衆議院

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第6号 平成13年11月6日(火曜日)

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平成十三年十一月六日(火曜日)

    午前十時四分開議

 出席委員

   委員長 山口 俊一君

   理事 伊藤 公介君 理事 奥山 茂彦君

   理事 佐藤 剛男君 理事 根本  匠君

   理事 海江田万里君 理事 中川 正春君

   理事 石井 啓一君 理事 鈴木 淑夫君

      伊藤信太郎君    大野 松茂君

      奥谷  通君    倉田 雅年君

      小泉 龍司君    七条  明君

      砂田 圭佑君    竹下  亘君

      竹本 直一君    中野  清君

      中村正三郎君    林田  彪君

      牧野 隆守君    増原 義剛君

      宮腰 光寛君    山本 明彦君

      山本 幸三君    渡辺 喜美君

      五十嵐文彦君    生方 幸夫君

      江崎洋一郎君    河村たかし君

      小泉 俊明君    佐藤 観樹君

      末松 義規君    永田 寿康君

      長妻  昭君    前田 雄吉君

      松野 頼久君    谷口 隆義君

      若松 謙維君    中塚 一宏君

      佐々木憲昭君    吉井 英勝君

      阿部 知子君    植田 至紀君

    …………………………………

   財務大臣         塩川正十郎君

   国務大臣

   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君

   内閣府副大臣       村田 吉隆君

   財務副大臣        村上誠一郎君

   財務大臣政務官      中野  清君

   財務大臣政務官      林田  彪君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  原口 恒和君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    高木 祥吉君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   牧野 治郎君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    大武健一郎君

   参考人

   (日本銀行理事)     永田 俊一君

   財務金融委員会専門員   白須 光美君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月六日

 辞任         補欠選任

  七条  明君     伊藤信太郎君

  砂田 圭佑君     奥谷  通君

  竹本 直一君     宮腰 光寛君

  江崎洋一郎君     松野 頼久君

  河村たかし君     前田 雄吉君

同日

 辞任         補欠選任

  伊藤信太郎君     七条  明君

  奥谷  通君     砂田 圭佑君

  宮腰 光寛君     竹本 直一君

  前田 雄吉君     河村たかし君

  松野 頼久君     江崎洋一郎君

    ―――――――――――――

十一月二日

 租税特別措置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二一号)

同日

 相続税法の改正に関する請願(小泉龍司君紹介)(第一七七号)

 消費税の増税反対、消費税率三%への減税に関する請願(大幡基夫君紹介)(第一九一号)

 消費税の大増税に反対、食料品の非課税に関する請願(中林よし子君紹介)(第一九二号)

 相続税の救済措置に関する請願(鈴木淑夫君紹介)(第一九三号)

 消費税の大増税に反対、税率を三%に引き下げることに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第一九四号)

 同(松本善明君紹介)(第一九五号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一九六号)

 同(児玉健次君紹介)(第二七〇号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二七一号)

 同(春名直章君紹介)(第二七二号)

 同(山口富男君紹介)(第二七三号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二七四号)

 消費税の福祉目的税化反対に関する請願(山口富男君紹介)(第二六九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 租税特別措置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二一号)




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     ――――◇―――――

山口委員長 これより会議を開きます。

 この際、去る十月三十一日の本委員会における河村委員及び村上財務副大臣の発言に関して、一言申し上げます。

 国会法第百十九条、「各議院において、無礼の言を用い、又は他人の私生活にわたる言論をしてはならない」となっておりますので、この趣旨を踏まえて発言は十分配慮の上なされるように、委員長から厳重に注意をいたします。今後ともに円滑、適切な審議に御協力を願います。

     ――――◇―――――

山口委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 金融に関する件、特に新銀行設立後の経営状況について調査のため、明七日水曜日午後一時、参考人として株式会社新生銀行代表取締役会長兼社長八城政基君及び株式会社あおぞら銀行代表取締役社長丸山博君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

山口委員長 次に、内閣提出、租税特別措置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。財務大臣塩川正十郎君。

    ―――――――――――――

 租税特別措置法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

塩川国務大臣 ただいま議題となりました租税特別措置法等の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。

 政府は、証券市場の構造改革に資する観点から、個人が上場株式等を譲渡する際の課税について、申告分離課税への一本化、税率の引き下げ、譲渡損失の繰越控除制度の導入等を図るとともに、緊急かつ異例の措置として、新規購入額一千万円までの要件を満たすなど、一定の上場株式等に係る譲渡益について、非課税とする措置を講ずることとし、本法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、国民が安心して参加できる、透明性、公平性の高い証券市場の構築に資する観点から、株式譲渡益に係る源泉分離選択課税を平成十四年末をもって廃止し、申告分離課税へ一本化するとともに、平成十五年一月以後に譲渡する上場株式等について、申告分離課税の税率の引き下げ、譲渡損失の繰越控除制度の導入を行うこととしております。

 第二に、最近の経済情勢等を踏まえ、緊急かつ異例の措置として、個人が平成十四年末までに新たに購入した上場株式等を平成十七年一月から平成十九年末までの間に譲渡した場合において、その購入額が一千万円に達するまでのものに係る譲渡益について、一定の要件のもと、非課税とする措置を講ずることとしております。

 その他、既存の百万円特別控除制度の適用を平成十七年末まで延長するとともに、平成十三年九月末以前に取得した上場株式等に係る取得費の特例を創設するなど、所要の措置を講ずることとしております。

 以上が、租税特別措置法等の一部を改正する法律案の提案理由及びその内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

山口委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

山口委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として日本銀行理事永田俊一君の出席を求め、意見を聴取することとし、政府参考人として財務省主計局次長牧野治郎君、財務省主税局長大武健一郎君、金融庁総務企画局長原口恒和君及び金融庁監督局長高木祥吉君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山口委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。奥山茂彦君。

奥山委員 おはようございます。

 このたび上程されました租税特別措置法等の一部を改正する法律案につきまして、数点質疑をさせていただきたいと思っております。

 御案内のように、我が国の証券市場は、今日の不景気を反映して、その沈滞は目を覆うような状況になっているわけであります。それまで緩やかな下降ぎみ傾向であったアメリカの経済も、同時多発テロによって、たがが外れたように急激に大きな落ち込みを見せているわけであります。その影響をもろに受けて、我が国を初め、特にアメリカを中心とした貿易に頼っている国々においては、すっかりその体力を消耗しているような状況に実は今なっているわけであります。

 巷間、市民の間では、大阪弁で言いますと、もうかりまへんな、何とかなりまへんかというような、そういう声ばかりが市中で聞こえてきているわけであります。それを一番敏感に反映するのが株式市場でありまして、今や株価は大きく値下げして、かつて一万四、五千円の株価も一時期は一万円を大きく割り込むというような状況にまで落ちてきたわけでありました。この一両日はやや回復しているわけでありますが、相変わらず厳しい状況が続いているわけであります。

 証券界が今、外国人投資家あるいは機関投資家のみで、十分その活性化を図ることができないわけでありまして、特に個人投資家を呼び込んで、株を長期に保有してくれるような安定した個人投資家を育成する努力がなされなければならないわけであります。

 しかしながら、現状におきましてはその逆の状況が生じているわけでありまして、一般投資家は、日本市場ではこれまで十分育てることができなかったわけでありました。その一つに、バブルの時代に、株価がどんどん上がる時代の中においても、小口の一般個人投資家に投機的なセールスがなされたり詐欺的な勧誘があったりして、それが、バブル崩壊とともに国民の株式投資への大きな不信感が残ってしまっておるわけであります。個人投資家に対して新規参入を促すにいたしましても、この不信感が大きな障害になっているわけであります。

 そこで、お尋ねをしたいわけでありますが、税制改正も、これは個人投資家をまた呼び戻すことにはなるかとは思うのですが、それにも増して、一般投資家に不信感が随分強いわけでありますので、その不信感を取り除く努力が大きな課題であると言えるわけであります。特に一般国民の間には、株式投資が投機的なものと考える国民が非常に多いわけでありますから、そういった国民に対する啓蒙活動、そういったものをもっともっとやらなければ、個人投資家が株式市場の中に帰ってくるということがなかなかできないわけでありますが、大臣におかれましては、こういった対策をどのように講じていこうとされておられるのか、まずお尋ねをしたいと思うのです。

村田副大臣 今委員の御指摘のように、個人投資家が証券市場に入ってきて我が国の証券市場が厚みを増していくということは、我が国の証券市場の安定にとっても不可欠な要素でございます。

 これまで証券会社の営業姿勢に対する不信がかなりあったということもございまして、私どもとしては、個人投資家の証券市場への信頼性の向上を高めるという観点から、八月の八日に「証券市場の構造改革プログラム」を策定いたしまして公表したところでございます。

 その中にいろいろな方策が書いてございますのでその一々は申し上げませんが、大事なことといたしまして、証券会社の営業姿勢の転換に向けた方策の一環として、行為規制違反に係る全行政処分の公表を初めといたしました諸施策を講ずることともしておるわけであります。そのほか、個人投資家の証券市場への信頼性向上のためのインフラ整備、それから個人に対する証券教育ということまで含めて「証券市場の構造改革プログラム」に盛られておりまして、我々としては、そうしたプログラムの着実な実施を図ってまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。

奥山委員 しかしながら、バブルの時代にはかなり証券会社も強引なセールスをずっとやってきたわけでありますから、それが個人投資家には、その後の株価の下落によってほとんどの人が大きく損をしているわけであります。もちろん、今度の税制改正におきまして、その損失の繰越控除の導入等も考えられているわけであります。しかしながら、一方におきまして日本の株式市場が外国の投資機関によって左右されている状況も随分見られるわけでありますから、そういったものに十分対応できるような日本の市場の育成をこれから我々ももっともっと図っていかなければならないかと思います。

 しかしながら、我々もこれに傍観ばかりはしているわけにいきませんので、このたび考えられている租税特別措置、すなわち、今度の証券税制の改正におきまして申告分離への一本化ということがあります。さらにまた、税率の引き下げも考えられているわけであります。そして、先ほど申し上げました損失の繰越控除の導入。この幾つかの課題が、ここで対策が出されているわけでありますが、それによって具体的にどれほどの効果が期待できるのか、少し示してもらえたらと思います。

村上副大臣 奥山委員の御質問にお答えしたいと思います。

 今委員が申されたように、今回の証券税制改正法案においては、株式譲渡益課税について、平成十五年一月から申告分離課税への一本化、そして二番目に、税率の引き下げ、そして三番目に、譲渡損失の繰越控除制度の導入等の措置を講ずるとともに、四番目に、緊急かつ異例の措置として、平成十四年度末までに新たに購入した上場株式等について、その購入額が一千万円までの譲渡益を一定の要件のもと非課税とする措置を講ずることにしております。

 そして、御高承のように、源泉分離課税については、諸外国に例のないみなし利益への課税をするものでありまして、所得課税としてふさわしくない等のいろいろな問題が指摘されているところでありまして、こうした源泉分離課税を廃止して申告分離課税へ一本化することが、透明性、公平性の高い証券市場への構築に資すると考えております。また、あわせて、税率の引き下げや損失繰越制度を導入することにより、税負担やリスク負担の緩和も図るということを考えております。

 こういう措置を通じまして、一般的な個人投資家にとって安心して証券市場に参加できる環境の整備が図られることと我々は考えております。その結果、個人投資家の市場への参加が促進されまして、もって厚みのある市場の形成に資するということを期待している。

 以上であります。

奥山委員 幾つかの案が示されて、対策が出されているわけでありますが、今副大臣がおっしゃった対策の中におきまして、特に源泉分離課税がいろいろ問題があるということで、今度申告分離へ一本化する。これはそれなりに理解ができるわけでありますが、しかしながら、源泉分離から申告分離へ一本化することによって、逆にこれは市場においては結果としては増税になるわけであります。

 試算した計数をもらいますと、約一千六百億の税収がふえるということに結果としてはなるわけであります。その一方におきまして、税率の引き下げ並びに損失の繰り越し等で約二千三百億の減税、こういうことになるわけでありますから、果たしてこれは証券の実質的な個人投資家の呼び込み策につながるのかどうかという懸念がどうしても私は離れないわけでありますが、その点、もう一度聞かせてもらいたいと思います。

大武政府参考人 お答えさせていただきます。

 ただいま先生からお話のありました増減収額でございますが、一点当方から申し上げさせていただきますと、申告分離課税への一本化は一応千六百億円程度、それから税率の引き下げで千九百億円程度の減税、それから損失の繰越控除で千四百億円程度の減税、トータルして大体、これ自体が十三年度の予算税収を基礎に計算しておりますので、今後の取引いかんによって変わるところではありますけれども、概して一千億円程度の規模の減税ということになっているのかと思います。

 今先生の御指摘がございましたけれども、まさにこれからは、回転売買というよりは、長期にできるだけ保有していただく方については、まさに一〇%の税率に三年間してあるとか、あるいはさらに、ただいまの先生の御指摘の中では触れられませんでした緊急の措置としての、一千万円までは購入していただいて二年以上保有していただくといわゆる譲渡益に課税をしないというような特別措置、それらをあわせたところによりまして、個人の投資家の導入ということが期待できるのではないだろうかというふうに思っております。

 もちろん、これらは税だけで成り立つものとは当然思っておりませんけれども、税としても環境を整えていく一つということになっているのかと思っているところでございます。

奥山委員 源泉分離課税がいろいろ課題があって申告分離に一本化された、この趣旨は我々も十分理解をしているわけでありますが、なかなか計数の上では、それほど投資家に減税によって利益を還元するということにつながっていかないように思っておりますので、その辺は、投資家に十分理解を得るように、さらに努力をしてもらいたいと思います。

 それから、今日の不景気が、以前の不況と違って、国民の間に生活の先行き不安や、あるいは証券市場においても特に魅力のある商品というんですか、そういったものが最近は非常にないんじゃないかということが言われているわけであります。そして、以前の不況と違うのは、国民がある程度お金を持っておる、そのお金を実際は使わせるような、そういうものが最近は非常に少ないんじゃないかと思われるわけであります。

 特に、お金を持っているというのは、これはある程度アンケート調査でも出ているわけでありますが、高齢者が預金したり、場合によってはたんす預金とか、そういった人が非常に多いわけでありますが、その高齢者にお金を使わせるような、特に株式市場においても投資信託で魅力のある商品が少ないということがいろいろ言われているわけであります。株式をそのまま個人投資家が買うということのリスクをいろいろ考える場合に、やはり投資信託とかそういった面における商品開発というものをもっと考えていかなければ、なかなか高齢者からお金を引き出すということができないわけであります。

 そういった点について、具体的に何か、国として考えることではないかもしれませんが、やはり業界の指導をこれからしていかなければ、実際には株式の活性化につながってこないように思いますので、いかがでしょうか。

村田副大臣 米国等に比べまして我が国の株式市場におきます個人の参加が非常に薄いということもありますし、かつまた、株式に入る前に、諸外国でも投資信託のシェアが非常に多いということもございます。

 そういうことも勘案しまして、緊急対策でもうたわれましたけれども、株価指数上場投信、ETFという商品を、我が国の東京市場あるいは大阪証券取引所におきまして七月の十三日から取引が開始されております。これは投資信託の一種でございますが、TOPIXあるいは日経のダウと同じ指数でもって上げ下げする。それから手数料も安い。それから、いろいろな税もそうでございますが、原則として株と同じような取り扱いをしていただく。何よりも、指数でございますから、会社がつぶれる危険性、リスクはないということでございまして、そういう意味では、私どもとしては、こうしたETF等につきまして、個人の投資家がこういうものを手始めとして株式市場にお入りになるということを大いに期待しているわけでございます。

奥山委員 日本の株式市場におきましては、個人投資家の割合がたしか一七、八%ぐらいでないかと思います。アメリカの場合ですと五〇%を超えるというようなことも聞いているわけでありますから、諸外国に比べても日本は個人投資家の割合が非常に低いんじゃないかと思いますので、その点について、やはり日本の株式市場の構造的な問題としても、もっと個人投資家の育成を図っていかなければならないかと思います。

 今副大臣がおっしゃったETF、いわゆるネット証券ですか、これが今大変な伸びを見せているわけであります。これもこれからの株式の新しい行き方でないかと思いますので、そういった点について、これからもさらに活性化の努力をしてもらいたいと思います。

 何かちょっと、そういう点で。

柳澤国務大臣 今、奥山委員の御指摘になられたとおり、我が国の株式市場における個人投資家の割合というのは、ここ十五年ほどの間、大体二〇%弱ぐらいのシェアということで推移をいたしております。投資信託を含めたベースでも二七、八%ということでございまして、私どものねらいというのは、これをやはりもう少しふやしていかないと、本当の意味の厚みのあるというか、価格変動に対して一挙に一方向に行くというような形でない市場を構築するということにはやはり力不足ということだろうと思うんです。

 目標をどのくらいのところに置いているんだというようなお話であるといたしますと、これをふやすわけですけれども、私どもは、調達面からのシェアというか、そういうことではなくて、個人金融資産をどこに振り向けてもらうかという観点からシェアを少し考えたい、こういうふうに思っておるわけでございます。

 それで見ますと、現在、個人の金融資産の株式への投資というのは全体の五・三%ぐらい、投信の二・四を加えても全体として七・七%くらいということなのでありまして、これは諸外国と比べても非常に低いわけでございます。仮にこれを倍近くまで持っていくということを一つの目標というふうに考えましたときに、先ほど申しました二七、八%というかそのくらいのものが一体どのくらいになるかというと、株式プラス投信のものでございますが、これが四〇%くらいになるというふうに、今度は市場でのシェアがそのぐらいになるということで、これは大体においてアメリカとドイツのちょうど中間ぐらいというようなことに計算上なります。

 そういうようなことでありますので、おさまりは悪くはないなと思いつつも、結局、まずとりあえずこの個人の金融資産について、集計ベースですけれども、倍近いところを目標にして伸ばしていくということが我々の目標であるべきではないか、こんなことを考えているというのが現状でございます。

奥山委員 いずれにいたしましても、今度は東証も大証も株式会社化されたわけでありますし、かなりその体質も変えようとされてはいるわけでありますが、さらに政府としても健全な株式市場の育成に努めてもらいたいと思います。

 そして、余り時間がありませんので、もう一点だけお尋ねをさせていただきたいのですが、来年四月定期預金、さらに再来年の四月には普通預金のペイオフの凍結が解除されようとしているわけであります。これはもう既に一年間延期されてきたわけでありますが、また最近のマスコミ等におきましてもペイオフの再延期論というのがかなり出てきておるわけであります。先日の東京都の石原都知事の発言にも見られますように、地方の自治体においても、このままでペイオフをされると預金を移しかえしなきゃならない、こういうことを言っておられたりするわけであります。

 我々も、地元の中小の銀行等といろいろな話をしておる中において、以前からもありましたけれども、預金の引き揚げ、移しかえということが起こらないかということがやはりいろいろ言われているわけでありますし、市民にとっても預金者にとっても、もし今このままの状態でペイオフが実施されると、銀行経営がいろいろ問題になっておるだけに、不信感というのが広がりかねない状態になっておるわけであります。

 国会内外でもいろいろとこの問題について議論されているわけで、再延期論を強く主張される方々もおられるわけでありますが、これについていかにこたえられていくのか、お尋ねをしたいと思います。

柳澤国務大臣 日本の国の預金というのは、一九九七年の十一月のああいう金融不安の発生というところまでは、事実上いわゆる護送船団方式と言われる行政の方針のもとで満額保護されてきたというのが実態であったというふうに、事実上そういうことになっていた。それが、そういうことでなくなったということの中で、急遽これは全額保護するという法制が緊急措置としてでき上がって、ここしばらくそういう法制的な裏づけを持った預金の全額保護の体制のもとで国民が暮らしてきたということです。

 しかし、これはどう考えても臨時異例の措置である。つまり、金融機関が破綻した場合に、その損失は国民の税金で穴埋めすることによって、金融機関の一種の債権者である預金者が債権を全額保護される、こういうようなことでございますので、そういうものというのはやはり臨時異例の措置であるということでございます。

 それが、期限が本年の、本来でしたら三月末に到来したわけでございますけれども、これについては、実は、信用組合という預金を取り扱う金融機関としては一番小規模なものについて、その監督権が地方公共団体から国に移るということが同時に行われるということでしたので、これはやはり、国がしっかりとした検査をしまたそれに基づいて必要な措置を命ずるということがないままに、そういうペイオフの凍結を解除するというのはいかにも少し乱暴ではないか、こういうことで、じゃ、その必要な措置をする時間的なゆとりを与えようということで、一年これが延期されたということでございます。

 実際、本当にここしばらくというか、少なくともみんな戦後は一貫して全額保護の世界に住んできた国民ですから、それが違う世界に行くということについては、それはもうみんな、一番素朴に考えても不安がないというわけにはいかないと思いますけれども、私どもとしては、こういう臨時異例の措置を長引く、いつまでもこれをやるということは、市場経済を経済の原理にしようというところからすると、それはやはり考えるべきことではない、こういうふうに思っておりまして、私どもとしては、既定方針どおり来年の四月からペイオフの凍結を解除すべきである、こういうふうに考えているわけであります。

 地方団体の預金がというようなことのお話が具体的にあったわけですが、これを申し上げますと、地方団体の長たる者というのは、自分たちの公金の預金を保全するということも大事ですけれども、それぞれの地域経済の担い手である金融機関を大事にするということも、これは公共的な見地からいっても、私、負けず劣らず大事なことだろうと思うのです。

 そういうことの中で、現実の今の地方公共団体の皆さんの動きを見ておりますと、今すぐそういう大きな資本のところに移行させようというような動きというものはあらわれていない、こういう認識でございまして、私どもとしては、やるべきことをしっかりやって、つまり検査をして必要な措置をとった上で来年の四月一日が迎えられるようにいたしたい、こう思っておりますので、既定方針どおりやらせていただきたいという考え方に変わりがありません。

奥山委員 わかりました。

 もう時間が参りましたので、余りこれ以上申し上げませんが、日本の金融界の構造改革のためには、やはり私はこれが必要なことであろうと思うのです、凍結解除が。ただ預金者にとっては、やはり我々は、心配のないように十分しておいてもらわなければなりませんので、その点は、また万全を期して、これからも取り組んでいただきたいと思います。

 以上で終わります。

山口委員長 次に、谷口隆義君。

谷口委員 おはようございます。公明党の谷口でございます。

 今回は、大胆なと申しますか、大規模な証券税制の改正の法案が提出されたわけでございます。今回のこの証券税制については、従来から大変国民の皆さん方も関心を持っていらっしゃったことなんだろうというふうに思うわけでございますが、透明性また公正なルールのもとで、個人投資家を証券市場に参入させることを促進する、また、証券市場を活性化させ、この結果、経済構造を現在のような銀行中心の間接金融から直接金融にシフトしていくといったような構造改革の推進という大きな意味合いがある、このように考えておるわけでございます。

 そんな状況の中で、今回のこの証券税制、先ほどからおっしゃっていらっしゃいましたが、一つは、源泉分離課税を、現在は申告分離、源泉分離というように二本立てになっておるわけでございますが、当初は二〇〇三年の四月一日からこれを一本化しようというものを、三カ月前倒しで、二〇〇三年の一月から一本化をしようというようなことのようでございます。

 また、従来から私どもの党もこの一本化について申し上げておったわけでございますが、それとともに、税率の引き下げでございます。現行二六%の申告分離課税の税率を二〇%にというように言っておったわけでございますが、この税率の引き下げも二〇〇三年の一月から行われる。また、三年間に関しては、二〇ではなくて一割、一〇%の税率というようなことになったわけでございます。

 また、損失の繰越制度が、今、現行の制度ではありませんので、これを入れてもらいたいというように申し上げておったわけでございますが、このような損失の繰越控除、三年間の損失の繰越控除が、これも二〇〇三年の一月からスタートする。

 また、現行百万円の特別控除がございますが、これが今回延長されたということでございます。

 また、緊急投資優遇ということで、二〇〇二年の末までに株を買われるといったような方が、二年間保有する、そしてこれを売却しますと、これについては非課税にしよう。

 このような証券税制の改正の概要だというようなことのようでございます。塩川大臣御自身も大変関心を持っていらっしゃって、大変な勢いでやられたということをお聞きいたしておるわけでございます。

 冒頭、お話をさせていただいたように、証券市場の活性化というのは大変重要な問題でございます。後ほどペイオフの質問もさせていただきたいわけでございますが、我が国の従来の証券行政、金融行政が、行政主導型のやり方から、それを大きく開いて、国民の皆さん方にリスクというものをわかっていただくというような社会にしていかなければならない。そういう観点で、間接金融が中心の時代から直接金融にシフトしていくという大きな意味合いの中での今回のこの証券税制の改正でございますので、私は大変前向きに、一歩前進の改正である、このように評価をいたしておるわけでございます。

 ただ、若干やはり複雑だなというようなこともこれは否めないわけでございまして、国民の皆様方に、この法案が成立をいたしましたら周知徹底をしていただいて、今回のこの制度の御利用をお願いするといったようなことの方法を考えていただきたいというように思う次第でございます。

 私も、与党の中で今回のこの証券税制の改正について議論の中に入らせていただいて、いろいろな私自身の意見も申し上げたわけでございますけれども、一つのポイントは、現行二本立てになっておる、源泉分離課税と申告分離課税の二本立てになっておって、その中でいろいろな問題と申しますか、メリットといいますかデメリットといいますか、ある。一つは、現行は、申告分離また源泉分離を有利な方を選択できるというようなところがございます。現実に証券取引をやっていらっしゃる方は、これは非常に便利だというようなことになるんだろうというように思いますが、一方で、源泉分離方式の持っておる、一つは匿名性であるとか、一つは簡便性、さっき申し上げました、どちらか優位な方を選択できる有利性、このようなものがあるのだろうというように思うわけでございます。

 議論の中でも、源泉分離はやはり残した方がいいのではないか、現行取引をやっていらっしゃる中の、既に取引をやっていらっしゃる方については、やはり匿名で行うということについてのメリットを大変大きく思っていらっしゃる方が多いというような議論がございました。

 私は、現在のやり方は好ましくない、やはり透明性という観点から申告分離でやるべきで、その後は総合課税まで持っていくべきだ、このように申し上げたわけでございます。

 先日新聞を見ておりましたら、日経連の奥田会長が、どんな条件を出しても約七〇%の人は株を買わないというような調査結果があるというようなお話をされておったわけでございますが、その一つの原因は、やはり不透明性と申しますか、株の世界は何かわけがわからない。昔、親が亡くなったときに、遺言で株だけはするなといって息子に言い聞かせたというようなことも聞いておりますが、そのような後ろめたさが一般投資家が株式市場に参入しない一つの原因でもあるのではないか。こういう観点も考えられるわけでございまして、今回の申告分離に一本化するといったことについては、これは大きく前進したというように考えておるわけでございます。

 また、先ほど申し上げました簡便性ということがございます。源泉分離におきましては、もう申告する必要がございませんから非常に簡便であるということがあって、非常に株の取引がやりやすいといったことがあるわけでございますが、今回の改正におきましては、この簡便性のところもやはり考慮に入れていかなければならないというようなことで、我々も主税局、また金融庁の方に、この簡易な申告の方式についても検討してもらいたいというように投げたわけでございます。

 これはまた新聞紙上等見ておりますといろいろな議論もあるようでございますが、例えばタッチパネルで申告をするといったような申告の方法等考えていただいておるようでございますが、この簡便な申告というのは今回の証券税制の大きなポイントの一つでもございますので、国民の皆さん方が十分納得できるような簡便な申告方式をぜひ考えていただきたいというように思う次第でございます。

 それと、先日、本会議におきます野党の皆さん方の御主張の中に、今回の証券税制につきましては配当の観点からの改正がないではないか、このような御指摘があったわけでございます。

 現行の配当課税におきますと、一銘柄当たりの配当額が十万円未満の場合に、申告免除で源泉分離税率が二〇%でございます。また、十万円超五十万円未満になりますと、総合課税と源泉分離課税と選択できるわけでございますが、源泉分離課税の場合には税率が三五%といったような税率になっておる。現行の三五%の税率は、私はやはりいささか高いのではないか。このような配当課税の軽減ということも、今後の証券税制の改正の中には検討し、やっていかなければならない一つのポイントなんだろうというように思う次第でございます。

 もう一つは、配当の二重課税、このような問題が出ておったわけでございます。

 配当の二重課税というのは税の根幹にかかわることだと私は与党協議の場でも申し上げたわけでございますが、日経新聞の社説でこういうことが書いてあったわけでございますが、「法人には株式の配当所得に課税しない益金不算入の特典があるのに対して、個人は配当に課税される。配当は企業の税引き後利益から支払われるので、個人の配当は二重課税されていることになる」このような記載ぶりになっておるわけでございます。

 この書きぶりは正しくない、私はこのように思うわけでございまして、法人税の体系そのものについて、今どのような法人税体系の中の考え方があるか。法人というのは実在しているものなのか、最終的に個人に帰着する間の擬制されたものなのかといったような考え方があるわけでございますが、現行法人税の体系は法人を擬制しておるといったような状況でございますので、課税された利益を利益処分する、利益処分したものを配当する、配当したものが、株主が法人の場合と個人の場合、法人の場合は、最終的に個人に帰着するといったことですから、法人の受取配当についてはスルーするだけであって、本来、受取配当としての益金に算入しないといったことがやはり論理的構成上正しいんだろう。現行の状況は若干の課税をされておるわけでございますが、そういうことが正しいんだろう。その後、個人に来た配当については課税をされる、この課税をされることは二重課税ではないというふうに私は思うわけでございます。

 現に、利益処分で企業は配当を行い、また役員賞与を出すわけでございますが、役員賞与については課税されておるわけでございまして、課税された利益から利益処分したものがまた課税されるといったようなことにはなっていないわけで、私は、二重課税といったことのこの論拠は正しくない、このように思うわけでございますが、二重課税について、御所見をお伺いいたしたいというように思います。

大武政府参考人 お答えさせていただきます。

 まさに谷口先生が言われましたように、配当の二重課税の調整の問題というのは、法人税と所得税の基本的仕組みにかかわる問題でございまして、政府税制調査会でも長年にわたりまして議論がなされまして、現在は、個人の段階で配当控除、先生御存じのように、総所得が一千万円以下であれば配当所得の一割は税額控除される等々の調整を行うという仕組みになっているわけです。

 特に主要諸外国の取り扱いを見ても、アメリカのようにそうしたことを一切調整しないという国から、今申し上げた日本を初めイギリス、ドイツなど部分的に調整する国、それからフランスのように完全に調整を行う国、これは取り扱いが極めて区々でございまして、現状、我々が認識している問題は先生と同様でございまして、やはり法人税の負担がどの程度株主に転嫁されているか、理論的にも、まさに実証的にも明快な結論を得られていない。また、配当所得者を過度に優遇するということもいかがかということから考えれば、公平中立の観点から現状のような制度が選ばれている、こういうことなのではないか、このように思っている次第でございます。

谷口委員 ですから、配当の二重課税に関する考え方については、そのあたりをベースに議論していかなければならないというように私は思う次第でございます。

 次に、連結納税について若干お聞きいたしたいわけでございます。

 連結納税は、八千億程度の減収になるというようなことのようでございます。しかし一方で、商法改正を含めて国全体の施策を今考えますと、企業の分割であるとか、また株式交換であるとかいうようなことを通じまして企業の組織再編を支援するような枠組みを整えておるわけでございますが、その仕上げのところに連結納税制度というのがあるんだろうというように思うわけでございます。

 企業の事業再構築を進めるといった観点で、連結納税制度はぜひ導入をしていかなければならない、このように思うわけでございますが、どうも最近、与党内、特に自民党の党内で、減収のこともあり、これを先送りすればいいんじゃないか、こういうような議論があるようでございますが、私は、これはぜひ来年の実施ということでお願いしたいわけでございます。

 しかし一方で、付加税、連結納税制度を採用した企業にまた税金を課すといったことについては、私どもも、ちょっとこれは問題がある、再編を促進するといった観点で考えていかなければならない、このように思います。

 今申し上げたように、先送りをするという意見がございますが、財務大臣、この連結納税制度について御見解をお伺いいたしたいと思います。

塩川国務大臣 この件につきましては、長年の要望でございますので、私たちはぜひ実現いたしたいと思っておりまして、でき得れば来年度の税制改正のときの法案に提出いたしたいと思っております。

 付加税につきまして、いろいろ経済界から議論はございますけれども、非常に軽微な付加税にいたして、要するに連結納税制度をとるところととらないところの意識ともいいましょうか、気持ちをきちっと整理さす意味において、付加税でも薄い付加税を実施いたしたいと思っております。

谷口委員 付加税というのは、もう大臣の中ではこれを導入しようというように決めていらっしゃるんでしょうか。これはちょっとぜひ慎重に対応をお願い申し上げたいというように私は思うわけでございますが、御答弁をお願い申し上げたいと思います。

塩川国務大臣 私は、やはりこの制度は、ベンチャー企業を育てるということと、それから企業の分社化が進んでおりますこと等をあわせまして、経済の構造改革の一環として進むべきだと思っておりまして、なおそれは、先ほどちょっとしゃべり過ぎてしまいましたけれども、十分に慎重に検討しなきゃならぬところはあろうと思うのでございますけれども、我々財務省といたしましては、これは経済構造改革への一つのステップとして考えていきたいと思っておりますので、御理解いただきたいと思います。

谷口委員 ぜひ連結納税制度を予定どおり、来年の実施ということでお願いいたしたいというように思います。

 次に、先ほどの同僚議員の質問にもございましたが、ペイオフの議論が、またここに来て、延期をすればいいのではないかという意見が与党内の議員の方からも出ておるというような状況のようでございます。

 これは、一昨年の末に私もこの議論に参加をいたしまして、最終的に、柳澤大臣が先ほどもおっしゃったように、弱小金融機関、特に信金、信組あたりの状況も勘案して一年の延期ということになったわけでございます。これが仮にまた再延期、延長されるといったことになりますと、諸外国から我が国の金融システムに対する信用が失墜するんじゃないかというように思うわけでございますし、一方で、金融機関が今大変な努力で自己変革といいましょうか、体質改善をやっておるわけでございます。再編を進めたり、また提携を進めたりといったようなことをやっておるわけでございますが、このあたりの勢いがなえてくるのではないか、これは大きな問題ではないかというように思うわけでございます。

 我が国の産業構造の転換、産業構造改革、構造改革の大きなポイントが不良債権処理でございますから、この不良債権を処理するためには金融機関がもっと国際競争力をつけてもらわなきゃならない。またそれは、ペイオフを実施することによって国際競争力をつけてもらわなきゃいかぬというように思うわけでございます。ですから、このペイオフの延期ということは私は反対でございます。私が一昨年の末にこの議論に参加した折にも、私はそういう意味合いのことを申し上げたわけでございますが、近づけば近づくほどそういうような声も上がってくるんだろうというように思うわけでございます。

 しかし、今我が国の金融機関がしっかりしていかないと、また金融システムがしっかりしていかないと、今後我が国の経済に対する影響はもう大変なものなんだろうというふうに思うわけでございまして、先ほど金融担当大臣、柳澤大臣の御答弁を聞いて一安心したわけでございますが、もう一度、強い御決意を御披瀝願えればありがたいというように思っております。

柳澤国務大臣 先ほどの御答弁でも申し上げましたとおり、戦後初めてというか、そういう世界に足を踏み入れるということについては、やはりそれなりにみんな素朴な不安というものが生じてくるということは、これは否定できないと思います。しかし、そうだからといって、それでは先延ばししていいのかというと、私はそうは思いません。これはもう谷口委員の今の御指摘のとおりだと私は思っております。

 今金融機関は非常に厳しい状況に置かれていますけれども、この厳しい中で、やはり真剣に自分たちの金融機関が直面している問題というものに正対をして、そしてどうして生き残り、かつ、生き残るだけじゃなくて自分たちの金融機関を強化して、地域の、あるいは国民経済の期待にこたえていくかということが考えられているはずでありまして、私は、ここでこの緊張を緩める、自分たちの周囲の環境を非常に和やかなものにしてしまうということは、そういう努力の姿勢に水を差すということになって、決していいことはないというふうに考えております。

 みんなそれぞれが、厳しいマーケットメカニズムの中に身を置いて、生き抜くんだ、役に立つ機関になるんだということの努力の中で日本の金融機関というのは真の意味の健全化が行われるわけでございまして、損失を税金で埋めてくれる、あるいは資本が足りなくなればまた公的部門から注いでくれる、こういうようなことをやっているところからは私は本当の意味の強い健全性というものは生じてこないというふうに思っておりまして、そういう意味で、既定方針どおり、みんなそれぞれの立場で今準備もしておりますので、私はこの方針を貫きたい。ぜひ御理解を賜りたいと思います。

谷口委員 柳澤大臣の御決意、大変心強い思いをいたしました。私も、ぜひそういう考え方で主張をしてまいりたいというように思う次第でございます。

 本日の新聞を見ましても、地銀の検査がペイオフに備えてやられているというような報道がございます。もう既に大手金融機関の特別検査もされておるわけでございまして、いわば順番にそのシナリオが進んでおる、こういう状況でございますので、今手を抜くことによって本当に後世に悔いることのないように、ぜひやっていただきたいというように思うところでございます。

 その次にお伺いをいたしたいわけでございますが、どうも最近、生命保険会社、生保の風評による問題があるようでございます。

 この十一月の一日に、新聞の報道でございますが、金融庁は日本生命に対して、風評で他社の営業妨害をしたということで業務改善命令を出したというようなことでございます。保険業法におきますと、保険契約を勧誘する際、他社の信用力や支払い能力が自社より劣ることを不当に強調することを禁じておるというような状況のようでございます。最近、株安が進行いたしておるわけでございますけれども、このような状況の中で、各生保がこのような風評といったようなことの事態がふえておるというようにお聞きいたしております。本年の三月に破綻した東京生命保険の当時の社長は、既契約の解約が三倍になった、風評にやられたといったようなことを記者会見しておるようでございます。

 このような状況に対して、金融担当大臣、御見解をお聞きいたしたいというように思います。

村田副大臣 事実関係でございますけれども、先般、日本生命の営業職員等が、保険契約者等の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつきまして誤解されるおそれのあることを表示した資料を作成しまして、これを外部の者に配布等を行ったという事実が判明いたしたことから、十一月一日に同社に対しまして、保険業法第百三十二条に基づく業務改善命令を行ったところであります。

 また、私どもとしては、今回の事案のような大変不適切な募集行為というものは、保険業界全体に対します国民から、あるいは契約者からの信頼を損ねる、こういうことでございますので、監督当局としては看過し得ないということで、法律に基づく業務改善命令を発出した、こういうことでございます。

 これに基づきまして、私どもとしては、日本生命に改善計画をつくっていただきまして、そして役員以下生命保険募集人に至るまでの教育指導の徹底、会社全体におきます法令等の遵守体制の整備充実を図ること、それから再発防止のための実効性のある措置をとるようにということでございまして、同社が改善計画を立てて、速やかにそうした事態の二度と起こることのないような措置をとっていただくことを期待しているわけでございます。

谷口委員 お聞きしますと、今回の件だけではなくて、各生保で現場の中でそのような風評という事態が起こっておるようでございますので、これはひとつ、今何点かおっしゃいましたが、このようなことに対する厳重な注意だけではなくて、これがワークするというような何らかの体制を考えるなり方法を考えていただいて、このようなことのないように、市場の混乱を起こさないようにやっていただきたいと思う次第でございます。

 一つのポイントは、財務上の問題に関して風評が出ておるというような状況のようでございますから、情報開示、どういう形になるのか考えていただきたいわけでございますが、より一層の情報開示をして、保険契約者なり国民一般の皆さん方によくわかるようにというようなことを考えていただきたいわけでございますが、そのあたりはどのようにお考えでございましょうか。

村田副大臣 委員の御指摘のように、保険契約者が生命保険契約を結ぶに当たりまして、適切な情報開示のもとに保険契約を結ぶということが必要でございまして、私どもとしては、保険会社に対します検査とかあるいはモニタリングを通じまして、私ども自体がその財務内容の適切な把握に努めていきたい、こういうふうにも考えているわけでございます。

谷口委員 時間が参りましたので終わりたいと思いますが、先ほど申し上げましたペイオフに関しましては、大変な状況なんだろうと思いますが、柳澤大臣にぜひお願いを申し上げたいというように申し上げまして、終わらせていただきます。

山口委員長 次に、五十嵐文彦君。

五十嵐委員 民主党の五十嵐文彦でございます。

 本日は、まず、証券税制に関する租税特別措置法案についてお尋ねを申し上げますが、まず財務省にお尋ねを申し上げます。

 一年超保有の株式について、平成十五年から十七年の間に譲渡した際には譲渡所得税を暫定的に一〇%にするというかなり大幅な特典といいますか減税が行われるわけですが、これが入った以上は、現行の百万円特別控除は当然縮減ないし廃止されるべきだ、私はもう廃止されるべきだと思うんですが、これはどのようにお考えになっているのか。特に、九月十八日の政府税調の金融小委員会の意見でもそのような立場が表明をされているはずでありますけれども、これにも反するのではないか。税調の小委員会の言うことは無視してもいいということなのか。その辺の事情を含めて御説明いただきたいと思います。

大武政府参考人 お答えさせていただきます。

 今回の証券税制の見直しにつきましては、まさに十五年の一月から申告分離課税一本化をする、それにあわせて、株式の保有実態あるいは垂直的公平の要請などを踏まえつつも、他の金融商品に対する課税のバランスをとりまして二〇%へ引き下げる、そしてさらに、三年間、長期保有のものについて一〇%に下げるというような措置をとり、かつ、繰越控除制度の導入を行うことによって税負担及びリスク負担の緩和に配慮して、国民が今後安心して証券市場に参加できる一つの環境整備としてやらせていただいたものでございます。

 先生が御指摘になりましたとおり、政府税制調査会の金融小委員会の意見におきましては、今後の申告分離課税の税負担水準のあり方については、課税ベースを大きく縮減させる、百万円の特別控除がある中で税率の引き下げを行うことは適当ではないという御指摘はいただいたところでございますが、ただ、昨今の経済情勢あるいは株式市場の動向等を踏まえまして、個人投資家の株式市場への参加を促進するといった観点から、百万円特別控除につきまして、その期限を十七年末まで区切ることによって特別に税負担の軽減をすることとしたということでございます。

五十嵐委員 恒久税制の部分は私どもも昨年から主張いたしておりまして、その部分については賛成だということは申し上げているわけですが、それにしては、このおまけの部分、いわば昨今の株価の状況を見ての、株価対策的な側面からの緊急措置、特別措置というものは、やはり悪乗りというか、やり過ぎではないかという立場に立っているわけであります。今の答弁を伺っても、これは特に理屈があってこうするんだということではなくて、昨今の株価の状況を見てのことだということであります。とにかく、それにしては私は、繰り返しますけれども、やり過ぎだな、悪乗りだなという感じがするわけです。

 特にこの緊急措置については、単にやり過ぎというだけではなくて、むしろ害が生じるおそれがある。すなわち、十四年中に株を買えば、前の持っていた株を売って十四年中にクロスで買いかえても、それは三年後に一千万まで非課税になるということですから、まさに買いかえなさいという回転を奨励している。回転売買の奨励であって、証券会社の手数料を稼がせるための措置ではないか。

 また、株というのは、本来、配当を目的としてきちんと長期に所有するという姿が望ましいのであって、回転売買をしてキャピタルゲインを上げるというのは、それは主目的であるよりは付随的なものだというふうに私は思うわけですが、この緊急措置についても、やがて売らなければいけない、今度は売る方のインセンティブになるわけですから、やはりこの時点でも、確かに数年間持つことにはなるわけですけれどもこれは回転売買の奨励という側面も持つということで、本来の投資家育成という考え方とはそぐわないのではないか、こう思うわけですが、これについてお伺いをいたします。

大武政府参考人 お答えさせていただきます。

 ただいま五十嵐先生が言われましたとおり、既存の株主が平成十四年末までに売却をして乗りかえるということもあり得るわけでございますが、ただ、現状の中で、所有しておられる株式が譲渡損失があるというようなケースが多い。そういう状況では、現状では繰越控除制度がございませんので、ある意味でいうと、繰越損失の利益を得られることがないという状態にあるのかと思います。むしろ今回の措置は、やはり二年以上の株式保有が条件となっているということもあって、今後長期に保有する意思を持った多くの新たな個人投資家の方々に株式市場に参加するきっかけとなるというようなことを期待したということでございます。

 それから、もう一つ先生が申されました、売却期間を十七年から十九年と限定しているという問題につきましては、我々も、これはもっと長期に持っていただくということが望ましいということは十分承知しております。

 ただ、現状において、証券会社が複数にまたがっているとかそういう全体を考えますと、証券会社によって名寄せをしていただくということが困難な状況の中で、いわば非課税限度額をきちっとやっていこうとしますと税務当局が管理せざるを得ない。そういう中で、やはり当該売却が税制適格要件を満たすか否かについて、納税者の証明とか税務当局の確認というようなものを適正、円滑に執行していくという観点から、売却期間を一定期間に制限せざるを得なかった、こういう点についてはぜひ御理解を賜りたいと思う次第であります。

五十嵐委員 現状では譲渡損失が出る可能性の方が高いからというのはあるわけですけれども、何も全部がそうなわけではありません。もちろん、それで損する人は売らないでしょうから、そういうことにはならないということもあるわけですけれども。

 いずれにしても、そのクロスの売買、買いかえというのは好ましくないというふうに私は思います。ですから、このようなやり方はいささかトリッキーである、正統的ではないというふうに思うわけですね。そこを正当化しているのが、個人投資家を株式市場に呼び込むきっかけになるからだ、こういう御説明なわけですけれども、それにしては私は、税制で本当に株取引に個人が参加してくれるのかという根本的な疑問を持たなければならないと思うわけです。先ほども同僚委員の方からありましたけれども、株は結局、もうからないから買わない、それから配当性向が低いから買わないということの方が大きいのだと思います。

 ですから、日本の株式市場を活性化したかったら、本質的な部分、株を買って持っていればいいことがあるのだという、本質的な部分を手直ししていかなければならないのだ。それには、それは上場企業の収益率を高めてROEを高めるというのが本筋だと私は思いますし、配当性向をきちんと高める、そのためには、株の持ち合いなどはやめてちゃんと投資家の方に、株主の方に目を向いた企業経営がなされるということが必要なのだろうと思います。

 そこで提案を一つさせていただきたいのですけれども、これは、ROEというような要素を、東証は一つの民間の組織ですから命令をするということはできないのでしょうけれども、ROEを上場の基準にするというようなことをすれば、必死に努力をして、あるいは何年間かの猶予期間を置いてでもそういう仕組みをすれば、日本の株式市場もよみがえる可能性があると私は思うわけであります。法律的に縛らなくても、要請をするというようなこともできると思うのですが、そういうような本質的な手だてを打つ必要があると思いますが、それについては、例えば金融担当大臣はどうお考えになりますか。

原口政府参考人 議員今御指摘のように、証券市場の活性化のためには、最終的には企業が元気を出し、またその業績等が客観的に評価できるということは重要なことだと思います。そういう観点から、タイムリーなディスクロージャーとか業績の発表等は今いろいろな措置を講じているところでございますが、一定のROEをそういう基準にするということについては、そういう御提案については、一方で新しいベンチャーですとかいろいろな企業を上場させる、そういうことによって活性化させていくという観点との調和の問題があり、そういう点を含めて検討すべき課題ではないかなというふうに感じます。

五十嵐委員 いろいろ調整すべきところは多いと思いますが、ぜひ検討していただきたいと思います。とにかく、株価が二十円台というような企業が上場されて残っているということ自体がおかしいという感覚にならなければ私はおかしいと思います。

 それから、先ほど自民党の委員さんからも話がありましたように、かつて株の世界では、大口の顧客だけを大事にして、一億円以下の客はごみだというような、そういうような扱いがされたということで、個人の投資家が逃げていった、懲りてしまったということがあるわけですね。特に、その中には政治家が一方的に優遇されて、つけかえが行われたというような歴史があるわけであります。ですから、そういったことを監視するということが非常に必要だと私どもは思います。

 そこで、私どもは、インサイダー取引等も含めて厳しく証券取引を監視する日本版のSECをつくる必要があるということを主張し続けてまいりました。私どもだけではなくて、与党の中にもそのような主張をされて、法案を準備されているという有力な、専門的な知識を持たれる議員もおられるわけでありまして、日本版SECは、今のシステムで十分、強化すれば対応できるのであって必要ないという御答弁が続いているわけですけれども、本当にそうなのでしょうか。もう一度お答えをいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 SECというものでなければ今言った不公正な取引、インサイダー取引を初めとするそういうたぐいの取引の取り締まりができないのか、あるいは、もしSECと比べて、どなたかが先般御質疑の前提として言われたように、告発件数が少ないというようなことを前提とした場合、それはマンパワーの問題なのかというようなことも一つの論点だと私は思うのでございます。

 SECというふうなことで申しますと、金融部門だけ財政から分離されたということだけでも、人繰りの関係とかなんとかというようなことで非常に難儀をして、今行革の中で非常な難儀をしているところに、またSECというのを、独立のところをつくって、やるというようなことになりますときに、一体、そういうマンパワーというようなことでも、それが何らかいい方向に働くのかということについては、理論的というより現実論ですけれどもやはり大きな問題があるというふうに私は思っております。今の証券市場監視委員会も、逐年、いろいろな方々の御理解を得て今マンパワーの増強をいたしておりますので、その方向での努力というのがまず基本的に必要であるというように私は思います。

 なお、SECの体制と今の体制がどうかといいますと、これも、アメリカは確かにそういうように証券と銀行あるいは保険というものを分離しておりますけれども、そういう国ばかりではないわけでありまして、私どものシステムがどっちの方向に行くべきかというのは、やはり現実の金融というものが、商品にしても、あるいは金融サービスを行う会社の形態にしても、やはり統合の方向へと行っているということを踏まえるべきだということを私どもは申し上げている次第でございます。

五十嵐委員 現行の委員会組織では強力な権限が振るえない、だから独立した、行政委員会としてかなり強い権限を持ったものが必要だというのが基本であります。

 それからもう一つは、やはり日本の金融市場というのはフェアネス、公正性というのが疑いの目で見られているという部分が非常に大きい。したがって、そこを、コストをかけてでもフェアネスを守るのだ、つくっていくのだ、確立するのだ、そういう意識が必要だという意味からこれは欠かせない。私どもは何度も実例を挙げても申し上げてまいりました。ダイエーの前社長の取引がどうしてあれでインサイダー取引でないのかというようなことは前にも指摘をさせていただきましたけれども、これは外国からも、本当に不思議だ、こう言われている。あれが捕まえられないのであれば、もうインサイダー取引の認定なんか日本ではあり得ないではないか、こう言われているくらいであります。

 前にも質問をいたしましたけれども、そうした実例を考えても、日本版のSECというのはぜひ必要だ、お考えを直していただきたいと思うわけであります。

 それから、次に質問を移らせていただきます。

 このようなことをやってもなかなか日本では、長い間の歴史がありますから、直接金融に進まないという状況にあるわけです。ところが一方で、今まで頼りにしてきた間接金融が機能不全に陥っている。これは今の経済を非常に悪くしている根本的な原因であるということは、もう私だけではなくて多くの人から指摘がなされているところであります。

 実は先週の委員会で資料としてお配りをさせていただきましたけれども、日銀の経済統計月報がございます。八月まで出ているのですかね、八月末の都市銀行の貸出残高を見ますと、ますます落ちてきている。ちょうど平成十年のころには二百二十兆円台の貸出残高があったわけですが、今や二百兆ちょっとというところまで、一方的にこのところずっと落ち込んできているという状況があります。これはどうして貸出残高がこんなに落ちてきているのでしょうか。

柳澤国務大臣 貸出残高というのは、いろいろな複合的な要因でもって減少しているというふうに思います。金融機関の金融仲介機能が正常に働いているか、あるいはクレジットクランチ的な状況に陥っているかというのは、各企業の資金繰りであるとか、あるいは各企業が金融機関の貸し出し態度をどう見ているか、これも同時に調査が行われておりますので、そういうのを見なければ、貸出残高だけで論ずるというのはやや偏った見解になるのではないかと思うわけでございます。

 そうした意味で、今私が申したような資金繰りであるとかあるいは貸し出し態度というようなものを見ますと、実際の金融危機と我々が目しておったあの一九九七年、八年というようなところに比べればはるかに正常でございますし、それから、若干ことしに入って少しきつ目の数字が出ておりますけれども、これはアメリカなどでも、景気が悪くなれば貸し出し態度というのは厳しくなるというようなことは一般に見られる現象でありまして、そういう現象としてとらえられるということでして、資金需要あるいは景況というようなことがその背景だというふうに私としては考えているわけでございます。

五十嵐委員 この表は、同時に実は都市銀行の国債保有残高を表示しているのですが、こちらの方は、ここのところ数カ月は別なんですが、やはり平成十年前後には大体十一兆円前後だったわけですが、それが一方的にほぼ一本調子に伸びて、十三年四月末には四十八兆円まで伸びた。すなわち、貸出残高が減るのとほぼ正反対に国債の保有残高が伸びているということですから、貸出分が国債に置きかわっているということが言えると思うのです。

 これがやはり大きな問題になっている。長い間のゼロ金利政策が生きていない、大幅な量的緩和も生かされていない、国債に置きかわっているという問題があって、この国債バブルがいよいよ危なくなってきたということが、この表から見てとれるわけであります。

 村田副大臣が、ここのところ数カ月、国債残高は減っているじゃないか、八月末で三十四・四兆円に減っているじゃないかという御指摘がこの間の委員会でありましたけれども、ここはやはり、さすがに国債がふえ過ぎて怖くなってきた。いわゆる銀行の側で、国債暴落の沸点といいますか、それが近づいている、沸騰点が近づいてきた、そういう意識があるのでここに急激な、このところの落ち込みが出てきたのではないか、そう見られるわけですが、一般的にも、市場でも国債の需要は弱まってきているというのが一般的な見方だと思います。

 この国債をむしろ日本の銀行ががぶのみをしてきた、それによるリスクが高まっているという点について、柳澤大臣はどのようにお考えでしょうか。

村田副大臣 せんだって私がお答えした御答弁の続き、関連いたしますので、私からお答えさせていただきたいと思います。

 金融機関、銀行の貸し出しの方は低調に推移しているわけでございますけれども、国債がそれに置きかわっているのじゃないか、かつまたその国債保有のリスクが高まっているのではないか、こういう御指摘でありました。

 私どもは、銀行の融資態度が必要以上に萎縮してしまうということは大変問題があるところだ、こういうふうに思いますけれども、しかしながら、基本的には、先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、その時々の経済情勢とか企業側の資金需要、これによって貸し出しというものは影響されるのではないか、こういうふうに思います。

 国債の保有につきましても減っておる。減っておりますが、これもやはり、今度は金融機関が銀行側の経営判断によって資産のポートフォリオをどういうふうにしていくか、こういう観点からの行動であろうか、こういうふうに思っております。一方において、国債の金利も一体に総じて安定的に推移しているという状態をかんがみれば、そういう意味では、銀行のポートフォリオの判断でもって保有を増減させているということが見受けられるのではないかというふうに思います。

五十嵐委員 何を言っているのだかわからない答弁なんですね。そんな話を聞いたって意味がないのですよ。減っているとはいえ、いまだに銀行が持っている国債の保有水準は高水準だという意識があるのかないのかということですね、まず。つまらない話をしてもしようがない。明らかに市場は、国債は暴落のリスクが高まっていて危ない、こう見ているわけです。ですから私どもは、これを考えに入れなきゃいかぬということを盛んに言ってきたわけであります。

 もう一度念のために、理財局おいででしょうか、教えていただきたいと思うのですが、平成十四年度、新発債は三十兆円に抑えると言っていますが、中期展望は三十三兆円でありました。あと、それだけではなくて借換債というのがあるわけでありまして、借換債と新発債、それから財投債の市中発行分、これを合わせると一体どのぐらい国の債券というのは市中で消化しなければいけないのか。その要消化額といったものを、平成十四年から二十年まで年度ごとにちょっと予定を教えていただきたいというふうに思います。

牧野政府参考人 お答えいたします。

 ただいま平成二十年までという御質問でございましたが、財務省で一応試算しておりますのは、財政の中期展望、これは現行の制度、施策を前提といたしておりますので、三年間の予測になっております。かつ、そういう現行の制度、施策を前提としておりますから、当然新規の施策や制度の改廃は織り込んでおりませんから、そういう意味で、何もしなかった場合にはこうなる、そういう数字であるという前提で、三年間の数字をまず新発債についてお答えさせていただきます。

 平成十四年度は三十三・三兆円でございます。平成十五年度は三十五・四兆円でございます。平成十六年度は三十八・三兆円でございます。

 それから、借換債でございますが、借換債につきましては、ただいま申し上げました財政の中期展望と同時に提出させていただいております「国債整理基金の資金繰り状況等についての仮定計算」というのがございますが、これに基づきますと、平成十四年度は七十・二兆円、平成十五年度は七十六・七兆円、平成十六年度は八十三・一兆円となっております。

 また、財投債の市中発行額の見込みについてという御質問でございましたが、今後の財投債の市中発行額の見込みにつきましては、将来の財投計画の規模でございますとか、それから経過措置に基づく郵貯等の直接引き受けをやっていただいておりますので、その額が確定しておりませんので、具体的にお答えできないということで御了解いただきたいと思います。

五十嵐委員 借換債については二十年度までわかると思うんですが、もう一度お願いします。

牧野政府参考人 借換債につきましては二十年度まで数字を出しております。ただ、これはさっきも申し上げましたように、将来の新発債の発行額が十六年度までしか出しておりませんので、極めて仮定といいますか、その性格が非常に強いものでございます。

 十七年度以降の数字を申し上げますが、これはあくまで新発債の発行額が十六年度以降同額だという前提に基づいて出したものでございます。

 借換債の数字を申し上げますが、十七年度が九十八・九兆円でございます。それから十八年度が百六・六兆円でございます。十九年度が百十六・七兆円でございます。二十年度が百三十二・九兆円でございます。

五十嵐委員 借換債が二十年度に百三十二・九兆円、物すごい額だと思いませんか。物すごい額ですよね。これに、新発債だってそうは縮められないということはわかっているわけですから、四十兆円足したとすると百七十三兆円。それに、わからないけれども財投債の分も加わる。もう二百兆円近い。財投債はことし十三年度で十・五兆円ですから、そうすると、これはもう二百兆円近い国の債券を消化しなきゃいけないという大変なことになってくるわけです。

 この数字を見ただけで、特に過去、自民党政権が、どういうつもりか知らないけれども補正で大ばらまきをやったおかげで、借換債については十六年度から十七年度にかけて約十六兆円ふえるわけですね、一挙に借換債が。こぶができちゃっている。それから、十九年度から二十年度についても、同じように十六兆円一挙に借換債がふえる、こういうことをやっている。これは消化できる自信がありますか。

村上副大臣 五十嵐委員の御質問にお答えします。

 今御指摘がありましたけれども、現在、国債の消化は低い金利水準のもとで非常に順調に進んでおります。今後の国債市場の動向は、国債の需給のみならず景気や物価の動向、金融政策等のさまざまな要因によって変動すると考えております。そういうことで、なかなか一概に予測することは困難だと考えています。

 だから、今後とも国債消化が安定的に進むよう、まず第一には、いつも申し上げているように、健全な財政を運営するための財政の構造改革をやる、それから二番目に、国債の発行に当たって年限間のバランスのとれた適切な国債発行計画を策定すること、そして三番目は、市場の実勢を反映した発行条件の設定、そして四番目に、国債市場懇談会等を通じた市場との密接な対話に努めていきたい、そのように考えております。

五十嵐委員 自信があるかどうか聞いたので、お題目を聞いてもしようがないんですよ。

 それで、これはもう大変なことだと思います。仮定の計算ですけれども、もし〇・五%金利が上がったとすると、国債価格は二%ぐらいダウンするんじゃないかという予測があるようです。平均償還期限を五年と計算して、一体どれくらい銀行はそこで新たな不良資産といいますか、損をすることになるんですか。ちょっと計算を知らせていただきたい。

高木政府参考人 お答え申し上げます。

 今、主要行について、ちょっとラフな試算でございますが、主要行が保有いたします国債残高が十三年三月末で約五十一兆ございます。

 それで、その平均残存期間ですが、先生今五年とおっしゃいましたけれども、実質、実態は三年程度ということになっておりますので、これを前提にはじきますと、価格が一・五%値下がりするという計算になってまいります。その残存年限の、本当は入れかえ等あると思いますけれども、それをしないという前提で計算いたしますと、金利が〇・五%上昇いたしました結果、評価額は約一兆円減少するということになってまいります。

五十嵐委員 大変な数字ですね。主要行で一兆円ですよ、一兆円。これは大変な数字だと思いますね。景気がよくなりかかるとその他に資金需要が出てきますから、国債は人気がなくなります。そうすると、国債の暴落が起きて、価格下落が起きて、銀行は〇・五%金利が上がるだけで一兆円損をする、主要行だけで。これはいわば、永遠に景気をよくさせないシステムじゃないですか。アンチステービライザーというべきものでありまして、景気がよくなりかかると銀行は新たな多量の不良債権を抱えるということと同じなわけですから、これは大変な話になってくるわけですね。

 これは、国債の暴落リスク、そして金融のシステムに大きな影響を与える大きなリスクだと考えないでいいわけですか。この点についてお伺いをいたします。

高木政府参考人 お答え申し上げます。

 今、ちょっと補足いたしますけれども、さっきの、〇・五%金利が上がった結果一兆円の評価損が発生する、それで、それが主要行の自己資本比率にどういう影響を与えるかといいますと、約〇・一ポイント低下につながってくる。ですから、十三年三月末で見ますと、実績が、自己資本比率一一・七%だったわけですが、それが一一・六に下がるということであります。

 銀行がどういうふうにリスクを管理しているかということをちょっと申し上げたいんですが、国債投資に係るいわゆる金利変動リスクにつきましても、当然ですけれども信用リスク同様、リスクについて日々銀行はリスク管理をいたしております。それからさらに、その残存期間、さっき三年と申し上げましたけれども、金利いかんによりましてはその入れかえ等もございますし、そういう意味で、金融機関はできるだけ適切なリスク管理に努めているということを申し上げたいと思います。

五十嵐委員 それは、都合のいい方ばかり見ればそうでしょうけれども、今、主要行だけで五十一兆円、銀行全体では、実は百十兆円所有しているんじゃないですか。そうすると、弱いところもあるわけですよ。

 それから、自己資本比率は、主要行で〇・一ポイント下がるだけだと言いますけれども、正味の自己資本比率、これもこの間、先週のときに質問できないままお配りをいたしましたけれども、実際には、正味の自己資本比率は非常に低いじゃありませんか。いわゆる税効果会計、繰り延べ税金資産、それと公的資金、やがて返さなければいけない公的資金分を除いて計算をし直しますと、私どもの試算では大変低い数字が並んでいる。むしろ主要行、私どもの試算では、八%超えているところは一つもない、一番悪いところは一・六%だ。

 これは大変な状況に既になっていると私は思います。これに国債の暴落リスクが加わるということは、これはシステミックリスク前夜だと言っていいと私は思うんですが、もう一度、柳澤大臣からこの点についてお伺いをしたいと思います。

柳澤国務大臣 ポートフォリオでどういうものがリスクが高いか、リスクが低いか、それがまたそれぞれの経済状況によってどういうふうな推移をたどるかということは、常時、市場リスク管理ということでウオッチをしているということで、金融機関としてそのリスクをできるだけ避ける方向に行動するということは、いわば当然のことでございます。そういうことでありますから、先ほど委員が指摘されたような国債の残高の推移も、あるいはそういうことの一環かもしれないと私も観察をしているわけでございます。

 そういうことで、国債についても十分なリスク管理を行っていくということを前提にいたしますと、今現在の状況について、すぐに大きな問題があるというふうに言い切る必要はないんではないかというふうに思います。

 なお、その場合に、自己資本比率の関係を委員は言及されたわけでございますけれども、これについても、正味自己資本比率というようなことで、公的資金も除いて税効果も除いてという前提に立てばそういう数字も出てくるかと思いますけれども、これらについても、しっかりした会計基準のもとで自己資本ということが認められているわけでございまして、これは国際的にもそういうものだということで容認というか認知されているわけでございますから、それを仮定計算で、これを引けばこうなる、それは引けば少なくなるだろうと思うんですけれども、そういう議論で一刀両断にするという議論をするのは、私ども、必ずしも適当ではないというふうに思うのでございます。

五十嵐委員 いつも大臣そう言われるんですけれども、市場はその正味の自己資本比率を注目しているわけですよ。だからたびたびいろいろなメディアでこの数字が出てくるわけであります。そのことを無視していいという話じゃないと思うんですね。

 例えば、中央三井信託銀行は、その計算でいくと、わずか一・六%という数字が出てきてしまうわけですよ。そうすると、この中央三井信託銀行、今度持ち株会社化に移行するわけですけれども、これはやはり、四分の三を配当原資に回せる、準備金を取り崩せるというねらいじゃないかなというようなことが出てくる。日本の極めて脆弱な銀行の体質、それを守ろうとする金融当局の間で、都合のいい数字だけを持ってきて説明をしようとしている、だけれども実態はそうではないんだという疑いを常に持たせるというところになってくるんではないかな、こう思うわけであります。

 ですから、市場に注目をして特別検査をするというのであれば、市場が何を見ているかというものをもっと敏感にとらえるべきだ、私はこう思うわけですけれども、それはいかがでしょうか。

柳澤国務大臣 私どもも、市場の声あるいは市場の発するシグナルということについては耳を傾けていかなければならない、こういう考え方を基本にいたしております。

 今のお話でございますけれども、なるがゆえに私どもは、最終的に本当に資本を強化するというか強くするには、やはり自己調達、あるいはよりそれ以上に自分の収益を上げて剰余金を積み上げていくということこそが本道である、そういう体質の金融機関というものをいかに構築するかということについて、各金融機関を督励して真剣な努力を促しているということでございます。

五十嵐委員 最近、いわゆるサラ金、消費者金融、それから商工ローンがまた、あれほどの問題指摘があったにもかかわらず大変にぎわっている、こう聞いているわけですね。銀行は、貸し出しを渋ってこれだけ貸し出し態度が厳しくなっている一方で、そういうところにはかなりお金を流しているらしいと。それによって、たくさんの方々が高金利のものに泣かされて、自殺に走っているということが出てきているわけであります。この辺は私は大きな矛盾だと思うんですね。

 いわば、私どもが言いたいのは、銀行はちゃんとリスクをとりなさいと。そして、どうしても競争してリスクをとる銀行にしたくないのであれば、やはりこれは国がある意味では一時的にプレーヤーになるのもやむを得ないかな。すなわち、優先株に配当できなくなったところは普通株に転換してもらって、場合によっては一時国有化して、そしてミドルリスクの銀行、すなわち一〇%程度のちゃんとリスクをとって貸し出す、いわゆるローリスク・ローリターンの銀行とハイリスク・ハイリターンの商工ローンの中間を埋めるような金融機関を、場合によっては知恵がなければよそから連れてきてもいいと僕は思うんですが、そういうようなものが日本には必要じゃないか。今の銀行の貸し出し態度、それが改まらないのであれば、日本はますます経済の血液たる金融が機能しなくなる、こう思うわけですが、どうでしょうか。

柳澤国務大臣 実は、いろいろ金融機関の話を聞いている中で、みずから、今先生が指摘をされたようなことを自分たちのビジネスモデルとして採用しよう、ミドルローンというんでしょうか、そういうふうなことをはっきり志したいというようなことを申している金融機関もございます。本当に、御指摘のことは御指摘どおりだと私も考える面がございます。

 でも、要は、そういう金融を行うに当たってのノウハウ、これを今の金融機関が備えていないということに問題がありまして、このあたりのことは、人材のヘッドハンティングとかそういうようなことでやってもこういうノウハウを至急自分のものにして、今言ったような、しっかりリスク、社会的な問題にならない程度の信用リスクというものを上乗せした金利をいただく、こういうビジネスを伸ばしていくことはあるべき態度ではないか、このように思います。

 ただ、その前提として、委員が仰せられたような、それは国家管理あるいは国有化という銀行でなきゃできないとは私ども思っておらないわけでありまして、できるだけ民に任せ得る、そういう段階でそういうことを志させたい、このように考えております。

    〔委員長退席、奥山委員長代理着席〕

五十嵐委員 ですから、私も前提として、民間でそういうことをやらないのであればということを申し上げたわけであります。

 それから、特別検査をこの十月にもやるというお話であったわけですが、これはもう特別検査に入っているんでしょうか。

 それから、特別検査においては検査マニュアルを変えているのか、追加しているのか、今までのままでやっているのか、お聞かせいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 まず、特別検査は、先週というか十月の末から取りかかりました。これは該当の金融機関に対して、予告というんだそうですが、はっきり言って検査開始通知という実質的な意味を持つそういう通知をした、こういうことで検査が開始されたということになるわけでございます。

 その際に、金融検査マニュアルを変えたのか、こういうことをお尋ねになられたわけですが、これは形式的に変えるというようなことはいたしてはいないわけでございます。

 ただ、もともと、この検査マニュアルの中に、ベストプラクティス的な意味でこういうふうな処理をするのが望ましいというようなくだりがございまして、特に引当金の算出、算定に当たって、こういう債務者区分というか行内区分、行内格付というか、そういうものを細分化することによってより実態に近づくというようなことをするのが望ましいというくだりがありまして、そういったベストプラクティスを入れることは考えているわけでございます。

五十嵐委員 その検査の結果なんですけれども、行内格付の変更というのは当然あり得るわけですが、それは表には出てこないわけですね。

 そうすると、この間からの問題に絡まってくるわけですが、その指導が、この間申し上げているいわゆる口ききとか手心みたいなものと絡んできて、行政の透明性を確保するのが非常に難しくなってくる。結果として、決算書を見て引当金をたくさん積んでいれば、これは何らかの変化があったんだなというのは後からわかるのでしょうけれども、行政として、公正にやりましたということをディスクロージャーするような何らかの方法はないのでしょうか。

柳澤国務大臣 この特別検査は、かねて申し上げておりますとおり、風評被害を生みがちな側面ということは否めないわけでございまして、そういうことを政府が行うということは、これは断じて避けなければいけないことだろう、このように考えるわけでございます。それなるがゆえに、私どもは、この検査については慎重の上にも慎重を期していっているというのが実態でございます。

 そういう前提に立ちまして、さてその結果をどういうふうにディスクローズできるのかということでございますけれども、正直言って、国民というか市場からの透明性の要請というのも考えなければいけないということも、これはまた別の面としてあるわけでございますので、それらを勘案して、少なくとも個別具体的な問題に触れるわけにはいかないということ、したがって概括的、集計的な概要にとどまらざるを得ないということだし、また、タイミング的にいっても、ちょっと落ちついた、ちょっとというかかなり落ちついた後に、こういう状況でしたということで、事後的な皆さんへの評価というか、そういうものにつながるような、そういうことを考えるのかなというふうな感じが現在の感じでございます。

五十嵐委員 それだけ気を使っていればなおさら、先日の問題ですけれども、個別名を不用意に挙げて借りかえを迫るというのは、私は、大変問題のあることだと思います。

 それに加えて、これは新生銀行側にも問題があると思うのですが、あした聞かなきゃいけないと思うのですが、どうも新生銀行は外資系の関係の会社に個別融資先企業の内容を漏らしているのではないかといううわさがかなり市場で流れています。であればこそ、その一つの証拠が、行内のメールがウォールストリート・ジャーナル紙の二人の記者に流れたこと自体が、逆にそういう情報管理ができていない一つの証拠と見られているわけですね。

 であればなおさら、そういう銀行に対して金融庁長官が、金融当局の責任者が、トップが個別名を挙げて借りかえに応じろというようなことを言うのは、これは許してはならないことだと思うのですが、一般論としてそういうことを、借りかえに応じるよう社名を挙げて迫るということがもしあったとすれば、許されていいことですか。

柳澤国務大臣 あくまでも、借りかえに応じるか応じないかというのは、それぞれの銀行のまさに経営判断の問題です。

 今御指摘の銀行について言われておりますのは、これは経営の姿勢としてそういう方針をとっているということを問題にしたわけでございまして、私どもの長官が経営判断にまで立ち入ったようなことを申すということはあり得ないし、あってはならないことだ、こういうように思います。

 ただ、経営方針、経営の姿勢というようなものについて議論をするときに、その中に、例として個別の企業の名前に全く触れない、触れることが全くないのかと言われれば、それは例としてはあるだろう。しかしそれは、あくまでも経営判断はそれぞれの金融機関のものだということは十分認識した上での話ですから、個別の金融機関についての経営判断について圧力を加えるというようなことはないと私は確信をしているわけであります。

    〔奥山委員長代理退席、委員長着席〕

五十嵐委員 そこが私どもは確信ができないのです。その説明責任はやはり御本人にあるでしょう。ですから、この場にぜひ森さんを呼んでくださいということをきょうも申し上げて、拒否をされたわけですけれども、拒否の理由はほかにもあるのですか。

 それから、時間が迫ってきましたので申し上げますけれども、十月十二日付のトニー・ミラー氏という方の投稿について、シェイキング・ダウン・ジャパンズ・バンクスという投稿に対して、金融庁がエディターへの、編集者への手紙という形で反論を出されています。これにこういうような反論を出されるのでしたら、もし違うというのだったら、とっくにウォールストリート・ジャーナルには同じように、出典まで明らかにされた記事ですから、何らかのアクションがあってしかるべきなんですが、しているのでしょうか。

柳澤国務大臣 この間の経緯については、私も、先般の議論のときに若干混同というか混乱をした話をしておりますので、その点、もしそういう混乱に基づいて誤った話をしているとしたら、この際、訂正をさせていただく、こういう前提で申し上げますと、最初のエイジアン・ウォールストリート・ジャーナルの記事については、本人から我々の方の金融監督担当の者にそういう話があったものですから、そのときに反論をしたということです。したがって、その記事が、その当該の筆者の手によって、反論があったということはその本文の中に記述をされたということでございます。

 そして今回、今先生御指摘になられたトニー・ミラー氏の十月十二日付の記事については、そういった事前の働きかけもなかったものですから、私どもとしては、記事が出た後で、それに対する反論のレター・ツー・ザ・エディターでしょうか、そういう形での手紙を発出して、それが後に掲載された、こういういきさつでございますので、御理解を賜りたいと思います。

五十嵐委員 しかし、ウォールストリート・ジャーナルの方は、あれだけ具体的に出典や、それから情報提供者は普通はジャーナリストは明かさないのですけれども、情報提供者の名前まで挙げてこれは書かれているわけですから、そしてその疑わしい行為というのが確かにあったかどうかという確認すら、私どもは受けていない。大変残念なことだと思うんです。

 先ほどちょっと言いましたけれども、この間柳澤大臣が言われた理由のほかに、森さんがここで答弁できない、事実関係にして私は国民に対して説明をする説明義務があると思うんですけれども、説明できないという理由がほかにあるんですか。それをお伺いしたいと思います。

柳澤国務大臣 本人が説明できない理由があるとは私は思っておりません。

 要するに、これは一種の国会と行政府との慣例というか、そういうものに従っているというだけでありまして、議会というのは議事規則も何も慣例の積み重ねというか、それは先人の知恵みたいなものがそれぞれあってやっているわけですから、それに従っているということでして、これはすべからく議会の問題ですから、理事会なりのお取り扱いということが基本だろう、こういうふうに思っています。そのときに私どもとしては主張すべき点は主張させていただきますが、基本的には議会の理事会の問題だろう、このように思っています。

五十嵐委員 そうすると、本人が出て説明することもあり得べしという解釈でいいんだろうと思います。要するに、今までは政府委員制度がありましたから、政府委員に次官は指名されていなかったから出られないということがあったわけです。しかし、政府委員制度はなくなりました。

 そして、ただの組織の管理者、大臣がここにいる間組織を管理しなきゃいけない、そういう組織の管理者としての事務次官は確かになかなかここで拘束するというわけにいかないでしょうけれども、しかし今度の場合は、御本人が、直接自分が言われた、直接自分が行動されたことについて国民に説明をする義務があると私どもが主張をしているわけですから、説明をする責務が私は当然ながらあると思うわけですね。

 この件に関して、前例とか慣例とか役所のメンツとかいうことで答弁を拒否するというのは許されない。私は、改めてこの場、この委員会での御本人の説明を要求するということで、時間が参りましたので終わらせていただきます。

山口委員長 ただいまの件につきましては、今理事会で協議中でありますので、早急にまた結論を出させていただきたいと思います。

 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時十四分開議

山口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。小泉俊明君。

小泉(俊)委員 民主党の小泉俊明でございます。代表質問に引き続きまして、当委員会でも御質問させていただきます。

 この連休中に、実は地元の中小企業の経営者何人かとお目にかかりました。その中で、年商七十億ぐらいの社長が私にお話しされたことが、小泉さん、もうこのぐらいの景気状態になると、ビルの高いところに行って下を見ても、飛び込むこと自体がもう怖くなくなっちゃうんだよ、こんな気持ちわかるかいというようなお話もされましたし、きのうまた、実は水戸で、商工会議所、商工会等を中心に中小企業危機突破集会、三百名ほどで開かれました。その中でも、皆さん、各界の代表者がおっしゃることは、企業努力はいろいろな制度を使って一生懸命やっているんだ、やっているけれども、どうもこの危機的状況を乗り切ることはもうできないというような、非常に悲鳴に近いようなお話が四団体の代表からそれぞれやはりなされて、非常に胸の詰まるような思いでそのお話を聞いてまいりました。

 その中で皆さんが、せっかくこれは現場から聞いてきたお話ですので大臣にも聞いていただきたいのですが、おっしゃっていることが、三十兆円の枠にこだわらないでほしいということを、まずそういった経済団体の方たちがおっしゃっていることと、あとは、政府系金融機関の廃止等を急激にやらないでほしいということ。また、やはり企業経営者が非常におっしゃっているのが、毎回私が本会議並びに委員会でお話しさせていただいておりますが、資産デフレの問題を何とかしてほしい。

 中小企業は、やはりほとんどがこれは間接金融しかありません。直接金融をやろうと思っても、ほとんどの、九九%を占める中小企業の零細のところはなかなかそれができない、これが現実であります。ところが、これは担保割れしているために、黒字の会社であってもなかなか今金融を受けられないというのが現実でありますので、ぜひともその辺を、もともとこれは与党の支持団体の方たちの集会でありますので、ぜひともそんな声をお伝えさせていただきたいと思います。

 それでは、本会議に引き続きまして、日経平均が五月二十一日、一万四千円でありましたが、これが九月十二日の時点で九千六百十円まで落ちました。この間の失われた時価総額をもう一度確認させていただきたいと思います。

村上副大臣 小泉委員の御質問にお答えします。

 今委員が御指摘になった、一万四千円であった五月二十三日の株価が九月十二日に一万円を最初に下回った時点で、およそ百兆円減少している、そういうふうに計算しております。

小泉(俊)委員 本会議場では、一万四千円から一万円といった形になりましたので、八十兆円とお答えいただいたのですが、一応今副大臣お答えいただきましたように、五月二十一日の一万四千円から九月十二日の一万円を割った九千六百十円の段階で、これは約百兆円ですよね。これは繰り返すまでもなく、年間予算の八十三兆円をはるかに超える金額であります。そしてまた、年間GDPの二割を占める大変な金額が、たったこのわずか半年間に急激に失われた。

 景気というのは単純な話で、これはお金の回りでありますから、こういった株価の下落をそのまま放置して、そもそも景気の回復ができるとお考えなのかどうかを、これは財務大臣並びに柳澤金融担当大臣にお尋ねいたします。

塩川国務大臣 その間に失われた時価総額が約八十兆円というお話がございましたですが、数字の上で確かにそうなるのでございますけれども、しかし、これは現実に売買されて起こってきた損失ではないと思っております。

 でございますから、その分の穴埋めは、いずれまた回復したときに、株価が回復したときにはそれを取り返すべき資産でございまして、それだけに、私たちは、株価の上昇に鋭意努力していくということがこの損失を補てんする道であろうと思っております。

柳澤国務大臣 土地と並んで有力な形態である資産である株が下落をしたということは、やはり逆資産効果というような形で、それが仮に自分のポケットの損失として生じていなくても、景気にプラスの影響はあり得ず、マイナスの影響があるだろうということでございます。

 ただし、それでは株価というものがどうしてそうなったかといえば、それは自律的にそうなったのではなくて、むしろ経済の不振ということの結果そういうことになったというふうに見るのが正統的な見方だ、こう思いまして、私どもとしては、構造改革を行うことによって日本経済を本格的に立ち直らせていくということを志している、こういうことだと思っております。

小泉(俊)委員 質問の角度を変えますが、それでは、今のお話を聞いておりますと、市場の要因で下がっていて、多種多様な原因があるというお話でございますが、今の一万円に近い株価の水準を、財務大臣と金融担当大臣というお立場でこれは容認をされるわけでございますか。お二人にお伺いします。これは、ですから一万円でもしようがないと、それをお認めになられるのかということをお尋ねいたします。

塩川国務大臣 決して私たちはこれでいいという、容認しているというわけじゃございません。それは株価が高いほどいいと思っておることは事実でございますし、また、その努力をしなきゃならぬということも事実でございます。

 しかし、これは市場が決める問題でございますので、そして株価はそのときの金利水準なり為替の変動、それから企業の景気、不景気の動向等いろいろなものが複雑に絡んでおりますので、なかなか政府の行政指導とかそういうことの及ばない範囲が多うございますけれども、しかし、ほかのファンダメンタルズを改良することによって株価の維持を向上させていくという努力は私たちも続けていかないかぬと思っております。

柳澤国務大臣 おおむね財務大臣と同じ考え方です。

小泉(俊)委員 現状の一万円を容認するわけではないけれども、さまざまな要因で株価は決まるんであるから、まあいろいろ努力はするというお話だと思います。

 ただ、御案内のように、代表質問でも言わせていただきましたが、日本経済が収縮している、いまだに収縮の方向に向かってどんどん収縮しているわけですね。これは結局経済だけではなくて、要するに個人消費の六割がなぜ伸びないかといいますと、個人の心理状態自体がもう収縮してしまっている。また、企業経営者自体がそもそもマインドがどんどん収縮してしまっている。ですから、これを今おっしゃるような形で、実質、市場のことは市場に任せるような感じでは、私はやはりこれはまずいのではないか。きのうも企業経営者の方、実質に企業経営をやっている方たちがやはり皆さん異口同音におっしゃるのが、何とか、とりあえず株の下落を何らかの形でとめてほしいというのが大きな願いであります。

 そんな中で、今回もいろいろな税制の改正等ありますが、私は、いろいろな政策を、例えば過去九年間十四回やってまいりましたけれども、なぜ正面から、株価対策というとまああれでございますが、適正な水準に戻していったり、市場の活性化、それを正面から目的にして、それで全省庁がなぜその一本化の目的に向かって政策ができないのか、いつもおかしいなと思っておるんです。この辺に関して、なぜ政策の目的をそこに一本化できないのかというのをお尋ねしたいと思います。

塩川国務大臣 今お話の中にございました経済が収縮、収束しておるということでございますけれども、確かに世界的にこういう傾向に入っておって、我が国だけがひとりその被害をこうむっておるというわけじゃないんでございますけれども、その中にあって我が国の方の構造の転換がおくれたということは、これが不況を長引かせておる一つの大きい原因であろうと思っております。

 そこで、生産の面と消費の面と比べてまいりますと、消費は実態的に言ってそんなに私は収縮しておるとは思わないんです。けれども、価格の面では確かに物価が下落しております。この下落は、生産性向上によるところの下落であればいいんでございますけれども、そうではなくして主として流通関係、貿易関係から来るところの価格下落であるだけに、これに対する根本的な対策というのはなかなか講じにくいというところでございます。

 そう見ます場合に、要するに消費から見るところのスパイラルは、私はまだ現在のところはそこまで至っていないと思っております。しかし、生産の方は確かに落ち込んできておることは事実でございます。それは、新しい構造の面から来る新規技術に対する需要と生産技術から来る需要というものをもう少し振興、振るい起こしていく必要があると思っておりますが、現在、世界的にIT関連産業がいわば凋落いたしましたときでございますので、これの需要供給の調整をある程度急がなきゃならぬと思っておりまして、その時点においてまず景気は転換期に差しかかってくるのではないか、そういう予測を持って努力しておるところです。

小泉(俊)委員 今財務大臣は、消費は余り低迷していないんじゃないか、生産は低迷していると。ただ、これは生産がなぜ低迷するかというと、企業は消費が伸びないというのをわかっていますので、それで生産を控えているわけですから、やはり財務大臣の御認識は、私は、現場の認識からするとちょっと違うんじゃないか。

 先ほどお聞かせいただきたかった質問が、要するに私は、ここまで日本経済が悪くなって、ただこれを立ち直らせるのに、マイナス面の不良債権の処理も確かに必要でありますけれども、そこにばかり目が行っているといつまでたってもイタチごっこになる。どこで起爆剤とするかというと、やはり私は、株式市場の活性化を図って、それによって心理状態が活性化していく、そこに経済の活性化を見出していかないと日本経済がいつまでたってもよくならないんではないかという観点から、市場対策とか株価対策をなぜ正面から政策の目的にされないのかということをお尋ね申し上げているんですが、もう一度御答弁いただけますでしょうか。

塩川国務大臣 小泉さんがおっしゃるような趣旨で、私たちも同様でございます。それだけに、この証券に関する税制を他の税制改正と切り離して臨時国会で早急にお願いしておるところでございまして、意のあるところは酌んでいただきたいと思っております。

小泉(俊)委員 それでは、今回の改正案なんですが、今財務大臣のお話では、方向性は同じであると。確かに、今回の改正案を見ますと、例えば各種優遇措置等、内容的には別としまして、個人投資家に極力市場に参入してほしいというその思いはわかります。

 ところが他方で、これも内容についての当否はまた別の次元の問題でございますが、源泉分離の廃止の前倒しをする。どうも、片方で個人投資家を市場に参入させたいという思いと、もう一方で、個人投資家が離れるのではないかという危険があっても、要はこれは税を何とか確保したい。主税局は大体、いかにして税金を取るかとしか考えていないように私は常々思うんですが、その二つの目的が、違う方向の目的が改正案の中に入ってしまって、どうも足して二で割ったような改正案のように感じるんですが、その辺についてはいかがでございましょうか。

塩川国務大臣 源泉を中止したということに対して、非常に株を買いにくくした、大衆離れを促進する、こういう御質問でございますが、確かにその一面はあると思っております。

 けれども、一方から見まして、源泉を希望される方々、その方々はどちらかというたら定期取引というのをやっておられる方でございまして、この定期取引の中で、現在日本の市場を見ました場合、いわば株式の貸借でございますが、株式貸借の面について、これはもう少し透明にして、また貸借の実態の姿がわかるようにすべきではないか。この貸借関係にどうも一般大衆の方々が、どう動いているかわからぬ、そういういわば透明性の欠如というものはある。

 そういたしますと、定期売買の方々よりも、むしろ一般に株式を保有してくれるお客さんといいましょうか投資家、これを育成すべきであるという観念に立ちまして、今回の税制は、そういう株を保有してくれる方に重点を置きました。したがって、趣旨の中にも申しましたように、透明性と公平性を確保することを目的にしておるということがねらいでございますので、そこらは理解していただきたいと思っております。

 それともう一つ、保有につきましても、私はできるだけ長期に保有していただくという考え方をとりまして、新たに特別の優遇税制を導入したということでございます。

小泉(俊)委員 非常に説明はわかるのですが、私が申し上げたいのは、改正の目的の中に、どうも目的の二重性とか不明確性があるんじゃないかということなのです。

 要するに、政策の目標は常に一つの目標に限定して、そこに政策の目的を集中していなければ、結果として、過去九年に十四回も経済対策をやってまいりました。しかし世界の、先ほど大臣はどこも収縮していると言いましたが、少なくとも十年間ずっと悪かったのは日本なんですよね。ここでまた米国テロで、より一層、非常に危険性が高まっている。その中でこそ、やはり危機的な状況であることを認識すれば認識するほど、目的を一本化して、そこにすべての政策を集中していかないと、この難局を乗り切れないんではないか。

 ですから、今回の改正案に関しましては、一方では、大臣おっしゃるように、市場の活性化というか個人株主の参入をやっておきながら、もう片方では税をいかにして取るかという、目的の二重性があるということで、政策効果が私は、これを導入したとしても、非常に相殺されてしまってその効果が出ないんではないかということを感じているんですが、この辺に関しましてはいかがでございましょうか。

塩川国務大臣 確かに、源泉制を廃止したということは、おっしゃるような理論も成り立つと思うんでございますが、私は、先ほど冒頭に申しましたように、源泉を選択されている方は定期取引の方が多いのであります。したがいまして、むしろ定期取引をしている方々にセーフティーネットを与える方が、より安全で、そして公正な取引がしてもらえるであろうと思いまして、その意味において繰越損失、損失のプール制を導入した。これを導入することによりまして、源泉制で取引しておる方々に対する一方の保護といいましょうか、それを誘導してきたということでございます。

小泉(俊)委員 一応そういうお答えをいただいておりますが、私、政治というのは結果責任だと思います。何度も言いますけれども、過去九年間に十四回やっておきながら結果がなかなか出ない。先ほど申し上げましたように、現実の経営者のお話を聞くと、高いところに上っても、飛びおりることすらもう怖くなくなってしまうんだと。今まで与党を支持してきた経済団体の皆さんが、本当に何とかしてほしいという悲鳴のような状態になっているんですね。ということは、今までの政策が結果として私は十分機能してこなかったと評価しております。

 その中で、それではそういう今回の、さまざまな改正をされますけれども、私はこの政策によって結果が出なかった場合の、余りにも今までの政策というのは、先ほど私が言っているように目的がいつも非常に不明確なんですよね。不明確とはどういうことかというと、結果が出なくてもだれも責任をとらないんですね。結局だれも責任をとらずに、毎年三万三千人も死んで、この半年だけでも一万五千人も死んでいるんですよ。

 ですから、もし今回のそういう、確かに理論的には財務大臣がおっしゃっているようなことで、定期売買から保有へという流れをつくりたい、それはわかります。しかし、その結果がもし出なかった場合の責任はどうおとりになられるのかをお聞かせいただきたいと思います。だれがどういう責任をおとりになるのか。

塩川国務大臣 今回の税制改正、証券に関するもの、私は来年すぐに結果が出てくるものではないと思っております。御存じのように、十四年末をもって一つの区切りになって源泉と申告と一本になるということでございますし、それから特別優遇の方も、十四年度に購入した株、それが二年間保有でございます、三年先になりまして平成十七年に出てくる。したがって、今回のこの改正は、いわば中期的にその結果が出てくるものでございまして、まだ何とも予測するものじゃございませんけれども、しかし、少なくとも一般の投資家、国民の投資家、特に小口の投資家は、株の方、株式保有の方に目を向けてくれることは確かであろうと思っておりまして、私の方の役所で調査いたしましても、非常に関心度が高いということが出ておりますので、期待しております。

 ただ、ここで問題は、税制改正だけによっての期待だけではできないので、やはり配当するということがもう一番根本的な、いわば株式優遇の措置でございますので、企業、会社が配当できるような経済環境に持っていくということが絶対的な使命であろうと思っております。

小泉(俊)委員 いろいろ中長期的にかかるというお話でございますが、行政は継続性でありますので、結果が出た時点できちっと責任者が責任をとるということをお願いして、また次に移ります。

 先ほど財務大臣おっしゃっておりますように、個人に市場に参加していただく、これが何しろ一番大切なことだと思います。

 その中で、これも内容の是非とは別でございますが、ドイツ等において行われている非課税制度、これについてはどういう評価が省内で行われたのかということを大臣にお尋ねいたします。

村上副大臣 今小泉委員が言っているのは、ドイツの証券税制で個人の譲渡益課税についてはないのではないかと言っているんですけれども、実はこれは一九二〇年代からずっと行っておりまして、投機売買等の一定の場合を除いて非課税とされておって、実はリーセントリーというか、最近行われたものではないのであります。また、反復的な、継続的な利得のみを所得としてとらえるという制限的所得概念の影響によるものだと考えておりまして、政策的に株式投資を優遇したものではない、そういうふうに我々は考えております。

小泉(俊)委員 時間がありませんので、次に移ります。

 株式市場の活性化を図る。何しろ適正な株価水準まで持っていって、少なくとも日本経済を活性化するということと、個人も経営者も幾らかでも精神的に前向きに経済活動ができるようにするためには、やはり市場の活性化が最重要で、そのためには、一千四百兆円も国民金融資産を持っている、過半を占めると言われております高齢者層の市場参加を促さなければ、やはりなかなか本当の意味での市場の活性はしないと私は思うんでございます。

 その中で、前もお尋ねしましたときに財務大臣がおっしゃられました、証券に関する相続税を一定額非課税にするとか、土地等についても行われておりますが、大幅な評価減をすることによってやはり高齢者層の保有を促していくということ、確かに一つの方法だと思うのですが、これに関しまして、実は本会議でもお答えいただこうと思ったんですけれどもお言葉がなかったものですから、その後どういうようなお考えで、なおかつ、これは具体的なお話なのかどうかを、ぜひとも財務大臣にお聞かせいただきたいと思います。

塩川国務大臣 それは私の個人の持論でございまして、できればその実現を図りたいと思って、努力を重ねていきたいと思っております。

 今、日本人の財産観というものは、専ら土地、不動産でございますね。嫁にやるときにも、婿の主人はどのぐらいの不動産を持っておるかとか、あるいは企業を経営しておりましても、その会社でどれだけの不動産を持っておるか、それが企業力になってきますね。私は、余りにも土地にというか不動産、特に土地に財産観の重点を置き過ぎておると思っております。

 したがって、これからの財産の保有というものは、不動産も必要でございましょう。しかしながら、また一方において有価証券、流動性のある有価証券、一方においては生活を豊かにする美術だとか宝石だとか、そういうバランスのあった財産を保有すべきだと思っております。

 そういう考えを私は前から持っておるんですが、その観点から見ましたら、税制においては、土地、不動産には非常に優遇されております。特に農地等においては非常に優遇されておりますけれども、一方、中小企業の持っております有価証券、あるいは個人が持っております有価証券というものに対しては、余りにも評価が厳格過ぎておると思っておりまして、そこで、不動産並みに有価証券というものを流動化できやすいようにして、しかも財産としての保有を維持していくためにこれを保護していくにはどういうふうな状態がいいだろうかということを私は前から実は関心を持って勉強しております。

 そのためには、土地と同じようにまず相続財産の面からこれを優遇してやるということを考えたらどうだろうと。そうしますと、相続財産で税の計算が非常に複雑だとかいろいろ言われますけれども、単純にいたしまして、被相続人が長年にわたって持っておる有価証券、特に株式とかいうようなもの、あるいは国債もそうだと思うんでございますが、そういうものは、ある程度個人が持っておったいわば財産なんだという考え方で見てやればかなりな優遇も考えられるんではないか。その中身はまだちょっとやっていないんですけれども、そんなことを思うておるところなんです。

小泉(俊)委員 私も、株式市場活性化をして適正な水準まで株価を戻していくためには、やはり資産としての株の持つ、ストックとして、資産面の持っている意味をもっと重視して、そこに誘導していくような政策がどうしても必要になってくると思います。

 その意味では、今、大臣の御発言は国家意思の表明でございますので、ぜひとも何らかの形で、それでツーリトル・ツーレートにならないように、常にここに一年四カ月いて思うんでございますが、政策が出てくるときにはもうその政策を立案したときの状況と全く違っちゃうんですね、半年とかずれますと。また一年もずれると大分変わりますので、やはり機を見て敏というのが一番大切でございますので、ぜひともそれは財務大臣、具体的なお話として進めていただければと、これはもう私も個人的にそう思います。

 あと、保有を強化するという意味では、やはりもう一つぜひともお答えいただきたいのは、株式配当課税を優遇することも非常に大きな効果があるのではないか。現時点で、今でも、日本は株式の配当悪いと言っていますけれども、いいところであれば二%から五%で年間回るぐらいの株式は十分あるわけですよね。

 こういった株式配当に関する優遇を盛っていくことによって、保有に対する、特に一千四百兆円の過半を占める高齢者の方たちに長期的に保有してもらうというんであれば、そういった方向が一つあると思うんです。ところが、何か現実を見ますと、十万円と五十万円未満と五十万円超でこれは税率が違っていたり、かなり複雑になっておりますので、この辺に関しましては財務大臣、どのようにお考えでございましょうか。

塩川国務大臣 これは非常に重要な問題で、絶えず検討されてきておる長い歴史がございます。いずれ結論を出さなきゃならぬと思うんでございますけれども、しかしこれは単純に税だけの問題ではなくて国庫収入の問題もございますので、そういうようなものも複合的に考えまして、なお一層進めていきたいと思っております。

小泉(俊)委員 大臣、何度も申し上げますけれども急いでやらなければ、もう既にほとんどの、死屍累々という、ことしの年末から来年三月期にかけましてこれはますます大変な状況になるのではないかということが、実質的な、これは企業経営者の皆さんと話をしますと、大企業だろうが中小企業だろうが商店主であろうとほとんど同じ認識なんですね。

 ただ、委員会におきましての官僚の方たちとお話をしたり、また大臣の方たちの御答弁を聞いていますと、どうも切迫した危機感が私は感じられないように思います。やはり政策はそんなゆったりしていたのでは、みんな死んでしまうのですね。ですから、先ほど申し上げましたように、目的を一本化したんであれば、すべての政策を総合的にその目的に向かって一本化していただかないと、これは大変な問題になると思います。

 そういった意味で、確かに過去のいろいろなあれはあると思いますけれども、現実をぜひとも見ていただいて、十年後の水よりもやはりここ短期をどうするかということも、もちろん中長期的なあれは必要でございますが、短期もぜひとも見ていただいて素早い政策の実現をお願いしたいということをお願いしまして、最後に財務大臣のお言葉をいただいて、質問を終わりにしたいと思います。

塩川国務大臣 御趣旨を体して、今後とも一層努力いたします。

小泉(俊)委員 質問を終わります。

山口委員長 次に、長妻昭君。

長妻委員 民主党の長妻でございます。よろしくお願いいたします。

 時間がありませんので、端的に両大臣の方から御答弁をいただきたいとお願いを申し上げます。

 まず、塩川財務大臣が十月の二十九日、大阪で記者会見されて、ことしの国債発行の枠三十兆円の問題について御発言をされておられます。私は久々に国家の意思、国の意思というのを感じた発言だというふうに感じました。

 塩川大臣の発言というのは、「国内的な需要の問題で「国債三十兆円枠」を変更したら小泉政権の崩壊につながる」、「変更したら小泉政権は改革をあきらめたということになる」と、非常に強い決意で三十兆円の枠の堅持というのを言われておられます。テロが米国で起こったりいろいろありましたから、それは変更をしたとしても国民の皆さんからそれほどの異論というのは出なかったと思うのですが、にもかかわらずきちっと原理原則を守る、こういう理念をきちんと掲げる国家の意思というのを久々に感じたということであります。

 ただ、ここまで大見えを切った、世界のマーケットにもこのメッセージが強く日本という国の意思として好意的に受け取られていると私は思いますので、これをぜひ体を張ってでも塩川大臣に私は堅持をしていただきたい。逆に言いますと、これがいろいろな大合唱で崩れるということがあれば、塩川大臣は責任をとるというぐらいの強い決意でこの理念、国家の意思というのをぜひ実現をしていただきたいと思うのですが、そこら辺の、責任をとってでも体を張ってでもこれを堅持するというのを、ぜひもう一度御意思をお示しいただきたいと思います。

塩川国務大臣 私は、心情的にまさにそのとおりであります。

長妻委員 次に、証券税制の問題でございますけれども、やはりこの国会という場は、哲学といいますかそういうものを大臣と闘わさせていただく、そういう場でもあると思っておりまして、一つのいいテーマだと思うのです。大変重要な問題でもあると思います。

 私は、マーケット、市場というのは、特に株式市場というのは、リスクをプレーヤーはみんなとって活動しておりますので、純粋に何にも、できるだけプレーヤーが自由にプレーできるような環境を整えていく、これのインフラを整備するのが政治の最大の役割だというふうに感じております。

 今回出てきた証券市場を活性化しようという意図はよくわかるのでございますが、特に緊急投資優遇というところで、購入が平成十四年だ、売却は十七年から十九年の三カ年に限る、購入価格が一千万までの譲渡益が非課税、こういうような時限的措置といいますか、期限を区切ったものというのは、ある意味ではリスクをとる投資家が、固まりが、また市場の原理とは別の形で動いてしまうということで、これは弊害が私は大きいと思うのでございます。市場というのはできるだけというか基本的には完全にこういう時限的措置を排除するべきだというふうに考えておるわけでありますけれども、そこら辺の哲学を塩川大臣からお伺いできればと思います。

塩川国務大臣 それは無制限に、そういう取り決めをせずして制度を発足さすということはいいと思うのですが、しかしそれは、一面からいいましたら制度にはならないのです。ですから、むしろけじめをつけたことをして、その結果を一応見て、プラン・ドゥー・シーとよく言いますが、一つのプランを持ってそれを実行してみる。そして、証券優遇ということがどのような結果に出てくるか。私は、そもそも証券対策というのは、税はある程度大きいウエートを占めますけれども、根本的にはやはり企業の努力であり、証券会社の努力であると思うんです。税制というのは補完的なものでございますから、補完的なものを無制限に放置しておくということは、これはよくないと思います。

 したがって、過去におきますところの証券に関する税制というものは、ほとんどやはりすべてのものが大体期限をつけて、そしてそれを延長すべきか、あるいはここで廃止すべきかということはそのときそのときの期限の到来で検討しておるというのが大体の習慣であるように思いますが、私は、特に証券、流動資産のインセンティブというものはそういう性格のものでいいのではないか。あくまでも株価の上昇、そして株の安定というようなものは、それはやはり発行しております企業の責任、これがあり、そしてそれを媒介しております流通の証券会社あるいは銀行等の責任というもの、これがもっともっと多く背負っていくべきであるのにかかわらず、税にのみ責任を負わせていくという考え方、そのことはやはり国民的な関心の中で見てもらいたいと思っております。

長妻委員 であれば、やはりこれは財務大臣という総理に次ぐ国の最高責任者であるわけでございますので、やはり市場、マーケット、特に証券市場ということに関しましては、基本的にこういうことは絶対に私はやめていただきたいというふうに、見解が違うということでございますけれども、ぜひこれを削除していただきたい。これが、やはりこういう哲学の話をもっともっと国会で詰めていく必要が私はあると思います。

 時間の関係で次に移ります。

 これは柳澤金融担当大臣にお尋ねをさせていただくのですが、昨日、今話題の森金融庁長官が十七時一分から十七時四十二分、金融庁の会見室で記者会見をされて、議事録が今あります。

 これは朝日新聞のまとめた議事録でございまして、これは今朝日新聞のサービスで有料で流れている議事録でございます。その中で、記者が森長官にこういう質問をしています。「まず個別の企業をですね、融資姿勢に問題があるというときに、例示するということがあり得るのかどうかということ」をお尋ねする、こういう質問を新聞記者が森長官にした。森長官の回答は「私の通常の行政手法からして、そういう例示することはあると思います」と。「一般論ですけど、どっかの金融機関が貸し渋るとですね、どうしても協調金融機関のほうにその肩がわりがいくわけでして、他の協調金融機関のほうから、個別の話も玄関のほうには入ってきます。そういうものは私どもにも上がってきて、ですからそういうことから、その時点においては、今、何も企業名などは頭の中にはないんですけども、例示したということは、それはあるかもしれません」こういう話を会見で言っております。

 先ほどこの委員会で、きょう、柳澤大臣は、森長官のこういう発言はあり得ないし、あってはならないという御答弁をされたと思うんですが、どういう処分をされますか。

柳澤国務大臣 先ほども、あり得るというふうに申し上げたのです。というのは、そこでちょっと言葉遣いがあれなんですが、経営の姿勢と個別の経営判断、経営と言っていいのかどうか個別の判断ですね、個別の判断と一般的な経営姿勢、経営方針の問題とを分けて考えていきたいのでございますけれども、要するに個別の融資、この企業に融資をするかしないかというようなことについて行政庁がとやかく言ったって、責任のとりようがないわけでございます。(長妻委員「これは言っているんです」と呼ぶ)いや、ところが、経営の姿勢、例えば、何というのですか、今一般に指摘をされた銀行について、貸しはがしだとか融資を借りかえをさせないとかというようなこと、これは一般の経営姿勢の問題で個別の経営判断の問題じゃないのですが、そういう経営姿勢の問題を、こういうことがあるというふうなことが上がっていますよ、我々の耳にはよく聞こえますよというときに、その話の説得力を持たせるために、こういう話も聞いていますというようなことで例に挙げるということは、それは十分あり得ると私は思うわけでございます。

 ただし、この企業に対して借りかえを認めなさいよ、あなた何しているんですかなんて、そんなことを言うことは、仮にやっても、では、それが焦げついたら責任とれるか、とれません。そんなこと行政ができるわけがないというのが我々行政に携わる者のいわばコモンセンスだというふうに思って先ほど申したのでございます。

長妻委員 ここで、だから、先ほどこの委員会の議事録、また取り寄せればわかりますけれども、柳澤金融担当大臣は、森長官はこういうことは言うことはあり得ないし、あってはならないという御答弁をされているわけでございますから、今、使い分けの何か答弁をされて、具体的な企業名を出す場合ありますよ、それはあっていいと私は思いますよ。ただ、その具体的企業名を出して、借りかえとか融資姿勢を個別に言うということが問題だということで言っているんですけれども、この会見の内容というのは、報告が上がっていますか。

柳澤国務大臣 実は、森長官が会見されますと、いつでも私の未済の箱の中には、議事録じゃなくて、何というのですか、記録が上がっておりますが、私は、見るときと見ないときがありまして、この本件、きのうの会見については私まだ読んでおりませんけれども、一般論として、我々は、個別の融資判断というのでしょうかそういうものと、一般的な経営姿勢の問題というのは分けて話をするというのがいわば共通の理解になっていまして、一般的なその方針について言うときに、例として個別の企業名を挙げるということは十分あり得るということを申し上げ、それでまた、他方、個別の融資判断について個別の企業名を挙げてやるということはあってはならない、こう思っているわけです。

長妻委員 個別の融資判断について個別の企業名を挙げて言うことはあってはならないと今答弁の最後に言われましたけれども、もしそういうことがあれば、必ず森長官を処分してくださいね。国会の発言というのは大変重いわけでありますから。そういうようなことを言っているんですよ、これは。ぜひ確認をいただいて、こういう、きのう記者会見やったことで、国会で三時間もとまった問題に関して、議事録まだ見ていない、こういう姿勢も非常に問題だと私は思いますので、徹底的に調査をぜひしていただきたいと思います。

 そしてもう一つ、質問の角度を変えますけれども、この四社というのが、これ、メールは全部流出したのは英文で出ているんです。八城社長も、自分が書いたメールも出た、文法がちょっと間違っているのも、ウォールストリート・ジャーナルは文法が直ってきれいにちゃんと載っていたなどということを言っているぐらいですから、かなり信憑性の高い記事なんですよ。

 それで、この四社というのが、私は、既に四社という名前を出してこういうことを言うのは問題だと思うんですが、この四社が大企業だった場合はもっと問題だと思うんです。今、この新生銀行に対しては中小企業の貸出枠をふやせと改善命令みたいのが出ていますけれども、中小企業ならいいというわけではありませんけれども、そういう一つの例示ということは森長官が口が滑ったということはあるのかどうか知りませんけれども、四社が大企業であれば全然関係のない話でありますから、この四社というのが大企業なのか大企業ではないのか、中小企業なのか、健全化計画で資本金がちゃんと決められていますけれども、それだけは調査してお答えいただきたいと思うのですが、いかがですか。

柳澤国務大臣 先ほどの御質問を先にちょっと申しますと、今ここに森長官の会見の模様がありますが、何度も申したように、特定の企業に貸し続けろとか、回収するななんて言うはずはありません、これが森長官の記者の質問に対するお言葉ですので、私が先ほど来申していることと軌を一にする表現だ、このように思います。

 それから、四社が大企業か中小企業かということについて話をしろ、調べろ、こういうことでございますが、まず、調べることは調べますけれども、ここで申し上げるべきことなのかどうかについて、私が今ここで確答を申し上げるだけの、そういうことを行えるという確信がないわけでございます。

長妻委員 個別名を挙げろと言っているわけではなくて、今調べることは調べるというふうにおっしゃられましたから。この四社の中にマイカルが入っているかもしれないということも言う人がいるのですよ。マイカルがこの四社の中に入っていると言う人もいるわけですから、別に個別名ではないのですから、今調べることは調べると言われましたから、ぜひ、委員長、それを後日、調べて提出するようにちょっと言っていただけますか。

山口委員長 調べると答弁していますので、また聞いていただいたら出てくると思います。

長妻委員 今委員長から、調べる、そしてここに、この委員会で公表するということですから、当然、委員長が言っているわけですから、そうでございますね、そういうことでいいですね。

山口委員長 調べるというふうな答弁がありましたので、そういうことだと思います。

 では、柳澤金融担当大臣。

柳澤国務大臣 個別の問題になるとこのように次々、今先生はマイカルのことまでおっしゃいましたけれども、そういう次々に憶測をたくましくするということが非常に出て、次から次へと風評というものが拡大していくということは、金融行政の場合にはあってはならないと私は思っております。

 そういう意味で、森長官がどういうことをおっしゃったか、あるいは、仮に森長官が個別の企業名を言ったということであれば、それが中小企業か大企業か、それは調べるというか聞くのはやぶさかでありませんけれども、聞いて、その結果をどういうことにせよ報告をしたら、では大企業だと言えば、マイカルか、こういうふうな話になって、際限がない話だと私は思う。では、マイカル以外の大企業なんというような言い方をすれば御満足なのか。そういうことは行政当局の、経営方針について例を挙げて言うこともあると。森長官が例を挙げたと言っているわけではないのですよ。挙げて言うこともあり得るということを私は申し上げていて、それについては今、先ほど先生もそれはあるだろうというふうな御発言をいただいたわけですけれども。要するに、常識の話として私は、ただし、この企業に貸せとか借りかえを許すなとか、そういう個別の融資判断に介入するということはありません。何回言ってもない。あるわけがない。

山口委員長 調べるというふうなことは今大臣の方から答弁がありました。その中身についてどうするかということは、これは質問者と答弁者でもう少し詰めていただきたいと思います。

長妻委員 では、結果をぜひ報告していただきたいということをお願い申し上げます。

 そして、再度申し上げますけれども、先ほど前段で言われたこの議事録をよくもう一回見ていただいて、私が申し上げた部分もございますので、森長官にきちんと聞いていただいて、今柳澤大臣が御答弁で、あるはずがないということと違う行動を森長官がしておりましたときには、ちゃんとここで御報告をいただきたいということを一言お願い申し上げます。

柳澤国務大臣 森長官の御自身の言葉の記録ですが、何度も申したように、特定の企業に貸し続けろとか、回収するななんて言うはずはありませんということでございます。

長妻委員 直接確認をしてください。この議事録だけですからね。私が言ったこともありますから、ここの場で報告をしてください。森長官に直接聞いて、この紙っぺらで見て今言うのではなくて、森長官に直接聞いて、御報告してください。(柳澤国務大臣「何。何を」と呼ぶ。)だから、「融資姿勢に問題があるというときに、例示するということがあり得るのかどうか」というふうに記者が聞いておりますけれども、そのときに森長官は「私の通常の行政手法からして、そういう例示することはあると思います」質問はあれですよ、個別の企業を、融資姿勢に問題があるというときに、例示するということがあり得るのかどうか。「融資姿勢に問題があるというときに」とついているのですから、直接森長官に聞いていただいて、ここで御報告をいただきたいということです。

柳澤国務大臣 その記録がどういうふうになっているか、私もそれを持っていませんから、ここで答えられませんけれども、要するに、融資姿勢というのと個別の融資判断というのは、截然と分かれた言葉遣いになっているのではないでしょうか。

 そうすると、融資姿勢について言うということについて、例を挙げるというのは、まさにそのことなのです。一般的な融資の姿勢、一般的な方針、これについて個別の企業を例として挙げることがあるかといったら、例として挙げることはあり得ると森が答えているというのは、今先生のお読みになられた記録の趣旨だろうと私は思うのでございます。

 そうして、個別の企業に対する融資判断、これについては、私がここで持っているように、特定の企業に貸し続けろとか回収するななんて言うはずはありません、もう全く私の答弁と同じ内容だというふうに私は考えております。

長妻委員 そこのペーパーが、朝日新聞が出している議事録をぜひお読みいただきたいと思います。違うことが書いてありますから。ぜひそれで調査していただきたいと思います。

 ちょっと次の質問に、時間もないので移ります。

 塩川大臣、二十九日の大阪での記者会見で、もう一つ重要なことを言われていると思うのですが、不良債権の問題で、塩川大臣御自身の一つの私案というか、案みたいなお話をされて、細かいところは別として、方向性は共感できるものがあるわけでありますが、この案を金融庁、柳澤金融担当大臣に示して、どうだというふうにお話はされましたですか。

塩川国務大臣 所管が違いますから、言っておりません。

長妻委員 所管は違うから言っておりませんというお言葉でありますけれども、経済財政諮問会議で、今不良債権というのは非常に大きな問題となっております。その中の主要メンバーでありますので、ぜひ皆さんの知恵を出し合ってこういう議論をするということが必要だと思いますので、そういう私案を出されたからには、私も共感する部分があると申し上げておりますので、金融庁の責任者、金融行政の責任者である柳澤大臣にもぜひ申し伝えていただきたいというふうにお願いを申し上げます。

 そしてもう一つ、塩川大臣の私案にも関連するのでございますが、一つ問題となるのが、実質債務超過企業というのがあって、それが要注意先に分類されている、こういうところに一つの問題があるのではないか。当然、すべて問題があるというわけではなくて、一年くらいの実質債務超過という企業もありましょうし、あるいは再建計画がきちっと本当に立っている、そういう実質債務超過もありましょう。これは要注意に分類されてもいいと思うのですが、ただ、その再建計画が非常にずさんにもかかわらず実質債務超過で要注意に分類されているというような企業が、私は最大の問題じゃないかというふうに考えておるのです。例えば、融資残高が百億円以上で、実質債務超過企業で、かつ要注意先に分類されている、こういうような企業はどのくらいあるのかというような、企業の数についてのお答えはいただけないでしょうか、柳澤大臣。

柳澤国務大臣 金融検査マニュアルを読んでいただきますとわかるのですけれども、再建計画の評価については、五年以内だったら、実現合理性をもちろん考えてですけれども、要注意先に区分してよろしい、それから、十年だったら、それはすぐにその実現可能性というものを判断するのじゃなくて、二、三年の実績を見て実現可能性を判断してあげてよろしい、こういうのが、私、今記憶ですからあれですが、大体の検査マニュアルの言っているところであるというふうに思います。

 今、先生、企業の数がわからないかとおっしゃったのですけれども、検査の人たちというのは、今私が例えば述べたようなそういうものを正確に手続を踏んで区分をしているか、検査マニュアルに照らして適正な処理をしているかということを検査して、それでよければいいということを言うので、今先生がおっしゃられるような問題意識で、これは実質債務超過だけれども、再建計画の状況によって上がった、上がらないなんというようなことで、そういう視点から統計をとるというようなことはしていないというふうに聞いております。

長妻委員 ぜひ、そういう統計もとっていただければ貴重な資料になると思いますので、よろしくお願いします。

 そして、もう一点でございますけれども、今のに関連いたしまして、特別検査というのが先週ぐらいから入っているというふうに聞いておりますけれども、その実質債務超過企業で要注意先に分類されている、それは再建計画があるから要注意先になっているというようなところの再建計画を、ぜひ特別検査で特に注意をして見ていただきたいというふうにお願いをするのですが、それはいかがでございますか。

柳澤国務大臣 ちょっと、対象企業の選定基準にわたるような話なものですから、今の先生のサジェスチョンでも、そのことずばりについて、私、お答えするのはやはり差し控えたい、こういうように思います。

 ただ、ちょっとつけ加えさせていただきますと、先ほども言ったように、再建計画については実現可能性ということが一番のポイントでございますけれども、その実現可能性というものがちゃんと確認できるというか、そういう蓋然性が高いということが確認できるというものの場合でも、五年以内の計画でないとそうならない。それから、それをオーバーするものについては、多分三年間ぐらいと聞いておりますけれども、三年間ぐらいの実績を見て、その実現可能性の蓋然性というものを判断してそういうことを認めるかどうかを決めておる、こういうことでございまして、現検査もかなり厳格に行われているということを申し添えたいと存じます。

長妻委員 ぜひ特別検査では、そこの計画がきちんとなされていないにもかかわらず要注意先に分類されている企業があるかないかというのも、より厳格に見ていただきたいということをお願い申し上げます。

 そして、もう一点でございますけれども、その特別検査でありますが、森長官が言われておりますのが、中間期決算にこの先週入った特別検査の結果を反映させるのかというようなことに関して、森長官としては、検査結果全部はちょっと反映するのは難しいけれども、特別検査結果の一部は中間期決算に反映される、こう会見で言われておりますけれども、その特別検査の結果の一部は中間期決算に反映されるの一部というのは、具体的にはどういうことでありましょうか。何行かある銀行のうちの数行には中間期決算で反映される、そういう一部という意味でございますか。

柳澤国務大臣 特別検査に入って、検査官の方の問題意識というか、提起している、まあ問題意識でしょうか、そういうようなもので、これはこうではないのだろうかというふうに言ったときに、ああ、そう言われればそうですねということで話が非常に早くついちゃうというようなものについては、それではあなた、中間決算の段階からそういうふうにしてくださいというものがあり得るということを言ったのではないかというふうに、私は今の先生の森長官のお話を聞いておって、また日ごろ私と長官とのいろいろな打ち合わせの機会に私どもが話していることから推測をしますと、そういうことだというふうに考えます。

長妻委員 何か、これまでも柳澤担当大臣の御答弁を聞いておりますと、森長官を推定で、森長官は多分こういう話をしているのじゃないかという、だから、ぜひ森長官に一度ここに来ていただいていろいろお話をお伺いしたいということでございますが、せっかく特別検査を、来年入ると言っていたのを今月というか先週入った、先倒ししたわけですから、ぜひ中間期決算に全部反映するようなつもりでというか、そういうことでぜひ取り組んでいただきたいと思います。

 そして、最後に一点でございますが、先ほどの冒頭で問題提起をさせていただきました、その四社というのが大企業なのか、健全化法に言う中小企業、中堅企業なのか、どちらなのかぐらいは、これによって全然その発言の内容というのがまた違ってくると思いますので、それだけはぜひこの委員会で調べて御報告をいただくということをお約束いただきたいと思います。

柳澤国務大臣 まず、本人が個別企業を言ったということでないと話が前に進まないわけでございますが、あり得るということ、例として言うことは自分の行政手法からいってあり得るということなので、本件について言ったと言っているわけでは必ずしもないのでございます。

 それからまた、憶測を呼ぶというのは、金融行政の場合には非常にいい結果を私は生まないと思います。ですから、しょっちゅう話をしている長官でございますから、そのぐらいのことを聞くのは何にも難しいことではないと私は思うのですけれども、その私が聞いたことをまた外部に対して伝えるということがどういうことになるのかということ、ちょっと私は今にわかに判断しかねます。ですから、ここを外部、庁以外は外部と言わせていただければ、外部について伝えるということについては、ちょっと結論を待たせていただきたい、こう思います。

長妻委員 ぜひそれは、もしこのウォールストリート・ジャーナルの記事が間違っているのであれば、金融庁や政府が大変屈辱的な扱いを受けている、日本という国がもっと国として誇りを持っていただきたいと思うのです。

 ぜひそのぐらいはきちんと調べていただきたい、報告をいただきたいということをお願い申し上げまして、質問を終了します。ありがとうございました。

山口委員長 次に、中塚一宏君。

中塚委員 自由党の中塚でございます。

 証券税制改革ということで、中身は減税法案ということなんでしょう。

 証券税制の改革の目的ということで、もうずっと言われていることですけれども、間接金融から直接金融ということとか、あと、貯蓄よりも投資を優遇していかなきゃいかぬ、そういうトレンドの中で税制改正をしていくんだというようなことはもうずっとずっと言われてきたことなんですけれども、こうやってまた年度中に制度改正、年度の制度の改正が終わってからこれで二回目なわけですね。一回目が、さきに通常国会で百万円の特別控除というのをつくりまして、今回はまたこういうことで、臨時国会で証券税制の改正をするということになっていて、やはりそういう意味でいくと、表向きのスローガンは、間接金融から直接金融とか、貯蓄から投資とか、すごく、全くもってそのとおりのことなわけですけれども、実際問題、やっていることというのは、いかにもその場しのぎ的なことになっちゃっている。

 そもそも、今から二年前の税制改正で、有取税を廃止する、そのかわりに二〇〇一年四月から申告分離に一本化するということが決まっていたわけですよね。それを、申告分離方式は面倒くさい、源泉分離を残した方がいいということになって、去年の末、二年間この源泉分離課税を存続させよう、延長させようということが決まって、それが決まってことしの通常国会で百万円の特別控除をつくる。そして今回またこうやって申告分離に、将来のことですけれども一本化して、今度税率も下げるというふうなことになっているわけですね。

 やはりこういう一連の流れを見ていますと、いかにも本当に、その考え方もさることながら、その場しのぎ的な手法になっているんじゃないかなというふうに思いますし、特にまたこれが租税特別措置ということで盛り込まれているわけですね。

 やはり望ましい税制の姿というのをちゃんと示すということでいきますと、この租税特別措置をもってこういった譲渡益課税を変えていくということは、かえって投資家にはいいサインを送らないことになるんじゃないかというふうに思うのですが、財務大臣、いかがでしょう。

    〔委員長退席、佐藤(剛)委員長代理着席〕

村上副大臣 中塚委員の非常にテクニカルの問題なので、説明するのも非常にちょっと大変なところがあるのですけれども。

 現行株式等の譲渡益に対する申告分離課税と源泉分離課税との選択制度は、御高承のように、平成元年に、株式等の譲渡益を原則非課税から原則課税に改めた際にとられたものであります。これは当時、有価証券取引及びこれにかかわる譲渡益を把握する仕組みが十分整備されないまま総合課税に移行した場合には、かえって実質的な公平確保の面で問題があるというふうに考え、当面の措置とされたわけです。その際、本来総合課税方式を前提として、当分の間、株式等譲渡益にかかわる税額計算を特例として租税特別措置法に規定されたところであります。

 今回の改正は、現行の選択制を改めて、申告分離課税への一本化を行うとともに、譲渡損失の繰越控除制度の導入などの措置を講ずるものでありますけれども、譲渡所得に対する総合課税方式の特例であるという位置づけは変わらない、そういうふうに考えております。

中塚委員 というわけで、やはり本則総合課税なわけですよね。

 ということは、どうなんですか、将来は総合課税の方向へ行くということですか。

村上副大臣 それについては、今後総合的にどうするか、やはりじっくり考えていきたいと考えております。

中塚委員 というわけで、やはり本則総合課税なんだけれども、それの特例で申告分離というやり方自体がマーケットあるいは投資家に対していいサインを送っていないのではないかというふうに私は考えているわけです。

 だからこそ、この租税特別措置で、しかも今回の改正は税率を下げるとかいうこと、また、繰り越しを認めるということ以外に非課税をつくってみたりとか、そういったことも書いてあるわけですから、やはりどう見たって時限措置なんだな、短期的な景気対策というか株価対策というふうに見えてしまうわけですよね。

 それは、おつくりになった方の意図がどこにあるかは別にしても、そのように見えてしまうというところがあるものですから、やはりそういった意味で、租税特別措置ではなくちゃんと本則で、それこそ総合課税が原則ということではなくて、もう申告分離でずっといくのかどうかということもちゃんと根本から、そもそもから議論をするようにしていかないと、本当の意味での証券市場の活性化ということにはつながっていかないんだろうというふうに私は思います。

 それで、証券投資を優遇するということなわけですけれども、二六%が二〇%になったと、なったというか、これからなるわけですね。ただ、なるということが、では果たして優遇なのかね、この優遇で十分なのかねという問題はあるんだろうというふうに思っています。

 特に具体的には、やはり預金と比べましても、預金の利子というのは、もう確定申告も要らない源泉分離課税ということになっているわけですね。ところが、株式の譲渡益については、これはもう申告分離に一本化をしていくということで、しかも税率が同じなわけですね。これでは、優遇をしたとはいうものの、ちょっと優遇の仕方が足りないんじゃないか、不十分じゃないかというふうに思うわけですが、財務大臣、いかがでしょう。

村上副大臣 そこら辺はちょっと価値観がいろいろあると思うのですけれども、現行の源泉分離選択課税方式については、諸外国に例のないみなし利益に課税するものであって、所得課税としてふさわしくないと考えておりますし、意図的な税負担調整が可能となるということ、それから、今までですと課税に対する匿名性があったなど、いろいろな問題点が指摘されているわけです。したがって、これを廃止することが税制の公平性、透明性を高めることにつながって、ひいては証券市場の構造改革につながる、そういうふうに考えております。

 また、株式の譲渡益は、その譲渡価格から取得費等を差し引いて算出することから、そもそも証券会社においてその所得がわからないため、投資家本人の申告による必要があること、それから、利益と損失の発生が別々であることや、利子や配当のように取引ごとに源泉徴収する現行制度になじみにくいことから申告分離課税方式がとられておって、申告分離課税に一本化することが妥当だ、そういうふうに考えているわけです。

中塚委員 そのお話はよくわかるのですけれども、ただ、要は、証券税制を改正する目的というのが、貯蓄よりも投資を優遇しようということなんだろうと思うわけですね。だから、そうであるならば、貯蓄利子よりもこの譲渡益課税というのはもっと優遇されてしかるべきだろうと。税率もさることながら、その納税等の手間についても優遇されてもしかるべき、当然ではないのかというふうに思うのですが、塩川財務大臣、いかがですか。

塩川国務大臣 私は、先ほど来申しておりますように、源泉制を選ばれる方は、要するに、いわば株の、どちらかといったら素人よりもちょっと玄人っぽい人なんですね。ですから、どうしても定期取引をやっておられる。この方々は、源泉にしろ、そして一方では損失所得を認めろ、こういう要望と二つが来ておる。私は、どちらを選ぶのが定期取引しておられる方に有利かということを見ましたら、やはり、損失繰り越しを認める方が、これはセーフティーネットにもなるし有利なんじゃないか、そう考えました。

 そもそも、証券の売買で、源泉で一・〇五%というのは、果たしてこれで、商取引のいろいろな面から見て公平な税率であるかどうかということも問題でございましたし、といって一・〇五をさらに引き上げるということは、これはやはりインセンティブにならないということを考えます。

 したがって、むしろセーフティーネットの方に重点を置いた方がいいという結論になった、これが一つ。そのかわりに一般の投資家に対してはどういう態度で臨むか、これは、保有をしてもらうことをねらいにするということでございまして、そのために今度新しくこういたしました。

 これからはやはり、一番問題になりますのは、配当し得るような企業に育ってもらうということが、これが株式対策の最終的な一番重要な目標ではないかと思っております。

    〔佐藤(剛)委員長代理退席、委員長着席〕

村田副大臣 十五年から申告分離に一本化されるということでありますけれども、私どもとしては、現在、個人の株式投資家のうち七割を超えるような方が源泉分離課税を利用している、こういう状況にかんがみまして、できるだけ簡便な納税の仕組みを講じていただくことも、やはり必要ではないかということでございまして、与党三党が十月三日に発表いたしました株式等譲渡益課税の見直しの案においても、「申告分離課税への一本化にあたっては、新たに申告を行うこととなる一般の個人投資家が簡便に納税申告できるよう立法措置も含め必要な取組みを検討する」というふうにされているところでございまして、今後とも、金融庁といたしましては、申告分離課税への一本化が投資家の課税の申告の負担をふやさないように、できるだけ今後とも簡便な措置の導入を図っていきたい、お願いをしていきたい、こういうふうに考えております。

中塚委員 金融庁の方にお伺いしますが、税率の方はこれで十分とお考えでしょうか。柳澤大臣、いかがでしょうか。

柳澤国務大臣 私どもは要求官庁なんですね。要求官庁ですから、税制当局に、私どもが私どもの見地から是とする案を申し上げたわけでございます。だから、それを満額実現してくれるのが一番望ましいということになるわけでございます。

 ただ、私は、それに加えて、先ほど来申し上げていることなんですが、今度こそはやはり中期的税制としてやってもらいたいという切なる願望を持っておりましたけれども、微力だということ、武運つたなくと申しますか、とにかく一敗地にまみれたというか、こういうことで合意をせざるを得なかった、こういうことでございます。

中塚委員 先ほど塩川大臣がおっしゃった譲渡損の繰り越しの話とか、あと保有を促すという話は、またちょっと後でお聞かせいただきたいと思うんですけれども。

 通常国会では百万円の特別控除だったわけですよね。株式の譲渡益の百万円の特別控除というのをつくったわけですよね、通常国会で。それで、今回、このように申告分離課税に一本化をして、しかも税率を下げるということになったわけですけれども、何で通常国会ではできなかったんですか。

塩川国務大臣 通常国会のときは、私は大臣になりましたけれども、もう既に法案は出てしもうとったんですな。これはしゃあないなと思うて、それで、今度機会があればと思うておったんです。

中塚委員 それで、あのときはもう法案が出ておったからしようがなくて、今回こういうふうにお出しになったということなわけですけれども、保有を奨励しているのか、売買を奨励しているのか、ちょっとそこのところがいまいちよくわからないところがありまして、譲渡益の課税に対しての税率を下げるということになりますと、やはりこれは、何か売買を奨励しているんじゃないかなというふうに受け取るわけですね。

 時限で非課税措置をとったりされていますから、そこへ向けては保有をすることになるのかもしれませんけれども、ただ、本当に保有を奨励するということであるならば、やはり、配当課税の見直しというのが必ずなけりゃいけないはずですよね。持っていることによって得る利益というのは配当が一番なわけでしょうし、将来の値上がりを待って、株価が上がるのを待って保有するということもあるとは思いますが、例えば預貯金なんかと比べた場合に、何もしないでも利息がつくというのと比較をすると、やはり、この配当というのも税制改正の中に織り込んでいかないと、保有を優遇したというふうには言えないんじゃないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

塩川国務大臣 それは、配当課税、優遇するというのは結構ですね。私どももそれはいいと思いますけれども、そう一遍にあれもこれもとできませんし、とりあえず、今度は保有に重点を置いたんです。これは、中塚さんよく見ていただいたらわかりますが、売買に重点を置いていませんよ。絶対に保有に重点。

 ですから、源泉をやめて申告制に一本にしていったということも、そして申告を優遇していったというこの一連の流れ、これはやはり、保有をねらっておるということでございますし、また、特別措置として出しましたものも、これは完全に保有をターゲットにしてというか、保有を奨励するための一つの方法であるということです。

 まあぼちぼち、いろいろな税制、証券税制というのを改正していきますよ。しかし、私何遍も言うていますように、今までの、証券というものはそういう財産の非常に重要な形態の一つなんだという認識、それじゃなくて、証券は、何かもうけるための、株の取引で差益を目当てにした、そういう甘いものの商品であるというような考え方がやはり、頭の中に皆あるように思うんですね。

 そうではなくして、やはり、歴然たるこれは財産なんだという考えを持ってもらうということが一つ大事だと思うし、また、株を持っているのは金持ちやという、そういう既成観念、誤った既成観念がございますが、そうではなくして、今、中産階級の資産の保有の中心は有価証券であるという形に持っていきたい、これは私の願う一つの理想なんです。

中塚委員 というのは、要は、源泉分離方式は、本当はもうことしの三月で廃止されるはずだったわけですよね、そもそもは。ところが、個人投資家離れが加速するということで二年間延長したわけですよね、今までの政府の説明というのは。源泉分離をやめると個人投資家が離れるからということで延長していたものを、今回おやめになるわけですね、先の話ではありますけれども。

 それをおやめになる一方で、配当については何もお触れになっていないということは、それは、あれもこれも一遍にはできませんということになるのかもしれませんが、やはりそこは不備ではないかなというふうに思うわけなんですが、いかがでございましょうか。

塩川国務大臣 そうですね。源泉を残したら株の保有はふえる、株主はふえるということを、去年の暮れごろ、盛んに国会で出ていましたね。ところが、残しておいても依然と減っちゃっているんですね。これは一体どういうこっちゃろということなんですね。ですから、そう観念的なことだけではなくて、やはり現実の進行を見て政策を考えなきゃいけないんじゃないかと思っております。

 したがって、今回、源泉を一本化することによって、十四年までこれをやりますよ。十四年末でもって打ち切るとしましても、私は、そんなに大きい変動は出なくて、むしろ保有の方に向いてくれるのではないかと思っております。

中塚委員 何も私が、源泉分離を廃止すると個人投資家が離れると言っているわけじゃないんですよ。政府・与党がずっとそういう説明をされてきたわけですよ。それは塩川大臣ではないかもしれないけれども、政府・与党はずっとそういうふうに言ってきたわけだし、宮澤財務大臣も、やはり株価の問題これありというふうな御答弁を当時はされていたわけですね。そういった意味からも、保有を促すというふうに今おっしゃるのであれば、今までの答弁とはちょっと変わってきているのではないかということをお話しさせていただいているわけです。

 それでもう一つ、先ほどの御答弁の中で、源泉分離を廃止するということ、そして申告分離に一本化するということが長期保有を促すというふうな御発言でしたか。

塩川国務大臣 いや、私が言っていますのは、源泉分離を廃止して申告制一本にしても、投資家の移動というものはそんなに激しく起こらないんじゃないかということ、激しくならないということを言っておるんです。

中塚委員 柳澤大臣、源泉分離の廃止ということですね。今の塩川財務大臣に対してのお尋ねと同じなんですが、ずっと源泉分離方式を廃止すると個人投資家離れが加速するという意見をよく聞いていたわけですけれども、今回、将来廃止されるということが決まったわけですが、その点は、もう個人投資家離れの問題というのはなくなったということでよろしいんでしょうか。

柳澤国務大臣 現実には、源泉分離課税は非常に使われているわけです、先ほど副大臣が言ったように。それはどういう理由からだといえば、それは先ほど谷口委員でしたか、おっしゃった匿名性、便利性、有利性、この三つだという分析、私はこれは正しいというふうに思うんですね。

 そこで我々は、税の問題ということに、やはりみなし所得であるとかというのを入れたくないという税当局の考え方、それからまた、一般国民はそれを多分支持するだろう、こう思うわけですね。したがって、私は、この匿名性ということについては、これはもう少々抵抗があってもやむを得ないというふうに思うわけでございます。そういうことで、あと残るのは便利性ということなんですが、これはやはり工夫をすることによって、便利性というものは残してちっとも差し支えないものだ、こういうように思います。

 最後にちょっとつけ加えれば、有利性というのも、これはできるだけ有利にしてもらうということであれば、それは税率等でほかの工夫ができるわけでございますから、そういうもので大いに減らしていただきたい、こう思うわけでございますが、この便利性ということについては、やはり納税者にいろいろ負担を課するということはできるだけ避けるべきだという観点であれば、我々が申し上げているように、より簡易な申告制というものをぜひ導入していただければというふうに、なお考えているということでございます。

中塚委員 今それこそ柳澤大臣からも御答弁がありましたけれども、より簡易な納税制度というのがなければ、やはり貯蓄よりも投資を優遇するという話にはなっていかないんだろうというふうに思うわけですね。まず、申告の制度の話があるし、それからあともう一つは、税率の話ということがあるんだろうと思うんです。そういう意味で今度の改正は、制度の問題、税率の問題を考えてみても、やはりこれでは不十分なんじゃないか、政策目的を達成していくためには不十分じゃないのかというふうに考えるわけです。

 そしてもう一つ、それに加えて、源泉分離方式が廃止される、そして申告分離課税に一本化されるというときにはいつも出てくる話題なわけですけれども、今とにかくもうかっている人は源泉分離の方が有利なわけですよね。今利益がもう確定をしているという人であれば、源泉分離課税の方が有利なわけでしょうから、これは申告分離に一本化されるまでの間に売り圧力の方が多くなるんじゃないか。その結果として、マーケットの地合いがやわらかくなる、株価が下がる方に働くんじゃないかというふうな意見があるわけですけれども、それについてはいかがでしょうか。

村上副大臣 我々は、そういう考え方があるのかもしれませんけれども、今回の証券税制の改正において、申告分離課税の一本化とあわせて、申告分離課税の税率の引き下げ、そして二番目に損失の繰越控除制度の導入、それからまた株式投資に関する税負担やリスクの負担の軽減に配慮しておりますし、また百万円の特別控除制度も存置されておりまして、一本化によって税負担が重くなるというふうには考えておりません。

 また、最近の経済情勢及び株式市場の動向等を踏まえて、個人投資家の証券市場への参加を促進するために、緊急かつ異例の措置として、平成十四年度末までに購入した上場株式に係る譲渡益を、一定の要件のもと非課税にするという措置も講じておりますので、これらの措置によって、個人投資家にとって安心して証券市場に参加できる環境の整備が図られているとともに、個人投資家の株式取得及び株式保有のインセンティブが与えられるようになるという考えから、今委員が言われるように、個人投資家の売り越しを誘い、株価が下落するというふうには我々考えておりません。

中塚委員 そういった意味で、まさしく新規の方がどれぐらい参入をしてきてくれるかということが、一番のポイントになっていくんだろうというふうに思うわけですね。ところが、さっき塩川財務大臣がおっしゃっていたように、源泉分離課税が残っていても、どんどんと株式に投資する人というのは減っておるというのが現実問題であって、やはりそこは税制の問題と株価の問題というのは直接リンクはしない。やはりそれよりも投資を優遇するということで、株価ということよりは、直接金融というところにどんどんとシフトさせていくということが一番の課題なんだろうというふうに思うんですね。

 それでもう一つですが、今回この改正案に盛られていない中で、投資信託の問題なんですけれども、この投資信託について、譲渡益課税の見直しというのがこういうことで法律が出されたわけですけれども、次に、投資信託の税制改正というのをどのようにお考えになっているかということを財務大臣にお伺いしたいと思います。

村上副大臣 投資信託の課税については、現在利子と同様の課税になっています。その見直しに当たっては、所得分類等の所得課税の基本的な部分にかかわる側面もあることや、投資信託の運用状況や受託者責任のあり方の税制以前の基本的な問題があること等を踏まえまして、今後さらに十分な議論が必要ではないか、そういうふうに我々は考えております。

中塚委員 この投資信託の税制改正、投資信託に対する税制の改正の話なんですが、同様に柳澤大臣、いかがお考えでしょうか。

村田副大臣 それでは、要求官庁の方から。

 私どもは、投資信託でございますけれども、やはり大変小口で投資ができるということ、それから銀行等の窓口でも売られておりまして、非常にアクセスが広いということでありまして、株式そのものよりも投資信託の方が投資家にとって入りやすい商品であろうかな、こういうふうに思いますので、私どもは、株式投資信託につきまして、株式並みの税制措置を措置していただくように引き続きお願いをしている、こういうことでございます。損失の通算とかあるいは繰り越し等の措置を同様に講じていただきたいということでございます。

中塚委員 今お話ありましたけれども、やはり株式の譲渡益課税だけじゃなくて、ぜひともこの投資信託の方の税制改正の方も、本当は一緒にやってもいいぐらいの話なんだと私は思っているんです。何でそれを分けるのか、譲渡益課税だけの話になっちゃっていて配当の話はない、投資信託の話もないというふうになっていて、本当に残念だなというふうに思いますし、これでは本当に不十分なんだろうというふうに思います。

 次に、財務大臣にお伺いをしたいわけですが、今回、キャピタルゲインの課税ということで、株式の譲渡益課税がこのような形で改正をされることになりますが、先ほど来の質疑の中でも時々出ていた話ではありますけれども、同様の譲渡益課税の問題として、土地なんですけれども、土地の譲渡益課税については今後はどのようにお考えになっていかれるんでしょう。

村上副大臣 御高承のように、土地の税制改正は何回も実はずっと重ねられてきまして、今回の証券税制の改正は、いわゆる骨太の方針において示された貯蓄優遇から投資優遇への金融のあり方への切りかえ、そういう観点を踏まえて、個人投資家の株式市場への参加及び株式の保有を促し、国民が安心して参加できる透明性、公平性の高い証券市場を構築するという証券市場の構造改革に資するというのでやってきているわけですけれども、土地をめぐる状況は証券市場の状況と同様とは考えておりませんで、今回の株式譲渡益課税の見直しが行われるからといって、直ちに土地の譲渡益について同様の措置を講ずるということにはならないというふうに考えております。そういうふうに考えております。

中塚委員 そうなんでしょうかね。資産デフレという意味でいけば、株式だってそうですけれども、土地だって同じなんだろうと思うんですね。そういった意味で、今度株式のキャピタルゲインをこのように変えていくわけですから、土地についても何か将来的なものがあってもしかるべきではないのかなというふうに思うんですが、財務大臣はいかがですか。

塩川国務大臣 今、資産デフレで土地が一番中心になっております。私は、先ほど来何遍も申しておりますように、日本人の財産観というものの変更と密接に関係しておると思うんですね。土地というものは、要するに、持っておることに値打ちがあるようなことを思うておったんです。そうではなくして、グローバリゼーションの経済の中から見ましたら、土地というものは、社会的に利用して初めて値打ちがあるものだ、利用価値に重点を置いた財産観というものが、土地にまつわって考え方を変えなきゃならぬということになってきた。そうしますと、土地から受ける収益性というものがどうしても土地の価格相当なものになってくるということなんですね。

 そうしますと、今まで日本の土地というものは、利用価値より何よりも、近隣とのバランスといいましょうか、売り買いの力関係によって値段を決めてきた。そういうことでございまして、同じ土地でも、私が持っておったら十万円にしかならぬけれども、中塚さんが持っておったら百万円で売れますからね。やはりあの人は絶対土地は売らないんだ、持っておるんだ、こういう人は土地の値打ちがありますよ。塩川やったらいつでも売りよるでとなったら値打ちががたんと落ちるというようなものですから、だから、非常に不安定。

 それよりも、その土地を使ってどれだけの資本効率が発揮できるかという、ここにやはり考え方が変わってきたんですから、私は、これは土地のデフレとかそんな見方をしていないんです。土地に対する考え方が変わったんだ、こう見ておるんです。

中塚委員 土地のデフレじゃなくて資産デフレということで、その中に土地も含まれるという話なんですけれども。

 まさしく株価というのは、企業収益というか企業価値によって決まるわけですね。土地だって、別に隣の土地が幾らで売れたからここが幾らで売れるというわけじゃなくて、これからは収益還元法というのになっていかなきゃいけないし、その土地が幾らの価値を生み出していくかということについて考えるようにしていかなきゃいけないと私は思っております。結局、土地は株とは違うんだということ、これからは株の方、証券市場の方を活性化していきたいというふうにおっしゃっていながら、やはりまた話はもとへ戻って、預貯金の方と比べるとそんなに優遇されているわけじゃないんだろうなというふうに思わざるを得ない部分がありまして。

 最後に一つお伺いをしたいんですけれども、今回の改正案が預貯金よりも証券を優遇しているということにはなっていないというふうに思っておりますし、その一方で、小泉内閣が目指す政策の整合性という点からもほったらかしにしておけないのは、やはり郵便貯金だと思うんですね、間接金融から直接金融へというふうにシフトしていくという話の中で。郵便貯金をほったらかしにしておいて、しかも預貯金の利子というのは源泉で二〇%、そういったものを残しておいてこの証券市場を活性化しようというふうに考えても、これはなかなか無理があるんではないかというふうに考えますが、財務大臣はこの郵便貯金の民営化ということについていかがお考えでしょう。

村上副大臣 その問題については、今、懇談会で検討しておりまして、非常に大きな量があるだけに、やはり慎重に検討したい、そういうように考えております。

中塚委員 今検討会をやっているし、慎重に検討したいということだとは思いますけれども、そういうものをおいておいて片一方で証券市場を優遇するということが、本当に内閣としてやっていることの整合性がとれているのかというふうにお尋ねをした上で、それで、どのようにお考えですかというふうに伺っているんですが、財務大臣、いかがでしょう。

塩川国務大臣 今まで利子の方が優遇されておって、株式の売買あるいは株式の配当金に対するものはやはりきつかったんです。これを緩めてきておる。そうすると、利子税と配当並びに証券の所得のバランスというもの、これはとって、平衡化していかにゃいかぬと思いますが、私は、今度で、株式の方が優遇されるようになって、やっとこれで利子課税と平衡がとれるようになってきたと思っております。

 ただ、利子課税の中でも、福祉優遇税以上の貯金ですね、あれは一千五十万ですか、以上はきついということでございますが、ここなんかの見直しというものはどうなのか。私は、もう利子というのが非常に低くなってまいりましたので、その利子税に対する措置というものはちょっと気の毒やなと思うたりするのですけれども、しかし、現在の制度の上に立っておるものですから、これを急に変更するということはできないですけれども、株の配当とのバランスで、今後も検討していきたいと思っております。

中塚委員 そんな、極端にかわいそうな人の話を持ってきて、それを廃止するのがどうのこうのということでは、私は全然そういう意味でお尋ねをしているわけではないのですけれども、いみじくもおっしゃいました、やっとこれで預金利子なんかと互角になったのかなということなんでしょうね。ただ、株価自体はやはりリスクがあるわけですから、そういった意味で、この税制であっては不十分だということを申し上げまして、終わります。

山口委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。提案された証券税制改正法案についてお聞きをしたいと思います。

 日本の個人金融資産の構成というのは、日銀の資金循環統計によりますと、預貯金が五一・九%、圧倒的に大きいわけであります。株式はわずか四・六%、投資信託や債券を含めても九%でございます。

 今度提案されました証券税制に関する法案は、預貯金から株式投資に広く一般の国民が参加するように誘導しようというのがねらいだというふうにされているわけであります。そこで、塩川財務大臣に極めて初歩的な質問をさせていただきたいのですが、庶民が金融資産をどのような形で持つかというのは、本来、それぞれの国民の選択の自由でありまして、いわば国民の勝手ではないか、預貯金で持っているのがなぜ悪いのか、こういう声がありますが、どのようにお答えになりますか。

    〔委員長退席、奥山委員長代理着席〕

塩川国務大臣 私は、何も貯金で持っていたら悪いというようなことは全然言っておりません。貯金で持っているの、結構です。

佐々木(憲)委員 そこで、日銀に事実関係をお聞きしますけれども、日本では株式で保有している金融資産の比率は、日銀の国際比較統計によりますと六・四%というふうに言われておりますが、国際的に見て、株式保有の比率は本当に低いのか。アメリカ、フランス、イギリス、ドイツではどのような比率になっているか、それぞれの国の個人金融資産のうち株式の占める比率はどうなっているか、お答えいただきたいと思います。

永田参考人 お答え申し上げます。

 各国における株式のウエートでございますけれども、直近時点ということで申し上げますと、米国が一九・五%、イギリスが九・三%、フランスが三・九%、そしてドイツが一一・九%でございます。

 なお、参考までに、日本の二〇〇一年六月末時点では五・三%ということでございます。

佐々木(憲)委員 今のお答えで明らかなように、日本の場合、直近は五・三ですね。そうしますと、フランスよりは日本の方が株式保有比率は高いわけでありまして、イギリスは一けた台、ドイツも、二けたといいましても一一、二%というところですから、極端に日本が株式の占める比率が低いわけじゃないのですね。アメリカが一九・五というのは極めてまだ高い、むしろアメリカが高過ぎるというのが国際的に見て正確な判断ではないかと思うのです。

 そこで、塩川大臣にお聞きしますけれども、先ほど、預貯金で持っているのは別に悪くはないのだ、こうおっしゃいました。預貯金で持っている比率は日本は大変高いというわけですけれども、なぜ預貯金で持つ比率が高いのか、その理由をどのようにお考えでしょうか。

塩川国務大臣 これは、過去におきまして、国民が、有価証券市場といいましょうかいわゆる株式取引というか証券会社、こういうものに対するなじみが薄かったということ、これがやはり根本的な原因だろうと思っております。

佐々木(憲)委員 そこで、日銀にお聞きしますけれども、金融広報中央委員会の家計の金融資産に関する世論調査というのがありますね。平成十三年度の調査ですけれども、その中に、金融商品選択の際に最も重視していることはという問いがあると思うのですけれども、その回答はどうなっているでしょうか。また、これを安全性、流動性、収益性の三基準に分けますと、それぞれ何%になっていますでしょうか。

永田参考人 お答えいたします。

 最初の御質問でございますが、この設問に対して選択肢の答えが幾つかあるわけですが、そのうち一番高い比率でありますのが、「元本が保証されているから」ということが三四・五%であります。これは、重複回答をあれしておりますので、必ずしも全部足して一〇〇ということではありませんけれども、一番高いのがそれでございます。

 それから、おっしゃられました三つの基準、安全性、収益性、流動性というふうに分けた場合、安全性という範疇に入れておりますのは、「元本が保証されているから」という先ほどのものと、もう一つ「取扱金融機関が信用できて安心だから」、この二項目を安全性と言っておりますが、そのウエートが直近の調査によりますと五一・一%ということになっておりまして、ピーク時の五五・九%よりは若干下がっておりますけれども、そんなウエートでございます。

佐々木(憲)委員 塩川大臣、今世論調査の結果をお聞きになったと思うのですが、国民が預貯金で持つ理由というのは、株式に投資するよりも預貯金の方が極めて安全であるという回答が一番多いわけですね。元本が保証されているということであります。ですから、株に対してなじみがないという面もあるかもしれませんけれども、それだけではなくて、むしろ、安全性、確実性、元本保証というところから、株よりは預貯金の方が安心であるということがこれらの調査で明らかになったと思うのです。

 例えば、ほかの調査も同じような結果が出ておりまして、日本リサーチセンターの平成十二年度証券貯蓄に関する全国調査というのがありまして、これを見ましても、貯蓄保有世帯に貯蓄するときに重視している点を選んでもらいたいということで、調査をいたしますと、「元金が安全なこと」というふうに答えた世帯が五二%であります。要するに、元本が保証され、安全であるということが、預貯金で持っている最大の理由であります。

 それだけではなくて、もう一つ私大事だと思いますのは、最近は預貯金の残高が逆にだんだんふえているのですね。この十年間をとってみましても、定期性預貯金は四七%十年間でふえております。それから、通貨性預貯金は一〇六%ふえております。つまり、倍以上にふえているわけですね。これだけ預貯金がどんどんふえていくこの理由、これは大臣、どのようにお考えでしょうか。

塩川国務大臣 一つは、投資先がないから当面流動性貯金で持っていようという、その選択が多いのじゃないかと思います。それともう一つは、株式とかあるいは債券というものの将来性に対する不安、先ほど佐々木さんがいみじくもおっしゃった預貯金は安全であるという、これはやはり大きい要素になっておるだろうと思いますけれども、とりあえず私の思いますのは、適当な投資先がない、買い物、消費をしようにも消費先がない、だから、いつでもその資金が活用できるような状態に置いておきたいというのが一般の人たちの意向ではないかと思っております。

佐々木(憲)委員 今の御答弁で、投資先がないからというのが一つと、二つ目に、株式の将来性の不安というのが挙げられました。

 私は、もう一つ大変重要な要素があると思うのです。それは、この日本総研の雑誌がありますけれども、この中で、環境・高齢社会研究センターの副主任研究員の飛田英子さんがこういう論文を書いているのです。「不確実性とディスインフレ下の家計の金融資産選択行動」という論文なんですけれども、この中で、こういうふうに書いてあります。

 将来不安の増大が家計の貯蓄志向を強めていることが実証された。このことは、現在消費マインドを脅かしている諸要因が改善されない場合には、今後も引き続き貯蓄意欲が強まることを意味している。したがって、個人消費振興のためには、社会保障制度の抜本改革や失業・雇用対策の見直し等を通じて、家計の将来不安を解消することが不可欠である。

こういうのが一つ結論として挙げられております。

 それからさらに、こう述べているのですね。「老後の所得保障の手段として、通貨性預貯金の重要性が高まっている。通貨性預貯金の期待収益率は他の資産に比べて低いことを考えると」本当に預金の利率が非常に低いですから、収益性というのは本当に低いわけですね。そういう低いことを考えると、「この傾向は現在の所得からより大きな部分を貯蓄に回す必要性を示しており、将来不安の増大に加えて家計の貯蓄志向の強まりを説明するものといえる」つまり、将来不安というのと老後の所得保障、これが今の預貯金に大きく国民の金融資産がシフトしている要因であるということであります。これは、私は非常にはっきりしているんだというふうに思うのですね。

 それでは、塩川大臣にもう一回お聞きしますけれども、先ほども御答弁の中で少し出てまいりましたが、株式投資に個人資産が回らないという理由ですね。要するに、個人が株を買わない理由ということについて、大臣はどのようにお感じになっていますでしょうか。

塩川国務大臣 現在、配当性向が非常に低いですね。やはり、株を持っておっても利回りが全然悪いということが原因であったということと、それから、株が、高低差がちょっと最近はきついように思います。そうすると、やはり不安を感じるということ。以前、十数年前でございましたら、株は右肩上がりのそれ行けどんどんでございますから、持っておったらもうかるという時代でございましたけれども、今持っておったら損するでというような、そういう意識も持っておる人がふえてきた、そういうものがミックスしたので、やはり私は、ここで一番大事なのは、株の信用、株式に対する国民の認識を変える、その認識を変える一番の中心は、株は安全であり、やはりそれ相当の利益も期待できるものであるという、そういう実績を積み重ねていくことが一番大事なことだと思っております。

佐々木(憲)委員 大変今率直に、利回りが悪い、あるいは不安があるというようなお話がありました。

 確かに、政府税調に出された資料が、この調査局の財務金融調査室で出した資料を見ましても、アンケート調査結果がここにも出ておりますが、「個人投資家が株式市場に参加しない要因」、それは株式投資の経験のない世帯に聞きますと、知識を持っていないからだというのが四九・五%、「損したという人の話を聞いたから」これは二八・九、「株価の動きなどに神経を使うのが嫌だったから」二五・四、それが、株を買ったことのない世帯の回答です。

 それから、株を買ったことがある世帯のアンケートによりますと、株を買っていない、最近株を買わなくなった、その理由は何かということで調べますと、「値下がりの危険を感じたから」が三〇・五%で一番多いのですね。「これまでの結果が思わしくなかったから」これが二四%というふうになっております。

 結局、大臣がおっしゃったように、株の値下がりがこのところずっと続いてきた、自分も損をした経験がある、人からも、損をした、危ないよという話を聞いたことがある、そういうような不安というのが大変大きい。株式市場に対する信用性、信頼性という問題ももう一つある。そうなりますと、やはり問題は、そこのところをどう解決するかということだと思うのですね。

 そこで、次に、この法案の効能といいますか効果でありますが、今度の法案では、株取引で得た利益に対する税金を軽減するということが盛り込まれているわけですが、では今、株を買わない理由として、税金が高いから買わないという方がどの程度いるんだろうか。税金が高いからというのは、どのくらい株を買わない理由としてあるとお思いでしょうか。

村上副大臣 佐々木委員の御指摘の考え方もあると思うのですけれども、やはり今回の税制改正のねらいは、貯蓄優遇から投資優遇への金融のあり方への切りかえということが理念にありまして、そして申告分離課税の一本化により透明性、公平性の高い、オープンな証券市場の構築をする、そういうこととあわせて、税率の引き下げや損失繰越制度を導入することによって税負担やリスクの負担の緩和を図る、これらの措置を通じて、個人投資家にとって安心して証券市場に参加できる環境の整備が図られるということをねらっておりまして、個人投資家の市場への参加が促進され、そして厚みのある市場形成をできるのではないか、そういうふうに考えております。

 ただ、御指摘のように、個人投資家の株式市場の参加の促進については、税制だけではやはり限界があるわけでして、むしろ市場の監視、取り締まり体制の充実や証券市場への信頼性向上のためのインフラを早急に整備することも重要と考えておりまして、関係者の皆さんの積極的な対応を望みたい、そういうふうに考えております。

佐々木(憲)委員 今の私の質問に直接お答えにならないで、いわばこの法案のねらいといいますか何といいますか、間接金融から直接金融への移行という、これは政府の意図としてはそういうことがあると思いますが、問題は、私が聞いているのは、国民の側が株を買わない理由に、税金が高いから買わないんですよという要因というのはどの程度の比重なのか。

塩川国務大臣 それは余りないだろうと思いますね。余り国民は、株から起こってくる税制に対して、税金が高いから買わないというのじゃないと思います。けれども、私は、税制を有利に、インセンティブを与えて有利にするということで、株の投資をやってみようかという魅力を感じてくれるということ、そちらの方を誘導しようというのが今回の税制の改正ですから、税は高いんだ、こう言っている人に対する直接の答え方とはちょっと違ったねらい、先ほど村上副大臣が言っていましたように、今度の税制の趣旨は、要するに誘導していこうという趣旨でございます。

佐々木(憲)委員 そうすると、税制というか、税金の重さで買わない比率というのは余りないというふうにおっしゃいましたね。要するに、税では、税を操作することによってそれほど動く部分というのは少ないのだと思うのですよ。

 ですから、例えばこういう結果が出ております。これは、平成十二年度の「証券貯蓄に関する全国調査」の結果がここにありますが、その中で、貯蓄時の重点視、何を重点にしているかということなんですが、この中で、税制面で有利になるというのを選択の基準として重視しているという方は、平成十二年でわずか二・四%なんです。圧倒的多数は、元金が安全かどうか。これはもう先ほど言ったように、五二%がそこで判断するわけです。ですから、税制によって動かされる部分というのが、全体でいいますと二%程度なんですよ。

 それでも、やらないよりやった方がいいというふうにおっしゃるのかもしれませんけれども。しかし、このことによって、何か間接金融から直接金融へというふうに、大きく全体の事態が移行するような効果を持つとはとても思えない。

 そこで、もう一度日銀に事実関係だけ確かめたいのですけれども、アメリカの個人金融資産に占める株式の比率は高いということでありますが、歴史的に見ますとどうなのかということですね。例えば、一九七五年ごろでは何%であったか、それからピーク時は何%か、現在は何%か、それぞれ数字をお答えいただきたいと思います。

永田参考人 お答えを申し上げます。

 米国におきます金融資産の中における株式のウエートでございますが、お尋ねの七五年末時点では一三・四%、ピーク時でございますが、これは一九九九年の末でございますが、これが二六・六%、そして直近時点は、二〇〇一年の六月ということをとりますと、これは時価が下がっているということもございまして、一九・五%になっております。

佐々木(憲)委員 アメリカの場合は、金融自由化という八〇年代の大きな動きの中で、個人の金融資産が預貯金から株式へとどんどん移行していきました。一九七五年には一三・四%でしたけれども、ピーク時は二六・六%、大変高い株依存体質になったわけであります。それが、このところの株価の急落によりまして一九・五%。落ち込みの比率だけ見ますと二六・七%、四分の一以上大幅に損失、失われているわけであります。

 バブルの崩壊というのがアメリカで実際にあらわれたわけです。これが株への過大な依存体質を直撃しまして、現在大変な消費不況になっているわけですね。ですから、株に依存する体制をつくるということは、流れからいうと、間接金融から直接金融への移行のように一面では見えますけれども、同時にまた、国民の資産が株の価格の上下によって左右されるという、大変脆弱な構造に変えられるということも逆には意味するわけであります。

 そこで、アメリカのこの事態について、金融資産が株価暴落でかなり大きな影響を受けていると思うのです。その金融資産の消費への影響、それから経済への影響、この点について、財務大臣自身はアメリカの事態についてどのように認識されておられるか。――財務大臣の認識をお聞きしているのですけれども。

村上副大臣 この問題は、非常に株式保有割合が高いアメリカにおいて、消費者の気分というかセンチメントがどのように株式市場に強く影響されるかという問題なんですけれども、過去数年の個人消費の高い伸びが、こうした資産効果に支えられた面があったということは事実だったと思います。

 昨年来の株式相場の調整局面では、消費に対する資産効果の落ちが消費を抑えているという指摘もなされています。また、その逆資産効果につきましても、資産価格の下落が消費にマイナスの影響を与えるまで、マイナスを与えるまでの期間のタイムラグが大きいという見方もありまして、今後、この影響が本格化して米国の個人消費を押し下げる可能性があるということも指摘されておりますけれども、現時点では、それがどういう影響を、定量的に判断するかについては、十分な材料がないということで御理解いただきたいと思います。

佐々木(憲)委員 株の下落によってかなり消費が抑えられている、こういう事実はお認めになりましたし、それが今後どういうふうなあらわれ方をしていくか、タイムラグがあって、将来もっと深刻化する可能性もあるということであります。

 そういうことですから、株式市場への国民の金融資産の移動が、決してプラスだけではなくて、マイナス効果、マイナスの要素もあるのだという点を我々はよく認識をしていく必要があると思います。そういう点を考えていかないと、何か株に依存するのがいいことで、預貯金で持っているのがよくないことでというような話になりますと、国民の暮らし、国民の資産、国民の消費ということを考えますと、これは一方に偏り過ぎた考えになるのではないかということを危惧するわけであります。

 さて、その次に、財政に与える影響についてお聞きをしたいのですけれども、今回の証券税制の改正によって、これはどのぐらいの減収になりますでしょうか。

大武政府参考人 お答えさせていただきます。

 今回の改正は、基本的には十五年度以降の株式譲渡に係るものでございますので、十三年度の税収に直接影響するものではございません。

 それから、十五年度以降の減収額の計数につきましては、当然、株式市場の動向に左右されるわけでございますが、一応十三年度予算の税収をもとに一定の前提を置いて試算いたしますと、概して一千億円程度以上の規模かと思われます。

佐々木(憲)委員 一千億円以上の税収減ということでありますが、単純計算すると一千七百億円ぐらいの減になるというのは、財務省の資料でも我々は聞いております。

 そうしますと、今の財政状況というのは大変危機的な状況だと大臣も御認識されていると思うのですね。このような減税が今の財政全体にどういう影響をもたらすか、この点については、大臣、どのように判断されていますか。

塩川国務大臣 税への影響というのは、再来年に出てくると私は思うのです。

 ですから、十四年度の税制に直接、多少は影響はございますけれども、そんなに大きい変動ではない。十五年度には相当改正いたしましたものが、要するに分離課税と申告、一本になりました結果のものが出てくると思いますし、また、特別優遇のものが十七年度以降において出てくると思っておりますので、十四年度、直接には余り大きい影響はないと私は思っております。

佐々木(憲)委員 いずれにしても、ここ数年の間にその影響が大きく出てくる。マイナス影響だというふうに私は思います。

 今回のこの法案というのは、税制の体系からいっても異例ずくめではないかというふうに私は思うのですね。源泉分離課税は廃止して申告分離課税に一本化する。しかし、その税率は引き下げる。また、損失繰越控除制度を創設する、百万円特別控除制度は廃止しない、株式の長期保有を特に優遇する緊急投資優遇措置はつくられる。

 これは本当に異例の優遇税制というふうに言ってもいいと思うのですけれども、要するに、一年を超えて株保有をすると、二〇〇三年から二〇〇五年の間に譲渡した場合、百万円までの譲渡益は課税されない、百万円を超える譲渡益は一〇%しか課税されない、もしトータルで損失が出れば、その後の譲渡益からは控除できますよと。さらに、二〇〇五年から二〇〇七年の三年間の譲渡益についてはもっとよい譲渡益非課税の緊急投資優遇措置があります、今は株式の買いのチャンスですと言わんばかりのものでありますが、先ほど言ったように、株でそれほど動くものではないし、私は税制のゆがみの方がむしろ問題じゃないかというふうに思うわけであります。

 そこで、まず一つお聞きしたいのは、百万円の特別控除制度の問題であります。九月十八日の税制調査会の金融小委員会の「証券税制等についての意見」というのがあります。この意見はこう述べているわけですね。「百万円特別控除制度については、課税ベースを大きく縮減させるものであって、その下での税率の引下げは適当でなく、税率の引下げを行う場合には、廃止又は縮減することが適当である」あるいはこう述べているわけです。「百万円特別控除制度を廃止又は縮減した上で」云々、こういうふうに書いてありまして、この意見と実際に出されてきた今回の法案は全く違うものであります。

 つまり、一カ月半前に明確に廃止、縮減ということを打ち出したにもかかわらず、この意見を完全に無視して今度の法案が出されていると思うのですが、これはなぜそうなったのでしょうか。

    〔奥山委員長代理退席、委員長着席〕

大武政府参考人 お答えさせていただきます。

 ただいま先生から御指摘がありましたように、政府税制調査会の金融小委員会の意見におきましては、今後の申告分離課税の税負担水準のあり方については、非課税ベースを大きく縮減している特別控除がある中では税率控除の引き下げは適当ではないと指摘されているのは、そのとおりでございます。

 ただ、同じ小委員会の中でも、これからは売買の促進ではなくて保有を重視していく、個人にできるだけ持っていただくということを重視するというのも同様に触れられておりまして、そうしたことも勘案しながら、かつ、最近の経済情勢、株式市場の動向を踏まえて、個人の投資家の株式市場への保有という形での参加を促進する観点から、百万特別控除につきましても、期限をしかし区切って特別に税負担を軽減するということにしているものでございます。

佐々木(憲)委員 全く御都合主義のやり方だと思うのですよ。もう一カ月半前に廃止、縮減というのを決めていながら、何もその状況がそれほど変わったわけでもないのに、インセンティブを与えるためだからといってそれを継続する。これはもう本当に税制の基本的な議論を無視してやっていくということでありまして、これは私は非常に問題だというふうに思うのですね。

 もう一つ、塩川大臣が肝いりで、購入価格一千万円までの株式を二年間保有して次の三年間で売却すると非課税である、売却したときの利益が例えば倍に上がっていても、三倍に上がっていても課税はゼロである、大変異例中の異例なんですけれども、こういう制度は外国に事例としてありますでしょうか。

大武政府参考人 お答えさせていただきます。

 主要諸外国において今般の緊急投資優遇措置と全く同じものがあるということはないというふうに思っております。

 ただ、株式譲渡益の非課税措置という観点からは、例えばイギリスにありますインディビジュアル・セービング・アカウントといいまして、あえて言えば個人貯蓄勘定というのでしょうか、そういうものがございます。この勘定につきましては、年間七千ポンドまでの拠出金の運用から得られた株式譲渡益課税等を非課税にするというものがございまして、一九九九年に十年間の時限措置として導入されたというふうに承知しております。

佐々木(憲)委員 イギリスの個人貯蓄勘定というのは全く性格が違うものでありまして、今回のようなこういう制度は世界にはどこにも見当たらないわけであります。一部の投資を誘うためにこういう大規模な減税措置を、しかも税制の体系もかなりゆがめ国際的に見てもやったことのない、そういうものをやるわけでありますから、これは本当に、効果がないにもかかわらずやったことのマイナスの方が非常に大きいという税制だと私は思うのです。

 そこでちょっと、もう一つお聞きしますけれども、今度の税制改正で株式投資というのはどの程度ふえると予想されているでしょうか。あるいは、現在のこの状況を前提としますと、対象となる人はどのくらいふえるというふうに予想していますでしょうか。

大武政府参考人 今先生が御質問にございました優遇措置といいますか、今度の税制改正全体で個人投資家の証券市場への参加あるいは株式の保有というものにどの程度の影響があるかという御質問でございますが、明らかに、我々の意思としましても、株式の保有、売買ではなくて保有というところへインセンティブを与えるという改正をしておりますので、我々の期待としては多くの個人投資家がこれを機会に株式市場に参加いただけることを期待しているということで、具体的にこれはどの程度になるかということは申し上げることはできないということは御理解いただきたいと思います。

佐々木(憲)委員 具体的にどんな効果が出るかもわからない、これだけの臨時異例の措置をとりながら効果もはっきりしないというんじゃ、全く私は無責任だと思うんですよ。実際に税制で動くという可能性のある方々はわずか二%程度だという状況でありますから、効果が実際にはほとんど考えられない。そうしますと、一体何のためにこういうものを出してきたのかという根本問題が問われるわけであります。

 結局、現状でいいますと、株の取引を実際にやっている個人の方々というのは非常に例外的な方々であります。一般的にいいまして、非常に高所得者の方々が、例えば年収一千五百万以上の世帯では四六・六%が株を保有している、これは持っているだけも含めてですけれども。七百万以下の世帯になりますと平均して十数%にすぎないんですよ。ですから、全体としては、現に株を売った、買ったをしている投資家、一部の株保有者にとっては大変有利な減税になるでしょう。しかし、これは一般の投資家を刺激し、一般の投資家を株式市場に誘導するというほどの効果はほとんどない。

 そうなりますと、結局、不公平な税制を拡大するというだけであって、その負担は財政に来るわけです。財政に来る負担は国民が負担するわけです。結局、ごくごく一部のいわば高額所得者に減税になるのが中心であって、どうも実際にはそれを国民が負担するという構造になっているのではないか。

 私は、株の問題を考える場合にはやはり実体経済をどれだけよくしていくかということが基本だと思うのです。先ほども貯蓄の理由に将来不安がある。将来不安を解消するということによって初めて消費に回る、あるいは株の投資もしてみようか、そういう方々がふえていくわけでありまして、やっていることが、本質を外れたところでどうも効果のないことをやっているというふうにしか私には思えないわけであります。

 そういう点で、この法案については我々としては賛成できないということを最後に申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

山口委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 いつも私の質問は最後に置かせていただいておりますので、きょう一日の皆さんの審議を承った上で、総括的なお話をまず柳澤金融大臣にお伺い申し上げます。

 今般のこの租税特別法案のいわば大きな背景にございますものは、間接金融から直接金融へ、より金融市場を活性化する、いわば金融の構造改革の問題が大きな流れとしてあることを私もまた認識しておりますが、ここで、そうした金融の構造改革について御見識と、現実にいろいろやってこられた御経験のある柳澤金融大臣からごらんになって、特に平成九年度、いわゆる金融ビッグバンという言葉が私どものような政治の外におりました者にも届いてまいりましたが、そういう平成九年度の金融ビッグバンも通過してみて、現在、間接金融から直接金融へという流れは、何がどこまで到達し、また今後何が最も課題であると認識しておられるのか、中間総括的な大枠の御答弁をいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 今、阿部委員から本が一冊できそうな内容の質問を受けまして、ちょっと、ちょっとというか全く戸惑っているわけでございますけれども、例えば、ある企業が業を起こすという場合に、一体日本ではどういうふうにやるかというと、資本金は商法が認める最低の資本金、それで、あとはとにかく銀行からの借入金というような資金計画が通常なのでございます。しかし、こういうことに対しては非常に、私なぞ時々本をのぞくわけですけれども、アメリカの金融の専門家なぞは、そういうことがおかしいんだ、つまり資本というものをまずもっと集めるという努力をしないといけない、借入金との比率もそれなりの比率であるような資金調達の方が健全なんだというようなことを言う向きもあるわけでございます。

 それで、私なぞは、ああ、そういうもともとの基本の考え方があるのかというようなことで、現在の日本の資金調達なぞの状況を見ますと、これは、さっき冒頭触れた例は、例えば、個人が一念発起して仕事をするときもそうなんですけれども、株式を上場したというようなもの、そういう大きな企業になったものも含めて、非金融法人という企業の資金調達の割合を見ますと、例えば、アメリカなぞでは五〇・九%が株式、出資金が一五・七%、それで社債等が八・二%で、借入金は一二・一%というぐらいに借入金のウエートは低い。それで、株式とか出資金というようなリスクを分担してくれることが予定されている資金が過半を占めている、こういうようなことがあるわけでございます。それに対して、日本はやはり株式二八・七、出資金五・一というようなことで、借入金がやはり三八・八というような状況になっております。

 また、もう一つのメルクマールで、企業の自己資本比率というような比率で見ますと、我が国が二二%、アメリカが三七%というようなことで、やはりアメリカが資本金という形態で資金を調達しているということがはっきりわかるわけでございまして、これはもうリスクに対して非常に強い企業の財務体質だということが言えようかと思うのでございます。

 そういうようなことの中で、この資本市場の充実ということが非常に大事なわけですけれども、昔、日本では証券会社のことを株屋というふうに言っておりまして、何か非常に危険な商売、それからまた少し、何というか、暗い部分というか、やみの部分をあわせ持ったような商売というような印象があって、それはもう銀行よりも少し距離のある仕事の質を持っているというような、そういう見方がありました。

 阿部委員は女性でございまして、例えばお嫁の先として銀行員と株屋のどっちに行くかというと、明らかにこれは銀行員の方が行き先としてはベターだ、こういうような社会的な認識もあったように私なぞ若いころには聞いたわけでございます。

 そういうものを、そうではない、証券会社というのは、資本市場という非常に重要な企業の資金調達の場であるし、また投資家の投資の場である非常に大事な市場の一種の仲介者であるというようなことで、これを、ステータスをもっと引き上げなきゃいけないというようなことを昭和四十年ちょっと前でございましょうか、三十年の後半にやってきたわけでございます。

 その努力は、私、一時実ったように思うんです。銀行よさようなら、証券よこんにちはというような表題で言われたこともありまして、非常に証券会社のステータスも上がるし、質も上がったということで、そういう時期もあったわけですが、昨今では非常に、むしろ資本市場に問題がある、また、それを仲介する証券会社にも問題があるというようなことが言われて、個人投資家の証券市場離れというようなことが出てきてしまっている。

 本当は、これからもっともっと、先ほど言った資金調達のシェアなぞからいって、企業の資金調達が直接資本市場というのに依存しなければならない、そういう状況にあるにもかかわらず、実は資本市場、証券市場というものに対する世の中の見る目というものがそういう状況になっているというのは、これはもう明らかに一種の矛盾でありまして、この矛盾を非常に早急に克服しなければならないということでございます。

 そういうものが、これは金融市場、資本市場を通じてのことでございますが、それをもっと活力のあるようにしなきゃいけないということでビッグバンということが言われたんですが、活力を持たせるにはそういう規制の緩和ということと同時に、もっと行為の規制というのは強くしなきゃいけない。例えば、参入規制なんという、業者が入ってくるのを規制していてというようなところはむしろ取っ払わないといけないんですけれども、入ってきた人たちがきちっとしたルールに適合した行動をとらなきゃいけないという行為規制というのはきつくしなきゃいけないし、またそれは監視も強くしなきゃいけないし、違反をしたときの罰則も強くしなきゃいけないというようなことで今進んでいるというふうに言ってよろしいんだろうと思っておるわけです。

阿部委員 基本的な御答弁から、現在の今でも続く証券市場へのある種の国民の不安感、不信感まで、御丁寧な御答弁をありがとうございます。

 本来は最後に伺おうと思いましたが、あえて、今御答弁をいただきましたので、証券市場の監督省庁としての金融庁並びにそれを所轄しておられる金融大臣に、今の金融市場のいわゆる国民から見た信頼のなさということに関して、幾つかのデータを挙げて御質問を続けさせていただきます。

 株式市場及び証券会社に対する根強い不信感ということで、これは証券会社の方たちがみずからさまざまに分析されたデータの中で、例えば金融庁からのいろいろ勧告を受けております勧告件数が、平成四年度、例えば二件、平成五年十三件であったものが、平成九年、十年、十一年、十二年と、四十件から三十数件へと勧告件数もふえてございます。

 あるいはまた、この間、日本証券協会、苦情相談、あっせん受理状況というのを拝見いたしましても、平成十年度、十一年度、十二年度と明らかに増加しております。十年度四千六百六件、十一年度五千三百一件、十二年度五千七百四十六件。

 と申しますことは、先ほど柳澤金融大臣は、三十年代の終わりから四十年代に少しだけ日が差したけれども、やはりまた、まだやみ夜の中であるというふうな簡単に言えば御答弁だったと思いますが、今もってこのような増加し続ける苦情件数あるいは勧告が必要とされるようなさまざまな不祥事ということに対しまして、所轄の金融庁並びに、柳澤さんのお答えになることかどうか、私も質問通告どなたにしたか忘れましたので、金融大臣としてはどうお考えか、この点をお願いいたします。

村田副大臣 監視委員会でございますけれども、私どもが検査をし、あるいは犯則事件の調査の結果、必要がある場合には、内閣総理大臣あるいは金融庁長官に対して行政処分を求める勧告を実施することができることになっておるわけであります。そしてまた、犯則事件の調査により犯則の心証を得たときは告発しなければならないということになっております。

 委員はただいま、昔からかなり長い期間のスパンをとられてこの件数を挙げられました。私ども、直近の十年ぐらいから数えてみますと、監視委員会の勧告件数は大体、十事務年度で三十六件、十一事務年度で三十七件、平成十二事務年度で三十四件となっているわけであります。それから告発件数は、同様に、十事務年度で六件、それから十一事務年度で七件、平成十二年度では五件、こういうふうになっているわけであります。

 近年は、特に勧告件数あるいは告発件数ともに横ばいが続いておりますけれども、これは、かつてよりいろいろな証券市場をめぐります環境は急激に変化しておりまして、金融商品につきましても、市場のいろいろな難しい事態に対処していかなきゃいけないということでございまして、近年は計数上の数字というのは横ばい傾向をたどっている、こういうことでございます。案件がややかつてよりも複雑にわたっている、こういうことが、直近時点、三年をとりましたけれども、その告発件数あるいは勧告件数の横ばい傾向をあらわしているのではないかというふうに考えております。

 私どもは、事務の効率化をやったり、あるいは調査手法の向上などに努めまして、なお一層努力をしたい、こういうふうに考えておりますが、一方で、最終的には、委員会の要員が不足しているということにかんがみて、来年度にかけまして倍増の定員要求をさせていただいている、こういうことであります。

 それから、一方において、もう一個でございますが、証券会社に対します行政処分件数でございますが、これも、平成十年度で十三件、十一年二十八件、十二年度は二十件でございます。

 それから、日本証券業協会が苦情相談の受け付けをしておりまして、これを今、委員も先ほど指摘されましたけれども、十年度は四千六百件、十一年度は五千三百件、十二年度は五千七百件、こっちの方はかなりふえている、こういうことでございます。

 これは、我々も、金融監督庁の行政処分の方につきましては、金融監督庁発足後、厳格な事後監視行政を徹底いたしたということもありますし、それから証券会社の方でも不適切な事例が見えた、こういうことでございまして、処分の件数がふえた、こういうことでございます。

 それから、証券業協会に対する苦情相談の件数につきましては、いろいろ見てみますと、内容的には、金融システム改革のときに導入されました分別保管制度等の新しい制度に関する照会が一挙にふえたとか、あるいは新しい金融商品に関する問い合わせが増加したとか、それから、一部の証券会社の営業姿勢に対する苦情が増加したということも残念ながらあったようでございまして、そうしたことが理由になりまして、証券業協会に対する苦情相談件数もかなりふえてきているということが見られるわけでございます。

阿部委員 相談件数等々がふえることは、一概には悪いことではないと思うんです。そして、その相談にかかわる人員をふやすということも、むしろ、本来的な意味で、証券市場を市民にとってわかりやすく近くするという意味では私は前向きのことと評価したいと思っています。

 しかしながらでございます。例えば、今回の税制の委員会の金融小委員会の冒頭といいますか、「証券市場の現状認識等」の既に大きな枠のところで、証券市場への参加が進まない理由として証券市場への不信感が現在もなお挙げられ、そして、今回の租税特別法案のさまざまな減税処置はいろいろに多様でございまして、わかりづらいということも大変気になる事案でございます。

 やはり、税制というのはわかりやすく、かつ不公平性のないものでないと、例えば、ある金融商品を買おうといたしました場合にも、今ならお買い得ですよ、でも、ここまで来たらちょっとこれは、その措置はなくなりますよ等々の短期的なものというのは、これはまたトラブルのもとにもなりやすいものですので、私は、その意味で、今回のジグザグした改正というもの自身がかなり庶民にとっては金融商品の魅力を増すよりは、むしろわかりづらくしているのではないかという点を一点指摘しておきたいと思います。

 引き続いて、塩川財務大臣にお伺いいたします。

 その件とあわせて、今回は、証券市場へのさまざまな税制優遇措置ということをかなり踏み込んでお取り上げでいらっしゃいますけれども、そもそも、平成元年度になりましたでしょうか、いわゆるキャピタルゲインについての課税が行われまして、特に源泉分離課税がしかれて、これも過渡的な措置というお考えでございましたのに、今回、十五年度まで一応、申告分離課税への一本化までの十五年間結局続いた制度になってございます。

 このことに関しまして、そもそも財務省としては、総合課税という大きな枠の方針をお持ちなのか否かということと、それから、暫定的と言われたものが十五年続いてきたことについての御認識ですね、いろいろあったからと塩川大臣ならばおっしゃるやもしれませんが、私は、実は、今回の税制措置で期限を三年とか設けましたものについても、本当に期限どおりで済むかどうかが非常に不安な気持ちを持っております。そして、わかりづらいということもございます。

 これらの事態を踏まえまして、源泉分離課税について十五年を要したことと、それから大枠では証券税制をどのようにお考えかということについて、これも塩川財務大臣にお考えを伺いたいと思います。

塩川国務大臣 御承知のように、税制というのは、なかなか朝令暮改を嫌うものでございまして、できれば安定したものがいいということで、そこで、暫定をいたしましたものでもそれがなじんでまいりました場合は、その延長によってそれを保障していくという制度になってきた。

 暫定が続いておるということに対しまして、今御発言のとおり、私も同様だったと思っております。しかし、現在、証券税制をめぐります事態はいろいろと問題もございます。

 一つは、先ほど来何遍も申しておりますように、有価証券の財産観に伴う優遇措置を、インセンティブを与えてそちらへ誘導しようということ。それから、金融体制も間接から直接金融へ誘導していこうというもの。そしてまた、証券税制そのものをもっと簡素化していこう、わかりやすくしていこうということ。そしてまた、利子税との関係の公平性を維持していこう、そういう問題が多々ございます。

 今回いたしました税制改正も全部期限をつけておりますけれども、それは、やはりいずれ近いうちに証券税制に関するものの集大成的な改正が必要になってくるのではないかと思っておりまして、その意味においても、暫定的な措置がいろいろ続いておりますこと、これはかえって御迷惑をかけておると思うのでございますが、一面からいいましたら、こういう措置は、政策の効果、減税の効果というものを検討していく上についての一つの重要な資料を提供してくれるものだと思ったりしておりまして、とりあえず暫定的な措置でつないでいって、そして集大成への踏み場にしていきたいということでございます。

阿部委員 今の御答弁に基づきまして、例えばでございますが、減税によって株式市場が活性化するか否かということも、政策評価の、今塩川大臣のおっしゃったことと連動してまいりますと思うんです。

 例えばですが、昭和四十五年と昭和六十年の家計の保有株式割合を比べましても、四十五年が三八・六%、六十年が二六・二%で、この間税制は全くさわっていない、非課税のまま推移しておるわけです。

 一方でございますが、特にここで目立った変化がございましたのは、平成十一年度、いわゆる申告税に一本化するよということがアナウンスされたときに、駆け込み的に源泉分離にだだっと流れましたことを見ましても、実は、税制をいじるということは、株式の売却とは関連したとしても、保有ということに関しましてはなかなか相関性が薄いようにも思いますし、そもそも税制で株式市場を活性化させるということのある種の限界については、財務大臣としてもいろいろ御認識がおありだと思うのです。

 でも、逆に、過去の御経験の中で、あるいはこれまでの政策評価の中で、税制が何らかの前向きな寄与を株式市場にしたと思われるような事象はございましたでしょうか。

塩川国務大臣 ちょうど昭和三十年、日本の経済が戦後から復興へ向かった時期がございました。そして、昭和三十五年、安保条約以降におきまして、これからは成長の時代に入るんだといいましたときに、その時分から株式は国民の財産として大きいウエートを占めまして、私ははっきりは忘れましたけれども、その当時言われましたことは、財産三等分化ということが非常に流行語のようになっておりまして、いわゆる不動産と現金と有価証券、それほど有価証券、つまり株式が一般庶民に浸透した時期がございました。

 そのときは何がそうなったかといいましたら、税制じゃございません。そうじゃなくて、事業会社がどんどんと積極的に増資増資をいたしましたし、その増資によるところのいわば見込み益というものが非常に大きかったということ。そして、それに伴いまして、株式がふえましたに伴って配当金も自動的にふえていったという、まさによき時代がございまして、そこで昭和四十年のときに山一証券問題が起こったわけでございまして、そこで一とんざはいたしましたけれども、しかしその時分はまだ依然として株に対する期待が大きい時代でございましたので、順調に株の保有は伸びておりました。

 しかし、バブルが今度発生いたしましたときに思わぬ誤算が起きましたことは、このバブルのときに、個人の株主は相当ここで株を売却していったということと、持っておった人は物すごい損をした、そういう悲劇的なことがここで起こってまいって、それ以来、株に対する信頼感というものを非常に失ってまいりました。

 そこで、源泉分離課税とかいうような制度を導入して、株へのインセンティブをつけようとはしてまいりましたけれども、このこと自体はそれほど大きい効果はなかったと思っております。現在におきましても、株式の振興ということは、税制だけでなかなかその目的を達することはできないと思っております。

 根本は、各企業がしっかりと体勢を立て直して、配当金を十分に分配してくれることであろうと思っておりますが、そうなるためにも一つの環境をつくっていかなきゃなりませんし、それは一つ、企業が構造改革をしてくれることだ、企業の構造改革の一つとして間接金融から直接金融への道を開いていく、こういうようなものが相まって今回の株式優遇の措置を講じようという思想に結びついたということでございますので、御理解いただきたいと思っております。

阿部委員 きょうの御答弁、ずっと今おっしゃられたようなことですので、御趣旨はわかりますが、あえて言えば、政治は長い目で見るべきですし、特に税制の問題というのは本当に軸がしっかりしていないと、短期的に、呼び水的に税制を利用するというのは、かえって私は禍根を残すように思いますんです。

 そして、今回苦肉の策として、例えば塩川財務大臣が一生懸命、直接金融へということでお考えになったであろう緊急投資優遇措置、いわゆる一千万までの購入をすれば十七年度から十九年度までに譲渡した場合でも非課税にする、もうこれは大バーゲンセールと思いますんですが、やはりこれに至っては、税の根幹的な考え方から、幾らバーゲンでも逸脱しておると私は思うわけです。

 そして、あえて言えば、先ほど塩川大臣がおっしゃった、やはり実体経済の流れに即してしか人々は株を買いたいとは思わない。だって、暗くて危なくてもうからないとなれば、申しわけないけれども、だれだって欲しくないのでございます。

 多少の呼び水をしようという苦肉の策であるのはわかった上で、私は、この緊急投資優遇措置というのは、いわば税の公平性からしても非常に問題が多いと考えております。

 この点に関しては、他の委員も御指摘でしたので、私はあえて見解だけを述べさせていただいて、そしてあわせて、短期で方針がころころ変わるというのは、先ほど言いましたように、市民からは見えづらい。

 例えば、ついせんだって百万円の株式譲渡益についての非課税ということが定められて、十月一日から施行であった。そのことが、また二年間急に延長された。例えば、十月一日から施行されて、ある期間を見て評価して延長なさるならまだわかるのですけれども、成績も出ていない時点で簡単に延長が決められるような、こんなふうにころころ延期、延期していっていいものかしらと思うのですが、この点について所管から御答弁をお願いいたします。

村上副大臣 阿部委員の御質問に答えたいと思います。

 先ほど来おっしゃっていますように、本年十月一日から実施されております一年超保有の上場株式に係る百万円の特別控除制度は、緊急経済対策の一環として、いつも言っていますように、個人投資家の株式市場への参加を促進するという観点から、現行の源泉分離選択課税制度のもとで最大限の政策的配慮を行うために設けられたものであります。

 今回の証券税制の改正において、この百万円の特別控除の適用を平成十七年末まで継続することとしておりますけれども、これはこの措置が当初の予定どおり平成十五年三月末で終了する場合には、平成十四年三月末までに購入しない限り、あと数カ月しかないわけですね、その措置の適用が受けられないこととなるために、個人投資家の株式市場への参加を促進するとの所期の政策誘導効果が薄れることになりかねないという事情に配慮したわけであります。

阿部委員 今御発言のようなことは、そもそもこの法案を初期に提出なさるときにわかっていたことではないでしょうか。それを、一度、一回法として成立されてからまた延長されるというふうなやり方を繰り返すことに、やはり、例えばほかの期間限定の減税措置についてもまた同じようなことが起こるのではないかと大変案じられます。

 なぜそもそも最初から平成十七年度末までの期限となさらなかったのでしょうか。続けての御答弁をお願いします。

大武政府参考人 お答えさせていただきます。

 今回の措置は、実は先般の改正は十五年三月末まで源泉分離課税を残すというのを前提にしておりましたが、今回、十五年一月からいわば抜本的に申告分離に一本化し、かつ繰越控除制度を入れることとなり、そしてさらには三年間の暫定措置として、長期保有の方に限って上場株式の譲渡益の税率を一〇%にするというようなものを全体系で導入させていただきました。その一〇%の低税率の特例もまた、十五年から十七年までという三年間に区切らせていただきました。

 したがいまして、それらを一体として行うという意味で、この特別の百万円特別控除も十七年末までということで時限を区切らせていただいたということでございます。

阿部委員 ただいまのは、当たり前に考えれば、御答弁にはなっていないと思います。

 なぜこういうふうに、ある程度方向性と長期的な考えを持って政策というのはお出しになるべきで、十月一日から施行されるものを、もう、施行されて一カ月かそこらでまた何年か延長というふうになさっていったのでは、場当たり的な政策を次々に打ち出して一貫性がないというふうに考えられても仕方がないことだと思います。

 そして、それが、国民は、どういう形で税を負担し、自分たちに還元されるかということが一番やはり自分たちにかかわることですので、大きな興味の中心になると思います。

 私は、そうしたやり方を見ていると、例えば期間限定の暫定税率の特例の創設といって、今回二〇%の税率から暫定的に一〇%に置くような税率についても、本当に三年間の期間限定になるのかどうか、極めて不安でございます。そして、これは、利子に対する課税とこうした証券税制に対する課税の明らかな不平等でもございますから、逆に、この一〇%になさる、新規購入についての一〇%ということがあくまでも期間限定というふうにこの場で明言していただけるかどうかの責任ある御答弁をいただきます。

大武政府参考人 お答えさせていただきます。

 ただいま先生が言われましたとおり、この一〇%という税率は、勤労所得に対する最低税率をも下回る水準ということでございまして、極めて異例なものだと存じております。

 ただ、先ほど来大臣もお答えさせていただきましたとおり、貯蓄優遇から投資優遇へ金融のあり方を切りかえる、税制でどこまでやれるかというのについては、それこそ政府税制調査会の答申にもありますとおり、それだけでは無理だということも十分承知しながら、環境の整備という意味で、個人投資家の市場への参加、なかんずく保有という形態での参加のきっかけになってほしいということで、三年間の限定として特に設けさせていただいているということかと存じます。

阿部委員 では、塩川財務大臣に伺います。

 三年間の期間限定をしたとしても、これはどっち方向にも抜けがたい期間限定だと私は思うのです。どういうことかといえば、株価が上がっておれば、もっともっと株の方に誘導していきたいからということで三年間の期限を延ばすことも考えられますし、株価が下がれば、まだまだ不十分だから三年を六年にいたしましょうということになるやもしれません。そして、先ほどお伺いいたしましたように、源泉分離課税、暫定的と言われながら、移行措置と言われながら、十五年続いたわけでございます。

 やはり、全体の政策の方向が見えない中で、こうした暫定的なものを次々に打ち出していく財務省の金融・証券税制について、再度、塩川財務大臣の御覚悟のほどをお伺いいたしたいと思います。

塩川国務大臣 多少試行錯誤的なことがあることは、私もこれは認めざるを得ないと思っておりますけれども、しかし、現在はそれほどに、今はそういうことをやらざるを得ないほどいわば先行きが不透明であるということ、この事実はやはり御承知いただきたいと思っております。

 おっしゃるように、できるだけ税制は恒久的なものが望ましいことは当然でございますけれども、しかし、経済は時々刻々激しく変動してまいりますので、そのようなかたくなな態度のみでは立ち行かないと思います。しかし、おっしゃる趣旨はようわかっておりますから、そういうことを踏んまえて、今後の運用を考えていきたい。

 これは一つの、試行錯誤的にやっていって、その中に、恒久的なものを、できるだけ抜本的に改正し得るものを見出し、方向を定めていきたいということは、先ほど申したとおりでございますので、よろしくお願いします。

阿部委員 では最後に、その試行錯誤的であるからというのも、塩川財務大臣の極めて正直なお答えではあると思うのですけれども、逆に、試行錯誤ということを、余りにもこの時期、緊急にというか火急にやり過ぎると私は思うのです。それが、どっしりと落ちつく期間をなくして、国民は、蛍の、こっちの水は甘いよみたいに、この税制で、これでなびくかどうかということにおいて、やはり私は、先ほど申しました、もうちょっと言えば、今は実体経済の回復に向けてある種の我慢の時期であるというふうに思います。そして、その我慢の時期に、不公平税制が過剰にしかれるということ。

 特に、もともと株式市場は、例えば御老人のマル優に比較いたしましても――今、御老人と障害の方はマル優の適用になっておりまして、このマル優制度もだんだん縮小される方向になってきております。これは、税の負担能力の低い方に多少の優遇措置をしてございますが、でも、私は、こういう税制で貯蓄や証券へのいろいろな優遇の手を打つよりも、根本的な課税制度での、国民にわかりやすい税制ということの方がより望ましいと思いますので、右往左往するような税制改革ということについて、見識をしっかりと持ってお取り組みいただきたいと重ねて要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

山口委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

山口委員長 この際、本案に対し、中川正春君外一名から、民主党・無所属クラブ提案による修正案が提出をされております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。中川正春君。

    ―――――――――――――

 租税特別措置法等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

中川(正)委員 租税特別措置法等の一部を改正する法律案に対する修正案の提案理由説明をいたします。

 ただいま議題となりました租税措置法等の一部を改正する法律案に対する修正案の提案理由は以下のとおりであります。

 現在、我が国の証券市場改革の最大の課題と言われる個人投資家の市場参入の促進については、これは言うまでもなく、証券市場の信頼回復、透明性の向上、株主重視の企業経営などのインフラの改革が不可欠であります。したがって、証券税制のみで貯蓄から投資に資金の流れを変えられるものでないことは、これは言うまでもありません。市場の透明性向上の観点からは、民主党が提案しているように、まず米国SEC並みの独立性と監視体制を持つ証券取引委員会を設けることが望まれます。こうしたインフラを整備した上で、次の二つの原則に基づいて、証券税制の見直しをする必要があります。

 第一に、短期的な株価対策ではなく、市場の信頼性や透明性の向上と整合的であること、第二に、金融資産に係る所得課税の公平性を実現すること、これが改正の基本的な方向性であるべきだと民主党は従来から主張をしてきました。

 この意味で、本改正案のうち、恒久税制というべき申告分離一本化、税率の引き下げ、譲渡損失の繰越控除については、私たち民主党が昨年秋以来主張してきた内容と同一であり、むしろ政府・与党の対応が遅きに失した感はあるものの、当然の改正であると考えるところであります。

 しかし、他方、同法案には、税の基本原則からの逸脱があります。取得費の特例、百万円特別控除の特例の延長、そして緊急投資優遇措置と称する非課税措置の創設など、法改正の本来の目的から大きくはみ出した、筋の悪い、的外れの株価対策、思いつきの対策としか言いようのない項目が含まれております。

 特に、緊急投資優遇措置については、短期的には買い誘引になるものの、実際に非課税が適用される時期になれば当然売り誘引になります。個人投資家にとってリスク低減の観点から望ましいとされる長期的、安定的な投資への誘導策とはなっていないのであります。むしろ、同一銘柄の回転売買による証券会社の手数料稼ぎなど、政策目的とは無関係の取引に利用される可能性も大きいと言わなければなりません。

 このため、民主党は、特に逸脱の甚だしいこの緊急優遇措置について、これを削除することが望ましいと考え、本修正案を提出することといたしました。

 次に、修正案の内容の概要を御説明申し上げます。

 本修正案では、改正案中、租税特別措置法第三十七条の十四の二関係の特定上場株式等に係る譲渡所得等の非課税に関する規定を削除するとともに、その他所要の規定を整備することといたしております。

 以上が、ここに修正案を提出する理由であります。

 何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願いを申し上げ、提案理由の説明といたします。ありがとうございました。

山口委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

山口委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木淑夫君。

鈴木(淑)委員 私は、自由党を代表して、政府提出の租税特別措置法等の一部改正案、並びに民主党・無所属クラブ提出の同修正案に反対の討論をいたします。

 反対の第一の理由は、証券税制改革が構造改革を実現する上でどのような効果を発揮するものなのか、将来の経済、社会の中でどのような位置づけになるものなのかを明確にすべきであるにもかかわらず、この租税特別措置法案では、その理念も哲学も全く感じられないことであります。

 証券税制の改革は、間接金融よりも直接金融への流れを促し、また貯蓄よりも投資を有利にすることにより、金融の市場化、証券化、グローバル化という国際的なトレンドに日本の税制を適応させることであります。それによって、グローバルな金融の競争に日本が勝ち抜き、また高貯蓄率を国内の高投資率、ひいては日本経済の中長期的な高成長に結びつけるための構造改革を行わなければなりません。しかしながら、これらの視点がこの法案には全く欠落しております。

 反対の第二の理由は、約千四百兆円の個人金融資産に占める株式保有のシェアを引き上げる観点から、配当課税を利子課税よりも優遇したり、株式をより長期間保有した場合の譲渡益課税を短期保有に比して優遇すべきであるにもかかわらず、法案には、恒久的措置として全くそれらが入っていない点であります。これでは、長期的な視野で株式に投資しようという個人投資家のインセンティブは強まりません。相変わらず、株式は譲渡益ねらいの短期回転売買の対象だという従来の考え方に立ち、短期の譲渡益課税だけを考えればよいという発想から抜け出しておりません。長期で多額の金融資産は、株よりも預貯金で持っていた方が有利な状態は変わらず、構造改革の理念に全く反しております。

 反対の第三の理由は、法案では、一年以上保有した上場株式の譲渡所得に対する暫定税率の特例の創設や、百万円特別控除の延長といった暫定措置、特例措置が入っておりますが、これらは、一時的に株価対策として暫定的に導入するものでしかない点であります。今後永続的に、株式を長期保有すれば金融資産の運用上有利になるという構造改革の理念は全く見ることができず、その場しのぎの株価対策にすぎないものであり、税の公平性、中立性の観点からも疑問が残ります。また、唯一の恒久的措置として、譲渡益課税を二六%から二〇%に引き下げ、三年間の損失繰り越しを認めておりますが、これらもまた不十分であります。

 以上申し上げましたように、今回の証券税制改正は、構造改革全体の中での位置づけが全く不明確であり、株式に対する当面の駆け込み需要を期待するだけの、株価維持のための暫定的施策にすぎませんので、自由党といたしましては、政府提出のこの租税特別措置法案に反対いたします。

 なお、民主党・無所属クラブ提出の修正案につきましては、配当課税に対する見直しや株式長期保有の恒久的優遇が含まれていないなど、証券税制の構造改革の観点からは不十分であると考えますので、反対いたします。

 以上で討論を終わります。(拍手)

山口委員長 吉井英勝君。

吉井委員 私は、日本共産党を代表して、政府提出の租税特別措置法改正案並びに民主党提出の同修正案に対する反対討論を行います。

 政府提出の改正法案に反対する第一の理由は、実体経済の回復や証券業界の信頼確保という本質的な問題の解決抜きに、キャピタルゲイン優遇税制によって一般国民を証券市場に参加させようとしていることです。

 本法案は、小泉内閣の骨太の方針及び改革先行プログラムで掲げた証券市場の構造改革に基づき、国民の個人金融資産を株式市場へ誘導しようとするものです。しかし、たとえ収益性が低くても元本が保証され、安全性の高い預貯金を選択するか、それとも収益性は見込めるけれどもリスクは高い株式を選ぶかは、本来、国民の選択の問題です。また、たび重なる不祥事によって、証券市場に対する不信も強いものがあります。しかるに、本来補完的役割を担っている税制に格別の減免措置を導入し、株式市場に国民の資金を呼び込むことは、本末転倒というべきものであり、到底賛成できません。

 反対する第二の理由は、導入される税制優遇の中身自体に多くの問題があるからです。

 まず、塩川財務大臣の肝いりで導入された、期間限定とはいえ譲渡益課税を非課税とする緊急投資優遇措置は、世界にも類例のない異例の優遇税制であります。また、源泉分離課税は廃止するものの税率を引き下げ、損失繰越控除制度を創設、株式の長期保有を特に優遇し、不労所得と高所得者を優遇するものとなっています。

 さらに、百万円の特別控除制度は、政府税調の「証券税制等についての意見」でも、「申告分離課税への一本化後においては、百万円特別控除制度を廃止又は縮減」と指摘していたのに、これを無視し、申告分離課税への一本化後、三年間もこの制度を温存しようとしています。

 現在、日本で株式を保有しているのは圧倒的に高所得者であることを考えれば、以上の措置は、結局、一部高所得者に多大の利益をもたらすものであり、このような不公平税制をさらに拡大する改正案は、到底容認できません。

 民主党の修正案につきましては、緊急投資優遇措置を削除する点は同意できます。しかし、百万円特別控除の特例の延長は削除せず、税率の引き下げや譲渡損失の繰越控除は評価するというものであり、賛成できません。

 最後に、私は、そもそも株式譲渡益は他の所得と合算して課税すべきであり、税制は総合累進課税を適用すべきであることを表明して、反対討論を終わります。(拍手)

山口委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

山口委員長 これより採決に入ります。

 租税特別措置法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、中川正春君外一名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

山口委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、原案について採決いたします。

 原案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

山口委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

山口委員長 次回は、明七日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十三分散会




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