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第8号 平成14年4月2日(火曜日)

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平成十四年四月二日(火曜日)
    午前十時一分開議
 出席委員
   委員長 坂本 剛二君
   理事 中野  清君 理事 根本  匠君
   理事 山口 俊一君 理事 山本 幸三君
   理事 海江田万里君 理事 古川 元久君
   理事 石井 啓一君 理事 中塚 一宏君
      岩倉 博文君    金子 一義君
      金子 恭之君    倉田 雅年君
      小泉 龍司君    佐藤  勉君
      七条  明君    竹下  亘君
      竹本 直一君    中村正三郎君
      林田  彪君    増原 義剛君
      山本 明彦君    吉田 幸弘君
      渡辺 喜美君    五十嵐文彦君
      生方 幸夫君    江崎洋一郎君
      小泉 俊明君    佐藤 観樹君
      中川 正春君    永田 寿康君
      長妻  昭君    前田 雄吉君
      上田  勇君    遠藤 和良君
      藤島 正之君    佐々木憲昭君
      吉井 英勝君    阿部 知子君
      植田 至紀君
    …………………………………
   財務大臣         塩川正十郎君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君
   国務大臣
   (経済財政政策担当大臣) 竹中 平蔵君
   内閣府副大臣       村田 吉隆君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   財務大臣政務官      吉田 幸弘君
   政府参考人
   (金融庁総務企画局長)  原口 恒和君
   政府参考人
   (金融庁監督局長)    高木 祥吉君
   政府参考人
   (金融庁証券取引等監視委
   員会事務局長)      渡辺 達郎君
   政府参考人
   (国税庁課税部長)    村上 喜堂君
   政府参考人
   (中小企業庁長官)    杉山 秀二君
   参考人
   (日本銀行総裁)     速水  優君
   参考人
   (預金保険機構理事長)  松田  昇君
   財務金融委員会専門員   白須 光美君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月二日
 辞任         補欠選任
  渡辺 喜美君     佐藤  勉君
  小林 憲司君     前田 雄吉君
同日
 辞任         補欠選任
  佐藤  勉君     渡辺 喜美君
  前田 雄吉君     小林 憲司君
    ―――――――――――――
三月二十日
 日本たばこ産業株式会社法の一部を改正する法律案(内閣提出第一七号)
四月二日
 金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律案(内閣提出第六〇号)
 外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案(内閣提出第六二号)
は本委員会に付託された。
三月二十八日
 特定非営利活動の促進のための法人税法等の一部を改正する法律案(衆法第五号)の提出者「岡田克也君外九名」は「岡田克也君外八名」に訂正された。
同月十四日
 大和都市管財被害に対する行政支援による包括的救済等に関する請願(樽床伸二君紹介)(第六七二号)
 消費税の増税に反対、食料品の非課税に関する請願(穀田恵二君紹介)(第七一四号)
 消費税の大増税に反対、税率を三%に引き下げることに関する請願(大森猛君紹介)(第七一五号)
 消費税増税反対等に関する請願(木島日出夫君紹介)(第七一六号)
同月二十日
 消費税の大増税に反対、税率を三%に引き下げることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第八五八号)
 同(大森猛君紹介)(第八五九号)
 消費税の大増税中止、税率の三%への引き下げ等に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第八六〇号)
 同(吉井英勝君紹介)(第八六一号)
 納税者権利保護規定の法制化に関する請願(大森猛君紹介)(第九五九号)
同月二十五日
 大和都市管財被害に対する行政支援による包括的救済等に関する請願(久保哲司君紹介)(第一〇六七号)
四月一日
 大和都市管財被害に対する行政支援による包括的救済等に関する請願(河村たかし君紹介)(第一一九八号)
 消費税の福祉目的税化反対に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第一三〇〇号)
 同(塩川鉄也君紹介)(第一三〇一号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第一三〇二号)
は本委員会に付託された。
三月二十八日
 大和都市管財被害に対する行政支援による包括的救済等に関する請願(第一八七号)は「辻元清美君紹介」を「中川智子君紹介」に訂正された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――
坂本委員長 これより会議を開きます。
 財政及び金融に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁速水優君及び預金保険機構理事長松田昇君の出席を求め、意見を聴取することとし、政府参考人として国税庁課税部長村上喜堂君、金融庁総務企画局長原口恒和君、金融庁監督局長高木祥吉君、金融庁証券取引等監視委員会事務局長渡辺達郎君及び中小企業庁長官杉山秀二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹本直一君。
竹本委員 少し時間をいただきましたので、日ごろ思っていることを、多少雑駁になるかもしれませんが、御質問申し上げまして、関係大臣からの御答弁をいただきたいと思っております。
 まず、もうきょうは四月二日で、一日だったらエープリルフールということもあるかもしれませんが、まじめな話をしたいと思うんですけれども、年度当初、ことしは大変な経済不況がまだまだ続くという議論が大勢を占めておりました。しかし、私は、アメリカが非常な、テロが意外に早く終わったということ、そういう意味で、IT産業が復活してきたこと、あるいはナノテクノロジー、バイオ産業が言ってみればマーケットに商売の種となってきたこと、こんないろいろな事情の中で、必ずことしはブルマーケットになるという話を私の友人のアメリカ人から聞いておりましたので、ぜひこのことを皆さんにお伝えしようと思って、新年の各地で行う互礼会でも、必ず景気はよくなりますよ、アメリカがよくなれば日本もよくなるんだということを言ってきた人間でございますが、そのときささやかれておられたのが政治の三月危機と経済の三月危機でした。
 政治は、小泉政権は行き詰まるんではないかと言っておりましたけれども、私は、それは絶対ないと言っておりました。それが一つ。それが証拠に、いろいろなことがありましたけれども、いまだに五割近い支持率を持っているということは、過去の歴代政権のいろいろな数字と比べましても圧倒的な支持率だと私は思うわけであります。それは、国民が何かをこの政権に期待しているからだ、いまだに期待しているからだと私は思っておるわけであります。
 もう一つ、経済の三月危機があると言われておりました。これは、ペイオフが四月一日から解禁されることに伴いまして、大変な金融の混乱が起こるであろうと言われておりました。もう一つは、大型倒産が必ずあるだろう、そうしますと大変なクライシスに突入するんではないか、こういうことも言われておりました。
 しかしながら、私は、一つは、仮にそういうことがあるとすれば、首相を頂点とする緊急金融対策会議が開かれて、そして政府が公的資金を必ず導入する、もしそういう事態になれば、最後は政府がそういう態度をとるという安心感から、経済が底をつくであろうというのが私の主張でありました。今、そこまでのところには至ってはおりませんけれども、そういうことにおける政府の信頼感こそがこの小泉政権に対する信頼につながっているんだと私は思っておるわけであります。
 それからもう一つ、これは塩川財務大臣もよく言われることでありますけれども、円安が大分進んでまいりました。百三十円台になりました。将来、私は百五十円、六十円ぐらいまで行くんじゃないかと思っておりますけれども、日本の苦境に立たされている産業が何とか立ち直り、そして、特に中国、世界の工場と言われる中国と相競争するためには、どうしても円レートが問題になるわけであります。
 先般、経済産業委員会で参考人を招致いたしましたときに、ある商品と言われましたが、恐らくベアリングの玉だと思いますけれども、香港でつくると三円でできる、日本で幾らリストラをやって節約しても八円でしかできない、これじゃ競争ができない。では、ほかの国はどうかといって聞きましたら、ドイツは四円でできる。では、どこにそんな差があるのか。ドイツは日本と人件費がそう変わらないはずである。何か。それは、通信費であり電気料金でありといったような公共料金の差、あるいは地価も入っていると思いますが、そういうことが非常にあるんではないか、こういう結論でございました。はあ、なるほどそういうことかと思いまして、私は納得したわけでございます。
 ならば、そういったことについて、どんどん各国との競争に勝ち抜けるような、そういう能力、備えをやはりつくっていかなきゃいけない。先般、東京電力ですか、七%でしたか値下げしましたけれども、そういったことをすると同時に、やはりやらなきゃいけないのは、もう少し円安になった方がこの苦しい日本産業を救うには役立つんではないか。
 このように、最後の政府の断固たる措置、対応と円安、そしてアメリカの後押し、この三つがあれば必ず日本経済は年内に上昇気流に乗るんではないか、こういうことを申し上げておったんですけれども、昨今の新聞、テレビの報道等、あるいはきのう出ました短観等を見ましても、何とか底をついたというような感じで報じられていることを見まして、ほっとしているところでございます。
 さて、それで、では大丈夫だというふうに満足できるかというと、まだまだそういう状態ではございません。今手をつけることをどんどんやっていかなきゃいけないというふうに思うわけでありまして、そういう思いの中で、幾つか考えておりますことを申し上げまして、御答弁をお願いいたしたいと思います。
 一つは、言うまでもなく、貸し渋り対策であります。
 相変わらず貸し渋りが横行していると私は認識しておりますけれども、しかしながら、金融庁が融資のガイドラインを出しまして、それに従って金融機関が融資をしているわけです。これは、貸せないと言われるものを我々が貸してやれと言っても、判断を曲げるわけですから、なかなか難しいだろうと思います。
 そこで、先般、政府のデフレ対策の中で、要するに、融資の事例集をつくり、あるいは検査センターですか、そういったものもつくりながら、より現実に合った融資をするように御指導はいただいてはおりますけれども、私は、それだけではまだ不十分ではないかなというふうに思うわけであります。
 要は、融資というのは、経済社会における需要と供給がどこにあるかということでございますが、現実を見ますと、例えば、住宅ローンを借りますと二%、二・三、四%ぐらいかと思いますけれども、商工中金ですと二・一〇八%だということでございますけれども、そういう安いものもありますけれども、必ず担保を要求されるわけでございます。ところが、中小企業は全然担保なんかもう今や持っていません。二重、三重の抵当に入れているわけですから、そういった人に担保を要求したって、ない。そうしますと、この間もこういう事例がありましたけれども、担保がなければ個人保証でいいというんですけれども、個人保証を探しましても、年金生活者はだめだというんですね。そうしますと、ほとんどの中小企業はもう借りられるものがないんですよね。そういうのが現状であります。
 では、しようがないから、どうしても金が必要となるとどこへ走るか。商工ローンに走り、サラ金に走るのもあると思います。そうしますと、利息制限法が二九・八%でしたか、それぐらいの利率だと思いますけれども、大変な、それに近いところの融資を受けて、結局は自分の首を絞めて倒産してしまう、これが現状であります。
 先般、これも経済産業委員会でお呼びした東京都民銀行でしたでしょうか、五百万円までであれば無担保無保証で、割合低い金利、低くもないんですけれども、九%ないし一四%の金利で即座に貸すというようなことをやっておられるという話を聞きました。私は、御質問したいのは、こういった現実の需要に合った、そういうある種のリスクマネーを供給するようなシステムを、どうして今金融界でそれに対応ができないのか。私は、素人目に考えましても、高い金利で、そして、倒産する危険性もあるでしょうから、それに対しては保険をつける、あるいは保険と同時に、恐らく全部が安全だというわけではないでしょうから、それに対する措置を、保険をつけた場合にその保険に対して政府でも何らかの後押しをするというようなことが考えられてもいいのではないか、このような考えを持つものであります。
 そういう意味で、ここは金融担当大臣の柳澤先生に、ぜひこの辺についてのお考え、あるいは気持ちというものをちょっとお聞かせいただきたいと思います。
柳澤国務大臣 前段では、金融検査マニュアルがきつ過ぎるということも、現下、中小企業に対する金融の円滑化というものの障害になっていはしまいかというお話もございました。これについては、私ども、中小企業への配慮というものの具体的な事例をまとめて、例えばどういうものだったら技術力として評価したかというような事績をファイルしまして、そういうものによった場合には、これは適正な検査なんだというようなことを示すことによって、検査による金融の円滑化への障害というものをできるだけ取り除いていきたい、こういうことを考えておるわけでございます。
 しかし、今竹本先生のお話では、それだけでは足りない、もう少しリスクをとった、そういう供給をすべきではないか、こういうお話がございました。これは、現在全くやっていないわけではなくて、今、東京都の地銀でございましたか、そういう方々によるいわゆるスモールビジネスローンということを例に挙げられましたけれども、こうした事例というのは大手銀行でも既に始めておるところがありまして、無担保無保証、ただし、このリスクは金利に反映させていただくので金利の面では若干高いということもありますよ、こういうような形で、リスクを金利で吸収するということによって中小企業への金融の円滑化を図っていこう、同時にまた金融機関の側でも今必要な収益というものを上げていこう、こういうような動きにございます。
 もっとこれを根本的に考えられないかということで、保険というようなお話も出たわけでございますけれども、結局、金融というのはリスクを一体だれがどのようにして分担するんだということに尽きるというような学者先生の説も最近では非常に強く叫ばれておりまして、私どものいろいろ周辺でも、そういったことについて根本的な仕組みというものを考えたらどうかというようなことで御検討いただいておりますけれども、リスクのプール、それからそのプールしたリスクを証券化して、できるだけ小さいリスクにしてこれを分担してもらう、こういうシステムができないか等々議論をしていただいておるわけでございますけれども、現在まだ形のあるもの、具体的な姿をとるというところまで至っておりません。とりあえず、これだけお話し申し上げておきます。
竹本委員 ありがとうございました。
 もう一つその関連で、信用組合、信用金庫等における融資において、先ほどの融資ガイドラインが適用されるわけでございますけれども、言ってみればダブルスタンダード、こういう従来の、過去の慣例、今までのしきたり、いろいろなところから見ましても、ある種、個人保証、個人信用をもとに、担保が十分でなくても融資をしてきたのが今までの実態であります。それが今回のガイドラインではだめだという、基本的にはそういうことになっておりますけれども、中小企業金融の逼迫さを考えますと、ダブルスタンダードを認めてはどうかと私は思うのですが、いかがでしょうか。柳澤大臣にお願いします。
柳澤国務大臣 金融機関の健全性というものは、これは特に昨日から始めさせていただいたペイオフの時代におきましては殊のほか大事になるわけでございます。今回、もし破綻をするというようなことになりますと預金者にまで迷惑がかかるというようなことが始められたわけですので、健全性というのは非常に必要だ。その健全性を担保する具体的な措置としては、資産の査定というものを厳正に行うということが必須条件でございまして、この点についてダブルスタンダードというものは、これはあり得ないということになります。
 では、資産の査定について中小企業への配慮は一体何なのかといったときに、債務者区分をするときに、通常大手の企業ですと、あるいは所有と独立した経営というようなことになってまいりますと、その財務の数表というものが基本的に判断の資料になるわけですけれども、中小企業の場合にはそうではない。そうではなくて、所有と経営というものがそれほど分離していないわけでございますので、その所有のところまで勘案した、そこまでもう勘定に入れたところでその信用力をはかっていくということが必要になってくる。それで、いわば周辺の、例えばあの人はもう借金を返さないというような不義理なことをしない人だ、あの家系はそういう方々の家系なんだというようなことになってくれば、これはもう近い親類縁者までの、極端に言いますとそういう返済能力というようなものまで勘案することもこれは可能で、これはケース・バイ・ケースの判断になりましょうけれども、そういったことが考えられるわけであります。
 そうしたことを事例として今度積み上げていくことによって、その債務者の信用力を判断するときに、一体どこまでを取り込むということがこれまで行われてきたのか、こういう練達の検査官の事例をそこで申告してもらって、それをファイルして、そして若い検査官にも、あるいは他の検査官にも、これを統一された共通のスタンダードにしていこう、こういうのが事例集の考え方でございまして、御理解を賜りたいと思います。
竹本委員 ちょっと思いとは少しずれるのですけれども、ダブルスタンダードと言えるような運用をぜひお願いしたいというのが私の気持ちでございます。
 きょうは、塩川財務大臣、また竹中大臣にも来ていただいておりますので、時間がありませんがどうしても一言申し上げたい、お聞きしたいことがございます。
 それは、世界の各国の過去の経済復興の歴史を見ますと、特にクリントン大統領のときがいい例でございますけれども、やはりいろいろな改革が、どんどん手を打ったものが大体成功いたしました。そして、国民からほぼ好意的にそれが受け入れられた。その背景は何かというと、やはり景気がどんどんよくなってきたという、この一言に尽きると私は思うわけであります。調べますと、九三年、これはクリントン大統領が就任した直後でございますが、失業率が七・一%ございました。それが、退任直前の二〇〇〇年の一月では四・〇%に失業率が下がっておるわけであります。先般の財務金融委員会でも、私は、ある私の友人の例を挙げておきましたけれども、四〇一kに預けておいた資金が四年間で四倍になった、そして、その資金があれば老後も安心だ、こういう希望の灯がともっておったわけでございます。
 こういう希望の灯を、今、小泉政権、一生懸命つくる努力はしているわけですけれども、何とか早急につくらなきゃいけない。そのためには、土地税制、証券税制、あるいは譲渡税における住宅の建設の促進等を目指した規制の緩和、税率の緩和ということをやっておられますけれども、それだけでは十分いかないケースも十分あり得るんではないか。私はそれでもいいんだと思いますけれども、待ち切れないことがあり得る。その場合に、三十兆円という公債特例枠に縛られずに、頂門の一針という言葉がございますけれども、ケインズの言うように、道路を掘って埋めても投資になるというのですけれども、経済の波及効果があるといいますが、私はそうは思わない。効果のある公共事業ならば、三十兆円プラスアルファで認めても、それは小泉ドクトリンに反しないのではないか。私はそう思い、あちこちでこういう一説を投じておるわけでございますけれども、この私の見方に対して竹中大臣、できれば塩川大臣、どうお考えか、簡単にちょっとお考えをお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
竹中国務大臣 経済の活性化と財政の規律の兼ね合いに関しての重要な御質問だと思います。
 基本的には、やはり経済を活性化させるということが大変重要であり、そのためにも税制の改革、産業の戦略を練りたいというふうに思っているところでありますが、やはり一方で、今の国債市場の状況を考えますと、財政規律を守り、かつマーケットに示していくということが大変重要なことだと考えております。
 三十兆ですから、GDP比六%の赤字をそれでもまだ続けるということでありますから、これはこれでGDP比六%の非常に大きな財政刺激を続けているという見方もできるわけでございます。その意味では、予算も認めていただいた段階でこれをしっかりと執行していく、そのことがまず何よりも活性化のために重要であり、今の税制の論議なんかも進める。そうした一方で、国債三十兆の枠を堅持しながら財政の規律をまた同時に示していくということが、やはり同時に重要なのではないかというふうに思っております。
塩川国務大臣 せっかくのお尋ねでございますので、私の感想から言いまして、おっしゃるとおり、有効な公共事業であればどんどんとやっていったらいいと思っております。しかし、ただし今の公共事業のあり方にも一つの習慣がございまして、その悪い習慣はやはり改めてもらわないかぬし、いい方に作動していくようにするという、私は、公共事業の範囲をもっと広げて、公共施設も公共事業的に扱って拡大していくことが需要増大にも結びついていくと思っております。
竹本委員 どうもありがとうございました。
 時間はまだありますか。
坂本委員長 いや、もうないね。
竹本委員 ありませんか。
 それでは、もうこれでやめますが、ちょっとベンチャー育成のための出資のシステムのあり方についても質問するつもりでございました。経済産業省、どうも申しわけございません。
 以上で終わります。ありがとうございました。
坂本委員長 次に、金子恭之君。
金子(恭)委員 自由民主党の金子恭之でございます。
 本日は、我が国の借金について、わかりやすく質問をさせていただきたいというふうに思っております。
 国と地方の長期債務残高が六百九十三兆円にも上る。昨年に比べて、またふえてしまいました。現在、我が国の財政事情というのは非常に厳しい状況であるわけでございますが、私たち国会議員としましても、国民にその状況をわかりやすく説明する義務があるのではないかというふうに思っております。そういう中で、国民の方も、頭ではわかっているんでありますけれども実感が伴わない、そういう状況ではないかと思います。
 私も、地元で国政報告会を開いたり、いろいろな会合の中で、今国の抱える借金は七百兆近くいっているんだよ、国民で平均すると一人当たり五百五十万にも及ぶ借金をみんな抱えているんだ、それは返さなきゃいけないお金なんだということを言うと、みんな一様に驚かれるんですね。しかし、それが自分たちにも考えもつかないような話なものですから、また、今の状況で個人個人に実害があるわけでもないものですから、何かいまいち、認識が少しまだまだ足りないのではないかなというふうに思っております。
 小泉内閣は、構造改革の一環として財政構造改革を進めているわけでありますけれども、これは、国民の理解、危機感、そういうものがなくしては成功しないのではないかというふうに思っております。そういう意味で、財務省としまして、財政の問題に対しまして国民の関心、理解を深めるためにどのような取り組みをなさっているのか、お答えをお願いいたします。
    〔委員長退席、中野(清)委員長代理着席〕
谷口副大臣 金子委員の御質問でございますが、まさにおっしゃるように、我が国の財政状況は極めて悪化いたしておるわけで、政府は、今財政構造改革に取り組んでおるところでございます。そのような状況の中で、国民に御理解、また御協力を得なければいけないわけでございまして、そういう観点で国民に今の財政の状況を御報告するといったことが大変重要であるというような認識におるわけでございます。
 このような観点から、憲法第九十一条、財政法第四十六条というのがございますが、これは、国会並びに国民に対して、予算、決算の状況について報告をするといったような観点から、パンフレットであるとか、またインターネットを通じてこのような財政状況の情報提供に努めておるところでございます。ちなみに、こういうような「財政の現状と今後のあり方」というようなパンフレットをつくっておりますし、また、「フォートゥモロー」というような、現在の財政状況についてわかりやすく説明をいたしておりますパンフレットもつくっておるところでございます。
 財務省といたしましても、今後ともこのような努力を続けていきたいというように考えております。
金子(恭)委員 今、御答弁がございました。国民全体から見れば、なかなかまだ目に触れる機会は少ないと思います。そういう意味では、こういう取り組みをさらに進めていただきたいというふうに思っております。
 とはいっても、まだなかなか国民の人にぴんとこないというのが現状だと思います。そういう意味では、私たちもいかに具体的にわかりやすく説明するかというので苦労するわけでございますが、その一つの工夫として、国際的に日本の財政事情というのはどういう状況にあるのかということを比較して説明するのも一つの方法かと思います。
 そういう中で、G7諸国の中では言うに及ばず、OECD諸国の中でも非常に厳しい状況にあるというふうに聞いております。現在と十年前と比較をして、OECD諸国の中でどのような位置づけとなっているのか、御説明お願いいたします。
谷口副大臣 今まさにおっしゃったような、OECD諸国の中で我が国が一体どういう地位にあるのか、位置にあるのか、こういうお尋ねでございますが、この十年間、大変な財政の悪化が進行いたしておるわけでございます。
 今おっしゃったように、十年前でございますが、OECDが発表しておるデータによりますと、一九九〇年における日本の一般政府財政収支対GDP比でございますけれども、これはマイナス一・五%ということでございまして、OECD各国平均のマイナス三%ということに比べまして、小さな赤字幅ということでございました。また、一般政府債務残高対GDP比につきましても六四・六%ということで、これは各国の平均値とほぼ同水準ということであったわけでございます。その後、各国の財政収支対GDP比が大きく改善をされたわけでございます。
 また、二〇〇〇年には、各国平均が改善されまして、財政収支対GDP比で〇・二%ということになっておるわけでございますが、一方、我が国の財政収支対GDP比がマイナスの七・三%ということで、各国中最悪の水準にまで陥っているということでございます。また、債務残高対GDP比につきましても一二三・二%ということで、これはOECD各国平均の七二・七%に比べまして、はるかにこの平均を上回っておりまして、これも各国中最悪の状況ということになっておるわけでございます。
金子(恭)委員 改めて答弁を聞きますと、非常に私たちも心配になってくるわけでございます。その中で、このまま財政が悪化していきましたときにどういう状態になるのかというのは、やはり国民の方にも知っていただく必要があるのではないかというふうに思っております。
 そういう中で、もう一つの観点として、日本がこれから破綻したらどうなるかということはなかなか考えにくいことでありますけれども、例えば、最近破綻をしたアルゼンチンの状況などを一つの例として、破綻した国ではどういう状況になっているかということを国民に知っていただいて、そうならないように財政問題にはきちんと取り組むべきであるというような姿勢を示した方がいいのではないかというふうに思っております。
 もちろん、アルゼンチンと我が国では経済状況、政治状況が違いますので、一概にアルゼンチンと同じに考えることは危険なことではありますけれども、一つの事例として、参考としてお聞かせをいただきたいというふうに思っております。そういう中で社会に与えた影響、そして現在の状況をわかりやすく御説明いただきたいというふうに思います。
谷口副大臣 アルゼンチンの状況でございますが、御存じのとおり、アルゼンチンは大変な状況になっておるようでございます。
 財政状況の悪化から政府債務償還への不安が高まっておりまして、通貨ペソへの信認も低下してきたということで、昨年後半におきましては、預金残高、外貨準備が大きく減少したということになっております。これを受けましてアルゼンチン政府は預金引き出し規制等を導入いたしましたが、これに反発をした市民が暴徒化するというような状況の中で、昨年十二月に大統領は辞任に追い込まれたというような状況のようでございます。
 その後、大統領が交代を繰り返す中で、モラトリアムでございますけれども対外債務への支払いが停止され、為替相場制度も固定相場から変動相場制に移行したわけでございます。こういう中で、ペソの下落や預金引き出し規制等の継続による経済への影響も大きいということで、社会情勢も依然として大変厳しい状況にあるということを聞いておるわけでございます。
 現在、アルゼンチン政府はIMFとの間で新規支援プログラムに向けて交渉を行っておるということで、今後の動向につきましては、予断を許さないものの、我が国としては引き続きこの事態の推移を注意深く見守っていくというような対応をいたしておるところでございます。
 今金子委員がおっしゃったように、アルゼンチンにおきます財政収支の赤字と巨額の政府の対外債務、この問題があって、今大きな問題になっておりますけれども、これがすぐに我が国と比較できるものではないというふうに考えておりまして、我が国は経常収支黒字国であり、かつ、世界最大の債権国であります。財政赤字の資金調達を対外借り入れに頼っているわけではないわけでございまして、このように両国の間では状況が大きく異なるということもあり、先ほど金子委員のおっしゃった、単純にこれは比較できるものではないというように考えておるわけでございます。
 いずれにいたしましても、我が国も大変財政状況が悪化いたしておるわけでございますから、一刻も早くこのような状況を脱却できるように財政構造改革を推し進めていくということで取り組まなければならないというように考えておるところでございます。
金子(恭)委員 今説明を受けたわけでありますが、アルゼンチンは地球の裏側でございます。遠い外国で起きたことと簡単に考えないで、今副大臣の方からお話がありましたように、これからも財政構造改革に真剣に取り組んでいただきたいというふうに思うわけであります。
 それから次に、目を地方に向けてみます。私の地元熊本でも非常に財政が厳しい状況でございまして、大変苦労しているわけでございます。今、地方はそういう状況の中で将来に不安を感じまして、方向性を見出せないでいるのが現状ではないかなというふうに思っております。そういう意味では、現状を把握することが重要だというふうに思っております。地方財政の現状につきまして、財務大臣の御認識をお聞かせいただきたいと思います。
塩川国務大臣 地方財政は非常に窮迫した状態でございますが、私は地方行政の実態をずっと見ておりまして、私は平成四年のときに自治大臣をやっておりました、そのときから、いわゆるシビルミニマムといいましょうか、それを少しはやはり考えてもらいたいなと思っておったのです。ところが、いわば地方自治体に対する財政需要というものが何か非常に無限に広がっていった、これもやはり、首長選挙があるたびごとにその需要を拡大していった、それが非常に財政を一つは窮屈にしてきておると思いますね。
 それが一つと、それから府県段階についていいますと、国から地方に対しまして、経済対策上の問題として、県を単位にした単独事業を思い切り下へおろしましたね。その単独事業に府県がかぶりついてきて、無理な単独事業を展開していったと思っております。それのツケが今地方財政を苦しめてきている。
 ですから、地方財政の窮迫というものは、府県段階で見るものと市町村段階で見るものとは違ってきておるのです。その対策を的確にとらないと、一律して地方の財政が苦しいからということで対応を考えても回答が出てこないと思っておりまして、そこらのことについて、もう少しいろいろな面から検討し対策を政府全体としてとり直すべきじゃないかと思っております。
金子(恭)委員 今大臣の方からお答えをいただきましたように、国の財政も地方の財政も非常に厳しい状況にあるわけであります。しかしながら、財政収支のつじつま合わせに血眼になりまして、財政支出の意義を不当に低く評価することも間違いであると思います。私も、これまで財政支出をしていただいた予算がすべてむだに使われたとは思いませんし、かなりの部分が、地方にとっても国にとっても、有益に使われているというふうに思います。
 そういう意味では、これまで公共事業にもかなりの予算が費やされているわけでございます。そういうふうに費やされた、整備された道路網につきましても、全国を非常に効率的に結ぶ役割をしたと思いますし、また教育に対しても、また福祉に対しましても、非常にこれまでの日本の発展について大きな役割をしてきたというふうに思っているわけでございます。要は、いかに限られた財源の中で効率よくお金を使うかにかかっているのではないかなというふうに思っております。
 今、痛みを伴う改革ということで、何年我慢すればいいのかとか、そういう非常に暗くなるような言葉が走っております。痛みを伴う、我慢する。そういう状況ではなくて、私は、今言っているのは、地方だからいろいろな予算が削られるということではなくて、もっと地方も中央も、限られた予算の中で、自分の地域で必要な事業は何なのか、そういう優先順位をつけまして、いかに効率よくそれを運営していくかということが一番重要ではないかなというふうに思っているわけであります。
 そういう意味では、これからますます経済状況が厳しくなり、財政状況が厳しくなっていく中で、ことし以上にまた厳しくなることも予想されるわけでございますが、大臣にこういう観点から、予算の効率的な執行という点につきまして、先ほど竹本先生の質問に御答弁されたわけでありますが、その辺について大臣の御所見をお伺いしまして、質問を終わりたいと思います。
塩川国務大臣 私は、先ほども申しましたように、市町村段階におきましては、シビルミニマムというものを一回厳格に見直してもらいたい、それに合った財政構造を考えていくべきだと思っております。それから府県段階におきましては、府県は国との関係がございますので、府県と国との関係で、過去において行った、過大な経済政策のために行ったいろいろな施策がある、そしてそれがいわば起債として残っておりますが、これなんかの整理についてのやはり根本的な考え方、これを解決していく方向に変えていかなきゃいけないんじゃないか。
 私は、ただ単に国と地方との財源配分だとか財政問題のスパンだとか、そういう抽象的な議論ではなくして、やはり中身についての細かい分析をして、負担の区分を変えていくということをやらなければ、地方財政の窮乏を脱出していくことはなかなか難しいと思っております。
 国は一つの見方として、二〇一〇年を一つの財政の節度として、二〇一〇年にはプライマリーバランスをいわば黒字に転換しようという一つのめどを持っております。これはなかなか難しいと思います。しかし、その目標を持っていろいろな財政問題を考えていきたい、こう思っております。
 であるとするならば、地方の方にもプライマリーバランスというものがやはりあるわけでございまして、それをどのような方法で解決していくのかという、地方行政全体として、しかもその中で府県はあるいは市町村はという、そういう個々の問題のバランスの維持というものをどうするかということ、ここを同時に考えてもらいたい、それをあわせて国と地方と協力して解決していく、こういうふうに持っていきたいと思っております。そのためにも、一番やはり底辺として大事なのは、シビルミニマム、そしてナショナルミニマムをどのように調整していくかという問題にあると思っております。これを抜きにして財政の問題を議論しても空理空論に終わってしまうように思いまして、そういう心配をしております。
金子(恭)委員 ありがとうございました。
 質問を終わります。
中野(清)委員長代理 次に、海江田万里君。
海江田委員 民主党の海江田万里です。
 竹中大臣、きょうは当委員会にお越しをいただきまして、ありがとうございました。なるべくたびたびお越しをいただきたいわけでございますが、早速でございますが、竹中大臣に幾つかお尋ねをしたいと思います。
 三月二十九日の、ことしに入りまして八回目の経済財政諮問会議で税制改正の論点整理が行われたということでございますが、この議論の方向性というんですか、私も、きょうの夕方にたしか議事録の要旨が出るということで、まだその議事の要旨は見ていないんですが、新聞報道ですとか、あるいは公表されましたこの論点整理のペーパー、あるいはその後の竹中大臣が記者さんにやりました会見ですか、これを見ておりますと、若干わかりにくいんですね。
 と申しますのは、公表されて私どもが持っておりますペーパー、これは論点整理が三枚で、当日記者さんにお配りになったのもやはりこの三枚だと思いますが、大臣は六枚の紙ですか、それを手持ちになって、ここに書かれてあることも論点整理だということで随分お話しになったようですので、どうしてそんなことになったのかなというのが大きな疑問なわけですが、そこはちょっと後で、きょうは時間もありますので、少し詳しくお話を聞かせていただこうと思います。
 まず、どうですか、この三月二十九日の税制改革の議論、全体にどんな議論が行われて、そして、これは感想でもよろしゅうございますが、どんな感想をお持ちになったのか、総理も一時間半このときはずっといらしたということもあって、かなり活発な議論が行われたと思うんですが、全体的にどういう印象をお持ちになったのか、お聞かせいただきたいと思います。
竹中国務大臣 委員よく御存じのように、今経済財政諮問会議で、六月を目途に取りまとめるということを念頭に置きながら税制改革の議論を進めております。
 御指摘の三月二十九日には、重要な、ある意味で議論の出発点になります論点の整理と基本的な考え方について有識者議員、つまり民間議員が問題提起をされて、それについて話し合ったということでございます。したがって、そこで何かを決定したという性格ではもちろんございません。
 民間有識者議員からの問題提起の内容はどうであったかということをまず申し上げますと、基本認識として、税制改革の課題として、これは活力を引き出して、国際的整合性を重視する税制でなければならない、多様な選択を可能にして、すべての人が社会に参画できるような税制にならなければいけない、長期にわたって安心を支える税制でなければいけないというような基本的な認識が示されました。
 それを受けて、特に重要でありましたのは、公平、中立、簡素という例の租税の三原則について、これは三原則を変えるわけではありませんけれども、中立を、これはそもそもは活力という意味でリデファインすべきではないかという議論が民間議員からなされたということであります。産業の将来を考えた税の活用を積極的に進めるべきだという意見が一方でございまして、また、巨額の財政赤字があって、プライマリーバランスを改善するというマクロの中期的な問題との調和も、これはやはり責任ある税制改革としては踏まえなければいけないという議論がございました。
 方向としましては、これはやはり税というのは経済のサブシステムでありますから、経済をよくするための税制にしましょうということ、そういった意味での問題提起がなされて、それに基づく議論が行われたということでございます。
海江田委員 今幾つかお話しになりましたけれども、一つの当日のキーワードは活力だというお話もございましたけれども、従来のこれはいわば税制の基本理念、公平、中立、簡素ですか、それに、特に中立と活力ということがそこでは議論になったということですが、最終的には中立というのも活力を引き出すためのその一つの考え方である、こんなようなまとめになっているわけです。
 ただ、これは税制の議論で考えていきますと、この中立というのは、これはもうもちろんよく御存じであると思いますけれども、資源の配分等について、課税が経済活動に資源配分上のゆがみをできる限り与えないようにすることであるということで、効率的な市場における経済上の決定に対する影響を最小にし、資源配分を錯乱しないような税制が中立性の原則から見て望ましいということで、この原則あるいはこの基本的な理念と活力というのは、これはやはりトレードオフの関係であることは確かなわけですよね。
 それは前回の第七回ですとか第六回でもそういう議論が出たわけで、一つここが、やはり活力という言葉が前に出てきたということが、私は、特に民間の議員の方の強い主張なんじゃないだろうかということで、それはいろいろな定義があるから、いろいろな解釈があるから、その解釈を活力という形で今現在は、あるいは集中調整期間ですか、ここの二年間ぐらいはそっちを前に出していこうというふうにお考えになったというようなことなんですが、やはり私は、中立と活力というのは若干違って――若干違ってというか、今言ったような、かなりそこに考え方の違いというものが出てきているんじゃないだろうかというふうに認識をしているんですが、その点についてはいかがですか。
竹中国務大臣 御質問はかなり哲学的な問題を含みますので、これは財政学者が集まったら何時間でも、何日でも議論できるテーマなのかもしれません。
 ちょっと誤解のないようにぜひ申し上げておきたいのでありますが、例えばレーガン税制の第二期の八六年の改革のときにもやはりこういう議論がなされております。そのときには、フェアネス、それとシンプリシティー、これは公平と簡素でわかりやすいのですが、もう一つ、三番目はエコノミックグロースというふうにいうわけですね。
 これはアメリカの代表的な租税のテキストと言われるスレムロッドの本なんかでも、やはりフェアネス、シンプリシティー、エコノミックグロースという言葉が出てくる。
 やはり経済を最大限成長させたい、そのためにはどうしたらいいかということで、やはり標準的な考えは資源の配分をゆがめないことである。したがって、中立というのは、その意味では、中立と経済の活力、グロースというのはやはりこれは矛盾しないというのが基本的な考え方なのだと思います。
 ただ、一部のものにはいわゆる外部性、外部効果、外部経済効果があるものがある。例えば研究開発なんかそうですけれども、研究開発なんかは、私的な資源配分に任せておいて資源配分がなされたものと、しかし、これは外部経済効果を持つから、政策的に関与して何かやった場合とでは、これはやはり活力、違うわけですね。
 そういうようなものもあるから、基本的には中立なんだけれども、だから中立と活力というのは決して矛盾はしないんだけれども、そこはやはりこういう時期、そういう外部経済効果があるようなものもあるんだから、活力という方がわかりやすいのではないでしょうかというのが有識者議員からの御指摘であったというふうに思います。
 したがって、矛盾しているわけではない。したがって、一つの解釈として、今の現在の現状も考えて、活力というふうに呼んだらどうだろうかという御指摘があったわけでございます。
海江田委員 もう一つ、やはり公平という言葉も一応公正に置きかえをしているわけですね。だから、その点でいくと、まさにレーガン税制の第二次の方の基本的な考え方を当てはめをしたというふうな理解でいいと思うんですが。
 ただ、公平が公正に置きかわって、それから中立が活力に置きかわった。この二つをパッケージにして考えますと、やはりかなりこれからの経済財政諮問会議でお話し合われた税制改正の方向性、これはもちろん短期のものと中長期のものがあると思うわけですけれども、短期の、特に二年ぐらいのスパンで見たときに、私は、やはり公正と活力というのはまさにセットになって、それは従来の公平とそれから中立というのとは若干違ったニュアンスになってくるんじゃないだろうかという認識を持っているわけですね。
 やはり、特に公平ということでいうと、公平は、垂直的な公平だとかあるいは水平的な公平だとか、ここのところから来ている話であって、さっき言われたフェアネスのまさに公正というのとは違うわけですね。ここは私は違うと思うわけで、別にどっちがいいとか悪いとかいう話じゃなくて、やはりこれからの一つの方向性として、そういう方向性、特に短期で見たときそういう方向性でいこうというようなお考えを竹中さん自身がお持ちではないかと私はそんたくするわけですが、御本人のお考えを聞かせていただきたいわけです。
竹中国務大臣 重ねて申し上げますが、三原則を置きかえたわけではございません。解釈という趣旨であります。
 その意味では、民間の有識者が提起された問題というのは、やはり今の日本の経済の現状を踏まえて、かつ、シャウプ勧告以来のさまざまな問題をやはり解決できるような非常に大幅なものでなければいけないということも踏まえて、民間議員の問題提起というのは大変納得できる点が多いというふうに私自身も個人的には考えております。
海江田委員 そうなってきますと、例えば、これは法人税なら法人税の考え方でいくと、もう一つのこの論点の方向性とすれば、課税対象を広くして、そして税率を下げよう、広く薄くという考え方があるわけですけれども。
 やはり活力という形でいうと、特に法人税について言うと、私は必ずしも広くということにならないんじゃないだろうかと。そこは当然のことながら租税特別措置法ですけれどもいわゆる課税の所得を小さくして、そしてそこで税率をどのくらい下げるかということが出てきますけれども、今税率について言うと、日本とアメリカというのは、実効税率でいうともうそんなに差がないわけですよ。地方税も入れて四〇%ぐらいのところで、日本もアメリカも四〇・〇幾つとかいうところで、四〇・八七と四〇・七五ぐらいしか差がないわけですよね。
 そうすると、今、何が日本の企業の活力を一番なくしているかというと、まさに、税率は同じなんだけれども、急速な償却の問題でありますとか、それから研究投資に対する税額控除の問題でありますとか、税額控除の方は若干別ですけれども、やはりそういう加速度的な償却をやって、結果的に課税対象の所得を小さくするということが今大切な問題なんじゃないだろうかというふうに思うわけで、そうすると、課税対象を広げて、そして税率を下げてということよりも、所得税なんかについてはそうかもしれませんけれども、法人税について言えば、必ずしもそうでもないんじゃないだろうかというふうに私は思うんですね。
 ただ、もちろん、租税特別措置法の中身をもう一回見直しをするんだとかそういう議論はあると思うんですが、ただ広く薄くということよりも、私は、活力ということを前に出すのならばそこは、それから国際的な、特にアメリカとの関係でいくと、税率についてはもうそんなに差がないわけですから、むしろそっちの課税対象の所得のところを新しい租税特別措置なんかで小さくしていって、そこに、今の税率でいいのか、あるいはこれは地方税の問題も若干ありますから地方税のあたりをいじってもう少し税率を下げるのか、そんな方向になってくるんじゃないかなというふうに思うんですが、いかがでしょうか、竹中大臣。
    〔中野(清)委員長代理退席、委員長着席〕
竹中国務大臣 税の論議の難しさというのは日ごろ痛感しておりますけれども、基本的な議論をすると、それぞれやはり皆さん大変興味のあるところをお持ちなものですから、必ず具体的な話になるということなのだと思います。
 基本的には、経済財政諮問会議は細かい制度設計の議論をする場ではないというふうに認識しております。非常に幅広く自由に議論をしながら、諮問会議と政府税調との間では当然のことながらすみ分けが出てくるのだと思っております。
 我々は、そういった法人税、所得税というような税目の話についてまだ議論をしておりませんので、今の段階で諮問会議はどう考えているかということはちょっとお答えできない問題でありますが、ただ、今の御質問の点に関連して一言申し上げるならば、事実関係そのものが、なかなかわかっているようでわからない問題というのが実は税の問題では非常に多いのだと思います。
 例えば、日米の税率の格差等々も、どこを焦点に据えるか。例えば、特にアメリカの場合、州の税制が複雑でありますから、カリフォルニア州で見るのか別の州で見るのかによっても違ってまいりますし、標準的な例えばその姿、これは所得税の方でいきますと、いわゆる標準世帯で見ていいのかどうか、標準世帯の割合というのはどのぐらい高いのかとかそういう問題もありますので、実は事実関係そのものが、法人の実効税率に関してもやはりまだ議論のあるところなのだと思うんですね。
 そういった御指摘も実はありまして、いろいろなところからいろいろな違った数字が出ているではないかというような御指摘も実はありまして、そういった事実関係も踏まえて今後議論を進めたいというふうに思っております。
 申しわけありませんが、所得税、法人税の税目の話についてまだ議論は全く至っておりませんので、基本的な考え方としては今申し上げたとおりのことでございます。
海江田委員 これは、それでしたら塩川大臣にお尋ねをした方がいいかもしれません。
 例えば、今言った法人税の研究開発の税額控除のところをもっと拡充すべきだとか、あるいは加速度償却のところですか、そういうところをやらなければいけないというふうなお考え、これは政府税調というより塩川大臣のお考えでもよろしいんですけれども、そういう認識というのはおありでしょうか、どうでしょうか。
塩川国務大臣 法人税の問題で、法人の利益と所得とが違う、これをどう整合していくかということなんかも問題がございますけれども、私は、まだ、今の税制調査会の関係、また諮問会議における税の議論というのではなくて、もっと根本の問題をしっかりしておいてもらわなきゃいかぬ、こう思うて、いわゆるどういうふうな考え方で、理念で税制改正に取り組むのかということと、それから、その結果は何を期待するのかということとをきっかり議論しておいてもらわな困ると思っております。
 私は、この前の経済財政諮問会議等におきまして、今回改革をしていく税の議論について根本的な問題がございました。先ほど竹中大臣のお話にございましたように、公正、中立、簡素というものを公正、活力、簡素という方向に一応やっていくということになったのでございますけれども、それでは、中立と活力、これをどのように解釈していくのかということについて、いろいろあると思います。
 私は、今、やはり税制は経済政策の一環として考えるべきである、非常に大きいファクターであるということは、これは認識しております。そして、そのためにはある程度の活力を与える方法を考えるべきだ。しかし、この活力ということが余り前面に出てしまいますと、減税、イコール減税に走ってしまう。その減税は、活力を上げた結果として、一般の、いわゆる国民全般に負担がかかってくるのではないか、こういう負担、懸念があることが一つ。それからもう一つは、活力とした結果、それでは、その活力をどこでどう財政の半面に取り返していくのかということも問題になってくると思います。
 そこで、私は、やはり税制には中立を維持しておいてもらわにゃいかぬということを主張しておるんです。その中立は、貧富の中立ということもありましょうし、それから官と民との中立ということがあるし、財政の中の収支の中立ということもある。中立という言葉は便利な言葉であって、本当は焦点がどこなのかということははっきりしないんですね。
 私は、その中立ということは、財政の中の中立ということに一つ考えを持っていきたいと思っております。そうするならば、財政の中立であるならば、減税もあるし増税もあるしということが財政の中立だと思っている。
 財政の中立を保つためには、一定の期間内にそれが完結されればいいではないかということ。そうであるならば、減税を先行して、ただし、増収を図る手段というもの、増収は、増税によるのか、あるいはそうじゃなくて経済活力の結果として出てきた増収分で図るのかということ。これは一つの経済計画の中できちっとして、その上において減税をいたしますというならば、それは一つの方法である。それを活力とおっしゃるならば、私は、その活力は有効であると思います。
 ただ、活力で、減税をしっ放しということにしてしまったら、過去において、国会議員というのは無責任なものでございまして、減税は大いに賛成、減税は賛成だけれども、増税になると皆反対、もう与野党ともそうですから、それではやはり国家の財政の秩序がもたないじゃないか。ですから、活力を主張するなら、減税に活力を置くとするならば、財源の問題をきちっと一つのセットにしたものにしてもらわなければ困るじゃないかと。
 その意味において、一つの期間、私はその期間を、プライマリーバランスを一つの視野に入れておりまして、そのために二〇一〇年という視野を持っておるんです。その間におけるバランスがとれる、いわゆる中立が完結できるという一つのスケジュールがあるならば、それなりの活力の使い方がある、私はこういうことを申しておるんです。
 その一つの方法、活力の中の問題として、法人税は確かにありましょう。法人税の中も余りにも複雑になり過ぎておるということ、それは、租税特別措置法とかいろいろなものの整理があるということでございますけれども、一つの問題は、先ほど申しました、法人の利益と法人の所得は違うじゃないか、これは非常に複雑な計算をされてきておる。ここなんかはこの機会に、いわば簡素化の一つの要因であろうと思います。
 また、個人の所得税に関しましても、公正ということは、うたい文句というよりも税の基本としてもらいたいというならば、簡素にして公正を期するということ、これは所得の空洞化をどうして埋めていくかということだと思うんです。そうすると、所得の空洞化を埋めるところについては、国民負担の、つまり給付と負担というものの関係をやはり根本的に国民に納得してもらわなければ、空洞の問題というものも解決していかないと思います。
 したがって、今回の税制改正について、私は、直接的に法人税をどうする、所得税をどうするかという議論の前に、そういう根本の問題を一回整理した上に立って、議論をさらに深化し、展開してもらいたい、これが私が財政諮問会議で主張した言葉であります。
海江田委員 今の、二〇一〇年ぐらいのプライマリーバランスをというのはかねてからの御主張でありますし、そこを視野に入れた減税であり、あるいは減税をもとに戻すといいますか、そういうものであるということはよくわかっているんです。
 ただ、きのう短観なども発表になりまして、少し底を打ったかなというような兆しも見えますけれども、まだやはりデフレ圧力というのは強いわけでありますから、そのデフレ対策でこれから期待されるものといったら、まさに税制を活用したデフレ対策といいますか、やはりそこしかないというのは、これは別に私だけじゃなくて大方の見方なわけですよ。そこは、やはりある程度のスピードも必要になってくるわけであります。
 そのときに、竹中大臣の方は、二〇〇二年と二〇〇三年の集中調整期間ということを言っていまして、この期間は特に経済活性化に重点を置き、これに資する戦略的な税制改革を実施する、減収の財源は構造改革の成果を活用する改革還元型の減税を考えると。これはペーパーには書いていませんけれども、口頭で、そういう論点もそういう形で整理されましたよという形でおっしゃったわけですから、民間の議員の方からそういう意見が出たんだろうと思いますけれども。
 この改革還元型ということでいうと、要するに、歳出の構造改革をやるから、そこで、例えば、先ほど来出ていた、むだな公共事業なんかを削って、そこで財源が浮いてくるだろうとか、あるいは、こういうふうにお考えがあるかどうかわかりませんけれども、国が持っている一定の資産を売却して、そこから収入を得て、それで減税の財源にやろうというようなことをお考えになっているんだろうと思いますけれども、やはりこれも一つの考え方だろうと思うわけで、それをこの二〇〇二年から二〇〇三年ということでいうんだったら、余り悠長なことは言っていられないわけです、もう年度もかわりまして、二〇〇二年度に入ってしまいましたし。
 だから、その辺のスピードと、それから、特にそういう減税だとか何だとかということをどういうふうにお考えになっているのか。今私がお話をしたことでいいのか。これは、竹中大臣からでも塩川大臣からでもよろしゅうございますが、お答えいただきたいと思います。
塩川国務大臣 私は、今回の税制の効果で、改革還元型ということを一つの考え方だと思っておりますが、それが二年、三年の集中期間では出てこない、そういう短期な効果は出ない。レーガン改革を見ましても、その成果が出てくるのは、やはり長いタームを経て出てきておる。サッチャーでもそうです。私は、そういうものは焦ってはいかぬし、また、デフレ対策に税制を適用しようといったって、これはそんな効果出てきません。
 私は、そうではなくして、やはり税制改革の効果というものは構造改革の上に出てくると思っております。ですから、やはり一定の期間、私はそこを一つの期間として見ておりますのは、二〇一〇年のプライマリーバランスを、これも無理だと思うんだけれども、一応二〇一〇年を期間にしなければ節度がつきませんので、二〇一五年でもいい、何でもいいといったらだらしがない、だから二〇一〇年ということを一応目標にして、プライマリーバランスの黒字化を努力する、ここに財政の節度というものを求めておるんですが、そのような効果の中において税制改革をやっていった効果というものは、それ以降においても出てくるのではないかと思っておりまして、ですから、集中的にやるということは、いわゆる構造改革を急がす期間を二、三年の集中期間にしましょうと。そうして税を改正した効果というものは、私はもっと後年度に出てくるものだと。
 そこでございますから、ですから、私は、財政の中立というものについてこだわるのは、減税だけを先食いされてしまったのでは、それじゃその効果はどのように出てくるかということを、これを国民にはっきりと明示してやらないかぬ。それは増収の形で出てくるのか、あるいは増税の形でそれをカバーしていくのかと。その中立性をとるのにどういう方法でとるのかということを、これをセットにして国民に説明しなければならぬのではないか、こういうことを言っておる次第です。
海江田委員 今、塩川大臣がおっしゃった、改革還元型の減税などというのは二年、三年でできるものじゃないよということは、これは竹中さんと随分違うんじゃないですか。竹中大臣はやはり、これは特に記者へのブリーフの中で、紙には書いていないで、さっきも言いましたけれども、さっき私が読み上げたような文言を使っているわけですから、二〇〇二年とか二〇〇三年の集中調整期間については改革還元型の減税を考えるというようにおっしゃっているわけですから。それはどうですか。
塩川国務大臣 私もそう言っていますが、改革還元型であると。二、三年というのは改革の方に重点を置くという意味であって、その二、三年の集中的な期間に、税を改正したいろいろな効果、活力というものが直ちに出てくるという期待は難しいということを言っておるので、二、三年で構造改革のために集中的にやらす、そのためのインセンティブとしての税制を使うのであって、税制を変えた、そして構造改革変えた、その成果というものは、二、三年でそれを回収できるものじゃない、それは長いタームが必要であると。そのタームを入れたものを一つの、その中立の中に組み込んでもらいたい、こういうことを言っておる次第です。
竹中国務大臣 今の財務大臣のお話のとおりだと思います。
 この議論、常に言葉がひとり歩きして、先行減税とか改革還元型といった場合も、それぞれがちょっと違ったとり方をされますので、これはマスコミがそういうふうに特に書き立てるものですから私たちも困っているのでありますが、まず、これからの二年間は集中調整期間であるということは、これは閣議決定された「改革と展望」で一つの位置づけを与えているものでございます。
 その中で、民間の委員から改革還元型減税という意見が出たのは、改革の効果が出てくるということではなくて、改革の努力をしましょうと。これは歳出削減であったり、別の税収の確保であったり、資産の売却であったりいろいろ、これは努力ですから、そうした努力で財源が確保できたときは、それを減税しましょうということなわけです。
 したがって、先に減税をやって、後からそれを考えるというような、そういういわゆる先行減税の議論というのは、私の知る限り、民間有識者議員の中でもだれもそういう議論は唱えていないと思います。その意味では、財政中立だ、財政中立で考えるといった財務大臣のお話と、実は非常にコンシステントなわけです。
 ただし、この二年間については、財政の規律をもちろん守る、そのために改革努力をして、そこで出てきた財源の範囲で減税を行って、経済の活性化をする。逆に、経済活性化のための減税をしたいのであるならば、やはり改革努力をして、財源を、まあ歳出カットとかそういうことをしなければいけない。その意味では、先ほどから財務大臣がおっしゃっていることと、私ないしは民間議員が主張していることというのは実は同じことなんだというふうに御理解をいただきたいと思います。
海江田委員 今私が読み上げましたのは、別にマスコミが勝手にそう言ったんじゃなくて、それは竹中さん自身が記者に向かって、ブリーフですか、会見でお話をしていることでありまして、これを読みますと、さっきもお話をしましたけれども、それは努力をした結果であるということでありましょうけれども、やはり改革還元型の減税を考えるということをやはり言っているわけですよ、これは。まあ、民間の議員からそういう考え方が出たということで、だから、ここは特に、二〇〇二年と二〇〇三年の集中調整期間について。それで、二〇〇四年から二〇〇六年度については、経済基盤を強化する期間、経済基盤強化期間で、効率的な財政構造をつくり上げつつ税制改革を完成させるという形で、やはり二〇〇四年からとそれから二〇〇二年、二〇〇三年を分けているわけですよ。
 これはもちろん、改革工程表の中で集中改革期間だという分け方、区切りだろうと思いますけれども、この二年間には、二〇〇二年と二〇〇三年の間については、四年以降とは違った手を打つんだよということをやはり言っているわけですから、それが改革の努力の結果であるかもしれないけれども、やはりできたらそこで減税をやりたいということはお考えなんでしょう、これは。
竹中国務大臣 もう一度申し上げますけれども、そこは実は財務大臣がおっしゃっていることと民間議員が言っていることは同じなんです、だと私は思います。
 例えば、これはちょっと仮定の話をもうある程度せざるを得ませんけれども、これからの集中調整期間とそれ以降の期間とどのように対応を考えるのか、何がこの集中調整期間、特に活力を重視するのかという点に関して申し上げますと、仮に歳出削減を大幅に行えたとして、まあこれは難しいわけですが大幅に行えたとして、どれだけかの、何がしかの財源が確保されたとしたら、この財源の使い方は二通りあるわけですね。これは、国民に還元するもの、減税で還元するか、いやいや、そもそも大変赤字が大きいんだから、赤字を減らしましょうというやり方もあるわけですね。そうではなくて、まあ国債を減らすということも重要かもしれないけれども、この二年間に関しては、経済活性化に使うということを優先させましょうと。だから、この二年間とそれ以降について考え方を分けているわけです。
 ただ、いずれにしても、どちらの場合も、それは財源のないようなところで減税をするということはやはりやるべきはない、これは本末転倒であると。これは民間議員の意見も財務大臣の意見もみんな一致しているわけでありまして、その改革還元型減税という言葉からちょっとイメージされるものがそれぞれ人によってどうも違うみたいで、この言葉がいいかどうかということも我々考えますけれども、意図しているところはまさにそういった、財源が確保された場合に、国債の、赤字を減らすということを優先させるのか、経済活性化を優先させるのか、その点において、集中調整期間というのを少し特別に扱いましょう、そういう主張になっているわけであります。
海江田委員 塩川大臣、その点はそれでよろしいわけですか。塩川大臣、今の考え方でいいわけですか。聞いていましたか。――聞いていなかった。この集中期間については、歳出削減の努力をやって、そしてそこである程度のお金が出てきたら、そのお金を借金減らしに使うのか、それとも減税に使うのかと言われれば、減税に使う、そういうことですよね、これは。
塩川国務大臣 それは減税に使う方が有効ですね。
海江田委員 いや、それならいいんですけれども。ただ、では、その場合の減税ということは、まあこれから議論するんでしょうけれども、そこの減税というものについてのある程度の方向性というのは、具体的にどういう中身にやるかということについても、これはもう二〇〇二年、二〇〇三年の話ですから、ある程度やはりスケジュールを考えておかなければいけないと思うわけですよね。それはどのぐらいまでにそういう具体的な中身について結論を出すおつもりなんですか。
塩川国務大臣 私は、本当に改革を集中的にやるということ、そのためにはインセンティブとかつけなければ改革ができない、構造改革ができない、これは当然だと思うんです。そうならば、そこに減税ということが出てくるのは、これはもう当然の理屈だと思っておるのですね。
 そうすると、その財源をどうするのかということなんです。私は、集中期間二年とか三年とかいうふうに限ってやるならば、そこに思い切った減税の措置も講じなければならないだろうと思います。そうしたら、そのための財源は、財政の節約ということはあります、これだけではとても賄い切れない。そうすると、ほかの財源、例えば国有財産を売るのか何をするのかという、いろいろな財源を持ってきてそれで充当しなければ効果は出ない。いわば期待もされないようなちっぽけな減税であったなら、構造改革の牽引車になりません。私は、今度はそういう牽引車になるような、構造改革を引っ張っていくような、そういう措置がやはり必要であろうと思っております。
 そのためには、どういう方向で構造改革をするか、産業界をどこへ引っ張っていくか、誘導していくのかということ、政府がやはり絵をかかないかぬ。今、何でもかんでもやりなさい、やりなさい、構造改革だと、これでは、産業界自体も焦点がつかみにくいと私は思うのです。
 私は、これは古い考えかもわかりません。わかりませんが、ちょうど終戦直後に私が復員してまいりましたときに、傾斜生産で日本の経済を復興させるんだとやりましたね。鉄と石炭をリンクして、その上で三白を入れてやりましたね。ああいうことが、今の産業活性化の中に重点施行するものが必要だろう。ここに政府は重点を置いて産業界の復興を図る、いわゆる活力社会に構造転換を図るということもやはりそれに必要だろう。そういうものと税制改正とはひっついていかなきゃいけない、私はそう思うのです。
 それに対する財源は政府が責任を持って考えていくということも必要だ。その中身は何やねんと言うたかて、私は今はわかりません。わからぬ。だから、これから議論をかけて六月までの間に考えるということで、今海江田さんがそんなことを言うたかて、私は、これだということを答えようがないということ、しかし考え方は一つの考え方として持っておるということを御披露しておるんですよ。
海江田委員 六月までに、そういうまさに引っ張っていくような、産業になるのかどうなるのかこれははっきりしませんけれども、方向性というのは決めるということでいいわけですか、理解としては。
塩川国務大臣 六月までにそういうことをきちきちっと議論していく。そのためには、入り口で一番根本な、公正とはどういうことで公正の実をとっていくのか。中立というけれども、それは、活力をつけるための中立。私は、減、増というものを一体としたスケジュールを提示して国民に納得してもらえるようにしなければ、とてもじゃない、耐えられるものじゃないと思う。簡素化というものは、先ほど言いましたような、いわゆる納税システムを、計算システムを、活力化する。活力化することは、逆に活力をつけることにもつながってくると思うし、そういう基本を、ここの四月、五月、六月までの間に、入り口できちっとそれをやっておいてもらいたいということを言っておるのです。
 それをなくして、直ちに、所得税をどうするんだ、法人税をどうするんだ、消費税の問題はどうだとかそういう議論、国と地方との分担をどうするんだ、そういう個別問題に入ってしまったら、ごちゃごちゃになってしまって、ちゃんこなべを煮ているようになってしまう。それはだめだ。だから、きちっと主体を、順序を踏んで税制議論を進めてもらいたいということを言っておるのです。
海江田委員 個別の議論に入るな入るなというのは、随分新聞報道もありまして、そういうお考えだということはよくわかるんですけれども、やはりこのスタート台のところの、先ほどからお話をしています第八回の経済財政諮問会議というのも、その意味では、今の議論だって余りよくわからないので。それから、幾らその報告を読んでもわけがわからぬわけですよ。
 だから、そこのところはもう少し整理をしていただかないと、それこそ発表の方式だって、冒頭に述べましたように極めて異例な方式で、私は、だから早く議事録の要旨が、これまでの議事録の要旨、議事要旨というのは、読めば大体わかるわけです。それで、どういう方向だなというのはわかるんですけれども、ここの第八回になりましてまた急にわからなくなっているんですよ、これは。新聞だってそれぞれウエートの置き方が全然違うし、それから、私自身だって、何が決まったのかということが、方向性あるいは論点が、どこがどういうふうな形で、一つ一つについて決まったとか決まらないとか、法人税や所得税の中身が決まったなんて毛頭思いませんけれども。
 今の二年の間の減税という話だって、それはとにかく集中改革期間だから一生懸命改革をやって、その改革の成果が出たら減税をやるということでいえば、二〇〇二年というのが入っているわけですから、そうすると、二〇〇二年、年度だろうと思いますけれども、二〇〇二年度というのは来年の三月三十一日までですから、例えば、そういう方向性が決まったら、それを秋の臨時国会だとか何だとかで議論しなきゃいけないわけですよ。だけれども、そこのところがまだ全然ないわけで、私は、その意味では入り口のところで少しもたもたしているなと。
 特に財政諮問会議と政府の税調が意見がどうも合っていないんじゃないだろうか、はっきりと方向性が決まっていないんじゃないだろうかということに、これはよくそういう書き方でしていますから、私は余りそういう書き方はとりたくないものだから、どういう考え方なんですかということを私なりにいろいろ尋ねてみたわけですが、全然わかりませんので、そうすると、やはりそうなのかなというふうに思ってしまうわけですよ。だから、やはりこれはもう少し明確にした方がいいわけで、もし本当に政府税調とそれから経済財政諮問会議との間で意見の争点が、違いがあるんだったら、ここはやはり違うよという形ではっきり出した方がいいんじゃないですかね、ここのところは。
 だから、活力という言葉を使うと、どうしてもそれは、とにかく行け行けどんどんで減税をやってしまえと思われるから、これは活力という意見も出たけれども退けて、とにかく中立でいくんだとか、やはりそういうふうな形で整理をされた方がいいんじゃないですかね。それを、中立の解釈に活力があるというような書き方じゃ全然わからないですよ。
塩川国務大臣 まだこれは議論を始めた、今ちょうど、料理でいいますと、何をつくろうかとメニューをちょっと書いてみて、食材を当たっているところでしょう。それで、食って、甘いか酸いかはっきりせいということはそれは無理や。そうじゃなくて、これからどういうふうにしようかと。だから、基本の問題、何を使うか、素材をどう集めるかということと、どんな料理をつくるのかメニューをきちっとしておこう、そこの議論をしておるので、それで早く味のよしあしを言えといったって、ちょっと無理だ。
 それから、政府税調と諮問会議とまた党と意見がばらばらだ、そういうふうなことでしょうが、そういう議論の整合性なんというものは、まだ全然始まっていないんですよ。これを、私はさっきも言っていますように、政府税調も基本問題小委員会で、さっきも言いましたような原則をきちっと早急に、できるだけ早くまとめると言っていますし、党の税制調査会もちょうど今議論が始まったところなんです。遅いじゃないかとおっしゃるけれども、予算が三月に上がったんです。予算が上がるまでにこの議論をしていたらもう予算委員会もぐちゃぐちゃになってしまうし、だから、予算委員会を早く終わって、予算を成立させてもらったら、そうしたら、ここから新年度のスタート。新年度というと十五年に向かってのですよ、十五年度に向かってのスタートを切ろうということですから、十分に時間はあります。六月までに、海江田さんのおっしゃるような、批判してもらうような案はきちっと出しますから。
海江田委員 それは本当に、さっきデフレ対策というお話もしましたけれども、そんな近視眼的なことで考えているんじゃないという御意見もありましたけれども、前回の二月の二十七日に出しました政府のデフレ対策というものがやはり甚だ不十分であったということは、もうマーケットはみんなそういう見方をしているわけですから。
 その次に、財政といったって、公共事業なんかの財政出動でない、やはりもう一つの税制をどういうふうに変えていって社会に活力を持たせて、しかも経済の活性化につなげていくかというのが、みんな一番そこに注目をしているわけですから、そこのところで、余りいつまでも入り口のところで、私は申しわけないけれども、やはり入り口のところでもたもたしているというような印象を持たざるを得ないので、やはりそこは、はっきりとわかりやすい形で、竹中さんの言っていたのもきちっとそれが文章になっていれば、ああ、なるほどそういうことかなということでわかりやすいんですけれども、文章になっていなくて口でしゃべって、文章は本当に、このわけのわからない、まさに材料がずらっと並んでいるだけという状況ですので、それはやはり、恐らくこれから逐次やっていくわけですから、一日も早くまさに議論できるような中身をまず議論してくださいよ。
 それでそこの議論を、なるべく、これはわざわざ屋上屋を重ねるじゃないですけれども、政府の税調とは別個に諮問会議でその議論もやろうという話になったわけですから、やはり、それは一つには公開性というか透明性というか、できるだけ幅広くその中の議論を外に向かって明らかにして、そしてその議論が国会などでも議論をされるとか、あるいは全国、タウンミーティングで回っておられるわけですからそういうところで議論されるとか、何かそういうような形に資するものにしていただかなきゃいけないわけで、申しわけないけれども、本当に随分時間を使っちゃいましたけれども、この間出た三枚紙じゃ、これについて例えば国会で議論しろといったって、私は私なりにやってみたけれども全然議論になっていないわけですよ。やはり、議論に資するような議論をまずやってもらうというのが私のお願いでございますので、それはぜひお願いをしたいというふうに思っていますね。
 余りいろいろな思惑だとか何だとかで紙を出すとか出さないとかいうことでなしに、そこは本当に、どういう中身が、話し合いが行われたのか、その論点の整理はこういうことなんだということでやはり書いていただかないとわかりませんので、ぜひそれはお願いしたい。これは竹中さんへのお願いですね。どうですか。
竹中国務大臣 基本的に総理からは、政府税調、経済財政諮問会議、それぞれ重複を恐れずに自由に議論しろというふうに言われております。その中でおのずと役割分担というのはできてくるんだと思うんですね。
 海江田委員の御質問に対して財務大臣が先ほど答弁されたとおりだと私は思うんですが、やはり議論というのは、議論を広げていく段階とそれを収れんさせる段階があるんだと思うんですね。広げる段階のほんの今入り口のところでありますので、だから論点整理、何が決まったのかというふうにおっしゃいましたけれども、論点について民間議員が問題を提起した段階でありますから、別に論点を決めるということでは私はやはりないんだと思うんですね。これを出発点にして議論を今広げていく段階でありますから、そのプロセスにおいてはいろいろな議論をオープンにするということにやはり意味があるのだと思います。
 議事要旨は明日出るというふうに聞いておりますので、その中で、ペーパーにする方がいいのか口頭でやる方がいいのかというのはいろいろな御議論があるかもしれませんが、そこは自由にオープンに議論をしておりますので、その議事要旨等々を参考にしていただいて、ぜひその内容については把握をしていただきたいと思います。
 引き続きこういう形で議論を深めて、いましばらく、やはり論点を広げるようなことをやっていかなきゃいけない。その中で、特に諮問会議としては、政府税調ではなかなか扱えないような大きな枠組みの問題を、地方との税源の移譲でありますとか、例えば社会保障との関係でありますとか、そういうことについてさらにまだ議論を広げていく、そういう段階ではないかと思っております。
海江田委員 深めてじゃなくて広げてということで、よくそこのところは、そういう状況なんだろうというのはわかりましたけれども、やはり、深める作業それからまとめていく作業というのは、私は本当にかなり急いでいただかなければいけないと思っていますので、それは六月までにしっかりやっていただきたいというふうに思うわけです。
 塩川大臣、一つだけ、これは何か大阪でシンポジウムでお話になったということなんですが、相続税と贈与税の一本化というんですか一体化というんですか、今の制度では当然のことながら生前の贈与を重くしているわけですけれども、それをならして、一生累積課税方式というわけですか、そういうお考えがあるということですが、それはどんなお考えなのかお教えいただきたいと思います。
塩川国務大臣 その上に、我が党ではということがついておるんです。党では、そういう相続税と贈与税を一体化した制度を導入してはどうかということはある。私はこれに興味を持っておって、勉強してみたいと思っていますということを、そう言っております。
 これは、今や人生八十年になってきたんですね。八十年過ぎてまだおやじがぎゅっと財布を握っているというのは格好悪いですよ。やはり、適当なときに息子に譲って息子に活躍さすような場をつくるべきだと思うんです。そのことを、死なぬと相続税になりませんから、おやじが生きておる間、贈与の形である程度それができるようなことがあってもいいんじゃないか。私は、そういうことの発想をちょっとこれはおもしろいと思って検討してみたいと思っております。
 ただ、直ちにそれが制度になるかどうかはまだわかりませんけれども、検討に値すると思うんですが、海江田さんはどう思いますか。あなたは税の専門家だから、これはひとつ一緒に研究しておいてくださいよ。
海江田委員 八十歳になってわあっと握っておるのは格好悪いということですから、それはもう、大臣はまだ八十になっていませんけれども、ぜひ大いにこれから散財をしていただかなきゃいかぬと思います。私もいろいろ考え方はありますが、今逆質問ですので、ほかに質問したいことがたくさんありますので、ちょっとここではお話をしませんが、やはり、我が党は、特に住宅絡みで減税を、特にローンの利子控除なんかやるべきだという考え方ですし、そういう住宅資金の贈与については党の中ではいろいろな意見がありますけれども、私なんかはやはり、住宅資金の贈与の枠をなるべく拡大するようにというふうに考えていますので、また、なるべく早くそちらも出していただければこちらも、実際にもう幾つか出しているところもありますので、お互いの議論をやりたいと思っています。
 本当に時間が少し短くなりましたけれども、きょうはこれだけというわけにはいかないわけでございまして、先ほどからずっと柳澤大臣には黙ってお座りをいただいているわけでございますけれども、一つは空売りの問題で、今株価が何とかこの三月危機というのは乗り切った、その中では株価が随分戻してきたからだということで、その株価の戻しの大きな理由の一つに空売り規制があったわけですが、この空売り規制について、アメリカのCEAのハバード委員長が発言をしていて、それに対して大臣は随分、参議院の財金委員会ですか、アメリカと同じことをやっているのにアメリカから非難される筋合いじゃないというようなお話をされたやに聞いておるんですが、この空売り規制について、やはり、それは株価の維持にというかあるいはむしろ株価のリフティング、底上げに随分効果があった、そのような認識をお持ちですか。
柳澤国務大臣 私がハバード委員長との話で何か反論をしたかのような受けとめ方をされておられるようなお話がありましたけれども、必ずしもちょっと、そういう気持ちではありませんでした。ハバードさんと実はお会いしていろいろなお話をしたんですけれども、そのときに、もしもう少し時間があって、ハバード委員長の方から、この前の空売りのルールの改善がどういうことですかというようなお話があれば、私もきっちり説明したのにな、それは大変残念だったんですというお話をさせていただいたということで御理解をお願いしておきたい、このように思います。
 それから、空売りの規制というか、一概にそういうふうに言われておりまして、そういうふうな呼び名ですからそれでお話を進めさせていただきますと、これが株価にどういう影響があったかというのは、正直言ってわかりません。これはもう、株価というのは、そのときに上げの要因というのは、アメリカ経済の見通しが非常に強気になってきたとか、あるいはそれの日本への影響についていろいろ明るい見通しをする人も出てきたでしょうし、さらに、たまたま日本経済の在庫調整というようなのもそれなりに終わっていくんじゃないかというようなことが同時に出ておりますので、どれがどういうふうになってというようなことは、私ども、これを責任を持って申し上げられる分析もないし、そういう立場でもない、このように申し上げざるを得ないということでございます。
海江田委員 そんなことはないんで、それはやはり、片一方で空売りの規制をやっておいて、もう片一方で指定単を使って年金の資金を入れて、株を、維持というよりも株価を上げた、これはもう紛れもない事実であります。売り手を規制しておって、そこに買いの資金が入れば、これは上がるのは当たり前で、それは、まさに金融庁があうんの呼吸でおやりになったことに私は間違いないというふうに思っているわけです。資料だって幾らだってあるわけですから、そういう手口の、投資主体別売買動向なんて見ていればわかるわけですから、これは。むしろ、そういう公的資金で買いを入れたなんというような話を一切されずにほかの要因ばかり挙げましたけれども、その言わぬところに真実があるというのが今のお話の一番の証左だろうと思うわけです。
 ただ、この空売り規制の問題というのは、特に今度の場合、これはアメリカが実はやっているわけですけれども、直近の株価以下では空売りできないというのが一番のポイントです。そうすると、今度本当に空売りをやろうと思ったら、その前に現物を売っておいて、特に外資がそうなんでしょうけれども、持っている現物をまず売っておいて安くしておいて、そこから空売りが出てくるという形になるわけです。その意味では本当にもろ刃のやいばで、確かに三月はそういう形で乗り切ったかもしれないけれども、これからの株価の下落の不安といったときに、やはり規制は当然やらなきゃいけない。だけれども、そのやった副作用というものもやはり出てくるというふうな認識は当然持っていなければいけないわけで、そういう認識が果たしておありなのかどうなのかということについて、私は大変疑問を持っているんですね。その点についてはいかがですか。
柳澤国務大臣 要は、空売りそのものがいけないなどというようなことは全く我々は考えていないわけです。これはもう今、空売りの取引というのも取引の中で相当のウエートを占めておりまして、空売りそのものが市場として大きな要素になっておるし、そういうことがまた市場の厚みを増すゆえんだと我々は本当に考えていまして、そういう気持ちは全くないわけです。
 ただ問題は、これを作為的な相場形成の手段に使う、そういうことは不公正であるということを我々は申し上げているわけで、当面、アメリカ並みの、直近の出合いの価格以上のものにしてもらいたいということを申し上げましたが、今言ったように、直近の出合いそのものをまた崩していくという手法もあり得るじゃないかというようなことでございますけれども、そうなればそうなったで、またそのこと自体、つまり、そういう直近の相場と同じであったならばいいよ、それからまた、いや、それはまずくて、それよりもちょっと上ならいいよというのも、これは要するに、作為的相場形成というのはけしからぬということを言っているわけでありますから、そういうラインで我々は対処していくということでございます。
海江田委員 これは言わずもがなのことで、ほかの手があるかといったらないわけですが、ただ、そういうリスクを含んでいるということは、まさに言わずもがなですけれども、あえて指摘をさせていただいたという話なんです。
 あとは、昨日でペイオフが解禁になったということで、柳澤大臣も昨日記者会見をやって、各金融機関は健全性の基準を満たした財務状況をもって本日を迎えたという形で、その意味で安全性を強調していたわけですが、本当にこれで金融機関は安全なのかという素朴な疑問ですね。どういうふうにお考えですか。
柳澤国務大臣 私が申し上げたのは、そこに言っていることに尽きているというわけでもないんですが、そこに言っていることを客観的事実として申し上げたということでございます。
 これからの安全性について、あるいは健全性については、これはもうみんなが努力をしていく。その努力の過程がまさに構造改革になるだろうという説明を私としてはさせていただいたということです。
海江田委員 これもさっきの株価と同じなんですが、やはり問題はこれからなんじゃないかというふうに考えているわけで、確かにこれからペイオフの解禁だよということで、今起きているのは、同じ銀行の中の普通預金に定期性の預金から、これは決済性の預金ですけれども、普通預金にシフトが起こっているということです。これから、やはり普通預金から別の預金にという動きは当然起きてくるわけですよね、これはまさにこれから。それから特に、例の大手の銀行に対する特別検査の結果がこれから出てくるわけですから、これは日付はいつごろになるかということがもしわかっていれば、大体二週間後ぐらいだと聞いているんですが、後でお答えいただきたいんですが。
 そうすると今、いわゆる各自治体の資金ですよね。自治体の資金が、その特別検査の結果が出てきて、それで東京都なんかも、一部こういう基準でやりますよということを発表しているわけですけれども、東京都だとかそういう都道府県レベルじゃなくて、もっと小さな千代田区だとか港区だとか区のレベルとかで、そういう特別検査の結果などを見ながら、まさにどこへ預けたらいいかということを実際に考えてきて、そして、これから来年の三月三十一日までの間にそういう動きが出てくるわけですよね。
 そうすると、例えば中部銀行なんというのが一番いい例で、あそこは最終的には破綻をしましたけれども、その破綻の経緯というのが、静岡県の預金の預け先になっていたわけですけれども、どうもそれを引くんじゃないだろうかということで、個人の預金者が、沈没する船から引き揚げなきゃいけないということで、どんどん解約が進んでいった。
 そういう話があって、その意味では、地方の銀行の破綻だとか、そういうまさにこれまで公的な資金の預金先であったものが、そこから外れるということをきっかけに個人の資金移動というものが起きて、それからまた、市場から資金が、インターバンクのところから取れなくなるとか、そんなような動きもあって、それで結果的に破綻をするというようなケースが出てくると思っているんですけれども、そういう危機感というんですか、それについてはどういうふうにお考えをお持ちなんですか。
柳澤国務大臣 とりあえず定期性預金について、私ども、ペイオフの時代に入っているわけですけれども、次の段階は流動性預金、こういうことになるわけです。その間においてまたいろいろな動きが出てくるということは、ある意味で当然のことだというふうに思っております。
 そういう中で、地方公共団体の預金の動向というものがいわばシグナル的な意味を持つんではないか、こういうことでございますけれども、この点については、私が今ここの段階でいろいろ申し上げるというのは少し時期尚早かなというように思っております。
 この点について、これまで私が申し上げてきましたのは、もう一つの側面として、地域の公共団体には地域の経済に対して責任を持つという側面もこれは正直言ってありますので、地方公共団体のようにいろいろな情報というものも一般の預金者に比べればはるかにたくさん持てる、そういう立場にいる人たち、そういう方々は、もっと事前事前に、自分だけ助かりゃいいというようなことではなくて、その金融機関、一度そういう指定金融機関にしてこれまでいろいろな取引をされてきて、それが同時に地域の経済、産業にプラスの役割を演じてきたというものであれば、できるだけそういうものが続くような形でいろいろ監視をし、また、いろいろな直接間接の働きかけというか、そういうようなものがあることによって、その金融機関がもっとしっかりしていく。そんな簡単に流動性の危機が招来するような、そういう体質でないものに改善していく、そういう動きがペイオフで期待される我々の金融機関における構造改革であるし、また、金融界における構造改革に結びついていくんだろう、このように私は考えているわけであります。
海江田委員 今ちょっと話が二つ入りまじったように思うんですが、前半の方では、地方公共団体が、そんな軽々にこれまでつき合いのあった地方の金融機関と取引をやめるんじゃなくて、もう少し、まさに地域全体を支えていくような観点からそういう銀行とおつき合いをやっていけというようなお話だったと思うんです。
 ただ、現実の問題として、今、さっきお話をした定期性預金の取り崩しをやっているというのは、やはり額が大きいですから、だからボリュームでいけば一番やはり地方公共団体が多いわけですよ、これは。今まだ流動性のとか、流動性というか本当は決済性の預金ですよね。先ほど大臣も流動性と言いましたけれども、貯蓄預金なんか流動性ですけれども入っていませんから。
 決済性の預金に、今のところは一時避難をしているわけですけれども、これからそれがいよいよ次のところへ出ていくということになると、これはやはりかなりそれを、地方公共団体はそういう形でそういう銀行とつき合いをやっていけといったって、地方公共団体は、区民や市民の、住民のお金を預かっているわけですから、個人はまだ自己責任という形で、自分のお金を預けているわけですから自分で責任をとりゃいいわけですけれども、公共団体がそんな形でやはり責任をとれないわけですから、これは当然いろいろな動きは出ていくわけで、そこに期待をするんじゃなくて、やはりそこは金融庁がきちっとした検査をやっていくとか、それこそ早目の指導をやっていくとか、やはりそういうことの方に私は尽きるんじゃないかなというふうに思うんですがね。
 公共団体に金融機関とのつき合いを求めるというのは私は無理だというふうに思っていますが、もう一回いかがですか。
柳澤国務大臣 もちろん金融庁がやるというのはもう大前提で、これはもう言うまでもないことでありますが、そのほかの局面でどういうことがあるかといいますと、現実に私が言ったようなことが起こっているんです。私が言ったようなことが起こって、やはり地域経済としてはこの銀行を守っていくんだというようなことを地方公共団体がやられることが現実に起こっています。
 そういうようなことで、では、ただ協力だけすればいいのかというと、そういうことじゃないですね。やはりこの金融機関が本当に体質が強いものになっていただかなきゃ困りますよ、こういう働きかけ、こういうことが当然起こるでしょう。それはそれで、そういうものを別に排除して、いや、あなたがそんなことをする必要はありませんよと言うことはないでしょう。そういういろいろな人たちの監視だとか働きかけの結果がその金融機関の構造改革を通じての体質の強化に結びついていくだろう、それがペイオフというもののある意味で政策的な効用でもあろう、こういうことを私は申し上げたわけです。
海江田委員 このペイオフなんですが、いろいろな調査なんかで、大体六六%ぐらいの人が、これは電通の調査ですかね、何かペイオフについて知っているということなんです。ただ、その知っておるというのは、ペイオフがいよいよスタートしたと新聞やテレビがあれだけ大きく報道すればその程度のことは知っていると思うんですが、ただ、その中身についてやはりまだ非常に理解をされていないというんですか、きょう、せっかく竹中大臣にお越しいただきましたけれども、A銀行に五千万円定期預金があった。このA銀行が、きょうならきょうでいいです、破綻をした。そうすると、概算払い率というのがあって、これが五〇%だというふうに計算をすると、この人の場合は幾ら戻ってくると思いますか、これは。ちょっと突然の質問で恐縮ですが、常識の範囲で。五千万円定期があって、それで破綻をした。定期ですから当然ペイオフの対象ですが、まあ、資金贈与もあるわけですけれども、概算払い率が五〇%というと幾らになりますか、戻ってくるのは。
竹中国務大臣 これは、その内容によってよくわからないのではないでしょうか。
海江田委員 非常にわかりやすいんですよ。概算払い率が五〇%という話ですから。わかるでしょう。わからない。結構これ、みんな知らないんですよ。要するに――いいですよ。だから、一千万円は保険の方から払いますが、残った四千万円のあれが五〇%だから二千万円で、トータル三千万円戻ってくるわけですよ、これは基本的に。委員長もちょっとけげんな顔をしていますが。
 だから、金融庁のパンフレットなんかも見てみたわけですけれども、非常に報道なんかも不正確で、金融庁なんかも、最低保障が一千万円だみたいな書き方をしているわけですけれども、最低保障という言い方も余り正確じゃなくて、NHKは比較的正確にやっているんですが、確実に戻ってくるのは一千万円までですよ、こういう言い方をしているわけで、元金についてですね、金利もそうですけれども。現実には、その一千万円を超える金額もむしろ戻ってくるケースの方がほとんどなわけで、まさに竹中さんがおっしゃったのは、債権債務の関係でもって、債務超過の程度がどのぐらいかということで、それを概算払い率でぱっと瞬時に払い戻しをして、そういう話なわけです。
 これまでの破綻の例でいけば、北海道拓殖銀行なんか概算払い率が八〇%ぐらいあるとか、あれは流動性の危機からきた話ですから。一番悪かったので木津信用組合で、あのときは、今の時点で計算をすると大体二〇%ぐらいしか概算払い率がないというような話ですから、二〇%から八〇%ぐらいの中でそれぞれの破綻のケースによって違ってくるということで、必ずしも一千万円だけしか戻ってこないということともまた全然違うわけですよね。むしろ、金融庁なんかがしっかりと検査をやっておればそこの概算払い率は高くなるはずですから、そうすると、先ほどの例じゃないですけれども、八〇%で計算すると、五千万の定期が仮にあったとしても、四、八、三十二ですから、四千二百万円戻ってくるわけですよ。
 だから、そういうような情報というんですか、やはりそういうことも少し――それから、もちろん、あと相殺というシステムがありますから、借り入れがあればそことの相殺ができますので、その相殺と概算払い率をうまく利用すれば、そんなに、五千万円あった人が四千万円なくなっちゃうとか、三千五百万円なくなっちゃうとか、そういう世界でもないわけで、そういうことをもっと、PRといいますか、やはり定期性がどうしてそこまでに行くか、それで、いよいよ来年になったらまさに決済性の普通預金なんかがペイオフになるわけですから、そういうときにそういう情報を、これからでも遅くはないわけですから、大いにPRをするというか、正確な情報を与えるということが私は必要だと思いますので、ぜひそういう努力を金融庁にやっていただきたいと思いますので、その点の御答弁をお願いします。
柳澤国務大臣 率直に言って、これまでも一生懸命努力したつもりですが、さらにいろいろ改善の余地があり得ようと思いますので、それらについてはしっかりした改善をして、きちっとした判断あるいは理解が行われるようにPRにさらに努めていきたい、このように考えております。
海江田委員 時間が来ましたので、これでやめます。ありがとうございました。
坂本委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    正午休憩
     ――――◇―――――
    午後二時一分開議
坂本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。中塚一宏君。
中塚委員 自由党の中塚でございます。
 年度がかわりまして、三月危機だとかなんとかいろいろなことが言われていたわけですけれども、今までは、危機の対応の話と、そうではなくあるべき姿というのが、ごっちゃになって議論されていたところがたくさんあって、そういう意味では、そういうクライシスというものがなくなった分、冷静に議論をすることができるんだろうなというふうにも思うわけです。ただ、では何が変わったかというと、株が上がったというだけのことで、実態的には何にも変わっていないだろうなというふうな基本認識をもとにお伺いをしていきたいというふうに思いますが、その経済の問題に入る前に、まず、ペイオフということと関連をして、朝銀問題について伺いたいというふうに思います。
 ペイオフが解禁をする前に、朝銀信用組合、受け皿をつくらなきゃいけなかったということで、四つの信用組合が、二十日ですか、金融庁に認可されたということで、朝銀の処理策自体はペイオフ解禁前に決着をしたということになるんだろうと思います。ただ、いろいろなことが言われてきた信用組合であり、それこそ十六の朝銀がつぶれて、そのうち十信組には、十一月までに六千二百三十一億円の公的資金というのが受け皿に投入をされてきたという経緯もあるし、またそれがつぶれてしまったということ、そして、その実態解明という中で不正送金疑惑というふうな話まで出てきているわけでありますので、やはり、この新しい受け皿がちゃんとこれからやっていけるのかどうか。
 やっていけるのかどうかということについては、それこそ不正送金の問題との兼ね合いで、朝鮮総連との関係が清算されているのかどうかということは非常に重要な課題だというふうに思うわけですけれども、この受け皿の信組を認可するに当たって朝鮮総連との関係というのは果たして清算をされているのか、そのことを御確認になっているのか、あるいはその清算ということが新しい受け皿信用組合の認可の前提条件というふうになっていたのかどうか、この三つのことについて伺いたいと思います。
村田副大臣 三つのという御質問でございますが、相互に絡み合っておりますので、まとめて御答弁させていただくこともありますので、御了解を願いたいというふうに思います。
 朝銀をめぐりましては、朝銀東京が総連向けへの不正な資金の流れがあるということも把握されまして、新しい受け皿の認定に当たりましては、私ども、総連を含めます一定のそうした組織からの独立を組合が持っているということでなければならないということを考えたところでございまして、こういう問題が二度と起こらないようにするということ、そのために経営の独立性というものが担保されていなければいけない、こういうふうに考えたわけでございます。
 このために、定款におきまして、朝銀信用組合や朝銀で構成される団体、朝鮮総連の役員経験者、その他組合の経営の独立性を阻害するおそれのある者は役員としない。役員は、朝鮮総連のいかなる地位にもつかず、いかなる職にも従事しない。朝鮮総連及び朝銀信用組合で構成される団体に参加しない。朝鮮総連に対する融資を引き継がず、新たな融資も行わない。そういったような事項を定款に盛り込むように要求したところでございまして、私ども、そうしたものを、そうした要件が満たされているということを審査した上で、新設の組合についての設立の認可をしたところでございます。
    〔委員長退席、中野(清)委員長代理着席〕
中塚委員 その役員の適格性といいますか、何と言ったらいいのか、要は、朝鮮総連とは関係がない人物であるということを、それをどういうふうに具体的に立証していくのかという問題は常にあると思うのですね。
 そのことと、もう一つは、もしその役員が今後、これから先、朝鮮総連との関係が新たに露見をしたとか、あるいは朝鮮総連の役員である人が新たにこの信用組合の役員になったというふうなことがわかった場合に、業務改善命令等を発動されることにならなきゃいけないというふうに思うのですが、これは柳澤大臣、いかがでしょうか。
柳澤国務大臣 もう定款違反の事態が起こるわけですから、当然のことです。
中塚委員 それと、ペイオフ解禁前の破綻ということで、預金は全額保護されるということになっているわけですが、聞いているところでは、やはり仮名口座、借名口座等々たくさんあるというふうなことで、それが不正送金に使われていたのではないかというふうなことも言われているわけですけれども、今、金融整理管財人が入って、受け皿信組に対して事業を譲渡するという中で、そういったことの精査、口座の中身の精査とかそういったことをずっと続けていらっしゃるのだろうというふうに思うのです。
 二つお伺いをしますが、こういう借名口座とか仮名口座というものの預金は、保護されることはどんなことがあってもないんだろうということが一つと、あともう一つ、その受け皿信用組合へ譲渡をするに当たって、そういった仮名口座、借名口座の洗い出しというものはちゃんと進んでいるのか、行われているのかという二点についてお伺いします。
村田副大臣 真正権利者が把握されていない、そういう口座につきましては、現在、金融整理管財人におきまして実態解明が進められているところでありますし、それから、最終的に譲渡時点になお真正な権利者が解明できないという預金につきましては、RCCに移しまして引き続き解明に努める、こういうことでございます。その意味で、先生が御質問なさいましたように、実態のわからないものについて資金援助がなされるということはないわけでございます。
 そういう意味で、現在引き続き金融整理管財人におきまして実態解明が進んでおりますが、RCCに譲渡された以降はRCCが責任を持って引き続きその解明に努める、こういうことになるわけでございます。
中塚委員 RCCが解明をするというのは、それは預金もですか。
村田副大臣 そのとおりでございます。
中塚委員 この国会で、それこそテロに関連して、金融機関の本人確認の法律等の審議というものも行われるわけですし、また柳澤大臣から、定款違反の場合は業務改善命令というのは当然だというふうな御答弁もいただいたわけです。確かに、日本の国内の法律にあって預金保険料も払っていたということで、実態があれば保護をするというのはそれは当然なんでしょうけれども、北朝鮮と我が国の間には、それこそ拉致疑惑等、いろいろな問題もあります。そんなことも含めて、この件については毅然たる態度をとっていただきたいというふうに思います。
 また、続いて、今度は足利銀行のことについて伺います。
 足利銀行は、北朝鮮にある七つの銀行と送金契約、コルレス契約を結んでいて、送金業務を行っていた。一九七〇年代から人道的見地で始まったということのようですが、今どき何か人道的見地というと、人道的とかいうと、うさん臭い話ばかりで、本来の人道的ということが全然実現されていないのが余りにして多いわけですけれども、このコルレス契約を解除して、北朝鮮への送金業務を閉鎖することになったということですけれども、この契約の解除ということについて、例えば、朝銀の受け皿が決まった、事業譲渡が行われる、あるいは拉致疑惑等、そういったこととの関連というのはあるのかどうか。いかがでしょうか。
高木政府参考人 お答え申し上げます。
 今先生おっしゃった点と関係あるのかどうか必ずしも聞いていないんですが、足利銀行の説明によりますと、国際業務の合理化、効率化を図るために海外店の全面撤退や海外決済業務の縮小を進めておるところでございまして、本措置もその一環だというふうに聞いております。現実に、公表によりますと、送金金額も年間百万ドル程度ということで非常に小さい金額でございますので、足利銀行の説明もそうかなというふうに理解をいたしております。
中塚委員 そういったことで、足利銀行もコルレス契約を解除するということですが、足利銀行自体の経営内容というか、そういったものについても、なかなかもろ手を挙げて万歳というふうにはいかないような状況のようだからこういうことになっていくということだと思うんです。足利銀行自体も、栃木県が増資を引き受けたりする、栃木県独自の御判断なんだろうとは思いますが、そういった意味で、公金によって増資が行われるというようなこともありますので、ぜひこういった面での監督ということについても強化をしていただきたいというふうに思います。
 そして次に、アルゼンチン国債のお話を伺いたいんですけれども、アルゼンチン国債がデフォルトを起こすということになる、なるおそれもあるということのようです。二〇〇〇年九月に発行した円建て債というのが二十六日の利払い日を迎えても実施されなかったということですが、三十日以内の猶予期間に支払われる可能性は少ないというふうに言われているわけですけれども、このアルゼンチン国債がデフォルトになることの我が国の金融機関への影響ということについてはいかがでしょうか。
村田副大臣 銀行、保険会社、証券会社につきましては、保有するアルゼンチン国債等の額は資産規模に比しまして僅少でありまして、経営に与える影響というのはほとんどない、こういうふうに考えております。それから、アルゼンチン国債等を保有している信金、信組につきまして、一部に破綻したところもあるわけですけれども、そのほかの信金、信組については、こうした事態に備えまして既に所要の自己資本を確保しているところでありまして、別段の問題はない、こういうふうに考えております。
中塚委員 きょうは答弁をお願いしていない、お呼びしていませんのでなんですけれども、新聞紙上なんかでは、第三セクターのようなところがいっぱいこういうものを買っているというふうな記事が出ていますし、中には、系統金融機関ですね、農協等がこういうのをたくさん保有しているというふうな話も耳にするわけなんです。単組とかあるいは第三セクターということの財務内容は金融庁さんの御所管ではないということなんでしょうけれども、しかし、単組が破綻というか、アルゼンチン国債を買っているということによって財務内容が悪化をした場合に、信連とかそういったところにもどんどんと影響をしていくことになるわけですので、この問題についても的確にそれをウオッチしていっていただきたいというふうに思います。
 続きまして、日本銀行総裁に伺いますが、年度がかわりまして、ひところと比べて株価も持ち直したということです。それこそ、三月危機ということで一万円あればなというふうな話もあって、一万円をちょっと超えるぐらいで年度を越えました。期末も乗り越えたわけですけれども、景気の先行きも明るくなったというふうな見方もあるわけだけれども、輸出なんかはよくなっているとはいうものの、先ほど申し上げましたが、これで何かが変わったというわけではないわけですね。
 期末に向けて、すごい緊張感というか、三月危機というふうに言われていて、それはあるのかないのかということは別にしてもいろいろな意味でそういう緊張感があって、ところが、期末を乗り越えて株価も一万千円ぐらいあると、これで一安心というか、何もかも終わったような雰囲気、ムードに世の中なってしまうということなんですが、株価だって上げ幅の大部分は空売り規制の効果なんだろうというふうに私は思っています。
 そういう意味で、三月危機という言葉が正しかったかどうかは別にしても、危機は先送りされたということであって、例えば銀行決算が公表される時期とか、中間期末が近づいていくということになるとまた、実態は別ですよ、実態は別ですけれども、危機だ、危機だと言われてしまうわけですね。三月危機が、六月危機が、それが合っているかどうかじゃなくて、そういうふうに次々と危機だ、危機だと言われることが大変に大きな問題だし、また、火のないところに煙も立たないわけです。
 そういう意味で、速水総裁御自身、今後、金融システムの問題がクローズアップされるというか、危機ということがまた再燃をする、あるいは危機論議が再燃をするという可能性について、どういうふうに見ていらっしゃいますでしょうか。
速水参考人 確かに、ひところに比べまして株価が上昇したことから、我が国の金融システムにつきましても見方が幾分和らいだ面もあると思いますが、基本的には、引き続き厳しいと受けとめております。
 そうした厳しい見方の基本的な背景には、不良債権問題があることは申すまでもございません。多くの金融機関で毎年多額の不良債権処理が行われているにもかかわらず、地価の下落とか景気の低迷とか構造問題の深刻化とか、こういったことが背景になって新規に不良債権が発生していることも事実だと思います。また、既存の不良債権の劣化も進行しておりますから、我が国金融システムにとりましては、不良債権問題の克服は依然として最大かつ喫緊の課題であると私は思っております。
 このために、金融機関は、不良債権処理を迅速かつ適切に行って内外市場からの信認回復に努めるべきであると思いますが、その過程で、金融システム全体の安定に万一支障が、疑問が呈せられるような事態に至りました場合には、タイミングを逸することなく、早目に対応するのがよいと思っております。
中塚委員 というわけで、今後の、危機が再燃する、あるいは危機論議がまた復活するという可能性について伺ったわけですけれども、不良債権問題ということについてお触れになりました。
 要は、やはり不良債権問題というのが片づいていかなきゃしようがないなという趣旨の御答弁だというふうに思いましたけれども、二月、三月のころ総裁がおっしゃっていた資本注入ということですね、危機的な状況になったらその対応をとるのは、それは当然の話なわけです。ただ、二月、三月のころに議論をされていた話というのは、危機的な状況ということとは別に、予防的な資本注入というか、そういったことも議論されていたわけで、柳澤大臣はそういったことは必要ないということもずっとおっしゃっていたわけですけれども、その資本注入、つまり邦銀が過少資本である、資本不足であるということが前提なんだろうというふうに思いますが、その資本注入について、今でもお考えは変わりませんか。
速水参考人 今の日本の銀行の自己資本の現状、これはいろいろ見方があると思いますけれども、当面大丈夫だとは思いますが、これから先、不良貸し出しが減っていかない、あるいはまた新しく起こってくるといったようなことが起こってくるとしますと、それを消していくのは、これまでは株価の含み益というものが償却の財源になっていたと思います、そのほかにもちろん銀行の収益もあったと思いますが。これからの株価の動向によってまた含み益が含み損になっていくといったようなことが起こったり、当面、今銀行は、再編が終わりまして、これからいかにして収益をふやすか、非常に努力をしていることだと思いますけれども、そういうものを今後見ながら考えていくべきことだというふうに思っております。
中塚委員 次に、デフレ対応策が発表されて、そのときに、国債の買い入れが、月に八千億が一兆円になったということだったわけですね。
 私は、金融緩和というのが本当にそういう効果があるのかどうかということについてもずっとお話をしてまいりました。そういう問題意識を持って予算委員会でお伺いしたときに、総裁は期末対策なんだというふうなお答えをされたわけですけれども、期末対策ということでしたが、このとおり期末は乗り越えたわけですね。期末は乗り越えたということになりますと、この国債の買い入れの額、あるいは日本銀行が今行っている金融緩和ということの政策態度を変更することはあり得るのでしょうか。いかがでしょうか。
速水参考人 日本銀行は昨年来、内外の中央銀行の歴史にないような思い切った金融緩和を行ってまいりました。これらの措置は、金融市場では強力な緩和効果をもたらしております。すなわち、短期金利はほぼゼロに低下しておりますことのほか、この三月期に、期末にも大きな混乱なく越えることができました。日本銀行は、今後とも粘り強く潤沢な資金供給を続けて、金融市場の安定確保と緩和効果の浸透に全力を挙げていく方針でございます。
 なお、長期国債の買い入れにつきましては、二月末に、年度末に向けて大量の資金供給を行う必要が予想されたことだけでなくて、期明け後の当座預金需要の動向がまだ不確実であるということを踏まえまして、一応、月額一兆円のベースに増額してここまで参ったわけでございます。長期国債の買い入れは、引き続き円滑な資金供給を図る観点から、かつ、銀行券発行残高という明確な天井を決めておりますので、歯どめをつくっておりますので、この線で当分実施していく方針であります。当面、四月入り後の当座預金需要がなお不透明でございますので、これらをかんがみまして、買い入れ額を今ここで減額することは適当でないと考えております。
中塚委員 総裁は会見で、コアキャピタルをふやせということをおっしゃっているわけですね。資本の質に注目をするということを言われているわけで、これは以前、竹中大臣がおっしゃっていたことと同様の趣旨のことなのかなというふうな気もするわけですが、コアキャピタルをふやすということと公的資本を注入するということは、これは明らかに別の話ですよね。
 コアキャピタルというのはまさに銀行の正味の自己資本というか、そういったことなんでしょうが、そのことと公的資本注入というのは全く別の問題だろうというふうに思いますけれども、それでは、日本銀行総裁として、コアキャピタルをふやせという、そのための手段というか手法というか、日本銀行としてとれる方策というのはあるのですか。
速水参考人 コアキャピタルが十分でないということは私、言ってまいりました。ただし、資本投入をするというのは、これは緊急の事態に対してやらなきゃならないことが起こるかもしれないという話でございます。
 私が申しておりますコアキャピタルというのは、中長期に見て、日本の銀行はこれでいいのか。コアキャピタルがふえるのは、それで不良貸し出しを消していくということになるわけですけれども、収益をふやさなければだめなわけですね。それには現状の収益状況では非常に難しいし、不良貸し出しを消していくといっても、今の収益だけではなかなか難しいのじゃないかなという感じは、中長期の予想をして考えなければならないことだというふうに思っております。
 また、増資をするということをやるにしても、やはり銀行の自社株が今のような状況ではなかなか難しい面もあると思いますし、株価の動向とか、何よりも銀行がこれから貸し出し政策をどんどん、利益、収入増加という建前のもとで貸し出しを通じて収益をふやしていく、あるいは新しい仕事をクリエートして収益をふやしていく、それがどれぐらいのスピードで効果を上げていくか。また、お互いに競争し合うことになると思いますけれども、そういう競争が市場の中でうまく行われて収益が上がっていくことを期待して、それがコアキャピタルの源泉になっていくのだというふうに考えております。
中塚委員 考え方はそのとおりだろうと思うのですが、要は銀行のビジネスモデルの問題であって、やはり収益がちゃんと改善していかないとコアキャピタルなんてふえるわけないし、もっと言えば、不良債権だってなくなっていかないわけですね。幾ら資本注入してそれで不良債権を償却するといったって、そんなの限度もあるわけですし、そんなことをしていたら、しまいに本当に日本じゅう国営銀行だらけになっちゃいますから、そんなことできるわけないので、やはりビジネスモデルを変えてもうかる銀行になっていかなきゃいけないし、そのために日本銀行が何をおやりになるのかということを伺ったわけです。
 そこで、竹中大臣にもお伺いをしたいわけですけれども、そういったお話も含めてされるのがまさに経済財政諮問会議なんだろうと思うのですね。銀行の収益の改善ということ、それによる不良債権の償却とか、そういったことを議論するのがまさに経済財政諮問会議なんだろうというふうに思うわけです。
 きょうお伺いしたいのは、午前中も税制改革のお話が出ていました。税制改革のお話と裏腹の問題として、裏腹ではないですね、歳入ということで、同種の問題ということなんですが、財政の健全化、大変重要な課題だと思います。三十兆円の枠を設定をするとこれは達成できないんじゃないのか、逆に悪くなってしまうんじゃないのかということをずっとお話ししてきたわけですね。特に、今税制改正のお話をされている、六月までに結論が出るというふうなこともあるというふうに聞いていますけれども、その場合も、結局財源論ということに話が行っちゃうわけですね。
 そういうふうになってきたときに、国債の発行枠の設定ということなんですけれども、今年度のことは後に伺うとして、来年度、来々年度、また予算の編成も始まるわけですので、来年度、来々年度の財政の健全化ということと予算の関係で、国債発行枠の設定というのはどういうふうにするおつもりなのか、お考えをお聞かせください。
竹中国務大臣 中塚委員のマクロ財政運営に関する考え方というのは私なりに理解はしているつもりであります。
 ただ、今の私たちの内閣の考え方というのは、これはやはり長期的にプライマリーバランスを回復させる、その一歩としての平成十四年度三十兆円国債発行枠というのは、これはどうしても重要な一歩であると考えている。「改革と展望」の中で、十四年度はこの収支差額で三十兆円という一つの短期の目標をつくったわけですが、それ以降についてはどうするかということに関しては、一般政府歳出規模、これをGDP比に対する比率で見て、それが増加しないようにする、非常に緩やかな歳出キャップをはめて、これは収支差額ではなくて歳出で財政をコントロールしていくという考え方を示しているわけです。
 しからば、そのときの国債発行額はどうなるのかというのは、これは総理も実は一昨日のテレビの会見の中でおっしゃっているわけですけれども、これは一つの結果であるということになるのだと思います。しかし、それぞれの予算編成の過程で、短期的な目標というか、戦術をどのようにするかというのは、今申し上げた歳出に緩やかなキャップをかける、その前提で、では当面のわかりやすい戦術的目標をどうするかというのは、やはりそれはそのときにいろいろ議論が出てくるわけで、その点、やはり総理は柔軟にというふうな言葉を使われたのだというふうに理解をしています。
 基本的な考え方は、差額ではなくて歳出で、緩やかな歳出キャップで財政運営を健全化していく、そういうコントロールをしたいということであります。
中塚委員 竹中大臣が会見なんかでおっしゃったように、減税というのか税制改革、負担を減らす方向での税制改革は私も必要だと思うんですけれども、歳出削減とか国有財産売却とか改革の還元ですか、そういったことを財源にして税制改革をするというお話なんですけれども、それを聞いた人がどういうふうに受け取るかというと、例えば国有財産の売却というのは、そんな多年度にわたってずっと継続していけるものではないし、また歳出削減といっても、どういうふうに削減するのか、その発射台の数字を何に持ってくるのかということで変わってくるとは思うんですけれども、これもなかなか、来年度、来々年度の社会保障の経費なんかを考えると、もう抑制が精いっぱいなんだろうという感じがするんですね。
 大きく金目が削れるとすれば、私は地方へ行くお金なんだろうというふうに思いますけれども、そうなってくると、よっぽど大胆な歳出削減策というものを用意しない限り、なかなか本当に構造改革につながるような税制改革というのはできないだろうし、そうなってきますと、まして十四年度中にはこれは実施はできないんではないか。それは、例えば国有財産を売って、そのお金で時限的に何かの税金は安くしますというようなことはできると思いますが、ただ、それじゃやはり意味はないので、制度改革になって、それが構造改革につながっていくというものでなきゃ話にならないわけですから、そういうことになっていきますと、竹中大臣のおっしゃっている財源をもとにしていくと、十四年度中はやはり税制改正、特に負担を減らすという方向での税制改正というのは無理なんじゃないかと思うんですが、そこはどうでしょう。
竹中国務大臣 御指摘のように、そういった意味での財源をつくり出すことが簡単であるとは全く私も思っておりません。歳出規模をゼロで抑制するというふうに申し上げましたけれども、それすらもう極めて大変なことで、そこからさらに、そういった改革努力ができた分、財源になり得るということでありますから、これは本当にどのぐらいのことができるのかということに関して、そんな楽観的な見通しは全く持っておりません。
 さらに、御指摘のように、国有財産の売却、これ自体も簡単ではありませんが、できたとしても、これは単年の話でありますから、恒久的な財源になるものでもない。しかし、それは承知でそういった努力をするのがあの改革なのだろうというふうに思います。
 十四年度云々につきましては、これは年度が始まったばかりで、予算を着々と執行していく段階でありますので、どういったマクロ的な運営、その中で税制を位置づけていくかということは、これはいろいろな流れを見ながら判断すべき問題であると思っておりますので、今の時点でどうこうという言及ができる性格のものではないと思っております。
 御指摘のように、非常に厳しい状況の中にあるということは認識をしています。
中塚委員 そこで、塩川財務大臣に、午前中の質疑を聞いていた感想も含めてお伺いしたいんですが、私も税制改革をデフレ対策として使うのはよくないと思うんですね。デフレ対策というとわけがわからなくなるのですが、要は景気対策のことでしょうから、そういった形で税制を妙な形にゆがめるというのはやはりよくないというふうに思っていまして、逆に、税こそ、この国の社会とか経済の形を決めるという意味で、ちゃんとじっくりと取り組んでいかなきゃいかぬのだろう。
 ただ、その方向性としては、やはり負担を減らすということは当然だし、またその負担を減らすというものの財源は歳出削減を充てるというのは、それはそういう方向なんだろうなというふうに思うんですけれども、そういった意味で、ただ、やはりそうなってきますと、三十兆円枠があるということで、当年度、年度中というのはなかなかそういう税制改正というのは難しいんじゃないのかというふうに思わざるを得ないんですが、いかがでしょうか。
塩川国務大臣 さっきから中塚さんの意見をずっと聞いていますと、何とかして三十兆円の枠を振って国債発行で賄うようにするということを言わそうと、そっちの方へ誘導するような感じがしてならぬのですが、それはまだ全く未定な話でございまして、我々はそういうことを考えての税制改革を今まだ考えてはおらないのです。しかし、どうも先ほど朝の海江田さんの質問といい、今までのずっと皆さん、そちら側の方の質問を聞いていると、何とかして減税の財源を国債で賄うということを言わそうと思って一生懸命に誘導しておられますけれども、これはなかなかわかりません。
 したがって、我々はできる限り、たとえ減税するにしても、ただ、どんなところへ、将来の効果を何を期待して、即効性はどんな程度なのかということを、いろいろなものをはかっていかなきゃならぬ。ただ設備投資で減税せよといったって、無差別にやってみたって、これは効果はないだろうと思いますし、しかしながら、将来の産業の方向を主導して、そちらの方に減税を向けるということになれば、これまた効果もあるだろうと思うし、いろいろなことの議論があると思っております。
 しかし、今のところ、まずそれよりも、先ほど申しましたように、税の改革をする根本の問題、そこをしっかりと議論しようということでございまして、いずれそういうのが出てきたらだんだんと問題点がクローズアップされてくるであろうと思っておりますので、今なかなか出てこないということでございます。
中塚委員 その三十兆円ということに過剰反応されるところを見ると、恐らく大臣の方がよっぽどそのことを気にされているんだろうな、きっとこれは失敗であったなというふうに内心では思っていらっしゃるんじゃないかなというふうに思います。
 いずれにしても、財政の健全化が大切なことは言うまでもない話なので、ただ、その健全化の手法というか方法として、その枠の設定というのが果たして妥当なのかどうかということが一番の問題だということをかねてより申し上げているわけですし、大臣自身が損して得とれということもおっしゃっていたわけですから、そういった方向での税制改革というものをぜひとも実施していただくということが、また日本経済の立て直しということにもつながっていくんだろうなというふうに思います。
 あとちょっと聞きたいこともあったんですが、国税庁の課税部長には申しわけないですが、時間ですので、これで終わります。
中野(清)委員長代理 次に、五十嵐文彦君。
五十嵐委員 民主党の五十嵐でございます。
 まず、柳澤大臣が、一月危機、二月危機、三月危機と言っていたけれどもないじゃないかということを再三発言され、それをまた小泉総理大臣も全く同じようにお話をされているわけですが、私は、同僚議員の指摘にもあったように、依然として危機はある。
 先ほど日銀総裁もお答えの中で、基本的には引き続き厳しい状況であるという金融状況をお話しされましたけれども、たまたま株価が上昇したと。これはたまたまではないわけで、株のPKOがあった。これは、年金等の資金による買い出動、それから財政投融資を得ている特殊法人等による買い支え、また、空売りをした外国のファンドが買い戻しの時期が来たということがあります。それから、アメリカがやはり同じように株の買い支え政策をとりました。例えば自動車ローンのゼロ金利政策もありましたし、その他のこともありまして、こうしたことが相まって、株価は上昇したということなんだろうと思います。
 しかし、この地合いは、基調は決して強いものではありません。現にアメリカでは、ナスダックの方はそれほど上がっていないという状況にありますし、また日本でも、株価がもし九千円という水準だったらどうだったのかというと、これは一転して大変なことになるわけで、決して金融の状況がもう心配ないんだと安全宣言をするというような状況にはないと私は考えております。
 そこで、突然の質問に当たるかもしれませんが日銀総裁に、まず、三月のロンバート型貸し付けの実績状況、もし記憶の中にでもおありになったら御説明いただけますか。
速水参考人 お答えします。
 三月末は、ロンバート貸し出しの残高はゼロでございます。
五十嵐委員 三月の期中で突出して出されたというようなことはございますか。
速水参考人 三月中は数件ありまして、二十五、六億円の貸し出しをやっております。
五十嵐委員 件数だけで、額の方は御説明なかったわけですが、また後でお伺いをしたいと思います。
 この特別的な措置がされました。普通は五営業日というのを延ばすという措置をとられて、これが四月の十五日までですか、ということだと思うんですが、それで十分とお考えでしょうか。私の方は、引き続き、特にペイオフが始まりまして決済性の資金の瞬間的なショートというのはあり得る、こう思っておりまして、また、この四月以降、どのようなことがあるかわからない。特に最近は、会計監査、監査法人による監査がまともになってきたというか厳しくなってまいりましたので、そのやりとり、決算のやりとりをめぐって、五月といったあたりにはいろいろなことが起こり得るというふうに思います。
 これは、四月十五日までの措置は延長するお考えはありませんか。
速水参考人 今の御質問にお答えいたします前に、三月中の実績は、ちょっと数字が違っていましたので、三月中で二十九件、五十二億円貸しております。残高は、三月末はゼロでございます。
 今まだ、当座預金残高が二十七兆というのがピークでございましたけれども、これからどういうふうに動いていくか、もうしばらく見ておりませんとわかりませんが、今のところ十五日までということを変えるつもりはございません。
五十嵐委員 わかりました。日銀の方でも、少し状況が改善したという御認識なんだろうと思いますが、私は、引き続き、ここで緩めてはいけないのではないかというふうに思います。私の身の回りでも、普通の主婦の方が、外貨で外国の銀行に預金をするという方が思った以上にふえております。また、報道されていますように、金の購入といった形でもそうした状況は出ております。
 三月末の預金の増減状況はまだ発表されておりませんが、手元に二月末の状況の資料がございます。特に問題になっているのは地銀、第二地銀の状況であります。なぜかというと、小さい信金、信組というのは地域に密着しておりますので、それなりにかたいお客さんがついている。しかし、地銀、第二地銀のところでは、問題なのは公金ですね。自治体の資金が、選別が起こって移動が起こる。特に東京都の基準の影響というのが大きいと思うんです。
 十四年一月の前年同月比の調査ですから少し古いですけれども、これですと公金は、地銀、第二地銀の中で定期性預金は三二・三%のマイナスになっているという資料がございます。これは少しやはり、これから先影響を与えるのではないか、これが拡大するのではないかと思います。
 私は、預金保険の考え方からすると、公的資金については優先的に保護するということがむしろあってもいいのではないかという考え方を持っているんです。というのは、自己責任というものを強調するのはいいんですが、この自己責任に果たして自治体というものを厳しく当てはめていいのかという問題があると思うんですね。そのことによって金融機関がおかしくなるきっかけをつくるということでは、まさに本末転倒という結果になりはしないか。それぞれの個々の預金者の自己責任を求めるという考え方とは別のところで弊害が出てきてしまうというふうに思うんです。
 この公金の資金移動の状況、見通し、そしてそれに対する対応策ということについて、もし柳澤金融大臣にお考えがあれば伺いたいと思います。
柳澤国務大臣 公金の増減の状況を先にお触れになられましたけれども、額で言いますと、定期性預金が三・三兆減りましたけれども、CDで二・三兆ふえているというようなこともありますので、完全な引き出しということでもないということをちょっと注意的に申し上げておきます。
 それから、今の公金の保護の問題ですけれども、そういう考え方も理解できないわけではございませんけれども、何でも保護保護と、つまり、かつての全額保護の時代を基軸にとって、それが今度の新しい制度のもとでどうなるかというようなことで、かつての全額保護の方が原則的な制度であって、そこの点からいろいろな御意見を申されるというのは、私はどうもとらないところでございます。
 要するに、何と申しますか、預金者も、そう常につぶれるわけじゃありませんから、つぶれないようにみんなで協力していく、先ほども海江田委員の御質問に対して私は申し上げたんですけれども、そういう方向で物を考える。保護ではなくて、それが有用な金融機関であれば、みんなでそれをいいものにしていく、こういう努力が構造改革の路線だ、こう思っているわけであります。
五十嵐委員 全くそれと反する考え方を私は述べているわけではありませんよ。
 しかし、例えば公金がもし万が一毀損した場合には、これを償うのは納税者なわけですね。納税者というのは、公金、自分が出した税金の行き先について責任が持てないし、判断する決定権も持たないわけでありますから、そこは一般の預金者の自己責任という考え方と分けて考え得るじゃありませんかというお話をしているわけです。考え方の問題でありまして、これは、一般論として言われた自己責任、金融における自己責任の原則の考え方と矛盾するものではない、健全な金融機関を育てようという考え方に反する考え方ではないと私は思うわけであります。
 こればかりにかかわっているわけにいきませんから先に進めますが、問題になっているのは、これから先、ペイオフが解禁となりました、そこで、いわば危機対応策としていろいろな考え方が出てくるわけですが、金融庁の方は、もはや資本の問題ではなくて、これから問題があるとすればむしろ流動性の問題であるということで、それは本来日銀がカバーすべきじゃないか、だから流動性の危機は日銀特融でやるべきだ、こういうお考えなんだろうと思います。
 これに対して日銀の方は、そうはいっても、その流動性危機が起きるもとには資本不足があるじゃないか、あるいは、流動性危機が起きたときに、それは銀行の資本不足につながるじゃないかということでありまして、安易な特融をすれば今度は日銀の資本が毀損されるということで、ある程度の危機が起きても民間自体で対応できるという状況で、民間行の資本増強ということが必要ではないかというお立場なんだろうと思います。
 私は、問題は、やはり日銀のバランスシートが決定的におかしくなるというようなことがあってはならないわけでありまして、はっきりと歯どめをかけるべきだ。すなわち、かつてのように、債務超過をごまかして、債務超過ではないというところで日銀のお金が出る、あるいは公的な資金が出るというようなことではなくて、債務超過行には融資はできないんだ、そのため甘い資産査定は検査の段階でしないんだということを、やはり確認すべきなんだろうと思いますが、私の今の考え方について、日銀総裁、柳澤大臣にお考えを伺いたいと思います。
速水参考人 今おっしゃるように、金融機関としましては、今後、不良債権問題を初めとする重要な経営課題に一層前向きに取り組んでいくことが不可欠だと思います。また、そうすることは、金融機関に対する預金者からの信認向上にもつながっていくと考えています。
 流動性危機といった問題につきまして、日本銀行としては、現段階で具体的な事態とか方策を想定しているわけではございませんが、万が一の場合には、政府の対応とあわせて、金融システムの安定を確保すべく、流動性供給の面から適切に対応してまいる所存でございます。
 先ほど御心配になりました、日本銀行のバランスシートが悪化するではないかという御心配につきましても、私ども、特融を貸し出す場合の四つの原則の中で、日本銀行の債権の健全性を守っていくということは非常に重要な項目の一つとして掲げておりまして、その都度それは十分考えていきたいと思っております。
 それから、今おっしゃいました、貸し倒れになっていく可能性があるじゃないかといったようなことにつきましても、これは、そういうことは起こらないように、債務超過の金融機関につきましては、いわゆる破綻金融機関ということになりますけれども、その処理を行うに当たりましては、預金保険法のもとで預金保険機構が必要な資金を供給するという仕組みになっております、これは四月一日から適用になるわけですが。このために、危機時の例外として預金保険法百二条に基づいて全債務全額保護の措置がとられるといった場合を除きまして、債務超過の金融機関に対しては、私ども、特融を行うことはないと考えております。
 金融機関の自己査定の正確性、引き当ての適切性といった点につきましては、日本銀行としても、考査等によって引き続き厳正なチェックを行って、甘い査定といったようなことがないようにしてまいりたいというふうに心がけてまいります。
柳澤国務大臣 金融機関であれ証券会社であれ、日本銀行は特融をする相手については考査をなさっているはずであります。
五十嵐委員 考査は双方しているわけですね、金融庁についても。
 それで、金融庁と日銀の考査と検査がどうも食い違っている印象もあるわけですね。なぜかというと、金融庁の方は、私の方はマクロの見方じゃなくて積み上げでやってきているんだから、安全だというのは信じてもらわなきゃ困ると言うんですが、日銀の方も、細かく支店を通じて状況を見ている、考査もやっている。そして、日銀の方も積み上げているはずです。日銀の方は危ないんだと言っているのに、片方の金融庁の方はそんなことはないんだと言うわけですから、どうも日銀考査と金融庁の検査というのは、必ずしも一致しなくてもいいんですけれども、大分差があるんじゃないか、こういう印象があって、私どもが言っているのは、双方とも、銀行の資産査定が意図的に甘くされて、そして特融というような措置がとられることがないようにしてほしいということであります。
 それから、金利の動向について、一般的な見方で結構なんですが、日銀総裁、今後どのような推移になるかということをお話ししていただけませんでしょうか。
速水参考人 五十嵐先生は、いつまでもゼロ金利にしておくなというお気持ちがあっての御質問かと思います。
 長引く超低金利のもとで、家計等の利子収入が減っていくとか、あるいは年金など機関投資家の運用難があって困る、あるいは構造改革の阻害などが副作用として指摘されているわけでございます。
 しかし、機関投資家の運用環境とか家計の収入というのを改善させるためには、まず経済活動全体を活発化させて、それに応じて金利収入や賃金が増加するような状態を実現する必要があると思います。また金融緩和には、景気を下支えして構造改革を促していくという側面もございます。私どもの金融緩和は、こうした経済活動の活発化を目指して、粘り強く実施していきたいというふうに思っております。
 それで、日本経済がデフレから脱却するためには、やはり持続的な経済成長を実現しなければいけないので、需給バランスを改善していくことが不可欠だと思います。小泉総理がよく言われますように、構造改革なくして経済成長なしということは、私どももそのとおりだと思います。経済成長が起こって初めて物価も上がりますし、金利も上げられるような情勢に変わっていくのではないかというふうに考えております。
五十嵐委員 見通しについてはお話しにならなかったけれども、私も、企業活動が活発になる、それによって家計も機関投資家も潤うというのは、オーソドックスであり、当たり前のことであり、当然のことだと思うわけでありますが、問題は、今の状態がそれじゃ正常なのかということが一つであります。
 資本主義の社会で、実質ゼロ金利、マイナス金利というような状態が長い間継続してまともなのかということがある、基本論があると。その上で、金利によってむしろ企業が選別された方がいい、要するに金利に耐えられないような企業はマーケットから退場をしていただくのが普通の姿ではないか。それを、政治的な何かによって救済の選別が行われるというようなことは、むしろ自由主義経済の正当性をゆがめるではないかという議論をさせていただいているわけであります。
 それから、デフレ退治のために必要なんだというお話があるわけですが、私は、今までのデフレ論というのはかなりラフな話じゃないかなというふうに思っておりまして、これは反省を込めてなんですが、もう少し緻密に見る必要があるんじゃないか。単に、いいデフレ、悪いデフレとか、デフレはみんな悪いんだとか、そういう話でデフレを退治するんだというような話になっていいのかという問題があるわけであります。
 私たちは、一人一人の国民が豊かになっていただくということが最終的な目標なんだろうと思いますね。我々はとかく、経済を考えるときに、金額という価値だけで物事を判断しがちでありますけれども、金額というのは、利用価値もあれば資産価値もあり、期待を含んだ価値というものもあるわけでありまして、問題は、国民にとっては、利用する価値が実質的な価値というものに近いんだろうと思いますね。
 ですから、例えば物価の下落率と総売り上げの下落率がもし同等だったら、国民は同じだけの利用価値を手にしていると考えていいのではないでしょうか。だから、単に物価が下落しているから悪いんだという話にはならないですよね、そうだと思うんです。
 例えば、公共料金がみんな下がって、物の生産、流通にコストがかからなければ、物価はみんな下がりますよね。それは悪いことではないわけでありまして、物にはみんないい面と悪い面があるわけで、デフレというのを一くくりにして、とにかく悪いんだから退治するんだというのは、本当はちょっと違うんじゃないか。悪い面、いい面があって、デフレの性質あるいはそれぞれのデフレというのは何なのかというのを分析してみる必要があると思うんです。
 例えば、今言ったように、デフレスパイラルが起きているかどうかというのは、私は、業種別にはかろうと思えばある程度はかれるんじゃないかなと。今言ったように、一つは、すべての指標ではありませんけれども、それは売り上げの総額とその業種ごとの商品の価値の下落率というのを比べてもいいですし、いろいろな指標の見方、専門家はあると思うんです、私は素人ですからあれですけれども。ですから、もっと消費の落ち込みが本当にデフレスパイラルにつながっているのかどうかというのを見る必要がある。
 ある資料によりますと、食料品と衣料についてはデフレスパイラルが始まっている、しかし、その他の製品、業種についてはデフレスパイラルは起きていないという、実は証拠があるんですが、もっと細かくデフレ論議をすべきだという考え方について、今政府の方は、デフレ退治だ、デフレ対策だというふうに言っておられるようですが、担当大臣にお話を伺いたいと思います。
    〔中野(清)委員長代理退席、委員長着席〕
竹中国務大臣 デフレ担当ということではないと思いますが、マクロ経済ということでお答えさせていただきます。
 御指摘のように、いわゆる純粋に消費者から考えますと、物の値段が下がるというのは悪いことではない。しかも、日本の物の価格は国際的に見て高い高いと言われてきた、それが国際価格に収れんしていく過程ということであるならば、これは歓迎すべきであるという議論は大いに理解できるポイントだと思います。しかし、ここはやはり、一般的な物価水準と相対価格、一般価格と相対価格は区別して考えなければいけないということに尽きると思います。
 それともう一つ、人間、我々はフローの、今の社会の価格だけで生きているわけではなくて、過去の価格にも依存して生きている。
 その典型が過去に借り入れた借入金の話でありますが、今の物の売上価格が一〇%下がって、仕入れの価格も一〇%下がって、人件費も一〇%下がったら、確かにそんなに困らないんだけれども、過去の価格に我々は依存している。それは、過去一億円借り入れたものは、今の物価が一〇%下がっても一億円である。したがって、これはやはりここで相対価格の変化が起こる。過去の価格が相対的に高くなって、実質借入金が高くなる。であるからこそ、バランスシート調整に悩んでいる今の日本の社会において、デフレというのは克服すべき問題であるというふうに考えるわけでございます。
 細かく分析しなければいけないという御指摘は、そのとおりだと思います。経済財政白書において、マクロ的なメカニズムについてはかなり詳細に分析をしたつもりでございますが、産業別に見ると、御指摘のように幾つかの可能性はあるのだと思います。そうした点、さらに我々なりに努力はしたいと思いますけれども、経済全体で見た場合に、デフレというものは克服すべき問題である、政策課題であるというふうな認識をしています。
五十嵐委員 だから、私の言っているのは、同じようなことを言ったんですよね。我々、デフレの最大の問題はデフレスパイラルと負債デフレだということを何回も予算委員会でも申し上げているじゃありませんか。
 ですから、まず最大の問題は、負債デフレにどう対処するのかということを我々は第一に考えた。だから、それが、金利が上昇したときにさらにこの負債デフレは大きくなりますから、負債デフレの問題をできるだけ緩和する、除去するためには、私は、ローンの利子控除制度というのがこれは一番効果的であるということを言っているわけですね。今の実質ゼロ金利が永遠に続くわけじゃない、また続いたら困るんだということも申し上げました。ですから、それは、負債デフレを取り除く政策を前面に打ち出すべきである、それからデフレスパイラルを起こさないような政策を打ち出すべきだということを申し上げているわけで、だからデフレ全体を退治するんだという話には直接にはならない。
 要するに、いい悪いではなくて、デフレというのは、今まさに竹中大臣がおっしゃったように、必然の面があるわけですね。我が国が高コスト体質になり過ぎたという必然の面があって、その調整という面があるから、それをいかに軟着陸させるかという問題がこの問題なわけです。
 それは、一つはキャピタルフライト、それから国際的な立地の競争という面にさらされているわけですから、これは全体のコストのインフラといいますか、インフラ的な部門を小さくする、そしてコスト競争のお手伝いを、基礎をつくるというのが政府のむしろ役割ではないだろうか。
 ですから、デフレ対策をやるというにしては、物価が下がる方向に行く議論はみんな悪いというふうに言われるかもしれないけれども、そうではなくて、例えば高速料金を下げる、電気料金を下げる、あるいは航空機の運賃を下げる、あるいは、流通のシステムの中で起きているむだを省くような方向に制度を設計し直す、これは大分できてきたわけですけれども、そのような社会のインフラとなる部分のコストを下げる、まずそういう努力をすることが政府の大きな役割ではないか。
 だから、物価は上げるのがいいことで物価を下げるのは悪いことだという考え方は、一概に成り立たないんじゃありませんかということを申し上げているのですが、間違っていますか。
竹中国務大臣 まさにこれは、物価というものを一般物価で議論するか、それとも相対的な価格体系の変化という形で議論するかという問題だと思います。
 これはもう委員御承知の上で御発言だと思いますが、私たちが申し上げているのは、例えば国際的に高い物価が一〇%下がる。その場合、他の物価がゼロ%のままで、一〇%そのものが下がるというのが相対価格の一つの変化だし、しかし、一般物価が一〇%上がって、そのかつての高いものがゼロ%のままでいく、それも相対価格の減少になる。前者と後者であれば、後者の方が、やはり今のような多くの負債を持っている社会においては適切であろう。その意味では、やはり相対価格の変化は御指摘のように促進させながら、しかし一般物価水準そのものが下がらないような、そういったマクロ運営に、これは大変難しいのですけれども、持っていきたいというふうに考えているわけでございます。
五十嵐委員 私どもも、例えば中国との関係でいえば、円安はむしろ容認すべきだ。というのは、円の実力の問題もあるわけですね。円の実力、購買力平価でいくと、やはり百六十円台だろうと思っていますから、そこまで自然になる分についてはむしろ容認していくべきだという発言をして、一度日銀総裁から怒られましたけれども、これは安定しているのがいいんだというお話がありましたけれども、私どもは、中国との関係でいえば、今の元が、中国の方が安過ぎるという認識ですから、その差は埋まっていく方がいい。そして、アジアの経済への影響というのは、当然、これも日銀総裁から御指摘ありましたけれども、日本の経済全体が絞め殺されては元も子もないわけですから、それはある程度まで容認はされるだろう。
 アメリカについても同様だと思うのです。ある程度までの円安は容認されるだろう、こう思っているわけであります。ただ、本当に為替だけでこれを調整しようとすると、一ドル二百円が必要だということになってしまうので、これは円の実力からいってもおかしいわけでありまして、それは許されないだろうというふうに思うわけです。
 さて、日銀総裁に、先ほどの金利の話に戻るわけですが、私はこう申し上げました。いつまでもゼロ金利を続けていくわけにいかないでしょう、副作用が強くなり過ぎているじゃありませんかと。どこかで見直す。CPIがゼロ以上になるというのが見直し時点だというけれども、十九世紀のイギリスは九十年間デフレが続いたじゃないかということを申し上げました。
 だから、政策がきかないんだったら、どこかで政策転換を図る必要もあるわけですし、見直す必要があるんじゃないでしょうか。ずっと金利をこのままにしておくのか、どういう条件が精密に整ったらそれではその金利見直しに入るのかということをお伺いしたいと思います。
速水参考人 今の、デフレというのは、先ほども御指摘のように、確かに輸入品とか輸入物価、輸入競合品の低下で、昨年の平均を見ても七割ぐらいがそれで下がっているんですね。そういうことはありますけれども、やはり需給ギャップがあって需要が足りないからであって、デフレというのは、経済状況の結果であって原因ではないと思います。経済活性化ということが重要であって、デフレだけを取り上げるのは非生産的だというふうに思います。
 改革が成功して成長が伸びていく、需要がふえていくというのにはかなり時間がかかると思います。その時期を明示することもなかなか難しいのですが、日本銀行としましては、改革の努力ができるだけ早く実を結ぶことによって、生産がふえ、物価が上がっていく、それまでの間、粘り強く金融緩和の努力を続けていくというのが現在の方針でございます。
五十嵐委員 はっきりとはいつもながらお答えをいただかないのですが、景気が回復すると、短期金利は上昇するでしょうね。それから、短期国債が増加する傾向にありますから、短期金利が上昇すると、国債の利払い費にかなり重大な影響が起きると思うわけであります。そうすると、日銀は、今度は低目に誘導しなきゃいけない時期が来るかと思うのです。
 ですから、逆に言うと、いわゆる金利は、よい上昇と悪い上昇があるんではないかなと思うのです。あるいは、長期金利の方を考えると、これ以上国債が増嵩しますと、長期金利が当然上昇してまいります。長期金利が上昇すれば、企業の設備投資が抑制をされますから、これは景気のむしろ足を引っ張る要因になる。
 ここまで経済、金融の状況が煮詰まってくると、まさに金利の上昇が、いい意味での上昇じゃなくて悪い意味での上昇が起きる可能性もあるし、いい意味での上昇を起こそうとしても、それが逆に景気の足を引っ張るということになって、ゼロ金利のスタビライザーみたいなものが働くのではないかというふうに思うのですが、これをどうやって抜け出しますか。竹中大臣、名案がありますか。
竹中国務大臣 今、五十嵐委員御指摘になった点が、まさに「改革と展望」のシナリオを書く上で私たちがやはり一番頭を悩ませた問題、今でも頭を悩ませている問題であります。
 御指摘のように、金利が上がる場合に、いわゆる経済実態がよくなって、資金需要がふえて金利が上がる場合と、そうではなくて、経済実態が悪いままで、将来に対するリスク要因が高まって金利が上がる、それをよい、悪いというふうに言われたのは、全くそのとおりなのだと思います。
 もちろん、悪い上昇にならないようにするために、先ほどから申し上げているように、三十兆の枠組みはやはり堅持したいし、その枠組みで、構造改革を通して経済を活性化するということをぜひ実現したいというふうに思うわけです。
 現状は、もう指摘するまでもありませんが、名目金利は非常に低い、しかし、デフレになっているので実質金利はそんなに低いわけではないという非常にゆがんだ構造になっている。したがって、経済実態をよくすることによって、名目金利が少しは上がってもいいような状況をつくる。しかし、そのときやはり実質金利は狭まっていなければいけないわけで、これは本当に微妙な狭い道ではありますけれども、名目金利の上昇幅よりも物価の上昇幅の方が少し高いような、そういった経済実態を反映した上で、今申し上げたような状況をいかにつくり出せるか。そこは、とにかく構造改革を一心不乱に進めて経済実態を活性化させるということが何よりも重要であるというふうに思っております。
五十嵐委員 そのとおりです。ですから、私は、よい金利上昇に耐え得る体質をつくらなきゃいけないし、そのときに個人が一番痛みますから、負債デフレ対策というのをやるべきだということを申し上げて、それがローン利子の控除制度だということを申し上げているわけであります。
 大臣、お忙しいようですので、結構でございます。ありがとうございます。
 そこで、日銀総裁に、長期金利を上げないまま、うまく短期金利を適正に誘導するということができるのかどうか、自信がおありになるのかどうか、その辺をお伺いしたいということなんです。
速水参考人 長期金利の上昇が景気の回復に伴って起こってくるというのは、これは全く問題のないことだと思います。長期金利が上がって、短期金利がそれに伴って動くということも十分考えられますけれども、やはり一番大事なことは、景気の回復が起こるかどうかということであって、景気の回復なしには、仮に金利が上がったとすれば、それは金融機関の経営とか、あるいは企業が資金の調達にコストがかかるとか、むしろ景気をまた下押ししていくような効果を持つことは否定できないところだと思います。
 そういった意味で、やはり景気の回復が起こるように構造改革を進めていただいて、それによって物価も上がり金利も自然に上がっていくという状況を私どもは考えております。それにはやはり時間はかかると思います。時間はかかると思いますけれども、日本銀行としては、改革の努力ができるだけ早く実を結ぶまで、なるたけ金融を緩和して今のような量的緩和の措置を続けていきたい、そういうふうに考えております。その間は、金利は恐らくはそんなに上がらないだろうと思います。
五十嵐委員 量的緩和を続けることによって金利を低目に誘導し続けていくんだというお話でございました。
 私は、しかし逆に、日本の構造改革を進めるためには、金利によって企業が資本主義の論理に従って淘汰をされていくべきだという考え方を先ほども申し上げました。しかし、実際にはそうではなくて、十一社リストというのが出回りましたけれども、政治やあるいは特殊な一部の官僚による救済企業の選別がどうも行われているのではないかという疑いを濃くしております。この十一社リストというものについてどういう御認識か。柳澤大臣、竹中大臣はもう退室されましたけれども塩川大臣、この十一社リストの存在と出どころの予想、御認識、情報、ありましたら、お聞かせいただきたいと思います。
柳澤国務大臣 正直申して、この前もお話ししたかとも思うんですけれども、本当にわけのわからない紙のようですね。そういうものについて当局者として何かコメントをするというのは、全く不適当だと私は考えて、大変恐縮ですけれどもそのようにお答えさせていただきます。
五十嵐委員 内部から出たものではないということですか。
 それから、十一社じゃなくて本当は二十社前後だ、十七社という説もあるんですかね、そのリストだという話があるんですが、実は、なぜこう問題になっているかというと、当たっているからですよね。要するに、何らかの合併なり何らかの措置で、倒産がうわさされていながら倒産せずに生き長らえている、あるいは債権放棄が行われているという会社がぴったり当たっているわけですよ。ですから、これは何らかの政治的な意図なり行政の意向なりが反映をしたリストではないか、こう言われているわけで、単に出所がわからぬからコメントするに足りないというのでは済まないのではないかなと思っているんですね。
 いわゆる今まで破綻をした企業と破綻をせずに残っている企業で、どっちが状況が悪いかというと、破綻していない企業の方が状況が悪いところが多いわけですよ。大きいがゆえにつぶせない。というのはどういうことかというと、金融機関が損失を確定したくない、そういうことに基づいて、大きいところ、より悪いところが残って、それよりもちょっと下位のところが清算させられるという状況になっているんじゃないかという疑いがあるから申し上げている。果たしてこれは、資本主義の原則というかルールにのっとった話なのかという問題なんです。私は極めて重要な問題だと思いますが、もう一度答弁を伺います。
柳澤国務大臣 逆のことをちょっと考えていただければわかると思うんです。私の立場になって、私が見たことも聞いたこともない話を、突如この紙があって、それでこれについて何か言ってくださいといったら、五十嵐さんだったらどうお答えになりますか。全く当惑するだけじゃないですか。全くナンセンスな話です、それは。
 大変恐縮ですが、以上、答えさせていただきます。
五十嵐委員 大臣は答弁の名人じゃないですか。報道機関がいろいろ報道されている話でもあり、また事前通告もいたしておりますし、質問も前にも出てお答えになったというわけですから、初耳だという話でお逃げになるのはおかしいと思うんですよ。
 そうじゃなくて、今原則論で申し上げていて、前に、銀行が逆算主義だと私が申し上げて、いや、それが本当に問題なんですよと大臣おっしゃったじゃないですか。逆算主義がきいていて、大きいから損を確定できないという形でこれが残されていて、それが実際に本当は日本経済全体の足を引っ張っているんじゃないかと。今、清算するといったって全部失業者になるわけじゃないでしょう。いい部分は残すわけでしょう、今の清算の仕組みというのは。それなのに、大きいからといって、大きいがゆえに残されて、どうしようもない、ゼロ金利でなければ立ち行かない、これから先も兆を超える有利子負債の縮減がなかなか難しそうだというところがそのまま残っていて、そうでない、特殊な技術があってちょっと惜しいなと思う企業は、そこより悪いところを飛び越えて清算をされるというような選別がどうもされているんじゃないか、おかしいんじゃないかということがあるわけですが、そういうような金融機関のビヘービアに対して、金融庁は、下の方々まで中立的でおやりになっているという自信がありますか。
柳澤国務大臣 要すれば、まず、我々の方にはそういうノウハウはないんです。実態的ないろいろな産業分野の企業について、これをこうしたらどうだ、あれをああしたらどうだなんというようなノウハウはないです。ですから、ああいう紙のようなものについて私どもがコメントを申し上げるというようなのは、全く考えられないことでございます。
 それから、なお前段、五十嵐委員がおっしゃられた逆算ということについて、何とおっしゃられたか、私もそれを認めたかのような話がございましたけれども、そういうことではもちろんないわけで、これは、せんだっての、どなたか先ほどもお話しなさっていたかと思うんですが、総理の指示にもありましたように、銀行の自己資本であるとか体力であるとかというようなことにかかわらないで、とにかく真っ正面から不良債権の処理をしなさいというようなこととも軌を一にする話であって、私は、絶対そういうことはあってはならないということで、あのときにもそうしたことを申し上げたというのが本意でございます。
五十嵐委員 柳澤さんだけ責めてもしようがないんですが、ただ、一点について言えば、金融機関の逆算主義が問題ではありませんかと私が申し上げた、予算委員会ですよ、ちゃんと議事録残っています。そうなんです、逆算主義が問題なんですよと大臣はおっしゃっているじゃないですか。ちゃんと残っていますよ、それは。だから、それはそんな、肯定したことはないとか、言った覚えはないなんという話はないですよ。それは、今の御答弁は違うと思います。
柳澤国務大臣 問題意識というか、問題提起に対して、私がそこが本当のポイントですよという、つまり問題意識ですね、そういうことについて申し上げたわけであって、今我々のやっていることが実は逆算でございます、そんなことを言った話では毛頭ありません。
五十嵐委員 それはやっていても認めないでしょうよ。ただ、今問題になっているのは、それは大臣直接ではないと思いますが、出ているのは、マスコミ等を通じて私どもの耳に入ってくる話は、官邸やいろいろなところに、あるいは財務省の中でも、あるいは金融庁の中でもこうした話が出ていて、どこで決めているかわからないけれども、まことしやかに伝えられているのは、財務省のかなりな高官のところでそういう話があって、旧知の間柄ですが、財務省から行っている金融庁の高官のところに話が行って、そして選別される企業が決まっているんだというようなお話がやはり出てくるわけですよ。あるいは、それが官邸から指示がおりているという話もあるわけですね。
 これは、火のないところに煙は立たないというじゃないですか。しかも、それが当たっているわけですよ、今申し上げたように。当然つぶれるべき企業というリストにかつて挙がっていたようなところ、数字的にもどうもおかしいなというところが残っているところがいっぱいある。それがまさにリストのとおりだということが証明をされてしまっているということに問題がある。
 私が言いたいのは、そのこと自体も問題なんですが、そういうことよりも、適正な金利に金利水準が上がることによって、ゼロ金利でなければ耐えられないようなところは、むしろ自然体でマーケットから退場していただく方が本当ではありませんか。それを、そちらの方の要請があるから無理やりゼロ金利にしているのではないですか。金利を上昇させれば、倒産が相次ぐんだ、失業者がうんとふえるんだというような話があるけれども、本当にそうですか。そういう計算になっているんですか。例えば、金利が一%上昇したらどのぐらい倒産がふえるというようなことが、政府としては計算をされているんですかということをお伺いしたいんです。
 担当大臣、竹中さんもいらっしゃらないようですが、内閣府の村田副大臣、政府として、金利の上昇によってどのような悪影響があるかというのは、仮定計算といいますか、そうしたものは出ていますか。聞いたことありませんか。
村田副大臣 委員の御質問を改めて聞き直してみましたけれども、私ども、その問題についてはお答えする立場にはないと思いますので、御答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
五十嵐委員 突然ですからやむを得ませんけれども、慎重ですが、私は、そういう計算もしてみるべきだと。一体、金利が上昇したらどのぐらい経済に影響を与えるんだと、経済の状況によって変わってくるでしょうけれども、幾つかの変数を置いて計算してみるべきだと思うんですね。そうでないと、いい意味での金利上昇が起きたときに、先ほど言ったように、どの程度スタビライザーが働いて足を引っ張られるのかということもわからないわけですね。私は、極めて重要な面、先ほど、ポイントの一つだ、頭を悩ませた一つだというふうに竹中さんはおっしゃいましたけれども、政府全体としてこの問題も真剣にお考えになっていただきたいことだなというふうに思うわけであります。要望しておきます。
 次に、午前中に海江田委員の方から空売りの問題が質問をされました。私もかつて、これもまた柳澤大臣お覚えがないのかどうかあれですけれども、外資に日本は甘いじゃないか、違法なクロス取引とかされているんじゃないのと。日本の証券会社には相当厳しく指導が来るけれども、外資にはいかにも甘いですね、空売りも放置していたんでは、これは株価はよくなりっこないし、外国のファンドのひとり勝ちにいつも終わってしまうではないかというようなことを指摘したときに、先ほど大臣がおっしゃっておられましたけれども、空売りも正当な取引の一つなんだ、そんな強権的にいろいろやれないんだという御答弁があったかと私は記憶しているんです。
 それが、なぜこの十二月から、一転して空売り規制が強化されて、今度またかなりきつく強化されたんですが、なぜそういう変化が起きて、かつてはできなかったのが、なぜ今度はやるようになったのかということをお伺いしたいと思います。
柳澤国務大臣 これは、かねてからもこの委員会でも御答弁申し上げているかと思うんですけれども、ローテーションによる検査が入りました。それで、私どもがそこで見出したものは、この空売りについてのルールを遵守しないケースが非常に多かったんです。そういう事態を我々見出しまして愕然としました。
 それから、中には、非常に我々として許しがたい不公正な価格形成にこれを利用している向きもあった、こういうことがわかりまして、私どもは、これは本当にもう一度この問題に取り組み直さないといけない、こういうことで今回見直しをさせていただいた、こういうことでございます。
五十嵐委員 私どもは、もっと早くからこの点を指摘していたつもりであります。
 そういう意味では、空売りは規制されたけれども、先ほど言ったその他の不公正なクロス取引等については、まだ外資系については甘いんではないでしょうかという指摘があるんですね。これは外資系の会社から聞いていますから、あるんだろうと思います。そこをやらないで、ただ空売りというものだけがいけないんだということになると、逆にゆがみやしないかということを私は心配しているんですね。
 空売りというのは、まさにおっしゃったとおり、不公正に使うことはよくないんですが、これも確かにおっしゃるとおり売買の一つですから、これを完全に規制してしまうと、日本市場から逆に外資がすべてさようならしてしまうということが起こりかねないんですね。空売りするということは、逆に買い戻しがあるということでもありますから、これは損しても買い戻しをするわけですから、売買が、日本市場にお金が入るということでありまして、全く日本をパスして、さようならしてしまうのは一番悪いことなんですね。
 ということは、規制をする場合でも、市場と対話しながら規制をするということが必要だと思いますが、そういう精神をお持ちでしょうか。危惧しているのは、効果があったといって喜んで、いきなり今までとは百八十度転換して、空売りは全部だめだという方に行きかねないんじゃないかなというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
柳澤国務大臣 五十嵐委員の御指摘のとおりでございまして、私は、これはどこのマネーセンターも、東京が今やマネーセンターと言えるか、あるいはキャピタルセンターというのか、そういうようなことが言えるかどうかは、じくじたるものなきにしもあらずですけれども、私はやはりそうでなきゃいけないと思うんです。ですから私どもは、相当厳しい状況のときにも、やはりマーケットはマーケットなんだということで、できるだけそのサービスを提供していかなくちゃいけない、これを基本的なスタンスにしております。
 例えば、九月十一日、ああいう事件が起きたときも、閉めたらどうだという声は随分ありました。しかし、あの日に売りたい、そういう投資家もいるはずなんです。それが、マーケットが閉まってそれができないというようなことを起こしますと、あのマーケットは、ちょっと困ることが起こったらもう流動性をシャットアウトさえしちゃうんだ、こういうような定評ができたりなんぞしましたら、これは本当に元も子もない話でございます。
 そこで我々は、相当いろいろ、何が起こるかわからないという恐怖感というか、そういう懸念を持ちつつも、あえてマーケットの機能をやはり提供していこうというような決断をしたこともございます。空売りについても同じなんです。そういうようなことについて、今五十嵐委員の御指摘をいただいたことは、全く私、そのとおりであるということでございます。
 そこで、今回の空売りのルールの変更というようなことにつきましても、これは導入に当たってパブリックコメントを募集いたしました。つまり、インターネット上に、こういう改正を考えているけれども、これについての御意見をいただきますということでやりました。それからさらに、証券会社の皆様方に対しては、説明会を開催して質疑応答の機会を提供するというようなことで、手順を踏んでこの改正に当たらせていただいた次第であります。
五十嵐委員 それは大変結構なことだと思います。これからも、日本の金融行政はとかくマーケットとの対話が足りないということをまた関係者から聞いていますので、ぜひマーケットと対話しながらよりよいルールをつくっていっていただきたい。ただ、先ほど、九月十一日の同時多発テロに関連してマーケットを閉鎖しなかったのはよかったとおっしゃったわけですが、値幅制限をしたのは逆に中途半端でよくないという話もあるので、それもこれからの研究テーマとしてお考えをいただきたい。
 特に、危機管理の法制を今政府全体としてお考えのようで、我々も考えているんですが、そのときに金融を忘れてもらっては困ると思うんですね。ドイツでは、危機管理の条項として、まさにそういうようなことがあったときに国難を利用してもうけるようなやつはけしからぬということで、かなり厳罰を用意し、禁止をする条項を盛り込んだと聞いています。当然ながら、あるケースとしては、市場の一時閉鎖の権限も与えるということなんだろうと思いますが、それは我が国でも同じだと思うんですよ。
 あれは、同時多発テロはアメリカで起きたことですけれども、日本が標的となった場合はまた別の話だろうと思うんです。日本の危機をあるいはパニックを利用してさらに売り込んで経済的な傷を深めようという行為は、やはり私は問題があると思いますから、日本の危機のときには、危機管理の一環として、金融も当然今から相当念頭に置かれて法的な準備もされるべきだと私は思いますが、その点について伺いたいと思います。
柳澤国務大臣 全くそうです。委員の御指摘、これはもう大変ありがたく忠告として承ります。
 私が考えているのはやはり地震ですね。もし仮に地震の予知があったときに、その情報を知っている人が、今委員が言われたように、非常に国難を利用して大もうけするということも可能でございまして、それらについては、私としては、かなりこれは注意深く取り組まなきゃいけないというようなことを考えているということでございます。
 加えて、内閣の危機対応の会議でございますけれども、これについても、大体安全保障的な関係閣僚が寄るわけですけれども、やはり金融の担当者もこのメンバーに入れていただくのがよろしいんではないか、このように考えてもいます。
五十嵐委員 よろしくお願いを申し上げたいと思います。
 さて、通告をしておりました石川銀行の問題に移らせていただきたいと思います。
 私は、かねて、日本は金融をめぐる取引については貸し手、借り手の支配、被支配の関係が極めて濃厚にあって、偏った取引慣行が横行していて、これは正しくないという立場をこれまで何度も表明させていただきました。それをまさに証明するような話がこの石川銀行の増資をめぐる問題であります。
 私も、出資者の方々のお話を調べてまいりました。これはかなり問題が多いというか、これはもう詐欺というか犯罪であるというふうに言わざるを得ないと思うんです。老人のところへ再三再四支店長が来られる、あるいはもとの支店長が来られる。なぜもとの支店長かというと、かつてローンを認めてくれた、出してくれた、あるいは商売をやっている方だと融資をしてくれた、そのかつての恩を背景に何回もやってきて要請する。嫌だと言ってもしつこくやってきて、そしてお願いをしていく。そうすると、これから先もまた孫がお世話になるかもしれない、例えば孫が大学へ入るときに学資が要る、そのときにローンを借りるかもしれない、あるいは、これから先また融資を受けなきゃいけないかもしれないということで、仕方なく購入をしたという人が実にたくさんいるんです。
 元支店長というのがやってきた、断り切れなかった。そのときに、定期を無理やり中途解約させて、振りかえて、そして株を買わせられた。また、この株はいつでも換金できますよということを言い、そしてまた、これはもう絶対安全なんですということも言う。それから、もし破綻した場合に、出資は返らないけれども預金のままだったら、今までの、ペイオフ解禁前ですからこれは全額が預金の方は保護されるけれども、こちらは保護がないというような説明を全くしていない。いい話だけして、場合によっては向こうから融資を条件に持ちかけて、融資が必要だという人にこれを買ってくれたら融資をしますというようなことを約束して、実際には実行されないんですけれども、そうして解約をさせて株を買わせたというのが非常にたくさんある。
 あるいは、老人や御主人の亡くなられた未亡人の方のところへ押しかけていって、無理やり解約させる、買わせる、購入させる。そして、そのときに、すぐ返事をくれ、急いでいるのですぐ返事をくれと。考える余地を与えない、人と相談させる余地を与えないというようなのがもう実にたくさんあるんです。
 これは、私は、契約として実は無効なんではないか、一件一件裁判を起こしたら、契約の不確認というか、違法な契約であるとして無効になるようなケースがいっぱいあるんじゃないかなと思うんです。
 そうすると、これは裁判を起こしてもいいんですけれども、裁判だと、双方が争えば相当なことになりますし、片っ方はもう破綻をしてしまったんですから、裁判を起こしてどうなるという見通しも立たないわけであります。そうすると、定期を中途解約させて損をのませたケースといったものについては、これは、契約が有効なものではなかったとみなして、その振りかえ分についてはまだ預金が存在しているものとみなすことが逆にできるんじゃないか、私はこう思うんですよ。
 普通は、これは詐欺になるかもしれませんが、詐欺というのは被害者の側にも問題が多いことが多いわけですね。いわゆる高い利益につられて詐欺に乗ってしまった、詐欺の手口にかかったというケースがあって、応分の責任が被害者にもあるというケースが詐欺犯罪では多いんですけれども、このケースはほとんどそんなことはありません。最初から損になる話であり、義理と人情といいますか、かつての恩を着せられる、あるいは先ほど言いました支配、被支配の、優位、劣位の関係を利用して押しつけられた契約であります。こういうものについて救済されなければ、何で政府が存在する意味があるか、公的な機関が存在する意味があるのかと私は思うくらいであります。
 私は、ぜひ柳澤大臣と、お待たせして松田理事長に申しわけありませんが預保の理事長に、今言ったような何らかのみなし規定、余地があるんじゃないか、あるいは法的にも可能ではないかなと思うんですが、御検討される余地がないかどうか、前向きの答弁を伺いたいと思います。
村田副大臣 今、石川銀行の破綻に絡みます出資の問題、株式の問題についての委員からの御指摘がございまして、出資者の方には大変お気の毒でございますが、もとより出資株式は債権ではございませんので、そういう意味では、例えば預金保険の対象商品にはなじまない、こういうふうに考えているわけであります。
 それで、新しい制度をつくるかどうか、こういう御指摘もございましたけれども、今の増資に絡み合います個別の取引の状況について、私も嘆願書を読ませていただきましたので、御指摘のようなことは理解をしたわけでございますが、しかしながら、仮に優越的地位の利用とかあるいは詐欺、そういう疑いがある場合には、独占禁止法あるいは民法等の関係法令に基づきまして、関係当局あるいは当事者間で対応あるいは解決が図られるべきではないか、こういうふうに考えているわけでございまして、以上、お答えを申し上げます。
松田参考人 お答えいたします。
 先生も御指摘なさいましたように、現在、石川銀行は全額保護という枠組みの中で作業が進んでおります。ただ、全額保護というのは、預金を中心とする債権債務の関係でございますので、ただいま村田副大臣からお話ございましたように、出資金そのものは保護の対象に直接ならない、これはちょっと動かしがたい事実ではないかなと思います。
 ただ、これは一般論でございますけれども、例えば御指摘のような、出資金の勧誘方法等に重大な問題があって、出資者がそれが不当であるとして訴訟を起こして、裁判手続において当該銀行に不法行為が認定される、こういうケースも考えられなくはないわけでございまして、そうしますと、不当行為に基づく損害賠償請求権の存在というものがそこで司法の場で認められますから、そうなりますと、その請求権は全債務保護の範疇に入ってくる可能性があるということはございます。
五十嵐委員 ありがとうございます。私もその点を言っているんですね。可能性があるにとどまってしまいましたけれども、出資金全部を保護しろと言っているわけじゃないですよ。それは違法ですよ、もちろん。そうじゃなくて、実際に出資をした中には、定期の中途解約で、先ほど言った優越的な地位を利用して無理やり押しつけた契約があって、これは、例えばリコール制度があったら適用されるようなものであって、本来預金が継続されていたとみなしてもいいようなものがあるんじゃないかということを申し上げたんですね。
 要するに、これは出資ではなくて、その出資の契約は無効であって、本来定期預金として預金されていたものがそのまま残っている状態と同じとみなされるべきだというものがあるわけで、今まさに松田理事長がおっしゃったとおり、法律的に損害賠償請求が認められる。
 そのときに、それではそれがどこから補てんされるかという話で、相手は破綻していますから、それは後を引き受けたところが、それは管財人と、金融管財人の中に預金保険機構も入っているわけですから預金保険機構がそれを受け継いで、認められた部分は預金とみなして、あるいは預金の変化したものとみなして補てんをするということがあり得る、あり得るというよりしていただきたいということで、今そういう可能性もあるということを御発言いただきました。それに比べて、村田副大臣の答弁は非常に冷たい答弁だったわけでありますが、私は、そういう法的理論もあり得ると思うんです。
 大臣、どうですか。政治家として柳澤大臣、こういう事件を救えないようじゃおかしいと私は思うんですが、いかがでしょうか。
柳澤国務大臣 まず大前提は、私ども、個別の、特定の取引について私の立場でどうこう言うというようなことはできないということが大前提です。
 それから、一般論として、今松田理事長が言われるように、これが民事法上の不法行為に当たるという場合には損害賠償請求権が存在しますので、司法的な手続で確認、確定されれば、それは一つの石川銀行なら石川銀行という銀行の、くだんの銀行と言いかえますが、くだんの銀行の債務になるということなんです。
 そこで、今は、預金及びほかの、債権と言ったり債務と言ったりしてわかりにくいですが債務、そういう銀行、金融機関の側にとっての債務については全額保証でありますから、その保証の対象になる、こういうことでありまして、これは、一般的な不法行為の損害賠償請求と今の制度を合体させるとそういうことになるということを申し上げているわけでございます。
五十嵐委員 それをぜひ、認定された場合にあり得る、可能性があると言ったのを一歩進めていただきたいなということが一つ。
 もう一つは、それじゃ、行政当局が全く瑕疵がなかったのかという問題があるんですね。私どもは、不作為の責任が行政当局にもあったのではないかという見方をとっております。すなわち、行政当局が逆に訴訟の相手になる可能性もあると思うんです。私はその点を強く指摘をしておきたいんですね。ですから、民法上の訴訟の結果を待つまでもなく、私は、認定する可能性もあってよろしいと思うんです、実体上はそれを定期預金であったとみなしていいんではないかなと思うんです。
 特に、この不作為の問題があるのは、今横におられる佐藤観樹先生が、これは二月の二十八日の財務金融委員会で質問をされて、柳澤大臣はお答えになっているんですが、こういうふうにお答えになっていますね。
  十二年九月期の決算の適正性を検査するために十三年の一月から検査に入った、そういうことで、いよいよ検査が入って事実上五月に検査が終了するわけですが、まさにその検査が行われている時期である三月から増資の手続に入るわけでございます。
ちょっと長くて恐縮ですが、読ませてください、大事なところですから。
  それで、そこには目論見書というものを提示しなければいけないわけでございますけれども、その目論見書というのは、まさに検査の対象になっているところの自分たちの自己査定による決算の結果を目論見書に当然出すわけでございますけれども、私どもとしては、そういうようなことについて、目論見書に書いてあること、記載事項が本当に適法なのかというようなことで監査法人や弁護士の意見を聴取するというようなことで、少なくとも経営陣に対しては、こういうことをやることについては慎重であるべきだというある種の警告を発した、こういうことを行わせていただきました。
  しかも、増資は当初のもくろみの二百二十
というのは、これは億円という意味ですが、
 二百二十には達しなかったわけでございまして、それにもかかわらず、今度は自分たちの三月期の決算を四・〇八%だというようなことで言われる。そうすると、二百二十億で浮き上がるというはずだったんじゃないのかと我々は当然思うわけでございまして、増資が満額いかなくても四・〇八だというようなことは、一体どういうところからそういう計数が出てくるんだというようなことについても、私どもとしてはいろいろ論議もいたしたわけでございます。
という話なんですね。
 これは、要するに、目論見書がおかしいじゃないかということを言われているんですね。要するに、二百二十億円が集まらなかったのに、二百二十億円集めて初めて四・〇八、四%以上になるはずだ、過少資本にならないということになるはずなのに、集まらなかったのに四・〇八だと言い張っているということでしょう。どうしてこれは認めたのですか。
 そのときに、実は、一月に入ったときに、九月期で債務超過だったということをお認めになっているんですね。債務超過だったということをお認めになっている。二〇〇〇年の九月末を基準とする検査で、この時点で三百二十一億円の債務超過だったということをお認めになっているのです。その後、増資したからいいじゃないかと相手が言っているのでそれを認めましたという話なんですが、ところがこの九月期では、この三百二十一億円より少ない二百二十四億円の債務超過で破綻を認定しているのですね、十二月末に。
 だから、これは三百二十一億円が債務超過だった時点で、そんな、相手の言うことは信用できないけれども、まあ信じておきましょうというのではなくて、私は、これを公表すべきだったし、公表していれば、皆さんもおっしゃっているのですよ、これが公表されていればこんなの応じなかった、増資には応じなかったと。これは不作為ですよ。タイムリーディスクロージャーに反する。あの大和銀行ニューヨーク支店事件の反省を全く考えていない、反省に立っていないと思うのですね。あれは、あの不正事件が起きて大穴、特別損失をあけた、井口さんというお名前でしたっけね、それを隠しておいて、その間に社債を発行しているのですよ。それが怒らせたのですよ、アメリカを。そして追放されたのです。
 ですから、こういうような重要な事項は、当然私は、株主等に公表されてしかるべきだ。それを、五月末になるまで、増資が完了をするまで待って発表しているのですね。発表したのはいつですか。五月なんじゃないですか。これは、だまされなさい、あなた方はだまされなさいと増資に応じた預金者たちに金融庁が言っているのと同じことですよ。そうじゃないですか。
村田副大臣 増資手続でございますけれども、私どもの立入検査が、十三年の一月二十三日に立入検査を開始いたしまして、検査結果の通知は五月の二十一日にしているわけでございます。その間に二回の増資が行われているわけでございまして、増資が行われている時点では債務超過との検査結果は出ていない、こういうことでございます。増資については、銀行法上、届け出事項とされておりまして、委員が、何で認めたのか、こういう御指摘がございましたが、そういう意味では、私どもが増資の認可等をしたことはないわけであります。
 事務ガイドラインによりますと、銀行に対します行政処分については確定した決算等に基づいて行うこととされておりまして、十三年三月末の見込みの計数をもって仮にその早期是正措置等の発動等を打つ、こういうことはでき得ない、こういうことであったというふうに思います。
五十嵐委員 私は問題が幾つかあると思うのですが、一つは、五月二十一日まで検査がかかったというのは長過ぎるんじゃないか。物すごい長いですよね、これは。増資を待っていたんじゃないの、そういう疑いがありますね。これは長過ぎますよ。ほかもこんなに長く検査がかかるのですか。通常はもっと短いんじゃないですか。その辺はちょっとどうですか。
村田副大臣 今、検査局の者がおりませんが、通常は大体これぐらいの長さということを今お答えをいたしたいと思っております。
五十嵐委員 そうですかね。この検査は通常の検査ですか、それとも何か特殊な問題があっての検査ですか。それをちょっと早急に、ほかの検査事例、銀行の名前は伏せて結構ですから、資料を下さい。どうも信用できないですね。
 それからもう一つは、大臣、直接お答えいただきたいのですが、大臣は、今私が読み上げた答弁のように答弁されているんですよね。四・〇八、疑わしいということを言っているのですよ。これは、そのときどうして否認しなかったのですか、この四・〇八という数字を。私はおかしいと思うのですよ。だって、厳密に検査していたんでしょう、じっくり検査して。
柳澤国務大臣 先ほど基本的に村田副大臣が答弁申し上げたことと変わらないわけでありますけれども、要するに増資の努力を片方でどんどんしているわけですね、増資の努力を。これをぶち壊しにするようなことを他方でするというのは、これはできないですね。これは常識論です、法律論じゃなくて。そういうことはできないわけです。しかも、届け出です。承認でも何でもない。そういう努力がされている。
 ですから、私どもとしては、その経過経過で、例えば目論見書であるとか、あるいは決算の発表であるとかというものについて、いろいろその都度監査法人あるいは弁護士さんに、これでいいんですかというようなことを確認していくということで、ある種の牽制をしていく。それで、内部的にその監査法人なり、あるいは弁護士さんの当該の勧誘先に対する働きかけを期待する。こういうようなことが我々がとり得るところだということは、御理解いただけるだろうと思っております。
五十嵐委員 大臣、まともな銀行だったら、大体九月期で三百二十一億円の債務超過になんかならないんですよ。債務超過に陥った原因は何なんですか。御存じだったはずでしょう、これだけ調べたんだから。
 これは、森前総理の大変親しい経営者でありますけれども、この森前総理の御親戚の方も、これは有罪になられた犯人というか被告人の一人がおられますけれども、非常に不明朗な北九州市のホテル経営会社、ホテルニュー田川という会社をめぐる非常に詐欺的な融資ですね。このお金が一部銀行の経営者そのものに還流しているんじゃないかという疑い、疑惑が持たれている。すなわち、銀行経営者自体が、これはぐるみの特別背任的な融資ではないかと言われている事件があって、それによってそうしたものが――これだけじゃないですね、もう一つあるのは、やはりこれも森さんと大変親しい福島の小針さんの系列の会社に対するゴルフ場の方ですけれども、これも不当な融資ですよ。東京支店を通じての不当な融資です。こうしたものが積み重なって債務超過になったところです。
 それはおかしいんですよ、増資の努力をしているのを邪魔できないなんて。増資の努力はいい努力だったんですか。一般的にはそう言えるかもしれないけれども、この増資の努力はいけない努力だったんですよ、明らかに。詐欺的な増資の努力だったんです。それを邪魔できないという話はないのであって、問題は、九月期の三百二十一億円の債務超過をどこかの時点でディスクローズするべきであったんじゃないですか。そのことを申し上げているのですが、御答弁がありません。もう一度。
柳澤国務大臣 その債務超過を我々の方で認定したのは、検査結果がすべて出切った段階であります。その間に、増資が行われる、さらには不動産についての評価、これを大幅に計算方法を変えることによってそれを主張される、そういうような経過がありますので、そういうものを行政当局としては、それに対して適正に対応せざるを得ないんです。世の中のうわさであるとかいろいろな周辺の事情でもって、そういったいろいろな御主張に対して、それをまともに受けてきちっと結論を出していかなくていいということにはならない、こういうことでございます。
五十嵐委員 それはおかしいですね。それは、最終的な認定は五月になったかもしれないけれども、九月時点の債務超過が五月になるまでわからなかったということはないでしょうに。九月期の債務超過が五月の時点になるまでわからなかったということはないでしょうよ。
 では、なぜ増資努力が途中で行われたんですか。これは、明らかに過少資本だったから増資努力を行ったんです。過少資本を認めたから増資をするから認めてくれ、四・〇八になりますと言っていたんでしょうが。九月時点での債務超過が五月でわかったわけじゃないですよ、それは。そうでしょう。
柳澤国務大臣 いえ、先ほど委員は、三百二十一億の債務超過が云々とこういって言われましたので、その検査結果は五月にしか判明しなかったということを申し上げたんでございますが、九月末の債務超過については五月の二十一日に判明しているわけでございます。
五十嵐委員 ちょっとおかしいんじゃないですか。間違っているでしょう、今の答弁。間違っているでしょう。全然間違っていますよ。
村田副大臣 十三年の一月の立入検査でございますが、基準日は十二年九月三十日の時点の決算でございますので、今大臣が申し上げたとおりであります。
五十嵐委員 だから、十二年の九月三十日の中間決算ですか、それが三百二十一億円の債務超過だったんでしょう。そうでしょう。それがわかっていたのは、だから、いつの時点かというのは、五月じゃないでしょう。何言っているんですか。
村田副大臣 いや、それが、検査を通じまして五月にその数字を通知した、こういうことであります。
五十嵐委員 答えになっていないじゃないですか。十二年九月三十日に三百二十一億円の債務超過だったというのは、発表したのは五月だろうけれども、その間に、あなた、増資しているのは三月と五月と、二回増資しているんですか、増資しているんでしょう、三月と四月と続けて。それは、増資しているのは、債務超過なり、あるいは過少資本だったということを認識しているから、増資をしますといって増資をしているわけでしょう。だから、わかったのはもっと前でしょうが。何言っているんですか、そんな。
村田副大臣 増資自体は石川銀行の判断でされるということでありますし、それから、最終的に検査を通じて追加的な償却、引き当てをして、それから、今大臣もおっしゃいましたように不動産の含み損を認定して、それで債務超過の数字になっているということでございますが、その間において増資が二百二十億なされたということでございます。最終的に、三百二十一億という委員がおっしゃるその数字につきましては、検査の結果でございますので五月の時点で判明している、こういうことでございます。
五十嵐委員 違うでしょう、それは。それはもっと早くわかるはずですよ、債務超過なんということは。最終的な金額が最終的に確定して、いろいろな手続を経て認定されたのは五月かもしれないけれども、もっと早くわかっていなきゃこんな話にならないでしょうが。何を言っているんですか。うそを言っちゃいけないですよ。今の答弁は納得できないよ、そんな答弁は。
    〔委員長退席、中野(清)委員長代理着席〕
村田副大臣 繰り返しで申しわけありませんが、委員のおっしゃる時点では債務超過という検査結果は出ていなかった。私どもが、今委員が何かすべきである、行政処分をすべきであるというそのときには、先ほど申しましたように、事務ガイドラインによりまして、確定した決算とかそういうものに基づいてでなければ不利益処分はできない、こういうことであります。
五十嵐委員 処分じゃないんですよ。なぜディスクロージャーしないのかと聞いているんじゃないですか。
 それで、その時点でも四・〇八%にどうしてなるのかわからないという問答があったと、押し問答をしていたということを言っているじゃないですか、大臣が。だから、この時点ではおかしいということはわかっているはずですよ。かなりな過少資本ないし、もっと前に言えば債務超過だったということはわかっているはずですよ。それは、その押し問答をしている最中に。そういうことじゃないんですか。
 では、なぜ三月、四月に慌てて増資の手続をするんですか、こんな強引に。すぐ返事しろと言っているんですよ。ある人は、とにかく考える余裕を与えずに、もう何度も依頼をされて、すぐ返事をしろ、そう言われて、断り切れずに増資に応じてしまった。女性です。支店長がやってきて、その日にとにかく返事をくれというので押し切られてしまったと言っているんですよ。なぜこんなに急ぐのですか。
 それは、金融検査が入って、金融庁の検査が入って債務超過じゃないかと指摘されたからじゃないですか。この時点で何にもわからなかった、五月になって初めて過少資本とか債務超過がわかったなんという話じゃないでしょう。そんなばかな話じゃないですよ。なぜディスクロージャーしなかったか、この被害を防がなかったのか、防げなかったのかということを聞いているんですよ。まじめに答弁しなさいよ。
村田副大臣 もちろん、新株発行の目論見書の記載を見ますと、十二年九月末に関しまして、監査法人と石川銀行が協議の上公表した中間決算どおりになっておりまして、この記載を見ますと、平成十二年度収益見通し及び資本推移表から、十三年三月末の見込みに関しては、増資がなければ債務超過と推定できるものでありました。それは、この表、目論見書を見てわかるところでございます。
 その上で、先ほど大臣が御答弁申しましたように、増資をしようという石川銀行の自己努力というものを途中で妨害するといいますか、途中でブレーキをかけるということは、増資につきましては石川銀行の判断で行うものであるがゆえに、そこはいたさなかったということでございます。
五十嵐委員 何遍も言っているじゃないですか。まともな銀行だったら増資はいいことなんです。だけれども、この銀行はそうじゃないでしょう。だから、こういうときにはなるべくタイムリーにディスクローズをしなければいけないんではないですかということを言っている。あなた方は責任がありますよ。そして、疑わしいのは、前総理の影がちらちらしている、そういうことに対する配慮があったんではないですかということを言っているわけですよ。
 もう時間が参りましたから、さらに調べた上で追及していきますけれども、まじめにやってくださいね、まじめに。そして、できるだけ被害者は救済をする、それがあなたたちの償いですよ。このことを申し上げて、質問を終わります。
中野(清)委員長代理 次に、阿部知子君。
阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
 きょうは三大臣におそろいいただきまして、ありがとうございます。
 冒頭、各委員から御質問がもう既にございましたことですので、ごく簡略にお伺いを申し上げますが、いわゆる三月危機問題、日銀の短観を見ましても、あるいは二月の税収の減少を見ましても、引き続く不良債権の問題を見ましても、経済、財政におけるいわゆる危機の事態というのは今後もあり得ることとどなたもお考えではあると思います。
 そこで、おのおのの三大臣に、塩川財務大臣、柳澤金融大臣、そして竹中経済財政担当大臣に、おのおののお立場から、どのようなことを最もリスクファクターとお考えになりながら、今後の各部署のお仕事を続けていくか。特にいわゆる三月危機と言われたようなこと、これは先ほども五十嵐委員でしたかどなたかでしたか、また五月危機とかいう形で、ずっと危機、危機と言われるような事態というのは国民にとっても幸福ではございませんので、おのおのの担当大臣に、何を一番おのおのの担当からリスクファクターと見られて、そしてそこに注目しながら運営をしていかれるかということで、御所見を伺いたいと思います。
塩川国務大臣 私は、二月の末ごろだったかと思いますが、この委員会で三月危機のお話が出ましたときに、いや、そういうことはないと思いますと。あのときには、今、目下啓蟄の時代で、ちょっちょっと虫が動いておる時代、そういう春がやってくるという時代だ、こういうことを申し上げたと思っております。
 まさに春になると同時にだんだんとようなってきたでしょう。ですから、経済というものは、そんなに数字でばかり判断するんじゃなくて、やはり世の中の動きが経済に映ってきておるのです、それは。ですから、私は、三月危機というのは初めから否定しておりました。
 けれども、また、景気が非常に厳しいということは私は絶えず言っておることでございますので、景気が厳しいということと、危機だ危機だということとは、ちょっと違うと思いますね。
 また、今度、四月危機、五月危機、ずっと危機続きますけれども、これはやはり、マスコミとか評論家は危機と言うていなければ論文の値打ちがないものだから言っておるのです。私は、しかし、厳しいということは否定しませんよ、これは大変だ、だから、それに対する対応はやらなければならぬ、危機だといって危機対策で追われていくという必要はないと思っております。
柳澤国務大臣 私も今の塩川大臣と同じで、厳しい状況が続いているというふうに思っておりまして、そういう中で、私の担当であります金融機関あるいは金融機関の固まりとしての金融システム、このあらゆる面について、注意を凝らして適切に対応していかなければいけない、このように考えて仕事に取り組んでいるところでございます。
竹中国務大臣 政府の月例経済報告におきましては、景気は依然として厳しい状況にあるものの、一部下げどまりの兆しが見られるというふうな判断をしております。
 しかし、御指摘のように、幾つかの考慮しなければいけないリスクファクターが存在しているということも十分に認識しているつもりであります。
 二点申し上げたいと思いますが、やはり、先ほどからさまざまな形で議論なされていますように、不良債権の問題、バランスシート調整の問題というのは、一つのリスクファクターとして今後とも注意をしていかなければいけない問題であると認識をしています。
 もう一つ、あえて挙げるとすれば、循環的に日本の経済は少しいい姿が期待できる状況になっておりますが、これはアメリカの動向に依存している面も非常に強い。さらには、在庫調整等々が進展しつつありますが、国内で見ましても、設備投資循環、いわゆる資本ストックの調整が十分進んでいるとは言えないわけでありますので、やはり循環的な動きではなくて、日本の経済のファンダメンタルな部分をしっかりとさせていかなければいけない。
 答えは、したがって、やはり構造改革をしっかり進めなければいけないということになるわけでありますが、今の二点が特にリスクファクターとして心しなければいけない問題であると思っております。
阿部委員 では、塩川大臣と竹中大臣には後ほどまた質問を続けさせていただきますが、今の中で、竹中大臣からも御指摘であり、また柳澤金融大臣もきょうの御答弁で随所で触れておられました不良債権問題について、言及をさせていただきます。並びに、いわゆる金融庁による金融機関に関する特別検査のことも伺わせていただきます。
 まず特別検査の公表時期でございますが、以前に森金融庁長官は、三月中の途中経過報告を示唆しておられたように記憶いたしますが、結果的にはまだ公表されておらないように思います。そして、その折に、金融庁といたしましては、銀行の三月決算を控えて、銀行自己査定にこの金融庁の検査結果を反映させるのがねらいというふうなコメントも聞かれておるやに思いましたが、果たして柳澤金融大臣、これから以降、可及的に早い時期と思いますが、特別検査の発表時期についてはいつとお考えでしょうか。
柳澤国務大臣 これは、特別検査というものが、金融機関が決算を控えて一月から三月にかけて自己査定をします、そこに参加するというか、そういうことでやらせていただいておりますので、三月末までそうした作業が必要であったということでございます。それをこれから取りまとめて発表をするということになるわけでございまして、私どもとしては、半ばごろまでには取りまとめたい、このように考えていることは以前から申し上げているとおりでございます。
阿部委員 では四月の半ばの御発表という前提に立ちまして、次に公表の形をどうなさるかということですが、例えば、不良債権を発生させた企業ごとに公表することはもちろん難しいと思いますが、建設、流通などの業界別という形でなさるのか。あるいは金融機関側は、銀行別あるいは銀行業態別などのいろいろな発表方式があると思いますが、柳澤大臣としては、どのような形で特別検査結果を御公表なさいますでしょうか。
柳澤国務大臣 前から申し上げておりますように、特別検査の結果が、特別検査をやったかいがあった、効果があったということを、これは最終的には国民の皆さんに御判断いただくことですけれども、そういうものの御判断をいただくことができるだけ可能であるようにということ、こういう事柄と、もう一つは、検査対象になった企業にいわゆる風評による被害というようなものをもたらさないようにということで、今どういう形があるかということを取りまとめをしながら、また同時にその形も決めるという作業をしているものと承知をいたしております。
 その場合に、対象になった企業あるいは銀行というような個別のものというのは全く難しいというふうに考えておりまして、しかし、できるだけ御評価をいただけるのに容易なようにということで努力をしてまいりたい、このように考えております。
阿部委員 柳澤金融大臣が念願であったペイオフも、四月一日、順調に開始した、一応そういう事態にはなっておるわけです。では、はたまた国民の側に銀行というものを評価する目安があるかというふうに、国民の側に振りかぶって考えてみますと、今おっしゃったような公表の仕方で、果たして本当に国民が自己責任で自分の資金を運用していけるような、そのための判断基準になるかどうかということは、私は極めて心もとないように思います。
 例えば、この特別検査の公表結果が、要注意先債権とか破綻懸念先債権とか破綻先債権がどれくらいあるという形で大ぐくりに一括されましても、果たしてそれが国民に本当に利用し得る、自分に還元し得る情報であるか否か、私は疑問に思いますが、そこのあたりまで踏み込んで、国民の知る権利ということも含めて、なおかつ企業にも余分な風評被害にさらされないという運営上の守られるべきものは私はあるとは存じますが、その微妙なバランスの中で、どこまで踏み込んで、どういう形でお考えであるか、もう一度国民の側にわかりやすく御説明いただけますか。
柳澤国務大臣 特別検査というのは、これはもう銀行の融資先としては大きなところではありますけれども、極めて一部にとどまっております。したがって、今阿部委員がおっしゃられたように、ペイオフとの関係で、国民の皆さんが評価を、例えば自分の預金の預入先を評価されるのとは、ちょっとそこには距離があるのが考えられるところでございまして、そういう特別検査の結果もひっくるめて、決算というもので、あるいはリスク管理債権の公表といったようなもので発表される情報、これに基づいていろいろと預金者の皆様方等にはお考えいただくということになろう、このように考えております。
阿部委員 もちろん直接にペイオフとの短絡的な関係はございませんと思いますが、しかしながら、やはり国民にとりましては、今の銀行というもののありようは、絶えずどこに預けておいても安心ができない、逆に言えば、そのような目に見えない不安感に覆われているような状況というのも、やはり政治に携わる者としては御認識いただきたいと思うのであります。
 そこで、そうした大きな不安感のもとになるのがやはり先ほど述べました不良債権の問題かと思いますが、銀行の三月期決算が終わって、その後不良債権処理が果たして順調に進むのかどうか。先ほどどなたかの、速水総裁でしたかのお話にありましたが、今ある不良債権自身の問題もあり、はたまた今後不良債権が新たに発生してくることもいろいろな要因から考えられる中であります。
 三月決算で大手十二行の不良債権処理の損は、昨年十一月時点で六兆五千億と言われていたものが、一兆円ふえて七兆五千億円にすると言われております。また、一年前に比べましても、四割増加して二十四兆円だというふうに言われております。
 見通しを聞くのは、さまざまな要因がございまして必ずしも正確な御答弁とならないので、柳澤大臣はお嫌いかとも思いますが、しかし、やはりある程度の見通しを立てないと国民の側への安心のメッセージも出てまいりませんので、二〇〇二年度における不良債権の見通し、それはすなわち景気の問題でもあり、土地の地価の問題でもあり、株価の問題も総合的に判断された場合に、この不良債権問題の一年ということを、今後の一年、柳澤大臣としてどのようにお考えか、お教えください。
柳澤国務大臣 非常に難しい問題であるというふうに考えます。しかし、処理損というものは、今度の特別検査によるものは、また再びそれの損が出るということでは、これは物の本質上そういうことにはならないわけでありますので、二〇〇一年度に比べて、二〇〇二年度はそこまでは行くまいというふうに考えております。
阿部委員 行くまいであればよろしゅうございますが、新たな不良債権の発生というのも、先ほど日銀の短観でも雇用情勢、まだまだいわゆる企業の側から見ると人員増である、しかしながら、リストラされる側、首を切られる側にとっては職を失い、強いて言えば、所得税を納入する本人が消えるということでもございますし、また、今の経済の状況の回復も、冒頭御指摘のございましたように、アメリカの景気の回復につれたもの、あるいは円安という輸出に係ったものという、実体経済の側はまだまだ弱含みというところも私はあろうやに思います。
 そこで、この一年の不良債権という問題は、なお緊張を持って対処していただきたくも存じますし、また、いつも柳澤大臣は、きちんとした対処をすることによって絶対に金融システム不安は起こさないというふうにお述べでございますので、その点について御留意をいただきますようにお願い申し上げます。
 引き続いて、塩川財務大臣にお願いいたします。
 先ほど私が、三月危機は去りましたが、はたまた税収の落ち込みも六カ月ずっと続いて減収でございますし、塩川財務大臣が冒頭御発言でございましたが、いわゆる塩川財務大臣が復員された当初のような鉄鋼業とか、目に見えて我が国が、リーディングインダストリー、これが我が国を導いていくんだというような産業が、あえて言えば、今のところはっきりとは見えてこない。そのことについて六月ごろまでにも、政府としてこれからの日本の産業の発展、復興についていろいろな意見を聞いていきたいし、また、きょうは三十兆円枠のことは、私はその枠にこだわるかこだわらないかというような、そこの形式的な論議をしたいのではなくて、やはり有効なところにどのように投資していくかということを論ずべき場がここであると思っておりますので、そのような趣旨に塩川大臣のお返事を伺いました上で、先ほど塩川大臣は公共投資、そのことはいわゆる施設物――箱物というと言葉が悪いので、施設物も含めて、道路だけではなくて考えていこうというふうに冒頭おっしゃいました。
 私は、それはついせんだっての補正予算を見ましても、かなり施設の各地域への補正予算が組まれましたので、そのようなお考えはあろうかと思いますが、いま一つぜひとも指摘させていただきたいのは、実はいつもまた言うことですが、医療と申しますのも、道路や日常本当に必要とされるものと一緒で、いわゆる社会的な公共資本としてこれから位置づけて、道路にしてもそうです、必要がないのではなくて、国民の生活や命の安全のために必要なものをどのようにつくるか。私は、医療という分野も、今ひたすらに医療費抑制ということが前面に出ておりますが、果たしてそのような考え方でこの国を導いていいものかどうか。もちろん高騰、暴騰させてよいとは思っておりませんが、医療というのは社会的公共資本だというふうな本当の基本的な観点を組み直すことによって、さらに私は必要な投資の生じてくる分野と思いますが、塩川大臣の御所見を伺います。
塩川国務大臣 何か一遍にぎょうさん質問されたので、ひょっとしたら漏れているかもわかりませんけれども、まず最初に、今リーディングインダストリーはどういうことになるんだというお話でございました。
 私は、これはもっと早く政府がその方向を示すべきだったと思うんですね。ITにもちろん集約していっておりましたけれども、それだけではやはり国際競争力に勝っていく日本の産業体制にはならないと思う。
 これは私自身としては、やはりこれからの新しい産業技術の動向を見ますと、一つは、ナノの分野における技術開発が一つ大事だろう、それからバイオテクノロジーの分野、そしてIT、特にソフトの分野というのは、私は勝手に、そんな分野が本当はこれからのリーディングインダストリーとしての活路を開いていくべきだ、また、政府もそちらの方に産業界と協力して方向づけをしていくべきだということをかねてから考えておるのでございますが、私自身の所管事項でもございませんので、経済財政諮問会議等に、機会がございましたら、こういう問題を議論してもらうようにひとつお願いしたいと思っております。
 それから次に、三十兆円にこだわっておらないけれども、金の使い方をもっと有効に使えということはもう当然でございまして、私は、平成十三年度、十四年度を通じて、皆さんから隠し借金の、インチキな予算だということをさんざん言われましたけれども、これによって、一応は、予算の使い方、金の使い方というものを各省とも大事にしてきた。要するに、行政コストというものを考えてくれたということは、これなりに効果はあったと思っております。
 したがって、十五年度、十五年度後年度におきましても、この三十兆精神でもって予算を編成していくというこのやり方は変えてはいかぬと思っております。
 しかし、一方において、経済のいわゆる拡大、そして需要と供給とのアンバランスを是正していくための経済のいわば活性化、拡大の問題については、やはり、全体としてもっと政府が考えなければならぬ施策は何だろう、それに伴うところの財源はどうするかということは今後の問題として考え、六月をめどに、大体この両方におけるあらかたな方針、基本方針というものを提出できるようにいたしたいと思っております。
 医療についてでございますけれども、昨日、日本医師会の総会がございまして、会長選任の行事もあったのでございますが、その間におけるところの、医師会総会での議論ということを見ました場合に、医療の一般平面的な対策ではなくて、地域医療はどうするか、研究医療はどうするか、また、病院における病院経営としての医療をどうするかというような、そういう医療における役割分担的な対策というものも考えるべきではないかという意見も相当あったと思っております。
 私は、来年度の医療関係の予算等におきましては、この前の抜本改正がございましたので、この抜本改正の趣旨にのっとって編成することは当然でございますけれども、日本医師会が提案されておりますところの地域医療のあり方とかいうものにつきまして、役割分担について、やはり厚生労働省ですか、ここなんかと十分に相談して、地域の人たち、住民に医療の心配のないような体制をしていきたい。
 いかに先端医療の先端技術が進んだといたしましても、そちらの方に資金を使ったとしましても、地域医療の方で国民が心配するようなことがあっては何の医療なのかということになってくる。私は、その点についてかねてから非常に大きい関心を持っておるものでございます。そういう点を十分勉強したいと思っております。
阿部委員 御見識のある御答弁をありがとうございます。
 地域医療は、一つには、根本的にはやはりそこで暮らす人々の安心という問題でもございますが、地域産業の活性化ということについても、雇用の創出ということについても非常に大きな意味を持ってございますので、ぜひ政府の中でも前向きに取り組んでいただきたいと思っております。
 最後に、竹中経済財政担当大臣に二点お願いいたします。
 今の塩川大臣のお言葉の中にもありましたが、いわゆるリーディングインダストリーになるかと思われていたIT産業、これはITバブルと言い切っていいかどうかは私自信がございませんが、しかるべくアメリカ等々の例をとりますと、ある程度限定的な側面もございます。
 今、アメリカでは、バイオ関連の産業がかなり全体の経済の活性化に貢献をしておるということですが、我が国におけるバイオ産業の位置と見通し、期待するものは何であるか、また制約は何であるか、あるいは限界は何であるかが一点。
 それからもう一点は、先ほど、政府の税調と経済財政諮問会議等で論議するときの差は、グローバルに税制のことを考えられることだとおっしゃいましたが、私は、特に医療における官民格差、官民と申しましても、医療は公的医療機関のほかに医療法人経営がございまして、この医療法人の税制と財務状況の公開ということが極めて重要な意味を持ってまいると思います。
 その二点について、ごめんなさい、これは予告していないのですが、竹中大臣にあっては何でもオーケーですから、よろしく御教授ください。お願いします。
    〔中野(清)委員長代理退席、委員長着席〕
竹中国務大臣 まず、リーディングインダストリーについてのお尋ねがございました。
 この問題は、要するに、インダストリーというのをどのようにとらえるかということなのだと思います。戦略的に産業を活性化するということを考えるわけでありますが、いわゆる一九六〇年代から七〇年代にかけて行われましたように、いわゆるチャンピオンインダストリーを政府が選んで、そのチャンピオンインダストリーに資源を集中投下する、私は決してそういうことではないのだと思います。
 IT産業という言葉がありますけれども、ITというのは決して産業ではなくて、ITこそ一つのインフラであるというふうに思いますし、デジタル情報を自由に、ローコストで早くやりとりすることができるようになった中で、実はバイオ産業というのは出てきた。アメリカのバイオベンチャーというのは、だからこそシリコンバレーに多くが立地しているという事実もあるのだと思います。その意味では、インダストリーの概念そのものを含めて、産業に対する戦略的対応を考えていきたいと思うわけであります。
 しかしながら、バイオは、技術フロンティアがデジタル技術の活用も含んで急速に広がっている大変重要な部門であるということは認識しております。日本の場合、本来、バイオに関しては、いわゆる醸造業等の非常に伝統的な技術の中で非常に強い面があるという部分と、しかし、医薬品の産業が、どちらかというと経営形態が同族会社が多いというようなこともあって、一つの制約になっている。その可能性と制約、二つがあるというふうに思っております。
 そういったところで、研究開発等々に政府が果たすべき役割は当然のことながらあると思いますので、塩川大臣がおっしゃったような一種の集中と選択を、塩川大臣は傾斜生産とおっしゃったわけですが、集中と選択と同じ意味だと思います。そういうところに重点を置いた一つの戦略をぜひ考えていきたいと思っているところであります。
 税制との絡みで、医療の分野とのお尋ねがございました。
 これは非常に個別の議論でありますので、余り十分にお答えするべき見識を私持っておりませんが、医療というのは非常に重要なインフラであるという側面と、重要であるからこそ、そこにやはり、これは言い方によっては御反論もあろうかと思いますが、そこにやはり何らかのインセンティブが、もっといい医療をしよう、もっといい頑張った医療をして患者さんに貢献しよう、そういうものをいかに入れ込んでいくかという点が、私はやはり両方なければいけないのだと思います。
 極めて公的なものである、しかし同時に、それを担っているのはやはり個人であり経営主体でありますから、そこでの兼ね合いをどのようにつくり出していくかというところが、税制の面でも一つの工夫が求められているのだと思います。
 御指摘のように、経済財政諮問会議の場合は、グローバルな視点という御指摘がありましたが、他の制度との整合性、例えば補助金と税とどちらがいいのか、保険と税とどちらがいいのかということを総合的に考えるということが重要な使命だと思っておりますので、細部のところまではまだ議論ができませんけれども、方向としては、そういう心がけでもって対応をしていきたいと思っております。
阿部委員 私の前者の質問の趣旨は、いわゆるバイオ産業といっても非常に幅広い分野で、ただし、これから本当にそれが日本において定着し、ある意味で人々の幸福につながるとすると、そのもとになる医療という分野の足腰がしっかりしていないとやはり宙に浮いたものになるという意味で、医療についての必要な投資もやはりきちんとなさっていただきたいという点が一点です。
 それから、後者の質問に関しましては、いわゆる日本の医療の特性は、半分が官、公立、半分が民間でございまして、民間の多くは医療法人という経営形態をとっております。私もその医療法人を預かる院長でございましたが、何が一番困ったか。いわゆる初期投資、土地とか建物を取得する場合に、公立と違って非常に負担が強い。そして、残念ながら、税制上はほとんど優遇がない。その結果、人員を削減しないと、官立、公立とは違って少ない人間でやらないといけないというところが非常に制約でございました。
 私は、これから医療に株式会社が参入するという、その株式会社という言葉にこだわるのではなくて、例えば、私の医療、公の医療とやった場合に、税制で差をつける、あるいは情報公開、経営状況をもっと公開させる、これは財政諮問会議の中でも指摘がございましたので、情報公開に向けてなお担当大臣として御尽力いただきたいというお願いではございました。
 どうもありがとうございます。
坂本委員長 次に、吉井英勝君。
吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。
 最初に、きょうは、大阪証券取引所問題から幾つか質問をしておきたいと思います。
 三月二十九日に、株式会社大阪証券取引所は、大蔵省OBの前の副理事長野口卓夫さんを背任及び特別背任で大阪地検に告訴、告発しました。どういうことであったのか、まずその概要を伺っておきたいと思います。
原口政府参考人 大証におきましては、一昨年六月にまとめられました大証関連会社に関する調査委員会の調査報告書を踏まえていろいろな措置を講じ、また、さらに調査を続けてきたということでございますが、今回、一昨年十月に大証に新設された考査室によって関連会社の整理を進めていく過程でさらに調査を進めたところ、平成十三年度決算において当初想定していなかった約八億円の整理損の発生が新たに見込まれることとなったこと等を踏まえ、野口前副理事長の背任等の容疑に関して告訴、告発状を提出したというふうに承知しております。
吉井委員 今おっしゃった二年前の六月二十日の大証関連会社に関する調査委員会の報告書、この中では、関連会社の統括責任者や関連会社役員に背任、横領等を裏づける事実は見当たらなかった、こういう結論を出していたわけですね。ところが、結局、問題ありということで、告訴、告発ということになったわけです。
 これまでから、衆参の委員会で我が党は繰り返しこの問題を取り上げてまいりましたけれども、昨年の六月五日の当委員会でも私はこれを取り上げて質問しました。柳澤大臣は、法令違反にわたる行為があった場合には厳正に対処していくと私に答弁をされました。
 今回の告訴で、大阪証券取引所のたくさんの関係子会社が設立されたこと、それらが大証に大きな損失を与えたこと、不正に役員報酬が支払われていたことなどが記者会見等でも明らかにされております。
 それから、既に三月十九日のマスコミ報道でも、これら子会社のうち、例えば投資会社ロイトファクスは実体のないペーパーカンパニーなのに、証券会社日本電子証券を相手に、大証が設立した電子取引市場J―NETで総額五百十五億円の株取引をした。このロイトファクス社の株購入資金に、大証がつくった子会社DSS、大証システムサービスに仮払いした三十二億円が充てられていたなどということが、これは公にもされているわけですが、こういうことはもちろん承知しておられますね。
原口政府参考人 一昨年六月の調査報告において、ロイトファクス社に係る取引についての疑問点等が指摘されているということは承知しております。
吉井委員 それで、一昨年ももちろんそうなんですが、最近も改めてマスコミ等でも広く報道されてきた問題です。
 昨年六月に質問したことなんですが、このロイトファクス社が仮装売買したのは証取法百五十九条違反に当たると思いますが、しかし、仮装取引というのは一社だけではできないわけですね。昨年、資料もきちんと示しましたが、ロイトファクス社の相手先の企業名も出ている文書も委員会に資料として提出して、私は質問をいたしました。
 この相手方というのは、光世証券という現在の株式会社大阪証券取引所社長の巽氏が社長を務めていた証券会社です。調査して不正があれば、現在の大証社長の巽さんが野口卓夫大証前副理事長を告訴するというのは当然のことだと思うんです。それなら、仮装取引の相手方の光世証券社長の巽さんの方はなぜ問題にならないのか。不思議な話なんですが、これは御説明いただきたいと思います。
原口政府参考人 金融庁としても、一般論として言えば、いろいろ法令違反等が明らかになったことについては厳正に対処するということは基本でございますが、今個々の事案についてこういう場で答弁ということは、従来どおり差し控えたいと思います。
吉井委員 とんでもない話だと思うんですよ。私は、昨年、具体的な資料をこの委員会でお配りしました。委員の皆さんにも見ていただいて質問もしたわけです。それで、個々具体の事案なんというような話じゃないんですね。
 あのころは、まだ皆さんの方はこの二年前の報告書の立場で、調査したけれども、関連会社役員に背任、横領等を裏づける事実は見当たらなかったということでもって、それ以上は何にも明らかにされなかった。
 しかし、現実に、今度は現在の社長の巽さんの方が大蔵省OBをもう告訴、告発したわけですよ、調べて。だけれども、調べて告発したんだけれども、その人が問題になっている事案に関係して、仮装取引の問題では、なるほど、そういう会社へ仮払いということでDSS、大証システムサービスがお金を出したりとかしているんですよ。そういうのは問題だといろいろ明らかにして告訴、告発してはるんだけれども、肝心の告発している人が一方の仮装取引の相手方だとすれば、片方は告訴、告発の対象、私は知らないよと。どう考えたってそんなばかなことは通用しないわけで、しかも、それを個々具体の事案だとかなんとかいってあいまいにできる話じゃないと思うんですよ。
 やはり、告訴、告発があった事案については、あなたの方でも徹底的に調査をする、そして仮装取引の相手方についてもきちんと事実関係を押さえて、これは証取法違反に当たるというものになれば、それはなった時点できちんとした対応をするべきじゃないですか。
原口政府参考人 今御指摘になりました、告発を行ったという事案につきましては、もちろんこれまでも証券取引所において必要な改善措置を課してきたところでございますし、今後もそういう自主的な改革努力が重要だと考えておりますが、当局としても、司法当局の検討状況の推移等を踏まえて、適切に対処してまいりたいと思っております。
 また、御指摘の仮装取引の件につきましては、これはまさに個々の取引の情報について、我々は、監視委員会も含めて、それをどういうふうに判断するかという事柄でございますので、先ほど申し上げましたように、個別の事案ということでお答えをしているわけでございます。
吉井委員 これは告訴、告発となったんですから、司法当局が動くのは当たり前の話なんです。しかし、司法当局とは別に、監督官庁としての皆さんの方が、もう一年前に具体的な資料も添えて言っているんですから、そういう問題も含めて問題のあるところで、これが今回告訴、告発されているんですから、司法当局の捜査とは別に、独自に監督官庁としてこういう仮装取引の問題については徹底的に調べていく、問題があれば厳しく対処する、当たり前の話じゃないんですか。何か、司法当局がおやりになるからというような人ごとみたいな話じゃ、全然そんなのは、公正な透明性の高い市場というのはつくれませんよ。
 もう一遍、きちんと答弁してもらいたい。
原口政府参考人 御指摘のように、司法当局にそういう告発状が出されたということは我々もそれなりに重く受けとめておりますが、その時点で、その関連会社に係る背任等の問題につきましては、やはり司法当局においての対応というのがまず第一義的になろうかと思います。
 それから、全体のこのような状況ということにつきまして、もちろん、先ほど御説明していますように、証券取引所全体の問題として直ちに、告発された事柄と同一の事象ではないというふうに思いますが、証券取引所全体としてどのような改善を行っていくかという点を含めて、金融庁としてもさらに何らかの対応をすべきかどうか、それは真摯に検討していきたいと考えております。
吉井委員 今から検討するような話じゃないんですよ。一年前にきちんと資料も出して示しているんですよ。そのときからきちんと検査もし、監督もしておられたら、向こうが独自に告訴、告発する前にも、問題がどこにあるのか、何が問題か、皆さんの方で明らかにして、厳しい対処をすることもできたと思うんですよ。
 それで、私、大臣に伺っておきたいんですが、証券取引所の中にいろいろ、大蔵OBの方と、違う立場の方といろいろあったりした、いろいろな複雑な問題もひょっとしてあるのかもしれません。どういうことがあろうと、いわば、取引所の中で政権がかわると、内紛の当事者同士で、その一方が告訴して、自分の責任はほっかぶりということになると、これは公正さや透明さという本当に市場に求められるものが満たされないことになりますから、ましてこういう不正を現場で働いている人はわかっているものだから、告発したりしてきたんですよ。ところが、現場で働いていて、その不正の事実を知って告発した側は解雇されたままで、本当に余りにも異常な措置というふうに私は言わざるを得ないと思うんです。
 これは、大臣としても、昨年も答弁いただいておりますけれども、既に告訴、告発のあったというこの時点に立って、私は、徹底した調査を行い公正な解決というものを、そして市場が信頼を失うようなことのないように、やはり大臣としてきちんと取り組んでもらいたいと思うんです。これは大臣に伺っておきたい。
柳澤国務大臣 いろいろ情報の提供をいただいての御議論があったことは、私もよく記憶をいたしておりますけれども、そのときには法に触れることではなくて、適切不適切の問題というようなことでございましたので、そういうこととして、業務の改善ということで終わっておったわけでありますが、今回こういうことになりましたので、まあとりあえずは、ちょっと時間の経過の上からいうと、司法の処理の経過というのを見てみたい気もいたしておりますけれども、基本的には、こういうような問題と関係なく、個別のことについて何か私がここでコメントをするということではなくて、これらの事態全体を重く受けとめて適切に対処してまいりたい、このように申し上げます。
吉井委員 司法の場で解決すべきもの、犯罪性のあるものですね、それと同時に、そこまではいかないけれども、しかし証取法その他関係する法令に違反しているものを、きちんと検査して見つけたならば、これは是正をさせていく、当たり前の話ですし、しかし是正をさせる過程でそこに犯罪性ありとなれば、当然告発をしていくというのは当たり前の話でありますし、そういう立場で、これは我が党が取り上げてもう大体二年ぐらいになろうかと思いますが、本当に長い事案ですから、これは大臣としても特に厳しく取り組んでもらいたいというふうに思います。
 次に、一月二十五日に大阪の相互信金が破綻した問題について伺っていきたいと思います。
 昨年の十二月二十五日に金融庁が検査に入って、二十六、二十七、二十八と一月七日の四日間の検査で、当然それじゃ三十九の支店のうち半分ぐらいしか見ることができないわけですが、一月八日には、破綻せよという指示を出して、相互信金は大分抵抗しましたが、一月十八日に経営者が破綻を決断させられ、二十五日に、昨年九月末の基準日で二十五億円の債務超過として破綻を発表、こういうふうになってまいりました。
 そこで伺っておきたいんですが、これは何をもって債務超過ということになったのかいまだにわからないんです。出資者の方は何にも知らされていないんですよ、何で破綻したのか、どういう理由で、どの分がどれだけ債務超過になるようなものになったのか。わからないけれども、とにかく出資金が返ってこない、そのことだけはっきりしているわけですよ。これは、善良な出資者の皆さん、先ほども議論ありましたが、定期預金にしておった人で定期を出資金に振りかえてくれとか言われてやった出資者からすると、何が何だかわからないが、とにかく債務超過で破綻したんだ、だからあなたの出資金は返りませんと宣告だけ受けるんです。
 何をもって債務超過ということにしたのか、これをまず伺いたいと思う。
高木政府参考人 お答え申し上げます。
 いずれにいたしましても、今先生がおっしゃったように、財務局の方で検査に入っておりまして、その検査が終了しておりません状態で破綻になりましたので、何がということは明確には言えないわけですが、いずれにしても、銀行自身の、その検査の状況を踏まえた自己査定で、たしか二十五億ですか、債務超過だということで破綻の申請があったわけでございます。
 我々の承知しております中身といたしましては、債務者の業況悪化だとかあるいは資産の劣化だとか、そういったことが主な理由だったというふうに考えております。
吉井委員 その説明で出資者の皆さんは納得できると思いますか、資産の劣化だとか業況の悪化だとか。しかし、とにかく債務超過だ、債務超過と言われるだけで、中身は何なのかさっぱりわからない。しかし、あなたが出資した一千万円は返ってきませんよとか、千五百万円の出資金はもう泣いてもらいますよと。しかし、貸し付けた金だけは返しなさいと。これは、本当にそういうところに置かれているんですよ。
 今、大阪の公示地価というのは下がり続けている状態で、まだとまっておりません。担保評価は下がり、ですから、皆さんの方からすると、引当金を積めという、引当金は積み増しとなるわけですね。これからも破綻は、地価が下がっていく中では続くということになりますよ。実体経済をよくしないと、これは信金の努力だけでは解決しない問題ですよ。それを、不動産鑑定士の評価に対して金融庁の方が、掛け目として九割だ八割だ七割だというのを掛けて、この掛け目を掛けた担保の債権だったらこれだけ貸倒引当金を積みなさい、こんなことになってくると、これは信金、信組の経営が大変になってきて、もうそれだけで債務超過に金融庁の皆さんの手で追い込まれるのは当たり前だと思うのですよ。
 これまで柳澤大臣は、検査マニュアルには、中小企業の返済状況などの面では十分配慮するようになっていると言うてはりましたね、そういう規定はあると言ってきたわけです。しかし、中小企業への貸し出し債権にとっている担保物件については、掛け目を掛けてはじき出された数字、それを念頭に置いて貸倒引当金を積ませていく、こういうことをやってきたんじゃないですか。
高木政府参考人 お答え申し上げます。
 担保評価の掛け目の話です。検査の話で、私も必ずしも十分承知していないのですが、いずれにしても、私どもの承知しています話によりますと、その評価が実勢からかけ離れていたということでそれを評価減したんだというふうに聞いております。
吉井委員 ふなしんと同時に検査に入られた東京ベイ、これは営業地域はほぼ同じなんですが、同じ不動産鑑定会社に担保不動産の鑑定を頼んでいたんですね。
 金融庁が不動産処分例を見て掛け目を掛けるというやり方を東京ベイの方は知ったものですから、検査に入る前に競売を取り下げて、処分例をつくらなかったんですね。そうしたら、掛け目は一〇〇%なんですよ。ふなしんの方は、皆さんの方は不良債権処理をやれやれと言うものですから、不良債権処理を進めたんですよ。当然、処分したものについては、地価が、その処分したものの価格が基準になってきて、それを基準に置いて掛け目というのを考えられるものですから、掛け目が低くなってくるんですね。だから、ふなしんは九〇%で破綻させられた。
 柳澤大臣の方は、かつて、鑑定書のグレードがばらばらだというお話をされたこともありますが、相互信金の管財人団に会って我々も聞いたんです。我々が聞いたところでは、簡易鑑定も正式鑑定も同じだったというんですね。それを、簡易鑑定だからといって、掛け目七〇%にした。余りに意図的じゃないか。
 毎年やっている鑑定というのは、実は、金融機関ですから毎年鑑定するんですよ。だけれども、正式の鑑定をやりますとべらぼうに金がかかりますね。ですから、簡易鑑定でやっているんです。これをもし正式鑑定をということで全部やれとなったら、それだけでも金融機関の経営全体を圧迫することになってきますよ。だから、普通は簡易鑑定なんですが、簡易鑑定だからといって掛け目七割とされたら、三井住友銀行で仮に掛け目七割でいったらという試算をやってみたことがあるんですが、資本金の大体三割から四割を食われてしまいます。
 だから、都銀だって、簡易鑑定だから掛け目七割とされたら、もうそれでかなり破綻に追い込まれていきますよ。私は、やはりそういうやり方というものを根本的に考え直さなきゃいかぬと思うのですが、これは大臣、どうですか。
柳澤国務大臣 要するに、担保の評価は処分可能見込み額ということが基本的な概念でございます。検査に入ったときに、鑑定は、今先生まさにおっしゃったとおり、本格鑑定というか、すごい詳しい鑑定というのはなかなかコストがかかるというようなことで、簡易な鑑定がされているというケースが当然信金、信組の場合には多いかと思うのです。
 そういうときに、ざらっとした実勢価格の調査を片方でやるということが例のようでございまして、そして、その実勢の調査、売買実例等なんでしょうけれども、そうした調査の結果、やはり鑑定などと乖離がある場合と、かなりもう一〇〇%に近いほどの、乖離幅が少ない場合とがある。そういうものを見て、では、例えば九八・七%だというようなことになれば、これはもう一〇〇でそのまま是認していいじゃないかということになるし、例えば六八%ということになったら、やはり七割を掛けさせていただく。処分可能見込み額ということが基本の観念である限り、これはもう検査官としては当然なすべきことであるというように私は考えます。
 そういうようなことの結果、引き当ての金額が当然そこから影響を受けるわけですけれども、そういうことが何かねらい撃ち的に行われているんじゃないかということについては、そういう事実はございません。そういうような掛け目が掛かって是正されたものの中にも、別に破綻もせずに健全にその後存続している、それからまたいろいろ活躍をしていただいている金融機関も当然ございます。したがって、何かねらい撃ち的にそういった掛け目を掛けているんだというような事実はないということを申し上げ、御理解をいただきたいと思います。
吉井委員 今まさにおっしゃったように、処分見込み可能額ですね。検査官の方が行かれても実際にはわからないんですよ。何を処分見込み可能額というふうに考えるかとなりますと、それは売買実例、処分例なんですね。やはりそれが大きな比重を占めるんですよ。
 そこで、今申しましたように、ふなしんと東京ベイの場合ですと、同じ不動産鑑定会社に担保不動産の鑑定を頼んでいますから、鑑定評価は両者そんなに違わないんですよ、同じ会社がやっているんだから。しかし、東京ベイは、金融庁のやり方をよく御存じだったんでしょう。ですから、検査が入るということになってくると、不動産処分について、競売にかけておったものまで取り下げて、処分例をなくしていったんですよ。処分例がなかったら、その地域、その銀行の鑑定評価と処分例からして掛け目を幾らにするかというのはわからないんです。
 これに対してふなしんの場合は、不良債権処理をどんどんやれと言われて進めていって、当然、処分するとなると簡単にそう高く売れるわけじゃありませんから、その処分を進めた結果、掛け目は低くなってくる。そうしたら、不良債権処理をやれと言われてやった方は掛け目が七〇%、この場合は九〇%ですが、それで破綻に追い込まれていく。
 私は、やはり処分見込み可能額というものそのものが本当に、根拠があるようなお話だけれども、ないんです。こういうふうな売買実例ということで、結局その企業の不動産処分例が一つの大きな目安になってくると、不良債権処理をやればやるほど掛け目がどんどん低くなってくる、進めれば進めるほど。そうすると破綻に追い込まれるということにさえなってくるわけです。
 私は、やはり根本的に、中小企業に貸し付けている、そこが返済状況が悪いということについて、中小企業向けには随分いろいろ検査マニュアル、考えているんだというお話はありました。しかし一方で、その担保物件についてこういうやり方をやっておったら、信金、信組、これだけ地価がどんどん下がっていく状況の中で、それは破綻に追い込まれますよ。それでつぶしてしまったら地域経済はますます落ち込むわけですから、ますます負のスパイラルに陥ってしまう。
 だから、そこは、これは大臣、根本的にもう少しこの評価というものを考え直して、簡単に破綻に追い込むようなことはしないということをやはりやらないと、今のように地価がどんどん下がり続ける中ではこれからも続くと私は思うのですよ。考え直さなきゃいけないんじゃないですか。
柳澤国務大臣 今の吉井委員のお話を聞いておりますと、担保価値あるいは担保の評価が全債権について問題になるように皆さん多分誤解されると思うんですね。
 実際、そういうことで引当金額が変わるのは破綻懸念先以下の債権なんです。要管理先以上はそうしたことは関係ありません。したがって、それが全債権に、例えば地価の下落が影響するとかあるいはその評価が引当金額に影響するとかいうことはないというふうな認識を我々持っております。御理解を賜りたいと思います。
吉井委員 破綻懸念先をふやしているんですから。ですから、どんどんふえてくるわけです。
 それで、信金中央金庫の常務とお会いしたときに、この方はかつて大阪支店にも勤務していた方なんですが、相互信金の経営にも詳しい人だったんです。地価の下げどまり、下がりがとまってせめて横ばいになっていたら絶対に相互信金は破綻しなかったと思う、優良な企業だった、破綻と聞いて涙が出るほど悔しかったというお話もしておられましたけれども、実際、これだけ地価が下がっていく、この中で掛け目を九割、八割、七割と厳しくすれば、もうそれだけで本当に破綻に追い込まれますよ。
 破綻した信金の取引先の企業には出資金が返ってこない。新規融資はなかなか受けられない。RCCに送られたりしますと、返済が迫られ担保の売り飛ばしが行われる。この三重苦が襲いかかってくるんですね。倒産に追い込まれるわ、経済実態はますます悪くなるという本当に負の連鎖なんですが、こういうやり方で信金破綻が進むことをやっておったのでは、実際、去年の一月から四月までは五件ですね、信金、信組。小泉内閣が誕生してことし一月までで四十八件の破綻ですから、どんどん破綻させたわけですが、これで景気の回復につながるというふうにお考えなのか。これは、このこと自体、特に中小企業が危うくなる、地域経済を困難に追い込むということは、景気の回復という面から見ても大変深刻な問題だと私は思っているんですが、大臣は、このやり方を続けて景気の回復につながるとお考えですか。
柳澤国務大臣 検査のスケジュールがありまして、破綻の頻度が多くなったというのは、検査のスケジュールにのっとって検査が済んだものについてそうした処理が行われたということでありますから、これは小泉内閣とかということとはとりあえず関係がないことでございます。たまたまですが、私は森内閣からずっとやっていますものですから、そこのところで何か小泉内閣になったから急に破綻を起こさせようというようなことではありませんので、余りそうした見方はなさっていただかない方が、御判断いただくあるいは御批判いただくにしても正しい理解だ、こういうように私は思います。
 それから、そうした不良債権の処理というものが景気あるいは今日進行しているデフレとどういう関係にあるかということについては、かねがね申し上げておりますとおり、とにかく構造的に非常に立ち行かないところについては、これはやはり、早く整理をしていただくということの方がかえって傷が浅くなるということですし、また、一つの企業の中にいいものが残っているというものについては、それらを処理して切り分けて、いいものを残していく、それで、そこにまた融資が行われるというような形になるのが私は現在のまさに経済の構造改革そのものの姿だというふうに思っておりますので、私としてはそうした考え方のもとにこの施策を進めさせていただいたということでございます。
吉井委員 中小企業倒産、廃業、失業がふえればふえるほど、地域経済も悪くなる、実体経済も悪くなる。これは不良債権をさらにふやしていくことにもなってきますし、信金の基盤そのものを危うくすることになるということをやはり考えなきゃならぬということを申し上げて、次に、先日の総代会の問題に少し、移って聞いておきたいと思うんです。
 先日、管財人ともお会いしたんですが、相互信金の総代会が三月十五日に開かれました。相互信金の解散と大阪信用金庫に譲渡するという提案があったんですが、これを総代会で否決したんですね。裁判所は、三月十五日の総代会で否決された事実を非常に重視しておりまして、それで、三月十八日以来、管財人の方たちが裁判所へ相談に行かれたんですが、総代会で否決されたという状態では代替許可は与えることができないという表明があり、管財人の皆さん方も、三分の二を超える賛成を集めないと許可は得られないという心証を得たということを言っておられました。
 先日参議院で、柳澤大臣は、破綻したら総代会の議決権、経済的な権利は空洞化していると言っていたわけですが、総代会で解散を否決しているのに、出資者の代表、総代会の意向が無視されるということになるのは一体どこに規定があるのか、何かそういう規定があるのか。破綻したら権利は空洞化だとおっしゃるんですが、それはどこにその規定があるのかを伺っておきたいと思います。
柳澤国務大臣 預金保険法第八十七条でございますけれども、ここに、商法の営業譲渡あるいは減資あるいは解散というようなものが行われる場合には、これは株主総会その他こうした類似の総会での決議が必要という規定でございますが、こういう規定にかかわらず、裁判所の許可を得て、次に掲げる事項を行うことができるというふうに規定をされているわけでございまして、要するに、そういうものがあるんだけれども、それにかかわらず、それに代替して許可を得て手続を進めることができるという根拠規定はここでございます。
吉井委員 しかし、今回ひょっとして恐らく初めての事例かもしれませんが、総代会が開かれて否決されたわけですね。否決されると、今はそういうのがなくても代替許可、裁判所が許可すればということなんですが、裁判所の方は、総代会で否決されるような状況では、それは代替許可を出すことができない、そういうお話があり、管財人の方はそういう心証を得たと言っているんですね。
 もし総代会の議決権が空洞化しているなら、大体三月十八日から二十七日まで、金融庁が猛烈な圧力をかけて、大騒ぎまでして賛成票を集めることはなかったことになるわけですよ。
 それで、裁判所の意向を受けて本当に強引な賛成票集めをやれと指示したのが近畿財務局の方、金融庁の意向を受けてやっているわけですが、三月二十二日は終日、支店長会議が招集されて、総代会決定の尊重を指摘する支店長に対して強引な強制が行われました。そんなことを言うとったらこれはもう清算ということになるぞとかいろいろな、雇用も退職金もパアになってだめだぞとか。
 その日の深夜、午後十時から翌日の午前一時にかけて、金融庁、近畿財務局が金融整理管財人に今度は圧力をかけて、土曜、日曜に賛成票を集めろ、金融整理管財人が総代の家を一軒一軒回って集めてこい、二十五日月曜日の午前九時三十分の柳澤大臣の登庁までに三分の二の賛成を集め切れと命令して猛烈な圧力をかけたと。
 二十三日の日に、ですから、再度管財人は支店長を集めたんですね。このままでは承継銀行に行かざるを得ない、承継銀行に行ったら受け皿が見つからない可能性が高い、ほぼ見つかりませんとまで言っておどかすんですね。しかし、日本承継銀行というのは破綻した金融機関の受け皿を見つけるのが大きな役割のはずであって、それを真っ向から否定するようなことを言って、受け皿はほぼ見つからないということを、金融庁が任命した管財人が、職員や取引先に対して言いふらしていくというのは、これは本当に異常なことだと思うんですよ。
 二十五日は朝九時から九時半まで、電話をかけまくって賛成票集めをやらされたという支店長の声も聞いております。管財人は、金融庁は異常なことをしたと言っていましたよ。もう何が何でも大阪信金に譲渡させると。何でそんな圧力をかけたのかとみんな不思議なんですが、これは一体どういう理由ですか。
高木政府参考人 お答え申し上げます。
 ちょっと先生の御指摘、必ずしも私は理解できないんですが、いずれにしても、私ども金融庁の方から、何が何でも三分の二を集めてこいとか、そういういろいろなことを指示したことはないわけでございます。
 いずれにしても、代替許可に当たって賛成票が三分の二以上が必要だというのは必ずしも条件でもなくて、ただ、裁判所に事前に相談する中で、これまでの経緯もあるので、よく説明して、どういう状況か教えてほしいという話もあって、それで管財人は、ずっと支店長を使って説明をして回って、その状況を裁判所にも報告したということで、少なくとも、とにかく三分の二がないと代替許可が出ないという法律上の要件でもございませんので、何が何でも三分の二集めてこいという指示を我々がする必要もないというふうに理解しております。
吉井委員 その三分の二を非常に意識して、しかし、何が何でも集めてこいということをやられたんですよ。それは現場で、管財人団の皆さんやら支店長さんやら、いろいろな方から聞いてまいりました。もう深夜に及んで、金融庁、近畿財務局から物すごい圧力がかけられた。
 問題は、大臣もここをよくお考えいただきたいと思うんです。時間も参りましたからまとめておこうと思うんです。要するに、冒頭に最初にお聞きしたように、本当に何で破綻したのか説明がないんですよ。何をもって破綻に追い込まれたのか、債務超過かがわからないんです。きちんとした説明は何にもないんですよ。しかし、あなたは出資金はもう返らないよといきなり言われて、それで総代会でもって説明も何にもない中で、簡単に解散を決めてもらっては困る。
 そして、簡単に金融庁が、もともとここの場合は、金融整理管財人も、受け皿会社の顧問弁護士を出している事務所の方を選んで、補佐人まで受け皿金融機関の人を選んでいたわけですから、もう全く金融庁の方が、受け皿はもう大阪信金だと決めてやっているみたいなものですからね。それは不信を持つのは当たり前ですよ。いや、現実はそうだったんだから。
 だから、そんな物事を全部ディスクローズしないで、そんな不信な状況の中で一方的に賛成しろ、賛成しろと言われても、それは困る。だれだってそれは怒りますよ。きちっとした説明も何にもなしに、やみくもに今度は圧力でもって管財人の方やら支店長さんに圧力をかけまくる。私は、本当に異常なやり方を続けてきたと思うんです。ある支店長は言っていました。数千億円と見込まれる持参金を大阪信金が欲しがっていたのが、破綻と破綻処理の異常な姿に出ているのではないか。これが本当の理由ではないか、こういう声すら出ていますよ。
 私は、今回の大阪相互信金の破綻問題、そして破綻処理のやり方、総代会決定無視のやり方、根本的にこれは考え直すべきだと思います。そして、本当に出資者の皆さんの利益がきちんと守られる方向を考えていくべきだと……
坂本委員長 吉井委員、結論を急いでください。
吉井委員 私は、出資金問題は、きょうは時間が参りましたので改めてまたやりたいと思いますけれども、しかし大臣、このことだけはきちんとやらないと、これから他のところにおいても、それから信金、信組に対する信用不安の問題とか、さまざまな問題が出てきますよ。私は、そのことについてだけは、やはりこれはやり方をもう一遍きちんと大臣としても精査して、考え直すべきところは考え直すんだということをきちっと言われた方がいいと思いますよ。どうですか。
柳澤国務大臣 もう長話はやめますけれども、まず、破綻というのは、株主総会とかなんとかは関係なくて、経営陣との問題です。経営陣が、自分の金融機関は債務超過に陥って、そして増資等の事態の修正の方途もありません、よって破綻を申し出ますということで、申し出主義でございます。したがって、そこのところでその人たちは、当然何で自分たちが破綻しているかというのは、知らないでそんなことをやるわけがないので、知っているということでございます。
 それからさらにまた、この受け皿がもう特定されていたんだなどというようなことも、それはもうあり得ないわけで、いろいろ候補者の中から、ここが全体的に考えていいでしょうということで管財人が決められたということでございまして、大体私は、この株主総会等がなかなか紛糾をしがちだということは、もう法律を制定するときからある程度考えておりまして、そういうようなことから代替許可の規定が置かれているというふうに実は理解をしております。
吉井委員 時間が参りましたので、終わります。
坂本委員長 以上で本日の質疑は終了いたしました。
 次回は、明三日水曜日午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時三十七分散会


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