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第6号 平成14年3月6日(水曜日)

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平成十四年三月六日(水曜日)
    午後六時三十三分開議
 出席委員
   委員長 坂本 剛二君
   理事 中野  清君 理事 根本  匠君
   理事 山口 俊一君 理事 山本 幸三君
   理事 海江田万里君 理事 古川 元久君
   理事 石井 啓一君 理事 中塚 一宏君
      岩倉 博文君    岩崎 忠夫君
      金子 一義君    金子 恭之君
      倉田 雅年君    七条  明君
      砂田 圭佑君    竹下  亘君
      竹本 直一君    中村正三郎君
      林田  彪君    福井  照君
      増原 義剛君    山本 明彦君
      吉田 幸弘君    渡辺 喜美君
      阿久津幸彦君    五十嵐文彦君
      生方 幸夫君    江崎洋一郎君
      小泉 俊明君    小林 憲司君
      佐藤 観樹君    中川 正春君
      永田 寿康君    長妻  昭君
      牧野 聖修君    上田  勇君
      白保 台一君    藤島 正之君
      塩川 鉄也君    吉井 英勝君
      阿部 知子君    植田 至紀君
    …………………………………
   財務大臣         塩川正十郎君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君
   内閣府副大臣       村田 吉隆君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   財務大臣政務官      砂田 圭佑君
   財務大臣政務官      吉田 幸弘君
   政府参考人
   (内閣府政策統括官)   安達 俊雄君
   政府参考人
   (財務省主税局長)    大武健一郎君
   政府参考人
   (財務省関税局長)    田村 義雄君
   政府参考人
   (財務省理財局長)    寺澤 辰麿君
   政府参考人
   (国税庁次長)      福田  進君
   政府参考人
   (国税不服審判所次長)  後藤 敬三君
   参考人
   (日本銀行総裁)     速水  優君
   参考人
   (日本政策投資銀行総裁) 小村  武君
   財務金融委員会専門員   白須 光美君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月六日
 辞任         補欠選任
  小泉 龍司君     岩崎 忠夫君
  竹本 直一君     福井  照君
  五十嵐文彦君     牧野 聖修君
  小泉 俊明君     阿久津幸彦君
  遠藤 和良君     白保 台一君
  佐々木憲昭君     塩川 鉄也君
同日
 辞任         補欠選任
  岩崎 忠夫君     小泉 龍司君
  福井  照君     竹本 直一君
  阿久津幸彦君     小泉 俊明君
  牧野 聖修君     五十嵐文彦君
  白保 台一君     遠藤 和良君
  塩川 鉄也君     佐々木憲昭君
    ―――――――――――――
三月六日
 特定非営利活動の促進のための法人税法等の一部を改正する法律案(岡田克也君外九名提出、衆法第五号)
同日
 大和都市管財被害に対する行政支援による包括的救済等に関する請願(大谷信盛君紹介)(第五〇九号)
 同(石井一君紹介)(第五四六号)
 所得税の基礎控除引き上げ、課税最低限度額の抜本的改正に関する請願(金子哲夫君紹介)(第五一〇号)
 預貯金等の国民生活にかかわる諸制度の安定的運営に関する請願(鹿野道彦君紹介)(第五六八号)
 消費税増税反対等に関する請願(大森猛君紹介)(第五八九号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 平成十四年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案(内閣提出第二号)
 租税特別措置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四号)
 関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第九号)


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     ――――◇―――――
坂本委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、平成十四年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案、租税特別措置法等の一部を改正する法律案及び関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁速水優君及び日本政策投資銀行総裁小村武君の出席を求め、意見を聴取することとし、政府参考人として財務省主税局長大武健一郎君、財務省関税局長田村義雄君、財務省理財局長寺澤辰麿君、国税庁次長福田進君、国税不服審判所次長後藤敬三君及び内閣府政策統括官安達俊雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長妻昭君。
長妻委員 続きをさせていただきます。
 前回の質問では、何か自民党からばかというような不規則発言で終わったように記憶しているんですが、不規則発言も品よくお願いをいたします。
 途中になりましたけれども、柳澤大臣と金融の再建の問題をめぐっていろいろ話をした途中であったというふうに思います。十一社リストの話等をさせていただいたと思いますが、何でそういう話を申し上げたかといいますと、私は、柳澤大臣が国会で答弁されているとおり、やはり金融庁というのは、お役所は、企業の再建に対して一々口を出すべきではないと。これも柳澤大臣が国会で答弁されております。私もそのとおりだというふうに思うんです。ところが、例えばダイエーを見ると、あるいはほかの企業の再建を見ても、情況証拠として、政府主導でいろいろな物事が決められているというようなことが散見されております。
 例えば、これは朝日新聞の二月の二十四日の朝刊でございますけれども、この一面トップに、朝日新聞の一面トップに、「金融庁、一千億円増要請 ダイエー支援枠 「不十分」主力三行に」、こういう、金融庁が主語で一面トップに出ている。これは一つの事例ですけれども、かなり多くの、ほとんどと言っていいと思いますが、それが、金融庁主導で、政府主導で、例えばこのダイエーの再建は決められている、銀行がいろいろ呼ばれてやられている、こういうような報道がされております。
 柳澤大臣は否定はされているんですが、これだけ情況証拠が出ると、金融庁としてはこういうような主導で手を突っ込んで再建策をやっていると疑われてもしようがないと思うんですが、世間からそういうふうに見られているということに対して、大臣はどういうふうに認識されておられますか。
    〔委員長退席、中野(清)委員長代理着席〕
柳澤国務大臣 金融庁は、金融機関の監督官庁、それから基本的にそれぞれの貸出先のやっている事業の内容、こういうようなものについてノウハウがあるかといえば、これはもう率直に言ってないと言うことができようかと思うわけでございます。
 我々が常に言っていることは、基本的に不良債権については、最終処理と申しますか、オフバランス化を進めてくれ、こういうことでありますし、その中の一環として企業再生型の処理ということがあるとすれば、その再建というものの計画、この合理性、それから実現可能性、こういうものが、もう本当に納得がいって、市場から評価されるようなものでなければ困る、こういうことを強く金融機関に申し上げているということでございます。
 そういうこと以外に、我々の方が貸出先の事業の中身に立ち入ったような話は当然できないというように考えておりまして、世の中がもしそういうようなことで言われるとすると、どうもそれはかなり、何というか、誤解というか、金融庁というものについて買いかぶりぐらいのことを言っていらっしゃるんじゃないか、こういうように私としては受けとめざるを得ないということでございます。
長妻委員 それはおかしいと思うんですね。そういう抽象的な話ではなくて、ここには、例えば金融庁が一千億円増要請と、細かい一千億円ということも報道されておりますし、ほかのマスコミでもそういうような報道もあるわけでありまして、これ、よく金融庁長官は、前打ち報道に対して一週間ぶら下がり禁止とか、マスコミに対しては厳しい措置をとっておられるようですけれども、こういう報道に対しては、何かマスコミ各社に事実と違うとかそういうような弁明は、もし柳澤大臣が言うようにこういうことをやっていないんであれば、そういうことはきちんとやられているんでございますか。
柳澤国務大臣 金融庁の仕事についての論評というのは、昨今では、もう本当に私でもとても目を通せないほど大量にございます。そういうようなことで、一つ一つについて、その論評について何か物を申すということも余り適当だとは思いませんので、そういうことの中で、どうしてもこれはやはり、こう私が言っても、じゃ今から言うことは絶対ないんだね、何を書いてもいいんだねというふうに誤解をされたのでは困るので申しますけれども、我々としては、特段の措置をとるということはしないで、結局は、これは事実というか、歴史が証明してくれるだろう、このように考えているという次第であります。
長妻委員 これは、これだけマスコミでも報道され、情況証拠が整っておりまして、絶対に金融庁は、こういう個別のことに関して、金額がどうだとか銀行に対して一々言わないでいただきたい。というのは、金融庁は責任をとれないわけですから、その再建企業が、後どうなろうと。
 それで、小泉総理は、実は、そういう指導をしているようなこともほのめかしておられるのです。一月十八日の記者会見で小泉総理は、ダイエーの破綻は、企業、失業者、金融機関に非常に大きな影響をもたらすという小泉内閣の強い意向を感じたから、ダイエーを倒産させるわけにはいかないと対応が進んだのではないかと。総理は、政府の意向が働いてそしてこういう対応が進んだのではないかというふうにおっしゃられておられるわけでありまして、こういうような指導みたいな形は絶対にとらないということをここで、今後そういうことは、誤解を受けるようなこともしないということを明言いただきたいと思うのです。
柳澤国務大臣 これは一貫して、私、申していることですけれども、我々は金融機関の監督当局でありまして、そういうことに精いっぱい仕事をさせていただくということに尽きるということでございます。
長妻委員 そうすると、そういう指導は、具体的に再建するかしないかも含めて、金融機関に対して、個別の事案に対しての意見とか指導というのはしないということを、ちょっともう一回、はっきり明言していただきたいと思うのです。
柳澤国務大臣 私が申していることは、とにかく不良債権の処理を進めてもらいたい、再建計画を立てて再建型の処理をする場合には、本当に実現が確実なように、そういう再建計画にのっとった処理をしてもらいたいということを、これからともに、これは言わせていただかなきゃならない、このように考えております。(長妻委員「個別はしない、個別の指導はしないんですか」と呼ぶ)個別の指導は、経営判断の問題であるということでございます。
長妻委員 ちょっとあいまいでございますけれども、本当は私は、指導していい点もあると思います。
 これは個別ではありませんけれども、私的整理のガイドラインでありますが、これは昨年九月十九日に策定されたものでありますが、金融庁もオブザーバーで入っておりますけれども、これは非常に厳しい私的整理、債権放棄も含めた再建策が書いてあるということで、私は、一つの考え方だというふうに思っております。
 では、今まで、私的整理のガイドラインが適用された事例というのは何個あるか、あるいはどういうものか、御存じでございますか。
柳澤国務大臣 これは、細部まで私が全部知悉しているかといえばその自信はありませんけれども、大どころでは二つぐらい、一つは繊維の関係、一つは百貨店と申しますか、そういったものというのが、間違いでなければ、記憶に残っているところであります。
    〔中野(清)委員長代理退席、委員長着席〕
長妻委員 私は、一つ、一事例だというふうに認識しておりますけれども、もし大臣が言われる二事例がそうであれば、いずれにしても、一事例か二事例か、これだけいろいろな再建策があるにもかかわらず、肝いりでせっかくつくったガイドラインにもかかわらず、まだこれだけしか適用されていないということに関して、いろいろ金融機関を監督する責任者として、感想はありますか。
柳澤国務大臣 非常に多数の債権者を巻き込んで再建していこうというようなことになりますと、抜け駆けは許さないということで、恐らく停止命令というような、ガイドラインにあるような措置をとられるんだろう、こういうように思います。
 しかしまた、そういう方式ではなくて、まさに主要な金融機関だけが負担をするような形での再建計画でいこうじゃないか、こういうような話になりますと、停止命令というような措置はとらないで、対象企業も通常の営業をしながら再建を図っていくというようなことがあろう。
 しかし、いきさつは省きますけれども、ガイドラインというようなものをつくっていただいて、できるだけその精神を酌んだような再建計画でないと、これはやはり先ほど言った市場の評価等に影響するわけですから、そういう意味では、できるだけそういう精神を酌んだものにしていこうという努力が行われているというような認識を持っているわけでございます。
長妻委員 以前のトーンと比べて、何か物わかりがよろしくなったというか、ガイドラインを積極的に適用するということも金融庁は望んでいるというようなお話もあったわけでありまして、ぜひこれを、口を出すのであれば、細かい再建策が云々よりも、この私的整理のガイドラインを適用しなさいというところに口を出していただきたいというふうに私は考えます。
 次の質問に移らさせていただきますけれども、昨日の予算委員会で、塩川大臣から、平成十四年度の予算について、北方支援の予算に関して執行される意向があるんでしょうかという質問に対して、これは一財務省だけで決定できませんから、財務省、外務省、よく相談して、内閣で協議して決定しますということでありますけれども、この予算に関しては、削除するとかあるいは執行しないということも視野に入っているという発言でございますか。
塩川国務大臣 この予算全体を見まして、十億ちょっとなんですが、そのうちに支援委員会の職員の給料なんかもあるんですね。そうしますと、職員をどうするのかという問題等は、これは私どもだけで決められませんし、外務省の方も、やはり関係国ございましょうから、その分も全部ゼロにしてしまうということは、果たして現実的にできるのだろうかどうかということもございます。
 ですから、この中身をよく検討いたしまして、少なくとも、今まで質疑があったような、そういう疑惑の持たれるようなことはやってはいかぬ、これはもうやめなきゃいけませんけれども、やはり支援委員会がある以上は、そういうようなものも考えなきゃいけないんじゃないかなと思います。その意味において、協議した上で決定するということを言っておるのです。
長妻委員 これは、平成十四年度予算案、まだ本会議では可決はされていないわけでありますけれども、そうすると、結局、お給料とか支援委員会のいろいろな予算があるけれども、この予算、平成十四年度予算の案から削除するというようなお考えもあるということですか。そういう可能性もあるということですか。
塩川国務大臣 削除じゃございませんで、執行を停止することがあるかもわからぬということを言っております。だから私は、あくまでも、執行について協議し、決定するということを言っております。
長妻委員 今から執行しないかもしれないということを、我々としても、そういう予算案を表に出されて、審議をしろといっても、本当は審議できないわけでありますけれども、本来は、その執行するしないという結論を出した上で平成十四年度予算案を審議すべきだというふうに思いますけれども、こういう事例というのは、過去、あるのですか。
塩川国務大臣 私は、財務大臣、まだ十カ月もやっていないので過去のことは知りませんけれども、私は、国会議員三十数年やっていました間に、ちょいちょいとこんなことがありましたですね。ですから、それは要するに、予算の執行を含みで、それやった後、当該委員会等にその状況等を説明するということはやっておったことはあります。
長妻委員 過去、具体的な例は御存じないわけですね。過去、財務大臣、財務の責任者が、まだ成立していない当初予算に対して、執行するかしないかわからない、検討するということを予算が通る前に言われるというような形での事例というのは私も知らないわけでありますけれども、これはちょっと異常なことだというふうにお感じにはなりませんか。
塩川国務大臣 確かに正常じゃありません。
長妻委員 そうであれば、財務大臣の職権で、今回の予算案はもうちょっと、執行するしないをきちんと決めてから国会に提出するんだというような形でリーダーシップを発揮していただきたいと思うんですが、きちんとした形で予算案を再提出するというようなことは、ぜひ……。
塩川国務大臣 先ほど予算委員会で、本予算は委員会で決定されました。私もそのときに申しておりますように、予算の原案を承認してもらいたい、ただし、執行については、政府部内で十分に協議した上で、適正に、疑惑の持たれないように執行をきちっとやるから、それを信じていただきたいということを申し上げて採決が行われた、こう信じております。
長妻委員 ちょっとおかしな話、ちょっとどころか異常な話だと思うんですが、今おっしゃられたのは北方支援の関係に関する予算でありますけれども、いろいろ疑惑が出てきておりまして、その意味ではいろいろな、北方支援に関してのみではなくて、いわゆる鈴木宗男議員の疑惑関連で、今後、これに限らず、予算を見直していく、執行を停止する等々の検討を加えていくというような可能性も、今後のいろいろ疑惑、今も北方以外にも出ておりますけれども、そういう広い範囲で考えてよろしいんでございますか。
塩川国務大臣 そのように考えていただいて結構だと思います。
 私は、昨年の四月就任いたしまして、五月になりましてから、財務省の幹部会におきましてこういうことを提案し、現在実行しております。それは、予算編成は財務省でやるけれども、やった後、各省に配分した後、各省がどのように執行しておるかということを正式にチェックしていく、あるいは監視していく、そういうシステムが財務省の中にない。したがって、主計局の中で予算の執行状況を絶えず見守っていくというセクションがあってもいいんじゃないかということを提案いたしまして、それを昨年の六月、七月に実行いたしました。それを十四年度以降においても、私はこれを制度的なものにしたいと思っております。
 大体、政府の中に、プラン・ドゥー・シーという、このシーの方が全然弱い。これをやはりもっと強くしていく必要がありまして、そういういびつなものがあるからいろいろなことが起こってくると思っておりまして、私は、これからも政府部内でそういうシーの方の目を強くし、活動を強くするように一生懸命提案し、実行していきたいと思っております。
長妻委員 冒頭、今回の鈴木宗男議員の一連の疑惑に関して、今後出てくるものも含めて予算の執行停止等も視野に入れるというお話がありました。これは、塩川大臣、国民的関心もありますので、例えば、この北方支援に関しては、予算の執行停止等々の見直しというのは、大体いつごろの時期までに検討して結論を出される予定でありましょうか。
塩川国務大臣 できるだけ早くということを申し上げておきたいと思います。
長妻委員 できるだけ早くというのは小泉総理も言われておられて、その直後に十日間ということで決定をされたんですけれども、これは私もよく言うことですけれども、どんな組織でも、できるだけ早くという言葉はあり得ないわけでありまして、一国の財務大臣でありますから、大体十日だとか以内とかそういう時期を、大体の目安を本当に区切っていただかないと常識外れになりますので、ぜひお願いします。
塩川国務大臣 これは何ぼ何でも、私は、それは、僣越的なことは申し上げられません。
 といいますのは、長妻さんもよう御存じのように、これは国際機関でしょう、支援委員会というのは。ですから、私は財務省に、即刻この実態と今後の方針とかいうものを問い合わせて、そして、外務省の中で、この支援委員会をどうするのかという、その国際協議もやはり経なければならないんじゃないかと思います。
 ですから、それは思い切り私の方からせいてもらうように言いますけれども、しかし、だからといっていつまでと言うことは、私はおこがましい、よう申し上げられません。できるだけ早くやるということです。
長妻委員 次に質問移りますけれども、柳澤担当大臣に、今回デフレ対策等がいろいろ出ましたが、端的にお尋ねしますけれども、不良債権問題が解決しないネックというのは、一つ挙げるとしたら、最大のものは何ですか。
柳澤国務大臣 不良債権問題が解決しないと、今一生懸命解決しようとして我々努力をしているところでございます。
 不良債権問題の処理というのは、いつも私申して恐縮ですけれども、間接的なあるいは銀行内部の会計処理としての引き当てということと、貸出先とのかかわり合いでこの最終処理というかオフバランス化を進めるということが二つありまして、このそれぞれが大事でございますけれども、今これを、特に集中調整期間と言われる年度を通じましてこの処理に当たりまして、二〇〇四年度におきましてはこの問題の正常化をしたいということで、懸命の努力をさせていただいておるというところでございます。
長妻委員 私は、全然的が外れていると思うんですね、柳澤大臣。
 私は、この不良債権問題が解決しない最大のネック、一つ挙げるとしたら、金融庁が信用されていない、これが最大の問題だというふうに考えております。金融庁が信用されていれば、市場からも、国民からも、世界からも信用されていれば、国会で何にも不良債権議論なんてしません。全部お任せして、すべて金融庁の仰せのとおりすれば物事解決するわけでありまして、全然金融庁が、市場からも信用されていない、国民からも信用されていない、ここに私は最大の問題がある。今の答弁は本当に的が外れておられる。そういう認識というのはありますか。
柳澤国務大臣 この金融の問題については、先ほども申したとおり、もともとが、金融というのは情報産業で、貸出先についての情報は金融機関が最もたくさん持っている、特にメーンバンクが持っている、こういうことで進んでまいりまして、それを金融庁、その前は大蔵省というところの監督当局が外側からチェックに当たっていくということでございます。
 そういうことをしているわけですけれども、最近においてもいろいろマーケットの声がひとつ出てきまして、そういうような声に触発された人々がいろいろのことをおっしゃる。こういうような中で、金融庁のことについても、特にマーケットの中に金融庁の行政のあり方というものを批判する声も一部にあった、こういうことでございますけれども、これはマーケットの方もどんどん言うことが変わってきているということが実態でありまして、そのあたりのことを長妻委員の方々にも、皆さんによく推移を見ていただきたい、このように考えます。
長妻委員 質問に答えていただきたいと思うんですが、これは本当に重要なことなんです、耳の痛いことだと思いますけれども。柳澤大臣、金融庁が市場から信用されていない、こういう自覚というのはどの程度お持ちなんですか。そういう質問だったんです、さっきは。
柳澤国務大臣 金融庁が最終的にどういう仕事ぶりについての評価をいただけるかということは、この経過の中ではなかなか客観的なことは言い得ないだろうと思います。私は、この問題の正常化ができるかということの中で評価されるべき問題だ、このように思います。
長妻委員 いや、これは全く驚きますね。全然金融庁が信用されていない、市場からも信用がされていないという自覚が全くない答弁でありまして、まずその自覚から始めないと、不良債権というのはきちんと処理することはなかなかできないわけでありますので。
 これは小泉総理も、お配りした資料の資料三の方に、これは金融庁がつくった資料だと思うんですが、「特別検査では、自己資本や体力を気にせず、金融機関の経営に大きな影響を持つ貸出先について、しっかり検査して処理するようにしてほしい」と。ですから、自己資本や体力を気にしないでちゃんとやれということを総理も言っておられるわけで、裏を返せば、今まで自己資本や体力を気にしてやっていた、それを見過ごしていたんじゃないか、こういうことも言えるわけであります。
 それで、一つ私がこの質問の前回に日銀考査の話をしましたのは、金融庁がなかなか市場から十分な信認を受けていないというようなところを補う、信用をつくる環境を金融庁として努力をしないと不良債権問題は解決しない、その一つに日銀考査との突き合わせが重要であるということで、日銀考査の話を申し上げました。
 もう一つの提案でございますけれども、今、特別検査は、銀行と金融庁の検査官と、あとは銀行の監査法人の三者で特別検査をやられているというふうに聞いておりますけれども、その監査法人というのは結局は銀行が雇った監査法人でありますので銀行側となりますので、それに加えて、例えば政府の、金融庁ではない、内閣のどこかの部門が税金で監査法人を雇って、その方を入れて第四者で、ある程度監査の精査をして、そして、中立の目から見てこれは確かに正しいというような監査人制度というのを創設する必要もあるのではないかと思うんですが、いかがでございますか。
柳澤国務大臣 監査法人も、自分たちの監査のありようということについては常に反省を怠っておりません。最近も、金融審議会の中のこの関係の方から、監査のありようについての改正案というようなものについてパブリックコメントを求めている段階でございます。
 また、金融のみならず、企業の財務状況の監査に当たる監査法人等は、今や決算の適正性を自分らとして確信を持ってやっているんだということについては極めて慎重になっているというようなことで、監査の法人の出方によって現実に企業の破綻が起こってしまうというようなことすらあること、これも委員御案内のとおりかと思う次第であります。
長妻委員 私も金融庁が信認されていないという耳の痛いことを申し上げるのは、やはりそれを自覚したところから始まると思うんですね。その意味では、こういう日銀考査とか第三者の、銀行が雇ったのではない監査法人を使うとか、あるいは、例えば特別検査の結果を、かなり踏み込んだ個別企業ごと、銀行ごとの結果を、例えばこの財務金融委員会でも秘密会にして、秘密会という規定は国会でも、国会法上もあるわけでありますから、そして国民の代表である議員が見るというような形で信頼を醸成するような施策をとらないと、日本の不良債権問題は解決しないと思います。
 これは、金融庁は、いや信認されていないというのは一部の人が言っているだけだというふうに先ほど言われていましたけれども、そういう認識のままであると、いつまでたっても、自分たちは正しいという、第三者の力はかりない、こういうような発想になって、不良債権処理がどんどんおくれていくというふうに考えます。
 その一つの例としてお尋ねするんですが、これは金融庁長官や金融担当大臣あるいは塩川大臣、総理に、金融の情報がどの程度上がっているかということで質問をさせていただくんですけれども、例えば、破綻したマイカルという企業がございますけれども、マイカルが破綻前にいろいろな都市銀行、主要銀行で一体自己査定でどの分類にあったか。よく言われているのは、要注意の分類だったというふうに言われているんですけれども、そのマイカルが自己査定でどの分類にあったかという情報は、柳澤大臣にはそういう情報というのは上がっておられるんですか。大臣、大臣に。
村田副大臣 後で、要すれば後で大臣にお答えをしていただきたいと思いますが、個別の案件につきまして、行政内部でどういう扱いを受けているかということはお答えを差し控えさせていただきたい、こういうふうに思います。
 しかしながら、一般論として申し上げれば、金融機関の検査におきます個別債務者の査定結果等の情報については、逐一担当の検査局から上げられているというわけではありませんが、要すれば、金融機関のリスク管理の観点から必要と思われる場合には適時適切に報告がされる、こういう形だと思います。
長妻委員 同じ質問を大臣に。大臣にもそういう情報が上がるのかどうか。
柳澤国務大臣 今、副大臣が答えていただいたことにつけ加えることはないのです。
 つまり、一々、検査の結果について、個別債権あるいは個別の貸出先についてかくかくしかじかでしたというようなことは通常上がりません。まあ検査結果ということで、主要な事項については私もその報告を受けますけれども、今言ったような個別のことについては、どちらかといえば問題が生じたときに必要な情報が上がってくる、こういうことです。
長妻委員 そうすると、別に私も個別の企業がどの査定だというのを言ってほしいと言っているわけではありませんで、一つの事例として、マイカルが破綻前に主要銀行でどの自己査定の分類にあったのかということは、柳澤大臣は御存じでありましたか。要注意とか破綻懸念。
柳澤国務大臣 個別の、その今委員の特定されたことについて私申し上げるのは差し控えますけれども、一般にそういうことが起こったときには、当然こういう銀行の自己査定の状況でしたということについては報告を受けるということです。
長妻委員 公的資金の注入に関してなんですけれども、今、日銀総裁等からも話が出て、この議事録も速記中止という議事録が内閣府から出回っております。塩川大臣は常に諮問会議はオープンだと言われているんですけれども、なぜその部分だけ速記中止になってしまったのかというのは非常にわかりにくいわけであります。
 いま一度速水総裁と柳澤大臣にも確認をしたいんですが、この預金保険法百二条によって公的資金が注入されるときは、これは当然銀行の経営者の責任というのは明確に問うということに、百五条の条文なんかを見るとそういうふうに書いてあるようにも読めるんですが、百二条の現行法で公的資金が銀行に注入されるときは、銀行の経営者の責任は明確に明確化されるということは大前提となるということでよろしいんでございますか。明言を。
柳澤国務大臣 そのように法律の規定がなっております。
長妻委員 これは経営者退陣、役員を退任するということと同義語でございますか。
柳澤国務大臣 これは、法律の用語は相対的だというのを昔聞いたことありますけれども、各法によって解釈が違うんだろう、違うこともあり得る、こういうように思います。
 しかし、あえてちょっとつけ加えて言いますと、この文言は早期健全化法で使っていた文言をそのまま使っておりまして、それがさらに資本の区分に応じてブレークダウンされているというのが健全化法の建前でございましたので、その法律の立て方、規定の仕方との見合いからいうと、必ずしも委員が今おっしゃるようなことにはならないという解釈ができるんではないか、このように思います。
長妻委員 今の話はちょっとわからないんですけれども、経営責任を明確化するということは退陣をするということではないんですか。どういうことなんですか。またかつての注入のように、経営者の責任を全く問わないで公的資金が注入されるというような、退陣とかそういうことがなくて公的資金が注入されるということもあり得るということですか。
柳澤国務大臣 ちょっと私、失礼をしたかも――やはりそうですね。
 実は、健全化法第六条の第一項第六号のところに「経営責任の明確化のための方策」というのがございまして、健全化法ではそれがさらに、資本の充実の区分に応じてこれがブレークダウンされていく、こういうことになっております。
 例えば、健全な自己資本の状況にある、そういう金融機関のところに資本を注入した場合には、役職員数の抑制等により経営の合理化を行うこと、これが経営責任の明確化のための方策というものの中身になる……(長妻委員「役職員数」と呼ぶ)役職員だけ。それからもう一つは、今度は過少資本の場合には、これは役員数の削減等の経営体制の刷新を行うこと、こういうふうになる。それから、著しい過少資本の場合に、代表権のある役員の退任、給与体系の見直し並びに役職員数の削減、こういうふうになっていく。
長妻委員 そうすると、今の話ですと、何かこれはまたかつてのような、第一次、第二次の注入のように、経営者の責任を問わないで公的資金が入るということも考えられるような気がする。
 一つ明確にしていただきたいのは、預保法の百二条による公的資金注入であると、銀行の最高責任者、頭取は辞任をする、当然公的資金の注入と引きかえに辞任をするというのは、これは当たり前ですね。
柳澤国務大臣 いや、それは要するにケース・バイ・ケースの判断ということになるんだろう、こう思います。その判断に当たっては、今委員の言ったようなことも当然あり得るし、多くの場合そういうことになるんだろうと思うんですけれども、絶対にイコール、一〇〇%イコールかというと、さっき言った法律の建前とこの預保法の法律が全く同じ概念を使っているわけですね。
 この経営責任の明確化のための方策という中には、さっき長妻委員も若干不規則発言的、御着席のまま確認されたように、役職員数の削減から始まるという状況なんです。ですから、役職員数の削減、それで過少資本になって初めて代表権を持つ役員の退任というものが書かれているということ、こういうことを踏まえて、しかしまた、最近の預保法の考え方、これは概念の相対性ですから、我々が別に全く健全化法と同じことをやらなきゃならぬという理由はないはずですから、その中で考えていくということになろうと思います。
長妻委員 いや、これもまた本当に驚くんですけれども、預保法で金融危機対応勘定で公的資金が注入された場合、頭取が退陣をしない場合もあるということを今言われたわけでありますけれども、これは全く私は理解できないし、かつての失敗の二の舞、責任を問わないで公的資金注入という失敗の二の舞になる余地が残されている、そういう御発言だということで、大変問題だと思います。
 速水総裁、時間がないので、最後で恐縮でございましたけれども、速水総裁は記者会見で、私もテレビでその現場を拝見いたしましたけれども、公的資金注入に関して記者に問われて、年度内にできればいいと思うというふうに会見で明言をされておりますけれども、それは今もお気持ちは変わりませんか。
速水参考人 公的資本の注入につきましては、私の考えを改めて申し上げますと、我が国の金融システムに対する内外市場の見方は大変厳しいものがある。その基本的な背景には、不良債権問題がある。今後も新規の不良債権の発生があり得ることや、既存分について最終処理を進めていけば、自己資本が必ずしも十分とは言えなくなる事態が生じないとも限らない。そうしたことから、不良債権問題の早期克服を図る過程で金融システム全体の安定について疑問が呈される場合には、タイミングを逸せず、大胆かつ柔軟に対応していくことが必要である。また、そうした事態に陥る前に早目に公的資本注入についての考え方を表明していくこともあるのではないかと思う。
 以上が私の先日の記者会見で申し上げた趣旨でございます。(長妻委員「年度内にできればいい、年度内に」と呼ぶ)
 必ずしも年度内とは申しておりません。
坂本委員長 長妻君、時間が参ります。最後の質問です。
長妻委員 これはビデオでもあるわけですから、年度内にできればいいと思うという発言は記者会見ではされてないということですか。
 速水総裁に一点お尋ねするんですが、公的資金の注入に関して、今柳澤大臣とやりとりをさせていただき、法律論のやりとりはあったわけでありますけれども、預保法の百二条で公的資金が注入される場合、もちろんその頭取は辞任をしていただくというのは当然だというふうにお考えですか。
速水参考人 その問題につきましても、今の段階で、具体的な注入基準とか対象範囲をどうするかとか、予断を持っているわけではございませんですから、そのときそのときの状況を踏まえて、適切な判断をしていくべきであるというふうに考えております。
長妻委員 本当に、これはもう、第一回、前回の公的資金の注入が、これはだれの目にも明らかなように失敗でありまして、それは、経営責任を問わないで、健全行というフィクションをつくって投入をした、全然だれも責任を問わない、それでお金を投入したから全く事態が改善しなかったというこの過去の教訓を全く生かされていない今、御答弁だと思いますので、責任を問うということと引きかえに公的資金を注入する、当然だと思います。ぜひ、塩川大臣も、副総理格でありますのでそれをよく考えていただいて、小泉内閣として注入のあり方をきちんと、責任と引きかえということを強く申し上げて、質問を終了いたします。
坂本委員長 次に、藤島正之君。
藤島委員 自由党の藤島正之でございます。
 先ほど来から財務大臣をうかがっていますと大分お疲れのようでございますので、端的にお答えいただければと思います。
 まず、株価についてちょっとお伺いしたいんですけれども、空売り規制の成果だとかPKOの成果だとかいう話もありますが、まさか構造改革が進んでいるということからだというふうにはお思いじゃないと思いますけれども、両大臣に現在の株価についての感想をちょっとお伺いしたいと思います。
塩川国務大臣 私は、証券市場が健全であるように、そして証券市場が一般投資家に信頼される、プロは別ですよ、プロはばくちをやっていますからいいんですけれども、素人が、民間の人が信頼できるようなルールにきちっとしてもらって、それをやはり守ってほしい。そういう意味で、空売りというのはインチキでやっているのも随分あるということを聞いておるんですよ、私は実態を知りませんけれどもね。そういうことを聞けば、もっと、空売り規制について証券取引所は考えておるのかということを言うただけで、こうせいああせいということは言うたことない。
柳澤国務大臣 株価が最近上がっているということについては、私は、非常にありがたいことだ、企業の決算あるいは金融機関の決算、さらには、株価が、資産効果というか心理的な効果というか、そういったことで、やはり、国民に明るい気持ちを持たせるという意味では、そういう意味で歓迎すべきことだというふうに思っております。
 ただ、その原因がどういうところからきているか。これは、株価の変動の要因というのは、もう限りなく、恐らくいろいろなものが複合しているということであろうということで、これについてはコメントをしないということで通させていただいております。
藤島委員 総理は、何か、支持率が落ちても株価が上がった方がいいというようなことを言っておられたようですけれども、財務大臣は、今、直接関与していないという点はおっしゃられましたけれども、水準についての、柳澤大臣はコメントはすべきではない、こうおっしゃったんですけれども、財務大臣もそういうことですか。
塩川国務大臣 それは常識で大体考えていただいたらわかるだろうと思うんですが、今、預金で、定期預金をしたら〇・〇何%ぐらいなんでしょう。ところが、ある株式、公共機関の株式なんかを持っているとうんと利回りがいいということは株の利回りがいいということなんですね。そうすると、株の価格はもう少し高くあってもええやないか、これは常識で考えられるんじゃないでしょうか。その意味において、私は、株は安いんじゃないかなと思うておるから、ですから、逆に言うたら、株はもう少し高くてもいいんではないかということを言っておるんです。
 そして、そのことは、いわゆる企業が、株式を持っている企業が多いですし銀行もたくさん持っておりますから、そういう企業あるいは金融機関にとって株価が上がることは、やはり安定した経営につながってくるということも考えられるし、それからして、そういう両々ありまして、私は、株はもう少し高くてもいいのではないかなという判断、これは独断ですけれども、そういう判断を持っておるんです。
藤島委員 願望としては高い方がいい、しかし、具体的に操作には手を出していない、こういうことでございますね。
 次に、デフレの問題についてちょっとお伺いしたいんですが、両大臣は現在もうデフレだというふうに考えているのか、あるいは、まだデフレではないと考えているのか、どちらなのか、御意見を伺いたいと思います。
塩川国務大臣 物価が下がっておるから、やはり僕はデフレだろうと思いますね。
柳澤国務大臣 これは藤島委員も御案内かと思うんですが、昨年でしたか、デフレの定義が改められまして、物価の連続的な下落というものをもってデフレというと。従来は、ちなみに、物価の値下がりと成長というものを絡ませて両面から定義しておったのが、物価だけの現象ということになりました。その定義に従えば、デフレである、ただ、デフレスパイラルではまだない、こういうことだろうと思います。
藤島委員 そうしますと、両大臣とも、現在は一応デフレである、こういう認識であるということでございますね。
 それで、ただいま物価の問題と絡めて出たのですけれども、物価の下落が歯どめがかかり、本当に物価が上昇に転ずればこれは景気が回復するというふうにお考えなんでしょうか、両大臣。
塩川国務大臣 物価が上がれば景気が回復するという、直接的に言っておるんじゃございませんで、景気が回復してくれば物価が上がるという現象が出てまいりますから、とにかく景気をよくするという、そのための一つの手段、一つの手段でございますが、して、物価がやはり安定することが大事だ、下がりっ放しでいくということは危険なことだと思うておりまして、先ほど柳澤大臣も言っていますように、スパイラルにはなっていない、なっていないですけれども、低い状態で安定しておるよりも、ファンダメンタルズ全体から見て、やはり、為替相場あるいは生産能力等いろいろ見た場合、もう少し物価水準が高くてもいいんじゃないかということでございます。
 それでは目標はどうかとすぐ聞くと思うんですが、先に言うておきますけれども、それは、目標というのは、これは別に何%ということが大切じゃないんです。私は、こう思うているの、平成九年ごろですね、あの時分が安定しておったんですね、物価、そう思うんです。それから以降、ずっと毎年下がってきている。だから、平成九年ごろの状態にまでずっと緩やかに戻っていってくれたらいいんじゃないか、こう思うております。
柳澤国務大臣 私、大変恐縮なんですが、余りマクロ経済のことについては、自分には、個人的にはいろいろな思いがありますけれども、役所を代表してということはできないわけです。つまり、私の組織はマイクロ、ミクロの行政をしておりますので、役所の担当大臣としてマクロ経済を論じるということは私は差し控えるべきだろう、こういうふうに思っております。
 そういう意味で、まあ、あえて、立ちましたので申しますれば、物価が上がるということになれば売上高も名目で、たとえ名目であっても上がる、それから資産の、特に資産の価格が下げどまる、あるいは上がるということは、私の担当する金融機関にとっても望ましい状況ということは言えようかと思います。
藤島委員 そうしますと、財務大臣は、物価が上がるということが必ずしもデフレ阻止の要因ではなくて、安定していることがデフレ阻止にはいいんだ、こういうお考えのように聞こえたのですが、要するに、物価が上がることはデフレを抑止するということではないということですか。
塩川国務大臣 私は、このままほっておいたら物価は下がるように思うのです。でございますから、やはり上げる努力をしていかなければ物価はだんだんと下がっていくという感じがいたします。
 それは、外国から安い製品がどんどん来ていますしいたしますので、それは為替の問題もあるでしょうけれども、そういう外圧的なものが将来もやはり懸念されることもございます。物価を、やはりある程度水準を上げていくという努力をしておいた方がいいと思っております。
藤島委員 それでは、その件はこれくらいにしまして、次に、構造改革というか財政改革とデフレ対応策、これは本当に両立するのかどうか、私は大変疑問を持っているのですが、つい最近、財務大臣は、これは大変困難な問題だというようなことをおっしゃっているわけですが、その辺の真意といいますか、ちょっと説明をお願いしたいと思います。
塩川国務大臣 それは、ある程度これは矛盾した構造になりますね。ちょうど肺病と糖尿病とどうするのかというようなことになってくると思います。
 しかし、健康な体をつくるのには、ただそれにこだわることなくて、みずからやはり運動もし、気分を変えていくことによってできるというようなもので、経済の問題も、私は、余り端的に一つの政策にこだわることなく総合的にやっていけば健康な体になっていくと思うのです。
 従来は、気つけ薬ばかり打ってやってまいりました。それを補正予算で何兆円、何兆円とやってまいりましたけれども、余り気つけ薬ばかりやっていては体が弱ってしまう、それよりもやはり体のしんから強くする、それが構造改革だ、それは併用するのが今一番ええのと違うかな、私はそう思います。
藤島委員 いわゆるある部分は、はっきり言って矛盾する部分はあるわけですね。そのときに、どちらを重点にやっていくかという問題は一つあろうかというふうに思うわけです。
 その次に、景気対策ということで最初言っていたのが、いつの間にかデフレ対策というふうに名前が変わってきているわけですけれども、景気対策とデフレ対策とは一体どこがどう違うのか、御説明いただきたいと思います。
塩川国務大臣 それは、景気対策をすることによってデフレは解消されていきますし、デフレ現象のいわゆる物価修正をやる、あるいは新しい企業を起こして活性化していくということになれば、それは景気回復にもつながってくる。両々相まって、ちょうどお金の裏表と違いますかな。ですから、これを一つのものとして考えていかないと、ばらばらに考えるわけにいかないと私は思います。
藤島委員 そこで、二十七日に政府のデフレ対策がまとまったわけですけれども、まさにこれは、日銀総裁はいないのですけれども、日銀に全部をしわ寄せして政府の方が何もやらないというような、そんな感じがするわけであります。
 その際も財務大臣は、大変難しい問題だというようなことをおっしゃっているわけですけれども、それはそれとしまして、対応策を出すと同時に、総理を初め関係大臣全部、第二弾、第三弾が必要だ、こういうふうにもおっしゃっているわけです。
 仮定の話として、具体的に今そう考えているという意味じゃなくて、仮定の話として、本当にこの今手段が限られた中で第二弾、第三弾というのはどんなものがあるのか、ちょっと私にはなかなか思いつかないのですけれども、財務大臣はどういうふうに考えているのか、お伺いしたいと思います。
塩川国務大臣 私は、まず、やはり規制緩和、細かい事案がたくさんあるのですね、そういう規制緩和を思い切ってやるべきだ。
 今度のデフレ対策は金融面から中心になってやりましたけれども、今度追加して出すべきものは、そういう経済の体制、いわゆる小泉総理が言っています構造改革ですね、構造改革に結びついたもので日常茶飯事的な、いわゆる経済の末端に及ぶような、そういうものをどんどんと改革をしていく、そのことが第二弾として有効になってくると私は思っております。
 第三弾、第四弾とあるでしょう。けれども、その段階になりますと、デフレ対策だけじゃなくして景気刺激、経済の回復そのものにつながっていく改革になっていかざるを得ない。
 今は、とりあえず金融面からデフレ現象を脱却する対策を講じようということをやったということであります。
藤島委員 私は、いつも申し上げているのですけれども、兵力の小出しの運用は本当に負け戦のもとだと思うのです。日銀と政府の方であっちだ、こっちだと何か相手の方に責任をなすり合って、自分のところが後から少しずつ出ていくということで、ついこの間も、総力戦でやるべきだという意見もかなり出ているわけですね。それにもかかわらず今回こういうふうに本当に小出しをしているというのは、本気で考えているのかどうか疑わしいような気もするのです。
 今財務大臣がおっしゃったように、規制改革、規制緩和、これは本当に最も大事なことだと思うのですけれども、これはもう既に前から総理もおっしゃっていたし、財務大臣もおっしゃっていたことなんですね。これを今さら、もう一回精査すれば細かいのが出てくるとかいうことなんですか。その辺が私には、イメージとして、そんなものであればもう既にやれていたはずではないか、ということは、第二弾、第三弾というのは本当に口先だけのものであって、本当に内容が次々と出てくるのかどうか、それは経済界や国民に単に期待を持たせるために、とりあえず今の責任逃れな、そんな言葉のような気がしてならないのですけれども、先ほどおっしゃったような抽象的な話じゃなくて、何かそういう意味で具体的な内容を持った規制緩和というか、第二弾、第三弾があるのかどうか。
塩川国務大臣 規制緩和は順次相当なペースで進行しておると私は思っております。現に、昨年の九月でございましたか、都市計画関係並びに建築関係のものを規制緩和いたしまして、相当マンション業界等にも影響を与えておりますね。
 そのようなことで、規制を緩和するについて、これはやはり相当な抵抗勢力があるということは御存じの話です。ですから、政府が勝手に、独断でどんどんと規制緩和をしたらいいというものじゃなくて、規制緩和をするについては、やはり関係者とのある程度の説明責任を果たした上でやっていくということでございます。
 ですから、不断に努力をして、そのチャンスをつかまえて規制緩和をしていくということを続けていくべきだと思っておりまして、これからもその改革を引き続き積極的に進めていきたいと思います。
藤島委員 私は、まさにそこが問題だと思うのですね。規制緩和というのはまさに抵抗勢力との戦いになるわけですね。そこのところが解決しない限り、口先だけで、第二弾は規制緩和だ、こう言ってもなかなか出てこないと思うのです。
 要するに、第二弾、三弾というのは、来年か再来年の話じゃないのであって、つい近い将来に出てくるというものだろうと一般には思われるわけですけれども、本当に近い将来にそういう規制緩和の内容のものが、デフレ対策として貢献できるほどの内容のものが出てくるのかどうか、もう一度お答えをお願いします。
塩川国務大臣 できるだけ早い時期にこの計画を移していきたいと思っておりまして、それは経済財政諮問会議にいずれかかってくることではありましょうけれども、今、与党の方でも規制改革の具体的な問題等について検討されまして、近いうちに、ある程度中間報告のようなものが出てくるということを聞いております。
藤島委員 与党の方は余り、抵抗勢力との関係で党側から進めるというのは難しいので、今の小泉内閣は、それに対して、規制緩和を中心とした構造改革をやる、こういうふうに断言して、今も一生懸命やっている、こう言っているわけですから、内閣として、先ほどからしつこくなって恐縮なんですが、本当に近い将来具体的なものを考えているのかどうか。そうでなければ、今の大臣のような、金融面だけではなくてデフレ対策として規制緩和を考えているんだということにはならないんじゃないかと思うんですが。
塩川国務大臣 内閣としてもある程度スケジュールを持っておりますが、私は、今その資料を全然持っておりませんので、具体的には申し上げられませんけれども、石原行革担当大臣のところで相当な計画が煮詰まってきておることは事実でございまして、近いうちにそのことは正式に協議にかけられるであろうと思っております。
藤島委員 わかりました。
 それでは次に、特別検査について柳澤大臣にお伺いしますけれども、いつから始めて、どういうやり方で、いつ終わるのか、これを御説明いただきたいと思います。
柳澤国務大臣 特別検査は、十月の二十九日にこの特別検査の検査予告というものをさせていただきました。テクニカルタームは予告ということですけれども、検査開始通知というふうに御理解いただいて差し支えない、このように思います。それがスタートでございます。
 それで、一ラウンド、二ラウンド、三ラウンドというように進めざるを得ないということでございまして、現在、特に一月から三月まで、これは三月決算に向けての自己査定の作業が行われておりますので、それにいわば並行して進めるような形で今進行中であるということでございます。したがって、三月末にはとにかく一定の結論に達する、こういうスケジュールで進めさせていただいております。
 それから、検査の対象については、基本的に、市場の評価が非常に激しく変わった企業等ということで、そういう債務者を選定して検査をやっているわけでございます。しかし、これ以上の、どういう債務者の選び方をしたかというその基準等については、他方において、あそこが検査の対象になったんじゃないかというような風評を生んで、それがために被害をこうむるということも心配しなければいけませんので、そういうようなことで、これ以上申し上げることは差し控えさせていただいております。
 結果については、したがって、三月が過ぎましてできるだけ早い機会に、私としては、四月の半ばごろには、その検査の結果というか、検査がどういう効果を上げたかといったようなことが国民の皆さんに御理解いただけるような、そういう形で結果を開示いたしたい、このように考えているわけであります。
藤島委員 大まかな点はわかったんですけれども、やり方として、どういうやり方をやっているのか。これはちょっと話しづらい面はあるかもわかりません。例えば、危険度が高いところとか、いや、そうじゃなくて、その一歩手前のところからやっていくんだとか、そういった何か手順みたいなものはあるんでしょうか。
柳澤国務大臣 金融検査というものが、何というか、本当は債権ごとに行うわけですが、日本の場合にはコーポレートファイナンスというような、ある種、ある意味で特別な形をとっています。つまり、人的な貸し付けなわけでございます。
 その貸付先をどう評価するかということが常に金融機関が行わなければならない自己査定という作業なのでございますが、その自己査定というものが本当に実態に合った査定であるかどうか、これを検査しているということでございまして、危険なものだけとかそういうことではなくて、対象は、先ほど言ったように、市場の評価が激変したもの等ということであるわけでございます。
藤島委員 何で私こんなことを聞くかと申しますと、恐らく、もうかなりやってきておりますから、柳澤大臣のところには中間的な報告が上がっているんじゃないか、柳澤大臣だけは実態をほぼ把握しているというふうに思うのですけれども……(発言する者あり)時間につきましては、私のオーバー分は同僚の方から減らしますので。その点を伺います。
柳澤国務大臣 全く、何というか、煙も見えないということを言えばそれは正確でないということですけれども、検査というのは、かなり、本当に最終の結論が出てみないとわからないという、検査局全体もいわば勝負をやっているわけですね。ですから、余り軽々に見通しのようなものを私のところへ持ってきておいて、それで、あそこの戦いでは負けましたとかというわけにも多分いかないんだろうと思うのですね。ぎりぎりの論争をしているというようなこともあり得るわけでして、したがって、明確な結論というのは、やはりその時期が来ないと私にも上がってこないということでございます。
藤島委員 もちろん明確な結論は最後になるんだろうと思うのですけれども、先ほど来私がどういう手順でやっているのかということを伺ったのは、まさか、一番大きいというか一番問題なのを最後のぎりぎりになってやるはずはない、その前に一番問題になりそうな部分はかなりやって、ある程度の中間的な感触を得て、もう三月に入ってきているわけですから、その途中の感触は、柳澤大臣には感触として、結論じゃないですよ、感触として上がっているんじゃないか。
 なぜかといいますと、財務大臣や竹中大臣は公的資金を注入しなきゃいかぬ、いかぬ、もうそういう時期じゃないかと盛んに言っているにもかかわらず、柳澤大臣は、いろいろな人がいろいろなことを言っているにもかかわらず、泰然として、そういう状態は考えられないようなことをおっしゃっているわけでありまして、私は、役人経験からしましても、大臣がそこまで自信を持って言っているということは、背景にそういった中間的な状況がある程度報告があって、それをもとに柳澤大臣はそういう言葉を使っているんじゃないか、こういうふうに実は考えるものですからそう伺っているわけですけれども、その辺は明確な答えはないと思いますけれども、どんなものでしょうか。
柳澤国務大臣 それは、藤島委員、こういうことなんです。
 要するに、九月末の決算を各銀行、やりました。特に大手行ですね、そういうような方々は、中間期の決算の発表のときに、翌期、つまりこの場合には十四年三月末の期の予想というものを、自分たちの見通しというものを話されるわけです。私がそういうことを、そういうニュアンスが出ているのかどうか、ちょっとあれですけれども、基本的に自己資本比率が過少に陥る可能性というのは少ないんではないかというのは、基本的な座標軸としては、今言った各行が出している来期見通し、つまり十四年三月末の見通し、これを中心にして物を考えているということにとどまります。
    〔委員長退席、中野(清)委員長代理着席〕
藤島委員 何でこういうことを申し上げるかといいますと、やはり、せんだっても質問させてもらいましたけれども、各大臣がばらばらなことを言っているわけですね。これが非常に経済界や国民の不安を醸し出している。すなわち、本当に三月危機というのはあるのかどうか。かえって、ばらばらであることによって、実態はそうでないにもかかわらず、そういう三月危機があるかの疑念を抱かせている面がかなりあるんじゃないかと思うんですね。
 そこで、柳澤大臣が頑として、三月危機になるようなことはないだろうと、総理がさせない、させないと言うのは、あれは言葉としてちっとも信憑性がないわけでありまして、担当の柳澤大臣が頑として、そういうことはない、こうおっしゃっているということは、そういう検査の中間的な報告が、結論じゃないですよ、方向性のある中間的な報告があるというふうに私は考えておるものですからそう伺っておるんですけれども、大体こういうものは明言はできないわけですけれども、そんな感じであるというふうに私は理解させていただいておきたいと思います。
 あと、税法の問題でちょっと伺いたいんですけれども、沖縄に金融特区をつくろうとしているわけですけれども、これは内閣府は来ておりますか。この金融業務について、ごく簡単に、どういうものをどういう趣旨でつくるのか、御説明いただきたいと思います。
安達政府参考人 今般提案しております沖縄振興特別措置法案の中で、地元から非常に強い要望として情報特区、金融特区の創設がございまして、これを受けて検討を進めてきたものでございます。
 金融特区の制度につきましては、昨年末に認められました税制の関連規定を置いているわけでございますけれども、税制といたしましては、金融業及び金融関連業務を広範に対象にしていきたいというふうに思っておりまして、こういった制度によりまして、金融関連企業の新たな集積を目指したい。それによって、今沖縄の高い失業率がございます、雇用の創出に貢献していくものとして期待しておるところでございまして、他の施策とあわせまして、所期の成果が生まれることを強く期待しているものでございます。
藤島委員 法人所得の三五%を損金算入だとか、あるいは従業員二十名以上とか、いろいろな条件がついているわけですけれども、私は、九州比例区ということもありまして、沖縄に随分行くんですけれども、普天間の飛行場の移転の代償といいますか、その対策としてもやるわけですから、きちっと成果があるような形でないと、ただそういうものをつくったというだけではいけない。
 そういう意味で再度お尋ねしますが、これでどれくらいの効果が期待できるのか。
安達政府参考人 今この制度によって何社が来るというようなことを申し上げるのはちょっと早かろうと思いますけれども、私ども、数年前から情報関係につきまして制度をつくりまして、また今回も情報特区ということでさらに強化するわけですけれども、この情報産業振興地域制度、その他各般の対策をやりまして、ここ数年間に約六十社の新規進出、そして五千名近い新規雇用を生み出したという点、これは情報関係で、私どもとして誇っていい成果ではないかというふうに思います。
 これらにつきましては、最初の段階、大変苦しゅうございます。個々の企業の説得の中で、数社でもできるだけ早く成功事例を見出すことによって、他の企業についても、ああいうソリューションの方法があるではないかというようなことで流れができるというようなことになれば、大変制度が生かされたことになるのではないかというふうに考えております。
藤島委員 せっかく日本のほかにない制度をつくってやろうということですので、実効のあるようにやってもらいたいし、また現在の案だけにこだわらず、やってみて余り実効が上がらないようであればもっと優遇、この枠でもいいので、今先ほど私が申し上げたような数字を変えるとか、いろいろな意味でもう一度考えてもらうような、そういう態度でやっていただきたい、こう思います。
 あと一つ、これは小さな話ですけれども、今確定申告中でありますけれども、受け付け中の税務署の勤務体制はどうなっているのか。国税庁の方にお伺いしたいと思います。
福田政府参考人 お答え申し上げます。
 まずその前に、本年度の確定申告の初日、二月十六日でございましたが、土曜日でございました。税務署は土曜日、日曜日等が閉庁日でございまして、確定申告の相談などは二月の十八日、月曜日から始まることにつきまして、私どもの広報が必ずしも十分でなかったために、せっかく来署していただきました納税者の方々に御迷惑をおかけしたことにつきまして、まずおわび申し上げたいと存じます。今後は、このようなことのないように、わかりやすい広報に一層努めてまいる所存でございます。
 私どもといたしましても、この確定申告期間中の閉庁日におきましても、納税者の方々に御不便をかけることのないように、これまで土曜日、日曜日等におきましても、各税務署に設置しております時間外の収受箱により申告書が提出していただけますとともに、申告書は郵送でも提出できることとしております。
 また、一般的ないわゆる税金相談につきましても、電話等で相談していただければ自動的に回答が得られます、タックス・アンサー・システムと言っておりますがそういったもの、あるいは確定申告に関します各種の情報等を掲載いたしました国税庁のホームページを設けておりまして、土曜日、日曜日等を含めまして二十四時間御利用いただけるようにしていることといった施策を実施しておりまして、今後とも納税者の方々に不便をかけることのないよう努力してまいる所存でございます。
 なお、将来的には、そもそも納税者の方々が税務署に来署していただかなくても、御自宅あるいは事務所等にいながらにしてインターネットで申告手続がしていただけますように、現在電子申告システムの開発を進めているところでございます。
藤島委員 やはり納税者は本当に血のにじむ思いで行くわけですね。それで、やはり土日しか休めない人もおるわけですね。それが今のようにただ受付に出せばいいとかそういう問題じゃなくて、根本的に、我が自由党が言っているんですが、ともかく税制を簡素化しないと、本当に一人で納税の申告書を書くというのは大変なものなんですよ、皆さんも御承知だと思いますけれども。
 したがって、相談の窓口は開いていないけれども受け付けだけはインターネットでもやれるようにと、そんな問題じゃない。やはり土日を含め、昼休みを含め、相談の窓口は受け付け期間中一カ月ですから、それは確かにそこだけ集中的に人材配置というのは大変だとは思いますけれども、それは、税務署はそれぐらい工夫をして、国税庁として統制をとって国民にサービスする、それぐらいの気持ちでやる必要があると私は思います。ことしはもう時間がないわけですけれども、来年については、ぜひそういう国の態度としてしっかりやってもらいたいし、改革してもらいたいということをお願いして、私の質問を終わります。
中野(清)委員長代理 次に、中塚一宏君。
中塚委員 自由党の中塚です。
 税法について伺いますが、塩川財務大臣、昨年の九月にこの委員会で議論をしましたときに、私、連結納税制度のことを伺いまして、連結納税制度を仕組むのを、要は企業負担を軽くするということに意味があるわけですので、三十兆円の枠との兼ね合いで本当に大丈夫なんでしょうかという話をしましたが、大臣が、損して得とれという言葉があるというふうにおっしゃっておられまして、私は、ああなるほど、さすが塩川財務大臣だというふうに思ったわけなんです。しかし、出てきましたものを見ますと、やはり三十兆円の弊害というんでしょうか、連結納税ですから、要は大企業が使う税制ということになるわけですけれども、そういう大企業向けの減税を、課税ベースを広げてそれで全体の税収でカバーをするというふうなことになってしまっているわけで、連結納税が使えないような企業というと、これはやはり単に増税ということになってしまうわけですね。
 それこそデフレ対応策というのもお出しになっているわけですが、こういう厳しい経済状況の中で、個別企業の問題ではありますが、増税になるようなところが出てしまうということ、私はやはりこれはちょっと、今の経済状況を考えて、今のタイミングではやるべきではないというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
塩川国務大臣 中塚さんのおっしゃっている懸念、ある程度私も実はそれを感じておるんです。
 そこで、ちょっと私が勉強しました範囲で申しますと、この制度、グループ企業が所得と損金とを合算しまして、結局、税の方から見ましたとき税収減となるのは、約八千億円ほどなるんじゃないかという算定をしまして、それをある程度、余り大きいものだからカバーするために付加税二%としまして、それは確かに一般の連結納税していないところだったら増税になるものですから、だから、やはりこれは考えなきゃいけないなという状況はあります。
 こうして見ますと、私は、案外、連結納税の採用をするところが少ないんではないかなと思ったりもするんです。そこはやはり検討する必要もあると思っておりますが、やはりやってみなければわからぬということに、大変無責任なことですけれども、まあこの法案等まとめる段階のときには、税収減が余り大きい、これはショックだったわけです。ですから付加税をということをしたんですが、発足してみて、状況によって柔軟に対応したいと思っております。
中塚委員 まさに、連結納税制度を使うところは少ないかもしれないなというお話でしたが、連結納税制度を使うところが少なくても、課税ベースの広がる方は全体的に広がるわけですね。やはりこれは私は本当に大変なことだと思っていまして、デフレ対応策とは別にまた税制の見直しということもおやりになるようですけれども、いつも大臣は、例えば人件費が高いというふうなことをおっしゃっていて、それは私もそうだと思うんですね。ただ、人件費を下げるというときに、法人だろうが個人だろうがそうなんですが、やはり産業のコストとか生活のコストというのを下げなきゃ、そういう意味ではサプライサイドの改革だって進んでいかないわけですので、ぜひともそれは、税負担というのは下げる方向での改革というものでなきゃいかぬのだろうなというふうに思います。
 あと、課税ベースが広がるという話の中で、例えば退職給与引当金が廃止になるわけですね。私は、退職給与引当金廃止ということは、それこそ産業構造が変わっていく上で、これはこのことだけを考えればいい話なんだろうなという気もするんです。ただ、それを廃止するんであれば、要は今まで退職金として支給していたものを給与に上乗せができるような、そういうふうなことも必要なんだろうなと思うわけですね。
 だから、こういう、企業がどんどんつぶれるような時代になっているわけですから、退職金が当てにならないということで、じゃ、その分給料がふえるとか、または、そうでなければ、例の確定拠出の年金の非課税というのをちょっと広げてやるとか、そういう、退職給与、給与の枠内での見直しということでないと整合性がとれないと思うんですね。何で、退職給与引当金を廃止して、タックスベースを広げた分で連結納税の穴を埋めるんだということになると思うんですが、そこはいかがですか。
塩川国務大臣 そこらの一貫性の問題は、今度の税制改正で十分検討したいと思っておる一つの課題だと思っております。
中塚委員 続いて税制の問題なんですけれども、そういう関連性がないものを数字を合わせるためにやりくりするというのは、私はやはりそれは税の全体の形というのからしてすごい筋の悪い話だと思うんです。
 交際費拡充の話もありますが、こういう経済状況の中で中小企業自体がもう利益が出ていないわけですね。そういう利益が出ていないときに交際費を拡充する。それ以外のところは課税ベースが広がるわけですね。要は、もうかっていない会社に課税ベースは広げる、増税にはなる、けれども、飲み食いしたら税金まけてやるというようなのは、ちょっとこれは税制の理念というか、哲学というものが感じられないなと思うんですけれども、この辺はいかがでしょう。
谷口副大臣 中塚委員の質問でございますが、結論的に申し上げますと、連結納税と基本的に交際費の定額控除限度額の引き上げというのはリンクしておらないというように言えるわけでございます。
 それで、連結納税を入れますと、委員がおっしゃっておったように、減収になるわけでございます。一方で、今回、交際費の限度額の引き上げでございますけれども、資本金が一千万円超かつ五千万円以下の法人につきまして、現行が定額控除限度額が三百万円でございますけれども、これを四百万円に引き上げたわけでございます。このような交際費の緩和と連結納税は、基本的にはリンクしておらない。
 一方で、先ほど財源措置で退職給与引当金のことをおっしゃったわけでございますけれども、これは中小企業にも十分配慮していかなければいけないという観点で、本来四年で取り崩すべきものを、例えば今回は十年で取り崩す、中小企業の場合は。このような配慮であるとか、また、受取配当の益金不算入割合の引き下げについても、中小企業の所要の措置を講じておるということでございます。
中塚委員 谷口副大臣、まあそういうふうにおっしゃるけれども、十四年度税制改正の要綱というのにやはり連結納税制度というのがあって、減収と増収が書いてあるわけですね。だから、リンクはしていないとおっしゃるけれども、やはりそれは連結納税制度を仕組むためにこれを見直したというふうに私は言わざるを得ないと思います。
 三十兆円の国債発行枠がいいか悪いかは別にして、財政の健全化というものはするようにしていかなければいけないわけですが、きょう、堺屋太一さんですか、今内閣顧問かなんかされているんですか、自民党の方で御講演になって、財政収支均衡思想から脱却しろというふうなお話をされたということなんです。私は、三十兆円の枠にこだわるというよりも、やはり税収がふえるような税制改正ということが一番大事なんだろうと思っています。そういう意味では、今回の税制改正は税収中立なわけですけれども、本来ならもっとめり張りをつけないと、将来の税収にもつながらないし、足元の景気も悪くなるんではないかというふうに思うわけですが、塩川財務大臣からコメントをいただいて終わりたいと思います。
塩川国務大臣 十四年度税制は中立だったということはちょっと私は、もう少し経済構造あるいは景気刺激ということになれば、税の面でもう少し考えるべきであったと思うんですが、これはやはり党の根回しとかが不足しておりましたね。それと、経済財政諮問会議でも、これの取り上げ方が私らが思うておるほど熱心じゃなかった、それははっきり言えると思うんです。
 ですから、十五年度のときには構造改革に取り組めるように、ひとつ十五年度はしっかりと改正をやっていきたいと思っております。
中塚委員 もっと審議しましょうか。
 終わります。
中野(清)委員長代理 次に、吉井英勝君。
吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。
 税制で、所得再分配機能というものと、それから財源調達機能という大事な役割を考えておりますが、今日重大な問題は、バブル後のこの十年間に政府が進めてきた、所得税の最高税率引き下げなど累進緩和を中心とした高額所得者減税の方と、もう一つは法人税の税率引き下げなどで大企業減税、つまり税負担のフラット化によって、一つは、公平公正であるべき税制の所得再分配機能が著しく弱まってきたという問題。もう一つは、税収の空洞化が進んで、経済がよくなっても税収増が期待できないという仕組み、つまり財源調達機能を著しく失ってきたということが、今抱えている問題の大事な点の一つだと私は思うんですが、この点、最初に財務大臣のお考えというものを伺っておきたいと思います。
塩川国務大臣 この十五年度で税制改正をひとつ積極的に取り組んでいきたいということの中の一つといたしましては、やはり経済の活性化ということに志向する方向に持っていこうということも一つございますが、同時に、平成九年のときの税制改正、平成九年でしたかな、の改正で、恒久的減税をやりましたね、六兆円でしたか。あの減税が、非常に国の財政に影響してきておるところがあります。ある程度これの修正を図っていきたいということもあります。その一つが、先ほどおっしゃいました税の空洞化ができてきておるところに集約されておりますので、それを改正していくということをやはり今度の税制改正の中で検討してもらいたい重要案件である、私はそう思うております。
吉井委員 平成九年とおっしゃったが、これは十年の、一九九八年のことだと思うんですが、それは、そのときだけの落ち込みで、すぐ回復しているわけですよね。
 それで、やはりこういう所得再分配機能が弱くなったということ、それから税収の空洞化、よく大臣、税収の空洞化と言われますが、こういうふうになってきたのは、これは自然現象ではなくて、一年きりの話はもうもとに戻っていますから、高額所得者減税と大企業減税、つまり税負担のフラット化が今指摘したような重大な事態をもたらすんだということを私たちはその都度指摘してまいりましたが、やはりどのように――フラット化ということによって進めてきたことが、今景気は落ち込んでおりますが、回復しても実はなかなか税収が上がってこない、こういう問題を持っているわけです。
 ですから、やはりフラット化が何をもたらしたか。景気回復しても税収の空洞化は生まれているという、そのことの総括なり反省、検討というものなしに国民への増税を求めていくということになったら、これはもう全然逆立ちした発想になりますから、やはりこの点について、大臣として、税のあり方としての問題ですね、やはり総括なり反省なりというものが必要だと思うんですが、この点、大臣、どうですか。
塩川国務大臣 吉井さんは、フラット化が税収減の大きい原因だと言っておられますけれども、確かにそれは否定しません。否定しませんけれども、しかしそのことは、やはり経済全体から納税者全体を見ましたら、活性化へつながっていく一つの要因であったと思うておりますが、それよりも、やはり課税ベースをもう少し広げて税率を低くするということの考え方も、私は、税制改正の中に取り入れてもいいのではないか。
 そうすると、課税ベースを広げるということは、いわば空洞化をできるだけ圧縮していくということにもつながってくる。それは、吉井さんの考えからいうたら、弱者をいじめることになるじゃないか、そこへ結びついていくだろうと思うんですけれども、私は、必ずしもそうではない。それは、課税ベースを広げ、空洞化を埋めることによって、もしそれが生活苦に結びついてくるというようなことがあるとするならば、それはそれなりで、社会政策上の問題として考えていけばいい、こういうことでございまして、税はある程度、負担するのは公平に負担するという原則に立ち返るとするならば、私は、現在の空洞化というものはやはり是正すべき方向だと考えております。
吉井委員 その点で、大臣は財政演説でも、最近、税負担の空洞化を強調しているわけですが、我が国の所得税課税最低限が高過ぎる、そのために働いている人のうち四分の一が所得税を負担していないのは異常だ、その空洞を穴埋めしなくてはならないという趣旨の発言を、今もそういう趣旨ですが、繰り返しておられるわけです。
 さきの本会議でも取り上げましたけれども、所得税の非課税者というのは、現在二〇%強ですね。八〇年代後半には三〇%弱だったんですね。ですから、逆にこの十年間で次第に納税者数がふえている、この事実を示していると思うんですが、本会議の後、財務省に、八〇年代にさかのぼった就業者数に占める納税者数の数字というのを試算してもらったんです。
 これは財務省からいただいている数字ですから大臣のところにもある数字ですが、給与所得者について見れば、二十年間を五年ごとに切っていったとき、一九八〇年の非納税者率は三四・〇%、八五年が二九・五%、九〇年に二五・一%、九五年が二三・〇%で、二〇〇〇年が二六・〇%、こういうふうに、実は非納税者率というのは下がってきているんですが、まず、これは政府参考人の方に確認しておきたいと思います。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 ただいま先生が言われましたとおり、統計数値をとりますと、まさに八〇年代以降五年置きに、一九八〇年が三四・〇、一九八五年が二九・五、九〇年が二五・二、一九九五年が二三・〇、それから二〇〇〇年が二六、これは全体の就業者に占める所得税の非納税者割合でございます。
吉井委員 ですから、大臣、この非納税者というのは、最近四人に一人になっているということじゃなくて、バブル以前の、八〇年代初めの三分の一から見ると、非納税者率は減ってきて、逆に納税者数はふえているのじゃありませんか。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 確かに、所得税の非納税者割合という形でおとらえになりますとそのようなことが言えるかと思いますが、ただ、他方で、所得税の非納税者割合について申し上げれば、やはり今後の高齢化社会において、公的サービスに必要な費用を国民みんなで支え合うということの重要性を踏まえますと、特に、所得水準が向上してきた今日にありまして、我が国の税制のあるべき姿としてふさわしいか否か、そういう点はよく議論する必要がある、こういうことを申しているわけでございます。
吉井委員 その話は全然違う話なんです。
 絶対数もふえ、率もふえているわけなんですから、納税者数はふえている、こういうことは当局の数字によってもはっきりしているわけなんです。
 所得税の空洞化の原因ですね。これは非納税者が主要な問題ではなくて、この間、景気の低迷で所得が落ち込んで減収になっている、それから、最高税率引き下げなどで累進緩和の高額所得者向け減税が繰り返されてきた結果こういうことになってきて、そして国民所得に対する所得税負担率の低下もそうした結果だ、こういうふうに見るというのが大臣、これは当然のことじゃないですか。大臣、どうですか、これは。
塩川国務大臣 私は、所得水準というのはそんなに落ちておらないと思います。やはり、特別控除あるいは諸控除が相当きつくきいてきておるのが空洞化への一つの大きい原因になっておると思います。
吉井委員 今問題になってきているのは、景気低迷で所得が落ち込んでいるんですよ、現実に。これはもうちゃんと、はっきりしている話なんですから。所得が落ち込んで、そして最高税率の方もどんどんフラット化だといって下げてきたわけですから、その結果として国民所得に対する所得税負担率も低下してくるのは当たり前の話なんですよ。そのことを大臣、やはりきちんと見てもらわぬといかぬですよ。
塩川国務大臣 それと空洞との問題は、ですから、所得の全体が落ちておりますからこれは当然でございます。けれども、個人個人で見ました場合の空洞化の限度額というのはちっとも落ちておらぬ。だから、依然として高い水準にあるということは間違いない。
吉井委員 その話はゆっくりこれからやっていきますから。
 ですから、大事なことは、非納税者が四人に一人になっている、こういう議論でもってそれで空洞化だとか云々というのはもう全然違う話であって、課税最低限以下の人から新たに税金を取るということ、それをやりますと、現在の納税者にも増税をけしかけていくという議論になりますので。
 そこで、私、ここでちょっと聞いておきたいんですが、課税最低限の引き下げをやったというのは、これまで歴史上、どんなときにやっていますか。これをまず伺っておきたいんです。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 最近の例で申しますと、平成十二年度税制改正の際に、財政、税制を通じて少子化対策の重点化を図る観点から、年齢十六歳未満の扶養親族に係る扶養控除の割り増しの特例廃止を行った結果、対象となる世帯の課税最低限が結果として引き下がったという例がございます。
吉井委員 もっと以前の例を挙げてください。そんな小さい話じゃなくて、大きい、課税最低限がぐっと引き下げられたことがあるでしょう。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 先生が申されているのは、多分一九四〇年ごろのお話かと存じます。先ほど、先生から資料の、資料というか御質問がありましたので、緊急に調べましたので明確にお答えできるかどうかわかりませんが、一九四〇年ごろに、いわゆる戦費調達というか、増収確保という観点から、昭和十五年にいわゆる税制の抜本改正をやりまして、その後、昭和十七年にいわゆる課税最低限の引き下げを行っているという例がございます。
    〔中野(清)委員長代理退席、委員長着席〕
吉井委員 ですから、調べてみますと、我が国で過去、所得税の課税最低限が引き下げられたというのは、小さい話じゃなくて大きい例で見ますと、それは戦前の戦費調達のために行われた増税の一環としてやったときだけなんですね。このときは、一九四〇年、所得税の大改正がありましたが、この改正による勤労所得控除の比率の引き下げ、その後の基礎控除の大幅な引き下げにより、所得税の課税範囲の拡大が進んで、一九四〇年以降四年間で所得税の納税者は約四百万人から千二百万人へと一挙に三倍に拡大した、こういう経緯があります。税率の引き上げも急なことで、最高税率は一九四四年には七四%まで引き上げられておりますが、いずれにしても、課税ベースを広げるということでは、一挙に三倍になったのはまさに戦前のことです。
 ですから、この点では、税の空洞化を解消するということで、それでみんなに負担ということになってきますと、これはまさに戦前の例に倣うことになるということを言っておかなきゃいけないと思うんです。
 歴代の主税局長などが対談しております「昭和税制の回顧と展望」によりますと、四〇年代の前半、第二次世界大戦に突入して最初の増税は四一年の間接税中心の増税、四二年は直接税中心、四三年は間接税、四四年はまた直接税というふうに、一年置きの直間増税が繰り返された。もちろん、増税といっても、戦時財政は主に公債依存ということになりますが。しかも、日銀引き受けの赤字国債発行で一般会計と臨時軍事費合わせて約七〇%を国債、税は大体三〇%のシェアであったということになりますが。
 今検討されようとしている課税最低限の引き下げというのは、この戦費調達という非常事態に行われた以外にこれはほとんど例がないということをきちっと見ておかなきゃいけないと思うんですが、あれ、大臣、いなくなっちゃったな。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 先生が言われますとおり、いわゆる所得税というものの歴史は、ある意味ではそれほど古くありませんが、昭和十五年において総合所得税と分類所得税という二種類の形になりまして、それを昭和十七年に、言われたように、課税ベースを広げるということをやったということです。
 ただ、その後は、いわば物価が上がってまいりますものですから、今日のような状態かどうかは別として、かなりの物価上昇を軽減するという形での減税を行ってきたということだろうと思います。ただ、その後も、物価が大して変わらないにもかかわらずかなり減税を繰り返してきたことも、また事実だろうと存じます。
吉井委員 物価が上がったというのは、それは戦後のインフレの話ですから。
 それで、日本の課税最低限が国際的に見て高過ぎるという話をよくされますが、本当に日本の課税最低限は高過ぎるのかということが問題になってまいります。そこで、資料を配付していただきたいと思うんです。
 財務省は、課税最低限の国際比較に為替レートを使って計算しておりますが、ホームページでは、一ドル百十九円、一ポンド百七十三円、一マルク五十五円、一フラン十六円。これで計算すると、日本の課税最低限は確かに、この表、財務省試算では諸外国に比べて高いということになりますね。政府は、これをもって、主要国中最も高い水準だ、国際的に見て高過ぎる、こういうことを言っているんじゃありませんか。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 やはり、国際比較に用いる換算レートというのは、先生が言われますような購買力平価をとりますと、対象品目のとり方とかあるいは品目間のウエートのつけ方とかそれぞれまちまちであるわけでございます。事実、先生がおつけになられたこの二枚目にもあるように、いろいろと計算によっても変わってくるということだと思います。
 やはり、そういう意味では、市場の取引によって一義的に決まる、現実に用いられる為替レートということが一番参考になるのかなというふうに思っているところでございます。
吉井委員 そんなことを言い出したら、為替も一ドル八十円のときもありましたし。今日の為替レートでは全然違うわけですから、最初からきちんとした主要国の中での比較ということ自体ができなくなるじゃありませんか。
 やはり購買力平価で計算するということが比較の上で大事なことで、OECDが毎年発表している購買力平価によれば、私の一枚目の資料にも、二枚目の方は主税局につくっていただいた表ですが、これで見たって、夫婦子二人の場合、お話にあったように、購買力平価にも、OECDの取り方もあれば、経企庁生計費調査もあれば、国連職員生計費調査など、さまざまあるにしても、これは基本的にはOECDを中心にした、OECDでの購買力平価で見ますから、これで見れば、日本というのはアメリカよりまだ少し課税最低限は低くて、ドイツ、フランスよりははるかに低く、イギリスよりは多い、これが現状ではないんですか。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 確かに、購買力平価でとりますとそういう数字になるかと思います。
 ただ、他方で、租税負担の国民所得に対する比率である租税負担率は為替レートの影響を一切受けませんけれども、これを比較しますと我が国の水準はまさに非常に低いということでもありまして、その意味では、やはり購買力平価をもって直ちにそうであるということは言い切れないのではないかと思うわけでございます。
 もちろん我が国の租税負担、特にこの所得税負担の低いのは、課税最低限のみならず、全般的に低いということは言えるかと存じます。
吉井委員 購買力平価の問題についてはもう少し進めていきたいと思いますが、その前に、この表で見ればイギリスだけ課税最低限が低く出ていますね。これは、低所得者に対して、就労世帯税額控除など、社会保障制度というべき手厚いかわりの手当制度があって、低所得者への税負担は事実上かなり免除されているというのがイギリスの問題として言わなければならないんじゃないかと思うんですね。
 だから、結局、国民の生活実態に見合った購買力平価による国際比較では、日本はむしろ非常に低位の課税最低限の水準になってくると。これは本当の国際比較の結果ではないかと思うんですが、どうですか。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 ただいま先生のお話のあったのは、ワーキング・ファミリーズ・タックス・クレジットという制度だろうと存じますが、一九九九年の十月に、歳出措置の家族給付というのを廃止する一方で、この制度を導入したと聞いております。ただ、これはいずれにしても非常に低い低所得世帯に限って適用される税額控除ですけれども、実は控除し切れない分は給付として支給するという意味では、歳出の一環として措置されているというようなものかと存じます。
 その意味では、まさに税のみならず、歳出歳入あわせたところで、それならば比較をするということになるのかと存じます。
吉井委員 ですから、簡単に課税最低限が日本は高いなどと言える話じゃないんです。
 では、私は、少しおもしろい例を見ておきたいと思うんですが、現在の財務事務次官の武藤さんが、これは昨年一月号の雑誌「時評」の対談の中で言っておられますが、自分たちの賃金水準が国際的に高いかどうかは、購買力平価で見ないと、単純に為替レートでは比較できないと言っておられますね。高級公務員の賃金水準は国際的に比べて高いのではとの質問に対して、購買力平価の関係があり、単純に為替レートでは比較できません、いずれにしろ国家公務員の給与は人事院勧告に従って決められているんだというお答えですが、この高級公務員の方も財務省の幹部の方も、やはり購買力平価で国際比較というのは考えていかないとおかしいんだと言っておられます。
 竹中大臣にきょうは出席を求めておりませんが、竹中さんも、「竹中教授のみんなの経済学」の中で、為替レートは、長期的には購買力平価、中期的には経常収支、短期的には金利差で決まると解説して、購買力平価について、実際に今の円・ドルレートは日本の購買力に比べてどうかというと、私としては今の一ドル百十円程度、このときはまだ今より円高の時代ですが、百十円程度という円の評価は高いと思っています、アメリカに住んで生活していると一ドル二百円ぐらいの感覚です、少なくとも一ドル百五十円から百六十円程度という数字は、統計上の計算からしても出てきますと。
 竹中大臣も、購買力平価で考えるという発想、これでないと本当は国際的には意味をなさないという趣旨のことを「みんなの経済学」でも言っておられるのですが、武藤事務次官も同様のことを言っておられるわけです。やはり財務省の皆さんも、実際に税というのは暮らしと結びついた問題ですから、もし比較するとすると、購買力平価で考えていくということをやらないと、これは実態に合わないということを考えているんじゃないですか。
 財務大臣、何か病気かなんかですか。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 いわゆる実際の為替レートがどのような価格で形成されるかというのは、もちろんいろいろあって、多分、その為替レートより、もっと今の水準が購買力平価を勘案して見ないとおかしいのではないか、そういうような御議論は十分あるのだと思います。しかし、やはり課税最低限の国際比較を行う際などの為替レートというのは、もちろん日々の為替レートではありませんで、過去の例えば通貨の六カ月間の実勢相場の平均とか、そういうもので調べるのが一番比較としてはよいのではないかということで議論しているところでございます。
吉井委員 大蔵省内で研究会をつくっておられますね。学者の皆さんの討論の中で、ちょうど二年前になりますが、二〇〇〇年の三月七日の、大蔵省の二十一世紀初頭の財政政策のあり方に関する研究会、第六回会合議事録の中で書いてありますが、森信茂樹阪大教授、現在財務省財務総合政策研究所次長さんですね、この方が、我が国の所得税について、給与収入ごとの所得税の負担割合を示す実効税率カーブを示して、日本の負担割合が低いということ、とりわけ三千万円以下の所得層で低いなどと報告したことに対して、為替レートに基づいたその実効税率カーブに関する参加メンバーとの討論が紹介されております。
 メンバーからは、購買力平価で比較しないと税負担感の国際比較は難しいのではないか、つまり、日本の税率のカーブは実は諸外国と比べるともう少し左方向に平行移動する可能性があるのではないか、為替レートで比較すれば一千万円は一千万円なんですが、恐らくアメリカとかヨーロッパ諸国の中で、日本の一千万円以上に消費財の量に換算した場合にはもっと価値を持つわけだから、その辺を少し考えていかなければならないのか、こういう質問があって、報告者の森信氏は、おっしゃることはよくわかるし、確かにそういう観点も必要だと。
 だから、研究会でも、購買力平価で税負担を考えないとおかしいという議論が展開されていたと思うのですが、そういうことなんじゃないですか。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 ただいまの森信次長の発言も、多分そういう点も考慮してということであるので、あくまでも中心は市場の為替レート、しかも数カ月の平均というのがあるのだと思います。
 ただいま先生がお配りになられた二枚目の資料で、私どもが出させていただいた資料もここにつけてございますが、時点の違いはあるにせよ、例えばOECDのアメリカの一ドルは百五十二円、経企庁では百三十七円、あるいは国連では百三十一円と、購買力一つとりましても、機関によって非常に違ってくる、こういうあたりもやはり考えなければならない、こういうことだろうと存じます。
吉井委員 もともと、為替レートというのは、日本と海外の通貨の交換比率なんですね。ですから、日本と海外との輸出入の取引に伴う通貨の需給によって変動するものなんですよ。中長期的には、内外の輸出入等に係る貿易財の価格の比率になるものでありますし、また、為替レートというのは、貿易財の輸出入だけで変動するわけではなく、物の移動を伴わない金融取引、資本取引によっても変動する。
 ですから、これで比較したところで、実際の国民の暮らしの中の問題、暮らしが成り立つのかどうかという問題、そういう問題と結びつけた税負担というものを考えなかったら全く意味をなさない。だから、為替レートだけでもって国際的に日本は課税最低限が高いんだなんというような議論は、全く成り立つものじゃないということを言っておきたいと思うんです。
 アメリカでは、稼得所得税額控除、EITCという制度ですね、貧困対策の一つとして七五年に開始された所得補助制度がありますね。一定額以下の稼得所得の納税者に対して税金の還付を行う。低所得者層の税負担を軽減ないしなくすことによって、所得補助を受けている世帯課税最低限を実質的に引き上げるということを意図して行われているものだというふうに言われておりますが、どういう制度なのか、課税最低限とのかかわりを中心に、簡潔にお願いしたいと思います。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 ただいま御質問のございましたものは、アーンド・インカム・タックス・クレジットという制度かと存じますが、これ自体は、例えば利子、配当、キャピタルゲインといったものの収入が二千五百五十ドル、約三十万円ぐらいでございましょうか、超えないといった要件を満たす低所得世帯に限って適用される税額控除ということでございまして、これもまた先ほどのイギリスの仕組みとよく似ておるのですが、控除し切れない金額は給付として支給される。しかも、連邦財政会計上は、この金額は一般財源からの歳出としても計上されるという意味では歳出の性格を持つ。その意味では、先ほどお答えさせていただいたと同様、そうなると、やはりこれは歳出歳入両面で比較をするものではないのかなというふうに思っているところでございます。
吉井委員 ですから、はっきりしていることは、人が人として生きていく暮らしというところをきっちり踏まえて考えていかないと、これは比較する上で全然意味をなさない。
 英国にも類似の就労世帯税額控除という制度がありますが、アメリカの稼得所得税額控除制度などを参考に設計された制度で、九五年に導入されたこの制度は、扶養する子供がおり、週最低十六時間雇用されている家族が対象であったのが、九九年十月からは、WFTCというこの制度に拡充して、週十ポンドの収入がある家族には最低週百八十ポンドを保障し、週二百二十ポンドまでを無税にすると。これは二〇〇〇年度からは増額されているわけですが、やはりイギリスなどでもそういう制度というものをきちんと考えていっているというのは、事実の問題としてあるんじゃないですか。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 先ほどもお答えさせていただいたとおり、この制度はもちろんございますし、この制度は、やはり歳出の一環という色彩で設けられている制度かと存ずるところでございます。
吉井委員 歳出面の配慮ということとあわせて、これは、要するに、暮らしにかかわるものには税をかけない、その基本的な思想の上に成り立っているものですよ。それはあなたもお認めになっていらっしゃることですから。
 最近、日本総研の蜂屋さんという研究員の方の論文で、「課税最低限の水準に関する一考察」というのが出ておりますが、アメリカのこのEITC制度や英国のWFTC制度が紹介されていて、この論文では、課税最低限の国際比較をする際に、これらを加味する必要性と試算というのを試みております。
 これは、大武さんも専門家だから、もうよくお読みになって理解しておられるところだと思いますが、欧米諸国には、日本とは比較にならない、住宅、教育費に広い控除制度があるわけですね。また、我が扶養控除制度のかわりに手厚い児童手当制度がある。こうしたことを総合的に勘案して初めて正確な比較ができるんだということを指摘しておられますが、あなたも先ほど、それにつながる意味でのお答えをしてはるわけだけれども、やはりそのことを勘案して初めて正確な比較というものが成り立つということ、この点はお認めになると思うのだけれども、そういうことでいいのですね。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 まさに、税を仕組む上では歳出歳入両方を考えてということだろうと存じます。その意味で、今お話しになりましたイギリスの制度などといいますのは、実は、夫婦の貯蓄の合計が三千ポンドというような、非常に資産も少ない方に対する給付だというふうに思っております。
吉井委員 ですから、いずれにしても、税の面と給付の面と両方含めて考えていかないと、簡単に、日本が課税最低限が高いとかなんとかいう議論は成り立たないということを今認められたわけですが、よく使われる、夫婦子供二人の標準世帯で給与収入三百八十四万二千円というものですが、これは一時金三カ月として見ますと、月収約二十五万六千円のサラリーマンということになってきますね。配偶者は無職、子供二人のうち一人は十六歳以上二十三歳未満の子供、ですから大学生か高校生という想定になりますが、しかし、この給与収入、これを月収に直して二十五万六千円以外収入がないような四人家族というのは現実にはどれほどいるか。これでは生活できないわけですね。
 だから、日本の標準家族として課税最低限が高過ぎるというのはそもそも現実的ではないということ、大臣、そこはやはり考えていかなきゃいけないんじゃないでしょうか。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 いわゆる税制調査会の一昨年の七月に出されました中期答申におきましても、やはり、国民所得の水準が高度成長期から安定成長期を経て上昇するとともに、国民の保有資産も相当程度増加してきている、こういうような経済社会の構造変化などにかんがみると、課税最低限については、生計費の観点からのみではなくて、個人所得課税を通じて公的サービスを賄うための費用を国民が広く分かち合う必要性などを踏まえて総合的に検討していく必要がある、こういうような御答申もいただいておりまして、総合的に議論をしていくという視点でございます。
吉井委員 今のお話には、生計費には課税しないという考え方を否定しているものじゃありませんね。
大武政府参考人 お答えさせていただきます。
 前段を読むのを省略させていただいたんですが、かつて我が国の国民の生活水準が国際的に低かった時期には、生計費からの観点が重視される傾向にあった、しかし今日、所得が上がってきたのでは、全く無視ということではありませんけれども、しかしその観点だけではない、広く国民が分かち合うという視点が重要だという視点かと存じます。
吉井委員 だから、都合の悪いところを省略したらいかぬのですよね。
 生計費に課税しないという考え方というのは、その中でも否定することはできないわけですよ。ですから、日本の標準家族として挙げておられるのも、そもそも現実的な数字じゃないわけです。
 独身者の場合に至っては、課税最低限は百十四万四千円ですが、これを一時金三カ月分として見た場合、月収約七万六千円、これで独身者は生きていけるのか。大体、いけないわけです。
 ですから、そういう生活が成り立たない人にまで生計費非課税という考え方を崩して課税をしていこうという考え方は、そもそもそれは、憲法二十五条を基準にして、この課税最低限では二十五条で言う生活ができないということ、独身者の場合あるいは標準世帯で挙げておられるこの金額では現実には生活できないわけですから、だから、この金額をもって日本の課税最低限は高いと言って、新たに所得税をそういう収入でも払いなさい、こういうことになってくると、これは大臣、国際的に見てやはり恥ずかしい話じゃないですか。
大武政府参考人 現在の、先ほど来先生もお話しになられましたように、税は税だけで議論するわけじゃないので、本当に困窮者に対しては生活保護あるいは歳出面における各種措置があるわけでございまして、やはりそれは全体で御議論いただかなければならない、こういうことかと思います。
 先ほどの単身者の場合でも、本当にお体が悪ければそれなりの手当てが出されるということでありまして、その意味では、税の面でも、障害者控除等も別にあるということかと存じます。
吉井委員 ですから、生活保護の計算でいったものでいくとどうなるか。
 これは日本総研の蜂屋さんが書いておられますが、人的控除と最低生活費を比較すると、すべてのケースで人的控除が最低生活費を下回る。人的控除の趣旨が、納税者本人や世帯状況に起因する納税者の担税力に対する配慮である点を踏まえると、最低生活費と比較する場合には、課税最低限を人的控除のみで再定義するのが合理的だと。
 また、別な、谷山税制研究所の所長さんは、本来、給与所得に必要経費の控除がないための代償措置としての制度が給与所得控除だから、本人の人的控除と同等に扱うのは不合理であるという指摘もしておられますが、これらの給与所得控除とかあるいは社会保険料控除というもの、この両控除は、そもそも課税最低限に入れて考えること自体がおかしいのですよね。
 ですから、生活保護の水準から見ると、実はそういうものを別にすると、本当に課税最低限の方が実は生活保護水準よりも低いということになってくる。そうすると、生活保護水準で計算するよりも低いのに税をかけるのかという問題が出てくるわけですね。
 ですから、小泉総理は、だれもが負担し、努力が報われる税制などと言って、マル優廃止と課税最低限引き下げや消費税増税の主張など、庶民増税を進めるという考え方を今進めておりますが、その一方で、ごく一部の高額所得者や大企業に減税する。こういうようになってくると、ますます税収の空洞化を招いてまいりますし、この点では、やはり直接税中心、総合累進、生計費非課税の原則に立った税制の再建というものをやっていかないと、これは冒頭に申しました所得再分配機能が著しく損なわれ、景気がよくなっても財源が入ってこないという税の空洞化問題、財源調達機能を著しく失ったというこの形を残したままになって、それをとにかく課税ベースを広げるんだということで国際的に比較すること自体が、実は課税最低限という問題については簡単に国際比較というのは成り立つ問題じゃないのに、それを国際的に比較して、そして日本の課税最低限は高いんだ、こういう議論でもって所得の低い層からもどんどん課税を進めようというこの考え方というものは、私は根本的に改めていかなきゃならないというふうに思うわけです。
 この点で、ドイツでは、九二年に連邦憲法裁判所の判決があって、生活保護基準を下回る控除は無効である、しかも、その控除には他の控除をつけ加えてはいけないとしているわけですね。この点では、日本のさまざまな控除をくっつけている問題については、改めて計算しなきゃいけないわけです。
 最後に大臣、いずれにしても、課税最低限については、制度の違う国との正確な国際比較というのは不可能に近いのです。ですから、課税最低限がどうあるべきか、その国の実情とか国民の要求、暮らしぶりに基づいてきっちり見た上での議論が必要で、日本の課税最低限が高いとか、あるいは負担している人が少ないからということで庶民増税の道に走るのは私は誤っているんだ、その道を選んじゃならないということを申し上げておきたいと思いますが、何か大臣、一言ありますか。
谷口副大臣 今、吉井委員がおっしゃった、各国の控除制度、また購買力平価の問題等々あったわけでございますが、実態的に国民所得に占める所得課税の負担割合を見てまいりますと、アメリカが一一・七%、イギリスが一三・九%、ドイツが一〇・二%、フランスが一一・二%に対しまして、我が国が四・三%というような現状にあるわけでございます。
 そこで、今おっしゃったような課税最低限の問題につきましては、公的サービスを賄うための負担は国民が皆で広く公平に分かち合うことが基本であるという観点から、その水準をどう考えるのか。また、課税最低限は各種の基本的な控除の積み重ねであり、その構成要素である諸控除について、経済社会の現状に照らしてそのあり方を見直す必要はないのか。複雑化している現状をどのように考えるのか。このような観点から、今、一月から政府税調で議論をしていただいておるところでございますが、予断なく、幅広い観点から税のあるべき姿を検討する必要があると考えておるところでございます。
坂本委員長 吉井委員、もう時間が来ましたので、御協力ください。
吉井委員 もう時間が参りましたので終わりますが、生計費非課税というこの原則を崩すということは間違いですし、それから、国際比較というのは単純にできないのだというのがさまざまな研究者の視点でもあり、それからまた、財務省の研究所の中でもそういう検討はされておりますから、そこを抜きにして今の数字を挙げたって意味がない、このことだけ申し上げて、時間が参りましたので質問を終わります。
坂本委員長 次に、植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。
 私がお伺いしたかったところ、詳細に今吉井先生がお伺いされましたので、そこは省きたいと思いますけれども、まず、税制にかかわって、簡単なことですけれども確認だけさせていただきたいと思います。
 まず、塩川財務大臣、簡単なことですから端的にお答えいただければいいのですけれども、財政演説等々お伺いしておりましたら、おっしゃるように「経済活動に中立でゆがみのない、簡素でわかりやすい税制の構築」ということであれば、政策減税みたいなやり方は余り取り上げたくはないのかなというふうに財務大臣はお考えなんですね。
塩川国務大臣 そのとおりです。
植田委員 ちなみに、いろいろな意見が経済界等からも、例えば投資優遇税制であるとか経済活性化に資する税制の検討を求める、そういう考え方がいろいろとあるわけですけれども、その点、財務大臣としては経済活性化と税制ということについてどうお考えかということを伺いたいわけですが、少なくとも経済活性化のために積極的に税制を活用するというお考えがあるのかないのかという点、お伺いしたいと思います。
塩川国務大臣 申すまでもなく、先生方は十分心得ていただいておると思うんですが、税にはいろいろな機能がついております。その中で、一つは公平、平等に所得の再配分をするんだということもあるだろうし、経済への一つの政策的インセンティブとして活用するということもあるだろうと思います。
 私は、十五年度の税制改正は、そういう経済構造の改革に結びつくものであり、かつ経済の活性化に役立っていく有効な改正をやはり、最優先とは言いませんけれども、今までは余りこれを有益に考えてこなかったということがございますので、そうではなくして今回は、十五年度の改正には、こういう経済活性化への、この面についてある程度の重点を置いた改正をしていくべきだと思っております。
 しかし、税の最大原則でありますところの公平、平等な課税が行われるということ、この原則から外れてしまって、大きく、経済構造改革のための税制、そういうインセンティブの税制になってしまってはいかぬ、これはもう当然であります。
植田委員 お話は非常によくわかるんです。その意味で、そういう問題意識等々もあります。税の空洞化と呼ばれることをおっしゃっておられるんだろうとも思うわけですけれども、繰り返しになりますけれども、その税の空洞化というべき状況について議論することが必要というときに、真っ先に課税最低限の問題が出てくるということは私も大いに疑問であるということだけ、重複するのもあれですので、申し上げておきます。
 そこで、もう一点だけ。これは税務行政にかかわって、私はこれは毎度確認をさせていただいておる件でございますが、人の件でございます。
 というのは、要するに、人が余っておるのに人をふやせという話を私はしているわけじゃないんですよ。事実としてやはり人が足らぬから、ふやさないかぬのちゃうんか、充実せないかぬのちゃうんかということを申し上げているわけです。
 例えば、二〇〇〇年の七月から二〇〇一年の六月までの一年間で、全国で行われた相続税の税務調査が計で一万一千八百四十六件、前の事務年度より二千四百二十七件減少しているということがあります。これはやはり税務職員の減少が要因というべきものだと当然推察できるわけですし、また、情報公開法でいろいろな開示請求があるわけですけれども、これが他省庁とはもう比較にならへん状況にあるわけです。二〇〇一年四月から、去年の四月から九月までの間で、わずか半年で九千七十五件。これはかなり突出した多さだろうと思いますが、こういう意味で、事務量がかなり増大しているということでございます。
 また一方、国際化また高度情報化等々で職務の複雑性、困難性というものも増大しているという中で、本当に今の状況では、税務の職場における改善というのは当然十分だとは言えません。
 そういう中で、きめ細かな税務の執行、また本当の意味でそれこそ公正なまた適正な課税の実現という観点からしても、やはりまず事務量に見合った適正な定員の確保というもの、また高度化、情報化に対応した専門性の確保、この点については私は急務だと考えておりますが、これはいつもいつも、毎年これをやるときは年中行事のように全会一致で附帯決議もつくわけですけれども、余りそれが生きておらぬなという気もいたしますので、積極的なまた御決意をお伺いしたいと思います。
谷口副大臣 植田委員、ありがとうございます。
 御存じのとおり、歳入の大宗が税収でございます。税はいわば国家の柱というようなものなんだろうと思います。そういう状況の中で、こういう景気状況でございますから、国税職員が現場で大変な状況にあるということはよく理解いたしておるところでございます。
 そこで、この人員の確保の問題等々おっしゃっていただいたわけでございますが、税務行政を取り巻く環境は、一つは申告件数の増大、また滞納の急増、経済取引の高度情報化、国際化、広域化、不正手口の巧妙化等により、質量ともに厳しさが増大いたしておるところでございます。
 これに対して国税庁はこれまで、コンピューターの活用による事務の高度化、効率化、また有効な資料情報に基づく効率的、効果的な調査の実施等に努めるとともに、職員の専門的能力の維持向上を図るため、職員研修の充実にも配意をいたしたところでございます。また、税務の困難性及び歳入官庁としての特殊性にかんがみ、所要の定員確保に取り組んできたところでございます。
 今後とも、税務行政をめぐる環境は厳しさを増すことが考えられるということから、現下の厳しい行財政事情を踏まえつつ、所要の定員の確保について関係各方面の理解が得られるよう一層の努力をいたしたいというように考えております。
植田委員 もう既に、例えば東京国税局には、そうした脱税の国際化やまたコンピューター化に対応するために、査察国際課また査察開発課というものもできているようでございますけれども、毎年この種の脱税自体が高度化、複雑化している中で、そうした急速な変化に対応していくためにも、やはり機構の充実というのは当然だと思います。
 そこで、もう一度繰り返しになる部分もありますけれども、例えば国税、国際税務専門官であるとか情報技術専門官、また審理専門官等の確保、また、やはりその点の、全体の事務量にも見合った定員の確保は言うまでもありませんけれども、そうした特にこの間の情勢に対応したところに厚みを持たせた機構の充実なり人員の確保というものが当然必要だと思いますけれども、その点もつけ加えてお伺いしておきますので、ちょっとお願いします。
谷口副大臣 今おっしゃったことも含めまして、十分に検討させていただきたいというように思います。
植田委員 国税のことをお伺いしますと、税関、関税行政についても同様のことで言及せざるを得ないわけですけれども、ここも実際、二〇〇二年度の予算案では、八十四名の削減に対して、税関職員百八十一名の増員ということになっているわけですが、それはそれとして評価するといたしましても、内訳を見ますと、成田空港要員としての百二十一名、羽田空港要員が二十二名、地方空港要員が十二名、その他二十六名ということになっているわけです。確かに評価はできなくもないけれども、現場の実態を見たときに、これだけで適正な配置が行われていると言うにはやや寂しいものがあるのではないかと思います。
 例えば、冷凍タコの輸入のときに四億円の関税を脱税したような事件が発覚したわけですけれども、税関にはこうした事後調査の業務もあるというふうに伺っておりますので、まずそうしたセクションへの適正配置、増員も必要ではないかと思います。
 また、最近の密輸入等々の動向では、地方またあるいは洋上での取引というのもありますから、地方官署への人員配置というものも当然確保すべきでしょうし、ここでも税関業務の内容の複雑性、専門性が問われるという意味で、やはり処遇の向上を含めて必至の課題であろうと思うわけですけれども、これについても、御所見また御決意をお述べいただければと思います。
谷口副大臣 税関職員に対しましてもいろいろ心配りをしていただいて、ありがとうございます。
 大変な業務の中、万全の体制をしいてやっていただいておるところでございますが、税関の業務量がこの十年間で、空港入国者数に当たっては約一・六倍、輸入申告件数に当たっては約二・四倍と増大をいたしております。かつ、税関業務が複雑、困難化をする中で、税関においては、覚せい剤、麻薬、銃砲等社会悪物品及び他法令規制物品の水際取り締まりの一層の強化に努めておるところでございます。
 このような状況の中、コンテナ貨物大型エックス線検査装置を導入するなど、事務の機械化、重点化による業務運営の効率化に努めるとともに、厳しい行財政事情のもと、必要な定員の確保に努力をしてまいったところでございます。
 今後とも、厳しい行財政事情のもとではありますが、税関職員の確保に努力をしてまいりたいというように考えております。
植田委員 これも通年、附帯決議がついておって、そのことは十分御認識されていると思いますけれども、必要なところに適正な配置を国税にしても税関にしてもするということについては、やはり言うべきところはしっかりと物を言っていただきたいというふうに私は思っておるところでございます。別に私がわざわざ質問しなくても、積極的にやはり問題提起を言っていただければいいのではないかなと思っております。
 この件はこれで終わりまして、次、国債価格の下落と長期金利の上昇にかかわって何点かお伺いしたいわけですが、最近の価格の低迷についての御認識、またその原因が那辺にあるというふうにお考えか、お伺いしたいと思います。
寺澤政府参考人 お答えいたします。
 国債の価格につきましては、国債の需給のみならず、景気や為替の動向、財政金融政策など、複合的な要因によって変動するものでございまして、その原因を分析することは非常に困難でございますが、御指摘の、一月から二月にかけましての国債価格の低下傾向、金利の上昇傾向につきましては、市場におきましては、円安に伴う海外投資家による日本国債の売却等が背景となっていると言われております。
 なお、三月に入りまして、株価の上昇等を背景といたしまして、国債の価格は安定的に、一・五%を下回る水準で推移しているということでございます。
植田委員 いずれにしても、国債というのは国の借金ですから、それが下がるというのは日本に対する信認が、信用が失われつつあるということは言うまでもないことですが、背景に、財政破綻の懸念であるとかデフレ化の進展に伴う信用リスクの増大、これがあることは当然言うまでもないことだろうと思います。そこで実際に日本の内外の投資家が愛想を尽かしている、資産を徐々に円から逃避させているというのが今の実態であろうかと思います。
 現状では確かに、では国債暴落がこの半年、一年の間に起きる、そういう可能性はさほどないだろうと思います。というのは、外国人の投資家は為替リスクに敏感に反応するわけですから、円ベースで常に購買力を見ている国内の投資家が資金を本格的にシフトしていくというのは一定タイムラグがあるだろうと思うわけですが、ただ、やはり既にアーリーウオーニングを発したという状況はあるわけです。また、中期的に考えるとワーストシナリオの可能性も否定できないわけですから、そうした状況を踏まえて、これを、特に国内投資家の資金シフトと国債暴落を回避していくというところの具体的な具体策、どんな対応策を講じようとお考えかという点、まず、お考えがあればお伺いしたいと思います。
寺澤政府参考人 お答えいたします。
 御指摘のとおり、市場関係者の意見も、現時点で見ますと、我が国が世界最大の債権国であること、また我が国の高い貯蓄率やデフレ的な物価の傾向等を踏まえますと、現時点で御指摘のような国債金利の急上昇というのは現実的ではないだろうと。ただ、中長期的に見まして、国内投資家の海外への大幅な資金シフトや国債金利の急上昇というのは回避するように、私どもも注意をしていかなければならないと考えております。
 そのためには、一つは、財政構造改革に積極的に取り組むことによりまして、財政の規律を確保する、国債の信認を維持するということがあると思います。
 また、二番目には、国債の発行に当たりましては、市場のニーズを踏まえまして年限構成を策定するということ、また市場実勢を反映した発行条件を設定する。また、個人向けの国債の導入等を通じまして保有者層の多様化を図る。また、市場との密接な対話を行うということが必要だと思います。
 さらに三番目には、二〇〇八年の大量償還などを踏まえますと、買い入れ消却の実施によりまして国債発行を平準化するといったような債務管理の適正化を図ることが必要であると考えておりまして、国債市場の安定と国債の確実かつ円滑な消化に、こういった施策を着実に実施することにより万全を期してまいりたいと考えております。
植田委員 後で二〇〇八年の件、お伺いしようと思っていたのですが、今一応おっしゃっていただいたわけですが、そこの点、御承知のように、小渕内閣のときの国債大量発行の現金償還をしなければいかぬのが二〇〇八年だということですけれども、それについては既に、その時期を前提としての債務処理の確定の作業をもうなさっているということでよろしいわけですね。
寺澤政府参考人 平成二十年の大量の、十年の国債の償還を控えて、平成十四年から、買い入れ消却を行いたいと思いますが、実は買い入れ消却につきましては、国債買い入れ消却の法律及び国債の整理特別会計、整理基金の特会法に基づきまして、買い入れ消却がしにくい状況にございますので、今回、国会に提出いたします振替決済法の中で、より弾力的な買い入れ消却ができるようにしていただきたいというふうに考えておるところでございます。
植田委員 二〇〇八年度には、償還期を迎えた国債を借りかえる分だけでも百二十七兆あるわけでございますけれども、今後も国債発行は全くしないということにはなりませんから、やはりふえるわけです。その意味で、日本の国債の保有構造は、やはり今現在いびつだろうと思うわけですが、十分な国債の消化を行うための新たな需要の掘り起こし、この点について何か具体的なお考えはお持ちでしょうか。
寺澤政府参考人 お答えいたします。
 国債に対する新たな需要を生むための政策といたしましては、まず、国債保有層の多様化を図ることが必要であると考えております。我が国の国債の保有構成を見ますと、金融機関等の割合が高い一方で、個人及び非居住者等の割合が低くなっております。こうした個人や非居住者の割合を高めるということが不可欠であるというふうに認識しております。
 個人の保有を促進することにつきましては、これまでも積極的に広報等を行ってきたわけでございますが、さらに、十五年一月を目途に、個人向け国債を導入することを予定しているところでございます。
 また、非居住者の国債保有の促進につきましては、平成十一年度から非居住者等の保有する国債の利子に係る非課税措置が講じられているところでございますが、十四年度の税制改正におきましても、海外の証券投資信託が保有いたします国債の利子も非課税措置の対象に加えることとして、そのための租税特別措置法の改正について現在御審議をお願いしているところでございます。
 さらに、国債の発行市場、流通市場の整備に努めまして、国債の流動性を高めることが必要だと考えておりまして、流動性を高めることにより、投資家にとって国債がより魅力的な商品であるというふうになるように努めてまいりたいと考えているところでございます。
植田委員 ありがとうございます。
 今のところ、淡々とお伺いしているわけですが、お休みのところ申しわけございませんが、一点だけ塩川財務大臣に、これともかかわりながら、お伺いをしておきたい。お疲れのところ申しわけございませんけれども、もうわずかですので。
 それで、私自身、この国債の発行枠、何かどこかの新聞では、うちは三十兆枠を堅持せぬのは公約違反やないかと言っているというような記事が出ておったようですけれども、我々としては、三十兆円枠に拘泥することないじゃないか、この期に及べば、そう考えているわけです。だから、数字自体は政策として意味ないわけですが、別にそれが三十二でも三十五でも、中身さえ適切なものであればいいじゃないかと考えております。
 実際、与党の動きなんかも、それぞれの偉い方のお話をお伺いしていましても、例えば現の麻生政調会長も、財政、金融の両面を出動せぬ限りデフレは脱却できへんとおっしゃっておられますし、さきの政調会長亀井静香さんも、政府のデフレ対策については、認識が甘い、これでは底は抜けかかっていると。特に亀井前政調会長は、財政出動やりなさい、政策転換をしろということをおっしゃっておられます。
 少なくとも、政策の具体的な中身を皆さんおっしゃっておられませんから、それ一つ一つについては言及するつもりはありませんが、事実認識として、今の不況が決定的需要不足にあるのだ、そこからどういう政策を導出するのかというところまでは、議論の土俵は同じだと私は思うわけです。
 要は、これ以上の無秩序な国債発行に歯どめをかけていくことが本来大切なのであって、その意思が市場に伝われば、少なくとも国債の格下げリスクを軽減できるのじゃないかと私は思います。もちろん、従来のような野方図なばらまきを絶対やめるのだという意思をきっちりと示して、隠れ借金を使わぬでもある程度必要な国債の発行の追加というのは可能だろう。総力戦でデフレと戦うに当たって、少なくとも、やはり必要に応じた適切な財政出動を的を絞ってやるということが肝要かと思っておるわけですけれども、その点どうでしょうか。与党の他の方々の御意見の感想も含めながら御答弁をいただければ幸甚です。どうぞ、お願いします。
塩川国務大臣 景気をよくするということと、それから財政支出を出せということは、これは理屈としてはわかるのでございますが、一方、景気刺激に無尽蔵に国債を発行して、これを利用して景気がよくなるかといったら、私はそうはならないと。それは、過去十年間、補正予算等で何兆円という金をつぎ込んで、公共事業だけでも十年間で百三十五兆円つぎ込んだのですね、補正予算として。ちっともそこが変わってこない。やはり構造改革を進めていくということと並行しなければだめなのだということをわかっております。
 そこで、構造改革、変えていくのに必要なことであるならば三十兆円の枠を超えてもいいじゃないか、こういう議論があることは事実でございます。ただし、それは、三十兆円ということで十三年度、十四年度縛りをかけましたので、初めて国債というものが認識されてきてそういう議論が出てきたということでございまして、今までは、底なしに、国債を刷ったら札と同じように、紙幣と同じように出てくると。こういう認識を改めて、その上で国債というものの価値と責任というものを感じていただくならば、それはまた国債の使い方、三十兆円にこだわる必要はないじゃないかという、その意味もわからぬことはないと思いまして、それはそれなりの方向転換はあるだろうと思っております。
 そこの一番大事なことは、国債の持つ財政に与える影響と、それから経済への効果というものと、その見きわめを、バランスをしっかりととってもらわなければ、一概に、簡単に、国債に依存して財政支出をふやしたらいいじゃないかということにはなっていかないと思うのです。とはいって、何も三十兆円にこだわる必要はないというそのお考え方は、私は間違っておらぬと思います。
植田委員 だから、私は何も野方図にばんばんやればええじゃないかなんて一言も言っていないのです。
 ただ、財務大臣とやや事実認識が違うのは、その十年の間で財政出動さんざんやったけれども景気はよくならなかったじゃないかとおっしゃるわけですが、この間、私も何度か質疑の中でもやりとりさせていただいたと思うのですが、決してそうじゃないじゃないかということを言っているわけです。
 だから、前も言いましたけれども、従来型と呼ばれていた、決して、もちろんそこには問題がある、その公共事業のあり方は当然問題で、それを前提として申し上げれば、そうした公共投資であっても、例えば村山内閣時、小渕内閣時、ただ村山内閣時は十四兆以上の財政出動をやっていますが、そうした財政出動によって、やはり景気の浮揚効果が、少なくともこの失われた十年の中で景気を下支えしてきたということはやはりはっきり認められるのではないかというふうに、私は、やはりこれは事実認識はそうだろうと思うわけですよ。
 むしろ見立てを誤って、そうした政策から緊縮に切りかえることでむしろ景気を落ち込ませてきたというのが、この十年間の、言ってみれば、ある意味ではちゃらんぽらんな経済政策の結果、もうちょっと待てばいいものを時期を見誤った、見立てを誤ったということの方が、むしろそうした政策決定に誤りがあったからペケやったと。だから、それを今回バランスよくやりましょうという発想自体が、そもそも両方の誤りをそのまま包摂しながら二頭立てでいくとなると、恐らくそれはますますこの構造改革、小泉さんの構造改革を転換しない限り、ますます景気は悪うなりますよと言いたいわけです。
 少なくとも、その失われた十年の事実認識は、私もそんな間違ったこと言うてへんと思うのですけれども、ただ単に、大規模な財政出動したが景気はよくならなかったと、ではその要因は何なのかということを今私申し上げたわけですが、それはそういうことで御理解いただけますでしょうか、大臣。
塩川国務大臣 よく財政支出、積極財政、あるいは景気対策のためもっと政府は積極的に金を出すべきだという意見をおっしゃる方、多いです。私も、それはそれなりの効果はあると。今もおっしゃるように、財政支出が発動されたとき、出動したときは、一時的にも景気がよくなってきているということもございます。
 それならば、三十兆円にこだわらず景気を拡大せいというならば、それはやったらいいと思うのですけれども、ではどこへどう出すのかというその具体的な、どういう効果をねらって、どこへどんな金額をどのように持っていくのかということ、これをやはり見きわめて、ある程度の見きわめをとって、そして三十兆円の枠を撤廃するということを考えるなら考えたらいいと思うのですが、今のような、ただ金を出せ、金を出せ、そうしたらようなるだろうという、いわば淡い希望的観測だけでこれを議論しておったのでは怖いと私は思ってしまう。それよりも、三十兆円撤廃しろ、そして、こういうところへ使ったらどうだという提案と一緒になって初めて私たちが検討し得る材料になってくると思っております。
坂本委員長 植田君、そろそろ質問を簡潔にお願いします。
植田委員 はい、ちゃんと時計を見ておりますので。
 具体的な提案は私どももさんざんさせていただいているのですよ。だから今、要は、景気悪いいうたらもうからへんことですやんか。それで、もうからへんいうたら売れぬことですやん。売れぬいうことは買わぬいうことですやん。何でかいうたら、雇用不安や老後の不安があるからですやんと。だから、やはり雇用に特化して、政府が責任を持って雇用創出、直接雇用を創出する。
 私は、個人的には、やはり公的なサービス部門で、職業訓練もええし、いろいろやったらよろしいですけれども、やはり必要な分野で、それは先ほども関税や国税のところでも言いましたけれども、そうなったら役人をふやすのかとおっしゃられれば、いやそれは、必要なところは公務労働の部門もふやすべきだ、少なくともそういう直接雇用をこしらえるところに財政を集中的に投下すべきだとずっと言ってきた。それは抽象的な提案じゃない。ただお金くれくれと言っているわけじゃないですよ。まず政府が責任を持って雇用をこしらえるということをきちんとやると。でも、実際、補正で何ぼ雇用対策を積み増したかということですやんかね。だから、私どもはそういう具体的な提案をさせていただいています。
 やはり今必要なのは、まず雇用を守るということと、新たな雇用を政府が責任を持ってこしらえる。いろいろな知恵はあると思いますから、どうですか、最後にしますが。
塩川国務大臣 これは植田さんの提案としてお聞きいたしておきます。
植田委員 時間だそうですから、終わります。
坂本委員長 ただいま議題となっております各案中、平成十四年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案及び租税特別措置法等の一部を改正する法律案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 これより両案を一括して討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。吉井英勝君。
吉井委員 私は、日本共産党を代表して、政府提出の歳入関連二法案に対し、反対討論を行います。
 まず、二〇〇二年度における財政運営のための公債発行の特例等に関する法律案についてです。
 反対する第一の理由は、本法案による赤字国債の発行は、歴代の自民党政府の経済財政政策の失政から生じたものであり、しかも、国民本位の財政改革の方向でなく、従来型の自民党政治を続けるための発行になっているからです。
 第二に、小泉内閣は、国債発行三十兆円枠を守ったなどと言っていますが、二〇〇一年度第二次補正予算と合わせて約六兆五千億円もの隠れ借金を駆使した会計操作によるごまかしにすぎません。財務省の試算ですら来年度以降の国債累増に歯どめがかかっておらず、財政再建には全くつながらないではありませんか。
 それどころか、小泉内閣は、国債発行三十兆円を口実にして、むだな公共事業や軍事費、大銀行支援などを温存し、国民には一層の痛みを押しつける財政運営を行っており、到底認めることができません。
 次に、租税特別措置法の一部改正案についてです。
 反対する第一の理由は、高齢者マル優の廃止が盛り込まれている点です。高齢者の医療、年金制度が次々と改悪される中で、超低金利だからといって高齢者の頼みの綱を断ち切る増税は認めることができません。
 第二に、証券業界の要望にこたえた上場株式等の譲渡益課税の申告不要制度の創設、一部企業の役員等のみを優遇するストックオプション税制の拡充など、高額所得者や一部企業を優遇する制度の創設や減税の拡大などが含まれている点も反対です。
 第三に、本法案には、愛知万博への出展費用、新幹線鉄道大規模改修に対する準備金制度の創設など、大企業のための大型減税が盛り込まれています。法人税収が大きく落ち込んでいる中で、こうした優遇措置を創設、温存することには反対です。
 なお、本法案には、阪神・淡路大震災の被害者対策の延長、福祉、環境対策への税制措置、中小法人の交際費等の損金不算入制度、障害者対応設備等の特別償却制度の延長、ハンセン病療養所入所者等に対する保証金の非課税措置創設など、賛成できる部分も含まれています。しかし、全体としては、高額所得者、大企業を優遇し、高齢者いじめを進めるもので、反対であります。
 以上、二法案について反対であることを表明し、私の討論を終わります。(拍手)
坂本委員長 植田至紀君。
植田委員 私は、社会民主党・市民連合を代表して、本委員会に付託された平成十四年度における公債の発行の特例等に関する法律案、租税特別措置法等の一部を改正する法律案に反対する立場から討論を行います。
 まず、特例公債法案について、反対する理由を申し述べます。
 二〇〇二年度予算案においては、公債依存度は三六・九%に達しており、財政状況はむしろ悪化しており、三十兆円の枠を維持しても、我が国の財政危機は依然として厳しい状況にあります。公債残高の対GDP比が上昇し続ける限り、財政破綻への懸念は解消されません。外国の有力債券格付機関が昨年後半相次いで日本国債の格付を引き下げたのも、こうした事情を反映しております。
 今後予想される高齢社会では、社会保障関係の財政需要の拡大は避けることができず、たとえ景気が本格的に回復し、税収が増加するとしても、それだけでは日本の財政危機は解消しません。
 ただし、本年度末で六百九十三兆円と予想される政府の借金残高をすべて償還する必要はないし、政府自身もある程度の金融資産を持っています。健全化の筋道を早急に示し、本格的に財政再建に乗り出せば、日本の財政運営を維持可能な状況に引き戻すことはまだ十分可能と考えます。
 私たちは、国民生活の安定や安心のためには必要な財政出動は必要であるという立場に立っています。したがって、明確な財政再建方針を国民の前に提示した上でということであれば、ある程度の債務負担の増加はやむを得ないとも考えています。しかし、本法案は、財政健全化のビジョンがないままに野方図に財政法の理念に反するような措置を行うものであり、認めるわけにはいきません。
 次に、租税特別措置法について、反対理由を申し述べます。
 租税特別措置が我が国経済の成長過程を通じてそれ相応の役割を果たしてきたことについては評価するものです。しかし、障害者マル優を新たに設ける反面、老人マル優については、来年から段階的に縮小し、二〇〇五年に全廃することが打ち出されていますが、富の偏在が最も顕著な高齢者向け措置であるからこそ、一定の要件を付すなど改善措置を施した上で存続は考慮されてよかったと考えるものです。厳格かつ適正な所得要件を設けるならば、税の公平・平等性との両立を図り得る老人マル優の存続は可能であったと考えます。
 また、金融・証券税制についても、本来は、申告は、申告納税制度のもとで投資家本人の自己責任のもとできちんと行われるべきであり、それまでに個人投資家を市場に誘導するための抜本的施策を準備することこそが求められております。二〇〇三年一月からの申告分離課税への一本化を前にして、目先の手直しを行うような手法には疑問を感じざるを得ません。中小企業関係税制にしても、時限的措置とするならば、もっと大胆な措置が出されてしかるべきでした。
 以上の理由により、本法案は、一部理解のできる部分はあるものの、総体として賛成することはできません。
 最後に一言。
 税は国家の運営の大宗であり、国税等の職員の日々の努力なくしては安定した税収は望めません。社会経済情勢の進展に対応した適正な人員配置、機構の充実に十分な配慮を行うよう強く要望します。
 以上申し上げて、私の討論を終わります。(拍手)
坂本委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 これより採決に入ります。
 まず、平成十四年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
坂本委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、租税特別措置法等の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
坂本委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、山本幸三君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び社会民主党・市民連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。石井啓一君。
石井(啓)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。
    租税特別措置法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。
 一 中長期的な財政構造健全化の必要性にかんがみ、今後の経済動向にも留意しつつ、歳出の重点化に努めるとともに、歳入の根幹をなす税制に対する国民の理解と信頼、税負担の公平性を確保する観点から、課税のあり方についての抜本的見直しを行い、社会経済構造の変化に対応した税制の確立に努めること。
 一 租税特別措置については、政策目的、政策効果、利用状況等を勘案しつつ、今後とも一層の整理・合理化を推進すること。
 一 変動する納税環境、業務の一層の複雑化・高度情報化・国際化、更には滞納整理等に伴う事務量の増大にかんがみ、複雑・困難であり、かつ、高度の専門知識を要する職務に従事する国税職員について、税負担の公平を確保する税務執行の重要性を踏まえ、職員の年齢構成の特殊性等従来の経緯等に配意し、今後とも処遇の改善、定員の確保、機構の充実及び職場環境の整備に特段の努力を行うこと。
 一 高度情報化社会の急速な進展により、経済取引の広域化・複雑化及び電子化等の拡大が進む状況下で、従来にも増した税務執行体制の整備と、事務の一層の機械化促進に特段の努力を行うこと。
以上であります。
 何とぞ御賛成賜りますようよろしくお願い申し上げます。(拍手)
坂本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
坂本委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付すことに決しました。
 本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。財務大臣塩川正十郎君。
塩川国務大臣 ただいま決議がございました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。
 ありがとうございました。(拍手)
    ―――――――――――――
坂本委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
坂本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後九時四十分散会


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