衆議院

メインへスキップ



第21号 平成14年6月12日(水曜日)

会議録本文へ
平成十四年六月十二日(水曜日)
    午前十時二分開議
 出席委員
   委員長 坂本 剛二君
   理事 中野  清君 理事 根本  匠君
   理事 山口 俊一君 理事 山本 幸三君
   理事 海江田万里君 理事 古川 元久君
   理事 石井 啓一君 理事 中塚 一宏君
      岩倉 博文君    岩崎 忠夫君
      金子 一義君    金子 恭之君
      倉田 雅年君    小泉 龍司君
      七条  明君    砂田 圭佑君
      竹下  亘君    竹本 直一君
      谷本 龍哉君    中村正三郎君
      林田  彪君    増原 義剛君
      宮本 一三君    山本 明彦君
      吉田 幸弘君    渡辺 喜美君
      五十嵐文彦君    石井 紘基君
      生方 幸夫君    江崎洋一郎君
      小泉 俊明君    佐藤 観樹君
      中川 正春君    永田 寿康君
      長妻  昭君    細野 豪志君
      上田  勇君    遠藤 和良君
      藤島 正之君    佐々木憲昭君
      吉井 英勝君    阿部 知子君
      植田 至紀君
    …………………………………
   財務大臣         塩川正十郎君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君
   内閣府副大臣       村田 吉隆君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   財務大臣政務官      砂田 圭佑君
   財務大臣政務官      吉田 幸弘君
   政府参考人
   (郵政事業庁貯金部長)  斎尾 親徳君
   政府参考人
   (財務省大臣官房参事官) 大村 雅基君
   政府参考人
   (財務省主計局次長)   津田 廣喜君
   政府参考人
   (農林水産省大臣官房審議
   官)           林  建之君
   参考人
   (預金保険機構理事長)  松田  昇君
   参考人
   (ムーディーズ・ジャパン トーマス・
   株式会社代表取締役)   J・ケラー君
   参考人
   (ムーディーズ・インベス
   ターズ・サービス ソブリ
   ン・リスク・ユニット バ
   イス・プレジデント/シニ
   ア・クレジット・オフィサ トーマス・
   ー)           バーン君
   通訳           小穴  誠君
   通訳           竹内 瑞紀君
   通訳           富田 晶子君
   参考人
   (株式会社みずほホールデ
   ィングス取締役社長)   前田 晃伸君
   参考人
   (株式会社あおぞら銀行取
   締役社長)        丸山  博君
   参考人
   (ソフトバンク株式会社代
   表取締役社長)      孫  正義君
   参考人
   (日本銀行企画室参事役) 雨宮 正佳君
   参考人
   (全国銀行協会会長)   寺西 正司君
   財務金融委員会専門員   白須 光美君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月十二日
 辞任         補欠選任
  岩倉 博文君     岩崎 忠夫君
  金子 恭之君     谷本 龍哉君
  竹本 直一君     宮本 一三君
  小林 憲司君     細野 豪志君
  永田 寿康君     石井 紘基君
同日
 辞任         補欠選任
  岩崎 忠夫君     岩倉 博文君
  谷本 龍哉君     金子 恭之君
  宮本 一三君     竹本 直一君
  石井 紘基君     永田 寿康君
  細野 豪志君     小林 憲司君
    ―――――――――――――
六月十日
 消費税の大増税に反対、税率を三%に引き下げることに関する請願(木島日出夫君紹介)(第四四八四号)
 同(矢島恒夫君紹介)(第四四八五号)
 消費税の大増税中止、税率の三%への引き下げ等に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第四四八六号)
 消費税増税反対等に関する請願(松本善明君紹介)(第四四八七号)
同月十一日
 消費税の大増税に反対、税率を三%に引き下げることに関する請願(春名直章君紹介)
 (第四六九七号)
 同(藤木洋子君紹介)(第四六九八号)
 配偶者特別控除の廃止に関する請願(石毛えい子君紹介)(第四八二六号)
 消費税の増税反対に関する請願(植田至紀君紹介)(第五〇〇一号)
同月十二日
 消費税の増税反対に関する請願(大幡基夫君紹介)(第五一七二号)
 同(藤木洋子君紹介)(第五一七三号)
 同(中川智子君紹介)(第五三一九号)
 同(土井たか子君紹介)(第五五〇六号)
 同(北川れん子君紹介)(第五七一〇号)
 消費税の大増税に反対、税率を三%に引き下げることに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第五三一六号)
 同(吉井英勝君紹介)(第五三一七号)
 消費税増税反対等に関する請願(児玉健次君紹介)(第五三一八号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 財政及び金融に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――
坂本委員長 これより会議を開きます。
 財政及び金融に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 両件調査のため、本日、政府参考人として財務省大臣官房参事官大村雅基君、財務省主計局次長津田廣喜君、郵政事業庁貯金部長斎尾親徳君及び農林水産省大臣官房審議官林建之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 ただいま参考人としてムーディーズ・ジャパン株式会社代表取締役トーマス・J・ケラー君、ムーディーズ・インベスターズ・サービス・ソブリン・リスク・ユニット・バイス・プレジデント、シニア・クレジット・オフィサー、トーマス・バーン君及び預金保険機構理事長松田昇君が出席しております。
 なお、後刻、株式会社みずほホールディングス取締役社長前田晃伸君、株式会社あおぞら銀行取締役社長丸山博君、ソフトバンク株式会社代表取締役社長孫正義君、日本銀行企画室参事役雨宮正佳君及び全国銀行協会会長寺西正司君が出席の予定であります。
 この際、ムーディーズの御両名に一言ごあいさつを申し上げます。
 国際経済が非常に緊迫しており、ナーバスになっておるときに、先般ムーディーズ社の格付が発表なされました。早速我が国でも議論が沸騰し、特に、当財務金融委員会におきましては、一度ぜひムーディーズ社の格付の基準等々について御質疑をしてみたいという意見が出てまいりました。したがいまして、本日、大変お忙しいところでございましたが、当委員会に御出席をお願いしましたところ、早速おこたえいただき、本日の委員会となったわけでございます。まことにありがとうございます。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中野清君。
中野(清)委員 自民党の中野清でございます。
 本日は、ムーディーズ社のトーマス・バーン氏におかれましては、わざわざ米国からお越しいただきまして、感謝を申し上げる次第でございます。また、ムーディーズ・ジャパンのトーマス・ケラー氏におかれましても御出席賜りまして、ありがとうございました。お礼を言いたいと思います。
 今、当面するいろいろの課題につきまして率直な意見交換をさせていただきたい、そういう意味で、率直に申し上げますので、率直な御意見をいただきたいと思うわけでございます。
 日本国債の格付につきまして、特に、五月三十一日の格下げの経緯、及びこれについての市場の評価をどのように受けとめているか、これについてまずお伺いをしたいと思います。
 この日本国債の格下げにつきましては、国民の関心も高く、財務省の貴社に対する質問、それに対して貴社がどのように答えるか注目をしていたわけでございますけれども、それにもかかわらず、この我が国の質問に対して明確にお答えすることなく、二段階格下げという決定が行われたわけでございますが、これについては非常に問題ではないか。そういう意味で、まず、率直な御意見をお伺いしたいと思います。
坂本委員長 どちらに質問しますか。
中野(清)委員 バーン氏に大部分お願いしたいと思います。
バーン参考人(通訳) 中野先生、御質問にお答えしたいと思います。
 まず第一に言えることなんですが、私ども、こちらにお招きいただきましたこと、感謝をしております。日本の政府のそうした信用状況ということに関してお話しできること、そしてまた私どもの意見を皆さんにお話しできることをうれしく思っております。
 私どもムーディーズは、自分たちの意見に関して、そしてまた方法論に関して、できるだけ透明性を確保しようと考えています。特に、中野先生の御質問ということに関してお答えをしたいのですが、ムーディーズの考えとして、財務省の方から出された質問に対しては答えていると思います。もちろん、答えの中で不十分なものもあったかもしれません。そしてまた、今後もそうした部分では対話を続けていきたいと考えています。私どもの分析に関しては、できるだけ透明性を確保しようと考えています。
 そしてまた、外貨に対する日本のソブリンリスクということに関して、そしてまた日本のデフォルトの可能性ということに関しても、後半のところで触れています。そしてまた、さまざまな要因というところで、私どもが重要と考えるところに関しては、日本の方から出された質問とは一致しない部分があったと思います。
中野(清)委員 今、日本への回答はしてあるとおっしゃいますけれども、全く不十分だと思います。
 黒田財務官が二回目の質問も出しているはずでございますが、これについてはまだ回答が出ておりませんし、きょう、私もこれを前から見ておりましたけれども、いわゆるムーディーズ社が、日本のソブリンリスクに対するレポートというのが出ておりますけれども、これを見ましても、必ずしも十分な答えがないと思っております。
 そういう意味でもってお伺いをいたしますと、今回の、今お話しのように、これを対話を続けると思っておりますけれども、この発表の経緯と、市場の評価をどう受けとめるか、お伺いをしたいと思いますが、貴社の日本国債に対する格付につきましては、多くの市場関係者からも、財務省はもちろんでございますが、疑問が呈されております。
 例えば、六月十日付のゴールドマン・サックス社のレポート、この資料を皆さんに配付してございますが、その資料の中で、貴社の決定について、ムーディーズの判断は一面的であり、かつ合理性を欠いている、格付が本来よって立つべき基準からは最上級のトリプルAが妥当だというふうにやっておりますし、また、メリルリンチ社は格付機関が信認を失っているようだと言っておりますが、これらのレポートは、政府債務の大きさだけを重視してその他の要素をほとんど考慮しない貴社の分析に疑問を投げかけているわけであります。
 これらの批判にどのようにお答えするか、ぜひ率直な御意見をいただきたいと思います。
バーン参考人(通訳) では、中野先生の質問にお答えしたいと思います。
 これによって、より私どもの原理原則というところで、そうした特に自国建ての国債に関しての引き下げに関する完全な答えになると思います。日本の経済政策というものがまだ不十分であるということ、そしてまた日本における国内の債務の状態というものが悪化しているということを判断といたしました。特に、戦後の中でもそうした先進国の中でも未踏の域に達したというのが私どもの判断でありました。
 ムーディーズの分析ということに関してなんですが、今後数年間にわたってそうしたような債務状況の悪化というものが考えられるということ、そしてまたGDPに対する債務の割合、そしてまたその全体的な財政のレベルというところを見て判断をいたしました。そしてまた、中期的なところを見てということで、そしてまた長期的なところからその新たな格付を行ったということであります。恐らく、長期的に見れば世界の標準から見て非常にレベルが高いと思われる債務の問題というものは、最終的には解決できると思います。
 しかしながら、そうしたようなところが事前にどこまでのところでできるかどうかということに関しては、まだはっきりとわかっていない部分があります。そしてまた、現時点ではどの程度のそうした危機が発生するか、その結果がどの程度になるかということがまだわかっていない部分があります。そしてまた、日本の政府債務というものがどれぐらいのところまで上がるか、そしてまたそこのところからどれぐらいのリスクが出てくるか、そしてまたそれが全体的なダイナミックスとしてどのように影響を与えるかということに関しては、まだしっかりとした全体的な判断がつかない状況でもあります。
 ですから、現在の政府の債務というものは、はっきりと言って問題であるということ、そしてまた事前のところでそれがどれぐらいのところまであるかということがまだ不明であるということ、もちろん、短期的、中期的にそうした危機が発生するということは考えてはいませんが。
中野(清)委員 今バーンさんの御説明につきまして伺いましたけれども、私は、これはこれから詳しく議論させていただきますけれども、今の御説明では、少なくとも我が国の経済のファンダメンタルズから見ても、納得できないということをまず申し上げたいと思います。
 先ほどこのゴールドマン・サックスとか、こういう資料もやりましたけれども、それについてのお答えがありませんけれども、そういう意味でどう考えているかということはもう一回お伺いしたいと思います。
 それと、貴社の格下げに対するレポート、さっきも皆さん、きょうお配りになっておりますけれども、この格下げ理由等につきましてはたった数行しか出ていないわけですね。大部分は日本のリスクは大きくないという説明に費やされているわけですよ。
 これでは、今もおっしゃったけれども、なぜ格下げしたか全くわからないという点で、例えば、日興ソロモン・スミス・バーニー社のレポート、それにおきましては、二段階格下げでムーディーズ社は自己主張を正当化して、それで安定的というところでもって財務省との妥協を図った。それから、BNPパリバは、意地を張るためのツーノッチ、二段階、それでソブリン問題から足を洗うための安定的であろうという勘ぐりができても仕方がない。はっきりそういうふうにこういう機関が言っているわけですよ。
 そうすると、はっきり申し上げまして、結論が先にあって、後からですよ、理屈は後だ。あるいは、それはもうそういう理屈なんかないんだというんでは、少なくともこういう対応は、ムーディーズのように世界的に市場に責任を有する格付会社としては問題ではないかと私は思うんでございますけれども、もう少しそういう点でお答えをしていただきたいと思います。
バーン参考人(通訳) 中野先生の御質問に対してお答えさせていただきます。
 日本がそうしたゴールドマン・サックスのレポートを取り上げたということ、この点に関しては私どもも承知をしております。これに関しては、一九九八年のころから言われてきた内容の反映もされています。日本の、そしてまた外貨準備高、そのシーリングに関してもAa1であります。これは過去二年間、その分に関する私どもの評価は変わっておりません。
 こうしたような強みというものに関して、これは日本の国内の高い貯蓄率にもつながっていると思います。日本は貯蓄率が高いからこそ、そうしたところから、財政赤字で、オフショアのセービング、オフショアの貯蓄に対して何らかの資金調達を行う必要はないということも理解はしています。
 そしてまた、日本は貯蓄率が高いというところから、そうしたようなほかの先進国と比べて政府債務に対する体力が高いということも言えると思います。
 そしてまた、こうしたような外貨に対するレーティングというところに関しては、Aa1というところで安定したそうした外貨準備高を日本は持っているということを私どもは認めてはおります。
 そしてまた、その他A2、こちらの方は自国通貨建てのものに関しての格付ですが、これに関してトリプルAと格付すべきだという話がありましたが、政府に関してはいろいろな財政的な義務というものがあります。例えばロシアに見られたもの、これは九八年でありますが、この部分、JGB、ここのところもAa2からAa3というところに、政府のそうしたような財政的な責任が十分に果たされていないというところから、九八年の時点でも格下げを行っています。
 もちろん、こうしたところで投資に対する魅力というところも見ながら、そしてまたその全体的な金利、そしてまた適切性ということも考えなければいけません。そしてまた、将来的なところの可能性もそこでは見ております。
 ここで改めて言っておきたいことですが、ゴールドマン・サックスのレポート、これに関しては日本の財務省の方々もよく引き合いにされるかと思います。このところに関しては、自国建て、そしてまた外貨建てというところに関しても、はっきりとそこのところでは触れられていないと思います。
 そうした日本の政府債務というところに関して、IMFの予想を見てもそうですが、GDPの一四〇%、もしくはそこを超えないまでもそこのところまで行くであろうという予測が出ています。そして、日本の政府全体におけるそうした債務状況というのがGDPの一〇%から二〇%というところで、それはそれほど高くないと思います。ですから、何らかの危機等が発生するようなことがあったとしても、国内での資金調達というところに対する余裕はあるというのが私どもの判断でもあります。
 そしてまた、外貨建てというところに関してのレーティング、格付が高いというところは、そうしたようなところの評価を総合的に反映したものでもあります。
中野(清)委員 今御説明をいただきましたが、我が国のファンダメンタルズについての安定性ということについては認めていらっしゃるということについては、私ども同感なんですよ。しかし、それではなぜA2に引き下げたかということ、他国に比べまして、これについての御説明にまだなっていないと私は思うんですよ。率直に、やはり我が国にとっても非常に大きな影響がある話でございますから、この説明の仕方については問題だと思いますし、これからこの後、もう一つ質問した後で内容についても質問させていただきますので、それだけを申し上げておきたいと思います。A2についての、なぜA2だか全くわからないということを申し上げたいと思います。
 この点で、さらに、先ほどのゴールドマン・サックスについてのお話がございましたけれども、それじゃ、ソロモン・スミス・バーニー社とか、それからまたBNPパリバのこういう見方、これはうがった見方かもしれないけれども、そういう市場の反応があるということについてはどのようにお感じかということをまず一点お伺いしたいと思います。
 それから、貴社がこの格下げの当日、レポートの中で、民間企業は直接にも間接にも今回の格下げの影響を受けないとしておりますね。それは私もよくわかります。そうしますと、わずか二カ月前に、我が国の主要銀行の評価といいますか、引き下げ見込みで見直したときには、その大きな理由の一つとして、政府への信用の懸念を理由の一つに挙げていらっしゃいます。これはどういう意味か。これと今回の関係を伺いたい。
 ところが、こういう、これは矛盾しているんじゃないかという議論が出ましたらば、ムーディーズ社では、六月十日、一昨日ですか、今までの見方を変更するレポートを出していらっしゃいますね。これですか、この中に、出していらっしゃいます。それで、貴社はこう述べていますよ。従来、日本の銀行の格付は国債の格付に常に連動すると見ていたが、今後はそうした見方は必ずしもとらないと言っておりますね。そこに大きな矛盾があるんじゃないでしょうか。そういう点をお伺いしたいと思います。
 私は、誤りを訂正するときは必要かもしれない。ぜひそれはすべきだと思います。しかし、このような重要な問題で、しかも基本的な問題の話ですから、基本的な問題について、短時間に判断の仕方そのものが変わるというのは、これは余りにも格付会社として場当たり的じゃないか、そういうふうに私は言わざるを得ないと思うんですけれども、いかがでしょうか。
 もし、我が国の国債についても、今おっしゃったような銀行に対する見方と同じように変えてくるというのならば、そういうのでしたら、もし――国債に対する評価というものに対して、判断を訂正することが、ムーディーズ社として、市場に対する説明責任、そういうものを果たす意味でも重要ではないかということを申し上げたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
バーン参考人(通訳) 中野先生の御質問、二つあったかと思います。
 まず、ここは繰り返しになりますけれども、私どもリサーチをして、そしてプレスリリースという形でその結論を出しましたし、また、ウエブサイトにも公表しております。その理由についても具体的に述べてあります。そうした場において、既に具体的な説明が行われております。
 次に、ここも繰り返しになりますけれども、確かに債務というのが非常に重要性を持つわけであります。ほかの先進国のやはり格下げ、例えばイタリアを行いましたし、スウェーデンもそうです。イタリアに関しましては、一段階の、一回その格下げを行いました。
 二つ目の御質問についてでありますけれども、このように申し上げたいと思います。
 イタリアは当時A1、そしてここで重要な我々の客観的なインディケーター、指標によりますと、やはり歳入に占める政府債務のレベル、そしてGDP対比のレベルが、債務に関しましてそれほど、日本ほど、日本の現在の状況ほどは深刻ではなかったということであります。
 二番目の質問に関してお答えいたします。
 私どもの五月三十一日のプレスリリースの中では、市場における誤解を解こうとしていまして、私どもの格付に関する誤解を解くということであります。とりわけ、実際、外貨建ての政府債務に関しましては、ここでシーリングを設けております。ところが、実際に我々、自国通貨のガイドラインとどうも混同されているようでありまして、ある特定の発行体に関しまして、政府に関しましてで、自国建てのシーリングでありますけれども、これは実際自国建ての通貨とは関係ないわけでありまして、今トリプルAでありまして、自国建て通貨に関しましては。ですから、JGBは実際にこれを格下げがされておりますけれども、実際に、例えば日本が保証している円建て債券に関しましては、非常に、トリプルAという形で高い格付になっております。ですから、どうも混乱があるということを申し上げたいと思います。
中野(清)委員 今バーンさんが誠実に一生懸命お答えいただいている、その姿勢については感謝をしたいと思っております。しかし、その内容については全然かみ合っていないわけですよ。ですから、格付の判断内容について少し触れさせていただきたいと思うんです。
 私は、先ほど来何回も、格下げにおいて、日本政府の債務残高が増大しつつあるということを、理由を挙げるのみで、なぜこれがA2の水準になるか、他国に比べてもという説明が全くないという話をさせていただきました。
 例えば、A2になるというときに、貴社の話からいきますと、日本のデフォルトリスクといたしまして、将来の日本政府が国債に対する利子課税とか資本課徴金とか債務返済の繰り延べとか、そういう可能性をどうも想定しているような感じがするんですけれども、少なくとも、国債のうちで九五%は日本国民が持っているんですよ。そうしますと、日本政府が、国民が実質的な増税になるようなこんな措置をするわけがないんです、はっきり申し上げて。それをどういうふうに御理解しているか、お伺いをしたい。
 そして、今バーンさんの方でも、我が国の財政の健全化を疑問視する。我々も今一生懸命やっておりますし、それについての御意見とか御注文、御忠告については十分伺うつもりでいますし、真摯に受けとめるつもりでおりますけれども、それと、今申し上げた金融市場が混乱するような国債に対する措置というものはあり得ないんだということについてはどうお考えか。
 ですから、そういう意味で、私はA2という基準について、どうしてA2になるんだということについての客観性というものが少しわからないんじゃないかということを何回もお伺いしたわけでございまして、できれば、今言ったようなことを想定しているのか、それじゃなければ、少なくとも、日本のデフォルトリスクということを言うこと自身がそもそもおかしいんじゃないかと思うようなくらいに我々は思っておりますが、まずその点を内容としてもう少し我々の議論とかみ合わせていただければありがたいと思うわけであります。
バーン参考人(通訳) このインディケーターの目的ということに関しまして、先ほど申し上げましたように、日本の債務、日本政府債務というのは、やはり戦後、平和時において最高のレベルに達しております。我々はその中でも、軌跡、トラジェクトリーを描きまして、どのような形で政府債務がさらに悪化してきたのか、そして今後GDP対比においてどのような形の軌跡をとっていくのかという試算を行いました。
 また、国家の歳入比に対して、またGDP比に対して悪化する状況というものを予測しておりまして、さまざまな前提条件を我々の中で策定いたしまして、社内的でのレーティングコミッティーがございまして、その中で幾つかのアサンプション、シナリオを設定いたしまして、その中で我々検証した結果、実際、債務悪化の軌跡というものは、さらに中期的には悪化するのではないかということであります。もちろん、直近あるいは中期的にはA2レーティングの一貫性を持てるであろう、しかし長期的にはまだ我々わからないというふうに考えております。
 また、デフォルトのムーディーズの概念でありますけれども、我々のディフィニションに関しましては、若干、一般的なデフォルトの定義よりも少し広くなっております。というのは、これは、我々はまず、一方的にこの債務契約が変更されてしまうということ、そして、もともとの契約がいろいろな形で行われる、例えば、償還の構造が変わってしまうということ、あるいは一般的な形で、国内の現行制度にそぐわない形での変更が行われてしまう、あるいは、財務省証券あるいは国債に関しまして、何らかの形の資本課税がなされてしまうといったようなことであります。したがいまして、我々のデフォルトの定義というものは広い。
 そして、その中で考えてまいりますと、非常に日本というのは強力である、高い貯蓄率を誇っている。その意味で、デフォルトのリスクはないというふうに我々は考えています。
中野(清)委員 なかなか議論がかみ合わないので、恐縮でございますけれども。
 今お話ありましたけれども、国の債務というのは、バーンさん、将来の日本の税収で返済されるというものでありまして、この税収を生み出すところの我が国の経済のファンダメンタルズ、例えば貯蓄の大きさとか、対外セクターとして、例えば日本が債権の最大国であるとか貿易黒字であるとか、それからいわゆる外貨準備高が多いとか、そういうようなことが十分評価されるべきなんですよ。
 その上で、今お話しの、何か聞いていますと、デフォルトリスクについての定義について、一方的な解釈であるようでございますけれども、やはりこれはどこの国も同じじゃなきゃ困るわけですよね。日本だけ特別じゃ困るということだけ申し上げておきます。
 先ほど私は、ゴールドマン・サックス社のレポートで、政府の債務の累増が即デフォルトリスクの上昇につながるわけではないということもありまして、国のデフォルトリスクの判断においては、政府債務の大きさのみならず、今申し上げた経済のファンダメンタルズも重要であるということを私はあえてもう一度申し上げたいと思うんです。
 貴社の資料を見ますと、日本のデフォルトリスクというものを例えばボツワナとかエストニア等の諸国と比べておりますけれども、要は、日本の政府の赤字が額的にこれらの諸国より大きいからリスクが大きいと言っているにすぎないんじゃないか、そういうふうにしか私は思えません。
 しかし、経済のファンダメンタルズの差というのは財政指標の差よりも大きい場合があるはずでございまして、ましてや、世界でそういう意味でのファンダメンタルズの基盤が強いという我が国の場合に、日本の場合に、そういうほかの諸国と比べるというのはちょっと無理があるんじゃないか。
 だから、ボツワナとかエストニアにかかわらず、日本よりも格付の多い国が三十ぐらいあるわけですね。その中で、こういう今申し上げたデフォルトリスク等の判断において、どのような理由で、では、日本とそれらの諸国との間の差といいましょうか、そういうものを評価なすっていらっしゃるのか。チームをつくられてやっていらっしゃるんでしょうから、そういう点は、やはり世界で権威のあるムーディーズ社でありますから、説明責任があるはずだと思いますので、ぜひお伺いをしたいと思うんです。つまり、経済のファンダメンタルズの差よりも財政指標の差が大きいと判断している明確な理由というものを御説明願いたいと思うんです。
 あえて申し上げますれば、例えば、自国建ての通貨の国債がデフォルトをした新興債務国がたくさんありますけれども、日本は、変動相場制のもとで強固な対外バランスというものがあるはずなんです。国内の金融政策の自由度も、隣に金融大臣がおりますけれども、そんなに窮屈なものじゃない。相当そういう意味で柔軟性のある適用をしていると私どもは思っておるわけでありまして、そう考えてくると、少なくとも我が国は、ハイパーインフレの懸念というものはそうあるわけない。
 そういうことを考えたときに、今の御説明ではちょっと私ども十分納得できないんですけれども、もう少し教えていただきたいと思います。
バーン参考人(通訳) では、お答えさせていただきます。
 中野先生、強調したい点がございます。経済的なファンダメンタルズに関してですけれども、ムーディーズでは、きちんと日本の経済的ファンダメンタルズ、そして公共の債務負担に関して、この分析に盛り込んでいると書いてあります。意見の違い、つまり、その要素がどれぐらい中間的な見通しに役に立つかということですけれども、いろいろなファクターをこの分析において含めております。高い格付を、保証債また外貨建てにAa1のレーティングを適用しております。
 日本のいろいろな対外支払い能力を考えますと、そのデフォルトのリスクは低いと考えております。日本は、対外の支払い能力が高く、ほかの国に比べて対外支払いの債務が低く、またポジションはかなり高いものとなっております。
 ボツワナに関してですけれども、また、その他の格付が同様の国に比べますと、自国通貨建ての債務の格付ですが、ボツワナはほとんどないと考えます。デフォルトのリスクは低いと言えます。ですから、A1のレートというのは適当であると思います。高い債券の価格というのは、このような国、このような経済発展のレベルでは、かなり安定的であると思います。そしてまた、対外債務はほとんどないと言ってもいいと思います。これらのファクターを盛り込んだとしましても、ボツワナの、ダブルAよりも四段落低いものを、ボツワナではあります。
中野(清)委員 いろいろと御質問をいたしましたけれども、最後に、組織運営上の問題について簡単にお伺いをしたいと思っております。
 ソブリン債のリスクを判断するときには、その国の財政や経済状況というものはもとより、その国の社会、経済、歴史等を熟知している必要が当然あるんじゃないかと思っておりますけれども、バーンさん、特に、これは失礼なお伺いかもしれませんけれども、日本国債の格付についての分析責任者でいらっしゃいますけれども、日本についてどのようにわかっていらっしゃるか。例えば、日本の学校で学んだことがあるかとか、在日経験とか、また日本の企業とか、または日本での実務の経験がどうかということについては教えていただきたい。もしあれでしたら、少なくとも我々は、ムーディーズ社の格付判定委員会のメンバーがどんな方で、日本についてどんな知識を持っているか、それについてはやはり知りたいと思っておりますので、お伺いしたいと思うんです。
 それともう一つは、どちらかというと、格付については、特に日本の国債のように勝手格付といいましょうか、そういうものについてはどうしても厳しく、安易な引き下げというのが行われやすい一方、いわゆる手数料をいただいている社債といいましょうか、そういうお客には格付の判断は甘いと言われておるわけですよ。これはあのエンロンなんかの話だって、御承知のとおり、そういう御批判があることは事実だと思います。
 そうすると、この際、貴社の収入の中で債券等の発行体から収入はどのぐらいあるのかとか、その収入構造というものを、やはりこれはある程度は透明性というものを持つべきであろうと思いますが、そういう意味で見直すべきだと思います。
 そういう点については、これは少し厳しい質問かもしれませんけれども、少なくとも我々は、あなた方の格付によって、ある意味での日本の経済というものが大きな影響を受けたわけでございますから、そういう意味で、ぜひ、わかる範囲で結構でございますけれども、御説明いただければありがたいと思います。
ケラー参考人(通訳) 私の方から中野先生にお答えします。
 まず、御質問、IIR、勝手格付それから依頼格付に関しての質問からお話ししたいと思います。
 最近、ムーディーズの白書に載っておりますように、ムーディーズの民間債の格付、そしてその格付のプロセスについて白書がありましたけれども、格付の決定は、ムーディーズの顧客関係等の存在によって左右あるいは影響されるものではありません。
 二〇〇一年度末ですけれども、こちらの会計年度に関しましては、発行体からの報酬というのは大体ムーディーズのコーポレーション収益の八七%を占めています。発行体の中でも、ムーディーズは多様化した報酬ベースがあります。二〇〇一年におきましては、どこの発行体におきましてもトータルの収益の一・五%以上支払っているところはありません。そして、過半数がほんのその一部しか支払っていません。
 ムーディーズが信じますに、弊社のビジネスの報酬体系によって格付を行う上でのリソースが確保されていると考えております。これは、年間のデフォルトの調査、これが非常に予測可能であり、そして市場にとって非常に価値あるものであるという事実にも裏づけられていると思います。また、ムーディーズが信じますに、多様な報酬の関係、これが独立性を死守しているものと思います。
 ムーディーズの格付、これは公共の利益にかなっていると思います。というのは、資本市場の効率化に貢献しているからです。公共の利益といった特徴ですけれども、これは、この格付が非常に包括的にカバーしている、そして世界的に格付が普及していることによっても証明されているかと思います。そして、包括的なカバレッジを維持するために、市場の関係者によっては、依頼報酬でなくやっている顧客もいます。そのために、ムーディーズとしては、時に、勝手格付をしている場合であっても、依頼顧客でなくても価値を置いているということであって、そのために、その価値に対する報酬を払うつもりがあるかどうかというふうに尋ねることがあります。
 次の二番目の質問に移りたいと思います。
 この委員会の構成、そしてその関係者の構成ということですけれども、今現在、二十のサブアナリストがワールドワイドでおります。それから、十三のシニアアナリスト、七のアナリストがおります。シニアアナリストというのはかなりの豊富な経験を持っております。銀行そしてその他の国際機関における豊富な経験を有しております。その中には、IIF、世界銀行、そして国際通貨基金、IMFが入っております。
 デービッド・レビー、ソブリンリスク部門のコーヘッドですけれども、シカゴ大学そしてハーバード大学で専攻しておりました。そして、ムーディーズに一九八六年に移ってきましたが、その前に、カントリー・リビュー・デパートメント、サンフランシスコのウェルズ・ファーゴ銀行でマネジャーをしておりました。また、一九七〇年代、いろいろな銀行あるいはいろいろな機関、そして大学に対してのカントリーリスクあるいは政治的な諮問を行いました。
 ミスター・レビーですが、ハーバード・ユニバーシティーで経済学、エール大学、そしてソーシャルリサーチ、ニューヨークにおきますニュースクールで教鞭をとっておりました。一九七〇年代初頭には、ビジネスウイークのアソシエート・エコノミック・エディターを務めておりました。
 ビンセント・トゥルーリアですが、これは、ソブリンリスクユニットのコーヘッドですが、スクール・オブ・フォーリン・サービス、ジョージタウン大学、ワシントンDC、そしてマクギル大学、こちらはカナダのモントリオールにございますが、こちらを卒業しました。また、さらにその後ダブリンのトリニティー大学、そしてイタリアのペルギアにおけるストラニエリ大学で勉強しました。また、トゥルーリア氏は、ソブリンリスクアナリストとして二十五年間、そして、FRBにおきまして国際的銀行の経験を持っております。ムーディーズに一九九二年に移りました。
 そして、ソブリンリスク部門のヘッド以外にも、その構成部員ですが、ソブリンアナリスト、そしてほかのカントリーエキスパートが含まれております。バンクアナリストあるいはその他のアナリストも適宜含められております。また、日本のバンクのアナリストは、日本の委員会の構成委員であります。というのは、バンクアナリストがこのバンキングシステムによって台頭するであろう潜在的な圧力に関して理解しているからです。これは長期的な信用状況に影響を与えるものと考えております。
 ソブリンリスクのエキスパートだけではなく、日本の例えばリードアナリスト、そしてバックアップアナリストとして、日本だけではなくアジアのスペシャリストもおります。また、国際的な財務機関、また国際的な銀行でも経験を持っております。ソブリンリスク部門のコーヘッドは、両者とも何年も日本を行き来しております。
 また、トゥルーリアですが、日本における経済的イベントに関しての論説を載せております。また、ミスター・トゥルーリアは、年金問題に関して議会で証人となったり、あるいは特に日本の年金問題に関しても答弁をしております。また、橋本前首相、そしてウォルター・モンデール在日駐在大使とも仕事をした経験がございます。
中野(清)委員 時間があれですから、最後に申し上げたいと思いますけれども、今の御説明で伺いましたように、いわゆる経営の専門家ではあるけれども日本についてはよく存じ上げていないという面もあるようでございますので、ぜひ日本についてもさらに一層研究していただいて、この評価、格付についてお願いをしたいと思うんです。
 そういう意味で、私は、今のこの格付については全くなぜA2かということについて納得できないと思っております。そういう意味ではこれから率直な議論の交換をさせてもらいますけれども、ぜひ、日本で二度目の書簡を黒田財務官も出しているわけでございますから、それらについてやはり具体的に御返答をしてもらいたい。そして、そのことの上でもってお互いに率直な議論をすべきだろうと思います。
 特にお願いしたいのは、先ほど来、政府のみならず外資系の金融機関を含めて多くの市場参加者からの批判があるわけでございますけれども、やはり先ほどおっしゃったように格付機関というのは当然独立性を持たなければいけない、資本市場における独立性を持つべきだ。そういう意味での貴社の役割は大きいわけでございますので、我が国の質問に対して速やかに答えると一緒に、格付の適正化に向けても速やかな対応をすることを望みたいと思っております。
 お二人に対しての質問を終わりますけれども、きょう私は、本来は中小企業の問題で柳澤大臣や松田参考人に聞くわけだったんですけれども、特に申し上げておきますけれども、中小企業の問題、特に金融の検査のマニュアルは一生懸命やりました、どうかそれについては、これから実施でございますからきちんとやってもらいたい。
 それからもう一つは、ぜひ不良債権については実際に効果があるように……(発言する者あり)すぐやるから。今最後の発言だから黙ってくださいよ。最後の発言なんだから。質問じゃないんだから。
坂本委員長 質問、簡潔にお願いします。
中野(清)委員 ですから、そういう意味で、ぜひRCCの問題についても、やはり中小企業の立場で考えていただきたい。それから、ペイオフとか税制改革もございますので、どうか中小企業を守るという視点でこれからも頑張っていただきたいことをお願いいたしまして、私の質問を終わります。
 また、お二人にはいろいろありがとうございました。心からお礼したいと思います。
坂本委員長 次に、遠藤和良君。
遠藤(和)委員 私、公明党の遠藤和良ですが、私の持ち時間、二十分しかありません。その二十分のうち最初の十分間はみずほホールディングスの問題、そしてあとの十分間は今お話ししておりましたムーディーズのことについて質問をさせていただきたいと思います。
 きょう前田社長さんいらっしゃっていますけれども、簡単に聞きますから簡単に答えてください。
 システム障害の発生原因についてですけれども、これは究明できましたか。また、今後の対応はどのように考えていますか。基本的な認識をまず聞きたいと思います。
前田参考人 前田でございます。
 ただいまの御質問にお答え申し上げます。
 今回のシステム統合に伴いまして、口座振替の事務処理遅延など、社会的インフラとも言える決済システムなどに障害を引き起こし、お客様ほか関係各方面の皆様に多大な御迷惑をおかけいたしましたことを改めて深くおわび申し上げます。
 今回のシステム障害につきましては、金融庁による立入検査、日本銀行による考査と並行して、当グループ内におきましても発生原因を詳細に究明してまいりましたので、その概要を御説明させていただきたいと思います。
 今回の障害は、コンピュータープログラムや事務の水準確保が十分でなかったことによるものであることは、既に一部御説明申し上げているとおりでございます。
 四月一日及び八日に発生したATM障害につきましては、一言で申し上げますと、グローバルプロセッサーのプログラムに不都合があったことが原因でございます。このグローバルプロセッサーとは、旧第一勧銀のホストコンピューターであるSTEPSを起点とし、旧富士銀行のTOP及び外部のコンピューターセンターとの接続部分を担うシステムであり、この部分に不都合が生じたということでございます。
 一方、口座振替の事務処理遅延につきましては、後ほど補足説明させていただきますが、次の四点が主な原因でございます。
 まず第一に、MT交換テーブルの不備、第二にスケジュールトランズの不備、第三にジョブ・コントロール・ランゲージのプログラムの不都合、そして第四に受け付け事務処理の混乱の四点が挙げられております。
 今申し上げました四点につきまして、少し補足説明をさせていただきます。
 まず、MT交換テーブルでございますが、これは委託者のお名前、媒体の種類など収納企業情報を記録する基本データファイルでございます。次に、スケジュールトランズですが、これは入力件数、金額などのデータを保有し、日程管理を行うシステムであります。さらには、JCLですが、これはコンピューターが電算処理を行う際に用いるコンピューター専用の指示言語であります。
 こうしたシステム、事務の不都合は、各種テストやリハーサルなど事前準備が十分でなかったことによるものであり、特に口座振替システムにつきましては、システム開発スケジュールのおくれから、テストが未了ないし不完全なものにとどまっていたことが判明いたしました。四月の段階でこの委員会で御説明を申し上げたときには、この事実を十分把握できておらず、また解明できておらず、適切な御説明ができなかったことをおわび申し上げます。
 また、統合後の業務運営や大規模な障害発生を想定した訓練を実施できていなかったことなども、一連の障害を拡大、長期化させた直接的な原因として挙げられます。
 以上、申し上げてまいりましたように、システム、事務に不都合があったにもかかわらずシステムをリリースすることになりましたのは、システム統合プロジェクトの管理体制に種々問題があったことによるものであります。
 まず第一に、システム統合につきましては、勘定系、情報系、国際系、市場系など、三行が持つ多数のシステムを二つの銀行に統合するという極めて難度の高い開発プロジェクトと認識し、システムごとに開発責任行を定め、開発を行ってまいりました。今回障害が発生した部分につきましては、その開発責任行においてシステム開発部門のシステムに対するリスク認識、評価が不十分であったことから、経営陣及び持ち株会社に対して適切な報告が行われていなかったことに加え、システム部門内の牽制機能やチェック機能が不十分であったことなど、システム開発体制が十分に整備されておりませんでした。
 第二に、システム統合プロジェクト全般にわたる進捗管理については、持ち株会社であるみずほホールディングスが統括管理する体制となっておりました。しかしながら、開発責任行からの報告が適切さを欠いたことを主因とすることとはいえ、持ち株会社としても、障害発生の可能性の早期検知及び障害発生の防止に至らず、その統括責任を全うできませんでした。
 第三に、内部監査については、統合準備の過程におけるシステム統合リスクの重要度認識について不十分な面があり、プロジェクトの重大な問題点をシステム部門の外からチェックするに至りませんでした。経営陣を初めとした当社グループの役職員に、システム統合にかかわるオペレーショナルリスクに対する認識と管理に甘さがあったと言わざるを得ず、深く反省いたしております。
 私どもといたしましては、システムの安定稼働を確保するとともに、今回の障害に伴って発生した事務の混乱の正常化、業務運営の的確化を目指し、今次障害の発生原因を踏まえた適切な再発防止策の策定、実施を早急に進め、今回のような事態を二度と発生させないよう役職員が一体となって全力で取り組んでまいりたいと考えております。また、こうした取り組みとともに、大切なお客様によりよいサービスを御提供することにより、信頼の早期回復に努めてまいる所存でございます。
 今回の大規模なシステム障害を引き起こしましたことを厳粛に受けとめ、本件にかかわる責任の所在についても明確にしてまいる所存でございます。
遠藤(和)委員 二十分しかない質問時間を、随分、五、六分かかって今最初一問で答弁してもらって、本当に私いらいらするつもりで聞いておったんですけれども、一応始まりましたから静かに聞いていました。
 それで、結論から明確に述べると、どういうことかというと、原因は対等合併、だから、船頭多くて船が山へ登っちゃった、要するに、基本方針を最初に早く決められなくてぐずぐずしちゃったから事前の準備が十分できなかった、そういうことじゃないのかなと私は思うんですね。ですから、今後の対応としては、人事のシェープアップですね。上の方をきちっと、合併した人たちがみんなそこにいるというような変な形ではなくて、シェープアップしていく、責任体制を明確にしていく、こういうことは大変大事だと思いますけれども、そういう認識はありますか。
前田参考人 お答え申し上げます。
 責任体制の点でございますが、御指摘のような部分、このフェーズ1の段階におきましては、一部管理体制がよくなかったということは今申し上げたとおりでございます。四月一日から新しい体制に入っておりまして、そういう意味では、先生御指摘のように、責任体制が不明確にならないように全力で頑張りたいと思います。
遠藤(和)委員 それから、コンピューターのソフトの問題も、これはつなぎ合わせでやっているわけですね。これは、建て増しをして渡り廊下でつなぎ合わせた旅館とかホテルみたいなもので、バリアフリーになっていない。だから、今はうまくいってもいつかまたおかしくなる、私はそういうものを中に含んでいると思いますね。したがって、コンピューターのシステムを抜本的に一元化する、一本化する、こういうことをやっておかないと、また事故が起こるんじゃないかな、こういうことを思います。これについてどう考えているか。
 それから最後に、経営陣の責任をどう考えているか。それは、今お話しになった社長さんを含む現経営陣の問題と、それから前経営陣の問題がありますね。これに対してどういう責任をとるのか、これを明確にしてもらいたいと思います。
前田参考人 お答え申し上げます。
 コンピューターをつなぐシステムにつきましては、三つの銀行を二つに再編するということで、これは移行リスクを最小限にするために、リレーコンピューターを使っております。コーポレート銀行では既にシステムと事務を一本化しております。それから、みずほ銀行では二つのシステムが併存いたしておりまして、これは、この後統合する過程で、二度とこういうことのないように、十分慎重に見直した上で、新しいみずほ銀行のシステムを一本化させていただきたいと思います。
 それから、新旧経営陣の経営責任についての御質問でございますが、私どもは、今回のシステム障害に関して、当局検査も一応きのう示達をいただきましたが、これと並行いたしまして、外部の方もメンバーに加えたシステム障害等特別委員会を設置し、原因の究明と再発防止策の有効性、適切性の検証を行っております。この委員会の調査結果の公表をした上で、その中で、私を含め責任について明らかにして、皆さんの信頼を回復するための第一歩としてまいりたいと思います。
 以上でございます。
遠藤(和)委員 では、次はムーディーズの、まずバーンさんに聞きたいと思いますけれども、日本のことわざに、木を見て森を見ない、そういう言葉がありますけれども、今回の貴社の日本国債に対する格付は、格下げですけれども、これは日本の国が持っている体力、水準、そういうものを十分に把握しないで、その傾向性、それは、一つ大きなのは国債発行残高というものが未踏の領域に入った、その一つの事実だけを過大に評価をしてこの格下げを行ったのではないか、このように私は考えております。
 私だけではなくて、それは市場もそういうふうに反応した。要するに、皆さん方の格付、格下げ、低下というものを市場は無視した、こういうふうになっているわけですから、まさに木は見たけれども森というものを見なかった、このように私は思いますが、どう思われますか。
バーン参考人(通訳) 先生の質問にお答えしたいと思います。
 私ども、木も見ておりますし、森も見ております。
 私どもは、まず、その分析を始めるとき、日本の九八年からの状況がどう変わっているか、それがどのように継続しているかというところを見てきました。確かに日本はその対外的なポジションは強いということの意見には合意しています。そしてまた、対外的な支払いのデフォルトなどといったような可能性はないと思っています。それに関しては安定した見通しを持っていいと思っております。
 繰り返しなんですが、私どもというのは、こうしたような対外的な強さというところが日本の外貨建ての国債に与える影響というのは、間接的な部分ではそれほどないと思っています。その経済全体の中でどれぐらいのリソースがあるか、そしてまた政府の全体的な歳入がどれぐらいあるか、そしてまたそれが可能性としてどれぐらいふえるかというようなところも重要だと考えます。
 そしてまた、全体的なマージン、そしてまた政府の持っている全体的なその債務、資産の割合というところを見ても、その外部的、これは日本の企業も含めて、そしてまた日本の国民も含めて、一四〇%というのが日本のGDPに対しての債務率というところになります。そしてまた、資産というものは、GDPに対して三〇%程度であります。
 ですから、実際のところで政府が利用できる資金、その資産の額というものは実質的に低いと考えざるを得ないというのが私どもの判断です。
 そしてまた、この対外的な資産というものが大きいとしても、ムーディーズは、その他の国というところもいろいろ見てきたところから、政府が短期的にそうした対外、海外の資産というものを銀行外、それからまたその他の企業というところに対して動員するということは難しいということは、これまでも判断をしてきております。
 そしてまた、ゴールドマン・サックスの分析のお話も先ほどありましたが、日本のそうした貯蓄の余剰は非常に大きいということは確かだと思います。しかしながら、それがだんだんと減ってきているということは指摘できると思います。
 そしてまた、政府もそうした全体的な債務の負担を減らすというところから、そうしたところでの全体的な支出を減らすようにもなってきています。
 そして、日本のそうした貯蓄率というものが下がり、そしてまた高齢化というところになってくると、最終的に政府の債務というものが非常に危機的な状態になるということも考えられると思います。そこのところで資本のフローというものがあればいいわけですが、それがだんだん下がる、そしてまた金利などが上昇するというところから、そうした債務の償還、国債の償還などの負担につながるということも考えられるわけです。
 私どもとしては、基本的に短期、中期的に何かの危機的な状況が発生するとはもちろん考えてはおりませんが、ただ、そうした債務の問題というものが今後も広がる可能性はあるということを指摘しているわけです。
遠藤(和)委員 木も見ているし森も見ているという発言でありましたけれども、私は、ちょっと具体的に申し上げますと、皆さん方のプレスリリースを見ておりましても、格下げの理由については本当に数行しか書いていないんですね。その後、債務不履行のリスクは小さいとか、いずれ改革は行われるでしょうとか、見通しが安定的ですとか、そういうふうな話をたくさん長く文章を書いていますね。これは余り、格下げをどういう根拠で行ったかという論理的な文章というよりも、何か政治的な文章のような気がしますね。それはちょっとおかしいのではないかと。
 やはり、格下げをしたなら格下げをした明確な、公平な、オープンな根拠を示すべきでありますし、それは、国というのは民間と違って課税権とかあるいは通貨の発行権を持っていますよね。それから、あるいは日本の国の体力ということを考えると、確かに債務は未踏の領域に入ったことは事実ですけれども、世界最大の債権国ですし、それから経常収支黒字国ですし、それから外貨準備も最大ですよね。それから、資金のフローを見ましても、二〇〇一年にかけても、政府の赤字三十二兆円を上回る四十二兆円の民間の貯蓄超過があるわけですね。こうした国全体の体力というものをきちっと判断すれば、こうした結論というのは出ないので、まあ、安全ですよ、大丈夫ですよということを最後にいっぱい書いてあるんだけれども、結論は二段階格下げ。
 ということは、二段階格下げというのを政治的に、そういう延長上でやった、そして、何とかそれを弁解する意味で文章的な構成をした、そういうふうな余り論理的じゃなくて政治的な文章のようだ、だから市場が無視したのではないか、このように思います。どうですか。
バーン参考人(通訳) 先生の御質問にお答えしたいと思います。
 先ほどケラーの方からもコメントがありましたが、ムーディーズは独立した立場を持っています。政治的な姿勢はとっておりません。そんな政治的であったら、ビジネスをこれだけの時間にわたって継続はできなかったと思っています。
 そしてまた、日本の今後の見通しの安定性ということに関してなんですが、マーケットアナリストの中には、そうした格付に関しての反対の意見が出ているということも認識はしています。そしてまた、アカデミックの部分からいろいろ出ている批判、全体的な格付ですとか、それからまた政府がそうした債務問題に対処するだけの十分な政策を行っていないというような批判的な意見が出ているということも勘案をしています。
 私どもの基本的なこの格下げの理由というのは、日本の債務レベルというのが持続可能なレベルを超えてしまったということにあります。戦後のところから見ても未踏の領域に入っているということもそうですし、そしてまた、何らかの問題が起こったときにそれに対する対応が難しいのではないかというところが理由でもあります。
 そしてまた、プレスリリースに関しては、ソブリン関係のプレスリリースの中では、その長さということを見ても、違っています。そしてまた、日本のソブリンリスク、そしてまた外貨建て、外貨に対するリスクというところに関しても、ウエブページで情報も公開をしています。プレスリリースのところで前向きなコメントというところでかなりの行を割いたというところに関しては、そうした全体的なセンシティビティーというところを勘案したということも確かにあったことは言えます。
遠藤(和)委員 意見の相違点がいっぱいあるのですけれども、質問時間が終了したという連絡が来ました。大変残念です、短い時間で。私、用意した質問の十分の一しかできなくて非常に残念ですが、次、こういう機会をたくさんつくっていただきたいと心から希望します。
 ありがとうございました。
坂本委員長 次に、五十嵐文彦君。
五十嵐委員 民主党の五十嵐文彦でございます。
 最初に、一問だけ財務大臣に伺おうと思いますが、今の格付問題なんですけれども、私は、実は正直なところどっちもどっちだと思っておりまして、ムーディーズの方も、エンロンで大失敗した、だから意地でも自分たちの正当性を示したいという気持ちがあったんではないかな、こう思うのですが、日本の方も、どうも感情的な反発で、ボツワナに迷惑だと思う。ボツワナというのは財政の極めて健全な国ですから、ダイヤモンドがとれて。国債の健全性を問うのに、ボツワナより国の格が上か下かという感情的な反発をしても私は仕方がないし、逆にマイナスだと思うのです。
 むしろ、世界は日本に対して、日本の社会というのはサステーナビリティーがあるのか。例えば年金を見ても、一時、支給の方の削減を少し手がけましたけれども、それだけでは不十分なことはみんなわかっているわけで、団塊の世代が年金支給年齢に達すれば、これは今のままでは継続できないだろうというのは明白なんですね。
 将来像を示していない、いたずらに後世代に負担を先送りしている、こういうような状況から見て、今の国債の状況、これが国際的に見て未踏の水準に達しているという危機意識が政府・与党全体として不十分なんではないかというような指摘も、一方ではムーディーズ等の格付会社の格付にマーケットが反発しながらも、そういう見方については、やはりなるほどなと思うところもあるわけですから、私は、政府としては、まあ塩川さんは大変まじめに国債の水準の問題に取り組んでおられるとは思うけれども、政府・与党全体としてはまだ危機意識が不十分だというふうに思わざるを得ないのです。
 そういう謙虚な目で、そして冷静な議論を格付会社との間ですべきであって、感情的な反発をするのは逆にマイナスだというふうに私は思うのですが、その点についての御感想だけ、塩川大臣、最初に一問だけ伺っておきます。
塩川国務大臣 五十嵐さんの質問は、野党の立場に立っての質問はそういうことになるだろうと私は思います。
 けれども、冷静に見ました場合に、私は、ムーディーズの今回の状況をずっと、一回、二回と反論を読んでおりますけれども、どうも、日本の経済状況を分析していることには一つの意義があったと思いますけれども、これと国債の格付とどうして結びつけておるんだろう、そこがわからない点なんであります。
 経済というものは、国の国債の格付とかいうものは、非常に有機的に動いてまいりますから、ただ単に計数だけでその国の力を判定し、その国が持つところの債券の価格を判断するということは、近代経済界においては私は意味がないと思うのです。
 もっと以前の経済状況でございましたら、そういう計数だけで判断する、社債の格付なんかやってきたことでございますから、そういうことはあるだろうと思いますけれども、現在の国債の価額というものは、やはり国の経済力それからこれからの政策的な施行力というもの、そういうものが複雑に絡んで判断されるものであって、ただ単に一研究所なりあるいは一役所、担当者のみでこれを検討するものではない、それは歴史的な評価として後で見るべきものである、私はそう思うております。
 したがって、今回の格付会社の回答等は、状況をよく見ておるということにおいて私はしておりますけれども、これを格付に結びつけているということに対しては私たちは非常に不満であるということは申し上げたいと思います。
五十嵐委員 不満であるのはわかるのですよ。
 それから、私は、今いろいろおっしゃいましたけれども、格付会社の格付を頼りに投資家は投資をするわけですから、それは商売として成り立っているわけで、ただ、商売だから信用がないんだというような発言を当初大臣されたかに思いますけれども、そういうような話では、逆に日本の政府当局の姿勢がむしろ国際的に疑われることになるのではないかということを申し上げているわけであります。
 バーゼルの国際会議では、シングルA以下の国債について、リスクウエートを二〇%にしようじゃないかというような話も今進んでおります。ただ、ローカルルールが適用されるかもしれないということで、その場合でもローカルルールを適用して国内の銀行のリスクウエートはゼロのままでいいんだということを森金融庁長官などは早々言っておりますけれども、海外の投資家にとっては、やはりこれ以上日本の国債が増嵩すれば暴落リスクがふえるということで、全体のウエートを下げよう、ウエートというのは、全体の投資先の中で日本国債のウエートを下げられないかという動きはもう既に出ているわけですから、そういう意味では、私は、日本国債の増嵩の状況というのはもっと危機的にとらえるべきだというふうに思うわけであります。
 このことはこれだけにさせていただきたいと思いますので、財務大臣、一問だけで大変失礼でございましたけれども、どうぞ、結構でございます。
 次に、お配りをいたしておりますけれども、大手行それから金融機関、三月期の決算が出てまいりました。前から同じ質問だというふうに思うかもしれませんけれども、状況はますます悪くなっております。
 合併差益も吐き出しました、そして株価等の含み益もほとんど残っていないという状況の中にあって、私どもが主張している正味の自己資本比率は惨たんたる状況になっているというのが見ていただければおわかりになると思います。実質的に大手の銀行グループで六%を超えているのは住友信託銀行だけで、あとは、東京三菱がまた別なんですが、公的資本増強行では一%台、中には実質的に自己資本比率マイナスに陥っているというところが出ているということであります。
 これは、私は大変な状況だと思うんですね。これから先、償却原資をどこからひねり出すのか。業務純益をふやす以外にないというところまでまさに追い込まれているわけですけれども、不良債権がふえておりますから、これはどうにもならない。業務純益だけで今後、例えば来年三月期に償却予定額がカバーできるのかといった不安が残っていると思うんですね。
 そこで、貸出金利を引き上げて収益率を改善しようという動きがあるわけでありますけれども、みずほのシステム障害によって、みずほグループではこの金利の引き上げ交渉が極めて困難になりますし、また、そのみずほの影響でよその銀行にとってもいろいろな障害が出てくるのではないかな、こう思うわけでありますけれども、この辺の見方について、柳澤大臣から伺いたいと思います。
柳澤国務大臣 自己資本の状況についての民主党さんの見解というのは、かねて何回も聞いておるわけですけれども、これはもう見解の相違ということしか申し上げられないわけでございます。
 その上で、これから、この不良債権の原資ということの観点からも、また、公的資本の、どういう形にしろこれの償却をしなければならないということの原資ということからも、また、そもそも、日本の銀行がもっとリスクをきっちりとって、金融仲介機能を充実した形で展開するという見地からも、私どもは、収益力を向上させることはもう不可欠の条件ということは、かねてから申し上げているところでございます。そうした中で、各行が最近に至ってその動きを活発化させているというのは、私どもの期待にこたえてくれているというふうに評価をいたしている次第であります。
 そうした中で、みずほの今回のシステム障害に伴う顧客へのいろいろな形での迷惑をかけたという事情を反映して、みずほ銀行においては、そうしたことが十全な形で、他の銀行と比べてどうも力が弱くなるのではないか、こういうことでございますが、私どもも、その点は率直に言って心配をいたしております。ただ、今、五十嵐委員がおっしゃったように、そのことで全くそうした努力が効果を上げないかといえば、私どもはそうはまず考えません。これは、みずほ銀行そのもののこれからの営業姿勢の問題である、こういうように思います。
 仮に、万々が一、みずほ銀行の場合に、そうした収益力向上のための利上げ交渉に十全な力が発揮できないというようなことがあった場合に、そうしたことが他行に影響するかというふうに考える御設問かと思いますけれども、私は、みずほ銀行といえども、他行が顧客に対して利上げの交渉に入った、そんな利上げをするぐらいだったらみずほさんのこれまでの金利でいいよと言ってくれる方に、向こうへ行きますよという形で、非常に利上げの努力というのが全体として低下するということがあるか、こう考えてみますと、私は、それはないだろう、こう考えます。
 それはなぜかというと、みずほさんも基本的には利上げをしたいという姿勢でいるわけですし、その場合、新規のお客さんに来れば、これまで何の迷惑もかかっていないということになれば、これはもう非常にもってこいのお客さんということになって、きちっとした利上げ交渉ができる、こういうように考えますので、御懸念は御懸念として承りますけれども、私は、それと共有する懸念を持っておりません。
    〔委員長退席、中野(清)委員長代理着席〕
五十嵐委員 私が申し上げているのは、単にみずほの障害がそのときのクライアントに対する迷惑だけにとどまらないということを今申し上げたわけでありますけれども、このみずほフィナンシャルグループのシステム障害というのは、私は重大な問題だと思います。銀行に対する、金融機関全体に対する信用を失墜させるわけでありますし、また、日本の監督行政についても、私は、海外から見て問題ありと言われるんじゃないかなということも思うわけであります。
 五月七日付のみずほから金融庁に対しての御報告というものの骨子が私の手元にありますが、これでも、私は、みずほの意識というのは大変まだ甘い、不十分だ、こう思わざるを得ないですね。先ほどの前田社長のお話を伺いましても、結局、開発責任行から経営者のところに報告が十分に上がっていなかったということを主原因にしているんですね。だけれども、開発の責任者グループは、そのテストが間に合わないということを必ず言っているはずなんですよ、自分たちの責任になるわけですから、失敗すれば。
 ですから、途中の報道でも、三月に至って、実は十分な期間がないんだという議論が中で行われたけれども、えいやということでゴーサインが出されて、予定どおり進んでしまったというような報道もなされているわけで、私は、経営者の責任を逃れるために言っていることではないかなと勘ぐらざるを得ない状況なんです。
 一番肝心なところは、最初はいわゆるリレーコンピューターと言い、その後はグローバルプロセッサー、GPと言われるもののソフトのふぐあいだ、こう言っているわけですけれども、肝心なところは、顧客や一般の預金者に迷惑がかかるかもしれない、そういう迷惑がかかるようなことが万が一にでもあってはいけないという感覚が経営陣にあったかなかったか。いわゆる顧客や一般の預金者に対するモラルの問題なんです。そこが一番肝心なところで、私はそこについて、前田社長の説明を伺いたいと思います。
 この責任はあると私は思うんですね。ですから、かつての経営者、三人頭取が退任をされましたけれども、頭取たちが、長い人はかなり長い間、頭取職におりましたから、興銀の西村さん等には数億円というような慰労金、退職金が支払われる計算になるというような報道もありました。こうした合併の責任者たちに対する退職慰労金、こうしたものの支払い等について、責任を明確化する中でちゃんとする気があるのかどうかというようなことも含めて、御回答をいただきたいと思います。
前田参考人 お答え申し上げます。
 まず最初に、経営陣を初めとするリスク認識の部分でございますが、先ほどもちょっと申し上げましたとおり、グループ役職員全体に、統合におけるシステム、事務にかかわるリスク、いわゆるオペレーショナルリスクに対する認識に甘さがございました。それから、障害発生時のお客様への影響、さらには社会全般への影響を把握した上でのリスク管理が十分には行われていなかったと言わざるを得ず、この点は深く反省をいたしております。
 それから、退任された方に対する退職慰労金の件でございますが、システム障害に関する調査、それから当局の検査の結果を昨日いただいております。責任を明確化する中で適切に対応してまいりたいと思います。
 今回の株主総会は六月の下旬に、既に招集通知を出しておりますが、みずほホールディングス、みずほ銀行、みずほコーポレート銀行におきましては、退職慰労金の議案は上程をいたしておりません。
 以上でございます。
五十嵐委員 この際一期見送ったということなのか、それともその先があるのかというのはよくわからないですけれども、一応反映をさせた、今度の株主総会で今度の事件のことについては反映をさせて、退職慰労金の提案は見送るということだと思うんですが、私は、監督官庁の方にも全く責任がないとは言えないんじゃないか、こう思うんですね。この間に検査もあったでしょうし、いろいろな報告徴求もしているんだと思いますけれども、監督官庁の監督責任はどう考えるのか。
 それから、ここへ来て検査の結果を通知していると思うんですが、それに基づいて最終的な報告を受けて行政処分ということになると思うんですが、どのような姿勢で臨まれるのか、監督責任も含めて大臣から伺いたいと思います。
柳澤国務大臣 この一連の流れ、この中で我が監督官庁は十全のことをやってきたかという見地で、私もいろいろと考えてみたわけでございます。
 余り長々としたお話は時間の関係で差し控えなきゃならぬと思いますけれども、平成十三年三月から六月にかけての検査、ここで私どもは、時間の不足、それが何から招来したかといえば、先ほど前田社長の言葉にもありましたように、経営陣のシステムリスクに対する認識の甘さ、そうしたものが決断のおくれになって、そのためにいろいろなテスト等の時間が確保できないのではないか、こういうようなことになったこと、それからもう一つは、口座振替の取り扱いの仕組みが、当初の構想で本当に消化できるほどの能力があるのかどうか、そこにも懸念があるといったようなことを中心に指摘をいたしたわけです。
 ちょうどその検査結果が通知される十月のころというのは、実は、みずほ銀行の分割、統合の認可申請が行われた時期と一致しているわけでございます。これも非常に重要な一致だったと私は思うんですが、その認可申請の審査の際には、実際にこのシステムの構築に当たっている人たちも面前に呼んで、そして今回も検査に当たった我が方のシステムの専門家を加えまして、いろいろとシステムの安全性というものにチェックをいたしたわけでございます。
 その後は、実は、そうした直接のシステムということではなくて、いろいろ確認の手だてというのはみずほホールディングカンパニーの方の渉外のところとやっていたということですが、結局において、その認可申請のときのシステムエンジニアを目の前に置いてのチェックにおいては、彼らは、第一点についてもしっかりこれから頑張ってやりますと言いますし、第二の点については、今すぐ、そのキャパシティーの調整の点については別案を考えてやりますというようなことでありました。
 そういうことで答えをもらったものですから、後は、このテスト等がしっかり行われているんですねということの確認をいろいろな節目でやらせていただいたわけですが、結局において、私ちょっと留守していたんですが前田社長も申したように、今回事故を起こしたこのシステムの開発の部門からの報告がホールディングの方の経営陣にきちっと正確に、迅速になされていなかった。これがために、私どもの方にもそのことが、結局、ホールディングの人たちに聞いている限り、いわば実態を反映しない、事実とは、ずれた、そういう報告、チェックに対する回答になってしまった、こういうことでございます。
 そういうことで、これをどう考えるかということでありますけれども、私としては、管理責任を非常に、内部の管理責任の問題だと思いますが、対外的な、私どもとの接点のところが、完璧に、いわば事実と違ったことを信じ込んで言っているわけでございますから、私どもとしてもその適切な監督ができなかったというのは、これはやむを得ないことだったのかなということを考えているわけでございます。(五十嵐委員「行政処分」と呼ぶ)失礼しました。つけ加えて申します。
 今度、今委員おっしゃられたとおり、検査結果通知を昨日発出すると同時に、この検査結果に対する当該行の認識とか、あるいは業務の改善についての考え方あるいは方針といったものについて報告をいただくわけでございますが、それに基づいて私どもとしては厳正に処分をいたしていきたい、このように考えております。
五十嵐委員 厳しい目で見ていただきたいと思うんですが、今のお話でも、どうも、開発責任行から上に、経営者に情報が上がらなかったというのは、今の段階ではそれを信じるほかないわけですけれども、後でもしそうではなかったというようなことがわかったときには、また重大なことになると思いますので、厳密に検証をさらにしていただきたいというふうに要望をしておきます。
 それで、ちょっとその問題と外れるんですけれども、けさほど金融庁の方から、私どもの党で生命保険会社の決算を伺いました。ちょうどみずほの前田社長がおられるものですから伺いたいと思うんですが、一時、朝日生命が大変な契約の流出といいますか、解約のあらしに見舞われたわけでありますけれども、今どうなっているのか。先ほど聞いた話では、昨年十月ぐらいのレベルに落ちついているというんですが、それがどの程度の水準なのか。私は疑わしいなというふうに思うんですが。
 生命保険会社全体から見ると、利益が大変厳しい状況になっていることは間違いない。逆ざや現象が起きているし、その他の、例えば株の含み益等も大幅に落ちているということも間違いないわけですから、生命保険会社全体の利益が大変厳しい状況になっている、経営が厳しい状況になっていることは間違いないわけで、そこで、生命保険会社と銀行とのダブルギアリングというのは法律では禁止されておりません。しかし、リスクが当然あるわけでありまして、例えば朝日生命とみずほ、これは旧第一勧銀が朝日生命のメーンだったわけでありますけれども、その朝日生命とみずほとの間では株式、劣後債、劣後ローン等の持ち合いは一体どの程度あるのか、参考までに伺っておきたいと思います。
 また、本体だけではなくて、系列会社、投資信託等を通じてのダブルギアリングがどの程度あるのか。事前に、わかったら教えてほしいということを通告してありますので、教えていただきたいと思います。
前田参考人 お答え申し上げます。
 生命保険各社と私どもの関係で申し上げますと、生命保険各社はみずほグループの主要な株主様でございます。と同時に、劣後ローンなど資本提供をいただいている投資家でもございます。一方で、生命保険各社にはみずほグループから基金等への資本拠出もございます。
 ただいま先生のおっしゃいましたダブルギアリングのところでございますが、これは私ども、当然、ダブルギアリング、自己資本規制の問題に関しましてはルールがございまして、ルールにのっとった厳正な取り扱いをいたしております。
 それから、個々の会社のお取引、どこでどう持ち合っているかというのを私がこの場で申し上げるのは、必ずしも全部実はデータを持っておりませんで、適切ではないと思いますが、みずほ全体で申し上げますと、基金等への拠出が約四千五百億円ございます。そのうち朝日生命様には千五百八十億円の資本拠出を行っております。
 以上でございます。
五十嵐委員 多分、それは本体の持ち合いなんだろうと思うんですね。子会社等を通じてのダブルギアリングは、それをはるかに上回る額に最終的には達するだろう、こう認められるわけですけれども、そうなると、生保の危機というものが深まると、私はやはり銀行の危機、システミックリスクの引き金になる可能性が依然としてまだあるんだ、こう思わざるを得ないんですね。
 そうすると、生命保険会社の問題というのは、実は、我々が考えている以上に、国民にとっては銀行以上に深刻な問題。消費者、国民の消費行動に影響を与えるのは、むしろ私は生命保険会社に対する心配の方が大きいと思うんですね。
 この問題にもっと政府は真剣に取り組むべきだと思うのですが、かつてありました破綻前の予定利率引き下げの議論が、金融庁の内部で再燃しているのではありませんか。それから、契約者保護機構へ公的資金を入れようじゃないかという話が出ているという話もありまして、その辺の真偽を伺いたいと思います。
柳澤国務大臣 まず、予定利率の引き下げの問題については、五十嵐委員つとに御案内のとおり、金融審議会で御議論していただいたのですが、結局、パブリックコメントにかけましたところ、国民世論というか、そういうものの支持を得るという状況にはないのではないか、こう考えられたところから、いわば他の審議項目について見切り発車的に、できるものから先にやろうというようなことで、今日この問題というのは、そのままに置かれているということでございます。これが現在金融庁の中で何かまた再検討の対象になっているかというお尋ねですけれども、この点はございません。そういう事実はございません。
 保護機構の問題でございますけれども、これは、現在民間拠出の部分がほとんど底をついていて、あと、現在政府がコミットしている四千億が保護機構の資金の大宗を占めているという状況にございます。しかも、この資金は十五年の三月に動かなくなってしまう、こういう状況にあるわけでございまして、私どもとしては、この保護機構を一体どうするかということについて、この期限が近づいてきたときには、やはり真剣に検討しなければならない。これは民間の方々にも無関心ではいられないはずでございまして、民間の保険会社の方々ともよく論議を重ねまして、適切な結論に達してまいりたい、このように考えております。
五十嵐委員 ぜひ、モラルハザードに陥ることがないように、慎重な検討をしていただきたいというふうに思うわけであります。
 それから、先ほど、銀行全体の健全性については平行線だというお話がありましたけれども、ここまで償却余力がなくなってまいりますと、私どもの言っている議論の方が説得力を持ってくると思うんですよ。例えば、この五年分の税効果会計ですけれども、これは、課税所得が五年分で、それまでに税効果に計上した分以上上回らなければ、これは監査法人も税効果を否認しちゃうんじゃないですか。そういう危険性が非常に高まってきた。裸の中身になってきて、おまけで得られるような利益がなくなってくるということになると、大変厳しい状況に陥ってきているので、税効果会計を五年分見るのは無理が生じてくるというのは我々は前から言っていることなんですが、それは、平行線というより、むしろ現実は我々の議論に近づいてきているというふうに思うんですが、どうですか。
柳澤国務大臣 これはもう委員には申し上げるまでもないことですけれども、要すれば、税務会計と企業会計、この場合には銀行会計との調整の項目でございまして、その調整の仕方については、企業会計基準それからまた実務指針ということできちっとルールが決められておりまして、銀行の決算においても、外部監査法人がその基準を当てはめて税の繰り延べ資産の金額を判定しておる、こういうことでございます。
 したがいまして、私どもとしては、それは客観的な事実でございますから、それがいいとか悪いとかということでは私はなかろうと。
 今後のことはどうかといえば、今後のことは、これまでこれだけに思い切った処理損を出して不良債権の処理に当たったわけでございますから、私ども別に現在、大手銀行が出した、次は二・五兆円ぐらいの処理損で済むのではないかという見通しについて、あれこれ申し上げるだけの準備はまだ実はないわけでございますけれども、あれだけ、七・七兆というようなことをやった後は、やはりかなりの規模で処理損を縮小してくるだろう、こういうように思っておりまして、今先生が申されるように、業務純益で賄い切れないということで、経常なりあるいは当期の利益なりのマイナスが今後とも続くというようには必ずしも、現在まだ計算を完全に我々していませんのではっきりしたことはもちろん言うのを避けなければなりませんが、見通しの問題としては、そんなことにはならないのではないか、こう考えているということでございます。
五十嵐委員 しかし、特別検査は、百四十九社で不良債権が九兆七千億ですか、ふえているわけでありまして、十兆円近くふえているわけで、では、その特別検査の百四十九社で全部洗い出してカバーしたのかというと、そうではないわけですから、まだ潜っている、隠れている、検査をすれば出てくる不良債権というのはあるわけでありまして、先ほど言いました、約二・五兆とおっしゃったけれども、予定されているのは二兆五千二百三十億円、これで間に合うとは私は思わないということであります。
 それから同時に、認められているルールだからとおっしゃったけれども、税効果会計は大昔からあったわけではなくて、日本の金融機関の経営が厳しくなった時期から五年ルールというのは入れられたんじゃないですか。ですから日銀総裁も、アメリカ並みになったらどうなるかということを心配しておりまして、五年ルールが果たして適当なんだろうかということも私はその言葉の裏にはあると思うので、五年ルールが認められたルールだから税効果会計が当然認められるべきで、自己資本に当然のこととして組み入れていいんだという理屈については、私はちょっと無理があるというふうに思うわけでありますが、時間がありませんので、これはまた別途やらせていただきたいと思うわけであります。
 それからもう一つは、今焦眉の急は、地銀の合併促進というのが大きなテーマになっているかと思うんですね。それから、自治体が来年度の普通預金のペイオフ解禁を控えて指定金融機関を選別しようという動きが出ておりまして、それがまた新たな金融危機の引き金になるという可能性があると思うんですね。合併促進策、そのインセンティブが働くようなものが果たしてできるのかという問題があると思う。どのようなものを検討されているのか、どのような手順でこれをおやりになろうとしているのか、伺いたいと思います。
柳澤国務大臣 私ども、この前の新規施策の中に三項目、新しい取り組みというものを発表させていただきました。準常駐的な検査であるとか、あるいは不良債権の直接償却のスケジュールを目標値を各年度別に設定するとかということに並んで、合併の促進、特に地域金融機関についてそういうことを申させていただきましたが、まだそれからそんなに日がたっているわけでもございませんし、今検討を始めるかといったところでございますので、どうしたことが具体項目としてあるかということについては必ずしも申し上げられるだけの準備がないわけでございます。
 いずれにせよ、私どもとしては、多分、関係の役所ということになると私どもの役所だけでは済まない問題の広がりを持つだろう、こう考えていますので、これら関係の役所ともよく打ち合わせさせていただいて、有効な施策を打ち出してまいりたい、今はこの程度にしか申し上げられません。
五十嵐委員 ぜひ、考えられるんでしたら、早目にその全体像をまとめていただきたいと思います。
 ところで、もう御存じだと思いますが、最近インターネット上で柳澤さんのスキャンダルが表に出てきておりますが、実はこのスキャンダル、私どもは昨年の段階でつかんでおりまして、調査を進めているところであります。これは重大な問題でありますから、事柄がアイワイバンクの認証問題をめぐる重大な問題でありますから、ぜひ火の粉は払っていただかなければならないと思うんですが、きょうは時間がありませんので、その中で派生して出てきた幾つかの問題がありますので、その方をまずただしておきたいと思います。
 これは、柳澤さんの土地、御自宅の問題なんでありますけれども、ここに、静銀信用保証株式会社代表取締役社長大野康吉さん名の某雑誌編集長あての私信があるんですね。ことしの四月三十日付なんです。これは、ちょっと間違っている部分もあるんですが、柳澤さんが一九九五年に掛川市の宅地を購入したときに、静岡銀行の住宅ローンを利用されて、今も返済中だと。そのときに、上物をここに建てた場合は追加担保を入れていただくという念書を取り交わしている。この居宅は、土地上に平成十年二月二十八日に完成して、この資金は自己資金で調達されたということなんですけれども、追加担保の約束が果たされていない、ルール違反だというふうにされているわけですけれども、こういう事実はあったんですか。
柳澤国務大臣 事実があったかということなんですけれども、要するに、今委員の指摘されたように、私、選挙区が移りまして、新しいところに移らざるを得なかったわけですが、そのとき、まず土地を手当てしたわけです。そのときに、静岡銀行にお願いして融資をお願いをしたわけですが、その土地は当然抵当にとられるというか、とっていただいたわけです。
 その後、上物が建ったときに、郵便で、追加担保を求めるという趣旨のことが書いたものが来ましたので、私は、それは郵便も悪いことはないかもしれませんけれども、これだけ大事な問題ということになると、やはり面談をして、お話をして調印をするということでなければならないんじゃないでしょうかということをその銀行の支店長、この人は浜松の支店長さんですから偉くて、常務さんか何かのお役目であったと思うんですが、そこに申し上げたということです。
 それで御連絡も待っていたんですけれども、その後ちょっとさたやみになったものですから、私は、あの通知というのはいわば機械的な処理みたいなことだったのかなというように、やや勝手だったかもしれませんが解釈をして、そのままにしてあるということでございます。
 ですから、私としては、来ていただくなり、私を呼びつけていただくなりすれば、いつでもそれは担保の追加提供に応ずるという姿勢を今日までずっと持してきた、こういうことでございます。
五十嵐委員 ちょっとそれはおかしいなと思うんですね。多分、監督官庁はその当時はまだ金融庁ではなかったかもしれませんけれども、おっしゃるとおり、面前自署、捺印、押印というのが、これはそれで本人の意思を確認するというのは当たり前のことであり、静岡銀行というのは非常にかたいので有名な銀行ですから、当然やっていると思うんですね。そういう要求はあったと思うんですけれども、それがなかったという御説明は、どうもこれはおかしい。それで、それは柳澤さんの利益になることなわけですから、相手が――いやいや、追加担保を出さないというのはそういうことだと思うので、それはおかしいなというふうに思うんですね。
 それから、土地だけで担保は十分だという説明を記者団にされたのですかね。土地の上に上物が建つと、土地だけの担保というのは弱いわけですね。居住権を主張されたり短期にほかの方に又貸しされたりしますと担保価値が下がるということは常識でありますから、私は、これは追加担保される方が当たり前なのでありまして、これは柳澤さんが、十分こういう契約関係に熟知されている大臣がこれを放置されたというのはおかしいということを指摘せざるを得ないと思うんですね。
 また、私は、そのことと同時に、移られた先なんですが、掛川にある現在の御自宅なんですけれども、九八年三月に新築をされているわけですが、建築業者は地場の有力ゼネコンである川島組、氏原さんという社長の方ですけれども。掛川に転居する前は袋井市に住民票を置いておられて、また浜松に御自宅があったということは今の御説明のとおりなんですが、浜松の土地は九八年五月に自宅完成後売却をされているんですが、売却をした先が、川島組の子会社である株式会社川島デベロップという会社なんですね。つまり、家を建ててもらったところと、その資金でやっていたかどうか、土地を買ってもらったところは同じところだというのは、そういうこともあり得るかとは思うんですけれども、ゼネコンということでもありますし、これは地元のうわさでは、浜松の土地を実勢価格よりも高く買ってもらって、また建築費は安くしてもらったんだといううわさが出ているわけですね。
 そうなりますと、これはちょっと問題があるんじゃないかというふうに思うんですが、もしできましたら疑念を、これは単なるうわさで間違いなんだというのであれば、このときのもし書類があれば、売買価格等を明らかにしていただきたい、こう思うんですが、いかがですか。
柳澤国務大臣 これは、先ほど言ったようないきさつで、まず土地を手当てしたわけです。浜松には住んでいると物すごい時間のロスがあるんで、これはやはり移らざるを得ないということで、そういう準備に入ったわけですが、家を当然建てなければ目的は実現しないわけですから、うちを建てたわけですが、そのときに、私としては、やはり同時履行というか、ある意味では交換をしてくれるようなことでどこかお願いできないだろうか、こういうことをお願いしたわけです。そういうことで、私の母校の高校のあるところでもございますので、友人もおりますし、その友人にこの問題を投げかけたら、ここにそういうことを話したらいいじゃないかということで、話をしてもらって、そしてそうしたことで話がまとまった、こういうことです。
 値段はどうなんだということでございますけれども、浜松の方を土地、家屋を七千万程度でこれを売却する、それで一方、掛川の家の建設については外回りを含めて八千三百万程度で購入する、こういうことで話が成立しまして、そういうことでお互いがその契約を履行した、こういうことでございます。
 ただ、私は、そういう際に、やはりそれぞれにかなり評価だとかそういったことがかかわる問題でございますので、私としては基本的に、自分自身が素人でやるよりも、やはり専門の方を代理に立ててやっていただくというのがよかろうと思いまして、その方にそうしたお話の取りまとめをお願いしたということでございます。
    〔中野(清)委員長代理退席、委員長着席〕
五十嵐委員 政治家とゼネコンとの関係というのはかなり問題があることが多いわけですから、李下に冠を正さずという言葉がありますけれども、私は、こういう取引はやはり誤解を生むもとだ、こう思うんですね。ですから、物件は違うんですが買い手と売り手が同じ、相殺をすればそうなってしまうわけなんで、これは慎重にやられるべきだと思うんですが、ちなみに、川島組さんと柳澤さんとの間では、政治献金あるいはパーティー券というおつき合いは、関係はあるんですか。
柳澤国務大臣 川島組さんとは、私はそれまでは全く知らなかったわけです、選挙区も違いますし。そういうことで、したがって友人の助言をいただいたわけですが、今委員が御指摘のとおり、その建設会社さんはこの地域では、いわばその地域での大手、こういうことでございまして、その後、私の政治活動についてもいろいろと御支援をいただいているかと思います。ただ、ちょっと、きのうのきょうでございまして、どの程度かということはつまびらかにできませんけれども、いずれにしても、非常に、後援者としてありがたい御後援をいただいておるということで、私自身感謝をしているという関係でございます。
五十嵐委員 おっしゃるとおり、この川島組さんは地元では有力な企業なんですね、私どもも全部調べさせていただきましたけれども。ただ、一方では、地元の市との間で、公共事業をめぐって口ききがあったとかなかったとかということもかなり頻繁にうわさされていることでもあるんですね。ですから、私は、有力閣僚としての柳澤大臣が、ただありがたいということではなくて、もっと公私の区別を厳密にし、疑問を提示されたら明確にお答えをいただくというのが正しい態度であろう、こう思いますので、この点についてはもう触れませんけれども、今後よろしく、こういうような疑惑が降りかかったときには積極的に明らかにしていただきたいということなんですね。
 時間がもうなくなったんですが、前回、私がちらっと申しました、東急エージェンシーの脱税の問題がありますねという話を、大臣おられないところで言ったかどうか、指摘をさせていただいたんですが、この東急エージェンシーとは柳澤さんは大変親しい関係にある、特に前野徹さんとは親しいというふうに伺っているんですが、どのような御関係か、お答えいただけますか。
柳澤国務大臣 私は全くもって今のお言葉をやや意外にお聞きしました。
 要するに、二十年ちょっと前に、二十年以上前になりますけれども、どこかでごあいさつをする機会は持ったかと思いますが、しかし、それ以前もそれ以後も全く格別な、特別な関係にはございません。今、五十嵐委員が言われた前野何とかというようなことも、私、ちょっと聞きそびれるわけで、私の政治活動の中で何か交差した点があるだろうかと考えて振り返ってみましても、全くございません。
五十嵐委員 わかりました。それは前野徹さん、これは東急エージェンシーの元の社長で、政界では有名な方でありますけれども。
 それで、この東急エージェンシーという会社は極めて政治的な会社でありまして、以前にも実は裏金をつくって追徴課税を受けたということが報道された会社なんですが、実は、それとは別の裏金づくりがイトーヨーカ堂との間で行われたということが報道されておりまして、その行き先にいろいろ憶測が出ているということなんです、一言で言うと。
 そのイトーヨーカ堂がアイワイバンクを御存じのとおり認可されてつくったわけでありますけれども、このアイワイバンク認可が非常に難航していた。それが、どういうわけか、柳澤さんになってからとんとんといったじゃないかという話がありまして、このアイワイバンクの認可をめぐって、もう時間ありませんけれども、どのような論点があって、なぜ進まなかったのか。そして、なぜそれがオーケーになったのかということだけ最後に、もう時間ありませんので、簡単に伺っておきたいと思います。
柳澤国務大臣 私が着任したときには、内認可の申請が既に行われておりました。
 そういう中で、私がそのときに聞いたのは、これはちょっと今時間がかかっていますということですが、その理由は、アイワイバンクが本来ビジネスの基本的な骨格として考えておった、端末を置いたところと、その端末が、一般の今の都市銀行のやっているBANCSというところに接続をさせてもらい、その手数料をいただくというときの、その手数料を幾らにするか。つなげていただけるか、つなげていただいた場合、手数料は幾らであるかということについて、まだちょっと話がまとまらないんです、こういう報告を受けまして、ああ、そうということでございました。
 そうしたら、私、今度のことがあったんで事務当局から上げさせたんですけれども、三月末ですかというときに、ようやく話がまとまりました、ああ、それはよかったねということで、私が内認可をおろした、こういうことでございます。
 全く法令上、五十嵐さんもまさか私を本当に疑っているとは思わないで、政党だか何だか、組織的にそういうことを言わざるを得ないというお立場だとは思いますけれども、それはそれで結構でございますけれども、そんなことをやって金融大臣が務まるとは、私は思いません。
五十嵐委員 時間が来ましたので、それはまた後ほどやらせていただきます。ありがとうございました。
坂本委員長 午後零時五十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時十三分休憩
     ――――◇―――――
    午後零時五十三分開議
坂本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。生方幸夫君。
生方委員 本日は、参考人として、あおぞら銀行の社長の丸山さん、それからソフトバンク社長の孫さんに、お忙しい中をお越しいただきまして大変ありがとうございました。一時間にわたりまして、御質問をさせていただきます。
 まず、あおぞら銀行の丸山社長にお伺いしたいと思いますが、つい先日、あおぞら銀行の決算が発表をされました。私も、新聞報道、それから決算書そのものを拝見させていただきまして、業務純益が前期比五四%増となっているということを伺いまして、経営再建は順調にいっているのかなというふうな感想を持ちますが、社長の一年間を振り返って、どのような状態だったということをお話しいただきたいと思います。
丸山参考人 あおぞら銀行の丸山でございます。
 ただいま、あおぞら銀行の経営が大変順調である、こういうコメントをちょうだいいたしました。まことにありがとうございます。
 確かに、経営健全化計画というものが我々銀行にとっては一つの指針になっておりまして、この経営健全化計画を、前年度、前々年度、二期連続で達成いたしました。その限りにおいては甚だ結構だと思いますし、二期連続と申しましても、その前の三期は特公管の時代でございましたので、ちょっと別だと思います。
 とりあえず二期連続で達成したということで、私としては大変喜んでおりますが、どういうことが原因でこういうことになったかというと、やはり、一般的には銀行の貸出金が減少をしていると思うんですけれども我々の場合には増加してきた、しかもスプレッドも改善してきた、それから、調達金利が低下いたしまして預貸のスプレッドが改善した等々が重なりまして、こういうことになりました。
 大変、銀行のお取引先の皆様の御協力のたまものだと感謝しております。
生方委員 あおぞら銀行と新生銀行、二つの長期銀行が同じような形で再建過程をたどっているんですが、新生銀行さんの方は瑕疵担保条項を大胆にお使いになって再建を進めている、あおぞら銀行さんの方は、それは比較的控えながら再建を進めているということで、貸出先の中小企業等にとっては、無理やり引きはがすというようなことをやらない中で業績がよくなってくれるのが我々も一番ありがたいわけで、引き続きそうした努力をしていただきたいということをまずお願い申し上げておきます。
 瑕疵担保条項は来年の九月まで残っているわけでございますが、これまで瑕疵担保条項を使って売却をした債権の額は幾らになっているのか、それをお伺いしたいと思います。
丸山参考人 瑕疵担保条項を使って回収できた額ということでございますけれども、ベースがちょっといろいろあると思うんですが、預保の承認ベースか、もしくは実際の入金ベースか。預保に承認してもらった後、実際に入金するまでに二、三カ月のギャップがございますので。
 ただ、実質的にはやはり預保の承認ベースというのは本当の姿だろうと思いますので、それで答えさせていただきますが、現在まで約千四百五十億円であります。
 よろしゅうございましょうか。
生方委員 それは何社でございますか。
丸山参考人 正確に私はちょっと記憶していないんですが、たしか四十一社、失礼、四十九社だそうです。
生方委員 これは最初にあおぞら銀行、国から引き継いだ時点で引当金が積み立てられている分と、それ以降に引当金を新たに積み立てた分というふうに分かれると思うんですけれども、その内訳というのはわかりますでしょうか。
丸山参考人 これは今、まことに申しわけないんですが、現時点では、私は正確なところを記憶しておりません。
 確かに、国からちょうだいした部分と、その後、それでは不足だということで積み立てた分はあるんですが、現時点で私、承知しておりません。申しわけございません。
生方委員 額はいいんですけれども、その後に積み立てた分、いわば引き当てている分ですね。これが今、瑕疵担保条項を使って処分をした場合、その引当金相当部分はその後はどういう処理になるのか、ちょっと教えていただきたいんですけれども。
丸山参考人 これは私どもみずから積み立てたものでございますので、国との間のやりとりでは、預保との間のやりとりでは、この分は関係ございません。ですから、当然我々の社内に留保されるわけでありますけれども、実際には、ほとんどそれは他の案件のさらなる保全のために使っている部分が多いかと思います。
 実際の数値は、ちょっとそこまでは覚えておりませんので、御容赦願います。
生方委員 そういう再建途上の中で、四八・八八%を所有している主要株主であるソフトバンクさんが株を手放すやの報道がなされたわけでございますが、その報道をお聞きになって、丸山社長の感想をまずお伺いしたいんですが。
丸山参考人 正直申し上げまして、その最初の報道というかニュースが伝わりましたときには、大変悲しい、こういう感情を持ちました。せっかく開業来、ともに手を携えてきたわけですから、とりわけ大株主三社、ソフトバンクさん、東京海上さん、オリックスというものは手を携えてきたので、ここでそういうことになるのは大変悲しいというのは率直なところであります。できればそうはなってほしくない。ただ、どうしてもそうならざるを得ないんだとしたら、今後の我々の経営のためにプラスになるような、どうかそういういい株主に譲渡してほしいというのが私の偽らざる感想であります。
 今まで、孫さんにも、取締役会等で非常に我々にとって参考になるようないい御意見をちょうだいしてきました。少なくとも現時点で、ソフトバンクさんはこれについてまだどうこうというあれじゃございませんで、専らうわさだけでございますので、本当のところは私にもわかりませんけれども、もし、そのうわさどおりであるとすれば、なるべく長く株主の座にとどまって、なおかつ適切なアドバイスをちょうだいしたい、かように思っております。
生方委員 そこで、孫正義社長にお伺いしたいんですが、いろいろな報道がなされております。もう売るのを前提としたような報道も随分なされておるのですけれども、実際のところ株を売却するおつもりがあるのかどうか、率直な意見を聞かせていただきたいと思います。
孫参考人 ソフトバンクの孫です。御質問いただきました。
 売却の検討はしております。しておりますけれども、まだ売却をするとかしないとかということの結論は出しておりません。
 そもそもそういうような検討を開始したきっかけといいますのは、本年四月一日に銀行法が改正になりました。この法律の改正によって、原則として、一定の猶予期間をもって、その間に主要株主の基準、つまり二〇%未満になるように、主要株主基準を下回るような株主になるように、つまり処分をするように、その立場を変えるようにというような趣旨の法律改正がなされているということであります。
 これは私も大変驚いたわけでございますけれども、私どもが購入を検討しておった段階、あるいは決めた段階ではそのような法律はもちろんなかったわけでございますので、後でそのような法律が出てきたということで検討せざるを得ないという状況でございます。
生方委員 四月に銀行法が改正をされて、二〇%以上の株主に対しては金融庁から検査が入ることがあり得るということなんですけれども、あり得るということで、二〇%以上保有してはいけないというふうに変わったわけではもちろんないわけで、二〇%以上、検査が入るということに何か重大な支障というのがあるんですか。入ることがまずいというようなことがあるんですか。
孫参考人 法の趣旨は、私ども解釈しておりますのは、あくまでも原則売却ということを法に定められておるわけでありまして、ただし、別途許可を、認可を得れば、その認可のもとに例外的に許されるということでございます。そのように理解しておりますけれども、ただ、先ほど申しましたように、まだ売却を決めたということではありませんで、あくまでも検討を開始したということでございます。
生方委員 金融担当大臣にお伺いしたいんですけれども、我々は、原則禁止だ、原則売却だというふうには理解していないんですけれども、今孫さんはそのように理解しているようなんですけれども、いかがでございますか。
柳澤国務大臣 私どもも、二〇%以上の株主の存在を認めないというようなことでは毛頭ないわけでございまして、健全性等の観点からそういう必要が認められる場合には、検査にその株主さんの企業にも入らせていただく、そういういわば権限が与えられているということでありまして、必要性がなければ、むしろできるだけ株主たる他業種の皆さんには縦横に、自由に企業活動を展開していただきたい、そういう立場というのは尊重していかなきゃいけない、このように考えています。
生方委員 今柳澤大臣もおっしゃったように、我々も、銀行法が改正になったからといって二〇%以上の株主がいけないというふうには理解していないので、いわば唐突にソフトバンクがこの株を売却するという話が我々には伝わってきたわけですね。その意図がどこにあるのかということで、きょうわざわざ参考人としてお呼びをさせていただいているわけです。
 ここの契約には株式売買契約をもちろん結んでいるわけですが、そこの中に、「主要買主は」これはもちろんソフトバンクさんを含む三社でございますが、これは旧日債銀ですが、「日債銀に長期的な視野から投資を行い」というのがこの売買契約書に書いてあるわけですね。まだソフトバンクさんが株主になってから一年十カ月弱にしかなっていないわけで、我々はこれを長期と呼ぶか短期と呼ぶかといえば、どうしても長期とは呼びがたいのではないかなというふうに思うんですが、孫さんは、この一年十カ月弱の期間で十分もう長期だというふうにお考えになっているんでしょうか。いかがですか。
孫参考人 まず先に、先ほどの御質問の中のところですけれども、長期信用銀行法第十六条の二の二の第二項のところに、当該長期信用銀行の営業年度の終了の日から一年を経過する日までに、長期信用銀行の主要株主基準値以上の数の株式の所有者でなくなるよう、所要の措置を講じなければならない、このように明確に法律に書かれておりますので、私どもは、そのように解釈しました。ただ、先ほど申しましたように、だからといって完全にまだ我々が売却すると決めたわけではなくて、あくまでも検討をしている、検討を開始したということであります。
 今の、長期に当たるかどうかということですけれども、本年八月でちょうど二年になります。私どもの株主間協定におきましては、少なくとも二年間を保有するということで、二年以上は持つということで合意しております。
 私どもは、少なくとも二年というものは長期として持たなければいけないというふうに解釈しておりました。
生方委員 今、金融担当大臣とちょっと解釈が違うようなんですが、恐らく今後保有する場合はというのがきっとつくのじゃなくて、既にもう保有している場合はそれは適用されないのじゃないかと思うんですが、柳澤大臣、いかがでございますか。
柳澤国務大臣 二年以内に、つまり新しい法律が施行されたときに既にその主要株主たる要件を持っている人についての規定かと思うわけでございます。
 その場合には、これは二年でしたかの間に許可を申請してその許可をとるという形で、法施行後新規にそういう立場を取得する人たちとの平等を期した規定かと思うわけでございます。
生方委員 もともと持っていた人にもそれが適用されることだということで、そうすると、二〇%以上保有している人はなるたけ早く二〇%を超えた部分は売れ、そういう趣旨ではないのですか。もう一度。
柳澤国務大臣 そうではなくて、二〇%以上持っている人も、今から、四月一日から二年、十六年の三月三十一日までに、それはいつでもいいのですけれども許可をとってください、そういうことによって、十六年の四月一日からは、二〇%以上持っている人たちはみんな許可を持っているということにしよう、こういう趣旨の規定でございます。
生方委員 今柳澤大臣がおっしゃったことがもちろん正しいわけで、孫社長、解釈がややちょっと曲解というか、だから売るんだということには直接結びつかないと私は思うんですが、今の柳澤大臣の話では、別に持っていても何ら支障はないということなんですが、そういう前提でお考えになってはいかがでございますか。
孫参考人 新しく本年四月に決まったばかりの法律で、私どもも十分にその法律を理解しているのかどうかわかりません。それについてはもう少し勉強してみたいというふうに思っておりますけれども、少なくとも、新たに認可を受けた場合にはこの限りではないということで書いておりますけれども、逆に私どもにとって、新たに認可を得るというのはどのような義務が生じるのか、そういうようなことについて等も十分にこれから検討していきたい。
 私どもはこれまで比較的自由に事業をやってきておったわけですけれども、私どもの今後の事業活動において、こういう許認可を得て行うということがどういうことを意味するのか、そういうようなことを十分これから検討してみたいというふうに考えております。
生方委員 そのことについては、金融庁の方に何かソフトバンクの方から問い合わせはなさいましたですか。
孫参考人 まだ私ども、先ほど申しましたように、売るとか売らないとかいうことを決めておりませんので、現時点でそのような相談をするという必要はないというふうに思っております。
生方委員 火のないところには煙が立たないのでございまして、いろいろな新聞にいろいろ報道されておりますし、いろいろな雑誌でもソフトバンクが売るというのを前提にした話がいろいろ飛び交っているわけでございまして、今、孫社長がおっしゃったように、四月に銀行法が改正されたから云々という理由だけではなくて、ほかにソフトバンクなりの事情もあるやに聞いておるんですが、少し話を進めまして、長期的な保有が二年で長期になるのかどうかというようなことをさっきおっしゃっておりましたですが、ここに「経営の健全化のための計画」というのがございます。
 これは平成十二年九月に出されました債券信用銀行のものでございますが、ここに「ソフトバンク・グループの投資目的」、これはグループですから、ソフトバンクと東京海上とオリックス、三社入っているんだと思いますが、この中に「弊行を、収益力のある健全な銀行、日本の銀行業界において特長ある地位を占める新しい銀行、日本経済の活性化に貢献する銀行として再生するということが、ソフトバンク、オリックス、東京海上火災保険の中核三社が弊行を買収するにあたっての基本的な目標であります」というふうになっているわけですね。
 「中核三社以外の各々の株主も、長期的視野に立ったこのビジョンに賛同して投資しており、長期にわたって出資を継続し、弊行の再建に協力していく予定であります」というふうになっているわけで、まさにこのソフトバンクグループの中核をなしているソフトバンクが、この投資目的が、私はどう見てもまだ達成されているとは思わないのですが、達成される途中で仮に売るとすれば、いわば任務というんですか、我々に果たした公約みたいなものを放棄した形で売るというのはいかがなものかというふうに思うんですが、売るということになったとき、この投資目的とそごはございませんか。
孫参考人 私どもは、少なくとも二年以上は保有しようということで考えておったわけですけれども、経営については、一歩一歩銀行は、少なくとも約二年前の当初に比べればはるかに健全な状態になってきて、かつ経営陣も立派に今その責務を果たしている。随分さま変わりの状況になってきた、落ちついてきた、こういうふうに認識しております。
生方委員 それは瑕疵担保条項の問題がございますので後ほど述べますが、少なくとも、ここには、先ほどの売買契約書の中には「日債銀を収益性・成長性の高い銀行として運営する目的で日債銀の株式を購入する意図を表明し」というふうになっているわけで、仮に二年で売ってしまえば「日債銀を収益性・成長性の高い銀行として」というふうに、まだたった二年しかたっていないわけで、これが達成されたとはとても言えないわけで、この時点で株を売買するとすると、この株式売買契約書に違反をするんではないかというふうに私は思うんですが、孫さん、いかがですか。
孫参考人 その辺についての解釈については私どももこれから十分検討してみたいというふうに思っております。
生方委員 この売買をするのだというような発言があってから、同じようにソフトバンクさんから誘われて、誘われたかどうかはわかりませんけれども、投資をしました東京海上火災やオリックスさんの方からも批判が上がっている。もちろん、金融庁の方もある程度の批判はしておるわけで、柳澤さんにこの間こちらでも質問させていただきましたが、これは本当に、ここの時点で売ってしまうということは、少なくとも我々があのとき委員会の中で審議した中で、長期的保有というのが二年でまさか株を売るというのは考えていなかったわけです。
 むしろ我々が心配したのは、新生銀行の方はリップルウッドという、これは投資ファンドでございますからいつかは売り抜けていくというのは、これは会社の目的がそうでございますから、そうであろうと。そちらを我々は非常に心配したわけですけれども、こちらの方は日本の会社が買うのであって、長期的に保有をして、きちんと日本の風土に合ったような銀行に変えていってくれるんだ、だから我々もそこで了解をしたわけです。
 今、この時点でソフトバンクさんが、まだもちろん決定していないとは言いますが、仮に売るということになれば、リップルウッドよりもむしろソフトバンクの方が投資ファンド的な役割を果たしてしまうことになっちゃうんじゃないかというふうに思うんで、私は、この売買契約に照らしても、やはりきちんと、だめならだめというふうに言った方が国民にも非常にわかりやすいと思うんですが、いかがでございますか。
柳澤国務大臣 何と申しますか、私どもとしては、そこの契約の条項あるいは健全化計画における記述、こういうようなところに表明された意図というものが今後とも尊重され、現実にそれが行われるということを心から願っている。孫社長も、生方委員の御質問に答えられて、今まだ決定しているわけではない、こうおっしゃっているわけでございますので、先回りをして私が何かを申し上げるというのは全く不適切ではないか、このようにお答え申し上げます。
生方委員 もし仮にソフトバンクが売るというようなことが正式に決まったら、金融庁としてもそれなりにきちんとした対応をとっていただけるものというふうに確信をいたしております。
 孫社長にお伺いしたいんですが、普通の企業の株を普通の企業が買ってそれを売るというのは、これは全く普通の商行為でございますから、我々はとやかくここで言うような問題ではもちろんないわけでございまして、ここは、あおぞら銀行の場合は国営もされておりましたし、公的資金が大量に導入されている、いわば国民のお金が入っている銀行だからこそ、私もきょうこうやって参考人としてお呼びして、お話を伺っているわけでございます。
 孫社長は、このあおぞら銀行に公的資金が幾ら投入されたか御存じでございますか。
孫参考人 その数字は存じ上げておりません。
生方委員 これは新聞に幾らでも書いてあるわけでございまして、存じ上げないというのはちょっとおかしいかなと思うんです。存じ上げないものは存じ上げないでしようがないんですが。
 額はいろいろなとり方があるんですけれども、一応、四兆三千八百三十四億円。これは今皆様方のお手元にお配りしました資料の中に書いてございます。内訳は、国民負担が確定した分が、債務超過の穴埋めとして三兆七百十四億円、九八年三月注入分の損失が六百億円。将来回収が期待される分、これは全額が回収できるかどうかわかりませんが期待される分でも、実際にもう既に公的資金が導入された部分で、不適資産の買い取りとして三千百八十八億円、保有株の買い取りとして六千七百三十二億円、譲渡後の資産注入として二千六百億円、計四兆三千八百三十四億円というふうになっております。
 これ以外に、瑕疵担保条項に基づいて預金保険機構に買い取らせた不良債権が二〇〇一年分だけで八百五十六億円ある。トータルをいたしますと大体四兆五千億円近くの公的資金が投入されている。これを国民一人頭にならすと、国民一人頭大体三万六千円近くのお金が投入されている。
 先ほどあおぞら銀行の社長にもお伺いいたしましたが、比較的あおぞら銀行の経営がうまくいっているというのは、もちろん経営陣の努力というのが大きいわけでございますが、それ以前に、このような公的資金が入って、いわば不良資産をきれいにして新しい銀行が動いていったから、これだけこの銀行がうまくいっているわけですね。
 主要株主の責任として、これだけの公的資金が入っているわけですから、途中でいわば責任を放棄して売り抜けてしまうというようなことをするのではなく、当初の目的のとおり、あおぞら銀行がきちんと、今二年ですから、そうではなくて、もっと長期的にきちんと立ち行けるというところまで見届けるというのが国民に対する義務としてもあるのではないかというふうに私は思うんですが、いかがでございますか。
孫参考人 当時公的資金が多額に投入されたということでございますけれども、それは私どもの前の経営陣の時代のことでありまして、私どもは、その状況に陥った後に、むしろその後の経営を引き継ぐということで入った立場でございます。ただ、今おっしゃっておられますように、大変重要な役割を担っているということは十分に認識いたします。
 当銀行はその後、今生方先生のおっしゃったように、当時の大変リスキーな状態と言われているときに比べますと、着実に健全化が進んできているというふうに認識しております。
生方委員 当初、孫さんがこの株を買ったときはいろいろ、もちろんマスコミでも話題になって、あおぞら銀行をどういう銀行にしていくのかということで、孫さんもいろいろな雑誌で抱負を語っておられました。日本にはまだまだ不足しているというベンチャーキャピタル的な銀行にしていくんだとか、ネットバンクとして機能させていくんだとか、いろいろその当時抱負を語っておられました。
 それは今現在で、最初にいろいろ語った中で、どの部分ぐらいが達成されたというふうにお考えになっていますか。
孫参考人 比較的若いベンチャーの企業をより積極的に育成していくとか、あるいはそのほかのスキームを使って、地方銀行、金融機関との連携をより図りながら金融ポータルをつくるとか、一つ一つのプロジェクトが着実に前に進み始めている。もちろん、すべてが達成されているというふうには思っておりませんけれども、一歩一歩、前に進んできているというふうに感じております。
生方委員 丸山社長、いわゆるベンチャーキャピタルとしての機能とかネットバンクというのは、現実に進んでいるというふうに考えてよろしいんですか。
丸山参考人 ネットバンクの問題に関しましては、世の中でまだ一つの形式として十分に定着していない。ただ、いずれ、今後そういうものが定着した形になるであろうことは十分に予測はできるわけですが、一つの定着したものにはなっていない、それが現実の姿だと思います。
 我々、まだ小さな銀行でございますので、ネットバンクに対する膨大な投資というものはいささかいたしかねる。そこで、ネットバンクの行く末については慎重に勉強をしろ、それで、その行く末がはっきりしたら出ていこう、実はそういうふうにネットバンクについては考えております。
 それからベンチャーにつきましては、現在、子会社を通じたり自分自身だったりして、ベンチャーの企業には結構我々は投資している方だろうと思います。したがって、ベンチャー向けの投資は、今のところ、かなり成功していると考えております。
生方委員 当初もくろんだ特徴ある銀行というところまではまだまだいっていないんではないかなというふうに私は思います。
 ところで、今、これはもちろん上場しているわけではないわけですから、株価が幾らだという額はつくわけではないんですけれども、今現在、ソフトバンクがお持ちになっている株を仮に全株売却したら、幾らくらいになるというふうに、孫さん、お思いになりますか。
孫参考人 それは仮定の話でございますので、実際にどのような値段になるのかというのは全くわかりません。
生方委員 資料をお配りしていると思いますので、資料をごらんいただきたいと思うんです。
 ここにいろいろな方式で、株を発行する場合は、株価を決めるということがあるように聞いております。私も銀行と証券会社二社に試算をしてもらいました。もちろんこれはあくまでも、実際に上場したときの額とは一致するわけではございませんで、めどでございますが、一つの方法として、純資産価額方式というのと、もう一つが類似業績基準方式、大きく分けて二つ方式があるんだという話を聞きました。
 まず一方の、純資産価額方式という方で計算をしてもらったところによりますと、ここに書いてございますように、発行済み株式総数は二十八億三千四百八十七万株、この中に政府の優先株がございますから、それを考えなければいけないということでございます。純資産というのは、これは総資産から総負債を引いた額が純資産額になるわけでございますが、四千七百六十一億が純資産というふうになっている。これを優先株を除いた株数で割ると、一株当たりの株価が六十七・七六円になる。ソフトバンクが保有している株式数は、四八・八八%の約十三億八千五百万株持っているということでございますから、これを掛け合わせますと、ソフトバンクの株価は約九百三十九億円になるという計算が、一つの計算式としては成り立ちます。
 それから、もう一つの類似業績基準方式というのは、同じような銀行の株価と比べてどうかという計算のやり方でございます。これは、類似行の株式の時価発行総額というのが純資産掛ける何倍かというのを見ますと、これを類似行というふうに呼んでいいのかどうか議論があるところでございましょうが、一応、東京三菱さんが一・三七、三井住友が一・一八、みずほが〇・四二、UFJが〇・四二、四行の平均をとると〇・八五で、あおぞら銀行の純資産に〇・八五を掛けると四千四十七億円になる。このうち、優先株の部分を除いてソフトバンクの部分を計算いたしますと約三分の一になりますので、千三百三十五億円になるという数値が出ております。いずれにせよ、九百億円から千数百億円になるであろうという数値が出ております。
 ソフトバンクがこの株をお買いになったときの出資額は四百九十三億円でございますから、仮に現在の時点で売却をすると、純資産価額方式で見れば九百三十九引く四百九十三の四百四十六億円の利益が出るということになる。類似業績基準方式で計算をいたしますと、千三百三十五億円引く四百九十三億円で八百四十二億円の利益が出る。
 先ほど二〇%保有云々というようなことがございましたので、これに基づいて若干計算をしてみて、仮に四八・八%のうちの三〇%を売却したケースでいいますと、ここに書いてありますように、五百七十六億円で大体売れるだろうということになりますと、初期投資額が四百九十三億円ですから、これでも八十三億円の利益があり、かつ、株式の一八・八八%を保有したままになるというふうになるわけでございます。
 ここで問題なのは、当然投資にはリスクが伴って、リスクが大きければ当然リターンも大きいというのが投資の原則でございまして、この数値、たった二年で、仮にこの九百三十九億円で売れたとすればほぼ倍ですね。二年しか保有していないで倍になるような投資というのは、今、ほとんどどこを見てもないわけで、この倍のリターンに見合ったリスクをソフトバンクが株主として本当にとっていたのかどうか。
 これは瑕疵担保条項があるわけです。御存じのように、資産価格が二〇%以上下落した場合は預保が買い取るという瑕疵担保条項がくっついているわけです。私もいろいろな銀行に聞きましたが、資産の劣化というのが銀行にとっては最大のリスクなんだ、そのリスクがないうちにソフトバンクにどんなリスクがあったのか、我々もちょっと考えつかないなというような話を何人かの方がいたしました。仮に今の数値で投資額の倍ぐらいのリターンがあったとすると、孫さんは、これぐらいのリターンは、自分たちがとったリスクにすれば当然のリターンだというふうにお考えになりますか、どうですか。
孫参考人 今の数字はすべて仮定に基づく数字ですから、数字そのものに対する直接的なコメントは控えさせていただきたいというふうに思いますけれども、少なくとも私ども、当初入札するときには、あくまでも法の定めに基づいて、私どもが提示されておりました枠組み、入札の手続を通じて、オープンな形で、しかも競争入札者が複数ある中でフェアに入札のプロセスが行われたというふうに認識しております。ですから、購入したときの価格はあくまでもフェアな、透明性を持った価格であるというふうに考えております。
 それがその後、仮にいずれかの時点で一部あるいは全部売却されることがあって、もしそのときに利益が出た、あるいは利益が出なくて損失が発生したというのは、その後の結果の行為であって、それは通常の事業活動あるいは投資活動の一環であるというふうに考えております。
生方委員 もう一度伺いますが、この二年弱の間で株主としてどんなリスクがあったのか、具体的にお教えいただければありがたいんですが。
孫参考人 経営にはさまざまなリスクがあるわけでございまして、それは瑕疵担保条項という一つの特典だけで救済されるものではなくて、それはもう数限りないぐらいさまざまなリスクがある。もちろんメリットもあるから私どもは投資するということを決意したわけでございますけれども、リスク対リターンというのは、買ったときの値段、そして最終的に売却したときの値段、その差額がまさにリスク対リターンの物差しであろうというふうに考えております。
生方委員 私が伺ったのは、具体的にどんなリスクがあるのかということを伺ったわけで、もし具体的なものがあれば。
孫参考人 例えば、そこには行員がいるわけでありまして、その人事的なリスクだとか、経営陣における経営のかじ取り、資金調達、そのほか顧客開拓、数えていけばたくさんのリスクはあるというふうに思っております。
生方委員 週刊東洋経済、二〇〇〇年九月十六日号のインタビューの記事がございまして、その中で孫さんは、「「瑕疵担保条項があるのだから、買う側にリスクはない」という批判も耳にしますが、これもおかしい。三年間で一九%以下の劣化しかなければ買い戻し要求はできないし、譲渡から三年間という返品期限もあるわけです。そこから先は完全に我々のリスクです」というふうに言っているわけですね。これだけ読めば、三年間はリスクはほとんどないということを言っているに等しいわけですよ。
 瑕疵担保条項がある場合、それから先がリスクなんだと。それを、リスクを負う前に売り抜けちゃって、常識で、これは仮定の話だとはいいますが、銀行さんと証券会社が、今もしあおぞら銀行の株を売却すれば、大体の目安となる数値でございますから、本当の額とそんなに離れてはいないと思うんですよ。そうなりますと、四百九十三億円で買ったものが一千億円近くになる。一千億円近くになるもとには、国民の税金が四兆円以上も投じ込まれているから銀行が今経営が順調になっているわけで、これはいわば国民の税金によって正常化した。その正常化したリターンを、まさに国民が得るのではなくて、ソフトバンクがたった二年間保有しただけで得てしまっていいのかという問題を私は指摘しているわけです。
 これはソフトバンクさんのこれまでの投資行動を見れば、これまでにもいろいろな会社を買ったり売ったりしてきて、その株価の含みの中でソフトバンクグループというのは伸びてきたわけですから、我々も、最初にソフトバンクさんがこの話をしたときにそういうことは懸念はしたわけですよ。懸念はしたんですけれども、こういう契約書やなんかを見て、長期的に保有するんだ、本当に、ソフトバンクグループが本体で金融業務として一生懸命やっていくんだという前提があるので、それだったらいいんじゃないでしょうかというふうに思っていたら、今お話を聞けば、二年保有したらもう十分長期だと。リターンが幾らあるのは自分たちでリスクをとったからだといったって、これは国民はなかなか納得できる話ではないと私は思うんですよ。いかがですか。
孫参考人 仮に私どもが一部または全部売却するとしたら、今おっしゃっているように、三年目以降というのはより大きなリスクがあるわけでございます。購入される方は当然そういうリスクを踏まえた上で価格をつけるわけですから、そのリスクは当然価格に反映されるものであるというふうに考えております。
生方委員 だから、それは三年目でしょう。今二年目ですからね。まだあと一年間は瑕疵担保条項は残っているわけですよ。
 じゃ、もう一回話を違えて聞きますが、当初から、先ほどは銀行法の改正が四月にあったからというのを口実になさいましたが、一番最初に我々が懸念したのは、ソフトバンクグループの機関銀行化してしまうんじゃないかということを懸念いたしたわけですよね。ところが、これは異業種の銀行参入等におけるいろいろな規制というのがあってできないということがわかった、したがって、もうソフトバンクグループにとっては余り意味がなくなったから、一番おいしい時点で売って利益を上げよう、そういうお考え方なんじゃないんですか。
孫参考人 違います。
生方委員 これは、ソフトバンクさんが呼びかけて、東京海上さんもオリックスさんも、いわば一緒にグループとして買ったわけですよ。私、東京海上さんともお話をいたしましたが、東京海上さんがほかのマスコミに語っていることを聞いても、いわばはしごを外されたようなものだと。自分たちで呼んでおきながら、自分たちはもう売り逃げて出ちゃいますよということになれば、ほかの二社に対しても道義的な責任が発生するんじゃないんですか。
孫参考人 先ほど申しましたように、まだ完全に売るとか売らないとかいうことを決めたわけでございませんので、今話しているのはあくまでも仮定の話ということで話しているわけでございますけれども、先ほど申しましたように、法の改正が私どもから見れば突然にあった、しかも、それがさかのぼって適用されるかのような形で決まったわけでございまして、私どもも驚いたというのが実は正直な感想でございます。そういうことによって、私どもは、売却も選択肢の一つだということで検討を開始したということでございます。
生方委員 銀行法のやつは勘違いが大きいと思うし、一般に雑誌等で指摘されているのは、ITバブルがはじけてソフトバンクグループの資金繰りが苦しくなったから売却するんだと。銀行法の改正が云々なんという話はどこにも出てないわけですよ。いわば、取ってつけたような、ちょうど渡りに船のような形で、四月に銀行法改正が成ったからそれを理由にして売ってしまおうという意図だというふうに私は感じざるを得ないですね。
 もう一点、視点を変えましょう。四百九十三億で、幾らで売れるかわからぬと。これはわかりません。ただ、仮に、一千億円で売れるとしたら、四百九十三億円で預保に買い戻してもらって、あとの分は国民に還元するべきだ、私はこういうふうに考えますが、いかがでございますか。
孫参考人 それは私ども検討したことがございませんでしたので、コメントのしようがございません。
生方委員 コメントのしようがないって、今聞いたわけですから、検討する余地があるのかないのか。
 だから、さっき言いましたように、適度なリスクを負ったのなら適度なリターンがあるのは当たり前です。国民は今預金を預けたって、幾らだか忘れましたが、〇・〇一%ぐらいしか利子が入ってこないんですよ。それが、国民のお金、四兆幾らも使って、国民一人頭三万五千円も使った銀行の株を取得したというだけで、たった二年間で五百億円弱が一千億になるなんておいしい話が転がっていたとしたら、国民は納得できないんですよ。何でそんなことでそんなにもうけなきゃいけないのかと。
 それが正当なもうけであるならいいですよ。瑕疵担保条項というのがあって、三年間は守られているわけですよ、少なくとも。あなたがおっしゃるように、ちゃんとしたリスクなんて考えられないわけですよ。国は、責任を持ってこれはきちんと立て直すんだということでやっているわけですからね。それで、これだけもうけるのが全く正当な商行為であるというふうに考えるとすれば、やはりこれは国民を欺く行為だというふうに私は思いますが、いかがですか。
孫参考人 それほどおいしい話だと思われるのであれば、入札当初、幾らでも入札に参加できるチャンスはあったわけでございます。私ども以外に、他に少なくとも日本の金融機関あるいはその他の事業会社グループ等は一切入札に参加してこられなかった。ですから、それは、瑕疵担保条項があるという前提の中で、なおかつ入札に参加してこられていないということであります。
 また、外資系のほかの投資家グループについては入札に参加しておられましたけれども、少なくとも私どもは、当時、オープンでフェアな形で入札のプロセスがあったというふうに考えております。
生方委員 当時もいろいろ論議をしましたよ。新生銀行に瑕疵担保条項がついて、あおぞら銀行がおくれてから瑕疵担保条項がつくのはおかしいんじゃないかと、いろいろ我々も言いましたよ。だけれども、長期に保有するという前提で我々はそれをよしとしたわけですよ。
 この間も言いましたけれども、金融再生委員会の議事録で、モルガン・スタンレーがフィナンシャルアドバイザーでしたから、いろいろ調査をしたわけですよ。七十数社、実際には名乗りを上げていて、最終的には、優先交渉権をソフトバンクグループが得たわけでしょう。あのときだっていろいろあったじゃないですか。瑕疵担保条項がつかなきゃ嫌だとかなんとかいろいろごねて、最後、もう時間切れみたいな状況になってあなたたちが株を取得したんじゃないですか。
 それは、長期保有というのを前提にして我々はそういうふうに思ったわけですよ。二年間で売るんだというのであれば、そのとき、柳澤さん、本当に、二年間で売るという条件があればソフトバンクグループにこの株を売却しましたですか。いかがですか、大臣。
柳澤国務大臣 長期保有の意図をいろいろな形で御表明になったということ、当然、それはだれを落札者にするかというときの判断の要素にはなっておるだろう、このように考えております。
生方委員 だから、したがって、二年間というのは長期でないとすれば、仮に三年以内で売るとするのならば、私、さっき申し上げましたように、四百九十三億円ですから、じゃ、リスクをとったというなら七億円ぐらい足してもいいですが、五百億円ぐらいで預保が買い取る、そのほか売った利益が出たら国民に還元する、国庫に返すというような措置をとらなければ、私はとても納得できないと思うんですが、大臣、いかがですか。
柳澤国務大臣 どんどん、質疑者としてはそういうように問題提起をされていくというのはよくわかりますけれども、私の立場でその今の生方委員の提起される問題に一々具体的にお答えするというのは、やはりちょっとひっかかるものが、ちょっとどころじゃない、あるわけでございます。
 今の全くの仮定の問題でございますけれども、そうしたことというのが我々の持つ権限の中にあるかと言われれば、それはなかなか難しいのではないか。法令上あるいは契約上、そういうことについてはかなり困難ではないか、このように申し上げておきます。
生方委員 それじゃ、仮定の話じゃなくて、現実にそうなった場合、国民が四兆幾らのお金を投入していて損をする。だれか責任とるんですか。
 だから、長期保有だというのを前提にして株を売る。ところが、ソフトバンクはそう思ってなかった。二年で売っちゃった。これをどこに売るかわかりません。どこに売るかわからないから、また投資ファンド的なものに売っちゃうかもしれぬ。これでは、株主が非常に不安定化する危険性もあるわけですね。そうなった場合の責任はだれがとるということになるんですか。
柳澤国務大臣 これは、どういう形になるかということはなかなかいわく言いがたいわけですけれども、私は、孫さん自身も、いわば企業のレピュテーションというものが非常に傷つくというような形で、経済界の中でひとつ責任がとられるということになるだろう、このように考えております。
生方委員 だから、普通の銀行の普通の株式を、孫さんのグループはそれまでにずっとやってきたわけですよ。いろいろな株に投資して、損したのもあるでしょうし、もうけたのもあるでしょう、だからここまで大きくなってきたんですね。その一環としてこれをやられたらたまらぬということなんですよ。
 これは、あおぞら銀行として、旧日債銀に国民のお金が四兆円もつぎ込まれているから我々もここで初めて質問しているわけで、個人の、全く普通の企業が普通に株を売買するのに一々とやかくなんか言うはずもないわけです。これは国民感情として、国民が百万円預けたって百円の利子がつくか十円の利子しかつかない時代に、国民がなけなしの金をはたいて助けてあげた銀行の株をたった二年間保有していただけで、倍にして五百億もうけて何の痛痒も感じないとしたら、国民はこれは許しがたい、これはとても納得できる話じゃない。
 だから、仮定の話、仮定の話とおっしゃっていたって、新聞にもいっぱい出ているわけですよ。現に、あおぞらの社長だって、今度売るときは投資ファンド的なところに売らないでほしいなんということを言っているわけですから。これは現実の問題なんですよ、仮定の話じゃないんですよ。仮定の話であれば、孫さんが今否定すればいい。我々は売りません、三年以上持っていますよとここで言ってくれればいいけれども、そんなことは言わないわけですから、いつ売るかわからぬと言っているわけですから。
 これは、国民的には私は納得ができない。だから、これは柳澤金融担当大臣として、ソフトバンクに、もし売るんであれば、そんな不当な利益があっちゃいかぬから、買った金で返しなさいと言うぐらいの指導はしたらいかがですか。
柳澤国務大臣 孫さん御自身も、今回の銀行法の改正を、売ることを検討する一つのきっかけとして挙げておられましたけれども、今回、もし孫さんが売ろうとする先が二〇%以上持つというようなことになったら、これは主要株主で、私どもも認可をしなきゃならないというようなことでございますので、いろいろな関所が実はあります。
 孫さんも、きょうの御議論も聞いていただき、また、もともと長期保有の意図ということを表明されておられたわけですから、私などがこんなことを申し上げるのはあれかもしれませんが、孫さんも立派な経営者として社会のレピュテーションを集めてこられたわけですから、そうしたレピュテーションにこたえられるような行動をとっていただけるものだ、このように考えております。
生方委員 最後になりますけれども、孫さん、これだけ今論議をしてきたわけですよ。我々が納得いかないのは、公的資金が入っているからだけなんですよ。だから、そこで不当な利益というか、利益を得てしまうのは、これは普通の商取引としたって、なかなか納得ができるものではない。
 ここで最後に、もう一度、売るか売らないか、まだ検討しているということなんですが、我々の一般的な考え方からいえば、どうしても二年は長期とは言いがたいし、投資目的の中に、あおぞら銀行をこういう銀行にするんだというような抱負をいっぱい語っている中で、ほとんどが達成されていない中で売り抜けるというのはおかしいし、今、銀行法の改正をいろいろ口実にしておりましたが、柳澤担当大臣もおっしゃいましたように、それは別に障害になるわけでも何でもないということが明らかになっているわけですよ。この時点で、最後に、これでも、短期的に、少なくともあと一年ぐらいの間に売る気があるのかどうか、もう売らないよ、我々は長期保有するんだから売らないというような発言をするのかどうか、お伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
孫参考人 当初から申しておりますように、まだ売るとか売らないとかは決めておりません。これから慎重にいろいろと検討を重ねていきたいというふうに思っております。
 また、今回の四月の法改正の内容につきましても、仮に長期保有を続けていくとすれば、どのような認可の手続が必要で、どのような条件がつくのかということなどについても、これから十分に勉強していきたいというふうに思っております。
生方委員 いろいろな活動をなさっているわけですから、孫さんのグループも、国民の支持がなければほかの活動にも影響が出ると思いますので、ぜひともゆっくりと熟慮してお考えをいただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
坂本委員長 次に、石井紘基君。
石井(紘)委員 きょうは、ムーディーズのトム・バーン氏それからトム・ケラーさん、本当に、わざわざトム・バーン氏はアメリカから急遽御出席いただきましたことを改めて感謝を申し上げながら、質問をさせていただきたいと思います。
 まず、私の質問でありますけれども、最初に、大体、日本の金融経済の実態について財務大臣に幾つか質問をいたしまして、その後に、ムーディーズに対して幾つか質問させていただきたいと思います。
 私の質問の大きな項目といたしましては、まず、我が国の財政における借金残高という問題。それから、よく千四百兆の国民金融資産があるんだというふうに喧伝されているわけですが、この実態の問題。それから、さらには、我が国の実際の歳出とGDPとの関係において、財政あるいは経済の実態。そして最後に、国債の保有状況との関連で、我が国の国債というものが、必ずしも市場ではなくて、政府みずからが保有しておる、このことがやはり国債の価値を大いに低めている、こういう問題について論じてまいりたいと思います。
 まず、我が国の長期債務の残高は、国と地方で、平成十四年度、今年度末で六百九十三兆円になるというふうに言われているわけでありますが、これには、実は政府の短期証券は含まれていない。それは含めないとしても、もう一方では、特殊法人の債務の一部、借金の一部を保証しているところの政府保証債務というのが五十八兆円もあるわけですね。これを含めないというのはいかがなものかという点について指摘をしなければならない。これを含めますと、七百五十兆円ぐらいに債務残高は膨らんでくるということになります。これは財務大臣、ちょっと見解を伺いますので聞いておいていただきたいと思うんですが。
 特殊法人、認可法人、これは公益法人は除いておりますが、公益法人にもあるんですが、この債務残高、これは約三百五十兆円。このうち、財投からの借入残高が二百六十兆円。これは、特殊法人等の借金も、これは国が法律をもって設立した機関でありまして、国の政策を遂行している機関でありますので、当然のことながら、これは国の借金である。これを含めますと、何と我が国の借金残高は一千百兆円になるということになります。
 この財投機関、特に特殊法人も含めるということは、これは財投計画というのは国の会計であるということもつけ加えなければなりません、国会へかけられる会計ですね。
 それからまた、財投機関には、特に特殊法人等には不良債権が非常に多い。大手の、大手というか主要な七つの金融機関だけでも百七兆円の不良債権を抱えておる。これは、今の、不良債権についての金融再生法の開示基準に従った算出を行って、この七つの金融機関、政府系金融機関というのはもっとたくさんあるわけでありますけれども、七つだけで百七兆円を超えているという状況ですね。
 これらの特殊法人等の借金というのは、返済が極めて困難な状況にある。年々歳々、この借金残高というものはどんどんふえておる。例えば一九九〇年から比較してみますと、一九九〇年の、これは財投からの借り入れだけで、残高は百七十八兆円でありました。これが十年後の二〇〇〇年になりますと二百五十八兆四千億というふうに、十年間でこれほど膨らんでおりますし、またさらに十年さかのぼると、これはもう一けた少なかったわけであります。二十年もさかのぼりますと、数兆円という金額だったわけであります。
 この財投機関、特に特殊法人等の借金残高というのは、これはもうウナギ登りでありまして、御案内のとおり、借金を返済するために新たに借金をするというような構造になっているというところから見ても、これは、特殊法人等の借金は国の借金である、こういうふうに理解をしなけりゃならないというふうに思いますが、これまで私が述べましたことについて、財務大臣の見解を伺いたいと思います。
塩川国務大臣 今申されました数字はおおよそ仰せのとおりの数字でございまして、私の方から訂正するような数字ではございません。
石井(紘)委員 ムーディーズの皆さん、ぜひよく聞いておいていただきたいと思います。
 それからもう一つは、千四百兆の国民金融資産があるんだということを盛んに言われるわけですが、これは第一に政府の資産ではないということは当然のことですね。それからまた、このうちの四百兆円は、見てみますと、これは将来国民が受け取るはずになっているところの保険とか年金の積立金ですね。それからもう一つは、一方には、国民の負債というものは財務省の統計でも三百九十兆、約四百兆出ておるというのがございます。いずれにしても、金融資産として存在するのは約六百兆円程度ではないかというふうに推計されるわけでありますが、この点についてはいかがですか。
谷口副大臣 石井委員のお尋ねでございますが、千四百兆円の個人金融資産があると。これが、昨年末の運用状況を見ますと、おっしゃるように、保険、年金に四百七兆円、有価証券が百二十兆円、預貯金に七百三十一兆円と、この千四百兆円の個人金融資産がそのような形態で運用されているというような状況でございます。
 また、おっしゃるような、この借入金が、負債が四百兆円というようなお話がありました。御存じのとおり、資産が千四百兆円、また一方で負債が四百兆円、これはもう両建てなものでございますので、一方で千四百兆円の資産がそれぞれの形態で運用されておって、また一方で負債が四百兆円ある、このようなことになっておるわけでございます。
石井(紘)委員 年金や保険の積立金が運用されているというんですが、この運用の実態は極めて惨たんたる状況であるということは、先ほどの特殊法人についても一部申し上げましたので省略をいたしますが、実態としては、この部分はもうほとんどカウント不可能に近いというふうに言わざるを得ないと思います。
 それからもう一つは、対外資産が膨大にあるんだということが言われます。対外資産は、これもまた大部分は国民のものであって、政府のものではない。公的部門における資産は、対外資産合計三百七十九兆円、三百八十兆円ぐらいのうちの八十五兆でございますね。それに対して、公的部門の負債は三十兆。そうすると、公的部門における純資産は五十四、五兆ということになると思います。
 しかしながら、こうした対外資産というものも、これは公的部門の場合は調達によるものである、大部分が。もう一つは、発展途上国なんかの国債を少しずつ引き受けるとか、そうした外交的な要素のあるものとかも、かなり含まれております。外貨準備等につきましても、五十二、三兆ございますが、こうしたものはその都度調達をしながら回している、こういう性質のものであるということについても御確認をいただきたいと思いますが、財務大臣、いかがですか。
塩川国務大臣 おおよそ調べがあっての話だろうから、間違いないと思います。
石井(紘)委員 まあ、簡明な答弁で大変結構でございます。
 あと、経済の実態については、先ほど来のいろいろな不良債権の議論だとか、あるいは企業倒産なんというのも、これはもう戦後二番目の数に上っておるし、毎年十四、五兆円という負債総額でもって倒産が上昇しておる。倒産件数あるいは負債額が上昇しておるということも経済の実情でございます。まあ、それは蛇足でございますが。
 次に、我が国の歳出とGDPの関係について申し上げたい。
 これはなぜ申し上げるかといいますと、GDPに占めるところの政府支出というものが我が国の場合は異常に高いということから、市場経済というものが円滑に回らないという状況があるということであります。つまり、日本経済には、資本の拡大再生産機能といいますか、そうしたものが失われているということを言わなければならないわけです。つまり、日本という国は、そういう、市場性を失わせる、いわば分配経済といいますか、そういうシステムに貫かれておるということですね。それは、先日来の公共事業からのいろいろなピンはねというような仕組みというものとも関係しているんですが、これは今ちょっと余分なことを申し上げました。
 まず、政府の歳出について、これは一体全体幾らなのか、そもそも、こういう幼稚な議論からしなきゃならぬわけであります。これが、正確には実はだれにもわからない。試しに財務大臣に伺ってみようかと思うわけでございます。これは、私は、昨年のたしか春に、宮澤前当時は大蔵大臣でしたか財務大臣でしたか、聞いたことがあるんですね。そうしたら、宮澤大臣は、研究してみますという答弁でございました。塩川大臣はいかがでございますか。
塩川国務大臣 ちょっと質問の趣旨がはっきりわからないんですけれども、要するに、お聞きになっていることは、一般会計の中で一般歳出予算は幾らかというお尋ねですか。どういうことなんでしょうか。はっきりちょっと聞いてください。
石井(紘)委員 では、もう少し申し上げます。
 国の予算というのは、御案内のとおり、一般会計予算と特別会計の予算、それから、最近では財政投融資計画というのも国会にかけられるようになりまして、その御三家といいますか、その三つの財布があるというふうに思います。
 特に、一般会計でもって通常議論されるわけでありますが、実は、一般会計というのは、カムフラージュというような性質のものでございまして、一般会計のうちの大部分、つまり、八十一兆なら八十一兆のうちの五十兆以上は特別会計にすぐ回ってしまうわけですね。特別会計の規模は、御案内のとおり、最近ではもう三百八十兆というような規模になっているわけですね。
 そこで、三つの財布をそれぞれ行ったり来たりしておりますから、こっちの財布から政府外に、つまり、国民にといいますか、出ていったり、あるいはこっちの財布から出ていったり、こっちの財布からこっちの財布を経由して出ていったり、そういう非常に複雑きわまりない構造になっておりますが、そういう中で、果たして、国の歳入歳出という面からいったら幾らになるか。これは純計しなければなりません、これらの財布を。それがすなわち我が国の国家予算なんです。年間の国家予算なんです。それは、到底、八十兆やそこらのものじゃありません。それを、私は、今からちょっと計算してみたいと思うわけであります。
 そこで、申し上げましたように、一般会計は十四年度八十一兆です。特別会計は三百八十二兆。これを純計いたしますと、二百四十八兆円でございます、行ったり来たりしておりますからね。それで、さらにその中から内部で移転をするだけの会計の部分があるんですね。整理、移転というものがあります。この部分約五十兆円でありますから、これを除きますと、純粋の歳出は約二百兆円であります。我が国の予算は二百兆円でありますから、どうぞ、ひとつ、財務大臣、御認識をいただきたいと思うのであります。
 こういうような議論、これはアメリカの連邦政府の予算にほぼ匹敵するというか、アメリカの連邦政府の予算よりちょっと多いぐらいの規模でございます。これは連邦政府のレベルで、我が国の場合も地方の分は今入れないでお話を申し上げて……(発言する者あり)あなたも、知らないでぐずぐず言っていないで、よく聞いていなさいよ。
坂本委員長 お静かに願います。
石井(紘)委員 二百兆円、国税収入が税プラスその他でもって五十兆円になるかならないかというのに、二百兆円の予算を組まれているということは、これはすなわち国債の発行だとか、あるいは郵貯の資金二百五十五兆円、年金資金百四十兆円、あるいは簡保の資金百十兆円、その他の資金五十兆円というようなものを、投資とか融資に主として充てている。公共事業なんというのは、こういうものでもってかなり投資活動として行われているわけです。
 したがって、こういうふうに見てみますと、一方でGDPは名目で約五百十兆円ぐらいですね。そうすると、このGDPに占めるところの中央政府の歳出というのは、何と三九%に上ります。
 ちなみに、アメリカの場合は連邦段階で一八%、イギリスの場合は中央政府で二七%、ドイツも一二・五%、フランス一九%、大体そんなふうになっているわけです。
 さらに、これに、政府の支出という意味でいきますと、地方政府の支出を当然含めなければなりませんから、我が国の場合、これも純計をして、途中を省きますが申し上げますと、大体これに四十兆円超加えなければなりません。そうすると、一般政府全体の歳出は約二百四十兆円というふうになるんです。これは何とGDPの四七%であります。GDPの四七%。
 GDPというものの性質上、政府の支出、例えば公的固定資産形成とかそういう項目に入っているGDPの数値というものは、もう一回その一部は最終消費支出で、家計簿でまた出てくるというような性質があるわけですね。そうしたことを勘案してみますと、我が国のGDPの場合、実質五割以上は、半分以上は実は一般政府の支出によるものである、したがって、市場からの成果というものは極めて限られたものだ……(発言する者あり)あなた、よく聞いておいた方がいいですよ。後でよく勉強したらいい。そういう国の仕組みというふうになっているんですね。
 これは実は、市場というものと権力というものとの関係において、我が国では権力が市場を支配している。これは今枚挙にいとまがありませんから、法制度やあるいは財政の仕組み等々についてはこれ以上申し上げませんが、権力が市場を支配している。その結果、市場経済というものを破壊しているというところがあるんです。
 こうした我が国の実態というものが、先ほど申し上げました分配経済と呼ぶべきものですね。私の言葉で言えば、私は官制経済というふうに申し上げているわけであります。これは、ここでは本質的に資本の拡大再生産というものは行われない、財政の乗数効果というものは発揮されない、こういう体制にあるんです。
 財務大臣、よく聞いておいてください。いいですか。これは後で、なぜこういうことを一々言っているかということを……(発言する者あり)いいですか。自民党の、あなた、与党の皆さんがよく聞いていなきゃだめですよ。
 一方、国民負担率というものは、我が国の場合は、私はもう今既に限界に達しているんだと思うんですね。
 財務省の数字によりますと、潜在的な負担率も含めて四八%と言っておりますが、しかし、これは先ほど申し上げました特殊法人等から生ずる負担というものがカウントされておりません。財務省が昨年九月に出したところの特殊法人等による行政コストというのは、年間十五兆五千億円くらいあると言うんです。
 こういうものを含めると、国民負担率、これは当然、例えば電気にしても、ガスや水道なんかのそういう公共料金、運賃や何かも含めて、こういうものは特殊法人という、認可法人や公益法人も入りますが、総称して特殊法人というものによって、このコストが乗ってくるわけでありますから、そうした将来にかかるコストと、現実に日常的にかかるところのコストというものがオーバーラップしてあります。こうしたものを含めた国民負担率というものは、もう六〇%に近づいているだろうというふうに考えられます。日本の不安定な社会保障の実態というものとあわせて考えると、これは六割近い国民負担率というものは非常に異常な状況であると言わざるを得ないと思います。
 さて、こういうことでございますから、財務大臣、これは一生懸命不良債権の処理とかやっておりますけれども、日本ではこの市場経済の成果というものはほとんど出てこないんですよ。財政も法制度もあるいは政策もそうした行政主導でもっていっておりますから、出てこない。税収も伸びてきません。GDPに対する政府支出の割合というのはそんなに大きいですから、ですから、もし予算編成の中でこの政府支出を減らしますと、必然的にGDPの数値が下がってきて、経済の成長率というものは下がっていくというような、漠然とですけれども、そういう構造になっているということを認識してもらわなくちゃいけないんですよ。いいですか。
 今まで申し上げましたことについて、財務大臣の御認識を伺いたい。どうですか。
塩川国務大臣 御意見としてお述べになりましたのでございますから、私が否定するようなこともございません。
石井(紘)委員 そこで、それでは、ムーディーズの今回の日本国債の格下げということは、どのぐらいの位置づけがふさわしいかどうかということはこれは別といたしまして、日本国債が非常に弱い状況にあるという意味では、私は、極めて適切であったし、また、そのことが日本の財政当局あるいは経済に対して大きなやはりインパクトを与える、今のような議論ができるということもこれもまた格付会社のおかげであろうかというふうにも思いますが、そういう意味で大変感謝しているわけです。
 そこで、まず二つほど伺いたいのは、財政投融資資金によるところの特殊法人等の多額の借金があって、こうしたものを初めとして、日本政府の債務残高というものは表に出ているよりはさらに実態は悪いのではないかというふうにお考えになるかどうかというのが第一点。
 それから、GDPに対して、これは市場経済の機能ということがあるわけですが、そのGDPにおいて政府支出が過半を占めている。これは市場経済の機能の低下といいますか、これと反比例して市場経済が痛めつけられている、そういう可能性が私は高いし、それはさまざまな今まで申し上げたような数値にも出てきているということだと思いますが、この二点について、まず御見解を伺いたいと思うんですが、いかがですか。
バーン参考人(通訳) 石井さんにお答えいたします。
 まず申し上げたいのが、私どものこの分析は独立の形で行われたということであります。いろいろな影響があったとしても、それが直接私どものこの評価、いわゆる与信の評価、そしてデフォルトの確率に影響を及ぼすものではありません。
 具体的な質問にお答えいたしますと、まず第一点目。まず、この評価、財投融資に関する評価、そして、それ以外の資産に関する評価についてであります。
 まず、OECDなどが非常に興味深い指摘をしております。とりわけ国内資産、日本の公共部門の国内資産についての評価方法であります。また、学問の分野、アカデミックスタディーにおきましても興味深い点を出しております。両者ともに、やはりこうした資産の過大評価が行われているのではないかという点が共通しているわけです。
 実際に、その学問的な研究によりますと、よりこの点に関しましては悲観的な見解が出されております。また、OECDの方がむしろその資産評価に関しては過小評価しているというようなことも学問的研究で言われております。
 また、OECDの分析でも指摘されておりますけれども、この公共部門の資産は、実際にそれが政府がすぐに使えるようなものがあったとしても、規模的にはこの債務、負債を支払うには十分ではない、この政府債務の問題解決には十分ではないと言っております。
 ただ、我々にとってもっと重要なのは、この一般的な政府債務というのが、これは既にこの測定が容易になっております政府のBS、この貸借対照表にも出ておりまして、これは長期的には上昇の機運を見せております。これは今後ともふえていくだろうというふうに、そして、さらに時間の経過とともに、ほかの既存の政府資産、それが何であれ、それらをやはり動員して将来の偶発債務に充てなければならない、例えば、この国民年金基金などに対しての偶発債務に支払うために充てなければならないというふうなことが示唆されております。
 そのほかの点に関しまして、例えば、この債務の規模ということでありますけれども、基本的に、私どもの債務の計算評価、これについてはいろいろな異論はあるかと思いますけれども、私どもの分析の基礎は、これはOECD、IMFなどでも出されております。最近のIMFの経済見通し、日本の、その中で、債務を一四〇%、つまり二〇〇一年に関係しましては一四〇%、GDP比でありますけれども、今、達している。今後二年間、それがさらに増加するであろうという見通しを出しております。
 ここで我々にとって重要なのは、やはり公的債務がふえていくということ、とりわけ、非常にこれはやはり戦後の平和時においては最大のレベルに達しているわけで、それがさらにこれだけ上昇の可能性があるということは、やはり危機のリスクというものも高まっているというふうに我々は理解しております。
石井(紘)委員 ありがとうございました。
 さらに、私がお出しをするデータを検討していただいて、実は国際的に、OECDでもいいしアメリカでもいいんですが、日本政府、今も聞いていただいてお気づきのとおり、財務大臣を初めとして政府の関係者も、日本の財政あるいは経済の実態というものを、私に言わせれば、そのポイントをつかんでいないわけでありますので、そういう点でも影響力を行使していただくのが一番近道だろう。
 私が最近出した「日本が自滅する日」というこの本は、今アメリカでも翻訳をされておりますが、やはりアメリカから言っていただくのが、自民党なんかあんな調子ですから、一番効果があるんじゃないか、こういうこともございます。そういう意味で、ぜひ適切な、これまで以上に適切な、日本経済、日本財政に対する御認識をいただきたい。
 そういう思いから、次に、我が国の国債そのものの保有の実態というものを申し上げてみたいと思います。
 我が国では、日銀の統計で出てきているところによりますと、国債の時価評価におけるところの現在高は、四百五十二兆円というふうに出ております。そのうちの、政府機関がどれくらい持っているのかということが私の重要な関心事であります。政府機関、自分の借金を自分で負っているということは、非常に不自然な姿であります。まさにこのことが、国債の評価を決定的に低める要因になることだろうというふうに思うわけであります。
 そこで、政府関係の所有状況につきまして申し上げますと、日銀の統計をもとにしております、これは財務省の財政融資資金が七十二兆七千億ぐらい持っております。それから、郵貯と簡保の特別会計、郵便貯金と簡易保険特別会計が、合わせて八十二兆円保有しております。これはいずれも、昨年の十二月末現在です。それから、日銀が六十八兆円持っておる。これだけですと約二百二十三兆円なんですが、それに加えて、日銀の統計には証券会社とか証券投資信託というような民間金融機関の保有の項目がございますが、この中に実は政府系の機関の保有している国債が一部含まれているのであります。
 それはどういうものかといいますと、四十二の特殊法人が約十八兆四千億円の国債を所有しております。赤字でどうしようもない、借金がたまっていてどうしようもない、こういう特殊法人が国債を何と十八兆四千億円抱えておる。それからまた農林中金、これも法律によって設置をされましたところの一種の特殊法人であります。これが七兆六千億円。この農林中金と特殊法人全体で二十六兆円の国債を保有しておりまして、政府系全体でトータルをいたしますと二百四十九兆円であります。これは現在時価総額の、国債の総額の五五%に当たります。こういう状況です。
 しかし、これは昨年十二月末ですから、それから今日まで半年経過をして、郵貯や簡保の所有分、あるいは日銀の所有分というものがさらに大幅にふえているのが実態でありますから、さらにこの割合はふえてまいります。
 例えば、総務省にちょっと数字だけ言っていただければ結構ですが、昨年末の段階と現在とを比べると、郵貯が保有している金額は幾らになりますか。
斎尾政府参考人 お答えいたします。
 郵貯、簡保の国債保有額でございますけれども、平成十三年度末の状況について、現在決算の取りまとめ中でございますけれども、郵貯で約五十三兆円、それから簡保で約三十七兆円となる見込みでございます。
石井(紘)委員 そうすると、先ほど私は二〇〇一年十二月末現在で郵貯、簡保で合わせて八十二兆円と言いましたが、今言われた数字ですと合計九十兆になりますが、これは統計をとった時点が違うんじゃないでしょうかね。これは昨年十二月末現在ですか、今言われた数字は。
斎尾政府参考人 ただいま私が申し上げました数字は、十三年度末でございます。したがいまして、十四年の三月末の状況でございます。
石井(紘)委員 年度で言われたわけですね。
 そうすると、ちょっと今ムーディーズの方がいらっしゃるから私は西暦で言っているわけですが、そうすると、年度で言うと、西暦が言いにくいんですね。
 そうすると、昨年十二月からことし三月までの間にこれだけ変化したということは、どういうことになりますかね。それは後でちょっと分析してください。
 それから、日銀の場合はいかがですか。先ほど私は二〇〇一年十二月で六十八兆円と言ったんですが、その後の変化はいかがですか。
雨宮参考人 お答え申し上げます。
 今先生が御指摘になられた数字は、私どもの資金循環勘定というベースの数字かと存じますけれども、これはいわゆるファイナンシングビルと申しまして、政府短期証券を含むかどうかで若干数字のベースが異なりますけれども、それを前提に申し上げますと、私どもの国債の保有残高は、昨年十二月末が七十六兆円でございました。これが、直近の五月末ですと八十五兆円でございますので、増加額だけ申し上げますと、この間、九兆円増加しているというような数字になっております。
石井(紘)委員 平成十三年度末で八十五兆円ということですか。
雨宮参考人 十三年度末で申し上げますと、八十七兆円でございます。
石井(紘)委員 そうすると、これが日銀は、二〇〇一年十二月末と十三年度末ですと三カ月ですから、この三カ月の間に七十六兆から八十七兆にふえた。それから、先ほどの郵貯、簡保は八十二兆から九十兆に八兆円ふえたというような調子で、政府機関の保有というのはその後もどんどんふえているわけですね。こうした実情、これはまさに自分の足を自分で食う、タコが足を食うという、英語でも言うでしょうけれども、日本語では言います。
 それからまた、これは普通の企業でいえば、出しちゃいけない融通手形ですね、こういうものを乱発しておる、好きなだけ借金をふやしておる。それはだれの保証も要らない、自分で保証していればいいんだというような、大変私は、ムーディーズの皆さんを前にして、日本国民として恥ずかしい話で、情けない話でありますけれども、しかし、そういうことを私たちも認識をしなきゃいけませんので申し上げるわけでありますが、こうした国債の保有状況について、トム・バーンさんにまた御見解を伺いたいと思います。いかがでしょうか。
バーン参考人(通訳) 石井先生に回答申し上げたいと思います。
 日本は、非常に高い一般政府債務を抱えているというふうに書いてあります。また、最近のプレスリリースにおきまして、日本政府は、ほかの先進国に比べまして、かなり高い債務負担を抱えることができる余裕があるというふうに考えております。それは政府の債務市場の構造によるものと考えております。
 今おっしゃった市場構造ですが、その保有構造が高い、金融システムの中での保有率が高い、または財投における保有残高が高い、あるいはバンク・オブ・ジャパン、日本銀行における保有残高が高いという理由かと思います。
 最終的には、もちろん一般的な家計部門の貯蓄が政府の赤字をカバーするというふうに考えておりますけれども、このシステムの特異性ゆえに、例えば外部との連携があるために、リスクは時間の経過とともに、例えばそのような大きな債務の信用リスクというのは増大しておりますけれども、安定性の要素があるというふうに考えております。というのは、これは日本の中だけにとどまっているからであります。そのために、安定的な見通し、これはパラドックスに聞こえるかもしれませんが、を持っております。例えば、同時に大きな危機があるというふうには考えておりません。
 また、見通しは、その信用リスク、これはA2の格付になっておりますが、これはもちろんトリプルAほど強くありませんけれども、ある特定のリスクのエレメントはあるけれども、今現在は喫緊のものではないというふうに考えております。
石井(紘)委員 いわゆる市場において、株式等については外人買いといいますか、外国からの買い注文も相当部分あるんですが、国債については、外国に出ていかないというのもございますし、それからまた、最近政府は、昨年から一生懸命国民が国債を買うようにという竹下景子なんというのを使ってテレビのコマーシャルをやったりしておりますが、さっぱりふえません。そういうふうに、国内でも国債の人気というものは非常に低い。
 こういう中で、もう一回ムーディーズに聞きたいんですが、先に財務大臣、こういう国債の所有の形態、実態というものを見て、これでいいのかどうなのか。こうしたものは、先ほどの政府支出のGDPとの関係の問題にしても、構造改革の中で基本的な問題として改革を進めていかなきゃならない問題じゃないのかどうなのか。これは後ろの方、副大臣じゃなくて、財務大臣に伺います。
塩川国務大臣 私は、別に異常を感じておりません。
石井(紘)委員 要するに、不感症ということですね。そういうことをムーディーズの代表の前で言われますと、ますます日本の評価というものは国際的に下がっていくだろうと心配をするわけであります。
 もう一度、トム・バーンさん、日本の財政状況は極めて厳しいと先ほど分析をされましたが、そういう状況でございまして、そういう中で国債の格付というものは、私は、もう二段階この間下げられましたから、しばらくは下がらないとは思いますが、将来下がる可能性というものはあるというふうにお考えでしょうか、ないというふうにお考えでしょうか。
バーン参考人(通訳) 御質問にお答えしたいと思います、石井先生。
 この格付の見通しですけれども、弊社にとりましては、安定的な格付の見通し、これは一年、二年後を念頭に置いております。確率は五〇%以下、つまり、格付を見直す可能性は五〇%以下であるというふうに考えております。これは格付を下げる、あるいは格上げの可能性に関して、両方に関してのことだと思います。
 この安定的な見通しですけれども、これもやはりパラドックスかもしれませんけれども、安定的と申しましても、確かに政府の債務は、今後もこの期間、増大するものと予測しております。また、経済は今後も不振を続けるというふうに考えております。
 また、補足いたしますと、思いますに、日本は難しい局面に直面していると思います。政策のジレンマを抱えていると思います。速水総裁ですけれども、最近のスピーチにおきまして、金融緩和がまだきちんと経済のアクティビティーを回復させていないというふうに言っております。また、日本銀行は、金融政策だけでは十分ではない、構造的な改革によって補完されなければいけないと言っております。また、NPLの問題、そして金融システムの問題の解決が必要であると言っております。それから、日本におけるデフレーションのスパイラルの可能性はありますけれども、すべての政策をまとめた場合には、経済の回復が民間セクターによって牽引されるのではないかと言っております。
 私たちが認識している一つの問題ですけれども、経済はもちろんリストラが必要であると考えておりますが、この合理化というのは苦痛が伴うものというふうに考えております。これは、例えば失業率の増加であるとかによって反映されておりますが、それらのバランスをとるのは、為政者によっては、例えば信頼性が失われるのではないかといった懸念もあります。
 ただ、当局は、経済がより深刻な不振状況に陥ることを防止するものというふうに考えております。ただし、究極的には、もしこの合理化そしてマクロ経済の実効性がうまくいかなかった場合には、高齢化による負担、そして政府に対する予算への負担、また公共部門への負担が、経済にとってもかなり深刻な影響を及ぼすものと思っております。そして、政府の公共部門の債務の間にも大きな影響を与えると思っております。
石井(紘)委員 ありがとうございました。今のお話でも、政策のジレンマに陥っている、構造改革が必要であるということがあったと思いますが、実はこの構造改革、我が国の政府はちょっとこの方向を間違っておりまして、勘違いの方に構造改革が進んでいるんです。
 それで、実はこの公的セクターの経済活動、これが非常に大きいということを私は先ほど来申し上げているわけです。これは民間の経済、つまり、民間の経済ということはないか、経済は民間がやるものですから、市場の経済活動に対して大きな制約になっているというふうに思いますが、この公的セクターの公共事業等を初めとする経済活動、日本ではこれが大き過ぎるためにこうした財政の窮状といいますか実態をもたらしている。こういう点については御見解はいかがでしょうか。
 それから、もう一つは、したがって、政府の投資活動、投資事業、こうしたものを予算的に縮小して、GDPとの関係においてもその割合を減らしていかなければならないというふうに思いますが、その点について、突然の質問でございますけれども、御見解がありましたら伺わせていただきたいと思います。
バーン参考人(通訳) 石井先生、私の回答ですけれども、先ほど申し上げましたように、日本の一般政府の債務の問題、これはもう既に特定されているものと思います。非常に大きな債務、これは平時における非常に大きな債務であるというふうに考えており、またさらに増大するものと思っております。
 具体的な、定量的な意味では、まだ数字は盛り込んでおりませんけれども、ただ、偶発的な債務というのは金融システムにおいて存在し続けるものと思っております。また、財投機関も、将来的には政府のバランスシートの中に盛り込まなければいけないかもしれません、資本化されなければいけないかもしれません。また、その具体的な数字については今はございませんが。
 そして、私たちの役割というのは、政策の効果を信用リスクという意味から評価することにあります。これは債券の、日本国債の所有者、保有者に対しての信用リスクを明らかにすることであります。私たちは、日本の政府に対する政策の諮問機関の役割は示しておりません。また、信用リスク、これこそが弊社の格付が模索しているものであります。それよりも大きなものあるいは小さなものを対象にしているのではなく、狭義にその信用のリスクをその債務に関して評価するものであります。
石井(紘)委員 私どもにとりまして大変参考になる、すばらしい御見解を伺わせていただきました。心から感謝を申し上げたいと思います。
 これまでのトム・バーン氏のお話の中には、我が国の債務はさらに増大するということの明言がございました。このままいけば今後のさらなる格下げということも五〇%の可能性があるということを言われたと思いますが、さてそこでどうしたらいいのかということは私どもの問題でございますから、これは御列席の、特に与党のあの辺の皆さんはよく勉強していただかなきゃならないと思います。
 最後に余計なことを申し上げましたけれども、以上でもって終わらせていただきます。ありがとうございました。
坂本委員長 午後三時五十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後二時五十六分休憩
     ――――◇―――――
    午後三時五十三分開議
坂本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。藤島正之君。
藤島委員 自由党の藤島正之でございます。
 まずムーディーズ社にお聞きしたいんですが、その前に、財務大臣に。
 ムーディーズさん以下各社の格付機関があるんですけれども、これは完全な民間機関なわけですね。しかも、民間機関が主として民間の財務体質といいますか、そういったものを評価するというようなことが主だったわけですけれども、現在、各国の国債についてもいろいろ評価しておるわけですけれども、こういう機関について、財務大臣はどのように評価しておるといいますか、お考えになっておりましょうか。
塩川国務大臣 これは民間の会社の、要するに経済調査機関でございますから、営業でやっておられるということがまず先決の問題であろうと思っておりますが、主として社債を手がけておられたと思うんです。私は、社債の評価、格付と国債の格付というものとは相当違うと思うんですね。
 それはなぜかといったら、国債というものは国の債券ではありますけれども、そこには、やはり国の勢い、国勢というものと、それから世界的な状況の中に、世界情勢の中におけるその国家の位置づけ、役割、活動というものもあるし、また国家自身が持っておる政策の評価というものもあると思います。
 でございますから、私は思うのに、これは経済状況を分析して述べておられるということであって、これが、国債の格付をするのは私は不当なことじゃないか、こう思うておるんです。ですから、現に、この格付が発表されましてもマーケットは何ら評価しておりませんね。関係ないというふうな状態でございますから、私はそのように思っておりまして、要するに、国債の格付というものと社債の格付というものとは全く次元が違ってくるんだということを認識しておるところです。
藤島委員 私も大体似たような考え方を持っているんです。
 ところで、ムーディーズ社さんにお伺いしますけれども、会社の収入源といいますか、それは大体どんな構成といいますか、大まかに言ってなっているんでしょうか。
ケラー参考人(通訳) 先生の質問にお答えしたいと思います。
 ムーディーズの売上収益というのは、本質的に、そうした格付の料金の支払い、その申請費というところで構成されています。この料金の計算は、どれぐらいの債券を発行するか、会社もしくは国がどれぐらいのものを発行するかということによって料金は決まります。そしてまた、機関投資家に関する調査もその中に入ります。
 先ほど売上収益の構成に関しては若干触れておりますが、二〇〇一年のレベルで、こうした発行主体、それが国であっても企業であっても、払った料金はムーディーズの全体の売上収益の八七%を構成しておりました。ですから、大半ということになりますね。
藤島委員 やはり、そういう業務といいますか、収入と格付との関係がかなりあるのではないかという感じはするんですが、そういう意味におきまして、格付の業務といわゆるコンサルティング業務というものと利益相反性があるのではないかという感じがするんですが、その点はいかがですか。
ケラー参考人(通訳) お答えしたいと思います。
 ムーディーズの考えなんですが、私どもの事業における料金体系というものは、私どもに必要な、格付を行うのに必要なリソースを提供してくれるものだというふうに考えています。そしてまた、年間のデフォルトスタディーというところに関しても、そこでいろいろ正確な予想ができ、それはマーケットからも評価されているというふうに思います。そうした料金との関係というのは、そうした独立性ということをむしろサポートしてくれているものだというふうに考えています。
 私どもは、トラックレコードに基づき、そして、信用リスクなどはそれに基づいてしっかりとした判断をしております。
 そして、情報の公開もデフォルトスタディーに関して行っております。それに関しては、過去の履歴、トラックレコードというところから見ておりますので、そうしたところで相反するというようなことは出てこないと思っております。
 格付を行う、そうした料金を取るということが相反するとは考えておりません。
藤島委員 格付の依頼とか取引、そういった関係、こういったところがある会社についての格付はやはり必然的にある程度甘くなり、政府のような、発行している国債のようなところについては、どうしても辛口の格付になる、こういう傾向が出るんじゃないかと思うんです。
 特に我が国の場合は、余りそういうことに政府の方が文句を言わないというような、ある意味では甘く見られているんじゃないかと思うんですけれども、恐らく民間であれば、自分のところが格付が低くなれば相当に文句を言うというようなことになるんじゃないかと思うので、それで伺ったわけです。私は、この点は回答は要りませんけれども、そういう考えを持っておるということを申し上げさせていただきたいと思います。
 それでは、個別の内容に入りますけれども、御社の日本のソブリンリスクレポートでは、ここに触れておりますけれども、ギリシャとイスラエルの一般政府債務比率との関係で触れておりますが、かなり高水準であるけれども、現在は両国とも若干日本を下回っている、こう言っておるわけです。そして、日本と同格付ということなんです。
 しかし、政府債務は日本の方が確かに若干高いんですけれども、政府債務の比率だけで評価をすべきものではないと私は思うんです。そのほか、やはりGDPの大きさなんかを見ますと、ギリシャ、イスラエルとはもう全く比較にならないくらい我が国は大きいわけですし、一人当たりのGDPを見ましても、数倍になっておる。あるいは、外貨準備高を見ましても、四十倍とか七十倍といったような数字。あるいは、工業付加価値の問題にしましても、数十倍あるいはもっと大きいものになっておる。それから、海外での特許取得数につきましても、もう比べ物にならないぐらいの大きさになっている。こういった点も総合的に考える必要があるんじゃないかと思うんですね。
 そういうことからしまして、一般的に、経済は日本が上だが、政府債務が多いということから同じ格付という、そんな単純なものでいいのかどうか。財政状況とか経済のファンダメンタルズといったようなものが本当に反映されているのかどうか、御説明を願いたいと思います。
バーン参考人(通訳) それでは、藤島先生の御質問にお答えしたいと思います。
 ムーディーズの方の考えとしては、日本の経済的なファンダメンタルも、そしてまた政府の債務の負担というものも適切に勘案していると思います。もちろん、こうした要因をどれぐらいウエートづけするかということに関して、そして国の中期的な見通しを出すということに関しては、いろいろ見解の相違はあると思います。基本的に、私どもの格付というのは、そうした要因に関して私どもが自分たちのウエートづけを行った結果だと思っています。
 そして、もちろん、例えば日本の対外的な強みというところに関しては、自国通貨建てのものに比べて、外国通貨建てのものはAa1という形で、自国通貨建てよりも高くしています。ギリシャ、イスラエルなどに関しては、そうした外貨建ての格付は日本のものよりかなり低くなっています。こういうところ、対外的な強さということに関しては、私どもはちゃんと反映させているつもりです。
藤島委員 対外的な強さについて反映されているというふうにおっしゃっていますけれども、それであれば、なぜ今回のように二段階も格下げされるのか、非常に説明とやっておられる結果が合わないんじゃないか、こう思うから伺っているんですが、今の答えはむしろ、そうであれば格下げする必要はなかった、こういうお答えになるんじゃないですか。
バーン参考人(通訳) 藤島先生に対するお答えです。
 私どもは、さまざまな要因というもの、そしてまたいろいろな強み等を経済システムの中で見て、それを織り込んだ形でデフォルトの可能性というものをはじき出しております。先ほど言った強みということ、これに関しては、外貨準備高ですとか、それからまたその他、資本、所得、そして貯蓄高の高さということに関しては、Aa1の外貨建ての国債の評価というところにつながっていると思います。そしてまた、当面は安定した見通しというようなことで考えています。
 自国通貨建てに関しては下げています。A2というところまで格下げを行ったわけですが、これに関しては、国内の通貨義務ということを考えての判断にもなります。そしてまた、クレジット価値、信用価値ということに関しても、特にこれは財政の面ということですね、日本の政府債務のGDP比率、そしてまた債務の歳入に対する割合というところから判断をいたしました。こうした比率に関しては、ほかの国と比べると、先ほど先生が言われた国よりも悪い状況にあります。
 そして、今後の流れ、そしてまた見通しというところもこの中には入っています。ほかの国では、今後の見通しがもっと強く持てるものもあります。日本に関しては、債務の額、そして割合がまた今後もふえるというふうに考えられます。そして、政策的な決定、その選択というものが、短期的に、中期的にどう行われるかということを考えると、やはりそこのところはリスクを見なければいけないというふうに考えたわけです。もちろん、そうしたようなところというのは、私どもの評価に反映されております。特に、債務がふえているというところが、そうした判断の基準にもなっています。
藤島委員 要するに、債務の額の大きさ、これにこだわり過ぎているんじゃないかと思うんですね。それに対して、我が国の経済全般を考えた場合、ほかの国とは全然違う面があるわけですね。そこが配慮されていないのではないかという気がするわけです。
 午前中の説明もありましたけれども、その正当性を述べる際に、後半の部分はむしろ下げる理由が不適当だったといった方向の説明になっているんじゃないか。例えば、中期的には政府の資金調達が危機的状況に直面する可能性は少ない、あるいは、日本政府には債務問題に対しデフォルトを回避するため適切な対策を検討する猶予がある、あるいは、五年以内にデフォルトに陥る確率はわずかに二百分の一といったようなことをずっと言っておるんですね。これは、自分のやった二段階格下げが間違っていたということをまさにはっきり言っているんじゃないでしょうか。
バーン参考人(通訳) 藤島先生の御質問に対する回答ですが、ここでも、先ほどの繰り返しになりますけれども、意見の相違というものは避けられないと思います。どうした、どのような要素を入れ、それにどれだけのウエートを与え、そしてまた最終的な結論をするかというところでは、意見の相違はもちろんあると思います。
 私どもが一番に見たのは、債務の額がふえていること、そしてまた日本の経済的なパフォーマンス、その将来の見通しというものがまだまだ弱いというところ、そして日本の債務の状況というものが今後も悪化する可能性があるというところ、これをリスクというふうに判断したわけです。こうしたリスクというものがA2という格付になったということです。
 しかしながら、将来的なところに関しての見通しは、安定というものを出しています。ですから、この安定した見通しというのと格付が低いというところで、相反するのではないかというところで混乱があったのかもしれません。
 特に、こうした、政府は長期的に見ますと適切な政策を持ってそうした債務問題に対処する可能性はあるだろうというところは、もちろん私ども認めています。これが、もしこうしたような危機的な状況というのが起こる可能性があったとしますと、それはかなり先まで見ないとわからないということで、短期的、中期的にはそういう危機はないというのが私どもの見解です。
藤島委員 次に、内容に入りますけれども、今確かにプライマリーバランスが、二〇一〇年ぐらいにやっと、うまくいって、いくかということですので、国債の発行がふえていくというのはある程度は間違いないと思うんです。小泉政権がどうなるか先はわかりませんけれども、今のようなことであればそうなる可能性が高いのは私もよくわかりますけれども、安定的とおっしゃったのは、格下げをしたままの形での安定的というふうに理解されるんですけれども、どういうことですか。
バーン参考人(通訳) 安定的な見通しということでありますけれども、今後一、二年以内において、可能性としては、レーティング、格付を見直す可能性が五〇%以下だということです。この見直しというのは、格下げ、格上げ両方の可能性がありますけれども、もちろん、日本の特質というところを考えて、踏まえて見ますと、日本の債務の資金繰りでありますけれども、そういうことは非常に手当てがされているということで、見通しとしては安定的であると。あるいは、短期的、中長期的には、そうした、ファンディング、資金調達の危機的な状況というのは起こらないだろうというふうに思うわけであります。また、現在の金利状況が、非常に低く安定しているというふうな状況ということも勘案されております。
藤島委員 その問題についていきますと、資本逃避のリスクは小さいといったようなことも言っておられるんですけれども、経常収支の黒字は当面続くということもありますし、そういうことを考えると、午前中の説明でも同じような説明があったわけですけれども、デフォルトがどういう状況で発生すると考えているのか、その辺が非常にはっきりしていない。そのまま、先ほどのような、国債の額が大きいというだけで格下げというような感じがするんですが、どのような形でデフォルトの状態が生ずるというふうに考えておるのか。あるいは、そういうことは全く考えていないということなのか。
バーン参考人(通訳) お答えいたします。
 二点あったかと思います。
 まず第一に、ここでもやはり対外収支ということが言われました。まず、国内債務の規模ということを考えますと、IMFの認識でありますと、GDP対比、この債務、GDP対比というのが一四〇%を超えている、これが二〇〇一年の状況でありますし、また、一般政府債務、これを歳入に比べますと、四〇〇%を超えているというような状況であります。
 そして、対外債務は、これを純資産で見てみますと、最近のこれは日銀総裁のステートメントによりますと、GDPの三〇%ぐらいだというふうに理解しております。
 これは実際には、これは政府がアクセスできないような民間部門の資産を含んでおります。公共部門の資産、そして日銀の、公共部門の、実際、この資産、対外資産というのは、三〇%よりもっと低いわけであります。もちろん、外貨準備高というのは、GDPの中で見ますと一〇%ぐらいの割合になっております。その意味で、対外的な強さということを考えますと、失礼、これはリソースということ、直、すぐに政府が何らかの形でアクセスできるようなものではないと。そうしますと、政府といたしましても、恐らく、こうした資産、とりわけこの非政府部門、民間部門が保有している資産に対して、なかなか簡単にはアクセスできないような状況にあるというふうに理解いたします。
 また、債務の規模ということを考えますと、全体的に見ると、これは実際に、ほかの例えば格付で、外貨建てでということで見てまいりますと、かなり、我々としては大きな問題があるというふうには考えていないわけです。ですから、デフォルトということに関しましては、外貨建てのもので見ますと、それほど大きくないと考えております。
 先ほど申し上げましたように、我々、デフォルトの定義というのは広く考えておりまして、基本的な契約が何らかの形で一方的に変更させられる、あるいはまた満期構造が変わっていくということ、また現行システム内にとどまらない強制的な債券の交換であるとか、あるいは例えば財務省証券のみを対象としたような税の導入であるとか、あるいは資本課税などを考えております。例えばインフレ、例えばそれがハイパーインフレであっても、我々のデフォルトの定義では、デフォルトとはみなしておりません。
 また、もう一点。例えば自国通貨建てでデフォルトを起こしたというようなケースがあります。一番最近が九八年のロシアのケースであります。これは外貨建てでのデフォルトではなく、自国通貨建てであります。もちろん、日本とロシアは全く違います。ロシアは新興市場国家であります。
 ですから、日本のシナリオの場合を考えてみますと、どのような、同じようなデフォルトの状況が発生するというふうに我々は考えておりません。例えば、かなり、では財務省証券のみを対象とした非常に差別的な資本課税などが起こるというようなことも考えられておりません。
 例えばまた、イタリアのケースを先ほど申し上げましたけれども、これは実際に満期構造を変更してしまった、これは一回に限らず二回にわたって満期構造を変えてしまったというような状況があったわけであります。そこで我々としては、格下げをしたわけであります。
 それで、日本の状況に戻りますと、このシングルAのレーティングに関しましては、これはソブリンレーティングをサポートするだけではなく、実際に民間企業の社債をサポートするものであります。このシングルAのレーティングに関しましては、非常にプラスの属性を持っております。とりわけこのアッパーミディアムに関しまして、元本あるいは金利の支払いに関しまして何らかの形で問題が発生するということはないというふうに考えております。
 その意味で、我々としては、このシングルA、A2という形での格下げを行いました。
藤島委員 時間がないので、もうちょっと簡潔にお答えをお願いしたいと思いますが、今ロシアの例、午前中も出たんですけれども、これは確かに外貨建てじゃないというんですが、これは自国建てではありますけれども、かなりの部分を外国人が保有していたということと、ルーブルとドルレートとの関係等で、対外的な制約が大きかったといったような特殊なことがありますので、これが直ちに例として我が国の評価に当たるとは私は実は思っておりません。余り現実的でない例を引かれているというふうな感じがします。
 それから、先ほど来、外貨建ての話が出ましたけれども、先ほどもちょっとお話がありましたけれども、外貨建てについていいますれば、対外債権の残高だとか経常収支の状況あるいは外貨準備、こういったものについてはいずれも世界最高になっているわけですね。したがって、こういうのを考えた場合、先ほど来、外貨建ての評価はちゃんとやっているとおっしゃっていますけれども、私は、ほかの国に比べましても、トリプルAで当然いいんじゃないかという感じがするんです。ほかの格付会社についても、そういうことを言っているところは多いわけですけれども。
 むしろ、外貨建ての方も低過ぎ、ましてこれよりも四ランクも低いというのは、私は、主張の中が矛盾しているんじゃないかという感じがするんですが、いかがですか。
バーン参考人(通訳) お答えいたします。
 確かにおっしゃるとおりだと思います。ロシアは、日本を比べるいい例ではなかったと思います。確かに、私としてはここではもっと一般的な点を指摘したかったわけであります。つまり、自国通貨建ての債務に関してデフォルトを起こしたということを言いたかったわけであります。ただ、日本のこうした資金調達のシステム、私も先ほど申し上げましたけれども、そういうことを考えますと、日本は非常に強い状況にあると思います。しかし、だからといって、これが永遠に続くとは思っておりません。
 また、この外貨建ての格付でありますけれども、外貨建て債券の格付、私ども、これはAa1、ここは格下げはしておりませんし、二〇〇〇年以降変わっておりません。これは、ですから、まだ一番最近でもこの格付の見直しの対象にはなってきてはおりません。
 また、先ほど指摘されたように、日本は確かに対外資産ではナンバーワンのポジションにあるということは私も同感だと思いますし、さらに、一般政府債務という意味でも一番高いレベルにあるということを申し上げなければなりません。
藤島委員 お話を伺っていると、いよいよ何かおかしくなってきまして、どんどん格上げした方がいいんじゃないかという説明をしているようにしか聞こえないんですよね。私は、トリプルAでもいいんじゃないかという感じがするんですが。
 そのほか、普通のケースですと、国債の格付が一番上で、民間企業の場合はそれより必ず下になっているんですが、日本の企業の場合は、数字によりますと、三十七社が国債のランクよりもいいわけですね。これはどういうふうに説明するんでしょうか。
バーン参考人(通訳) お答えいたします。
 今言われた見解ですけれども、つまり日本はもっと格上げに値するのではないかということですね。これに関しましては、ニューヨークに戻りましてこの格付委員会の方にそのメッセージを伝えたいと思います。とりわけ自国通貨建て国債の格付については、これがシーリングということではありません。
 我々がこのシステムを管理する方法としては、いろいろな形でのストレスがかかるようなときがあったとしても、これは経験的な形で、例えば最近のデフォルトのケースなど、これはアルゼンチンのケースということに限りませんけれども、パキスタンやロシアなどのケースということを見てまいりますと、また、この信用度、とりわけ企業の信用力ということ、これに関しましては、やはり債務返済を行っているかどうかということが重要になります。
 日本の場合、確かに政府のとりわけ自国通貨建ての信用度というのは、直接これを実際に、この格付の対象になっているわけではありませんし、それが例えば社債の格付に直接影響するということではありません。
 我々、つまり自国通貨建ての実際ガイドラインがありまして、トリプルA、日本でも一番高い格付を得ているのは、日本政府ではない民間の企業なわけであります。それはやはり基本的に、生来的な財務力が強力な会社があれば、そこのところはやはり政府の信用力ということにかかわらず、最高のトリプルAを付与しております。
 また、シングルAのレンジが我々としては日本の自国通貨建て債券に妥当であるというふうに考えております。
藤島委員 何か全然説明になっていないので、全然私は納得はできないんですけれども、時間ですのであれですけれども。
 ポンド危機後の英国外債、あるいは双子の赤字が大問題となっていた一九八〇年代後半の米国債は、トリプルAだったんですね。我が国の現状をそれに比べまして、何か意図的に低くされているんじゃないか。
 私は、今我が国はやはりここで自信を持ってどんどん行かなきゃいけないというときに、一種のアメリカと我が国の金融戦争みたいな形でやられているんじゃないか、その片棒をこのムーディーズが担いでいるんじゃないか、そんな感じも実はしないではない。言ってみれば、最初の話に戻りまして、財務大臣がおっしゃるように、これは単なる一民間企業のやっていることで、国債についてそんなに大騒ぎすることじゃないんだということなのかもわかりません。
 そういう意味で、余り取り上げて議論すること自体がどうかという感じもしないではないんですけれども、ただ、影響力として現実にかなり影響力があるものですから、一応議論をさせていただきました。
 時間でありますので、結構でございます。どうぞ。
坂本委員長 この際、一言申し上げます。
 ムーディーズの御両名におかれましては、御多用中のところ御出席をいただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。
 御両名との議論を通じ、財務金融委員会といたしましても、今後の活動に大いに参考にさせていただきたいと存じます。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。(拍手)
藤島委員 それでは、続きまして、みずほホールディングスの問題について質問させていただきます。
 午前中も質疑があったわけですけれども、いずれにしましても、みずほホールディングスは、我が国で最大の銀行なわけですけれども、大変な社会的な使命を持っているはずでありますが、その社会的インフラとも言える決済システムに今回大変な障害を起こしたということは、本当に余りにもお粗末過ぎるという感じがいたします。
 これからもトップの銀行として活躍してもらわないかぬわけでありますので、まず足元をしっかり固めてかかる必要があると思うんですが、この点について御返事をいただきたいと思います。
前田参考人 お答え申し上げます。
 先生のおっしゃるとおり、今回のシステム障害等によりまして、社会的インフラとも言えます決済システムに重大な障害を引き起こし、多くのお客様に多大な御迷惑をおかけいたしましたことにつきまして、重ねておわび申し上げますとともに、私ども経営に携わる者として深く反省をいたしております。
 私どもといたしましては、お客様には個別に十分御相談をさせていただきながら、誠心誠意対応させていただきますが、システムの今後の安定稼働の確保と一層の事務の正常化、業務運営の的確化及び適切な再発防止策等の策定、実施を早急に固め、今回のような事態を二度と発生させないよう、役職員が一体となって全力で取り組んでまいりたいと考えております。
 また、こうした取り組みとともに、お客様によいサービスでお返しすることによりまして、失った信用の早期回復に努めてまいる所存でございます。
藤島委員 リストラの点もあるんですけれども、リストラを余りやり過ぎちゃってまた不都合が出ても、これはぐあいが悪いだろうと思うんです。合併したねらい、これは、ただ規模が大きくなるということじゃなくて、組織を割り直すといいますか、機能を割り直して効率化するということにあるんだろうと思うんですね。
 そういう中で、どうも従来の三行の人事にしても、いろいろな面でこだわり過ぎているんじゃないかなと。確かに、かつても大きい商社その他が合併をした際には、それぞれの取締役の数等は比例してずっとやるとか、もう十年も二十年もたってもまだそんなことをやっている会社もあるんですけれども、今はそんな時代じゃないと思うんですね。
 それで、今後、そういう点を含め組織の改革というか、あるいは今回の責任問題を含めどういうふうに持っていこうとしているのか、御説明いただきたいと思います。
前田参考人 お答え申し上げます。
 今回の統合は、三つの銀行を二つに再編し直すという大変大きな統合でございました。この統合の目的は、統合することによりましてコストを大幅に削減いたしまして、より多くのサービスをお客様に提供するためのものでございます。
 そのために、経営のやり方につきましても、従来はもちろん取締役の数もたくさんいたわけでございますが、この三月三十一日までの体制をすべて一新いたしまして、四月一日からは全く新しい体制でスタートをいたしております。それぞれの組織のトップは一人ということで、社長もしくは頭取でございます。会長職も置いておりません。それから取締役の数は、現在三つのエンティティーで二十一名でございまして、ホールディングスにおきましては専任は四名だけでございます。それから、みずほ銀行、みずほコーポレート銀行でもそれぞれ七名ということで、ぎりぎりの体制でやっております。
 今後につきましても、これは先ほど先生がおっしゃいましたように、三行のあつれきとかいろいろな問題があるという御指摘をいただきました。これは私どもは謙虚に反省をいたしますとともに、四月一日からまさに新しい銀行としてスタートしたばかりでございます。システム障害を起こして大変申しわけなかったんですが、一刻も早く正常な形にし、組織も簡素化いたしまして、いろいろな形でお客様にいいサービスを御提供するという本来の統合の目的の方に全力を投入してまいりたいと思いますので、何とぞ御理解いただきたいと思います。
藤島委員 余り責任問題ばかり言っていてもしようがないと思うんですけれども、午前中にも議論ありましたけれども、端的に一口に言って、今回の原因といいますか、それと、今後はどういうふうにするから、絶対とは言えないんでしょうけれども、起こらないようにするというものがあるのかどうか、もしあればお答えいただきたい。
前田参考人 お答え申し上げます。
 午前中にも申し上げましたが、今回の原因を究明する過程でいろいろなことが判明いたしております。障害発生の直接の原因は、プログラムの不都合等につきまして、この点につきましては既に修正済みでございます。システムの安定稼働を今後とも確保いたしまして、一層の事務の正常化、業務運営の的確化に向けてシステム全領域にわたるリスク分析を行いまして、速やかに必要な対策を講じます。
 また、障害発生の原因究明の中で、システム開発体制において開発工程の管理や開発標準の遵守状況など、また報告に適切さを欠いたなど、運営に問題があったことが判明いたしておりますが、これにつきましても、改善状況に重点を置いた内部監査の実施等によりまして徹底的にフォローをいたしまして、開発管理体制を強化してまいります。
 また、フェーズ1の段階での持ち株会社と違いまして、この四月一日からは持ち株会社がある意味では単独の持ち株会社になっておりますので、持ち株会社といたしましても、今後の重要なシステム開発プロジェクトに、全般に関してより踏み込んだ管理を行ってまいります。
 今回のようなお客様に迷惑をかけるような事態を二度と起こさないように、私どもといたしましては、全員がお客様第一の精神を改めて持ち直してフォー・ザ・みずほの精神で、三行の過去の歴史をすべて忘れて新しい銀行をつくりたいと思います。よろしくお願いいたします。
藤島委員 社会的使命をよく自覚されて頑張っていただきたいと思います。
 最後に、金融担当大臣に伺いますけれども、今回の調査、もう早く結論を出して、早く指導するならするということが必要だろうと思うんですが、御意見を。
    〔委員長退席、中野(清)委員長代理着席〕
柳澤国務大臣 藤島委員の御指摘のとおりだと考えております。
 立入検査後、オフサイトの審査というものもある意味で並行して進めてきまして、我々としては、最も短時日の間に検査結果通知を出し、同時に二十四条報告を徴しております。この期限も一週間ということで切っておりまして、この後、一週間後に二十四条報告が出てきた場合には、早急に適切な処分を行って、早く立ち直るための基盤づくりをいたしたい、このように考えております。
藤島委員 今、最後におっしゃったことに尽きるんだろうと思うんですね。早く立ち直る基盤づくりをきちっとやるということだろうと思うんです。
 本当に最後の質問ですけれども、ほかの銀行も結構相前後して起こっていますね。UFJだとかあるいは東京三菱のATMの問題だとか、あるいは郵貯のATMトラブルとか、こういうのが起こって、所管でない部分はあるかもわかりませんけれども、こういうのが全般にあるということから、今後どういうふうに御指導していこうと思っておられるのか伺って、終わります。
柳澤国務大臣 一般に、金融機関に対しましては、何らかの事故が起こったという場合には、これは一カ月以内でしたか、報告の義務があるというルールが課せられているわけでございますけれども、コンピューターシステム障害等についての資料の提出についてということで、この場合には本当に迅速に、もっと迅速に報告を求めるということになっております。事実関係、障害の原因、復旧状況、事後改善策、こういうようなことでこの報告を求めるという特別なシステムを置いてございます。
 もちろん、そのほか我々の検査におきましても、金融検査マニュアルには、委員御存じのとおり、システムリスク管理体制等についてさまざまなチェックを行うということになっております。
 こういうようなことで、今後とも、システムの障害、事故が生じないように適切な監督をいたしていこう、このように思っておりますが、今般のこともございましたので、まず、さしずめ各業界団体に対して先般、一体どういう状況なのか、もう一回再点検をしてくれというようなことで指示を出しまして、今回の事故を一つのきっかけにしまして全般についての点検をさせる。その後、先ほど言ったようなルーチンのルール等適切な監督を展開していきたい、このように考えております。
藤島委員 終わります。
中野(清)委員長代理 次に、佐々木憲昭君。
佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 きょうは、寺西、前田両参考人にお越しをいただきまして、今の銀行の実態についていろいろお聞かせをいただきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。
 五月二十四日に一斉に発表されました大手銀行の七グループの三月期決算によりますと、不良債権処理額が大幅に拡大して、前期比で約一・八倍の七兆七千二百億円に膨らんでおります。同時に、不良債権残高は二十七兆一千七百億円と、前年比で四七%増ということでございます。簡単に言いますと、処理しても処理しても不良債権はどんどん膨らんでいく、こういう実態だと思うわけです。
 そこで、基本的なことからお聞きをしたいんですけれども、この不良債権にはバブル時代につくられたものがあったと思いますが、それは現在ではもう既に基本的には処理し終えたというふうに理解してよろしいのではないかと思いますが、現在抱えているのは、それ以後に発生したものである、大ざっぱに言いまして、このように考えてよろしいかどうか、お二人にそれぞれお伺いしたいと思います。
前田参考人 私の考えを申し上げます。
 バブル期の不良債権処理は、もう十年以上たちまして、私はほぼ終わったと考えております。現在発生いたしております部分は、通常言われております、いろいろ帝国データバンク等の分析でも、本業不振型とか不況型とか、いわゆるそういう種類のものではないかと思われます。
 ただ、きれいに分けるというのは大変難しいんですが、どちらかというと不況型と言っていいのではないかと思います。
寺西参考人 お答えをいたします。
 私見でございますけれども、これまでの不良債権というのは大きく申し上げて三つに分けられるのかな、このように思っております。
 最初は、先生おっしゃいました不動産融資に代表されますバブル型の貸し出しということでございますが、これにつきましては、御指摘のとおり、おおむね処理が完了しているというふうに考えております。その次に起こりましたのが、ここ数年、ある意味で景気低迷とかデフレの影響によりまして、本業の業況が悪化して不良債権化している部分。それから、日本経済の産業構造の大きな転換が起こっておるわけでございますが、この大きなうねりの中で横波を受けて対応に苦慮しておる企業といったことが、その次に起こっておる不良債権ではないかな、こういうふうに思っております。この辺がここ数年に起こっていることではないかな、こんなふうに考えております。
 以上でございます。
佐々木(憲)委員 今のお話ですと、不況型あるいは日本経済の構造的な転換の中で、不良債権が急にふえてきているということなんですが、三月期決算では、みずほの不良債権は九千七百二十億円ふえておりまして、UFJの場合は実に三兆八千百十七億円ふえているわけですね。原因として、政府の説明によりますと、景気の後退で不良債権化している部分、それからもう一つは資産査定の厳格化で不良債権がふえた、この二つの要因を金融庁などは答弁でお答えになっているわけです。
 お二人にお聞きしますけれども、不良債権の最近の増加分、この一年で結構ですけれども、その中で、資産査定の厳格化によって生まれた部分というのはどの程度の比率を占めているのか、これをお伺いしたいと思います。
前田参考人 お答え申し上げます。
 ただいまの先生の御質問は実は大変難しい御質問でございまして、どの部分でふえたかというのは大変分析が難しいと申し上げざるを得ません。資産査定の厳格化で限界的にどれぐらいかというのは、自己査定というのは、既に導入いたしましてかなり期間を経ていまして精度が上がっております。
 ただ、昨年は特別検査がございましたので、その部分は間違いなく若干影響したと思いますが、それ以外の部分で、割合をちょっと分解するというのは非常に難しいということをお断り申し上げたいと思います。
寺西参考人 お答えを申し上げます。
 直接お答えになるかどうかはわかりませんが、私どものグループについて少し数字を挙げて御説明をして御理解いただきたい、このように思っております。
 私どものグループについて申し上げますと、二〇〇二年三月期の不良債権、これは金融再生法の開示ベースでございますが、六兆五千億円ということで、九月末期より三兆六千億ふえているということでございます。この残高の増加の主因は、市場の厳しい評価も踏まえまして従来以上に厳格な査定を行ったということとか、大口債務者に対します再建計画等の策定を行ったということが考えられます。
 数字で具体的に申し上げますと、破綻懸念債権に相当いたします危険債権が一兆六千億ふえてございます。それから要管理債権、これは要注意先のうち、貸し出し条件緩和を行っておる債権等でございますけれども、一兆九千億円それぞれ増加しております。特に要管理債権の増加につきましては、実体経済が悪化している中で、返済猶予と少しでもみなされます債権につきましては、厳格に判断して金利水準にかかわらず開示することとした、こういうことが影響してございます。
 先ほどお話ございましたように、当然のことながら、実体経済の低迷に伴う債務者の状況悪化も影響しておりまして、資産査定の厳格化のみの影響を数量的にとらえることは非常に難しい、このように思っておりますので、今の我々が置かれております現状を少し御説明して、お答えにさせていただきたい、このように思います。
 以上でございます。
佐々木(憲)委員 どうも余りはっきりした数字が出てこないようですけれども、金融庁の説明によりますと二つの要因がある。景気が悪くなった面と資産査定の厳格化、こういう説明をされているわけでありまして、それがどの程度の比率なのかということを知りたいと思ったのですが、どうも難しいという話であります。
 そこで、もう少し別な角度で聞きますけれども、不良債権の構成でありますが、大手企業向け、中小企業向け、そして個人向け、大きく三つに分けますと、不良債権はそれぞれどの程度の構成になっているのか、比率になっているのか、これをお知らせいただきたいと思います。
前田参考人 お答え申し上げます。
 今先生の言われた、きれいに分解ができているかどうかちょっと申し上げにくいんですが、私どもが保有しておりますデータで申し上げますと、ことしの三月末時点での国内店におきますリスク管理債権の融資先別の構成でございますが、大企業と中堅企業で合わせて約三割、それから中小企業で六割強、それから個人というジャンルで分けますと、ここは大体一割弱、七%ぐらい、これで大体一〇〇%という分類でございます。
寺西参考人 お答えをいたします。
 ざっくりした数字になりますが、二〇〇二年三月時点におきます私どもの不良債権の内訳、大手それから中堅企業合算で四割強、中小企業が約五割、個人向けが一割弱、ざっくり言いますとこういう分布になろう、このように思います。
 以上でございます。
佐々木(憲)委員 そこで、中小企業あるいは個人というのは、社会的にも大変弱い立場にありまして、景気の荒波に大変もまれやすいという状態にあります。
 私は、昨年十二月三日の予算委員会で、資金回収のあり方について質問をいたしましたところ、RCCの場合、回収のあり方については、二つの要因といいますか原則で当たっているというふうに答えております。
 一つは契約の拘束性の追求、それでもう一つは人間の尊厳の確保という二つを挙げまして、回収に当たる場合、相手側の要望に耳を傾けて、一方的な競売だとかあるいは強制執行によるのではなくて話し合いに応ずる、できるだけ話し合いで解決していく、こういう姿勢を表明しております。簡単に言いますと、身ぐるみはいで路頭に迷わすというようなことはしないということでありました。預金保険機構の松田理事長にも、RCCの鬼追社長にも確かめましたけれども、人間の尊厳の確保というのが優先されなきゃならぬのだという答弁でありました。
 問題は、銀行としてはどういう姿勢をとるかということであります。森長官にただしたところ、長官は、RCCという国の公的サービサーがやっていることは、競争の激しい、民間の、レピュテーショナルリスクを抱えている銀行は、当然、その程度まではやってしかるべきではないか、こういうふうに述べています。つまり、人間の尊厳の確保を優先するということを強調しているわけでありますが、この金融庁長官の発言について両参考人はどのように受けとめておられるか、これをお聞きしたいと思います。
前田参考人 お答え申し上げます。
 整理回収機構が回収方針としてお示しになっております、契約の拘束性の追求という部分と人間の尊厳の確保と両立を図るという考え方は、私どもも承知いたしておりますし、その趣旨につきましては、私どもの考えと矛盾するものは全くございません。
 私ども、お金をお貸ししているわけでございますが、延滞が起こった場合には、お客様とお話し合いによる解決を基本に、それぞれのお客さんの事情を十分に勘案しながら、誠心誠意御返済のお話し合い、それから条件を変えるとか、いろいろなことをやらせていただいております。
 また、いただいた担保の処分につきましても、まずは物件所有者の方の任意で売却をお願いいたしております。やむを得ず競売の申し立てや家賃の差し押さえ等を行う場合でも、これは個別の事情を十分に勘案した上でやる、そういうぐあいに基本的に取り決めておりまして、先生のおっしゃった部分、私どもは、整理回収機構の方針とも矛盾はないと思います。同じ考えでございます。
寺西参考人 お答えをいたします。
 RCCの回収方針は、私どもの民間が回収に当たるときも守るべき指針である、このように認識をいたしております。
 私ども、特に個人のお客様に対します債権の回収に当たりましては、こうした指針にのっとりまして、契約をしゃくし定規にのみとらえることなく、さまざまな個別事情も十分に勘案しながら、貸し出し条件の変更、例えて申し上げますと金利の減免とかリスケジューリング等の御相談に応じるなど、ケース・バイ・ケースの対応を行ってきてございます。
 債権回収に際しまして、行き過ぎた行為のないよう引き続き指導を徹底してまいりたい、このように考えております。
 以上でございます。
佐々木(憲)委員 森長官はこういうふうにも述べているわけです。当然、銀行はレピュテーショナルリスクを自覚して、一定のモラルを持った対応というものが期待されている、仮に、銀行が、不祥事だとか、あるいは、そこまでいかなくても社会的批判を受けるようなことをやっているということが監督当局の耳に入れば、それは必ず事情を聴取しておるわけでございまして、それに基づいて適正な対応、非常に極端な場合は二十四条報告をかけるとか、そういうことも監督当局としてはやっております、こういうふうに述べているわけですね。
 銀行は、バブル時代を振り返りますと、大型フリーローンなどと組み合わせた、いわば提案型融資というものを大規模に行った経緯がございます。それも、年収の何倍もの過剰融資を行ったとかいう事例も聞くわけであります。バブルがはじけると、貸した側の責任は一応棚上げにしまして、回収に走るという事例が少なくないように思うわけですね。話を聞きますと、銀行の場合、競売に一度かけたら絶対に取り下げないとか、話し合いに応じると口では言っても自分たちの主張は絶対に曲げないとか、ともかくしゃくし定規に、法的処理、競売、回収、場合によっては身ぐるみはいで追い出すというような事例も、私も相談を受けたことがありますね。そういうことがマスコミでも報道される事例もあります。
 今、自殺者が三万人を超えるとか、ホームレスが大変ふえておりますが、こういう時代に、公共的な性格を持った銀行の役割というのはますます大きなものがあるというふうに思うんです。銀行もやはり貸し手の側の責任というのがあると思うんですね。借りた側の責任だけ問題にするんじゃなくて、やはりそういう問題というのは相互に踏まえて対応すべきだと思うんです。
 回収に当たって、人間の尊厳を自覚して、やはり話し合いで解決するということを基本原則として行っていく、先ほど一般的回答がありましたが、個々の事例についても、やはり相手側の立場をよく踏まえて、人間的に生きていく最低限のところを保障するような、そのぐらいのことはしっかり現場に指導していただく、支店までその考えを徹底するということが必要だと思うんですが、その決意をそれぞれお聞かせいただきたいと思います。
前田参考人 お貸し出しした方がお金を返済できない場合のやり方でございますが、銀行と個人の方という立場の違いがございますので、どうしてもそういう御指摘のような問題がございます。ただ、これは、私どもは、そうはいいましても、相手の方の御事情を十分配慮するというのは当然のことだと思っておりまして、契約に書いてあるからそのとおり形式的に適用するというような運用をやらないようにと、むしろそういう指導をいたしております。
寺西参考人 お答えをいたします。
 一部繰り返しになりますが、私どもといたしまして、回収に当たりましては、まずお客様と十分な話し合いを行い、御納得いただける点をぜひ見出せるよう、誠意を持って対応したい、このように考えております。実際、お客様の個別事情をきめ細かく勘案いたしまして、無理のない返済が可能となるよう、リスケジュール等に応じてきているケースも多数ございます。先ほど申し上げました、債権回収に際して行き過ぎた行為とならないよう、引き続き指導を徹底してまいりたい、このように考えております。
 以上でございます。
佐々木(憲)委員 では、次に、中小企業向け貸し出し計画の問題についてお聞きをしたいと思います。
 今、公的資金を投入されている銀行の場合は、経営健全化計画というものを作成しまして、その中に中小企業向け貸し出し計画を掲げ、その達成を目指しているわけです。
 昨年十二月三日の予算委員会で、金融庁の森長官はこういうふうに言いました。中小企業向け融資というのは、金融機関、銀行にとりましては、大手であれ地域金融機関であれ、大きな稼ぎの源泉である、要管理までは何とか健全化に持っていくよう、銀行にその旨のマネジメントというものを強化するよう要請しております、破綻懸念先に落ちた場合でも、その中小企業の特性、地域の特性等も考えながら、中小企業に対してよく相談しながら物を進めるよう銀行を監督している次第でございます、こう述べているわけですね。
 両参考人にお聞きしますけれども、融資先の中小企業の位置づけですね。金融庁長官はもうけの大きな源泉であるというふうな位置づけをされていますけれども、中小企業をどのように位置づけているか、まずこの位置づけについてお伺いしたいと思います。
前田参考人 お答え申し上げます。
 私ども、四月一日からスタートいたしました二つの銀行のうち、みずほ銀行は、主として中小企業、個人のお取引をメーンマーケットとする専門の銀行でございまして、そういう意味では、その中で中小企業というのはまさに中心のマーケットでございます。大変重視をいたしております。
寺西参考人 お答えをいたします。
 中小企業向けの貸し出しということにつきまして、ある意味で、健全化計画の達成という観点のみならず、私どもの銀行の収益基盤の強化という観点からも非常に重要な経営課題、このように認識しておりまして、まさしく銀行の本業そのものという認識でございます。
 以上でございます。
佐々木(憲)委員 そこで、この中小企業向け貸し出しの計画をそれぞれ出されているわけでありますが、みずほの場合は、昨年三月からことし三月までの中小企業向け貸し出し計画では七百億円ふやすということになっておりました。昨年九月時点では、三月に比べて五百八億円の増というふうになっております。ことし三月にはこの目標は達成されたのかどうか。どの程度の水準になっているか、数字を示していただきたいと思います。
前田参考人 お答え申し上げます。
 経営健全化計画に基づきまして、私ども、中小企業向け貸し出しを増強するということをお約束いたしております。
 それで、三月末の数字でございますが、現在残高は精査中でございますが、私が速報ベースで聞いている限りでは、プラスの数字になっていると思われます。正確な数字は、大変恐縮ですが、今精査中でございます。
 以上でございます。
佐々木(憲)委員 プラスになっているということですが、どの程度プラスになっているんでしょうか。
前田参考人 お答えいたします。
 大変恐縮です、数字そのものは、私、いまだ精査していないものですから申し上げられませんが、数百億円程度のプラスになっていると思われます。
佐々木(憲)委員 UFJの場合は、増加計画は五百億円プラスということでありますが、昨年九月の達成状況を見ますとマイナス一兆四千五百四十七億円ということで、昨年の三月から九月の間に大幅に逆に低下しているんですね。しかも、見ますと、これはかなり飛び抜けたマイナスでありまして、ことしの三月にはこのマイナス分を克服してさらに五百億円の上積みをしなければならない、こういう計画になっていたはずでありますが、これは達成されたんでしょうか。実際の数字はどうなっていますでしょうか。
寺西参考人 お答えを申し上げます。
 健全化計画ベースの貸し出し計数につきましては今精査中でございまして、御容赦いただきたいと思いますが、既に決算発表で公表した個人も含めたベースで申し上げますと、中小企業向け貸し出しは前年比非常に大きく減少しておりまして、大変苦しい状況にあるということは事実でございます。
 言いわけがましくなりますが、厳しい環境が続く中で資金需要が低迷していることとか、お客様が財務体力の改善努力に伴って貸し出しの圧縮の動きがあるとか、約定返済の進行などが原因になっているとかというようなことがございますが、いずれにせよ、中小企業向けの貸し出しは前年比大きく減少しており、大変苦しい状況にある、こういうことでございます。
 以上でございます。
    〔中野(清)委員長代理退席、委員長着席〕
佐々木(憲)委員 先ほどは、中小企業というのはまさに経営の中核、中心であるというふうにおっしゃいましたけれども、その中心に対する貸し出し計画、みずからお立てになった計画自体もこんなに大幅にマイナスになっていると。一兆七千億ぐらいマイナスになっているんでしょうか。数字はどの程度マイナスなんでしょうか。
寺西参考人 細かな精査ができておりませんが、先ほど申し上げました、個人も含めてでございますので少し計数が整合性がとれないかもしれませんが、個人も含めますと、かなり私ども、九月末比で申し上げますと、一兆六、七千億円のマイナスになっておるということでございます。
佐々木(憲)委員 これは、公的資金を受け入れるときに、その見返り、見返りといいますか、その際に経営健全化計画を提出する、その中に中小企業向けはこれだけふやしますと、みずからお立てになった計画でありまして、これがこんなに減っても、これはしようがないということなのか。これは、なぜそうなったのか、その理由、それから今後どのようにして中小企業向けの融資をふやすおつもりなのか、その点についてお聞きしたいと思います。
寺西参考人 お答えを申し上げます。
 中小企業貸しの減少につきましては、大変重要なことだと重く受けとめております。先ほど申し上げました、中小企業に対する貸し出しというのは我々の本業という認識であるということでございます。
 そういった意味で、組織を挙げていろいろ努力をしてまいったわけでございますが、先ほど申し上げましたように、非常に厳しい経済環境が続く中で、何とか増強したいといろいろな手だてをやってまいりましたが、その経営努力が功を奏さないということでございまして、深く反省をいたしているところでございます。
 今後、行内の取り組み体制の再強化を図り、健全な中小企業の資金需要によりきめ細かく対応してまいるなど、中小企業との取引推進に責任を持って取り組んでまいりたい、このように考えておるところでございます。
 以上でございます。
佐々木(憲)委員 どうもはっきりした方向性が見えないと私は思うんですね。
 それで、一方で不良債権処理ということを掲げて、それを推進していくわけでありますから、当然、この景気が悪い状況のもとで、営業状態の悪いところにはなるべく貸したくないということになって、貸し渋りあるいは貸しはがしというような状況がかなり進行しているんじゃないか、一方で貸し出し計画、ふやす計画を立てても、それが足かせになって達成できないんじゃないか、私はどうもそういうふうに想像するんですけれども、その辺はどのように考えておられるでしょうか。実際の感じをお聞かせいただきたいと思います。
寺西参考人 お答えをいたします。
 私ども、先ほども申し上げました、中小企業を含めまして融資というのは私どもの本業ということで、新しいファンドを創設する、固定ファンドを創設する、それから営業店に対してもきめ細かな指導をやって中小企業枠をふやそうというような経営努力をいろいろと積み重ねてきたわけでございますが、一方で、お客様の返済圧力も非常に強うございまして、なかなか私どもがふやそうとした施策が生きてこないというのが現状でございます。
 ただ、手をこまねいているわけにもございませんので、もう一度体制を再構築いたしまして、何とかこういったことが可能になるように、もう一度経営努力を傾けて努力をしてまいりたい、このように考えております。
 以上でございます。
佐々木(憲)委員 前田社長にもお伺いしますけれども、不良債権処理を一方で進めながら貸し出し計画を達成するというのは、かなりの自己矛盾に陥る面があると思うんですけれども、それはどのように克服して貸し出しをふやすということをされているのか、その考え方、手法についてお聞きしたいと思います。
前田参考人 お答え申し上げます。
 今先生がおっしゃいましたように、現在、国内景気が長期低迷いたしておりまして、中小企業の資金需要は非常に少なくなっております。それから、売り上げの減少もございます。それから、有利子負債を圧縮するなどの全体の傾向がございます。
 この中におきまして、今先生がおっしゃいました二つのこと、まず、不良債権を処理するというこの部分につきましては、既に不良債権したことにつきましては、銀行といたしまして、引き当てはいたしましても、その後、最終的な処理を、これは二年、三年ルールがございましてやるというのは、最大限の努力をさせていただきたい。それから、新しく中小企業のお貸出先を開拓するというのは、これは一つ銀行の使命でございますので、これは二つのことは矛盾がなくて、むしろ同時に並行でやるべきものだと思います。これが、私どもみずほ銀行の役割課題そのものでございます。
佐々木(憲)委員 時間が参りましたので、終わります。どうもありがとうございました。
坂本委員長 次に、吉井英勝君。
吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。
 きょうは、寺西参考人にも来ていただいておりますので、柳澤大臣と寺西参考人に伺いたいというふうに思います。
 五月二十二日の当委員会で、私は、個人信用情報が金融機関でどう扱われているかという問題を取り上げました。
 住宅金融公庫から、全銀協傘下の銀行はもとより全国の七百二十社の金融機関に対して、九五年、九九年、〇〇年、〇二年とほぼ二年置きに、公庫のローンを受託している金融機関が公庫の業務上知り得た公庫債務者の情報を債務者の同意なく借りかえのシミュレーション等に利用してダイレクトメールを発送していることに、抗議の文書を発送しております。公庫からもらって、私もそれを見て質問したわけですが、UFJでは、ことし四月十二日にこの文書を受けながら、十日後の二十二日に、全店に対して、地区リテール営業部長、リテール業務責任者あてに「住宅ローン肩がわりダイレクトメールの実施について」という通達を発出されて、この抗議を無視してダイレクトメールの発送を指示しておられました。
 私が質問した翌二十三日に、今度は「至急」と、「住宅ローン、アパートローン肩代りリストによる勧誘中止について」という通達を全店に発出して、これを取りやめられたわけでありますが、そこで最初に寺西参考人に伺っておきたいのですが、この二十三日に出されたのは、これは住宅金融公庫からのこの文書を受けて、そして十日後にやっていたことは、これはやはり間違っていたという判断から取りやめられたものと理解していいのかどうかということを伺っておきたいと思います。
寺西参考人 お答えをいたします。
 まず初めに、私どもの住宅ローンの営業推進につきまして、関係各位に大変御迷惑をおかけしましたことを深く反省しており、心からおわびを申し上げたい、このように思います。
 まず、御質問でございますので、事実関係から簡略に御報告したいと思いますが、当行で住宅金融公庫を御利用されているお客様に住宅ローンの借りかえを勧めるDMを発送いたしましたが、その際に、借りかえメリットがないと考えられる方々に御案内が届かないよう、残高とか金利など公庫情報の一部を使用して発送先を絞り込んだ、このことは、ある意味で公庫との業務委託契約の第十五条に違反している、こういうことでございます。
 また、御指摘のとおり、一部の支店で、お客様の同意を得ずに借りかえのシミュレーションを行い、そのメリットを明示したDMで肩がわり勧誘した事実がございます。これにつきましても、公庫の情報を自己の利益を図るために使用したもの、このように認識をいたしております。ただ、DMにつきましては御本人しか送っておらず、お客様の情報がほかに漏れたという事実はございません。したがいまして、第三者への情報漏えいという点では業務委託契約には抵触していない、このように認識をいたしております。
 ただ、いずれにせよ、私どもの業務推進のやり方が非常にまずかったということでございまして、非常に反省しているところでございます。
 以上でございます。
吉井委員 それで、残高その他を調べられて、必要ない人にというよりも、逆に言えば、住宅公庫の債務残高の多い方で、金利の高いときの方でというふうに、そして延滞債権その他の正常債権でないものを除いて、それで送られるということは、これは銀行として非常にメリットのあることですから、何か、余り必要ない人に送ることのないようにという配慮からというふうなお話では、余り当を得ていないのではないかと思います。
 六月十日に、UFJの方として、金融庁に顧客リスト流用の調査報告を提出されました。これは新聞等で報道されたので知ったわけですが、業務委託契約では、委託業務に関して知り得た秘密を漏らし、または、乙ですね、受託金融機関の利益のために使用してはならないとしている。この契約に違反していたことが、誤りだという判断があったのかということが一つですね。
 もう一つは、債務者の同意なく借りかえのダイレクトメールの発送に使ったという、これは、漏れた漏れないの話だけではなしに、そのこと自体が個人の信用情報保護という上で誤りだ、そういう判断をされたのかどうか。この二点について伺っておきたいと思います。
寺西参考人 まず最初の御質問でございますが、公庫との委託契約の中では二つございまして、一つは、知り得た情報を漏らさないということ、それから、その情報を自己のために使用しない、これが第十五条の根幹をなしている契約でございますが、残念ながらこの点につきましては、我々は後段のところ、自己のために公庫の情報を利用した、こういうことで違反があった、このように考えてございます。これが一点でございます。
 二点目。シミュレーション等を行ったということも、これもある意味でこのルールを逸脱している、このように考えております。
 以上でございます。
吉井委員 今の後段で少し伺っておきたいのですが、債務者の同意なく借りかえのダイレクトメールを送る、これはやはり、これからの時代、個人の信用情報、個人情報を保護する上で、他の金融機関の情報をその金融機関の債務者の同意なく勝手な扱いをするということは、これは個人情報保護という点ではとんでもない誤りだと思うのですが、その点の御認識を持っていらっしゃるかどうかだけ、もう一度確認しておきます。
寺西参考人 私ども、住宅金融公庫が今回の契約の相手でございます。そういった意味で、住宅金融公庫との私ども委任事務契約に違反している。その点が、例えばお客様の同意なくシミュレーションをやって、それをお客様に提示した、こういうことは、そこに違反している、このことは私どもは認識いたしております。
 以上でございます。
吉井委員 それは契約違反ということとともに、これからの時代は、個人の情報を、特に、本人の同意なくほかでの必要に応じて与えている情報を利用しちゃならないという点で、これは極めて、もっと深刻に受けとめてもらわなきゃいけない問題だというふうに思います。
 六月三日の日には、リテール営業部長が全店に「住宅金融公庫情報を利用した借換勧誘にかかる新聞報道について」という通達を出しておられますが、公庫を利用しているお客様に住宅ローン借りかえ勧誘ダイレクトメールを発送するに当たり、対象とするお客様の選定に、本部での準備作業として住宅金融公庫の情報を利用したものと書いておられます。これは、公庫の顧客の債務残高だとか金利だとか、延滞債権か正常債権かなど、一人一人の個人情報をUFJとして作成し管理していらっしゃる、これは、いわば通常業務となっているというふうに理解していいのかどうか、これを伺っておきたいと思います。
寺西参考人 お答えをいたします。
 私ども、住宅公庫とは代理店業務ということで契約がございまして、それを行うに当たって必要な情報はすべて保有をいたしてございます。
 具体的に申し上げますと、個々の債権明細につきまして、融資の年月日、最終返済日、当初それから現在の残高、当初とか現在の金利等々でございます。住所とか電話番号等も保有しておりますけれども、住宅金融公庫のお客様は、一方で私どものお客様でもありますので、銀行の情報としても保有をいたしております。
 以上でございます。
吉井委員 実は、そういう情報が今度、銀行の中ではさまざまな情報として、これは銀行自身がローンを申し込むときにさまざま情報を集めておられるということと合わさって、今日銀行業務の領域が広がる中でそれらの情報が、銀行の投資信託だとか、あるいは銀行系の証券、生命保険とか、あるいは、先ほども佐々木議員の方から指摘ありました、相続税対策などと称する資産運用とか提案型の融資、それで他の業務部門の営業のために利用され、さまざまな問題を引き起こしてきたということは事実の問題としてあります。
 そこで、銀行内部で、個人情報の取り扱いについて、そういう審査の部門あるいは直接取り扱っている部門と他の業務との間で完全なファイアウオールをつくっておられるのかどうか、あるいはそれは漏れても仕方がない形になっているのかどうか、これを伺っておきたいと思います。
寺西参考人 ちょっとポイントがずれるかもわかりませんが、お答えをいたします。
 私ども、個人情報に関しまして重要なことは、ある意味で情報の利用と保護のバランスがきっちりとれることが非常に大事なことかな、このように考えてございます。視点を変えて申し上げますと、お客様の利便性につながるような場合でありますと、あるお取引を通じて得たお客様の情報を、あくまでも銀行の業務の枠の中でございますが、銀行業務の枠の中で活用させていただくことはあり得るのかな、このように思っております。
 もちろん、銀行という枠を超える場合には、当然ながら、しっかりファイアウオールを設けるなど適切な対応が必要だろう、このように考えておりますし、また実際、当行でもそのようにいたしております。
 以上でございます。
吉井委員 これで最後にしたいと思いますが、実際に、提案型融資その他でファイアウオールというものがきっちりなくて個人情報が他に使われて、相続税対策などと称する資産運用などでその後大きな被害が出たりというのが、今、金融被害者として、この委員会でも何度か取り上げられました。
 やはり、そういう問題について厳しい対応が必要だということを申し上げまして、最後に柳澤大臣に。
 十日の日に報告書を得たときに、森長官は、必要があるなら銀行法上の対応をすると会見で示されたわけですが、今回の公庫との問題などについて、何か大臣として対応を考えておられるのかどうか、この点を最後に伺って、質問を終わりたいと思います。
柳澤国務大臣 委員の御指摘のとおり、十日の日に二十四条に基づいて求めた報告をいただきました。その中には、事実関係について、今寺西頭取がるる説明したようなこと及び認識というものが示されておりまして、その後、そういったことはもうさせないように、しないようにという再発防止策と同時に、今後とも、住宅金融公庫との業務委託契約に基づいて、これに万々が一にも違反することのないように適正に業務を運営するということが銀行の意思として表明されておりましたので、私どもとしては、当面、この意思の実現ぶりと申しますか、そういう現実化、具体化ぶりを見守っていきたい、このように考えます。
 そして、そういう中で、もし万が一、再びこのようなことが起こるというようなことがあれば、これはこれでまた別途法令に基づいた処置というものをしていきたい、こんなふうに考えているところでございます。
吉井委員 時間が参りましたので、終わります。
坂本委員長 次に、植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。
 まだ、参考人、お願いしているんですが。では、ぼちぼち始めます。
 まず、金融庁さんにお伺いするんですが、けさの新聞、日経の一面ででかっと「みずほシステム障害金融庁検査 意思決定の遅れ原因」と大見出しで出て、内容が十一日に明らかになったという記事があったわけです。
 私、一つびっくりしましたのは、そもそも、意思決定のおくれがあったということは既に自覚されていただろうと思うわけです。だから、何でそういうことになってしまったんだという、システム障害の原因が、意思決定のおくれということが一つの要因であると。ほかにも、内部報告の不備等とありますけれども、例えば、そうしたことがそもそも何で起こったんだというところまで立ち入った検証というものがなされなければ、システム障害を起こした、その原因は意思決定のおくれですよということだけであれば、これはまずいだろうなと思うわけです。
 そういうふうな疑問を抱きますと、やはり金融庁の検査マニュアル自体がどうだったのかという、形式的に過ぎたんではないかという疑問がまず生じてまいりますし、もしそのマニュアルが万全であるとするならば、チェック体制に問題があったんではないだろうかという疑問が出てくるわけですが、まず、これは金融庁さん、お伺いいたします。
村田副大臣 委員が今御指摘なさいました金融検査マニュアルにおきましては、「システムリスク管理態勢の確認検査用チェックリスト」ということが書かれておりまして、この中で、経営者に関します点検項目といたしまして、リスク管理に対する取締役の認識や取締役会の役割をチェック項目としている等々、一連のシステムリスクの管理体制についてのいろいろな記述がありまして、それに基づいて検査をしているということでございます。
 みずほホールディングスにつきましては、三月から検査を始めまして六月には終了して、十月にはその検査の結果を通知している。その中で、分割、合併を前にいたしまして、それが確実に遂行できるように、その準備態勢に万全を期すことが必要である旨の通知を金融庁から行っているわけであります。
 それに対しまして、みずほ側からは、今委員も一部御指摘なさいましたけれども、私どもが把握するところでは、みずほのシステム担当役員から経営陣に対して実際の進行状況についての適切な報告が上がっていない、こういうことに基づきまして、私どもに対する報告も適切を欠いていた、こういうことがございまして、私どもの指摘が十分に実現できなかったということでございます。その点につきましては、まことに遺憾であるというふうに考えているわけでございます。
植田委員 金融庁さんは、もうそれで結構でございます。ありがとうございました。
 そこで、遅くまで大変お疲れさまでございますけれども、みずほさんの前田社長にお伺いしたいわけですが、きょうの午前中の質疑の中でも、見切り発車であったということをお認めになったわけですけれども、私ども素人からしても、別にシステム障害以前に、今回のみずほについては、これはもう見切り発車だったんじゃないかというのは、町を歩いていたら一見してわかるんですよね。
 例えば、私の秘書なんか板橋に住んでおりますけれども、中山道を歩いていますと、それこそ中山道を挟んで、みずほ、みずほと道の両はす向かいにある。日本興業銀行自体はそんなに、店は少ないでしょうけれども、第一勧銀、富士銀行、合わせただけでも五百幾つ支店があったわけです。要するに、こういうことはそもそも統合する前に議論しておかないかぬ話だったと思うんですよね、支店の統合なんていうのは。そういうところがいまだにぎょうさんあるという状況があるわけです。
 こんなのはシステム障害以前の問題ですよね。みずほ銀行の新しい看板をかけるだけでもかなりの出費やと思いますけれども、何でそれができなかったんでしょうか。おかしいなと思いますわね、普通。
前田参考人 お答え申し上げます。
 店舗の統合につきましては、平成十八年三月末までに百十八カ店の統廃合を行う予定でございます。店舗の統廃合はもちろんそういうことでやるのですが、統合する前に、先に店舗統合、システム統合をやった方がお客様のためにもなるし、効率は先に上がるのではないか、そういう御趣旨の植田先生の御質問だと思います。
 この部分は、要するに、四月の一日に旧三つの銀行を統合させる前の事前統合というのは、実は、それぞれの銀行が別の銀行の名前で営業を行っておりまして、例えば板橋、新宿もそうですが、それぞれ、多くのケースは隣り合ったり同じところに三つあったりという段階でございますが、これを店舗統合を行うといたしますと、これは銀行が違うものですから、個別にそれぞれのお客様に御了解をいただいた上で、お取引を一たん解約していただいて、隣の銀行に移っていただく、こういう手続をせざるを得ないということでございまして、そういう意味で、大変に現実的には事前統合というのは難しいということでございます。
 ただ、海外の場合はリテールをやっておりませんので、実際には、海外の店舗は三月三十一日以前に既にかなりの部分、統合した部分がございます。
 そういう意味で、基本的に、お客様の御了解をいただいて、解約して新規でお取引をいただくという手続が、国内の場合には非常にたくさんのお客様がございますので、統合前にやるというのは、申しわけないのですが、非常にやりにくいという事情がございます。
植田委員 事情はよくわかりましたですが、実際問題、それゆえにこそ、そうした困難をわかっていながら、何でいろいろなところに穴のあいた見切り発車にしたんだということがまた問われてしまうわけですから。そのことは私はあえて必要以上に繰り返しませんが。
 もう一つ、前田社長にお伺いしたいのは、今回のシステム障害問題にけじめをつけて、そして経営改革をしようということで、先月の支店長会議では工藤頭取も人事融合、リストラの前倒し等も表明されましたし、これもおとついの日経を見ていますと、いろいろとみずほ再生案の骨子というものが出ておるわけですが、まずコスト削減策で、いきなり従業員の実質賃下げを検討とか、従業員も五千人削減へというふうなことがあります。
 例えば、今回の経営改革というものが、当然ながらシステムの障害問題にしっかりけじめをつけて、そういうことが起こらない、信頼たり得るシステムをちゃんとつくっていきましょうということであるとするなら、それが趣旨であるならば、何でこれが、真っ先に従業員の実質賃下げであるとか従業員の五千人削減というのが出てくるのか。何か、まるで今回の問題を受けて渡りに船とばかりにこういうことをやっちゃうのかというふうにも思わざるを得ないわけです。というのは、普通、労働者の立場としたら、そう思いますわね。
 そこで、二点だけお伺いしますが、一つは、要は、では今回システム障害の問題にけじめをつけるというところから、必然的にこうした実質賃下げなり従業員五千人削減というものが導き出されるものなのかどうなのかという点が一つ。それともう一つは、実際に、こんなごついことを言ってしまうと、当然現場の行員の方々との調整というものは難航することは必定ですけれども、その辺は十分自信がおありなのか。その点、お伺いいたします。
前田参考人 お答え申し上げます。
 私どもにとりましては、行員は、人材は最大の資産でございます。今回の四月一日からの大規模な障害では、大変なショックを受けながらも、社員が一人一人頑張って、高いモラールでお客様への対応や復旧に取り組んでいただいたことが、事態収拾に向かって大きく寄与したと、経営といたしましても高く認識をいたしております。私どもの責任は、みずほグループの最大の資産でもあります社員に対して、働きがいに満ちたみずほフィナンシャルグループを早期に確立することが重大な責務であると認識をいたしております。
 みずほ銀行の工藤頭取が、五月の中旬の支店長会議で支店長に申し上げたことも全く同じ趣旨でございまして、そういう意味では、今植田先生がおっしゃいました従業員の給料の件は、これは新聞が勝手に書いたことでございまして、大変恐縮ですが、私は、従業員の処遇を検討する前に、経営陣として責任の所在を明らかにし、それぞれ、経営をスリム化するとか、そちらの方が当然のことながら先だと思います。
 私の考えは、以上でございます。
植田委員 よくわかりました。
 ただ、いずれにしても、こういう時期だからこそ、現場で立ち働いている行員の士気をどう高めていくのかということ、そういう意味では、経営陣の側がそういう意味で襟を正す、身を律するということが当然先決だと、もし違う答弁だったらそういうことを私は言おうと思っておったのですが、そのことは十分御認識のようですので、それは粛々と、まずどこから身ぎれいにするのかということは、自覚的にやっていただきたいというふうに思っております。
 みずほさんの方はもうこれで結構でございますが、続いて、午前中また午後の質疑で大体出ておりましたので、ダブりになるので、次に簡単にあおぞら銀行の丸山社長にお伺いしたいわけです。
 この間の質疑等の話を聞いていますと、まず、いわゆるソフトバンクさんが株売却の検討を始めたということについての御感想はという質問に対しては、非常に悲しいというふうにおっしゃいましたですし、また、そうしたことが既に両者の間で何らかの協議がされているのかというと、それはまだ協議はされていないということも明らかになっているわけです。
 私は、そのことについて、民間企業がそれぞれの経営判断でなされることについて、そのことをとやかく申し上げるわけではないのですが、丸山社長さんにもう一つだけ確認したいのは、しつこいようですけれども、これからソフトバンクさんが検討されて、その結果がどうなるか、これは先の話ですから、ここで推察で物は言えませんが、仮に何らかの形で株が売却される場合、今度、かわりに、例えば筆頭株主になるのが投資ファンドであるということは、あおぞら銀行さんのお立場からすれば非常に困るというふうにお考えということでよろしいでしょうか。
丸山参考人 お答えいたします。
 決算記者会見の席上で、確かにそういう趣旨の発言はいたしました。いたしましたが、あそこは、多分御存じだろうとは思うのですが、何十人かの記者が群れ集うて、しかも大変狭いところの中で、落ちついてしゃべれる状況ではなかったということで、ちょっと私の本意とするところとは違うのですね。
 その辺をお話しさせていただきたいと思いますが、私は、単にこれがファンドであるということだけで、どうこうということは申し上げてはいなかったつもりなんです。ファンドというのは、基本的に短期利ざやを稼ぐというところでございますから、純粋ファンドということになると多少の問題はあるかと思います。
 ただ、本来はファンドでありましても、あるいはそれが外資系であれ、国内系であれ、どこであったとしても、問題となるのは、ファンドという形式ではなしに、そのファンドを構成しているメンバー、これの性格の問題だろうと思っています。どういうところが集まってそのファンドを構成しているか、ここのところが非常に私は大事な問題だと思います。だから、その構成メンバーによっては受け入れ得るし、構成メンバーによっては受け入れ得ないということもあり得るかと思います。
 それから、私どもは数多くのお客様を抱えておるわけでございまして、このお客様ないし銀行にとって、今後の経営にとってプラスになるというような株主であることが最も望ましい。極論すれば、ファンドであるかないかということよりも、銀行にとってプラスになるお客様であるかどうかということが最も望ましい株主であろうか、かように思っております。
 よろしゅうございましょうか。
植田委員 そこで、ソフトバンクの孫社長にお伺いしたいわけですが、ここで、あえてもう今回の経緯等々、いろいろな議論あったでしょうから繰り返しは避けますし、また、なぜ、では今売却を含めて検討されているんだという、その理由をただすにはこの場所は非常にやぼな場所かなとも思いますが、ただ、いずれにしても、売却を検討されているにせよ、売却するその寸前まではやはりソフトバンクとしてもあおぞら銀行に対する経営責任は持っておられるわけですよね。
 そのことを踏まえて、今丸山社長がおっしゃったように、売却を検討するに当たって、例えば投資ファンド、一般が困るというふうには丸山社長はおっしゃいませんが、いずれにしても、その判断基準が銀行にとってプラスになるかならないか、望ましいか望ましくないかというお話だったろうと思いますけれども、当然ながら、その売却を検討するに当たって、実際、現段階で株を持っている限りにおいて、あおぞら銀行への経営責任というものはお持ちなわけですから、そのあおぞら銀行にとって望ましくない、もしくはプラスにならないような内容を持った検討というものは当然その範疇の外にあって、そうしたものはそもそも検討対象ではないということで御理解してよろしいでしょうか。
孫参考人 そのように思っております。
 また、今丸山さんがおっしゃったとおり、その相手の形式がどうだこうだという、形式でコメントするのは適切ではないというふうに思っております。むしろその内容の方がより重要だと。
 また、私どもにとりまして、あおぞら銀行が、二年前の危機的な状況から大分今健全な状況になってきましたけれども、より一層健全な銀行になっていくことを心から望んでおります。
植田委員 という趣旨で御検討をされるということで受けとめておきます。
 以上で参考人の方、長時間ありがとうございました。あとはもう財務省さんの方への質問だけですので、お引き取りいただいて結構でございます。本当に遅くまでありがとうございました。
 そこで、お伺いしたいのは、これから、塩川大臣いらっしゃいますので、国債のあの格付の引き下げの問題にかかわって何点かお伺いをさせていただきたいわけですけれども、幾つか私も読ませていただいたわけですが、例えばフィッチ社の指摘、ポイントというのは、要は、もう持続不可能な基調にある財政がデフレの影響で一段と悪化しているという、そのごくごく自然な背景、状況というものを指摘をしている、そこにポイントがあるのかなと思うわけですが、とするならば、そもそも、例えば日本の経済の潜在能力がどうか云々というよりは、この間の政策当局の政策遂行能力に疑問符がつけられたんだというふうに私は理解しておるんです。
 これは、私は別にそれぞれの格付会社の指摘が正しいという立場には立ちません。むしろおかしいんじゃないかという方に私は傾いているわけですが、ただ、ニュートラルな立場でいえばそういうことなのかなと思うんですが、その点、財務大臣、どんな御見解でしょうか。まずお聞かせいただけませんでしょうか。
塩川国務大臣 私は、民間会社のことでございますから、何が基礎的なデータでやっているかというと、ちょっと公開もしておりませんし、そやからコメントは避けたいと思っておりますが、いずれにしても、一国の国債の格付をするということと、単に民間会社の、頼まれて、お金もらって社債の格付をするのとは根本的に違うものだと思っておりますので、社債の格付のつもりでデータだけで位置づけをされるということは非常に迷惑だと思っております。
植田委員 いや、それで別に私は構わないんです、そんなふうにおっしゃっていただければ。
 ただ、これまでも格付会社が日本の国債の格付の引き下げを何回もやってきましたけれども、これまでは柳に風で、言ってみれば黙殺していたわけですね。当然、いろいろな新聞紙上ではこういう指摘は当たる当たらないという話はあったかもしれませんが、何でこの期に及んで、四月の三十日には黒田財務官名で欧米の格付会社に意見書を送った、それ以降、それこそ高校生や中学生が交換日記やるみたいに、ああやこうやといって、意見書を出して、またその回答に対して意見を出す。何で無視しなかったんでしょうか。何でこういうふうに転換をされたのか。その点が非常に疑問なんですよ。
 ここは財務大臣に聞きますよ。というのは、四月の十六日に、スタンダード・アンド・プアーズ、S&Pが格下げしたときに、閣議後の記者会見で、いろいろ言って下げておりますが、これは勝手な見方だなと思うんですけどねと。会社が勝手にやっとるんだから何ともこちらから文句の言いようもないんですけれども、まあしかし、これは一つの日本に対する示唆だと思うて、やっぱり我々も今後財政の調整能力の向上、不良資産の解消に一層の努力をしなきゃならぬと思うておりますが、でも僕は、何というかな、勝手な評価をしとるなという感じがしますね、しかし、まあ全く無視するんじゃなくて、やっぱり何というか、これを見て自分らも反省するところはしたらいいと思うと。
 ようわからへんような、わかったような話なんですが、これでもう私は実は十分だと思うんですよ。ここでもおっしゃっているように、会社が勝手にやっとるんだから何ともこちらから文句の言いようがないですけれどもとおっしゃっているんですから、一々民間会社の格付に反論する必要は私はそもそもないと思うんですけれども、何で一々、例えば今フィッチ社に対するやりとりも読ませていただきましたけれども、何でこんなことをする必要があったんでしょうか。その点はお答えいただけますか。
塩川国務大臣 それならば私からも反論したいんですが、今まで何遍も格付を下げたり上げたりしてきておりました。そのたびごとに、一般の人は全然無関心で、私らに一つも質問もしませんし、要望もいたしません。しかし、今回に限っては、あらゆる階層の人たちが、何でだということを私たちに聞いてきた。その一つがマスコミなんですね。ということは、非常に皆さん関心を持っておられるなと思いましたので、私はあえて言った。
 そのことは、何でたくさんの方が関心を持ったかというと、あのムーディーズの会社は、評価しますときにエンロンで大変な失敗をやっているわけですね。それから、ほかの格付会社の中でも、それはアルゼンチンの、あるいはロシアの格付につきましても、必ずしも正鵠を得たものではなかった、これは植田さん御存じですわな。
 そうすると、世間の方は、何かそんな例がたくさんあるものだから、おい、日本どないなっとるんだという関心を持つのは当たり前だと思うんです。それに対して私はこたえておるのであって、私はそんな、さっきも言っていますように、ムーディーズがどうしようがこうしようが、皆さんちっとも今まで関心を持っていなかったじゃないですか。それが今度やるようになったというのは、エンロンの失敗とかいろいろあるし、それはもうアルゼンチンとかいろいろあるものだから、おい、日本のこんなんなったのはどうだというところ、私はそれを受けたということなんですね。
植田委員 細かい話ですけれども、そやから、何もそれぞれの会社あてに出さぬでもいいでしょうと。それこそ、財務省としての政府見解を出せばそれでよかったんと違うんですか。
谷口副大臣 まさにおっしゃるようなことなんです。今大臣がおっしゃったように、私はもう従来からこのことについては疑問を感じておりまして、本日も、何回も答弁したいと思いながら、どうも私が答弁するよりも大臣が答弁してほしいという人たちが多かったものですから黙っておりましたが、本当に我が国のファンダメンタルズを反映しておるのかどうか。
 また、これはムーディーズの格付の状況でいきますと、御存じのとおり、三カ月前に評価したものと今回二段階引き下げたわけですね。当時と比べて、経済状況はむしろ、先日もGDPが一―三が一・四%とプラスということになったわけでございまして、むしろ上昇しているにもかかわらず二段階の引き下げが行われた。また、ゴールドマン・サックスにおいてはトリプルAということでございますけれども、A2ということで、もう断然差があるわけでございます。
 このような評価のやりぶりについて、このまま放置しておいていいのかというようなことは、国民の皆さん方もそういうふうに感じていらっしゃる方もいらっしゃいますし、また今回は、市場関係者も含めて、この二段階の引き下げをした当時に円がまた上がるといったようなことで、市場関係者も無視したわけですね。このような状況があったということでございます。
 さらにつけ加えて申し上げますと、新BIS基準をバーゼルで今協議いたしております。ここのバーゼルの協議のところに、格付機関、外部格付をリスク評価に援用しようという動きがあるわけです。
 私は、先日もこの担当の方に来ていただいてお話をしたんですが、一方でトリプルA、一方でA2、このような断然違うようなレーティングをやられて、これでこのリスク評価をやられるということでいいんですかと。だから、バーゼルのところでは、なるべく外部格付について、そういう意見の表明というか、我が国からそういうはっきりした、極めて客観的な基準を援用すべきだというようなことも言ったらどうでしょうかと言ったわけでございますけれども、そんなことがあるわけでございます。
 それは、どうも聞いておりますと、OECDの格付を使おうというような話も出ておるようでございますが、いずれにいたしましても、そのようなことがある。
 また、国債の格下げに連動して民間の起債コストが上昇するおそれがある。だから、放置しておりますと、確固たる基準もないにもかかわらず、今回のような二段階の引き下げと、トリプルAからしますともう数段階の引き下げになるわけでございますけれども、このようなことを放置しておりますと民間の起債コストが上昇するといったことがございますので、従来から申し上げておったんですが、今回は意見書ということで出させていただいたわけでございますが、どうも返ってきた答えは、従来のように定性的な回答しか戻ってきておりません。
 ですから、どういう基準でこれが行われたかといったことがいまだ明確ではない。きょうの審議を聞いておりましてもどうも中途半端な言いぶりだったわけでございますので、そのようなことも踏まえて今回やったわけでございます。
植田委員 いや、だから、それでいいんですが、例えばS&Pのものもぱらぱら全部一通り読ませていただいたんですが、また、きょうの質疑を聞いていても明確な基準なりなんなりないわけですよね。言ってみれば、日本経済の情況証拠を積み上げてやっているだけで、基本的な一番核心を突くところについての論証がなされていないというのは、それぞれの格付会社のそれぞれの格下げの理由に共通することなんですよね。
 だから、そうだったら、むしろ政府として、それこそそれぞれに一々意見書を送るんじゃなくして、何か見解が必要だというふうに、少なくとも、内容はともかくとしても、与える影響を考えるのであれば、一つ見解をぽんと、財務省としての見解を出すだけで私はよかったというふうに思っていたんですよ。
 だから、むしろそこでわざわざ一国の財務省、大財務省がそれぞれの民間会社に対して論戦を挑むようなことをするまでもないんと違うかということを私は申し上げたかったわけです。
 ただ、とは申せ、財務大臣に聞きたいんですが、格付何するものぞということで開き直れということを私は言っているわけではなくて、少なくともそうした格付に対する回答というのは、まさに今の現状、特に、今のデフレの解消を急いでいく、そして債務返済の元手となる成長率を高めていく戦略をきちっと提示して、それを政策として実行していく、それがそれぞれの格付に対する言ってみれば正面からの回答だと私は思うわけですが、その点は、財務大臣どうでしょうか。
塩川国務大臣 それはもちろん当然そうでございまして、だから何遍も政策を提示してやっておりますが、それを評価するかしないかというのは民間会社の判断ですから、これは何とも我々申すわけにまいりません。
植田委員 私は、民間の格付会社に評価されるようにしなさいと言っているわけではございません。そこは別に、先から申し上げているように、私は、各格付会社のそれぞれの論証についてはどうも不十分な点があるから、これに足をとられる必要はないということを申し上げているわけです。
 そこで、もう時間がありませんから最後、大急ぎで聞きますけれども、まさに今申し上げたような、デフレの解消を急いで成長率を高めるということでいけば、まさに今、話はもう飛んでしまいますが、総需要を増加させる必要があるんじゃないかと思うわけです。
 私は、それに関連して先日、財務大臣にお伺いいたしましたところ、私自身は三十兆円の枠に拘泥しないでやるべきだと言ったときに、たしかそのときの御答弁いただくと、「三十兆にこだわらず景気を拡大せいというならば、それはやったらいいと思うのですけれども、ではどこへどう出すのかというその具体的な、どういう効果をねらって、どこへどんな金額をどのように持っていくのかということ、これをやはり見きわめて」云々と。
 だから、まさに今デフレ対策等をおつくりになるのであれば、まさにどこへどう出すのかという具体的な、どういう効果をねらってというのを見きわめた議論が必要なんじゃないでしょうか。三十兆という上限を先に設定した議論よりは、少なくとも、例えば雇用であるとか福祉産業また環境サービス産業等々、そういうところにポイントを置いた、そうした公共投資に最大限配慮していいと私は思っておりますが、そのことの可否は問いません。
 まさに今、先日の三月六日に御答弁されたことを、これからいつデフレ対策を政府でおまとめになるのか知りませんがそのことを念頭に置いて、まさに大臣が答弁されたことに沿って、どういう効果を持っていくのかということを、三十兆円枠というものをとりあえず頭の外に置いて考える必要があるんじゃないか、そういう時期に来ているんじゃないかというふうに思っているんですが、大臣の御見解をお願いします。
塩川国務大臣 おっしゃるように、もっと総合的にデフレ対策考えたらいいと思います。
植田委員 だから、総合的に考えるということは、あらかじめ政策として、アナウンス効果はあるかもしれないけれども政策論としてはさして意味のないことに足をとられないで、総合的に議論を検討していく必要があるというふうに私は理解していいでしょうか。どうですか。
塩川国務大臣 先ほど言いましたように、私の方からあえて、今まで何遍もこういうことがございましたけれども、格付の話がございました。やったことはなかった。けれども、さっき私、答弁しているじゃないですか。たくさんの方々から、何でこういうことになっとるんだということの真相を教えろという要望が随分とあったものだから、だから新聞記者が私に聞いたわけです。新聞記者もその一つですね。それで私はそれに対してこたえたということでございますから。これにこたえたらいかぬというのは、それは全く無視しておけと、それはちょっと無責任な話だと思います。
植田委員 今、何をお話し、これで終わろうと思っていたんですが、全然違う。お疲れのようですね。私は、だから今、格付の話、何も聞いていませんよ。
塩川国務大臣 デフレ対策をしっかりやったらいいじゃないかというのは、私はそのとおりだといってお答えしたんです。そうしたら、だから、こんなこと気にせぬとやったらええじゃないかとおっしゃるから、気にしているというんじゃなしに、こういうことだから新聞記者に答えたんだということです。
植田委員 気にするというのは、せんだっても答弁されたように、要するに、総合的にやるということは、あらかじめ例えば三十兆の枠とか、そういうことを設定してその枠の中で議論するんじゃなくて、そうした国債の三十兆円枠を一回取っ払って、もう一度、どこに何が必要か、どこにどんな効果を与えるのかを検討するということが総合的な検討なんですねということを聞いたんですよ。
坂本委員長 時間が来ておりますから、簡潔に。
塩川国務大臣 それに対しては、そのとおりでございますと私は言っているじゃないですか。
植田委員 では、そのとおりということなので、終わります。
坂本委員長 以上で本日の質疑は終了いたしました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後六時一分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.