衆議院

メインへスキップ



第15号 平成14年4月26日(金曜日)

会議録本文へ
平成十四年四月二十六日(金曜日)
    午前九時二十分開議
 出席委員
   委員長 坂本 剛二君
   理事 中野  清君 理事 根本  匠君
   理事 山口 俊一君 理事 山本 幸三君
   理事 海江田万里君 理事 古川 元久君
   理事 石井 啓一君 理事 中塚 一宏君
      岩倉 博文君    金子 一義君
      金子 恭之君    倉田 雅年君
      小泉 龍司君    砂田 圭佑君
      高木  毅君    竹下  亘君
      竹本 直一君    中村正三郎君
      中本 太衛君    林田  彪君
      増原 義剛君    松野 博一君
      吉田 幸弘君    渡辺 喜美君
      五十嵐文彦君    上田 清司君
      生方 幸夫君    江崎洋一郎君
      奥田  建君    小泉 俊明君
      小林 憲司君    佐藤 観樹君
      中川 正春君    永田 寿康君
      長妻  昭君    松野 頼久君
      上田  勇君    遠藤 和良君
      藤島 正之君    佐々木憲昭君
      塩川 鉄也君    阿部 知子君
      原  陽子君
    …………………………………
   財務大臣         塩川正十郎君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君
   内閣府副大臣       村田 吉隆君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   財務大臣政務官      砂田 圭佑君
   財務大臣政務官      吉田 幸弘君
   政府参考人
   (警察庁警備局長)    漆間  巌君
   政府参考人
   (公安調査庁調査第二部長
   )            中村 壽宏君
   政府参考人
   (外務省大臣官房審議官) 黒木 雅文君
   政府参考人
   (外務省アジア大洋州局長
   )            田中  均君
   政府参考人
   (財務省大臣官房総括審議
   官)           藤井 秀人君
   政府参考人
   (中小企業庁次長)    小脇 一朗君
   政府参考人
   (国民生活金融公庫総裁) 尾崎  護君
   政府参考人
   (中小企業金融公庫総裁) 堤  富男君
   参考人
   (商工組合中央金庫理事長
   )            江崎  格君
   財務金融委員会専門員   白須 光美君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月二十六日
 辞任         補欠選任
  七条  明君     中本 太衛君
  山本 明彦君     松野 博一君
  江崎洋一郎君     松野 頼久君
  中川 正春君     奥田  建君
  永田 寿康君     上田 清司君
  吉井 英勝君     塩川 鉄也君
  植田 至紀君     原  陽子君
同日
 辞任         補欠選任
  中本 太衛君     七条  明君
  松野 博一君     高木  毅君
  上田 清司君     永田 寿康君
  奥田  建君     中川 正春君
  松野 頼久君     江崎洋一郎君
  塩川 鉄也君     吉井 英勝君
  原  陽子君     植田 至紀君
同日
 辞任         補欠選任
  高木  毅君     山本 明彦君
    ―――――――――――――
四月二十五日
 消費税増税反対等に関する請願(小沢和秋君紹介)(第二二四六号)
 消費税の大増税に反対、税率を三%に引き下げることに関する請願(小沢和秋君紹介)(第二三五四号)
同月二十六日
 配偶者特別控除の廃止に関する請願(石井一君紹介)(第二四一四号)
 同(前田雄吉君紹介)(第二四四八号)
 消費税の大増税に反対、税率を三%に引き下げることに関する請願(児玉健次君紹介)(第二四四六号)
 同(吉井英勝君紹介)(第二四四七号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 政策金融機関に対する検査の権限の委任のための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第七四号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――
坂本委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、政策金融機関に対する検査の権限の委任のための関係法律の整備に関する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、参考人として商工組合中央金庫理事長江崎格君の出席を求め、意見を聴取することとし、政府参考人として財務省大臣官房総括審議官藤井秀人君、警察庁警備局長漆間巌君、公安調査庁調査第二部長中村壽宏君、外務省大臣官房審議官黒木雅文君、外務省アジア大洋州局長田中均君、中小企業庁次長小脇一朗君、国民生活金融公庫総裁尾崎護君及び中小企業金融公庫総裁堤富男君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田清司君。
上田(清)委員 おはようございます。民主党の上田清司でございます。
 きょうは、政策金融機関に対する検査の権限の委任のための関係法の審議ということであります。御承知のとおり、朝銀大阪が大阪府の監督であったがゆえに十分な検査ができなくて破綻をし、膨大な公的資金を投入するような結果になりました。もちろん、他の信用組合等々についても、都道府県の能力について、いかがなものか。現実的に、金融庁が我が国で最大の検査能力を持った機関であることは間違いないことでございますから、各政策金融機関がそれぞれの監督省庁の監督検査を受けるのではなく、重要な部分について金融庁の検査を受ける等々、大事なことではないかということで、基本的には賛成したい、こういう立場で臨むものであります。
 そこで、四月十二日に金融庁の方から「より強固な金融システムの構築に向けた施策」、ペーパーで三枚でありますが、この中で、「主要銀行グループ通年・専担検査の導入」、つまり常時専任で検査をしていく、こういう仕組みを導入すると聞いておりますが、定期的な検査ですら、先般の関西興銀の関係で検査官が逮捕されるという事件が起きておりますが、ずぶずぶの関係ができたりしているにもかかわらず、通年でやったらかえって癒着の温床になるのではないかと思いますが、この点についてはどのようにお考えか、担当大臣にお伺いしたいと思います。
柳澤国務大臣 私ども、先般、十二日の日に特別検査の結果を公表させていただきましたけれども、その際、ある意味でそうした検査結果を踏まえまして、新しい施策を何点か発表させていただきました。その中に、今委員の御指摘のような通年専担検査体制、実質常駐検査体制というものをしかせていただくということを公表させていただいたわけでございます。
 これをやると、大変遺憾なことでございますが、今回、近畿財務局の検査官が犯罪の嫌疑をかけられて逮捕されたというような事件がありまして、それに照らして考えると、こういう専担制というのは、そういう癒着というか癒着に起因するような犯罪の事案を生みやすくなるのではないか、こういう御懸念が表明されました。この点は確かに一つの問題点であるというように私どもも考えているわけでございます。
 ただ、私ども、その点は十分当初から、配慮というか考慮しようというふうにいたしておりまして、もともと一人の人間が専担するわけじゃなくて、部門が専担いたします、複数の人間であるということ。そして、その複数の人間については、ずっとそこに、同じポストにとどまるということは、これは人事管理上もできないわけでありまして、そういうものをうまく人事管理上ローテーションをするということ。この複数制ということと人事異動を行うということで、もちろん、その他、公務員としての自覚あるいは指導というようなことを伴うのは、もうこれは言わずもがなでございますけれども、そういう体制で今御懸念のようなことを防止して、そして検査の実の方について成果を上げたい、このように考えているところでございます。
上田(清)委員 いみじくも今大臣が、複数でということでありますが、関西興銀の立入検査で便宜を図ったと言われるこの検査官、一人では検査をやらないわけですね。多分、五人とか七人とか、そういうグループで検査をし、なおかつ部門で最終的な処置をする。審議をし、また処分なり等々をするということですから。
 一人じゃない可能性があるということですが、今回の事件に関して、基本的に金融庁、あるいは財務局ということであれば塩川大臣でありますが、どのように受けとめ、これについてどのような内部の調査をなされるつもりか、この点についてお伺いしたいと思います。
塩川国務大臣 これは私は、専ら今後、政府系金融機関の検査にやはり金融庁が関与してもらってやってもらう、それはもう信頼を置いてその成果を見ていくより仕方がないんじゃないかと思っております。
柳澤国務大臣 当該の人物はもう逮捕されて、いわば司直の手のもとにありまして、今後、司法のプロセスを経てこの事案が処理されるということでございまして、私どもは、この捜査あるいは司法のプロセスの進行の過程を見て、適切な時期に適切な処分をしてまいりたい、このように考えています。
上田(清)委員 またそれは事件の概要が明らかになってから改めて問いたいと思います。
 そこで、一つ、かねてから私も北朝鮮系信用組合の問題についてはいささか議論をさせていただいてきた経緯がございます。また、今回、新しい四信組の受け皿の中で、総連系の支配を受けない仕組みをつくる、こういう原則を打ち立てたわけでありますが、関係のそれぞれの役員に総連系の幹部が就任していたということが明らかになっておりますが、このことについて、きちっと確認ができたのかどうか。別に政府委員でも構いませんので、どうぞ明らかにしていただきたいと思います。
漆間政府参考人 お尋ねの四信組の役員のうち、公刊物により、朝鮮総連と密接な関係を有する朝鮮大学校の学部長や商工会の役員を務めていたことを警察として確認している者が何名かおります。その他の役員で、公刊物で確認できない者が朝鮮総連と関係を有しているかどうかにつきましては、警察の情報活動の内容に関する事柄でありますので、お答えは差し控えさせていただきます。
上田(清)委員 法務省の立場からいかがですか。
中村政府参考人 お答えいたします。
 御指摘の信用組合の役員の中には、朝鮮総連及び傘下団体の機関誌等によりまして朝鮮大学校の学部長及び傘下団体の役員として報じられた人物と氏名の一致する者が含まれております。ただ、それ以上の情報につきましては、当庁の業務遂行に支障が生じるおそれがございますので、答弁を差し控えさせていただきます。
上田(清)委員 金融庁にお伺いします。
 今、警察の立場からと公安調査庁の立場から一部明らかにしていただきましたが、私どもの知るところでも、ハナ、ミレ、京滋、兵庫ひまわりの中に、理事長以下常勤の役員の中に総連系の関係の方がおられる。こういう実態が明らかになった以上、これは何らかの形で取り消しなり処分の対象として御検討されるのか、あるいはどのような立場でこの問題を処理されるのか、明らかにしていただきたいと思います。
村田副大臣 新設四信組につきましては、朝銀東京をめぐりまして、不正な資金の流れが総連向けも含めてあったということでございましたので、私どもとしては、新設組合の定款においてそうした総連等の組織からの独立性を確保することが、今後そうした新設の組合の経営の健全性を確保するためにも重要であるという観点から、定款に一定の、そうした、組合との独立性を確保するということを定めるようにお願いをしてまいりました。
 そういうことでありますが、今、公安あるいは警察当局からもお答えがございましたけれども、私どもは、そうした定款に書かれたことの実効を確保するためにいろいろ指導をしてまいりましたのですが、国会での御論議、あるいはマスコミ等でいろいろなことが言われている、そういう現状にかんがみまして、ただいま新設の組合の役員に対しまして、そうした国会での厳しい論議の状況などを伝えまして、改めてそうした事実がないかどうか、役員体制の見直しについて求めているところであります。なお、銀行法上の報告も徴求をしているところでございます。
 いずれにしても、今後とも定款違反の疑惑を招くことがないようなことを確保するために、今後とも努力をしてまいりたいというふうに考えております。
上田(清)委員 今、異なことを言われました。ないかどうかを今確認中だということですが、もともと定款で独立性を確保するということを言っている以上、認可するときにそのことを確認しなくちゃいけないのに、確認しなかったという責任についてどういうふうに答えるんですか。
村田副大臣 私ども、捜査権がないという状況のもとに、定款で定めたことが実行されるように求めてまいったわけでございますが、しかしながら、マスコミとか国会での御指摘もあり、そういうこと、今後とも定款違反のないことをさらに徹底するために、今役員に対しましてその実行を強く求めている、こういうところでございます。
上田(清)委員 マスコミや国会で指摘がないと、理事長以下役員の経歴等々について調べないということですか。
村田副大臣 私どもは、捜査権が、権限がございませんので、そういう意味で、役員に対しまして、発足時にそうした定款の定めるような事項が守られているかどうかについて確認をして、そして認めた、こういうことでございます。その中で、私どもとしては、法令に従いまして厳正に処理をしてきたというふうに考えております。
上田(清)委員 おかしな御答弁ばかりであります。
 捜査の話じゃありません。認可して、この受け皿金融機関がきちっとして機能するには、資金贈与を受け、あるいは不良債権の買い取りをさせ、膨大な国民の税金がここに投入されるわけですから、適格な受け皿かどうかを事前にチェックするというのは当たり前のことであって、捜査じゃないんです、調査です。その調査ができていないということについての責任をきちっと明らかにしなきゃいけないということなんです。できていませんでした、これは失礼しました、おわびします、今後こういうことがないように注意をしますという言葉が出なければおかしいでしょう、もう明らかになっているんですから。それとも、まだ明らかになっていないというんですか。
 それから、法務と警察は結構でございます。お疲れさまです。どうぞお引き取りください。
村田副大臣 私どもの調査の及ぶ範囲内で、私どもは、そうした総連等の役員についていないかどうかということについて最大限の努力をしてきたというふうに考えております。
 しかしながら、その後、政府部内での意見交換ももちろんやってきたわけでございますが、一定の疑いのあるケースがあるということでございますので、私どもは、これまでもこうした役員について、銀行法上も、あるいは定款違反の場合には協同組合法のもとで一定の処分ができることになっておりますけれども、不利益処分をするということにつきましては、的確な正しい情報がなければいけないということでこれまで慎重に対応してきたところでございますが、なおいろいろな情報をもとに、我々としては、そうした定款の違反のないように、今相手方と一生懸命詰めているというところでございます。
上田(清)委員 余りはっきりしない答弁ですよ。明確に調査をした後に明らかにされるべきであって、ある意味では丸のみしているような雰囲気が見られます。
 それで、朝銀北東、中部、西、この三つについてはもう既に受け皿として機能しているわけでありますが、こちらの方にも多大な資金が投入されております。まさかこっちにはそういう問題はないんでしょうね。この確認をさせてください。
村田副大臣 既存の三朝銀でございますが、これは新設組合とケースが違う、すなわち破綻をしておりませんので、私どもは、定款に先ほど申し上げたようなそういう規定を定めることは、求めるということはできなかったわけでございますが、いずれにしましても、今後ともそうした事実がないということを、引き続き検査監督を通じて詰めていきたいというふうに考えております。
 しかしながら、今のところ、経営上、総連等から、その経営に重大な影響を与えるというような事実は確認されていないということでございます。
上田(清)委員 かねてから私が申し上げました、総連の系統に朝信協があり、朝信協のもとにそれぞれの信組があり、そして信組の理事長や理事が全国津々浦々、あたかも一つの金融機関みたいにぐるぐる回っていて、しかし、その地域で信任されたのだから仕方がないというような答弁を、当時村井副大臣ですか、あるいは政務次官ですか、答弁しておりましたが、そういう答弁がいいかげんなものであったということが今日明らかになっているわけです。今度は、そういうことがあっては我が国のこれはもうある意味では主権というか外交の問題にも発展するような問題ですから、大変重く受けとめていただきたいと思います。
 この問題に関しては、時間がちょっともったいありませんが、今回の四信組に予定されている贈与額、資産買い取りの予定の金額というのをそれぞれ挙げていただきたいと思いますが、概括で結構です。決まっているんだったら教えてください。
村田副大臣 新設四信組に対します金銭贈与額とそれから資産買い取りの見込み額でございますけれども、現在のところ、ペイオフコストを上回ると認められる旨の報告がなされて、手続的にはそこまで行っているわけでありまして、今後具体的な金額が定まってくるということでございますが、そういう観点で、具体的な数字はございませんが、今後の見込み額にある程度近い水準に考えられるという数字は、破綻した六朝銀の十三年三月期決算におきます公表債務超過額でございまして、その金額は四千三百四十七億円になるということをお答えさせていただきたいと思います。
上田(清)委員 続きまして、今度は韓国系信用組合の問題に移らせていただきます。
 お手元の図の三を資料として見ていただきたいのであります。京都シティ信用組合というのがございまして、これは大阪商銀の受け皿になりました。当時役職員二十三名で、こうした預金また出資金があり、大阪商銀の受け皿になったわけであります。これがその後改称し、京都産業信用組合になったわけでありますが、この京都産業信用組合が、日本一の信組でありました関西興銀、そして中堅の京都商銀の受け皿になっていったという経緯がございます。小が大をのむ、あるいはしっぽが体を振り回すと言わんばかりの大変な異常な肥大化でありまして、この点について、幾つも疑念があります。
 例えば、この京都シティ信用組合は、一九九九年の三月期に超過債務の状態になっています。こういう不安定な信組がなぜ受け皿になったのか、極めて疑念であります。また、ディスクロージャー誌を読みますと、この京都産業信用組合は、平成八年、九年、十年、十一年、十二年、経常利益は五カ年連続マイナスであります。当期利益においても、平成九年、十年、十二年とマイナスでありまして、繰越欠損額も十二億、自己資本も平成十二年度にはマイナスの一六%というような、むしろ十一年にこの受け皿になることによって、贈与金によってプラスになるというような、こういう弱い体質の金融機関がなぜ受け皿になったのか、極めて不思議でなりません。この異常な肥大化あるいは経営体制に問題はないのでしょうか、この点についてお伺いしたいと思います。
村田副大臣 御質問は、当時の京都シティ信用組合についての問題点の御質問だと理解いたしますが、先生御指摘のように、一九九九年三月期の決算におきまして、京都府の検査結果等を踏まえまして不良債権を処理した、こういうことで京都シティ信用組合は約十億円の債務超過でありました。そういう状況でありましたけれども、約十三億円の出資増強によりまして一年以内に自己資本比率を四%に回復する、そういう内容を定めた経営改善化計画を策定しまして京都府知事に提出したところであります。そういうことで、京都府知事は同年五月に早期是正措置、第一区分でございましたが、これを発出したものと承知しております。
 その京都シティ信用組合でございますが、同年六月に経営陣を一掃しまして、新しい経営陣を迎えた上で、その予定されました約十三億円の出資増強によりまして十二年三月期決算においては約三億円の資産超過、自己資本比率で申しますと五・〇九%というふうになった、こういうことを承知しているわけでございます。
上田(清)委員 承知しているだけじゃ困るわけで、実際、体質が弱いんではないかと。では、先ほど申し上げました五期連続経常利益がマイナスだというこういう金融機関が、破綻したとはいえ日本一の金融機関の受け皿に何でなれるのですか。配当ゼロですよ。これはまともな金融機関じゃないじゃないですか。もし上場していたら、上場取り消しになりますよ、こんなのじゃ。それが何で受け皿になるのですか。
村田副大臣 今お答え申しましたように、自己資本比率が五%超であること、そして新しい経営陣のもとに京都シティ信用組合の経営が健全化の道をたどっていく、こういうことでありました。
上田(清)委員 それでは確認します。この増資によって確かに自己資本がマイナスからプラスになっております、増資活動によって。このとき、見せ金増資というのはなかったのでしょうか。例えば、旧関西興銀ほかの不良債権先から近畿産業信用組合の増資引受企業になっている事例とかないですか。そういう事例というのは確認できませんでしたでしょうか。係官でも結構ですよ。
村田副大臣 増資引受先の個別の出資者につきましてはコメントを差し控えさせていただきたいと思いますが、今先生が御指摘のような債務者であったものが出資の引受人となった、そういう事実はないというふうに承知をしております。
上田(清)委員 きょうは余り時間がありませんので、いずれそうじゃないということを教えてあげます。
 それから、ダブルギアリング、持ち合いの出資を各商銀ごとにやっていませんか、韓国系信用組合ごとに。これはどうですか。
村田副大臣 出資において相互に持ち合う、そういうことはないということでございます。
上田(清)委員 これも後で明らかにしてあげます。
 それから、預金の持ち合いそのものは別に非合法ではありませんが、しかし、基本的には望ましいものではない、こんなふうに考えてよろしいんでしょうか。
村田副大臣 預金を預け合うということは、一般的に取引の中で行われていることでございます。
上田(清)委員 いいか悪いかということについての確認もしているのですけれども。望ましいことか、それとも別に評価に値しない話なのか、教えてください。
村田副大臣 いいか悪いかということではなく、通常、一般にそういうことはある、こういうことであります。
上田(清)委員 でも、こういうことは言えますね、極めて弱った者同士が持ち合いを出し合って、弱った部分をお互いに隠し合いっこするというのはよくないですね。
村田副大臣 民族系の金融機関におきましては、大変預貸率が高いという状況にあるという事実もございますので、今先生のおっしゃったようなそういう状況であれば、決して好ましくないということになるかと思います。
上田(清)委員 そこで、北東商銀を見ると、まさに今村田副大臣が言われたとおりでありまして、表面上は、預金残高が十三年九月末で二百八十三億。しかし、私どもが調べた数字では二百二十三億。貸し出しが二百三十二で預貸率が八二%ですが、実質的な計数を確認しますと一〇四%という形で、完璧に一〇〇%を超えております。この預金残高のうちの中身は、多分、六十億が金融機関の預金のはずです。こういう北東商銀を東京商銀の受け皿になぜしたのか。
 きょうは余り時間がありませんから、私の方から申し上げておきますよ。そのうちの二十億円は近畿産業信用組合からの取り込み預金のはずですよ。何でこういうところを受け皿にしたのか。何の問題もなかったんですか。
村田副大臣 私どもは、受け皿として適格性に問題があるとは考えなかったということでございます。
上田(清)委員 多分、その中身をお互いに今から論争すると十時までに終わりませんので、きょうは少し地雷だけ敷いておきますので、後で爆発させてもらいます。
 熊本商銀についても少しお伺いします。
 十三年三月末に十億の繰越損失、十三年九月末に一億の赤字決算、出資残高は十一億で、実質的な資本はゼロに近いのですけれども、こういうところがなぜ福岡商銀の受け皿になるんですか。私には到底理解できません。お答えください。
村田副大臣 熊本商銀についての御質問でございますが、私ども、財務内容からいきまして、健全性に特に問題があるというふうに考えたわけではありません。
上田(清)委員 全然答えになっていないんですよ。多分にこれは、本当にあなた方はずぶずぶですよ、この関係でいうと。全然弱い体質のところを受け皿にしています。
 では、もう一つ聞きます。
 この熊本商銀で、エム・ケイ・グループの関連会社からの相当数の、何億という数字ですが、出資はなかったですか。
村田副大臣 エム・ケイ・グループからの増資引き受けはなかったかということでございますが、詳細について、具体的に申し上げることは控えさせていただきたいというふうに考えております。
上田(清)委員 私どもの調査では五億円程度のものが入っております。他の商銀が増資をして受け皿銀行を強化するという、文字どおり持ち合いをしております。
 それから、もう時間がありませんから、この近畿産業信用組合のディスクローズ誌の中にも明らかにしてありますが、ここの融資の中身を、これはもう公にされているものだけですから明らかにしていきますと、この中で、貸出金業種別残高構成比というのがあります。これを見ますと、建設業に一七・三%、不動産業に一九・三%、建設、不動産業関係で四割近い貸出残高になっております。
 もう御承知のとおりの実情でありまして、関西地区が一番不動産の下落率が高いところであります。あるいはまた、ビルの空き室は関西圏が一番多いところです。こういう実態を踏まえた上で、本当に近畿産業信用組合が、日本最大の信用組合であった関西興銀あるいは中堅の京都商銀の受け皿金融機関として正しい選択なのか。私は間違っていると思いますよ、基本的に。金融庁は急いで、これ、丁寧にやらないとだめですよ。だれもチェックしなかったからこういうことをやっていますけれども、大変なことになりますよ、これが二次破綻になっていくと。
 私は再調査をお願いしたいと思いますが、まずはこの点について、四割近い不動産、建設関連の融資残高があるという事実について、こういうところについて何の懸念もなかったのかどうか、この辺について内部の討論というのはどういうものだったのか、それを明らかにしていただきたいと思います。尋常じゃないでしょう、四割というのは。
村田副大臣 今、具体的に融資先の割合を示す資料が私の手元にございませんので、それに対してのお答えは差し控えさせていただきたいと思いますが……
上田(清)委員 差し控えてじゃなくて、私はディスクローズ誌をそのまま読んでいるのですから、これは私の勝手に思いついた数字でも何でもないからそのまま聞いてください。不動産業が約一九・三%、それから建設業が一七・三%で断トツです。ほかのはもう余りありません。あとは一けたです。
 この二つ、しかも関西地区の事情については谷口副大臣もよく御承知だと思います。空き室が一番多いこと、土地の下落率が一番多いこと等々を考えれば、また公認会計士としての能力からしても、谷口副大臣であればこういう中身について、極めて、逆指名をさせていただきますが、谷口副大臣、少し気になりませんか、私の指摘に対して。
谷口副大臣 突然の御指名でございますので、所管ではございませんので、意見をここでは控えさせていただきたいというふうに思います。
上田(清)委員 では、村田副大臣。
村田副大臣 受け皿につきましては、基本的に金融整理管財人がその選定権限を持つ、こういうことでございまして、金融整理管財人におきまして透明で公正なプロセスのもとで譲渡先の選定が行われたということでございますが、その原則は費用最小化原則ということでございますし、このケースにおきましても、在日の韓国人の組合員のもとでの、そうした皆さん方の意見、総意というもの、そういうものも考慮されたのではないか、こういうふうに考えております。
上田(清)委員 時間になりました。ただし、金融庁の今総務企画局企画調査室長の大森泰人さんが近畿の理財局長のときに、このエム・ケイ・グループの総帥に、ちゃんと関西興銀や京都商銀を受け取れ、こういう話があったということをインタビューで明らかにしているんですよ。できレースだったように思います。このことも改めて機会を通じて明らかにしますが、しかし、極めて脆弱な体質の信用組合が、こういう弱い体質の金融機関が相当数、日本最大級の金融機関の受け皿になっていることについて、どうも担当副大臣にしても問題認識が薄いような気がします。そこだけ指摘申し上げまして、終わります。
 ありがとうございました。
坂本委員長 この際、暫時休憩いたします。
    午前十時一分休憩
     ――――◇―――――
    午前十時四十九分開議
坂本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。佐々木憲昭君。
佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 今回提案されております法案では、九つの政府系金融機関に対して、民間金融機関と同じマニュアルによって金融庁が検査を行うということになっております。私は、リスク管理債権などの内容を、民間と政府系金融機関を同じ基準で評価していいのかどうかという点については根本的な疑問を持っておりますが、塩川財務大臣にまず確認をしておきたいのですが、政府系金融機関と民間の銀行、民間金融機関、この本質的な違いがやはりあるのではないかと思いますが、大臣の基本的な認識をお伺いしたいと思います。まず塩川大臣に。
塩川国務大臣 根本的に違うところは、政府系金融機関といいましても、預金を預かっておりませんね。預金を直接、一般、不特定から預かっていない、ここが市中金融機関と全く違うところ、これが一つ。もう一つは、政府系金融機関は営利を目的とするんではなくして、政策目的のためにつくられたという機関ですから、その点は市中金融機関とは全く違う性質のものであるということです。
佐々木(憲)委員 今おっしゃったことは大変重要な点だというふうに思います。
 それで、この法案で新たに検査が行われるとしても、政府系金融機関のそれぞれの政策目的に沿った運営といいますか、それは変更されるものではないというふうに私は思うわけですけれども、検査があったからといって、今までの役割を変えるとか、あるいは大きく変更するということはないと思いますけれども、それはそのとおりでよろしいですね。
谷口副大臣 先ほど塩川大臣がおっしゃったように、民間金融機関はコマーシャルベースで行い、政策金融機関はその政策目的を達するためにやるわけでございますから、佐々木委員がおっしゃるように、金融庁の検査が入ったところで、従来の政策目的を達するというその観点は変わらないということでございます。
佐々木(憲)委員 それでは、きょうは、国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、商工中金、それぞれ責任者の方に来ていただいておりますので、まず、国民生活金融公庫の尾崎総裁にお伺いをしたいと思います。
 国民生活金融公庫法、ここでは、目的の中で、「一般の金融機関からその融通を受けることを困難とする国民大衆が必要とするものを供給し、もつて国民経済の健全な発展及び公衆衛生その他の国民生活の向上に寄与することを目的とする。」というふうに書かれておりますし、また、総裁自身が、いろいろな雑誌でこの立場に立ちまして発言をされております。
 例えば、「実業界」の昨年九月号を見ますと、「民間企業は非常にはっきりした目的を持っています。それは「利益を出す」ということです。ところが政府系の特殊法人の場合、利益を出すことが必ずしも目標ではない。むしろ目標の中にそれはないんです」というふうにおっしゃっておりますし、また、「金融ジャーナル」の昨年五月号を見ますと、「マーケットでは資金が調達できない、零細で信用力のない事業者に対して、政府が手を差し延べるという点にある」「我々の存在理由は市場原理では解決できない問題に政策的配慮を与えるものであるから、市場の論理とは当然違ってくる」「リスク管理債権の増加を支店長が強く意識すると、条件変更に厳しくなってしまい、公庫本来の使命が果たされないのではないかと恐れた。仮に返済条件を緩和して立ち直るのであれば条件を緩和してあげたい」大変前向きの、政策目的に沿い、また設立の法案の目的に沿った、そういう発言をされておられます。私はこれは大変重要な姿勢だというふうに思うんですね。例えば、「金融財政事情」、昨年の八月六日号を見ましても、新しく仕事を始めるという場合でもこういう姿勢が大事だというようなことを書かれているわけですね。
 そこで確認ですけれども、中小企業の支援、民間の銀行が相手にしないようなところに支援を行う、この姿勢は、今回の法案があろうがなかろうが当然変わらないと思いますし、今後もそういう方針でいかれると思いますが、確認をしておきたいと思います。
尾崎政府参考人 私どもに与えられております使命は、法律上はっきり書かれておりまして、先生御指摘になりましたように、基本的には、一般の金融機関から資金の融通を受けることを困難とする国民大衆に融資するということが私どもの目的であるわけでございます。そういうものは、仮に金融庁の御検査があるにいたしましても、私どもは、そういう目的のためにあるんだというのは御承知の上でおいでいただけるものと考えておりますし、私どもは法律に従って従来どおりやってまいりたいと考えております。
佐々木(憲)委員 そこで、基本的なことをお聞きしたいんですけれども、駆け込み寺的な性格を持っている、大変困った方が、中小業者が駆け込んでくる、それに対して積極的に対応するということなんですけれども、年間にどのぐらい融資の申し込みがあるのか、そして、実際にそのうち何割ぐらいが融資をされるのか。大ざっぱでいいですけれども、その数字、わかりましたら教えていただきたいと思います。
尾崎政府参考人 お答えいたします。
 申し込みで申しますと、年間、平成十二年度で申し上げますと四十四万件ほどございます。この申し込みは、実は申し込みをしておいて途中で取り下げる方がございますが、それは除いた数字でございます。それから、金額で申しますと三兆五千億ほどになります。それに対しまして、貸し付けをしておりますのが、件数で四十万件ほど、それから、金額で二兆八千億円ほどでございます。
佐々木(憲)委員 途中で取り下げるということなんですけれども、これは事前に資格がないよということをお話しして取り下げるということになった方々が多いんでしょうか。それは何件ぐらいあるんでしょうか、取り下げは。
尾崎政府参考人 取り下げの件数は実は把握していないようでございます。
佐々木(憲)委員 ちょっと私はそこが疑問に思うんですが、駆け込みをするわけですから、何件駆け込んできたかという、駆け込み寺としては当然その駆け込んだ数というのは正確に把握するというのは大事だと思うんですね。そのうちで取り下げるという人もあるかもしれぬ。これは自発的に取り下げる場合もあるでしょうし、あなたはちょっと最初から無理だから申し込み自体は御遠慮いただきたいといって取り下げる場合もあるかもしれない。
 実は、私もいろいろな話を聞いていまして、必ずしも駆け込んだらすぐ融資というふうにはならないという話も聞いていますので、一体その実態はどうなのかということを正確に把握するというのは、やはり国金として当然ここはきちっとするべきだと思うんですね。つまり、駆け込んだ数がわからないというんじゃちょっと困るわけで、その数は当然しっかりと把握していただくということで今後お願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
尾崎政府参考人 私ども、日々支店の店先で、あるいは電話で、あるいは書類による申し込みというようなことで仕事をしているわけでございますが、申し込みということではなくて、本当にただ御相談においでになる方とか、申し込みというおつもりでおいでになって説明を聞いておやめになる方とか、本当に一遍申し込みをなさって、途中でほかに資金の融通がついたりして取り下げをなさるとかいうようなケースもございまして、実は、そのどの段階から申し込みとして把握するかというのはなかなか難しい問題がございます。
 ただ、おっしゃいますように、やはり全体の姿をできるだけコンクリートにつかんでおくべきではないかという御指摘はそのとおりだと思います。そのように努力をいたしたいと思いますが、非常に漠然としている部分がございまして、なかなかきっちりとした統計というような姿にはならないと思いますけれども、できるだけその努力をして仕事をしてまいりたいというふうに思います。
佐々木(憲)委員 では次に、中小企業金融公庫の堤総裁にお伺いしますけれども、法律では、「中小企業者の行う事業の振興に必要な長期資金であつて、一般の金融機関が供給することを困難とするものを供給することを目的とする」このように書かれておりまして、やはり民間の銀行が貸せない長期資金を大いに中小企業に貸すということが政策目的として掲げられております。
 また、「金融ジャーナル」の昨年五月号を拝見しますと、民間の場合は市場原理で行われているために、内容のよい企業のみに貸すという選別性がはっきりした、質的貸し渋りという形がある、こういうふうにおっしゃって、公庫は民間金融機関がリスクテークしない分野にしか携わっていないんだというふうにその立場を述べておられるわけであります。「現在の環境では、公庫のような補完金融が必要だと思われる」こういうふうに述べておられるわけです。
 やはり、この立場は今後とも私は大事だと思いますが、今回のこの融資先の債権内容を民間と同じように、同じ基準で検査をするということになっていきますけれども、その辺の姿勢というのは変わるんでしょうか、変わらないんでしょうか、確認をしたいと思います。
堤政府参考人 お答え申し上げます。
 基本的枠組みはもう既にできておりますし、我々が中小企業のために仕事をするというのはもう約五十年の歴史がございます。そういう中で、検査のやり方が変わったからということで、我々は政策実施機関でございますし、政府の政策としてどうなるかということには常に動かされるのが当然でございますけれども、我々としてはそういう大きな変更があるとは思っておりませんし、あるべきではないとすら考えております。
佐々木(憲)委員 それでは次に、商工中金の江崎理事長にお伺いしますが、商工中金の場合も、これは協同組合的な内容ではありますけれども、「主トシテ中小規模ノ事業者ヲ構成員トスル団体ニ対スル金融ノ円滑ヲ図ル為必要ナル業務ヲ営ムコトヲ目的トス」、こういうふうに法律には書かれているわけです。
 同じような質問でありますけれども、この点についてどのように、今回の検査が行われても変わらないのか、それともこれが影響を受けるのか、この点をお聞きしたいと思います。
江崎参考人 商工中金でございますけれども、商工中金は、従来から、金融庁の公表しておられます検査マニュアルに準拠して既に自己査定を、これは平成十一年度からですが、やっております。それから、さらにそういったものについて監査法人のチェックなども受けているということでございますので、金融庁の検査が実施されることになりましても、この検査結果が大きく変わるということはないんだろうというふうに思っております。
 私ども、従来から、景気低迷が長期化するとか厳しい経営を余儀なくされている中で、中小企業のために、長期資金だけではなくて短期資金も含めまして総合的な金融サービスを提供することによりまして、セーフティーネットですとかあるいは経営革新といったような、重要な政策的役割を果たすというふうに思っておりますけれども、金融庁の検査が実施されることになりましても、こういう中小企業のための金融の円滑化という政策目的に沿った業務の運営方針を変えることにはならないと思いますし、また変えてはいけないんではないか、このように思っております。
佐々木(憲)委員 今、中小企業関連の三つの政府系金融機関の総裁、理事長にお伺いをしたわけですけれども、やはり政策的な目標、すなわち中小企業に対する支援、民間の銀行ができない、あるいは相手にしない、そういう中小企業を大いに支援していきたい、こういうお話でありました。
 さてそこで、それではその具体的な政策、例えば平沼プランというのがありますね。つまり、今日本の中小企業というのはつぶれる方が多くて、新しく生まれるのはそれより数が少ないために、全体として企業数が減っております。そこのところを減らないように、創業が大いに活性化するという目的でこれがつくられているというふうに思いますけれども、この平沼プランの概要を、中小企業庁の小脇次長、来ておられると思いますけれども、説明をしていただきたいと思います。
小脇政府参考人 お答え申し上げます。
 新産業の創出あるいは雇用の拡大のためには、開業、創業の促進、拡大が極めて重要な課題というふうに私ども認識をしております。
 こうした観点から、昨年五月に取りまとめられましたいわゆる平沼プランにおきまして、開業創業倍増プログラムといたしまして、新規開業を五年間で現在の年間十八万社から三十六万社へと倍増させることを目標といたしまして、資金調達面、あるいは人材育成面、あるいは需要開拓面等々、多様な支援を強力に推進することといたしております。
 具体的な政策としては、まず、資金調達面での支援といたしまして、従前の融資制度を見直しまして、新たな融資制度といたしまして、担保の有無あるいは過去の勤務要件などの形式的要件によらないで、いわゆるビジネスプラン、事業計画の内容を審査いたしまして、すぐれたものであれば無担保かつ第三者保証、そして本人保証もとらないで国民生活金融公庫が融資を行う制度、これを本年一月から実施いたしているところでございます。
 また、創業者に対します民間金融機関からの融資を円滑に進める、こういう観点から、信用保証協会によります新事業創出関連保証につきまして、昨年秋の臨時国会におきます法律改正によりまして、保証限度額を一千万から一千五百万に引き上げたところでございます。
 さらに、国内の成長初期段階にあります創業・ベンチャー企業への民間からの投資を促進するための呼び水といたしまして、中小企業総合事業団によります投資事業組合への出資制度、これを平成十一年から実施しているところでございます。
 さらに、人材育成面での支援としては、商工会、商工会議所等におきまして、創業塾、創業セミナー等を開催いたしておりまして、平成十三年度では約二万人の方が受講いただいております。本年度は対象者を倍増いたしまして、約四万人を対象として実施する予定でございます。
 さらに、需要開拓面の措置といたしましては、創業者の販路開拓を後押しする、こういう観点から、創業者の試作品の展示でありますベンチャーフェア、これを開催いたすとともに、創業希望者が投資家に対しまして事業計画を発表する場でありますベンチャープラザ、これを全国各地で展開しているところでございます。
 そのほか、平沼プランに基づきまして、いわゆる産業クラスター計画や中小企業の技術開発を支援いたしますSBIR制度等々を推進しておりまして、今後とも、こうした施策を積極的に実施することによりまして、開業、創業の推進、拡大のため全力を挙げてまいりたい、このように考えているところでございます。
佐々木(憲)委員 その平沼プランの中でも、大変私は大事だと思いますのは、創業をするという場合は、なかなかこれは最初から担保が十分あるわけでもありません。また、保証人も簡単につけるということもできない。そういう個人あるいは一定の集団が新しい企業を立ち上げる、その場合には、無担保無保証人というのが大変重要な手段になると思うんですね。
 昨年七月から百五十万上限として制度ができたということなんですが、ことしに入って五百五十万に引き上げられた。この予算というのは幾ら組まれているのか、それから何件の利用を積算の根拠として見込んでおられるか、これをお聞きしたいと思います。
小脇政府参考人 お答え申し上げます。
 ただいま先生御指摘の国民生活金融公庫の新しい融資制度でございますけれども、十三年度の補正予算で九十七億円の措置をいただいたところでございます。そして、この制度に関しましては、私ども積極的にPRに努めておりまして、既に百万部のパンフレットも印刷、配布をいたしておるところでございまして、私ども、この制度によりまして、三年間で約一万社の開業、創業が見込まれる、このように考えているところでございます。
佐々木(憲)委員 三年で一万社というと、年間三千強ということになりますね。これはなかなか、全体の数からいいますと非常に比率が低いのではないかという感じを受けておりまして、百万部パンフを出しても年間三千というんじゃ、ちょっと少な過ぎるような感じがいたします。
 それでは、これを実際に実行していく国民生活金融公庫の尾崎総裁にお伺いしますけれども、年間、今までの実績でどのぐらいの実績を上げているか。枠は一応、今説明がありましたように、つくられました。特に無担保無保証、私は重要だと思いますけれども、それを実際に実行していく場合、国金がどの程度、具体的に何件貸すか、これがかぎになると思うんですね。その点でまず実績を示していただきたい。
尾崎政府参考人 十三年度の実績でございますが、先生御指摘ございましたように、十三年の七月から百五十万円という限度額で始めまして、補正で充実されまして、十四年の一月から五百五十万という限度額になったわけでありますが、二つに分けて申し上げたいと思います。
 七月から十二月までの半年間でございますが、申し込みは五十九件、貸し付けが三十四件でございました。それが、充実が図られて以来、一月から三月の三カ月間で申し込みが六百八十八件、つまり、その前の半年と比べて半分の期間で十一倍に申し込みがなりました。それから、貸し付けで二百九十三件ということでございます。
 まだ始まったばかりで、平年度化してこれからどういう姿になるのか、ちょっと予測できないところがございますが、私ども一生懸命PRに努めて、御利用をいただきたいというように考えております。特別に目標額幾らということを置かずに、今努力をしているところでございます。
佐々木(憲)委員 今の数字ですけれども、申し込みが昨年は五十九件、実際に実績としては三十四ですね。ことしに入って三カ月間で六百八十八の申し込みがあって、実現が二百九十三。比率でいいますと、ことしに入ってからの方がかなり厳しくなっている。件数はふえていますけれども、申込件数に比較する実績といたしますと。
 それで問題は、先ほどありましたように、申し込み以前にいわば取り下げというのもあるんじゃないかというふうに思いますが、それは数字は把握されてないと先ほどおっしゃいましたが、ぜひ、積極的に貸し出すという姿勢が私は重要だと思います。
 その点で、例えば、平沼大臣が昨年の十二月五日に経済産業委員会で答弁をされていまして、この制度を活用して新規事業の立ち上げを倍増にしたい、柔軟に、迅速に、果断に、そして、新しく業を起こそうとする方々にはその意欲に十分おこたえする、こういうことで運用していきたいというふうに答弁されておりますので、これは無担保無保証人ということで大変期待をされているわけですが、問題は、窓口で余り厳しくしますと、せっかく可能性のあるところを、創業をしたいという事業者を抑えることになりまして、本来、果断に、積極的にという大臣の主張されていることとも違ってくるとこれは大変困りますので、その点の今後の姿勢についてお伺いしたいと思います。
尾崎政府参考人 新規開業支援は、私ども一番大切な仕事だと考えておりまして、実はもう既に平成七年度末に新規開業支援室というものを設立いたしまして、自来いろいろ事例を積み上げながら、全く過去の実績もない、信用というものもまだできていない、担保もない、あるのは創業者の意欲だけというような企業に一体どのように貸していったらいいかという、いわば事例を積み重ねながら努力をしてまいりまして、今そういう従来やっております方式で、十三年度約二万九千件の貸し出しをいたしております。
 先ほど申し上げましたのは、新しくできました保証人なしという、つまり、保証人もとらないんだけれどもリスクを金利の上乗せでカバーしよう、そういう新しい試みについてだけでございます。
 それから、ちょっと私、先ほど一言本当は言葉が足りなかったのでございますが、三月末までに申し込みのあったもので貸し付け決定が今年度にずれ込んでいるものがございますので、申し込みの件数と貸し付けの件数の比率だけをとられますと、最近の部分がちょっと数字が落ちてしまう。ちょっとそれを申し上げるのを忘れまして、失礼をいたしました。
 そのような努力を重ねてきて、そして、実は従来の例から考えて、保証人もいらっしゃらないという方がおられる。それでリスクプレミアムを見るということを考えた。私ども、それを始めましたら、今度政府の方からも積極的な支援をいただいたということで、大変喜んでいる次第でございます。
 ただ、悩ましいのは、独立した事業としてどうも成立しないんじゃないかというようなものもあったりいたしますから、それに御用立てして、それがだめになりますと、今度は納税者の負担になる話でございますので、そこの、どうしたらいいのかというところが大変我々つらいところでございますし、また、そこで我々の努力をといいますか、我々のノウハウを発揮していかなくてはいけない部分であるというように考えております。
佐々木(憲)委員 その点、ぜひ積極的に、もちろん、全く見込みのないところに貸すというようなことを申し上げているわけじゃありませんで、やはり可能性を十分酌み尽くすという姿勢で、ぜひ前向きに、積極的に対応していただきたいというふうに思います。
 さてそこで、今回の金融検査との関連でお聞きをしたいんですけれども、ディスクロージャー誌を見ますと、二〇〇一年の国民生活金融公庫レポートですが、この中の五十六ページのところに、「貸出条件緩和債権について」という部分がありまして、ここで、民間金融機関と比較をしまして、バランスシートの健全化を民間の場合は重視するようになって、バランスシートの健全化といいますと、貸し出し姿勢を慎重にすることになると。いわゆる貸し渋りという現象を生みました、当公庫は貸し渋り対策として、この金融変革期のショックを和らげるセーフティーネットの役割を求められてきましたと。つまり、民間金融機関が貸し渋りという状況のもとで、国金としてはセーフティーネットの役割を求められた。その場合、政策目的を果たすための措置として行う返済条件の変更と、民間金融機関の貸し出し条件緩和債権とは、性格が異なり、同一視することはできません、こういうふうにおっしゃっているわけですね。
 これは私、大変重要なことだと思うんです。つまり、同じ基準でいきますと、民間銀行でいいますとこれは不良債権の部類じゃないか、こういうふうになりますけれども、しかし、政府系金融機関として政策目的に沿って貸し出すものがそういうふうに条件変更を行う、これはもう私は、その企業を助け、民間ができないことを行う、大変目的に沿った対応だろうと思うんですね。しかし、この新しい基準でいきますと、質が無視されて、どうしても量で比べられるという傾向が出てくるんではないか。この点について総裁はどのような見解をお持ちでしょうか。
尾崎政府参考人 民間の金融機関、いわゆる銀行問題というのが、目下、現下の日本経済の最大の問題だということを考えてみますと、金融機関がそれぞれのバランスシートをしっかりしたものにしようという努力はやはり必要なんだろうと思うわけですね。その結果として、どうしてもリスクの多いところには貸さなくなる。それは私どもが働かなくてはいけない状況に今あるということだと思っておりまして、そのための努力を続けているわけであります。
 新たに貸すというだけではなくて、既に貸したお客様についても同じ問題があるわけでございます。そういう方々に対してのその条件変更につきましても、やはりよく事情を伺いまして、条件変更をすれば返していただけるということもあるわけですから、それを私どもそのような姿勢で取り組んでまいりました。
 ところが、それがリスク管理債権に入るということになりますと、私恐れましたのは、各支店の職員がやはりどうしても自分のところのリスク管理債権がふえるのは本能的に嫌がりますから、そのために条件緩和が厳しくなってはいけないと思いまして、実は、この方式で算定するようにと言われました最初の年、抵抗をしまして、一年間発表しなかったことがあるんです。ただ、その後、政府保証債やら財投機関債を出さなくてはいけないことになりましたから、そういう債券をお持ちいただく方のためにディスクローズが必要だと思いまして、現在は出しております。
 しかし、私どもの条件緩和債権というのはこういう性格のものだということをよく世の中に説明して、そこは御理解をいただく。そして、従来どおりの条件緩和についての姿勢は改めないということでいきたいと考えております。
佐々木(憲)委員 この点、大変重要な点で、新しく検査が金融庁主導でやられて、民間と同じ基準でいくというふうになりますと、どうしても一定の圧力がかかる。したがって、我々は、こういうやり方というのはやはり一律にすべきではないというふうに思っておりまして、今回のこの法案についても、そういう危険性が非常にふえますし、政府系金融機関の本来の役割を圧迫することになるんじゃないかということで、立場として反対という立場を表明して、時間ですので、以上で終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
坂本委員長 次に、阿部知子君。
阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
 まず、基本的には、今回の政府系金融機関に対する金融庁の検査の導入ということは長年社民党も求めてきたところのものでありますし、本法案に基本的に賛成する立場から、しかしながら、幾つかの懸念もまだ残る部分これあり、本日の御質問とさせていただきます。
 まず、先ほど申しましたように、これまで政府系金融機関に対する検査の権限が主務官庁にございましたところから金融庁に移すという今回の法案は、より透明性を増すという意味でも前進ではございますが、ただし、政府系金融機関と申しますものは概して、世でいうところのいわゆる天下り等々で、例えばですが、財務省に旧おられた方が関連の、日本政策投資銀行でもいいです、そういう機関にその後お仕事を移されて、そしてそこを、旧財務省におられて今は金融庁に移られた担当官の方が検査なさると、なかなかこれ、内々の検査になりはしまいか。また、民間の金融機関に対する検査とはまた違う面のなれ合い、悪く申せばそのような面も生じ得ることではございますが、そうした観点から見た場合に、柳澤金融大臣としてはどのような歯どめ策というかお心構えで臨まれますでしょうか。
柳澤国務大臣 年来の構想がこういう形で実られるというお話を聞きまして、大変、何と申しますか、私どももこういう方法をとってよかったという感じがいたしました。
 しかし、その上で、政府関係金融機関というところにはとかく財務省系統の人材が配されているということとの関連で、検査の客観性あるいは厳正さというものが確保できるだろうか、こういう御懸念がございました。
 私は余り懸念をいたしておりません。というのは、確かに、頭の中で考えてみるとそういうことがあるのかなというふうにお考えになるのもわかるんでございますけれども、現実を見ますと、今ここで答弁に当たったような方は相当の年配者でございまして、実は我々の検査官として出かけていく人材とは相当もう年齢的にも開きがございまして、何というか、その先輩の人たちと何か仕事上のつき合いがあったり指導を受けたというような年齢ではもうほとんどないというのが実態でございます。それで、もうそういうようなことで全く影響なんというのは事実上ないということでございます。
 むしろ検査官は、かねて私ここで申し上げているとおり、財務省から離れた、あるいは、何と申しますか、自分たちの存在はこの検査の厳正さというものをきちっとやることによってしか確保されないんだ、そういう気持ちは非常に強いわけでございまして、私は、委員の御懸念は御懸念として受けとめて、実際上の指揮監督においてそういう誤りのないようにするということを心がけてはいきたいと思っておりますけれども、まあ、実態を考えると、少し御心配のし過ぎではないかと思いまして、もう少し当初のお考えに自信を持っていただいたらよろしいんではないか、このように考えます。
阿部委員 先輩後輩という関係でまいりますと、やはりなかなか物は言いづらいのが世の常でございます。それが逆にジェネレーションギャップとなって、公明性、公正性が出てきてくれることを願いながら、ただしかし、もう少しシステム的な歯どめも必要かなと思いますので、あえて御質問をさせていただきました。
 そして、そのシステム的な歯どめとは、例えば民間の専門家の手をかりるとか第三者機関的なものをお考えになるとか、そういうことについてはお考えはいかがでしょうか。これは先回、何の質問の折でしたか、塩川財務大臣がこのことに関連するようなことを少し御発議なされましたので、今回は柳澤金融大臣にお願いいたします。
柳澤国務大臣 債務者の財務状況を評価する、そしてそれを銀行の健全性の確保のために反映させたいろいろな引き当て等の措置を講ずるということは、かなり厳しい守秘義務が要る話だというように思っております。
 私は、検査官なぞというのは、その職務上知り得た秘密ということを一般の公務員以上に気をつけて守っていかなければならないという立場の者であると思っておりまして、そういう意味で、もちろん今委員の御提案も、一たん守秘義務というようなものをかぶせた上で、そしてその職を離れた後もその義務をずっと課していくという構想のもとかと思いますけれども、しかし、なかなか現実問題、難しい面があろうというふうに私は考えるわけでございます。
 もし技量というようなことでいけば、我々の方にも、公認会計士の資格を持ったり、あるいは公認会計士の事務所に勤めたことすらあるというような人間もおりますので、そういう人間が厳正に検査に当たるということで、委員の期待されるような機能というか、そういうものは十分確保できるのではないかと私は考えております。
阿部委員 行政機関におります者が、その業務上知り得た個人の情報について……(発言する者あり)そうです、どのように保護してまいるかは、別途、法案の審議の中にも今ちょうどかかっておりますし、行政機関における情報保護法等々ございますので、またその面で審議を深めたいとは存じますが、やはりこれからはいろいろな分野からいろいろな目で見た方々を取り入れていくという方向に、官を開いていくという方向に御検討くださいますよう、これはお願いでございます。
 先ほど柳澤金融大臣がおっしゃいましたが、若い人たちがどんどん金融の実際の検査現場に入ってこられる。私は、それ自身、非常に前向きに評価いたしますが、民間金融機関には、先日来、常駐体制に等しい体制がしかれる、そして、今度政府系金融機関でも新しく検査という業務が加わる。果たして、そのための金融庁の人材の配置なり増員なり、そしてそのことと、一方で総定員法という枠がございますから、そのことの兼ね合いの中で主務官庁としてどのようにやっていかれるか、お考えを伺いたいと思います。
柳澤国務大臣 御心配いただいていることを感謝申し上げます。
 まず、実質常勤というか常駐検査体制ということについてまでのところは、実は平成十四年度にいただいた定員でもって私どもも賄い得る、そういう体制をつくるという考え方でございます。
 しかし、今回、新たに政府系金融機関の検査という業務が今度の法律で加えられる、それで十五年度からこれが実施されるということを考えますと、やはりそれに相応した人員の拡充をいただきたい、このように考えておりまして、これは率直に言って、この関係の、行政改革の一環として推進されている方々も、この点は十分御理解の上でこうした構想の実現を進められている、このように理解をいたしております。
阿部委員 私も実際に人手が必要なことはよく理解しておりますが、くれぐれも金融庁だけが肥大するという形にならないように、いろいろな創意と工夫をして、そして厳正な検査で透明性が確保されるというふうにお願い申し上げたいと思います。
 そしてまた、人員だけでなくノウハウというものも、新たに加わりましたこれらの政府系金融機関を検査していきます場合に必要になってくるのではないかなと思う事案が一つございますので、お答えをお願いいたします。
 私が特に案じてございますのは、国際協力銀行、いわゆるJBICも今回こうした政府系金融機関の検査対象に加わっております。このJBICという機関自身、旧来の、財務省とそれから外務省、経済産業省等々いろいろな機関が寄り集まってできた一つの機関になってございますが、行う業務としては、かなり、他の政府系金融機関で今回検査に当たる機関とはやはり趣をちょっと異にしておると思いますが、このJBICの検査に当たっても、金融検査マニュアルというのは、今私どもの手元にいただきましたこの金融検査マニュアルをお使いになるのでしょうか。関連部署からの御答弁をお願いいたします。
柳澤国務大臣 JBICの検査においてどういうマニュアルを使うんだということでございますけれども、基本的に現行のマニュアルで間に合うというふうに考えております。
 これは後でもっと細かい御議論あるのかもしれませんけれども、ODAというのは、大体政府及び政府関係機関に対して援助の要素を加味した融資を行うということでございまして、その融資の査定というのは、一般にソブリンの査定ということ、つまり主権国家の信用度の査定ということが基本でございます。
 これについては、実は、民間の金融機関の場合であってもそういう外国の政府及び政府関係機関に対する融資というものが現に存在しますので、それについての資産の評価という、債権の評価ということについては、検査マニュアルはつとに、これに対する評価のあり方ということがそこにうたわれておりまして、それが適用されるということで、基本的に間に合うというふうに思っているわけでございます。
阿部委員 実はこの金融マニュアルの中には、旧輸銀関連の、財務省がこれまで主務官庁として財務状況を見てこられた輸銀について、輸出入銀行についてのマニュアルは約十五行ございますが、私が案じておりますのは、これまでやはり日本のODAと申しますのは、焦げつきも含めて、世界で一番のODA援助額を出しながら、果たして本当にある意味でそれが有効に活用され、また返済がきちんとなされているかということにおいて、これまでノーチェックであった。いわゆる輸出入銀行の行ってきた業務とまた一歩別にODA業務がございまして、このODA業務については、実は主務官庁は経済企画庁でチェックをする予定になっておりましたが、実は今まで一度もなされておりません。
 これは、私が今回の法案の提出に関しましていただきました衆議院の調査局の財務金融調査室でおつくりいただいた資料の中に、例えば、平成十三年の五月から六月、国際協力銀行に関して政府系金融機関に対する主務官庁の検査が実施されたという記載がございますが、私がよく伺いますと、これは旧財務省関係の輸出入銀行関連の方のチェックだけでございます。
 再度この場で確認させていただきますが、旧海外経済協力基金を管轄していた経済企画庁として、主務官庁による財務状況の検査が義務化されましてからODA関連の融資検査は行ったことがございますでしょうか、ございませんでしょうか。
黒木政府参考人 お答え申し上げます。
 国際協力銀行の海外経済協力業務及び同勘定につきましては、平成十三年一月より外務大臣が主務大臣となっておりますけれども、現在のところ、同業務及び勘定に関する事項については検査を実施しておりません。
 また、平成十三年一月以前に同業務及び勘定の主務官庁でございました経済企画庁につきましても、検査を実施したことはないというふうに承知しております。
阿部委員 私が昨日あらかじめこの質問に際しましてお伺い申し上げたときのお答えも、今のようでございました。私がちょっと言い間違えまして、十三年の一月以前が経済企画庁になりますか、その後が外務省、いずれもいわゆる主務官庁による検査が行われていない。ということは、今回、金融庁の検査がある意味で初めてのものになる。
 そして、私は、冒頭申しましたように、こうした検査が行われるということは前向きに評価してございますし、特にこの間、鈴木宗男氏問題で、ODA疑惑、国会を揺るがし、さまざまなまだ未解決な問題が累積している中でございますから、ぜひともODAが本当に相手国にも感謝され、世界の経済発展とそして我が国の信頼を高めるもののようになってほしいと願う立場から、そういう立場から見ると、この金融マニュアルでも十五行しかないし、今までもやったことがないという分野に新たに検査に入るときの、それなりの心構えなり人的配置なり、あるいは、いろいろなノウハウをこれから得ていくための問題意識を喚起したいと思いまして、きょうは私はこの点を質問させていただきました。
 まず、今私が申し述べましたような概念的な話でございますが、金融大臣にはどのようにお聞きあそばされたでしょうか。
柳澤国務大臣 今度のJBICの検査というのは、旧輸銀の部分と旧海外経済協力基金の部分がございます。旧輸銀の部分というのは、これは基本的にODAではありません。ODAというのは、旧海外経済協力基金の部分でございます。
 今、阿部委員の指摘されたこととの関係でいいますと、私は、ちょっとここは間接的なんだろうというように思います。間接的な部分が多いだろうというように思います。
 つまり、私どもは、外国の政府、政府の例が一番わかりやすいので政府ということなんですが、政府に貸しまして、それがその当該政府の予算、多分国家予算の中に入っていくんだろうと思いますけれども、国家予算の決め方として、当該のプロジェクトにその予算の配分が行われるということになるだろうと思います。もちろん、私どもはそのプロジェクトにも関心がないわけじゃない、それどころではなくて、そういうプロジェクトがあってその援助が行われるということでございますけれども、基本的に、融資の対象である債務者はだれかといったら、その政府そのものなのでございます。
 したがって、その政府の信用力というものが私どもにとって第一義的に大事だということになるわけでして、そういう意味では、ちょっと、委員が強く御関心を寄せておられる個別のプロジェクトの、何と申しますか、採算であるとか、あるいはその健全性であるとかというようなこととちょっと、間接的なものになるということは御理解いただいておかなきゃならないだろう、このように思います。
阿部委員 検査がいわゆる相手国の信頼度に対して持たれるということは承知しておるつもりです。そして、確かに相手国に、例えば要注意債権国とかそういう名前がつかないのも、国が破産したりするという形も、普通は考えの中にそういう表現をとらないということも存じておりますが、逆に、国に対する援助でも、その国の中でメーンになるプロジェクトの行方によってはその国の経済を揺るがすような状況が生じてくるのも、またこれ事実でございます。
 そこで、この間、問題になっておりますいわゆるケニアにおけるソンドゥ・ミリウという水力発電所の問題ですが、今、アフガニスタンのみならずケニアでも非常に干ばつがひどい、水の利用問題が問題であるし、また、水力の自国での発電がそれなりに充実すればまた経済も発展していくということで、このケニアのソンドゥ・ミリウのプロジェクトというのは、我が国が深く関心を寄せ、なおかつ、この間、非常にまた政治の違う俎上から問題になってきた問題でもございます。
 そして、ちょっと個別の事案で恐縮ですが、事例のために幾つかお答えいただきたいのですが、実務者の方からで結構です。
 実は、このケニアのソンドゥ・ミリウの水力発電所については、いわゆる第一期工事と第二期工事がございまして、第二期工事にかかわる部分といたしまして、まだ交換公文が締結されておりませんが、しかし実際に業者への入札等々はケニアと業者の間で行われた。この入札から交換公文までの間に、いまだまだ交換公文がなされておりませんので円借款は出ておりませんけれども、既に入札が行われて、約二年の時期が経過してございます。
 このあたりの事情について、少し御説明をください。
黒木政府参考人 お答え申し上げます。
 ケニアのソンドゥ・ミリウ水力発電所計画につきましては、第一期分については、九七年一月に交換公文を締結しまして、約六十九億円の円借款を供与しております。また、この計画が所期の効果を発現するためには、先生御指摘の第二期分の事業が実施されることが必要であるとの認識を有しておりますけれども、第二期分に対する円借款の供与につきましては、環境、社会面の問題に対するケニア側の取り組み及びケニアの債務返済能力につきましてさらに確認を要するというふうに考えております。したがいまして、第二期分の円借款供与につきましては、引き続き慎重に検討を行っていくという考えでございます。
阿部委員 ぜひとも、今の御答弁、二つの意味で前向きに行っていただきたいと思うのですが、先般、外務省から十四年三月四日付で、ソンドゥ・ミリウ水力発電所に関する調査結果報告書というのが出まして、これは、直接には鈴木宗男議員の関与がいかなるものかというふうなことを調査したものではございますが、その中に幾つかケニアの事情についての表現が、経済事情あるいは借款等々の状況についての報告がございます。
 私が特にこの中で読みまして気になりますのは、二〇〇〇年度の一月、ケニアはみずからの責任において第二期分の調達に係る土木工事等の入札手続を開始したが、しかしその後、パリ・クラブ、パリで行われました世界のこういう債務の返済に関しまして、債務の削減は求めないが、パリ・クラブにおいて債務削減に至らない条件での債務繰り延べに合意していると。これが二〇〇〇年の十一月十五日でございます。
 そうすると、こういう債務繰り延べに合意しているということは、先ほどのわずか十五行のマニュアルの中の二番目にも、債務返済の繰り延べに関する契約等が締結されているということに当たりまして、実はこれが、逆に言うと、我が国が借款を行っていいかどうかの判断の一つの基準になってございます。
 実は、この案件に対しましては、既に一九九九年、鈴木宗男氏が官房副長官のころケニアにいらして、債務の削減は求めないから事業を進めていいだろうというお話をされたわけです。それに基づいてケニアと業者側は入札をなさいました。しかしながら、実際のケニアの財務状況、あるいは債務繰り延べを要求されてそれがパリ・クラブで実際に締結されているという事態にかんがみますと、我が国としてはやはり円借款ということに極めて慎重であっていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
黒木政府参考人 お答え申し上げます。
 本件計画の第二期の円借款につきましては、一九九九年九月に事前通報ということを行っておりますが、その後、先生御指摘のとおり、ケニア側におきまして入札手続を行ったという事実がございます。しかしながら、これはケニア側がみずからのリスクでもって実施した入札手続でございまして、日本側といたしましては、あくまでも第二期の円借款についての意思決定は今まだ行っていないという状況でございます。
 したがいまして、第二期分の円借款につきましては、先ほど申しましたように、環境、社会問題についての配慮、及びケニアの債務負担能力、これを十分踏まえた上で検討していきたいというふうに思っております。
阿部委員 そして、あえてもう一点つけ加えさせていただければ、私はいたずらにこのケニアへのODA援助をとめたいというのではなくて、逆に、九九年段階で既に我が政府として内々の、内諾を与えるような形になり、業者とケニアの間で入札が行われ、それが遅滞していることによってある種ケニアにも、負債状況といいますが、負担状況が生じておりますわけです。
 例えば、JBICからいただきました資料の中にも、第二期借款の遅延によるコスト面への影響で、第一期施工工事者からのクレームと称しまして、おくれましたことによって、第一期の工事にかかわっておりました業者の人件費とか等々で約一億円・パー・毎月という支出をケニアからその業者側にしなくてはいけない、あるいは、先ほど申しました、ケニア経済が立ちおくれていく、電力の事情が改善されないで立ちおくれていくということがございまして、極めてこのODAというのは慎重に、かつやはり大切な役割を担うと思うわけです。
 そこで、改めて、政治、外務省サイドのやはり姿勢と、それから実際にそのことを、ある意味で、個別の案件は評価しないとおっしゃった柳澤金融大臣のお言葉もよく理解した上で、しかしながら、他の政策系金融銀行とは異なる多面的な問題をはらんでいるという認識もぜひとも再度柳澤金融大臣に持っていただきたいので、今の私のこのやりとりを聞いての御感想を、最後にこれを質問といたしますので、お伺いいたしたいと思います。
柳澤国務大臣 援助をする、そしてその援助で一定のプロジェクトを手がけるという場合に、国内的に言うとそれは投資ですけれども、投資の効果が上がって、所期の経済全体への影響が、いい影響が早く出るように、それに努めていくというのは当然であります。
 この点については、別途、私の知るところでは、私の所管外ですけれども、実はODAの評価というのがこのごろ外務省でも行われておりまして、これはいわゆる第三者、部外の方がチームを組んでODAの具体的なプロジェクトについて評価をする、そして評価の報告書というのは毎年出ていると私承知をいたしておりますけれども、そういうような形で、援助が当初ねらった効果を上げて、それが経済全体に裨益していくということは、これはもう本当に厳格に追求していただきたいと思います。
 ただ、その問題と債権の健全性の評価というのは、今委員も言われたような、パリ・クラブでリスケが起こった、それは債権としてどういう債務者区分になるかというようなこととは、ちょっとやはり切り離して考えざるを得ない。それはもちろん実質的には影響しているんでしょうけれども、しかし、それはほかのいろいろなプロジェクトとか国内の財政状況だとかというものと混然一体となった形で我々としては評価をするということであって、やはりプロジェクトとしての評価とはちょっと間接的なものにならざるを得ないということは、大変恐縮ですが、御理解をいただいておかなければいけない点だと思います。
阿部委員 プロジェクトとしての評価は、もちろんJBICの方がそれなりにきちんとなさっているのだとは思います。ただしかし、先ほど申しましたように、いろいろな政治事情、あるいは入札疑惑等々もまたこれあり、非常に政治的な課題にもなっております。
 しかしながら、実際に一番肝要なところは、どのような信頼性に基づいて我が国がお金をODAに出していくかというその根幹のところに、今回金融庁が、出す方のもちろんチェックではございません、正しく使われたかどうかの結果、あるいは相手国の状況がどうかという結果ではございますが、極めて重要なかかわりを持たれるということを再度認識していただいて、ぜひともきちんとした政治姿勢を持って評価に臨んでいただきたいということを申し添えて、私の質問とさせていただきます。
坂本委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。佐々木憲昭君。
佐々木(憲)委員 私は、日本共産党を代表し、政策金融機関に対する検査権限委任のための関係法律整備法律案に反対する討論を行います。
 政府系金融機関の財務の透明性の確保は当然必要なことでありますが、財務内容を評価する場合、それぞれの金融機関の政策目的に照らして、中小企業支援などの役割の上に判断する必要があります。
 しかしながら、現在政府が進めている政府系金融機関の財務内容の開示策は、リスク管理債権の内容などを民間金融機関と同じ基準で評価することを求めるものであります。
 政府系金融機関へのこのような金融庁検査は、公的金融見直しの動きを推し進め、中小企業向け金融の縮小、合理化のてことなるものであり、認めることはできません。政府系金融機関を民間並みの水準で検査することは、現在でも貸し渋りの訴えが絶えない中小企業向け機関の貸し出し態度を一層硬化させるものであります。
 また、公的金融の役割、存在を民業圧迫だとか金融市場活性化の阻害要因だとする銀行業界は、かねてから、政府系金融機関の整理合理化に向け、金融庁検査の導入を求めてきました。本法案は、みずからの収益力拡大のため公的金融の縮小をねらう銀行業界の要求にもこたえるものであり、容認できません。
 以上の理由から、本法案には反対であることを述べ、反対討論とします。(拍手)
坂本委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 これより採決に入ります。
 政策金融機関に対する検査の権限の委任のための関係法律の整備に関する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
坂本委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、山本幸三君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び社会民主党・市民連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。阿部知子君。
阿部委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。
    政策金融機関に対する検査の権限の委任のための関係法律の整備に関する法律案に対する附帯決議(案)
  政府及び各政策金融機関は、次の事項について、十分配慮すべきである。
 一 民間金融機関について、いわゆる貸し渋り問題等の批判が依然としてみられる状況にあること等を踏まえ、政策金融機関にあっては、民間金融機関が行う金融の補完というその本来の使命を果たすこと。
 一 政策金融機関の中小企業等に対する融資については、いたずらに貸し渋り等の批判を招くことにならないよう、金融庁による政策金融機関に対する検査の実施に当たっては、中小企業等の実態を踏まえ適正かつ的確に行い、一律的にならないよう留意するとともに、各主務省庁及び各政策金融機関においては、金融庁による検査の結果を踏まえた上で、政策金融の機能が的確に発揮されるよう努めること。
 一 民間金融機関についても、中小企業等に対する資金供給の円滑化を図ること。
以上であります。
 何とぞ御賛成賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。(拍手)
坂本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
坂本委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付すことに決しました。
 本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。財務大臣塩川正十郎君。
塩川国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配慮してまいりたいと存じます。(拍手)
    ―――――――――――――
坂本委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
坂本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時一分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.