衆議院

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第16号 平成14年5月17日(金曜日)

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平成十四年五月十七日(金曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 坂本 剛二君
   理事 中野  清君 理事 根本  匠君
   理事 山口 俊一君 理事 山本 幸三君
   理事 古川 元久君 理事 石井 啓一君
   理事 中塚 一宏君
      岩倉 博文君    金子 一義君
      金子 恭之君    倉田 雅年君
      小泉 龍司君    七条  明君
      砂田 圭佑君    竹下  亘君
      竹本 直一君    中村正三郎君
      林田  彪君    増原 義剛君
      山本 明彦君    吉田 幸弘君
      渡辺 喜美君    五十嵐文彦君
      生方 幸夫君    江崎洋一郎君
      小泉 俊明君    小林 憲司君
      佐藤 観樹君    武正 公一君
      永田 寿康君    長妻  昭君
      長浜 博行君    上田  勇君
      遠藤 和良君    高橋 嘉信君
      藤島 正之君    佐々木憲昭君
      吉井 英勝君    阿部 知子君
      植田 至紀君
    …………………………………
   財務大臣         塩川正十郎君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君
   内閣府副大臣       村田 吉隆君
   財務副大臣        尾辻 秀久君
   財務大臣政務官      砂田 圭佑君
   財務大臣政務官      吉田 幸弘君
   政府参考人
   (警察庁生活安全局長)  黒澤 正和君
   政府参考人
   (警察庁刑事局長)    吉村 博人君
   政府参考人
   (金融庁総務企画局長)  原口 恒和君
   政府参考人
   (金融庁証券取引等監視委
   員会事務局長)      渡辺 達郎君
   政府参考人
   (法務省民事局長)    房村 精一君
   政府参考人
   (財務省大臣官房総括審議
   官)           藤井 秀人君
   政府参考人
   (財務省大臣官房参事官) 大村 雅基君
   政府参考人
   (財務省理財局長)    寺澤 辰麿君
   政府参考人
   (財務省国際局長)    溝口善兵衛君
   政府参考人
   (国税庁次長)      福田  進君
   政府参考人
   (経済産業省大臣官房審議
   官)           桑田  始君
   参考人
   (日本銀行理事)     三谷 隆博君
   財務金融委員会専門員   白須 光美君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月十七日
 辞任         補欠選任
  中川 正春君     長浜 博行君
  永田 寿康君     武正 公一君
  藤島 正之君     高橋 嘉信君
同日
 辞任         補欠選任
  武正 公一君     永田 寿康君
  長浜 博行君     中川 正春君
  高橋 嘉信君     藤島 正之君
    ―――――――――――――
五月十六日
 法人税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九八号)
同月十三日
 配偶者特別控除の廃止に関する請願(赤松広隆君紹介)(第二六九四号)
 同(土井たか子君紹介)(第二六九五号)
 同(水島広子君紹介)(第二六九六号)
同月十七日
 配偶者特別控除の廃止に関する請願(土井たか子君紹介)(第二八一一号)
 出資法の上限金利の引き下げ等に関する請願(海江田万里君紹介)(第二八八九号)
 相続税法緊急改正に関する請願(西村眞悟君紹介)(第二八九〇号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 証券決済制度等の改革による証券市場の整備のための関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第六九号)


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     ――――◇―――――
坂本委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、証券決済制度等の改革による証券市場の整備のための関係法律の整備等に関する法律案を議題といたします。
 趣旨の説明を聴取いたします。金融担当大臣柳澤伯夫君。
    ―――――――――――――
 証券決済制度等の改革による証券市場の整備のための関係法律の整備等に関する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
柳澤国務大臣 ただいま議題となりました証券決済制度等の改革による証券市場の整備のための関係法律の整備等に関する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。
 政府は、社債、国債等について、券面を必要としない新たな振替制度の整備、より効率的な清算を可能とする清算機関制度の整備を行う等、決済の迅速化、確実化を初めとする証券市場の整備のため、短期社債等の振替に関する法律等関係法律の整備等を行うこととし、本法律案を提出した次第であります。
 以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。
 第一に、決済期間の短縮化等を図るため、統一的な証券決済法制の対象をコマーシャルペーパーから社債、国債等に拡大することとしております。
 第二に、発展性のある証券決済システムを構築するため、一般投資家が振替を行うための口座を証券会社や銀行等に開設することが可能となるよう、多層構造の振替決済制度の創設を図ることとしております。
 第三に、決済事務の標準化及び決済事務量の削減を図るため、安全かつ効率的な清算を可能とする清算機関に関する制度の整備を行うこととしております。
 第四に、一般投資者保護のための仕組みとして振替制度に加入者保護信託制度を創設するほか、国債に関し、元本部分と利息部分を分離して振替を行うことができるいわゆるストリップス債や、譲渡性に制限を付した国債を導入する等、国債市場の整備のための措置を講じております。
 以上が、この法律案の提案理由及びその内容であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
坂本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、参考人として日本銀行理事三谷隆博君の出席を求め、意見を聴取することとし、政府参考人として財務省大臣官房総括審議官藤井秀人君、財務省大臣官房参事官大村雅基君、財務省理財局長寺澤辰麿君、財務省国際局長溝口善兵衛君、国税庁次長福田進君、金融庁総務企画局長原口恒和君、金融庁証券取引等監視委員会事務局長渡辺達郎君、警察庁生活安全局長黒澤正和君、警察庁刑事局長吉村博人君、法務省民事局長房村精一君及び経済産業省大臣官房審議官桑田始君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。五十嵐文彦君。
五十嵐委員 おはようございます。民主党の五十嵐文彦でございます。
 当法案を民主党でもヒアリングを受けたわけでありますが、当初、かなり実務的、技術的な法案であるというふうに伺っておりまして、説明もそのような状況でありましたけれども、ぱらぱらとめくっておりましたら、私が途中で、ちょっと待てよ、これは必ずしもそうじゃないじゃないかということに気がつきまして、もっとその部分を詳しく話をしてくれと途中で説明を求めたという経緯があるんです。技術的な部分はいいんですけれども、国債の金利スワップという部分がどういうわけか紛れ込んでおりまして、その説明が十分ではなかったというふうに理解をしております。
 金利スワップ、ヨーロッパでもやっているということなんですが、十分な準備もなくてこのような形で急遽入れてくるというのはかなり問題があるのではないか。やはり重要な内容でありますから、本来二つの法案、別々の法案で出してくるべきであり、何々等法案というふうに別の法案に抱き合わせ販売でしてくるというのは正当なやり方ではない、私はこう思うわけでありますが、この二法案、本来二つで分けるべき法案を、どうして一本で出してきたのかということを伺いたいと思います。
柳澤国務大臣 法案の提出に当たりまして、私ども念頭にありましたのは、発行市場を含む社債市場、国債市場等、証券市場の整備を図る、こういう大きな理念のもとで今回法案の立案に当たる、こういうことでございました。
 したがって、今委員御指摘のように、確かに証券の決済制度を抜本的に整備するということが一つの柱でございますが、同時に、今御指摘になられたような国債に関する諸措置についても、国債市場が我が国の主要な債券市場であるというようなことから、先ほど申した理念に合致するというふうに考えまして、これを第二の柱として本法案を構成したものでございます。
 委員の御指摘のような、ちょっと想定とは違う形になったというお気持ちになるのもわからないのではないんですが、これは、政府には、御案内のように内閣法制局というのがありまして、法律をどのような形式で整えるか、国会提出に当たってどういう形にするかということについては、かなり厳格な原則に基づく審査が行われるわけでございますが、本件については何らの問題もないということで、このような形式を整えさせていただいた次第でございます。
五十嵐委員 内閣法制局は大体政府の意に沿った判定をするものでありまして、特に、国債については個人の所有は二・五%しか日本ではないわけですね。ですから、急にこれをメーンの取引ということには、確かに国債そのものの厚みは債券の中でありますけれども、国債の金利スワップについては特にここで急いでやる必要はないはずでありまして、もっと十分な準備が必要だと私は思うわけでありまして、この裏には何らかの意図があるであろうということなんですね。
 日本の国債の発行状況を考えますと、とにかく大量発行が続きまして、残高がここまで厚くなってまいりますと、さまざまなリスクが予想されるということで、日本の金融機関等も、残存期間の短いものにシフトしていこう、すぐ逃げられるようにしようというような状況が出てきておるわけでありまして、長期国債の金利の上昇、国債価格の暴落というものが懸念をされる、そういう状態でありますから、まず、今の超低金利の状況の中で短期国債を発行しておいて、固定金利払い、変動金利受けの金利スワップを後からやるという形で、見かけ上の長期国債の発行を抑えていくということがねらいではないかなというふうに思われるのですが、そうではないですか。
寺澤政府参考人 お答え申し上げます。
 金利スワップ取引は、国債市場の状況や国債の負債構造等に応じまして、いろいろな形で活用できるものでございます。いろいろな取引をめぐって、目的がこうではないかとかいうことは当然想像されるわけでございますが、私ども、国債管理政策の観点からこれを申し上げますと、私どもは、国債を確実かつ円滑に発行、消化すること、また、長期的な調達コストを抑制することを管理政策の目的としておりまして、そのために、まず、市場の動向、ニーズに応じまして国債の発行計画を策定していくということが必要だと考えております。
 ただ、市場の動向、ニーズに応じて発行するという場合に、場合によっては、市場の環境から、長期国債が十分に発行できない場合が存在するだろう。その場合に、私どもは、発行計画は市場の動向、ニーズに応じて策定いたしますけれども、その発行の結果、国の債務構造、負債の構成、デュレーションと言っておりますが、それが、私どもが望ましいと考えている負債構造から離れた場合に、それを望ましい形に調整をする、変換をするための取引として、金利スワップ取引を考えているわけでございます。この国の負債のデュレーション管理につきましては、第一義的には発行計画で行う、それで、この金利スワップ取引はあくまでも補完的な手段というふうに位置づけているわけでございます。
 なお、先ほど先生がおっしゃいましたような短期の国債を発行するということは、過度の短期化を行いますと借りかえリスクや金利変動リスクが生じますので、スワップ取引を導入したからといって、こういった、殊さらに短期国債を発行するということは考えておりません。
五十嵐委員 考えていないというのですが、そうせざるを得ないような状況になっていくのじゃないか。
 現実に、今、長期国債は人気がなくなってきているわけでありますね。ですから、長期国債を、国債の残存期間のバランスを保つという名目のもとに発行をむしろ控え目にして、短期国債の方にシフトしているというのが現実で、それは市場の需要とマッチをしているわけですね。いや応なくこれからは短期国債の発行がふえてくる。そして、いよいよ苦しくなってきたら短期国債でつないで、そして金利スワップでコストの低減を図るということに向かうのは目に見えているわけですね。ヨーロッパとは違うんですね。
 ヨーロッパは、むしろ、国債残存期間の調整のために金利スワップを活用しているわけですけれども、ヨーロッパは財政が急速に改善していますから国債発行残高が減少して、新規発行が少なくなっている。ところが、債券市場は一定の厚みを保たないとなりませんから、いわば市場のために発行しているという部分があるので、この金利スワップによって政府債務の短期化を図るということがあるわけで、日本とは事情が全く逆なんですね。
 そういう意味からして、日本の状況は、これは、ねらいは、むしろ短期国債を発行しておいて長期化させるという逆の方向になるわけで、確かにメリットもあるのですね、何かあった場合に。それから、今のような金利が超低金利の状況の中では、コストを安くできるというメリットはあるわけですけれども、このメリットの陰には、今、理財局長もおっしゃいましたけれども、リスクがあるわけですね。そのリスクを十分にコントロールできるのかという問題があるわけで、金利スワップというのは専門家がやっても難しいわけですよ。
 ですから、十分な検討なしに、こういうツールが手に入ったということで飛びつくというのではなくて、例えば、失敗したときには一体だれがどういう責任を負うのかとか、どういうリスクヘッジの仕方があるのかというようなことも含めて十二分な検討が私は必要だと思うのですが、それがなされたように思われない。どうやら、この法案の作成過程の中で突如飛び込んできた話ではないかなということで、柳澤大臣に最初に御答弁いただいたのですが、最初からこの話はあった話なんですか。法案の途中から入ってきた、飛び込んできた話ではないのかという疑いもあるわけですが、いつからこれを準備されたのかということと、リスクをどのように考え、どのように責任をとるというようなことを考えて仕組まれたのかということを、二点、伺いたい。
寺澤政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど申し上げましたように、今回導入をお願いしております金利スワップ取引は、国の負債のデュレーションを調整するために、現実に発行されている国債の利子等につきまして金利の変換を行うというものでございまして、いわゆるスペキュレーションといいますか、金利の負担軽減とかもうけようとかといったような趣旨で行う取引ではございません。
 したがいまして、現在私どもが考えております金利スワップ取引によって変動金利を固定金利に変換した場合に、国にとっては、最初から固定の利付国債で資金調達をしたことと同様の効果が生ずるものでございまして、それ以上のリスクは発生しないというふうに考えております。
五十嵐委員 半分答えてないのですが、いつごろからこの法案準備に入ったか、いつごろ、この法案に入ることは出てきたか。
寺澤政府参考人 失礼いたしました。
 今回の法律は、証券決済制度等の改革による証券市場の整備のための関係法律の整備等に関する法律ということで、この法律の趣旨、目的が、我が国証券市場の効率化や国際競争力の向上を図るために、先ほど大臣が答弁されましたペーパーレス化による新たな振替決済制度等々、証券市場整備のためのいろいろな措置が盛り込まれるということでございます。
 この趣旨に合うかどうかを検討いたしまして、この金利スワップ取引の導入が、国債市場の需要の状況に応じて国債発行が市場が攪乱されずに行えるということで、国債市場の安定した形成に資するものだというふうに検討いたしまして、お願いをしたものでございます。
五十嵐委員 悪用の仕方によっては、あるいは、法律というものはいつでもそうなんですが、当初の目的はこうだったからこういう基準で運用しますといっても、あなたがいつまでも理財局長の席にいるわけではないわけですね。後の時代に新たな状況が起きたときにどのような使われ方をするのかというのが問題になってきて、そのような状況になっても悪用や誤用が起きないようにするというのが法律なわけであります。
 大量発行はしないんだというふうにおっしゃいましたけれども、大量発行を余儀なくされる事態が来る可能性が高いと私どもは言っているわけで、そのときに、これが大きな国の失敗につながるおそれがある、だから十分に考えておきなさいということを私どもは言っているわけですね。
 私どもは、これがいわゆる日銀の国債直接引き受けになだれ込むための一つの入り口、突破口になるのではないか、短期国債の大量発行から始まって、これが日銀に短期国債を買い取らせるという話になり、短期国債の買い取りを契機に、まさしく長期国債まで含めた直接引き受けにつながるのではないかという懸念を持っているわけであります。
 そういうことがないように、では、金利スワップにかける量について枠を設けているのかどうかということを伺いたいと思います。
寺澤政府参考人 お答えいたします。
 金利スワップ取引を行います場合には、国は一定の債務を負うということでございますから、憲法、財政法の規定に基づきまして、国は国会の議決に基づいて行わなければならないということになるわけでございます。
 具体的に申し上げますと、その具体的な実施額につきましては国債発行計画においてあらかじめ公表をするとともに、さらに、受け払いの所要額については予算に計上いたしまして、国会の議決により授権を得た範囲内で行うということにしているものでございます。
五十嵐委員 そうすると、あらかじめ国会に提出する国債発行計画の範囲内でしかやらないということですね。それは、歯どめはどこの条項で決まっていますか。
寺澤政府参考人 スワップでございますから受けと払いがあるわけでございますが、国の払いの方は利払い費になりますので、国債整理基金特別会計の歳出の中でそれが計上されるということになるわけでございます。
五十嵐委員 それでは、金利スワップの相手方はどこになるんでしょうか。
 ヨーロッパの例を見ますと、最低格付の基準を設けておりまして、相手方がシングルA以上でないと金利スワップの相手になれないというのがヨーロッパの例と聞いております。これを日本にそのまま例えば当てはめますと、邦銀の四大メガグループがあるわけですが、ここでシングルA以上というのは三菱東京だけなんですね。そうすると、万が一、三菱東京がこれ以下に格付が下がった場合には相手がいなくなっちゃうんじゃないですか。
 そのことは、要するに、二つのことを聞いていますが、最低格付の基準を設けるのかどうか、そして、その相手をどういうふうに想定しているのかということをお伺いします。
寺澤政府参考人 お答えいたします。
 相手方をどういうものにするかという点につきましては、基本的には、金利スワップ取引についての十分なノウハウや取引実績と十分な信用力のある金融機関等との取引を行うと考えております。その選定に当たりましては、相手方の格付についてどのように取り扱うかにつき、今後、市場参加者の御意見等も聞きながら検討してまいりたいと思います。
 御指摘のように、金利スワップ取引には、カウンターパーティーリスクと言われる債務不履行に陥るリスクに対応するために、諸外国で一定の信用度のある相手方しか取引を行わないといった対応をしている、また必要に応じて担保を徴求するといった対応をしていると承知しております。
 基本的に、相手方につきましては、十分なノウハウ、取引実績と信用力のある金融機関と行うように、こういった海外の例も参考にしながら今後検討してまいりたいと考えております。
五十嵐委員 この程度のことは基準を決めていなきゃいけないんだと思うんですね、法律を出してくる以上は。それが、これから検討だというような、そして、一般論でしか答えられないというところから見て、この法律が十分に考え抜かれてきたとは思えない。
 それから、大量発行しないんだからリスクはそんなに大きくないんだということなんですけれども、少なくとも、リスクのある仕事であることに変わりないので、もし失敗した場合はどうするのか、あるいはだれが責任をとるのかというようなことも、きちんといろいろなことを詰めた上で私は法律を出されてくるべきだというふうに思うので、出し直しをしていただくように求めたいと思います。
 そこで、相手方がシングルA格以上でなきゃいかぬという話があったんだけれども、国の方もどうも信用がないじゃないかという話になってきているわけですが、外国の格付機関に対して、三社に対してですか、財務省は財務官名の意見書というものを発出したようでありますけれども、その意見書を送付した意図、そして相手方の反応を読んだ上でこういう行為を初めてしたわけですけれども、したのかどうかということをお伺いしたいと思います。
尾辻副大臣 お話しのとおりに、財務官名で外国格付機関あての意見書を出しました。それに対します答えは、五月十六日現在では二社、すなわちフィッチとムーディーズから届いておるところでございます。三社にあてて出しまして、今、二社から回答が届いておりますので、三社の回答が出そろったところでこれらを精査して適切に対処してまいりたいと考えております。そのときに私どもの見解はまとめて申し上げたいと存じております。
 今申し上げられますことは、基本的な認識の違いといいますか、考え方の違いといいますか、それは、格付会社は財政のみを見て格付をいたしておる、それに対して私どもは、その国の持っている、国債に対する格付でありますから、やはり経済力というその一番基本の力とでもいいますか、そういうところをしっかり見て、そして、それに基づいて国債も発行しておるわけでありますから、一番その大もとの力をきっちり見て判断すべきであろう、こういうふうに言っておるわけでありますが、ここのところがお互いの見解の違いだというふうに認識をいたしておりまして、今後、これらの議論になろうかと思います。
 いずれにいたしましても、申し上げましたように、三社の回答がそろったところでこの見解を私どもは申し上げたい、こういうふうに考えております。
五十嵐委員 ムーディーズの反応は私は余り承知していないんですが、フィッチの方はもう報道されているんですが、これに対しても今の時点ではコメントしない、あるいはできないということですか。
尾辻副大臣 申し上げましたように、三社そろってから精査をして見解を申し上げたい、このように考えております。
五十嵐委員 ムーディーズは、三月に幹部が来られたときに、二ノッチ、ツーノッチの格下げを予告していたと伺っております。それが、先日のイタリアの格上げによって、ツーノッチではなくなりそうだというので、それを好感してもう株価は反応しているわけでありますけれども、このムーディーズの格上げをどう見るかということについてはどうですか。
尾辻副大臣 お話しのとおりに、ムーディーズがイタリア国債の格上げをいたしました。それは承知をいたしておりますけれども、これは他国の格上げのことでございますので、私どもからコメントする立場にはございません。したがって、コメントは差し控えさせていただきたいと存じます。
五十嵐委員 外国の格付会社、確かに認識の差、私どもともあるとは思うんですが、彼らは彼らなりにそういう需要があって、すなわち、海外の投資家で日本国債を買っている人がいるわけですね。海外は今五・〇%ですか、数は、総体の中では小さいけれども、その人たちが、今、各国、先進国は財政を急激によくしていますから、そのポートフォリオに従って買おうとすると日本国債しか目ぼしいところはないということで、日本国債をできれば買おうという動きがある中で、本当にリスクはどうなんだという話が出てくるわけですから、そのために、海外の日本国債を買おうとする投資家のために、彼らは格付をしているという面が強いと思うんですね。
 そうすると、日本国債の将来というのは当然問題になってくるわけでありまして、二〇〇六年以降、今バーゼルでやっておりまして、議論をさんざん金融庁長官ともいたしましたけれども、森金融庁長官が、いや、日本国債はローカルルールを適用して、そういうことがあっても、格付の低下があってもリスクウエートはこれはゼロにするんだということを、先に早々と表明をされました。
 しかし、ローカルルールを適用したとしても、日本の国内の投資家は、金融機関はそれで新たな不良債権が出るということはないのかもしれませんけれども、海外の投資家はそういうわけにいかないんじゃないんですか。日本国債保有のリスクウエートが海外でゼロになるとは限らないわけで、そうすると、ある一定格付以下になると、リスクウエート二〇%ということになると思うんですね、二〇〇六年以降。そうすると、やはり厳密に財政状況を見なきゃいけないということになるんだと思うんですよ。
 だから、一方的にけしからぬ、けしからぬと言っても、それはある意味では、話のかみ合わない無理な注文ということになるのではないかなと思うんですが、いかがですか。
尾辻副大臣 おっしゃっておられることはそのとおりだとも思いますが、私どもとしては、先ほど来申し上げておる、すなわち、日本国の持っておる経済力、この基本的な経済力をちゃんと評価すべきだということを言い続けることになります。
 国債というのは、申し上げるまでもありませんけれども国が保証しておるわけでありますから、国の信用力でちゃんとやるということを約束しておるわけでありますから、その国の経済力が基本的にしっかりしておる、このことを言い続けることになろうかと思います。
五十嵐委員 しかし、今は日本の経済力はしっかりしているけれども、その債務の大きさから見て利払いが持続可能かどうかということが問題になってくるわけで、ここまで大きくなってきて、日本の国の政治の政策の方向がそちらの方に向いていないとなれば、不安を抱かれるのは、これは政治論になってきますけれども当然なんですよ。
 デフォルトが直ちに起きるとは思っていないですよ、それは。外国の報道機関もそうは言っていない。しかし、何らかの形での、巧妙な形でのリスケジュールというのが余儀なくされる時点が来るんじゃないか、この調子で累積債務残高がふえていけば、という疑いが濃い、こう言われているわけでありまして、それはある意味では事実なんだろうと思いますね。だって、プライマリーバランスが均衡するめどが今立っていないわけですから、言い切れないわけですよ。
 この状態の中で、いわゆるストックはストックのまま残ってフローの赤字もたまりつつあるというのではこれはやがて限界が来るというのは、もう簡単な算数ですからこれは目に見えた話で、この反論をするよりは、むしろ、政治の姿勢でもって、プライマリーバランスを何年までに、必ず、どんなことをしてでも均衡させ、債務の圧縮に向かうんだという強い断固たる意思を、改革の意思を行動でもって示さなければならないということなんだろう。自分に返ってくる話なんですよ、これは。
 そう思うんですが、これは局長に求める答弁ではなくて大臣だと思うんですが、どうですか。ただ格付機関に文句を言うのではなくて、むしろ行動で見せてくださいよというのが相手方の回答なんだろうと思うんですね、一言で言うと。その点についてどう思われますか。
尾辻副大臣 最後の部分は、もうそのとおりだと思います。したがって、私どもは、構造改革、これをきっちりと進めていかなきゃならない、そのように考えます。(発言する者あり)
五十嵐委員 それは、ウォール街じゃないですよ、世界じゅうがそう思っているのですよ。日本人も大多数の国民がそう思っているのです。
 そこで、もう一つ、それでは大臣、後でまとめてお答えをいただきたいと思うのですが、G7で公約をされてまいったというふうに報道されております。六月に減税を含め明確な戦略を示すんだという約束をとられてきた。
 減税ということを特に例を挙げて言われているわけですが、これは、与党税調、自民党税調と調整をされて、はっきりした方針のもとに発言をされたのか、それとも、この発言をしなければG7、これから来るサミットを乗り越えられないということで、政治的判断をとっさにされてやられたのか、お伺いをしたいと思います。
塩川国務大臣 減税の問題につきましては、実は、二月に「改革と展望」というのを、経済財政諮問会議で議論いたしまして、用意いたしましたが、その際に、今後の経済の改革については、産業の活性化と同時に、税制あるいは規制緩和、そういうようなものが一体となって改革に協力していくということをうたわれておりますので、そういう意味から税制の改革も必要であるということを申し上げた次第です。
五十嵐委員 前からの大きな構造改革の流れの中の一つだというのなら、今までいろいろな、骨太の方針があり、その後の計画もあるわけでありまして、ここでわざわざ六月に減税を含め戦略を示すと言われたことの意味が、ひとつわからない。
 景気回復のために何か手を打てということなのかというふうにも見られるわけですが、そうすると、大臣の念頭にある減税の項目というのは何ですか。
塩川国務大臣 総理が六月を一つのめどにいたしましたのは、企業の三月決算が明確になってくるということが大体六月ごろであろう、それを受けて議論をしたいということが、これが一点。
 それから、まだ三月中は国会において予算の審議中でございますから、十四年度予算審議中であるのにかかわらず十五年度以降の話をするということは、これは議会を冒涜するようなことでございまするから、議会で十四年度予算をしっかりと議論していただいておる間、我々はそれ以上の先行したものは提示すべきではないという、その節度を守ったということがございます。
 そういうことと、さらには十五年度、つまり二〇〇三年度に向かいまして、OECDとかあるいはまたアメリカ経済等が先行きについての表示を出してくるのが大体四月以降であろう、こういうことを見定めた上で総合的に六月に判断しよう、こういうことになったわけであります。
五十嵐委員 全くお答えになっていないし、ちょっと今のお答え自身がよくわからないのですが、三月決算が出そろってくるのが六月だ、だから六月中に減税を決めなきゃいかぬというのは、理屈になっていないですね、それは。
 それから、今年度予算の審議中は遠慮をしていたので、それが成立をしたからもういいんだという話なんですが、年度改正に含むべきものをやるのではないかな。今言われているのは、相続税、贈与税の見直しと試験研究税制について。これは、今、国会に提出をされております連結納税の関係で、増加試験研究費の税制が空洞化する、いわゆる合算されてしまうと、研究部門を切り離しておいてそこでやらせるということができにくくなってくるということで、逆に試験研究費が減ってしまうんではないかという懸念が生まれるものですから、そういう状況の中で、試験研究税制、今のままでいいのかという問題が出てくるんだと思いますね。
 そういうことが当然予想されるんですが、これは年度改正に本来含まれるべきものであって、ここで急に方向性を出すという話ではないんではないかなと思うんですが、なぜ六月結論なのか、今言ったような相続税、贈与税あるいは試験研究税制といったものが大臣の念頭にあるのかどうか、もう一度お答えをいただきたい。
塩川国務大臣 念頭にないと言えばうそでございますけれども、だからといってそれを主題にする、するということも言っておりません。
五十嵐委員 いまだに、お答えを聞いても、これはどうも与党税調と、あるいは自民党そのものの税調と調整をされた上でこの発言をされたようには聞こえないわけでありまして、本当に全体の中で税制が論じられるんであろうかという心配があるわけであります。
 私は、ことしの予算委員会等を通じまして、今日本に欠けているのは、産業立地の国際競争が行われていて、その中で日本がおくれをとっている、これをどう取り戻すかというところに一点集中して国の政策を組み立てなければならないということを主張してまいりました。
 それは、日本の土地の地価、日本の土地もかつては日本だけのものでしたけれども、地価そのものが国際競争の中にさらされているということで、国際商品になったという言い方を私はいたしましたが、地価、人件費、電力、ガス、水道、通信費、あるいは高速道路、鉄道、航空、港湾の料金等の物流のコスト、あるいは税、金融も含めるわけですが、トータルな産業立地のコスト、これが最近台頭してきたあるいは例えば中国と比べてどうなんだというような話を検討した上で、総合的に国の施策としてはこれらのコストを下げるような方向の政策を集中していく、そういう必要があるということを言い続けてきたわけであります。
 税というのは、そのほんの一部なんですね、ほんの一部なんですよ。相対的に税の水準は、法人税も下がりましたから、日本は税水準としてはそんなに問題があるとは思えないわけでありまして、そこに税を頼って景気をよくしようというような発想をするとすれば無理が生じてくるわけですね。税のあるべき論、相続税や贈与税のあるべき論から離れた、消費拡大のために役に立つものは何でもやるんだというだけの税制になってしまうんではないかな、こう思われるわけです。
 その辺の、構造改革に本当に資するのかどうか、それとも今の、当面の景気浮揚のために、これは全部否定するわけではありませんけれども、やるべきことをやるというのと、どういう考え方でおやりになるのか。あるいは、今言った、全体の中のほんの一部にすぎない、これに過大な期待をかけさせるとかえって国際世論を間違った方向に導き、あるいは失望を生んでさらに格付が下がるということになるんではありませんかということを申し上げているわけですが、その辺について本質的なもう少し議論をさせていただきたいんですが、大臣はどうお考えですか。
塩川国務大臣 おっしゃるとおりであります。
五十嵐委員 どうも、おっしゃるとおりでありますと言われると言いようがないんでありますけれども。お答えをいただきたいのは、これはいつごろ結論、六月中に戦略を示すというんですが、例えば法案の形で出されるのはいつごろを念頭に置かれているんですか。
塩川国務大臣 法案で出すということは今考えておりませんが、税制の改正につきましては、大体、経済財政諮問会議あるいは政府税調で決まりまして、作業をいたしますのは夏ごろになる。正式の法案として出すのは、やはり予算審議が行われる直前になるであろうと思うております。
五十嵐委員 そうでしょう。結局、年度改正に入れるということを今大臣はおっしゃっているんで、それだったらその方針を六月に出すというのはどうも拙速で、単なるサミット対策にしかすぎないということになるんではないでしょうか。私は、どうも勝手に大臣が約束してきちゃったなという印象を持つわけでありますけれども、もう少し、先ほど私が申し上げましたように、全体の論議を組み立ててから、その一部として税制があるという形で、本来の構造改革の流れに沿った改革を大胆にしていただくように。
 年度改正で、小手先、小手先でやっていく話をここで持ち出されても困る。それでは大胆な改革はできないんですね。大改革という方は、一遍に、大規模にやらないとならないんで、小さな改革を積み重ねて大改革が達成されるということは私はほとんどないと思っているものですから、そういう考えを貫いていかれるように御要望いたします。
 そして、第一回目の質疑は、時間が参りましたので、終わりにいたします。
坂本委員長 次に、小泉龍司君。
小泉(龍)委員 自由民主党の小泉龍司でございます。
 なかなか質問のチャンスがめぐってきませんので、きょうは両大臣にゆっくりお話を聞きたいと思ったんですけれども、十時から参議院の本会議が入るということで、質問の順番を変えまして、一問だけ塩川大臣にお話を伺いたいと思います。
 この法案は、証券決済システムの整備に関する措置のほか、弾力的な国債管理政策に関する措置として、ストリップス債の導入、国債の買い入れ消却の実施、金利スワップの導入、個人向け国債の発行、こういう措置が盛り込まれております。
 マーケット自体がグローバル化する中で、国債市場についても発行あるいは流通市場の効率化を図る、あるいは諸外国が持っているような国債管理政策の手段、ツールを整備するということは大変重要な施策であり、不可欠な措置であると私は思いますけれども、国債の発行管理政策を考える上で、やはり、今五十嵐委員からもお話がありましたように、国債の格付という問題、日本国債の格付の問題が大きな問題になってきていると思います。幸いまだ外国人投資家は、格付が小刻みに下がってきても、シングルA手前まで来ても、そう大きくは為替も金利も反応していない、投資家も反応していない。しかし、だんだんこれが大きな問題になってきていると思います。
 私もかねがね、一方的な格付、一方的にやられる格付について、どういう問題があるんだろうなといろいろ問題意識を持っておりました。デフォルトリスクを本来ならば評価するべきところを、ファンダメンタルズはいいと思うんですけれども経済政策の端々まで評価をされる、あるいは国民負担率、租税負担率が諸外国に比べて低い、増税の余地があるという点は全く評価されていない。経済政策の評価ということになりますと客観的基準がないわけでございまして、やられたい放題、言われたい放題言われているわけでございます。
 もっと早い時期にこの委員会で御質問しようと思っておりましたら、幸いに四月二十六日に大臣の強いイニシアチブのもとで手紙を外国格付機関三社に出されたというふうに伺いました。大変思い切った措置であり、評価したいと私は思いますが、目先の損得を考えますと、外国格付機関もやはりメンツがあるでしょう、いろいろな考え方がありますから、圧力に屈したという姿勢は見せたくない、むしろ下げる方向に動くリスクもあったかと思いますが、その辺をどういうふうにお考えになって、またどういう意を持ってこの書簡を送付されたのか、大臣のお言葉でお考えをぜひこの委員会でお伺いしたいと思うわけでございます。
塩川国務大臣 ちょっと私見が入りまして恐縮ですけれども、格付はもっとやはり神聖なものである、私、本当はそう思うておったんです。民間会社のものであるとはいうものの、もっと公正にして、そして定量的に、きちっと基礎のあって、具体的な支持があったもの、そう思っておったんですけれども、最近の格付の状況を見ておりますと、一昨年の九月に一度格付を落としましたね。そしてまた落としている。
 何かそこに、ファンダメンタルあるいは日本の国の状況が変わったのかどうか、そこをどう認識しているのかということ、私はそれを知りたかったというのが本心なんです。ですから、民間会社とはいえ、やはり私たちはこの格付というものを慎重に見ておることは事実なんです。それだけに気になるものであるから問い合わせたんです。
 ですから、私どもの方から、財務官が聞きましたのは、その格付をこうして急に変えたが、これに対する具体的な説明はどういうぐあいにあるのか、それから、定量的に見てどこに欠陥があったのかということを議論したい、こういうふうに言ったということなんです。
 もちろん、これをするにつきまして、むしろ彼らは感情的に反発してくるかもわからぬということは、私たちもそんなことも思いました。しかし、そうであるとするならば、その格付会社そのものが格付を落としていることになる、私はそう思いまして決断したということであります。
小泉(龍)委員 おっしゃる意味はよくわかりました。相対の論争になっていくと思いますので。
 そこで、やはりマーケットのインフラですから、より広いマーケット参加者に説得力のある議論を、粘り強く、けんか腰にならないで冷静にやっていただくということも必要だろうと思いますね。現に外国人投資家が、格付が下がっても、為替も金利も少しは動きますけれども平常に戻るということは、おっしゃった、格付というものを軽く見始めているという要素もある、兆しがあると思いますので、ぜひ大臣は、真っすぐ行かれると思いますけれども、市場というものを対象にお考えいただきたい。ありがとうございました。
 この格付の問題に関しまして金融庁にもお伺いをしたいわけでございますけれども、指定格付機関制度というのがございまして、有価証券届け出書には指定格付機関の格付をとって格付をする場合には提出しなさい、この指定を金融庁が行うわけでございます。
 監督官庁は金融庁ということでよろしいかと思いますが、アメリカでも、最近、エンロンの破綻を契機としまして、議会で格付機関の問題点というものが議論の対象になり始めました。三社の実質的な寡占であるということ、あるいは格付機関がグループ企業の中にコンサル会社を抱えておりまして利益相反の問題が起こる、この寡占と利益相反の問題、これで議会が大分騒いでいるようでございまして、それに押される形でSECが市場関係者にサーベイを行うというところまで来ているようでございます。
 何年かに一度、こういう動きはあったようでございますけれども、いよいよ我が国でも、財務省が手紙を出しましたので、所管官庁として、これは発行体ではないわけですけれども、どのようにこの財務省の書簡をお考えになっているのか、あるいは、そのSECの動きに対して日本の監督官庁としてどういう対応をされていこうとしているのか、村田副大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
村田副大臣 小泉委員には、大臣が参議院の方の本会議に出まして、私がかわって答弁をさせていただきたいと思います。
 御指摘のように、財務省の方から格付会社に対しまして意見を求めたということは私どもも承知しているわけでございまして、私ども政府の一員といたしましても、日本政府が財政構造改革を初めといたしまして経済社会の構造改革に非常に熱心にやっている、こういう状況にありながら、日本の国債に対しまして格付を下げていく、こういうケースが見られるということは、私どもといたしましてもまことに残念な状況にございます。このことにつきましては、銀行監督委員会の国債の格付に対する将来の動きに絡みまして、私ども、大臣からも長官からも、さまざま態度の表明がなされているところであります。
 ただ、我々金融行政当局といたしましては、この格付というものをいろいろな行政のために利用している、活用している、こういう立場にあります。そういう意味で、私どもは、その格付というのは、債券に対する元利等の償還の確実性に対する格付機関の意見の表明、そういう性格のものである、こういうふうに考えておりまして、そういう考え方は市場でも広く受け入れられている、こういうことでございまして、今申しましたように、我々行政上も活用させていただいている、こういう状況にあるわけであります。
 アメリカでも、今委員御指摘のように、エンロン問題を契機といたしまして、この格付のあり方につきまして、今おっしゃったように、参入の障害の問題といいますか、寡占になっている、こういう状況、あるいは利益相反のごときことが可能性があるんじゃないかという御指摘もなされているわけでございます。私どもといたしましては、米国におきますそうした議論の趨勢といいますか行方というものを注意深く、幅広く見ていきたい、こういうふうに考えているわけであります。
小泉(龍)委員 マイカルが破綻したときに柳澤大臣がこの委員会で何度もおっしゃいましたけれども、いや、いきなり四段階下げられたんだよ、これが大きいんだということを言外に何度もおっしゃいました。
 結局、マーケットのインフラでありながら、政策当局との対話が十分できていない。そういう大きな問題を抱えておりますので、財務省は発行体として問題意識を持たざるを得ませんけれども、金融庁もぜひ正面から所管官庁だという認識を持っていただいて、また、財務省とは立場は違うと思いますけれども、この問題にSECの動きも含めて取り組んでいただきたい、このようにお願いを申し上げます。
 法案の審議でありますけれども、先ほど申し上げたように、大臣がいらっしゃればマクロ経済政策の大枠について幾つかお伺いをしたいと思いましたが、これは通告後変わられたので、予定どおり、財務省当局にマクロ政策の大枠について三問、四問質問をさせていただきたいと思います。
 一つは、構造改革政策の道筋でございます。
 小泉内閣ができまして、構造改革政策が出まして一年がたちましたが、なかなか国民の理解が進まない。世論調査を見ても、雇用対策をやれ、景気対策をやれということが上に来まして、構造改革については順位が非常に低い、要望が低い。理解が進まないんですけれども、進んだ点が一つありまして、それは、痛みを伴うんだ、痛みがあるんだ、これだけははっきりと国民の理解に達しているわけでございます。
 問題は、その痛みがどういう形で最終的に自分たちの恩恵として返ってくるのか、経済が再生していくのかというところが、私も選挙区で説明をしていてどうも自信が持てないところでございまして、この議論を第一歩に、出発点に戻しますと、GDPギャップ、需給ギャップの原因がどこにあるんだろうというところに出発点があると思います。
 この委員会でも、たしか社民党の植田先生が、いや、需要不足ですよと、大臣が、いや、それは供給過剰ですよと言う。そういうかみ合ったようなかみ合わないような議論がありました。供給が多いのか、需要が足りないのか。これまでの経済政策は、言うまでもなく需要不足論でありまして、財政支出拡大によって、実質平均一%の過去十年間の成長を財政によって支えてきた。しかし、つなぎにしかならない、財政破綻のリスクも限界まで来ているということで、構造改革に切りかわったわけでございます。供給サイドを調整しようということでございます。潜在需要を掘り起こせない供給力を削って新しい供給力をつくる。
 供給力を削ることは割合簡単にできるんですね。不良債権処理をしていくのも一つの大きな道筋だと思います。しかし、削った後、新しい供給力がどこからどういうふうに生まれてくるのか。いや、それは歳出構造改革ですよ、規制緩和ですよという説明がありますが、明確な道筋というのが経済メカニズムとして見えてこないわけでございまして、やはりそこは価格メカニズムしかない、それは実質賃金を下げるしかない。
 アメリカは、八〇年代に失業率が一〇%を超えまして、労働コストがどおんと下がりました。時給三百円とか四百円の世界だと思います。そういう安い労働コストというものが生まれて、ここで失業率が一〇を超えて下がって初めて経済がサービス化する、サービス経済という方向へ構造改革が進み、製造業も空洞化いたしましたけれども付加価値は高まる、高まった付加価値をサービス経済を通じて雇用に均てんする、こういう仕組みで経済が再生したわけでございます。
 そういう道筋を考えていきますと、失業率の上昇、ワークシェアリングでそれを抑えるにしても、実質賃金の低下、そして安い労働力、安い労働力が成長産業における新規企業を起こす、この道筋しかないと私は思うんです。そこがはっきりしないから、需要不足論、補正予算の問題、常にかみ合わない議論が繰り返されている、そのように私は思います。
 かなりはしょりましたけれども、これは大臣にお答えいただくのがいいと思うんですけれども、しかし、財務省がある意味では小泉内閣の司令塔であるというふうに言われている向きもございますので、藤井総括審議官でしょうか、お答えをいただければと思います。
藤井政府参考人 お答えいたします。
 今先生の方からは、構造改革、あるいはそれに至る道筋という全体の御質問があったと思います。
 御案内のとおり、構造改革、これは、経済社会の変化に対応いたしまして、効率性の低い部門、これから効率性あるいは社会的ニーズの高い成長分野へ労働力あるいは資金の円滑な移動を図るということを通じまして、新たな市場あるいは成長部門を生み出し、我が国経済の活性化を図るということに尽きると思います。
 こうした観点から、社会政策上の必要な配慮を一方では払いながら、今お話ございました規制改革あるいは経済財政の構造改革のための諸施策、こういうことを実施し、労働市場を含めまして、市場機能が十分に発揮されるような環境整備に努めてきたということでございます。
 そこで、今先生の方から賃金水準の問題がございました。
 確かに、対アメリカとの関係で申し上げましても、我が国の賃金につきまして下方硬直性が八〇年代以降見られるということは、そのとおりでございます。私どもといたしましては、やはりこの賃金水準につきましては、要は生産性に見合った賃金水準、これに収れんしていくということが何よりも大事である、それによりまして、企業及び我が国全体の競争力の維持、そのためにそれが生かされるということが必要であろうというように考えております。
 ただ、基本的に、各企業における賃金問題というのは、今後の経営戦略、そういうものを踏まえて決定されるということでございますので、政府の方でそのあたりのいわば方向性というものを見つけ出すというのは難しいわけですけれども、基本的には、先ほど申し上げましたように、生産性に見合った賃金水準ということを念頭に置いていく必要があるのかなというように思っております。
小泉(龍)委員 いずれにしても、実質賃金の低下が構造改革にどうしても必要だということになりますと、現在のデフレもやはり構造改革の大きな阻害要因になると思います。山本先生がよく御指摘になるように、デフレによって実質金利が上がるという問題もありますし、今申し上げたように、実質賃金が下がらない、こういう問題もデフレのもとでは起こってくるわけでございます。
 政府は、ようやく一月になりましてデフレ解消の必要性というものを認めまして、経済財政諮問会議の経済財政中期展望におきまして、今後二年程度の集中調整期間においてはデフレ克服が第一番目の課題だということをはっきり言いました。デフレ対策もまとまりました。しかし、実際は、このデフレ対策というのは三月危機対策であって、その後、政府の中では追加的なデフレ対策に関する関心あるいは認識がしりすぼみになっているように思います。
 その背景は、政府が、各省庁の幹部が集まって一月にまとめました「デフレ問題についての論点整理」、これが政府のデフレ問題に対する認識の基本的なあり方だと私は受けとめておりますけれども、これを読みますと、一言で言うと、よいデフレ論というものにまだ引きずられている部分があると思うんですね。
 確かに、実態から見ると、安い輸入品が入るあるいは技術革新が進む、日銀が言うように、よいデフレ論、実際の実体経済が、リアル経済が構造調整していく過程でデフレが生じているという面もあると思いますけれども、もう一方で、実質賃金あるいは実質金利を圧縮することによって、先ほども申し上げた、成長分野の企業の成長を促進するという部分が大きく阻害されていく、その部分の問題意識がまだ十分ではないなというふうに私は感じるわけでございまして、この点についても手短に財務省からお答えをいただければと思います。
藤井政府参考人 今、よいデフレあるいは悪いデフレというような話がございました。私どもといたしましては、一般的な物価水準、これと相対価格、言いかえますと、一般物価と相対価格、これは区別して考える必要があろうというように思っております。
 高コスト是正のための業者間の競争等を通じます相対価格の変化、これは当然あるわけでございますけれども、マクロ経済の視点から考えますと、一般物価水準、これが全体として下落するということになりますと、それは、御案内と思いますけれども、例えば企業等の実質債務、これが増加する、あるいは実質金利の高どまり、さらには実質賃金の上昇を生みまして企業収益を圧迫するというようなことを通じまして、企業の投資など民間需要が抑制されるという経済にさまざまな悪影響を与えているということが考えられるわけであります。
 そういうことからいいまして、今おっしゃいましたように、本年の一月の「構造改革と経済財政の中期展望」におきましても、デフレの阻止は民間需要主導の持続的成長を実現するため政府と日銀が緊密な連絡のもとに取り組むべき最重要課題であるというふうに位置づけをされているわけでございまして、本年六月、税制の抜本的見直し、あるいは経済の活性化方策、基本的な方針が取りまとめられるわけでございます。
小泉(龍)委員 ありがとうございました。
 デフレの問題を議論するときに、為替レートの問題も避けて通れない問題だと思います。この委員会でもなかなか為替レートの問題が正面から議論されることが少ないので、とりあえずきょうは二点だけまとめて御質問申し上げまして、お答えいただきたいんです。
 私は、今日のデフレというもののベースは、いや、確かに直接の原因はバブル崩壊による資産デフレ、デフレのスパイラルだと思いますけれども、ベースは八五年のプラザ合意以降の円高基調だというふうに思うんですね。あのときに為替レートが切り下がった国の成長率はどこも高くなって、切り上がった日本だけが沈んでいった。これははっきりした事実であります。また、統計的に見ましても、輸入物価あるいは卸売物価はバブル期を除いて八六年から趨勢的にはマイナス基調にもう既に入っていたわけでございまして、その上に資産デフレが起こって、その相乗効果、それが折り重なって今日のデフレを招いたというふうに私は認識をしております。
 そうであれば、自然な気持ちとして、円を円安に振りたいなとだれしも思うわけでございますが、それはそう簡単にはいかないわけでありまして、財務省も、為替レートは経済のファンダメンタルズによって決まるんですよと。これは抵抗ができないお答えではあります。
 しかし、落ちついてもう一歩考えてみると、例えば、昨年末からことしに入っての円安局面においては、財務官は頻繁に、いや、これは昨年八月以降の行き過ぎた円高の是正過程だ、調整じゃなくて是正過程だということをコメントとして出されました。その為替当局の認識と発言が円安を推し進めたという部分は、これは否定ができないというふうに思うわけでございまして、マーケットに対して何にも当局が言わないのであれば、はい、ファンダメンタルズで結構ですということで理解はできるんですけれども、その都度おっしゃる。最近の円高局面でも、日本のファンダメンタルズから見て、円高に振れる必然性はないという発言をされる。
 ファンダメンタルズというのを表現する、映し出した適正な為替レートというのはどこにあるんだということは、実体はだれもわからないわけですけれども、為替当局において、例えば購買力平価、生産者物価でこれを見ますと、百三十六円という数字が、試算があるようでございますけれども、発言の背景には、当然適正なレートというものが念頭にあるんだろう、こういうふうにマーケットの一部では受けとめられております。その点をどういうふうにお考えになるのか。
 時間がなくなってきました。もう一つは、元の切り上げの問題です。
 日本の労働力コストを中国と比べますと二十倍、中国は二十分の一でございます。今は、クーラーあるいはオートバイ、パソコンの部品が競合していますけれども、今後二十年しますと、二十分の一の労働コストと日本の全産業が正面から競合いたします。
 調整手段は三つございます。一つは付加価値を高めること、一つは実質賃金を下げること、三番目が為替レートの調整だと思いますね。
 これは、ドルにリンクしていますから、国際的な通貨体制の問題ですから大変難しい問題ですけれども、昨年の九月に、私はあるほかの閣僚から伺いましたが、塩川大臣が初めてG7の場で元の切り上げ問題に言及された、こういうふうな話を伺いました。
 適正な円レートの水準、元の切り上げ問題、手短にまとめて溝口局長からお願いします。
溝口政府参考人 御指摘のように、為替相場は、G7の間では、経済のファンダメンタルズを反映して動くことが望ましいといういわばコンセンサスのようなものはあるわけでございます。特に主要三通貨につきましては、経済がそれぞれ大きいものでございますから、そういうファンダメンタルズを離れて動くということはいろいろな混乱を生ずるので適当でないということで、G7があるたびにコミュニケを出しますが、そのコミュニケではそうした文言が必ず入っているわけでございます。
 問題は、さっき御指摘がありましたように、ではそのファンダメンタルズがどういうふうに変化しているのかということはあるわけでございます。それは状況によって変化はするわけでございます。
 先ほど財務官の発言もございました。昨年の夏にやや円高が進みました。それは米国経済がどうも弱いのではないかという見通しが市場にありまして、それで円高が進んだわけでございますが、私どもとしては、日本経済の状況を見ると、やはり総体的なファンダメンタルズというのは米国の方が強いという見方をしているわけでございまして、したがって、いわば行き過ぎた円高に対しては、九月でございましたか、介入もいたしたわけでございます。
 その後、テロ事件の後、米国経済の停滞がさほどない、やはり米国経済は強いんだという見方が年末にかけて生じてきたわけでございます。それが年末にかけての円安と申しますかドル高につながったわけでございまして、そこを、調整過程といいますか、あるいは是正というような言い方で言ったわけでございまして、私どもとしては、そういうファンダメンタルズを反映して動くことが望ましいということを繰り返しているわけでございまして、私どもの立場は、そういう意味では変わっていないわけでございます。
 ただ、いつも、コメントを我々が積極的にやっているわけじゃございませんで、今の通信社、プレスの方々はしょっちゅう我々に廊下あるいはいろいろなところで聞くわけでございまして、全くコメントしないというやり方もあるのでございますが、コメントしないとまたそれを容認したとか、こういうふうになるわけで、それは大変難しいわけでございます。
 ただ、言えますことは、非常に短い変動につきましてはそういう発言を材料にするということはあるのでございますけれども、その材料はその時々の材料になっているだけでございまして、長い動きを規定するということにはならないというふうに思っています。やはり長い動きは経済のファンダメンタルズを反映して動くんだろうということであろうかと考えております。
 それから、中国の元の問題でございますが、中国の元はドルに対してペッグをしているわけでございます。
 先ほど来お話がございましたが、円はプラザの後どんどん強くなってきまして、九五年ぐらいにピークになりまして、そのときは一ドル八十円を割るような動きになったわけでございますが、その後、基本的には、その行き過ぎた円高の調整が進んでいるわけでございますね。八十円でありましたのが今は百三十円ぐらいに戻っているわけでございます。元も同様でございまして、八五年ぐらいには一元が大体十円ぐらいまでの円高になっておりましたが、今は一元が十六円ぐらいでございまして、六〇%ぐらいの調整が進んでいるということでございます。
 したがいまして、元も変動しているわけでございますけれども、もう少し実態に合わせて変動すべきではないかという議論がいろいろあるわけでございます。これは日本に限りませんで、米国などでもあるわけでございます。
 ただ、為替の制度といいますのは、各国で、自分の国の予算をどうする、社会保障制度をどうする、あるいは金融政策をどうするかという、ある意味で主権に属する部分がございます。したがって、先進国間ではG7というような場を通じまして、大蔵大臣たちが年に数回集まって経済政策あるいは経済状況について議論をし、そういう中で、各国の考え方を酌み取ってそれを国内の政策に反映するということを長年かけてやっているわけでございます。
 中国についても、これはグローバルな問題であり、それからASEAN諸国も関心を持っているわけでございまして、地域的な問題でもございますし、当然日本の問題でもございます。ということで、いろいろな場を通じまして政策の対話を強化していくことを通じて、こういう問題に我々としては対処していきたいというふうに考えているところでございます。
小泉(龍)委員 もうぎりぎりですけれども、法案の質問を最後に一問だけさせてください。申しわけありません。
 今回の法案は、証券決済制度の仕組みについてさまざまな措置がございますけれども、グローバルスタンダードから大きくおくれているわけですね。そしてアジア諸国からもおくれている。逆に、アメリカもどんどん先へ進んでいく、いわゆるTプラス1ですか、ヨーロッパも統合が進む。おくれているものがどんどん広がっていく。
 マーケット自体の競争力が問われる今日、ここまでこの決済システムをおくらせてきたことの是非、本当にそれによって証券市場の発達が阻害されなかったのか、これまでの対応を含めて、その点をお伺いしたいと思います。
村田副大臣 委員が、我が国の証券決済システムの整備がおくれているんじゃないか、こういうふうにおっしゃいましたけれども、必ずしもそういう事態ではないわけであります。証券の決済期間の短縮化でございますが、我が国におきましては、大体一九九〇年代の半ばから始まったと。そのもとは、一九八九年に出された証券決済制度に関するG30の勧告がこのスタート、契機になっている、こういうわけであります。
 第一に、国債につきましては、九六年に五十日決済からTプラス7の各営業日決済へというふうに進みました。翌年にTプラス7からTプラス3の今の状況に進んだと。社債につきましては、九八年にTプラス7からTプラス5決済へ、九九年にTプラス5からTプラス3決済へと。そういうことで、我々もこの証券決済の決済期間の短縮化について努力をしてきた、こういうことであります。
 しかし、今委員が御指摘のように、我が国証券市場の国際競争力の強化、あるいは決済に伴うリスクの回避ということからなお一層進めなきゃいけない、こういうことでございまして、諸外国の動き、それからコンピューターを初めとする技術革新も進んでまいりましたので、そういう意味では、我々としては、前回もCPについてお願いしたわけでございますが、今回、証券決済システムを抜本的に見直しましてより安全で効率的なものに改めていきたいということで、本法案の御審議をお願いしているわけであります。
 そういう意味で、各国の比較を見ましても、着々と進めているこういう流れに我々は競争力の観点からもおくれないように、できるだけ早くこの措置をしたい。
 ただ、決済システムについて、インフラを今度法律を改正することによって整備していくわけでありますが、これに伴って民間レベルでの商慣行の整備とか、そういう民間での対応のいろいろな措置の整備ということもあわせて行わなければTプラス1に向いていかないということでありますから、我々は、まずインフラを整備した上で、民間での商慣行の、Tプラス1に向けた改めといいますかそれに向けての努力を促したい、こういうふうに考えているわけであります。
小泉(龍)委員 わかりました。
 終わります。ありがとうございました。
坂本委員長 午前十時四十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十時二十分休憩
     ――――◇―――――
    午前十時四十六分開議
坂本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。五十嵐文彦君。
五十嵐委員 それでは、本日二回目の質問に入らせていただきたいと思います。
 まず、報道によりますと、政府は、不良債権の問題を早期に打開するため、整理回収機構、RCCに対して、金融機関の不良債権の買い取り価格を二倍に引き上げるように要請をするんだ、そして、それによってRCCの方は損失を抱える可能性があるわけですが、その穴埋めに備えて、公的資金枠のうち金融再生勘定を活用して対応をし、足りなければ来年度予算で増枠をするんだというような報道がなされておりますが、これはどうも、記事の内容からすると、報道の内容からすると財務大臣のお話かなと受け取れるんですが、政府としてそのような方針を決められたのか、財務大臣がどこかで提案をされたことがあるのか、伺いたいと思います。
    〔委員長退席、中野(清)委員長代理着席〕
塩川国務大臣 私は、そんなこと言うたこと全然記憶にないんですがね。恐らく、おっしゃっているのはこれじゃないかというふうに想像するんですが、五月の十三日日経で「買い取り価格上げ要請 従来の二倍メド」、これじゃないかと思うんですが、これに関係しているんですか。
 私は、こんなこと言うたこと全然ございませんで、私の言ったのは、同じ二です、二次ロスはもっと積極的にRCCで買い取ってくれぬだろうかという希望を言うたことはありますけれども、しかし、それを二倍、三倍とか、そんなこと言うたことは全然ございませんので、それは誤解であると思っていただきたい。
五十嵐委員 このことは直ちに金融庁でも問題になりまして、森昭治金融庁長官が十三日に記者会見を夕方されていまして、この記事について話をされているわけですね。それによりますと、政府がこのような検討をしているという事実はないということが一点と、金融再生法の改正によりまして時価で買い取れるということになったわけですが、その買い取り後の実績も進んでいて、買い取り価格も約一・九倍に上昇しているということなんです。
 改正したばかりでさらにまたこのような、時価以上に買い取るというのはとんでもない話だと私は思うんですが、そういうことを検討するつもりもないというような御答弁ができるのかどうか、金融担当大臣に伺いたいと思います。
柳澤国務大臣 私どもは、不良債権の直接処理を進めてもらいたい、従来三年と言っておりましたけれども、さらに、一年目で五割ぐらいはいってもらいたい、二年目にはその大宗を処理してもらいたい、ただ、一応二年までで八割をめどにということを頭に置いていただいてもいいです、こういうようなことを先般、四月の十二日でございます、申させていただいているわけでございます。そういうことを推し進めるためには、もちろんローントレーディングのマーケットを利用していただくということが考えられるわけですけれども、それと同時にRCCの活用を大いにしていただきたいということを当然念頭に置いているわけでございます。
 そういうことでございますけれども、あくまでも私どもは、現在の法律にのっとった、先般改正をしていただいた、時価でもってその買い取りをしていただくということでございまして、それ以外のことを考えているという事実は全くございません。
五十嵐委員 時価でということはある意味では当然と思うわけでありますけれども、それを二倍にというむちゃくちゃな話が政府の内部から出てくる、少なくとも経済専門の大新聞に載っているということは、それを誤解を生むような発言があったということなんだろうと思いますね。慎重に発言をしていただきたいということを改めて申し述べておきたいと思います。
 次に、みずほ銀行の統合に伴うシステム障害の問題でありますけれども、前にみずほから聞いた話が間違っていた、うそだったというようなことが、金融庁にはそのようなことがあったように聞いていますけれども、最終的な報告というのは届いているんでしょうか、原因は究明されたんでしょうか、伺いたいと思います。
柳澤国務大臣 みずほそのものからのいわゆる報告というものは既にあったわけでございます。四月の七日に、いわば補遺というか補完というようなことで提出がございました。
 それによりますと、システム障害の発生の原因というものは、ATMの障害については、対外接続用ホストグローバルプロセッサーというものにおけるプログラム不良等であると。また他方、口座振替に伴った遅延等のふぐあいにつきましては、これは口座振替処理に係るシステムのふぐあい、受け付け事務のおくれ等ということにされております。
 そういうものを受けまして、私ども八日から、かねて予告をしておりました立入検査に入っているところでございまして、私どもとしては、この検査によってこれらの報告を確認すると同時に、いろいろと独自の観点からも十分な検査をさせていただいて、そして結論を出したい、このように考えているという段階でございます。
五十嵐委員 私どもも今大臣がおっしゃられたとおりのことをかねて聞いていたわけですけれども、どうも情報によりますと、例えば、ATMの障害につきましては、いわゆるBANCS等の、外部システムとの接続するための対外接続用システム、今グローバルプロセッサーとおっしゃいましたけれども、そのプログラムのふぐあいというだけではなくて、みずほ銀行間の、勘定系のホストコンピューター間の接続もどうも悪かったんじゃないかということのようですね。
 そうなりますと、これからも、今大臣はたしか地銀の統合促進というような政策をお考えだというふうに漏れ伝わっているわけですけれども、同じようなことがやはり起きかねないという、構造的な問題として認識をしなきゃいけない部分が一つあると思うんですね、これは後でまた伺いますけれども。
 それから、口座振替の方も、口座振替システム自体のふぐあいというのを今大臣御答弁があって、あと受け付け事務処理の混乱というのもお話しになったわけですけれども、それ以前に、根本的にクライアントとの接触、その姿勢、情報のやりとりというのにどうも抜かりがあったとしか思えないんですね。すなわち、銀行としての姿勢、基本的な姿勢、クライアントを大事にするという、あるいは一般の、企業ではなくて個人のお客様に対する姿勢というものに問題があったのではないかというふうに思えてならないんですが、今検査中だとおっしゃるんですが、今私が指摘したことについてどうお考えになるか、もう一度お伺いしたいと思います。
柳澤国務大臣 ちょっと先に、御答弁の先に訂正をさせていただきますが、私、先ほど報告及び立入検査開始日について四月というようなことを述べてしまいましたが、これは月が間違っていまして、五月でございます。
 その上で申し上げさせていただきますが、私も、今回の事案についてはすぐに報告徴求をかけて報告を徴していたわけですけれども、やはり報告を聞くだけではこの件については適切でない、このように判断をして、システムの問題に限った調査、検査をしようということを決定して、現在検査中であることは先ほど申し上げたとおりです。
 今委員の御指摘になられたようなことも、大変一つの情報というか、あるいは評価というか、そういうことでありますので、それらを含めて私どもの検査にまた参考にさせていただきたい、そのように考えます。
五十嵐委員 それで、今ちょっと触れましたけれども、地銀の合併促進策というのをお考えと聞いておりますが、そうすると、みずほと同じようなシステムというものをみんな持っていますから、そのシステム統合障害というのがまた起きる可能性があるというふうに思うんですが、このみずほの問題を糧として、新たな地銀間の合併を促進するに当たってこれを防止するようなことをお考えかどうかということをお伺いしたいと思います。
柳澤国務大臣 私ども、漏れ承るというお言葉で先ほど委員御指摘になられましたけれども、これも先般、特別検査の結果を公表させていただくに当たりまして、さらにこの上に考えたい新しい施策ということを三点にわたって発表させていただきまして、その中に、一点として、地域金融機関を中心に考えるけれども合併等の促進ということを新しい施策として考えたい、こういうことを明らかにいたしたところでございます。
 そういう中で、昨今の銀行の統合ということの中には、勘定系、あるいは場合によっては情報系のコンピューターシステムの統合というものが当然伴うわけでありまして、その際には、今回のみずほの事案というものが他山の石として考えられなければならないのではないか、こういう御指摘でございますが、私どももそのとおりに考えております。ただ、今、委員がどういうお言葉でおっしゃられたかちょっと再現できかねますけれども、我々の方で何か施策を考えているかということについては、ちょっとその点までは今念頭にあるわけではありません。
 ただ、この投資が非常にかさむということについては何か助成をする、そういう財政面というか、財政というのはすぐに、直ちに塩川大臣の方に響くことのみではないと思うのですが、いずれにしても、そういう財政面からの支援を一つの施策として考えていきたいという、金銭上のことで考えているということでございます。
五十嵐委員 合併を半ば慫慂するという形でやるのであれば、それにメリットを感じないところにメリットを感じてもらうためには、ある程度の代償措置が必要だというのはわからないでもありません。しかし、商法改正等でいろいろな合併や分社化については柔軟にできるような仕組みを今整えてきたわけですから、金融会社に限って過分な恩典を与えるというのはいかがなものかという話が出てくると思うんですね。
 持ち株会社化の促進ということになるんだろう、帰着していくんだろうと思うんですが、どのような合併促進策をお考えなのか。現行法では何が不足しているのか、金融機関に限ってやらなければいけないものがあるのかどうか、お考えの大筋をお知らせいただけないかなと思います。
柳澤国務大臣 これにつきましては、今申したこと、つまり、コンピューターシステムの統合にかかる費用について何か考えられないかといったようなことを、たまたま御質問がありましたので漠として頭にあったことを申し上げたわけですが、これ以外に何が考えられるかというようなことについては、私ども今まさに幅広く検討しているところでございますので、ちょっとこの段階で、どんなことを大筋として考えているかということについては、お答えするにちょっとまだ時期尚早ということでございますので、御理解を賜りたいと思います。
五十嵐委員 そうすると、まだ法案になるとかそういう段階にまでいっていないというふうに解釈をさせていただきたいと思います。
 必要なことは必要だと私どもも思います。地域金融を守る上で、もう少しオーバーバンキングを整理して体力のある金融機関を地域につくっていくというのは、必要なことだと思うわけでありますけれども、そのときに全銀システムとの連結等が障害にならないようにというのは十分わかるわけでありますが、金融持ち株会社等の促進を図るに当たって、例えば税制上の優遇とか、一般事業会社と違って過剰な恩典が与えられるということでも、また理解は得られないのかなと思いますので、慎重な検討をしていただきたいというふうに思うわけでございます。
 次に、つい最近でありますけれども、近畿財務局の八幡さんという方が逮捕されていると思います。四月の下旬でありますけれども、八幡匡紀さんという方が、上席金融証券検査官でありますけれども、大阪府警に逮捕をされております。この件につきまして、事実、そして地検への送検についてどうなっているか、事実関係を警察庁に確認したいと思います。
吉村政府参考人 お答えを申し上げます。
 四月二十三日、大阪府警におきまして、今お尋ねの近畿財務局職員一人、それと関西興銀の元理事長ら三人、計四人を贈収賄罪で逮捕しております。
 逮捕事実は、近畿財務局が平成十一年十一月中旬実施の信用組合関西興銀に対する検査に関して、近畿財務局の上席金融証券検査官が興銀側に検査体制、検査内容等の検査情報あるいは対応策を教示したことへの謝礼等として、十一年八月下旬ごろ同興銀理事長らから現金二十万円のわいろを収受したというものであります。その後の捜査によって、同検査官がタクシーチケットあるいは商品券の供与、また、飲食接待を受けていたという事実がございましたので、総額二十数万円相当になりますが、これを追送致をしておりまして、これらを含めて五月十四日に起訴をされているところであります。
五十嵐委員 この近畿財務局というのは非常に問題が多いところでありまして、かつて接待問題というのがありました。この接待問題の大きな舞台にもなったところであるわけでありまして、本格的にメスを入れなきゃいけない。要するに、接待問題で大処分が行われたわけでありますけれども、それ以降も接待が行われたということの証拠になるんじゃないかなと、今回の事件が。タクシーチケット、飲食接待、そして現金の授受、こういうことが行われるというのは、いわゆる接待漬けがその後もひそかに継続されていたということになりはしないかという疑いが出てくるわけでございます。
 それから、それに関連して、この近畿財務局管内ではさまざまな疑惑事件が発生をいたしているわけで、それとの関連も私は追及されなければならないだろうと思います。
 今起訴されました八幡容疑者というよりも被告ですかは、一九七五年四月に近畿財務局に採用されまして、一九九〇年以降、検査官を務めており、九九年七月からは審査業務課配属でありまして、関西興銀の件で今回、情報を漏えいした、そしてその見返りに現金を受け取ったということで逮捕、起訴されたわけでありますけれども、実際にこの八幡被告が関西興銀の問題や大和都市管財の検査に、あるいは審査に直接かかわっていたんではないかというふうにも疑われるわけですが、この点の事実関係は確認できますか。
村田副大臣 近畿財務局におきましては、理財部の検査総括課が検査の時期とか体制等の計画を立案する、それで情報を管理する、こういう建前になっております。立入検査は、同部の金融証券検査官が実施をすることになっておりまして、八幡検査官は上席の金融証券検査官ということでございます。
 立入検査後の審査、すなわち立入検査で得た資料等を精査しまして結果を取りまとめていくということは同部の審査業務課が行っておりまして、必要に応じて金融庁のチェックを受ける、こういうことで、検査の結果は財務局長名で通知している、こういうことでございます。
 それで、本人は同部の審査業務課というところで、関西興銀につきましては審査業務に関与しておった、大和都市管財につきましては検査官として立入検査をしている、こういうことのようでございます。
五十嵐委員 やはりかかわっているわけですね。
 そうすると、単に情報を提供しただけではなくて、審査の過程で手心を加えた可能性が出てくるじゃないですか。その辺の確認はしていますか。要するに、関西興銀の審査がこれによってゆがめられたという事実はなかったんですか。
村田副大臣 先ほどの警察庁の方の御答弁にありましたように、まことに遺憾ながら八幡検査官が起訴されたわけでありまして、委員の御質問のことも含めまして、事件の詳細につきましては、今後、捜査の結果を踏まえまして司法の場において明らかにされる、こういうふうに考えておりますので、御答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
五十嵐委員 いや、司法の手といっても、一たんはこれは決着しちゃっているんですから、それは司法の問題じゃなくて金融庁として、監督当局としても、検査そのものがゆがめられたのかどうか、そして、こういうことが再発される可能性があるのかどうかということを厳しくチェックする必要があるんじゃないですか。どうですか。
村田副大臣 今御答弁申し上げたとおりでございますけれども、審査の過程、審理の過程でもって、八幡検査官が一人でまとめていく、こういうわけではありませんで、同僚の検査官あるいは上司とも協力しながら結果をまとめていく、こういうことでございますので、私どもとしてはそうしたことがなかったものと考えておりますが、いずれにしましても、捜査の結果を見ながら我々としては対処していきたい、こういうふうに考えております。
五十嵐委員 今村田副大臣は、一人でやったんじゃないから大丈夫なんだという御答弁でありましたけれども、そんなことは言えないと思うんですね。
 九八年に、いわゆる大蔵省の接待スキャンダルというのが問題になりまして、四名が逮捕されて百十二名が処分を受けているわけですね。特に近畿財務局は問題なわけですけれども、その後も、近畿財務局では幹部職員が接待を受けていたという報道があるんですね。だから、その延長上にこの話があるんであって、一人だけ特殊な方が八幡さんだったというより、そういう風土が残っていたということではないんですか。
 だから、この八幡容疑者が逮捕されたことで一件落着というのではなくて、改めて近畿財務局全体について、業者との癒着がなかったかどうか、このような接待の慣行が残っていたかどうか、それがいろいろな疑惑事件との絡みで不正な手心が加えられたのかどうかということを、これはきちんと見る、チェックする必要があるんじゃないですか、どうですか。
    〔中野(清)委員長代理退席、委員長着席〕
村田副大臣 いずれにしましても、関西興銀につきましても、最終的には管理を命ずる処分ということで、破綻を来しているわけでございまして、大和都市管財につきましても、近畿財務局からの請求でもって清算をする、こういうふうになったわけでございます。
 私どもとしては、近畿財務局において、先生がおっしゃるようなそうした事実があって、不適切な金融行政が行われたということは考えておりませんけれども、今後とも金融行政の遂行に当たりまして綱紀の粛正に努めてまいりたい、こういうふうに考えております。
五十嵐委員 どうもそれは臭い物にふたをするような話でありまして、どうしてチェックをしないのかというのは不思議でならないですね。このようなことが行われたとは思えませんなんというような話は、チェックしてみてからでないとわからないはずですね。大体、上席の検査官が逮捕されるという自体、日本の金融検査の信頼性を揺るがせるような事態が起きたわけですけれども、この逮捕の監督責任というようなものはどうなっているんですか。
村田副大臣 私ども、先生の御指摘のように、職員が収賄の容疑で逮捕されたということはまことに遺憾でございまして、そうした意味で、私どもの金融行政について信頼を損なう行為であった、こういうふうには認識をしております。
 しかしながら、私どもは、その一件のみをもちまして我々全般の金融行政が曲がって行われた、こういうことはないと信じておりまして、今後ともなお一層職員の綱紀粛正に努めてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
五十嵐委員 監督責任についても述べないし、近畿財務局の体質に疑わしいところがあるからチェックするということもおっしゃらない。これはゼロ回答でありまして、とても答弁になっていないですね。
 それでは、観点を変えて、八幡さんだけかという話をさせていただきたいと思いますよ。
 一九九八年六月に破綻をいたしました大阪商銀の受け皿となった京都シティ信用組合、名前が今変わっております。近畿産業信用組合というふうに名前を変えましたけれども、預金量が大阪商銀の十分の一しかなかった京都市内の小さな信用組合が、十倍の大阪商銀の受け皿となったわけであります。これが、今八幡さんの事件があった関西興銀、これは最も大きな民族系の信用組合だったわけですけれども、この関西興銀と京都商銀をも譲り受けるという形になったわけですね。関西興銀と京都商銀を合わせた預金量は、実に近畿産業信用組合の五十倍ですね。十倍のものをのみ込んで、さらに五十倍のものをのみ込んだという極めて異常な受け皿のバトンタッチが行われたわけですね。
 これでは、二次破綻の可能性は極めて高いと言わざるを得ないと私は思うんですが、この不自然な受け皿選定に際して、私の方で調べたところでは、近畿財務局の理財部長であった大森泰人氏、今金融庁の総務企画局企画課の調査室長でありますけれども、この大森さんが、近畿産業信用組合が受け皿になれるよう指導したというふうに言われておりまして、そういう情報を入手いたしました。これは大変重大な問題だと思うわけであります。
 大森氏は、九九年十一月には関西興銀、二〇〇〇年十月には大和都市管財の検査をも指導しておりまして、これは八幡さんとセットで動いていたと思われるわけですけれども、大森氏についても同様に厳重に調査をする必要があるのではないかというふうに私は思いますが、どうですか。
村田副大臣 私も、先生からの御指摘を受けまして、青木社長の雑誌の対談といいますか、その部分を読んでみました。あと、その時点時点の経緯を考えたときに、一部不正確であるところもこの青木発言にはあるな、こういうふうに私自身感じたところであります。
 すなわち、大森が近畿財務局におりましたのは十三年七月まででございまして、その後異動をして今金融庁におるわけでございますが、そういう意味で、関西興銀については彼がかかわりようがないということにもかかわらず、青木さんの中では、関西興銀について、あたかも何か引き受けを慫慂したような発言がございまして、そこは必ずしも正確ではないな、こういうふうに私自身感じた次第でございます。
 いずれにしましても、韓国系の破綻四商銀につきましては、私どもとしては民族系のまとまりがあるということを期待してまいりましたけれども、そういう意味ではまとまり切らずに、最終的には、透明、公正なプロセス、すなわち入札によって受け皿が選定された。その経緯につきましては、譲渡先の選定権限を有します金融整理管財人においてもその経緯が詳しく述べられておるわけでございまして、そういう意味では、大森が今先生の御指摘なさるような不明朗なことにかかわっていたというふうに私どもは考えてはおらないわけでございます。
五十嵐委員 大森さんと、私が名前を出していないにもかかわらず今言われた、京都シティ信用組合のもともとオーナーであり、近畿産業信用組合の今でも実質的なオーナーであります青木定雄氏との深い関係があったということは指摘をされているわけでありまして、そして、この大森さんという方自身は、九八年のいわゆる大蔵省接待スキャンダルの際に処分を受けている人ですよね。訓告処分を受けていると思いますが、訓告処分というのはかなり重い方の処分だと思いますが、これは事実関係、確認できますか。なぜそのままこの近畿財務局に置いておいたのか、問題がある近畿財務局でこのような仕事をさせたのか。
 私は不思議でならないのですが、この人物はいろいろな疑惑を持たれている。今おっしゃった受け皿の選定について、よく調べたけれども問題になるようなところはないとおっしゃったけれども、当初十二月初旬と予定されていた結果通知が一カ月近く延びたという事実もありまして、大森さんが、近畿産業信用組合に増資を果たして受け皿となれるように時間稼ぎをしたという疑惑も持たれているわけですが、全く調べもせずに、何の問題もないのだと言い切れるんですか。
村田副大臣 私ども、破綻した四商銀の譲渡先の選定手続につきましては、先ほど御答弁申し上げましたように、金融整理管財人がその選定権限を持っておりますので、その管財人のイニシアチブによりまして、一つは費用最小化原則、あるいは引き受け譲渡後の信用組合の経営の健全性を確保する、こういう観点から、選定を公明な、透明性のあるプロセスで行った、こういうわけでございまして、大森当時部長がその選定を無理に曲げた、そういう可能性は全く介在し得ない、こういうふうに考えております。
五十嵐委員 それはおかしいですね。極めて密接で、また、その指導をしていた、そして別の情報では、近畿産業信用組合の余裕資金を利用して不適切な増資まで誘導しているという話が、大森氏にはそういう疑惑の情報も流れているわけです。
 もともと、今言われた金融機関の会長さんは、前科十犯なんじゃないですか。そういう方が雪だるま式に膨れ上がっていく金融機関の会長職を務める、事実上支配できるというのは、私は大変問題だと思いますよ。その人と癒着関係にある人がいろいろ動いて、何にもありませんでした、一点の曇りもありませんなんという話は、世間では通用しないです。
 しかも、ドラゴン銀行というライバルがあって争ったわけですけれども、当初ドラゴンに傾いていた金融当局の考えが、急速にある時点からこの近畿産業信組の方に転換をしていった。とても不自然なんですね。公的負担の最小化原則というのが突然持ち出されたりして、この受け皿選定の経緯が極めて不自然に動いてきている。
 こういうことから考えて、大森さんが何の関係もないという今の答弁は到底納得できるものではありません。ちゃんとこの方のやってきたことについて、今でも金融庁の幹部になっているわけですから、そして過去に接待をされていた、そして訓戒処分を受けたという事実もあるわけですから、この人のこの経緯、そして八幡さんとの関係、飲食やタクシーチケット等の接待を受けていなかったかどうか、改めて調べる必要があると思いますが、きちんと答弁してください。
村田副大臣 大森前部長につきましては、大和都市管財の登録更新拒否に関しましては、私どもかねてその経緯を調べたことがございますが、むしろ私どもとしては、大森部長が登録更新拒否をした、こういうふうに聞いておりまして、そういう意味では、彼は適切な行政処分を行ったというふうに私どもは考えている次第であります。
 それから、破綻四商銀の手続につきましては、先ほど申しましたように、金融整理管財人が譲渡先の決定についての詳しい資料を公表しているわけでございまして、その中で書いてありますようなそういうポイント、そういうメルクマールに基づきまして入札まで行いまして、それはなぜかというと、一つにまとまれ切れなくて、手を挙げたその受け皿が幾つかあったということの中で入札を実施した、こういうわけでございまして、突然入札を提案した、こういうわけではなくて、そういう選定の仕方として、幾つかの受け皿候補がある場合に入札を実施しまして、費用の最小化原則とかそういうものを見ながら受け皿の優先順位を決めていった。こういう過程はまことに透明で公正なプロセスであったと私どもは考えている次第であります。
五十嵐委員 だめですよ、そんなでたらめなごまかし方をしたんじゃ。大和都市管財にしたって、登録拒否は確かにしましたよ。だけれども、それは遅過ぎたんですよ。なぜあそこまで引っ張ったのかということの方が問題なんですから、そんなものは公正な決定をしたという理由にならないですよ。
 それから、この京都産業信組についてはめちゃくちゃな事実をつかんでいますよ。このエム・ケイ・タクシーの青木定雄氏が大阪商銀を引き受けた際には出資を募ったわけですけれども、出資を募った先の一人である堺市在住の松原さんという方がいるんですが、出資金の払い込みは青木氏の関連企業の小切手でしている。それで、そのわずか五カ月後の九月に、総代会の承認がないまま全額返還した。これは見せ金増資ですよ。こういうことをずっと繰り返しやってきて、小が大をのむということをやってきたわけですから、到底まともな手段でこれが認められたとは思えないというわけであります。
 この問題は引き続き追及しますけれども、大森さんのチェック、ちゃんとしておいてくださいね。それだけは言っておきます。
 それから最後に、時間がなくなりましたから、もう一つ、国税庁をお呼びしていますので最後に御質問をさせていただきます。
 ことし四月十日の報道によりますと、大手広告代理店東急エージェンシーが東京国税局の税務調査を受け、二〇〇一年三月期までの五年間に約十億三千万円の申告漏れを指摘され、一部に悪質な所得隠しがあった模様で、重加算税を含め八億四千万円を追徴されているというふうに聞いています。事実関係、あったのかどうか。
 東急エージェンシーはかなり政治的な会社でありまして、意図的な裏金づくりが行われたのではないか。かつて三つのプロダクションを使って同じような裏金づくりも行われていて、これも問題になったわけでありますけれども、この東急エージェンシーの脱税といいますか申告漏れについてどのような調査をしたのか、国税庁に伺います。
福田政府参考人 お答え申し上げます。
 五十嵐議員御指摘のような報道があったことは承知しておりますが、調査の実施状況を含めまして、個別の調査の内容等に係る事項につきましては、守秘義務が課されている関係上、従来から答弁は差し控えさせていただいておりますので、何とぞ御理解をいただきたいと存じます。
 なお、一般論として申し上げますと、私ども国税当局といたしましては、あらゆる機会を通じまして課税上有効な資料情報の収集等に努めまして、課税上問題があると認められる場合には、必要に応じ実地調査を行い、事実関係等を精査した上で、税法等に基づき厳正、的確な対応に努めているところでございます。
五十嵐委員 私どもは今の答弁は不満です。告発義務を課せられるような事実をつかんでいながら、していなかったという疑いがあります。重大な犯罪に結びついている脱税事件ではないかという疑いがありますので、引き続き調査をさせていただきますので、協力をしていただくようにお願いして、私の時間が来ましたので、終わります。
坂本委員長 次に、江崎洋一郎君。
江崎委員 民主党の江崎洋一郎でございます。
 早速でございますが、質問を始めさせていただきます。
 まず、法案全体の評価をさせていただきたいと思います。今回提出されましたいわゆる証券決済システム改革法案は、昨年成立しました短期社債等の振替に関する法律の改正のほかに、証取法や金融先物取引法の改正、さらには国債に関連する法律の改正などをセットにしたパッケージになっているわけでございます。先ほど五十嵐議員より柳澤大臣にお伺いをいたしましたが、大臣から、パッケージについては法律的には問題ないという評価がございましたんですが、今度は塩川大臣に、ぜひその意義についてお伺いをしたいと思っております。
 このパッケージについてなんですが、証券決済システム改革にとって、証券の決済や清算に関する法律を整備する必要があるということはよくわかります。しかしながら、国債証券買入銷却法の改正であるとか国債整理基金特別会計法の改正といった法手当てが、証券決済システムの改革やあるいは証券市場の整備という目的から行えるものと言えるかどうかというのには、私は疑問が残るところであると思います。
 本法案、証券決済システム改革法案になぜ国債管理政策に係る手段が加えられたのか。もう少し詳しく申しますと、我が国財政にとって重要な資金調達手段であります国債について、証券市場のインフラ整備と同じ土俵で一緒に片づけてしまってよろしいものなのかどうか、その理由について塩川大臣にお伺いしたいと思います。
塩川国務大臣 非常に難しい質問で、私もこんなのは弱いんですけれどもね。
 この法案が証券決済システム改革法案と言われておりますけれども、正式の名前は、証券決済制度等の改革による証券市場の整備のための関係法律の整備等に関する法律なんですね。あっちこっちに等、等が出ますので、まあ何でもできるようにしてあるんだろうと思うんですけれども。
 この中で、いわば何で国債がこういうふうに突然登場してきたのかということでございますけれども、国債が今までシンジケートを中心にして消化しておりましたですね。これからは個人にうんとこれを消化してもらえるようにしよう、そういうところのねらいがあることが一つ。
 それからもう一つは、国債の発行も、国債も証券もいろいろなものを多様化していかなきゃならぬ。例えば、一つはストリップ債というのを今度発行する、こういうことをやっておるんですが、こういうような商品が、いろいろなものができてきたということ等が、これをやはり証券市場に乗せていかなきゃいかぬと。といって、国債市場だけと独立さすわけにもいかないから、社債と一緒にあわせてそういうことをやっていったんだと思うんです。
 それからもう一つは、国債整理基金の扱いというものも、これによりますところの金融のスワップ取引の導入というもの、これもやはり国債市場の需要に合わせてやっていかなきゃならぬ。
 そういうようなものがいろいろ重なって、こういうことに新しく発展をさせていく道を講じたんだと思っております。
江崎委員 今、この法律の正式名称は違うんだ、等が入っているからこういった国債管理政策も附属したんだというお答えではございましたが、しかし、これらの国債関係の法律改正というものは、その目的が、やはり発行残高が増大する国債の管理を行いやすくするものだということ自体はもう明白なんだと思うんです。そこで、証券市場のインフラ整備と同じ土俵で扱っていいものなのかどうかというのは、やはり疑問だと言わざるを得ません。
 私は、国債管理政策そのものについては、整備をしていくということは重要だと思っております。そういうことでは、もちろん大臣のおっしゃる意味はわかるんですが、しかし、同じ法律であった方がよかったかどうかという点については、やはり別々に議論すべきではなかったかというふうに考えておる次第でございます。
 そこで、国債の管理政策の手段について少しお伺いをしたいわけなんですが、今回手当てをされようとしております国債の買い入れ消却やあるいは国債の金利スワップ、これがなぜ必要なのかとか、これらを具体的にどのように活用しますよという議論が今回欠けていたように思うんですね。まだ、そこら辺の十分な議論が行われていたのか、あるいは検証というものが十分あったのかどうか、よくわからない状況にあります。
 例えば金利スワップについても、素人目に見ましても、政府が金利スワップの取引自体を大規模に取り組んだ場合に、市場にやはり大きな影響というものが出てくるんではないか、そういう心配もございます。また、その金利スワップ自体を政府が組んだことによって本当に効果が上がったのかということについても、やはり十分検証をしていくという必要があるんではないかと思うんですが、こうした点について検討はどうなっているのか、お伺いをしたいと思います。
尾辻副大臣 まず、国債の買い入れ消却のお話ございましたので、このことからお答え申し上げます。
 この実施要件の緩和は、国債の償還年限の平準化による残存年限のバランスのとれた国債市場の形成や、発行残高が減少して流動性の劣った銘柄の消却を通じた流動性の高い国債市場の形成に資するものでございます。
 それから、金利スワップのお話がございました。
 このことは、基本的にまず御理解いただきたいと思います。今法案をお願いいたしておりますけれども、この法案をお認めいただいたといたしましても、この金利スワップの取引につきましては、直ちにやろうといたしておるものでもございません。また、積極的にこれをやろうといたしておるつもりもございません。ただ、言いますと、まさかに備えるといいますか、備えあれば憂いなしということでお願いをしておる法案の中身、一部、こういうふうに御理解をいただきたいわけでございます。
 そこで、十分な議論があったのかなかったのかというお話も先ほど来ございます。そうなりますと、十分準備して法案をお出しするか、ある程度の準備は当然いたしておりますけれども法案をお出しして、その後で十分な準備をするのか、これは御議論のあろうところと思いますけれども、私どもは、法案をお認めいただいて、そして準備させていただいた方が、その準備に対するコスト等もございますので、その方がやりやすいといいますか十分なる準備ができる、こういうふうに考えましたので、今ここで御審議をお願い申し上げておるところでございます。
江崎委員 今、国債の買い入れ消却そのものについては十分理解はできるわけですが、金利スワップ、この取引自体は大変リスクが伴う取引なわけであります。私も銀行におりましたころに、ちょうどデリバティブが隆盛期というか、非常に活発に取引が行われるようになった時期でございまして、実はその当時、大蔵省の勉強会というのがございまして、榊原元財務官のもとに御講義に伺うというようなことも私させていただいていたわけでございますが、このオフバランスという取引自体、やはり、信用創造によりまして取引相手の資産以上の取引も可能であるわけです。とりわけ金利スワップというのは金利のみが動くということで、想定元本は決済されないわけですね。そういった意味で、非常に取引そのものが膨張していくという可能性もあるわけでございます。
 それに加えて、今は民間の金融機関同士がかなり、ここの事例にあるような単体のスワップ取引ではなく、スワップ取引にさらにスワップをかけていくというような、非常に複雑化した取引を行っているわけであります。その中で、実際に民間の金融機関も事故が起きているという事例もありますので、このスワップ市場に参入するに際しては、十分に議論を重ね、さらに慎重に対応をいただきたいというふうに思っておる次第でございます。その点だけは十分お願いを申し上げたいと思います。このスワップのリスクによって日本国経済が吹っ飛んでしまうというようなこともあり得ないわけじゃないわけでございますので、十分検討をしていただきたいと思います。
 そこで、早速それでは短期社債振替法の中身につきましての議論に移らせていただきたいと思います。
 まず、この振替法について、昨年、通常国会におきまして、短期社債等の振替に関する法律案、この審議が行われ、同法案は可決されたわけでございますが、附帯決議が三つほどついておりました。この附帯決議に照らして、この新しい今回の法案を評価させていただきたいというふうに思っております。
 まず一点目でございますが、前回の法案審議の際には、証券の投資や保有が現実には銀行や証券会社を仲介機関とする重層構造あるいは複層構造で行われることにかんがみて、法律上、こうした重層構造を可能にする必要があるということが附帯決議で指摘されたわけでございます。今回の法案では、この点については、何層にもわたります重層構造が採用可能となっているわけでございますので、この点は評価をしたいというふうに思っております。
 次に、前回の短期社債等振替法は、その対象がCP、コマーシャルペーパーのみが対象となっていたわけでございますが、今回の法案ではそれが広がって、通常の社債や地方債、国債、ひいては投資信託受益証券等も取り込んでいるということで、対象証券が拡大されたという方向性については一定の評価はできると思います。しかし、なお抜けている部分もありますので、これは後ほど質問をさせていただきたいと思います。
 三点目の附帯決議としては、決済機関の競争性、競争可能性確保や、いわゆる天下りの問題について指摘がございました。これらについては引き続き注視していく必要があろうかなというふうに思っております。
 手元の資料によりますと、平成十四年、ことしの四月一日に株式会社化されました証券保管振替機構におきましては、従前の財団法人でありましたときの理事長竹内さん、常務理事村井さんがそのまま横滑りをされて、それぞれこの新株式会社の代表取締役社長と常務取締役に就任をされておられます。
 そういった意味で、これは設立当初だから引き継ぎも兼ねた人事だということなのかもしれませんが、しかし、附帯決議におきましては官庁からの天下り要請の禁止徹底、あるいは、保振機構の役員に引き続き旧大蔵省出身者が占められないように十分検討するという約束事がございました。本件、四月一日付においては引き継ぎというふうに見るとしても、今後の方針についてどのようなお考えをお持ちなのか、お伺いしたいと思います。
柳澤国務大臣 御指摘のように、前回のコマーシャルペーパーの振替に関する法律案、それから保管振替に関する法律の一部を改正する法律案、この二案につきまして、御可決をいただく際に附帯決議が付されまして、その第三項めに、いわゆる天下りということについての御決議をいただいているわけでございます。それによりますと、「行政当局からの退職職員の再就職の要請を厳に慎むなど、公務員制度改革の趣旨を十分に踏まえること」ということがございます。
 本件について私の考え方を申し上げますと、前の財団法人のときの役員が横滑りをしたわけでございますけれども、一つには、形式論みたいなことですけれども、これは決して新たに何か要請をしてというようなことが伴ったものではございませんで、いわゆる新設の会社でございますので、その発起人がみずから決定をした役員人事であったということがございます。
 それから、あえて私、実質的な理由を申しますと、この役員さんについては、私も一、二度、仕事絡みで会ったことがございますけれども、物すごく勉強をしていまして、特に、この保管振替についての国際的な各マーケットの動き等についても極めて多くの知見を有しておりまして、みずからの抱負も語られるというようなことの中で、私は、非常に専門的な知識を備えた人になっているということを感じました。
 私は、これからの金融行政あるいは金融行政の相手であるいろいろな機関については、かなりの専門的な知見を持った人が即戦力であるということが非常に必要だと思っておりまして、そういう意味でも、彼の場合は、あるいは彼らの場合には、私は、これは発起人たちが選任するだけの理由があったんだろう、こういうように思っていまして、そういう意味で、余り関係もないようなところから持ってきて、そこへ充て職的にやるというようなことでは、私自身も余り、余りというか賛成しないつもりでおりますけれども、本件についてはそういうことではないということも、またあわせて御理解を賜っておきたい、このように思います。
江崎委員 専門性ということでございましたが、竹内さんも、昭和十七年生まれということで、そろそろ六十歳になられるんでしょうかね。そういった意味も含めて、今後、専門性の高い人材を育てていただきまして、また後継に、この附帯決議にあるようなことを侵していないということを、誤解がないような人事をお願いしたいというふうに思っております。
 さて、この法案の検討の出発点となりました件についてちょっとお伺いをしたいわけなんですが、金融審議会の報告書では、今回の法案、統一的な決済法制の整備ということがうたわれているわけでございます。
 しかし、今回の法案では、先ほどちょっと附帯決議のところでも申し上げましたが、株が対象となっていないわけですね。このままでは、債券の振替決済が異なる法律によって規律されることになって、株と債券と、二つの制度が併存することになってしまわないかという心配をしております。統一的な証券決済法制が実現しないこととなってしまうと、やはりいろいろな点で問題が出てくるのではないかな。また、株と債券の中間に位置するような転換社債等の商品の存在も考えれば、やはり統一すべきだなというふうに考える次第でございます。
 そこで伺いますが、なぜ今回、この法律に株を対象にされなかったのか、また、何か問題がその議論の過程であったということでございましたら、おっしゃっていただければと思います。まず、金融大臣からお願いいたします。
柳澤国務大臣 これは、一つには、法務省の関係でございますけれども、券面主義というか、株式のそういうことの全廃ということについて、検討はされているわけですけれども、なおまだ結論に至っていないということもございます。
 それからもう一つは、振替口座簿に過大記載が行われて善意取得があった場合の処理なんですけれども、これは、従前の証券振替機構の場合には、一部がこうした口座に乗っかっているというようなことで、それは振替機構の責任において、他から現物を調達して、それでみずからの責任を果たすというようなことができますけれども、今回のように、全面的なペーパーレス化が前提になって、すべてが口座の帳簿で処理されるという場合に、もし過大記載があったときにはどうやって責任をとれるんだということが非常に問題になります。
 特に、経済的な問題だけでしたらいろいろな解決の方法もあり得るわけですけれども、株主権というような議決権、こういうようなものが絡んでまいりますと、なかなかここに難しい問題が出てくるというようなことがありまして、そういったことで、なおこのあたりのことについては時間をとって結論を出さなければいけない、こういうことになっているということだというふうに承知をいたしております。
江崎委員 同様な質問で、法務省の方から何か意見はございますか。
房村政府参考人 お答え申し上げます。
 ただいまの金融大臣の御説明にもありましたように、株式の場合には株主権がつきものであります。株主総会での議決権であるとかあるいは少数株主権あるいは単独株主権、こういったものがございますので、振替制度に乗せた場合に、株主を的確に把握する仕組みをつくっておかないといけない。そこが社債、国債等の金銭債券と大分違う問題がございます。
 特に、善意取得で振替の過大記載を賄うということにした場合に議決権等をどうするか、これは非常に難しい問題がございます。そこを今検討しているところでございまして、何とか適切な方策を見出して振替を実現したいということで検討を進めているところでございますが、まだ現段階でその結論が出ておりませんので、もう少し時間をいただきたいということでございます。
江崎委員 株については、このようにいろいろ問題があるということは十分わかりました。不発行制度の問題あるいは議決権の問題が検討されているということであることは理解できたんですが、やはりいろいろ考えてみますと、これは個人的な私見ではございますが、株券が不足する、あるいはこれに相当するようなケースの処理についても、すべての証券が振替制度に入っていれば、結局のところ、今回の法案と同じような形で、最終的には金銭的に補てんするという手段しかないのかなというふうに感じております。
 しかし、この議決権という問題も別途ございますので、十分議論を尽くしていただきたいと思いますが、いずれにせよ、統一的な証券決済法制の整備ということがうたわれている中でございます。その中で、やはり株というのは非常に全体の基礎に置かれるものであると思います。
 そういった意味で、我が国の証券決済制度改革に迅速に取り組んで、株等のエクイティー関連商品を一日も早く今回制定する法律の対象としていただきたいというふうに私は願っておる一人ではございますが、今後どのような取り組みをお考えなのか、また、スケジュール等も明確化できるんであれば、ぜひお答えいただきたいと思います。
柳澤国務大臣 これはむしろ、実体的な判断は法務省の側にゆだねられているということは、今の答弁の状況からいっても御理解いただけると思います。
 私どもとしては、もうこれは本当にできるだけ早くやりたい、こういうようなことでございまして、今後とも法務省さんに、そうした我々の意欲というか、そういうものを伝えて、できるだけ早期に結論を出していただくようにお願いをしていきたい、このように考えております。
江崎委員 今、柳澤金融大臣からも早急に取り組みたいというお話でございました。私も市場関係者からお話を聞きましても、やはりせっかくこういう制度をつくる以上は一日も早く株券も認めてほしいという意見が、声を大にする方が多でございます。
 そういった意味で、やはり今法務省の中で法制度を整備されているとは思いますが、今後の方向性及びスケジュールについて、同じようにお願いいたします。
房村政府参考人 この株券のペーパーレス化につきましては、既に法務大臣から法制審議会に諮問をいたしまして、検討を開始しているところでございます。
 金融庁とも協力をいたしまして、できるだけ早く実現をしたいと考えているところでございますが、いろいろたくさん法律があるものですから、現在のところ、できれば平成十五年度中には何とか改正法案を国会に提出したいということで、鋭意努力をしているところでございます。
江崎委員 本当に一日も早くこの法体系を整えていただきたいというふうに願うわけでございます。
 次の質問に移らせていただきます。
 昨年、短期社債等振替法を成立させたわけでございますが、この成果についてお伺いをしたいと思います。
 コマーシャルペーパーについては特に法整備を急ぐ必要があるというのが昨年の法案審議の際の政府答弁であったかと思うんですが、実際にこの証券決済システム改革を早急に進めていくという観点から、まず、この四月から施行されました短期社債等振替法に基づいて、電子CPの決済システムの構築を急ぐ必要があったのではないかと思います。
 その実際の作業状況及び金融関係者の対応状況というのはいかがになっておられるのでしょうか。金融大臣、お願いいたします。
原口政府参考人 電子CP、短期社債の実用化につきましては、昨年の法律の成立を受けまして、まず、政府部内におきまして政省令の策定作業を行いましたが、それと並行いたしまして、実務界におきましても、今年度中の稼働を目標として具体的なスキームについて検討作業が進められているところでございます。
 実務界におきましては、証券保管振替機構を中心に、電子CPの振替制度の基本要綱の取りまとめを終了いたしまして、現在は、コンピューターシステムの基本設計に向けたシステム概要の取りまとめを行っている段階であるというふうに承知しております。
 いずれにいたしましても、当局としても、この円滑な実用化が図られるよう、実務界と緊密な連携、調整に引き続き努めてまいりたいと考えております。
江崎委員 これは、具体的にはあれでしょうか、金融機関にとっては、昨年の法律を受けて一時的に単層構造の準備をしました、しかしながら、長期展望としていずれ複層構造が法律として認められるんではないかということで、二段階ロケットのような形でシステムがある程度設計されて、いつでも受け入れ態勢は整っているという趣旨として考えてよろしいということでございましょうか。
原口政府参考人 御指摘のように、実務界の方でも全体のスケジュール観といいますか、流れの中で準備をしているということで、御指摘のとおりというふうに承知しております。
江崎委員 金融機関にとっても、恐らくこのシステム対応というのは大変な金銭的負担を負うものだと思うんですね。銀行の経営が大変厳しい環境下の中でこういったシステム負担というのは、法律改正に伴ってのシステム負担というのは、ひいてはこれは自分たちの業績向上にもつながることになるでしょうから当然といえば当然かと思いますが、この点については、現状、歓迎しているという認識でよろしいんでしょうか。金融機関側がこのシステムについてもう既に予算取りもあって、十分対応できる、先般のみずほのようなことがないという認識でよろしいんでしょうか。
原口政府参考人 もちろん金融機関にとって負担を伴うことではございますが、これはもう、このグローバル化の中で市場間の競争という問題もございますし、また円滑で安定した決済を確立していくというそういう共通目標はもう金融機関も共有しているというふうに認識しておりますので、そういう気持ちで積極的に取り組んでいただいているというふうに認識しております。
江崎委員 民間金融機関が十分な準備をしているということであれば安心なんでございますが、とにかくみずほの例があったわけでございますので、今後金融庁さんとされても、十分CPのこういった決済が円滑に進むよう、またこのシステムのチェックというものも十分に行っていただきたいというふうに思うわけでございます。
 続きまして、資金決済に伴って、今度は日銀さんにちょっと御質問をしたいわけでございます。
 今回の電子CPの決済システムでは、ペーパーレス化だけではなく、デリバリー・バーサス・ペイメントという、いわゆるDVPのシステムも同時に実現する予定だと伺っております。このDVPについては当然、金融機関同士の決済ということでもございますので日銀さんの協力も不可欠かと思われますが、日銀さんとしてどういう対応になっているのか、お答えいただければと思います。
三谷参考人 お答え申し上げます。
 CPにつきましては、先生御指摘のとおり、既に関係者の中で新しい法制度のもとでどういった決済システムをつくっていくのかという基本的なコンセンサスができあがっておりまして、その中で、日本銀行に対しては、CPの振替とその代金決済とが同時に行えるような仕組み、今御指摘のDVPシステムの実現に協力するように要請が来ております。
 私どもとしましても、こういったDVPの実現というのは、単に金融機関の間におきます証券の決済リスクの削減ということだけにとどまらず、証券決済に伴う代金、つまりその資金決済の安全性向上にとっても極めて重要な仕組みであるというふうに理解しておりまして、これに積極的に協力してまいりたいと考えていますと同時に、現在既に関係者との間でシステム開発の中身等について鋭意検討を進めておるところでございます。
 したがいまして、証券保管振替機構の方でCPの振替が実現できるようになると同時に、私どものシステムもDVPが実現できるような形で対応すべく努力してまいる所存でございます。
江崎委員 今、国債で既にDVPというのは実現されているんだと思いますが、システム的な意味では、もう完全にCPにおきましても同じような仕組みで対応が十分できるという考えでよろしいんでしょうか。
三谷参考人 お答え申し上げます。
 国債は、実は日本銀行の中で全部扱っておりますので、多少仕組みは異なります。ただ、既に現在、登録社債等につきまして、四年ぐらい前からでございますけれども、日本銀行の資金決済と、それからJBネットといったと思いますけれども、そこでの登録社債等の決済等をDVPでやはり実現するようなシステムはつくっておりますので、そういった意味ではそのシステムにかなり近いものになるというふうに理解しております。
江崎委員 ぜひ、日銀さんとしても、この証券決済システム改革にはしっかり御協力をいただきたいというふうに思っているわけでございます。
 もしお時間がございましたら、どうぞ御退席ください。
 さて、CPというものを振り返って考えてみますと、企業にとりましては短期の資金調達手段としてこれから最も期待される一つの手法というふうに言えるかと思いますが、今回のCPの電子化の議論におきまして、CPを電子化、ペーパーレス化することによって、その発行をより機動的に、具体的には、資金需要がありました、金利情勢によっては即日でも発行できる、そういう事業法人等の願いというのが非常に込められて、昨年もこのCPについては先行してスタートしたという経緯があったわけでございます。
 今回の法案につきましては、発行体のニーズを十分満たすような仕組みになっているのか、その法的手当てというのがなされているのかにつきまして、金融大臣に伺いたいと思います。
原口政府参考人 段階的に行っておるわけでございますが、今回の法案につきましても、発行体等のニーズも十分聴取した上で、その要望にこたえ得る内容になっているというふうに考えております。
江崎委員 昨年の法律におきましてはCPというものが対象であったわけですが、今回はCP以外の対象も広げられたということでございます。
 そういった意味においては、社債等その他の商品につきましても、即日発行、即日決済ができるというような仕組み、法律体系になっているという理解でよろしいんでしょうか。
原口政府参考人 御指摘のように、法律上は対応できることになっております。
 ただ、実際にそういうことができるかというのは、もとより当然のことですが、そういう法的なインフラの整備をした上で、各参加者の事務フローですとかシステム、またあるいは取引慣行といったようなものをそれに合わせて、民間の面であるいは実務の面でそれに対応して整理をしていく、あるいは改めていくということは当然必要になるということでございます。
江崎委員 そうですね。今おっしゃるように、商品によっては決済期日、いわゆるTプラスアルファと、アルファの日が違うわけですので、当然慣行によるものかとは思いますが、いずれにせよ、やはり発行体としましては、とりわけCPについては即日発行、決済というのが望まれているわけでございますので、そういった意味で、この法律体系で十分確保されたという認識に立ったということでございますので、安心しておる次第でございます。
 続きまして、それでは、受け皿として、先ほどの日銀、あるいは金融機関のシステム、あるいは法的体系がなされたということでございますが、逆に発行体となります企業や産業界が、電子CPへの対応というのはどのようになっているか。この点につきまして、経済産業省さんの方からお答えをいただきたいと思います。
桑田政府参考人 お答え申し上げます。
 CPを初めとしました証券決済システムの整備につきましては、先生が御指摘のとおり、資金調達のコストそれからリスクの低減という観点から、産業界としては非常に重要な課題であるということで早期の実現を求めてまいりました。
 法制度に向けました政府の動きにあわせまして、二〇〇〇年の五月にはCPの主要ユーザーが中心となりまして日本CP協議会を設けて、CPのペーパーレス化を具体的にどのような仕組みで導入するかについて検討してきたところでございます。
 また、昨年の通常国会におきまして、CPについてのペーパーレス化を可能とする短期社債法を成立させていただき、また今回、現在御審議いただいております法案によりまして社債等のペーパーレス化が進むことでございますけれども、産業界といたしましても、この法案の早期成立を期待していると認識しております。
 また、産業界は、これらの動きを受けまして、さらに実務面で使い勝手のよい決済システムを目指すべく、昨年十一月に「電子CP等の決済システム・グランドデザイン」を提言いたしました。本年三月には、CP協議会を改組いたしまして、社債等を含めました日本資本市場協議会を設立して、その具体化に向けた検討を進めております。
 当省といたしましても、企業の資金調達の円滑化のためにも、実務的に使い勝手のよい証券決済システムの整備に向けまして、産業界、関係省庁と連携を深めながら、一刻も早く具体的な施行が可能となるように、引き続き努めてまいりたいというふうに考えてございます。
江崎委員 産業界の方も、みずからが望んできたことでありますので、当然準備は怠りないという認識であると思いますが、また逆に、発行体の方からの準備が十分できていなかった結果として、何かシステム障害を起こして決済リスク、信用リスクを伴うということも考えられないわけではないわけです。
 そういった意味で、発行体サイドにおかれても、実際にこのシステムがスタートしていく前に、きちっとしたシステム設計がなされているのか、また十分な運用ができるのか、そういった面につきましても経済産業省さんの方でやはりきちっと管理監督をしていただければというふうに思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。
 もしあれでしたら、法務省さん、経済産業省さん、どうぞ御退席ください。
 続きまして、決済期間の短縮化につきましてお伺いをしたいと思っております。
 今議論のありましたCPの即日発行といった観点でございますが、より広く一般化して言えば、証券売買等の取引をしてからその決済までの時間をいかに短くするかということであろうかと思います。この、いわゆる短くする、証券決済システムの改革のメニューの中でも決済期間の短縮、俗に言うTプラス1とか2とか、いわゆる決済日が何日間になるか、こういうことに今、これからは議論は移っていくのかなというふうに考える次第でございます。
 このTプラスアルファというのが非常に重要な課題であることはもちろんなのでございますが、果たして本当に、国際競争力の上では重要かもしれませんが、取引当事者にとって重要なことかどうかというのは、もうちょっと議論の余地はあるんじゃないかなというふうに考えているわけでございます。
 取引から決済までの時間が長いと、その間に決済の済んでいない取引が積み上がって、万一その間に取引相手が倒産してしまったり、市場価格が大きく変動した場合、当然リスクが大きくなるということは明らかであるわけです。しかし、じゃ逆に、取引をしてから決済までの期間をただ短くすること自体がどのぐらい有益なのかということについては、もうちょっと議論の余地があるんじゃないかなという意味でございます。逆に、リスクやコストをふやすことはないのかということを、ちょっと私も考えてみました。
 例えば、決済までの期間をともかく短くすることだけを決めた場合、仮に取引を処理するためのシステムや事務処理体制が整っていなければ、実際には決済の当日に証券やお金をきちんと用意できない金融機関や投資家が多数出てくるおそれというものが考えられると思います、これは当たり前の話ですが。これではかえって市場を混乱させるということになりまして、本末転倒になりかねないと思うわけです。
 アメリカにおいても、早くから目標となる時期を掲げて、Tプラス1、これを早めよ、早めよという動きがずっとあったわけでございます。しかし、欧州ではそうした話というのは意外と聞かれていないのかなというふうにも思います。また、アメリカにおいても、当初Tプラス1というのは二〇〇二年からスタートしようという目標があったわけですが、現在では、二〇〇五年までずらして慎重に対応していこうということが検討されているというふうに聞いております。こういったことで、やはり現実を踏まえて拙速を避ける動きが必要だという意見もアメリカの中でも出てきているという解説者もおる次第でございます。
 そういった点を考えますと、我が国においても、確かにその国際競争力、市場としての優位性を保つために、一日も早くTプラス1を実現にという意見は十分、わからなくはございません。しかし、それに伴うリスクとコストというのがあることも十分認識をした上で検討をしなければいけないんじゃないかなというふうに思っておるわけです。
 そこで、質問なんでございますが、この決済期間の短縮化に伴って、その市場の関係者が十分前提条件が整っていますというようなことが見きわめられた上で実施されるべきだと私は考えておりますが、現在、決済期間短縮に向けた金融機関の取り組みの現状というのはどのようになっているのか。また加えて、政府としてはどのように今後進めていこうとお考えなのか、その方向性についてもあわせて御回答いただきたいと思います。
    〔委員長退席、中野(清)委員長代理着席〕
村田副大臣 委員御指摘のとおり、決済期間の短縮を進めていくわけでございますけれども、一方において市場参加者におきますシステム面での整備というものも伴わなくてはいけない。あるいは、市場慣行の変更が必要でありますので、そういうものもついていかなきゃいけない。こういうことでありまして、そういうことがあわせて車の両輪として実現されていかなければ、委員が今御指摘のように、オペレーションミスを誘発する、こういうことになりかねないということであります。そういう意味では、私ども、インフラを整備する一方で、市場関係者の十分な準備とか習熟も必要であろう、こういうふうに考えています。
 現在、市場関係者サイドにおきましても、日本証券業協会を中心といたしまして、決済期間の短縮を含めた証券決済改革に向けた検討が精力的に進められておりまして、私どもとしても、このような市場関係者の御努力と十分な連携をとりまして、決済期間の短縮の円滑な実現に努めてまいりたいというふうに考えております。
 しかしながら、根本的には決済期間の短縮は証券決済におきます決済リスクを削減するために極めて重要なことでございますので、私どもといたしましては、投資家の利益にもなるということでできるだけ早期に実現をしたい、こういうふうに考えているわけであります。
江崎委員 これは、商品によってもTプラスアルファというのは考え方が違ってくるのかなとも思えるんです。確かに、CPについては即日性というものが重要かと思いますので、Tプラス1ないしTプラスゼロに近づく、今回の場合はTプラスゼロということでございますが、そういうことが重要かと思いますが、株式においても、あるいはその他の商品につきましても、本当に一律にTプラス1にそろえていく必要があるのか。
 また、今村田副大臣からございましたが、今後努力をされるという動きにつきましても、商品ごとに積み上げていくことをお考えになっておられるのか、あるいは市場慣行として一遍に整備をしていこうという思い切った施策をお考えなのか、その辺について、ちょっとお伺いをしたいと思います。
原口政府参考人 御指摘のように、Tプラス1なり、そういう短縮化というのはいろいろなリスクを伴う、また、商品によってその性格が違うという面はあると思いますが、一方では、やはり決済リスクを削減するということに果たす決済期間の短縮というものは各商品に共通であり、また投資家の利益に資するということから考えると、統一的に行うというのは自然だろうと思います。
 また、国際的にも、ISSA、いわゆる国際証券サービス協会の勧告におきましてもTプラス1の採用が望ましいということで、そういう意味では、商品ごとというよりはやはり全体的に考えていくということが妥当ではないかというふうに考えております。
江崎委員 こちらに国際比較の表をいただいておるわけですが、これは金融庁さんの資料かと思いますが、この中でアジア市場を見渡してみますと、シンガポールはTプラス3ですが、今、韓国、台湾、香港はTプラス2という決済期日を持っているわけでございます。
 仮に、日本が早期にこのTプラス1を実現した場合に、アジアの市場においてもかなり影響を持つ、やはり、かなり日本にいわゆる市場取引も引き寄せられるんではないかというお考えをお持ちでしょうか。その点につきまして、ちょっと御意見をいただきたいと思います。
原口政府参考人 もとより、市場間競争といいますか、市場にどういう顧客が集まってくるかというのは、単純に決済期間だけではなくて、いろいろな各種のサービス、インフラですとかあるいはその市場の活性の状況とか、いろいろなことが複合するとは思いますが、その中で、やはり決済期間というのは一つの重要なファクターであるというふうに考えますので、逆に、これがおくれるということは相当なマイナスになるというふうに考えられると思います。
江崎委員 Tプラスアルファというその決済期日につきまして、今いろいろ御議論いただきまして、状況については十分わかりました。
 しかし、この決済期間の短縮につきましては、やはりその進め方については十分留意が必要なんではないかなというふうに考えております。特に、今、商品ごとというよりは一律にという御議論もありましたが、取引や商品の種類あるいは取引当事者の性質等によって決済期間短縮の必要性や有益さの度合いというのはかなり異なってくるんじゃないかな。単純に市場が統一化されればいいということと、この議論というのは少し異なるような気もいたします。
 そういった意味で、十分議論を重ねていただきたいと思うんですが、例えば、金融機関同士が資金を融通し合う取引の中で証券を担保としてやりとりするケースを考えますと、証券の受け渡しも資金の決済と同じように取引当日に決済可能である必要が高いわけで、逆に、取引当日の決済が可能であれば当事者にとって大変有益だろうと考えられるわけでございます。他方、証券を満期まで保有するだけの投資家にとりましては、例えば、取引相手が十分信用できる金融機関であれば、証券の受け取りが取引の翌日であるか三日後であるかというのは余り重要な問題ではないんじゃないかと思うんです。
 そういった意味で、取引の中身によっても、このTプラスアルファというのは個別、個別に対応を考えていくので十分じゃないかなというふうに個人的には思っております。
 意見は以上にしまして、証券決済システム改革といっても、これをするに当たっては、いろいろな面で今議論がありましたような細かな対応というものが必要だと感じております。そういった意味で、この改革については民間の市場関係者等のイニシアチブがまずは重要だと考えるわけです。
 他方で、証券決済システムという金融インフラの整備が、我が国証券市場、金融市場の国際競争力の一つの重要なファクターになるというふうに考えております。こうした改革を通じまして、円建て証券や金融商品の魅力が高まることができれば、これがひいては円の国際化あるいは円の持つ魅力の向上につながるということで、政府としても改革のための環境整備等に役割を果たしていくことは不可欠ではないかと思っているわけでございます。
 そこで、この法案について最後の質問になりますが、証券決済システム改革への今後の政府の取り組みについて、大筋こんな方向で考えているんだということにつきまして、まず柳澤金融大臣からお伺いしたいと思います。
柳澤国務大臣 大変広い、また高い視点からのいろいろな御議論、まことにありがとうございました。
 今後、私ども、法律の枠組みをつくるということは、これはもうできるだけ早くやっておかなければならない、こう考えておりますけれども、この実施に当たっては、やはり何といっても市場参加者の認識であるとか、あるいはなれであるとかということが非常に大事だ。それからまた、場合によっては、今委員がおっしゃられたような商品ごとの必要性の度合いといったようなものについても目を配っていくということが必要だというふうにも考えますので、今後、いろいろな意味で参考にさせていただきたい、このように考えております。
 将来方向ということでございますけれども、これはもう既に御議論がずっと出ているわけでございますが、私ども、証券の市場につきまして、これまで以上にもっともっと活性化をしていかなきゃいけないと基本的に考えておるわけでございます。
 それで、もちろん本当に駆け足でございましたけれども、私、この連休に実は香港の市場とシンガポールの市場に行って、全くの感じだけをつかまえに行ったということでございます。この二つがそもそもライバルであるということが基本にあるんでしょうけれども、ほかの、他方の動きに対してびりびりした反応をしているというのが実情で、これはもう委員もつとに御承知のことかと思うんです。
 例えば、私、一番驚いたのは、シンガポールと香港とは物理的にいえば一時間の時差があるんですけれども、それを、全く同じ時間帯に属するんだというようなことで、大げさに言えば日付変更線のようなものを金融の、経済行為のために改めてしまうというぐらいの迫力を持って、自分たちの市場の魅力を何とか高めよう、相手との比較において優位に立とう、こういうようなことをやっているわけでありまして、その競争心というか、そういうものは本当に、私ちょっとのぞいただけですが、ひしひしと感じたというところでございます。
 もちろん、これらに市場は非常に頑張ってはおるんですけれども、まだまだ我々の市場が大きいわけでございますけれども、やはり、人材をインターナショナルに、国際的な目配りの中から引き連れてくるとか、あるいは背後地の人口が、例えばシンガポールであればインドネシアというようなところを持っているとか、あるいは香港であれば、上海との競争はあるものの、やはり中国大陸のあの巨大な人口を持っているとかというようなことを考えますと、日本としても、うかうかはしていられないというように感じておるわけでございまして、私どもとしては、この決済システムのインフラを含めて、これからそういったことにも目配りをして、日本の市場の活性化に努めていかなければならない、このように考えている次第であります。
 非常に刺激的な言葉ですが、決済を制する者が市場を制するなどというような言葉も専門家の間にはあるようでございますので、そういう中でもこの決済システムの整備というのは非常に大事なファクターであろう、こういうように考えている次第であります。
江崎委員 今ちょうど香港、シンガポールのお話もございましたので、アジア市場におきましても、やはり大変なライバルというか、競争意識が激しいわけですよね。
 バブル崩壊以降、日本も非常に、株式市場を初め、いわゆるインターナショナルなという意味での国際的な市場というものが、非常にちょっと、やや海外の目から冷めてきてしまっているかなと。外国為替取引のボリュームも減っているということでもありますし、非常にそういった意味で、日本の経済が活性化していないからお金が来ないのか、あるいは取引の慣行なりインフラが整っていないゆえにお金がなかなか呼び込まれてこないのか、非常に懸念されるところであるわけでございます。
 そういった意味で、今、柳澤金融大臣から、やはり真剣に、積極的にさらに取り組んでいかなければいけないというお話もいただきましたので、これから海外の投資家が自由に入ってこれるような間口の広い市場整備に努めていただきたいと思います。
 また、CPを初め社債市場においても、今、フランスが非常に決済システムの構築ということにつきましては熱心に行っているようでございまして、とりわけEU市場の中で、ヨーロッパというと、どちらかというとドイツが金融取引というのは強いというイメージでありましたけれども、むしろ決済システムを非常に精緻なものにし、さらに高度化することによってお金を呼び込むんだという意識で、フランスも積極的に、政府が、また中央銀行が後押ししながら、決済システムの整備というものを積極化していると聞いております。また、それに伴って、やはり投資というものも徐々にヨーロッパ大陸の中でふえつつあるとも聞いておるわけでございます。
 こういった意味で、何も国内取引のメンバーを対象とした改革だけでなく、外にも目を向けて、ぜひとも国際化、市場の整備というものを図っていただきたいと思います。
 それでは、最後に塩川大臣に、円の国際化への展望も含めた証券市場の整備というものにつきまして御意見を承りたいと思います。
塩川国務大臣 私は、最近、国債とか社債とかそういう、要するに間接金融に余り重点を置かれ過ぎてしまって、直接金融の面がおろそかになってきたような傾向があると思っております。したがって、国債はどうも戦争中の国債のイメージにつながるような弱点もございますけれども、やはり国債を持つということが、日本の経済にもあるいは国のあり方にも関心を持つ大きな動機にもなると思いますので、国債の保有について一層の努力をしてみたいと思っております。
 ちょっと調べてみましたら、英米、イギリスは国債の保有に随分と税制上の優遇もしておりますね。日本はちょっと、国債の優遇を余りしていないように、三百万円ですか、金利をちょっとやっていますな、ちょびっとのやつ。あんな程度のことで、もう少し国債になじんでもらう方法はないだろうかという感じがして、勉強してみたいと思っております。
江崎委員 ぜひとも、やはりまだまだドルなり、今、ユーロという通貨に比べて円というものは非常にまだまだ国際化が、一時は大分熱心に行われた時期もございましたけれども、八〇年代初め。しかし、ここに来て、景気の悪さと伴って、この国際化というのは非常におくれているんではないかというふうに思っている次第でございます。そういった意味で、今後、インターナショナリゼーションという意味における国際化もどんどん進めていただければなというふうに思う次第でございます。
 以上で、この証券決済システム改革法案につきましては質問を終わらせていただきますが、一応また午後若干の時間をいただいておりますので、こちらで不良債権の問題につきまして議論を続けさせていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
 では、以上、午前中は終わらせていただきます。
中野(清)委員長代理 この際、暫時休憩いたします。
    午後零時三十九分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時四十一分開議
坂本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。江崎洋一郎君。
江崎委員 それでは、午前中に引き続きまして午後の質問を再開させていただきます。
 午前中は証券決済システムの法案につきまして御質問をさせていただきましたが、午後は二十分ということでございますので、不良債権問題につきまして絞りまして、柳澤金融大臣に御質問をさせていただきたいと思います。
 まず、その前に私から、前回二月二十七日の当委員会におきまして御提案させていただきました内容につきまして、もう少し詳しく付言をさせていただきまして、御提案させていただきたいと思っております。
 最近は外からも、オニール米財務長官が不良債権の早期切り離しを提言したというニュースが流れましたり、あるいは金融庁が、先ほど五十嵐議員からの御質問にもありましたように、RCCの不良債権買い取りの時価の引き上げを検討とか、そういったニュースも流れておるわけでございますが、そういった意味で、RCCの機能強化という問題につきましては再び議論が活発化してきているんではないかなというふうに認識しております。
 私も、RCCの不良債権処理における活用ということにつきましては高い関心を持っております。先ほど申しましたように、前回の質疑でも提言をさせていただいた次第でございます。不良債権問題という大きな氷山を一気に崩すことはできないまでも、一角でも着実に崩していくということが今本当に大事な時期に来ているんではないかなというふうに思っております。また、不良債権問題というのは、むしろ企業再生の促進という観点からもっと注目されなければいけないんではないかな。何も金融機関を助けるということが目的ではなく、むしろ、不良債権を切り離すことによって企業が再生していくという観点からももっともっと議論を尽くしていかなければならないんではないかというふうに考えておる次第でございます。
 この年初には、与党三幹事長共同で、RCCによります不良債権の実質簿価買い取り案というのが提案されました。同提案には、実質簿価買い取りに伴う二次ロス負担など幾つかの未解決問題があって、議論は煮詰まらなかったわけでございます。宙に浮いたままになっているわけでございますが、我が国が直面する不良債権問題に対する一つの意見としては、十分、その当時議論された問題だけではなく、また今の一つの参考とされる意見ではないかというふうに思っております。もちろん、二次ロスを国民負担にするということは現下の情勢では許されるわけではないわけですが、しかし、方法を多様化することによって、この辺の問題は解決できないかなというふうに私は考えている次第でございます。
 また、不良債権問題の本質というのは、先ほど触れましたが、銀行の過少資本の問題だけではなく、企業の過剰債務問題としてとらえていくべきじゃないかという観点も考えております。構造調整を進めて日本経済を立て直すためにも、過剰債務に苦しむ企業の再建を急いでいくべきじゃないかというふうに考えております。そのためにも、不良債権処理の方法の選択肢を広げて、金融機関が自主的に不良債権処理をできる環境を整備するのが政府の役割ではないかなと考えておる次第でございます。
 例えば、金融機関がみずからの力では再建できないと判断した企業につきましては、早期に資本力と経営ノウハウのある企業再建ファンド等のスポンサーに売却をすべきではないかなというふうに思っております。
 しかし現実には、金融機関は、売却損によって収益が悪化したり資本が毀損してしまうということを恐れて、不良債権の売却については極めて消極的だというのが現状の状況じゃないかと思います。それに加えて、この超低金利のもとでは金融市場に資本がじゃぶじゃぶとあふれているわけですので、不良債権を抱えていたままでも金利負担がほとんどないというふうな状況で、わざわざ自己資本を食いつぶしてまで不良債権処理を進める必要はない、まあないとまでは言い切れないでしょうけれども、意欲がわかないというのが現状の環境じゃないかと思います。
 さらに加えてもっと悪いことに、貸出先との株式の持ち合いといった持ちつ持たれつの構造というものも重ね合わせて、金融機関が企業向け貸し出しを処理することをちゅうちょするということにもなっているんではないかと思います。だからこそ、特別検査によりまして強制的に不良債権処理を行って、その結果過少資本になった先に対しては公的資本注入を行うべきだということを私も再三申し上げてきたわけでございます。
 不良債権問題を金融機関に対する公的資本投入の問題ということで取り上げるだけではなく、やはり企業再生の観点に立つべきであり、例えば、特別検査がある意味で厳しいという意味においては北風政策だ、しかし金融機関が自主的に不良債権処理に取り組んでいく意欲がわくような、そういうような太陽政策というか温かい政策も現段階ではもうしていかないと、何も進まないまま時間だけ浪費してしまうという危険がないのか、私は大変心配をしているわけでございます。
 そこで、金融機関が資本不足に陥らずに不良債権を処理できる枠組みというのが用意できないかということで、一つ御提案をさせていただきたいと思います。
 例えば、金融機関が実質簿価などの言い値で一たんRCCに不良債権を買い取ってもらいます。その後にRCCはこれを速やかに時価で市場に売却するということで、ここで当然二次ロスが発生するわけです。この二次ロスが、今までは国民負担だからだめだという議論になっておったわけですが、例えばこの二次ロスにつきまして、十年、二十年といった長期に案分して金融機関がみずからの期間収益の範囲内で計画的に弁済していくというそういった方法は考えられるんではないでしょうか。例えば、二次ロスを直ちに資本の食いつぶしとしてとらえてしまうだけではなく、個人の住宅ローンのように長期借りかえに置きかえて、いわゆるキャッシュフローの問題としてとらえて、そして時間をかけて金融機関自身がこの二次ロスを負担していくという考え方はないかということでございます。
 RCCの買い取り価格が大幅に弾力化できることになると思いますし、また時間的猶予を与えられた金融機関の売却意欲も、背景では高まってくるんではないかというふうに思っております。加えて、RCCにもメリットがあるんではないかと思っておるんです。例えば複数の金融機関が同一企業に対する債権を共同でRCCに売却するということになれば、大口債権者となったRCCは、今度は一括して、バルクセールのような形で市場に売却できる。そこによってまたメリットも出てくる。あるいは、企業再生ファンドもついてくるということも考えられようかと思います。そういった意味で、有利な価格で市場でRCCが売却できるというチャンスを生む手法にもなるかなというふうに思っておる次第でございます。
 あくまで誤解していただきたくないのは、不良債権の先送りを提案しているというわけではございませんで、むしろ不良債権の切り離しを急いで、金融機関の二次ロスを急いである意味で確定していくということが大事なんじゃないかと思っております。この二次ロスさえ確定すれば、金融機関も将来の経営戦略というものも立てやすいんではないかというふうに考えておるわけでございます。
 また、RCCが不良債権を買い取る資金を手当てする必要というものも出てくるわけでございますが、金融機関に長期分割で弁済させれば、二次ロスを税金で埋めるという発想もなくなるわけですので、一石二鳥ではないかというふうに思っているわけでございます。
 この中で一つ解決しなければならない問題というのは、二次ロスを自己資本の欠損とならないように長期に案分するということになりますと、会計原則の問題が出てこようかと思います。この問題、今のところ会計原則上は、いわゆる損失が発生する可能性が出てきたときに直ちに引き当てを積まなければいけないという会計原則がございますので、ここの部分の緩和をしなければ、この案というものは単なる案に終わってしまうわけでございますが、そういった意味での解決策の一つの糸口として、会計原則に対しても特例を設けていくということも、この場においては必要な時期に来ているのではないかというふうに考えるわけでございます。
 そこで、質問に入らせていただきますが、まず、柳澤金融大臣に御質問申し上げます。
 この不良債権処理につきまして、今非常に引き当て水準というものに注目し過ぎていないかということを私は感じております。引き当てということについては、査定ということが加わるわけでございまして、かなり主観的な要因というものも大きくありますし、また、いざだめだったという意味で、ロスが拡大する危険があるんではないか。むしろ市場に売却することでロスを確定したり、あるいは、不稼働資産を減らすということが今銀行にとっては大事なことなんだと思いますけれども、引き当てに今非常に注目をされているのかなと思っておるんですが、いかがお考えでございましょうか。柳澤大臣、お願いいたします。
柳澤国務大臣 江崎先生のような、ある意味で、実務を御存じだし、またいろいろ物をよくお考えになられる委員の先生が、いろいろな方面から現在日本の金融機関が直面している不良債権の問題についてお知恵を出していただけるということは大変ありがたい、このように思っております。
 それはそういう前提でお話をさせていただきますが、本当にこれは恐縮なんですが、私が一昨年の十二月にこの仕事を仰せつかりまして真っ先に打ち出したのが、実は、不良債権の処理は間接処理ではなくて直接処理をしなければだめだ、それが非常に大きなラインでございました。それは、いろいろなことからそういうことを申させていただいたわけでございますけれども、要するに引き当てというのは、ある意味で、今委員も御指摘になられたように、評価の問題なのでございます。そういうことだと、いつもその評価が正しいとか正しくないとかというような話にもなる、こういうことでございまして、私はやはり、そういうことではなくて、直接処理をすることによって評価の要素がそこから払拭される、こういうことの方がずっといいということも実は念頭にございました。
 そういうことだし、また、もちろん当時言われていたことでございますけれども、とにかく構造改革が必要だということになりますと、引き当てだけ行内の会計処理としてやっているんでは、債務者企業に対して何も働きかけが行われないわけでございます。債務者企業も銀行もじんわりとそこに、片方は引き当てをし、片方は業況の不振をかこってスタンドスティルの状態になる、こういうことでは日本の経済の活路が見出していけないのではないか。やはりそこは、直接処理というような形で債務者企業に働きかけて、双方のいろいろな話し合いのもとで再生の計画を立てて、それを実行していくというようなことが構造改革そのものを意味するという側面もあるんじゃないか。
 こういうようなことをいろいろと考えまして、私は実は、自分の今回の任期の一番早いころに直接処理ということを申し上げて、間接処理では物事は動かないと。まあ金融機関の健全性ということだけを仮に考えれば、これも実は債権を抱えている限りその劣化が起こりますから必ずしも健全性の面でも間接処理がいいということはないんですが、少なくともある時点をとってみますと、それは健全性ということについては問題がないということも言い得るかもしれませんけれども、私は、やはりそれでは物事は動かない、直接処理をやっていかなきゃいけないということで、随分そのことを言わせていただいたわけでございます。
 ちょっと委員の認識と私のとってきた政策の方針というのが食い違って、やはり御理解いただけていないなという感じ、残念な気持ちもありますが、専門家でいらっしゃいますから、その上に立っていろいろとまた御意見を提起していただければ大変ありがたい、このように思っております。
江崎委員 先ほど、五十嵐議員から時価が二倍の質問をさせていただいたわけですが、これについては、政府としては現段階で考えていないということでありますが、いずれにせよ、こういったRCCの活用というのも手法の一つであるわけでありますので、その中で、市場原理をゆがめるような形での決着というのは、物の本質の解決には至らないのではないかというふうに認識しております。そういった意味では、これからも大臣の御方針を進めるに当たっても十分御留意をいただきたいというふうに考えておる次第でございます。
 そこで、先ほどちょっと私の質問の中でも触れさせていただいたわけですが、私の提案の中で最大のハードルというのは、二次ロスを直ちに資本計上しないで期間損失としてとらえるということでございまして、今の会計原則からは大変きついものがあるわけでございますが、この辺につきまして御検討の余地があるものかどうかにつきまして、御答弁をお願いしたいと思います。
柳澤国務大臣 これは、結論を言いますと、かなり難しいということのようでございます。
 別にまだ正式に委員の御提案を公認会計士の方に聞いたとかということではありませんけれども、感触だけお聞きしたところでも、それは非常に難しい、計上の仕方からして極めて大きな困難を伴うというような感触が伝えられておりまして、何回言っても同じ言葉になるんですが、極めて困難なというようなことであります。
江崎委員 今までの会計原則に沿ってお考えいただくと大変厳しいという御見解かとも存じますが、やはり我が国を取り巻く環境というのは、今大変厳しい目で、この不良債権処理がどれだけ進んでいるのか、これがさらに景気回復を導く一つの扉になるのではないかということで、冒頭申し上げましたようにアメリカも非常に注視しておりますし、また最近では、IMFも日本の不良債権処理がどの程度進んでいるかについて非常に関心を持っているということも私は聞いております。
 そういった意味で、この金融危機の大変なさなかにおいては、こういった会計原則、原則は原則であって特例も認め得るというような前向きな御検討をぜひこれからもお願いを申し上げて、私からの質問は以上で終了させていただきます。
 どうもありがとうございました。
坂本委員長 次に、中塚一宏君。
中塚委員 冒頭、景気のお話をちょっとさせていただこうというふうに思います。
 大底を打ったというふうな意見もそろそろ聞かれるようになってきていて、最近発表されるインデックスなんかを見ても、確かにインデックス自体はよくなっているものもあります。鉱工業生産なんかは大分上昇基調で来ているわけです。そういうことで、また、今度の月例経済報告で、政府がどういうふうな判断をするのかということも非常に注目が集まっているわけなんです。ただ、そういう生産は底打ちということなのかもしれませんが、雇用とか賃金というのは引き続きそんなによくなっているわけではなくて、生産が底打ちしても、時間外労働がふえているんだろうなということで、別に雇用がふえているというわけでもないように思うわけです。
 そこで、ちょっとまず塩川財務大臣に、今の景気の認識ということについて伺いたいと思います。
塩川国務大臣 きょう、月例報告があるんですが、五時からなされまして、その中身をまだ正式発表されておりません、聞きますと。まあ、景気の降下傾向が下げどまりになったということは表現されると思っております。
 こんな数字が実はございまして、国内卸売物価指数が大体先月と今月横ばい、それで、消費者支出の方は三月、上向いてきておる。それから、輸出もよくなってきておる。鉱工業生産もようなってきておる。完全失業率は少しましに直ってきておる。そういう数字がございまして、いずれも微増でございますけれども、そういうのを総合すると、少しはやはり明るくなりつつあるのかなという感じがいたしますが、しかし、これは構造的に作用して経済が自力でよくなってきたというんじゃなしに、ずっと積み重ねてきました在庫調整とかそういうふうなものが偶然ここらに集中してきてようなってきたんだろうと思っております。
中塚委員 今大臣がおっしゃいましたように、私も、循環論的な景気の問題と、あともう一つは構造的な問題というのは、やはり分けて考える必要があるんだろうなと思うんですね。そういう意味では、循環論的な景気の現状というのは、まあ、底ばいというか、一息というふうなお考えということでよろしいんでしょうか。
塩川国務大臣 まあ、大体そういう傾向にあるかと思います。
中塚委員 循環論的な景気の問題ということになりますと、短期と中長期ということに分けると、循環論的な話はやはり短期のカテゴリーに入って、構造改革というのは中長期の課題に入るんだろうというふうに思うわけですけれども、そういう短期の課題について、一息、底ばいになった。やはり、外需なんかが一番大きく効いているようですし、限られた財政状況の中では、大変にラッキーだったんだろうなというふうに思うわけです。
 この今審議されている法律につきましても、証券の決済ということですが、やはり、国債管理政策という側面もたくさん含まれておりますし、そういう国債の発行ということにナーバスにならなきゃいけないような財政状況の中にあって、そういう意味では大変にラッキーなんだろうなというふうに思います。
 今、先ほどおっしゃいましたまさにそれをちょっとお伺いしたかったのですが、卸売物価等が下げどまりつつある、下げどまったということがあるわけですけれども、そういうことをもってデフレが終わったんではないかというふうな論調もちらほらとあるように聞いているわけですが、それについて、大臣の御見解いかがでしょう。
塩川国務大臣 私は、デフレが下げどまったとは思っておりません。まだ相当リスク条件が周辺にあると思っておりますが、しかし、最近の企業活動を見てまいりますと、株価にも象徴されておりますように、本格的に企業の再生を図ろうという意欲が、具体的な設備の関係であるとか在庫調整であるとかあるいはまた生産体系の見直しとかいう方に出回ってきたというような感じがいたしますので、デフレはとまったとは思えないけれども、しかし、悪い方に進行していくという気配はないように思っております。
中塚委員 デフレ云々ということについては、やはり構造問題があるわけでしょうし、午前中の質疑の中でも、需要管理なのかあるいは供給面の改革なのかというお話もありました。ただ、わかりやすいのは大事なことなんですが、余りどっちか片っ方というふうに物事簡単化しても、結構ミスリードな場合が多いんだろうなと私自身は思っていまして、そういう意味で、では、今物価は下げどまりつつあるというのは、これはデフレというものが終わったというよりは、やはり循環論的な景気回復といいますか、そういったことの影響によって物価の下げどまりということが起こっている、そういうことでよろしいですか。
塩川国務大臣 私も大体そんな感じで思っています。
中塚委員 それで、ということになりますと、やはり大臣も構造改革ということの必要性についてはまだまだあるというふうにお考えなんだろうと思うわけですね、今までの御答弁からしましても。そしてまた、政府の方としても、一カ月以内にデフレ対策ですかをおまとめになるということのようです。
 一番の懸念というのは、やはり、循環論的に景気がよくなっていく、そこには政府としても政策を総動員してそれを下支えするということですね。その需要管理という面も含めて政府として一生懸命におやりになったことも効いて、循環論的には景気はだんだんと下げどまりつつあるということなんですが、そのことをもって、では構造改革はもう要らないんだとか、あるいは、では、よくなってきたんだから今度はすぐ増税に転じようとか、そういうことになってしまうと、やはり今までの努力というのがみんなパアになってしまうわけですね。
 前、橋本内閣のときの経済財政政策ということについてお話をしたときもありました。大臣もお答えいただいたわけですけれども、今までの御答弁でいきますと、そういう構造改革、いわゆる潜在成長率というのをこれから上げていく、日本の経済、財政の仕組みを変えていくという、その構造改革ということについては今後も継続しなきゃいかぬし、手を緩めることがあってはいかぬというお考えだと思うんですけれども。
 そこで、税制改革のお話をちょっと伺いたいわけですが、けさほど記者会見で減税財源のお話にお触れになったように報道なんかでは聞いているんです。前もお話をしたときに、減税という以上は財源をどこかから持ってこなきゃいけないんで、例えばスクラップ・アンド・ビルドということになりますと、あるものを増税してあるものを減税するというふうな考え方が成り立つし、あるいは後年度以降新たに財源になるようなものを見つけて、それをもって議論ができれば年度内に減税をするというふうなお答えをいただいたと思うんですが、新たに見つける財源というものの中に歳出削減というのはどういうふうにお考えでしょうか。
塩川国務大臣 かなり思い切った歳出削減をやはり十五年度以降においても行わなければならないと思っております。
 その削減について、削減の仕方があると思うんですね。要するに、一つは、財政コストを見直してそのコストに合った削減をしていくということが一つ。それから、不急不要の状態を見定めて、それでいわゆるめり張りをつけていく過程において削減していくという方法。それからもう一つは、国と地方との関係の見直しの中で、ある程度、いわばシビルミニマムとナショナルミニマムとの総合性を勘案して整理をしていく、そういう方法での削減。いろいろあると思いますが、多様的に削減を考えていきたいと思っております。
中塚委員 例えば来年度の予算の編成というものの中で、これから概算要求基準を決めたり、概算要求をしたりということが起こっていくわけですね。そういった来年度予算の編成過程の中で、例えばこういったものは、今のお話のとおり、ばさっと削れるというふうなことが明らかになった場合、そのばさっと削れるものを今年度から行う減税の財源として使おうというふうなことは大臣のお考えの中にはおありですか。
塩川国務大臣 まだそこまできっちりと定めたものじゃございませんけれども、歳出削減したものは、減税対象というよりも、やはり、優先的に国債発行の抑制の方にまず考えていくべきであろうと思っております。
中塚委員 優先的に財政赤字の削減というか国債発行の抑制というものに回していくということですが、全部回してしまうと、減税ということについて年度内の実行というのはなかなか難しくなってくるわけですし、あともう一つは、どこかから財源を見つけてきて単年度でやるような減税というのは、私は、これは意味がないんだろうと思っていまして、やはり、やるんだったら制度的なものにしていかないと構造改革にもつながっていかないだろうと思うんですね。
 税制改革は、まさに、そういう意味で、制度、仕組みを変える、社会とか経済の仕組みも変えることになりますし、また、ある意味で需要追加的な要素も持っているわけですので、そういう点では最優先で取り組まなきゃいかぬ課題だというふうに思うんですけれども、優先的に国債を減らすというものに充てるにしても、やはり選択肢としては、どうなんでしょうか、そういったことも、そういったことというのは来年度以降の歳出削減を前倒しで持ってきて、年度内から、制度減税というものを年度中に行うというふうなことはあり得るということなんでしょうか。
塩川国務大臣 ある程度そういうことも入れないと減税の財源は出てまいりませんし、また、減税そのものも、実は、歳出削減した分それのみを減税の財源に充てるということにも、少し、ちょっと疑念があるように思うしいたしますので、財政規模をどうするかということをまず決めなければ、減税の問題にも具体的な数字に入っていけないと思っておりまして、したがって、減税問題につきましては、目下、経済財政諮問会議において基本的な問題の決定をしていただいて、その上で財政との見合いにおいて考えていきたい、こう思っております。
中塚委員 当然、具体的なことが、今、まだ決まっていないんだろうと思うんですが、ただ、考え方ということですよね。財源がなければ減税できないということになりますと、やはり、それはどこかから持ってこなきゃいかぬわけですし、また、それは私だって、財源なしに減税をぼこぼこやれなんということはそれは言えるわけもないと思っています。そういう意味で、考え方として、財政の規模というお話もありましたが、デフレ対策を先に出すということを決めている以上は、そしてまた、その中に税制改革ということがある以上は、そういったことが前提にならなきゃおかしいんじゃないでしょうかというお尋ねなわけです。
 というのも、循環論的な景気というものが底入れをしたということになっても、その一番の牽引要因であるアメリカ経済というのも、なかなか、アメリカ経済の見通しというのも弱含みになっていますし、そういうことを考えると、輸出なんかも年央には鈍化をしていくんだろうというふうに思うわけですね。ですから、ここでそういう景気の一時的な回復というか下げどまりということにとらわれる余り構造改革というものがなおざりになっては、本当に、せっかく今までやってきた努力もみんなパアになってしまうんだろうということがあってお尋ねをいたしました。
 次に、国債管理政策の話が入っている今回の法案の改正なわけですが、格付会社三社に対しまして意見書を送付されたということですが、その送付された意見書の内容というのを御披瀝いただけますでしょうか。
尾辻副大臣 私どもが財務官名で格付会社三社に送りました意見書についてのお尋ねでございます。
 そこで、まず、なぜ今意見書を送ったかということからお答え申し上げたいと存じます。
 ムーディーズ、S&Pがさらに国債の格下げをいたしますと、シングルAになります。これはいかにもひどいじゃないかという思いがありますし、また、けさ、午前中にも御議論ありましたように、新BIS規制案が論議されておりますが、この案が今の案のとおりにまとまったりいたしますと、影響が、そうしたことが出てくるというようなことが一つございます。それから、国債が格下げになりますと、当然、民間がそれに連動いたします。これは大変迷惑な話でございます。そういうことがございますので、今意見書を出した、こういうことであります。
 その概要は、日本国債の格付は日本経済のファンダメンタルズを反映しておらず不当に低い、よって、格付の具体的、定量的な判断根拠を求めたい、これが概要でございます。
 そして、それをもとにいたしまして、具体的な質問事項としては、主なものを申し上げますと、まず、日本国債のデフォルトとはいかなる事態を想定しておるのか、あるいはまた、日本経済のファンダメンタルズをどのように評価しておるのか。言っておりますことは、日本は世界最大の貯蓄超過国であります。また世界最大の債権国でもございますし、外貨準備も世界最高でございます。一体こうしたものをどういうふうに評価して格付をしておるのか、こういうことでございます。
 それから、各国間の格付の整合性に疑問があるではないか。これはまたどういうことかといいますと、例えばポンド危機直後の英国の外債、あるいはまた財政赤字、経常赤字の持続性が疑問視された一九八〇年代半ばの米国債は、それでもトリプルAでございました。一体そういうことと今の日本の状態、そして日本の格付と整合性があるんだろうかどうだろうかといったようなことを質問したところでございます。
 質問の内容についての御質問でございましたので、以上お答え申し上げます。
中塚委員 非常にやはり憤りを持って意見書を送られたんだなということがよくわかりましたけれども。
 それで、返事があったように聞いておりますけれども、三社送られたということなんですが、そのうち何社から返事があって、あと、返事の中身についてお知らせをいただけますでしょうか。
尾辻副大臣 申し上げましたように、三社について意見書を出しました。そして、二社から今回答がございました。けさもお答え申し上げたんですが、三社の回答が出そろったところで、私どももよくその答えを精査して、そして私どもの見解をまとめたいと思っております。
 しかし、せっかくのお尋ねでございますから、今答えてもらっているところでちょっとだけ申し上げますと、私どもが今、その答えについて申し上げると、申し上げたように、デフォルトの実態というのは一体どんなものを想定しているのかと聞いているわけですが、その答えが、例えば債務のリスケジュールというようなことがあるんじゃないのというような言い方をするわけですが、それは、債務のリスケジュールですから十年国債を十年で返さずに十二年で返しますというようなことを言い出すんじゃないの、言うならばそんなことを心配するよと言っているんですが、幾ら何でも、国債、そんなことを私ども言うつもりもありませんし、そんな事態でも全くありませんから、おかしいんじゃないのといったようなことがございます。
 ちょっと申し上げると、そんな答えが来ているので、今から精査してもう一回見解を出したいと思っておる、こういうことでございます。
中塚委員 精査して発表される、発表されるんですね。精査して発表されるということなんですが、今の段階で、その返事というのはその格付をするに足る理由ではないということばかりだということでよろしいんでしょうか。
尾辻副大臣 一言で申し上げると、私どもはそう思っています。私どもには納得のできない回答が来ておる。
 ただ、もっと申し上げますと、けさも申し上げたんですが、何となく基本的な認識が少し違うかなと思っておりますのは、向こうは、向こうはというのは格付会社は、財政的なことだけでほとんど判断をしていると言っている。私どもは、先ほども御説明申し上げたように、反論の中で盛んに言っておりますように、日本経済のファンダメンタルズをどう見るんだ、全体で見ろよということを言っておりますので、ややそこにちょっとした基本的なところでの意見の違いはあるかなと思いますが、そういうことで、私どもがこれなら納得できるなという答えは、一言で申し上げると来ていない、このように御理解いただいて結構でございます。
中塚委員 次に、質問を変えて、シ団制度のことについて伺いますが、シ団制度というのを廃止しようというふうな意見もあるということなんですけれども、今の格付会社のお話もありましたが、特に廃止論というのは外資系の証券会社なんかがやはり多いわけですね。不透明じゃないか、あるいは国債市場をゆがめているんじゃないかというふうな意見があるということなわけですが、このシ団制度の将来について、どのようにされるおつもりなのか。いかがでしょうか。
尾辻副大臣 このシ団制度というのは、これまでの国債の円滑な消化には大きな役割を果たしてきたところであります。
 ただ、今お話しのように、いろいろな御意見がございます。そして、私どもも競争入札の比率を段階的に引き上げなきゃいけない、これはその方向でやっていかなきゃいけない、こういうふうに思っておりますので、ことしの五月からは、競争入札にお任せする部分を七五%、ここまでしております。ということは、引いて二五%をシ団にお願いしておる、こういうことでございます。引受手数料につきましても、五月債より額面百円当たり三十九銭に引き下げておるところでございます。
 そこまで来ておりますが、今後ということになりますと、やはり、完全に廃止しますと、それにかわる安定消化のスキームを構築する必要があると考えておりますので、現時点では、今ここまででございまして、そして、将来廃止の方向で考えたいと思っておりますが、それ以上の具体的なスケジュールは持ち合わせておりません。二〇〇三年廃止という新聞報道もございましたが、私どもには、今そのことが念頭にあるわけではございません。
中塚委員 それで、その二〇〇三年ということに関連して柳澤大臣の方にお伺いをしたいんですけれども、二〇〇三年というと、ペイオフ解禁との関連で伺うんですが、やはり昨年度末まではペイオフというものが解禁されていなかった。そういう意味では、預貯金というのは全部国家保証がついていたようなものなわけですね。それが、今年度、来年度とペイオフというものが解禁されていく、そうなると預貯金というものに保証がなくなる。その一方で、では今度金融機関もリスクフリーの資産を優先的に買う権利というものがあらかじめ認められているということについて、やはりおかしいんじゃないかなという気がしてくるわけなんですけれども、そのことについていかがでしょうか。
柳澤国務大臣 元本保証、しかもその発行体も破綻ということが考えられない、そういうものとしては、国債というのは確かに預金者というか今まで預金をしてきた人たちにとって一つの魅力のある商品だということだろうと思うのです。
 ただ、そのこととシ団の制度とはちょっと直接には結びついていないように思います。というのは、財務省も結局、先ほど尾辻副大臣のお話ですと七五%ももう入札方式でやっているということですし、その中で恐らくまたいろいろと個人消化の商品も考えていくということでございますので、個人消化の商品を考えていくときには、ぜひ二五%をつぶさないとそれができないんだということではないように理解をしているわけです。
中塚委員 最後に、買い入れ消却について伺いますが、二〇〇八年に十年債の大量償還があるということで、それを平準化するということですが、二〇〇八年の償還を迎える十年債というのが四十兆円、四十兆二千億弱あるようですね。それで、市中発行されている部分がそのときで十五兆七千億ぐらいなのかな。それで、その後日本銀行が買い切りをしているものですから、今市中には十四兆円ぐらいあるというふうに聞いておりますけれども、その十四兆円の十年債について、これを五兆円ほど買い入れるという御計画のようですけれども、なかなか難しいだろうなというふうに思うのですね。
 というのは、今二〇〇二年であと六年かけて五兆円を買うということになるんでしょうが、償還までの年限が短くなればなるほどやはり買うというのは難しくなっていくというふうに思うわけです。ということは、市中からだけではなくて、その他、例えば運用部とか貯金とかが持っている、そういったものから買い戻しをするということもあるというふうに思うのですが、どうなんでしょう。
尾辻副大臣 お話しになりました数字は、私どももそのように思っております。
 すなわち二〇〇八年に満期を迎える十年債の市中分というのは十三兆から十四兆円と考えます。そのうちの五兆円をということになるとかなり難しいんではないかというお話でありますが、私どもは市中のみから買い入れるとしても不可能ではないというふうには思っております。しかし、公的主体からの買い入れも可能性としては検討をいたしておりまして、その可能性はある、今後の検討、こういうことでございます。
中塚委員 終わります。
坂本委員長 次に、佐々木憲昭君。
佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 提案された証券決済法案は、決済期間を短くしたり、リスクを減らすために統一的な証券決済法制を整備しようとするものであります。既に、CPについては、ペーパーレス化あるいは振替決済の法整備が行われております。今度の法案では、社債あるいは国債についても対象とされる、しかも、国債を、リスクの大きなデリバティブ取引の一種であります金利スワップ取引の対象にする、これ自体、大変大きな、重大な問題だと私どもは思っております。
 そこで、柳澤大臣に基本的なことについてお聞きをしたいんですが、この法案では株式は除かれておりますね。今後、株式も対象とした統一的なシステムを目指していくという考えなのかどうか、これをお聞きしたいと思います。
柳澤国務大臣 私どもは、この決済制度、決済の迅速化ということを考えますときに、ぜひ、このコンピューターシステムを使って、ペーパーレス化した統一的な証券決済制度というものをつくりたいと強く願っているところでございまして、今回はその準備が整わなかったことで株式を除外した法制になっておりますけれども、できるだけ早く、株式も取り組んだところの、先ほど来申している統一的な証券決済制度というものを構築したい、このように考えている次第でございます。
佐々木(憲)委員 そこで問題となりますのは、この統一的な証券決済システムの導入が、中小あるいは中堅証券会社にどういう影響が与えられるかという点でございます。
 金融審議会の第一部会ワーキンググループの報告、「証券決済システムの改革及びこれに伴う投資家保護策について」という二月十五日の報告書がありますが、この中では、中小、中堅証券に対する分析が全くないわけであります。
 私たちが中堅証券会社の方からお聞きをいたしますと、新しいシステムに移行するためにはコンピューターシステムなど約数百億円かかるのではないか、そうなりますとこれを負担できるのは大手だけではないかと言われているわけであります。
 中小証券にとっては、この負担というのは到底不可能で、そうなりますと、大手の金融機関に口座を開設してもらって新しいシステムに加わるということになる。そうすると、今度は銀行に口座を維持してもらうために当然手数料がかかります。あるいは、翌日決済のような短期間の決済のためには一定金額を預託する必要がある。この負担も大変だということで、大変な経営圧迫要因になるのではないかと思うんですね。
 そこで、お配りした資料の一枚目を見ていただきたいのですけれども、この間の証券会社というのも随分破綻をしておりまして、大変な数に上っております。しかも中小証券に集中していると思うんです、数の上から言いまして。
 柳澤大臣にお聞きしますけれども、この法案というのは、今でも大変厳しい経営環境に置かれております中小証券を一層不利な状況に追い込むことになるのではないか、中小証券への影響を大臣はどのようにお考えか、この点をお聞きしたいと思います。
柳澤国務大臣 佐々木委員は、ある制度をつくるときにそのマイナス面を指摘されるということが大体いつものことでございますが、それはそれで、我々にとってもいろいろな問題を考えておかなきゃならないという意味で私は積極的に考えております。
 ただ、この件について、中小証券、なるほど数が多いけれども、例えば三洋、山一、これを見れば、我々は記憶に非常に鮮やかなところで、そういう大手も余り適切な経営をしなければ破綻をするというのはもういたし方ない、こういうことでございます。
 さて、今回の証券決済システムの導入に伴う費用ですけれども、それはそれなりに、コンピューターの新しいシステムを入れることになれば相当な経費がかかるということは事実でございますけれども、しかし他面、このことによって日本の証券市場全体が活性化していくという大前提がありますし、また逆に、このシステムを入れることによって、今までかかっていた費用が削減されるということもございます。
 先ほど来申し上げておりますように、まだ商法が発券停止というかそういうことを認めておりませんで、有価証券の無券面化というようなものも株式については一部にとどまっておるわけでございますけれども、やはり、券面の管理や保管あるいは受け渡しというようなものにはそれなりの、恐らく人件費的な形をとると思いますけれどもコストがかかっているわけでございまして、そういうものが削減されるという面もあるわけでございます。そういうメリットの方もございますので、私どもとしてはこれを進めてまいりたい、このように考えております。
 なお、委員、つとに御指摘もいただいたわけですけれども、みずからそのコンピューターのシステムをつくれないというようなことの場合には、一時的にそのシステムの一環になった証券会社等に口座を開設することによって、みずからの顧客との関係というものの処理をそこに委託するというようなこともこの制度では許容されておりますので、そういうことでコストの削減も図れるように配慮がなされているということでございます。
佐々木(憲)委員 費用が削減される面もある、しかし他面で、費用負担に耐えられないところは、特に中小の場合にはさまざまな面でデメリットが発生する、したがって大手と中小の間の格差というのはやはり拡大するのではないか、そういう点での配慮はどうしても私は必要だと思います。残念ながら、今回のこの法案には、その配慮が見当たらないということであります。
 そこで、この証券会社の改革という場合に欠かすことができないのは、やはり、証券市場の不正あるいは不公正な取引、こういうものを一掃するということであります。こうしてこそ、証券市場に対する国民、投資家の信頼を確保することができると思うんですね。
 具体的な事例として、既に当委員会でも何度も取り上げられてきた大阪証券取引所、大証をめぐる不正取引事件についてお聞きをしたいと思うんです。
 まず確認をしたいのですが、証券取引法第百五十九条では相場操縦の禁止というのが規定されておりますけれども、これに違反した場合にはどのような罰則があるでしょうか。
原口政府参考人 お答えをいたします。
 証券取引法上、相場操縦につきましては第百五十九条において禁止されており、この規定に違反した者に対する罰則としては、五年以下の懲役もしくは五百万円以下の罰金、またはこれを併科することとされております。また、財産上の利益を得る目的で行った者は、五年以下の懲役及び三千万円以下の罰金を科することとされております。
 なお、法人の代表者または法人もしくは人の代理人、使用人その他従業者が、その法人または人の業務または財産に関して違反した場合は、その行為者を罰するほか、その法人に対して五億円以下の罰金刑を科することとされております。
佐々木(憲)委員 まさに、その違法性が問われるような疑惑が大阪証券取引所で発生しております。
 既に一昨年六月に大証がまとめた調査報告書というのがあります。その中で、野口元副理事長が理事会の承認なしに関係会社を設立したこと、あるいは、関係会社の一つでありますロイトファクスと日本電子証券との間で行われた、電子取引市場、Jネットで、取引をめぐり不正支出を行ったこと、こういうものが確認されております。
 ロイトファクスとはどんな会社か。この会社は、一九九六年以降大証が設立をした十一の関連会社の一つであります。
 資料の二と資料の三を見ていただきたいのですけれども、資料の二を見ましても、「関連会社資金取引状況」というものでありますが、これだけたくさんの大証関連の関連会社がございます。大証システムサービスというのが最初にありまして、その後にたくさんの関連会社がぶら下がっている。ロイトファクスもその一つとして、そこにあるように、存在をしていたわけであります。
 そこで、この調査報告書の中でも、このロイトファクスは、その事業活動の状況からして、公的性格の強い大証の関連会社としては不適切と思われる会社と指摘をされているわけであります。さらに、実体がなく、大証及び関連会社間の取引のつけかえをしているペーパーカンパニーに近い存在である、こういうふうに書かれているわけであります。
 金融庁も、昨年の四月二日の参議院の金融経済特別委員会で乾局長が、「金融庁といたしましても、ロイトファクスの設立は大証の公共性、設立手続等の観点から見まして適切ではなかったと考えております」こう答弁されているわけですね。
 この点、間違いないか確認をしたいと思います。
原口政府参考人 御指摘のとおりでございます。
佐々木(憲)委員 では、このロイトファクスがどういうことをやってきたのか、具体的にお聞きをしたいと思います。
 一九九七年七月十八日から個別株オプション取引が東京と大阪の証券取引所で開始されました。焦点となったのは、両取引所の共通銘柄だったソニーや日本興業銀行であります。これを東京がとるのかあるいは大阪の証券取引所がとるのかということで、大変激しい競争が行われていたわけであります。そこで、大阪証券取引所は、東証との売買高競争に勝つために、大阪での売買が商盛である、大変売買が数多く行われているということを装うためにロイトファクスを利用した。
 ここに、資料の中に資料四というのがありますけれども、光世証券がこのロイトファクスあてに出した取引報告書であります。日付は八月一日。この取引を整理しましたのが資料五であります。資料五を見ていただきますと、全体の数が、統計が整理されております。
 そこで、取引報告書に出ている光世とロイトファクスの間でのソニーの取引は、ロイトファクスの売りが二百七十一単位、一単位は千株でありますけれども売りが二百七十一単位、買いが三百三十一単位となっております。ところが、光世証券の市場での売買記録には、この上の段ですね、光世証券の売りが六百三十九単位、買いが六百六十九単位となっているわけであります。
 注目したいのは、光世証券の市場での売買数量がロイトファクスとの売買数量の約二倍になっていることであります。これは、ロイトファクスの売買注文に対して、光世証券が市場で、いわば自己商いで、売り注文に対しては買い向かい、買い注文に対しては売り向かっているという疑い、これが極めて濃厚だということを示しているわけであります。
 ちなみに、この日の大証で取引されたソニー株のうち、一八%に当たる部分が光世証券によるものであります。極めて大きいんです。これは、大証で株券オプション取引の売買が繁盛しているかのように見せかけるものであります。これは双方が通じ合った不正売買の疑いがあると思いますけれども、この点、いかがでしょうか。
渡辺政府参考人 お答えいたします。
 今の先生の御質問に直接お答えするという形にはなかなかならないんですけれども、私ども今、御承知と思いますけれども、大証に検査に入っておりまして、四月の十八日に検査の実施を予告いたしまして、五月の九日から検査をしているという状況でございます。
 この検査におきましては、御承知のように大証が株式会社化されたということを受けまして、今までやっていただいておった自主規制機能というものがさらに重要性の高まりが見られますので、それをちゃんと継続的にやっていただけるのか、その他、金融庁検査局とも合同で財務の状況等についてもチェックをする、こういう趣旨で入っております。
 そういう中で、私ども、いろいろな観点から、それだけにとどまらず、証券取引等監視委員会といたしまして、私どもの任務の範囲内でいろいろと関連する取引等の公正性というものをチェックするということもいたしておりまして、先生の御指摘のような取引というのが、実際に私が検査に行っているわけじゃありませんけれども、もし見つかって、仮に、それが証券取引法に違反するということであるとすれば、当然のことながら、法の定めに従って厳正に対処していくということになろうかと思います。
    〔委員長退席、中野(清)委員長代理着席〕
佐々木(憲)委員 この八月一日の取引をめぐって、もう一つ疑惑があるわけです。光世証券の取引記録である売買手口によりますと、八月一日の取引に、興銀の売り買いのそれぞれが、その表にありますように、実に千五百の単位となっております。
 千五百単位という取引は、これは専門家に言わせますと、とてつもないものだと。当日の当該銘柄の取引千五百十四単位の出来高の九九%以上を占めている。これは、現物株式の取引に置きかえますと百五十万株の売買に相当する、約二十五億円の取引金額となる。これは極めて大規模なものでありまして、通常は、だれが考えてもこれは考えられないと言うのですね。
 しかも、この資料四の取引報告書には、これは出てこないんです。これも大証で株オプション取引の売買が繁盛しているかのように見せる光世証券の自己売買の可能性がある。不正がないかどうか、これも当然検査に含めて調べるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
渡辺政府参考人 今おっしゃったようなことも踏まえまして、検査を進めてまいりたいと思います。
佐々木(憲)委員 資料の六を見ていただきたいんですね。これは総勘定元帳でありますが、これはロイトファクスの総勘定元帳です。
 株式オプション取引を行う場合には、証券会社に証拠金を預けなければならないわけですね。総勘定元帳にはその出し入れの記載があります。これを見ますと、ロイトファクスが光世証券に預け金をしていることがわかります。つまり、株式オプションを行うためのものですね。
 この経緯については、調査委員会の関係者への聴取、これを見ますと、野口元大証副理事長が証言をしております。個別株オプション取引で大証にメーンの市場としての役割を持たせるという意味合いで、ロイトファクスを設立して取引させた、その証拠金を証券会社に預ける必要があったとはっきり述べているわけです。総勘定元帳に名前の出てくる大和証券というのがありますね。これは取引を中止しております。なぜ中止したかといいますと、こういう取引は問題がある、そういう認識で中止をしたというわけです。そこで、後に残った光世証券がロイトファクスの取引を続けたということであります。
 資料七を見ていただきたいんですけれども、光世証券の株オプションの取引実績は、大証でオプション取引が始まった九七年七月十八日からスタートをしております。そして、九九年一月二十六日には終わっております。それ以後は全く出てこないんです。これは繁盛していると見せかけるための取引だったということがここにあらわれているのではないかと思うんですね。その後は日本電子証券に切りかわっております。この日本電子証券とロイトファクスの取引については、調査報告書で、問題がある、こういうふうに指摘をされているわけですね。
 証取法第百五十九条では、なれ合い売買は禁止だというふうになっております。ロイトファクスと光世証券のこの取引も証取法に触れる可能性があるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
渡辺政府参考人 お答えいたします。
 今のお話だけでもちろん即断は私はできないと思いまして、事実をきちっと調査いたしたいと思いますけれども、百五十九条に相場操縦に触れるような行為の構成要件が書いてありますので、これとの関係をきちっと調査したいと思います。
佐々木(憲)委員 大証がロイトファクスを利用したのは、そもそも不正を行う意図によるものではないかと思うわけであります。ロイトファクスと光世証券の取引関係というのは、たまたま個別にそういうものがあったというだけじゃないんですね。つまり、大証が、先ほど最初に示したように、一連の関連会社をつくっているわけです。そして、そういうものを使って、いわば架空、偽装の取引をやる、そういう不正事件の一環をなすものだと我々は考えるものであります。現在行っている金融庁の検査で、当然こういう点も含めて検査をされるということですから、ここはしっかりと究明をしていただきたいと思うんです。
 そこで、問題は、このような不正を行った光世証券の当時の社長はだれかということです。これは、現在の大阪証券取引所の社長の巽氏であります。このような状況を放置していては、これはもう証券取引所と証券市場に対する不信を広げるということになるんですね。つまり、大証が子会社を使って不正な取引をやった、その不正な取引をやった実行部隊の証券会社の社長が今の大阪証券取引所の社長をやっているというんですから、これはもう全く信用できないということになるわけです。
 金融庁の乾局長は、昨年六月五日に当委員会でこのように答弁しております。「証券取引所の役員である者が証券取引法等に違反する行為をしたことがあってはならないことは当然のことでございまして、そうした事実が把握されました場合には、これも法令にのっとって厳正に対処する所存でございます」と答弁しています。大証の社長を務める人物にかかわる不正が指摘されているわけでありますから、検査の結果、不正が確認されれば、厳正な対処をするのは当然だと思いますが、これはいかがでしょうか。
原口政府参考人 まさに一般論として申し上げれば、先生のおっしゃるように、そういう不正なことを行ったということが確認されれば、それに対応して我々としても法令に従って適切な措置をとるということでございます。
佐々木(憲)委員 このロイトファクスと光世証券の不正取引については、我が党は二年前から国会で指摘しているんですよ。これは調査を求めてきたわけでありますが、監督当局が大証に検査に入ったのは、今まで、いつ検査を行いましたか。今回は何年ぶりでしょうか。
渡辺政府参考人 正確なちょっと日付、今手元に持っていないんですが、私の記憶では大体三十年か三十一年ぶりであると思います。
佐々木(憲)委員 とんでもない話なんですね。つまり、金融機関に対する検査、銀行に対する検査というのは一定のサイクルでやられておるわけですけれども、証券取引所、つまり公正な市場がそこで成立していなければならない、その証券取引所に対する検査が三十年ぶりだと。これではまともに監督が行われているのかどうかというのは疑わしい。大体、そういう検査が行われないものですから、やりたい放題、大証は十一も関連会社をたくさんつくって不正取引をやっている、そういうことが野放しになってきているというのが今までの実態であります。
 今検査に入っているというわけですけれども、今まで何度も我々が指摘してきたわけだけれども、まともにみずから調べるということはなかった。大証の身内の調査、調査報告書というのが出ていますけれども、それはそのとおりだということで直接検査をせずに受け入れるというのがこれまでの姿勢だったんですね。やはりそういう点は根本的に改めていく必要が私はあると思います。
 やはりこういう不正事件を見逃すことにつながるということになるわけで、こういう点で最後に柳澤大臣に確認をしたいんですけれども、やはり監督当局として、今後このような株式市場、公正な株式市場の取引を確立する、あるいは投資家、国民の信頼を確保するという上で検査を適正に行うということが必要になっていくと思いますし、不正を見つけたならば直ちに厳正な対処をするということが必要だと思いますけれども、その決意をお聞かせいただきたいと思います。
柳澤国務大臣 取引所につきましては、これまでは公益法人ということでございまして、また、みずから自主規制機関というような立場も持っておりまして、そういうことで、何と申しますか、いろいろ限られた人的資源の振り回しの中で、なかなか検査対象にするというようなことができなかったわけですが、今回は、昨年度の取引所の株式会社への組織変更ということがございまして、これはこの機会にやはり検査をしておく必要があろうということで、差し当たり東証と大証に検査を実施するということにいたしたわけでございます。
 ただ、この検査は、言うまでもないことですけれども、そういう業務がちゃんとしたいろいろな組織立てのもとできちっと行われているかどうかということを検査するものでございまして、そういう過程の中で違法、法令違反というようなものが発見された場合には、今委員が御指摘のように、当然これは厳正に対処する、こういう考え方でおるわけでございまして、今後とも、それぞれの証券取引所が、マーケットということの公正な業務の運営ということが確保されるように我々監督当局としては努めてまいりたい、このように考えております。
佐々木(憲)委員 終わります。
中野(清)委員長代理 次に、植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。
 先ほども塩川財務大臣、お話しされておられました件ですが、先日、閣議後の記者会見で、景気がそこそこ底を打ったとおっしゃっておられましたが、その認識に立った理由をまず冒頭聞こうときのうの質問のレクでも言うていたんですが、大体の話、先ほどの話でなされていましたので、そこは飛ばします。
 私自身、例えば内閣府の景気ウオッチャー調査を見ても、現状の判断指数が四六・七ということで、三カ月前に比べて景気がええと見てはる人の割合はふえている。また、判断指数も、ここ最近三カ月で一五ポイント近く上昇幅があるということで、こういう数値を見る限りでは、やや消費者心理も改善しているんかなと思わないでもないわけです。また、実際、遅々たる歩みだろうと思いますが、外需主導で景気が徐々に回復していく、そういう可能性もないわけではないと思うわけです。
 ただ、一つやはり注意しなければならないのが、大企業と中小企業の景況感の格差が広がっておるということにあるんじゃないのかなと思います。特に、中小企業における生産回復のおくれ、雇用過剰感が高まっている。また、販売価格におけるデフレ圧力また資金調達環境の悪化、これは中小企業を今取り巻くさまざまな悪環境だと思います。実際に、日銀の短観の業況判断を見ても、企業規模別に見れば、大企業と中小企業との間でかなり乖離が広がっているというふうに思われます。
 あくまでも循環の中での景気回復というお話でございましたけれども、やはり心配なのは、これは経団連の会長も、今年度下半期、後半以降、景気の順調な回復に至るのじゃないかということをそれなりの厳しい条件も指摘しながらおっしゃっていますが、大企業と回復の波にまだ乗れていない中小企業との間に二極分解が進んでいる、ここがやはり現状の一つの大きな問題点ではないかと思いますが、かかる認識については、まず塩川財務大臣、どのようにお考えですか。
    〔中野(清)委員長代理退席、委員長着席〕
塩川国務大臣 まず、景気全体のことをちょっと申し上げますと、個人消費は横ばいで推移する中で、一部で底固めが見られるということでございますし、輸出は増加に転じつつございまして、生産や国内卸売物価は下げどまってきております。また、三月の景気動向指数、DIでございますが、これの速報値のうち、一致指数は十五カ月ぶりに五〇%を上回ってきておる、大体五六・三%となってきております。
 そのほかに、個々の指数でございますけれども、消費支出なりあるいは輸出、鉱工業生産、国内卸売物価、消費者物価指数あるいは失業率、こういうようなものを個々に検討いたしましても、少しは安定してきたという状況が見られておる、そういうところから底入れ感ということを申したのでございます。これは大体固まってきておるんではないかと思っておりまして、夏にかけてこの調子が続いてくれれば幸せだと思っております。
 ところで、お尋ねの大企業と中小企業の二極化でございますけれども、ここは非常に激しく格差が開いてきておるように私は思うんです。それは何かといいましたら、大企業は、いわば構造改善をとり得る力とそれからそういう環境が整うてきておりますけれども、中小企業の場合は、そういう構造改革に伴って大企業が、親企業が転換したに伴って、それに附属する中小企業の転換がおくれてきておるということは事実だと思っております。
 しかしながら、一方において、最近の鉱工業生産の実態を見ますと、大企業による大量生産よりは、中小企業による手作業によるところの特別な別注作業というものがふえてきておるように、私は現地で、東大阪でございますが、そういうところでは見ております。そうしますと、中小企業は、非常に落ち込んではおりますけれども、これからの対応によって、また新しい中小企業の任務と展開が行われるのではないかなと私は思うて期待を込めておるところでございますが、いずれにしても、中小企業に対するこれからの施策というものを一段と強化していく必要があると思っております。
植田委員 丁寧にありがとうございます。
 大企業と中小企業の二極分解の話についての御答弁の、特に前段の話は全くそのとおりだと私も思います。全く首肯できる見解だと思います。
 後段の話、東大阪の話でございましたが、確かに中小企業の中でも、それは、別注もふえておると言いますけれども、ちょっと私も今すぐにデータがないので何とも言えないんですが、確かにいわゆる差別化戦略の波に乗れるようなそういう技術力なり固有の特性を持っているそうしたところは、製造業の部門でも、中小企業、非常に強いだろうと思いますけれども、東大阪を越えて、二上山を越えた私の選挙区の奈良あたりで、例えば靴下なんていう、こんな靴下なんてこれは差別化でやっていけませんね。やはり追いまくられている現状があるわけなんです。
 だから、そこは、今の話を聞いていると、靴下はもう淘汰されてもええけれども、やはりそういう差別化戦略に乗る中小企業があるから期待が持てると。これも、構造改革というのが恐らくそういうものなんだろうと私は理解しているからいつも反駁するわけです。
 いずれにいたしましても、地域の経済を支えている普遍的な産業、中小企業、さまざまな企業が今しんどい状況にあるわけですよね。いわゆるそうした固有の地場産業でも非常に厳しい条件にあることは確かに事実でございます。例えばそれは、固有の技術を持っておっても、奈良のことばかり言って済みませんが、例えば皮革産業やヘップサンダル、スキー靴、グローブ、こうした産業も、それこそ一子相伝で手作業の技術があるわけですね。でも、やはり追いまくられる中で、そういう企業はどんどんと地域で減っていっているような現状があるわけです。
 ですから、やはりそこにも光を当てて、後段の話も私すべて否定しません。そういう中小企業の持っている可能性にしっかりと光を当てた対策も必要ですが、今私が申し上げたところも念頭に置いてほしいなということを、一応念頭に置いていただけると思いますが、ただ、いずれにしても、現状、やはり実体経済が消費者心理に追いつかない限り、仮に本当に――景気回復の波が本格回復に至るまでに息切れする可能性がある。やはり今の中小企業と大企業との言ってみれば二極分解というのは、やはりその意味では足を引っ張る要素になるんではないかということは認識されていると思いますので、やはりその大企業と中小企業との間で広がりつつある、乖離ができつつある、景況感の乖離、これをもう一度埋め戻していく、復元していくための具体的な政策なり支援策なり、そうしたものが肝心だろうと思っておるわけです。
 思いつくままでも別に結構ですし、具体的なことを検討を始めているんであればそうでも結構ですが、具体的にどんな施策、これから求められるとお考えでしょうか、財務大臣。
塩川国務大臣 私は、今内閣府でやっておりますところの経済財政諮問会議において、産業の活性化の要件をずっと検討されております。まず、先端的産業分野を決めるとか、あるいは中小企業対策をどうするか、それに対する金融、税制、いろいろありますけれども、私は、非常に強く主張しておりますのは、中小企業対策においては技術の移転だと思うておるのです。
 現に中小企業の中でも、先ほど言いましたように、非常に特化して、特異な技術を持っておるところがございまして、そういうところは、大企業が果たし得ない少量生産の特殊な製品をつくって、そのかわりに、非常に高コストで付加価値が高いものでございますから、非常によくもうけておるというようなことがございます。また、一般の、従来からの産業、植田さんの足元でございます繊維であるとかあるいは皮革品あるいはかごとかいうようなものにつきましても、デザイン等において特異なものを発揮して目立っておる企業もある。要するに、中小企業の対策の中で非常に大きく抜けておるのは、技術をどうして中小企業に広く深く与えていくかという、この点だろうと思っております。
 幸いにして、今、各府県におきまして、産業技術指導所みたいな、研究所みたいなのがございますので、私は、ここをもっと充実させたものにして、そこの活用を通じて、中小企業に技術を移転し、伝播していくことが必要かと思ったりしております。それによって中小企業が新しい活路を見出すならば、融資もそちらの方に連動して実行していくことができる、そういう一体感を考えて、政策の中に盛り込んでいくべきだということを主張しておるところであります。
植田委員 わかりました。技術の移転という、それとあわせた融資の話もされましたので、そこは一つの御見解というか、お伺いしておきます。
 本来ここは、差しかえで、経済産業委員会でも行って細かい話は聞くべきところだろうと思いますので、そうした問題意識を持って財務大臣が御主張されているということについて、ここでは受けとめておきたいと思います。どうもありがとうございました。
 そこで、一応法案に即して、今回の難しい法律、私はよくわからへんので、御教示をいただきたいわけでございます。調査室に聞いても、室長がいなかったらわからへんという代物でして――失礼いたしました。本当にこれは、私、相場はやったことがないので、勉強しながら、いろいろと教えてほしいのです。
 いずれにしても、決済の安全性また効率性に対する信頼というものが確保されて初めて、一般投資家というのは取引に参加するものだろうと思います。その意味で、今回の改正もその一環であると理解いたしますが、証券決済システムを安全でより効率性の高いものにしていくというのは喫緊の課題だろうと思います。
 いろいろ引っ張ってきますと、何か、国際標準として、G30、一九八九年の勧告であるとかISSA修正勧告等がこの証券決済制度に関してあるわけですけれども、また、各国もその標準にあわせて、目標に向けて努力をされているようですが、現状では、やはり、すべて今回の法改正でも達成しているというわけではないわけですが、その点について改めて、おさらいの意味も込めまして、我が国の標準に対しての達成状況、そしてまた、その標準と、うちの法制度であと残されている課題は何なのか、一応、かいつまんで教えていただけますか。
村田副大臣 証券決済にかかわります国際標準といたしましては、今委員が御指摘のように、G30の勧告がありますし、その後にISSAが修正して、その国際標準を採用している、採択している、こういうことであります。
 我が国の現状でございますけれども、Tプラス3でのローリング決済をもう実行している、そういう国際標準を達成しているものもありますけれども、証券決済機関が有価証券の種類ごとにそれぞれ別々に存在して、それぞれ異なるルール、手続で決済を行う、こういった分野もあるわけでありまして、そういう意味では、国際標準がまだ未達成のものがあるわけであります。
 そういう意味で、前回はCPについての改正、ペーパーレス化の法案を御審議、成立をさせていただきましたが、引き続き、今回は、さらに進める意味で、国債あるいは社債等につきまして、決済を速める、短縮化をするという意味で御審議をお願いしているわけでございます。
 この法案が成立した暁に残るものとしては、株式会社等の問題がこれからの課題として残る、こういうことだと考えております。
植田委員 まず大くくりのところをお伺いしまして、若干、個々に及んでお伺いしたいわけですけれども、既に指摘されていますように、証券決済というのは、有価証券の種類ごとに異なる法制に基づいて行われているという点については、これは統一的に規律するルールが存在しない、証券決済制度の分立というべき状況にあるということで、この制度改革の第一には、当然ながら、統一的な証券決済法制の整備があるということは言うまでもないわけでございます。
 また、実際、こうした現状にあるということが、利用者のニーズに十分にこたえられていない、サービスが提供できないという状況も生んでいるんじゃないかと思いますが、今申し上げたような問題点も含めて、今後の決済システムの、当然ながら、今もお伺いしました、かぶるところもありますけれども、今後改善していくべき点というのが、どういう問題意識を持っておられるのか、幾つか、その点のところの問題点、課題というものを挙げていただければと思います。
村田副大臣 今お答え申しましたように、今回の法律案につきましては、社債、国債等を対象といたしまして法整備を行っている、こういうことでありまして、しかし、今後でございますけれども、統一的な証券決済方法の完成に向けまして、株式について早急に法整備を行っていきたい、こういうことでございます。
 それからもう一つは、クロスボーダー取引におきます決済を円滑に行うために、内外の証券集中保管機構との連携を図る場合などに備えまして、内外の法律について、法制度の整合性の確保について検討する必要があるか、こういうふうに考えております。
植田委員 最後の答弁のところはまた後でもう一度簡単に伺いますが、CPについては去年の国会で電子化が進んだわけですが、全般的に言うと、今おっしゃっておられるように、有価証券の流通段階におけるペーパーレス化が十分進んでいないということで、さまざまなリスクが存在する。そこで、特に現物証券の取り扱いに係る問題、これを解決していくために、決済振替制度また登録制度というものが採用されていると聞いておりますが、例えば、株券の保管振替機関への預託率も、諸外国に比べるとかなり低い水準にあるそうですね。また、株券の不所持化についても余り芳しくないようですが、こうした預託率や不所持化の現状というものは実際どうなっているんでしょうか。
原口政府参考人 株式につきましては、現段階では、株券等の保管及び振替に関する法律によりまして、口座振替に基づく権利の流通が行われているわけですが、この法律に規定する保管振替機関であります振替機構に対しまして、平成十四年末におきましては千九百十五億株の株式が預託されておりますが、これは発行済み株式の五割強というふうな数字になっております。
植田委員 あともう一つ、いわゆる振替決済制度、登録制度が必ずしも評判がよろしくないというか不評だというふうに思いますけれども、不評じゃない、十分使われているということであればいいのですが、私のような認識が間違っていれば間違っているよと指摘していただければええし、こうした制度の問題点があるがゆえにどうも活用がされていないんではないかということであれば、原因がどこにあるのか教えてください。
原口政府参考人 この制度につきましては、機関投資家を中心にそれなりに活用されているというふうに認識しておりますけれども、さらに一般的な、普遍的なペーパーレス化というものが今後必要だろう、こういう考えでおります。
植田委員 あと、問題点で、日本でも海外の証券を譲渡したりまたそれに担保を設定する取引が増加してくれば、当然ながらその取引に関する法的紛争が日本の裁判所に持ち込まれてくる可能性も出てくるわけです。
 その場合、我が国の判例に従って準拠法を決めておく必要が出てくる、そういう問題意識は持っておられるということでしょうが、特に、外国法を準拠法とする証券も視野に入れながら国際私法上の立法的手当てを当然しなければならないのですが、この辺については当然検討課題になっていると思いますが、現状は、かかる検討状況はどういうふうになっておりますでしょうか。
原口政府参考人 海外との証券決済に係るいろいろな事例に対してどういう法制を適用していくか、いわゆる国際私法の問題につきましては、振替決済制度におきましては、まだ国際的に統一された明確なルールが存在していないという問題はございます。
 この問題につきましては、現在ヘーグにおきまして、間接保有による証券決済の準拠法に関する条約案の検討作業が我が国も参加をして進められているというところでございますが、まだ現在継続的に検討が進められているという段階でございます。
植田委員 わかりました。
 次に、特に、インターネット等の電子証券取引等への対応にかかわって、私はインターネットが証券取引に与えたメリットというのは当然はかり知れないものがあると思うのですけれども、注意しなければならないのが、事前に聞いたところによるとそういう事例がないということなんですが、インターネット証券取引による詐欺被害がこれから増加するんではないか、出てくるんではないかという危惧があるわけです。
 実際に、東京証券取引所では、同サイトの「証券入門」の中ではさまざまな注意点、「オンライントレードを行う方へ」という項目の中で、証券取引にインターネットを利用する際の注意点として典型例とか摘発例というものを挙げてかなり詳しく注意を促しているわけですけれども、日本ではまだそうした実情が、実際のところはそんなに摘発例というのはないように聞いているんですけれども、少なくともアメリカでは現実にはこういうオンライントレードをめぐる詐欺行為の事例というのがかなり見られるわけですね。詐欺による被害総額が大体一万八千ドルから、中には十億ドルを超えるものまである。
 だから、これは当然ながら我々の国の中では刑法に抵触するわけですけれども、違反者には刑事罰が科されるわけですが、巧妙な詐欺というのは、インターネット、オンライントレード、こうしたものをめぐってはなかなか見つけにくい、そういう可能性も聞くわけですけれども、実際、こうしたインターネットの特性を使って行われる証券取引における詐欺等々、我が国の実情がどういう状況になっているのかという点が一つ。
 それと、それぞれ民間で注意を喚起していますけれども、投資家等が自己責任を自覚しながらやることが当然ですけれども、やはりこうした新たな詐欺行為等々にかかわっての体制というものをしっかり整備しておく必要があるのではないかというふうに思うわけですが、その点、警察庁さんにお願いしておりますので、御説明お願いできますでしょうか。
黒澤政府参考人 ただいま御指摘の御懸念の点でございますけれども、インターネットを利用した証券取引については、詐欺罪として、詐欺被害として警察としては認知したものはございません。
 IT社会の進展に伴いまして、ハイテク犯罪の検挙件数はネットワーク利用犯罪を中心に増加傾向にございまして、警察に寄せられる相談件数も急増いたしております。ネットワークを利用した詐欺事件の検挙、証券取引ではない詐欺事件の検挙も増加をいたしておるところでございます。
 ハイテク犯罪をめぐる情勢というのは大変厳しいものと認識をいたしておりまして、警察庁及び都道府県警察におきましては、ハイテク犯罪対策を重要課題と位置づけまして、各種施策を推進いたしておるところでございます。
 都道府県警察におきましては、専門の体制としてハイテク犯罪対策プロジェクトを設置するほか、専門知識、技術を有する者のハイテク犯罪捜査官としての採用など、捜査体制の充実を図っております。また、警察庁及び都道府県警察におきましては、ハイテク犯罪の予防に必要な知識等に関する積極的な広報啓発活動の実施、相談窓口の整備、国民からの相談に的確に対応するための専門の職員としまして情報セキュリティーアドバイザーの設置、活用等を行うなど、ハイテク犯罪の未然防止対策も講じておるところでございます。
 今後とも、インターネット利用者の増加が見込まれる中、安全なネットワーク社会を実現していくため、所要のハイテク犯罪対策を積極的に推進してまいる所存でございます。
植田委員 ありがとうございます。
 いずれにいたしましても、詐欺にかかわらず不公正な取引、証券取引が発生してしまう危険性というのは当然あるわけでございますので、もう質問はいたしませんが、当然ながらそうした問題についての啓発というものをそれぞれ監督当局でやはりきちっとやっていただきたい。それは、警察庁としては警察のつかさ、また金融担当の方としてはそれはそれでつかさでやるべき啓発等々しっかりとやっていただきたいと思っております。
 最後、一点だけお伺いしたいわけですけれども、この間のずっと不況の中で、消費支出はみんな抑えているんだけれども、情報通信の支出だけは常に増加傾向にあるわけでございます。
 特に、このオンライントレードの分野というのは、最近は口座数も数百万に上るというのが予想されていると聞いておりますが、特にインターネットを利用した金融サービスの一つともいうこの証券取引のオンライン化、オンライントレードを健全に発展させていくための基盤整備がやはりこれから必要であろうと思うわけですが、特に、金融審議会とか金融ビジョン懇話会等でこうしたオンライントレードを発展させるという観点で具体的な議論がどんな形でなされているのか。それ自体をテーマにして議論をされていなかったとしても、議論の中でこのことについてはどんな問題意識が披露されているのか。その点、最後、御教示いただきまして、終わりたいと思います。
柳澤国務大臣 ITというものについては、これは恐らく二つに分けることができると思うのですね。つまり、今まで何らかの方法でやっていたものをIT化していく、こういうものと、今まで、ITがなければ存在しないような、そういう場をどうやってつくっていくか、こういう二つの面があります。
 例えば、前者についてはディスクロージャーというものをIT化しなさいということで、あるいは届け出書等についても電子化していくというようなことも実際もう我々金融審議会等で審議をして、それをもう実現しているという状況にあります。それから、ITというか、インターネットなりなんなりがなければ存在しないような、そういうものについても、これは私的取引所と言っていいのかどうか、そういうようなものでの取引ももう可能になっていますし、今、先ほど来先生がお触れになっているようなインターネットの上でのオンライントレードも行われているということでございます。
 こういうようなことで、割と金融の面あるいは証券取引の面というのは、商品が金額であらわされて、質はそうすぐ問題になるというものでないものですから、インフォメーションテクノロジーに非常になじみやすいというふうに我々考えておりまして、今後ともこれを、間違いを起こさないような、先ほど詐欺のお話もありましたけれども、そういう方向でこういうものをある意味で先進的に、ほかの分野、ほかの産業分野に比して先進的に展開していくという心がけが必要なのではないか、このように考えている次第でございます。
植田委員 以上で終わります。
坂本委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 この際、本案に対し、古川元久君から、民主党・無所属クラブ提案による修正案が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。古川元久君。
    ―――――――――――――
 証券決済制度等の改革による証券市場の整備のための関係法律の整備等に関する法律案に対する修正案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
古川委員 民主党・無所属クラブの古川元久です。
 ただいま議題となりました証券決済制度等の改革による証券市場の整備のための関係法律の整備等に関する法律案に対する修正案について、提案理由及び内容の概要を御説明いたします。
 初めに、鈴木宗男議員について、公設秘書の逮捕に続き、極めて近い特別な関係にあった外務省職員も逮捕され、疑惑が限りなくクロに近づいているにもかかわらず、相変わらず鈴木議員をかばい続ける自由民主党及び保守党に対し、強く抗議を申し上げます。
 鈴木議員に代表される利権政治家が税金を私物化し、ばらまき財政を続けた結果、六百七十五兆円という途方もない額の借金の山が築かれることになりました。国債残高も、今年度中の早い段階で四百兆円を突破することが確実です。
 しかしながら、財政破綻が目前に迫っているにもかかわらず、小泉総理は財政健全化への道筋を示すどころか、会計操作や粉飾に手を染め、財政規律崩壊にますます拍車をかけています。最近、欧米の有力格付機関が相次いで日本国債の格付を引き下げておりますが、小泉総理のこうした姿勢こそが最大の原因であることは、火を見るより明らかです。
 政府原案には、これまでの国債大量発行の失政を取り繕うため、国債管理に関する幾つかの施策が盛り込まれています。しかし、そもそも、証券決済システム改革法案という性格の異なる法案にこのような施策を目立たないようにこっそりと盛り込むこと自体、こそくな手法だと言わざるを得ません。
 とりわけ、金利スワップ取引の導入については、非常に多くの問題があります。まず、現在の財務省が、国民に無用な損失を与えないようなリスク管理体制を整えているとは思われません。また、この取引を悪用すれば、見かけ上国債の利払いを減らすという会計操作さえできます。財政規律を捨て去り、会計操作や粉飾に手を染めた小泉内閣に、このような法改正を認めるわけにはまいりません。
 以上のような考え方に基づき、修正案では、政府原案の第十一条に定める金利スワップ取引を削除することといたしました。
 議員各位の賛同をお願いして、私の説明を終わります。(拍手)
坂本委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。吉井英勝君。
吉井委員 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました政府提出のいわゆる証券決済システム改革法案に反対の討論を行います。
 本法案は、決済期間の短縮や決済リスクの低減を目的とした証券決済システム改革のために、統一的な証券決済法制の整備を図るものであります。
 反対する理由の第一は、この決済システム改革は、国際競争力強化などを目指す大手金融機関によって一方的に進められようとしており、巨額のシステム開発費用等を捻出できない中小証券会社等が新しいシステムから取り残されるおそれがある点です。その結果、現在でも経営の厳しい地場の中小証券会社や地方銀行の廃業や大企業への吸収合併が加速されかねず、地域金融の一翼を担う中小金融機関の経営を脅かすような法案には反対せざるを得ません。
 第二に、金利スワップ取引はデリバティブ取引の一種であり、相手先の信用リスクを抱える取引に国債整理基金特別会計が参加することは認められません。
 今日、証券会社や銀行では、激しいリストラ、人減らしが行われており、本法案による証券決済システム改革は、労働者に対する一層の首切りや強引な配置転換などの問題を引き起こすおそれがあり、改革法案については反対します。
 なお、民主党提出の修正案は、さきに問題を指摘した金利スワップ取引を認めないとする内容であり、賛成いたします。
 以上で私の討論を終わります。(拍手)
坂本委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 これより採決に入ります。
 証券決済制度等の改革による証券市場の整備のための関係法律の整備等に関する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
 まず、古川元久君提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
坂本委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
 次に、原案について採決いたします。
 原案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
坂本委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
坂本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時三十六分散会


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