衆議院

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第15号 平成24年8月7日(火曜日)

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平成二十四年八月七日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 武正 公一君

   理事 逢坂 誠二君 理事 野木  実君

   理事 皆吉 稲生君 理事 宮島 大典君

   理事 石田 真敏君 理事 坂本 哲志君

   理事 福嶋健一郎君 理事 西  博義君

      石井登志郎君    石山 敬貴君

      稲見 哲男君    江端 貴子君

      小原  舞君    大泉ひろこ君

      大島  敦君    大西 孝典君

      奥野総一郎君    神山 洋介君

      小室 寿明君    杉本かずみ君

      高井 崇志君    中屋 大介君

      永江 孝子君    長島 一由君

      長安  豊君    野田 国義君

      松岡 広隆君    山田 良司君

      湯原 俊二君    和嶋 未希君

      今村 雅弘君    加藤 紘一君

      川崎 二郎君    佐藤  勉君

      菅  義偉君    橘 慶一郎君

      谷  公一君    中谷  元君

      長島 忠美君    西野あきら君

      平井たくや君    松浪 健太君

      森山  裕君    岡島 一正君

      笠原多見子君   斎藤やすのり君

      稲津  久君    塩川 鉄也君

      重野 安正君    柿澤 未途君

    …………………………………

   議員           逢坂 誠二君

   議員           山花 郁夫君

   議員           松浪 健太君

   議員           坂本 哲志君

   議員           福嶋健一郎君

   議員           佐藤 茂樹君

   総務大臣         川端 達夫君

   総務副大臣        大島  敦君

   総務大臣政務官      稲見 哲男君

   厚生労働大臣政務官    津田弥太郎君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  久元 喜造君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           田口 尚文君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  椎川  忍君

   政府参考人

   (総務省情報流通行政局長)            田中 栄一君

   政府参考人

   (国税庁課税部長)    西村 善嗣君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    岡田 太造君

   総務委員会専門員     阿部  進君

    ―――――――――――――

委員の異動

八月七日

 辞任         補欠選任

  稲見 哲男君     長安  豊君

  大西 孝典君     石井登志郎君

  永江 孝子君     江端 貴子君

  松崎 公昭君     石山 敬貴君

  湯原 俊二君     神山 洋介君

  加藤 紘一君     佐藤  勉君

  川崎 二郎君     長島 忠美君

  橘 慶一郎君     西野あきら君

  谷  公一君     松浪 健太君

  森山  裕君     今村 雅弘君

同日

 辞任         補欠選任

  石井登志郎君     大西 孝典君

  石山 敬貴君     松岡 広隆君

  江端 貴子君     永江 孝子君

  神山 洋介君     湯原 俊二君

  長安  豊君     中屋 大介君

  今村 雅弘君     森山  裕君

  佐藤  勉君     加藤 紘一君

  長島 忠美君     川崎 二郎君

  西野あきら君     橘 慶一郎君

  松浪 健太君     谷  公一君

同日

 辞任         補欠選任

  中屋 大介君     稲見 哲男君

  松岡 広隆君     松崎 公昭君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 地方自治法の一部を改正する法律案(内閣提出第六〇号)

 大都市地域における特別区の設置に関する法律案(逢坂誠二君外八名提出、衆法第二八号)


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     ――――◇―――――

武正委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、地方自治法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、本案に対し、逢坂誠二君外五名から、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会、国民の生活が第一・きづな及び公明党の四派共同提案による修正案が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を求めます。橘慶一郎君。

    ―――――――――――――

 地方自治法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

橘(慶)委員 おはようございます。

 ただいま議題となりました修正案につきまして、提出者を代表いたしまして、その提出の趣旨及び内容について御説明を申し上げます。

 本修正案は、各会派間の修正協議の結果を踏まえ、本案による改正に加え、百条調査に係る関係人の出頭及び証言並びに記録の提出の請求の要件の明確化、政務調査費の名称の変更等、普通地方公共団体の長及び委員長等の議場出席についての配慮規定の追加等の改正を行おうとするものであり、その内容は次のとおりであります。

 第一に、普通地方公共団体の議会が当該普通地方公共団体の事務に関する調査を行うため関係人の出頭及び証言並びに記録の提出を請求することができる場合を、特に必要があると認めるときに限るものとすることとしております。

 第二に、政務調査費の名称を政務活動費に、交付の名目を議会の議員の調査研究その他の活動に資するために改めるとともに、政務活動費を充てることができる経費の範囲について、条例で定めなければならないものとすることとしております。また、議長は、政務活動費については、その使途の透明性の確保に努めるものとする規定を追加することとしております。

 第三に、会期を通年とした普通地方公共団体の議会の議長は、当該普通地方公共団体の長及び委員長等に議場への出席を求めるに当たっては、当該普通地方公共団体の執行機関の事務に支障を及ぼすことのないよう配慮しなければならないものとする規定を追加することとしております。

 第四に、その他所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、本修正案の趣旨及び内容であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

武正委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

武正委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省自治行政局長久元喜造君、情報流通行政局長田中栄一君、国税庁課税部長西村善嗣君及び厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長岡田太造君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

武正委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

武正委員長 これより原案及び修正案を一括して質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。笠原多見子さん。

笠原委員 おはようございます。国民の生活が第一の笠原多見子でございます。

 今までなかなか質問の機会をいただけませんでした。今回、総務委員会で初めての質問をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 では、早速質問に入ります。

 地方議会の会期についてお尋ねいたします。

 先日の委員会で、自民党の先生方からも、この件に関しましてそれぞれお尋ねがありました。私も、現行制度でも通年議会を実施している市町村議会が幾つかあり、また、県議会では栃木県及び長崎県が採用している中で、現行制度のままでも会期についてそれぞれの自治体において定められること、今回法改正する意味がどこにあるのかよくわかりません。

 それで、先日の答弁を聞いておりましたが、いま一つ理解できませんでした。

 伊東委員の質問に対して、川端大臣は、メリットとしては、定例日を定めて、一年間を通じて、住民にこういう時期に議会が開かれるという予見性のある議会運営が行われていくことで、幅広い人たちが、例えば傍聴にしてもそうですし、議員においても、そういう予見性があるという部分での、仕事と兼職している方もおられるということで、議会運営が開かれるということでありますとお答えになっておられます。これらの答弁を聞きましたら、なおさら改正の意味がわからなくなりました。

 現在の年四回の定例議会の方が、会期日程が定まっていて、年間スケジュールが組みやすいのではないでしょうか。総務大臣にお尋ねいたします。

川端国務大臣 おはようございます。

 この前、そういう観点も御答弁を申し上げました。現行の定例会、臨時会の課題ということを整理させていただきますと、一つは、議会の審議が一定期間に集中しているということで、ほかに職を持っている住民が参画しにくい状況、あるいは議会が多様な幅広い住民の意見を反映できているということにおいては、やはりもう少し改善の余地があるのではないかという論点が一つ。

 それから、閉会中に重要な議案を長が専決処分しているものがありまして、議会のチェック機能が必ずしも十分に働いていないのではないか。

 それから、現行の限られた会期日数では、十分な審議時間や議員間の討議、議会からの条例等の政策立案、積極的な政策提言のための時間が確保されない状況となっているのではないか。こういうふうな論点がございます。

 そこで、今回の法改正は、多様な層の幅広い住民が議員として活動できるようにする観点から、通年の会期を設け、条例で定例日を定めることにより、予見可能性のある形で定期的に議会審議を行う議会運営を実現するということと同時に、定例会を年一回とする運用による通年議会、これは今御紹介がありましたけれども、そういう運用で通年議会をやるということでは、長等の議場への出席義務に何ら限定がなく、執行機関側の円滑な事務処理に支障を及ぼす可能性があることから、正面から制度化しようとするものでございます。

 なお、当然のことでありますが、通年会期を導入するかどうかは、各地方自治体における議会のあり方等にもかかわることであり、議会審議の活性化の観点から、各自治体において判断されるべきものと考えております。

 今運用上できるという制度を真っ正面から制度上できるということにして、法的担保をつけて、そして、そのときに想定されるいろいろな課題は、これも法律でしっかりと問題ないように手当てをするという趣旨でございます。

笠原委員 地方議会は二元代表制に基づいているので国会とは違いますが、国会に来て一番効率が悪いと感じたのは、本会議と委員会の日程が定まっていないことでございます。平日の予定が一週間前でも確定できない。異なる点が多くあるのは承知ですが、地方議会はやるべきことを会期内に決める、そういう点では私は利点がある点もあると思います。

 総務大臣、改めてお尋ねします。今いろいろと申されましたけれども、メリットを簡潔に申してください。お願いいたします。

川端国務大臣 通年会期のメリットとしては、導入前よりも十分な審議時間の確保が可能となること、議会の活動能力が常時担保されるため、長の専決処分が減少し、議会で審議できる事件、案件が多くなること、議員間の討議、議会からの条例等の政策立案、積極的な政策提言の機会が確保できることなどにより、議会運営の充実、活性化が図られるというふうに期待をしております。

笠原委員 ありがとうございました。

 今の御答弁の中にもありましたけれども、総務省の、今回の改正案のもとになったもので、「地方自治法抜本改正についての考え方」というのがありますが、その中で、先ほどの大臣の答弁の中の同じフレーズがありますけれども、「多様な層の幅広い住民が議員として活動できるようにするため」というふうに目的を提示されております。そのことが、私は、多様な層の幅広い住民が議員として活動できるようにすることを阻害している要因とか、活性化や議会審議の充実を阻む原因だとは、地方議会を体験して、そのようには思いません。

 総務大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。

川端国務大臣 御指摘のように、地域の多様な層から幅広い住民が議員として活動できるようにするためには、議会運営のあり方として、こういう通年議会で、例えば月の第何曜日の何時からは必ずあるというふうにするということは、例えば職を持ちながらという方においては、それは、仕事との調整とかいうことでいうと、調整しやすくなるということで、当然改善はされると思うんですけれども、議会が幅広い人たちで構成され、活力あるためにというときには、こういう議会運営のあり方だけで全て解決するものでは当然ございません。

 そういう意味では、労働法制、例えば兼職を禁止されているとか、いろいろな状況の中での、議会人になることへの制約があることは事実であります。

 そういう環境整備を幅広くすることにはさまざまな方策が必要であることは当然でありまして、今後、国民的な幅広い議論が行われることを期待しておりますし、議会の活性化の観点から、議論をより充実させるというほかの方策についても、引き続き検討はしてまいりたいと思っております。

笠原委員 ありがとうございました。

 基本的に、会期のあり方はそれぞれの地方議会が決めることであり、通年にするかも含めて地方に委ねるべきだと思います。多くの地方議会が求めるのは抜本的改革であり、今回のような、現在でもそれぞれの議会が判断して変えられることではないと思います。

 また、通年議会にした場合、費用弁償の問題等、議会に係る予算が膨れ上がり、行革の流れに逆行する懸念があります。先日の答弁では幾つかの自治体の例を挙げておられましたが、その点について、総務大臣、どのようにお考えでしょうか。お尋ねいたします。

稲見大臣政務官 議会に係る予算の問題でありますが、前回もお答えいたしましたように、通年会期の導入に伴い会議の開催が増加をすれば、それに伴う費用弁償は増加することが見込まれます。ただ、現行制度の運用におきまして、実施をしている団体では、会議開催や費用弁償のあり方等を検討する例もありまして、これまでのところ、極端に増加しているケースはない、生じていないというふうなことであります。

 前回、宮城県の蔵王町、それから北海道の福島町の例を出しましたけれども、今、自治行政局の方で調べた結果でいいますと、そこを含めまして七つほど、市町村名は省きますが、マイナス二千三百万円、マイナス二百万円、プラス三百万円、マイナス九百万円、プラス二百万円、マイナス三百万円、プラス百万円、少し早口でしたけれども、おおむねマイナスの方が多い、こういうふうなことであります。

 通年会期の導入により、災害等の突発的な事件や緊急の行政課題等に速やかに対応できる、こういうメリットも見込まれているところでございまして、各議会において適切に御判断いただく、こういうことかと思います。

笠原委員 ありがとうございました。

 私が県議会に初当選したとき、私の家は県庁まで三十分以内でしたが、それでも応招旅費は九千七百円でした。当選間もないころ、同僚議員に、この制度は必要ないんじゃないかと言いましたところ、三時間半かけて車を運転してきて、本会議が終わってまた三時間半かけて帰って、またあすの朝運転してくるのは無理、岐阜市内に泊まらなきゃならない身にもなってほしいと言われました。地方によっても、選出される選挙区によって実情は全く異なるわけです。

 岐阜県議会では、議会活性化改革検討委員会なるものを設けて、費用弁償ほか、いろいろとみずから身を切る改革を進めております。ですから、議会の活性化はそれぞれに任せて、議会の質を高めるべきだと私は思います。

 次に、招集権の問題についてお尋ねいたします。

 この件は、ある地方都市の問題から改善を図られたんだと思います。しかしながら、私を含め、地方議員になられた方々の思いとしては不十分だと思います。

 地方公共団体の組織のあり方に鑑みると、長に招集権が付与されている点は、理解しようと思えば理解できなくもないですが、本来、議会の運営は、議会を構成している議員、その議員がその責任と見識において行うものであると考えます。議会は議長が招集すべきだというのが私の考えです。このことが議会の活性化において大変大切なことであるとも思っております。

 今回の改正案で、議長等から臨時会の招集請求があったにもかかわらず長が招集しないときのみに限定されているのはなぜでしょうか。総務大臣にお尋ねいたします。

川端国務大臣 この部分は、いろいろな長年の議論の経過もございます。

 地方自治法の百四十七条では、「普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体を統轄し、これを代表する。」というふうに書いてあります。これを根拠にして、法律上、議会の招集権も統括代表権を有する長に専属することとされているところでございます。国会の召集は天皇陛下が行う、天皇が国会を召集するというのと考え方は同じようなことになる、いわゆる統括代表権を有するということになっているんだというふうに思っております。

 長だけでなく、今おっしゃいましたように、議長が有するということ等の論点については、過去の地方制度調査会においても議論されてきておりまして、平成十八年の自治法改正においては、第二十八次地方制度調査会の議論を踏まえて、議長が臨時会の招集を請求することができるというふうに改正をされました。

 しかしながら、最近、長が議長等の招集請求に応じず、招集義務を果たさないという事案が生じており、本来議会が有する権限を行使することができない状況に陥ることのないよう、このような特別の事案に対応する必要があります。

 このため、今回の改正は、招集権は統括代表権を有する長に属するという考え方を維持しつつ、議長または議員定数の四分の一以上の者から臨時会の招集請求があった場合に、長が招集義務を果たさないという例外的な状況に限定して議長が招集を行うこととしたものでございます。

 なお、一般的な議会の招集権を議長にも認めるべきという課題については、長と議会の基本構造のあり方にも関係することでありますので、これは、地方制度調査会を含めて随分いろいろな議論の中で最終的にこういう結論に至りましたが、見直し等はこれからも議論されていくものだというふうに思っております。

笠原委員 大臣、ありがとうございました。

 今お答えいただきましたけれども、特別な例をもってこの改正案があったと思いますが、構造自体について本当にもっと議論を深めて変えていっていただきたいと私は切に願います。

 次に、専決処分の問題について質問をいたします。

 専決処分を濫用するようなことは、大きな災害が起こり、議員の参集が困難な場合以外では、長がよほど独裁者でない限り、ないと思っています。しかしながら、時に横暴な専決処分をされる場合が自治体によっては行われることがあるのではないかと思います。

 我が岐阜県においても、平成十九年三月末、つまり県議会の改選時期でありましたけれども、平成十八年度予算の各費目の削減が行われ、例年ならばこれを繰越金として翌年度の財源としたところを、基金に積み立てる措置が専決処分されました。さらに、年度当初に議決された予算の一部を執行保留するという措置がとられ、本来予定していた事業に着手できないという状況が生じました。このような議会軽視があってはならないことだと私は思います。

 今回の改正案を見ますと、長の専決処分について議会が不承認としたときは、長は、必要と認める措置を講じ、議会に報告しなければならないこととすることとありますが、必要と認める措置とはどのようなことをお示しされておられるのでしょうか。総務大臣にお尋ねいたします。

川端国務大臣 今回の改正案では、条例、予算の議決が議会の最も基本的な権限であることから、条例、予算に関する専決処分を議会が不承認とした場合には、長に対して、必要と認める措置を講じ、議会に報告する義務を課すことといたしました。

 この場合の必要と認める措置の具体的な内容については、補正予算の提出や条例改正案の提出なども含めて長の裁量に委ねられており、専決処分が必要となった理由あるいは不承認とされた専決処分の内容などを踏まえて、長が適切に判断するものであると考えております。

笠原委員 簡潔にお尋ねします。

 それでは、不承認とした場合、その専決処分は有効なのかどうなのか、お尋ねいたします。

川端国務大臣 一旦、正常に効力が発生した条例及び予算に基づき行政処分等が行われたときに、その効力が専決処分が不承認とされたことにより否定されることは、法的安定性の観点から問題があるものでございます。

 今回の改正案では、条例、予算に関する専決処分を議会が不承認とした場合には、今申し上げましたように、長に、必要と認める措置を講じ、議会に報告する義務を課すこととしたものではございますが、不承認とされた専決処分は引き続き有効であり、この点は今回の改正案によっても変更はないものでございます。

笠原委員 大臣、ありがとうございます。

 確かに、不承認となって、それが有効でないという状況になった場合にはさまざまな問題が生じますので、その結論はいたし方がないかと思います。

 ただ、今回の改正で、効力がない、影響を与えないということならば、多分、今までの議会でも、そのことについて、例えば専決処分が行われたことについて、一般質問等を通じて長に対して説明責任は必ず行うように要求してきたことだと思います。ですから、この法改正が余り意味をなさないものだとするならば、大変残念なことだなと私は思います。改正するなら意味あるものにすべきだと思っております。

 次に、直接請求制度の見直しについてお尋ねいたします。

 現行法で、解散、解職の請求に必要な有権者署名数が、有権者数の三分の一、四十万を超える部分については六分の一であるものを、改正案では、四十万から八十万の部分については六分の一、八十万を超える部分については八分の一に緩和することは、規模の大きい自治体で署名活動をすることの難しさが背景にあったかと思いますが、このことは民意の反映という点でどのように考えられるのか、総務大臣にお尋ねいたします。

稲見大臣政務官 人口が大規模な地方自治体におきまして法定署名数の収集が困難になっているということは、住民に直接請求を認めた制度創設の趣旨に沿わない状況であるというふうに認識をいたしております。

 民意の反映あるいは民意の平等な反映というふうなことでの御指摘でございますが、議会の解散請求、議員の解職請求、長の解職請求、これにつきましては、その署名が有効になったとしても、その後に選挙権者の投票というのがございます。また、主要公務員の解職請求におきましても、議会に付議をされて三分の二以上の出席による四分の三以上の同意、こういうふうなことで、そこで民意が正確に反映をされるとするならば、議会審議の契機というふうなことで、全ての地方自治体において、直接請求が必要とされる場合に機能する有効性のある制度であることが必要であるということで、今回の改正に至ったという経過でございます。

笠原委員 政務官、ありがとうございました。

 議員及び行政の長は、選挙で掲げた公約を実践していくことが求められ、直接請求は、地方自治体のトップや議員が間違った方向に大きく傾いているときに大変有効な、大切な制度だと思います。しかしながら、安易な解職及び解散請求は行政運営に支障を来したり住民サービスに影響を与えかねませんので、住民にとっての大事な最後の手段としての制度であるべきものと考えます。

 また、その反対の、私の地元ですけれども、岐阜市の例を少しお話しさせていただいて、その御見解をお尋ねしたいと思います。

 市長が、選挙のときに掲げていない、京都にある私立高校の誘致を突然言い出して、御存じだと思いますが、高校の設置は県の所管でございます。その一年前に県内の公立高校の再編計画が策定されたばかりなのに、打ち出したことが市議会を二分する、そういう結果になりました。議会で否決されまして、そのことに納得できなかった市長が任期あと一年というところで辞職したわけです。そして、もちろん任期途中ですから、一年後また選挙が行われたわけです。全く同じ人物が、現在も市長ですけれども。

 その選挙というのは、一回の選挙費用が大体約六千五百万円です。その誘致結果はどうだったかというと、結局、誘致できずにだめだったという結果になっているわけです。トップがみずから混乱の種をまき、多額の税金を使い、結局何も残らなかったことについて、総務大臣の御見解をよろしくお願いいたします。

川端国務大臣 個別の自治体における事案について直接にコメントすることは差し控えさせていただきたいと思うんです。それは御理解いただきたいと思います。隣の県でありますので、実情は私も承知はいたしております。

 長と議会はそれぞれが選挙で選ばれるということでありますので、住民との関係では、ともに正当に選挙で選ばれたという立場でございます。託された民意を背景として御主張されるというときに互いに異なる立場をとるということは、そう珍しくないことも起こります。

 そういう中で、二元代表制においては、そこで議会を通じて活発な議論、熟議を重ねていただいていい方向に進めていただくというのが理想だというふうに思いますが、どうしてもその意見が合わないときに改めて信を問うという形で、例えば、辞職をされる、あるいは不信任案が出る、あるいは議会が解散される、いろいろな形があります。

 その部分で、改めていろいろな形で住民の意思を反映する立場を確認するということは制度的に担保されているものでありますから、個別の事案に、これがよかったとか悪かったとか、費用がどうかということはちょっと議論できる立場ではありませんが、制度的にはそういうことでありますので、いろいろなことが当然ながら起こる、そして、結果として、いろいろな経過を住民の皆さんが見ておられる中で、またこれからいろいろなことを判断されていくということになるのかな、そういう制度であると理解をしております。

笠原委員 大臣、ありがとうございました。なかなか答えにくい事案だったと思いますけれども。

 ただ、多くの自治体で、自分の思いどおりにならないからといって、議会を解散とか辞職するとか、こういった事例が最近多々見られますので、やはりそういうことのないようにというか、混乱するのは住民ですから、そういう点に配慮できるような議会運営がなされることを私も願いますし、これからちょっと改善していかなきゃいけない地方自治体のあり方ではないかと思います。

 次に、一部事務組合からの脱退手続の簡素化についてお伺いいたします。

 これまで一部事務組合は、全構成団体、全ての議会の議決を受けなければ、設置や組織・規約の変更、廃止・解散、財産処分を行うことができませんでした。このことは、構成団体を組織する自治体間において、事業によっては負担が大きいと感じたり、構成団体の一員となっていることによって不利益が生じる場合があっても、手続の難しさから諦めざるを得なかったりすることがあったかと思います。その意味で、画期的であると思いますし、自治体の自立を促す意味でも評価できるものと考えております。

 しかしながら、一方で、行政サービスが滞り、住民が困る事態に陥る可能性も考えられます。

 例えば、私の地元の岐阜市と隣の羽島市は、ごみ処理で一部事務組合を構成しておりますが、ごみ焼却施設の問題というのは大変難しいもので、それが絡んでくるので大変難しい。構成団体を解消したい側と解消したくない側、その双方があって、解消したい側の自治体が通告すれば二年後には解消ということに簡単にはならないと思います。

 また、市町村退職手当のような、一つの自治体が抜けるだけで運営や存続に大きな影響を与えるところもあります。岐阜県が唯一構成団体に入っている笠松競馬を主催する岐阜県地方競馬組合などは、県が脱退すれば存続そのものが不可能になるであろうと思われます。

 地元の例を述べさせてもらいましたが、一部事務組合等からの脱退手続の簡素化は、慎重な対応が必要であり、安易な脱退を助長させない手だてが必要かと考えますが、総務大臣、お考えをお聞かせください。

川端国務大臣 今回の改正の背景として、第三十次地方制度調査会の地方自治法の一部を改正する法律案に対する意見において、「一部事務組合等からの脱退については、これに伴う財産処分やその後の事務処理体制の構築などの課題があることから、これらの事項を構成団体で誠実に協議し予告期間内に適切な結論が得られるよう努力すべきである。」との意見をいただいております。

 そういうこともありまして、今回の改正は、全ての構成団体の協議が調うことを要する現行の脱退の手続の特例として、協議が調うことを要しない予告による脱退の手続を設けるものでありまして、これは、現行の手続では、脱退を希望する地方公共団体の意思が拘束され、過度の負担を強いると言わざるを得ない場合があることを想定したものであります。

 あくまでも手続の特例的な選択肢を設けるものでありまして、改正後も事務執行をより円滑に継続する観点からは、できるだけ現行の手続により、脱退する際に関係地方公共団体間の協議が調うことが期待をされております。

 なお、特例手続による場合も、二年以上という法定の予告期間を設けることによって十分な準備期間を設け、安定的な事務執行の確保を図っているところでありまして、また、脱退に際しての財産処分については、協議によって定められることとしており、残る側が一方的に負担を負うものではないものでございます。

 いずれにしても、脱退に伴う財産処分や脱退後の事務処理体制の構築などの課題については、関係地方公共団体で誠実に協議することが求められているものでありまして、総務省としても、法案の成立後、各地方公共団体に対し、こうした制度の趣旨及び留意点を周知してまいりたいと思います。

 今御指摘のように、抜けたらそのもの自体がなくなるということは、やはりよほどよく話し合っていただかないといけないというのが基本にあるという制度でありますので、そういう対応の中で、それぞれがしっかり御議論をいただきたいというふうには思っております。

笠原委員 ありがとうございます。

 大変難しい問題ですので、脱退者側だけじゃなくて、脱退されるほかの構成団体についても御配慮いただき、二年というのは長いようで短い、その期間にきちんと対処できるような形を、また、この法案が通った後に、こういう事案が出たときにさまざまな問題が出てくるかと思いますので、そういう点についても誠実に対処できるような体制をとっていただきたいと願います。

 次に、修正案に盛り込まれました百条委員会について、提案者にお尋ねいたします。

 当該普通公共団体の事務に関する調査を行うため特に必要があると認めるときは、選挙人その他の関係人の出頭及び証言並びに記録の提出を請求することができるという条文の中に入れられた「特に必要があると認めるとき」とは、どのようなときを示されておられるのでしょうか。修正提案者に御説明をお願いいたします。

橘(慶)委員 笠原委員にお答え申し上げます。

 一般的に、百条調査権の発動や出頭、証言を要請する場合におきましては、調査によって得られる公益、それと出頭、証言を要請された方がこうむる影響というものを比較考量した上で、公益が上回る場合に行われるべきものであると考えているわけです。

 もし出頭等を要請する必要性が乏しい場合にまで関係人の方に対して出頭等を要請できるものだとすれば、関係人の方に不当な負担を強いるおそれがあります。したがいまして、関係人の出頭等の要請については、その必要があると認めるときに限り行われるべきものであると考えるわけであります。

 しかしながら、現行の地方自治法の規定においては、この必要があると認めるときなどの文言がありません。その趣旨が規定上明確でないというふうに考えまして、特に必要があると認めるときという文言を追加することによってこういった趣旨を明確にしようという意図で改正を提案するものであります。

 なお、特に必要があると認めるときというのは、それぞれ個別具体のケースについては、それぞれのいろいろな問題があると思います。それについては、この条文をもとに、それぞれの地方議会において、その個別具体のケースについて判断をいただければと考えているわけであります。

 以上であります。

笠原委員 橘委員、御丁寧な説明、どうもありがとうございました。

 百条委員会を設置するのはよほどのことがない限りないと思っておりますが、人権問題につながることも想定されるので、このことについては、有識者等を参考人として、本来は議論を重ねた上で、濫用されない、けれども、きちんと手順を踏んで、関係人の人権を侵害しない制度としていくのがよかったかなと思うんですけれども、いろいろなことを配慮、また考慮されて提案されたということで御理解いたしたいと思います。

 それで、私が県議会に在職しておりました十八年七月五日に、県庁の裏金問題が発覚いたしました。そこで、執行部による資金調査チームが設置され、その後、弁護士三名によるプール資金問題検討委員会が発足し、その後、県議会において、調査権限の強い百条委員会の設置を希望された議員もおられましたけれども、手続の問題として時間がかかる、裏づけをとらなければならない、偽証罪の問題でプレッシャー等がかかる等の議論が当時あったかと思います。

 最終的には、不正資金問題調査検討委員会が議長のもとに設置され、数回にわたる委員会での検討の後、最終的に再生プログラムが作成されました。これにより多くの県職員が処分されましたが、主導権は時の権力者の意向が大きく働いた結論だったと私は今でも思っております。なぜなら、弁護士もチームも知事が任命しているからです。

 この結果、七人もの関係者の自殺者が出てしまいました。この結果は、長きにわたり、県庁内に暗い影を落とし、県職員の士気を奪い、そして不満と禍根を残しました。このときの処分問題は裁判へと発展し、今なお裁判の結審がされておりません。

 ですから、こういう問題について議論を重ねて、人権を侵さないような形にしていかなければならないと思います。今回の修正案は、百条委員会設置の濫用を避ける意味では理解できますが、この問題については、ぜひとも引き続き検討課題としていただきたいと切に願います。

 次に、修正案に盛り込まれました、政務調査費の名称の変更についてお尋ねいたします。

 名称を変更することにより、今住民の方々から議員に向けられております無駄の排除、活動費の妥当性、透明性の確保につながるのでしょうか。提案者の橘委員、よろしくお願いいたします。

橘(慶)委員 お答え申し上げます。

 これまで、政務調査費につきましては、条文上、交付目的は調査研究に資するものに限定されていたわけですが、今回の修正によりまして、今後は、地方議員の活動である限り、その他の活動についても使途を拡大し、具体的に充てることができる経費の内容については条例で定めるという形にしたわけであります。これに伴いまして、名称については政務活動費という名称に変更することとしております。

 そこで、笠原委員御指摘の、まず無駄の排除や活動費の妥当性といった問題でありますが、これは、政務活動費として具体的に充てることができる経費の範囲を条例で定めるという形にいたしますので、この条例を定める際にそれぞれ地方議会において審議をされる、その審議の過程において、また住民の皆さんが監視をなさる、こういった形によりまして、この政務活動費の無駄の排除あるいは活動費の妥当性ということについて担保されるものと考えるわけであります。

 また、政務活動費が調査研究以外の活動にも充てることができるようになることに伴いまして、笠原委員御指摘のとおり、その透明性を確保することが従来に増して重要となると考えております。

 このため、現行の規定における、議長に対する個々の議員の収入、支出の報告書の提出に加えて、当該議会の議長におかれて政務活動費の使途の透明性の確保に努めるよう義務を課す規定を追加させていただいて透明性を確保する、こういう形の改正を提案しているものでございます。よろしくお願いいたします。

笠原委員 橘委員、御丁寧な説明、ありがとうございました。

 政務調査費というのは、各自治体において、その使途においてさまざまな指摘がなされているところでございます。議員活動と政治活動の違いを述べるような大変な難しさがあります。各自治体によって形式等も違いがあると思います。

 私が県議時代には、当選当初は会派ごとにまとめておりましたけれども、途中から個人に行くようになりました。議長に報告して、一万円以上の支出については領収書の添付が必要とされました。調査研究費、資料購入費、事務所費、人件費など九項目について、別々に分けて書き込むようになっておりまして、改選を迎えるごとに厳格化されていった気がします。

 私は、個人的に一円以上の領収書を添付しまして、議長提出前に議会事務局の方にチェックをしていただきまして、それが妥当であるかどうか、そういう判断をしていただきました。間違った支出がないということを確認した上で提出させていただいておりましたけれども、面倒だったのは、電気料金を後援会、政治団体それから政党支部と三つの分野に分けて三分の一ずつにしていたわけですね、物によっては二分の一。そういったことで政務調査費と政治団体を分けた記憶と、また、年度の開始が違うわけです、そして締めも違うので大変難しかった、ややこしかったという記憶があります。

 私自身で政務調査費の収支報告書を作成していて感じたことは、これは議員個人の見識の違いがあらわれるというふうに思って書いておりました。

 これからますます政務調査費を含めた議会の支出に住民の厳しい目が向けられていく中で、政務調査費のあり方について、総務大臣に御見識をお伺いしたいと思います。簡単に、よろしくお願いいたします。

川端国務大臣 今回の実施は、議員活動が幅広くあるということで、調査費ではなくて、名称を変更して、幅広くいろいろ活動できるようにしようという趣旨だというふうに思います。

 同時に、やはり公費でありますので、それが透明化されるということが非常に大事であるということで、議長への報告義務と同時に、何に使うかを議会で条例で決めるということを法定しましたということは、議会の中でけんけんがくがく有権者の前で御議論いただいて決めていただくということは、大変意味のあることだというふうに思っております。

笠原委員 ありがとうございました。

 最後に、今回の改正案では見送られました監査制度について述べさせていただきます。

 実は私、県議会で最大会派に所属しておりまして、期数を考慮し順番を大事にする県議会ではあり得ないことに監査委員の順番を外されました。原因はよくわかりませんが、一説によると、知事が私に、監査委員になるのを嫌がっての措置だったというふうに人づてに聞きました。

 現在の県議会の監査制度は形骸化していると思います。監査委員会の人選は、県議会議員からの選出を初め、教育委員会と同様に名誉職扱いになっており、形だけになっているように思います。監査制度が有効に機能していたならば、裏金問題も発生が難しかったのではないかと考えます。

 今回の改正案は、改正することに問題はないけれども、その必要性についてはいささかの、ほかの見直ししなければならない事案に対して見劣りがすることを申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

武正委員長 次に、福嶋健一郎君。

福嶋(健)委員 おはようございます。国民の生活が第一の福嶋健一郎でございます。

 十五分でございますので、簡潔なやりとりをお願いいたします。

 法案の中身については、先般来いろいろと議論がされておりますけれども、私は、まず、この法案提出のステップについて大臣にお伺いしたいと思います。

 今回の法改正は、総務省に設置をされました、いわゆる地方行財政検討会議で議論されて、その後、地制調に行って、そしてきょうを迎えているわけですけれども、そもそも、この検討会議と地制調との役割分担は今回どうだったのか。もっと言いますと、その二つの会議体というのはそもそも必要だったのかということについて、理由を含めて、まず伺いたいと思います。

川端国務大臣 経緯はもう委員十分御承知だと思いますけれども、二十二年一月に地方行財政検討会議、これは総務大臣を議長、政務三役、有識者を委員として、地方自治制度全般について幅広く議論を行ってまいりました。

 その中で、二十三年一月に、「地方自治法抜本改正についての考え方」を示されました。これは幅広く、トータルの議論でございました。それを取りまとめて、その中で、総務省としては、速やかに制度化を図るとされた事項について、この改正案として取りまとめをいたしました。

 この当初の案につきましては、当然ながら、これは地方自治法ですから、地方の関係団体のさまざまな御意見があります、実情もございます。そういう意味で、この当初の案について、地方六団体からさまざまな意見が表明されました。特に議論となった事項について、改めて慎重に議論し、合意をしていただくという手順が要るということでありますので、国会議員、それから地方六団体の代表者も構成員であります第三十次地方制度調査会を立ち上げて、その意見を踏まえたという手順で改正案をつくらせていただきました。

 役割としては、地方行財政検討会議というのは、いわゆるスピーディーに検討を行って取りまとめた、これは非常に短期間で大きな方向性としてまとめさせていただきました。

 一方、地方制度調査会は、先ほど申し上げた経過の中でありますが、内閣総理大臣から諮問された事項を調査審議するために、地方制度調査会設置法に基づいて、内閣府において、法定での委員会でございまして、有識者のほかに、地方六団体の代表者、国会議員から構成されております。先ほどのはスピーディーに取りまとめて方向性を示したと申し上げましたが、こちらの方は内閣府に設置された公的な委員会でありまして、丁寧に合意形成を図るということで審議を行ってまとめさせていただいております。

 それぞれの役割を持ってやらせていただきました。

福嶋(健)委員 今御答弁いただきましたけれども、スピーディーとか、先般の和嶋委員の質問にもありました。要は、今までであれば、地方自治法等の改正については地制調をベースで議論をして、政権がかわって、その前に検討会議で、スピーディーというふうなたてつけではあったんだけれども、結局、その分だけ本当にスピーディーだったのかというふうな疑問も実はあって、今大臣に伺ったわけでございます。

 二つ、明確に意味があるということであれば、では、また次の段階で地方自治法を改正するというふうなことがあったときには、この二つの会議体を引き続き併用されるというふうな理解でよろしいでしょうか。

川端国務大臣 大きな方向性としては、先般の地方行財政検討会議でやらせていただきました。これは、設置当時の委員の委嘱期間は二年で満了をいたしておりますので、現在のところ新たな委員を委嘱はしておりませんが、この役割としては、政務三役を中心にスピーディーに検討を進められる点など、調査会とは異なる役割があるということでありますので、特に、大きな方向性としての議論でいえば、いわゆる財務というんですか、自治体の会計においての課題がたくさんまだ残っておりまして、そういうことを含めて、必要に応じて活用されることもあり得るというふうには考えております。

福嶋(健)委員 これはずっと、ちょっと引き続き、私も着意を持って取り組んでいきたいと思っておるところなんですけれども、川端大臣も総務大臣と地域主権大臣を兼務しておられますし、今回の第三十次の地制調の会長の方も、実はその前の、検討会議の自治法改正の分科会というか、そこの主査をされているわけですね。頭になる人が全く同じであるということであれば、本当に、政治主導という名のもとに、スピーディーの名のもとに、この検討会議というのは今のままでいいのか、少しいろいろなことを含めて考えていかなければいけないのではないかというふうな問題意識は持っております。きょうは時間が足りませんので、またそれは引き続き議論をさせていただきたいと思います。

 一方で、いわゆる国と地方の協議について伺いたいんですけれども、時間がないものですから質問を一個飛ばします。

 私の方でお話をいたしますけれども、この法案が閣議決定をされて、国会提出をされたのがことしの三月の九日、また、この法案に関する国と地方の協議が行われたのはことしの四月十六日と、閣議決定後に国と地方の協議で地方自治法のお話がされているという事実がございますけれども、今般の地方自治法改正の趣旨等について、四月十六日ではなくそれ以前に、すなわち閣議決定、国会提出をされた以前に国と地方の協議の場でこのことが議題になったということはあるのでしょうか。確認をさせてください。

川端国務大臣 四月十六日に開催をいたしました国と地方の協議の場においては、社会保障・税一体改革について、災害廃棄物の広域処理について及び地方自治法の改正についての三つを議題といたしました。それ以前に議題になったことがあるかということでありますが、四月十六日以前の国と地方の協議の場において、地方自治法の改正が議題となったことはございません。

福嶋(健)委員 普通に考えれば、いわゆる政権がかわって、国と地方の協議の場をつくる、すなわち、大きな問題については国と地方というのが協議をしながら進めていきますよ、私は与党におりました当時、そういう理解をしておりました。

 この地方自治法の改正というのは、先般来出ていますように、議会のあり方を変えるとか、あるいは長と議長のあり方を変えるとか、さまざまな重要な問題を含んでいると思うんですけれども、これは、議題に出すのは運営している内閣府ではなくてむしろ総務省だと思うんですけれども、なぜこれを事前に議題に出して地方の意見をこういう場で聞かれなかったのか、その理由を教えてください。

川端国務大臣 国と地方の協議の場において、協議対象となる事項というのは、何を議題にするかということは、国と地方の協議の場に関する法律に基づいて、地方自治に関する事項や地方自治に影響を及ぼすもので重要なものというふうに規定をされているんですけれども、そこで、それは重要なものじゃないかという御指摘だと思うんですけれども、実際の協議事項を何にするかは、事前に地方側と十分に相談をしながら、これをテーマにしようということは合意形成の上で決めさせていただいているという経過がございます。

 そういう中で、今回の地方自治法の改正については、地方六団体の代表者にも委員として参加をいただいている第三十次の地方制度調査会において議論を行っているということでありますし、丁寧な合意形成が行われて地方自治法改正に関する意見が取りまとめられたということで、この意見を踏まえた内容でありまして、既に、そういう意味で、第三十次地方制度調査会に六団体のメンバーもお入りいただいて議論をしていただき、地方六団体とは意見の一致を見ているものでありますので、閣議決定前に国と地方の協議の場において改めて協議を行う必要がないというふうに判断をさせていただきました。

 なお、閣議決定後に開かれた国と地方の協議の場においては、この改正案について政府が説明をいたしました。

 地方側からは、例えば知事会長は、この地方自治法の改正案につきましては、地制調での議論を経て、また地方の意見を踏まえていただきまして、いろいろな面で御配慮いただきました、まずはこのことについてお礼を申し上げます、時間は後先になっているかもしれませんが、審議の前にこうして国と地方の協議の場を開いていただいたということを大変うれしく思っておりますし、国と地方の協議の場、私は硬直的な問題ではなく、それまでの話し合いも含めて最終的にこういうところできちんと俎上にのせたということが、国と地方の信頼関係を高める上で非常に重要なことではないかと思っておりまして、その点からも、今回、この案件を国と地方の協議の場にのせていただいたことに対して、心から感謝を申し上げますということで、トータルの流れは十分に御理解いただいているというのを踏まえまして、そしてあと、各三団体からは、ぜひともこの国会で早期成立を図ってほしいという御要望をいただいたということで、形式の部分はいろいろな場がありますけれども、趣旨は、地方の皆さんと十分な意見交換をし、実情を踏まえて合意形成を図るという趣旨でありまして、その部分では一定の手順を踏ませていただいたというふうに思っております。

福嶋(健)委員 今の大臣の御答弁は、御答弁としては一理あるとは思うんですけれども、であれば、そもそも国と地方の協議の場というのは何をやるんですかという根本的な疑問が私はあるんですね。

 ですから、きょうの、今までの私の問題意識としては、そもそも、まず政府の中に検討会議とそして地制調ということで、結果として、この二つがお互いうまく連動していたのか、これからするのか、必要なのかということ等を踏まえて、一方で、国と地方の協議、頭出しをここまでやっているにもかかわらず、ほかのところで皆さん合意しているから議題には上げませんというのもどうなのかなというふうなことはあります。必要な会議はあって、必要じゃない会議があるという、何かその辺のごちゃごちゃとしたことについてやはり整理をしていかないといけないのではないかなというふうに思っておりますが、きょうはこの問題についてはここまでにしたいと思います。

 厚生労働省にきょうはおいでいただいています。ありがとうございます。

 先ほど、実は政務官が来られる前に、川端大臣みずから労働法制のお話をされました。私も全く同じでございまして、今回の法改正では、多様な、いろいろな層の皆さんが、例えば、はっきり言うとサラリーマンが地方議会の議員になることができる、可能性を広げた法案なのかなと思っています。ただ一方で、いわゆる政治の仕組みとして広げても、では実際、サラリーマンで勤めていて、私もそうでしたけれども、いわゆる被選挙権を行使するときには、もう事実上会社をやめなきゃいかぬというふうなことも現実的には起こっていると私は思っています。

 国政は国政の考え方があるんでしょうけれども、地方の議会というのは、そういう意味ではより多くの方が参加すべきだと私は思っております。

 労働基準法第七条においては、公民権行使の保障、すなわち被選挙権の行使について、使用者は拒んではならないということがございます。これに伴って、厚生労働省としてもいろいろなところに監督に入られていると思いますけれども、まず、ここ数年間で七条違反に該当する大きな事案があったのかということの確認と、もう時間がございませんので、きょうは政務官の思いを聞かせていただきたいんですが、いわゆる労働行政の面から、地方自治に市民の皆さんがより柔軟に参加することができる、これに向けての政務官の御所見をぜひ厚生労働省さんの見解としてお聞きしたいと思います。お願いします。

津田大臣政務官 お答え申し上げます。

 厚生労働省の労働基準監督署が、公民権行使につきまして労働基準法第七条違反、つまり、「使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。」ということについて指導したということについては、最近三年間はございません。

 今、福嶋委員から思いも少し述べろということでございました。

 私は、三十年間の労働運動の中で、いわゆる勤労者が有権者の七割近くを占めている中で、しかし、議員は逆に三割弱ぐらいしかいない。国民各層の意見を代表する人たちが議員になるという意味では、やはり勤労者の方々も議員になる道を多くつくるべきではないかという思いで運動をしてきた経過がございます。

 ただ、これを厚生労働省の行政として当てはめた場合にどういうことができるかということについては、これはなかなか難しい点があるだろうというふうに思っております。諸外国の例を見ても、夜に議会を開催するとか、土日に開催するとか、さまざまな工夫を行うことによって、さまざまな立場の方々が議員になることができる環境をつくっている、そのように承知をしているところでございまして、そういう点では、私どももさらに何かいい方法がないか研究をしていきたい、そのような思いでございます。

福嶋(健)委員 ぜひ厚生労働省さんと総務省さん、まさにここで地方の議会の皆さんの声を聞いていただいて、より一歩、二歩前進になるように、私どももまたそういった議論をさせていただきたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

武正委員長 次に、西博義君。

西委員 公明党の西博義でございます。

 きょうは、本題に入る前に、二問、地デジのことについての確認をさせていただきたいと思います。被災地も含めて、地デジへの完全移行がなされました。しかし、若干残された課題もあると思いまして、その確認をお願いしたいと思っております。

 一つは、今までラジオでテレビの音声を聞いていた、こういう視覚障害者への対策でございます。もう一つは、衛星放送等で地デジの番組を受信している暫定的な対策が講じられておりますが、いわゆる難視聴地域への対策の状況でございます。

 まず、視覚障害者対策について、情報通信研究機構の助成金を活用して今まで開発を進めていただきました、地デジ放送を受信できるラジオが先日発売されたというふうに聞いております。大変ありがたいことです。ところが、価格が少々高いというのが難点だと思います。

 そこで、きょうは厚生労働省から来ていただいていると思うんですが、障害者が生活に使う用具を支援する事業、日常生活用具給付等事業というものがありますが、このことについて簡単に御説明をいただきたいと思います。

岡田政府参考人 日常生活用具給付等事業は、障害者や障害児の日常生活がより円滑に行われるための情報・意思疎通支援用具などの日常生活の用具を給付または貸与する事業でございます。

 この事業は、障害者自立支援法に基づきます地域生活支援事業と位置づけさせていただいておりまして、地域の特性や利用者の状況に応じて、各市町村の判断において柔軟に実施していただけるようにしているところでございます。厚生労働省が告示で定めます要件や用具の用途及び形状に該当すれば、各市町村の御判断によりまして、具体的な給付品目、それから貸与の種目を定めることができるということとされているところでございます。

西委員 ありがとうございます。

 私の申し上げた課題の一つの解決のめどが立ったということは、大変喜ばしいことでございます。関係者の皆さんに大変御努力いただきましたことに敬意を表したいと思います。

 具体的にはこれから、今御答弁がありましたように、市町村の判断ということになりますので、各市町村で相談して、これを活用していただければというふうに思っております。もう結構でございます。

 もう一つの課題は、難視聴地域の対策です。

 これは、デジタル放送推進協会が暫定的難視聴対策事業として、平成二十七年三月までの約五年間、東京地区の地上デジタル放送の番組を衛星放送でとりあえず視聴する、こういうふうになっておりました。

 これは、地上系の放送基盤、中継局、それから共同受信施設等が整備されるまでの間の措置ということになっておりますが、難視聴地域の解消に向けて、基本方針、進捗状況、特に個人の負担がどのようになるかということについてお聞きしたいと思います。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 先生今御指摘になられました地デジに伴う難視世帯の関係でございますけれども、私ども、平成二十四年三月末時点の段階でございますが、約十六万世帯というふうに把握をいたしております。

 この解消対策に当たりましては、総務省、放送事業者が一体となりまして、地元の自治体、住民の方々と調整の上、対策計画を策定し、中継局の整備や共聴新設等の対策を進めているところでございます。

 先ほど申し上げました数字のうち、約七割が今年度中に完了する計画となっておりまして、現在、鋭意作業を進めておるところでございます。

 この暫定衛星対策は、先生御指摘になられましたように、平成二十六年度末までの施策となっておりますことから、それまでに対策が円滑に進むようしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

 なお、中継局や共同受信施設等の整備を進めていくに当たりまして、国の支援を引き続き行いまして、個人の負担の軽減に努めてまいりたいというふうに考えております。

 以上でございます。

西委員 今年度中に七割ということで、特に各地の、今地域的な災害が多発しております。中央の情報だけでは十分間に合わないということもありますので、できるだけ早く、しかも、個人の負担についても十分配慮して進めていただきたいことをお願い申し上げます。

 さて、ここから本題に入りたいと思います。

 公明党は、昨年一月、公明党の目指す地方議会改革という提言をまとめさせていただきました。

 特に、長と議会の関係については、二元代表制の本来の趣旨である、議会と首長で権力を分立し、相互に牽制し合うチェック・アンド・バランスを堅持しつつ、単なる対立関係ではなく、自立した関係を目指している。この提言を踏まえながら、提案されている地方自治法改正案について質問をさせていただきます。

 初めに、抜本見直しの手順についてでございます。

 二〇一〇年六月に出された地域主権戦略大綱では、「地域主権改革を更に進めるため、地方政府基本法の制定」、これはいわば地方自治法の抜本見直しということでございますが、これについて、「総務省の地方行財政検討会議において検討を進め、成案が得られた事項から順次国会に提出する。」こういうふうになっております。

 これに対して、地方からは、地方自治法の抜本改正を目的としているにもかかわらず、全体像をはっきりと示さない前に、部分的に重要な制度改正を進めている、こういう批判が出ております。全体像を示さないで部分的な改正を先行させようとしている理由について御説明いただきたいと思います。

川端国務大臣 御指摘のように、平成二十二年に地方行財政検討会議において、地方公共団体の基本構造のあり方、監査・財務会計制度など、今回の改正案に盛り込まれていないことも含めて幅広い検討を行いまして、昨年一月に「地方自治法抜本改正についての考え方」を取りまとめました。

 その中では、御指摘のように、「地方公共団体の基本構造のあり方」、あるいは「長と議会の関係のあり方」、「住民自治制度の拡充」、それから「広域連携のあり方」、「監査制度・財務会計制度の見直し」というタイトルに基づいて論点を整理させていただきました。

 御指摘のように、そういう部分の一番もとになる地方公共団体の基本構造のあり方ということで、論点としてはあるけれども、姿としてやるには非常に大きな問題だから、これからしっかり議論してまとめていきましょうという課題もありました。

 ただ、早急に、いろいろな問題にも直面をしているから、できるだけ速やかに制度化を図らなければならないという整理をされたものもございました。

 そういう意味で、引き続きいろいろな議論をしていく中で、速やかに制度化を図るとされたものについて、今回、改正案を用意いたしまして、そして地方の皆さんの御意見を伺ったら、またそれはやはりいろいろな御意見が出てきたという中で、改めて地方制度調査会の意見を踏まえてということにいたしました。

 この法案に盛り込まれていない事項については、国会での御論議なども踏まえながら引き続き検討してまいりたいと思いますし、そういう意味では、全体像の、議論すべきフレームとしては示させていただいているんですが、その中身において全部そろっていないというふうに御指摘されれば、引き続き検討という意味ではまだそろっていないということは御指摘かもしれませんが、やはり、どういう方向性であれ、たちまちというか、直さなければならないものから手がけたという、御理解をいただきたいと思います。

西委員 今回は、まさに現実に起こった問題の対処ということでは、そこは理解できるんですが、今後、やはり全体像というものを出しながら、その中の位置づけ、今この問題について議論しているんだということをぜひともやっていただきたいと思います。

 次に、基本的な方向性についてです。

 二〇一〇年六月に総務省が示した「地方自治法抜本改正に向けての基本的な考え方」では、「現行の地方自治法の関連規定を見たときに、真にこのような観点から必要なものか、必要以上に画一的になっているのではないかという指摘がある。地域住民が自らの判断と責任において地域の諸課題に取り組むことができるようにする観点からは、地方公共団体の組織及び運営や住民自治の仕組みについても、法律によって定められる基本的事項の枠組みの中で可能な限り選択肢を用意し、地域住民自身が選択できるような姿を目指すべきである。」という考え方が示されております。

 政府が目指す地方自治法の抜本的な見直しについては、地方自治体の選択肢をふやす、つまり、多様化を目指していくというのが基本的な方向なのか、その方向性についてお伺いをしたいと思います。

川端国務大臣 今御紹介いただいたものに全て尽きているわけでございますけれども、やはり考え方としては、住民にとって身近な行政は、可能な限りその身近な地方自治体が自主的かつ総合的に広く担うということが一つの基本である、そして、その中身においては、地域住民がみずからの判断と責任において地域の諸課題に取り組むことができるようにすることという二つの大きな目標にかなう地方自治制度の実現を目指したい、これが基本であります。

 そういう意味で、地方公共団体の組織及び運営や住民自治の仕組みについての基本事項は、憲法第九十二条に基づいて法律で定めるべきものというのが、憲法にそう書いてあるわけでありますけれども、法律によって定める基本事項の枠組みの中では可能な限り選択肢を用意して、地域住民自身が選択できるような姿というのを目指しておるところは事実でございます。

西委員 実は、私ども公明党の提言でも、こういうふうに書かれております。自治体といっても、基礎自治体、広域自治体という種類、その規模などは多様です。議会の組織、運営の自由度を拡大し、多様なあり方が選択できるよう、各自治体の実情に合った実効ある地方議会基本条例の制定を推進する。こういうふうに私どもうたっているわけです。つまり、多様化というものを目指していくべきだというふうに考えております。

 この多様化を目指す方法としては、政府のように地方自治法を改正して規定を詳細にしていく以外にも、別の方法があるというふうに思っております。それは大綱化という考え方です。

 地方自治法には、地方公共団体の組織及び運営に関して大綱を定めるというふうになっていますけれども、法の趣旨と大きく異なり、実際は詳細な規定がたくさんございます。その詳細な規定が地方自治に画一性をもたらす、こういう弊害が指摘されているわけです。

 地方自治体の自立性を高めるという観点からは、地方自治法は大綱化して、詳細な規定は条例で規定すべきだ、こう考えますが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

川端国務大臣 先ほども申し上げましたように、地方自治法は、憲法に規定された条文の附属法典であるという位置づけでありますから、地方自治の本旨に基づいて、地方公共団体の区分並びに地方公共団体の組織及び運営に関する事項の大綱を定めて、国と地方公共団体との間の基本的関係を確立することを目的としているという意味では、やはり基本は、先生おっしゃるとおりの趣旨だと私も思います。

 そういう意味で、地方自治法には、地方自治に関する基本的な準則等必要な規定が置かれているものと考えていますけれども、とはいえ、昔からの経緯でいうと、よくもここまで細かく書いたなということでございました。

 今まで、都道府県の局や部の数の法定制度を廃止、逆に言えば法定していた、定例会の招集回数の自由化、監査委員定数の増加の自由化、議決事件の範囲の拡大等の改正で、条例で定める範囲を拡大してまいりました。また、この法律案においても、委員会に関する規定を簡素化し、条例に委ねるということにもしております。

 今後とも、地方公共団体の自主性、自立性の拡大の観点から、条例に委ねる範囲というのを拡大する方向で見直してまいりたいというふうに思っております。

西委員 全く大臣のおっしゃるとおりでございます。

 ただ、今の流れ、今の方向性は私は大事な方向性だと思うんですが、それにしても現状が余りにも詳細にわたって規定し過ぎているということからすると、今後の改正というのは、本当にそれを一つ一つ手直ししていくだけで抜本的な地方自治の方向性というのを見出せるのかなという問題意識でございます。

 次に、政府は、地域主権戦略大綱で、地方政府基本法を制定する、こういうふうになっておりますが、その内容も、やはり地方自治法の抜本改正というところが基本のように思われます。

 一方で、地方自治法の改正ではなく、自治基本法研究会の地方自治基本法案、全国知事会の地方自治のグランドデザイン、それから当時の神奈川県松沢知事の地方自治基本法の提案、それから世界平和研究所の地方自治法改革基本法の提案のように、地方自治の本旨を具体化し、基本的な原理や制度的な原則を定めた、いわゆる基本法を制定するという提案があります。さらに、大阪府橋下知事の、当時でしたが、今は市長ですが、地方政府基本法などは、自治体の立法権を拡充するために通則法を制定すべき、こんな提案もございます。

 地方自治法は定着しているので残すというのも、これは一つの考え方であるということは私も率直に認めたいと思いますが、基本法それから通則法という提案も、これは検討に値する考え方ではないか。事実、たくさんの皆さん方、またグループが提案をされております。そんな意味で、基本法、通則法、こういう提案に対する大臣の御見解をお伺いしておきたいと思います。

川端国務大臣 地方自治に関して、課題もあるし、こうありたいという思いも含めて、幅広くいろいろな議論がされており、そういう問題意識を背景にして、いわゆる基本法を制定すべきだ、通則法を制定すべきという御提起が、今御紹介があったものを含めて幅広くあることは私も承知いたしております。

 大きな流れと、今までの基本的な考え方としては、現行の地方自治法は、性格上、先ほど御議論もありましたけれども、やはり基本法的な性格あるいは通則法としての性格もかなりの部分で持っていることは事実でございます。そういう意味では、名前も含めて定着しているという状況という実態はございます。ただ、御指摘の部分の中には、やはり傾聴に値する切り口、あるいは御提言もたくさんあるというふうに私は思っています。

 そういう意味では、名前にこだわるとかそういうことではなくて、真摯に耳を傾けるというか、そういう議論の俎上にのせながら、地方自治制度の改革は、やはり前向きに、大胆に取り組んでいく議論が必要だと思っておりますので、地方制度調査会は、またいろいろな御議論、大都市問題中心にやっていただく、そういう議論も含めながらでありますが、こういう意見にも耳をしっかり傾けて取り組んでまいりたいというふうに思っております。

西委員 事実、知事会の皆さん、それから元知事さん初め地方の現場を預かる皆さん方からの声というのもやはり重視していく、傾聴するに値する内容があると思うんです。国の視点だけではなくて、それこそさまざまな各界各層の御意見をぜひともお聞きした上で方向性を定めていただきたいと思います。

 次に、議長の招集権についてお伺いしたいと思います。

 今回の地方自治法の改正では、長が招集義務を果たさない場合、議長に臨時会の招集権を付与する、こういうふうに決めております。

 総務省の「地方自治法抜本改正に向けての基本的な考え方」では、「憲法第九十三条が地方公共団体の基本構造に関し、どのような組織形態を許容しているのかについては様々な立場があり得る。地方自治法の抜本見直しにおいては、日本国憲法の伝統的な理解に沿った二元代表制を前提としつつ、地方自治法が一律に定める現行制度とは異なるどのような組織形態があり得るかを検討していく。」こういうふうに述べておりまして、具体的には、二〇一〇年七月の「地方公共団体の基本構造について」では、五つのモデルがたたき台として提案をされております。

 この五つのモデルのうちの純粋分離型モデルでは、議会の招集権、議事堂の管理権、議会の予算執行権は議会が行使する、完全分離というか純粋分離、こういうことを言われております。純粋分離型モデルの場合では、長ではなく議長に議会の招集権を付与することになるのかということをまずお伺いしたいと思います。

 現行制度とは逆に、議長が招集権を持つことを原則として、議長が招集義務を果たさない場合に、長に臨時会の招集権を付与する。これは、考え方が逆といえば逆かもしれません。主体は議長にある、こういうふうな考え方をとることも可能だと思いますが、この点についても御所見をお伺いしておきたいと思います。

川端国務大臣 五つのモデルを示した中で、今のは純粋分離型モデルということになろうと思いますが、この検討会議で、五つのモデルというのは、両極端からいろいろ議論をしてみようということでありまして、一つは、議会が執行権限の行使に事前の段階からより責任を持つようなあり方というものと、議会と執行機関それぞれの責任を明確にすることによって純粋な二元代表の仕組みにしようという、この部分でいうと後者の方が純粋な形ということであります。

 このモデルは、長と議会が執行機関と議事機関としての役割、責任をより明確化することを基本的な考え方としておりまして、このモデルにおいては、議会の招集権は議会が行使するということを想定しているというふうに思っております。

 議長が招集権を有する場合が、理屈の上でこのモデルに限定されるものではないと思いますが、議会の招集権は、統括代表権を有する長に専属するというふうなことが、ずっとまあ、解釈としてされてまいりました。先ほどの御議論でもありました。

 そういうことでは、一般的に議会側が招集権を持つべきかどうかについては、いわゆる議会と長の基本的な役割分担、すなわち地方公共団体の基本構造のあり方の見直しとあわせて、同じことを言っていることになるんですが、ということで検討されることになるというふうに思います。

 この論点、議会の招集権について、長だけでなく議長が有すること等の論点については、平成十八年の自治法改正において、二十八次の地方制度調査会の議論で、四分の一以上の議員が臨時会の招集を請求することができるということまで改善された。

 今回は、これを前提として、長が招集請求を受けても招集義務を果たさないという例外的な場合に限り招集権を行使できるというふうにしたということで、議長側と長側の丁寧な議論の中で合意形成されたという経過でございます。

 議論としては、憲法解釈を含めて幅広い議論があることは事実だというふうに思っております。

西委員 いわゆるバランスといいますか、行政と議会との間の分離のレベルがさまざまあって、今のは純粋分離ですからいわば極端な一つの例ですが、そういう議論もあるということについてはやはり認識をしておくべきかなというふうに思って質問をいたしました。

 次に、議会の自立性についてお伺いをしたいと思います。

 経済同友会が、ことしの四月に「地方議会の改革について」という提言をまとめております。この提言の中で、首長と議会が相互の抑制と均衡によってある種の緊張関係を保ちながら、議会が首長と対等の機関として、その地方自治体の運営の基本的な方針を決定し、その執行を監視し、また積極的な政策提案を通して政策形成の舞台となることこそ二元代表制の本来のあり方である、こういうふうにうたっておりまして、いわば厳格な分離型の二元代表制を提案しております。

 私たち公明党は、地域主権の改革を進める上で重要なことは地方自治体の自立性を高めるということではないかというふうに考えておりまして、議長の招集権、議事堂の管理権、議会の予算執行権、議会スタッフの充実などについては、議会の自立性を高める上では必要な要件の一つではないかというふうに思っておりまして、このことについてもお伺いをしたいと思います。

 議長の招集権など議会の自立性が高まったことがすなわち首長と議会との間のバランスを大きく崩すことには、これはそのままなっていくということでは必ずしもないのではないか。こういうことについても、地方議会の重要性、今までの首長主導の議会ということよりも、やはり、バランスの上では議会の重要性というのをもっと上げていくべきではないかという趣旨でございますが、この点についてのお考えをお伺いします。

久元政府参考人 今お話にありました経済同友会の御提言につきましては、私ども、詳細に読ませていただきまして、また、これをおまとめになりました部長さんにもおいでいただいて意見交換をさせていただいたところでございます。

 招集権につきましては、先ほど来、川端大臣からお答えがあったところでございますが、そのほか、御指摘がありました議事堂の管理権、また議会の執行権につきましても、地方行財政検討会議などで議論が行われているところでございます。

 私どもといたしましては、この点につきましては、執行機関としての長、また議事機関としての議会の役割分担のあり方に関係するものでありますので、引き続き、各方面から幅広く意見をお聞きしながら検討させていただきたいと思っております。

 一方で、政策立案や法制的な検討や調査等にすぐれた能力を有する事務局職員の確保など、議会の政策形成機能や監視機能を補佐する役割は、御指摘のとおり、地方自治体の自主的な政策立案の範囲が拡大する中で一層重要になるものと認識しておりまして、総務省としても必要な支援を行ってまいりたいというふうに考えております。

西委員 ありがとうございます。

 次に、専決処分についてお伺いします。

 このことについては、いとまがないときの判断は個別具体の例によって異なってきます。要件の明確化を規定するというのは、なかなか難しいことではないかと思っております。したがいまして、全国都道府県議長会の制度研究会報告、「改革・地方議会」という報告ですが、いとまがないときの判断を首長一人に委ねるのではなくて、議長と首長のあらかじめの協議を義務づけるということで解決すべきであるという提案がなされております。

 この両者によって協議して、そして解決を図っていくということについての考え方についてお伺いをしておきたいと思います。

久元政府参考人 専決処分の要件につきましては、これまでも地方制度調査会でさまざまな議論が行われたところでありまして、平成十八年に、その要件といたしましては、特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかと認めるときというふうに、要件の明確化が図られたところであります。

 その前年に全国都道府県議長会からの提言がございましたが、この点につきましては、議論もさせていただきましたけれども、災害時などには物理的に協議できないような状況も想定されますし、また、協議が調わなかったときの取り扱いをどう定めるかといったような問題がありまして、平成十八年改正におきましては、首長と議長との事前協議を義務づけるということにはされなかったものでございます。この考え方は、今回の改正におきましても維持をさせていただいているところでございます。

西委員 さまざまなケースがあるので、必ず両者の協議で合意をしなければいけないというのはなかなか難しいかもしれませんが、十分事前に協議をするということを前提にするということは、私は、今後の運営の仕方としては重要なことではないかなというふうに思っております。

 それから、再議制度の活用についてお伺いしておきます。

 長と議会の対立問題への対処として、再議制度の改正が今回提案されております。しかしながら、再議制度を活用しようというインセンティブというか再議を促す仕組みがなくて、改正によって再議制度が積極的に利用されるかどうかというのがなかなか見通せない部分もあるように思います。

 これもまた同友会の提言ですが、同友会は、一部の自治体では、首長が議会の反対を強引に押し切るために議会の招集を拒む事態や首長主導による議会のリコール運動などの地方自治法が想定していない事態が生じているということで、議会による首長の不信任議決権及び首長による解散権を廃止するということを提言しております。

 これは、いわば場外での泥仕合を防いで、結果として、不信任議決権、解散権の廃止によって、予算案や条例案の議決をめぐって首長と議会が対立した場合には、安易に民意に問うことはできないために、首長と議会の間で十分な政策論議を尽くして妥協点を探る、こんなことが求められている。こう指摘されているように、再議制度に向かわせる効果がこれによってあるのではないかというふうに思うんですが、このことについての御見解を、これも総務省にお伺いしておきます。

久元政府参考人 不信任議決あるいは解散権を廃止して、再議制度をより使いやすいようにしたらどうかという御指摘についてでございます。

 地方行財政検討会議や地方制度調査会などでいろいろな議論をさせていただきましたけれども、そのときに明らかになりましたのは、再議制度はほとんど使われていない、それに対しまして、専決処分は非常に幅広く使われているということであります。

 今回の制度改正は、再議制度が、長と議会との見解が異なるときに、長が議決に対して反論を行うことを通じて議会の議論が活性化する、そして熟議が深まるということを期待しているものであります。

 一方、不信任議決と長の議会解散権につきましては、両者がかなり決定的に対立をいたしまして、その関係が修復不可能な状態に至ったときに、直接住民に判断を委ねて、行政サービスの停滞等の支障を回避する手段として設けられているものでありまして、これは再議制度とは異なる意義を有するというふうに考えております。

 この不信任議決、長の議会解散権につきましては、これは廃止をすべきであるという一方で、国会における解散権のあり方のように、不信任議決に限られないで長が解散権を持つべきだという見解もございます。

 さまざまな議論があるわけでありますけれども、ここは基本構造の根幹にかかわる事柄でありますので、これからもさまざまな御意見などを各方面からいただきながら、引き続き検討を進めていきたいというふうに考えております。

西委員 違法再議についてお伺いします。

 違法再議に関して、これは都道府県の議長会の提言ですが、国や都道府県という上級官庁の裁決によって解決するという従前の国の監督制度を存置した制度となっており、地方分権時代における制度としてはふさわしくないということで、争訟制度、争訟というのは訴えを起こして争うということですが、争訟制度上の審査申し立て前置制度、これを廃止して、議会または首長が直接裁判所に訴えを提起できる制度とすべきである、こういう提言をなされております。こういうことについての考え方をお示しいただきたいと思います。

 また、都道府県や国の関与が何らかの理由で必要であるとすれば、例えば、裁定ということではなくて、地方自治体の判断で、調停とか仲裁とか、もう少し余裕のある緩やかな感じの内容ということが可能であるような、そんな案も考えられるのではないかというふうに思いますが、裁定でばさっとやってしまうということではない、何か工夫がないのかなということも含めて、大臣、お願いできますか。

川端国務大臣 現行法上は、長は、違法と認める議決に係る再議において、さらに同様の議決をされたときは、審査申し立てを経なければ裁判所に出訴することができないというふうになっております。これは、いわゆる審査申し立て前置主義というのがとられております。

 これは、行政部内の係争でありますので、行政部内の係争は政治的な理由によるものが少なからずあるということから、いわゆる法的な問題ではなくて政治的な背景ということがありますから、まずは、司法による判断の前に、できる限り行政部内で解決されることが要請されるということを踏まえて、こういう制度にされているものだというふうに思います。

 そしてまた、この場合における争いが、議会と長との間の機関相互の争いであるために、議会の議決についてその自治体内部の別の機関に審査をさせることはできませんので、地方自治体の適正な運営の確保に責任を担う、例えば、都道府県での場合であれば国、総務大臣、市町村の場合は都道府県、知事による客観的な審査が前置されている、そういう背景での考え方になっております。そういう意味では、いきなり訴訟という前にこういうものがあるというのは、一定の意味があるというふうに我々としては思っております。

 また、裁定ではなく調停や仲裁というものは考えられないのかということでありますが、違法再議に関する訴訟というのは、争訟というのは、議会の議決が適法かどうかの争いでありますので、いわゆる黒か白かということなので、真ん中というのがないという争いでありますので、調停とか仲裁の対象とすべき当事者間の利害調整にとどまらない性質を持っているということで、現行の国または都道府県による裁定とその後の機関訴訟の手続を存置することが適切ではないかというふうに思っております。

西委員 最終的に違法というふうに言っているんですが、違法と判断する前は、必ずしも違法かどうかの時点からさまざま議論が起こってくるんだと思いますので、いずれにしても、十分双方の意見を聞いて、そして方向性を出していただきたいというふうに思います。

 一つ飛ばさせていただいて、政務活動費についてお伺いします。

 今回、政務調査費を政務活動費という名称に変更して、調査研究以外の議員活動に充てられるようにする修正案が提案されております。

 経費の範囲については条例で定めると、先ほどからも議論がございました。この内容について、どのような経費が対象となるのか、どういう考え方に基づくのかということを、アウトラインを示していただきたい。また逆に、議員活動で対象とならないというものの考え方についても、もしございましたら提案者から御答弁をお願いしたいと思います。

稲津委員 お答えいたします。

 これまで政務調査費については、条文上、交付目的は調査研究に資するもの、このように限定をしておりましたが、今後は、議員の活動である限り、その他の活動にも使途を拡大するとともに、具体的に充てることができる経費の範囲について条例で定めることとしております。

 例えば、従来、調査研究の活動と認められていなかったいわゆる議員としての補助金の要請あるいは陳情活動等のための旅費、交通費、それから議員として地域で行う市民相談、意見交換会や会派単位の会議に要する経費のうち調査研究活動と認められていなかったといったものについても、条例で対象とすることができるようになると考えられます。

 どのような経費の範囲を条例で定めるかにつきましては、これは各議会において適切に御判断をしていくべきものであると考えております。

 ただし、あくまで議会の議員の調査研究その他の活動に資するための経費の一部を交付するものであるということから、議会の議員としての活動に含まない政党活動、選挙活動、後援会活動それから私人としての活動のための経費などは条例によっても対象にすることができない、このようにしております。

 また、本会議や委員会への出席、全員協議会への出席、議員派遣等の議会活動は、従来どおり、費用弁償の対象となるために政務活動の対象とはならない、このように考えているところでございます。

 以上でございます。

西委員 それぞれの地方で条例によって決めるということになっております。今アウトラインといいますか、全てではありませんけれども、方向性は大体お述べいただきました。

 もちろん、住民の皆さんの監視も十分行き届いているこんな時代ですから、それは議会においても真剣な議論が必要かと思いますが、今まで、政務調査費の時代でも、地方別で見ますと、議会別で見ますと、若干範囲が曖昧であったという嫌いがあります。今回、このような形にするにおいて、やはりきちっとした範囲ということをそれぞれの議会で決めていただいて、そして透明性を十分発揮していただくということが前提ではないかと思います。

 議員として活動していく、議会の中で活動していくために必要な経費、これは政務活動費として使っていただくことは当然のことだと思いますけれども、逸脱することのないように、これからきちっとした対応を、それこそ、それぞれの自治体の独自性を発揮していただいて執行をしていただきたいということをお願い申し上げます。

 次に、議員の役割についてお伺いをしたいと思います。これは大臣にお願いします。

 全国都道府県議長会は、地方議員は直接住民によって選ばれた公選職という位置づけを明確にするために、地方議員の位置づけを法定化すべきであるというふうに求めております。今確かに、法文上は地方議員としての位置づけというのは必ずしも明確ではないんですよね。そういう意味で、私はその主張はもっともだなというふうに思っております。

 公明党は、附則で議員の位置づけを法定化することを検討するという修正案を提案いたしましたが、今すぐにというわけには、なかなか合意は得られませんでした。

 議員の役割、責務などを明確化することによって、先ほどの政務活動費、その他のさまざまな議員の諸活動に対する役割、性格というものがはっきりしてくるのではないかというふうに思っておりまして、地方議員の位置づけを法定化するということについての大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

川端国務大臣 住民に身近な行政はできるだけ地方の自治体でというふうな大きな流れの中で役割がどんどん大きくなっているということで、議会機能も非常にその役割は大きくなってきていると思いますし、その構成である議員の皆さんの活動範囲も当然ながら広まってきている、責任も多くなっているということはそういうことだというふうに思います。そして、これからますます大きくなっていくのではないか。都道府県会議員、市町村、それぞれの段階でそれぞれ濃淡は、レベルは、多少のあれは違うかもしれません。役割としてはそうだと思います。

 こういう中で、いわゆる公選職として位置づけを明確にして、職責、職務を法制化すべきという意見が都道府県議会議長会から出されている。公明党の皆さんからも御提言をいただいていること、私も読ませていただきました。

 前回のこの委員会では、坂本委員からも同様の議論をさせていただきました。そのときにも申し上げましたけれども、方向性としてそういうしっかりした位置づけが必要であるという認識は大体いろいろ合意形成ができてきているのかな、認識としては。

 ただ、やはりクリアすべきいろいろな問題があるだろうということで、地方制度調査会でも議論されてきましたけれども、政治活動とそれから公選職というか公務であるという部分のどこに境目があるのかということ、それから、そういう議員の活動というものが、選挙で選ばれているとはいえ、地域住民への説明責任という部分でどういうふうに整理するのか、それから、職責、職務を法制化するというときにどういう法でできるんだろうかということを含めて、いろいろな課題、整理しなければならない課題がたくさんあることも事実であります。

 そういう意味で、今回の改正で新たな議会運営ということも行われます。そういうようなこと、それから、こういう国会の議論の場も、いろいろ今回も出ておりますので、そういうものの状況を踏まえながら、引き続きしっかり検討してまいりたいと思います。

 御趣旨のように、やはりこの整理が、実は、先ほどの政務調査費等々、あるいは報酬なのか手当なのかということ、全部リンクしている議論であることは御指摘のとおりでありますので、我々としては課題として認識をして検討してまいりたいと思っております。

西委員 今大臣が御答弁いただいたとおりなんだと思います。今回の通年議会の改正においても、さまざま、今地方において地方議員が果たす役割、地方議会が果たす役割というのはどんどん大きくなってきております。それは、とりもなおさず、これからの日本の将来、やはり地方のことは地方で議論をして解決していくという方向性は、これは間違いのないことだと思います。

 その一つの足がかりとして、地方議員の立場といいますか役割といいますか、あり方というものは、我々、国の立場でも十分議論をして定めていく、こういうことをやはり検討する時期に入ってきているのではないかというふうに思っておりまして、大臣のこれからの活躍に期待をしておきたいと思います。

 では、以上で終わります。

武正委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 きょう提出をされました地方自治法改正案の修正案で、政務調査費の政務活動費への名称変更というのが提案をされているわけです。

 この政務調査費というのは、いろいろな形でたびたびマスコミを騒がせてきた、こういうものだというふうに思います。

 調査研究に使わなければならないとされているこの政務調査費を高級店での飲食代に充てたとか、それでバイクを買ったとか、調査研究目的だからということで本を買って、その代金を、領収書を添付するというのは認められるだろうということで、いろいろ地方議員の方々も御苦労されて、そうなっていたんですけれども、ある日、この本につけられているISBNコードからどんな本を買ったのかということが突きとめられてしまって、大変いかがわしい本を買っていたということがわかってしまったとか、オンブズマン等の情報公開請求でそうした実態が次々に明るみに出て、マスコミ等でも大々的に報じられて、政務調査費の返還を迫られる、こういうケースが相次いでまいりました。

 この政務調査費について、政務活動費というふうに名前を変えた上で、調査研究のほかに、その他の活動にもその使途を広げる、こういうことになっているわけですけれども、これは、事実上地方議員の第二の議員報酬になっているとか、こういう使われ方をしてきて、非常にいわば物議を醸してきた、こういう批判をされているような現状を、かえって国がお墨つきを与えて、法律にそういう形で位置づけられたんだからいいんだという、いわば不適正な使い方を是認する、こういうための法改正だ、そのように言われかねない部分があると思いますけれども、そうした疑問についてどのように払拭をするのか、ぜひお伺いをしたいと思います。

逢坂委員 お答えをいたします。

 これまで政務調査費につきましては、条文上、交付目的は調査研究に資するものに限定されていたわけですが、今回の修正によりまして、今後は、議員の活動である限り、その他の活動にも使途を拡大し、具体的に充てることのできる経費については条例で定めるということとしたわけであります。これに伴って、名称につきましても政務活動費に変更することとしたわけでございます。

 そして、政務活動費として具体的に充てることができる経費の範囲、これを条例で定めるというところが非常に重要なポイントでございまして、その条例の制定に関する議会の審議、その審議の過程に対する住民の監視等により、不適切な支出や無駄な支出は防止、是正することができるというふうに考えております。

 また、さらに、政務活動費が調査研究以外の活動にも充てることができるようになることに伴いまして、その透明性の確保が従来にも増して重要になると考えられることから、現行の規定における議長に対する収入、支出の報告書の提出、これに加えて、政務活動費の使途の透明性の確保に努める義務を議長に課す規定を追加し、透明性をより一層確保することとしております。

 以上のような観点から、修正案提案者としては、委員御指摘のような、政務活動費が地方議員の第二の給与になるのではないかといった懸念については、それは当たらないのではないかと考えているところでございます。

 以上です。

柿澤委員 るる御説明、御答弁をいただきました。

 これは、言葉は悪いですけれども、これまでの政務調査費の取り扱いにおいて、地方議員の方々の中に不適切な処理があった、このことは事実だと思います。

 その一方で、調査研究に使途を限定していることで、事実上、議員活動に必要な経費にも政務調査費をなかなか支出できない、こういう問題があったことも、私自身、地方議員を経験した者として知っているつもりであります。

 特に、地方議員経験者、東京以外の方は驚かれると思うんですけれども、皆さん、都議会の政務調査費というのは、議員一人当たり六十万円なんです。私がいた当時は、地元における個人事務所の維持費や、また議員個人が雇う職員の人件費、こういうものには充てることができなかった。しかし、この一月六十万の政務調査費を調査研究という限定的に捉えられるものに全て充てるというのは至難のわざでありまして、私は、そういう意味では、調査研究に附帯をした、こうした活動に使途を拡大するというのはあってもいいというふうに思っております。

 しかし、例えば飲食代はどうか。例えば、調査研究に資するための会合で、最低限、コーヒーを出した、弁当を出したという話まで私はいけないとは思いませんけれども、しかし、領収書を堂々と添付して、高級料理店やクラブやスナックでの飲食代を政務調査費で払おう、こんなことが今まで行われてきたわけです。

 こういう使い方も、政務活動費とすることで、条例で決めてしまえばできるようになるということであれば、これは先ほど申し上げたような、市民の批判の強い政務調査費のあり方を、名前を変えた上で逆に堂々と認めてしまう、こういうことになってしまうのではないかと思います。この点、どういう運用を行うことを想定されているんですか。修正案提出者にお伺いします。

皆吉委員 お答えいたします。

 委員御指摘のように、政務活動費の名称変更後も、あくまで議会の議員の調査研究その他の活動に資するための経費の一部を交付するものであるということでございます。そうしたことから、議員としての活動に当たるものに限られ、飲食代が使途として認められるかどうかは一概には言えないと承知をいたしております。

 なお、飲食代につきましては、例えば、従来の裁判例において、会議室を借りるなど賃借にかえて少人数の会議を喫茶店で行うなど、喫茶代金は研修会等に要する費用に当たるとして、政務調査費の使途として認められているところでございます。ところが、委員御指摘いただきましたように、バーやクラブなどの飲食費は、社会通念上、会合を行うのに適切な場所とは言えないために、政務調査費の使途として認められていないと承知をいたしております。

 以上です。

柿澤委員 本当に、ここの部分は条例の決め方によってかなり大きく変わり得るところだと思うんです。

 条例で使途を決める、それと十分な透明化、情報公開をしていくということで、住民監視によって適正化を図っていくんだということだと思いますけれども、後ほど住民投票に関して少し質問をさせていただきますが、そもそも地方議会において住民自治の精神にのっとったガバナンスがちゃんときいているのかどうか。このことが今地方議会あるいは地方行政全般において一つの問題になっているところでありますので、ここはやはりきちんと、ある意味では使途を拡大していく法改正を提案した者として、しっかりとチェックを今後もしていかなければならないのではないかというふうに思います。

 平成二十年の地方自治法改正で、地方議員への報酬を、他の行政委員会の委員への報酬と別に切り離して、議員報酬として位置づける法改正が行われました。そのときに、議会活動と議員活動があって、その周りにまた政治活動というのがあって、それらが重なり合っているんだ、こういう同心円状のイメージが示されています。つまり、要するに、議会での本当に狭義での議会活動というのと、議員が選挙区内、地域内で行う活動というのは密接不可分の関係である、そういうことから、ある種実費弁済色の強かった報酬というところから、議員報酬はまた別のものなんだよ、こういうことになったというふうに理解をしています。

 これはこれで、活動自体として、私は議員をやっている以上、理解するんです。しかし、これも、重なり合って一体不可分だからということで、政務活動費はその他の活動にも充てられるということになった、そして議会活動、議員活動、政治活動というのは一体不可分の関係であるということになると、例えば政務活動費としていただいたお金を議員個人の政治団体にそっくり移しかえて使ってしまう、こんなことも行為として、条例でそれもいいということであれば認められるべきだということになってしまうのか。こうなると、法律で調査研究その他の活動というふうに定めて、条例でその範囲を限定するという意味がなくなってしまうように思うんです。

 今申し上げた具体例、政務活動費を議員個人の政治団体あるいは政党に入れちゃうケースもあるかもしれない、こういうふうにして、事実上使途限定を外したお金として使えるようになってしまう、こういうことを条例で定めればやってもいいということなんでしょうか。お伺いをしたいと思います。

皆吉委員 お答えいたします。

 政務活動費は、繰り返しますけれども、あくまでも議員の調査研究その他の活動に資するための経費の一部を交付するものでございます。そうしたことから、議員としての活動に含まれない政党活動、選挙活動、後援会活動、私人としてのプライベートな活動のための経費などは条例によって対象にすることができないものと心得ております。

 したがって、議員個人の政治団体等に移しかえる行為は、議会の議員としての活動に含まれないものと承知をいたします。したがって、条例によってもそのことを対象とすることができないと承知をするところでございます。

 以上でございます。

柿澤委員 この点は、今の御答弁によって大変クリアになったのではないかと思います。

 これも余計なことですけれども、私も、議員をやっていて地方議員もやっていてという経歴ですからわかりますけれども、こういう誘惑に必ず駆られると思うんですよね。だから、そういう意味では、ここの部分を事前にしっかりと見解を示しておくことというのは、私は非常に大切なことだったのではないかというふうに思います。御答弁をいただいて、ありがとうございました。

 政務調査費については、事実上何でも使えるのなら議員報酬と同じだということになって、ならばこれは議員個人の所得として課税すべきだ、こういう話になる。税金のかからない第二の議員報酬だ、こんなふうに言われるゆえんがここにあるわけです。

 政務活動費の使途が、これはまた条例で定められるとしても、例えばその条例の定めっぷりが、使途拡大によって、もう何でもありだという非常に広義な定め方をした場合、これは議員報酬とどこが違うのか、そこに課税しないのはどうだという話になりかねないというふうに思います。この点をチェックするのは一体誰なのかなというふうに思うんですけれども、少なくとも、その人が受け取っているお金が課税所得とみなせるかどうかということは、これは国税庁の税務調査の一つの対象になるんだというふうに思います。

 政務活動費の使途が条例で定められるとしても、その条例の定め方が余りにも使途を広くとっていて、例えば議員個人の生活費に充てられる、そのようにみなされるようなケースがある場合は、税務署は場合によっては税務調査しなきゃいけない、こういうことになるのではないかというふうに思います。こうしたケースに対してどう対応するのか、お伺いをしたいと思います。

西村政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、政務調査費の課税上の取り扱いにつきまして御説明いたします。

 一般論として申し上げれば、地方公共団体の議会の議員が地方公共団体から現行の地方自治法に基づいて政務調査費を受領した場合には、所得税の課税上、雑所得の収入金額となります。雑所得の金額は、一年間の総収入金額から必要経費の総額を差し引いて計算をいたします。この総収入から政治活動のための支出を含む必要経費の総額を差し引いた残額があれば、それは課税の対象となり、残額がない場合には課税関係は生じないということになります。

 国税当局におきましては、納税者の適正公平な課税を実現するという観点から、提出されました申告書等を分析するとともに、法定調書のほか、税務職員が独自に課税上有効な各種資料情報の収集に努め、課税上問題があると認められる場合には税務調査を行うなどして、適正公平な課税の実現に努めているところでございます。

 今先生からお話のありました政務活動費でございますが、法改正後のことでありますので確たることは申し上げられないものの、税務上の雑所得の必要経費となります政治活動のための支出につきましては、支出の態様、目的など個々の実態に即して税法等に基づき適正に判断してまいりたいと思っております。

柿澤委員 抑止効果の高い御答弁をいただいたと思います。

 都議会の政務調査費が議員一人当たり六十万だと申し上げましたが、これは見ようによっては、れっきとした一人分の議員報酬をさらに上回るような金額であるわけです。そもそも、日本ほど地方議員報酬の高い国はほかにはないと言われております。きょう、配付資料、大変わかりやすくグラフになっていたのでお配りしましたけれども、議員一人当たりの年間報酬は欧米の地方議員のほぼ十倍。戦前は日本も地方議員は無報酬の名誉職であったということであるはずですけれども、なぜこのような議員報酬の高額化が進んだのか。総務省はこれをどう考えておられるでしょうか。

川端国務大臣 確かに御指摘のように、明治時代でありますと、府県あるいは市制、町村制では、府会議員は名誉職とするとちゃんと書いてありまして、要するに無報酬ということでありました。

 我が国においてそういう歴史的な経過はございますが、地方議員は、戦前はそういう意味で無給の名誉職とすることができるとされておりましたけれども、その後、地方自治体の役割が大きくなり、事務が複雑多岐にわたることとなって、議員の職務が一般的に多忙となり、都道府県を中心に専業化が進むといった事情などを踏まえて、議員報酬を支給すべきものとされてまいりました。

 議員報酬につきましては、条例においてその額及び支給方法を定めることというふうにされておりますので、各地方自治体において、第三者委員会を設置して、その審議を経て議員報酬の水準を決定するなどの取り組みが行われてきております。

 こういう経過でございまして、やはり仕事が、そういう部分で、ある意味でそれに係る時間的な部分が多くなってきたという経過があるからこうなってきているのではないかというふうに思います。

柿澤委員 一方で、欧米の国々を見ると、スイスなんかはもうほとんど無報酬、日当のみと書いてありますが、ほかの国で額が書いてあるところも、事実上そうした形をとっている国があるわけですね。

 地方議員は無報酬として、実費だけの支給を受けるものとすべきだ、こういう意見も日本でもあります。福島県矢祭町が全国で初めて、町議の議員報酬を議会出席のときのみ日当三万円、こういう形で支給する日当制を導入しました。これは経費削減の観点もあるでしょうけれども、やはり議員は無報酬のボランティアであるべきだ、こういう考え方も背景にあったのではないかと思います。

 こうした考え方について、総務省はどのような見解をお持ちでしょうか。お伺いしたいと思います。

川端国務大臣 地方議会の役割が変化してきて、大きな役割を担っているということの流れの中で、これらの役割を果たすために、先ほど、議員としての役割、責務はどうか、議員の立場をもっと法的に明確にしろという議論もあります。あるいは、その部分で都道府県議会議長会からは、身分の確定化、法制化と同時に、報酬というものをしっかり位置づけろという議論もあります。

 一方で、先生言われたような矢祭町の実例や議論があることは事実でございますが、やはり、その仕事がどういう仕事なのか、どれぐらいの実務的な部分と時間的なものとで責任を果たしていただいているかというのが、各級議会のレベルによっても差があるというふうに思います。

 そういう意味で、それぞれの議員報酬に関して、地方自治体はその議会の議員に対して議員報酬を支給しなければならないということでありますが、その額及び支給方法については条例で定めることになっているという部分で、そこの御判断ということになっているんだというふうに思っております。

柿澤委員 まさに予想していたとおりの御答弁をいただいたんですけれども、それぞれの自治体にはそれぞれの形、あり方があって、そして条例で定めるということになっているわけですので、議員報酬のあり方もそれぞれ条例において定める、こういうことでいいんだ、こうした御見解であります。それはそのとおりだと思うんです。

 だとすると、地方交付税の基準財政需要額の算定において、標準団体における議員報酬は都道府県議が六十八・二万円、市町村議が三十四・五万円、なおかつ、期末手当というか、いわゆるボーナスの基準も定められているわけです。月額で六十八・二万円、三十四・五万円です。これは、議員報酬の全国一律の高額化を事実上促すようなものになってしまっているのではないでしょうか。

 議員報酬は条例で決めるということになっているわけです。ならば、地方独自にみずからの考え方に基づいて議員報酬の水準を決めればいいことであって、基準財政需要額に算入して地方交付税で財源措置をし、この額まではいわばおなかは痛まない、日当制なんかをやって経費削減すればむしろ損する、これではおかしいのではないかと思うんです。

 議員報酬をこうした形で基準財政需要額に算入して交付税措置する、こうした対応を行う必要は必ずしもないのではないかと思いますけれども、見解を伺います。

川端国務大臣 どちらが先か、財政手当てをしているから議員歳費を出しているのか、議員歳費を出しているから財政手当てしなければならないかということにもなりますが、今言われました都道府県議会の財政需要額の算定は六十八・二万円、市町村議は三十四・五万円でございますが、現実の都道府県議会議員の部分の標準団体の平均報酬額は八十万五千二百八十五円、人口五万以上十万人未満の団体で三十八万六千二百二十三円、人口十万以上十五万人未満の団体で四十四万八千百二十一円でありますので、それよりは一定額低い算定基準になっております。

 これはやはり、その議会に対して、議員報酬を支給する旨が地方自治法に定められておりますのを踏まえて、実態を考慮しつつ議員報酬について基準財政額に算定をしておりますので、一応この平均値よりは下回っておりますけれども、一定額は手当てをさせていただいている、実際の需要に対して一定部分を手当てさせていただいているということでございます。

 当然ながら、地方交付税は使途が制限されておりませんので、条例で定める議員報酬の額に、このことがこうしているからということで、制限を加えているわけでも上限をつけているわけでもございませんので、それぞれが必要な部分は手当てを条例でしていただくという趣旨でございます。

柿澤委員 時間も参りましたが、まさに、地方自治体がみずからの独自の考え方を持って条例で決めるというところにも、結局、財政的なこうした一つの鋳型というかモデルがあって、それに基づいて財源措置を行う、こういうやり方をとっていることが、先日地方交付税のことについても議論をさせていただきましたけれども、こうした状況を生んでいる、促している、こうした結果になっているのではないか、このことを御指摘させていただきたいと思います。

 住民投票についてお伺いをしたいと思っていたんですが、時間になってしまいました。済みませんでした。

 ありがとうございました。

武正委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 地方自治法の改正案について質問をいたします。

 最初に、首長等の議場への出席義務の解除の件についてお尋ねをいたします。

 今回の法改正によって、首長が出席すべき日時に出席できないことについて正当な理由がある場合において、その旨を議長に届け出たときは、議会への出席義務が免除されるという規定が盛り込まれることになっています。

 正当な理由については、先日の答弁でも、災害による交通の途絶や現地対応、その団体にとって重要な影響のある公務出張、あるいは重い疾病や傷害、出産といった事情を想定しているとしております。

 首長等の議会への出席義務の解除の規定は、通年議会の場合だけではなくて、従来どおりの定例会や臨時会を開催する場合の審議についても適用されるとしております。

 そこで、大臣にお尋ねしますが、この改正によって、現行の定例会、臨時会を行っているような議会において、首長の出席が今よりも後退することになりはしないか、こういう懸念がありますが、この点についてはいかがでしょうか。

川端国務大臣 長等の判断によって議会審議が軽視されるようなことがあってはならない、御指摘の、御懸念されていることは起こってはいけない、これが基本的な立場でございます。

 通年会期にした場合に、いつでも議会を開会できるということから、執行機関側の負担が過重になってはいけないという御懸念が出てまいりました。ということで、長等の円滑な行政執行に配慮すべき旨の意見が全国市長会等から寄せられました。

 そういう意味で、地方制度調査会において、そのような意見も踏まえて、三議長会の代表の参画も得て議論が行われた結果、長の円滑な職務執行に配慮し、一定の手続を経た場合にも長等の出席義務を免除することができるようにすべきであるという意見が取りまとめられましたことを踏まえて、このような改正に盛り込ませていただきました。

 現行の制度の運用においては、議長による出席要求に対し、急遽出席できない場合に、議長宛てに欠席届を提出することとしている例も見られますけれども、このような届け出は事実上の行為であって、法的に出席義務が解除されるものではございません。このため、今回の改正において、正当な理由がある場合に限定して、出席義務を解除する手続に関する規定を置くことにいたしました。

 この正当な理由は、今言っていただいた例示も申し上げましたが、客観的に正当な理由であることが必要でありまして、議会審議が軽視されることにはつながらないというふうに思っております。

塩川委員 現行の定例会、臨時会で首長の出席が後退することにならないのか。起こってはいけないということですけれども、実際に後退させないという担保はあるんでしょうか。

川端国務大臣 通年議会にするときにという背景からこういう懸念が出てきて、免除されるという規定を設けましたが、今、これを適用しない議会においては、何もしないということで現行どおりとしますと、逆に、法的に正当な理由があっても拒否できる、制度的に何もないんですから、拒否できるということになる、休むことは認めないということにもなりかねないということで、制度的には議会に対して同じ条件を付すという意味で、今までの議会にもこういう免除規定を、出席義務を免除する規定を設けましたが、趣旨は先ほど申し上げたこと、正当な理由においては、円滑に執行機関の職務を遂行する等々のことにおいては、議会はそのことにおいて配慮するという部分は担保する制度でありますので、軽視するということにはつながらない制度であるというふうに思っております。

塩川委員 具体的に、後退させないという担保のお話はありませんでした。

 これまで首長が議会に出席できない正当な理由というのは、議会の方の議会運営委員会などで、その議論を通じて、議会の側での判断を行ってきたわけであります。今回の法改正ですと、そういう正当な理由について、首長側が判断するということへ変更される、議会側の判断から首長側の判断に変更されるということになるんじゃありませんか。

川端国務大臣 そういう意味で、今までは、そういう議会の判断というのも、法的には何の担保も制度的な規定もございません。それは運用としてそれぞれがやっておられたことでありますので、逆に、こういう正当な理由があるときにおいては免除されるということを法定したということでございます。

塩川委員 通年議会の話があるから現行の規定でも盛り込むということ自身が、実態として何か具体の問題があるというよりも、結局は法制度上の整備の関係でそうなっている。それが、結果として現行の定例会、臨時会において首長の出席義務を後退させることになりはしないのか、こういう懸念というのを拭うことができない。議会出席を回避したいがために公務出張などという口実で出席義務の解除を図るといった、議会審議を形骸化させることにもなりかねない。議会の権限を現行制度より後退させるような改定というのは私は認められないと申し上げておくものであります。

 次に、国等による違法確認訴訟制度の創設の件についてお尋ねをいたします。

 地方分権一括法以前の国の関与規定を踏まえた自治体の対応についてですけれども、現行の自治事務に関しては、国の是正要求に対し、自治体は必要な措置を講じなければならないとされております。このような規定というのは一括法以前はどのようになっていたのか、この点についてお答えをください。

久元政府参考人 今御指摘がありました是正の要求の規定は、地方分権一括法によって盛り込まれたものでございます。

 分権一括法の改正前の旧自治法には二百四十六条の二の規定がありまして、内閣総理大臣は、普通地方公共団体の事務処理またはその長の事務の管理及び執行が法令の規定に違反していると認めるとき、一定の要件がある場合に、当該普通地方公共団体またはその長に対し、その事務の処理または管理及び執行について違反の是正または改善のため必要な措置を講ずることを求めることができる、こういう規定がございました。

塩川委員 ですから、現行の法では国の是正の要求に対して自治体側が必要な措置を講じなければならないという規定があるわけですけれども、一括法以前はそれがなかったということであります。一括法以前は、自治体の自治事務に対して是正義務を課す規定は設けられていなかったということであるわけです。

 ところが、分権一括法の是正の要求では、地方自治体に是正を義務づける規定を明記しております。これによって、国は、法定受託事務だけではなく、地方自治体の全ての事務に対して、強制的な是正を含む介入、干渉の権限を持つことになりました。地方分権一括法によって、自治体に対する国の関与が強まったわけであります。

 今回の国等による違法確認訴訟制度の創設というのは、この分権一括法によって強められた国の是正の要求をさらに実効あるものにするための措置だと言わなければなりません。

 そこでお尋ねをしますが、国等の違法確認訴訟制度の創設という今回の法改正を行う契機となったのは何なんでしょうか。

川端国務大臣 国等による違法確認訴訟制度は、国等が是正の要求等を行った場合において、地方自治体がこれに応じた措置を講じず、かつ、国地方係争処理委員会への審査の申し出もしないときに、国等は違法確認訴訟を提起することができることとするものであります。

 現行制度上、国等の側から審査の申し出や訴えの提起を行うことができないことになっておりますので、地方自治体側に不服があり、是正の要求、指示に応じた措置を講じず、かつ、審査の申し出、訴えの提起も行われないときには、問題が解決しない状態が継続することになります。

 このような事態は、地方分権一括法による制度導入時から懸念されていたところでございますが、具体の例でというお問いでございますが、住基ネットに関して東京都国立市及び福島県矢祭町に対する是正の要求を行った際に現実のものとなったところであります。こうしたことから、裁判所の判決により違法を確認する本訴訟制度を創設することといたしました。

 この両件に関しては、例えば、国立市は住民基本台帳ネットワークシステムに不接続状態、違法状態になりまして、東京都知事より是正の勧告を二度出しました。矢祭町は、住民基本台帳ネットワークシステムに不接続状態で、違法状態、福島県知事より是正の勧告を二度実施。そしてその後、最高裁によって合憲の判決が出まして、そういう意味で、国立市に対して是正要求を行うよう、総務大臣より東京都知事に対し指示を行い、国立市に是正の要求がなされました。矢祭町に対して是正の要求を行うよう、総務大臣より福島県知事に対して指示を行い、矢祭町に是正の要求がなされました。

 そういう段階で、いずれも、国立市長、矢祭町長とも何の行動も起こさないという事態で、違法が続いていることの状態を踏まえての措置でございます。

塩川委員 お答えがありましたように、住基ネットの不接続の問題で是正の要求を出された。現行で該当するのは矢祭町ということになると思いますが、地方分権一括法の際の参議院における附帯決議ではこのように書いてあります。

 「自治事務に対する是正の要求については、地方公共団体の自主性及び自立性に極力配慮し、当該事務の」「公益を侵害しており、かつ、地方公共団体が自らこれを是正せず、その結果、当該地方公共団体の運営が混乱・停滞し、著しい支障が生じている場合など、限定的・抑制的にこれを発動すること。」と政府に課しております。

 住基ネットの不接続に関して、矢祭町の自治体運営が混乱、停滞し、著しい支障が生じている事態なんでしょうか。この点について、いかがですか。

川端国務大臣 お問いの趣旨は個別の町の状況についてのことでありますが、この法律の趣旨は、そういう事態があるというときに、制度上、そういうことに対して何らかの国としての行動ができるという仕組みを持たなければいけないという観点からのことでありますので、この矢祭町に対して、個別にこれをするためにつくるわけではありません。そのことは御理解をいただきたいと思います。

 国、地方の関係というのは、義務づけ・枠づけなどの事前規制を縮減して、例外的な事象が生じた場合の手続としてやっていることでありますので、この部分に関して、今、矢祭町の住基ネットが法で決められた部分、最高裁の判決も出たのに接続されていない状況にあるという違法状態にあることはお認めいただけると思いますが、それがトータルとしてどういう状況になっているか、支障が生じているというのは、住基ネット、全国ネットに、途切れているという状況でありますが、どういう判断をするかという、今言われたことに個々にお答えすることは差し控えさせていただきます。

塩川委員 矢祭町が住基ネット接続問題では違法状態というお話をされましたけれども、この参議院の附帯決議というのは、それだけにとどまらず、その結果において、当該自治体の運営が混乱、停滞、著しい支障が生じている場合、こういう場合に限って、限定的、抑制的に是正の要求を発動すべきだという趣旨を述べているわけで、こういった自治事務に対して国が物申すことについて抑制的であるべきだ、こういう参議院の附帯決議を踏まえた対応を考えたときにも、今回の措置というのは、やはり踏み越えるような中身となっているということを言わざるを得ません。

 矢祭の自治体運営が停滞、混乱し、著しい支障が生じているという事実はありません。昨年四月の町長選挙でも住基ネットの接続が争点となりましたが、現職が再選となりました。町民は、個人情報の保護が十分ではない、国が地方自治に介入するのは地方分権に逆行する、住民に全く利便性がなく経費の無駄遣いだと訴えた候補者を選んだものであります。住民は改めて住基ネットへの不参加を継続する意思を示したわけで、この民意こそ尊重されるべきであります。

 是正の要求において当該自治体がその措置をとらないということをもって今回の違法確認訴訟制度の創設となっているということを見ても、こういう矢祭の住民の意思に対して、それに反するようなことを国が行おうとしている。住民の頭越しに民意を否定するようなこういう国のやり方は認められないと言わざるを得ませんが、その点について、大臣のお考えはいかがですか。

川端国務大臣 この制度を当該自治体にどう適用するかということは、参議院の附帯決議とかいうふうな趣旨は、当然の一つの意思として示されていることは我々も承知をしておりますし、そういう個別の判断をどうするかということは差し控えさせていただきますが、現に住基ネットを接続していないということにおいて、例えば、年金受給者現況届の省略とか行政手続における住民票の写しの省略等が不可能になっている、あるいは、住基カードが交付されていないから、国税の電子申告・納税システム、e―Taxを利用できないでいる、転入通知等々の部分に不都合が起こっている等々が行政執行上はやはりネットに接続されていないことで生じていることは事実であります。その部分を踏まえて、我々としてはトータルとして判断をさせていただきたいと思います。

 接続していないけれども何の問題もなく済んでいるという状況でないことは御承知おきいただきたいと思います。

塩川委員 町長選挙の選択を踏まえての、住民の意思として接続しないという選択をしているというのが矢祭の現状ですから、この参議院の附帯決議というのも、違法状態ということだけではなくて、当該自治体の運営というのが混乱、停滞している、こういうことをもって抑制的に是正の要求を行うべきだということを確認しているわけで、今回の矢祭等に対する是正の要求というのは、まさにそういう参議院の附帯決議を踏まえないものとなっている、こちらの方こそ問題だということを言わざるを得ません。

 仮に自治体に違法な事務処理があるとすれば、監査委員制度や議会による監視機能の発揮、住民監査請求とか住民訴訟とか、そして選挙などを通じて住民によって自律的に解決されるべきものであって、国が口を出すというのは地方自治の趣旨に反するということを重ねて言わなければなりません。

 次に、修正案の提出者に百条調査の件についてお尋ねをいたします。

 この百条調査の件については、関係人の出頭、証言及び記録提出の請求をする場合には、特に必要があると認めるときに限るとしております。

 そこでお尋ねしますが、特に必要があると認めるときというのは何を意味するのか、この点についてお答えください。

橘(慶)委員 お答えいたします。

 一般的に、百条調査権の発動、あるいは出頭、証言を要請する場合には、調査により得られる公益と、出頭、証言を要請される方がこうむる影響を比較考量した上で、公益が上回る場合に行われるべきものであると考えます。もし出頭等を要請する必要性が乏しい場合にまで関係人の方に対して出頭等を要請できるということになりますと、関係人の方に不当な負担を強いるおそれがあることから、関係人の出頭等の要請につきましては、その必要があると認めるときに限り行われるべきものであると考えるわけであります。

 しかしながら、現行の地方自治法の規定においては、こういった必要があると認めるとき等の文言はございません。したがいまして、こういった趣旨が規定上明確ではない、このように考えます。特に必要があると認めるときという文言を追加することによりまして、今申し上げたような比較考量、あるいは本当に必要がある場合、こういうことで運用していただいたらどうかということで、趣旨を明確にするものであります。

 なお、当然、それぞれのケースについてはそれぞれの御判断ということになります。したがいまして、個々具体のケースにおいて、特に必要があると認めるときということに当たるか否かについてはそれぞれの地方議会の判断に委ねる、こういう趣旨での改正を提案しておるわけでございます。よろしくお願いします。

塩川委員 百条調査に係る関係人の出頭等というのは、その百条委員会において必要があると認めるからこそ、つまり公益性、公益が上回るからこそ要請をするのであって、特に必要があると認めるときと限定をする理由というのは見つかりません。こういう規定が入ることが、逆に、地方自治法に定められた議会調査権を制限するものになりはしないのか、そういう懸念が出てくるわけであります。

 そこでお尋ねしますが、こういう百条調査の件について、このような法改正を今行う、今見直しを行う、そういう具体的な問題というのは何かあるんでしょうか。

石田(真)委員 塩川先生にお答えをさせていただきたいと思います。

 今回の地方自治法改正案というのは、地方公共団体の議会による適切な権限の行使を確保するために議会制度の見直しを行うということで提出されているわけでありまして、そういう中で実は党内で議論をいたしました。そういう議論の形として、今回の修正案という形で出させていただいたわけでありますけれども、その一つが百条委員会についてでございました。

 先日、坂本議員の質疑がございました。また、先ほど笠原議員の質疑があったわけですけれども、やはり現行法における問題点というのも指摘されているわけであります。

 そして、先日の坂本議員の質問に対しまして、川端大臣がこのように答弁されております。「運用において適正であるのか濫用で行き過ぎているのかということを、今ダイレクトにチェックしたり、そこに物申したりということの仕組みは制度的にはございません。」中略ですが、「制度的にどういうふうにすればそれが円滑に運営できる、本来の使命を果たすことの節度を持って、濫用に当たらないかという仕組みに関しては、今のところ、我々の法律の改正案を含めては手当てをしておりませんが、いろいろな議論の中で、御指摘がある、検討すべき大きな課題の一つであることは、実態を踏まえての議論があることは私も認識をしているところでございます。」このように答弁をされているわけでありまして、私どもは、政府としても、今後より深い議論がなされていくものと理解をいたしております。

 こういう状況の中で、当面の対応として、出頭や証言を要請する場合の要件を明確化することにより、議会による適切な権限の行使を確保しよう、そういうのが今回の修正案の趣旨でございます。

 以上でございます。

塩川委員 今回のような法改正を行うに当たって、今見直すべき具体的な問題があるのかということについての直接のお答えはありませんでした。

 同時に、先日の坂本議員の質問で、現行法についての問題点の指摘があったというお話がありました。坂本委員の質問の中におきましては、長崎県議会の例が紹介をされておりました。

 そこでお尋ねしますが、長崎県議会において、こういった事例をもってこのような修正を行うというのは、余りにも一方の当事者に肩入れするようなものではないのかということを言わざるを得ません。

 資料を配付いたしました。これは、長崎県議会における、諫早湾干拓事業における入植者選定に関する調査特別委員会の設置についての提案理由説明と、反対討論及び賛成討論の一部の抜粋を載せてあります。

 そこで、参考までに読み上げますけれども、一枚目の左側。

 諫早湾干拓事業における入植者選定に関する調査特別委員会の設置を求めることについて、提案理由を申し述べます。

 諫早湾干拓農地の入植者選定手続の適否については、これまで県議会・県政改革特別委員会において、関係書類の提示や長崎県農業振興公社の当時の事務局長等を参考人として出席を求めながら、五回にわたって集中審議をしてまいりました。

 この問題は、かつて国会の論戦でも取り上げられたことから、同特別委員会において政策決定手続や事業決定手続の透明性、合理性等を検証する過程において、個別審査事項として取り上げ、審査を行ってきたものであります。

 特に審査対象になったのは、当時の本県知事であった金子原二郎氏と農林水産政務官であった谷川弥一衆議院議員の子供さんたちが設立した農業生産法人T・G・Fの入植に関し、その選考及び措置が客観的に公平公正に行われたか否かという点であります。

 諫早湾干拓事業は、全体事業費二千五百三十億円が投じられたほか、国から農地を払い下げてもらうことに関し、県から県農業振興公社に二十五億四千四百万円が貸し付けられる予定であることなど、多額の血税が投入され、また、されるだけに、事業の推進に大きくかかわってきた両責任者の親族が、それまで農業にはほとんど無縁であったにもかかわらず、他の入植希望者に優先して入植をかち得たことについては、当時から、これをいぶかしがる多くの県民の声が聞かれたのは事実であり、そうした声に応えるためにも、また、税金の適正な執行を確保するためにも本件の真相を解明することは、県民の負託を受けた議会として当然果たすべき職責でありますとしております。

 あわせて、二枚目の賛成討論、左側の下から七行目から読み上げます。

 御高承のように、平成二十年四月から営農開始した諫早湾干拓農地の総面積は六百七十二ヘクタール、その五%に当たる三十二ヘクタールは、何と東京ドーム七個分の広さと言われており、この広さの農地の中に時の長崎県知事及び主管庁の時の農林水産大臣政務官、それぞれ職務権限を持つ二人の政治家の親族企業が入植しているのであります。

 入植者選定については、六十二の経営体が応募し、入植決定件数は現在四十二経営体と、約一・五倍の高い競争率を、わずか一年前に設立した新規参入の親族企業が選ばれ、しかも、獲得した小江干拓地は、国道の脇に位置し、海面より高く浸水のおそれのない好条件の一等地と言われており、その親族企業は、その三分の一、約十万坪を手に入れたとも言われているのであります。

 県民の声や入植した、あるいは応募された関係者からは、長年の営農経験があれば問題はないが、入植するために急遽つくった会社なら、選定作業の透明性などについて世間の批判を浴びても仕方がない。さらに、この干拓の事業費は二千五百三十三億円、我が長崎県も五百五十二億円に上る血税の事業費を拠出するところであり、一ヘクタールの事業費は三億七千七百万円、親族企業の三十二ヘクタールを事業費で換算すると、実に驚くなかれ百二十億六千七百万円になると言われているのであり、それだけ莫大な公金支出の恩恵を、この親族企業が真っ先に受けるということは、率直に理解しがたく、県民の皆さんの怒りもけだし当然のことだと考えるのであります、このように述べています。

 一枚目の右側に反対討論もありますけれども、この百条委員会の設置には反対としながらも、現行の特別委員会での審議が不十分で拙速だということが反対の理由となっているわけで、問題がある、解明しなくちゃならぬという点では議会としての共通の認識だということであります。

 現行、このように長崎県議会において行われている事態というのは、そもそも百条調査そのものが県民要求に応えたものだ、県民は真相解明を求めているわけで、関係人は出席して堂々と語ればいい、このように率直に思いますが、提出者としてのお考えをお聞かせください。

石田(真)委員 塩川議員にお答えをさせていただきたいと思います。

 先日の坂本議員の御質問は、長崎県だけを言われたのではありません。熊本県のお話もされました。そして、先ほどの笠原議員のお話では、岐阜県のお話がなされたわけであります。

 そしてまた、市町村を見てみますと、これは市町村数がずっと減ってきていますので、一千団体という単位で見てみますと、昭和六十二年、昭和六十三年、これは十三。そして、その後もずっと、例えば平成十九年から平成二十年、十一というように、ほとんど毎年十台の市町村でこの百条の調査が行われているわけであります。

 我々といたしましても、百条委員会の権限について今ここで修正どうこうするということではなしに、先ほども御指摘ありましたけれども、やはり人権の問題とかそういうことに配慮してやるということが今の段階、当面の課題として必要ではないかということでありまして、特定の個別の団体を念頭に置いて今回の修正案を出させていただいたものではありません。

塩川委員 しかし、今回の流れを見ても、長崎の事例というのは人権云々のお話もあったということの御紹介もありました。しかし、実際長崎県議会で行われている百条委員会というのはこういう議論となっているわけで、私は、真相解明こそ県民の要求だ、それに応える百条調査委員会に関係人は堂々と出て説明をすればいいと思う。ましてや国会議員であるならば、当然のことながら、国民、県民の前に説明をする責任があるんじゃないでしょうか。

 民主党の県会議員もこの百条調査委員会の設置に賛成をし、議論をしているところであります。その民主党も含めてこういう修正案の提出者となっているということについて、甚だ疑問の思いもせざるを得ないということが率直なところであります。長崎県の関係者の衆議院議員もこの委員会におられるわけで、私、そういう点でも、こういうあり方というのは本来あってはならないということを言わざるを得ません。

 大臣にお尋ねしますけれども、そもそも百条調査については県議会が自律的、自主的に対応していく、そのことを通じてこそ県民の信頼を得ることができるというふうに思いますが、この点についての大臣のお考えをお聞かせください。

川端国務大臣 百条委員会の趣旨、目的というのは、やはり適正な県政運営ができるようにということの中でいろいろな調査権限を持つ、かなり重い権限を持つということであります。趣旨はそういうことだと思います。

 それは、それぞれの自治体議会において適切に運営されるべきものであると思っております。

塩川委員 百条の委員会を濫用するようなことがあるとしたら、それはそもそも県民の理解が得られないということであるわけで、議会そのものが批判を受けるわけであります。今回の法改正というのは、事件の真相解明を求める住民要求に逆行するものだと言わざるを得ない。こういう修正案は撤回をすべきだと強く申し上げておくものであります。

 最後に、残りの時間で、百九条の二項で、「常任委員会は、その部門に属する当該普通地方公共団体の事務に関する調査を行い、議案、請願等を審査する。」とありますが、今回、陳情という文言が削除されております。これはなぜなのか、お答えください。

川端国務大臣 現行法上、委員会の審査の対象になる「議案、陳情等」については、請願が「議案」のうちに含まれているということで請願と書かずに、「等」が陳情類似の要望、意見書のようなものを指すということで、今まで法律として書いてまいりました。

 ただし、陳情と規定する用例は地方自治法以外に一例しかなく、一方、請願は憲法や地方自治法等に根拠がある規定であることから、今回の改正にあわせ、国会法に倣い、「議案、請願等」と文言を改めることにさせていただきました。これは、文言の使用例の整理という観点でございます。

 文言を改めることになっても、その意味するところは変わるものではないため、陳情については、「議案、請願等」の「等」に含まれるものと解されます。したがって、今後、標準議会会議規則に関し、総務省から陳情の取り扱いを変更させるような働きかけを行う予定はございません。

塩川委員 文言の使用例の整理ということで、意味するところは変わらない、「請願等」の「等」に陳情が含まれるというお答えもありました。

 憲法十六条は、「何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。」と定めております。憲法上は、陳情も本条に言う請願に含まれると解されております。いわば、議員の紹介があるのが請願で、ないのが陳情というだけであり、請願権を保障する重要な手段の一つが陳情ということであります。

 地方議会では、請願を審査するだけではなくて、陳情も審査をしている場合が少なくありません。全国の市議会においても、こういった陳情を審査する処理状況というのが大変多いというのが現状ですが、この点について、確認で御答弁いただけますか。

久元政府参考人 御指摘の、全国市議会議長会が行った実態調査でありますが、平成二十二年の一年間で、各市議会の委員会において、審査した陳情の処理件数は八千百五十五件というふうになっております。また、陳情書のコピーの配付や陳情書の一覧表の配付等の処理で、審査しなかった陳情の処理状況は六千八百八十三件というふうになっております。

塩川委員 つまり、陳情を審査している例が多数あるというのが地方議会の現状でありまして、そういう点では、今回の、陳情という文言が落ちることによって、この扱いというのは変更することになりはしないのかという現実の問題が生まれてまいります。

 そもそも、変更しないというのであれば条文を変える必要がないわけで、国民の請願権を後退させることになりかねないような文言変更こそやめるべきだ、このことを申し上げて、質問を終わります。

武正委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党、重野安正でございます。

 早速質問に入りますが、まず、通年会期をあえて法制化した理由についてお伺いいたします。

 今回の自治法改正の主なものは、地方議会制度の見直し及び議会と長との関係に関する制度の見直しであり、方向性としては、二元代表制のもとでの自治体議会の充実強化に資するものとなっており、昨今散見されます一部首長の強権的な運営に歯どめをかける意味もあると受けとめています。

 そうした上で、幾つかの疑問や懸念がありますので、その点についてただしてまいります。

 まず、今回の改正では、通年会期方式が可能となります。しかし、現行法のもとでも通年会期制の導入は可能で、実際に導入している自治体もあることは御案内のとおりでありますが、あえて今回法制化する理由は一体那辺にありや、そのことを聞いておきたい。

川端国務大臣 お答えいたします。

 現行制度のもとでも、定例会の回数を一回とすることで、いわゆる通年議会を開催している地方自治体が現にあることは御案内のとおりでございます。

 今回の改正は、多様な層の幅広い住民が議員として活動できるようにする観点から、定例会、臨時会を開催することなく、通年の会期を設け、予見可能性のある形で定期的に会議を開く議会運営を行うことを条例で選択できるということを正面から制度化しようとするものであります。

 改正案による通年会期においては、条例で定例日を定めることとしておりますので、年間を通じて住民にとって予見可能性のある形で議会運営が行われるようになります。また、条例で定める日の到来によって長が当該日にこれを招集したものとみなす規定を設けていることから、一般選挙後三十日以内に長が議会を招集する場合を除くほかは、招集行為は不要となります。

 さらに、改正案では、会期が通年になることによる執行機関の負担の増加にも配慮する観点から、長等の出席義務は、定例日に開かれる会議の審議または議案の審議に限定することとし、さらに、長等が議場に出席できない正当な理由がある場合は、議長に届け出たときには出席義務を解除することとしておるところでございます。

重野委員 これまでは、会期ごとに一事不再議の原則が会議の運営上のルールとなっておりました。しかし、今回の通年会期制によってこの原則はどうなるのか、総務省の考えをお聞かせいただきたい。

川端国務大臣 いわゆる一事不再議の原則というのは、一度議会が議決した案件について同一会期中には再び審議しないという議会運営の慣行上の原則をいいまして、法律には規定はございませんが、広くこの考え方により議会運営が行われております。

 通年会期を選択した場合であっても、会期は存在するので、一事不再議の原則が当てはまるということで、これがいわゆる一年間に適用されるということであります。

 ただし、一事不再議の原則については、現行の会期制においても、議会の構成員の変更や突発的な災害等によって議決の前提が大きく変わったような場合等、議決後に客観的な事情の変更があるような場合は当てはまらないものと解されております。

 このような事情変更がある場合は、通年会期の場合も一事不再議の原則は適用されず、同一会期中においても再び審議されることがあり得るというふうに思っております。

重野委員 一事不再議の原則、今の会期制のある状態の中で適用されてきたことが、今後、通年議会が開かれるという状況になっても変わらないという認識なのでしょうか。

 議会というのはいろいろな言論をする場であります。そこ辺を抑制的に持っていくことが原則になるということはいかがなものか。むやみやたらとやることは別としても、しかし、やはり議会というのは多様な、さまざまな論議が尽くされる場であるという大前提があるわけですから、そういう面については、この点について変わらないという対応は、私は検討の余地はあるというふうに思うんですが、全くそういうふうな認識は持ち得ないのか、聞いておきたい。

川端国務大臣 先ほども申し上げましたように、これは議会の慣行上の原則でありまして、例えば、多分ほとんど否決されたときになるんだと思いますが、可決された場合も、同じ案件を何度も何度もというのは、ある種濫用になるということもあるので、一会期中には一回決めたことはもうやらないというのが、慣行上、今までみんな取り入れてきたルールでございます。

 そういう意味では、一度決めたことを改めてもう一回審議して決をとろうというときには、やはり一定の、議会の構成員の変更とか突発的な災害とか、議決の前提が大きく変わった場合には、議決後に客観的な事情の変更があるということにおいては、これは一事不再議の原則は当てはまらないというのが一般の解釈でありますので、そのことをもってということまで排除するものではありませんということでございます。

重野委員 通年議会という大きな変化が、いろいろな意味で、ありよう、あるいはさまを変えていくんだろうと思うんですが、その中で、この通年会期制の導入にあわせて、首長等の議会出席の義務の解除が行われております。その中で、出席できないことについて正当な理由がある場合、その旨を議長に届け出たときには出席義務が解除されることになっている。これは今までなかったことであります。

 そこで、正当な理由がある場合というふうになっているんですが、その正当な理由とは一体何かということ。あるいは、議長あるいは議会が長等の届け出を認めない、長が届けを出すんですが、それを議会あるいは議長が認めない、そういうことは可能なのかどうなのか、それについて聞いておきたいということが一つ。

 さらに、通年会期とせず、これまでどおりの定例会、臨時会とした場合も出席義務の解除規定が適用されるんですが、出席義務の解除はあくまで通年会期を念頭に置いたはずでありまして、なぜ従来の会期にも適用するのか、それについて聞いておきたい。

川端国務大臣 議論のスタートとしては、通年会期にすることによって、いろいろなメリットは当然あります。一年間を通じて、例えば、予算の時期に審議する部分のときは春の一定期間集中的に、それ以外の、間のときは毎月定例何曜日というふうに決めるということで、円滑な審議、充実した審議ができるというふうなメリットがあります。

 一方で、頻繁に長が議会に呼び出されるというと、執行の業務との兼ね合いの部分で、支障を来してはいけないという懸念があるということであります。一方で、定例化して日が決まるということは、その日に公務を可能な限り調整するということは当然していただかなくてはいけないと思うんです。その部分でも、万やむを得ない事情があるということが起こったときには、やはりそれは、「長の円滑な職務遂行に配慮し、一定の手続を経た場合にも長等の出席義務を免除することができるようにすべき」という御意見が地方制度調査会で出てまいりました。

 そういう部分で、正当な理由として、災害による交通途絶や現地対応、その団体にとって重要な影響のある公務出張、重い疾病や傷害、出産などということで、正当な理由ということで届けた場合には免除されるということであります。届け出された場合には免除されるということでありますので、議長側に長の欠席について許可権を与えるものではありませんので、届け出を拒否することはできないという制度でございます。

 そして、経過としては、通年会期のもとでそういう負担がかかってはいけないということでこういう免除制度をつけたときに、通年会期を採用しない議会もそういうことを適用するのはなぜかということでございます。

 現行の定例会、臨時会の場合においても、会期を長期に設定することで、通年会期を採用した場合と同様にいつでも会議を開き得る状況にすることは可能であるし、現にやっているところもある。それから、仮に通年会期のみに手当てをしますと、現行制度上、出席しないことについて正当な理由が生じたとしても出席義務が解除されないという反対解釈が生じる。要するに、出席しなさいと言われたときに、この規定がないと、どんな理由があっても出席義務は解除されないということが法制上生じてしまいますので、そういうことも含めて、現行の定例会、臨時会を選択する団体においても、長等が議場に出席できない正当な理由を届けた場合には長等の出席義務を解除することができることといたしたところでございます。

重野委員 次に、国等による違法確認訴訟制度創設の理由について聞きたいんですが、今回、国による違法確認訴訟制度の創設が行われました。この制度の創設は、国等による関与に対する自治体側からの審査の申し出に限定した国地方係争処理委員会の趣旨に反しているのではないか、分権・自治の点から疑問が残るという点を指摘するところでございます。

 そこで、まず、今回の違法確認訴訟制度を創設した理由は何ですかということをお聞きしたい。

川端国務大臣 御指摘のように、現行法上は、地方自治体の事務処理が法令の規定に違反していると認められるとき等に、国等による是正の要求、指示によって事務処理の適法性を確保する手段が設けられております。

 関与を受けた地方自治体は、是正の要求等に応じた措置を講じる義務を負うことになる一方で、不服がある場合には、国地方係争処理委員会への審査の申し出等を経て、裁判所に訴えを提起することができます。

 しかしながら、逆に国等の側からは審査の申し出や訴えの提起を行うことはできないということでありますので、地方自治体側に不服があり、是正の要求等に応じた措置を講じない場合であっても、審査の申し出、訴えの提起を行わないときは、問題が解決されない状態が継続することになります。

 このような事態は是正の要求等の制度導入時から懸念されていたものでありますけれども、このような懸念が現実のものとなったのは、東京都国立市及び福島県矢祭町に対する是正要求の事例であります。

 こうした現行の制度の不備を改め、司法的な手続を整備するとの観点から、国等が地方自治体に対し是正要求等を行った場合で、地方自治体がこれに応じた措置を講じず、かつ、国地方係争処理委員会への審査の申し出もしないときに、国等がその地方自治体の不作為の違法を確認する訴えを提起することができる制度を創設するものであります。

 国と地方自治体の間で法律の解釈の相違がある場合に、司法手続によりその解消を図ることを目的としておるものでありまして、国が地方に対して介入をするとか、そういう趣旨では全くございません。

重野委員 具体的に聞いておきたいんですが、公有水面埋め立てとの関連について、普天間基地の移設に関連して、公有水面埋め立てについて知事が不承認をした、そういう場合でも国は是正の指示をできるとしております。これについて、辺野古埋め立てが是正指示のプロセスを経て司法判断で認められたら着工が可能になるのではないかとの懸念があります。

 今回の違法確認訴訟制度では、今私が指摘をしましたテーマも対象となるのかどうか、聞いておきたい。

川端国務大臣 今、個別の案件がどうこうということを直接的にお答えはちょっとできかねますけれども、基本的には、国がいろいろな法的な反映を求めて地方に要請をしたときに、これに対して不服があるから係争に申し立てをされた場合はそこで議論ができるんですが、不服の申し立てはしないけれども是正勧告には何もしないという不作為の状況の中で違法な状況が続くことに対して、国が処理をするようにという係争を行うことができるということでありますので、それぞれの案件に関して、そういう状況で国がどうするかというのは、新しく法律ができたときにはそれぞれの判断になるというふうに思います。

 今の状況をどうこうというのは、ちょっと今、突然のお問いでありますけれども、御答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

重野委員 次に行きますが、議会が不承認とした場合の措置はどうなるのかという点です。

 一部自治体では、首長が議会を招集することなく専決処分を連発して、大きな混乱が発生するという事態がありました。

 今回の改正では、専決処分について議会が不承認の場合、長には措置義務が課されることになります。条例や予算について、専決処分に対して議会が不承認であれば、条例の改正や補正予算の提出が通常の措置と考えられます。ところが、法案では、長がとるべき措置として、「必要と認める措置」という非常に曖昧な書き方になっています。具体的に、必要と認める措置とは何を指すのか、お聞かせください。

川端国務大臣 今回の改正案では、条例、予算の議決が議会の最も基本的な権限であるという認識のもとに、条例、予算に関する専決処分を議会が不承認とした場合には、長に、必要と認める措置を講じ、議会に報告する義務を課すということにいたしました。

 この場合の必要と認める措置の具体的な内容については、予算、条例でありますので補正予算の提出や改正条例案の提出などを含めて、長の裁量に委ねておりまして、専決処分が必要となった理由あるいは不承認とされた専決処分の内容などを踏まえて、長が適切に判断するものであります。

重野委員 先ほどもありましたけれども、必要と認める措置、今大臣は幾つか具体的に申されましたけれども、であるならば、そこ辺はきちっと法律の中に書いておくということが私は非常に大事ではないかと思います。

 そういう曖昧な形で法律をつくっていることが、いろいろな意味で混迷、混乱を招くもとになるのではないかという見方を私は持つんですが、大臣はその点についてはどのようにお考えでしょうか。

川端国務大臣 専決処分というのは、しょっちゅうやっていいという問題かと私は思いますけれども、万やむを得ないときに長の責任において行われるということで、その部分が不承認された場合というときに、効力は、これはもう発効いたしますから、専決処分の部分は議会が不承認といえども効力は発生いたします。そういう部分では、行政の執行の安定、継続性という部分の背景に、こういうものは首長の責任において行うというのがもともとの趣旨だというふうに思います。

 そういう意味では、そのことに関して、後に関していろいろと制約的な条件が今おっしゃったようなことまで個別具体につくことまでは、やはりいろいろ議論のあったところでございます。

 しかし、やはりそういうことをやったということが、議会に対して、それから地域住民に対して開かれた形で説明責任が果たせるように、議会もそれを不承認としたということの部分での責任もあるわけですから、説明責任が果たせるようにという意味で、長において必要と認める措置をとるということの趣旨は、こういうことに至った背景とこれからのあり方を含めて、地域の皆さんに議会を通じてはっきりとよく理解をしてもらうという説明責任を果たすという趣旨は、これは必要だろうと。ただ、いろいろきつく縛って、ねばならないというまでは縛るべきではないという経過の中だというふうに私は承知をしております。

重野委員 次に、一部事務組合等からの脱退手続の簡素化について聞いておきたい。

 今回の改正では、一部事務組合、協議会及び機関等の共同設置からの脱退の手続が簡素化されることになります。この簡素化によって、一部事務組合の安定的な運営に支障を来すような事態は発生しないのか、気になるところでございますが、この点について大臣はどのように考えておられるか。

川端国務大臣 現行の制度では、全ての構成団体の議会の議決を経た協議が調わない限り、一部事務組合から脱退することができない、脱退しようとする地方公共団体の意思は過度に拘束されている制度であるという指摘がかねてからされてまいりました。

 そういう意味で、新たに広域連携を活用することをちゅうちょさせる要因にもなっているんじゃないか。一度入ったら、抜けるのは大変難しいということであります。そういうことから、今回の改正では、現行の脱退手続の特例として、必要かつ十分な期間を置くことを前提に、脱退を希望する地方公共団体の意思により脱退できることとしたものであります。

 あくまでもこれは手続の特例的な選択肢を設けるものでありまして、改正後も、事務執行をより円滑に継続する観点からは、できるだけ現行の手続により、脱退する際に、構成団体間の協議が調うことが期待されております。

 なお、特例手続による場合でも、予告期間を二年以上とすることによって十分な準備期間を設け、安定的な事務執行の確保を図っているところでありまして、また、脱退に際しての財産処分については、協議により定められることとしておりまして、残る側が一方的に負担を負うものではございません。

 いずれにしても、脱退に伴う財産処分あるいは脱退後の事務処理体制の構築などの課題については、構成団体間で誠実に協議することが求められているものでありまして、総務省としても、法案の成立後、各地方公共団体に対して、こうした制度の趣旨及び留意点を周知してまいりたいというふうに思っております。

重野委員 以上で質問を終わりますけれども、今の問題もそうですが、一部事務組合であるとかそういう姿というのは、国がある意味では推進をし、促進をしてきたわけですね。それはアクセルを踏み続けてきたんですけれども、今の表現を聞いておると、どういうことを言っても、これは今度はブレーキをかけるのかな、こんなことを考えなきゃならぬような感じがするんですね。

 そこのところは、やはりこれに至る結論を出すまでに自治体はいろいろな苦労をするわけで、そういうものを今度は逆に、今言うような形で、いや、そこは緩めますよというように受け取られるような感じが私はいたします。こうなってくると、やはり国の大きな政策の転換になるのではないか、こういうような気もいたします。そのことでうろたえる、いろいろな苦労をするのは末端の自治体でありますから、そこのところをきちっと、本当に納得できるような説明というものが求められると思うので、そこ辺は心がけてやっていただきたいなと思います。

 以上で終わります。

武正委員長 これにて原案及び修正案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

武正委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。塩川鉄也君。

塩川委員 私は、日本共産党を代表して、地方自治法改正案並びに修正案に対する反対討論を行います。

 まず、地方自治法改正案についてです。

 専決処分についての見直し、条例公布義務の明確化、議長による臨時会の招集権付与などは、この間、一部自治体の長によって起こされた議会無視の横暴な行政運営を防ぐもので、当然であります。また、解職、解散請求に必要な署名数要件を有権者数の規模に応じて緩和することは、住民の意思をより反映し、住民自治の拡充につながるものであります。

 しかし、国等による違法確認訴訟制度の創設は、地方分権一括法によって盛り込まれた地方自治体への権力的関与と一体のものであり、容認できません。機関委任事務が廃止された際、新たに持ち込まれたのが国の関与の法定化であり、自治事務に対しても、是正の要求という権力的関与の規定が加えられたのであります。我が党は、その削除を求めてきましたが、違法確認訴訟制度はこれを補完するものであり、反対するものです。

 また、長等の議会への出席義務を議長への届け出によって解除できるとする規定は問題です。長等が重要な影響のある公務出張などを理由に出席しなくてもよいと法定することは、議会軽視であり、行政のチェック機関としての議会の役割を後退させることとなります。

 さらに、陳情の文言を法文から除いたことも重大であります。私の質問に対し、大臣は、請願等には陳情が含まれると答えました。であるならば、そもそも法文を変更する根拠はありません。憲法十六条が主権者である国民に保障する請願権を後退させかねない問題であります。

 次に、民主党、自民党、公明党、国民の生活が第一等の共同提出による修正案についての反対理由を述べます。

 百条委員会に係る関係者の出頭、証言、記録提出について、特に必要と認めるときに限るなどと極めて制限することは、百条委員会の調査権限を大幅にゆがめ、不正疑惑の真相を究明するその役割を後退させる、重大な改悪であります。

 しかも、本委員会でも長崎県議会の事例を自民党委員が取り上げているように、本修正案提出の背景には、昨年九月、金子原二郎参議院議員と谷川弥一衆議院議員の親族企業であるT・G・Fが諫早湾干拓農地に入植した経緯等の疑惑解明のために、長崎県議会百条委員会が設置され、両国会議員らが出頭要請等についてこれを拒否してきた問題があります。

 百条委員会は、真相の究明を求める県民要求に応え、議会の議決によって設置されるものであります。関係人は出席をして堂々と語ればいいのであって、出頭、証言、記録提出を拒むためにこのような制限を加えることなど、断じて許されないことであります。

 また、政務調査費の名称を政務活動費に改め、調査研究その他の活動へと使途の制限を取り払うことに、国民の理解は得られません。政務調査費をめぐる一番の課題は、使途の全面公開を徹底し、住民の信頼を得ることであります。

 さらに、議長に対して議会出席への配慮義務を課すなど論外であります。

 以上述べて、反対討論とします。

武正委員長 次に、重野安正君。

重野委員 私は、社会民主党・市民連合を代表して、政府提出の地方自治法の一部を改正する法律案について反対、修正案についても反対の立場で討論を行います。

 今回の自治法改正案は、総務省に設置された地方行財政検討会議における検討を踏まえて取りまとめられた地方自治法改正案に対する第三十次地方制度調査会の意見を踏まえたもので、一部自治体の首長と議会の対立の問題の解決も目指されたものだと理解しています。

 地方議会と長との関係に関する制度の見直しは、自治体議会の充実強化に資するものであり、一部自治体の強権に歯どめをかける意味もあると考えます。また、直接請求制度の見直しについても、大都市に住む住民の自治の強化に資するものであり、評価するものであります。

 しかし、国等による違法確認訴訟制度の創設は、国等による関与に対する自治体側からの審査の申し出に限定した国地方係争処理委員会の趣旨に反し、分権・自治の点から疑問が残ります。司法の場で国と自治体が住民の前に論点を明らかにして判断を求めるものであり、また、訴訟の結果も、違法を確認することにとどまり、自治体に対して何らかの義務づけをするものではないとしても、国の施策や主張を押しつけるために使われ、住民の意思に基づく自治体の独自施策を萎縮させ、ひいては分権・自治の推進に逆行しかねない事態を招来するおそれが拭い去れません。

 また、条例の制定、改廃の直接請求の対象の拡大、大規模な公の施設に係る住民投票制度などが先送りされ、地方自治法の抜本改正への道筋や、地方自治基本法や地方政府基本法の見通しが立っていません。

 こうした観点から、政府提出の地方自治法の一部を改正する法律案については反対します。

 また、修正案については、政務調査費の政務活動費への改正や透明性の確保等については賛成でありますが、他方で、百条調査に係る関係人の出頭及び証言並びに記録の提出の請求要件の明確化は、執行機関への監視機能としての百条調査を消極化することへの懸念があり、賛同できません。

 社民党は、分権・自治を推し進める立場から、引き続き、自治法の抜本改正、地方自治基本法などの制定に向け全力を挙げることを申し上げ、討論とします。

武正委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

武正委員長 これより採決に入ります。

 地方自治法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、逢坂誠二君外五名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

武正委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

武正委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

武正委員長 この際、ただいま議決いたしました法律案に対し、皆吉稲生君外三名から、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会、国民の生活が第一・きづな及び公明党の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。皆吉稲生君。

皆吉委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。

    地方自治法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法施行に当たり、次の事項に十分配慮すべきである。

 一 本法による改正事項のうちには、地方側から意見が寄せられたものも多いことを踏まえ、改正内容の周知と適切な助言に努めるとともに、適宜その運用状況を把握し、必要に応じ、制度の見直し等適切な対応を図ること。

 二 議会に付与された極めて強力な権限である、いわゆる百条調査権については、その運用状況を踏まえ、引き続き、その在り方について総合的な検討を行うこと。

 三 政務調査費制度の見直しについては、議員活動の活性化を図るためにこれを行うものであることを踏まえ、その運用につき国民の批判を招くことのないよう、改正趣旨の周知徹底と併せ、使途の透明性の向上が図られるよう、特段の配慮を行うこと。

 四 通年会期方式については、これを選択する場合、長等の執行機関や職員の事務処理に及ぼす影響に配慮する必要があるものとされていることを踏まえ、適正な運用が図られるよう、改正趣旨の周知徹底を図ること。

 五 第三十次地方制度調査会の地方自治法改正案に関する意見を踏まえ本法による改正から除外された、地方税等に関する事項の条例制定・改廃請求の対象化及び大規模な公の施設の設置に係る住民投票制度の導入について検討を行う場合には、同意見に示された考え方を踏まえるとともに、国と地方の協議の場等を通じて地方側と十分な協議を行うこと。

 六 地方議会の議員に求められる役割及び在り方等を踏まえ、その位置付け等を法律上明らかにすることについて検討すること。

以上でございます。

 何とぞ委員各位の御賛同をよろしくお願いいたします。

武正委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

武正委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、総務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。川端総務大臣。

川端国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、その趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

武正委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

武正委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

武正委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十分開議

武正委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 逢坂誠二君外八名提出、大都市地域における特別区の設置に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省自治行政局長久元喜造君、自治行政局選挙部長田口尚文君及び自治財政局長椎川忍君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

武正委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

武正委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。野田国義君。

野田(国)委員 まず冒頭に、九州北部の豪雨、本当に大きな大きな爪跡を残した、甚大な被害を残したということでございまして、被害地の皆さん、被災者の皆様方に心からお見舞いを申し上げたいと思います。

 そしてまた、総務省におきましても、交付税について適切、迅速な対応をとっていただきました。心から感謝を申し上げ、また特別交付税等いろいろな支援策があると思いますので、被災地への御支援をよろしくお願いしたいと思います。

 それでは、質問をさせていただきたいと思います。

 まず、いわゆる大阪都構想と申しますか、今回その法案、関連が出されているところでございますけれども、私、ずっと橋下さんを見ておりますと、権限を強くするというか一元化すると申しますか、恐らく大阪府の府知事になられて、政令市に大阪市と堺市がある、福岡も同じなんですね、福岡市と北九州市がございまして、いわゆる知事の権限というのは、ある意味では大きな政令市をのかしたところ、省いたところの知事なんだというような言い方もいたします、そこを恐らく、なる前となった後、大きな差を感じられたのかな、そういう気がするところでございます。

 そしてまた、私も十六年間市長をさせていただきましたので、首長として、あるいはリーダーとして考えた場合に、やはり権限を集中するということは改革に必要なことでありますので、そういう形を変えていこうというような思いからこういう形になってきたのかなと思っております。

 そしてまた、二重行政という観点からも、私もこれは思っておりました。福岡を見ても、福岡県がやっている美術館、あるいは福岡市がやっている美術館、博物館とかいろいろあるものですから。ただ、そこは利用者がある程度、両方とも多ければいいんですけれども、どうしても片方が少ないというようなことになってきますと、いろいろな費用の問題なんかもあるんですけれども、果たして二つ必要なのかというような論議等もあって、こういう考え方になってきたのではなかろうかなと思っておるところでございます。

 そこで、この間から、国の出先機関の改革の論議がありました。私、そこでも申し上げたんですけれども、私も青年市長会の会合に呼ばれたので行きましたところ、何で反対しているかということを聞きましたところ、権限が余りにも都道府県に行き過ぎる、いわゆる基礎自治体の声がなかなか反映できない、だからやりにくくなる。

 これはまさしく私が思っていたとおりでありまして、私自身もそういうところを何回も何回も経験させていただいたということでございまして、基礎自治体から国の方にいろいろ意見を申し、また国からのいろいろな支援もいただく、そこが三重、四重という形になりますと、非常に風通しが悪くなるということも言えるのかなと思っておるところでございます。

 そこで、国のいわゆる出先機関改革じゃありませんけれども、こういう形で大阪都構想の話が出てまいりますと、そこの大阪府には大きな権限が当然集中するということになるわけでございますけれども、このことは、皆さんどうお考えになっておるのかということをちょっとまず第一点としてお聞きしたいと思いますけれども、逢坂先生、よろしくお願いいたします。

逢坂議員 お答えをいたします。

 まず最初に御理解をいただきたいんですが、今回提案している法案でございますけれども、これは、生活圏とか経済圏がある種一体化している大都市地域において市町村を廃止して特別区を設置する、その手続を定めるというのがこの法案の柱であります。

 したがいまして、ここで、どういう特別区をつくるのか、その際に道府県との関係をどうするのかということについては、この法律の中ではうたってございません。その個別の内容につきましては、特別区の設置に関する協議を行う特別区設置協議会において協議されて、そこで作成される特別区設置協定書の中に具体的なものが記載されることになるわけでございます。

 したがいまして、委員御指摘の、道府県と特別区の権限の配分についても、事務分担、税源配分及び財政調整に関しては、これについては総務大臣との事前の協議が必要とされているわけですが、その他の事項については、基本的に今後地域における自主的な判断に委ねられるということになります。

 したがいまして、我々提案者としましては、道府県と特別区において、地域の実情に応じた適切な権限の配分がなされるということを期待しているものでございます。

野田(国)委員 私は、先にやはり道州制という形がないといけないんじゃなかろうかな、そういうふうに思っているんです。ですから、近畿でいいますと、近畿州ですか、そういうようなことを、まあ九州府とかいろいろとあるわけでありますけれども、そういうことを前提にその権限の強化を図っていくということになればいいんだろうけれども、そこがない中でこういう仕組みをつくっていくというのはちょっと危険性があるのではないかということを思っております。

 そして、二点目といたしまして、これが二百万人以上の人口ということになっております。よろしかったら、この根拠を答えていただきたいなと思います。

山花議員 今回のこの法律案の中では、特別区の設置が可能な市町村というのは人口二百万以上ということになってございます。

 その理由についてということですけれども、先ほど野田委員から御議論もございました二重行政についての指摘があります。二重行政ということが一つと、あとは住民自治等の観点からという、この二つのことが言えようかと思います。

 野田委員が市長を務めておられました八女市ですけれども、今人口が、先ほどホームページを拝見いたしますと六万八千八百六十八名、六月末ということでございますが、例えば、七万人弱のところの自治体ですと、小学校の数とか、あるいはそこを教育委員会がそれぞれ見て回るということもできるのかなと思うんです。

 他方、二百万以上で、先ほど来挙がっております大阪で申し上げますと、人口が二百六十七万人、市立の小学校が五百六十ございます。これを一つの教育委員会で見ているということで、なかなか目が行き届かないであるとか、あるいは街路樹の整備だとか生活保護などについて、中之島の市役所で全て、全域わかるのかというような話もありまして、こういった観点から、公選の区長であるとか公選の区議会を設置することができるというのは住民自治の観点からプラスになるのではないかというのが一つでございます。

 そして、二百万ということで申し上げますと、人口規模において、都道府県を人口の多い順に並べていきますと、中央値より上のところが二百万ということになります。つまりは、一つの都道府県の中に中央値よりも大きな都道府県並みの自治体が存在するという、このことが、一つ二重行政のようなことを招いているのではないかということで、二百万という要件を課した次第でございます。

野田(国)委員 そこで、この区割り、これが大きな難題になろうかと思いますが、区割りをするということは、ある意味では、議員さん、今、大阪市の議員はいなくなるのかもわかりませんけれども、区議とか職員はかえってふえるというようなことにもなるということでございますし、また、今も大阪の方は交付税をもらっているということでありますけれども、それがかえってふえるような状況にもなるのかな、そういうようなことを思っております。

 国との協議が、結果的には事務あるいは税源の配分、この二つに協議が絞られたということでございます。

 国のさじかげんで地方というのは幾らでも変わるということでございまして、私、市町村合併を経験してきました。本当に、五、六年間はそこにエネルギーを集中しておかなくちゃいけないような状況になりまして、ほかのことに手がつけられないような状況になった。恐らく橋下さんもかなりこのことにエネルギーを割くんじゃなかろうかな、そのようなことを思っております。

 そこで、市町村の合併によってどのくらい財政状況が変わったのか。政権前と政権後、そのあたりのところを、地方財政のことでちょっと話していただければと思います。

椎川政府参考人 御質問の趣旨は、平成二十二年度以降、交付税の増額確保ということをしていただいているということに関連してかというふうに思います。

 地方財政は、全般としては基調的に大変厳しい。リーマン・ショック後の地方税収の落ち込みから完全に回復し切れていない、あるいは、地方債の残高も平成二十二年度末で百四十二兆円、交付税特別会計の借り入れ三十兆円も合わせますと二百兆円の水準で高どまりしておりまして、大変厳しいわけでございます。

 しかし、二十二年度に別枠加算という特別な交付税の総額の加算措置を設けていただきまして、二十二年度には一・一兆円の総額の増額、さらに、二十三年度にも〇・五兆円、今年度は〇・一兆円の総額の増額ということをしていただきまして、一般財源の総額についても五十八・八兆円という高い水準を確保していただき、現在まで維持しているということでございます。中期財政フレームなどでもそういうことを書いていただいて、財政の予見可能性というものも高まってきているのではないか。

 地方団体からも、生の声として、リーマン・ショック後の経済対策と相まってこのような措置をしていただいたことによりまして一息ついたというような声もいただいているところでございます。

 さらに、決算のデータで見ますと、経常収支比率という財政硬直化をあらわす指標も、二十一から二十二年度にかけまして、都道府県でいえば全団体で改善。トータルでは、九五・九%という非常に高い水準から九一・九%という水準に落ちております。さらに市町村についても、九一・八%から八九・二%というふうな水準になっておりまして、基調としては厳しいんですけれども、一定の改善効果が見られるというふうに考えてございます。

野田(国)委員 どうもありがとうございました。

 これは、地域主権、地方が主役のそういう仕組みをつくっていかなくちゃいけないということは、恐らく皆さん共通したことだと思いますので、それが実現するように、隗より始めよという言葉もございますけれども、そういう気持ちで果敢に挑戦をしていくということが大切なことではないかと思います。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

武正委員長 次に、西野あきら君。

西野委員 自由民主党の西野あきらでございます。

 今次提案をされました大都市地域における特別区の設置に関する法律案、そもそもこの法案を提案されたきっかけは、次のことにあると思うんですね。

 その最たる理由は、昨年四月の統一地方選挙、具体的に大阪の例をとりますと、大阪府会議員選挙で、二重行政を廃して仮称大阪都構想を標榜した勢力が過半数を制することになりました。続いて、十一月に大阪府知事選挙と市長選挙、いわゆるダブル選挙が実施をされました。このときも、その仮称大阪都構想を唱えた勢力が圧勝いたしたわけであります。いわば民意がそこにあったということであります。

 それを受けまして、私ども自由民主党は、十一月のそのダブル選挙が終わってから直ちに、党内でこの問題についての検討PTを立ち上げたわけであります。そして、年内、昨年中に骨子だけをまとめました。そして、年が越えましたことしになってから、友党であります公明党さんとも協議をいたしながら、いち早く自公で、いわば地方自治法の改正なるものを四月の十八日に実は提案いたしたわけであります。それと相前後いたしまして、各党会派におかれましてもそれに同調をいただきまして、七月に、七会派共同でこの法案が提出をされるに至ったわけであります。

 実は、私ごとでありますけれども、私は、地方議員の大阪府会議員に初当選をしましたのが昭和五十年でございます。そのときから、いわばこの二重行政を廃せという声を上げて取り組んできたわけでありますが、なかなかその状況には至らなかったことであります。それだけに、今回、七会派が相そろって、これを受け入れるための法案の提案に至ったということは、私にとってもまことに感慨無量のものがあるわけであります。

 ところで、この二重行政なるものの最たる例がさまざまあるわけであります。

 大阪の例をとりますならば、大阪市内に、定数、市会議員としては議員さんは八十六名いらっしゃいます。同じ大阪市内に、同じ立ち位置の大阪府会議員が三十三名おります。ともに大阪市のことを議論いたしておるわけであります。

 一方では、その行政の長として、大阪市を包含した大阪府知事、そして、大阪市を当然責任を持つ大阪市長、いわば大都市大阪の中に船頭が二人おりまして、片方が右と言うと片方が左と言う、これでは大都市の方向づけがされないわけであります。したがって、そういういわば矛盾が一つそこにあるということであります。

 今お話もありましたとおり、箱物もそうでございまして、図書館だとかあるいは体育館もお互いに大阪市と大阪府は競争して建てておるという状況。とりわけ、水道事業なんかを見ていますと、同じ淀川河川の中に、取水場も、大阪市はもちろん取水場はつくる、大阪府も別途取水場をつくる、浄水場もつくるというようなことで、大阪市域に対する、大都市に対する実質二重の投資がされておるのも実情ではないかなというふうに思います。

 交通関係で見ましたら、例えば、地下鉄でございますけれども、大阪の地下鉄を見ますと、大阪の都市の内部の交通網でございまして、隣接をする市への延伸なんかやっていない、あるいは、私鉄との相互乗り入れもごく一部だけでございまして、ほとんどやっていない。大阪市域だけの利便に供するためのものであるという。交通であれば、当然ながら広域にやるべきである、こういう思いもいたしておったところであります。

 バスなんか見ていますと、大阪市と東大阪市の境界がございまして、その境界のところに一つの商店街があるんですね。アーケードがございまして、そのアーケードで、一方は大阪市、一方は東大阪市、こうなっているわけです。同じ商店街の中に、行政区が二つになっているわけです。片方は、バスは高齢者になったら無料になっているんです。向かい側の東大阪市は有料なんです。同じ大阪府民として、商店街は同じ、向かい合わせをしているのに、非常に、弊害といいますか問題がそこにも出てきておる。

 今こういった二重行政の弊害的なものをちょっと列挙いたしましたけれども、これらのことは、その行政に携わる者あるいは経営の形態によって私は改善をされてくることだろうというふうに思っています。

 現に水道なんかは、今、大阪広域水道企業体というものがありまして、大阪市もそこに参画をして、一本化をしていくという方向になっていますし、市バスについてもあるいは地下鉄についても、この際民営化しよう、こういうことを言っているわけでございまして、行政の努力によって、二重行政なるものはかなり改善されていくはずであります。そういう動きが出ておることは大変ありがたいというふうに思っておるわけであります。

 それでは、この法案が成立をした場合、この二重行政解消に、今申し上げたもの以外に一体どんなことが、どんな役割を果たすことができるのか。二重行政の解消に対してどんなことができるのかという問題が一つ。それから、平たく言えば、この法案が通ったらどんなメリットがその地域住民にあるのか、できれば具体的にお示しをいただきたいし、あるいは、当然ながら、この大都市の特別区ができるためには議会の同意と住民投票というプロセスが必要であろうと思いますけれども、それ以外に、やろうとした場合にどういうことをやらなければならない、あるいはできるのかということを、ちょっと具体的に例を挙げてお示しをいただければありがたいと思います。

坂本議員 お答えいたします。

 今、西野先生言われましたように、それぞれの都道府県あるいは市、政令市の行政がお互いに話し合って一つにできるものならば、二重行政を解消できるものならば、それにこしたことはありません。

 しかし、今回の法律は、特別区を設置するようにしてほしいという強い要望がありました。それに対して、やはり多くの民意が特別区設置ということであらわれました。そのことに対して、特別区を設置しようとするその枠組みは法的にやはり受け皿としてつくっておかなければならないということで今回の法律をつくったわけでございまして、例えば、大阪に例えますと、この法律をつくることで、大阪都構想の実現が望ましいとか、あるいは市民生活にメリットがあるという価値判断に基づいて成立したものではありません。あくまでも枠組みとして、法的な受け皿としてつくったものであるということを御理解いただきたいと思っております。

 それから、いろいろなメリットといたしましては、やはり住民の意思がより細かに反映される、区議会を通してあるいはその議会を通して、区長さんを通して細かに住民の生活に反映されるということは、一つの大きなメリットになろうかと思います。

 あと、大阪のさまざまな諸問題につきましては、松浪委員の方からもお答えさせていただきたいと思います。

松浪議員 委員が、もう本当に長年府議会議員をされまして、それこそ大阪の問題は一番熟知されていると思いますけれども、今回、今、坂本委員が申し上げましたように、我々のこの法案は、あくまで価値判断をするものではありません。

 しかしながら、今進んでいる状況というのを見ますと、ほとんどの二重行政の問題、箱物からその他の問題、今網羅されたと思いますけれども、例えば病院なんかにしても、府立病院と市立病院の一体的な運用とか、そういったところにも現在改革が進んでいるというふうに聞いております。特に大阪の場合は、府と市が、フシアワセと言われるぐらい首長が連携がとれないということが長年ありました。

 ですから、現在は、先般の十一月の選挙でこれが一体的になっているということが考えられるわけですけれども、将来にわたって府と市のトップが今のような連携をできるとは限らないわけでありまして、病院の一体的な改革であるとか、こうしたものを永続的にするという意味では、我々は、実は可能性は大きいのではないかなというふうに考えている次第であります。

西野委員 お答えのように、この法案が成立をすれば、あとは、大都市が今度は逆にどう対応していくかということにかかっておるんではないかというふうに思っております。要するに、受け皿ができた、手続法である、こういうふうに私も理解をしておるところでございます。

 ところで、時間がありませんので一点だけお尋ねをしておきたいんですが、住民投票というプロセスを経るわけであります。

 例を挙げますと、大阪市に隣接をいたしました東大阪市が同時に特別区として参入をする場合は、当然ながら東大阪という市がなくなるわけでございますから、これは住民投票が必要だろう、こう認識をしておるんです。

 ところが、同じ基礎自治体であります五十万都市東大阪なんですが、これが、例えば二十万と三十万とかいうふうに案分をして、区分して、後日、大阪の方が仮称大阪都構想なるものが実現をした後に参入をしようとした場合には、後の場合には、住民投票はやはり必要なんでしょうか。それとも、東大阪が一本で、一つの行政区、一つで参入するなら、これは合併扱いということになるように聞いているんですが、どういうことになるのか。

 案分の場合は住民投票が要る、案分しないで一つとして後日参入した場合は、これは合併扱いだから住民投票は要らないというのか、そこらあたりをちょっとお尋ねしたいんですが。

坂本議員 お答えいたします。

 あくまでも住民の意思は一番大事だと思います。ですから、議会の議決、そして住民投票、これは最も尊重しなければならないことであるだろうと思います。

 ですから、最初に特別区を設置する場合、これはもう一番最初の制度でありますので、やはり全ての区で住民投票を実施する。そして、もちろん議会の議決を経た上で住民投票を実施するという二段構えになっております。

 そして、その後、おくれて追加的に合併しようとする場合には、やはり一つの制度がスタートしたという事例がありますので、そこで住民の方々はいろいろな判断ができると思います。そういうことで、合併と同じ扱いで、住民投票を義務づけなくても、議会あるいは首長の判断でできる。もちろん独自の判断で住民投票を行うこともできます。

 ただし、今言われましたように、東大阪市のように、東大阪市が二分される、自分たちが住んでいた東大阪という名称がなくなるということは、住民の共同意識やあるいは市民生活に大きな影響を及ぼしてまいりますので、二つ以上に分割される場合には、そこで住民投票を義務づけるというような法のたてつけ方にしているところでございます。

西野委員 今お答えのように、隣接する市が同じ五十万都市だとしましても、案分される場合にはやはり必要だ、そうでない場合は必要でないというのが、ややわかりにくい問題点もありますが、この法案を、皆さんの協力をいただいて、ぜひ一日も早く成案を得て、地域でそういう意向がある場合には、その民意をしっかりと国の方で受けとめることができる受け皿案としての法案が成立することを私も期待をして、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

武正委員長 次に、斎藤やすのり君。

斎藤(や)委員 国民の生活が第一・新党きづなの斎藤やすのりと申します。

 突然私ごとなんですけれども、十五年ほど前に、私、サラリーマン時代に五年間大阪に住んでおりました。本当に人がおおらかで、人情があって、若いときに育ててくれた場所ということで、私は大変恩を感じている土地なんです。

 一方で、ほかの土地では余り経験できないことも大阪で経験しました。私の職場のスタッフが目の前でひったくりに遭ったわけです。五年間のうちに二回ひったくりに遭いました。大阪の皆さんには本当に申しわけないんですけれども、今でも大阪市というのは、悪く言うわけじゃないんですが、ひったくり、路上強盗、自転車泥棒、街頭の犯罪発生件数は全国で一番でございます。

 それから、西成のあたりに行きますと、釜ケ崎ですか、本当にホームレスの方も多いです。ほかの都市ではあんなに多くないですよね。これも全国ワーストワン。

 治安だけじゃなくて経済も地盤沈下しておりまして、事業所の減少率、これは全国平均の二倍です。ですから、法人市民税も大阪市は十五年前の六割ぐらいしかないというような状況です。こうなれば市も火の車でございまして、大阪市の税収は六千億円ということなんですね。どんどんどんどん経済まで地盤沈下してしまっている。

 一方で、借金は二兆円です。なぜ借金がこんなにふえたのかといいますと、九〇年代に無駄な箱物を雨後のタケノコのようにつくってきました。大阪ゆかりの方はわかっているかもしれませんが、大阪南港なんて行きますと、もう本当にバブルの塔の墓場のような形に今なっております。このバブルの塔にたくさんシロアリが群がって、さらに放漫財政に拍車がかかった。この二十年間の都市経営、自治体経営がもう完全に間違って、破綻してしまっている。これが今の大阪の状況だというふうに思います。

 会社でいえば、社長も取締役も経営陣を一新してスリム化しなければいけない。経営ビジョンも経営形態も事業の中身も変えなきゃいけない。まさにグレートリセットボタンを押さなければならない状況で橋下さんがあらわれたということだと思います。

 そこで、大阪都構想という手段をもって今の大阪の問題を解決していこうということなんですが、その手段が市民生活をよくしていくのか。これは大阪だけではなくて、今回の法案が大都市制度のあり方そのものにかかわることでございますので、私は大賛成なんです、大阪都構想というのは。ただ、幾つか心配なこともありますので、きょうはその部分をちょっとお聞きしたいと思います。

 非常にざっくりした質問です。

 先ほど西野委員からも同じような質問がありましたけれども、この法案が採決されて、大阪都構想の実現が後押しされる、市民生活は向上するのか、メリットは何なのか。福嶋委員、教えてください。

福嶋(健)議員 お答えいたします。

 先ほどの質疑にもございましたけれども、この法案自体が、そもそも生活圏や経済圏が一体となった大都市地域において特別区を設置するための手続について定めた法案でございます。したがいまして、特別区設置の強い要望がある場合の対応という枠組みでございます。

 したがいまして、今御質問がありましたように、即、この制度のベースとなる価値判断において、市民生活が向上するかとかあるいはメリットがあるのかということについては一様にはちょっとお答えしづらい部分があるんですが、現実論として、もう委員御承知のとおり、いわゆる二重行政等があるわけですから、そういったものの解消に寄与することも十分考えられるということで、この法案で特別区が設置されるということで、地域の実情に応じた、大阪であれば大阪の実情に応じた大都市制度が設けられて、結果としてそれが市民生活の向上につながるということを私どもも期待をして、この法案を提出しているということでございます。

 以上です。

斎藤(や)委員 ありがとうございます。

 福嶋議員が今言ったように、地域の実情に合った都市経営ができる、これは確かだと思います。東京都の中央区と大阪市の中央区、同じ中央区でも全然違います。大阪中央区には予算編成権がありませんし、議会もないし議員もいない。自治権そのものがなくて、単なる市の出先機関と化している部分がありますので、その区に権限と財源を与えて、その区の強みを打ち出して弱み、懸案をクリアしていこう、これが大阪都構想のメリットだと思います。

 一方で、心配していることがあるんです。今、二重行政の解消に寄与する場合があるという答弁がありましたけれども、これが、一方で、区が八つになってしまうわけで、ということは、議会コストとか福祉コストというのは、単純に掛ける八になっちゃうんじゃないか、八重行政となって総コストは結局上がってしまうんじゃないか。このことについて、共同提案者の福嶋議員、どう考えておられますでしょうか。

福嶋(健)議員 お答えいたします。

 先ほどの繰り返しになりますけれども、これについては、そもそもこの法案は特別区を設置する手続を定めた法案ということと、それに基づいて特別区設置協定書というものができてくるわけですけれども、そういう中で、今、斎藤委員御指摘の、さまざまなコストの問題があるじゃないかということにつきましては、関係地方公共団体、関係者において、自主的にどうやっていくのかという御判断が尊重されることとなると思います。

 ただ、この法案を提出して特別区ができる、先ほども申し上げましたけれども、やはりキーワードは地域の実情だと思うんですね。この法律ができたから全てが終わりということではなくて、そこから各地域地域の実情に応じて、今のような、総コストが上がるのではないかということであれば、そういったものについても、その地域の中できちっと話をしながらよりよいものにしていくということではないかというふうに考えております。

斎藤(や)委員 私、今単純に掛ける八と言いましたが、恐らく革命者でおられる橋下市長は、掛ける八なんかしないよ、議会だって、それから議員のあり方だって、もうあり方そのもの全てを変えちゃうよということだと思います。それぞれその地域に任せるべきだというのはごもっともな意見だと思いますので、それは見守っていきたいというふうに思っております。

 それからもう一つ、私、心配していることがあるんです。災害時の対応なんですね。

 大阪というのは地震が少ないイメージがありますけれども、大阪の都心部には、南北に、ちょうど御堂筋線に沿うような、並行するような形で断層帯が走っておりまして、直下の断層地震の中では非常に発生確率が大阪は高いそうです。

 怖いのが、この被害の大きさです。そんな都市のど真ん中を南北に断層が走っているわけですから、九十七万棟が全壊する、死者は東京の首都直下地震の約三倍にも上る最大四万二千人、経済的な被害が七十四兆円というふうに想定されております。

 問題は、この震災対応です。

 東日本大震災のときの宮城県と仙台市の分担、復興が遅い遅いというふうに言われておりますけれども、私はなかなかうまくいった方だと思っております。仮設住宅の建設のおくれなんかはありましたけれども、うまく分担ができたと思っております。

 大阪都構想は災害対応ができるのか、ここが重要なポイントなんです。市一つじゃなくて、八つの区と府、それぞれに災害対策本部ができた場合に、権限が錯綜し混乱してしまうリスクがあるんじゃないか。また、区では権限が弱いんじゃないか、臨機応変には対応できないんじゃないか。これについて、法案担当者はどう考えておられるでしょうか。

福嶋(健)議員 お答えいたします。

 今、斎藤委員おっしゃったことなんですけれども、現在の災害対策基本法というものがございまして、これによりますと、都道府県及び特別区は、それぞれ、中央防災会議の定める防災基本計画に基づいて地域防災計画を定める、そして、災害時には災害対策本部を設置することと、その他もろもろ、これも何度もきょう申し上げていますけれども、地域の実情を踏まえた災害対策の基本的な枠組みというものが定められております。

 したがいまして、この法案は特別区を設置するという手続法案ではございますけれども、今委員から御指摘ございましたことについては、これも先ほどの質問のときに答弁させていただいたとおり、関係地方団体、こちらの方の自主的な判断によるもの、これを尊重することになるかと思います。国が大きく言う話でもなくて、ここはそうだと思います。現在の東京都及び特別区に適用されている災害対策基本法の枠組みを前提とするということであれば、今委員おっしゃったような、区では権限が弱い、そういった御懸念というのは必ずしも当たらないのではないかなというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、こういったことを踏まえて、関係自治体がその地域の実情に応じて新しい都市づくりをしていくという法案だというふうに整理をいたしておるところでございます。

斎藤(や)委員 いろいろこれから、防災体制、それから議会のあり方などは、大阪と特別区に任せるということだと思うんですけれども、震災対応に関しては、実は、県と市というのが防災の、世界に誇れるモデルケースだというふうに言われております。基礎自治体が震災対応を担い、県が市町村間や国との調整を行うということで、非常にうまくできたシステムだというふうに言われております。

 基礎自治体が区になるんでしょうけれども、非常に細かく分かれますので、そのあたりの差配がうまくできるかとか、支援物資の差配だとか緊急医療体制の組織化がうまくできるかとか、そういう心配はちょっとありますので私は今質問したわけでございますけれども、それも市町村に、区に任せられる、そういう話でございました。

 最後の質問です。

 今回の法案では、特別自治市についての言及がありません。都市制度は、地域の特性に合った多様な大都市制度があってしかるべきだと考えます。特に、大阪と同じ二百万都市である横浜市長は不快感をあらわにしているという話ですし、仙台市の奥山市長も特別自治市の方をお勧めするというようなことを言っておりますが、この都構想法案をもって大都市制度の議論は終わってしまうのかということを最後に政府にお聞きしたいと思います。大臣、どうでしょう。

川端国務大臣 大都市制度のあり方については、いわゆる大阪都構想のほかにも、横浜市を含む指定都市市長会の特別自治市構想、中京都構想、新潟州構想など、各地で新たな大都市制度について提案がなされているものと承知をしております。

 現在、大都市制度全体のあり方については、政府のもとに置いてあります第三十次地方制度調査会において審議が進められております。六月二十七日の同調査会の専門小委員会において、大都市の見直しに係る今後検討すべき論点が取りまとめられまして、新しい大都市制度について審議が進められていると承知をしております。

 この論点において、新しい大都市制度の一つとして都道府県に属さない特別市について言及されておりますけれども、この制度については、例えば、道府県全体の広域調整機能との関係、道府県の税財源が市町村税とされることの影響、行政区の性格や権限、議会や住民自治のあり方などの論点があって、今後これらの論点についてここで具体的な検討が進められるものと考えております。

 私としては、大都市制度に関するさまざまな各地の構想も踏まえて、同調査会において幅広く検討が行われることを期待しております。

 以上です。

斎藤(や)委員 検討をしていただけるということで、これで大都市制度の話は終わりですよということにならないようにしていただきたいと思います。

 橋下市長が、グレートリセットしかないと言って、大阪から日本を変えると言って選挙で勝ちました。選挙で約束を守る、これは大変すばらしいことだと思います。選挙での公約を守らないで破り捨てるというのは、私は民主主義の否定で絶対にやってはいけないというふうに思っております。

 私たち、国民の生活が第一・新党きづなは、橋下さんが掲げた大阪都構想をバックアップする今回の法案、実現できるようにしなければいけないというふうに思っております。

 以上質問させていただき、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

武正委員長 次に、西博義君。

西委員 公明党の西博義でございます。

 このたび、大都市地域における特別区の設置に関する法律案、審議に入ることになりました。長時間にわたって熱心な議論をして、しかも七会派に及ぶ賛同者を得て、このようにしていよいよ法案の審議に入られたということですが、提案者の皆様方の御苦労に、本当に、まず敬意を表したいと思っております。

 順次、議論を進めていきたいと思います。

 今回の法案は、東京都以外の道府県において特別区を設置するための手順を定めるものであると、先ほどからたびたびお話がありました。

 東京都の特別区については、地方自治法で定められております。今回、地方自治法の改正という形の法案ではなくて、新規立法ということで法案を提出された理由についてまずお伺いをしたいと思います。

佐藤(茂)議員 西委員の御質問にお答えいたします。

 まさに法形式をどうするかというのが、各党の実務者協議、十回やりましたけれども、何回かそれぞれ主張を交えて争点となったところでございます。ただ、それぞれの主張はありましたけれども、最終的に我々が合意した認識といたしましては、次のようなものでございました。

 それは、地方自治法における特別区というのは、都にのみ置かれることを前提として制度化され、これはもう長年の運用によって定着してきたものでございます。これに対して、本法案における特別区は、地域の実情に応じた大都市制度の特例として道府県に置かれるものであって、いわば改革推進的要素を有することから、その設置手続に関しては、最終的に、地方自治法の改正という法形式ではなくて、地方自治法とは別の新規立法、そういう法形式を採用させていただいたところでございます。

西委員 手続を定めるということで、余り東京都という形にとらわれずに、それぞれの自治体の自由度を高めるという趣旨を尊重されたというふうにお伺いしましたけれども、私もそれは一つの考え方だというふうに思います。

 次に、特別区に関して、今回の法案と地方自治法、これを見比べますと、一つは、今回、住民投票ということを入れられております。二つ目は、特別区設置協議会を設置するということが義務化されております。それからもう一つは、事務分担等に関する意見申し出に係る措置というのが今回取り入れられております。

 こういうところの違いがあるのかなというふうに見ておりますが、地方自治法と異なる規定を今回この法案に盛り込んだ理由について教えていただきたいと思います。

佐藤(茂)議員 今、西委員が御指摘ありましたように、大きく地方自治法との違いというのは、今御指摘のとおりの三点は大きな相違点だと思っております。

 それぞれ今挙げられたことの例について申し上げれば、住民投票につきましては、関係市町村が廃止されて特別区が設置されることによって、関係市町村の住民には住民サービスの提供のあり方というのが大きな影響を受けるわけですね。特に指定都市が今回廃止になるという、大阪市のような場合、そういう場合については権限や税財源の面でいわば格下げとも言える事態が生じて、通常の市町村合併以上に住民の生活等に大きな影響があると考えられます。ですから、本当にそういう指定都市を廃止して特別区という形にしていいのかということについて住民の意思を尊重する、そういうことも大事であろうということで、住民投票を必要とさせていただきました。

 二点目の、特別区設置協議会の設置を義務づけたと。現行法では協議会はできるという形になっていたかと思うんですけれども、設置を義務づけたことについても、道府県における特別区の設置というこの新たな手続に関して必要な事項について、原則として関係自治体の自主的な判断をできるだけ尊重してあらかじめ定めておくこととするために、特別区設置協定書の作成と、その他特別区の設置に関する協議を行うための特別区設置協議会を設置するものとしたところでございます。

 三点目に、事務分担に関する意見申し出に係る措置、これも新しい要素でございますが、実際に特別区を設置して運用してみた、その運用していく中で、特別区を設置する前に想定していた事務配分や財政調整の仕組みが想定どおり機能しないとか、あるいは実際に運用していって新たな必要性が出てきたという場合に、特別区の制度の円滑な運用を実現する、そういう観点から、事務分担等に関する意見申し出に基づいて政府が新たな措置を講ずる必要の有無について検討して、期限を六カ月程度ということをめどにして、必要であると認めるときには法制上の措置等を講ずる、そのようにしたところでございます。

西委員 特別区に関して、非常に丁寧なプロセスを経て、立ち上げるという、その意味がよく理解できたように思います。

 次に、法案の第十一条なんですが、道府県及び特別区は、政府に対して意見を申し出て、必要があると認める場合、政府が法制上の措置等を講ずる、こういうふうにされております。この規定を設けた目的についても御説明いただきたいと思います。

佐藤(茂)議員 先ほど答弁させていただきました三点目と重なる部分が多いかと思うんですけれども、御指摘の第十一条というのは、今申し上げましたように、既に特別区が設置されて、運用していく中で、事前に想定していた事務分担、税源配分、財政調整の仕組みがうまく機能しないとか、あるいは運用していく中で、新たにこういう事務配分にしてくれとか財政調整をもうちょっと変えてくれという必要性が生じた場合に、政府に対して意見を申し出ることができる、そういう形にしたわけでございまして、本法案がもともと地域の実情、提案を踏まえた大都市制度を設けるものであるために、運用した後の中でも出てくるそういうニーズに応じて、特別区制度の円滑な運用を実現する観点から、特別区の設置後においても、道府県及び特別区による意見申し出の手続を設けたものでございます。

西委員 今御答弁をいただきました。私は、この法案第十一条の事務の分担等に関する意見の申し出に係る措置の規定、これは今後の地方分権、それから地域主権、こういうものを確立していく上において非常に重要な立法ですが、意味を持ってくるものだというふうに思っております。

 地方の自治事務でありましても、立法権は国にあるわけですから、地方自治体に関連する法律に関して、地方自治体から今度逆に国に申し出るということについては特に権限は今までなかったわけです。

 現行の地方自治法第九十九条で、地方議会は意見書を国会や関係行政庁に提出するという規定があります。しかし、これに対して国のリアクションに関する規定はありません。同じく第二百六十三条の三でも、地方六団体の意見申し出はできますけれども、内閣には回答の努力義務が課せられているという程度で、必ずしも義務ではありません。

 昨年十二月に制定された東日本大震災復興特別区域法第十二条第八項では、国と地方とでつくる協議会で協議が調った事項について内閣総理大臣は所要の法制上の措置を講ずる、これは我々、議論したところですが、初めてこういう形になりました。

 それに対して今回の法案は、それに引き続いて、地方に対して国への、要するに、まあ、オーダー権、発注権、意見を申し出る権利を与えて、そして、一方の国に、地方の要求に対して法制上の措置などを講ずるよう義務づける、反応する権利、それに対して応える権利を定めているという意味では、大変重要な意味を持っているんではないかというふうに思っております。

 今後、このように国が地方の要望に応じて法制上の措置等を講ずることをぜひとも一般化すべきではないか、私はこう思うわけですが、このことについて御検討いただきたいと思うんですが、大臣のお答えをいただきたいと思います。

川端国務大臣 震災復興に対する取り組みは、やはり震災復興を何としても前に進めなければいけないということの背景があります。

 今回は、道府県と特別区が、特別区を設置して運用していく中で、事務分担、税源配分及び財政調整の仕組みが事前に想定どおりに機能していない場合ということで、政府に対して意見を申し出ることができるとされたところでありまして、そういう意味で、道府県に特別区が設置された後に、全ての特別区と道府県が共同して、それぞれの議会の議決を経た上で、事務分担、税源配分及び財政調整に関して政府に意見を申し立てることができると同時に、六カ月以内に新たな措置を講ずる必要性を判断して対応するということになっているということであります。そういう意味で、これは、今回こういう特別区の設置という政府において法制上の措置が必要となることが想定される部分に限定をして、その後のフォローアップをしようという趣旨であります。

 国が地方の要望に応じて法制上の措置を講ずることを一般化すべきという御提案でございましたけれども、趣旨はというか思いは私も共有するところがありますが、現実問題としますと、地方の意見は実はさまざま、多様であるということ、それから、同時に相互に異なることをお申し出になるということもあります。また、地方六団体の意見の申し出との関係と個々の団体の申し出というものをどうするのか。それから、国と地方の協議の場はありますけれども、どういう形で意見調整をするのか等々、論点として検討すべき論点はまだ幾つもあるのではないかというふうに思っています。

 地方制度の見直しについては、地方六団体の代表者も委員として参画していただいて地方制度調査会で議論をしておりますので、こういうところの意見も踏まえながら今議論を進めていただいているところでありますが、そういう一定の枠の中であるとはいえ、いろいろな流れがあることも、またぜひとも議論の参考にしていただきたいと思っております。

西委員 今申し上げたのは若干極端でしたけれども、さまざまな意見に対して国としてやはりきちっと応答するという透明性は私は必要だと思います。さまざまな意見を全て法制化して、それを実現していこうというのは、それは極端かもしれませんけれども、やはり意見は意見として誠実に対応するというところから始めるべきだというふうに思っております。

 次に、法案の十二条と十三条の規定は、後で特別区になろうとする自治体が出てきた場合に特別区設置の手続について定めたものというふうになっておりますが、先ほど、西野先生ですか、若干お話がありました。このことについての考え方について、簡単に御説明いただきたいと思います。

佐藤(茂)議員 西委員の質問にお答えいたします。

 第十二条及び第十三条というのは、今御指摘のとおり、特別区を設置した後に追加的に特別区を設置する場合の手続について定めているものでございます。

 委員御指摘の第十三条のうち、第一項と第二項というのがありまして、第一項は、この特別区設置により従来の市町村の区域が分割される場合においては、これは生活圏や経済圏がまた分割されるとか、そういう問題も出てきますので、住民投票を含め、道府県に最初に特別区を設置する手続と同様の手続を必要とするものでございます。

 他方、第二項においては、特別区の設置により従来の市町村の区域が分割されない、すなわち、市町村の区域がそのまま特別区の区域になる場合においては、道府県に最初に特別区を設置する手続のうち、住民投票を不要とするものでございます。

 これは、最初の特別区の設置の手続と二度目以降の特別区の設置の手続の均衡を図るということが一つある一方、市町村の区域がそのまま特別区の区域になる場合には、一つ固まってそのまま特別区となる場合には住民の共同意識であるとか生活環境等に与える影響というのは比較的小さいということから、住民投票を義務的なものとはせずに、議会の議決で足りるということにしたものでございます。

西委員 今回の法案は、やはり新しい大都市地域の行政のあり方について大変重要な位置を占めると思います。今後とも、先ほど大臣もおっしゃられたように、さまざまな形での提案があります。それをどのようにして地方の意向を生かしていくかということは引き続きまた大事な課題だと思いますので、その議論の展開を見守りたいと思います。

 以上で終わります。

武正委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 大都市地域における特別区の設置に関する法律案について質問をいたします。

 最初に、提出者にお尋ねしますが、今回の法案は東京都以外の道府県においても特別区を設置することを可能とする、そういう手続、仕組みの法案だと受けとめておりますけれども、そのとおりでよろしいでしょうか。

逢坂議員 お答えいたします。

 本法案第三条には、総務大臣は、東京都以外の道府県の区域内においても特別区の設置を行うことができることとされております。したがいまして、委員御指摘のように、今回の法案は、東京都以外の道府県においても特別区の設置を可能にするものでございます。

塩川委員 それでは、総務省にお尋ねしますけれども、この東京都の都区制度、特別区制度の特徴というのはどういうところにあるのか、この点についてお答えください。

久元政府参考人 特別区制度の特徴についてお答えを申し上げます。

 現行の地方自治法上、特別区制度が設けられている理由は、東京都の特別区の存する区域におきましては、人口が高度に集中しておりまして、行政の一体性及び統一性を確保する必要がある、こういうふうに説明されております。そのために、通常の市町村であれば市町村が処理する上下水道や消防に関する事務を、都が一体的に処理しております。そして、そのために必要な財源といたしまして、法人住民税、固定資産税、特別土地保有税につきましては都が課税することになっておりまして、この財源は、二十三区の財源の均衡化を図るための都区財政調整制度に充てられます。

 このように、一言で申しますと、基礎自治体の権限の一部を広域自治体が有する、その理由は大都市地域における一体性に求められる、これが現行の都区制度の特徴ではないかと考えております。

塩川委員 基礎自治体の事務の一部を広域自治体が請け負う、その背景として大都市地域における行政の一体性及び統一性の観点がある、市町村の事務を都が一体的に処理する、その上で、そのための財源についても、財政調整制度などを通じて、都が確保した上で配分をするという中身ということであります。

 つまり、特別区制度、都区制度というのが、市町村が処理する事務のうち、人口が高度に集中する大都市地域における行政の一体性及び統一性の確保の観点から、特別区の存する区域を通じて都が一体的に処理することが必要であると認められる事務を処理する制度ということです。

 そこで、重ねて総務省にお尋ねしますけれども、特別区制度というのが市町村の事務のうち一体的に処理することが必要であると認められる事務について広域自治体の処理を可能とする仕組み、そのための財政調整制度はどのようになっているのか、このことについてお答えいただけますか。

久元政府参考人 都区の事務配分に応じた財源の均衡を図るために、都区財政調整制度が設けられております。

 これは、特別区の行政の自主的かつ計画的な運営を確保するために、都が法定の都税、これは法人市民税と固定資産税でありますが、条例で定める一定の割合を特別区財政調整交付金として特別区に交付する、こういう制度でございます。そして、その交付金の算定方法につきましては、地方交付税と類似の方法で基準財政需要額と基準財政収入額が算定されまして、交付金が交付されるという仕組みになっております。

塩川委員 特別区制度によって、事務、権限とそれに必要とする財源を市町村から広域自治体に移すことが可能となる、そういう仕組みとして特別区制度ということになっております。

 大臣にお尋ねしますが、大都市制度の課題がある、その課題の解決に当たってはさまざまな提案もあるところであります。そういうときに、今回の法案におきましては、この大都市問題の解決に当たって、特別区の設置、いわばそれだけを可能とする法案となっているわけですけれども、こういう法案を通じて地方の大都市問題解決に当たってのさまざまな要望やニーズに応えることにつながるのかどうか、総務省としてのお考えをお聞かせください。

川端国務大臣 先ほど来の議論にもありましたように、大都市制度については、今回のいわゆる大阪都構想のほかにも、指定都市市長会が提唱している特別自治市構想を初めさまざまな御提案がされておるものと認識をしておりまして、これらの提案も含めて、現在、地方制度調査会で幅広い議論をしていただいておりまして、それぞれの構想についてもヒアリング等々も行わせていただいているところでございます。

 このたび、東京都以外の区域に特別区を設置する手続を定めた本法案が七会派から共同提案されたことについては、大都市の現状を踏まえて各党各会派がそれぞれ法案を用意され、協議が行われて、七会派の一致した御提案として結実したものというふうに受けとめております。

 この法案は、道府県における特別区を設置するための手続を定めたものでありますけれども、先ほど局長も東京都の例を申し上げましたけれども、実際に特別区制度を東京以外の地域に適用する際には、道府県と特別区の事務配分のあり方、税源配分、財政調整のあり方、個別法の都、特別区に関する特例の取り扱い等の論点がありまして、これらについては引き続き地方制度調査会で御議論をいただけるものと考えております。

 総務省としては、地方制度調査会の審議の状況を踏まえて、大都市制度の現状や課題、その解決方策について、さまざまな観点から検討してまいりたいと思っております。

塩川委員 地方制度調査会でさまざまな議論が行われている、特別区制度についてのいろいろな課題の洗い出しもしながら検討も行っているということでありました。

 そこで、提出者にお尋ねをいたしますけれども、大都市制度の課題の解決に当たりましてはさまざまな提案もあるところですけれども、なぜ特別区の設置だけを可能とする法案を提出されたのか、その理由についてお答えください。

山花議員 塩川委員御指摘のとおり、また今総務大臣からも答弁がございましたけれども、大阪だけではなくて、特別自治市であるとか、あるいは新潟州、中京都等々、こういったことについて今議論があるということについては承知をいたしております。

 今回の法案につきましては、道府県に特別区を設置したいという地域の提案を受けまして、各党がその提案を真摯に受けとめまして、幾度の議論を重ねた結果、最終的な合意を得た到達点として七会派共同で国会に提出したものでございます。

 提案者としては、他の大都市制度に関する方法とか提案に関する課題につきましては、必要に応じて適切に対処していければと思っておりますが、ほかの今具体的に提案があるものについては、既存の制度とはちょっと違う中身を有しているのかなと思っております。

 それに比べまして、特別区というのは、例えば東京都に既存の制度があって、今回の場合、先ほど御議論があったような事務の分配であるとか財政調整だとか、その部分はやや変形いたしますけれども、基本的な型があるものではないかと思っております。他方、ほかの提案というのは全くオーダーメードのような形になっていますので、まだちょっとその部分については、七会派ではそこまでの合意には至りませんでした。

 今回、特別区の部分について合意を得たということで、その部分について提出をした、こういう経緯でございます。

塩川委員 特別区については、二十三の特別区の側からも現状についての、基礎自治体の事務、権限の問題や災害の問題についてさらなる検討を求めるような要望もあるわけで、そういういわば課題つきの制度ということが前提の上で、なぜ特別区だけを実現可能とするような手続法を出されたのか、その点について改めてお答えいただけませんか。

山花議員 東京都の特別区、私も東京都の、まあ多摩地域の選出の人間ではありますけれども、二十三特別区のあり方についてはもっとこうあるべきだという議論があることについては承知をいたしております。

 ただ、自治のあり方ということについて、固定的に、これが完成形であるというのは恐らくないんだと思います。そのときそのときでいろいろな提案があるんだと思います。ただ、既存の東京の二十三特別区の中でいろいろな御提案があるということはさておきましても、現行、仕組みとして少なくとも機能している、ワークしているということについては否定できないことでありますし、それをモデルとする形でやりたいという自治体が手を挙げてきているわけでありますので、そこから先、仄聞しているところによりますと、この先の展開としては、今の東京二十三区の権能というよりも、中核市並みの権能を与えるような形でこれから進めていきたいと聞いております。そういった地方の提案を受けとめるということでは、あくまでも今回は手続法でありますので、その部分について合意ができたので提出をした、こういう経緯でございます。

塩川委員 地方の提案という話がありました。

 今回の特別区を可能とする法案というのが、大阪維新の会の大阪都構想、これが念頭にあるということはそのとおりですね。

山花議員 実際、具体的にこのような提案をされているのは、大阪市、大阪府からの提案というふうに認識をいたしております。

塩川委員 では、この特別区制度によって大阪などの大都市問題についてどのように課題の解決を図ることが可能となるのか、それについてどのようにお考えですか。

逢坂議員 今回の法案は、先ほど来説明しておりますとおり、地域でどんな自治体を形成するかの中身について言及している法案ではございません。御提案のあった、特別区をどう実現するかというその手続についての法案でございます。

 具体的に、事務の配分をどうするか、あるいは財政調整をどうするか、税源配分はどうあるべきか、こういったことについては、関係自治体で構成する協議会において、協定書の中で、御議論をいただいて最終的に決定することになるわけであります。そして、その際には当然議会の議決が必要である、加えて住民投票の手続を経るということでありますので、さまざまな形で、地域の納得の上でそういったことがつくられていく。その中で地域として最善の方向を探っていただけるよう、我々としては期待をしているところであります。

塩川委員 法案の提案理由説明の中で、指定都市制度については道府県との二重行政の弊害等の指摘もあるということで、地域の実情に応じた大都市制度を構築できるように制度改正を行うということが述べられております。

 二重行政の弊害ということが言われていますけれども、例えば大阪維新の会橋下市長などは、二重行政に関して、大阪に司令塔は二人も要らない、一人の司令官が産業政策、空港戦略、広域インフラを進める、このように言っております。

 先ほど確認しましたように、特別区制度というのが、市町村の事務のうち一体的に処理することが必要であると認められる事務について広域自治体が処理することを可能とする仕組みであります。事務、権限とそれに必要とする財源を市町村から広域自治体に移すものとなります。

 そうしますと、今回の法案というのは、結局のところ、二重行政の排除というスローガンのもとで、大阪市など基礎自治体の権限と財源を広域自治体の府などに吸い上げて、大型開発を推進するために特別区制度を活用するということになりはしませんか。

山花議員 先ほど、東京の特別区の特徴であるとか趣旨ということについては政府側から御説明がありました。あれは、もともと東京都で特別区の制度が設置された当時の趣旨と思います。

 今、それこそ分権改革、あるいは民主党ですと地域主権改革と申し上げておりますけれども、こういったことが進んでくる中で、例えば先ほど御指摘があった二重行政についても、そういうことがあるんだというふうに現地からは聞いておりますけれども、国の側から自治体の行政に対してこれが二重行政であるということを指摘するのは余り適切ではないのではないか。やはり地域の方々が、本来こうあった方が効率的じゃないかとかそういった議論をしていただいて、それを国の方で受けとめる、こういうことだと思います。

 国の方で何か大規模な開発を後押しするとかそういうことではなくて、やはり本来、自治のあり方について、先ほど手続についても説明がありましたとおり、協定書をつくり、議会でも議決をし、それに対して最終的には地域の住民の方々の住民投票で決していく、こういうことでありますので、こちらの方で何か政策目的を持ってという趣旨ではないということは御理解いただきたいと思います。

塩川委員 特別区制度を可能とするという仕組みであること自身が、この法案というのが、二重行政の排除ということを口実にして、大企業優先の巨大開発事業に集中投資するための仕組みづくりであり、結果として、大型開発に集中投資をすれば福祉や教育の予算にしわ寄せをされることになる。

 こういう法案は廃案にすべきだということを申し上げて、質問を終わります。

武正委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正でございます。

 十五分という限られた時間でありますので、答弁等々については、ひとつしっかり整理した答弁をしていただきたいなと思っております。

 まず、この法案の提出に至った理由について法案提出者に聞いておきたいんですが、私は、今回の法案提出には非常に唐突な印象を持っております。現在、地方制度調査会では精力的に大都市のあり方について議論、検討が行われている最中です。そのさなかに、今回大都市法案が提出されました。なぜ今この時期に、地方制度調査会で一生懸命議論されているそのときに、今回のこの法案の唐突な提出と言っていいと思うのでありますが、それに至ったのか、そこについて聞いておきたい。

坂本議員 お答えいたします。

 現在、地方制度調査会におきまして大都市制度のあり方について議論をされている、このことは承知しておりますし、それは十分これからも尊重していかなければならない問題であると思っております。

 しかし一方で、都道府県に特別区を設置してほしいという地域の要望、これに対してはやはり応える責務があるというふうに思います。しかも、大阪府あるいは大阪市という西日本を代表する大都市からの要望でもあり、そして、昨年の十一月、ダブル選挙におきましてそれが一つの大きな民意となってあらわれた、そのことについては、国の責務として、その受け皿を、枠組みをしっかりつくっておく、これはやはり必要なことではないかというふうに思い、七党それぞれいろいろな議論をしながら、今日の共同提案になったところであります。

 また、現在、地方制度調査会で行われております大都市制度に関する問題、これに対しましては今後十分尊重し、また、先ほどから言われておりますように、各都市からさまざまな都市の形態についての提案があった場合には、それに対していろいろな対応措置をまた考えていきたいと思っているところでございます。

逢坂議員 今回の法案の提出に至った経過は今、坂本議員が説明したとおりでございますが、加えて、与党としましては、実は、政府が二十二年の六月二十二日に地域主権戦略大綱を閣議決定してございます。この地域主権戦略大綱の中に、「国のかたちについては、国と地方が対等なパートナーシップの関係にあることを踏まえ、国が一方的に決めて地方に押し付けるのではなく、地域の自主的判断を尊重しながら、国と地方が協働してつくっていく。」ということを閣議決定いたしてございます。これが二年前の六月でございます。ここで言う「国のかたち」というのは、国家全体の形のこともございますし、当然、自治の形というものも含まれるわけですが、この閣議決定を一つの出発点にして、与党としてはこの法案化の作業に入ったということでございます。

 つけ加えさせていただきます。

重野委員 具体的に、こういうような形で法律を国会に提出する、今説明されましたようなプロセスを経て法律を国会に出した、そういうケースが今までありますか。

坂本議員 そこはまだ詳細に調べておりませんけれども、民意によってさまざまな問題が顕在化してきた、それに対して立法措置をするということは、それはこれまでたびたびあったというふうに理解しております。

重野委員 説明を聞いても、大阪における、今起こっている状況というものに刺激をされて、名をなさしめてなるものか、我々もしっかりやるんだ、そういうところを私は非常に意識するわけですね。

 今後、こういうふうな類いの話というのが出てくるかもしれませんが、その折々において、政府がそういうふうに反応をし、それを具現化していくということが今後の政府の決定プロセスの中に特徴づけられてくるのかな。そういう点では、しっかりそこのところは監視をしていかなければいけない。

 私は、今回のこの出来事というのは、言うように、自然な流れというふうにはどうも感じられない、違和感を感じる部分がある。したがって、今後ともそのことについては申していきたいと思いますので、ひとつ検討していただきたいなと思っています。

 次に、創設されることになる特別区について尋ねます。

 自治法では、第一条の三で、地方公共団体は普通地方公共団体及び特別地方公共団体とし、普通地方公共団体として都道府県及び市町村、特別地方公共団体は特別区、地方公共団体の組合及び財産区とするとの規定があるわけです。

 今回の大都市法での特別区とは、この自治法上で言うどれに当たるのか。

逢坂議員 本法案では、地方自治法における都と特別区の制度とは別に、道府県において特別区の設置の手続を定めるものではございますけれども、本法案の手続にのっとって設置された特別区も地方自治法上の特別区であり、特別地方公共団体ということになります。

重野委員 東京都制は、戦時中の一九四三年に制定をされています。帝都たる東京に、真にその国家的性格に適応した確固たる体制を確立することをその提案理由としておりました。つまり、もともと現行憲法の精神のもとでつくられた体制ではないものです。

 実際、特別区は、過去には、憲法九十三条第二項にある、地方公共団体の長、その議会の議員は直接これを選挙することになっておらず、その意味では、地方公共団体そのものではなかったと言えます。現在では、長や議会は選挙で選ばれますが、他方で課税権は制限されています。

 そこで、大臣に伺いますが、地方公共団体であるための要件はどういったものがあるでしょうか。

川端国務大臣 地方公共団体の要件に関する明文の規定はありませんが、一般に、地方公共団体が成り立つためには、次の三つの要素が必要であると解されております。

 第一は、地域的、空間的構成要素、場所的構成要素でありまして、一定の地域を画した区域を有すること。第二は、人的構成要素であり、その一定の地域内に住所を有する全ての者をもって、その団体の構成員とすることであります。第三は、法制度的構成要素であり、その地域の範囲内において、その住民によって構成される団体に対して国法に基づいて法人格が与えられ、事務を処理する権能、自治権が認められていることである。この三つの要素が備わって地方公共団体が成立すると解されているところでございます。

重野委員 一九六三年の最高裁判決、「新憲法の基調とする政治民主化の一環として、住民の日常生活に密接な関連をもつ公共的事務は、その地方の住民の手でその住民の団体が主体となつて処理する政治形態を保障せんとする趣旨に出たものである。」「単に法律で地方公共団体として取り扱われているということだけでは足らず、事実上住民が経済的文化的に密接な共同生活を営み、共同体意識を持つているという社会的基盤が存在し、」「自主立法権、自主行政権、自主財政権等地方自治の基本的権能を附与された地域団体であることを必要とする」、このように一九六三年の最高裁判決があるわけでございます。

 当時の東京の特別区は憲法九十三条二項の地方公共団体ではない、最高裁は当時の東京についてそのように断じているわけでありますが、この観点から、つまり、自主立法権、自主行政権、自主財政権等地方自治の基本的権能を付与された地域団体と特別区は言えるのか。特別区はそのように言えるのか、それについて大臣に尋ねます。

川端国務大臣 御指摘のように、昭和三十八年三月二十七日の最高裁判決においては、憲法上の地方公共団体について、今先生が御紹介されたとおりの判決が出ております。

 現行の特別区は、昭和三十九年、翌年でありましたけれども、三十九年の地方自治法の改正で、地方税法上の課税権を有することとされました。昭和四十九年の地方自治法改正で、区長が公選になりました。平成十年の地方自治法改正で、基礎的な地方公共団体と位置づけるということなど、これまでの累次の改正を経て、現在、地方公共団体としては、一般の市町村と遜色ない位置づけになっていると判断をしております。

 他方、最高裁判決においては、憲法上の地方公共団体の要件として、単に法制度的な要件にとどまらず、社会的基盤や沿革までが求められているところであり、特別区がこれらの要件を満たしているかについては、さまざまな見方が議論としてはあり得るというふうに思っております。

重野委員 先ほども述べたのでありますが、東京都が制定されたのは戦時中なんですね。戦後、市町村が廃止されるのはこれが初めてです。

 これまでも市町村合併によって自分の生まれ育った市や町村がなくなることはあっても、新たな市や町、つまり普通地方公共団体で暮らすことに今までは相違はなかった。しかし、今回の大都市法によれば、これまで普通地方公共団体であった市の住民が、普通公共団体ではない、制限された自治区の住民になるということになる。これは地方自治の本旨に果たして合致したものなのかという点について、提案者並びに総務大臣に伺います。

佐藤(茂)議員 重野委員の御質問にお答えいたします。

 本法案においては、今言われたように、道府県に最初に特別区を設置する際には必ず住民投票を実施することとしておりまして、特別区を設置して住民の皆さんがその特別区の住民となるか否かについても住民投票によって、この住民の民意というものが反映された、その結果次第で決まる、そういうことになっておりまして、統治のあり方を住民みずからがしっかりと決めるという点において、まさに地方自治の本旨にかなうものである、私はそのように考えております。

川端国務大臣 この法律に基づいて設置される特別区の権能は、その設置を申請しようとする市町村及び道府県で構成される協議会が作成する特別区設置協定書に基づき定められることになっています。

 したがって、現在の都と特別区の役割分担が必ずしもそのまま適用されるわけではないですが、市が処理することとされている事務の一部について、大都市地域における行政の一体性及び統一性の確保の観点から、特別区でなく道府県が処理することも想定されます。

 その場合に、委員御指摘のように、特別区の権能が従来の指定都市より制限され、住民に大きな影響があることとなります。そのため、今、佐藤議員からも御説明ありましたけれども、住民投票によって特別区の設置の是非について住民の意思が適切に反映されることが重要であろうというふうに考えております。

 一方、人口二百万以上という大規模な指定都市等が廃止され、公選の区長や区議会議員を有する特別区が設置されることは、一面においては住民自治の拡充につながるものであり、必ずしも地方自治の本旨に反するものとは言えないものと考えております。

重野委員 もう一問通告をしておりましたけれども、時間が来ましたので、以上で終わります。

武正委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 大都市地域における特別区の設置に関する法律案、本当にここまで来たなという感じ、感慨深い思いでこの質疑を迎えております。

 昨年十二月に、大阪ダブル選挙があり、その結果として橋下市長また松井知事が御就任をされたわけであります。その就任に先立って、十二月の十八日でしたか、橋下市長予定者が上京されるということで、我が党の渡辺喜美代表にお会いをされる、そのときに、この大阪都を実現するための地方自治法の改正案について、アウトライン的なものをつくって示したい、こういうお話をされて、あの時点から、どんなものをつくればいいかという議論を開始させていただいた。三月になって、法案の骨子、要綱段階までまとまって、四月に実際に参議院に提出をさせていただきました。その後、自民党さん、公明党さんの案が出てきて、また民主党さん、国民新党さんの案が出てきて、出そろったところで各党協議をやり、計十一回ですか、協議を行って、この成案を見ることとなったわけであります。

 今お配りをしている資料でごらんいただいているとおり、私たちの案が全て満たされたわけでは決してありませんけれども、しかし、いずれにしても、人口二百万人規模の大都市において、住民自治を深めるために特別区を設置する、そして府と特別区との間で事務分担、財源配分、税源配分、財政調整、こうしたことを議論して決めていく、こういう極めて画期的な仕組みがつくられることとなった。このことは、日本の、中央集権的に行ってきた、国がある種の枠組みを決めてそれを地方に行わせてきた、上からの地方自治のあり方をボトムアップで変えていく、大変意義深いものだったというふうに思います。

 そういう点で、私も実はできれば法案提出者ですから答弁に立ちたいんですけれども、私自身が質問に立たざるを得ないので、総務大臣初め対政府の質疑に絞らせていただきたいというふうに思っております。

 都という名称について、この間いろいろと議論になりました。最終的に、今回は、特別区法をつくって、府が特別区を設置するという形になって、都にはならない、こういうことになったわけです。名称変更というのは、私は、内実からすれば余り大きなことではないというふうにも思いますけれども、しかし、大阪都、大阪都と言ってきて、これを今何と呼べばいいのかということで、大変苦労をしていることも事実なんです。

 もっと申し上げると、私自身は、地方自治法上の都というものに大阪府が移行をしていく、こういうイメージで考えてきましたので、本来であれば、都という自治体に移行していくのが当然のことだというふうにも思ってきました。

 地方自治法上、都というのは東京都のみであるとはどこにも書かれていません。大都市において、特別区を設置し、府県レベルと市レベルの事務配分や財政調整を行う、こういう広域自治体を都というふうに称する、こういうたてつけになっているわけです。その意味では、今回の大阪府に特別区を設置した場合も、これは本当のことを言えば地方自治法上の都と位置づけるのが順当なのではないか、このように考えてきました。この点、総務省の御見解をお伺いしたいと思います。

久元政府参考人 現行の地方自治法の解釈として、私の方からお答えをさせていただきたいと思います。

 地方自治法におきましては、地方公共団体の名称は従来の名称による、地方公共団体の区域は従来の区域によるというふうにされておりまして、この規定により、昭和二十二年に地方自治法が制定されましたときに、その当時、東京都制に存在しておりました東京都が、地方自治法上の東京都に引き継がれたわけでございます。

 そこで、その名称でありますけれども、現行の地方自治法では、都道府県の名称を変更するときには法律を別途定めることになるというふうにされております。

 今回提案されております法案では、法令の適用については特別区が設置された道府県を都とみなすこととされておりますけれども、名称については特段の規定は盛り込まれておりません。

 したがいまして、今回の法案に基づいて特別区が設置された道府県の名称を変更しようとする場合には、別途法律の手当てが必要になるというふうに考えております。

柿澤委員 これは、これから聞こうと思った質問に対する答えをいただいてしまったんです。

 私自身は、先ほど申し上げたとおり、もちろん、都というからには東京都を想定した部分も大いにあったんだろうとは思いますけれども、しかし、地方自治法上の仕組みとして、東京都イコール唯一の都だということにはなっていない。ましてや、今回の法案で、先ほどおっしゃられていたように、ほかの法律の都に関する規定は、今回、大阪府を都とみなすということで読みかえ規定を置いちゃっているわけですから、これは実質的に都になることと何も変わらないというふうにも思うんですよね。

 先ほど、名称変更については、地方自治法上、その三条で、都道府県の名称変更は法律においてこれを定めるということになっている、だから、大阪府が大阪都になると名称変更になるので法律によって定めることが必要ですよ、こういう御答弁をもう既にいただいてしまったんですが、私自身は、考えてみると、これは内実の違う都道府県の中で、府というものから内実の違う都というものになる。例えば、どこどこ町がどこどこ市になるということと基本的には似たような話であって、名称変更といった場合に、大阪府が例えば浪花府になるんだったら、これは名称変更でしょう。長野県が信州県に名称変更しようとして特区申請をしようとしたことが昔ありましたが、こういう場合は僕は名称変更だと思うんですけれども、大阪府が大阪都になる、これはある意味では器、乗り物の変更ですから、これをもって名称変更とするということが一概に言えるのかどうか、微妙なラインだと思うんですよ。その点、どうお考えになられているのか、もう一度御答弁いただければと思います。

久元政府参考人 地方自治法におきまして、名称変更の規定がありますけれども、市町村の場合には別途名称変更の規定を置いております。

 都道府県の名称の変更につきましては別途法律で定めるというふうにしておりますのは、都道府県の名称の変更が国民生活に及ぼす影響が大きいというふうに考えられているからではないかと思われます。

 現実に、一八八八年に香川県が愛媛県から分離して現在の四十七の道府県となったわけでありますけれども、その後、都道府県の名称の変更が行われたのは、昭和十八年に東京都制が制定されて、東京府が東京都に名称変更が行われたという一件だけでございます。

 現行の地方自治法上は、都道府県の名称変更についてはそのように厳重な手続を設けている、そういう立法趣旨ではないかというふうに考えておりますが、今後の都道府県の名称の変更を含むこの名称変更のあり方については、これはまた国会でさまざまな御論議が行われるのではないかというふうに理解をしております。

柿澤委員 配付資料をごらんいただくと、私たちの地方自治法の一部を改正する法律案、当初のみんなの党案と申し上げましょうか、そういうものでありますけれども、四のところですけれども、事務・財源配分等協議会、こういうものをつくることになっていました。そして、事務分担、税源配分、財政調整の制度に関して政府への意見具申を行うというものが盛り込まれております。これは、実際に今度の法案にも取り入れられた考え方であります。

 私たちは、この事務・財源配分等協議会、要するに府と全ての特別区が集まって協議をする機関ですけれども、これを都の設置後も常設して、そして必要な制度改正について国に提言権を持つ、こういうイメージでいたわけであります。

 これを東京都にまた戻して考えると、地方自治法上、東京都政においては、都区協議会というものがあって、東京都と特別区が集まってさまざまな事柄を議論する。しかし、いわば諮問機関のような位置づけになっています。この都区協議会、まさに今回の法案をベースにして、これから国に対して例えば意見具申をしていく、そして、それに対して国の応答義務を課す、こういう形の、今回の法案に倣った改正というものが望ましいし、必要だというふうに私は考えます。その点について、ぜひ御見解をお示しいただきたいと思います。

川端国務大臣 先ほど佐藤提案者からもこの条項に対する趣旨の御説明がありましたけれども、道府県及び特別区が特別区の設置後に事務分担、税源配分及び財政調整の仕組みが事前の想定どおりに機能していない場合等に政府に対して意見を申し出ることができるとしたものと理解をしております。思っていたようにいっていないからということであります。したがいまして、当該特別区とその特別区を包括する道府県が、それぞれの議会の議決を経て、共同により政府に対して意見を申し出るという制度になっております。

 一方、東京都は、現行の東京都の都区制度における事務分担や税財政の仕組みは、累次にわたる制度改革の結果、現在の制度が比較的安定的に運用されているものでありまして、都区協議会における協議状況からすれば、現時点において、国に対して都と特別区が一致して制度改正等を求める具体的な動きは、私の立場では承知をしておりません。

 現在、都区協議会を含めた現行の都区制度のあり方につきましては、第三十次地方制度調査会でも御論議をいただいて、それぞれの意見もヒアリングとしてさせていただいたところでございますので、これを踏まえて、今後も適切に対応してまいりたいと思っております。

柿澤委員 現実に、都区制度をこうしようというような、都と特別区の共同の動きが見られないからいいんだということなんですけれども、私は、これはとても不服な答弁だと思います。

 やはり、こうした形で、地方の側からみずからの統治機構というものを考えて提案をする、こうした仕組みをつくったことが今回の法案の意味であり、なおかつ言えば、先ほど来申し上げているとおり、私自身は、大阪都の制度と東京都の制度は、基本的に、最終的には収れんをして、できる限り同じような制度の枠組みにおさまっていくべきものだというふうに考えています。

 そういう意味でいうと、今度また、地方制度調査会においては大都市制度のあり方を審議していて、例えば指定都市市長会が提言をする特別自治市、これについても、これから場合によっては道を開く法改正も予定をされているわけであります。そういう中で、多種多様な大都市制度がいろいろなところでできるようになる。これは、一面では大変結構なこと、地方の独自の取り組みがある意味では花を開いていくということになるわけですけれども、一方で、場所によって違う制度がいろいろな形で動いていくという形にもなって大変わかりにくい、こうした状況にもなりかねないと思うんです。

 しかし、そうしたことになるということは、総務省としては、これは受け入れられるというか、それでいいんだ、こういう考えなんでしょうか。お伺いをします。

川端国務大臣 今回議員立法で出された分は、いわゆる特別区をつくる手続の法律でありますけれども、地方制度調査会を含めて議論していますのは、大都市の抱えるいろいろな問題点と同時に、それをどういう形にしていくかということで、さまざまな提案もいただいている部分も真摯に伺いながら、課題としては、いわゆる業務分担のあり方、とりわけ財政調整のあり方を含めての大きな課題があります。

 そういうものを整理して一定の方向性を示す中で、これからの議論でありますけれども、そういう中で、これからあるべき地方の大都市の姿というのは、そんなにたくさんのメニューがばらばらというイメージを私自身は持っておりませんで、一定の方向に収れんするものに議論の中の論点整理がされていくのではないかというふうに期待をしております。

柿澤委員 時間も参りましたので、質問は終わります。

 ありがとうございました。

武正委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

武正委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 私は、日本共産党を代表して、大都市地域における特別区の設置に関する法律案について反対の討論を行うものであります。

 本法案は、大阪維新の会が掲げる大阪都構想を実現するために、現行の地方自治法上、東京に限って適用している特別区制度を東京以外の道府県にも認めることとし、その手続を定めようとするものであります。

 大阪都構想は、特別区制度を使って政令指定都市である大阪市を解体し、これを府と特別区に再編するものであります。なぜこうした自治体制度のつくりかえが必要なのか、それは、大阪府、市全体の事務、権限と財源を大阪府に集中することを可能とするためにほかなりません。

 橋下大阪市長は、二月十六日、第三十次地方制度調査会の専門小委員会に出席し、大阪都構想の内容と狙いを説明し、大阪全体を広域行政地域とし、長が立てた広域行政戦略のもと、産業政策、空港戦略、広域インフラ等を展開していくと述べているのであります。要するに、関西大資本が進める巨大開発事業のために、権限と財源を活用していく、これが大阪都構想の核心であります。

 特別区の税収や地方交付税が府に吸い上げられるならば、特別区の財政の悪化をもたらし、住民の福祉や暮らしは大きく後退することになることは明らかです。

 大阪の経済発展を言うのであれば、大資本優先の政治を根本から転換し、府民の暮らしと福祉を立て直すことこそが求められているのであります。

 東京都の特別区制度の歩みを見ても、東京二十三区を基礎的自治体として認め、その機能を拡充する方向を築いてきています。また、地方分権の流れは、権限と財源をできる限り市町村に付与し、国と道府県がこれを補完していくというものであります。

 大阪都構想はこうした流れにも逆行するものであり、大阪都構想に対する疑問や反対の声が次々と上がっているのも当然のことであります。

 以上、大阪都構想を実現するための本法案には反対であることを述べて、討論を終わります。

武正委員長 次に、重野安正君。

重野委員 私は、社会民主党・市民連合を代表して、大都市地域における特別区の設置に関する法律案、橋下大阪市長が提唱している大阪都構想に対応するための法案に反対の立場の討論を行います。

 大阪都構想は、大阪市の基礎的な仕事が住民に近くなる分権的な面ばかり強調されますが、実際には、政令指定都市である大阪市が廃止され、産業政策や大規模なインフラ整備などの権限と財源を府が召し上げるという、市の自治権を府が奪う集権化にほかならず、住民の暮らしや自治を豊かにするためのものではありません。

 さて、本法案は、現在憲法上の地方公共団体である市を廃止し、権限及び財源の制限された、憲法上の地方公共団体でない特別地方公共団体たる特別区に分割するものであります。現行憲法下で市町村自体を廃止したことはありません。憲法によって保障された自治体の自治権を、その実体を無視して奪うことは、憲法九十二条の保障する地方自治の本旨に反するものと言わざるを得ません。

 また、行政区を公選区長、議会を有する組織体に変えるとしても、特別区の権限は限られており、住民の自治権としては後退します。具体的な事務配分、特別自治区の区割り、行政組織、議会のあり方、移行手続等、多くの課題が山積しており、ムード先行ではなく、デメリットについても丁寧で真剣な論議が求められます。

 東京市と東京府が統合され東京都が誕生した経緯や、東京二十三区が都の内部団体からの脱却と基礎自治体化を求めてきた歩みを考えれば、今回の制度改正は分権・自治の流れに逆行するものであると言えます。

 その上でどうしても大阪都構想を実現したいのであれば、憲法九十五条に基づく特別の住民投票として、府全域での住民投票をすべきです。

 大阪府は四十七都道府県の幸福度ランキングで最下位であるものの、大阪市はアジアで住みやすい都市一位に選ばれています。府と市が協力すれば、二重行政はある程度解消できますし、大学や図書館等を府と市がやることは、二重行政ではなく、住民のニーズに応えた多様性にほかなりません。

 本法案は、大阪で示された民意を実現するためとも言われていますが、沖縄で何度も示された県民の民意には頬かむりし、橋下市長初め特定の勢力におもねるような法制定は問題があると強く訴え、反対討論とします。

武正委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

武正委員長 これより採決に入ります。

 大都市地域における特別区の設置に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

武正委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

武正委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

武正委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十二分散会


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