衆議院

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第7号 平成13年11月7日(水曜日)

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平成十三年十一月七日(水曜日)

    午前十時四分開議

 出席委員

   委員長 山口 俊一君

   理事 伊藤 公介君 理事 奥山 茂彦君

   理事 佐藤 剛男君 理事 根本  匠君

   理事 海江田万里君 理事 中川 正春君

   理事 石井 啓一君 理事 鈴木 淑夫君

      大野 松茂君    倉田 雅年君

      小泉 龍司君    七条  明君

      実川 幸夫君    砂田 圭佑君

      竹下  亘君    中野  清君

      中村正三郎君    牧野 隆守君

      増原 義剛君    山本 明彦君

      山本 幸三君    渡辺 喜美君

      五十嵐文彦君    生方 幸夫君

      河村たかし君    小泉 俊明君

      佐藤 観樹君    末松 義規君

      永田 寿康君    長妻  昭君

      牧  義夫君    谷口 隆義君

      若松 謙維君    中塚 一宏君

      佐々木憲昭君    吉井 英勝君

      阿部 知子君    植田 至紀君

    …………………………………

   国務大臣

   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君

   内閣府副大臣       村田 吉隆君

   財務大臣政務官      中野  清君

   政府参考人

   (金融庁長官)      森  昭治君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    高木 祥吉君

   政府参考人

   (総務省大臣官房総括審議

   官)           林  省吾君

   政府参考人

   (総務省郵政企画管理局長

   )            松井  浩君

   参考人

   (株式会社新生銀行代表取

   締役会長兼社長)     八城 政基君

   参考人

   (株式会社あおぞら銀行代

   表取締役社長)      丸山  博君

   財務金融委員会専門員   白須 光美君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月七日

 辞任         補欠選任

  竹本 直一君     実川 幸夫君

  江崎洋一郎君     牧  義夫君

同日

 辞任         補欠選任

  実川 幸夫君     竹本 直一君

  牧  義夫君     江崎洋一郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 金融に関する件(破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告)

 金融に関する件(新銀行設立後の経営状況)




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     ――――◇―――――

山口委員長 これより会議を開きます。

 金融に関する件について調査を進めます。

 去る九月十一日、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律第五条の規定に基づき、国会に提出されました破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告につきまして、概要の説明を求めます。金融担当大臣柳澤伯夫君。

柳澤国務大臣 去る九月十一日、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律第五条に基づき、平成十三年一月六日以降七月三十一日までを報告対象期間として、その間における破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告書を国会に提出申し上げました。

 本日、本報告に対する御審議をいただくに先立ちまして、簡単ではございますが、本報告の概要について御説明申し上げます。

 まず初めに、長銀及び日債銀の特別公的管理後の諸措置につきまして、概要を申し上げます。

 日本債券信用銀行につきましては、前回御報告申し上げましたように、昨年九月一日、預金保険機構が保有する日債銀の既存普通株式約二十五億株をソフトバンク、オリックス及び東京海上火災保険を中心に構成される出資グループに対して譲渡することにより、同行に係る特別公的管理が終了しておりました。その際、昨年八月三十一日、予備的基準日貸借対照表に基づき三兆二千四百二十八億円の金銭贈与、損失補てんが行われておりましたが、本年二月七日、基準日貸借対照表の確定に伴い、あおぞら銀行より預金保険機構に対して、金銭贈与に係る特例資金援助及び損失の補てん額の変更の申し込みがなされ、同日、内閣総理大臣等により金銭の贈与、損失の補てん額を三兆二千三百六十五億円に変更することが承認されました。

 また、新生銀行及びあおぞら銀行からの預金保険機構による瑕疵担保条項に基づく債権買い取りの状況についてですが、今回の報告対象期間中に預金保険機構が引き取った案件は、新生銀行については五十五件で、債権額二千六百五十九億円、支払い額千五百五十七億円であり、あおぞら銀行については十六件で、債権額三百七十三億円、支払い額二百十二億円となっております。

 次に、金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分が行われた金融機関に関する措置につきまして、御説明申し上げます。

 管理を命ずる処分が行われていた幸福銀行、東京相和銀行、なみはや銀行及び新潟中央銀行の四行の受け皿への営業譲渡については、各行の金融整理管財人により鋭意作業、検討が進められた結果、なみはや銀行が本年二月十三日に大和銀行及び近畿大阪銀行に、幸福銀行が二月二十六日に関西さわやか銀行に、新潟中央銀行が五月九日に第四銀行、同十四日に大光銀行を初めとする五行に、東京相和銀行が六月十一日に東京スター銀行にそれぞれ譲渡されております。

 また、協同組織金融機関に対しましては、今回の報告対象期間中に、十二信用組合に対し金融整理管財人による管理を命ずる処分が行われております。なお、その後において、五信用組合及び三信用金庫に対し、同様の措置がとられております。

 続きまして、預金保険法に基づく金融機関の破綻処理について、御説明申し上げます。今回の報告対象期間中においては、破綻信用金庫の事業譲渡二件について、預金保険法単独適用案件として処理が行われております。

 最後に、これらの破綻金融機関の処理に係る預金保険機構による主な資金援助等の実施状況及び公的資金の使用状況について、御説明申し上げます。

 破綻金融機関の救済金融機関への営業譲渡等に際し、破綻金融機関の債務超過の補てん等のために預金保険機構から救済金融機関に交付される金銭の贈与に係る資金援助額は、今回の報告対象期間中において二兆六千八百七十六億円であり、これまでの累計で十六兆八百五億円となっております。このうち、ペイオフコストの範囲内の金銭の贈与に係る資金援助の額は、報告対象期間中で一兆三千六百九十九億円、これまでの累計で五兆五千六百五十九億円であり、ペイオフコストを超える金銭の贈与に係る資金援助の額は、報告対象期間中で一兆三千百七十七億円、これまでの累計で十兆五千百四十六億円となっております。

 また、預金保険機構による破綻金融機関からの資産買い取り額は、報告対象期間中で七千五百四十九億円、これまでの累計で五兆四千二百十五億円となっており、金融再生法第五十三条に基づく健全金融機関からの資産買い取り額は、報告対象期間中で六十四億円、これまでの累計で三百四十六億円となっております。

 次に、特別公的管理銀行の業務の実施により発生した損失を補てんする金融再生法第六十二条に基づく損失補てんは、これまでの累計で四千五百億円であり、報告対象期間中においては、長銀、日債銀の基準日貸借対照表の確定による清算の結果、八十一億円増額されております。他方、当該清算の結果、金銭贈与額が百二十三億円減額されております。

 さらに、預金保険機構による金融機能早期健全化法に基づく優先株式等の引き受け等の額は、報告対象期間中で千四十億円、これまでの累計で八兆四千九百三十三億円となっております。

 これらの預金保険機構による資金援助等についてはいわゆる七十兆円の公的資金枠が措置されておりますが、最後に、その使用状況について申し述べます。

 まず、特例業務勘定の特例業務基金に交付された十三兆円の交付国債の償還額の累計は、七月三十一日現在で八兆九千九十五億円となっております。

 また、一般勘定、特例業務勘定、金融再生勘定及び金融機能早期健全化勘定における政府保証つき借り入れ等の残高は、七月三十一日現在で各勘定合計で十九兆八千六百六十三億円となっております。

 ただいま概要を御説明申し上げましたとおり、破綻金融機関の処理に関しては、これまでも適時適切に所要の措置を講じることに努めてきたところでありますが、今後とも、金融庁といたしましては、我が国の金融システムの一層の安定に向けて万全を期してまいる所存でございます。

 御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございました。

山口委員長 これにて概要の説明は終了いたしました。

    ―――――――――――――

山口委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として金融庁長官森昭治君、金融庁監督局長高木祥吉君、総務省大臣官房総括審議官林省吾君及び総務省郵政企画管理局長松井浩君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山口委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤観樹君。

佐藤(観)委員 ただいま金融担当大臣から報告がありました破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告、まことに多岐にわたり、とりわけ預金保険機構のあり方等々、お伺いしたい点は多々あるのでありますが、きょうは、急遽時間が短くなりましたのでペイオフ問題、ここでも触れておりますが、とりわけ地方公共団体への影響について、関係のところにお伺いをしたいと思います。

 きのうも委員会で、ペイオフを来年の四月一日から解禁するのかということにつきまして、柳澤金融担当大臣は、これはやりますということを言っておられました。それで、その理由の中に、もちろんかねてから言っていることであるし、資本主義の大筋からいってもそういうことでもあるし、ただ、一挙にそういう体制に入るには少し準備が要るだろうということで一年延びたというふうに理解をしておるのでありますけれども、ほぼその準備はできたし、当然、来年四月からはペイオフは解禁をしなければならないというふうに考えますけれども、改めて柳澤大臣の決意、そして、これはいろいろ議論があるのを私も知っておりますが、大臣の政治生命をかけても、そのころまできっと金融担当大臣だと思うんですが、その決意について冒頭お伺いいたします。

柳澤国務大臣 佐藤委員、長く大蔵委員、引き続いてこの財務金融委員会の委員をお務めになられまして、この間における日本の金融システムの動揺とその安定化に向けての各般の努力について、いろいろと有力の議員として御発言になられ、また全体として指導的な役割をお果たしになってこられた方でございまして、この間の経緯については特につまびらかでいらっしゃる委員の方である、このように認識をいたしておりますが、そのような方から改めて決意のほどをと言われておりますので、以下率直に申させていただきます。

 私は、基本的に、一九九七年の秋の金融の動揺の時期までは、事実上預金の全額保護が行政の実務によって、いわゆる護送船団方式と呼ばれる方式でありますが、それによって実行されてきたというふうな認識でございます。それが、先ほど申した時期における金融の動揺の中で改めて法的にどうなんだということが、その整備を求められて、そして緊急措置法が二法制定され、そのうちの特に再生法、あるいは預金保険法の改正によってその法律的な裏打ちが行われた、こういうことであります。

 しかし、これは基本的に、再生法そのものも時限立法でございましたし、預金保険法の全額保護規定も、いわば附則に書かれているような、そういう臨時的な措置として位置づけられていたことは御案内のとおりでございます。したがって、これはどういうふうに見ても臨時異例の措置であるということでございます。

 その臨時異例の措置を終わるか終わらないかという問題であるわけでございますけれども、事実上のことと法律的な裏づけを持った措置としての預金の全額保護という世界から、私どもは初めて、預金が預金保険のみによってしか保護されない、それ以上の保護ということはないという時代に入る。これはだれしも不安に思うし、いろいろと心配があることは、これはよくわかるわけでございますが、そこに入っていかない限り、私は、本当の意味のマーケットメカニズムによる相互の監視というか、経済主体が自由にいろいろの意思判断をすることによって一番効率的な経済が運営されるということが損なわれるというふうに考えております。これが大前提でございます。

 それから、最近の問題で特に私が指摘したいのは、やはりここでペイオフ解禁をまた延ばすとかなんとかいったら、せっかくずっと、経済のいろいろなこの厳しい状況の中でそれぞれの主体が緊張感を持ってこの時代を迎える準備をしているわけですけれども、そういったものが一挙に弛緩をしてしまうということを私は考えておりまして、そういうことは決して日本の金融システムの安定あるいは金融機関の健全化にとって適切でないと私は考えていまして、そういうことから、あと残された時間を有効に、最大限の努力をしまして来年の四月一日からは新しい時代に入っていくべきものである、つまりペイオフの凍結を解除すべきものである、このように強く決意をしている次第であります。

佐藤(観)委員 そこで、私が非常に心配をしておりますのは、地方公共団体が持っております公金ですね、これがペイオフ解禁によってどういう影響をこうむるかというのをちょっと点検をしたいのであります。

 それで、総務省、林さん、ちょっと簡単な前提を一応確認しておきたいのであります。

 一つは、地方公共団体の多くが、地銀、第二地銀が指定金融機関が多い。それで、特に町村の場合には県信連、農協の割合も多いという状況。一々数字を挙げればいいんですが時間がありませんから、そういう傾向。

 それから、最近地方銀行あるいは第二地銀の経営状況が発表になって、九月期の発表だと、これが残念ながら下方修正、つまり黒字のつもりだったのが赤字になった。全部が全部じゃありませんけれども、かなり下方修正を迫られているという状況。

 それから、そのために今、公金が債券なりあるいは郵便貯金なり、そういう移動が徐々に始まっている、こういうふうに私いろいろと調べておるのでありますが、そのことの確認。

 それから、ざっと地方公共団体の公金というものは二十兆円。

 この四点、確認をしておきたいのです。

林政府参考人 ペイオフに対応する地方団体の状況でございますが、御質問の中でお触れになりました指定金融機関の状況、また、新聞報道等によるものでありますが、銀行、金融機関の経営状況につきまして、下方修正するような金融機関がふえているということを報道で私どもも承知をいたしております。

 また、そういう中で、地方団体におきましては、ペイオフの解禁を控えましていろいろな対応策がとられているわけでありますが、幾つかの団体におきましては、御指摘になりましたような対応策が講じられているところもある、こういうふうに伺っております。

 なお、地方公共団体の預金総量、年々また状況によって変動いたしておりまして、最新の状況を持っておりませんが、ほぼ御指摘のような規模ではないかと承知いたしております。

佐藤(観)委員 そこで、一つは、ことしの三月に、これは徳島県が阿波銀行に預けていた公金でありますけれども、オンブズマンから指摘を受けて、高松高裁はことしの三月に、正当な運用なら得られたであろう利益を失い、自治体が損害をこうむるおそれは否定できないという判断で、いわば自治体にこういう公金の管理ではいけないということの判決を下したわけであります。これは、いわば定期に預けておけばもう少し金利が高かったんだけれども、不定期のものにしたということで、やはりペイオフになっても、まだ一年不定期なら時間があるものですからそうしたということだと思うのですが、これもいけませんと。

 高裁ですから、恐らくこれは最高裁まで行くのじゃないかと思いますが、しかし今は高裁の判決があるわけでありまして、そういった意味で、公金の扱い方というのを間違えますと、間違えるというか安易にしますと、これはオンブズマンの指摘だけではなくて、いろいろな意味でこれから糾弾をされていくという非常に重要な時期に来たというふうに認識しておりますが、総務省の方ではいかがですか。

林政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘のように、ペイオフの解禁後は、地方公共団体におきましても、みずからの公金預金の管理運用に関しましては自己責任が前提となりますために、各地方公共団体におきましては、取引金融機関の経営状況を把握した上で、地方自治法の趣旨を踏まえ、安全で確実かつ有利な公金の管理に取り組む必要があることになります。

 このため、地方公共団体におきましては、金融機関の経営状況を正確に把握するとか、あるいは、地方自治法に基づきます出納責任者の責務を全ういたしますためのいろいろな対策をペイオフ解禁を前にして検討している状況にございます。

佐藤(観)委員 今審議官が言った後の方の問題は、そこが一番大事なんですが、もう少し詳しく後でお伺いします。

 そこで、何が一番安全であろうか、まず思いつくのは郵便貯金であります。

 しかし、現下のさまざまな政治的状況の中で、全部が全部行くとは限りませんが、二十兆円という地方公共団体の公金が全部郵便貯金になっちゃうと、ただ、これは当座性がないものですからなかなかそうはならぬと思いますけれども、そういうことになると、全体的な金融、特に、先ほど触れましたように、地方銀行、第二地銀という地域の経済に根差したものの根底が崩れるということになってくると思うのであります。

 このことは、いろいろ新聞であるいは雑誌で報道されている、この銀行は日本の中で一番いいという銀行に公金を預けても同じことで、つまり地域の経済、地域の金融機関というのが非常に経営が危なくなるということにつながっていくわけでありますので、事は簡単ではないのであります。

 ちょっと総務省にお伺いしますけれども、旧郵政省にお伺いしますが、今、我々個人は御承知のように最高一千万プラス金利までいい、それまでですよということになっていますけれども、自治体の場合には、これは制限がない。特殊法人その他もそうですけれども、ないということになっております。現に、現状ではそういう意味で、理由はわからないけれども、持ち主はわかっていますから、地方公共団体であるということはわかっていますから、地方公共団体が郵便貯金にシフトするということがかなり多く出ているのかどうか。

 二つ目は、それに対して、預入限度額を引き下げるべきである、地方公共団体あるいは特殊法人、その他のいわば一千万という限度がないものについてはこの限度を設けるべきではないかという意見があるわけでありますけれども、こういったものについて、総務省の方ではどういうふうに把握をして、どういうふうに考えておられますか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 地方公共団体の郵便貯金の限度額につきましては、一般の例と違いまして一千万円という限度額が適用されない、郵便貯金法の第十条に基づきましてそういうことになっているわけでございますが、そういったものは、先生の御指摘のように、地方公共団体以外でも、特殊法人だとか、社団法人だとか、そういった例でもそのようになってございます。

 ただ、この地方公共団体の預金でございますけれども、実情をまず申し上げますと、地方公共団体の資金を集中的に取り扱う民間の指定金融機関が、総合的な金融取引の一環として取り扱っておられます。郵便局につきましては、地方自治法令上、指定金融機関とはなれない状況になっておりますので、そういう意味で、実態としてはほとんど利用されていないということがございます。

 私どもからしますと、全体で約二百五十兆ありますけれども、私どもの推計では、地方公共団体は〇・一%ぐらい、千分の一ぐらいですから、なかなか、それ自体を集計はしておりませんので、個々の動きについて目立った動きの報告はございません、現在ございませんが、量的なイメージがそんなところでございます。

 そうはいいましても、いろいろ御議論が前の国会でもございましたですが、私どもといたしましては、郵便貯金の目的、それから地方公共団体等の関係者の御意見も十分お聞きしながら、検討を進めていく必要があろうかというふうに思っております。

 さらに、御案内のように、平成十五年には郵政事業につきましては新しい国営の新たな公社に移行するということが基本法で決まっておりますので、この公社の制度設計の検討にあわせまして検討し、結論も出してまいりたいというふうに考えているところでございます。

佐藤(観)委員 総務省、結構です。

 それで、私は、何といっても地方公共団体のこれは公金ですから、金融機関が倒産をした、あるいは清算をしたときに、これは優先的に、国税、地方税、労働債権あるいはその後のいろいろ事務的にやっていく費用等と同じように、優先的に地方公共団体の公金というのは確保できないんだろうかということを、いろいろそう思って調べてみたのでありますが、これは法務省にもお伺いをし、内閣法制局、衆議院の法制局にもいろいろと調べてもらったんですが、結論的には、非常に難しいのであります。もうそのことは触れませんが、結論的にはそれは非常に難しい。

 ということで、総務省の方でことしの三月三十日に、「地方公共団体におけるペイオフ解禁への対応方策研究会とりまとめ」というのを出して、ペイオフが解禁された場合にはこういうふうに対応しなさいというようなまとめをしております。これは簡単でいいですから、ちょっとどういう内容で、どういう方法を具体的にとりなさいと言っているか、お答えをいただきたいと思います。

林政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘の研究会の報告書は、本年の三月に取りまとめられたものでございまして、旧自治省時代におきまして、ペイオフの解禁を控えまして、金融機関や地方公共団体の代表等の方にお集まりをいただいて議論をし、取りまとめたものでございます。

 その中では、地方公共団体の公金預金の適切な管理運用に必要な対策といたしまして、金融機関の経営状況を把握するために情報データベースの構築等の体制整備、これが一番重要であるということも掲げておりますし、また、預金債権と借入金債務との相殺であるとか、債券による運用であるとか、あるいは制度融資における預託金方式から利子補給方式への変更等、公金預金の類型に応じた対応方策をお示しいたしたところでございます。

佐藤(観)委員 今審議官が言われた中で、一つは、それは当然のことながら、指定金融機関の中身をよく調べなさいということが言われています。当然のことながら、健全性の分析、収益性の分析、流動性の分析等のほかに、二〇〇〇年の金融再生法の中で、金融機関にリスク債権の開示の公表を義務づけておって、そこで開示項目というのは、リスク管理債権の状況、貸倒引当金等の状況、リスク管理債権に対する引き当て率のほか、金融再生法開示債権と金融再生債権の保全状況ということで、例の正常債権から要管理債権からずっと、こういうことを開示しなさいということを決めておるわけですね。

 事実それを実行しておるわけでありますが、問題は、それでは、これは金融庁の事務方でいいんですけれども、指定金融機関に対しまして地方公共団体が、今申しましたような数字以外に、おまえさんのところはどういうふうになって、これはいいのか、この金融機関が貸しているこの企業はいいのかと、そういう情報というのを指定金融機関は地方公共団体に言うことはできるシステムになっていますか。

 つまり、今申しましたようなもののほかに、こういった当てられた開示の、ディスクロージャーのほかに、指定金融機関だから特別、おい、ここはどうなった、あそこはどうなっているということを地方公共団体に開示するということは許されますか。

柳澤国務大臣 今の先生のお話、逐一正確に理解したかどうかはちょっとおぼつかないところもありますが、この企業に対する貸し出しがどうなっているかというようなことの問い合わせに応ずることができるかということですと、まあこれは、個別の案件についての情報ということについては難しいかと思います。それと、個別性ということに加えて、やはり情報開示についての公平性というようなことも考慮に入れなければならないという観点からいっても、難しいのではないか。

 今、突然の御質問で、ちょっと事務局も、監督局長かと思いますけれども、おりませんので、とりあえず私の感じとしてそのことを申し上げておきます。

佐藤(観)委員 私は、大臣の言われるとおりだと思います。つまり、ディスクロージャーするにしても、一般の人にディスクロージャーするのと、地方公共団体と指定金融機関だからという特別な関係でその中の個々をディスクロージャーするということは、やはりこれは秘密事項等を開示することになるわけで、これはできない。

 だから、今、林審議官が言われたように、一般論として、今までは指定金融機関に大体任せておけば心配なくよかったわけでありますが、ペイオフ後というのはそういうことじゃいけませんよ、指定金融機関といえども、あるいはその他の関係する金融機関といえども、しっかりと地方公共団体が見ていなきゃだめですよと。そういう意味においては当たると私は思うんですが、では、実際にこれで大丈夫かということにはならないと思うんです。

 それから、二番目に言われました、地方債と地方公共団体が預けているお金との相殺の問題でありますけれども、これも、要するに借りているものが非常に多くて預けている方の額が少なければ、相殺してまだ担保できますが、逆の場合、全体的な数字を見るとたしか五分の一ぐらいしか、地方債の合計に対して預けている額の方が多くて、相殺しただけでは担保できないということになっていると思います。ですから、これは一つの方法であることは間違いないけれども、これだけでまた全部公金をペイオフ後確保できるかどうか、万が一の場合できるかということになると、なかなかそうはならない。

 そこで、一番有効なのは、あなたも言ったと思いますが、銀行が持っている債券に担保をつける。恐らくその多くが国債で持っているんだと思いますけれども、担保を地方公共団体がつけるというやり方が一番確実な方法ではないか。それで、私が先ほど触れたように、地方公共団体の公金というものはいわば優先的に確保できないのかという発想と、地方公共団体の持っている債権について、担保をつけるというやり方が一番確実なんじゃないかという結論に私は達したわけであります。

 そこで、地方自治法の二百三十五条、「都道府県は、政令の定めるところにより、金融機関を指定して、都道府県の公金の収納又は支払の事務を取り扱わせなければならない」「市町村は、政令の定めるところにより、金融機関を指定して、市町村の公金の収納又は支払の事務を取り扱わせることができる」これを受けて、政令の方で、これが有名な地方自治法の長野士郎さんの解説で、いわば基本になっているものでありますが、この解説の中で、「指定金融機関は、普通地方公共団体の長の定めるところにより担保を提供しなければならない」これは施行令の百六十八条の二の三項でありますが、「従来の規定と同じであつて、たとえ預金制度であつても公金の取扱いを総括するところから、将来発生する債務の履行を確保するため提供せしめるもので、担保の種類、価格等は、指定契約に定めておくのが通例である」こういうふうになっているわけですよね。

 そしてもう一つ、施行令の百六十八条の六、歳計現金の保管、「出納長又は収入役は、歳計現金を指定金融機関その他の確実な金融機関への預金その他の最も確実かつ有利な方法によつて保管しなければならない」先ほど林審議官が答弁の中で言ったことであります。

 それで、二つ質問しておきたいと思います。

 一つは、これを行うためには、地方公共団体とそれから指定金融機関の間で契約をおのおの、どういう時点か、結んでおくということをやらなきゃいかぬと思うのでありますが、こういうペイオフ解禁という状況を踏まえて、その契約をしなさいという指導、かなり前からされているという話もあるけれども、本当に一〇〇%されているのかどうかということであります。したがって、その契約をこれからどうやっていかなきゃいかぬかということ。

 それともう一つは、これが担保できれば、ペイオフ後の地方公共団体の公金が万が一の金融機関の破綻なり清算でなくなるということはなくなっていくというふうに思いますので、一体、地方公共団体はこの担保をつけるということをどれくらいやっているのか、そのことも報告をしてもらいたい。

林政府参考人 御指摘のとおり、担保につきましては、地方自治法施行令百六十八条の二におきまして規定されているところであります。

 これを受けまして、私どもといたしましても、先ほど御答弁申し上げました研究会の検討結果も踏まえて、地方団体にはこういうものを参考としながら指定金融機関との間でちゃんと契約を結ぶよう指導はいたしているところでありますが、どの程度地方団体において指定金融機関との間でそういう契約がされているか、また、それに基づいてどの程度担保が実際にとられているかにつきましては詳細を把握いたしておりませんので、お許しをいただきたいと思います。

 ただ、その研究会での議論の中でも、担保につきましては、実態といたしましてなかなか預金額をカバーできるものが対象として具体的に見つからないとか、あるいは国債、地方債等を担保とすることについてはなかなか金融機関の方で難しい問題があって成約されにくいとか、そういう実情はお聞きをいたしているところでございます。

佐藤(観)委員 一番大事なのは最後のところなんでありまして、一つは、この契約が金額ベースでもどのくらいなされているものかということをひとつ、これからまだいろいろ委員会がありますから、ぜひ調べ上げた上に発表してもらいたい。

 それから、金融庁の方に要望でありますが、今審議官から話がありましたように、金融機関側が公金に対して担保をつけることについて拒んでいるというような答弁が今あったわけでありますけれども、私は、これは個人のお金ではなくて税金で集めた公金でありますから、万が一のときにもこの公金は担保できる、そういう措置をすべきであるというふうに思います。当然だと思うのですが、ぜひそのことについて、銀行協会か地銀協会か第二地銀協会か知りませんが、知りませんがというよりも、おのおの信金なり信組なりのそういう連合会もあるわけですから、そこでしっかりやってもらわないと、万が一のときに指定金融機関がつぶれて公金が逸失してしまうというようなことがあってはならぬと思いますので、その手当てを金融庁、担当大臣としてやっていただきたいと思いますが、いかがですか。

柳澤国務大臣 金融機関の中で公金を受け入れる、預金の形態あるいは当座預金での資金繰りの実務に当たるというようなことを含めて預金を受け入れるというときに、それが税金であるということから、このペイオフ時代においても特別な保護をなされるべきではないかという観点からの種々の方策、その中で特に有力な担保の提供というようなことの御提案がありましたけれども、そういう仕組みがあったということは当然でございますけれども、実際上それが今多数使われているということもないものですから突然のお話のようにもお聞きいたしたのでございますが、いずれにせよ、これはちょっと金融審議会などの議論も簡単にしてもらって結論を速急に出したい、このように存じます。

佐藤(観)委員 終わります。

山口委員長 次に、五十嵐文彦君。

五十嵐委員 大変偉い方にやっとお出ましをいただきましたので感謝を申し上げつつ、時間が短いので簡潔にお答えを願いたいと思います。

 森長官にお尋ねをいたします。森長官、株取引については詳しいですか。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 金融庁、当然取引所あるいは市場そのものの監督をしておりますので、その監督上必要な知識は有していなければいけないと思っております。

五十嵐委員 七月の十九日に、海の日を控えてマイカル株が急落をいたしました。そのときに慌ててマイカル自身も、心配はないんだ、これは風評だということを言ったわけですけれども、メーンバンクの第一勧銀が、東証の上場部へわざわざ出かけて、資金面を含め最大限の支援を行っていく方針ですという否定の文書をつくって投資家向けのネットワークに載せたということであります。

 市場関係者によると、株価形成のメカニズムからいくと、このときもう既にマイカル株は空売り停止銘柄に指定されていたんですね。風説がたとえ流布されても、空売り注文がなければ意味はないということで、なぜこんな意味のないことをしたんだろうか、DKBは知らないはずがないのに、これは金融庁がそのような指示をしたんではないかということが言われているんですけれども、そのような事実はありますか。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 そのような事実は全くございません。

五十嵐委員 それで本題に入るわけですが、八月の十日、金融庁長官は新生銀行の八城さんとお会いになられましたか。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 新生銀行は、御承知のとおり特別公的管理銀行から譲り渡した先でございますし、さらに資本注入行でございますので、いろいろな機会をとらえて意見交換をしております。その監督上の意見交換の一環として、おっしゃる日に八城社長と会いましたのは事実でございます。

五十嵐委員 マイカルはもう破綻をしておりますから構わないと思うのですが、そのときにマイカルの行内格付について、貸し付けの区分ですけれども、新生銀行と話をしたか、引き揚げを求めたかというような事実はありますか。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生がおっしゃいましたとおり、一般的には個々の企業名につきましては競争上の地位を脅かすという面から触れるわけにはいかないのでございますけれども、まさに五十嵐先生がおっしゃいましたように、マイカルは既に破綻しておりますのであえて言わせていただければ、八月十日の八城さんとの面談においてマイカルという名は一切出ていないことを陪席者にも確認しております。

五十嵐委員 そうすると、問題は九月の二十六日付のウォールストリート・ジャーナル、これに、八月の十日の会合で森さんが八城さんに言ったことが、これは新生銀行から出された会合の議事録によればという形で紹介をされております。ジェイソン・シンガー、フレッド・ドゥボラックという二名の記者の方の署名が入っている記事でありまして、また出典も、新生から出された行内向けのメールをプリントアウトしたものをもらったものだと。

 新生から出された会合議事録によれば、八月十日の会合で森長官は八城氏にこう言ったと。複数の国会議員が批判をしている、どのように批判しているかというと、多くの借り手企業の借りかえを拒否していると複数の国会議員が批判をしていると。そのまま続けてのセンテンスで、そのウォールストリート・ジャーナル紙には、森氏は、新生が融資継続を余りにリスキーでできないと判断していた四つの企業を特定した、名前を挙げたということをはっきりと書かれているわけです。

 これはどうも読み違えようがないんですね。一つのセンテンスの中で、複数の国会議員が借りかえに応じないといって新生銀行を批判しているということを森さんが指摘をし、また、融資継続をとてもリスキーでできないと新生銀行が判断をしていた四つの企業名を挙げたと。一つの文章の中で、一段落の中でこのことが続けて出てくるわけですが、これは私は、明らかに国会議員の要請を受けて森さんがそのことを新生銀行に伝えたというふうに普通は読み取れるわけですが、これについてどう釈明をされますか。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 若干説明させていただきたいのでございますけれども、先ほど申しましたように、八月十日の会談は、新生銀行に対する監督上の見地から、先方も陪席者を置き、当方も陪席者を置き、金融庁の行政として行ったものでございますが、そこで焦点になりましたのは、新生銀行は資本注入行でございまして、資本注入行である限りは経営健全化計画というものを出しているわけでございます。

 その経営健全化計画の六十一ページに、「今後の資金の貸し付けその他信用供与の円滑化のための方策」という欄がございまして、そこで先方は、「弊行としましては、資産判定において適資産とされた貸し出し関連資産については保有を継続するとともに、これらの顧客に対しては引き続き適切な融資を継続し、信用供与の円滑化を図っていく方針です」こういうことを我々に約束しておるわけでございます。

 これのフォローアップの一環として、当時国会等という言葉を使ったと私は思うんですけれども、新生銀行の貸し渋り、あるいは週刊誌等では貸しはがしという言葉も使っていたと思うんですが、いろいろ問題になっていた。事実、国会議員からの新生銀行の貸し渋りに対する質問主意書も出ておりました。

 そういうことを念頭に置いて、こういう批判があります、これはあなたが約束しております経営健全化計画の中での方針と明らかに違うんじゃないですかということを申し上げたわけでございまして、まず一つ申し上げたいのは、この話で、つまり新生銀行の貸し渋り問題で、国会議員の先生から個々の話はあったことはございません。陳情ももちろん受けたことはございません。

 それを一つ言わせていただきたいことと、当時、融資対応が問題なのでございますけれども、融資対応については、個々の融資対応、個別の企業に、貸し続けろとか回収するな、こういうことは我々の行政としては介入できません。我々が言えるのは、融資姿勢の問題でございます。

 ただ、その際に、融資姿勢が、あなたは経営健全化計画の約束したこととか、それているんじゃないですかということに具体性を持たせるために、当時原課に入っていたいろいろな企業の幾つかを、それはもちろん新生銀行の自己査定で要注意先になっているところです、破綻懸念先ではございません。新生銀行自身が自己査定で要注意としたところについて、そういうことを言われているというのはどういうことですかというときに、例示として具体名は確かに言いました。言いましたが、それは例示として言っただけで、その企業について、だから回収をやめろとか、そういうことを言った覚えは全くございません。

 なお、申し上げれば、なぜそういう、これは資本注入行の融資方針としていかがなものかという以外に、今不良債権処理問題で金融庁は、要注意先は健全化の努力をしてほしい、破綻懸念になったら最終処理を考えてくれ、そこに明確な線を引っ張っておりますので、要注意先について回収や貸し渋りというのは、金融庁の一般の今の不良債権行政からも反しておるものでございますので、その点を注意するために、そして話を具体性を持たせるために幾つかの企業を例示した次第でございます。

五十嵐委員 今のお答えの中に幾つか問題があるんですが、一つは、この英文では国会議員とはっきり書いてあるんですね。今のお話では、国会等という表現を使われたというんですが、なぜ国会議員と言われたのか。

 それから、四つの企業名というのは、それでもどうしてこういうところで挙げなきゃいけないのかというのはよくわからない。しかも、国会議員の話とつながっているところで具体的な企業名を挙げたことがわからない。

 それからもう一つは、その企業名というのは大企業ですか、中小企業ですか。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま五十嵐先生御指摘の日本の経済誌の記事は読ませていただきました。大筋において何か間違いがあるということじゃないんですけれども、私は、話で国会等あるいは国会議員という言葉を使ったかもしれません。そこは私は確たる記憶がございません。ただ、国会議員の方から質問主意書が来ていることは事実でございますし、私は、たしか何か新聞や雑誌で、国会議員のある方が批判しているという記事を見た覚えもございます。

 そういうことから、私はそう言ったと思うんですけれども、そこの話と、このあれにすると四つのと書いてあるんですけれども、その四つの企業をすぐ続けて話したわけではございません。まず一般論で、こういう批判がありますよと言って、後、個々具体的な話になったわけでございまして、なお企業名は、先方からも企業名が先に出てきたということもあって、当方からも企業名を出して、お互いに具体的な例示の中で、新生銀行の融資姿勢というものに対する意見交換を行ったということでございます。

 なお、最後の御質問の点の、挙げた企業が中小企業であったかどうかにつきましては、昨日の当委員会でお話がありましたので私は至急陪席者に確認し、チェックをいたしました。中小企業もございました、中小企業でないものもございました。

五十嵐委員 中小企業の場合は、それでも一般論として言えばいい話で、なぜかこの国会議員の話とくっついて出てくるというのは、いまだにわからない。あなたは切り離して話したと言うんですが、かなりこの記者は裏づけをとって、速記録に基づいて書かれているわけですから、私どもとしては、今の話ですべてクリアになったというわけにはいかないと思うわけであります。

 それからもう一つは、そもそも私どもは、リップルウッド社が主体となっているこの新しい新生銀行ですけれども、この投資会社、それまでに実績も実態も余りわからない投資会社に日本のこのような大銀行を売却すること自体が、効率のパフォーマンスを求められるわけで、おいしいところだけとってさっさと逃げてしまう、日本の国の銀行の役割、公的な役割を果たしてもらえないのじゃないかという指摘を民主党はしていたわけですけれども、案の定という感じがしないでもないわけであります。

 そういう反省を持たれているのか、どういうお気持ちで今回の指導なり話し合いというのをしたのかということを伺わなければならないと思います。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 最終的には平成十二年の三月に譲渡をしたわけでございますけれども、当該リップルウッドに譲渡を実質的に決定いたしましたのはその半年ちょっと前だったと思います。しかし、そこに至るまではまた五、六カ月の交渉期間があったと思うのです。

 そんな中で、あれほど大きな銀行でございますので、買い手というのは極めて限られていたわけでございます。その中でどこを選択するかということにつきまして、当時、柳澤金融再生委員長を中心に、金融再生委員の方々にいろいろ御議論をいただきました。

 そんな中で、限られた選択肢の中からリップルウッドを選びましたのは、やはり日本の金融界に新しい革新的な空気を入れてくれることに対する期待があったということも一つの事実でございますし、もう一つは、買収条件について、最終的に国民負担最小の原則等いろいろなこちらの原則と先方とで最後のぎりぎりのところで折り合ったところが二社でございまして、その二社の入札の結果、やはり国民負担最小の原則からするとリップルウッドの方がまさっていたということで、リップルウッドに決定した次第でございます。

五十嵐委員 いや、そのことが、今のような状態になってみて、やはり正しかったなと思われるのか、それとも問題が多かったと思われるのか、そのことをお伺いしているのです。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 今の評価がどうかということについてでございますけれども、新生銀行も懸命に新しい銀行として再生させるための努力をしていただいておりますし、業務純益などを見ましても、千億近い業務純益をことしの三月期に上げております。そういう面では、一たん破綻した銀行を強くするという面では懸命な努力をされているし、一定の評価を下せるのではないかと思います。

 ただ、私がここで監督上の見地から注意いたしましたのは、やはり銀行でございますので、新生銀行は三つを柱としています。いわゆるこれまでの伝統的な融資業務、ホールセールバンキングと言っていいかと思います。それと、これからはリテールバンキングをふやしていくということを言っております。三番目の柱は、インベストメントバンキング。この三つの柱を調和して日本の中のいい銀行、日本のいい銀行にしようということを八城社長は言っておりますし、それに対して我々も共感しております。

 ただ、その中でホールセールバンキングという分野について、私は、八城社長も現在はいろいろな反省点の上に立っていてくださっていると思いますけれども、やや銀行の本来の業務、つまり与信の円滑な供与という面での配慮が欠けていたのじゃないかという御注意をさせていただいたわけでございます。

 そういうことでございまして、この一点をとって新生銀行を選んだのがどうかこうかというようなことではないのではないかと思います。

五十嵐委員 しかし、今回の件でわかったことは、行内メールが容易に外国の新聞に、報道機関に流れているということ。昨日も指摘をさせていただきましたけれども、どうも新生銀行を通じて新生銀行の融資先の企業の個別情報が外国に流れていて、ハゲタカファンドのいいえじきになっている、これは風評であるかもしれませんけれども、そういうことが言われているわけであります。

 こういう状況をどう思うかということと、そういう状況の中で、あなたが国会議員の名を挙げつつ、一方で、かなり誤解を、誤解とあなたはおっしゃるわけですが、誤解を生むような実名を挙げたことの軽率さということについてどうお考えになるか、伺いたいと思います。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 最後の方からお答えさせていただきたいのですが、ただいま五十嵐先生、国会議員の名をとおっしゃいましたけれども、国会議員の名は、一切出しようがございません、私自身に。先ほど申しましたように、個々の国会議員の先生とこの件で話したことはございませんので、それは全く誤解でございます。国会議員の名は出しておりません。

 それから、個々の企業につきましては、融資姿勢についての意見交換の際、具体性を持たせるということで挙げたわけでございまして、しかし、こういうふうな報道をなされることがわかっていれば、そんな名はもちろん挙げないわけでございますけれども、しかし行政はいろいろの手法として、そういう具体性を持たせるために個々の企業名を挙げるということは、どうしてもある場面では必要な場合があるわけでございまして、必ず企業名を挙げてやるなんて、そういうことは私は考えておりませんが、場合によってはそういうことも行政手法としてはあり得るということは御理解いただきたいというふうに思っております。

 なお、新生銀行から、ミニッツといいましょうか、そういう議事録的なものが出たか、あるいはそれをウォールストリート・ジャーナルが本物の議事録で書いたのか、そこについては私は全くコメントしようがございません。しかし、もし仮にそういうものがあって、それが流れたということであれば、それは確かに遺憾なことだと思っております。

五十嵐委員 実は、フレッド・ドゥボラックさんというウォールストリート・ジャーナルの記者の方は我が党に電話をされてきまして、この記事の内容についてはすべて事実であるということは確認を改めていたしております。

 それから、実際、八城さんのその他のいろいろなところでの言動、きょうも後でおいでになりますから確かめますけれども、八城さんの言動を聞くと、やはり金融庁から圧力を受けた、プレッシャーを受けたという意識を持たれていることは事実です。だから、こうした行内メールを示してウォールストリート・ジャーナルに訴えたという面があるのだろうと思います。

 ウォールストリート・ジャーナル自身も、このような大きな記事にしているということ自身が、日本の金融行政にはそういう古い部分、不透明な部分があるのだということを意識してこの記事を大きく扱っているわけでありまして、このこと自体が、あなたは誤解だとおっしゃるけれども、日本の金融行政の信認という意味で、世界的な信認という意味で与えた影響は非常に大きい。その責任を自覚しているのかどうかを伺いたいと思います。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 一言申し上げさせていただきますと、このウォールストリート・ジャーナルの英文を読ませていただきました。私からいたしますと、一つ大きな視点が抜けております。それは、この金融機関が資本注入行だということでございます。

 私は、一般の銀行がどういう融資姿勢を示すかということに対して、それは基本的に強い銀行になるということを目的にそれぞれやっていることでございますので、そのそれぞれの融資姿勢には相当の許容度はある。ただ、やはり原点としては、銀行の公益性からいって、与信の円滑な供与というのはそれはそのとおりでございますけれども、それを見る目には相当、一般の銀行であれば少し幅が広いのだろうと思います。

 ただ、資本注入行というのは、経営健全化計画でそこを厳格に我々に約束しているわけでございます。私は、ウォールストリート・ジャーナルの記事でそこのことが何も触れていない、資本注入、国民から負託を受けたお金を二千四百億つぎ込んでいる銀行であることを前提とした議論が全く抜けている、そのことだけを申し上げたいと思っております。

五十嵐委員 しかし、一般的に中小企業であれば、中小企業に対する融資態度が、どうも中小軽視という考え方でひどいんじゃないかというようなことは言えると思うんですよ。その中で例はあるかもしれないけれども、例えば大企業の分については、それはもう経営態度、経営の側の判断の問題だと思います。こういうようなところで個別名を挙げてやるということについては誤解を生じかねない。実際には、そのような受けとめ方をされているということ自体が重大な問題だと私は思うわけであります。

 これから同じようなことが特別検査を通じてかなり起こり得ると思うわけですが、これからそのような検査に際してどのような態度で臨むのかということをお伺いして、質問時間が来ましたので終わりにします。

柳澤国務大臣 特別検査につきましては、かねて申し上げましておりますとおり、私どもの検査というものと企業の実態に関する市場の評価というものに、今日のような経済の変動期においてはタイムラグが生ずるということがある事例で判明したということをきっかけとして、このところはこういうタイムラグを放置するわけにいかないということから始めさせていただくわけでございますが、同時に、本件検査が特定の債務者に着眼した検査であるということから、どこの企業を対象にしているかということが、やはり非常に市場経済の中ではある種の危険をはらんでいるということは否めません。

 そこで、私どもとしては、この検査に当たっては、非常に対象企業の選定等については、実際、最大限の慎重さを求められているというふうに考えておりまして、慎重に取り運びたい。しかし、しかるべきしっかりした成果というか効果を上げる検査でなければならない、このように考えている次第であります。

五十嵐委員 終わります。

山口委員長 次に、中塚一宏君。

中塚委員 自由党の中塚でございます。

 きょうは、破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告ということなんですけれども、柳澤大臣が御就任以来、二度目の御就任以来というんでしょうか、不良債権の処理ということも積極的に御発言なさっているわけですし、やはりこれからのことが一番大切なわけですので、今、五十嵐委員の質問の中でもちょっと最後お触れになったんですが、特別検査のことについて私なりに伺いたいというふうに思います。

 検査は今までも、要はやっておられたわけですよね。それこそ、再生法ができたり、あと早期健全化法ができたりして、そのたびごとに厳格に検査をされていたはずだし、しかも、その検査がちゃんと行われていたからこそ、柳澤大臣も追加の公的資本注入は必要ないということをずっとおっしゃっていたというふうに私は理解をしているんです。中身が本当にそのとおりかどうかということは別ですけれども。

 そういう点で、今どうしてまたこの改革工程表というのが出され、その改革工程表の中で特別検査ということが盛り込まれて、今始まったばかりなんでしょうか、そういうことになったのか。特別検査の必要性というのは、それは確かに今の御説明のとおりでよく理解はいたしますけれども、そういったことが問題になってくるということ自体、これはどうなんですか、政府部内で、やはり今までの検査のやり方に問題があったということになっているんですか。いかがでございましょうか。

    〔委員長退席、奥山委員長代理着席〕

柳澤国務大臣 検査というものは、特に新しい行政改革後の検査は、事後チェック行政の一環ですから、当然、検査の基準日と言うんですけれども、ある時点を選んでその金融機関の健全性をはかるということが主目的なのです。ある時点というのを基準日、こういうふうに言うわけですが、その基準日というのが、新しい金融監督庁になってからの検査では直近の決算日、こういうことになっているわけでございます。

 直近の検査日だということですと、例えば、九月決算はちょっとおいて、わかりやすく三月決算ということにすると実際上どうなるかというと、決算が三月三十一日に行われても、決算の書類ができる、財務諸表ができ上がるのはかなり時間がたってから、二カ月なり三カ月近くかかってからということも、これも御案内のとおりです。

 ですから、そういうようなこともあって、そこでもう二カ月半なり三カ月たつわけですが、その後また検査というものが行われるというのが、仮に事務年度というものを、わかりやすく例ですが頭に浮かべていただきますと、事務年度というのは七月からなのです、人事異動が一応終わってからというのが事務年度ということで。そうすると、事務年度が行われて新しい検査の体制ができて、では検査の計画をつくる、そして検査の計画に基づいて検査に入るということで初めて三月期の決算が検査をされるわけですけれども、そこまでに至ってももう既にかなりタイムラグがあるということは御想像いただけるかと思うのです。

 では、検査の、銀行の決算の中身というのはどうなのかというと、たまたまいろいろの方から御指摘いただける企業の場合、二月、八月の決算なんですね。そうすると、二月決算の数字が銀行の三月決算に反映するかというと、反映いたしません。何となれば、事業会社といえども決算の書類をきちっとまとめるのは二カ月半とか、大企業の場合にはそういうことですから、結局、三月の銀行の決算に反映するのは八月の事業会社の決算なのでございます。ということになると、我が方の決算の活動の日から実際に銀行の貸出先の決算との間にはもう一年くらいのタイムラグが生じてしまうというシステムなのでございます。

 これが、では何で問題にしないのかと言われると、やはり今までは、そういうタイムラグという点についてよりも、むしろ対象になるそれぞれの時点でのいわば数字の正確性だとか適正性だとかということに注力して検査が行われてきたということだと、あえて言えば言わせていただきたいところでございます。

    〔奥山委員長代理退席、委員長着席〕

 ところが、ある大手の小売企業が破綻したというときに、いろいろな格付会社が格付をしていらっしゃるわけですが、我々が常識として聞かされているのは、やはり投資適格から投機の債権だあるいは企業だという分類をされた。しかも、それが四段階一挙に下げられたというところが非常に大きなショックを与えたということでございまして、しかも、そういうことが六月に行われているわけでございます。

 そういう時系列を考えますと、これは、このタイムラグというのをほっておけませんねと。例えば八月なり九月なりに我々が検査に入るとしても、去年の八月の話をしていたのでは、これは話にならない。ことしの六月の格付会社の格付との関連で、数字は上がっておりませんけれども、よく見ないといけないということになるんだろうというようなことを考えまして、もちろん今までの検査といえども、ここまで言うと多分事務方は、そんな、大臣そうおっしゃいますが、我々だって数字はなくても最近の状況を頭に入れていろいろ議論はしますよと言うのですが、何といっても数字の上の議論が中心だということになると、本当のやりとりというのは、出てきた数字をもとにやるということだろうと私、推測するわけですね。

 そうすると、やはりこのタイムラグの問題というのは看過できない。では、タイムラグをふさぐ新しい検査というものを取り入れなきゃならないんじゃないか、こういうことで今回の特別検査という方式を取り入れたということでございます。

 私は実は、検査というものと、その後の例えば資本注入、今先生例に挙げましたけれども、そういう監督行政の手法との間にどういう厳格な関係がなければならないかということについては、行政改革に私自身が党の事務局長として携わってきたころから非常に深刻に考えた問題なんです。

 私は実は、昔話をしてもしようがないかもしれませんが、むしろ日本の金融行政では監督と検査を分けた方がいい、そこにこそウオールを置いたり、あるいは場合によっては別組織にした方がいいという説を吐いたのでございますけれども、やはり検査は監督の一環だみたいな一般論に押し切られて、そこのところは監督と検査が同じ屋根の下に置かれるということになったのです。

 しかし、私は、検査の独立性、検査はひとえに検査の基準に忠実に厳格な検査をする、後、その検査を踏まえて監督行政がどういうことを展開するかというのは、それは監督にゆだねるべきだということで、厳格な検査、基準に基づいた検査というのは非常に強調してきた人間でございますので、これまでにも、そういう私の行政運営についての考え方というものを踏まえていろいろと御説明をさせていただいてきた、こういう次第でございます。

中塚委員 そういう変化の激しい時代にあって、急に格付がぼこぼこぼこっと落ちてしまうようなことがあるということなら、特別検査ということも考え方の一つなのかもしれませんが、いっそのこと、例えば検査官を常駐させるとか、そういったことはお考えとしてはどうですか。

柳澤国務大臣 大変中塚先生に恐縮ですが、これはちょっと筋の違う問題だと私は思うのですね。

 我々は、今までは、金融検査というのは金融機関の検査ということで、もちろんその債権の健全性を見るには当該の債務者を見なきゃなりませんけれども、金融機関の資産の健全性を見る、こういうことでございました。

 今の特別検査というのは、その先を見るということで、本当は立入検査ということまで考えられれば非常にまた、それはまた別のことになりますが、これはあくまでも金融行政の範囲内にとどまらなきゃいけないというので、債務者に着目はしていますけれどもあくまで銀行の中にとどまっての検査、こういうことになるわけでございます。

 そういうことでございますが、それをきめ細かくやるということは、また別途のいろいろな背景、事情から求められていることでありまして、我々も、特に小渕総理の時代でしたが、小渕総理がそういうこともちょっと検討課題だみたいなことを議会でも御発言になられたということがきっかけで、私どもも議論をいたしたのですが、今の銀行法はどうなっているかといいますと、基本的に、銀行の行動というのは自由でなきゃいけない、もちろん、だけれども公共性の観点から検査には行かなきゃいけないということのバランス、自由な活動ということと監督当局が検査に入るということのバランスを銀行法が規定している。その規定している内容は何かといったら、必要があるときに検査をするということになっている。多分それでいいですね、必要があるときに検査になっている。だから、その必要があるときというのは、やはり限定的なものだろう。つまり、権力の側に足かせをはめているのが銀行法の規定だ。

 したがって、それに忠実でなければならないということがありまして、今、常駐ということは、この銀行法に違反するおそれが極めて強いということを法制局等で言われておりまして、私どもは、現行では少なくともそれはやはり適切でない、こういう結論に達しているわけです。

 では銀行法を直せばいいじゃないかという議論があり得るかと思うのですが、そうなりますと、今度は、要員はどうあるべきか、あるいはそのスタッフというようなものが、例えば一名ぽろっとそこにいることがどれほどのファンクション、機能を果たし得るかというようなことから、根っこから考えなければいけないということで、今は銀行の検査を、特に大手行については一年一回にする、しかもそれが次の決算に、検査の結果というか、検査で指摘された趣旨が次の決算に本当に遵守されるかということをフォローアップ検査として検査するというようなことでもって、今先生の言われたような御趣旨をできるだけ現行法で実現しようという方向で運営させていただいておる、こういう次第でございます。

中塚委員 そうやって、債務者も、要は、全部ではなくてピンポイントというかピックアップして検査をされるということになりますと、すごく恣意的な検査というふうに言うこともできますね。基準ということも余り公開をされていないというふうに思いますし、そういったところで、この特別検査自体が、行わなければいけない事情、背景というのはあるにしても、それを実施することが与える影響ということだってあるはずだし、現実問題、検査される債務者というのは、自分が検査されていることはわからないわけですよね。

 そういうことであるならば、この特別検査というのを実施するということなら、まさに、検査官を常駐させて、そういった検査を常日ごろからやっておくべきなのではないか。債務者の問題ではあるのかもしれないけれども、その債務者の区分によって銀行の財務内容というのも変わってくるわけですから、特別検査ということをおやりになると決めた以上は、やはりそこはもう一つ、もう一歩踏み込んで、新しい方法というのもあるのではないのかなというふうに私は思っているわけです。

 それで、この特別検査の結果、債務者区分が変更になるということがあるかもしれませんね。今までの検査がちゃんと適正に行われていれば、適正に行われていてそんなに大きく変わっていなければ、特別検査の結果と今までの検査の結果というのはそんなに変わるものではないはずですけれども、ただ、急速にずっと景気も悪くなっている、テロなんかの影響もあるということで、検査をした結果、債務者区分が変更になるというようなことがあると思うのですけれども、特別検査は主要行だけですよね。債務者区分が変更になったときは、ほかの第二地銀だとか地銀とかあるいは信組とか、そういったところが同じように貸していた場合は、やはりその債務者区分の変更というのはお求めになるんでしょうか。

柳澤国務大臣 まず、自動的に、横ぐし的に、すっとある一つのところを検査して、この債務者についてはこういう債務者区分になったからということで自動的にというか、そういう仕組みはもともとございません。これはもう御案内のとおりです。

 それでは、検査官が仮に出かけていって、この債務者に対する貸し付けをしている金融機関というのは容易にわかりますから、行って、いや実はあそこを検査したんだけれどもと言って、かくかくしかじかの債務者についてはこういう債務者区分にいたしましたということがこちら側から言えるかといったら、それは守秘義務がかかっておりますから、そういうことは申し上げません。そういうことでございますから、必然的にというか、そういうことが制度的に担保されるような仕組みになっておるかといえば、なっておりません。

 結局、債務者の評価というのは、それぞれの金融機関が行うということで、私ども検査当局としては、検査に行って、検査官の頭には入っていますね、この債務者についてはこういう区分を自分が特別検査で、あるいは自分の同僚が特別検査でやった結果こういうふうな債務者区分にしたんだというのは十分入っていますから、それは、あなたの金融機関はこういう区分をしているけれども、それはこういうところを見落としているんじゃないかということで、自分たちが特別検査の結果こういうふうにしたんでということは言いませんけれども、しかしその債務者の実態というものについて知り得るところをいろいろ述べて、向こうも知り得るところを反論して言うでしょう。そういうような中からその金融機関における債務者区分が決定を見る、こういうことになる。その点は通常の検査の場合と同じである、こういうふうに理解をお願いしたいわけでございます。

中塚委員 それで、この検査自体は、改革工程表なんかによると、検査の結果、私的整理のガイドラインにのっとって処理をするとか、あと何かRCCに売っ払うだとか、そういったことを書いてありますね。そこまで行ってしまえば、いや応なしに、どういう会社であったかというのは後からになればわかってしまうということだと思うんですけれども、特別検査の結果、そこまで至らなかった、債務者区分は変更されることがあるかもしれないけれどもそこまで至ることがなかったような債務者というのは、これは、検査結果というのは公表されるおつもりというのはおありですか。

柳澤国務大臣 これは、今まさに委員が御指摘のように、外部からも知れる手続のところに入っていけば、その限りではわかるというか、しかしそれだって、出自というか出どころが、例えば前に要注意だったものなんだよなんということがわかるかというのは、それは皆さん情報通ですからわかるといえばわかるかもしれませんが、役所からそういうことは、これは実は前期決算期においては要注意先でございましたなんということを別に言うわけじゃありませんから、これは、わかるといえばわかるかもしれませんが、わからないといえばわからないということですね。

 これは、別に特別なことをやるわけではないわけでございます。速やかにやるということはありますけれども、しかし、それはもうそういう手続に入ったということで、前から破綻懸念先に分類されていたものについてもそういうことが行われることがありますから、それとの区別がつくかといえば、そう截然とつくものでもない、こういうことでございます。

 では、調べた結果、やはり要注意先でしたね、あるいは破綻懸念先に落ちたけれどもまだ外部から見えない、まだ引当金をたくさん積んだという段階にとどまってその次の段階に進んでいない案件については、これはわからないということで、ただ、決算期に少し引当金がふえたかなというようなことかもしれません、あるいは不良債権の開示の中で、破綻懸念先の残高がふえたというようなことで若干推測のきっかけになるかもしれません。

 それでは、そういったことを明らかにするのかということについては、破綻先であっても本当にはまた正常の方に、逆流と言ってはなんですが上昇するものもあるわけでございまして、そういう可能性があるという前提ですと、この企業については、この債務者についてはというようなことで公表をするというようなことは、ちょっと考えられないというふうに考えています。

中塚委員 特別検査をせっかくおやりになるわけですから、債務者区分が変わった場合には、やはり主要行だけじゃなくてほかの金融機関等にもそれを徹底していただいた方が、より金融行政の透明性が増すんだろうというふうに思います。

 終わります。

山口委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。

 きょうは私、最初に、旧長銀から現新生銀行に至るまでの間、投入した公的資金が一体幾らで、資本増強、特例資金援助、損失補てん、金銭贈与、瑕疵担保特約関係などありますが、それぞれ一体幾ら公的資金を使って、そのうち返ってくるのは幾らか。逆に言えば、返ってこないのは幾らかということになりますが、最初にこの問題から伺いたいと思います。

    〔委員長退席、奥山委員長代理着席〕

高木政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、投入いたしました公的資金の額でございますが、まず旧長銀、旧日債銀時代から資本注入した額ですね。旧長銀に対しましては、旧安定化法に基づきまして、優先株式で千三百億、永久劣後ローンで四百六十六億投入しております。それから、旧日債銀に対しましては、優先株式で六百億投入をいたしております。

 それから、特別公的管理終了後の旧長銀、旧日債銀に対する資本増強といたしましては、旧長銀に対しましては、優先株式で二千四百億投入しております。それから、旧日債銀に対しましては、優先株式で二千六百億投入いたしております。

 それから、特例資金援助の額でございますが、旧長銀に対して行った金融再生法七十二条に基づく特例資金援助といたしましては、金銭贈与で三兆二千三百五十億、資産買い取りで七千百二十三億出しております。それから、旧日債銀に対しましても、金銭贈与で三兆一千四百十四億、資産買い取りで三千九十九億出しております。

 それから、特別公的管理時代の業務に伴う損失といたしまして、その補てんのために、旧長銀につきましては三千五百四十九億、それから旧日債銀に対しましては九百五十一億出しております。

 それから、瑕疵担保条項の行使によって買い取った金額でございますが、本年の九月末時点で申し上げますと、新生銀行につきましては、債権額が五千五百八十億、支払った額は三千百二十億ということでございます。それから、あおぞら銀行につきましては、債権額が四百二十八億、支払い額は二百三十九億ということでございます。

 このうち、戻ってくるかどうかというのは、基本的に、何といいますか、交付国債で賄っている分がたしか八兆九千億ございますが、これは基本的に使い切りになります。あとは、政府保証で、それぞれの特別保険料等で返ってくる見込みがあるとか、あるいは、瑕疵担保につきましてはこれからRCCが回収に努めるということですから、その回収の結果いかんによって、国民負担が生ずるのか生じないのか、あるいはどの程度生ずるのか決まってくるということでございます。

吉井委員 それで、結局使い切りで八兆九千億ということで、さらに瑕疵担保関係で、この瑕疵担保特約を使って相手の方が引き取りを求めてきたときにさらに負担がふえるということで、これは本当に非常に大きな国民の負担というものが出ているわけです。

 そこで、大臣に伺っておきたいのですが、長銀が昨年三月に特別公的管理銀行から新銀行として再出発したときに、当時、後任の谷垣金融再生委員長は記者会見で、巨額の公的資金を投入して損失を穴埋めして生まれ変わったというわけでございます、大変巨額の公的資金を投入したわけでありますから、日本の経済、国民生活に大きく貢献していただく健全な銀行として成長していってほしいと思っておりますと言っておられます。前任者でもあれば今も担当していらっしゃる柳澤大臣としても、この点の思い、考えというのは多分同じだと思うのですが、念のために、ちょっと確認的に伺っておきたいと思います。

柳澤国務大臣 私も谷垣大臣と同じ思いでございます。

吉井委員 それで、ですから本来、日本の経済、国民生活に貢献をしてもらうということは非常に願っていらっしゃったところだと思うのですが、こういう点で、十月四日に金融庁から、公的資金投入に伴う経営健全化計画で示した中小企業向け貸し出しの増加目標を達成できなかったとして、新生銀行に業務改善命令、早期健全化法に基づく資本注入を受けた健全銀行としては初めての業務改善命令が出されたわけです。この中小企業向け融資が計画を下回った未達成の銀行といえば、ほかにも、あおぞら銀行、東洋信託銀行とあるわけですが、なぜ新生銀行にだけ業務改善命令を出したのかという、その特別な理由というものを伺っておきたいと思います。

高木政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、十三年三月期で、中小向け貸し出しが計画を下回った、前年度実績も下回ったという金融機関は七行ございます。その七行につきましては、履行状況報告の中で中小企業向け貸し出しの計画未達成の理由と代替措置が、これはすべての銀行に記載をさせております。

 そういう中で新生銀行につきましては業務改善命令を出したわけでございますが、その大きな理由は、計画未達成、前年度の実績を下回ったという率が一二、三%ということで、非常に大きな率になっております。それから、そういう目標達成のための行内の体制、そういう体制整備が不十分であったということが理由でございます。

 その他の銀行の場合には、そういう部店別に管理体制とかそういうものは一応整備されていて、それでチェックしながらも年度末になって、ほかの要因もあるのですけれども、やや達成できなかったということで、特に新生銀行については業務改善命令が必要というふうに判断したところでございます。

吉井委員 この業務改善命令を出して、それで達成される保証があるのかどうかということですね。この実効性というものは何によって担保されるということになっているのですか。

高木政府参考人 お答え申し上げます。

 基本的に、業務改善命令に対する報告がもう既に出ておりますけれども、要は、行内の体制、部店別にちゃんと中小企業向け貸し出しを管理しますとか、そういうまず体制をちゃんと整備させるということですから、自律的に行内できちっとチェックされるだろうという点が一つあります。

 それから、我々は、今回同様、その実施状況については厳しくフォローアップしていくつもりでございますので、そういうことで、その目標を本年度については確実に達成するようきちっと厳格にフォローアップしていきたいと思っております。

吉井委員 体制の問題だけなのかというところが、やはり見ておかなきゃいけないところだと思うのです。

 重大な点としては、先ほど他の方の質問に対して森長官答弁の中でも出てきておりましたが、新生銀行がこの間、要注意先企業からも回収を求めているという問題ですね。

 そこで、あらかじめ先に伺っておきたいのですが、長銀から新生銀行に継承された貸出先の件数は四千九百三十四件で、総額七兆八千七百九十億円ということですが、その中で、借りかえを認めていた件数と金額、要注意先債権を回収した件数と金額、破綻懸念先以下の債権回収の件数と金額、これはそれぞれ幾らになるのか、伺いたいと思うのです。

高木政府参考人 お答え申し上げます。

 実は、先生からのそういうお話を承っていろいろ中で検討したのですが、そういう数字は、基本的にそれは銀行自身が判断するものでございますので、実は把握していないということを御理解いただきたいと思います。

吉井委員 私、ここは非常に問題になっているときですから、やはりきちんとつかんでもらわなきゃならぬと思うのです。

 他の銀行の査定では不良債権に当たらない要注意先債権も回収対象にしていた。そうすると、この融資回収通知を受けた企業は借りかえを拒否されていくことになりますし、遅延損害金一四%を上乗せした返済を求められるケースもあるということで、回収を強行され、利益を上げているのに破綻手続に入るしかないという企業も出てくる。こうなってくると、本来銀行業務の公共性を求められている金融機関が、借り手保護から収益優先に走っていく、こういうことになってくるわけですね。

 銀行というのは、企業を資金の面からその活動を支え、日本経済や産業の発展に貢献するのが本来の姿だと思うのですよ。だから、税金投入して健全行にしようとした、その意図しておられたこととは、やはりこれは違ってくるんじゃないかというふうに思うのです。この点、やはり要注意先債権の回収までどんどん進んでいくという問題については、これはさっき言われたような単なる銀行の管理の問題じゃなくて、やはりそういう点についてきちんと姿勢を正させるように、これはさせなきゃいけないと思うのですが、これは大臣どうですか。

柳澤国務大臣 旧長銀、現在の新生銀行については、譲渡時のまず契約がございます。その契約の文言上も、継続保有を適当としたいわゆる適資産については、基本的に三年間の間はこれを融資継続をするということが、契約上のまず文言にもあるわけでございます。

 その上で資本注入をいたしたものですから、その資本注入をするときにも、健全化計画の中でそういうことをみずからうたった計画を提出しているわけでございます。その中に、もちろん中小企業への貸し出しもあるということで、貸し出しについての計画もあるということでございますので、何と申しますか、もう一重二重にそういう基本的な継続融資の意思の表明をしていただいている、こういうのが本件の大前提なんですね。したがって、いろいろな報道であるとかというようなところについて、最近における貸し出し態度というか、そういう融資の姿勢というようなことについて批判があったので、先ほど長官も、これを呼んで指導をした、こういうことだというふうに私としては理解をいたしております。

 したがって、ここはやはり契約、それからみずからが提出した健全化計画、こういうようなものを実現すべく最大限の努力をするというのが当然のことだと私どもは思っておりまして、そのことを指摘しながら新生銀行の適切な対応を促していくというのが我々の態度でございます。

吉井委員 大臣のおっしゃったとおりだと思うんですよね。この契約もあれば計画も出しているわけだし、その大前提をそもそもちゃんと守らないからこんな問題が出てきているわけで、それに対して行内管理体制の整備ということを言っても、果たして本当にやらせる担保があるのかどうか、そこが今非常に問われてきているときだと思うんですよ。

 そういう点では、新生銀行の側からすれば、損失リスクを一切負わない、そういう形がつくられている。つまり、瑕疵担保条項があるわけですから、新生銀行は企業に返済を求めて、遅延が発生すれば企業の債務者区分が要注意先から破綻懸念先に落ちていく。そうすると、借りかえその他条件変更あるいは追加融資とかも応じない。この企業がどんどん悪くなっていきますと、再生させる努力どころか、まあつぶれる方へ行くわけですから、そうすると今度は不良債権ということで、債権劣化ということで瑕疵担保条項を満たしやすくなってくる。

 瑕疵担保条項という仕掛け、仕組みをやはり国がつくったということがあるわけですから、そうすると新生銀行の方は安心して中小企業から貸しはがしなり企業つぶしを進めていくということもできるわけで、やはりこういうところに基本的に問題があるということ、これはやはりきちっと見なきゃいけないと思うんですが、大臣どうですか。

柳澤国務大臣 先ほどちょっと申したんですが、三年間継続保有ということを、ぎりぎりの法律論をやるといろいろあるようですけれども、基本的に義務づけているということの裏腹の問題として、その間に我々として見落としていた瑕疵があらわれたということだったら担保責任を負いますよということで、バランスしているわけなんですね。それをそっちの方から崩してくるというような話になれば、これは話としては非常に違った話になるということだと私は常識的に考えているわけでございます。

 そういうようなことで、基本的に、新生銀行といえども、まず日本の国法のもとにおける免許事業ですからね、そういうようなことで対応してもらわなくちゃならないというのが基本です。

 ただ、じゃ今度余りそっちばかり強調しますと、やはり我々が新生銀行に期待した、新しい角度からのいろいろなビジネスの展開ということで刺激を与えてもらいたいということの芽を摘んでしまうというか、そういうものを日本の伝統的な銀行と全く同じ行動をしたんなら、何のために彼らに譲渡したかということもちょっとこの意味が少なくなるんで、そこは非常に難しいんですが、私の考え方としては、三年間はその準備期間にしてもらったらどうですかと。三年間はまず基本的に、契約だとかあるいは健全化計画で言ったところを基本にしてもらいたい、その後においていろいろなビジネスの展開をしてもらいたいというふうに私は思っているわけでございます。まあ法律上の議論になればいろいろなことはありましょうけれども、私の常識としてはそういうふうに思っている、こういうことです。

吉井委員 大臣の常識も最初の期待も、なかなかそのとおりいっていないというのは、本当にここは大変なところで、本来金融機関が、中小企業その他をつぶすんじゃなくて、全く破綻しているのは別ですけれども、どうして生かしていくかというときに、要注意先までどんどんもう破綻に追い込んでいく。

 それで、債権を転売するときの問題もあるんですね。債権放棄に応じるのは、この場合積んである引当金の範囲内に抑えて、逆に、範囲内にうまく抑えますとそこで出てくる差額は特別利益になっていくという問題も指摘されておりますが、もともと公的資金で積まれた引当金だから、こういうものは国民にきちんと返させる。少なくとも常識的判断といいますか、そういうことをなしにやっておれば、さっきもハゲタカファンドという言葉がありましたけれども、本当にハゲタカのように、これだけ国民の税金が投入されたものをおいしいところだけつまみ食いをして、まずいところは全部国にもっと面倒見ろというふうなことだけで、しかも本来の銀行の公共性、果たすべき役割を果たさないということでは、これは問題になってきますから、まず返させる。引当金などで積んであるものでこの差額が出れば、それはやはり国民にお世話になっている分なんですから、国にちゃんと返すということはさせるとか、そういうことをやっていかれるのかどうかを伺っておきたいと思うんです。

高木政府参考人 お答え申し上げます。

 そもそも、ひもつきで引当金が幾らだと、公的資金を入れたことは事実なんですが、それは入札といいますか、競争の中で決まってきて公的資金が入っているわけで、それで、その前提で渡した以上は、その銀行の経営判断で個別の転売も含め融資に対応していくというのは基本だと思うんですね。そういうひもつきで考えることは私は難しいと思います。

吉井委員 私は、結局この出発点にかなり問題がある、本当に大きな問題があると思うんですよ。ひもつきでやっているから仕方がないという話なんですが、しかし、全部国民が負担しているんですよ。そういう説明じゃ、国民の立場からしたらとても納得できるような話じゃない。私は、そのことを言わなきゃならないし、やはりこの根底にあるのは、この特約条項に見られるような銀行甘やかしという問題がある。そのことを指摘しておいて、時間が参りましたので質問を終わりたいと思います。

奥山委員長代理 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、柳澤金融大臣の御報告をお伺いいたしまして、大体三つの点にわたって御質問をさせていただこうかと思います。

 私は、昨年の六月の衆議院の総選挙で初めて当選いたしましてこの国会に参りまして、実は財務金融委員会と厚生労働委員会という二つの委員会に所属しております。厚生労働委員会は、私がもともと医療分野におりましたので、かなり自分自身でもなじみの深い分野でございますが、この財務金融委員会と申しますのは、国会議員になりまして初めて、本当に一から勉強するというふうな中で質問を重ねてまいりました。

 昨日、たまたま塩川財務大臣のお言葉の中に、当然ですが、やはり経済は生き物である、いろいろな財政政策、金融政策も、生き物である経済を相手にしている限り動くものであるというようなお言葉もありましたけれども、私はこの間ずっといろいろな質問を準備しながら、特にこの金融問題を取り上げる場合には、非常に医療問題と似ておるなと思いました。

 どういうことかと申しますと、きのうも金融への不信、特に株式への不信のことが言われておりましたが、私のおります医療分野でも、いわゆる医療ミス、あるいは医療不信ということが今大きくクローズアップされておりまして、体の右半分を手術しようと思って行ったら左半分を手術されたり、心臓と肺を間違ったりとか、信じられないような事態が生じておる。

 世上では特に医療は不安だ、不信だと言われますけれども、でも逆にその中で医療を提供しております私のような医療従事者にとっては、そうであってもやはりどういうふうに信頼性を高めていこうかというところに、あらゆる批判に耐えながら行ってきた。ちょうど、ずっとこの間、柳澤金融大臣の御答弁を伺っておりますと、世上での強い金融不信、不安に対して、精いっぱいと申しますか、一生懸命御尽力されておられる様子、大変に御立派と拝見しております。

 そうした前提に立ちました上で、また、きょうも委員会、委員がほとんどいなくなりましても担当大臣はそこにいなきゃいけないという重い責務を負って、本当に御苦労さまと思います。私の質問も手短にいたしますので、よろしくお願いいたします。

 もう本当にしつこくて恐縮ですが、ペイオフ解禁のことをまず冒頭伺わせていただきます。

 端的に申しまして、今の銀行にペイオフ解禁に耐え得る体力がありや否やという点で、私はもうこれで三度も質問しておりますわけでございますが、特にペイオフ解禁という事態を考えますと、例えば今、二〇〇一年三月末現在で、これはペイオフの解禁が俎上に上りましてから一年くらいのところと思いますが、一千万円以上の預貯金口座、いわゆる一千万円までは安全だからということで一千万に、小口に分割して預貯金口座を設けた方が三・七%増加、ただし総額は二・一%減というふうな数値、あるいはこれを第二地銀に限ってみますと、実は口座数それから総額ともに第二地銀への預貯金というのが減ってございまして、また、この十年間で、破綻銀行十七行のうち十四行が第二地銀であるという実態も報告されております。

 また、先般、九月二十一日の発表だったと思いますが、小泉内閣の改革先行プログラムが出されました途端に市場というか株価が反応いたしまして、特に銀行株、下落が幾つかあったように思います。ということは、風が吹いておけ屋がもうかるというのと逆さで、ちょっと風が吹けば、あるいはちょっとした風評で、例えば銀行の株式が揺れる。改革先行プログラムが風評かどうかというのはちょっと失礼に当たりますからそうは申しませんけれども、政府の政策の変更に伴って株価が大きく変動したりするという、外の動きによる部分。

 それからもう一つは、やはり銀行間で都市銀行、地銀、第二地銀と分けました場合に、特に資本規模の弱い第二地銀、ただし、これらは庶民の金融には非常に近いところに位置しております第二地銀が揺れているという現状。

 そしてあわせて言えば、都市銀行も来年三月末赤字決算をしなくちゃならない等々、どこを見てもまだまだ難局はこれからではないか、これから大きなものが来るのではないかという予測もある中で、柳澤金融大臣としては、来年の四月が本当にペイオフの解禁にふさわしい時期とお考えかどうか。

 要するに、治療もそうですが、手だても、そのこと自身は正しくても時期を見誤ると患者さんが死んじゃうとかいうこともございます。今、本当にこのことを来年四月、なすべきとお考えか否か。これで三度目ですので、またよろしくお願いします。

柳澤国務大臣 基本の考え方は、そもそも預金の全額保護というようなペイオフの凍結という事態は全く臨時異例の措置であったということが基本でございます。その凍結を一体いつどういう状況のもとで解除するのが適当かということが御質問の趣旨かと思います。

 私どもといたしましては、来年の四月一日に店をあける金融機関というのは、いずれも基準に合った自己資本比率、これが最も健全性の基本的なメルクマールというふうに思っておりますけれども、そうした基準に合った自己資本比率を有している店ばかりがずらっと日本の国に並んでいる、こういうことがあるかという問題かというふうに思っています。そういうことをやるべく、私ども今大車輪でいろいろな検査を行って、本当に来年の四月一日に店を開く金融機関はみんな基準に合った自己資本比率を有している、こういうことにしたいということの努力をしておるということでございます。

 したがって、率直なことを申しますと、これから年度末にかけて、ややそうした最後のぎりぎりの判断ということの中で、やはり自分のところは増資もできないから市場から退出いたします、そういう金融機関、これはどちらかというと小さいところになるというふうに私は思っているわけですけれども、そういうようなことが私どもの国で生じてくるということは、そういう四月一日に店を開くところはちゃんとした自己資本比率を持っているんだということを確保するためにやるということでございます。

 したがって、こんなに金融機関が市場から退出するという状況ではますます不安になるんじゃないのという言われ方はちょっと我々としては本意でないので、そういうことをやって、みんないい銀行に四月一日に残ってもらうということのためにやっているんだというふうにむしろ御理解をいただきたいということでございます。そういうことで、私どもとしてはしっかりした準備をして四月の一日が迎えられるようにしたいということでございますので、この点はぜひ御理解を賜りたいということでございます。

 なお、まだ御質問があれば承ってお答え申し上げますが、とりあえずそういうことだということで御理解を賜りたいと思います。

阿部委員 趣旨は一応は理解しておるつもりであります。そして、いい銀行が残るといった場合に、先ほど申しましたような第二地銀のような非常に身近な銀行もやはり残ってくれないと困ると思うわけで、そのために今正しいプログラムがしかれているかどうかというところで、後ほど少し自分の見解も述べさせていただきますが、公的資金の注入ということもまだあり得ることと、私は銀行全体、大手行に対しても思っております。それくらいにまだ処理せねばならない問題があるのではないかと思っております。

 そのことに移る前に、与党内でも、麻生太郎政調会長や堀内光雄自民党総務会長、あるいはよくお名前の出る亀井静香さんなどなど、一応このペイオフ解禁についていかがなものかというふうな論調も聞こえてまいります。私は、そういう論調があって悪いということで申し上げているのではなくて、国民にとりましては果たして本当にこのことがどういうふうに向かうのかというのが、また与党内での意見の相違ではないか、あるいは本当にそうなるのかとか、いろいろな不安要因、風評要因になると思っております。

 例えば、先ほども少し御紹介いたしましたが、九月二十一日の改革先行プログラム発表の際に、三井住友銀行の株価が約三四%低下の千七十円から七百十円、そのほかにも東京三菱フィナンシャル・グループも一八%減とか、やはり一つの政策とか考え方に連動して市場が極めて敏感に動いているやさきと思います。

 柳澤金融大臣にあっては、金融のプロとして、現在の政府・与党内でもしかるべく見識とまた発言力もお持ちでお取り組みのこととも思いますが、与党内での意見調整、この場で本当は金融大臣のお言葉で回答いただいていいのかどうか私もちょっとわかりませんが、御党内にさまざまな御意見がございますこと等々もどういうふうにお考えかということもお聞かせくださいますか。

柳澤国務大臣 昨日も私、申したような記憶がございますけれども、要するに、戦前の昭和二、三年の金融恐慌のころは、歴史の教科書でのぞく限り、取りつけみたいなことがあったというようなことでございますので、そこのところをちょっと除いて考えますと、特に私どもがよく知っている戦後の歴史の中で申せば、事実上、預金は全額保護されておった。それからまた、一九九八年、九九年というところでは、緊急措置法でもって預金が保護されておった。それがまた一年延長されている、こういうことでございますので、事実上の問題と、法制上の裏打ちがあっての制度として、いずれにしても預金が全額保護されていた時代を日本国民はずっと過ごしてきたわけでございます。

 それがゆえに、預金をするときに、私の預金は戻ってくるかしらというようなことを一瞬たりとも考えずに預金をする。したがって、預金の先も、出し入れに便利なところでもう何の疑いもなく大事な預金を取引されるということがずっと来たわけで、それが今度は、戻ってこない銀行があり得るということの中でいろいろ預金をしなきゃいけないということで、そういう違う世界に入っていくということをだれしもちょっと不安に思うということを私、とてもよくわかることでございます。

 ですから、不安をちょっと考えますと、この際また国の税金で見る方式の方が安心でいいじゃないかと、これは不安な方式がいいのか安心の方式がいいのかと比較すれば、安心の方式の方がいいことはわかり切った話でございまして、その副作用というものが一体どういうふうになるのかということを考えるわけです。特に私は、金融機関の本当の収益力であるとか、あるいは競争力であるとかということを考える。未来永劫税金で面倒見るなんという銀行が、金融機関があり得るわけがないのでございますので、そういうことを考える立場からすれば、副作用の方をあわせて考えるということで、立場の違いというか不安はみんな共通だろうと思うんですが、その不安を私も理解するんですけれども、私は副作用とのバランスからいって、ここは踏み込んでいただかなきゃならない、こういうふうに考えているわけでございます。

阿部委員 では、いわゆる銀行が信頼を看板に背負って、いわば安心な代名詞として機能してきた。きのうは、株の方はちょっとそうではない、暗いイメージだったというお話、金融大臣からございましたけれども、その銀行の信頼ということ。それから、銀行とて市場というリスクを持ったものの中で動くものであるという中で、今般、金融再生委員会が設けられ、また金融庁の業務も拡大されていることとは思いますが、不良債権処理全般にわたりまして、金融庁が銀行の現段階での信頼性、並びにそうしたものの処理過程がどの程度進んだかということについての認識が実はこの一年でも大きく変動しております。

 二〇〇〇年十二月の御発表ですと、銀行システム問題は解決している、二〇〇一年二月になりますと、不良債権の会計処理は終わったが最終処理は課題だ、同じく七月、破綻懸念先債権の最終処理のため不良債権処理費用の上乗せを銀行に求める、八月、三年間は不良債権高が横ばいとのシナリオを発表、十月は、このマイカルの破綻があったことによって、まだ要注意先債権の認識を修正しなければならないか。

 これをずっと続いて読みますと、簡単にいえば、もう大体、さきの公的資金の注入によって一応は、ちょっとは処理は一段落したんだよと言っていたのが、また、まだかな、もうちょっとかな、だんだん怪しいぞ、簡単に言うとそういうふうに受け取れますのですが、柳澤金融大臣として、さきの公的資金の注入も含めて、中間時点での総括をお聞かせください。

柳澤国務大臣 今阿部委員がおっしゃったことで非常に私も思い出させられて、頭が整理されたような気持ちもするわけですが、基本的に、バブルで発生した不良債権の引き当ておくれというのは一九九九年の三月三十一日の決算であらかたやりましたよ、これはもう紛れもない事実でございます。両年度に、九七年度と九八年度で、大手銀行だけでも二十六兆円余りの処理損を出していますから、そういうことで、この二年度間、特に資本注入を受けた九八年度は大量に処理が行われたということは、これはもう紛れもない事実でございます。

 ただ、その後、何でまだ引き当てが、特にこの間の、いわゆる不良債権処理の、最初はモデル推計と言っていたのでモデル推計と言わせていただきますと、モデル推計でなお残高がちょっと膨らむかというと、これは実は検査マニュアルというものが一九九九年の七月から施行になりました。九九年三月で一応終わったのですが、九九年七月に検査マニュアルという新しい基準ができまして、特にそこで明らかになったことが、要注意先債権のうちでかくかくしかじかのものは要管理に区分されるべきであるということが、いわばこれは全銀協の人たちも、何というか、新しい通達というか、確認的な通達と当時は言っていましたけれども、いわば新しい通達が入ったものですから、その影響が結構大きいということがありました。

 それは具体的に申しますと、貸し出し条件の変更ということでございます。その貸し出し条件の変更というところの影響が非常に多いものですから、残高が膨らむ。特に、要注意のときには不良債権じゃないのですから、要管理から不良債権になるというわけですから、要管理に入れろということは、不良債権がそれだけ膨らむということでございます。

 そういう引き当てとか不良債権の増加というのは、そういう特殊な要因で起こったということですが、基本のところは九九年三月に処理されているということは、これはもう紛れもない、私繰り返し言っているんですが、そういうことでございます。

 しかし、もう一つは、最終処理をするということが、私がことしの一月ごろから言い始めて、実際上それが具体的な政府の政策になったのはことしの六月のいわゆる骨太の方針というあたりからでございますけれども、そういうことを申し上げておりまして、それのためにこれからさらに一生懸命やっていこう、こういうことになっておるわけで、これは引き当てとは違う、もう一つ先の処理の仕方であるということで、ここもおわかりいただけるんじゃないかと思います。

 その上で、あえて言うと、何でまた特別検査をやるのといったら、先ほど言った、今の検査の中には、ややタイムラグの点で今の方式に弱点が正直言ってありますねということを認めざるを得ないと私は感じまして、そのことを補うために、今度そういう特別検査というのを臨時にやらせていただくということにしたのでありまして、要するに、引き当ての問題の処理、それからその次はバランスシートから引き離す処理、それから今度のタイムラグの処理というのが次々に起こってきたということでありまして、それぞれに具体的な背景があって、私どもはそれに対応した措置をとっているということで御理解を賜れればと思います。

阿部委員 特別検査の結果、引き当て処理についても課題が残るのではないかと案じておりますが、また引き続き質問をさせていただきます。

 ありがとうございました。

奥山委員長代理 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

山口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 金融に関する件、特に新銀行設立後の経営状況につきまして調査を進めます。

 本日は、参考人として、株式会社新生銀行代表取締役会長兼社長八城政基君及び株式会社あおぞら銀行代表取締役社長丸山博君に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございました。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から、特に今申し上げましたようなことにつきまして忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存ずる次第でございます。

 次に、議事の順序につきまして申し上げます。

 まず、八城参考人、丸山参考人の順序で、お一人五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。

 それでは、まず八城参考人からお願いいたします。

八城参考人 新銀行の経営状況について御報告申し上げます。

 当行は、平成十二年三月、特別公的管理の終了とともに、新しい株主、新しい経営体制のもとで、民間銀行としての営業を再開いたしました。そして、平成十二年六月五日に、行名を株式会社日本長期信用銀行から株式会社新生銀行に変更いたしました。この行名変更により、名実ともに新スタートを切りました。

 旧長銀におきましては、長年にわたり多くの事業法人、金融法人、個人のお客様と緊密にお取引をいただいてまいりましたが、新銀行は、欧米の一流金融機関の出資による初めての銀行という特色を最大限に発揮し、先進的なノウハウを活用し、日本のお客様のニーズに最も適切におこたえできる商品、サービスをスピーディーに提供すべく尽力してまいりました。

 重点分野としては、新たにリテール業務と投資銀行業務という二つを拡充すべき分野と定め、金融債発行や事業法人向け融資などに限定されていた業務の幅を拡大しつつあります。

 新しいリテール業務といたしましては、円預金、外貨預金、金融債、投資信託などを一つの口座でお取引いただける総合口座の取り扱いを開始いたしました。そのほかに、二十四時間三百六十五日御利用いただけるATMや、郵便貯金とのATM・相互送金提携など、商品、サービスの充実、利便性の向上を図ってきております。

 次に、投資銀行業務につきましては、新銀行営業開始後、直ちに金融商品部門を設置し、その後、高い専門能力を有する外部人材を採用いたしました。そして、お客様のニーズに迅速かつ適切に対応するために組織の再変更を行いました。具体的には、今後の日本のマーケットで成長が期待し得る分野で、従来日本の金融機関が余り手がけてまいりませんでした新しい分野、業務であります証券化業務、MBO等買収ファイナンス、不動産ノンリコースファイナンス、ローントレーディング等への取り組みを強化いたしております。

 また、平成十三年五月には、当行全額出資の新生証券株式会社が営業を開始いたしました。そして、投資銀行分野において有益かつ革新的な金融商品をお客様に提供する体制が整っております。新銀行を設立してわずか一年半ではございますが、目指してまいりました体制が次第に整ってきたと考えております。

 直近の決算状況ですが、平成十三年三月期につきましては、収益力強化の具体策として、新たな商品、業務分野の体制整備による収益機会の確立を進めました。財務面では、コスト削減を主眼といたしました調達構造の見直し、多様化に加え、劣後債務等を削減することによって資本効率の改善を推進いたしました。

 一方、営業経費についても、経費控除後の業務純益を業務目標化することといたし、各部門のコスト意識の高揚を図りました。業務、事務フローの見直し、店舗スペースの削減、システム管理体制の見直し等による経費削減を進めることができました。

 以上の結果、おかげさまで当該年度は実質業務純益が三百八十八億円、経常利益は九百六十億円と、いずれも経営健全化計画を上回る実績を上げることができました。

 しかしながら、同じく経営健全化計画の目標であります中小企業向け貸し出しにつきましては、当行貸出業務の主力である長期資金について、全般的な設備投資意欲が低迷したこと、当行の中小企業取引先の中で大きなウエートを占めております大企業や金融法人のグループ会社において親会社主導による負債圧縮の動きが大きかったことなどから、残念ながら大幅な減少を余儀なくされました。また、これに関しては、先般、業務改善命令を受けましたことをまことに申しわけなく思っております。

 今年度の貸出業務につきましても、引き続き全般的な設備投資意欲が低迷していることから、厳しい状況が続いております。また、近時の景気動向もあって、貸出先の業況が悪化するケースも多くなっており、その中で、一部返済をお願いする交渉を進めましたが、その仕方について性急な面があったことが発生し、皆様に御心配をおかけいたしましたことについては心から遺憾の意を表明いたします。

 現在は、かかる交渉におきましても、個々の貸出先の事情をよく把握した上で十分な話し合いの機会を設けるべく、行内で繰り返し徹底させております。

 また、中小企業向け貸し出しにつきましては、私が委員長を務めます中小企業向け貸出取引推進委員会を新たに設立し、当行の最重要課題の一つとして強力に推進する体制をとっております。

 以上、簡単でございますが、当行の新銀行としての経営状況を報告させていただきました。

山口委員長 どうもありがとうございました。

 次に、丸山参考人にお願いいたします。

丸山参考人 あおぞら銀行の丸山でございます。

 冒頭、意見陳述をさせていただきます。

 弊行は、平成十二年九月に特別公的管理を終了し、ソフトバンク株式会社、東京海上火災保険株式会社、オリックス株式会社と地域金融機関九十三行並びに外資系を含めた百五社の株主に譲渡され、民間銀行としてスタートいたしました。

 特別公的管理終了に当たりましては、金融再生法に基づき、合計三兆二千三百六十五億円の資金贈与等の国民負担をいただきましたこと、また二千六百億円の公的資金による優先株のお引き受けをいただきましたことを何より重く受けとめ、日本経済において弊行の果たすべき役割の実行と公的資金の返済のための収益力の向上を第一の使命と考え、日々運営に努めているところでございます。

 おかげをもちまして、平成十三年三月期は、業務純益、当期純益とも、経営健全化計画にお示しした水準をクリアする利益を確保することができました。この九月中間期におきましても、現在決算作業中でございますけれども、ほぼ経営健全化計画に予定していた水準を達成できる見込みであります。

 貸し出しにつきましても、この一年間でお取引先数もふえ、残高も順調に増加しております。昨年は残念ながら増加計画を達成できずに終わりました中小企業向け貸し出しも、今年度は昨年度を上回るペースで順調に実績が上がっております。特に、新しい産業の創造や今後の成長性が高い事業に取り組んでいかれる企業に対して、弊行独自の専門性を生かした金融サービスにより積極的にサポートすることを使命と考え、経営資源を割いて注力しております。

 また、弊行では、経営と執行を分離したコーポレートガバナンス体制を確立し、経営の健全化と意思決定の迅速化を図っております。株主に関係しない社外取締役及び監査役で構成いたします特別監査委員会を設けておりまして、株主及びそのグループ会社と弊行との取引に対し厳重なチェックを行っており、いわゆる機関銀行化の回避策を徹底して講じております。

 あわせて、同じく社外取締役により指名報酬委員会を設置し、役員の任免、報酬等を決定しております。

 一方、経費節減のリストラ、効率向上のためにも力を尽くしております。経費は十三年三月期で前期比三十二億円の減少を実現し、四百億円となっておりますが、この中間期もさらに減少が実現できるものと見込んでおります。

 おかげをもちまして、かように弊行の再建は順調にスタートしておりますが、今後も弊行といたしましては、再生の経緯をしっかりと認識し、銀行に対する社会のニーズに十分におこたえし、かつ収益力を高めて、国民の皆様に多額の御負担をいただいたことに報いる所存でございます。どうかよろしくお願い申し上げます。

山口委員長 どうもありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

山口委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤剛男君。

佐藤(剛)委員 ありがとうございます。理事をやっております自民党の佐藤剛男でございます。

 まず、本日、お忙しい中、ショートノーティスの中で、八城新生銀行社長、丸山あおぞら銀行社長、御出席賜りまして、心より感謝を申し上げる次第でございます。また、少々お聞きにくい質問をするかもしれませんが、お許しいただきたいと思います。

 といいますのは、実は同僚議員の五十嵐文彦議員が、本件の問題、もっと具体的に言いますと、ウォールストリート・ジャーナルに載っております「世界鳥瞰」というところを前提にしまして、新生銀行の八城社長と、それから金融庁長官の森長官との会談の件につきまして、前々回の当委員会においていろいろな調査がありました。そしてそのエッセンスは、森金融長官をここに、この委員会にお呼びしていろいろ聞きたい、それは何なのかというと、森金融庁長官と八城会談において金融庁の圧力が相当あるんじゃないかということの、これはアメリカのジャーナリストの、ウォールストリート・ジャーナルに書いてあるものを前提にしたものでございます。

 そこで、委員長、皆様方に、円滑なる審議のために、そのウォールストリート・ジャーナルをお配りさせていただきたいと思います。もう配ってあると思いますけれどもね。また、一刀両断というものに八城社長の御見解が載っておるわけであります。

 そして、前々回のときには、四時間にわたって本件の問題について当委員会は中断いたしたわけであります。そういうことで、なぜ中断したかというと、森長官を当委員会に参考人としてお呼びするということをしてくれという御要求に対しまして、金融庁の長官というのは次官並みの待遇になっておる、次官は国会には出ないというふうな一つの慣習がありまして、そういう中で、それならば、その対談の相手は八城社長でございますから、これは私、理事として申し上げたんですが、八城社長をお呼びしたらいいんじゃないか、こういう中だったわけでありますが、きょうの理事会におきまして、突如と言っていいだろうと思いますが、森金融庁長官が御出席されまして、午前中、いろいろな質疑が交わされたわけでございます。

 そういうことでございまして、ちょっとダブるかもしれませんが、事は、私は、非常に八城社長の敏腕についてはかねてから尊敬いたしている者の一人でございますし、エッソ石油の社長、シティバンクの社長をせられ、この日本の国際的な経営者でございますから、そういう中で、はっきりと、この森・八城会談において解明すべきものは解明しておくことが今後の我々金融委員会の職務ではないかと思って、今お配りさせていただきました。

 そこで、これについて私はわざわざ線を引かせていただきました。ちょっと社長、ごらんいただきたい、こう思います。一、二、三、四、五、六、七、これについて、まず最初に御確認申し上げますが、きょうお渡ししましたが、既に本件についての過去の経緯からごらんになっているというか、当然のことでありますがあると思いますが、まずそこら辺から一つ御確認して質問に入りたいと思いますが、ごらんになってここに御出席されておりますでしょうか。

八城参考人 読んでまいりました。

佐藤(剛)委員 そういうことでございますので、それでは、イエスかノーかでも結構なんでございます。この一について、これは、「国会議員が批判している」という題名の中で、五十嵐同僚議員が指摘している問題でありました。金融庁の圧力が強まったのは八月だ、新生側の速記録によると、八月十日、金融庁長官の森さんが、このくだりですね、このくだりで、「「借り換えに応じようとしない新生の姿勢を国会議員が批判している」と伝えている」こういうふうに森さんが八城参考人に、八月十日になっておる。これはアメリカの記者だと思いますが、ウォールストリート・ジャーナルの記者、ジェイソン・シンガー、フレッド・ドゥボラックですか、というぐあいに言っていますが、この事実はあったわけでございましょうか。

八城参考人 今御指摘の点については、二つの点で間違っています。

 第一は、翻訳される前のウォールストリート・ジャーナルには、こういう直接国会議員とそれから融資先とのつながったセンテンスはございません。その意味で、まず日本語が間違っているというのが第一。

 第二の点は、森長官から私にこういう話は全くございません。マスコミとか国会でもいろいろと新生銀行の融資姿勢について批判がありということはおっしゃいましたけれども、それとは全く別のところで個別の問題の融資先についての話があったわけで、そういう意味ではつながっておりません。

佐藤(剛)委員 それでは、ありがとうございました。それ以上の深入りはいたしません。

 それでは、二につきましてごらんいただきたいと思います。

 二はこう言っているんですね。「速記録によれば森氏は「新生は他行と足並みを揃えるべきだ」と述べ、続けて「(さもないと)レピュテーション・リスクを心配する必要が出てくる。これから何が起きるか分からない」と警告した」ですから、社長の場合には警告されたということですね。そして「「なぜ問題先へ融資を続けられないのか。金利を高めにすればいいだろう」とも尋ねたが、これへの八城社長の返答は「これ以上問題債権をバランスシートに残しておけないから」というものである」これについての是非をお伺いします。

八城参考人 森長官とお目にかかったのは、健全化計画のフォローアップの一環として話をしたい、そして、新生銀行の最近の融資あるいは返済についての姿勢について、いろいろと世間の評判が悪くなっているので、そういう意味でレピュテーションリスクがあるのではないかというふうなお話があったことは事実でありますが、これほど具体的なことで私に話があったわけではございません。

 ここで言っていらっしゃる、例えば、二の方でございますが、「バランスシートに残しておけないから」というのは常々私が言っていることでございまして、譲渡後の資産の内容が非常に悪い、依然として多額の不良資産があるので、これは健全化のためにどうしてもきれいにする必要があるということを私は常々申しております。そういうコンテキストで、あるいはこういう話があったのかというふうに思います。

佐藤(剛)委員 私は、これ以上深入りいたしません。

 それでは、次の三のアンダーラインを引いてあるところでございます。

 このウォールストリート・ジャーナルによりますと、「だが森氏は譲らず、リップルウッド側役員」、リップルウッドというのは長銀の引き受けをされたあれですが、「リップルウッド側役員のティモシー・コリンズ、クリストファー・フラワーズ両氏に金融庁の意向を伝えるよう求めた。「新生は、各社が立ち直れるよう必要な支援をするものとする。この点、念を押しておきたい」。速記録の伝える森発言だ」これはいかがでございましょうか。

八城参考人 お答えします。

 新生銀行の経営責任は私が持っておりますが、新生銀行の株主を代表して、二人の社外取締役が入っております。その二人の名前が出ておりますけれども、その二人に対してもやはり新生銀行のあるべき姿ということを伝えてほしいというのは伺いました。これは、私の経営者としての責任上、株主に対して考え方をお伝えするということは当然のことでございます。

佐藤(剛)委員 この機会ですから、八城社長は御気分を悪くするかもしれませんが、実はきのう御社の方がいらっしゃったときに、いわゆる昔の長銀、優秀なる僕らの大学の、私は東大の大学でしたが、優秀な人たちが興銀、長銀に参りました。そして、そういう人たちが日本の経済の基盤を長期金融というものを通してつくったものと私は思っておりました。

 そして、今回のバブルを契機に長銀が不幸なことになって、そしてその譲渡先がいわゆるリップルウッド・ホールディングス、あるいはメロンバンク、あるいはGEキャピタル、あるいはトラベラーズグループ、そして日本では三菱商事、何か知らぬが、経団連の今井会長もその役員になっておられる。それから、つい最近までアサヒビールの樋口さんがなっておられた。そういう中で、社長として国際的な経営者の八城さんがなっておられる。

 そこで、私はこう聞いたのですよ、株主の状況のシェアを教えてくれ。そうしたら、文書が返ってきました。私はこれは驚いたですね。出資者については、申しわけありませんが、守秘義務の関係から出資割合の明細はお出しできません、こういう話ですよ。失礼きわまる話でして、私は知っていますよ、どのような形になっておるか。千二百億円の出資をやったので貸しができておる。

 それから、その中に、株主の人というのは、有名な方々が株主になっておられます。あるいはシニアアドバイザーになっています。

 例えばボルカー。ボルカーといえば今のグリーンスパンの前任者ですよ、FRB、連邦準備銀行の。今、グリーンスパンがやっていますけれども、そのボルカーもシニアアドバイザーになっておる。そういうような方々が、私は全部わかる。それからまた、ロックフェラーの神様もなっておられる。それから、片っ方のロスチャイルドの系統の人たちも株主になっている。しかし、それも出せない。これはまことに、こういう話こそトランスペアレンシーのない話だろうと思う。

 ここに、一刀両断ということで八城社長が「解除権行使は正当な権利 邦銀のカネは誰がために」こう書いてあるのです。その中に、株主というのは重要である、預金者も重要である、そういうことで非常に強調されている。

 私は、それは一つの考え方だと思います。思いますが、その会社が、私はこの財務金融委員会の理事ですが、そういう難しくない株主の話のシェアも、これすら出せないような話ではまことに情けないな、いよいよ、私は、もしそういうことでありますれば、これから新生銀行の活躍ぶりをいろいろ詰問しなきゃいかぬなというふうなことも思っています。

 時間が限られておりますので、今や新生銀行は、日本の中小企業の人たちあるいは大企業の人たち、ある批評家によりますと、三十社を不良債権で整理すれば、二十行をひとつなくせば日本の不良債権問題は処理できる、こういう乱暴なことを言うている人たちがいます。一つの企業が倒れれば、二次、三次、四次、下請、孫請から大変なことになる問題があるわけだ。中小企業の影響は限りなく大きい。その中で、最後の首の根っこを持ってあれしているのが新生銀行ですよ、旧長期信用銀行。日本はそれをどれだけの資金であれしたか、十億円の資金で譲渡したのです。どれだけの国の金が行っていますか。

 そういう中で、私は、どういうふうな社長の経営哲学かをじっと眺めているつもりでありますし、そういう面で非常に遺憾であったということを、そのくらいのことは知っているはずです、長銀がどういう形でいったのか。それすらも出さない、そして経営者としての見解を言われていることに対して、私は非常に遺憾であるということをこの場をもちまして参考人に申し上げておきます。よく注意しておいてください。

 次の問題に移ります。

 そこで、四のところです。線が引っ張ってあるところを見てください。時間が私は三十五分までしかないもので、申しわけないです。

 そういうことで、四にこう言ってあるのですね。「金融庁が同行に対し、直ちに融資政策を改めるよう求めたとある。理由はやはり、政治家の批判が厳しいからというものだ。「そこで自分は」と」石黒氏の見解ですが、ここのところのくだりは正しいのでしょうか、正しくないのでしょうか。

八城参考人 ウォールストリート・ジャーナルがどういう資料を持っているか、私は全く存じません。したがって、このくだりについてはお答えできません。というのは、彼らが持っている資料を見たわけでもございませんし、したがって、私が直接聞いた話でもありませんので、お答えはできません。

 そういう事実は、私に関する限りはございません。

佐藤(剛)委員 結構でございます。それは、そういうふうな話として速記に残しておいてください。

 次ですが、五のところでございます。「九月五日夜、別のメールが八城氏から内部向けに出た。そのプリントアウトも見たが、氏はそこで、金融庁から何項目か要求があったと述べている。それには、融資回収を求めた先のリストを金融庁に提供すること、マスコミ向けに文書を直ちに出し、新生の融資姿勢を明示することといった要求が含まれる」これはそういうメールが出ているという話なんですね。「さらに、「短期資金を突然回収しない」「邦銀の慣習尊重」の二点を文書で明記せよとの要求もある」これは事実でしょうか、事実じゃないでしょうか。

八城参考人 森長官とのお話の中でいろいろありまして、主として、新生銀行の融資の姿勢についてどう考えているかという御質問がございました。それにお答えしたその関連で、現在のやり方についてどう考えているかということを問い合わせがございましたので、私どもは、その当時から既に、銀行としての、夏の、初夏以来の融資態度あるいは回収態度について、原則的には間違っていない、短期のものが期限が来ればお返しいただくというのは、そして、しかもリスクがあれば、それを引き続きお貸しすることがもしも銀行の採算にとって、将来にとってリスクが大き過ぎるとするなら、返済をお願いするのは当たり前だと考えておりましたので、そういうことを申し上げました。そのコンテキストの中で、常々、監督官庁には、書類を提出することを求められることがございます。そういう意味で、出す必要があるであろうということは言ったことは事実であります。

佐藤(剛)委員 これもテークノートしていただきます。

 そして、次の六のところをごらんいただきたいと思います。

 「このメールによると、指導に従うための猶予は四十八時間。果たして二日後の九月七日午後、同行はニュースリリースを」出してこう言っておるんですね。「弊行の事業法人に関する融資姿勢に関しまして、各方面からさまざまな御批判や報道がなされており」弊社としましては極めて遺憾とした上、「「積極的に融資を行うべきお取引先へのさらなる融資の強化を図ります」と述べた」これは事実でしょうか。

八城参考人 これは実は八月の三十日に私どもは、これからの融資姿勢について、特に中小企業に対しては中小企業向けの貸し出しを推進する必要があるということで委員会をつくりました。それと、一週間後でありますけれども、こういうニュースリリースを出すことが当行の姿勢をはっきりさせる意味で大事であるというふうに考えて、出したことは事実であります。

佐藤(剛)委員 今一番、日本の経済を見ますと、危機的状況にあると私は思っているわけであります。その中で、一番困ったことに、金融機関が一番弱い状況にあります。そういう中で、私、こう言っていいかと思いますが、青い目の銀行と言わせていただきたい、わかりやすく言いますと。外国の銀行の方が中心になって、これだけ並んでいるわけですから、シニアアドバイザーがボルカーであったり、それから、このメロンバンクであったり、GEキャピタルなんというのは、長銀の子会社の日本リースをGEキャピタルが買収したわけですね、二兆円で。こういうものであります。三菱商事がどういう形でかんだのかもよくわからないですが、さらにそれに瑕疵担保条項というのもある。これもまた非常に奇妙きてれつなものでありますが、そういうふうな形でありまして、非常にこの意味では、新生銀行がやめますということでやめた瞬間、日本の企業は手を上げちゃう。これは私は放置できない状況だろうと思っております。

 ところが、これを見ました、一刀両断、そうしましたら、これは社長の見解なんですね。こういうことをしてなぜ悪いんだ、とるものはとって、殺すものは殺したらいいじゃないか、こういうふうな感じですよね。まさしく一刀両断。

 それはアメリカのプラクティスはあるかもしれない、アメリカの金融行政はあるかもしれない。しかし、日本には日本の金融行政というのがあって――乱暴な人がいました。三十の企業というのをつぶすのが不良債権問題だと言って、ずっと歩き回っている人たちがいる。それは新聞、雑誌で有名です。マイカルが一つつぶれましたから、三十が二十九になっている。

 こういうような状況の中で、新生銀行は、日本のマイカルに対しても大融資先であった、そごうに対しましても大融資先であった。こういうふうなことを眺めますと、マイカルが、社長が引く瞬間につぶれますよ。つぶれますと、二次、三次、四次、五次、中小企業はめちゃくちゃになります。そういうことの立場にあるということをしっかりと理解していただいて、これはおかしいと言われたら、それは、おかしいのは、私は八城社長の方だと思っております。

 こういうふうなことで、私はあえて申し上げましたが、ジョン・デービス・ロックフェラーといえば、ロックフェラーの最たる、神様みたいな人だ。それから、ロスチャイルドといったら、ヨーロッパの神様みたいな人です。こういうふうな方々が出資をして、メロンもそうです、GEキャピタルもそうです。全くそういう中で、なぜ三菱商事がそこに入っているかよくわからないが、私は、それはそれとして、それは深入りしませんけれども、非常に注意深く見守らせていただくことをこの機会に申し上げまして、また必要がありますときにはお呼び申し上げますから、先ほど申し上げましたように失礼な段お許しいただきまして、私の参考人に対する質問は終わらせていただきます。

 それから次に、時間がないんですが、簡単ですが、丸山参考人、あおぞら銀行、元日債銀であります。あおぞら銀行の青空のようにきちんと日本の経済、金融を流してもらいたい。そうじゃないと、日本の中小企業、日本の企業はおかしくなってしまう。

 そこで、先ほど来お話がありましたが、中小企業向けの融資、これに対してもう一度、結成されまして、あおぞら銀行になってから、当時の計画と、当時の約束と今の状況の、減少しているわけですから、それについて説明してください。

丸山参考人 実は、昨年度の決算におきまして、私どもを含む三行が、経営健全化計画の中での中小企業に対するバジェットを未達成、こういうことで金融庁から御注意を受けました。私ども、実は、三百四十億円のバジェット、純増バジェットを持っておったんですが、それに実は二十八億足らなかった、こういうことでございます。

 私ども、決して、中小企業に対するあれを軽く見たわけではございませんが、あえて申し上げれば、二十八億という数字、確かに足らなかったことは足らなかったんですが、申しわけない、こういうことでございまして、よし、それならば次の年はしっかりやってやるぞ、こういうことでございまして、今期のバジェットは三百五十億でございます。その三百五十億に対して、この上半期で実は七百億の純増を達成いたしました。これで昨年度の二十八億のショートをお許しいただけるか、かように思います。

佐藤(剛)委員 もう時間でございますので、最後に、八城参考人それから丸山参考人に対しまして心より敬意を表しまして、どうかひとつ、今、日本の経済がとんでもないことに来ている、こういう中で構造改革をやらなきゃいけない、それで、そういう面で金融のあり方というのは基本で、極めて重要なんです。ですから、皆さん方が返してもらうぞ、返してもらうぞ、手をやった瞬間に息がとめられちゃうんです、企業が。大企業が一つとめられたことで、それに食っている、例えば一つのそごうにしても、そこが、商品を入れている段ボールのあれから何から大変なものが影響する、これが現実であります。

 ですから、そういう中で、瑕疵担保条項というようなものも与えられているわけですから、それについてどうのこうの言うつもりはないが、そういう形の一つの日本的なプラクティスも、それはアメリカ的な、あるいはヨーロッパ的なプラクティスもあるかもしれない。しかし、グローバリズムという言葉でよく言うが、グローバリズムという言葉はないんです。グローバリティーというのはある。しかし、何でもかんでもそういう市場原理に任せたら、世界の経済全体が今テロでおかしくなってくるような状況でありますから、そういう状況の中での運営でございますので、お二人とも大変なる経営者でございます、特にあおぞら銀行については、日本の、孫さん、あるいは東京海上さん、あるいはオリックスさん、こういう立派な方々が進められておるわけでございますから、ひとつしっかりと国を守っていただきたい。

 これをもちまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

山口委員長 次に、五十嵐文彦君。

五十嵐委員 民主党の五十嵐文彦でございます。

 両参考人におかれましては、わざわざお出かけをいただきまして、まことにありがとうございます。時間が限られておりますので、簡潔にお答えをお願い申し上げたいと思います。

 まず最初に、健全化計画に含まれる約束事のフォローアップに森金融庁長官がわざわざ出向かれたということでありますけれども、こうしたことで森長官がやってくるというのは通例のコンタクトのあり方ですか。それとも、こうしたフォローアップ作業はもっと下の実務的な方が来られるのが普通ではないかと思われるんですが、両社長に簡単にお伺いします。

八城参考人 お答えいたします。

 森長官が来られたのではございません。私が金融庁に参りました。それ以前にも、事務レベルでいろいろとフォローアップについては話がございました。(五十嵐委員「いや、通例ですか、そういうことは」と呼ぶ)ええ、通例でございます。監督官庁として、質問があればお呼びになる……(五十嵐委員「長官と話をすることは通例ですか」と呼ぶ)時たまございます。それほど頻繁ではございませんが、二、三カ月に一回ぐらいは銀行の状況について聞きたいということもあったように思います。

丸山参考人 お答えいたします。

 森長官が私どもを訪ねたということはございません。私の方が何回かお訪ねして、お話をお伺いしたことはございます。

五十嵐委員 両銀行はかつて、長銀、日債銀時代に、政治家のお財布だ、こう言われていた長い時代がございます。ということで、マル政案件というんですかね、マル政、政治絡みの融資案件というのが残っているんじゃないかなという予測をする向きもあるわけですけれども、引き継がれたときに全部そうした案件については整理をされたのか、それとも、政治家絡み、あるいは政治家が口をきいたというような案件が融資の中に残っていたかどうか、両代表にお答えいただきたいと思います。

八城参考人 お答えいたします。

 マル政という言葉を初めて聞きました。

 私は、新生銀行の社長になりまして以来、そういう話は一度も聞いたことはございませんし、そういうものを引き継いだということは全くございません。

丸山参考人 お答えいたします。

 一言で申し上げれば、現在のあおぞら銀行、日債銀には、その種のものは全く残っておりません。

 巷間いろいろ言われております。しかし私は、就任に際して何度も社員に聞きました、こういったものは今残っているかと。残っていません、完全にありません、こういうことでございました。

五十嵐委員 八城社長にお伺いをいたします。

 今回のウォールストリート・ジャーナルの記事、私は英文に基づいて質問いたしておりますので、その中で、先ほど社長がおっしゃった誤訳だというのは言い過ぎだと思います。

 同じセンテンスの中ではっきりと、これは、まず、プレッシャーがかかってきた、そして、非常にリスキーでもう融資が継続できないというようなものについて国会議員が批判をしているんだということを森さんが言ったという記事がありまして、それに、そのまま段落を変えないで、すぐ続いてまた、森さんは幾つかの企業を、そうした融資継続が困難だと新生銀行が考えている四つの企業名を挙げた、こういうふうに書いてあるわけですよ。これはつながっている文章ですね、いわば。ですから、必ずしもこれは誤訳だとは言えないというふうに思います。

 それから、それはどうでもいいんですけれども、まずこの記事のもとは、内部資料と言われるものが流出をしたとはっきり書かれているわけです。それから、その内部資料と同じものかどうかわからないけれども、役員の石黒さんという方が内部向けに出したメールのプリントアウトを見たんだと。それから、八城社長自身の九月五日付の内部向けのメール、それから九月十日付の八城氏のメール、これのプリントアウトしたものを手に入れたんだと。こういう三つか四つの内部資料に基づいてこの記事は、また補足的な質問もしてできているということで、かなり信憑性は高いと私は思っています。

 私、もともとマスコミ出身ですけれども、ウォールストリート・ジャーナルはかなり信用度の高い新聞であって、また日本の記者以上に裏づけをとられるということもわかっております。また、私どもが調べた範囲内では、この原文のメールは英文で、英文の文法の間違いすらそのまま実は載っていた、指摘されていたというようなこともあるぐらいですから、こうしたメールが出されたということ、そしてそれが流出したということは事実ではないかなと容易に推測されるわけですが、それについて、確認をされたのか、それとも全く知らないというのか、もう一度お伺いをしたいと思います。

八城参考人 ウォールストリート・ジャーナルの記事が出た段階で今先生のおっしゃったようなことが書かれていたことは事実でありますけれども、ウォールストリート・ジャーナルには、日本訳にも書いてありますように、企業秘密に属すること、顧客との話の内容、あるいは監督官庁との話について、公表すべきでないものは絶対できないという考え方です。そこで、質問について私は答えませんでした。しかもそれは、はっきり否定も肯定もしない。否定をすれば、後でそれがもしも真実だった場合に非常に困るというのは長い間の経験からわかっておりますから、こういう流出をしたという情報をもとにして、どういうものかわからないものをもとにして答えるわけにはいかないと。

 ところで、銀行では直ちに内部調査をいたしました。現在も続行中です。銀行の内部の調査ではどうしてもわからないところもありますので、公平性を考えて、第三者として法律事務所から弁護士に来てもらって、当行のコンプライアンス委員会の委員である弁護士先生に現在聞き取りをしていただいているという状態でございます。

五十嵐委員 これだけの内部資料が一度に流出しているということは、恒常的にこれまでも流出していたんじゃないでしょうか。そして、その中には当然のこととして個別の企業の秘密に関する分も入っているケースが多いと思われますが、そうした秘密保持について、新生銀行は今まで厳重にやってきたのか、大変疑わしいわけですが、その辺についてはどうですか。

八城参考人 銀行には三つの規則がございます。一つは、非常に重要な規則で、銀行のポリシーとして情報管理ポリシーというのがございます。それから、それをさらに敷衍しまして細かく決めたものが、情報管理規則というのがございます。さらに、外部とのコミュニケーションについてのポリシーがございます。そのいずれにも違反をしている事件であります。私が銀行の社長に就任してから初めての事件でございます。そういう意味では、厳重にその調査をし、最終的にはコンプライアンス委員会、懲罰委員会で、だれが出したかということがわかれば、処分をするつもりであります。

五十嵐委員 市場の中には、実は新生銀行からいろいろな情報が漏れているという話もあるわけですから、厳重にしていただきたいと要望をしておきます。

 それから、先ほど午前中に森長官に私質問いたしまして、四つの企業名を挙げたのかということを尋ねました。一般的に、例示として、新生銀行の融資態度を問う中で、一般的に具体的名前を挙げないと迫力がないから挙げたんだということは認められました。その中に、融資先企業は中小企業も大企業もあるということをおっしゃったわけですけれども、これはどうですか。肯定されますか。

八城参考人 そのとおりでございます。

五十嵐委員 中小企業については、これは一般論として中小企業への融資態度が厳しいんじゃないかという話があって、まさに文書を出しているくらいですから、あるいは金融庁としてこれも、そういうことを出すこと自体がどうかという話もありますけれども、中小企業への融資態度は考えろというような方針を金融庁自身が出されている。

 ですから、わからぬわけでもないんですが、なぜ大企業について金融庁が新生銀行に対して言わなきゃいけないのか。私自身も実は社長と同じようにわからないわけですが、この辺はどういう文脈で出てきて、それで反発をされたからこそ行内でこういうような、実はメールが流出したのではないか、こう思うわけですが、圧力があったとお考えになったのかならないのか。そこをお尋ねしたいと思います。

八城参考人 簡単にお答えしますと、圧力があったとは考えておりません。

 というのは、銀行としてはどうしても守らなきゃならない、守るべき融資についての方針がございます。つまり、それはリスクとの関連であります。あるいは、金利とリスクを考えて、融資のできないものについては、銀行の将来にとって大きな問題を残すという場合にはいたしません。したがって、圧力とは私は感じておりません。

五十嵐委員 いや、それにしては、先ほど同僚委員が指摘をされました日経ビジネスの一刀両断を初め、あちこちで八城さんがおっしゃっているところには金融庁の口出しに対する怒りが感じられるわけですけれども、こういう反論をされること自体が、これは圧力があったという証拠になるんじゃないですか。

 それからもう一つは、この九月の七日に発出されたニュースリリースですね。融資態度を改めます、遺憾ですという、いわば謝ったような、ごめんなさいと言っているような文章ですけれども、これは金融庁が求めたから出てきたというふうに思われますが、これについてはどうですか。

八城参考人 その私の日経ビジネスの一刀両断、論断というんですか、これはインタビューに基づいて記者が書いたものでございまして、細かい文章とか表現については私は必ずしも納得いたしておりません。

 しかし、私が申し上げたかったのは、新生銀行というのは多額の公的資金をいただき、そして最初の段階で債務超過を消すために税金が使われた。この銀行の使命の一つの大事なことは、早く公的資金を返し健全な銀行にすることだというふうに考えています。そして、多くの場合に、バランスシートの左側の資産のことは常に問題になるけれども預金者のことはほとんど問題にならない。したがって、私は両方ちゃんと見なくちゃならないのではないかということを申し上げたことであります。

 それから、九月の七日は、このプレスリリースでありますけれども、我々自身がやはり反省をすべき点は反省をするということで出したわけで、そして、したがって、金融庁から借りかえに応じろとかあるいは回収をとめろとかという話は一切ございませんでした。その点ははっきり申し上げます。

五十嵐委員 どうもかばっているんじゃないかなというふうに思えないこともないんですが、その点に関しては、新生銀行側の主張はある程度正しいと思うんですが、一方では金融庁が躍起となって指導しなきゃいけないという要素も確かに新生銀行の側にはあったと思います。

 私は、瑕疵担保特約についても、これを用いるのは当然だという八城社長の主張を読んでいるわけですけれども、確かにこれによって利益も損失も出ないということは事実でありますが、しかし、あらかじめ引当金を積んだ上で譲渡された融資先がある場合は、メーンバンクにその分肩がわりしてもらえば、新生銀行には引当金の分が丸々利益として残るんじゃないですか。ですから、こういう利益の部分もあると思うんですが、それはどのぐらいあるのか、それについてどうお考えになるのか、伺いたいと思います。

八城参考人 メーンバンクに肩がわりをしてもらうといっても、我々は引当金を持っておりますから、引当金の範囲内で交渉するということになります。お買いになる方は、買ったものが一〇〇であれば、引当金を除いた、例えば三〇の引当金があれば七〇というのが向こうの考える数字だろうと思います。ですから、そこはお互いに売り買いの話でありますから、商業ベースでの話になる。したがって、そういうことによって幾ら残ったかというのは、これは個別の案件について申し上げることもできませんし、実際には昨年一年間でプラス・マイナス・ゼロですというお答えにいたします。

五十嵐委員 いずれにしても、その分でお荷物が軽くなるという部分もありますから、瑕疵担保特約をできるだけ使いたいというインセンティブが働くんだろうと思いますが、そのこと自体が我々は問題だと追及をしてきたわけでありまして、利益追求する株式会社ですから、それをしちゃいかぬというわけではないですけれども、一方で金融機関が日本の社会、経済社会に求められている公的な役割というものを十分理解して融資をするということでなければならないし、あるいは、むやみな債権回収をすべきではないというのも、私はそういう考え方も当然あるというふうに申し上げておきます。

 そこで、もう一つ、時間が迫ってまいりましたので、マイカルの問題をお尋ねしたいと思うんです。

 社長の文章の中で、マイカルの債務者区分ですけれども、譲渡時、長銀からの譲渡時は正常債権だったというのは事実のようですね、ここに書いてあります。このマイカルについてはもう破綻をしているわけですから、社長がお書きになっているとおり、もうある程度明らかにしても構わないということだろうと思います。

 二〇〇一年、ことしの三月末には、それでは、貴行の中での債務者区分は、マイカルについてはどうだったんでしょうか。それから破綻時はどうだったんでしょうか。ちょっとお教えいただけますでしょうか。

八城参考人 三月末では正常債権だったと記憶いたしております。六月末で要注意に変えております。それから、破綻時は、私どもは全く関係、関係といいますか、破綻が起きた時点で依然として要注意債権のままで破綻をしたということでございます。

五十嵐委員 節目、節目で伺いましたけれども、途中で破綻懸念先に落としてはいませんか。

八城参考人 落としてはおりません。

五十嵐委員 この問題について、金融庁から要注意先のままにしておいてほしいというような要請はありませんでしたか。

八城参考人 全くございません。

五十嵐委員 それから、このマイカルについての債務者区分については、よその融資銀行とこれは協議をしたり、あるいは債務者区分について横並びをしたりということはありませんでしたか。

八城参考人 お答えいたします。

 全くございませんが、債務者区分は、金融検査マニュアルに基づいて自己査定をいたします。私どもの自己査定でございますので、他行との相談ということは一切ございません。

五十嵐委員 それで、譲渡時が正常債権であったとおっしゃったわけですが、この譲渡時の正常債権というのは、もともと査定が正常なものとして、正常なものだからこそ引き受けた、適債権として引き受けたということなんですが、この資産査定そのものが甘かったということではないかなと思うのですが、そのように感じられますか。

八城参考人 譲渡時においては旧長銀の自己査定をもとに、そして監査法人がそれを精査し、そして売却が行われたわけですが、甘かったと言われる先生の御質問ですが、私は甘かったんだろうと思います。これは昨年起きたいろいろな企業の破綻から見てもそういう結論を得ざるを得ない。全部が全部ではありませんけれども、かなりそういうケースがあったように思います。

五十嵐委員 新生銀行の場合、譲渡を受けたのはすべて適資産だったはずなんですが、資産査定が甘かったというのはマイカルのほかに一体どのぐらいありましたか。件数とか額とかおわかりになりますか。

八城参考人 一年間の間に債務者区分が劣化した、落ちたというケースはかなりございます。要注意債権から要管理債権に落ちたものが、金額で申しますと四四%、要管理債権を飛び越して破綻懸念に落ちたものが六%、破綻したものが五%ですから、要注意で五五%は金額で落ちております。それから一方、件数で申しますと二四%。つまり、集中度が非常に高いということでございます、新生銀行の場合には。

五十嵐委員 それはある程度引き継ぐ際にわかったことではないかなと思うのですね。これほどまでに極端に債務者区分が変わるようなものが含まれるということは、プロがたくさんおられるわけですから、ぱっと見たときにこれはおかしいぞというのはわかったはずなんですが。

 わかっていたけれども引き受けさせられた、だから二次ロスが出た場合の対策を求めたということなんだろうと思いますが、もとの話に戻って恐縮なんですけれども、そのために瑕疵担保条項というのが考えられた。最初から要するに厳密な査定をしていなかったことが瑕疵担保になり、このようなその後のだらだらと債務者区分が下がって不良債権がふえるということにつながったと思うのですが、そのところの事情をもう一度振り返って御説明いただけませんか。

八城参考人 日本の企業の財務内容あるいは資産内容というのは、これは先生もよく御承知のように、この二、三年の間にいろいろ会計原則とか監査の厳しさというのは非常に変わっております。したがって、新生銀行が引き受けた資産だけに限られる話ではございません。しかしながら、新生銀行の場合には、そういう問題を持っている債権が他行に比べると非常に比率的には多いです。

 その理由をいろいろ考えてみますと、やはり二十五兆の銀行で二十兆近くの貸出債権を持っていた銀行が、現在はその四〇%の規模になっております、譲渡時において。したがって、一件当たりが非常に大きい。したがって、コンセントレーションと先ほど申し上げましたが、集中度が高いということも一つの原因だろうと思っています。

五十嵐委員 瑕疵担保特約が期限が切れるわけですけれども、それまでにできるだけお荷物を減らしておきたいというインセンティブが当然働くのだろうと思いますが、今回の、今回のというか九月の七日に発出したニュースリリースとの関連で、この瑕疵担保特約の使い方について、態度を変えられているのか、変えられたのか。それから、これから先もできるだけこの特約を活用したいと考えているのか。その方針を伺いたいと思います。

八城参考人 銀行としての基本的な考え方は変わっておりませんで、私がプレスリリースで出し、行内に徹底しておりますのは、お客様との話し合いをよくするように。つまり、期限が来て、短期のものについて期限前にお返しを願うとかということは一切ございません。今までもありませんでした。今後もございません。しかし、短期のものが期限が来て、しかも非常にリスクが高いというものについては、お返しをいただけるように何回も交渉すべきである。

 要するに、夏に起きた問題というのは、十分なお客様との話し合いがされなかったということが散見されるので、それを直していこう。そして同時に、お客様についてどういう再建計画をお持ちであるか、我々もそれに協力をしましょうというふうなことで、お客様のためにも役に立つような方法で解決をしていきたいというふうに考えておりますが、場合によっては例の解除権を行使せざるを得ないという例はこれからも出てまいります。

五十嵐委員 それは御商売ですから、当然あってしかるべきなんだろうと思います。それは私どもも認めますが、先ほど反省すべき点もあるとおっしゃったように、余りにも強烈なセーフティーネットといいますか、最後の伝家の宝刀ともいうべき瑕疵担保特約があるために、それに寄りかかって、少し指導といいますか、やればつぶれなくても済むような中小企業まで冷たい態度で臨むということがあったのではないかなというふうに私は思いますが、これについては、やはりそうした瑕疵担保特約へのもたれかかりというものがあったということをお認めになりますか。

八城参考人 いろいろ精査しますとそういうケースがあったことは認めます。しかし、それは非常に限られたケースでございます。基本的にはそういうことはやっておりません。

五十嵐委員 時間が来てしまいましたので。丸山さんには余り質問できませんで済みませんでした。

 ありがとうございました。

山口委員長 次に、若松謙維君。

若松委員 若松謙維です。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、お二人の委員から質問がございまして、私はまず八城会長に、公的資金を受けた銀行として、いわゆる健全化計画ですか、これがあるわけですが、第一期目の決算がたしかことしの三月期、当初の計画がたしか百九十億の業務利益が実際には三百八十八億ということで、計画を大変大幅に上回った。これはどういう理由でそのような好結果になったのか。それについてまずお聞きしたいと思います。

八城参考人 業務内容の点から申しますと、銀行のかなりの部分を占めております貸出資産による収益がございます。これについては調達コストを下げる努力をいたしまして、それから同時に金利で上げていただけるものについては上げていただくという両方の努力によって、一年間に前年に比べますと〇・二七%そういう金利収益が向上しております。それ以外に、いわゆる手数料収益も予算よりかも高い収益を得ることができました。

 したがって、結果としてそういう数字になったのですが、一方、IT関係とか支店の縮小とか規模を小さくするとか、いろいろそういった経費の節約に努めた結果、これが実は五十億ございます。

 したがって、百九十五億の予算に対して三百八十億を超えたというのは、幾つかの複合的な要因であります。

若松委員 ありがとうございます。

 そうしますと、いろいろな要素があるわけですが、非常に景気がよくない状況で、とりあえず新生銀行としては、二〇〇八年ですか、いわゆる公的資金を受ける銀行を脱却する、返済をするということですが、それはいかがですか、達成の見込み。また、早まる可能性もおありですか。

八城参考人 譲渡契約のときに、二〇〇七年、遅くとも二〇〇八年までには国からいただいている公的資金をお返しし、そしてそれを、普通株の形で優先株は返るわけでありますけれども、そういうことが決められております。私どもといたしましては、できる限り早い時期に公的資金をお返ししたい。

 そして、いろいろ考えておりますけれども、いわゆる上場については、これは法的な規制がございますので、私の口からは従来昨年の三月に申し上げた以上のことは申し上げることはできませんけれども、二〇〇〇年三月に新聞記者会見でも申し上げましたが、三年以内に上場をする、上場をすることによって公的資金を返せる方策を現在考えているというところが事実であります。

若松委員 今、三年以内上場ですけれども、先ほどの経費の五十億削減、いわゆる大体一割削減ですかの努力とか、手数料もいろいろと頑張っておられるようですけれども、三年以内、どうですか。これは相手がある話ですから、マーケットまた証券会社とか、自信のほどをちょっと御披露いただきたいと思います。

八城参考人 当然金融庁とよく御相談申し上げた上で手続を進めることになりますが、私どもとしては、三年以内というのは二〇〇三年三月で終わりになりますので、その目標に向かって現在でも鋭意努力中だということを申し上げたいと思います。

若松委員 それでは、中小企業について、ほかの議員からも御指摘がございましたが、この中小企業の貸し出し状況について触れてみたいと思います。

 たしか八城会長は中小企業対策委員会委員長ですか、ということ、これはいつつくられて、具体的にどのような対策を講じながらいわゆる中小企業の目標ですかを達成されようとしているのか、それについてお答えいただきたいと思います。

八城参考人 九月の上旬に委員会を設置いたしまして、私が委員長に就任しました。委員会の下には、私どもの常務を事務局長といたしまして、毎週、事務局が中心になりまして、担当部署から人を出していかにして達成するかということを議論しておりますけれども、委員会も実は毎週開いておりました。先週はございませんでしたけれども、既にもう十回近く開いておりまして、具体的な方策について案をつくり、そして各部店ごとに目標数字を与えております。

 どういう形で中小企業への融資をふやそうとしているかといいますと、第一は、いわゆるバランスシートといいますが、通常の融資をするのを一つ考えておる。これについては、各部店から我々としてぜひとも融資を受けていただきたいお客様ということで何百社というものを出して、それで個別名を挙げながらリストアップをしております。そして、各部店で交渉をさせていただいている。

 第二は、新しい金融の調達方法として、単にバランスシートによるローンでなしに、例えばプロジェクトファイナンスというのがございますけれども、案件ごとに、それでプロジェクトごとのファイナンスをするというのがございます。これはプロジェクトが失敗をすればそのプロジェクト自身が銀行に戻ってくるという形ですけれども、これはバランスシートを必ずしも入れなくても済む、中小企業にとってもバランスシートが軽くて融資が受けられるというケースもございますので、そういった種類のことを実はいろいろ提案をさせていただいております。これは昨年からやっております。

 それからさらに第三は、破綻をした金融機関が貸しておられた住宅融資を我々が買い取る。そして、買い取って、場合によってはセキュリタイゼーションと称しますが、証券化という方法もとりますけれども、我々が中小企業への融資をする。それとの関連でもう一つ申し上げたいのは、中小企業融資について得意な会社がございます。そういうところとパートナーシップを組んでそれへの融資をさせていただくといういろいろなことをやっておりますが、今着実に成果を生みつつあります。

 ぜひとも目標の数字は三月末までに達成をしたいというふうに考えております。

若松委員 御存じのように、今中小企業、全体的には景気低迷で、非常に貸す側もリスクが高まっていると思うんですね。率直に言って、やはり中小企業貸し付け、この目標というんですか、健全化計画の目標を達成しなくちゃいけないわけですが、やはり、経営者の本音として、株主の側から見ますと、中小企業貸し付けというのは収益力を高めるにはいわゆるネックになるのか、かなりリスクが高いものなのか、そこら辺はいかがでしょうか。

八城参考人 お答えいたします。

 銀行はリスクをとる商売でございます。リスクを全然とらないということはございませんで、ただ、リスクとリターンとの関連で考えなくちゃいけない。

 先生も御承知のように、日本の銀行は一%から三%以内の金利しかとっていないんですね。いわゆるファイナンスカンパニーになりますと一五%から一八%。ですから、リスクに応じて、一から三ということでなしに徐々に上がっていく、つまり、リスク、リターンの関係を考えた金利設定をするなら、たとえリスクが高くても融資はできるわけです。それが現在は銀行の慣行として行われていない。

 株主も、私どもが中小企業への融資を達成しなくちゃいけないということは今回の業務改善命令でよく承知をしておりますから、私どもが達成することについて了解をしていることはもう当然であります。たとえリターンが十分得られなくてもしなければならないというふうに考えております。

若松委員 そこで、私も、やはり中小企業の貸し渋りの原因は、いわゆるリスクプレミアムですね、中小企業ですから当然リスクも高くなる、それをしっかり乗せるべきだと。そうすると、確かに今金利が一から三パーであっても、当然五パーもあるし八パーもあるし。例えば八パーで差が三%、もし五%とれると。そうすると貸し倒れの確率が二十分の一、それで済むわけで、ある意味で町のファイナンス、金融機関ありますよね、そこの一八パーとか二〇パーより安くなるんで、その間のところが実は日本は供給がないわけなんですね、資金の供給が。

 だから、それは、もう二、三年前になりましたが、越智当時金融再生委員長のときに、そういう慣行はやはり改めるべきじゃないかと言いましたが、あのときは委員長は、いや、現在の低金利はやはり持続すべきです、リスクプレミアムを乗せるべきじゃないと言ったんです。私、そういう時代じゃないと思うんです。

 そういう前提に立って、いわゆる金融庁からのさまざまな行政のいろいろな意見等があるわけですが、今後中小企業の貸し付けに対してそういうしっかりリスクプレミアムを乗せるような形をやっていこうとされるのか、またそれに対して金融庁と、いわゆる邪魔と言ったらあれなんですけれども、非常に後向きな指導というのはあるのかどうか、そういった点、ちょっと教えていただけますか。

八城参考人 先生の御質問に直接お答えしますと、そういうことは全くございません。

 私の記憶では、新聞で読んだことですが、金融庁長官も、銀行はリスクに応じた金利をとるべきであるということをこの数カ月前に言われたことを記憶いたしております。私はそうすべきだと思っております。なかなか日本の銀行業界ではそういう考え方はまだ受け入れられていないというふうに思います。

若松委員 ぜひ八城会長、せっかく、宇宙人とまで言われないまでも、グローバルマンとしてそこら辺の新しい資金供給のいわゆるパイオニア役になっていただきたいんですが、決意というほどでもないんですけれども、そんな具体的なことを言わなくても結構ですが、そういう意思でこれからやられる御意思はございますか。

八城参考人 先生のお話を私は真摯に受け取って、銀行としてのあり方を考えていきたいと思っています。常々そう思っておりますが、なかなかお客様のあることで、私どもがこれだけの金利をいただきたいと言っても、よそからもっと安い金利で借りられるということで断られるケースは幾らでもございます。

若松委員 今、借り手側から、貸し手側からもそうなんでしょうけれども、マーケットが二極化していまして、いわゆるリスクがかなり少ないところはもう大勢の銀行が寄ってたかって借りてくれ、借りてくれと。反対にリスクが高いところはみんな敬遠しちゃって、それで、リスクプレミアムを乗っけても実は貸し手がいない、こういう面もあるんじゃないかと思うんですね。

 そうすると、今会長がおっしゃった、ほかにとられちゃうと。もしとられるんだったら何が原因でとられちゃうのか。それは、日本の公的な、例えばさまざまな公庫とかありますよね、いろいろな保証制度とか、そういった通常のマーケット以外のいわゆるビジネス慣行が働いて本来のリスクプレミアムを民間の金融機関ができない、そういうことなんでしょうか。

八城参考人 私の個人的な感想でございますけれども、やはり、日本は戦後、高度成長のときに、銀行はスプレッドが取れて、しかも倒産確率が非常に低い、お客様が。したがって、リスクをちゃんと管理するというところに実は欠けていたんではないかというふうに私は個人的に思っています。

 ですから、リスク管理からまず考えなくちゃいけない。とするなら、それぞれのお客様についてのリスクを正確に把握できるのなら、どのくらいの金利であったら貸せますかということは、計算上、出てくるわけであります。それはそのまますぐいただけるというわけではありませんけれども、つまり金利というのは、調達コスト、プラス、リスクプレミアム、プラス、使っている資産に対するリターンというところまで考えて設定すべきものだと私は思っています。

若松委員 この議論はこのくらいにして、いずれにしても、ぜひとも積極的に、先ほどバンクはリスクをとる仕事だと、本当は政治家もそうなんですけれども。そういうことで、ぜひとも、これから伸びる、かつリスクも高いところに模範の形で中小企業への資金供給をお願いしたいと思います。

 それでは、せっかくこういう形で八城会長、来ていただいておりますので、RCCがまたこの委員会で議論になります。

 アメリカのRTCというのが、シードマンさんですね。この方は、シードマン・アンド・シードマンという会計事務所の創設者でありまして、もともとは会計士ですから、かなりこういう荒わざをやってのけた経験、バックグラウンドがあるわけですが、日本のこれから、今法案で、とりあえず今回の法案はかなりRCCの機能強化ということなんですけれども、具体的には、中身の議論はこれからだと思います。その中身の議論で、不良債権処理に際して、今後このRCCに対して、どのような形へ持っていったら不良債権処理がいい形で進むのか、それについてアドバイスが、また御意見がありましたら拝聴したいと思います。

八城参考人 私も新聞で読む以外のことは存じませんが、RCCの機能強化は、日本の銀行の持っている不良債権処理について非常に重要な役割があるのではないかというふうに思っています。銀行自身の力ですべてを解決することは無理でございますから、やはりRCCといった公的な要素の入った機関が不良債権問題の解決に大きな役割を果たすことが適当だろうというふうに私は思っています。

若松委員 その際に新生銀行としてもRCCを活用される、まだ具体的になっていないわけですから何とも言えないでしょうけれども、RCCを活用するいわゆる可能性というか意思は否定できない、そういうことでしょうか。

八城参考人 RCCが新たに持つ役割について私は十分承知をいたしておりませんので、これからの御審議を通じて出てくるものについて、我々が活用させていただけることがあればもちろん活用させていただきますが、現在のところ、いわゆる解除権というのが二〇〇三年二月末までございますから、解除権を中心に考えるのが現在のところであります。

若松委員 それでは今度は、八城会長、さらに丸山社長にお聞きしたいのですが、これもこれから話題になりますペイオフ解禁、来年の四月からになる予定ですが、いろいろな議論が出ております。御両人に、このペイオフ解禁、予定どおりやるべきかどうか、それについて御意見をいただきたいと思います。

八城参考人 私見でございますけれども、やはり国際的に日本はこうするんだということをある意味では約束したというふうに私は理解しておりますので、実施すべきだろうというふうに私は思っています。しかし、これは私の決めることでは全くございませんので、ただ私見でございますので、その点、御留意いただければと思います。

丸山参考人 これも私見でございますけれども、私は、やはり実施すべきである、かように思っております。

若松委員 御両人とも意見は一致いたしました。これからも、後で議論いたしますが、いずれにしてもいつまでも、今国際公約と言いましたが、やはりそういった性格が強いと思います。今の意見を貴重な御意見として、しっかりまたこの委員会での審議に活用してまいりたいと思います。

 ちょっとお二人にまた聞きたいんですが、コーポレートガバナンスという観点からお二人にとって一番怖い人はだれですか。

八城参考人 率直に申し上げまして、銀行は私的企業でありますから、当然私ども経営の責任を持っている者を監視するのは取締役会でございます。私どもの銀行には、十五人の取締役がおりますが、そのうちの四人は常勤であります。十一人は社外取締役でありまして、日本あるいは欧米の金融問題あるいは産業問題に非常に詳しい、立派な経歴を持たれた方々ですから、私は、その方が私のある意味ではボスだと思っています。

 しかし同時に、我々は銀行ですから、銀行法によって認められている事業をしているわけですから、金融庁も当然のことでありますが怖い存在であることは事実であります。

丸山参考人 私どもの銀行は、設立時からコーポレートガバナンスということを強く意識した会社構成にいたしております。例えば、取締役のうち常勤取締役は三名でありまして、十名が社外取締役であります。あるいは、役員の昇格、昇給等が、退職金も含めてでありますが、役員の待遇に対してトップがお手盛りでできないように、指名報酬委員会というものが社外役員によって構成されている。こういうような形でコーポレートガバナンスの体制はとられております。まだほかにもいろいろありますけれども、主なる点はこの二つであります。

 何が一番怖いかということでありますけれども、指名報酬委員会の方は、給料が幾らになるのかな、ボーナスが幾らになるのかななんというような問題でございますから、これは大して怖い問題じゃございません。

 それからもう一つ、言い忘れました、特別監査委員会というのがございます。これは、いわゆる我々の銀行スタートに当たりまして機関銀行化ということが言われまして、要するに株主三社に対して特別なメリットを享受しないようにということで、株主でない社外役員を中心につくられた委員会がございます。したがいまして、何かの案件をやろうとしたときに、この特別監査委員会の承認がないと、社長といえども実行できないというのがございます。

 主なる機関は大体この三つでありますが、私にとりまして一番怖いのはこの特別監査委員会でございまして、やろうと思っても、場合によってはできない、そこでノーと言われますと、できません。ですから、何が一番怖いかと言われると、この特別監査委員会が一番怖いです。

若松委員 先ほど某委員から、私にとって一番怖いのはだれかと言われましたけれども、率直に思いついたのが私の妻の顔でございます。

 いずれにしても、本来、日本の金融機関の一番怖いのが、いわゆる金融当局じゃなくて、今言ったような、まさに取締役が一番怖ければこんなに金融制度がひどくならなかったのですね。それを、いわゆる身内の取締役会にしてしまった。やはりそこを、実際に取締役を任命するのは頭取、社長、会長でありまして、この長いかけ違いが日本をこれだけ悪くしたのかな。そういう意味で、お二人の答えは安心しました。

 ぜひとも、もっともっと厳しい社外取締役を呼んで、さらにその指摘を受けて、もっと強い金融機関になっていただくことを要望して、質問を終わります。ありがとうございました。

山口委員長 次に、鈴木淑夫君。

鈴木(淑)委員 どうも両頭取、お忙しい中お越しいただきまして、大変御苦労さまでございます。ありがとうございました。

 自由党の鈴木淑夫でございます。

 ちょうど今半分過ぎたところですので、お疲れかと思いますが、もう少し頑張ってください。一般的な話から入りますから、少し肩から力を抜いて聞いていただきたいです。

 私ども自由党は、両銀行さんが誕生する大もとであった金融再生法をつくるときに、こういう主張を展開したのです。やはり、大銀行であっても債務超過になっていたら、これは一時的に国営で管理してもいいが、そこで整理してしまえと。国営にした後、不良債権だけ除いて、それでまた生きたまま民間に返すのはだめだという主張をしまして、ところが、そういう仕掛けが金融再生法の中に自民党さんの努力でうまく入っちゃったものですから、私どもは途中から反対に回ったのです。

 ですから、私どもの考えでは、申しわけありませんが、両行さんは本来、存在すべきでなかった、あそこで整理しちゃわなければいけなかったのだ、そういう経済政策的な観点を持っているんです。ということは、逆に言うと、幾ら瑕疵担保特約がついていたって、みんながそれを見ていますから、そう気安く行使できないとすれば、両頭取はさぞ御苦労されているだろうなというふうに思って見ております。

 ちょっと失礼なことを申し上げますが、大体私は、預金を集めてきて主として貸し出しに運用する銀行業なるものは衰退産業だと思っています。なぜかといえば、もう言うまでもないわけですが、情報革命が起きて、金融の情報化、コンピューター化、これを基礎にしてグローバルな規模で金融が市場化する、証券化するという動きの中では、それらを全部生かすようなさまざまな形で資金を調達してさまざまな形で運用する金融サービス業というものは、これは発展産業だと思うんですね。でも、両行さんのように銀行業に限定された商売というのは、私は、一般論としては衰退産業に属しておる、金融サービス業としてもっと大きな商売をやる条件を欠いているために、さぞ御苦労も多いだろうなというふうに思うんです。

 初めに、両頭取に、銀行業は衰退産業だ、しかし金融サービス業は発展産業だよという言い方についてどういう御感想をお持ちか、お伺いしたいと思います。

八城参考人 先生の御質問にお答えいたしますが、まず第一に、私は、古いタイプの銀行はやはり将来、国際的な競争はできないだろうというふうに思っております。

 そこで、まず、先生が私のことを頭取と言われましたが、頭取という名称は最初からやめました。普通の会社の社長と思っています。

 それで、何をしたいかと考えますと、いわゆる金融業の中で、環境が変わったにもかかわらず、銀行の業務内容が変わらないことに問題があるんだ、つまり、収益性からいっても競争力からいっても、国際的な点からいいますと、日本の、お金を集めてただ貸すというタイプの銀行というものは将来にも限りがある。しかしながら、銀行自身が変わっていくべきだというふうに思っています。

 これは欧米でもそうでありますけれども、八〇年代に、いわゆる銀行業というのは仲介業でございます、預金を集め、それを企業に貸すということからどんどん変わっていったわけです。特に、間接金融から直接金融への変化は非常に激しくて、米国の銀行の場合には、銀行の貸出資産というのは主として運転資金であります。長期の設備資金というものは市場で、社債あるいは株式の形で安定資金を得るということでございます。

 そういう意味では、私どもも銀行の発足に当たりまして、従来の銀行の形ではいけない、したがって、より広い金融サービスを提供する必要があるということで、投資銀行業務を入れ、そして個人についても、金融債のみならず、そういった種々の個人の金融サービスを提供するということでやってまいりまして、かなり成功しつつあります。

 一例を申しますと、昨年は、まだ一つの数字でございますけれども、全体の収益の九〇%は金利の差による収益ですが、ことしの四―九では三割が金利以外のもの、つまり一〇%であったものが三〇%に変わってきている、ふえてきている。これはやはり金融業のあり方としてビジネスモデルを変えなくちゃいけない。環境が変わったにもかかわらず変わっていないところに問題があると私は思っています。

 さらに、もっと変わるべきことは、恐らく現在のビジネスモデルは二、三年のうちにまた変えざるを得ないだろう。ということは、もっと個人、企業、金融機関の資産の運用にもどんどん進出をしていく必要があるというふうに思っております。

 したがって、一言で申しますと、従来型の銀行というのは、衰退産業とまで申しませんがそれでは競争に勝てない。したがって、広い意味での金融サービスに変わっていくべきであろう。チャイニーズ・ウオールと呼ばれていますウオールをちゃんと守りながら変わっていくべきだろうというように思います。

丸山参考人 銀行が隆盛たる業種であるか、衰退する業種であるか、どっちなんだろうなというと、私は、はっきり申し上げまして、どっちでもないとは思いますが、では、そのうちどっちに偏っているかというと、やはり針は衰退産業の方にやや向いているのじゃなかろうかなという気はいたします。

 銀行の存在価値は依然として残ります。ですから、全く不要なものだとは思っておりません。ただ、ただいま新生さんが申しましたけれども、私どもでも通常のバンキング業務の収益は昨年度よりも本年度の方が率として低下しております。額としてはふえていますが、率としては低下しております。ですから、そういう意味で、やはりどちらかといえば真ん中よりもやや衰退寄りに近いのかもしれないなという気はしております。

 もう一つの、金融サービス業の方でございますが、これは、これからいろいろなあらゆる種類の金融サービスのテクニックが発明されまして、どんどん投入されてくることだろうと思いますし、我々もできる限りそれを取り入れたいと思っております。これは確かに隆盛発展産業だろう、こう思っております。

鈴木(淑)委員 社長、頭取、お二方とも非常に率直にお答えいただいたと思いますが、資産運用を企業や個人のさまざまのニーズに合わせて多様化していく。それから、資金を集めるのも、単純に預金ではなくて、金融債あるいは社債のような形に多様化していく。この多様化の努力をしておられるというのは高く評価させていただきますが、しかし、多様化してみても、バンキングの基本、つまり個人から確定利付で預かる、変動金利預金というのもあるけれども元本保証ですね、元本保証で原則として確定利付、場合によっては変動金利でお金を預かる。それは、個人がリスクをとる能力がないからなのですね。そのかわり、プロとしてリスクをとりながらさまざまな形で運用をしていく、いかに多様化しても、これがバンキングの本質だと思うのです。

 ということは、信用リスク管理の、リスクはいろいろな種類がありますけれども、為替変動リスク等々いろいろある、金利変動のリスクもあるけれども、基本的には、バンキングというのは信用リスク管理においてそれのできない個人のかわりにやってあげる、そういう金融仲介業だと思うのですね。

 ですから、非常に大事なことは、どうやって信用リスク管理をしているかということでございます。話せば長くなってしまうと思うのですが、社長、頭取、それぞれ、自分の銀行はこういう形の信用リスク管理をやっているのだということについて簡単にお答えいただけますでしょうか。

八城参考人 簡単にお答えいたしますが、私どもは、商品としては、最近でもデリバティブの商品を企業のリスク管理の商品として出しております。しかし一方、銀行自身のリスク管理につきましては、外部から人を昨年採りまして、これはシティコープのリスク管理の最高幹部の一人であった人ですが、それを入れまして、全部今までのやり方を変えました。

 簡単に申しますと、お客様への融資については、お客様に直接接触をする部店とそれから審査部が両方が話し合いをして、そしてお貸しをするかどうかということを決めるわけですが、それぞれの地位に応じて、与えられた権限は金額、期間についても変わります。非常に大きな金額になりますと常務クラスの者がそれを決定します。さらにそれ以上の金額になりますと審査委員会というのがございます。さらにそれより大きな案件になりますとリスク投資委員会というのがございます。すべて、リスク投資委員会には、私が委員長でございますから、常にそれを見ている。

 かつての米銀の場合でも、クレジットと称する審査部がいいと言ったから貸したのだ、それで大きな損失を九〇年代の最初に起こしているわけで、両方とも、ラインと呼ばれている、お客様と接触しお客様の要求にこたえてやるものと審査が一体化して、お互いに違った立場からの意見を出すというシステムが大事だと私は思っています。

丸山参考人 先ほど申し忘れましたが、八城社長と同じく、私も社長を名乗っております。恐らく社長を名乗っている銀行というのは、二社だけとは申しませんが、非常に少ないのではなかろうかと思います。私は、銀行といえども株式会社である以上、そのトップは社長である、こういう考えに基づいております。ちょっと付言させていただきます。

 我々は信用リスク管理をどうやってやっているかということでございますが、まず、信用リスクにつきましては、営業部及び営業推進部からは独立した審査部が統括しております。審査部が個別の取引に対する審査格付を評価いたしまして審査を実施している、それに対して、その審査をさらに検査部が内部検査としてこれをチェックしている、ダブルのチェックをいたしております。

 それから、実際の与信をするに当たってどういうことになっているかというと、もちろん額によって権限が細分化されておるわけでありますけれども、ある一定の基準に該当する案件の決裁あるいは大口の取引先に対する決裁等は、代表取締役や担当役員等から構成されるクレジットコミッティーによって決裁されております。

 以上です。

鈴木(淑)委員 日本では、社長と称していた相互銀行が第二地銀になって、一斉に頭取になってしまったものですから。銀行の社長というのははやらなかったのですが、失礼しました。お二人とも社長であることを今発見いたしました。

 今の質問に関連して、ずばり二つのことをお伺いしたいのです。

 両行とも、取引先の信用リスクを、甲乙丙丁でもABCDでもいいけれども、ランクづけして、それを量にあらわして、トータルのリスク管理をしていますか。つまり、量的なリスク管理をしていますか。それが一つの質問。アメリカなんかはみんなそうですけれども。恐らく八城さんのところもそうかな。それが一つ。

 もう一つは、日本の銀行というのは伝統的に審査部でリスクの評価と与信の実行と、両方決めるのですね。御両行ではどうなっているか、その二点、簡単にお答えください。

八城参考人 量的な分析は非常に細かくいたしております。これは最初の御質問へのお答えです。

 それから審査と与信は別でございます。審査はいたしますけれども、最終的な決定は、先ほど申し上げたように、いろいろな段階を経て、実際に与信をするものと審査は一緒になってやりますけれども、一つになっているということではございません。

丸山参考人 まず量的な方でございますけれども、私どもでは平成十二年五月に新しい内部モデルの稼働を開始いたしまして、国内外の事業法人、金融法人、個人等の与信先に対する貸し出し、債券、保証等のオフバランス取引とスワップなどのオフバランス取引を対象として、信用格付、デフォルト率、回収見込み率といった客観的データをベースに、信用リスクの計量化を行っております。これによって個々のあれをはかっているということが一つ。

 それから信用リスクそのものについては先ほども申し上げましたか、信用力の評価それから与信実行は同一部署、例えば審査部で行っているかどうかというような御質問だったかと思うのですが、これは我々においては、それぞれ独立した部署で行っております。個別案件の稟議及び決裁を受けた与信実行を行う営業部店及びこれら営業部店を統括する営業推進部、信用格付評価及び個別案件の審査を実施する審査部と、完全に独立した体制をとってやっております。

 以上です。

    〔委員長退席、奥山委員長代理着席〕

鈴木(淑)委員 両行さんとも新しいバンキングのビジネスモデルを取り入れていると思いますので、その確認の意味でもお伺いしたわけです。ぜひ取引先を単に、それに対する貸し出し要注意だ、要管理だと言っているだけではなくて、きめ細かに、量でその信用リスクをあらわした上で、加重平均で、今全体として信用リスクどうなっているかということを管理していただくと同時に、それとは独立の部署が与信の決定をする、そのかわり、その与信の決定をしたら、今度は全体のリスク、加重平均がどう動いているかということも見る。

 これを一緒にすれば、言うまでもなく利益相反が起きますから、いいかげんになるに決まっているのですね。これは日本の銀行の伝統です。審査部が信用判定と融資実行と両方決めますから。完全に利益相反になることを平気でやってきていますが、これは恐らく前身ではそうだったに違いないと思いますので、あおぞら銀行さんもぜひ、前の組織とはっきり違えて、その点、前の組織は利益相反を起こしていましたよ。もう利益相反を両方の前身の銀行は起こしたからあんなひどいことになったので、この点は十分に気をつけていただきたいと思います。

 少し時間が余りましたので、もう既に何人かの委員が詳しく御質問したことでありますけれども、日本の金融行政はこれまで本当に銀行経営のはしの上げおろしまで介入したわけですね。ところが、両行さんの場合は、今度は非常に特殊な形で生まれましたから、それで、公的資金も入っています、間接的にも直接的にも入っていますから、これはまた非常に厳しいチェックが来るというふうに思うのです。

 その場合に、私は八城社長が答えておられることを信用いたしますけれども、とにかく個別の案件に介入させないということはしっかりと守っていただきたい。八城さんにとって怖いのは取締役会であって、個別の案件について、もちろん瑕疵担保特約を発動して戻すなんというときには個別の案件についての交渉になってしまいますけれども、それ以外のことで個別の案件について干渉させない。個別の案件については、自分のところはこういうリスク判定をしている、こういう経営戦略あるいはビジネスモデルで、それを総合的に判定してこの貸し出しはふやすんだ、減らすんだという判定をしているということを堂々とおっしゃって、話し合いをしていっていただきたいというふうに思います。

 私も、日経ビジネスを読んだときは、もしこのとおりだとすれば昔の過剰介入の裁量的な銀行行政に逆戻りしているなと思ったから、非常に驚きました。その点は十分に注意していただきたいと思いますが、何か御感想がございましたらどうぞ。

八城参考人 今先生のおっしゃった幾つかの点は、私も全く同感でございます。

 したがって、銀行はちゃんとした政策を持ってやっていかなきゃならない。しかし同時に、銀行業というライセンスを政府から与えられているわけですから、銀行の行政の中で問題があれば、我々はできるだけ問題のないように調整を図っていく必要がある。しかし、個別の企業の問題については銀行の経営責任において決定をさせていただきたい。そのつもりでありますし、現在までも、その点については私は譲ったことはございません。したがって、圧力という話は時々出ますけれども、私は圧力を受けたとは全く思っておりません。

 以上でございます。

鈴木(淑)委員 それから、最初に聞いたことと関連するのですが、総合的な金融サービス業に一歩でも二歩でも近づくために、こういうところの垣根規制を取っ払ってくれないか、垣根というのは業態別の規制ですね。今一生懸命、持ち株会社形式ならいいよとか、あるいは持ち株会社の下にぶら下がっている子会社じゃなくて一つの会社で経営してもいいよとかいって少しずつやっていますけれども、これを垣根規制の撤廃とか自由化とかいうのですが、その関連で、皆様方が銀行経営をちゃんとやっていくために、どういう業務をやらせてくれたらいいのに、兼営させてくれたらいいのにと思っておられますか。そういうことを感じたことがありましたら、どうぞ両社長からお聞きしたいと思います。

八城参考人 お答えいたします。

 私は、やはり保険と銀行というのはちょっとそぐわないのではないかと思っています。保険をするためには膨大な資産が必要でありますし、したがって、銀行がやれることは、先ほど申し上げましたように、いわゆる仲介業の仕事が、だんだん、ディスインターメディエーションとよく外国で言われている、仲介業の役割は小さくなってくる。直接資本市場で、企業の方が格付がいいということもあって調達しやすいわけでございますから、そういう意味ではこの役割はだんだん変わっていくだろう。しかしながら、依然として運転資金を中心にしたものは残ることは事実であります。

 しかし一方、個人をとっても企業をとっても、あるいは地方の銀行と申しますか金融機関をとっても、公的な機関をとっても、すべて今非常に困っていることは資産の運用であろうかと思います。これは、何も金利が安いから資産運用に困っているのではなしに、資産運用というのは金融サービスとしては非常に重要なものである。

 そういう意味では、銀行子会社で証券会社を持っていますと、非常に活動が制約されております。そういう意味では、ホールディングカンパニー、いわゆる持ち株会社のもとに銀行と証券会社が自由に活動ができるように、しかも、ファイアウオールというものを守りながら、必要な範囲で守りながら、利益相反が起きない形でやるべきだろうというふうに思っています。私どもの希望としては、そういうことを望んでいます。

丸山参考人 どうも困ってしまうのでありますが、実は、率直に申し上げますと、一番やりたいなと思っているのは、現時点では私は信託銀行なんですが、信託銀行は間もなく開放されるわけでございますので、そうなるとこれはちょいとわきに置きますと、やはり八城社長と同じ証券業なんですね。これはもう八城社長が申し上げましたので、これ以上追加する必要はないと思いますが、そう挙げさせていただきます。

鈴木(淑)委員 両社長とも、大変ありがとうございました。参考になりました。

 終わります。

奥山委員長代理 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 まず、両参考人にお聞きをしたいと思います。

 先ほど来、鈴木議員の質疑もありましたが、社長ということを大変強調されておられます。銀行というのは私企業でありますから、自己の利益を追求するというのは当然そういう面があると思いますね。同時にまた、金融という公共的な性格を持つ、そういう部門の運営をなさっておられるわけでありまして、そういう点では大変公共性の高い性格を持っているというふうに思うわけでございます。

 そこで、両社長にお聞きしますけれども、この私的な利益を追求する面とそれから公共的な性格を追求する面、これはどちらに重点を置いて経営をなさっていこうとされているのか、それぞれ御見解を伺いたいと思います。

    〔奥山委員長代理退席、委員長着席〕

八城参考人 お答えいたします。

 私的企業として大事なことは、銀行にとって一番大事なことは、実は自己資本が安定しているということだと思うのです。自己資本が非常に低い水準に落ちますと、銀行はつぶれます。つまり、資金の出し手がなくなってしまう。かつての長期信用銀行がなぜつぶれたかということを考えてみても、資金の出し手がなくなったということからつぶれた。そういう意味では、銀行はまずリスク管理を徹底してちゃんとやらなきゃならない。

 しかし同時に、公共的な性格としてお客様との取引がございますから、それは企業であれ個人であれ、銀行業としていたすべきことというのは、例えば必要な資金を提供する。資金の提供をするときに、お客様がどういうふうな計画を持っておられるか、そしてその資金の使途は何であるか、そして資金の返済能力はあるのか、返済計画はどうなっているのだということは基本的なことだと思うのです。あるいはこれはバブルの影響かもしれませんが、日本ではそういった大事なことが忘れられたのではないかというふうに思います。

 ですから、公共性と同時に、そのお客様の持っている資金の需要の性質等々、そういうものも十分考えて運用する必要がある。銀行はどうしても、必要な資本が毀損された場合には、一遍につぶれてしまうということは起き得るんですね。例えば一〇%自己資本比率があっても、何かの出来事によってこれが一遍に毀損されるということはあります。そういう意味では、やはりリスク管理は非常に大事だというふうに思っています。

丸山参考人 私は、極めて俗な言葉で申し上げますが、私企業として何を重視するかと言われますと、利益と申し上げたいと思います。たまたま、今、八城社長も自己資本ということを申し上げましたが、これもまたやはり利益の集積があって初めてなし得ることだと思うんですね。ですから、私は利益ということが第一だとは思いますが、しかし同時に、これはまた利益至上主義であってはならないのは言うまでもないと思います。そこに、バランスのとれた利益ということでないと世に受け入れられない、こういうことだと思います。

 私どもの場合に、国民の皆様の負担によって再生したという事実がございます、これは新生さんも同じことですけれども。そういうことを深く認識しておりまして、それゆえにこそ、収益力のある健全な金融機関として、金融システムの安定と社会経済の発展に貢献していくという使命を痛感しております。そういうことによって公共的な立場もまた同時に果たしたい、かように思っております。

佐々木(憲)委員 今、私企業としての利益を追求するということを通じて公共的性格を果たしていきたい、両社長それぞれ、少しニュアンスが違うかもしれませんけれども、そういうことをおっしゃったように私は感じたわけでありますが、やはり、公共的性格というものを常に意識していないとどうしても利益追求を第一に考えてしまって、その結果、融資先、特に弱い中小企業などにマイナスの影響が及んでくるという危険性を伴っているということをぜひ自覚してやっていただきたいと思うわけでございます。

 そこで、新生銀行の八城社長にお聞きしますけれども、十月四日に金融庁から業務改善命令を受けられたわけであります。中小企業向けの貸し出しの計画の達成に向けた具体的かつ実効性のある体制の確立を含む業務改善計画の提出とその実施、これを求められたわけですけれども、実態を数字で見せていただきますと、ことしの八月のフォローアップによりますと、ことし三月の計画は二百億円の増加ということでありましたが、実績ではマイナス一千七百二十二億円でありまして、これはもう、ほかの銀行と比べましても極めて異常な低さでございます。

 具体的かつ実効性のある体制の確立ということでありますけれども、そのためには、なぜそうなったのかという原因、ここをやはり徹底して明らかにしなければならないと思うわけであります。八城社長はこの点について、どこに一体一番問題があったのか、それをお聞かせいただきたいと思います。

八城参考人 お答えいたします。

 昨年、私は実は国会に三回招致されまして、八月であったかと思いますが、その当時、新生銀行に対していろいろな批判が出ておりまして、それはいろいろな理由がございましたけれども、それで、ある意味では新生銀行のイメージが非常に落ちたということがございます。健全な中小企業が私どもに返済をされて、借りかえをしていただけなかったというケースがございます。それから、譲渡後五週間目につぶれましたそごうに関連する中小企業もあり、特別の名前を出すのはどうかと思いますが、既に破綻したところでございますから。そういった関連企業の中小のものからの融資がなくなったということもございます。

 さらには、もっと積極的に申しますと、大企業あるいは金融機関の関連会社、子会社で、中小の企業がございますが、そういうところは、大企業自身が有利子負債を削減するという計画を立てて、関連会社から有利子負債を返したいということで減ったものがございます。ですから、複合的な理由でありますが、昨年の下期には、正常先の中小企業への融資は減っておりません。

 したがって、原因分析は十分いたしました。そして、ことしについてはその数字を絶対に達成しなければならないというふうに考え、具体的な施策をつくって現在実施中であります。

佐々木(憲)委員 今の御説明ですと、客観的な状況の変化の上に立った相手先の事情というのをかなり説明されましたが、みずからの銀行の貸し出し姿勢としての分析、自己検討というのが極めて不十分ではないかと私は感じるわけであります。

 来年三月期の中小企業向けの貸出計画というのは二兆三千五百三十二億円という計画となっておりますけれども、これは、昨年の、平成十二年の三月期と比べましてプラスになっているんでしょうか、マイナスになっているんでしょうか。

八城参考人 お答えいたします。

 十三年三月の実績は二兆三千三百五十億円でございまして、十四年三月末、来年度でございますが、ふえておりまして、二兆三千五百三十二億でございます。(佐々木(憲)委員「その前の年の話です」と呼ぶ)前の年に比べて、来年はふえるということでございます。その前の年ですか。旧長銀でございますか。(佐々木(憲)委員「十二年の三月と比べて」と呼ぶ)十二年の三月は二兆六千七百五十八億円でございます。

佐々木(憲)委員 つまり、二年前に比べますと三千二百二十六億円のマイナスになっているわけであります。

 本来ですと、この中小企業向け融資を計画的に、計画どおり実施をしていれば、さらに来年も大きくプラスということになっていくんでしょうけれども、一度どんと落ちましたので、そこから、つまり、ことしの三月期から出発しますと、それは、落ちたところから多少は上がるかもしれないけれども、しかし、以前の、一年前の状況と比べてもまだまだ低い水準にある。つまり、マイナス三千二百二十六億円の水準だということをぜひ自覚してやっていただきたいと思うわけです。つまり、本来果たすべき中小企業に対する融資という役割を軽く考えずに、ぜひきちっとやっていただきたいということを私はその数字を見て申し上げたかった点でございます。いかがでしょうか。

八城参考人 先生の今の御発言は厳粛に受けとめておりますので、絶対に達成をしたいと思っております。

佐々木(憲)委員 それから、中小企業を含めた全体の貸し出しの状況を見ますと、増加計画に比べて一兆一千億円弱、これも低いわけであります。これは何を意味するのか。ほかの銀行と比べましても、これだけ大幅に貸し出しが減っているというのはないわけでございまして、かなり大規模な資金の回収を図ってきたのではないか、こういうふうに見ざるを得ないわけでありますが、この点は、どういう方針でこのように貸し出しを減らしてこられたんでしょうか。

八城参考人 譲渡時において、要管理債権以下悪いものが全体の貸出債権の約二割近くありました。そして、現在でもその数字は減っていません。これは、普通、他行の平均は六%でございますから、三倍以上の不良債権があるということです。したがって、我々は数字を伸ばそうと思っても、確実にリスクが高くてふやせないものもあるわけです。ですから、その中身が大分違うということを一つ御理解いただきたいというふうに思います。

佐々木(憲)委員 八月のフォローアップによりますと、要管理債権は八千十五億円から四千五百三十億円に、約半分近く減っているわけですね。これに対して、破綻更生債権及びこれに準ずる債権、いわば破綻先でありますが、これが二千八百九十一億円から四千七百二十九億円にふえていると。

 これを見ますと、いわば要管理先債権、要注意先債権とぴったりではないかもしれませんけれども、その債権が相当大幅に減っているということは、これは要管理先と言われる相手に対して相当厳しい回収をやったとしか思えないわけでありまして、その結果破綻先がふえたんじゃないか、こういうことが想定されるわけですけれども、そういう事実はありませんか。

八城参考人 解除権を行使しますと、行使された債権は、例えば百億の債権であれば、要管理でありますと初年度では二七%引当金がありましたから、その差額が預金保険機構から来ます。その債権が、したがって、RCCに預金保険機構を通じて行くというふうに私は理解しております。解除権の行使が、総額におきまして約五千五百億近くあったと思います、したがって、この債権が減ってくるということになります。

佐々木(憲)委員 どうもいろいろな報道を見ますと、利益が上がっている企業なんだけれどもも、借りかえを拒否されて延滞損害金を一四%上乗せした例があったというふうにも書かれております。そういう事例もあるんですか。

八城参考人 延滞金というのは原則として一四%ですが、そういう事例があるということは、私は現在の時点では知りません。

 しかしながら、利益が出ていても、例えば債務超過である、あるいは累積損失が続いているという場合には、これは破綻懸念になるわけです。したがって、我々はよくお客様の財務内容を精査しています。その結果、破綻懸念であれば、要管理から落ちていくという場合があります。

 先生も御承知のように、先ほどほかの議員の先生にお答え申し上げましたが、マイカルは正常債権でした。ことしの六月末になって初めて要注意になったわけですから、一概に要管理、要注意といっても中身をよく精査しなきゃならない。その場合に、リスクが非常に高いというものについては、短期の融資については期限での御返済をお願いするという場合がございます。

佐々木(憲)委員 そこのところが、中小企業などにとっては大変厳しい取り立てがあったというふうに言われる点だと思うんですね。

 つまり、公共的な性格を持つ金融という事業と、それから私的企業としての利益を追求する面と、どちらに重点かということを考えた場合に、どうも私的企業としての利潤追求を第一に考えた行動をとっておられるのではないのか。この点が、中小企業向けについては計画を未達成にしている大きな要因となっているのではないのか。

 利益が上がっているにもかかわらず、破綻懸念になるというふうに先ほどおっしゃいましたが、それは、中小企業にとっては今、大変な深刻な不況の中で四苦八苦しているわけでありまして、そういうときに、やはり利益が上がったり上がらなかったりというのはあるわけです。しかも、経営にとってはなかなか環境は厳しい。そういうものを、これは将来危ないぞというふうにどんどんレッテルを張って処理をする、回収を図るということになっていきますと、中小企業にとっては、これは大変な銀行だということになるわけであります。

 もっとやはり経済全体にとっての金融の役割ということを考えていくとすれば、これらの中小企業に対して、中小企業が本当に再建できるような、再生できるような支援を行うという姿勢に銀行自身が立つということが私は大事だと思うんです。そのことが、その中小企業からの利益を得ていく道でもある、将来の利益をふやしていく、その前提を、土台をつくっていく道でもあるというふうに私は思うわけでございます。

 どうも、一昨日の朝日新聞で、八城社長はこう述べておられるんですね、「日本の文化は困っている人を助けるのがやさしい銀行だが、それでは銀行が破たんし、預金者が困ることになる」と。つまり、困っている企業に対して優しい銀行というのはよくない銀行であると。つまり、厳しくやらなきゃいかぬ、そうしないとこちらが倒れる、こういう発言をされているわけですけれども、果たしてそれほど、新生銀行というのは倒れるような銀行なんだろうか。

 例えば、ことしの三月期の業務純益あるいは経常利益、当期利益、これはかなりな規模になっていると思うんですね。あるいは株についても配当ということをされているわけであります。ですから、みずからの利益はかなり上がっているわけでありますから、その点で中小企業に対してはもっときちっとした、優しい対応というのか、中小企業の経営を支援する、そういう姿勢に立つ必要があるんじゃないかと思いますけれども、その点については今どのようにお感じになっておられますか。

八城参考人 中小企業の経営がうまくいくように支援するということは当然のことでございますけれども、私が先ほど申し上げたのは、利益が出ているにもかかわらず回収をしているというのは私が言ったことではございませんで、利益が出ている場合でも、場合によっては業況は非常に悪くなっていて、しかも債務超過になっているという場合もあるわけです。ですから、個別の企業の中身について精査をして、それが企業として再生できるなら当然協力をしなきゃならないというふうに考えています。

 それから、もう一つ、朝日新聞の記事をクオートされましたけれども、朝日新聞で私が言っておりますのは、日本ではとかくバランスシートの右と左の左側の話ばかり出てくる、右の方はどうなるんだろうか、これも、個人である、預金者の保護ということが大事ではないだろうかという意味で申し上げたんです。

 もしも解除権がなかったとすると、計算上でありますが、ことしの三月末までに、丸一年間の間にどれだけ損失が出たか。担保を全部勘案した後の話ですが、千六百億円損失が出ている計算になります。ということは、業務純益の相当、何倍になりますか、健全化計画で出した八倍の損失が出ている。資本金は普通株が千二百億円ですから、完全になくなっているという状態であります。

 そういう意味で、銀行としての健全性をやはり考えなければならない、したがって、お客様についてできることはいたしますけれども、リスクが余りにも大き過ぎるものについては、期日に来れば短期のものについてはお返しをいただくようにお願いをしている、ただ、そのやり方については性急過ぎたということを冒頭に申し上げたわけで、それについては十分反省もしているし、何回もお話をして、いろいろと提案もこちらからもさせていただくということでございます。

佐々木(憲)委員 瑕疵担保特約についてお聞きしたいんですけれども、八城社長は、リップルウッドによる旧長銀買収は特約の実行が前提となっており、これは曲げられないと。それから、別な新聞によりますと、瑕疵担保特約の行使は当然だ、契約があるのに実行しないのでは株主に説明がつかない、こういうふうにおっしゃっていて、先ほども、マイカルはリップルウッドに買収されたときは正常債権であった、それがことしの六月で要注意先になったと。先ほどのお話ですと、破綻先とはまだ認定していないということでしたね。

 そうしますと、マイカルの場合は二割以上の減価という条件に達しているのかどうかというのが一つと、それから、この瑕疵担保特約をこれに対して実行するおつもりはあるのかどうか、この点お聞きしたいと思います。

八城参考人 破綻をしたということは、瑕疵担保条項の瑕疵に当たります。したがって、解除権を行使することになります。

佐々木(憲)委員 我々は、この瑕疵担保特約自体も、これは国民の税金を投入する一つの仕掛けであって、この仕掛け自体は非常に問題があるという立場でこれまで議論をしてまいりました。また、公的資金をこれほどつぎ込んで、身ぎれいにして外国資本に売り渡すというようなやり方も、これ自体非常に問題がある。したがって、銀行業界全体として、こういう破綻した銀行についての処理は、みずからの負担とみずからの責任で行う、これは銀行業界として。そういう立場を我々は主張してまいりました。

 現在、こういう形で新生銀行、あおぞら銀行というのが生まれているわけですけれども、しかし私たちは、現状こういうお二つの銀行が生まれ、その銀行はどういう役割を果たすのかという点で、これは今さら否定できない状況ですから、したがって、その銀行が公共的な性格をできるだけ果たすようにということと、つまり中小企業に向けてしっかりした融資をやっていただきたいということと、それから、公的資金を使うようなこういう仕掛けは、できるだけ早くこれはやめていただきたい。社長に言ってもしようがないわけでありますが、これは国が、つまり国会が決めたわけですけれども、そういう仕組み自体はやはりやめるべきだということを我々考えているわけでありまして、それは、今後この委員会でいろいろな形で我々も議論をしていきたいというふうに思っております。

 きょうは大変ありがとうございました。

山口委員長 次に、植田至紀君。

植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀と申します。

 両参考人におかれましては、長時間にわたりまして、お忙しいところ、本当にありがとうございました。

 まず、八城参考人の方に何点かお伺いをさせていただきたいと思います。さして難しいことではないかと思いますので、よろしくお願いいたします。

 まず、昨年の話になりますけれども、例のそごうにかかわりまして、そごうは九百七十億円の債権放棄を求めていたけれども、結局新生銀行は放棄には応じなかった。もちろんそれだけが原因ではないだろうと思いますけれども、結果、そごうは再建を断念した、そういう経過がございましたけれども、この件で、いわばそごうの債権放棄に応じなかったということが一つの契機で、取引先企業との関係の中で、いわゆる取引関係に何らかの影響というものが出たのかどうかということについて、まずお伺いをしたいと思います。

八城参考人 そごうの破綻については、今先生おっしゃいましたように、私どもは債権放棄を求められましたが、これは銀行が譲渡されてから五週間目であります。しかも、その時点で、我々はそごうの再建計画についてはよく存じておりませんでした。

 したがって、これに対してどう応ずるかということは、もしも債権放棄に応じれば、実は解除権をなくすわけです。解除権をなくすということは、非常に大きな損失が一遍に一つの案件で出てしまうということがあります。しかも、解除権を行使しなければ、残った債権、つまり、引当金の範囲内で放棄をすればそこで損失はないだろうというふうにお考えになるかと思いますが、残った債権、残存債権というのは約一千億残るわけですが、これはどう考えても、再建に十年以上を要するということになりますと、十五年だったかと思いますが記憶は定かではありませんが、要管理債権になります。そうしますと、約三百億弱の新たな引当金を立てる必要があります。業務純益百九十五億円に対して、年間の計画に対して余りにも大きな引当金を立てる、つまり最初の年からそれだけで赤字になるという状態がありました。したがって、私どもとしては、債権放棄に応じることはできないということにしたわけであります。

植田委員 今私が伺いましたのは、債権放棄に応じなかったことの理由であるとか、また、その是非についてではなくて、そのことが一つの契機になって他の取引企業との関係で何か影響がありましたでしょうかと、要するに、債権放棄に応じたか応じなかったかというのは話の導入のことなんで、そのことを問うているわけじゃなかった。そっちの方をちょっとお答えいただけなかったので、改めてお願いできますか。

八城参考人 私は、私どもが理由でそごうが破綻をしたとは全く思っていません。というのは、あの当時におけるそごうの債務超過、累積赤字というものは一年でできるものではありません。先ほども申し上げましたが、会計基準あるいは監査の面で問題があったんではないかと思います。あれだけの損失を出すには、相当の期間において問題があったというふうに考えます。

植田委員 質問に当たりまして、私も幾つかの新聞記事等ちょっと集めてきたわけですが、ことしの三月の、これは日経だったでしょうか、「新生銀二年目のハードル」という特集記事がございまして、そこで、新生銀行の貸出金の減少がとまらないというようなことが書かれています。二〇〇一年三月期末の残高見通しが六兆八千億円、そして、これは前年同期と比べて一割、金額にすると約九千億円落ち込む模様だと。そして、昨年三月に金融再生委員会、今の金融庁に提出している健全化計画では初年度で三千億円ふやすはずだったということですから、これは大きな誤算と言える、そういう論評がされているわけですが、これは八城参考人も、大きな誤算であったというふうに御認識でいらっしゃるわけでしょうか。

八城参考人 お答えいたします。

 誤算でありました。というのは、あれほど大きないろいろな貸出先が破綻を来すとは思っておりませんでした。つまり、適資産の買い取りということから始まっておりますから、予測しなかった事態であります。

植田委員 いわば貸出残高減少の理由ということについて言うと、そういう意味では予想もしなかった事態が幾つも起きたということで御理解をさせていただければいいかと思うわけです。

 確かに、ライフであるとか第一ホテル等々が相次いで倒産をしたわけでございますけれども、その辺の対応にかかわって、これも昨年の記事を見ていますと、そごう倒産後、邦銀からの新生銀行に対する批判は消えないということで、例えば、ライフへの対応等々にかかわって反発が強いというようなことも書かれているわけですけれども、やはりそうした貸出残高減少の理由にかかわって、例えば、経営不振の企業はもういとも簡単に切り捨てられるんではないだろうかとか、債権は国に売却されるんではないだろうかという不安に駆られた取引先の方が、むしろ新生銀行からの借り入れを減らそうと、そういう動きをしたからではないか。そういう意見も恐らく聞かれておられるとは思いますけれども、その点についてはどういうふうに御認識をされておられますでしょうか。

八城参考人 私どもの銀行の貸出資産は、全貸出資産の、全金融機関の一・二、三%です。ですから、我々の行動がいろいろな日本経済に大きな影響を及ぼすということは規模ではないんですが、中には、私どもがメーンバンクであったライフあるいは第一ホテルのケースでお話がありましたけれども、いずれもちゃんと再生をしているということも事実であります。むしろ前よりもよくなっているということは事実でありますので、批判は批判として受けておりますけれども、私自身は、必ずしもその批判はすべて当たっているとは思いません。

植田委員 ただ、貸出残高が減りますと、当初社長が、参考人がおっしゃられていたような収益計画そのものにも狂いが生じてくるんではないかというふうに思いますのは、これも日経のことしの三月ですけれども、八城参考人が、現状の収益の九割は融資業務だけれども、三年以内には投資銀行業務による収益が三割を占めているだろう、こういう見通しなり方向性を示しておられるわけです。

 これは、投資銀行業務などによる手数料等をふやしていこうということなんだろうと思うわけですが、やはり企業に資産の証券化を提案するにも、企業との融資関係がなければなかなか相手にされにくいではないか。そうなると、貸出残高が減るようだと、やはりこういうふうにインタビューの中でもおっしゃられておられる今後の見通しそのものにもやや狂いが生じてくるんじゃないかと思うわけですけれども、その点についてはどんな御認識、御見解をお持ちでいらっしゃいますでしょうか。

八城参考人 一般論で先に申し上げたいと思うんですが、日本の今までの銀行の収益率というのは、総資産に対して〇・三%です。これは不良資産による損失を数える前の状態で〇・三%しかありません。それに対して欧米の有力銀行は、大体一・二%から一・五%ですから、五倍ぐらいの収益力があります。ということは、バランスシート、つまり、融資を使いながら同時にいろいろな金融サービスを提供するというのが望むべきビジネスモデルだと私は思っています。

 現実に、ことしの、去年もそうでありますけれども、金利収益は減っておりません。これは調達コストを下げ、それから金利をいただくものを少しずつ改善していくという努力をすることによって、金利収益そのものは絶対額としては計画に比べても減っておりません。その他の新しい金融サービスというものによって利益を上げることはできている。

 そういう意味では、確かに、ビジネスモデルが変わったことによって、バランスシートを大きくして利益を上げることを第一義的に考える、それだけが中心であるという経営はいたしません。第一義的と申しますか、それを中心にした経営がいいとは実は思っていません。金融サービスは、環境の変化とともにどんどんお客様の要望は変わってきているわけです。

 現実に、私はいろいろな企業の方にお会いしますけれども、金を貸してほしいと言う大企業はほとんどありません。いかにして自分たちの有利子負債を減らそうか、しかし、新しい金融商品、金融サービスを提供してほしい、自分たちの持っている問題の解決策を提示してほしいというお話はよく聞きますということでお答えにしたいと思います。

植田委員 それで、話はよくわかりましたが、最近、特にここ数カ月、八月ぐらいから、新生銀行さんの方が融資の回収を加速させているというような、これも報道で出ておりますから、そういう報道が出ておるということは十分御承知されているだろうと思います。

 私自身確かに、きょうお越しのそれぞれ銀行の方、頭取と言わずに社長というふうにおっしゃるようですが、他の私企業にも増してやはり銀行としての公共性、金融機関としての公共性というものと、先ほど佐々木先生のお話もありましたけれども、そういう公共性を持っている金融機関が収益優先に走るという姿勢については、私も非常に問題があるんではないかというふうには思っている一人であります。

 そのことについてはもう改めてお答えを願うわけではないんですが、ただ、この回収にかかわって、最近の記事等見ていますと、半年、一年程度の短期資金の回収がかなり厳しいということが出ております。これは、金融界の慣行とすれば借りかえをやってきたようなものが、新生銀行ではそれはちょっとペケだよ、あかんよということで、抜本的なリストラ計画をまず求める、そして納得のいく回答がなければ資産を差し押さえるぐらいの厳しい回収だというふうなことも、これは私も新聞等を通してそういうものを読ませていただいていたという範囲でございますけれども、実際こういうことになってしまうと、回収を求められた企業の他の主要取引銀行は、それを肩がわりして企業を延命させるという手段をとるか、それとも引当金を積み増ししていずれ起こるであろう経営破綻に備えるか、そういう選択を迫られることになるかと思うんですが、なぜ新生銀行さんの方が融資回収を急がれるのか、その点についての理由はどういうことなんでしょうか。

八城参考人 率直に申し上げますと、瑕疵担保条項と皆さんがおっしゃる、要するに解除権は二〇〇三年二月末になくなります。依然として銀行の持っておる不良債権は全体の二割になります。要注意債権まで入れると三〇%になります。これは、そのまま続いていった場合には、銀行は三年間の間に健全な銀行になれません。

 そういう意味で、やはりお客様、個別のお客様について、場合によっては期日での返済をお願いしなきゃならない、これはもう何回も申し上げましたけれども、その話の進め方については十分納得のあるお話をしていく必要がある。そして、できるならその再生のために協力をしていきたいというのが基本姿勢であります。それは今後とも続けてまいります。しかし一方で、健全な銀行にならなければならない、そして一日も早く公的資金を返すことが責任であるというふうに思います。

植田委員 今、ややはっきりおっしゃいましたけれども、瑕疵担保特約には期限があるわけでございますので、それまでの間にやれることはやりますよという、そういうお話を含んでおられるということですね。

 そのことについての是非等について、私ここでただすつもりはございませんが、いずれにしても、瑕疵担保特約がある間にやっちゃいますという意思だというふうに受けとめておきます。

 そこで、今そういう意味では、新生銀行のさまざまな一挙手一投足が注目されているということで、いわゆる貸しはがしにかかわっての話なわけですけれども、ありていに言って、どんな取引先が短期融資の返済を急いで請求する対象になるんだろうか。また、請求対象として、固有名詞を挙げるのはあれでしょうけれども、どれぐらいの企業を実際にリストアップしているのか。言ってみれば、その請求対象の、ある種の新生銀行さんとしての基準といいますか、その辺はどういうふうに設定されておられるんでしょうか。

八城参考人 個別企業に影響のあることでございますから発言は控えさせていただきますが、我々は相手のお客様の経営内容、特に財務内容等を非常に精査に見ております。そして、どういうふうな経営内容で今日まで来ているか、今後どういう計画を持っていらっしゃるか、そして再生の可能性はどのぐらいあるだろうか、我々は何ができるだろうかということをまず第一義的に考えています。ですから、個別のそれぞれのケースによって対応はみんな違います。

 そういうことでございますので、御了承いただきたいと思います。

植田委員 個々の事例についての話ですけれども、例えば、巷間出回っていると言われる三十社リストなるようなものもあるようですが、ここで当然お答えいただけないだろうと思いながらお伺いするわけですけれども、実際、新生銀行が大口与信に対してどんな対応をするのかということはやはりみんな注目している。

 やはりそこで、固有名詞を挙げるとなると、例えばダイエーというのがございますね。ここもグループ全体で千三百億円強の与信額があると言われているわけです。例えばこうした場合、固有名詞を離れて、どういう条件を提示すべきだとお考えなのか。また、回収の可能性はありますなんて言えないでしょうけれども、固有名詞を離れて、具体的にそういうとき融資を続ける条件ということで、当然個別判断でしょうけれども、どういう条件を提示されるおつもりでいらっしゃるのか。言える範囲で結構です。言えないということであればそれはそれで私の方はとりたてて申し上げるつもりはございませんが、お願いできますでしょうか。

八城参考人 先ほど申し上げたことでお答えにさせていただきたいと思います。

植田委員 私も無理は申し上げるつもりはございません。

 そこで、ただ、回収を実際強行されれば利益を上げているのに破綻手続に入るしかないという企業もあるというようなことも私も聞いておりますけれども、とりわけ、他行、他の銀行から反発されているのは、この七月に、これも日経でしょうか、「新生銀 新たな衝撃」ということで「慣行破る厳しい回収 要注意先も対象 「破たん招く」他行反発」と、見出しだけ読み上げればどういう中身かということは大体察しがつくわけですけれども、債務超過に陥っている破綻懸念先だけではなくて要注意先にも返済を迫り始めている。そして、先ほど言っていました短期融資の回収という態度についても、他の関係者から非常識ではないかという批判もあるという点についてやはりどういうふうにこたえるのかということは一つあるかと思います。

 それと、続いて、やはりそうなってくると不安に駆られる地方銀行等々いわゆる中下位行がこれに、新生銀行さんに追随して回収に走れば、ますます要注意先が相次いで破綻に追い込まれるのじゃないかという声も伺うわけです。

 そうなってくると、地域の、地方の有力企業がそういうことで巻き込まれていけば、当然地域の雇用悪化にもつながっていくわけでございます。今でも完全失業率五・三%、私のおります近畿、関西では六・四%という高率でありますけれども、個別の地域ごとに見ればさらに悪化していくところも出てくるだろう。こうした新生銀行さんの今のやり方がそうした方向を助長させかねないのではないかという心配が当然あろうかと思うのですが、そうした心配についてはどういうふうにお答えになりますでしょうか。

八城参考人 場合によっては、貸出先のお客様それからメーンバンクの銀行の方ともよく相談をいたしております。特に、地方銀行がかかわり合っている場合には、私が直接お話をする場合もあります。それで、どうしましょうかということで御相談を申し上げるというケースは随分ございます。

植田委員 どういう形で取り組んでおられるかという話はわかりました。

 では、今私がお伺いしたのは、今まで、それは受けている批判は恐らく社長さんとしては不本意である、本意ではないと当然お考えでありましょうが、そうしたことが結果として地域の経済を悪化させていく、そのことを助長しかねないのではないかという心配については、いや、それならこういう心配はないんですよともしお答えになるとすれば、どういうお答えをされるのでしょうかということを私お伺いしたわけでございまして、その点についてはどうでしょうか。

 やっておられるということについてはわかります。そんな詳しく聞きません。そうした地域経済、地域の雇用悪化にまでつながる、言ってみればマッチで火をすることになりかねないかという、その心配がありますよというときに、その心配にどうお答えになるのかということについてお伺いしたいのです。お願いできますか。

八城参考人 たびたび申し上げているように、お客様とは何回でもお話をする、そして関係する金融機関ともお話をするというのが姿勢ですし、現実にやっております。しかし、本当に累積債務があって、累積赤字があって債務超過であるという場合は、どんなに努力をしても再生できないという場合もあるのですね。

 ですから、他行のことは申し上げませんけれども、私の主義ではございませんけれども、これだけ大きな不良債権の処理が出てきたというのは、実はやるべきことをしなかったということも言えるのではないかと思います。

植田委員 ちなみに、ちょっと話はそれてしまうのですが、これも参考人の御意見としてお伺いできればと思うのですけれども、アメリカでは、地域の信用需要にこたえるということを義務づけた地域再投資法というのがございます。

 私ども社民党の方も、これを援用しながら、やはり地元の利用者の立場から望ましい金融機関のあり方をこれから模索していこうじゃないかということで、私どもの政策の中でも、例えば中低所得者層であるとか女性でありますとか中小ビジネスベンチャー企業等々に公正な融資をするということを金融機関に義務づけて、そして地域全体の需要にこたえていく、そういう日本版の地域再投資法というものを導入してはどうかということをこの間提案をさせていただいているわけです。

 その中身についてもさることながら、そうした考え方、要は地域経済の活性化に資するための、資するよう金融機関にそういうことを義務づけたそういう法律というものについて、必要性また効果について、この点については社長さんのお立場としてどんなふうにお考えかということを、後学のためにお伺いしておきたいと思います。

八城参考人 私は、中小企業への融資は、実はアメリカのそういった地域と性格的には似ている面もあるのですね。ですから、中小企業への融資によってコスト割れになってもしなければならないということは、今回の業務改善命令との関係でも、それを決意と申しますか、実行するということを考えているわけです。

 しかし、民間の企業である、銀行も社会の公器だということも事実でありますけれども、民間の企業でできることには限界がある。つまり、金融のシステミックリスクを冒すようなことは最後はやはりできないのですね。

 ですから、私はある意味では、私の意見を申し上げることではないとは思いますけれども、公的な金融機関の役割ということも十分考えられるのではないかというふうに思います。

植田委員 余り色よいお話ではございませんでしたが。

 実は、あおぞら銀行さんの方にも幾つかお伺いしたいことがあったわけでございますけれども、ちょっと時間も参りましたので、せっかくお座りいただいたのに失礼いたしました。

 きょうは本当に、お二方、長時間ありがとうございました。

 以上で終わらせていただきます。

山口委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人各位におかれましては、御多用中のところ御出席をいただきまして、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚くお礼を申し上げます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十九分散会




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