衆議院

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第4号 平成13年10月29日(月曜日)

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平成十三年十月二十九日(月曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 山口 俊一君

   理事 伊藤 公介君 理事 奥山 茂彦君

   理事 佐藤 剛男君 理事 根本  匠君

   理事 海江田万里君 理事 中川 正春君

   理事 石井 啓一君 理事 鈴木 淑夫君

      大野 松茂君    倉田 雅年君

      小泉 龍司君    七条  明君

      砂田 圭佑君    竹下  亘君

      竹本 直一君    中野  清君

      中村正三郎君    林田  彪君

      増原 義剛君    山本 明彦君

      山本 幸三君    渡辺 喜美君

      五十嵐文彦君    上田 清司君

      生方 幸夫君    江崎洋一郎君

      河村たかし君    小泉 俊明君

      佐藤 観樹君    末松 義規君

      永田 寿康君    長妻  昭君

      高木 陽介君    若松 謙維君

      中塚 一宏君    佐々木憲昭君

      吉井 英勝君    阿部 知子君

      植田 至紀君

    …………………………………

   財務大臣政務官      中野  清君

   財務大臣政務官      林田  彪君

   参考人

   (全国銀行協会会長)   山本 惠朗君

   参考人

   (社団法人全国地方銀行協

   会会長)         平澤 貞昭君

   参考人

   (社団法人第二地方銀行協

   会会長)         一色 哲昭君

   参考人

   (日本証券業協会会長)  奥本英一朗君

   参考人

   (野村證券株式会社取締役

   社長)          氏家 純一君

   財務金融委員会専門員   白須 光美君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十九日

 辞任         補欠選任

  五十嵐文彦君     上田 清司君

  谷口 隆義君     高木 陽介君

同日

 辞任         補欠選任

  上田 清司君     五十嵐文彦君

  高木 陽介君     谷口 隆義君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律案(内閣提出第二号)




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     ――――◇―――――

山口委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律案を議題といたします。

 本日は、参考人として、全国銀行協会会長山本惠朗君、社団法人全国地方銀行協会会長平澤貞昭君、社団法人第二地方銀行協会会長一色哲昭君、日本証券業協会会長奥本英一朗君及び野村證券株式会社取締役社長氏家純一君、以上五名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。せっかくの機会でございますので、参考人の各位におかれましては、それぞれのお立場からぜひとも忌憚のないお話をお聞かせをいただいたら、御意見をお述べをいただいたらと思っておりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、山本参考人、平澤参考人、一色参考人、奥本参考人、氏家参考人の順序で、お一人十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。

 それでは、まず山本参考人からお願いをいたします。

山本参考人 全国銀行協会会長を務めております富士銀行の山本でございます。

 本日は、私ども銀行の保有している株式に関連する法案を御審議いただいております本委員会にお招きをいただき、意見を述べる機会を設けていただきましたことに厚くお礼を申し上げます。

 それでは、御審議いただいております銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律案につきまして、私の意見を簡略に述べさせていただきます。

 本法案の第一の柱であります銀行等による株式等の保有の制限、いわゆる株式保有制限に関しましては、金融審議会の場で規制の是非を含め議論が行われましたが、私どもも、その審議会の場等でさまざまな意見を述べさせていただいております。

 まず、株式持ち合いの問題について申し上げますと、私は、この問題は我が国金融・資本市場の発展過程と関連づけて理解すべきであると考えております。

 銀行による株式保有は、まず終戦直後の産業資本が枯渇していた時期に、さらには一九六〇年代の高度経済成長期におきまして、企業の旺盛な資本需要、資金需要にこたえる形で増加してまいりました。この当時は資本市場が未整備であり、銀行による産業資本の供給に大きな意義があったと考えているものでございます。また、株式持ち合いという慣行自体につきましても、一九八〇年代には米国などにおきまして、安定的取引の維持、長期的視点に立った経営という観点から、積極的に評価された時期もあったわけであります。

 ところが、一九九〇年代以降、企業の自己資本の充実、金融・資本市場の発展、個人金融資産の蓄積などによりまして、株式持ち合いの意義が低下する一方で、株価の長期低迷、時価会計の導入等の要因が加わりまして、銀行、企業の双方にとって多額の株式を保有、維持することが経営上の問題点に変化してまいりました。昨今の持ち合い解消の動きは、こうした歴史的な環境変化を踏まえた構造変化であると認識しているものでございます。

 既に、銀行も企業も、それぞれの経営判断によりまして持ち合いの解消を進めておりますが、特に銀行の場合には、財務の健全性を確保する観点から、株式保有リスクの適切なコントロールがより重要となっております。

 こうした観点から、今回の株式保有制限の政策意図は我々の経営判断と同じ方向を目指していると考えております。

 ちなみに、私が属しております、みずほフィナンシャルグループの例で申し上げますと、九八年度より二〇〇三年三月、この期までに総保有額の三分の一、約三兆円の保有株式の圧縮を計画しており、この九月末時点で既に二兆円強の圧縮を実施済みでございます。本計画が予定どおり達成できますと、その時点で私どもみずほの保有株式残高は自己資本にほぼ見合う水準となる見込みでございます。

 ただ、お取引先の株式を売却することによって、そのお取引先の株価や私ども以外の株主の動向、ひいてはお取引先の資本政策にも影響を及ぼす可能性もあります。したがいまして、保有株を売却する場合には、事前にお取引先に対して十分な御説明をし、御了解をいただくことが必要となります。

 私ども民間金融機関といたしまして、お取引を継続しつつ持ち合いの解消を短期間に進めていくことは、こうした観点から、それほど容易なことではないということも事実でございます。保有株式の総額や自己資本との比率は金融機関ごとに異なっておりまして、それゆえ各金融機関の保有株式圧縮のスピードや方法は個々の銀行の戦略、判断にゆだねることが望ましく、その意味で、一律の保有規制は経営にとって大変に厳しいものであると受けとめております。

 ただ、繰り返しになりますけれども、本法案のねらいであります株式保有リスクを縮減するという点につきましては、多くの銀行経営者が目指している方向と同じであるということを再度申し上げたいと思います。

 次に、法案の第二の柱でございます銀行等保有株式取得機構に関しまして私の意見を申し述べます。

 法案では、取得機構は、株式保有制限の実施に伴う銀行等による株式の処分を円滑に進めるために創設されるものであるとされております。さきの緊急経済対策にこの取得機構の創設のアイデアが盛り込まれた際、もしこれが、銀行がみずからの保有株式を自己責任のもとで処分できないがゆえの救済措置、したがって銀行界のために政府の関与する取得機構をつくるということが目的であるとすれば、それは私どもの本意ではありませんでした。

 つまり、先ほど申しましたとおり、我々銀行界は自己責任のもとで保有株式圧縮を懸命に進め、着実に実績も上げてきていたからこそ、銀行救済の色合いがあるような当初の取得機構のアイデアに対しましては銀行界全体としての固有のニーズはないと申し上げていたわけであります。

 しかしながら、政府の御説明や法案等を承った限りでは、個人投資家の市場参加を促すための証券市場の構造改革プログラムや個人投資促進税制等の証券市場活性化策と相まって、今回の取得機構は、株式持ち合い構造を解消し、我が国証券市場の構造改革を進めていく上での緊急措置、一時的な受け皿と位置づけられるものというふうに理解しております。

 法案の中に盛り込まれている短期の買い取り媒介機能につきましては、銀行の保有する株式を、株式市場を経由することなく、個人投資家の受け皿と言い得るETF、それから投資信託、これらに直接移転することを想定しております。これは、政府の証券市場活性化策のような個人投資家を証券市場に招き入れるための環境整備を背景としつつ、取得機構という現実の組織を通じより直接的に銀行セクターと個人セクターを結びつけることにより、株式保有構造改革を進める触媒的な機能と評価できるのではないかと考えております。

 また、長期の買い取り機能につきましては、時々の株式市場の状況や会員のニーズ等を勘案して臨時緊急的に発動されるセーフティーネットと位置づけられています。この方法で買い取った株式については、最終的にはその大部分が市場に売却されることになりますが、その長期買い取り機能は、さきに述べた政府の証券市場活性化策の効果がより一層浸透し、個人投資家が株式市場の主役となるまでの時間的なギャップを埋めるためのものと理解することができます。

 また、市場との関係では、不測の事態に対応できるようなセーフティーネットをあらかじめ設けておくことにより、一定の安心感を与える効果というものも期待できるのではないかと考えております。

 いずれにしましても、法案では、民間側が主体となって機構を立ち上げ、御当局の認可をいただく手続となっております。私としましては、国会の御審議を経て、構造改革等の観点から取得機構の設立が必要との最終の御判断がなされた場合には、金融システムの一つのインフラを構築していくという観点から、全銀協の会長として金融界を取りまとめてまいりたいと考えております。

 簡単でございますが、以上で終了させていただきます。ありがとうございました。(拍手)

山口委員長 どうもありがとうございました。

 次に、平澤参考人にお願いをいたします。

平澤参考人 全国地方銀行協会長を務めております横浜銀行の平澤でございます。

 本日は、このような機会を設けていただき、ありがとうございます。また、本委員会の皆様には、日ごろ当業界に対しまして御指導を賜り、厚く御礼申し上げます。

 それでは、私からは、まず、株式保有に関する地銀界の状況について申し上げたいと存じます。

 平成十三年三月期、すなわち前期におきましては、地方銀行各行が保有する株式の金額はおおむねその自己資本額を下回っております。

 例えば、地銀全体の保有株式総額でございますが、自己資本額に対しまして五割程度でございます。また、今回の保有制限の上限となっております自己資本のうち基本的項目、いわゆるティア1に対しましては、約七割となっておるわけでございます。

 さらに申し上げますと、地銀全体の総資産、これに占めます株式の割合は約三%ということでございまして、大手行の半分程度でありますことから、その株式保有リスクは相対的には小さいもの、そのように考えております。

 とは申しましても、昨今の株式市況の低迷や金融商品の時価評価導入等を考えますと、株価の変動が銀行の財務面の健全性に影響を及ぼします。さらに、銀行に対する信認や金融システムの安定性に対しても悪影響を与えかねないという点につきましては、私どもも十分に認識しておるところでございます。

 したがいまして、地銀各行におきましても、おのおのの経営上の戦略や判断に基づきまして、保有株式の計画的な圧縮をこれまでも進めてまいっているところでございます。

 それでは次に、本法律案につきまして申し上げたいと存じます。

 まず、法律案の第一の柱でございます株式保有制限につきましては、政府の緊急経済対策にも盛り込まれておりますとおり、「銀行の保有する株式の価格変動リスクを銀行のリスク管理能力の範囲内に留めることにより、銀行経営の健全性が損なわれないことを担保する」、そういうことがその趣旨であると述べられておりますが、私どももその意味で十分に理解しておりますし、また、私どもがこれまで考え、目指してまいりました方向性と違わない、そのように考えているわけでございます。

 一方、本法律案の第二の柱、銀行等保有株式取得機構につきましては、株式保有制限の実施に伴いまして、信用秩序の維持に支障を来すことなく、銀行等による株式処分を円滑に進めることを目的に設立されるものであるというふうに理解いたしております。

 本機構は、株式保有制限に伴う急激な株式放出が、株式市場だけでなく金融システムの安定性や、ひいては経済全般にも悪影響を与えるおそれがあるということを踏まえまして、セーフティーネットとして設立されたものである、そういう意味で、信用秩序の維持という観点からも公共性の高い組織である、そのように考えている次第でございます。

 また、本機構に多数の銀行が参加することによりまして、財務及び組織面の基盤が安定いたしますとともに、その公共的役割がより明確となり、市場においても安心感が生じる効果も期待できることを踏まえますと、地銀界におきましても、この法案の成立を待ち、それぞれの地方銀行において本機構への参加について検討されるものと存じます。

 以上、簡単ではございますが、地銀界の考え方を述べさせていただきました。

 今後とも引き続き御指導のほどをよろしくお願い申し上げまして、私の発言を終わらさせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

山口委員長 どうもありがとうございました。

 次に、一色参考人にお願いをいたします。

一色参考人 第二地方銀行協会の会長を務めております愛媛銀行の一色でございます。

 先生方には、日ごろ当業界に対しまして御指導を賜り、厚くお礼を申し上げます。また、本日は、このような席に出席をいたしまして意見を申し述べる機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。

 さて、御指摘のございました銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律案に関しまして、当業界の意見を申し述べさせていただきます。

 まず第一に、株式保有制限について申します。

 本年六月の金融審議会における「銀行の株式保有に関する報告」でも述べられておりますとおり、株式保有に伴うリスクは、本来、個別の銀行が保有株式のリスクを適切に評価し、それに対応した自己資本を維持して、適切にリスク管理を行うべきものであると考えております。

 この観点から、まさに現在、バーゼル銀行監督委員会において、平成十七年の適用開始に向け、自己資本比率規制における株式保有リスクの取り扱いについて多面的な検討が行われている、このように承知をしております。

 しかし、バーゼル銀行委員会の結論が得られるまでにはなお時間を要するようでありまして、他方、現に自己資本を上回る株式を保有している銀行が存在していることから、保有株式のリスクが銀行の財務面に与える影響の大きさを考慮いたし、金融システムの安定を図ることを目的として銀行等に株式保有制限を課すということは、妥当な見解ではなかろうかと思っております。

 なお、当業界といたしましては、取引先企業の株式を保有し育成していくことも、地域金融機関としての重要な役割と考えておりますことから、特に非公開株式について保有制限の対象外としていただきたい旨、金融審議会の場においても要請をいたしましたところでありますが、この点に関しましては、法律案が成立した場合には、政省令レベルにおいて保有制限の対象から除外されるものと聞いておりまして、私どもの要望が受け入れられたものと評価をいたしております。

 また、保有制限の適用開始が平成十六年九月三十日とされ、さらに、個別銀行の株式保有額が自己資本を上回る状況に応じ、平成十八年九月まで経過期間が設けられる点につきましても、放出される株式の市場に与えるインパクトをできる限り抑制するという観点から適切な措置である、このように考えます。

 次に、当業界における株式の保有状況でございますが、当業界全体でいえば、ティア1の五〇%弱であります。したがって、この法律に基づき株式保有制限が課せられたとしても、大量に保有株式を売却しなくてはならないといった状況ではございません。

 このように、当協会会員行で株式保有制限の適用により保有株式の処分を要するところは少ないと思われますが、既に時価会計の適用も開始されておりまして、また、十七年には改正BIS規制の適用が予定されていることもありまして、保有株式のリスク管理強化にさらに努めてまいらなければならない、このように思っております。

 続きまして、銀行等保有株式取得機構についてでございます。

 この機構は、銀行等の株式保有制限に伴う株式の放出が、株式市場だけでなく、金融システムの安定性あるいは経済社会全般にも悪影響を与えるおそれがあることを踏まえ、セーフティーネットとして設立されるものであると承知をいたしております。また、株式市況が急落するような事態となると、時価会計を通じて個別銀行の財務面にも大きな影響を与えるおそれがあり、全体として銀行の株式処分が円滑に進むかどうかは、金融システム全体の評価あるいは個別銀行の評価にも影響を及ぼしかねないといった点も考慮されていると存じております。

 当業界としても、機構のこのようなセーフティーネットとしての意義に関しては異論のないところでありますが、既に申し述べましたとおり、当協会においては、株式保有額からすると、機構のみならず市場に対しましても、保有株式を売却する必要性は限られたものであります。当協会会員行が機構を利用する可能性は低い、このように思われます。

 したがって、機構が設立された場合には、できるだけ多くの銀行等が利用することにより、セーフティーネットとしての役割を十分果たすことのできるよう、例えば特別勘定で買い取り対象となる株式の範囲については、政府による損失の補てんに極力つながることのないよう配慮が求められるというものの、それらを踏まえた範囲でできる限り幅広くカバーすることが適当であると存じます。

 また、機構の存続期間は設立後十年以内となっておりますが、特別勘定で買い取った株式を存続期間中に市場において処分するに当たっては、株式市場や株式発行企業に与える影響を十分留意していただきたく存じます。

 最後に、本委員会の先生方におかれましては、今後とも第二地方銀行協会に対しましてよろしく御指導を賜りますようお願いいたしまして、私の発言を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

山口委員長 どうもありがとうございました。

 それでは、引き続きまして奥本参考人の方からお願いをいたします。

奥本参考人 日本証券業協会の奥本でございます。

 本日は、このような場におきまして意見を述べる機会を設けていただきまして、ありがとうございます。御礼申し上げます。

 初めに、基本認識についてでございます。

 この問題は、金融システムの安定性の観点から提案されている問題ではありますが、証券市場に携わっている者としましては、銀行等に対する株式の保有制限の問題につきましては、構造改革という観点から取り組むことが重要であると認識しており、また、保有制限を課すことに伴い生じる株式売却に際しましては、株式市場の需要と供給と価格形成の影響に最大限の配慮をいただきたいと考えております。

 次に、法律案に対する考え方について申し述べます。

 今回提出されております法律案は、二つの柱、銀行等の株式等の保有制限と、銀行等保有株式買い取り機構から成っております。

 まず、銀行等の株式等の保有制限に関しましては、提案理由にもありますように、第一義的には銀行の財務面の健全性をいかに確保するかという問題でありますが、銀行による株式保有をめぐる問題の根底には、我が国における法人間の株式持ち合い構造の問題があると認識しております。すなわち、銀行を中心とする法人間によります株式持ち合い構造が存在しているために、間接金融と直接金融のバランスのとれた金融システムをつくり上げなければならないという問題意識の欠如につながり、旧来型の経済システムのもと、我が国経済の競争力の低下や金融システム不安を招いた一因となったのではないかと考えております。

 したがって、銀行の株式保有問題は、個々の銀行の財務内容の健全性の問題にとどまらず、銀行が株式を相当程度保有しているため、株価の変動が銀行の経営に大きく影響を及ぼし、企業活動や金融システム全体に悪影響を与えてしまうという、一国の経済全体の問題であるというふうに認識すべきだと思います。こうした観点からしますと、銀行等の株式保有に一定の制限を課すという対応も必要となってくるのではないかというふうに考えます。

 私としましては、今回の銀行に対する株式の保有制限は、法人間の株式持ち合い構造の解消を一層促進することにつながり、間接金融中心から直接金融中心へという流れをつくっていくことにもつながるのではないかと期待しております。

 次に、もう一つの柱であります銀行等保有株式取得機構についてであります。

 先ほども申し上げましたように、現在の我が国経済を取り巻く環境は、世界的な経済環境の悪化なども加わり、大変厳しい状態にあります。そうした環境下において、銀行の保有する大量の株式が一時期に株式市場において売却されることになりますと、需給悪化に伴う株価の急落、それに伴う銀行の財務内容のさらなる悪化、またそれを受けた株価の下落といった悪循環に陥ることになりかねません。本来であれば、価格メカニズムが働く株式市場において売却されるべきでありますが、保有制限を実現するための手段として取得機構に取得させることは、現下の株式市場の状況にかんがみますと、緊急避難的な措置としてやむを得ないのではないかと考えております。

 当面、取得機構による買い取りは二兆円程度を想定しているようでありますが、現在の銀行の株式保有額からしますと、十兆円規模の株式が売却されることが予想されております。国際決済銀行、BISにおける議論の動向次第では、この規模がさらに膨らむということも考えられます。そうしますと、この二兆円という額は必ずしも十分ではなく、必要であれば増額できるような手当ても必要でないかと考えます。

 金融システムの安定化のための措置として位置づけるのであれば、予想される売却額に見合うだけの資金は用意しておかなければならないでしょうし、それが困難であるならば、株式市場において十分に吸収することができるような手当てが必要ではないでしょうか。仮に十兆円用意したとしましても、株式取得機構が十年間の避難措置である以上、遅かれ早かれ株式市場において取得株式は売却しなければなりません。

 そういうことからしますと、あくまで取得機構は株式市場における売却の補完であると位置づけ、株式市場において混乱なく受け入れることができるような施策を早急に講じるべきではないかと考えております。

 つまり、銀行や取得機構が保有する株式を株式市場に大きなインパクトを与えることなく売却できるよう、この猶予期間において、株式市場に厚みのできるような環境整備に官民一体となって取り組まなければ、この問題の本質的な解決はあり得ないと考えております。

 最後に、マーケットに携わる者の立場から、株式市場における価格形成への影響という点について付言させていただきたいと存じます。

 政府が関与する取得機構においては、多大な量の株式を取得、売却することになることから、取得機構の動向が直接に株価へ影響を与えることがないようにしなければなりません。特に、取得した株式を売却するに当たっては、株式市場へ与える影響に細心の注意を払う必要があるというふうに思っております。取得機構による株式の買い取り、売却は運営委員会の議決を経て行われることになっておりますが、この運営委員会には、株式市場に理解の深い方の参加をぜひともお願いしたいと存じます。

 さらに、取得機構による買い取り、売却などの情報は、株価に影響のある情報となることが予想されます。したがって、株式市場で形成される価格への信頼性が損なわれることがないよう、株式市場の公正性、透明性の観点から、情報の厳正な管理、適切なディスクローズについては十二分に御配慮いただきたいと存じます。

 繰り返しになりますが、この法律案で示されている施策は、あくまで問題の一部分を解決するにすぎず、基本的には、直接金融を中心とする市場メカニズムの機能する金融システムを構築し、株式市場を活性化していくことしか根本的な解決はないと考えております。そのためにも、今回の法律とあわせて、幅広い層からの資金を株式市場に導入するためのインセンティブを提供できる思い切った施策、それを早期に実現していただくことをお願い申し上げ、私の意見陳述は終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

山口委員長 どうも、大変ありがとうございました。

 引き続きまして、最後になりましたが、氏家参考人、よろしくお願いいたします。

氏家参考人 野村証券の氏家でございます。

 本日は、このような場で意見陳述の機会をいただけましたことにつきまして、まず御礼を申し上げます。

 時間の関係もございますので、早速、法律案についての意見を述べさせていただきます。

 まず第一に、銀行による株式保有制限についてですが、銀行による株式保有を制限するという考え方は、我が国だけでなく、世界各国の中央銀行で構成される国際決済銀行においても検討されております。そこでは、現在の信用リスクに着目した自己資本規制を改め、保有株式の株価変動リスクを考慮する形にするという方向で議論が行われております。銀行が大量に株式を保有していれば、株価の変動によって銀行の財務面の健全性が損なわれ、ひいては金融システムの安全性に対して影響を与える危険性があるという認識は世界共通のものであります。

 我が国の銀行は、事業会社との株式持ち合いなどを通じて、諸外国に比べて多くの株式を保有しており、株価の変動が金融システムを不安定なものとする可能性は少なくないと思われます。したがいまして、銀行の株式保有に対して何らかの規制を課すことにつきましては、やむを得ない措置であると思います。

 もっとも、本来、株式保有に伴うリスクは、国債など他の有価証券の保有や企業等への貸し出しに伴うリスクと同様に、各銀行がみずからの経営判断により管理すべきものであり、一律のルールで規制するということは望ましいものではありません。したがいまして、仮に規制を課すとしても、最小限の規制にとどめていただいた方がよいと考えております。

 次に、銀行等株式取得機構の創設につき意見を述べさせていただきます。

 銀行の株式保有に対して、例えば、自己資本の一〇〇%以内といった規制が課されることになりますと、多くの銀行が、現在保有している株式のかなりの部分を処分せざるを得なくなります。このため、銀行による保有株式の売却が加速されるといった事態が想定されます。そうなりますと、一時的に株式の売却額が急増し、市場における需給関係の悪化により、円滑な価格形成機能に支障を来すことも懸念されます。

 株式の売却は、証券取引所などの株式市場を通じて行われるのが本来の姿ではありますが、そのような危険性があることを考えますと、売却される株式の受け皿となる銀行等保有株式取得機構のようないわばセーフティーネットの仕組みを設けることにより、銀行による株式処分の円滑化を図ることも必要であると思われます。

 機構の創設によって、銀行にとっては、通常の市場での売却に加えて株式の処分方法に関する新たな選択肢が与えられることになりますので、銀行による株式処分がより円滑に進むことが期待できるのではないかと思われます。

 もちろん、保有株式の規模を規制の範囲内におさめるためにどのような方法をとるかという点については、まさに各銀行の経営判断にゆだねるべき問題であります。機構が創設されたからといって、その利用を強制されるといったことがあってはならないことと考えております。また、機構の活動が株式市場における自由な市場メカニズムの発揮をゆがめることがないよう、十分に留意していただく必要があると思います。

 機構の運営に当たっては、株式の取得を公正な時価に基づいて行うとともに、買い取りに関する価格、数量などの情報を一般の市場取引と同じように証券業協会等を通じて公表するなど、透明性の確保を図るための何らかの手だてを御検討いただければと存じます。

 機構が取得後に保有している株式を売却する際におきましても、市場に悪影響を与えないために御配慮をいただく必要があるかと思われます。とりわけ、機構による売却が役職員によるインサイダー取引や相場操縦などの不公正取引につながることがないよう、情報の管理につきましてはくれぐれも徹底していただきたいと存じます。また、市場における価格形成をゆがめないようにするためにも、ディスクロージャーが充実されるように御配慮いただきたいと存じます。

 銀行の株式保有制限と取得機構の設立という御提案は、中長期的に見れば、我が国における株式の保有構造を、銀行や事業会社などの法人を中心としたものから個人投資家を中心としたものへと転換していく一つの大きな契機となるのではないかと思います。しかし、現状においては、個人投資家の証券市場への参加がまだそれほど進展していないというのが実情です。

 この背景には、我が国では間接金融中心のシステムが長く続いたため、銀行等の金融機関に比べると、証券会社や株式市場が一般の個人にとってはまだなじみにくい存在であるといった事情もあると思います。私どもといたしましては、営業姿勢の転換や投資教育の推進などを通じて、証券市場に対する投資家の御理解を深めていくよう努力しているところでございます。

 金融システムを間接金融を中心としたものから直接金融と間接金融とのバランスのとれたものに転換していくためには、やはりインフラ整備が必要であり、とりわけ税制面での御支援をいただくことが非常に重要であると考えております。そのためにも、諸先生方の御理解、御協力をいただく必要があると考えております。

 今後とも、証券市場の活性化に関しまして、諸先生方の御理解、御協力をいただきますようお願い申し上げて、私の意見陳述を終わらせていただきます。御清聴どうもありがとうございました。(拍手)

山口委員長 どうもありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

山口委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。七条明君。

七条委員 それでは、私、自由民主党を代表して、きょう、五人の参考人の皆さん方に質疑をさせていただきたいと思うわけであります。

 まずもちまして、五人の参考人の先生方には、お忙しい中をわざわざこうして私たちの審議におつき合いをいただいておりますことを、本当に厚く御礼を申し上げます。ありがとうございます。

 本来、今議題となっておりますこの銀行の株式保有の制限に関する法律案、提案理由の説明を書いてあるものを読んでおりますと、我が国の銀行等は相当程度の株式を保有しているため、株価の変動が銀行等の財務面の健全性や、あるいは銀行等に対する信認及び金融システムの安定性に影響を与えかねない状況にある、法律案の提出された理由がこう書かれているわけであります。

 まず、私、全国銀行協会、全銀協の山本会長にお聞かせいただきたいのは、先ほど来、お書きをいただいておりました内容の中で、銀行がみずから保有株を自己の責任のもとで処分できないがゆえに救済措置というような表現、あるいは、銀行のために取得機構がつくられるというような目的であれば、これは不本意、本意ではない、こういうふうに言っておられたわけでありますが、意味はよくわかるのでありますけれども、しかしながら、これはさっきの目的の中からいえば、はっきりと、銀行の財務面での健全性を確保する、あるいは金融システムを安定するという意味では、私は、どういう意味なのかなということも感じながら、一つちょっと疑問がわいたわけであります。

 そう一つ物を考えていきますと、今、銀行というのは非常に公共性の高いものだ。公共性の高いという意味があるものでありますから、ちゃんと銀行法の中でもそういうことをうたっておりますし、当然そのために、公共性が高いために許認可制度になっている。当然、そういう公共性の高いものをこれからどうあるべきかという形でこういう法案をつくっていったと私は感じておるわけであります。

 そういう意味で、山本参考人にぜひお聞かせをいただきたいのは、銀行界は、取得機構に頼らずに自己責任において保有株式の圧縮を進められる、進めておられるということを聞きましたし、先ほど来、みずほの関係ではもう既に着実にできているよというような内容も聞いたわけでありますが、しかし、圧縮が進められると考えられるのか、あるいはこの株式取得機構の意義や必要性についてはどういうふうに考えておられるのか、これをお聞かせいただきたい。

 もう一点は、きょうは信託銀行の関係の業界の方が来られておりません。しかしながら、やはり都銀と信託銀行が保有株式が一番多いのではないかと私たちは推測をいたしておりますけれども、そういたしますと、都銀あるいは信託銀行を代表していただけたらと思いますが、それらの保有するいわゆる株を具体的にどのような形で処分をしていかれるか、あるいは、この機構を使ってやろうとされるのなら、どういう形で今後日程上、この法案の中でやろうとされているかも教えていただければと。

 以上二点、お聞かせをいただきたい。

山本参考人 ただいまの御質問につきまして、まず一つずつお答えを申し上げたいと思います。

 最初は、取得機構に頼らず自己責任で圧縮していこうとしているが、取得機構の意義と必要性というのは何か、こういう御質問かと存じます。

 先ほども申し上げましたように、株式保有リスクをコントロールし、それぞれの銀行が判断する合理的な範囲内にとどめるということで、多くの銀行は、みずからの戦略に基づいて自己責任のもとで保有株式の圧縮をしていると認識しております。この方針は、保有規制の導入や株式取得機構の創設に関係なく、今後とも各銀行の経営者は真剣に取り組んでいく課題であると考えているところでございます。

 株式取得機構は、政府の進める証券市場活性化策と相まちまして、株式の持ち合い構造を解消し、我が国の証券市場の構造改革を進めていく上での時限性のある緊急措置、一時的な受け皿という機能を果たす、そういう意義があるというふうに考えております。

 具体的な機構のメニューについて申し上げますと、現在の法案や政府の御説明を伺っている限りで申し上げますと、一般勘定による買い取り、それから媒介という機能、この業務は株式保有構造のいわば触媒的機能を果たすと考えられます。もう一つは、比較的長期にわたる特別勘定買い取りというのもございまして、これは市場の状況等、不測の事態にあらかじめ備えるセーフティーネットとして、市場に安心感を与える効果が期待できるというふうに考えているわけでございます。

 我々の銀行についての対応でございますが、保有株の圧縮の取り組みにつきましては、まず機構の一般勘定買い取り媒介機能、これは短期間に買い取り、転売をする、ないしは媒介をするというものですが、これについては積極的に使っていきたいと考えております。特別勘定の問題は、まずは基本は市場で売却を行う。通常の状態では、市場でまず売却を行いたいと考えております。緊急事態あるいは非常に特殊な状態において、例外的に特別勘定を使いたい。これは全銀協会長ということではなくて、みずほのCEOとしての方針でございます。

 二番目は、都市銀行、信託銀行、多くの株式保有があるが具体的にどう処理していくのかという御質問だと存じますが、これは個別の銀行の方針でございますので、みずほホールディングスの立場で申し上げたいと思います。

 都市銀行、信託銀行、御指摘のとおり保有株式が多いわけでございます。機会あるごとにいろいろな銀行の頭取とお話をしておりますが、皆さん、非常に重い経営課題ととらえた上で、真剣に取り組んでいらっしゃいます。ただ、個別にほかの銀行がどう具体的に対応しようとしているのかということは、詳細は承知しておりません。

 私どもの例で申しますと、既に何年か前から圧縮をしておりまして、先ほども申し上げましたように、この九月までに二兆円の圧縮をし、今後一年半の間に残りの一兆円の圧縮を計画しているということでございます。例えば、今年度については、年間五千七百億円の圧縮計画を持っておりますが、上期で四千六百億円、残り一千百億円を下期に圧縮するというような計画で対応しているところでございます。いずれもこれは市場での売却によって圧縮をしているということでございます。

 以上でございます。

七条委員 できるだけ市場で売却をしていく、機構を通すことも、やらなきゃならないことがあればということだろうと思います。先ほど言われたように、銀行セクターと個人セクターのいわゆる触媒的な機能だというような内容も含めて、いろいろ考えておられる。しかしながら、私はやはり、ぜひその意味ではこの機構をうまく利用されながら、リスク管理債権あるいはそういうものがあるというならば、うまく機構を通して、私たちは早く元気になっていただきたいな、こういう期待も込めておきたいと思うわけであります。

 私、かねがねから、先ほど来五人の皆さん方の内容の中にもありましたけれども、間接金融から直接金融中心へ、あるいは法人の投資家から個人の投資家へ、これをうまくバランスをとっていかなければならないというような内容のお話がありましたが、まさにそのとおりだと思うんであります。そういう意味で、証券業界の皆さん方の方にもお聞かせをいただきたいと思うんですけれども、奥本証券業協会会長にはこういうことをちょっと聞いてみたい。

 銀行等の株式保有問題の最終の解決のために、今やっておりますこういうことが早く解決するために、幅広い施策が必要だとさっきちょっと言っておられたですね。私もそう思っておるわけでありますが、これを、どのような施策が有効と考えておられるのだろうか。幅広い施策という意味では、どういうことを考えたら有効になるのかということがまず第一点。

 それからまた、この取得機構による株式の買い取りの処分において、特に留意する点があればお聞かせをいただきたいんであります。透明性の確保のために、あるいはインサイダー取引だとか、あるいは相場操縦、株価操縦のようなもの、不正な取引について、具体的に何かこうやった方がいいよというような内容があれば、これもお聞かせをいただきたい。

 もう一つ、さらに野村証券の社長には、参考人には、銀行の保有の機構の中で、機構を置くことが株式の取得のPKOになってしまうんじゃないかというふうに認識をされる方があるのかもしれません。しかしながら、機構の設立によって市場でのいわゆる価格形成がゆがめられることがないんだろうかという心配も、実は私も一人しているわけでありますが、この意味で、こういうことがあるのかないのか。特に、野村証券はこの業界のいわゆるトップカンパニーでありますから、そういう御意見をお聞かせいただければと。

 さらにもう一方で、市場の担い手として、いわゆる証券会社としての取り組むべき課題、これは野村証券としてどういうふうに認識をしていられるかもお聞かせをいただければと思います。

 以上、よろしくお願いいたします。

奥本参考人 七条先生の御質問は二つに分かれるかと思います。まず、どのような施策が有効と考えるかという点でございます。

 先生お話しのように、従来型の間接金融から直接金融へという方向転換、これにはやはり幅広い層からの資金が証券市場に入ってくるということが、やはりどうしても欠かせない部分だというふうに思っております。その中でも特に、いろいろな幅広い考え方を持っております個人、個人の参加を積極的に促せるということが、これからの取り組みの中で大変重要なことなのかなというふうに思っております。

 個人が入れるようなインフラということにつきましては、もちろん私ども証券業界として、市場仲介者としてのしなくてはならない努力、それは当然のことでございますが、やはりなれ親しんだ預貯金から株式への金融資産のシフトということになりますと、どうしても税制面でのバックアップといいますか、税制面での援助が必要になってくると思います。

 本国会におきまして、株式の譲渡益の課税につきまして、いろいろこれから御審議いただけるというふうに聞いておりますが、これだけではなく、やはり入り口のところ、つまり個人が株式に魅力を持てるような税制上の問題。例えば、現在の株式の配当について、いわゆる源泉分離課税の税率を下げていただくとか、あるいは投資信託の非課税枠を創設していただくとかいうようなこと、あるいは贈与税につきまして、親子間あるいは孫への贈与については思い切って五分五乗方式の採用をいただくような税制上の優遇措置というのは、非常に効果があることなのかなというふうに思います。

 また、この十月から発足しました確定拠出型年金というのも、これからの資金の導入については大変威力あるものというふうに思っておりますが、これにつきましても、やはりより一層の税制上の恩典といいますか、優遇措置について、アメリカ並みとまではいかなくても、現在以上の優遇措置についてもぜひ御検討いただきたいものだというふうに思っております。

 それから、基本的には、やはり一般大衆といいますか国民に対する教育活動だと思います。私ども証券業界としましても、これにつきましては、改めて関係団体一緒になりまして始めました。証券というもの、株式というもの、あるいは株式市場というものにつきましての知識を何とかやはり広めたいということでございますが、これにつきましても、やはり学校教育の中で取り上げるという手段があるのではないかというふうに思っております。この点につきましても、先生方におかれましてもぜひ御協力いただければというふうに思っております。

 また二番目の、インサイダー問題、あるいは取引に関する相場操縦についての具体的な案という御質問だと思います。

 やはり、取得機構がスタートします。それによりまして、買い取り、売却などが行われるときに、その情報というのは大変株価に影響のある情報となることが予想されます。その情報の管理いかんによっては極めて不本意な結果になることも想定できるわけでございまして、株式市場での価格の決定の公正性からしまして、やはりこの信頼を損なわない意味での十分な情報の管理あるいは適切なディスクローズというものが必要なんだというふうに思っております。

 これからスタートするわけで、スタートする前に具体的な云々ということもなかなか思いつかない面もあるんですが、本取得機構における株式の売買につきましては、運営委員会が設定されるというふうに承っております。この運営委員会での議論といいますか、それにつきましては、マーケットのことがよくわかっている方を入れるということが、やはりこういった情報管理とかなんとかいうことにも十分役に立つものかなというふうに思います。

 基本的には、売買の情報につきましては遅滞なくディスクローズされ、不公正取引につながる懸念というのを排除していただくこと、これがやはりどうしても必要なことだろうかというふうに思っております。

 以上でございます。ありがとうございました。

氏家参考人 御質問は二つあると思いますが、買い取り機構の設立によって市場での価格形成がゆがめられるおそれがあるのではないのかという点と、トップカンパニーとして、取り組むべき課題も多い証券市場をどう認識しているか、この二点だと思います。

 まず、第一点目からお答えをさせていただきます。

 取得機構を設立することによって市場の価格形成がゆがめられるおそれはないかということに関しましては、一般の投資家とは目的が異なる機関が市場に入ってくるということになりますので、市場の価格形成に全くゆがみが生じないとは言い切れないと考えております。ただ、かつて言われましたいわゆるPKOのようにとらえるか、とらえられるか、そういったことによる市場のゆがみがあるかどうかということに関しては、そのように考えておりません。

 なぜならば、銀行に対して株式の保有制限が課されますと、一時に大量の株式が売却されるということが想定されるわけですが、この取得機構は、この大量の株式の売却による市場への一時的なインパクトを吸収するということで、短期的な暴落を防止するという効果はあろうかと思いますが、機構が買い取った株式はいずれ市場に出てくることになりますので、したがいまして、ある程度の期間を考えますと、長期的に株価を維持するないしはPKOにつながるとは考えておりません。

 むしろ、ゆがみを生じるということを前提といたしまして、これを最小限に抑えるためにディスクロージャーを充実させて透明性を確保する、不公正取引が生じないよう情報管理を徹底する、こういった防止策を講じていくことが重要であると考えております。

 それから、第二番目の質問に関してでございますが、先ほどちょっと意見陳述の際にも触れさせていただきましたが、現状におきまして、個人投資家の証券市場への参加がまだそれほど進展していないというのが実情でございます。

 私どもといたしましては、営業姿勢の転換や投資教育の推進などを通じて証券市場に対する投資家の御理解を深めていく必要があると考えておりまして、弊社だけではなく業界としても取り組んでいるところでございます。

 また、金融システムを、間接金融を中心としたものから、直接金融、間接金融のバランスのとれたものに転換していくためには、やはりインフラ整備が必要であり、とりわけ税制面での御支援をいただくことが非常に重要と考えております。そのためにも、諸先生方の御理解、御協力をいただくよう考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。

七条委員 税制面ということを非常に力説されておりましたが、この後、証券税制に関係のある、特に、一千万円までは無税でやろうというような法案をやがて審議ができるようになるのではないかと思いますが、そういう問題も今提起をしながら、緊急措置でやりたいな、私たちはそう考えております。

 しかしながら、個人の方へ向けて、あるいはこれから法人から個人へ向けての投資家を誘っていくというのは、今のこういう厳しい時代の中で非常に大変だと思いますが、それらも活性化をしていくことが私たちの願いでもあるわけであります。

 本法案を通しまして、あと二人の、地銀、第二地銀の皆さん方にお聞かせをいただこうと思いましたが、二十分という限られた時間になってしまいましたためにこの辺で終わらせていただきますが、余りにリスク管理をする余り、どうしてもリスク管理をし過ぎると、地銀、第二地銀、地方の中ではどうもそれが貸し渋りになってしまっているんじゃないかというようなニュースを私たちも聞いてしまいます。リスク管理をする中で貸し渋りにつながることのないような地銀や第二地銀の皆さん方の御努力もお願いをして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

山口委員長 次に、上田清司君。

上田(清)委員 民主党の上田清司でございます。

 参考人の皆様には、御多用の中、こうして意見を開陳する機会をつくっていただきまして、本当にありがとうございます。

 今いろいろお伺いをいたしましたが、特に山本全銀協会長には、銀行救済の色彩の強い意味合いを持ったと考えたときもあったが、まあまあやむを得ぬというような認識を示していただきましたし、また奥本日本証券業協会会長には、緊急避難措置としてやむを得ないという論述、あるいはまた、二兆円の枠というのが本当にこれで足りるのかどうかとか、場合によっては十兆円あるいはそれ以上の枠をつくっておく必要があるのではないか、それ以上に、こうした猶予期間内に吸収する態勢が本当にできるのかというような、そうした貴重な御意見もいただいております。また、運営委員会のメンバーに対して、いわばお役所のOBみたいなのばかりが来ては困ると言わぬばかりのニュアンスを感じたところであります。

 さらに、野村証券の社長におかれましては、まさに買い取りに関する中身について公正な取引ができるのかどうかというような意味や、あるいは機構による売却そのものが役職員によるインサイダー取引や相場の操縦にもつながるのではないかというような御懸念も表明されましたこと、大変意義深く感じたところであります。

 今後、意見交換を通じながら、正しい御指摘もまたしていただきたいと思います。

 それでは、早速ですが一つお聞きしたいんですが、銀行とこの機構の関係は、いわゆる利益相反、一方が得をすると一方が損をするような関係になっているのではないか。

 せんだってマイカルが破綻しましたときに、投資家の資産を保全すべき社債管理会社は銀行であります。銀行以外のところもあるわけですが、銀行がなっていた場合があります。しかし、一方では銀行は、資産の、いわば破綻先の債権を保全しなきゃならないという、こうした利益相反の関係があるわけですが、同じように、今回の法案について、銀行とそして機構との関係にいえば、同じ人たちが、ある意味では買う人たち、そしてまた売る人たち、こういう関係になっているんですが、この点についてどのようにお考えになっているのか。証券業協会、そしてまた全銀協の会長からお話をいただきたいと思います。

山本参考人 順番が後の私が先で恐縮でございますが、全銀協としてどう考えているかということを申し上げます。

 現在、機構の役職員、それから運営委員会のあり方というのは、まさに国会で法案を御審議いただいている状況でありまして、私ども、具体的なアイデアを持っているわけではございませんが、法案等の御説明から理解しているところでは以下のとおりでございます。

 まず、機構の役員の選任、解任、それから定款、業務規程は当局の認可事項であるということがまず第一点。それからもう一つは、立入検査など、当局の厳しい監督下にある組織であるという点。こういった点から、公正さを欠く運営が行われる可能性は極めて低いのではないかと考えている次第でございます。

 以上でございます。

奥本参考人 再々出ておりますように、いわゆる特別的な措置であるという点については、大変評価できるものだというふうに思っております。

 また、入り口のところの議論というのはいろいろされておりまして、それなりの評価ができるのだと思いますが、問題は出口のところの議論、つまり、どうやって売却するかというところにつきまして、これからの問題が残ってくるかというふうに思っております。

上田(清)委員 当局の認可事業であり、当局の立入検査権があるという御判断の中で、不公平な取引、不公正な取引はあり得ないだろうというふうな御認識を示されたわけですが、御承知のとおり、かつて兵庫銀行などは、検査をしたときには六百億の不良債権があり、そしてその三カ月後に破綻し、一兆五千億になっておりますが、二十五倍開いております。御承知のとおり、一般的に言えば、金融機関が破綻すると三、四倍に不良債権が膨らむことはありますが、二十四、五倍になったのは、この兵庫銀行と木津信と二つのみであります。

 そういう意味では、当局の検査権とかあるいは当局の監督権というのはいかがなものかと、私は佐々波委員会以来、銀行をずっとウオッチしている者の一人なんですが、いささか、そのような御認識で本当にいいのかどうか、いま一度確認をしたいと思います。

 全銀協の会長にお願いいたします。

山本参考人 ただいま再確認ということでございますが、詳細を申し上げますと、まことに私見で恐縮でございますが、運営委員会がこのキーになるわけでございまして、実際の実行部隊は、株式の取得、売却にかかわる執行という業務は信託銀行がされるというふうな案だと伺っております。

 先ほど来証券業界の方からもいろいろ御意見がありますように、運営委員会のメンバー、それから運営の仕方というものの中で、御指摘のような問題を、リスクをミニマイズするような仕掛けを入れていくということが、私見で恐縮でございますが、賢明なやり方かなというふうに考えております。

 以上でございます。

上田(清)委員 それでは、御承知のとおり、この法案は、銀行が機構に株式を売却する場合、売却額の八%を拠出することになっております。そうしたことを考えますと、実は、いい株、つまり将来発展が見込めそうな、そうした株式は、こうした八%の拠出をしないで済む一般市場で売却をし、そして、いわばぼろというのでしょうか、将来紙切れになるようなものは機構に引き取っていただくというような、こういうインセンティブが働くといってもいいのではないかな、ある意味じゃそういうような作用が働くのではないか、私はそう思うのですが、これについて、山本全銀協会長はどう思われますか。

山本参考人 そのような懸念をいろいろな場で表明されている方がいらっしゃるということは承知しておりますが、私ども、現在の法案、それから政府の御説明を伺っているところでは、機構が特別勘定で買い取る株式につきましては、投資適格、具体的にはトリプルBマイナス以上の格付を有していることという基準を設けるという案となっているようでございます。

 したがって、一般論として申し上げますと、比較的優良な信用状況のお取引先の株式のみを買い取り対象とするというのが今回の法案の趣旨であろうと理解をしているところでございます。

上田(清)委員 野村証券の氏家社長にお伺いしたいのですが、今、山本会長から、いわば優良な格付のみを対象としていく考え方を言っておられますが、御承知のとおり、最近の動向の中でスーパー系のマイカルが破綻したわけであります。これは当然、トリプルBということで、適格なものであるという判断のもとに、幹事会社として九百億を販売され、また、個人投資家はそのうち六百億だというふうに伺っております。

 しかし、現実はそうでなかった、私はそう思っておりますが、必ずしも格付会社の認定というのが信用できるのかどうかということについて、大変市場も不安視しております。証券税制の話もあります、また今回の法案もありますが、それ以上に、市場に対して、あるいはこうした投資家が本当に格付に対しても安心しているのかどうか。あるいは、証券会社のそうした債券の販売についても本当に信頼できるのかどうかということも問われていると思うのです。

 この間破綻しましたマイカルについて、投資適格のトリプルBという判断をしていたからゆえに当然発行されたものだと私は思っておりますが、この点について氏家社長にお伺いしたいのですが、いかがでしょうか。

氏家参考人 マイカル社債の発行後約一年でマイカル社が破綻したことについては、まことに遺憾でございます。

 弊社は、マイカル債の発行に際して引受主幹事を務めさせていただきましたが、引き受け審査に際しては、開示資料が適切であるかなどにつき審査を行いました。この段階では、引き受け審査上の特段の問題は見当たらず、引き受けを行うとの判断に至りました。

 発行条件の設定に際しましても、格付、年限、その企業の業種、発行額、既発債の額及び流通利回りなどを踏まえて買い条件を決定し、全引受シ団証券会社で需要動向を確認し、その結果に基づいて条件決定をいたしました。

 また、お客様への販売に際しましても、目論見書を交付し、信用リスクや価格変動リスクなど、債券のリスクについても十分説明した上で、広範なお客様に御購入いただいております。

 遺憾ながら、マイカル社の破綻という事態に立ち至ったわけでございますが、当社といたしましては、マイカル社、代理人、社債管理会社などに、社債の弁済率の引き上げなど、社債権者の皆様の意見を十分に酌み取っていただくよう申し入れを行っております。

 なお、弊社といたしましては、今回の事態を受けまして、お客様の信頼にこたえていくためにはどのようなことができるかを考えている段階でございまして、引き受け審査体制の強化やお客様への情報伝達体制の拡充など、お客様によりよいサービスを提供するための施策を検討しております。

上田(清)委員 お話でありますが、二十七回債を発行したのが二〇〇〇年の十月でありますが、二〇〇〇年の九月二日に週刊ダイヤモンド、そして九月九日号の東洋経済で、いずれも企業レポートでマイカルを特集した、要するに、予断を許さないマイカルの今後というような特集記事が出ておりますし、九七年当初から、ムーディーズそれからスタンダード・アンド・プアーズ、こうした格付会社は、最初から投機的、こういう判定を下していたこと等々も含めて、本当にそうしたことを消費者、投資家の皆さんに御説明をされたのでしょうか。都合のいいところばかり御説明されたようなことはなかったのでしょうか。野村証券の幹事会社としての責任は大変重いのではないかと思いますので、私は、この点についてもう一度お伺いしたいと思います。

 同時に、一般投資家、二百万クラスの方々が多いということですので、この小口債権者のいわば債権回収について、この席を通じてどうぞアピールして、小口債権について優先的に回収するというようなことも発表されることが証券市場の活性化、信用につながるのではないかというふうに思っておりますので、この点も含めまして、参考意見を言っていただければありがたいと思います。

氏家参考人 私どもが社債引き受けを行うに当たりましては、引き受け審査において、開示の適切さなどを確認し、既発債の市場実勢等も勘案し、また、発行会社が取得する格付も確認の上、総合的に判断を行います。その過程においては、発行会社が取得する格付以外の格付も留意しております。

 取得格付は、公開情報のみを用いたいわゆる任意格付の場合と異なりまして、会社から情報提供を受け、またヒアリングも行った上、社債発行に焦点を合わせて審査しているものでございます。引き受け審査に際しましては、この取得格付をより重視しております。JCRの取得格付は、十月時点の段階でトリプルBになっております。

 なお、社債の販売につきましては、目論見書をお客様に交付し、目論見書をお読みいただく。その中で、債券に関するリスク、信用リスク、価格変動リスク等を十分に説明し、御理解していただくよう努めております。

上田(清)委員 ムーディーズ等の格付についてのお知らせというのはしているんでしょうか。

氏家参考人 その時点での格付は承知しております。

上田(清)委員 承知しているというよりも、投資家にそういうことをお伝えしていたんですかということをお尋ねしているんです、一貫して。

氏家参考人 そういう情報は、私どもは持っておりますので、投資家のお客様に聞かれた場合には当然お伝えしております。

上田(清)委員 ありがとうございます。

 都合のいいことだけをお知らせしないようによろしくお願いしたいと思います。

 それでは、また山本全銀協会長にお伺いしたいのですが、私どもでちょっと資料を用意しまして、もう一枚渡すのを忘れてしまったのですが、実は、二〇〇一年三月期の公的資本増強行の税効果相当額と公的資金の控除額を除いた自己資本率を計算いたしました。よく言われるところの正味自己資本率というような考え方だと思いますが、これを見ますと、どこがどうだとか申し上げませんが、四・九%、四・一%、六・一%、五・三%、六・七%、六・〇%、五・二%、三・九%、一・六%、七・二%、五・二%、これが大手行のいわば税効果と公的資金を外したときの自己資本率になるわけですが、この二つが入っていわば八%条項をクリアしているという状況です。

 できましたら、やはり、より資本増強したときの基本的な考え方、佐々波委員会で約二兆円、その後、七兆五千億の資本投下、資金増強がなされたわけでありますが、特に、今会長行であります富士銀行は最高額を、いわば公的資金を受け取っているという形になっておりますが、今お渡ししております資料を見ておりますと、国民的にはどうも理解がしがたい。

 役職員の数を減らしておられることは事実であります。それはそれで、健全化計画に基づいてなさっていることは高く評価したいと思います。しかし、私はずっとこの三年間ウオッチしておりますが、最初の二年間は、この健全化計画の中で計画を立てられた分に関しては完全に実施しておられました。しかし、ほとぼりが冷めた昨年の九月期とことしの三月期の中身を見ますと、平均役員報酬は上がっているところが出てきている。

 退職金もどんどん上がってきている。例えば、個別行を申し上げると恐縮ですが、住友銀行などは九千万が一億四千万になったり、あるいはさくら銀行が四千万が八千七百万になっている。あるいは東海銀行が六千万が一億四千九百万。あるいはまた東洋信託が四千五百万から六千五百万。第二地銀の会長行であります横浜銀行は、四千百万が七千百万になっている。職員の給与についてもそうであります。資本増強を行った二十五行中十八行が逆に給与をふやしている、計画よりも実績が。

 こういうことについて、国民的な理解が本当に得られるのか。なぜ先ほど私が自己資本の、いわば税効果と国民からお借りしている資本注入の部分を引いたら、マイナスになってしまうんですよ、八%よりも。だれのおかげで、救っておられるのかということについての認識に欠けておるんじゃないか。

 このことについて、山本会長にお伺いしたいと思います。そしてまた、全国地方銀行協会会長の平澤会長にお願いいたします。

山本参考人 まず、私の方からお答え申し上げます。

 先ほどの個別の計画の達成状況につきましては、私ども全銀協という立場で個別に事情それから数字を把握しておりませんのでコメントはできませんが、私どもみずほフィナンシャルグループとしては、今の数字、配付された資料によりますように、計画の達成に努力し、計画内で、内でというのは達成をしているということをまず御理解いただきたいと思います。

 それから、個別の銀行のそれぞれの事情がございますと思いますので、個別の銀行についてはコメントを差し控えさせていただきます。

 では、どう考えるかということでございますが、この公的資金を資本注入という形で受け入れていることについて、私どもは経営をしていく上で非常に重要な問題である、問題であるといいますか責任を感じて経営をしているところでございます。

 この受け入れた趣旨は、金融システムの安定化、それから金融の機能を十分に果たすこと、つまり円滑な金融機能の発揮ということでございます。この点につきましては、リストラ計画とあわせ日常の業務の中にきちんと位置づけ、努力をしている次第でございますし、今後につきましても、こうした景気の状況でございます、経済の見通しも大変受け入れ当時に比べて暗くなってきていることでございますので、健全化計画につきましては、一段とリストラの強化、収益機会の発見、収益力の強化といった観点で計画を見直し、対応をしてまいりたいというふうに考えております。

平澤参考人 今山本会長からお話がございましたように、当行、横浜銀行といたしましても、健全化計画を守るために一生懸命努力しているところでございます。

 ただ、一つだけちょっと申し上げたいのでございますが、当行の場合は三年前から役員を、二十五名いたのを十二名に切りました。現在十二名でやっております。それに合わせて役員報酬も、二割から三割、そのときから切っております。

 ただ、ここに出ております退職慰労金につきましては、全体十二名のうち監査役が四人です。そうすると、残りが取締役が八人という中から、去年、ちょうどこの年、トップクラスの者が一人、長年役員をしていたのがやめたものですから、このように少し多目に出たわけでございます。それで、計画で出しておりましたのは、御当局の指導によりまして一定の標準の姿で出しておりますので、こういう四千百万という数字になっているわけでございます。

 しかし、いずれにしましても、御指摘のように、できるだけこれからも厳しくやっていきたい、そのように考えている次第でございます。

    〔委員長退席、佐藤(剛)委員長代理着席〕

上田(清)委員 時間が参りましたが、少なくとも、いろいろな個別事情があっても、二年と四期にわたって健全化計画についてはきちっと実は皆さんやっておられたんですよ。ところが、昨年の九月から、ほとぼりが冷めてきたかと思ったら突然ふえてきたんですよ。この三月期も。その九月期にも我々は指摘しましたよ。しかし、またふえてきているじゃないですか。だれか特別な方がぼんと出たから平均退職金が高くなったと言っておられますが、賞与もふえているんですよ、それから給与もふえているんですよ。何かみずほグループの中には、興銀でさる方が十億ぐらいになるというようなお話も聞いていますが、本当にそういうことが通用するのかどうかということについて、ぜひ冷静に考えていただきたいと思います。

 きょうは意見陳述ありがとうございました。

佐藤(剛)委員長代理 次に、若松謙維君。

若松委員 公明党の若松謙維です。

 まず、山本全銀協会長と奥本証券業協会会長に同様の質問をいたしますが、全銀協または証券業ともに、この株式保有機構の法律案につきまして、それぞれメリットがあるかどうか、それを端的にお答えいただきたいと思います。

 あわせて、全銀協そして証券業に、今次このような保有機構をつくらざるを得なかった、この前提に、いわゆる持ち株が多過ぎたという現実があるわけですね。この持ち株を進めたのは、ともに両業界の責任でもあるわけです。それについて、どのような責任として感じていられるのかについてお願いいたします。

山本参考人 お答えを申し上げます。

 まず、銀行に取得機構はメリットがあるかということでございます。

 取得機構への株式の売却は時価で行われるというふうに聞いております。その限りにおいて、市場に売却するかわりに機構に売却するという直接的なインセンティブは銀行にあるわけではございません。しかし、取得機構はあくまで株式市場構造改革を進める諸施策の一環であると理解しておりまして、その過程で、万一の場合に備えて、セーフティーネットとしての特別勘定買い取りが用意されているというふうに認識しております。そういう意味で、金融システムの安定化につながるという点から、銀行界にとっては意義があるというふうに考えております。

 第二点でございますが、今日のような状態、つまり、株式の持ち合い構造というものができたことについて銀行は責任を感じているかという御質問でございますが、冒頭で御説明を申し上げましたように、株式の持ち合いというものは、我が国の金融・資本市場の発展の過程で歴史的な役割を果たしてきたというふうに私は認識しております。ただ、その歴史的役割が状況の変化の中で、銀行、企業双方にとって、現在のような多額の株式を保有していることが経営上の問題、つまり、財務上のリスクが大きくなったという問題として認識されて、現在は、それぞれ企業、銀行ともに、経営の戦略の問題として株式の持ち合いの解消を進めているというのが現状であるというふうに認識しております。

奥本参考人 一時的な株式の売却が行われますと、当然のことながら、市場における需給の悪化ということにつながり、円滑な株価形成にそごを来すということは、そういうことになるんだと思います。そういった意味では、セーフティーネットの仕組みを設けてその円滑化を図るということは意味があることでございますし、証券会社にとりましても、やはり株式市場がいたずらに混乱することを避けるという意味でも、それなりの大きな意味があるのかというふうに思います。

 それともう一つ、基本的には、やはり本件を契機としまして、先ほどからいろいろ出ております、間接金融中心から直接金融中心へという流れをつくっていくことによりつながってくるという期待は強く持っているところでございます。

 それから、持ち合いの結果の問題でございます。

 これは、ただいま山本参考人からお話ありましたように、それなりの歴史的な意味はあったことは事実だと思います。それなりの役割を持ち合いというものは果たしたということも事実だと思います。ただ、間接金融と直接金融のバランスのとれた金融システムをつくり上げていくということにつきましては、この問題意識の欠如につながってしまったということは否めない事実だと思います。我が国の競争力の低下とか金融システムの不安を招いた一因というふうになってしまったのかという点は、御指摘のようにあるというふうに思っております。

 以上です。

若松委員 それでは山本参考人にお聞きします。

 今、セーフティーのところには関心がおありのような、反対に一般勘定の方には余り関心がないような認識を受けたんですけれども、ちょっと二点お聞きするんですが、まず、この株式機構について、みずほさんは株主として、いわゆる発起人として参加の意思がおありなのかどうか、それが一点です。それと、今後一般勘定というものを使うことが予想されるのかどうか。その二点についてお願いします。

山本参考人 まず冒頭で、先ほどの私の御説明申し上げたことで、セーフティーネットは使うが一般勘定はやらないというふうにおとりになっていらっしゃったようでございますが、一般勘定の方は一時的な、短期的な保有でございまして、これは積極的にやってまいりたいと考えております。それから、セーフティーネットとして機能いたします特別勘定の方につきましては、これはそのときの情勢で、使い勝手がいいものができますと、私どもも使ってまいりたい。使わないということではございません。

 それから、みずほはこの機構に拠出するのか、こういうことでございます。

 今までの法案あるいは政府の御説明を伺っている限りでは、取得機構案は我が国証券市場の構造改革を進めていく上での諸施策というふうに位置づけられておりまして、金融システムのインフラとして意義を有しているというふうに考えております。

 御審議の結果、こうした機構の意義が国会でも認められ、法案が成立した場合には、私、全銀協会長という立場を離れても拠出をしていくということになろうと思っております。しかし、最終判断は、細部いろいろな御検討がこれからなされると思いますので、現段階で確定的なことを申し上げるのは時期尚早であると考えております。

 以上でございます。

若松委員 同じく山本参考人にお聞きしますが、この保有制限の適用が平成十六年の九月三十日からということになっておりますが、じゃ、その期間までの間、銀行は、この株式、いわゆるティア1を超える株式についてどのような行動というんですか、どのように処分、処理されるのか。市場に放出するのか、機構というところに放出するのか、それについてはいかがでしょうか。

山本参考人 平成十六年の九月末という期限までどういう行動をとるかという御質問でございます。

 先ほど御説明申し上げました二つの機能のうち、第一の機能、一般勘定を通す機能でございますが、これはETFあるいは投資信託を組成するための短期の買い取りあるいは媒介という機能でございます。これにつきましては、保有株式を減らす方法として、生の株式を市場に売却する以外に、投資信託という形でこれを実現する手法となるということ。それから第二に、証券市場構造改革を進めるための触媒としての役割が期待できる。この機能につきましては、銀行界としても可能な範囲で積極的に対応してまいりたいと考えております。恐らく、会員になられるであろう銀行も同じ考え方をとっているはずでございます。

 他方、長期の買い取りの問題でございますが、これは買い取り条件が全く同じ、つまり価格が同じでございますので、一般論としていいますと、八%の売却時の拠出金を拠出するという条件が機構にはついております。したがいまして、この拠出をしないで済む市場売却をまず考えるということが、銀行にとっての経済的な合理性のある行動であろうというふうに考えます。

 まず、市場売却。ただし、状況によりまして市場売却ではなく機構に売却をするような状態になれば、といいますのは、機構は機構の判断で買い取りをするかしないかを決めるということになっておりますので、そういう状況になりますと、銀行は市場売却にかえて機構にも売却するということがあろうかと思います。

 大まかな方向感といいますか、行動の予想はそんなところでございます。

 以上でございます。

    〔佐藤(剛)委員長代理退席、奥山委員長代理着席〕

若松委員 それでは、奥本参考人並びに氏家参考人にお聞きしますが、今、短期の場合のETFの株式保有機構への売却という話がありましたが、それでは今度はこのいわゆるETF、投資信託ですね、その組成のために、では証券業としてしっかりとそれを処理するというか、信託なりいわゆるETFとして売却していく、または、こういった一般勘定の消化のために積極的に参加されるか、そういう意思についてはいかがでしょうか。

奥本参考人 ETFという商品につきましては、恐らくこれから相当活発化する商品になるということが予想されると思います。ただ、それを各証券会社がどう使うかということは、ちょっと協会ベースではわかりかねますことでして、失礼します。

氏家参考人 ETFは、インデックス投信としてのわかりやすさと株式の機動性をあわせ持った商品でございます。そのため、個人のお客様が新たに株式投資を始めようとするに際して適した商品であろうと思います。

 したがって、今後、株式市場全体に対する見通しが強気に転じた場合には、大きな需要が見込める商品であろうと判断しております。そのような状況になれば、取得機構にETFを組成するための現物株式の供給をお願いする場面もあろうかと思います。

若松委員 今回の株式保有機構の四月からの議論の際に、私も当初そのプロジェクトに参加いたしまして、まず私の印象では、日本の特に銀行、銀行協会等は非常に消極的でした。それに対して、非常に市場を重視するいわゆる海外、欧米の証券業等、そういう金融機関は、やはりこれは早くやるべきだ、市場に反した一つのシステムだけれどもどんどん早くやるべきだ、こういう認識を受けました。

 結局、やはり日本の金融機関の皆様というのは、いわゆる非常に調子がよくて、皆さんにとって都合のいいときには、銀行の護送船団方式ですか、そういう形で一緒にそれに乗っかって、そして、今回のように非常に株価が低迷、さまざまな金融機関のひずみが出てきたときには、今度は、市場の原理を優先すべきだ、こんな主張をされて、非常に何か都合のいい使い方をしているなという実感をいたしました。

 そういうふうに思いますと、やはり株式機構についてというよりも、株式機構を使うかという以前に、いわゆる株式の持ち合いの解消、これは言ってみれば過剰資本の解消にもつながると思うんですね。それについて山本参考人と奥本参考人にお聞きしますが、これからのこの持ち株の解消、あわせて過剰資本の解消について本当にどのように対応しなければいけないのか、どのように対応されようとしているのか、この点についてお聞かせいただけますか。

山本参考人 ただいまの御質問で、都合のいいときに市場、都合が悪くなると国、こういうことではないかという御指摘でございますが、私どもは当初から、市場売却をしてきたという経緯がございますので、市場売却と、つまり市場とあつれきが起こらない、マーケットフレンドリーなという片仮名で言っておりましたが、マーケットフレンドリーな機構をつくるのであれば、そういうものにしなければならないということを申し上げてきたわけであります。

 それから、外資が積極的であるということは、先ほど来議論がありましたように、需給に影響が出る、銀行の保有株が放出されてくるとマーケットの需給に影響を与えるので、株価下落要因になる。したがって国が大きな保有機構をつくるということが望ましいというのが、外資、とりわけ資産運用をやっている外資系の会社の主張だったというふうに思います。

 私どもは、そういうことではなく、現在の公的資金で資本を受け入れている銀行、銀行界としては、市場で自力でやれる限りやりたいということを申し上げていたわけでございます。

 それから、マーケット全体の過剰資本問題をどうするかということでございますが、一面からいえば過剰資本で、他面からいえば過少資本でございます。つまり、持ち合いをしているものをネットアウトすると過少資本ではないかという議論もあるわけでございまして、いずれにしましても、企業、銀行、あるいは企業同士の株式の持ち合いというものは、欧米流の資本市場、証券市場というものからするとかなり特異な性格のものでございます。これにつきましては、証券市場の活性化、証券市場の構造改革の各種諸施策が今御審議中かと思いますが、こういったものについて、一日も早く実現をし、早く市場の構造改革というものをやっていく必要があるのではないか、そういう中で解消されていくものだというふうに理解をしているところでございます。

    〔奥山委員長代理退席、委員長着席〕

奥本参考人 過剰資本になるのか過少資本になるのかという点につきましては、いろいろな意見があるのかと思います。ただ、銀行が現在持っている株式が、持ち合い解消という点でまだこれからもマーケットに出てくるということがある、これは事実だと思います。恐らく、BISの規制の強化等も始まれば、やはりまだまだ売却ニーズが高まるのかなという思いもあります。今も山本参考人からお話がありましたように、やはりその受け皿というのは、構造改革の中で間接金融としての証券市場の活性化で受けていく、それ以外には方法はないのかというふうに思っております。

若松委員 氏家参考人にお聞きしますが、今の、見方によっては過剰資本、また過少資本という言い方がありましたが、いずれにしても、バブルの時代に、結果論からいえばむだな株式発行というんですか、それも否定できないと思います。そういった認識で、株式消却というのもこれは一つのいわゆる過剰資本を解消する方法なんですけれども、技術的には株式機構を通じないで株式消却をすればこういう問題もなくなるという話もあるわけですが、なぜこういう株式消却というのが日本ではとられないのか、そこら辺について御説明いただければと思うんです。

氏家参考人 過剰資本であるか過少資本であるかというのは、定義によりいろいろ考え方が変わってくると思うのでございますね。ただ、日本で自社株消却等が始まりましたのはここ数年の話でございまして、直近では自社株消却の金額は非常に大きく成長してきております。大きく伸びてきております。したがいまして、今後、企業が株主価値を重視するという経営に向けてかじをとっていく過程で、自社株消却は市場及び企業に浸透していくと考えております。

若松委員 最後の質問ですが、一色第二地銀会長にお伺いしますが、第二地銀の皆様の声として、御存じのように主要十六行を中心としての資本注入、では、第二地銀はどうなんだと。主要行ばかり、それは金融システムの安定のためには十六行優先に体制を整えなければいけないということはおわかりなんでしょうけれども、では私たちはどうなんだ、そんな声というか議論があればちょっとお伝えいただきたいと思います。

一色参考人 お答えをいたします。

 第二地銀の我々の仲間の中にも、御案内のように、既に資本注入をしたところもございます。しかし、今後の問題となりますと、個別行の問題でございますので。ただ、先ほどから話が出ておりますように、自己資本を充実して安定した金融、安定したシステムをつくっていく、安定した基盤をつくるということについては、力いっぱい努力をしていかなければならない、このように思っております。

若松委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

山口委員長 次に、鈴木淑夫君。

鈴木(淑)委員 自由党の鈴木淑夫でございます。

 五人の参考人の方、お忙しい中をお差し繰りいただきまして私どもの委員会のために御出席くださいまして、まことにありがとうございます。私ども、与えられた時間、二十分でございますので、なるべく簡潔なお答えをちょうだいしたいと思います。

 法案は、御承知のように、二つの部分に分かれておりまして、前半が株式保有規制でございますが、これにつきましては、参考人の皆様、賛成の御意見でございました。

 私も、バーゼルの銀行監督委員会の長い議論を引用するまでもなく、これは日本に導入されていなかったのがおかしい、それは恐らく右肩上がりの株価を前提にしていたので日本では必要ないと考えられていたかと思いますが、バブル崩壊後のこの十年間の推移を見ますと、当然、株価変動に伴うリスク管理、原則としては自己責任でおやりいただくわけでございますが、そこに一つのルールを入れるというこのバーゼルの考え方に沿った保有規制、これは必要だと思っております。

 もう一つ、後半にありますのが、それに伴う、株式の売却に対応するために、保有機構を立ち上げるということでございます。

 これにつきましては、少し私は心配をしておりまして、日本の株式市場の中に人為的な介入をする仕掛けができたとか、あるいは市場を通さないで売買する仕掛けができたとかいうふうに諸外国から見られますと、自由市場を基本とする日本の株式市場の評価が下がりはしないかという点を心配しております。

 その点からいいまして、私、参考人の御意見を聞きながら心強く思いましたのは、山本参考人が、この機構というのが銀行救済のための機構だというのなら御免こうむるよ、そうではなくて、一時的な、緊急避難の場所として設けるということであれば賛成だというトーンでございましたし、それから、氏家参考人、証券界の側からも、この機構ができたからといって、銀行は必ずこの機構に向かって売らなきゃいけないというんじゃだめだ、市場に売りたいときは市場に売るべきだ、それはもう銀行の経営の自由に属する問題であって、選択肢が一つふえただけというように考えるべきだ、また、機構についても、取引あるいは機構の保有株式についての透明性を高めるということが結局は、さっき私が申しましたような、日本の市場についての批判、妙な介入の仕組みができたとか、市場を通さないものができたとかいう批判にこたえる道であるという御意見でございまして、これも私は大いに心強く思った次第でございます。

 そういう観点からお伺いしたいのでございますが、そういう自己責任の経営をしているんだ、またそういう機構をつくるんだという観点からの質問でございます。

 これは銀行経営をしておられる、山本、平澤、一色、お三人の参考人にお伺いいたしますが、山本参考人、御自身の公述の中にもありますが、そして私、銀行の経営者の中に知人、友人大勢持っておりますので、ふだん、ざっくばらんな会話の中で聞いておりますが、銀行さんにとっては大事なお取引先の株式でございます、その株式を売却することによって大事なお取引先に悪い影響が行かないようにという配慮を当然なさりながら売っていっているわけですね。ですから、株価の急落を招くようないわば無責任な大量売りというのは、マーケットのこともさることながら、大事な大事なお取引先のことを考えたらやれるわけがないんだというふうに私は感じておりますが、山本参考人はそういう売りが銀行からどんと出る可能性というのを大きく見ておられるかということなんですね。

 それから、平澤、一色両参考人には、そもそも、地銀あるいは第二地銀の中には、ティア1を大きく上回る株式保有している銀行は例外的に数えるほどしかない、特に地銀さんはそう、第二地銀さんも非常に少ない、平均的にはティア1の七割あるいは五割とおっしゃった。これもまた、銀行の経営にとって最高の意思決定みたいなことに属するお取引先の株式売却について、保有がそもそも少ないのにそんなどんと売るような事態というのは考えられますか。私には余り考えられないのですが。

 どうぞ、お三人、どういう感触でおられるか、お聞かせいただきたいと思います。

山本参考人 大変銀行実務におりた御質問でございますが、先ほども申し上げたかもしれませんが、持ち合い解消の場合は取引先と十分な話し合いを持ちながら進めていくということでございますので、市場売却、それから仮に機構ができて機構に売却をするという事態になりましても、資本政策を含めた相当の話し合いをした上で実行するというのは変わらないというふうに思います。

 それから、株価が落ちたときにどしゃ降りのように売るか売らないかという一般的なお話でございますが、株価が下がったときは我々はできるだけ売らないで株価が上がったところで売る、これはお取引先それから我々の双方にとって大事なことでございますので、そういうふうな対応でいくということでございます。

 ただ、機構の運営ということでありますと、機構については非常に特殊な状況で緊急避難的に特別勘定での買い取りを認めるということでございますので、そういった状況においてはお取引先、銀行ともにまたいろいろな考え方が出てこようかというふうに思いますが、いずれにしろ個別の判断は相当のネゴを要すると思いますので、短時間に急速に進めるというようなことは、できれば私どもはそれにこしたことはないわけですが、そう急に大量に売却ができる状況にはならないというふうに考えております。

平澤参考人 地銀のことについて申し上げますと、今委員がおっしゃいましたように、株の持ち合いの規制に当てはまるいわゆるティア1を超えている銀行というのは、計算の仕方にもよりますけれども、一、二行でございますから、その意味でいいますと処分するという意味でのプレッシャーはないわけでございますが、次の問題といたしまして、そうではあるけれども、なおそこそこの株を持っておりますから、そういう株を今後持っていくことがいいことか悪いことか、これは個々の銀行の経営者の御判断でこれからおやりになることだと思います。ただ、その場合も、御指摘のように取引先企業に御迷惑をおかけするということは何としても避けるということでございますから、いろいろ知恵を絞りながらそういう方向でやっていくのではないかなというふうに思います。

 それから、もう一つやはり考えておかなければいけないのは、持ち合いですから、こちらも持っておりますが向こうの企業も銀行の株を持っているわけでございまして、こちらが処分すれば向こうも処分する、その結果として銀行の株にもいろいろ影響を与えるという点もまた考えなくちゃいけないということでございますから、その辺はかなりいろいろなことを考えながら、しかし、方向性としては持ち合い解消のために積極的に努力するということではないかな、そのように思っております。

一色参考人 お答えをいたします。

 先般も御説明申し上げましたように、我々第二地銀協会といたしましては、例外を除きましてティア1の五〇%以下でございますから、この問題について差し迫った検討というのは比較的しておりませんが、我々の生きざまといたしまして、地域とともに、お取引先とともにというスタンスで経営を行っておりますから、いきなり売却をするとかというようなことは一切考えておりません。

 いろいろな弊害を勘案しながら、よく信頼関係を保ちながら持ち合い解消、株式売却というようなことを進めていかなければならない、このように思っております。

鈴木(淑)委員 ありがとうございました。

 地銀さんあるいは第二地銀さんの場合は、まさに今一色さんおっしゃいましたように地域とともに、お取引先とともにという経営姿勢でございましょうし、大手の銀行さんの場合は、日本経済とともに、お取引先とともにという姿勢でございましょうから、私には、短期間に大量の株がどんと銀行から売り出されるという事態は余り考えられないのですね。しかし、万が一そういうことがあるといけないからこの機構をつくっておくのだ、緊急避難的な、一時的な受け皿をつくっておくのだという議論は成り立つかもしれません。

 そこで、証券の経営者である氏家さん、それからかつて証券会社経営にタッチしておられた奥本さんにお伺いいたしますが、そういうふうに一時的にぼんと売られた場合は、それは株価は下がる、株価が変動すると思うのですね。つまり、短期的に見れば、明らかに日々の動きとか一週間の動きとかは需給で株価は動いていく、これは言うまでもないことでございます。しかし、その需給の結果株価が非常に下がった。しかし、よく考えてみると、日本の企業の予想収益の割引現在価値からいうとこれは下がり過ぎているねということになれば、当然どこかから買いが入ってくるというのが株式市場だと思うのですね。

 つまり、お二方は、株価というのは何に依存して基本的には決まっているか。目先的、短期的には需給に決まっているのですよ。そうじゃなくて、もう少し長い目で見たら、教科書の世界では、予想収益の割引現在価値ですね。これは株価にかかわらず、地価であろうが不良債権の時価を計算するときであろうが、資産のファンダメンタルズはそれで決まるというのは教科書です。お二方は、基本的というか中長期的というか、株価については、何に依存しているとお考えでございましょうか。

氏家参考人 鈴木先生おっしゃられましたように、一般的に資産の価格はどうやって決定されるのかと申しますと、短期の需給等は別といたしまして、その資産が将来発生するであろう収益ないしはキャッシュフローをある割引率で現在価値に割り引いたものであるというふうに考えております。

 したがいまして、今後企業が伸びてその会社の収益が上がってキャッシュフローが上がってくるということが株式上昇の基本だと思います。もしそういう状況が期待できないということであれば、短期のいろいろな政策を打ってもなかなか株式、株価は上昇するのは難しいということになるのではないかと考えております。

奥本参考人 いろいろな見方があるのかと思います。

 基本的な問題はさておきまして、やはり株価の価値を考えるときに、現在の金利水準とかそういったものも大きな一つのファクターになってくると思います。したがって、企業が持っている現在の、会社の価値はともかくとしても、やはり企業が配当しています配当利回りとかいうのも、やはり株価評価の一つの広い意味でのファンダメンタルズだというふうに思っております。

鈴木(淑)委員 いろいろな要素から成る株から得られるであろう予想収益、キャッシュフローという言い方が一番全部包含できると思いますが、それの予想されるあるいは現在支配している長期金利による割引現在価値プラスリスク要因で決まると私は考えます。

 氏家参考人の御意見は全く私と同じことをおっしゃいましたので、ああ、そうなんだなと思いましたが、そういう観点からいいますと、さっき奥本参考人がおっしゃいました、二兆円じゃ足りないんじゃないか、十兆円ぐらい要るかもしれないということの意味が私にはよく理解できない。

 緊急避難的な短期の受け皿としての意味はこの機構にありますが、株価を支えるという意味はこの機構には私はないと思います。こんな機構をつくったって株価を支えられるわけがない。大体、市場価格三百兆円もあるでしょう。そこへ、潜在的な需要としては今やグローバル化されているんだから世界じゅうの資金が市場を見ているんですから、そんなところに二兆円を十兆円にしてみたって、需給がちょっと動くでしょう、だけれども、そんな一時的な需給の変動で、価格も動くかもしれないけれども、そんなことで株価の大勢は決まっていかないというふうに思うのですね。

 ですから、需給で株価が決まるような観点から、あるいはこの機構は需給をいじくるのが目的だというふうに考える、これは私は反対でございます。あくまでも短期の緊急避難的な受け皿の意味しかないな、それも、これを利用しようが利用しまいが皆様方の経営の自由によるものであって、縛るものではない、拘束するものではないということではないかと思うのですが。

 それにしても、そういう念のために緊急避難の短期的な受け皿をつくるのはいいじゃないかという御議論に対して、私、一つ非常に心配をしていることがあります。

 これは、御承知のように、十年間できれいにするわけですね。五人の参考人の方々、十年間日本の株価が低迷し続けるとお思いですか。これは先のことだからわからないと言っちゃえばそれまでですよ。しかし、十年間も株価が低迷するようであれば、この前も、先週も当委員会でみんなそうだとうなずき合ったと思うのですが、我々国会議員はみんな首ですよ、そんな情けない政策をやっているようでは。日本経済、幾ら何だって、十年とは言わないまでも、五年以内に立ち直らなきゃいけない。できれば二、三年で立ち直らなきゃいけない。まさか十年間立ち上がらないということは絶対にあってはいけないことだと私は思っているのですね。

 そういう観点から見ると、待てよ、これをつくったら、銀行さんが、この株式保有規制を守ろうと思ったら三年以内に売るんだけれども、実は、この機構があるから十年以内に売ればいいんだ、売って安くなっちゃう場合は機構というところへ置いておいたらいいんだ、それで回復したところでどんと売れば二倍までもうかるのですね。二倍以上もうかっちゃったら、今度は国庫に納付するというのがこの機構ですね。そうしますと、この機構は、何のことはない、銀行さんをもうけさせるためにつくった機構だ、そのためにセーフティーネットとして政府が保証して立ち上げた機構だということを、後の世の人が批判する可能性があります。

 共同証券を思い出していただいたってわかるでしょう。共同証券をつくって需給をいじったけれども、株価は全然上がらなかったです。むしろ、あの後下がっていますよ。ところが、景気が回復してきてから株価が上がったから大もうけをしたわけですね。今度の機構だってその可能性が非常に高いのです。

 ですから、私は、まあ、だめもとというか、あるいは万が一に備えてつくっておいたらいいやという議論に対しては、ちょっと待ってくれよ、後でこれは銀行さんをもうけさせるための仕掛けだったと言われたらどうするのというふうに問いかけているわけでございますが、もう時間ぎりぎりになってしまいましたので、右代表で、山本全銀協会長、それから氏家社長、それぞれ銀行界、証券界の経営に携わっておられますお二方から、もうけるための手段じゃないか、機構じゃないかという批判が将来出てきたときにどうお答えになるか、お伺いしたいと思います。

山本参考人 もうけるための機構ではないかという御質問でございますが、損をしたら国が負担するのかというお話もございまして、何とも将来のことはわからないと思いますが、仕掛けとしては、損失が発生した場合には、まず民間側の拠出金が最初に損失をこうむるという形でございまして、それでもカバーができない場合は政府の保証が履行されるという仕組みでございまして、利益の側につきましては、民間の拠出分については、拠出のリスクという観点から上限をつけて配当を払い、残りはすべて国庫に帰属するということで、国と民間の会員側のリスク、それからそれに対するリターンのバランスをとられた仕組みだというふうに理解をしているところでございます。

氏家参考人 この銀行等保有株式取得機構の存在は、万が一大量の株式が短い期間に市場に放出されるというときのセーフティーネットとして、一つ選択肢が加わったという効果であると思います。長期的に株を塩漬けするものではなくて、将来の需給動向を見ながら、またこの株は市場に出てくるものだと考えております。

 したがいまして、あくまでもこの株式取得機構のメリットは、選択肢を一つふやした、その選択肢を一つふやしたということに利点を見出すものだと考えております。

鈴木(淑)委員 ありがとうございました。終わります。

山口委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 参考人の皆さん、大変お忙しい中御出席をいただいて、大変貴重な御意見をお聞かせいただいて、ありがとうございます。

 先ほど来の議論をお聞きいたしまして、まず山本参考人にお聞きしたいのですけれども、株式取得機構に対する銀行業界としての固有のニーズはないというふうなお答えでございました。

 この取得機構の必要性という点でいろいろな議論があったように思いますが、全銀協としては一貫してそういう姿勢をとってこられたように思います。前会長の西川会長の記者会見を見ましても、銀行業界として株式を売却した後の下落リスクを国に負ってくださいということはとても申し上げることはできないと考えていますとか、固有のニーズはありませんとか、そういうふうにお答えになっているわけです。

 そこで、端的にお聞きしますけれども、全銀協として、この機構をつくってもらいたいという要請を政府に出したという事実はあるのでしょうか、ないのでしょうか。

山本参考人 お答え申し上げます。

 こうした機構をつくってほしいという要請を全銀協として関係当局に要請をしたということは、私は記憶にございません。

佐々木(憲)委員 それでは、地銀協会の平澤会長にお聞きしますけれども、地銀としては、今回保有制限の対象になる銀行というのは非常に少ないわけでありまして、我々が金融庁からいただいた資料を見ましても、地銀は八行超えておりますけれども、しかし、一五〇%を超えているのはそのうちの一行しかございません。ですから、地銀としては、どうしてもこの機構がなければならないということには当然ならないと思うのですね。

 それから、第二地銀協会の会長さんの一色さんも同時にお聞きしますけれども、地銀よりも第二地銀の方はますますそういう保有制限の対象になるところは少ないわけでございます。

 お二人にお伺いしますけれども、この機構をつくってもらいたいという要請を協会として出された事実はございますか。

平澤参考人 特にそういうことを申し上げたことはないのではないかな、正式にはそういう御意見は申し上げていないと思います。

一色参考人 お答えします。

 第二地銀としても、要請をしたことはございません。

佐々木(憲)委員 日本証券業協会会長さん、奥本さんにお聞きしますけれども、そうしますと、こういう機構をつくってもらいたいというのは、これは証券業界として非常に強い要望を出しておられたのでしょうか。それとも、どうも私は先ほどの御発言を聞いていて、かなり積極的な印象を持ちましたが、協会としてこういう要請を出されたという事実はありますか。

奥本参考人 協会としてこういう要請を出したという事実はないと記憶しております。

佐々木(憲)委員 つまり、関係業界は、このような機構をつくってもらわなくても、いわば自己責任、自分たちの一定の計画に基づき、過剰な株の保有があれば、あるいは持ち合いがあれば、それを計画的に市場に放出し、そしてみずからの保有制限、保有を減らしている。これは、今までの状況を見ますと、そのように見えるわけですね。

 全銀協の会長さんにお聞きしますけれども、これは西川会長の記者会見でありますが、大手銀行の話ですが、「一九九九年度、二〇〇〇年度と続いて、二兆円を超える株式圧縮が行われたとのことである。この金額は、二〇〇〇年一年間の三市場における株式売却代金合計額が三百兆円近くであることを考えれば、十分に吸収可能なロットであろうと思う」このようにおっしゃっているわけですね。

 つまり、大手銀行としては、一定の計画のもとに着実にこの過剰な保有を解消しつつあった。しかも、その金額というのは株式市場に大きな影響を与えるようなことはなかった。つまり、年間二兆円としても、三百兆の市場からいうとわずかなものである。こういう状況ですので、山本会長の認識もそういうことではないかと思うのですが、それはいかがでしょうか。

山本参考人 前西川会長がそのような発言をされたというのは私も記憶しておりますが、年間に二兆円から三兆円という銀行の売却については、これまでのところ何とか消化ができてきているということは、そのとおりだというふうに思います。

 ただ、今後の一定の時間内で、それぞれ保有株数の制限を上回っている金額、個別銀行で違いますけれども、売却のスピードがその時々で上がってまいりますと、こうした順調な吸収が可能かどうかということがあって、今回のような緊急措置としての機構というものを考え出されたのではないかというふうに私は認識しているところでございます。

佐々木(憲)委員 大手銀行としては、ティア1を超える部分というのは三月時点で十一兆というふうに言われているわけですけれども、例えばこれを五年間で、つまり、過去一年間、二兆円ということでやってきたとすれば、五年程度で計画的にやっていけば、当然これは解消可能な、基準をクリアできる、その程度のロットである、こういうことが言えるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

山本参考人 計算上はそういうことになろうかと思いますが、マーケットの状況、それから、先ほど申し上げました株式の保有制限の時限性という問題を考えますと、順調な消化ができない特別な状況があるのではないか。それで、こうした機構をあらかじめ用意しておくというのが今回の趣旨だろうというふうに思います。そういう意味で、この機構は役に立つのではないかというふうに評価しているわけであります。

佐々木(憲)委員 そうしますと、では、具体的にお聞きしますけれども、先ほどの御答弁の中で、市場に直接売却する場合、それから機構に売却する場合と分けて考えた場合、市場に売却するのが中心である。しかも、その場合、株式市場の動向を見まして、株価が上がったところで売るのが常識である。これは取引先との関係でいっても、そういうことが必要である。このようにお答えになりましたね。

 そこで、それでは、機構に売却する場合には売却価格の八%を拠出金として出さなければならない。この拠出金を積むということは、これは大変高いコストになるわけでありますが、市場に出さずに機構を通じて、つまり機構に八%のコストをかけて売却しなければならないというような状況というのは、具体的に言うとどんな事態が想定されるんでしょうか。

山本参考人 どういう事態かというのは、ちょっと具体的に例示はできないわけでありますが、先ほど申し上げましたように、保有制限がかかる時限性の中で、銀行によっては売却が間に合わない、あるいはマーケットの状況が非常に悪くて売却が進まなかったというような事態があろうかというふうに思います。それを機構が緊急事態だというふうに判断すれば、初めて特別勘定が発動されるわけでございまして、そういう段階では、八%の拠出金を拠出しても売却をするという銀行があるのではないかというふうに考えます。

 現時点で考えますと、八%の売却時の拠出金というのは、これは、まだいろいろな議論がこれからというところがございますが、自己資本を毀損するというふうな考え方もございます。そうしますと、非常に自己資本比率に悪影響を与えますので、私どもとしては、まずは市場売却を優先して対応したいということを申し上げているわけでございます。

佐々木(憲)委員 機構を通じて売らなければならないほどの緊急事態とおっしゃいました。緊急事態というのはどういう状態でしょうか。

山本参考人 具体的に緊急事態というものを、これはむしろ政府の御提案の趣旨がどういう説明であったか私存じ上げませんので、明確なことは申し上げられませんけれども、会員のニーズがあり、それから個別の銀行の株式の処理の状況、つまり進捗度合いということかと思いますが、それから残された期間内における市場の状況、それらを総合的に判断して特別勘定の発動を決めるという御提案だと理解しておりますが、そうした状況のことを申し上げておるわけであります。

佐々木(憲)委員 会員のニーズがありと言いますが、会員としてはニーズはないわけでありますね、先ほどの御答弁では。そうすると、進捗状況が思わしくない、つまり株式保有制限の期限がぎりぎり来まして、もう後がない、そういうときに八%のコストをかけて機構に売らなければならないのでしょうか。市場に売れば済む話なんじゃないのでしょうか。

 市場の動向を見ると言いますが、それは株価が比較的安定した状態、あるいは先ほど株価が上がるという状態でなければこれは売れないとおっしゃいましたから、それはそういう状況を考えれば、要するに、突き詰めて言うと、期限が来てもう売らなければならなくなった、そして政府が機構を通じて買い上げるからどうぞ売ってください、八%出しなさい、こういう状態が生まれた場合、これが緊急事態ということなんじゃないのでしょうか。

山本参考人 先ほど鈴木先生の御質問の中で、株価が低いときには我々は余り売らないで、株価が高くなったら売るという個別の経営判断のお話を申し上げたわけでありますが、これは、全体としてそういうことではございますが、個別に、売却のタイミングは取引先との関係で、例えば先ほど話題にありましたように、株式の消却をやる、自己株の消却をやるというようなケースでは価格がむしろ低い方がいいわけでございまして、その時々で判断されるということでございます。

 全般的な状況としてどういう状況かということでございますが、何分短期間に、私どもの場合は自己資本を超過している額が少ないわけでありますが、個別の銀行では多いところもございます。そうしたところが短期間でお客様とネゴをしながら売却をしていって、なお期日にまだ相当数の株式を残しているというような事態を想定されているのだろうというふうに私は解釈しております。

 ただ、業界としてニーズがないと言ったではないかということでありますが、全般としてそういうことを申し上げたわけでございまして、個別銀行のレベルにおりますと、中には保有比率が高くて、お客様との関係からそう急に全部はできないよというようなところもあろうかと。そういう場合が会員のニーズということだろうというふうに理解しておりますし、また、市場の動向ということになりますと、残りの期間、例えば今のような状況ですとこれから一年間で相当数をさばくということが非常に見通しとして暗いというような状況であれば、運営委員会が御判断と思いますが、その判断でこれが発動されますと、マーケットの消化力を見ながら機構に二次的な、セカンドベストの判断として売っていくというふうな経営判断になろうかというふうに思います。

 そういう意味で、緊急避難的なものでございますから、そう頻繁にあるいはそう多額のものが要るというようなことは今想定していないのではないかというふうに見ております。

佐々木(憲)委員 今までの御答弁を聞いておりますと、このような株式買い取り機構というものが果たして必要なものなのだろうか、それから、一定の期限を決めても、その期限を少しでも超えてはならないというような性格のやり方で果たして正しいのだろうか、大変根本的な疑問を覚えてくるわけであります。

 もう一点お聞きをいたしますけれども、この株式買い取り機構の全体の仕組みとしては、一定年限たちますと最終的には解散をするわけでありますが、その際に、株が買い取りのときと比較をして上がった場合には利益が出ますけれども、これは十年後ですから、上がるのやら下がるのやら大変想定が難しいわけであります。しかし、下がるという可能性というのは決してこれは少なくないといいますか、考えられるわけであります。

 そうしますと、仕組みの上では、売却された株式が銀行の拠出金を超えてその総額が低下した場合、それを国民の税金、いわば財政資金で穴埋めをするという形になっております。つまり、買い取った株が損失を出した場合には、国民の税金がそこに注入される、これに対して素朴な、何でそんなところに我々の税金を使うんだ、こういう批判も出ているわけでありますが、このことについて全銀協会長としてはどのようにお感じになっておられるでしょうか。

山本参考人 私どもとしては、法案の中に八%の拠出金というものを設けて、それから基本の基金というものを設けて、リスク部分について民間の負担すべきものをまず規定されているというふうに理解しておりまして、それを超える部分について、株式の保有構造あるいは証券市場の構造改革をやるという政府の御方針の中で御判断されたものであるというふうに理解をしております。

佐々木(憲)委員 私の質問にどうも正面からお答えにならないわけでありますが、私は、今までの御答弁をお聞きしまして、このような機構をつくる必然性というのをどうも感じられないわけであります。銀行業界、証券業の業界としても何ら必要はないと言っておられたものでありまして、しかも、みずから株式保有相互持ち合いを解消する計画を立て、いわば、自己責任とおっしゃいましたから、その責任に基づいて計画的に保有のみずからの縮小というのをやってこられたわけでありまして、それを着実に自分の責任であるいは自己の負担で実行する、これが本来の自立した銀行業界のあり方ではないだろうか。

 私は、今度の保有機構というのは、そういう本来あるべき銀行業界の姿勢を、むしろ国の方からゆがめ、国の方からいわば護送船団的な丸抱えの仕組みをつくる、株が落ちたら国民が負担する、こんなことは銀行業界だって望んでいないはずでありますし、国民も望んでいない。

 したがって、私は、この機構そのものに根本的な疑問を覚えるという点について最後に申し述べまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

山口委員長 次に、植田至紀君。

植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀と申します。きょうは五人の参考人の皆様方、遠くからお越しの方もいらっしゃるかと思いますが、長時間、本当にお忙しいところをありがとうございました。あとしばらく、私で最後でございますので、もうしばらく御辛抱をお願いいたします。

 さて、冒頭お伺いしたいことは実に簡単なこと、山本参考人、奥本参考人、氏家参考人、お三方にお伺いしたいのですが、本当に簡単なことです。

 今、小泉総理がやはりいつも事あるごとに、地方でできることは地方でやろう、民間でできることは民間でといつも述べておられます。言ってみれば、できるだけ政府の関与は避けて小さな政府を志向する、そういう経済政策の理念をお持ちのようです。

 その中身についてここでそのよしあしを論じようとしておるわけではございませんが、翻ってみたとき、今回の法案、特別勘定で買い上げる部分には政府保証をつける、また、最後の場面で損失が出たらまたこれは国民の負担になるというふうな中身になっておりますが、こうした、かかるこういう中身が、まさに小泉政権における市場重視、民間でできることは民間でという、いわば小泉内閣にとっての基本理念とどこでどういうふうに符合しているのか。

 中身として、まさに小泉さんがおっしゃる市場重視、民間でできることは民間で、そういう言ってみれば基本精神と言ってもいいだろうかと思いますけれども、それと今回の法案の中身がどこで符合しているのかなというふうに思うわけです。

 その点について、お三方からちょっと御教示をいただければと思います。お願いします。御指名をさせていただいておりますので、その名簿順で結構でございます。

山本参考人 現在の内閣の基本方針との整合性ということでございます。

 私は、この問題は、先ほど申し上げましたように金融・資本市場の大きな、歴史的なとも言うべき転換点で、構造改革をやるのだということの政府の意思である、それが保有制限であり、証券関連のいろいろな施策、証券市場の活性化策であろうというふうに考えております。

 そういう過程で、政府が実際に民間の活動に制約を加えてくる場合、あるいは構造改革をアクセラレートするという観点からこうした仕組みが考えられたのであろうというふうに私どもは受けとめております。

奥本参考人 意見陳述の際も申し上げましたが、当然のことながら、先生おっしゃるように、銀行が保有している株式の売却は本来、価格形成機能が十分働く株式市場において行われるべきものであるというふうに思っております。

 ただ、今回の銀行に対する株式の保有制限という考え方は、いわゆる法人間の持ち合い解消、これがやはり一つの金融の構造改革というものを、つまり間接金融から直接金融への構造改革を促すということで、そういう大変大きな意味があるものというふうに思っております。

 この場合、極めて短期間の間に、あるまとまった株式の売却というようなことになりますと、どうしてもそういった、この種の取得機構のような制度が必要になるのかなというふうに思うわけで、強制的に一定期日を決めての放出ということになりますと、マーケットに不測の損害を与えることも予測できます。そういった意味からも、これはやむを得ない措置であるというふうに考えております。

氏家参考人 民間でできるものは民間に任せ、小さな政府をということをこの場合に当てはめますと、銀行が直接、証券会社を通じて売却することもできるのではないかということになるかと思いますが、証券会社は営利企業でございますので、比較的短期間の収益を意識しなければなりません。そのために、自己ポジションで買い取った株券の処分は通常数日、長くて数週間といったスパンで考えざるを得ないので、証券会社が通常業務の中で買い取れるサイズというものはおのずから限定されます。

 一方、銀行等株式取得機構は、短期的な収益を求められる性格のものではありませんので、時間をかけて処分することができる、すなわち、我々証券会社よりもずっと大量な株券を短期間に買い取り、長期保有した上で、市場への影響を抑えながら処分することができるという点が異なります。その点で、この機構の存在意義はあると考えております。

植田委員 改めて再質問はいたしませんが、冒頭申し上げましたように簡単なことだったのです。というのは、民間でできることは民間で、そういう一つのあれからすれば、今回の法案がどこで符合するのですかというだけのお話だったのでございます。それぞれ、やや難しい御答弁をされたようでございますが、御意見としてはよくわかりました。

 続いて、これは山本参考人、平澤参考人、一色参考人、お三方にお伺いしたいのでございます。

 私、せんだっての質問でも、株式保有の制限については大体みんなよろしかろうということで、けしからぬのはこの取得機構の方に大体集中するわけですが、個人的には、実際、この銀行の株式保有の問題というのは全体の中で、要するに、銀行の資金調達なり資産運用の全体の中で本来はとらえるべき問題だろうというふうに思っております。

 というのは、銀行のリスク管理の観点からいっても、銀行の資産形成というのは株式だけではなくて、株式というのはワン・オブ・ゼムにすぎぬわけですから、そうしたときに、こんな意見が出てくるのもあながちおかしな話ではないだろうと思うのです。少なくとも、銀行の業務の健全な運営の確保という観点からするのであれば、株式だけを対象として保有制限を課すというのは論理的にやや無理があるのじゃないかという意見があっても、これはおかしくないかと思うのです。

 こうした意見にかかわって今三名の参考人の方にお伺いいたしましたのは、当事者として、そういう意見に関してはどのようにお考えかということについてお伺いしたかったからでございます。よろしくお願いいたします。

山本参考人 株式の保有制限について、トータルなリスク管理という時代の方向から考えておかしいではないかという御質問かと思います。

 御指摘のとおり、BISの今議論されている新しい自己資本比率規制でも、銀行のトータルのリスク管理を要請するというのは世界的な流れでございますし、私もその方向は間違っていないというふうに考えております。したがいまして、銀行の運用資産の一部であります株式だけを取り上げて規制するということについては、銀行界としては必ずしも適切でないというふうに考えているところであります。

 しかし、新しいBISの自己資本比率規制におきましては、株式の取り扱いは現行規制よりも厳しくなるという方向で議論が進んでおります。さきの金融審議会でも、そうした新しい動きに対応するために、一定の上限規制をそれも早期に実現するという前提で、是認できるのではないかという結論になったと理解しているところでございます。

 そうした観点から、保有規制を課すべきか否かということ、私個人としては、私どもの銀行としては不要ではないかと考えておりますが、ただ、トータルの金融システムを、監督を預かる政府として、政策的に、一定の期間でこの程度まで株式保有を落としていくことが健全性確保のために必要であるという御判断、これは諸外国にもある判断でございまして、そういうことで御判断をされたのであろうというふうに理解しているところでございます。

平澤参考人 今お話しの件は、いわゆるALMで資産、負債全体をいかにうまく管理するかということと同じ御意見だと思います。

 これにつきましては、まず株につきましては、例えば債券あるいは貸し出しに比べますと価格変動が非常に激しいものでありまして、これが、ことし九月から時価会計が導入されるというようなことがあって、問題がかなり急に顕在化したということからこの法案のような措置が今回とられたのではないかな、そういうように思っているわけでございます。

 あと有価証券につきましても、今後金利が、特に長期金利が上がりますと有価証券の価格がどうなるか、これも大変頭の痛い問題でございますし、それから金融機関の貸し出しにつきましても、今の段階では時価評価というのをやっておりませんが、どうも欧米、BISあたりではそれも対象にするというようなことも言っておりますので、そういう問題がここ数年のうちに全部いろいろ出てくるのじゃないかな、個人的な感じですけれども、その一つとして今回の株の問題があるのかなというふうにも理解しているわけでございます。

一色参考人 お答えします。

 先生御指摘のように、銀行がどのような資産を持つか、どの限度で株式を持つか、どの限度で有価証券を持つか、どの限度で貸出資産を持つか、まさにこれは経営そのものでございまして、ただ、当面、当協会会員行に限りますと、株式保有制限の適用によりまして保有株式の処分を要するところは少ないわけでございます。先ほど申し上げましたように五〇%、ティア1の五〇%弱でございます。

 しかし、これから考えられますいろいろな状況、例えば時価会計の適用も開始されますし、また平成十七年からは改正BIS規制の適用も予定されることもありまして、保有株式のリスク管理強化には力いっぱい努めてまいらなければならない、このように思っております。

植田委員 当然、地銀さん、第二地銀さんにしてみれば、今回の株式の保有の制限というものは、余りかすらない話でございますよね。そういう意味では、実際、そうした中堅の金融機関の方々が、これは次の取得機構にも移りますけれども、今回の法案について、何でおつき合いなさっているのかなという気もしないわけではありませんが、いずれにしても、基本的には大銀行にかかわってくる話だろうと思うんですが、ここでその点について質問するのは、参考人の方々ですから、むしろそれは政府に聞くべきことでしょう。

 どうもこの間の質疑でも聞いていましても、保有の制限というものがあってというよりは、むしろ取得機構をこしらえて、そしてその取得機構をこしらえる以上保有制限をせぬといかぬという、どうも主客転倒した、そういうことじゃないだろうかというふうに私は思わざるを得ないな。この点は、また次回、別途質疑がありますから、それはそれで質疑の中で考えたいと思うんです。

 では、今度この法案で予定されておりますこの取得機構というのはほんまに実際活用されるんだろうかどうかという、これも素朴な疑問なんですけれども、実際、保有株の売却というものは任意でございますし、拠出するときは八%値引きされる、また投資適格要件等々、実際銀行がこの取得機構を活用する際にちゅうちょをしかねぬ、そういう点もあるわけですけれども、実際、保有株の売却先自体は別に市場ルートがあるわけですから、要は、これは選択肢の一つというよりは経営判断の問題になろう。そうなってくれば、実際にニーズがあったのかどうなのかという話はおいておいても、つくったはいいけれども、効果が本当にあるのかな。そして、実際きょうのお話の中でも、全銀協会長さんの方は、銀行業全体に共通するニーズということでは必ずしも積極的な意味合いを見出しておられないようなお話もあったかと思いますが、その辺のそもそものこの取得機構の実効性についてどんなふうにお考えなのか、これは山本参考人にお伺いしたいと思います。

山本参考人 私の先ほど来の御説明で、どういうときに使われるのかということは、具体的に私から御説明し切れないという部分がございますので御理解いただけないかもしれませんが、八%の売却時の拠出金というものが自己資本比率に大きな影響を与えそうだということがございますので、まずは私どもは市場売却をする、しかし、現実に時限性のある株式の保有制限というものが入るわけでございますので、これが果たして、これからのマーケットの状況、それから個別のお取引先とのネゴの進捗状況、そういったものから個別銀行としてスムーズにいくかということになりますと、それは現時点でかなりの困難を伴うところもあろうかということでございます。

 そうしたいろいろな状況から、臨時かつ緊急のセーフティーネットが発動されるということでございますので、各行の個別の状況、それからマーケットの将来の状況というものを現時点で予測はできませんので具体的にイメージを申し上げられませんが、そうした状況になれば、協会メンバーないしは、あるいは機構の会員となる銀行につきまして、利用するところがかなりあるのではないかということも予想できるわけでございます。

植田委員 最後にもう一つだけ全銀協会長さんの方にお伺いしたいわけですが、今、要するに、実効性についてといってお伺いすれば、それは、個々のケースどんな展開になるのかまだ子細にはわからないということですから、使われる、場面によっては活用されるだろうということですから、やってみないとわからないということなんでしょうが、はっきりしていることは、実際そこで損失が生まれた場合、公的資金で穴埋めをするということだけは法案の中ではっきりとあるわけです。そうなってみれば、これは当然、市場原理から見ても疑問でありますし、政府負担というのは結局私らの税金なわけですから、実際これも、最後、素朴な質問で締めたいんですが、銀行救済という国民の批判を受けることは必至というふうに思います。

 実際、銀行側からすれば誤解なのかもしれませんけれども、そういう形で批判を受けることは当然ながら本意ではないだろうと私は思うわけですけれども、その点についてはどういうふうな御見解をお持ちでしょうか。

山本参考人 今回の法案の御趣旨を私ども理解しておりますのは、私どもは、まず自力で解決をするという考え方でございまして、株式市場あるいは証券市場の構造改革をやっていく上で、早くやりたい、そういうことからこの法案が提案されているというふうに理解しております。

 そういう意味で、銀行界のためにこの法案が、この機構がつくられるんだというふうな御理解があるとすれば、私どもは私どもなりに基本となる資金、基金、それからさらには売却時の拠出金という形でリスクを負担するということでございますので、その辺については御理解をいただきたいというふうに考えております。

植田委員 ありがとうございました。

 あと、最後、これも簡単なことです。もしもの話にはなかなかお答えづらいかもしれませんが、仮に、今回の法律、二つの柱になっておりますけれども、いわゆる取得機構というのはなしで、株の保有制限だけの法律だったら、どういうお立場に立たれましたでしょうか。それだけをお伺いして、終わります。

山本参考人 株式の保有につきましては、先ほど冒頭に御説明申し上げましたとおり、株式の持ち合いを中心にした、資本不足を賄う、日本の金融・資本市場の歴史の中で一定の役割を果たしてきた仕組みでございますが、これがここ数年、むしろ弊害が大きくなってきたというのが一般的な認識かというふうに思います。

 そうしたものを短期間に、証券市場活性化あるいは証券市場改革とこの構造を変えていくという中で、銀行の保有株をまず制限して、そして仕組みを変えていこうじゃないかという意図かと思いますが、これは、実は経営サイドでは、保有株式が自己資本との関係で高過ぎるという認識を持っておりまして、総合的なリスク管理の中で、さらにこの保有額を減らしていくのが財務の健全性という観点から望ましいというのが、今の一般的な銀行の方向感でございます。

 各銀行とも株式の保有額を圧縮してきたというのが最近の動きでございまして、そうした動きの中で、さらにそれを金融界全体として後押ししよう、さらに後ろから背中を押して、もっとアクセラレートしようというのが今回の方向感だろうと思います。

 政府の方向感につきましては、その点で特に我々と方向を異にしているわけではございませんので、仮に保有株制限がこうした形で出てきた場合、私どもとしては、時限性もございますので大変につらい規制でございますが、この法案について絶対に困るというようなことを申し上げる状況にはない、我々が目指している方向とこの今回の規制というものが別の方向を向いているわけではない、同じ方向を向いているということでございます。

植田委員 参考人の皆様方、長時間ありがとうございました。

 以上で終わります。

山口委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人各位におかれましては、御多用中のところわざわざ御出席をいただきまして、大変貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して心より厚くお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。

 次回は、来る三十一日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時一分散会




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