衆議院

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第25号 平成14年7月19日(金曜日)

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平成十四年七月十九日(金曜日)
    午前十時一分開議
 出席委員
   委員長 坂本 剛二君
   理事 中野  清君 理事 根本  匠君
   理事 山口 俊一君 理事 山本 幸三君
   理事 海江田万里君 理事 古川 元久君
   理事 石井 啓一君 理事 中塚 一宏君
      岩倉 博文君    金子 一義君
      金子 恭之君    倉田 雅年君
      小泉 龍司君    佐藤  勉君
      七条  明君    砂田 圭佑君
      竹下  亘君    竹本 直一君
      中村正三郎君    林田  彪君
      増原 義剛君    山本 明彦君
      吉田 幸弘君    渡辺 喜美君
      五十嵐文彦君    生方 幸夫君
      江崎洋一郎君    小泉 俊明君
      小林 憲司君    佐藤 観樹君
      中川 正春君    永田 寿康君
      長妻  昭君    上田  勇君
      遠藤 和良君    藤島 正之君
      佐々木憲昭君    吉井 英勝君
      阿部 知子君    植田 至紀君
    …………………………………
   議員           相沢 英之君
   議員           大原 一三君
   議員           金子 一義君
   議員           七条  明君
   議員           石井 啓一君
   議員           小池百合子君
   財務大臣政務官      砂田 圭佑君
   財務大臣政務官      吉田 幸弘君
   参考人
   (日本銀行総裁)     速水  優君
   参考人
   (日本銀行副総裁)    藤原 作彌君
   参考人
   (日本銀行理事)     三谷 隆博君
   参考人
   (日本銀行理事)     小林 英三君
   参考人
   (日本銀行理事)     平野 英治君
   参考人
   (日本銀行理事)     白川 方明君
   財務金融委員会専門員   白須 光美君
    ―――――――――――――
委員の異動
七月十九日
 辞任         補欠選任
  渡辺 喜美君     佐藤  勉君
同日
 辞任         補欠選任
  佐藤  勉君     渡辺 喜美君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 参考人出頭要求に関する件
 銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律の一部を改正する法律案(相沢英之君外五名提出、衆法第二五号)
 金融に関する件(通貨及び金融の調節に関する報告書)


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     ――――◇―――――
坂本委員長 これより会議を開きます。
 相沢英之君外五名提出、銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 質疑の申し出がありませんので、これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。金子恭之君。
金子(恭)委員 自由民主党の金子恭之でございます。
 私は、与党三党を代表して、ただいま議題となっております銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律の一部を改正する法律案に賛成する立場から討論を行います。
 本案につきましては、昨年の臨時国会において成立しました銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律の一部を改正し、銀行等保有株式取得機構が、銀行の保有する株式に加え、新たに銀行と株式持ち合い関係にある事業法人の保有する銀行株をも買い取ることができるようにするものであります。
 銀行は、株式保有制限の導入に伴い、原則として平成十六年九月末までに自己資本を超過する株式をすべて処分することが必要となりました。これにより、銀行の保有する株式が短期間のうちに大量に株式市場に放出されれば、株式市場、ひいては金融システム全体に多大な悪影響をもたらすおそれがあります。こうしたことから、市場売却を補完するセーフティーネットとしての銀行等保有株式取得機構が本年一月三十日に設立されました。
 しかしながら、我が国産業界は長年の慣行として銀行との間で互いの株式を持ち合ってきたわけであります。銀行が、このような株式保有制限という規制を守るため事業法人の株式を売ることとなれば、当然のことながら、事業法人でも、今まで長期にわたり持ち続けていた取引銀行の株式を手放すことになります。こうしたことが、今ありとあらゆる銀行と企業との間で行われているわけです。これでは、株式市場が冷え込むのは当たり前です。
 昨今、我が国の景気がようやく持ち直しつつあると見られているのに株式市場が一向に元気がないのは、まさにこの持ち合い解消によるところが大きいと言われております。こうした状況を放置しておいてよいのか。このような問題意識に立ち、持ち合い解消株式の受け皿として銀行等保有株式取得機構の機能を拡充するのが今回の改正法案であります。
 金融システムの構造改革として持ち合い解消を進めることは、もちろん重要なことであります。しかしながら、構造改革には当然痛みが伴います。それを少しでも和らげ、日本経済がこの長く暗いトンネルを抜け、再び大きく躍進していくためには、セーフティーネットというものをしっかりと充実させておく必要があるのではないでしょうか。景気回復と構造改革という二つの課題を達成し、我が国経済を明るい方向に導いていくためには、一刻も早く本法案を成立させることが必要なのではないかと考える次第であります。
 以上の理由により、本法案に賛成するものであります。
 よろしくお願い申し上げます。(拍手)
坂本委員長 海江田万里君。
海江田委員 ただいま議題となりました銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律の一部を改正する法律案について、反対の立場で討論を行います。
 四月一日、柳澤金融担当大臣は金融安全宣言を発し、ペイオフ凍結を一部解除しました。柳澤大臣の安全宣言を信用するならば、金融システムは今や盤石であり、来年四月に予定されているペイオフ凍結全面解除についても全く不安はないはずです。しかし、国民の間には依然として金融機関に対する不安が存在し、与党内でもペイオフ再延期が声高に叫ばれるようになってきました。金融システムがいまだ危険な状況にあることは、与党の皆さん自身も認めるところであります。
 こうした事態を招いた原因は、言うまでもなく、これまでの自民党内閣が不良債権処理と金融システム健全化を先送りしたことにあります。昨年四月に誕生した小泉内閣も、その例に漏れないことは言うまでもありません。そして、抜本策を講じないということは、その場しのぎのびほう策ばかりが繰り返されることになります。
 昨年来政府がとってきた対策を思い起こしても、RCCによる不良債権買い取り価格の引き上げ、公的資金による銀行保有株の買い上げ、空売り規制強化、年金資金などによるPKO、PLOなどはまさにその象徴と言えます。金融機関の合併促進についても、真の目的は、経営不振の金融機関を救済することと、金融機関の不良債権処理に使える業務純益をふやすため、競争ではなく独占的に貸出金利を引き上げさせることにあるのは明らかです。今回、与党から提出された本改正案は、こうしたびほう策の中でも極めて筋が悪いものだと言わざるを得ません。与党提出者が与党も含めた質問者の質問に何一つとしてまともに答弁することができなかったことは、まさにその証明と言えます。
 以下、本改正案に反対する理由を申し述べます。
 第一に、本法案の提案理由の最大のものとしている持ち合い関係の解消の際の不均衡については、そもそも事業法人には株式保有制限が課せられておらず、機構が事業法人から銀行株を買い上げる必然性が全くないことは明らかです。
 第二に、機構の株式買い取りの基準が相変わらず不透明で、機構が相場操縦やインサイダー取引などの不公正取引の温床となる可能性があり、株式市場をゆがめるおそれが大きいことです。
 第三に、今回の措置は明らかに銀行株の買い支えを目的とするものであり、特定の業種の株価を著しくゆがめ、ひいては株式市場全体の価格形成をゆがめることにつながることです。
 現在、米国では、企業倫理の欠如が一般投資家の株式市場に対する信頼性を大きく損ない、結果的に株価を大きく下げる原因となっています。我が国においては、政府・与党が公然と株式市場の公平性、透明性、信頼性を裏切る行為を行っていると断ぜざるを得ません。その意味では、本法律案は株式市場の活性化はおろか、株式市場のさらなる低迷にもつながりかねない内容の法案であります。
 政府や与党が今直ちに行うことは、我が党が既に提案している、株式市場の信頼性を増加させる証券取引監視委員会設置法案の審議を行い、これを成立させることだと思っています。特に銀行の株価については、ごく短期的な見方からその需給関係にのみ関心を持つのではなく、中長期的に株価を上昇させる資本効率の向上に資する施策をとるべきであると考えます。
 いずれにしろ、与党提案の本法律案は、そのごく限られた質疑時間の中での質疑と答弁でも明らかなように、到底これを成立させるべき代物ではなく、本委員会全体の意思としてこれを葬り去るべきであると考えます。
 我が国経済は、抜本改革が先送りされる余り、危機のマグマがますますたまってきています。もはやこうしたびほう策を繰り返すべきではありません。我が党が提案した金融再生ファイナルプラン関連法や地域金融円滑化法を実行することが危機を克服する唯一の道であることを強く申し上げ、討論を終わります。(拍手)
坂本委員長 中塚一宏君。
中塚委員 私は、自由党を代表して、銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、反対の立場から討論をいたします。
 そもそもこの法律そのものは、政府が銀行への株式保有制限を行う際の措置として、市場に売るのではなく、株式買い取り機構を創設して株を買い上げるというものであり、それは市場経済をゆがめるものであると指摘してまいりました。二十一世紀最初の愚策であります。それを今度は、銀行と持ち合い関係にある事業会社の所有する銀行株まで買い上げるものであって、これは、銀行と事業会社双方が持ち合う持ち合い株が市場にさらされることなく、政府保証つきの株式取得機構に預け入れて売り逃げしてしまうことであり、市場原理の原理原則も何もありません。
 反対の第一の理由は、この改正は構造改革に資することは全くなく、国際的な信頼は得られないということであります。
 本来、株式の持ち合い解消というのは、市場の動向を見ながら企業同士がお互いの経営判断で解消していくものであります。にもかかわらず、株価が不安定になるからといって、取得機構が一枚かんでしばらく塩漬けにしようというのは、証券市場の市場原理をゆがめるまさに株式市場のPKO策にほかなりません。そればかりでなく、投資家が企業を判断する一つの指標である株価を操作することになり、企業のコーポレートガバナンスをゆがめ、企業経営の透明性を見えにくくすることにもつながります。これでは、日本の株式市場が世界マーケットから信頼を得られることはなく、公正、透明な構造改革からは全く逆行するものであります。
 反対の第二の理由は、もともと株式の買い取りスキーム自体が市場原理をゆがめるものであるのに、さらに買い取りルールが不公平きわまりない仕組みになっていることであります。
 株式取得機構に株を売ることができるのは、銀行等と持ち合い関係にある事業会社が保有する銀行株であり、一般企業同士の持ち合い関係になっている株式は対象外になっており、また、銀行と持ち合い関係にあった企業と銀行だけがこの機構を使えるわけであり、同じ市場原理の中で市場ルールに直接さらされるものとさらされないものという格差をつくることになります。
 さらに、銀行が株式取得機構に株を売るときには八%の拠出金を必要とするのに対して、事業会社が持つ銀行株の売却には何の拠出金も必要ありません。事業会社は、ノーリスクで株式取得機構に銀行株を売り逃げできることになります。
 この改正案は、取ってつけたように株式取得機構の目的をも加えることで、ゆがんだ市場経済がさらにゆがむだけであります。この法律の目的には、国民経済の健全な発展に資することを目的とすることと書かれておりますが、財務大臣さえ、この制度は、市場原理を尊重する資本主義経済社会からすれば決してよい制度ではないと認めておられるとおり、株式取得機構の制度を含めて、改正案はますます国民経済の健全な発展の障害になっていくことを申し上げ、私の反対討論を終わります。(拍手)
坂本委員長 佐々木憲昭君。
佐々木(憲)委員 私は、日本共産党を代表し、銀行株式保有制限法の一部を改正する法律案に反対する討論を行います。
 本改正案は、株式の持ち合い解消を口実にして、銀行保有株式取得機構が事業法人の保有する銀行株を買い取ることを可能にするものです。
 反対する第一の理由は、本法案が、これまで政府自身が説明してきた株式取得機構設立の立法趣旨と全く相入れないものであることです。
 わずか半年前の法案審議の中で、政府は、機構の設立は株式保有制限の導入に伴う信用秩序の維持のためだ、事業会社の持つ銀行株がスキームに入らないのは当然の帰結だ、持ち合い解消を目的にした制度ではないなどの答弁を繰り返してきました。与党が提出した法案は、半年前には明確に否定した事業法人の保有株式の買い取りを一転して今度は認めようというものであり、何の道理もないものであります。
 買わないと言っていたものをどうして今回買うというのか、先日の委員会質疑では、与党議員を含めてここが鋭く問われました。しかし、柳澤金融大臣からも、法案提出者からも、何ら説得力ある答弁はありませんでした。このような破綻が明らかとなった法案を、わずか一日だけの質疑でしゃにむに成立させようという与党三党の態度は許されないものであります。このような法案は撤回すべきであります。
 反対する第二の理由は、買い取り対象株式の拡大によって、国民負担のリスクが増大することであります。
 法案では、事業法人の保有する株式の買い取りは、政府保証つきの特別勘定で行われる仕組みになっています。したがって、株式取得機構が買い取った株式から損失が生まれた場合、国民負担で穴埋めされます。これは、事業法人が抱える株式損失リスクを国民に転嫁するものであります。しかも、事業法人からは売却時拠出金を徴収しないため、損失が発生すれば丸々国が穴埋めすることになります。
 委員会質疑の中で、私は、株の下落について国民に責任があるのかとただしましたが、国民負担を当然視する提案者からは何ら明確な答弁はありませんでした。このような、いわれなき負担を国民に求める本法案には断固反対であります。
 第三の理由は、本法案が、銀行株の買い支え策の性格を持ち、新たな銀行支援策になっていることです。株式取得機構が事業法人の保有する銀行株を買い取ることは、銀行株の市場売却による値下がりを買い支えるものであります。本法案は、この間政府・与党が進めてきたモラルなき大銀行支援策の上塗りをするものであり、認められません。
 さらに、これは公的資金による株価維持政策としての株式取得機構の性格を強めるものであります。株式取得機構をめぐる一昨年来の議論を振り返ってみると、与党自民党の中には常に株価維持政策の発想が見られます。
 公的資金による株価操作は、公正な市場の形成をゆがめるものであり、株価対策としての効果はありません。経済の実態を回復させ、企業の業績を改善することなしに、公的資金で株価を買い支えようという政策は根本的に誤ったものであります。
 以上の理由から、本法案に反対であることを表明し、討論といたします。(拍手)
坂本委員長 植田至紀君。
植田委員 私は、社会民主党・市民連合を代表して、銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
 そもそも私どもは、本法案が制定される際に、この機構を設立するに当たって、株式資本主義と市場経済の理念も有効性も欠いていると厳しく批判をした上で、いわば合法的な飛ばし行為に近い手法であり、金融システムの安定化に名をかりたPKOと言わざるを得ないと断じてきたところであります。
 以下、主な反対理由を述べます。
 第一に、そもそも私どもは、本法案の制定時の審議の中で、銀行等保有株式取得機構について、同機構による株の買い取りのために借り入れる資金には政府保証がつけられるという、精算時点で銀行からの拠出金で損を埋めなければ政府が穴埋めをする公的資金が投入されるというスキーム自体に、何らの責任もない国民に負担を強いるものであると強く反対してまいりました。また、売買に伴う損失を政府が負担をするということは、市場原理から見ても疑問があり、株の値下がりまで税金で補償することは筋違いな措置であると厳しく批判をしてきたところであります。
 しかし、実際の機構の買い取り状況を見ると、一般勘定と特別勘定の二つのスキームのうち、一般勘定はほとんど活用されず、政府保証がつけられる、すなわち国民の税金が注ぎ込まれることが前提の特別勘定による買い取りが中心というのが実態であることが既に明白であります。
 第二に、株式持ち合いの解消は確実に進んでおり、自由な株取引で適正な株価を決めるという市場の大切な機能を損ないかねない、改正案のようなスキームが必要であるというような立法事由が存在するとは考えられません。
 第三に、そもそも銀行等保有株取得機構は、その制度の複雑さや利点も少なく、同機構の発足以来の買い取り実績も当初期待値よりもはるかに少額であります。機構のスキームを論議する過程の中で、一般事業法人の保有する銀行株を同機構の買い取り対象に加えるというスキームは、株価維持策と見られかねないという理由で一たん否定されたものであります。それがゾンビのように復活するというのはまことに不可解であります。
 機構の置かれている現状を解消することなく、機構本来の設立目的も有効に果たしていないまま買い取り対象を一般事業法人の保有する銀行株に拡大しても、肝心の一般事業法人がどのくらい機構を活用するのかも不透明なままであります。それどころか、本機構の設立時も問題とされたように、機能を広げ過ぎると海外の市場関係者等から株価維持策と見られることは必定でありましょう。
 第四に、生損保が機関投資家として多くの銀行株を保有していることは周知の事実であり、一方、銀行も基金と劣後ローン、劣後債の形で生損保へ拠出しております。銀行と生損保の危険な持ち合い構造は、金融危機の連鎖構造に連動するものです。生損保は大手銀行にとって超大口融資先であり、破綻となればあっという間に金融危機につながる可能性があり、提案者の言うように非対称性を解消し、株式持ち合い解消の動きに対応するためというのであれば、一般事業法人の保有する銀行株に着目するより、まず、生損保保有の銀行株こそ問題にすべきであります。
 第五に、我が国市場の株式の持ち合い構造を根本的に解消するというのであれば、取得機構の買い取り対象の範囲を広げるというつけ焼き刃的な、小出し的な施策ではなく、いかにして効果的な株式市場の活性化が実現できるのかという視点からの抜本的な施策にこそ知恵が出されてしかるべきではないでしょうか。
 以上の理由により、本法案には反対するものであります。(拍手)
坂本委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 これより採決に入ります。
 相沢英之君外五名提出、銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
坂本委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
坂本委員長 次に、金融に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁速水優君、日本銀行副総裁藤原作彌君、日本銀行理事三谷隆博君、日本銀行理事小林英三君、日本銀行理事平野英治君及び日本銀行理事白川方明君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 去る六月七日、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づき、国会に提出されました通貨及び金融の調節に関する報告書につきまして、概要の説明を求めます。日本銀行総裁速水優君。
速水参考人 日本銀行は、先月、平成十三年度下期の通貨及び金融の調節に関する報告書を国会に提出いたしました。今回、日本銀行の金融政策運営につきまして詳しく御説明申し上げる機会をいただきまして、厚く御礼申し上げます。
 本日は、最近の経済金融情勢や金融政策運営について、日本銀行の考え方を申し述べさせていただきます。
 まず、我が国経済の動向につきまして御説明申し上げます。
 昨年初来、IT分野の調整に伴い世界的に景気が急速に後退する中で、我が国経済も悪化傾向をたどってきました。しかし、ことしの春先以降は、海外経済の回復を背景にして、景気悪化のテンポは緩やかになり、最近では、輸出や生産面の明るさが増して、企業の収益や業況感についても改善していくなど、全体としてほぼ下げどまっております。雇用面でも、所定外労働時間や新規求人数が持ち直すなど、限界的な部分には改善の動きが続いております。しかし、持続的な景気回復のかぎを握る民間需要につきましては、設備投資が引き続き減少しているほか、個人消費も全体として弱目の動きが続いており、まだ回復へのはっきりとした動きがうかがわれません。
 先行きにつきましては、海外経済の回復基調が続けば、輸出や生産の増加が企業収益の回復を通じて国内民間需要を下支えしていくことによって、景気は下げどまりが明確になっていくものと予想されます。もっとも、過剰雇用や過剰債務の調整圧力が根強いことなどを踏まえますと、景気は当面、自律的な回復力に乏しい展開となる可能性が高いと思います。また、最近の景気改善の動きを支えてまいりました輸出をめぐる環境を見ますと、米国を初めとする世界的な株安やドル安の動きに見られますように、このところ、幾分不透明感を増していると言えます。
 この間、物価面を見ますと、国内卸売物価は、これまでの輸入物価上昇や在庫調整一巡の影響もあって、ほぼ横ばいの動きとなっております。前年比で見たマイナス幅は徐々に縮小しつつあります。他方、消費者物価につきましては、緩やかな下落を続けております。
 先行きにつきましては、消費財輸入の増勢鈍化が価格低下圧力を何がしか緩和する要因として働くと考えられます。しかし、先ほど申し上げましたように、国内民間需要の回復力に乏しい展開が予想されることや、技術革新、規制緩和、流通合理化といった要因も、引き続き物価を押し下げる方向に作用すると考えられます。これらを踏まえますと、当面、物価は緩やかな下落傾向をたどるものと見られます。
 次に、金融面の動きを見ますと、金融・資本市場は、本年三月にかけて、ペイオフ解禁を控えた金融システム不安の高まりなどを背景にして、神経質な展開をたどりました。企業金融面でも、民間銀行の貸し出し態度が慎重化し、信用力の低い企業、とりわけ中小企業では資金調達環境が徐々に厳しさを増してまいりました。
 しかし、四月以降、金融・資本市場は、経済情勢が幾分改善傾向を示すもとで、全般に徐々に落ちつきを取り戻してまいりました。社債、CPなど、市場を通じた企業の資金調達環境はこのところ改善傾向にあり、投資家の信用リスクに対する姿勢が回復してきたことがうかがわれます。もちろん、相対的に信用力の低い企業の資金調達環境がなお厳しい状況にありますことも確かでございます。このため、金融機関行動や企業金融の動向には引き続き十分注意していく必要があると考えております。
 また、米国株価の下落などを背景にして、六月中旬以降、株価がやや軟調に推移しておりますほか、為替相場も、ひところに比べて、ドル安・円高の動きとなっております。
 こうした市場の動きが行き過ぎて、金融・資本市場が大きく不安定化すると、改善傾向にある我が国経済にも悪影響を及ぼすおそれがあります。このため、金融・資本市場の動きにも細心の注意を払ってまいりたいと思っております。
 次に、金融政策運営について御説明申し上げます。
 日本銀行は、昨年三月、コールレートがほぼゼロに達して、オーソドックスな金融政策による緩和余地がほぼなくなったもとで、日銀当座預金という資金の量を目標とした金融政策運営の枠組みを採用いたしました。それ以来、こうした新しい政策の枠組みのもとで、内外の中央銀行の歴史に例のない思い切った金融緩和を実施してまいりました。
 また、金融緩和の効果が企業金融の面でも浸透していくことを期待して、資金供給手段や担保面でもさまざまな工夫を凝らしてまいりました。
 この結果、金融市場では、オーバーナイト金利はもちろん、やや長目の短期金利までもほぼゼロに低下するなど、金利は極めて低水準で推移いたしております。また、マネタリーベースは、前年比三割弱の高い伸びとなっております。
 こうした日本銀行の金融政策運営は、IT分野の世界的な調整や、米国テロ事件の発生、金融システム不安の高まりなど、我が国経済に大きなストレスがかかる中で、金融市場の安定を確保することを通じて景気の底割れを防ぐという意味で、大きな役割を果たしてきたと思います。
 しかしながら、我が国経済がさまざまな構造問題を抱えるもとで、企業の投資や家計の支出が十分活発化するには至っていないことも事実であります。金融緩和がその効果を十分に発揮し、景気の本格的な回復を実現していくためには、税制改革や経済活性化策の具体化といったことなどにより経済、産業面での構造改革を進めて、民間需要を引き出していくことが不可欠だと思います。同時に、不良債権処理を通じて金融システムの強化、安定を図ることが極めて重要であります。
 終わりに、我が国経済は、九〇年代以降、循環的には三度目の景気回復局面を迎えようとしております。これまでの二度の回復局面、九五、六年と九九年、二〇〇〇年でございますけれども、この二度の回復局面におきましては、海外経済の減速や金融システム不安などをきっかけにして景気は勢いを失って、民間需要全体の自律的かつ持続的な拡大には至っておりませんでした。こうした点を踏まえまして、我が国経済の持続的な成長の基盤を整えるために、各方面における構造改革への取り組みが粘り強く進められることを強く期待いたしております。
 日本銀行としましても、今後とも、デフレ脱却に向かって、潤沢な資金供給を通じて市場の安定と緩和効果の浸透に全力を挙げていくこと、また、最後の貸し手としてシステミックリスクの顕現化を回避することの両面において、中央銀行としてなし得る最大限の努力を続けてまいりたいと思っております。
 以上で、私からの御説明を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
坂本委員長 これにて概要の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
坂本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中川正春君。
中川(正)委員 民主党の中川正春でございます。
 毎回といいますか、こうして日銀報告をいただくわけでありますが、最近つくづく感じるんですね。この報告のトーンが、まあうちとしてはやるべきことをみんなやって、特にデフレ化の中では、これまでタブーとされてきたあるいはこれまで常識では考えられなかったところまでやってきたつもりなんです、だからあとは政府のサイドの政策、構造改革初め金融における不良債権の処理を早いところやってもらうということでしかないんじゃないか、ずっとこういうトーンなんですね。そこが、私たち聞いていて、もうひとつ物足りないところなのかなと。
 いわば日銀の存在感といいますか、あるいは経済に対する説明責任というか、もっと言えば、さらに努力をして、今問題になっているところの論点整理を含めて、将来の可能性というか、私たちがこれから政策を怠った場合にはこんなふうになりますよという警告も含めて、もっと強いトーンでしっかりと打ち出していただくべきなんじゃないかということですね。このことを毎回感じるんです、この報告を読んでいると。
 こういう点をまず冒頭指摘をさせていただいて、これからの報告書の中には、本当のセントラルバンクあるいはバンカーとしての存在感がしっかりと国民に対して出てくるようなめり張りのきいた報告というのを、あるいは訴えというのをやっていただきたいとまず冒頭申し上げておきたい、期待を込めて申し上げておきたいというふうに思います。
 その上に立って質問をしていきたいというふうに思うんですが、まず、日本の経済を語る前に、今はアメリカの経済を語らなければいけないんだろうというふうに思うんですね。もう改めて説明をするまでもなく、どうも、会計システムに対する不安ということあるいは信頼性が崩れているということだけにおさまらず、もともとの言われていた株価、このバブルが本格的に崩壊をしてきているという局面なんじゃないかという指摘もされます。
 そういうことを含めて、このアメリカの経済を日銀としてはどう見ておられるのか、ここのところをまず説明をいただきたいと思います。
速水参考人 中川先生の最初におっしゃいました、もう少しセントラルバンカーのやるべきことあるいは存在感をはっきり言った方がいいという御忠告、ありがたくお受けしたいと思いますが、実際、この金融政策の効果という面だけで見ますと、幾ら資金を出してもなかなか民間需要が動き出さないということなんですね。
 そこのところは、今政府が進めておられる構造改革とか不良債権の償却とか、やはりそういった金融だけではできない仕事の方がそういう民間需要が動き出す。民間需要という場合は、企業にとっては設備投資であり、消費者にとっては消費の新しいクリエーティブ、フレッシュな消費生活を始めていくといったようなことかと思いますけれども、そういうことを動かしていく政治的な対応が待たれるということを常に申しておる次第で、私ども随分、先ほど申し上げたように、マネタリーベースで金を出しておるわけですけれども、これをこの勢いで幾ら出していっても、なかなか経済そのものが動いていかない。
 ある中央銀行の、私と親しくしております総裁ですけれども、こういう状況を見て、ちょうど、ひもを押して、プッシュ・オン・ザ・ストリングといって、風船にひもがついていて、ひもを引っ張れば風船が下がってきますけれども、幾ら風船をひもで押しても実体の風船というのは動かない、そういう状態だと思うというようなことを言ってくれた友達がおります。
 そういうような状況で、私どもは、政策を決定し新しく打ち出す場合にはいつでも、どうかひとつ、私どもはこれだけのことをやりましたが、政府の方でも民間需要を引き出すような構造改革、特に不良貸し出しの償却、そういったものを初めとした民間需要への対応をやっていただいて、それで民間需要が動き出したときに、こういった資金はそういう経済の成長をサポートしていくことができるんだということをステートメントで申すことを常といたしております。そのことについては、私どもは今でもそのとおりだと思っておりまして、政府の構造改革の成果について非常な期待を持って待っている次第でございます。
 それだけを言わせていただきまして、御質問の米国経済に対する認識について説明をさせていただきます。
 米国の実体経済指標は、総じて景気の緩やかな回復を裏づけるものとなっております。すなわち、企業部門では生産の増加傾向が続いております。また、家計部門でも住宅投資が好調を維持しておって、個人消費も底がたく推移しております。雇用調整圧力も和らぎつつあります。その一方で、米国株価は今春以降下落傾向をたどっております。その背景としては、一つは、相次ぐ不正会計事件を受けた企業会計への不信、二つ目は、中東情勢等テロ再発への懸念、三つ目は、先行きの企業収益や設備投資の回復について市場の一部に慎重な見方があること、こういったことが指摘されております。アメリカはもともと生産性の高い国でございますから、こういったことがなくなっていけば経済の成長は伸びていくんじゃないかというふうに思います。
 米国経済につきましては、我が国の輸出などに及ぼす影響も大きいだけに、株価の下落なども含めて、その動向を注意深く見てまいりたいというふうに思っております。
中川(正)委員 短期的な動きと同時にもう一つ指摘されているのは、米国経済の構造的な部分があるかと思うんですね。株価そのものも、それこそ実態からいくとバブルであったということ、それから経済の中身も、いわゆるブッシュ政権にかわってから、テロというそのことが前提にあったものもあるんですけれども、非常に戦時経済化しつつあるという指摘がもう一方あって、それにイラクに対する攻撃を前提にした論議が盛んに今なってきておるんですね。
 そういう、本来の健全な経済で裏打ちされた国家の運営というよりも、どうも全体として虚構に走っている、その虚構というのが裏にあるから、一つこうした引き金が引かれたときに大きく変動をして、それが新しい構造展開へと結びついていくんじゃないか、そんな指摘が最近方々で出てきておるんですが、そういう意味で、長期的な構造という部分ではどのような見方をされておりますか。
坂本委員長 どなたに質問ですか。
中川(正)委員 どなたでも結構です。
坂本委員長 平野参考人。
平野参考人 アメリカ経済、特に株価におきましては、テクノロジー関連の株価を中心に、ある種のバブルの崩壊があったということは広く一般的に認識されているところでございます。いわば、株価、二〇〇〇年の春にかけましては相当大きく上昇したわけでございますが、その裏にはバブル的とも言える強気の期待があった。その期待の修正が行われるとともに、特にテクノロジー銘柄のウエートの高いナスダックで見ますと、ピークに比べまして現在四分の一ぐらいの水準に落ちている。これをもってある種のバブルの崩壊という見方が一般的になされていることは事実でございます。
 その裏にアメリカの構造的な問題があるのではないかという中川先生の御指摘でございますけれども、確かに、例えばアメリカの財政収支が今会計年度には赤字に転ずるといったようなことをもって、長期的に見て、アメリカの経済、構造的に多少弱さ、弱い面が出つつあるのではないかという見方も市場の一部にあることは事実であろうというふうに思います。
 これについて、なかなか確定的なことを申し上げるのは難しいわけでございますけれども、ただ、よく言われておりますように、経済の基本的な潜在成長力と申しましょうか、経済の力を規定する大きな要素として生産性の伸び率というものがございます。これで見る限り、ことしの一・四半期までアメリカの生産性、労働生産性は相当高い伸び率を維持しているわけでございます。言ってみれば、生産性の顕著な伸びに象徴されますように、経済のファンダメンタルズ自体は基本的には強いという見方も十分できるわけでございます。
 ただ、非常に変化の激しい状況でございますので、先生の御指摘された点も踏まえまして、今後の経済動向、あるいはそのことが株価あるいは為替に与える影響につきましては、十分注意をして見てまいりたいというふうに思っております。
中川(正)委員 そこで、先ほどちょっと最後の方に出ました為替なんですが、日本の経済がやや底を打ったという先ほどのお話の裏には、アジアに向けての輸出が非常に好調であったということ、これがあるということでありますが、ここで懸念されるのは、ドルがこれだけ下がってきている。しかもそのドルというのは、中国やアジア諸国のそれぞれの通貨にペッグされておりまして、その固定された中で考えていけば、結局、ドル安じゃなくて円高になってしまうというそういう構造上の問題があるかと思うんですね。
 これについて、この報告書の中でも多少触れてはありますが、これはこのままの状況で為替を見詰めていっていいのか。例えば五月、六月あたりには相当介入をして、円高という、ドル安という傾向を何とか食いとめようという努力があったということはこれはあるんですけれども、しかし、それだけでいいのかということですね。
 もっと基本的な問題として、中国がああいう固定相場で、日本の一昔前の三百六十円で固定していたような運営を政治的にも含めてやっているというこのことに対して、私たちとしてもう既にさまざまなルートで物を言っているわけですけれども、日本の中央銀行として、どういう見解を持ちながら対応していこうとしているのか。ただ相場観で説明するだけじゃなくて、為替をどう動かしていくかというその政策として見ていく場合に、何をすべきかということですね、ここのところを説明いただきたいというふうに思います。
平野参考人 中国の為替につきまして御質問がございましたので、この点につきまして、私から若干敷衍をさせていただきたいと思います。
 まず一般論といたしまして、私どもの方から他国の為替制度そのものについてあれこれ申し上げるのは適当ではないというふうに思うわけでありますが、いろいろ御議論のあるポイントでもあり、せっかくの御質問でございますので、今後の人民元レートを見る上でのポイントということで多少申し述べてみたいと思います。
 御案内のように、中国は昨年の十一月にWTOに加盟したわけでございます。これに伴いまして、中国の産業構造あるいは国際収支の構造が今後非常に大きく変化するということが予想されております。例えば、まず貿易収支面で見ますと、関税の引き下げ等に伴う輸入の増加から、中国の貿易収支が悪化するということが一般的に予想されているわけでございます。その一方で、長期的に見ますれば、外国企業と中国企業との競争が激化する中で、中国企業の改革が進展いたしましてその競争力が高まるという可能性も指摘されているわけでございます。
 一般論として申し上げれば、私どもいつも申し上げておりますように、為替相場は経済のファンダメンタルズを反映して推移することが望ましいということであります。ただ、今申し上げましたように、中国におきましては、経済の構造改革が進む中で、ファンダメンタルズ自体も大きく変化しているということに注意をする必要があるというふうに思います。
 その意味では、ファンダメンタルズに合った為替相場を展望するという趣旨から、やや長い目で見ますれば、中国の人民元の相場自体も、より弾力的な形で動いていくのが望ましいというふうに思っておりますし、中国当局も、長い目で見れば中国の人民元相場を変動するということを展望しているというふうに私ども理解しております。
 いずれにしましても、中国経済あるいは人民元の動向につきましては、日本経済にも御指摘のように非常に大きな影響がある点でございますので、十分注意をして見てまいりたいというふうに考えております。
中川(正)委員 速水総裁、この中国元について、国際会議等でそれぞれの国から今発言が出ておりますけれども、総裁としてはこれに触れて発言をされたことはありますか。
速水参考人 国際会議の席で中国元のあり方について発言をしたことはございません。
 しかし、彼らがよく私どもに言っていることは、日本円は余り安くされると我々の輸出に影響するので困るんだというようなことを言ったりはしております。
 中国元、あれだけの大きな経済力を持った国ですから、WTOにも参加して、これからだんだん国際通貨になっていくんだろうと思いますけれども、私どもとしては、先般、中国元と日本円によるスワップ協定を成立させました。中国銀行の戴頭取が来られて、東京でそれを調印いたしました。こういうことから始まって、これから為替の取引もふえていくんではないかというふうに思っております。
中川(正)委員 私は、これはもっと日銀としても積極的な発言の機会をつくっていくべきだというふうに思うんですよ。そこから始まって、アジアの通貨をどうしていくかということを、これを大きな枠組みの中で話し合っていくという、その必要性というのはもう見えているわけですから。
 私は、そういう意味では、中国が第一歩なんだと。ここから、まずはけんかして、けんかしたことから始まって、それじゃ何とかしようじゃないか、こういうことになっていくというのが大体国際交渉の常なんですね。それを、けんかもせずに、逆に日本の円の方を余り切り下げるなというような話で、ああそうですかというようなことでは、これは将来のダイナミズムは出てこないというふうに感じたんですね。
 そういう意味で、はっきりと、日銀としては元は高過ぎるんですか、それとも安過ぎるんですか、そこのところを今の見解として正式に聞かせておいてください。
    〔委員長退席、中野(清)委員長代理着席〕
平野参考人 まず、中国当局としっかり話をしろというお話でございますが、この点につきましては、先ほど総裁からも話がございましたように、いろいろな場をとらえて相当突っ込んだ議論をしております。
 ただ、これは非常に微妙な問題を含みますので、ここで、必ずしもこういう場で明らかにするというわけにはまいりませんが、ただ、私ども、例えば中国の為替相場を管轄しております、中央銀行であります中国人民銀行でございますけれども、もう二十年以上おつき合いをさせていただきまして、その中で大きな信頼関係が築かれております。信頼関係が築かれているということは、逆に言えば、相当突っ込んだフランクな話し合いができるということでございまして、そうしたことを順次積み重ねてきておるということにつきまして、まず御理解を賜りたいというふうに思います。
 それから、人民元相場がそもそも適正なのかどうかという御質問でございますけれども、これは私、先ほど申し上げましたように、そういうことにつきまして私どもの方からお答えするのは適当ではないというふうに思いますので、コメントを差し控えさせていただきますけれども、多少、先ほど申し上げたことに加えまして、事実だけ御指摘をさせていただきたいことがございます。
 それは、例えば日本と中国の貿易収支でございます。たしかきょうのある新聞にも報道されておりますように、このところ、特にことしに入ってから、日本の中国向けの輸出というのは前年比で見ますると二けたの増加を続けている、非常に輸出が伸びているという事実がまずございます。
 それから、貿易収支はどうかということで見ますと、日本と中国本土、中国だけの貿易収支をとってみますると、二〇〇一年も赤字、日本の赤字でございます。
 ただ、日本は香港向けに相当貿易の黒字を出しておりまして、日本から香港へ出ます輸出は、その大部分が中国本土へ参ります。したがいまして、香港と中国を合わせたベースで考えますと、二〇〇一年でたしか数千億円程度の日本の赤字、ほぼ均衡している。それから、ことしに入りましての展開は、これは全く均衡しているということでございまして、申し上げたいことは、日本と中国、香港との間に大きな貿易不均衡はただいまないということでございます。
中川(正)委員 今の、海外に向けて、特に中国に向けて生産拠点を移していく日本の製造業の実態を見れば、私はこれを、ただ向こうは人件費が安いから仕方ないんだという話じゃないんだと思うのですよ。やはり為替ということの構造的なものが今それを起こさせている。それがまた製品として返ってきてデフレ要因をつくっている。その非常に大きな要因としてあるということは、まず統計的にもこれは出ているのですね。それがはっきりしているだけに、私は国益を主張すべきだというふうに思うのですよ。さっきの事務当局の話じゃないのです。
 問題は、そういう意思表示を日本がしていくということが大事なんですね。にもかかわらず、総裁が触れたことがないということ。逆に、向こうからは日本の円を下げるなと言われている。これは、何をもって日本銀行は仕事をしているのかということを問いかけたくなるような状況ですね。
 速水総裁、もう一度聞きますが、これはやはりはっきりと、元を切り上げろ、この主張をすべきだというふうに思うのですよ。向こうは日本の円を下げるなと言っているわけですから。どうしてそういう主張をしないのですか。改めて聞きます。
平野参考人 先生への直接のお答えにならないかもしれませんけれども、為替相場についてあれこれ申し上げるというのは適当ではないというふうに思いますが、ただ、先ほど申し上げましたように、相当中国と突っ込んだ話し合いをする中で、本来、為替相場は経済のファンダメンタルズを反映して動くのが望ましい、こういう共通な認識はできております。
 ただ、中国は今後、WTOの加盟の中で大きな変革が予想されている。中国当局としても、どのような変化がどのようなスピードで起こるのか、非常に大きなコンサーンを持っているというところでございます。その中で、直ちに為替相場の変動幅を大きく拡大させるというのは政策的にとりがたいというのが中国当局の立場であろうと思います。
 ただ、ファンダメンタルズの見きわめがついた段階では、やや長い目で見て変動幅を拡大する。変動幅を拡大するということは、要すれば、為替相場は市場が決めるという方向に歩み出すということでございます。そうした方向は中国当局も確認をしているところでございますし、それは実は、私どもも含めまして、いろいろな国際的な議論の場で議論を重ねながら、中国当局としてもそうした認識を持つに至ったということであろうと考えております。
 その意味で、私どもは中国に対して何も物を言わないということでは全くなく、相当突っ込んだ話し合いをする中で、いわばそうした認識をつくり上げてきたということであろうと理解しております。この点につきまして、ぜひ御理解を賜りたいというふうに考えます。
中川(正)委員 私が言っているのは、総裁が言うべきだと言っているんですよ。やはりそういう情報発信すべきだと思いますね。向こうが日本と同じようなシステムを持っているんだったら別だけれども、これは固定で、スネークである範疇というのはあっても、その基本は政治的に動かしているということでありますから。それに対してこちらもやはり見解を持って、ファンダメンタルズに対してどうなのかという主張はすべきだと思うんです。
 さっきの話だと、そういう今のようなことから、変動相場、いわゆる市場メカニズムに持っていこうよと言っているだけで、それは日本の意思じゃないです。そんなのは当たり前の話。成熟してきたらそうなる。ところが今は固定されているわけだから、それに対して日本の意思はしっかり発すべきだ、この話をしているんですよ。そういうような心構えで、ひとつ日本の国益というのを代表していただきたい、また、はっきりと日本が何を考えているのかということを表明していただきたい、このことを申し上げているんです。総裁、ちょっと答えてください。
速水参考人 中国の人民元が、まだ国際通貨の仲間入りをしていないわけですから。これから入ってくるんです。そういうふうになってきたときに、今、フロートの国際通貨の市場の中で、固定相場で変動幅が非常に狭いものはおかしいということは彼ら自身もおのずからわかって、変えてくることは自然な動きだと思っております。その辺のところは、御指摘のお気持ちはよくわかりますけれども、やはり物事に順序がございますから、今、そういうことだけを言ってみても、それは通用しないと思います。
 私ども、さっき申し上げたように、今、人民元と円との預け合いのスワップをやっております。人民元の方で資金がショートしたりしたときには、私どもの方で預かっております円建ての預金を引き出して使うことができるといったような、そういうスワップ協定が調印されまして、これは非常に大きな、やはり両国の歩み寄った制度ができたというふうに考えております。こういったところから始まって、いろいろな、為替の問題、貿易の問題についても話し合いが行われていくことだというふうに思っております。
 中国の方は、御承知のように、非常な勢いで今伸びておりますけれども、セントラルバンキングとか通貨政策とか、そういう面では、私どものところへ随分いろいろな形で、教えを請うなどという大きなことは申しませんけれども、日本はどうやってこういうふうになってきたのかといったようなことを、非常に丹念に勉強しておられます。そういういろいろな機会がありますから、お話をすることはよくできますし、また、BIS会議などには、バーゼルに人民銀行の総裁も時々来ておられますから、もちろん十カ国の中には入っておられませんけれども、一緒にお話をする機会はございますので、そういうところでいろいろな話を、公の席ではないかもしれませんけれども、いたす機会は幾らもございます。
 そういう空気になっておりますから、余り御心配いただく必要はないと思っております。
中川(正)委員 これは、私の気持ちだけを最後にこの為替の問題では申し上げますが、実は、うちの県に、私は三重県なんですが、この間シャープが液晶の工場を、もともと一つセンターがあるんですがそれに関連する工場を立地することを決めました。最近、地方自治体は死に物狂いなんですね。この立地に対して、三重県は九十億円からの補助金を出すんです。うちの知事とその議論をしていましたら、結局競争相手は国内のあちこちの話じゃないんだと。中国、東南アジア、この選択肢に対して、何とか日本で生産を続けていきたい、その生産拠点というのを日本に置きながら次の技術革新と、それから根っこというのをこの国から他に持っていきたくないという、そのシャープの気持ちを組み込みながら、そうした判断をしたということなんですね。各企業、これは死に物狂いなんです。
 企業のサイドの話を聞いていても、これはそんな、合理化しろとか人件費をどうこうとか、国内の中での構造改革とかということを既に超えているんだ、やはり為替なんだと。そういう死に物狂いの誘致活動と勝負をしている感覚からいうと、さっきのようなお話というのは、本当に他人事というか、国民にとっては響いていきませんよ、これは。どこのセントラルバンクなんだと思う。我々、一体何を信頼していったらいいんだというような、そうしたことにつながっていくスタンスだと思うのです。これは、恐らく中国に対しては、セントラルバンクというか日銀だけの話じゃない。外務省そのものが、私は今外務省でも議論しているんですが、外務省そのものがそんなような体質があるんですね。それをトータルで受け継いでいるんだろうなというような感じを受けました。
 物事を始めていくのには、本当に言うべきことを言って、その中から対立した意見がぶつかって、それからが、それじゃどうしようかという話が出てくるんで、やはりこれが世間に見えないと、それをやっているんだということを国民に見せないと、さっきの存在感につながってくるわけですが、一体日銀どうなんだという話になってくる。このことを改めて指摘しておきたいというふうに思います。
 次に、国内の話に移っていきたいというふうに思うのですが、もう金利でやるべきことをやって、いわゆるゼロ金利、底をはっているということから、今度は量的緩和でやっていますよというのがさっきの説明だったわけであります。ところがその金利、ゼロ金利ではあっても、これはよく指摘されることでありますが、デフレ化でいけば、なかなか、実質金利というのがアメリカ等と比べてもこれは高いじゃないか、こういうことがあるんですよ。やはりこれは金利自体を、もうやるべきことをやったからこれ以上はという今の日銀のその議論に対して、私ももう一つ疑問符があるんです。日銀としても努力すべきところはまだ残っている、これはあるというふうに思うのですが、どうですか、もうこれは金利はこれですべてですか。
白川参考人 お答えします。
 日本銀行は、昨年三月に当座預金をターゲットとします、いわゆる量的緩和という方式を採用しまして、先生御指摘のとおり、そのもとで流動性をしっかりと供給するという政策をとってまいりました。短期金利については現在もゼロということで、これは短期の金利、例えばきょう借りてあした返すという金利だけじゃなくて、一年物、二年物、あるいは三年物の国債まで含めて、ほとんどゼロに近いという水準にまで下がる程度にまで潤沢に流動性を供給しております。
 その際、短期金利がもうゼロだからこれ以上何もないというふうなことではなくて、日本銀行としては、いわゆる時間軸ということを採用しました。つまり、現在のこういうふうな政策を将来消費者物価が安定的にゼロ%以上となるまで続けますよという、これは内外の中央銀行でそういうことをやったことは一度もございませんけれども、そういうことを事前にアナウンスして、そういういわば政策を新たに繰り出して、今努力をしているということでございます。
 それから、実際にマーケットで、例えばことしの三月がそうでございますけれども、非常に不安な心理が台頭しまして流動性が高まるというときにはまた流動性を供給する、これは非常に目に見えない形ではございますけれども、経済の底割れを防ぐという意味では大きな効果を生み出しておるというふうに思います。
 これは、先生御指摘のように、しかしそれで積極的に需要がなかなかつくれないじゃないかということでございますけれども、しかしそれは、先ほど総裁が冒頭御説明しましたとおり、さまざまな構造的な問題があって、それは日本銀行として決してこれ以上何もやることはないというふうに逃げているわけではございませんで、それが経済の現実である、これはこれで、一生懸命しっかりと説明することも必要であるというふうに思っております。
 それからもう一つ、日本銀行としてどういうことをやっているのかということですけれども、先ほどは金利あるいは量という全体的な話を申し上げましたけれども、あともう一つ私ども、企業金融の面でいろいろな努力を重ねております。
 この数年来、金融市場では資産を担保とする証券、あるいはCP、コマーシャルペーパー、こうしたもののマーケットが少しずつでき上がって大きくなっております。日本銀行は、こういうものを担保として資金を供給するという方式を去年来、拡張してきておりまして、これも非常に地味な方法ではございますけれども、企業金融を支える、そのために日本銀行として何ができるかということについて一生懸命考えまして、知恵を絞って導入したものでございます。これからも、そういう金融政策、日本銀行の持っている手段でどういうことができるか、これは一生懸命考えていきたいと思います。
 ただ、繰り返しになりますけれども、日本銀行として、一国のセントラルバンクとして経済の状況がどうであるかということもあわせてしっかり説明する義務があるということで、先ほど総裁が申し上げたということでございます。
中川(正)委員 一方で、量的緩和ということをやっている。預金残高十兆円―十五兆円、これは維持しているということ。しかし、最初の報告にあったように、必ずしもこの政策が、じゃ市中の貸出残高を伸ばしているかということになると、そうでもない。本当の意味での市中の中での量的緩和につながっていかないということですね。これが構造改革が進んでいないからだというような説明で終わっているわけでありますが。
 この今の日銀のとっている、残高を十兆円―十五兆円のレベルに維持するというのは、これはある意味では緊急事態に備える保険みたいなもので、まさかのときにはこういうことで安定をさせられる、いわゆるシステミックリスクに対する対応とはなっても、今の構造では本来の量的緩和、市中に対する量的緩和にはなっていないということが、現実に統計上出ているということですね。
 では、この後、もうそれは政府の責任ですよ、我々これ以上のことはできませんよというようなスタンスというのは、今これは報告書に出ているんですが、本当にそうなんですか。もう全然オプションはないんですか、ほかに。
白川参考人 お答えします。
 経済をこれから活性化していく上で、日本銀行あるいは金融政策として何かできることがあるのかという御質問でございます。
 こうした政策議論につきましては、学者あるいはエコノミストの間でいわゆる非伝統的金融政策という言葉でくくられておりまして、例えば、もっと長期国債を買ってもいいんじゃないかとか、あるいは人によっては株式とか不動産、こうしたものを買ってもいいんじゃないか、そうした議論があることは議論としては承知しております。
 しかし、冒頭申し上げましたとおり、まず中央銀行としてきちんとやるべきことは、経済全体にしっかり流動性を供給してそれが経済全体にしみ渡るように努力をする、そこに最大限努力するというふうに思っております。その面で、現在、日本銀行、今申し上げたような資産を買って流動性を供給しないといけない、つまり、手段がないために流動性が供給できないという状況ではないというふうに考えております。
 それから、一部の学者あるいはエコノミストが言っているような政策、これについても、もちろん私ども、そうした政策の持つあり得べきメリット、それからあり得べき副作用について、慎重に、一生懸命勉強しながら検討しております。
 ただ、こうした政策を考えてみますと、二つのことが言えるのかなという感じがいたします。それは、効果があるかどうかについても非常に不確定でございますけれども、しかしそれ以上に、非常に副作用の方が大きいのかなというふうに思っております。それからもう一つ、そうした政策は、果たしてこれは中央銀行としてやるべき政策なのかどうか。つまり、その政策の性格を考えてみますと、それはかなりの程度ミクロの資源配分に介入していくような、そういう政策でございます。すぐれて財政政策の領域に近い政策でございまして、そうした政策というのは、本来は国会で決めて、国会の意思としてやるような、そういう財政に近いような領域に、そういう世界に中央銀行が入っていくということになってくると思います。
 いずれにせよ、そうした政策も含めて、あり得べき効果とその副作用ということを一生懸命考えて、日本銀行はどういう政策がいいのか、これを毎回の金融政策決定会合で一生懸命議論して、現在の政策スタンスが最も適当であるというふうに考えておる次第でございます。
中川(正)委員 結局、数字で見ていると、こうして預金残高をある一定のレベルに保っているというのは、市中銀行から国債を買い入れて、その国債を吸収しながらこの数字を保っているということですよね。だから、銀行としても、だからといってそこで貸し出しが伸びる、あるいはそうした反動がつくということじゃなくて、もっと違ったレベルで本来のマネーの供給というか、あるいは量的緩和というのは直接市中へ向いて出さなければいけませんね、そんな話なんだろうと思うんです。
 結局、みずから言っておられるように、もう今の時点でこれまでの中央銀行としての枠というか、それが持っている手段というか、金融手段、そういうものを超えた形でもう歩み出しているということだと思うんですよ。たまたま、国債が今ずっと膨張している中である程度長期金利が安定をしながら均衡を保っているというのは、この今の日銀の動きというのが非常に影響しているんだろうと思うんです。例えばこれが一たんとまって、国債の買い手がもう飽和状態になってくるというふうなことが出てきたときに、じゃそれは次どこへ回していくんだというような議論が、もう既にあると思うんですね。これをいつまで続けるのかということが、もう本当に国としての命運を左右するような、そうした局面にもなっているんだろうと思う。そうであるにもかかわらず、その次の手段でいったら、これをやっていいものかどうかまだ迷っている、こういうことなんです。
 だとすれば、皆さんだけで考えていないで、基本的にこうしたいんだという話を一遍国会に持ってきたらどうか。直接、もうこれまでの常識的な範囲を超えて踏み出すオプションを中央銀行としては持っていいのかどうかということを、我々に対してどうして提示をしながら一緒に考えようというスタンスが出てこないのか、これが不思議で仕方ないんですよ。この報告書というのは、まさにそれを私は期待しているんです。どこまでやるのか、どこまでやるべきなのかというのを我々と一緒に議論しましょうよということなんですが、総裁、どうですか。
速水参考人 私ども、金利を下げられるところまで下げた後、量的緩和ということで昨年の三月から始めたわけでございますが、長期国債を買い入れて、これも買い入れ額をフロム・タイム・ツー・タイムにふやしていって、今一カ月一兆円ということで、長期国債の買い入れが現在で五十二兆円ぐらいの残高になっておりますけれども、前年に比べますとかなり膨らんでおります。
 この主たる操作目標は、日本銀行の当座預金残高、そして、日本銀行の当座預金残高を今十兆から十五兆円までというふうに決めておるわけですけれども、その辺の操作ができるのは、やはり国債の売買とその他のオペを、毎日売ったり買ったりしながら必要な資金の調整をやっているわけでございまして、資金量としては十分それで供給がついているというふうに思っております。
 中長期国債を買うにつきましては、御承知のように、銀行券発行残高を長期国債保有額の上限とするということで、今、銀行券が約六十八兆ぐらいでございますから、まだかなり上は、あいていることはあいております。
 それと同時に、現在の金融市場調節方式というのは、やはりデフレ対策で資金を量的に潤沢に供給するということが主要な目標になっておりまして、それをいつまで続けるのかということにつきましては、消費者物価の指数が、前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまではこの資金供給方法を続けていくということを条件づけておるわけであります。こういう条件をつけながら、必要な日々の資金を供給し、吸収し、調節を続けている、これが私どもが今やっている金融政策であるというふうに御理解いただきたいと思います。
    〔中野(清)委員長代理退席、委員長着席〕
中川(正)委員 ちょっと質問に対して的確には答えていただけなかったんですが、言わんとするところは、やっていることが異常である。日本の経済そのものが異常なんですから、そういうことの中で、とうとうこれまでの規律をはみ出していろいろなことをやらなければならないオプションが出てきましたよということは、ちまたでは話が出ている。また日銀の中では議論があるんでしょうけれども、これは、日銀だけがやっていったら日銀の責任になる、総裁の首が飛ぶじゃないか、こういう話になる。
 だとすれば、これはこっちへ出してきたらいいんですよ。そのときのリスクと政策オプションというのは、もっとはっきりと、国民的な議論を呼んで、その中で、ここまで行くのは危ないから、だから財政規律も考えていきましょう、それから政府としての政策も危機感を持ってやりましょう、こういう話になるんですから。そこのところを、存在感を持って、政策オプションをしっかり提示して国会で一緒に議論をしましょうという、そんなことにしていきましょうというのが私の提案なんです。
 ぜひひとつ考えてみていただきたい。でないと、これは、みんながこもってしまって、いつの間にか日銀が全部悪いんだという話になりますよ。というようなことを一つ指摘しておきたいというふうに思います。
 それから、ペイオフなんですが、これは日銀からいただいたマネーサプライの統計を見ていても、M1が非常に大きく、これは前年比ですから、一般的には前年比五%から一〇%の間で伸びているのが、急に二五%レベルになって、三〇%近くまで一挙に伸びたということ。これは、定期預金が取り崩しがあって、それが一般の預金に回ったということの証左なんですが、これはもう一回、ことしから来年にかけてあるんですね。
 どうですか、日銀が見ていて、市中銀行、特に地方の信金、信組はもちろんのこと、第一、第二地銀まで、これは耐えられる状況かどうか、次のこれが入ってきたときに。どのように分析されますか。
速水参考人 ペイオフということですけれども、民間の金融機関が預金者から預かる預金を、政府がそれを常に全額保証するといったような保証制度というのは、これは極めて異常なものなんですね。むしろ、民間の金融機関が競い合って、それぞれの預金者からの信頼を競い合って預金をとって、それをいい貸し出しに回し、いい運用にして銀行の収益をふやしていく、あるいは拡大していくといったようなことになる性格のものでありまして、数年前にこういうペイオフという銀行の預金を保証する制度ができたわけですけれども、これはやはり、正常化しつつあるときにはなるたけ早い時期にペイオフを解除していくのが当たり前だというふうに思っております。
 ことしの三月にああいう形で、一千万円を超える定期預金、これはペイオフのそういった意味での保証をしないということになったわけですけれども、それでかなり定期預金の残高が減って流動性預金がふえたり、あるいは小さい銀行から大きい銀行に預金が多少動いたり、そういう経緯は確かにありました。しかし、そういうことをやりながら、やはり正常化していくという意味では、これはなるたけ情勢が整ったときに解除していくべきものだというふうに思っております。
 来年の三月にペイオフ解除ということを決めておるわけでございますから、まだそれまで約八カ月ほどございます。その間に、やはりそれぞれの金融機関が自分たちの今問題にしている課題を早く解決していくことによって、例えば不良貸し出しがあるなら、多過ぎるならばそれをいろいろなことを考えて減らしていく、あるいは貸し出しをもっとふやして収益をふやしていくといったような努力をしていくことが大切なのであって、すべて政府の庇護、保護に任せるという、戦後、護送船団方式というのがあったわけで、その考え方自体が、やはり資本主義のもとでのバンキング、銀行業務というものとは少し相入れないものがあったんだというふうに思います。それを今、グローバリゼーションの時代でございますし、自由化して海外からも入ってくる、日本からも出ていくというときに、同じ条件で競争をしていくということがあるべき姿だと思います。
 そういう意味では、来年三月に、これも一年延ばしたわけですけれども、ペイオフ解禁をするということを決めておるわけでございますから、そのつもりでそれぞれの銀行が、あと残された八カ月の間に自分たちのバンキングを正常化し、健全化していく努力を懸命になってやっていくということが一番大切なことであって、今から延ばすとか延ばさないとかいうようなことを議論するのは、私は余り適当でないというふうに思っております。
中川(正)委員 ここでもう一つ、一言申し上げておきたいんですが、私たちも、基本的にはペイオフ、これはもう決着をつけるべきというふうに思っているんです。ところが、中央銀行としては、さっきの精神論はわかるんですよ、それは基本理念みたいなものはわかる。しかし、それだけで解決できないところがあるんですよね。
 何をやはり示してほしいかというと、実際に出したときに、これがどのような形で具体的に金が動くか、預金が動くかということですね。それを前提にした上で、やはり地方経済にとっては非常に大きなインパクトが出るだろうと思うんです。時と場合によっては倒産を覚悟しなければならないような、それでなくても信金、信組はどんどんつぶれているわけですから、それを加速させるような動きになるんだろう、数字的に見ていくと。そういうようなところがはっきり出てきたら、それに対する次の対策というのは打てるんですよね。
 今、何が悪いかというと、やるべきことはやらなきゃいけないんだ、整理するところは整理しなきゃいけないんだということだけで物事が終わらないということ、そこなんですよ。だから、次の議論が出てこない、お説教ばかりしているわけだから。そこの議論を起こすためにも、次のステップに、地方経済というのを、どういうふうに地方金融をやっていったらいいかという、そこへ向いて入っていくためにも、はっきりとした日銀なりのデータ、予測、それから説明、もっと言えばこんな施策もあるんじゃないかという提言、そんなものもひとつ出てきていいんじゃないか、知恵を出してくださいよということなんですよね。
 政治が知恵を出すと、もうやめておこう、地方銀行だけは特別に、違った基準でやろうというふうなことぐらいしか出てこないんです。そうじゃなくて、エキスパートとしてはもっといい知恵が出てきてもいいじゃないですか、そういう話なんですよ。そこのところをひとつペイオフについても期待を申し上げたいというふうに思うんです。さっきの話はよくわかるんですが、お説教したって始まらないというところまで来ているんだということですね。
 それから最後に、通告してあるので聞きますけれども、朝銀の問題ですね。
 これは、いろいろ報道されておりますように、もう日銀が既に六千六百億円出しているということですね。こういうときに、もう既にこれは破綻が出てきたときに、海外への不正送金であるとか、あるいは朝鮮総連とのさまざまなややこしい関係とかというのは指摘されていたレベルの話なんですよね。にもかかわらず、チェックなしで、要るものは要るんだ、仕方ないんだ、後で取り返せるからといってどんと出す。取り返せるといったって、それは結局のところ、公的資金がもう一回向こうから回って、それが日銀に入ってくるだけの構造になってしまっているわけなんですね。
 だから、一番もとのところで、日銀のところで物事を判断するのに、新しい価値基準、ただ機械的に入れるんじゃなくて、つぶれたからとりあえずのところ使ってくださいと機械的に入れるんじゃなくて、その中にあるさまざまな情報を加味した上での判断というのは必要なんだろうというふうに思うんです。それができていたかどうかということ。
 それから、そうした意味では、私はこの朝銀の問題というのは、もっとはっきりするまで公的資金を入れるべきでない。ないということは、結局は日銀に金は返ってこないということにもつながっていくわけですが、それであっていいんだというふうに思っているんですが、これについてはどのように見解をお持ちですか。
三谷参考人 お答え申し上げます。
 今の御指摘の朝銀関係の話でございますが、一点ちょっと訂正させていただきたいのは、たしか以前の新聞記事だったと思いますけれども、日銀が朝銀に六千六百億円程度融資しているというのは、これは必ずしも正確ではございませんで、日本銀行が今特融で出しておりますのは、朝銀近畿信用組合に対して、最近のところで二千億円弱ぐらいの特融を出しているというのが正確なところでございます。
 それはそれといたしまして、今先生の御指摘の件でありますけれども、この朝銀近畿信用組合に対する特融というのは、当時、預金等は全額保護するんだ、そういう大前提の、大きな方針のもとで、御承知のとおり、金融再生委員会及び大蔵大臣の要請を受けまして、朝銀近畿の預金払い戻し等に必要な資金を信用秩序維持の観点から特融として貸し付けてほしいという話がございました。
 もしこの時点で、預金は保護しない、預金払い戻しに要する資金も特融で出せないということになりますと、その瞬間に預金の払い戻しができなくなり、全額保護というスキームも崩れ去ったということでありますので、私としては、この時点でこういうことをしたということ自体は、当時の環境からすると、当然せざるを得なかったというふうなものだと考えております。
 さらに、では返ってくることがない方がいいんじゃないかというお話でございますけれども、私どもとしては、特融を要請を受けましたときに、預金保険機構等による資金援助は実施される、それまでやってくれということでございましたので、そこは政府の方で、しかるべき、どういう形になるのか、まだ私ども、詳細が決まっているわけではございませんけれども、その最終的な処理方針というのをお考えになっていただけるのだというふうに考えております。
中川(正)委員 以上、終わります。ありがとうございました。
坂本委員長 次に、佐々木憲昭君。
佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 初めに、景気の現状について、どう見るかということについてお聞きをしたいと思います。
 先ほどの速水総裁の概要説明の中で、ことしの春以降は、海外経済の回復を背景に景気悪化のテンポは緩やかになり、最近では、輸出がはっきりと増加し、生産も持ち直すなど、下げどまっていますというふうに述べておられました。また、先行きについては、海外経済の回復基調が続けば下げどまりが明確になっていくものと予想されます、こういうふうに説明をされたわけであります。
 これは要するに、外需主導型の下げどまり、簡単に言いますとそういうことになると思うわけですけれども、もう一度その基本的な認識について、その点お聞きをしておきたいと思います。
速水参考人 先ほども御説明させていただいた次第でございますけれども、現在の経済情勢につきましては、国内需要は依然弱い、しかし輸出や生産面の明るさが増してきて、企業の収益や業況感も改善するなど、全体としてほぼ下げどまってきたと見られる。輸出は大幅に増加しておりますし、生産もはっきり持ち直しております。企業収益は、そういった面で回復に転じつつあることも示されております。先日公表した短観でも、企業の業況感の改善が確認されております。雇用面でも、所定外の労働時間や新規求人といったような限界的な部分で雇用改善の動きが続いてきております。しかし、民間需要につきましては、まだやはり、設備投資が引き続き減少しているということ、個人消費も全体として弱目の動きが続いているということ。
 今後、景気は下げどまりが明確になっていくものと考えられますが、構造調整圧力の根強さなどを踏まえますと、しばらくの間は景気は自律的な回復力に乏しい展開となる可能性が高いと思っております。
佐々木(憲)委員 内需の中心がしっかりしていない、しかし外需と生産という点で多少の下げどまりが見られるということでありました。
 それでは、外需主導といいますか外需依存というのは、今後安定していくのか、伸びていくのか、この点が大変重要だと思うわけですけれども、先ほどの御説明ですと、米国株価の下落などを背景に、六月中旬以後、株価がやや軟調に推移しているほか、為替相場も、ひところに比べてドル安・円高の動きとなっています、こうした市場の動きが行き過ぎ、金融・資本市場が大きく不安定化すると、改善傾向にある我が国経済にも悪影響を及ぼすおそれがあります、こういうふうに指摘されていますね。
 実際に最近のアメリカの株の急落などを見ますと、順調な輸出というふうにはなかなか、今後の想定としてできるのかどうか、この点がやはり疑問に思うわけでありまして、外需の今後の見通しという点についてどういう認識をお持ちか、お聞きをしたいと思います。
白川参考人 お答えします。
 外需の動向でございますけれども、まずは、一番大きなアメリカ経済でございます。
 先ほど平野からお答え申し上げましたように、アメリカの経済につきましては、現在、若干の不確実な要因もございますけれども、実は今、アメリカの経済について見方が大きく分かれております。
 その分かれ方というのは、マクロの経済データを見てみますと、これは、アメリカ経済、今比較的順調に回復をしているという数字が現実に出ております。しかし、一方で、今佐々木先生御指摘のとおり、株価の動きあるいはそういう金融市場の動きを見てみますと、先行きのアメリカ経済について、疑問が出てくるような、そういう動きが出ておりますし、それから、アメリカの企業経営者も概して慎重に見ているということで、現在、アメリカの中では、どっちの見方が正しいのか、実体経済の数字の方に収れんするのか、あるいはマーケットに収れんするのか、二つの見方がございますけれども、現状では、アメリカ経済はこの後回復をしていくというのがエコノミストの間での多数意見であるかなというふうに思っております。ただ、いずれにしても、これは決め打ちはできませんので、私どもとしては注意深く見ております。
 それから、もう一つ日本にとって重要な輸出先はアジアのマーケットでございます。アジアのマーケットの方はアメリカ経済に比べて若干強目で今拡大しておりまして、私ども今注目していますのは、アジアとアメリカの関係だけではなくて、実はアジアの域内で今割合貿易が活発になっておりまして、アジア域内の内部的な力というのが従来に比べて強まっているような感じもいたします。しかし、そうはいっても、最終的にはアメリカ経済の動向に依存する面も強いようにも思いますので、そこも含めて注意深く見ております。
 そういう意味で、足元は、輸出、生産ははっきりと持ち直しておる、しかし、先行きについては前月に比べますと若干不透明な要因が高まっているということで、そうした判断をつい最近公表したところでございます。
佐々木(憲)委員 先行きが不透明ということになりますと、やはり、外需依存型といいますか、あなた任せというか、そういう回復ということでは心もとないわけでございまして、肝心なのは、やはり内需をどう安定して拡大していくか。これは政府の政策にもかかわる問題でありますけれども、特に設備投資と個人消費、これをどのように活性化するかというのが大変大きなかぎになると思うんですね。
 総裁の御説明ですと、持続的な景気回復のかぎを握る民間需要については、設備投資が引き続き減少しているほか、個人消費も全体として弱目の動きが続いており、まだ回復へのはっきりした動きはうかがわれません、こういう状況ですね。また、こういうふうにも述べておられるわけです。企業の投資や家計の支出が十分活発化するには至っていないことも事実ですと。これですと、なかなか力強い回復というふうにはなりにくいと思うわけですね。
 まず、設備投資について確認をしてみたいと思います。
 内閣府のGDP速報によりますと、民間企業設備投資は、昨年十―十二月期は前期比でマイナス一二・〇%、ことし一―三月期ではマイナス三・二%。ことしの一―三月期を前年比で見ますとマイナス一一・五%で、大変大きな落ち込みでございます。財務省の法人企業統計で見ましても、前年同期比で、昨年の十―十二月期ですね、この時期はマイナス一四・五%、それから一―三月期はマイナス一六・八%と大変な落ち込みであります。このような傾向は内閣府の法人企業動向調査報告にもあらわれております。
 日銀短観ではどうなっていますでしょうか。この数字を確認しておきたいんですが、十三年度の実績見込み、それから十四年度の計画、これは数字はどうなっていますでしょうか。
藤原参考人 お答えいたします。
 先ほど私どもが発表しました六月短観の設備投資計画ですが、先生御質問の数字は、大企業でいいますと、十三年度は前年比マイナス八・九%でございます。それで、それが十四年度にはどうなるというふうに数字であらわれているかといいますと、マイナス六・七%というふうに減少しております。中小企業はどうかといいますと、十三年度のマイナス四・三%に続きまして、十四年度もマイナス九・三%と、減少するという計画になっております。
 この調査時期は、まだ企業が投資計画というものを決め切っていない時期でして、したがって数字が低目に出る傾向があるわけですけれども、であるとはいいましても、企業の投資姿勢は基本的にはなお慎重であるということはここからも推測できるところであります。
 この設備投資がどうしてこういうふうなふざえな計画になっているか、私どもとして詳しく分析したわけじゃありませんけれども、考えられる背景といたしましては、まず、企業の先行き見通しが、それ自体が依然慎重であるということで及び腰であるということ、それからもう一つは、過剰債務の圧縮といった、リストラの動きが依然として続いているということが挙げられます。
 一方で、同じ短観では、そういう計数評価のほかに判断基準というものがありますが、設備投資がどうなっていくかという関連でちょっとだけ申し上げますと、生産の持ち直しを受けまして、設備投資への影響が大きくあらわれる企業収益は、現在は回復に転じつつあるという数字上の結果が出ております。
 こうした中で、設備投資の先行指標である機械受注等の一部には下げどまりの動きが見られているということも、これまた事実でございます。これは、内閣府及び財務省の設備投資に関する調査からちょっと動意が見られる点じゃないかと個人的には考えます。
佐々木(憲)委員 今の御説明では、全体として先行きの見通しが慎重になっている、それから過剰債務の圧縮、リストラで設備投資が慎重になっている、こういうような話であります。
 日銀短観で、全体としての、十三年度の実績見込みはマイナス五・六で、十四年度の計画ではマイナス七・六というふうに見ておりますけれども、今、大企業と中小企業に分けた数字の説明がありました。この中で、私は、特に中小企業の先行きの設備投資の計画、これがマイナス九・三というのは非常に大きいと思うんです。低目に出るという話がありましたが、それにしても、大企業の方はマイナス六・七、これもまあ大きいことは大きいわけですよね、それ以上に中小企業の落ち込みというのが非常に大きい。
 これはなぜそうなるのか。いろいろな理由があり得ると思うんですけれども、最終消費市場である個人消費が低迷していて、それに非常に近い、密接に関連のある中小企業、その設備投資が落ちているという面。それから、中小企業の債務、経営が非常に厳しい状況の中で返済が滞るということで不良債権化する、それを処理するということで貸し出しが一層厳しくなる、資金回収が深刻になる、こういうことで中小企業の経営環境というのは非常に大手の企業に比べますと深刻な事態になっているのではないか、それがこういう形で反映しているのではないかというふうに思われますけれども、その点はどのように見ておられるか、お聞きをしたいと思います。
藤原参考人 お答え申し上げます。
 私どもは、これはあくまでも計数の調査及び判断基準の調査でして、そこから推測するしかないわけですけれども、大きく分けまして、先生が今御指摘になりましたように、中小企業は、大企業に比べまして、個人消費につながる部分が多いジャンルが大宗であるということ、そのとおりだと思います。
 もう一つは、大企業に比べまして、やはり現在の債務の返済に苦慮しているということも事実だと思います。
 それから、中小企業にもいろいろな規模、内容がありますが、いろいろな産業構造の変化の中で衰退していくジャンルのものが、非製造業を中心に、中小企業には多いということも言えるかと思います。
 規模で見ますと、零細に近い中小企業の方に特にそういう現在の傾向があらわれているかと推測しております。
佐々木(憲)委員 企業倒産を見ましても、今おっしゃったように、物が売れないという比率というのが、不況型倒産という項目が非常に大きい形であらわれているわけですね。最近の統計ですと七六・三%、二カ月連続して七五%を上回っております。物が売れない、焦げつきが発生したというようなことで、不況要因によって倒産に追い込まれる企業が全体の四分の三を占めているわけです。
 これはやはり最終的には、私は、個人消費そのものをどう回復させていくかということとセットで考えていかないと、なかなか中小企業だけしりをたたいてもうまくいくはずがないわけでございまして、そこで、個人消費の問題について次にお伺いしたいと思います。
 総裁も、個人消費も全体として弱目の動きが続いており、まだ回復へのはっきりした動きがうかがわれませんと先ほど述べられました。
 実際に、五月の勤労者世帯の消費支出を見ましても〇・四%のマイナスであります。二月、三月のマイナスから、四月にはプラスになったんですが、五月になりまして再びマイナスになるということで、大変消費の低迷というのが明確に出てきているわけですが、この個人消費の低迷の要因、その理由について、どのように把握しておられるかお聞きをしたいと思います。
藤原参考人 お答えいたします。
 個人消費はいろいろな点から動向をはかれるわけですけれども、わかりやすいものからいいますと、例えば、目に見えるといいますか品物から見ていきますと、乗用車販売とか、それから家電販売などには一部に底がたさがうかがわれるということが統計的に出ておりますが、しかし、御指摘のとおり、全体としては弱目の動きが続いております。
 その背景として考えられますのは、まず、企業の根強い人件費削減姿勢といったものを背景にしまして、雇用者所得が明確な減少を続けるといった家計の雇用所得環境が引き続き厳しい状況にあるということをまず指摘できるかと思います。
 それから、家計が、年金や社会保障制度のあり方、将来不安といったものを依然として抱いているということも指摘できるかと思います。
 そういった個人消費を回復するためには、したがいまして、まず経済活動の活発化に伴いまして、雇用所得環境を改善するということ、裏返しですけれども、それが必要でありますし、もう一つ、家計の方ではそういった将来不安が解消されるような施策をとっていかなければならないと考える次第です。
佐々木(憲)委員 確かに、今大規模なリストラが、昨年の秋以後、大手の企業を中心に大変な規模の計画がつくられて、それが実行されております。したがって、このリストラそのものが、全体として、雇用不安あるいは家計の所得の将来の不安というものにつながっております。
 我々は、こういう大企業のリストラについては規制すべきだ、やりたい放題どんどんやるということでは個人消費そのものを冷え込ませる非常に大きな要因になるので、ヨーロッパ並みにせめて法的な規制をやる必要があるという主張をしております。
 もう一つは、将来の家計、年金とか社会保障の不安というふうに先ほどおっしゃいました。この点も、今医療保険の審議が参議院で行われておりますけれども、二割負担から三割負担に引き上がる。あるいはお年寄りの負担がふえる、保険料がふえるということで、全体として一体どうなるんだろう、将来不安というのがやはり大きな要素として出てきておりますので、そういうことから財布のひもが非常にかたくなっていく、こういうことにつながっているんだと思うんですね。
 ですから、消費を拡大しようとすれば、私は、今までのようなやり方を抜本的に発想を切りかえて、政策の上で転換をする必要がある、そういうふうに思うわけでありますが、しかし、日銀にそれをやれということを言ってもこれは担当が違いますので、政府に言わなければならないというふうに私は思っております。
 そこで、こういう状況の中で中小企業が大変な経営難に陥って、倒産がふえているという状況でありますが、最後に、不良債権処理との関係についてお話をお伺いしたいと思います。
 この不良債権の処理は小泉内閣の一つの大きな柱の政策でありますが、我々は、不良債権はもちろん減らさなきゃならぬと思いますが、減らし方に問題があると思っております。
 といいますのは、不良債権だからといって、ともかく資金の回収を優先させていくということになっていきますと、中小企業の倒産あるいは貸し渋りを非常に広げて、倒産、廃業に追い込んでいく、こういうことにつながっていくわけでありまして、そこは慎重にやる必要がある。むしろ私は、実体経済の最終的な市場であります個人消費をどう刺激するかというところに政策の重点を置くべきだという主張を持っております。
 いずれにしましても、この不良債権処理を二、三年で最終処理をやり遂げるという政策が出されておりますから、そうすると、中小企業の側としては、どうしても新たな資金を借りるという立場からいいますと非常に困難な事態に追い込まれていくということで、実際に金融緩和を日銀が史上空前の規模で行われておりましても、銀行から先に資金が流れていかない。
 今月の八日に発表されました日銀の貸出・資金吸収動向によりますと、信用金庫を含む銀行の平均貸出残高というのが、前年同月比で四・四%のマイナスになっているわけですね。これは、比較可能な二〇〇〇年一月以降を見ますと、十八カ月連続のマイナス、つまり、全体として資金貸し出しはどんどんどんどん減っているわけです。日銀としてはじゃぶじゃぶ資金は供給しているとおっしゃるわけだけれども、中小企業には、そこから先に行かないんです。そこのところをどう解消していくか。
 これは、一方では最終需要を拡大するというのがありますが、同時に、銀行に対して一方的に不良債権処理を急げというのではなくて、やはり中小企業の実態に合った貸し出し、資金需要に即応した貸し出しということをもっと積極的にやっていく必要があるのではないかというふうに思うわけであります。その点についてどのようなお考えをお持ちか、お聞きをしたいと思います。
速水参考人 確かに、不良債権処理の促進で直ちに景気がよくなるというわけではないと思います。短期的には、むしろ、倒産とか失業の増加を通じて景気を下押しする要因となる可能性もあると思います。
 しかし、長い目で見れば、金融機関の前向きな信用仲介、今、貸し出しが伸びていないと言われるのは、銀行が、大銀行も中小金融機関もそうなんでしょうけれども、リスクを抱えて、それをまず償却しないと新しい貸し出しも危なくてできないといったようなことが現状なんでありまして、不良貸し出し処理というのは、そういった根っこにあるものを早く落としてしまう必要があるということで、これはやはり構造的な問題でございます。
 これができないために、日本の銀行、大銀行も地方の中小金融機関も預金者からいま一つ信頼が得られない、あるいは競争相手からも信頼されないといったようなことが起こっておるわけで、金融機関の前向きな信用仲介、資源の有効活用といったようなものを可能にして、持続的な経済成長を実現していくためには、やはり不良債権処理というのは不可欠なことだと思うし、それこそ今やるべきだというふうに思います。
 加えて、金融機関の信認向上につながっていくならば、株価上昇などを通じて比較的早目に景気への好影響が期待できるとも言えましょう。
 金融機関が企業の実態を十分見きわめて対応すべきことは当然でありますけれども、不良債権処理の手を緩めることは、かえって経済にはマイナスになると私は思っております。
佐々木(憲)委員 そこが根本的に我々と姿勢の違う、政策的な視点の違う点でございまして、実際に、早く落としていくというふうにおっしゃいましたが、昨年来、大変な規模の不良債権処理をやりました。ところが、残高を見ますと逆にふえているわけですね。
 なぜふえているかといいますと、実体経済の悪化はもちろんありますが、不良債権処理をやれば、中小企業の経営が一層深刻になり、消費が冷え込み、逆に不良債権がふえていくという結果をもたらしているのではないか、そういう悪循環になっているのではないか。やはり根本的にその点をぜひ考えていただきたいというふうに思うわけです。
 それからもう一つは、銀行の行動そのものについても、やはり中小企業に対する貸し出し姿勢の改善ということ、この指導をぜひやっていただきたい。
 総裁も、相対的に信用力の低い企業の資金調達環境がなお厳しい状態にあることも確かです、このため、金融機関行動や企業金融の動向には引き続き十分注意していく必要があると考えています、先ほどそういうふうに御説明になりました。
 つまり、金融機関行動、これはやはり信用力の弱い企業の調達ということを考えた場合、この貸し出し姿勢というのが大変大事なことになると思うので、一体どのようにここのところを改善していく必要があると考えておられるか、この点について最後にお聞きをしたいと思います。
速水参考人 中小企業に対する貸し出しが伸びない、あるいは借りられなくて地方で非常に苦しい思いをしているということを随分あちらこちらで耳にいたします。貸し出しをやっても、やはりリスクのある貸し出しは、民間の金融機関である限りなかなか貸せないものだと思います。
 私は今、機会あるごとに、講演会やあるいは金融機関の方々と話し合うときに申しておりますことは、中小企業の取引先で、ぜひそれを育てていきたいというお気持ちでおられるときには、よく経営者と話し合って、今のこの仕事をこうやってこのまま続けていて続けられるのかどうかということを、本当に親身になって相談相手になってやるということが一番大事ですよと。そういうことができないでずるずる延ばしても、先行き見込みのない、競争にも勝てないといったような中小企業をそのまま続けていくということにはやはり無理があると思うんですね。その辺のところは、これなら新しい需要がくっついていけるといったようなものを銀行、金融機関の立場からいろいろ考えてあげるとか紹介してあげるとか、そういったことを借り手の立場に立って考えてあげることが必要だというふうに思います。
 ただ、今これを、生き延びるためにお金を出して、それがプラスに使われていくならいいですけれども、そのままで、先行きの当てもなしに中小企業が現状のままの仕事を続けていくというのであれば、やはりそれには無理があると思うんですね。その辺のところは、世の中が変わり、経済の基本が変わりつつあることを認識してもらわなければだめだと思います。
佐々木(憲)委員 これで終わりますけれども、中小企業の経営というのは、経営者そのものの責任というよりも、むしろ今は業況全体が悪化しているわけでありまして、それをどう支えていくかということを考えていかないと日本経済そのものが底が抜けてしまうという状況になるわけで、それをやはり金融面で支えるという姿勢が銀行にとって大変重要なポイントだと私は思っておりますので、その点を最後に述べまして、終わりたいと思います。ありがとうございました。
坂本委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時八分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時四分開議
坂本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。藤島正之君。
藤島委員 自由党の藤島正之でございます。
 まず最初に、最近の経済指標といいますか、先ほどの報告にも一部触れられているんですけれども、景気は底を打ったといいますか、若干回復の傾向の数字があるというふうに経済指標的には言われているんですが、我々、地方を回ってみますと実感としては大変よくない、とても底を打っているとか回復の傾向にあるとは思えないし、実感としてまだむしろ悪くなっている、特に中小企業においてはその傾向が大変きつく出ているというふうに感じているんですが、この点について総裁はどういうふうに見ていらっしゃいますか。
    〔委員長退席、中野(清)委員長代理着席〕
速水参考人 昨年来、内外の中央銀行の歴史に例を見ないような思い切った金融緩和政策をやってきているわけですが、その結果として、オーバーナイト金利とか、やや長目の短期金利とも、ほぼゼロまで低下しております。マネタリーベースの前年比は二七%、三割弱ですが、高い伸びを示しております。これだけの資金を供給しているわけです。
 こういった金融緩和というのは、IT分野の世界的調整、それから米国テロ事件の発生、金融システム不安の高まり、こういった我が国経済に大きなストレスがかかる中で、金融市場の安定を確保することを通じて景気の底割れ回避に寄与したと思っております。
 しかし、我が国経済がさまざまな構造問題を抱えておることはまだ御承知のとおりでございまして、企業や家計の支出活動や銀行の信用仲介機能といったようなものが十分活発化しているところまでは至っておりません。
 金融緩和が力強い効果を発揮していくためには、金融システムの強化とか経済、産業面の構造改革を進めて、民間需要を何とか引き出していくことが不可欠であるというふうに思っております。
藤島委員 私の申し上げたいのは、地方経済といいますか中小企業にはまだとても、いろいろな政府の施策なり日銀のそういった金融緩和の施策が行き届いていないんじゃないか、そういう実感がとても感じられないということについてどう思うか、こういう質問なんですけれども。
藤原参考人 お答えいたします。
 先生のおっしゃるようなことは私どもも感ずることが間々ありまして、例えばマクロの数字を見ますと、それは景気が上向きを示しているということは、そういうふうに読み取れることは歴然としている場合でも、実感はそうじゃないという面はよくあります。
 私どもは、いろいろな方から意見も伺っておりますが、中小企業の代表者の方とのダイアローグもやっておりまして、口々におっしゃるのは、この数字と我々の実感とは違うじゃないかというお話です。その辺のところを踏まえながら金融政策を運営しているつもりですけれども、何しろ私たちに与えられた金融政策のツールは、マクロといいますか、一律的に金融政策を運営していくということでありまして、そういうことを与えられた手段の中でやりながら、潤沢な資金を供給して景気全体を下支えして、あらゆる分野に回っていくような工夫を考えながら今後とも努力していきたいと思っております。
藤島委員 今のような答弁ですね。やはり実感として地方経済というか中小企業はまだ非常によくなっていないということを、マクロの数字とはまた別に、よく踏まえてこれからもやっていただきたい、こう強く要望しておきたいと思います。マクロの数字だけで安心しているととんでもないことがあり得るわけですから、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 それから、きのうの参議院の財政金融委員会で、総裁はまだ大変厳しい状況にあるというふうにおっしゃっているわけですが、それに対して柳澤金融大臣が、要路の人が不安をあおるようなことを言うべきでないとか、内外の見方より、一番知っている我々がどう考えているのかの方が大事だとか、こうおっしゃっているわけですが、この辺についての日銀総裁の再度の御意見があれば、伺いたい。
速水参考人 私、その新聞記事を読んでおりませんのでわかりませんけれども、きのうはやはり、日本の金融機関に対して内外の信認はまだ厳しいと。特に預金者からも、どこへ預金したらいいかとかいろいろ、ここは大丈夫か、初めてそういう目に遭っていることは確かなんですね。これは余り経験したことがないわけでしょうから、金融機関が非常に恐れをなしている面もあるかと思いますし、借りている方の中小企業その他の取引先が、借入人の方で、私のところは続けて仕事ができるだろうかといったような不安があることも確かだと思います。
 しかし、今やろうとしていることは構造改革なんですね。ペイオフにしても、先ほども申しましたけれども、大きな国では、ほかの国もシステムとしてはありますけれども、こんなに使っている国というのはほかにないんですね、預金を全部政府が保証するというシステム。そういうものを正常化していかないと、内外の金融機関は、やはり日本はまだこういうことをやっているのかということになるわけですね。それはなるたけ早く正常化させるべきだと思うし、そのためには今、あと残された数カ月を健全化、正常化に全力を尽くすことが必要だということを私は申したつもりなんです。
 その第一に、不良貸し出しを早く減らしていくことだというふうに思っております。それにどういう手があるかというのはこれからの考えるべきことであって、その辺が金融庁とどう意見が違っているか、私、議論しておりませんのでよくわかりませんけれども、余り違っていないというふうに思うんですが。
藤島委員 報道は確かに対立したような形で書きたくなるものでしょうから、そういう書き方になっているんでしょうけれども、この二つの考え方自体を見れば、私は、総裁の方の厳しい見方というのを実は応援したくなるような、そういう感じが今実感としてはしておるんですね。
 というのは、政府の責任である構造改革の方は、正直言って本当に遅々として進んでいない。金融政策としてある程度もう限界までやっているんだという気持ちが、総裁の方からは確かににじみ出ている。私も、実際問題、客観的に見ますと、政府の方の構造改革が非常におくれている、ここに根本的な原因があるんだろう、こういうふうには思っております。
 それで、地方の問題との絡みになってきますけれども、次はペイオフの問題なんです。
 いろいろあるんですけれども、非常に今環境条件が悪い、これは言えると思うんですね。不良債権処理も終わらず、デフレ傾向のあるときに、本当にこういうふうにペイオフを完全にやっていいのかどうかという問題は確かにあろうかと思うんですが、さればとて、ここでまた来年四月の完全なペイオフを延期する、これはもう言語道断の措置だろう、こう思うわけであります。
 今回、四月にありました定期性預金についてのペイオフを実施した際には、確かに、かなりの金額が地方銀行から都銀の方に流れていった分はあるわけですけれども、実は先日、地方で地方銀行の支店長さんを数カ所訪れて話を聞いてみますと、ことしの四月の分に関して言うと、逆に自分らにとって若干メリットもあったというんですね。
 なぜかというと、要するに、定期性預金といっても普通預金といっても、今ほとんど金利に差がないものですから、そうすると、定期性の預金を都銀の方に預けかえるよりは、当面、自分の銀行の中の普通預金に切りかえている。
 そうすると、金利差は大したことはないとはいえども、銀行から見れば、同じ金額がそのまま滞留しておって、金利が定期預金より普通預金の方が少なくて済むわけですから、大きい声では言えないけれども、実は四月のものに関して言えば、そんなに問題ないし、むしろメリットもあった、こういうふうに言っているわけです。
 実際、心配しているのは来年の四月だと。本当に流動性の預金まで全部ペイオフになった場合に、今度は自分の中でそういうわけにいかないわけですから、信用のある銀行に流れていくんじゃないか、これが大変心配だと。
 同時に、もしそれが行われると、自分たちが地元の中小企業に貸している、それを貸すことができなくなるし、回収せざるを得なくなる、これは地方経済にとって大変な問題なんですよということを数カ所の支店長さんから聞いてきたんですね。
 実は昨日、第二地銀協から、陳情書といいますか、ペイオフ解禁に伴う問題点、こういう資料が出されておるわけですけれども、この中で、いろいろな難しい経済環境のような状況下で、解禁は経済社会に混乱を招き、我が国の対外信用を低下させると。
 具体的に言うと、資金調達手段が限られている中小金融機関に深刻な影響を及ぼす可能性が高く、信用収縮が中小企業や地域経済に悪影響を及ぼす、不安心理から預金分散やたんす預金がふえて預金者に負担を強いる、自治体の預金、自治体が地方銀行に預金している場合に、損失が生ずれば財政運営が影響を受ける、あるいは、金融システムの混乱や短期金融市場での危機、長期国債の売り圧力などを招きかねない、こういうふうに言っておるわけですね。
 確かに、現在もう既に、たんす預金といいますか、個人が非常にお金を持っているんですね。ちなみに、この間調べてみましたら、一流銀行の金庫、貸し金庫、あれを聞いてみましたら、数カ月先まであかないというんですよ、間違いなく。幾つか聞いてみましたけれども、数カ月先まで貸し金庫は満杯だというんですよ。こういう状態なんですよね。
 こういうのを踏まえて、日銀の総裁は、このペイオフについてどういうふうにお考えになるのか、お伺いしたいと思います。
速水参考人 先ほども申したと思いますけれども、ペイオフの解禁というのは、前から日本が約束をしてきて公表してきたことでございますので、これは、ここへ来てなぜまた延ばさなきゃいけないのかということは、内外の日本のことを気にしている人たちは、やはりだめなのかというふうにとる可能性は多いんではないかと思います。
 できることならば、今まで言ってきたように、来年の三月ですべてが解禁されるのが望ましいと思いますけれども、御指摘のようないろいろな問題がまだ残っていることも確かでございます。
 ただ、これからまだ八カ月あるわけですから、その間にそれぞれの銀行の持っている問題を、力の限りそれを解決していくということが必要なことだと思います。そうすれば、そんなに、まあそれはどうしてもだめそうなところは、統合するとか強いところと一緒になるとか、いろいろな手はあると思うんですね、まだこれから。そういうことをやってもらうことの方が先であって、延ばすべきだということを言うのは、今この段階で言うべきことではないと私は思います。
 私どもも、きのう、地銀、第二地銀、それぞれ頭取方と懇談会を持ちました。地銀の方は、割合、これは当たり前だという受けとめ方をやっておられる方が多かったと思いますけれども、第二地銀の方には、やはりかなり今やられると困るというような声も強かったように思っております。
 あと残された八カ月をいかにうまく使っていくかということを、政府ももとよりのこと、私どもも、またそれぞれの金融機関も全力を尽くすべきではないか、それができて初めて内外からの信認がかたくなるというふうに私は考えております。
藤島委員 おっしゃるとおりだと私も思うんですけれども、今総裁がおっしゃった中に、この段階でまだ言うべきでない、そういう言葉が入るんですよね。これが非常に誤解を招くんですよ。そうすると、ぎりぎりになればいいんじゃないかということが出てくるんじゃないか、そういった誤解を招くんですね。
 円高の問題についていいましても、せんだって、財務大臣が百十五円云々の話で、そこまでは云々という話をして、後で、本意はこうなんだ、こういろいろ解説、言いわけですよね、している。似たような点で、総裁もおっしゃっている部分がある。これはまさに本意じゃないと思うんですけれども。
 要するに、マスコミ、国民に非常に関心のあることについて、財政の責任者あるいは金融の責任者が、ほんのちょっとした発言、これが裏の裏まで読まれるというか、勘ぐられまして、いろいろな表現になってマスコミに躍る、国民はそれに一喜一憂する、これは非常によろしくない。
 例えば今の発言についても、この段階でというのは余計なんですね。一生懸命努力すべきである、日銀としてもいろいろな知恵を出したい、議論もしたい、ここまででいいので、いろいろな問題でこういうふうになることは、非常に私にすれば無責任きわまりない、こう思いますが、どうですか。
速水参考人 質問に答えるときにどこまで話すのがいいのか、その辺は案件によっていろいろあろうかと思うんですが、為替の問題につきましては、私が最近の為替市場の動向に関して申し上げていることは、ドルや円やユーロに対して、ドルが今むしろドル安だ、円高じゃなくて、ユーロに対しても円に対しても、アジア諸国でもそうなんですけれども、ドルがみんな安いというのは、やはりアメリカサイドに問題があるんだということを言っております。
 私は、日銀に総裁になって帰ってくる前に、三十四年ほどほとんど為替関係をやっております。固定相場のときから、それからニクソン・ショックのときもロンドンに、ロンドン、ニューヨーク、ロンドンとおりまして、いろいろ為替の実践を、実際の動きの波の中で育ってきた男でございます。それから商社にもおりましたし、為替のことはかなり実態をよく知っているつもりですね。そういう経験から、今ドルが弱いんだと。
 それは、ここへ来て株価が軟調であるということもあるけれども、経常収支がGDPの四%以上も赤字だ、これはもう事実ですから。それから、一九九八年にようやく財政が黒字になった、これがまたことしから赤字になるんですね。財政の赤字と経常収支の赤字、この二つがいわゆる双子の赤字と言われて、七〇年、八〇年代ごろのドルの弱さ、これは私どもも随分苦労したんです、ドルが弱くて。その原因だったわけです。それがまた復活してきたんですね。そういうことを申したつもりですけれども。そういうことが後ろにあるんですよ、だから、円だけが高いんじゃないですよ、ドルが弱いんですよということを申し上げたつもりです。
 その辺のところは、新聞がどう書いたか知りませんけれども、恐らく事情が必ずしもよくわからないで書いてしまったのかもしれません。そういうことを、御質問に対してのお答えとしては、私はそれぐらいのことを言ってもいいと思っております。
藤島委員 私の申し上げたいのは、背景だとか事情説明、よく知っている、そういった問題じゃなくて、まさに総裁は、マスコミがどう書いているか私は見ていない、これはいかぬのですよ。やはり総裁の発言がマスコミを通して国民のもとに届くわけですから。マスコミがどう書いたか私は知りません、これは無責任きわまりないんですよ。やはり自分の発言がどういうふうに日本の経済に影響していくか、これは大変重大な問題なんですよ。はっきり言って、総裁がおやめになった後何を言おうと、それは構わないんです。来年の三月までは現に総裁なんですから、その発言についてやはり経済界は非常に耳を澄ましているわけですよね。それは、ここに来てみんなが聞くわけじゃなくて、こういうことをマスコミが報道する、それを聞いているわけですよ。それも経済の大きな材料の一つになっているわけですね。
 したがって、総裁がどういうふうな勉強をして、どういう事実を知っておって、それは正確に言うのは構わないんですけれども、私が申し上げたいのは、それが誤解を招かないように。しゃべっちゃって、後から言いわけばかり言っている、しかも本当はマスコミが何を書いたかわからない、これでは私は無責任きわまりないと思う。もう一回答弁をお願いします。
速水参考人 今のおっしゃったことは、私は、新聞社の名前は出しませんけれども、それは読みました。私の言ったことと違っていたので、編集局長に私は、これはおかしいよ、私はこんなこと言っていませんよ、それをしかも題目のようにして大きく書くのはおかしいじゃないですかと。それで、同じことをエイジアン・ウォールストリート・ジャーナルがちゃんと書いているんですよ。私の言ったとおりのことを書いて、むしろ、ミスター速水は円が高い背景をこういうふうに説明したということをきちっと書いているんですね。そこが私は非常に残念だと思うんです。日本の新聞はそこまで詰めないで書く。海外の連銀の人たち、中央銀行の人たちも言うんですけれども、まだマチュアしていないと言うんですよ。とにかく売らんかなで書かれてしまうんですね。
 そこのところは、おっしゃるように、私どももしゃべるときはよく注意してしゃべらなきゃいけないことはもう十分心得て、これからも注意しますけれども、さっきの件の事実はこういうことでございます。だから、編集局長はちゃんと知っています。
藤島委員 最初から今のような答弁があれば、非常にすっきり私も落ちたんですけれども、何かマスコミは知らないみたいな表現だったものですから、それは無責任だろうということで。今みたいに、自分の言ったことが違って報道されたらきちっと文句を言ってもらわないと、やはり責任者なんですから、そこは、発言に注意することと同時に、ぜひその辺もきちっとやるべきはやっておいてもらいたいというふうに思います。
 もうだんだん時間がなくなってきましたけれども、金融緩和政策をずっとやってきたわけですけれども、その中で十兆円から十五兆円という数字が出ております。これはなぜ十兆から十五兆円なんでしょうか。どなたでも結構ですけれども。
    〔中野(清)委員長代理退席、委員長着席〕
藤原参考人 お答えいたします。
 先生おっしゃいました当座預金残高の目標については、毎回の金融政策会合で、金融、経済に関する情勢判断が一つと、それから、それまでの金融緩和政策の効果とそれからデメリット、いろいろなことを検討しながら議論して、それで採決するという形で決めております。
 おっしゃいました十兆から十五兆円程度という目標は、去年の十二月に、そのときの景気情勢の悪化や金融市場における不安定な動き、それを勘案して議論して決定して現在に至っております。
 その決めた昨年末以降の情勢の展開を見ますと、輸出や生産の明るさが増して、経済全体はほぼ下げどまっております。しかし、我が国経済がさまざまな構造問題を抱えるもとで、企業や家計の経済活動はまだ十分活発化するに至っていないということは、私たちもそう認めております。
藤島委員 こういう政策をとってきて、いい点と非常に効果があった点、私もある程度は認めますけれども、弊害もあるわけですね。その点について、日銀なりのこの政策をとってきたことに対する評価、こういう点は効果があって非常に政策としてはよかったと思うという点があればそれを。それで、やはり弊害もあったわけで、弊害について私も幾つか考えているんですけれども、ちょっと時間がないものですから、どういう弊害があって、それについてはどういう対策、あるいは今後どういうことが期待できるか。その二点について、どなたでも結構ですけれども。
白川参考人 お答えいたします。
 量的緩和の弊害、副作用ということでございます。
 量的緩和自体、これは内外の中央銀行で一度もやったことのない政策でございますから、現時点で完全にその評価をしてしまうということはまだ時期尚早でございますけれども、現在、次の二点、これが問題点として指摘されているというふうに考えております。
 一つは、コール市場の縮小といいますか、短期金融市場の機能が低下をしているということでございます。ちょっとテクニカルな話でございますけれども、今、百億円マーケットに出しまして、あしたお金を返してもらう、そういうふうな運用をやりますと、百億円で得ます金利収入は二百七十三円でございます。したがって、そういう取引を成立させるに必要ないろいろな手数料、それから電話代、人件費等を考えますと、実はもう全然採算に乗らないということでございまして、したがって金融機関は、日本銀行の方に余った資金を運用する、無利子でもいいからそれを運用するというふうになってまいります。そうしますと、とり手の金融機関の方は、いざという場合になかなか金融市場で資金を調達しにくい。若干レートを上げても、出し手からしますとほとんど金利収入がないということですから。したがって、短期金融市場でうまくお金が回っていかない、それを機能の低下というふうに申し上げていますけれども、そうしたことが一つ副作用として指摘されております。
 それから二つ目は、超低金利に伴いまして、家計の利子収入が減ってくるとか、あるいは年金など機関投資家の運用が難しくなってくる、これも問題点として指摘されております。
 私ども、量的金融緩和を始めますときに、こうした副作用が一方であるかもしれないということも十分意識いたしました。しかし他方で、経済の情勢は非常に厳しいもので、そういう中で、こういう量的緩和をやっていくことによって景気の底割れを防いでいくということにより大きな意味があるというふうに判断いたしまして、量的緩和に踏み切ったわけでございます。
 それで、対策ということでございますけれども、先ほどの短期金融市場の機能の低下、これは私どもとしても非常に大きな問題というふうに意識しておりますけれども、しかし、これは金融政策で景気を支えていくということに伴って今起きているという現象で、最終的にはこの効果と副作用、バランスをとりながら考えていくしかないのかなというふうに現時点では考えております。
 それからあと、利子収入の減少の話でございます。これは大変に家計にとって大きな問題であることは私ども十分認識しておりますけれども、しかしこれは、経済活動を活発化させて、その結果として経済全体が活発になってきて、貯蓄の果実が高まっていくということでしか解決が難しい問題だというふうに思っております。
 いずれにしましても、量的緩和の問題点、副作用につきまして、私ども、十分にこれからも目を凝らして見て、その上で、金融政策については、景気を支えていくという大事な役割もありますので、政策運営に誤りなきを期してまいりたいというふうに思っております。
藤島委員 弊害もやはりあるわけなんで、その辺も常にウオッチしながらやっていかれた方がいいんじゃないか、こう思います。
 最後に、通告していないんですけれども、オーバーバンキングという言葉がありまして、柳澤金融大臣もそういうことを言っておるんですが、今、地域金融機関で七百を超えているわけですけれども、これについて日銀としてどう考えているのか。総裁か副総裁で結構ですけれども、そういうふうなオーバーバンキングという認識があるのかないのか、あるいは、もしあるとすれば、どのくらいが適当というか、オーバーバンキングでない範囲になるのか。通告していませんけれども、ちょっと参考に伺っておきたいと思います。
速水参考人 七百というのは、千であったのが七百まで減っているわけですね。大銀行、都市銀行につきましては、御承知のように、四大銀行といったように、再編がほぼ一巡したわけですね。ところが地方の銀行は、やはり地方銀行、第二、そして信用金庫、信用組合、そういうところが全部同じようなことを仕事にしているわけですから、七百というのが銀行の数として多過ぎるということは私も感じます。
 それを整理していくためには、やはり、強いところが残って、弱いところは強いところへ頼っていくといったようなことが今起ころうとして、起こりつつあるわけですね。そのことは私、いいことだと思います。そうして、同一地域あるいは何らかの関係で一緒になって、数が少し減っていった方がいいと思う。
 幾つがいいかというのは、ちょっと今の段階では私は何とも申せません。かなり整理されていいんじゃないかというふうに思っております。
藤島委員 終わります。
坂本委員長 次に、植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。きょうは、総裁初め参考人の方々、大変お疲れさまでございます。
 まず総裁に冒頭お伺いしたいわけですけれども、先日、金融庁の特別検査の結果が公表されたわけですが、当然総裁も、日銀の特別考査を通じてその実態を知る立場にいるわけですけれども、その実態を改めて取りまとめてみれば、数値の上では、ごく一部を除いてBIS基準をクリアしているんですけれども、大手行の資本というものの半分以上は、これはいわばかりそめの自己資本とでも言うべきでしょうか、税効果会計と呼ばれる自己資本によってかさ上げされているという実態がある。
 こうした自己資本不足というものは、いわば、欧米に比べて圧倒的な低収益構造にあるということは当然巷間言われていることですけれども、特に邦銀の経営、とりわけ財務体質の問題というのは、いかに低収益構造を改善するかということが一つあるでしょう。それともう一点、言うまでもなく不良債権問題。我が国の金融システムが抱えておるところの二つの大きな問題、これを整理した場合、不良債権にかかわっても、目立った減少をするどころか、むしろ新規の発生が高水準を続けているというのが、これは実態なわけですよね。そして、不良債権の処理でますます銀行の財務体質が悪化している。自己資本の内容は過少資本の状況にある。
 かかるこうした状況を改善していくためには、何らかの支援ということが私は全く意味がないとは思いませんが、速水総裁はこの間、公的資金の注入について、予防的な注入を含めて、積極的なお立場だったと理解をしておるわけですが、まず冒頭、そのお考えに変化があるのかどうか、今のお考えをお聞かせ願えますでしょうか。
速水参考人 我が国の金融機関の体力面から見ますと、これまでの不良債権処理や株価の下落といったようなもので、不良債権処理のバッファーはかなり低下してしまっているわけですね。こうした中で、今後の不良債権処理のためにも、収益力をふやしていくことは不可欠なことだと思います。金融機関が収益力を向上させていくためには、借り手企業と十分対話をして、信用リスクに応じた貸出金利の設定を進めていくことが重要だと思います。このほかに、やはり業務内容を抜本的に見直して、コストの徹底的な削減に努めていくことも必要だと思います。
 公的資本の注入がどうかという御質問でございますけれども、金融機関にとって、不良債権問題の克服が依然として最大の課題であって、これに全力で取り組む必要があることは今申し上げたとおりですが、一方、主要行の経営体力面の備えは不良資産処理や株価の下落などから低下してきておるわけです。したがいまして、金融機関が今後さらに不良債権処理を進めていけば、その過程で、自己資本が十分とは言えなくなる事態もないとは言えません。
 こうした状況のもとで、金融システム全体の安定について疑問が呈せられるような事態に陥った場合には、かねて申し上げているとおり、公的資本注入も含め、タイミングを逸せずに、早目に対応していくことが必要ではないかというふうに思っております。
植田委員 わかりました。
 では、先ほどの質疑にもありましたが、特に量的緩和にかかわって、これから、与えられた時間で、総裁を中心にお伺いをしたいと思うわけです。
 少なくとも、政策の論理的な整合性というものを常に重視してきた従来の日銀からすれば、異例の量的緩和に踏み切ったというのは、ある種、大転換なのかなと思ったわけですが、それからもう一年三カ月経過しているわけです。その結果、インターバンクでは連日すさまじい規模で余剰資金があふれている。しかし、期待されていたような効果があらわれていない。むしろ、資金のめぐりが悪化している。そして、日銀の当座預金残高は高水準でありながら流動性が低下するという悪循環が発生している。こういう状況の中で、かつて量的緩和に賛意を表した人も、ほんまにこれでいいのかという意見もあろうかと思います。
 実際、理屈からいえば、量的金融緩和が短期金利のさらなる低下、いわゆるポートフォリオリバランス効果、期待効果などを通じて効果があるということは言われるわけですけれども、今問題になっているのは、こうした三つのルートを通じて、銀行の貸し出し行動であるとか企業の設備投資を活発にさせるには至っていないということになるんじゃないでしょうかと私は思うわけです。
 もちろん、金融政策の効果の波及というのはタイムラグがあることは当然わかりますが、なぜ期待されるような効果が出てこないのか、なぜデフレの解消に現状においてきいていないのか、これはいかにお考えでしょうか。
速水参考人 昨年来、内外の中央銀行の歴史に例を見ない思い切った金融緩和措置を実施して、その結果として、オーバーナイト金利、やや長目の短期金利ともほぼゼロまで低下しているわけで、マネタリーベースの前年比は、先ほど来申しておりますように二七%、三割弱の高い伸びを示しております。こういった金融緩和というのは、IT分野の世界的調整とか、あるいは米国のテロ事件の発生とか、金融システム不安の高まりといったようなことで我が国経済に大きなストレスがかかる中で、金融市場の安定を確保することを通じて景気の底割れ回避に寄与したと言えると思います。
 しかし、我が国の経済がさまざまな構造問題を抱えるもとで、企業だけでなく家計、企業や家計の支出活動あるいは銀行の信用仲介機能というものが十分活発化していないことも事実でございます。金融緩和が力強い効果を発揮するためには、金融システムの強化や民間需要を引き出すような制度面での施策を講じていくことが必要だというふうに考えております。
植田委員 きょうの、さっきのだれかの質問の答弁とまるっきり同じ文言を今読み上げられたわけですけれども、要は、さまざまな構造問題がありますよってに、期待されるようには効果が出ておらないということをおっしゃりたかったんでしょう。
 ならば、そのことは今現状においてもそうですけれども、この間一年やってきて、もう一年三カ月になるでしょうかね、もう一年四カ月ですか、なるでしょうが、少なくとも、さまざまな構造問題があるがゆえに、量的金融緩和なるものが期待されたほどの効果を上げたとは胸を張っておっしゃりがたい状況にあるわけですし、また、日銀の関係者も、それぞれのさまざまな講演録を読んでいますと、先ほども御説明されていましたが、副作用の問題や、また限界性についても触れているわけです。にもかかわらず、そういうことがわかっていながら、二月に長期国債オペ増額等々の追加緩和を講じたというのはいかなる理由、政策判断によるんでしょうか。それをやったら、何か一条の光でも見えると判断されたんでしょうか。
藤原参考人 お答えいたします。
 日本銀行が量的緩和金融政策をとっているその流れの中で、先生御指摘の御質問は、二月二十八日の、特に長期国債の買い入れを増額したのはここに来てなぜかというお尋ねだと存じますけれども、思い返してみますと、本年二月は、四月からペイオフの部分解禁というのを控えまして、株価がバブル後最安値をつけたり、金融・資本市場が非常に不安定な状況にございました。
 二月二十八日は、ちょうど政策決定会合でしたけれども、その日の議論の中で、こうした議論を踏まえまして、年度末、つまり三月末までにかけてマーケットが非常に不安定な状況にありましたので、一層潤沢な資金供給をこの際行い、金融市場の安定確保ということと、それから緩和効果を一層浸透させることが必要だというふうに議論の中で意見が一致しまして、こういう措置をとったわけであります。
 つまり、長期国債の買い入れをその段階で増額したわけですけれども、その増額した理由は、先ほども申しましたように、年度末にかけまして特に大量の資金供給をその時点で行う必要があったということと、それから、一方で年度が明けた期明け後の当座預金需要の動向が不確実でして、銀行がそれに備えてお金を集めるという動きが頻発し、短期の資金供給オペで札割れが発生するといったような事態があったので、そういうことを、マーケット、短期金融市場の動向を安定化させるために資金供給を図る必要があるという観点から、長い緩和政策の流れの中でそういう措置を特に講じたわけでございます。
植田委員 私は、量的緩和そのものがけしからぬ、けしからなくないという議論をしようとしているわけではございません。今の御説明を伺っていますと、一度、量的緩和という政策に転じれば、かかるようなことも、どこかでやるという判断も出てこざるを得ないだろうというのはわかります、それは、今のお話では。ただ、この間じゃぶじゃぶ資金供給を続けている、しかしそのお金がどこにあるか。銀行貸し出しを通じて市中に行き渡ることがないまま、あまつさえ日銀に今度また逆流しようとしているような現状があるじゃないですかと。
 私は、これは何も量的緩和策が悪いという趣旨で言おうとしているんじゃないです、後でいろいろ聞きますが。ほかにもそういう政策をとれば、日銀さんとしてやらないかぬことというのは、政策の選択肢は限られるわけですから、その中で一生懸命やってはるんだろうな、さまざまな圧力もあるかもしれませんが、その中で工夫をされているんだろうなと思うわけですけれども、少なくとも、銀行はあり余った資金を中小企業には貸し出してないわけですよ。そして、リスクの少ない国債を買っているのが実態ですし、金融緩和が、企業、とりわけ中小企業や家計の経済活動を活性化するに寄与したかというと、これは寄与したとは恐らくおっしゃられないというふうに思います。
 要は、量的緩和にはたんす預金や豚積みという副作用もあるわけですけれども、結局、先ほども副作用の御説明もなさっていましたけれども、日銀が資金供給をふやせばふやすほど、短期の金融市場も縮んでくるわけですよね。要するに、それだけ資金供給をしてもマネーサプライがふえへん、銀行貸し出しや設備投資の増加に結びつかないというのは、需要側が弱い、金融機関のリスクテーク能力が低下しているからと。じゃ、そういう状況の中での金融緩和策というのはざるに水を入れているようなものじゃないでしょうかと。
 これは、もう一度言いますよ、量的緩和が間違っているという趣旨ではないんですよ。そういうことで今議論をしようとしているわけじゃない。今のその実態を見たときに、さらなる量的緩和というものはざるに水を入れるようなものじゃないかと。どうでしょうか。
白川参考人 お答えいたします。
 量的緩和の効果の評価でございます。
 これは、いつも二つの議論がございまして、一つは、金融市場で流動性不安が発生する、それに対して量的緩和で潤沢に流動性を供給することの効果と、それから、あとは経済活動を積極的に持ち上げる効果があるか、この二つの議論があるというふうに思います。
 先ほど先生が御指摘の点は、その後者の方の経済活動を積極的に持ち上げる効果があるかということだというふうに理解しまして、その面についてはこれまでのところその効果は余り観察されなかったということで、その背後には、先生の御指摘のようなさまざまな構造的な要因が存在をするということです。
 その上で、その前者の方ですけれども、思い起こしてみますと、ことしの二月、三月ですけれども、株価が急激に下落する、それから金融システムについても不安がある、それからペイオフの部分解禁を控えている、そういう非常にマーケットに不安定、神経質な地合いがございまして、そういうときにマーケットでどういうことが起きたかといいますと、金融機関の方はとりあえず流動性を保有したい、そういうニーズが現実ございました。また、そういう動きを背後にしまして、社債とかあるいはCP、コマーシャルペーパーですけれども、そうしたものの金利が安全資産である国債との関係で上がってくるという現象がございました。
 これはやはり、流動性の不安があるからそういう現象が起きてくるわけで、現実にそういう現象が起きてきたときに日本銀行が流動性を供給しなかった場合には、そうした悪い方向の動きが加速するということになります。したがいまして、そういうマイナスを必死になって消していくという意味での金融量的緩和の効果というのは、あったんだろうというふうに思います。
 繰り返しになりますけれども、積極的にプラスをつくる方の効果、これは、企業については過剰な債務を抱えている、それは裏っ返しからいいますと金融機関の不良債権問題でございますし、それから家計については将来に対するいろいろな不安がある、そういう中で積極的に支出をふやしていくことになりにくいということがあって、これがプラスの効果をつくりにくい大きな理由になっているというふうに考えております。
植田委員 ありがとうございます。
 先日の、きょうはお越しじゃないでしょうが、山口副総裁が外国特派員協会で量的緩和策について講演なさったときに、私はそれは大体事実認識としてそうだろうなと思ったんですが、金融システム不安の抑制には役に立ったという点は評価しつつも、通貨供給量の伸びが高まっていない、資産価格が下落している、物価の下落がとまっていない、実体経済が改善していない、この辺がかかる構造問題と言われるものとリンクするんでしょうが、この点、四点を挙げながら、効果は限定的であったというふうにおっしゃっておられます。これは正確な事実認識だろうと思います。
 ですから、私がきょうここで総裁初め皆さん方に聞きたいのは、本来、量的緩和を実効あらしめるために、全体の経済財政政策の中で問題がなかったのかどうなのかということについて、日銀さんとしてどれだけ意識的にこの間物を言ってこられたかということなんです。
 恐らく、量的緩和、量的金融緩和政策そのものが固有の属性として持っている効果なり限界、副作用というものは、先ほどの御説明でもあったとおりだろうと思います。固有の問題もあるでしょうけれども、金融政策だけが単独で、それこそ一個小隊ごとに作戦を展開しているわけではないですわね。全体の財政金融政策の中で、現状において日銀の今一番ベストな選択だという判断で量的金融緩和に踏み切られた。にもかかわらずそれが効果がない背景は、構造問題が解決しない、それをさせない全体としての政府の経済財政政策にあるんではないかというふうに一応私は課題を設定してお伺いしたいわけです。
 もちろん、日本銀行さんとしても、金融面から需要を刺激したいということは当然お考えだろうと思いますし、実際、幾ら日銀が資金を出しても、我々国民の懐が温まっていない、景気が一向によくなっていないということも事実として認識されていると思います。
 その意味において、量的緩和政策が限界を迎えている。それは、むしろ量的緩和政策が、その政策の持っている固有の限界というよりは、むしろ全体の政策の中で、金融の量的緩和を実効あらしめないような政策が一方で展開されているからではないかと私は一応一つの作業的仮説を立ててみたわけですけれども、そうではないということであればそうではないでいいんですが、そういう答弁でもいいわけですけれども。
 実体経済の難問というのはたくさんあるわけですよね。その実態面が改善されない限り、日銀さんの努力というのは報われないのと違うのか。その意味で、私は、むしろ日銀さんは、それはそれとして、みずからの役割の中で最大限努力しているとしても、それは今度政府に対して、今やっている日銀の金融政策を実効あらしめるために、問題提起なり物言いを積極的にやっていくべきだろう。それは別に分を越えた話じゃないだろうと思いますが、この間、速水総裁、そういう問題提起をされてこられましたでしょうか。
速水参考人 まさに御指摘の点が私どもの問題でありまして、幾ら金融緩和をやり量的緩和をやっても、民間需要を引き出すような、不良債権処理もそうですし、構造改革が進んでいかない限り、やはり企業が新しい仕事を始めようという気にもならないし、銀行は銀行で信用仲介機能、リスクをとっても機能させていこうという気にならないし、やはり政府が民間需要を引き出すような手をお打ちになって、その効果が出てくるまで私どもは期待を持って待っていますよと。出したお金は、そういうものが、そういう需要が動き始めて効果を発揮するものであるということは、二月の二十八日のステートメントをごらんになってもおわかりだと思います。ちゃんと書いてあります、四番目ぐらいのところに。
 だから、こっちから先にボールを投げたような感じで、向こうから、政府サイドで構造改革をやってくだすって、需要が出てくれば出ていった金が生きてくるんだということをいつも申しているつもりなんですけれども、そこは政策の拡大ないし転換の都度繰り返して言っておりますから、お調べになったらおわかりだと思います。
植田委員 そこで、構造改革というものの言葉の定義もちょっと後で整理をしたいわけですが、まず、これも幾人かの方が何度も伺われたことだろうと思いますので、当面の景気の現状また展望について、総裁、ちょっとおさらいをさせてほしいんです。
 というのは、確かにこの間、短観を見ても、下げどまりに向けた動きが見られる、悪化のテンポは緩やかになっている、政府は全体としても底入れ宣言もしているわけですが、ただ、六月の内閣府の景気ウオッチャー、これは実体の経済の感触を知る指数ですけれども、家計の動向や企業の動向また雇用関連、すべてのDIが低下している。二カ月連続の低下になっている。そういう意味では、国民的な、庶民の景気認識というのは、下げどまり、底入れというそんな状況にはない。
 なぜそうなのかといえば、少なくともこの間、国内最終需要の方が弱目の動きがずっと続いている。設備投資、個人消費、ここがやはりまだまだ弱目の動きが続いておるという私は現状の認識を持っておるんですが、そこはそういうことでいいかどうか。時間ありませんので端的に、そういうことでいいならいいと、いや、違う要素があるなら御説明いただければと思います。
 総裁、お願いします。
速水参考人 今おっしゃったとおりでございます。
植田委員 その点については、ちょっと古いですけれども、速水総裁が五月の三十日のきさらぎ会で講演なさったところでも端的に表現されているんです。
 要するに、緩和的な金融環境にもかかわらず実体経済活動は活発化していないということが、大きく三点、ここで総裁が述べられました。御記憶だろうと思いますからいいんですが、ちょっと見てみますと、第一に、企業においては、過剰債務問題や産業構造問題がなお未解決のために、金融環境がどんなに緩和的であっても、設備投資などの企業活動がなかなか活発化しない、第二に、不良債権問題を背景に、金融機関における信用仲介システムの機能が低下、金融面から景気を押し上げる力が働きにくい、第三に、家計においても、年金や社会保障制度の将来に不安を抱いているため、お金を使いやすい金融環境のもとでも支出が積極化しない。まさに端的に、的を得たことをおっしゃっておられます。
 すなわち、ここの問題を解決していくことが不可欠だということを常々おっしゃってこられたということですが、とするならば、総裁がおっしゃるような金融緩和政策は、本当の意味での力強い効果を発揮するためにはやはり需要の回復というものが不可欠だろう。少なくとも、現在の日本経済の不調の原因というのは決定的な需要不足にある。とするならば、この小泉さんが言っている構造改革、これはもう明らかに供給面の改革にシフトした、これは塩川財務大臣も、供給構造改革と言ってもいいんですかと言ったら、はいそうですとおっしゃいましたが、需要喚起型、需要創出型、こうした改革というものが今求められているんじゃないでしょうか。そうでない限り、幾ら日本銀行さんが頑張っても、金融政策が効果を発揮しないのではないかと私は思うわけですけれども、その点についての総裁の御見解はいかがでしょうか。
速水参考人 御指摘のとおり、改革に伴って生産性の低い企業が淘汰されたり、経済全体として供給能力が増加するだけであれば、短期的にデフレ的影響がまた生じることになってきます。しかし、改革を通じて築かれる成長分野におきましては、新たな投資や消費が生み出されて、それが経済の持続的成長につながっていくことが期待できます。また、そうした先行きの展望が市場で前向きに評価されれば、株価上昇という形で改革のメリットを享受することもできます。
 ただし、改革の成果が実現するには、どうしてもある程度の時間を要します。そのために、構造改革を粘り強く進めていく努力が必要であります。改革なくして成長なしと小泉総理がおっしゃるのは、私はこれは正しいと思いますし、全く同感だと思います。
植田委員 改革なくして成長なしという言葉だけ切り取ってみれば、それはだれもけしからぬとは言わないだろうと思いますが、要するに、サプライサイド面、供給面での、言うところの構造改革というものが日本銀行における金融政策を後押しする、そういう政策なのかどうなのかということを私は聞いているわけです。そこなんですよ。
 だから、何よりも需要の回復が不可欠だというところまでは御同意していただけますでしょう。しかし、その先、では供給構造改革というものが実は金融緩和の、量的緩和の政策のむしろ足を引っ張る役割を果たしていませんかという疑問を私は持つんですが、いや、整合していますと総裁はおっしゃるでしょうか、いかがでしょうか。
速水参考人 当面はマイナス要因も必ず出てくると思うんですけれども、これは、この構造改革が成功していけば必ず需要がふえていくと思います。
植田委員 だから、そこは別に小泉総理とくつわを並べた御答弁をしていただかなくても、日本銀行はやはり独立しているわけですから、積極的に物を言うべきだろうと思います。
 現に小泉内閣でも、結局、昨年、三次まで補正を組まざるを得なかったわけです。結局、一方で需要政策と供給構造改革が両者で足を引っ張り合うような結果になっているわけです。そろそろそれに終止符を打つ時期が来ているんではないか。
 これは、何も私どもだけではなくて、与党の一部でもあるかもしれませんが、例えばデフレ対策にかかわっても、量的緩和の効果に限界があるんですから、むしろ、この際、政府の方が適切な財政支出による景気対策を打つべきではないか。むしろ、そのことの方が量的緩和ということの政策と整合性を持ち得るんじゃないかと私は思うんですが、総裁、いかがですか。
藤原参考人 済みません、私からお答えさせていただきます。
 先生おっしゃいますように、金融政策が制約に直面している、そういうもとでは、需要不足を補って自律的な経済成長を実現する上で、理論的には、財政政策の果たす役割は存在し得ると考えます。ただ、現状を見ますと、我が国の国債残高の対GDP比率は先進国の中でも最高水準に達しておりまして、中長期的な財政規律の確保は、一面でまた極めて重要になっております。
 こうした状況を踏まえながら、民間需要をうまく引き出すようなことを財政政策に求めるとすればどういうことが言い得るかといいますと、例えば、支出内容を見直すなどによって、適切な財政運営をすることが求められるかと存じます。
 そうした意見は、総裁からも財政諮問会議で申し上げているとおりでございます。
植田委員 ですから、実際、理論的には財政政策が果たす役割は存在することも、金融政策がゼロ金利の状況のもとで当然あり得るという見解というものは共通した認識であろうかと思います。
 だから、例えば、今の小泉構造改革の政策メニューを、金融政策をつかさどっておられる日銀としてやはり検証をしていく。同じ規制改革をするにしても、例えば、人々のニーズにこたえるようなサービス、商品を提供しやすくするような、例えば高齢者のケア、子育て、住宅、生活者支援、医療、こうした潜在需要をそれこそ顕在需要に転化する、こうした産業や雇用を創出するところでの規制改革をやるということであれば、私は、決して反対はいたしません。しかし、そうでしょうか。
 むしろ、今こそ、国民の生活基盤の整備、雇用環境の安定、雇用確保、そこに特化した投資こそ必要になってくるんじゃないか。それは、なぜならば、いわゆる国内の最終需要が弱い、そこのところにまだ明るい兆しは見られないという事実認識をお持ちであるとするならば、理論的には財政政策が果たす役割が存在するというふうにおっしゃる以上、むしろ、日本経済の活性化が、財政政策と金融政策が本当に整合しながら総合的に働いてこそ相乗効果が上がるわけですから、やはりそこは、ようおっしゃらないけれども、私は、日銀の量的緩和が、せっかくやったんだから、本当の意味で効果をもたらすためには、需要政策を、もうそろそろそちらに切りかえるべきなんじゃないですかと言っているわけですよ。
 そうなると、いや、小泉さんのやっていることはすばらしいとおっしゃるものだから、今言ったように、例えば、同じ規制改革をするにしても、切り口が違うところでやったらいいんじゃないですか、そういう今の、この間の小泉構造改革と言われる政策メニューを日銀なりに検証して、その上で、どこにどうした適切な歳出をするのか。単に一律削減すればいいということではありません。ですから、どこに適切な歳出をするのか、それがはね返って日銀の金融政策にも反映されるよということをこれから検証して、もっと言っていくべきじゃないでしょうか。
 その点、最後、時間が過ぎていますが、総裁、お願いします。
速水参考人 私も経済財政諮問会議の一員でございます。御承知のように、つい最近、第二の骨太の提言、報告書を決めました。
 あれをお読みになればおわかりと思いますけれども、決してサプライサイドだけじゃないんです。いかにして活性化させていくかということに重点が置かれているんですね、税制にしても、規制緩和、撤廃にしても、雇用対策にしても。それは、私がさっきから申しておりますように、民間需要が引き出されて初めて、緩和された資金が生きていくんだということに、多少時間はかかりますけれども、適合していると思います。もう少しスピードアップしていいかという感じはいたしますけれども。
植田委員 もうちょっと聞きたいのですが、時間を超えてしまいましたので、以上で終わります。お疲れさまです。
坂本委員長 次に、石井啓一君。
石井(啓)委員 大変御苦労さまでございます。
 私の方は、きょうは、なるべく短くやれとの与野党からの強い御要請もございますので、短い中にも充実した質問をさせていただきたいと思っております。
 まず、主要行の三月期の決算からお伺いいたしますけれども、この三月期決算、主要行だけで申し上げますと、不良債権処分損が七・七兆円ございました。これは前年度の四・三兆円に比べまして三・四兆円増加しているわけでございます。相当頑張って不良債権処理をやっていただいている、こういうことでありますが、その一方で、不良債権の残高、これが、昨年の九月期から比べてみましても、九月期が二十・七兆円でありましたものが、この三月期には二十六・八兆円ということで、六・一兆円増加しているわけでございます。もっともこれは、特別検査をやったことによりまして新たに開示不良債権になったというものもございますけれども、業況が悪化して新規発生をしたというのもございます。
 ということで、かなり懸命に不良債権処分をやっていただきながらもトータルとしてはふえてしまった、こういうことでありますが、こういった状況についてどういう御見解を持っていらっしゃるのか。また、今後不良債権の総額を着実に減らしていかなければならないわけでありますが、これは、やはり新規発生を抑えるのと同時に不良債権処理をしっかりと進めていかなければならないということでありますが、その方策について御見解をいただきたいと存じます。
三谷参考人 お答え申し上げます。
 先生が今御指摘のとおり、昨年度の主要行の決算では、多額の不良債権処分損を行う一方で、不良債権残高は大幅に増加しております。これまた先生の御指摘のとおり、金融庁の年末から春にかけての特別検査というのがこれに大きく寄与したということも事実でございます。
 ただ、ちょっと誤解がないように申し上げておきたいんですが、不良債権処分損というのはいろいろな形のものがございまして、差し当たっては、相当多くのものは、まず引当金の繰り入れという形で対応されているものでございます。その段階では不良債権と引当金とが両建てで計上されますので、残念ながら不良債権の残高そのものはむしろ減らないということになります。結局、残高を減らすためには、一方でオフバランス化をするなり、他方で正常化に向けて努力をするなりといったようなことで対応せざるを得ないということで、これは若干の時間がかかるということでございます。
 いずれにしましても、不良債権の残高が相当な増加を続けているということから見ましても、先生御指摘のとおり、金融機関の相当な努力にもかかわらず、まだまだ、不良債権の問題の克服というのが引き続き我が国の金融システムにとって大きな課題であることを示していると思います。
 減少させていくための方策ということでありますが、本当にこれは、いい手は、即効性のある手はなかなかないわけでありまして、基本的には、金融機関が借り手企業と十分よく協議した上で、その状況を十分見きわめながら、一方で、破綻懸念以下のような再建の見込みがない企業に対しては、やはり早くオフバランス化を進めるということ、一方でまた、何らかの支援により再建の可能性があるというところについては、再建に向けて積極的に支援していくというふうな手段を一段と、時間をかけずに進めることが何よりも必要だというふうに考えております。
石井(啓)委員 それでは、かねてより総裁は、銀行の自己資本の中身についてたびたび言及されていらっしゃいますね。先ほどの質問でも指摘がございましたが、ことしの三月期の自己資本を見てみましても、主要行でございますが、自己資本の総額が約三十三兆円でございますけれども、そのうち、繰り延べ税金資産が約八兆円、約二四%、それから、公的資金、優先株、劣後債、劣後ローン、これが合計して約八・三兆円、二五%ということで、この繰り延べ税金資産と公的資金を合わせますと自己資本総額の四九%、約半分を占めているわけでございます。
 この状況について、これはどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、まず見解を伺いたいと思います。
    〔委員長退席、中野(清)委員長代理着席〕
三谷参考人 お答え申し上げます。
 十三年度の決算におきまして主要行の自己資本比率はおおむね一〇%台を維持しているわけでありますけれども、先生御指摘のとおり、その中には繰り延べ税金資産とか公的資本が相当大きなウエートを占めているということは事実でございます。
 このうち、これまでも何度もいろいろな機会で御説明したわけでありますが、繰り延べ税金資産というのは、いわば将来の収益を見合いとしたものでございますし、また、公的資本も、いずれ返済する、もしくは民間出資に置きかわるべきものというふうに考えざるを得ないものでありますので、その返済原資の確保あるいは民間が出資に応じるような形になっていくためには、何といっても収益力の向上というのが必要になるわけでございます。
 そうした意味で、たとえ規制上の自己資本比率が必要な水準を十分上回っているとしても、日本の金融機関、収益力を強化して、本当に自分の足で立つというような形での資本の質の強化にこれから努めていく必要がまだまだ非常に大きくあるというふうに考えております。
石井(啓)委員 ところで、総裁は、金融危機を未然に防ぐための銀行への予防的な公的資金注入については前向きな立場でいらっしゃいました。
 この三月六日の予算委員会の締めくくり総括のときに私は質問に立ちまして、この予防的な資本注入について、これはどういう要件で考えられるのかということで御質問をいたしました折に、総裁の方の御答弁は、まず、金融危機を未然に防ぐという意味での予防的な資本注入は必ずしも排除されてはいないというふうにおっしゃった後に、仮に三つの要件を考えていますと。個別の金融機関の状況が一つ、二つ目に、その時々の金融システム全体に対する信認の状況、三つ目に、市場や経済の一般的な状況などから見て必要と判断された場合、こういうふうに三つのケース、要件を挙げられていらっしゃるわけでございますが、これをもう少し詳細に、どういう状況なのかということでお伺いをいたしたいと思います。
 また、これは、当時株価が相当下がっていた、特に二月時点で下がっていたときにそういう予防注入という話が大分出てきたと思いますけれども、今後、株価が大きく下がったり、あるいは不良債権の新規発生が大幅に増加するというようなケースで、やはり金融危機につながるような可能性があるのではないかというふうに思っておりますが、その点についての御見解も改めて伺いたいと思います。
速水参考人 先ほど、今おっしゃった三月六日の石井先生の御質問に対して、私は、当該措置が講ぜられなければ信用秩序の維持に極めて重大な支障が生ずるおそれがある場合、その判断に当たっては、一に、個別の金融機関の状況、二に、その時々の金融システム全体に対する信認の状況、三に、市場や経済の一般的な状況、こういったものを総合的に判断する必要があるということをお答えした記憶がございます。
 あらかじめ一定の枠をはめて判断することは適当でないと思いますけれども、これはあくまでも仮定の話でありますが、議員が御指摘になったような事態が万が一生ずれば、先ほど申し上げたような条件に当てはまる場合もあると思います。
 いずれにしましても、金融システムをめぐる情勢については、今後とも十分に注視してまいりたいと思っております。
石井(啓)委員 なかなか金融危機を事前に想定するというのは難しいわけですから、具体的なお答えがなかなかいただけないのかもしれませんけれども。
 先ほど、金融機関の収益力の向上、強化というのが大変重要な課題である、これを通じて自己資本の質の強化もしなければならないという御答弁がございました。
 確かに、従来の我が国の銀行のビジネスモデル、担保をとって貸出金利は低く抑える一方で量的に拡大をして、融資量を拡大して収益を上げるというビジネスモデルが成り立たないといいますか、通用しない状況になっているわけですけれども、それにかわる新たなビジネスモデルというのがなかなか確立できていないという状況にございます。
 私ども、銀行の収益性を向上していただくのは当然でございますけれども、なおかつやはり貸し渋り、貸しはがしという状況であっては困るのでありまして、融資量を減らしておいて金利を上げるということでは一方で困るということでございます。この二つの課題、収益性を上げてなおかつ融資量もふやしていただくという課題を両立するための方策について、御見解をいただきたいと思います。
三谷参考人 先生おっしゃるとおり、これは非常に難しい話だと私も思っております。
 本当に、これまでの日本の金融機関は、これまた先生の御指摘のとおり、どちらかというと担保安住、薄利多売というふうな傾向がありまして、企業の内容を十分分析しながらそのリスクに応じた金利を取るというようなことは余り十分やってきていなかったということだろうと思います。
 ただ、何といってもやはり金融機関のメーンの仕事は貸し出しということでありますので、安い金利で長期資金が調達できるだけでは収益は上がりません。やはり貸し出しをしっかり、よりもうかるようにしなくてはいけない。そういった意味では、いろいろな弊害、確かに先生御指摘のようなこともございますけれども、基本的には企業の信用リスクに応じた貸出金利の設定を進めるということが重要であろうかと思います。
 もちろん、これは今こういう状況のもとで、では一律にこれだけ上げてくれと言ったってそれはなかなか企業の方もすぐにこたえられるわけでもございませんので、それこそ先ほど申し上げたように、企業とよく相談しながら、企業の体質改善も図りながら、一気に全額ということでもなく、少しずつでもあれ信用リスクに応じた金利の設定ということをしていただく必要があろうかというふうに考えております。
 ただ、実際問題、こうした方策がとられますと、では融資量が目に見えてふえるかどうかということになりますと、これまた難しい問題がございまして、さっきから量的緩和の話が出ておりますように、経済全体の状況、企業の資金需要が出てこなければなかなか量はふえないし、また今の日本経済、御承知のとおり、バブルの後大きく膨らんだ過剰債務、これをどうやって処理していくのかという問題も抱えているために、なかなか一気に貸し出しが増加に転ずるというのは難しいのかなという感じもいたします。
 またさらに言えば、この間金融庁が御発表になりましたように、今後日本の金融というのは非常にウエートの高い間接金融から直接金融へやはりシフトしていかなくちゃいけない、そういう問題も抱えております。そういった直接金融へのシフトというのも、ごく少しずつではありますが現在進んでおるところでありまして、そういったものがどんどん進んでいけば金融機関の融資量が必ずしも拡大しないという可能性もございます。そういったこともありますので、私、この先そうすぐに貸し出しが大きく増加するような方向に転ずるというのは難しいのかなという感じもいたします。
 ただ、いずれにせよ、また収益力の向上という観点からいけば、今申し上げたような貸出金利の見直しのほかにも、業務内容を抜本的に見直すとか、これまでもやっておりますけれども、コストの徹底的な削減、リストラに努めるといったこともまだまだ大事な点であろうかと思っております。
石井(啓)委員 総裁は、会見あるいは談話の中で、地域金融機関についてオーバーバンキングの状況であるという趣旨の御発言をされています。
 今、金融庁でも、地域金融機関の再編統合を進めるための施策をこれから検討していこうということで、先日、その概要といいますかテーマを発表したところでございますけれども、この地域金融機関の再編統合に対してどういう御見解をお持ちになっているのか伺いたいと思います。
速水参考人 地域金融機関の再編統合の問題につきまして何よりも大事なことは、やはり金融機関自身の判断にゆだねられるべき事柄であるということが大切だと思います。ただ、金融機関が収益力の向上とか経営基盤の拡大を図る目的で再編統合を行うというのは、金融システム安定の観点からも有用であるということは申せると思います。
 私が先般来申し上げておりますのは、こうした観点から見て、必要ならさらなる再編統合も避けるべきでないということでございます。
石井(啓)委員 それでは、最後の質問にいたします。
 今年四月の定期性預金のペイオフ解禁に続きまして、来年四月には決済性預金のペイオフ解禁が予定をされているわけでございますけれども、これについて日銀としてはどういうふうにお考えになっておるのか。
 ちなみに私の意見を最初に申し上げておきたいと思いますが、そもそも、定期性預金に一年ずらして決済性預金のペイオフ解禁をしたといいますのは、個人や企業の決済が金融機関の破綻によって滞るということになると、これは経済に対する大変な影響があるということで、その決済への影響を最小限とするようないろいろな措置をするための猶予期間としてまず設けられたというのがございますね。例えば、金曜に破綻させて月曜日に営業を再開させるというようなことで破綻処理を短くさせることだとか、あるいは民間の方で多様な決済の手法を開発してもらうとか、そういう猶予期間として設けられているというのがございます。
 また、そもそもペイオフ全面解禁をするための前提としては、やはり金融システムが安定をして預金者に要らぬ心配をかけさせないような状況にしておくことが大前提だというふうに思っておりますので、私は、来年の解禁は、法律は今そういうふうに予定しておりますから、政府の方はその法律にのっとってということだと思うんですけれども、そもそもそういった前提がきちんと満たされているかどうかというのをやはり私は冷静に判断しなければいけないという立場でありますが、日銀総裁はこの点についてどうお考えでいらっしゃいますか。
速水参考人 ペイオフ全面解禁を延期することにつきましては、今各方面からいろいろな意見が出されていることは承知しております。我が国の金融機関の場合には、やはり、不良債権問題の克服等の課題に全力で取り組んで、内外、特に預金者も含めてですが、内外からの信認の回復に努力することが今一番大切なことだというふうに思います。
 現時点では、そうした努力をさらに促進していくことがまず第一であって、私どもとしても、金融機関の取り組み状況を引き続き注視してまいりたいというふうに思っております。
石井(啓)委員 では、以上で終わります。
中野(清)委員長代理 次に、山本幸三君。
山本(幸)委員 自由民主党の山本幸三でございます。
 石井委員が早目に終わっていただいたので、私はフルにできるかなと思っておりますが、まず最初に、中川委員の質問にも出ましたが、朝銀近畿に対して日本銀行は特別融資をやっておりますが、どういう理由でこういう融資をやられるようになったのですか。
三谷参考人 先ほど中川委員の質問にお答えしたとおりでございまして、この朝銀近畿が破綻いたしましたのは平成十二年の十二月でございますが、その時点では、破綻金融機関の預金者は全面的に保護するというのが大きな政策的な方向でございました。そういった方向を受けまして、当時の大蔵大臣及び金融再生委員会から日本銀行に対しまして、朝銀近畿の預金の払い戻しと、そういったものに必要な資金について日本銀行から特融という形で資金を出してほしいという要請がございましたので、私どももその意図を踏まえまして、その要請に応じまして、現在に至るまで特融を出しているということでございます。
山本(幸)委員 私は総裁の見識と国家観を聞きたいので、総裁にお答えいただきたいと思いますが、再生委員会が言ってくれば何でも受けるんですか。
三谷参考人 私では役不足かもしれませんけれども、御承知のとおり、日本銀行では、特融に関しては四原則というものを設けております。そういった特融の要請等がありましたら、その四原則に照らして政策委員会で慎重に審議の上で決定するというプロセスをとっております。
山本(幸)委員 総裁は、政策委員会でそのときに、日本人を拉致した金正日政権を財政的に支える朝銀、あるいは朝鮮労働党が支配している金融機関、そういうことについての認識はなかったんですか。
速水参考人 朝銀近畿といいますけれども、これはやはり日本の法律で認められた日本の銀行でございますから、これは特融については、私どもの持っております四つの原則をよく審議した上で、大蔵大臣等からの御要請を受けてやったわけでございます。
山本(幸)委員 私が聞いているのは、それをするときに、この朝銀というのは、日本人を拉致したり、あるいは核兵器開発をやっているかもしれないと言われている、あるいは日本海、三陸沖にミサイルを撃ち込んできた、あるいは朝鮮半島で武装攻撃事件を起こしている、そういう政権に金が渡っていると言われている。そして、朝鮮労働党が実質的にその金融機関の運営について支配していると言われている。そういうことについて認識があったんですか、なかったんですかと聞いているんです。
藤原参考人 お許しを得て、私から答弁をさせていただきます。
 私もあの政策委員会に出席していた一人ですから、当時の議論を、詳細に申し上げることはできませんけれども思い返してみますと、金融庁と再生委員会と財務大臣からの御要請がありましたときに、さまざまな検討をなさっての御要請でございました。そういったことを受けまして、私どもも私どもなりに九人の委員で事態を検討した結果、四原則に当てはまると判断して決定したものでございます。
山本(幸)委員 これは、その四原則だけで律するような話ではないんですよ。そういう検討した中に、こういう銀行だということについての認識なり議論はあったんですか。
藤原参考人 その審議の対象になりました朝銀近畿の経営内容及び経営問題、当面抱えているさまざまな問題についての材料といいますか、情報を踏まえて議論したわけでございます。
山本(幸)委員 委員長、しっかり私の質問に答えるように言っていただきたいと思いますが、この朝銀近畿は、北朝鮮の政権に何らかの財政支援をしている、そしてまた経営について朝鮮労働党が支配している、そのことについて知っていたのか知っていなかったのか、それはどうなんですか。
中野(清)委員長代理 参考人に申し上げますけれども、今の質問者の御趣旨をよく了解の上、御答弁願いたいと思います。
 藤原参考人。
藤原参考人 先生が今おっしゃいました具体的な文言そのままの言葉の意味において、きめ細かく、特別などういう事情があるかということを踏まえた上で、詳細にわたって事実関係の証拠云々といったようなまでの議論はございませんでしたけれども、総括的な意味合いにおいて、さまざまな議論を重ねたわけでございます。
山本(幸)委員 では、証拠はなかったけれども、そういうことはあり得るという話が出た、そういう話が出た上で、なおかつやる必要があると思った、そう判断したんですか。
藤原参考人 お答えいたします。
 証拠云々といったような具体的な議論は覚えておりませんけれども、朝銀近畿がどういう経緯をたどった銀行であり、どういう経営内容か、どういう方が経営者であるかといったことについての情報は参酌して議論したと思います。
山本(幸)委員 そうなると、大変問題になる。朝銀近畿は、北朝鮮に対して金が流れているかもしれない、それを助けている金融機関かもしれないんですよ。しかも、そのことは話題には上がった、確かに証拠はなかったけれども、そういうものではないかという議論までした。それでなおかつこういう銀行に対して、将来的には血税をもって支援しなきゃいかぬ。その判断の第一歩を日銀がやった。
 日銀総裁は、日本人の拉致問題についてどう思っているんですか。
速水参考人 日本人の拉致問題とこの問題とはどう結びつくか、私は知りませんけれども、拉致問題につきましても、余り詳しい内容は知りませんから、余りいいかげんなことをお答えしない方がいいと思っております。
山本(幸)委員 いいかげんなことを答えなくていい、それは関係していないと。関係していると今副総裁は認めたじゃないですか。話題に上ったんですよ。話題に上って、そういう北朝鮮政権を支える財政的な支援もやっているような朝銀、それをなぜ助けなければいけないのか。
 つまり、拉致問題なんて気にする必要はない、あるいはミサイル開発をやっていることを気にする必要はない、そういうことを支えた財政支援をやっているということが言われているにもかかわらず、そんなことは気にする必要がない、結果的に、そう判断したということでしょう。日本銀行は、国家の中央銀行としてそんなことでいいんですか。
 マネーロンダリングなんというのが言われていますが、おかしなことに金を使うようなことを助けてはいかぬというのは、金融機関の監督当局の基本じゃないんですか。もしそういう話があって、証拠がないなら、証拠があるまで徹底して、疑わしきはやめるというのが筋じゃないですか、どうですか。
藤原参考人 先生御承知のとおり、朝銀近畿は、日本銀行と直接取引がある銀行ではございません。この問題が政策委員会に提起をされましたのは、政府からの要請があって、政府からのその事由、それから要請の内容等に従って私どもは議論したわけでございます。
山本(幸)委員 では、日銀の独立性というのは何なんですか。そのときだけ政府が言ってきたら、はい、はいと犬がしっぽを振るみたいに何でも言うことを聞きます、何も考えずに、そう言うんですか。それは認められない。これだけ独立性、独立性と言っているじゃないですか。日本銀行というのは、もし政府がおかしいことをやろうとしたら、それは待っておけ、待つべきだ、そういうことをちゃんと言えるのが独立性じゃないんですか、どうですか。
藤原参考人 お答えします。
 朝銀近畿が破綻しました当時は、預金等の全債務全額保護という全体的な方針が打ち出されておりました。そして、法律に基づいた日本にある金融機関として、政府の要請に基づきまして、日本銀行の特融の条件に合致するかどうかについて私どもで議論したわけでございます。
山本(幸)委員 全く答えになっていない。
 これは、ちょっと普通の金融機関の救済と異質なんですよ。そこには、国際感覚とか国益とか、あるいは日本人としての姿勢というのが問われるんですよ。そういう日本人を拉致したりミサイルを開発しているようなところにするというのは、マネーロンダリングを助けているのと同じじゃないですか。それを、政府が言ってきたから何でも聞きますと。大体、もっとおかしい、債務超過の銀行だから。そういうものは、しかも国益に反するかもしれないというおかしなことがあるんだったら、ちょっと待て、徹底的にはっきりした証拠が、ないと確信できるまではやめましょうと。場合によっては破綻、解散させたっていいじゃないですか。預金者は、それからちゃんと保護すればいいんですよ。それをどうしてそうしなかったんですか。
藤原参考人 国益に反するということになりますと、それは外交とか軍事とかということを念頭に置いて先生は御質問なさっていると思いますけれども、私どもは、政府からこういう問題が提起されましたときに、金融機関として、ほかの金融機関と同様の審査といいますか、協議事項に照らして議論をさせていただいたわけでございます。
山本(幸)委員 それは、日本銀行は何もやっていないということと同じじゃないですか。独立性はどこへ行ったんですか。あるいは、不正なことを見逃さないという姿勢はどこに行ったんですか。マネーロンダリングなんか許せないというのはどこに行ったんですか。
 これをやったことが、国際的に、日本は何をやっているんだと言われている一つになっているんですよ。金正日、ブッシュさんが言った悪の枢軸の一つだ、それを助けるようなことを何で率先して日本銀行はやるんだ、国益を害しているじゃないかと。
 まだ遅くない。きょう何かやるらしいけれども、日本銀行さんは、独立性、見識、日本人としての誇り、国家意識、しっかり発揮して、さっさと整理するように政府と一緒に働きかけたらどうですか。その気はありませんか。
藤原参考人 私どもは、日本銀行の、新しい日銀法に与えられました独立性の立場に立って、慎重に、特に金融システムの全体の安定という視点から議論してまいりましたし、今後もやっていくつもりであります。
山本(幸)委員 答えになっていない。
 総裁にお伺いしますが、北朝鮮政権を、悪の枢軸を助けるようなことは好ましいことではない。したがって、政府と、政府が間違っていると思うなら早急にそういう申し入れをして、正すべきところを正す、本当にちゃんと送っていないという証拠はないですけれども、ちゃんと送っているともうそこにいた人は言っているんだ。そういうことをやるという日本人としての誇りは、総裁、ありませんか。
速水参考人 この件については、今、整理管財人が調査しているはずでございますし、国策に反してこれをやったわけでもございませんし、柳澤大臣、宮澤大臣からの要請があって、私どもも私どもなりの調査をして認めたものでございますから、これは、これからももう少しよくウオッチしながら成り行きを見ていきたいと思っております。
山本(幸)委員 日本銀行としてきちっと調査を、足らなければしっかりやってくださいよ。そして、もうちょっとちゃんとウオッチしていくというんなら、しっかり見直すということも含めて御答弁されたと思うので、私は期待しています。こういうことをしっかりやらなきゃ、日本銀行の独立性とか見識とか、疑われますからね。総裁、ぜひしっかり国家意識を持ってやってもらいたい。
 次に移ります。
 次、資料をお配りしていると思いますが、総裁は九八年の三月末に就任されまして、五年の任期、来年の三月ということでありますが、四年半近くたちました。これから、最後、そろそろ総裁の仕事ぶりについての評価をしなきゃいかぬなということだと思いますが、総裁、これまでの四年半の任期で、総裁としての使命を十分果たしたと思われるのか、自分の仕事ぶりについて何点ぐらいつけられるか。
速水参考人 まだ任期までには八カ月あります。
 私が就任したときは全く予想もしないことが起こったわけでございますけれども、当時、日本経済は、不良債権や過剰債務等のバブルの負の遺産を抱えて、さらに、グローバルな環境変化の中で強い調整圧力にさらされる、そのもとで、私は、物価の安定とこれを通じた経済の健全な発展という金融政策目的の実現に向けて全力を尽くしてきた次第でございます。特に、新法が私の総裁就任とほぼ前後して施行された。新しい法律のもとで、独立性、そして透明性、二つの原理を踏まえてここまでやってきたつもりでございます。
 就任した当時は、既に公定歩合は〇・五%に下がっておりました。こうした状況のもとで、日本銀行は、残された政策手段について予断なく効果や副作用について慎重に検討を重ねて、さまざまな政策措置に踏み切ってきた次第でございます。ゼロ金利政策も、現在の日銀当座預金をターゲットとする時間軸へのコミットメントを伴う金融緩和、これも内外の中央銀行の歴史には前例のないものであります。これらは、景気の底割れを回避する上で大きな意義があったと考えております。
 日本経済は、なお多くの課題を抱えて、苦境を脱したとはまだ言えません。私は、中央銀行総裁としての立場から、これからまだ何が起こってくるかわかりません、引き続き、経済の本格的な回復の実現のために、残された日々、精いっぱい努力してまいるつもりです。私の成績が何点であるかというのは、十年ぐらい後になってつけていただきたいと思っております。
山本(幸)委員 日本銀行法第二条、日本銀行の理念、私は使命と理解していいと思いますが、「日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする」とありますね。つまり、まず物価の安定を図る。
 それで、実績はどうですか。九八年から九九年、二〇〇〇年、二〇〇一年、そして今二〇〇二年、物価はずうっと下がりっぱなし。GDPデフレはどんどん深くなった、去年ちょっと戻ったけれども、しかし、それにしてもすべてゼロ以下のところのマイナスで動いている。ちっとも物価の安定が図られていないんじゃないですか。これをもって成績、とてもいいとは言えないと思いますが、どうお考えですか。
白川参考人 私から、総裁の点数ということでなくて、物価についてお答えいたします。
 山本先生御指摘のとおり、日本銀行の使命は物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資するということでございまして、私ども、それは強く意識しております。
 そうした金融政策の目的を意識しまして、日本銀行は、昨年の三月に、先ほど来話が出ています量的緩和を採用いたしました。それで、現在、日本の短期金利はゼロと、金利のオーソドックスな金融政策の発動余地をほぼ使い尽くした中で、どうやって物価の下落を阻止できるかということについて知恵を絞りまして、その上で量的緩和を採用したわけですし、さらに、この政策を消費者物価が安定的にゼロ%以上になるまで続けるということを、明示的に最初からこれはコミットしておるということでございまして、こういう政策は、海外の中央銀行ではもちろんとっておりません。こうしたことも、日本銀行がその物価の安定という責任を強く意識しているがゆえに採用したものでございます。
 ただ、この政策が直ちに物価の上昇につながるかにつきましては、午前中それから午後、私どもが御説明したとおりでございます。
山本(幸)委員 総裁の評価をやりとりしているのに、失敬なことじゃないですか。私は、総裁に、あなたはこの実績を見て総裁として合格点だと思いますか、思いませんかと言っているんですよ。理事が総裁の評価なんかするんですか。これはおかしい。総裁、どうですか。
速水参考人 デフレのもとで消費者物価が下がっていくというのは、これは需給のギャップということもあったと思いますけれども、かなりの部分が輸入関係の値下がりが多かったように思っております。これは、チャートで数値をかいてみればすぐ出てくるんですけれども。
 日本は、御承知のように、私は経済同友会の代表幹事を九一年から九六年までやっておりましたけれども、内外価格差がどうしてこんなにひどいのかということを随分問題にしたつもりでございます。それは、やはり、今でもまだそうだと思いますけれども、日本の物価が高かったことは間違いないと思います。これは、いろいろ規制があったり、それから申し合わせがあったり、いろいろな日本の、今まさに改革しようとしている構造改革ができていなかったということが非常に大きな原因の一つだと思います。
 そういうことがフリーになり、そして、需給ギャップの方はだんだん縮まってきていると思います。特に、卸売物価をごらんください。最近のこの五カ月、二月から六月まで、ほとんど横ばい、プラス〇・一、〇、〇、〇、〇です。こういうのを見ておりますと、物価は安定しているな、下がったといっても、前年比でCPIでもWPIでもせいぜい一%前後でございますから、そんなに大きな物価下落が起こっているとは思っておりません。同時に、CPIについては、安い輸入製品がどんどん入ってくるようになって、その刺激を受けて国内の物価が下がっていく、こういうことはやはり消費者にとっては、決して怒られるものではないというふうに思っております。
 金利が低いということは、家計にとってはお困りのことは多いと思います。しかし、これは物価の関係からいってやむを得ないことで、もうしばらくこのままでいくしかないというふうに思っております。
山本(幸)委員 いろいろ問題になるようなコメントでありましたので、一つ一つやりますが、要するに、言いわけを聞いているんじゃないんですよ。残念ながら、トップは結果責任なんです。それは政治家だって役人さんだって結果責任なんですよ。幾ら一生懸命やりました、慎重にやりましたと言ったって、結果が出なきゃ失敗なんですよ。だから、私は、結果だけを示して、これは明らかに失敗だったんじゃないですかと言っているんですが、先ほど言われたせいぜい一%前後のマイナスだから失敗にならない、そうおっしゃるんですか。
速水参考人 日本銀行は、経済、物価情勢を注意深く点検しながら、その時々において、もっと適切あるいは最も適切と考えられる政策を機動的、弾力的に行ってきております。
 ただ、日本経済がさまざまな構造問題を抱えるもとでは、残念ながら、中央銀行の力だけでデフレから脱却することができるような状況ではございません。金融緩和が力強い効果を発揮してデフレからの脱却を実現していくためには、構造改革を通じて企業や家計の前向きの活動が引き出されていくことが不可欠であります。
 現在、各方面で構造改革に向けた取り組みが進められておりまして、日本銀行としても、思い切った金融緩和の継続によって引き続きそうした努力を強力にサポートしてまいりたいと思っております。
山本(幸)委員 自分の失敗を認めたくない、自分の失敗ではない、ほかの原因によるんだ、そういうふうにおっしゃりたいということですか。
速水参考人 これは、私の失敗であるとはまだ私は認めておりません。これはやはり、先ほど申し上げたように、物の面での構造改革といいますか、先ほども申しましたが、改革なくして成長なしであって、成長なくして物価の上昇はなしということでございます。
 そういうことで、今その方向に向けて一生懸命動いていることを、議員の先生方も皆そういう方向で動いてくだすっておるんだと思いますが、物価は、経済活動の体温でありまして、さまざまな経済活動の結果としてあらわれるものであります。過去を見ると、平均的には、経済成長率が上がって一年から二年が経過してから物価が上がっていくのが普通でございます。
 昨年来の思い切った金融緩和措置は、金融市場の安定確保を通じて景気の底割れ回避に寄与するものだと思います。しかし、我が国経済がさまざまな構造問題を抱えるもとで、企業の投資や家計の支出は十分活発化するには至っておりません。結果として、物価は前年比で見て緩やかな下落が続いております。デフレを克服していくためには、金融システム面や経済、産業面の構造改革などを通じて、家計や企業、金融機関の前向きな活動を引き出すことが不可欠であるということをもう一度繰り返させていただきます。
山本(幸)委員 自分の失敗は認めたくないという、言いわけだけしたいという感じであることはわかりました。
 そこで、ちょっと問題だと思うところを幾つか指摘しますが、物価の下落率が一%前後のマイナスなんか大したことない、私はこの認識は非常に問題があると思うのですね。今政府、六百六十六兆の債務があると言われていますが、これも七百兆円ぐらいになったのか、七百兆にしましょう。七百兆、毎年一%物価が下がれば、七兆円ずつ負債の負担はふえますよ。消費税で言えば三%分ぐらいだ。これは政府に起こっているだけじゃなくて、民間企業に起こっている。だから、不良債権、減らないのですよ、何やったって。
 今度、物価スライドを年金に対してしなきゃいけないでしょうね。年金生活者、私が言っているのは、年金生活者は日銀を囲めばいいじゃないか、まあこれはちょっと言い過ぎですが、そういうことが起こっている。一%がどんどん続いていくというのは、これはそんな大した話じゃないのですかね。日本銀行というのはそういう認識でいるのですか。
速水参考人 今一%になってきていますけれども、先ほど申し上げたように、下がり方はうんと減ってきていることを私どもはウオッチしております。それで、物価が下がって債務者が不利になることはわかります。しかし、一般家計や債権者にとっては、ためてある家計の千四百兆円が使い勝手が多くなってきているということは確かでありまして、それを喜んでいる人たちもいることは反面にあります。
 経済というのは、そういうものですから、我々は既にデフレを許容しないという強い決意を持って、コミットメントの形でそれを表明して、世界の中央銀行の歴史に例のない金融緩和措置を講じてきているわけです。今後とも、物価の継続的な下落を防止して、経済が安定的かつ持続的な成長軌道に復帰することを支援するために、中央銀行としてなし得る最大限の努力を続けていく方針であります。
 ただ、繰り返し申し上げておりますとおり、この目的を達成するためには、金融緩和だけでなく、不良債権問題の解決を初め、金融システム面や経済、産業面での構造改革が不可欠であるということをもう一度言わせていただきます。
山本(幸)委員 構造改革が必要というのは、私に言わせれば、それは逃げ道だ。
 もっと詰めますが、では、下がっているなら家計は喜んでいるはずだ、もし家計の所得が変わらなきゃ、そうでしょうね。ところが、今度は変わりますよ。落ちますよ。今言ったように、年金は、無理して過去三年間、わざわざ法律つくって物価スライドとめているから、もってきた。もうもちませんよ。ほかの家計、どんどん給与下がっているんじゃないですか、これからどんどん下がるんじゃないですか。あるいはどんどんリストラされている。そういう人のことは一切念頭にないのですか。あなた方みたいに給与なんか変わらないでどんどん物価が下がれば、それはいいかもしれませんよ。世の中の人はそうじゃないですよ。これから年金生活者は下がるのですよ。それでいいんですか。それでハッピーだというのですか、あなたは。
白川参考人 お答えいたします。
 日本銀行は、先ほど申し上げましたとおり、消費者物価の下落を阻止するという覚悟で、去年の三月に量的緩和を採用しました。この量的緩和の枠組みを、消費者物価指数の前年比の伸び率が安定的にゼロ%以上になるまで続けるということをこれはコミットしております。日本銀行の政策姿勢は、このコミットメントにあらわれております。ただ、このコミットメントに基づく政策が直ちに物価を上げるかどうかにつきましては、これは金融政策だけではなくて、その他のいろいろな要因がやはり作用しているということも厳然たる事実だというふうに思います。
 それから、今山本先生が御指摘の、経済全体の動きをちゃんと目配りをしているのかという御指摘で、私ども、毎回毎回の決定会合で、これは特定のセクターだけでなくて、家計についても、企業についても、海外セクター、政府についても、さまざまな経済主体から成ります経済の動きについて、目を皿のようにして見て、分析しております。
山本(幸)委員 白川さんはほかで議論できるからいいんですよ、いつでもできるから。私が言っているのは、総裁が、せいぜい一%ぐらい大した話じゃないと。そして、下がっているけれども、家計はハッピーだから全然問題ないよ、そういう発言をされたからおかしいと、そんなことはないと。所得が一定であれば、日銀の職員みたいに所得が変わらないという前提があれば、物価が下がるときはハッピーですよ。しかし、その所得が下がるのですよ、今度は。リストラなり給与削減なり、今度は年金ですよ。そういう状況をもたらすのに、それでハッピーですかと、そう総裁に聞いているのです。
速水参考人 極端なことを余りおっしゃらないでください。全然おかしくないなんというようなことを言っておりません。そういう、一%ですけれども、だんだんそれが縮まりつつあることを私どもは期待もし、そして注視、注目しているわけでございます。物価が安定することがいいことは、もちろんでございます。
山本(幸)委員 そうしたら、せいぜい一%だから大したことないなんて言わないでくださいよ。あるいは、物価が下がっていても家計はハッピーなんだからいいという、そういう発言をしないでくださいよと言っているのですよ。日本銀行総裁というのは金持ちのことばかり考えているわけじゃないんだからね、本当は。そこを忘れているんじゃないかと言っているので、そこをぜひお願いしますよ。
 それからもう一つ。輸入関係でどんどん下がってきたと言っていますが、輸入価格指数というのはそんなに下がっていませんよ。総裁は、中国からの輸入品がどんどん下がっているから物価が下がっているんじゃないかというように言われますけれども、中国からの輸入というのはどれぐらいあるのですか。
速水参考人 輸入関係指数と言っている意味は、輸入品、輸入製品の価格だけではありません。それと競合関係にある日本の製品もそれで下がっていっているわけでございます。そういう意味で、輸入関連指数は、関連の価格は下がってきておると思います。そういうことが、さっき申し上げました内外価格差を縮小しつつあることは事実だと思います。
 給与が下がってもいいのかというようなことをおっしゃっておりますが、私は、そういうことを言ったつもりはありません。
山本(幸)委員 二つ言いましたね。給与については、あなたはさっき、家計はハッピーだと言うから、それは給与が下がらなければハッピーだろうけれども、給与はこれから下がるんですよ、決してハッピーじゃないと言ったので、これはわかってもらったと思いますから、それ以上言いません。
 輸入物価指数というのは、ちょっと僕は、今手元に持っていないんだけれども、国内物価指数の下がり方に比べてそんなに下がっていませんよ、僕の理解するところは。それから、中国。中国の輸入品が下がったからといって、そんな日本経済に大きな影響を与えるほどのサイズなんですか。これは白川さんに。
白川参考人 お答えします。
 輸入品の影響でございますけれども、先ほど総裁から申し述べましたとおり、これは必ずしも中国ということではなくて、輸入品と、それから輸入品と競合します国内の商品ということで申し上げました。
 これは今、消費者物価指数は全部で三千八百二十一品目ございますけれども、そうした品目、今申し上げました輸入品あるいは輸入関連品目というのが千六百二十八ということで、約四割程度ございます。こうした四割程度の商品につきまして、物価の動き、輸入品についての価格の動き、前年比の数字、それから、それに対応します輸入品の数量の動きを見てみますと、比較的きれいな関係が出てきて、輸入品がふえるときにはそうした輸入品もしくは代替品の価格が下がるということでございます。そういうことをさっき総裁が申し上げたということでございます。
山本(幸)委員 中国はどうですか。わからないですか。
白川参考人 今申し上げましたとおり、中国というふうに特定しているわけではなくて、もちろん中国も有力な輸入先ではございますけれども、中国も含めて輸入品ということで申し上げました。
 それから、中国の輸入品のウエートが幾らかというのは、ちょっと今手元に数字がございませんので、正確な数字はお答えできませんけれども、また後ほど御説明したいというふうに思います。
山本(幸)委員 それは、ちょっと今私が手元に資料を持っていないので、いずれ議論したいと思います。
 それで、ただ、中国の輸入品がふえたからどんどん物価は下がっているんじゃないかというんだけれども、中国からの輸入品は、輸入金額は七兆円ぐらいですよ。GDPで見れば一・四%しかない。そんなもので日本の物価が大きく動くわけがない。全体の総需要が減っているから落ちているんですよ。
 次に、アメリカの連銀、FRBが最近おもしろいレポートを出しました。日本銀行の失敗から学ぶというようなことでありますが、デフレをとめるためにはどうしたらいいかということで、FRBのエコノミストが論文を書きました。
 これで、連銀と中央銀行の間ですからかなり日銀のことを思いやっているなというふうに見えますけれども、要するに、あのときはだれも予想できなかっただろうねと同情的に言って、しかし、今日のようなデフレ状態をもたらしたのはやはり日銀の金融政策、金融緩和が遅過ぎた、もっと早く二%ぐらい金利を下げていれば、それはマネーサプライをふやす、マネタリーベースをふやすということですけれども、下げていれば、ここまではいかなかったんじゃないか、自分たちはそれを反面教師としてやりますよと。実際やっていますわね。そういう分析をして、日銀の金融緩和は遅過ぎたというように分析していますけれども、これについてはどう思われますか。
白川参考人 学術的な論文なもので、私の方からお答えさせていただきます。
 今、山本先生御指摘のFRBのレポートでございますけれども、これはタイトルが「デフレの防止 九〇年代の日本の経験からの教訓」というペーパーでございます。このレポートは、九〇年代全般の日本の経験を分析することによりまして、低インフレ下の経済においてどのような経済政策運営を行えばデフレを防止できるかについて教訓を導き出そうということで書かれたものというふうに理解しております。
 レポートはいろいろなことを書いてございますけれども、主要な点として三点、教訓として引き出しております。
 一つは、バブルが崩壊した後、デフレを事前に予測することは非常に難しいということを書いていまして、当時のマーケットの状況、例えば長期金利であるとかいろいろな数字がございますし、あるいは内外のエコノミストの予想、あるいはFED自身も含めて、デフレを事前に予測することはできなかった、非常に難しかったということをまず第一点としては言っております。
 それから、二つ目は、一たんデフレになりますと、短期金利がゼロに近づきますと、金融政策は経済を安定化させる力を失ってしまうということを二つ目の教訓として上げております。
 三番目は、したがって、物価上昇率が低下するときには、デフレ回避のために、通常必要とされる以上の金利引き下げやあるいは財政への刺激が望ましいということで、金融政策と財政政策についてレビューをしております。あわせて、金融システムについての対策についてもメンションをしているということでございます。
 私ども、このレポートももちろん読みまして勉強しておりますけれども、このレポートにつきましては、特にデフレを未然に防ぐことに主眼を置いた政策対応が重要であるということを指摘しているというふうに理解しております。
山本(幸)委員 今や遅きに失したので、失敗のレッスンということしかないんですがね。
 ただ、ここでは予測が難しかったと言っていますけれども、九四年、九五年ぐらい、それ以前にもっと下げておけばよかったんだけれども、その予測は難しかっただろうなと言っているんですね。しかし、私はそれは納得できない。私は、最初、九三年に当選したんですが、そのころからもう、早く金利をゼロにしろと言っていたんですよ。これは、私の書いたやつを読んでみればわかりますがね。そういう点からすると、どうも余りに日本銀行をかばっているような気がしてなりませんがね。
 それから、おもしろいコメントがあるなと思ったのは、金融緩和はやり過ぎてもそれは後から簡単に取り戻せる、しかし、やり足らなかったら大変なことになるということを言って、私はこれが一番いい教訓になっているなというように思っておりまして、ぜひこれはこれからの、今や遅きに失しましたけれども、金融政策運営でちゃんとやってもらいたい。
 ところで、量的金融緩和の効果について、どうもなかったというように言っているんですが、そういう認識での理解でいいんですか。
白川参考人 お答えします。
 同じ答えになって恐縮でございますけれども、量的緩和につきましては、二つの効果について分けて考える必要があるというふうに思っております。
 金融システム、金融市場において不安が発生し、流動性需要が高まる、そういう状況に対応して日本銀行が潤沢に資金を供給していく、あるいはそういう姿勢を見せているということによってマーケットの混乱を防ぐ、そのことを通じて景気の底割れを防ぐという面で大いに効果はあったというふうに思っております。
 一方、経済活動を積極的に持ち上げるという方の効果は、これまでのところ見られていない。その背後にはさまざまな構造要因があるというふうに理解しております。
 それから、ちょっと今の質問に対するお答えではございませんけれども、先ほど山本先生から御質問のありました中国が輸入に占めるウエートでございますけれども、二〇〇一年で一六・六%ということでございます。
山本(幸)委員 私は、間違ったら、また改めてそれはします、中国については。
 白川さんとはいずれゆっくり議論したいと思っていますが、総裁、総裁も効果はなかったということなんですか。
速水参考人 量的緩和の効果がなかったということは私は言っておりません。そうは思っておりません。十分効果はあったと思っています。
 ただ、量的緩和、もっとふやせばもっと効果が出るんだということになれば、これはまたそのときの情勢によってよく判断しなきゃいけないことだというふうに思っております。
山本(幸)委員 私は、効果はあったと思っているんですよ。それは、ただ、日銀と認識が違うのは、量的緩和は、三月からのやつは量的緩和と認めない。去年の三月のやつというのはゼロ金利へ戻っただけであって、本当に量的緩和をしたのは九月からだと私は認識しているんですがね。九月からの量的緩和で一気にマネタリーベースを上げて今日までやってきて、それはかなり私は効果はあったと思っているからこそ、最近、そのことについては評価するよという話をしているんですがね。それは、だって円は途端にあれから安くなったし、株は年初について上がったわけですよね。
 問題は、本当は私は、三月に三〇%近く行ったので、これはいいなと、これを半年ぐらい続けてくれればなと思っていたのです。それを、二割弱ぐらいに落ちてきましたけれども、それでも昔に比べればまだいい。だから、これを落とさないでしっかりやるということが大事なんだ。
 というのは、お配りした図の二を見てもらいたいのですが、為替レートというのは、日銀の当座預金の残高と実に見事に相関しているのです。当座預金残高が上がれば為替は円安になるし、それが落ちてくると円高傾向に出てくる。これは金融・為替理論から、そう言えますね。ただ、問題は、相手国もあるから、相手の状況がそのときどうかというところによって違いますけれども。
 私は、最近の円高というのは、日銀の当座預金があの三月、四月のレベルから少し落ちてきているということを反映しているんじゃないか。逆に、アメリカの連銀の方はちょっと経済が心配になってきて、最近の数字はちょっとわからないんだけれども、一時ちょっと下げたけれども、また上げ始めているんじゃないかなという気がしているんです。そういう意味からいって、今日、アメリカ経済が少しいろいろな問題が起こってきてドル安というのが進んでいると、せっかく日本経済が量的緩和によって少しよくなりつつある状況のときに、これはやはり問題だ。その意味では、日銀当座預金残高はむしろ三月、四月レベルに少し近づけた方がいいんじゃないかという気がするんですが、総裁、いかがですか。
速水参考人 日本銀行はこれまで潤沢に流動性を供給してきて、マネタリーベースも前年比三割弱という高い伸び率になっているわけでして、為替相場の方はさまざまな要因に影響を受けて変動しておりまして、量的緩和導入後の一年間の動きを見ましても、日銀当座預金残高の増額が円安をもたらすかどうか、これは明らかではありません。
 特に、最近の、円高と言っておりますけれどもこれはドル安でありまして、ドル・ユーロの関係をごらんになってもおわかりのように、スタート時の一対一になっております。ドルが安くなっているということには、やはり裏に、先ほど申し上げましたように、企業の会計監査、会計がおかしいとか、あるいは経常収支の赤字がGDPの四%を超えているということ、そしてまた財政の赤字も本年度の赤字は避けられないようになってきている、いわゆる双子の赤字がまた出てきているということ。
 そしてまた、これは海外でドルを持っているアメリカのドル債務、ネットドル債務というのは二兆三千億ドルぐらいあるわけですね。逆に日本は一兆二千億ドル以上の債権超過ですけれども。海外の人たちが二兆三千億ドルぐらいのドルを持っているわけですから、ドルが弱くなりそうだとなると資金が動き出すのは、これは自然の流れだと思います。
 七〇年代、八〇年代、それでアメリカは苦労したわけですけれども、今日、ここまで下がって、ドル・ユーロも大体スタート時になっておりますし、円・ユーロも大体スタート時になっておりますし、この辺のところで、ほかに頼れる通貨というのはないわけですから、私はそんなにずるずるとドルが下がり続けることはないように思っております。これは私の個人的な見方でございます。
山本(幸)委員 もっと、せっかく私が評価しているんだから、しっかりやってもらえばまた評価しますよ。
 というのは、本当はインフレターゲットを持って将来時点まで約束するというのが私は一〇〇%なんですよ。それで期待感に働きかける方がいいと思います、それが百点満点だ。しかし、それでも量的緩和をしっかりやるということは評価します。それが本当に百点満点になるためには、ターゲットを持って、異時点間でそういう期待感に働きかけた方がいいと思うけれども、なかなかそこまで踏み切れないようですから。しかし、私は、何もいじめるつもりはないんだから、評価するところは評価するんだから。したがって、評価を失望させないようにちゃんとやってもらいたいということですよ。
 というのは、私のシミュレーションで、当初三〇%ぐらい半年ぐらい延ばして、それから一五%ぐらいにすると、二年したら必ず物価はプラスになる。これはシミュレーションで出ている。これはまたおもしろいことに、まず何にきくかというと機械受注にきいてくるというシミュレーションなんですね。そのトランスミッション・メカニズムを論理的に、僕はちょっと、十分に説明できないけれども、モデルをつくってシミュレーションをやると、機械受注にきいて、それから設備投資にきく。為替にもきく。物価についてはちょっとそれが遅くなるんだけれども、そういうのがありまして、それから見ると三〇%、なかなか結構なことじゃないかと。ただ、すぐやめちゃったのが残念だけれども、ぜひこれをもう少し、半年ぐらいやって、そしてそれから一五%ぐらいでやれば、これを二年続ければ絶対プラスになりますよ。
 問題はこの九月からなので、というのは、去年の九月からはふやしましたから、だから伸び率を伸ばすためにはそれをふやさなければいけないので、ここはしっかりやってもらいたい。これは、私のせっかくの評価を落とさないようにしてもらいたい。いずれ、またその辺については議論できるときがあるでしょう。
 一つだけちょっとお伺いしておきたいのですが、インフレターゲットをやるときに、日銀の皆さん方が政策手段がないからできないんだという議論をしきりにやるんですが、政策手段が足らないから、何が足らないんですか。
白川参考人 お答えします。
 金融政策は、マーケットにリザーブ、資金を供給して短期金利をコントロールし、それが経済全体にしみ渡っていく、これが金融政策のオーソドックスなルートでございます。
 短期金利について、今現在ゼロになっております。それから、短期金利がゼロになっておりますから、もう少し長い金利も低くしようということで、時間軸、コミットメントをしておるわけですけれども、その面でもほぼゼロになってきているということで、そういう意味で、金融政策が効果を発揮するオーソドックスなルート、手段が今乏しくなっているということをもってそういうふうに表現しております。
山本(幸)委員 オーソドックスなところはそうでしょうが、ではオーソドックスじゃない状況になれば非正統的な手段を考えてやればいいわけなんだと思うので、それはいつでも法律改正してやりますから、言ってきてください。
 以上で終わります。
中野(清)委員長代理 以上で本日の質疑は終了いたしました。
 参考人におかれましては、長時間大変御苦労さまでございました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時二十九分散会


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