衆議院

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第14号 平成14年4月24日(水曜日)

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平成十四年四月二十四日(水曜日)
    午前十時一分開議
 出席委員
   委員長 坂本 剛二君
   理事 中野  清君 理事 根本  匠君
   理事 山本 幸三君 理事 海江田万里君
   理事 古川 元久君 理事 石井 啓一君
   理事 中塚 一宏君
      岩倉 博文君    金子 一義君
      金子 恭之君    上川 陽子君
      倉田 雅年君    小泉 龍司君
      左藤  章君    竹下  亘君
      中村正三郎君    馳   浩君
      林田  彪君    増原 義剛君
      山本 明彦君    吉田 幸弘君
      渡辺 喜美君    生方 幸夫君
      江崎洋一郎君    小泉 俊明君
      小林 憲司君    佐藤 観樹君
      中川 正春君    永田 寿康君
      長妻  昭君    原口 一博君
      牧野 聖修君    上田  勇君
      遠藤 和良君    藤島 正之君
      佐々木憲昭君    吉井 英勝君
      阿部 知子君    植田 至紀君
    …………………………………
   財務大臣         塩川正十郎君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君
   内閣府副大臣       村田 吉隆君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   財務大臣政務官      吉田 幸弘君
   政府参考人
   (警察庁刑事局長)    吉村 博人君
   政府参考人
   (金融庁検査局長)    五味 廣文君
   政府参考人
   (金融庁監督局長)    高木 祥吉君
   参考人
   (株式会社みずほホールデ
   ィングス取締役社長)   前田 晃伸君
   参考人
   (株式会社三菱東京フィナ
   ンシャル・グループ取締役
   社長)          三木 繁光君
   参考人
   (株式会社UFJ銀行取締
   役頭取)         寺西 正司君
   参考人
   (株式会社三井住友銀行頭
   取)           西川 善文君
   参考人
   (日本銀行総裁)     速水  優君
   参考人
   (日本銀行理事)     三谷 隆博君
   財務金融委員会専門員   白須 光美君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月二十四日
 辞任         補欠選任
  竹本 直一君     左藤  章君
  山本 明彦君     馳   浩君
  五十嵐文彦君     牧野 聖修君
  小泉 俊明君     原口 一博君
同日
 辞任         補欠選任
  左藤  章君     上川 陽子君
  馳   浩君     山本 明彦君
  原口 一博君     小泉 俊明君
  牧野 聖修君     五十嵐文彦君
同日
 辞任         補欠選任
  上川 陽子君     竹本 直一君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 金融に関する件(主要行に対する特別検査の結果等)


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     ――――◇―――――
坂本委員長 これより会議を開きます。
 金融に関する件、特に主要行に対する特別検査の結果等につきまして調査を進めます。
 この際、特別検査の結果等につきまして説明を聴取いたします。金融担当大臣柳澤伯夫君。
柳澤国務大臣 去る四月の十二日、政府の「早急に取り組むべきデフレ対応策」二月二十七日発表のものでございますが、これを踏まえまして、金融庁におきまして、主要行に対する特別検査の結果及び主要行による平成十四年三月期の財務内容の概要を公表いたしますとともに、あわせて「より強固な金融システムの構築に向けた施策」及び金融検査マニュアル別冊・中小企業融資編(案)を公表いたしました。本日は、これらにつきまして御説明させていただきます。
 まず、特別検査は、昨年十月の改革先行プログラムを踏まえまして、企業業績や市場のシグナルをタイムリーに反映した適正な債務者区分及び償却、引き当てを確保するため、市場の評価に著しい変化が生じている等の債務者に着目して、昨年十月末から継続的に実施してまいりました。
 今回取りまとめました特別検査の結果の主な内容を申し上げますと、対象債務者百四十九社のうち、七十一社について債務者区分が下位に遷移し、そのうち三十四社は破綻懸念先以下に遷移いたしました。また、対象与信額十二・九兆円のうち不良債権処分損が一・九兆円となっております。
 次に、特別検査の結果公表に合わせて主要行が公表した十四年三月期の主な財務内容を見ますと、特別検査等を踏まえた結果、不良債権処分損は七・八兆円と、昨年十一月時点の業績予想六・四兆円と比べますと、一・四兆円の増加、二一%増となっております。また、自己資本比率は、国際基準行については八%、国内基準行については四%を大きく上回る水準となる見通しであります。
 さらに、「より強固な金融システムの構築に向けた施策」につきましては、ペイオフ解禁がなされたこともあり、総理の指示を踏まえ、金融システムの安定を確保するため、不良債権処理等をさらに促進するよう、切れ目なく施策を講じる観点から、金融庁として取りまとめたものであります。
 この新たな施策は、三つの項目から成っております。
 第一に、不良債権処理の促進のため、主要行に対し、その破綻懸念先以下の債権のオフバランス化について、原則一年以内に五割、二年以内にその大宗、八割めどとの具体的な処理目標を設定するよう要請することといたしました。
 第二に、主要銀行グループ別に検査部門を再編することにより、通年・専担検査を導入し、実質常駐検査体制といたします。
 第三に、金融機関の経営基盤の一層の強化と中小企業金融の円滑化を図るため、主として地域金融機関を念頭に置いて、合併促進を中心とした施策を早急に検討することとしております。
 これにあわせて、中小企業等の経営実態に応じた検査の運用確保のため、金融検査マニュアル別冊・中小企業融資編(案)を公表するとともに、検査の効率性の観点から、資産内容に特に問題がなく前回検査の結果が良好な金融機関に対しては、与信額が一定額以下の債務者について、原則として自己査定にゆだねることとしております。
 今回の特別検査の結果や十四年三月期の主要行の財務内容の概要に示されているように、不良債権処理の具体的進捗が図られたところですが、金融庁としては、引き続き、より強固な金融システムの構築に向けて、全力を尽くしてまいる所存であります。
坂本委員長 これにて説明は終わりました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 本日は、参考人として、株式会社みずほホールディングス取締役社長前田晃伸君、株式会社三菱東京フィナンシャル・グループ取締役社長三木繁光君、株式会社UFJ銀行取締役頭取寺西正司君及び株式会社三井住友銀行頭取西川善文君の四名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。根本匠君。
根本委員 自由民主党の根本匠です。
 私が自由民主党、与党を代表して質問をさせていただきます。参考人の皆様には、きょうは国会までおいでいただきまして、本当にありがとうございました。
 私は、今回の特別検査の結果を踏まえて、特別検査をめぐる幾つかの論点について、与党の立場から明らかにしていきたいと思います。
 特に、不良債権処理問題、いつまでも続いているのが不良債権の実態の議論であります。ふたをあけてみると、不良債権が実際公表されていたものよりも大きいではないか、これは本当に不良債権の実態が把握されているのか、あるいは十分に公表されているのか、こういう疑念がいつまでもつきまとっております。
 不良債権の実態ということについては、なぜそういう疑念が起こるか。これは、金融機関の自己査定が甘いんではないか、あるいは金融庁の検査監督が十分ではないんではないか、したがって不良債権というのは公表された以上にあるんだ、こういう議論がよく巷間あるわけでありますが、今回の特別検査の意義を明らかにしながら、果たして不良債権の実態がきちんと掌握され、解明されているのか、実はこういう観点から幾つかの質問をさせていただきたいと思います。
 不良債権の実態につきましては、確かに十年前は、ふたをあけてみたら実際公表された数字よりも多額の不良債権が出てきた、非常に不信感を招いておりました。ただ、この三年、金融検査マニュアルあるいは自己査定も厳しくなっておりますし、金融庁の検査監督も厳しくなってきておりますので、私は、不良債権の実態とこの公表された数字の乖離はぐっと縮まっているはずだ、こう思っております。ただ、昨年のマイカルの倒産で、あれは検査直後に格付が下がってぱたんといったものですから、やはり怪しいではないか、こういうことになりまして、これを受けて今回の特別検査が行われたわけであります。
 今回の特別検査は、マイカルを教訓に、要はリアルタイムで見ようと。これは通常の検査というのは、決算した後、事後的に検証する、これはアメリカでもそうですが。要はそういう制度上の限界が、こういう不景気の中では制度上のどうしてもタイムラグの限界がある、ですから特別検査をやろう、こうなったわけでありますが、この特別検査について、銀行側としてどのように受けとめているか、そしてこの特別検査というのは、今までの検査と比べてここがこう違うと。もう今の直近の実態が赤裸々に出ている、私はこういうことだと思いますが、その点について、みずほの前田参考人から、この特別検査の内容、意義、とらえ方、これにつきましてお伺いをしたいと思います。
前田参考人 今回の特別検査は、市場の評価に著しい変化が生じている債務者に対しまして、当該債務者に対して銀行が企業業績や市場のシグナルをタイムリーに反映した自己査定や引き当てを行っているかどうかを当局が検証することが目的であると私どもは理解しております。
 こうした中で、金融検査マニュアルにのっとったルールに基づき私どもが行った自己査定に対しまして、直近のデータなどをもとに、さらに当局と銀行それから会計士、三者で十分な議論を重ねてきておりまして、そうした点で大きな意味があったと理解いたしております。また、自己査定の結果につきましても、従来以上に高い信頼をいただけるものと考えております。
 今回、初めての特別検査を受検したわけでございますが、その過程で議論したことを自己査定に生かしまして、さらに精度の向上を図ることを通じまして厳格な自己査定を実施してまいりたいと考えております。
根本委員 要は、今回の特別検査は、リアルタイムで実施したということと、それから、今もお話がありましたが、三者協議により内容をぎちぎち詰めてやった、こういうことだと思います。
 それからもう一つ、今回の特別検査で債務者区分が相当下位に推移しておりますが、これはどうしてこういうことが生じているのかということなんですね。要は、金融機関の自己査定が甘かったのか、あるいはこのタイムラグに基づくデフレの進行で悪化して、その結果直近では下位に推移したのか、私は二つぐらいの要因だと思いますが、この点につきまして寺西参考人にお伺いいたします。
寺西参考人 お答えをいたします。
 当行におきましても、従来より、時点時点できっちりとした自己査定を行いまして、適切な引き当て、償却を行ってきたわけでございますけれども、厳しい経済環境下、市場における評価が急速に低下するとか、それを受けた業況の悪化といったことにより、債務者区分が引き下げとなるケースが少なからずあるということでございます。
 二〇〇一年下期も、こうした傾向が継続する中で、特別検査も踏まえまして、市場の厳しい評価や直近の業況等をリアルタイムで反映させましてより厳格な自己査定を実施したことによりまして、結果として従前以上の債務者区分の悪化があった、こういうことでございます。
 以上、お答えいたしました。
根本委員 次に移りますが、今回の特別検査を通じた不良債権の処理についてみずからどう評価しているか、その点についてお伺いしたいと思います。
 私は、この観点は二つありまして、一つは、今回の不良債権処理問題、典型四業種が相当、債務者区分を変更されておりますが、実は、一連の不良債権処理問題で一番大きいのは、バブルの崩壊の過程で大きく積み上がった不良債権、特に多額な借金を抱えた大口債務者問題、これが、要はバブルの清算がこれできちんと終わったのか、こういう観点と、それからもう一つ、今回は百四十九社が対象になったわけですが、この対象範囲が狭いのではないか、それ以外を含めると大丈夫か、こういう観点があるわけですね。
 金融機関として、今回、典型四業種が随分出ておりましたので、私は、バブルの清算というのはここで終わったということが言えるかどうかということに非常に関心を持っていますが、その点と、対象企業の範囲が少ないから、ほかの企業はどうなんだ、こういう観点でみずからどう評価されているのか、これを三木参考人にお伺いいたします。
三木参考人 三菱東京フィナンシャルの三木でございます。お答え申し上げます。
 特別検査でございますけれども、そこでは、その対象債権につきまして大変厳格な評価を受けまして、処理を行いました。したがいまして、先生がおっしゃいましたバブルの後遺症としての大口の債権につきましては、現時点での処理はしっかり終わっているように思います。
 また、この特別検査以外にも十三年度中はいろいろな検査がございまして、フォローアップ検査とか信用リスクのターゲット検査とかございまして、また、金融庁ではございませんが日銀考査もございまして、こういった検査を受けまして、都度当局と協議を重ねまして、御指導を受けました。こういったものを反映いたしまして、特別検査以外の先につきましても決算処理をしっかり反映いたしました。その限りで、きちっとした処理ができたと思います。
 ただ、これで終わったと宣言できるかということにつきますと、これからの景気次第で新しい不良債権が出ないとも、ちょっと予断を許しませんので、その点につきましてはともかく、現時点での処理は、今回の特別検査を機に非常に整理されたと思います。
 以上でございます。
根本委員 はい、わかりました。
 不良債権処理残高というのは、処理しても処理しても、新しい不良債権がふえれば残高というのは変わってきますから、大事なのは、一番の争点であるバブルの清算が終わったか、私はこれが非常に大事なんだと思うんですね。
 続いて、今後の不良債権の推移ということで、今後の不良債権処分損、そして不良債権残高の推移をどのように見込まれているのか、これは西川参考人にお伺いいたします。
西川参考人 三井住友銀行の西川でございます。お答えをいたします。
 十三年度につきましては、私ども、合併直後ということもありまして、経営の土台固めを改めてやらなきゃならないということもございまして、債務者の状況、それから債権の内容等につきまして、再度抜本的な見直しを行いました。そのことによりましてさらなる償却、引き当て処理を促進いたしまして、将来の資産劣化リスクへの対応力の強化を図ってまいりました。その結果、不良債権処理、償却、引き当てを大幅に積み増しをいたしました。
 したがって、十四年度以降の処理額、償却、引き当てでございますが、これは大幅に減少していくものというふうに見込んでおりますが、まだまだ客観情勢は大変厳しいものがございますし、企業倒産が依然として高水準であるというような問題もございますので、銀行といたしましても、またその不良債権の最終処理を急ぐ必要があるという事情もありますことから、やはり、減少はいたしますものの、我々が考えます巡航速度というラインをかなり上回る水準がここ数年続くのではないかというふうに思っております。そういう覚悟で臨まなければならないというふうに思っております。ただし、その水準は、我々の業務純益の範囲内に十分おさまっていくものというふうに考えております。
 不良債権残高につきましては、私どもの場合、今申しましたような事情で十三年度、相当増加をいたしました。そういう関係もございまして、基本的には今後減少していくというふうに考えられますが、長引く不況によりまして、新規の不良債権発生も予想されますので、いずれにいたしましても、政府の方針にのっとりまして、原則一年以内に五割、そして二年以内に大宗の処理を終えるために必要な措置を講じていく方針でございます。
 以上でございます。
根本委員 ちょっと今の話に関連して、資産劣化リスクに対応して十分な引き当てを積んだ、こういうお話でしたが、その資産劣化リスクに対応してというのは、先行き、デフレが進行した場合ということもある程度想定して引き当てを積んだということでしょうか。
西川参考人 そのとおりでございます。主として要注意先企業につきまして、債務者区分の見直し、そして引き当て率の引き上げということを行ったということでございます。
根本委員 それでは次に移らせていただきますが、これからの不良債権処理を考える場合には、銀行の収益力をいかに強化していくか、これが大きなテーマになるわけですが、銀行の収益力強化のために、経営合理化、リストラあるいは新商品開発、新しいビジネスモデル、いろいろな収益力強化策があるかと思いますが、金融機関としてどのような収益力強化策を考えておられるのか、これをお伺いしたいと思います。
 これは、では寺西参考人、お願いいたします。
寺西参考人 お答えをいたします。
 収益力の強化をどうやってやるのかという御質問でございます。私どもといたしましては、金利収入、それから非金利収入、これはある意味で手数料の収入のことでございますけれども、この両面におきます抜本的な強化と、一方での支出の方、コスト構造の改革によりまして、収益力の抜本的な強化を図ってまいる所存でございます。
 金利収入の拡大のためには、住宅ローン等の取り組みを抜本的に強化していますほか、法人向けには信用リスクに見合った金利体系、金利設定を行うなど、努力をいたしておるところでございます。
 もう一方の非金利収入比率の引き上げ、このためには、我々といたしましては、お客様に対しまして本当に質の高いサービスの提供に努めてまいりたい。特に、法人向けに関しましては、決済だとか投資銀行業務だとか外国為替だとか、こういったものに注力するとともに、お客様の企業価値の向上とか、一方でその事業発展に貢献できるような、ある意味でお客様の持っている課題をきっちりと解決していくような、そういったビジネスを展開してまいりたい、このように考えております。個人向けのお客様に対しましては、資産運用ビジネスといったものにも力を入れてまいりたい、このように思います。
 当然のことながら、引き続き、聖域なきリストラ、こういったものも徹底いたしましてコスト削減をやってまいります。そういった意味で、入りを上げ、出を下げて、収益構造の抜本的な改革をやっていきたい、このように思っております。
 以上でございます。
根本委員 私は収益力強化策がこれからも本当に大事だと思いますので、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。
 それから最後に、銀行のつくる企業の再建計画についての批判、いろいろな批判があるわけですが、その批判にどうこたえるかという観点から御質問をしたいと思います。
 私は、金融機関が、企業を再建するか、あるいは切り離してRCCに行ってもらうか、この辺の判断は非常に金融機関というのは、再建するというのはまさに金融機関の機能そのものですから、この辺の判断は、外部から見た判断と実際やっていただく方の判断というのは私は異なってしかるべきだと思います。
 ただ、再建計画についていろいろ批判されるのは、二度の債権放棄をやったではないかとか、あるいは債権放棄のガイドラインに沿っていないではないか、あるいはデット・エクイティー・スワップをやり過ぎだ、いろいろな再建計画の批判があるわけですが、金融機関の行っている企業の再建計画についての批判にどうこたえ、どう考えておられるか、これを最後にお伺いしたいと思います。
 これは前田さんにお願いいたします。
前田参考人 個別企業の再建計画につきましては、企業ごとに態様は異なっておりまして、一概に申し上げるのはふさわしくないと思いますが、今回の特別検査では企業の再建計画の妥当性につきましても厳しく検証が行われております。仮に再建計画や支援計画がございましても、その実効性が乏しければ厳しい査定になるということでございます。
 私どもは、この二〇〇一年度に、特別検査も踏まえ従来以上に厳格かつ精緻な自己査定を実施いたしまして、大口先の処理につきましてかなりの程度進捗したと認識しております。トータルで二兆二千三百億の不良債権処理を実施いたしました。今後も、再生可能な企業は極力再生の方向で支援いたしますが、処理すべき先は処理するというようなことで、不良債権問題の正常化をできるだけ早期に実現してまいりたいと考えております。
根本委員 ありがとうございました。終わります。
坂本委員長 次に、海江田万里君。
海江田委員 民主党の海江田でございます。
 四参考人には、お忙しいところ本委員会にお越しいただきまして、ありがとうございました。
 早速でございますが、みずほグループの前田参考人にお尋ねをしますが、今回のシステムに関するトラブルで御行が、これから東電でありますとかNTTでありますとか、いろいろな損害がありますのでそれの要求をするというような報道もございますけれども、御行が受けた損失というんですか損害というんですか、これをどのくらいに見積もっておられるか、お聞かせいただきたいと思います。
前田参考人 お答えをします前に、今般のシステム障害に関しましては皆様に大変御迷惑をおかけいたしました。まことに申しわけございません。また、先般、四月九日の本委員会にお呼びいただいたときに、私も初めて国会の中に入りまして大変緊張いたしておりまして、生方先生の御質問の際に、その場では訂正させていただきましたが、大変不適切な回答をしてしまいまして、ここで改めて深くおわび申し上げます。
 今、海江田先生の御質問でございますが、現在もまだ月初のいろいろな事務ミスに伴います部分の修復をやっている最中でございまして、現時点で定量的な金額を正確に把握する状況ではございません。ただ、少なくとも私どもがおかけした損害については、お客様と十分お話し合いをさせていただきたいと思います。
 四月の三十日が口座振替、年間のピークを迎えます。私どもだけで、口座振替が九百万件、それから給料の振り込みそれから相互振り込み、いわゆる振り込みが三百万、一日だけで千二百万件の処理をいたす日でございまして、現時点ではそこに向けて全力を投入いたしておりますので、何とぞよろしく御理解いただきたいと思います。
海江田委員 時間が余りありませんので、全部言われちゃうと、この後聞こうと思っていることもいろいろありますので。
 今、今回の特別検査を受けまして、みずほグループで、安田信託を除いてだろうと思いますけれども、不良債権の処分額が二兆二千三百億円ということです。業務純益が約九千億ぐらい、九千四百億ぐらいだろうと思うんですが、そうすると、一兆円からの幅、ギャップがあるわけですから、これから例えば、先ほどもお話ありましたけれども、金利を上げていくとか手数料を上げていかなきゃいけない、そこで業務純益を上げていかなきゃいけないということになるんですが、今のような状況で、既にもう起こってしまったことにつきましても非常に影響が大きいわけですから、金利を上げていくとか、それからましてや利用している人に手数料の値上げを、もう既に今、合併するところで若干上がった部分も、かなり上がった部分もあるわけですけれども、この上さらに上げていくなんていうことができるとお考えになっているんですか。
前田参考人 今回のシステム障害につきましては、ここは決済機能でございまして、銀行にとりまして大変重要な社会インフラと認識いたしております。まず完全復旧をお図りいたしますが、海江田先生お話しのサービスの手数料部分でございます、ここも、私どもはこの重大な社会インフラをある意味では壊したというわけでございますので、私どもに残された信頼回復の道は、立派なサービスを改めて十分提供する、こちらでおこたえするしかないと思います。サービスの強化のために、システムを含めてすべての銀行のインフラを再度点検してまいりたいと思います。
海江田委員 私がお尋ねしましたのは、既に合併の前に上がっている部分もかなりあるわけですよ。特に住宅ローンの借りかえなんというのは二万、三万上がったりしているし、それからあと、貸し金庫でありますとか細かな点はいろいろありますけれども、もう既に上げて、その上げたことに対する批判も、上げたのにもかかわらずこういう事態になったんじゃないだろうかということですので、これから私は上げていくというのはなかなか難しいと思いますし、金利についてもそうですし。
 それからあと、やはり、まず信頼を回復していかなきゃいけないというわけですけれども、そういう中で、本当に業務純益を上げて、それによって不良債権の処理ができるのかどうなのか。それから、新商品の開発なんかも業務純益を上げていく上での重要なポイントになるわけですけれども、それらのことが今の体制で本当にできるのかどうなのか。そこのところを、そういう形でやはりやっていくしかないわけですから、上げていくおつもりがあるのか、それはもう無理なんじゃないかという、そこのところのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
前田参考人 お答え申し上げます。
 四月から既にみずほ銀行で新しい住宅ローンを発売しておりまして、そういう意味ではお客様のニーズに合うような金利の設定をいたしております。そういう意味で、サービスの面で新しい商品を提供することでしか信頼の回復の道はないということでございますので、全力を尽くしてまいりたいと思います。
海江田委員 あと、やはり、今回の問題で一番明らかになってきましたのは、事前のテストですね、四月一日にスタートするに際しての。もう既に三十日から、バッチ処理にかかわるシステムプログラムのところでは問題が起きていたということもあります。それから、もちろんこのオンラインのシステムについても、四月一日の当日、問題が起きたということで、本当に十全なテストというのは行われていたんですか、どうなんですか。
前田参考人 テストにつきましては、これは九万人月という開発をやってつくってきたわけでございまして、それぞれのシステムごとに役割分担を定めております。共同で開発する部分と、それぞれ単独に銀行で開発する部分がございます。そういう意味では、開発責任銀行のもとで相当な準備期間、これは一年以上とっておりますので、相当な準備期間をとりましてシステムをつくり、それからそのシステムについて精力的にテストを行ってきたと聞いておりますが、また、この結果につきましては、持ち株会社のシステム担当役員あてに適宜報告を求めてきたということでございます。
 そうは申しましても、結果として、このような障害が発生したことでお客様に多大な御迷惑をおかけしたわけでございますので、私は、事前テストが不十分であったと言わざるを得ないと思っております。まことに申しわけないと思います。
海江田委員 今の事前のテストということでいうと、UFJが一月の十五日に新しく統合されましたけれども、私が聞きますところによると、例えば、一月の特に十五日という日にちを選んだのは、三連休、成人の日なんかがあるので三日のあきを選んだということ、それから、一月の二日には行員が、全体で二万人ぐらいですけれども、そのうち一万人が一月二日のお正月に出社をしてそれぞれ仕事に当たったとか、それから、一番直近では二月の十四日ですか、これは約六千人がやはり出て一斉にATMを実際に動かしてみたとか、そんなようなお話を伺っているんですが、そういうUFJの事前のテストの御努力というんですか、それをちょっとお話しいただきたいと思います。
寺西参考人 お答えをいたします。
 お答えをいたす前に、私どもも、一月十五日合併当初から口座振替のふぐあいは起こっておりまして、経済の重要なインフラでございます決済システムを担う一員といたしまして、トラブルを起こしたことについて責任を痛感いたしております。今後、安全かつ効率的な決済サービスを提供することで皆さんの信頼を回復していく、こういうことに努力を重ねてまいりたい、このように考えております。
 ただいま、どういう準備をやったのかという御質問でございますが、先生おっしゃいましたように、私どもとしましても、合併時にシステムを統合することのリスクを十分に認識しておりまして、事前にいろいろなリスクを分散するといったようなことをまずやっております。
 具体的に申し上げますと、ハードウエアの方は去年の七月に全部新しいものに入れかえているということでございます。ソフトウエアも十月に新しいものに差しかえたということでございます。十月には、店番変更等の移行作業を完了いたしております。それから、システムに伴うテストにつきましては、項目ごとの通常のテストは数限りなくやっておりまして、営業店事務のリハーサルなどの大規模なテストを計十一回実施いたしております。それから、今お話ございましたように、一月二日には一万人の行員を出勤させまして、全店一斉にATMの負荷がどのようにかかるかというようなことをテストを行っております。さらに、一月十三日のシステム立ち上げ後の十四日には、全店にてシステムの作動確認、こういったものをやっておりまして、一月十五日の統合を迎えた、こういうことでございます。
 以上でございます。
海江田委員 UFJではそういう一応事前の準備をした。にもかかわらず、やはりシステムのトラブルが起きたということだろうと思うんですが。
 どうですか、前田参考人は、一万人集めたからいいという話では決してないんですけれども、全行挙げてやはりそういう取り組みというんですか、そういうことをおやりになったんですか、事前に。
前田参考人 お答え申し上げます。
 このシステムの移行につきましては、私どもでは、二〇〇一年の六月に設計を終えて、そこから準備活動に入っております。
 具体的には、まず二〇〇一年の七月から八月にかけまして預貸し金の個別機能の稼働テスト、次に二〇〇一年の九月から十一月にかけましてリレーコンピューターの機能テスト、さらに二〇〇一年十二月から二〇〇二年、ことしの三月にかけまして、運用テストと移行リハーサルを実施いたしております。
 移行の本番に入ります三月三十日、三十一日は、ここはもう直接移行手続そのものに入っておりますので、この場ではテストというのはいたしておりません。回線のつなぎかえを行いまして、実際に通ずるかどうかという部分を確認したということでございまして、この段階でテストをするというようなステージではございません。
 それから、UFJさんの実例もございまして、私どもでは、この部分も含めまして、口座振替につきましては強化テストを実施いたしました。そういう意味では万全を期したつもりですが、結果としてこのようなことになっております。
 三月の九日、十日、十六日、十七日に口座振替の強化テストを実際に行いました。にもかかわりませずこういうことが起こったということで、大変反省いたしております。
海江田委員 やはり結果責任ということもあると思いますので、三人のCEOの方は辞意を表明されたということですが、前田さん御本人の責任のとり方というのは、どういうふうに今の時点でお考えになっているか、お聞かせください。
前田参考人 このシステム移行は長い年月をかけて準備して実際に行ったものでございまして、現在、事故の原因につきまして、私どもみずほ銀行で独自にもちろん調査もいたしております。それから来月には、金融庁、日本銀行の検査、考査がシステム絡みで、第三者の目で検査いただきます。その過程で、当然、どこに問題があったか、責任はどうかというのはすべて明らかになると思いますので、その後、私を含め、責任を明確にしていきたいと思っております。
海江田委員 特に、先ほどお話があったように、三十日は大変大きな山場を迎えるということですので、これにやはり万遺漏のないようにやっていただかなければいけませんし、あるいはそれをやるに当たって、本当に今の体制でいいのかどうなのか。それが、全部終わってから、終わってからとおっしゃる方がよくいらっしゃるわけですけれども、場合によっては、やはり新しい体制にしてそういう危機に臨むとかそういうことも当然考えられるわけですから、ぜひ今度は迷惑のかからないようにお願いをしたいと思います。
 それから、ちょっと話が変わりますが、お手元に二枚紙をお配りしておりますが、これは東京三菱の三木さんにお尋ねをしたいと思うんです。
 今回の特別検査は、これはもう言うまでもなく大企業に対する特別検査でございますが、そのほか中小企業、あるいは、やはり私は、個人の債務が不良債権化、皆さん方からすれば不良債権化しているケースが大変多いと思うんですね。中でも、東京三菱銀行の融資にまつわる個人の債務者の不良債権化というのは大変多いと思っております。
 その実例としまして二つのグラフをお示ししたわけでございますが、これの原因といいますか、特に、これは一つは変額保険にかかわってくる話でございますが、これを頭取はどういうふうにお考えになっているんでしょうか。
 私は、特に平成元年からずっと個人に対する貸し出しがふえていって、この平成元年は長期総合ローンというローンを生み出した時期でございますので、やはり長期総合ローンにかかわる不良債権化が大変多いんじゃないだろうかと思いますが、いかがでしょうか。
三木参考人 お答え申し上げます。
 ただいま先生からお話がございました長期総合ローンの方でございますけれども、これは主に自宅購入資金やアパート建設資金、その他もございますけれども、こういったものに御融通した、これが枠の範囲内でできるということが大変便利だということになりまして利用をされました。現在は行っておりませんけれども、保証極度内での繰り回し利用可能ということでやったものでございます。
 それから、お尋ねの変額保険の件でございますけれども、これは、今、先生おっしゃいましたように、平成の初めのころに相続対策等を主因といたしましてたくさん生じたものでございます。これにつきましては、本当に個別の債務者ごとに御事情がございますので、私どもとしましては、機械的に対応することなく、よく御事情を伺いながら、お話し合いを進めながら解決したいということで、解決の道を探っているところでございます。
 以上でございます。
海江田委員 個別に、それぞれ言い分を聞きながらということでございますが、きのうも判決が一つ東京高裁で出まして、御行がその意味では訴えられて、かなり主張が認められて御行の方が敗訴しているような状況があるわけですから、私は、個別にというお話でありますが、やはり特にお年寄りなんかが債務者に多いわけでありますから、ぜひそういうところをしんしゃくしていただくということは大切だろうと思います。
 それから、今の中で、自宅ですとかアパートその他と言いましたけれども、その他の中に変額保険が入っていることも確かですよね。自宅やアパートは、別にこれは自分が住んでおるわけですから、それからアパートも、幾ら景気が悪くなってもある程度家賃収入があるわけですから、不良債権化はしないわけですよね。不良債権化するのは、まさに、変額保険やあるいは全く過剰な不動産投資用の融資でありますとか、そういうところにあるだろうと思うので、その他ということの中には当然そういうことは入っている。そこに問題があるという認識をお持ちかどうか、お尋ねをしたいと思います。
三木参考人 昨日の判決でございますけれども、私どもが一部敗訴ということになったわけでございますけれども、残念に思っておりますけれども、よく判決内容をそしゃくいたしまして対応を検討してまいりたいと思います。
 それから、長総ローンの中にその他がありまして、その中に変額保険もあったのではないかとおっしゃいますと、確かにそういうものもございました。住宅それから不動産、そのほかにゴルフ会員権とかセカンドハウスとかそういうものと並んで、確かに、ああいう当時でございましたので、変額保険というものもあったと思います。この点につきまして、今、大変御苦労なさっておられる方も多いわけでございますので、本当に個人個人の方で事情が違いますので、よくお話し合いをさせていただいて解決してまいりたいと思っております。
 以上でございます。
海江田委員 その話し合いの態度といいますか方向性でございますけれども、自宅も担保にとって、そして保険自体も担保にとってと、身ぐるみはがされたという形での仲介のあっせんみたいな提案があるわけですよね、私も実際にそういう例をたくさん聞いていますが。それでは全然問題の解決にならないわけですから、やはりここは本当に誠意を持って、しかも、この時期の貸し出しにはかなりの無理があったことは事実なわけで、提案型融資という形で言われておりますが、そういうことも事実なわけですから、その点もしんしゃくしていただきたいと思うので、やはり提案型融資ということがあったとお考えになりますか、それとも、全くなかったというふうにここで言い切れますか。
三木参考人 お答え申し上げます。
 提案型融資というのは、もちろん当時としては、こちらが強引に勧めるということではございませんけれども、いろいろ御質問もあります中でいろいろな提案もあったかと思います。私どもとしましては、御決定いただくのは債務者御自身だったとは思うのでございますけれども、それが、私どもが先方さんのニーズに応じて提案をしたというようなことはもちろんあろうかと思います。
 それから、繰り返しになりますけれども、身ぐるみどうのというお話がございましたけれども、私どもとしましては、本当に、個別に応じましてお話をお伺いしております。ただし、担保をいただいておりますと、その担保処分というのを交渉するということは、これは銀行としてはやはりやらなきゃならないことでありますので、話し合いの中でそういうことも進めております。先生の御指摘も受けまして、さらに個別によく対応してまいりたいと思います。
 以上でございます。
海江田委員 もちろん、最終的には個別にということなんでしょうけれども、そこに一つの姿勢といいますか、この問題で、なるべくそういう借り手の側の意見もよく聞いて、そして自分たちの貸し手の側の責任も感じて、そういう立場で事に臨むということを、どうですか、それはそんな無理のない話だろうと思うんですが、いかがですか、最後に。
三木参考人 従来も十分そのようにしてきたつもりでございますけれども、さらに、先生の御意向を受けまして、皆さんのお話もよく伺いたいと思います。
 以上です。
海江田委員 ありがとうございました。
 西川さんには、せっかくお呼びしながら質問ができませんで、申しわけございません。
坂本委員長 次に、遠藤和良君。
遠藤(和)委員 公明党の遠藤和良でございます。
 きょうは、四人の参考人の皆さん、まことに御苦労さまでございます。私は、時間が短いものですから、三点に絞りまして四人の皆さんにひとしく質問いたしますから、簡単明瞭にお答えを願いたいと思います。
 最初に、今回の特別検査の結果ですけれども、大口の対象債務者百四十九先のうち新たに三十四先が破綻懸念先以下になったということですけれども、大手十三行で三十四先ですから、きょう御出席の皆さんのところの銀行で考えると、平均、まあ六社か七社ぐらいだろうと私は推定するわけですけれども、その破綻懸念先に対して三年以内にオフバランス化する、これからそのタイムスケジュールを立てていかなきゃいけないわけですね。最初に、一年以内に大体五割ぐらい、そして二年以内に大宗、まあ八割はめどという話も金融担当大臣からあったわけですけれども、それに沿って個別に計画をお立てになる。
 最初は、やはり再建計画の策定から入るんじゃないかと思うんですけれども、これは市場に評価されるものでなければ、この再建計画そのものが破綻しちゃうわけですから、きちっと市場に評価していただけるようなものをつくらなきゃいけない。これを早急につくらないとスタートにならないわけですね。その後、民事再生法などによる法的手続による会社再建とか、あるいは市場退出だとか、あるいは金融機関からいえばRCCに対して債権の売却をするとか、そういう具体的な話になるわけですけれども、この各社ごとの再建計画の策定は、いつごろまでをめどに、どのようにつくっていかれるのか、それを心づもりをお聞かせ願いたいと思います。
 では順番に、前田さんから。
前田参考人 昨年の四月の緊急経済対策におきまして、主要行に対しまして、破綻懸念先以下の債権を二年あるいは三年でオフバランス化していく、いわゆる二年、三年ルールが明示されております。私どもは、不良債権の回収、最終処理につきましては、専門部署による不良債権の集中管理やバルクセールの活用等によりまして、管理、回収体制の強化並びに迅速かつ効率的な処理を実施してまいっております。
 一方、企業再生のための体制づくりも注力いたしておりまして、その結果といたしまして、今回示されましたラップ目標にのっとって、オフバランス化は現在では進んでおります。
 今回、破綻懸念先以下に区分された先につきましても、この金融庁の考え方に沿いまして、三年以内にオフバランス化できるように、最大限の努力を重ねていく計画でございます。
三木参考人 お答え申し上げます。
 破綻懸念先になりました先、今回の特別検査でなったというのは実は非常に少ないわけでございますけれども、それ以外にも、先ほど申しましたように、こういう考え方を通しまして破綻懸念先がございますので、これらにつきましては、債務者の事情をよく勘案しまして、再生可能性をまず判断する。再生可能なものにはそのようにいたしますけれども、これが難しいものがかなりたくさんございますので、企業の実態に応じて、改革先行プログラムの方針に沿いまして、二年、三年で処理してまいりたいと思います。
 なお、再建計画につきましては、おっしゃいますとおり、非常に、再建可能なようなぎりぎりな再建計画を最初に立てるということに心がけてまいりたいと思います。
 以上でございます。
寺西参考人 お答えいたします。
 私どもUFJグループといたしましても、例を申し上げますと、二〇〇〇年九月以前に発生いたしました破綻懸念以下先の債権につきましては、その翌年一年間で五〇%強のオフバランス化といったものをやってきております。
 そういった意味で、特に今回特別検査の対象になった先につきましては、先生おっしゃるような再建計画を早急に取りまとめて実行に移すといったことが必要ではないか、こう思います。
 もちろん、二年、三年ルールというものがございますわけですから、この中で全力を尽くしてまいりたい、このように思っております。
 以上でございます。
西川参考人 ただいま遠藤先生の御質問、再建計画の策定ということに絞ってお答えを申し上げたいと思いますが、私どもは、特別検査の結果、破綻懸念先に債務者区分を引き下げたというところがやはり数社ございます。これらにつきましては、もともと私どもの方で、昨年度の下期以降に、金融支援をしなければならないであろうというふうに予想をしておった先が中心でございまして、それらの先については、既にどうするか、再建についてどうするかということを考えておりました。したがいまして、改めて再建の可能性というものを慎重に見きわめまして、そして、実行可能で、かつ有効な再建計画の策定を急ぎたいと思います。
 これは既に進めておるわけでございますが、各上場会社は六月に株主総会があるわけでございます。その株主総会に諮らなきゃならないといったケースもございますので、もうここ一カ月程度の間には、必要なものはまとめてまいらなきゃならないというタイミングでございます。
遠藤(和)委員 数字は三十四先と出ているんですけれども、これが再建計画を早く立てないと、会社探しになっちゃって変な評判になって再建できるところも再建できなくなる、こういう心配を私は懸念するわけですね。いずれも大手ですから、いつかは明らかにしなきゃいけないわけですから、これは株主総会にきちっとかけるという話も、ある意味では必要だと思いますね。
 そうすると、早急にやらなきゃいけない、これは本当に時間を一刻もむだにできない話ではないのかな、こう思いまして、この再建計画を本当に市場が評価し、かつ会社の方も評価ができる、こういうものを透明な形でおつくりになることが大変大事だ、こういうことを指摘させていただきたいと思います。
 それから二番目の質問ですけれども、銀行の体力ということから考えますと、自己資本比率、この側面から見ますと、不良債権の処理に対して公的資金の注入は必要ない、このように考えられるわけですけれども、そのことに対して四人の方々はどのように認識されておりますか。
前田参考人 今年度、みずほグループも大幅な赤字決算によりまして自己資本は減少いたしますが、これはむしろ不良債権の積極的な処理の推進によるものでございます。これを実施した後でも、この二〇〇二年三月末の自己資本比率は一〇%前半を確保した見込みでございます。
 また、私どもでは、この二月に三千五百億円強の優先出資証券を発行して資本増強したばかりでございまして、公的資金による再注入の必要は現在ではないと考えております。
三木参考人 私どもは、これまでも公的資金の導入をなしに自助努力でやってまいりました。現在自己資本比率が一〇%前半でございますが、今後も自助努力により厳しい環境を乗り切ってまいりたいと思います。
 以上でございます。
寺西参考人 お答えをいたします。
 私ども、UFJグループ全体で申し上げますと、不良債権処理二兆円を行った上で、二〇〇一年度末の自己資本比率、連結の自己資本比率でございますけれども、一〇%後半を維持するということでございますので、公的資金の投入を必要とするような状況にはないのかな、このように思っております。
 昨年来、不良債権の早期処理に向けまして、RCCの強化とか特別検査の実施といったいろいろな施策が打たれておりますし、私ども個別行といたしましても、昨年自己資本調達といった自力の調達もやっております。経済状態その他も予断を許しませんけれども、ぜひ収益力の強化、お取引先の再生支援などを進めまして自力で頑張っていきたい、このように思っておるところでございます。
 以上でございます。
西川参考人 お答えします。
 私どもの方も十三年度の不良債権処理が一兆五千億余りに上る見込みでございますが、一方、業務純益は一兆一千八百億円、これには特殊要因も入っておりますが、かなりの増強に努めました。また、資産売却益なども計上をいたしております。それでカバーをしておるということでございますし、また一方、アセットの面では、低採算資産を相当に圧縮いたしました。その結果、単体では一一・五%前後の自己資本比率でございますし、BIS自己資本比率においても一〇%台半ばということでございます。
 そういう状況でありますから、例えば九七年、九八年のように、自己資本比率のために貸し渋りが起きるといったような状況でも全くございません。したがいまして、公的資金の投入は必要ないというふうに考えております。
遠藤(和)委員 それでは第三問目ですけれども、金融機関の社会的責任あるいは社会的使命という側面から、今後の融資のあり方ですね。これは、今まで不動産を担保にした、その結果バブルがバブルを生んだ、この反省にも立って、今の日本の経済をどのように活性化していくか、あるいは新しい起業家をどう応援していくのか、そうした側面からの新しい融資のあり方というものを各行考えるべきではないのかと私は思っております。
 例えば、無担保で融資ができる制度はないのかとか、あるいは知的所有権といったものを担保にする方法はないのかとか、あるいはいろいろそうした無形のもの、あるいは何か新しい意欲とかアイデアとか、そういう頭脳に投資をするというんでしょうか、ハートに投資をすると言ったらいいんでしょうか、そうしたものを金融機関が考えていかなければ、金融機関だけが生き残って社会の経済が破滅するということはあり得ないわけですね。やはり経済の大きな波の上に金融機関の船は浮かぶわけでございますから、どのように日本の国の経済を活性化していくか。
 新しく業を起こしていこうとする、例えば大学を卒業したばかりで新しい起業をしようとする、こういう方々がアメリカではたくさんいらっしゃるわけですけれども、日本ではそういう仕組みがまだ十分できていない。そうすると、その方々のための資金を調達するマーケットをつくるということも大切なんですけれども、いきなり株式を発行できない人もいます。そうした方々に対して、間接金融の形で大手の金融機関がそういうプラン、そういうものを発表するとか、こうした議論が私は大事じゃないかと思うんですね。
 何となく、金融機関とかの責任の話をすると後ろ向きの議論が多くなるわけですけれども、もっと前向きの、積極的な、こうした新しい融資プランを考えています、新しい起業家百人を我が社では責任を持って育成しますとか、そんな計画を、銀行がこういうふうに合併して大きくなったわけですから、それぞれの合併した銀行は体力があるわけですから、余裕があるわけですから、そうしたものを各グループごとに発表していく、こういうことは大変社会的にも有意義だし、かつ銀行の社会的な信頼を得るものにもなるのではないか。
 このように思いまして、各グループごとにそういう壮大なプラン等がありましたらぜひ開陳してもらいたいし、今後そういうことについてぜひ検討していきたい、こういう決意表明でも結構でございますから、順次お答えいただきたいと思います。
前田参考人 私ども、中小企業向けの貸し出しは貸し出しのまさに中心部分でございまして、従来から、貸し出し商品の充実や、本部によります営業店の支援等の強化を実施いたしております。
 具体的には、取引状況に応じて金利を優遇する中小企業育成ファンドなどの貸し出し商品の充実、それからダイレクト・マーケティング・チャネルでございますビジネス金融センターの拡充、それから本部の専門スタッフによりますソリューションビジネスへの対応強化、それから自動審査モデルを活用したスコアリング審査の導入等、借りる方にとって借りやすい、それから、それぞれ細分化して使いやすい商品を開発する努力をいたしております。
三木参考人 先生御指摘のとおり、銀行は、私ども自体が健全になることに加えまして、何といっても国民経済の健全な発展に資するということが社会的責任だと認識しております。社会的に有用な事業、こういうものの発展のために資金を提供するということが責務だと思っております。
 融資判断に当たりましては、過去の非常に担保主義ということの反省にも立ちまして、資金使途、それから債務者、経営者の資質、企業資質、財務状況、キャッシュフロー、そういったものをよく考えていくということで、担保につきましても、もちろんなくすわけにはまいりませんけれども、補完的位置づけと申しますか、そのぐらいのつもりでやっていきたいというふうには思っております。もちろんケース・バイ・ケースではございます。
 なお、新しい産業につきましては、これを支援するということはぜひやりたいわけでございますが、現在私ども、専担部署を設けまして、融資部の中に新産業グループというのを設置しております。こちらが御融資をするあるいはコンサルティングをするということに相努めておりますので、これをまたさらに積極化してまいりたいと思います。
 ただ、いわゆるベンチャーとなりますと、これは私の経験でも、実際にこのベンチャーが育つかどうかというのは非常に難しい判断、かつリスクも大きゅうございまして、これを間接金融でやるというのは限度がございます。こういうものにつきましては、子会社でベンチャーキャピタルがございますので、こちらで資本出資をするというようなこと、これと、先ほどの銀行の新産業グループとの、この両方のタイアップで新しい産業を育てるように尽力してまいりたいと思います。
 以上です。
寺西参考人 お答えをいたします。
 将来あるベンチャー企業を育成する、そういう夢を持て、こういう御趣旨のお言葉でございます。
 私ども、ベンチャー企業など将来性のある、また成長性のある中小企業、これを支援する、育成するといったことは、我が国の発展にとっても不可欠の重大な課題であろう、このように認識しております。一方で、銀行のビジネスにとっても、こういった成長力のある企業との取引推進というのはある意味で本業であろう、こういうふうに認識しております。
 私どもUFJグループでは、こうした企業に対する支援の強化を目的といたしまして、成長企業支援室といったものを設置いたしておりまして、資金的な支援にとどまらず、いろいろ幅広い企業のニーズ、経営アドバイスその他含めまして、そういったものを、ニーズにこたえるような体制をつくったところでございます。
 以上でございます。
西川参考人 お答えいたします。
 私の方からは一つの私どもの商品についてお話を申し上げたいと思います。
 中小企業向け融資の一つでございますが、ビジネスセレクトローンという商品をつくっておりまして、これを売り出しております。これは、無担保無保証の融資でございまして、最大五千万円までということでございますが、こういう企業向け融資といたしましては大変異例のことでございますが、先日来、テレビコマーシャルあるいは新聞等で広告もいたしております。お気づきになったかどうか、きょうも新聞に広告を出しておりまして、三井住友銀行を試してみませんかというキャッチコピーでやっております。これは自動審査を行うものでございまして、やはりお申し込みに対して早く回答するということが何よりも重要なことでございますので、それを心がけてやっておるわけでございます。おかげさまで、このところ大変反響を呼びまして、順調に残高が伸びてきておるという状況でございます。
 なお、ベンチャービジネスにつきましては、先ほど来お話ございますが、やはりキャッシュフローを生むまでは間接金融、貸し出しではなかなか難しい面がございます。したがいまして、やはり我々の場合も、子会社として持っておりますベンチャーキャピタル、こちらから出資をするというところから始めまして、ある程度成長されてきたところで銀行貸し出しも並行的に行うというやり方をとっております。
 以上でございます。
遠藤(和)委員 終わります。ありがとうございました。
坂本委員長 次に、藤島正之君。
藤島委員 自由党の藤島正之でございます。
 現在の不良債権問題でございますけれども、大方二つに分かれているんだろうと思うんですね。一つは、バブル時代の後遺症的なものがまだ残っているのかどうか。それと、最近のデフレの進行に伴うものということなんですけれども、私は、端的に言って、銀行経営に甘さがあったんじゃないかと思うんですね。これは、責任は銀行だけではなくて、恐らく旧大蔵省の指導に基づく護送船団方式、こういうことにもあったんだろうと思うんですけれども、いずれにしても、バブルを起こしたのはほかならぬ銀行だったんじゃないかと思うんですね。
 この責任問題をそのまま、ないがしろにしたままで、口をぬぐったまま、あたかもこの問題が自分たちの責任ではなくて、経済全体の、自分らではどうしようもないことから来ている問題だというふうにすりかえている面があるんじゃないかと思うんですけれども、まず、その点について前田参考人にお伺いしたいと思います。
前田参考人 バブル期の融資につきましては、私は直接その場にいたわけではございませんが、今、私はその後のバブルの結果の不良債権処理、回収の方の責任者でもございました。
 実際にいろいろ回収の交渉をお聞きしますと、もちろんお借りした方と貸した側の両方にいろいろ事情があったのは事実でございますが、結果といたしまして、資産が右肩上がりで上がると信じたとかいろいろな事情があった結果、債務が返せなくなったということがございます。そういう意味で、銀行も責任はなかったともちろん申し上げません。
 そういう意味で、二度とそういうことがないようにするというのが私どもの責任だと思っております。
藤島委員 寺西参考人、いかがですか。
寺西参考人 バブルの反省はどうだという御質問でございます。
 静かに振り返ってみますと、私ども、今、不良債権等いろいろなものがございますけれども、大きな反省は、特定の産業とか特定の業種に一部偏った融資があったのかなとか、もう一方で、特定の会社にかなり多額の融資はした、こういったことがある意味で大きな反省点だろうと思います。
 商業銀行といたしましては、そういった偏りじゃなくて、もう少し満遍なく、きっちりとした、分散したというんでしょうか、分散したポートフォリオを持つべきであったのかな、このように思っておるところでございます。
 以上でございます。
藤島委員 前田参考人の答弁は、自分が担当していなかったからよくわからないというのは、そんなものは答弁にならないと私は思うんですけれども。
 それでは、もう一方、三木参考人はいかがですか。
三木参考人 先生御指摘のとおり、バブルの責任は銀行だけではなく全体もあるけれども、銀行も反省すべきこと、大いにあるのではないかとおっしゃいますのは、まことにそのとおりだと思います。
 私どもといたしましては、生じました不良債権を遅滞なく処理して、早く社会に貢献できる体力をつくる。現在も必要資金は供給しているつもりでございますけれども、不良債権からの脱却、それから収益を向上して健全な体力をつくるということに励むのは現在の我々の使命だと思っております。
 バブルの時期につきましては、私も銀行だけとは思いませんが、銀行も含めて反省しております。
 以上です。
藤島委員 ところで、明確に区分できるのかどうかわかりませんけれども、バブルに係る不良債権問題はもう済んだというふうに考えてよろしいんでしょうか。これは西川参考人にお伺いしたいと思います。
西川参考人 お答えいたします。
 いわゆる不動産を担保にしたバブル時代の行き過ぎた融資というものは、不良債権という形でほとんど処理が終わっておると思います。
 ただ、先ほども寺西参考人からお話がありましたが、私も、当時から銀行のリスク管理の基本であります集中リスクの回避ということをなおざりにしたというとがめが、今日に至っても、特別検査の対象になったような特定業種の大口先についてなお残っておるという状況だと思います。これをさらに再建計画を策定し、それを実行する中で、我々も債権処理をしてまいらなきゃならないという段階であるというふうに認識をいたしております。
藤島委員 ところで、第一弾がそういうことで、第二弾の、デフレの進行が新たな不良債権を生み出し、金融システムへの信頼回復を阻んでいる、これは二十三日の寺西参考人の記者会見でおっしゃっているんですが、そういう面もあると思うんですけれども、やはりこれも銀行経営の甘さによるところもかなりあるんじゃないかと思うんですね。
 ここのところは両面あるとは思いますけれども、いずれにしても、今後不良債権について処理していくためには、いわゆる業務純益でやっていかざるを得ないわけですね。この点について、先ほど根本委員の方から寺西参考人には質問があって、お答えがあったんですけれども、みずほの前田参考人はその点、いかがでしょうか。
前田参考人 お答え申し上げます。
 本業の収益力を示します業務純益は二〇〇一年度は九千四百億円という見込みでございまして、経営健全化計画を上回る見込みでございます。そういう意味では、コアの収益力は着実に強化されていると思います。
 不良債権処理をさらに積極的に進めていくためにも収益の増強が不可欠でございまして、今後、リスクに見合った貸出金利の確保、手数料収益やデリバティブ収益といった非金利収入の増強、リストラの着実な推進などを実施していくことによりまして、不良債権処理をカバーしてまいりたいと思います。
    〔委員長退席、中野(清)委員長代理着席〕
藤島委員 各行合併をされているわけですけれども、同種のものが一緒になっただけではなかなか収益改善がいかないと思うんですけれども、今回みずほの場合ですと、一緒になったけれども今度縦割りに移行するわけですね。それで、それぞれまた新しい発想でやる。やはり何かそういう発想でないと、大きいところだけがただ一緒になっただけでは、我々素人の感覚ですけれども、業務純益が必ずしも上がっていくというふうな感じはしないわけです。
 各行、いろいろ工夫はされていると思うんです。例えば債権放棄を随分やられましたけれども、ああいう際、これはちょっと次元が違うんですけれども、今までの処理の中で、結局、借り手だった企業が単に債権放棄されただけでは、ちょっと延命するだけですぐまた数年すると同じような状態になるわけですけれども、いずれにしても、各経済界、本当に血のにじむような思いで合理化をし、やっているわけです。
 今までも、銀行界では合併がいろいろあったわけですけれども、どうも給与だとか福利厚生などでは合併したいい条件の方に引き寄せる、そういった条件にする、あるいは、各行、頭取をやられた方が亡くなるまで全部顧問で、大変な手当を払っている、そんな状況があったやに聞いておるわけですけれども、例えばそういう点が銀行の甘さにもなっていた。
 ということは、そういうことがあることは、万事、行員も知っておるわけで、全体に経営にも甘さがあったんじゃないか、こう思うんですけれども、この点の、リストラといいますか合理化といいますか、社内のそういう努力、こういうものについてはどういうふうに考えておるんでしょうか。前田参考人。
前田参考人 お答え申し上げます。
 役員の処遇とかそれから従業員の処遇等につきましては、従来から大幅な見直しをいたしております。みずほグループではこの四月一日をもちまして、持ち株会社、それから子銀行、みずほ銀行、みずほコーポレート銀行、それぞれ頭取もしくは社長が一人で会長等も設置しないということで、役員数は大幅に削減をいたしております。それから処遇の水準も、既に健全化計画で公表いたしておりますが、従来の、過去の対比では、恐らく三割から四割以上の大幅な削減になっていると思います。もちろん、リストラそのものを全力でやっておりまして、役員の処遇だけは例外とかそういう扱いは一切いたしておりません。
 ぜひ御理解いただきたいと思います。
藤島委員 寺西参考人、いかがですか。
寺西参考人 私どもも、リストラというんでございましょうか、経費の削減も含めまして、聖域がないということで取り組んでおります。
 役員につきましても、役員数を削減するといったことはもとより、その報酬水準につきましても、最高で五〇%カットし新たな水準に移行しているということでございます。さらに、車等につきましても、頭取、会長以下は送迎をしないといったような、そういったベースのところもやっておりますし、また、従業員につきましても、これだけ厳しい環境にある中で賞与を引き下げるといったことで、また、銀行の持っておる保養所はほぼ完売いたしておりますし、そういった意味で、全体に、上から下まで身ぎれいに、そしてきちっとしたガバナンスの中で新しい経営をやっていこう、こういう気持ちで今努力しているところでございます。
 どうぞ御理解いただきますようお願いいたします。以上でございます。
藤島委員 努力されているとのことなんですけれども、我々国会議員も、実は一割歳費削減をやっておるわけです。必要な経費を余り削減するのはいかがかとは思うんですけれども、やはり、これまでの銀行経営の甘さの中で、ただ今までやっていたということでむだな経費が残っているのがかなりあるんじゃないかなと。ほかの企業では、かなりそこをぎりぎりのところまでやって収益を出しておるということなわけですけれども、公的資金まで入っている銀行が今までと同じような発想でいいわけはないというふうに思います。
 あともう一問だけ御質問をさせていただきますけれども、寺西参考人は同日の記者会見で、公的金融が金融市場の活性化、効率化を阻害する要因になっており、改革が必要だ、こうおっしゃっておりますが、私も、各役所が持っている公的金融はもう完全に役割は終わって、全部民営化すべきだ、これは郵貯も含め、そういうふうに思っているわけですが、このあり方について、郵貯を含めた、特に郵貯についてを重点にして、各参考人の御意見を賜りたいと思います。
    〔中野(清)委員長代理退席、委員長着席〕
寺西参考人 お答えをいたします。
 郵貯についてどう考えているのかということでございます。
 郵便貯金につきましては、そもそも、少額貯蓄手段の提供という本来の役割から大きく逸脱しておりまして、今やその残高が昨年の十二月末では二百四十兆円に達しているということでございます。ある意味で、量的に極端に肥大化いたしておりますし、一方で国家保証とか諸税の免除等の官業ゆえの特典を有したまま、こうした巨額の資金がいわゆる金融市場のらち外に置かれておることによりまして、我が国のマネーフローを大きくゆがめている、このように考えております。
 そういった中で、私ども、従来より、郵便貯金の廃止もしくは民営化の方向での抜本的な改革を強く主張してきたところでございます。特に民営化につきましては、民間金融機関と郵貯の競争の活発化を通じました利便性の高いサービスとか商品の提供等の観点から、有力な選択肢の一つと言えるのではないかな、このように考えているところであります。
 また、こうした改革は、一方で実質的、潜在的な国民負担の解消につながるだけではなく、金融市場、資本市場の活性化とかリスクマネーの供給拡大など、いわゆる日本経済の構造改革にも資するのではないか、このように考えているところであります。
 以上でございます。
藤島委員 ほかの公的金融についても一言。
寺西参考人 ほかの公的金融につきましても、そもそも、民間でやれるところは民間でということがそれぞれの金融機関の持っている立法の精神でございます。そういった面で、確かに、民間で全部やれるかというといろいろな問題があろうかと思いますけれども、そういった、民間でやれるべきものは民間でという精神に立ち返って、もう一度、その事業領域といったもの、政策目的、どうなんだということを幅広く議論することが必要ではないかな、このように考えております。
 以上でございます。
藤島委員 時間がありませんので全員というわけにいかないと思いますけれども、今、公的金融につきましても、今まで大蔵省が銀行業界を全部抑えておったもので、公的金融が民業圧迫になっているのを知りながら、恐らく不満や意見を言えなかったんだろうと思うんですね。今やもうそういう時代じゃないわけでありまして、金融庁が銀行業界を抑えるといったようなものではないので、銀行業界としても、そこら辺は、言いたいことはきちっと言う時期に来ているんじゃないか、こう思うんですね。
 ところで、もうちょっと時間がありますので、この点について、それじゃ最後に三木参考人に御意見を賜りたいと思います。
三木参考人 ただいま寺西参考人が申されたとおりでございますが、少しつけ加えますと、郵貯でございますけれども、国営形態を維持したままの公社化、これでは問題が解決しないと思います。したがいまして、完全な民営化、これも廃止ないしは分割・民営化ということになろうかと思いますけれども、公社化ではぐあいが悪いと思っております。
 また、一般の国営の金融機関につきましても、民間で今新しい商品を開発いたしまして、私どももそれに、ニーズに取ってかわることができるようになりつつありますので、ぜひ民間にお任せいただきたいと思います。
 以上でございます。
藤島委員 それでは、終わります。ありがとうございました。
坂本委員長 次に、吉井英勝君。
吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。
 私、最初に、前田参考人にまず伺っておきたいのですが、学者、専門家はもとより、全国銀行協会とか日銀が銀行の決済機能というものをどのように位置づけて考えているかということを、改めて幾つか読みました。
 日銀が銀行の機能と業務として挙げているのが、役割は二つあって、決済機能と金融仲介機能、全銀協が書いておられるものでも、支払い決済システムが経済活動に不可欠の存在、その安定性と信頼性の確保が重要な課題だということを書いておりますが、他の論文を見ておりましても、決済機能ということについては大体同趣旨のことを書いているわけです。
 四月九日に前田参考人がこの委員会に来られたときの実害が出たということはないという発言に私は端的にあらわれていたと思うのですが、銀行業務の中ではもとより、国民生活の中、日本経済の中で、そして国際的にも、やはりこの決済機能の喪失という深刻な事態を生じたというこの自覚を持っていらっしゃるのかなという、そこのところをまず最初に伺っておきたいと思います。
前田参考人 前回の委員会でもおわび申し上げましたが、本日もおわび申し上げました。
 私も、ここは社会インフラであるということは十分自覚いたしております。また、決済が滞るということは、銀行システムそのものがうまくいかないということでございます。そういう意味で、このような事態になったことについては本当に深く反省をいたしております。
 一刻も早く完全復旧したいということで、現在のところ、オンライン系は正常に動いておりますし、口座振替もほぼ正常に復帰いたしましたが、この間、多大な御迷惑をおかけしたことは事実でございます。深くおわび申し上げます。
吉井委員 私は、決済機能の喪失という問題をどれぐらい深刻にとらえておられたのか、とらえているのかということだけ聞きたいのですよ。その一点で結構ですから、ごくコンパクトに答えてください。
前田参考人 口座振替だけで、一カ月二千七百万件の処理をお受けいたしております。そういう意味でも、極めて重大な社会インフラだと認識いたしております。
吉井委員 ここで、これまでの経過もありますから、寺西参考人に二、三お聞きしておきたいのです。
 一月十五日からの問題で、きょうも出ておりましたが、一月二十一日に、「口振引落結果通知遅延の件」として、内部でずっと文書を流して取り組んでいらっしゃったことですが、各営業店に、対応の仕方について示した「口座振替結果通知の遅延などに関するQ&A」というのを出しておられましたが、みずほホールディングの前田社長の実害は出ていない発言と同じように、読んでいますと、システムに問題があったのかとのQに対して、大きな問題が起きたわけではないと回答するように示しておられました。
 ところが、その直後の一月二十三、二十四には、口座振替自動引き落とし遅延が六十万件発生、一月二十八日には、口座振替二重引き落としが十八万九千件、約二十八億円分、引き落とし漏れが八千六百件発生など、大きな問題は出ていないと言った直後に大きな問題が生じたと思うのですが、ここを伺っておきたいのです。
寺西参考人 お答えをいたします。
 一月二十一日時点では、口座振替を依頼しているお客様、個々の預金者の方の引き落としというのはなされておりました。一部、その後、口座振替を御依頼いただいた委託者の方の結果通知といったものにおくれがあったということでございまして、今から考えてみますと、その辺が予兆だったということでございますが、我々の目も、いささか本体の、ATMを含めたシステムの方に行っておりまして、そういったミスリードするような通達だとか指示が流れたのではないかと思い、反省をいたしております。
吉井委員 そういう大きな問題が生じたからこそ、今度二月十四日には、「手数料の取り扱いに関する説明書」の方で、一月十五日より二月八日までの期間の口座取引に伴う手数料を無料扱いとさせていただきますと方針を出されて、約二千万件で約五億円の手数料収入を受け取ることができなかったように思うのですが、その点はどうなんですか。
寺西参考人 お答えをいたします。
 おっしゃるとおり、一月十五日から二月八日までの間、口座振替が正常に機能していない、こういう判断に立ちまして、口座振替手数料を無料にさせていただきました。総計は、先生おっしゃる五億円でなく、六億円でございます。
 以上でございます。
吉井委員 私の方はちょっと少な目に見ておったのですが、六億円ということですが、そういうことがあって、では、一月十五日の件だから大体終わったのかと思ったら、三月二十七日にオリコの新規登録の九百四十件分が引き落とされていなかった、四月十三日にオリコの引き落とし未済が確認されたわけです。
 ですから、一月十五日ごろの話だけでなくて、今日でもなお、システムの統合に伴うトラブルが、事務手続とか打鍵の誤りを含めて発生しているということが実態のようですから、私は、今度のみずほの皆さんの方も、四月一日からしばらくの間の話なのか、かなり長期にわたるものなのかということが、UFJの問題からやはり酌み取らなきゃいけない問題じゃないかと思うのです。
 そこで、前田参考人に引き続いて伺いますが、東京電力は、事前のテストを申し入れしたが断られたというのですね。東京ガスは、一月に振替テストを求めたがやはり断られた。この東京ガスについては、三月十五日に一部の試験データをみずほに渡して、口座振替、引き落としの処理がうまくできるかどうかのテストを要請した。みずほ再編に伴う新たな銀行コードを使っていたが、三月二十二日に、このデータではうまく処理できないとの回答があったということで、そこで、古いコードのまま、四月からのデータ処理をすることになったというふうに伝えられておりますが、ほかに、こういうテストをやってもらいたい、ほかの企業からテストの申し込み、あるいは、この企業についてはこんなテストを実施したというそういう例があるのかどうか、これを伺いたいと思います。
前田参考人 大口の利用者でございます東京電力さんとは、数度といいますか何度も、直接窓口同士でいろいろ御相談等させていただいたように聞いております。その過程でテストの御要望もあったのは事実でございまして、それにもかかわりませず、実際にテストがお客様の御要望で、できなかったということでございますので、ここは私は大変遺憾な事態だと思います。
 それから、東京ガスさんのケースもございまして、いずれにいたしましても、大量に口座振り込みをやっていただいているお客様からこれだけ御心配をいただいていながら、十分におこたえできなかった事態があったということだと思います。ここは大変遺憾なことだということをおわび申し上げるしかございません。
吉井委員 三月二十五日にはみずほ銀行のATMが停止する、何台か、かなりの数が停止する事態が発生したりとか、四月一日の直前まで事故がいろいろ起こったり、職員の皆さん方は、このころ非常に忙し過ぎて、直前に手渡されたマニュアルを読む暇もなかったという、それぐらい大変だったということも伺っておりますが、三月二十八日に出された「四月一日以降のみずほ銀行STEPS店用事務手続の運用について」という文書を見ておりますと、旧三行間で「統一した事務処理がおこなわれないことから混乱が生じるケースがある」と、三月二十七、二十八段階でそれを書いていらっしゃったわけですね。
 前田参考人らの経営陣の方は、混乱が避けられないという認識を持っておられたんじゃないかと思うのですが、ここはどうなんですか。
前田参考人 お答え申し上げます。
 三つの銀行を二つにするという分割再編をいたしたわけでございます。そういう意味では、当然、手続書はそれぞれ二つの銀行で編さんするということで統一をいたしておりました。当然、三つの銀行ですから、それぞれ自分の銀行の用語を使っておりましたので、事務上の用語は統一いたしました。また、共通化できる部分はお客様との授受等すべて共通化をいたしました。
 ただ、事務の大宗が実際に使用するシステムに依存いたしますので、特にオペレーションする場合にはその部分に依存いたしますので、みずほ銀行の中では二つのコンピューターシステムが併存いたしましたので、これは二つのお店用に手続集を区分して運営するという運営にいたしております。
 そういう意味で、手続の編さんは事務フロー等営業店の事務の部分に直結いたしますので、二〇〇一年の九月までに編さんを終えておりまして、秋から実際の研修に使っております。もちろん、全行員が非常に多数の数でございますので、たくさんの研修をいたしましたが、そういう意味で手続をすべて変えたということでございませんので、そういう意味では、準備は十分行ったと我々は考えております。
吉井委員 端的に伺いますが、この文書で、統一した事務処理が行われないことから混乱が生じるケースがあるということを内部では、それは文書を回して言っておられたわけですから、全店舗へ。ですから、この段階で、やはり混乱は避けられないというこの認識は持っておられたのじゃないかと思うのですが、混乱は避けられないという認識を持っておられたのか、いや大丈夫だという認識だったのか、その一点だけ伺います。
前田参考人 恐縮ですが、混乱を避けられないという意味では、私はその当時は責任ある立場でございませんのでちょっと責任ある回答はできないのですが、混乱を避けられるかどうかというより、混乱が起こるということは想定していなかったということだと推測いたします。
吉井委員 その文書の中でも出てくるのですが、「別紙二に記載の事務手続にかかわる新事務手続書は、四月一日までに営業店に到着しない予定」ということも書いてありますね。ですから、事務手続書が到着しないんだから、混乱は避けられない。今おっしゃったように、三つの銀行が統一するわけですから、それぞれマニュアル、事務手続、みんな違うわけですから、その事務手続書が届かないことにはまず研修のしようがない、読んで対応のしようがない。
 ところが、この文書の中でも、「四月一日までに営業店に到着しない予定」ということなんですから、これではとてもじゃないが四月一日からできないということはわかっていたんじゃないですか。それを、前の経営者、前の社長、頭取じゃないから、わし、わからぬと言われても、これはちょっと話にならないと思うのですよ。どうですか。
前田参考人 お答え申し上げます。
 先ほど申し上げましたように、事務手続をすべて変えたということではございませんで、営業店に新しい手続を全部差しかえて新しい手続でやるという運営をいたしておりませんので、そういう意味では、営業店が大混乱ということはないと思います。
 ただ、実際に、細かい部分、頻度の少ない手続等につきましては完全に統一化はもちろんできなかったわけでございます。そういう意味での混乱は、これは逆に現場の負担を回避するために暫定的な手続集もつくっております。
 そういう意味で、手続につきましては、事務の基本でございますので、最大限の目配りをしたものと私は聞いております。
吉井委員 四月一日まで営業店へ到着しない予定ということで、到着しない自体が大変なんですが、現場で聞くと、各地の店長さんにしろ第一線の方にしても、実際に伝票、そして帳票類、これは数百から数千種類でしょう、これが現場に届けられたのは前日の三月三十一日ですよ。現場には、今おっしゃった富士銀行なら富士銀行の一覧表があり、みずほの一覧表があり、貸借対照表があり、電話帳みたいなものを、実際にはそれを突き合わせないと仕事にならないわけですよ。しかも、一日の日からATMは大混乱。
 これは本当に、システムの問題だけじゃなしに、やはり根本は決済機能という銀行の魂を忘れてしまった営業姿勢というものが非常に問われてくるのじゃないですか。
前田参考人 お答え申し上げます。
 私、聞いておる限りでは、伝票もすべて差しかえをもちろんやりますので、新しい伝票を各営業店に三月の中旬ぐらいにデリバーいたしまして、それが届いたかどうかというのをすべての営業店から確認をとったと私は聞いております。
 そういう意味で、三月三十一日にすべて全部やりかえたということではございません。ただ、実際にお休みの日が二日ございまして、営業店は出てまいりまして新しいシステムに切りかえる作業等も実際にやっております。そういう意味では、営業店は土日に出てやったわけでございますが、そのときに、すべてをその日に差しかえたということではございませんで、整々と差しかえをするための事前準備をして、伝票等も配付をしたわけです。
 ただ、実際に私もそのとき一部聞きましたけれども、これは一部宅急便の方にお届けいただいたのですが、土日にデリバーする分もありまして、銀行は土日ですとあいておりませんで、裏口がわからなくて入れないというような連絡もあったことを私は記憶しています。ただ、それも個別に御連絡いたしまして書類をちょうだいした、そういうことでございます。
吉井委員 銀行の入り口がわからぬ、裏口から行った。余りそんな漫画みたいな話をしてもだめだと思うのですよ。ATMのトラブルもあれば事務手続上の、そもそも書類が営業店へ到着しない予定と言われていたような事態なんですから。
 だから、その結果として、今、四月は大体百時間超えるぐらいのサービス残業という実態になっているという話が、現場の皆さん方からはこもごも語られていますよ。
 私は、その決済の問題についてあわせて聞いておきたいのですけれども、三月末といえば、各社の決算のために、企業と監査法人には取引銀行は残高証明書を発行しなければなりませんね。
 企業への口座振替にトラブルが発生した中で、残高の数字が確定してこない。その数字が合っているかどうかの確認、証明というのは通常は四月二日、三日段階でやって、四月の三日、四日には発送するというのが普通だと思うのですが、期末決算用残高証明の発送が四月十六日以降にずれ込んだ。しかし、四月十五日という日は残高証明発行手数料を法人の口座から自動引き落としするということになっているときですから、金額は、この手数料はわずかかもしれませんが、証明書は出せないが発行手数料だけは先にいただくという、商道徳にもとるような事態が生まれていたのじゃありませんか。
前田参考人 お答え申し上げます。
 口座振替の処理の遅延が期の、四月の初めにございましたので、残高につきましては、残高証明書そのものに間違いがある可能性がございますので、一部のお客様に対しましては発行を差し控えておりましたのは事実でございます。
 ただ、四月の四日から発行を開始いたしまして、四月の中旬からは通常どおりの発行を行っているとの報告を受けております。もちろん、お客様とは個別に十分御相談させていただきながら対応させていただいております。
 この点につきましても、お客様に大変な御迷惑をおかけいたしております。深くおわび申し上げます。
吉井委員 次に、手形について問題がある可能性があるという答弁がせんだってありましたが、現場では、毎日勘定が合わないということでの仮払い問題が出ていますね。
 なぜ仮払いの問題が出てくるかというと、取り立て手形の決済ができない、交換、持ち帰りがある、その結果勘定が合わない。そして、結局、お客さんとの関係があるから仮払いで処理しておかなきゃいけないという問題が次々出てきていますね。
 例えば、四月三日にクレディセゾンがコーポレートから振り込んだお金がどこに行ったか不明。これは四月五日に判明して、仮払いで入金しているんですが、どういうことかというと、時間がだんだん迫ってまいりましたので簡潔にやりますが、クレディセゾンは振り込んだ、コーポレート銀行から伝票が来ないからどうなっているかわからないという状況の中で、綜合警備保障会社の方は困ってしまうというところから、結局、コーポレート銀行が仮払いという扱いでとりあえずお払いをする。
 これは、為替システムが正常に働いていれば大体こんなのは不要な手段なんですね。仮払いがあること自体が為替取引に障害が起きたということを示していると思うんですが、先ほどの口振の方は相対取引ですからまだ波及的影響は少ないと言えるかもしれないけれども、手形決済となりますと、今度、波及的影響が物すごい大きいんですよ。
 ですから、私は最後に伺っておきたいんですが、毎日の勘定がきちっと合わないということになってきますと、合わない実態そのものがかなりこれは深刻な問題ということになりますし、毎日の勘定が合わないということは、日銀ネットの関係も勘定の面でおかしいことになってくるし、これは一みずほの問題だけじゃなしに、日銀ネットその他を含めた日本の金融全体にとって非常にこの決済機能の問題というのは深刻な事態を引き起こしたんだと。そういう問題を、やはり前田参考人の方は非常に厳しい反省なり責任というものを感じていただかないと、この間のような、実害がなかったようなのんきな話じゃないということを、私は最後に伺っておきたいと思います。
前田参考人 全銀システム等の決済につきましては間違いはないというのは、前回の委員会でも日銀の方からもお話があったと思います。私ども、その部分につきましては、間違ったことはないと思います。
 ただ、仮払金という今の御指摘はおっしゃるとおりでございまして、銀行の中で勘定が合わないときに仮払いを立てることがもちろんございます。これは直ちに消すということが私どもの仕事でございまして、仮払いというのは、要するに正規の処理ではございませんので、正しい処理をするという、もちろんそういうことでやらせていただいております。
 ただ、実際に、電力料金等、口座振替が全部終わらないとお支払いできない部分、逆に、電力さんなんかに大変御迷惑をおかけした部分で仮払いという形で処理をさせていただきまして、後、引き落としが終わった後で精算する、そういう手続は個別にはございます。ただこれは、勘定が合わないというのとちょっと別の話でございまして、それは、個別にお客さんとの関係で最後はきれいに精算する、そういう扱いでございます。
 いずれにいたしましても、大体、銀行で勘定が合わないとか数字を間違えるということ自体が異常でございます。これは、そのようなことがないように十分反省したいと思います。
吉井委員 もう時間が参りましたから終わりにしますが、各支店で支店長のところに多額の現金を積んで、毎日毎日仮払いで処理しなきゃいけないということ自体が、手形決済の面で深刻な問題を起こしているということなんですよ。私は、その点について本当に、社会的責任、そしてこれはどんな深刻な事態を引き起こしたのかということをやはりもっと深刻に受けとめてもらわぬと困る、このことを申し上げて、質問を終わります。
坂本委員長 次に、阿部知子君。
阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
 お昼の時間も迫ってまいりました折から、四人の参考人の皆様には大変御苦労さまです。
 本日は、先ほどの遠藤委員のお話、あるいはただいまの吉井委員のお話、銀行の社会的使命とは何かということをこの場で論議するために参考人として来ていただきましたものと思っておりますが、はたまたそうした観点からいたしますと、一つは不良債権問題、そして二つ目はいわゆる銀行の今後の収益力の問題、そして三つ目は顧客サービスという点において、現在、日本の銀行業界の置かれた位置と申しますものは必ずしも国民の信頼を得ていない、あるいは世界の金融市場からも評価されていないのではないかと私は言わざるを得ないと思います。
 きょう一連の論議を伺いましても、例えば郵貯の民営化等々のお話も参考人の中の御意見で出ましたが、それはそれとして選択の一つとしてあり得ると思いますが、ただし、今の銀行体制では、国民の大事なお金はどこに行ってしまうかわからない。むしろ、そうした民営化を話す前に、まず銀行みずからがおのれの経営基盤なり社会的信頼ということにもっと自覚を持っていただきたいなと思った次第であります。
 そういう私の見地から、本当は各行の皆様にお伺いしたいですが、許された時間がございませんのであえて指名をさせていただきながらお伺いを申し上げます。
 最初に、西川参考人にお願いいたします。
 今回の金融庁の特別検査を受けとめる各金融機関のさまざまなコメントがございます中に、三井住友銀行の奥専務のお話の中に、金融庁検査に背中を押された面はあるというふうに表現されておられます。
 私は今回、冒頭、柳澤金融大臣が金融庁検査の結果をお述べになりまして、今後、常駐体制に近い検査体制をしく等々の文面を読みますと、ああ、何だかこれは民間銀行の、ある種国によるチェック、監視がさらに強まっていかなくちゃいけないほど銀行の、逆に言うとおのれの経営、おのれの財務状況、おのれの不良債権処理、そのことがまだまだ不確かなんだなと思いましたが、そのこととあわせて、この背中を押されたという表現について、どのようなお考えでおっしゃられたのか、一点お願いいたします。
西川参考人 お答えいたします。
 私、奥専務のコメントの前後を、どういう話があったのかよく聞いておりません。どういう意味で背中を押されたというふうにコメントをしたのかやや不確かな面はありますが、これはやはり今度の特別検査におきまして、検査官、監査法人、そして銀行、この三者協議の中で、市場のシグナルを的確に自己査定に反映していく、そしてそれに応じた適切な償却、引き当てを確保していく、こういう作業の中で、こういったいわば新しい視点という点について述べたものであろうと思います。決して、これまでの我々の自己査定が甘かったというふうに考えて申したわけではないと思います。
阿部委員 そうであればよろしゅうございますが、先ほど申しましたように、今後も常駐体制に近い検査体制をしくということは、必ずしも、これまでの銀行のなされていた自己査定そのものがいま一歩評価が甘いのではないかという認識にも立つということではないかと思うのです。
 そして、この不良債権処理問題については、過去にもさかのぼることですので、その点についてきょうも幾多の論議がございましたので、むしろ先ほど遠藤委員もおっしゃいました、前向きの、今後の収益力をどう上げるかという点に移らせていただきます。
 収益力を上げる、特に先ほど四銀行の皆様から、中小企業金融について各社のお取り組みのシステム面のお話がございましたが、私は、そのことに関する人材的教育面において、各銀行がこれから本当に国際競争に打ちかって人材育成をしていく場合に、どのようなお取り組みをなされているのか。各行、恐縮ですが、短目におのおのお願いいたします。
前田参考人 お答え申し上げます。
 新入社員には、社会人、銀行員としての基礎をしっかりと身につけさせることをねらいに、一年間の教育プログラムを実施いたしております。
 具体的には、持ち株会社傘下の各社共通の研修といたしまして、四月入社時に、法令遵守、行動規範など、社会人、企業人としての基本を徹底的に教育いたしております。その後で、みずほ銀行、みずほコーポレート銀行では、数カ月ごとに、預金、為替、融資、外為、営業などの基本業務について、集合研修や通信教育、そして上司、先輩による実地教育を繰り返し行い、銀行員としての基礎を身につけさせております。
 なお、二年目以降につきましても、企業取引の基礎や企業を見る目、債権管理の教育等を実施いたしております。
 教育研修そのものは、最後までずっとやり続ける種類のものでございます。
三木参考人 人材教育のために、最初に、銀行実務とお客様第一の精神、これをしっかりと植えつけるべく、私どもは、二年間、基礎的な新人教育を行っております。
 最初に集合合宿教育がございまして、その後、各支店でOJT、オン・ジョブ・トレーニング、これは担当者をつけていたしますが、そのほかに、二年間に大体十回、五十日に及ぶ集合研修をいたしております。
 以上です。
寺西参考人 お答えいたします。
 ただいまお二方が新入行員の教育について申し上げましたので、私から、ちょっと視点を変えて、どういう人間を育てているかというお話をさせていただければと思います。
 ある意味で、銀行にとって、これは我々の反省でもございますが、やはり企業を見る目を育てていくということが一つの基本かというふうに考えておるところでございます。財務面だけではなく非財務面も含めましてお取引先を正しく知る、こういうことのために、ある意味でOJTを中心にしまして、さまざまな研修だとか教育、こういったプログラムをやってまいっております。
 例えて申しますと、業種だとか業界、そういったものの分析、マーケティングをやる、事業力の分析なども学ばせておりますし、また、企業を見る目の基礎となる、お客様に関するあらゆる情報をデータベース化して、与信判断のところにそういったデータベースを生かしていく、こういった試みにも取り組んでおるところでございます。
 以上でございます。
西川参考人 お答えします。
 私どもも、基礎教育期間と申しますのは一年半から二年程度全員に、これは入行時の約一カ月の集合研修を含めてあるわけでございますけれども、その他、また各部門別に研修も行います。
 しかし、そこで基礎知識を取得いたしまして、それをいかに現場で生かしていくか、そして自分のものにしていくかということが最も重要なことでございます。
 そういう意味で、私どもの場合は、各店に融資オフィサーという者を置きまして、これは別に教育ばかりやるわけじゃございませんけれども、専門家ということで若手の教育も行うということでございます。その中で、いろいろなケースに遭遇をいたしまして、いろいろな問題の解決策を考えていく、そういうことを繰り返すことによって成長を確保していくという考え方で臨んでおります。
 以上でございます。
阿部委員 銀行業界と限らず、日本において若い人の教育ということを語るときに私がいつも思いますのは、かなり抽象的な理念なり非常に標準的なプログラムだけで、実践編なり、実際にそれでは企業との関係をどのように築いていくかの日常トレーニングが非常に欠けていると思うのです。先ほど中小企業金融の貸し出しのお話の中で寺西参考人がおっしゃった、例えば成長企業支援室とかそういうシステムをとることによって、その中で企業と銀行の行員がお互いを了解し合いながら目きき力をつけていく等々、私は、極めて現実的に重要なことだと思うのです。
 それから、システム障害の発生にあっても、かなり理念でわかっていることと現実にやってみた場合が違うということが今回わかったわけですから、ぜひとも、民間銀行の皆さんにあっては、実際の実践編を担える人材をつくることにもう少しトップの方がそれこそ心血を注いでいただきたいとこの場でお願い申し上げます。
 そして、そのこととも関連いたしますが、私は、例えば、先ほどの前田参考人の吉井委員への御答弁の中でも少し気になりましたが、その当時自分の部局でなかったか否かということでおのれの責任なりおのれの役割を論ずるというようなやり方は、やはり非常に、ここに官僚の皆さんがたくさんおられるので恐縮ですが官僚的社会になってしまって、人間の本当の意味の伸びていく力なりその人の、逆に言うと自分が一つ一つリスクを負いながら成長していくということを阻害するように思います。そして、銀行業界というのが、とりわけその行員の教育においてヒエラルキーが非常にタイトであるということも日本の特徴と思いますので、本来は、時間があれば各行にそのあたりの銀行の人事のあり方を私は伺ってみたいと思うのですが、それはちょっと私からのコメントだけにさせていただいて、次の点に移らせていただきます。
 最後に、私は先ほど、一点目が不良債権処理の仕組み、それから二点目が銀行の、銀行自身の収益力を上げていくための取り組みについて伺いましたが、もう一点、今国民から見ました場合に銀行の非常な問題点は、顧客サービスのあり方、顧客に向けられた視線のあり方のように思います。その顧客とは、もちろん企業でもあるし、ある場合は個人の預貯金者でもあるのですが、四方に伺います。
 おのおのの銀行が出しておられるディスクロージャー誌というのがございますが、そのディスクロージャー誌にこれからつけ加えていきたい点、あるいは御自身たちでどう評価されているかについてお伺いいたします。みずほのあれはまだ私拝見しておりませんので、統合がなされた後のものは。ほかの三方のは拝見いたしましたが、みずほはまだ拝見しておりませんが、よろしくお願いします。
前田参考人 お答え申し上げます。
 ディスクロージャーは私どもの一番重視している部分でございます。これは、ディスクローズする場合に、どの方に向けてどういう情報を開示するかというのを分別していろいろなものをつくっております。その中で、自主開示項目につきましても、できる限りのものを開示するように努めております。
 みずほグループになりましてから既に何度かディスクロージャー誌をつくっておりますが、今阿部先生が言われたように、みずほ銀行とみずほコーポレート銀行というのはこれからでございますので、今までは、みずほホールディングと下に三つの銀行、富士銀行、第一勧業銀行、日本興業銀行が、それぞれのディスクロージャー誌を一緒に合わせた形で公開をいたしております。
 いずれにいたしましても、ここは、お客様もしくはいろいろな関係者の方に正確に開示をしていくという一番重要な部分だと思います。私どもは、海外の銀行のディスクロージャー誌等も含めて、目いっぱいわかりやすい表現にさせていただきたいと思っております。
三木参考人 お答えいたします。
 私どもも、年に二回ディスクロージャー誌を発行しております。そのほかに、私どもは、ニューヨーク市場に上場しております関係で、アメリカのSEC基準のディスクロージャーもアメリカで発行しております。あと、ホームページ、こちらにいろいろな情報を載せるようにやっております。
 これからどういうものを充実していくかという先生の御質問でございますけれども、やはり、そのときそのときに一番合った、現在ですとペイオフにちなんだ問題等を今後ディスクロージャー誌に載せてまいりたいと思っております。
 以上でございます。
寺西参考人 お答えをいたします。
 ディスクロージャー誌の発行は年に二回でございまして、それにつけ加えまして、ことしから三カ月ごとの四半期情報開示といったものを開始する予定にいたしております。タイムリーな財務情報を示すことができるように努力をしてまいりたいと思っております。
 私どもの持ち株会社でございますUFJホールディングスのホームページ上では、重要情報をプレスリリースというような形で公開しておりますほか、新しい試みといたしまして、昨年の夏からでございますけれども、ホームページを通じて投資家などから寄せられました質問につきまして、よくある質問、こういうような形で、図表を使って解説、回答も始めたところでございます。
 いずれにせよ、私どものグループ全体の姿をよく御理解いただくために、わかりやすい情報開示に今後とも努めてまいりたい、このように考えております。
 以上でございます。
西川参考人 お答えいたします。
 私どもも、年二回のディスクロージャー誌に加えまして、ホームページその他、IR説明会等でもいろいろなディスクロージャーをいたしておりますが、どちらかといえばそれらは金融の専門家向けということでございまして、個人のお客様にはかなりわかりにくいものではないかというふうに感じております。
 今までも個人のお客様向けのミニディスクロ誌というものを発行しておるわけでございますが、この四月のペイオフ凍結の解除を受けまして、主として個人のお客様により当行の経営状況をわかっていただく、多くの方にわかっていただくために、別途わかりやすいディスクロージャーをしていきたい、そういう小冊子を四半期ごとに作成いたしまして全国の各支店に常備をして、いつでもごらんになっていただけるように、あるいはまたお持ち帰りもいただけるようにというふうにいたしたいと思っております。
 わかりやすくするということがまず最も重要なことだというふうに考えております。
阿部委員 私も最後の西川参考人がおっしゃったように、各社のホームページを拝見いたしましても個人である私には非常にわかりにくうございます。
 それからもう一つ、普通ホームページといいますとこちらからメールアクセスができるようなメールアドレスがあるのですが、各社を私が見た限り、気がつきませんでした。もしかしたらないのかなと思いました。
 先ほどどの銀行の方も郵貯の民営化のお話をなさいましたが、その場合はもっともっと、個々人が金融ということ、銀行に対してアクセスしやすい体制がどの程度とられているかという当たり前の前提が欠けております。これからの社会というのは、どんな小さな個人からも信頼されるような金融の仕組みがないと結局のところやはり足をすくわれると私は思いますので、各社、そのような方面に御尽力いただきたいと思います。
 終わらせていただきます。
坂本委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人各位におかれましては、御多用中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時十四分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三分開議
坂本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 午前に引き続き、金融に関する件、特に主要行に対する特別検査の結果等につきまして調査を進めます。
 これより政府に対する質疑を行います。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁速水優君及び日本銀行理事三谷隆博君の出席を求め、意見を聴取することとし、政府参考人として金融庁検査局長五味廣文君、金融庁監督局長高木祥吉君及び警察庁刑事局長吉村博人君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。根本匠君。
根本委員 自由民主党の根本匠です。
 私は、十分間なものですから二問だけお伺いします。
 一つは、特別検査の持つ意義、ねらい、これをどう評価するか、この点についてお伺いをしたいと思います。
 特別検査は、きょうも参考人の方からいろいろとお話をお聞きしましたが、実は、特別検査というのはマイカルの破綻を教訓に実施されたものであります。マイカルの破綻の問題点、これは、銀行の自己査定や金融庁の検査で破綻懸念とされていなかったにもかかわらず、直後に格付機関の格付の格下げによって短期間で破綻に至った。だから、銀行が厳格な自己査定をしていないんではないか、あるいは金融庁の検査が甘いのではないか、こういう批判が出たわけであります。
 通常の検査は、これはもう釈迦に説法でありますが、決算が適正に行われているかを事後的に検証する。自己査定については、直前の決算期において銀行が把握している債務の状況、正確性を検証するもので、実はこの手法は米国でも同じであります。ただ、このように経済が急速に悪化する状況の中では、この制度の問題点として、直近の債務者の状況と検査で検証する債務者の状況にタイムラグがある、こういうことで今回特別検査を実施したということだと思います。
 特別検査の特徴は、株式などの市場の評価に著しい変化が生じた債務者についてリアルタイムであるということと、それから、外部監査人、銀行、検査当局と共同作業でこれを厳正にやった、これが私は特徴だと思います。それで必要な引き当てを十分に積んだ、こう理解しております。
 柳澤大臣から、今回の特別検査によって、問題大口債務企業を含めて不良債権の実態が確実に把握されて、必要な引き当て処理は余すことなく行われたと言えるのかという点、それから、銀行の自己査定、金融庁の検査が甘いという批判、懸念は払拭できたんだろうか、それからさらに、実質常駐体制を今後もやる、こう方針を立てられておりますが、今後の考え方を含めて、柳澤大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
柳澤国務大臣 特別検査の趣旨については、まさに根本委員が非常に簡潔にかつ要領を得て総括していただいたとおりのことでございます。
 私ども、通常検査というものを大手銀行については一年一回にするとか、あるいは、その検査で申し上げた指摘が次の決算なり決算を控えての自己査定にきちっと反映しているかということでフォローアップ検査というものもやる、こういうことで、通常検査の頻度あるいはフォローアップでその充実強化を図ってきたつもりであったわけですけれども、マイカルという大手の小売の企業について、大変急速な市場の評価の悪化と、それに伴う破綻ということがあったときに、我々の検査ということで今日のような経済状況のもとで本当にしっかりした資産の査定が行い得るかということが我々に問題提起された、こういう受けとめ方をしたわけであります。
 そこで、非常に例外的なことですけれども、自己査定に対してある程度市場の評価というものがきちっと反映することを確保しなければならない、こういうことで、今度、まあ三者協議ということも言われておるわけですけれども、実際には立ち入りをしまして、自己査定に、そこに出かけていって、そうしたことを踏まえての、検査マニュアルに書かれた基準によるところの自己査定というものがしっかり行われているかということを検証する作業を行ったわけでございます。
 しかし、これはやはりどこまでいっても例外的なものだと我々とらえておりますし、また、通常の検査をやりながらのそうした異例の検査ということでもありましたので、ここにどれだけ最大限マンパワーが割けるかということで、おのずと大口のものにやはり限らざるを得ない。また現実に、大口のものについてやることによって金融機関の健全性というのは、まさかのことがあったとしてもそれは確保できる、こういうことが一つございました。
 そういうようなことで、大口で、しかも市場の評価が著しく低位へ変動しているというようなものをとらえまして、今度の検査を行ったわけでございます。
 したがって、第一の問題についてお答えするならば、私どもは、今度のような検査とそれから通常検査の充実によってそうした課題にこたえていくことができる、またできた、このように考えている次第でございます。
 それから、自己査定なりあるいは金融庁の検査なりが甘いのではないかというようなことが世上よく言われるわけでありますけれども、私ども、とにかく、金融検査マニュアルという基準を適切に当てはめることによって的確な債務者区分とそれに伴う引き当て、償却を行うということで努力をいたしておるわけでございます。
 ただ、ここのところあえて、ちょっと言いわけがましく聞こえるかもしれませんけれども、申し上げますと、やはり検査マニュアルというものによる検査がようやくここで一巡した、大手行についても一巡したというようなことがございます。それからまたもう一つは、会計基準そのものがいろいろと、これは世界的にもそうなんですけれども、いろいろ模索の過程にありまして、そうしたものを反映して日本でも会計基準なりあるいは実務指針なりというものの改革が行われておるわけでございまして、この基準というものが変わった場合には常に初めてそれを適用するというようなことがございますので、過去の基準によるところのそうしたものより、結果よりもちょっと違った結果が出るというのは、これはもう避けられないことでございます。
 そうしたようなことを乗り越えて、私ども、できるだけ先ほど言ったような的確な基準の当てはめということをやってまいりたいと思いますし、それは徐々にそうしたものが実現され得ると思って、徐々というか着実に実現され得る、こういうように思っております。
 そのために、今後私どもは、実質常駐と言っておりますけれども、大手の銀行については専担の体制を検査部門についてしきまして、そして、そのグループのどれかに常に入っている、したがって関連して何か問題があればそのグループの、同一のグループに属する金融機関に対しても常に検査が可能である、こういう体制をとる。つまり通年の検査体制をとり得るというようなことで、今後も今申した検査の目的を的確に追求してまいりたい、このように考えております。
根本委員 確かに、三者の共同作業というのは極めて異例なことだと私も思いますが、本来は、これは銀行みずからが、今回の特別検査の経緯も踏まえて、問題企業について直近の経営状態を踏まえた厳格な自己査定がこれからも必要だと思います。それから、リアルタイムチェックは当面維持して行うべきだと考えますし、今回打ち立てた実質常駐検査体制を効果的に活用していただきたいと思います。
 それから、金融担当大臣の所掌を超える部分もあるかと思いますが、有効なデフレ対策について見解をお伺いしたいと思います。
 実は私は、今回の特別検査によって、問題とされている大口債務者を中心に少なくとも現状は厳格に検証され、必要な引き当てがなされたと理解すべきではないかと思っております。もし、それでも懸念があるというのだったら、私は、日銀と共同検査をやればいいと思っているのですね。
 それから、不良債権はもっとある、引き当ても足りないという議論が出てくるのですが、これは、現状をどう見るかという話と、今後の先行きをどう見るか、これがどうも混同されて議論されているのではないか。
 今回も、この先行きをどう見込むかという話でやれば、これは峻別して考えた方がいいと思うのですが、デフレがこのまま続けばやはり追加的引き当てが生ずるでしょう。では、これにどう対応するかといえば、予防的な引き当てを今からたっぷり積む。そうすれば完全に市場の不信は払拭できると思いますが、そういうあらかじめ予防的な引き当てを積む、技術的にもなかなか難しい点はありますけれども、これをやるのであれば、私は、これでもし自己資本比率を欠くようなところがあれば、脱デフレ早期健全化法のようなものをつくって思い切ってやる、こういう手当てが必要だと思います。
 要は、何を言いたいかといいますと、金融庁の行政の役割分担、限界、これを明確に区分して、全体のことを考える必要がある。要は、何を言いたいかといいますと、金融庁の検査をいかに厳格化しても、デフレが進めばさらに不良債権は新たに生じるわけですから、やはり金融庁の行政とデフレ対策、これが二本柱であらねばならない、こう思うものですから、有効なデフレ対策について、柳澤大臣に見解をお伺いしたいと思います。
柳澤国務大臣 時間が制約されておりますので簡潔に申し上げるわけですけれども、今委員がおっしゃられたとおり、デフレが進んで経済の状況がさらに悪化するというようなことの中では、不良債権の発生というのは、これはもう防ぎようがない、金融機関を離れた問題ととらえるべきだ、こういうお話でございますが、私もそのとおりだと思うのです。
 ただ、一つだけ私どもがある種責任を感じておりますのは、一つ、銀行が不良債権を抱えているがゆえに金融仲介機能を十分果たせなくて、それが経済の不振の要因にもなっているじゃないか、こういうことがございます。
 これは私は、定量的にこれを分析している研究の成果というものはこの世の中に存在しないと思いまして、そういうものがあればぜひ参考にさせてもらいたいと思っているのですが、相変わらず私の目には現在触れておりません。したがって、定量的にはそういうことがあるのかどうか私も断言できませんが、ただ、定性的には、そう言われればそういう側面も否定できない。こういうことが我々金融行政が置かれている立場なのでございます。大変苦しい立場です、正直言って。
 したがって、私どもとしては、このデフレの中でも、とにかく的確に今言ったような債務者区分、それから引き当て、償却というものを着実、誠実にやっていくということによって、金融機関に対する信頼を少なくとも維持し続けるということが今日でも大事じゃないか、こう思っているわけです。
 デフレをどう克服するかということについて、私は、寡聞にして、いろいろな人がいろいろな説を言っているということは知っておりますけれども、今日に至るまで定説というものはないのじゃないか。そこで、ありとあらゆる気がついたものを総動員してやるんだというような政策が行われているんじゃないかというふうに観察をしております。
 私は本当は、きのうも、おとついですか、ある外国の新聞社に言ったのですけれども、私、このごろ歴史人口学のところ、日本では速水先生の創始された学問を見て、そういう新書版を読んで思ったのですが、要するに、これだけ、十年もこの問題に苦しんでいて、日本の経済学者の中に実証的な研究をしているのはほとんどいやしない、全く何をしているんだというふうに私は個人的には思っているんですよというふうに申し上げたのですが、いずれそういうものも記事になるでしょうから、ここでも申し上げておきたい、このように思います。
根本委員 ありがとうございました。
 終わります。
坂本委員長 次に、馳浩君。
馳委員 昨年十二月に破綻した石川銀行の受け皿銀行の選定が難航しております。そこで、私は、石川銀行の受け皿銀行の選定問題を中心に質問させていただきます。
 石川銀行は、破綻後、預金全額保護のため、一たん国内初のブリッジバンクへの譲渡契約を余儀なくされました。しかし、実際の譲渡作業完了までには時間を要するので、実はその間に受け皿銀行探しも並行的に行っております。しかし、この受け皿探しが難航しております。
 この段階に来て、富山県知事が受け皿問題で発言をなされ、一層受け皿探しが難航いたしております。これを受けて預金保険機構は、松田理事と金井審議役が富山、石川の両知事に事情説明と協力要請を四月十一日に行い、また、さらに四月十七日には金井審議役が石川県に出向いておられると承っております。
 そこで、質問というよりも要請でありますが、金融庁として、しかるべき人が御出馬をいただき、両県知事に事情の説明とともに協力の要請をぜひ行うべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
柳澤国務大臣 石川銀行の承継銀行と申しましょうか、受け皿銀行についてのお話でございますが、馳委員が御指摘されるように、これはできるだけ早く見つけ出さなければいけない、こういうふうに思っております。それに対して私どもも最大限に支援していくということを考えております。
 おりますが、預保がやったから金融庁もやったらどうだというのは、ちょっとそこは、先生、立場が違うのでございまして、預金保険機構というのは金融整理管財人そのものなんです。まさに、金融整理管財人というのは次の受け皿銀行を探すこともその任務のうちの非常に大きな部分でございまして、それがためにそういう努力をしてくださっているということでございます。
 だからといって、金融庁は何もしなくていいということではないんですけれども、金融庁と預金保険機構というのはそういう意味でちょっと立場が違うということも御理解を願いたいのでございまして、私どもとしては、同じような早期の解決というものを目指しまして、また環境整備その他、側面的にこれを支援していくということは当然のことだと考えております。
馳委員 一般論としては今の御答弁だと思いますが、石川銀行の特殊性を踏まえて、今回は例外的な行動をすべきと思います。その理由を申し上げます。
 一つには、過去に破綻した金融機関の規模でいうと石川銀行はかなり大きい、早く受け皿が決まらないと取引先の不安感や資産の劣化が増加してしまいますし、また、石川銀行から融資を受けている優良な取引先がほかの銀行に融資を受けるようになってきており、今回想定されている受け皿銀行のメリットも日々減少しているのが実情でありますし、こういう点に関しまして、石川県内の金融機関、経済界は深い憂慮を示しております。
 二つ目は、石川銀行が金融庁の検査期間中に行った約二百二十億円の増資。金融庁は増資の届け出書を見てある種の警告を発したが、増資が実行された上、八カ月後には破綻というふうな形になっております。この問題については、金融庁の責任問題が当委員会でも厳しく追及されております。したがって、受け皿選定までは金融庁の責任問題と見ているのが国民の視点であります。
 三つ目は、制度的にも金融庁は、金融整理管財人を選任しており、さらに受け皿銀行への資金援助の適格性を認定する立場にあり、さらに営業譲渡についての認可権があることからも、一刻の猶予もなくなっている非常事態の場合、積極的に局面打開のためにアクションを起こすことは何ら制度上も問題がないし、むしろ期待、要請されていると言える点があります。事実、昨年十二月の大臣談話で、金融整理管財人を最大限支援してまいると述べておられます。
 四つ目に、私も地元で精力的に関係者に事情聴取を重ねてまいりましたが、そのすべての方々が、金融庁は傍観者過ぎるのではないかという批判的な意見でありました。
 以上、四点を踏まえまして、大臣の熱い思いを込めての再答弁をお願いいたしたいと思います。
柳澤国務大臣 金融機関が破綻した場合に、時間とともに資産の劣化、あるいはフランチャイズバリューの劣化というのが起こるというのは、私どもが最近ここ数年間、金融機関の破綻の経験の中で強く学んでいるところでございまして、私は、今委員が御指摘になられたような心配というのは本当に存在するということで受けとめているわけでございます。そこで、いろいろ過去の例なぞについても、もっとゆっくりやったらいいじゃないかとかというようなそういう議論もあるのですが、なかなかそうはいかないんですということを申し上げる次第でございます。
 私ども、今委員が言われたことで申しますと、やはり責任のありかというか、そのことをやるという権限と責任を持っているのは金融整理管財人でありまして、その中に、この場合には非常に事が重大でありますので、法人としての預金保険機構というものを入れて、たくさんのスタッフを抱える預金保険機構というものが専門的な立場でいろいろな動きができるようにということで、これを金融整理管財人として任命したといういきさつがあるわけでございます。
 そういうことでございますけれども、では金融庁は何をするかといえば、これはもうあくまでも金融整理管財人を支援するということでございまして、この点については、委員の御懸念のことも我々、先ほど申したように十分わかりますので、この支援をさらに一層強めていくということを申し上げて御答弁にさせていただきます。
馳委員 私の意見を申し上げておきますが、私は、石川銀行の整理管財人とこの一カ月、本当に丁寧に意見交換をしてまいりました。石川県の商工労働部長の方とも意見交換をしてまいりました。経済界の方とも、あるいは北國銀行、いわゆる地元での基幹の金融機関でありますけれども、こちらの頭取とも意見交換をさせていただきました。
 破綻した石川銀行のある支店長の方とも意見交換をしてまいりました中で、何とかして、やはり石川銀行とのこれまでの取引先の方々の思いを考えれば、一日も早く受け皿が決まって、それに営業譲渡されてほしいという強い念願がありますので、その点を踏まえた上で、金沢の方には財務局長かな、児玉さんもいらっしゃいますけれども、いろいろな立場の方で情報を提供し合いながら、受け皿が早く決まるように、また富山県側の立場もありますから、配慮をしていただきたいというふうにお願いを申し上げておきます。
 二点目は、当委員会で論議された石川銀行の破綻前の増資の問題に私も触れないわけにはまいりません。二度とこのような増資に絡む被害者を出さないためであります。
 私の問題意識の出発点は、今回の増資、つまり増資しなければ債務超過が推定された増資、この点は四月二日の当委員会で明らかにされた点でありますが、このような増資に対してまで、行政のチェックが届け出だけでよいのか、何らかの制度的規制は例外的に必要ではないのか。さらには、増資に絡むディスクロージャーの拡大をすべきではないかという問題意識であります。
 そもそも、株式会社が増資という生き残りをかけた自己努力をする、このことを行政が真正面から規制をしていくというのは基本的にはおかしいことであります。しかし、経済の動脈と言われ、公的機能も有するがゆえに特別の配慮もされる銀行、その銀行が今増資をしなければ債務超過に陥ることが推定されている状況下で行う増資については、だれが考えても、銀行の優越的地位を利用した募集活動が行われることは火を見るより明らかであります。
 つまり、不正な募集活動を防止して、公正な自己努力をさせる環境づくりに腐心すべき行政の義務があると思います。これは自己努力の規制とは根本的に違います。経営上のリスク情報を追加請求できるようにして、公表できるようにしてはいかがでしょうか。また、出資、募集活動をこのような場合に限って監視することも必要ではないでしょうか。
 例えば、募集活動の事後報告書を提出させて、アトランダムに不正な募集がなされていないか事後チェックをし、問題があれば指導し、その事後チェックを報告書にまとめ、後日、問題が司法の手にゆだねられたときには、被害者の立証責任の負担を軽くするために利用できるようにしてはいかがか。
 関連して、銀行の場合には、証券取引法第十五条にある目論見書の交付義務が実行されているのかを監視し、あわせて、目論見書の説明義務を不動産取引の重要事項の説明義務のように制度化し、暫定的には行政指導することを提案したいと思っております。
 以上、私の提案に対する回答と、現在金融庁が考えている予防策についてもお伺いしたいと思います。
    〔委員長退席、中野(清)委員長代理着席〕
柳澤国務大臣 石川銀行の場合、当然目論見書を明らかにいたしております。そして、直近の決算時における自己資本比率、それからまたその後において、これが適正かどうかということも問題になるのではないかというような我々懸念も持って検討もお願いしたわけですけれども、増資後の自己資本比率というのも実は目論見書の中に書かれているわけであります。しかも、直近の自己資本比率より増資後の自己資本比率の方が低いのでございます。しかも、その絶対水準も四%に極めて近いというような状況です。
 こういうのをごらんになられると、かなりのところはディスクローズされているというように、そのもの自体の評価として私はそういうようにも見受けたわけでございます。
 いずれにせよ、もっといろいろな手だてを講じてこのような遺憾な結果を招来しないようなことを考えたらどうかということでございますが、これはいろいろな今御提案もあったわけですけれども、これらについては御提案を御提案として受けとめさせていただきまして、今後のいろいろな検討の中で生かさせていただきたい、こういうように思います。
 ただ、一つだけちょっと申し上げておきますと、ペイオフ前の場合とペイオフ後の場合とではかなり環境条件も変わってきているだろう、こういうように思います。あのようなことがある程度、時間のゆったりした経過のと言えるかどうかわかりませんが、できるというのも、預金者の目がない。預金者はもう全額保護されていますから、預金者はそういうことは余り関知しないところだというようなことが許されるということでございまして、今度私どもが入っている新しいペイオフの時代というときには、これはもう非常に預金者の目というものが厳しくなりますから、そういう中で、増資がなければ債務超過だというようなところまで追い込まれて、なおそうしたことが行い得る状況が今後もあり得るかといったら、これは非常に私は難しいだろうと思っています。
 我々が目指すべきことは、そういう危険な状況のもとで増資が云々ということよりも、早くそこまでいかない先に早期の是正措置を講ぜしめる、そういう指導をして、そういうボーダーラインに金融機関が陥ることを防ぐということが最大の眼目ではないか、このように考えております。
馳委員 終わります。
中野(清)委員長代理 次に、長妻昭君。
長妻委員 民主党の長妻昭でございます。
 端的にまたお答えをいただければと思います。速水総裁におかれましても端的に、速水総裁はおられないですか、ぜひ端的にお答えをいただきたいと思います。
 まず初めに、過去の教訓といいますか経験に学ぶというようなことで、今資料を順次お配りしておりますけれども、日本長期信用銀行のあの当時を振り返ってちょっと過去の経緯等をおさらいさせていただければというふうに思っております。
 今お配りをしている資料の資料六というものがございます。大臣、速水総裁、ごらんになられていると思いますが、ここには経緯をちょっと書かせていただいたんですが、長銀は、九八年三月末で自己資本が一〇・三二%、こういうような発表があったわけであります。そして、一番下を見ていただきますと、同じ年の九月末の立入検査、当局の検査で実質債務超過が判明した。これは十月十九日に結果通知をしたということでございますけれども、何といいかげんなものだったのかと過去を振り返ると思うわけでございます。
 自己資本が一〇・三二%と胸を張っていたところがたった半期で実質債務超過だ、こういうような驚くべき状況になってしまったということでありますけれども、これは当局としては何が問題だったのか、そしてこのときの教訓は今どういうふうに生かされているのかを柳澤大臣にお伺いします。
柳澤国務大臣 自己資本比率が急速に低下したということでございますけれども、委員御記憶だと思いますが、破綻申し出というのが長銀の場合はあったのでございますけれども、これは資金繰りの破綻ということでございまして、長銀としては、あくまでも、自己資本比率の点で債務超過、自己資本比率がマイナスになったということは、最後までそういう認識には立っておられなかったわけでございます。
 そういうことで、ここのところは何がそうした問題であったかというと、そこに容易に推測できることですけれども、これはもう見解の相違というか、つまり資産の評価についての見解の相違というのが非常に強く大きく横たわっていたということでございます。そういうことで、私どもは、そうではないと、これは一つの立場をとらせていただきました。これは債務超過による破綻であるという立場をとらせていただいたわけですけれども、これは職権でそういうことができるというのが当時の再生法の定めるところでございましたのでそういうことを申したのでございますけれども、当該銀行の立場はまた違うものであったということでございます。
 事ほどさように、これは資産の、特に長銀関連の企業の資産についての見解の相違が非常に強くあったというように記憶をいたしております。
長妻委員 いや、私、今の認識というのは非常に問題があると思うんですね。見解の相違だとか自己資本が急速に劣化したということで片づけてもらっては大変困る。今も、特別検査が実施をされて、その後自己資本が大手行でも一〇パー前後ちゃんとあるというような発表があるわけでありますけれども、それが万が一そういうふうになった場合に、また大臣はひょっとすると、自己資本が急速に劣化したとか見解の相違だったとか、こういうことを言われるんでしょうか。
 非常に、これは実際問題、一〇・三二%というところが、見解の相違というか、事実と全く違っていたような形だったということを金融庁も、当時の当局も見抜けなかったし、あるいは監査法人も見抜けなかった。はっきり言えば、だまされていたんだというような認識にぜひ立たないと、見解の相違とか急速に自己資本が劣化した、こんな認識では私はまた二の舞を繰り返すということが懸念されるわけで、ぜひ、そういう認識ではない、きちんとした過去の長銀の認識を持っていただきたいというのをお願いします。
 そして、これに絡んでもう一つ問題がありますのは、監査法人でありますが、このときは、当時、太田昭和という監査法人が長銀の監査をしておりました。これは、不良債権問題を考えますと、やはりこういう委員会でいろいろ議論をする、あるいは金融庁がいろいろ指導をする、ただ、一番究極は、銀行自身がきちんと自己査定をするということが基本であって、その次には監査法人が本当にきっちりと監査をしていれば、何も金融庁も苦労することないし、ここの委員会でいろいろ議論することもないわけであります。そこが非常に日本は欠けているということで、そういう問題意識でもう一点申し上げます。
 当時の太田昭和監査法人、九八年三月末に自己資本一〇・三二%、こういうような前提の決算の判こを押しているわけでありまして、そうすると、公認会計士法という法律があって、これは金融庁が監査法人の監督官庁でございますけれども、この太田昭和に対して監督官庁としてちゃんと何らかの処分をされたんですか。こういういいかげんな、大問題を引き起こした、ある意味では粉飾決算を許したようなところがある当時の太田昭和監査法人にそういう処分をされたのかと金融庁に聞きましたら、きのう回答があって、いや、まだ調査中である、行政処分を出すか出さないかが調査中であるというようなお答えが金融庁から来たわけであります。
 九八年の案件でまだ調査を、行政処分出すか出さないか調査をしているというのは驚きでありますけれども、これは処分は、いつ調査結果が出るんでありますか。
柳澤国務大臣 これは、ちょっとその前に長妻委員に申し上げておきますけれども、一〇・三二というようなのと、それから長銀について行われた一斉検査の一環としての検査というのは、検査自身も非常に違っていたわけですね。あの当時、しょっちゅう予算委員会か何かで話がありましたけれども、当時の大蔵省検査というのは、引き当てについては検査しないという体制のもとでの検査でありました。したがって、その当時のことと、その当時のことを反省するということは非常に大事だと思って、それ自体は別に否定するわけじゃないんですけれども、随分制度が違っているということも、ちょっと我々、議論するに当たっては念頭に置かないと、正しい結論になかなか行き着けないんじゃないか、こういうように思います。
 それからもう一つ、今、監査法人の問題についてどうなんだということでございますけれども、これは、会社が作成した重大な虚偽のある財務書類を重大な虚偽等のないものとして証明した場合には、公認会計士、監査法人に対して懲戒処分をすることができるということに規定がございます。そういうようなことで、私どもとしては、今、このことについては虚偽記載罪で元頭取等が公判中なのでございます。したがって、ここのところと関係なく勝手に処分をするというわけには、私は、やはりちょっと適切な方法とは言えないというように思っておりまして、この公判の帰趨、そこでどういう御判断が出るかということを知った上で、これについて監査証明の問題ということであれば、法律に基づきこれは厳正に処断をしたい、このように考えているわけであります。
長妻委員 これ、大臣もよく御存じのはずでありますけれども、裁判での有罪、無罪とは別に行政処分の話でありますから、これは別にそんな裁判の結果を待って行政処分を出すなんということは必要ないわけでありまして、それにもう三年たっているわけであります。
 これ、大臣、本当に言うんですけれども、金融庁は自分で自分の首を絞めているところがあると思うんですね。いいかげんなことをした監査法人を、きちんと指導しないでそのまま放置をしておく。そのことによって、自己査定が監査法人によってきちんと修正されない。それで金融庁がまた責められていく、こういうことで、自分で自分の首を絞めていくことになるわけでありまして、監査法人をきちんとこの法律にのっとって行政処分していくということで、何でこんな三年もかかっているんですか。今の答弁はちょっと違うと思いますよ。
 判決を待たないと行政処分ができないということはないと思いますので、では、いつまでに結果を出して、どんな処分をされる御予定なのか。もう三年たっていますから、明確に、もう一回御答弁願います。
柳澤国務大臣 恐らく委員も、処分をするとすればこの条項に基づく処分だろうということで御同意いただけると思うんですが、これは、監査法人が故意にまたは相当の注意を怠って、会社が作成した重大な虚偽のある財務書類を重大な虚偽等のないものとして証明した場合ということになりまして、このこと自体が刑事的にも有価証券報告書の虚偽記載罪が成り立つかどうかということで、それを争っているわけですから、それと無関係に私どもが処分をするということは、ちょっと適当を欠くんだろうと私は思います。
 それがもう完全に表裏の関係にあるわけですね。刑事的な手続で今判断を裁判所がしようとしていることと、私どもが行政処分をするとすれば、その問題、まさに我々の判断を示すということでありまして、私は、そういうような我々の考え方というのが適切を欠くとは考えないのでございます。
長妻委員 ちょっと、大変驚くべき今、御答弁だと思うんですね。裁判の判決が出ないとこの公認会計士法の処分というのはできない、こういうふうに答弁されているんですが、それは撤回してください。
柳澤国務大臣 いや、ですから司法の判断が出るまでというふうに厳格に考えるべきかどうか、これはあり得ることだと思うんですが、まさにその問題が裁判で論じられているときに、それと関係なく私どもの方で先走ったことをするというのは、これは行政の判断としてやや適当を欠くのではないかということを言っているわけです。
長妻委員 ちょっと大臣、その発言は取り消していただきたいんですが、金融庁の企業開示参事官室というのがこの監査法人の担当ですけれども、それでは、今までずっと調査をしたということできのう金融庁から報告を受けていますけれども、どんな調査をされたんですか。
柳澤国務大臣 こうした問題が起こったときには間々あることでございますけれども、関係の書類がすべて押収されているというようなことでありますので、したがって当局においては、それ以外のことでいろいろとヒアリングによる調査をしているということであるというふうに承知をいたしています。
長妻委員 ヒアリングによる調査というのは、何人ぐらいに聞いて、どなたが調査を担当して、中間報告はどういうのですか。
柳澤国務大臣 私は、まさに私どもの処分の対象になることが今裁判でまさに問題になっているということがありますので、今申したような立場をとらせていただいているわけであります。(長妻委員「速記、とめてください。調べて、十分に調べてください」と呼ぶ)
中野(清)委員長代理 ちょっと速記をとめてください。
    〔速記中止〕
中野(清)委員長代理 速記を起こしてください。
 今長妻委員の御質問につきましては、後日理事会に御報告になるということで、とりあえず質問を続行してください。(発言する者あり)今の調査の、あれでしょう、監査法人に対する調査の、どういう調査をしたかということ、それについては理事会で報告してもらう、それでよろしいですか。
 これまでどういう調査をしたかを理事会に報告してもらうということで、このことについてはこの委員会におきましてはおさめていただいて、質問を続行してくれませんか。
長妻委員 ぜひお知らせをいただきたいと思いますが、いずれにしても、三年もかかって、それで裁判を見て云々という非常に悠長なことを言っているからその監査法人がきちんと機能してこないという面も私はあると思うんで、ぜひそのところを、金融庁も自分で自分の首を絞めることになりますから、監査法人がきちんと監査をして、いろいろ銀行と話し合ってまともな決算を出していくということが徹底されれば、不良債権問題等も解決の進捗が見られるわけでありますので、ぜひ大臣、今回の特別検査でも、あるいは三月期の決算でも、それぞれ銀行というのは監査法人がいるわけでありますので、本当にきちんと、まあ監査法人はやられているとは思いますけれども、例外的にきちんとやってないところがあるとすれば、厳重にそれは、金融庁、監督官庁でありますので、指導監督をしていただきたい。
 そのことが、自律的に、行政の介入も招かないし、国会でこういう議論もしないし、もうほっておいてもきちんと自己査定が行われる、こういうことにつながるわけでありますので、ぜひお願いをいたします。
 では、次に質問を移らせていただきますと、速水総裁にお出ましをいただいておりまして、ありがとうございます。
 総裁と前回ちょっとやりとりをさせていただいたんですが、資料の七というところをごらんいただきまして、これは日本銀行のホームページからとった速水総裁の会見録でございますが、二月二十八日木曜日に、速水総裁は記者の、年度内に公的資金注入をやっていくべきだという御認識なのかということで、年度内にやれればいいと思うがというふうに、年度内の公的資金の注入というのをこのときはお話しされておられたということでございますが、この持論は、この認識は特別検査の後、今現在変わりましたか。
    〔中野(清)委員長代理退席、委員長着席〕
速水参考人 これは、記者会見をいたしましたときはまだたしか二月だったと思います。当時、まだ特別検査が真っ最中でございましたし、どういう結果が出るかもわかりませんでした。今、公的資本再注入の必要性があるのかないのかと聞かれますれば、私は、現時点で資本不足に陥っている先があるとは認めません。認識していません。
 ただ、これまで申し上げてまいりましたように、金融機関にとっては不良債権問題の克服が依然として最大かつ喫緊の課題であることは間違いないと思います。今度海外へも行きましたけれども、海外でもそういう見方をしているようです。また、主要行の経営体力面の備えは、不良資産処理や株価の下落などから、前年度に比べ低下を見ていると思います。今後さらに不良債権処理を進めていけば、その過程で自己資本が十分とは言えなくなる事態もあり得ると思います。
 中期的に見ますと、日本の大銀行のコアキャピタルというものは決して十分ではありませんし、また、従来のように保有株の含み益などで不良貸し出しの、不良債権の償却をするといったようなこともできなくなっております。こうした状況の中で、金融システム全体の安定について疑問が呈せられるような事態に陥った場合には、タイミングを逸せずに早目に対応していくことが必要であると考えております。
 また、単に公的資本の注入だけではなくて、一番大切なことは、やはり金融機関が収益力の向上、経営改革に積極的に取り組んでいくということがぜひとも必要であると思います。
 以上のような私の考え方は、基本的には変わっておりません。
長妻委員 印象を受けるのは、柳澤担当大臣と同席されると何か速水総裁はいつも持論が後退するようなイメージを持ってしまうんですけれども、日銀の総裁であられる速水さんが、この記者会見で、年度内に公的資金をやれればいいと思うと言った。ところが、特別検査を受けたら、ああやっぱり緊急にはやる必要はないんだと。ちょっと特別検査をやっただけでこんなに簡単に認識がころっと変わっちゃう、これが日本の中央銀行の総裁、こういう見識でよろしいんでしょうか、そういうことを強く思うわけでございます。
 もう一点、次の資料八でございますけれども、これは四月十五日の速水総裁の記者会見、これも日銀のホームページからとったものでございますが、記者の問いで、大手行が資本不足であるという認識を撤回されたような印象を受けるがどうですかと。私と同じ印象を多分この記者も持ったんでしょう。答えの中に、下線を引いたのはこれは私の方で引いたわけでございますが、繰り延べ税資産というようなことで五年間も延ばしていくことは、他の国ではやっていない、アメリカは多少やっているが、日本が自己資本にそれをカウントしているのは、最も甘いと言っていい、こういうふうに、非常に私にしたら同感、いいことを言われておられるわけでありまして、全くそのとおりだと思います。
 そこで、柳澤担当大臣、速水総裁、中央銀行の総裁がこういう発言をしておられるわけでありまして、これは世界にも当然発信されているわけでありますが、こういうようなことが内部から、日本の国内の、中央銀行の総裁まで言っているわけですから、繰り延べ税資産を五年間認める、自己資本に、ティア1に算入するのを五年間認めるというようなことを、もうここに来たらやめたらどうかという検討をぜひ始めていただきたいと思うんですが、いかがですか。
柳澤国務大臣 繰り延べ税金資産、今、会計基準というものあるいは会計原則というものが、私は、自分自身の観察では、過渡期にあるというか、あるいは模索の段階にあるというか、非常に揺れているというのがここ数年の状況だと思っています。
 例えば、繰り延べ税金資産というものを資産として認識するとかしないとかいうようなこと、これも、私もいろいろ物の本を読んだりして、そういうことはないというような理論のもとで構築したらどうかというような、今の国際会計基準に対するアンチテーゼをいろいろ打ち出しているような方々も日本国内におったりして、この議論はなかなかまだ収束し切れていないな、こういうように思います。
 しかし、日本は国際会計基準ということを受け入れてやっていこうということが、そういういろいろなところでの研究の発表というか、そういうものはありながらも、そこに向かって今進んでいるということでございますので、私も、この国際会計基準を踏まえて、日本の公認会計士の皆さんが実務指針で考えているところを適切に運用するということが大事だ、このように考えているわけでございます。(長妻委員「見直す検討は」と呼ぶ)
 見直すといって、どこをどう見直せばいいのか、これはもう長妻委員も御存じのとおり、無期限でいいという財務状況のところ、あるいは、現在は赤字だけれどもそれの赤字がある意味で一過性のものだというふうに認識された場合の、その繰り延べ税金資産の期間のとり方である、あるいはその他いろいろ例外的に認められる期限であるとかというように、かなり精緻に私は組み立てられているものだというように思っております。
 それをどういうふうに改革すればいいか。私は、この背後には日本の税法もあると思うんです。前にも申し上げましたけれども、日本の税法あるいは税の執行の体制、こういうものが非常にもうアメリカなぞに比べてリジッドでありまして、したがって……(長妻委員「研究はされますか」と呼ぶ)ちょっと待ってください。あなた、私は発言中なんです。(長妻委員「長いんです」と呼ぶ)長かったら聞かなきゃいいじゃないですか。(長妻委員「時間が余りないんです」と呼ぶ)聞かなきゃいいじゃないですか。私は私で申し上げたいことを申し上げているんですよ。(長妻委員「時間が余りないので、端的に」と呼ぶ)
 そういうことで、私は、まず税の執行における取り扱いというようなものを含んだ検討をしなければ、私がここで再検討しますなんて言ったって、それはちっとも、何というか、自分の権限の中にあるものではありませんので、私としては、先ほど来申し上げているように、国際会計基準にのっとった、今の会計士の方々、こういうような方々の決められた実務指針によってまいりたいと考えているわけであります。
長妻委員 これは中央銀行の総裁が、こういうふうに最も甘いというふうに問題点を指摘しているわけですから、ぜひ研究をしていただきたいと思うのですね。議論を始めていただきたい。
 それで、速水総裁はこの四月十五日の会見で、公的資金の注入、大手行が資本不足であるという認識について、その考え方は全然変わっていない、これからの課題としていまだに残っているというふうに御答弁されておられるわけであります。
 それで、もう一つ、これは柳澤大臣にお伺いをするんでございますが、かつて一九九九年の九月九日に大臣がニューヨークに行かれて、「日本の金融再生と経済の展望」という講演会をされておられます。これは、二度の資本注入が終わった後に行かれたわけでございますけれども、この中の発言を拝見いたしますと、基本的にはもう不良債権問題は終了したんだと高らかに宣言をされておられます。
 例えば、「私は、主要行によるこのような不良債権処理により、日本の金融システムの安定性は基本的に確保されたと考えている。今後も経済情勢に応じたレベルで不良債権が発生する可能性は否定できないが、今般の資本増強により、主要行は、このような将来のリスクをも十分吸収できるだけの引当て及び自己資本を積み上げている」こういうふうに高らかに終了宣言されている。
 そしてまた、終わりの方では、「私はこの一年の間に確立・履行された政策を確かなものとして信じているということです。私に課せられた責務は過去に前例のない重いものでした。しかし、日本の金融危機の克服の過程は、今や全体として過去のものとならんとしています」。
 こういうふうに終了宣言といいますかを、これは九九年の九月九日ですから、二年ぐらい前であります。ところが、中央銀行の総裁も公的資金の、まあ年度内、直近ということではないと今お話がありましたけれども、資本不足については今も言及をされておるということでありまして、これは大臣、もうそろそろ、こういうような発言が過去あって、二度の公的資金が失敗した、注入失敗したというのは明らかだと思うのですね、回復していないということでありますから。
 ぜひここで、御自身の出処進退を本当に考えるというぐらい、やっていただきたいと思うのですが、いかがですか。
柳澤国務大臣 御持論の展開がたびたびあるわけでございますけれども、私は、九九年後の一年間というような時期を、先生も御案内のとおりだと思うのですね。
 つまり、九九年三月の資本注入の後、のっぺらぼうに今日に至っているわけではないわけでありまして、その効果は明らかに市場も認めるところであって、市場もそういう反応をしたんですね。そういう後において、昨年の八月ぐらいから株価が非常に下がってまいりまして、私が就任したおととしの十二月ごろの論議というのは何だったかというと、株価の低落が、株価の時価評価を導入する次の期から非常に心配になりはしないかということでありました。そういうようなことが主たる論議であったということ、それがだんだんまた年央に入るに従って、また特に流通とかあるいは建設、不動産というようなものの再建というようなものが、果たして九九年資本注入後に行ったことで、この厳しい公共事業予算の削減等の中で果たして十分であったかという形で新たな問題が発生してきたということだと私は認識をいたしております。
 御持論は御持論で、常に傾聴をいたしておりますけれども、私の見解とは異にするということを申し上げさせていただきます。
長妻委員 大臣はそういうふうに茶化しておられますけれども、これは本当に日本の不良債権問題、もう議論し尽くされておりますけれども、先ほど速水総裁も海外の声というのを言われましたけれども大変な本当に大問題になっているわけでありまして、明白に過去の二回の資本注入というのは、このときは大臣は今日のような事態が起こるというのは多分予想だにされていなかったんだと思いますけれども、不十分だった、失敗したというふうに私は認識しておるんです。それはあながち間違った見方ではないと思いますよ。
 それで、もう一点でございますけれども、なかなか大臣は、御自身の過ちといいますか、不十分な処理だったということをお認めにならないんですが、それでは、仮に速水総裁が言われるように、今銀行の資本不足の問題というのはまだ解決していない、そして、いずれかのときに、遅くないときに資本注入をせざるを得ないというふうな事態が起こったら、今度こそ柳澤大臣、また笑われて、にやにやされておられますけれども、笑い事じゃないですよ。今度こそ、柳澤大臣、責任をとって出処進退を本当にみずから決するということは、これはもう当たり前のことだと思うんですが、いかがですか。
柳澤国務大臣 私は、常に本当に重い責任を感じながら仕事をさせていただいております。責任のとり方というのはいろいろあるわけでありまして、真剣に仕事をするということも責任のとり方ですし、また、出処進退というか、退出をするということも責任のとり方であるというのは政治家として当然心得ているところであります。
長妻委員 本当に、日本の経済のために、ぜひよくお考えになっていただきたいというふうに思います。
 みずほのシステム障害の件に質問を移ります。
 大臣、今いろいろ報告を受けておられる、大臣まで情報が上がっているということも聞いておりますけれども、東京ガスとみずほ銀行の間で、テストをやった、やらないというような話が今出ているやに聞いておりますけれども、大臣までそれは報告は上がっておりますか。
柳澤国務大臣 そのことについては、報告を受けておりません。
長妻委員 東京ガスとみずほさんの間で、あるいはほかの会社とみずほさんの間で、いろいろな話があって食い違うところがあると思いますので、監督する金融庁としてはそういう問題を把握するべきだというふうに思いますので、ぜひきちんと把握をしていただきたい。
 そして、さきに、四月の十二日に私がこの委員会で柳澤大臣にこの問題を、同じ問題を質問させていただいて、柳澤大臣はまた茶化されましたけれども、私は、大臣の責任論、責任問題というのを言って、ところが大臣は、またいつもの責任論ですねとにやにや笑いながら答弁をされたわけであります。
 その中で、これは大臣の発言です。
 私の責任は、政治家として責任はありますよ。結果責任ですから、何が起ころうと結果責任を負います。ですけれども行政の責任、私、今行政の長としての責任を申しているのですけれども、行政の責任というものについては、手順が踏んである。故意はないことはもとよりのこと、過失というようなことについても、私はそんなに大きい程度にあるというふうには思っておりません。
こういう御答弁をされて、政治の責任と行政の責任というのを分けて御答弁されている。
 行政の責任というのも過失は大きくはないというふうに言われていますけれども、私はこれも異論があるのですが、ここでは政治責任ということを前段で言われております。結果責任だと、政治家の責任というのは。
 大臣、金融担当大臣として、今回の大きなトラブル、決済機能が麻痺する、そしてそれが回復する見込みが立たない、何月何日までに回復するというのをだれも信じない、こういう重大な問題が今起こっているわけですから、そういう意味では前段の政治家としての責任というのは、大臣、どうですか。
柳澤国務大臣 政治家の責任というのは私は結果責任であると思います。それはもう、例えば与野党で、いろいろな政治的な行動をとったのが、実は選挙という責任を問われる場でその黒白がつけられるということを初めとして、いろいろな段階での政治の責任をとる、あるいはとらなきゃならない、そういう局面時というか、ダイメンションというか、そういうものがあるということは、もうちょうちょう申し上げません。
 そういうことで、政治の責任というのは私は結果責任であるということを考えているものでございます。
長妻委員 具体的にはいろいろな責任のとり方、減俸とかいろいろなことはあると思うんですが、具体的にはどういう……。
柳澤国務大臣 私は、今まず第一に自分がやるべきこととして考えておりますのは、事態の正確な検証だというように思っております。そういうことをきちっと行って、どういう経緯あるいは出来事の中でこうした事態が招来されたかということをしっかり明らかにする。そういう中で、それぞれの責任があるのか、あるいはどういう責任があったのかというようなことについてきちっとした検証をして、しかる後に責任の問題というのは考えていくべき問題だ、このように考えているというところでございます。
長妻委員 次の質問に移りますが、大臣が、四月十二日の特別検査が発表された夕方、一時間ほどの記者会見をされておられて、最近はインターネットでビデオが見られるので、私は、大臣の会見を生でというか、ビデオで拝見しました。
 その中で、ちょっと気になる発言があったわけでございますが、私的整理のガイドラインに対して、非常に厳しい見解が大臣から発言された。私的整理ガイドラインは、企業を経営しながらの再建計画とはちょっと違うんだ、専門の法律家に聞かなくてはとか、非常に保全措置が厳しい、あるいは倒産に近い、破綻に近い債務者にはなじむということで、私的整理のガイドラインに関して非常に後ろ向きといいますか、こういうような限定的なお話があったというふうに聞きましたが、これは大臣、ちょっと勘違いをされておられるのかどうか。この発言は、これも撤回をしていただきたいと思うんです、この記者会見での認識を。これは日本全国に大きい影響がありますので。
 資料九を見ていただきたいのでございますけれども、この資料九というのは、去年の四月六日に緊急経済対策ということで政府が打ち出した目玉の対策のうちの抜粋したペーパーでございます。その中に、これは下に線を引いたのも私が引いたのでございますけれども、私的整理における関係者間の調整等に当たっては、ガイドラインに沿って、早期かつ円滑な調整に努めるということが書いてありまして、その下に、「経営困難企業の再建及びそれに伴う債権放棄に関する原則の確立」というふうに書いております。
 これはすべては読まないですけれども、何しろ債権放棄に関して、プロセスの公正、円滑化を図る、そして関係者の共通認識が醸成される、これが望ましい、このためにガイドラインをつくるんだということでありまして、債権放棄のガイドラインとも当時言われましたけれども、この私的整理のガイドラインのねらいは、安易な債権放棄は認めないんだと。債権放棄というこういう重大な判断をするときは、きちんとガイドラインにのっとってやりましょうよ、こういうガイドラインの適用が嫌なんであれば、債権放棄なんていう手段は打てませんよ、基本的にはそういうような形で制定をされているわけです。
 私は、この私的整理のガイドラインを本当に一生懸命つくられた方々が今どんなお気持ちでおられるか、お話も聞きましたけれども、大変不満を持たれておられる方もおりますよ。そのような意味で、ぜひ大臣、政府が肝いりでつくって、民間の方が一生懸命汗を流してつくったわけですから、安易な債権放棄をさせない、これが前提でないと債権放棄は基本的にできませんよ、こういうことでありますから、この十二日の後ろ向きの発言は撤回をしていただきたいと思うんですが。
柳澤国務大臣 緊急経済対策に書かれていることがスタートになってガイドラインができたこともここに書いてあるとおりでございますけれども、現実の話というのはどうだったかというと、これは私が責任者として当たっていたわけでございますけれども、要は、なぜもっと企業の再建型の整理が進まないんだ、オフバランス化をこれから進めていこうという場合にはそういうことがもっと迅速に進む必要があるということで、それには一体何が足りないんだろうかということのヒアリングをいたしました。
 そのときに、何が足りないんだということの中で、司令塔がない、RCCさんがその司令塔を、采配を振るってくれて、あなたは大体このぐらいのことを考えてください、あなたはこのぐらい負担してくださいというようなことを仮に言ってくれるというようなことになったら、また話がぐっと多数債権者の間で進むんじゃないかというような話があった。そういう第三者的な機関をつくるのが一つの方法でした。
 それに対してもう一つは、そういう機関によらないで、ガイドラインによってあらかじめ話を、まさにガイドラインですね、そういうものをつくっておいて、そういう話を円滑化するということも一つの方法ではないかと。いろいろな案が出た。二つの案が出たんです。
 そのときに私が言ったんですね。そういえば、パリ・クラブというのがあるんだけれども、パリ・クラブはあれはガイドラインがあるんじゃないのかと言ったんです。そうしたら、そこに出席していた私のスタッフの、事務方の一人が、いや、ロンドン・アプローチがありますよというような話から、ではそれを調べてみようということになって、INSOLの原則というものに行き着いたわけです。
 そして、INSOLというのは非常に各国の破産法制というもののぎりぎりの共通原則をまとめ上げたものでございましたので、それはINSOLはINSOLでいいけれども、もう一つ、日本型のものはないかということで、それを実務者の方に考えてもらおうということででき上がったというのがいきさつでございまして、要するに、そういうことで、債権者間の話し合いをもっと進めるためというのが基本的な私どもの考え方でありました。
 したがって、そこがうまくいくといってはなかなか、今回のいろいろな処理だって、みんなの御苦労があったということをよく私は承知していますので、そんな簡単なものではないということは当然知っているわけですけれども、そういう話がうまくいくということが大事だというふうに私は考えているわけであります。
長妻委員 いや十分それは、そういう話は、経緯は私も聞いております。
 だから、そうであれば、大臣、記者会見の場で金融担当大臣たるべき者が私的整理のガイドラインに関してこういうような発言をしちゃいけないと思うんですね。これは債権放棄を伴う一つの再建のテーマでありますから、それは厳しいのは当たり前なんですよ。
 大臣、この発言に関して、さっき私が質問したのも、何か反省されていますか。あるいは撤回するとか。そうしないと、本当に私的整理ガイドラインなんて、ああ、使わないでいいんだと、銀行もどこも使わなくなりますよ。
柳澤国務大臣 これはこれで私の真意を酌み取っていただきたいというように思うんです。ガイドラインというのはあくまでガイドラインでありまして、そういう方向に導いていくということでありますので、そのとおりでなくてもいいということはガイドライン自身にも書いてあるということでございます。
 それで、そういうようなことで、私がちょっと、大変だなと思っていることをここでも申し上げたんですが、要すれば、債務の履行を一時停止するという処分、これは、まさにゴーイングコンサーンとしてこうした再建計画を練っていこうということにはちょっとなじまない点があるというのが、私がここでも指摘した点でございます。
長妻委員 ぜひこういう発言は今後は慎んでいただきたいと本当に心から思うわけであります。
 それで、速水総裁、先ほどロンドン・アプローチとか、いろいろ柳澤大臣から話がありましたけれども、日本では金融庁というわけにいかないでしょうけれども、日銀が調整役になって、こういう私的整理のガイドラインに沿って行司役というか、さっき司令塔という話もありましたけれども、ガイドラインはあるけれども、やはり司令塔という意味では日本はなかなかまだ根づいていないわけですので、日銀が今後、ある程度私的整理に司令塔としてコミットしていくんだ、こういう発想を私は持っているんですが、いかがでございますか。
速水参考人 市場というのは、移り変わっていく、忍耐強いものではないと思います。債権の放棄の話し合いをゆっくりやっている暇がないのも事実だと思います。したがいまして、何から何までガイドラインどおりにいくというわけにはいかないけれども、ガイドラインの考え方自体は尊重すべきではないかと思います。
 私どもの考査は、前にも申し上げたと思いますけれども、私どもの取引先である金融機関が将来どうやって健全な経営、立派な金融機関になっていくかということを日々見ておるわけでございまして、考査といいましても、そういった視点から考査をし、オフサイトモニタリングと言っていますが、電話で聞いたりしているんですね。(長妻委員「考査の話じゃないんです。委員長、ちょっと」と呼ぶ)
坂本委員長 今答弁中ですから、しばらくお待ちください。
速水参考人 ですから、十分金融庁とも話し合って銀行をリードしてまいりたいと思います。
長妻委員 いや、それは次の質問の答えですよ。総裁、ちょっとしっかりしてください。辞任説も、きのううわさが何か流れたらしいですけれども。どうなっているんですかね。
 司令塔として、調整役に、私的整理をするときに日銀はなるような用意があるのかどうかという質問だったんですが、もう切りがないんでやめますが、時間がどんどんたってしまうので、総裁、よろしくお願いします。
 それで、日銀が初めて公表した資料が資料の三というところにあって、これは本当に評価できる資料だと思います。四月の八日に公表されて、「考査における自己査定の修正状況」、こういうような資料であります。平成十三年度は九十七の金融機関に考査、立ち入りに入った。そして債務者の数は、考査先数で、これは単位が百ということでありますので、二万一千三百社入った。これは正常とか不良債権とかと別に、アトランダムに選んで二万一千三百社をピックアップしたら、その中の千九百社が基本的には、下方遷移というんですか、下方修正、要注意とか要管理とかそういう自己査定のところがなった。その修正率が八・九%あった。
 こういう資料が出たことは非常に評価していいと私は思います。これこそ、金融庁がやっている検査をある程度補強するといいますか、本当かどうかの信憑性を裏づけるというか、あるいはチェックするというか、そういうような観点になると私は思う。
 これを推計しますと、何しろアトランダムに選んだ債務者のうち、債権のうち、八・九%が自己査定がちょっと違う、もうちょっと下の査定に、悪い査定にするべきだというような傾向が出ているわけです。そして一つ計算をすると、では、大手行というのは、総与信額というのは幾らなんだ。総貸出額は平成十三年九月期でいうと三百三十一兆円だ。では、これに八・九%を掛けてみよう。掛けてみると、二十九兆円ある。ということは、これは一つの推計の数字でありますけれども、約三十兆円くらいが今の自己査定がおかしいんじゃないのか、こういうような見方もできるんじゃないか。
 それで、今回の特別検査を見てみますと、特別検査の対象が百四十九社、総与信額十二・九兆ということでありまして、その中の下位遷移、これが七・五兆だった、こういうようなことであります。その意味では、まだ四分の一。この推計の数字が正しいとしたら、特別検査でも指摘をされて銀行が訂正をしたのがまだ四分の一。四分の三はまだ間違った自己査定にあるんではないかというふうな推計もできるんであります。
 私は一つ言いたいのは、今は、柳澤大臣、メーンだけを、特別検査ではメーン行だけをやったわけですけれども、準メーン以下も全部やると、これは大臣も記者会見で言われていますけれども、今十二・九兆ですが、大体、総与信が倍ぐらいになるんじゃないかというようなお話をされていました。そうすると、理屈でいえば、簡単な計算でいえば七・五兆円が下位遷移が倍になって、あと七・五兆円もきちんと自己査定が進むというふうに私思うんですが、これはどうしてもやはりメーンだけじゃなくて準メーン以下の債権者、銀行もやるべきだ、やるべきだった、特別検査で、と思うんですが、これからぜひ近々やっていただきたいと思うんです。大臣、いかがですか。近々やっていただきたいと思うんですよ。
柳澤国務大臣 これはどういうことかと申しますと、あの記者会見でも申し上げましたけれども、メーン行、基本的にこれを検査いたしたわけでございますが、それが、同じ債務者に対する他の債権者、これが大手行である場合は、直接間接、その影響を受けるということはあり得たわけでございますし、また、あったんだろうと思っています。(長妻委員「ダイレクト」と呼ぶ)
 ダイレクトにあるというのは、例えば再建計画を立てる際のいろいろな協力した行為というもの、それにも入ってもらうためには、当然ダイレクトに影響が出るわけでございます。大手行の場合には大体そういうような形で行われましたので、それを、全部ある債務者についてこの検査の対象にしようというようなことを考えたときに、メーンとメーン以外のものがどういう関係にあるかということを事前に推計というか計算をしたところによると、大体二十六兆ぐらいあった、こういうことでございますから、二十六兆は当然影響を受けて、同じような処理になっている。
 ただ、それは直接我々が特別検査の対象にしたわけではないので、そこは除外してあるんですが、結局、処理損の七・八兆あるいは表面上七・一兆というものの中には当然そういうものも含まれている、こういうように解していただいていいだろう、こういうことです。
 今後は、こういう一律の検査というのは私どもやらないつもりでございまして、これからやることは、先ほど申し上げたような常駐検査ということの中で、そうした市場の評価が激変するものについてはやっていきたい。それから、この特別検査による債務者区分というものについては、今後の通常検査の中で、基本的に横ぐしが末端に至るまで入っていく、こういうことで御理解を賜りたいと思います。
長妻委員 そういう悠長なことではなくて、いろいろ人手、マンパワーの問題等があると思いますけれども、自然にいずれ変わっていくということもあるでしょうが、メーンだけではなくて準メーン以下もきちんとやればさらに出るというのはある程度推定できるわけですから、これはスピードが必要なわけでございますので、ぜひ、今後も特別検査をされるということでありますので、よろしくお願いをいたします。
 それで、一つ不可解なのは、今回の特別検査で上位遷移したものは非公開だ、会社が何社あるかも言えないんだ、こういうような説明があるわけでございますけれども、何でなのかなと。上位遷移というのは褒められることであって、別に下位遷移じゃない、下位遷移は出ているわけですから。そうすると、何か、多分、上位遷移というと、再建計画が策定されて、それで上位になるというようなことがあるのかな。そうすると、余り上位遷移の数が多過ぎるから、公表すると再建計画が安易な再建計画と批判されるから、それを公表しないのかとか、いろいろなことを考えてしまうんですが、大臣、端的に、何で上位遷移を公表しないのか、理由をお願いします。
柳澤国務大臣 要するに、上位遷移というと、十三年九月末のものよりも今度の査定が上位に遷移したというものだって、それはあるんだろうと私は思います。特殊な企業努力をしたとか、あるいはたまたま業況が振るったとかというようなことでございまして、そういうものはあるんだろうと思いますけれども、今回の私どもの考え方というのは、先ほど来申したように、突然の破綻、市場の評価に、激変にきっかけを持つ突然の破綻というものをとにかく、もっとその直近の決算でしっかりつかまえておくということを目的としたものでありますので、下位遷移のものを私ども的確にとらまえるということが大事だというふうに基本的に思っているわけでございます。
長妻委員 ちょっとこれ、何か審議がうまくできないですね。全然、さっきからずうっとはぐらかされておられるわけでありまして、質問が何かお気に召さないのかどうかわかりませんけれども、きちんと、大臣、上位遷移の社数、会社数を公表しないのはなぜですかという理由を聞いているんです。
柳澤国務大臣 いや、上位遷移のものは、今申したように、その会社の財務状況が、何と申しますか、客観的な状況で改善して、それで上位遷移したものもあるわけです。そういうものを何で何社だといって言わなくちゃならないのか。本当に、もちろん……(長妻委員「問題ないなら出せばいい」と呼ぶ)全部が再建計画とかということと関係ないんですよ。上位遷移というのは、企業が努力をしてよくなったものだって入ってしまうんじゃないですか。(長妻委員「何社だって、何で出せないんですか。社数、何社か」と呼ぶ)そんなこと、私……(長妻委員「下位遷移は全部出ているんです」と呼ぶ)いや、何というか、これでは、私、答弁しちゃっていますので、これは議事録から見てもわけがわからない議事録になってくると思うんですけれども、私は、先ほどの答弁で十分私の真意をお伝え申し上げているつもりでございます。
長妻委員 全然わかりません。ちょっと、きちんと答えてください。いや、何で上位遷移、もう一回答弁お願いします。
坂本委員長 余り質問、難し過ぎるんじゃないのか。
 柳澤担当大臣、何かありますか。つけ加えるものなし。――答弁できますか。
 ちょっと、速記とめてください。
    〔速記中止〕
坂本委員長 速記を起こしてください。
 柳澤担当大臣。
柳澤国務大臣 要するに、業況が改善してよくなったものも全部ひっくるめて出して、そういうようなことで何か有意な議論が、私どもこの検査の目的からいっても、するに当たらないんじゃないかという意味でこれは用意していないということでございます。
長妻委員 その発想は本当はおかしいと思うんです。
 問題がなければ、それはだからある意味では企業が再生したということにも、そういう再建計画ができたりして、自己査定が上がった、それで金融庁もそれに対してお墨つきをつけているわけですからいい兆候という見方もあるわけですから、問題がなければ会社の社数ぐらいは、ずっと何度も私言っているんですが、出さない出さないということで言われていますので、何か資料価値がないから出さないというような今御答弁だったと思いますけれども、そうじゃなくて、問題がなければ出していただくということで、ぜひ前向きに御検討をいただきたいというふうに思います。
 そして、時間も迫ってまいりましたので、特別検査を今後とも続けていくということを聞いておるんですけれども、通常検査の中にちょっと含めていくような話を聞いておりますけれども、具体的には、今後は特別検査、今回のような考え方の検査というのはどんなようなスケジュールで、どういう規模でやられる御予定なのか、お聞かせを願いたいと思います。
柳澤国務大臣 特別検査は、こういうリアルタイムで各金融機関の自己査定の作業に、ある意味で検証のために参加するみたいな手法でございまして、これは私ども、事後チェック型の行政の中では例外的な措置だということをかねて申し上げさせていただいたわけでございます。
 したがって、今度のように、一つのまとまりとして、特別検査というようなことで、一定の尺度でもって債務者を検査対象に選択して、一斉のそうしたことをするということは考えておりません。そうではなくて、常駐検査の中で、現実にまたそうした市場の変化が激変したような債務者がある場合には、個別対応としてそういうことを織りまぜた検査をしていくということを考えている次第でございます。
長妻委員 最後に……
坂本委員長 もう時間ですよ、時間。
長妻委員 わかりました。
 それでは、ぜひ中小企業の比率も、大手だけじゃなくて不良債権に占める大手行の中小企業の債権の比率というのも、この資料四にありますように六五%もありますので、そこら辺も含めて、きちんと自己査定の検査をしていただきたい。
 それと、監査法人に関しても、監査法人がきちんとやっていれば、金融庁もこの国会でもこういう議論をしないで済むわけですから、ぜひそこのところを再度強く申し上げて、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。
坂本委員長 次に、原口一博君。
原口委員 民主党の原口一博です。
 金融特別検査をめぐる諸問題について数点、金融担当大臣それから財務大臣、日銀総裁、きょうはありがとうございます、お尋ねをしたいと思います。
 まず冒頭、少し残念な質問をしなければいけないんですが、警察庁、お見えでございましょうか。
 昨日、近畿財務局の金融検査官が逮捕されるという事態が起こりました。このことについて、警察庁、どのように事態をとらえていらっしゃるのか、どういう容疑で検査官を逮捕されたのか、お尋ねを申し上げます。
吉村政府参考人 お答えを申し上げます。
 お尋ねの事案は、近畿財務局理財部審査業務課上席金融証券検査官が、平成十一年十一月中旬から近畿財務局が信用組合関西興銀に対して実施をする検査に関し、同興銀側に検査体制や検査内容を教示するなど、有利、便宜な取り計らいをしたことに対する謝礼等として、十一年の八月下旬ごろ、関西興銀理事長らから現金数十万円のわいろを収受したという贈収賄罪で逮捕したものであります。大阪府警におきまして、四月二十三日、検査官を収賄容疑で、興銀の理事長、審査部長、企画部長の三名を贈賄容疑で逮捕いたしまして、現在捜査中であります。
原口委員 柳澤大臣、私は、今回の特別検査について一定の評価をしています。それは、大手銀行が、不良債権という負の遺産についてしっかりと金融当局と協議をしながら、それにオフバランス化の道筋をつけていく上で大変大事なことだというふうに思うわけですが、その審議の前日に、特に平成十一年といえば、その前の年に、同じように当時の大蔵省検査部の示達書にかかわるさまざまな、何とかしゃぶしゃぶというようなところで大変な疑惑を、疑惑というか事件が起こったわけですね。その翌年にこういうことが起こっている。
 財務大臣、財務局を所管する、人事を所管する大臣として、こういったことについてどのようにお考えなのか、お尋ねを申し上げたいと思います。――財務大臣に、済みません。
塩川国務大臣 過去のこととはいえ、非常に残念なことでございますし、よく次から次とこういう問題起こってくるなと思うて、私も実際がっかりしておるようなことでございますが、なお一層緊張して職務を遂行するように注意しておきたいと思っております。
原口委員 やはり、今回の特別検査で問われたものというのは、金融検査の信頼性と銀行の自己査定の信頼性、この二つであったと思うんですね。その中で、私たちは、さまざまな金融事件あるいは不良債権の処理の現場のお話を聞くと、どうもやはりやみの世界だとか犯罪組織といったものの影をいろいろなところで目にするわけです。そういうものと決然として闘っていくということで、私たちはこの不良債権の処理の問題についてもしっかりとした決意を持って臨んでいるはずなんですが、まことに残念であり遺憾であるということを当初申し上げなきゃいけないと思います。
 そこで、今、長妻議員が御質問をいたしましたが、G7、財務大臣も御苦労さまでございました、日本の立場をしっかりと主張してこられたというふうに思いますが、財務大臣、そして日銀総裁にお尋ねをします。
 今、委員長のお許しをいただいてお手元に十数枚の資料を配らせていただいています。G7においてのコミュニケ「七か国財務大臣・中央銀行総裁会議声明」というのをお手元に配らせていただいていますが、特に今議題となっております日本の不良債権、そしてマクロ経済、こういったことについて一体どのような議論があったのか、そして我が国は何を主張してきたのか。そのことについて、財務大臣、日銀総裁にお尋ねをしたいと思います。
塩川国務大臣 G7の討議の内容につきましては、お手元にこうして資料が配られておりますので、これで大体要約されておるということでございます。私からこれにさらにつけ加えて申し上げることは、我が国の経済についてのことだと思っております。それでよろしゅうございますか。全体の、この中身全体についてですか。(原口委員「いや、結構です」と呼ぶ)これはよろしゅうございますね。(原口委員「我が国の経済についてどのようにおっしゃったのか」と呼ぶ)ああ、そうですね、私が言ったことですね。
 この前に一つ、これのほかにちょっと、載っていないことでございますけれども、先に申しますと、グリーンスパン議長がおっしゃった話の中で、世界の石油状況の話がございました。これはIMFの専務理事も、世界の石油状況が今後の経済成長に微妙な影響があるというお話がございましたのですが、その中で、私は非常に印象を強く受けましたのは、世界の石油はスポットの価格と長期に見通した価格とは違ってきておる、長期は安定しておるがスポットは乱高下があるだろうからこれに対する注意を十分に喚起すべきであるということの報告があった。これがここに抜けておりますので、つけ加えてちょっとそれを言うておきたいと思っております。
 それでは、我が国の方の主張というものはどうかということでありますけれども、日本の経済は非常に厳しい状況であるということ、これをまず冒頭に申し上げたのでありますが、しかしながら、昨年に比べて、景況としては厳しいけれども、底打ちの状況に向かって、いわゆる力強い点も出てきておる。それは、一つは在庫調整が非常に進んだということ、それから輸出がある程度振興しておるということとをもって、我々は、ここで一層のまずデフレ対策を講じて景気の回復を図っていきたい。それについては、四つの分野について我々は経済の活性化を図りたい。
 それは一つは、昨年の七月に骨太の方針が示されたこと。それに伴って、予算の編成等財政構造の改革を進めていき、規制緩和等もその線に沿って進めていった。しかしながら、日本の今後の産業の中核となって活性化していく方向についてまだ十分な示唆がないので、その点について我々はできるだけ早く方向を示したいと思っておる。
 それでは、その方向としてどういうものが議論されておるかということにつきまして、私は、一つはナノエレクトロニクス関係の技術開発に関するもの、それからバイオテクノロジーに関するもの、IT産業、特にブロードバンドのいわゆる拡張、拡大に対するソフトの開発等の関係、それから資源活用、いわゆる循環型社会をつくるためのそういう資源再開発事業の技術開発、こういうものが中心となっていくであろう。そうであるとするならば、それに伴うところのいわば減税対策等、誘導政策が必要であると思うので、その誘導政策も同時につけ加えていきたい。そういう基本的な政策を、でき得れば六月中に経済財政諮問会議等において方向を決定していきたい。それに伴って減税の基本的な方針。減税は、実施はおくれるけれども方針は示していきたいということであります。それが一つ。
 それから、不良債権の整理については、過日の特別検査を受けて、企業と銀行との間のこれは問題であるから、その検査の結果、金融機関がより一層の不良債権の整理に努力していくであろうということは我々も期待しておるし、常駐的な検査を行われるので不良債権の整理が進んでいくことは間違いないということでありました。
 それと、日本の経済構造全体を変えるための構造改革を実施する。この構造改革の中身につきまして、一つは、官がやっておる事業をできるだけ民に移していきたいということ。そのためには、郵政公社化の法案も近く国会に出されることとなっておるし、道路財源をめぐるところの公団公社の整理も進んでおる、そういう規制緩和のこと、ほかにまだございますけれども、時間がないんだったらやめておきます、それを説明いたしました。
 それに対しまして、若干の質問がございましたけれども、日本の努力は非常に敬意を表する、できるだけ早くその実体を示してもらって日本の経済が活性化することを望む、こういうのが大体の会議の中の空気でございました。
原口委員 ありがとうございます。
 日銀総裁。
速水参考人 今、塩川大臣から大体御報告ございましたから、私からは、金融政策運営につきまして引き続き流動性供給面で最大限の対応を講じていく方針であるということと、今後、構造改革を通じて民間のコンフィデンスが強化されれば、思い切った金融緩和の効果も目に見えて出てくると見られるということを説明しました。これに対して、各国からの特段の質問はございませんでした。
 G7のサーベイランス、各国の話をするのは一時間半足らずでございますので、そんなに大きな議論はございません。あとは、テロ資金の対策とかあるいは危機予防のやり方とか、そういうことで随分議論が沸騰しました。
 一つだけ、今グリーンスパンの話が出ましたのですが、これは私がなるたけ七人の総裁と個々に話をしたいということで話を聞いたわけですけれども、グリーンスパンはその前日の日に国会の両院の合同委員会で証言をしておられまして、アメリカ経済の話をされて、その後上院の議員から質問がありまして、日本経済が悪いけれども、これでアメリカの経済にも、世界経済にも影響があるんじゃないかという質問に対して、グリーンスパンが答えられたのは、日本経済はスタビライジング、均衡を保ちつつある兆しが見えてきた、他国がよくなっていけば日本が米国の経済に深刻な影響をもたらすようなことはないということをはっきり言っておられます。
 帰ってまいりまして、新聞、テレビなどが随分、日本はアルゼンチンと一緒に落第生にされたといったような書き方をしておられますけれども、記事や、記事だけでなくて論説にもそういうことを書いておられますけれども、事実はそういうことではございません。向こうはやはり、日本のいいところはちゃんと見ておりまして、ウォールストリート・ジャーナルなど、日本の卸売物価が一月、二月とプラスになっていること、それを表を書いて大きく出しておりますし、消費者物価も下がり方が減ってきたというようなことを大きく取り上げております。その辺のところは、ちょっと日本の新聞は行き過ぎているんじゃないかというふうに思っております。
原口委員 警察庁の方はどうぞ。
 今、G7の御報告を詳しくいただきました。柳澤大臣、先ほど財務大臣がお話しになりましたように、去年、不良債権のオフバランス化を大臣と議論したときには幾つかの仮定があったと思うんです。オフバランス化をやらないとたくさん、持っているだけでコストがかかるから、それは早くやりたいということと、もう一つは、あのとき私たちが共通の基盤として持っていたのは、産業再生とやはりセットだったんですね、不良債権の最終処理というものと産業再生というものが一体となってそれで初めて実効を上げてくる。
 今、塩川大臣、くしくもおっしゃったように、産業の中核となっているものというのが十分な兆しがない中で、今やらなければいけない。だから、私は、金融庁だけに責任や非難が集まるのはある意味ではアンフェアだと思っております。
 それはなぜかというと、マクロの経済政策の部分がやはり相当厳しくなってきている、マクロの経済政策で一体何をやろうというのかがわからない、これは予算委員会でも議論をしなきゃいけないのかもわかりませんが、二十年前のあのインフレ下でとられたようなサッチャー改革と同類なものを今のこのデフレ下でやろうとしている、そのこと自体に大変な金融の苦しみがあるんではないのかというふうに思います。
 柳澤大臣、この一点だけ確認をしておきたいんですが、やはりこのオフバランス化という問題は産業再生と一体となって取り組むという、そういう御決意がおありなのか、その私の認識は間違っているのかそうではないのか、教えていただきたいと思います。
柳澤国務大臣 不良債権の処理の中で、引き当てというように金融機関の内部の会計処理で終わるものもあるわけですけれども、私ども、それにとどまらないで、それはそれとして十分ちゃんとやらなくちゃいけないけれども、同時に、金融機関がこの貸出先企業に働きかけて、両者でもってその再生を図るなり、あるいは整理すべきものは整理するなりということをやることが大事だということで、昨年の一月以降、私どもそういう方向を追求してきたところでございます。
 その際、当初私ども、金融再生と企業再生、産業再生は車の両輪というような表現をそこに与えまして、これは同時に追求されていくことが大事だ、こういうことを随分申させていただいた記憶もございます。オフバランス化、不良債権の最終処理は、もちろん金融機関の側にとって収益力を上げるということも非常に大きなメリットでございますけれども、同時に、貸し出し側の産業、企業の再生を図るということが、今非常にこの不況の中で呻吟している企業のブレークスルーにもなるんじゃないか、こういうような考え方から、そういうことを私ども言わせていただいてきたわけでございます。
 現実にどうだったかといいますと、一つは、先ほど、ガイドラインの話をここに持ち出すのははばかるべきだと言われかねないんですけれども、ガイドラインをつくるときにも、オブザーバーとして参加いたしましたのは、私どものほかに、経済産業省、それからまた国土交通省の方々でございまして、共同の作業をさせていただきました。
 それから、今回、いろいろな特別検査の中で、企業再生を一方で進めさせていただきましたけれども、これらが進められる過程の中では、それぞれの担当省というようなことで、個別の企業が各担当の役所にいろいろ相談をしたり状況を報告したりというようなことがございまして、しからばおまえは満足であるかと言われますと、やや、もうちょっと深いところで相談に乗ってもらいたいという気持ちも私の気持ちとしてないわけではないんですけれども、まあ各役所ともに目いっぱいの協力はしていただいているのではないか、このように考えまして、これらの方々には感謝をしている次第でございます。
原口委員 そこで、やはり私は野党として厳しく指摘しながら、いいことはいいと。先ほど日銀総裁がお話しになりましたように、全部の指標が悪いわけじゃないんです。
 今、お手元の資料のTOPIXをごらんいただきたいと思うんですけれども、この四、四ページでございます。
 去年の二〇〇一年九月十一日の同時多発テロ、それから、この特別検査が始まったのが二〇〇一年の九月二十八日でございますから、現在、三月中の平均でこういうポイントになっている、約六〇ポイント、TOPIXだけで上がっているわけです。こういう中で、一つ一つの指標をしっかりと踏まえながら議論をしていかないといかぬのではないかというふうに思います。
 特別検査の中身に入る前に、数点確認をしておきたいことがございます。
 お手元の資料の中で、三をごらんください。よく不良債権問題は、ある方によると大手三十社問題あるいは大手行の問題だということを言われていますが、果たしてそうなのか。
 この資料の三をごらんいただきますと、二〇〇二年二月末のシェア、貸し出し、預金とも確かに大手行は三〇%を超えるシェアを持っていますが、地銀それから第二地銀、信金、信組、農中・農協といったもののウエートというのはとても大きいんですね。こういったところを、つまり問題の所在点を間違って処方せんをつくってしまうとその解決策も間違ってしまうということをまず押さえなきゃいけないというふうに思うのですが、柳澤大臣、この地銀や信金、信組のウエート、先ほどここの重要性についても述べておられましたけれども、一体この不良債権問題というのは大手行だけの問題なのか。
 あるいは、私たちはむしろここでも議論させていただきましたけれども、第三セクターを含めた大きな問題もある、あるいは国債のウエート、国債の償還についてのリスク、これは毎年毎年高まっているわけです。先ほど、塩川財務大臣は、六月に減税の検討云々というお話をされましたけれども、財務大臣、私は一貫して申し上げているのは、歳入全体の構造改革、それは減税も含めていいけれども、やはり減税というのは必ず先食いされるわけですから。今まで過去全部そうなっている。歳出そのものを一生懸命構造改革で、小泉改革でいじられるのは結構だけれども、歳入の構造改革全体に踏み込まなきゃいかぬということをずっと主張してきているわけです。
 柳澤大臣、きょうは歳入の構造改革に踏み込む時間はございませんので、不良債権全体像から見て、一体この大手行の問題と地銀、信金、信組の問題とどのようなウエートづけでどういう解決策を持っていくのか、基本的なアウトルックをお示しいただきたいと思います。
柳澤国務大臣 本当に、不良債権問題といいますと、我々つい大手行だけに注目をしてそこの議論に関心が集まりがちでございますけれども、今委員がおっしゃられたとおり、不良債権問題というのは、必ずしもそこだけの問題ではなくて、地銀あるいは第二地銀、信金、信組というようなところにとっても非常に大きな問題であるという認識は私も当然持っているわけでございます。
 この解決のアウトルックということを今お尋ねでございますけれども、これについては、私ども、当然資産の査定、それからそれに対する引き当てという間接処理については、これは金融検査を通じてその適正さというものを確保してまいりたいと考えておりますけれども、直接処理につきましては、私ども直接これらの金融機関に対して格別の呼びかけをしているということはないわけでございます。
 ただ、非常に私にとってはありがたかったことに、そういうことを大手銀行、大手金融機関に私どもが呼びかけましたときに、この地方銀行以下の方々も、これは特別、最終処理をしないと自分たちの不良債権残高、あるいは不良債権比率というものが非常に高くなって自分たち自身の信用問題になりかねないぞ、そういうことで、これはもうできるだけ同じような歩調で考えていかざるを得ない。それには一体自分たちの貸出先の大宗を占める中小の企業についてどういうことを考えたらいいかということで、この方々が考え出されたのは、もっと上位に引き上げていくための措置ということでございました。
 その専門のチームを編成していろいろコンサルタントのような方々にも、なかなか相談を投げかけるような立場にないだろうといってコンサルタントを紹介してみたり、事業の経営の改善計画、この改善計画も自分で練り上げてつくり得るという方も少ない場合もあるようでございまして、そういうものに手をかしていこうというようなことをやっていただきました。
 これは、私は抽象的に聞いているだけじゃなくて、前にもちょっとここでお話ししたかもしれませんが、私の非常に近い近親者も同じような今状況にありまして、そういう再建型の改善計画をつくって、そしてまたいろいろな取引先なども紹介を受けて、そういうふうに今できるだけ不良債権化したものを上の方に持っていくというような努力もしていただいております。
 ただ、率直に申しますと、法的な整理にいかざるを得ないものも総体的に多い、それは中小企業の場合には非常に、何と申しますか、変な話ですがスピードが逆にあるものですから、非常にそういうものも出てきているということも現実の姿として私は認識をしているところでございます。
原口委員 そこで、これは一月二十八日の予算委員会でも平沼経産大臣と御議論をさせていただいたんですが、会計というのは一体何なんだろうか。会計というものは自己の活動の正当性を数値でもって説明したものだ、こういうふうに考えると、今お話しになりましたように、大手行、大手企業と同じような会計基準であって本当にいいんだろうか、地銀や信金、信組が相手にしているそういう地域の中小企業、ではこの人たちは一体だれに説明責任を負うんだろうか。恐らく、海外の多くの株主に対して説明責任を負うということはないと思うんですね。
 とすれば、今回、特別検査の中で、さまざまな中小企業に対する検査の細かなマニュアルというのをつくっていただいた。それと同時に、これは所管が違うのかもわかりませんが、やはり政府全体として、地域の中小企業の標準的な、会計のスタンダード、これを逆につくっていくことが、今さまざまな、長妻議員との御議論の中で、会計自体が今模索中だというお話をされました。私は、日本の産業全体を再生し、金融全体を再生するためには、やはり中小企業の、特に地域の中小企業の会計、このことについての明確なスタンダードが必要だというふうに思いますが、所管が違うかもわかりませんが、大臣、御意見がありましたら教えてください。
柳澤国務大臣 中小企業向けには大手企業と違う会計基準があってしかるべきではないかというようなお話でございます。これについてはたびたびここでも議論がございまして、外国の例等も私どもそれなりに調べさせていただいているわけですけれども、大体においては、独自の会計原則というものを持っているということは、実はそういう国はないわけでございます。
 ただ、主要国の中では、イギリスが形式上小会社向け会計基準というものを設けておりますけれども、これはもうほとんど、ただ冊子を別にしているというようなことが主でございまして、中身としては我々の方と基本的に同じような形になっているということでございます。
 国際会計基準の方では、国際会計基準委員会が、これから将来に向かって会計基準を検討しようというような検討項目というものを提示しておりますけれども、その将来検討を目指す十六項目の中には、中小企業及び途上国の会計基準というものも実は含まれておりまして、将来の課題にはなっているということがこのところから認識されるわけでございます。
 しかし、これがまた二つに分かれておって、当面取りかかる項目、九項目の中にはそれは入っていないというふうに私ども認識をいたしておりまして、まだこの点については明確な、国際的な合意もないというふうに認識をいたしております。
 その中で、今委員が御指摘いただいたように、今回、私どもは、検査マニュアルの別冊として中小企業の実態を把握するときの着眼点及び着眼をする場合の実例集というようなものを編さんさせていただいておりまして、今パブリックコメントにかけておりますけれども、これらのものを、パブリックコメントをいただいて豊かな内容のものにしていくということで対処をいたしたい、このように考えております。
原口委員 私は、優先順位を中小企業の会計基準の選定についてやはり上げなきゃいけない。今のは、いわゆる大会社に準じる、それをリデュースしたものというようなことで、やはり、ともすれば全部一律、同じ会計基準になってしまうということはむしろアンフェアだというふうに私は思います。ぜひいま少し、いま半歩前に出ていただくように要請をいたします。
 さて、そこで、今度の特別検査の中身について、いただいた資料をパネルにしてみました。委員長、パネルを使わせていただきたいんですが、お許しいただけますか。
坂本委員長 はい、どうぞ。
原口委員 今回の検査の対象というのは、先ほど申し上げました、大手銀行そのもの自体が日本全体の不良債権の中のごく一部だ、三分の一ぐらいだ、その中で今回この十二・九兆円、つまりごく限られた範囲において特別検査をされた、この認識は間違いないと思います。
 その中で、実は昨年の九月の末、二〇〇一年の九月末にはこういう正常先、要注意先、要管理先、破綻懸念先という状態だったのが、半年において破綻懸念先が三・七兆円というふうに下位遷移をしてきた。あるいは、要管理先についても四・二兆円というふうになってきた。この原因というのは一体どこにあるのか。それは、私は、経済が悪化したということでは、先ほどTOPIXの動きを資料四で見ていただきましたが、経済が特段に悪化したからということではなかなかそれは理屈は立たないんではないか。
 私たちは、二〇〇〇年、二〇〇一年、二〇〇二年と、当初の銀行の大手行の不良債権の処理額の見込みというものについてもさまざまなところで議論をしてきました。それが一年たつと、当初の見込みが二倍も三倍も不良債権の処理額がふえている、そういう状況というのは一体どのように理解をすればいいのか。金融業というのは、リスクを極小化して、そして利益を極大化する、そういう仕事だと私は理解をしていますが、年初に見込んだものが、それが一年たってみると三倍も違う、そういうリスクテーカーというのは果たして信頼が置けるのかということがまさに今回の金融特別検査で問われたんだというふうに思います。
 私は、やはりこの二〇〇一年の九月末の自己査定、このことにさまざまな問題をはらんでいたんではないか。そういう認識をお持ちであるのか。いや、そうではないと。テロも起こったから、そしてその後アメリカ経済は大変なつらい時期を過ぎました。半年間で五%も金利を、公定歩合を下げるというグリーンスパンさんの決断、こういう国はほかにはなかった。しかし、それも功を奏したのか、今経済は復活に向かって動いています。
 私たちの国も、政府の御発言によると底入れが見えてきたということでありますから、経済が、景況がこの半年間急速に悪化したことでもってこれほどの下位遷移というのは説明できないんではないかと私は思うんですが、柳澤大臣、御反論があれば教えてください。
柳澤国務大臣 ちょっと私のコメントの先に、事実問題でございますので、検査局長に実情を説明させます。
五味政府参考人 お答えいたします。
 現場で指揮をしておりました者の感じたところというところで御説明をいたします。
 この大きな下位遷移が起こりました主な理由というのを挙げてみますと、一つは、直近までの経済情勢の変化、これを反映して、一般的にこの九月から三月にかけてというのは経済が悪い方へ向かっておりましたので、対象債務者の財務状況が一般的に悪化している、そういう中でのチェックであったということ。
 それから、特に対象といたしました百四十九の債務者といいますのが、株価や外部格付などに著しい変化が生じているなど、そもそもこうした経済状況のもとで債務者区分が下位に遷移する可能性が高い、こういう債務者を対象とした集中的なものであったこと。そして、当然のことでございますが、銀行あるいは外部監査人との共同作業で、リアルタイムで共同自己査定をしておったような格好でありますので、その時々の経済状況が非常にリアルな形で反映をされた、こんなようなことがこの大きな下位遷移の主な理由として考えられると思います。
 こんなことをも反映いたしまして、銀行自身が昨年中の立ち入りの議論なども踏まえまして、年末の仮基準日における自己査定などを経由いたしまして、年明け、銀行みずからが下位にこれを変更していたというような事例も相当ございました。
 そんなことですので、今申し上げたような主な理由から見ますと、その大きな要因は、やはりこうした経済状況の悪化あるいは対象債務者が特異な下位遷移しやすいものを集中的に見ているということからくることであったと思いまして、銀行の自己査定自体に重大な問題があったということでは直ちにはないように思われます。
 ただし、これは今御指摘にもございましたけれども、私どもの経験でも、昨年九月期の段階における銀行の自己査定において、債務者の実態把握がやはり銀行として不十分であったというふうに思われるようなケースも依然としてこれは確かにございました。したがいまして、各銀行におかれては、やはり厳格な自己査定ということには引き続きこれは注力していただく必要がある、これが現場での感じでございました。
原口委員 そこで、今回その「主要行に対する特別検査の結果について」という紙を読んでみると、こう書かれているんです。「検査の過程において、下位遷移すべきであると当局側が判断したものの、その後、再建計画が策定される等により最終的には下位遷移とならなかったものは、下位遷移したものに含まれていない」と書いてあるわけです。
 二月、三月にたくさんの、駆け込み的と言っていいのか何と言っていいのかわかりませんが、再建策が発表されました。そして、これは財務大臣にも伺わなけりゃいけないのですが、二月十七日前後、ブッシュ大統領が来られる前後に官邸に閣僚がお集まりになって、そしていわゆる大口の問題先企業のリストを挙げて、ここについては助けますというようなお話をされたことがございますか。財務大臣。
塩川国務大臣 記者会見の記録を読みますと、不良債権の処理等あるいは経済の状況が常に変化してきた場合、その場合には金融機関の、金融システムの秩序を維持するために必要があれば公的資金の注入も必要である、だから現在は公的資金の注入をする必要はない、強制注入の考えは持っておらないと思っておると私は発言しております。
原口委員 質問を多分聞いていらっしゃらなかったのだと思いますが、村田さん、笑っちゃいますよね、私は公的資金の注入の是非を聞いたのではなくて、二月十七日に、いわゆる私たちが呼んでいるところの小泉徳政令、十数社のリストを出して、ここの企業については各銀行に、大手行に支援策を要請する、そういうお話し合いをなさったでしょうと。なさいましたでしょうか。
    〔委員長退席、中野(清)委員長代理着席〕
塩川国務大臣 それは、そんな細かい具体的なことは話ししておりません。
原口委員 いや、私は、これがいけないということを言っているんじゃないのです。金融担当大臣、あの大きなシステムのリスク、ペイオフを控えて、さまざまなリスクについて私たちは検討してしかるべきだと思いますよ。その中で、ツービッグ・ツーフェールで、余りにも経済に及ぼす影響が強い、そういう大口の不良債権をたくさん持っている企業については、ここはやはり優先的に助けるべきだということを政府が判断しても、それはおかしい話じゃないのです。そういう話し合いというのは総理を中心に今までなさったことありませんか、担当大臣。
柳澤国務大臣 今までにということでございますが、とりあえず財務大臣と同じ日のことを申し上げますと、これは財務大臣が今おっしゃられたとおり、私どもの公的資金注入についての考え方を統一するということで、それに尽きておりました。
 それから、その他において、何か個別貸出先について、私を含めたところでどれをどうするかというようなことを議論したことは全くありません。
原口委員 私を含めたところと。私を含めないところでお話し合いになったことはありますか、金融担当大臣。――ない。
 ないということですが、私たちは、予算委員会の最中にそういう情報が入って、そしてリストが出て、そのとおりのことが二月、三月に起こったものですから伺っているわけでございます。
 資料の七をごらんになってください。七と八、ここで、これは過去二回に及ぶ公的資金の注入の一覧でございます。金融機能安定化法に基づく資本増強、これと、それから早期健全化法に基づく資本増強、一九九九年と、ここに書いてあります一九九八年、この二回に分けて行われたわけでございます。
 そこで、少し事実について伺いたいと思いますが、公的資本注入ということで、日銀総裁、先ほど長妻議員の質問に対して、タイミングを逸しないように公的資金を注入すべきであるというふうに言われたというふうに私は受け取りました。資料二、ことし四月十五日の総裁記者会見、これでも、公的資本注入といったものも含めてタイミングを逸せず早目に対応していくことが必要であるというふうに総裁は述べられています。
 総裁は、この金融検査について、特別検査について、一定の評価を与えていらっしゃいますが、しかし、これでも、すべてが解決したというスタンスは到底それはおとりになっていません。むしろ、銀行の体力の弱さ、それから構造改革の進まなさというのをずっとおっしゃっているわけですが、このスタンスは、総裁、今も変わられませんか。
 それと、あわせて伺いますが、公的資本注入したときに、私たちは劣後債や永久劣後債、劣後ローンといったものを入れています。この部分を減らして、正味自己資本比率をなんという話を私はここでする気はありませんが、実は、このときには優先株も一緒に入れています。当時入れた優先株は、私がきょうお示しをした資料の七と八を合計していただければ、大変大きな額であります。当時の株価と今の株価を見れば、この優先株について、大変劣化をしているのではないかということが容易に予想をされますが、この二点について総裁にお尋ねを申し上げます。
速水参考人 公的資本の注入をこの二月にした方がいいと私が言ったとおっしゃるのかもしれませんけれども、そのころはまだ今の特別検査もわかっておりませんし、私は、そういういざというときにはそれができるんだということを年度末までに総理がおっしゃればいいがなというふうに思っていたので、三月末までに入れろというような気持ちは持っておりませんでした。
 それから、今、二番目の御質問については、一時的には下がることもあったかもしれませんけれども、これはまだもうしばらく見ていないとわからないのじゃないかというふうに思っております。
原口委員 同じ質問を柳澤大臣にお尋ねをします。
 劣後債、劣後ローンでも、期限つきの劣後ローンもあるわけで、これはいつまでも持っていていいわけでもございません。しかも、質疑の中で明らかになっておりますように、これは例えば八ページの一番上、みずほが持っております劣後ローン、承認レート、六年目以降はステップアップをして、これはLIBORプラスの一・二五という金利になるわけです。銀行にとっても大変な大きな負担になっていく。これはみずほという名前をたまたま出しましたけれども、ほかの銀行ではさらに大きな金利を負担しなきゃいけないところもある。
 柳澤大臣、この優先株式についても今どれぐらいの評価損が出ているというふうにごらんになっていますでしょうか。特別検査でその点については評価をされたんでしょうか。いかがですか。
柳澤国務大臣 ちょっと事前にそういうお問い合わせをいただいていませんでしたので、今ここでちょっとにわかにお答えする用意がございませんが、基本的に、優先株の価格の変動というのは、どちらかというと投資家である国の側がいわば負担をするということになっておりまして、投資先の銀行、金融機関としては投資されたものがちゃんと入っているという考え方を私どもさせていただいていいんじゃないか、このように思います。
 それから、ステップアップ金利が高いものがあったり、あるいは期限が区切られているものがあるのではないかというようなことでございますけれども、期限もまだかなりの余裕が一番先の有期限のものについてもございますし、またステップアップ金利の上乗せ幅については、これは自己資本に計上できる商品のステップアップ金利の限界が定められているわけですけれども、これの中にまだ悠々とおさまる幅であるというようなことから、この点についても今直ちに何か問題が存在しているという状況ではないと考えております。
原口委員 通告はしていると思うし、金融庁が念のために私が言ったことをもう一回書いてくれたのにもありますので、通告がなかったというのは非常に残念なことでありまして、優先株についても、まさに今大臣がおっしゃったように、国民の方が損するわけですよね。だから、そういった問題についてもしっかりと議論をするのは当たり前の話なわけでございます。
 さてそこで、支援の方に戻りたいと思うのですが、私は金融庁にお願いをして、最近公表された主な金融支援についてリストをつくっていただきました。一々企業名は申しませんが、この中身を見ますと、果たしてこういう内容で本当にいいのだろうか。
 例えば、Hコーポレーションとだけ申し上げておきましょう。ここは、一千五百億のデット・エクイティー・スワップによる債務の株式化ということをやっているんですね。本当なんだろうか。デット・エクイティー・スワップ、これは金融機関にとってもありがたい、あるいは、それを受ける大口の不良債権を抱えている企業にとってもありがたいでしょう。しかし、果たしてこういったことを駆け込み的にやっていってモラルハザードは起こらないのだろうか、あるいは、この株式というのは一体どのような意味を持つのだろうかということを、やはりきっちり押さえておかなければいけないというふうに思います。
 私にいただいたリストは、金融庁からいただいたのが七つありました。この七つを、全部この株価をこの二月、三月、四月とずっと追ってみると、それが金融支援策が出たときには大変な大きな、出来高だけは膨らんでいます。しかし株価自体はほとんど低位推移、むしろその後落ちているんですね。
 つまり、これは、マーケットの今の反応だけ見ていると、今までの反応だけ見ていると、やはり信認がされていない。やはり問題のある企業は、その再建策についても、あるいはその再建策を決めた銀行についても、信頼を回復するには至っていない。株価が百円割れをしている企業がずっとそのまま百円割れのままということはどのように理解をすればいいのか。金融担当大臣に基本的な認識を伺いたいと思います。
柳澤国務大臣 二つお話があったかと思います。
 一つは、デット・エクイティー・スワップというのはどういう意味があるんだ、こういうお話でございます。私も基本的な認識は委員とそんなに違っていないというように思いますけれども、デット・エクイティー・スワップというのは、やはりそのスワップをして取得したエクイティーというのが投資価値があるということが基本的に必要だと思います。そのためには、そのもとになったデット・エクイティー・スワップを含めての再建計画というものが、本当に合理的で、実現可能性があって、市場の評価も得られるというものでなければならない、このように思っております。
 ただ、これは第二の問題とも関係するわけでございますけれども、私ども本当に今回の特別検査絡みで、各金融機関と貸出先の間で合意され、あるいはまだ合意のままで実行もされていないというものと実行されたものと両方あるわけですけれども、いずれにしても、こういう再建計画というものについては本当に合理性とそれから実現可能性というものを、もう口が酸っぱくなるほど、これは監督の方から強く申し上げたわけでございます。
 ただ、あえて一つだけ言わせていただくと、実は検査というのは会計処理としての適正さというものが基本でございまして、そういうところで、そういうことが満足される限り、検査としてはやはりそういう再建計画を前提として債務者区分をしたりあるいは引き当てをしたりするということを認めることになる、こういうことでございます。
 もう一つさらに言わせていただきますと、私としては、株価というのはいろいろな複合的な要素で決まりますので何とも言いがたいところがありますけれども、願わくばというか、そうであらなきゃならぬわけですけれども、再建計画の合理性、それから実現可能性というものが実態によって裏づけられていくということを通じて、市場に評価される、さらに評価が上がるというような方向にいってくれることを考えているということでございます。
原口委員 ということは、破綻懸念先以下とされた三十四社については、これはもう法的整理とか、あるいはRCCに行っての再建とか、そういったことを考えていらっしゃるという理解でよいのか。
 それと、あと、「より強固な金融システムの構築に向けた施策」という中で、いわゆる金融機関の合併促進を盛り込んでいらっしゃいますが、この意図は一体何なのか。今でも私自身はオーバーバンキングの状態であるというふうな認識を持っています。オーバーバンキングの状態であるものをマーケットによって選別をしてもらう、これが一番大事なのではないかと思うんですが、四大メガバンクを二大メガバンクに再編しようという動きもあるやに聞いていますが、そういうお考えをお持ちなのか。先ほど午前中に、さまざまなシステムの合併によるリスクというお話も頭取さんがなさっていました。どのような意図を持ってこの「より強固な金融システムの構築に向けた施策」をおつくりになったのか、意図は何かをお尋ねしたいと思います。
柳澤国務大臣 まず、破綻懸念先以下に今回債務者区分されたところについては、これはもう一般論的に申し上げることができるわけですけれども、オフバランス化を速やかに進めていただくということになります。そのオフバランス化の手法としては、やはり法的な整理、私的な整理、これは両方あり得るわけでございまして、その上に、今委員が御指摘になられた、法的整理というか破綻というか、そういうようなものも当然あり得る。こういう三つの道がそこに開かれているということは、一般的な話として御理解をいただきたいと思います。
 それから、合併の促進ということを申させていただいておりますけれども、これは発表した文章のところでも申し上げておりますとおり、金融機関の収益力を上げたいということと、もう一つは、経営的な基盤をしっかりさせたいということでございます。
 なお、経営的基盤のことで申し上げますと、これは実はいろいろな方がいろいろなことを言う中での一つの話ですが、結局、これだけ金融機関の経営というものが厳しい状況、環境の中で行われなければならないということを考えますと、やはり人材ということについても考えなきゃいけない時代になった。つまり、本当に金融機関の経営が難しくなりましたので、人材というものを考えた場合になかなか、現在の金融機関に、皆、適切な人材を擁し得るほど人材というのがいるんだろうかというようなことを、先般、実は参議院の方の御議論があったときに、当該の地域の金融機関の皆さん方が、かなりここは一致して訴えられていた点でございまして、私どもも、経営基盤というものの中には人材ということをやはりかなり考えているということを申し上げたいと思います。
原口委員 もう時間が迫りましたので、資料六をごらんください。今、人材ということでございますが、この間の主要行のROE、コア収益、資本勘定を見ると、やはりかなり厳しい。これも私たち、こうやって計算をさせていただきながら、やはり自分の収益力を上回る不良債権の処理を迫られている、あるいは毎年不良債権が新規発生しているという状況の中では、かなり私たちはクリティカルなところにいるんだということから議論をスタートしなきゃいけないというふうに思います。
 それで、資料十一でございますが、これは四月の十日付のウォールストリート・ジャーナルです。私は、日米の関係も随分変わったなと。去年三月二十日にワシントンでさまざまなアナリストの方々、あるいは経済、財政、金融あるいは軍事といったところで議論をしてきましたけれども、やはり私たちがリスクをとり得ていない、リスクを管理できないということが、世界の中で大変不安定な状況をもたらしてしまう。特に、国債がGDPの一四〇%まで膨らんでいる、こういったことについては、私たちは、本当に構造改革に向けての時間がないということで、しっかりと改革を前に進めていかなきゃいけないというふうに思います。この記事は、もう政界再編をして、解散をして新しいチームをつくったらどうだということまで言っているわけです。
 私は、今の内閣は右手がやっていることと左手がやっていることが違う。一生懸命それぞれのつかさつかさで頑張っていらっしゃる、それは私は評価します。しかし、全体としてのチームとしてはやはり厳しいというふうに思います。
 結びに、次、予算委員会でも議論させていただきますが、やみの世界としっかりと手を切って、そして果敢な処理をしなければ、私たちの国全体を資本がパスするんではないか、そういう危惧を持っています。
 そこで、金融担当大臣と日銀総裁に要請をしたいと思います。
 一つは、この不良債権処理の端緒となったいわゆる住専処理、これは一体どうなっているのか。住専というのはつぶれました。そして、まさに預保が管財人としているわけですけれども、住専の大口貸出先というのは一体どうなっているのか、そのバランスシートを下さいということをきのうお願いをしたら、それはありません、公開していませんということでした。
 私は、国会議員にうそを言わないでほしいと思うんです。そんなことあり得ないんです。なぜならば、あのときに、回収計画、それを出させて、そして国民の税金を返すということをやったわけですから、皆さんは毎年、大口貸出先にそのバランスシートを出させているはずなんです。それをぜひ公開していただきたい。
 そして、日銀総裁にお願いをしたいと思うんですが、RCCも銀行です。日銀考査というものの重要性を私たちは改めて認識をしたいと思っています。ぜひ私は、RCCの、公的な機関でもってこういうサービサー的なことをやる、公的な機関がやることについてももっと議論が必要だと思います。不良債権の現場を歩いていると、もうびっくりするような事案に当たります。ぜひ総裁に、日銀考査、これはRCCも銀行ですから、対象となっていないわけないんです。どのような不良債権の処理のされ方をしているのか、果敢に考査をしていただきたいと思うんですが、二点、金融担当大臣と総裁に要請をして、私の質問を終えたいと思います。
 ありがとうございました。
柳澤国務大臣 住専の問題については、実際これを処理しているのはRCCであるということでございまして、私も時々、鬼追社長の方から、住専の回収と、将来の二次ロスというんでしょうか、二次ロスの懸念ということの話を聞いたりいたしておりますが、今後とも、今委員のおっしゃられたように、きちっとこれを我々としてもトレースしていかないといけない、このように考えております。
中野(清)委員長代理 速水参考人。
 時間が過ぎていますから、簡潔に、的確にやってください。
速水参考人 RCCとは考査をすることになっております。しかし、今まだ活発に動いておりませんし、今後、金融庁とも相談しながら、不良債権の最終処理についてはよく私どもの方でチェックしてまいりたいと思っております。
原口委員 ありがとうございました。終わります。
中野(清)委員長代理 次に、藤島正之君。
藤島委員 自由党の藤島正之でございます。
 今ほど原口委員からちょっと質問が最初にあったのとダブるかもわかりませんけれども、G7に行ったときの会議の話は、財務大臣、先ほどされたようですけれども、その前後にアメリカのオニール長官と会われて話をされているようなんですけれども、その辺はどういうお話をされたんですか。先ほどの話が同じ話なんですか。
塩川国務大臣 この内容につきましては、原口先生の質問のときに大体お答えいたしましたので、ほぼお聞きいただいておると思いますので、時間もったいないから節約させていただいて、大体そんな内容でございましたんですが、そこでオニール長官から、いろいろ努力しておられること、議論しておられることはわかるが、一向に具体的なものが出てこない、六月に基本方針をおまとめになるということだが、ぜひそれまでには具体的なものが提示されるようにひとつ期待しておる、こういう話でありました。
 私たちも、改革というものはなかなか日数がかかるものであって、一生懸命に努力しておるけれども、何といったって、法律的な措置を要するものもあるし、また、経済の直接的な習慣を変えるということも難しいので、少しは時間をかしてくれなけりゃ、小泉政権できて一年たったから何もかも変わるということではないということで、それはそのとおりだ、こういうお話でございました。
 それと同時に、それじゃアメリカの経済は確かに、確実に回復したのかと聞いたら、二月までは相当苦労した、苦労したけれども、私は絶えず先を明るく見ておったので、今のところは見通しは明るい、間違いなく回復してくるということを彼は断言しておりました。我々も、それは大いに期待しておるということです。
 そこで、石油はどうなるのかと聞いた。これが実は今後の経済の状況に大きく影響する、こういうことを言っておりましたが、オニールさんは、石油については、若干の高低はあるだろうけれども先々はそんなに心配しておるものではない、こういうことがありました。あとは、もういろいろな、経済と不良債権の話をしたということであります。
    〔中野(清)委員長代理退席、委員長着席〕
藤島委員 その、あとはいろいろなという中で、やはり構造改革についても、あるいは不良債権処理についても、G7の会議とは別ですから、一対一ですから、かなり深く突っ込んでお話されたんじゃないかと思うんですが、それに対してオニールさんは、財務大臣の言うことを信用しているというかそういう雰囲気なのか、あるいは懐疑的に見ているという雰囲気だったのか、どちらなんですか。
塩川国務大臣 それは、私の話は非常に真剣に聞いてくれまして、一々うなずいておりました。
 郵政の郵政公社への法案の提出等についても、それはもう十分承知しておるということを言っていまして、道路の問題も言っておりましたし、規制緩和のことをどんどん進めていると言って、その点については承知しておるということで、肯定しておりました。
藤島委員 何かかなり甘いような気もするんですけれども、そのほかに税制改革についても話をされたんですか。
塩川国務大臣 税制改正の中身は何も話しませんが、先ほど原口さんのときに申しましたように、今後の先導的産業の推進のために、そのために減税もあり得ると思う、そのときには、やはり経済刺激策としての減税は考えておるんだ、これはもちろん話の中にしておきました。
藤島委員 さて、その減税ですけれども、どうも今の政府の中ではばらばらで、いろいろなことを言うとそれを否定する人が出て、こういうものはいいんじゃないかと言うとまたそれもいかぬとか、いろいろ本当にばらばらでどうにもならないぐらいなんですが、その中で一つだけ。
 財務大臣は減税先行論に傾いておいでだと思うんですけれども、かなり前向きであると思うんですが、それに対して、役人である武藤事務次官が、また一切否定するようなことを言っておると。とんでもない話だと思うんですけれども、この辺はどうなんでしょうか。
塩川国務大臣 そういうことはあり得ないと思います。
 それに対しましては、要するに、個々の新聞記者のぶら下がりの、何といいましょうか取材というのは、これはちょいつかみの取材ですから、私は、これが非常に先生方の判断に影響しておると、いいか悪いかは別にしまして思っておるのですが、やはり、こういう場できちっとした議論をしておいていただいたらいいと思います。
 武藤次官の言っているのは、要するに、一定の期間バランスをとってもらうということであるならば、減税先行だって何もいとうところじゃない、この考え方は間違いないと思います。
藤島委員 ぶら下がりだからいいかげんなことを言っていいということじゃないんじゃないですかね。
塩川国務大臣 いやいや、違う、違う。そういうこと言われるから私は困る。そういうこと言われるから困る。
 ぶら下がりで意見を聞いて、それが、ぽんぽんと発言が出てくることが、これが、うそではないんだ、ぶら下がりだから。けれども、上と下を抜いて真ん中だけちょっと言うたら誤解受けるでしょう。私は、そういう報道のあり方が間違いだと言っておるんです。ですから、上と下ときちっと聞いてもらわなけりゃ意味は通ってもらわない、私はそれを言うておるんで、いいかげんなことを新聞記者が言っているとは、絶対そんなこと言っていませんよ。そういう誤解されるから困る。
藤島委員 そうすると、あれですか、新聞が、一紙だけならいいんですけれどもいろいろな各紙が全部誤解をしている、こういうことになると、やはり、ぶら下がりといえども説明不足であるということになるんじゃないでしょうか。
塩川国務大臣 それはどの新聞にどう書いていますか。ちょっと言ってください、参考のために。
藤島委員 これは、幾つかあったんですけれども、毎日新聞と日経だったと思いますけれども、今ちょっとデータ、そこにないんですけれどもね。
 国民は、そういうマスコミを見ながら判断するわけですから、大事な話は、ぶら下がりがどうのこうのじゃなくて、やはりきちっと真意も言った方がいいと思うんですね。
 これは、タイトルは、毎日新聞で、大臣の写真入りで、「先行減税論尻すぼみ」、こう書いてあるわけですね。それで、十八日の武藤……(塩川国務大臣「減税先行もあり得ると書いていないですか」と呼ぶ)「尻すぼみ」、こうなっているんですね。(塩川国務大臣「そうでしょう、減税先行もあり得る」と呼ぶ)
 一方、武藤次官は、十八日の記者会見ではっきりこう言っておるわけですね、塩川財務大臣が示した原則について云々とこうなって、ちょっとマイナスの方のベクトルの話をしておるものですから、そうすると、右に行ったり左に行ったり、国民の目から見ると非常にわかりづらいということだと思うんですね。特に、大臣の話であれば、大臣がきちっと話をするのならいいんですけれども、役人である武藤次官が記者会見でいろいろ言うということがいいかどうかですね。問題があるんじゃないかと私は思います。
 次に、金融検査の点について少し細かく質問させていただきます。
 正常先、要注意先、要管理先それから破綻懸念先、こういう区分になっているわけですけれども、この区分は、具体的な対象をどういうふうに検査をしてこういう区分をするのか。
 普通であれば、ある項目ごとに何点、何点、何点、合計何点と。例えば、何点以上ならば正常先、あるいは何点から何点までが要注意先、そういうのであれば、これは公にするわけじゃないんですけれども非常にわかりやすいわけですけれども、そうでないと、検査担当官の主観がかなり入ってくるんじゃなかろうか、こう思うんですが、その区分けの基準みたいなものを御説明いただけますか。
五味政府参考人 お答えいたします。
 債務者区分は、公認会計士協会の実務指針をベースにいたしまして、金融検査マニュアルで、もう少し着眼点などを検証ポイントという形で整理をしたものでチェックをしてまいります。おっしゃいましたような得点制にはなっておりません。
 基本となりますのは、やはり債務者の債務償還能力をあらわしますさまざまな事象、こういったものについてどういう現象が起こっているかということをチェックしていく。
 例えば、要注意先でございますと、金利減免や棚上げを行っている、こういった貸し付けの条件に問題が生じているというような事象がないかどうか。あるいは、元本の返済や利息の支払いが延滞をしている、あるいは事実上延滞をしているといったような現象があらわれているかいないか、こういった履行状況の問題。さらには、こういった履行状況がある程度確保されていましても、債務者の業況がどういう状況にあるか。この業況が非常に低調であったり不安定であって、企業としての財務内容に問題があるといったようなことになっていないか。
 こういった、いわば債務償還能力という点から見て、今後の債権管理を行っていく上でどの程度の注意を必要とするか、こういった点を判断してまいりまして、それぞれ、これは破綻懸念あるいは実質破綻といったようなものについても着眼ポイントが示されておりますが、そうしたものを判定していくということであります。
 なかなか、自動販売機のように、上から条件が入ると下から債務者区分が出てくるというようなわけにはまいりませんで、これまでの積み重ねと、それから会計士の見解など、これは、会計士の見解は当然途中で聴取をいたしますし、そういったようなやり方で、正確性を随所で確保しながら確定をしていく、こういうことでやっております。
藤島委員 なかなか点数制にはなじまないし、難しい面はあると思うんですけれども。これからちょっと御質問する方につながっていくんですけれども、それでは、今回行った検査の具体的な方法、これについては、例えば、どういうチームで、何人ぐらいで、何日間ぐらい、こういう点について御説明いただけますか。
五味政府参考人 お答えいたします。今回の特別検査の関係の体制ということでお答えをいたします。
 今回行いました特別検査は、検査班を三班編成をいたしました。そして、これは専従の班でございますので、他の検査には一切関与しないでこれだけに注力をするという検査班でございます。この三班は、各班を六名で構成をいたしました。六名の主任検査官といいますが、責任者を務めます者は、現在の検査局の各検査部門の統括検査官を務めている者、これを充てております。おのおの統括検査官が三班のヘッドという形になっております。また、検査官の中に公認会計士が八名ほどおりますが、このうち三名を各班一名ずつ配置をいたしました。
 全体としては、目的が非常に限られた検査、すなわち、特定の債務者の資産査定と適切な償却、引き当てという部分に限定をされた、信用リスクチェックの中でもさらに限定されたものでございますので、公認会計士は償却、引き当てなどにも能力がございますが、こうした資産査定に特に能力のすぐれている検査官を選抜してここに張りつけたという形で行いました。
 検査は、平成十三年の十月二十九日に着手をいたしまして、今月の十一日、四月十一日に、検査の結果を主要十三行すべてについて通知をいたしております。
 日程的には、三班の検査班がチェックをいたします債務者のウエートがある程度、ワークロードが等しくなるように担当の銀行を決めまして、したがって、一班で複数の銀行を担当することになります。この銀行に、十月二十九日の着手以降、順次立ち入りを行って、三者協議という形で査定作業を行った。すなわち、銀行と銀行の関与公認会計士、そして検査官という形で特定の債務者を三者で議論しながら、立ち入りをして、債務者区分を確定し、償却、引き当て額を計算していったということでございます。
 順次入っておりますので、債務者数の多い銀行には比較的長く入っておりますし、そうでないところは短いといったような濃淡がございました。これは、断続的に、年内、一通り議論をさせていただき、年明け、また、今度は新しい状況を踏まえて、一通り立ち入りをしてさらに議論を深める、こういう形で行ってまいりました。
 どこに何日間というようなお話は、また、さまざまな報道との関係で債務者が推定されてしまうおそれがありますので、申し上げかねますけれども、およそこのような感じで、順次の立ち入りを断続的に繰り返しながら、三月末日までの段階での債務者区分の確定を行ってきたということであります。
藤島委員 こんな大事な検査なんですけれども、私の感覚としては、たった三班の十八人、これでいいのかなと。要するに、日本じゅうがこれを注視している中で、この程度の規模で十分だ、こういうふうに、これは金融大臣、よろしいんでしょうか。
柳澤国務大臣 これはいわば通常の検査、これも実は大手行については、毎年一回にするとか、あるいは、先ほど言ったように、前の検査で指摘されたことが次の決算に反映しているかというようなことを確認するフォローアップ検査等の手法によって、かなり強化をしているわけですね。その上に、市場の評価が急変しているというような債務者等について、その債務者に着目した検査をする、それをリアルタイムでするというような検査でありまして、私どもとしては、異例、例外的な検査だというふうに思っているわけです。したがって、そういうしなきゃいけない対象というものも、おのずから限られてくるわけであります。もちろん、その対象を決める際には、検査の部局の職員にかかるロードというものと相互にフィードバックさせながら現実決めるわけですけれども、そういうような検査であった。
 つまり、非常に例外的な、補完的な検査であったということでございまして、その他の、一般の資産の査定であるとか、引き当て、償却であるとかということについては、これは通常検査で十分対応できる。十分対応できないものは何かということで、あるいは十分対応できなかった場合非常に危険なものは何かというようなことで今回の検査が行われたということでございまして、確かに藤島委員が御指摘になられるように、何か、このことに国民がすごい関心を寄せられたということもあるんですけれども、我々の位置づけというのはあくまでもそうしたものであったということで、それでまた十分適切な対応であったというふうに考えているということでございます。
藤島委員 鳴り物入りでやったわけですね、三月危機との関係もあって。鳴り物入りでやるにしては内容が非常に限定されている。先ほど、原口委員からもあったように、大手行だけではなくて、ほかもいっぱいやる必要があったんじゃないかなと私は思うんです。
 その点も、今の十八人体制というような組織ではやはり限界もあり、大手行だけにとどまらざるを得なかったんじゃないかなという感じがするんですが、もう少し、検査のやり方ですけれども、外部監査法人、こういうものをもっとふんだんに使ってやるべきであったのではないか。そうすれば、一時的なものですから、かなりの規模の人数も集められるし、あるいは、何班という班もかなり多くの班をつくれるわけですし、そうすれば、大手行だけじゃなくて、先ほどのようないろいろな小さいところも現実調べてみる必要があったのを、そういうものをやれたのじゃなかろうかという気がするわけです。
 特に、今回、金融庁の役人の方が多かったんでしょうけれども、先ほど最初に検査のマニュアルの基準みたいなものがないかという話との関係なんですけれども、やはり、企業の検査には、企業の再建計画とか、あるいは企業での競争力を評価するとか、そういった部分があるわけですね。そういった部分を本当に役所の検査官が評価できるのかどうか、この辺はどういうふうに考えているんでしょうか。
五味政府参考人 その部分の評価というのが、まさに、債務者区分を確定していくために不可欠の部分でありますので、それが検査官の使命でありまして、私の見ますところ、経験の浅い検査官はともかくといたしまして、今回選ばれました各班六名の検査官につきましては、十二分に過ぎるぐらいのその点での実力は備えておったと考えております。
藤島委員 私は、なかなかここは難しいところじゃないかなという感じはするんですよね。かなり経営に詳しくないと判断できないんじゃなかろうか。資料的にいうと、確かに銀行は、自分の銀行が経営が悪化するかどうかの問題ですから、かなり貸出先に対する資料は整ってはいると思うんですね。しかし、それに対する、先ほどの説明の中にも、資産査定の分野、こういったものは意外とそんな難しくないんだろうと思うんですね、現物を評価したりいろいろすればいいんですけれども。そのほかに、本業、あるいはそのほかの将来の競争力、今はかなり財政状態悪くても、これから先この会社が十分利益を上げていく体質がある、そういうふうな評価は、これが入っているわけですね、先ほどの区分の中に。これに対しては、本当に普通の役人の方がそう簡単にできるものなのかどうか、私は非常に疑問に思うわけですけれども、そこら辺はもう一度答弁願います。
五味政府参考人 先ほどの答弁と同じになってしまうんですけれども、資産査定と再建計画、再建計画を評価するというのはすなわち資産査定でありまして、全く同じことなんですね。
 再建計画ができまして、その再建計画ができた段階で、その債務者の債務償還能力がどう向上したかというところを査定する、それによって債務者区分を確定するというのが再建計画がある場合の資産査定。ない場合には、当然再建計画がない状態での債務者の債務償還能力を確定していくということでございますから、使います資料、データといったようなものが違うわけでもございません。
 それから、当然ですが、検査官は企業経営を行うわけではありませんし、企業経営の能力のある検査官はおるかと言われると私全く自信はありませんが、経営していく上での企業の将来の像を示すさまざまな指標というものを、会計上のさまざまなルールに翻訳をしてこれを評価していく、この技法については十分な訓練を経ておりますし、知識も持っておる、こういうことでございます。
藤島委員 どうもちょっとかみ合わないんですけれども、やはり、査定をするときに、その対象企業の将来の経営が少しずつ悪くなっていくのか、あるいは逆に、今は資産内容が悪くても人材その他でよくなっていくのか、こういう評価なんですね。これは企業経営的なセンスといいますか、なければ判断できないんじゃないかなという感じがするんですよ。
 では、そこで私はやはり監査法人、アメリカの監査法人でちょっとおかしくなったのもありますけれども、ああいう経営の分析を専門にしている監査法人をもっと使ったらいいのじゃなかろうか。守秘義務の問題は出るかもわかりませんけれども、現に会計士等を使っておられたようですし、これからの検査はもっとそういうのを使って、今回のような検査の場合ですよ、特別検査の場合は、もっと大々的に、あれだけ鳴り物入りでやったにしては、私は検査対象と内容が非常に何か一部にしかすぎないなという感じがしておるわけですね。もっと大々的にやるのであれば、そういった経営判断の専門家を臨時に登用して、短期間に集中してやるべきだ。
 だらだらだらだら、それは十八人でやっていたんじゃ半年もかかると思いますけれども、そんなんじゃやはりいかぬのじゃなかろうか。やはり、一、二カ月でぱっとやって、成果はこうだというものを、そうじゃないと、国民は、だらだらやっているからかえって疑心暗鬼になるのであって、その間、まあよさそうだ、どうも公的資金注入しないといかぬそうだというのがどんどん両方の形で出る、こういうのはやはり不信感を持つということになるので、私は、今後こういうことをやるのであれば、ぜひそういった評価の専門家を一時的にどんとやる、そういうことをやっていただいた方がいいんじゃなかろうか、こう思いますので、その点を質問したわけであります。
 ところで、四月十二日に柳澤大臣は、事後チェックが基本の金融行政としては例外的な措置であり、これをピークに不良債権処理損失は下降線をたどるだろう、こうおっしゃっているんですけれども、これをピークに不良債権処理損失は下降線をたどるだろう、これはどういう根拠でおっしゃっておられますか。
柳澤国務大臣 ちょっとその御質問の前に、先ほど前段で委員が触れられた点について申し上げますと、ちょっといろいろなことが、我々の言葉も、何というかその場その場で使いますので、委員が誤解をされていることも十分あり得るわけです。
 まず、資産査定という言葉ですけれども、これは何か固定資産の査定ということではなくて、これはもう銀行のバランスシートの資産側にあるものの評価という意味でございます。したがって、それには銀行の資産の場合には、貸出金債権というものが一番大きな資産でございまして、その査定、それで、その査定というものは、日本の場合にはコーポレートファイナンス方式でやりますものですから、つまり人的な貸し付けでございますので、その評価というものが債務者区分という評価の手法をとっているんだということでございますので、ちょっとまずそこのところを御理解賜りたいと思います。
 それから、公認会計士を入れたらどうだということでございまして、五味局長の方は、公認会計士が一チームに一人入りましたという場合の公認会計士というのは、公認会計士の資格を持っている国家公務員が検査官になっていて入ったという意味でございます。外部の人を臨時的に採用して、これを導入したという意味ではないということでございます。
 それから、こうした問題のときに、外部の公認会計士の方の方がいいじゃないかというようなお話をなさいましたけれども、我々の方の検査のマニュアルと検査官の経験の積み重ねというのは、正直言って公認会計士の試験を通られて、そしてある程度実務を積んで公認会計士の資格を取られた方々にまさるとも劣らない技量を持っているということでございますので、この点も少しイメージを改めていただけたら大変ありがたい、こういうように思います。
 不良債権の推移でございますけれども、これは我々は二つのメルクマールで見ております。一つは、不良債権の残高そのもので要管理先の債権の残高の推移を見るし、またそれが全体の貸し出し債権に対する比率、これを不良債権比率と言っておりますけれども、基本的には不良債権の残高をフォローしていくという格好で見る場合もございます。
 これについて、私は記者会見でも申したと思いますけれども、我々一定の推計をこれからまた作業します。ラフな推計はもう既にしているんですけれどもこれは外部には、出すとこういったことというのは混乱を招きますので出してはおりませんけれども、非常にラフな推計はしているわけでございます。そうすると、いわゆる集中調整期間の最初の二年間というのは、むしろ残高は減らないというふうに推計していますということです。
 もう一つの不良債権のメルクマールというのは処理損でございます。これは小難しい言葉ですけれども、与信費用比率というふうに言うわけでございますけれども、これの推移を見ております。この推移については、今回で言うと七・八兆だとか七・一兆というのがそういうものでございますけれども、これはここ数年のことを申しますと、平成九年に十兆ぐらいやりました。十年にも十兆ぐらいやりました。その後二年間四兆五千、四兆三千ぐらいやりました。それで、今度七・八兆というもう一つの山ができたわけでございます。
 これについては、特別検査の結果もあって、そういうようなところがやや前倒し的に処理をしたというようなことがありますので、これは外部の経済環境にもちろんよるわけです、不良債権の新規発生というものは外部の経済環境と無関係ではありませんから、よるわけですが、それについては「改革と展望」で示されたような名目成長率の推移というものを前提に考えますと、この七・八兆がさらに八兆、九兆、十兆というように上がるということではなくて、むしろ大体我々の業務純益であるところの四兆に近づいていくという傾向をたどるであろうという見通しを申し述べさせていただいたということでございます。
藤島委員 全体の経済がどうなっていくかにもかかってはくるんだと思いますけれども、全体の経済もここが底ばいという判断が恐らく根底にはあるんだろう、こうは思いますけれども。
 その前に、資産査定の部分ですけれども、私も全く同じなんですけれども、ただ、経営ですから、数字に評価できていない、例えば、人材が非常に豊富におるとか、資産計上までされていないノウハウというんですか、特許に近いそういうものがたくさんあるとか、そういうのもこれからの経営には非常に大きな意味があるわけであって、それが必ずしも資産査定と違う分野でなかなか判断が難しいような部分だろうと思うんですね。
 それと会計士、確かに私も部外の会計士かと思っておりましたけれども、そうではない、公務員の会計士さんだということですけれども。まあそれはそれで結構なんですけれども。先ほどのような観点から、私は、どんと一度にやるには、やはり人材がそんなにない公務員だけに頼っていないで、もっと民間のそういったセンスのある人を一時的に公務員に採用するなりしてもやるべきじゃないか、むしろそれに適しているんじゃなかろうかなという感じもしておるものですから申し上げたわけであります。
 まだ検査についていろいろお聞きしたいんですけれども、時間でございますので、最後に、午前中、四大銀行の社長さんにお見えいただいて、質問もしたんですけれども、一般に、銀行の経営の甘さが国民の目から見ても、ほかの企業から見てもあるわけですね。ですから、ほかの企業は、今回利益が上がる企業もありますけれども、それは非常に努力をして、リストラをやって、身を切る思いでやっておるわけですね。それに対して銀行は、まだまだ、給与体系にしましても、切り下げの努力はしているようですけれども、ほかの企業群に比べると非常に高い。あるいは、元頭取みたいな方が終身顧問かなんかで一人数千万円もらっているとか、退職金なんかも非常に高い。そんな感じが国民の目から見るとかなり強いわけですけれども、金融担当大臣からは、その辺の国民の意向を踏まえて、できるだけ、公的資金も注入しているわけですから、ぜひきちっと指導して、国民の納得いくような方向でやっていっていただきたい、こうお願いをして質問を終わります。
 ありがとうございました。
坂本委員長 次に、吉井英勝君。
吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。
 せんだって、柳澤大臣の方は、決済機能というのは銀行にとって第一の生命線だ、こういうお話をされました。私、けさの参考人の皆さんとの質疑のときにも、銀行の役割として決済機能というのは本当に魂になるところですから、そういう角度から質問したんですが、そういう点では、決済機能をどうして確実に果たさせるかというところに、今度は金融庁の側の検査とか監督の大事な意味、言ってみれば、金融庁の存在意義のかなりのものがここにもかかってくるというふうに思うわけでありますが、そういうところから、みずほ銀行、コーポレート銀行で現実に起こっている事態をまずどのように掌握しておられるのか、ここのところから最初に政府参考人の方に伺っておきたいと思うんです。
 例えば、自治体の公金の収納の問題ですね。これは、例えば、規模は大きくなってきますと一日約百億円ぐらいのお金が自治体の中に設けてある銀行に入って、それがその銀行であれば同じ銀行の中のやりとりということになりますし、違う銀行の場合であれば、それが、大体役所の方は五時ごろまでやっておっても、銀行の方は三時で一応終わりますから、そこで、電話送金等でやりとりするわけですね。午後三時までだったら問題ないわけですが、午後三時をおくれますと、午後三時二十分までなら全銀システムの方で対応が可能となりますし、さらに、午後三時二十分を越えて三時半までだったら日銀ネットでもって対応がされる。三時半過ぎると翌日回しということになってこようかと思うんです。
 ところが、三時過ぎて未送金という状態が四月一日以降のみずほのトラブルの中で発生したときに、現場ではこのみずほの支店から本部の資金管理部と総合事務部の方にそれぞれどう対応するかということが、どう対応したらいいかということが、課長あるいは課長代理がそれぞれに電話をして問い合わせをして指示を仰ぐというぐらい混乱した状態が生まれたりしておりました。
 やはり、公金、これだけ大きなお金が扱われるだけに、この振り込みのトラブルとか、それは同じ銀行内部であれ、あるいは他行との間であれ、解決までにどういう取り組みがなされてきたかなど、つかんでおられるかどうか、つかんでおられたらお聞きしたいし、つかんでおられないならつかんでおられないということで結構ですが、どうですか。
高木政府参考人 お答え申し上げます。
 まず、みずほにつきましては、大きく分けてATM障害とそれから口座振替の問題が生じたわけでございます。
 それで、ATM障害につきましてもそれぞれの原因に応じまして、銀行の対応としてはプログラム修正をするとかあるいは――基本的にATMについてはプログラム修正をしたということでございます。それから、口座振替の関係につきましては、そもそもデータ受け付け管理事務に不手際があったとかいうこともあって大変混乱したわけでございますが、その辺についてはとにかく人海戦術で一生懸命やり、それから、システムのふぐあいもございましたが、その辺については手当てをしたということで、雑駁で恐縮でございますけれども、プログラム修正と、それから人海戦術で一生懸命対応したというふうに承知しております。
吉井委員 そのプログラム修正、人海戦術の話は知っているんですけれども、自治体が扱っているお金、大体午後三時過ぎぐらいにこれは非常に大きな金額が動くわけですね。それについて、どういう問題が発生したかとか、どういうふうな取り扱いがなされていったかとか、解決までの経過等についてつかんでおられるかどうか、そこを伺っているんです。
高木政府参考人 お答え申し上げます。
 その辺も含めて、今鋭意実態解明に取り組んでいるところでございますので、もう少しお時間をいただきたいと思います。
吉井委員 そうすると、みずほは実態解明中だというお話ですから、UFJの方、こちらは一月十五日以降約一カ月間の問題でしたから、十分実態等はつかんでいらっしゃると思うんですが、けさもこれは質問じゃなくて紹介しておきましたが、この三月二十七日にオリコの新規登録の九百四十件分が引き落とされなかった、そういうトラブルが発生しました。
 四月十三日にオリコの引き落とし未済が確認されたわけですが、一月十五日ごろのトラブルかと思ったら、今日でもやはりシステム統合に伴うトラブルが、事務手続なりあるいは打鍵の誤り等含めて発生している、こういう状況があるわけです。ですから、UFJでも一月十五日の話がまだ三月下旬になってもこういう事件が起こっているわけですから、みずほの場合かなり長期化するということも懸念されるなと私は思っているんですが、とりあえずUFJでのこのオリコの問題など、報告はきちんと行っているのかとか、つかんでいらっしゃるのか、これを伺いたいと思います。
高木政府参考人 お答え申し上げます。
 UFJのオリコの口座引き落としの件でございますが、我々が事実を、御指摘もあって調べているわけですけれども、現時点で把握しておりますことは、一月に発生したシステム障害とは無関係な事務処理ミスだというふうに聞いております。そういう事務処理ミスの結果、オリコカードの新規加入者について、初回引き落としが三月二十七日にできなかったというふうに聞いております。
吉井委員 大体、システムに直接間接にかかわっておっても全部、多くは単純ミスとか単純な事務ミスという扱いで済まされて、何が本質的な問題かということの究明を企業の側でもかなり避けているというところがありますので、それは、けさの参考人質疑のときにもシステムトラブルの問題と。しかし、そこで解消できない経営上の非常に重要な問題、それも取り上げました。ですから、今聞いたところの単純な事務処理ミスということだけじゃなしに、もっと深めた検査というものを行うべきだろうというふうに思います。
 次に伺いますが、UFJの方は一月二日だったと思うんですが、お正月のときに、全国すべてのATMに一台につき一人の担当者を張りつけて、それで一斉にこのATMの機械を操作して、一斉に十五分動かして十分間休んでまた十五分動かす、トラブルが発生しないかどうかの確認作業をするなど模擬練習して、システムに異常があれば修理するというやり方で進めてきたわけですね。
 みずほの方は、機械をとめて、全国の支店すべてのATM端末で一斉に打鍵するなどのリハーサルは、聞いてみますと、やっていないというわけですね。システム移行作業グループの者だけについて、ストレスをかける検査をやらせただけと。だから、故障など結局は直し切らないまま出発したということがやはり問題であったように思うんですが、これは、リハーサルなしでも四月一日から進めていくことを認めるという立場でやってこられたのかどうか、これを伺いたいんです。
高木政府参考人 お答え申し上げます。
 UFJの件もございまして、きちっとした十分なテスト等をやって、対応に万全を期すように我々は求めてきたということでございます。
吉井委員 対応を求めて相手がやらなきゃ、きちっとやらすということがやはり大事なんじゃないですか。東京電力の南社長が、事前のテストを申し入れたが断られたということも明らかにしてはりますね。それから、東京ガスの話なども、これはけさ参考人にも伺いました。こういうのはきちんと三月段階で、あるいは一月段階で報告を受けていたのかどうか、これを伺いたいと思います。
高木政府参考人 お答え申し上げます。
 三月段階で報告は受けておりません。
吉井委員 それで、これはこの間の、十二日のこの委員会で、柳澤大臣の方も、心配が的中して残念だというお話がありました。「十月に検査結果通知という形で通知をいたしておるわけでございますけれども、そのときに問題になった主たることというのは、こういうスケジュールで進んで本当にテストの時間等が確保できるのか、その点、懸念があるということでございまして」という、やはり大臣も心配してはったということはよくわかりました。
 それで、一月の、東京ガスとか東京電力がテストを求めたことを知っていたか知っていないかにとどまらないで、やはりずっと大臣も懸念してはったわけだから、これは金融庁としては、業者任せで、テストを実施することを求めるだけじゃなしに、やはりきちんと、本当に大丈夫なのかと、そのことを指示するということがあったのかどうかということがやはり問われてくると思うんですね。
 これは、テストをきちんと指示したんですか。指示したが相手が言うことを聞かなかった、一回言うて聞かなかったのでもうあきらめちゃったのか、そこはどうなんですか。
高木政府参考人 お答え申し上げます。
 今具体的に先生の方からお話がございました東京電力の件と東京ガスの件を例に少し挙げたいと思うんですが、まだ完全に実態を掌握しているわけではございませんけれども、現時点で我々がヒアリング等したところによりますと、例えば東京電力の件ですが、ことしの二月十五日に、東京電力から口座振替請求データを持ち込むのでテストしてほしいという要請があったそうでございます。それで、三月一日に、みずほの方は、東京電力と相談の上で、東京電力の過去のデータを使ってテストを実施するということで、東京電力の方にお断りしたようでございます。東京電力との間ではそのテスト結果を報告するという約束になっていたようでございますが、みずほでは、三月上旬から中旬にかけてテストはやったんですけれども、先方への報告を失念していたというふうに現状では聞いております。
 それから、東京ガスでございますが、三月十五日に東京ガスから、四月一日から新しいフォーマットで口座振替請求データを持ち込みたいというふうな相談が、それが可能かどうかという相談があったそうでございます。これに対しまして、みずほの方は、いろいろ検討した結果、個別システムの開発が必要なので六月まで時間が欲しいという回答をしたと聞いております。東京ガスの方はその旨了解して、六月までは昔の、従来のベースで持ち込むということになったというふうに聞いております。
吉井委員 今、大口の二つをお聞きしただけでも、とてもじゃないが準備が整っているような状況じゃないと思うんですね。
 そういうことでこれを始めるのをオーケーしたのかなということを今非常に不思議に思ったんですが、これは午前中も指摘しましたが、みずほの三月二十八日の文書の中では、「統一した事務処理がおこなわれないことから混乱が生じるケースがある」と書いていたんですね。これはみずほ自身の文書に載っているんです。ですから、経営陣の判断の中にも、混乱が避けられないという認識はあったと思われるんですよ。「新事務手続書は、四月一日までに営業店に到着しない予定」という文章までここに書いてあったんです。
 つまり、新しいフォーマットでやるとかいろいろなことをやりますと、三つの銀行の統合ですから、旧富士銀行の場合はこういうやり方をしました、新しいみずほ銀行だったらこういうふうにやります、貸借対照表をつける、そういうのをきちっとしないと、幾ら事務手続だ何だといったって、うまくいかないわけですね。
 そういう問題があって、実際に現場で聞いてみますと、そういうやりかえたりしなきゃいけないものを含めて、伝票、帳票類、大体数百から数千種類のものが現場に届いてきたのは前日の三月三十一日というところがあったと。けさも、社長のお話によると、宅急便業者が入り口がわからなかったからうろうろしたとか、何とも漫画チックな話まで出てきたわけです。
 こういう事実など、つまり三月二十八日に内部でも、これは大変だと文書まで出ていた、そういうことなどを金融庁は何も御存じなかったのか。あるいは、四月一日からの出発というのは平穏無事に進むものだ、こういうふうに考えておられたのか。これは監督する立場からして、その点はどうだったんですか。
高木政府参考人 お答え申し上げます。
 今先生がおっしゃったような具体的な報告は受けておりません、三月時点では。ただ、四月一日からの移行に問題はないということは聞いていたということでございます。(吉井委員「聞いていたんですね」と呼ぶ)ええ、我々はそういうふうに説明を受けていたということでございます。
吉井委員 そうすると、四月一日から出発するのは大分心配な状態だということはみずほの方からも聞いておられて、それでも出発してよろしいと。そこのところの判断は、これは大臣、大臣としては当然、検査、監督、それぞれの局長さんらと御相談もされたと思うんですが、大臣として、しかし、心配なことはあるが、四月一日から始めてもいい、そういう判断をしておられたんですか。これは大臣の方に伺っておきますから。
高木政府参考人 ちょっと私のさっきのお答えが正確でなかったかもわかりませんけれども、そういうトラブルといいますか、そういう問題が生じているということは一切聞いてなくて、四月一日からの移行について問題はないと聞いていたということを申し上げたわけでございます。
吉井委員 これまでからもこの委員会で議論されたと思うんですが、金融庁の金融検査マニュアル、この中で、新しいソフトを開発したりシステムの統合をやったり、いろいろな場合のリスク管理の態勢のチェックの中にテストというのがあるんですね。これは大臣もよく御存じのところですが、「テストは適切かつ十分に行われているか」と。あとの細かいところはもう読みませんけれども。つまり、ちゃんと検査マニュアルがあって、テストは適切かつ十分に行われているかどうかについては、少なくとも懸念される問題が随分あったんですから、これは何段階にも、きちんと問い合わせもすれば、乗り込んでいってチェックをすることとか。
 何で私がここをしつこく言うかといいますと、大臣も言っておられるように、決済機能というのは銀行の第一の生命線なんです。決済機能が確実に果たされるかどうかというのは非常に大事なところで、もしこれに揺らぎが出たら深刻な問題なんですよ。だから、この検査マニュアルに基づいて、本当にきちんと、これは危ないとなれば、何度も何度も、これはもう毎日行ったっておかしくない話なんですよ。そういうことをやられたのかどうかということが、今金融庁に問われているところだと私は思うんです。どうなんですか。
柳澤国務大臣 これは、早い段階で検査が行われて、そしてスケジュールのおくれがあるけれども大丈夫だろうかということ、大まかに言ってそういう指摘をしているわけです。そして、その後、問題は監督部局に移っていて、監督部局からは何回もそういうことのだめ押し的な確認をしておった、こういうことですね。
 ですから、問題は、それが大丈夫です、万全を期していますので円滑に四月一日から滑り出すはずですというようなことというのはどういうところから出てきたか。ある意味で、後にまた修正しなきゃならぬかもしれませんが、あえて、今の単純な事実からすると虚偽の報告ですね、これは。そういうことを受けていたということで、金融当局としてはその報告を信じて、その間別段の処理あるいは統合計画そのものの見直しというようなことについて何ら指示をしないままに、期日どおりの統合に進んでいったということでございます。
 そういうようなこともあって、私はこれはずっと、二十四条報告を直ちに徴求して、期限を切ってその報告もいただいて、その後、中間報告ですというからその後の補完的な報告も随時いただいているわけですけれども、しかしこれは、特に事務の手違いとかそういうような人手の部分のある意味の間違いとか、それから磁気テープの表示がどうのこうのとか極めて物理的なものもありますので、これはとてもその報告だけを徴してそれを信ずるということにはちょっといかないんじゃないかということで、非常に早い段階で私は立入検査を決断しました。
 しかし、この立入検査ということをいつ発表するかというのはこれはまた別問題でありまして、当座混乱が一応鎮静したときに発表をさせてもらって、そして、現実にかなり事態が鎮静した後において、すべての問題をトレースし直して、何が起こったのか、責任の所在、どういう責任がそこに存在するのかというようなことについて、改めてこれはもう根本から問い直していかないといけない、こういうことで今回事案を処理したい、このように考えているわけです。
吉井委員 私、検査する、報告を求める、そしてきちっとよく調べて、精査して、判断を大臣も下される、そこはよくわかるんです。ただ、決済機能をどうして確実に果たさせるかというこの部分は、本当は金融庁内部の責任の非常に重いところだと思うんですよ。それが、大臣は答弁の中で、十月に検査結果通知という形で通知いたしておると。そのときに問題になっていた、このスケジュールでいったら本当にテストの時間をとれるのか、大変じゃないか、そういう点で懸念があるということを随分言うてきはったわけですよね。いろいろな話も聞こえておったわけですよ、UFJの経験も含めて。
 そういう中で、しかし、きちんと入っていって、検査して、監督して、これは決済機能がこんな長期にわたって失われるようなことになるというんだったら、四月一日これは無理だろう、四月一日からやるんだったら、文字どおりこういうチェックを事前にやらなきゃいけないとか体制をとらなきゃいけないとか、それをやるのが検査を受けての今度は監督の方の話だと思うんですが。
 私は、そういう点では、今回の問題というのは、金融庁自身が決済機能を確実に果たさせるという点で非常に、考え方が甘いという言葉で済まないぐらいの重い責任があると思っているんです。大臣にこの点、伺っておきたいと思います。
柳澤国務大臣 最終的にはもう金融庁に責任があると言われればそれはそうなんですが、しかし、相手も非常に大きな企業で、立派な方々がそこにいて運営をしているものでございまして、大丈夫ですというものを、本当に大丈夫かといって本当に行かなきゃならなかったのかどうか。これは、もう少し事態を調べたり、あるいは、場合によってはこうした問題が、類似の問題が起こっているかどうかはともかくとして諸外国の例なぞも調べてみて、我々反省すべきところは反省するということはもう当然のことだと思っておりますけれども、責任云々ということについて申し上げれば、もう少し事態がはっきりした段階でこの問題については答えを出すべきだというふうに考えているということです。
吉井委員 私は、みずほの責任は責任としてあると思うんです。みずほの責任というのは、やはり銀行の生命線である決済機能というものを確実に果たすということを考えたときに、どういう対応をしてきたのかということで非常に大きい責任があると思っているんです。しかし同時に、その決済機能をどう確実に果たさせるかということについての金融庁の側の責任というものを、どっちかがお互いに責任を振り合って済む話じゃないというふうに思っているんですよ。
 何でこれをしつこく言うかといいますと、実は一月二十五日に、大阪で相互信金を、金融庁の方の非常に厳しい検査によって債務超過だということにして、破綻させたわけですよ。ここの総代会の皆さんは、総代会を開いたというのは非常に珍しい例ですが、解散するということと、それから代替許可については、出席者の四分の三の総代の方が反対されたのです。だから、裁判所の方も、代替許可なんといったって認められないという判断をしたわけですね。
 そのときに、二十五日と言ったら、二十五日にかけて金融庁の方は、相互信金の管財人の方に対しても、もう夜の十時から午前一時ごろにかけてやいやい言って、金融庁、近畿財務局の方が、とにかくこの総代の皆さんに賛成票をもろうてこい、とにかく裁判所が代替許可を出してくれるようにやれと物すごいことをやっているんですよ。
 一方では大阪の相互信用金庫というところにはそれぐらいやっておきながら、同じ時期に、本当に日本の金融の決済機能にかかわってくるこの問題については、あれだけ問題になっておったのに一体金融庁の皆さん何をやっていたのか、それが問われるぐらいの問題になっているんですよ。
 だから、私はこういうふうな問題について、本当に金融庁としてあいまいな済まし方じゃなくて、きちんと責任を果たしていくということをやってもらわなきゃいけないと思うんです。
 時間が大分たってきましたから、これはひょっとしたら最後の質問になるかもしれませんが、手形決済問題です。口振というのは相対取引ですから影響の範囲が狭いのですよ。しかし、手形決済というのは社会的に物すごい波及効果が大きいんです、影響が大きいわけですね。
 この前、前田社長が来られたときに、手形の決済等で一部事務の不都合があった可能性がございます、一部という言い方は非常に不正確で申しわけないんですが、そんなにたくさんの数があったとは聞いておりません、これは参議院の方の財金の委員会ですね、この間、十六日です。手形決済の一部で不都合が生じたというわけですが、一体、一部とはどれぐらいのものなのか、具体的に報告をさせてきちんとつかんでおられるのか。つかんでおられたら、主な内容としてはどういうものなのか、これを伺っておきたいと思うんです。
高木政府参考人 お答え申し上げます。
 参議院の方で、一部参考人としてそういう答弁があったことは承知しております。我々は、それも含めて実態解明に努めておりますが、現時点では承知しておりません。
吉井委員 その点で、けさも社長相手にやったんですけれども、仮払いが物すごく多いのですよ。仮払いというのはATMの話じゃないですよ。実際に手形決済がきちんとできないと。だからあいまいなところで、つぶすようなことになっちゃいけないものですから、全国の各支店の支店長のところに現金をどかんと大量に積んでいるというのですよ。それでもって、とにかく仮払い、仮払いでやっておかないことには大変だというところへ今行っているんですよ。
 私は、そういう実態というものを金融庁としてきちんとつかむということをやらないと、何か先ほどのお話を聞いておったら、ATMと口振の話だけなんですよ。一番影響の大きい、この仮払いという形で今出ている手形決済の問題ですね、本当に決済機能を果たさせるという点で深刻な問題ですから、これは大臣、先頭に立ってきちんと掌握して対応していただきたいと思うんですが、最後にその点だけ伺って、質問を終わりにしたいと思います。
柳澤国務大臣 そういうことが起こっているのでしょう、責任ある委員がそういうふうにおっしゃることであるわけですから。起こっておりますが、起こっているところへ行って何が起こっているんだというのは、やはりちょっと、私としては、余り適切でない。したがって、御指摘の問題は、これから行われる立入検査の一環としてしっかり調べ、そしてしっかりした処置をさせるということでまいりたいと思います。
吉井委員 時間が参りましたので、終わります。
坂本委員長 次に、植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。
 特別検査の評価にかかわって、冒頭、まずお伺いをしたいわけでございます。
 公表された資料を見ましても、一・九兆円の処理損が計上される見通しになったわけですけれども、この辺についての御所見もお伺いしたいわけですが、この特別検査をやるに当たって、小泉総理は、今回の検査については銀行の体力を気にせぬと整理しなさいということで大号令をかけはったと思うわけですが、実際、果たして今回の検査が銀行の体力を気にせずに厳格に行われたのかどうかという入り口のところをお伺いしたいわけです。
 まず一点目として、去年の九月現在でも、大手行が抱える正常先と要注意先への債権残高は少なくとも三百兆を超えるという中で、特別検査の対象になったのはごくわずかだろうと思うわけですが、実際、債権残高の何%ぐらいが今回の検査の対象になっているのかということ。
 あと、実際、商社とか製造業で過剰債務の企業が結構あるにもかかわらず、そうした企業は特別検査の対象に含まれていなかったんではないかということなんですが、その点、まずお伺いします。
五味政府参考人 特別検査の対象になりましたのは、メーン行を対象にしておりまして、十二・九兆円、百四十九先でございますね。たしか全国銀行の貸し出しの合計が三百二十数兆円でなかったかと思いますので、それと比べると、そういうウエートだ、数%ということになろうかと思います。
 もう一つ、パーセンテージということであれば御参考に申し上げておきますと、この十二・九兆円というのはメーン先ということですが、準メーン先以下にもいわゆる横ぐし効果というのは入ったというように私ども認識しておりまして、そういたしますと、準メーン以下の貸し付けまで加えますと、カバーされましたのは百四十九先でおよそ十二・九兆の倍近くということになろうかと思います。
 また、主要行の総体ではそういうことでございますけれども、一般要注意先、その他要注意先でございますけれども、これは今回の検査でメーン行で六・四兆円を対象にしておりますけれども、九月期の主要行の要注意先総額が約四十兆円でございますから、これとの比較でまいりますと、この六・四兆円というのは約一五%程度、横ぐしが通っておるという効果を考えますと、要注意先の約三分の一程度がカバーされている。
 それから、要管理先については三・二兆円をカバーいたしましたが、これは九月期の主要行要管理先総額が八・五兆円のはずでございますから、これの約四〇%をカバーしている。横ぐしが通って倍程度と考えますと、主要行要管理先の四分の三程度がカバーされたということであろうと思います。
 それから、対象企業の業種につきましては、これは業種に着目して対象企業を選んだわけではございません。市場における評価が著しく低下しているなどの債務者ということで、一定の形式基準を設けまして、ふるいにかけるようにして選びました。結果的に、発表資料にもございますように、いわゆる四業種、建設、不動産、卸小売、その他金融というものが非常に大きなウエートを占めておりますけれども、それ以外の業種というものは、この残余の部分に含まれているということでございます。
植田委員 今回、百四十九社というのが実際どういう基準で選ばれたのか、今ふるいにかけられたようなことをおっしゃいましたけれども、実際、一定の基準というのはあったんでしょうか。
五味政府参考人 内部的に形式的な数量基準を設けまして、これでふるいにかけております。検査の目的が市場の評価が著しく低下するなどの債務者ということでございますので、株価あるいは外部格付、こういったようなものが著しく低下している等ということ、それまた大口のものをチェックするということがポイントでございましたので、この大口ということについても一定の基準を設けております。
 数量的な基準でありまして、これを申し上げますと、公表資料から百四十九先がかなり容易に特定されていく可能性がありますので、この点は申し上げないことにしております。
植田委員 そうなると、体力の範囲内でやっただけと違うんかなと疑問は残るわけですが、ちょっと時間がありませんので先に進みます。
 今回の特別検査が、自己査定がほんまに大丈夫かいな、金融検査は大丈夫かいなという疑問に答えよう、そういうことはあったかと思いますが、実際、その百四十九社のうち七十一社が下方修正されているわけです。実際、この自己査定の正当性はそもそも疑われておったわけですが、特別検査の結果下方修正されたというこの事態というのは重大だろうと私は思います。
 その意味で、なぜこういう下方修正されざるを得なかったのか、今までの検査のあり方、自己査定にかかわる総括を含めて、御見解をお伺いしたいと思います。
五味政府参考人 この特別検査で下位遷移という特異な言葉を使っておりますが、これは、銀行の自己査定が誤っていたので修正したという、従来の通常検査のものとは違う性格のものであるということを示しております。
 すなわち、十三年九月期の自己査定に比べて、特別検査というこうした手続を経た上での十四年三月期の自己査定がどうなったのかということでございますので、十三年九月期を間違っているから直したという性格のものではないというのが大前提にございます。その上で申し上げますが、この三月期の債務者区分が九月期に比べまして下位遷移をしている七十一先ということになります。
 この下位遷移の主な要因でございますけれども、一つは、直近までの経済情勢の変化を反映するということでございますと、この時期、九月から三月というのは、一般的に、経済状況から見まして対象債務者の財務状況が悪化しているという環境の中にあったということ、それから、特に今回の検査は、株価や外部格付が著しく低下をしているなど、こうした、そもそも、短い期間をとりましても債務者区分が下位に遷移する可能性の高い債務者を集中的に見ている、いわば一番油っこいところだけを見ている検査であるということ、それから、リアルタイムの情報に基づく検証である、こういったようなことがございますので、そもそも九月の自己査定が正しかったかどうかという観点から申しますと、一概に、こうしたことで下位遷移が出たからといって、これまでの自己査定が甘かったといったようなことが言えるというものではないと思います。現実に、三者協議をしております過程で、年明けの段階で債務者区分を下方に遷移させる、こうした判断が銀行側から出てきている例も相当数あるということでございます。
 ただ、これですべてを説明できるわけではございませんで、やはり私ども、この七十一先の内容を見てみますと、現実問題としては、昨年九月期の段階での銀行による債務者の実態把握が不十分であったというものも見られるわけでございまして、この点は、各銀行における厳格な自己査定というのが今後求められるというふうに考えております。
植田委員 その債務者区分が悪化した七十一社のうち、実際、特別検査の結果十五社以上が二段階下がったと言われておるわけですが、十五社といえば、これは実際百四十九社ですから、検査対象の一割ですよね。ここまでの企業が二段階も悪化したということであれば、景気が悪いとかデフレやとかいうことで説明はできないだろう。むしろ、これまでの銀行の自己査定が甘かったのか、それとも体力の範囲内でしか引き当てをしていなかったのか、どっちかやったというふうに言えるんじゃないのかと思うわけですが、その点についてはいかがですか。
五味政府参考人 二段階以上のダウングレーディングがあったかどうか、あるいはそれが何社かということは、これがまた風評のもとになり得ますので申し上げられませんが、この一般的な発表資料の表を見ていただければ、そういうことがあり得たであろうということは当然推測できるわけであります。
 そうした大きなダウングレーディングというのが半年の間に起こるということにつきましては、当然、さまざまな要因が考えられるわけであります。先ほど申し上げましたとおり、こうしたダウングレーディングが起こりやすい、マイカルの例を反省のもととして行われた検査でありますから、非常に短期間のうちにある一定のグレードから破綻先まで行ってしまったというものは現にあったわけですので、そうした経済の状況を反映した大きなダウングレーディングというものは当然あり得る話でございますし、また一方で、先ほど申しましたように、九月期における銀行の自己査定が甘かったというものも見受けられたということでございます。
植田委員 いろいろな要素がありましたという話でございます。ただし、実際、特別検査を厳格にやったということでそのことを評価するのであれば、過去の自己査定が甘かった、体力の範囲内でしか引き当てしていなかったということは、むしろはっきりおっしゃった方がいいんじゃないでしょうか。むしろ、特別検査をやったこの結果の正当性というものを言いたいのであれば、そういうふうにはっきりとおっしゃった方がすっきりするんじゃないかと私は思うんですが、いかがですか。
五味政府参考人 この特別検査と並行いたしまして、当然のことでございますが通常検査が行われております。過去の銀行の自己査定がその時点において正しかったかどうかというのは、この通常検査において私ども厳正にチェックを入れております。それから、今後につきましては、常駐的検査体制という中でこれをチェックしていくということになります。
 特別検査というのは、これとは違って、いわば共同作業で自己査定をしていくという特異なものでございまして、もちろん、自分たちの手柄を誇りたい気持ちはありますけれども、現実に銀行においても真摯な対応がなされ、さまざまな形でのダウングレーディングがみずから提案されているというようなこともございますので、さまざまな状況があったということだろうと思います。
植田委員 もう時間がありませんから先へぱぱっと行きますが、いずれにしても、特別検査の結果を踏まえても銀行の健全性に問題はないということは、結局、結果としてはおっしゃっているわけです。
 そこで、柳澤大臣にお伺いしたいんですが、特別検査の公表後の記者会見、ちょっとまたインターネットで検索していましたら、そのとき、不良債権問題の峠は越えたという認識はあるんでしょうかという問いに対して、不良債権処分損の七・八兆円というのは二つ目の山をつくったというおっしゃり方をされていたわけですけれども、この辺、どういう真意なのか。とりあえず今回の検査の結果を見て峠を越えたということなのか、それとも、新たな荷物を背負ってしまったな、そういう課題が新たに目の前にあらわれてきたな、背負ってしまったなということなのか、その辺、どうなんでしょうかねということをお伺いしたいんですよ。
 その上で、実際、私個人は、今回の特別検査の結果を見た場合、必ずしも、この特別検査の結果を踏まえて銀行の健全性に問題はないと言い切れるかどうか、やや疑問の余地もあります。それは後でお伺いしますけれども、まず、今申し上げた点について御答弁いただけますでしょうか。
柳澤国務大臣 平成九年度、平成十年度、平成九年度は十兆近くのもの、平成十年度は十兆多分三千億だったと思うんですが、そのくらいの処分損で引き当て、特に引き当てを、この不足を解消した、こういうことをやりました。それから、平成十一年、十二年、この二年度は、大体処理損は四・五兆、四・三兆ぐらいでありました。そして今回七・八兆ということですから、そういう意味で、残念なんですけれども、いわば、反転してもう一つの山ができた。こういう不良債権処分損の金額の推移について、客観的なことを説明させていただいたということでございます。
植田委員 答弁をお伺いしていますと、そのときの質疑応答の中身と大体同じ中身ですから、いや、すごいなと思って。大体同じことをおっしゃっていますよね。
 ただ、その事実認識としてそうだということなんですが、ということになれば当然、例えば、ここでやぼなことは聞きませんが、公的資金注入についての考え方も、恐らくこの検査の結果を見て、むしろ健全なんだということですからますます意を強くされていると思いますのでそのことはお伺いはいたしませんが、ただ、検査結果を見ると、対象の約六割が評価を落としている。
 先ほど、冒頭申し上げましたように一・九兆円の処分損の積み増しを強いられておるわけですし、評価を落とした七・五兆円のうちのほとんど、六・三兆、八割以上がいわゆる構造不況四業種ということなんですが、ただ、この四業種というのは、やはり景気循環の恩恵を受けにくい業種だろうと思いますから、いわゆる今回の特別検査の結果を見たときに、不良債権がいわばこれ以上はふえないという展望が見えた結果ではなかったというふうには言えるだろうと思うんです。
 要するに、不良債権がこれから累増していく、そういう条件は今回の検査の結果を見たところ取っ払われているなということは私としては思わないわけですが、その辺の問題は、事実認識としては引き続き深刻な課題である、そして、そのことが二つ目の山をつくったという言葉で表現されたのかなと私思ったので、ちょっとそこをもう一度お願いします。
 わかりにくいですか。
柳澤国務大臣 ちょっとわかりにくくて誤解をしているかもしれませんけれども、ある意味で、一方的に私の方の感じを申し上げます。
 確かに、四業種というのは、私もちょっとびっくりしたわけです。検査局の方から四業種ということで一般のものと分別して表示をしたいという提案があって、四業種でこんなになっているのかという感じでございました。しかし、聞いてみればそういうことかもしれないというようなことで、業種についてもある程度開示をした方がいいじゃないかというような意見も世上ございましたので、これで発表することでいいだろう、こういうことで私、それを了承したのでございます。
 建設は、これはやはり公共事業の予算が削減の傾向にあるということから申して、やはりなかなか今後とも急に明るくなってくるという展望は描けないのじゃないかと思います。PFI等で頑張ったとしてもなかなか厳しい構造的な問題を抱えた分野だというふうに思います。
 不動産はどうかということですが、これはなかなか展望は難しいかもしれませんが、地価の動向等を考え、また、例えば土地への需要というようなものを考えたときには、なかなかこれまた明るい展望を容易に描ける分野ではないというように思います。
 それからノンバンクは、これはちょっとなかなかわかりにくい。あとは、要するに卸、小売なんですね。
 卸、小売が、これは植田先生の御見解なども参考にさせていただきたいのですけれども、これは何と申しますか、外国勢が非常に参入してくるということを考えると非常に難しいというふうにも思いますけれども、景況の影響は受けにくいという分野ではなかろうと私は思うわけでございまして、この辺のところはなかなか容易に展望すること、いずれの方向にもかなり難しい分野だというように思っておりまして、したがって、ここから、これが不良債権の問題にどういう影響をもたらすかということでございますけれども、構造不況の業種についてはやはり構造不況に対応するように不良債権のむしろ整理を進めていかなきゃいけないというように思います。
 それから、卸、小売については、これは景況によってむしろ客観的情勢の変化で上位に遷移していくものもあり得よう、こういうように私は大ざっぱに思っています。
植田委員 えらい詳しい御説明、ありがとうございます。
 私が申し上げたかったのは、景気が回復感を仮に増していったとしても、やはり循環的な景気回復の恩恵をこの四業種は受けにくいのじゃないか。そこはちょっと違うようなお話でしたが。だから、これらの問題債権がそうやすやすと減っていくことにはならないだろうなと。その辺の見解をお伺いしたかったわけです。
 もう一点、中小企業の業績悪化というものは、これは大手行の財務にも当然響いてくるわけですが、都市銀行の貸出残高で大体二百五兆円のうち中小企業向けが百一兆強ということなんですが、ほとんど、要するに大手行の貸し出し全体のうちの半分近くが中小企業向けなわけですから、実際、こうした影響も、中小企業の影響等も考慮すると、実態がむしろ悪化しているということが言えるんじゃないのかなと私は思うわけですが、大臣、その点はいかがでございますか。
柳澤国務大臣 これはなかなか一概には言えないのだろうと思います。
 中小企業といっても、業種的に見れば非常に多くのレンジにまたがっている分野だろうと思います。したがって、そうは言い条、一番の問題は中小企業の場合恐らくメーカーの空洞化の問題、それから、もうそういうものはなくなっているかもしれませんが、中小小売の方々、こういう問題だろうと思いますけれども、これらについてはかなり難しい問題があるということは考えられると思います。
 ただ、それがそうだからすべて中小企業に望みがないかと言われれば、私は、景況の状況によって、さらにはこれからの新しいビジネスの発生の状況によってかなりいろいろ違ってくる要素もそこにあるだろうと思って、これはなかなか、業種的な偏り、その中でも実は、思い出したのですが、四業種は結構多いのです。中小企業の四業種というのが多いのですね。
 そういうようなことで、難しい、厳しい状況はあるということは認めますけれども、全般についてここで何か一つのイメージが描けるかといったら、なかなか私の手には負えないというのが率直なところです。
植田委員 もう時間が詰まってきましたですけれども、実は、私も幾つか質問を今回用意しておったのですが、非常につくりづらかったのですが、私個人的には、そもそも不良債権の処理を今急ぐべきではないというふうに考えております。ですから、総スカン食らう見解なのかもしれませんが、ただし、不良債権の本当に早期処理をするのであればどういう手法があるのかなということで、そういう問題意識でそれなりに質問を組み立てたわけですが、先ほども何か激論があったようですが、そういう意味では、例えば私的整理のガイドライン、私は実は厳し過ぎると思うんです。法的整理を加速させるような対処をするよりは、むしろ過剰債務企業に対して、優良な事業部門、不採算部門があるわけですから、一切合財つぶしてしまうわけではなくて、法的整理の前に企業再編を行うということがやはり必要であると思います。
 ある人の見解を見ますと、過剰債務企業には、不採算部門を撤退させる、資産売却、債務圧縮の三点セットを急がせるべきだと。要するに、私なんかは、そうしなきゃならない。企業がダウンサイジングしていくために、結局経済の規模が小さくなってしまう、また新たな不良債権が生まれてしまったら、年がら年じゅう処理をしなきゃならないということで、私は不良債権の処理というものを国策としてどばっとやるべきじゃないとは思っておるわけですが、これはこれで、私は、もしやるとするならばと言うに当たっては、一つの卓見だろうと思います。
 その意味で、これまで、特別検査の考え方にもあるのは、やはり十分に引当金を積むべきだという発想が底流にあると思います。それは私も否定しませんが、ただ、この間、特に大手三十社問題以降、企業の過剰債務の問題よりも銀行の会計処理のあり方に随分目が行っていたんじゃないか。その意味で、今後、銀行の収益力をどう向上させるかということ、そこにやはり着目した施策というものを展開する必要があると思うんです。
 その点についての御見解と、やはりそうなると、少なくとも現状において、銀行がそれをする条件がやはり厳しいことは私事実だろうと思いますから、そこで、償却原資の支援というものは、私は、もし不良債権の処理を本当に早期にやるならば、やはり念頭、どこかに置く必要があるんじゃないのかな。それは、具体的にどういうスキームでやるかどうかはこれから考えるべきことだろうと思いますけれども、その点を含めて、ちょっと時間がありませんので最後にしたいと思いますので、御答弁お願いいたします。
柳澤国務大臣 半分ぐらい大体先生と同じような考え方を持っているんですが、最後のところへ行って何か突き落としを食ったような感じがいたします。
 それはどういうことかと申しますと、要するに、不良債権の処理に当たって、できるだけ再建型のものでなければならないということでございまして、ただ、そのときに、ダウンサイジング、ダウンサイジングとなっていくと、さらにまた不良債権が生まれるのではないかというのは、ちょっと私考え方が違っていまして、それは、追い込められると、人間、アイデアが出るというか、そういう感じもしていまして、新しいビジネス、資源を新しい方向に向けていくという動きが必ず出てくる。人間、遊んでいるわけにいきませんから、必ずそういうものは出てくるだろうと思っていますから、ダウンサイジングをやればすべてダウンサイジングの方向だというふうには考えないということが一つです。
 それから、銀行の収益力が必要だということは全く同感でございますけれども、最後の突き落としは何で食ったかといいますと、資本の注入でもってその代替を果たさせたらどうか、これは全く私の理解を超えるところでございます。
 要するに、公的資本を注入しても、先ほどどなたかが言ったように、すごいリターンを、国として応分のリターンを求めなければなりません。これは銀行の収益にとっては大変な負担になるわけでありまして、収益力を強化したいということとおよそ逆方向のことになってしまうということでありまして、私は、歯を食いしばっても危機が訪れるまでは頑張り抜いて、そんな余分なところに利益を割くのではなくて、本当に不良債権の方の処理に利益を割くべきだというふうに考えているということでございます。
植田委員 もう終わりますけれども、今、前者の話は、しんどくなっても神風が吹くような話だったと思いますが、後者の話については、引き続きまたこの場でやりとりさせていただければというふうに思っております。
 きょうはありがとうございました。お疲れさまでした。
坂本委員長 以上で本日の質疑は終了いたしました。
 次回は、来る二十六日金曜日午前九時十分理事会、午前九時二十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時二十三分散会


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