衆議院

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第23号 平成14年7月9日(火曜日)

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平成十四年七月九日(火曜日)
    午前十時一分開議
 出席委員
   委員長 坂本 剛二君
   理事 中野  清君 理事 根本  匠君
   理事 山口 俊一君 理事 山本 幸三君
   理事 海江田万里君 理事 古川 元久君
   理事 石井 啓一君 理事 中塚 一宏君
      岩倉 博文君    金子 一義君
      金子 恭之君    倉田 雅年君
      小泉 龍司君    七条  明君
      砂田 圭佑君    竹本 直一君
      中村正三郎君    林田  彪君
      増原 義剛君    山本 明彦君
      吉田 幸弘君    渡辺 喜美君
      五十嵐文彦君    生方 幸夫君
      江崎洋一郎君    小泉 俊明君
      小林 憲司君    後藤 茂之君
      佐藤 観樹君    中川 正春君
      永田 寿康君    長妻  昭君
      上田  勇君    遠藤 和良君
      藤島 正之君    佐々木憲昭君
      吉井 英勝君    阿部 知子君
      植田 至紀君
    …………………………………
   財務大臣         塩川正十郎君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君
   内閣府副大臣       村田 吉隆君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   財務大臣政務官      砂田 圭佑君
   財務大臣政務官      吉田 幸弘君
   政府参考人
   (金融庁検査局長)    五味 廣文君
   政府参考人
   (金融庁監督局長)    高木 祥吉君
   政府参考人
   (法務省民事局長)    房村 精一君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君
   政府参考人
   (国税庁次長)      福田  進君
   政府参考人
   (国税庁調査査察部長)  東  正和君
   政府参考人
   (中小企業庁次長)    小脇 一朗君
   参考人
   (預金保険機構理事長)  松田  昇君
   財務金融委員会専門員   白須 光美君
    ―――――――――――――
委員の異動
七月九日
 辞任         補欠選任
  小泉 俊明君     後藤 茂之君
同日
 辞任         補欠選任
  後藤 茂之君     小泉 俊明君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――
坂本委員長 これより会議を開きます。
 財政及び金融に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 両件調査のため、本日、参考人として預金保険機構理事長松田昇君の出席を求め、意見を聴取することとし、政府参考人として国税庁次長福田進君、国税庁調査査察部長東正和君、金融庁検査局長五味廣文君、金融庁監督局長高木祥吉君、法務省民事局長房村精一君、法務省刑事局長古田佑紀君及び中小企業庁次長小脇一朗君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中野清君。
中野(清)委員 自民党の中野清でございます。
 私は、中小企業の経営に入りまして四十年、この間、多くの中小企業の人々の血のにじむような努力を見てきました。今般、第三次のデフレ対策が求められている厳しい状況下におきまして、中心に質問をさせていただきたいと思います。
 まず、金融問題といたしまして、過日、埼玉県議会から、衆参両院議長、総理大臣、金融担当大臣、経済産業大臣に、中小企業の再生に関する地方自治法九十九条の意見書が出ております。このことについて、まず第一に既存融資に対する長期分割、期間延長の借換制度の創設について、第二に個人保証制度の廃止、第三として金融検査マニュアルのさらなる緩和、この三点についての要望が出ておるわけでございます。
 この意見書を受け取った金融担当大臣として、この要望について、現状をどのように考えていらっしゃるか、受けとめていらっしゃるか。そしてまた、対策としてどのようなことを考えていらっしゃるか。また、この埼玉県議会に対してどのような、これからの対応といいましょうか、これをなさるか。これは県議会としての質問でございますが、大きなことでございますので、この点をまず伺いたいと思います。
柳澤国務大臣 先般、私もお会いしたかと思いますけれども、埼玉県議会の方々が、多分あのときは超党派でいらっしゃったかと思うんですけれども、議会での議決につきまして、私のところにこの決議をお伝えいただきました。意見書によりますと、今委員の御指摘のような項目がございます。
 私どもは、今中小企業金融の置かれている厳しさというものについては、これは十分認識をしているところでございます。ただ、それぞれ具体の意見につきましては、私ども、今後の検討をしていかなきゃならないものだというようなことを、議会の方々も、これはやや長期的な検討課題なのかと思うけれどもといったようなお話であったかと思うわけでございますが、今当面はどうか、こう申しますと、融資の期限の変更の問題も、これももうそれぞれその当該の債務者たる中小企業の置かれている状況というものをよく見たところで金融機関も対応をしているものである、こう考えております。
 それから、個人保証の問題については、現在法務省で倒産法制を検討いたしておりまして、その中で、差し押さえの範囲についてどう見直しを行うかといったような課題との関連を、私どもとしても強く認識しているところでございます。
 それから、マニュアルの件につきましては、現在、今まさに中小企業に対する別冊をつくったほやほやという段階でございますので、さしずめ、当面は私どもこの適切な運用というものを期してまいりたい、このように考えておるところでございます。
 いずれにしましても、金融機関と中小企業者の間は、金融機関の側でも、ある種のみずからのレピュテーションをかけた話で、余りいわば世間の常識に反するようなことをやれば、金融機関の評判が落ちるという形で、いわばその報いを受けるわけでありますので、彼ら金融機関としましても、慎重の上にも慎重な配慮をしながらその処理に当たっているというものだと認識をいたしております。
中野(清)委員 埼玉県議会におきましては、このほか、超党派で、全会派が一緒になってこの問題をやっているということをどうか大臣も御認識いただいて、これから私が申し上げることは決して党利党略ではなくて、中小企業という全体の話としてこれから質問したいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 我が国の中小企業の現状というのは、大臣もう御承知のとおり、九九%が中小企業だ、そのうち、七割を雇用も占めているということでして、その中で、いわゆる大手、すべての貸付残高というのは御承知のように二百九十二兆一千六百十億円で、破綻懸念先が十一兆八千四百億だと。ところが、そういう意味で考えていきますと、中小企業の債権というものは、実は四二%なんですよ、債権残高は。ところが、破綻懸念先以下の不良債権になってきますと、六五%もあるわけですね。はっきり言いますと、それが約七兆七千三十億あるわけです。しかも、RCCに今現在行っている法人が四万社だ、そのほとんどすべてが中小企業だと言われていますね。そういう人たちが、再生とか回収というものの中で厳しい現実があるということが事実だと思っております。
 そういう中で、結局、これから何回か申し上げますけれども、今大臣がおっしゃった、金融機関が変なことをやれば世間的に笑われるから、そういう状態ではなくて、もっと厳しい状態で、今政治がこれに対して関与しなきゃいけない。そういう意味で、私は、きょうはRCCの改革のあり方について、特にそれを中心に質問をしたいと思っております。
 そういう意味で、初めのことでございますのでこれは簡単に御答弁願いたいんですけれども、例えば大手中堅、それからまた中小零細、この二つについてどのように分類がされて、いろいろ数字を残高とかつかんでいらっしゃるか。
 また、先ほど言いました県の話の中で、連帯保証人の問題が出ております。では、連帯保証人がついた債権と、ついていない債権はどうだとか、そういう問題について、また不良債権がどういうふうに処理されているか。
 それからまた、特に中小企業についてのオフバランスに対する配慮はどうだとか、この点については、初めの話でございますから、なるべく簡単に御答弁願いたいと思います。このことは簡単で結構でございます。
柳澤国務大臣 中小企業向けの融資、あるいは不良債権と分類されたものの債権の姿については、私どもも別に特別な定義をしているわけではなくて、中小企業基本法に基づく定義によりまして統計を出しておるわけですが、今先生が御指摘になられた数字のほかに、さらに詳しい、例えば連帯保証つきのものがどうなっているかというような数字は、残念ながら私、今この段階で把握しておりません。
 そういうことで、今最後にお尋ねのオフバランス化に対する考え方ということでございますけれども、これは基本的に、私ども、とにかく再建の可能性というものをぎりぎりまで考えて、再建できるものについては再建をさせるということで、オフバランス化を進めていきたいという基本方針は同じでございます。
中野(清)委員 今大臣から、中小企業については特に再建の可能性を最後まで追求するというお言葉をいただきまして、本当にこれは私どもも意を強くしております。そういう意味でもって、RCCの果たすべき役割、その対応について、幾つかお伺いをしたいと思うわけであります。
 RCCに期待される役割として、今大臣もおっしゃいましたけれども、今までの回収専門からいわゆる企業再生への役割が与えられてきたという中で、特にRCC予備軍ともいうべき民間の企業のいわゆる破綻懸念先以下というものに対して、これをどうしようかという意識、それがちょっと、率直なところ、私どもが感じているものについては、RCCとして非常にこの意識が乏しいのじゃないかという率直な感じがいたしております。
 それはなぜかといえば、RCCの社長に言わせれば、今まで入ってきたのはみんなろくでもないのばかりで、ほとんどつぶれちゃっているんだ、だから再生する要件はありませんよというような表現の新聞記事も私は見たような気がいたしております。
 その中で、昨年の十一月に金融再生法が改正されましたね。今までは私ども何回もRCCに言って、回収だけじゃないんだよ、再生も大事だよということで、それでもう正式に政府もそれに踏み込んでいただいた、それは私も評価しておるんです。ですけれども、具体的に、ではそのことがどう進んでいるかということがきょうの議論の中心でございますけれども、十一月から今日まで半年間ありましたね、その間に、ではどのようにRCCが変わったのか、それでどのように対応してきたか、これは非常に大事な話だと思うのでございます。そのことをまず一つお願いしたい。
 それと、先ほど私、RCCに四万社ある、だからこの不良債権の問題が非常に大事だということも申し上げましたが、それと一緒に、民間での、大手十四行でだけで破綻懸念先以下が七兆八千億近くある、これがRCC予備軍だということを考えたとき、この処理ということも非常に重要だと考えておるわけなんです。
 ところが、大手の金融機関の頭取なんかに言わせれば、いわゆるバブルのときに踊った債権とか、それから暴力団絡みという債権とは違うんだ、一生懸命努力しているんだから、これについては納得して送りたいと言っておりますけれども、本当に今のRCCの状況の中で納得してRCC送りにされる企業はあるか。ありっこないのですよ、はっきり申し上げて。
 これはなぜかといえば、RCCに行ったらば、これは後ほど申し上げますけれども、死刑の判決だと。行けばもう次の融資がないのだという現状の中で、どうするんだという話が今あるわけなんです。
 ですから、私どもは、そういう意味でRCCの問題について今こそ政治がこのことを考えなきゃならない、そういう時期なんですよ。しかも、それはまず四万社の今あるRCCの皆さん、それと、今民間金融であるところの、まず破綻懸念先以下の企業に対して中小企業が六五%もあるということについて、これは政治が解決しなきゃならない、そういう課題だと思うんですよ。
 ですから、これは、これから各論に入りますけれども、まずその意味で、大臣が再建を主導にしたいとおっしゃることについて私も賛成。自然死じゃなくて、ぜひ何とか再生ができないかということを一つお願いしたい。そうしませんと、RCCに行ったということで、当の企業が、結局、自分たちの発言権もなければ相談もされないで、ただつぶれるのを待っているのかと。
 私も、実は幾つか自分なりの案をつくって、あるいわゆる民間金融団体からそれについて聞いてみました。そうしたら、こういう答えが出てくるんですよ。この問題については、当事者じゃなくて、当の金融機関とそれからRCCがやればいいじゃないかというような声が出てきました。私は反対なんです。もちろん、当然、金融機関とRCCで協議する、そのことも必要だと思いますから、決してそれを否定しません。しかし、それと一緒に、まず、今、破綻懸念先と言われるその企業がどうしたらばこれから再生できるか、そういう希望とか目標というのをつくらなければ、これは絶対に、幾ら金融機関とRCCがやったって解決ができない。
 そういう意味で、私は今言った、RCCに行くのは死刑判決だというような今のこの風潮を絶対なくさなきゃいけない。それは、今までのRCCには事例がないのですよ、はっきり申し上げまして。だから、こういうことをやるのは、やはり実際の事実以外ない。実際に再生されたという事実をつくる以外ない。それは政治の責任だ。
 そういう意味で、大臣のお考え、そしてまた、きょうは預保の理事長さんも見えていらっしゃるようでございますから、あなたのところで、本当はきょうは私はRCCの社長をと思ったのですけれども、この間もお目にかかったらば、私と同じ、一体だとおっしゃっているんですから、ぜひ預保の理事長さんにも、そういう意味でお二人の決意とか考え方をまず伺いたい。
柳澤国務大臣 RCCに行くことは死刑判決だ、こういうことが流布されておるということ、これは私も耳にしないことはございません。私が金融再生法をやったときは、まさに、破綻懸念先の債権のRCCへの譲渡についても、そのことは非常に強く言われました。ある種、私どももそういう評価というものを考えながら、このRCCへの譲渡というものを決めなきゃならぬ、そういうような、そのぐらい強い風潮でございましたが、しかし最近、委員が今御指摘になられたとおり、再生法が改正されまして、RCCの業務の中に再生業務というものが入りまして以降は、これははっきり言って違うわけでございますから、回収一本の時代とは違うわけでございますので、そうしたことがもし言われるとしたら、これは我々も努力いたしますが、先生のように中小企業者の本当にお近くにいらっしゃった見識の高い先生が、そうではないのだということをぜひおっしゃっていただければ大変ありがたいと思います。それには、今委員が御指摘のように、実績を上げていくことじゃないか、こういうことでございます。
 まさにそのとおりでございますが、やはり再生というのは、右から左にどんどん再生の方針あるいは計画を決めるというほど、言ってみると、私、たやすい話ではないと思うんですね。再生推進本部というものもRCCの中にしつらえられまして、この特別のタスクフォースがこれに当たってはいるわけですけれども、やはり相当時間がかかるということも事実のようでございまして、まだ先生に御満足いただけるような、実際にその再生手続の実施に入ったというのは幾らかもないわけでございますが、現在、懸案中、検討中のものも含めますと、百三十件くらいの案件についてこれに取り組んでいる、こういうことでございまして、決して消極的な姿勢であるということではないことをぜひ御理解賜りたいと思います。
中野(清)委員 今大臣からお話がございまして、大臣のお立場からいえば私は当然だと思いますけれども、現実は、非常に、もっと厳しいということだけはまず申し上げたいと思うんです。
 それで、そういう意味で、今大臣もおっしゃいましたけれども、四万社あるわけですよ。その中で、今おっしゃった企業再生本部で取り扱ったのが約三、四十件、実際にできたのが十件程度ということなんですね。ですから、今、金融機関の常識なんというのは、もうRCCに行ったらだめでしょうと簡単に答えちゃう。
 これは大臣、これから後でいろいろな話で申し上げますけれども、ぜひお気をつけ願いたいのは、今まで金融検査のときも、金融庁は何も中小企業をいじめるために検査したんじゃないんですよ。ところが、実際の金融の現場になってくれば、金融庁が悪いんですよ、金融検査がうるさいんですよということでもって、今まですべての責任は金融検査に送られたんです、はっきり申し上げまして。だから、今回大臣なんかも英断されていただいて、この金融マニュアルの見直しをやっていただいた、私はこれは評価しているんですよ。そういう意味でいいますと、これからのこの問題について言っても、大臣は、五万件のうちで百四十件で少ない、少ないんじゃなくて、実際は金融の現場において、RCCに行ったらもうだめですと、これで終わりなんです、今は。だからそれをどうしようかということだと思うんです。
 さっきも言いましたけれども、一つには、いい物件がないとRCCの社長も言っているようだけれども、確かにそういう面もあると思いますよね、はっきり言いまして。それは認めますけれども、では逆に、RCCとしてのというか国としての、企業再生をするんだという意思だとか情報というものが、どれだけ今第一線の、例えば金融の担当者とかそれからいわゆる商工団体とか、ましてや経営者自身までがわかっているかということになれば、これは非常に問題があると私は思っております。
 それで、あえて申し上げますけれども、民間金融機関に言わせれば、RCCに行った債権が、例えば自分の銀行が今健全行で、その企業に対して債権を持っている。片っ方がRCCに行っちゃった。その場合、いつこの債権が処分されるかわからない。そうなったらば、方針がわからないんだから、これについてはもう銀行は逃げる一手だというのが今の現実なんですよ、一つの例を申し上げますと。つまりそれはRCCの責任でもあるわけです。つまり、この債権をどうしようかということをはっきりする、それが、今言った、RCCに行ったら債権がだめになるんですよ、死刑の判決だと言われない唯一の道だと思うんですよ。
 実績づくりだというのは、私は、できれば金融機関とRCCが、その企業についての計画だとかそういう見積もりとかするんです。おっしゃるとおり、実績なんかすぐ出るわけありませんから、今すぐにやらなきゃならないのは、RCCが債権を確定すべきなんですよ、はっきり言って。あなたのところは債権を確定すべきだということを個々にやる必要がある。そうしなければこれはできっこないんですよ。
 それで、それは少なくとも契約書とか約定書とかという形で、第三の金融機関を初め第三者が、やはりRCCとその債務者とはこういう関係なんだとはっきりしなければ、これは幾ら取引をしてやろうとか救ってやりたいと思う金融機関があったって何もできるわけがない。うっかりやれば、何かおかしいんじゃないかと言われるぐらいのものです。そういう意味で、希望を持たせるというのは、まず第一にその点のことを、RCCが積極的にやらない。条件がどう、解決がどう、そんなことばかり言っている。実際にどうするんだという話だと思うんですよ。
 その点について、では今までRCCとしてそういう契約書なんか何件ぐらいつくったのか、これから手をつけようとしているのは何件かということを、やはりこの際はっきりしてもらった方がいいと思うんですよ。
 それで、その中で特に申し上げたいのは、例えばRCCの場合、これは大臣御承知のとおり、一億円の債権といったって実際には、時価でございますから、二千万だってあり得ると私は思うんです。その二千万ということが基礎になってこれからの考えが出てくる、当然だと思うんですよ。それはこの後きちんと申し上げますけれども。
 まず、どのぐらいつかんでいらっしゃるか、それはひとつ理事長、おわかりですか。
松田参考人 御指摘の契約書というのは、RCCに当該債権が来て、まず債務者とよく面談をして実態をよく知って把握した上で、今後どういう返済条件をするかというときに、従来持っておられる債務者の権利といいますか責務といいますか、それを変えて、新しい、例えば条件を緩和するとか、あるいは、条件を厳しくするということはありませんけれども別のものに切りかえるとか、そういう状況を変えるときの契約書を指しておられるのではないかなと思いますが、これは一件一件千差万別でございますので、RCCとして、何件契約書をつくったかという件数自体はまだ把握をいたしておりません。
 それからもう一つ、条件変更の交渉が終わりまして契約書をつくろうという段階になって、債務者の方で、ちょっとその弁済ではまだ自信がないなということで、契約書だけはちょっと待ってくださいという事例もあります。
 以上でございます。
中野(清)委員 今理事長のお話でございますけれども、私は大してできていないと思っているんですよ。事実、今まではRCCは回収専門だと、大臣、言っていたんですよ。だから簡単に、そんなこと言っても無理ですよと言ったのが半年前なんですよ、はっきり申し上げて。それがやっとこのごろ――だから私は今一番お願いしたいのは、金融庁や預保やRCCに対して意識改革だと思うんですよ。
 そういう意味で一つ申し上げますと、そういう意識改革がなぜ必要かといえば、今までいわゆる過剰債務、債権の問題、しかもその回収ということが非常に言われてきました。それは当然なんですね。当然だと思いますけれども、果たしてそれだけでもって不良債権問題は解決できるかということになれば、私は違うと思うんです。
 そうしますと、その問題も大事だけれども、それと一緒にキャッシュフローという考え方についても、もう一つの大きな要素としてもっと前面に出していいんじゃないかという感じがしております。例えば、これはもう大臣なんかに釈迦に説法ですけれども、よく財務というかそういうものは野球で、資金繰りはボクシングだと言われているんですよ。十対一でも二十対一でも、九回が終わらなければ、これは負けたことにならない、つぶれたことにならないんですよ、これが財務ですよ。ところが、どんなにいい黒字の企業だって、どんなに資産があったって、資金繰りでショートすれば一発でもって倒産なんですよ。そういうことを考えれば、逆に言えば、その債務の、大きな債務超過かもしれないけれども、まず資金繰りをきちんとやってやる、そういうことが実は一番、まず第一の盲点だと思うんです。
 あえて申し上げますけれども、中小企業白書によりまして、有利子債権の返済について、大企業で大体六年から九年と言われているんです。それからいわゆる中堅企業が八年から九年と言われているんですよ。ところが、中小企業は十九年と言われている。つまり、借金した金を十九年かけなけりゃ平均的には返せないんだということなんですよ。しようがないから、借りかえとかなんかいろいろなことをやっている、そのとおりだと思うんですよ。大臣の前ですけれども、これは普通の中小企業です。ましてや破綻懸念先なんといったらば、これはどうなんだということになれば、さらに厳しいということを、再生とおっしゃる以上、RCCも金融当局も本当に理解しているかどうか、これを私はまず確認をさせていただきたいと思うんですよ。
 そしてその中で、きょうは時間がございませんから、六点について具体的にそのことを私は提言をしたいと思うんですよ。これがきょうの私の一番申し上げたいことでございますから、ひとつよろしくお願いしたいと思います。
 これは、やはりこれから、今金融政策として、中小企業の金融の特に不良債権の処理について大事なのは、RCCとして、今まで、民間の金融機関も含めて、社会全体に対して一つの新しいルール、新しい原則、そういうものがはっきり言って不明だったんじゃないだろうか。RCCの姿勢も含めて、そうだと思うんですよ。だから、私は六つのことをここで大臣に申し上げたいと思うんです。これは大事なものですから、一つ一つを丁寧に答えていただきたいと思うんです。
 というのは、第一には、今までいろいろなことがありました。でも、中小企業については、回収について申し上げたいのは、つぶしてもいいから早く回収しようという姿勢はだめだと私は思うんですよ。なぜかといえば、先ほど埼玉県の話が出ましたけれども、連帯保証をさせられているんですよ。ですから、つぶれるときというのは、はっきり言って家屋敷全部なくなっちゃうというのが実情なんです。埼玉県の方では、月に四人も犠牲者が出ているというようなことも言っているくらいです。
 ですから、まず、回収が前提なんです。しかし、一生懸命やったってだめなところもあります。これはやむを得ない。ですから、まずそれをやはりもっともっと、まず第一に原則として表に出すべきじゃないかと思うんですよ。それが第一点。
 それから、先ほどキャッシュフローの話を申し上げました。結局、普通にやっても十九年もかかるんだというのをどういうふうにやっていくかということですね。何も、そうなってくれば、今預保の理事長も、条件変更がある。それはこれからの大きな要素だと私も思っているんです。そのとき、いわゆる民間金融については、大臣が御承知のとおり、金融検査をやっているわけですよ。そうすると、そう簡単に、やたらに長いものなんかつくれば怒られるに決まっているじゃないですか、金融庁から。それは決まっているんですよ。それだったら、そういう意味での政策的な問題については、RCCが負担すべきだと思うんですよ。それの期間はありますよ。十年でも十五年でも二十年でも二十五年でも、その企業の実態に合わせてまず計画をつくるべきだと思っているんです、はっきり申し上げまして。
 ただ、私も、二十五年とか二十年まで先がわかるわけありませんから、そんなのはモラルハザードになっちゃいますから、それは、例えば五年なら五年でもって一回見直しますよということがあったっていいですよ。ただし、計画としては、それは借金だらけでもってつぶれる寸前の企業がそう簡単な、きれいなキャッシュフローなんかできるわけないんです。だから、そういうことを考えたときの長期の返済の問題。
 それから、三つ目は、これは今日までの、いろいろな不良債権処理についてのトライがありました。いろいろなことをやってこられた。それについて、私どもは、もっともな面が多いと思うんです。
 ただ、不満なのは、不公平という話があるんです。中小企業の方に行きますと、何で大手の業者については債権カットをやって、おれたちはしてくれないんだと。それはあなた、借金というのは返すのが当たり前なんだと、それはそういうことでもってやらなきゃしようがない。人の金を借りたんだ、返すのは当たり前なんだからやろうじゃないかと。ただし、条件については、前に申し上げたように延ばしてもらうということは、それは事情によってしようがない、これはある意味で考えなきゃいけないけれども、やはり借金を返すというのが前提なんだから、そういう前提の中で、切り捨てはしない、これをやはりはっきりした方がいいと思いますよ。
 生半可、今まで幾つかの事例があったから、だからおれたちもまけてくれなんて、それは私は、やはりこれからの日本経済全体を考えるときに、モラルとして、一生懸命やっている人はどうするんだということになってしまいますから、これはぜひ、三つ目としてそのことも申し上げたいと思うわけであります。
 それから、四つ目としては、先ほどちょっとRCCについて、債権回収が、例えば一億円のものを二千万で買ったとかというような例がいっぱいあります。現実には、ことしの一月から六月までは九・九%だ、前は二・二で上がってきたというのは、やはりそれはそれで結構だと思っているんですよ。
 ですけれども、そういう意味で、RCCが買った金額、それについては、例えば三年なら三年とか、悪くても五年ぐらいには、買ったものだけは、それはもうちゃんと返してもらいますよ、ちゃんと回収させてもらいますよ、そういう原則を例えばやるということをはっきりしたっていいんじゃないですか。
 ただ、私もそれについて、よく言えば、幾らで買ったと言えなんていうと、それは交渉がありますから、言ったらそれはちょっと交渉ができなくなっちゃう、RCCが。だから、それはやはり言わなくていいと思う。しかし、やはり回収するという原則にだけは立ってこなければ、さっきの長期の、延ばすという話もなかなかできてこない。それから、債権についての確定もできないんですよ。
 だから、その一つとしては、やはりRCCが買った以上は、それは原則は三年だろう、できないものは五年までぐらいはしようがないだろうとかというようなものを、大臣、こういうものをちゃんとつくった方がいいんじゃないですか。今、そんなのは何にもないんですよ。言えば、それはRCCの恩恵としかとらえていないんですよ、はっきり言って。だからだめなんです。中小企業、金融機関も、ちっとも本気になって相談する気になんかなりっこないということを申し上げたいと思います。
 それから最後に、さっきも申し上げた、いわゆる契約や、その信頼性を、RCCの姿勢を、一年なら一年ごとに全部はっきりするというようなことが必要だと思うんですけれども、いかがでございましょうか。
 そういうことがありまして、それを、私がさっき言いましたように、原則化、ルール化。
 そしてもう一つは、いろいろ言いますと、いろいろなことをおっしゃるわけですよ。確かに、金融の世界というのはいろいろなことがありますから、それだったら、この間、金融検査マニュアルでもって十六も事例をつくったじゃないですか。そういうような、こういうケースだったらこうだということでやっておかなければ、全部、一つ一つを一つの原則でなんかできるわけないけれども、具体的には、基本精神はそういうルールや原則があって、その中でこういう事例というようなものをつくっていかなければ、解決なんかできるわけないし、第一、第一線の諸君が何も手の打ちようがないんですよ。
 そういう点、この六点についてまずお伺いをさせていただきたいと思います。
柳澤国務大臣 今の中野委員のお話というのは、非常に建設的な観点からの御提案を多々含んでおる御発言をいただいたようにお聞きいたしました。
 中野委員も御発言の中でお認めいただいたように、債権債務関係の処理というのは、それぞれの多様な個々の事情に応じて、非常に多様な対応の仕方を求められるということでございますけれども、そこに何か共通の原則みたいなもの、特に中小企業向けにそういうものが考えられないかということとしてお受けとめさせていただきます。
 個々の論点について、ここで一々私のコメントを差し挟むことはこの際控えさせていただきたいと思いますけれども、先生の御意見、大変貴重な御意見として承って、今後私ども、ぜひいろいろな施策を考えるに当たっての参考にさせていただきたいということをお答えさせていただきたい、このように思います。
中野(清)委員 今の六点については、本当は細かくやりたいんですけれども、おっしゃるとおりぜひ検討をしていただきたい。
 実は、後ほどもし時間があれば質問するんですけれども、デフレ対策の中にも、例えば根本先生なんかが一生懸命御提案になっているわけですよ、はっきり申し上げて。そうすると、そういう中に、私が言ったこの問題についてもぜひ考えていただきたい。そういうことでなければ、本当の意味での不良債権の解消というのはできない。ただオフバランス化すればいいということだけでもって、そんな気楽なことでできるんだったら、大臣、とっくにやったんじゃないですか。できないんですよ。
 まして中小企業なんかについて、簡単にオフバランス化して、自殺がどんどん出てきたらどうすると言われたら、それは少なくとも私は今の段階で、申しわけないけれども、RCCに行った債権というのは、まだ、一般のサービサーに行ったところですとか、高利貸しに行ったところよりはいいと思っているんです。だから、これから、RCCに行ってよかったと言われるような、むしろ助かったと言われるようなシステムをつくらなければ大臣、だめなんですよ。それを私は特にお願いしたいと思うんです。
 そういう意味で、さっきの話をもうちょっとだけ申し上げますと、例えば、今、破綻懸念先と言っているでしょう。破綻懸念先といったって、いろいろあるわけですよ。すると、それをやはりもっと分析しなきゃだめですよ。例えば、八千万借金があるというので、それが――これはでは後ほど、もう時間がありませんから申し上げますけれども、キャッシュフローの話で、例えば千六百万返したところに七百万しかキャッシュフローがなけりゃ、これは破綻懸念先なんですよ。ところがこれを、例えば四百万にして、あと三百万残してやれば、これは新しく借りられるんだと。そういう希望を持たせてもらいたい、そのことだけ申し上げたいと思うんですよ。
 時間もありませんから、最後に、組織の受け皿についてお伺いしたいと思うんです。
 先ほど大臣は企業再生本部についてお話しになりましたけれども、私は、これは判定委員会を含めて、はっきり言って、率直な話、大手、中堅向けのシステムだと思っているんですよ。これは無理なんですよ。しかも判定委員会でわざわざやる。そうじゃなくて、例えば、大きな問題として、RCCの中にいわゆる中小企業再生支援本部を設立するということで、それを大きな、一番大事な任務にする。
 とにかく大臣、五兆七千億、八千億あるんですよ、民間の方は。片っ方は四万社あるんですよ。これをどうするかということについては、つくったって当たり前なんですよ。むしろ一つの機関をつくってもらいたいぐらいなんです。だから、それをつくるべきだろうと。それから、その人員の問題もあります。これもぜひ考えてもらいたい。
 それから、例えば事務委託なんかも、中金とか、商工中金とか国金とやったっていいじゃないですか、中小企業については。それからまた、五千万以下とか一億以下については、さっき言った延ばすのも、そんな、本部でわざわざやるんじゃなくても、出先のところに全部任せてもいい、そこまでやるとかという、そういうものをつくっていかなきゃだめだ。
 それから、私、前から言いましたらば、やっと一年に一遍、商工会議所とか県とかとみんなが話をやるというけれども、一年に一遍で、そんないろいろな会合なんか、実態なんかわかるわけないんですよ。だから、そういう意味での特別な委員会というんでしょうか、そういうものを各県ごとにつくる必要、そういう点について、まずお伺いをこの辺でしたいと思います。
柳澤国務大臣 RCCの中に企業再生の本部があるわけですけれども、その実態はやはり大手企業あるいは中堅企業どまりではないか、こういう御指摘でございます。
 確かに、委員も引用になられておりましたけれども、中小企業の中で再生の案件、可能性をぎりぎり見つけるにしても、対全体のRCCの抱える中小企業向け案件の中での比率というのは、相対的に非常に厳しいものになっているということも実態で、これは委員もお認めいただけるだろうと思うわけであります。しかし、その中にも、やはり再生可能性のあるものがあるということについてはよくよく配慮をしていくべきではないか、そうであれば、それ向けの組織というものを考えるべきではないかという御提案でございます。
 そのほかに、いろいろな関係の機関との協議の機関も、もうちょっと頻繁に開かれるような機関として考えるべきだ、こういう御提案でございますが、今その中で、事務方に言わせれば、やっているものもあります、やっているものも一部あるんですというような話ですけれども、非常に厳しい状況にあるという前提はお互いに共通に持たせていただいた上で、さて何ができるかということで、前向きに取り組むということについては、私、ちょっとこれは検討課題としてここで引き取らせていただきたい、このようにお答え申し上げます。
中野(清)委員 検討課題でなしに、ぜひ実行してもらいたいと私は思います。
 最後に、実は過日この席で、我が党の馳議員から、今の金利の値上げについての御答弁がありまして、私も大臣の御答弁を見せていただきました。私は、はっきり言って、大臣の真意が伝わってないような気がする。つまり、リスクに合った金利を上げればいいということだけが先行しちゃって、大臣は決してそうじゃなくて、健全な銀行というふうに思うんですよ。
 ところが、私に言わせますれば、例えば、今まで銀行は金利というものは、例えば担保がないとか保証人がないときに合う金利をつくるというようなことは、これは当然なんです。ところが、同じ金利、同じ担保のところに金利を入れて、しかも、これは金融庁が上げろと言われたから上げますという、はっきり言ってそういうことなんですよ。だから、これは困る。それは大臣の真意じゃないと。それからもう一つは、弱い方からいっちゃうわけです。弱いやつから金利を上げさせられている。
 それからもう一つは、十年間も低金利の中で銀行だけもうけたと言われているのに、何で今銀行が金利を上げる必要があるかという声は多分にありますよ。それはおっしゃるとおり、金利のことは言えるかもしれない、それは両方のバランスですから。原価の方が十年間ぐっと下がっているというのは間違いなく事実でしょう。それについてどうかということであります。そうすると、さっき申し上げた、この問題については、まだ大企業にいろいろ面倒を見ていて、むしろ銀行自身の責任もあるんじゃないかと。例えば、不良債権の貸し付けの問題にしたって、これは全部預金者の責任かということになると、違うんじゃないかという話もあります。
 そういう点で、私は、やはりこれは大臣の御発言というものが曲解されて、それはリスクに合った金利を上げればいいんだというんじゃなくて、大臣はもっと高い立場でおっしゃったと思いますので、これはどうなのかということ。塩川大臣も、もう時間もありませんから、もしあれだったら一言お伺いできないかと思います。これで私の質問はもうしませんから、両大臣からお伺いをいたします。
柳澤国務大臣 今の金利をリスクに見合ったレベルに引き上げさせていただくということは、基本原則としてはそのとおりでございますけれども、今委員が御指摘になられたように、担保をとっているのに信用リスクのスプレッドをとるなんというのはおかしいじゃないかという御議論、もしそのとおりであれば確かにおかしいわけで、担保でもって信用リスクはカバーされているという前提に立てば、そういう必要性はない、こういうことでございます。
 私に言わせると、いずれにしても、金利の引き上げについては基本的に市場金融志向の考え方でございますけれども、他方、いろいろ中小企業については、技術力であるとかあるいは経営者の資産であるとかということもよく考えろということを言っておるわけでございますので、そういうものを勘案した引き上げの措置ということでなければならないと考えていることは、重ねて申し上げます。
中野(清)委員 もう時間が来ましたから、どうか大臣の御発言について、そういった意味で御発言がひとり立ちしちゃって、金利を上げればいいというような状況にはならないように、ぜひこれはお願いをしたいと思います。
 終わります。
坂本委員長 次に、五十嵐文彦君。
五十嵐委員 五十嵐文彦でございます。
 今発言されました中野委員は、私の選挙区の隣、地続きの選挙区でございまして、埼玉県の西部地域なんですが、まさに、小川信用金庫というところが破綻をいたしまして、後を引き継いだ信用金庫がほんの一部の優良な先を除いて全部RCCへ送ってしまったということで、非常に不景気がひどいところなのであります。
 私の地元中の地元の狭山市というところでは、地場の建設業者は、上から、大きい方から三番目まで全部つぶれました、破綻をいたしまして、連鎖倒産もかなり起きているという状態のところでありますので、中野さんがおっしゃったことは非常によくわかるわけであります。
 私も、金利でリスクをとりなさいということを言ってまいりました。しかし、アメリカで金利でリスクをとるのは、それはやはり個人保証や物担をとっていない、きちんと事業を評価してプロジェクト融資をしているということでなっているわけで、相変わらず物担主義に走ったまま金利だけもうけさせてくれというのは、私は、これはやはり問題があるというふうに思いますので、私の発言も含めて誤解されている部分がかなりあるのではないかということで、指導を、私の方からも、そのような趣旨できちんと本来の銀行業務をやってほしいということを徹底していただくようにお願いをしておきたいと思います。
 私の地元でも、最終的に、決算で八千万円の黒字、収益がある病院が、病院改築をしようと思って金融機関に借り入れを申し込んだら断られた。それは十分な物担がないということだそうでありまして、こういうやり方でやったら、いつまでたっても日本は銀行の、金融機関の収益率は上がらないんだろうなというふうに思うわけであります。
    〔委員長退席、中野(清)委員長代理着席〕
 さて、私も中小企業の問題は、そのような状態ですから深刻に考えておりまして、最初は中小企業庁にお尋ねをしたいと思うんです。
 私の知り合いの中でも、三人の夜逃げ、三人の自殺者が出ております。大変深刻な状況なんですが、最近になって私の親しい経営者の一人から訴えがありました。鉄骨加工業の方なんですが、平成三年七月以来、中小企業事業団、今の中小企業総合事業団の中小企業倒産防止共済に加入をいたしまして、現在三百二十万円の払い込み済みの掛金の残高があるんですが、この人の取引先の経営者が、小規模零細企業者なんですが、行き詰まって自殺をしてしまったわけであります。そして、取引先でありますから、最大の債権者が、私が今言った鉄骨加工業のNさんという方なんですが、当然親しい取引先であり最大の債権者でもあるんですけれども、そのほかの債権者に対する手形の裏書きをしているんですね。
 そうすると、死亡したということが確実になった段階で殺到をして、かわりに払ってくれと言われる。また、その自殺した方が公的な制度によるお金も借りておりまして、その人の連帯保証も実はしておりまして、金融機関の方からは、事故扱いだから直ちに一括弁済してくれ、こう言われて、今までどおりに、もとの、原の約定どおりに引き継いで返すからそれはしないでくれないかと言われたんだけれども、だめだ、これは死亡したんだから事故だということで、県の保証協会の方に代位弁済を求められてしまったということなんですね。そうすると、事故の扱いになりますから、遅延損害の高い利率が表面上はかかってくるということになるんだろうと思います。
 そこで、困ったこの方は、自分が持っているマンションを売りに出した。と同時に、三百二十万の払い込みの掛金があるんで、中小企業総合事業団の方に倒産防止共済による貸し付けを申し入れた。ところが、これは一回目の不渡りが出た段階なんで、倒産が確定していないからそういうことはできないというふうに、もう最初から断られてしまったということです。それじゃ、最後の手形は、最も遅いものは八月末だといいますから、その最後の手形の二回目の不渡りが出てからというようなことになってしまえば連鎖倒産免れないということで、これは連鎖倒産を防止するための、目的の事業なのに、このような運用の仕方をされたら連鎖倒産が逆に起きてしまうではないかということで、私のところは仕方ないのかもしれないけれども、必要なところならちゃんと改正してほしい、そういう趣旨の陳情といいますか、相談がありました。
 そこで、本日、中小企業庁の小脇次長さんにおいでいただいていますけれども、債務者が自殺したというようなケースについて、倒産の認定、そしてこの倒産防止共済の給付、貸し付けといったことについて、どのような運用をされているのか、改善点が本当になくていいのか、お尋ねをしたいと思います。
小脇政府参考人 お答えを申し上げます。
 今先生お尋ねの中小企業倒産防止共済制度でございますけれども、これは、取引先の倒産によりまして回収困難となった売掛金債権等の額に応じて共済金の貸し付けを行う、そういった制度でございます。中小企業倒産防止共済法におきましては、取引先の倒産のケースとして、破産等の申し立てと手形交換所における取引停止処分、この二つを規定しているところでございます。
 このうち、今先生御指摘の取引停止処分に関しましては、手形交換所において、同一振出人の手形等について二回目の不渡り届が提出された時点、これを倒産したものとして取り扱われているというのが通例でございます。ただ、取引先の事業者が死亡した場合、この場合の本制度の運用に関しましては、不渡りの回数にかかわらず、死亡を原因として金融機関がその事業者との金融取引を停止したこと、これを中小企業総合事業団が確認することによりまして、その事業者は倒産したものと取り扱われておるところでございます。その上で、ほかの要件に問題がなければ共済金の貸し付けが行われる、こうなるわけでございます。
 したがいまして、今先生御指摘いただいたような、取引先の事業者が死亡した場合には、二回目の不渡りを待たずに取引停止処分があったものとして運用しているというのが現状でございます。
 私どもといたしましては、今後ともこの制度が連鎖倒産防止という趣旨に沿って適切に運用されるように努めてまいりたい、このように考えております。
 以上でございます。
五十嵐委員 今の場合でも、要するに、手形は何回にも分けて振り出されるわけでありまして、いろいろな事情がケースごとに出てくると思うんですね。そのときに、やはり柔軟に、実態に合わせた対応をしなければ、立法の趣旨に反するような事態が起きてしまうと思いますので、ぜひそうしたことについて、それぞれケースが違うと思うんですけれども、立法の趣旨に即した対応をしていただきたいというのは改めて申し入れておきたいと思います。
 それから、けさ八時から一時間半ほど、私、信用金庫、信用組合の、全国の協会の幹部の方々と話を今してきたところなんですが、信用組合の連合会ですか、の方から、最近、政府系金融機関が中小企業の、長い間おつき合いをいただいている自分たちの優良顧客に対して相当働きかけをして、お客さんを奪っちゃうということを言われました。
 これは、やはり官業は民業の補完でなければいけない。民業が働いていないから官が今活躍場面が多いですねというのは、それは中小企業の方からいえばそのとおりなんですけれども、あくまでも官業側の立場としては補完でなければいけないんですね。いいとこ取りされたらたまらないわけですよ、それは。
 それで、そのような苦情が出ているということでございますので、この点について、通告していませんけれども、ついでと言っては失礼ですが、小脇さんの方から、所感があったら伺います。
小脇政府参考人 お答えを申し上げます。
 ただいま中小企業の皆様方は、大変貸し渋りと申しましょうか、債務の状態について相当厳しい状況にございます。
 こうした中で、民間金融機関、なかなか十分に機能していないということもございまして、政府系金融機関、いろいろな手段を通じて、例えばセーフティーネット貸し付け等々を通じて頑張っておるところでございまして、今先生御指摘のとおり、民間の、民業の補完に徹していくということは言うまでもないところでございます。
五十嵐委員 貸し渋りに対してかわりに出動するというのはわかるんですが、そうじゃなくて、自分の方から積極的にセールスして歩いて自分のところから借りてくださいというのは、これは問題があると言わざるを得ないと思いますので、その辺もきちんとしていただきたいということで、中小企業庁にはこれで質問は終わりますので、どうぞ、結構でございます。
 それから、財務大臣につきましても、大変ここのところお忙しい日程で御苦労さまでございましたが、為替が大分急上昇しております。百十九円台ですか。
 この為替の問題、かなり深刻に受けとめられていると思いますが、見通しと、今どのような対応をされているのか、お伺いをしたいと思います。
塩川国務大臣 今世界的に為替は、ドル対円、円対ユーロ、ドル対ユーロ、またポンドとドルとの関係、ポンドとユーロの関係、非常に複雑に絡み合って、一種の調整時期に入っているような感じがしておるように思っております。
 それは、一つは、アメリカの経済が実際、状態として、強いドルを志向しておりますけれども実態はそうではないような方向に動いておるということが、一つのそういう世界的に為替相場の変動が起こってきておるということは思っております。
 私としては、為替は市場原理に任すべきだと思うております。これは信念でありますけれども、何としても、急激に動くということは非常に困る。したがって、為替の動き方が、どのようなスピードで動くかということにつきまして非常に大きい関心を持っておりまして、その場合にはある程度の対応というものも考えざるを得ないのではないかと思うております。
五十嵐委員 急激に円高が進むようだったらある程度の介入をするというお言葉でありますけれども、ここのところの円高は、ブッシュ大統領によるドル安容認とも受け取られる発言がやはり加速をしているというふうに思われますので、我が方も、これからの日本の経済、貿易に大変強い影響がありますので、必要なことは必要なポイントで発言をいただき、日本政府の意思を示していただく必要があるというふうに思うわけであります。それから、介入もきっちりと、余り役に立たないようなやり方ではなくて、しっかりとしたやり方で介入される必要があるんではないかなと思います。
 それから、一方、こうなってまいりますと、中国との関係も大変気になってまいります。
 私は、中国が今や日本に対する巨大な競争相手になってきているという状況から見まして、単に人件費等の比較をするんではなくて、やはり為替の問題でかなりギャップが解消されると考えております。中国の元が正当に評価をされれば、私は人件費格差というのは実は半分ぐらいに縮まるのではないかな、こう思っておりまして、かつて日本がアメリカから迫られましたように、中国に対して日本からも言うべきことを言っていいのではないか、中国の元に対しては正当な切り上げをするように私はもっと求めていいのではないかなと思うんですが、その点についてはいかにお考えでしょうか。
塩川国務大臣 中国の元につきましては、ただ単に我が国だけではなくして、主として東南アジア諸国並びに米国も非常な関心を持っておるところであります。
 けれども、為替政策につきましては、各国に介入をするようなことは申すべきではないという、これはもう当然でございますので、直接的な表現ではいろいろ持っておりませんけれども、できるだけ自由な、開放された為替管理を維持してもらいたいということは皆希望として申しておるところで、したがって、中国の問題、元に関しましても、我が国として元に関する中国へのコメントということではなくして、各国協調の中で、自然な動きの中で解決していくべきだと思っておりますが、最近は元も非常に強い姿勢の方に傾いてまいりました。
 これはやはり、WTOに中国が加盟しましてから、中国自身もWTO体制への順応に非常に力を入れておることがこの相場の中に反映してきておるように思っておりまして、私たちも十分な関心を持ってこの問題を見詰めていきたいと思っております。
五十嵐委員 各国協調が必要だというのはそのとおりだと思いますが、それと同時に、日本政府としての立場ももっとはっきり言っていく必要があるのではないかなというふうに私も思う次第でございます。
 さて、その次に、今、中野委員の方からも第三次デフレ対策というお話がちょっと出ておりましたけれども、与党の方では、秋に向けていろいろな提案が出てきそうだ、あるいは今出ているというものもあるわけであります。
 金融に関して申しますと、一般事業会社が持つ銀行株の買い取り、株式買い取り機構買い取りをしてほしいという、私どもから言わせると余り筋のよくない銀行株買い支えの法案を今国会に提出をされるということのようでありますし、第三次デフレ対策としては、普通預金ペイオフの再延期だとか上限の引き上げなどの預金保険法の改正、整理回収機構の不良債権簿価買い取りのための金融再生法改正、地域金融機関への公的資金増強を復活させる早期健全化法の改正、それから破綻前生命保険への予定利率の引き下げと契約者保護機構の公的資金枠四千億円の期限延長などを図る保険業法の改正といったものが与党の内部で検討をされているというふうに伝わってきているわけであります。
 こういうことが七月中にもまとめられるデフレ対策の中に出てくるということになれば、これは与党と政府との間で金融問題、金融危機という認識に対する、状況認識に対する違いが出てくるということになるんだと思うんですが、このような、与党内で今検討されていると言われているような法改正案についてどのような姿勢で対応されるのか、柳澤金融大臣から伺いたいと思います。
柳澤国務大臣 今委員からいろいろな項目についての御発言があったわけですが、一々ちょっとメモをとりはぐったものですから、その個々についてコメントを申し上げませんけれども、まあ与党の幹部の皆さんがそれぞれ、いろいろなこの難しいデフレの状況のもとでその政策について思いをめぐらせている、それを御発言になられるということは、私は当然だし、私どもも常に耳を傾けているということでございます。
 しかし、それと政府が責任を持って展開する施策としてどういうことを考えるかというのは、ひとまずちょっと分けて御理解をいただいておきたい、こう思っておりまして、私どもとしては、これまで申し上げてきたような、あるいは展開させていただいてきたような、そういう施策と一貫性を持った政策展開でないと、いろいろ効果の点でもどうかと思うし、また国民の皆さんもどっちを向いて政府は経済運営しているんだということで戸惑いも出てくるだろうし、そういうような意味で、できるだけ考え方を一貫させて、よく説明しながら政策を実現していきたい、このように考えております。
五十嵐委員 それでは一点だけ、その中でも今関心が一番高い普通預金、決済性預金のペイオフの延期、再延期につきましては、どのようなお考えでおられますか。
柳澤国務大臣 私ども、この四月から定期性預金についての、いわゆるペイオフという制度をしかせていただいておりまして、預金者の皆さん方におかれては、それぞれ正確な知識を持ってどういうふうに対処するかというようなことに思いをめぐらせて、そういう中でこの預金の移動というようなものも起こっていることは確かでございます。
 ただ、そういう中では、非常に残念なのは、これは正しく理解をしてくれたんだろうかというような気もするんですけれども、現金を全部お宅に引き取っちゃって、そして事故に遭われるというような痛ましいケースもあるようでございまして、なかなか正しい知識ということの普及に今後とも努めていかなきゃいかぬ、こういう気持ちにさせられているわけですけれども、我々は、今現在段階におきまして、預金の移動が何か非常に大きな問題を提起している、このペイオフの実施について考え方を大転換しなきゃいけないというような状況にはないというふうに基本的に考えておりまして、今現在、私ども、この方針を変えるという心づもりはございません。
五十嵐委員 私どもも、ペイオフ再延期ということになりますと、いつ一体それじゃできるのかという話になってしまうと思うんですね。これは問題があると思うんですが、ただ、中小地域金融機関の皆さんは、けさもお話を伺ったと先ほど申しましたけれども、ある意味かなり不安を持っておられるわけで、これはいろいろなそのほかの政策も含めて考えなきゃいけないなと。
 特に私も思ったのは、ペイオフというのは自己責任原則の確立のためにやるわけですね。そうすると、自治体の指定金融機関という形で自治体が公金を預けるという場合については、個人の自己責任原則というのとちょっとやはり違う扱いがあるべきではないかなと思うんですね。
 自治体の公的資金の移動というものがきっかけになって地域金融の混乱、システミックな危機というものが起きる可能性もあると思っておりまして、この点については配慮をし、特別に措置をする可能性もあるのではないかなと思うんですが、その点についてはどうお考えになりますか。
柳澤国務大臣 委員の仰せになることもわからないではないんですけれども、恐らく、それに似たようなものも非常にあって、その分界を画するというのは実務的に非常に難しくなるんではないかというようなおもんぱかりも正直言ってございます。
 私どもとしては、公金を預けられている皆さん方がやはりそこの地域経済全体にも責任を負うていらっしゃる公的な機関であるということを考えますと、物事をそちらの方向でお考えになるんではなくて、自分が、指定機関として指定されている金融機関をどうしたら預金者から本当に信頼される金融機関にすることができるかという方向、これを我々はペイオフの第一の効果として考えているわけでございます。そういう方向で物を考えていただいたらありがたい、このように考えております。
五十嵐委員 私の方は、ですから、そもそもの自己責任原則という考え方からすると、公的な資金というのはワンクッション置くわけでありますから、別の意味の保護があってもいいという、そもそも論から考える余地がある、こういうふうに思っているわけですが、さらに検討をお願いしたいと思います。
 次の問題に移るのですが、新聞紙上、次の金融庁長官の内示が行われたというふうに伺っております。高木祥吉監督局長が新しい金融庁長官になられるというわけですが、原口総務企画局長が本命と言われていた中で大逆転の人事が行われたというふうに理解をしております。これは柳澤さんの意思とも伺っておるのですが、それでよろしいのでしょうか。
 また、高木新長官は不良債権問題のソフトランディング路線の確固とした考え方の持ち主と聞いているわけですが、原口さんがある意味では忌避されたのはハードランディング路線に変わる可能性があるということを考慮したのではないかというような観測もなされているわけですけれども、その辺の事情も含めて御説明をいただきたいと思います。
柳澤国務大臣 金融庁長官の人事の人事権者は内閣総理大臣ということでございまして、私はそれを補佐する立場だというふうに心得ておりまして、そのとおりの人事の運びをやったつもりでございます。
 なお、政策との絡みでいろいろな評価をしていただく御発言があったわけでございますが、私どもとしては、人事については、これは適材適所というほかに何かそれにつけ加えて申し上げることはない、このように考えております。どういう考えであるかというようなことについては、今後の実際にとられる施策、方針、こういうもので御判断をいただき御批判をいただくしかない、このように考えております。
五十嵐委員 しかし、官邸人事とおっしゃいましたけれども、まあ総理の人事とおっしゃったわけですが、官邸も、あるいは原口さん、高木さんのもとの出身であります財務省も、既定でいくものと思っていたという話もありまして、このような急遽の逆転人事というのはちょっと奇異に受けとめられているわけですが、財務省としてはそれで結構だというお話なんですか、塩川財務大臣。
塩川国務大臣 人事は任命権者が決めることでございますので、任命権者が決めたら、私たちとしてはそれに対する批判は差し控えたいと存じます。
五十嵐委員 それでは、財務大臣、結構でございますので、どうぞ。
 それでは、前回の質問の続きの話にさせていただきたいと思います。恐縮ですが、柳澤大臣の御自宅の問題を取り上げさせていただきました。
 前回の質問に対して、六月十二日の当委員会での質問でございますけれども、浜松市鴨江四丁目二百三十七番五のもとの柳澤大臣の私邸の土地建物でありますけれども、地元ゼネコン川島組の子会社、株式会社川島デベロップに九八年五月に売却をされたということで、そのときの売却価格は約七千万円という答弁を前回の委員会で大臣はされたわけであります。
 私はそれで納得をしたわけなんですが、建物は木造で十七年たつものですから、その価値は、考えてみると、多分一千万までいかない評価になるんだろうと思います。数百万円程度。それで、逆算をしていきますと、土地の買い取りの平米単価は約二十二万円程度になるというふうに逆算ができます。そこで、地元の不動産業者さんに、売買当時の周辺の単価はこの地域はどのぐらいですかということをお尋ねしたところ、平米十二万円程度であるというお返事をいただいたわけであります。
 そうなると、やはりこれは相場の二倍近い価格で地元の親しいゼネコンの子会社に買っていただいたということになって、適正価格というのとは離れているんではないかというふうに思うのですが、そうすると、高く買ってもらったんだという地元でのうわさが本当だったという話になるのではないかなと思うのです。その点について、いかがですか。
柳澤国務大臣 私は、先般の御質問にもお答えしましたように、こういうことについては評価の要素が非常に大きいというふうに思いますし、私自身そういったことについていろいろ立ち入った交渉事をする時間的なゆとりもないということから、私の知り合いのそうしたことに通暁されている一級建築士の資格を持っている方、この方は、また同時に都市計画なんかについても地域の団体のリーダーとして非常に深くかかわっていらっしゃる方で、土地の事情にも詳しい方でございますが、たまたまその方が知り合いだものですから、その方に交渉をすべて一任させていただいたということでございまして、私は、彼が適正な評価をしてくれたということを確信している次第でございます。
 一々の評価について、私、今、この段階でもコメントをする余裕はございませんし、またコメントを差し控えさせていただきたいということでございます。
五十嵐委員 ただ、前回も指摘しましたけれども、一方で、新しく建てられた家はこの川島組が建てられたということで、こちらはいわば請負ですね。新しい家の請負の方と、そのもとの土地の買い手の方はほぼ同一と言ってもいい会社であるということ、また公共事業を請け負うゼネコンであるということで、私は、ある人に交渉を一任したからそれで済むんだという話では済まないような気がします。ぜひお調べいただいて、わかりやすく、周囲の方々に疑念を持たれないような説明の仕方をされる必要があると思うのです。
 もともと、この鴨江四丁目の土地というのは、大臣が大蔵省に二十年近く勤務をされた後、一九八〇年六月に衆議院に初当選をされて、その直後とも言っていいと思いますが、十一月に旧第一勧銀から購入をされているわけであります。銀行から土地を買っちゃいかぬというわけではないわけですが、しかし、官僚当時から金融機関との癒着があったんではないかというような、それこそ推測をされかねない話なんだろうと思います。
 また、この当時、実は大蔵省は金融機関との癒着というのが大変問題になった時期とも重なるわけでありますから、この第一勧銀から宅地を購入された経緯、価額等がおわかりでしたらお教えをいただきたいと思います。
柳澤国務大臣 大体の時期的な経緯は今委員が御指摘のことであろうと思います。私、今ちょっと手元に持っておりませんので。
 五十五年、当選して以後間もなく、私、その土地を購入させていただきました。これは私、それまで住んでおりました横浜のうちを売却して、自分が地元との関係というものを強く考えている人間であるということのあかしとして地元に引っ越してこい、こういう後援者の御指示もありまして、そういうことをいたしたわけでございます。
 第一勧銀がもとの所有者であったわけですけれども、私、初めて当選したわけですけれども、私は大蔵省現役の当時から別に銀行と親しい関係にあったわけではございませんし、また、当選一年のほやほやの私が大蔵省出身の人間であるというようなことも余り世の中の人は知らなかったというふうに私は思っております。それは、よく大蔵省出身の代議士というような名簿が出ることもあったんですが、その中にどういうわけか私はおっこっていまして、実は私も変な話だとは思いながら、そういえば私、卒業してから、例えばそういう大蔵省のOBの集まりなんか一切出ておりませんし、自分が大蔵省の人間であるというのは、別に鼻先にそれをぶら下げてその後の活動をしたわけではありません。私は専ら農林の仕事をしておったというようなことでございます。
 そういうようなことで、私、実は娘がおりまして、近くの学校に通っておったんですが、娘がどうしても転校したくないと言うものですから、最初借家をしたところの近くで土地を探してやらなきゃいけないという私は使命を帯びたわけですね。一、二件あったんですが、売ってくれるというところを探したわけですが、それがたまたま第一勧銀の社宅の跡であった、こういうことでございます。
 私は、実はこの交渉も一切いたしませんでした。たまたま私の知り合いに、その当時不動産鑑定士の試験に受かった青年がおりまして、遠縁なんですけれども、それが不動産屋をこれからやるというようなことでございましたので、その青年に交渉一切を任せたわけでございます。そういうことで、値段の点もほとんど、何か難しい交渉があったというふうには本人からお聞きしませんでした。
 実は、価額について、私はこの間、自分に疑惑みたいな形で言われましたので、本当のことを申し上げたんですけれども、そうしたらかえって、こういうことを言ったと申しましたら、私の知り合いの税理士が、そういうことを言うとこれからは商売がやりにくくなるんだから、余りそういうことをぺらぺらしゃべらない方がいいんですよと言って注意されました。私も、それもそうかなという感じがいたしましたけれども、しかし、またここでも、今度はこの価額を申し上げないということになるとまた何か変な感じになりかねないということで、そのものを申し上げますけれども、価格は二千六百万円強でございました。
五十嵐委員 今お話を伺って、なるほどなということもあるわけですが、ただ、銀行は当時の大蔵省に対しては大変関係が深かったわけですから、銀行が有力な大蔵省のエリートであった柳澤さんのことを知らないで売るということはないと思うのですね。それは、今の御説明ではどうかなと思う点でありますけれども、自宅の問題はここまでといたします。
 次に、私、大臣の地元の磐田郡福田町の方から実名入りで投書をいただきました。地元の太田川という川があるんですが、その堤防に柳澤大臣夫人紀子さんのサイン入りの絵がペンキで描かれている。地元の小中学生の絵でもいいと思うのだけれども、なぜ政治家の奥さんの絵なのか。不自然じゃないかということなんですね。
 これは不自然なんですよ。これが絵なんですが、これは周りの風景と全然マッチしていないんですね。堤防にただペンキで、こう、いきなり周りの色と違う絵がかかれているわけですね。この地元の投書をされた方は……(発言する者あり)何を言っているんだ。当時の、よく聞きなさいよ、当時の福田町長、この福田町長は森田弘さんという方なんですが、実は柳澤さんの元私設秘書なんです。後援会の幹部であり、私設秘書なんです。要するに、柳澤さんの元秘書だった町長さんが、いわば柳澤夫人の絵を宣伝してあげているということになるんではないですかという話なんです。
 そのほかに、町営の健康福祉会館というのが、リフレUというのが地元にあるんですが、そこにイハラ工業団地組合から寄贈されたというやはり夫人の作品が掲示をされているし、夫人の作品は静岡県庁の浜松総合庁舎にもあるということなんですね。
 また、地元企業が夫人の、有名な版画家でいらっしゃるわけですけれども、その版画作品をかなり購入しているんだけれども、結構版画というのはたくさん刷りますから相場はそんなに高くないんですが、二、三十万で買っている、あるいは買わされているという話がありまして、これは形を変えた、いわば迂回献金ではないのか、政治献金の迂回した姿ではないかというのが投書の中に実は書かれているんです。これは重大な話なんですね。
 ですから、単に奥さんの話だとか、地元の話とかという話ではなくて、政治にかかわる問題として解明する必要があるということなのでありまして、よく聞いてからやじを飛ばしてください。いかがですか。
柳澤国務大臣 私の妻は版画家として活動いたしておりまして、これは私の結婚以前からの活動でございまして、私はこの彼女の活動に対して一定の敬意を払っているものでございます。
 妻の活動を政治資金集めに利用するようなことは一切いたしておりません。これは、どういうことでそういう、素人の皆さんの、何か一種の連想みたいなことでそういう話を組み立てられているんだろうと思うのですが、私の妻の売り上げというのは、これは事業収入として、それにかかった経費と一緒に事業所得として申告をしているものなんです。
 したがって、どういう形でそれが政治資金に活用できるかといえば、それは、一つは、私の妻がその自分の所得を私の後援会か何かに寄附をしてくれるというようなことがあり得るかと思うのですが、そういうことはいまだかつて一度もございません。
 それからまた、本当にお笑いになると思うのですが、私が、私の妻の作品が何らかの形で売れたとして、そのお金をこちらに流用しちゃうようなことをすれば、領収書が出ているお金でしたら、これは売上除外になってしまうんです。ですから、そういうことはあり得ないわけなんです。私の妻はずっと所得の申告をしておりますから、そういうようないいかげんな経理ということはできないのでございます。
 今いろいろなお話をされましたけれども、したがって、私は、彼女はもう独立の、プロのアーティストなんです。ですから、私はその活動に対しては一切干渉していないし、私の活動と混在させるようなことは一切いたさないのでございます、私は。したがって、市町村とか県とかというようなものが作品を何かその空間に欲しい、パブリックアートが欲しいという場合にも、私は一切関係ありません。市長さんにも県知事さんにもそんなことを話したり、何かその関係の筋の人に私の妻のはどうですかなんということは、これはもうないわけです。
 加えて、たまたま今お引きになられた例で申しますと、県庁のものとかあるいは福田の工業団地がお買い上げいただいた作品なども、工業団地であるし、当事者は。それから、県庁の作品も、これはどなたかが元請をされて、そうして、それでそのアートを一体だれにお願いするかというときに、たまたま家内、妻が選ばれたということであって、私とは、妻もまた、市とかそういうものには関係ないわけです。
 一点、その福田町の今委員が写真を見せられたそれですけれども、それは浜松のペンキ屋さんがやられたものでございまして、私の妻はその原画を、どのぐらいの大きさか私知りませんけれども、書いたんじゃないでしょうか。そして、その原画料として、私、妻の作品の値段なぞについてはこれから一切言うつもりはありませんからね。その前提の上でこの件だけに言いますと、十一万一千百十一円というものをいただいて、それは当然申告の収入金額の中に入れてあるということでございます。
五十嵐委員 私どもが解明する必要があると言っているのは、公共事業との絡みがあるということが一点なんですね。
 それから、一切かかわりないとおっしゃったけれども、別の情報では、大臣の政策秘書の松永晴行さんという方、いらっしゃいますね。松永さんは、ヒルクレスト平河町三〇二号室の柳澤事務所で紀子夫人の版画の営業を行っていませんか。
柳澤国務大臣 松永秘書は、私の高校の同級生で、私の議員になるからずっと私の事務所で、若干の健康のぐあいとかなんとかで中断はありますけれども、基本的に一貫して私の事務所で働いてくれている私の同級生です。その人間は、残念ながら、昔、私、高校の時代には彼は書道部で非常に立派な字を書いておったんですが、この関係については全く、何というか、趣味、趣向というか、たしなみはないわけです。それから、そういう松永秘書が私の妻の絵を取引しているなんということは、金輪際、一切ありません。全くないことです。
 これは、何と申しますか、じゃ、それ、どうしてそういうことを皆さん、不存在を言うのは、これはなかなか難しいのですが、ただ、一つだけちょっと言いますと、画廊が、画廊というのは貸し画廊と企画の画廊があるわけです。企画の画廊というのは、絵かきさんが展覧会をやるときには全く料金なぞは取らないで、自分のリスクでもってその売れたものの何がしかのものを自分の収入にする、そういうものなんです。
 したがって、私の家内、妻も画廊がついています。ですから、そういう画廊さんが、そんな、片っ方で松永秘書がそんなに売り歩いちゃったら、マーケットがめちゃくちゃになっちゃいます。展覧会をやったとき売れなくなっちゃいます。直取引になっちゃいます。そんなことは絵の取引の常識としても全くあり得ないことで、そういったことを全く御存じない方が、まあ先ほどの連想でそういうことをおっしゃっているのかなと思ったりいたしております。
    〔中野(清)委員長代理退席、委員長着席〕
五十嵐委員 そういう連想だとすれば、連想が出てくるのは、やはり絵画ビジネスというものに柳澤さんが接触点が余りにも多いからということなんだろうと思うんですね。
 一番問題なのは、実はRCCとかかわってくるんですけれども、柳澤さんの秘書官だった倉田陽一郎さんという方がおられるんですが、この方が今、現在ではシンワアートオークションというオークション会社の社長になっておられるんですね。これは大手のオークション会社です。このシンワアートオークションという会社については、同業の方なりいろいろな方から、どうもここだけにいわゆる超高額な絵が出てきたり、問題があるという話がかなり実は出ているわけであります。
 そこで、いわゆる金融機関は御自身が買い集めたりあるいは担保としてとったものの中に美術品の名品があったりするわけでありまして、その金融との関係でここにそうしたものが出てくるんではないか。それから、このシンワアートオークションという会社は、さらに言いますと、画商の皆さんがこれは集まって、出資をしてつくった会社と言われているんですが、ヨーロッパではオークション会社と画商は切り離していなければならないんですね。自分のところの売れ残り品をオークションにかけてつり上げたりして相場形成ができるというようなことで、禁止されているのがヨーロッパでは普通であります。それが、画商の集まりであるオークション会社ができるというのは、それだけで、日本では法律で禁じはされていないけれども、不自然であるという話がありまして、ここの問題が出てくるわけであります。
 そこで、私は、金融機関、破綻したところも含めて、いろいろな美術品がRCCの管理下に入っているんではないかなと思うんですが、預金保険機構の松田理事長に、大変恐縮でありますけれども、わかりましたら、RCCの管理下に入った美術品の点数、それから簿価、それからRCCが売却をした点数、売却の総額、そして、このシンワアートオークションを通じて売却した美術品があるかどうかについてお伺いをしたいと思います。
松田参考人 お答えをいたします。
 平成十四年の三月末までにRCCが破綻金融機関から譲り受けた、担保ではございません、所有になりました美術品は、引き受け簿価で四億一千二百十一万円でございます。件数としましては、千四百三十一点ございました。そのうちこれまでに処分をいたしましたものは四百八十八点でございますが、それに見合う簿価は三億六千五百二十二万円でございまして、実際に売れた処分額は四億一千六百十二万円、約五千万円の利益が出たという処分をいたしております。
 次に、お尋ねのシンワアートでございますが、大きなところの取引は回数にして約十回弱ございますけれども、その中でシンワアートがかかわりましたのは一回だけでございまして、このときに売りましたものは、簿価として千三百二十二万円のものを二千四百八十七万円で処分をして、約一千百万円ぐらいの利益を得た、こういう実情にございます。
五十嵐委員 取引は一回だけ、大きなものは十回弱でその中の一回がシンワアートオークションを通じてだということでありますが、いずれにしても、柳澤さんの周辺でそうした美術関係の取引に携わっている人がいるということは事実であります。
 また、このシンワアートオークションについては、周辺から言われていることは、普通、こうした大きな美術品の買い物をしたところには国税当局がどういうお金でお買い求めになられましたかということを聞いているというのが通常と聞いております。ところが、このシンワアートオークションに関しては、そういう国税からの問い合わせが来ない、それは後ろに柳澤さんという大物がいるからだという話がこの業界の中で伝わっているわけですよ。場合によっては、あるいはシンワオークションの方がセールストークでそう言っているのかもしれませんけれども。
 そのようなことが伝わっているので、特に柳澤さんと元秘書官だったこの倉田さんの関係、そして美術品がRCC経由で流れることがあるということについては、私はやはり解明の必要があるというふうに思うんですが、この点については御説明がいただけるでしょうか。
柳澤国務大臣 倉田秘書官は、私どもの勉強会の若い仲間です。非常に優秀な、外資系の証券会社に勤めていて、市場のいろいろな事柄についてのノウハウは、もう本当に豊かに持っている青年であります。そこで、私は、最初に金融再生委員長になったときに、彼を口説きに口説きました。これはもう、自分がせっかく外資系の勤めていたところが、本国に引き揚げて、自分が独立したという時期から幾ばくもありませんでしたから。しかし、私は、もう国のためだと、君をおれは必要とするんだということで、秘書官に就任してくれたわけであります。私にとっては非常に貴重な働きをしてくれた青年でして、いまだに感謝の念を持っております。
 この秘書官が、私の退任と同時にやめてもとの仕事に復帰して、そして休止、休眠していた会社をもう一回業務の開始をするというような届けをしていよいよ始めたんですけれども、そうしたら幾ばくもなく、今度私はこういう仕事をするんだと言って、今委員の御指摘のようなこの会社の社長になったんです。
 何でなったかというと、彼は自分が自営業者であるときも、ライオンズだかロータリーの銀座の会員だったわけです。そういうようなことの中で、そこに出席している方々と知己を得て、そして、なかなか倉田君という青年は非常に物の見方も鋭い人間でございまして、恐らくそういうことがアピールしたかと思うんですが、結局ヘッドハントみたいに、自分たちの会社の社長でやってくれ、こういうことを言われたんだそうです。
 私の聞いているところ、私どもは、友人たちはびっくりしまして、それはやめておけ、実はそういうことを言ったんです。言ったんですけれども、頼まれたことで、自分もおもしろいと思うというようなことを言って、その任についたわけですが、その仕事のことで何か私の金融の当局者としての仕事にかかわりのあるようなことは、もう全くございません。もうこれは、彼の名誉のためにも私はもう力説しておきたいと思うんですけれども、そういうことはもう全くありません。ぜひ御理解を賜りたいと思います。
五十嵐委員 これはかなり業界の中で流布されているうわさがあり、また、それだけではなくて、関係の雑誌等にいろいろなことがシンワオークションについては書かれております。これについては、さらに調査をさせていただきたいというふうに思います。
 あと、時間が少なくなってまいりましたけれども、柳澤大臣をめぐるいろいろなことが最近週刊誌等をにぎわしておりますけれども、一番問題となるアイワイバンクの問題についてただしておかなければならないと思います。
 この問題、私、四月時点で毎日新聞の記事で御質問をこの委員会でさせていただきました。ことし四月十日付の毎日新聞なんですが、昨年三月期までの五年間に東急エージェンシーで十億三千万円の申告漏れがあり、八億四千万円の追徴をされたという記事が載りました。
 この東急エージェンシーに詳しい人に証言をいただいたところによると、二〇〇一年七月から国税の調査が入り、そしてイトーヨーカ堂への七千万円の裏金供与が判明をしたということなんであります。そして、その直後から三、四カ月の間、七月から十月までの間ですから四カ月間ですか、東急エージェンシーでも内部調査を行ったそうであります。
 結論からいくと、東急エージェンシーは、以前にも実は若林さんという副社長を中心に摘発をされました同様の脱税行為がありまして、これはやはりイトーヨーカ堂とセブンイレブンがかんでいるわけですが、セブンイレブンの店頭プロモーションですかね、イトーヨーカ堂関係の店頭プロモーションをピンはねして、販促開発という会社を通じて、指定する三つのこれは芸能プロダクションに裏金が流れ、それがイトーヨーカ堂に回ったということがありました。
 これが今度は、今回の摘発に関しては、スコープという会社が東京・新宿区築地町にございます。横山寛さんという社長さんなんですが、東急エージェンシーの関連の広告代理業者さんであります。このスコープという会社を使って同様に、今申し上げましたプロダクションを使ったのと同様の裏金捻出が行われて、それがイトーヨーカ堂に流れた、こういう話で、それがどこへ流れたかという問題が出てきたわけであります。東急エージェンシーに派閥争いがありまして、どうもその派閥争いの中から内部告発が流出をしているというのがスタートのようであります。
 私のところには、実は昨年の十一月か十二月時点でこの内部告発の文書が届いておりました。そのイトーヨーカ堂が、過去にも東急エージェンシーを通じて裏金をつくってきた、そういう会社だということがそこからは想定をされるわけですが、一方で、イトーヨーカ堂は、アイワイバンクの設立に関していろいろな政治的な働きかけをしているわけであります。
 これも実はアイワイバンクの当時の関係者の証言を二人ばかり伺っております。一人の人は、アイワイバンクの免許取得難航の一因は、日銀出身の、銀行設立準備室のプロジェクトリーダー、畑山さんという方なんですが、その方が金融当局や他の銀行との関係を悪化させてしまった、そのことが原因なんで、二〇〇〇年五月にセブンイレブンの氏家さんという方をプロジェクトリーダーに据えて、事実上は鈴木敏文イトーヨーカ堂社長が直轄のような形で関係再構築を進めたんだ、そして、幹部間ではしばしば自民党政治家の名前が出たという証言をいただいているわけであります。
 それから、もう一人の証言は、九七年当時、セブンイレブンに共同ATMをつくる設置構想が生まれたんだけれども、九九年に新銀行設立方針に変更になった。そのときに、越智通雄金融再生委員長が反対をし、特に他の銀行では三菱の岸暁頭取が強い反対を表明した。そこで暗礁に乗り上げたということで、ちょうど先ほど申し上げました証言と符合するわけですが、二〇〇〇年三月ごろに、佐藤信武イトーヨーカ堂副社長をトップとして、畑山さんからプロジェクトリーダーを変更させて、竹本繁常務、これはもと瀬島龍三さんの秘書さんを務めたという方でありますが、それから有名な長野厖士さん、元大蔵省の証券局長、この三人をメンバーとして政界工作を行ったという証言が出てくるわけです。
 そして、二〇〇〇年十二月の柳澤金融再生委員長就任から確かにこの話が軌道に乗りました。そして、二〇〇一年四月の予備免許取得に至るわけであります。柳澤さんにトップがかわってから予備免許へ向けて話が急速に進んだ、そしてそれはこうした政界工作の成果であったというような、そうした証言が得られているわけであります。
 一方、イトーヨーカ堂について、私は、この免許問題について幾つかの問題点があると思うんですね。一つは、機関銀行化しないかということが一つであります。
 それから、三年以内に黒字転換しなければいけないという基準がありまして、その三年以内の黒字転換は非常に難しいものですから、全国八千店のセブンイレブンのATMと結んで、それは大変銀行にとって魅力的なわけですけれども、それの接続料を銀行からたくさん取らないとこの黒字転換が望めないということで、十五億円でしたか、大変大きな設定をしたということで、これが銀行側の反発を招いてこれが進まなくなってしまった、こういう経緯があるんです。
 それともう一つ、このアイワイバンクには、私、やはり銀行経営者の適格要件の問題があるとも思うんですね。というのは、イトーヨーカ堂は、シジミを北朝鮮から輸入して足利銀行を通じて二十億円の振り込みを行うなど、北朝鮮と非常に関係が深い企業でありまして、伊藤雅俊名誉会長さん、創業者ですが、総連系のイベントに小まめに出席をされていた過去があるということもありまして、これはやはり、こういう北朝鮮と関係の深いところが銀行を直接持つということについては、私は疑問が残る。いわゆる朝銀問題とつながるような問題が生じる、こういうふうに思っておりまして、そういう意味からも問題があるというふうに思っているわけであります。
 そして、先ほど瀬島さんの秘書をやられた竹本繁常務という話をいたしましたけれども、この竹本さんという方は中曽根臨調の事務局に出向していたわけでありますが、そのときに、いわゆる経世会の担当だったわけです。そして、経世会の担当で、同時に、東急エージェンシーからも同様にそのころ実は臨調事務局に出向していた方がおられまして、そこで結びつきも一方ではできた。いわゆる経世会とイトーヨーカ堂と東急エージェンシーの接点というのがそこにもあるわけであります。
 もともと東急エージェンシーとイトーヨーカ堂とは、東急エージェンシーが四百億円、毎年、宣伝広告事業にイトーヨーカ堂から請け負っているという、大手のクライアントと業者という関係にあるわけでありまして、今申し上げた事実関係からいいますと、これは大変不透明な部分が出てくるわけであります。
 もう一つ証言があるわけでありまして、前野徹東急エージェンシーの元社長がおられるんですが、この方のことはほとんど知らなかったというふうに前回の質問で大臣はおっしゃられましたけれども、この前野元社長が鈴木敏文ヨーカ堂社長から依頼を受けまして、アイワイバンクがとまっちゃったときに、作業がとまったときに、野中広務氏を紹介した。そして野中さんが柳澤さんを鈴木さんに紹介したというような、そのような証言が実はあるわけでありまして、これは本当かどうかわかりませんよ。
 そこで、こういう今までの登場人物の一連のつながりというのが一応形の上で浮かび上がってくるわけですが、野中さんから柳澤さんが、鈴木社長ないしイトーヨーカ堂を紹介されたというようなことが、事実があるかどうかから伺いたいと思います。
柳澤国務大臣 全くそういう事実はございません。
五十嵐委員 イトーヨーカ堂のアイワイバンク設立に関して、それでは、どのようなことがそれまで越智委員長のもとで滞っていた理由になったのか。私は、今幾つかの問題点を申し上げました。機関銀行化するおそれがあるんではないか、あるいは三年以内の黒字転換の可能性、基準がクリアするのは難しい見通しなのではないか、あるいは銀行経営者として本当にイトーヨーカ堂があるいはその経営者が適格性があるかどうかというような問題点があると認識をしているわけですけれども、それについてどういう判断をされたのか、お聞かせをいただきたいと思います。
柳澤国務大臣 この問題についての時系列的なことを必要な範囲で簡潔に申し上げますと、今御指摘になられたようなこと、例えば機関銀行化だとかそういったようなことについては、異業種ガイドラインという形で検討され、取りまとめられ、公表をされているわけでございます。これは越智大臣のときをスタートとしているようでございますけれども、谷垣大臣のときに取りまとめを終了し、パブリックコメントにかけておりまして、相沢大臣の時代に異業種ガイドラインとして公表をされております。
 なお、アイワイバンク銀行とガイドラインの適用等についての協議、実質的な審査は相沢大臣の時代に終了をいたしておりまして、予備審査申請という、予備審査という言葉を使っておりますけれども、これはもう行政の手続上は実質的にその審査が終了して、審査申請をしていいよということであることは、いろいろ行政にもお詳しい五十嵐委員の御承知いただいているところかと思います。
 私になりましたときには、相沢大臣のころに予備審査申請が既に行われていたものがペンディングになっておったんですが、それは専らBANCS加盟に係る民間当事者間の交渉というものが妥結に時間がかかっているということでございました。そして、その終了をいたしたというようなことを機に、私の方は、予備審査の終了通知をして、免許をおろしたということでございます。
 それに尽きるわけでございまして、今委員からいろいろ該博なる情報、知識をお持ちで、お話があったわけですが、私は、そのことは、今ずっとお聞きしていたんですが、ほとんど私全く存じておりませんで、大変失礼でございますけれども、私どもは、ある基準をつくってその基準に合致するかどうかということを、これは事務当局を中心に、もちろん大臣の指揮のもとですけれども、審査をして、それに適合すれば免許をおろすということを整々粛々として行ったということに尽きるわけでございます。
五十嵐委員 今のお話でわからないところがたくさんございます。
 まず、先ほど私も説明しましたけれども、BANCS加盟をめぐるその他の銀行との交渉が難航したというのはあると思うんですが、それについて、金融庁なり大臣なりがアドバイスしたり、間に立つというようなことがあったのかなかったのか伺いたいということがまず一つであります。
 それから、先ほど申しましたように、銀行設立だったら、銀行経営者は適格要件というのは非常に厳密に見なきゃいけないわけですから、当然審査対象になったはずなんですね、そのことも。それについてはどういう検討をされたのか全く伺えていない。今言ったように、裏金捻出の常連なんですよ、この会社は。裏金を捻出してきて、政界工作を行ってきた常連の会社なんですから、それはやはり厳しく見る必要があったので、それは今から振り返って何の問題もない、BANCS加盟がもめていたのは、民間同士でもめていたのは解決がついたから粛々として話が進んだんだというだけでは、私は説明にならないと思うわけですが、どうですか。
柳澤国務大臣 もちろん、必要な審査は申請後なされておりますけれども、特に時間がかかっているんですよという説明を私は事務当局から受けたんですけれども、その原因というのは、実は、BANCS加盟、それと手数料、フィーの問題であったというように記憶をいたしております。その間に私に、政治家絡み、あるいは経済界の今の方々絡みで何か陳情とか働きかけがあったかということですが、全くなかったというふうに記憶しておりますし、なかったと私はここで申し上げたいと思います。
五十嵐委員 今質問の一部だけお答えになったわけですけれども、先ほど言いましたように、ちょっとお調べになればわかるわけですが、このイトーヨーカ堂は、東急エージェンシーと組んで何度も裏金をつくってきて、そしてそれが国税当局によって告発をされたという過去があるわけであります。
 ですから、そういうところがやっていいのですかということと、先ほど言いましたように、朝銀信組が破綻を、二次破綻、三次破綻を重ねて、一方では、かなり問題になっているところがあって、いわゆる北朝鮮、そして朝鮮総連との関係で、この銀行についてそういう送金ルートになるおそれがあるんではないかという問題については、何の考慮もされなかったということですか。
柳澤国務大臣 今のお話、二つあったかと思うんですね。
 一つは、脱税の問題でございますが、これは東急エージェンシーの問題だというふうに私は報道から承知をいたしておりまして、その問題は、イトーヨーカ堂の認可ということについては、多分問題になりようがなかったというふうに存じます。
 それから、イトーヨーカ堂の取引については、それは格別そのこと自体が、北朝鮮との間でお取引があっても、それ自体が何か問題ということには、私、ちょっとならないんじゃないかというように思うわけでございます。ですから、取引が何か非常に不健全であるとか不適正であるといえば、それは別の角度から問題になるでしょうけれども、取引があって、通常の商取引が行われているということについて、格別問題があるというふうには認識いたしておりません。
五十嵐委員 取引のすべてが問題があるとかないとかというのは、こちらの側からというより、全体の、今までの取引をむしろお調べになって、問題がなかったかどうかを確認する必要があったのではないかなということなんだろうと思いますね。
 それから、脱税について、明らかにイトーヨーカ堂ないしセブンイレブンの店頭プロモーションを利用して裏金が捻出をされたということでありますので、それはやはり何らかの関係があるということを推定する方が自然でありまして、実際にはいろいろな証言を見ても、これはイトーヨーカ堂のために使われた、あるいはイトーヨーカ堂に七千万円については渡ったということがある意味で判明している事実だと私は思いますので、時間が来ましたのできょうはこれだけにしますけれども、私の方でも引き続き調査をさせていただきたい、またこういう機会にたださせていただきたいと思います。
 以上です。終わります。
坂本委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時七分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時一分開議
坂本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。長妻昭君。
長妻委員 民主党の長妻昭でございます。よろしくお願いをいたします。
 本日の当委員会の理事会で、私どもが要求をしておりました、質問主意書で国税御出身の税理士の方に対するあっせんの部分の御検討というのをお願いしていたところ、文書が出たということでありますので、御説明を簡単にいただきたいと思います。
福田政府参考人 お答え申し上げます。
 二月の質問主意書に対する答弁で、できるだけ早く結論を出したいと申し上げておりましたことで、二つございます。
 一つは、いわゆる押しつけ的なあっせんについての風評調査でございますが、平成十二年七月以降に国税庁が把握いたしました納税者からの風評、苦情、投書の調査を行いました。税理士顧問先あっせんについて、具体性のある事例を指摘しているものが二件ございました。この二件の事例につきまして事実関係の精査を行いましたところ、押しつけ等の事実は把握できませんでした。
 それからもう一つの方は、OB税理士のあっせんについての考え方、方針の整理でございますけれども、これまで御答弁申し上げておりますように、私ども、現在の顧問先のあっせんは、職員の在職中の職務の適正な執行を確保する等の観点から必要であると考えております。
 なお、現在の顧問先あっせんは、国家公務員法等の現行法上は問題はないと考えておりますが、ただ、違法ではないとしても、押しつけではないかといった誤解、疑念、批判を招きかねないとの御指摘があることは、これを重く受けとめているところでございます。
 このため、このような誤解等を避ける観点から、今回、まず第一点といたしまして、副署長、調査管理課長等によるあっせん補助を廃止することといたしました。来年以降は人事課の職員のみで対応するということでございます。それから二点目は、あっせん状況の概要の公表を行わせていただくということでございます。そして、万々が一個別に非行が把握された場合には、当該非行職員に対する厳正な対応を行うということでございます。
 以上でございます。
長妻委員 今の前段の方で、二件あったけれどもこれらのケースも押しつけ等の事実はなかったということなんですが、そうしますと、トータルで何件を調査されたのでございますか。
福田政府参考人 先ほども御答弁申し上げましたように、風評、投書のたぐいがございました。その中で、具体性のあったものにつきまして、二件の内容を調査いたしました。その中身が、先ほど申し上げたものでございます。
長妻委員 ここに「あっせん補助」という言葉があるんですけれども、この言葉は私は初めて聞いたんですが、この「あっせん補助」というのは具体的にどういう仕事なんですか。詳細にお教え願います。
福田政府参考人 お答え申し上げます。
 従来、税務署の副署長あるいは調査部の調査管理課長等が、関連いたします納税者、法人が多いわけでございますが、そういった方々の税理士に対する需要、御要望等をお聞きしていたということでございまして、そういったことを、本来は人事課でやる仕事でございますけれども、その手足となって、いわば手足となって補助をしていたということでございます。
長妻委員 簡単に言うと、御用聞きのような、そういう法人に必要ありますかというようなことを言うということが、副署長じゃなくて今度は人事課職員のみでやると。全然、全く変わっていないわけでありまして、これは、二月に質問主意書を出して、さんざん待ったあげくこれだけの話かというのは、全く回答になっていないというふうに私は認識をしておりますので、もうあっせんをやめるということを要望しているわけでありますので、抜本的な解決策を出していただきたい。
 もう一点は、浜田元札幌国税局長の脱税の問題がございましたけれども、浜田さんは年間の顧問料が一億円を超えている、二億円近いというふうに聞いておりますけれども、これはあっせんで集めたものではないというふうに国税は御答弁をされておられますけれども、そうすると、これは、あっせんで集めた分が幾らぐらいで、あっせんじゃない部分はどうやって集めたのかという、その二点をお答え願います。
福田政府参考人 お答え申し上げます。
 浜田元国税局長につきましても、彼が退官いたしましたときに、普通の他の職員と同様に、私どもの人事課があっせんをしたのは事実でございまして、その額、件数等につきましては、平均的なものとさほど違いはないというふうに理解しております。
 それ以外のものにつきましては、私ども、彼がどういったことについてやっているかということについては承知しておりません。
長妻委員 今の御答弁ですと、偉い方は年間の顧問料二億円というのが大体平均的なあっせんの紹介、そういうことでよろしいんですか。
福田政府参考人 今ちょっと手元に平均的な数値を持っておりませんけれども、金額的にいたしましては年間一千万弱というふうに記憶しております。
長妻委員 そうすると、年間二億円近い顧問料があるという中で、一千万円は確かに国税が紹介をしたけれども、ある意味では一億九千万円弱は、どこからか降ってわいたようにといいますか、天から降ってきた顧問料として収入があったという摩訶不思議な話でありますけれども、これは一説によりますと、裏あっせんというのが、国税庁が認めていない裏の段階でのあっせんもある、こういうようなことも聞いておりますので、塩川大臣、一言、抜本的な改革、調査というのをさらにしていただいて、本当にあっせん自身をもうこれはやめるんだと。今はまた人事課員で今度御用聞きをかえるということを継続するということでありますけれども、もうこういう御用聞きも含めてあっせんをやめていくというような調査、深い調査、裏あっせんも含めた御決意を。
塩川国務大臣 私がしばしばここで答弁しておりますように、この問題は長い習慣がございますので、これはやはり改めていかなきゃならぬという方向で、各国税局単位に厳しくその是正を要請しておるところでございまして、おいおいにその効果を発揮さすようにいたしたいと思っております。
長妻委員 御用聞きというよりは押し売りに近いというふうに思っておりますので、この御回答では到底容認できませんので、引き続き廃止の方向をぜひ進んでいただきたいということをお願い申し上げます。
 次の質問に移らせていただきますと、今お手元にお配りをいたしました資料の二番というのがございます。
 そういう意味では福田次長、質問はこれで国税の分は終了でございますので、引き続きよろしくお願いいたします。
 資料二でございますけれども、これは財投機関債の国債と比較したときの金利の差というのをグラフでつくっていただいたものでございますけれども、この資料の二の1では、字が小さいんですが、一番右の方、七五ベーシスポイント、これは〇・七五%。地域振興整備公団というのは国債と財投機関債との金利の差が〇・七五%ある。そして、左の、一番高い棒の左側は都市基盤整備公団、これは〇・七二%差がある。その左は阪神高速道路公団ということで、これは〇・五%差があるという図でございます。
 資料二の2も同じような見方をしていただければいいわけでございますが、首都高速道路公団、日本道路公団、首都高速道路公団、日本道路公団と、十年債、五年債のグラフがありまして、それぞれ〇・八%程度の国債との開きがあるということでございます。
 さて、金融庁に検査のところでお伺いするんですが、これはある意味では、金融庁の検査マニュアルにもございますけれども、一般の金融機関がこういう公団にお金を貸しているときに、やはり債務者の債券の金利等の動向も見る、それで債務者区分を変えていくというお話もあるわけでございますので、このようなスプレッドが開いているものに関しては、幾ら特殊法人といえども債務者区分をずっと正常にしておくんじゃなくて、要注意とか要管理とか、そういうふうに動かすということは指導をされておられるんでしょうか。
五味政府参考人 債務者区分につきましては、債務者に対します各金融機関の信用格付に基づきまして、これを正常先あるいは要注意先、それ以下に債務者区分をするということになっております。
 その際の配慮の要件といいますのは、その債務者の財務の状況でございますとか、あるいはキャッシュフローから見ました償還の可能性の状況でございますとかこういったことがございますし、もちろん、信用格付を行うに際しましては、マーケットの評価というものも考慮するということになっております。
長妻委員 質問に答えていただきたいんですが、そうすると、公団、特殊法人といえども、そういう今おっしゃられたようなところでこれが要注意や要管理に適当だと思った場合は、そういうふうにしなさい、こういう指導をされるということでよろしいんでございますか。
五味政府参考人 債務者区分に関しましては既に金融検査マニュアルに基づく検査を実施しておりまして、対象が特殊法人であるか純粋の民間企業であるかにかかわりなく同じ扱いをいたしております。
長妻委員 それでは、個別名はともかくとして、この特殊法人の中で債務者区分が要注意より悪いものというのは存在をするんですか、しないんですか。
五味政府参考人 私が今まで検査局長をやっておりましてチェックいたしておりました限りでは、要注意先以下のものというのは特殊法人では見たことがございません。
長妻委員 そしてもう一点でございますけれども、この資料の中の資料三の2というところに金融マニュアルの抜粋を書かさせていただいておりますけれども、ここの(6)の分類対象外債権ということがありますけれども、その中の4ということで、政府出資法人に対する債権という項目がございます。
 これは、民間銀行が例えば政府出資の特殊法人にお金を貸す、債権を持っている、そうすると、その債権はもう分類はしない、基本的には正常であるというのがもうあらかじめ決まっているというようなことの意味だというふうに私はとっておりますけれども、それで、では、特殊法人は一体民間から幾らぐらいお金を借りているのかということを財務省に調べていただきましたところ、政府出資の特殊法人、大きいものからいろいろ調べてもらいました。
 一番民間からお金を借りている特殊法人は、日本道路公団の、何と三兆三千億円が民間の金融機関からの借り入れだということであります。そのうち、政府保証つきのものというのはゼロ円であります。特殊法人の借り入れは、政府保証つきのものと政府保証がついていないものというのに分かれておりますけれども、今のような数字であります。
 さらには、次に借り入れが政府保証がついていないもので多いものといたしましては、都市基盤整備公団。これが約一兆円民間から借り入れがありますけれども、政府保証はそのうちの約三千億円しかついていない。
 あるいは首都高速道路公団。これは一千七百億円民間から借り入れがあるけれども政府の保証はついていない。
 地域振興整備公団。これは三百三十億円民間から借り入れがあるけれども政府の保証はついていない。
 今、私が申し上げた、名前を読んだ公団というのは、さっきのスプレッドの表を見ていただくと、非常に、五〇・〇ベーシスポイント以上のスプレッドの開きが国債とある、そのような公団でございます。ある意味では、例えば日本道路公団三兆円、都市整備公団一兆円近く民間から借り入れがあるわけでございまして、それで先ほどの金融マニュアルを見ますと、幾ら政府出資の特殊法人が民間銀行からお金を借りていてもその債権はすべてもう何も考えずに正常に分類をする、こういう金融マニュアルでありますけれども、これは例外というのはないんでしょうか。
五味政府参考人 極めて技術的な部分で恐縮でございますが、債務者区分と債権分類とは異なる概念でございます。
 まず、先ほど御説明しましたような手順で債務者区分というものを確定いたしまして、その上で、債務者に対します個々の債権の資金使途等の内容を個別に検討いたしまして、担保保証等状況を勘案して債権の回収の危険度あるいは債権が毀損する危険性、こういったものの度合いをはかりまして、これによってその債権の分類を行うというものでございます。
 今お話しのありました、政府出資法人に対する債権は分類対象外債権とするというこの部分は、債権分類の方の話でございまして、債務者区分と債権分類というのは、すなわち、償却、引き当てを計算する際の準備作業として行われるものでございます。
 同時に、この結果というのは金融機関のリスク管理に活用されるわけですが、この債権分類は一分類から四分類まである。この一分類というのは、ここで言う分類対象外債権でございますが、二、三、四とふえてくるに従って危険度が高まるということでございます。第二分類と申しますのは、この債権回収について通常の度合いを超える危険を含むというものでございまして、三、四となれば、さらにそれは損失の危険度が高まるということでございます。
 政府出資法人につきましては、実質的に政府の一つの部門としてその政策遂行に当たっている組織でございまして、基本的には、こうした考え方からいきますと、回収に基本的な危険性はない、あるいは、第二分類以下であるような通常の度合いを超える回収の危険度というものは、これはないというのが通常の判断でございます。
 なお、極めて理論的に考えますれば、それは回収の危険度が特殊法人であっても非常に高まるというようなケースは理論的にはあり得るかもしれませんけれども、現在の政府の運用の中ではそうしたことは予想できませんので、非分類債権ということになっておるわけでございます。
 純理論的には、当然、例外になるということは起こり得ます。
長妻委員 ちょっと私はおかしな話だと思っておりまして、おんぶにだっこだと。政府の保証がついていない融資も、政府が面倒を最後は見てくれるから、全然何にも考えずに第一分類にしますよ、簡単に言うとそういう御発言だと思います。
 財務省にお聞きしますけれども、そういう認識を金融庁は持たれていますが、政府保証がついていなくても必ず国が全額保証してくれるんですか。
坂本委員長 だれに質問しましたか。
長妻委員 答えられる方。塩川大臣に。
塩川国務大臣 政府保証がついていなくても全額保証するのかという御質問でございますね。
 それはケース・バイ・ケースによりますけれども、絶対に保証するということではございません。
長妻委員 今聞かれたと思いますけれども、ケース・バイ・ケースで、絶対に保証するわけではないということでありますので、これはちゃんと金融庁は銀行を検査するときに指導をして、特殊法人に対する債権であっても、これは、何にも考えずに今第一分類というお話がありましたけれども、きちんと考えて、この債権が第二分類かもしれない、第三分類かもしれない、こういうチェックを今まで全くしていなかったということでありますか。
五味政府参考人 繰り返しになりますけれども、債権分類の第一分類というのは、別にリスクフリーということを意味しているわけではないわけですね。
 第二分類以下というのは、回収の危険度が通常より高い。正確に言いますと、その回収について通常の度合いを超える危険を含む。その理由は、債権確保上の諸条件が満たされていない、あるいは信用上疑義が存する、こういったようなことで通常の度合いを超える危険を含むということでありますから、特殊法人の場合には、こうした通常の度合いを超えるような危険というのは通常ないので、そこで非分類としているということであって、政府が完全に保証することが約束されていてリスクフリーだということを意味しているわけではないわけでございます。
長妻委員 そうすると、今まで公団の債権は、検査というのはしていなかったわけでございますか、個別には。
五味政府参考人 検査におきまして、通常、大口の貸付先になりますので、抽出をいたしまして、チェックをしております。
長妻委員 そうすると、今の塩川大臣の御答弁も、これまでの政府の御答弁も、それは全部、全額保証するわけではない、ケース・バイ・ケース、こういうことでありますから、これは何にも考えずに第一分類だというような発想ではなくて、ひょっとするとこれは第二分類になるかもしれない、あるいは、ひょっとすると第三分類までいく危険性があるものもあるかもしれない、こういうことも考えながら、きちんと、これはひょっとしたら第二分類になるかもしれないということまで考えながら今後御指導をしていただきたいと思うのですが、いかがでございますか。
五味政府参考人 債務者区分が要注意先以下になるというような疑いがございますれば、当然に、その対象となっております債権が第一分類であるのか、第二分類であるのかということはチェックをしなければいけません。
 このマニュアルの記述と申しますのは、先ほど来申し上げておりますように、予想されない事態でありますから、非分類だと。予想といいますのは、特殊法人に対する貸付金が通常の度合いを超えて返済に危険があるというようなことは通常考えられませんので、非分類と書いてございますが、個々のケースに当たってみまして、例えば、当該法人の業況が極めて悪化している、回収に万一の問題が生ずるおそれがあるのではないかというようなおそれが出ているということでありますれば、それは実態判断をして分類を行っていくということは、これは可能性としては考えられるということでございます。
長妻委員 財務省にもう一度お聞きするのですけれども、今の金融庁の御答弁では、通常の度合いを超えて返済に支障があるというような趣旨のお話をされましたけれども、そうすると、特殊法人は通常の度合いを超えて返済に支障があるということは起こり得ない、そういう場合は国が全部保証する、何しろ特殊法人は、通常の度合いを超えて返済に支障があるということはどんな特殊法人でもあり得ない、こういうことでよろしいですね。
塩川国務大臣 特殊法人は全部法律に基づいて設立しておりますので、最終的には政府が保証するということはございますけれども、とはいって、無条件で、その数字、債務額全額を保証するという意味ではございませんで、そこに至ります過程において、その特殊法人自身が非常な努力と、それから清算への切り詰めた数字の整理をいたしましたその結果としての判断に基づいて、政府が対応するということになるものでございます。
長妻委員 いずれにしましても、今後、金融検査におきましては、特に特殊法人、あるいは第三セクターとか、あるいは公的なものに関する貸し出しも、きちっと、初めから第一分類だと頭から決めつけるのではなくて、精査をしていただきたいということをお願いします。もう完全に国が全部おんぶにだっこでいくんだということはないわけでありますので、ぜひよろしくお願いをいたします。
 そして、もう一点は、政府保有株の売り出しにかかわる幹事社、証券会社の決定のプロセスというのが不透明であるというような御懸念を持たれている方が多いわけでございますけれども、その意味で、例えば、さきに決定をしましたJTの幹事社決定のプロセス、あるいは平成十二年に決定をいたしましたNTT株の売り出しのときの、四社が幹事社に決定しましたけれども、随意契約ということで決定をされるわけですけれども、それぞれの大体点数が何点で、どういう理由で決定をしたのかという情報公開というのはなされないのでございますか。
谷口副大臣 長妻委員のお尋ねでございますが、今国会におきまして日本たばこ産業株式会社法の改正を行っていただきまして、十四年度予算におきまして三十三万三千三百三十四株の売り払いを計上いたしておるわけでございます。五月二十三日に、この売り出し準備のため、主幹事証券会社、二社でございます、一社は大和証券SMBC、もう一社はメリルリンチ日本証券を選定いたしまして、現在、関係書類の作成等、売り出し準備のための事務を行っておるところでございます。
 各社が主幹事証券に選定された、この二社が選定された理由、また、この審査における評点につきましては、これらを公にするといったことによりますと、提案した社の競争上の地位の利益を害するおそれがある、また、今後主幹事選定の事務が適切に行われないというようなことも考えられるわけでございますので、この公表については差し控えをさせていただきたいというふうに思うわけでございます。
 今先生おっしゃったように、予算決算及び会計令ですね、会計法の政令でございますけれども、この政令におきまして、売り出しにかかわる件につきまして、これは五条一項八号でございますけれども、随意契約でいけるということに規定されておるわけで、今回この随意契約ということになったわけでございます。
 また、手数料全体につきましては、決算参照書というのがございますが、ここに明らかにいたしておりまして、この手数料の幹事団メンバーへの具体的配分については、メンバー間で締結される幹事団契約に基づいて幹事団において決定されるものであって、これらにつきましては当局が公表すべき立場にはないというように考えておるわけでございます。
長妻委員 ぜひそういうプロセスを、決定した後は公表していただきたいと思います。
 さらに、例えば平成十二年のNTT株の売り出しにかかわる引き受けの手数料の総額というのは七十億円近い国費が証券会社に払われていて、一体どの証券会社に具体的に幾ら支払われたのかというのはわからないというか、財務省によると財務省も把握をしていないというお話でありましたけれども、これは七十億を一つの口座に振り込んで、後は証券会社が分けて、幾らどこに行ったかわからない。個々の証券会社とは財務省は契約を個々に結んでいるわけでありますので、そこら辺きちっと把握をしていただくということが重要でありますので、お願いを申し上げます。
 あとは、柳澤金融担当大臣にもお尋ねをいたします。
 金融庁長官人事というのが決定をしたやに聞いておりますけれども、これは民間人という話もあったというふうに、俎上にあったんではないかということも聞いておりますけれども、民間人ではだめなんですか。
柳澤国務大臣 今、公務員改革も行政改革の一環として行われておりまして、そういう精神からいって、民間人であることも別に制度上排除されているわけではないというふうに考えております。
長妻委員 民間人になされなかった理由というのは何かあるんでございますか。
柳澤国務大臣 私、人事のことでございますので、既に内定をいたしておりますので、この内定をした人が最も適材であるというふうに考えたということ以外申し上げるべきことはないということでございます。
長妻委員 そして金融庁長官には高木監督局長が就任をされるということのようでございますけれども、ある意味では、監督局というのは、今回のみずほのトラブルを最終的に食いとめるべき監督局ということで、その局長が、みずほのトラブルの責任は何も問われずに長官に上がっていく、こういうようなことは問題があるんではないかというふうに私は認識しております。
 柳澤大臣は、六月二十一日の会見では、我々の対応というのはやむを得なかった、我々の責任というのはこれからの再発防止とかそのようなことに万全を期すというようなお話をされておられる。あと、当委員会で、五十嵐議員の質問に対しても、私どもとしては適切な監督ができなかったというのは、これはやむを得ないという、判断を、やむを得ないということをされたと思うのですが、しかし、再発防止を考えるというふうに、それが責任だというふうに御答弁されているんですが、具体的な再発防止というのは、今お話しできるものは。
    〔委員長退席、中野(清)委員長代理着席〕
柳澤国務大臣 まず、これは基本的に検査をしっかりやるということが大事でございます。検査が、やはり立ち入りができるということでございまして、そういう意味では、検査の充実というのが一番大事で、この点につきましては、やはりシステムの検査というのは相当の専門知識が要る、専門性の高い技能が、知識が要る、こういうふうに考えておりまして、そうしたいわば専門家を一つのまとまりとした専門班というものをつくりまして、この検査を特に四メガを中心として、大手行でしたか、大手行を中心として専門班を、これをローテーションさせながら常に見ていくという形をとることを予定いたしております。
 なお、私ども監督の部局におきましても、やはりこうしたシステムの専門家というようなものが必要だというふうに私は考えておりまして、これからの採用に当たっては、そういったことの充実も、検査はもとよりでございますけれども、図ってまいりたい、こういうことで再発防止に力を注いでまいりたい、このように考えております。
長妻委員 そして、塩川大臣にお尋ねしますけれども、一度塩川大臣と日本の国債、借金について議論をしたいなと思っておりまして、ことしの三月末、国の国債と借金等の残高というのが六百兆円を初めて超えたというようなことがございますけれども、この六百兆円というのは、全額返却をするというのは大体何年後をめどになっているんですか。五十年後なんですか、百年後なんですか。
塩川国務大臣 ちょっと予測は立たないと思っておりますけれども、できるだけ早く償還への努力をしたいと思っております。
長妻委員 やはり長期ビジョンといいますか、そもそも、では、この借金、国債を全額返却する、こういうおつもりはあるということでよろしいんですか。
塩川国務大臣 当然ございます。
 しかし、国債の中でも、建設国債といわゆる特例国債というのがございまして、問題は特例国債をできるだけ早く償還するということが重大なことだと思っておりまして、当然その努力を我々続けていくはずであります。
長妻委員 これは、格付会社がいろいろな格付を日本の国債にしているわけでございますけれども、やはり長期ビジョン、どういう形で借金、国債を償還していくということが問われているんだというふうに考えております。
 閣議決定、ことしの一月二十五日の書類を拝見いたしますと、二〇一〇年初頭にはプライマリーバランスを黒字化することが望まれる、こういう表現でございますけれども、この黒字化が望まれるということは、当然一義的には総理が責任を最終的に持つんでしょうけれども、大臣の中には一義的に責任を持たれるのは、内閣府の大臣なのか、財務省の大臣なんでしょうか。
塩川国務大臣 これは私は財務大臣の責任だと思っております。
長妻委員 その意味では、ここは抽象的な、二〇一〇年初頭にはプライマリーバランスを黒字化というのが、ある意味では唯一の今の政府の借金に対するスタンス、表に出ている唯一のものだというふうに私は認識しているんですが、そうではなくて、この資料の六に、これは財務省の資料をつけさせていただいておりますけれども、今日本のGDPの比率、国及び地方の債務残高のGDP比が一四〇%を超えているということでございますけれども、これは大臣、適正なGDP比の国債の残高というのは大体どのぐらいなのか。国としてはこのぐらいを目指していくと。当然ユーロは、ユーロに入るのには六〇%を超えると入れない、こういう規定があるわけでございますけれども、大体の目安を国民の皆様に提示をして、それに向かって頑張っていくんだというものがないと、どのくらいの規模になっていくのかがさっぱりわからないというのはよくないと思うのでございますけれども、大臣の御認識をぜひ承りたいと思います。
塩川国務大臣 EUの統合いたしましたときの、そのときの基準が各国マイナス三%ということで意思統一して、それが各国とも、それを一つの努力目標にして財政も経済も健全化してきたという歴史がございますので、我々もやはりそれに準拠した方針をとっていきたいと思っております。そういうことから考えまして、とりあえず、直近の目標として、二〇一〇年をプライマリーバランスを黒字化していくということに設定して努力を重ねておるところです。(長妻委員「パーセントは」と呼ぶ)
 パーセントは、大体その程度のことでいきたいと思っております。
長妻委員 その程度のことというのは、重要な御発言なのでございますけれども、大体その程度というのは、六〇パーとか、そのぐらいでございますか。
塩川国務大臣 大体その程度でいきたいと思います。
長妻委員 その程度というのを、ちょっとどの程度なのか、具体的な数字で言っていただきたいと思うんですが。
    〔中野(清)委員長代理退席、委員長着席〕
塩川国務大臣 現在、実はプライマリーバランスを、数字から見まして十三兆三千億円が要するに赤字になっておるわけです。これを二〇一〇年には償還していくとすると、どのぐらいのペースでいくか、ちょっと計算して御報告いたします。
長妻委員 非常に、途中で財務省の方がさっと入られて説明があって、私が先ほどやりとりで、その程度の水準というふうに塩川大臣が言われたのは、対GDP比の国及び地方の債務残高がこの資料六の表で一四〇%を超えているけれども、ユーロ加盟は六〇パーが一つの基準だ、日本はどうですかと言ったら、その程度の水準というふうにお答えになられたわけでございまして、その程度の水準というのは六〇%をめどということなのでございますか。どのくらいのめどなんですか。ぜひこれは、お役所の方に何か言われて、指示をされてお答えになるのではなくて、政治家として、ぜひ大臣、お答えをいただきたいと思います。
塩川国務大臣 もう少し説明、ちょっと質問を明確にひとつしていただきたいと思うんです。どの数字を言っておられるのか、ちょっと私、とりにくいんです。
長妻委員 この資料六を見ていただきますと、日本が一四一・五とありますけれども、このレベルでいうと、先ほど大臣のその程度の水準というのは六〇%ということでございますか、こういうことであります。
塩川国務大臣 数字の面でちょっと私は答弁しかねますけれども、要するに、欧米諸国と、EU諸国と同じ水準に持っていきたいということでございますから、計算上六〇%になるのかどうか、私はまだ計算をやっておりませんので、後でお答えいたします。
長妻委員 今、お話がありまして、欧米並み、六〇ということでありますけれども、ぜひそういう目標に向かって政府全体で取り組んでいただきたいというふうに私は考えております。
 そして、もう一点でございますけれども、これは大臣に。大臣、もうお役所の説明は後で聞いていただいて。
 以前、かなり前のこの財務金融委員会で、大臣が就任された早々に私が質問させていただいて、公共投資のGDPの比率はどのようにされるんですかというような御質問をさせていただきましたら、大変前向きなお話がございまして、十年で欧米並みにGDPの比率を持っていくんだというお話があって、これは各新聞にも出て、もうそれがある意味では国の目標であるというような認識で私もおったわけであります。
 ただ、今、政府内の方と話してみますと、いや、これは塩川大臣がただ言っただけの精神的目標なんですよ、余り気にしないでください、こういうことを平然と言われる方がおられるわけで、けしからぬ話でありまして、ぜひ塩川大臣、十年で公共投資のGDPを欧米並みに持っていく、これは本当にやるんだから、そんないいかげんな発言をするなというのをぜひもう一回言っていただかないと、これが今、もうほごにされてしまいそうな雰囲気でございます。
塩川国務大臣 そういうことを幾ら議員が言いましても、世間がやはりきちっと見ておりますよ。
 私が言っているように、やはり十年後には欧米並みの、公共投資の比率が二ないし三%だと私は申し上げたと思っております、現在六・五%ぐらいになっているんじゃないかと思うんです。
 これは、現在いろいろな知事選挙とか首長選挙のところを見ましても、公共投資に対する国民の見方というのは変わってきております。ですから、公共投資というものが質的に変わるし、また量的にも変わる。それが、財政上の負担というものがどうなるかということが国民もよくわかってまいりましたので、有効な公共投資に集中していくであろう。そうするならば、私は当然に、いわば各国、欧米諸国がやっておられるような平均的な状態に日本の状態もなっていくであろう。これは世間が、国民がその方向に持っていくと思っております。(長妻委員「十年で」と呼ぶ)十年で。
長妻委員 最後に一問でございますけれども、柳澤大臣がけさの閣議後の記者会見で、あしたにでも地域金融機関の合併促進策のポイントを明らかにしようというお話がありました。その手法の点で私もいつも疑問に思うんですけれども、委員会の、国会の場で本当は説明していただくのが一番いいんですけれども、いつも何か国会じゃなくて記者会見で説明をされる。これは国会の場で初め説明をしていただくということを、ぜひ今後、そういういろいろ説明物のときにお願いをしたいのが一点。
 もう一点は、その合併策の概要をぜひここでお聞きしたいのが、一つは税制の優遇とか、あるいは公的資金の活用とか、あるいはペイオフの払い戻し保証額の引き上げとか、大きく三つのテーマが出ているんですが、どれを選択してどれは選択しないのか。その発表の手法と、その三つのポイントの点を御答弁いただきたいと思います。
柳澤国務大臣 私は、とにかく事務方を今鞭撻しまして、もうとにかく実質的な事務年度の更改の時期も近いんだからできるだけ前倒しして仕上げてくれ、こういうことを言っておりまして、私、期限を切りまして、あしたの晩方には発表できるようにやってくれ、こういうふうに、あれは記者会見を通じて事務方を督励したつもりでああいうことを申させていただいたわけです。
 その中身でございますけれども、中身は、基本的にはもうちょっと詰めていく、かなり詰めないといけないそういうテーマでもございまして、これはまたいろいろこの委員会の委員の先生方にも御意見もいただきたいわけでございますけれども、それのいわばたたき台というか、問題の範囲、我々が視野に置くべき範囲みたいなものを項目として挙げたいということを考えておりまして、公的資金云々というような表現は我々の方にはないはずでございますけれども、いずれにせよ、そういうことを含めて、今委員が言われたところは全部含めて、その論議の最初のステップというか基礎にしたい、このように考えております。
長妻委員 質問を終わります。ありがとうございました。
坂本委員長 次に、中塚一宏君。
中塚委員 自由党の中塚です。
 きょうは、まず初めに、先ほど衆議院の本会議で可決成立いたしました郵政公社法のことについてちょっとお伺いをしようと思います。
 両大臣とも御所管でないのは重々承知の上、百も二百も承知の上でお尋ねをするんですが、参議院の審議もあるでしょうから、なかなかめったなことは言えないんだろうというふうにも思いますけれども、ただ、今景気の問題とか経済の問題というものが言われている中にあって、構造改革ということも盛んに言われている中で、何をすることが景気、経済に資するのかというふうに考えたときに、政府がお出しになったのは郵便事業への民間参入ということが中心になっているわけなんですけれども、民間参入自体それは確かに景気浮揚効果がないわけではないと思いますが、一番、この三事業の見直しなり改革ということになったときに、私自身はやはり郵便貯金と簡易保険の問題だろうというふうに思うんですね。これこそ本当に日本のかねてよりの、それこそ明治以来の財政の一部ということでもありますので、そこを変えていく中長期の構造改革と、あと短期の経済対策という観点からお伺いしたいというふうに思うんです。
 貯金なり簡易保険というものが、国がやっているわけですが、このことによって、官民の資金の問題ということが一つあると思うんですね。官がやはりこれだけ大きな資金をブロックしてしまうということ、そのことによって長期的に民間の資本蓄積というのがおくれ、日本の潜在成長率が低下をしているんではないのかという懸念を私ども持っておりまして、それで、郵政公社法とか信書便法案というものの対案として、私ども自由党として、貯金と保険の株式会社化という法律を提出させていただいたところです。
 そういう経緯も踏まえてお伺いをするんですが、みずほフィナンシャルよりも一・五倍の資金量を持っている郵便貯金というものがあって、これが、官と民の資金の配分という意味で、官から民へという言葉ももう使い古されたようにもなってきているわけですが、官から民へというふうな線に沿って構造改革を進めていくというのであれば、やはりお金の流れというものも官から民へというふうに変えていく必要があると思うんですね。そういう意味からも、やはり三事業というのであれば、貯金、保険というものについて民営化する、民営化するということは国がやらないということですから、廃止ということにもつながっていくと思うんですが、こういう考え方について、まず塩川財務大臣、いかがでしょうか。
塩川国務大臣 当然、資金を管理しております郵貯並びに簡保等、年金もございますが、そういう関係のものは民営化するのが望ましいであろうとは思います。思いますけれども、しかし、現在までやってまいりましたのは、純粋な国営企業としてやってまいりましたのが、一応公社化いたしまして、そこに経営の責任を明確にさすという手段をとったのでございますから、一応公社で私は運営していくべきだと思っております。ここで公社の実績を十分に、民営化に近い公社としての実績を積んでくれればいいと念願しておるところです。
中塚委員 民間参入の話にしても、いろいろと政治絡みになったり、いろいろおもしろおかしくマスコミなんかで伝えられる中で、そういう景気とか経済とかいう面からの検討というのは、やはりちゃんと加えなきゃいけなかったんだろうと思うんですね。
 衆議院を通過したけれどもあえてお伺いするんですが、同じ趣旨なんですが、柳澤金融担当大臣はいかがでしょう。
柳澤国務大臣 私も、長い論議の末に公社化ということを一つの結論にいたしたわけでございますので、まず公社化の実現を確実なものにするということが極めて大事なことであるというふうに考えております。
 その上で、私どもの立場からずっとこれはお願いをしてまいったわけでございますけれども、やはり、民間金融機関とのイコールフッティング、同じ条件というものをぜひ実現していただきたい、こういうことでございまして、かなりの程度そういうものができ上がりつつあると考えておりますけれども、それをより確実なものにしていただきたい、これを今後とも我々の立場からお願いしてまいりたい、このように考えております。
中塚委員 それで次に、官と民の話の次に間接金融と直接金融という切り口から今度お伺いします。
 やはり改革のトレンドとして、間接金融じゃなく直接金融のシェアなりウエートを広げていこうという話だと思うんですね。この場でもまさしく証券市場の活性化税制なんかの議論もしたわけなんですが、そういうふうな観点から考えたときに、やはりこの郵便貯金、簡易保険の問題ということに突き当たると思うんですね。直接金融市場を広げていくというときに、お金をやはりそっちに回さなきゃいけないわけで、後ほどちょっと経済対策の話もさせていただこうと思っていますが、なかなか借金もふえていて、思うに任せず、お金も使えないというときに、私はこれは貯金なり保険なり、廃止、民営化なり廃止ということですが、することによって、やはり間接金融じゃなくて直接金融市場の方にお金を流すことができる。民営化ということでなくても、例えば一千万円の限度額をちょっと引き下げたりしていくことによって、直接金融市場、株式市場なり債券市場の方にお金の流れをシフトすることができる。となれば、お金をかけなくてもそういう経済対策ということにもなるわけなんですが、そういう観点からは、財務大臣いかがでしょう。
塩川国務大臣 私は、郵便貯金がなぜこれだけの貯金の残高を持っておるかということに、それなりの理由がやはりきちっとあると思っております。それは、非常に便利さがあるということ、そして、非常に庶民的な雰囲気の中で預金あるいは引き出しができるという、この雰囲気が非常に大事だと思うんです。
 だって、中塚先生、例えば銀行へ行くのも大儀ですよ、あのごっつい建物で、見てごらんなさい。そんなところへ五万円、十万円持っていけないでしょう。ところが、一般のお金というのは、一般の庶民の、おかみさんのお金というのは五万、十万のお金なんですよ。ところが、丸の内のあんなところへ持っていけますか、五万円ちょっと預金でと。そこらの感覚が、やはり金融機関がもっと考えなければいけないだろうと私は思うんです。これが一つです。
 それからもう一つは、直接金融に移していくというのに、やはり私はもう少し、株というもの、株式、証券というものの一般の人のなれ方、これが必要なんじゃないかと思っておりまして、今でもやはり年いった人なんか、みんなお金持っていますから、この人たちに聞きましたら、株は怖いと言います。こういう雰囲気のもとで直接金融を進めていくことはなかなか容易なことじゃない。だから、そこを十分にやはり時間をかけて、そういうことの訓練も重ねてやっていくということが必要でして、一遍にそういう状況になるということはなかなか難しいと私は思っておりますが、努力をしていかないかぬということは事実です。
中塚委員 まず第一点に、別に丸の内に預けなくてもいいわけで、農協も漁協も今ありますから、そういうところでもお金は預けられるわけですから、郵便貯金がなくなったら都市銀行しかないということではないと思うんですね。それが第一点。
 あと、株が下がる、株が危ないというのは、それは政府の経済政策が危なっかしいから株が下がるわけであって、それはちゃんと、政府がきちんとした経済政策をとることによって株価だって安定をしていくということになると思いますし、また最後のことについても、ゆっくりというか、努力するということはそうなんだろうと思い、現実そういうことをおっしゃるんですが、ただ、やはり改革というのはゆっくりやると余り改革にならなくて、スピードがないと改革というふうには言えないのだろうと私は思っております。
 間接金融、直接金融という点で、先ほど柳澤大臣から民間とのイコールフッティングというお話がありましたが、今度は間接金融、直接金融という観点からはいかがでしょうか。
柳澤国務大臣 今、中塚委員が言われたように、窓口で株式を売る、売るといっても自己の勘定において売るというのではなくて、例えば証券会社の勘定において仲介をするというようなことで、郵便貯金に流入する資金を何がしかでもとにかくそうした金融商品の方に流すということができないか、こういうお話でありますと、これは本当のことを言って、私、前からここで申させていただいているかと思うんですけれども、ドイツでそういうことをやってかなり成功をして、株式の保有層というものも大いに拡大したということがございまして、私ども、そのことは常に念頭に実はございます。ただ、今そういうことをやる時期かというようなことについて、これはもういろいろ検討をしてみないといけないというふうに考えております。
 加えまして、今度は、郵便貯金なりに集まったお金の運用先ですね。これについて、膨大な資金がそこに集まるということになりますと、その運用先というのはこれから非常にいろいろ、ある意味で悩ましい問題ということになるわけでございます。
 ここのところで、私どもとしては、例えば、民間の金融機関の立場からいうと、貸出金債権を証券化するというようなこと、これが考えられまして、いわば証券に対する機関投資家の役目を果たしてくれるというようなことも考えられまして、これは、市場型の間接金融、間接金融ではあるんだけれども市場型ということになって、ちょうど直接金融と間接金融の間の形になるというように位置づけられるかと思うんですが、これも一つのこれからの検討課題ではないかな、こんなことを考えているわけでございます。
中塚委員 そして、三つ目に財政のリスクということなんですが、財政投融資という仕組みでずうっと特殊法人なんかに資金を供給し続けてきていまして、それが、財投改革があって直接ではないということになってはおりますけれども、ただ、実態としては財投債というふうな国債を買っているわけだし、また、郵貯も簡保も民営化なり廃止ということになっても、今政府が国債発行を抑制しているという政策とは裏腹に、今度買ってくれるところがなくなって困るということになるかもしれませんけれども。
 ただ、今、道路公団の民営化等の話も進んでいる中で、本当にやはりこれは民営化ということになれば、特殊法人なりの資産の総ざらえをしなきゃいけなくなってくるわけです。それはJR、国鉄の民営化のときなんかも同じでしたけれども、始めるのにも金は要るんですが実はつぶすときにも金は要るわけでありまして、特殊法人を廃止するというときに、その借金、穴があいていれば、それは引き取ってやる、面倒を見てやらないと民営化ということになっていかないわけですね。
 だから、そういった意味で、この郵便貯金、簡易保険がこれからもずうっと将来的に財政のリスクというものを供給し続けるというふうなこともあり、これを廃止なり民営化することによって、特殊法人が、機関債とか、あるいは財投債にしても国債マーケットの中から調達するというふうな方向に変えていかないと、このままずるずる進めていった場合に、結局最後、特殊法人の整理合理化を全部終えたときにとんでもない額の穴があいていたということにもなりかねないというふうに思っております。
 そういう観点からも、一刻も早く郵便貯金、簡易保険というものについては民営化または廃止をするべきだというふうに思うんですが、こういう考えについては財務大臣はいかがでしょうか。
塩川国務大臣 今おっしゃるような同じ考えを持っておりますから、でございますから、特殊法人等に対する資金運用部資金を通じての融資というものは漸次償還を早めまして、七年間で解消するということになっております。
 そして、機関債を発行することによって、機関債で資金を調達するようになる。そのことは、いわば一般経済界に対して、その特殊法人の実力を査定することになりますので、そのことがあわせて公社公団の整理につながっていくきっかけになるだろうということを期待しております。
中塚委員 以前この財務金融委員会で、その公社について、日本銀行と取引をするということになると日銀の考査をするのかというふうな質問をさせていただきましたけれども、それと同様に、公社ということになって公社がそういうリスクを抱え込む、私は、今でもリスクはあるけれどもそれは顕在化していないんだというふうに思っているんですが、そうなりますと、やはり郵政公社のリスクというものをちゃんと管理しなきゃいけないわけです。先ほど、特殊法人の債権の検査のお話もちょっとされていたようですけれども、そういうふうな公社の持つリスクについて、今後それをどのように扱っていくことになるのか。金融検査というふうな側面から、柳澤担当大臣、いかがでしょうか。
柳澤国務大臣 公社になった暁におきましては、私ども、ほかの政府関係金融機関あるいは政策金融機関と同様に、リスクの部分についての検査をさせていただくことになります。
 信用リスクというものを考えなきゃならぬ分野がどのぐらいあるかということはちょっと問題かと思うんですけれども、少なくとも市場リスクというものは、運用先についてやはりかなりちゃんと見なければいけない分野だというように考えております。
 その場合、当然、当てはめるべき基準というのは民間と同じ金融検査マニュアルということになって、それでいろいろと健全性についての検査をするということを通じて我々の使命を果たして、そのことを監督当局に的確に伝えていくということが大事だ、このように考えております。
中塚委員 民間金融機関の持っている不良債権については早く処理しろというふうにいつもおっしゃっているわけですので、そういう国の持っている不良債権というんですか、公社ということですけれどもそれの持っている、不良債権とは言えなくてもその潜在的なリスクということについても、きちんと把握しておく必要があるんだろうというふうに思うわけです。
 いずれにいたしましても、郵政公社についてはこれで終わりますが、財政赤字がどんどん膨らんでいっている中で、それを抑えるための努力をされているわけですが、現実は私は、これほど借金ができること自体の方が実は異常なんだろうと思っていまして、あるところで借金はできなくなって、そして改革していかなきゃいかぬというふうな気にもみんななるわけなんです。
 そういう意味で、どんどんと借金ができ続けるということ自体がちょっとやはりほかの国と比べてもおかしい。そして、そのおかしいものの大部分が、この郵貯なり簡保というものが国債を引き受けておるということなんだという問題意識を持っているということをお話をしておきたいというふうに思います。
 柳澤大臣、もうこれで結構でございます、お休みいただいて。
 次に、景気とあと財政の問題についてお伺いをいたしますが、塩川財務大臣、サミットに行かれたりASEMに行かれたりして、いろいろなところで海外の経済もつぶさにごらんになってこられたことだろうというふうに思いますけれども、先月の末、サミット前に、経済財政運営と構造改革に関する基本方針というものが発表されて、ただ、発表された瞬間に株価がぎゅんと下がっちゃって、TOPIXだって一時一〇〇〇を切るぐらいまでになってしまって、がけっ縁という発言をされたようですけれども、私も本当に心配をしていたんですが。
 五月に底入れ宣言というものがなされて、その後、やはり経済の構造改革なりあるいは景気対策ということが軽んじられているんではないか。つまり、この経済財政運営と構造改革に関する基本方針についても、どちらかというと財政健全化に寄り過ぎているんじゃないのか、税にいたしましても歳出にいたしましてもですが。そういったことがやはり株価なんかに反応しているというふうに感じたんですが、そこの部分についてはいかがでしょうか。
塩川国務大臣 経済の現在の状態というものは、バブルが崩壊しまして後の日本経済のあり方が間違ってきた、確かにそれをリードする政治の問題もあったと思いますけれども、政治はそこで産業政策というものを的確に誘導していかなかった、そしてまた、政府の方が経済の構造を変えようという積極的な意思がなかった、したがって経済界そのものが方針を見出すことなくしていたずらに十年を過ごしてきた、これが今日の状態に来ておる、私はそう認識しております。
 そこで、十年たちまして、産業界自身が、これでは国際競争力に勝てないし、また自分らの企業の存立すら危ないという絶命的なところへ立って、断崖に立って、やっと方向転換するようになってきた、それが二、三年前だろうと思うております。ですから、企業の意識が変わってまいりましたから、日本は救済されていくと私は思っております。
 それを救済するについて、政府の方がインセンティブを与えて、方向づけをやはり的確にすべきであると思っておりまして、その方向づけをするのが昨年出しました骨太の方針の第一弾でございましたし、ことしまた六月に出しました第二弾、この方向をもってこれから政府は誘導していきたいと思っておりますが、その根本になるのは、今までのような微温的な、いわば救済的な考え方ではなくして、みずから立ち上がっていく、そういう積極的なアプローチをする方向に政策を誘導していくということでございますので、その点が構造改革の、今まで従来やってきましたのとは異なるところだと思っております。
中塚委員 平成十年、十一年に景気が急激に落ち込んだものですから大変な経済対策を打って、大盤振る舞いというか、要は落ち込んだものを引っ張り上げるのにすごいお金を使っちゃったわけですね。私も実はまさに大臣がおっしゃっていることと同じことを考えていまして、実はあのとき景気対策と一緒に構造改革というのもやらなきゃいけなかったわけなんですけれども、ところがそれがどうしても財政出動のみに寄ってしまうようなところがあったということが、失われた十年と言われる中の後半の部分なんだろうというふうに思っているんです。
 ただ、民間の創意工夫を促して活力を引き出していくということについては、それはもう全くそのとおりで異論はありませんが、ただ、そのときに、公的部門というか政府がそれを邪魔するようなことがあってはいけないと思うんですね。
 今、景気の現状ということについて言うと、外需主導ということで、アメリカの景気がよくなって、そしてそれに引きずられる形で日本もよくなってきている、やはり外需主導の景気回復ということなんだろうと思うんですが、ここでやはり外需から内需へとバトンタッチをするような政策というのを打つべきときなんだろうというふうに思うわけです。その外需から内需というものへのバトンタッチの政策がなくて、経済財政運営と構造改革に関する基本方針というものが余りにも景気抑制的な中身になってしまっているということで、やはり株価もおっこってしまったんではないかというふうに思うんですけれども、そこのところはいかがでしょうか。
塩川国務大臣 景気抑制型というとり方をするということは、すなわちこれを裏から見ますと、今までのいわば政府誘導型の、いわゆる赤字垂れ流しの誘導型政治の方がいい、こういうことの反証になってくると思いますが。それが間違っておるから改革していこうというのでございますから、それは中塚さんのおっしゃるのとはちょっと違うと私は思っております。
中塚委員 そうではなくて、先ほど十年、十一年のお話をしたときに、財政出動と同時に構造改革をしなければいけなかったというふうにお話をしたんですが、そのことは実は今も同じで、改革なくして成長なしとはいうものの、改革だけしていれば成長するかというと、それはそうではないというふうに私は思っておりまして、改革をするということも必要だけれども、加えて、やはり景気対策、経済対策というものもやらなきゃいかぬ。それはかつてのように大盤振る舞いというわけではないですよ。民間の邪魔をしない程度にというふうに申し上げたのはまさにそういう意味なんです。ただ、そういった観点からしても、ちょっと景気抑制的なんじゃないかなというふうに私は思っているわけです。
 次に、外需主導の景気回復というものが今後どうなっていくのかということなんですけれども、経済財政運営と構造改革に関する基本方針というものの中に、世界経済が順調に推移することが期待されというふうな文言がありまして、そうなれば本当に麗しいと思いますけれども、ただ、最近アメリカの株価なんかも大変軟調になってきておりますし、アメリカ企業の粉飾決算というんですか、そういった事件も明るみに出てきているわけで、V字回復というふうなことはよく言われておりましたが、なかなかそうもいかないのかなというふうになってきているわけです。そういったことが日本の景気に与える影響、アメリカの株価の軟調あるいはアメリカ景気の先行きということについて、日本経済に与える影響というものはどういうふうにお考えでしょうか。
塩川国務大臣 現在、アメリカの経済界の雰囲気ですね、雰囲気というか、主義じゃございませんが雰囲気は、どうも利潤追求型雰囲気に偏り過ぎておると私は思っておりますが、このことはいずれ、いろいろな事件、不祥事件が現在出ておりますことから、必ずその反省が起こってくると思っております。そのことは、アメリカ経済が健全化して、やはり世界の経済の中に占めるウエートがそれなりの、以前のような力になってくるということを期待しております。
 今中塚さんのお話のように、外需に頼らず内需にというお話でございましたけれども、今、日本の経済もアメリカの経済もグローバリゼーションの時代に完全に入り込んでまいりましたから、これが内需だ、これが外需だという、そういう区分というものを割合にできにくい。その点、比較的、予算の支出について我々は考慮する必要がありますけれども、経済全体を見た場合、そういう仕組みのとり方は難しいんではないかと思っております。
 ですから、我々としては、予算の使途、それは内需を振興する方向に使うようなことを配慮したものにしていきたい、これは当然心得てやるべきものだと思います。
中塚委員 内需、外需、グローバル化で区分けがつきにくいというお話でしたが、手元に実は半導体関連指標の推移というのがあるんですけれども、半導体製造装置なんかは海外受注が本当にびゅうんと伸びているんですね。ただ、集積回路の出荷数量、国内向けというのはそんなに伸びていなくて、そういう意味では本当に大変に外需主導型なんだなというふうに思っております。
 それともう一つ、外需ということのリスクについていえば、アメリカの株の軟調、各種いろいろな会社の粉飾決算等の問題もありますし、あと、今度アメリカは中間選挙を控えてイラク侵攻みたいな話まであるわけで、そうなってくると大変な混乱だってしないとは限らない。だからこそ、そのときまでに日本の景気というものを内需型に伸ばしていく必要があるんだろうというふうに思っているわけです。
 財政の健全化ということとも関連をいたしますし、景気ということにも関連するんですが、十年、十一年、確かに大盤振る舞いはしたものの、十二年でやっと税収もふえるようになったわけですね、年中で増額の補正なんかもしたんですけれども。昨年は、今度は歳入欠陥、歳入減が出るというふうなことになってしまっていて、やはり今までの経済運営というものについていえば、税収だって伸びないわけで、なかなか財政の健全化というのもつらいなというふうに思わざるを得ないわけなんです。
 そこで、今度、税制改革ということについてお伺いをいたします。
 この場でも何度かお尋ねしましたけれども、行政改革、将来の改革の果実によって減税を行うということについて、財政制度審議会の財政制度分科会が出しております十五年度予算編成の基本的考え方というのを拝見しますと、歳出削減を減税財源に充てるという考え方は、結局、財政赤字を拡大させる以外の何物でもないというふうに明記をしてあるんですけれども、大臣はやはりこの基本的考え方と同じスタンスということなんでしょうか。
塩川国務大臣 財政審の考え方からいいましたら、そのことはタコ配だとおっしゃるんですね、タコ配しているんじゃないかということでおっしゃる。私もその考え方はよくわかるのでございます。けれども、やはり私は、歳出削減の分を全部国債発行の削減に充てる、そういう政策のみではなかなか現在の対応はできにくいように思っております。
 先ほどもおっしゃるように、一方に構造改革を進めながら一方において経済刺激政策をとれと、二律背反性のことを一緒にやれということですから、冷房と暖房を一緒にかけろということですから、その程度をどの程度にするかという配分の問題ですね。そういうことを考えますと、歳出削減をどのように使うかということも、これも冷房と暖房のかげんを見てやはり配分を考えるべきだろうと思っておりまして、予算の歳出削減を全額国債の償還に充てる、こういう考え方のみで通し得られないと思っております。趣旨はそこへ持っていくといたしましても、それのみでは予算のやりくりができないだろうと思っております。
 それから、私からちょっと反発ですけれども、言わせてもらいますと、さっきから抑制型、抑制型とおっしゃっていますね。しかし、十三年度予算の実績を見ましたら、当初予算から二度の補正予算をしまして、あながち抑制型ばかりで来ているとは言えない。経済のいわゆる活性化に対する配慮というものを、第一次、第二次補正予算で十分な措置をしていっているということがございますので、一方的に決め込んでしまうということは、判断がちょっと違っているんじゃないかと思っておりますので、念のため申し添えておきます。
中塚委員 私も念のために申し上げますと、二回の補正予算のうちの一回は、国債整理基金特会からお金を引っ張ってきて、それで景気対策というか経済対策を打って、それでもなお歳入減が立っているということでありまして、そのことを私は申し上げているんです。
 ただ、今のお話で、構造改革とあともう一つ景気対策というのが二律背反で、暖房と冷房だというのは、それは恐らく構造改革って何なんだということにも関係すると思うんですけれども、私はそれはちょっと違うと思っているんですね。構造改革ということが財政再建ということだけならば、それはそういうことなのかもしれませんけれども、けれども構造改革というのは、私は財政再建だけじゃなくてほかにもいろいろあるわけですね。(塩川国務大臣「将来への投資」と呼ぶ)ええ、そういうことですよね。
 だから、その二つが二律背反だという考え方で、常に、いつの時代もどっちかしかやらない、どんどん内閣がかわるたびにどっちかに振れてしまうというふうなことが結果として財政のむだを生んでいるということ、そのことをさっきから申し上げているわけなんですね。
 構造改革の定義、私は、これはちょっと本筋から離れますが、大蔵省が財務省になって、本当に財務省は財政の健全化の話しかしなくなったなと思っていまして、やはり経済、財政一体ということで考えたときに、景気対策と構造改革の問題というのは、二律背反ではなく一緒に考えていかなきゃいけないということを申し上げているんです。
 あと、塩川財務大臣に最後に伺いますが、改革、タコ配当という話もありましたが、要はたくさん削減する余地というのは実はまだあって、特に私は地方財政、大臣も自治大臣を経験されておりましたけれども、地方財政なんかまだまだ節約の余地があるんだろうというふうに思っているんです。その地方交付税制度の財源保障機能の廃止について、この財政審の考え方にも書かれておりますし、あと政府税調の答申の方にも書かれていたと思うんですが、ここで大臣自身のお考えはいかがでしょうか。
塩川国務大臣 私は、財政のいわゆる削減、これを何も、今までもあえて制度を改正するということ、これは将来において当然やらなきゃならぬ問題ですけれども、当面の来年度予算あるいは再来年度予算を考える場合に、あながち制度改正と並行してやらなきゃならぬというばかりではないと思っております。
 ということは、従来からのいわゆる歳出査定の中で、世間の常識から見て、過大であるかあるいは不適当であるかということは常識に照らしてみて相当改正すべき点があるだろう、その部分を改正するだけでも随分と予算の削減につながっていくということがございます。基準のとり方もそうでございますので、そういう点、細かく個々の問題について親切に見直していくということが当然財政の削減につながっていく、こう思っております。
中塚委員 それでは、景気、経済の話は終わりまして、東調査査察部長、済みません、どうもお待たせしまして。ちょっと一点だけ、税のことに関連してお伺いをしたいんです。
 今いろいろと話題になっている田中眞紀子前外務大臣の秘書給与の話なんですけれども、自民党の中で党紀委員会等でいろいろな資料を出すとか出さないとかいう話があって、私も詳しくよく存じてはおりませんけれども、自分のオーナー会社であるところの社員が自分の秘書になっていて、そしてそれがまた公設秘書の登録をしているということのようです。その点はどうも間違いないようなんですけれども、そして、その秘書の給与を会社に返納するというのかな、公設秘書の給与を一たん会社に預けて、そこから支出を受けていて、適正に処理されていたというふうに前外務大臣は言っているわけなんですが、この場合、適正に処理をされていたというのは税務上どういうことなのかということと、あともう一つ、その公設秘書の給与というものが、株式会社、そういったものに入るときに、これは税務上どういう扱いになるのかということについてお答えいただけますか。
東政府参考人 お答え申し上げます。
 個別の課税関係等に係る事項につきましては、守秘義務が課されている関係上、従来から答弁することは差し控えさせていただいております。よろしく御理解を賜りたいと存じます。
 なお、御質問の趣旨は、仮に議員秘書として秘書給与の支給を受けている者が、同時に民間企業の社員としての身分を有し、当該企業からも給与の支給を受けている、そういう内容の確定申告を行っている場合において、当該企業に対し給与相当額を払い戻していた場合の当該民間企業における税務上の取り扱いは一体どうなるのか、こういう趣旨であると理解いたしております。
 一般論として申し上げますと、このようなケースにおきましては、例えば払い戻しを行った者が実際に当該企業の収益の稼得のため必要な役務の提供を実際上行っている、その対価としての給与相当額を払い戻している、そういった場合につきましては、当該民間企業においては、法人税法上の所得金額の計算上、一たん損金の額に算入された給与の額について、改めて、その者から同額の金銭の贈与を受けたものとして益金の額に算入することとなると考えます。
 また、払い戻しを行った者が民間企業の収益の稼得に必要な役務の提供を行っていない、そういうふうに認められるような場合には、当該企業がその者に支払った金銭は給与としての損金性は認められません。したがいまして、損金の額に算入することはできず、例えば単なる一時的な仮払金の精算を受けたにすぎないもの、そういったものとして取り扱うことになると考えます。
 いずれにいたしましても、国税当局といたしましては、個々の事実関係等に即しまして、かつ税法等に基づきまして、的確に対応すべく努力してまいる所存でございます。よろしくお願いいたします。
中塚委員 そうやって益金として計上されたものに対して法人税がかかるということですね。益金として返ってきたものに法人税がかかるということですね。
東政府参考人 二つの場合に分けて申し上げたわけでございますが、実際上、一たん損金に算入された額について改めて贈与として受領した、そういった場合については、その部分が益金に算入されて所得金額が計算されるということでございます。
 ただし、そうではなくてその経費性が認められないものがあります。そういったケースにおきましては、一時的な仮払金の精算である、これはいわば行って来いであるといったふうな取り扱いになる場合もあろうかと存じます。
中塚委員 終わります。
坂本委員長 次に、吉井英勝君。
吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。
 きょうは、不況が非常に長引いている中で、また貸し渋りなどがある中で、随分今問題になってきている多重債務の問題、この問題について質問したいと思います。
 最初に、簡単な話から確認しておきたいんですが、債権者が、債務者との契約上全く関係のない第三者に、あなたは支払い義務があると言って取り立てを行うということは法律上当然許されないと思いますが、まずこの点について最初に確認しておきたいと思います。
高木政府参考人 お答え申し上げます。
 個別の事情にもよりますけれども、貸金業規制法上の、二十一条の取り立て行為の規制に違反する可能性はございます。
吉井委員 実際にこういう事例が結構多いので、一つ見ていくと、ある二十五歳の青年が函館で働いていた九五年の六月、武富士函館支店から十万円借りた。年収は二百万から二百五十万円と答えた記憶はあるようなんですが、この青年はその後、よく業者がやるように、追い貸しを業者が勧めたりもするわけです、武富士函館支店の方から増額すると言われてさらに借りて、昨年十月現在、債務残高五十三万七千五百六十七円になっていたんですが、今度はなかなか返済できずにいたところ、これは母親に内緒の借金だったのに、昨年秋、武富士は、保証人になっていないパートで働いていた母親に電話をして、払ってもらわないと困ると催促をする。母親は、やむなく毎月一万円支払うようになったというわけです。弁護士さんが武富士側になぜ支払い請求をしたのか回答を求めたわけですが、何の回答もしない。
 ほかにもこの種の例がありまして、病弱で生活保護を受けて生活している女性に、娘に貸した五十万円を支払えと執拗に迫って数回にわたって支払わせたという例もあります。この件は、裁判で母親が支払い義務があると誤解して支払ったことを認めて、母親が支払った分は一応返済されました。たとえ親兄弟でも、支払う義務のない者に支払い請求することはできないことは明らかだと思うんです。ですから、この種の例は、これは裁判で争うまでもなくきっちりするのは当然なんですが、武富士のようなトップ企業がこのような債権取り立て行為をしているのは問題だと思うんですね。
 金融庁にはあらかじめこのような事例を伝えておいたんですが、承知しておられますか。
村田副大臣 そういう事例があることは承知しているかどうかということでございますが、私ども、個別の案件についてそういう事例を把握しているかということについては答弁は差し控えさせていただきたい、こう考えております。
吉井委員 ことし四月に、弁護士さんの方から関東財務局に申告されていることです。問題は明確であり、このような行為はやめるように指導して、先ほどおっしゃった貸金業法第二十一条、取り立て行為の規制違反の事実を調査して、武富士を指導して、事実が確認されたら処分を考えていく。大臣、そういうことはきちんとやはり進めるべきだと思うんですが、この点は、大臣の見解を伺っておきたいと思います。
村田副大臣 今委員が御指摘のようなことが事実であって、貸金業法第二十一条に該当するようなのが仮にあるとすれば、私どもとしては適切に処置をしなきゃいけない、こういうふうに考えております。
吉井委員 これは既に申告されている事実でもありますから、個別の案件についてここで出すのは、しゃべりにくいということにしても、きちんと調査をし、指導し、この二十一条違反の事実があれば処分をする、こういうことで臨んでいただきたいと思います。
 次に、特定調停法について幾つか伺いたいと思うんです。
 この特定調停法は、もともと目的は、これは委員会会議録でも出てきておりますが、多重債務者が経済的破綻に至る前に、裁判所の調停制度を利用して、迅速、円滑に合理的な再建計画を立てることを促進いたしまして、これによってこれらのものの経済的再生を図るものとしてつくったものだということが、これは国会の中でも答弁等で示されているものであります。
 この特調法による特定調停事件の申し立て件数を少し見てみますと、〇〇年の月平均、大体数千から二万件ぐらいまでだったものが、昨年の〇一年には二万件台になり、ことしに入って二万七千件から三万四千件台へと、受け付け件数が随分ふえていっております。月々の調停成立件数が大体七、八千件、不成立は一千件前後ですが、確実に成果を上げているということを見ることもできると思うんです。
 しかし、問題も出ています。その一つは、特調法第十条の当事者の責務の問題です。
 第十条に、「特定調停においては、当事者は、調停委員会に対し、債権又は債務の発生原因及び内容、弁済等による債権又は債務の内容の変更及び担保関係の変更等に関する事実を明らかにしなければならない」とあるわけですが、これは特定調停を進める土台であって当然のことだと思うんですが、この十条はそのための義務規定と理解していいと思うんですが、これはいいですね。
房村政府参考人 御指摘のように、この特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律十条では、当事者にそのような協力すべき義務を課しているものと解されます。
吉井委員 ところが、サラ金会社や商工ローン業者の中には、債権内容について、契約書や取引内容の文書をなかなか提示しない貸金業者があります。そのために、債務者が債務の整理に努力しようとしても、調停自体がなかなか進まないという場合があります。
 この特定調停法の第十条というのは義務規定であり、債権者は本来債務残高や返済状況を示す資料を裁判所に提出するなど協力をするということが当然のことだと思うんですが、これも確認しておきたいと思います。
房村政府参考人 御指摘のとおりだと解釈されます。
吉井委員 それで、特調法の成立趣旨からすると、債権者も債務者も第十条の趣旨は尊重すべきものであり、当然、債務の内容については、これは本来、債務者自身も承知していなければならないものなんですが、ただ実際には、多重債務者というのは追い詰められた状態で次々と借りていって、債務に関する書類を所持していない場合が結構多いわけです。そうすると、債権者の方で契約書だとか弁済記録だとか取引明細を示す文書を提示する必要がありますし、これは調停を進める基礎であり、義務規定にもなっているわけですから当然のことだと思うんですが、ところが現実には、この資料提出に協力しない債権者がいます。相手が破産すると何も回収できなくなるのに、調停に応じて過剰な債権が減額になることを恐れて、資料協力拒否の姿勢をとっているというのが、今、実態として多いわけですね。
 そこで、最高裁民事局長は金融庁に対して、調停手続への協力依頼の文書を送付して、債務者の借り入れや弁済の状況を記載した帳簿、その他資料を提出するように、貸金業者に従うよう指導してほしい、こういう要請もしていらっしゃると思うんですが、これもお聞きしておきたいと思います。
柳澤国務大臣 要請をいたしております。
 平成十二年三月に最高裁判所より、特定調停法の施行を機に貸金業者が調停委員会の要請に応じて情報開示をするよう貸金業者を指導するよう要請されたことを受けまして、当局といたしまして、同年三月、財務局及び全国貸金業協会連合会に対して、調停手続への協力について貸金業者を指導するよう指示をいたしたところでございます。
吉井委員 それで、特定調停法十二条の当事者等に対する文書等の提出命令、これは調停委員会の職権で発するものと理解しているんですが、この第十二条に規定している「事件に関係のある文書又は物件」というのは、これは山本さんの一問一答調停法でも逐条解説的に書いていらっしゃいますが、これは、債権者が勝手に計算した計算書ではだめだ、契約書、帳簿、それに取引内容を示す資料のことなんだ、このことが明瞭にされていると思うんですが、そういう立場で当然臨んでおられるんですね。
房村政府参考人 調停委員会における運用でございますので、直接私どもが所管しているわけではございませんが、御指摘のような運用がなされていると承知しております。
吉井委員 それで、特定調停法第十二条文書提出、十三条職権調査は、第十条の当事者の責務を補完するものという位置づけでありますが、この十二条、十三条を現実に実行されているのかどうかということですね。この十二条及び十三条を具体的に実行した例はどの程度あるのか。
 一方、また、この特定調停法二十四条には、「当事者又は参加人が正当な理由なく第十二条の規定による文書又は物件の提出の要求に応じないときは、裁判所は、十万円以下の過料に処する」という規定をしているわけですが、この条文を適用して過料に処した例というのはどの程度あるのか、これを伺っておきたいと思います。
房村政府参考人 これも裁判所で行われている事柄でありますので、最高裁判所から得た情報でございますと、文書提出命令の件数といたしましては、平成十二年に二百九十六件、平成十三年に三百九十二件、平成十四年に百五十件、現在までの段階ですね、ということを聞いております。
 過料については、ちょっと資料が今手元にございませんので。
吉井委員 過料の方を特に聞いておきたかったんですが、わからないということなんですが、過料を科されることは、過料を科されるということがないと、裁判所をなめ切って、調停を無視する業者もいるわけですよ。本当にけしからぬ話なんです。
 第十二条の文書提出に応じない者への過料は当然なんですが、第十二条命令を発するまでもなく、債務者の申し出があれば財務局も協力すればいいし、そういう方向で先ほど大臣も文書も発出し、求めているということでありますから、これは当然のこととしてこの立場で臨んでいただきたいと思いますし、やはり本当に命令に従わない場合には過料を科す、それで、なめ切った態度を許さない、強い態度で臨んでもらう必要があると思います。
 これは、いいですね。これは、裁判所の方がそうなさるんだけれども、そういうことで連絡を取り合ってやらはりますね。
房村政府参考人 本日この委員会でそのような議論がなされたということは、裁判所にも伝えたいと思っております。
吉井委員 次に、特定債務者から調停の申し出があった場合、これを拒否できる、あるいは特定調停をしない場合というのは、これは特定調停法第十一条の特定調停しない場合の三つの要件ですね。この場合になるわけですが、このような理由に該当しない場合なのに、債権者の側が調停の場に出てこないという場合があります。これは、特定調停法による調停の場を否定しようとするもの、あるいは、理由なく債権者の一方的都合で調停を拒否しているという問題にもなってくると思うんです。
 そこで、破産手続になれば債権放棄しなければならないのですから、調停に応じて少しでも債権回収すればいいのに拒否するということであれば、裁判所の方としては、債権放棄とみなすことを債権者に申し渡して調停の場に戻るようにさせるぐらいの、そういう取り組みというものが必要なんじゃないか。
 法務委員会じゃないので、最高裁の方、出てこられないのでやりにくいんですが、裁判所の方が債権者に調停の場に出るように強く促して、やはりこういう、事実上、理由なく債権者の一方的都合で調停拒否になるような、そういう形にならないように、やはりきちんとした強い態度というものを示してもらう必要があると思うのですが、答えにくいだろうけれども、仕方がないから、あなたの方から。
房村政府参考人 基本的には、調停というのは、当事者の合意によって成立するということでありまして、合意を強制するわけにはいかないという基本的制約がございます。ただ、基本的に、調停の呼び出し等があれば、できる限り協力して、調停を成立させるべく努力をいただくということは期待されているんだろうと思いますし、また裁判所においても、そういう調停の理念を生かした運用をされているだろうと理解しております。
 いずれにいたしましても、本日このような議論があったことは、裁判所にもお伝えしたいと考えております。
吉井委員 最近の調停の事例で見ると、債権者である特定の貸金業者が調停の場に出てこない例がふえているというふうに聞いております。これは、特定調停の場に出ると、結局、高利を得ようとしたんだけれども、利息制限法の上限金利まで引き戻される、これを拒否するためではないかというふうに思われています。
 債務者が経済的再生を求めてまじめにその道を模索している場合に、債権者の側から、最初から特定調停の場に出てこないというのは、いわば債務者の再生の道を閉ざすことになってしまう。私は、大臣、こういうやり方が許されたら、こういうやり方がまかり通ったら、法の趣旨が生かされないということになってくるんじゃないかと思うのですね。
 ここは、やはり大臣として、この法の趣旨が生かされるように取り組んでいただく必要があると思うのですが、これは大臣に伺っておきたいと思います。
柳澤国務大臣 先ほど法務省の方からの話にもありましたように、調停法というのは、両者の合意に基づいての調停手続の開始だろうと思います。
 しかし、今日の社会的状況を見ますときに、私どもとしては、やはり協力というものを強い立場の債権者がしない、サボタージュするというのはいいことではないと思いますので、これはしっかりと協力するように、今後とも努力、要請をしてまいりたい、このように考えております。
吉井委員 これは山本さんの本にも出てきますけれども、もともとこの法の目的が、経済的破綻に至る前に、裁判所の調停制度を利用して迅速、円滑に合理的再建計画を立てることを促進して、これらのものの経済的再生を図る、やはりこの立法趣旨が本当に生かされるように、これは大臣としても強い立場で臨んでいただきたいというふうに思います。
 このような貸金業者が何でこういう立場になるのか。これは、貸金業規制法四十三条、いわゆる任意に支払った場合のみなし弁済に基づいて、利息制限法第一条の利息の制限額を超える利息を得ようとするために、こういう立場に出てくる、こういう態度に出てくる。彼らの主張というのは、貸金業規制法第十七条書面、それから同十八条書面、これを交付していることを理由に、特定調停の場に臨む必要はない、利息制限法の上限を超える利息をもらってもよいのだ、だから特定調停の場に出る必要もないというのが彼らの主張であります。
 この点で、具体的な例で見ますと、Aさんという方の場合なんですが、事業に失敗して、債務を何とか整理して再生したいと考えて特定調停を申し入れたわけですが、商工ファンドの方は、テーブルに着くのを拒否する、いきなり内容証明で、取り立て、差し押さえするという文書を送りつけてきました。簡易裁判所の調停委員会が取り立て一切の処分停止の措置決定をしても、商工ファンドは、みなし弁済を認めろと上申書を簡易裁判所に出して、調停を拒否してくる。だから、せっかく、迅速、円滑に合理的な再建計画を立てることを促進するという特定調停の道を閉ざすことになってきています。
 商工ファンドにすれば、高利は承知なんだろうということかもしれませんが、しかし、一般的に多重債務者というのは、高利息は承知しながらも、追い詰められて、わらをもつかむ心境でやむなく借りて、また、利息制限法や出資法のことなんか知らないまま借りているわけですよ。それがほとんどなんですが、それを、貸金業規制法十七条書面、十八条書面を交付していることを理由に高利をむさぼり、特定調停の拒否を許してよいものかという問題がここには私はあると思うのです。
 これはやはり、こういうことがまかり通ったんじゃ、特定調停法成立の意義を本当に認めないことになるので、私は、こういう点では、この貸金業規制法四十三条問題でもって、高利をむさぼるために、十七条書面、十八条書面を交付しているということで特定調停拒否に出てくる、こういう態度は、この面でも法の趣旨をゆがめますから、やはりこれについても、現在の法律の枠内でどうするかということと、では、関係する法律をこういうふうにすることによって、もっとこの法の趣旨が生かされるように臨んでいくということもあるでしょうし、この点について、柳澤大臣のお考えというものを伺っておきたいと思うのです。
柳澤国務大臣 先ほど申し上げたことを繰り返すことになるわけですけれども、調停というものは、これはどの調停もそうですし、この特定調停もそうだと思いますけれども、基本的に両者の合意によって調停手続が開始されるというものであります。そういう意味では、一定の制約は認めざるを得ませんけれども、私ども、今、貸金業者あるいは貸金業をめぐるいろいろな社会的な情勢をよく見まして、この特定調停法、せっかくの法の趣旨が生かされるように、これからまた関係方面に要請していくというようなことで努力を重ねてまいりたい、このように存じます。
吉井委員 この貸金業規制法の四十三条の面から見ると、これは八三年の金利引き下げの際に、貸金業者の営業を考慮して導入したというものでありますが、この貸金業規制法四十三条の規定がある限り、せっかくの特定調停法の目的とする多重債務者の経済的再生に限界があるということになってしまいます。それは、多重債務者から、出資法の高利息を取り立てる道が残ってしまうからなんですよ。
 ですから、私は、今の質問で申し上げましたのは、この特定調停法の問題と、それにかかわるいろいろな分野で、やはりきちんとした総合的に、多重債務者を本当に生活再建もできるような道に、そういう道が開かれる、その方策というものを総合的に考えていかないと、せっかく特定調停法をつくったんだけれども、この法律だけで言いますと、大臣おっしゃった問題はあるんです。調停というのは調停という性格を持っていますから。しかし、それだけでうまくいかないときは、合わせわざといいますか、やはりいろいろなことを含めて進めていくということが、これは金融担当大臣としてもぜひ考えていただきたいところなんです。
 私は、そもそも、この利息制限法の上限金利だって、元本十万未満で年二〇%、元本十万以上百万未満で一八%、元本百万以上の場合で一五%となっていますが、今日の超低金利の時代に、これはもう超高金利なんですね、これ自体が。実際には、出資法の上限金利で貸し付けられているというのが実態です。
 では、ここで少し具体的に政府参考人から伺っておきたいのですが、消費者向け貸金業者上位四社の平均約定金利と平均調達金利は現在どういうふうになっていますか。
高木政府参考人 お答え申し上げます。
 十四年三月期の大手四社の平均約定金利は大体二四から二六%程度となっております。それから、平均調達金利は二%前後ということになっております。
吉井委員 これは有価証券報告書で、皆さんももう見て御存じの話ですが、武富士、平均約定金利は二六・四四%、平均調達金利は二・一〇%。ですから、金利差は二四・三四%ですね。アコム、平均約定金利は二四・三〇%、平均調達金利は二・一三%。金利差は二二・一七%。プロミス、平均約定金利二四・九三%、平均調達金利が二・二四%で、金利差が二二・六九%。アイフル、平均約定金利が二五・五五%、平均調達金利は二・四五%。ですから、金利差が二三・一〇%。これが有価証券報告書から読み取れるところですが、超低金利時代に金利差二四%。ぼろもうけですね。
 この約定金利と調達金利の実態というものは、これはだれが見ても、有価証券報告書から読み取れば、政府参考人の方でごらんになられても私が見ても同じだと思うんですが、念のために、今の四社について確認しておきたいと思います。
高木政府参考人 お答え申し上げます。
 さっき、私は十四年三月期を申し上げましたけれども、先生、十三年三月期の数字として、そのとおりだということでございます。
吉井委員 出資法でもって、年二九・二%までは、それを超えると処罰ですね。三年以下の懲役もしくは三百万円以下の罰金。二九・二%までは処罰の対象にしないと定めているところにやはり問題があると思うんです。
 大体、日本は諸外国と比べて、消費者金融の金利が余りにも高過ぎるわけです。アメリカの消費者金融の金利は年一五から一八%くらい、高くても二〇%以下というふうに聞いておりますが、ドイツやフランスではもともと我が国のようなサラ金は存在しないで、消費者金融の中心は銀行によって担われているんですね。ドイツ、フランスの銀行の消費者金融の方の金利は大体一〇%前後と言われております。
 この不況で小企業者、零細業者が営業困難に陥っている中で、金融機関が資産圧縮でなかなか融資しないという状況のもとで、ひとり貸金業者だけが高利で庶民を困窮に陥れつつ営業利益を稼いで、申告所得上位五十社の中にはさきの四社が全部入っているんですね。この日本社会は、これはとてもじゃないが、この社会のありようは正常な姿とは言えないと思いますよ。
 〇〇年六月一日に改正出資法が施行されて、来年は三年目迎えるんですね。出資法の附則第八条には、「この法律の施行後三年を経過した場合において、資金需給の状況その他の経済・金融情勢、貸金業者の業務の実態等を勘案して検討を加え、必要な見直しを行うものとする」とありますが、そこで、柳澤大臣、公定歩合が事実上今ゼロの状態ですね。それから、銀行の普通預金金利は大体〇・〇二%ぐらいなものでしょう。そうすると、何とこの千二百五十倍から千四百六十倍の異常な高金利でもってサラ金業者は貸し付けているわけですね。本当に異常な姿だと思います。
 こういう貸金業者の金融機関からの調達金利というのも見てみると、かつての時代に比べて、四分の一とか五分の一とか安くなっているんですね。利息制限法だけは、百万円以上だったら一五%、あるいは一八とか二〇%とか段階別にありますが。出資法の上限金利二九・二%の方も、余りにも実態とかけ離れていると思うんですよ。調達金利に合わせて例えば四分の一とか五分の一に変更すれば、利息制限法で見れば四%近いものになるし、出資法で見れば七%以下ぐらいの利率になってくると思うんですよ。
 ですから、この「必要な見直しを行うものとする」という規定があるからいよいよ来年三年目で見直しするわけですが、私はそれ以前にやるべきと思いますが、少なくとも、見直しということですから、この両法とも金融庁で金利の大幅引き下げの方向で検討すべきじゃないかというふうに思いますが、大臣のお考えを伺っておきたいと思います。
柳澤国務大臣 この問題は、利息制限法、それから出資法ですか、その間にグレーゾーンがあって、これをどうするかというようなことでいつも、改正の都度というか、改正のきっかけとしても論議を呼んでいるわけでありますけれども、要は、これはそれを無理に制約を課していくということをしますと、それがまた社会の裏側に戻ってしまうというか、行ってしまう。それはやはりよくない、表に出して、そして適切にコントロールしていくという手法がよろしい、こういうようなことで今日までこうした道行きをたどってまいったわけであります。
 そういうように改正の機会が法定をされておりますので、その機会に私どもしっかり検討をして、見直すべきは見直さなければならない、このように考えておるということを申し上げます。
吉井委員 裏側に行く心配をなさっておられるかもしれないが、そういう議論があるかもしれないが、ドイツ、フランス、先ほども申し上げましたとおり、そういう裏側の話じゃなくて、銀行の方できちんとしたことをやっているわけだし、それから、国民生活金融公庫を、そういう場合は本当に国民の必要とする資金をどう準備するかとか、もっと政策的にきちんとしたことを考えることによって解決するべきであって、私は、裏側に行く行かないの議論でもってこれは先延ばしをしたりあいまいにしちゃならぬと思います。
 実際、財団法人日本クレジットカウンセリング協会のデータによると、多重債務の事由ですね、これは、ギャンブルだとか遊興なんて、実はうんと小さくなってきているんですね、比率が。生活費、これが大変で走らざるを得ないという人が四〇・八%。収入の減少、これが一二・六%。失業、倒産が一〇・四%。ですから、六四%ぐらいの人は倒産とか失業とか生活苦、収入減、そこから、行かざるを得ないところへ追い込まれていっている。しかも、そこへ行ったらもう本当に確実に深みにはまる仕掛けがあって、とことん追い込みをかけられて、自殺とか一家離散とか悲惨なことになってきているわけです。ですから、そもそも金利差二四%が当たり前というふうな、こういう異常な事態をやはり正さなきゃいけないと思うんですね。
 大臣も、三年のこの法律上のことで考えていかれるだろうと思いますが、これは真剣にその方向を求めていただきたいと思います。
 最後に、多重債務、自己破産が急増する中で、与信の判断に残高等のホワイト情報を活用すれば多重債務を防止できるという議論が一部にあります。実態は、テラネットという組織が〇〇年十二月からホワイト情報の有償販売を始めた結果、実は消費者金融、クレジット、信販会社などのテラネット会員の間でホワイト情報の交流が始まりました。
 一年半たったわけですが、多重債務、自己破産は、このホワイト情報の提供で、テラネットができて減るという話があったが、減るどころかふえているんですね。〇〇年十四万五千二百七件だったのが、昨年は十六万八千八十二件、ことしは、既に一月から五月までで八万四千六十件ですから、年間換算すれば二十一万件と、物すごく多重債務、自己破産はふえているんです。
 ですから、最後に大臣に伺っておきたいと思うんですが、ホワイト情報の交流というのは本当に多重債務の防止に効果があったのか。こういう問題については、これはもう時間が参りましたので、深刻にやはり再点検といいますか、きちんとした検討をし直していく必要があると思うんですが、この点だけ質問しておきたいと思います。
柳澤国務大臣 簡潔にお答えしますが、ホワイト情報を開放すればうまくいくのではないかということだったんだけれども、事は予想どおり運んでいない、こういう問題提起があったわけでございます。これは、私ども、ちょっとよく子細に検討してみないといけないという感じを持ってお聞きしております。
 それは、要するに、債権者が自分たちのリスクを分散するために、シンジケートローンのような考え方で、多重債務というと非常に悪いことばかりのように聞こえますけれども、要するにリスク分散を図るというような意味の多重債務もあるというような学者さんの見解もあるようでございまして、私ども、このホワイト情報というのはひょっとしてそういうところに結びついているかもしれない、その可能性もなきにしもあらずというような感じもいたすものですから、これはやはりきちんと分析をして問題の解決に当たりたい、このように思っております。問題を解決しなきゃいけないということは、吉井委員と同じラインにいるということを申させていただきます。
 なお、もう一言だけつけ加えますと、先ほどの話で私ちょっと言いそびれてしまったんですけれども、通常の銀行、これが消費者ローンなりあるいは商工ローン的なものなりというもので、いわばスモールローンというんでしょうか、そういうような分野を開拓しようと思って非常に努力をしているんですが、現在までのところ、いわゆる消費者専門の金融の方々とジョイントを組んでやってすら、なかなかうまくいかないんですというような、そういう状況も聞いております。そんなことを言うのではなくて、そこがうまくいって、その懸隔が、片方は通常の銀行ローン、それからもうその先は今言われたような非常に高利のローンということじゃなくて、もっと連続的にそこが埋まるように、もちろん最高限はもっと下げなきゃいけないという先生の御趣旨もよくわかっていますけれども、そういうような金融というものができないのか、これは我々模索して、探求していかなきゃいけない、このように考えております。
吉井委員 テラネットの問題につきましては、これは個人情報保護の角度から改めてまた議論をしたいと。
 時間が参りましたので、これで終わります。
坂本委員長 次に、阿部知子君。
阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
 まず、私の質問に入ります前に、きょう実は私は、法務と厚生労働委員会の合同審査で十六委員室に出入りしておりましたので、この委員会、午前中からずっと欠席というか、なかなか参加できなかったのですが、そして急に自分の質問の段になってこういうことを言うのは恐縮なのですが、ざっと見渡したところ空席ばかりということで、これは、委員長にあっては、大変恐れ入りますが、私は質問は続けますが、もう少し参加者を調えていただいて、よろしくお願いします。
坂本委員長 努力いたします。
阿部委員 さっきまで自分もいなかったのに申しわけありません。本当にずうずうしいと思います。でも、実はきょう塩川大臣から大変いい御答弁をいただきたいと意気込んできましたので、それを自民党、与党の皆さんにもぜひ聞いてほしいので、勝手なお願いですが、よろしくお願いいたします。
 まず、道路特定財源についてお尋ねを申し上げます。
 この間、道路公団をめぐっての論議が活発に行われておりますが、その論議の中身も、民営化するか否かということにやや論点が集中しておる嫌いがございますように思います。実は、道路公団問題の最大の問題点と申しますのは、道路特定財源をどのように一般財源化するかということとプール制にあると思いますが、この委員会では特に、財務金融委員会だということもあって、道路特定財源についてお伺い申し上げます。
 私は、この問題をこの委員会で取り上げさせていただくのは恐らく三度目になると思いますが、塩川大臣にお伺いいたします。
 小泉総理も、六月七日の経済財政諮問会議で、道路等の特定財源については、長期計画や今次税制改革と一体的に、そのあり方、見直しを行う、可能なものは平成十五年度から具体化するというお考えでありました。
 私の拝聴するところ、道路特定財源の一般財源化を念頭に置かれたものと思いますが、塩川大臣にあっては、昨年私がこの委員会で質問をさせていただいたときを初めとして、随所の報道に対しての御意見の表明にあっても、一般財源化ということを御発言されていたように思いますが、現時点で二〇〇三年度に向けてどのような基本的スタンスをお持ちでしょうか。一問目、お願いします。
塩川国務大臣 私は、今でも道路特定財源は、いわば使命というものは終わったと思っております。これからもますます道路の整備は必要でございますけれども、特定財源をあえて充てなければ、という感じを持っております。
 けれども、特定財源は、御承知のように、本則と特例法と合わせまして現在の税収になっておるのでございますから、この財源は非常に貴重な財源でございますので、有効に使いたい。したがいまして、一般財源化してもらって、もっと有効な使い方をいろいろと考えていただいたらと思っております。
 もちろん、道路にも中心的に使うことは当然でございますけれども、道路以外にも使える、そういう財源にしていただいたら財政上非常に好都合であると思っております。
阿部委員 大変御見識がある、また国民の要求というか考えに沿った御答弁だと思います。
 余り新聞記事を引くと、新聞ばかり見て質問してとこれも塩川大臣にしかられますが、でも、ちょうどタイムリーに七月五日の読売新聞で、いわゆる道路問題で、政策転換を望む声が国民の中にも非常に強い、高速道路の建設の抑制や道路財源の見直しということで、今大臣のお答えにあった、道路以外にもという声が六一%と。ある新聞社の統計ではございますが、かなり国民の声を反映したものかと思います。
 では、そのプロセス、具体的にどう進めていくかということでございますが、実は、二〇〇二年度の予算で、自動車重量税のうち二千二百四十七億円を一般財源として使えるようにという形になってございます。自動車重量税の方はもともと法律で明確に使途を限定したものではございませんが、しかしながら今までは道路建設財政に使われてきた、そのうちの一部なりとも一般財源として入ってくるということは一歩前進と思っておりますが、二千二百四十七億円というのは、自動車重量税六千七百二十億円のわずかまだ三三%、三分の一でございます。この額を、先ほど大臣の御答弁にございましたが、一般財源化していくようにさらに進めていくところのお考えはいかがでございましょうか。
塩川国務大臣 この二千数百億円というのは、要するに、平成十四年まで道路五カ年計画というのがございまして、それが有効に作動しております。その計画の中でやりくりをいたしまして、最大限、一般財源に使える金というのが二千数百億円であった、それを一般財源的に使ったということでございます。
 したがいまして、十五年度以降におきましては、もう少し拡大した、制約のない拡大した方向で一般財源化に使っていきたいと思っております。
阿部委員 今の御答弁と重ねて、今の大臣の御答弁の中にも出てまいりましたが、道路計画、道路整備五カ年計画の五年五年の節目が、ちょうど次年度というか次に当たる計画になっていると思います。
 その際に、今御指摘のありましたこの自動車重量税からの一般会計へのさらなる移行とあわせて、これまで、道路五カ年計画に合わせて暫定税率で、ある程度計画に合わせて税収を取るということをなさってこられたかと思います。ちなみに、揮発油税を例にとりますと、本来の税率が一リットル当たり二十四・三円であったところが、暫定税率を上乗せして二倍の四十八・六円だというふうに私も聞いております。
 このような、ちょうど道路五カ年計画も見直しの時期である、そして一般財源化に方向づけるということとあわせて、この暫定税率のことも、もし、まず道路建設ありき、それから暫定税率を決めていくという手法をおとりにならないとすれば、当然見直されると思いますが、この点についてはいかがでございましょうか。
塩川国務大臣 暫定税率、特例的な税率でございますが、これを予定した計画で現在予算の編成の検討を進めておるところでございますので、でき得れば、というよりもぜひ暫定税率をこのまま存続させていただいて、要するに、いただいた税金はむだにしないで使うということが大事でございますので、その点を御理解いただいて御協力いただきたいと思っております。
阿部委員 もちろん暫定税率をやめると税収が減ってまいりますので、財務省としてはなかなか前向きには言いがたいところかと思いますが、しかしながら、税というものには国民の理解と納得と、骨格がなければなかなか合理的と言えないと思います。
 先ほど大臣がおっしゃられたような、全体的に道路特定財源のそのもののあり方は歴史的使命を終えつつあると。確かに日本の中で、インフラ整備として、社会的共通資本として、道路が計画的につくられていかなければいけない時代はあったと思いますし、そのことの果たした役割も大きいと思いますが、現時点では、従来、大臣の御指摘されるような生活道路とか環境面への配慮した使い方とか、さらには、私がいつも要望しております医療や福祉、そういう部門への使い方により広く一般財源化する、そしてあわせて暫定税率の決め方も、道路建設ということの目的、一、それに合わせて収入これこれとしなければ、当然これから見直されると思いますので、きょうの御答弁ではなかなかそこまでいただけませんでしたが、これは全体の流れの見直しの中でぜひもう一度お考えいただきたい。国民にわかりやすい税の仕組みということでお考えいただきたいと思います。
 関連して、三点目、お伺いいたしますが、いわゆる揮発油税や石油ガス税は、これはもうもろに道路整備財源ということでございまして、これを一般財源化するとなると法改正が必要になってまいりますが、その点については、私の意見は、やはり明確に先ほど来申しますように、法改正を伴ってでも一般財源化して、より時代のニードに合った行政をしていただきたいと思いますが、この法改正という点について、今は例えば御無理と判断されれば、ある時間展望はお持ちであるのか否かも含めて、御答弁をお願いします。
塩川国務大臣 一般財源化へ法改正は必要であるということは当然認識しておりますので、今、どのような改正をお願いするかということ。おっしゃるように、世論をわきまえなきゃならぬということが最大のポイントでございますので、そういうことを十分に配慮しながら作業を進めていきたいと思っております。
阿部委員 世で言われる少子高齢社会で、聞き及びますところ、来年度もいわゆる社会保障関連の費用は抑えていかざるを得ない、税収等もかんがみましてというお話ではございましたが、やはり我が国が新しい少子高齢社会にどのような形で立ち向かっていくのか、本当に岐路で、私は、世で小泉総理が構造改革とおっしゃっておられるところには、基本的に理念の改革、本当に国民にどういう時代を生きたいかという理念の改革を提示することが政治の役割と思いますので、そして、税というのはみんなが納めることによってその理念が具体的に自分の関与するところとして自覚される部分ですので、あわせて大臣には御尽力をいただきたい。できればもう、すぐと言っていただきたいけれども、まあ、前向きな御答弁ありがとうございます。
 続いて、柳澤金融大臣にお願いいたします。
 アメリカのワールドコムの粉飾決算に関連することで、三点お伺いいたします。
 この間、アメリカの株価の暴落が、このワールドコムの粉飾決算ということとその監査法人であったアンダーセン、これはエンロンの監査法人でもありましたが、会計は粉飾する、監査法人はきちんとそのことを監査しないということで、市場の信頼が揺らぎ株価が低迷するということが続いておりまして、同社は三十八億ドルの粉飾決算を行ったということに報じられております。
 巨額債務三百億ドルがあることも明らかになっておりまして、アメリカではこういうことをきちんと監査法人が監査できなかったことについても、例えばSECの機能について議会で改正することも含めて踏み込んで論議されていると思いますが、柳澤金融大臣は、このアメリカでの一連の事態、どのように御認識、御感想をお持ちでしょうか。
柳澤国務大臣 アメリカは非常に先進的な会計、それから市場、そういう仕組みを持った国だということで、私どもも多くの点でこれを見習わなきゃいけないということで努力をしてまいりました。ところが、そのアメリカにおいて、今委員の御指摘のような不正経理というか、あるいはまた不適切な監査だとかということが明るみに出まして、やや私も失望をしたというのが正直な感想でございます。
 ただ、しかし、だからといって私どもは、アメリカだってそうではないか、日本だけがそういう不正であるとかあるいは不適切な処理というようなことを言われるのは筋違いだみたいな開き直りだけは絶対してはいけない、このように考えておりまして、むしろ、これを他山の石とするということと同時に、また、こうしたことが明るみに出たときにこれにどう彼らが対応しているか、このスピードの面、あるいはさらにいろいろなこれに対する善後処置の面、こういったことについてむしろ学んでいかなければならない、こういうように考えているところでございます。
阿部委員 アメリカでは、ブッシュ大統領みずからこうした粉飾会計についてのきちんとした刑事処分並びにSECの機能強化ということで臨んでございますが、従来、このアメリカの監査法人のあり方と我が国の監査法人のあり方を比べて、むしろアメリカ側から日本の監査法人のあり方の不備を指摘されるような事態もあったと思うのです。
 私は、ここで柳澤金融大臣に一点お伺いしたいのは、今回いろいろに法整備も必要と言われるアメリカでありながら、なおかついわゆる日本の証券取引等監視委員会の人数と比べますと、アメリカは三千人、日本は百八十三人と、かなり規模においてもまだまだ我が国の質、量の改善向上が必要と思われますが、このアメリカの事象に学びながら、金融庁として、大臣として、我が国においてどのような方向性にこの監査法人のあり方、補強していけるか、その点についても御認識をお願いします。
柳澤国務大臣 監査法人の監査業務の質を向上させようということで、いろいろな取り組みも行われておるところでございます。
 ルールについても、先般パブリックコメントの後にこれを正規のルールとさせていただきました例のゴーイングコンサーンの問題等、そういったようなことで、ルールをより適切なものにしていこう、こういう努力も一方ございます。
 それからまた、これに実際的に携わるところの公認会計士の質もよくしようということで、品質管理というか、一つのチームが監査法人等をめぐるということで品質の向上を企てているというようなこともございます。
 そういうことであるわけですけれども、日本の監査法人と米国の監査法人を比べたときに少し助かるなと思うのは、実は、アメリカの監査法人については監査と同時にコンサルタント、コンサルティング業務というのをやっておりまして、例えばアンダーセンなんかも今回そのことが非常に問題視されておるわけでございます。
 これは、コンサルティングといって財務処理の方法についてコンサルタントとして相談に乗っていく、それでそのことが適正であるかどうかを今度は監査法人として監査する。こんなものは、監査するときに、自分の別部門、別部隊がコンサルで推奨したスキームでございますから、監査をして、それが不適切であるなんということは言いっこない。こういう利害の衝突というものがあったと言われております。
 私、お会いして、けいがいに接しまして非常に人格的にも立派だと思ったレビット前SEC委員長、この人が非常に強くそのことは主張されたんだけれども、議会でこれがつぶされてしまった。しかし、今議会の人たちは何と言っているかというと、レビットさん、あなたの言ったとおりでした、我々が不明でしたといってレビットさんに謝っているというようなことがあるようでございます。
 そういうことですが、その面については、私どもの監査法人においては、それほど、つまりアメリカほどコンサルティング業務と監査業務とが力が拮抗するほどコンサルティング業務をしているというわけじゃない。しかし、質的にはやはりしているのですね。ですから、これもやはりどう考えるかというのを、我々は今鋭く問題提起を受けているというふうに受けとめておりますが、そこが大きな弊害になるほどではないというのは一つの救いかな、こういうように思っております。
 いずれにせよ、しかし、監査法人のルールそれから実際の業務の品質の向上というのは、これからまたさらに我々は努力をしていかなきゃいけない分野である、このように心得ております。
阿部委員 私もいつもこの場で質問いたしますときに、今の日本の政治とか経済とか金融において恐らく一番欠けてしまったものというのは信頼、信じていく、金融などは信じなければ成り立たないわけで、そうしたことにかかわる監査、そして業界団体としての公認会計士の皆さんの業務の遂行の仕方をさらに金融庁が監視していくというシステムですので、ぜひとも金融庁の本来的な活動をきちんと強めていただきたい。
 特に、日本で、監査法人の調査についてというのをこの前資料請求で、これは理事会で出していただきましたが、日債銀と山一証券、そごう、ヤオハンと続きました倒産問題で、やはり監査法人に問題がありとされたところもございますし、また裁判係争中のものは、金融庁としてもそれを傍聴しながら対処策を考えておられるということで、極めて重要な事態と思いますので、よろしくお願いいたします。
 また、もう一点、このワールドコムに関しまして、日本の銀行がいわゆる海外融資という形で融資をしておることと思いますが、これは、銀行から金融庁がお聞き及びのところ、額としてどれくらいになっておるのか、つかみで結構ですのでお願いいたします。
柳澤国務大臣 主要行のワールドコムに対する融資の状況でございますけれども、主要行十二行のうち、ワールドコムに融資等を行っている四行の与信残高の合計は、最近の、平成十四年六月の時点で約三億六千五百万ドル、一ドル百二十円換算で約四百四十億円、このように承知をいたしております。
阿部委員 あらかじめ資料請求いたしましてもそのように報告されておりますし、また新聞紙上もそのように報道しておりますので、約四百四十億円と。
 この場でも銀行の不良債権問題はよく論じられておるところでございますし、ワールドコム自身今倒産したわけではございませんが、こういう海外融資というものが一つの、ある種の不良債権、今後のワールドコムのありようによっては不良債権化してくるということもございますし、それから、これだけ経済がグローバル化しておれば、当然日本の銀行の何がしかの融資、直接融資も、あるいは証券の取得等も含めていろいろなものが日本の銀行の運営形態、経営形態に影響してくるということは多々ございますように思います。
 一般論で恐縮ですが、こういうグローバル化した経済のもとで、金融庁として、海外融資ということも含めて、どういう監視行政といいますか指導行政を行っておられるのか、最後にこの一点をお願いいたします。
柳澤国務大臣 最近の新聞を阿部委員もごらんになっていただいているかと思うのですが、日本の海外融資は、残念ながら今縮小しているわけですね。これは、リスクをなかなかとれないというような現在の金融機関の状況をある意味反映しているというような報道もありまして、我々も、それはそれなりに首肯しないわけではないという状況でございます。
 いずれにせよ、しかし、今後を展望するときに、経済がボーダーレス化していきますので、当然金融もそうした傾向を示していくだろう、このように思っております。
 そこで、私なぞ、外国に行きまして金融監督当局と意見をすり合わせるところが多いわけですけれども、その際にはいつも、この間の協力をしっかりしようよということを言っております。
 現在私ども、金融検査では、我々の国籍があれば、つまり支店であればすぐ行けますし、場合によっては、現法についても、相手方の監督当局の了解を得てそういうところにも行ける。これは相互に双務主義でやるわけでございますけれども、そういうようなことをやっておりますし、それからまた検査の技法等についても、やはり郷に入れば郷に従った融資等も行いますので、それに対してどういう検査をすればいいかというようなことでノウハウの交換みたいなものも必要で、お互いに研修員を送り合ったりしております。
 いずれにせよ、そういうようなことで、海外だから検査の目が行き届かない、監督の目が行き届かないというようなことのないように、監督当局の間でも連携を密にして、この点について万全を期していきたい、こういう姿勢でもって取り組んでいるところでございます。
阿部委員 確かに、時代の状況というものが大きく変わってきた中で、特に一番足の速いのが金融というふうに思います、世界じゅうを駆けめぐる。
 その駆けめぐる金融ということが、どのような実体経済との相互関連を持ちながらということも、まだまだ私たちの経験していない分野も多々あると思いますので、ぜひとも金融庁にあっては、これからのそうした分野にお取り組みをいただきたいと思います。
 私にあと三分残されましたが、最初に文句を言った分で三分早くやめさせていただきます。ありがとうございました。
坂本委員長 以上で本日の質疑は終了いたしました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時四十分散会


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