衆議院

メインへスキップ



第16号 平成13年6月8日(金曜日)

会議録本文へ
平成十三年六月八日(金曜日)

    午後二時十三分開議

 出席委員

   委員長 山口 俊一君

   理事 伊藤 公介君 理事 奥山 茂彦君

   理事 佐藤 剛男君 理事 根本  匠君

   理事 五十嵐文彦君 理事 海江田万里君

   理事 石井 啓一君 理事 鈴木 淑夫君

      倉田 雅年君    小泉 龍司君

      桜田 義孝君    七条  明君

      砂田 圭佑君    竹下  亘君

      竹本 直一君    中野  清君

      中村正三郎君    西川 京子君

      林田  彪君    牧野 隆守君

      増原 義剛君    三ッ林隆志君

      山本 明彦君    山本 幸三君

      渡辺 喜美君    江崎洋一郎君

      岡田 克也君    河村たかし君

      小泉 俊明君    中川 正春君

      長妻  昭君    原口 一博君

      日野 市朗君    松本 剛明君

      谷口 隆義君    若松 謙維君

      中塚 一宏君    佐々木憲昭君

      吉井 英勝君    阿部 知子君

      植田 至紀君

    …………………………………

   財務大臣         塩川正十郎君

   国務大臣

   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君

   内閣府副大臣       村田 吉隆君

   財務副大臣        村上誠一郎君

   国土交通副大臣      佐藤 静雄君

   財務大臣政務官      中野  清君

   財務大臣政務官      林田  彪君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官

   )            浦西 友義君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    原口 恒和君

   政府参考人

   (国税庁長官官房審議官) 塚原  治君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長

   )            風岡 典之君

   財務金融委員会専門員   田頭 基典君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月八日

 辞任         補欠選任

  大野 松茂君     桜田 義孝君

  増原 義剛君     西川 京子君

  山本 明彦君     三ッ林隆志君

同日

 辞任         補欠選任

  桜田 義孝君     大野 松茂君

  西川 京子君     増原 義剛君

  三ッ林隆志君     山本 明彦君

    ―――――――――――――

六月八日

 不良債権処理のルールの確立、金融トラブル解決の第三者機関設置の立法化に関する請願(矢島恒夫君紹介)(第二四一五号)

 中小自営業の家族従業者等のための所得税法の改正等に関する請願(山口わか子君紹介)(第二四一六号)

 消費税の増税反対に関する請願(阪上善秀君紹介)(第二四一七号)

 同(土井たか子君紹介)(第二四一八号)

 大増税路線反対、国民本位の税制確立に関する請願(三村申吾君紹介)(第二五一二号)

 中小自営業の家族従業者等のための所得税法改正等に関する請願(三村申吾君紹介)(第二五一三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 財政及び金融に関する件




このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

山口委員長 これより会議を開きます。

 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、政府参考人として財務省理財局長原口恒和君、国税庁長官官房審議官塚原治君、金融庁総務企画局参事官浦西友義君及び国土交通省総合政策局長風岡典之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山口委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。原口一博君。

原口委員 民主党の原口一博でございます。

 通告に従って質疑を、財務大臣、金融担当大臣にお願いをいたします。

 まず冒頭、大阪教育大学附属池田小学校での午前中の事件で、大変な惨禍に遭われて命を落とされた児童の御冥福を心から祈り、けがをなさった皆様、関係者の皆様に、衷心より哀悼の誠をささげたいと思います。

 人心がうんでいる。自分を導く自分というものが、これは一般論でございますが、できない、そういう子供たち、あるいは大人も含めて、ふえている。その中で、小さい人たちがもうこれ以上犠牲になるということを私たちは見過ごしてはならない、もう許せないというふうに思います。政治そのものも、しっかりと襟を正して、礼節を守り、分を守りながら、範を垂れる、こういう姿勢が必要ではないかというふうに思います。

 まず、歳入構造改革の問題あるいは財政構造改革の問題について、数点お尋ねをしたいというふうに思います。

 けさのニュースで、来週発表される月例経済報告、内閣府は、五月の月例で、景気はさらに弱含んでいるという下方修正をいたしましたが、六月の月例ではそれを、悪化しているという判断、五カ月連続の下方修正をするということがニュースで流れておりました。

 財務大臣に伺いますが、これからの財政運営をするに当たって、現下の景気をどのようにとらえていらっしゃるのか、まずお尋ねをしたいと思います。

塩川国務大臣 おっしゃるように、現在は前期に比べまして弱含みのような状態でございまして、一―三月期は、何とか企業の成績もそれなりに、修正は一部いたしましたけれども、それほど落ち込んだ状況ではないと認識しておりましたが、四―六では、少し一―三月より悪くなるのかな、弱くなるのかな、そういう懸念を持っております。

 つきましては、これに対する対応をいろいろと政府としても考えなきゃならぬと思うのでございますが、具体的なものとしてまだコメントできることはございませんけれども、それに対して、予算の執行等を急がせて、その配分を消化さすということにとりあえず全力を挙げていきたい、こう思っております。

原口委員 この二月でございますか、当委員会で、前の財務大臣であります宮澤財務大臣は、我が党の中川委員の質問にお答えになりまして、いわゆるマクロモデルをつくる、そのマクロモデルでシミュレーションをするんだ、それができた段階では、多分十年とか十五年の間で我が国の経済社会にある幾つかの問題をその場で片づけなければ意味のある財政再建の答えは出ないという状況に、いわば決断をそこへ、国民的な選択を、言葉は悪うございますが、そういうところへ持っていこう、一種の追い込まれた立場になるということも言えるかもしれませんが、しかし、そのぐらいいたしませんと、今申したような幾つかの問題は都合のいい答えが出てこない、こういうことをおっしゃっています。

 つまり、二月のこの段階でも、これは何回も予算委員会でも伺いましたが、やはり歳入の構造改革にも踏み込むんだろうということを私たちはその宮澤財務大臣の答弁で感じたわけでございます。増税なき財政再建を唱える、歳出カットだけでプライマリーバランスが達成できないにもかかわらず増税なき財政再建を唱えるという、それだけで本当に将来展望が開けるんだろうか。景気マインドがさらにそのために冷えるんではないか。

 宮澤前財務大臣が、マクロモデルで検討すれば、最終的には国民の負担を覚悟していただかざるを得ないという旨の答弁をされていることからすると、今現在の財務大臣の姿勢は、こういう前財務大臣のスタンスよりも変わったと見るべきでしょうか。それとも、そのままだというふうに見るべきでしょうか。お答えをいただきたいと思います。

塩川国務大臣 宮澤前大蔵大臣との問答の中にございました宮澤大臣のお答えと私の今考えておりますこととは、根本的には変わらないと思っておりますけれども、宮澤大臣は、今すぐにでも根本的な方向を決断してかじ取りを変えなければということをおっしゃっておりますけれども、私は、今根本的にということは、税の改正、つまり、ある程度国民の負担をお願いしなきゃならぬということを直ちに決断しなければという意味も含めておると思うのでございますけれども、私は、そういう国民の負担を増額することをお願いしようというような経済情勢にはまだ今現在なっていない。弱い含みのときでございますだけに、そういう無理なお願いをいたしました場合に、負担の方の犠牲が出てきて、経済によくないように私は思っております。

 したがって、宮澤大蔵大臣も、いずれはしなきゃならぬ、マクロプランというのが、前の宮澤先生の考えでは大体十月ごろ、ことしの秋以降に出るんだろう、そうなった場合に、そのマクロプランの中にはそれが盛り込まれてくるのではなかろうかという懸念を持って言っておられるように思っております。

 私は、ここ一、二年の間はやはり増税するだけの力はない、経済そのものに力がないし、また、消費が落ち込んでおる現在におきまして、国民負担もそれにたえていけないように思っております。ですから、一、二年はとりあえず政府としては、要するに、歳出の削減等を通じて、めり張りのある予算の執行を通じて、経済の刺激を強いながら財政負担を軽減する方法を考える以外にないんではないかという考えを持っておるものであります。

原口委員 前回この委員会で御質問申し上げたときに、やはり中央、地方の政府歳出三百十兆というのは大き過ぎる、だから、これを小さくしていって、その分やはり国民に返していく。歳出構造だけをいじっていたのでは、私は増税をするべきだということを申し上げているんじゃありません、歳入構造改革にも踏み込まなければ、それは片方だけの構造改革に終わってしまうんじゃないだろうかということを申し上げたくて今お話をしたわけです。

 二年ほど前に理財の皆さんに資料を出していただきました。国のバランスシートの中で国と地方の資産が一千兆円ぐらいある、そのうちで、じゃ、知的な財産というのは幾らぐらいあるかということを聞いたときに、八十六億円という答えが返ってきました。一千兆円ある国、地方の資産の中で八十六億円しか知的な財産を持っていない。そのうちの四十六億円がたしか建設省の地図のデータベースの資産でございました。

 私は、完璧に経済が変わってきていると思います、ニューエコノミーからナレッジエコノミーに。知的財産そのものが資産を生む、そういう中で戦略を立てない限り、お金もどんどん外に出ていく、知的財産あるいは人材も外へ出ていく。

 日本の場合はおくれているということを言う人がいますが、実はあのDNAの分析を最初に言ったのは我が国の理研の所長さん、和田所長さんでありますし、あるいは金融についても、デリバティブはよその国のものだなんということを言う人がいますが、実はこれは我が国の京都大学の先生が発案をされたもの。あるいは光ファイバーについてもそうであります。アメリカに特許料をたくさん払っていますが、実はこれも東北大学の先生が発想された。しかし、特許はアメリカでとっていますから、莫大な特許料をアメリカに払っている。最近でいいますと、青色レーザーの開発、こういったものも、日本では知的な財産をもっと活用することができないんで、結局アメリカに行っているという状況であります。

 私は、先ほど歳入構造改革といったことを言ったときに、単なる増税ではなくて、こういう知的財産の戦略的有効活用といったことに本格的に踏み込む、そういうときに来ているのじゃないか、知的財産の証券化も含めて検討をすべきだというふうに思いますが、大臣の御所見をいただきたいと思います。

    〔委員長退席、佐藤(剛)委員長代理着席〕

村上副大臣 原口委員の御質問にお答えします。

 本当に、原口委員の御指摘というか切り口というのは重要じゃないかと思うんです。

 今一生懸命調べさせてみましたところ、財務省としましては、国有財産の有効利用の処分について、国有地の売却については積極的に取り組んでおります。

 ただ、今御指摘にありました例えば国有財産である特許権は、現在約一万六千百七十五件ありまして、実は、これらは各省庁が所管しております。こういう特許権の大部分は国の研究所や国立大学の研究成果として取得されたものですが、御高承のように、本年の四月一日から独立行政法人とされ、これらの機関が所管した特許権も独立行政法人に実は承継されているわけなんです。それで、こういう特許権等の有償での使用許諾に基づく有効活用について、これを所管している、保管している研究機関、大学において、今検討しつつあると思うんです。

 いずれにしろ、国有財産の有効活用については、財務省としても関係省庁と連携しながら積極的に取り組んでいきたい、そういうふうに考えています。

 ただ、実際のところ、今、先ほど委員が御指摘になった、具体的な金目のものになるのは何かといいますと、御承知のように、要するに特許とか著作権とか商標権とか実用新案権の中で、実は大部分は、旧建設省というか、国土省が掌握している国土地理院の地図等の著作権なんですね。帳簿上は、今言った著作権とか全部で七十九億あるんですが、実はその地図等の著作権の価格が七十一億円なんですね。そういうことなんで、今後、今までの基礎データであるんで、それを企業だとかに使ってもらうように、今言った研究機関やそういうものがもっと売り込んでいくとかそういう努力もやっていかなきゃいかぬのじゃないかな、そういうふうに考えています。

原口委員 前向きの御意見をいただいて、本当にありがとうございます。証券化までもう検討すべきだというふうに思います。

 そして、こういう知恵がただ官にだけ閉じ込められていたんでは、例えば、どんなに優秀な大学の先生でも、兼業の禁止あるいは自分の本俸より超えてはならないということで、どんなに頑張ろうと思ってもそれは官の論理の中に封じ込められてしまっている。そのことが、我が国が世界最大の知的生産国であるにもかかわらず財政やあるいはさまざまな社会に還元されない、こういう構造を持ってしまっている。

 そのことを指摘して、一方で、歳出カットについても、やはりすべてのものを聖域なく見直していくという姿勢は私も大事だというふうに思います。

 委員長にお願いをして資料をお手元にお配りさせていただいていますので、この資料の八をごらんいただきたいと思います。

 私は、さまざまな補助金やあるいは調査、ここに書いてありますのは調査の予算のことでございますが、こういったものも野方図に出し続ければいいというものではないというふうに思います。

 これは、きのう小長井漁業協同組合の元組合長の森さんという方が農水大臣に、こういう現状ですよ、もう報告をしてくださいということを申し入れをされたものでございます。私もその場におりましたものですから、一緒にお願いに行ったものでございますので、現場の農水省の皆さんと質疑応答をしてみて本当にびっくりしました。今、二年間で有明海の漁業被害の原因を調べるということで大きな国費を投じて調査をお願いしているところでございますが、その前提となるこの諫早湾漁場調査委員会というのが平成五年の六月一日にもう設置されている。それから満八年が経過しているんですが、ここに書いてありますとおり、調査結果の最終報告はおろか、中間報告すら全く出ていないということであります。

 私は、こんな予算の使い方が、塩川財務大臣、あるんだろうかというふうに思います。漁業者の人たちには、諫干がどういう影響を与えているのか、一日も早く知りたい、そういうことでこの委員会が国費を投じて設置をされて、毎年毎年大変な御努力をいただいた。ところが、その結果は、八年。私はきのうも、それはあるでしょうと。もう実際は終わっているのです。終わっているにもかかわらず、出てこない。こんな予算の使い方が、果たして、我が国で許されてきたこと自体信じられない思いでございます。

 大臣が、この資料をごらんになって、どのような御所見をお持ちなのか、伺いたいと思います。

村上副大臣 今御指摘のように、諫早湾の漁業調査委員会というのは、御承知のように、諫早湾の干拓事業の工事施工に伴う漁場の影響に対する調査を目的として、ずっと専門的な立場から助言、指摘を行うために、農林水産省に設置されたものであります。

 ここの文書にありますように、農林省は、調査委員会において、タイラギの生息環境について十分な調査の必要があるとの結論に達したために、学識経験者から構成された専門部会において議論を重ねて、収集したデータの評価及び検討に時間を要しているというふうに聞いております。我々が調べたところ、大体調査委員会は、平成五年の六月から九年三月までに十回ぐらい。専門部会においては、平成五年八月から十三年の二月まで大体二十五回。トータル、合わせて延べ三十五回やっているようであります。農林水産省において、こういう報告の取りまとめまで鋭意努力するように、できるだけ早く取りまとめてほしいというふうにお願いするとともに、そういうふうに早く取りまとめをせよというふうに努力しているように承知しております。

 財務省としては、こうした農水省における対応を注視していきたい、そういうふうに考えております。

原口委員 これは、一つの例なのですよ。

 今度の一月一日から、中央省庁再編基本法の二十九条で、きっちり政策評価をしなければいけない。予算を投下するのだったら、それがどういう効果を出したのか、しっかり国民に説明しなければいけないということがきっちりうたわれているわけです。にもかかわらず、こんなに生活に直結するようなものが八年間もなぜ中間報告が出ないのか。最終報告どころか、中間報告だって一行も出ていないのですよ。本当に驚くべきだ。

 私は、これがむだなお金だとは言いません。大変大事な調査です。しかし、大事な調査であるからこそ、期間内の報告提出義務や調査期間のサンセットというのをあらかじめつくっておくべきだ。さまざまな補助金も全く同じことでございますが、期限が切られないで出ている支出、これはダムの補助金もそうですね。あるところでは、下流の人たちが、負担があるにもかかわらず、幾ら負担しなければいけないかわからないにもかかわらず、その調査だけが延々と続いている。こういったものは、大臣、一回サンセットして見直す。それこそが、聖域なき構造改革の中身ではないかと思うのです。

 塩川大臣の方から、再度、サンセットも含めて、あるいはこういう事案にどのように対処するのか、財務省としてもやはりその本分が問われているのではないかと思いますが、御所見をいただきたいと思います。

塩川国務大臣 委員会が設置されてから満八年、その間報告を何にもやらないということは、まさにこれは怠慢だと言えると思います。それは、率直に言ってそうだろうと思うのです。しかし、それなりの理由があったのだろうと思いまして、その理由等も私は承知しておりませんので、一概にそれに論断を下すわけにはまいりませんが、なお農林水産省と十分進めておることと思っておりますので、私たちも注目をして見守っていきたいと思っております。

原口委員 八年も調査が出てこない。どんな理由があるのか、私もお聞きしました。しかしそれは、現場で聞いたところによると、事務所に聞いてみる、そんな答えですよ。森総理は予算委員会で私の質問に対して、五月中には一定の結論を出す、そういうことをおっしゃいました。そうであるにもかかわらず、現下はこういう基礎的な調査すらも、なぜ報告が上がっていないのか、発表が上がっていないのか。それも現場の事務所に聞かなければわからぬということであれば、何の仕事をしているのだと国民から言われても仕方がないというふうに思います。

 さて、もう一つ、これは大和都市管財という、そのグループで起こったいろいろな問題について、少しお尋ねをしていこうと思います。これもお手元に資料を配ってございますので、それに沿って幾つかお尋ねをしたいというふうに思います。

 これは共管になるのですかね。金融担当大臣になるのか、抵当証券の問題でございますので。この四月に、近畿財務局が証券業登録の更新を拒否ということで、同年同月に大阪府警がGFPの販売に関する出資法違反容疑で家宅捜索をした、こういう事件でございます。

 事件の経緯については、この資料の一に書かせていただいています。

 一九八〇年に業務を開始したこの大和都市管財グループが、さまざまな買収あるいは抵当証券の販売を通して業務を拡大されたわけでございますが、その中で、九七年の八月に、同じく近畿財務局が業務改善命令ということを出され、そして、ついに二〇〇一年の四月に近畿財務局が証券業登録の更新を拒否という形になったわけでございます。

 同社グループの商品とその商法ということで、これは新聞記事にあったものを、あるいは独自で調べたものを表にしたのが一枚目の資料から二にわたってでございます。

 顧客の状況を見ますと、顧客は約一万人。販売総額は約一千億円。既に、東京、大阪、名古屋の三カ所で、弁護団主催の説明会が開催されております。東京で二千人、大阪で一千三百人、名古屋で九百人の顧客が集まったというふうに承知をしています。

 大阪府警が分析をされた顧客百二十五人の分析によると、六十歳以上の方が四三%、しかも女性が六五%、無職の方が三八%。いわゆる社会的な弱者と言われるような契約者が非常に多くて、今後どのような形になるだろうか、果たして、自分たちがこの債券を購入したもの、これは返ってくるのだろうか、そういう不安が広がっておる事案でございます。

 このことにつきまして、数点お尋ねをしたいというふうに思いますが、現況、この大和都市管財に関する事案を金融当局は今どのようにとらえていらっしゃるのか、まず概要から伺いたいというふうに思います。

村田副大臣 今委員が御指摘なさいましたように、抵当証券業にかかわる法律、業法ができましたのが、立法化されたのが昭和六十二年、六十三年から実施をされまして、抵当証券業は登録の上、必要な条件を満たされれば業務が開始できるということになっておるわけでございます。そういうことで、私どもは、三年ごとに登録を更新されますものですから、そういう関係で立入検査をその都度してきた、こういうことでございます。

 最近になりまして、立入検査の結果、関連会社について大変業務内容が悪い、こういうことでありまして、業務改善命令を平成九年の十月に下した、こういうことでございまして、その後、平成十二年の十月になりまして再び立入検査をいたしまして、十二月に登録の期限が満了になりまして、その財産の状況等々考えた上で登録更新を拒否いたしました。

 その結果、私どもとしては、商法に基づきまして大阪地裁に対して会社整理の通告をして、今大阪地裁でその整理に入っている、こういうことでございまして、同日に会社整理の開始決定をいたしまして、管理命令を出して、管理人を選任して財産の保全を図っている。一方、大阪府警の方で、同社が販売した商品について出資法の違反がある、こういうことで今捜査を行っている、こういうふうに聞いております。

原口委員 これは、五月二十四日、一千億円の返還の見通しが立たない、豊田商事に次ぐ大型詐欺にもという新聞の報道がございます。九七年に、あるいは九四年にも入っていて、どうしてこれが見抜けないのか。私は、この事案を調べていけばいくほど不思議なことにぶつかりました。

 まず第一は、今財務副大臣がお話しになりましたように、大阪府警の捜査で、これは約一カ月の捜査なんですが、大和都市管財は九四年の段階で既に債務超過に陥っているということが判明したわけです。財務局が同社が債務超過状態であると判断したのは昨年秋の検査の段階であり、この検査結果をもとに登録の更新をしたわけでございますが、少なくとも一九九七年の、前回の検査でどうして気づくことができなかったんだろうか。

 メーンバンクがある、そういうものではございません。出資法違反の疑いというお話がございましたが、この金融商品についても、同じグループの中で債務者と債権者が、約束手形の小口化販売なんというものも、あるいはその下のGFPシュアー・ファンドなどというものも、同じグループの中で、つまりはタコが自分の足を食いながらその利を配当する、そういう形になっていたんじゃないかという指摘さえあります。あるいは、GFPシュアー・ファンドというのは、ベンチャーなどに出資して運用するという名目でございますが、どうもその実態も極めて疑問であるといったことも出てきておるわけでございます。

 そこで、資料の六をごらんになってください。これがGFPシュアー・ファンドというものでございますが、想定利回り年一〇%、そして左の、小さい字で恐縮でございますが、黒のポチの二段目、「元本の保全をめざしています。ファンド総口数の二〇%を当社が保有しますので(劣後出資)、万が一、運用損が発生しても、ファンド総額の二〇%以内なら当社が率先して負担をし、」ちょっと読みにくいですが、「元本や利回りには影響がでません。(優先出資)」

 こういったことをうたうことは抵当証券業法にも抵触するんじゃないだろうか。抵当証券業法は、三条において、「内閣総理大臣の登録を受けた法人でなければ、営んではならない。」と。内閣総理大臣の登録ですよ。しかも、これは指定ですよ。そういうものであるにもかかわらず、こういうことを見過ごしたというのはなぜなのか。大臣にお尋ねをしたいというふうに思います。

村田副大臣 出資法二条の預かり金に該当するか否かという情報の収集、それからそうした会社に対する指導については当庁の所管事務でございますが、具体的にそうした商行為が出資法違反に該当するかどうかということについては、取り締まり当局が最終的には調べて摘発する、こういうことになっているわけでございます。

原口委員 だれが告発するかなんというのは今大臣がおっしゃったとおりで、それこそ英明なる村田副大臣が私のお尋ねを聞き間違えられたとは思いませんが、なぜ九七年の段階で、こういう、GFPですか、今そのお話をしましたけれども、しっかり入って、そして、今のようなお答えをされるかなと思って三の資料をきのう、これはそのとき、九七年、平成九年の十月三十一日に、近畿財務局長のお名前で当該会社にこういう書類を出されています。

 これによりますと、五ページをごらんになってください、「貴社の抵当証券特約付融資に係る審査体制が不備であり、また、貴社の融資先である関連会社はいずれも経営状況が極めて悪く、かつ貴社が自主的に作成した」云々と、結果的に経営が困難となる可能性というのをここでもう指摘しているんですよ。

 私は、このことを調べていくと、どうも寄せられた情報を集めると政治家の影もちらついてくる。これほどのことを自転車操業のようになさっている。

 この四ページをごらんになってください。「経営状況の改善」、きのういただいた資料では、これは私が黒塗りしているのではなくて、恐らくプライバシーの関係から六社の名前が隠されているんだと思いますが、「貴社の経営状況の改善を図ること。このため、貴社が抵当証券発行特約付融資を行っている」云々の六社の今後の経営見通しを正確に把握した上で、経営健全化計画を出しなさいということを言っておるわけですね。

 私は、少なくともこのときにもっときっちりとした対応をしていれば、その後も、今お話をしたGFPであるとかあるいは抵当つき一部債権譲渡商品の販売だとか、こういったことで約三百億円のまた新たなる商品が外に出て、その商品は、先ほどの新聞記事を御紹介するまでもなく、もう返ってこないんじゃないかというようなことになっているわけです。

 一体何をどう検査していたのか。この委員会でも、私たちは、いかに一般投資家のあるいは市井のお金をさまざまな生きた投資に振り向けるかということを議論してきました。しかし、このようなことが行われているのであれば、なかなかそれは難しい。もちろん、一〇%だの五%だの、こういう高金利が今ごろあるということを私たちはとても信じられないような思いでこの広告を眺めていたわけでございますが、一体どんな検査をしていたのか、そのことについて再度お尋ねをいたします。

村田副大臣 平成六年にももちろん立入検査をしたわけでありまして、その時点で関連会社の経営状況の悪化というものを既に把握しておりましたので、その指摘もしたようでございますが、自主的に経営内容の改善を期待いたしましたけれども、その結果がはかばかしくない。九年の立入検査の結果、改めて、昨日先生にお渡ししたような業務改善命令の内容を発出した、こういうことでございます。

 当社については、大変いろいろな問題がございますが、抵当証券業の法律でございますが、この法律に基づいて、登録の取り消し、これができる条件というか、法律の二十四条に登録の取り消しの条件がいろいろ書いてございますけれども、これは、同法の六条の幾つかの条項が該当したときには取り消しができる、こういうことになっております。ただし、財務の状況等、そういう問題だけでは直ちに取り消しができない、そういう状況になっておりまして、今回、説明を聞いた結果、なかなかそういうところが、我々が検査の状況を踏んまえて適切な処置をするについては多少弱いところがあるなと私も痛感した次第でございます。

原口委員 百歩下がって、近畿財務局は、九七年の検査のときに大和本体の債務超過状態というのが、今のお話のように見抜けなかったとします。しかし、グループ全体としては債務超過にあるということは、もうここでも大変問題があるということをおっしゃっていたわけで、認識していらっしゃったのじゃないか。だが、その後GFPが東京都に貸金業登録を行っているなどということで、監督官庁の違いを理由に、その後、グループ他社に対する検査、指導などを見送っていたのではないか。

 かつて、木津信の抵当証券破綻の際にも同じようなことが議論されたのです。結果的に、あのときは、監督するところの責任を、いや、自分のところの責任だ、こっちの責任だ、そういうことをなすり合って、結局、今回もその教訓が生かされなかったのじゃないか、こんなふうに私は思います。

 抵当証券を販売する抵当権の評価は正当だったのだろうか、このことも、またちょっと時間が押してきましたので指摘をして、制度そのものの問題点もやはりここで指摘をしておこうというふうに思います。

 そもそも、抵当証券というのは、世界恐慌のときに銀行の連鎖倒産に歯どめをしようとする、そういう事業としてスタートした。その後、ほとんど発行されていませんが、一九七〇年前後に復活して、世に出始めている。今現在、運用の根拠になっているのが、今村田副大臣がお話しになった抵当証券業法です。

 ところが、この業法は、バブルの最中に定められた法であるために、地価が常に右肩上がりにあるという前提のもとに制定されているのじゃないかというふうに思います。

 例えば、担保評価の見直しが義務づけられていない。よって、何年も前の評価で売られてしまうことになって、大幅な額面割れを起こしているケースが少なくない。あるいは、以前の評価額のままで売るか再評価するかは、各抵当証券会社の判断にゆだねられている。これでは、消費者はとても、なかなか安心して、十分に情報が開示されない、そして、上がればいいですけれども、下がれば大損をするということを理解できていないのじゃないかというふうに思うのですが、業法の矛盾点について、あるいは改善点について、どのように大臣はお考えなのか、お尋ねをいたします。

村田副大臣 ただいま原口委員が御指摘のように、抵当証券でございますが、抵当証券法の手続に従いまして登記所が発行するものでありますけれども、担保価値が一度確認されますと、担保物件の評価額が発行時の価額を下回った場合においても抵当証券自体には影響がないというような形になっておりまして、御指摘のような問題点もございますけれども、私ども、今回の事件を教訓といたしまして、今回の事件の推移等も見守りながら、今後適切に対処していきたい、こういうふうに考えております。

原口委員 もう一つの問題点は、先ほどの資料の黒塗りのところにあったように、四にあるように、それぞれの顧客が手にするものは、抵当証券そのものではなくて、それを小口化したいわゆるモーゲージ証書という預かり証なわけです。一人一人の債権者としての権利は極めて不完全で、会社が破綻したときには、個々が単独で債権回収を行う。こんなことは不可能ですよね。ほぼ不可能だと言わざるを得ない。

 それから、顧客は、先ほどの黒塗りの資料にあるように、どこが不動産の担保になっているのか、あるいは何にその会社が投資しているのか、それはわからない。よって、株のようなリスク判断材料を与えられていない、そういうことだというふうに思います。

 これほどの事件、私は火をつけて回る気は全くありませんが、たくさんの心配をしていらっしゃる方々がいらっしゃる。業法の改善点あるいは検査の改善点、所管についても内閣総理大臣に登録するなどという物すごく大きな規定になっている。見直す時期に来ているんじゃないかと思いますが、大臣の御所見をいただきたいというふうに思います。

村田副大臣 御指摘の点も含めまして、今後適当に、適正に対処していきたい、こういうふうに思っております。適切に対処してまいりたい。

原口委員 この問題はまた後の質疑で、適切にというふうにお話しになりたかったかということで承りましたのでそれで結構ですが、また事態の推移を見ながら、さまざまなことが世に明らかになってくると思います。あるいは矛盾が、きょうお話しした中でも幾つかございました。そういうものを、国民を守る立場から、皆さんに、しっかりと御議論して解決策を示していきたいというふうに思います。

 さて、柳澤金融担当大臣にお尋ねをしますが、不良債権の最終処理に当たっての主要十六行の引き当て、保全は十分であるというふうにお考えだということでございますが、その根拠をお示しいただきたいということを前委員会でお話をしたのですが、主要行の引き当て、保全は十分であるというのは、今もその御認識は変わらないというふうに考えてよろしゅうございますでしょうか。

柳澤国務大臣 そのとおりでございます。

原口委員 資料九をきのう金融庁の皆さんにつくっていただいて、主要行の引き当て率、それから保全率という形で出していただきました。私は、この一つ一つを分析してみますと、やはりさまざまな銀行が貸している貸出先、そのことについてもしっかりと見きわめていかなければいかぬなというふうに思います。

 例えば、第一勧銀の場合は、引き当て率という中で、危険債権が七三%、要管理債権が一五%、引き当て率が四八%、保全率が七二%という形でございます。それに対してあさひ銀行の場合はそれぞれ、六二、一一、四八、七二ということで、大体七割から八割の保全率を持っているということでございます。信託銀行については、計算の仕方が違うので、しっかりとその合計が出てきていないのかもわかりませんが、六七%という保全率でございます。

 私は、さまざまな自己資本を計算するときに、いわゆる資産のリスクのウエートづけというのは、例えば国債や地方債というのはリスクのウエートづけはどうなっているのか。たしか私が承知しているBIS規制の中では、国債、地方債のリスクというのはゼロではなかったかと思うのでございますが、間違いございませんでしょうか。

    〔佐藤(剛)委員長代理退席、委員長着席〕

柳澤国務大臣 それで間違いございません。

原口委員 先般のシーガイアの破綻、第三セクターの破綻というものは各地域を回っていると大変大きなものがございます。そういったところに地方銀行が貸してみたり、あるいはシーガイアの場合は、あのときは第一勧業銀行でございました。こういう大手の主要行が貸している。

 今までは右肩上がりでございましたから、第三セクターがつぶれるなどということは、行政が例えば五〇%出資をしている、あるいはさまざまな補助金を出している、ほとんど想定をされてこなかった。しかし現在の日本全国の状況を私どもつぶさに調べていきますと、これはなかなか、いわゆる商法法人の四割が赤字、いや実際にはもっと赤字になっているのではないか。各地方の首長からすると、一つのインフラ整備という形で税を投入して、そして補助金を入れて、税金の減免をして、無利子融資をして、あるいはまた直接融資をしてという莫大なお金を入れている。しかしそのほとんどの財務内容を見てみると、どうも健全とは言えない。いや、もうあっぷあっぷの状況ではないか。わずかな出資金と莫大な借り入れでもって塩漬けになっているのではないかという認識を持っているのです。

 担当大臣、三セクとなるとこれはもう管轄がないわけですよね。厳密に言うと、地方の自治体が出していますから自治省になるのかもわかりませんが、金融にも大変大きな影響を与えると思いますので、どのような御認識をお持ちなのか、お尋ねをしたいと思います。

柳澤国務大臣 金融のサイドから見ますと、第三セクターが融資先であることはあり得るわけでございます。しかし一方、検査マニュアルにおいては、地方団体、地方公共団体の出資に係る法人貸出先であっても、そのことをもっていろいろ別途の配慮をしてはならない、こう書いてありまして、通常の貸出先としてしかるべき債務者区分をし、しかるべき引き当てを行う、こういう原則になっております。こういうことになっております。

原口委員 通常の貸出先という原則になっていますが、しかしそれが、先ほどお話をしたように、リスクは今までは極めて少ないと思われていた、しかし現在は果たしてそうであろうか、実態はそうであろうかというのは、きっちり押さえておかなければいけない。不良債権の最終処理という形で私たちはいろいろな議論をしてきましたが、しかしその実態はまだやみに隠れているんではないだろうか。出てきている部分というのはまだ氷山のほんの一角なんじゃないだろうか。

 例えば、各都道府県、市町村が持っています土地開発公社、これは氷山のいわゆる本体なんではないだろうか。そこにさまざまな塩漬けの不良債権がたまり込んでいるんではないか。隠れ借金がたくさんあるのではないか。そんなことを今私たちはつぶさに調査をし、そして野方図な財政出動や、あるいは選挙目当てというふうには私たちは思いたくありませんが、聞くところによると、そういったところに各首長さんが、三セクターですから、自分の縁故の人を入れたり雇ってもらったり、あるいはさまざまな便宜を図ったりというようなことも散見されるようでございます。そういったところについてはきっちりとしたチェックを私たちは入れていくべきだ、そしてそういう野方図な財政出動を国もやってはいけないし、地方ももちろんもうやってはいけないんじゃないかということを御指摘をして、次の問題にいきたいと思います。

 「上礼を好めば、則ち民使い易し」、これは、論語の憲問の第十四というのにございます。上に立つ者が礼を好んで民に臨めば、民もその風に化せられて、人に譲り、みずからを守り、内外の分が定まって、統治しやすくなる。礼というのは、上下の別であるとか、あるいは内外の分、正しい秩序ということを指すそうでございます。

 私は先日、移用のことを申し上げました。官房長官が、官房機密費をさまざまな各省庁の、総理が外遊されるときの宿泊費の差額に充てるということは財政法の違反じゃないかということを申し上げたわけでございますが、そのときに明確な答弁をいただけませんでしたので、財務大臣、こういう移用というのはどのようにとらえればいいのか、再度お尋ねをしたい。外交機密費じゃありませんので、よろしくお願いいたします。

村上副大臣 官房長官が言った件ですけれども、報償費というのは、御承知のように、国の事務または事業を円滑かつ効果的に遂行するための、当面の任務と状況に応じて、その都度、判断で最も適当と認められた方法によって機動的に使用する経費である、そういうことでありまして、内閣報償費は、首脳外交を円滑かつ成功裏に遂行するために外交団の活動条件を整える目的として使用されたものと私ども聞いております。

 そういうことで、外務省等の職員の宿泊費の差額に充当したからといって内閣報償費の目的を逸脱したものではなく、ゆえに、財政法の第三十三条に規定する移用に該当するものではない、そういうふうに考えております。そしてまた、例えば国立大学の教授が審議委員として参画していた会合に行くときに予算から交通費等を支給することとしていることも、それと同じような事例というふうに考えております。

原口委員 私は、こういう事務的な経費はもうあらかじめ予算として計上して、それぞれの役所でやるべきだ、また、それは一年半前からそうなさっているわけでしょう。御自身たちもおかしいと思われたんで、それは、今お話しになる財政法の三十三条に移用というものがあって、それに抵触するおそれがあるから変えられたんじゃないですか。私は、今の答弁はなかなか納得がいかない。本来、こういった中身を言わなければいいですよ。

 昨日、田中眞紀子外相は、外務省の複数の幹部から意図的に歪曲されて漏れている、外務省による組織的、意図的な漏えいだということで、昨日の参院外交防衛委員会で、アメリカのミサイル防衛構想や日米安保体制に触れた一連の二国間会談の中身が、外相会談の発言が報道されている問題について、弁護士と法的手段を相談していると。いかに国益を損なう結果になっているかを法律的に説明している。つまり、法的措置も含めて厳しい対応を検討するということをおっしゃっている。

 こういうことを外務大臣がおっしゃっているにもかかわらず、では一方でどうかというと、外交交渉の中身を元総理が外にお出しになる。あるいは、先日は、これはテレビの番組でございますが、元外務大臣、柿澤外務大臣でございますが、二十億円の上納があったということを、まさに今こういう議論をしている最中におっしゃっているわけです。

 私は、予算が国会できっちり議決をされるべきだということがないがしろにされている。それぞれの大臣が、自分たちが礼を失っている、分を失っているんじゃないか。本来だったら、機密費と今村上大臣おっしゃいますが、そのように言うんだったら、何に使われているか、その中身は言うべきじゃないんじゃないですか。しかし、審議の最中でもぽろぽろ出てくるというのは、どういうふうに理解すればいいんでしょうか。大臣の御所見を伺いたいというふうに思います。

村上副大臣 今回、外務省の改革要綱も出たんですけれども、やはり外務省において、報償費のあり方、見直しを含め、予算執行のさらなる効率化、厳正化を図られることを我々は期待していくというんですか、そういう方向でやはり検討していくしかないんじゃないかなというふうに考えています。

原口委員 財務大臣、私が申し上げたいことは、一方で外務大臣が、外務大臣はいわゆる事務方とおっしゃいますけれども、外務省の職員の皆さんについてのこういうことについては法的な措置をとる。しかし、外務大臣経験者や大臣も含めた各大臣経験者はどんどん言う。これはどういうふうに整理すればいいんでしょうか。

 私は、小泉内閣は非常にわかりやすいメッセージを出していると思います。しかし、この点についてはとてもわかりにくい。はっきりとした答弁をいただきたい。そして、その中で、やはり上に立つ者の礼が少し乱れているんですよ。上に立つ為政者の礼が乱れるときに多くの国民が混乱に陥るんじゃないか、このことを御指摘したいと思うんですが、大臣の御所見をいただきたいと思います。

塩川国務大臣 まさに論語のおっしゃるように、上が礼を通さないで人に強要するということはできないことだと思っております。また、官吏の服務規程の中にもそのことは明確に書いてございまして、官吏はおのれの職務に関すること、または他の官吏が関知したことに関する官の機密を漏えいすることを禁ず、その職をのく後においてもまた同様とするという規定が厳格にされております。それは当然守っていくべきで、その点は、確かに多少綱紀に弛緩があったようなこともあろうかと思ったりもいたしますけれども、今、そのことにつきましては懸命の努力をして、その服務規程のとおり努力していくべきだと思っております。

原口委員 質疑時間が参りましたので、これで質疑を終了しますが、先ほどの大和管財の検査については、幾つか不明な点がございました。また次なる機会にさらに深く質問させていただきたいということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

山口委員長 五十嵐文彦君。

五十嵐委員 民主党の五十嵐でございます。

 まず最初に、今の原口委員の質問の続きをさせていただきたいのですが、たびたび似たようなお話をさせていただいて大変恐縮なんですが、柳澤大臣に、国債、地方債のリスクウエートはゼロだということを確認されましたけれども、私は、今や国債、地方債がここまで積み上がってくると、やはりリスクはあるんだという実態との差をもう一度追求してみたいと思うんです。

 ちょうど九九年の二月時点で、日本の国内銀行の国債の保有残高は三十・一兆円でした。これがことしの二月期には六十九兆八千億円ということで、倍以上に当然ながら膨れ上がっているわけであります。この九九年二月の時点というのは、ゼロ金利の導入がありまして、利回りが一%弱から二・四%に上昇をいたしました。そして当然、その後の金利が高くなるのですからその前に発行されていた国債価格は下がるということで、一割下がったわけであります。そのときは、ですから三十兆円の一割ということになるんでしょうけれども、同じような現象がもし現時点で起きたとすると、約七十兆円に膨れ上がっているんですから、それだけで一割の損ということになると、資産の目減りということになりますと、七兆円になるわけですね。これはとても無視できるような額ではないと思います。

 ある程度のリスクヘッジをしているというお答えがあるかと思いますが、当然リスクウエートはゼロだと計算しているんですから、そんなに大々的なリスクヘッジの方法もないだろうし、してもいないだろうと私は思うんですが、国債の金利上昇リスク、それによる国内銀行、金融機関の資産に与える影響というものについて、もう一度お答えをいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 五十嵐委員から国債、地方債のリスクについてのお尋ねがあったわけですが、リスクに二通りあることはもう釈迦に説法でございます。

 信用リスクと市場リスクあるいは金利リスクでございまして、私が先ほど先に御質問になられた原口委員にお答えしたのは、要するに信用リスクウエートがゼロであるということでございました。これについては、いつぞやお答えさせていただいたように、BISのバーゼル委員会の方でも、ゼロから五だったでしょうか、そういうリスクウエートを考えるべきだという話があって、最初は一だったんだけれども、その後我が方の言い分が通ってゼロになった、こういういきさつであったということでございます。

 ただいま先生がお尋ねの向きは、いわゆる市場リスクということでございまして、この点については、ちょっとバーゼル委員会の方の扱いに言及させていただきますが、それによりましても、モニタリングをよくするようにということで、ウエートまで何か考えなければいけないということにはなっておりません。

五十嵐委員 私の方は、実態的にリスクがあるじゃないか、これに対する何らかの方策を考えておくべきではないかという観点からの質問であります。

 これは実は、今私の方は主に金利上昇リスクのことを言いましたけれども、信用リスクの方も、原口さんの議論であったように、国債についてというよりも地方債については、当然これからは出てくるんだろう。大手の銀行はそれほどかかわらないかもしれないけれども、地方の銀行はやはりかなり貸し込んでいて、それも、地方債だけではなくて、信用保証というような形で一般的な貸し付けも、例えば三セクなどにはかなりしている。三セクは、まさに原口さんの指摘のとおりに、大量倒産時代に入ったということでありますから、このことは十分に注意をし、金融の中に、今まではウエートが小さかったかもしれないけれども、かなりのウエートで頭の中に置いておく必要があるのではないか、要注意ではないかということなんです。

 金利上昇リスクとともに、信用リスクの方についても、財政サイドそれから地方自治体を監督する総務省サイドではなくて、金融庁サイドからも注意が必要ではないかなと思いますが、もう一度大臣のお話を伺います。

柳澤国務大臣 これは、きのうでございましたか、同様の御質問がございまして、私は、まだ日本の公的な社会において、この地方団体、この市、この町が破産でございます、したがって債権者の債権についてはかくかくしかじかの比率で損をこうむっていただきます、こういう破産のための法制自体もまだ、まだというか、早く備わるべきだというわけではありませんけれども、備わっておりません。

 同時に、あえてちょっと講釈みたいなことで恐縮ですが述べさせていただきますと、ある地方団体に、交付税も行っている、それから補助金も、これからどうなるかわかりませんが行っているというときには、格付機関も格付不能ということになるんだそうでございまして、そういう意味では、今先生がおっしゃるような信用リスクの問題を考えるというのは、そういう段階だとまでは到底言えないというのが私の考え方でございます。

 それから、もう一方、市場リスク、金利上昇リスクにつきましては、これだけ国債あるいは地方債について保有高を持ちますと、それについて十分な注意が必要ではないかということについては、全く私も同じ考え方でございます。

 ただ、現状どうかといいますと、それぞれの金融機関はしかるべくこのヘッジ等を行っておりまして、そういうことについて遺憾のないように期しておるということでございます。

 それからなお、バーゼルの方でどういうふうに考えているかということは、先ほど申し述べたとおりでございます。

五十嵐委員 ただ、例えば三セクについてはなかなか情報がないのですけれども、きょう、原口委員と一緒に勉強したところでもあるのですが、九七年までは数年に一社つぶれる程度だったのですね。それが九八年以降、物すごい勢いの倒産ラッシュで、最近は新聞や週刊誌等にもたくさん取り上げられるようになりました。

 専門家に言わせると、これから先まだ三百は実質的に倒産するだろう、こう言われているのですね。その規模がますます大きくなっているということであります。シーガイアの例は顕著でありますけれども、とても無視できないような数字の倒産の額になるということで、私は今のままで果たしていいのか、場合によっては先に公会計の整備というのが必要だと思うのですが、連結決算をしなければいけないと私は思います。

 国もそうですし、地方自治体も、公会計を整備して時価会計を導入する。そして発生主義をとって減価償却もきちんと見る。そして、その上で、連結をして関連のところと一緒にバランスシートを見るということが必要になってくるのじゃないかなと思うのです。国のバランスシートは一足先に発表されましたけれども、発生主義をとっていませんから、これはまだまだ不十分ということでありますし、先進国は、御承知のとおりみんな発生主義で、しかもほとんど一流国は連結のバランスシートを採用していると思うのですが、公会計についてそうした改革、改善をする必要がある時期に来たのではないかと私は思うのです。話はちょっとずれますけれども、いかがでしょうか。

塩川国務大臣 ちょっと質問の中身がどうもなかなか難しいことで、これは財政制度審議会の公会計改革の議論の中に出てくる問題だと思いまして、よく勉強しまして、いつかまた改めてお答え申し上げます。

五十嵐委員 少し話がずれていったのですけれども、しかし、そういう時期が来ているのではないかという認識をそろそろ我々も持つべきではないかなということを指摘させていただきます。

 それから、当初通告をしていた問題から少し離れていますけれども、ちょっとお時間をいただきたいのですが、先日、五月二十八日の衆議院の予算委員会で議論をさせていただきました。そのときの残りがあるものですから、ちょっとその話に戻させていただきたいのです。

 あのときの話は、構造改革というのは、経済の世界でいうと、不稼働の資本や資産を稼働させること、あるいは不稼働ないしは非効率の資本、資産を効率的に動かすようにすることが構造改革ではないかという指摘を私はさせていただきました。

 そして、銀行の不良債権処理が必要なのは、事業会社側の過剰債務という問題があって、これを減少させることによって不稼働資産を圧縮する、それによって稼働させる障害となっているものを取り除くという意味がありますねというお話になってくるのですが、それはあくまでも端緒というか最初の障害の除去にすぎないのであって、基本的にはもっと、実物の資産というのが反対側にあるわけですから、その資産収益率というか、それを稼働させる、上昇させるということが必要ではないかというお話になってくるわけであります。

 これに対して、政府がおやりになっている量的緩和策、あるいは緊急経済対策の中に含まれている銀行保有株式の取得機構を設置する、あるいは金庫株を解禁するというのは、一方では金融の自由化というのに資するという面があって、一概に私も否定をしていません。確かに役に立つ部分もあるんだろうと思うのです。

 しかし、これは、実際には実物資産の過剰供給という、現時点の構造を変えるというのではなくて、むしろ固定化し、あるいは先送りするというものに役立ってしまうのではないか。本当にこのこと自体が構造改革に役立つことなのか疑問ですという話をさせていただきたいのです。

 また、それと同時に、複数の質問をして恐縮でありますけれども、いわゆる含み資産に頼る経営がまだ変わっていない。もっと積極的に投資能力を銀行の側からいえば高める、あるいは一般事業会社の方もどんどん新しい分野に投資をしていくということがなければならないのであって、今の量的緩和策あるいは緊急経済対策というのは、果たしてそういった意味で構造改革に役立つのでしょうか。もっとほかの方策をお考えになる必要があるのではないかということをお伺いしたいと思います。

柳澤国務大臣 緊急経済対策全般についての評価は、私は立場上差し控えさせていただきたい、こう思いますけれども、ただいま先生が御指摘になられたような金融の側面について、私どもがどう考えているかということを述べさせていただくわけでございます。

 まず、お触れになられたものの中で、銀行の株式保有について何かチェックを設けるということをどう評価するのかと申しますと、私どもとしては、これも一つの日本の金融機関のあり方の構造改革という面があるというふうに考えております。

 一つには、金融機関としても、今までのように、株式の持ち合いの中で、非常に利回り、いわゆる株価収益率の悪いものをじっと抱いている、まことに資産の収益率としては利のないことをやっているというような体質は直してもらわなければいけないということでございます。

 それから、反対側といたしましても、今のことと同じなのでございますけれども、一般の企業のコーポレートガバナンスというものも、法人株主ということになり、またそれが相手方にも自分の会社の株を持ってもらっているというようなところでは、明確な意思表示というのはもう期待すべくもないと私は思いまして、本当にその会社の業務執行というものに株主として物申すということのためには、やはりみだりに銀行がたくさんの株を持っているということは決してよくない、それを改めることは構造改革の一面を持っておる、こういうように考えておるわけでございます。

 それから、含み資産に頼る経営はよくないというのは全く先生の御指摘と私は同感でございまして、そういうことではなくて、本当にカレントな業務からカレントな利益を上げていく、そのことによって自己資本も積み上がっていくというような体質にならなければ金融機関としての役割を果たす道ではない、私はこう思っていまして、その意味で、私どもは、あそこに書かれたようなことを推進する価値があるのではないか、こういうふうに考えているわけでございます。

五十嵐委員 柳澤大臣は大変賢明ですから、私は持ち合い解消を批判したのではなくて、もちろん持ち合い解消はやりなさいということを前回も予算委員会の場でも申し上げたのであって、持ち合い解消に伴ういわばショックアブソーバーと大臣おっしゃいましたけれども、その銀行保有株式買い取りというのは、こっちは逆に構造改革にはならないのではないかというお話をしたのであります。

 それから、これに関連するのですが、財政の方に関連して移るのですが、塩川大臣はいろいろなところで構造改革大切だ、大事だとおっしゃっていますが、いわゆる保守派の方々に突っ込まれると、いや量的拡大策ももちろん必要だということを何度か答弁されているわけです。私も耳にしました。

 しかし、量的拡大策というのは、私は実は問題が非常に大きいと思っているのです。量的拡大策そのものが乗数効果があればいいのだけれども、それがないから、例えば金融についても信用乗数が上がらないから役に立たないというお話はこの間もさせていただきましたが、それだけではなくて、そういう拡大策をとるということは、国債発行を続ける、また増加させざるを得ない、あるいは景気が上昇しないうちは国の財政に寄りかかるんだということを意味するわけであります。

 しかし、国債の発行が増加するということは、一方、今の論理でいきますと、実物資産が増加をするということにほかならないのでありまして、これは過剰資産がある状態の中で過剰資産をふやすということになるわけですから、そうすると、ぐるぐる回りになってしまって、実際には両立をさせるというよりも両立しないのではないか。

 すなわち、不良債権問題の処理が終わらないで国債だけがふえていく、そうすると、国債がふえると実際には不良資産が増加してしまう、そういうぐるぐる回りになってくるのではないかという気がするわけですけれども、これについてどうお考えになりますでしょうか。

塩川国務大臣 確かに、最近の都市銀行といいましょうか、大手十六行の傾向を見ていますと、貸出先を適当に、開発しないで安易に国債の購入によって資金の消化を賄っておるような、そんな感じがするのでありますが、これには私は、ずっと見ますと、規制の緩和がやはり大事なのではないか。

 新規産業に、あるいはまた公共事業、建設業一つとりましても、新規の事態に投資したいと思っても、いろいろな面で規制がかかってきておってなかなか自由にならない。そういう面があって、民間の設備投資それから開発投資というのはおくれておると思いまして、そちらの方から解決することによって、相当また民間資金が活発に動き出すのではないか、こう思うております。

五十嵐委員 今二つのお話があったと思うのですが、まさしくそのとおりでありまして、持ち合い解消ということもあって、あるいは投資を一方ではしないわけですから、国債を買う以外にない、お金を動かすには。ところが、国債は利回りが一%というような非常に低い利回りですから、もうからないということになって、量でカバーしようとするからますます国債を買うということになって、これでは実はせっかくの日本の金融資産が働かない。いわゆる不稼働になってしまう、低効率になってしまうということになるんだ。そこで、規制緩和が必要だということになるわけですね。

 要するに、国債増発というのは、今、金融の面から見ると、実は構造改革に逆行するのだということを一方では申し上げているわけです。要するに、財政政策で国債をたくさん出すということは、いわゆる構造改革とは逆行する方向に働きますねということを一つは申し上げたいということです。

 まさにその解決策としては、大臣がおっしゃられたとおり、規制緩和なんですね。徹底的な規制緩和をして、規制緩和というのは口でただお題目を言うだけではなくて実際に痛みを伴うというのは、中央官庁なり、地方の役所もそうですけれども、官庁の権限を縮小することなんですね、実際に。それができていない。ただ項目を数えて、幾つの項目の規制を緩和しましたというだけでは、かわりに新しい規制もできていく。それは必要な規制もあるでしょうけれども、それではだめなので、痛みを伴うような実質的な規制緩和を徹底的に行って、新しい産業分野をそこにもたらすということが必要ではないかと思うのです。

 橋本元総理の総理の現役時代にも、規制緩和の三カ年計画前倒しとかそういうようなお話がありましたけれども、実質的にはまだまだ進んでいない。そうすると、あの見直しというのはやはり痛みを伴わない見直しだったのだなと思わざるを得ないわけでありますが、これが本当に痛みを伴う規制緩和になるのかどうかというのが問題なんだろうと思います。

 規制緩和以外にも私はいろいろな方法があるとは思いますが、まず規制緩和をやる、そして役所を小さくする、規模を小さくするということが大切だと思うんですが、これは大蔵大臣としては抵抗も大変強いと思うんですが、もう一度御覚悟のほどを伺いたいと思います。

塩川国務大臣 今、その問題がまさに行政改革推進本部で検討されておりまして、五十嵐さんのおっしゃるように、小さい政府にせいという考え方、それは現在のぜい肉をとって小さい政府にせいというのか、あるいは国の責任というものと国民との間の、要するに負担とサービスの関係そのものをもっとスリムにして小さい政府にするのかという本質的な問題と、いろいろあると思いますけれども、とりあえず、小さい政府の中の一面をとって、私の方から議論として申しますならば、現在のぜい肉をとったらどうだろうという方面における小さい政府ということの解釈からちょっと私の考えを申しますと、その点においては、確かにぜい肉はある程度とる必要はございますけれども、私はある程度役人の使い方を間違っておるように思うのであります。

 それは何かといいまして、今、国の行政あるいは地方の行政を見ましたかて、仕事というものは全部プランを立てて、それを実行して、それを観察し評価をする、また監視するという仕事がありますね。プラン・ドゥー・シーといいますね。役所の仕事は、ドゥーの方ばかりにかかってしまっていて、プランをごくわずかの人がやっている、そしてシーの方が全然手が抜けておる、私はそんな感じがするのです。今必要なのは、行政をやってきた成果をきちっと確かめることだ。そうしますと、すべての行政経費についてのいわば効果がはっきり出てくると思うんです。

 例えば、この前も横須賀でございまして新聞にも報道されておりましたが、入札を、いろいろなことを横須賀市がやりました。その結果、入札のやり方を変えたら、十二年度で三十五億円ですか、節約できたというようなことが新聞で出ておりましたですね。あれなんかも、行政を少し小まめに、丁寧に見直していったらああいうことが出てくるだろう、また単価のとり方も、計画する前にそういう評価をもっと反映さす方法をとったらどうだろう、こう思うんです。

 ですから、確かに、おっしゃるように、ぜい肉をとれということも大事です。大事ですけれども、第一に、役人の使い方が、みんな仕事をするのはおもしろいですからドゥーの方ばかりにかかってしまう、シーの方に余り力を入れない、そこが間違っておる、私はそう思いまして、そういうことの行政改革に意見を申してみたいと思っております。

五十嵐委員 ぜひ頑張っていただきたいのですが、今までの発想だとだめなんですね。

 要するに、おっしゃるとおり、自己増殖する、官僚は。仕事をしたいのですよ。それは、省令の仕事よりは政令の仕事、政令の仕事よりは法律に基づく仕事をしたいわけですし、仕事を確保して組織を拡大すればえらい出世ができるという仕組みになっているわけですから、そうじゃなくて、うまく自分の仕事を効率化した方に御褒美が行くような仕組みに仕組みそのものを変えていかないと、要するに税金をむだ遣いしなかった人は偉くなれるという仕組みに変えていかないと、もともと今までの発想で積み上がっていったのでは幾ら節約してもたかが知れている。節約させる発想を、むしろ動機を、モチーフを与えるということの方が大切だと思います。

 その小さい政府という話でいいますと、先ほど出てきましたけれども、第三セクターも公益法人も特殊法人もそうなんですが、官がかかわる仕事というのは、これは実はうまくいって黒字が出れば民営化すればいいじゃないかという話になりますし、赤字になれば税金を投入するんだから、これは困ったものになる、どっちにしても、もともと本質的に余りふやしちゃいけないものだということなんだろうと思いますね。

 では、そこになぜそれが出てくるかというと、やはり天下りの問題であります。

 天下りをする人は、実際には長い間役所で仕事をしてきて退職金もあるわけですから、蓄えもあるわけですし、食べていける人であります。天下り役人を一人雇わなければ、その分で若者は複数雇えるわけであります。そうすると、人的資源という意味で、人も資産だということになれば、それを稼働させるには、天下りはできるだけやめる、そしてむしろ若い人を雇ってもらうようにするということの方が、これはよっぽど構造改革というか人的資源の活用になるわけで、多くの天下り機関は必要ないし、多くの天下り役人は仕事をしていないわけです。

 実際には、有能だから迎えられたのだというけれども、私ども調べました。調べたら、特殊法人の常勤役員の皆さんあるいは非常勤の皆さんはくるくる仕事場をかえるのですよ。いわゆる渡り鳥というやつです。なぜ、かえるのか。一カ所にたくさんいると、途方もない退職金になるのですよ。そうすると批判を受けるから、二、三年ごとにかわっておけば、一回ごとの退職金の量は目立たない、マスコミの批判を受けない程度におさめられるということでくるくるかわるわけですね。でも、合わせれば相当なものになるわけでありまして、この天下りを禁止する。有能な人は全く関係のない民間でも幾らでも長い間勤められるはずですから、むしろその人的資源の活用という意味では、天下りはやめた方がいいということになると思うんです。

 我が党は天下り禁止法を用意いたします。これについては、財務大臣、質問通告がなくて失礼でありますけれども、よろしくお願いします。

塩川国務大臣 五十嵐さんの話に二つほどございましたね。

 一つは、特殊法人だとか公益法人とかいうのは多過ぎて、これは非常にむだが多いじゃないかというお話、そしてもう一つは、天下りの問題とあったと思うんですが、これは相関連しておると思います。

 しかし、まず特殊法人等は、全くむだじゃないか、もうやめちまえという意見も確かにございまして、しかしながら、これは時代の進展に伴うということを考えなければいかぬ。昭和三十年、いよいよ復興だということから日本の経済は動き出しまして、そして四十年、高度経済成長をしましたですね。その間に、いろいろな民間セクターではできないような仕事、つまり経済基盤の造成であるとか環境の整備だとかあるいは新技術の導入だとか、そういうものはやはり官主導でやらざるを得なかった時代がございます。そのときに、政府だけではできないので特殊法人をつくってやった。しかし、その使命は時代とともに要らなく、要らないとは言いませんけれども、民間に移していってもいいと思うものはたくさんある。だから、この改革はしなければなりませんね。それはやっていこうと思うんです。それはそれでやる。

 しかし一方、天下りの問題を見まして、やはり人材を活用すると先ほどおっしゃいますので、人材を活用する問題として考えた場合に、天下りの問題より前に、公務員でも、また企業でもそうですけれども、定年が大体早過ぎますよ。これは、とにかく働き盛りのときに、おまえ、もうやめろと肩をたたくのだから、これは私は人道的に言ってもひどい話だなと思うことがよくあるのです。

 ですから、私の信念として、企業も役人もできるだけ長く働いてもらうように、何も新しいのがいいのではありません。若いのが優秀なのでもありません。それだけの体験を積んできた、経験をしてきた、そういう人こそ、今おっしゃる人材じゃないですか。そうでしょう。

 ですから、この人材を使うように、私は定年制というものをもっと真剣に考えて、その上で社会全体の構造、それでは若い者の就職をどうするんだとか、いろいろございますしいたしますから、それは総合的に雇用問題として考えて、その中で解決をしていかないと、単に天下りだけをやめろということ、それは私は決していいとは思いませんよ。天下りはできるだけ排除すべきだと思うけれども、現在の社会的な実態、そしてまた人間の生理的な状況等を考えますと、やはりどこかで優秀な人材を活用することも考えていかないかぬと。そこらをこれは総合的に考えたら、まさに、世の中の動き方、世の中のあり方を変える問題になっていくんじゃないかなと思いますね。

五十嵐委員 私どもも、天下りだけを禁止してそれで終わりにしろと言っているわけではないんです。私どもも、大分前から、公務員制度そのものを変えなきゃいけないと言っております。

 ですから、同期で一人事務次官に残るまで絞って、リザーブ入れて二人残しておいて、あとは早々やめていただくという仕組みを変えなきゃいけない。これは、例えば、戦後私どもの国が勢いを増したのは若いトップが出たからだとある意味では思うんですね。パージされてみんないなくなりましたから。だから、事務次官の年齢が違うわけですよ。ですから、若い、企画能力が盛んなときに、やはり先輩を飛び越えて抜てきもされるというような世界にならなきゃいけない。

 それから、私は、ある程度資産をつくり終わったら、年収は下がってもいいと思うんです。完全な年功序列がいけないんですよ。下がってもいいから、働きたい人はずっと働き続けられるという仕組みにすればいいだけの話で、これは公務員制度、私は、大変な改革ではあるけれども、変えられないわけじゃないと思うんですね。それは政府の側で考えられるべきだし、私どももそういうふうに考えているわけです。

 例えば、旧大蔵省でいえば、今は財務省になっていますけれども、主税局でいえば、三課長、二課長、一課長やって総務課長やって審議官になるという、一段階ずつ階段を踏んでいくということでは、そういう序列主義ではやはり活力が生まれないというふうに私は思いますし、徹底的に公務員改革を、むしろ大臣の方でお考えをいただきたいと思うわけであります。

 話はちょっとまた別になりますが、今かなり過去を振り返ってのお話が塩川大臣からもありました。日本の今に至る状況を見て、何が変わっちゃったのか。かつてジャパン・アズ・ナンバーワンと言われた国から何が変わったのかということを思うわけです。これは、いろいろな状況がありますが、大づかみに時代をつかむというのも細かい議論と同時に必要でありまして、私はやはり、モラルというものが日本において失われてきたということの大きさをもっと私どもはかみしめるべきだと思うわけです。これは、市場について、企業について、経営者について、政治について言えることなんだろうと思う。責任感が失われてしまった。

 特に金融に関して言えば、護送船団方式、これは金融に限らないんですが、それぞれの役所でやはり護送船団方式が行われて、業界指導というのが行われて、その護送船団方式に安住して、その安定に、居心地のよさに安住して、競争原理の発揮がおろそかになった、それから市場及び企業のモラルも弱くなっていってしまったということがあると思うんです。

 金融に関して言いますと、大企業が銀行よさようならという時代になって、CPを発行して自分で自己調達をするようになった、あるいは直接株式市場で増資をしたりして資本を調達するということで、銀行には頼らなくなった。そうすると、銀行は必然的に貸出先を中小企業にシフトしていかざるを得なくなった、大企業も。そうすると、小さい企業では情報収集や審査のコストが上昇するということで、このコスト増をどうやって吸収するかというと、担保をとればいいやということで、土地情報だけを気にして、土地担保に偏った審査というものが行われて、リスクをきちんと見るということがおろそかになって、銀行そのものの審査能力を衰えさせてしまった、これがバブルが形成される過程において起きた大きなことなんだろうと思うんですね。

 こういうことを、銀行の能力というのは何かというと、情報を収集し、分析し、評価して、きちんとそれに利率を対応させる、本来のリスクをきちんととるということが銀行の本来の仕事だと思うわけですが、それが弱くなってしまった、失ってしまったということに大きな問題がある。

 そしてまた、一度にたくさんのことを言って恐縮ですけれども、モラルということでいいますと、私の友人もあのバブルの最中、銀行の支店長をやって、私の仕事は事実上もう不動産業だ、こう言っていました。他業禁止というのがあったにもかかわらず、事実上もう不動産業者になっていたということを、銀行の中にいるエリートの行員、支店長が私に言ったことがあります。これがやはり問題で、そのときにやはり銀行のモラルというものが大幅に低下をしてしまったと思うんです。そしてまた、ですから、この不動産業と銀行との関係は、かなり厳しく見ていかなければいけないというふうに私は思っています。

 そこで、お待たせをいたしました、国土交通省、おいでいただいているかと思うんですが、不動産業、建設業、バブル前とバブル期と現在とで、会社の数、どんな推移になっているか、ちょっと教えてください。

風岡政府参考人 建設業と不動産業の推移につきまして御説明をさせていただきたいと思います。

 まず、建設業でございますけれども、バブル期以前ということで、例えば昭和六十年三月末ということで御説明をいたしますと、その時点では、業者数が五十一万八千九百六十四社でございました。その後減少に転じまして、バブルの全盛期ということで、平成二年三月末の数字を申し上げますと、この時点では五十万八千八百七十四社でございました。その後、企業数は増加を続けまして、平成十二年三月末、これがピークでございまして、六十万九百八十社となりました。昨年からことしにかけては減少しておりまして、最新の数字では、ことしの三月末でございますが、五十八万五千九百五十九社となっております。

 一方、不動産業、宅地建物取引業者数ということで御説明をいたしますと、やはりバブル以前の昭和六十年三月末でございますが、これは十万六千八百四十二社でありました。その後増加をしまして、バブル全盛期の平成二年三月末で申し上げますと、十三万四千三百八十一社でございます。その後はほぼ横ばい状態が続いておりまして、最新の数字は平成十二年三月末でございますが、十三万九千二百八十八社、このように推移をしてきております。

五十嵐委員 不動産に関して言うと、このバブル期に三万社ふえているという中に、やはりかなり銀行関連のものがあるんだろうと思いますね。それから、建設業の方でいいますと、むしろバブルが崩壊した後ふえている。十万社もふえているということは、やはり公共事業をじゃぶじゃぶと、不景気だということで投入していった、それに群がって十万社もふえてしまったということなんだろうと思いますね。

 そうすると、建設業界、不動産業界というのは、いわゆる不良債権の、流通と並んで御三家の一つでありまして、過当競争の社会であります。いわばオールドエコノミーであるわけですけれども、このオールドエコノミーを維持するために財政が出動されたということがあり、また、不動産業と金融との関係でいうと、ここは減っていないということは、いまだに金融も何らかの形でかんでいるから減らないんだというふうに私は思うわけです。お金がつかなければやっていけないわけですから。もちろん町の仲介だけをやっている人たちもいるでしょうけれども、そういうことが言えると思うんです。

 それでは、国税当局から見ると、これらの業種の方々の会社は、決算上はどうなっているかわかりますか。赤字か黒字か、黒字会社の数。

塚原政府参考人 お答えいたします。

 国税庁が実施しております平成十一年分の会社標本調査によって推計いたしますと、不動産業の場合、赤字企業の数十六万七千社で、赤字申告割合六七・九%でございます。建設業の場合は、赤字企業の数が約三十万五千社、赤字申告の割合が六六・九%でございます。

五十嵐委員 ありがとうございます。

 聞く前に私が述べたとおり、やはりかなり過当競争で、もともとここは淘汰されなければいけない部分、いい企業と悪い企業を分けなきゃいけない分野だと思うのですね。それが、悪い企業が生き延び続けているからこういう数字になるんだというふうに思うわけであります。

 構造改革という面からいきますと、やはりそれらを丸ごと助けていくというのではなくて、いわば悪い企業はいい企業に吸収させていく、あるいは必然的に淘汰をされて去っていくところがあるということがあってむしろ自然であり、当然なんだろうと私は思うのですが、それが行われていないということが問題であります。

 また、かつて不動産融資や建設業とのかかわりの中でいろいろ問題があったということを、金融の側からいうとやはり厳しく反省をしなければならないと私は思うわけです。規制緩和をするということは、私はいいことだと思っているのですよ。ですから、規制緩和はいいわけですけれども、過去の反省をなしに規制緩和をしてしまえば、規制があったときですらこうなったわけですから、同じことが起こりはしないか。土地が上がらなくなったからそんなことは起きないんだとおっしゃるかもしれないけれども、そうではなくて、やはり金余り現象というのはいつ起きるかわからないわけであります。どこでどう反転するかわからないということもあるわけでありますから、それは、厳しく過去の反省に立てば、銀行のモラルを上昇させる、あるいはそれを保障するシステムというのをつくっていかなければならないのではないかというふうに思うわけです。

 この金融業と不動産業との過去のかかわりについて、どういう認識がおありになるか、あるいはこれからの規制緩和という中でどう考えるべきかということをお伺いしたいと思います。

柳澤国務大臣 金融は、今先生のおっしゃり方ですと、本来リスクをとるべきであった、こういうことで、それは、情報産業としてそれだけの備えをして、しっかりした審査をして、リスクをとって、必要なところに資金を融通していくというのが本来の任務じゃないか、こういうお話でございました。

 それは、ある意味でそのとおりだと思うのですけれども、やはりリスクというのは、銀行、金融機関といえども限界があるわけで、情報不足のところ、あるいは自分の勉強不足のところを、担保という格好のものがあったものですから、それをとってリスクの軽減を図っていったという流れだったと思うのです。そして、その流れの果てに、不動産、建設、建設といっても本当の建設の請負事業をしてくれるところではなくて、実は開発か何かで不動産の絡みのところへの融資だったと思うのですけれども、そういうことの結果、非常に大きなバブルを起こしてそれが破裂して、今日の不良債権問題の主たる要因になってしまったということでございます。

 おっしゃること、一々私どもももっともだと思いまして、これは反省しなければいけないというふうに思うわけでございますが、これをどのようにしていくかということの中に、非常に大枠では、間接金融だけでは無理なんで、リスクを適切に分散する意味での直接金融、そういうチャネルもつくらなきゃいけない。それからまた、間接金融としても、今先生がおっしゃったように、審査ということを通じてリスクの軽減を図っていくということでなければならないし、また、債権の売買であるとか不動産によってバックアップされるアセット・バック・セキュリティーというか、そういうようなものでもって自分が一たんとったリスクを他にまた流動化していく、そういうようないろいろな手法を工夫して、資金の融通、仲介という機能を果たしつつも、リスクを自分の身に余るほど持つことをできるだけの方策でもって避けていく、こういうようなことに心がけていかなければならない、このように考えている次第でございます。

五十嵐委員 国民が銀行に対してかなり怨嗟の声が、ひところよりは大分鎮静化しましたけれども、今も上がっているということは事実であります。これはやはりそうした時代を通じてかなりひどいことをしてきたという例がいっぱいあります。

 私も新聞記者を通じ、十五年間新聞記者をやっていました。あるいは、その後政治の世界に足を踏み入れましたけれども、たくさんの相談事を受けてきました。

 某地方銀行では、あのバブルの時代に、たまたま支店に居合わせたお客さんに支店長が頼み込んで別のお客さんの保証人になってもらって、そこはつぶれてしまった。迷惑をかけないからということだったけれども取り立ててきたというようなことがありまして、これは僕はその当時の金融当局に電話をして調べてもらいましたけれども、支店長はどこかへ、子会社に行ったのでしょうけれども、退職しましたということで、逃げてしまった。

 別の関東地方の、これも地方銀行ですけれども、支店長の判を押した融資証明を出している。これも途中でひっくり返されて融資が出なくなって、その融資証明を出された方はその違約金を支払わされて、会社が危なくなって倒産をしてしまった。取り戻したいと思ったけれども、あれは勝手に下の者が支店長印を盗み出して押したもので、会社は責任がないと。個人の責任で、そいつはもう退職してどこへ行ったかわからないといった例がいっぱいあるわけですよ。ですから、そういった泣かされている方々はこういう極端な例でなくてもたくさんあって、銀行のモラルというのが、はっきり言って多くの人々から問われている。

 ですから、私どもは、民主党としては地域金融円滑化法案というのを、間もなく参議院に出しますが用意をしておりまして、これは、地域金融の円滑化というけれども実態は情報公開が中心なんですが、情報公開を強く迫って金融のモラルを高めてもらうための法案なんですね。そういう措置をすることによって金融の自由化がおかしな方向にいかないように担保できるというふうに考えているのです。

 私どもは、例えば金融の自由化、それから金融業界への参入についても、そのこと自体は反対ではありません。しかし、それによって伴う過去の反省からくれば、もっと金融業界の節度を高める、モラルを高める、モラルハザードを起こさないような制度をある程度整えておく必要があるんじゃないかということを言っているわけです。

 また、金庫株についても、これはインサイダー天国と言われているんだから、インサイダー取引を絶対に行わせないようなそういう仕組みをとる必要がある。この間も議論を柳澤大臣とさせていただきましたけれども、今の委員会制度を強化することでそれをやっていけるというお話でしたけれども、私どもは実は、八百人規模ぐらいで担当官をふやして、証券取引について厳しく見張ることができるように、インサイダー取引を徹底的にシャットアウトすることによって日本の市場の公正性を世界に証明できるようにする必要がある、私はこう思っているわけであります。

 私は、アメリカの国務省の高官と友人でありますけれども、何回会っても言われるんですよ。日本は一見資本主義に見えるけれども、我々の言う資本主義と違う。一見民主主義国だと思われるけれども、我々の言う民主主義とは違いますね。それはなぜかというと、インサイダー取引が横行している、粉飾決算が一流企業といえども横行している、談合がある。そして、その裏には官が絡んでいる。国ぐるみで社会主義的な政策をとって、社会主義的な行動を実際にとっているじゃないかというのが、私の友人でアメリカの国務省の高官、役職でかなりのところまでいっていますけれども、そういう人が会うたびに言われます。

 そういうことをシャットアウトすることによって、実は日本の市場の信頼性を取り戻し、個人株主も出てくるんじゃないか、投資家も出てくるんじゃないかなと思うんです。こういう措置をとらないで、モラルを高めるような措置をとらないで自由化に安易に走った場合には、日本の市場の信認性が落ちて、むしろ株価が落ちるんじゃないかと思っているわけですけれども、いかがなものでございましょうか。

柳澤国務大臣 経済とモラルということを今お聞かせいただいて、私、ふっと自分の地元のことを思い出したわけでございます。私のところに報徳社というのがございまして、その報徳社の門は、門の片っ方に経済門というのがあって、もう一つ片っ方に道徳門というのが書かれております。要するに、経済を無視した道徳はある種まやかしである、しかし、道徳を忘れた経済はこれは本当にとんでもない魔物のようなものであるということで、経済と道徳というのが両輪というか、両方が緊張関係のもとで運営されなければ本当の意味で人間の社会に裨益するところはないんだということを喝破している、そういう非常に古い建物が実はございます。私を訪ねてくれた古い東京からの友人も、そこへ案内すると、ちょっとどきっとして、すごいと言ってくれるわけです。

 私は、本当に先生にそういう意味で完全にその点では同意をさせていただくわけですけれども、CRAの地域再投資法については、私どもそういう御提言が近いうちにあるということはたびたび知らされているわけでございますけれども、開示ということになるときに、果たしてそういうことを義務化していくのがいいのか、それこそ規制を緩和して、むしろそれは競争に生かしてもらう。つまり、自分たちはこういうことをやっていますよ、こういうところに力点を置いた投融資をしているんですよというようなことを、いわばPRというかあるいはIRというか、そういうふうなもので、パブリックリレーションズあるいはインベスターズリレーションズ、場合によってはデポジターズリレーションズというようなことで訴えていく。それは、むしろ競争に任せるというような方がいいのかということをちょっと考えたりして、またいずれいろいろ考えさせてはいただくんでしょうけれども、さしずめそんなことを考えているわけでございます。

 それから、今の証券市場というものに対して非常に手厳しい御見解の開陳があったわけでございますが、私どももそれなりに努力をさせていただいておりまして、この点でのインフラの整備というのをここ何年か集中的にしてきたわけでございます。今回の金庫株の解禁に当たりましても、特にそれがインサイダー取引であるとか、あるいは相場操縦ということと結びつきやすいというようなことに着目いたしまして、この点の制度の整備を図っているところでございます。

 そういう意味で、私ども市場監視委員会の人員が絶対的に不足しているということでの御指摘もいただいたわけですが、それはある程度私ども、むしろ理解者としてありがたい御評価だというようなことで受け取らせていただいております。それでも、行革での定員制限の中ではかなり御当局の理解もいただいて、このところ着実に陣容を強化できております。もちろん、まだ大幅に不足であるわけでございますけれども、そういう限られた陣容の中で今一生懸命やっているというのが実情でございまして、これは人員の不足の問題と組織の問題、人員が不足だから組織を変えろというのとはちょっと話の筋が食い違っているのではないか、こういうように思っているわけでございます。

 私どもとしては、ある企業が資金を調達するというときに、まずバンキングのビジネスをやっているもの、これは本当はインベストメントバンキングビジネスでございますけれども、さて、あなたの資金の需要はどこから起こっているんだ、それにはどういった資金が一番いいのかというようなこと。そのときに、ローンがいいのか、ボンドがいいのか、あるいはエクイティーがいいのかというようなことは、総体としてむしろ相談に乗れる方がいい。そして、むしろそういう関連の中で必要な資金需要にこたえていけるような体制がいいと思っておりまして、金融商品が融合化しているというようなことも頭に置いて今のことを申し上げておるわけでございます。

 そういう現状を考えると、むしろ証券だけに特化したような機関というものがこれから先のいろいろな今言ったような状況に本当にフィットしているだろうか。アメリカが証券取引委員会をつくったときにはまさにそうだったでしょうけれども、これからまた証券取引委員会的なものをつくっていくのが本当に時代に合っているものかどうかということについては、私どもは疑問と思っているわけです。

五十嵐委員 幾つか反論があるわけですが、一つ今の点でいいますと、数が足りないからというだけではないのですね。やはり権限を強化して専念する必要があるというのが一つであります。それだったら、今まで数が少なかろうと、余りにも目立つようなインサイダー取引、この間私が前のダイエーの社長の例を言わせていただきましたけれども、なぜ捕まえられないのか。それ以外にもたくさんのインサイダー疑惑がささやかれた事件がいっぱいあります。外国ではとても信じられないと言っているわけですね。やはり働きをしていないのであればそれは強化をして新しくつくることも一つの案だろう、こう思うわけであります。

 また、三条委員会にする必要がある。なぜ金融監視委員会が内閣府の下に入ってしまったのかわからないわけですけれども、私は、しっかりとした権限の強い機関をつくる必要がある。なぜなら、それは経済の社会での一種の司法の役割を果たすからでありまして、質的な転換が必要だということを言わせていただきたいわけであります。

 それからまた、銀行業界を規制するより競争原理を働かせた方がいいのじゃないか。これは、一方ではそのとおりなんですけれども、しかし、競争原理が働かない社会に今の金融業界はなっているではないでしょうか。例えば、どういうわけか知らないけれども利率だってみんな横並びですし、例えばばか高い手数料、これは全くおかしな手数料体系だと思いますよ。

 アイワイ銀行が仮免許を付与されてスタートを切っているわけですけれども、本免許に至るまでにはいろいろな手続あるいは合意が必要だと思いますが、その中では、今までの既存のバンク網とのCD機のネット間の契約が入っていかなきゃいけない、それがなければ、どこでもおろせるというようなことでなければ競争に勝てませんから。ところが、そこでの銀行間の手数料が障害になってくる。事実上、新しいところができて、自分のところは手数料を安くしたい、それで新規参入者だから競争に勝ちたいと思っても、実際にはできないということになってくるんじゃありませんか。競争原理が働かない世界に今の銀行はなっている。

 だから、むしろ情報公開とある程度の規制というのは必要になってくる。アメリカでも、あれほど自由の国でありますけれども、銀行という公的機関についてはかなりの規制がございます。私は、アメリカの制度をそのまま日本に持ってこいと言っているわけではないんです。地域再投資にしても、アメリカの地域再投資法をそのまま持ってくるという形ではないんです、今度の法案は。すなわち、銀行のモラルを高めるためにそれを監視し、情報公開するということに主眼を置いたものだということを申し上げて、感想だけ伺って、時間がそろそろ参りましたので終わりにします。

柳澤国務大臣 もう余りちょうちょう申し上げることは差し控えますけれども、今、三条委員会でなくて八条委員会にしているのは何かといいますと、これは監督の一環ということで、監督との意思の疎通というものを確保していく方がいいという考え方に基づいているということをちょっと申し上げさせていただきます。

 それから第二点目は、競争がないではないかということでございますけれども、先ほど挙げられたアイワイバンクのことを念頭に置かれてのお話だったわけですが、私もまだ新聞情報以外には確たる情報を今確かめておりませんけれども、例えば、個別の名前を挙げるのはいかがかと思うんですが、新生銀行がそのあたりのことについては非常に果断な切り込みをして、競争を巻き起こしているというようなこともございます。私の地元のことばかり言って恐縮ですが、私の地元なんかは、今、メガバンクがいい中小企業をねらって、中小企業のお客さんのとり合いをしているという状況で、地元の銀行はその防戦をしているというような状況ですので、これから先かなり厳しい競争というものが行われてくるだろう、こう思っておりますので、その点についても先生に温かくお見守りいただき、御鞭撻をちょうだいしたい、このように思います。

五十嵐委員 終わりますが、財務省には質問を残してしまいまして、失礼いたしました。

 ありがとうございました。

山口委員長 中塚一宏君。

中塚委員 自由党の中塚でございます。

 ずっと塩川大臣に財政の健全化の話をお伺いしてきておりまして、財政の健全化、とても大切なことだとは思っているんですが、財政の健全化へ至る道筋についてちょっといまいち腑に落ちないところがありまして、きょうも引き続きそういうお話について伺わせていただきたいというふうに思っております。

 報道によれば、きょう、大臣、閣議後の会見でシーリングについてお触れになったようなんですが、その件をちょっともう一度御披瀝をいただけませんか。

塩川国務大臣 けさ、閣議終了後の記者会見で、私は、シーリング並びにシェアというものは余り採用しないということを言いました。それでは、今度の概算要求で何を基準に概算要求するんだということが問題になると思うのでございますけれども、昨年概算要求でやった金額よりは下目にして要求してくれ、ただ、この事業は対前年度何%減あるいは何%増、そういうことの説明は聞かないよ、こういうことを言ったんです。ですから、各省ごとで、主務官庁でそれぞれの事業についてめり張りをつけて、重点を明確にして要求を出してくれということとあわせて要望したということを新聞記者会見で申した、こういうことです。

中塚委員 シェアというのは、要は横向けの話ですよね。予算の配分のことですよね、シェアというのは。

 それで、当然マイナスに働いてくるというふうな御発言もあったと伺っておるんですが、シェアを見直すだけではなくて、各歳出項目について、地方に行くお金が一兆円、あと一般歳出、国の分で二兆円というようなことをずっとおっしゃっているわけですから、めり張りをつけるということと同時に、やはりシーリングもマイナスということを当然含んでいらっしゃるんだろうと思うんですが、その辺はいかがなんでしょうか。

塩川国務大臣 原則としてそういうことであります。けれども、特にこの事業について重点をやりたい、そのかわりにこちらの方は社会的、経済的ニーズが薄くなってきたからこの程度で収縮いたします、そういう見直しを一回してくれと。こちらの方はどうしても伸ばしていきたいという御要望があれば、それはそれで相談に乗ってくれてもいい、しかし原則としては昨年の概算要求で出したものに対するそれ以上の概算要求は遠慮して、控えてほしい、こういうことを言ったんです。

中塚委員 昨年の概算要求並みのは遠慮してほしいということですか、今最後おっしゃったのは。(塩川国務大臣「以上のものは」と呼ぶ)以上のものは遠慮してほしいということ。ということは、めり張りはつくにしても、これはやはりマイナスシーリングということなんでしょうね。

 確かに、むだな歳出を見直していくというのは別にことしに限った話ではなくて、ずっとやっていらっしゃったことなんだろうと思うんですけれども、スクラップ・アンド・ビルドをしたとしても、結果としてやはりシーリングでマイナスということになりますね、三十兆円を達成しようとしていけば。そういったことが本当に現実問題に照らしていいのかなというふうにも思うんです。

 まずちょっと根本的なお話なんですけれども、財政の健全化というのはもちろんしなきゃいけませんよね。私も別に赤字がいいというふうには全然思っていないわけです。けれども、では何のために財政の健全化をするのかということがやはり大切だと思うんですが、大臣は財政の健全化というのは何のために必要だというふうにお考えですか。

塩川国務大臣 それは私からあえて説明しなくても、中塚さん自身が十分心得ておられることだと思うのでございますが、財政が膨らんで赤字を膨らすということは決していいことじゃございませんね。規制を見直しあるいは行政のニーズを見直していかないで、このままの延長線でいきますと、毎年毎年当然増分だけはどんどんといや応なしにふえていくのでございまして、いわば高齢化社会に対応するためには財政にそれだけの弾力性を持たせておかなきゃならぬということ、これは賢明な中塚さんは十分御存じのはず。

 そうすると、どこで見直すかといったら、財政全体でございますけれども、やはり借金の国債費というものを減額することが一番財政に柔軟性を持たすことの道にもなると思います。そういう考えから、私たちは、国債の発行を抑制して予算の中に占めますところの国債費というものを減額しよう、それがねらっておる第一の原因であります。

 それと同時に、第二番目の問題として、やはり国民の負担というものを軽減していかなきゃならないと思うのでございまして、現在のように行政の必要分だけを安易に国債に依存していきまして国債がどんどん増発されてまいりますと、後年度においてこの負担というものが非常に大きく国民の犠牲を強いることになりますので、今のうちにこれを食いとめておきたい、こういうことの目的からやっておるわけであります。

中塚委員 第一がサステーナビリティーですね。柔軟性のお話をされました。二つ目が国民負担のお話ということだったのですが、一、二という順番にこだわるあれはないのかもわからないのですけれども、私自身は、財政を健全化させるということは、これから少子高齢化社会なんかを迎えていく中で、やはり持続成長可能な経済を支えていくために財政を健全化しておかなければいけないということなのではないのかなと思うのです。つまり経済イコール国民生活ということだと思うのですよ。

 ですから、第二番目の国民負担ということについては、確かに、国民負担ということも生活に密接にかかわってくる問題ですから、そういった意味では重なるのかなというふうな気がしておりますけれども、ただ、きょうの閣議後の会見で、シーリングをマイナスにしていくということになりますと、私自身がすごく心配するのは、サステーナビリティーの問題もさることながら、財政の健全化が赤字の削減のためということになってしまうのではないのかなと。借金を減らすということが財政の健全化に、つまり自己目的化してしまうのではないのかなというふうに思うのですけれども、その点はいかがですか。

村上副大臣 まさにそれは中塚委員が御指摘の重要なポイントでありまして、前から申し上げているように、結局、経済の持続発展を可能にするためには、将来性のない業種、また将来性のない分野について、いつまでも人材と資本、資金をくぎづけにするわけにいかないわけであります。そこにまさに、生産性を高めていきつつ、効率化を高めていきつつ、そういう将来性のあるところに資源や人材を配分するために、財政再建も経済の構造改革も一緒に、スクラムを組みながらやっていくために、やはり財政再建、財政の構造改革もパラレルに並行的にやっていくということが私は重要ではないかな、そういうふうに考えております。

中塚委員 大臣、今の副大臣の答弁でよろしいですか。

塩川国務大臣 私も村上副大臣が答えたのと同様でございまして、財政の健全化というのは、やはり国民の財政の負担をできるだけ軽減していくということが第一義だろうと思っております。そして、しかも、財政の体質と財政の機能によって国民の経済が活性化し、新しい繁栄社会をつくっていく、そういうリード役をしていく財政にもしなければならない、そういう体質の改善をつくることが、私は財政の健全化の一義的な問題だと思っております。

中塚委員 さてそこで、目的がそういうことであった場合に、ではどうやって健全化していくかということにもつながっていくと思うのです。三十兆円以内に新規発行を抑えていくということです。塩川大臣は、この三十兆円という数字自体は妥当だと思われますか。

塩川国務大臣 それは、必要に応じて国債を出すという考えからいいますと、三十兆円ではとても十四年度は賄えないと思っております。しかし現在、国の債務となっておる直接の国債の残高だけでも約四百兆近くになろうとしている。三百八十数兆円となっておりまして、この部分が、予算全体に占めますところの国債費の負担というのは膨大なものになっておりまして、世界各国から比べまして異常であるということはもう御存じだと思います。

 そういたしますと、ここで国債の負担を軽減して財政力に弾力性を持たさなければ高齢化社会にとても対応できないではないかということは、これは一般国民の常識だろうと思います。私は、常識に従ってそういうことをやはりやらざるを得ない。そこで、これの反応が出てくることは事実であります。それは国民の中に、あるいは景気を心配する、経済の心配、いろいろございます。しかしその場合に、痛みをできるだけ縮めて、景気の下落に歯どめをかけてやっていかなければならぬということは、これは当然心得なければならぬ問題でございますので、その点につきましては、いろいろと手段を講じて、そういうことのないように持っていきたいと私は思っております。

中塚委員 いろいろな手段というのも結構問題だとは思うのですけれども、財政のサステーナビリティーがこのままではもたないということ、だから三十兆円以内に抑える。妥当かどうかということをお尋ねしたのは、私はやはり経済財政一体だと思っているのです。三十兆円以内に抑えることは、それはえいやとやっていけば難しい話ではないのでしょう。けれども、そうすることによって景気なりなんなり失速をさせてしまうことで大変なことになりはせぬかというふうに思っているわけなのです。

 そこでお伺いをしますけれども、塩川大臣は、橋本内閣のときの財政構造改革法という考え方について、どのように評価をされていらっしゃいますか。

村上副大臣 この間も若干お答え申し上げたのですが、橋本総理のねらいというか考え方自体は私は間違っていなかったと思うのです。ただ、中塚委員御承知のように、あの当時、ちょうど山一証券、三洋証券、北海道拓殖銀行等次から次へつぶれ、その上に通貨危機とも重なりまして、非常に金融の状態が不安定であった。そういうときに、ねらいとしてはよかったのですが、TPO、タイム、プレース、オポチュニティーのタイムの場合、時期として妥当かどうだったかについては再考の余地があるのではないかな、そのように考えております。

中塚委員 大臣もそのような御見解でよろしゅうございますか。

塩川国務大臣 橋本内閣のときの財政構造改革法は、私は今思いますと、若干やはり大蔵省のリードが間違っておったと思っております。それは、やはり現状認識がちょっと狂っておったのではないかなと思うのです。それに従って改革をやりましたけれども、第一あの時分は、まだ重厚長大、右肩上がりのそういう経済構造がそのまま残っておりましたし、金融は破綻したままで、不良債権の処理とかそういうのが全然手がついていなかった。そこに財政構造を変えるのだとやりましたものですから、そういういわゆる古い線上のものとこれを切りかえるなどというものと、そこでごっちゃになってしまって、そこで活力を失ってしまった、私はどうもそんな感じがしてならぬのです。

 でも最近は、ある意味では三年間の間にそういう重厚長大を中心としたいわゆる経済構造というものがだんだんと需給調整しまして、いわば古傷をいやしてまいりました。ですから、そういう産業も体力がしっかりしてまいりましたので、これから行うことは、規制を緩和して新しい産業を芽生えさす、そういうことに重点を置いた政策をとっていくべきだと思っております。

中塚委員 タイミングがやはり余りよくなかったのではないかというふうなお話があったわけです。

 当時、平成八年、九年ぐらい、数字でいくとGDPなんかすごくよかったわけですよ。平成八年だと名目で三・〇%、実質で四・四%ぐらいの成長だったわけです。だから、そういったことが、財政構造改革をやっても大丈夫なんじゃないかというふうなインセンティブになったことも事実ですね。

 ところが、私ども、当時は新進党という党だったのですけれども、ただ、この高い成長率というのは、異常な低金利とたくさんの公共事業によって下支えをされたものであるというふうな認識があったから、財政構造改革というのはこのようなやり方では無理だ、このようなやり方というのは、例の財政構造改革五原則なんかにあるようなやり方なわけですけれども、そういったやり方では難しいのではないかということを主張しておったわけですね。

 翻って他方、では今は一体どうなんだという話になったときに、竹中経済財政担当大臣は、六月は月例経済報告で景気の基調判断というのを下方修正されるかもしれないというふうなことらしいですね。だから、足元の景気というのが、橋本内閣で財政構造改革に着手をしたアイデアを考えついたときよりも、今の方がはるかに悪いんだろうというふうに思っているわけです。

 さっき、大臣が不良債権の処理が終わっていなかったというふうにおっしゃっておられましたけれども、今また最終処理ということをおやりになろうとし出しているわけですね。だから、そういった中で、橋本内閣の財政構造改革法のときと今の景気の足元の状況を考えたって、今の方がはるかに悪いわけですね。

 そういったベースの状況がこれほど悪くなっているのに、来年度、再来年度と三十兆円以内に抑えていくということで、本当に大丈夫なのかなというふうに思っておるわけなんですが、大臣、いかがですか。

    〔委員長退席、佐藤(剛)委員長代理着席〕

村上副大臣 確かに、おっしゃるとおり、ある面では、橋本内閣のときよりも、今回、三十兆円以内に赤字国債の発行を抑えるという方が、現実的な数字からいえば厳しいという感じは持ちます。

 ただ、聡明な中塚委員ですからおわかりいただけると思うのですが、何回も申し上げるように、社会保障、年金、医療についても、公共事業、地方自治についても、今までのシステムをこのまま継続していくことが次の世代にとっていいのかということを考えた場合に、やはり私は難しいと。

 それはどういうことかというと、まず一つは、今までは、戦後、人口がふえる、経済規模が拡大する、経済成長する、税収がふえるということで、多様な行政サービスを広げるというモードで来たわけですけれども、これからは、残念ながら、二〇〇〇年を超えて四、五年からは、人口が減る、経済規模が縮小してくる、税収が減る。そうすると、今までのモードとは逆モードを考えていかなければ、次の世代が生き残っていけない。

 だから、極端な例を言いますけれども、医療でも、例えば八十歳、九十歳で、家族の者としてみれば少しでも延命したいという気持ちはわかると思うのですが、そういう人たちに、末期医療を含めてそういう医療や年金を極端にやっていくのがいいのかどうか。また、企業においても、将来性のない企業にいつまでも人材や資金、資本をくくりつけておくことがいいことなのか。それは、やはり私は本当に、先ほど来言われているように、次の世代が持続的、発展的経済を維持するためには、財政も経済も両方ともそういう仕組みを根本から立て直していくことは、やはり同時並行的にやらざるを得ない。

 ただ、私どもが考えているのは、今までは、短期的に財政出動することによって、需要を多くすることによって、ある面ではカンフル注射的な景気対策を続けてきたわけですけれども、先ほど来言われるように、本当に経済が立て直るためには、不良債権の処理という一番の病巣を取らないで、安易に財政出動に頼ってきたというところをやはりきちっと反省して、そういう財政並びに経済の、次の世代に発展できる展開を図るための構造をつくり直していくということを我々は不退転の覚悟でやっていくということを、私は何といっても、小泉内閣が発足した機会に、国民やまた与野党を問わずそのことを御理解する国会議員の皆さん方とやっていきたい、そういうふうに考えているわけです。

中塚委員 仕組みを変えるということについて全然異論はないのですね。ただ、仕組みを変えていくということと、単年度の赤字を三十兆円以内に抑えるということの関係がよくわからないということなんです。

塩川国務大臣 それは、中塚さん、時代の認識がちょっと違うように思うのです。確かに、九八年当時に三十兆に抑えるとかなんとかやったら、そういうことをやる体力と、現在と体力が違うと私は思うのです。

 九八年ごろの状態を見ましたら、要するに、その前年もしくはその前々年、九五年からたび重なる緊急対策、補正をやって景気を引き上げてまいりました。そのことが九八年のときにはいいような姿に出てまいりましたけれども、その当時の日本経済の体質はやはり供給超過で需要減退、それは目に見えて出ておりました。ですから、そういう右肩上がりの経済構造、重厚長大のそのしっぽがそのまま残っておった中でそういう財政の緊縮をやったものですから、もろに被害が出てきた。

 現在は、そういう経済の構造がだんだんと切りかわってまいりまして、要するに重厚長大型の旧来からの日本の産業構造は、体質は非常にスリム化してまいった。需給はタイトな状態になってまいりましたので、私は、今の不況というものは、そういう構造からくる不況ではなくして、産業の中に見る分野別、つまり、過度に情報機器、IT産業に期待をかけてきたその分の少し見込みが違ってきたということの反動、そしてまた、世界的に、アメリカあるいは東南アジア等の経済の落ち込みというものを受けてきておるもので、ここに日本の経済の、景気の現在の厳しさがある。私は、もうしばらくの間はこの厳しさは続くと思っております。

 しかし、全体の経済構造の体質なりあるいはファンダメンタルから見ました場合は、弱いものではない、九八年当時とは若干違うということを私は思っておりますので、まあ一度批判していただいたらと思います。

中塚委員 今の御答弁ですと、日本経済は当時と比べて構造改革が進んでいる、今は体力もあるという御答弁ですね。需給もタイトになってきているという御答弁。もう一つ、厳しさはもう少し続くだろうという御答弁もありました。そういうふうにおっしゃられると、確かに認識は違うかもしれませんね。そういうふうにお考えになっているんだったら、認識は違うかもしれません。

 厳しさは続くというふうに大臣みずからおっしゃっていましたけれども、その厳しいところに三十兆円に国債の発行を抑制するということをさらにお続けになるということについて、私は大変心配をしているのですね。

 先ほど申しましたけれども、システムを変えていくということ自体は何も否定はいたしておりません。ただ、その方法論というのが、何で単年度の三十兆円の赤字削減なんだということが一番の疑問なわけです。

 財務大臣は、新しい時代の景気対策ということで、ずっと規制緩和等を挙げていらっしゃいましたよね。私もそのこと自体は否定はしません。ただ、規制緩和にしても、そんなにすぐにぽんと効果が出るようなものではないんだろうというふうに思うわけです。だから、そういったすぐに効果が出ない景気対策を使うというときに、財政の方も手足をあえて縛ってしまうというようなことが本当に現実的なのかなということをお尋ねしているんですね。

 ちょっと改めて確認をしておきたいんですが、国債を三十兆円以内に抑えるということについては、これは補正後の話ですか。

塩川国務大臣 補正は目下のところ考えておりません。

中塚委員 いや、考えていないということではなくて、平成十四年度と言われる年度の中にあって、当初予算ベースだけの話なのか補正後ベースの話なのかということなんですけれども、いかがでしょうか。

塩川国務大臣 平成十四年度そのものの予算においてであります。

中塚委員 平成十四年度そのものの予算というと、当初予算のみということですか、それとも補正後ということですか。

塩川国務大臣 十四年度の補正なんて全然考えておりませんから、ですから十四年度の当初予算においてということであります。

中塚委員 財政構造改革法が出たときに、私どもは反対をしましたけれども、財政構造改革法自体の問題点として、当初予算についてはキャップがはまっていたりするわけですが補正については全然何も言っていなかったというふうなところがあって、財政健全化ということを強く主張する方はざる法だというふうにおっしゃっていたこともあったわけですね。

 そうすると、三十兆円の国債発行というのはまず当初予算についてのことである、今のところ補正は考えていませんよということですね。当然、当初予算を編成するときにあらかじめ補正を見込んでいるということは本来あってはならないことのはずなので、そうすると、十四年度は三十兆円以内というのは当初予算だけ、補正はまた別ということですか。

塩川国務大臣 何遍も申しておりますように、平成十四年度の補正は全然考えておりません。

中塚委員 ということは、平成十四年度は補正なしで、当初予算で新発債は三十兆円以内ということですね。

塩川国務大臣 現在のところは補正の用意なんて、それは災害があって、大地震が起こって何兆円という被害が出て、それを何か救済する措置を講じなきゃならぬ、こういう不時の、急施の状態が起こった場合は、それは神ならぬ身、わかりません。わかりませんが、現在の時点に立って平成十四年度を考える場合には、私たちは平成十四年度の補正を考えておりません。

 当初予算において三十兆円の国債の減額を、予定よりは、ここを間違ってもらったら困るので、現在の発行額から三兆下げるという意味ではございませんで、来年度の予定は、このまま自然増にいくならば、当然にいくならば、三十三兆三千億円発行しなければならぬ、そうでないと中期展望でいくと予算が組めないという仕組みなんですけれども、ここを節約して三兆円削って三十兆円で抑えようということでございますので、その意味をちょっと取り間違えないようにしていただきたいと思います。

中塚委員 意味を取り間違えないようにもう一度お伺いしますが、要は当初予算で三十兆円以内に抑えるというふうに私は理解をいたしました。もちろん、大地震とか大災害とか、予見しがたいそんなことがあったら、それは何とかしなきゃいけないのは当然のことだと思っております。ただ、やはり補正後ということで、当然に必要な経費とあと政策的な経費と、そういうふうな分け方をしたときに、いわゆる経済対策的な補正予算を組んで公債の発行がふえるようなことはもうないということで私は理解をいたしました。

 そのことについて大臣は、十四年、十五年というふうにおっしゃっていらっしゃるわけですけれども、二年間は三十兆円以内に抑えるんだというふうに御発言をされておられましたが、これは十五年についても同様であるということでよろしいんですか。

塩川国務大臣 質問の意味がちょっとわかりにくいんですけれども。

中塚委員 来年、十四年度予算は、当初予算で国債は三十兆円以内に抑えるということですよね。それで、いつも、十四、十五は三十兆円以内に抑えるというふうに委員会で御答弁されていますよね。だから、当初の予算で三十兆円以内にするということは、十四、十五ともにそうだということでよろしいんですか。

塩川国務大臣 当然、そのようでございます。十四年度だけが三十兆じゃございませんで十五年度においても、でき得れば三十兆より下げたいと思いますけれども、これはちょっと無理だと思います。当然増が十五年になると相当急激にふえていきますので、ちょっとそれは無理だと思いますけれども、しかし三十兆で抑えたい。

 もう一度言います。十四年度、十五年度、三十兆で抑えたいということでございます。

中塚委員 抑えるという答弁をずっとされていたと思うんですが、十四はそうします、十五は当然増経費なんかもあってなかなか難しいけれども頑張りたいということなんですか。何か大分今まで言っていらっしゃったことと変わってきているような気がしますよ。

 それで、中期財政展望なんかを見ても、実は十四年度三十兆円以内にするなんて割と簡単なんですよね。金利だって実は高目に見積もっているわけですし、公共投資予備費だって入っているわけですよ、十四年度の中期展望というのは。だから、十四年度三十兆円以内に抑えるというのはそんなに難しくない話なんですね。

 そうなってくると、今十五年度についてはなかなか難しいけれども頑張りたいというふうにおっしゃっていたんですが、十五年度はきっちり三十兆円以内に抑えるということではないんですね。

塩川国務大臣 そういう言葉じりをつかまえていただいたら困りますね。やはり私は、そのように十四年度も三十兆で抑えたい、十五年度も三十兆で抑えたいと。素直にとっていただければと思います。

中塚委員 素直にとっていただきたいというふうにおっしゃいますが、やはり委員会の席で御発言になったことはちゃんと議事録にも残るわけですので、その辺については大臣も御発言には注意をしていただきたいと思います、そういうことをおっしゃるんであれば。

 三十兆円以内に抑えるということは、今の御答弁だと、何か厳密なものじゃなくて努力目標なのかなというふうな印象を受けましたけれども、十四、十五以降はどうなんですか。

塩川国務大臣 それはもう何遍も私言っておりますけれども、十四年、十五年はとにかく歳出の削減ということに全力を挙げる、そして十六年以降になりましたら、これはもう私はかわっているかもわかりませんよ、わかりませんが、方針としては、景気の状況、あるいは規制緩和がきいてきて景気がよくなってくるかもわからぬし、そういう状況を見た上でないと、今からそんな幾何の図面をかくようなほどきっちりしたものは出てこない。しかし、その努力目標は絶えず持っていなければいかぬ。

 そうしますと、三年後において、あるいは四年後においてか、プライマリーバランスをとるための努力をその際にどんどんやっていきたい、こういうことが中期計画です。

 それは何年間でやるんだ、こうおっしゃったらこれもわかりませんけれども、しかし、できるだけ速やかにプライマリーバランスがとれるように努力をしていく、こういうことを言っております。

 それから、その後において長期安定財政計画というものを実施していくようにしたい、こういうことであります。

中塚委員 今週の水曜日に決算行政監視委員会で竹中経済財政担当大臣とお話をしまして、塩川財務大臣のプライマリーバランス回復論について、十年計画をどう思うかというふうにお尋ねしましたら、極めて妥当な計画であるというふうにおっしゃっていまして……(塩川国務大臣「十年なんて私言うたことおまへんで。私は年数は絶対言うてません」と呼ぶ)三年、七年の十年というふうに、十年程度というふうにおっしゃっていたはずなのですけれども。

 いずれにしても、大臣は小泉内閣の間はずっと財務大臣をされるわけですね。来年、再来年は三十兆円以内に抑えたいということなのですけれども、プライマリーバランスの回復に着手をするようになったときにも、三十兆円以内に抑えるということはずっとお続けになるのか、それとも、そのときはまたそのときだからまた考えていくということなのか、そのことだけちょっと御答弁いただけますか。

    〔佐藤(剛)委員長代理退席、委員長着席〕

塩川国務大臣 プライマリーバランスに入るときはどこが基準かといいましたら、三十兆が基準でしょう。そこから下げていくということが基準になってくると私は思います。

 それから、念のために言いますと、プライマリーバランスを、三年であれ十年であれ、私は年数は絶対言うてません。そういう意見をいろいろ言う人があるけれども、これは私はわかりません、徹頭徹尾わかりませんと言っておるのです。

 実際に組めるものではございませんで、それは評論家はいろいろ言えます。評論家は言えますけれども、政治責任のある数字として、それはなかなか容易に言えるものではない。言えるとするならば、経済財政諮問会議で決めてもらいたい、私はそう言っておるのです。

中塚委員 これで終わります。

山口委員長 鈴木淑夫君。

鈴木(淑)委員 自由党の鈴木淑夫でございます。

 塩川大臣、率直に言って、今の私の自由党の同僚の中塚委員の質問を聞きながら、よくまあ心配なくあんなことを言っているなと思って、感心して聞いておりました。

 なぜかというと、この一週間ほど、景気の基本的な指標が次々と発表になりましたね。まず、四月の生産、出荷、在庫、在庫率が発表になった。同時に、五月、六月の生産予測指数も発表になった。それから、四月の雇用統計も発表になった。機械受注も発表になった。きのうは財務省から法人企業統計季報が発表になって、一―三月の設備投資もこれでわかったので、間もなく一―三のGDPが出てくるでしょう。

 あの一連の基本的な経済指標をごらんになって、柳澤大臣も塩川大臣も普通なら心配になってくるはずだというふうに思うのですね。あれはすべて景気後退が始まっているという数字だと私は思います。

 景気後退が始まりますと、十二年度は割と予想外に景気がよくて税収は当初予想よりふえましたが、平成十三年度は多分当初計画ほど税収が入らないかもしれない。他方、秋ごろになると、本当に大変な経済状況になってきて、雇用対策を中心に補正を組まなきゃいけなくなるだろうと私は思っていますが、そういうことを全然心配ではなくて、平気で三十兆円、三十兆円と今中塚委員に答えておられましたが、景気について御心配ないのですか、今どんどん出ている数字を見て。

 柳澤大臣も、三年で新たに発生する不良債権を処理するとおっしゃっていますが、この景気の状況、このまま景気後退に突っ込んでいったらこれは大変なことだと普通は内心で心配していると思うのですが、とりあえず塩川大臣、この景気をどう考えていらっしゃいますか。どういう認識を持っていて、この先どうなると思って、それが御自分でおっしゃっている三十兆円以内に国債発行を抑えるという方針との関係で何も心配じゃないですか。

塩川国務大臣 それでは、鈴木先生は、抑えられないという判断に立っておられるわけですか。それでは、その理由をちょっと聞かせていただきたいと思います。

鈴木(淑)委員 私はとても無理だろうと思っておりますので、その理由をそれでは少しだけ申しましょう。

 まず、生産ですよ。御存じだと思うけれども、四月の数字というのは、予測はマイナス〇・八だったけれども、実績はマイナス一・七ですよ。出荷は、さらにマイナス二・五ですよ。前月に比べてですよ。前年同期に比べたら、もうマイナス四%くらいのところまで下がってしまっている。だから、普通は、これから平成十三年度、税収だって落ちるに決まっているのですよ、法人税を中心に。

 それから、五月と六月の予測指数を使って計算してみると、一―三月のマイナス三・七に続いて、四―六もマイナス二・八だ。かなりのスピードですよ。年率一〇%以上のスピードで落ちていくのです、生産が。そして、これはもう平成十三年度は明らかに企業収益は悪化しますから、法人税はすごく落ち込みます。

 それでは、個人所得はどうなのか。同じく四月の雇用関連統計が発表になりました。御承知のように、失業率は四・八%に上がりました。〇・一ポイント上がりました。それから、常用雇用指数、前年比マイナス〇・二%です。これはもう五カ月連続で前年水準を下回っている。雇用は減り続けている。首を切られないで雇ってもらっている人の所定外労働時間、時間外労働、これも前年に比べたらマイナス二・〇です。雇用が減り始めているのですよ。これでどうして個人所得がふえられますか。ふえられるはずがない。所得税も落ちてきますよ、平成十三年度は。

 そういう状況のもとで、個人消費、四月の数字が出ましたね。どうでしょう。個人消費の四月、家計統計ですよ。これは、季節調整済みの前月比でマイナス四・三%、どんと落ちてしまった。これも、一つは家電のリサイクル法の関係で買い急ぎがあったことの反動もあります。しかし、それにしても、もっと基本的には、雇用が悪化して個人所得が落ちてきているからですね。企業収益が悪くなりますから、夏のボーナスだって前年より悪い。賃金面からだって落ちていくに決まっています。

 住宅着工だって、四月の数字が発表になりましたが、季節調整済みで前月比マイナス五・八、年率換算で、戸数で百十三・七万戸。これは、十―十二が百二十三万戸、一―三が百十八万戸、さらに四月は百十三万、どんどん落ちてきています、住宅着工だって。

 もっと言えというなら、まだまだあるのですよ。公共投資が落ちている証拠が幾らでもありますよ。公共事業の請負統計というのを申し上げましょうか。これは、何と本年一―三月、前年比マイナス一六・一%。

 とにかく、どこを見てもかしこを見ても、えらい勢いで景気が落ちてきていますよ。これで、大臣、どうして心配じゃないですか。どうして三十兆円以内に国債発行額を、できれば十三年度もそうしたいのかもしれないが、絶対補正を組まないなんと言っているところを見ると十三年度もそうしたいのかもしれないが、十四年度に向かって、十三年度の赤字や税収の落ち込み、それから、間違いなく来る秋の雇用危機、これで補正組まないでいられないですよ。だから私は、その後、十四年度に国債発行額を三十兆円以下に抑えるなんて不可能だなと思いますよ。どうですか、これだけ理由を申し上げた。

塩川国務大臣 今御高説承りました。

 今聞いていますと、全部〇・二とか〇・三とか、微増ということですね。弱含みでじわじわ来ているということです。その点は私たちも認識は同じです。全く変わっておりません。

 ですから、私が申し上げておるのは、一―三月はまあまあそこそこ思うておるよりはよかったかなと思うけれども、四―六はさらに弱含みで推移するということは私たちも言っております。秋になって、それを、何かやはり世界経済全体の動きが活況化してくる兆しなきにしもあらず。特にアメリカ等におきましても税制改正等が進んでまいりましたら、やはり多少の影響は出てくるであろうと思うし、また、我が国の経済全体を見ましても底は固まりつつあるように思う。

 だから、大きい期待はかけておりません。期待はかけておらないけれども、おっしゃるように、経済がデフレスパイラルのような状態になるとは思わないという認識は持っております。これはもう鈴木先生も同様だと思うんです。しかし、弱含みであることは事実であります。だからといって、壊滅的な状態には私はなってはならないと思っております。

 そうであるとするならば、その延長で見て、十四年度以降において財政の構造に入らなきゃいけない。今までの景気対策というのは、とにかく補正予算をどんどん組んでまいりました。この五、六年の間に政府が追加支出したもの、金融対策も入れてでございますけれども、百三十兆円からの金を追加補正でこの五年間に入れている。それで一体どうだったのかということでございまして、その根本は何に原因が。やはり民間の自由な活力のある活動が抑えられてきたということ、これはもう以前から鈴木先生も言っているじゃないですか。やはり、これを直さない限り日本の経済は立ち直らない。そこが九八年度当時の状況と現在とは違うと私は先ほども申しておるわけで、小泉内閣が構造改革なくして景気回復なしと言っておる根本のところはそこにあると思って、とっていただきたい。

 ですから、これはもう実に苦しいことです。三十兆円というのは、できないできないとおっしゃいますけれども、やらざるを得ない状態に追い込まれてきておるという現状認識、これもやはり共通に持っていただかなければいけないんじゃないか。

 それでは、どんどんと、それいけ、国債でいけという状況じゃないということは、これは認識しておられる。では、どんどんいけということじゃない、といってこちらへ踏み込んでも難しい、それでは選択をどうするかということです。私たちは、難しいだろうけれども、三十兆円を一応とって、この選択によって、そのかわりに行政経費は今までのような緩ふんでやったらだめだ、締めるものは締めよう、単価も見直そう、すべての行政経費を見直そう、そういう非常な決意で取り組んでいって三十兆円に抑えるという努力をする。ここは私たちは政治家の責任があると思うております。

 ですから、もうしようがねえんだ、補正も出せ、そして国債も発行せい、これはもう楽であります。楽でありますけれども、政治家としての責任はそれでいいのかということを私は問いたい。

 こういうことで決断したので、どうぞこれを積極的にひとつ支援していただく方に回っていただきたい。鈴木先生なんかがこれはもう景気がよくなってきたと言ったら株は必ず上がりますから、あかんぞあかんぞと言うていると株はますます下がってしまいますから、そこらはやはり、いや大丈夫だ、こう言っていただくようにお願いします。

鈴木(淑)委員 今の塩川大臣のお話を伺っていて、九七年から九八年のときの予算委員会における橋本総理と私のやりとりを思い出した。あのときとそっくりですよ。二つ申し上げましょう。

 一つは、景気について他力本願。今おっしゃいましたでしょう、秋ごろになれば米国景気も何か底を打って、そして輸出が伸び始めるかもしれないからと。もう僕は途端に思い出しましたよ、桜が咲くころには景気が回復すると言ったとんでもない大臣がいたということを。どんどん突っ込んでいる最中に。あの方は今も大臣をやっていますな。

 大臣、そういう他力本願の経済見通しで政策を考えてはいけません。もっと国の中を見てください。国の中を見れば、一―三は若干プラス成長かもしれませんよ、さっきのリサイクル法の関係の買い急ぎがあったから。その反動も出て、四―六から私はマイナス成長はちょこちょこ出るというふうに思いますね。そうすれば、当然、雇用が減り、賃金が減りますから、消費がまた本格的に落ちてくるんですよ。そっちの面から、悪循環で。そういうのを眺めれば、設備投資も落ちてくるんですよ。現に、設備投資の先行指標の機械受注はこの一―三月にマイナスになっていますよ。それから、きのう発表になった財務省の法人企業統計季報を見ると、設備投資の実績も多分一―三はマイナスですね、季節調整してみると。

 そういう状況で、国内の景気の両輪ともいうべき個人消費と設備投資が内在的な悪循環で落ちていくんですよ、秋に向かって。そんなときに他力本願で、桜の花が咲くころみたいなのと同じ論法で、米国経済について何とかなるだろうと。米国経済についてだって、専門家の多数意見は年内景気後退ですよ。そんな秋からよくなるなんて言っているのはごく少数の意見であります。それが一つ。

 もう一つ、ああ、あのころと同じことを言っているなと。特に当時の橋本総理が言っていたのとそっくり。もう今や財政赤字削減は待ったなし、これが政治家の使命であります、今塩川さんそういうことをおっしゃった。財政赤字削減が政治家の使命だというのはそのとおり。でも、それは、待ったなしで、日本経済がひっくり返っちゃっても削減しろという意味ではないんです。これは中期の目標です。五年でプライマリーバランスをとるとか、七年でプライマリーバランスをとるとかいう議論があるように、中期の目標なんです。そこへ行く過程で財政赤字がどういうパスを通るか、どういう経路で行くか、こんなものは簡単に予測できるものじゃないんですよ。経済学者だって簡単に予測できない。こんなものは固定しちゃいけないんです。財政赤字なんというのは結果なんだから。景気が回復してくるか突っ込んでいくかで、もうすぐ財政赤字なんか変わっちゃうんですから。

 ですから、私は構造改革をやるななんて言っていない。むしろ、じゃんじゃんやれと。大臣おっしゃったように、私は昔から規制緩和論者、規制撤廃論者。そして、元気な民間、小さな、効率的な政府に向かえと昔から言っている。そのてこになるのが規制撤廃、規制緩和ですよ。それで構造を変えていくんですよ。それをやめろなんて一言も言っていない。しかし、この構造を変えていくというのは長期の計画ですよ。財政の赤字を減らしていくというのも、もう長期ですよ。柳澤大臣が担当しておられる不良債権処理というのはいわば中期ですよ、三年からそこらの中期ですね。それと目先の景気という短期がある。

 この短期、中期、長期は、塩川大臣、よく聞いてください、塩川大臣がいつも言うのは、長期の構造改革をしなければ景気も持続しません、それから、中期の不良債権処理をしなければ景気も持続しません、それはそのとおりですよ。でも、因果関係はその方向だけに走っているんじゃない。景気が回復しなければ構造改革は挫折するんですよ。なぜか。それは、構造改革は痛みを伴うのに、その前から景気が突っ込んで痛みが出ていたら、雇用面からもたない。日本人の暮らし向きがもたない。

 それから、柳澤大臣御担当の不良債権処理だって、景気がおっこっていったら不良債権がふえるという因果関係があるんだから、景気を落としながら不良債権処理をしていれば景気は上がってくる、そんな論理はないのです。要するに、短期、中期、長期は双方向で同時決定的な関係にあるのですよ。それを、長期の構造改革と中期の不良債権処理をやれば景気が上がってくる、そればかり言っていたのは、これも橋本総理でしたね。そっくりですよ。

 今、塩川大臣は、あのころよりは日本経済はしっかりしていると。これもおよそ根拠のない楽観論ですな。そんなことはわかりません。あのときは四%以上、直前まで経済は成長していたのですよ。グラフを見てごらんなさい。九五年度だって、九六年度だって、きゅっと成長していますよ、ぐっとGDPは上がっていますよ。今みたいにふらふら一%成長できるかどうかの状態じゃないのですから。見ようによっては今の方が危ないんですよ。あのときは、曲がりなりにも回復しているところに財政赤字削減のデフレ予算をぶつけたのです。それでも経済は参ったといって下を向いちゃった。今度は上がっていないで、ふらふら一%前後の状態ですよ。もう既に、ことしに入ったらマイナス成長に入っていますよ、四―六から、今年度は。そういう中でやるのですから、今の方が経済がしっかりしている、何を根拠にそんなのんきなことを言っていますか。

 しかも、さっきから伺っていると、ちょっとこれは揚げ足取りみたいに聞こえたらお許しいただきたいが、重厚長大型産業から変わるんだ、冗談じゃありませんよ。重厚長大型産業なんて構造はもうとうに終わっています、日本は。そんなものは高度成長時代の話です。一九七〇年代までの話です。それから最近ではいわゆる軽薄短小に変わったのですよ。エレクトロニクス産業が中心になった。だから、時計もメカからエレクトロニクスに変わったし、自動車も完全にエレクトロニクスで装備したし、いろいろなところでエレクトロニクスの産業は軽薄短小に変わったのです。その次に、今出てきているのが、情報化というもう一つの変化が今兆しているのですね。

 だけれども、そういう変化が兆しているから今の方が経済がしっかりしているなんて、どこで聞いてこられたか知りませんが、そういう楽観論は私は簡単に口にされない方がいいと思いますよ。ずっと大臣をおやりになるとすれば、本当に秋から暮れにかけて経済は深刻になりますよ。

 そのときにどうするか。その深刻な経済を発射台にして平成十四年度の予算を大臣は組むのですから、そこで公約どおり、三十兆円以内の国債発行にとどめるのでしょう。できっこないと私は思いますよ。あるいは、やれば、それを見てさらに民間の経営者はぶったまげる。恐らく、国債発行は三十兆円以下におさめるが、あの手この手で事実上のやみの国の借り入れをこしらえるとか、そういうチーティングをしない限りは無理ですね。これは議事録にとどめていただいて、秋の国会で、あるいは暮れにどうなったか、塩川大臣とまた討議をさせていただきたいというふうに思います。

 あの九七年度、八年度も、私がこう言うと、人をおどかすなとやじがぼんぼん予算委員会なんかでは飛びましたよ。だけれども、私が言ったとおり、九七年の四月から景気が突っ込んだのですから。それから、あのとき私は、不良債権処理は終わったと言う橋本さんに対して、そんなことはありません、住専処理が去年終わったが、あれは氷山の一角です、不良債権のメーンのところは主な銀行のバランスシートの中に残っていますと言い続けたのですよ。最近になって、あのころは国民がみんな間違えたのだから、おれも間違えて仕方がないという論法を使う人がいるけれども、とんでもない。うそだと思ったら、議事録を持ってきてここで読み上げます、私はずっと警告していたのですから。九七年の予算委員会あるいは大蔵委員会で。

 ですから、何か今の方があのころよりも経済がしっかりしているとか、あるいはあのときはみんな間違えちゃったのだよ、あるいは他力本願で、日本経済は秋からよくなるよ、そういう言い方は慎んでいただいた方がいいのじゃないかと思います。

 質問しないでこっちばかりしゃべっていますが、塩川大臣は相当お疲れだとお見受けいたしますし、それから、当初の予定は私は実は二十五分まででございました。そのために後の日程を組んでしまいました。

 柳澤大臣、本当に申しわけございません。柳澤大臣にお越しいただいて私が申し上げたかったのは、今の景気情勢にしっかり目配りをしてください、そうじゃないと新たな不良債権の発生で三年内にというのが苦しくなりますぞ、これを申し上げたかったものでお招きしたのですが、それに対する御答弁をいただかないで質問を打ち切ることをお許しいただきたいと思います。

 それでは、当初の予定どおり、二十五分で質問を終えます。

山口委員長 次回は、来る十三日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十六分散会




このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.