衆議院

メインへスキップ



第10号 平成25年6月4日(火曜日)

会議録本文へ
平成二十五年六月四日(火曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 北側 一雄君

   理事 田中 良生君 理事 土屋 正忠君

   理事 徳田  毅君 理事 橋本  岳君

   理事 山口 泰明君 理事 原口 一博君

   理事 東国原英夫君 理事 伊藤  渉君

      安藤  裕君    井上 貴博君

      今枝宗一郎君    大西 英男君

      鬼木  誠君    門山 宏哲君

      木内  均君    北村 茂男君

      小島 敏文君    小林 史明君

      清水 誠一君    瀬戸 隆一君

      田所 嘉徳君    橘 慶一郎君

      中谷  元君    中村 裕之君

      長坂 康正君    堀内 詔子君

      牧島かれん君    宮路 和明君

      湯川 一行君    小川 淳也君

      奥野総一郎君    黄川田 徹君

      福田 昭夫君    岩永 裕貴君

      上西小百合君    中田  宏君

      馬場 伸幸君    松浪 健太君

      濱村  進君    佐藤 正夫君

      塩川 鉄也君

    …………………………………

   総務大臣

   国務大臣

   (地方分権改革担当)   新藤 義孝君

   内閣府副大臣       西村 康稔君

   総務副大臣        柴山 昌彦君

   内閣府副大臣       坂本 哲志君

   総務大臣政務官      橘 慶一郎君

   総務大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    北村 茂男君

   外務大臣政務官      城内  実君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  占部浩一郎君

   政府参考人

   (内閣府道州制特区担当室長)           青木 信之君

   政府参考人

   (総務省大臣官房地域力創造審議官)        関  博之君

   政府参考人

   (総務省行政評価局長)  宮島 守男君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  佐藤 文俊君

   政府参考人

   (総務省自治税務局長)  株丹 達也君

   政府参考人

   (総務省情報流通行政局郵政行政部長)       鈴木 茂樹君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           大木 高仁君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           山野 智寛君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           高島  泉君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 宮園 司史君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 真部  朗君

   参考人

   (日本放送協会経営委員会委員長)         浜田健一郎君

   参考人

   (日本放送協会会長)   松本 正之君

   参考人

   (日本放送協会理事)   福井  敬君

   総務委員会専門員     阿部  進君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月四日

 辞任         補欠選任

  井上 貴博君     牧島かれん君

  小林 史明君     小島 敏文君

  田所 嘉徳君     鬼木  誠君

  中村 裕之君     堀内 詔子君

同日

 辞任         補欠選任

  鬼木  誠君     田所 嘉徳君

  小島 敏文君     小林 史明君

  堀内 詔子君     中村 裕之君

  牧島かれん君     安藤  裕君

同日

 辞任         補欠選任

  安藤  裕君     井上 貴博君

    ―――――――――――――

六月四日

 地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第五五号)(参議院送付)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第五五号)(参議院送付)

 行政機構及びその運営、公務員の制度及び給与並びに恩給、地方自治及び地方税財政、情報通信及び電波、郵政事業並びに消防に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

北側委員長 これより会議を開きます。

 行政機構及びその運営に関する件、公務員の制度及び給与並びに恩給に関する件、地方自治及び地方税財政に関する件、情報通信及び電波に関する件、郵政事業に関する件及び消防に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、参考人として日本放送協会経営委員会委員長浜田健一郎君、日本放送協会会長松本正之君及び理事福井敬君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

北側委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官占部浩一郎君、内閣府道州制特区担当室長青木信之君、総務省大臣官房地域力創造審議官関博之君、行政評価局長宮島守男君、自治財政局長佐藤文俊君、自治税務局長株丹達也君、情報流通行政局郵政行政部長鈴木茂樹君、文部科学省大臣官房審議官大木高仁君、大臣官房審議官山野智寛君、厚生労働省大臣官房審議官高島泉君、防衛省大臣官房審議官宮園司史君及び防衛政策局次長真部朗君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

北側委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

北側委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。清水誠一君。

清水委員 総務委員会での初めての質問ということで、お許しをいただきたいと思います。

 また、新藤大臣には、先週土曜日、北海道札幌の方に来ていただきまして、地方にとって大変元気が出る御講演をいただきましたことを、この場ですけれども、改めて御礼申し上げたいと思います。

 本日は、限られた時間ということで、道州制そして税、大きく二点について質問をさせていただきたいと思います。

 道州制につきましては、平成の時代に入って、大前研一先生の「平成維新」の中で、日本の国の形を変えるということで道州制というのが大きく打ち出されて以降今日に至っているというふうに思いますけれども、その中で、北海道、道州制特区というようなことで、平成十八年、閣議決定以降、十九年から道州制特区がスタートいたしました。

 この道州制特区のタウンミーティングということで北海道各地で説明会が開催されましたけれども、そのときには、バブル崩壊ということもありました、地方財政も大変厳しい、それから道内の企業の経営も大変厳しい。そういう状況の中で象徴的に言われたのは、国の権限を北海道、北海道の権限を市町村というようなことで、今思い出せば、一級河川、国が管理している河川を北海道の方に移譲していこうということになりましたら、人も予算も移譲していかなければいけない、また、それを受ける側の北海道や、また北海道から移譲される市町村という立場に立ったときに、それが移譲されたときに、財政的に将来の担保がどこまでできるのかというようなことで、まずは景気回復、あるいは地方財政が健全な状況になって初めてこの権限移譲ということがあるべきではないかというようなことで、これは正直申し上げまして、全道各地で反対、反対の非難がごうごうだったんです。しかし、これは法律ができましたから、まずは試行的にしていこうというようなことで、北海道を初めとして、道州制特区ということで。

 そのときの法律の中で言われているのは、三つ以上の都府県の区域、ですから、今の道州制で言われている、県がそれぞれ三つないし四つ、日本全国を十とか十三ブロックに分けるというようなことで、北海道は北海道ですけれども、それと同時に、三つ以上の都府県が一つにまとまるということでいった場合の特定広域団体というようなことが、法律に二つ試行的に掲げられていたわけです。

 平成十八年、十九年から今日まで六年経過しておりますが、この六年経過の中でどれぐらいの実績があって、そして、それに対して、これから道州制に行こうとするならば、試行的にした今の道州制の特区の方、これについての評価ということをまず最初に伺わせていただきたいと思います。

青木政府参考人 平成十九年に施行されました道州制特区推進法のこれまでの成果についてということでございますが、道州制特区法制定時に、商工会議所に対する監督権限の一部など四つの事務と、お話にもございました四つの直轄事業の移譲、合わせて八件の事務事業の移譲が行われたわけでございます。

 その後、五次にわたり北海道の提案をいただき、権限の移譲の追加が二件、権限移譲ではございませんでしたが実務上対応させていただいた案件が十三件、全国的な措置につながった件が七件ございます。

 道州制特区により移譲された事務事業につきましては、従来から北海道が実施していた事務事業との一体的な実施によりまして効率的な執行が図られている例や、あるいは、事務の処理期間の短縮化という点で利用者の利便が図られた、そうした成果が出ている一方で、権限移譲が関連する事務の一部が国にとどまるといったような場合には、申請者が国と道の双方の窓口に対応する、そうした課題もあったというように評価されております。

 こうした成果あるいは課題を踏まえまして、引き続き、北海道の提案を踏まえ、道州制特区について対応してまいりたいと考えております。

清水委員 北海道については、結果として八つといいながら、全国的に権限移譲その他もできていたということで、おおむね北海道の提案についてはかなえられるものはかなえられた。

 しかし、そのかなえられなかった部分、これは、例えば、観光面で、特定免税店制度の創設ですとか国際観光振興業務特別地区、こういうような観点で第二次の段階で提案をしていますけれども、今進展がしていないというようなことで、北海道もこの特区の提案については、委員会を設けて、また議会を通しながら提案をしてきているんですね。ですから、そういう面で考えていったときに、やはり今かなえられていない部分についても早急に検討していただきたいというように思います。

 また、先ほどお話をした特定広域団体、これから道州制を進めようということであるならば、少なくとも県二つないし三つがこれからどうやって一緒に広域行政の中でブロック、ゾーンを形成するか。そういうようなことについて今お話はありませんでしたけれども、試行的に北海道を含めた道州制特区がスタートしているということではなくて、これをモデルケースとして将来の道州制に結びつけるというようなことに行った場合に、少なくとも今日的にはやはり県二つないし三つが共同の歩調をとる、そういう動きということがあってしかるべきだというように思います。

 ただいま申し上げました二点について、いま一度お答えをいただきたいと思います。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 道州制特区推進法では、お話にもございましたように、北海道及び三つ以上の都府県が合併をして、自然、経済、社会、文化等において密接な関係がある、そういう地域を一体と考えられる場合においては、特定広域団体ということで、同様な措置を受けられる仕組みになっておりますが、現在までそうした案件が生まれてきていないというのが実情でございます。

 また、お話にございました平成二十年の北海道からの提案、特定免税店制度の創設と国際観光振興業務特別地区の設定でございますが、道州制特区推進法は、将来の道州制導入の検討に資するためのものという性格でございますので、この法律に基づき講じる措置につきましては、今申し上げました、三つ以上の都府県が合併した場合も含めて、道州制特区法上の全ての特定広域団体に適用し得るものであることが前提となっておりました。

 したがいまして、特定免税店制度の創設等について、北海道のみを対象とする特例をこの制度において措置することは難しい、そういうことから、北海道の御提案の趣旨を実現するため、別の手法をとり得ないか検討するといった整理がなされて、平成二十一年度税制改正におきまして、特定免税店制度の創設について、国土交通省及び内閣府において、北海道に限る措置として要望を行ったのでございますが、実現に至っていないというのが現状でございます。

 なお、特定免税店制度の創設の内容も含む北海道観光振興特別措置法案が議員立法により提出された経緯がございまして、また、現時点においても与党において検討が進められているものと承知しております。

清水委員 免税店制度は大変難しいということについては、今、北海道ブロックを初めとして、佐田先生を中心にして行っておりますので、省庁としてもぜひ後押しをお願いしたいなというように思います。

 道州制については、ただいまも御答弁いただきましたように、今進めようと思っても、現実的に、府県の合併になるような、そういう動きにはなっていないというようなことで、今自民党としても基本法案をつくる、提出するというような状況ですけれども、今後これが道州制にスタートをしていくということになりましたら、市町村の合併を含めて行っていかなきゃいけない。市町村の合併ということになりますと、やはり三十万人規模とかということになれば、新たな市町村同士の、基礎自治体の中央集権体制というものが惹起するんじゃないかというように、不安というのか、そういうような状況になっていったときに、せっかく中央集権体制を打破しようという中を、地方の中で新たな中央集権体制になっていくんじゃないか。

 また、北海道は今、合併も一段落して、今後、町村合併があるのかというと、大変厳しい状況、そういう中でありますが、今後の道州制に向けてどのようなプロセスを歩んでいくのか、ぜひこの件については大臣からもお伺いしたいというふうに思います。

新藤国務大臣 まず、答弁する前に、あれは先週でしたね、札幌にお邪魔いたしまして、大変にいろいろとお世話になりました。中村委員を含めて清水委員と北海道の皆さんの本当に元気な、そしてまたおおらかな対応で、私も、意義あるものとなりましたことにお礼を申し上げたいというふうに思います。

 今の道州制にかかわる問題は、これは根本的な問題点だというふうに思います。そして、今地域の皆さん、地方の自治体の方々からいろいろな心配や不安の声が上がっているということは事実であります。町村会からはもう既に反対という声が出ておりますし、市長会や知事会でもいろいろな議論があるということであります。私は、当然だと思います。

 道州制というのは、これは国の統治機構を根本から変える大改革です。そしてそれは、国と地方のそれぞれの役割分担を見直し、そこに住む人たちのサービスを向上しつつ行政を改善し、かつまた国家としての統治機能を強化する、こういう大改革であります。

 戦争が終わって、復興から成長へ、そして地方の均衡ある発展、こういったものを我々の先輩がつくり上げてまいりました。その地方制度は有効であったと思うんです。それがゆえに、これだけの高度成長をなし遂げたわけですが、しかし、バブルがはじけて以降、我々は先行きを見失っているという状態があるわけです。その中で出てきたこの統治機構の変更については十分な国民的議論が必要だ、それから精緻な設計が必要だ、このように思っています。

 今与党の方で御検討いただいている道州制の基本法というのは、まさにその議論をしていきましょう、そのための基本を法律として定めるものであります。ですから、これは党においても丁寧な作業をされているというふうに思いますし、私たちも、道州制担当大臣というのを私も拝命して、これは安倍内閣として進めるという意思のあらわれであります。しかし、その進め方については、いろいろな声に耳を傾けて、そして、さまざまな研究を行いながら着実に対応していきたい、このように考えております。

清水委員 与えられた時間ももう数分になりました。

 ただいま道州制について、党としても基本法案というようなことになりますけれども、町村会を初め市長会、知事会、まだ見えていないところがあるということで、まずは地方の自治がしっかりしないことにはやはりこの問題はできないというようなことでありますので、今後も、我々北海道もいつもしぼんでばかりいるわけにいきません。ですから、元気を出していかなきゃいけないというように思います。

 最後に、質問をさせていただきたいと思います。

 まずは、税についてですけれども、東京の方を初め大都市の方に大変感謝している税でありますが、地方法人特別税また譲与税ということで、これを新たに平成二十年度から導入させていただきました。

 北海道は、正直言いまして、六百五十七億円、通常の法人事業税から見ると、それだけふえているというようなことで、何とか元気に頑張っているところですけれども、ただ、この税の創設のときに、二兆六千億、消費税の譲与が一%ということなものですから、これに近づけるというようなことでありました。

 しかし、現実には一兆五、六千億しかないというようなことで、ぜひこれを二兆六千億に近づけていただきたいということ、これは要望ということにさせていただいて、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

北側委員長 次に、福田昭夫君。

福田(昭)委員 民主党の福田でございます。

 きょうは、一般質疑ということなものですから、最近、特に気になっていることに対して、政府の考えをただしてまいりたいと考えておりますので、それぞれ簡潔にお答えをいただきたいと思います。

 まず最初に、定住自立圏構想についてお伺いをいたします。

 一つ目は、定住自立圏構想の目的と取り組み状況について、現在どんなふうになっているのか、お答えをいただきたいと思います。

関政府参考人 お答えいたします。

 定住自立圏構想でございますが、集約とネットワークの考え方に基づきまして、中心市と周りの市町村が相互に役割分担をし、連携協力することによりまして、圏域全体で必要な生活機能などを確保して、地方圏における定住の受け皿を形成する施策でございます。

 平成二十一年度から全国で本格的にスタートいたしまして、現在、七十四圏域、延べ三百三十団体で定住自立圏が形成されるなど、取り組み団体数は着実に増加してきております。医療、福祉、地域交通など、さまざまな分野で取り組みが進められているところでございます。

福田(昭)委員 非常に重要な取り組みだというふうに思っておりますが、今回、多自然拠点都市構想について、このモデル都市を指定して、実証研究をしました。その成果はどうだったか、お尋ねをいたします。

関政府参考人 お答えいたします。

 通常の定住自立圏構想では、中心市のオフィスあるいは工場に周りから通勤することを想定いたしまして、中心市の要件を昼夜間人口比率一以上と定めていたところでございます。

 一方、今お話のありましたような地域、周りの市町村に豊かな自然を生かした就業の場があることなどから、周辺の市町村に逆に通勤をする、そういう逆の流れの圏域もあるところでございまして、このような圏域につきましては、中心市の昼夜間人口比率が一未満とはなっておりますけれども、圏域全体で集約とネットワークによる機能連携を図るということは十分できる地域でございますので、定住自立圏と同様に取り扱うこととしたところでございます。

福田(昭)委員 今、昼夜間人口比率が一を下回った地域でもその圏域の中心都市として十分機能できる都市について、今回、定住自立圏の一つとして認めたということでございますが、今回の指定で、全国で幾つの自治体が指定されたのですか。

関政府参考人 お答えいたします。

 今の要件に該当するところは、全部で十四圏域であると承知しておりまして、その中で、これから取り組みが進められていくということだと存じます。

福田(昭)委員 この取り組みは、私が野党時代から提案をしていた事柄でございまして、私どもの栃木県においては、那須塩原市と私の地元の旧今市市が実は指定をされたということで、この取り組みを地元の自治体でも大変喜んでおりますので、今後、すばらしい定住自立圏共生ビジョンを策定してくれることを私も期待しているところでございます。

 三つ目は、定住自立圏への支援策について、特別交付税、地域活性化事業債、定住自立圏などの推進調査事業などの支援策がございますけれども、この支援策をこれからさらに充実させていく考えがあるのか、その辺のところについてお伺いをしたいと思います。

関政府参考人 お答えいたします。

 最初にお話し申し上げましたように、制度をつくりましてからちょうど四年が経過しておりまして、各圏域でさまざまな取り組みが進められていると承知しております。それぞれの団体につきまして、具体的に実情やいろいろなニーズをまた十分に把握した上で、この定住自立圏に対する支援策のあり方を私どもも検討してまいりたいと思っております。

 また、あわせまして、現在、私どもの地域の元気創造本部というところで、地域の元気創造プランというものをつくっております。その中で、民間活力の土台となります地域活性化インフラプロジェクトということで機能連携広域経営型プロジェクトということで、市町村の枠を超えまして、一つの圏域、シティーリージョンという言葉が出ておりますが、その全体の高度化を目指して、医療や雇用や教育など、そういう分野におきまして、人、物、金の流れを強化するためのインフラを計画的に整備しようというプロジェクトを検討中でございます。

 今後、定住自立圏とかの圏域におきまして、こういうプロジェクトに手を挙げるといいましょうか、いろいろ御提案がございましたら、我々も受けとめまして、検討してまいりたいと考えております。

福田(昭)委員 政府は、実は長年にわたって過密過疎の解消ということに取り組んできたわけですが、それがなかなかうまくいかなかったということであります。この定住自立圏構想を何としても成功させて、地方が元気な日本をつくってほしいなと思っていますので、ぜひ総務省の皆さんには頑張ってほしいな、こう思っております。

 次に、TPPへの参加についてお話を伺います。

 一つ目は、日米の事前協議についてでございます。四月の十二日に日米の事前協議が終了したわけであります。この事前協議は完全な日本の敗北だ、こう言われておりますけれども、政府としてはどう認識をしていらっしゃるのか、お答えをいただきたいと思います。

城内大臣政務官 お答えいたします。

 四月十二日の日米合意におきましては、まず、TPPでは、包括的で高い水準の協定を達成していくことを確認するとともに、日米が経済成長促進、二国間貿易拡大及び貿易・投資等のルールの強化のため、ともに取り組んでいくこととしております。

 この目的のため、日米は、TPP交渉と並行して、幾つかの分野における非関税措置に取り組むこととしております。

 また、今般の協議では、米国が長年懸念を継続して表明してきた自動車分野についても協議が行われました。その結果、まず、両国政府は、TPP交渉と並行して、日米間で自動車貿易に関する交渉を行うことといたしました。

 また、米国にとってセンシティブな自動車関税に関して米国としての交渉上の立場が示されたことに対して、我が国としてもこれを確認いたしました。

 同時に、我が国にとってセンシティブな農産品に関して、TPP交渉において、日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品といった二国間貿易上のセンシティビティーが両国にあることを認識しつつ、日米がともに緊密に取り組んでいくことを確認したところであります。

 こういった状況でありまして、国益を守る合意であったというふうに認識しております。

福田(昭)委員 それは違うんじゃないですか、城内政務官。それは全く違うと思いますね。

 日本とアメリカの報道は全く違うんですね。日本政府はそう発表していますよ。しかし、アメリカのUSTRはそんな発表をしていないんですね。合意したのは、日本がTPPに参加する場合、包括的で高い水準の協定の達成を目指すということだけ実は合意をしたということで、安倍総理の守るべきものは守ると約束してきた、米とか麦とか牛肉、豚肉とか乳製品などの重要農産物の関税撤廃の聖域の確保については実は何の確約もしておりませんよ。それは確認しておりますか。

城内大臣政務官 御指摘の点でございますが、いずれにしましても、日本には一定の農産品、アメリカには一定の工業製品といった二国間貿易上のセンシティビティーがあるという確認はしたところでございます。

 また、米側が発表した文書もございますけれども、あくまでTPP交渉に関する日米協議の合意は四月十二日の佐々江駐米大使とマランティスUSTR代表代行の間で交換された書簡が全てでありまして、米国政府も独自に文書を国内向けに作成して発表したということは承知しておりますが、これはあくまでも先方が国内説明用に作成した文書でありまして、日米間の合意文書ではありません。

 以上です。

福田(昭)委員 それはおかしいじゃないですか。安倍総理とオバマ大統領で共同声明を発表しましたけれども、あくまでもお互いに重要品目がありますねと確認しただけであって、それを絶対守りましょうなんて約束はしていないじゃないですか。いかがですか。

城内大臣政務官 いずれにしましても、日米間の交渉におきましては、交渉力を最大限に駆使して、我が国として守るべきものはしっかりと守り、攻めるべきものは攻めていく、それによって国益にかなう最善の結果を出していく所存であります。

福田(昭)委員 そんなうそついちゃだめですよ。オーストラリアやニュージーランドも全品目の高い自由化の実現を参加の条件として念押しをしているじゃないですか。いかがですか。

城内大臣政務官 繰り返しになりますけれども、これからの日米間の交渉、そしてTPP全体の交渉につきましては、安倍晋三総理も累次にわたって申し上げているとおり、攻めるべきものは攻める、守るべきものは守って、国益を守る最善の結果を出していく所存でございます。

福田(昭)委員 そんな特攻隊みたいなことを言ったってだめですよ。TPPへの入場料として、先ほどちょっと答えていただいたけれども、アメリカに二国間協議で、まず何を差し出したんですか。

城内大臣政務官 差し出したという表現は余り適切ではないと思いますけれども、非関税措置に関する並行交渉については、日米協議の結果、両国政府は、TPP交渉と並行して、保険、透明性/貿易円滑化、投資、知的財産権、規格・基準、政府調達、競争政策、急送便及び衛生植物検疫措置といった九つの分野における非関税措置に取り組むことで合意いたしました。

福田(昭)委員 もっとわかりやすく私から言いますけれども、まず、牛肉の輸入の規制緩和、入場料として払ったものの一つ。それからもう一つ、かんぽ生命の新規商品は販売を中止する、二つ目。三つ目が、自動車の輸出と輸入ですよね。日本の自動車の関税は長期間にわたって維持をする。したがって、乗用車は五%、トラック二五%の関税は十年以上維持されるということでありますね。逆に、輸入する車は、車種ごとに、車の種類ごとに二千台から五千台、つまり五千台掛ける車種の分だけ、何万台実は輸入するようになるかわからないんですよ。いかがですか。そういうことを約束したんじゃないですか。

城内大臣政務官 いずれにしましても、日米合意というのは四月十二日の書簡に表明されているとおりでございまして、今委員御指摘されました牛肉については、その合意の中には入っておりません。

 自動車は入っておりますし、また、かんぽについて、これは麻生副総理兼財務大臣が閣議後の会見で述べられておりますけれども、これは日米合意とは関係ないものであって、あくまでも、かんぽ生命と他の保険会社との適正な競争関係が確立され、業務の適切な遂行体制が確保される必要があり、そのためには数年かかるという認識を述べたものであって、かんぽ生命につきましても、日米合意のパッケージの一部であるという誤解をされているようでありますけれども、それは関係ないというふうに思っております。

福田(昭)委員 それはおかしいじゃないですか。だって、アメリカが長い間狙っているのは、かんぽじゃないですか、あるいは農業共済じゃないですか。

 今回、最大の、最も重大な敗北は何だというふうに言われていると思いますか。

城内大臣政務官 米国側がかんぽ生命に対する関心を持っているということは承知しておりますけれども、あくまでもこの四月十二日の日米合意の書簡が全てでありまして、そういった観点から、これは日米合意のパッケージの一部ではないというふうに考えております。

福田(昭)委員 マランティスは勝利宣言しているんですよ。

 重大な敗北は、先ほどから城内政務官が答えられておりますけれども、自動車分野を初め、保険とか投資とか知的財産権などの非関税措置について、日米の二国間協議をして、TPP交渉妥結までにまとめるという約束をさせられたことじゃないですか。その約束も、対象分野は今後ふやせるという一文まで書かされたことじゃないですか。それが重大な敗北じゃないですか。どうですか。

城内大臣政務官 まさに日米交渉をこれから行ってまいりますので、まだ結果が出ていないのに敗北であるという結論を出すことは適切ではないと考えております。

福田(昭)委員 まだそんなことを言っているんですか。

 日本が交渉、それこそルールメーキングに加われるのはいつですか。

城内大臣政務官 日本がTPP参加国となった暁には、主要なルールメーカーの一つとして、他国と協議をしながらしっかりとルールメーキングに積極果敢に参加する所存であります。

福田(昭)委員 残念ながら、そんな機会は与えられないんですよね。

 最短で参加できるのはいつですか。七月の、予定されている二十三、二十四、二十五。もし、九十日間ルールというのがあって、参加が認められたとしても、最大限二日か二日半でありますが、その中でどんな交渉ができるんですか。

城内大臣政務官 まだ交渉は行っていませんので、仮定の質問にお答えするのは余り適切でないと思います。繰り返しになりますけれども、日本としては、攻めるべきところは攻め、守るべきところは守り、しっかりとした交渉力で結果を出していく所存であります。

福田(昭)委員 アメリカは、安倍総理はただ決まったことに対してサインをするだけで承知をした、参加を表明した、こう言っていますよ。どうですか。

城内大臣政務官 さきの衆議院選挙でも、聖域なき関税撤廃を前提にする限り、TPP交渉参加に反対するという公約を高らかに掲げておりまして、それ以外にも、自民党はJ―ファイルに五つの判断基準を示し政権に復帰したわけであります。選挙でお約束したことは、決してたがえることはありません。

 繰り返しになりますけれども、攻めるべきところは攻め、守るべきところは守り、積極果敢に国益を最大限守るという所存であります。

福田(昭)委員 城内政務官、今重大なことを言いましたよ。選挙で約束したことはたがえません。それはまるっきり、すぐうそになりますからね。それはよく覚えておいた方がいいですよ。

 次に、二つ目の、参加した場合の影響についてお伺いをいたします。

 政府は、参加した場合の影響試算について、関連産業や雇用も全く含めない、いいかげんな試算で参加を表明したけれども、それをどう考えておりますか。

西村副大臣 我々は、国際的に認められたGTAPモデルというものを使って試算しております。御案内のとおり、関税撤廃だけをまず、関税撤廃という前提、即時撤廃という前提、それから追加的な国内対策は計算に入れないという極めて単純化した前提を置いての計算でありますけれども、これで、実質GDPは〇・六六%、三・二兆円底上げをされるという試算を行っております。

 ちなみに、このGTAPモデルというモデルは、国際的に認められている唯一のモデルと言っていいと思いますけれども、これは、雇用数全体は関税の撤廃前後で変わらないという前提を置いておりますので、雇用がどういうふうになるかということについてはこのモデルでは評価はできませんけれども、一般的に言えば、GDPがふえますのでその分雇用も増加をして、一定程度の雇用への波及効果が期待されるというふうに考えております。

福田(昭)委員 それでは、西村副大臣、TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会というのができているんですが、その教員の会がした試算を御存じですか。

西村副大臣 承知をしております。

福田(昭)委員 この教員の会の試算と政府の試算とどう違いますか。

西村副大臣 まず、私どものモデルは、先ほども申し上げましたけれども、各国と共通のGTAPモデルというものを使って、各国の関税がなくなるという前提で、それで総合的にどういう影響があるかというものを試算したものでありますけれども、この大学教員の会の試算は、日本一カ国だけの産業連関表を用いていますので、ほかの国の関税が下がるという効果があらわれてこないという、まずそこは大前提としてあります。

 それから、毎年の農産物の生産減少額、これは私どもと同じ約三兆円減少するということを前提に置いているようでありますけれども、このことのみを入れた試算でありますので、先ほどの繰り返しになりますけれども、他国の関税撤廃により輸出がふえるとか、あるいは輸入品の値段が下がって実質所得や消費がふえるとか、そういった経済全体への影響は考えずに、農林水産物の輸入の増加だけが国内生産の減少に与えるという試算をされているというふうに承知をいたしております。

福田(昭)委員 そういう言いわけをするわけですけれども、しかし、やはり雇用への影響というのは避けられないと思いますし、大学教員の先生方は農家の所得の減少まで試算をしているんですね、基本的に。ですから、そういう大学教員の会の試算との差というのは歴然としておりまして、GDPは十・五兆円減って、雇用も百九十万人も減る、関連産業も含めてそういう試算をいたしております。政府の試算とは大きな違いでありまして、こうしたものはやはりしっかり統一の試算を、実は政府がなかなか本格的にやろうとしない。

 それからさらに、多分、自民党からも要望があるんだと思いますが、都道府県別にどういう影響があるのか試算をするようにと要望されているようでありますけれども、政府は一向にその試算もしない。そういう、本当に十分な検討もしない中での参加表明ということになっておりまして、そこは私は非常に不安がいっぱいだと思っています。

 ところで、参加したらどんなメリットがあるんですか。

西村副大臣 TPPは、このアジア太平洋地域において、貿易のルール、あるいは投資のルール、先ほど来御指摘のある知的財産、あるいは政府調達、こうしたさまざまなルールを決めていくことになりますので、これは、途上国であるベトナムとかマレーシアとか、WTOのいろいろなそういうルールについても、まだ加盟をしていない国々も含めて、こうした国々との間で高いレベルのそういう投資とか知的財産とかのルールも決めていきますから、そういう意味では、日本の企業が国際的にこのアジア太平洋の地域で自由に活動ができて、その分の国内GDPへの大きなプラス、国内経済への大きなプラスというものが考えられるというふうに思います。

福田(昭)委員 それは違うんじゃないですか。政府の統一試算で見ても、GDPがふえるのは十年でやっと三・二兆円でしょう。だから、それほどの大きな効果はないんじゃないですか。

 三つ目の、TPPの本質と問題点についてお伺いをしたいと思いますが、TPPの本質がどこにあって、問題点はどこにあるとお考えなのか、お答えをいただきたい。

西村副大臣 先ほどの私どもの政府の試算は、関税撤廃のみをした試算でありますので、知的財産で日本の企業のさまざまな製品が守られるとか投資が保護されるとかというところは、残念ながら、そういうものを図るモデルがまだ統一したものがないものですから計算ができておりませんけれども、そうした面での大きな効果もあるというふうに認識をしております。

 それから、メリットと問題点ということでありますので、問題点というか課題としていえば、それぞれの国にそれぞれの国柄というものがあって、我が国は我が国の、まさに、各地域の農村の伝統文化があったり、美しい田園風景があったり、あるいは世界に誇る国民皆保険というものがある社会保障制度があります。こうしたものを交渉の中ではしっかり守っていくというのが前提でありますので、そういう意味では、こうしたことを、交渉の中で日本の主張をしっかりして、国益を最大限実現していくということだと思います。

福田(昭)委員 TPPに入るということは重大な決断ですから、日本の国の形まで変えてしまうような大きな決断ですから、やはりもっと慎重な検討が必要だと私は思うんですね。

 TPPは、問題なのは、大きく言って三つあります。

 一つは、何といっても秘密主義です。交渉を十七回やっても、なかなか交渉の中身が伝わってこない。秘密主義。これは、情報が伝わったら潰されるから情報を出さないわけですよ。全く秘密主義。それから二つ目は、投資家や企業の利益を最大化する仕組みだということです。投資家や企業がISD条項をもって政府を超える、国家を超える、そういう非常に民主主義的でない企業の利益を求めるやり方だ。さらに三点目は、ブロック経済をつくるということであります。まさに、自由貿易に反するようなブロック経済をつくる。これがTPPの本質であって、大変な問題点だと思います。

 先ほど申し上げたように、九十日間ルールというのは今アメリカにないそうです。なぜ、それでは九十日間ルールがあたかもあるように言われているのか。それは、日本にルールメーキングに参加させない、そのためにオバマ大統領が九十日間ルールがあるように言っているようであります。したがって、日本は、七月の後半からもし参加できたとしても、ルールメーキングに参加できない。ただ安倍総理はサインするだけ、こういうことになるんですよ。

 この秘密主義、まさに、そのことについてどう考えておりますか。

城内大臣政務官 今委員、秘密主義とおっしゃいましたけれども、二国間、そして多国間の交渉事につきましては、相手国との関係もありますので、その交渉の内容を公開するということは、一般論として言えば行われておらず、適切ではありません。

 以上です。

福田(昭)委員 そうやって逃げるんでしょうけれども、それでは、ISD条項についてどう考えておられますか。

西村副大臣 これは、以前にも議員と議論させていただいたことがありますけれども、これまで日本が結んできた投資協定においても幅広く採用してきておりまして、御案内のとおり、二十四の協定の中に、EPAも含めて、このISDS条項は含めております。

 これは、国会承認をいただいてこの協定締結をしているところでありまして、基本的には、投資家と投資受け入れ国の間で何か紛争が起きた場合に、国際仲裁を通じて解決していく、そういうルールを決めたものでありますので、日本企業が海外で投資をして活動する場合、保護されるということで、非常に有効なものと考えております。

 TPP交渉においては、投資の保護と、それから、御指摘、御懸念の点だと思いますけれども、国家の規制権限の確保との間のバランスを保とうということで、この手続の濫用を防ぐための規定が検討されておるということも承知をいたしております。

 いずれにしましても、我が国の規制権限、それから海外で活躍する日本の企業の保護という両面を勘案しながら適切に対処していきたいというふうに考えております。

福田(昭)委員 このISD条項は、米国とオーストラリアのFTAには入っていないんですよね。先進国同士の自由貿易協定には実は入っていないわけです。したがって、今回もきっと、オーストラリアがTPP交渉の中で反対していると思うんです、ISD条項については。

 本当の自由貿易というのは、関税も非関税も、例外を認め合う、その国の守るべきものをしっかり認め合う、そういう自由貿易にしたらいいと思うんです。TPPも、本当に自由で包括的な、高レベルな自由貿易協定を結ぶんだったら、そういう自由貿易協定を結んだらいいと思うんですが、いかがですか。

西村副大臣 TPP交渉の中には、いわゆる新興国、途上国も入っておりますので、ISDS条項をどういうふうに扱うかというのは、我々まだ交渉に入っておりませんのではっきりしたことは言えませんけれども、交渉に入った後、適切な形で対応することになると思いますし、オーストラリアがアメリカとの関係で二国間の中には入れていないということも承知をしておりますし、ISDS条項には非常に慎重な立場ではないかということは仄聞をいたしております。

 いずれにしても、何度も繰り返しになりますけれども、このアジア太平洋地域で投資とか貿易とか知的財産を守るとか、そういったルールを決めていく、そういう意味で、高い、包括的な協定にしていこうというところ、これは我々も合意をして参加をしようということであります。

 その中で、もちろん、それぞれの国の国柄というものがあるわけでありまして、日本には日本の守るべきものがありますから、これは交渉の中でしっかりと確保していきたい、実現していきたいというふうに思います。

福田(昭)委員 アメリカのパブリックシチズンの貿易担当のロリ・ワラック女史、弁護士はこう言っています。日本の皆さん、TPPに入っちゃいけませんよ、アメリカという国は足が二十本もあるようなタコのような存在です、だから、どこでも足を伸ばしていって吸い取ってしまいますよ、だから入っちゃいけません、こう言っていますが、いかがですか。

西村副大臣 その言葉は承知をしておりませんけれども、もちろん、交渉ですから、お互いに、それぞれの国がそれぞれの国の国益を実現すべく交渉するわけでありますので、しっかりと日本としても心して交渉をしなければいけないと思います。

 一方で、多国間の交渉でありますから、これはいろいろな形で、マルチの場でいろいろな国々の主張を統合していくわけでありますので、アメリカの主張のみが全部通るということでもないと思いますので、これはしっかりと、アメリカともしっかり交渉するし、ほかの国ともしっかり交渉して、日本の国益を実現してまいりたいというふうに思います。

福田(昭)委員 アメリカとの交渉の中でなかなかそんなにうまくいくとは思いませんけれども、仮に、もしTPPに参加をして、日本の経済社会が疲弊をした、超格差社会が生まれて、多くの人が何をして生活をしたらよいかわからなくなってしまったり、国家主権までもなくなってしまったときに、安倍内閣は後世の歴史家からどう評価を受けると思いますか。(発言する者あり)

西村副大臣 まさに仮定のお話でありますので、お答えは差し控えたいと思いますけれども、我々、TPP参加によって日本の国益を実現して、さまざまなまた新たなビジネスチャンスが生まれてくる、その中でまた新しい人たち、新しいチャンスをつかんでいく、そうなるべく、我々しっかり交渉していきたいというふうに思います。(発言する者あり)

福田(昭)委員 委員長、少し注意してやってください。

 TPPの参加は、本当に日本の国を変えてしまう大きな参加です。それこそ、この決断が本当に大変な、日本の社会を破壊してしまいかねない、そういうTPPですから、本当に慎重に対応してもらわないと困る。

 だから私は、これは最後に聞こうと思っていたんですが、むしろ、それこそ新藤大臣みたいな、閣僚には、だめなときは体を張って安倍総理をとめる、それぐらいの覚悟がないとだめな交渉だと思っていますよ。新藤大臣、いかがですか。

新藤国務大臣 先ほどから委員がいろいろな御心配をいただいていること、これを私たちはきちんと受けとめたいと思います。日本じゅうが同じように思っているんです。やはりこれだけの国を揺るがす議論をいたしました。そして、前政権においては党を二分するような、また非常に難しい事態になったこと、それは、それだけの重大なことだったんだと思います。

 ですから、私たちはいろいろな声に耳を傾けつつ、基本は、我が国の国益の最大化でございます、最適化であります。こういったものを達成するための決意を持ってこの交渉に参加をしていくということを政権として決めたということであります。

 あわせて、さらに言わせていただくならば、私たちの国は、この日本という国の経済を発展させていくためには、世界じゅうとの経済の交わりを強めていかなくてはなりません。それはTPP一つで解決できるものではありません。しかし、TPPの交渉の参加、またそれにかかわる外交の展開において、いろいろな動きが出てきたということであります。中国の動きも韓国の動きもEUの動きも、RCEPという一回頓挫しかかっていたものもいろいろまた息を吹き返しました。外交というのは、いろいろな相関関係の中で、また私たちも幾つものオプションを持って、まさに国益の最適化を図るためにやっていく。

 ですから、御心配のことはしっかり受けとめて、その上で前に進めていきたい、このように考えます。

福田(昭)委員 新藤大臣から、前向きに取り組むという話でありましたが、アメリカが勝利宣言をしているということは本当にしっかり考えてやっていかなきゃならない問題だと思いますので、きょうはこのぐらいにしておきたいと思います。

 次に、日本郵政の現況についてですけれども、一つ目は、まず、日本郵政と子会社の持ち株会社の経営状況と問題点について、簡潔にお話をしてください。

鈴木政府参考人 お答えさせていただきます。

 日本郵政グループの平成二十四年度の連結決算におきましては、経常収益が、郵便物数の減少、あるいは低金利の継続、保険契約件数の減少等によりまして、対前年度比で八千百二十二億円の減収ということになってございます。そうした中で、賞与の削減などの人件費の削減、あるいは減価償却方法の見直し等の費用削減によりまして、結果として五千六百二十七億円の純利益を確保しました。こういった経営努力というのは評価したいと思います。

 平成二十五年度、今年度におきましても、厳しい経営環境は継続をいたしておりまして、グループ連結の純利益見通しは、前年度比で四割近く減益の約三千五百億円となる見通しとなっておりまして、新規サービスの早期開始などによります収益構造の多角化や強化、あるいは一層の経営の効率化を進めることが課題だというふうに認識をしてございます。

 総務省といたしましては、国民利用者に民営化の成果を実感していただけますように、株式上場に向けて企業価値の向上が図られますように、適切に監督をしてまいりたいと考えてございます。

福田(昭)委員 本当に、努力をしながらもなかなか成果が上げられないという厳しい経営環境にあるということであります。

 そうした中で、今回、日本郵政の人事を行う。しかも、日本郵政の株式を一〇〇%持つ政府の意向で経営陣が全面的にかわるということでありますけれども、今回、全面的にかえる必要があるんですか。いかがですか、新藤大臣。

新藤国務大臣 事実関係で申します。

 私どもとすれば、この郵政の社長人事について、これについては、社長人事というよりも、郵政の取締役の選任について意見を持っていました。そして、社長となる予定という、人事も含めての意見は、私どもとして郵政の方にお伝えをいたしました。

 今回のことは、郵政の民営化を国民に実感していただくために、また、民間会社としてさらなるガバナンスを強めていくように、そのためによりよい体制をつくるのにはどうしたらいいか、そういう中で、次期社長に就任する方として西室泰三さんがふさわしいのではないか、こういう意見は伝えました。そして、それに基づいて、日本郵政株式会社の中で御検討いただき、そして内部の手続を行ったわけであります。

 そして、新たに次期社長となる西室さんのお考えで、これは社内、社外を含めて、その取締役をどういう体制をつくろうかという中で、いろいろなお考えがあり、結果的には全ての方がおかわりになるということになったわけでありまして、私どもが、全てをかえるべきとか、そういったことを申し上げているわけではありません。

 我々は、取締役の選任に当たって、次期社長についてこういった方でいかがでしょうか、こういう考えをお伝えした、こういうことでございます。

福田(昭)委員 先日の総務委員会で、我が方の奥野総一郎委員の質問に対して、新藤大臣は、現執行部とは政権が信頼関係を結べないということをその理由に挙げて答弁を行ったわけでありますが、信頼関係が結べないとした理由はどこにあるんですか。

新藤国務大臣 私が申し上げましたのは、二つあったわけですね。

 一つは、私たち政権との間での信頼関係がやや保っていない、そういう部分がある、社長の交代劇に疑念があるということを申し上げているわけであります。

 それは、平成二十四年の十二月十六日に第四十六回の衆議院議員総選挙がございました。そして、この選挙の結果、政権が交代し、新たな政権ができる、こういうことがはっきりした時点で、十二月の二十日になって、齋藤社長さんが十九日におやめになり、そして二十日に新たな社長が就任された。この間について一切の連絡、相談もなかったということであります。

 次の政権の予定である、そういうところに何の連絡もなかった、これはいかがなものかというのが当時の自民党の幹部の発言でありますし、今、私たちの政権の官房長官がこのことについて非常に疑義を持っているということで、再三にわたってお話をしております。また、安倍総理においても、その官房長官の言葉は重い、こういうことで政権の意思となっているわけであります。

 ですから、私としては、政権移行が決まっている時点において、突然の連絡もない中の社長交代が行われた、これをもって政権との連絡性、また信頼関係に疑問が生じているということを申し上げたわけでございます。

福田(昭)委員 今回の菅官房長官の意思で始まった郵政の人事でありますけれども、非常に政治に翻弄される郵政事業というふうになってきてしまったわけであります。

 その菅官房長官が、郵政民営化の流れを取り戻していくんだ、こうおっしゃっているようであります。それは、例えばでありますけれども、ゆうちょ、かんぽの二社の株式を全面処分していくということを考えているのかどうか、お伺いをいたしたいと思います。

新藤国務大臣 これはまだ、そういったようなことではありません。適切にいろいろな諸情勢を考えながらやっていくということであります。

 日本郵政は、日本郵政株式会社、持ち株会社の株式の二分の一の処分までに、こういった金融二社の株式処理についての方針も明確化する、こういうことでありまして、今後、それはいろいろな状況を踏まえながら検討していきたい。最適な状況が生まれるのではないかということを期待しております。

福田(昭)委員 御案内のとおり、小泉政権が決めた郵政民営化法は、日本郵政が二〇一七年までに貯金と保険の二つの子会社の株式を全て売るという予定でしたが、それが今回の見直しで努力規定になったんですね。義務規定から努力規定になった。

 しかし、これは前々からのアメリカの要求、要望でありますから、そうしたことに実はつなげていくという狙いがあるんじゃないかということで、前もってこれはぜひくぎを刺しておきたいと思うんですが、それはありませんか。

新藤国務大臣 私は、それはアメリカ側からそういう話があったときにも申し上げますが、これは郵政民営化法にのっとって、我が国の国内において我が国の国内の民間会社が運営をされていくわけであります。その中で、私たちも政府としてこの郵政の民営化には関与しております。ですから、もろもろ含めて、最適な対応ができるように取り組んでまいりたいと思いますし、今の最終的な御質問については、新しい経営陣が最適な結論を出していくもの、このように考えております。

福田(昭)委員 これも実はTPPへの参加と関連してくるんですよね。

 先ほど城内政務官からお答えいただきましたが、日米の二国間事前協議で、非関税措置について、保険も含めてTPP交渉の妥結までに決めるというふうに実は約束させられているんですね。ということは、このかんぽ生命保険について、当然のことながら、新規商品の発行は認めない、また株式も全部売れという要求がここでまたもう一度実はやってくるというふうに私は考えているんですが、いかがですか、政務官。

新藤国務大臣 総務省といたしましては、このかんぽ生命の新規業務、これは郵政民営化法に則してやる、のっとってやるんだということでございます。これはもう再三言っております。そしてそれは、他の生命保険会社との適正な競争関係及び役務の適切な提供を阻害しないような形で実施されるということを米国側にも説明しております。

 それから、先生御存じだと思いますが、TPP交渉参加に向けた日米事前協議、これは、保険等の非関税障壁については、TPP交渉と並行して行われるということですね。

 この交渉は、日本がTPPに参加した時点で開始、交渉妥結までに取り組みます、そしてその成果はTPP協定が発効する時点で実施される、こういう約束をしたというのは事実であります。しかし、その中身については、私が当初申し上げましたように、我々はこの方針にのっとってやっていくということを強く米国側にこれまでも説明している、こういうことでございます。

福田(昭)委員 大臣、それが通ると思いますか。もし仮にISD条項がTPPのルールの中に入ってきたら、これは投資家が日本の政府を訴えられるんですよ。もし、官民イコールじゃない、イコールフッティングじゃないということになって、世界銀行の下部組織に訴えて、もしそれが、それこそ、そうだ、そのとおりだという裁定が出れば、日本の政府が損害賠償を払うと同時に、今大臣が言われた法律まで実は変えさせられちゃうんですよ。そこまで実は考えてこのTPP交渉をしないと私は絶対だめだと思うんですが、いかがですか。

新藤国務大臣 ですから、まさに先生がいろいろ御心配いただいていること、これは我々はきちんと耳を傾けていきたい、このように思うわけでありますが、しかし、そういうものも含めて、我々は国益の最大化を狙っていく。

 それから、独立国として、私たちの国が自分たちの国内のことを自分たちで決めていくわけであります。そしてあわせて、関税交渉を行って、貿易交渉を行って新たな経済連携の枠組みをつくっていく中で、国益と国益が時にはぶつかることもあるでしょう、いろいろな交渉を経てやっていくということであります。

 それぞれの交渉はつかさつかさがございますが、いずれにおいても同じ基本があると思います。御心配は御心配としてきちんと受けとめて、それに対する対処なり対応というものを考えなければいけない、このように思いますが、我々はそういった困難を乗り越えて国益の最適化を図るべきだ、このように考えています。

福田(昭)委員 私は、参加をすることによって国益を損なうことを心配しているんですよ。大臣は一生懸命、国益の最大化を目指すと言っていますが、参加することによって逆に国益を損なってしまう、そういう心配をしているわけであります。

 例えばでありますが、ゆうちょやかんぽがもし株式一〇〇%売却をすることになっちゃって、そうして、その株式が外国人投資家などにもし買われてしまって経営権が変わっちゃったら、どんなことを考えますか。想像できますか。

新藤国務大臣 仮定のことでございますから、全くお答えのしようがありません。委員がいろいろなそういうシミュレーションをしていただくのは結構だと思います。しかし、私は、行政において、所管である総務省の大臣として、そういった仮定の御質問にはお答えいたしません。

 しかし、私たちの国において、また私たちが所管する事業や事務において不利益をこうむることのないような、そういった最大限の努力はしてまいります。

福田(昭)委員 私は、アメリカという国は、先ほど申し上げたように足が二十本もあるタコのような国ですから、それこそどこだって足を伸ばしてきて、それがまさに金融資本主義でありますから、全部吸い取っていってしまうというのがアメリカの資本ですから、そこをやはりしっかり考えていく必要があると思うんですね。

 仮に、こうしたことも実はシミュレーションをして、答えなくてもきっとシミュレーションはしているんだと思いますけれども、シミュレーションをして取り組んでいく必要はあると思うんですよ。

 御案内のとおり、ゆうちょは八割、かんぽは六割、運用資金の八割、六割は日本の国債を持っているわけですよ。これは絶対持ち続けてもらわないと、実は日本の財政再建につながっていかないんですよ。もし、外国の資本がゆうちょなりかんぽの経営者となって日本の国債を売り払ってしまう、あるいは外国の債券を買ってしまう、こうなったら、本当に日本の国家財政の破綻の引き金を引くことになるんですよ。

 ですから、そこまで考えてしっかり取り組んでいかないと、ISD条項なんかが入っていたら本当に簡単にやられちゃいますから。それこそ小泉郵政民営化よりもっとすごいですよ。いわゆるルールに基づいてくるんですから。そのルールをきちっと食いとめられればいいですよ。しかし、裁くところが日本の裁判所じゃないんです、世界銀行の中で裁くんですから、とてもとても日本の裁判所で裁ける話じゃないので、これは日本の国を滅ぼすことにつながる本当に大きな課題ですから。

 TPPを、やはり農業だけじゃなくて、包括的な二十一の分野にわたっての交渉ですから、たった二日間ぐらいの交渉で参加をするようなことを決めちゃったら、とんでもない、取り返しのつかないことになると思うんです。そう持ってきたのがアメリカですから、ここはオバマさんは上手なんです。ですからそこをしっかり踏まえて対応していくことが必要だというふうに思っております。

 だんだん時間がなくなってきましたが、あとまだ少しあります。

 それでは、最後、四点目でありますが、経済財政運営の骨太の方針についてお伺いをしたいと思います。

 一つ目は、小泉内閣の骨太の方針の評価なんですけれども、時間がなくなってきましたので、こちらから一方的に申し上げたいと思います。

 ここに、「日本はここまで貧乏になった」ということで、日本経済復活の会の小野盛司会長が書いた本がございます。この小野先生、小泉構造改革を徹底的に検証したんですね。その結果、「小泉構造改革は、実は失敗だった!」こういうふうに結論づけております。

 どういう失敗かと申し上げますと、「一九九三年と一九九四年は日本の一人当たりのGDPは世界一、つまり日本は世界一豊かな国だった。しかし、二〇〇六年度には世界十八位までに転落。なんとこれは一九七一年の水準だ。その日本が一九七一年の十八位から世界一になるまで二十二年もかかった。デフレ時の緊縮財政という誤った小泉政策がみるみる日本を貧乏にし、財政も悪化させたのである。」そう結論づけております。この話はまさに傾聴に値する話だというふうに私は思っております。

 そこで、今回の安倍政権が考えている骨太の方針、まだ目次しか発表になっていないようでありますが、その基本的な考え方、どういう考え方で骨太の方針をつくろうとしているのか、お伺いをいたします。

西村副大臣 今回の骨太方針については、先般、五月二十八日に行われました経済財政諮問会議で、御指摘のとおり目次案をお示ししましたけれども、そこにありますとおり、停滞の二十年という反省に立って、安倍内閣の最優先課題でありますデフレからの早期脱却を実現すべく取り組むというのが一番の課題。そのために、総理から、回復の十年に向けた基本戦略となる、まさに骨太の方針をしっかりまとめてほしいという御指示があったところでありまして、現在、目次案に沿って中身を詰めているところでございます。

福田(昭)委員 目次を見てみると、どうも小泉内閣でつくった骨太の方針と大体同じなんですね。これでは、残念ながらデフレから全く脱却できませんよ。

 しかも、要するにプライマリーバランス主義を堅持して、二〇一五年にはGDP比半減、二〇二〇年には黒字化するんだ、それを基本にこの骨太の方針をつくるというんですが、残念ながらこれは小泉構造改革の二番煎じで、せっかく三本の矢ということで始まってきたところへ、四本目の矢がこの三本の矢をまた取り崩す、実はそういう骨太方針になっちゃうんですよ。そう考えませんか。

西村副大臣 御案内のとおり、一本目の矢もこれまでと次元の違う大胆な金融緩和を日銀の方でやっていただいておりますし、二本目の、機動的な財政政策ということで、まずは景気回復、底上げ、底割れを防がなきゃいけないということで補正予算を組ませていただきまして、二十兆円規模の財政出動をやったというところ。そして、今まさに策定中の三本目の矢で、民間主導、しっかりと成長軌道を描いていく、その成長戦略を今つくっているところでございます。

 そういう意味では、小泉内閣時代の骨太方針のいいところ、これは維持をしながら、しかし、さらに次元の違う政策をやって、日本経済をしっかりとデフレから脱却させるという強い意思で臨んでいるところでございます。

福田(昭)委員 先日の新聞報道によりますと、EUが財政再建目標を断念したというんですよ。緊縮緩和、成長重視に転換というんです。

 欧州連合の欧州委員会は五月の二十九日、加盟国の経済、財政に関する勧告を発表した、欧州債務危機対策として各国に課していた財政再建の目標達成を断念して、期限を先送りするなど緊縮策を緩和し、経済成長を重視する政策への転換を表明したというんですよ。財政緊縮が景気を一層悪化させ、失業増を招くという負の連鎖からの脱出を目指すんだというんですよ。私に言わせていただければ、まさに日本も、どうもこういうことを繰り返している。

 それで、EU加盟国は、これから緊縮緩和のかわりに、労働市場や年金制度の改革を進めて競争力を強化し、雇用と成長の拡大に向けた具体的な成長戦略策定を義務づけられるというんです。

 ですから……(発言する者あり)アベノミクスとは全く違う。アベノミクスは、実は大きな欠点が四つあるんです。

 三本の矢を一体的に進めるというのは私も大賛成でありますが、大きな欠点の一つは、まず中長期的な視点がないということ。それから、順序が逆だということ。金融緩和から始まっちゃった。これは本当に金融バブルで終わってしまう可能性が高い。そして三つ目は、内閣府が使っているモデルが十年間も当たらないモデルを依然として使っている。そして四つ目が、具体策が支離滅裂だということ。デフレなのにインフレの政策が入っている。この四点が実はアベノミクスの欠点です。

 ここをしっかり修正してやっていくということが、日本の経済をよくして、経済の成長なくして財政再建なしですから、増税でなんか財政再建はできませんから、そこをしっかり考えた策をやはりとっていく必要があると思っております。

 だんだん時間がなくなってきましたが、そこで、きょうは資料を一、二、三と用意させてもらいました。

 新藤大臣には、一は見てもらっているかと思いますけれども、これは、平成三年から二十三年までの実質GDPや名目GDPあるいは成長率などをあらわした表でございます。

 これを見ていただければわかるように、実質GDPはそれなりに大きくなっておりますが、名目GDPは二十年間一つも大きくなっておりません。そしてさらに、実質成長率はそれなりに伸びておりまして、マイナスなのはたった四年間だけであります。しかし、名目成長率が余り伸びておりません。したがって、名目GDPが全く大きくならないというのが日本の経済と財政の問題であります。

 次に、資料の二でありますけれども、資料の二は、国家ビジョン研究会がつくった、大型な財政出動を積極的に展開したときの成長のシナリオをシミュレーションしたものであります。

 これを見ていただくとわかりますように、実質GDPと名目GDPが二〇一七年に逆転をして、それからずっと二〇二〇年まで逆転をし、名目GDPは八百兆円を超える。そしてさらに、賃金も四百七十一万五千円から六百三十四万六千円まで伸びる。雇用者数も伸び、そして税収も伸び、さらに、政府の純債務も減っていく、人口もふえていく、こういうシミュレーションを国家ビジョン研究会がやっております。

 そして、さらにその次、資料の三でありますが、「アベノミクスは砂上の楼閣」という、先ほど話をした小野先生がまとめた文章でございますけれども、まさに主要民間シンクタンクの経済予測は、消費税を上げたらだめだよということをしっかり示しております。そして、その後ろの方を見ていただきますと、日本の名目GDPが世界各国に比べていかに大きくならないか、むしろ小さくなっているという表であります。ここをいかに大きくしていくかということが実は経済と財政をよくする方法なんですね。

 ですから、日本の英知を集めて、経済財政諮問会議のメンバーじゃなくて、本当に日本の英知を集めて、デフレからどうやったら脱却していくかという処方箋をやはり描いていくということが一番大事だ、それを提案して、時間が来ましたので、終わりにしたいと思います。

 ありがとうございました。

北側委員長 次に、岩永裕貴君。

岩永委員 皆さん、おはようございます。

 本日は、一般質疑ということで、前回、先々週にも触れさせていただきましたICTなどについて、もう少し深く質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、前回、冒頭にも申し上げましたフェイスブックの件について、もう少し総務省さんにも力を入れて国民に対して発信をしていただきたいというようなお願いをさせていただいたのが五月二十三日、前回でありました。

 そこで、前回、フェイスブックの利用者というのは、恐らく何千万という単位で、今、日本国内でも利用されていると思いますが、それが百五人しか見ていないというところで、少し残念ですというようなことを申し上げまして、きょうの朝確認してみたら、「いいね」の数が百二十三、十八人ふえていたということなんです。

 やはり国民目線に立ったときにはフェイスブックでの情報発信とかというのは本当に大切な部分でもあるでしょうし、この部分については引き続きもう少し力を入れていただいて、より多くの国民の皆さんにごらんいただいて、総務省さんが何をしようとしているのかということを周知徹底していただくように、今後も御努力いただきますことをまず冒頭に再度お願いをさせていただきます。

 それで、これも五月二十三日だったんですが、大臣室の方にお伺いをさせていただきました。4Kと8Kの視聴というところで、この委員のメンバーの中からも何人か御出席をされておりました。

 伺う前には、地デジとどのぐらい違うのかなということをかなり疑問を持ちながら伺ったんですが、大臣室で実際に4K、8Kというものを拝見すると、そのきれいさというのは本当に驚きを覚えましたし、ちょっと次元が違う、本当に高画質というところで、これからのテレビ産業なんかもこれを機に大きく発展していっていただきたいなというような本当に強い印象を覚えさせていただきました。

 ただ、かといって、今の時代、いいものが必ず売れるという時代でもないですし、いいものじゃなきゃ売れないんですけれども、やはりいろいろな戦略のもとに育み、育てていく分野だなという観点から質問をさせていただきたいと思います。

 まず、伝送経路の調整についてというところなんですけれども、少しお話を伺っておりますと、当初はCSから始めていって、BSに、そして行く行くは地上波にというような大きな流れがあるというふうに伺っておりますけれども、そのあたりについてと、現在の進捗状況というか、今考えていらっしゃるロードマップを、伝送経路について少し教えていただきたいと思います。

新藤国務大臣 これはまず、委員の皆様は、そのとき御都合がついた方々にお出ましいただいたことをお礼申し上げたいと思います。また、御都合の悪かった方にきょうおいでをいただくことになっております。

 とにかく、今、岩永委員の話ではありませんが、見ていただくことが一番だ、こういうことでありまして、その機会をまたいろいろつくってまいりたい、このように思います。そして、この将来性、また可能性というものを感じていただいた中で、ともにまた普及に対していろいろと御協力いただければありがたい、このように思います。

 4K、8Kについては、まず、当初より研究してきたわけでありますが、私が大臣になりまして、景気対策として、また日本を元気にさせるための方策として、予算をふやせば実現が早まる、こういうものは何かないかということで、省内の見直しをかけたときに、可能性として出てきたのがこの4K、8Kでありまして、当初、4Kは二〇一六年からの試験放送開始でありましたが、それを二年、予算をつけることで前倒しをできるようにしたということであります。それから、二〇二〇年に始めようとしていた8Kについては、四年前倒しをして二〇一六年にやろうと。

 二〇一四年はリオのサッカーのワールドカップがございます。それから、二〇一六年はリオのオリンピックがございます。そういった中で、こういった新しい取り組みを進めていって、二〇二〇年、東京オリンピック誘致成功を前提にして、これはもう日本においても、世界に対してでも、新しいこの4K、8Kを、特に8Kをここで一挙に普及を、弾みをつけようじゃないか、こういう作戦を考えたということであります。

 しかし問題は、この4K、8K、特に8Kは大量の画素数、データが重いわけであります。ですから、こういうものを実際に放送させていくためには、放送の電波のあきをつくらなきゃならないわけです。その意味において、今現状では、まずはCSで始めて、そしてBSに持っていく。そして、地上波においては、今いっぱいでありますから、そこを、いろいろな技術をさらに高度化させて、あけて、またこれを最終的には一般の方にもよく見れるようにしよう、こういう段取りになっています。

 しかし、放送電波に乗らなくても、DVDですとか、そのころがDVDと言うかわかりませんけれども、とにかくそういった形で、別のソフトウエアで見ることはできるようになると思うんですね。ですから、放送の普及をさせていくことはいろいろな工夫が必要だと思います。

 それからもう一つ。4K、8K、幾らいいからといって、アナログから地デジに変えるときは、アナログの受像機では見れなくなっちゃうんですよ。ですから、そこが、皆さんに大変な御苦労や御迷惑をおかけした部分がございます。今度のものは、順番に、スムーズに、無理な買いかえだとかそういうことを迫らずにやっていこう、こういう考えもあります。

 それは、8Kの放送も4Kの放送も、コンピューターの処理によって、これは8Kであっても2Kでも見れるように、そういう技術もある。逆に言えば、2K放送であっても、それを4Kテレビや8Kテレビで、もどきといいますか、コンバートというんですけれども、アップコンバート、ダウンコンバートを行うことによって、フルではありませんが、それに近いようなものが見れるような、そういう工夫もしていこうと。

 いずれにしても、無理なく、そしていろいろな展開ができるように、それは、映像を楽しむだけではなくて、産業用の展開や医療、福祉、そういったものへの展開も可能なのではないかなということで、追求してまいりたいと思っています。

岩永委員 ありがとうございます。

 まずはCSで、そしてBS、地上波についてはちょっとまだ見えないところがあるというようなお答えであったかと思います。

 もう一点。画質がきれいなんですね。きれい過ぎて、見えなくてもいいところまで見えてしまうというか、本当に至近距離で人間を見ているような、人間とかいろいろな対象物を見ているような感じぐらいきれいなわけなんです。

 私も放送の制作会社、関連の会社に以前勤めていた経験もございまして、よく言われるのが、地上波デジタルへの対応というのが一旦終わったというようなところで、次に、やはり4K、8Kに対して、地方局とか制作会社というものがこれからそうしたものに投資していくだけの体力とかがなかなか厳しいんじゃないかというふうなことも心配事として少し上がってきておりますが、そのあたりについて、今現在、総務省さんが把握していらっしゃる、特に地方局とか制作会社からの声というものがございましたら、お伺いをさせていただければと思います。

新藤国務大臣 まだそこまでの具体的な検討に入っているわけではありません。しかし、ローカルの局が4K、8Kの放送主体になるということまではまだ想定をしておりません。

 まずは、連休中に立ち上げましたけれども、4K、8Kの放送をしていく、そういう事業体を民間の皆さんが共同でつくっていただきましたから、そういったところでまず取り組みが始まるということであります。

 ローカル放送局につきましては、先ほども私申し上げましたけれども、従来の、4K放送、8K放送をコンバートして、ローカルの局でも流せるようにはなるわけであります。ですから、質は落ちますけれども見ることはできる、しかも十分な精度を持って。

 そういったことでございますから、特別な御迷惑をかけるようなことにはならないだろうというふうに思いますが、いや、我々もやりたいよということも必ず出てくると思いますが、それはさらなる検討とまた技術の進展が必要だ、このように思います。

    〔委員長退席、田中(良)委員長代理着席〕

岩永委員 なぜこのようなことをお伺いするのかと申しますと、先ほどの伝送経路の問題であったり、放送事業者がこれからどういうふうに対応していけるのかとか、国民に対しても、地デジ化が終わって、各御家庭が地デジ対応のテレビを購入されて、一旦落ちついたというような状況の中で、また4Kか8Kかというような議論もさまざまな分野で必ず出てくると思うんです。

 でも、電機メーカー中心に、この産業を成長戦略として国が推し進めていくんだということであるなら、前回、拝見させていただいてから総務省さんともお話をさせていただくと、やはりそのあたりのジレンマというのが感じ取れるんです。進めたいけれども、一定そういうところに配慮もしていかなければならないというようなお話がうかがえます。

 ただ、そういう配慮があり過ぎても、もう韓国なんかでは地上波の試験的な放送が始まっているというふうにも伺っていますし、やはり起死回生、電機産業というものを日本としてもう一度世界のトップレベルにしっかり持っていくんだというようなお話であれば、余りそこへの気遣いというものが過度になり過ぎると、メーカーの方も、生産台数が、どのぐらい投資をしていったらいいのかなとちゅうちょをしている間にまた諸外国に抜かれていってしまうというようなことになりかねないので、そういった部分について、政治的なリーダーシップでこの分野についてはぜひ推し進めていただきたいなということをまずお願いさせていただきます。

 それで、引き続いて、ICTの関連について、前回、大臣そして総務省の皆さん方にお伺いをいたしました。

 ICTは、私、この国の未来を本当に左右する、大変大きな大きな分野であるということも前回言わせていただきましたし、東日本大震災のときの日本人の人々の動きから国民性までがデータ化されてわかってくるというような話、そして、情報薬と言われる、情報がもう本当に薬になる時代なんだということ、予防医療とか、あとは巨額の医療費の削減にも絶対つながっていく、そしてまた、年間三万人を超える自殺者の方々が、自殺される前に未然に防止できるような対策まで、こういった、ビッグデータは本当に大きな可能性のある分野であるということも御紹介をさせていただきましたし、ぜひスピード感を持ってこのICTについては進めていただきたい。

 そして、大臣所信の中でも、ICTという言葉を本当にたくさん使っていただいて、今後の可能性をおっしゃっていただいているわけですけれども、前回伺えなかった部分というか、もう少し深めてしっかりと御答弁をいただきたい部分が、このICTを進めていくために、まず本当に一番大切になってくるのが個人情報の匿名化だと私は思っています。

 いろいろなデータはあるけれども、そのデータを使うために、いかにして個人情報というのを匿名化してデータとして活用していくのかというところがまず一番大きなハードルになって、ここを越えれば、本当に有効にビッグデータとかオープンデータというものを使っていけるんだというふうに考えております。

 個人情報の匿名化について、どのようなガイドラインと、今研究をしていらっしゃるのかということ、前回も少しお伺いをしたんですが、もう少し深く御答弁いただければと思います。

新藤国務大臣 これは政府の中で、そういったデータの、オープンデータを促進させるために、どのような今のような処理が必要かということで、検討会が始まっております。

 今委員はそれを質問で通告されたんですか。(岩永委員「はい」と呼ぶ)それの担当のところが来て……。

 ですので、今政府において、当然のごとく、それはさまざまな検討会を設け、ルール化をしようということで作業をしております。

岩永委員 済みません。通告をさせていただいたつもりだったんですけれども。

 いずれにしても、また聞く機会があると思いますが、この個人情報の匿名化というのは本当に大きなハードルになってきます。ただ、これを乗り越えないことには、さまざまな分野への可能性が閉ざされてしまうというところでございますので、何とぞ、この個人情報の匿名化というものを早急に進めていただいて、活用できるビッグデータ、オープンデータとして、リーダーシップを持って推し進めていただきたいと思います。

 それで、ICTの教育という部分についても少しお伺いをいたします。

 まず、これは文科省さんにお伺いをいたしますが、SNSの利用であったりとか、あとは情報に対する子供たちの順応性であったりとかリテラシーであったりとか、ICTというところと子供の教育という部分については、非常にさまざまな課題も今も出ておりますし、今後も課題が出てくる。

 それで、先日、ある現場の教師の方とお話をさせていただいていたら、現場では教育の形態が本当に大きく変わってきているということをおっしゃっております。

 要は、今まで教科書を見て、いろいろな問題であったり、公式であったりというものを全部頭の中に入れていっていた、それを教育として教えていた、それでテストをしていたという、まあまあ、当たり前の流れがあって、私たちもそういう教育を受けて育ってきたんですが、今は、子供がみんな覚える必要性というものを感じてくれないというような声が聞かれます。

 要は、タブレットの中にもう知識は全部入っているんですね。わからないことがあれば、その場で調べれば瞬時全部出てくるというようなことで、わざわざ自分の脳の中に覚える必要がなくなってきているような現場があって、教育も本当に教え方というものを一工夫、二工夫していかなければならない時代になってきたんだなというようなことも率直な感想としておっしゃっておりました。

 まず、ICT関連、SNS、またさまざまな間違った情報そして正確な情報なんかが本当に混在化する世界の中で、判断力であったり基礎的なIT能力というものを高めるための教育に今どういうふうに取り組んでいらっしゃるのか。そして、今後どういった形でそういったものを進めようとしていらっしゃるのかということもあわせてお伺いをいたします。

大木政府参考人 御指摘がございましたように、さまざまな情報が氾濫する中で情報を主体的に選択し活用していくための情報活用能力を育成すること、小学校から高等学校に至る学校段階におきまして重要な課題というふうに認識をいたしております。

 文部科学省といたしましては、三点、取り組みを進めておるところでございます。

 まず一点目でございますけれども、小中高等学校の学習指導要領、これが今改訂が済んだところでございますが、カリキュラムの基準であります学習指導要領の中で、各教科等を通じて、コンピューターや情報通信ネットワークなどの基本操作や情報モラルをしっかり身につけて、情報手段を適切かつ主体的、積極的に活用できるようにするなど、情報活用能力育成の一層の充実を図るべく改善をしたところでございます。また、その着実な実施に向けまして、教員用の指導資料を作成し、広く周知をしておるところでございます。

 二点目でございますけれども、児童生徒の情報活用能力の状況をしっかりと把握し、各学校における指導の改善を図るため、児童生徒の情報活用能力に関する学力調査を現在開発しておるところでございまして、この秋にも実施をする予定にしてございます。

 三点目でございますけれども、ソーシャルメディアの普及によりますトラブルなど情報化の進展に伴う新たな課題に対応いたしまして、適切な指導を行うための教員用の手引書を作成することといたしております。

 これらを通じましてまたしっかり取り組んでいきたいと考えております。よろしくお願いいたします。

岩永委員 近年にかかわらず、そういった部分への教育のあり方というものについて、取り組んでいただいているとは思うんですが、本当に現場の教師の皆さん方が混乱をされているというか、これまでの自分たちが教えようとすることについて少し子供の意識とのギャップが出てきているというような声もたくさん聞かれますし、教育というものは本当に難しい分野だとは思うんですけれども、そういったリテラシーの向上に向けて今後も積極的に取り組んでいっていただきたいなというふうに思います。

 引き続いて、サイバー空間について少し質問させていただきます。

 最高裁のホームページに中国国旗を掲げられた映像が出たりとか、あとはIT行政を担当する総務省のサイトが改ざんされてしまったとか、先日も報道等に出ておりますけれども、米国へのサイバー攻撃に中国政府の関与があったんじゃないかとかいうような話がたくさん出ています。

 そうした中で、今現在、政府機関に対して、どれぐらいのサイバー空間の中での攻撃というものがあるのか、どのぐらいの実害があるのかということを教えてください。

占部政府参考人 お答えいたします。

 サイバー空間に対する攻撃でございますけれども、政府に対する攻撃、政府機関等でございますけれども、よくありますものが、不審なメールが送られてきて、よく標的型攻撃といいますけれども、そういう攻撃というのがございます。それから、今御指摘がありましたホームページの改ざんというのがございます。そのほかに、DDoS攻撃といいまして、これはディストリビューテッド・ディナイアル・オブ・サービス、分散サービス不能攻撃で、一斉にわっとアクセスすることによってとめてしまうというような攻撃がございます。

 冒頭申し上げました不審メールによる標的型攻撃等につきましては、攻撃によってコンピューターがウイルスに感染してしまうというような事案がございます。それから、ホームページ改ざんというのもございましたし、それからDDoS攻撃によって、やはりある特定の省庁等のホームページが見づらくなるというような事案が発生しているというところでございます。

岩永委員 恐らく、わからないところも含めて、かなりのいわゆるサイバー攻撃というものがなされているんだというふうに思います。

 それで、これは本年度の報道によるものなんですけれども、二〇一二年六月に内閣官房情報セキュリティセンター、NISCに設置をされたCYMAT、情報セキュリティ緊急支援チーム、CYMATというものが設置をされた。国の独立行政法人が攻撃を受けた場合に各省庁に助言や支援を行うための組織がこのNISCなんですけれども、このNISCの職員というのがたったの三人程度しかいない。そのほとんどは各省庁のシステム担当者などが併任しているような状況で、日本が受けるサイバー攻撃の全容というものはどこも把握していないに等しい、そして余りにも無防備ではないかというような指摘がされています。

 それで、これも先日だと思うんですが、安倍政権がサイバーセキュリティ戦略というものの最終案をまとめられたということなんですけれども、これについて、その中身を簡単にお伺いします。

占部政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど、NISC、それからCYMATというお問い合わせがございましたけれども、若干バックグラウンドを言いますと、NISCというのは内閣官房の情報セキュリティセンターということで、我が国の情報セキュリティー政策の企画立案等をやっている組織でございます。それから、その中にCYMATというのをつくりまして、一たび攻撃を受けると単独の省庁さんだけではなかなか対応できないということで、横断的な組織というのをNISCの中に設置したということでございます。

 報道の中の三名というのはちょっとよくわかりませんけれども、我々の中でCYMATのメンバーに対して研修等を行ったりしているということでございます。

 それから、体制につきましても、国家公務員だけではなくて、学識のある方とか、それから民間の事業者からも専門性を有する方を登用して、優秀な人材の確保というのに努めているところでございます。

 先ほどのサイバーセキュリティ戦略でございますけれども、これは五月の二十一日に政策会議を開催いたしまして、そこで、国民の皆様に付す案ということで、今パブリックコメントをさせていただいております。その中でも、やはりNISCの強化というのが必要だということで、その辺をうたっているというところでございます。

    〔田中(良)委員長代理退席、委員長着席〕

岩永委員 政府としてもサイバー攻撃というものに対して非常に危機感を覚えていらっしゃるというところでの御対応だと思います。

 防衛省さんにも本日来ていただいておりますので、一点質問をいたします。

 サイバー攻撃が武力攻撃かどうかということ、そして、自衛権というものがこれに対しては発動されるのかどうかというところが、国際法、そして各国においても議論がなされているというところで、日本の対応は少しおくれているんじゃないかという指摘もあります。我が国において、どういったサイバー攻撃が武力攻撃と認定されるのかとか、サイバー空間が我が国の領土であるのかどうかとか、あとは、どういったサイバー兵器の使用が武力攻撃に当たるのかとか、そういったことについて、ただいま多分いろいろ協議されていると思うんですけれども、その協議の中身について少し教えていただければと思います。

真部政府参考人 ただいま委員の御質問にありました、何点かあろうかと思いますが、まず、国際法一般につきまして、いわゆるサイバー攻撃に対して適用があるのかないのか、あるいはどういうふうに適用されるのかということにつきましては、委員先ほど御指摘のとおり、国際的に今まさにさまざまな議論が現実に行われている状況にございます。

 我が国といたしましては、その中にありまして、サイバー空間を利用した行為に対しても従来の国際法は適用されるというふうに考えておりますけれども、まさにこれも御指摘のとおりでございまして、個別具体的な国際法の規範がどういう場面でどのように適用されるかということにつきましては、引き続き明確化が必要な段階であるというふうに考えております。したがいまして、この点につきまして、引き続き鋭意検討してまいりたいと思っております。

 それから、特に私ども防衛省に関しましても、いわゆるサイバー攻撃への対処というのは大変重要なものだと思っておりますし、こういった国際場裏における議論につきましても積極的に参加してまいりたいと思っております。

 それから、今は国際法の一般論でございますけれども、特に武力攻撃あるいは自衛権の行使ということにつきましては、この点につきましても、まず、サイバー攻撃そのものが、攻撃の態様とか規模とかによりましては極めて深刻な被害が発生する可能性があるというふうに考えております。その観点から、確かに、自衛権の行使がどのような場合にどういうふうにできるのかということについてきちんと検討していく必要があると思っております。

 いずれにいたしましても、自衛権、あるいは武力攻撃としてのサイバー攻撃ということにつきましては、自衛権の三要件がございますが、我が国に対する急迫かつ不正の侵害があること、これを排除するために他に適当な手段がないこと、それから必要最小限度の実力行使にとどめるべきこと、こういったことに当てはまる場合には自衛権を行使することができるというふうに考えているところでございます。

岩永委員 サイバー空間というものに対しては、本当にまだまだこれから議論が必要な部分だと思いますけれども、国家として、これは第五の作戦領域という言葉も使われますが、各国も非常に力を入れておりますし、お金のかからない分野での他国への攻撃というところで、本当に日本の防衛というものをしっかり考える上で大切な領域ですので、今後もまた機会があればさまざまな質問、そして議論を深めさせていただきたいと思います。

 時間となりましたので、これにて質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

北側委員長 次に、東国原英夫君。

東国原委員 東国原でございます。よろしくお願い申し上げます。

 きょうは、地方自治、そしてまた地方税財政、課税自主権についてお尋ねをしたいと思います。

 地方自治の根幹というのは、私は、課税自主権、課税であると思うんですね。自分たちの税金を自分たちの意思決定のもとに使うということが自治の根幹じゃないかなと思っております。

 課税自主権の尊重の趣旨というのは、御案内のように、住民の受益と負担を明確にして、住民の地方自治への関心や参加意識を高めるということであります。

 この課税自主権で、ことし、二〇一三年の三月二十一日に、ある司法判断が示されました。神奈川県の臨時特例企業税について、最高裁で、地方税法に違反し、無効とする判決が言い渡されました。

 臨時特例企業税というのは、御案内のように、法人事業税は単年度で利益が上がっても赤字分を繰り越して相殺できるんですけれども、その相殺の部分に課税をするということであります。

 最高裁は、特例企業税が地方税法の認める控除を妨げており、法人の税負担を均等にして、公平に課税するという法の趣旨に反するという判断のもとに、無効という判決が言い渡されました。

 これについて、地方分権の流れの中で、自治体の課税自主権が尊重される、そういったものの流れというのは尊重されたんでしょうけれども、条例とその上位にある法律、地方税法等々のどっちが上か、優越かというようなところの論点だったと思います。

 今回の判決は、自治体の権利というのは否定したわけではないということであるんですが、この判決はちょっと私も懸念を、あるいは疑問を持ちました。恐らくこれは、今後の国と地方の税のあり方、そういったものを真剣に議論しなさいということを問題提起されたんじゃないかな、そういう受けとめ方をしました。

 これに関して、まず、最高裁の判決が、国と地方の税のあり方、税財政のあり方を議論しなさいという問題提起をされたんじゃないかと私は判断したんですが、これについて、大臣、どうお考えかお聞かせください。

新藤国務大臣 今回の最高裁の判決は、臨時特例企業税の条例の規定は、地方税法の定める欠損金の繰越控除の適用を一部遮断することをその趣旨、目的とし、地方税法の強行規定と矛盾抵触するものとして違反し、違法、無効とされた、このように私どもは承知しています。

 司法の最終判断でございますから、これは重く受けとめるということであります。しかし、判決は、地方の課税自主権の重要さを否定しているものではない、私はそのように考えます。

 そして、一般論でありますけれども、地方公共団体が住民の意向を踏まえて、みずからの判断、それから責任において課税自主権を活用し、それらにより財源確保を図る、これは地方自治の観点から望ましいと思っておりますし、今後も方針は変わらない、変える必要はない、このように思うわけでございます。

 総務省としては、課税自主権の活用に向けた、地方公共団体からの御相談に応じたり、それから必要な情報提供をする、こういった中で地方公共団体への支援を行ってまいりたい、このように考えています。

東国原委員 ありがとうございます。

 法定外税というのは、御案内のように、平成十二年の四月、地方分権一括法による地方税法の改正によりまして設けられました。このときには、法定外普通税の許可制が、同意を必要とする協議制に改められました。この際、新たに法定外目的税も創設されたんです。

 臨時特例企業税というのは、総務大臣の同意を得たんですね。協議、同意を得ました。これは、平成十三年の六月二十二日に協議が調って同意ということだったんですが、不同意という場合、不同意の要件というのは一体どういうものがあるか、お聞かせください。

株丹政府参考人 御答弁申し上げます。

 法定外税は、法定外の都道府県の税、市町村の税、それから法定外目的税、三つ分かれてございます。それぞれに根拠条文は別なところに入ってございますけれども、趣旨は同じで、この場合は地方税法の第二百六十一条に規定がございます。そこには不同意とする場合の要件が三つ規定をされております。

 一つには、「国税又は他の地方税と課税標準を同じくし、かつ、住民の負担が著しく過重となること。」、二つ目としまして、「地方団体間における物の流通に重大な障害を与えること。」、三つ目としまして、今申し上げた二つのほかに、「国の経済施策に照らして適当でないこと。」

 いわば三つの消極要件が挙げられてございまして、総務大臣は、これらのうちのいずれかに該当する場合を除きまして同意しなければならないという規定になってございます。

東国原委員 今の三番目の、国の経済施策に照らして適当でないというのは、具体的にはどういうことでしょうか。

株丹政府参考人 法律上の文言といたしましては、今申し上げたことに尽きるわけでございます。

 ただ、これまで争いがあったことがございまして、実際に、例えば租税施策がこの中に入るかどうか、こういうことで争われたことがございます。

 先ほど議員が申されました同意とちょうど同じころの時期に、先行いたしまして横浜市で別の法定外税の条例が通り、協議が行われ、そのものにつきましては、総務省として、大臣として不同意をした。それについて、租税施策を含め、それは別でございますけれども、経済施策の部分に反するということで判断をしたものがございます。

 ただ、それは、その後、国と地方の係争処理委員会に参りまして、国としての裁量をいわば使い過ぎているということで、不同意の取り消しという勧告を受けたということがございます。

東国原委員 そういうケースもあったんですよね。

 臨時特例企業税というのはこの三つの要件に該当しなかったということで同意された、そういうことだと思うんですが、協議、同意のときに、地方税法に抵触する可能性等については検討をされなかったんですか。いかがですか。

株丹政府参考人 法定外税でございますけれども、御質問ありましたように、地方団体の課税自主権を尊重する観点で今の法律は成り立ってございます。そういう意味で、不同意要件に該当する場合を除きまして総務大臣は同意を義務づけられておりまして、御質問の臨時特例企業税につきましては、不同意要件には該当しないというふうに判断をいたしまして、総務大臣が同意をしたものでございます。

 当時の協議の際でございますけれども、三つの要件について、それぞれ該当するかどうかというものを協議し、判断したわけでございますけれども、条例につきまして違法性があるということについては、いわば想定しなかったというところでございます。

東国原委員 違法性があることを想定しなかったとおっしゃいましたが、検討はされたんですか。地方税法に抵触する可能性があるかどうかというのを検討はされたんですか。

株丹政府参考人 先ほど申し上げましたように、同意をするかどうかということについては、三つの要件に照らして判断をいたしております。

 その判断の中で、御質問もありました、国の経済施策に照らして適当かどうかというような検討はしてございますけれども、違法性そのものを検討したということではございません。

東国原委員 ちょっと冷たいんじゃないかなと思うんですよね。何かその辺、法律に抵触するかしないかというのを広角的に検討されるべきじゃないかと思うんですね。

 それは、地方の責任ももちろんありますけれども、でも、地方にとっては、総務省が同意をしてくれたというのは、これはいけるんだ、これは大丈夫だということで施行に踏み切ったと思うんですね。つまり、総務省が同意をしてくれたんだから、これは大丈夫だろう、法的にも大丈夫だろう。

 それは、地方の責任もありますけれども、総務省ともあろうところが、課税自主権、地方税について三つの要件だけで、これに当てはまらないから同意をした。ちょっとその辺がどうなのかなと思うんですよね。もうちょっと何か対応の仕方はあったんじゃないかなと思うんですけれども、いかがですか。

株丹政府参考人 繰り返しの御答弁になってしまうかもしれませんけれども、私どもは、法律で定められた規定に沿ってこれについて判断をしていくという立場であろうかと思ってございます。

 若干、時期的には前後いたしますけれども、先ほど申し上げました横浜市のケースにつきまして、これは不同意というふうに判断をいたしました。これも、あくまでも三つの要件に照らしてどうかというふうにしまして、これについては不同意という判断をいたしたわけでございますけれども、その後、国地方係争処理委員会におきましてヒアリング等をやっておるのがちょうどこの時期に重なるところだと思っております。

 実際に国地方係争処理委員会が勧告を出されましたのは七月の末ごろでございますけれども、国地方係争処理委員会の判断といたしましても、この同意の制度というのは、基本的には、国の施策と地方公共団体の施策との整合性を確保しないと施策の実施に著しく影響が生ずると認められない場合を除いて同意制度というのを用いるんだ、要件が充足している限りは同意をしなければならない、こういう制度であるということを前提として、改正された地方税法のもとでは課税自主権をより尊重することを前提として解釈されるべきなんだ、こういう勧告を頂戴してございます。

 直接的には、あくまでもこれは同意の三要件の中に合致するかどうかという点でございますけれども、総務大臣としまして裁量というものを非常に広くとってはならないという趣旨で勧告を頂戴したというふうに受けとめてございまして、私どもは法の規定につきましても同様に考えておるというところでございます。

東国原委員 裁量権拡大については大賛成なんですけれども、であれば、この三つの要件というのは必要なのかと思うんですね。

 極端な意見ですけれども、裁量権を最大に拡大する場合、この要件は取っ払って、地方の自主、責任、そういったものに委ねてもいいんじゃないか、地方税については地方の責任や判断、そして自主性に任せてもいいんじゃないかと思うんですが、いかがですか。

株丹政府参考人 確かに、委員がおっしゃいますように、もう同意を要しないようにするべきではないか、同意を要しない協議制に変えてしまう、導入をするべきだ、こういう御意見もあろうかというふうに思ってございます。

 しかしながら、今の法の制度のもとを考えました場合には、法定外税の新設等につきまして国の同意を要するというふうにしております理由は、法定外税の新設等によりまして住民負担が過重とならないように配慮する、あるいは、先ほど申し上げましたけれども、国の経済施策に照らして適当でない、こういうようなものと認められるような税目の設定をやはり回避するために設けられているというふうに承知をしてございます。

 仮に、単純に同意を要しないということにいたしますと、住民にとって過重な税負担となる場合等に、事後的に、国の各大臣から是正の要求をするでありますとか、訴訟をするでありますとか、そういう方法でしか救済をされないということで、かえって納税者が多大な不利益をこうむるおそれがあるというふうにも思ってございます。

 法定外税を含めた課税自主権につきましては、これまでも私どもも研究会等で研究をいただいてきてございますけれども、必ずしもこれだという結論には至っておらない。そういう意味では、引き続き慎重に検討しなければいけないものではないかというふうに考えてございます。

東国原委員 ありがとうございます。

 今回の判決というのは、地方に与える影響も、物理的あるいは心理的に大きいんじゃないかなと思うんですね。自主課税をして、もしかしたら地方税法等々に抵触するおそれがある、そうすると地方はだんだん萎縮してきます。そういったところが裁量権の拡大に本当に資するものなのかなというのはちょっと私は疑問なんですね。

 法定外税は、二〇〇〇年の地方分権一括法から課税しやすくなった。でも、新たな税を導入した自治体は少ないですね。国税などがもう既に網かけになっていますから、幅広く課税対象になっていますから、地方税、なかなか自主的に課税の余地がないというのが現状なんです。

 ちなみに、法定外税額は地方税額全体のどれぐらいを占めておりますか。

株丹政府参考人 一番近い数字が平成二十三年度の数字でございます。法定外税の税収額は、全部合わせまして三百十六億円でございます。地方税収の全体の規模でございますが、三十四兆一千七百億円ぐらいでございますので、割合とすれば〇・一%ぐらいございます。

 ただ、若干、二十三年度の数字は急激に数字がちょっと低くなってきたという事情もございます。二十二年度を申し上げますと、五百十五億円でございました。

 ただ、いずれにしましても、全体の規模と比べるとそれほど大きくはないというのは、御指摘のとおりでございます。

東国原委員 そういうことなんですね。三十四、五兆のうち四、五百億、これが法定外税の実態です。

 法定外普通税・目的税ありますけれども、これはどういう税目が多いんでしょうか。

株丹政府参考人 今、法定外税を実際に導入されておられる団体は、都道府県の方が三十三、それから市区町村では十三でございます。

 多い税目といいますので申し上げますと、個別に言いますと、名称が異なっておりましたり、課税標準のとり方等が異なっておりますので、ちょっと私どもの方で勝手に大ぐくりをさせていただくということをお許しいただきたいのですが、一つは、核燃料税がございます。発電用原子炉に挿入する核燃料の価格ですとか原子炉の熱出力、それだけではございませんで、県によっていろいろ工夫もされてございますが、一般的に核燃料税というふうに申し上げれば、十二の道県が導入してございます。

 それから、もう一つ多いもの、金額的にはむしろ核燃料税よりも少し少ないぐらいでございますが、産業廃棄物税、これも団体によりまして名称はいろいろ異なってございますが、最終処分場へ搬出をされます産業廃棄物の重量に課税をするという共通項でくくりますと、二十七の道府県で導入をされている。この辺が多い。

 ほかは、それぞれの団体ごとの御事情で、それぞれの行政需要に沿って特別な税目を立てておられる、こういうことだと思ってございます。

東国原委員 今御説明のとおりなんですけれども、法定外普通税で、ほとんどは核燃料関係税なんですね。核燃料税と核燃料物質等取扱税、これは青森県とかそちらあたりです。法定外目的税は、圧倒的に産業廃棄物税です。ほとんどと言ってもいいぐらい。

 だから、地方に課税自主権を認めるといっても、こんなものなんですね。要するに、これ以外の何か創意工夫、まあ、なくはないですよ、ゼロではないですけれども、自治体が自主的に課税しようとしても、もう核燃料系と産廃系しかないんですね。

 僕は、地方自治への住民の関心とか意識を高めるために、自分らの納めた税は自分たちで使うんだ、自分たちで考えるんだ、決めるんだ、責任を持つんだという、これが何か言葉だけが躍っているような気になってしまうんです。権限、財源を地方に移譲というのであれば、もうちょっと課税自主権の枠を広げるべきではないかなと思っております。

 ちなみに、二〇〇九年の地方分権改革推進委員会で、これは第四次勧告なんですが、国から地方への税源を移して、とりあえず国と地方の税財源を五対五にするように求められましたね。現在その割合はどうなっているか、お尋ねします。

株丹政府参考人 御指摘がございますように、当面の目標として五対五。もともと、国と地方の歳出比率が四対六であるのに対しまして、その歳出を支えます税源の方の配分は国が六で地方が四だということをいわば考慮いたしまして、こういう目標を設定したというふうに承知をしてございます。

 その後、個人住民税の三兆円の税源移譲が行われたというような取り組みもございました。そういうことで、六対四のところから数字が動いてきてございます。

 ただ、年度によって変動がございます。そういう意味では、端数のような感じになってしまうんですけれども、国と地方は、五・七対四・三から五・三対四・七、この辺をいわばこの数年間動いている。平均的に言えば五・五対四・五ぐらいではないかというふうに思います。

 直近の二十五年度の方の国の予算と地方財政計画で配分比率をパーセンテージで見ますと、五五・七対四四・三、そういう見込みでございます。

東国原委員 勧告がなされたのは二〇〇九年、平成二十一年なんですね。このときの地方税の割合が四六・六%なんです。そして翌年、二〇一〇年に四四・〇%。四六から四四に下がっているんですね。翌年が四三・一、翌年が四二・八、そして四二・四と、地方の税という割合が減っているんですよ。勧告されてから減っているんです。そして、六対四に、またもとに戻りつつあるんですね。これはどうしてか、お尋ねします。

株丹政府参考人 お答え申し上げます。

 二十五年度で地方税の割合の方は四四・三%でございますので、二十一年度の数字と比べますと二・四ポイントの減少、なおかつ、年度ごとに見ますとだんだん下がっているような感じにも確かに見受けられます。

 これにつきましては、国税と地方税の性格が影響しておるというふうに思ってございます。国税と比較をいたしました場合には、地方税は、一般的には、景気変動に対しましてより安定的な、大きく変動しないような税収という側面を持ってございます。

 この期間、ちょうどリーマン・ショックがございまして、景気変動の影響が国税、地方税とも非常にあって、税収が絶対額としては減ったわけでございますけれども、その減り部分が国税に比べると地方税の方が少な目であるということで、ウエートづけをいたしました場合には、二十一年度、国税が物すごく落ちたということがございまして、地方税の割合がいわば相対的に高まって見えた。

 その後は、地方税も徐々に、国税の方も徐々にでございますが回復をしてきたということで、相対的に見ますと地方税の割合が低下してしまっているように見えてしまうという部分だと思います。

 もう一点は、二十四年度に、これは復興財源確保のためということでございますけれども、主として国税の方で、復興特別法人税あるいは復興特別所得税、課税の方がスタートしてございます。そのことも一部の数字の動きの要因というふうに考えてございます。

東国原委員 どうも、地方分権という名ばかりで、ちょっと逆行しているような気がしてならないんです。

 最高裁が、課税自主権を拡充するには、国政レベルで立法の推進に努めるしかない場面が生じるのはやむを得ないことというべきであるという裁判官の補足意見が述べられました。

 地方からももちろん要望があって、九都県市首脳会議の代表、神奈川県知事の黒岩さんなんですけれども、地方の課税自主権拡大を制度的に保障するように関係法令の抜本的見直しを求めるということなんですね。

 だから、国の関与をなくして、地方の権限と責任のもと、地方の独自課税を進めるべきだともちろん考えますし、また、地方の課税自主権の拡大を制度的に保障する、関係法令を抜本的に見直すべきだと思うんですね。

 ちなみに、自民党さんの憲法改正草案には、第八章地方自治、第九十六条に、「地方自治体の経費は、条例の定めるところにより課する地方税その他の自主的な財源をもって充てることを基本とする。」と。これはすばらしい文章だと思います。それは、地方の事務経費は地方税やその他の自主的な財源でやることという意味だと思うんですね。

 また、公明党の憲法調査会、北側委員長が会長でいらっしゃいますけれども、議論されている第八章の地方自治では、地方自治体の自立と責任の原則を規定する、そして、地方の課税自主権を明記とあるんですね。

 これは私は大賛成なんです、ぜひやっていただきたいと思うんですけれども、これについてどういう御所見をお持ちか、大臣にお伺いします。

新藤国務大臣 地方が独自の財源を持ち、そしてみずからの判断で地方を運営していく、これは地方自治の原点だと思います。ですから、その意味において、この課税自主権の拡大というものを我々は推進していきたいというふうに思っているわけであります。

 しかし、既に委員からも、余りふえていないじゃないですかという御指摘がございましたが、要するに、地方税の制度というのはもう何十年も使ってきて、ずっと運営してきているわけであります。ですから、あとは、それぞれの町でそれぞれの工夫によって課税できるもの、こういった余地がそれほど大きくないというか、おのずと限界があることというのは事実だと思います。

 ですから、大枠としての分権改革というのが一つありますね。それから、課税自主権というのは、自分たちで工夫をして、さらにそこに財源を安定化させるためのものを、工夫を入れていく。あわせて、やはり地方税そのものの充実、これもやっていかなくてはいけないことではないか、このように思うんです。

 私どもの憲法の草案に出させていただいているのは、その原理原則、当たり前のことではありますが、自分たちの地域は自分たちの手で運営できるように、それは権限と税であります、これを確保した上で、それぞれが工夫をしながら、全体として、国家としてすばらしい生活ができるようにしていこう、こういう趣旨を憲法の草案の中には盛り込ませていただいた、このように私は理解をしております。

東国原委員 おっしゃったとおりでありまして、地方分権というのは、権限、財源を国から地方へ移譲する。課税自主権というのも一つ自治体の創意工夫だと思うんですが、国税を地方税に移管するという作業もこれからやっていただきたいと思っているところであります。

 地方は自主自立といいます。地方自治というのはそうだと私は思っております。これまでちょっと、やはり国が多く地方に関与し過ぎて、保護、補助し過ぎた部分があったんじゃないか。もっと地方は自分の足で立って、自分らが、地方に住む住民の方たちが、地方自治、自分たちの暮らしに直結する制度やあり方について強い関心を持っていただくためには、そういう制度改正も必要なんじゃないかと思います。

 そういったことを御要望させていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

北側委員長 次に、佐藤正夫君。

佐藤(正)委員 みんなの党の佐藤正夫です。

 きょうは、NHKの会長初め経営委員長においでいただきまして、ありがとうございます。早速ですが、質問に入らせていただきたいと思います。

 これまで、NHKの集中審議、さらには前回の総務委員会においても、NHKについていろいろお尋ねをしてまいりました。そのお尋ねと、また重複する点もあろうと思いますが、よろしくお願いをしたいと思います。

 前回の総務委員会で、どうして受信料を一〇%還元するようになったんですか、こういうお尋ねを何度もさせていただきました。その原因は、思い出したくないでしょうが、まさにNHKの不祥事等があったのではないでしょうか、こういう言葉を添えて、なおかつ、なぜそうなったんですかというお尋ねをしたところ、きょうおいでの福井参考人は、議事録に載っておりますけれども、「一〇%につきましては、我々から提案した数字じゃなくて、経営委員会の方から一〇%還元しろという提案がございまして、」この答弁を繰り返されたんですね。

 そこで、まずお尋ねをしたいんですけれども、経営委員長、なぜ一〇%還元ということになってきたのか、経緯を含めてお答え願いたいと思います。

浜田参考人 浜田でございます。お答えいたします。

 NHKは、御承知のように受信料収入によって運営されており、経営委員会は、効率的な経営を行うために明確な目標があると考え、前の三カ年経営計画に平成二十四年度以降の受信料一〇%還元を明記しました。

 地上デジタル放送への完全移行という命題があったため、すぐに還元することは難しかったわけですけれども、前の三カ年計画を着実に実行し、合理的な経営を行えば、平成二十四年度以降の一〇%還元は可能であると考えました。

 また、具体的に一〇%還元するという約束を計画に盛り込むことによって、NHKの経営、組織全体がより引き締まり、受信料の増収や経費削減に向けて一層努力するのではないかという効果も考えたものであります。

 以上でございます。

佐藤(正)委員 何度も申し上げますが、その前提として何があったんですか、経営委員長。どうして一〇%還元になったんですかということをお尋ねしているんですよ。何もなくて、突然一〇%還元しろとなったんですか。

浜田参考人 今委員の御質問の御趣旨は、不祥事があったから一〇%引き下げという判断に至ったのではないのかという御趣旨だと理解しておりますけれども、あくまでも効率的な経営を行うために経営委員会が判断したものでございます。

佐藤(正)委員 ということは、これまでの経緯の中で、平成十六年にNHKのプロデューサーの番組制作費着服事件等々あったわけですね。その結果として、不払い運動が起きたわけじゃありませんか。そういうものを踏まえながら、NHKとして、また経営委員会として、還元すべき、ある意味では受信料を下げるという方に決まったのではなくて、今の経営委員長のお答えでは、ただ単に一〇%を還元することによって経費の見直しができるからというだけですか。

浜田参考人 そのとおりであります。不祥事の対応は、理事が報酬をカットするとか、さまざまな形で対応をしたというふうに理解をしております。

佐藤(正)委員 であるならば、経営委員会の考え方は、不祥事とは関係ない、不祥事があったときに役員の給与を下げたからそれで終わったんだという御認識であるということでよろしいんでしょうか。

浜田参考人 はい、そういうことでございます。

佐藤(正)委員 それでは、NHKの会長にも同じことをお尋ねしたい。

 同じ認識でよろしいんでしょうか。

松本参考人 お答えいたします。

 私は途中で引き継いでいますけれども、現在は三カ年計画が発しておりますが、その前の計画をつくる中で、この計画をやっていけばそういうことができるのではないか、こういうようなお話があり、私が引き継いだのは前の計画の三年目ですけれども、そのときにはもう既に収入が、リーマン・ショックとかそういうことでその計画どおりにはなっていない。

 それからまた、前の計画をつくったときに、二十四年度、二十五年度というのを想定したものがありますが、それと現在の収入と比べると、二十四年度で大体三百五十億程度、それから、二十五年度でいうと五百億程度、当時想定した収入と乖離がある、違っている、こういう現状がありまして、それを踏まえてこの還元の問題をどう取り扱うかということを、引き継いだ経営者として悩んで、経営委員会ともいろいろ議論をしてきた。こういう経過でございます。

佐藤(正)委員 これはユーチューブで放送が入っていますので、国民の皆さんに訴えますが、基本的には、不祥事の問題については終わって、今は単純に経費を削減するために、その目標が一〇%だったということであるそうです。

 私は、そうは思っていません。なぜなら、NHKの集中審議のときにも、給与が高いのではないでしょうかというお尋ねをいたしました。国会でも何度かそういう御質問をされた。そのときに松本会長が言われたのは、いやいや、NHKというのは、公共放送もさることながら、ブランドを持っているんですよ、目に見えないブランド力があって、さらには知的集団だ、だから給与はこれだけ必要なんだ。

 ブランド力を下げたのは一体誰なんですか。会長、誰がブランド力を下げていったんですか。お尋ねします。

松本参考人 私がブランド力という言葉で言っておりますのは、NHKの競争業界というのはマスコミ業界であります。マスコミ業界との間で、どちらがいい放送を出すか、番組を出すか、あるいは質のいいものを出すかということを努力しております。

 そういう中で、まず、そういう人を採用するという必要がございます。人を採用する際に、応募する方のメルクマールというのは、やはり、その企業で何ができるか、自分のそういう思いをどういうふうに果たせるかとか、あるいは、報酬、処遇、そういうものが一つのメルクマールになると思います。もちろん、所在する場所とかそういうこともあると思いますが。

 私は、NHKはマスコミの中でいい人材を確保して、公共放送の使命をきちっと果たしていく必要があるというふうに考えております。その場合に、NHKのメリットというのは、NHKで仕事ができるという価値観がプラスアルファとしてあると思います。したがって、そのことと、企業レベルとあわせて、民間と、マスコミ界と競争できるという条件が必要なのではないか。そういう意味で、ブランド力、ブランドの価値、こういうことを言っております。

 それから、NHKのそういう価値というものは、多分、信頼とかそういうことに結びつくんだと思いますが、そのことについては、私がつくりました新しい計画では、四つの大きな柱の一つとして、信頼という柱を立てています。公共と信頼、そういうことを柱にして、その信頼を高めようということになっています。

 そういうことで、ブランド力は、一時そういうときがあったかもしれませんが、現在それを必死になって回復し、それから、計画の中にはそれを評価していただくというシステムを導入いたしましたが、その評価が二回なされました。そのうち、公共と信頼、公正とか、そういう項目については八割以上の方に評価をいただいておりまして、そういう意味では、そのブランド力は次第にもとに戻る、あるいはそれ以上に高めていけるのではないか、こういうふうに考えております。

佐藤(正)委員 私が言うのは、過去がこうだったから悪いんですよと言っているわけじゃなくて、その原因はNHK本体がつくったということなんですよ。

 NHK本体が不祥事を積み重ねてきた。そして、それを見て国民はどういう行動に移ったか。それは、受信料を払わないという行動に移ったんじゃありませんか。そこをしっかりと胸に刻みながらやっていかなきゃいけないと思いますよ。その辺は、経営委員長として、経営をやる上においては一番根底の大事なところじゃありませんか。

 その中で、今、松本会長が言われたように、士気を高めていくために努力をされたんでしょう。しかし、国民には、まだまだそれは見えていませんよ。役員が給与をカットした事実はあります。それをもって一〇%の受信料の還元とは関係ないとは、国民の皆さんは思っていませんよ。ずれがありますよ。どうですか、経営委員長。

浜田参考人 委員御指摘のとおり、私は、NHKの果たすべき役割は、いい番組をつくり、いい報道をして、いい経営をして、視聴者の皆様にお応えすることが基本だというふうに認識をしております。

佐藤(正)委員 そんなの当たり前じゃありませんか。当たり前のことですよ、そんなことは。誰もが思っていますよ。それができなかったから問題になって、受信料の未納者がふえてきた。そこから発端があって、何とか還元しなければならないというふうになったんじゃありませんか。時系列に見れば、事実は誰でもわかる。国会でもそういう議論がなされたことは事実ですよ。

 そこで、ここはもう行ったり来たり、水かけ論になるんでしょうが、ぜひ胸に刻んで、NHKというのは我々も信頼をしている公共放送ですから、そこが信頼を裏切ったということは物すごく重たいと思います。

 そして、例えば、産経新聞ニュースに、五年で基本賃金一〇%削減。削減計画が出たんですかね、経営委員長。出て、五年でおおむね一〇%削減していこうと。

 この中でも議論があったのは、経営委員会の資料があります、議事録を見たらいろいろな御意見があって、職員の削減をやるんだったら、まず経営者から削減しないと職員の士気が上がらないよという議論もありました。そういうことを踏まえて、五年で基本賃金一〇%削減という方向性になったと思いますが、私の認識は間違っていないでしょうか。

浜田参考人 私ども経営委員会も、委員御指摘のような判断に立って、役員報酬のカットを決めたのでございます。

佐藤(正)委員 それでも、高い、低いはいろいろあるんだろうと思いますが、国民から見たら、高いかなというふうに思われているのが現実だと思います。それで、何度も何度も国会で議論がなされている。

 それから、二十五年度から一部手当を廃止するということですが、どんな手当を廃止するんですか。

松本参考人 お答えいたします。

 給与制度の改革というのを全体的にやりました。

 これについては、実際にNHKの仕事を俯瞰しておりますと、やはり、年功序列とか年齢給とか経験年数とか、そういうものの比重が非常に大きいという要素がございます。それについては、やはり、努力する人がきちっと評価される、こういうふうにした方がいいのではないかということと、非常に制度が複雑でした。したがいまして、そういう制度を単純化して、わかりやすくして、そして、職員には評価についてもきちっと示していく、こういうふうにしたいということで、全体の制度改革を行いました。

 それから、同時に、賃金カーブの形を、評価を含めた形で順番に上がっていけるような形のカーブに変える、その制度改革によりまして、五年でおおむね一〇%の給与水準が、下がるというか、そこに落ちつくということがあります。

 それから、評価をするというためには、やはり管理職がしっかりとしないといけませんので、管理職の登用試験というのが明確でないところがございましたので、管理職には試験をきちっとやる、それで登用する。登用する際に、やはりNHKとしての役割、その使命、そういうものを価値観として刻み込むと同時に、職員の評価ということについても真剣に取り組むという教育をして、その上で採用したい、こういうふうに思っております。

 それから、そのほかに、単純化するという意味では、手当、これはクリエイティブ手当という手当がございましたが、これについては廃止をするということで、廃止しております。

 そのほかに、地方採用をするとか、いろいろな形の制度改正を行いまして、それを、労働組合との間の交渉と職員への直接の説得、そういうことも踏まえて、既に決着をして進んでおります。

佐藤(正)委員 細かいことは会長じゃなくて結構なんですけれども、クリエイティブ手当というのは何なんですか。どういう手当だったんですか。

松本参考人 クリエイティブ手当というのは、まさにその言葉のとおり、創造ということですけれども、自己啓発、自己を啓発するということで、これは一般職員だけだったんですけれども、一般職員に対して自己啓発をするための時間と資金を与える、こういう制度です。

 これについては、実質的な給与というようなニュアンスも考えられましたので廃止するということで、廃止をいたしました。そういう意味で、これまであったんですけれども、それは廃止するということで、やめました。

佐藤(正)委員 要は、NHKは、自己啓発をするために個人個人に時間とお金をくれるわけですか。すごいですね。

 それは幾らぐらいの金額なのかわかりませんが、大体どれぐらい払っていたんですか。

松本参考人 お答えいたします。

 これは、おっしゃるように、私ども、まさにおかしいということなのでやめたということで、既に過去のものですが、四万円を年二回支給して、そして自己啓発をしろ、こういう趣旨のものでありました。

佐藤(正)委員 一律四万円ということで、八万円なんでしょうか。ちょっと違うんじゃないですか。

福井参考人 年二回支給がございまして、一人当たり一回四万二千円支給してございます。年間八万四千円ということでございます。

佐藤(正)委員 もうこの辺で次の質問に行かないと時間がなくなってまいりましたが、受信料をいただいて、総括原価方式でやっていて、そんな経費を積み立てていって受信料を決める、まさに払っている方から見ればナンセンスですよ。そして、今言った個人の啓発をやるのに、やってもやっても不祥事が、払っていたときこそ不祥事が起きていた。とんでもない話ですよ。今後は、まだまだ手当等も見直すべきところがあろうかと思います。

 そして、前回の委員会でも御指摘しましたが、一〇%還元に向けて今後も努力をしていくことは考えられていると思いますが、経営委員長、これからも、まあ、東日本大震災も含めていろいろ経済状況もあったんでしょうが、一〇%削減、五年間でやっていくと、大体百億円以上の経費が出てくると思います。

 その中で、経営委員長として、再度、七%ではなくて一〇%を目指すように、そういうお考えはありますか。

浜田参考人 執行部にはさらなる経営努力を行っていただき、その成果を、大規模災害から国民・視聴者の生命と財産を守る公共放送の機能強化を図ることで視聴者の皆様に還元していくべきであるというふうに考えております。(佐藤(正)委員「一〇%やりますか」と呼ぶ)いや、そういう意味では、今後出た剰余金については、先ほど申し上げましたけれども、今後さまざまな設備投資が予想されておりますので、そこに充当するべく備えた方がいいのではなかろうかと現時点では考えております。

佐藤(正)委員 ということは、一〇%は諦めた、もう七%で十分だと。そして、今の準備金は、建設積立金、建設準備金をしっかり持っている。

 あるじゃありませんか、現に。ずっとためているじゃありませんか。経営委員長でしょう。経営委員長ですよ。経営委員長たる者、経営改革をもっとしっかり見ていくべきじゃありませんか。

 経営委員会の議事録を見させていただいたら、例えば、交際費についても結構細かな議論をされていますよ。交際費も下げてきた、だけれども、現実には、余った分は余剰金としてお返しをして、それはプールをするというふうな議論もいっぱいなされていますよ。もっともっとしっかりと中を見ていただきたい、このように思います。

 そして、制作費等についても、NHKから例えばNHKエンタープライズ、そこに制作をお願いする。そのときの予算についても、やはり民間よりも随分高いようでありますから。そのエンタープライズから、また制作会社に落としていくんでしょうね。事実かどうかわかりませんが、ああ、事実なんですね、そういうことで事件があったこともありましたね。NHKが中抜きをやったという事件もありました。だから、そういうところにもしっかりとメスを入れていっていただきたいと思います。

 松本会長も先ほど言われたクリエイティブなんというのは、まずなかったんでしょう、民間では余りない。だから、おかしいからやめてもらった。僕は冷静な判断だと思います。

 それと、もう一点だけ。

 NHK出版に天下り、我々は天下りと思っていますが、そこに行ったときに、松本会長は、集中審議のときにこういうふうに言われました。優秀な経営能力を持っている方だから、そこに行ってもらった、天下りというよりも、人材を有効に活用したんだ。そのことに関して、前回の委員会で、どういう点で経営改善をされて、どういうことをされたんですかとNHKの方にお尋ねをしたら、こう言われました。単純に言えば、在庫整理しましたと。そんなもの、在庫整理なんて誰でもすぐわかる話で、そのときに委員会は失笑が出ましたよ。それが優秀な、有能な方なんだろうか。

 ここは、松本会長、ちょっとまた答弁をお願いします。

松本参考人 その前に経営収支のことだけお話ししますと、今、収支均衡ということで必死になって努力しております。しかし、私は、旗は、将来のNHKの公共放送のためにみんなもっと頑張れ、こういうことを言っております。その一番大きなものは、NHKの放送センターは老朽化していますから、これを建てかえる、そのためにみんな頑張れ、こういうことで走らせております。

 したがって、二十四年度は頑張りました。二十五年度は、またさらに四百億ぐらいの減収が、値下げで入ります。これを乗り越えてやらないといけないということで、今頑張っているところでございます。

 それから、先ほど、出版のお話がございましたが、私は、在庫管理とか部数を減らすということはそう簡単ではないと思います。

 というのは、出版会社は今、構造不況で業種的に不況になっております。その中でどういうふうに経営を立て直すかという中で、発行部数というのは出版会社の看板なんですね、顔なんです。したがって、それを減らすということは、その会社の価値をみずから落とすということになります。当然、広告料とかそういうものも下げられます。したがって、どういうふうに部数を落ちつかせるのかというのは、将来の経営にとって大変なことなんですね。

 しかも、部数を減らすと、それをどういうふうに本屋に配分するか。これは、本屋ごとに売り上げも違いますし、本の種類によって違います。それは本屋とも交渉しなければなりませんし、あらゆる事柄をやるということがひっかかってきます。

 それから、一番あれなのは、それをやるかやらないかというのは、考えることは誰でもできるんです。しかし、それを実行するかしないか、そこが経営者の価値観、価値が評価されるかどうか。その点から私は評価をする、こういうことであります。

佐藤(正)委員 まあ、そういう方はたくさんいますよ、世の中。それだけ指摘しておきます。

 部数を減らしたのは、震災によって配らなくてよくなった、結果として、では減していいや、単純な、そんなことだったじゃありませんか。調べたらよくわかりますよ。

 その辺はもう結構です。ぜひ、一〇%還元に向けてさらなるさらなる努力をしていただくことをお願いしたいと思います。

 NHKの皆さんには、ありがとうございました。

 続いて、電波利用料の軽減についてお尋ねをしたいと思います。

 これも、前回の委員会で、放送法でNHKと民放に対して軽減措置が同率になっている、そこで、NHKは義務づけがされていますが、民放は努力義務、どうして義務と努力義務で同じ軽減率になっているんでしょうかねというお尋ねをしましたが、再度この点についてお答え願いたいと思います。

柴山副大臣 お答え申し上げます。

 前回私の方から答弁をさせていただきましたけれども、この軽減規定の趣旨ということを少し整理させていただきたいと思います。

 前回私が申し上げたとおり、サービスの持つ価値が大切であるかということ、それと、今御指摘のユニバーサルサービスが確保されているかどうか、これはそれぞれ法律で書き分けられております。

 その中で、確かに、放送法においては、NHKに対しては、あまねく全国において受信できるように措置する義務を定めておりますし、また、民放に対しては、その放送対象地域においてあまねく受信できるように努める義務を課しており、このユニバーサルサービスの確保において、あたかも違う表現がなされていて、サービス内容が違うように受け取られるという趣旨だと思います。

 しかしながら、実態としては、同一放送対象地域において、中継局の基地数に関して、NHKと民放において乖離があるわけではありません。例えば、関東広域圏における中継局設置数、NHKが百六十七局、在京キー局五社は各百五十九局と、決して遜色のない水準にあります。また、義務違反に対する罰則は、NHK、民放、それぞれございません。そういった実態が同一であるということが非常に重要です。

 また、法律上も、放送法の目的として、「放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障する」ものということが第一条一号に規定されておりまして、通常の市場活動を超えた責務が法律により規定されているという点において、NHKと民放は異なるものはありません。

 こういったことから、同様の軽減率を適用しているというように御理解をいただきたいと思います。

佐藤(正)委員 であるならば、もう同じ条文にした方がいいですね、実際。

 それと同時に、例えば北海道では、テレビ東京系のテレビ北海道、実は日ハムが日本シリーズに出たときに見られないところがたくさんあるんですよ、見られない地域が。こういう現状も実はあるんですよ。質問時間がなくなって余り細かいことは言いませんが、現実ではそういう実態もある。

 そこで、今度、例えば携帯電話についてお尋ねをしたんですが、携帯電話には普及努力義務というものはありませんというふうに、前回、総務委員会で、吉良局長でよろしいんでしょうか、お答えになりましたけれども、これはそのとおりでよろしいんですか。

柴山副大臣 はい。前回局長から答弁をさせていただいたとおり、電気通信事業法においては、その目的に、放送法第一条に書いてあるように今私が紹介した、普及に関する規定というものはありません。ですので、このような軽減率は現在適用していないということであります。

 ただ、本件も含めて、料額の算定に当たっては、今広く意見募集を行った上で検討しているという状況でございます。

佐藤(正)委員 そこで、先ほど来から8Kの話とか出て、要するに空き地をつくらなきゃという、これはもう一番大前提だと思います。空き地をつくって携帯電話にその空き地を渡したときに、実は、携帯電話事業者の方には、認定後七年後までに全ての管内で人口カバー率八〇%をそれぞれ達成することと入っているんですね。そのときは普及しなさいということを言っているんですよ。携帯電話にその枠を上げるときに言っているんですよ。恐らく、この法律ができたときには、携帯電話がこんなに普及するとは考えていなかったんだろうと思うんですね。

 そこでお尋ねをしますが、この事実を踏まえたときに、先ほど検討されていると言っていましたが、やはりそろそろ少し考え方を変えるときが来たのではないかなと思いますが、いかがですか。

柴山副大臣 今答弁をさせていただいたとおり、電波利用料のあり方に関する検討委員会が、私あるいは橘政務官を筆頭として開かれております。その中で、今委員から御指摘のあったような実態も踏まえて、また一般の意見も踏まえて検討させていただいているところでございます。

佐藤(正)委員 済みません、総務大臣にお尋ねする時間がなくなりました。

 ありがとうございました。

北側委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 今地方でも都市部でも医師不足が深刻な社会問題となっております。今全国で医師増員を求める取り組みが広がっております。その中で、医学部新設抑制方針の見直しを求める声も広まっております。

 首都圏の埼玉県などからも要望が出され、例えばことし三月二十七日、埼玉県議会は、医師不足の解消に不可欠な医学部新設の方針決定等を求める意見書を全会一致で採択しております。医学部新設を認可する明確な方針を速やかに決定することを要望しています。市町村議会でも同様の意見書が採択されておりますが、新藤大臣、埼玉では深刻な医師不足を背景に医学部新設を求める運動が広がっている、こういうことは御存じでしょうか。

新藤国務大臣 所管としては、私どもにその意見書をいただいているわけではありませんが、県議会や県政においてそういう動きがあるということは私も承知をしています。

塩川委員 埼玉県内の七十市町村のうち二十四の市町村議会で医学部新設を求める意見書が採択されていると承知しています。東日本大震災の被災県からも医学部新設要望が出され、京都や栃木、神奈川、千葉でも新設を求める動きがあると承知しております。

 そこで、医学部定員に関するこれまでの国の取り組みの経緯を文部科学省に確認したいと思います。

 一九八一年、昭和五十六年までの医学部新設の取り組みについて、まず説明していただけますでしょうか。

山野政府参考人 お答えいたします。

 医学部の新設につきましては、昭和四十八年の閣議決定がございまして、その時点では、医学部であるとか医科大学がないという県がまだ存在してございました。そういう県をなくそうという閣議決定がございました。

 それを受けまして、そういう医学部がないような県におきましては医学部の整備というのが進んできてございまして、昭和五十六年でございますが、最後には琉球大学に医学部ができたということで、四十七都道府県に全て、まあ県によっては、例えば東京のようにたくさん大学があるというところもあるんですが、全ての都道府県において医学部ができたというようなことになってございます。

塩川委員 医科大学、医学部のない県を解消することを掲げ閣議決定が行われて、昭和五十六年までに全国に医学部が整備された。

 そこで、重ねてお尋ねですが、こういった医科大学、医学部のない県を解消する、このことを掲げた理由というのは何なんでしょうか。

山野政府参考人 お答えいたします。

 当時の状況を言いますと、人口もふえており、経済も発展しており、医療も昔に比べれば高度化していったというような状況の中で、やはりそれぞれの地域においてきちんと医師の存在というのが重要であるというふうな趣旨だと理解してございます。

塩川委員 それぞれの地域にしっかりと医師を養成することが必要だという趣旨ということであります。

 そこで、引き続きお尋ねしますが、この医科大学、医学部のない県を解消するというのは国立大学においてという方針だと承知していますが、その点を確認したいということと、実際に医科大学、医学部のない県において国立大学によらず整備された県がどこに当たるのか、この二点についてお答えください。

山野政府参考人 お答えいたします。

 当時の方針は、別に国立大学だけに限ったところではございません。例えば、委員御出身の埼玉県は埼玉医科大学という私立でございますし、当時新設したというわけじゃないですが、岩手県なんかも岩手の医科大学は私立でございます。

 そういうことで、基本的には国立大学で有しているところも多いのは確かなんですが、国立だけでやったというような事情はございません。

塩川委員 岩手の医科大学は昭和二十七年ですから、ない県ではありませんけれども、要するに、国立ではなくて私立大学で医学部、医科大学のない県を解消するというところがあるということでのお話でした。

 一九八一年までに全国の都道府県に医学部、医科大学が設置をされました。各都道府県の医師不足解消に当たって、その都道府県、その地域に医師の養成を図ることが必要、医学部を設置することが重要だという認識があったわけであります。

 そこで、続けてお尋ねしますが、その後、医学部定員の抑制策がとられましたが、その中身がどのようなものだったかについてお答えください。

山野政府参考人 お答えいたします。

 その後、厚生労働省におきます医師の需給推計なんかも踏まえまして、昭和五十七年でございますが、閣議決定がなされてございます。その中で政府全体の医師抑制方針というものが打ち出されたということで、その後、医学部入学定員を抑制してきたということでございます。その方針は、平成九年においても閣議決定がございますが、それでも維持されてきているというような状況でございます。

 それを受けまして、当時でございますが、そういう方針は昭和五十六年から平成十九年まで続いたわけなんでございますが、その過程におきまして、定員の数でいいますと八千二百八十名から七千六百二十五名ということで、六百五十五名の削減が行われたというようなことでございます。

塩川委員 中身の確認ですけれども、昭和五十七年、一九八二年、行革方針がありまして、医師養成数については一〇%の削減目標、また医学部の新設はこれを認可しないということを方針として確認したと承知していますが、そのとおりでいいでしょうか。

山野政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘のとおりでございます。

塩川委員 医学部の定員を減らす、医学部の新設は認めないという方針だったわけですが、それが転換をしまして、医師の養成を図るという方針がこの間進められてきているわけです。平成二十年度から、医学部の入学定員増が図られてきております。

 その点について、なぜこれまでの医師養成の抑制政策を転換し、医学部入学定員の増加を図る方針へと転換したのか、その理由についてと、実際どのような取り組みをこの間行ってきたのか、この二点についてお答えください。

山野政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、近年は、地域の医師不足でありますとか、地域偏在というものが指摘されるような状況になってきたということでございまして、平成十八年度に、厚生労働省の医師需給推計というものがなされました。そこらの動向も踏まえまして、平成十八年でございますが、総務省、財務省、文部科学省、厚生労働省の四大臣合意というものがございまして、その中で、やはりこういう地域の医師不足にはきちんと対応しようということで、平成二十年度より医学部定員の増加を行ってきてございます。

 その結果といたしまして、平成十九年度には七千六百二十五名だったわけなんですが、今年度におきましては、そこから千四百十六名増員を図ってきてございます。

 その過程において、増員の仕方につきましては、初年度の平成二十年度には、医師不足が深刻な十県でありますとか、医師養成数が少ない県なんかを対象に増員を行って、近年では、御案内のとおり、地域枠と称していますが、各自治体が学生に対して奨学金を出す、そのかわりその学生は卒業した後そこの県に残って医者として働くという条件で奨学金を出すというような、多少県によってばらつきはありますが、そのような地域枠を中心にいたしまして、一部は研究医枠とか歯学部の振りかえ枠なんかもございますが、基本的には、そのようになるべく高校を卒業した後に地元に残ってもらうということにインセンティブを与えるような施策と連動しながら、定員の増加を図ってきているというような状況でございます。

塩川委員 こういった抑制方針を転換したという背景として、地域の医師不足、医師の偏在の問題がある。私に言わせれば、この間の行革方針によって社会保障抑制政策がとられて、地域医療の崩壊が社会問題となって、世論と運動に押されて医師養成の増員に踏み出さざるを得なかったということであります。

 ただ、その医師養成増員の仕組みについては課題があると考えています。

 今御答弁にもありましたように、医師不足県に対して措置をするとか、あるいはこの間の医学部の定員減をもとに戻すだかとか、あるいは地域枠の話もありました。その点、ちょっと中身で確認をしたいんですが、新医師確保総合対策では医師不足県における暫定的医師養成増についての方針を決めましたが、この医師不足県の基準というのはどうなっていたんでしょうか。

山野政府参考人 お答えいたします。

 当時、委員御指摘の点は平成二十年度の増員部分だと思いますが、そのときの医師不足が深刻な十県といいますのは、人口当たりの医師数及び面積当たりの医師数という両方の計数から見て医師が不足しておるような県として十県が選定されてございます。

 また、あわせて医師養成数が少ない二県、当時でいうと和歌山県とかでございますが、そういうところも入ってございます。

 以上でございます。

塩川委員 つまり、医師不足県という場合に二つの要件がかかっていると。一つは人口当たりの医師数で、平成十六年の人口十万人当たり医師数が二百未満。また、面積関係の要件として百平方キロ当たり医師数が六十以上の県は除外をするということですから、対象となった医師不足県というのは、青森、岩手、秋田、山形、福島、新潟、山梨、長野、岐阜、三重、東日本の県を中心に増員が図られました。これ自身は重要なことであります。

 ただ、面積要件がありますと、人口当たりの医師数が少なくても、都市部では対象とならないということもここで生まれてくるわけであります。

 次に、緊急医師確保対策における医師養成増員の方針がどのような仕組みとなっているのかについて御説明ください。

山野政府参考人 お答えします。

 一番初年度は、そのように一つの指標を用いて、医師が少ない県というのを特定しながらそこを重点的にとやったわけなんですが、その後は、全ての都道府県、やはりそれぞれの事情がございますので、今言いましたような自治体の奨学金とかとパッケージにしながら、必要なところにふやしていったというようなことでございます。

塩川委員 緊急医師確保対策においては、地域における医師不足の状況に鑑み、将来の医師の養成を前倒しするとの趣旨のもと、全都道府県を対象に、最大五名まで、北海道は十五名まで上乗せすることを可能とする。つまり、実質、都道府県一律の上乗せ措置となっていたということでよろしいですね。

山野政府参考人 お答えします。

 御指摘のとおりでございます。

塩川委員 ですから、都道府県一律の上乗せ措置が基本となっています。

 さらに、骨太方針の二〇〇八では、過去のピーク時の医学部定員まで増員することを可能とする仕組みもつくりました。これは、医学部抑制方針も続いて、減らしてきました、だから医学部の過去のピークの定員までは戻しましょうということを可能とする仕組みを骨太でも入れたわけであります。

 これら一連の措置がとられたわけですが、その上で、厚生労働省に確認をします。

 人口十万人当たりの医師数について、都道府県ごとに見た場合に、その医師数が少ない都道府県、下から五つ挙げるとしたらどこになるでしょうか。

高島政府参考人 お答えいたします。

 医療施設に従事する人口十万対医師数、これは全国平均で今二百十九人でございますが、少ない県でございます、下から、埼玉県が百四十二・六と、最も少なくなっております。その次が茨城県百五十八人、千葉県、新潟県、岩手県、これが少ない五県でございます。

塩川委員 全国平均二百十九人に対し、最も少ないのが埼玉、次が茨城、その次が千葉ということで、下から三つ、ワーストスリーが首都近郊の三県になっております。つまり、首都近郊を中心に、東日本で人口当たりの医師数が少ない傾向にある。

 文部科学省にお尋ねしますが、都道府県単位で見た場合に、人口当たりの医学部定員数を見ると、人口当たりの医学部の定員が少ない県というのは下から五つ挙げるとどこに当たるでしょうか。

山野政府参考人 お答えいたします。

 医学部の定員ということを考える場合には、実際上は、その県だけでなくて、近隣県の状況とかいろいろ考える必要があろうかと思いますが、非常に単純に各県の人口当たりの医学部定員数、入学定員数を下から言いますと、順番に、埼玉県、千葉県、静岡県、茨城県、兵庫県の順になってございます。

塩川委員 首都近郊など、都市部において人口当たりの医学部の定員が少ない、医師養成数が少ないということが見てとれるわけであります。

 医師不足県への増員策といいながら、面積当たりの医師数という要件をかけているために、都市部が対象外となっていた。また、都道府県一律の上乗せ措置を加えても、そもそも人口の多い埼玉や千葉、茨城などにおける医師養成のおくれを打開することができない。つまり、この間の国の医学部定員増加策では対応できない問題があるのではないのか。

 一九八二年の行革方針を受けて、医師養成数の削減とともに、医学部新設を認可してこなかった。医師養成数は増員措置をとることにしたが、医学部新設抑制方針は変更していないわけであります。

 そこで、文科省にお尋ねしますが、今までの医学部定員の増加策では、医師数の少ない県において医学部定員が小さいという状況が変わらないもとでは、このような首都近郊での医師養成のおくれに対応できないんじゃないのか、このように考えますが、いかがですか。

山野政府参考人 お答えいたします。

 恐らく、そういう医学部の入学定員をどうするかという問題につきましては、やはり複層的な要素を加味する必要があろうかと思います。

 埼玉県であるとか千葉県と言いましたが、近隣の東京にはたくさんの医学部がございます。そういうことも加味しながら対応するし、例えば、埼玉県であっても、埼玉医科大学も、最近では、地域枠なんかを活用しまして、たしか二十一名ぐらいの定員増を図っているところでございます。そういうことを、単純に形式的に人数がどうというのも、もちろんそれがまず重要なんでございますが、やはりいろいろな要素を加味しながら、どうやって地域の医師不足とか地域偏在というものをなくしていくかということを総合的に考える必要があろうかと考えてございます。

塩川委員 東京に医学部が集中しているといっても、別に東京の医学部に埼玉の医師枠なんてあるわけじゃないですから。

 そういう点でいっても、もともと医学部が限られている、人口がふえる都市部においては、決まった医学部の定員の枠内で増員策を、幾ら都道府県一律の上乗せ策をやっても、実際、首都近郊などにおける、都市部における医師不足の解消につながるような増員策を図れないのではないのか、これがやはり大もとにあるわけであります。

 ですから、医学部の定員については削減を改めて増員としたわけですから、医学部の新設を抑制する方針もぜひとも改めるべきだと考えますが、この点について、文科省はいかがですか。

山野政府参考人 お答えいたします。

 今るる議論がありますように、地域の医師確保につきましては、まず医師の養成数の増加というものに加えまして、最近では、それに合わせて、地域枠なんかも踏まえながらでございますが、偏在解消のためのいろいろな取り組みとか、あと、卒業した後の研修医制度のあり方をどうやって見直していくか、定着するようにしていくかとか、例えばでございますが、今の医学部の学生の三分の一は女性でございますから、そういう女性の医師になる人がいかに定着していけるかというような施策も含めて、いろいろな物事をパッケージで、総合的に考えていく必要があろうかと思います。

 ちなみに、御指摘ありましたような医学部の新設につきましてでございますが、委員御指摘のように、やはり中長期的な医師確保策として医学部をつくるべきだ、そういう強い意見もございます。

 その一方で、長期的には、少子化であるとか人口が減ってくるわけですから、やはり医師数が過剰になっていくんじゃないかというようなこと、そういう場合に調整ができないんじゃないかというような懸念があるとか、医学部新設に合わせまして、今医学部では教育に合わせて附属病院なんかも設置する必要がございますが、それに合わせて実際上、医療現場から医師を引き抜いてつくっていく、そういうことで地域医療を壊すんじゃないかというような議論もございます。

 そのような両論が、まさにそれぞれ両論ともかなり強い意見としてあるわけでございまして、そういう意見も踏まえながら、今私が言いましたように、医学部の定員をどうするか、新設をどうするかという問題につきましては、例えば、我が国が高齢化が進んでいくとか人口が減っていく、そういう中で今後の医療体制をどうするかとか、社会保障体制をどうするか、そういう大きな議論も踏まえながら、やはり総合的に、文科省だけじゃなくて、厚労省などとも連携しながら対応していかなければならないと考えてございます。

塩川委員 首都近郊の各県などは、急速な高齢化という問題も実際に生じてくる、そういう点での必要な医師の確保の問題も出てくるわけで、私は、改めて、医学部をつくると医師教員が必要だとかという議論なんかもあるわけですけれども、そもそも、日本の医師数というのが国際的に見ても少ないんだという現状認識から出発する必要があるんじゃないのか。

 例えば、OECDの調査などを見ても、国際比較で、OECDの人口千人当たりの臨床医師数を見ると、平均が三・一に対し、日本が二・二。OECD加盟国の平均よりも十四万人も少ないという現状があります。

 こういった点を踏まえて、しっかりとした増員策を大きく打ち出していく、医師養成を拡大すると同時に必要な場所に医学部の新設を認める、こういう方向にこそ、今改めて踏み出していくときだと思っています。

 この点で、文科省、もう少し工夫の余地があるんじゃないのかと思うんですけれども、どうですか。

山野政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の点を排除するとかというんじゃなくて、そういうことも含めて、今の地域の医師不足であるとか、今後の我が国の医療体制を、高齢化が進むとかそういう中でどうやって対応するかということの中で、委員御指摘の点も含めてパッケージで、本当にどういう施策がいいかということを検討していきたいというふうに考えてございます。

塩川委員 医師養成の増員策を図る最初の四大臣合意の当事者の一人が総務大臣であります。新藤大臣にお尋ねしますが、やはりこういった医師養成に当たって、医師不足の県において、しかるべく医学部の新設を求める、そういう地方の要望に対して、真摯に国として受けとめていく、しかるべく対応を行っていく、このことが求められていると思いますが、この点についての大臣のお考えをお聞かせください。

新藤国務大臣 医学部の設置に関しましては私の所管ではありませんが、しかし、そもそも、委員も私も住んでいる地域でもありますし、それぞれの地域において医師不足というものは解消をしていかなくてはならない、安心の医療体制を構築するというのは日本全体の課題である、このように思っています。

 そして、そういったことを含めて、地域の実情等も踏まえたそういうきめ細やかな対応、これは政府としてやっていくべきであるというふうに思っておりますし、政府内においてそういったことを働きかけをしてまいりたい、このように思います。

塩川委員 医師不足の根本原因というのが、医者がふえると医療費が膨張する、こういう理屈のもとで医師抑制を図ってきた歴代政権の責任は極めて重大だと言わざるを得ません。抜本的な医師養成、そして医学部の新設、これを可能とするような国の支援策を強く求めて、質問を終わります。

北側委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時二十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後零時二十七分開議

北側委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 本日付託になりました内閣提出、参議院送付、地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。新藤国務大臣。

    ―――――――――――――

 地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

新藤国務大臣 地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 住民に対する行政サービスの向上や行政の効率化を図るとともに、地方がみずからの発想でそれぞれの地域に合った特色ある行政を行うことができるよう、国と地方の役割分担の見直しを中心とした地方分権改革を推進することが求められております。

 本法案は、地方分権改革推進委員会の勧告等を踏まえ、地方公共団体に対する義務づけ・枠づけを規定している関係法律を改正する等、所要の措置を講ずるものであります。

 次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 地方公共団体に対する義務づけ・枠づけについては、これまで成立した二次にわたる一括法により見直しが具体化されたことに引き続き、残された義務づけ・枠づけについて、地方からの提案に係る事項、通知・届け出・報告、公示・公告等及び職員等の資格・定数等を中心に、関係法律の改正を行うこととしております。

 また、住民に最も身近な行政主体である市町村が地域における行政の自主的かつ総合的な実施の役割を担えるようにするため、都道府県の権限を市または特別区へ移譲することとし、関係法律の改正を行うこととしております。

 このほか、施行期日及びこの法律の施行に関し必要な経過措置について規定するとともに、関係法律について必要な規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の提案理由及び内容の概要であります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。

北側委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る六日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.