衆議院

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第17号 平成13年6月13日(水曜日)

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平成十三年六月十三日(水曜日)

    午前十時二分開議

 出席委員

   委員長 山口 俊一君

   理事 伊藤 公介君 理事 奥山 茂彦君

   理事 佐藤 剛男君 理事 根本  匠君

   理事 五十嵐文彦君 理事 海江田万里君

   理事 石井 啓一君 理事 鈴木 淑夫君

      大野 松茂君    河村 建夫君

      倉田 雅年君    小泉 龍司君

      七条  明君    砂田 圭佑君

      竹下  亘君    竹本 直一君

      中野  清君    中村正三郎君

      林田  彪君    牧野 隆守君

      増原 義剛君    宮腰 光寛君

      山本 明彦君    山本 幸三君

      渡辺 喜美君    江崎洋一郎君

      岡田 克也君    小泉 俊明君

      中川 正春君    長妻  昭君

      原口 一博君    日野 市朗君

      牧野 聖修君    松本 剛明君

      山井 和則君    谷口 隆義君

      西  博義君    若松 謙維君

      中塚 一宏君    佐々木憲昭君

      吉井 英勝君    阿部 知子君

      植田 至紀君

    …………………………………

   議員           塩崎 恭久君

   議員           根本  匠君

   議員           谷口 隆義君

   議員           石井 啓一君

   議員           小池百合子君

   財務大臣         塩川正十郎君

   国務大臣

   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君

   内閣府副大臣       村田 吉隆君

   財務副大臣        村上誠一郎君

   財務大臣政務官      中野  清君

   財務大臣政務官      林田  彪君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   小林 勇造君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  乾  文男君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長

   )            今村  努君

   財務金融委員会専門員   田頭 基典君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十三日

 辞任         補欠選任

  竹本 直一君     宮腰 光寛君

  牧野 隆守君     河村 建夫君

  河村たかし君     山井 和則君

  日野 市朗君     牧野 聖修君

  若松 謙維君     西  博義君

同日

 辞任         補欠選任

  河村 建夫君     牧野 隆守君

  宮腰 光寛君     竹本 直一君

  牧野 聖修君     日野 市朗君

  山井 和則君     河村たかし君

  西  博義君     若松 謙維君

    ―――――――――――――

六月十三日

 不良債権処理のルールの確立、金融トラブル解決の第三者機関設置の立法化に関する請願(大森猛君紹介)(第二六三三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二六三四号)

 同(近藤基彦君紹介)(第二七一〇号)

 同(重野安正君紹介)(第二七一一号)

 消費税の大増税に反対、税率を三%に引き下げることに関する請願(小沢和秋君紹介)

 (第二六三五号)

 同(木島日出夫君紹介)(第二六三六号)

 同(児玉健次君紹介)(第二六三七号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二六三八号)

 同(志位和夫君紹介)(第二六三九号)

 同(中林よし子君紹介)(第二六四〇号)

 同(春名直章君紹介)(第二六四一号)

 同(不破哲三君紹介)(第二六四二号)

 同(松本善明君紹介)(第二六四三号)

 同(矢島恒夫君紹介)(第二六四四号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二六四五号)

 中小自営業の家族従業者等のための所得税法改正等に関する請願(川田悦子君紹介)(第二七一二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 特定融資枠契約に関する法律の一部を改正する法律案(塩崎恭久君外四名提出、衆法第三〇号)




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     ――――◇―――――

山口委員長 これより会議を開きます。

 塩崎恭久君外四名提出、特定融資枠契約に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。提出者塩崎恭久君。

    ―――――――――――――

 特定融資枠契約に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

塩崎議員 ただいま議題となりました特定融資枠契約に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 金融機関等が一定期間にわたって一定の融資枠を設定、維持し、その枠内で顧客の請求に基づいて融資を実行することを約する融資枠契約につきましては、特定融資枠契約に関する法律の施行以来、利用件数が確実に増加しているほか、利用企業のすそ野も拡大してまいりました。

 この法律の適用対象となる融資枠契約、すなわち特定融資枠契約の借り主は、現在、商法特例法第二条に規定するいわゆる大会社に限定されておりますが、特定融資枠契約に係る制度のあり方については、法律施行後二年を目途として検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるべきものとされております。この規定に基づき、利用者のニーズを踏まえつつ、借り主の保護の必要性、法的安定性等も勘案して、特定融資枠契約の借り主の範囲を拡大するため、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、特定融資枠契約の借り主について、一、資本の額が三億円を超える株式会社、二、証券取引法の規定による監査証明を受けなければならない株式会社、三、特定債権等に係る事業の規制に関する法律第二条第五項に規定する特定債権等譲り受け業者、四、資産の流動化に関する法律第二条第三項に規定する特定目的会社、五、投資信託及び投資法人に関する法律第二条第二十項に規定する登録投資法人、六、一連の行為として、社債券の発行等の方法により得られる金銭をもって資産を取得し、当該資産の管理及び処分により得られる金銭をもって、その債務の履行等を専ら行うことを目的とする株式会社または有限会社を加えることとしております。

 第二に、特定融資枠契約に係る制度のあり方については、この法律の施行後二年を目途として検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるべきものとしております。

 以上が、この法律案の提案理由及び内容の概要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

山口委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

山口委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局長乾文男君、内閣府政策統括官小林勇造君及び文部科学省研究開発局長今村努君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山口委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。増原義剛君。

増原委員 自由民主党の増原でございます。初めてこの財務金融委員会で質問に立たせていただきます。どうぞよろしくお願いをいたします。

 何か参議院の本会議があるようでございまして、通告をいたしました質問の順序を少し変えて質問いたしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず最初に、平成十三年度の予算に関します前の宮澤大臣の所信表明で、この予算編成、この予算によりまして自律的な景気回復の実現に向けて十分な対応を行っているというふうに述べられておりますが、今もそのお考えに変更はないかどうか、同じかどうかお聞きいたしたいと思います。

村上副大臣 増原委員の御質問にお答えします。

 今の御質問は、宮澤財務大臣の財政演説、それからまた塩川財務大臣も実は同趣旨のことを述べておりまして、平成十三年度の予算においては、平成十一年度以降三年連続高水準の公共事業関係費を確保するとともに、公共事業関係費の予備費三千億を計上しております。こういう公共事業等、年度を通じまして、景気の下支えを、効果が切れ目なく行えるように、円滑かつ着実な執行に努めていきたいというふうにまず考えております。

 それから二番目は、やはり何といっても、今国民の皆さん方が、バランスシートの調整のおくれやまた将来に不安がありまして、いま一つ本格的な景気の回復がおくれている、そういう面におきまして、常日ごろ申し上げていますように、不良債権の処理と財政の構造改革とそれから経済の構造改革を、一石三鳥ではありませんが、同時進行的に、やはり景気をにらみつつバランスよくやっていくということが必要だと考えております。

 そのような、小泉総理が申し上げておりますように、構造改革なくして景気対策なしということは、その三点を着実に不退転の覚悟でやっていくということと考えております。

 いずれにしても、そのような円滑なる予算の執行とそういう構造改革とをバランスよく組み合わせて、自律的回復軌道に乗せるように全力を尽くすという考え方でやっております。

増原委員 どうもありがとうございました。

 今申されましたように、景気対策をして、その次に、景気が十分よくなってから財政構造改革に入る、あるいは構造調整に入るというのは、私はやはりおかしいんだろうと思っております。構造調整、構造改革なくしてやはり真の意味の景気の回復というものはないと私は思っておりまして、その点では小泉総理と同じような見解を持っております。そういう意味で、構造調整、構造改革と並行しながら、一方で景気に対しても十分な目配りをしていく必要があるのではないかなと思っております。

 それとの関連で、時間の都合上ちょっと飛ばしまして、平成十四年度の新発債の発行額を三十兆円以内に抑えることを目標として頑張るというふうに小泉総理は言われておりますが、「財政の中期展望」でございますが、これとの格差はかなり大きいものがあると思います。

 一定の仮定のもとの機械的な計算でのところでありますので、必ずしもそれが実際の予算編成とマッチするとは思いませんが、いわゆる公債金を見ましても、五兆円ふえておるわけでございます。三十三兆三千億。これを三十兆円以内に締めるということになりますと、やはり相当な努力が要るのではないかというふうに私は考えております。

 例えば公債費、これも少し、三・二%の十年債の金利で計算したらとか一定ございますが、これで一・六兆円。地方交付税等で二兆七千億円、これは大変なものでありまして、いろいろな理由があるようでありますが、これはやはり、ここらあたりにつきましても聖域なく全部見ていかないことにはとてもできるものではない。一般歳出はわずかに八千億の増でありますので、そういう意味で、地方交付税制度も含め、あるいは防衛、教育、福祉、いろいろな分野を本当の意味で聖域なく見ていただきたいと思います。

 そうした中で、歳入を見てみますと、税収はほぼ横ばい、これは郵貯の満期が到来する分の影響のようでありますけれども、その他の収入もほぼ横ばいでありますので、歳出の増を丸々先ほど申し上げましたような公債金で、五兆円で調達するというふうになっております。

 そういう意味で、この中期展望、機械的なものであるにせよ、三十兆円以内におさめるという目標は非常に難しいだろうと思っておりますが、そこらあたりで、歳入歳出面におきましてこれからどのような施策を打っていかれようとされているのか、お聞きいたしたいと思います。

村上副大臣 お答えいたします。

 増原委員の御指摘のとおりでございまして、非常に大変であります。まず、我々が考えておりますのは、三十兆円以下に抑えるということになりますと、三兆三千億以上ということでありますから、橋本内閣のときの財政改革よりも私はまず厳しいと考えております。

 まず我々が取り組まなきゃならないのは、歳出の徹底した見直しをやるしかない。先ほど来おっしゃっているように、やはりどうしてもポイントは社会保障、公共事業、地方と国のあり方、この三つだと思います。そういうものの徹底した重点化、効率化に取り組んで、どのように具体的にやっていくかということを、景気に与える影響も加味しながら、どこを削り、どこをやりながらやるか、そしてまた、先ほど来申し上げているように、そういう歳出のフレームワーク、構造をどういう形にしたら将来的に持続的に社会保障が機能していくか、そういうことを全体的に、鳥瞰図的に見ながら、今後しっかりと皆さん方と議論を詰めながらやっていきたい、そのように考えております。

増原委員 どうもありがとうございました。

 参議院の本会議の方もあるようでございます。どうぞ。

 それでは、その次でございますが、いわゆるプライマリーバランスの確保に向けて頑張るという中長期目標があると思うのでございますが、経済財政諮問会議も含めて、今では内閣府になるのでしょうか、旧経済企画庁のモデルを使って試算をしてそれを出していくというふうに言われておりますが、中長期的なものももちろんでございますが、当面の目標というのでしょうか、スケジュールというのでしょうか、経済、財政全体に対する構造的な取り組みについての日程、スケジュールがわかりましたらお話をいただけたらと思います。

 前の宮澤財務大臣に予算委員会でお聞きしましたところ、あれが二月の段階でしたが、三カ月ぐらいすれば大体あらあら出るのではないかというふうな話もあったやに記憶しておるのでございますが、その辺はいかがでございましょうか。

小林政府参考人 お答えいたします。

 現在、経済財政諮問会議におかれまして、いわゆる骨太の方針ということで、構造改革の基本方針を審議中でございまして、これがまず六月末に取りまとめる予定で審議を行っている状況でございます。

 御質問の中期的な経済、財政の姿を明らかにするための作業、これも並行して行っておりますが、この中長期の問題につきましては、次の経済財政諮問会議の大きな作業でございます平成十四年度の予算の基本的な方針というものをことしの十一月ぐらいまでの作業としてやる、そこの作業にあわせて中期モデルを作成していろいろな経済の姿を明らかにしていくということで現在予定をしております。

増原委員 小林政策統括官のお答えは大体わかりましたが、できるだけ早く国民の前にこれを示すことが、将来に対する不安の払拭というのでしょうか、懸念の払拭に役立つものと私は考えておりますので、その点御留意いただきたいと思います。

 そうした中で、今年度の政府の経済見通しでありますが、名目一・一、実質一・七だったでしょうか、そういうふうに見通しを立てられておりますけれども、先ほどの景気の、経済の自律的な回復という観点からすれば、確かに経済見通しでは民間消費が実質で一・五ですか、そして民間設備投資が三・八、いわゆる寄与度でいいますと民間の寄与度が一・五ということで、このあたりまでいけばある程度自律的な回復というふうに言えるのではないかと思いますが、昨今の経済情勢を見ておりますと、どうもこれは危ないのではないか、絵にかいたもちではないかというふうな懸念も持っておるわけであります。

 そうした意味で、今後政府の経済見通しを実現していく上でと申しましょうか、最も懸念される要因はどういうものがあるか、また、それへの対応はどうかということにつきまして御答弁をお願いしたいと思います。

小林政府参考人 我が国の経済の現況を見ますと、御指摘のございましたように、景気はさらに弱含んでいるという現況がございます。先行きにつきましても、さまざまな懸念材料が出てきているというのが正直なところでございます。

 一つは、今回の日本の経済が弱含んできた直接のきっかけになったアメリカの景気が一体どうなるのか。現在、アメリカも減速を続けておりますが、これがいつごろから立ち上がってくるのか、これが一つやはり大きなリスク要因になっております。

 それから、もう一つは日本の経済でございますが、物価が下がってデフレの状況が続いておりまして、したがって、企業収益も急激に鈍化しているというような状況の中で、私ども一番懸念しておりますのは、最近の機械受注を見ますと、設備投資の先行きがかなり鈍化してくるのじゃないかな、こういうことが大変懸念されているわけでございます。

 私どもとしては、こういう日本経済の脆弱性の背景には、やはり不良債権を初めとするさまざまな構造問題があるんだ。そこで、先ほども申しましたが、現在、緊急経済対策でこの不良債権問題の処理をするということを決定しておりまして、これは金融庁を初めとして着々と進んでいると思いますが、さらに構造改革問題全般の方針として、現在、経済財政諮問会議で六月末を目途に基本方針をつくっていって構造改革を断行するということを考えているわけでございます。

増原委員 どうもありがとうございました。

 ただ、先般もこの委員会で緊急経済対策に関連する法案を可決したわけでございますが、いわゆる株式市場の環境整備であったりするわけでありまして、いわゆる即効性があるというのでしょうか、そういうものでは必ずしもないように思います。

 また、これまでバブル崩壊後十年来とってまいりました各種のマクロ的な経済政策、減税とか公共事業の追加であるとかあるいは金利の引き下げ、こういったものは、どうも今の日本経済の処方せんとしては適切ではないといいましょうか、効果が薄いというふうに私は考えております。確かに下支えをしてきた、そういう効果はあるのだろうと思いますが、それがかえって日本の構造調整をおくらせたのではないか、こういう懸念を私は強く持っております。

 その意味で、いわゆるマクロ経済対策ではなくて、ミクロで、ピンポイントで我が国の経済なり社会のボトルネックになっているところを取り除いていく、いわゆる外科手術、不良債権もその一つだろうと思いますが、そういうことが必要なのではないかというふうに思っております。ぜひ、そこらあたりを具体的にもう少し出していただいて、経済政策だけではないのでありますけれども、十分な措置をしていっていただきたいと思います。

 とりわけ、いわゆる自律的な回復というのと、アメリカの経済が落ちましたのでちょっと設備投資も含めて悪くなりましたというのは、確かに経済全体はそれぞれつながっておりますから、必ずしもそれを否定するわけではありませんが、真に自律的な回復と言えるためには、そこらあたりについてのものをきちっとやっていただくことが大事ではないかというふうに思っております。

 それでは、話を変えまして、いわゆる特定融資枠契約につきまして、提案者の塩崎先生に一問だけお聞きしたいと思います。

 このコミットメントラインの契約、私は非常に結構なことだと思っております。融資に関していろいろな意味でいろいろなルートができるということは大事なことだと思っておりますが、先般、二年前にこれをやられて、その後今日まで、この政策によりまして特段の問題は生じていないかどうかということについてお聞きしたいと思います。

 また、このたび、それを広げるわけでありますね。例外措置といいましょうか、それを広げるわけでありますけれども、それによって問題が生じることはないか、あるとすれば具体的にどんなケースがあり、それに対してはどういう措置をとってやっていこうとされているのかにつきまして、ちょっと今の法案自体では必ずしも見えないものですから、御説明いただけたらと思います。

塩崎議員 まず、二年前にこの法律ができたときのことを思い出してみますと、まずこの法律自体は、共産党さん以外全党が提案者になっていただきまして成立した法律でございます。今回二年目の見直しで枠を拡大しようということで、借り主の枠を拡大することにしたわけでありますけれども、今御質問の、これまでに特段の問題があったかどうかということでございますが、まずもって特段の問題は聞いていないということでございます。

 釈迦に説法でございますけれども、この法律は、金融機関なら金融機関が貸し出しをすることを約束する、コミットをする、これは一定期間、そして一定金額、そのかわり手数料を取る。その手数料を、みなし手数料ということで利息制限法並びに出資法でカウントをされますと制限金利を超えてしまうかもわからないということで、適用除外にしようという法律であるわけであります。

 九七年に北拓が破綻をいたしましたが、あの金融不安、信用収縮が起きたときに、年末、年越し資金などで大変な資金需要がございまして、みんなパニックになって借りた。必要以上のものをたくさん借りたということの結果として、中小企業に、BIS規制等々の関係もこれあり、回っていかなかったということがございました。ということで、やはりこういう融資枠契約というものがあるべきではないかということで議論した結果、九九年にこの法律が通ったわけでございます。

 その際一番問題になったのは、やはり融資枠契約ということで約束をしているんだから必ず借りられるということで、大変よく見える、よく聞こえるということで、弱い立場の借り手が強い立場の貸し手によって、無理やりこの契約を結ばれた上で高い手数料を取られるのではないだろうかということを一番心配しておったわけであります。

 そこで、貸し手を制限するか、借り手を制限するのか、あるいは両方を制限するのかという議論をさまざまいたしました。一番慎重だったのは、弁護士会、日弁連でございました。消費者保護ということで、特に貸金業等々でいろいろと問題が起きておりましたので、これを悪用されるんではないかということでございましたが、これまでのところ、借り手だけを大企業に制限をするということで今日までやってきて、特段の問題は起きていないということであります。

 これから拡大をしようということで今回お願いをしているわけでありますけれども、このときも、貸し手側の交渉力の強さによって借り手が不当に高い手数料などを請求されないかということがやはり一番心配でございまして、それがために、今回、とりあえず資本金を五億円から三億円までに下げよう、あるいは、監査が義務づけられているところ、つまり、資本市場に参加をするようなある程度交渉力を持ったところに限定をしよう、あるいは実質的には大きな企業がやっている例えばSPCであるとか会社型投信であるとか、こういうところにまで広げていって、交渉力のあるところだけにとりあえず拡大をしようじゃないかというのが今回の改正の趣旨でございます。

 したがって、どのような問題が起こり得るかといえば、やはり同じように、交渉力のない側、つまり、今回三億円までバーを下げますから、その際に入ってくる企業で同じような問題が起きないかどうかということを我々はこれを施行する中でウオッチをしていかなければならないと思っております。

増原委員 どうもありがとうございました。

 それでは次に、今、多量の国債が発行され、債券市場は金融緩和によって低水準の金利で推移してきておりますが、私は実は今の状況というのは非常に危険な状況にあるんではないかというふうに思っております。特に、これまでのいわゆるバブルのときの不良債権の処理が十分に進んでいない、そして、これから二年間かけてやっていこう、こういうわけでありますが、そうした過程も含めての話になるのでありますけれども、場合によってはまた公的資金が必要になるのではないかという懸念を持っております。

 そうした中で、例えば民間の資金需要が回復をしてきた場合、先ほどの小林政策統括官のお話だと、どうも余りその心配もないのかなというふうな国内の情勢でありますけれども、しかし一方で、円に対する信認というものが落ちれば、具体的に言いますと、先行きの円高懸念が大体払拭されてくれば、今のような国内の金利ですと、我が国の多額の資金が短期間で海外に流出をしていくということも十分考えておかなくてはいけないんではないかと思っております。そうした場合には、いわゆる国債を中心とする債券市場、これはクラッシュが来るというふうに私は思っておりますが、それについてどのようにお考えになっているかにつきまして、御回答をいただければと思います。

 金融担当大臣が出られて、全部出られましたか。金融庁の方はだれもおられませんか。大臣はいいけれども、どなたかいらっしゃらないの。村上副大臣でも小林統括官でも結構ですが。(発言する者あり)

 それでは、もう一度質問をさせていただきます。

 今、大変な額の国債が発行され、残高ベースでもかなりのものになっております。本当にこれから、我が国の国内における民間の資金需要の回復であるとか、あるいは円高懸念が払拭されて、今の日本の国内金利を嫌がって我が国の資金が海外に多額かつ短期間で流出するといったような場合、もちろん相当な円安にもなりましょうが、これはある意味では国債価格が暴落するわけであります。いわゆる債券クラッシュ。私は、その懸念が近い将来に相当迫ってきている、その懸念は十分にあるというふうに思っておりますが、金融担当副大臣の村田さんの御答弁をお聞かせいただけたらと思います。

村田副大臣 大変恐ろしい話の予想をされていますけれども、私どもは、そういう債券クラッシュが起こらないように、日本経済のファンダメンタルズの回復のために、景気回復のために一生懸命経済政策を駆使して、順調な景気回復軌道に乗せていきたい、こういうふうに考えております。

 巷間、そうした国債とか債券相場のクラッシュというものをあおり立てる風潮もありますが、私どもは、今のところ基調は十分備えられるという考え方でおるわけでございます。

増原委員 今の御答弁で、一面は私は当たっているとは思うんです。景気対策、景気が悪くなると確かに資金需要もなくなってということになりますので。

 それもあるんですけれども、やはりマーケットとしては構造調整を求めているんじゃないでしょうか。それをきちっとやるスピードがおくれれば、資金が海外に流出する危険性は物すごくあると私は思います。それは日本のマーケットに対する、経済に対する信認が崩れることですから。その点がやはり一番大事なんだろうと思うんです。

 仮の話なんでありますけれども、今長期金利が一・五%前後ですか、でありますが、仮にこれが倍の三%になった場合に、いわゆる主要金融機関、都銀とか生保など、このあたりではどの程度の債券の含み損を抱えることになるでしょうか。

村田副大臣 金利リスクでございますけれども、各主要行でその定量的な計測、把握を行うとともに、先物やスワップ等を通じたヘッジ取引や残存年限の入れかえ等を行うことにより、適切なリスク管理を行っていると私どもは承知しているわけでございます。

 金利が上昇しまして債券価格が下落した場合の主要行に与える影響についての御質問でございますが、各行が保有する債権の残存期間やヘッジの状況、今申し上げたとおりでございますが、金利上昇のペースやそれに応じた売買の状況等の要因が複雑に関連することから、一概に申し上げることは困難でありますけれども、主要行について、金利が上昇した場合の債券価格下落に伴う残高及び自己資本比率への影響を機械的に試算すると、主要行が保有する債権残高は十三年三月末で約六十兆円となっております。仮に長期金利が三%に上昇した場合には、現在よりも約二%金利が上昇することになります。そして、債権の平均残存期間は三年程度であるため、機械的に試算すれば、評価額は約四兆円減少いたしまして、含み損は約四兆円となる、こういうことでございます。

 ただし、自己資本比率に対する影響は〇・六%程度の低下にとどまるほか、ヘッジ取引により価格変動リスクを回避できるということを勘案しますれば、金利上昇に伴います債券価格の下落が銀行に与える影響は限定的であると私どもは考えているわけでございます。

増原委員 いろいろな試算はあるんだと思いますが、ある試算によれば、十兆円を優に超えるというふうな試算を出されたところもあるようであります。いずれにしましても、日本の金融システムの危機をどのように管理していくかということにもつながってくるんであろうと思います。

 さきの金融国会でいろいろな危機管理施策をつくられましたが、そのときにおける一つの問題として、公的資金は申請主義によって受けるというのがありました。しかし、私は、今後起きる危機、起きた場合の大きさというものを考えた場合には、それだけでは不十分なのではないか、むしろ一定の基準のもとに当局が強制的に公的資金を入れて、金融システムの動揺を抑えるというふうな、金融システムの危機管理のための施策も今後考えていくべきではないかというふうに思っております。

 与えられた時間も大体参ったようでございます。このあたりで終えたいと思いますが、いずれにしましても、今の日本の経済あるいは財政の状況も非常に厳しい、ナローパスの上を歩いているんだろうと思います。そういう意味で、政府の方も非常に大変だとは思いますが、とにかくもう二度と前回のような危機というんでしょうか、それを起こさないようにするにはどうしたらいいか、この点について十分お考えになって今後行政を進めていっていただきたいと思います。私どももそれに対しまして全面的なバックアップをしてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 どうもありがとうございました。

山口委員長 松本剛明君。

松本(剛)委員 おはようございます。

 日程が変更になって、私で終わりということのようでございます。この前、質問をさせていただいたときは、私が終わったらみんなが帰れる。きょうは、私が終わったらみんながお昼を食べられるということですと、委員の皆さんに恨まれないように、きちっと時間でやらせていただきたいと思います。

 今の増原先生のお話、大変大事なお話で、続きをやりたいような気がするぐらい大変重要な話ではないかというふうに思うんですが、まずは、きょうの審議の案件であります特定融資枠契約に関する法律について、一、二質疑をさせていただきたい、このように思います。

 この二年間の経緯については、今も質問があったようであります。二年後に見直しという規定に基づいて見直しの準備をお進めいただいてここに到達をしたんではないかというふうに思いますが、実際にどんなところをヒアリングされて、どんな御要望をお聞きになられて今回の範囲拡大に至ったのか。逆に申し上げれば、おっしゃっていただきにくいのかもしれませんが、幾つか御要望を聞きながらも今回見送った部分もひょっとしたらおありではないかというふうに思うんですが、そんな点も含めて、今回の改正の経緯、かいつまんで提出者の方に御説明をいただけたらありがたい、このように思います。

塩崎議員 先ほど経緯については御説明したとおりでございますが、二年のめどをもって見直すということでございました。おかげさまで、導入をしたのが平成十一年、九九年の三月末でございましたが、その夏ごろに六百件ぐらい、銀行、保険あたりで、調査をしてみますとそうなっております。その一年後の去年の八月ぐらいになりますと、その倍になって千二百件ぐらい使われているということでありますから、恐らく今になればもっと使われていると思います。必ずしも融資だけのコミットメントラインではなくて、CPのバックアップラインとしてもかなり使われているというふうに認識をしているわけでございます。

 この見直しに当たって、今回、我々、いろいろな方々にお聞きをいたしました。もちろん経団連というか、大企業のサイド、それから、今回特債法の関係業者を入れることになりましたが、リース協会等々の関係団体からもお話を聞きました。それから、もちろん銀行、貸し手側、金融機関からもお話を聞きました。さらに、中小企業団体からもお聞きをいたしました。御案内のように、今回資本金のバーを五億円から三億円におろすわけでありますけれども、中小企業の関係団体の中には当然その範囲に入るところがございます。そういうことでお聞きをいたしました。

 そういったところに加えて、消費者のサイドということで、日弁連の御意見もお聞きをいたしました。日弁連は終始非常に慎重でございまして、行為規制等々について非常に御熱心な御意見をちょうだいいたしましたが、総合勘案した上で今回のようなことになったということでございます。

 あえて見送ったのはどこかということを申し上げれば、それは中小企業のジャンルだと思います。

 実は、私どもの自民党の中で議論した際にも、本来こういうものは何のバーも設けずに、中小企業を含めた全部の企業が借りられるように、こういうものを利用できるようにしたらどうだ、そのかわり行為規制みたいなものでびしっとやればいいじゃないか、こういう御意見もありました。ありましたが、やはりこれを実効あらしめるためには、かなりの体制と、それから、どういう行為規制が要るのかとか、こういうことをやらなければいけないということで、今回はとりあえず、今お願いをいたしております範囲の拡大ということで、また二年間様子を見て、その上でさらにまた広げていこうということで、特にここの業界に広げてほしいという話で、いや、だめよということになったところはございませんでした。

松本(剛)委員 一点確認でありますが、中小企業について、これはアンケートの資料を私もいただいたわけでありますが、希望するというのは一割強ぐらいであったように思いますが、提出者塩崎先生御自身がヒアリングをされた感触としては、皆さんの感じはどんな感じであったんでしょうか。あればいいなという感じであったのか、特に要らないという感じであったのか、ちょっとお聞かせをいただけたらと思いますが。

塩崎議員 中小企業庁などでとったアンケートは今先生がおっしゃったとおりでございますが、やはりまだこの仕組みそのものが十分に御理解をいただいていない部分がたくさんございまして、私も地元でいろいろ話を聞いてみますと、確かに、貸すことを約束してくれるような契約は大変結構なことじゃないか、こういうことでありますが、当然リスクプレミアムが手数料に反映をされるわけであって、もしこの融資枠を中小企業の皆さんがお使いになるということになると手数料が結構取られるかもわからないというお話をセットでお話し申し上げますと、やはり、それじゃもうちょっと待つかなと。

 もちろん、皆さんは金融機関からの融資を受けるのに相当苦労されているわけでありますから、約束をしてくれるというこの融資枠契約そのものは一見いいように聞こえるわけでありますけれども、やはり、手数料で結局実質的な金利負担というものが大きくなるんだということを考慮すると、やや、まだ、じゃやってみようかというところまでにはいっていない。よほど金融機関との交渉力があるような成長盛りの中小企業であるならば別かもわかりませんが、一般的にはなかなか、高い手数料を払ってまでこの融資枠契約を受けるというお考えには至っていないというふうにお聞きをいたしました。

松本(剛)委員 もう一点は、特定目的会社系の幾つかの法人が具体的に記されているわけでありますが、特に今回で言えば第七項になるんでしょうか、大変込み入った定義をされて、俗に言う広義での特定目的会社についても入れる必要があるという御判断をされたんだろうというふうに思いますが、これは、こういう形をつくるとなれば、法的にも相当な手間がかかる作業を積み上げた上でこういう定義をされたんだろうというふうに思いますが、この辺は相当要望が強かったという理解でよろしいんでしょうか。

塩崎議員 正直申し上げまして、今回、見直しに当たっていろいろなヒアリングをする中で、このようなニーズがあるということを私どもも知りました。したがいまして、随分いろいろと調べさせていただきまして、今回このような結果になったわけであります。

 いわゆるSPC法というのは、改正までされて、非常に使い勝手のいいものに、最初のものに比べるとなったわけでありますね。ありますが、やはり流動化計画をつくらなきゃいけないとかいうことがかなり負担になるわけですね。もちろん資本金が、SPCの場合には十万円でいいわけでありますけれども、普通の株式会社であれば一千万円要るということで、コストは若干かかるように見えますけれども、その手間からいくと、非常に簡便に、流動化のために株式会社、有限会社を使うというケースがあるんだということを私ども知りました。

 いろいろ業界の方々に聞いてみると、おおむね五千億ぐらいの資産を流動化しているんじゃないだろうかというふうに聞いておりまして、そういうことであるならば、やはり、このようなものを対象にして、いわゆる資金調達の安定性というものを確保してさしあげるということは、我々としても立法者の責務ではないか、こう思ったわけであります。

 では、それをどうやって定義するんだというのは、大変また厳しいいろいろなテストがあるわけでありますが、この法律案に書いてありますように、流動化を専らの言ってみれば目的とするという、「専ら」というところでこれをちゃんと見れるじゃないかということで、こういうことにしたわけでございます。

 結構活用されているようでありまして、今申し上げましたように、五千億円ぐらいの流動化が行われておって、ローン債権であるとかあるいは売り掛け債権であるとかさまざまなものを流動化するために簡便に使っている。私募的なものが多いとも聞いておりますけれども、そのようなことでございまして、これを悪用して、そうじゃない会社が割り込んでこないように、「専ら」という言葉を入れて峻別をしているということでございます。

松本(剛)委員 御努力、よく聞かせていただきました。

 今お話があった流動化ということは、今回も大変重視をして恐らくこの項目を取り入れ、また、定義に御苦労がある中でもあえて取り入れられたのも、ニーズにこたえよう、こういうことであろうというふうに思います。これから我が国の金融においても、証券化、流動化、ストラクチャードファイナンスというのは大変重要な地位を占めるというふうに私も思っております。

 けさ、インターネットから引いてきたスタンダード・アンド・プアーズの格付が私の手元にもあるんですが、実は、貸付債権担保つきの住宅金融公庫債券というのが、トリプルAを五月に発行の分が取得をいたしております。後のページを開くと、大変残念でありますが、我が国の長期債の格付は、スタンダード・アンド・プアーズではダブルAプラスでありまして、国の格付がダブルAプラスで特殊法人である住宅金融公庫債券の格付がトリプルAである。これはまさに、貸付債権を流動化してこれでバックアップされている、担保されているということによってトリプルAが取得をされるということであろうというふうに思います。

 手元にずらっと表があるんですが、これは皆さんもインターネット等でよくごらんになっていると思いますが、ずっと拝見をしますと、かなりいろいろな種類が出ております。率直な申し上げをすれば、聞いたこともないような会社もトリプルAがとれている。これも、それぞれ特定目的会社とかそういった形の、今の広義のそういったものを利用しての形であろうというふうに思うわけでありますが、ここに、これから先、大変重要なかぎが一つあるんではないかな、このように思います。

 スタンダード・アンド・プアーズの格付のレターでも、住宅金融公庫債券の格付をするに当たっては国の機関であるという要素を勘案しないわけではないというふうには書いてありますが、明らかに国より上位の格付がとれている。また、民間の、今おっしゃったような自動車オートローンとか、そういったものの債券についても、トリプルAをとっている債券がたくさんあるということであります。

 今、小泉内閣では、まさに民間でできるものは民間でできるだけやるということで、今、もう住宅金融公庫だからトリプルAということではなくて、住宅債権を流動化したからトリプルAがとれているというふうに見てもいいのではないか。とすれば、これから、民間がそういった融資を行っていくときに、こういうストラクチャードファイナンスのマーケットをきちっと整備するということが大変重要な要素を占めてくるのではなかろうかな、このように考えているわけであります。

 特に、住宅ローンというのは二十年、三十年という、そして借り手の側からすれば、やはり超長期固定で借りられるということが非常にありがたいわけでありますが、貸す側からすれば、超長期の固定というのは、先ほど増原先生からも債券相場の問題がありましたけれども、大変な金利リスクを抱えるということになります。今から十年前の金利を思い出してみるだけでも、想像がつかないぐらい変わってきているわけでありますから、二十年、三十年という金利リスクを抱えることを考えれば、超長期固定の住宅ローンなんかは必ず証券化、流動化をしていくしかない。

 そういう形によって、むしろ住宅ローンのニーズを必要とする国民にもプラスになるし、それを引き受ける金融の側も、きちっとマーケットで処理ができるという形になってくるというふうに思うわけでありますが、今、このストラクチャードファイナンスのマーケット、率直に申し上げれば、まだまだ機関投資家の世界というのが実情ではなかろうかというふうに思います。

 金融庁の方々とお話をさせていただいたり、多くの金融関係の方々とお話をさせていただいたりする中でも、とりあえずプロの機関投資家の間で育てて、いずれは個人にというようなニュアンスのお話を伺うことがあるわけでありますけれども、これそのものが、私は、ちょっと待てよ、昔からの考え方ではないのかな。まさに、きょう参議院の本会議、たしか確定拠出型年金の趣旨説明というふうに記憶をいたしておりますけれども、こういった年金の資産なんかを考えたときにも、今の住宅金融債権などは、まさに二十年、三十年で固定で、しかもトリプルAの格付のとれる債券ということであれば、投資対象としても考えていくべきではないかな、こんなふうに考えているわけであります。

 その意味で、一つは金融庁の方に、金融担当村田副大臣の方に、今のこういったマーケット、現状をどうごらんになっていて、またこれから整備をどうされるのか、どのようにお考えになっていくのかということをお聞きいたしたいと思いますし、できましたら、やはり金融については大変御達見の塩崎先生にもこういったことについてお伺いをいたしたい、このように思いますので、それぞれお願いをいたしたいと思います。

村田副大臣 松本委員にお答えいたしますけれども、大臣が今参議院本会議の方で答弁をしておりますので、私がかわりましてお答えをさせていただきたいというふうに思っております。

 ストラクチャードファイナンスという、この定義がいろいろあるようでございますけれども、資産の証券化、流動化ということで理解をしますと、提案者の塩崎先生からのお答えもございましたけれども、近年大変活発になってきている。四月の日経新聞にも、ABSの昨年の発行残高が二・四兆円に上った、こういう記事も出ておりまして、この数字は前と比べますと一八%の伸びだ、こういうことのようでございます。

 私どもとしましては、そうした新しい投資対象がふえていく、そして資金の流通が、供給が図られる、そういう市場が整備されていくということは、二十一世紀の金融制度というものを考えたときに大変好ましい現象であるというふうに考えております。そういった意味で、SPC法も、使い勝手のいいようにということで改正をした、こういうことであるかというふうに思います。

 ただ、一方において、今個人には広がっていないんじゃないかという御指摘がございましたけれども、JAPAN−REIT、不動産にかかわるものにつきましては、不動産投資については東京証券取引所に上場制度ができた、こういうことで、まだ具体例はないようでございますが、そうした道が開かれることによって、個人がそうした投資に参加しやすくなる環境というものも整備されつつあるのではないかなというふうに考えております。

 一方において、投資というのは個人の自己責任において行われるものでありますけれども、我々としては、SPC法とか投信法において法制度の基本的な整備を行いまして、ディスクロをより充実するということをやったわけでありまして、また、昨年、金融商品の販売等に関する法律ができましたものですから、この意味でも顧客に対して情報公開を徹底するという措置なんかも講じておりまして、今後、機関投資家のマーケットだけではなくて、個人にも幅広く広がって、個人の投資対象商品としても受け入れられるということを我々としても望んでいるわけであります。

塩崎議員 松本委員の、ストラクチャードファイナンスの重要性の問題、そしてまた個人投資家への広がりの問題でありますけれども、私も非常に重要な問題だと思っております。

 先ほど、住宅金融公庫の債権の証券化の話がございましたが、あれは、SPCを使ったものではなくて信託方式ということでやっているわけでありますが、実は去年からやっと始めたということで、我々が、ABSを解禁するようにしようじゃないか、そのために第三者対抗要件の具備であるとかいろいろ制度整備をやってまいりましたけれども、一番最初にできると思えばやはりあそこじゃないかなと私も言っておりましたけれども、なかなかやらないで、去年やっと始めて、ことしもたしか二千億ぐらいやっているんじゃないかと思いますが、大変結構なことだと思います。今お話がありましたように、ストラクチャードファイナンスというのは、オリジネーターのバランスシートから外してSPC等のバランスシートに載っけるという作業があるわけであって、そのことが先ほどの格付の違いにあらわれてきているのではないか、こう思うわけであります。

 しかしながら、本当に個人投資家にこれから広がっていくためには、今村田副大臣からもいろいろお話がございましたけれども、まだまだ整備をしなけりゃいけないことがたくさんあると思っております。

 先ほどいろいろ出ましたが、例えば倒産隔離の制度をもっと整備しないといけないのではないのかということもありましょうし、それからディスクロージャー、確かに今お話が出ました、しかしまだまだ徹底されていない。

 それから、サービサーは今回も適用範囲の拡大ということで皆様方にお願いをしたわけでありますけれども、例えばこのサービサーの格付というのもまだ行われていないような状況でありますから、こういうところで当然、SPCのサービシングというのをやる主体としてのサービサーの向上というものも絶対に必要だ。

 それから、今J―REITの話がありましたけれども、UP−REITというものを導入すべきじゃないかということを私は言っておりますが、これには実は税がついてこないと制度が成り立たない。これが非常にネックになって、もう二年難儀をしているわけでありますが、ぜひまた協力を皆様方にもしていただきたいと思いますけれども、こういった税でのきちっとしたインフラがないと、個人もまた入りづらい。

 そして、最後に大きな枠組みとして、やはり投信などの場合でもそうでありますけれども、ディスクロージャーを徹底させるというのはだれがさせるかといえば、やはりそれは当局の政策でなければならないと思います。

 その際の当局というのはどこなんだ。今、もちろん金融庁でありそれから証券取引等監視委員会であるわけでありますけれども、まとまって一カ所できちっと資本市場、直接金融市場を見る場所というのは、私は個人的にはやはり必要だと思って、いわゆる日本的な、日本版SECみたいなものが絶対要るんじゃないか、こういうふうに思ったりしているわけであります。

 いずれにしても、一括して、投資家保護あるいは投資教育等々を含めて強力な体制を組むことによって、間接金融から直接金融というのが、単なるお題目だけではなくて、個人投資家までの広がりを持てるようなものにするための最低限必要なものではないかと思っております。

松本(剛)委員 特に塩崎先生とは大変認識を共通にするところがたくさんあるのではないか、どちらがどちらによって一緒に手を携えてやるのかよくわかりませんけれども。

 今お話があったように、一つは、あえて住宅金融公庫債券を取り上げさせていただいたのも、これから特殊法人をずっと見直していく中で、特に政府の融資という形で、政策融資という形で行われているものをどのように民の方へ振っていくかということを考えたときに、やはりこういったファイナンスのマーケットというのは大変重要になってくる、このように思います。

 そして、このマーケットでは、私も認識は全く一緒でありまして、今おっしゃった税の問題、ディスクロージャー、情報開示の問題。これも、投資家にとっての情報開示という視点からわかりやすい形というのを、申し上げたいことはたくさんあるんですが、時間が限られておりますので。

 そして三つ目は、まさに今おっしゃったように、我が党でも用意をいたしておりますが、きちっとしたルールを守らせる証券取引等の監視委員会といったもの、私も必要ではないか、このように思っておりますので、認識が同じであれば、できるだけ実現に向けて努力をさせていただきたいと思います。

 そして、今おっしゃった中に、実はこの法案にかかわる大変重要な問題を一つ含んでいる、このように思います。マーケットの中は自由にして、ルールをきちっと決めておいてそれを守らせる、これがまさにこれからのマーケットの一番大事なことではないか、このように思うわけであります。

 今回の法案も、まさに先ほど提出者の塩崎先生のお話の中にありました、借り手保護という形で、どのぐらい、いわばコミットメントラインという金融商品をだれが受け取るというか使うことができるのかという話でありまして、今回のこの法案は、まだその意味では、借り手保護のために商品の範囲を限定するという、ある意味では昔ながらのやり方を採用しているという部分があるのではないのかな。

 行為規制は難しいというお話がありましたが、これからマーケットを育てていくとすれば、やはりそれを考えていく必要があるのではないのかな。今回も、先ほどもお話ししたように、中小企業も、一割という数字が多いと見るか少ないと見るかというのは大変難しいところでありますけれども、ニーズがあるわけでありますし、手数料が幾らになるかということがあるかと思いますが、現実の問題として、多くの中小企業にとって、やはりいざというときの資金繰り、事実上のバックアップというのは絶対に必要であります。結局どうしているかといえば、多くの企業は、預金を預けておいてその範囲でいつでも引き出せるようにする、企業の側に預金の余裕がなければ社長なり役員の預金を預けておいてその範囲で引き出せるようにするとか、そういったことをしているケースが決して少なくないように思われるわけであります。

 そんなことを考えると、コミットメントラインの範囲を中小企業、借り手と貸し手の強弱ということで限定をしても、結局のところは、むしろこれから行為をきちっと規制するべきではないのかな。私たちは、そういう意味で一つのこういった金融のルールを決めるという意味で、今回、地域金融の円滑化に関する法律案というのを今準備いたしております。

 要点を申し上げれば、貸し手と借り手の間の手続をきちっとルール化をする、場合によっては貸出基準を公開していただくなり、貸し出しを拒否する理由をきちっと書面なりで出していただくというようなことの方向へ誘導するということが一つ。

 もう一つは、銀行の場合、今ディスクロージャーは健全性という意味で、銀行そのものの健全性のディスクロージャーは大分進んできているというふうに思いますけれども、銀行法で言ういわゆる公共性、金融を円滑に預かる、円滑にさせていくという意味での公共性の部分のディスクロージャーというのをこの法案で行うことができないだろうかということで、これは私もいわばチャレンジの法案だというふうに思いますが、いわば今まで踏み込まれていないフィールドだというふうに思いますが、これから、さっきお話しさせていただいたように、マーケットということで、中を、マーケット自身は自由に、しかしルールはかちっとということであれば、金融部門においてもこういったルールが必要ではないか、このように思っております。

 金融担当の村田副大臣の御所見と、できましたら塩崎先生の御感想をお伺いしたい、このように思います。

山口委員長 時間が来ていますので、簡潔に御答弁を。

村田副大臣 銀行法第一条の公共性、これが三つばかり挙げられておるわけですけれども、その公共性という銀行、金融機関が持っている使命をどう解釈していくかということであります。

 そういう観点からいいますと、私どもは、融資がどう行われるべきかということはあくまで銀行、金融機関の自主的な判断、その基礎には市場原理、市場メカニズムが基礎にある、こういう観点から行うべきである。ディスクロージャーにしても、これは大臣が再三再四にお答えをさせていただいておりますけれども、銀行経営の健全性という観点からディスクローズは求められているし、その責任がある、こういうことであろうか、こういうふうに思っているわけであります。

 民主党の法案をちょっと拝見させていただきましたが、そういう観点から申しますと、一律に、法律をつくって融資の内容について報告を求めるとかあるいは監督をするというようなことはなすべきではないのではないかという考え方を御披露させていただきたいと思います。

塩崎議員 アメリカのCRA法を想定しての日本版のものを考えていらっしゃるのではないかなと思いますが、結論からいうと、ルールを守るということでやることが大事だというお話がありましたけれども、結局、ディスクロージャーによる銀行に対する言ってみればプレッシャーを活用しながらやろうということだろうと思います。

 そうなると、今村田副大臣からも話がありましたけれども、銀行の公共性というものと、それからどこまでディスクローズするかということの兼ね合いをよく考えていって、もし可能ならばそういうこともあり得るかなと思いますが、それについては、まだまだ、お互いの取引関係をどこまでディスクローズするかということの問題にもなりましょうから、今後、公共性を、今まで銀行の公共性が余り担保されてこなかったというのは私も賛成をいたしますが、これから、ではそれを全部オープンにしていくのかどうかということは、少し考えていかなければいけないのかなというふうに思っております。

松本(剛)委員 いろいろな意味でチャレンジと申し上げましたし、申し上げたいことがあるのですが質疑時間も終わっております。ただ、趣旨の意義については御理解をいただけた面もあるのではないかというふうに思いますので、ぜひ中身をよく御理解をいただいて、また、できるものはこれからともに変えていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

山口委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十一分開議

山口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。

 一昨年、特定融資枠契約法を制定した際に、法律の適用対象は大企業に限定されました。その理由について、提出者であった塩崎議員は、弱者保護のために利息制限法などで上限利息は定められているが、商法監査特例法上の大会社であれば、銀行と対等に交渉する力を持っているので弱者保護の必要はない、こういうお答えでした。だから大企業に限って、コミットメントライン契約の手数料をみなし利息の適用除外としたんだ、こういう答弁であったわけですが、法制定時には弱者保護の観点から適用対象を大企業に限定したわけですが、今回は適用対象を中堅企業にまで広げる。

 中堅企業は、大企業に比して金融機関との力関係は弱いと思うのですね。ですから、中堅企業には借り手保護の必要はあるんじゃないかと思うのですが、これは借り手保護の必要はないというお考えなのかどうか、この点を最初に伺っておきたいと思うのです。

塩崎議員 ただいまの御指摘のように、当初、この法律を導入する際には、弱者保護ということで、とりあえず大企業に限定をしたということでございます。

 当時、中小企業は資本金一億円未満ということでございましたが、途中で中小企業の定義も変わりました。製造業の場合では、一億から三億までバーが上げられて、三億以下が中小企業、こうなったわけでありまして、その間の、いわゆる中堅と言われているところについては、当初から導入をしようかどうしようかといろいろ考えたわけでありますが、とりあえず最初はということで、日弁連の御意見なども踏まえて大企業に限ったわけでありますけれども、その後、この制度そのものについての周知徹底も行われ、なおかつ今までのところ全く問題にはなっていないということを考えてみれば、いわゆる風通しのいい自己責任の世界を中堅のところまで広げてみようじゃないかということで、今回ここまで広げることにしたわけであります。

 つまり、資本金三億円ぐらい持っているところであれば、大分ビッグバンも導入をされ、自己責任原則も徹底されてきている中にあって、広げていっても大丈夫ではないんだろうか、こういうことでございまして、もともと借り手も貸し手も全く規制しないで、けさほど申し上げましたように、行為規制だけでいくというのが本当は一番すっきりした形かもわかりませんが、保護のための執行体制というものがきちっとできていないという中にあっては、やはりまだこういうところではないのかな、こんなところでございます。

吉井委員 コミットメントライン契約は、金融機関が貸し手としての立場の優位性を利用して、借り手の側に不利なといいますか、あるいは不当な契約締結を押しつけるというおそれがあります。

 それは、法務省民事局の方が書いた論文の中でも、通常の融資申し込みに対してコミットメントライン契約の締結を強要し、手数料の名のもとに高金利規制を超えた利息を徴収したり、借り手に不必要な融資枠を設定させ不当な手数料徴収をすることなどのおそれがある、この指摘があります。だから弱者保護は必要だということで、一昨年、塩崎議員は、二年後の見直しまでに手だてを検討するというお答えだったのですね。

 今回の改正では、対象の拡大は行われるのだが、借り手保護の規定は何ら盛り込まれていないという点で、やはりこれは一昨年の答弁と矛盾していると思うのですが、この点はどうですか。

塩崎議員 手だてを検討するということで、確かにいろいろと考えてきました。例えば、商品ファンドを規制緩和で限度額を下げていくときにも、書類でどういうことを書かなければいけないのかというような行為規制についても導入をしたわけでありますが、今回のこのコミットメントライン契約については、格別横断的に有効な行為規制というものがいまだ実効あるものとして上がってきていないということで、この二年の見直しの時期を迎えたわけでございます。

 そういう中で、我々としては、自己責任の世界を、とりあえず二年前は五億円超ということで行いましたけれども、それを少し下げて、この自己責任の世界を広げているということで、引き続いて、今後またどういうことがこれで起きるのかということを注意深く見ながら、今後二年後に見直すという規定もまた入れている、こういうことでございます。

吉井委員 貸し渋りの横行の中で、中堅企業もその被害を受けていたことを考えれば、中堅企業なら金融機関と対等に交渉できるとは必ずしも言えないというのが実態だと思うのです。

 日銀短観の、金融機関の貸し出し態度DIでは、近年若干改善は見られるのですけれども、しかし、資金繰りDIを見れば、ことし三月の調査では、構成比では、大企業がプラス一一ポイント、これに対して中堅企業はマイナス五ポイントで、中小企業はマイナス一三ポイントと、やはりかなり厳しいんですね。ですから、借り手保護の手だてをとらずに対象だけ拡大する、これは問題だということをやはり言っておかなきゃいけないと思うのです。

 しかも、今回の改正には、今お話ありましたように、二年後の見直しの条項が改めて盛り込まれているわけですね。そうすると、今度は中小企業にも対象を拡大するということを念頭に置いてのものなのかどうか。中小企業への拡大を目指すということについては、私は随分問題があると思うのですが、この点はどうお考えなのか、伺っておきたいと思います。

塩崎議員 二年後の見直しについての方向性というのは、この二年間の実施の間で何が起きるかを見ながら考えるということでございまして、今回の議論をしたときに、両方ありました、けさほど申し上げましたように、全部行為規制だけで、あと全部規制をなくせという意見もあれば、日弁連のように、引き続き貸し手を制限するべきではないのか、あるいは行為規制も一緒に導入すべきじゃないのか、いろいろありました。

 したがって、今回かなり広がりますから、これでどのようなことが起きるのかということを注意深く見ながら、行政にもちゃんと見ていただきながら、我々も次なる見直しに向けて考えをまとめていきたい、こんなふうに思っております。

吉井委員 法務省の方の指摘なども踏まえて、私は、中小企業へ広げるということについてはやめるべきだというふうに考えます。

 次に、柳澤大臣にも伺っておきたいと思うのですが、東の大田区、西の東大阪市というのは、基盤的技術の二大集積地として、日本の物づくりにとって重要な位置を占めると中小企業白書でも記載をしております。ところが、国金総合研究所の全国小企業動向調査結果というのを見ますと、今そこが、全国の業況判断DIよりもずっと悪いんですね。ことし一―三月期で、東大阪市はマイナス六〇・〇ポイント。

 東大阪市の商工会議所の調査などによりますと、有名なガレージ工場という名で貸し工場というのは集中しているわけですが、その貸し工場の集中している高井田、新家、柏田といった地域で、貸し工場から出ていく最大の理由は何ですかというのに対して、やはり廃業、倒産ということになっているんですね。

 実は、貸し工場などが集中しているということは、中小町工場のネットワークによって、旋盤とか溶接とか、さまざまな技術集積によって、非常にすぐれたロケット、人工衛星から新幹線の先頭車両に至るまで、非常に機微を要するものとか、そういうものをつくってきたところなんですよ。この技術集積の力を失わせていくという問題が出ているわけです。それはまた、地域全体の物づくりの力が落ちることにもなり、日本経済にとっても、日本の大田とか東大阪といった基盤的技術を持ったところが落ち込んでいくということは、新しい製品開発などを含めて本当にこれは大変な問題を持っているというふうに思うんです。

 そうした中で、都銀の貸し渋りとか、都銀を補完する政府系金融からもなかなか借りられないとか、その結果、仕方なく商工ローンしか借りられない事態になって、機械もすぐれたたくみのわざも失われていくというふうな大変な事態が生まれているというのは、中小企業の町の厳しい現状です。

 私は、前回質問をするときに通告しておいた具体の例はありますが、それは商工ファンドの問題とか道銀の問題とか、個別具体の実例も挙げながら聞こうということでやっておりましたが、きょうは時間の関係で、その個別具体の話はおいておきます。

 問題は、商工ローンの不当な行動がやはり今も全国で目立っておりますし、それから、大手都銀がそこへ貸し付けておる。本来、本当に物づくりで頑張っているところへお金が、血液として流れなきゃいけないのに、それが詰まってしまって流れるべきところが全然違う。商工ファンドだ、日栄だといったところに流れてしまって。これは本当に大変な問題だと思うんです。

 けさもありました銀行法第一条の公共性という点からもそうですし、銀行には銀行の倫理憲章というのがありますし、この倫理憲章の立場に立って、同時に、まだ日本では法律としてありませんが、アメリカの地域再投資法のような観点に立って、やはり地域産業や地域経済に社会的役割を果たしてもらうようにする。銀行にはやはりそうした社会的役割を果たさせるようにする。そういうことが、金融担当をしていらっしゃる大臣としてもやはり本当に力を入れて頑張ってもらう必要があると思うんですが、この点についての柳澤大臣のお考えというものを聞いておきたいと思います。

柳澤国務大臣 先生御自身、先ほどの塩崎提出者に対する御質問の発言の中でおっしゃられたとおり、中小企業に対する融資態度というものは、いっときに比べてかなり改善を見ているということは事実としてございます。

 そういう中でも、今お触れになられた商工ファンドのようないわゆる貸金業の方々が、いろいろまだ非常に融資の需要にこたえるという面があるのは私も耳にしているところでございます。そういう方々にはそういう方々の需要があって活動されている。これは全面的に否定ということにはならないと思うんですけれども、中小企業者、特に、技能、技術というようなことで社会的に大いに意義のあることを今後とも期待されるような方々がそういうような貸金業の方々の商売の相手になって非常に不都合ではないか、こういうことでございます。

 このごろは、先生の方が既に現場でよく御存じかもしれませんけれども、大手銀行の中にも、自分たち自身の利ざやというものを確保するために、そういう貸金業の方々と、超優良な、例えばプライムレートで貸し出しができるような、そういう中小企業の皆さんとの間にいわゆるスモールビジネスというか、そういうスモールビジネス向けのローンというようなものを考えて、自分たちもいいし、また、相手の中小企業の皆さんも、貸金業よりもはるかに有利な金利条件でもって貸し付けを受けるというようなことを大いにやっていきたい、そこに力を入れていきたい、そういうようなことも私ども聞いておるわけでございまして、私は、なかなかマーケットメカニズムというのはうまく働くなというようなことで、その限りでは、私もそうした現象をむしろ積極的に評価しているわけでございます。

 いずれにせよ、今先生がおっしゃられたような特別な、今後とも社会に残すべき技能、技術を持っている中小企業の皆さんが、この経済の状況、そこには私は構造的要因と循環的要因があろうかと思うんですが、循環的要因のために店を畳まなきゃならぬようなことはいろいろな形で回避していかなきゃならぬことだ、私どもはこのように考えております。

 いずれにせよ、中小企業の皆さんに対しては、例えば貸金業者の方々については貸金業法その他の法令の遵守が大事ですし、これに反するようなことがあれば厳正に対処するということで、そういうことを通じて、私ども、しっかりした方向と申しましょうか、その人たちがいたずらに社会的な存在を終えてしまうようなことを避けていきたい、このように考えております。

吉井委員 商工ローンなどの問題について、あるいは銀行の融資態度の問題について個別具体の事例も挙げておきましたので、きょうはもう時間の関係でおいておきますけれども、やはりきちんとした対応をやっていただきたいというふうに思います。

 次に、国際熱核融合炉、ITERに名をかりた大型公共事業と言われている問題が今出てきております。それと財政の問題。これは非常に大事な課題ですので伺っておきたいと思うんですが、六月五日に原子力委員会は、ITERの日本誘致というITER計画懇談会の報告書を尊重して推進していくことが妥当と結論づけました。

 これまで科学技術上の大型プロジェクトについては、広い分野の専門家の意見を必ずしも十分反映させてこなかったという問題とか、批判の声など無視して突っ走って失敗したということが随分あります。

 一例を原子力船「むつ」について見ますと、まず、当初予定した総所要資金額約六十億円で「むつ」はできるということで始めたんですが、最終事業費は千二百五十四億円。二十倍になったというふうに思うんですが、まず、この数字は間違いありませんね。最初に確認しておきます。

今村政府参考人 お答え申し上げます。

 総事業費、当初六十億円ということ、それから、開発が終了し、解役を行われました時点までの総事業費一千二百五十五億円ということで、そのとおりでございます。

吉井委員 「むつ」の場合、二十倍になったわけですよね。

 次に、高速増殖炉「もんじゅ」の開発までの高速増殖炉開発全体について見ていきますと、「もんじゅ」の当初計画では事業費が三千三百二十億円で始まったんですが、「もんじゅ」だけで今年度までで七千七百六十一億円要しておって、これは二・三倍ぐらいになりますか、使っているわけですが、実際には「もんじゅ」だけじゃなくて、「もんじゅ」と「常陽」と高速増殖炉研究開発費、その他のMOX燃料をつくるとかその辺はちょっとおいておいて、この三つだけを合わせても一兆四千九億円の総事業費になっています。

 プルトニウム循環方式の原発開発のために、一九五六年度以来、動燃事業団、今の核燃サイクル開発機構の総事業費は五兆七百二十三億円に上っていると思うんですが、この動燃事業団の総事業費、これも最初に確認しておきたいんですが、これでいいですね。

今村政府参考人 今先生のお話しになりました一九五六年以降の総事業費といたしましては、五兆八百七十四億円でございます。先生がお話しになりました数字の方は、五兆七百二十三億円ということでございますが、これは動燃事業団が発足いたしました一九六七年以来の数字でございまして、一九五六年ということでございますと五兆八百七十四億円ということでございます。

 なお、このうち、政府支出金の総額が三兆六千九百四十四億円、産業界からの出資が六千七百三十億円、自己収入が七千百九十九億円となっております。

 以上でございます。

吉井委員 いずれにしろ、五六年度以来ですと五兆八百七十四億円使ってきた。五兆円を超える物すごい金を使っているんですね。

 「もんじゅ」中心に直接の高速増殖炉開発に投じたのが一兆四千億円を超えるわけですが、もちろんこれは、再処理工場でプルトニウムを抽出し、さらにMOX燃料をつくるとか、そこらはちょっと別にしての話なんですけれども、それだけ事業費を使って、それで「もんじゅ」は事故で停止しておりますが、高速増殖炉の実用化というのは三十年以上先の話ということに今なってきて、なかなか見通しが立たないという実情にあります。

 この動燃事業団、核燃サイクル開発機構の総事業費五兆八百七十四億円というのは、例えば再生可能エネルギーの研究開発費の年間予算、これはとり方はさまざまでありますから、一応、風力とか太陽光発電の調査・技術開発の予算、それからバイオマスによる、メタンとかメタノールとか、それと燃料電池を組み合わせて進めるという燃料電池の開発まで含めたとして、大体年間二百十一億円とか二百億円そこそこですから、そうすると、動燃で使ってきたお金というのは、再生可能エネルギーの研究開発予算の二百五十年分なんですね。それだけ使って高速増殖炉実用化の見通しは立っていないというのが今の実情です。

 世界的にはプルトニウム循環路線からの撤退の時代にありますが、原型炉「もんじゅ」をやって、原型炉を生かしたどんな実証炉を考え、それをさらにどういう商業炉につないでいくのかとか、今、見通しはないわけです。ないままに、とにかく高速増殖炉「もんじゅ」の再開だけをやろうとしているわけです。

 そこで伺っておきたいんですけれども、「もんじゅ」をやって、それが近く商業炉につながっていくという何か見通しを持っていらっしゃるんですか。この見通しを伺っておきたいと思うんです。

今村政府参考人 お答え申し上げます。

 高速増殖炉の実用化の件につきましては、昨年取りまとめられました原子力開発利用の長期計画におきまして、「実用化に向けた研究開発の過程で得られる種々の成果等を十分に評価した上で、具体的計画の決定が行われることが適切であり、実用化への開発計画については実用化時期を含め柔軟かつ着実に検討を進めていく。」というふうにされております。

 具体的に申しますと、「もんじゅ」につきましては、先般、地元福井県等の御了解を得まして安全審査入りの運びになったわけでございますが、一日も早く開発を再開いたしまして、発電プラントとしての信頼性の実証を行い、その研究成果を得ること、さらには、これと並行いたしまして、実用化のためにどういう部分のコストダウンが必要かといったような戦略的調査研究を、今、サイクル機構と産業界が一体となって進めておりますが、そうした成果を十分評価した上で高速増殖炉の実用化の展望が開けていく、このように考えているところでございます。

吉井委員 一九五六年以来ですから四十五年やってきて、それで、今もお話があったように、柔軟かつ着実に進めるというお話はあっても、「もんじゅ」が商業炉につながるという見通しは今さっぱり立っていないのが実態だということをまず私はきちっと押さえておく必要があると思うのです。

 そういう中で、今度、ITERという話ですが、国際熱核融合炉、ITERのプラズマ主半径と建設費というのを、当初計画は一兆円と言われておって、それを半分にした。コンパクトITERと言っているもの。二月の予算委員会でのお話では、八・一メートルのプラズマ主半径で大体一兆円を六・二メートルで五千億円というお話でした。

 今村局長はそういうふうに答弁されておったのですが、先日、私、これを質問するというのでデータを持ってきてもらうと、コンパクトITERで四千四百五十六億円だというわけです。だから、財政危機の状況下なので四千四百五十六億円と低目の数字に変えたのかもしれませんが、まるでバナナのたたき売りみたいに金額がどんどん縮んでいくということ自体が非常におかしい話だと思うのですよ。

 当初、四極で始まったんです。今、三極で費用負担をするといっても、ロシアの方には財政負担の期待はまず困難です。仮に、二月の予算委員会答弁の、ITER懇談会で説明している数字と言っていた、日本の負担は、ITER五千億円として、建設費、付随するインフラでホスト国が負担すべきもの、合わせて約四千億円という見込みについても、これは事業を始めたらどうなるのか。原子力船「むつ」の場合は二十倍に膨らんだのです。「もんじゅ」を含む高速増殖炉開発だけでも、当初の「もんじゅ」の予定額からいうと五倍に膨らんでいるんですね。それで、原子力船「むつ」並みに二十倍とまではいかなくても、四千億円と言っておられるお話が、高速増殖炉開発並みで五倍になると二兆円という話に変わってくるんです。

 だから、日本誘致をするという場合に、負担が四千億円から膨らまない、何かそういう確約したものがあるのかどうか、それを次に伺っておきたいと思います。

今村政府参考人 御説明申し上げます。

 我が国は、ITERにつきましては、まだこれを誘致するかどうかということを決定しておりません。したがいまして、国際的に我が国の負担が幾らになるかということを確約したというようなことはないわけでございます。ITER計画に参加する場合の各極の負担につきましては、今後行われる政府間の関係局間の協議において確定される、このように考えております。

 なお、ITER建設のための必要経費ということでございますが、ITERの設計をベースにいたしまして非公式に協議した結果に基づきまして仮の試算をいたしましたところ、ITERを誘致する場合の負担としては、これは建設十年、残り二十年が実験ということでございますが、建設段階で十年間約四千億円、実験段階は毎年約百五十億円というふうに見積もられているところでございます。

吉井委員 国際的な約束はないにしても、とりあえず四千億の負担を日本はするんだということで言ってはるわけですよ。しかし、これは本当にどうなるかわからない。見通しをきちっと立てずに、今簡単にITER誘致、ITER誘致という話がありますが、それをやったときに、本当に「むつ」並み、あるいは高速増殖炉開発並みにいったときに、これは一度走り出したらどうなるかわからない、そういう財政問題についての余りにも無責任な議論になっちゃいかぬというふうに私は思うのです。

 プラズマ主半径八・一メーターのITERを六・二メートルのコンパクトITERに安上がりにしても、実はそれをやると当初の実験目標が達成できなくて、次の原型炉につながるものにはなっていかない。もしなっていかなかったら、これは意味がないわけです。また、ITERの次の原型炉、さらには実証炉へとつながっていくものでないと、核融合が五十年先とかあるいは百年先とかいろいろ言っても意味がないわけです。

 ですから、ITERも次の原型炉も、プラズマ温度が一億度、高速中性子線にさらされても材料劣化の起こらない増殖ブランケットとか、炉材料の開発が完了して炉材料のめどが立たないとITERも実験炉の建設も無理というのが実情なのですよ。増殖ブランケットの開発は直ちには無理だから、ITERからそれを外して安上がりというだけでは意味がないわけですね。一億度、高速中性子線照射を十年、二十年行って、大丈夫だと実証された炉材料は今あるのかということが問題なのですが、これは一言で結構ですから、ありますか。

今村政府参考人 お答えいたします。

 ITERの共同設計チームの考え方によりますと、ITERの目的、すなわちプラズマ燃焼の工学的実証を行う装置という目的に照らせば、現在提案されておりますオーステナイト鋼ステンレスが十分これに耐え得るという判断でございます。

 ただ、先生御指摘のとおり、将来核融合から実際にエネルギーを取り出す装置をつくるということになりますと、そこにおける中性子の量も多くなりますし、やはり炉壁の耐熱性あるいは低放射化材料ということが必要になりまして、ITERで使われる予定のステンレス鋼では、それ以降のエネルギーを取り出す装置については難しいのではないかという意見が多いということでございまして、その点は専門家の中でも議論が行われております。

 したがって、ITERをやればいいというだけではなくて、やはりそれと並行して、地道な炉材料の開発も並行的に必要ではないか、このような状況であろうかと思っております。

吉井委員 このITERの問題については、アメリカのDOEやら議会の判断とか議論というのは、私はなかなか傾聴に値する大事なものがあるというふうに思っているのです。

 一つは、一兆円という当初の建設費の問題がありますし、それから、ITERというのは、システムが多くて、構造が複雑で、将来の動力炉として信頼できるものにならない、そういう見通しを持っている問題、それから三つ目に、実験炉として点火、燃焼をするというプラズマ物理学者の予言に果たして保証があるのかという議論とか、やはり専門の皆さんからの角度、財政の面からの角度とか、いろいろな角度からよく議論しているのですね。

 さっき小型化というお話がありましたが、実は、小型化するということになると出力当たりの建設単価が高くなるのですよ。これは実用化からますます遠ざかるという問題になるのですね。点火、燃焼の実現できる確率も小型化すると小さくなってしまう。出力が高くできると今度は炉材料が耐えられなくなる、炉の寿命が短くなるという問題などがある。

 だから、簡単に見通しなく多額の財政を投入するよりも、例えばITER懇の飯吉厚夫先生、中部大学の学長さんは、低誘導放射化材料の開発計画などをきちっとやっていくべきだ、こういう炉材料など基礎研究と材料の開発研究、安全技術の開発とか、あるいはトリチウムその他の問題の解決とか、この基礎をきちんきちんと積み上げてやっていくべきだという考え方が随分多くて、実は二月にシンポジウムがあって私も議論を聞いておりますが、しかし、それ以外にも、学者、専門家の中でも多くの批判や反対やさまざまな声があります。ITERの日本誘致は賛成なのだが慎重にやるべきだとか、あるいは急ぐべきじゃないという声とか、ITERは賛成なんだが、しかし日本誘致には反対という方もいらっしゃるし、慎重に、結論を急ぐなという声とか、ITERは反対なんだが核融合の研究は賛成だという方とか、さまざまな方がいらっしゃるのですね。専門家の間で今そういうふうにさまざまな意見がある中で、日本誘致ということを簡単に、原子力委員会はその方向を確認しているようですが、簡単に走るべきじゃないと私は思うのです。

 そこで、財務大臣になぜこういう話を先に聞いてもらったかといいますと、私、先日苫小牧でシンポジウムがあって行ってきたのですが、苫小牧東部開発の失敗したところを数年ぶりに見てきました。それからむつ小川原の開発失敗地も何度も行っているのですが、今三つの候補地で誘致合戦をやっているのですね。前の町村文部科学大臣は、私が質問したときに、町おこし的な感じがするという答弁がありました。実際、その発想がちょっとおかしいのですね。池内了先生、名古屋大学の宇宙物理学者ですが、この池内教授は、科学技術に名をかりた大型公共事業の愚は犯してはならないという指摘をしておられます。

 そこで財務大臣、やはりこの国会で専門家や関係者の多くの発言を聞く公聴会を持つとか、財政問題とか、それから将来の原型炉につながる発展の可能性だとか、炉材料などの技術開発の展望とか、商業炉となる上で必要な採算性の見通しだとか、それから国内の基礎研究をどう発展させるとか、トリチウムの安全対策を含む安全技術の開発やら周辺技術の研究開発との調和のとれた発展、そのための研究費の投入をどうするかとか、やはり相当突っ込んだ深い検討を行った上で、国会での議論を踏まえて、日本誘致をするのか、あるいはやめるのか、国際的に建設を先へ延ばすようにするのかとか、そういう判断というものをやはり進めていくべきであって、原子力委員会などの形式手続だけで進めるべきじゃない。

 こういう点では、原子力船「むつ」の失敗の二の舞を演じないように、こういう大型科学のプロジェクトの問題について、財政の面からも、大臣、やはり相当よくきちんとした検討というものを尽くすことが大事だと私は思うのですが、この点を塩川大臣に伺っておきたいと思います。

塩川国務大臣 吉井さんのおっしゃるのはもっともだと思いますね。こういう大型の研究というものは、やはり十分に検討しなければならぬと思います。ましてやITER計画につきましては、財政面以前の問題として、安全性など技術の問題、あるいは原子力政策のみならずエネルギー政策全体、ひいては科学技術政策全体の中での位置づけというものが必要でございまして、そうでございますだけに、総合科学技術会議等の場において広範にかつ十分に議論していただいて、国民的議論が行われるべき問題であると認識しております。

 また、財政面から申し上げれば、ITERについては、国内誘致を行う場合はもとより、誘致を行わずプロジェクトに参加する場合であっても、長期にわたり膨大な財政資金が投入され、他の分野の圧迫要因となることから、厳しい財政事情のもとで、必要性、緊急性また後年度負担等について十分検討を行った上で、国民的な議論を経て慎重に対処すべき問題であると考えております。

吉井委員 原子力船「むつ」にしても、高速増殖炉開発にしても、この計画そのものを国会で審議して決めるのではなくて、国会外で決めて、関係する単年度の予算だけ総予算の一部として審議するというやり方で進めてきて、財政破綻もそこから生まれてきたり、実験の行き詰まりを来したりとかしてきました。

 だから、財務大臣も公共事業の見直しということを言っておられますが、ITERのような大型計画とかあるいは長期エネルギー需給見通しのようなエネルギーの長期計画などは、やはり国会できちんと審議する、大臣がおっしゃったようにいろいろな場で審議が必要だと私は思うのですが、やはり国会できちんと審議して決定する、そのことが財政面から見ても大事だと思うのです。この点だけ最後にもう一度大臣に伺って、質問を終わるようにしたいと思います。

山口委員長 時間の都合がありますので、一言で。

塩川国務大臣 おっしゃるとおり、国会においてのみならず、先ほど申しましたように、総合科学技術会議等において十分な議論をした上、国会でも審議していただくようにいたします。

吉井委員 時間が参りましたので、質問を終わります。

山口委員長 阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 まず、きょうのコミットメント法案に関しましては基本的に賛成の立場をとりますので、いただきました質疑の時間は、先回の積み残しについての質問とさせていただきます。

 きょう、本来の午前中の質問時間が午後に変更になりまして、柳澤金融大臣も御出席とのことですので、特に、柳澤金融大臣に中心的にお答えをお願い申し上げます。

 先回の同じ財務金融委員会の折に、私は、いわゆる自動車の自賠責問題、これは、今までは国が自賠責の六割のお金を再保険として担保し、自賠責の保険会社が四割を運用するという形でございましたが、規制緩和の流れの中で、保険会社が全体を自主運用なさる、そういう事態に相なりました。その中で、私は、特にこれが交通事故等、命にかかわる行政ですので、完全に規制緩和していい部分と、むしろ、統括官庁になりました金融庁からの適切な指導についても必要ではないかと思う観点から御質問をいたします。

 まず、皆様のお手元にお配りいたしました資料の一枚目に組織図のようなものがございますので御参照いただきたいのですが、この組織図には金融審議会の組織構成が書いてございます。「金融審議会の部会構成」となっております中に、一応、大きく分けて四部会ございます。

 先回、柳澤金融大臣にもお伺いいたしましたが、金融審議会自身の大もとの部分は、約三十名を定員とする専門委員ないしは学識経験者で成るということで、私は今回、この金融審議会の中に自動車損害賠償責任保険制度部会というものが従来ございますけれども、より自賠責についての責任的役割を果たすことから、ここに、いわゆる被害者の御家族、あるいは自動車における自賠責問題について、被害者としての立場から見解を述べてきた方々を入れていただくべきではないかという質問を先回いたしました。

 先回、時間との関係で、金融大臣に詳しい御説明をいたしませんで恐縮でしたが、続いて二枚の資料がございます。その二枚の資料には、これは国土交通省において設けられておりました自動車損害賠償責任保険審議会の委員名簿と、そしてもう一枚は金融審議会の自動車損害賠償責任保険部会の名簿がございます。

 ごらんになっておわかりのように、金融審議会の方の自動車損害賠償部会は四名、それから国土交通省の方では、特別委員四名を含めまして、ごらんになるような方々が委員に入っておられて、この中で肩書を見ていただきますと、委員の一番手にある井手さんという方は全国交通事故遺族の会の会長。実は、お嬢様を交通事故で亡くされた耳鼻科のお医者様で、その後ずっと被害者救済、いわゆる子供を失った親の悲しみのフォローも含めてなさってきた方でございます。

 そして、中ほどよりやや下にございます二木先生は、ここでは姫路獨協大学教授となっておられますが、神戸大学でしたかに御在籍の折に、自賠責の額の東西の格差ということを問題にされまして、既に国会でもこの件は問題提起され、東西格差の是正に向かわれましたように、この自賠責問題では当事者であり、かつ専門家であるというお立場でございます。

 私は、先回の御質問で柳澤金融大臣に、ぜひともこうした方々を金融審議会内の自動車損害賠償責任の部会にもお入れいただくようにお尋ねを申し上げましたが、そのときのお返事では、定員等々あるのでというお答えをいただきました。

 そこで、大変恐縮で、おまけに質問通告の部分ではないのでございますが、柳澤金融大臣に一、二、私ども現代社会に暮らすごく常識人としての御質問をいたします。

 まず、金融大臣にあっては、一年間の自動車事故による死亡者数と、いわゆるけがをされた方の数についてどのように御認識でございましょうか。

    〔委員長退席、佐藤(剛)委員長代理着席〕

柳澤国務大臣 自動車事故による死亡それから障害の問題については、まさに先生がおっしゃったように、現代社会の大変大きな問題であるという認識を持っております。

 自動車事故は、自動車が歩行者あるいはその他外部にいる人を傷つけるということと同時に、自動車が事故を起こして自分自身、その自動車運転者その他が亡くなってしまう。いろいろ、走る棺おけだとかそういったようなことが言われておったことも記憶しておりますが、昨今、非常に大きな官民挙げての努力の結果、一万人を割り込みまして、大体九千人くらいで推移しているというふうに記憶しています。

 他方、死亡者は減っているのだけれども、障害者、障害という形で被災をする人はなかなか減らないという状況にあって、ちょっと数はあれですけれども、これは何十倍という感じだったかと思います。

阿部委員 さすが柳澤大臣でございます。きちんと御理解でございます。

 一応、負傷者数は百十五万と言われております。死亡者数こそ確かに一万を割り込みましたが、負傷者数、毎年百十五万という値は、これは我が国にとっても大きな損失でもございますし、当事者になられた方は、障害を抱えてその後も療養されるわけです。

 そしてさらにもう一点、実は、警視庁関連の統計では九千人という数値が出てまいりますが、厚生省でとります統計、これは交通事故を直接原因として死亡なさいます方の数、警視庁では二十四時間で統計いたしますけれども、厚生省にあっては交通事故によって死亡なさった方という数値を挙げますと、四千人ふえてまいります。死亡者数も九千プラス四千、一万三千人が交通事故で亡くなり、百十五万人が交通事故による後遺症を抱えて生きておられる。戦後だけで換算いたしましても、五十二万人が死んでおられるということになってまいります。負傷者数は二千七百万とも言われております。

 このような膨大な数の死傷者がおります自動車問題ですから、私はぜひとも、まずこの金融審議会の自賠責保険部門に、これは柳澤大臣の御英断で、そして専門性もお持ちのお二人ですから、二木先生並びに井手渉さん、非常によい活動もされてこられましたし、国土交通省関連の審議会ではいい御発言も多々賜りましたので、再度柳澤金融大臣に、この審議会の中の部会の、例えば専門委員としてでも、あるいはその時々の特別委員としてでもお加えいただくような向きにの御検討をお願いいたしたく、御答弁を賜りたいと思います。

村田副大臣 六月五日の当委員会で、委員から、この問題については熱心に質問を続けますということでございまして、早速きょうまた熱心に質問をちょうだいしているわけでございます。

 先ほど、審議会でございますけれども、制度にかかわる問題は金融審議会の中の自賠責の制度部会というのができまして、そこは四人がいるということですね。それから、国土庁とさっきおっしゃいましたが、こっちの方は法律施行型の審議会として残されておりまして、私どもも、国土庁と同じように所管をさせていただくということであります。

 特に政府への再保険制度がなくなって、これは規制緩和の観点からでございますが、そのときに私も党の担当の一人としておりましたのでございますが、一番みんなが頭を悩ましたことは、先生今御心配のような、制度のあり方が変わることによって被害者救済というものがいささかも影響を受けることがあってはならないということでございまして、私どもも、繰り返し繰り返し被害者の代表の方にもおいでいただきまして、御意見を賜ったわけでございます。

 そういう中で、重度後遺障害者の方々の療養問題についても、これは、規制緩和の中で、ああいうのはやめたらどうかという意見もあったわけでありますけれども、これは今後も維持するということも決したわけでございますし、それから、死亡の方と同じくらいの費用がかかるということでありますから、そこの点についても、補償も厚みを増すというような措置も講じさせてもらったわけであります。

 それで、何よりも制度部会の方、この方には入っておりませんけれども、法律施行型の自賠審の方で引き続き、民間の損害保険の協会が預かります積み立てられた剰余金の使途、これを検討するときに、こうした審議会も活用して意見を反映させる、こういうような仕組みになっているようでございまして、あわせて、その点は、できるだけ被害者の方々の御意見が反映されるような仕組みになっているんだということを、御理解を賜りたいというふうに思います。

 なお、先ほど、残された法律施行型の審議会の方は共管と申しましたけれども、これは金融庁の専管だそうでございますので、引き続きそういうルートを通じて反映させていくということができる、こういうことでございます。

阿部委員 では、二点確認申し上げますが、今の、私の記憶では、二十分の九を残した国土交通省関連の自賠責審議会に相当するもの、予算において。これは国土交通省管轄ではなくて、これもまた金融庁管轄だということでございますか。

乾政府参考人 自賠責審議会の方でございますね、法施行型の審議会の方。これは、従来はまさに自賠責審議会ということで、企画と法施行と両方やっていたわけでございますけれども、その当時から、これは金融庁の審議会でございまして、そういう意味で、金融庁の両方の機能を備えた審議会当時から、先ほどお名前をお挙げになりました井手さんとそれから二木先生も入っていていただきまして、私ども、両委員を初め、各委員の活発な御意見のもとに昨年六月の答申がまとめられたものというふうに承知しているわけでございます。

 さらに、一月一日から、先ほど来答弁がございますように、企画型の金融審議会の自賠責制度部会とそれから法施行型の自賠責審議会というのに分かれたわけでございますけれども、その新しい法施行型の自賠責審議会、金融庁の審議会におきまして、引き続き井手委員と二木委員を委員に御就任いただいて、これからまた、先ほど来先生御指摘のような観点からの御意見、御議論も賜りたいと思っているということでございます。

阿部委員 明確な整理と御答弁、ありがとうございます。では、引き続き金融庁の指導のもとに、特に被害者救済の問題、副大臣も御指摘のように、けがをされてその後ずっと後遺症に苦しむ方も同じように苦しい現状でございますから、そこの方たちの御意見も、先ほどの二木先生と井手さんはともに御遺族でございますから、現在闘病中の方々の御家族の御意見も反映されるような仕組みについて検討いただきたいと思います。

 では、引き続いて、今度は自賠責による運用益の運用のことについてお尋ねを申し上げます。

 これもお配りいたしました資料の中に、四枚目でございますが、これは、これまでのいわゆる六割を国が再保険しておりましたときの自賠責運用収益の使われ方の表でございます。

 この当時、四割を自賠責の運用会社が運用しておりますときの年間の運用益が百三十億で、その中の三〇%をこのような形でいわゆる公益目的に、例えば被害者救済とか等々に活用するということが金融庁令で出ておりますが、その内訳について、これまでのものの実態でございます。そして、ちなみに、今回政府による再保険がなくなりますと、これまでの運用益の百三十億の約一・五倍、百五十億から二百億がこのトータルな収入に入り、それの三〇%がここに使われる金額になってまいると思います。

 これを上から下までずっと見てまいりますと、今おっしゃいました直接の被害者救済にかかわる部分は、二段目の被害者救済対策と三段目の医療費支払い適正化及び後遺症の認定対策等々になってまいると思います。上段にございますものは、救急医療の充実あるいは救急医療の搬送にかかわる自動車の、いわゆる物に対してのこれは支出でございますが、二段目、三段目。

 そして二段目は、ごらんになっていただければわかりますように、紛争処理センターに回っておりますので、これも遠回りには被害者救済ではございますが、直に被害者救済に回るものではございません。

 そして一番下の段、これは、予算枠におきましても、例えば自動車等々には二億、計で二億ではなくて八億でございましょうか、それから被害者救済の紛争処理には約九億でございますが、最下段のところは、全部合わせましても二億といってないお金。

 これはトータルで二十二億参りますが、やはりこの配分を見ましても、被害者救済の、直接に被害者にかかわる部分が非常に手薄であると言わざるを得ないと思います。例えば、公募による助成対象者のところ、交通事故医療研究助成の額は二千八百万でございます。二十二億のうち二千八百万というのは一%ちょっとというふうに理解いたします。

 そして、今後さらに、先ほど申しました運用益全部が損保会社に入るようになってまいりましたときに、被害者救済に直接に役立てる向きをもう少しお強めいただきたいと考えております。そのために、例えば今後のこの自動車の、自賠責による運用収益の支出について、関連者からのお考えの大枠をまずお教えください。

村田副大臣 先ほど申し上げましたように、自賠責保険の民間の運用益の各年度の具体的な使途につきましては、日本損害保険協会がその諮問機関であります運用益使途選定委員会、この議を経まして決定していただくということですが、これからは決定プロセスの透明性を高める、そういう観点から、今年度分より自賠責制度に関する審議会での議論を加えたい、こういうふうに考えております。

 今委員御指摘のように、公募型の、公募枠の拡充を検討すべきではないかという御意見でございましたけれども、それについても、委員の御指摘も踏んまえまして、関係者と協議してできる限り前向きに対処できたらなと考えておるところでございます。

    〔佐藤(剛)委員長代理退席、委員長着席〕

阿部委員 しつこい質問の成果を得まして、大変うれしゅうございます。ぜひとも実際の被害者救済に、特にお若くして事故に遭われて一生障害を抱えて暮らされる方もたくさんおいでですので、前向きに、公募枠も広げて、NPO等々でそうした方々に援助の手を差し伸べている方にもまた、こういう公募枠に乗れるような枠の拡充をお願い申し上げます。

 引き続いて、ついせんだって、これも厚生労働委員会で成立いたしましたいわゆる確定拠出年金についてのお伺いをいたします。

 この間、金融庁は大変な人気でございまして、この自賠責問題でも、それから確定拠出年金におきましても、これから金融行政、特にそれを監督なさる金融庁の役割は大きく国民の期待するところと思いますが、そもそも、この確定拠出型年金の法案作成並びに審議過程におきまして、金融庁側といたしましてどのような認識と問題点、あるいは、このように運営されるべきである等々の、この法案の成立過程におきましての御討議、あるいは問題意識について、まずお伺いを申し上げます。

乾政府参考人 この確定拠出年金に関しましては、先生御案内のように、米国に四〇一kという制度がございまして、これを、米国の場合には、会社とそれから従業員も出すことができるわけでございますけれども、そうして拠出したものが、積極的な運用ということを通じまして労働者の年金あるいは福祉の向上ということにつながっておりますし、またそうした運用先が、いわゆる直接金融の市場に大量の資金が流入するということをもちまして、米国の直接金融というものが活発化したということの動きを、従来からは政府といたしまして認識しているところでございます。

 そうしたことから、我が国にもこうした確定拠出年金というタイプの企業年金を導入すべきじゃないかという議論が広くございまして、与党の検討会の中でも委員会を設けて議論が行われてまいりました。

 確定拠出年金につきましては、従来の企業年金と違いまして、ポータビリティーとかいろいろなメリットもあるということでございまして、これの推進ということがぜひとも必要な政策課題ということでされてきたわけでございます。もちろん、年金制度でございますから、メーンは当時の厚生省が中心になって検討されてきたわけでございますけれども、実際にこの資金の運用に当たりますものは運営管理機関、それから、資金の機関というものは金融機関ということになるわけでございますから、金融庁といたしましても、そうした議論に参画をしてまいったわけでございます。

 成立いたしました法案の中におきましても、金融庁は、この確定拠出年金の運営管理機関に対する検査及び監督に関しまして厚生労働省と共管とされているところでございまして、そうした立場から、今後、この金融機関の経営の健全性、あるいは加入者の保護という観点から、厚生労働省と緊密に連携して、制度の適切な運用に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

阿部委員 概略の御答弁、ありがとうございます。

 物事には何でも、プラスの面と、逆に気をつけるべきマイナスの点がございますでしょうけれども、金融庁の御認識では、先ほど非常に明快な御答弁でしたが、直接金融の活発化、そういうふうに考えられることもある種当然理解できますし、直接金融の活発化というふうにアメリカでも現実に拠出型年金の成立というのはなったと思いますし、我が国においても願わしくはそうなってほしいものでございますが、はたまた、先ほどお伺いいたしましたように、導入してから逆に問題点が生じることも、物事ですからあろうかと思います。その点についての金融庁の御認識はいかがでございましょうか。

乾政府参考人 厚生労働省と協力いたしまして、この法案を作成、提出し、成立をお願いしてまいったわけでございますけれども、先ほど申しましたような、金融機関の経営の健全性、あるいは加入者の保護という観点から、今後、適切な監督を行ってまいりたいと思っておりますけれども、現時点で、制度上、ちょっとおっしゃるような問題があるということは認識していないのでございますが。

阿部委員 私が厚生労働委員会で問題にいたしました点は二点ございまして、いわゆる確定拠出型年金は手数料、ハンドリングコストが高くつく、これは運用の途中で組みかえたりしなければいけませんし、確実なものを受給権者にお渡しするために一番ベストな運用をするために、通常の公的年金よりも差しかえ、組みかえ等々もございまして、欧米等の例では、どうしてもハンドリングコストが高くつくというふうに報告を受けております。この点の御認識。

 そして、私は、質問通告におきまして、イギリスでのステークホルダー年金において、ハンドリングチャージを積立金の一%以下に規制するような措置もとられておるということを例に挙げて、日本ではどのようにお考えかという点を一点、通告いたしましたのと、さらに、それに関連いたしましては、私、金融は全く素人ですからわかりませんですけれども、この手数料体系が、残高比例的な手数料よりも一口座当たりの固定手数料が高くつくというふうに分析されている方もおありでございます。

 このあたりについて、金融庁としてのこれまでの御検討、諸外国の例と引き比べましての、一応やはり危険性についてもあるものと思わなければいけませんから、その辺の御認識についてお伺い申し上げます。

乾政府参考人 先生御案内のように、実は、今御質問になりました事務費負担等年金支給に係る部分につきましては、これは、先ほど共管と申しましたけれども、金融庁はその部分は管轄しておりませんで、その部分は厚生労働省の所管事項でございますので、私どもからお答えをするのは差し控えさせていただきたいと思うわけでございますけれども、既に厚生労働委員会におきまして、厚生省の方は、そうした問題につきましては、外国の制度と比べまして、この運営管理機関等が融資のようなことを行わないとか、あるいは、運営管理機関について競争を促進することによって、適正な手数料、また加入者の方も納得するような手数料になるものと考えているという趣旨の答弁をされていると承知をしているところでございます。

阿部委員 厚生労働省に伺いましたときには、ハンドリングコストも〇・六%くらいになるではあろうが、予測根拠については余りない、明確ではないという御答弁でもございました。そして、逆に厚生労働省の方は、金融庁ともよくよく相談をしながら、簡単に申しませばそのような御答弁でもありましたので、一度ある程度やってみたところでの中間総括的なものをやっていただきまして、手数料等について、どのような傾向を持つものか、傾向と対策ということで金融庁としても積極的な関与をお願いできれば幸いでございます。

 引き続き、もう一点、私は問題があると思いますが、いわゆる加入者保護ということで、これまでの厚生労働省が持っております年金関連の、例えば公的年金で問題が生じた場合には、社会保険事務所等々、受給権の保護のために一人一人の個人が相談するような窓口もございますが、果たして、この金融商品としての四〇一kという形になりますと、実は企業が加入するといっても、受給は個々人、いわゆる退職金に相当するようなものが年金で払われるわけですが、やはり途中で金融、特に株価等々の変動もあり、いろいろな不安定要素が生じたときに、一人一人の受給権者はどのように相談窓口を設けられるのかということを伺いました。これも厚生労働省としては余り明確な御答弁ではなくて、私の方から要請して、金融という問題に知識をお持ちの方も加わって、これからの受給者への相談ということを充実させていただきたいというふうにお願い申し上げましたが、この件について御認識のほどをお教えください。

乾政府参考人 実は、確定拠出年金に限りませんで、金融機関が販売をいたしました商品に関しまして、消費者の方との間でトラブルが起きたときにどうするかということは、これは金融行政の中での大きな課題として従来から取り組んできているところでございます。

 一つには、昨年の通常国会で御成立いただきました金融商品販売法というものがございまして、この法律の中で、金融商品を販売する者は、消費者に対しまして十分にリスクというものを説明しなければならないという規定が置かれたわけでございますけれども、今回の確定拠出の法案の中には、これは直ちにそれが適用することとはされておりませんけれども、今後、この法律、成立しました法律に基づきまして政令を整備する中で、実質上、それと同等の趣旨の規定を盛り込むべく、現在検討しているところと承知をしております。

 それから、もしもそういうトラブルが起きましたときの解決につきまして、裁判に行くということは、消費者の方々、なかなか大変でございますので、裁判外でどのような解決ができるかということで、よくADR、オルタナティブ・ディスピュート・リゾリューションと申しますけれども、裁判に代替をする紛争の処理ということの方式につきましても私ども勉強しておりまして、昨年いただきました金融審議会の答申に基づきまして、金融トラブル連絡調整協議会というのを昨年の九月に立ち上げまして、そうした場で、そうした問題に対する、各金融機関の団体等がどのように積極的に取り組んでいくべきかということの、検討と申しますか、もっと前進的な、具体的にどうするかということの議論を現在行っているところでございます。

 そうしたことを通じまして、消費者の方々に御心配をかけるようなことがないように、できる限りこれからも進めてまいりたいというふうに思っております。

阿部委員 では、さらなる御検討を引き続きお願いいたします。

 せっかく柳澤大臣にお越しいただきましたので、最後の一分で一問だけ。

 一―三月のGDPも年率換算で〇・八%マイナスとなっておりますし、今後の景気見通し、四月―六月、七月―九月、この前半の景気見通しの中で、さらに金融機関の運用状況についての柳澤金融大臣の見通しについて、よろしくお願いいたします。

柳澤国務大臣 金融機関、今度の三月末の決算、今、私のところには、まだ取りまとめということでは主要十六行ベースでしか上がっておりませんので、そのベースでお話をいたしますと、金融機関の本来の活動による稼ぎ、業務純益と申しますけれども、これは大体ここ数年と同じ傾向をたどっておりまして、三兆円ちょっと、三・三兆とかという数字になっております。

 これが、景気が悪くなったらどうなるかというお話かと思いますけれども、私どもといたしましては、率直に言って、利ざやというかそういうようなものも、それほど諸外国と比べていい成績でもない。ROEと申しましょうか、リターン・オン・エクイティー、そういう報酬の比率も、余り国際的にすぐれた成績を上げ得ていないというようなことがありまして、実はもうちょっとしっかりした金利収入を稼ぐこと、もちろん、かねて、そういう資産の運用による利益ではなくて、フィービジネス、手数料収入と申しますけれども、そういったようなことにも注力をしまして、全体としてもう少し収益力というのを高めてもらいたい、こういうように基本的に考えているわけでございます。

 ところが、他方、なかなか今度は利息を支払う方の状況が、今先生が御指摘になられたような経済状況の中で、はかばかしい成績を上げ得ないところが多いということになると、これがなかなか我々の方の願望が容易に実現されるというような状況になくなるわけです。

 そんなこともありまして、私ども、不良債権の処理もする、それについても、追加の損失、つまり引き当て担保で保全しているもの以上のコストが追加的にかかるということも、これは否定できないところでございまして、それらのコストを補うというようなことのためには、やはり客観的な経済状況というものも、それなりに、そうしたものを受け入れるだけの環境であってもらいたいと率直に言って思っているわけでございます。

 そういうようなことから、私どもとしてはぜひ政府全体で、私もその責任の一端を担っているわけでございますけれども、余り今この状況で高い率の数字を申し上げるということもできかねますけれども、基本的にプラスの成長はしっかりと実現してもらう、そういう気構えでもって経済の運営に当たってほしいというふうに、率直に言って考えているということでございます。

阿部委員 丁寧な御答弁、ありがとうございます。

 論議の時間がございませんので、また次回引き続いて。どうもありがとうございました。

山口委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

山口委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 私は、日本共産党を代表して、特定融資枠契約法一部改正案に反対する討論を行います。

 出資法並びに利息制限法のみなし利息規定を適用されることなく、通常の貸出金利に手数料を上乗せすることができる特定融資枠契約は、金融機関が貸し手としての立場の優位性を利用するならば、相対的に立場の弱い借り手に対して手数料稼ぎなどを目的とした不当な契約を強要するおそれを持っています。

 一昨年の特定融資枠契約法制定時に法律の適用対象を大企業に限定したのは、弱者保護の観点からであり、当時、法律の提出者は、今後の適用対象の拡大を念頭に置きつつ、弱者保護の手だてを検討することを明言していました。ところが本法律案では、中堅企業に対象を拡大しようとする一方で、借り手保護策の検討は置き去りにされています。提出者は、中堅企業ならば金融機関と対等な立場で交渉できるとしていますが、貸し渋りの横行の中で中堅企業もその被害を受けていたことに照らせば、その保証はありません。

 その上、本法律案には、施行後二年をめどに検討を加えるとの条項が改めて盛り込まれており、引き続く中小企業への対象拡大に道を開いています。本法律案による中堅企業への対象拡大は、中小企業を含む近い将来のコミットメントライン契約の全面的な解禁に向けたステップの一つであり、認められません。

 コミットメントライン契約について、資金調達の機動性の確保など企業側のメリットが強調されていますが、その恩恵を受けるのは、銀行と対等に交渉し得る財務基盤を持った一部の優良企業に限られます。そのような力を持たない企業にとっては、金融機関主導の融資契約を強いられ、事実上の高金利を甘受せざるを得ないこととなります。今金融機関は、収益至上主義の経営姿勢を強めており、収益性を物差しとした貸出先の選別を強めています。コミットメントライン契約は、そのてこともなり得るものです。

 従来、銀行は、当座貸し越し約定に基づき企業の機動的な資金需要に対応してきましたが、貸し渋り姿勢のもとでそれを後退させてきました。コミットメントライン契約は、融資からも手数料収入を得ようというものであり、その拡大は、収益第一の経営方針をとる大手銀行の要求でもあります。我が党は、このような方向を推し進めることには賛成できません。

 以上の理由から、本法律案には反対であることを表明し、日本共産党を代表しての討論といたします。(拍手)

山口委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

山口委員長 これより採決に入ります。

 特定融資枠契約に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

山口委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

山口委員長 次回は、来る二十六日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十一分散会




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