認められなかったというような話もあります。

 福島県の相馬市で今度聞いてみましたところ、仮設住宅の単価というのは、これから出てくる補正予算の今報道されているベースでいうと五百万とか七百万とかいう単価になっていて、うちの市に任せてもらえば用地選定も早く進むし費用も安く済むし、そもそも七百万もあれば本設の住宅がうちだったら建てられます、地元の雇用にもつながります、こういう話にもなっています。

 もう一つだけ申し上げます。

 宮城県の石巻市を中心に、避難所のトイレ事情が大変悪いということをずっと言ってきました。仮設トイレが満杯になって、大変衛生的に危険な状況だということも言われている。自動のラップ式のトイレの、商品名ラップポンというのがあって、これは、水を使わずに一回ごとにラップで包んで可燃ごみとして捨てられるという非常に現地で喜ばれているものでありますけれども、地元の石巻赤十字病院の方々も、これが百人に一台ぐらいあれば衛生問題は相当解決するんじゃないか、こういうふうに言われているものです。

 ある町が、これを見て導入を検討したんですけれども、県から、福祉避難所ならいざ知らず、一般の避難所にそんなもの要らないんじゃないか、こういうふうに言われてしまって、導入するなら町で買ってくださいということになって、頭を抱えて、やはり財政的に無理ですというふうに泣く泣くあきらめざるを得なかった、こういう話もあります。

 被災者生活支援特別対策本部の副本部長である片山大臣に聞けば、こういうところは国が手当てしますから被災者のためにやってください、こういうふうにお答えいただけるのかもしれませんけれども、やはりこれは、自分の手元にお金があるのとは違うんですね。

 そういう意味で、現場に近いところに権限をゆだねて、地方がみずから使途を決められる財源を渡していく。これはまさしく地域主権改革というものが目指しているものそのものになるのではないかというふうに、私、聞いていて思ったんです。

 この際、復旧復興をスムーズかつ迅速に、また地元のニーズに合った形で進めるためにも、やはり人、物、金を地方に渡して、大抵のことは現地決裁で進められる、そうした特別立法、泉田知事の言う特区の設定を考えるべきだというふうに思います。先日、テレビでも片山大臣はお話しになられたということも聞いておりますので、この特区のような考え方について、片山大臣のお考えをお伺いしたいというふうに思います。

片山国務大臣 災害のときに、応急から始まって復旧事業をやる場合に、できる限り地元の自治体の判断が優先される、実現できるようにするということは非常に重要なことだと思います。それを実現する上で障害になることは、例えば総合的な特例の仕組みをつくるとか、それから特区ということもあるのでありましょうけれども、やはり何らかの仕組みがあっていいと思います。必要なものは講じていきたいと思います。

 ただ、私も知事をやっておりましたときに災害対策に当たりましたけれども、国の仕組みが障害になって大事なことが進まなかったということは余りないんです。当時は、今と違って住宅再建支援制度というのはありませんでして、これは確かに国から非常に強い抵抗がありましたけれども、特にそれを制約する法律もなかったものですから、あえて国の反対を押し切ってやってしまいました。これが住宅再建支援制度でありました。多少の勇気と、それから、後で国からしっぺ返しをされるかもしれない、されたら出るところへ出てやってやろうというぐらいの気概があればできることであります。

 あと、一々細かいことを相談しないという生活習慣を身につけていただきたいんです。何でも相談をして、そうすると、相談された方は慎重になって、やめた方がいいんじゃないかとか、後でだれがいいと言ったんだと言われるのが恐ろしいものだから、無難に無難に消極的にやってしまう。

 先ほどのトイレの話なんかも、相談しないでやられたらいいと思うんです。先日、一台八万円だと伺いましたけれども、百台買っても八百万円です。一々そんなものを県に聞くからああだこうだと言われるので、もともと、私の方からも、本当に必要があったらこういうものを導入されたらどうですかといって自治体には推奨しているわけです。だったら、自信を持って買われたらいいと思うんです。最後に県がぐじゃぐじゃ言ったら、そんなものは解決します。

 それぐらいのことで臨まないと、何でもかんでも、一つ一つ指さし確認、石橋をたたいて渡るようなことをやっていたら、災害対応なんてできっこありません。ぜひこれは、自治体の方も腹をくくっていただかないといけない。一つ一つ、全部何かスムーズにいくように、全部そのおぜん立てをだれかがしてくれると思わない方がいいと私は思います。必要なことで妥当なことだと思ったら自信を持ってやっていく、そういうことをぜひ励行していただきたいと思います。

 ただ一つ、なるほどと思いましたのは、いろいろなことを国も、この際、規制緩和とか特例を認めたりしているんです。ところが、なかなかこれが周知されない。そういうもどかしさが私もあります。もうとっくの昔に決めているのに、仮設住宅は二年限りで追い出されるんだろうといまだに言われるんですけれども、原則は二年ですけれども特例で延長できるんですね。そんなことはちゃんと決めているのに、なかなか伝わらない。瓦れきの処理は地元の負担がないようにしてくれという、もうとっくの昔にないように決めているんですけれども、伝わっていない。

 これがあるものですから、今度、生活支援本部で県を通じてお願いをして、県から被災自治体の方にキャラバン隊のようなものを出していただいて、QアンドAを今つくっているんですけれども、ちゃんと詳細が伝わるようにしたいと思っております。この点だけはちゃんとやりたいと思いますが、あと細々としたことは地元で責任を持ってやる、こういう覚悟を持っていただきたいと思っております。

柿澤委員 基本的な考え方は私も完全に同意します。現場がもう少しみずからの責任で住民のために決断をするということがあるべきだというふうに思います。

 あるところでは、市の施設ですけれども、現地のローラー作戦で調査をしたその結果の個人情報にかかわるものを避難所のかぎのかかる場所に保管をしようと思って、かぎを貸してくださいと言ったら、その所長が、市から頼まれないと貸せないと言った。市役所に電話すると全くつながらないので、二時間も三時間も右往左往して、担当者がつかまらないので、せめて市の職員がだれかいたらというので、ずっと二時間押し問答している隣に市の衛生部局の職員がいたので、その人から言ってくださいと言ったらかぎを貸してもらえたとか、こういうばかばかしい話がたくさんあるんですね。

 これは日本の行政機関の隅から隅までに根差したある種のカルチャーだと思いますので、ここを変えないと本当に救えるものも救えなくなるというのを、私は、ある意味では危機感を持って感じているところであります。

 現地に決裁権限等、人、物、金を渡していくという意味でいうと、私たちみんなの党として、復興院というのを仙台市に置いて、担当閣僚もそこに置いて、国の権限をゆだねて、出先機関の事務を統合して、事実上の地方政府として、いわば道州制の先行特区みたいなものをこの際、復旧復興に当たって設置すべきじゃないか、こういうことを言っております。

 きのうの参議院の予算委員会なんかを見ていると、政府内にはどうも慎重な考え方もあるようですけれども、こうした復興に向けた実動部隊の組織、復興院、復興庁、何でもいいですけれども、こうしたものを設置することについて、ちょっと通告していませんけれども、片山総務大臣、どのように御見解としてお持ちであるか、お伺いをしたいと思います。

片山国務大臣 復興院のような新しい官庁をつくって、そこに関係するほとんどの権限を集約してそこで実施できるようにするというのは、一つの理想的な姿だろうと私も思います。ただ、実際にそれが本当にうまくいくかどうかというのは、いささか疑問なしとしない。

 といいますのは、全部ゆだねるといっても、財政、特に予算編成といいますか、財源の確保まで全部そこでできるわけではありません。やはり予算をどこかから持ってこなきゃいけないわけでありますし、そうなりますと、国費の使い方としてはいろいろな制約が出てまいります。そういう問題が一つあります。

 もう一つは、私もつくづく思うんですけれども、今、縦割りの官庁の仕組みになっておりまして、これはこれで実に多くの弊害があるんですけれども、今次のような危機的なときにスムーズに仕事を進めようと思いましたら、実はこの縦割りの組織というのは大変効率がいいんです、上意下達で、すっとおりてきますので。

 一方、新しい組織をつくって、そこに職員を調達して集めてということになりますと、物すごく時間がかかって、しかも、内部の調整、内部の秩序が形成されるまでに相当骨が折れます。それよりは、むしろ、こういうスピード感が要求されるときには、縦割りの組織を実効性ある形で作動させていくということの方がいいのではないかと、これは相対的な比較の問題ですけれども、私は考えております。

 もちろん、縦割りのままですと弊害が多いわけですから、縦割りが弊害を生まないように、うまくそれを総合管理していく。縦割りの縦に与えたミッションがちゃんと貫徹して実施されたかどうかをチェックする、そういう進行管理も含めた推進体制の方が必要なのではないか。そうなりますと、いわゆる本部をつくって、縦割りの中にいろいろなことを浸透させて、それでチェックをしていく、こういうやり方の方がいいのではないか、これは私の考え方ですけれども、そう思っております。

柿澤委員 片山大臣が私の質問に御答弁をされる際というのは、大体、理想としては、考え方はほぼ同じなんだけれどもとおっしゃった上で、ただの先が違うというのが大変多いなというのを、今回も、一問目も二問目も、こうこうです、ただというのが続いてしまったなというふうに思います。

 ちょっと法案本体のこともお伺いをしたいと思っていたんですけれども、もう一つ災害関連で、私が非常に急務だと思っていることを一点、残りの時間でお尋ねをしたいと思います。

 石巻で医療支援に入っている医師たちが、この土日で、石巻市で最も大きな被害が出た地区の全戸訪問を行って、ローラー作戦をやりました。計一万二千戸を歩いて生活状況を聞いて回ったそうであります。中心になってかかわった一人に亀田総合病院の小野沢医師がいらっしゃるんですけれども、ローラー作戦の結果として指摘している一番大きなことは、激甚被害地に人が住んでいるということであると。

 どういうことかといえば、津波で水没して泥まみれになって傾いた家屋の二階に住んでいる方、一階部分が津波でほぼ柱を残すだけになっているところの二階に住んでいる方、こういう方々が大変多いという状況だということなんです。震度六程度の余震がもう既にあって、場合によっては最大余震で再び大津波が来る可能性もなしとはしない、こういう状況の中で、既に、津波で水没をした、大変危険であるはずのところに、一万二千戸のうち千四百世帯が戻って暮らしている、こういう状況になっているんです。

 新学期で学校が始まって、避難所の学校から避難民が移動を迫られている、こういう状況も出てきているわけです。その地区の四階建ての市営住宅、電気もガスも水もない、下水もないところに、新学期が始まるからといって子供と一緒に戻っていく、そういう状況になっているんです。

 一方で、遠くに避難しなさい、こういうふうに言っておきながら、被災地の中心部の最も被害の大きかった地区の学校を開校します、こういうふうにアナウンスをして、学校は使えないので出ていってください、こういうことを事実上促している。こういうふうになると、親は子供を学校に通わせなければいけませんし、こういう形で、どこへ行ったらいいんだということで、いつもう一度津波が襲ってくるかわからない、傾いた自分の家の二階に戻っていく、こういうことがかなり広範に見受けられるというわけです。これで、今後マグニチュード八クラスが予想される最大余震で仮に大津波が生じた場合、大変なことになると私は思います。

 そういう意味で、私は、もちろん合意を得て、また行き先を決めなければいけませんけれども、しかし一方で、災害対策基本法六十三条に基づく警戒区域の設定を早期に行って、立入禁止地区や居住不能の家屋、こういうものを指定していかないとこれは収拾がつかなくなる状況になるんじゃないか、学校に関しても、そういうところにある学校が開校していくということで果たしていいのかというふうに思っております。

 もちろん、この災害対策基本法六十三条の警戒区域の設定というのは市町村長の権限なわけでありますし、私は地元に権限を渡した方がいいということを先ほど言ったばかりですから、矛盾を来す部分もあるのかもしれませんが、しかし、今、市町村長はまさに目の前の被災地支援活動で忙殺されているわけであるので、事態の切迫性にかんがみて、市町村行政を預かる総務省としても、適切な助言を被災市町村に与えていく必要があるのではないかというふうに思うんです。この現状を放置して見ているというわけにはいかないのではないかというふうに思っております。

 その点について御見解をお伺いしたいというふうに思います。

片山国務大臣 危険な状態をそのままにしておくというのはやはり問題があると思います。もちろん、地元には地元の非常に困難な事情がおありであればこそ今のようなことになっているんだろうと思いますけれども、必要な手は地元の自治体で打っていただく必要があるだろうと思います。今のお話も踏まえて、少し、実態を伺った上で、注意を喚起してみたいと思います。

柿澤委員 ぜひこれは、本当に、大変大きな余震がまだまだ来る可能性があるというふうに言われている中でありますので、襲ってきた際に後悔しても始まらない、こういうことだと思いますので、お取り組みをお願い申し上げたいと思います。

 ちょうど時間になりましたので、これで質問を終わりにさせていただきます。ありがとうございました。

原口委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時九分散会


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