衆議院

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第23号 平成23年7月14日(木曜日)

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平成二十三年七月十四日(木曜日)

    午前八時五十分開議

 出席委員

   委員長 原口 一博君

   理事 石津 政雄君 理事 稲見 哲男君

   理事 古賀 敬章君 理事 福田 昭夫君

   理事 皆吉 稲生君 理事 石田 真敏君

   理事 坂本 哲志君 理事 西  博義君

      井戸まさえ君    石井  章君

      内山  晃君    小川 淳也君

      大谷  啓君    大西 孝典君

      逢坂 誠二君    奥野総一郎君

      笠原多見子君    黄川田 徹君

      小室 寿明君    後藤 祐一君

      鈴木 克昌君    高井 崇志君

      中後  淳君    永江 孝子君

      平岡 秀夫君    藤田 憲彦君

      松崎 公昭君    湯原 俊二君

      赤澤 亮正君    秋葉 賢也君

      伊東 良孝君    加藤 紘一君

      川崎 二郎君    北村 茂男君

      佐藤  勉君    橘 慶一郎君

      谷  公一君    中谷  元君

      森山  裕君    稲津  久君

      塩川 鉄也君    重野 安正君

      柿澤 未途君

    …………………………………

   総務大臣         片山 善博君

   総務副大臣        鈴木 克昌君

   総務副大臣        平岡 秀夫君

   総務大臣政務官      逢坂 誠二君

   総務大臣政務官      森田  高君

   会計検査院事務総局第五局長            斉藤 邦俊君

   参考人

   (日本放送協会経営委員会委員長)         數土 文夫君

   参考人

   (日本放送協会会長)   松本 正之君

   参考人

   (日本放送協会技師長・専務理事)         永井 研二君

   参考人

   (日本放送協会専務理事) 金田  新君

   参考人

   (日本放送協会理事)   大西 典良君

   参考人

   (日本放送協会理事)   塚田 祐之君

   参考人

   (日本放送協会理事)   吉国 浩二君

   参考人

   (日本放送協会理事)   石田 研一君

   参考人

   (社団法人日本民間放送連盟専務理事)       福田 俊男君

   総務委員会専門員     白井  誠君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月十四日

 辞任         補欠選任

  藤田 憲彦君     井戸まさえ君

  赤澤 亮正君     秋葉 賢也君

  佐藤  勉君     北村 茂男君

  橘 慶一郎君     伊東 良孝君

同日

 辞任         補欠選任

  井戸まさえ君     藤田 憲彦君

  秋葉 賢也君     赤澤 亮正君

  伊東 良孝君     橘 慶一郎君

  北村 茂男君     佐藤  勉君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 委員派遣承認申請に関する件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 日本放送協会平成十九年度財産目録、貸借対照表及び損益計算書

 日本放送協会平成二十年度財産目録、貸借対照表、損益計算書、資本等変動計算書及びキャッシュ・フロー計算書


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     ――――◇―――――

原口委員長 これより会議を開きます。

 日本放送協会平成十九年度財産目録、貸借対照表及び損益計算書、日本放送協会平成二十年度財産目録、貸借対照表、損益計算書、資本等変動計算書及びキャッシュ・フロー計算書の両件を議題とし、審査に入ります。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 両件審査のため、本日、参考人として日本放送協会の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願い、また、参考人として社団法人日本民間放送連盟専務理事福田俊男君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 両件審査のため、会計検査院事務総局第五局長斉藤邦俊君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

原口委員長 まず、総務大臣から説明を聴取いたします。片山総務大臣。

    ―――――――――――――

 日本放送協会平成十九年度財産目録、貸借対照表及び損益計算書

 日本放送協会平成二十年度財産目録、貸借対照表、損益計算書、資本等変動計算書及びキャッシュ・フロー計算書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

片山国務大臣 ただいま議題とされました日本放送協会平成十九年度貸借対照表等及び平成二十年度財務諸表等について、その概略を御説明申し上げます。

 本資料は、放送法第七十四条第三項の規定により、会計検査院の検査を経まして国会に提出するものであります。

 まず、平成十九年度の貸借対照表の一般勘定については、平成二十年三月三十一日現在、資産合計は七千八百五十三億円、負債合計は二千六百二十三億円、資本合計は五千二百二十九億円となっております。

 損益計算書の一般勘定については、経常事業収入は六千八百四十七億円、経常事業支出は六千四百十六億円となっており、経常事業収支差金は四百三十一億円となっております。

 次に、平成二十年度の貸借対照表の一般勘定については、平成二十一年三月三十一日現在、資産合計は八千二百三十五億円、負債合計は二千七百二十九億円、純資産合計は五千五百五億円となっております。

 損益計算書の一般勘定については、経常事業収入は六千六百十六億円、経常事業支出は六千二百八十八億円となっており、経常事業収支差金は三百二十七億円となっております。

 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。

原口委員長 次に、補足説明を聴取いたします。日本放送協会会長松本正之君。

松本参考人 ただいま議題となっております日本放送協会の平成十九年度貸借対照表等及び平成二十年度財務諸表等の概要につきまして御説明申し上げます。

 初めに、平成十九年度につきまして御説明申し上げます。

 貸借対照表における一般勘定の当年度末の資産総額は七千八百五十三億円、一方、これに対する負債総額は二千六百二十三億円、また、資本総額は五千二百二十九億円でございます。

 続いて、損益計算書における一般勘定の経常事業収入は六千八百四十七億円、経常事業支出は六千四百十六億円でございます。

 以上の結果、経常事業収支差金は四百三十一億円となりまして、これに経常事業外収支及び特別収支を加えまたは差し引きました当期事業収支差金は三百七十五億円となりました。

 このうち、債務償還に充てました資本支出充当は八億円であり、事業収支剰余金は三百六十七億円でございます。

 なお、この事業収支剰余金は、翌年度以降の財政安定のための財源に充てるものでございます。

 以上につきまして、監事の意見書では、貸借対照表等は、監査の結果、協会の財産及び損益の状況を正しく示しているものと認めるとされております。

 引き続きまして、平成二十年度につきまして御説明申し上げます。

 貸借対照表における一般勘定の当年度末の資産総額は八千二百三十五億円、一方、これに対する負債総額は二千七百二十九億円、また、純資産総額は五千五百五億円でございます。

 続いて、損益計算書における一般勘定の経常事業収入は六千六百十六億円、経常事業支出は六千二百八十八億円でございます。

 以上の結果、経常事業収支差金は三百二十七億円となり、これに経常事業外収支及び特別収支を加えまたは差し引いた当期事業収支差金は二百七十五億円となりました。

 このうち、債務償還に充てました資本支出充当は三十三億円であり、事業収支剰余金は二百四十二億円でございます。

 なお、この事業収支剰余金は、翌年度以降の財政安定のための財源に充てるものでございます。

 以上につきまして、監査委員会の意見書では、会計監査人の監査の方法及び結果は相当と認めるとされており、会計監査人の意見書では、財務諸表が、放送法、放送法施行規則及び我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、すべての重要な点において適正に表示されているものと認めるとされております。

 これをもちまして概要説明を終わらせていただきますが、今後とも、東日本大震災の被災地の状況や復興に向けた取り組みにつきまして正確で迅速な報道に努めますとともに、視聴者の皆様から一層信頼される公共放送を目指した改革に取り組んでまいる所存でございます。

 何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。

原口委員長 次に、会計検査院当局から検査結果について説明を求めます。会計検査院事務総局第五局長斉藤邦俊君。

斉藤会計検査院当局者 日本放送協会の平成十九年度及び二十年度決算につきまして検査いたしました結果を御説明いたします。

 協会の平成十九年度の財産目録、貸借対照表及び損益計算書並びにこれに関する説明書等は、二十年六月二十七日に内閣から送付を受け、その検査を行って同年十一月七日に内閣に回付いたしました。

 また、平成二十年度の財産目録、貸借対照表、損益計算書、資本等変動計算書及びキャッシュ・フロー計算書並びにこれらに関する説明書等は、二十一年七月二十七日に内閣から送付を受け、その検査を行って同年十一月十一日に内閣に回付いたしました。

 十九年度の決算につきまして検査いたしました結果、特に法律、政令もしくは予算に違反しまたは不当と認めた事項はございません。

 また、二十年度の決算につきまして検査いたしました結果、検査報告に掲記いたしましたものは、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項一件であります。

 これは、コンピューターサービスの調達の実施に当たり、特定調達規程等の適用範囲について理解が十分でなく、特定調達の対象とならないと誤認していたため、必要な契約事務を行っていないなどの事態が見受けられました。これについて指摘したところ、特定調達に該当するものであることを踏まえ、契約事務に係る透明性、公正性及び競争性を確保するための処置を講じたものであります。

 以上をもって概要の説明を終わります。

原口委員長 以上で説明は終わりました。

    ―――――――――――――

原口委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。奥野総一郎君。

奥野委員 皆さん、おはようございます。民主党の奥野総一郎でございます。

 きょうは、質問の機会をいただきまして、本当にありがとうございます。

 時間もございませんので、早速質問に入らせていただきます。

 先日、東北三県の地上デジタル放送への完全移行の日程が来年三月末ということで決まった、そういう方針が出されたやに伺っております。

 これは、先ごろ通りました電波法の特例法によれば一年間は完全移行延長可能という話だったのでありますが、前倒しということであります。大丈夫なんでありましょうか。被災地の方々の負担にならないようにきちんと移行できるのでありましょうか。

 現在のデジタル化移行の復旧状況、進捗状況、そして三月末で大丈夫なのか、また復旧復興にかかるコストがいかほどなのかという点についてNHKに伺いたいと思います。

永井参考人 お答えいたします。

 震災により損壊した東北三県の放送所とNHK共聴のデジタル化については、来年三月までに間に合うようにデジタル化を完了するというふうに予定しております。

 このための施設の復旧経費でございますが、中継局で二億円、NHK共聴で十三億円、合計十五億円を見込んでおります。

 このほか、東北三県のアナログ放送を延長するために必要な追加経費として、回線料と電力料及びアナログ設備の維持費用が必要でございます。これらは約三億円と見込んでおります。

奥野委員 ありがとうございます。

 また、震災に伴いまして受信料の免除をしなければなりません。どういった方々が対象になるのか、そして、それに伴います受信料収入はどのくらい減収があるのかということについて伺います。

大西参考人 お答え申し上げます。

 東日本大震災に伴う受信料の免除は、自治体の皆さんの御協力やNHKの職員の現地調査などによって、五月末までに九万四千件を確定いたしました。引き続き免除の対象者の確定作業を進めておりますが、全体の把握にはもう少し時間を要するというふうに考えております。最終的な免除の件数は二十万件程度というふうに見込んでおります。

 なお、受信料の免除あるいは受信契約の廃止等の影響を加えた震災に伴う全体の影響額は、五十億円から六十億円と見込んでおります。

奥野委員 この東日本大震災に伴いまして、新たな復旧の費用、そしてこうした受信料の減免等を加えますと、今のお話ですと、およそ七十億から八十億ぐらいのコスト圧迫要因になるというふうに思われます。

 一方で、平成二十一年から二十三年度、今期の経営計画を見ますと、来年度から、「平成二十四年度から、受信料収入の一〇%の還元を実行」、こういうふうに書かれております。

 この点につきまして、こうしたコスト圧迫要因がある中で実行が実現可能なのか、経営の執行側のサイドから、会長にお答えいただきたいと思います。

松本参考人 お答えいたします。

 現在進行しております三カ年経営計画、これにつきましてはさまざまな努力をしてきております。

 収入の面で見ますと、長い間の不況と、そういうものに伴う受信料免除などで収入が減っているということですが、それを除けば、収入については大体計画どおり上げてきている、こういうふうに思います。トータルとしての収支差金も経営計画の線に沿って、一応予算の段階ですけれども、やっていけるものというふうに思います。

 ただ、仮にそれが経営計画どおりやれたといたしましても、この計画の遂行ですぐに一〇%の財源が蓄積されるという計画にはなっておりません。したがいまして、一〇%の還元ということに取り組むためには、そのための財源を確保する必要があります。

 したがいまして、それについて、全局的な取り組みを今いたしております。そのためには、経費の節減がありますし、それから収入の増ということについても取り組む必要があるということであります。この大震災もありましたし、今度のデジタル化でも少し収入に影響があるというようなことも想定されますので、その作業はなかなか容易な作業ではないな、こういうふうには思っております。ただしかし、現在、そのことに向かって努力をして財源を確保したい、こういうふうに考えております。

 それからあと、生み出した財源をどうするか、こういう問題がございまして、この還元の仕方ということについては、公共放送に課された使命、とりわけ災害のときの公共放送の役割というのは大変重要だということを痛感いたしておりますので、そういうことも含めて、還元の方法も幅広く検討してまいりたいというふうに思います。

奥野委員 還元という言葉をずっと使っているんですが、当初はこの還元は値下げだと。福地元会長なんかもこの総務委員会で値下げだというふうに理解、あるいは小丸前委員長なんかも値下げが主であるということを発言されております。

 今のお話ですと、もう少し幅広いことを還元というのは意味していると思われますが、この点について、経営委員長はこの還元という言葉をどういうふうに理解されているか、伺いたいと思います。

數土参考人 ただいまの質問にお答えいたします。

 二年前にやはり一〇%還元、経営委員長と会長がそろって受信料の現金でおこたえしたいというニュアンスで皆様に報告されていることは承知のとおりでございます。私は、これは非常に重いと思います。

 しかしながら、私、四月に就任以来、いろいろお勉強してみますと、三年間の間に、具体的な原資の確保あるいは原資の創出という点についての議論が執行サイドにまだ十分ではなかったのではないか、そういう懸念を持っております。今から執行部が経営委員に対して種々の案を示していただけると思いますけれども、その案の、例えばその肝をなす経営ノウハウあるいはスキームが本当にしっかりしたものなのか、ぜひほかの経営委員と一緒に審議していきたいと思います。

 以上でございます。

奥野委員 中身についてはこれから検討ということだと思いますが、いずれにしましても、現経営計画においては、来年度から何らかの形で還元をするというふうに書かれております。そうすると、今年度中には決めていかなければならない。もし還元ができないということであれば、その中身も含めて、状況も含めて、やはり視聴者、受信料を払っている方々にしっかり説明していかなきゃいけないと思いますし、もし実行するのであれば、具体的にどう還元していくのか、あるいは、今おっしゃったように、その財源をどう捻出していくのかということをしっかり検討していかないといけない、結構時間のかかる大変な問題だと思います。

 そこで伺いたいんですが、いずれにしても、では、来年度の次期経営計画の中にどう書いていくのか、もうそろそろ検討しないといけない時期に来ていると思うんですが、どのようにお考えでしょうか。

松本参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたような事情の中で、現在、全役員が頭を絞って検討中であります。今、経営委員長の方からもお話がありましたけれども、これまでの経緯ということもありますし、またその後の変化もございます。また、今回の震災を通してNHKが一番機能を発揮し、求められるという事柄についても、いろいろ検討しますと、やらなきゃいけないことがかなりあるという気もいたしております。

 そういうようなことを含めまして、まず財源の生み出し、それからそういう中身についての検討、こういう作業をやってまいりたい。できる限り早く進めたいと思うのですけれども、いずれにしましても、次期の経営計画の内容を固めますのは秋ごろには必要なものですから、そのころまでには一定の方向を出してまいりたい、こういうふうに思います。同時に、経営委員会の方ともしっかり意思疎通を図りながらやってまいりたい、こういうふうに思っております。

奥野委員 どうもありがとうございます。

 しっかり検討していただいて、視聴者の方々にしっかり説明がつくようにやっていただきたいと思います。

 次に、ガバナンスの問題について伺いたいと思います。

 このガバナンスの問題はずっと言われ続けておりまして、前経営計画、平成十八年から二十年度の経営計画におきましても、コーポレートガバナンスの改革ということで、経営委員会の監督機能そして説明責任の強化ということが柱として立っております。当時、不祥事が頻発した、これを受けて制度の改正なんかも行われたわけでありますけれども、しかし、では不祥事が減ったかというと、必ずしもそうではない。最近に至るも、さまざまな不祥事が起きているということもございます。

 また、昨年末からことしの頭にかけての会長の選任人事におきましては、経営委員しか知り得ないような選考過程の情報がさまざま外に漏れて、一たん決まりかけた候補の方が辞退を余儀なくされるということまで起きました。こうした問題はあってはならないことだと私は思います。経営委員会の信用そのものにやはり傷がついて、本当にこれで業務執行の監督がしっかりできるのかという疑念を生んだと思います。

 そこで伺いたいのでありますが、この間の会長選任の経緯、そして監査委員が監査を出しておりますけれども、その監査を受けまして、具体的に会長選任手続をどうやっていくのか、改革がなされたのかということを経営委員長に伺いたいと思います。

數土参考人 御指摘のように、NHKにとってもガバナンス、特にコンプライアンスは非常に重要であると思っております。また、御指摘の会長選任に関する経緯についても遺憾なことが起きた。

 それに対しまして、私、就任以来、ほかの経営委員の方々と非常に真摯に意見交換しまして、原因は三点ある。非常に明確である。それは、会長選任に当たって、指名委員会開始後わずか一カ月たたないうちに就任あるいは候補の要請に行った。あろうことか、その中で経営委員の九名以上のサインがないと指名できないというにもかかわらず、九名の賛成を確保せずに行った。もう一つは、それに至る経緯の情報が漏れた。その三点じゃなかろうかと私は思っております。

 他の委員といろいろ審議した結果、現会長の任期が終わる少なくとも六カ月前に指名委員会を立ち上げる。それから、九人の賛成を確保してから会長の就任を要請に行く。それから三点目は、我々の問題ですけれども、コンプライアンスを守る上からも、経営委員の服務に関する準則というものを改めて確認してもらいまして、特に会長選の審議が始まる六カ月前から署名捺印して監査委員会に提出する。この三点を六月下旬に内規として決めたところであります。

 以上、お答えいたします。

奥野委員 時間が参りました。最後の質問にさせていただきたいと思います。

 経営委員会の重要な業務執行、監督の手段がこうした人事権だと思いますので、しっかりやっていただければと思います。

 最後に、こうしたさまざまな事象を見ましても、コーポレートガバナンス、ガバナンスの強化が一層必要だということは明白だと思います。

 経営委員長に就任されまして、どのように公共放送等の使命を果たさせていくのか、どのように経営委員会を改革していくのか、抱負、所信を述べていただきたいと思います。

數土参考人 NHKの組織としては、平成二十年の改正放送法によりまして、委員会は三人の監査委員会を持つということが一つ、それから、執行部サイドには会長直属の内部監査室を持つ、そういうことで内部統制の実を上げていこうというふうに思っておりますので、これからは執行、経営委員両方、そういうものにのっとって御指摘のように努力してまいりたい、こう思っております。

 以上、お答えいたします。

奥野委員 どうもありがとうございました。

原口委員長 次に、橘慶一郎君。

橘(慶)委員 NHKの決算について質問をするわけですが、恒例によりまして、万葉集で始めさせていただきたいと思います。夏山にホトトギスが鳴く声を聞く、そういう歌でございます。

 巻八、一千四百九十四番、大伴家持であります。

  夏山の木末(こぬれ)の茂にほととぎす鳴き響(とよ)むなる声の遥けさ

 どうもありがとうございました。(拍手)

 実は、NHKさんの「日めくり万葉集」、教育テレビ、毎朝十時二十五分、来週月曜日七月十八日放送の第三百二十一回の歌でありまして、あとはそちらを見ていただければと思います。

 早速質問に入らせていただきます。

 まず、収支決算、そして、今ほど奥野委員からもありましたが、利益還元の問題でありますけれども、少しバランスあるいは損益の状況を確認させていただきながら、ちょっと質問させていただきたいと思います。

 二十年度決算でありますが、当初予算で六十八億円黒字計上の予定が、仕上がりは二百四十二億円の黒字であります。百七十四億円改善いたしております。その大宗は、受信料の増額、放送費等の減額。収支それぞれあるわけですけれども、特に節減の方で、どのような経費節減がなされたのか、お伺いをいたします。

石田参考人 お答えします。

 二十年度は、受信料が増収となったことと、支出面で不断の業務見直しに取り組むなど効率的な事業運営に徹した結果、決算では予算に対して、今御指摘のとおり百七十億円余りの改善となりました。

 経費節減の具体的な取り組みとしては、一つは番組関係で、一つの番組素材を複数の番組で活用するマルチ展開など効率的な番組制作を行ったこととか、それから北京オリンピックなどスポーツ放送実施経費の抑制を実施したこと、さらに、設備補修の実施対象数の見直しや、工程、仕様の見直し等による技術設備運用経費の節減などを実施しました。

 今後も、引き続き業務改革に取り組み、効率的な業務運営に努めていく考えです。

橘(慶)委員 やはり経費節減は不断の取り組みであると思います。

 今、利益還元策は二十四年度からという話なんですが、二十一年度から今の二十三年度については、どうしても地上デジタル化をやり切らなきゃいけない。七月二十四日も迫っております、被災地におかれては来春ということでありますけれども。このことで三年間で六百六十億円、三で割りますと一年二百二十億円ぐらいになるわけですが、こういった経費をどうしてもかけていかなきゃいけない。地デジ移行待ったなしというこの時期ですけれども、現在特に力を入れて取り組んでおられる内容について、ここでお答えをお願いします。

松本参考人 お答えします。

 七月二十四日のデジタル化まで、本当にもう秒読みの段階に入っております。NHKは当然、送信設備をきちっと整備するという役割がありますので、これについては、中継局の整備とか、先ほどの予算を駆使いたしまして送信側としての一〇〇%の設備を完了いたしております。

 一方で、デジタル化の場合は、送る方と受ける方がありますので、受ける方々の受信整備のことについては、NHKの立場としては支援という格好になりますけれども、そういうことにつきましては、新たな難視地域とかビル陰エリアの調査とか、あるいはお困りの方の受信相談、そういうようなこと等を含め、経費助成も含めて取り組んできております。

 また、放送、イベントあるいはダイレクトメール、こういうものも通じて、アナログ放送が終了になるということの周知広報もやっておりまして、視聴者の方々に早目の準備をしていただく支援をやってきております。

 これを組織的に受信者側の対策としてやっておられるデジサポという組織がありますけれども、そことも連携をとりまして、最後まで全力で取り組んでいくということと、二十四日時点でもいろいろなことが変化いたしますので、それに対応するような対応をとってまいりたいというふうに思っております。

橘(慶)委員 ありがとうございます。

 本当に、七月二十四日まであと十日間ということであります。どうか最後までよろしくお願いしたいわけですが、利益還元という観点からいきますと、先ほど申し上げた、二十年度で上振れ百七十億円、あるいは今のデジタル化経費六百六十億円を三で割ると二百二十億円と、数字がいろいろ積み上がっていくわけであります。

 二十三年度をもって実は、今、予算を二十三年度予算まで立てられていますので、今まで設備投資については放送債券というような形で独自に調達をされるということもあったわけですが、この放送債券の償還もこれで終わるという予定になっておりまして、そして、財産目録を見ますと、固定資産の方で長期保有の有価証券も二千六百五十六億円お持ちになっているという状況であります。

 今後、投資をしていくと、放送会館の建てかえとかいろいろあるにしても、これからは多分自己資金で、要するに自律的に対応されていくことになるのかなと思うんですが、この点のお考えを確認させてください。

石田参考人 お答えします。

 二十三年度、今年度までは、テレビ放送の完全デジタル化を遂行するため、送信設備を中心に大規模な設備投資を行ってきました。これらの投資については、デジタル化以外の設備更新を極力抑制することで、減価償却資金等の自己資金を中心に対応してきました。

 今後のことなんですが、今後の経営課題としては、先ほど会長からも御答弁しましたように、東日本大震災を受けて、放送機能を強化するための設備投資とか老朽化した放送会館の建てかえ等の検討を行っていますが、可能な限り自己資金を中心に対応して将来の視聴者の負担軽減に努めていきたい、そのように考えております。

橘(慶)委員 以上、簡単に三つ聞かせていただいた中でも、ある程度の原資というものはこうやってお話をしていると見えてくるような気もいたしますし、バランスシート上も、普通の株式会社、民間企業で見れば自己資本比率も非常に高い、ある意味で非常に筋肉質のバランスシートというふうにお見受けもするわけであります。

 そこで、改めて、二十四年度からの問題でありますけれども、二十三年度予算でも最初から四十億円の黒字というようなこともありますし、先ほど申し上げた年間平均二百二十億円のデジタル化経費もなくなる、まだまだいろいろな節減もできる。そういった中において、先ほどの奥野委員と重なってはいけないので、質問をもう少し細かくいたします。

 会長さんには、何らかの形での還元はある、要するに、ゼロか十かということじゃなくて、とにかく還元というのは何らかの形で行わなきゃいけないというところの確認をさせていただくということ。

 また、経営委員長さんにおかれましては、民間企業の経営もされてこられたわけであります。このNHKの今申し上げたようなバランスをごらんになりながら、そういったいろいろな原資のありようをどのようにお感じになっているかということでお答えをいただければと思います。

松本参考人 お答えいたします。

 先ほども少しお話ししましたけれども、経営計画、予算で赤字で計画したのを黒字に転換するとか、その途中途中で努力をしていることがあります。それは債務の返還とか、そういうことに充てたりしてやってきているわけですが、現時点で、ことしも予算どおりにやってどれだけのものが出るのかということについては、デジタル経費については先ほどおっしゃったような経費が一部落ちますが、デジタル経費の中で引き続きやっていかなきゃいけないだとかメンテナンスというようなものもありますので、全部がそういうことにはなりません。

 それから、収入の面では、やはり免除が大変ふえているということと、それから、デジタルに移行する際におやめになる方が相当見えるのではないか、こういうことで、それをちょっと見ないとよくわからないということがあります。

 そういう中で、現時点で申し上げますと、財源が、一〇%という話になると結構大きな額なものですから、そういうものが手元にあるかというと、計画は通すのだけれども、それはそうではない、こういう状況です。したがって、それを何とか生み出さないといけない。

 これまでの経緯からいいまして、やはり一〇%の還元ということは、私どもも、次の経営計画の中で何らかの形で盛り込んでいく、検討していく必要があるだろう、こう考えておりまして、そのためにどういう形で財源を生み出すのかを一生懸命検討しているということですが、私の今の感覚としては、そう簡単ではない、こういうふうに思います。

 しかし、何とかそういう努力をして、あとは還元をどういう形でやっていくのかということですが、公共放送の役割ということ、原点はやはり、災害のときにこれだけ頼りにされ、あるいは我々がやらなきゃいけないこともはっきりわかったということからいうと、そういうことはきちっと整備をする必要があって、こっちの方は結構資金もかかりますので、そういうようなことも含めて総体的に検討していきたい、こういうふうに考えております。

數土参考人 橘委員の質問は、二十三年度予算の経常収支差金はある、しかしながら、一方、我々の受信料の収入は六千六百八十億円を予定しているわけで、それの一割ということになれば六百六十八億円ということになりまして、相当の乖離があるということを指摘されたのだろうと思うわけです。私としては、非常にポイントをつかれた質問を、ちょっと厳しいですけれども、やられたと。

 会長は、なかなか簡単ではないと。今おっしゃいましたけれども、会長と私は就任以来非常に緊密に意見の調整とコンセンサスをとっています。会長は就任以来非常に厳しいとおっしゃっていますけれども、私の方は、厳しいことをやるのが会長の仕事だ、こう言っているんです。

 しかし、さはいえ、三年前と今は非常に経済状況が違っている。非常に世界も日本も、特に震災ということ、貿易収支、経常収支を見ても厳しい。過去に、五十一年、五十五年、五十九年と、三回連続値上げした経緯がございます。そういうことも含めて、一度値下げしたら、それは不可逆性のものである。それは、先ほど申しましたように、そういうことに対する経営のノウハウ、スキルが本当に確立されたものなのかどうなのか。いろいろな結果になるにしろ、そういうことを厳密に調査、チェックしていきたい、また視聴者・国民に満足してもらえるような案にしていきたい、こう思っております。

 以上、お答えいたします。

橘(慶)委員 ありがとうございました。

 現時点でいろいろ検討されている、そういった胸のうちということも含めて、あるいは、それを経営委員長として、いろいろまた助言あるいは提言されるという立場での御答弁だったと思います。

 私が申し上げておきたいのは、デジタルということじゃなくて、アナログという解決はあると思っております。ゼロか一かじゃなくて、ゼロか十じゃなくて、いろいろな形での解決。だけれども、ゼロだと余りにも寂しいので、そこはぜひよく御検討いただきたい、このように申し上げておきたいと思います。

 今ほど視聴者の皆さんというお話がちょっとありましたので、一つ質問が飛びますけれども、地域、視聴者との関係で一つお伺いをしておきたいと思います。

 業務に関して視聴者からいろいろな御意見が寄せられております。二十年度の数字でいうと、年間に四百六十万件御意見があった、こういうことであります。業務報告書によりましても、その四百六十万件の分析結果を業務改善につなげた、このように表現されているわけであります。大事なユーザーといいますかお客様のお声であります。

 具体的な、こういう改善につながった、こんな気づきがあった、こういったことの事例があれば、せっかくテレビも入るわけですから、こんな声はありがたかったというのをここで御披露いただきたいと思います。

塚田参考人 お答えいたします。

 具体的な事例としましては、「クローズアップ現代」をごらんになっている聴覚障害者あるいは高齢者の方から字幕放送にしてほしいという要望が寄せられたことを受けまして、二十一年九月から字幕サービスを開始いたしました。

 また、ニュースのテロップ文字と字幕放送の字幕が重なって読みづらいので、表示方法を変えられないかというような要望も寄せられました。これにつきましては、なるべくテロップに重ならないように字幕をつけるということで、二行分上の方にずらして表示するというようなこともいたしました。

 さらに、NHK全国学校音楽コンクールのブロック大会につきまして、家が遠いため観覧に行くことができないという意見、それからネットを活用した動画などで見ることができないかなどの御意見をいただきました。これを受けまして、九州など三つの地域のブロック大会の模様をインターネット中継でお届けしました。アンケートを行いましたら、このサービスにつきまして満足したということが多く寄せられましたので、二十二年度からは、八つのすべてのブロック大会でこのサービスを実施しております。

 このように、視聴者の声を反映した改善は二十一年度で千件を超えております。

橘(慶)委員 ぜひ、やはりそういうお客様というのか視聴者の皆さんとの双方向の対話の中からさらに前進をしていただくというのが大変いいことじゃないかと思いますので、引き続きよろしくお願いしたいと思います。

 そして、NHKさんの組織風土の問題について、ちょっと辛口になりますが、ここでお伺いをしておきたいと思います。

 先ほど来、新会長人事をめぐるお話が奥野委員からもありましたが、私は、経営委員会そのものというよりは、NHKさんの組織という方についてのお考えを経営委員長にお伺いしたいわけであります。

 というのは、残念なことですが、今もコンプライアンスに絡む職員の方の不祥事というのが時々あるわけでありまして、経営サイドとしては、そういうものを全部一掃していきたい、やはりみんなが頑張れるNHKにしていきたい、これは当たり前のことであります。

 しかし、今回の新会長人事をめぐって、経営サイドといいますか、その組織の中で怪文書が飛び交った、こういう話も伝わってきているわけであります。みんなで頑張ろうと言わなきゃいけない経営層の方でそういう怪文書が出てくるということでは、余りよろしくない。これはよく民間の会社なんかでも、会社ががたがたするとそういうことが起こるわけですが、やはり経営層もしっかりしている、職員の方々もしっかりしている、それで明るく元気に頑張ろう、そういうNHKでなきゃいけない、このように思うわけであります。

 この点はやはり企業の経営者であった數土委員長さんの方から、これからこういうふうに、こんなNHKに、そういう御見識があれば、そのあたりをお聞かせいただきたいと思います。

數土参考人 お答えいたします。

 おっしゃるとおり、全く橘委員と同じ感じでおりますけれども、やはりコンプライアンスのときには、教育をするマニュアルその他スケジュール、そういうものが決まっているかどうかということが一点と、実際に経営サイド、執行サイドがそれを確実に実践しているかということ、それから、起きてしまったときに、本人はもちろん、上司に対しても厳罰主義で臨む、これが普通の経営一般でございます。これを厳しく遵守していけば、周知していけば、少しずつよくなるのじゃないか、こう思っております。

 それから、会長の人選の件につきましては、先ほどお答え申し上げましたとおり、手順に非常に稚拙なところがあったと私は思っております。審議する期間、交渉する前提条件の、大事な九名という必須条件の欠落、それから情報管理の不徹底、こういうものは、先ほども申しましたように、我々は内規として厳重に管理していくということを決めましたので、これからそういうことが少なくなっていくというふうに期待しておりますし、実践していきたい、こう思っております。

 以上、お答えいたします。

橘(慶)委員 ぜひここの点はよろしくお願いしたいと思います。開かれた組織風土をお願いしたいと思います。

 大体時間も参りました。「日めくり万葉集」について、これからどういうふうになるかというのを簡単に最後お聞きして終わりたいと思いますが、それと、義仲、巴の大河ドラマ化の話は地元からお願いしていると思うんですが、ぜひ、長野、富山、石川、みんなで、北陸新幹線ができるころにはと。これはお答えは結構なので、「日めくり万葉集」の方をまずここでお答えいただいて、終わりたいと思います。

金田参考人 「日めくり万葉集」でございますが、昨年、新シリーズとしまして二百四十本制作いたしました。それを衛星ハイビジョンで放送いたしました。本年度、二十三年度は、これを教育テレビで、Eテレと最近申しておりますけれども、再放送しております。大変好評をもって見られているということでございます。

 来年度以降の展開につきましては現時点でまだ決めておりませんので、御承知おきいただきますようにお願いします。

橘(慶)委員 どうもありがとうございました。

原口委員長 次に、赤澤亮正君。

赤澤委員 おはようございます。

 本日、NHKの経営委員会と執行部のあり方について質問したいと思います。言いかえれば、NHKの経営委員長と会長、それぞれの役割やその分担関係について質問をさせていただきます。

 NHKの役割が極めて重いと思えば思うほど、あるいは、NHKと国民の信頼関係の構築そしてその維持が非常に重要であると思えば思うほど、少々辛口になりますけれども、NHKに対する期待の大きさあるいは思いの発露だということで、大目に見ていただきたいと思います。お許しいただきたいということをあらかじめ申し上げておきます。

 さて、インターネットでリアルタイムで、あるいは夜遅くテレビで録画を見てくださる視聴者のために、NHKの経営委員会と会長の関係について簡単に御紹介をしておきたいと思います。

 まず、NHKには、国会の同意を受けた、いわば国会が選任に責任を負う経営委員十二名によって構成される経営委員会がございます。この経営委員会が、執行部のトップである会長を決めるということであります。経営委員会が決めた会長は、NHKの執行部のトップとしてNHKの業務運営全般に責任を負い、経営委員会の議決、承認を得て、日々の業務を進めるということになります。

 以上が、放送法に定められた経営委員会と執行部の関係であります。これは、民間企業とは大きく異なる、公共性の極めて高いNHK独自ともいうべき体制だと思います。

 そこで、數土経営委員長にお尋ねをいたします。

 経営委員会と執行部の関係について、數土委員長が日ごろ心がけておられることがあれば、簡潔に御発言をいただきたいと思います。

    〔委員長退席、稲見委員長代理着席〕

數土参考人 ただいまの件にお答えいたします。

 私、就任以来三カ月たちましたけれども、松本会長とは非常に頻繁に意思の疎通を図っております。その目的は、特に、来期以降の大きな経営目標は何か、それからそれに対して解決手段は何かということを真摯に意見交換しているところでございます。それから、各経営委員も、各執行の理事の方と従前にも増して意思の疎通を図っているところであります。

 一方、先ほど述べていただきました平成十九年に改正されました放送法には、経営委員が松本会長以下の執行を監督すると。これは大変なことでございまして、これを誠実にやろうと思ったら、やはり多少の緊張感、あるいは相当の緊張感が生まれる、それは当然のことではないかと思っております。

 さらに、これはちょっと外れることですけれども、世界のいろいろな会社を初め組織の中で、例えばNHKの会長が経営委員会のメンバーでないということは非常に希有な例で、私の今までの経験では知らない点だ。そういう点も考慮しながら、我々は、両者の意思疎通を図って所期の目的を達成するよう努力している、そういうことでございます。

 以上、お答えいたします。

赤澤委員 數土委員長は、四月十二日の就任会見において記者から、残念ながら、前の委員長は、会長選出をめぐって混迷をもたらし、そして退かれたわけですけれども、その座につかれた方として、会長選びの混迷はどのように受けとめているかという質問をされたときに、「経営委員会や監査委員会でも報告を出しており、私が関与、あるいは説明を受けたこともないのでノーコメントが適切であろう。」、こうお答えになったとNHKのホームページで紹介をされています。

 私は、そもそもここから少々おかしいなと思ってきたわけです。つまり、いわば前任者の失敗について説明を受けたこともないと発言をし、コメントもしないというのでは、前任者の失敗の教訓が生かされないのではないかと不安になったのは私だけではないんだと思うんです。新しい経営委員長が前任者の失敗の教訓を肝に銘じて同じ失敗を繰り返さないこと、これを国民が期待するのは当然のことだと思います。

 このことを認識した上で、私は、就任当時の數土委員長から、せめて、経営委員会や監査委員会の報告などによれば、会長選出をめぐる混迷の教訓として、少なくともしっかりとした情報管理、あるいは言いかえれば経営委員の情報発信の管理などが必要だ、委員長である自分を含め経営委員は責任の重さを自覚し、慎重な発言や情報発信に努めなければならないと考えるなどという御趣旨の発言をいただいて、国民を安心させていただきたかったというのが率直なところです。

 以上を踏まえてさらに質問を続けますが、新聞に掲載された數土委員長のインタビューや記者会見について言及をさせていただきます。

 就任会見では委員長御自身が、自分はCEOではない、こういうことを明言されているにもかかわらず、私からすると、もし発信する必要があるとしても、本来松本会長が口にされるべき内容をかなり頻繁に數土委員長が口にされているように感じるんです。

 例を順次挙げていきたいと思います。

 就任から二カ月余り経過した時点の共同通信のインタビューです。就任直後だからという言いわけはもう通じない時期だと思います。受信料収入の一〇%還元について、還元は公の約束、受信料の値下げという形でやらないといけない、よほどの理由がないと変更できないと断言されています。その後のインタビューで、どうなるかわからないとトーンを落とされているわけでありますけれども、私の記憶が正しければ、この一〇%還元問題について、執行部のトップである松本会長が具体的に踏み込んだ発言をされたことはこれまでないと思っています。執行部のトップであって業務運営に責任を負う会長が言及しておられない問題を経営委員長があえて触れる必要があるのかというのは、私は大いに疑問だと思うんです。

 もちろん、數土委員長がさまざまな思いや考えがあって御発言をされていることは理解をいたします。私にも思いがあります。とはいえ、NHKの最高意思決定機関である経営委員会の委員長が執行部がまだ検討中の問題について言及をすることは、やはり執行部の判断や業務運営にも大きな影響を及ぼしかねないと思います。

 もっとまずい最近の例もあります。先週水曜日、六日の読売新聞だったと思いますけれども、インタビュー記事で、數土委員長は記者から「番組をインターネットに同時送信すべきか」と問われたときに、お答えはこうでした。「法改正が必要だが、同時送信しないとだめだろう。その場合、受信料を投入すべきかどうか。私見だが、NHKが直接運営するのでなく、中間の会社が広告収入を得て運営し、NHKが一定の収入を得る手法もあるのではないか。」と御発言になっています。

 率直に申し上げて、私見であれば発言されない方がよいと思います。

 この私見の表明を受けて、翌日の記者会見で松本会長は、「NHKは放送法で広告収入を得ることはできないし、そういうことを検討しているわけではない。」と発言をされました。これも、記者会見の内容としてNHKのホームページで公表されています。

 要するに、経営委員長が公にされた私見を会長が翌日打ち消す、否定するという事態が生じているんです。NHKそのものの信頼性を損なわないかを懸念される事態と私は理解いたします。

 冒頭の話に戻りますけれども、昨年末からことし初めにかけての経営委員会による会長選出の大混乱、これは記憶に新しいところです。この問題は我が自民党も厳しく追及をしてまいりました。その大混乱の原因は、経営委員会も、経営委員がマスコミに好き勝手なことを話した、つまり情報管理の甘さにあったということは認めています。先ほどからお話があるように、その教訓を生かして、數土委員長御本人が、先日、会長選任に当たっての内規を定められたというふうに承知しています。

 情報管理は経営委員長が一元的に行うということでありますけれども、その経営委員長が言いたい放題と言うと少々恐縮なんですが、私見を含む天真らんまんな御発言を繰り返されるとすると、会長選出をめぐる混乱と同様の混乱が再び起こらないという自信は私にはありません。

 そこで、數土委員長にお尋ねをしますけれども、経営委員長の最近のマスコミでの御発言を含め、私は、少なくとも、それを聞いた、見た国民から見て、経営委員長と執行部の間にいささか不協和音が生じているように見受けられると思うんです。數土委員長御自身は、この点についてどのように感じておられますか。

數土参考人 非常にいろいろな御指摘、御指導、どうもありがとうございます。

 先ほど来申し上げておりますとおり、経営委員長たる私と執行部の長たる会長と、非常に頻繁に意思の疎通を行っております。

 それからもう一つ、経営委員会の実践方法を、今まで、一月二回、執行部から議決案件あるいは報告事項を一方的に受ける。これを一日にして、あと一日は、経営委員同士、自分たちの経営能力を高めるために、一月に三時間、今までよりふやしまして、それでやっている。ブリーフィング、記者会見というものは、すべてこれにのっとったものであります。

 もう一つ、一〇%還元だとか、先ほどのネットとの関連につきまして、先ほど来申しておりますように、三年前からこの一〇%還元は経営と執行が約束をしていたものです。それに対して、具体的な原資の確保それから創出について、いまだに十分やられていないという感じは経営委員長として非常に強く思っております。

 このたび、来年一月に先生方に承認していただく二十四年度の案件は、私は、十月いっぱいまでに完了しないとだめだと。一般の企業であれば、大体一年前にそういうことはけんけんがくがくやっているはずだ、私はそう思います。

 そういう思いから、いろいろな面で、それが進捗するように、経営委員と執行役員が今まで以上に緊密に連絡をとりながら、時には少し執行委員が思う以上な発言をする。これは、経営委員会が執行を監督するということで、車の両輪といえども多少のきしみ、緊張感があってもいいのではないか、こう考えておりますけれども、ただいまの先生の御指導をしっかり受けとめて、また健全な方向に進んでいきたい、こう思っておりますので、御指導をよろしくお願いいたします。

赤澤委員 一言で申し上げれば、基本的に、NHKの中でけんけんがくがくやられることを私は望みます。

 先ほど、中の議論を踏まえての記者会見だとおっしゃいましたが、私見であるがと言ったことがやはり記事で大きく取り上げられて、翌日、会長がそれを否定するという展開が現にあるんです。私見を述べることは、経営委員会と執行部の間の議論の中で、まさに打ち合わせて述べられたんですか。私はそうは思っていません。

 だから、反省と言うと非常に口幅ったいです、私ども自民党も私本人も反省するところは多々あるという前提で、少しでもよりよい、国民に愛されるNHKという観点であえて申し上げさせていただけば、やはりいま一つ、もうちょっと中で議論を詰めていただきたい。

 個人的な意見を決して言ってはならないと私は申し上げるつもりはありません。ただ、同じNHKの一員なのだから、外に向かって発言をされる前に、まず経営委員会の中の議論を深める。これは、御自身の意見を松本会長にはよく伝えておられるというお話でしたので、もうそれをやっておられるということなんだと思いますが、私自身は、もう少し中でけんけんがくがくやられてから、外に向けてもう少し協調した感じで発信があるといいなというふうに受けとめております。

 ぜひそのことは念頭に置いていただきたい。同じNHKの一員なんだからという感じで国民も見ておりますし、私も拝見をしております。

 ここで、念のため、片山総務大臣に放送法の趣旨を確認します。

 今、數土委員長のお答えで私はもう一つ不満な点があったので、そこをちょっとたださせていただく前提としてなんですが、放送法は、NHKの会長については、「会長は、協会を代表し、経営委員会の定めるところに従い、その業務を総理する。」と書かれています。一方で、経営委員長については、「委員会の会務を総理する。」と書かれているわけです。そして、経営委員会の議事は、「出席委員の過半数をもつて決する。」、こういうことであります。

 したがって、私の理解では、経営委員長はいわば経営委員会の議長役であって、経営委員会としての意見、意思としては、委員会として議決されたもの、あるいは経営委員会全体で合意されたもののみが重みを持つものだというふうに理解をしております。

 片山大臣に、その放送法の趣旨についての私の理解はそれでよろしいか、お伺いをいたします。

片山国務大臣 厳密に言いますと、そういうことだろうと思います。経営委員会は合議制の機関でありまして、そこで正式決定されるものは合議制で決定されたものであります。それを会務を総理する委員長が代表するということだと思います。

 ただ、経営委員会というのは、放送法にもありますけれども、経営に関する基本的事項でありますとか、それから日々の業務のチェック、それはコンプライアンスのチェックであったり業務の効率性のチェックであったり広範にわたりますけれども、いろいろな事柄が経営委員会の仕事としてあります。それをすべて一つ一つ、逐一全部議決にかからしめるかというと、必ずしもそうではないと思います。したがって、会務を総理される経営委員長が、いろいろな問題について問われれば、やはりそれなりの会務を総理する立場として対外的に表明するということはあり得るんだろうと思います。

 その辺が、どこまでがのりであって、どこから越えればのりを越えるということになるのか。これは、その個性といいますか、委員長の属性にもよることだろうと思いますので、こういう場でいろいろな議論があったり意見があったりしながら、そんなことを踏まえて、それぞれみずからの責任の範囲内で発言をされ、行動されるものだと思います。

赤澤委員 ありがとうございます。私も納得のできるお答えではありました。

 數土委員長は就任会見のときに、「経営委員会と松本会長以下の執行部と本当に連携プレーをして、信頼関係を作って、情報交換し、コミュニケーションをよくとり、車の両輪でやらないとだめだと思っている。」と。先ほどまさにおっしゃった車の両輪論であります。

 ただ、私は、あえてもう一言申し上げておけば、車の両輪というのは決してツートップということではないというふうに思っております。つまり、経営委員会が合議体として執行部を監督する、そのとおりであるけれども、基本は経営委員長が監督しているわけではないという点は、ぜひ踏まえていただきたいと思います。

 片山大臣の御指摘を受ければ、個性のある委員長が少々、合議体としての範囲を離れて熱い思いでいろいろと発信されることはあり得るという趣旨の答えにも聞こえましたけれども、それは基本的に合議体として責任を持たなければならない、そして、委員長としておっしゃるのであれば、基本的にはNHKの中で、少なくとも発信した内容を翌日会長が否定しなきゃならないような形にはしないでやっていただきたい。私はこのことを強く御指摘しておきたい。片側の車輪だけが前に進み過ぎたり、あるいは違う方向に進めば、車は動かないどころか壊れてしまいかねない。その車は、今本当に重要な、国民のかけがえのない財産であるNHKだということを申し上げておきたいと思います。

 もう一言つけ加えれば、国民の代表である、国権の最高機関であります、すなわち国会が、NHKの経営委員の選任を同意する権能とか、NHKの予算や事業計画を承認する権能を持っております。新たな事業をNHKが行う場合にも、法律改正で対応いたします。そのことの意味は重大です。NHKは、公共性の高い別格の存在であって、かけがえのない国民の財産だということでございます。

 數土委員長には、これらの点もぜひ十分に念頭に置いていただきながら、経営委員会の議長役として、経営委員会が視聴者・国民の目線から執行部の事業運営を大所高所からチェック、監督し、結果としてNHK全体がよりよいものを生み出していけるよう、円滑な経営委員会の運営そして執行部との意思疎通をお願いしたいと思います。

 執行部のトップである松本会長にも申し上げておきます。

 経営委員会との十分な意思疎通に努めていただきたいということであります。同じNHKの一員であるのですから、胸襟を開いて率直に議論を深めていただき、国民のかけがえのない財産であるNHKをさらにさらに発展させていただきたいと思います。ここにいるすべての人間、そして国民の願いでございます。

 以上の私の話を聞いていただいて、數土委員長、松本会長からもし御意見があれば最後に賜って、私の質問を終わりたいと思います。よろしくお願いをいたします。

數土参考人 ただいまの御指導、御意見、大変貴重でありました。ありがとうございます。

松本参考人 私の方からも一言お話しさせていただきます。

 お話のとおり、NHKという形、組織があるわけですが、その中の経営委員会があり、そして会長以下に執行部がございます。私どもの立場からいたしますと、二十四時間、三百六十五日、放送という仕事をみんなとやり、あるいはいろいろな議論をしております。したがって、私の場合は、いろいろなことが見えるという立場になります。

 そういう観点で、やはり経営委員会あるいは委員長とも、我々がやっている事柄の内容とか動きとかいうことについても意思疎通をきちっとしながら、そういうことで監督という業務もきちっとできると思いますし、またその中で当然緊張関係はあるんですけれども、そういうことも踏まえながら、NHKのためにやってまいりたいというふうに思います。

赤澤委員 これで終わります。引き続き私どもも注視をしていきたいと思います。

 ありがとうございました。

稲見委員長代理 次に、伊東良孝君。

伊東委員 それでは、お二人から今、質問に答弁をいただきましたけれども、松本会長がことしの一月二十五日にJR東海副会長からNHK会長に転身されて、ちょうど半年たったわけであります。

 御案内のように、放送を取り巻く現状につきましては、メディアの一大激変期にあります。いよいよ地上デジタル放送が、東日本の震災地域を除いて、今月の二十四日、もうあと十日でありますけれども、いよいよスタートいたします。著しい技術革新に伴って放送と通信の融合が進み、さまざまなサービスが始まり、さらに進化しようとしているところであります。

 そうしたメディアの激変期に公共放送とされるNHK会長に就任され、公共放送としての責任、役割についてどのように今感じておられるか。また、最近よく耳にすることでありますけれども、内向きなNHK、あるいは影が薄くなったNHK、さらにはおとなしくなったNHKなどという話も聞くわけであります。こうした不満、評価あるいは批判は本当にそうなのか。六カ月余りのNHK勤務で会長の感ぜられたことを一言お聞かせいただきたいと思います。

松本参考人 お答えいたします。

 NHKの役割を外から見ていた時期と、現在、実際に執行ということでやっている中では、やはりNHKの役割というのは極めて重要だ、こういう気持ちを一層深く持っております。特に三月十一日の大震災を経験いたしまして、あの中で、いかにこういう時期の公共放送というものが機能を果たさなければならなくて、なおかつ一番頼りがいにされる、こういうことを実感いたしております。海外からも、そういうようなことでもいろいろな激励とかあるいは称賛、評価、そういうものもいただいております。そういう中で、公共放送というものについて、しっかりその基本といいますか、原点を守ってやっていかなければならない、こういうふうに考えます。

 その中で、今、中の役員みんなで検討していますけれども、幾つかのキーワードといいますか柱というものを立てておりまして、一つは公共という柱です。公共という中には先ほどの災害の問題も含みます。それから信頼と活力。信頼は、もちろん放送番組もそうですし、それからコンプライアンスもそうであります。それから、もう一つの柱は創造、活力ということで、技術の開発、あるいは今回のデジタル化もそうでありますが、将来に向かってNHKが公共放送として新しいサービス、こういうものをきちっとやっていく。こういうようなことを理念として考えてございます。

伊東委員 放送法では、経営委員会がNHKの最高議決機関とされているところであります。NHK会長には極めて多くの権限が付与されているところでありまして、熟慮断行とか、待てば海路の日和ありとか、時間を経て様子を見ていればという話にはならない時代であろう、このように思うところでもあります。

 さて、三年度という任期の中でいわゆる松本カラーを出していかなければならない、こう思うわけでありますけれども、今キーワードを三つ、公共、信頼、活力というお話がありました。どうぞ存分なる手腕を発揮していただきたい、こう思うところでもあります。

 さて、いよいよ二十四日から地デジが始まるわけでありますけれども、その後の経営課題として考えられることは何なのか。あるいは、今月には受信料制度の見直しに関する答申が専門調査会から示されたところでもあり、十月には次の中期経営計画、これは平成二十四年度から二十六年度でありますけれども、これがまとめられるというふうに聞いているところであります。具体的な課題、テーマとして、どういった内容が検討されているのかお聞きしたいと思います。

    〔稲見委員長代理退席、皆吉委員長代理着席〕

松本参考人 先ほど柱を申し上げましたが、言い間違えたかもしれませんので、再度申し上げたいと思います。

 公共というのが一つの柱であります。二つ目は信頼と活力。三つ目は創造と未来。未来というのは、夢も持とう、こういうことであります。

 デジタル化でいろいろな事柄が変わります。機能も大変持っておりますので、双方向も含めた、そういうような機能がありますので、それらを生かしたいろいろな展開が出てくると思います。

 一方で、放送と通信という形で、それぞれのメディアが歴史と大きな進歩をしてきましたが、その二つが非常に近づいて融合という形になっておりまして、今回の震災のケースなんかを見ますと、通信の機能というのが放送と重なり合わさることによって、本当に一人一人の被災者の皆さんのところにも情報が届き、かつ、皆さんからも情報が入るというようなことがあります。

 したがって、そういうような世界が大変これから広がっていくのであろうというふうに思いますし、世界のいろいろな国、先進国を見ますと、その中に垣根がある法制というのは余り見当たらないような気がいたします。そういう意味で、日本の公共放送として、将来に向かって役割をきちっと果たすためにはそういうような事柄が大きな課題になるだろう、こういうふうに思います。

 それに対しては、もちろん法律の問題もございますし、そういうデバイスにどういうふうに受信料がかかわっていくかというような問題もありますので、そういうようなことを総合的に考えながら、新しいサービスといいますか、そういう世界にいろいろ思いをめぐらすというか、検討をしていきたいと思います。

伊東委員 先ほど赤澤委員から、通信との融合の中で、インターネット等々のお話も出てまいりました。

 ことしの二月に、NHKはインターネットでのラジオ放送の同時配信サービスを総務省に申請されたわけでありますけれども、もちろんお話にあるように、テレビ放送の同時配信も検討されている、こう思うわけであります。もちろん料金の問題、先ほど、中間に別な業者あるいは会社を絡ませてという話もあったわけでありますけれども。

 今の放送法の改正のお話にもちょっと言及をいただいたようでありますが、過去の番組はインターネットで配信するサービスは可能であろう、このように思うわけでありますけれども、現在の放送と同時にこれを配信するというのはなかなか難しいのではないか、こう思っているわけであります。

 これらの問題について、問題点はよくおわかりだと思いますので、このインターネット配信のメリット、デメリット、あるいはその問題点についてちょっとお聞かせをいただきたいというふうに思います。

松本参考人 お答えいたします。

 インターネット配信については、前提としては今の法律の問題がある、こういうことが一つであります。もう一つは、NHKの立場からいたしますと、公共放送は受信料で成り立っておりますので、受信料でどういうふうにアクセスできるか、こういう問題がございます。今、いろいろなデバイス、ツールでNHKが流している放送を受信されている方が、特に若い人たちに多いです。そういう方に受信料という形でどういうアクセスができるか、こういうものが一番大きな問題だと思います。

伊東委員 私もそう思います。最近、固定電話を持っていない若い人が大半になってきているわけでありますし、もう既成概念で考えるのは難しいのではないか、こう思うわけであります。

 また一方で、民放などの一部メディアからは、NHKの業務の肥大化あるいは巨大化、商業化ということが常々言われており、反発が予想されるところでもあるわけであります。これに対する説得等も必要ではないか、こう思います。

 私、実は、今回の大震災等々におきまして感じたのは、海外に対する発信がどうも、私もきのうまでちょっとロンドンの方に行っていたのでありますけれども、ニュースは流れているんだけれども、的確な解説その他がなかなか海外に伝わっていない。

 NHKはテレビ・ジャパンという放送を海外に流しているわけでありますけれども、海外でこのニュースを聞く人たちが、その断片的なニュースで日本の状況を判断する。あるいは、それよりももっと有効なのは、日本にいる外国人に海外の人たちがみんなメールあるいは電話でアクセスをしてきて、日本の状況はどうなっているんだという話を聞くわけであります。ところが、日本に在住している外国人が、日本の国内放送でそれを逐一、全部情報収集ができるかというと、言葉上の問題があってなかなか難しい場合があります。そこで、テレビ・ジャパンで海外に流しているような情報を国内在住の外国人に見せること、発信することができないかどうかということもあるわけであります。

 インターネットにつきましては、受信料の問題があるといいますけれども、若い人たちに、あるいはテレビが本当に通信が途絶える、壊れてしまうときにネットで情報を得る、そういった観点からも今後必要であろうというふうに私は思うところでもありまして、世界に、あるいはテレビを持たない若い人に、あるいは緊急時、被災時、そういった状況のところでNHKの持つ情報をネットを通じていかに提供するか、こうしたことが非常に大事だ、このように思うわけでもあります。

 この点、震災対策に絡めての話でありますけれども、海外に対する発信及び国内にいる外国人に対する情報発信の観点で、いま一度御答弁をお願いしたいというふうに思います。

金田参考人 全く御指摘のとおりであります。

 現在、外国人向けのNHKワールドと、もう一つはNHKプレミアム、日本人向けの日本語放送と、テレビについては二つやっているわけですが、日本にいる外国人向けのサービスというのは、今までのところ、非常に限界的なものにとどまりました。しかし、一応現在でも、ネットでライブストリーミングでごらんいただけるようにPCベースではなっておりますし、それから、ポッドキャストのようなものでもごらんいただけるようになっております。

 ことし新たに、総務省の御了承を得て取り組んでおりますのは、アジアの上にあります大きな衛星から受信をしてそれを流すということを許していただいておりまして、現在、いろいろなケーブル会社にそれを再送信いただくようなことで調整をしております。もう実現しているところもございますし、大手のところについては今後取り組んで、少なくとも電波ではなくケーブルでは、NHKワールドを外国の方に日本でごらんいただけるような仕組みをことしじゅうには相当展開できると思っております。

 ちなみに、災害時点では、国際放送の音声をテレビの副音声のところで流すということも緊急時対策としてやっております。

 以上でございます。

伊東委員 最近、NHKニュースのローカル化あるいは民放化というような声もあるわけであります。ローカル化というのは以前からあったところでありますけれども、以前よりさらにドメスティック化、国内化しているという声を耳にするわけであります。世界のニュースの中で、中東情勢の話であったり、一大潮流というか、流れが起きているような場面があるわけでありますけれども、なかなかNHKさんがそれを伝え切れていないのではないかという話も出るわけであります。

 ぜひ、震災のニュースもそうでありますが、こうした世界の流れの中でのニュースにしっかり取り組んでいただく。これは編集する側あるいはチェックする側等々、経営者側の内部の問題になってこようかと思うわけでありますので、これについて一つお伺いしたいのと、時間もありませんので、先ほど赤澤先生からちょっと話が出たところでありますけれども、受信料の一〇%還元問題について、私は全く違う観点でお話を聞きたい、こう思うわけであります。

 二〇〇八年に、当時の経営委員会が、NHK改革の一環として受信料の一〇%還元を打ち出されました。この一〇%というのは受信料を値下げするという単純な意味であるのかどうかわかりませんけれども、二〇一二年からその方向性を出すということが言われているわけであります。

 さて、この一〇%還元につきまして、私は、一律に値下げするということも一つの考え方でありましょうけれども、今までお話にありました、地デジ化によって双方向のテレビ機能、あるいは通信との融合などなどもあるわけでありますし、災害対策、ネット対策、さらにはまた今の海外対策等々、利益還元という意味では、もう少し幅広い意味で契約者に対する利益還元ということをお考えになるべきではないのかなという思いもするところであります。ただ単に受信料の一〇%を値下げすればいいという話ではないのではないかという気がいたしております。

 これからグローバル化をさらに進める、そういった観点での利益還元ということをいま一度、これは先ほど、値下げだという話をまだしていないというお話、あるいは内部で検討されているというお話でありますけれども、この点につきましてもう少し、それぞれ現在の経営委員会の中でお考えいただきたい、検討していただきたいというふうに思うものであります。

 ローカル化、民放化、さらにはこの一〇%還元、テーマは三つになりましたけれども、まとめてお答えをいただきたいと思います。

松本参考人 お答えいたします。

 グローバル化につきましては、今もNHKは各国に支局、総局を配置しておりますし、人もそこに置いて取材をしている、こういうこともございます。そういうようなパワーも結集いたしまして、世界の潮流を的確迅速に伝えるということと同時に、今お話がありました視聴者の皆様のニーズにこたえられるような国際報道、こういうものを目指してまいりたいというふうに思います。

 それから、民放化ということの問題でありますけれども、多分、若い人が今すごくテレビから離れている、こういう状況がありまして、これはネットの方に行っているという影響もあるんですけれども、もう一つは、テレビの魅力というものが若者に届いているのかどうか、こういうことがあります。したがって、若い人に対して、参加型というようなことを含めたアプローチ、そういうものをいろいろ企画してつくっております。最近ではEテレの方でいろいろな企画が出ておりまして、これには若い人がついていっています。

 ただ、そこで大事にしなければいけないのは、今お話しのようにNHKは公共放送である、そういうことが支柱にあって、そのブランドといいますか、そういう中でためになる、見てよかった、そういう一つの範囲があると思うんですね。それを守りながらそういうものにアプローチしていくということが、民放化ではなくて、NHKの一つの新しいジャンルを開拓していくということになるのではないかと思います。そういう観点でやってまいりたいと思います。

 それから、先ほどの還元のお話でございますけれども、やはり計画をこういうふうに一番最初、構想した時点からいいますと、いろいろなものがすごく変わってきております。そういう中で、今お話しになった通信と放送の融合の問題、それからグローバル化の問題もありますし、三月十一日の震災の後の公共放送というのは何を一番重点にすべきか、そういうふうなことがあります。したがいまして、そういうことも一つの要素として考えながら、幅広く検討をしていきたいというふうに思いますし、また、経営委員会とも当然連携をきちっととりながらやってまいりたい、こういうふうに思います。

伊東委員 終わります。

皆吉委員長代理 次に、秋葉賢也君。

秋葉委員 自由民主党の秋葉賢也です。

 久しぶりに質疑の時間をいただきまして、ありがとうございます。

 きょうは限られた時間でございますので、私の地元、宮城県仙台市、今回の大震災によりまして大変大きな被害を受けたわけでございますけれども、NHKの仙台放送局も例外ではございません。塔屋のアンテナが倒れたり、もともと昭和三十五年、築五十年の建物でございますから、大変老朽化が著しかったわけでございますけれども、今後、この建てかえのあるべき姿について、きょうは会長あるいは委員長にもお伺いをしたいと思います。

 その前に、松本会長、そして數土委員長には御就任を改めてお祝いを申し上げたいと思いますが、指名委員会の混乱があったことを大変残念に思います。NHKの改革もいわば途上でございますから、お二人の、これまでの民間企業での経営者としての実績を十分に発揮していただきたいと思います。

 特に松本会長は、まさに国鉄時代に分割・民営化問題を手がけたり、さまざまな実績を残されてきたわけでございます。鉄道事業もいわゆる放送事業も、両方とも極めて公共性の高い事業でございます。そういう中で、国民のニーズにしっかりとこたえていくということが大切だと思っております。

 まず仙台放送局の建てかえは、今その方向で検討していただいていると伺っておりますけれども、建てかえの中身でありますとか、実施の時期でありますとか、今正式に建てかえが決定されている状況なのか、まずは冒頭、会長に伺いたいと存じます。

松本参考人 お答えいたします。

 仙台放送局は昭和三十五年の建設でございまして、お話しのとおり、五十年、経年いたしております最も古い放送会館の一つでございます。したがいまして、これの建てかえということで従来から検討を行ってきております。

 特に、この間、私も仙台局を訪問いたしましたけれども、やはり震災の影響を受けまして、上部の機器室のところが少し傷んだりして、今補修をしながら何とか使っている、こういう状況でございます。そういうことで、今具体的に、どういうところにどういう形でということを検討しております。

 協議につきましては、相手先のこともありまして、守秘義務というようなこともございますので、詳しくは、具体的な中身は申し上げられませんけれども、用地取得をした上で建設にかかる。多分、この建設も、移転とかいろいろなことがありますので三年半ぐらいはかかるのではないかな、こういうふうに思っております。条件が整えば早くスタートしたい、こういうふうに考えます。

秋葉委員 今会長から、鋭意、精力的に検討していただいている御答弁がございました。

 その前提となっておりますのは、仙台放送局は現在地がかなり手狭だということもございまして、今、新たな移転先を交渉いただいていると伺っておりますけれども、守秘義務の問題もあり、明確な状況は答えられないということでございましたが、いつごろこの新しい移転地の取得の結果が得られるのでしょうか。会長にお答えをいただきたいと存じます。

松本参考人 現在交渉中でありまして、時期等については、ちょっと今のところ、ここで申し上げられるような確定的な自信はありません。できる限り早く相手との合意に至れれば、こういうふうに思っております。

秋葉委員 時期はなかなかわからないということですが、今、交渉の中での手ごたえはどうですか。

松本参考人 手ごたえはあるのではないかというふうに感じております。

秋葉委員 ありがとうございます。本当に期待をいたしております。

 今交渉が予定されておりますところは、本当に宮城県の中心部、県庁の目の前の敷地でございまして、県民、市民にとっては大変すばらしい、これ以上ない場所だというふうに認識をいたしております。何とかこの交渉がまとまって、早く開設をいただきたいものだと思います。

 阪神大震災のときにも、神戸の放送局が大変な被害を受けました。仙台が五十年たっているのに比べれば、神戸はたしか築二十五年程度でございましたけれども、結局、現在地に建てかえたということもあって、新しい施設ができるのに十年の歳月を要しました。

 先ほどの会長の御答弁ですと、土地さえ決まれば、おおむね三年半をめどに実施できるのではないかという具体的な言及がございました。これまでの放送局のオープンまでのスケジュールを振り返ってみますと、順調に推移して、土地が決定して大体五年ぐらいかかっているわけでございますから、それを三年半を目途に御検討いただいているということでございますので、大変心強い限りでございます。

 問題は、先ほども触れましたように、やはりこの震災ということを一つの大きな背景にしながら、宮城県民、仙台市民にとっても開かれた施設であることが私は大事だと思っております。そういう意味で、放送事業にとどまらない付加価値といいますか、例えば音楽ホールのようなものをぜひ附置していただきたい、設置していただきたい。これは、地元の仙台放送局の局長も同じ考えであります。そして多くの県民もそうしたものを望んでおりますけれども、会長御自身は、こうした放送施設にとどまらない、開かれた施設の創設についてどのような考えをお持ちなのか、お伺いをしたいと存じます。

    〔皆吉委員長代理退席、委員長着席〕

松本参考人 お答えいたします。

 今ホールがございますのは、東京のNHKホールと大阪のホール、二つでございます。これは、やはりホールの稼働率、NHKの使う稼働率ですね、そういうことからこの二つに集約して、いろいろなイベントとか、あるいは視聴者の皆さんのためのイベントをやっております。

 そういう観点からいいますと、仙台は、今のお話にありましたけれども、仙台でいろいろやるイベントとかそういうものが年間あるわけですけれども、稼働率という意味では、それをつくるには少し足りない、少しというか大分足りない、こういうことでありますので、今、ホールについては考えておりません。その分は、いろいろな形で地元でのイベントを考えるとか、どういうふうにしたら地元の皆さんを力づけられるのかとか、そういうようなことをきめ細かく考えながら、ソフトの方でそういうものに努力していけたら、こういうふうに考えております。

 先ほど、建築には三年半ということなんですけれども、その後、移転とかそういうものに半年ぐらいかかる、こういうようなことで、やはり先生のおっしゃるとおり、五、六年かかりそうです。どうも済みません。

秋葉委員 ぜひスピード感を持ってお願いをしたいと思うわけでございますが、今、松本会長からは残念ながら、ホールの附置は考えていないんだ、その理由は稼働率が低い、こういうお話でした。

 しかし、今、現状のNHKの渋谷のホールあるいは大阪ホールの稼働率も、八割、九割いっているのかといったら決してそんなことはないわけです。もちろん、仙台はそれよりも少し下がるかもしれませんけれども、NHKの事業だけではなくて、公共性の高いものに開かれた施設としてのホールということで申し上げておりますので、ぜひ再考していただきたいと思うのです。

 と申しますのも、今回の震災で、宮城県の県民会館ホール、市民会館ホール、あるいは私どもの仙台フィルがメーンステージで使っております青年文化センター、これらがまだ四カ月たっても使えていない、いまだ補修中という状況でございます。

 そして、何よりも問題なのは、杜の都大仙台ではありますけれども、二千名を超えるような施設がないんですね。最高、多いところでも千名台ということでございます。NHKの渋谷のホールは三千六百入ります。それから、大阪のホールも千五百。大阪と東京にだけあるような状態なんですね。やはり東北の中心地仙台市にも、この際、震災復興のシンボルとして、メモリアル的な位置づけも含めて、NHKの事業だけじゃない、宮城県の県民の皆さん、東北の人たちにも使ってもらおう、こんな大きな観点からその導入を検討していただきたいと思いますが、会長、いかがですか。

松本参考人 お答えいたします。

 お気持ちは非常に強く伝わってまいるんですが、受信料でつくられる会館、こういうことでありますので、稼働率とかそういうものがやはり基礎になる。今のような趣旨で仮にやるとすれば、例えば、よその例でありますけれども、NHKの放送会館の近くに自治体がそういうようなホールをつくられて、それを使えるようにするシステムとか、そういうようなことでおやりになっているところもあります。

 NHKの中でそういう形を今回立ち上げるというのは、NHKの費用で、資金でやるのはなかなか難しいということで、それよりは、とにかく早く新しい会館をつくりまして稼働させて、そしてそこを、元気の出る場ということで、情報発信なり集いの場というようなことにしたい、こういうふうに思っております。

秋葉委員 松本会長からは稼働率の問題が、再三また答弁がございましたけれども、大阪ホールもそれほど高いわけではないと私は思うんですね。そして、局内、身内だけ使うという発想じゃなくて、やはり広く地元の方にも、NHK自体が公共性の高い事業体なわけでありますから、一般に使ってもらうということを考えれば稼働率ももっと高いものになってくるわけでございます。神戸の場合にも、ホールの建設はございませんでしたが、いわゆるオープンスタジオというものを、広目のスタジオをつくって、そこを市民、県民の皆さんに使ってもらおうというコンセプトでの整備がございました。

 先ほどの御答弁ですと、イベントを通してというようなことがメーンでの御答弁でしたけれども、やはりこれからの時代は、そうしたことを定期的にしっかりと発信できるスペースの確保ということが大変重要だと思っておりますので、ぜひ会長におかれましては、これから、土地の取得が決まれば中身をどうするのかということで進んでまいります。いわゆる県民に開かれた、従来にない発想でのそうした音楽ホール等、あるいは文化施設の設置というものを十分御検討いただきたいと思います。

 最後に、數土経営委員長にも、こうした私どもの考え方、仙台放送局の新しいあるべき姿について御見識を伺って、私の質問を終えたいと思います。

數土参考人 お答えいたします。

 先ほど来審議されておりますように、経営委員会は、執行部たるところからいろいろな案件を上げられまして、それに対して、国民・視聴者にとって何がいいかというプライオリティーをつけていくということに尽きると思います。

 ただし、申し上げたいことがございます。今回の東日本大震災に関しましては、経営委員全体が非常に大きな衝撃を受けております。また、被災されました東北三県に対して特別な思いを持っているということをつけ加えさせていただきまして、お答えとさせていただきます。

 以上でございます。

秋葉委員 残念ながら時間が参りました。

 計画ができれば、経営委員会の承認事項ともなっておりますので、ぜひ前向きに、これだけの世界的な未曾有の震災を背景にしているということをぜひ熟慮いただいて、御検討いただきたいと思います。

 前任の福地会長は、現地、現場というものを大変大事にする会長さんでございました。松本会長にも早速、仙台放送局をごらんいただいて感謝を申し上げますが、ぜひ移転地をごらんいただければ、なるほど、ここに会館があれば、秋葉が言っていたとおりすばらしいものになるだろうな、こう思っていただけると思いますので、新しい音楽ホールの設置も期待をいたしまして、私の質問を終えさせていただきます。

 お二人のこれからの活躍を期待しておりますので、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

原口委員長 次に、谷公一君。

谷委員 自由民主党の谷公一でございます。

 今、同僚の秋葉議員が大変熱のこもった要望をいたしました。音楽ホール云々ということは私は申しませんけれども、神戸でも、今お話ありましたように十年かかりました。神戸なり兵庫県では待ちに待ちました。たしか復興十周年の記念事業の一環として、多額のお金を費やして現地で立派な、そして復興のシンボルとなる建物を建てていただきました。ですから今度も、音楽ホール云々は私は言いませんけれども、何か復興のシンボル的なもの、そういう位置づけで、知恵を絞って立派なものを建てていただくよう私からもお願いを申し上げます。

 きょうは限られた時間でございますので、まず一〇%還元策について、同僚の議員も何人かお尋ねしたかと思いますけれども、経営委員長に一つだけお尋ねします。

 最近の新聞で報じられる発言を見てちょっと気になりましたのは、一〇%はどうなるかわからない、選択の幅はゼロから一〇〇%まであるというような発言もございました。しかし、これは御存じのように、中期の経営計画を経営委員会が修正したわけですね、修正してこういうふうに決まった。そして、この総務委員会で二年前、当時の福地前会長が、一〇%還元は受信料一〇%の値下げだと私どもは理解していると公の場で言われました。そういう発言はやはり重たいです。そういう発言を踏まえてしっかりとこれから判断していくかどうかということを確認させていただきたいと思います。

數土参考人 御指摘のとおり、二年前に、このような場で経営委員会委員長、それからNHK会長が、一〇%還元というものを実践していくと約束をしておられます。

 私は、これは非常に重いと思っております。経営委員会の委員長、経営委員それから会長がかわったとしても、これは非常に継続性ある、国民に対する約束事だ。これは、NHKの中でも経営委員会、執行部が常々やっており、しかしながら、これは三年前からそういうものを前提にして、先ほども申し上げましたように、六百六十億円あるいは六百七十億円に相当する原資の確保あるいは原資の創出について、この三年間、真摯な議論、そういうものが議事録に残っている。これは十分じゃないと、私は今、非常に強い危惧を感じております。

 一方、このたび東日本大震災……(谷委員「できれば簡潔にお願いします」と呼ぶ)ええ、簡潔に。それから経済の変動、先ほども申し上げましたように、過去に五十一年、五十五年、五十九年と三度値上げをせざるを得なかった。

 経営委員会としては、NHKの健全なる継続性を確保することが第一番だと思っております。そういうことを勘案して、実際に、これから十月いっぱいぐらいかかるだろうと思いますけれども、非常に真剣な審議をしていきたいと思います。その結果、今から予断を持つことは許されないものですけれども、やはり可能性としては〇%から一〇〇%あるのではないか。しかし、思いは最初の二つです。一番最初が重いです、そう思っております。

 以上、お答えいたしました。

谷委員 やはり国民に対して言われたことというのは、委員長が言われましたように、トップがかわったからといって安易に変えるということは大変混乱を招きますし、不信にもつながることでありますから、ぜひ、その辺はしっかり重く受けとめていただきたいと思います。

 次に、災害の受信料減免についてお尋ねします。

 今回の三月十一日の大震災で、NHKの受信料は現在、被災者あるいは原発避難者について減免をされています。十六年前の神戸のときはたしか二月だったと思いますが、徐々に延ばして、最終的に六カ月で切りました。今回は、三月から八月まで六カ月ということで決められております。

 しかし、要はこのままでいいのかなと。八月末で、仮設住宅に入っている人も、公営住宅にいる方も、あるいは民間賃貸に移られている方も、もう免除期間は終わりましたから九月以降払ってくださいということは、復興、特に生活関係の復興の状況から見てどうかなと私は思います。阪神・淡路に比べて生活の復興がおくれているということはよく言われますし、私もそう思います。お盆までに仮設住宅に希望者全員入居ということは絶望的です。入居率が悪いということも言われておりますし、瓦れきはまだまだたくさんある。

 どうでしょう。六カ月、八月まで免除という期間は、生活復興の状況から見るならば、もう少し延期する、延ばすということは考えられないでしょうか、お尋ねします。

松本参考人 お答えいたします。

 阪神・淡路のときは六カ月ということであったのですけれども、そのときの対応ということで今回も六カ月、こういうことでスタートしているわけであります。

 現時点でいろいろな状況がある、こういうふうにも思います。その期間の取り扱いにつきましては、今後の復興状況あるいは公共料金なんかの動向、ガスとか電気とかですね、それから免除に該当しない方とのバランスなんかもあります。そういうこととか、これまでの災害免除期間との比較など幾つかの要素がありますので、それらを考慮しつつ、いろいろな状況が動いてまいりますので、そういうものを判断しつつ今後検討してまいりたい、こういうふうに思っております。

 それから、居住している地域が原発事故などで警戒区域などに設定を受けている場合については、設定が解消されるまでの間、免除を延長する、こういうふうに考えてございます。

谷委員 いろいろな状況を加味して決める、それは当然だと思いますけれども、今も会長が言われましたように、復興そのものがおくれている、また阪神・淡路と比べて被害の程度が極めて大きい。現に、十六年前の統一地方選挙、あのときも統一地方選挙がありましたけれども、延ばしたのは二月ですよ、四月を六月に延ばした。今回は九月二十二日まで延ばして、なおかつ、まだ最終結論が出ているかどうかわかりませんけれども、一部の自治体はもっと延期しなければならない。

 憲法上に定められた選挙もできない、そういう状況であるということ、義援金もまだ配付が極めて低いという状況、それこれから考えると、やはりもう少し前向きに検討する必要があるのではないかと思います。再度、会長の御答弁を求めます。

松本参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたように、幾つかの条件、状況を配慮しつつ判断していく、こういうことになるというふうに思います。また一方で、免除世帯の増あるいは延長というのは当然減収になるわけですから、その辺は、NHK自体の経営の状況もありますし、そういうことの影響があるという前提の中でいろいろ考えてまいりたい、こういうふうに考えております。

谷委員 片山大臣にお尋ねします。

 基本的にはNHKが、みずからの経営あるいはさまざまな状況、公共料金の例を挙げましたが、それが適当かどうかわかりませんけれども、大事なことは、これは広い意味では被災者支援ですから、支援をいつまですることが適当か。

 今の考え方は阪神・淡路と全く同じということです、六カ月ですから。そのことについて、片山大臣も国の災害対策本部の副本部長でございますし、そういう立場からもこの問題をしっかり注目していただきたいんです。関与というよりも目配りしていただいて、適切な方向が出るようなアドバイスを期待したいんですけれども、コメントをお願いします。

片山国務大臣 基本的には、先ほど来、松本会長の方から御答弁がありますように、NHKの方で検討されて結論を出される、判断されるということでありますが、私も政府の一員として、災害対策、復旧復興に当たっているものといたしましては、ぜひ、被災地の現状を見ていただいて御判断いただきたいと思います。それから、先ほど来、谷議員からもお話がありますように、従来の災害とは違う面がかなりありますので、特殊性、甚大性がありますので、そういうものもよく勘案して御判断をいただきたい。

 その上で、しかるべき判断をされた後に総務省の方に手続が来ますれば、迅速にそれを処理したいと考えております。

谷委員 ぜひ前向きな、六カ月ではなくてもう少し見ていただいた方が、私は、NHKという立場からもしっかり被災者にも目配りしている、NHKも経営ですから、経営のことも考えなければなりませんけれども、でき得る限り目いっぱいの、最大限のそういう手当てはしているという姿勢を示していただきたいと思います。

 さて、次の質問に移ります。

 三月十一日、大変な災害で、一千年に一度とも言われておりますけれども、しかし、東海、東南海、南海の同時の巨大災害、三連発とも言われておりますけれども、そういう対応のことにNHKはどう取り組んでいるのかなというのが大変気になるところであります。

 東北地方の今回の災害は、確かに範囲は広く、地震、津波そして原発等々さまざまな複合的なあれがありましたけれども、しかし、東海、東南海、南海となると、いわゆる太平洋ベルト地帯、四国も含めて、もう壊滅的な大変な被害、今回の災害の比ではないと思います。そのときに、公共放送機関として、NHKがどういう対応を今からされているのかお尋ねしたいと思います。いろいろな施設の代替機能をどうするかとか、本部と各放送局の役割分担をどうするか、応援体制をどうするのか、さまざまあるかと思いますけれども、できれば具体的に、こういうようなことに検討着手しているということであれば、そういう状況を教えていただきたいと思います。

金田参考人 御指摘のように、今後の大震災ということを想定しますと、今回の対応では不十分なところがあるという反省を我々もしております。

 幾つか取り組んでおりますが、まず、御指摘の放送機能の維持強化ということについては、具体的に各圏域の状況なども踏まえまして、低地にあるところの対策その他、具体的な放送維持のための強化策を現在検討しているところでございます。

 それ以外に、訓練関係では、昨年の九月一日の防災の日に、三つの大地震が同時に発生したという前提で、取材方法の検討とか訓練を継続して行っております。これも、今回のことを踏まえまして再度、もう少し実態に合わせた訓練の仕方ということも考えていかなければいけないと考えております。

 それから応援体制でございますが、今回は東京への影響が軽微であったということもございまして、関連会社、OBを含めまして全国から六百名以上の応援体制で、岩手、宮城、福島に派遣をしました。そういうことでいいますと、その次の、来るべきということを想定したときに、それが本当に可能かどうかということについての検討もあわせてしなければいけないと考えております。

 それから今回、テレビ、ラジオ、ワンセグ、インターネット、あらゆる伝送を動員して、最大限我々にできることをやったわけですが、まだまだNHKとして及ばないところがあったという認識も持っています。そういう意味での検証と提言というのを協会員全員に求めた上で、サービスのあり方について改善を図っていきたいというふうに考えております。それ以上にどのような貢献ができるかというのは今後検討に当たるわけですが、何らかの新たな提案ができたらいいなということも考えております。

 全体に、この三つの地震の同時発生というのは、国の対策の検討状況も踏まえながら、それに応じてNHKとしての体制を整備していきたい、そのように考えております。

谷委員 ぜひその辺、やはりふだんから最悪に備え、最善を尽くすということは危機管理の鉄則としてよく言われることでありますけれども、公共放送機関であるNHKが率先して、嫌がられても最悪の場合を想定しながら、そういった準備を着実に、静かにしていただくことを要望したいと思います。

 次の坂本先生が早く終われと待っておりますので、時間がややずれているということですので、これで終えさせていただきます。ありがとうございました。

原口委員長 次に、坂本哲志君。

坂本委員 自由民主党の坂本哲志でございます。

 震災関連につきまして、報道につきまして、二点お伺いをいたしたいと思います。

 今回の東日本大震災の報道につきましては、私は、NHKの信頼性というのは国民に非常に高まったというふうに思います。その迅速性あるいは正確性、そして番組そのものの充実性、さらにはさまざまな形での啓発性といいますか、いろいろな形でNHKの役割を十分果たしていたというふうに私は思います。

 それを評価した上で、あえて二点、初期の報道について私なりの考えを指摘させていただいて、それに対する御見解をお伺いいたしたいと思います。

 まず、津波の初期報道でございます。

 地震が起きまして、津波が来るまで十五分から三十分ございました。津波警報が出るのは、マニュアルどおりでございます。そして、その後、さまざまな形での報道がありましたけれども、やはりこれだけの大地震であります、大津波が来ることが十分考えられました。しかし、実際の報道を見てみますと、聞いていますと、落ちついて行動してください、あるいはこれからの情報に十分御注意ください、こういうマニュアルどおりの報道が多かったように思います。

 時間が数十分あるわけでありますので、少なくとも、すぐ逃げてほしい、すべてを捨てて高台の方に駆け上がってほしい、あるいはすべてを捨てて高台の方に行ってほしい、そういう警告的な報道はできなかったのか。もしそれができているということであるならばかなり多くの人の命が救えたのではないかというふうに、結果論かもしれませんけれども、私は思います。

 こういう未曾有の大震災のときのさまざまなケーススタディーが行われていたのかどうかということを、まず一点お伺いいたしたいと思います。

 二点目は、原発に関する報道であります。

 私は、これは多少、初期の時点で、過小評価であったのではなかろうかというふうに思います。あの報道を見ておりますと、やはり解説が中心でありました。図説入りで、格納容器はまだ大丈夫である、あるいは圧力容器は大丈夫である、そして冷却水、冷やしていけば何とかおさまる、そういう報道が多かったわけでありますが、実際はもう既にそのときにメルトダウンをしていた、あるいは汚染水が漏れることが十分考えられていた。

 それは、原子力あるいは東電、こういったものの情報の隠ぺい体質なのか、それともそれをかいくぐってでも取材することができなかった取材力不足なのか、あるいはこれまでかつてなかったようなことに対する報道姿勢というものが確立していなかったのか、そのどちらかであると思いますけれども、私たちは、この問題について、多くの国民がチェルノブイリほど大した問題ではないんだというような固定観念を持ってしまったと思います。

 しかし、結果的には、それから汚染水の漏えいあるいは放射性物質の飛散、そして最終的には日本のエネルギー政策を今後どうするかというような、本当に大きな問題を抱える端緒であったわけですので、私は、報道の仕方あるいは瞬時の報道の判断力、こういったものがもう一度検証されてしかるべきであろうというふうに思います。

 ドキュメントなどを見ましてあの水素爆発の大きさが改めてわかりましたけれども、ドキュメントというのは、後からいろいろなことを取材して脚色するわけでありますので、どういうことでもできますけれども、大事なのは、まずニュースであります。まずそのときの判断であります。そのときの事の大事さ、大切さをいかに判断して、それをどう警告するか、どう事実として伝えるか、これが最も大切であると思います。

 その辺のところの初期の報道について、今、NHKとしてのどういう検証が行われ、これからどういう方向性あるいはどういう対応策がとられようとしているのか、お伺いをいたします。

金田参考人 津波につきまして、午後二時五十分に気象庁が大津波警報を出したのを受けまして、警報が出た地域と予想される津波の高さや到達時刻、それに避難の呼びかけを繰り返し放送いたしました。避難の呼びかけに当たりましては、早く高台に避難すること、津波は地形によっては発表された高さの数倍になることなどを繰り返し、継続してお伝えしました。

 しかし、結果として、御指摘のように今回の津波で多くの犠牲者が出たことから、御指摘にあったような避難が確実に行われるように、より効果的な放送ができないかということを総合的な観点から見直しをしているところでございます。その中で、画面表示のあり方、アナウンサーの伝え方などの検討を進めておりまして、できるものから実施していきたいと考えております。

 具体的に申しますと、まず避難の呼びかけ内容でございますが、四月に一部内容を見直し、できるだけ高いところに逃げること、決して立ちどまったりしないことなど、視聴者に避難をより強く訴える表現に変えております。また、テレビ画面に表示される津波警報の地図スーパーでございますが、これも今月改善しまして、本日十四日から、大津波警報の地区がよりはっきりごらんいただけるように改善しております。

 もう一つ、福島第一原発の事故につきましては、炉心の状態や汚染水について、いずれも重要な問題であることから、NHKとしては、専門家の意見や知見を含めて、可能な限り迅速正確にお伝えするように努めてまいりました。

 ただ、事故の深刻さについてより正確に伝える手だてはなかったかどうか、今回の経験を踏まえて、さらに検証していきたいということでございます。

 申し上げましたが、NHKができたことも大きいわけですが、まだまだだというところもそのとおり認識しておりまして、今後、検証し、また提言することも努力していきたいと考えております。

坂本委員 これからさらに、首都直下型地震あるいは東南海、あるいは原発につきましても五十四基あるわけでありますので、それぞれのいろいろなケースが考えられると思います。報道のあり方、事実だけを報道していいのかどうか、そして警告のあり方、こういったものの研さん、研究をぜひ積み重ねていただきたいと要望いたします。

 続きまして、先ほどから何回か出てまいりました、NHKのネットへの配信、通信への参入の問題であります。

 今回の震災の報道を見ましても、NHKに接する方々というのは非常に多くて、直後で三二%、そしてその後七七%という大変な数字が出ております。と同時に、やはりネットで、いわゆるポータルサイトでその後の地震の情報、津波の情報、あるいは被害の情報、安否情報、こういったものを検索するというようなケースが非常にふえております。ということは、やはりNHKが持っている取材力あるいはさまざまな映像力、こういったものを含めて、ネットへの配信はどうしても必要である、テレビ離れを防ぐことにもつながるというふうに私は思っております。

 NHK受信料制度等専門調査会では、つい先日、この通信への参入の問題が報告をされました。しかし、先ほど言われますように、これには受信料の問題があります。法改正の問題があります。先行している民放との関連の問題があります。そして著作権の問題、日本音楽著作権協会、いわゆるJASRACの問題があります。それぞれの問題があります。

 きょうはJASRACの方からはおいでいただけませんでしたけれども、大臣から、そしてNHKから、そして民放連から来ていらっしゃいますので、このハードルについて、これからどうするべきなのか、御意見をお聞かせいただきたいと思います。

松本参考人 まずNHKの方からお答えさせていただきます。

 今回の東日本大震災のように、こういう緊急時の機能というのは大変よくわかったわけですが、それにとどまらず、フルデジタル時代にインターネットでNHKのテレビ放送を同時に提供するということは、大きな時代の流れのようになっているのではないか、こういうふうに思っております。

 ただ、そうした業務を行いますには、放送法の改正が要りますし、また、お話にありました受信料制度との関係はよく整理する必要がございます。

 NHK会長の諮問機関でありますNHK受信料制度等専門調査会から、おととい、十二日に報告書を答申していただいております。その中で、NHKの放送が通信でも同時に視聴者あるいは国民の皆様に届くことが必要なのではないか、今後、財源負担のあり方も考えながら、ネット受信の方にどのように負担していただくか、こういうような財源のあり方も考えながら取り組むべきという提言をいただいております。

 今後の具体的な方針ですけれども、次の経営計画策定とあわせて執行部で検討してまいりたいと思いますし、また関係者の皆さんの御理解も得ながら進めたい、こういうふうに考えております。

福田参考人 民間放送連盟の福田でございます。

 お答えいたします。

 メディア環境の変化とか、あるいは多様化する端末といったようなことから、NHKさんがインターネットとどう向き合うかということを検討されることを否定しているものではありませんけれども、そこに受信料を充てるということについては違和感を覚えております。

 インターネットへの同時配信問題と受信料問題の関係は、NHKが公共放送として担うべき業務の範囲などが十分吟味された上で議論されるべきというふうに考えております。法改正をしてまで行うべきかどうか、これは十分な議論が必要だと思いますし、まず結論ありきで、急いでもらっては困るなという感じがしております。

 さらに、先日、NHKの経営委員長が新聞のインタビューにおきまして、私見としながらも、NHKが直接運営するのではなく、中間の会社が運営をして広告収入を得て、そこから一定収入をNHKが得るということもあるのではないかという見解を示されております。

 これは、ある意味では、受信料制度で成り立ちますNHK運営そのものに疑義を生じさせる一方で、二元体制を危うくするものというふうに考えております。そういう意味では、民間放送事業者としては相当遺憾に思っていることをお伝えしておきたいと思います。

 以上であります。

片山国務大臣 今のようないろいろな課題がある中で、これからNHKが検討されると思います。次期経営計画の中でそういう検討を行われて、一定の判断をされると思います。それを見ながら、総務省としては判断をしていきたいと思います。

坂本委員 次に移ります。

 最後の質問ですけれども、さきに会計検査院が調べまして、NHKの子会社、関連会社、二〇〇五年までに関連三十三団体の利益剰余金が八百八十六億円に上っているというふうに言われました。これは、ただ単にいろいろな形で発注をする随契になっている、そして支払いのチェックが不十分という高コスト体質になっている、結果として受信料が無駄に使われているのではないかというようなことを意味するものでありますけれども、この関連会社の高コスト体質に対して今後どう取り組んでいかれるか、そのことの答弁をお願いいたしまして、最後の質問にさせていただきます。

吉国参考人 お答えいたします。

 関連会社とNHKの取引につきましては、これまでも、できるだけ透明性を高めていく、それからNHKの発注の中でできるだけ競争入札をふやしていくということで、番組以外の取引については四〇%競争を課するということで、これはほぼその数字に近づいております。

 それから、NHKとの取引につきましては、できるだけ利益率が余り上がらないようにということで、経営計画の中で営業利益率を三%以下に抑えるということで取り組みをしておりまして、そういうことを続けまして、できるだけ効率的に運営されるようにこれからも努めていきたいと思っております。

坂本委員 質問を終わります。ありがとうございました。

原口委員長 次に、西博義君。

西委員 公明党の西博義でございます。

 平成十九年度、二十年度のNHK決算について質問をさせていただきます。

 初めに、予算総則の適用状況の中にNHK予算の流用についてという項目がございますが、このことについて質問させていただきます。

 NHK予算総則では、執行上やむを得ない場合に限り、予算の流用が認められている、こういうふうに理解をしております。

 資料を拝見しますと、平成十九年、二十年度のNHK決算の説明資料に、予算の流用に関する報告がございます。例えば、平成十九年度では、調査研究費や財務費など四項目の増額に対して、国内放送費を減額してこれに充てたというふうになっております。平成二十年度は、退職手当・厚生費や財務費などの三項目の増額に対して、給与や減価償却費を減額してこれに充てております。

 この調査研究というのはどんな内容なのかということをお聞きしたい。また、増額した理由についても説明をいただきたい。さらに、平成十九年、二十年度の財務費の増額についても、どういうことになっているのか説明をいただきたいと思います。

石田参考人 お答えします。

 予算の流用は、予算総則第四条により、「執行上やむを得ない場合に限り、経営委員会の議決を経て、」行っているというものです。

 今お尋ねがあった調査研究費は、新しい放送技術の研究開発や視聴率調査など、放送及びその受信の進歩発展に必要な調査研究に要する経費を計上しているものです。

 平成十九年度は、二〇一一年の、ことしですけれども、テレビ放送の完全デジタル化を着実に進めるために、中継局の置局調査を前倒しで実施したことや、共同受信施設のデジタル化改修工事のための受信状況調査などを行ったことにより支出が増加したため、予算の流用を行いました。もともとは机上でやろうとしていたのが、やはり実地の調査をしなければいけないという判断に至って、費用が余計にかかったということです。

 それから、財務費の方ですが、これは、納付消費税や支払い利息などの金融費用を計上しています。平成十九年度、二十年度とも、受信料収入の増により納付消費税が増加したため、予算の流用を行ったものです。いずれも、予算執行上やむを得ない措置だったと考えております。

西委員 その点については理解をいたしました。

 拝見いたしますと、結構多額な額の移動になっておりますので、できるだけ実情と合わせるような予算編成をお願いしたい、そういうふうに申し上げておきます。

 次に、NHK事業の適切さについて、例を挙げて質問したいと思います。

 平成二十年にパラリンピックが開催されました。このことに関して、視聴者からは、パラリンピックの扱いが大変少なかったという声が何度か聞かれておりました。

 平成二十年度の業務報告書には、「オリンピック・北京大会については、」「衛星第一放送で全二十八競技にわたって三百五十二時間四十分放送したのをはじめ、」「ラジオ第一放送で実施した。」、こういうふうに書かれておりますが、総合放送での放送時間、それからニュース番組で取り上げた放送時間をそれぞれお示しいただきたいということと、一方、パラリンピック北京大会の放送についてはどのような状況であったのかお示しいただきたい。総合放送ではどれぐらい放送したのか、なぜそのような放送時間となったのかということをお示しいただきたいと思います。パラリンピックの今回の放送のあり方についてどう考えているのかということについて、あわせて見解をお願いしたいと思います。できれば会長にお願いいたします。

松本参考人 お答えいたします。

 オリンピックの北京大会は、総合テレビで二百十七時間四十五分、教育テレビでは七時間三十分、これはニュース番組の中のオリンピック報道を含んでおります。

 パラリンピックの方でありますが、この北京大会の放送では、総合テレビは十七時間三十六分、教育テレビは二十四時間二十四分、BSは五十分ということで、これらを合わせた放送時間は、前回のアテネ・オリンピックから比べますと三時間余りふえております。

 そのほかに、この北京大会、パラリンピックからデータ放送を始めております。それから、バンクーバーの冬季パラリンピックからは総合テレビで字幕放送も加えるということで、そういうプロセスを踏んできております。

 NHKの考え方でございますけれども、障害がある方々が持てる力を発揮されて極限に挑まれる、こういう姿をお伝えしたいということと同時に、障害者のスポーツへの理解促進を図るという観点から、このパラリンピックの放送は公共放送の重要な使命、こういうふうに位置づけております。

 そういうこともありまして、先ほどの機能を付加するとか、時間についてもオリンピックごとにふえてきている、こういうトレンドでございます。多様で多彩なニーズというのがありますので、それらを踏まえながら、引き続き努力してまいりたいというふうに思います。

西委員 このパラリンピックにも大勢の選手が参加をして、しかも大変好成績で、日本のファンの関心も大変大きかっただけに、今後ともさらなる努力をお願いしたいと思います。

 次に、経営への信頼性向上の取り組みについて質問をいたします。

 平成二十一年四月、視聴者視点によるNHK評価委員会が発足して、毎年、NHKの事業については、外部専門家によって、視聴者の意向を運営に反映されるべく評価が行われております。この評価委員会の平成二十一年度報告書では、経営の信頼性への評価は低い結果となっております。その中で、「効率的・効果的な業務運営」については、五段階評価で二・一という大変厳しい評価となっております。

 そこで、さらなる効率的、効果的な業務運営を図るため、行政で行われるような事業評価制度の導入を私は提案させていただきたいと思います。

 事業評価の大きな特徴は、事業の性質によっては単純に成果指標として必ずしも数値化しにくいものもございますけれども、原則として、事業の目的達成度を成果指標によって数値的に客観的に把握することにあるというのが特徴だと伺っております。事業評価では、その結果を翌年以降、経営や財政改革、予算編成などの事業運営に生かしていく、こういうことが考えられます。職員にとっても自分たちの仕事の意義を考える契機となりますし、意識改革をさらに進めていく効果があるものだというふうに考えております。

 この事業評価制度を導入することについての委員長のお考えをお伺いしたいと思います。

數土参考人 ただいまの御質問にお答えいたします。

 ただいま提言されました案につきましては、経営委員会、執行部ともに検討してまいりたいと思っております。

 しかしながら、今御指摘のように、今、国民・視聴者からは非常に効率的なNHKの運営、経営を厳しく求められております。こういうものに時系列的な経営指標を持ちながら、時系列的に判断していくということが私は非常に重要じゃなかろうかと思っております。

 NHKは財務諸表三表をつくることが求められておりまして、これは民間の企業と非常に、限りなく近くなってきております。民間の企業が事業区分、NHKであれば例えばチャンネル区分あるいは地域区分、それぞれの事業区分、マトリックスごとにコストを時系列的に並べて、去年よりはことし、ことしよりは来年、そういう努力をすることがやはり非常に有効ではなかろうか、そういうふうに考えているわけです。

 そういうことを前提にしますと、原価管理会計だとか原価会計というものが今我々のやはり非常に取り組むべきところじゃなかろうかな、こう考えておりますけれども、先生の案とあわせて、さらに合理化に努めていきたい、こう思っております。

 ありがとうございます。

西委員 経営の第一線で活躍されてこられた委員長のさまざまな経営手法をNHKに適用していくということについては、私も全く賛成でございます。さまざまな考え方をまた委員会の方で十分御議論いただいて、NHKの経営の向上のために御努力いただきますようにお願いいたします。

 NHKの財務情報の作成それから公開の取り組みについて質問いたします。

 平成十九年の放送法改正によって、資本等変動計算書、キャッシュ・フロー計算書の作成が義務づけられました。そのことによって財務情報の整備がかなり進んだというふうに思います。連結決算諸表も公表されておりますが、補完資料がこの時点ではまだ十分ございません。

 例えば、NHK本体について、主たる設備の状況という資料に、所有する土地、建物、機械及び装置、その他の固定資産に関する詳細な情報が提供されておりますが、この年度は、子会社については同様の情報がございません。

 それから、平成十九年度連結決算報告書の主要な設備の状況という資料には、一部であるが、資産に関する情報が提供されておりました。しかし、平成二十年度はその情報がなくなっておりまして、子会社を含む資産状況がわからなくなっております。

 たまたま二十一年度の情報が先ほどの坂本先生の資料で若干出てまいりまして、かなり詳しい情報が出ておりますが、連結決算諸表に関する詳細な情報を提供することを今後ぜひとも積極的に取り組んでいただきたい。

 財務情報の充実について、お考えをお願いいたします。

石田参考人 お答えします。

 NHKの連結決算は、NHKのグループ経営の透明性向上、それから視聴者に対する一層の説明責任を果たすことを目的に行っているものです。

 平成二十年度連結決算報告書の内容については、放送法の改正によって、NHK単体の財務諸表が会社法に準じた内容になったため、監査法人と相談の上、連結決算についても会社法に準拠した財務諸表の様式にこの年に見直しを行いました。

 実は、そうした見直しに伴って一部の掲載する資料が変更になってしまったという経緯があるのですが、今、その御指摘も含めまして、今後も、視聴者に対する一層の説明責任を果たしていくために積極的に財務情報の充実に努めていきたいと考えております。

西委員 ぜひとも、視聴者の皆さん、国民のために説明責任を果たしていただくようにお願いしたいと思います。

 もう時間が少なくなってきましたが、次に、NHKが所有する不動産に関して質問をさせていただきます。

 会計検査院の平成十三年度決算検査報告では、NHKの非現用不動産の管理、処分状況についての報告がありました。

 非現用不動産とは、老朽化や移転等により使用されなくなった転勤者用住宅及び放送所等の跡地のことをいうそうですが、この非現用不動産の現状について報告をいただきたいと思います。

 また、放送事業に使われていませんが、例えば職員寮として使われている土地建物、それから貸し付けている土地建物、そして非現用不動産に含まれない未利用の土地建物があるのかなど、これらの不動産の利用状況について報告をいただきたいと思います。さらに、売却可能の資産があるのかについてもお伺いをいたします。

 ところで、非現用不動産、皆さんも初めてこんな言葉、どんな漢字を書くのかなと思うと思うんですが、一般の視聴者には大変わかりにくいと思います。前から使っているからずっと使っているんだろうと思うんですが、もう少しわかりやすい表記にした方がいいんじゃないかと、細かいことですが、申し上げておきたいと思います。

 では、お答えをお願いします。

石田参考人 お答えします。

 非現用不動産の現状についてですが、二十三年三月末時点で、会館跡地など百四十件ございます。このうち、横浜と鹿児島の放送会館の跡地については入札売却の手続を進めているところです。

 それから、非現用不動産のうち、自治体などに貸与している土地建物は二十三件ございます。それから、転勤者用の住宅については、現在、全国に九十二カ所保有しております。

 非現用不動産については、まず転用とか活用の可能性を検討し、それが困難、不可能なものについては各年度で計画的に処分を行っています。今後についても、各年度の収支の状況や不動産の市況を勘案しながら計画的に処分していく方針です。ちなみに、平成二十二年度については十四件を売却しております。

 それから、今、非現用不動産という言葉がわかりづらいという御指摘がありました。公表資料の記載のときに注記を入れるなどして、わかりやすい説明に努めていきたいと考えております。

西委員 最後に、あらかじめお知らせしておりました受信料収入の還元についての質問でございます。

 これも先ほどからさまざまな議論がありまして、経営委員長並びに会長からこれまた何回かお答えがございました。私は、今までのいきさつを考えると、やはり一〇%還元というのは、明らかに視聴者にとってそのまま還元されるというところから出発しているというのは、経営委員長のおっしゃるとおりだというふうに思います。しかし、現状、さまざまな需要におこたえし、新しいNHKを確立していくために必要な部分もあるということは、これまた事実かもしれません。

 まだ私たちにわからないさまざまな財務の状況の変化もあるのかもしれませんが、まずベースとしてやはり、ゼロか一かという話がありましたけれども、私は、一から出発をしていくという方向で物事を考えていただきたい。一からいって、無理があるためにどこまでおろしていくのかということをまずぜひともお考えいただきたい。

 同時に、この議論というものをぜひとも国民の皆様に明らかにしていただきたい。この説明責任をきちっと果たすことによって、この一〇%還元というものを国民にわかりやすい形で決着していただきたい、こういうふうに思うわけでございます。

 本来はお二人にというつもりでしたが、時間がもうなくなってまいりましたので、まとめて会長の方からお願いをしたいと思います。

松本参考人 一〇%還元問題は、次の経営計画の中で検討していくべき課題だというふうに、これまでの経緯からもそう思っておりますし、そのような形で検討したいと思います。

 先ほど申し上げましたように、今、財源そのものをどういうふうにつくり出すのかという作業をやっておりまして、なかなか困難な状況はありますが、とにかく頑張ろう、こういうことでしております。その上で、お話のあったところを、いろいろな状況の変化をどういうふうに加味して、どういう形の還元ができるかというのを検討してまいりたいと思います。

西委員 ありがとうございました。終わります。

原口委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 公明党の稲津久でございます。

 通告に従いまして、質問させていただきます。

 私は、三月十一日に発災しました東日本大震災、この震災にNHKがどうかかわってきたのか、それから、今後の復旧復興に向けてどのように貢献していくのかということをきょうは質問させていただきたいというふうに思っております。

 まず最初に、震災に際して、国民の皆さんがどのようなメディアと接触をしたのかということについてなんですけれども、これも先ほど一部質疑の中にありましたが、少し例を挙げて、私の方からも紹介させていただきたいと思います。

 例えば、大手の広告代理店の調査によりますと、震災直後のメディアへの接触は、NHKのテレビが三二%、それから地上波の民放が二二%、さらにポータルサイトが一一%、ワンセグ八%、このように続いています。発災後に接触頻度が増加したメディアはどこですか、こういうアンケートに対しても、NHKのテレビが七七%と、民放の四八%に比べますと随分数字が高い。

 NHK自身もこうしたことについて調査をされていまして、信頼度の変化について、上がった、これがNHKの総合で三二%、ポータルサイト一六%ということで、NHKのこの震災に関しての報道等については、接触率それから信頼度も明らかにアップしている、このように言えると思います。

 まさにNHKへの評価の高まりが見てとれるというふうにも思うんですけれども、率直に、この調査等についての受けとめ方を会長にお伺いさせていただきたいと思います。

松本参考人 お答えいたします。

 震災直後、全放送を震災態勢に切りかえました。二分後であります。それからずっと震災放送を流しました。流すときに、内部の人とは、我々の経験したことのない、あるいは被災地の方も経験したことのない状況になる、したがって、正確、迅速、沈着冷静、そしてできれば勇気づけられる放送というものをやろうということで取りかかりました。

 また、途中からは、二十四時間その放送が入るものですから、やはりお子様なんかも、もう少し違う放送、お子様用の明るいものもないのかというようなこともありました。そういうものを何日か後からは加えながら、それこそ勇気づけられるというような観点も含めて、一生懸命やりました。

 そういう観点で、いろいろな方がいろいろな形で見ていただきまして、ほとんどの日本の皆様が見ていただいたのではないか、こういう感じを持っておりまして、早くそういう報道姿勢で取り組んだということについて、大変頼りにされたという認識を持っております。

 それから、同時に海外のメディアの皆様からも、私のところに大変多くの電報やら手紙やら、場合によっては義援金まで、そういう形でやっていただきまして、NHKの報道力、そして、世界に流したものですから、そういう世界のメディアに対する姿勢というものも評価していただきました。

 これから息が長くなりますので、そういう姿勢を保ちながらやってまいりますが、特に今一番思いますのは、こういう大災害のときに瞬時なりともNHKの機能がとまったらどうなったのだろう、こういうふうに思うと、やはりその機能をきちっと点検して必要なことを整備していくことが必要だろう、こういうふうに思っておりまして、そういうことも含めて、私の率直な気持ちであります。

稲津委員 今回の震災の報道に対してはやはり相当の御努力があったということを、私も今答弁を聞かせていただいて感じました。

 その上でですけれども、NHKへの接触率、信頼度が高まったというこの結果、もう一方で、ポータルサイト、それからSNSですか、こういったネット関連の信頼度も上がっている、実はそういう結果も出ております。

 考えてみますと、今回の東日本大震災というのは、インターネットが本格的に我が国に普及してから起きた初めて経験する大震災。それから、特に今回の震災の中では、ツイッターとかあるいはソーシャルメディアが大変大きな役割を果たしたということも言えると思います。

 例えば、避難所からの声ですとかあるいは安否確認、そういった情報を広範囲に拾い上げたという点においては、これらの情報のツールというのは大きな役割を果たした。しかし、中には誤報とかデマもあったりして、そのような情報をさらに今度は淘汰するような、そういった発信もありました。そういう意味では、このソーシャルメディアについても、ある意味では成熟してきたんだろう、このようにも思っております。

 そこで、NHKなんですけれども、NHKも今回は動画配信サイトを通じて同時送信をした、今までにない異例の対応をとったということも言えると思います。では、これに対してどうなのかということにつきまして、ある一定の評価も出ております。

 ここで伺いたいんですけれども、私は、こうしたインターネットとNHKを含めた既存メディアとの関係について、今回の震災を受けて、どのように今後かかわっていくべきなのか、この点のNHKの見解を伺いたいと思います。

金田参考人 お答えいたします。

 NHKは、御指摘のように、三月十一日の震災発生当日から二週間、総合テレビのライブストリーミングを実施しました。合わせて延べ三千六百三十万人の方に御利用いただいたということを認識しております。また、ラジオ第一放送のライブストリーミングも十二日の午前零時過ぎから実施いたしました。

 利用者の声を調べますと、停電でテレビが見られなかった人たちのほかに、当日、公共交通機関がとまったために帰宅できなかった人、あるいは海外在住の方、それに職場にテレビがないためにリアルタイムの情報が得られなかった方々、さまざまな事情を抱えた方々がこうしたサービスを利用いただいたということを認識しております。

 災害時には、今後、こうしたテレビ、ラジオのライブストリーミングに加えまして、被災者が必要としている避難関連の情報、物資、食料、それに避難所での生活に関する情報や、持病がある方の対処の方法等の情報、必ずしも放送だけでは伝え切れない情報につきまして、細かい情報をテキストにして、インターネットやワンセグ、携帯電話といった多様な伝達手段を使いましてお届けできるように取り組みを強化したいと考えております。国民の安全、安心についての情報発信については、今後とも強化していきたいと考えております。

稲津委員 ぜひ、こうした点について、さらなるお取り組みをいただきたいということを申し上げたいと思います。

 今度は少し話がかわりますけれども、福島の第一原発の事故に対する報道が適切だったのかどうか、そういう認識に立っての質問でございます。

 放射線量について、これは直接NHKがどうこうということではないんですけれども、この事故の発生当初からしばらくの間、記者会見で官房長官から、直ちに人体に影響を及ぼす数値ではないとか、あるいは直ちに健康に影響を及ぼす数値ではない、さらに、すぐに健康に影響が出るものではない、こういう発言が繰り返されました。これは、落ちついた対応を求めますよ、そういう意味での趣旨だったと思うんですけれども、直ちに何々ない、これが強調されますと、論理的な一貫性が欠けて、非常に信頼性が失われるのではないか、こういうことも言われました。

 チェルノブイリ事故の被曝調査をしてきたある専門家からも、正確な情報を公開して、専門家による被害予測をわかりやすい言葉で伝えることが大事なんだ、このように強調がありまして、その上で、福島の原発事故については、NHKでも多くの時間を割いて専門家の方々の解説を行ってきました。結果的にこの解説が適切だったのかどうかは、現段階ではまだ何とも言えない状況かもしれません。

 そこでお伺いしたいのは、視聴者の方からどのような声が寄せられたのか、また、中には不安の声がなかったのか、そういうことの見解をお伺いしたいと思います。

金田参考人 福島第一原発の事故につきましては、信頼できる情報をリアルタイムで迅速にお伝えするために、専門家の分析はもちろん、専門知識を持った解説委員や記者による解説も交えまして、正確でわかりやすくお伝えできるよう工夫してきました。

 先ほどの枝野長官の会見等につきましては、視聴者から、震災発生後三カ月で合わせて五十件程度意見を寄せられています。主なものを御紹介しますと、直ちに影響がないとしても、中長期的にはどのような影響があるか伝えてほしいということとか、不安な心理が大きい現状では、直ちに影響はないという言葉は、いずれ影響があるかもと聞こえても不思議ではないということとか、消費者や生産者には将来にわたる全体像が見えないなどの御意見でございました。

 我々も、お伝えする側として、さらに一層の工夫が要るかどうか、もう少し検証しながら工夫をしていきたい、そのように考えております。

稲津委員 ここはぜひ、御答弁がありましたように検証を進めていっていただきたいと思います。

 いずれにしても、国民の皆さんにどのようにわかりやすく、正確に迅速にそういう情報をお伝えできるか、その使命、役割をしっかりとらえていただきたいというふうに思っております。

 時間が参りましたので、最後に一点だけお伺いしたいと思いますけれども、今回の東日本大震災の復旧復興に向けて、NHKはどのようにかかわっていくのかということでございます。

 もう少しはっきり申し上げますと、先ほど来、この震災を通じてNHKに対する評価、信頼度が上がっている、そういうことで冒頭から質問させていただきました。大変重要な情報源としてのNHKの存在意義というのが明確になってきた。では、これからこの震災の復旧復興に向けてNHKはどうかかわっていくのか、この被災地の方々等々に対してNHKとしてどう貢献していくのか。ちょっと大きな話になってしまいますけれども、最後にこの点をお伺いさせていただきまして、質問とさせていただきます。

松本参考人 お答えいたします。

 震災復興ということでは、長い道のりということで、私ども、息の長い取り組みが必要になるというふうに思います。そのために、組織を挙げまして東日本大震災プロジェクトというのを立ち上げました。私がトップになりまして、私のもとに立ち上げました。そういう体制のもとで、被災地の皆さんを元気づけるキャンペーン、支援のニュース、番組、あるいはエネルギー政策等々、復興へ向けた日本の社会を考える番組とか、そういうものをいろいろなシリーズ展開してやってまいりたいというふうに思います。

 こういうことを今やっておりますけれども、こういうことに対しての五月末の電話調査では、震災後の番組編成について八八%のかなり多くの方が評価していただいている、こういうふうに思っております。また、教訓としてこういうものが後世に残りますように、あるいは検証とか、そういうことも含めまして、広くいろいろなものに備えてまいりたいというふうに思いますし、また、放送機能の整備ということについても、放送業者として、公共放送の立場として万全を期してまいりたい、こういうふうに思っております。

稲津委員 終わります。

原口委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 NHK決算に関連して質問いたします。

 最初に、七月二十四日、アナログ放送が終了するに当たりまして、テレビが見られなくなる方を出さない、いわばテレビ難民をつくらないという立場で質問をいたします。

 地上波テレビ放送については、大震災、原発事故の岩手、宮城、福島の東北三県を除き、アナログ放送が七月二十四日に終了し、デジタル放送のみとなります。今、アナログテレビの画面の左下には、アナログ放送終了まであと九日という、アナログ終了を知らせるカウントダウンの字幕が表示されています。この表示を見て、まだアナログのテレビでごらんになっている方は、煩わしい、テレビが見づらい、やめてくれ、こういう声が殺到しております。本当にやめてもらいたい。

 一方、アナログテレビでデジタル放送が視聴できるようにとチューナーを買いに走ったけれども、電気店や家電量販店を五軒回っても、どこも在庫がない、入荷の見通しもないと言われているということであります。そもそも経済的な理由で準備ができないという方も少なくありません。アナログ停波を目前にして、準備が間に合わないという声が広がっています。

 そこで、NHKの松本会長にお尋ねをいたします。

 松本会長は七月七日の記者会見で、地デジ対応については一〇〇%は難しいと述べておられます。そこでお聞きしますが、七月二十四日までに地デジに対応できない世帯数は幾つぐらいで、地デジに対応できないテレビの台数がどのぐらいに上るということを前提に一〇〇%は難しいとおっしゃっておられたんでしょうか。

松本参考人 お答えいたします。

 地デジ対策には、私たち送信側の設備というものがあります。これはデジタルに切りかえてやっていきますが、これはハードですから、計画的にずっとやっていきますから一〇〇%できます。もう一つ、そちらが変わっても、テレビをごらんになる受信者側の方がその対応の措置を御自分でやっていただかないと、そういうものが対応できない、そういう格好になっているんですね。

 先ほど一〇〇%の話をおっしゃいましたけれども、私が申し上げたのは、私は前任が鉄道事業者ですから、このデジタル移行というのは大ダイヤ改正と一緒だというふうに思うわけですね。ところが、鉄道の場合はダイヤ改正をやりますと、きょうダイヤ改正をするならば、きょうの零時にいろいろなものがばたっと変わるんですね。それは、前段でコンピューター上でも走らせますし、すべてが一〇〇%できるという体制で移行する。

 ところが、そういうことから比べると、このデジタル化というのは先ほどの送信側、受信側の問題があって、性格の問題として、どんなに一生懸命やっても、先ほど表示の問題がありましたけれども、あれで表示がうるさいという方は対応されているんですね、そうじゃない方がどこかにおられるのではないかという意味で、性格の違うものだということで、一〇〇%は受信者側の問題で難しいのではないかという感想を述べた、こういうことですね。

 しかし、そういう中で、受信者対策ということで、デジサポという機関も、それからNHKも支援ということで今一緒にやっております。そういう意味では、先ほどのお電話も、最初は集中しましたけれども、それが日によって半分になる、またその半分になるということでだんだん収束している、こういうふうなこともありますし、いろいろなことが功を奏して、いかに二十四日までにミニマイズできるか、こういう問題だと思います。ミニマイズしてもそういうことが出た場合には、その方々にまた対応していく、それを早くやる、こういうことでデジタル化が完成していくのだろう、こういうふうに思っております。

塩川委員 会長の方は、つまり、地デジに対応する上では送信側の準備と受信側の準備がありますと。

 送信側の方は一〇〇%できると言いましたけれども、しかし、実際はそうじゃないんですよ。送信側の放送事業者にしてみても、アナログ放送が届く範囲をカバーするのが実際にはできなくて、その範囲について、新たな難視ということで衛星放送で対応する。地上波の放送で対応するというのはできていないんです。そういう点を見過ごしてはいけない。

 何よりも、受信者側、視聴者側の対応ができていないということが今の事態を深刻にしているわけで、テレビ局の都合だけで一〇〇%ができるということにならないのは当然のことであります。そういう点でも、一〇〇%は難しいというのは、受信者側の対応ができないということを述べておられたわけであります。

 そこで、片山大臣にお尋ねをしますが、七月二十四日以降、このように受信者側の準備が整わない、結果としてテレビが見られない世帯が生まれる、そういった場合にどうするお考えなのか、お尋ねします。

片山国務大臣 そういうことができる限り少なくなるようにということで今関係者が努力しているわけでありまして、先ほど塩川議員が、もうやめてくれ、うるさいとおっしゃったテロップといいますかメッセージの表示も、そういうことを極力なくすためにお伝えしているわけでありまして、ぜひ、残された期間に、まだ対応できていない方々については御連絡をいただきたい。その御連絡をいただくところがコールセンターであったり、それから地デジ臨時相談コーナーを設けたりしておりますので、そういうところにぜひ早目に対応していただきたいということであります。

 その上で、どうしても対応できないということがその当日生まれました場合は、またそこを通じまして、それぞれ、チューナーの支援の助成を継続することでありますとかそういうことをやっておりますので、決められた措置を、できるだけ早く対応していただくとともに、こちら側も対応していきたいと思っております。

塩川委員 総務省の方ではこういった、実際には準備が間に合わない世帯があるということを前提としておられて、例えば、集合住宅で大家さんの対応が間に合わないという方がいらっしゃるとか、あるいはビル陰などの映りが悪い地域についての対策が間に合わないだとか、あるいはアンテナをかえようと思ってもその準備、工事が間に合わないとか、そういう世帯があるということを前提として、衛星放送で見てもらって構いませんということを言っているんですよ。だけれども、その衛星放送のアンテナは自分で御用意くださいということですから、その準備の工事も間に合わないということであれば、こういった対策を一つ一つ見ても、期限に間に合わなくなるということを意味しているということでもあります。

 実際、準備をしようと思っても、チューナーがないとかという状況が今広がっているわけですから、だとすれば、こういったアンテナ工事が間に合わないとか、チューナーを購入できないという声が多数寄せられている中で、準備が間に合わない世帯が出ることがはっきり見越せるわけですから、このアナログ放送の停止、終了、これを変更して、引き続き延長する、継続をする、こういうことを考えるべきではありませんか。

片山国務大臣 これはもうさんざん議論をして、経緯を踏まえて現行法が停波の期限というものをつくっているわけでありますから、この法律に従って、我々は、その残された期間内を一生懸命努力するということであります。

塩川委員 いや、法律よりも視聴者の現状ですよ。テレビ難民が生まれないようにするという立場で、私は一貫してこの法律の改正も求めてまいりました。まあ今の時点で、法改正という準備の時期はあります。であれば、試験放送という形を含めて、今のデジタル放送と同時にアナログ放送も継続をするということであってもそれは十分に可能だ、やりようは幾らでもある、こういう立場で、アナログ放送の停波期限の延長ということこそ行うべきだ。実際にアメリカではアナログの停波を延期しておりますし、韓国、イタリアでも延期をしているわけであります。

 NHKには、放送法に基づいて、あまねく全国に放送を届けるという義務があります。国にはその義務をNHKにしっかりと果たさせる責務があります。そういう点でも、チューナー配付やアンテナ改修などの支援策をさらに拡充していく。NHK受信料免除、生活保護などの世帯についてはアンテナを含めて対応しますけれども、市町村民税非課税世帯についての支援策はチューナーを配るだけなんですよ。アンテナの改修は含まれていません。首都圏のように、VHFのアンテナをUHFにかえるということが必要な世帯は対応できないわけですから、支援策も極めて不十分だ。

 こういう支援策の拡充とともに、アナログ放送の停波を延期する、引き続き継続するという選択肢を持って、テレビ難民を絶対につくらないという立場で臨むことを国とNHKに強く求めるものであります。

 次に質問したいのが、ケーブルテレビへの切りかえによって視聴者の負担が拡大をしているという問題について、三月のNHKの予算案審議でも質問しました長崎県五島市久賀島を例に質問をしたい。

 NHKは、地デジ化に当たって、視聴者がアンテナで地デジテレビを視聴できるように、デジタル用の中継局を全国に設置してまいりました。しかし、放送事業者が地元自治体と協議をして、ケーブルテレビでテレビ放送を受信すると決めた地域では、NHKなど放送事業者は中継局の設置を行っておりません。つまり、アンテナの受信ではなくて、ケーブルテレビ会社と契約をしてテレビを視聴することになります。このような受信方法の変更がきちんと住民の方に説明をされていないという実情があります。

 長崎県の離島であります五島列島、その真ん中から南部分に当たります五島市に、久賀島という島がございます。二百六十四世帯、四百三十三人、高齢化率が五二・四%という島であります。これまでアナログ用の中継局がありましたが、ケーブルテレビ対応となり、NHKはデジタル用の中継局を建設しておりません。これまで五島市久賀島では、一部にアンテナで受信している世帯もありましたが、多くの世帯はケーブルテレビに加入するという経過がありました。

 このケーブルテレビ放送は、お隣の福江島から久賀島に、無線の設備を使って放送を届けています。この無線を経由するということが天候の影響を受けてしまう。台風ですとか、雨、風、霧などの悪天候の場合に、無線の電波が乱れて放送に影響が出ます。アナログ放送のときは、画像が乱れた場合でも辛うじて見ることができたわけですけれども、デジタル電波の場合には、その性格上、電波がきちんと届かないと画面が全く見られないということが生まれているわけであります。

 久賀島の住民の方にアンケートの御協力をいただきました。

 天候のよい日は全く問題ありませんが、風、雨のときは頻繁に全く映らない状況です。テレビは緊急時の情報手段ですので、緊急時のためにどうにかしてもらいたい。こういう声や、私はアンテナで見ていたが、NHKがケーブルに変更してくれないかと言ってきたので変更したところ、アンテナよりも映りが悪い。苦情を言っても何一つ改善できていない。雨、風の日は映らないので、いつも嫌になっています。映りが悪いので、受信料はちゃんと映るようになってから払いたい。こういう声が寄せられているわけであります。

 会長にお尋ねしますけれども、災害時のライフラインと言われるのが地上波テレビ放送なのに、肝心の悪天候のときにテレビが映らない、こういう状況を放置したままでいいのか。この点についてお尋ねします。

永井参考人 技術の方の関係もありますので、私からお答えさせていただきます。

 御指摘の問題については、先般、六月二十九日付で、当該ケーブルテレビ社から、長崎、地元の地上デジタル放送推進協議会に対して共同調査の依頼がなされました。今月から調査を開始しまして、その原因になっている電波の強さがどういうものなのかという調査を一緒にしようということで、測定を行うことにしております。

 ケーブルテレビでございますので、テレビ放送を再送信する際の品質についても、元来ケーブルテレビ事業者が確保するものと考えておりますが、地デジ化を推進する立場ということがありますので、当該ケーブルテレビ社につきましても、これまでも技術情報の提供等々、いろいろ協力を行ってきました。

 今行っている調査の結果も見て、技術的な相談があればNHKとしてもいろいろ対応していきたいというふうに考えております。

塩川委員 調査は結構なんですけれども、映りが悪いのは全然変わっていないんですよ。

 品質の保証と言いました。要するに、NHKが視聴者にきちんとした映像を届けること自身がNHKの責任なんでしょう。そのために品質の保証を技術基準でNHK自身が決めているわけですよ。番組について放送をケーブルテレビ会社に委託するんだったら、その委託先の番組の放送がしっかりと品質が保証されるようにする責任をNHKが持っているんですよ。天候が悪いときにテレビの映りが悪い、肝心の悪天候についての気象情報が見られなくなる、こんなことを放置していいのかということが問われているんですよ。会長にお尋ねしますけれども、こういった事態についてNHKが真剣に対応すべきだ。

 あわせて、もう一つ伺いたいのが経済的負担の問題です。

 アンケートでも、わずかな年金の中でNHKの受信料とケーブルテレビ使用料を支払っているのに、もう少しちゃんとした映像を提供してもらいたい。NHKの受信料を納めているのにちゃんと見られないのはおかしい、ちゃんと映るようになってから納めたい。これが視聴者の声ですよ。

 視聴者にしてみれば、NHKの受信料に加えて、ケーブルテレビの月額の利用料金の負担もふえているわけです。こういう世帯にまともに映像が届けられないということをそのままにしていいのか。テレビの映りが悪いのに、NHKは受信料をそのまま取り続けるのか。この点をお伺いしたい。

松本参考人 お答えいたします。

 先ほどの共同調査がなされるということで、その結果を見て、技術的な相談があればNHKとしても対応していく、こういうことであります。

 また、経済的な面では、ケーブルテレビへの移行については協会として助成を行う一方、利用料金の低廉化については国からも働きかけを行っている、こういうふうに聞いております。

 繰り返しになりますが、電波の強さ等の測定を行う調査結果も見まして、技術的な相談に応じるなど協力を継続してまいりたい、こういうふうに思っております。

塩川委員 映りが悪いのは、人任せじゃなくてNHKの責任で解消する、国にしっかり協力を求めて。こういうことでぜひ臨んでいただきたい。

 久賀島で、悪天候になるとテレビが映らなくなるという問題があることは、これは絶対放置できない。同じようなことが全国にあるかもしれない、こういう立場で臨むことが必要で、あまねく全国に放送を届ける義務のある、また災害時のライフラインともなっているNHKの地上波放送を提供するという責任が問われているわけであります。

 この五島市の場合では、久賀島からさらに北にある奈留島で、漁業が盛んなところですけれども、今までは中継局から電波が飛んでいましたから、漁船でもテレビが見られたんですね。気象情報を見ていた。それが、ケーブルテレビになるために見られなくなってしまった。貴重な気象情報がテレビから提供されなくなる。こういうことについて、ケーブルテレビ導入の際に国からもNHKからも何の説明もなかった、これが実態であります。現状をどうにかしてくれという陳情書が議会にも出され、採択もされるという状況になっております。

 私は、最後に大臣に伺いますけれども、ケーブルテレビ対応、もちろんケーブルテレビのメリットはあります。多様な放送を提供することもある、通信と複合的にやることもある。しかし放送を届けるという点で、ケーブル対応によって、結果として、NHKの設備投資は軽減されたかもしれませんが、視聴者は受信料に加えてケーブルテレビ利用料も払うことで経済的な負担が拡大をし、また、漁船のように、これまで受けていたサービスが受けられなくなるというサービス後退も招いているわけであります。ケーブル対応によって、結果として、NHKのあまねく全国に放送を届ける義務が後退しているということは極めて重大であります。

 大臣として、NHKにユニバーサルサービス義務を果たさせる立場として、こういう事態にどう対応されるのかを伺って、質問を終わります。

片山国務大臣 先般来お話のありますこの久賀島のケースというのは、特殊事情もあるようであります。そう伺っております。

 先ほど会長の方からお話がありましたように、NHKと地元のケーブルテレビとの間で共同して調査をするということも行われておりますので、その結果を踏まえて対応していただきたいと思います。

 また、別途、無線以外の伝送手段についても、地元の市も含んでいろいろな協議が行われていると伺っておりまして、これには総務省の地方機関の方も協力をしているところでありますが、現時点でなかなか関係者の合意が得られていないということでありますけれども、関係者の皆さんの合意が得られることによって、視聴者の皆さんに支障がないように、総務省としても引き続きよく目配りをしていきたいと思います。

塩川委員 ケーブルテレビ加入によるテレビ視聴によっての負担を可能な限り軽減する、解消する、このことを強く求めて、質問を終わります。

原口委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正でございます。

 きょうは主としてNHKの会長を中心にお伺いしたいと思います。

 本日は、新しい会長を迎えての、本委員会での二度目の質疑となります。本来であれば三月のNHK予算質疑で尋ねるべきことなんですが、東日本大震災直後でもありまして、震災関連の質問が中心となりましたので、できませんでした。そこで、今回は、会長のNHK公共放送に関する考え方を中心に質問をいたします。

 まず、公共放送の役割についての認識をお伺いいたします。

 ICT技術の発達で、国民はさまざまな情報にアクセスできるようになっています。NHKは、テレビがあれば視聴者から受信料を徴収するという、他のメディアとは異なる特質を持っているわけです。さきの東日本大震災では、NHKの報道が国民の間でも評価されておりました。先日発表されましたNHK受信料制度等専門調査会報告書でも、その点を踏まえつつ、公共放送の機能は、専ら緊急時に限って果たされれば足りるというものではないんだ、ふだんから豊かなサービスを継続的に提供していることが前提なんだ、このように指摘をしています。

 そこで、今後、公共放送としてのNHKの役割、機能、ここが民放とは違うんだ、そういう点について会長の認識を聞いておきたい。

松本参考人 お答えいたします。

 NHKは法律で定められた公共放送機関ということで、放送法というものをじっくり読んでみまして、普通の企業というか組織体というのは、それぞれの仕事とかあるいは人を一つの方向に収れんさせるために、経営理念とかそういう価値観をつくって、それでまとめる、こういうことがございます。NHKの場合は、まさにそれが法律そのものに書いてある、こういう気がいたします。

 法律の中には、公共の福祉に適合するとか、あるいは不偏不党、真実及び自律を重んずるとか、健全な民主主義の発達に資するというようなことで、そういう価値観、公共放送としてあるべき立地点というのが明確に書かれております。そういうものの上に立って、そしてNHKが目的とする、放送という商品を視聴者の方にきちっとお届けする、まあ商品と言ったらおかしいんですけれども、そういう成果物を原則に基づいた形でお届けする、こういうふうに考えております。

 一番大事なのは、やはりNHKに対する信頼というものをきちっと確立していくことだろう、こういうふうに考えております。

重野委員 今、会長の口から信頼という言葉が強調されました。そうだろうと思います。

 しかし、NHKは、かつてその信頼を著しく損なう、そういう事態を招来した経過があります。二〇〇四年に発覚した着服横領事件を皮切りに、その後も次々と不祥事が明るみに出ました。国民の公共放送に対する信頼を大きく損ねる事態となったことは会長も熟知のことと思います。

 その後、倫理・行動憲章の制定あるいは評価委員会の設置など、信頼回復に向けてさまざまな取り組みが行われてまいりました。しかし、最近の例では日本相撲協会への警察情報の漏えいなど、依然として不祥事自体の根絶には至っていない。甚だ遺憾なことであります。

 そこで、信頼回復に向けた現在の状況をどのように認識、評価しているのか。今後の課題はどういった点にあるんだという点について、いかなる認識を持っているのか。その点についてもお伺いいたします。

松本参考人 お答えいたします。

 信頼という中には、一つは、NHKがみんなでつくる放送そのもの自体がやはり信頼していただける、それから豊かな、中身のある、見てためになる、そういう信頼のある放送をつくるというのが一点あると思います。

 もう一つは、それをつくる職員がやはり信頼される行動をとっていなければならない、こういうふうに思います。その部分にコンプライアンスの問題があって、確かにそういうような事象がずっとあるというのをトレンドで見る、ある意味で俯瞰して見るわけですが、そういうものを見ますと、私の感じは、組織としてそういうことがあるというようなものが徐々に少なくなって、そして個人の責任によるところの不祥事が結構残っているというか時々出る、こういう感じだと思います。そういう意味では、トータルとして、一つの組織あるいは人間の集団の中で多いという感じではありませんが、そういう形のものが変化して、今そういうものが時々出る、こういうふうに思います。

 これをどういうふうにするかというのは、先ほどお話にありましたように、倫理・行動憲章、私今ここに持っておりますけれども、これは言葉を物すごく集約した、俳句で削りに削った言葉というような感じでありますけれども、こういうことをきちっと体質化して、これは言葉ですけれども、これを体質化することで行動に影響しますから、そういうことをやること。これは普通の教育ですね。

 それから、あとは実際に起きた事象、これはそんなにたくさん例があるわけじゃなくて、同じパターンが起きるものですから、それを徹底してなくすように努力する、それは背景も含めましてですね。

 もう一つは、起きた場合には厳しく対処する。これはなぜ厳しく対処せざるを得ないかというと、大半の人がコンプライアンスの問題について、もう脱皮したいと思っているんですね。したがって、そういう中でもなおかつ起きるということについては、これは厳しく対処するというのが姿勢である、こういうふうに考えて今やっております。

    〔委員長退席、稲見委員長代理着席〕

重野委員 そういうことだろうと思うんですが、さらに、もっとこの問題について深めていきたいと思うんです。

 それは、職員、関連会社の社員、地域スタッフなどが一生懸命信頼回復に向けて努力しているということは私も承知しておりますし、評価もいたします。しかし一方、こういう立場から見れば、まだ信頼回復は途上にあるというふうな認識を持つべきだ、したがって今後とも一層の努力が必要なんだ、こういうふうに思います。

 信頼回復の一つの指標として、かつて受信料不払いという問題が、NHKにとっては最も大きな課題として重くのしかかった一時期がございました。当時を思い返しますと、それまで三万件余りだった不払いが、不祥事発覚後、一気に七十四万件不払い、ピーク時には百三十万件近くに達しているという過去があるわけです。その後、この委員会でも、いろいろな角度からいろいろな議論が出され、それを受けとめてNHK本体もさまざまな信頼回復の努力に努めたということは私も承知をしております。

 しかし、不払いのこの間の減少と、そして今なお、三月末の段階でも二十万件弱不払いがあるという現実がある。確かに、百三十万件に比べれば、この二十万件という数字はやはり大きく減少したというふうに受けとめると思うんですが、しかし、私は、先ほど視聴率の話がありましたけれども、公共放送NHKに対する国民の信頼と期待というものに比較をすれば、今日二十万件弱の不払いがあるというこの事態はやはり非常に大きい、重く受けとめなければならないというふうに思うんですが、会長はどのような認識を持ち、どうしようとするのか、その点についても聞いておきたい。

松本参考人 お答えいたします。

 先ほど、途上にあるという認識をすべきだ、こういうふうなお話がありました。私もそういうふうに思っております。

 このコンプライアンスあるいは信頼の問題というのは、多分終わりがないんだと思いますね。したがって、繰り返すということもありますし、新たにまたそういうものの芽が出るということもありますので、とにかく終わることのない作業で、それを継続する、継続するところに信頼というものが少しずつ積み重なっていく、こういうことではないかと思います。

 そういう意味で見ますと、今お話がありました、まだ支払いをなされていない方というのが、かつて信頼を失ったときにそういう形で顕在化したということですが、それが徐々に今収束しつつある。このトレンドは、実際に受信料の理解を深めるという行動も含めて、やはり丁寧にやっていく、同時に、コンプライアンスを含めた信頼感を高める努力をしていくということで、両方ともの作業になるんですけれども、そういうことできちっとやっていくということで、大きな経営課題としてきちんと努力してまいりたいというふうに思います。

重野委員 次に、いわゆる地デジ移行のカウントダウン、これは先ほども若干質問がございましたけれども、これについて聞いておきたいんです。

 地デジ完全移行に向けたカウントダウンがスタートをしております。このカウントダウンについてはかなり苦情が寄せられていると聞いております。総務省や各テレビ局に寄せられた苦情、問い合わせのこれまでの件数、そして年齢的に見てどの年代層が多いんだとか少ないんだとか、そういう点の分析がなされておるのかどうか、また特徴的な内容があれば、それを聞いておきたい。

森田大臣政務官 お答え申し上げます。

 コールセンターには日々さまざまな相談がかかってくるわけでございますが、すべてがカウントダウンの苦情だけではありません。

 それで、簡潔に申し上げますと、六月三十日の件数がおおむね一万件であるのに対しまして、七月一日は三万一千件の入電がありました。うち四〇%くらいが苦情であると類推されておりまして、その主な内容は、移行期限はもう十分知っているから目ざわりである、目ざわりであるから消してほしい、そういう内容でございますが、その日から次の日以降は件数が二万件前後に下がりまして、苦情の割合も二割ぐらいに下がっています。

 それで、我々が心配しておりますのは、そうやって電話をかけてこられる方だけではなくて、電話もかけないいわゆるサイレント層の方々がいらっしゃいますので、最後の最後までそういった方々に周知を図るという意味で、カウントダウン表示のことに関しましては、なお続けてまいりたいと思っております。

重野委員 あと二点ほど通告をしておったんですが、時間が来ましたので、次の機会にやらせていただきます。

 終わります。

稲見委員長代理 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 NHKから関連団体への再就職についてお伺いをしたいと思います。

 昨年三月のNHKの予算審議において、関連団体への再就職の件をお尋ねしました。幹部職員が定年前の五十六歳前後で退職をし、関連法人に再就職をする、これはもう、官僚の早期退職勧奨とその先の天下りの相似形だというふうに申し上げさせていただきました。NHK出身とは思えない質問で申しわけありません、こういうふうに申し上げたら、今のように議場で笑いが起こったんですけれども、きょうもその続きをやらせていただきます。

 NHKとしては関連団体の整理統合を鋭意進めてきたと、福地前会長も御答弁をされていました。しかし、坂本理事が先ほど御配付の資料に基づく平成二十一年度の決算段階では、子会社十五、関連会社五、関連公益法人七の、二十七の関連団体がなおあるということであります。

 過去のNHKにおける不祥事、また省庁における天下り批判の高まりを受けて、こうしたNHKの関連団体の役員人事については、この間、NHKの理事、役員が関連団体のトップに直接天下ることはしない、こういうふうな慣例になっていたと聞いております。また、国会議員に対しても当時の橋本会長がそのような説明を繰り返し行ってきた、こういうふうにも聞いております。

 ところが、最近の関連団体の役員人事で、おやっと思うものが立て続けに行われました。六月二十日、NHK出版が、社長としてNHKの溝口特別主幹、この方は理事を経験した理事待遇の方でありますが、この方を選任するトップ人事を決めております。それに先立つ五月三十一日、こちらはNHK交響楽団の理事長として、NHKの日向放送総局長、やはり理事経験者であります、この方が就任をされております。

 これはいずれも、NHKの理事、役員からダイレクトにNHKの子会社、関連団体のトップに再就職をする、いわばダイレクトの天下りであります。まさにこれまでの、NHKの理事、役員が関連団体のトップに直接天下ることはしない、こう説明してきた従来の方針を覆す人事を行ったことになります。

 国会議員あるいは政党に対して説明をしてきたこういう方針を覆すわけですから、それ相応の説明責任があるはずであります。にもかかわらず、こうしたいわば方針変更を行ったことについて、今のところ何ら説明がなされておりません。いつ、だれがこの方針を変更したのか、そして変更の理由は何かということをまずお伺いをしたいと思います。

    〔稲見委員長代理退席、委員長着席〕

松本参考人 私が一月二十五日にNHKの会長になりまして、そして、いろいろなNHKの構えとかそういうものを見る中で関連団体の人事の時期が参りました。

 その中で、例えばNHK出版ですと、今、出版業界は大変赤字で非常に苦しい時期ですよね。そういう時期の中でこれを立て直さなければいけない、そういうときに、NHKの中で関連事業担当を長いことやってきた溝口さんという理事の方が今回退任されるかどうかというときで、ちょうどマッチングがありますから、その方に行っていただくのがいいだろう、こういうことにしたわけですね。

 それからN響の場合は、ちょうど前の理事長が六十六歳になって退任されるときでもありましたし、そういうようなことで、だれか、いい方がというような話もあり、それで日向さんを推薦した、こういうようなことでございます。

 いずれにしましても、それぞれの関連会社なりそういう中で、どういう人が要るというときにどういう人がいる、こういうマッチングの問題がありまして、これはいわば適材適所といいますか、そういうようなことがございます。そういう中で判断をして行っていただいている。現在、そこできちっとした、これまでの経験を生かして仕事をしていただいている、こういうふうに考えております。

柿澤委員 NHK出版の社長に溝口団体担当理事が就任をされたというのは、出版業界が赤字で非常に苦しい状況であるので、立て直しをしなきゃいけない。申しわけありません、松本会長の今の御答弁こそ、大変苦しい答弁に聞こえました。

 しかも、今回NHK出版の社長についた溝口さん、この方は今申し上げたとおり、NHKで関連団体担当理事をやっていた人で、先ほど申し上げた、NHKの理事、役員は関連団体のトップに直接天下ることはならない、そういう方針を内外に対して説明していた張本人だというではありませんか。こういう人が、関連団体のトップにはNHKから直接天下らない、こういう今までの慣例を率先して破る、そしてNHK出版の社長につく、これがどういうふうに正当化されるのか、私は大変疑問に思います。

 もう一度お伺いをしますが、溝口前理事のNHK出版社長への再就職、日向前理事のNHK交響楽団への再就職について、どういうプロセスで、なぜこんな人事になったのか、もう一度お答えください。

松本参考人 先ほども申し上げたように、グループ会社で適切な人が要る、そういうときにどういうところからその人を選び出すか、こういうことで、それぞれの人となり、あるいは能力、経歴、そういうものを見て私が選んだ。

 本人がそこに行きたいということで、例えば今溝口さんの話がありましたけれども、溝口さんがそういうことで希望して行くということよりは、むしろ、全体を見て、こういう方がここに行っていただくというのが最も適切であろうということで私が判断し、それから、トータルとしてグループ経営というのをNHKとしてきちっとやっていくという目的がありますから、その目的を発揮するためにそのようにしたということであります。

柿澤委員 適材適所、マッチング、能力がある、グループ経営の一体性、これは、これまでの省庁の官僚の天下りで、もう何度となくこうした天下りの正当化に使われてきた理屈だというふうに思うんです。

 そして、コンプライアンス、襟を正さなきゃいけないと、今回、松本会長も何度も答弁をされました。しかし、私が選んだ、私が決めたと今御答弁をされているわけですから、まさに不祥事を受けて、こうした関連団体のトップにそもそも畑違いの人を、NHKの役員出身だからといってトップに直接送り込むということをやらないようにしてきた、こうした慣例を、会長みずからが決めて破ってしまっている。これは大変問題だというふうに思います。

 適材適所とおっしゃいますけれども、今回のお二人がそういう専門性を有しているんでしょうか。NHK交響楽団の理事長になった日向さんは、私が聞き及ぶところによると、就任に当たり、周辺に、今までクラシック音楽は余り詳しくなかったので、これから勉強したい、こういうふうに言っているというではありませんか。

 こういう関連団体の業務についてわからない人が、NHKの理事、役員をやったからといって、いきなり関連団体のトップのいすに座る。これでは関連団体のトップというのは、NHK理事、役員の退職後の、高給の食いぶちをあてがうポストか、こういうことにもなりますし、また、関連団体の業務に精通をしているプロパーの人たちのモチベーションを下げることにもなると思います。だからこそ、直接トップには就任をさせない、こういうことを決めていたはずではありませんか。

 NHKの幹部職員が定年前の五十六歳前後で退職をして、半ば自動的に関連団体に再就職をする。これは、先ほど申し上げたように昨年の予算審議でも取り上げて、そして福地前会長もこの慣行を問題視していました。にもかかわらず、今回の人事を見ると、逆にその流れが強化されているようではありませんか。関連団体、子会社は、先ほど坂本理事の資料にもあったとおり、八百億円の利益剰余金をため込んでいる。これでは、国民は受信料を関連会社に払っているようなものではありませんか。ほとぼりが冷めたら、早速このような天下り解禁をしてしまうんですか。

 現政権が選挙で約束をした官僚の天下り根絶を全く骨抜きにしてしまった。その結果、資源エネルギー庁の長官が東電の顧問に天下る、こんな天下り人事が堂々とまかり通る状況になってしまった。こういう現政権の姿勢を見て、では、うちもやっていいのか、こういうふうになったのだとしたら、これは現政権の責任だというふうにも思いますよ。

 松本会長、そして片山大臣、あわせて御答弁をいただきたいというふうに思います。

松本参考人 私は、自然に考えて自然な人事を行った、こういうふうに考えております。

 やはり日向さんにしろ溝口さんにしろ、短い期間の接点ではありますけれども、人格的にも大変立派ですし、それからNHKの知識も深いです。それから、関連する人との知見というのも非常に大きいですし、そういうような方がトップについて、そして能力を発揮していただくというのがいいのだろう、こういうふうに思って、自然な形で、適材適所ということで判断してお願いした、こういうことであります。

片山国務大臣 現政権のこの問題に対する対応についても問われましたので、せっかくの機会ですからお話を申し上げます。

 確かに、議員がおっしゃるように、政府の中でのいわゆる天下りについて首をかしげざるを得ないような例も散見されることは、そのとおりだと思います。私もそう思います。

 ただ、政権の中で私も一つの省を預かっておりまして、この天下り問題については非常に気配りをしまして、できる限り政権の当初の方針にたがわないような運用をやっております。非常に苦労しております。従来のようなことができませんので、するべきではありませんので、組織の中の新陳代謝がなかなかうまくいかないというような苦労もあります。ありますけれども、本当にこの問題については真剣に努力をしております。これは他の閣僚の皆さんも、同様の悩みを抱えつつも努力をされているところであります。これからもこの方針を続けていきたいと思います。

 それは、例えば役所と関連団体との間の緊張感を欠くとか、透明性を欠くとか、それから団体の自主性を阻害するとか、いろいろな弊害があるからであります。また、先ほど、NHKの関連団体の方に余剰金があるというようなケースでいいますと、それは役所の方でも同じようなことがかつてありまして、本体の国庫の方はやせ細るけれども、外郭団体の方は非常に余剰金があるとかいろいろなことがあって、それを見直してきているわけであります。政府は、本当に政権交代以来、この問題を一生懸命やっているわけであります。

 NHKも、私も今お話を伺っておりまして、これはなかなか、説明責任を果たしていないと私も思います。政府の方針を、今やっている取り組みもよく見ていただいて、NHKでも、国民の皆さんそれから視聴者の皆さんから納得を持ってもらえるような、得られるような努力をぜひしていただきたいと思いますし、大組織でありますから組織の論理というものがきっとあるはずでありますけれども、そういう組織の論理にとらわれないように、これは経営委員会の問題でもありますので、経営委員会の方にも私の方から、今申し上げたようなことも含めて、一度じっくりとお話をしたいと思います。

原口委員長 松本会長に申し上げますが、本委員会で議論をしてきたことと今の答弁と、必ずしも整合性を一にしておりません。

 NHKとしても、今、片山総務大臣の発言を受けて、統一した見解を出していただくように委員長としてもお願いいたします。

柿澤委員 大臣並びに原口委員長から、私の意に大変沿った答弁並びにコメントをいただきました。

 私は出身者であるからこそ、NHKには立派な事業を展開していただきたいと思いますし、国民の皆さんからその事業に深い理解をいただくような協会であってもらいたい、こういうふうな期待を込めて質問をさせていただきました。御答弁をいただきまして、まことにありがとうございました。

 終わります。

原口委員長 これにて両件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

原口委員長 これより両件について討論に入るのでありますが、討論の申し出がございませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、日本放送協会平成十九年度財産目録、貸借対照表及び損益計算書について採決いたします。

 本件について異議がないと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

原口委員長 起立総員。よって、本件は異議がないものと決しました。

 次に、日本放送協会平成二十年度財産目録、貸借対照表、損益計算書、資本等変動計算書及びキャッシュ・フロー計算書について採決いたします。

 本件について異議がないと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

原口委員長 起立総員。よって、本件は異議がないものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

原口委員長 次に、委員派遣承認申請に関する件についてお諮りいたします。

 東日本大震災被災地における地方行政等の実情調査のため、福島県に委員を派遣することとし、議長に対し、委員派遣承認申請をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 なお、派遣委員の人選、派遣期間等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十八分散会


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