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第1号 平成14年10月29日(火曜日)

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本国会召集日(平成十四年十月十八日)(金曜日)(午前零時現在)における本委員は、次のとおりである。
   委員長 坂本 剛二君
   理事 山本 幸三君 理事 海江田万里君
   理事 古川 元久君 理事 石井 啓一君
   理事 中塚 一宏君
      金子 一義君    上川 陽子君
      川崎 二郎君    倉田 雅年君
      小泉 龍司君    小坂 憲次君
      七条  明君    砂田 圭佑君
      田中 和徳君    竹下  亘君
      竹本 直一君    中村正三郎君
      萩山 教嚴君    林田  彪君
      増原 義剛君    山本 明彦君
      吉田 幸弘君    渡辺 喜美君
      五十嵐文彦君    生方 幸夫君
      江崎洋一郎君    小泉 俊明君
      小林 憲司君    佐藤 観樹君
      中川 正春君    永田 寿康君
      長妻  昭君    上田  勇君
      遠藤 和良君    達増 拓也君
      佐々木憲昭君    吉井 英勝君
      阿部 知子君    植田 至紀君
    ―――――――――――――
十月十八日
 坂本剛二君委員長辞任につき、その補欠として小坂憲次君が議院において、委員長に選任された。
平成十四年十月二十九日(火曜日)
    午前九時三十分開議
 出席委員
   委員長 小坂 憲次君
   理事 金子 一義君 理事 七条  明君
   理事 林田  彪君 理事 山本 幸三君
   理事 渡辺 喜美君 理事 江崎洋一郎君
   理事 海江田万里君 理事 古川 元久君
   理事 石井 啓一君 理事 中塚 一宏君
      上川 陽子君    倉田 雅年君
      小泉 龍司君    坂本 剛二君
      砂田 圭佑君    田中 和徳君
      竹下  亘君    竹本 直一君
      中村正三郎君    増原 義剛君
      山本 明彦君    吉田 幸弘君
      五十嵐文彦君    生方 幸夫君
      小泉 俊明君    小林 憲司君
      佐藤 観樹君    中川 正春君
      永田 寿康君    長妻  昭君
      上田  勇君    遠藤 和良君
      達増 拓也君    佐々木憲昭君
      吉井 英勝君    阿部 知子君
      植田 至紀君    小池百合子君
    …………………………………
   財務大臣         塩川正十郎君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     竹中 平蔵君
   内閣府副大臣       伊藤 達也君
   財務副大臣        小林 興起君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   財務大臣政務官      田中 和徳君
   財務大臣政務官      森山  裕君
   政府参考人
   (金融庁監督局長)    五味 廣文君
   政府参考人
   (財務省大臣官房審議官) 藤原 啓司君
   政府参考人
   (財務省国際局長)    溝口善兵衛君
   参考人
   (日本銀行総裁)     速水  優君
   財務金融委員会専門員   白須 光美君
    ―――――――――――――
委員の異動
十月十八日
 辞任
  川崎 二郎君
同日
            補欠選任
             小池百合子君
同月二十九日
 理事根本匠君同月二日委員辞任につき、その補欠として渡辺喜美君が理事に当選した。
同日
 理事中野清君同月四日委員辞任につき、その補欠として林田彪君が理事に当選した。
同日
 理事山口俊一君同月十七日委員辞任につき、その補欠として七条明君が理事に当選した。
同日
 理事山本幸三君及び海江田万里君同日理事辞任につき、その補欠として金子一義君及び江崎洋一郎君が理事に当選した。
    ―――――――――――――
十月十八日
 証券取引委員会設置法案(海江田万里君外十名提出、第百五十一回国会衆法第三三号)
 日本銀行法の一部を改正する法律案(石井紘基君外六名提出、第百五十一回国会衆法第六一号)
 金融機能の再生のための緊急措置に関する法律及び金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律の一部を改正する法律案(五十嵐文彦君外四名提出、第百五十四回国会衆法第一号)
 金融再生委員会設置法案(五十嵐文彦君外四名提出、第百五十四回国会衆法第二号)
 特定非営利活動の促進のための法人税法等の一部を改正する法律案(岡田克也君外八名提出、第百五十四回国会衆法第五号)
 酒類小売業者の経営の改善等に関する緊急措置法案(谷津義男君外七名提出、第百五十四回国会衆法第四五号)
は本委員会に付託された。
十月二十五日
 日本銀行法の一部を改正する法律案(第百五十一回国会衆法第六一号)の提出者「石井紘基君外六名」は「上田清司君外五名」に訂正された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 理事の辞任及び補欠選任
 国政調査承認要求に関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――
小坂委員長 これより会議を開きます。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 このたび、財務金融委員長の重責を担うこととなりました小坂憲次でございます。
 我が国の財政及び税制のあり方はもとより、株価低迷、不良債権処理、ペイオフ問題等、昨今の金融経済情勢に対し国民から深い関心が寄せられておりますところでありまして、当委員会に課せられた使命はまことに重大なものがあります。
 委員長としても、その責務の重大さを十分に認識し、甚だ微力でございますが、委員各位の御理解、御協力をいただきまして、公正かつ円満な委員会運営に努めてまいる所存でございますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。(拍手)
     ――――◇―――――
小坂委員長 この際、理事辞任の件につきましてお諮りいたします。
 理事山本幸三君及び理事海江田万里君から、理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小坂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 次に、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。
 ただいまの理事辞任並びに委員異動に伴い、現在理事が五名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小坂委員長 御異議なしと認めます。
 よって
      金子 一義君    七条  明君
      林田  彪君    渡辺 喜美君
   及び 江崎洋一郎君
を理事に指名いたします。
     ――――◇―――――
小坂委員長 次に、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。
 財政に関する事項
 税制に関する事項
 関税に関する事項
 外国為替に関する事項
 国有財産に関する事項
 たばこ事業及び塩事業に関する事項
 印刷事業に関する事項
 造幣事業に関する事項
 金融に関する事項
 証券取引に関する事項
以上の各事項につきまして、今会期中国政に関する調査を行うため、議長に対し、国政調査承認要求を行うこととし、その手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小坂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
     ――――◇―――――
小坂委員長 この際、竹中金融担当大臣、小林財務副大臣、伊藤内閣府副大臣、田中財務大臣政務官及び森山財務大臣政務官から発言を求められておりますので、順次これを許します。金融担当大臣竹中平蔵君。
竹中国務大臣 このたび、改造で金融担当大臣を拝命いたしました竹中でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 本日は、現下の金融行政について一言申し述べさせていただきたいと思います。
 金融担当大臣の就任に当たり、総理からは、不良債権処理の加速化について具体策を早急に取りまとめ、全力で取り組んでもらいたい、金融システムの安定確保に万全を期し、市場の信頼を確保してもらいたいとの御指示をいただきました。この総理指示を踏まえ、より一層強固な金融システムを目指して、政策を進化させていきたいと考えております。
 まず第一に、不良債権処理については、平成十六年度には不良債権問題を終結させるとの総理の御指示を踏まえ、金融庁に金融分野緊急対応戦略プロジェクトチームを設置し、資産査定の厳格化、自己資本及びガバナンスの強化等について幅広い検討を行っております。これを踏まえ、近く不良債権処理の加速について包括的な対策を決定いたします。また、中小企業金融等、金融の円滑化に配慮するとともに、不良債権処理と企業再生を一体として取り組む所存です。なお、経済情勢に応じては、柔軟かつ大胆な政策措置を講じ、金融システムと経済の安定の確保に万全を期してまいります。
 このような不良債権処理の加速等の政策強化を進める中、ペイオフにつきましては、決済機能の安定確保のための制度面での手当てを行い解禁の準備を整えつつ、その実施は、金融システムの安定確保の観点から、不良債権処理が終結した後の平成十七年四月からといたします。決済機能の安定確保につきましては、金融機関破綻時に全額保護される預金として、決済用預金を制度として用意するとともに、決済途上にある取引を完了させるための措置を講ずることとしております。
 次に、地域における経済活性化の観点からは、金融機関の経営基盤の強化を図ることが重要であり、金融機関が合併等により組織再編を行うことはそのための有力な手段と考えられます。したがって、主として地域金融機関における自主的な組織再編を円滑化するため、合併等の手続の簡素化、合併等による自己資本比率の低下を回復させるための資本増強等の施策を講じることとしております。
 また、我が国証券市場を幅広い投資家の参加する真に厚みのあるものとするため、去る八月六日、証券市場の改革促進プログラムを発表いたしました。
 貯蓄から投資への流れの加速に向け、本プログラムの具体的な施策について、今後ともスピード感を持って着実に実施することにより、抜本的な改革を推進してまいります。
 最後に、さきに申し上げた施策に関連して、既に今国会に、預金保険法及び金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法案を提出させていただきました。
 法律案の詳しい内容につきましては今後改めて御説明させていただきますが、当委員会の委員長及び委員の皆様におかれましては、御審議のほど何とぞよろしくお願い申し上げます。
 以上、ごあいさつとさせていただきます。ありがとうございます。(拍手)
小坂委員長 財務副大臣小林興起君。
小林副大臣 このたび財務副大臣を拝命いたしました小林興起でございます。
 その職責の重大さを深く感じているところであります。大臣の御指示を仰ぎつつ、谷口副大臣とともに誠心誠意、職務の遂行に当たる所存でございます。
 委員の皆様の御指導をよろしくお願い申し上げます。(拍手)
小坂委員長 内閣府副大臣伊藤達也君。
伊藤副大臣 このたび内閣府の副大臣を拝命いたしまして、金融関係事項を担当させていただくことになりました伊藤達也でございます。
 竹中大臣を補佐いたしまして、不良債権問題を解決し、日本経済を再生させていくために全力を尽くしていく覚悟でございますので、小坂委員長を初め委員の皆様方の御指導、御鞭撻のほどを心からお願い申し上げます。(拍手)
小坂委員長 財務大臣政務官田中和徳君。
田中大臣政務官 皆様おはようございます。このたび財務大臣政務官を仰せつかりました田中和徳でございます。
 さまざまな課題が山積する中、森山大臣政務官とともに、大臣を補佐しつつ職務の遂行に全力を傾注してまいる所存でございます。委員の皆様の御指導をよろしくお願い申し上げ、一言のごあいさつといたします。よろしくお願いいたします。(拍手)
小坂委員長 財務大臣政務官森山裕君。
森山大臣政務官 皆様おはようございます。このたび財務大臣政務官を拝命いたしました森山裕でございます。
 財務省の行政運営に高い関心が集まる中、田中大臣政務官とともに、大臣を補佐しつつ職務の遂行に全力を傾注してまいる所存でございます。委員長初め委員の皆様の御指導、御鞭撻をよろしくお願い申し上げます。(拍手)
     ――――◇―――――
小坂委員長 財政及び金融に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁速水優君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として財務省大臣官房審議官藤原啓司君、財務省国際局長溝口善兵衛君、金融庁監督局長五味廣文君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小坂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
小坂委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。七条明君。
七条委員 おはようございます。
 時間の関係もありますから、早速入らせていただこうと思うわけでありますが、我が国経済の状況、今株価の急落を受けて非常に厳しい現状にあることだけはもう皆さん認識が一致するところであると思います。ただ、デフレなのか、あるいはデフレスパイラルまでも落ち込んでいる状況なのかということについては、これは論議が分かれるところでありますけれども、いずれにしてもデフレスパイラルにもう近い状況だ、非常に厳しい。
 特に、中小企業や、あるいはこれから起こってくるであろうことを想像してみるときに、非常に厳しいものをいかんともしがたい状況ではないかと思うわけでありますが、政府におかれては、近いうち、あすかあさってのうちだと思いますけれども、総合デフレ対策を示されると聞いておりますし、また、日銀は、あすの三十日に金融政策決定会合を開いて追加の金融対策を、今、金融支援対策というものを検討中だ、こういうふうにも聞いておるところでもあります。
 そこで、これから出される総合デフレ対策というのはどういうことなのだというようなことを含めて、お聞かせをいただきたいわけでありますけれども、今までのいわゆるデフレ対策あるいは景気対策というのは、日銀は日銀だけでやってこられた。あるいは金融庁は金融庁だけで一生懸命おやりになられた。あるいは内閣府として、今まで金融担当大臣と竹中大臣で持っておられた、金融、財政の大臣別々にそれらのやり方をやってこられたのではないだろうか。
 今、これから問われるのは、日銀もあるいは金融庁も、内閣府だけではなくて各省庁が一緒になって、いわゆる一、二の三、そういう形で市場にもメッセージを出す、政策もそれに合わせてフォローアップをしていくということをきちっとやらなければならないのではないかと実は私、思う一人であります。
 そのために、今に考えてみますときに、総合対応というのが今必要だ。いわゆる今回の組織において、経済財政担当大臣が金融担当大臣を兼ねられることになった。これは、そういう意味では一歩前進をした組閣ではないかと実は私、思うわけでありますけれども、これから三位一体になってやることができるかどうか。あるいは市場に対して各省庁一緒になってどんなメッセージが出せるかどうか。その総合力というものについて竹中大臣がどういうふうに考えているのだろうか。
 あるいは、もう一つお聞きをしたいのは、ペイオフを、先ほど、法案を出された、こう聞いておりますけれども、ペイオフの関連の法案の中で、今までは五カ月で決済預金がいいと言っておった。それをなぜ二年延長するのか。二年といういわゆる延長幅を決めたのはどういうことで決めたのか。
 もう一つ、そういう五カ月から二年に延長することを決めたわけでありますけれども、これは一つの政策転換なのではないだろうか、こういう疑問もわいてくるわけでありますが、この三点について、まずお聞かせをいただきたいと思います。
竹中国務大臣 七条委員から、三つの重要な御質問をいただきました。
 まず最初の、まさに総合力をどのように考えるか。
 今回金融担当大臣を総理から仰せつかるに当たりまして、まさしく経済、金融を一体となってしっかりと総合的な政策を組み立てていけというのが総理からの大変重要な御指示であると強く認識し、また重く受けとめております。
 御承知のように、金融との関係一つとりましても、日本銀行は日本銀行としてベースマネーを増強する、金融庁は金融庁として不良債権の処理を加速させて結果的に信用乗数が上がるような形をつくっていく、結果的に双方の協力でマネーサプライがふえて安定的なマクロ金融経済運営に資していく、そういう姿をぜひとも実現したいというふうに思っております。
 月末に向けまして、金融と同時に、総合的なパッケージとして、総合的な対応戦略として示すということにいたしましたのも、まさにそういう視点でございまして、任務を重く受けとめて尽力したいというふうに思っております。
 二点目のペイオフでありますけれども、まさに委員御指摘のように、金融庁としては、当初、ペイオフ解禁と決済機能の安定確保等を導入するための移行期間を五カ月ぐらいということで、新制度に移行する案を検討していたところでございます。その後、九月三十日に総理から、構造改革を加速させるための政策強化を行って、十六年度には不良債権問題を終結させるようにというような御指示がありました。
 このような一層の政策強化によって構造改革加速を図るためには、同時に、金融システムの安定と中小企業金融等の金融の円滑に十分に配慮することも必要である。こうした観点から、ペイオフについては、まさにこの十六年度には終結させようという総理の指示に合わせる形で、不良債権問題が終結した後の十七年四月から実施するというふうにしたものでございます。
 三番目の、これは政策転換なのかということでありますが、政策の基本は、昨年の骨太方針より一貫して不良債権問題を解決に向かわしめるということでございました。
 むしろ、今回それを強化するための措置をとるということでございますので、これはまさしく政策を強くする、その過程での一つの手段であるというふうに考えているところでございます。政策を強化する中で、全体のバランスをとりながらしっかりとやっていきたいと考えているところでございます。
七条委員 今、ペイオフ二年の形の方から先に申し上げますと、これは、金融システムを安定させる、非常に、今デフレ対策の中でこれが一番重要なことでもあるし、それを意識しなければならない。
 ただ、それだけではないというようなことも言っておられたわけでありますし、総合力をどうするかというのはこれからが恐らく問われるわけでありますし、金融担当大臣とお兼ねになられたわけですから、兼ねて両方やる、兼務をされるわけでありますから、当然その意味では、各省庁に対して、きちっとこれから出してくる政策を調整する、あるいは途中でそれがどこまで評価しているかということをきちっと評価をつけて、あるいはもう一遍やり直す、あるいはもっとそれを各大臣に言ってきちっとメッセージとしてもあらわしていくということをおやりになることが一番大事だと思うわけであります。
 それからもう一つ、私は、政策転換ではないか、こう申し上げたら、それは違うんだ、政策強化なんだということでありますが、これは見解の相違だろうと思います。野党の方々にとってみたら、これは完全に政策転換であろうというふうに思われる方も随分おられる。私自身も、よくよく見てみるとこれは政策転換だと言ってもいいのではないだろうか。
 そのぐらいの思いの中で今の厳しい状況を立て直していきます、こう言うことの方がむしろはっきりとして国民の皆さん方にもわかりやすい、それをはっきり示していくことの方が市場も反応しやすいのではないかと私には思えてならないわけであります。
 私が今考えますときに、不良債権処理を加速させることは非常に大事だ。特に、今金融大臣としても言われておられましたけれども、これから総合的にやるということをおやりになりたいというのはわかるんですが、しかしながら、一方で、中小企業対策だとか雇用対策などのセーフティーネットをきちっと位置づけておいて、きょう塩川大臣もおいででございますけれども、税制だとかそれに対する予算措置だとか、それから民需の創出策だとか、あるいは経済や証券市場の活性化策ということを一緒にやっていかなければならない。いろいろ各省庁が一緒になってやるということをきちっと本当にメッセージとして出せる、それを、本当にやるということを国民の皆さん方がわかっていただいて評価をしていただける、ここまでいかなければならないと思うのでありますけれども、どうも今感じますときは、不良債権処理が先に出てしまっている、金融政策だけが強調をされているように思えてなりません。
 日銀も含めて、各省庁が一体としてメッセージを出していただくことをお願いしたいと思うのでありますが、一方で、実はもう一つ竹中大臣にお聞かせをいただきたいのは、不良債権を急ぐ余りに、企業再生ということを忘れているんじゃないか。あるいは、銀行が貸し渋りや貸しはがしをしている、そういうことを助長してしまうんじゃないだろうか。中小企業に対する資金供給あるいは支援策があるかどうか。この貸し渋り、貸しはがしの防止策ということを考えながら、どういうふうに考えておられるのかということをお聞かせいただきたいと思います。
竹中国務大臣 委員から重要な御指摘、何点かございましたが、質問に関しましては、不良債権処理が先走っているのではないだろうかという点と、企業再生ないしは貸し渋り対策についてどう考える、この二点であったかというふうに存じます。
 まず、不良債権処理が先走っているのではないかということに関しては、そうならないように、まさに総合的な立場で調整に努めさせていただいているところでございます。
 これまで、経済財政諮問会議等々におきましても、四本柱の改革を進めることが重要であるということをずっと主張させていただいてきたところであります。歳出の改革、歳入の改革、これは税の問題でございますけれども、それと規制の改革、そして金融システムの改革。その中で、一年半を振り返って、特にこの今の時点で金融システムの改革を加速させる必要があるというのが総理の判断でございまして、むしろ、この点について従来よりもより速く、より大きくということの必要性が出てきたということで、この金融システム改革が今特に注目されているのだろうというふうに認識をしております。
 その意味では、四つの改革がバランスを持って進んでいけますように、今回の総合的な対応戦略についても十分に配慮して、御指摘の点を配慮しながら今取りまとめをしておるところでございます。
 第二点目の御指摘、これまた大変重要であると思っております。
 不良債権の処理といいますと、必ず非常に後ろ向きのイメージが出てくるわけでございますけれども、まさに我々が目指さなければいけないのは、最終的にはやはり企業、産業を強くすることであり、その結果国民の生活を向上させることであり、また、そのプロセスにおいて、決して銀行をつぶすとかそういうことではなくて、銀行そのものをやはり強くしていくということが、金融システムを強くすることが私たちの目的であるというのはもう言うまでもないことでありまして、そういう点についてしっかりとしたメッセージが出せるような金融システムの改革案にぜひともしたいというふうに思っております。
 とりわけ、御指摘の貸し渋り、資産内容を銀行がよくしようとする過程で資産の圧縮が高じて貸し渋り、貸しはがし等々が起こらないようなやり方を進めていくことがぜひとも重要でありまして、そのためにこそ、したがって総合的に考えていかなければならないと思っております。
 その第一歩として、あくまで一歩にすぎませんけれども、既に先週、金融庁の中に貸し渋り貸しはがしのホットラインをつくりまして、そういうものをきちっとモニターしながら必要な対応策を講じていくという姿勢を持っておりますので、委員御指摘の点を踏まえまして、しっかりと対応をしていきたいと思っております。
七条委員 これは、不良債権を進める、銀行を強くしたい、こういう思いがあるんでありましょうけれども、どうも私には、銀行を強くしたいという思い、竹中大臣が言われること、私はよく理解をするつもりでありますが、銀行は今、強くするというよりは、どちらかといったら政府から乗っ取られるんじゃないか、経営者かわれと言われているんじゃないかという不安の方が先に立っているんじゃないかという気がしてなりません。
 もう一つ言うならば、これから不良債権を進めていくときに、貸し渋り、貸しはがし、特に自己資本比率ということを徹底して見直してくると、そのために頭を使うことになると、貸し渋りや貸しはがしの方が先行してしまうということが非常に多いと思うんですね。ですから、この自己資本比率ということをきちっとして、それが健全かどうかという点を見きわめるときに、一方で貸し渋り、貸しはがしがないかということも、中小企業対策や企業再生というようなことも考えながら、総合的にやっていただくことをお願いしておきたいと思います。
 では、次に、きょうは日銀の速水総裁おいででございますから、日銀に対して三点お聞かせをいただきたいのであります。
 先日、日本銀行は思い切った発言をされたと私は思うんですね。これは、銀行保有株の買い取りをやりたい、こう言っておられる。まさにこれは、日銀の関係者が言っておられたのでありますけれども、清水の舞台から飛びおりるというような表現をしておられました。確かに私も思い切ったことを言われたと思うのでありますが、しかし、これをそのまま受けていいのかどうか。どうも、タイミングという意味では悪かったのではないかと思えてなりません。
 金融庁の方が、いわゆる銀行保有株制限法という法律を去年成立させました。あるいは、私たちも議員立法で、それに伴います銀行保有株の取得機構の改正法案なんかも提出をしているところでありますけれども、そういうような状況のときに、もう少し日銀が早く反応していただいておったら私はよかったんじゃないか。タイミングが悪いというのはそういうところにもあるし、日銀は日銀だけでやる、あるいは金融庁は金融庁だけで別々のやり方をしてきたということが、ここにも見えてくるのではないかと私は思えてしようがないんですね。が、しかし、これはやってよかったな、やらないよりはやってよかったなと実は思っている一人でもあります。
 しかしながら、先ほども言いましたように、金融庁は金融庁だけでやらない、あるいは日銀は日銀だけでやらないという総合的なことの力の中で、私がまずお聞かせをいただきたいのは、速水総裁、インフレターゲティング、これをもうそろそろ導入してはどうだろうかと私は思えてなりません。
 特に今、先ほど来、ペイオフを二年延長する、こう言われました。その二年延長ということで、来年の四月から二年延長するわけでありますが、この二年の延長ということを意識してインフレターゲティングを出せないか。二年の間にどういうことができるんだ、どういう形でどこまで物価の安定を持っていくことができる。あるいはそれが、一%か二%ぐらいの成長があればいい、引き上げられることはいいんでしょうけれども、ともかく二年でどこまでやれるかということを考えてみたらどうかと私は思っております。
 もう一つお聞かせいただきたいのは、先日、二十四日でありましたけれども、福間日銀政策審議委員から、講演の内容の中で、金融行政や市場の信用リスクにさらなる警戒感が大切だ、特に機動的かつ弾力的な政策が必要だと思うというような内容のことを言っておられたのでありますが、最近の日銀のいわゆる金融調整目標、いわゆる当座預金残高が今、目標、上限で十兆から十五兆円程度に固定をされてしまったままです。あるいは、長期国債の買い入れ増額の上限も一兆円に固定されているままなんですけれども、このいわゆる金融調整目標の継続的な拡大をするという気持ちがあるのかどうか。私は、これだけが今必要なのではない。もっと違うところで点検をしていかなきゃいけないことがたくさんある。
 今、銀行にはじゃぶじゃぶと資金がたまっているんですけれども、しかしながら融資比率が高まってこない。貸し渋り、貸しはがしが先ほども言ったようにある。一方で、国債の保有高がどんどん高くなってしまって、その辺で空回りをしてしまって下に落ちてこない。こういう現象があるのではないかと思うわけでありますから、これをこのまま続けておいただけではいけないんじゃないか。
 そういう意味では、三点目、お聞かせをいただきたいのは、今後、国債の買い切りオペの拡大はどうなんだ、あるいは、外債だとかETFを含めた有価証券などに対して売買に運用を広げていく、これは弾力的な、弾力性のあるところを図っていくというつもりがないのか。銀行の保有株まで買い取るんだということを言ったのなら、新発の国債ぐらいを買って、これがもっと下に流れていくよ、あるいは公共事業の中で流れていく、もっと全国津々浦々まで日銀の資金が流れていくようなことをお考えになるべきではないだろうか。
 こういうことの三点、お聞かせをいただきたいのですが、どうでしょうか。
速水参考人 お答えいたします。
 日本銀行としましては、できるだけ早く経済を持続的な成長軌道に戻して、物価がマイナス基調から脱却できる状況を実現したいと考えております。
 しかし、大きな需要不足を抱えて、金利もゼロに達しておりますし、さらに、さまざまな構造問題が金融緩和の効果を妨げております中で、どうやって達成するのかという裏づけなく、この二年間でという期限を先ほどおっしゃいましたけれども、期限を決めるというのは、これはかえって人々に信頼されなかったり、むしろ混乱を招く可能性が高いというふうに思っております。
 御指摘のとおりに、日本銀行は、既に、インフレ率が安定的にゼロ以上となるまで現在の思い切った金融緩和の枠組みを続けると宣言しておるわけでございます。デフレ脱却への強い決意を明らかにしているというつもりでおります。現在の状況のもとでは、こうした宣言のもとで思い切った資金供給を継続する方がわかりやすく、また効果的だというふうに考えております。
 それから、もう少し思い切っていろいろやったらどうかという御質問でございますが、日本銀行が潤沢な資金供給を行っていく上で、買い入れ対象資産や担保が不足しているという状況では今ございません。日本銀行による思い切った資金供給の効果が、金融システムの外側にいる企業や家計に十分波及しにくい状況にあることは事実でございます。今後、日本経済が持続的かつ安定的な成長軌道に乗っていくというためには、金融緩和策だけでは十分ではないと思うんです。税制改革とか歳出の見直しとか規制の緩和とか撤廃、さらに家計の安心感を高めるようなことなどを通じて、いわゆる構造改革というものかと思いますが、企業や家計の活発な支出活動を引き出していくことが重要であると思います。そのような前向きの動きが起こってくれば、日本銀行の思い切った金融緩和はこれまで以上に強力な効果を発揮していくと思われます。
 政府各省と一斉にやれというお話でございますけれども、御承知のように日本銀行法、新しい日銀法で、三条と四条で、三条には、日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性が書かれております。四条では、政府との関係で、日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえて、それが政府の経済政策の基本的方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にして、十分な意思疎通を図らなければならない、この政府の基本方針と整合的なものであるように、私どもは常に考えて動いてきたと思いますし、今後もそうしていきたいと思います。
 ただ、私どもの細かい金融政策、何をどうやって動かして今この目的を達していくのかということは、これは先ほどの三条の中で書かれておりますように、私どもがいろいろ討議をし、政策決定会合において決めることが法律で明らかに書かれておりますので、その点は、余り事前に、これとこれを政策決定会合で決めるんだというふうにはなかなか申しかねます。決定会合でいろいろ議論した結果、なるたけこの方向に合うような形で政策を進めてまいりたいというふうに思っております。
 以上でございます。
七条委員 インフレターゲティングの話でありますけれども、もう既に日銀は、物価の安定目標というのはつくっているんですよね。が、しかし、これに期日を入れていないというだけなんだと思うんです。ですから、私は、二年という話の中で、ペイオフを二年でやるというのなら、日銀も、その二年の間にどこまでいわゆる物価の目標をつくっていけるのかということをきちっとやっておけば、これが、日銀と金融庁が一緒になってやっているよ、政府と一緒になってやっているよという形にまたつながってくるという意味で御提案を申し上げたところでありますし、先ほど、じゃぶじゃぶお金があるけれども資金がまだ下まで流れていないというような話も申し上げたけれども、現実にはそうだとはっきり思います。
 ですから、これをどうしたらいいかということは、やはり日銀にも大きな責任がある。どういう形できちっとやらなければならないということを政府と日銀がきちっと話をして、早くメッセージを出してやらなければ、これは総合力のあるデフレ総合対策とは言えないと私は思いますから、その辺もきちっと位置づけていただきたいなと思います。
 では、きょうは塩川大臣おいででございますから、時間の関係で走り走り二つお聞かせを、三つと思いましたけれども二つに絞らせていただきますが、この総合デフレ対策に対して今国会で補正予算を出すのか、出さないのか。どうも出さないというふうに聞いておりますけれども、では、これは追加対応は次回の国会の中では必ずやるのかどうか。私は早くやるべきだと思うんですけれども、それはどうか。もしよければ、この予算の規模のようなもの、自由民主党は二兆円ぐらい出したらどうだなんて言っていますけれども、塩川大臣の前の発言は、一兆円そこそこかななどという話をしておりました。この辺もお聞かせをいただきたい。
 もう一つ、先ほど金融庁が出してきた二年延長をしたペイオフの問題を、二年ということを意識して、財務省としても何かメッセージを出す。あるいは、これに伴って、二年ということだけでどこまでできるか、金融庁としても、税制をどこまでやる、あるいは予算措置をどういう形でやっていくかということも含めて、財務省の二年という形を意識して一緒に総合的にやるべきでないか、私はそう思うんですけれども、それはどうでしょうか。
塩川国務大臣 まず、補正予算はどうするのかという話でございますけれども、私は、どうも現実と理屈の方が、役所の方が乖離しておるように思えてならぬのです。
 現実はそんなところまでまだいっていないので、これから不良資産の処理をどうするかということでまずやらなければ。何としても不良資産に対する引き当て充当率を十分さすということが先決で、その結果どういう現象があらわれてくるかということは、ちょっと予測しにくいような状態なんですね。私は、かなり不良資産のいわばあぶり出しが出てくるんではないかと思っておるんですが。その状態を、実際どのようなことにいくかということを見定めて資金手当て等もすべきだと思っておりまして、したがって、そのときには、やはり少しのタイミングのずれが起こってくると思っております。そのことを見きわめる必要があるので、直ちに補正予算をこの臨時国会中に組まなければならぬという、そういう緊迫した状態ではないだろう。
 まずは、とにかく不良資産の要するに処理を、充当を急がせて、その処理を急がせてもらわなければいけない、それを見定めた上でも十分できると思っております。したがって、資金手当てが必要であることは十分承知しておりますが、そのタイミングがいつかということについて、十分検討する必要がある。
 それからもう一つは、ペイオフを二年延長したということでございますが、これに伴うところの反応ということも、まだ十分につかみ切れていないと私は思っておりまして、そういうことから見て、金融対策に対する措置というものは、むしろ、それよりもセーフティーネットの方に重点を置いた措置というものを考えておくべきではないかと思っております。
 そのためには、まず中小企業金融に対してどういう態度で臨むかということですが、中小企業金融が、実態から見まして、保証枠を使ってやるのか、あるいは実際の実額の融資をするのかという、この方針がまだ十分に決まっておりませんが、私は、当面は、中小企業の保証枠を十分に活用することによって金融機関が積極的に融資をしてくれることを望んでおるんです。その保証枠が、現在でまだ枠としては三兆五千億円残っておりますので、これを十四年度、十分に使ってもらいたいと思っておりますが、そのためには、用途別にこの保証枠が決まっておるということを、これをもっと融通無碍にして使いやすくしてもらうということがまず先決ではないか。その上で、なお必要であるとするならば、さらに追加措置を講じていかなければならぬだろうと思っております。
 それから、雇用対策についてでありますが、雇用対策の経費も、各年度ごとの予算をずっと総合してみますと、約四千億円近くの雇用の対策費がある。これも十分に使うように。要するに縦割り行政の弊害からきておるのでございますから、こういうようなものを改正して、使いやすく、各省が責任を持って使いやすくするという、その垣根を撤廃するということが私の仕事だと思って、そちらの方に今重点を置いております。それで、なおかつこれだけ足らないんだというような実額の要求が出てくれば、私はそれに対して素直に応じていくべきだと思っております。
七条委員 もう時間が来ましたから私だけだと思いますけれども、私は、これは補正予算というのは今喫緊に必要だ、できるだけ早く処置をしてやるべきだ。もう一つは、減税を先行させてやる、いわゆる税制の中で減税を先行させてやる。その減税規模も、何とかここまでだということぐらいは出して、早く市場にそういういわゆるメッセージを出してやるということが必要だ。今財務省ができることは、そういう税制面あるいは予算面ということしか今はできないんですね。それをきちっと位置づけてやれるようなアナウンスを出してやるということ、それが総合力に近づいてくるし、いわゆる三位一体とさっき申し上げましたけれども、金融庁あるいは内閣府、日銀あるいは財務省が一緒になって総合力を出していくデフレ対策になっていくと思います。
 どうかよろしくお願いいたします。終わります。
小坂委員長 次に、石井啓一君。
石井(啓)委員 おはようございます。公明党の石井啓一でございます。
 まず、不良債権処理の加速策とデフレ対策ということで質問をさせていただきますが、不良債権処理の加速ということで、十六年度末までに不良債権処理を終結させるというふうにしているわけでございますけれども、そもそもこの不良債権処理の終結というのはどういう状態を指すのか、どういうメルクマールで判断をするのか、この点について、まず竹中大臣に確認をいたしたいと思います。
竹中国務大臣 何を目指して不良債権処理の加速を行うのかというのは大変重要なポイントであろうかと思います。ただ同時に、この不良債権の問題というのが非常にある意味で広範な問題でありまして、究極的にはやはり信頼感、安定感、そういうふうな総合判断の問題に帰するところも非常に大きいと思っております。
 したがいまして、我々が目指すのは、やはり構造改革を支えていけるより強固な金融システムをつくることであり、結果的に市場から、国民から信頼されるような金融市場をつくっていくということに尽きるのであろうかと思います。ただ、その場合に、例えば一つの中間的な整理としてどのような目標があり得るかということは、これはしっかりと考えなければいけないというふうにも思っております。
 そういう点も踏まえまして、今不良債権処理の加速策についての議論を進めているところでございますので、委員御指摘のような点をできるだけ取り入れさせていただいて、どのような示し方が可能かということを検討していきたいと思っております。
石井(啓)委員 では、その点は今後の検討を待ちたいと思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
 それから二点目に、今回不良債権処理を加速するわけでございますけれども、これはデフレ対策とやはり一体でなければならないというふうに考えます。
 二つ理由がございます。一つは、不良債権処理を加速するに伴う副作用への対応ということでありますけれども、企業倒産あるいは失業者の増大という懸念がございます。それによって景気に下押し圧力が相当かかるという懸念がございますので、こういった副作用にいかに対応していくのかということで、デフレ対策が必要だということがございます。
 それから、最近の不良債権は、バブルの後始末というよりは、むしろ、景気悪化が続き、デフレが悪化して業績が悪くなっている、その結果、企業倒産したりあるいは経営不振に陥ったりということで新たに不良債権化しているということで、デフレが不良債権を新たに生んでいる、こういう状況でもございますので、デフレを終息させないとこの不良債権の終結というのはない。
 こういった二つの理由から、不良債権処理の加速とデフレ対策は一体でなければならない、こういうふうに考えるわけでございますけれども、このデフレ対策には需要の下支えが必要でございます。構造改革に役立つ公共事業というのも相当ございます。また、中小企業や雇用のセーフティーネットを強化することも必要でございますし、また税制改革や規制改革で民間需要を起こしていくということも必要でございます。
 こういった総合的な対策が必要なわけでありますが、こういったことを考えますと、やはり補正予算は欠かせないというふうに考えるわけでございます。この点について、竹中大臣、塩川大臣、それから速水総裁、お三方からそれぞれ御答弁いただきたいと思います。
竹中国務大臣 政策をまさに総合的に展開していくということ、石井委員の御指摘のとおりであると思っております。その基本は、先ほども申し上げましたが、金融システム改革、今回力を入れてやるわけであります。歳出の改革、効率的な歳出の配分によってそれが需要拡大に結びついていくような体制を整える。歳入の改革、これは税制を含みますから、活性化を通して需要が安定的にふえていくような状況をつくる。それと規制改革、これは特区等も重要な課題でありますが、規制改革が非常に民間の需要刺激に大きな効果があるということもやはり重要なポイントであろうかと思います。
 したがいまして、この四本柱の改革をより早く、より大きく、よりわかりやすく示していくというのが今取りまとめつつあります総合的な対応策のやはり基本になるというふうに理解をしています。
 その上で、さらには、これまた御指摘がありましたようなセーフティーネット、中小企業の特に金融の問題、それと雇用の確保の問題、これをつけ加えた形で総合的な対応策に今取り組んでいるところでございます。
 今各省庁も、総力を挙げていろいろな対応策を検討してもらっておりますけれども、どういうような対策がまず必要なのか、その上でそれに伴う財政的な裏づけがどのように判断されなければいけないのかということを見きわめる必要が出てくるのであろうかというふうに思っております。
塩川国務大臣 総合対策の中の一つの重要なのは、二つございまして、一つは税制改革であると思っております。税制改革につきましては、既にいろいろなアナウンスが出ておりまして、それを集約する時期に来ておりまして、税は何としてもやはり法律の改正が必要でございますので、その法律の改正のための準備はもう十分な準備ができておりまして、これは時期を見て法律の提出をいたしたいと思っております。
 それからもう一つは、予算の関係から見まして、セーフティーネットに対する手当てが必要だと思っておりますが、それにつきましては、先ほども七条委員の御質問にお答えしたように、現在に講じられる手だてのものは十分にそれを消化した上で、必要がある分については実額をもってその措置を講じていきたいと思っております。
速水参考人 経済活動を活性化してまいりますためには、金融システムの安定化とともに、私は次の二つのことが大事だと思います。一つは民需を引き出す。そのためには、規制の緩和、撤廃とか、税制の改革ということが必要だと思います。そういうものを通じて民需を引き出すということ。それからもう一つは、国民の安心感ですが、雇用対策等のセーフティーネットを整備して国民の安心感を高めていく。こういうことがあって初めて経済が活性化していくんではないかというふうに思います。
 また、財政出動につきましては、一般論を申し上げますと、持続的かつ安定的な経済成長を実現する上で適切な財政運営は重要な役割を果たすと同時に、中長期的な財政規律の確保が求められているものと考えております。
 政府におかれましては、これらの点を踏まえて、適切な対応を打ち出されることを期待いたしております。
石井(啓)委員 総合的な対策をおとりになるということでは御答弁は一致したと思いますけれども、肝心の補正予算の件については一般論ということで、まだ総理が決断を、決断というか明言をされていらっしゃいませんからなかなかおっしゃりにくいと思いますけれども、これは大変国民も期待の高いところでございますので、今後よろしくお願いを申し上げたいと思います。
 それでは、具体的な不良債権処理の加速策に関しまして質問いたしますが、まだ最終的な報告が上がっていない段階で、私どももさまざまな報道を通じてしかわかりませんので、その段階での質問ということになりますが、まず、資産査定の厳格化と引き当ての強化という点でございますけれども、私は、これはしっかりとやるべきだと理解をしているところでございます。
 金融の健全化の大前提は、資産査定をしっかりやる、引き当てをしっかりやるということがまずすべての前提でございますから、ここはきちんとやるということは私は理解をするところでございますけれども、これによって自己資本が不足する銀行に公的資金を注入するということになりますが、この際、経営者の責任問題、いろいろの観点から言われております。現在の法的な仕組みでは、申請主義であるから、経営者の責任を問うということになるとなかなか申請してこないのではないか。あるいは、今の銀行の経営というのは、かつてのバブルのときの経営者に本来は責任を負わせるべきなんだけれども、今の経営者に責任を負わせるのはいかがなものか。
 いろいろな議論はありますけれども、私は、自己資本不足に陥った銀行に公的資金を注入するということであれば、やはり経営者の責任というのは明確化しなければいけない、一定の責任はきちんととっていただかなければいけないというふうに考えますが、この点、竹中大臣、いかがでしょうか。
竹中国務大臣 経営者、特に大きな組織を預かるトップの方々の責任というのは、一般論としては、常に非常に大きいものがあるのだろうと思います。したがって、まず、そういった責任に関しては経営者としてみずからがしっかりとその判断をされる。加えて、これもやはり重要なポイントとしては、いわゆるコーポレートガバナンスの中で、そのコーポレートガバナンス、組織のガバナンスの仕組みが発揮される形でその責任論がきちっと議論されるというのが正常の姿であろうかというふうに思います。
 今、日本の金融機関が大きな話題になる中で、そういったどういう形の責任論があり得るのかということも、これまた実は銀行経営のガバナンスをしっかりしていただくというのが今回の非常に大きなテーマでありますから、今鋭意いろいろ議論をさせていただいておりますが、一般論として、こういう場合には責任があるとかというのはなかなか難しい面がございます。委員御指摘のように、それがどういう理由によって生じたのかということに関して、政府が民間の企業に対して余りに介入するというのは、これはこれでまた別の問題もあり得るのだと思います。
 しかし、これはあくまで一般論でありますけれども、万が一にもやはり公的資金を注入しなければいけないというような事態になった場合には、これはやはり国民の税金を使うわけでありますから、それなりの責任を経営者が負うというのは、一般論としては、私は国民の感情からしても当然のことなのであろうかというふうに思っております。
 こういった点につきまして、今鋭意検討をしておりますので、最終報告の中で反映をさせていきたいというふうに思っております。
石井(啓)委員 過去の資本注入というのは、建前としては、不健全でない銀行をより健全化するという建前でやりましたから、経営者の責任というのは問わなかったわけでございますけれども、これに対しては国民の中でやはり非常に批判が強うございます。今回は自己資本不足に陥った銀行ということでありますから、やはり私もけじめをつけることが必要であるというふうに考えます。
 それから、税効果会計の見直しでございますけれども、これもさまざま議論を今されている最中のことでございますから最終的なお答えはなかなか今いただけないかと思いますけれども、私は二つのことを申し上げようと思います。
 一つは、突然の会計ルールの変更というのはやはり無用の混乱を招くということでございます。
 今報じられているように、ティア1の一〇%を上限にするということにいたしますと、自己資本比率八%を保つためには五十兆円の資産圧縮が必要だというような試算もございまして、これは相当規模の、数十兆円規模の貸しはがしが起こりかねない、こういうこともございます。また、試合の最中に試合のルールを変更するのか、こういう批判もございます。
 私は、これは会計ルールを変更するとするならば、やはり段階的に、十分猶予期間を設けて、激変緩和をしながら変更すべきではないか、こういうふうに思います。これが一点目でございます。制度の継続性という意味からもこれは考えるべきだというふうに思います。
 それから二点目は、この会計ルールを米国並みにするということであるのであれば、やはり税制も米国並みにすべきであろうということが二点目の主張でございます。
 具体的に三つのことを申し上げますけれども、一つは、無税償却基準の緩和をすべきである。これが厳しいがために有税償却、有税引き当てが多くなるということがございます。それから二つ目に、欠損金繰越期間の延長。我が国は五年でございます。米国並みに二十年に一遍にするのはなかなか難しいかと思いますけれども、この五年の欠損金繰越期間の延長というのも必要であろう。三番目に、繰り戻し還付制度。これは本来できることになっているんですが、今、凍結をされております。その凍結解除というのも必要だと思います。
 会計基準を米国並みにするのであれば、税制もあわせて米国並みにしてこそ初めて整合性がとれる、均衡が保たれる、こういうふうに思います。
 今申し上げました二点について、これは竹中大臣、それから税制に関連いたしますので塩川大臣、それから速水総裁に、それぞれお答えをいただきたいと思います。
竹中国務大臣 税効果の話に関しましては、さまざまな議論がジャーナリズムでなされております。これにつきましては、まず、政府は既にこういうことを決めたとかそういうことは一切ございませんので、その前提の上での御答弁ということであります。
 まず、委員御指摘のように、制度の継続性の問題。現実に存在している制度は制度で、これは大変貴重であると思います。特に今回の場合、やはり企業会計の原則、企業会計のルールという一つのルールがございます。それと、それに絡み合っている税制という一つのルールがございます。さらには、今度は金融監督の当局としてのBIS基準に基づく監督のルールというのがございます。これが三つ絡み合って、ともすれば非常に短絡的に議論されるような場合もあるわけでございますけれども、制度の継続性についてそれなりの尊重が必要だということに関しては、私もやはりそのとおりだと思っております。
 一方で、日本の金融機関に対する自己資本の評価に関しては、これまでのルールに基づくものと市場における日本の自己資本に対する評価の間で、残念だけれども、やはりどうもギャップがあるのではないだろうかということも、これは行政の立場からは見詰め直さなければいけない問題であるというふうに思っております。それが、今回、不良債権問題の解決を、不良債権処理を加速しろという総理の御指示の一つの判断でもあろうかと思います。
 その点の兼ね合いを、これはあくまで行政でありますから、現実的な中で、今いろいろな方の御意見を伺いながら、どういうふうにやるべきかということを今探っているところでございます。
 二番目の、特に税制でございましたけれども、確かに、この税制の複雑さが一つの原因になって今回のような税効果の問題が出てきているということはそのとおりだと思います。したがって、金融機関が不良債権処理を推進する上で、その環境を整備する観点から何らかの税制上の手当てが必要ではないかというような問題意識は持っております。
 金融庁としても、現実にこうした観点から、欠損金の繰越期間の五年から十年への延長でありますとか、繰り戻し還付制度の凍結の解除とか、繰り戻し期間の一年から二年への延長に係る税制改正要望、この要望としては税当局に提出しているところでありまして、そうした観点も含めて考えていく必要があるというふうに思っております。
谷口副大臣 石井委員のお尋ねでございますが、まず第一点目の、税効果会計に伴う繰り延べ税金資産のことをおっしゃったんだろうというふうに思います。
 この件につきましては、今、竹中金融担当大臣のところで不良債権の迅速な加速策について検討いただいておるわけで、その検討結果を待ちたいというように思うわけでございますが、私の個人的な見解で申し上げさせていただきますと、現行の税効果会計に伴う繰り延べ税金資産というのは、一般に認められた会計基準で今まで行われてきたわけでございます。そういう状況の中で、中核的自己資本の一〇%といったような処理の変更が起こりますと、石井委員がおっしゃっておるような混乱が生じる可能性があると思っております。私も、段階的な激変緩和の対応が必要だというように考えております。
 それと、その次におっしゃった税制のことでございまして、米国並みの税制にすべきではないかということで三点おっしゃったわけでございます。
 今、この不良債権処理の加速策の全体のビジョンを見ながら税制上の対応について検討する必要があるというように思っておりますけれども、まず初めにおっしゃった無税償却基準の緩和ということでございますけれども、現行税効果会計の面から見ますと、赤字法人の場合に、この繰り延べ税金資産の内容が、赤字法人の場合は有税償却によるものからこの繰越欠損金に振りかわるということだけになりまして、繰り延べ税金資産の減少にはならないというようなことがあるわけでございます。また、金融機関だけにこれを適用するということについても、公正公平の観点から考えていく必要がある、留意する必要があるというように考えておるわけでございます。
 また、二つ目の欠損金の繰越期間の延長につきましては、現行の帳簿の保存期間という観点に留意する必要があるというように思うわけでございまして、事務処理の観点、また検査の観点等々考えまして、帳簿の保存期間ということに留意をする必要があるというように考えておるわけであります。
 またもう一つは、繰り戻し還付の凍結解除について今おっしゃったわけでございますけれども、これは、赤字法人におきましても幾ばくかの税の負担をする必要があるんじゃないかというような観点であるとか、また、大変厳しい財政状態ということもありまして、平成四年度におきましてこれを停止したわけでございまして、これは現在も停止中でございます。これは前一年間の繰り戻し還付ということでございますので、例えば、連年において赤字が計上されるような企業におきましては、このような繰り戻し還付という効果がないというようなことも観点に置き、このようなことに留意しながら検討する必要があるというように考えております。
速水参考人 御質問の繰り延べ税金資産のことについて、この点につきましては、私も国会でもここ二、三年ずっと、海外からの日本の銀行に対する信認を得るためには、自己資本のトータルが一〇%あるとかいうようなことだけでなくて、内容を彼らは特に海外では問題にしておるわけです。それはどういうことかというと、一〇のうち四ぐらいが繰り延べ税金資産じゃないか、これは中身があるのかないのかよくわからないじゃないか、そういう外からの目。
 このルールは、御承知のようにBISの規制で、海外に店を持ち、あるいは海外取引を盛んに行っている銀行については八%ということになっているわけですね、八%以上の自己資本。その中で、量的には日本の銀行は満たされているけれども、その自己資本の内容、これは繰り延べ税金資産を算入することはできるわけですけれども、アメリカなどは一〇%までというのを、日本は四四、五%というようなことになっているわけで、それが、対応の収益力が満たされているときはいいのかもしれませんけれども、収益力も余り強くない時期でこれを積むということは、質の問題が問われても仕方がない。そういう意味で、こんなに多く自己資本の中に繰り延べ税金資産を入れている国はほかにないと思います。
 そういうことから、これは早く正常化していくべきだということを私はこれまでも何回か申してきました。それは、海外がそういうことを言うからです。そういうふうに見ているんです。そこのところは、だから、いつかはこれは正常化していく必要があると思いますが、今すぐそれをやるということは、いろいろほかに影響が大きいわけでしょうから、市場の信認回復の観点からも、金融機関の収益力を高めて、それを通じて資本の基盤のさらなる充実を図っていくということが何よりも重要だと申し上げたいと思います。
 また、御指摘のように、引き当て、償却、繰り戻し還付、そういったものの税務上の扱いについても、重要な論点だと認識いたしております。
石井(啓)委員 今、竹中大臣、検討中ということでございますので、今申し上げましたような視点も十分勘案していただいて、最終案を取りまとめられるように期待をいたしたいと思います。
 それから、政府保有の優先株の普通株への転換でございますけれども、私は、これは、普通株への転換もあり得るよというプレッシャーをかけることによって、金融機関の経営者に経営改善努力を促すということが重要であるというふうに考えております。
 竹中大臣も、国有化ありきということでは決してない、こういう御答弁もされておりますし、であるとするならば、転換可能期間が来れば直ちに転換をするということではなくて、経営健全化の努力が十分でない金融機関に対する最終手段としてこれがとられるというふうに私は考えるわけでございますが、この点について、竹中大臣、それから速水総裁から、それぞれ御答弁をいただきたいと思います。
竹中国務大臣 委員御指摘くださいましたように、これだけ大きな経済の金融部門というのは、やはり健全な民間企業が多くの信頼を得る中で粛々と業務を展開していく、そういう形を当然のことながらつくっていかなければなりません。したがいまして、一部に指摘されているような国有化を前提にするとか、そんなことは私は行政としてもあり得ないことだというふうに思っております。
 同時に、コーポレートガバナンスを発揮していただくためにどのような観点がよいのかということに関しては、これはさまざまな議論がございます。御指摘のような点も踏まえて、きちっと、ガバナンスの評価のためにどのようなことを総合的にやっていけるかということについて、結論を導きたいというふうに思っております。
速水参考人 基本的には、金融機関の自主的な経営改善努力が大事だと思います。
 優先株の普通株への転換という問題につきましても、国による経営権取得自体、これを目的とするということではなくて、むしろ、自主的な経営刷新を強く促していくという意味でこれは必要だと思うのです。転換のタイミングにつきましても、以上の観点から、おのずと適切な対応が決まっていくのではないかというふうに考えております。
石井(啓)委員 それでは、最後の質問になりますが、日銀の銀行保有株の買い入れに関して質問申し上げたいと思いますけれども、銀行保有株取得機構との役割分担をどういうふうに考えるのかということ、それから、現行の銀行保有株取得機構のスキームを変更する、そういうことを検討されるのかどうかということを、それぞれ竹中大臣、日銀総裁にお聞きしたいと思います。
速水参考人 銀行保有株取得機構の方は、むしろ株価の下落を防止するというねらいで、株式市場のセーフティーネットとして、幅広い金融機関を対象とするこういう機構をつくられたと私は理解しております。
 日本銀行の方の銀行保有株の買い取りにつきましては、これは、御承知のように銀行の保有株の、自己資本の中に入っておりますために、それが株価の下落によって自己資本を押し下げてくるんですね。これは、昨年九月から時価計算になりましたし、それから、ちょうどそのころから株価が下がってくる。
 銀行が株を持っているというのは、これまではむしろ含み益であって、右肩上がりでございましたから、その含み益の中から不良資産の償却などを随分やってこられたわけなんです。ところが、株価がこういうふうに下がってきて、しかも、国内の事情だけでなくて海外の事情で、それにフォローして株が下がってくるといったようなことになってきますと、そのことによって、銀行は自分たちの自己資本を押し下げていくということになりかねないんですね。
 そういうふうになってきますと、今何とかして不良貸し出しを償却していきたい、あるいは新規の貸し出しをふやしていきたいと思っている銀行が、手元の自己資本がこうやって減っていくことに気をとられていくことは明らかだと思います。
 そういうような意味で、今、株式の株数だけで見ますと、三七、八%が金融機関が持っているんですね。個人が持っているのは二五、六%です。そういうたくさん株を持っているというのは、民間の金融機関が持っているのはドイツと日本だけです。ドイツはもうかなり減ってきておりますから、日本が特に目立っているわけです。こういう大きな、国内事情だけでなくて海外市場にフォローして動いていくような株を、多くの預金を持っている民間の金融機関がそういう株に運用するということは、やはり限度があるべきだと思いますし、余り現状ではこれはほっておけないという感じがしたわけです。
 そういう意味で、銀行が自己資本、ティア1を上回って持っている株の保有分について、双方で話し合って、話がつけばそれを私の方で時価で買う。それで、買って五年は持っていて、そこから先は適当に処分していくつもりではございますけれども、私の方でもこれは二兆円という限度で来年の九月までの間に買うつもりで、今、買い取りは信託銀行に委託しますので、その信託銀行を入札で決めることを、今週中には恐らく決まるだろうと思っております。年内には買い取りが始まると思っております。
 そういう情勢でございますので、これは、流動性をふやすとかあるいは株価を維持するとかいうことでなくて、銀行の保有している株を減らしていくということが大事だ。今なかなかそれが売れない状況の中でございますので、そういうものをお手伝いしようということで始めたことでございます。
小坂委員長 竹中金融担当大臣。手短にお願いします。
竹中国務大臣 もう日銀総裁がお答えになりましたので特に重複は避けますが、要するに、買い取り機構と日銀は補完的な役割を果たすものというふうに思っておりますので、その業務の円滑な遂行を通じまして所期の目的を果たすということを期待している次第でございます。
石井(啓)委員 以上で終わります。
小坂委員長 次に、小池百合子君。
小池委員 保守党の小池百合子でございます。
 まず、きょうから日朝交渉が始まりますので、北朝鮮とお金の問題で二、三押さえさせていただきたいと思っております。よろしいでしょうか。
 最近、この日朝関係、大変注目もされているわけですが、私は、以前から、朝銀の問題を通じまして間接的に既に対北朝鮮に対しての経済支援は始まっているということを主張させていただいているわけでございます。そしてまた、昨今の国内におけるこの北朝鮮関連の動きからも、いろいろな新たな、何というんでしょうか、情報等々も出回るようになっております。
 そこで、大変心配と申しましょうか、これまでもうわさされていたようなことに対しての裏づけのようなことも聞こえてくるわけでございますが、そもそも、北朝鮮への最近の送金事情、これは一体どうなっているのか。数字で押さえさせてください。
溝口政府参考人 海外への送金は原則自由になっておりますが、北朝鮮への送金につきましては、北朝鮮とコルレスの関係を持っている銀行が、大体そこを通じて大部分が行われているということもございまして、その銀行から私どもが聴取したところでは、十三年度に大体十三億円でございます。
 それから、もう一つのものは、現金を持ち出す場合は……(小池委員「まだそれは聞いてないんですけれども」と呼ぶ)よろしゅうございますか。
小池委員 引き続きお答えいただいてもよろしかったんですけれども。
 送金の方法が、いろいろなことを、修学旅行生のかばんに潜ませて云々かんぬんという話もありますけれども、もっと大胆な話で、段ボールでそのまま荷積みされているという話もあるんですね。これはまさに船積みの際の関税のチェックということ、私はこの点も指摘して、何年か前に関税局の方にもこの場で問わせていただいたら、厳密にやっているという話でありますが、全然厳密でないようであります。
 ですから、そのあたり、一体どういう検査をされておられるのか、また、そういった指摘に対してどのように答えられるのか。これは、それぞれ港があるところの府県の担当の長、つまり知事になるんでしょうか、そういったところの監督も必要だとは思いますけれども、その辺、今の二番目のお答え、今お答えください。よろしく。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 先生御承知のように、現金等の支払い手段の携帯輸出につきましては、外為法令によりまして、輸出しようとする支払い手段の合計額が百万円相当額を超える場合におきましては、その輸出者はあらかじめ財務大臣に届け出なければならないとされておりまして、この届け出書の受理権限は財務大臣から税関長に委任されているところでございます。
 税関におきましては、旅客の出国に際しまして、この届け出義務の履行を確保するために、旅客に対して適切な指導を行うなど法令の適正な運用に努めているところでございます。
 先ほど話題にも出たと思いますけれども、新潟港に万景峰92号というのが、定期的貨客船が入港しておりますけれども、それに対しましては、新潟税関支署におきましては、警察等の関係取り締まり機関との連携によりまして、船を訪れる訪船者が入港中のこの船舶に対しまして現金等を不正に持ち込むことのないように、厳重に警戒いたしておりますし、また、北朝鮮向けに出国する旅客の携帯品につきましても、開披検査あるいはエックス線検査を行うなど厳重な取り締まりを実施しているところでございます。
小池委員 非常にお役人答弁だと思います。そもそも人を拉致する国がちゃんと届け出をしてお金を送るなどということは考えられないわけでございまして、そういったさまざまな指摘が、先ほど私が申し上げましたような指摘が実際あるわけですから、ここは、今の日朝関係も考えまして、むしろやはり厳しく取り扱うべきではないかということを私から要望させていただいて、この質問はまず終わりたいと思っております。
 次に、竹中大臣にお伺いをさせていただきます。
 この時期に金融担当大臣をされるというのは、おめでとうございますと言っていいのか、御苦労さまと言っていいのか、若干複雑な気もいたしますけれども、しかし、今大変大きな分水嶺だと思っておりますので、よろしくしっかりと御対応をお願い申し上げたいと思います。
 そこで、先ほど、マスコミの方でにぎわっている税効果会計の話という表現も大臣の方からあったようでございますが、私も、この税効果会計の問題につきましては、どうも余りにも注目され過ぎて、それが余りにもキーワードになり過ぎているというふうに思っているわけでございます。そもそも、今の金融のシステム上の問題というのは資産の問題であって、資本方の方の問題ではないわけでございまして、この資本の中身を税効果でやるのか、それによって公的資本に入れかえるのかといっても、結局は本質的な解決にはならないんじゃないかというふうに思っているわけでございます。
 もちろん、公的資本を注入するために、ルールを変えるということによって強制的にという、その手段かもしれませんけれども、要は、現在の状況を考えますと、資産の問題の大きな劣化と申しましょうか、こちらがポイントではないかと私は感じているんですが、大臣の方はどのようにお考えでしょうか。
竹中国務大臣 金融システムの強化のためには、基本的には、原則としては、先ほども申し上げましたように、資産の査定の問題、自己資本の問題、ガバナンスの問題、それをまさしく三位一体で改革、強化していくことが必要であるというふうに基本的には思っております。
 ただ、まさしく委員御指摘のように、やはり入り口として重要なのは、これは資産の査定をしっかりとやるということであるという点に関しては、私も実はそうであろうかというふうに思います。この資産の査定をしっかりとしていただくこと、同時に、こういうことを通して、繰り返しになりますけれども、これは常に産業の再生、産業の強化という大きな絵の中で、こういうことをバランスよくやっていかなければいけない、そのように認識してこの金融システムの強化を行うべきだというふうに思っております。
小池委員 その上でお伺いいたしますけれども、公的資金を投入するということが行われた場合、それはもちろん目的として信用収縮を改善するためにということだと思います。それであるならば、銀行の現在の与信拡大の足かせとなっている金融マニュアルなんですけれども、こちらの緩和の方も必要になってくるのではないか。
 つまり、これまでの金融マニュアルというのは、例えば、住専処理からずっと出てきた流れの中においてつくられたマニュアルであるわけでございまして、私は、現状の金融問題は質的にも大分変わってきているのではないかというふうにも思いますので、この金融マニュアルの見直しということもしなければ、実際に改善につながらないのではないかというふうに考えているところでございます。
 この点について、いかがでしょうか。
竹中国務大臣 委員御指摘の最初の、信用収縮が起こらないようにどのような対応が必要なのか。万が一にも危機に陥った金融機関、経営危機に陥ったようなところに関しては、公的資金の問題もあるだろうが、それと並行して金融マニュアルの問題をどのように考えるのか。ここはまあ大変実務上の問題が絡んでくる問題だろうと思いますが、金融の検査、それに関連して用いられるマニュアル、この検査は、これは決して融資判断に立ち入るという性格のものではありませんで、こういった意味での融資対応というのは金融機関みずからの経営判断だということは、これはもう言うまでもないと思います。
 その際、借り手、貸し出し案件の審査等、いわゆる的確なリスク管理を伴いながらリスクテークを行っていくというのが金融機関の役割であります。同時に、リスクテーク、リスク管理に当たって、金融検査のマニュアルというのはそのさまざまなリスクテークの場合のチェック項目ということでありますから、決してマニュアルで画一的な審査、貸し出し判断に結びつくというものではないというふうに思っております。
 しかし、現実問題としてそういうことが、そのことを理由に例えば万が一にも貸しはがし、貸し渋りが起こっているというような場合には、これをやはり別途モニタリングするようなシステムはつくっていかなければいけないというふうに思いますので、貸し渋りのホットライン等々の創設も始めましたが、さらにどのようなことが可能かということを、これは実態を見ながら検討していきたいというふうに思います。
小池委員 実務上という言葉でちょっと片づけられた部分はあると思うんですけれども、結局は実務のところなんですね。金融の場合はすべてオーダーメードでございますので、一つ一つの実務的なところでの判断が積み重なってどれぐらいの不良債権処理という総額になるわけでございまして、実は、大きな観点と同時に実務というところは、やはり細かいようですけれどもしっかり見ていかなければ、それの総体として私は動かないというふうに思っております。
 時間が短いので、あと一つだけ伺わせていただきますけれども、このところ、急にまたRCCが注目されておりまして、RCCでもって企業再生をするというようなことがよく伝えられているところでございます。私も、このRCCの、そもそも住専以来の債権の回収機能として始まったRCCに新たな企業再生機能をつけるというところで担当もしてきたわけでございますけれども、しかし、そもそもそれはついこの間始まったばかりでございますし、生い立ちから考えると、急に万全な再生機能ができるとも思わないわけでございます。
 では、実際にこれまで企業再生の実績はどれぐらいあるのか。この辺のところの数字その他挙げていただければ結構かと思うんですが、大臣。
竹中国務大臣 御指摘のように、RCC、回収からスタートするわけでありますけれども、回収、売却に加えて、再生がやはり重要であるというような形で、強化は、もうまさに御専門のとおり、行われております。
 その結果、RCCは、企業再生本部を設置した以降、企業再生本部の設置は昨年十一月でありますけれども、九月までに八十七件について企業再生手続を実施しておりまして、現在、さらに百二十の候補案件について再生の可能性を検討中であるというふうに聞いております。
 また、RCCは、ことし七月には企業再生ファンド検討のためのプロジェクトチームを設置しておりまして、八月には、御承知のRCC企業再生ファンドを設立するといったような観点から、ファンドの活用も視野に入れた活動を展開しているところでございます。
小池委員 今ファンドの活用と言うけれども、そもそもそのファンドはだれがお金を出すんですか。
竹中国務大臣 既に政策投資銀行等々の実績があるということは御承知のとおりであろうと思いますが、これは、民間も含めて、その再生のためのお金を集める仕組みをつくるということであります。
 さらに、今後これをどのように強化していくべきなのか。繰り返しますが、不良債権の償却加速とあわせて、その再生の仕組みをどのようにつくれるかということも含めて今検討をしております。
小池委員 それから、確認をさせていただきたい点で、これまでRCCへの不良債権持ち込みの際の不良債権の定義というのが、これはもう一度きっちり押さえておかなければならないと思っているんですけれども、二、三年ルールでは破綻懸念先に限定していたわけですけれども、これを要注意先まで広げていくのかどうか、現在でのお考えをお聞かせください。
竹中国務大臣 いわゆる五十三条買い取りの対象でありますけれども、これは金融庁の告示にありまして、原則として、破綻懸念先、実質破綻先または破綻先に区別される債務者に対する貸付金というふうになっております。したがって、破綻懸念先以下に対する貸出金が原則でということになりますが、同時に、要管理先に対する貸出金が五十三条買い取りの対象から全く排除されているわけではないというふうに理解をしております。
小池委員 これまでRCCというと、RCC送りで、もうそれで、はい、おしまいよということでありました。どういうプロの方が入られるのかわかりませんけれども、また別の形のものを大臣はお考えになっているのかわかりませんけれども、息も絶え絶え、ちょっと注入すれば、手助けすれば立ち直るという企業が実は多いわけでございますけれども、なかなか、これまでの例でいくと、RCCに送られたものというのは本当にもう、ほかがどこも引き受けようがないところを引き受けてやってきたということで、これは並大抵のものじゃないと思うんですね。
 ましてや、これまではほとんど弁護士さんということで、債権放棄の調整役はできても、再生ということは、先ほど数を挙げられましたけれども、これからの話なわけですね。ですから、不良債権処理に伴ってのさらに企業の倒産予備軍がふえるということを考えますと、この再生の部分こそ本当に大切に、また手厚くやっていかなければ、惨たんたることになってしまうのではないかということを大変懸念いたしております。
 また、ジャパン・ファンドという考え方もあるというふうに、またRCCとは全く別につくろうというような、そういったことも考えられるんでしょうけれども、これまた別の特殊法人をまたつくるんですかということになってしまって、不良債権処理という大きなテーマと再生との総合的なもののコストということで考えますと、一体どっちなんだろうなという、その辺はお迷いになるところだと思いますが、現時点でのお考えをお聞かせください。
竹中国務大臣 再生に向けた新たな、より強い取り組みが必要ではないかという問題意識に関しましては、全くそのとおりだと強く受けとめております。
 その際、どういう仕組みづくりがよいかということに関しては、今御指摘のとおり、やはり政策コストの問題、一方で効果の問題、これは大変難しい判断もあろうかと思います。今、塩川大臣、平沼大臣、関係大臣のところでどのようなことが可能か一生懸命相談をしているところでございますので、ぜひ、今のような御指摘等を踏まえたよいアイデアを出していきたいと思います。
小池委員 今抱えている問題をちょっと整理させていただきますと、この不良債権処理を加速させればデフレが加速する、そしてまた構造改革の成果が上がるまでの時間と短期的なデフレ作用との時間的ギャップが出てくる。そしてまた、構造改革のためにデフレ、景気悪化を甘受するということは、それはすなわちまた株価の下落、金融システムの不安、失業率の上昇、先ほど発表されたのでは五・四%と横ばいということではございますけれども、こういったまさに三つの、トリレンマを抱えている中での金融政策、そしてその運営ということではなかろうかと思います。
 私どもは、この不良債権の処理は必要ではありますけれども、その一方でデフレの加速によってさらに新規の不良債権が起こるということ、これを大変懸念しているわけでございます。そしてまた、先ほど石井議員の方からの御質問にもございましたように、税効果会計の関連で、無税償却をする際におきましても、これに対してもアメリカやドイツなどとは税制が違うわけでございまして、税制それから財政、こういった総合的な形でやっていかなければ、本当に危険なゲームになってしまうというふうに思っております。
 御就任以来、株価がまた急落をしたり、竹中ショックとか竹中不況などと、でもそういうのは、お名前は歴史に残ることでございましょうし、また口の悪い人は慶応不況なんて、済みません、大臣、そういうことをおっしゃる方もおられますけれども、ここは本当に正念場でございますので、我々与党のみならず、野党の声もしっかりとお聞きとめいただいて、これは総合的に考えて正しい政策をおとりいただきますように。
 また、先ほども冒頭の御質問にございましたように、私は本会議の質問で、経済安定本部をおつくりになったらどうだということを申し上げました。まさに省庁の縦割りを超えて、これは寝ずにやるぐらいのお気持ちでやっていかないと、困るのは国民であるということから、クールヘッド、ウオームマインドでぜひともお当たりいただきますようにお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
小坂委員長 次に、生方幸夫君。
生方委員 民主党の生方幸夫でございます。
 まず最初に、質問通告にはなかったんですが、今度補選が行われまして、私の選挙区でいいますと、投票率が二〇・一一と一九・八七ですか、五人に四人の方が投票に行かない。投票に行かない理由は、政治にもう何にも期待していないんだ、だれがなっても同じじゃないかというような形で、投票に行かない人が非常にふえてしまった。私も、選挙運動をやっていて有権者の皆さん方に話しかけるんですけれども、本当に関心を持っていただかなくなっちゃっているんですね。
 政治と国民が全く関係ないものであればそれは関心を持たなくてもいいんですけれども、国民の皆さん方は、買い物をすれば消費税を払っているし、所得があれば所得税を払っているし、財産があればいろいろな税金を払うという形で、税金を払っていわば行政サービスを受けるという形になっているのに、その税金を払っているという意識はもちろんあるんでしょうけれども、払っている使い道に国民が関心を失っちゃっているというのは非常に危険な兆候で、政治にとっても危機だと私は思うんです。
 税金を一手にお集めになって、使う側の責任者として、塩川大臣、今度の、全体的に投票率が非常に低くて、政治に対する関心が低くなっちゃっている、これをどうしたら上げていくことができるのか。これは難しいあれですけれども、大臣のお考えがあったらひとつ聞かせていただきたいと思いますが。
塩川国務大臣 私が思いますのに、政治とか行政すべて、やはり国民の生活と感情とにしっぽりと合っていないようには思っております。国会の議論等を見ましても、国民の生活の中にそれが本当に、生活の中から来た議論なのかどうか。そうではなくして、制度があり法律があって、その中における議論ではなかろうか、そういう懸念を私は持ちます。
 それは、長年官僚支配に負ってきた日本の政治の根本がそこにやはりぐっと、何といいますか、基礎としてできてしまっておる、それの上に今改革を試みて、国民生活に合う改革にということで持っていっておるんですけれども、その過程であって、なかなかそれは現実には理解がまだされておらないんですけれども、私は、この行財政の改革が進んでいけば、もっと生の声として国民も関心を持ってくれるんではないかと思っております。
生方委員 それは私ももちろん期待はするんですけれども、レストランに行って我々が何か食事をして、サービスが悪ければクレームをつけるわけですね。クレームをつけなければどんどんサービスが悪くなっちゃう一方で、政府の場合は、ほかにレストランがないわけですから、もうここへ行くしかないので、ぜひとも我々も心して、国民の皆さんに政治に関心を持っていただくことが政治の質を高めるんだということで、何とか投票率を上げるように我々も努力をしていきますので、大臣の方も、税の大事さというのをしっかりとまたこれからも、もちろんより大きく国民の方に示していただきますようにお願いを申し上げましてから、質問に入らせていただきたいと思います。
 現在の景気の状況をどうとらえるかということで、竹中大臣は、五月の段階で日本の景気の底入れ宣言をいたしましたね。現在も、その底入れ宣言そのものは間違っていなかったというふうに御認識でしょうか、そこからまずお伺いしたいと思います。
竹中国務大臣 正式に底入れ宣言というようなものがあるわけではございませんが、御承知のように、内閣府としては、毎月毎月の月例経済報告の中で、その時々の客観的な経済指標等に基づいてその判断をしていっております。その中で、ずっと減速していたものが下げどまって持ち直しの動きが出てきたということを、ことし前半から中盤にかけて、その時々の判断で示してまいりました。
 これは、例えばですけれども、ことし四―六月期のGDP統計は、これは年率換算ですけれども、二・六%ぐらいのGDPの実質の成長にはなった。これは、日本の潜在成長率を考えると、実は、数字だけから判断すると、少なくともそんなに悪い数字ではないわけでございますから、循環的な、経済のいわばリズムの動きの中では下げどまって、その持ち直しというのは、これは私は、判断としては間違っていないというふうに思っております。
 ただ同時に、最近の、最も新しい月例の報告では、持ち直しの動きはあるんだけれども、やはり環境が大変厳しくなっていると。特にこれは、世界の動き、資産市場の動き、そういう意味では引き続き大変厳しい認識を持って運営をしていかなければいけないというふうに思っております。
生方委員 数字だけ見れば確かにそういうことになるんでしょうけれども、我々は、日々、地元でいろいろな方にいろいろな話を聞いたり、町中を見ていれば、五月に景気が底入れしたなんというふうに思っている国民の方は一人もいないわけですね。そういう全然実感と離れた景気判断をして、それで政策を打っているんだというところに国民の失望があるんですよ。だから、大臣が就任なさった途端に株価がどんと下がるというのは、要するに、そういう認識を持った大臣が大臣になったんじゃこれから先も余りいいことはないだろう、そういう認識になっちゃうんですよね。
 竹中さんはお忙しくて余り町中を歩かれる機会もないかもしれませんけれども、これはタクシーの運転手さんの数値も今度取り入れるようになっているというような話ですけれども、実感というのは我々はじかに接していてわかる話で、景気が底入れしてよくなったという感じをほとんどの国民が持たないのに、統計の発表だけは底入れしたというふうに言われる、その違いが、政治に対する信頼というのをやはり私は失っていると思うんですよ。
 だから、数字、まあ世論調査だって、選挙のときいろいろな世論調査をして、生の数字と実態に取材をした数字とを、若干修正をしながら新聞も書くことは書くんですね。ところが、政府の数字というのは、生で、そのまま発表して、数値がこうなんだからこうだと。実態を見て、木を見て森を見ないんじゃなくて、何だかよくわからない数値になっちゃっているというのは、もう前々から我々は指摘をさせていただいているんですけれども、これは竹中さん、どうなんですか。
 数値で見ると確かにこれは底入れなんだから、底入れと言わざるを得ないのか。何か、だけれども、自分の実感として見るとこれはとても底入れじゃないというふうに思ったとき、どっちの判断を優先してお話しになるのか。大臣の立場としては、それは当然数値を優先するんでしょうけれども、記者に対するブリーフやなんかのときに、いろいろな説明の仕方はあると思うんですよね。底入れというのがまず新聞には出るわけですから、その違いというのが、国民は非常にギャップとして受けとめて、信頼感を失ってしまうという現実があるわけで。
 今の私の意見について、どうですか。
竹中国務大臣 実感とのギャップというのは、これは大変やはり重要な問題だというふうに私も認識をしております。経済指標と実感とのギャップというのは、たどれば恐らく非常に古くて新しい問題という側面もあろうかと思います。これはある専門家の指摘でありますが、バブルのときでも、景気はよくないと言っている人はやはりそこそこいたと。決してそういうことだけを強調するつもりはございませんけれども。
 月例の経済判断でも、景気は依然厳しい状況にあるが一部に持ち直しということで、ここはやはり、その水準としては大変厳しいという判断と、循環的な変化としては持ち直しの動きということを、非常に私たちとしては客観的に書かせていただいたつもりなんですが、しかし、確かに、それをいきなり、別に私たちが言ったわけではないにしても、底入れというふうに言われますと、そこはやはりギャップを感じる皆さんはいらっしゃるのだなというふうに思っております。
 そこは、御指摘のように、私たちは、現状は依然として非常に厳しいということは月例報告でも繰り返し申し上げていますし、そういう認識は持っておるんですけれども、そういう誤解が広がらないような工夫は引き続きぜひともしていかなければいけないと思います。
生方委員 その景気のいろいろな言葉が、前例からいろいろあるんでしょうけれども、一部に持ち直しの動きがあるものの、依然厳しい状況だとか、その言い回しがございますよね。言い回しがあっても、国民が聞いていると、どっちに重点が置かれているんだかよくわからないんですよね、持ち直しの方に重点が置かれているのか、依然厳しいの方に重点が置かれているのか。だから、これも、もし国民に向けて発表するんであれば、国民が聞いてわかるような言葉で発表していただかないとわからないんですよ。塩川大臣うなずいていますけれども。
 本当に、これ、意味のない発表をしたって意味がないんでね。国民に、今どういう認識で政府はこれから政策を行っていくのかということの前提が、国民にはよく理解できないような言葉で前提を語られたんじゃ、これからやる先の政策も国民によくわからなくてもいいんだということにもつながっちゃうんでね。この辺はぜひ、竹中さんは民間人なんですから、今までの前例にとらわれず、普通の国民が聞いてわかるような言葉に変えようじゃないかというふうに改革をなさったらいかがですか。
竹中国務大臣 私自身、この経済財政政策担当大臣として就任以来、まさに今までの経験を生かして、非常にわかりやすくフランクに語りかけるようなものにしたいという努力はしてきたつもりでございます。したがって、厳しいという言葉と循環的な意味での持ち直しという言葉を並列に書いて、いわば非常にプレーンに表現するという努力はしてきたつもりでございます。
 しかし、それにしてもその努力がまだ不十分で、十分に生かされていないという御指摘は、これはやはりきっちりと受けとめて、さらに努力をしたいというふうに思います。
生方委員 我々も、専門的な言葉がだんだん普通になっちゃうわけですね。その中で少し易しくしているだろう程度のことになって終わっちゃうんですね。
 一般の国民というのは、毎日、新聞を読んでいるわけじゃないし、全部の雑誌を読んでいるわけでもないわけですからね。底入れというメッセージだけをぽっと受け取るとか、株価が下がったというメッセージだけを受け取るとかというのはごく普通なわけで、やはりそこのギャップというのは、竹中さんにとっては易しい言葉でも国民にとってはまだまだ難しい言葉は幾らでもあるわけで、わかりづらい言葉も幾らでもあるわけで、そこはまず白紙なんだという前提から、国民の皆さん方にきちんと説明をするということをぜひやっていただきたいなというふうに考えております。
 今、民間人ということで、民間から大臣を登用するということは私は非常に大事なことだというふうに思っておりますが、私たちは、一応国民の皆さん方に投票で選ばれて、我々の業績はその中の判断で次の選挙で落ちるか受かるかというのが決定をされて、最終的な責任というのは次の選挙において我々は責任をとるということになっているわけですね。
 竹中大臣の場合は責任、例えばこれから不良債権の促進とかいろいろ国民の皆さん方に痛みを伴う改革を行って、それが成功するか成功しないかというのは、やってみなければわからない部分がたくさんあるので、いろいろこれからそれは論議をするんですけれども、その政策に対する責任というのは、竹中大臣は、だれにどういうふうに、どういう形でとるものだというふうに御理解をなさっていますか。
竹中国務大臣 これは言うまでもありませんけれども、今の議院内閣制のもとで、「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」ということが明記されているわけでございますから、私としては、この内閣の一員として、総理を初め他の大臣の皆様方と一致協力して、内閣の方針に従って各般の政策を推進していく、そういう枠組みの中で努力することが私の責任であるというふうに思っております。
生方委員 田中秀征さんがそのことについて書いておりまして、ちょっとだけ読ませていただきます。
  ノーバッジの本質的な限界も心得ていてほしい。すなわち、竹中氏には立脚する固有の政治基盤がなく、一〇〇%小泉首相の政治基盤に乗っていることだ。バッジ組の閣僚が、自分の政治基盤と首相の政治基盤に片足ずつを置いているのとは決定的に異なっている。
そして、
  また竹中氏は、自分に対する社会的評価を正確に認識しておく必要もあろう。特に森内閣当時、多くの人びとに“IT産業”が日本経済の救世主ででもあるかのような錯覚を与えたことは、今もって根強い不信感となっている。また、「公的資金の投入」をめぐる発言も決して一貫したものではなかった。さらに今回、四大銀行の破綻や大企業の倒産を示唆するような発言で、市場や国民心理に大きな混乱を招いた。学界では当り前の発言でも、政治の責任ある立場に立てば不用意な発言となる場合が多いこともよく認識してほしい。
というような指摘もなされておりますので、まあ、今度の株価が暴落した原因の一つに、竹中さんの、大きいところでもつぶせないということはないんだと、これは、予算委員会の論議の中で、英語の翻訳の誤りだ、私の意図したところではないというようなこともおっしゃっていたのはわかりますけれども、事ほどさように大臣の発言というのはあらゆる場所であらゆるようにとらえられるわけで、その反響までもきちんと考えて御発言をいただかないととんでもないことになるんだということを御指摘だけさせていただきます。
 それから、今度の内閣改造の目玉が、いわば竹中さんが金融担当大臣を兼任されたというのが目玉になっているわけですけれども、柳澤前大臣から竹中大臣にかわって、金融行政は何がどう変わったのか、教えていただきたいと思います。
竹中国務大臣 総理からは、十六年度までにこの不良債権問題を終結するように、まさにこの問題の解決に向けて政策を加速、強化しろという御指示をいただいております。そのための具体策につきましては今まさに検討しているところでありますが、どのように位置づけるかという御質問に対しては、私自身は、やはりこれまで前大臣のもとで金融庁一丸となって、危機を起こさせないという、経済環境が世界的に非常に厳しく、一年、一年半悪化する中で、危機を食いとめるためにそれなりの成果を上げたというふうに認識をしております。
 しかし、恐らく今求められているのは、単に危機を起こさせないということを超えて、構造改革を支え二十一世紀の日本を発展させる、より強固な新金融システムをつくっていくという、防御を超えてやはり攻めのというか、前向きの対応で金融システムを構築、強化していくことであるというふうに思っております。そういう位置づけのもとで、具体的にどのような当面の不良債権処理加速策を打ち出すかということに向けて、今努力をしているところでございます。
生方委員 柳澤さんは、現在の金融システムは危機にはないという、多分大ざっぱな認識は持っていたと思うんです。竹中大臣の方は危機であるという認識を持っているように、この間のずっと新聞報道を聞いているとあるんですけれども、その基本的な認識の違いはあるんですか、ないんですか。
竹中国務大臣 危機という言葉、これは大変包括的な言葉でありますけれども、あえて人間の体に例えればいわゆる危篤状態とか、そういう状況に陥ったということはもちろんなかったわけでございます。そういうことに陥らないように、これまでも前大臣、金融庁、努力してきたわけでありますが、同時に、やはり完全な健康体ではないということは、これはひとしく認識を持ってきたと思っております。
 であるからこそ、昨年来の骨太の方針の中でこのことを、この問題の解決を構造改革のいわば一丁目一番地と位置づけて対応策に取り組んできたわけでございまして、危機は起こさせませんでしたし、いわゆる危篤状態になかったということはもう明々白々でありますけれども、同時に、やはり体力の面で病んでいた面があったし、これをいかに信頼に足るものに持っていくかということが大変重要な今の政策上のポイントであるというふうに認識をしております。
生方委員 もう少し短く答えていただけるとありがたいんですけれども。
 柳澤さんは、公的資金を導入するような、注入するような時期ではないという認識で、竹中さんは、公的資金を注入しなければいけないんではないかという認識を持っている。基本的な認識の違いがあれば、当然、行われる政策も違ってくるわけですよね。何も、認識がほとんど同じであれば柳澤さんを今度かえて竹中さんに兼務をさせる必要はないわけで、ここは国民にわかりづらいわけですね。政策の転換をするために竹中さんに兼務してもらったんだというんならいいんですけれども、政策を強化するために竹中さんに兼務してもらったんだというと、国民には非常にわかりづらくなるんですよ。政策転換をするんなら政策転換をするんだということを、きちんと竹中さんと小泉総理が国民に説明をして、これこれこういう政策転換をこれからしますよと。
 それを言わないで、政策の転換を政策の強化だというようなことで言うから国民の政治不信は、私はますます深まっちゃうと思うんですよ。認識が違うんであれば当然政策も違ってくるわけで、認識が同じだ、余り違わないんですよということであれば政策だってほとんど同じような政策をとらないかぬわけで、ここはやはりはっきり、竹中さん、しておかないかぬところですよ。
 違うのか違わないのか、そこを、大枠ですよ、大枠違うのか違わないのかということだけ、もう一度お答えいただきたいと思います。
竹中国務大臣 これは、あくまで大枠は構造改革を進めて日本経済を活性化させる、その一丁目一番地としての不良債権問題の解決を急ぐということが重要である、そのために金融、経済一体となってこの問題を加速、担当しろというのが総理の御指示だと認識しておりますので、これは昨年の骨太方針以来の一貫した政策を強化するものであるというふうに認識しています。
生方委員 私が聞いたのは、柳澤さんとの認識の違いがあるのかないか。これはこれ以上聞いてもしようがないので、次の問題に進んでいきたいと思います。
 不良債権の処理を加速させるんだということで、不良債権の処理を加速、不良債権を処理しなきゃいけないということに反対をする国民の方はもちろんいるはずはないわけで、それは大いにやっていただきたいんですけれども、不良債権処理を加速させるということになれば当然デフレは一時的にはひどくなるというのは、これも共通の認識としてあると思うんですね。企業の倒産や失業者の増加がふえるであろうと。
 きょうの読売新聞にもちょっと出ていましたけれども、民間シンクタンクの日本総合研究所の試算では、「「竹中報告が実現すれば、四大メガバンクだけで最大約九十三兆円に上る貸しはがしを引き起こす恐れがある」――貸しはがしの規模は国の一般会計予算を上回る。それによって、三百三十二万人の失業者が生まれ、実質国内総生産も六・四%減少する」というふうにはじき出しておるわけですけれども、不良債権処理の加速と同時にデフレが起こってくる、このデフレが起こってくることをどのように阻止する政策をお考えになっているか、そこをお伺いしたい。
 それからまた、この日本総研の数値、この数値について竹中さんは、いやそんなことはないというふうに思っているのか、そのとおりだと思っているのか、それもお聞かせをいただきたいと思います。
竹中国務大臣 竹中案というのを私は出したことはありませんので、幾つかの仮定に基づいて計算しているその試算について、特に私、コメントは差し控えさせていただきたいと思いますが、御質問の、どのような形で、短期的にデフレ圧力が加わった場合にこれを解消していくかという問題に関しては、まさしく、先ほども申し上げましたように、これは歳出の改革と歳入の改革、それともう一つの規制の改革によって潜在的な需要を掘り起こしていく努力を進めるということがやはり基本線であるというふうに思っております。
 それと、ともすれば誤解が出てきますけれども、不良債権の処理を進める中で、一方で金融が正常化され、資本、資金の配分、アロケーションが効率化されることによって、これはむしろデフレを克服する圧力も当然のことながら起こってくるわけでありますから、つまり、その再生のメカニズムをどのように組み入れるか、そういうことをやはり同時に合わせわざとしてやっていくことが大変重要なわけでありまして、今まさにその方向で総合的な対応策を検討しているところであります。
生方委員 不良債権の処理はこれまでにもずっと進めてきたわけで、それなりの防止策もとってきたにもかかわらずデフレはますます深刻化しているわけで、やはり、セーフティーネットをきちんと構築しないところで不良債権の処理を加速させればひどいことになるというのは、国民がみんなひとしく受けとめているから株価も暴落をしているわけですね。
 だから、セーフティーネットをきちんと構築しなければいけないという中には、やはり私は、お金をつけた措置というのが必要であるというふうに思うんですよ。お金をつける措置というのは、もちろん補正なりなんなりで予算措置を伴わなきゃいけない。
 今、小泉さんがおっしゃっているのは、この臨時国会には補正予算は出さないんだという方針でどうも臨むようだというふうに聞いていますと、セーフティーネットに関連した政策というのは予算措置を伴わない政策になるんだというふうになると思うんですね。
 私は、これで思い出しますのは、九七年に橋本内閣が誕生したとき財政構造改革法をつくって、非常に厳しいキャップをかぶせた九八年度予算をつくったわけですね。十一月に山一証券が倒産したりして、我々は早く手を打たなければ大変なことになるよと言っていたにもかかわらず、補正予算が結局翌年度になって、来年度予算を審議しているときに補正予算を同時に審議するような形になって、その後、結局補正を三次にわたって組まなければいけなくなって、その当時、我々はツーリトル・ツーレートだというふうな批判をしたんですけれどもね。
 今度の小泉さんのやり方を見ていると、どうもまたその二の舞を演じてしまうんではないか。補正予算を組むと言っておきながら、組むのは来年だというふうになれば、これは来年度予算と一緒に補正予算の審議をしなければいけないということで、執行になればこれは何カ月もおくれてしまって、結局のところ、補正予算を組んでセーフティーネットを構築したとしても、そのセーフティーネットそのものが非常にお粗末なもので、また縫うためにお金が要ってと。結局、三次にわたる補正予算を組んで、残ったのは財政赤字がふえただけで景気を立て直すことにはとても及ばなかったという過去の経験があるわけですね。
 そうしたものもやはり我々は踏まえて対応していかなければいけないと思うんですが、補正予算を組む、組まないは別として、セーフティーネットを張るときに、国民の方たちが納得できるようなセーフティーネットということになれば、私は、当然予算措置が伴うものでなければ国民にはこれが本当のセーフティーネットだなというふうには見えないと思うんですけれども、その点はいかがでございますか。
竹中国務大臣 今、各省に協力をお願いいたしまして、そもそもどのような政策が必要なのかという、その政策の中身を詰めているところであります。その政策の中身をしっかりと詰めた上で、どのような対応が必要かということは、これはその後にやはり判断をしっかりとしなければいけないのだというふうに思っております。
 同時に、九七年から九八年にかけての経済運営との対比もございましたけれども、今、やはり日本の国債市場が非常に微妙な均衡の上に成り立っている。財政赤字がやはり拡大し続けるという認識がもしも市場に広がることによる、やはりそのデメリットということもあり得るわけで、財政の微妙なバランス、マクロ経済の微妙なバランスの中で非常に狭い道を歩まなければいけない、そういう制約の中で、御指摘のような点も踏まえて総合的な判断を行わなければいけないというふうに思っております。
生方委員 塩川財務大臣にお伺いしたいんですけれども、三十兆円枠というのは、別に三十兆という額にこだわる必要はないと私は思うんですよ。
 三十兆というのは、あくまでもこれは目標であって、そういうものを立てていて財政規律をきちんと確立するんだという認識を踏まえていればいいんであって、その三十兆円枠という自分の言葉にとらわれちゃって、実際の打つ手がおくれてしまうんではこれは何にもならなくなっちゃうわけで、セーフティーネット構築というときに、補正予算の前倒しというんですかね、前に組むということも含めた検討をやはり私はするべきだと思うのですよ。
 もう補正予算を今度の臨時国会には出さないんだという足かせをするんじゃなくて、臨機応変に大胆に対応するんだと言っているのであれば、やはり補正予算を組むこともあり得るんだという前提でこの臨時国会を開くのか、この臨時国会では補正予算は絶対もう組まないんだという前提で開くのかでは、随分違ってくると思うのですけれども、その辺いかがでございますか。
塩川国務大臣 臨時国会中で補正予算を出しても、それは即効性はなかなか期待できないように思いますし、先ほども言っていますように、今予算の中で未執行のものが随分あるんです。これをやはりしっかりと使うことなんですね。
 それは何で使わなんだかというと、縦割り行政がきちっと組み込まれておるからなかなか使えないんです。だから私が言っていますのは、それを自由に使えるようにするということが大事なんで、そこが役人的発想でつくってきた予算の仕組みというものをもっと柔軟に流動性を持たす……(発言する者あり)いや、それをやろうと言っているんだ。流動性を持たすということが大事なんです。そうすれば、当面のところは、もちろん、私はさっきも答弁を何遍もしていますように、必要があれば出さなきゃいけないんです。いけないんですけれども、それが今、それじゃ補正を組んだとして、それを執行するのは恐らく来年の二月、三月ごろになっちゃうでしょう。それだったら、それまでの間の資金こそ必要なんだろうと私は思うし、要するに、予算の使い方をもっと柔軟にして即効性あるように使うということが大事です。
 必要があればいつでも補正をする必要があるだろうと思いますが、現在のところでは、補正が済んですぐにそれが明くる日に有効に働くとは考えられないということを言っております。
生方委員 それは、縦割り行政の欠陥というのは我々もかねてから指摘をしているわけで、私が今言ったのは、そのセーフティーネットの関連に、不良債権の処理を加速するんだというときに、セーフティーネットがきちんと構築をされていないというんだと日本経済は破綻するんじゃないかということが株価にも反映をして、今九千円割れの状況になっているわけですから。
 そのときに、セーフティーネットを構築するといった場合に、何ら予算措置を伴わないセーフティーネットといっても国民の皆さんはなかなか納得できないから、そういうことも含めて、セーフティーネット論を語るときであれば、予算措置がつくのも含めたセーフティーネット論でなければなかなか国民の皆さんは納得できないということを御指摘させていただいたんで、今までの予算の執行が滞っているというのは、それは政府内部できちんと調整をしていただいて、きちんと執行するように、執行できない仕組みがあるのであれば、それを取り除いていただくのがまさに小泉内閣の責任ですから、そこは指摘をさせていただきたいと思います。
 それから、先ほど来、不良債権とは何かという定義の問題がいろいろ論議をされておりましたけれども、不良債権の処理を二〇〇四年度末までに終えるというふうに今小泉さんおっしゃっているんですけれども、不良債権の処理を終えるという状態は、どういう状態になったら終わったというふうに終結宣言をするんですか。
竹中国務大臣 基本的には、先ほども一部御答弁をさせていただきましたが、これはやはり全体的な意味での市場、行政に対する信頼性の回復ということに尽きているのだと思います。したがって、判断は非常に総合的なものにならざるを得ないのだと考えます。
 しかしながら、やはり当面のメルクマールとして、どのようなことをいわば中間的な目標として目指すべきかということは、これは考えておく方がよいというふうに私も思っておりますので、最終的な報告書の中でどのようなものを一つのめどにするかというようなことはぜひ議論をしていきたいと思っております。
生方委員 現在、不良債権の額は幾らあるというふうに認識をなさっていますか。
竹中国務大臣 幾らあると認識しているかという御質問でありますが、これは金融庁の集計数値でありますが、十四年度三月期の預金取扱金融機関の不良債権残高は、これは例のSEC基準の考え方に基づいて開示されているものでありますが、五十二・四兆円という数字であります。こうした数字に基づきながら、資産の査定をさらに見直してきっちりと対応をしていく必要があるというふうに思っております。
生方委員 二〇〇二年三月期で見ると、その主要四大手銀行だけで六兆六千億円の不良債権を処理をした。ところが、九兆九千億円の新たな不良債権が発生をしてしまったというのが、去年ですね、実績ですね。この数値が同じような形で進むというふうに仮に考えれば、五十二兆円の不良債権の処理をするというふうになれば、新たに八十兆円近いまた不良債権が発生をしてしまうおそれがあるんじゃないか。
 これ、一年でですから、二〇〇四年度末ということになりますと、たった二年ちょっとで不良債権を処理をするということになれば、非常に大きなデフレ圧力がかかってくるということになると思うんですけれども、これを阻止するのに、先ほどおっしゃったようなデフレ防止策だけでデフレを阻止することがとても私はできないと思うんですけれども、この二〇〇四年度末、これは、早くしなきゃいけないというのはわかるんですけれども、二〇〇四年度末という、たった二年半でこれだけの大きな額の不良債権が処理できる、処理して日本経済がもつというふうにお考えですか。
竹中国務大臣 委員、今ちょっと数字を示されましたが、最近期に起こった不良債権の処理と新たな不良債権の発生というその比率を単純に延長していただいて議論をするのは、これはやはり少し誤解を招くというふうに思います。不良債権が今期新規発生した理由は、もちろん要因は幾つかございますけれども、やはり特別検査等々によってきっちりとあぶり出されたという要因も、これが非常に大きいというふうに認識しておりますので、そういうような形で、いわばとても日本の経済が背負えないような形の問題があるとはもちろん思っておりません。
 資産査定をしっかりとさらに見直す中で、その辺の見きわめを行いながら、まさしく金融、経済一体となった総合的な運営を行いたいというふうに思っておりますが、私の認識では、日本の経済、非常に強い潜在力を持っておりまして、こういう自力、余力のあるときこそ、きちっと不良債権の処理を進めて終結に向かわしめる大変重要なチャンスである、機会であるというふうに思っております。
生方委員 不良債権の処理は、これはやってみなきゃわからないという点がございまして、あくまでも政治は結果論、結果がうまくいけばそれはいいのであって、結果がうまくいかなければ責任とるしかないのであって、私は、二〇〇四年度末というようなたったそれだけで、これまでもう十年も、十二年も不良債権の処理を言ってきながらできなかったもの、だからこそ加速しなきゃいけないんだというお返事になるんでしょうけれども、それができるような体力が今日本にあるのかどうかというのは、私は疑問符をつけているということだけ御指摘をさせていただきます。
 あした、総合デフレ対策が発表されるということで、本来は、その総合デフレ対策が発表されてから一般質問になれば私もよりしっかりした質問ができると思うんですけれども、総合デフレ対策、新聞等ではいろいろ報道されておるので、今現在でお話しできる範囲内で、どんな総合デフレ対策をお考えになっているか、ごく簡単で結構でございますから、御説明をいただけたらと思います。
竹中国務大臣 まさに、まだ最終的にいろいろ集計して調整しているところでございますけれども、基本的な考え方というのは、先ほどからも申し上げましたように、四本柱の改革を進めていく、その四本柱の改革、歳出、歳入、金融、規制を、より大きな規模でやろう、より速い速度でやろう、それをよりわかりやすく国民に見てもらえるようにしようということでありますから、これは経済財政諮問会議等々でもさまざまに議論してきた問題でもありますし、また各省庁においてもこれまで検討してきた項目でありますので、そういうものについて総合的に組み立てるということが基本でございます。
 加えて、今回不良債権処理を加速することによりまして、とりわけ中小企業、特に中小企業の金融の問題、それと雇用のセーフティーネットの問題、これについてさらにそのセーフティーネットの強化のためのものも埋め込んでいく、そういう形で構成された総合的な対応策を今考えているところでございます。
生方委員 具体的な策は、いろいろな省庁にまたがるんでしょうから、これは竹中さんに全部お聞きするというわけにはいかないので、これはあした出てから、我々もそれを精査して、また次に質問させていただきたいと思います。
 次に移りますが、金融システムの安定化について、これは新聞等でいろいろ、第一段階、第二段階、第三段階でこうやってシステム健全化をするんだというふうなことが報道されておりますが、金融システムの安定化について竹中さんが今お考えになっている、どのような手順で、どういうふうに安定化を図っていくのか、あらあらのスケジュールを教えていただければと思います。
竹中国務大臣 今委員が御指摘になった第一段階、第二段階というのが、ちょっと何を、どういう内容ないしは報道を指しておられるのか、申しわけありません、ちょっと理解できないのでございますけれども、一般論として、どのような手順でしっかりとやっていくのかということに関しましては、先ほども一部御答弁をさせていただきましたけれども、やはり資産の査定をしっかりとしていただくということを、これは早急にこの次の決算期までにしっかりとやっていただくというのがやはり第一段階としてまず重要なポイントであり、ある意味でこの第一段階といいますか、出発点がすべての基礎になるというふうに思っております。
 その上で、同時に、企業、金融機関のやはり収益力を回復していくような仕組み、それがまさにコーポレートガバナンスの強化であるというふうに思っておりますから、しかし、これは順番というよりは、これは同時進行していただかなければいけないわけでありますから、その資産の査定の厳格化ということを入り口にしまして、総合的に三つの要因が絡まって金融システムが強化されていく、そういうシナリオをぜひともたどりたいと思っております。
生方委員 この特別検査の再実施ですけれども、いつ行うんですか。
竹中国務大臣 既に実は特別検査というのは、これをリアルタイムで実施するというのは今年度も継続されているわけでございまして、これはその意味では既に行いつつあるというふうに御理解をいただくのが私は正確ではないかと思います。
 決算期に合わせて、また金融機関が自己査定をするときに、リアルタイムで金融庁がそれをフォローするという形になるわけでございますから、その意味では、去年から始まりました特別検査をさらに継続しながらしっかりと行っていく。その上で、金融機関の自己査定と金融庁検査結果との間に開きがあれば、それはしっかりと是正を求めていく。その中で資産の査定が結果的に強化されていくというふうに思っております。
生方委員 その銀行のコーポレートガバナンスが確立されていないんだということと、不良債権の見積額が低過ぎるんだという基本的な認識がおありになるんだと思いますよね。
 さっき、金融庁の方で不良債権の処理の額、不良債権額を五十二兆円というふうに判断をしている中で、これは竹中さんの認識としてはもっとあるという認識だというふうに考えていいですね。
竹中国務大臣 厳しい市場からの評価も踏まえて、もっとあるかどうかも踏まえて、きっちりと対応していこうというのが今回の基本的な姿勢です。
生方委員 よくわからないのは、金融庁も日銀も何度も何度も銀行を一応見ているわけですね。二カ月に一遍とか一カ月に一遍見ていて、それで不十分だ不十分だというふうに言っていても、最終的には銀行側が不良債権であるのかないのかというのはこれ判断をするわけですよね。そうすると、恐らく、幾ら厳しくやったって、銀行側から最終的な判断というのは余り変わったものが出てこないと思うんですけれども、それは、それ以上にするためには何か方法があるというふうにお考えになっているんですか。
竹中国務大臣 これは専門家の間でも、資産、特に生きている企業の、企業という一つの資産ですね、企業価値をはかるのは技術的には大変難しい問題であるわけでありますけれども、これについては、もう御承知のように、専門家の間でも幾つかの議論がなされておりますから、そういうものを取り入れるのが適切かどうかということも踏まえて、今、資産査定をより厳格にして、市場の信認にこたえるためにはどのような方法がよいのかということを検討して、最終的に取りまとめようとしているところでございます。
生方委員 これは、竹中大臣は、今の銀行の経営者では今の銀行を立て直すことができないから、国有化しても経営陣をかえて銀行を立て直さなければいけないんじゃないかというふうに言われていると、新聞ではいろいろ書かれておりますけれども、そういうふうに考えているんですか。
竹中国務大臣 これは先ほども答弁させていただきましたが、私は、銀行を国有化するというようなことをいわば政策の目標にするなどということは、これは一切あり得ないことだというふうに思っております。
 コーポレートガバナンスをより強く発揮していただいて、コーポレートガバナンスというのは一つのシステムでありますから、それをどのような形でより強化して、その収益力を高めるような基盤をつくっていっていただけるのか、これは非常に広範な問題でございますので、これも今大変重要なテーマになっているところでございます。
 私が大臣として、その経営者の評価というのを軽々にこれはすべきではないと思っておりますし、これはシステムの中で、コーポレートガバナンスが発揮されるようなシステムの中で解決されていくべき問題であるというふうに思います。
生方委員 優先株を普通株に転換するという方法が一つありますが、これは今お考えになっていますか。
竹中国務大臣 これに関しても、ガイドラインが存在しているわけでございますけれども、コーポレートガバナンスの有効な発揮という中で、そういった問題も含めて総合的に、ガバナンス強化がどのようにできるのかということを今検討しているところでございます。
生方委員 これは、優先株の転換権行使についてというので、その条件がございますよね。「直近の自己資本比率や収益指標等からみて経営が著しく悪化した銀行について、経営体制の刷新等、経営管理を通じた適切な業務運営を確保することが必要である場合」というふうになっているんですけれども、竹中さんの認識としては、今現在こういう状態にあるというふうに認識しているのか、そうではないというふうに認識しているのか、どっちなんですか。
竹中国務大臣 個別にどのように判断をするかというのは、これはまさに行政の判断の問題でございますから、今この場で私がどうこう言うというのは不適切であろうかと思います。
生方委員 何かその不良債権の処理を加速するんだという中には、金融システムを安定化させるんだというのは当然入っているわけですよね。
 その中で、竹中さんが最初に非常に勢いいいことを言っておきながら、今お話をすると、優先株の転換もするのかしないんだかよくわからないし、公的資金を投入するというのが決して目的ではない、国有化するのが目的ではないというようなことになっていると、金融システムの安定化といっても、結局、銀行任せにすれば、銀行の経営者は自分たちの身が、安全が大事ですから、検査もいいかげんにならざるを得ないという、これまでの繰り返しになっちゃうと思うんですよ。
 繰り返しじゃないというメッセージを発するためには、何を本当におやりになろうとしているんですか。金融システムの安定化のために、これまでとは違った何をおやりになろうとしているんですか。
竹中国務大臣 今御指摘の中で、最初は勇ましいことを言っていたけれども云々というあれがございましたが、私は、そういったことについて別に案を示しておりませんし、そういうことは何も言ってはおりませんので、一部報道にはいろいろなことがございましたが、この点はぜひ誤解なきようにいただきたいと思います。
 しからば、どういう形で金融システムを強化するのかということに関しましては、これはもう就任以来申し上げてきましたように、三つの視点を大事にしたい。
 それは、資産査定が十分に行われているかどうかということを厳しく見ていく必要があるのではないか。自己資本が十分かどうかということを厳しく見ていく必要があるのではないか。コーポレートガバナンスが発揮されるようなシステムを、これは厳密に、厳しくつくっていく必要があるのではないか。
 まさに今申し上げた三点を踏まえながら、しかし同時に、より大きな背景としては、これは企業を再生させて、金融システム、銀行を強くするための、したがって経済を活性化させるためのものであるという大きなビジョンの中できちっとした政策を打ち出していきたいと考えているところでございます。
生方委員 税効果会計の見直しというのも先ほどから質問にいろいろ出ていますけれども、これを見ますと、やるのは二〇〇四年の三月から、それも先延ばししようというような話も出ているようですけれども、不良債権の処理のけつを二〇〇四年度末までというふうに区切っておきながら、税効果会計の見直しをさらに延ばしちゃえば、公的資金の投入ということだって、基本的には税効果会計の見直しがなければ自己資本比率が八%を下回るなんというようなことはほとんどないのでしょうから、公的資金を投入するというようなこともなくなるわけですよね。
 そうなりますと、二〇〇四年の三月に仮に実施したとしたって、不良債権の処理に金融システムの安定化を役立てようとしたって遅過ぎたことになるんじゃないですか。
 もしこれを、これがいいかどうかは別として、やるとするのであれば、すぐにやらなきゃ何の意味もなくて、二〇〇四年の三月、それをさらに一年延ばすということになったら、不良債権の処理の促進とこれとは全く結びつかないということになっちゃうと思うのですけれども、いかがですか。
竹中国務大臣 税効果の話に関しましては、先ほどからの御質問の中にも、そのルールの継続性というのをどのように考えるのか、ないしは、税制と企業会計の基準とBISに基づく監督の基準というのをどのように整理していくのか、さまざまな視点が必要だという御指摘がございました。
 同時に、まさに今生方委員御指摘になられましたように、この自己資本の充実、特に、先ほど申し上げたような自己資本に関する市場との見方の差を埋めるためには、この問題を真正面から見据えなければいけないということも重要な指摘だというふうに心得ております。
 そうした立場から、非常に総合的な視点を踏まえまして、強力でかつ現実的な仕組みを今最終的に調整しているところでございます。
生方委員 竹中さんの頭の中にあるのは、厳しく今の銀行の状況を見ていこうとしたときに、銀行の壁が厚くてなかなか中身を見ることができない、中身を見ることができないからいつまでたっても金融システムが安定しないんだ、だから、中身を見るためには、やはり公的資金を導入して、強制的に自分たちが中身を見て、不足しているものはきちんと不足しているということを指摘しなきゃいけないんじゃないかというのが頭にあるんじゃないかと思いますよ。
 そうすると、公的資金を導入して、要するに情報を自分たちで見るんだということが目的であるとすれば、今までの、単に優先株を普通株に転換する、それで株主権を行使するとしたって、半分以上持っているというのは一行ぐらいしか出ないようですから、そうなりますと、そこはできないわけですよね。
 だから、目的がはっきりしているのであれば、むしろ、そのためにやるんだということで、やることはおやりになればいいと思うんですよ。目的がそうでないならばそうでないでいいんですけれども、目的がどう見たってそれにあるにもかかわらず手段を引き延ばししていたんじゃ、これは結局目的を果たすことにならないんじゃないかと思うのですけれども、いかがですか。
竹中国務大臣 目的が委員がおっしゃったようなところにあるのではないか、そういう御指摘については、これはそんなふうに決して決めつけないでいただきたいというふうに思います。
 これは非常にトータルな観点から、コーポレートガバナンスの発揮の仕組みを通じて金融当局の監督行政を効率的にやることができるのかという問題、それもありまして、さらにその検査を強くするということもそのうちの一つでありましょうから、先ほどから申し上げている資産査定、自己資本、それとガバナンス、これを一つずつ取り出して議論できるものではない。これはもう委員御承知だと思いますが、それをどのように組み合わせながら、民間の活力、まさにこれは民間の金融機関がみずから不良債権を処理し、みずから強くなっているプロセスをつくるということでありますから、その三つの視点を総合的に組み合わせることによって、システム全体がうまく機能するような形に持っていきたいというふうに考えているわけでございます。
生方委員 検査を強化するというふうにおっしゃっていますが、では具体的にどういうふうに強化をするんですか。今までの検査のどこがどう間違えていたからこうなのであって、これからはこういう検査をするから正しい検査だと、強化をするという具体的な内容をちょっと教えていただけますか。
竹中国務大臣 これは、具体的にその検査の強化体制をどのようにつくれるかというのは、大枠が決まった後で、ひとつ行政の問題として精緻に詰めなければいけない問題があるとは思っております。
 しかし加えて、先ほどこれはもう既に御指摘を申し上げましたが、自己査定と金融庁の検査が違った場合には厳しくその是正を求めて指導していくということは、これは資産査定を厳しくするというやはり一つの方向ではあろうかと思いますし、一般の専門家が議論しているような幾つかの新しい評価の手法を取り入れることが適当であるかどうかということを検討することも、これまた検査を厳しくする方法になるのだというふうに思っておりますので、そういう点を踏まえて今考えているところでございます。
生方委員 今のはディスカウント・キャッシュフローのことを言っているんだと思うんです。これも少なくとも、この新聞報道によれば導入は二〇〇三年三月からということですから、来年の三月まで待たにゃいかぬということになりますね。これをもっと早く取り入れるということなんですか、今首を振っていましたけれども。
竹中国務大臣 もちろんその方法だけではないと思いますが、その方法をどのように取り入れることができるのか、その場合の問題点は何なのか。これはやはりスピードを持って資産査定の円滑化はやる必要があると思いますので、その時間の調整も含めて、できるだけ早く、よりよい資産査定の評価をつくるということが私は基本だと思っております。
 全体の問題点、バランスを考えながら、できるだけ早くそういうことができるような体制がとれるように、今検討を進めております。
生方委員 とにかく、竹中さんはせっかく民間から登用されて大臣になっているわけですから、思い切ったことを思い切ってやらなければ余り意味がないわけで、ぜひ思い切ってやりたいことがあればやって、できなければそれはおやめになるというふうにしていただければいいと思います。
 最後にもう一点だけお伺いしますが、日銀が銀行株を保有する、買うというふうな方針を出されましたが、我々はこの場で銀行等保有株式取得機構というのをつくって、この四月から稼働しているわけですね。こういう組織があって、では実際どれぐらい株を買ったのかというと、千三百億円しか買っていないというんですね。二兆円ぐらい買うというふうに最初言っていたのが千三百億円しか買えないと。これは、今度の日銀が株を買おうとしている条件よりもさらに緩い条件でありながらこれしか買えないと。こういう機構がありながら、どうしてまた日銀が買うというふうになるのか、銀行等保有株式取得機構が機能をしていないのは何でなのか、そこを教えていただきたいんですが。
竹中国務大臣 委員御指摘のとおり、この機構は運営委員会の決定に基づいて運営されているわけでありますけれども、二月十五日から四月二十六日までの間の期間に特別買い取りを実施しまして、千三百億円の株式を買い取ったところであります。この機構の運営委員会では、新たに五月十七日から十一月一日までの期間に特別株式買い取りを実施することを決定しておりまして、業務が行われております。
 こういう形にのっとって、今後も銀行等による株式処分については、保有制限の達成に向け相当程度の処分が見込めますので、このニーズに合わせて適宜適切に対応していきたいというふうに思っているところでございます。
生方委員 時間がないので最後に速水総裁で。
 この機構があるのにもかかわらず日銀が新たに株を買うというのは、どういう意図なんですか。それを一言お伺いをさせていただきたいと思います。
速水参考人 私どもの今度の銀行の保有株の買い入れというのは、株価を支えるとか、あるいは流動性を株買いによって市場にまくといったようなことではないんです。
 御承知のように、日本の銀行は海外から注目されているように株を非常に持っているわけですね。値が上がっている間はいいですけれども、含み益になったんですけれども、今は値が下がってきて含み損なんですね。時価評価しなければならないようになったんです、去年の九月から。そうなりますと、自己資本を食ってくるんです。既に三月にはかなり少し食っているわけですね。それをこのままほっておけば自己資本はもっと減っていくわけですね。
 そういうものをここでとめてやろうということで、私どもは、ティア1を超えて大手銀行が持っている保有株というのは、九月末で大体六兆円だと思います、そのうち二兆円を来年九月までに買うということを決めまして、今話を進めているところですが、買い入れの銘柄についても、金融機関の株価変動リスクの軽減という今回の措置の趣旨や、日本銀行の財務の健全性を確保するといったようなことを配慮して、投資適格でありますトリプルBマイナスという以上の上場株式に限っております。一定の流動性を有するものと決めたわけです。この基準だと主要金融機関の保有する株式の大部分を買い入れの対象にすることができると思います。
 銀行は、十六年九月末までに保有株式を中核的な資本の額以内に削減するという法律上の義務を負っているわけで、日本銀行としては、対象金融機関が、今回の買い入れスキームを活用して株価変動リスク軽減を早期に進めることを強く期待して設けた制度でございます。
生方委員 いろいろ問題はあると思いますけれども、時間が来ましたので、また次の質問でさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
小坂委員長 この際、暫時休憩いたします。
    午後零時八分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時四十五分開議
小坂委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。五十嵐文彦君。
五十嵐委員 民主党の五十嵐文彦でございます。
 最初に、速水日銀総裁にお尋ねをしたいと思いますが、あすの三十日には金融政策決定会合があると承知しておりますけれども、追加の緩和措置を検討されているんでしょうか。私どもが観測するに、日銀の当座預金の残高目標を積み増しするか、あるいは長期国債の買いオペの上限を引き上げるかといったことが考えられるかと思うんですが、それ以上のことがおありになるのか、あるいは今申し上げたようなことをやろうとしておられるのか、伺いたいと思います。
速水参考人 明日、十月の二回目の決定会合が開催されますが、どういう議論をどういうふうに進めてどう決めるかというのは、今まだ私、議長の立場でございますけれども、何も決めておりません。今何も申し上げる立場にございませんので、そこはお許しいただきたいと思います。
五十嵐委員 恐らく今のようなことでお茶を濁すということになると思うんですね。しかし、こうした量的な緩和というのはもう既に十分やられて、もう手がないということを示しているんですね。それ以上に思い切った、例えば禁じ手をさらに出すのか。例えば社債の買い切りオペといったものを、さらに禁じ手を繰り出すおつもりがあるのかどうか、それも伺っておきたいと思うんですが、同じようなお答えになるのかもしれませんけれども。もう手詰まりだということなんじゃないでしょうかね。
 ということは、私が、銀行の株を日銀が買い取るというこの非常手段というのは、どう見ても最後の最後のこれは奥の手であり、禁じ手だ、そこまでせざるを得ないというのは金融危機を日銀が認識しているからではないかということを予算委員会でも言わせていただいて、いや、金融危機ではないとおっしゃったわけですけれども、これはどう見ても矛盾している。なぜそれでは、もう既に議員提案でできた、買い取り機構をつくったばかりであります。つくったということは、それで十分間に合うという計算の上でおつくりになったはずですから、それが間に合わないという日銀のお考えというのは、よほどの危機意識に裏打ちをされていると思うわけでありますけれども、なおお考えは変わらないんですか。
速水参考人 今が金融危機であるとは考えていないということを先般も申し上げました。今回もそう申し上げるしかないと思うんですが。
 しかしながら、三つの点が非常に問題だと思っております。一は、経済の構造調整に伴い、なお不良債権の新規発生が高い水準で続くと見られること。また一方で、金融機関の貸し出し利ざやが極めて薄い状況が続いていて、金融機関の体力が低下しているということ。三つ目は、経営のバッファーとして機能していたこれまでの株価の上昇益といったような含み益がなくなったということ。これは非常に大きな自己資本を圧迫する原因になっているわけで、こういう三つのことを踏まえますと、我が国の不良債権問題はこれまで以上に厳しい状況にあるということは申し上げられると思います。
五十嵐委員 これまで以上に厳しい状況にあるという認識だということなんですね。
 私は、金融危機の定義というものを考え直さなきゃといけないと思うんですね。どうも与党の皆さんの議論やちまたでの議論を聞いていると、金融危機というのは銀行の経営者が首になる危機だと思い込んでいるような節がある。しかし、実際にはそうではないはずであります。システミックリスクというのが心配をされる、金融が不安になるということが金融危機の大きな前提だと思うわけですが、それでは、なぜそれがいけないのかというと、そこまで戻りますと、いわゆる金融仲介機能、金融の機能が果たされなくなる、これが金融危機の大もとなんじゃありませんか。
 そうすると、現在、金融仲介機能は不全そのものでありますから、これはまさに金融危機なのじゃありませんか。そうでしょう。八十五兆一千億ものお金を九四年からことしまでに中小企業は貸しはがされている、そしてばたばたつぶれている、そのこと自体は、金融危機じゃありませんか。
 言いかえますよ、それでは速水さん、それでは金融危機前夜と言ってもいいんですか、おそれのある、極めておそれのある事態とも言っていいんですか、それも否定されるんでしょうか。
速水参考人 ここで不良貸し出しを克服して、新しい体制に切りかえていって、おっしゃるように信用仲介機能を堂々と進めていただきたいものだと思うわけです。それができないようでは、危機がまた招来されるかもしれないと思っております。
五十嵐委員 正面からお答えにならないんですけれども、今現在が金融危機なんですよ。危機を認定してこういうことをやろうとしている、これは私は竹中大臣も同じなんだろうと思うんですね。
 先ほどから議論が出ていましたけれども、昨年と同じことをやるんだったら意味がないんですよ。昨年も、市場の評価に着目して特別検査をやる、こうお話しになったわけでしょう。同じようなことをやるんだったら意味はないんですよ。金融危機だからやるんですよ。金融の仲介機能が果たされていないから、どうにかしなければいけない。そして、僕が一番問題なのは、先延ばしをすることであり、竹中さんが金融経営者たちの強い意見に押されてずるずると後退をしているように見えることなんですね。私は非常に問題だと思うんですね。
 銀行の経営者たちが言っていることで一つ大変おかしいと思うんですけれども、まず国有化ありきなのかという話を、批判を典型的にしていますね。私は、まず国有化ありきなのかという議論を銀行経営者がすること自体がふざけていると思いますね。その前に、こういう形にしてしまった自分たちの責任、要するに銀行の国有化以外にもう手がないところまで追い込んでしまった、そういう責任を銀行経営者たちは感じてもらわなきゃいけない。そこが間違っているんですよ。まずありきじゃなくて、その前に、自分たちの失敗があった、ここに至るまでに銀行の経営者たちの大失敗があった、あるいは不正があったということを認識すべきなんです。そこは大間違いだ、私はそう思いますね。だから、まず国有化ありきということではないんですなんという大臣の言いわけは、恐ろしくこれは銀行経営者におもねった発言だ、こう思わざるを得ないわけですね。
 もう一つあるんですが、それ以上にけしからぬことは、そういうことをするんだったら私たちは貸しはがしますよという、端的に言えば信用収縮が起きますよと。ある銀行などは、三十兆円も貸しはがさなきゃいかぬなんということを言うわけですね。これはとんでもない話ですよ。脅迫でありますし、いわば犯罪ですよ、犯罪の宣言ですよ。
 これはまさに実は金融危機じゃないですか。厳格に査定をされて、自分たちの体力がない、過少資本だということがばれたら貸しはがしますよと宣言すること自体が、もはやこれは金融危機なんですよ。そうじゃありませんか。
 竹中さんにその辺の認識を伺いたいと思います。
竹中国務大臣 午前中も少し議論をさせていただきましたが、危機かどうかというのは、言葉の定義をめぐって少し哲学的な問いかけになってしまうのかもしれません。
 一般的には、いわゆる預金の取りつけ騒ぎ等で決済機能が麻痺するようなことが起きているわけではないという意味では危機ではないというふうに認識していますが、御指摘のように、金融仲介機能が著しく傷んでいるということは、これはもう私は否定のできない事実であろうと思っておりますし、したがって、解決を要する大きな問題がそこにあるという認識は強く持っております。
 御指摘の中で、経営者の問題がございました。これは現実問題として、解決を要する問題がそこにあるわけですから、やはり経営者の皆さんには、当然、私は金融界全体として大きな責任があると思いますし、その意味では、金融行政もしっかりとしなければいけないというふうに思っております。決してそういった意味での、経営者におもねて云々ということではなくて、問題を正しく認識して解決すべき問題があると申し上げましたけれども、それに向かって今何をやるべきかということを英知を集めて議論をしまして、そのあるべき政策を提示させていただきたいと思っております。
五十嵐委員 信用収縮の話が出ておりますね。もっと私は細かく見ていかなきゃいけないと思うんですよ。
 貸しはがしやいわゆる貸し渋りというのはどういうところから起きてくるかということなんですが、一つは、仕方がないケース。中小企業の場合を考えていただきたいんですが、業績が悪化して回復の見通しがないということについては、清算に動くというのはこれは正しいあり方なんだろうと思います。しかし、今問題になっているのはそうじゃないんですよ。本業はずっとうまくいっているのに、担保価値が資産デフレで下落して、それを奇貨として追加担保を求めたり、全額の返済を求めるということが行われているんですね。それは当然のように銀行経営者たちは言っているわけですよ。
 だけれども、これはおかしいんです。本来、担保に着目しないで、その事業の効率性、収益性を見て貸しているはずですから、担保はあくまでも補助的な引き当ての手段でありますから、これは自分たちがそこで認めた責任もあるわけですし、担保の資産価値が下落したからといって直ちに貸しはがすというのは、私は、まともな商慣行ではない、取引関係ではないと思うんですね。それを認めてはいけないんだと思うんです、そう簡単に。
 それから、何もない、まさにそうしたこともないんだけれども、小さな瑕疵を取り上げて貸しはがしている例。要するに、借り手側の瑕疵を取り上げて貸しはがしている例がいっぱいあるんです。それはどういうことかというと、大企業への債権放棄で足りなくなった自己資本を積み増すために、無理やり貸しはがしているんです、今度は。一番たちの悪いやつなんです。そういう例が幾らでもあるんです。
 具体的な例をお話し申し上げたいと思うんです。私のところが知っている例なんですが、これはある合併した大手の大銀行です。同一の債務者なんですが、A支店では健全債権だ、B支店では、破綻懸念先だという認定をして貸しはがしに来た。名寄せしてないんですよ、債務者同士で。そんなことはあり得るんですか。同じ債務者で、A支店では健全な借り手である、B支店ではこれは破綻懸念先であるということで整理に入る。それが行われているんです、認めたんですから。
 そして、これは連帯保証人とのトラブルがあったんですが、最終的な返済を求める期限をつけて、最後通告をその債務者にしたんですけれども、その債務者への最後通告が来た期日が、返済を求める最終期限より後なんですよ、手紙が来たのが。それなのに、何と、直ちに仮差し押さえをかけて、競売手続を開始しているんです。しかも、その過程で、あなたの持っている、これはマンションなんですが、マンションをうちの系列の不動産会社に売却させませんかと。要するに、完全にもうけようとしてきているんです。まだ余裕のある中小零細事業者から貸しはがして自己資本を積みたいという気持ちの方が先に来ているから、そういうことが起きるわけです。そういう例がいっぱいあるんですね、実は。
 そのようなことを考えると、問題は、やはり大もとは、もうどんなにしても立ち直れない、ゼロ金利でなければこの先も生き延びていけないような腐った死に体の大企業に、自分の体力、これを全部不良債権にしてしまったら自分のところの損が確定してしまうから、逆算をして、そしてその体力の範囲内でちょびちょびと償却していこう、その犠牲に中小企業をしているということなんですね。この例が非常に多いわけであって、問題はそこなんですよ。
 ハードランディングしたら中小企業まで全部つぶれてしまうなんという理屈はどこにもないんですよ。いわばソフトランディングをするから、ちょびちょびと償却をしていくから、その分を貸しはがして積み増そうとする。それが中小企業の犠牲の大もとになっている。私はそのことを予算委員会でも指摘しましたけれども、それについて、今申し上げたことについて、御感想があったら述べてください。
竹中国務大臣 五十嵐委員が御指摘になったそのミクロの事例につきましては、これはちょっと私は、今お伺いしたところで承知をしておりませんが、マクロ的に今の日本の金融システムの問題をとらえるとするならば、御指摘のような問題が一部起こっている可能性はある、これは何としても正さなければいけないというふうに思っております。
 これは、昨年の経済財政白書で、内閣府で分析したところでもございますけれども、日本の銀行システム、金融システム全体として見ると、収益率が低下している部門にむしろ貸し付けをふやしてきたというマクロ的な傾向はあります。その過程で、そうすると、むしろちゃんと稼げるはずの中小企業等々から、ひょっとしたらお金が引き揚げられている。信用全体はその意味で収縮しているわけですから、その可能性はやはり厳重に追及しなければいけないのであろうというふうに思います。
 ただしかし、これも考えてみますれば、もうからないところに貸し込んで、もうかるところから貸しはがす、そういうような収益最大化に逆行するような行動を、では本当に民間の金融機関がとっているのか、そこに実は行き当たるわけで、であればこそ、本来、企業というのはきちっと貸して、きちっともうけて、借り手にも喜んでいただいて、自分の銀行も収益が上がる、そういうようなシステムが働いていくのが自然でありますから、だからこそ、先ほどから申し上げているまさに企業経営、コーポレートの経営のガバナンスが発揮されるような仕組みを中に入れ込んで問題を解決していかなければいけないというふうに考えているわけでございます。
 今の私のオブザベーションはマクロの認識でございますけれども、そういうような問題が広がらないようにきちっとした仕組みをつくりたいと思っております。
五十嵐委員 だから、そのもとは何かというと、土地担保主義だと言うんです。土地担保に着目してしかお金を貸せないというところに大きな問題があるんではありませんか。そのことになれ切った経営者たち、自分たちもずっと銀行マンとして土地担保にしか金を貸してこなかった人たち、その人たちに経営させても同じことなんですよ。銀行経営を見ていたらわかりますよ、いつかは土地が反転するかもしれないと思って、ちょびちょびと体力の範囲内でやってきた。そのことが通用しなくなったから、こうなっているんですよ。
 この土地担保主義から脱却するためには、私は経営者を一掃するほかもう手がないだろう、これは私の意見ですけれどもそう思っているので、それで思い切って厳格な資産査定をして、これも私は中小企業までみんなやれと言っているんじゃないんですよ、実は。問題は、先ほど言ったように一部の死に体大企業、これに対して極めて甘い資産査定が行われているからそういうことになっているんだということを申し上げている。これは中小企業をむしろ救うやり方なんですよ。だって、公的資金を十分に注入して、また大企業の問題を一掃してしまえば、貸しはがす必要はないんですから。そうでしょう。
 中小企業にとっては、ハードランディングではなくて、むしろソフトランディングなんです。ハードランディングだというのは、大銀行の経営者にとってのハードランディングなんです。そういうことなんですよ。
 それで、九月十日に厳しい判決が東京地裁で行われていますよ。これは御存じだろうと思うんですけれども。いわゆる粉飾的な、逆算主義によるそういう甘い資産査定をしたらこれは法律に違反するんだ、これは単に経営方針の問題じゃないんだ、商法違反なんだ、あるいは証券取引法違反なんだという判決があったんじゃありませんか。
 ですから、危機を認定して厳しく査定をし、それに基づいて公正に銀行の健全性をはかること、これが正義であり、私は日本の金融機関を立て直す大もとだというふうに思うんですが、これを先延ばししたら何のことかわからない。時間をかけるということは、また、今言ったちょびちょびと貸しはがしていくというやり方を正当化する、認めてしまうことになるんですよ。そう思いませんか。もう一度答えてください。
竹中国務大臣 幾つかの重要な御指摘があったと思いますが、土地担保主義に関しましては、まさに企業の価値というのは、その企業が生み出す将来価値を現在価値に置き直すことによって本来得られるわけでありますから、それを不動産鑑定士のやるような仕事として担保の価値でもしやっている銀行経営者がいるとしたら、それはやはり銀行業の本来の姿とかなりかけ離れているというふうに私も思います。
 しかし、ならば、先ほどの問題にも戻りますが、なぜきちっとした経営が、そういうふうに企業価値を見るということができないのだろうか。私はコーポレートガバナンスというふうに申し上げましたが、五十嵐委員は、それはいわば、むしろ能力の問題であるという御指摘をされたのだと思います。これはいずれにしても、能力を高めていただくことも、これまたガバナンスの一環でありますから、コーポレートガバナンスをきちっとする仕組みをつくる中で解決をしていかなければいけないのだと思っております。
 もう一点大変重要な点は、どういうタイムスパンで問題を解決していくのが、最もそれによって生じるフリクションが少なくて済むのだろうか、この御指摘は、私は大変重要だと思っております。
 委員の御指摘は、やはりこの問題は短期で解決することが一番コストが安く上がるのではないだろうかという御指摘がございます。一方で、けさも御指摘がありましたように、ルール変更を短期間ですることによって生じる混乱のコストというのがあるという御指摘も伺っております。
 そうした中で、これはやはり現実的に対応可能な範囲でベストのシナリオはどこかということを考えているわけでございますので、これは何度も御説明申し上げていますように、そういう中での、制約の中で、ベストのシナリオをぜひ探して、きちっとした対応策を出すつもりでおります。
五十嵐委員 ルール変更と言いますけれども、我々が見ているのは、税効果会計を五年分見る、しかも三割も四割も自己資本の中にそれがカウントされている実態というのは、どうも粉飾じゃないか、疑いがあるということなんです。粉飾まがいなんですよ。だから、ルール変更なんて偉そうなことを言う立場じゃないんですよ。悪いことをしているんじゃないかと疑われているんだから、そこを正す必要があるんじゃありませんかというのが一つ。そのために、その執行猶予期間を一年も二年も与えるというのは、やはり問題なんですよ。それは認められないと思うんですが。
 もう一つ、ディスカウント・キャッシュフロー方式というのも、これは変更といえば変更になるんですが、それは堅持されるおつもりですか。
竹中国務大臣 先ほどから何度も出ておりますが、資産査定をきっちりと、より厳格にやっていただく中で、どういう新しい方法をさらに採用していくことが可能かというのは、重要なテーマになっております。
 これに関しては、もちろん御承知のように既にやっている金融機関もあるわけでございますし、RCC等々のまさに企業価値の評価では使われていることでもございます。しかし、デフレの中でこれをどのように適用していくかというような技術的な問題については、詰めなきゃいけないところもあるでございましょうし、そういったことを、すべての要素を勘案して、しかし、結果として資産査定をより厳格にできるように、これは大変重要なところであると思っておりますので、方法、方策、手法については総合的に考えて、よい方法を採用できるようにしたいと思っております。
五十嵐委員 それから、私は、先ほど申しましたけれども、全銀行、全債務者を対象にするのかどうかという問題があると思うんですが、私どもは、もうどうにもならない大企業、もう株価も低迷をしておるというのは、これは一つの指標にすぎません。いわゆる市場の評価ということに着目するだけではなくて、もはや過当競争で収益率が構造的に低くて、将来の立ち直りの見込みもない、そういう大企業を残しておくことに問題があるんですから、そこに絞って厳格な検査をすればいいんであって、中小企業まで含めた全検査をやり直す、あるいは、去年と同じような検査をやるというのでは意味がないというふうに思うんですが、その竹中さんがおっしゃっている検査をやり直すという中身については、どのような対象でおやりになるつもりなんですか。
竹中国務大臣 御承知のように、いわゆる去年行った特別検査に関しましては、マーケットの指標等々を参考にしながら、かつ、一定以上の規模のところ等々に焦点を当てて行われたものだと認識をしております。その意味では、今五十嵐委員がおっしゃったような問題意識に根差して私はやられてきたのだと思います。また、この検査そのものについても、私は今、いろいろな細かいことを私なりに報告を受けておりますが、検査そのものは、これは監査機関等も動員しながらかなり厳格に行われてきたものというふうに考えております。こういった答弁は今までもさせていただいております。
 今重要なのは、いわゆる検査結果というふうに言いますが、それをどのように監督に使っていくかという、むしろそういう点であろうかと思っているんです。
 先ほど申し上げましたように、金融庁の検査と、繰り返しますがこれはかなりきちっとやられてきつつあると思います、それと自己査定とのギャップがある場合は、それをどのようにするか。これは、やはりそれをどう使うかという段階でございますから、その段階、使い方をきちっとするということも含めて、これで資産査定をより強固なものにしていく、それが私はやはり基本方針であろうかと思っております。御指摘の点を踏まえて、今、何度も申し上げますが、実現可能なベストのシナリオを検討しているところでございます。
五十嵐委員 それからもう一つ。予算委員会で言いかけて、お答えいただかなかったんですけれども、同時に、竹中さんは日銀に対していわゆるインフレターゲティングを求めている、こう伝えられているわけですね。これは私は何もならない。土地の価格が反転しなければ、資産デフレは直りません。そこまでするには日銀が直接土地を買うような乱暴なことをしなければ多分直らないと思うんですが、そういうことをしたんでは、かえって土地の反転を待っている銀行経営者を勇気づかせて、今までの先延ばし路線を続けさせるだけのものになってしまう。これは私どもの反対の理由でありますけれども。
 このインフレターゲティングについて、簡単に、一言で、どういう今お立場をとっているのか、説明してください。
竹中国務大臣 金融御専門家の中には、比較的このインフレターゲティング論を積極的に論じる方が多いというふうに認識しておりますが、今、五十嵐委員がどうしてこの問題に対して反対なのかということを、私なりに理解したつもりでおります。先ほどのまさに土地担保主義と関連いたしますが、資産デフレを無理やり奇策等々でとめるということは、調整のメカニズムにむしろ逆行するのではないか、そういう御指摘なのかなというふうに拝聴いたしました。これは、土地担保主義ということを今の銀行行動メカニズムの中でどのぐらい重く置いて見ておられるのかというところに依存するのだと思っております。
 ただ、資産デフレのみならず、一般的な物価水準としてのデフレに対しまして、これはやはり何らかの対応が私は必要だと思いますし、デフレというのはやはりマネタリーな現象という面がありますから、これはやはりマネーサプライがふえるような状況をしっかりとつくっていかなければいけないのだと思います。このマネーサプライをふやすような状況をつくるために何ができるか。そのために、インフレターゲティング、物価目標というようなことについて、これはやはり議論をする必要はあると思っております。(発言する者あり)
小坂委員長 静粛に。
竹中国務大臣 日銀の独立性を重視しながら、これは、しかしやはり一回きちっと、技術的な問題点もありましょうから、議論をしたいというのが私の立場でございます。
五十嵐委員 三十分しか時間がありませんので、もう最後でございますので、その議論はまた時間があるときにゆっくりさせていただきたいと思いますが、私は、もう一つ、最後に一つだけ言わせていただきたいのは、今の混乱のもとは、三十兆円枠の国債の枠とハードランディングの双方を求めている小泉首相、ハードランディングと財政出動を求めている竹中大臣、そして、ソフトランディングと財政出動を求めている自民党ということで、それぞれがばらばらであるというところに大きな問題があるし、国民が混乱をしているもとだ、こう思っておりまして、うまく選挙のために使い分けておられるつもりかもしれませんけれども、これは一番国民を混乱させ、わかりにくくさせているということを申し上げて、後の同僚議員に質問の席を譲ります。
 ありがとうございました。
小坂委員長 次に、長妻昭君。
長妻委員 民主党の長妻昭でございます。よろしくお願いいたします。
 まず、私の選挙区の隣でもございますけれども、石井紘基代議士に哀悼の意を表します。
 さて、質問をさせていただきますが、端的に、時間もないので、お答えをいただきたいとお願いを申し上げます。
 竹中大臣も、けさのこの委員会で、平成十六年度には不良債権問題を終結させる、総理からこういう指示があったという旨、発言がありましたけれども、昨日朝の、何か銀行との会談の中で、竹中大臣が、終結させる平成十六年を一年ぐらい延ばしてもいいような示唆をしたような報道が一部ございましたけれども、この真偽というのはどうなんでございますか。
竹中国務大臣 そういう事実は全くございません。
長妻委員 竹中大臣がいわゆる中間報告を考えられたと言われてから、銀行と頻繁に意見交換をしているわけでありますけれども、竹中大臣の案というのは大変銀行に厳しいわけでありまして、私は、銀行を救うとか、銀行の意見を聞くよりも前に、本当は、やはり中小企業や現場で働いている方の意見をまず聞いて、銀行に聞いたらそれは反対するに決まっているわけですから、むしろそういう現場の企業の声をより多く聞いていただきたいと思います。
 そもそも、銀行とこれだけ、三度も意見交換をするというのは、どなたの発案でそもそも銀行と会おうというふうに、言い出しっぺといいますか、それはどなただったのかというのをお教えください。
竹中国務大臣 これは当初から、ある時点までこれはきちっと深い議論をして、中間的な整理を行う必要があるだろう、中間的な論点整理を行った後は、その論点整理を踏まえて幅広くいろいろな方の御意見を伺おうというふうに考えておりました。特に、銀行は当事者でありますから、規制監督当局と監督される側は立場は当然異なるわけで、一種の緊張関係になければいけないものでありますから、これは何か話し合って合意をするとかそういうものでは全くございません。
 しかしながら、小泉総理が掲げる十六年度までに問題を終結させるというこの問題意識はやはり共有していただかないと、実際に不良債権処理を進めるのは銀行でありますし、そういうことも踏まえてきちっと意見交換をする必要があるというふうに思ってやったわけでございます。これに関しましては、塩川大臣初め閣内の皆さんからも適宜適切なアドバイスをいただきまして、そのように進めているところでございます。
長妻委員 そして、今、この委員会で資料を配らせていただきました。そのうちの資料一というのがありまして、これは「不良債権問題の終結に向けたアクションプログラム」、「主要行に対する公的支援を通じた経済再生」という副題がついてございますけれども、日銀総裁にお尋ねをいたしますけれども、日銀総裁は、この資料というのはごらんになられたことというのはございますか。
速水参考人 この資料の概要については、竹中大臣から伺ったことがあります。
長妻委員 総裁のこの資料の中身に対する感想といいますか、どう評価されているのか。簡潔にお答えをいただきたいと思います。
速水参考人 余り詳しく読んでいるわけじゃございませんのでわかりませんけれども、不良貸し出しの克服を早めてやるということについて、非常に思い切った考え方をお持ちになっているというふうに私は受けとめました。
 私も前から申していることは、自己資本比率というのはおおむね一〇%、平成十三年度決算で大銀行は持っているわけですけれども、この間で、中核的な自己資本を占めている繰り延べ税金資産と公的資本との割合が非常に高くなっていることは事実であります。三月末の段階で見ますと、ティア1が十七兆九千億、そのうち繰り延べ税金の資産は八兆円、四四%です。うち公的資本は六兆円、三三%なんですね。
 これはどう見ても内容が正常的なものでないなという感じは、特に海外から見ていてこれを盛んにおっしゃる方が、量的にはいいけれども中身の質がおかしいんじゃないかということは言われております。私は何回も聞きました。だから、それはやはりいつまでもほうっておくわけにいかない、これは日本の銀行に対する不信認の種になっているということは、私は前から気にしているところでございます。
長妻委員 私も今の総裁の意見に同感なんでございますけれども、この資料の中にもありますが、転換期限が来た、政府が注入した優先株の普通株への転換ということがこの中に書いてありますけれども、これはかなりもっと早い時期に転換すべきだというふうに私は考えているのでございますが、この点に関してだけ、総裁の御見解を伺いたいと思います。
速水参考人 基本的には、金融機関の自主的な経営改善ということが大事なんだと思います。優先株の普通株への転換の問題にしましても、国によって経営権取得自体を目的とするのではなく、自主的な経営刷新を強く促すということがポイントだというふうに理解すべきだと思います。転換のタイミングにつきましても、以上の観点から見ておのずと適切な対応が決まってくるんじゃないかというふうに考えます。
長妻委員 転換をすることによって、先ほど御答弁がありましたけれども、午前中、私の質問の、実質的な経営刷新が図られるのではないかという御見解がありましたけれども、私もそのとおりだと思っております。
 そして、先ほどもちょっとお話がありましたけれども、繰り延べ税効果をティア1で一〇%、上限を抑える、この案は総裁、どう思われますか。
速水参考人 これは私もなるたけ早い時期に、四四%ですか、これを減らしていくべきだと思いますけれども、構造改革あるいは今のデフレ対策といったような環境の中で、いつやるのがいいか、どれぐらいのスピードでやるのがいいか、この辺は私どもが決めることではなくて、政治でお決めになることだというふうに思います。
長妻委員 そして、竹中大臣にお伺いをいたします。
 このペーパー、資料一でございますけれども、ここに書いてあることのすべてを大臣自身は、まあ私自身はこのペーパーはかなりいい部分が多く書いてあるペーパーだというふうに、ちょっと首をかしげる部分もございますけれども、おおむね私は非常に前向きなペーパーだというふうに認識をしているのでございますけれども、大臣自身はぜひ、いろいろな抵抗勢力が周りにありましょうけれども、この中で、基本的には全部妥協せずこれをやるということなのか、あるいはこのポイントだけはちょっと妥協といいますか、見直しをしてもいいと考えられているのか。その御意見をお尋ねしたいと思います。
竹中国務大臣 お配りいただいている資料は、これは私がつくったものでも、金融庁のものでもないと認識しております。これはまあ、出所はよくわかりません。
 こういうものがテレビに映ったりしていたのは拝見したことがございますし、中身についてさらさらっと見せていただきましたが、これはまさに、非常に細かい、具体的にどういう不良資産、不良資産の償却を加速していくかという中身の問題でございますので、私としては、先ほどから申し上げていますように、資産の査定、自己資本の充実、それとガバナンスの強化という観点から、この紙も含めて賛否さまざまな御意見がありますので、今の三つの点を中心にきちっとした枠組みをつくり、かつ結果的にそれが銀行と産業を強くするような形に持っていけるように努力したいと思って、今最終案を取りまとめているところでございます。
長妻委員 今の答弁は非常に奇妙な答弁だと思うんですね。このペーパーは、先ほどの日銀総裁の話だと、竹中大臣が持ってきて説明をしたという話でしたけれども、竹中大臣は、このペーパーは大臣もつくっていなくて金融庁もつくっていないと。
 そうすると、竹中大臣は、何かわけのわからないペーパーをどこかから持ってきて、そこに金融担当大臣という名前を書いて、それを持って日銀総裁に説明をした、こういう理解でよろしいんですか。
竹中国務大臣 私は、日銀総裁にそのようなものを渡しておりません。どうぞもう一度御確認ください。
長妻委員 ちょっと待ってください。確認の前に、先ほどの御答弁で、これは議事録を見ていただければわかるんですが、竹中大臣が説明に来た、この資料を持ってというふうに御答弁があると思いますので、ぜひそれを踏まえて再度、では御答弁いただきたいと思います。
小坂委員長 委員長から言うのもあれですが、別の趣旨であったようにも感じられますので、もう一度御確認をいただきたいと思います。
速水参考人 私は、そのペーパーはいただいておりません。それで、その内容について恐らく説明をしてくれたんだと思います。
長妻委員 そうすると、内容についてこのペーパー、私の一番初めの質問というのは、このお配りをした資料一でございますけれども、それを日銀総裁は御存じですか、このペーパーを御存じですか、こういう質問をさせていただいたのでございますけれども、そのときに、このペーパーの説明を受けたということでありますから、大臣、まあ何しろ世の中は既にこのペーパーが前提で、大臣の頭の中にある理解としてもうすべて報道され、世間、マーケットもこれで動いているわけでありますので、この国会だけが何か時代から取り残されて、ここだけこれがないという前提で議論するというのもおかしな話でありまして、仮定の議論、まあこれは最終決着ということではないのでありましょうけれども、大臣の頭の中にある仮定の議論というのをこの委員会でするわけでありますので、ぜひ、そういこじにならずに柔軟に御答弁をいただきたいと思うわけであります。
 このペーパーの中に、先ほど私が申し上げましたような転換期限が来た優先株の普通株への転換、これに対してガイドラインというのが、先ほども生方委員から示されましたけれども、平成十一年六月二十九日のガイドラインがございますね、転換の。このガイドラインを変更するというふうにここに、中間報告の案といいますかプログラムに書いてあるわけでございますが、この転換ガイドラインの変更というのは、これはやるということでよろしいんですか。
竹中国務大臣 私の頭の中に徐々に案ができつつありますけれども、繰り返し申し上げますが、そこに出ている、マスコミに出ているペーパーは、これはどこの過程のものがどういうふうに出たのか私にはよくわかりませんので、私の頭の中にあることに基づいて聞いていただくというのは、これはそのとおりだと思いますが、それとペーパーと直接結びつけるのは、ぜひ御遠慮いただきたいというふうに考えます。
 その上で、今のそのガイドラインをどうするのかという話でありますが、これは、先ほどから申し上げていますように、ガバナンスをどのようにトータルとして発揮していただくのか、全体のシステムの中で今御指摘のような問題をどのように取り扱うのかということが議論されるべきなのだというふうに思っております。どのように最終的になるかというのは、これは月末にかけての結論の問題でございますので、まだいろいろな協議、御意見を聞きながら、私の中で最終案を固めている段階でございますので、今どうするということを申し上げることは御遠慮させていただきたいのでございますけれども、いずれにしても、ガバナンスの適切な発揮という中できちっと処理していきたいと思っております。
長妻委員 私、先ほど五十嵐委員からも御指摘がありましたけれども、やはり公的資金を注入する場合は、当局が危機だというふうに認識をしないで公的資金を注入するというのはいろいろな意味で無理があるというふうに思っておりまして、ただ、いずれにしても、既に公的資金が注入されている優先株を転換して筆頭株主に国がなる、そして経営者の責任を問う、これは文句を言う方は少ない、そして実効性のある一つの対策だというふうに私も思っております。ある意味では、先ほどのガイドラインでございますね、優先株の転換権行使について、ここに書いてあることが、今もうこの状況で起こっている、転換権を行使できる、この条件に今の現状が合っていると私は理解しているんですが、大臣は、それは全然今はこういう状況じゃないというような理解でございますか。
竹中国務大臣 委員の御認識は一つの見方であろうというふうに思います。しかし同時に、銀行に対して、これはあくまでも自主的な民間の経営を発揮していただくことによってよい面が出るという御指摘も多々ございます。そうした点も踏まえまして、枠組み全体を整備する中で総合的に金融担当大臣として対応させていただきたいというふうに思います。
長妻委員 本当に突っ込んだ議論というのが、これほど世間では議論されているのにここだけ、繰り返しになりますけれども、時代に取り残されたような感じを非常に、国会軽視と言ってもいいと思うのでございますけれども。
 資料二としてお配りしたのは、今優先株を転換した場合の、国がどのくらいの株主になるか。これは圧倒的な筆頭株主に国がなるわけでございまして、ここの、先ほどの中間報告らしきこの冊子の中にあります、経営の責任を問う、代表取締役については原則として全員更迭し、退職金を支払わないよう強く指導する、こういうことを実現していって、銀行の中の改革をしていく、担保主義至上主義を排する等々の改革をするということも、一つ重要なことだというふうに考えております。
 もう一点目は、割引現在価値、いわゆるディスカウント・キャッシュフローと言われる引き当ての手法を要管理の大口債務者に適用するという案もございますけれども、これは大臣、来年の三月期で反映するようにぜひこれはやるべきだと我々もかねてから言っているわけでございますけれども、これはもうこの場で即答といいますか、決断を言っていただきたいと思います。本当に国会の審議が全部、わからない、後でというと議論できませんので。
竹中国務大臣 これは、ちょっと申し上げましたけれども、この制度一つ一つをどうするかこうするかというのは、これは最終的な報告の中で確定し、きょう総理も、今夕お帰りでございますし、総理と御相談しながら確定することでありますので、今この場で結論をというのは、これはちょっとなかなか難しいものがあろうかと思います。
 ただ、ディスカウント・キャッシュフローを積極的に採用することが重要である、これはもう多くの専門家を通して御指摘をいただいていることでございますし、先ほども言いましたように、既にこれを採用している銀行もあるわけでございますから、やはり採用してうまくいっているんであるならばこれは採用する方向で考えるべきだと思いますし、問題点があるなら問題点を考えていくべきであろうかと思いますし、検討項目の中できちっと重要な項目として据えて、納得できる結論をきょうあすじゅうにでも、一両日中にでもぜひ出したいと思っております。
長妻委員 本当にぬかにくぎといいますか、全部一両日中云々の話でありますので。
 そうしましたら、三十日、あしたでございますね、あしたにはこの不良債権処理の基本的な方針というのがきちんと出る、もう先延ばししない、これはよろしいんですね。
竹中国務大臣 今月中にというのは総理からの強い指示でございますので、これは諮問会議等々の日程も踏まえて、明日中に結論を出すように今一生懸命調整をしているところでございます。
長妻委員 いずれにしても、貸しはがし、貸し渋りというのが現に中小企業に対してありまして、金融庁としても今月の十八日に業務改善命令をUFJとあさひ銀行に出しておられる。これは、中小企業の融資を引き上げるという数字が健全化計画に比べて大変、目標値を下回るどころか、引き揚げているわけでありますので、そういう措置も、命令も出されておられますので。
 いずれにしましても、やるやると言ってやらないのが一番悪いわけでありまして、やるやるやると言って、そして銀行が自己資本を上げるためにその分母である資産を圧縮してますます貸しはがしが横行してしまうということが最悪だというふうに私も思うし、竹中大臣もかつて昔そういうことを言われていたと思うんですけれども、ぜひ迅速に、もう抵抗勢力をはねのけて進んでいただきたいというふうに私は思っているのでございます。
 そして、もう一点は、大臣の不良債権の新規発生についての御見解をお尋ねをしますけれども、平成十四年の三月期、この通期、一年間では、破綻懸念先以下の新たな新規発生の不良債権というのが九・九兆円もあるということでございますが、平成十五年三月期、これは通期でこの九・九兆円を必ず下回る、こういうふうに見てよろしいんですね。
竹中国務大臣 これは資産査定をしっかりとやって、しかし、マクロ的な環境の中で起こるものもございますので確たることを申し上げるのは大変困難であろうかというふうに思います。しっかりとした資産査定を進めながら、同時に、金融システム改革とあわせて総合的な対応策を検討しておりますので、そうした政策との合わせわざで、不良債権の新規発生が適宜適切にコントロールされて、約二年半で問題の収束を迎えられるようにぜひ運営していきたいと思っているところでございます。
長妻委員 そして、不良債権処理を加速するには、デフレ対策というのが同時にセットだというのが必須条件だと。セットじゃなければいろいろな弊害が出るわけでございますので、これは私もそう思っております。
 その中で、雇用対策というのが一つ大きなテーマだと思っておりますけれども、これは政府は、内閣府は平成十三年の十一月九日に「改革先行プログラム等の経済効果について」こういうペーパーを出されておられまして、その中で、「今後約三年間で、概ね百万人分の雇用を創出」すると。お配りをしたこの資料四でございます、こういうことをうたっているわけでございます。
 私は、常日ごろ思っておりますのは、政府というのは、目標を初めに出して、その後の検証というのが余りなされていないんではないのか。そのことで国民の皆さんも、本当に政府の言うことは信用できるのかな、こういう御懸念を持つ方もふえてくるわけでございますので、これは昨年の十一月、ですから今ほぼ一年たったわけでありまして、昨年の十一月に三年間で百万人分の雇用創出という約束をしているわけでありますので、一年たった今時点で何人雇用がふえたのか、これを御答弁いただきたいと思います。
竹中国務大臣 政府が出す数字には、幾つか性格の異なるものがあると思います。これは、例えば厚生労働省等々で、所管の官庁で一つの政策目標を立てて、その政策目標に向けて政策を組み立てていく場合の数字の出し方もあると思いますが、今御紹介をいただきましたものは、経済財政諮問委員会の専門家委員会、これは慶応大学の島田晴雄教授を座長とする会で、どのような雇用拡大の可能性があるかという一つのリサーチとして示されたものだというふうに認識をしております。
 その中で……(発言する者あり)それは厚生労働省の方ですね。(長妻委員「資料四の、内閣府」と呼ぶ)わかりました、改革先行プログラムの。要するに申し上げたいのは、幾つかの次元の異なる、性格の異なる議論があるということでございます。
 この改革先行プログラムの雇用対策の効果については、三年間でおおむね百万人の雇用創出でありますけれども、この実績、これまでの実績でいえば、例えば新公共サービス雇用を創出する例の特別交付金については、平成十四年一月から三カ月間で環境分野等で二万三千人の雇用、本年度は約十四万人の新規雇用を見込んでいるというふうに承知をしております。
長妻委員 いや、ですから、このデフレ対策、雇用対策が重要だということが言われていて、あしたの対策、出される対策にも新規雇用の人数が出るのかどうか知りませんけれども、今までいろんな人数が出ても全然それが守られていないというケースが多いんですよ。
 それで、この百万人を創出するというふうに、やはりこれを期待して頑張る経営者もいるわけですね、当たり前ですけれども、政府が出すわけですから。そうしたときに、三年で百万人新しく雇用を生みます、では頑張ろうということで頑張る経営者、働く方は多い。しかし、もう一年たったにもかかわらず、今のを足し算すると、では大体十六・三万人ということなんですか。今時点で幾ら、何人、一年たって実際に雇用がふえたのかというのをお聞きしているんです。
竹中国務大臣 改革先行プログラムの効果として、百万人の雇用でありますけれども、そのうち新公共サービス雇用については五十万ということでございます。その新公共サービス雇用五十万のうち、今は、先ほど申し上げましたように、本年度で約十四万人ということでありますので、三年間でありますから、三分の一に比較的近いところの数字は出ているというふうに思っております。
 ただ、いずれにしましても、御質問そのものは……(長妻委員「実績」と呼ぶ)十四万人です。五十万人に対して十四万人です。したがって、約三分の一に近い数字は出ているということでございます。
 ただ、御指摘のとおり、政策に関して言うならば、一種のパフォーマンスレビューのようなものが政府全体として弱いというのは、ある意味で否定できない面であるかと思います。これは、むしろ政策評価の仕組みの中で考えるという面もありますし、御指摘の点につきましては、しっかりと検討をしたいと思います。
長妻委員 竹中大臣は、金融はお詳しいかもしれませんけれども、そういう今みたいな雇用とかになると、非常にいいかげんな御認識しか持ってないのではないのか。
 今言われた、十四万人が実績というふうに言われましたけれども、これは平成十四年度事業計画ですよ。それが約十四万人ということでありまして、実績というのは、だから一年たった今、現実的に何人雇用がふえたんですかと。全然、雇用の問題というのは余り眼中にないんじゃないですか。
竹中国務大臣 これは年度ベースでしかとらえられないものですから、御指摘の数字につきましては、きちっと検証した上で改めてまた御報告させていただく、そういう機会をつくっていただきたいと思います。
長妻委員 ということは、年度ベースでは実績の数字もきちんと集計をするという理解でよろしいんですね。
竹中国務大臣 雇用のみならず、さまざまな経済統計を内閣府では扱いながら分析をしておりますので、先ほど申し上げましたように、これは一種の政策評価の問題であろうかと思いますので、政策評価をどのように行っていくかというのは、これは実は経済財政諮問会議でもかねてから方法論としては議論がされているところでございますので、政策評価の中に御指摘のような点も織り込んでいくという形で対処したいと思います。
長妻委員 今、前向きの御答弁がありましたので。今まではやりっ放し、言いっ放しだったんです。では、この百万人の雇用計画というのは、きちんと年度末には実績が何人だというのを今お出しいただけるということでありましたので。
 それと、資料のもう一つの、この三ですね。資料の三には雇用が、これも昨年の五月十一日に出されたペーパーでございますけれども、約五百三十万人、サービス業で、今後五年間、五百三十万人の雇用が出るというふうにもここにございますので、こういう部分の検証もぜひ、言いっ放しではなくて、本当に、何万人、何万人というふうにバーゲンセールのように言われまして、それで結局は検証全然わかりませんじゃ、これは本当に国民の皆さんは混乱するわけでございますので、ぜひ検証をお願い申し上げます。
 そして次に、天下りの問題でございます。
 これは帝国データバンクが調査をしたデータでございますけれども、全国の銀行百二十七行に百十七人の天下りの方が役員でおられる、取締役でおられる、こういう数字がございます。百十七人の内訳は、旧大蔵省が四十六人、日銀も四十六人、あとは、残る二十五人は他省庁でございますけれども、これはもうこの時代、この天下りというのはみんな引き揚げてもらって、きちんとした、国民に疑惑を招かれない行政をするというのが筋だと思うんでございますけれども、大臣と総裁に一言ずつ、これはもう今いる方を早目にやめていただくような措置をとるとか何らかの対策をとるとか、こういう前向きの答弁をいただきたいと思います。
竹中国務大臣 これは主観の問題かもしれませんが、金融監督庁、金融庁においては、これまで国家公務員法に基づく人事院の承認を得て、いわゆる天下りとして民間金融機関へ再就職した実績はないというふうに理解をしております。
 今後とも、金融庁職員の再就職については国家公務員法等の枠組みのもとで厳正にこれは対処していることでありますが、もとより、国家公務員であった者が民間金融機関に再就職するに当たっては、当然のことながらそういったことを通して何らかのゆがみが生じてはなりませんし、厳正に対応していくというふうに思っております。
 繰り返しましたように、金融庁、金融監督庁についてはそういう実績はないというふうに認識をしております。
速水参考人 私、数字はちょっとよく知りませんけれども、いずれにしても専門的な知識と経験を買われていった人たちではないかと思います。
 現在はルールがありますから、そういうことは、行き過ぎといったようなことは起こり得ないと思っております。ルールに従ってやっていきたいと思っています。
長妻委員 今、金融庁、金融監督庁等はないという、新しいお役所ですので。
 そうしたら、塩川大臣、全国銀行百二十七行に取締役として旧大蔵省出身の四十六人の方が今現在天下りで在籍をされている、旧大蔵省でございます。こういう方々はもう皆さん御辞退をいただくという方向で取り組まれるのがいいんではないのかと私は思うんでございますが、御所見をお伺いします。
塩川国務大臣 それはいわゆる護送船団時代の遺物ですね。できるだけ、時期が来たら引退してもらうようにするのが当然だと思います。
長妻委員 非常にわかりやすい。民間の出身の大臣が何かお役所みたいな御答弁で、塩川大臣が非常にわかりやすい御答弁をいただきまして、ぜひ実行に移していただきたいと思います。
 そして、あと竹中大臣にお伺いするんでございますけれども、竹中大臣は、ちょっと御認識を伺いたいんですが、いわゆる債務者区分で要管理に分類されている中小企業、そこは現実的には追加融資というのは基本的にはできないわけでございますが、もし要管理に分類されている中小企業に対して追加融資をできるように仮にした場合、何%ぐらいの企業というのが立ち直っていくというふうに御認識ありますですか。
竹中国務大臣 再生の問題というのは、専門家、銀行家の方にお伺いしても、これはまさに個別の問題であるということに尽きるのだと思います。これはやはりそのときのサポート体制をどのようにつくるかということにも依存していましょうから、どのぐらいかと聞かれると、これは少し集計数値としては答えようがございませんけれども、そういうものがふえるような仕組みづくりを再生の仕組みづくりの中でやっていくということに尽きると思います。
長妻委員 そして、先ほど、資料一のペーパーで私がちょっと首をかしげる部分があるというふうに申し上げましたのは、本年末までにみずから辞職した代表取締役については、資本不足については責任に相当しないというような、非常に例外規定といいますか、何かおかしな規定があって、これは私は、そのねらいはわかりますけれども、やめた方がいいんではないかと。過去の、前回の資本注入の二の舞になってしまうというふうに私は思いますので、意見まで申し上げておきます。
 そして最後に、これは竹中大臣の御自身の問題について若干お尋ねをさせていただきたいんでございます。
 竹中大臣がお住まいになっておられますマンションの件でございますけれども、お住まいになっておられるか、あるいは会社が持っておられるかのマンションでございますが、閣僚というのは、閣議決定で、不動産を閣僚在任中は売買というのが自粛ということになっているというふうに聞いてございますけれども、大臣は、このマンションの三十一階部分の部屋を昨年の十一月に売却をされた。
 この売却のもとというのはヘイズリサーチセンターということで、これは、大臣が就任当時の記者会見の発言によりますと、このヘイズリサーチセンターというのは、堺屋太一さんの堺屋事務所みたいなものだというふうに思っていただければいいと思いますと。個人事務所、これは昨年の五月二十九日に行われた会見で言われておられるわけでございます。そして、そのヘイズリサーチセンターの資産というのを資産公表でも公表されておられますけれども、この自粛に違反すると思うんでございますが、これは大臣、違反という認識で謝罪をするとか何らかの措置をとられるおつもりはございますか。
竹中国務大臣 週刊誌の記事はさっと読ませていただきましたが、事実と違うところがかなりございます。
 まず、これは堺屋太一事務所の話等々もございましたが、これは以前そういうような仕事をさせていただいたことがございますが、今は、これは私の出資資本関係もございませんし、役員になるというような人的関係ももちろんございませんし、これは私とは独立した人格の法人でありますので、そこが、かつて役員をやっていた会社がどのような取引をしたかというのは、これはちょっと私としては関知のしない問題であるというふうに思っております。それを閣議決定違反というふうに明言している週刊誌に対しましては、今名誉毀損で訴えることを検討しております。
長妻委員 それであれば、今のお話もおかしな話でございまして、この国務大臣、副大臣及び大臣政務官規範という、昨年一月六日に閣議決定した文書がございまして、その中には資産公開という欄もございます。国務大臣等並びにその配偶者及びその扶養する子の資産を就任時及び辞任時に公表することとするというようなことで、これはこのヘイズリサーチセンターが所有している資産も公表されておられるわけでありますので、これは何にも関係ない会社であればこの資産公開で公表する必要はないんではないでしょうか。
竹中国務大臣 それは、私と独立の人格を持った法人がどのような資産を持っているかということは資産公開の対象になりませんので、公開はしておりません。
長妻委員 いや、これは公開資料の中に入っているわけでございますので、これに関してちょっと大臣自身も精査をしていただければというふうに思います。
 そしてもう一点でございますが、これは謄本もございますけれども、四十七階部分のマンションに関しまして、これは御夫妻で平成十二年の四月四日に御購入をされたということでございますが、そのとき、この謄本によりますと、あさひ銀行から、ここでございますが、一億七千万円、住宅ローンと思われますけれども、融資をこれは受けているということに謄本上はなっておりますけれども。
 あさひ銀行に確認しますと、大体買い値の八割、最高でも原則は八割までしか住宅ローンは融資できません、かつ住宅ローンは最高が原則五千万円までです、こういう原則があるというふうにあさひ銀行から聞いているわけでありますけれども。
 この住宅ローンの組み方を見ますと、一億八千百万円という、これはビラでございます、その当時の不動産屋さんの。そうすると、一億八千百万円で大臣が買われたかどうかというのは、これよりも低い値段で買われた可能性もそれはあるわけでありますので、こういう、当時不動産屋さんが配布していたビラの数字でございますけれども、仮に、この数字と先ほどの一億七千万円、これが住宅ローンであるとすれば、九四%の融資があるということで、八割の原則から大幅に違うわけでございますけれども、これは何か特権といいますか、優遇といいますか、むしろ今は金融担当大臣になられて、こういう融資を指導するお立場なのかどうなのか、そういう御見解をお伺いします。
竹中国務大臣 私も家族がおりますから、家は買わなければいけませんし、その家を買ったときが大臣になるはるか一年前で、一学者のときに、大臣になるだろうということも予想もしないで普通に取引をさせていただきました。
 その頭金はどうするか、こうするかというような原則があるのかどうか知りませんが、私は一私人として普通に銀行からお金を借りたつもりでありますし、銀行は多分、当時所得も高かったし、優良な借り手だと思ってくれたんだと思いますが、普通に取引をさせていただきました。
 これは、やはり私の私人としての、しかもどういう家に住んでいるかということも含めて、これは私の私人としての部分であると、私人として活動したときの部分であるということをぜひとも御認識賜りたいと思います。
長妻委員 そして、その後、これはまた、私人といいますか、今、公人の、ことしの一月の十八日でございますけれども、この住宅ローンを、謄本でもありますけれども返済をされて、かつ東京三菱銀行から五千万円の融資を受けておられる、この同じ四十七階のマンションを担保にしてということがこの謄本から読めるわけでございますが、ここの謄本によりますと、利息が年に一・二%ということで、五千万円を不動産担保にしたローンということで、借りかえローンというのもございますんですかね。
 それにしても、これも銀行に聞きますと、当時の金利というのは当然今の金利とは違うのでございますけれども、基本的には二%を超えるというのが通常ではないか、こういうようなお話をいただくわけでございますが、これは非常に、ことし一月の十八日の融資を受けた分でございますけれども、これはかなり優遇されているではないかというふうに私も思うのでございますけれども、このあたりについては、経緯というのはどんなふうでございましょうか。
竹中国務大臣 長妻委員は、金融についてはお詳しいはずだと思います。
 これは通常の借りかえでございます。借りかえに当たって、当時は、今もそうだと思いますけれども、金利一%の住宅ローンというのはたくさん出ているわけです。二%というのはどこからヒアリングされたかもしれませんが、私はその一%の金利の通常の住宅ローンの借りかえを一消費者としてやらせていただきました。そのときの一%金利の住宅ローンのパンフレットもございますし、どうぞその辺は、国会でお尋ねになるに当たって、どうぞ正確に御調査をいただきたいと思います。
 週刊誌にはそういうようなことを書いてございますが、これはどうぞ御確認の上、必要でしたらパンフレットも、一%の住宅ローンというのは今もたくさんあるわけで、それはお見せいたしますので、これは優遇でも何でもない、一個人として借りかえをさせていただいたということでございます。
長妻委員 一%というのもありますというのは、私も認識していますけれども、それはやはり融資のいろいろ期間ですね、期間というのが大変短い場合等々のいろいろな条件があるわけでございますけれども、その意味で、この五千万円というのは期間としては、じゃ、どのくらいの期間だったわけでございますか。
竹中国務大臣 ちょっと、これも正確に私、小さなことで覚えておりませんけれども、多分それは非常に短い、変動の、変動金利ですごい短いということで、金利が安いようなものであったというふうに記憶をしております。
 ちょっと、期間については、必要があればもちろんお調べをいたしますけれども、とにかく通常の定型化された商品でありまして、パンフレットは、きのう探しましたら手元にありますので、これはごらんいただければ御納得をいただけると思います。
長妻委員 そして、先ほど冒頭の三十一階部分の話に戻りますけれども、閣僚の不動産売買の自粛というのは、これは閣議決定されているわけですけれども、大臣は、不正な蓄財があるというのがよくないのでこういう制度があるんではないのかということを、これも記者会見で言われておりますけれども、買う方はそう、資産がふえる方でございますけれども、売買を規制を、自粛をしているわけでありますけれども、じゃ、売る方、売る方はなぜ閣議決定で自粛をしているというふうに思われますか。
竹中国務大臣 恐らく、高額の資産取引を、政策の中核にいていろいろなことを専権的に情報を、ある立場の者が悪用してはならないという趣旨、趣旨はそういうことであろうかというふうに思います。
 しかし、繰り返し申し上げますが、私は不動産売買を一切行っておりません。それは事実でありますので、この点はきちっと御認識をいただきたいと思います。
長妻委員 そうしましたら、この件は最後にちょっと一点お伺いしますけれども、不動産売買を行っていないということでございますが、このヘイズリサーチセンターが昨年、平成十三年の十一月に個人の方に売却をしているわけですけれども、この売却を、ヘイズリサーチセンターが売るという意思決定は、これはどなたが売るという決断をされたのでございますか。
竹中国務大臣 会社の代表取締役か総会か、そういうところであろうと思います。
長妻委員 総会というのは、会社の代表取締役というのは、どなたでございますか。
竹中国務大臣 私は、資本関係も持っておりませんし、人的な役員も務めておりませんので、これは私がこの場で申し上げることではないと思います。
長妻委員 竹中大臣が一番初めにヘイズリサーチセンターの社長をされておられた、これも謄本があるわけでございますけれども。そしてその次に竹中大臣の奥様が社長に就任をされたというふうに謄本にはありますが、今現在は、じゃ、奥様が社長ではないということでございますか。今現在といいますか、この不動産を売却をされた平成十三年の十一月には奥様が代表取締役ではないということでございますか。
竹中国務大臣 私と別人格の法人が、そこが例えば犯罪的な行為をしたかどうかとか、そういうことでありましたら国会で問題にしていただいていいのだと思いますが、これは私として、もちろんだれか、私は知らないわけではありませんけれども、私と関係のないところの法人の中身について私がちょっとこの場で申し上げるのは不適切ではないかと思います。
長妻委員 大臣としては、もうちょっと踏み込んだ御答弁、いただかないと。
 ということは、大臣の就任の記者会見では、堺屋事務所と同じ個人事務所だというふうに御自身でお述べになっておられまして、じゃ、平成十三年十一月時点でのヘイズリサーチセンターの代表取締役の方のお名前というのも、御存じない方ですか。
竹中国務大臣 それは、そういう形で私の個人的なマネジメントをしてくれた会社であったということは事実でございます。社長について、それはもちろん名前は知っておりますけれども、そういうことを、私と別人格で特に何か疑義があるわけでもない、これは私が疑義があるわけでもないところのことをこういう国会の場で申し上げるのはいかがなものかというふうに申し上げているのです。
長妻委員 それでは、ちょっと一点だけですけれども、この問題。
 そうすると、平成十三年の十一月時点でヘイズリサーチセンターの社長は奥様ではないということは確かでございますね、これは。
竹中国務大臣 ですから、平成十三年の、去年の十一月ですね。ですから、だれか、私の家内であるかどうかとか、だれかとかということは、国会のこの場で御議論いただくことなのでしょうか。これはもう、お調べいただけたらすぐわかりますし、結構なことだと思いますけれども、この国会の場で私が、私が答えることなのでしょうかということを申し上げているのです。
長妻委員 これは国会の場で私は議論する必要があると思いますね。
 先ほど大臣が言われましたように、自粛の閣議決定というのは、例えば売却のとき、大臣みずから先ほど御答弁されましたけれども、何らかの知り得る立場にあって、売るときに、ある意味では有利な時期に売るとか、そういう、一般の方よりも情報が入る立場でありますので、その意味では私は、個人が所有しているという要件というよりは、不動産を販売、売却する意思決定が重要だと思いますね。これは法人が売却したから、いや、全然自分とは関係ありませんというのは、ちょっとこれは不誠実だと私は思います。
 その不動産を売却をした意思決定が、もし竹中大臣がされているんだとしたら、それは自粛の規定にひっかかると私は思いますよ。そういう意味で聞いているわけで、国会でそぐわないというのは、全然そう思いません。大臣、御認識、変えていただきたいというふうに思いまして、ぜひ、引き続きこれは我々も調査をしてまいりますので、誠実に今後とも御答弁をいただきたいというふうに思います。
 そしてさらに、不良債権の、今度は企業再生の問題に移りますけれども、ここのペーパーの、先ほど資料一のペーパーの中には、「安易な企業再生に政府の「お墨付き」を与えることのないよう適正な基準を定めることを、関係府省に要請する。」というようなことの文章が書いてありまして、私もこれは一理ある話だというふうに思っていまして、特に二度目の債権放棄というのがゼネコン等で行われているわけでございますけれども、そうすると、仮に、一度債権放棄された企業に対して二度目の債権放棄があったときに、その再建の枠組みの中に政策投資銀行等が乗って企業を再建していくというのは、私は、ちょっと問題があるんではないのか、二度目の債権放棄ですから。
 大臣の御所見をお伺いいたします。
竹中国務大臣 再建は、いかに再建を進めるかというのは、言うまでもなく、大変重要な問題であります。しかし、本当にその企業が再建にたえ得るものなのか、市場の中でいわゆるバイアブルなものなのかどうかという判定は、これはやはり責任を持ってきちっと行われなければならない。万が一にも、最初のときにその判断が大変誤っていて、それで、ないしは企業経営のその後の非常に重大な問題があって生じたような場合には、これはやはりそれなりの厳しい対応が必要なのだというふうに思います。ただ、形式だけで区切れるか、何らかの不可抗力的な、外的なショックによるような場合なのか、これはやはり、私は最終的には実態判断なのだと思っております。
 しかし、いずれにしても、安易にずるずると再建が引き延ばされるようなことがあってはならない、あくまで一般論でありますが、そのように認識をしております。
長妻委員 そうすると、ちょっと詰めたいのでございますけれども、二度目の債権放棄を受けた、あるいは受ける予定の企業に対して、政府、例えば政策投資銀のようなものが絡むということもあり得るというふうに理解してよろしいですか。
竹中国務大臣 繰り返しますが、再生というのは非常にきめ細かな個々の判断の積み重ねなのだと思います。一般的に想定されるような形で、一回やってみたけれどもやはりだめだった、そういうようなものに関しては、これはやはり厳しく対応することが必要であろうというふうに思います。そういった点も踏まえて、実態判断をしていくことが必要だと思います。
長妻委員 時間もありませんので、最後の質問でございますけれども、塩川大臣に、けさの、この委員会の始まる前の記者会見で、再生委員会というような、企業を再生する委員会のお話を会見で話されて、それが金融庁を中心にそういう構想があるようなお話が出ましたのでございますけれども、これはどんなような構想でございますか。
塩川国務大臣 それは、今不良債権の整理を加速化するという政策をとっておりますね。そういたしますと、その不良債権に対して引当金を十分する。同時に、バランスオフをとるためにそれを外へ出さざるを得ないですね。そうした場合、その債権を受け入れてくれるところがなければなりません。
 それは、従来は引当金不足のままでRCCに行ったりして、RCCがこれを滞留しておるということがございましたし、また、それではRCCが引き取りません、引当金が低かったら。そこで、十分な引き当てをさせて、それでバランスオフします。その分を受けて、その中で、確かに破綻的なものとそれからその中から再生し得るものとがあるわけでございまして、部分的にでも生かしたら十分再生し得る、また、あるいはその企業全体が、あるいは新しい手を、融資をするとか何かによって再生し得ることもある。そういう診断を一回しなきゃならぬということであります。
 そうでないと、全部RCCへ送ってしまうというわけにはいかない、そんなことをしてつぶしてしまうようなことをしてはいけないので、生かすところは生かしたい。そういうことを、病院に一回入れて、そこで判定をする。その病院の中で、だれかが委員長になって、委員会をつくって、そこで正式に検討して、これはRCCへ送った方がいいだろう、これは再生の方にやったらいいだろうということを決めていく、そういう委員会をつくろう、こういうことを私は言っておるんです。
 そのことについて、委員長とかそういうようなことはどういう人かと新聞記者が聞きますから、もう役人とか銀行家はだめや、もうそんなのはあかんから、すべて民間で、しかも、まあ弁護士も入りますか、経営の能力をしっかり持った人で判定をしてもらって、それの仕分けをしてもらう、そういう委員会をつくったらどうだ、こういうことを提案しておるんです。
長妻委員 では、今と同じ質問を竹中大臣に。
竹中国務大臣 再生の機能を社会全体として強化するためには、やはり新しい仕組みづくりが必要であろうかというふうに思っております。しかし、それをどのような形で実現したらいいかということに関しては、これはお金もかかることでありますし、人も要ることでありますし、それを実効あらしめるためのやはりまさに仕組みづくりが入り用ですので、これは知恵を出さなければいけないと思います。
 塩川大臣がおっしゃった点を踏まえつつ、各省庁と連携しながら、これはきっちりとした財政の仕組みをつくる努力をぜひしたいと思っているところでございます。
長妻委員 ありがとうございます。
 基本的にそういう再生委員会あるいはRCC等でもいいんですけれども、基本的には不良債権と健全な資産を分離していくということが必要だと思いますけれども、そのときに、ただ分離をすると、全然経営責任も何もとられないで、経営者だけがよかったよかったという話にもなりかねないので、そこでその優先株を転換をして、きちんと責任をとらせるという意味でその転換をするというのは、これは銀行が反発しても、国民の皆さんは支持をいただける一つの案だというふうに思っておりますので、過去の過ちを責任を問わないで公的資金を注入したり資産を分離してあげる、不良債権を分けてあげるというような、銀行にとって親切な案というのはまた国民が地獄を見ますので、ぜひよろしくお願いを申し上げます。
 ありがとうございました。
小坂委員長 次に、中塚一宏君。
中塚委員 竹中大臣、経済財政に加えて金融まで御担当になったということで、日本の国民生活をほとんど一手にお引き受けになるようなお立場になられ、いろいろなことができるということで大変わくわくされているだろうというふうに思うんですが、日本経済をかけてギャンブルをするというか、横に胴元の塩川大臣がお座りになっていますけれども、ギャンブルじゃないというふうにおっしゃるかもしれないけれども、ギャンブルに見えてしようがないような部分もあります。そのあたりをちょっとお伺いをしたいというふうに思います。
 まず、不良債権の処理ということで、構造改革である、またデフレ対策であるというふうなことをずっと予算委員会等でもいろいろとお話をしたことがありますが、経済白書なんかでは、デフレの定義というのは、持続的な物価下落という意味だというふうに書いてある。我が国では景気後退と物価下落が同時に起こるという意味で使われる場合もあるというふうに書いてありますが、この経済白書では、しかし、国際的に通常使われるということで、持続的な物価下落ということをデフレだというふうに定義をされているというふうに思うんです。
 そこで、まずお伺いをしたいんですけれども、景気後退ということはこの経済白書では除かれているわけですが、そういう中にあって、このデフレということと今の景気の現状認識ということについて。
竹中国務大臣 デフレと景気認識ということでございますが、景気認識の方から申させていただきますと、御承知のように、月例経済報告の中で、景気は水準として依然として厳しい状況にある、一部に持ち直しの動き、しかし、環境は悪化している、その三つで大体基本的な認識は説明できるのではないかなと思っております。
 それと、デフレをどのように考えるかということでございますけれども、今年度の実質的な経済見通しにつきましては、御承知のように、政府経済見通しはゼロ%という厳しい見通しをしておりました。これについては、今のところ内閣府の独自試算では〇・二%ぐらいということで、実質経済成長率については、厳しいながらも予想より大きく悪化している状況ではないというふうに認識をしております。しかしながら、実はデフレの進行は予想より厳しい、それが基本的な認識であろうかと思います。
 経済財政白書の御紹介もいただきましたけれども、物の値段が下がるというふうに、これまた複数の要因がございますけれども、今の時点では、いわゆる要素価格デフレ、供給側の要因をベースに持ちながらも、やはり金融的な要因がかなり大きいのではないだろうか。これを正すためにも、不良債権の処理を加速させなければいけない。そこで、まさにデフレと不良債権問題の悪循環を断つ一つのポイントが出てきているのだというふうに考えております。
 景気の認識、それとデフレに関しましては、今申し上げたようなとらえ方をしております。
中塚委員 デフレの要因で、三つぐらい白書では挙がっていて、その中で、金融要因ということで、資金仲介機能の低下を解決するということを書かれているわけですね。
 その資金仲介機能の低下というのは、結局、資金需要がないのか、あるいは金融機関がお金を貸し出せないのか。それは、一体どっちの方がウエートが大きいというふうにお考えなんですか。
竹中国務大臣 これも要因は決して一つではなくて、両方の要因はあるのだと思います。しかし、物の値段ということになりますと、これは私はやはり、金融的な要因としてのマネーサプライの伸び率がどの程度かという点は大変大きくあると思います。しかし、これを議論していくと、マネーサプライはどのような形でふやせるかという、なかなか哲学的な問題に行き着くわけでございます。
 私は、そこはやはり、銀行の仲介機能が、つまり、まさしく貸し渋りとか貸しはがしとかいう言葉ができていること自体が、資金需要がそこにないわけではないということを意味しているんだと思うんです。したがって、そういう本当にお金を必要としているところにお金が回るようにきちっとしていけば、つまり、需要を満たしていけばマネーサプライにもプラスの影響が出るであろうし、そういう観点を重視するのが必要であるというふうに思っております。
中塚委員 ということをおっしゃっている方が、何で税効果会計のルールまで変更して、不良債権処理だと。不良債権処理はやらなきゃいけないとは思いますが、税効果会計のルールを変えるというのは不良債権処理とは関係ない話ですね。
 査定を厳格化するというのは、もちろんやらなきゃいかぬことだというふうに思うのですが、資金需要というのは、もうはっきり言って、私ら選挙区に行けば、みんな貸してくれない貸してくれないと言いますね。貸してくれないどころか、利息が上がっただの、返せと言われただのとか、本当に資金需要はいっぱいあるんだけれども銀行は貸さないということ。その件をちゃんと御認識になっているにもかかわらず、税効果会計のルールを変えるとか、あるいは査定の厳格化をするというふうなことをおっしゃっているということで、そこが本当にさっき申し上げたギャンブル以前の問題なのかもしれませんけれども、ちょっと政策的にトレードオフではないかというふうに思います。
 それで、今の不良債権問題の終結に向けたアクションプログラムですか、長い名前なので竹中プランとでも仮に呼ばせていただきますけれども、これは、竹中大臣の案というか、プロジェクトチームなんかもおつくりになっているようですから、そこでもいろいろと議論はされているんでしょうけれども、小泉総理とはきちんと御相談にはなっているんですか。
竹中国務大臣 総理とはもちろん、不良債権問題を十六年度に終結させろという非常に大きな指示をいただいた上で、論点を整理しまして、先ほどから申し上げているような資産査定の問題、ガバナンスの問題、自己資本の問題等々について、これを強力に強化していく必要があるということで、その基本的な方向について御確認をいただいております。その基本的な方向に沿って、しっかりとやれというような指示を今いただいているところであります。
中塚委員 基本的な方向というのは、何年以内に処理を終えなさいという程度のことなのか。あるいは、先ほど民主党の長妻委員から配付されたようなこういう紙があったとして、これをちゃんと見せて御説明になっているのか。そのあたりはどうなんですか。
竹中国務大臣 それぞれの論点につきまして、こういう論点がある、ああいう論点があるということを解説しながら、基本的な方向はそれぞれについてこういうことではなかろうかということを御説明しているわけであります。
中塚委員 総理は、閣議の後の閣僚懇ですか、竹中大臣の方針に沿ってというふうに御発言になったということですが、ということは、もうこの中身については総理も了承している、この線でやっていきなさいという理解でよろしいんですか。要は、内閣の意思ということでよろしいんですか。
竹中国務大臣 繰り返し言いますが、その紙については、これは私の案でも何でもございません。しかし、それぞれの重要な論点については総理に御相談をして、それぞれの論点ごとに、その基本的な方向はしっかりと進めていくようにという指示をいただいているわけです。
中塚委員 塩川財務大臣、よろしいですか。閣議あるいは閣僚懇ということで、総理が竹中大臣の方針に沿ってというふうにおっしゃったということなんですが、これは、そうしますと、やはり内閣の意思として決まっている、内閣の方針だというふうな考えでよろしいんでしょうか。
塩川国務大臣 総理の指示が出ておりますので、内閣としての大方の方向はそうでございまして、不良債権の処理を加速するということが基本線、方針です。それに対しまして、竹中大臣の方から構想というものを出しました。それに対しまして、与党なりあるいは政府の中で、竹中案を実行していくとするならば、まず竹中案のいわゆるミニマムをきちっとやはりしてもらいたいということ、これが一つありまして、これは近く決定されると思っております。
 それを受けて、それじゃ、セーフティーネットと、それから再建の方法の具体的な手法をどうするのかということがございます。その件につきましては、経済関係閣僚会議を開催して、そこで経済閣僚が意思統一をちゃんとしておかなきゃならない。ほぼ大体議論はし尽くしておりますのでいいと思いますが、これは確認する。それをもって、政府・与党間の連絡会議がございますので、そこで与党側の方にもやはりこれを理解してもらって、合意を取りつけなきゃならぬというふうになります。
 そういう段取りになりますが、その間において、結局、閣議で決定したい、こう思っておりまして、閣議の決定は近く、きょう、あすの間に行われるであろうと思っております。
中塚委員 閣議決定というのは、この不良債権問題の終結に向けたアクションプログラム、最終的に何という名前になるのかどうかはわかりませんが、それといわゆる不良債権を処理したときのセーフティーネットといいますか、セットでおやりになるということですね。不良債権処理策と、それに伴うセーフティーネットなりデフレ対策というものをセットでおやりになるということですけれども、それを閣議決定されるということですか。
塩川国務大臣 政府・与党の協議を経まして、それを閣議決定と申しましたけれども、閣議に報告をして了承を得るということでありまして、いわゆる法律的な閣議決定ではなしに、合意を得る、協力を呼ぶということで手続をすると。
中塚委員 政府と与党でお話しになるということを今大臣がおっしゃっていましたけれども、竹中大臣が自民党幹部と会談をして、その中間報告が延期とか、中間報告じゃないというふうに大臣はおっしゃっていますけれども、二十二日、自民党幹部と会談をされる前に、総理にはこの中身というのは報告はされたんですか。不良債権の終結に向けたアクションプログラムというものの中身は、総理には報告されましたか。
竹中国務大臣 先ほど申し上げましたように、それまで議論を詰めてきました論点について、こういう論点がある、こういう論点があると、それについて御報告をして、基本的な方向はこういうことではないだろうか、そういうお話し合いを持ったことはございます。
中塚委員 総理は、その竹中大臣の不良債権の処理のアクションプログラムというのを聞いて、自民党の幹部に対して、竹中の言っていることはおれの言っていることだから、これで頼むとか、これでいくというふうには言ってくれないんですか。
竹中国務大臣 基本的にはこれは金融担当大臣の仕事であるから、方向としてはこれはしっかりこの方向で、基本方針はまさにあなたの言うようにやっていく、言っていくのがよいと思う、ついては、与党ないしは銀行ともよく協議して、最終的にこの方向でまとめ上げるようにという指示をいただいております。
中塚委員 かつての竹中大臣の同僚で、官邸から、やれ、やれと言われて、やろうとしたら、だれかがスカートを踏んでいたというふうな大臣がいらっしゃって、大臣をおやめになって、議員もおやめになったんですけれども、何か今のお話を聞いていると、本当に大丈夫かな、そういうことの二の舞にならないかなというふうな気がいたしておりますので、そこはぜひ御健闘をいただきたいなというふうに心よりお祈りを申し上げます。
 例のツービッグ・ツーフェール発言ですが、大きいからつぶれないという意味でおっしゃったということを予算委員会で言っておられましたね。大きいからつぶれない。大きくてつぶせないじゃなくて、大きいからつぶれないという意味で言ったというお話だったんですが、ただ、いずれにしても、ということはないというのがつくんですよね。大きいからつぶせないということはないというふうに報じられているけれども、大きいからつぶれないということはないということでよろしいんですか。
竹中国務大臣 英語の翻訳としてはそのとおりであろうかと思います。
 あのとき、委員会でも申し上げたとおりなんでございますが、タイトル、翻訳のタイトルに、ヘッドラインに、メガバンクでも云々という、私は企業というのはそういうものだというふうに申し上げたんですが、メガバンクでもどうこう、こういうふうにコーテーションマークで書いているところが、これは事実と違うという点が最大のポイントでございます。
 ちょっと、せっかく御質問いただきましたので、そのニューズウイークの日本版の中から、つぶれるべき銀行は大きさにかかわらずつぶしていくというようなことは、竹中大臣は一言も口にしていません。ネガティブなアナウンス効果を勝手に増幅させる追いかけ報道に、不良債権問題を放置してきた張本人たちが悪乗りをする。そのあげく経済改革がとんざしたら、今度こそ世界は日本を見捨てるに違いありません。これはニューズウイークの編集後記に書かれている文言でございます。
中塚委員 大きくてつぶせないという、別に銀行というのは金融当局がつぶすものじゃありませんよね。そんなの、大臣がおっしゃったとかおっしゃらないということではなくて、逆にそれはおっしゃったら大変なことですけれども、つぶすものではありませんよね。ただ、つぶれることは幾ら大きかったってあるのは、それは一般論としては当たり前の話で、銀行だけじゃなくて、どんな会社だってそうですよね。
 私は、そのことは、真意を伝えるという意味ではおっしゃるのは構わないんだけれども、やはり言っていること自体は、それは間違っているわけではありませんよね。大臣自身も、言ったことが間違っているとはお考えにはなっていらっしゃらないというふうに思います。
 例えば、銀行でなくたって、やはりダイエーなんかでも、大きいところはつぶれない、そういうふうな声がちまたじゃあふれておるわけですね。だから、そういう意味で、竹中発言に対して好感を持っている人だって世の中にはいっぱいいるんだろうというふうに私は思います。だから、そういう意味で、ぜひとも、いろいろなことを言われて大変なんでしょうけれども、そこのところもぜひ初志貫徹をしていただきたいというか、ただ逆に、今もう大手銀行の人なんかとお話をされているようだし、中間発表というのが見送りになったようですけれども、中間発表じゃないとおっしゃるかもしれないけれども、でも、一回立ちどまってしまうと、なかなかもう先には進みにくいんだろうなというふうにも思いますので、本当に心より心配をしております。
 続いて、柳澤前大臣ですが、ずっと金融危機ではないというふうにおっしゃっていて、検査を厳格化しても金融危機にはならない、追加の引き当ても必要ないし、追加の引き当てをしても資本注入の必要はないというふうにずっとおっしゃっていたわけですね。
 ただ一つだけ、柳澤前大臣がおっしゃっていたことで、三月末の期末の株価が一万円あってほしいということをおっしゃっていたですね、経済危機ということとの関連で。経済危機との関連で、期末は株価が一万円あってほしいということをおっしゃっていたんですが、一万円あれば大丈夫だというラフな見通しを持っているという答弁をされていたんですが、そのことは、行政の継続性というか、恐らく変わっていないと思うのですけれども、大臣自身はいかがですか。
竹中国務大臣 あってほしい株価、株価は高くあってほしいとは思いますが、これは銀行のバランスシート等々の観点からポートフォリオも変わってくるわけでありますし、私自身、今の時点でこの水準であってほしいというように思っている特定の水準はあるわけではございません。
中塚委員 それで、一万円あれば大丈夫だというふうに前の大臣がおっしゃっていて、今は現実問題として一万円ないわけですが、ただ期末でもありません。
 そういう中で、より査定を厳格化するということ、また税効果会計のルールまで変えようというふうな話をされるということ、その真意というのは、不良債権問題の終結ということがタイトルにもうたってあるわけですから、要はここで全部けりをつけてしまおうということでしょうが、株価は確かに下がっていますけれども、資産の中身をより厳格に査定しようという話は、これはやはり今の銀行の資産内容というのはインチキだというふうに、ことしの二月、三月も考えていたし、今もそう考えているということなんですか。
竹中国務大臣 委員はインチキという言葉を使われましたけれども、基本的には、自己査定と金融庁の資産査定がある場合はそれをやはり埋めていただきたいというふうに思いますし、資産の内容について、より厳格に、厳しく、マーケットからの見方に近づけるために努力する余地はあるというふうに思います。
中塚委員 努力する余地があるというのは、自己査定と検査はやはり違うというふうにお考えになっているわけですか。
竹中国務大臣 これは日銀も形を変えてそういうアナウンスメントがあるように聞いておりますけれども、これは、例えば中塚委員と私が同じ資産を査定したら、当然それは違ってきて当たり前なんだと思うのですね。その意味では、資産の評価というのは違ってくる、個々の評価によって当然のことながら違ってくるわけです。
 しかし、それを専門家も交えて自己査定を、金融庁の検査と違う場合はやはりそれを、ギャップを埋めていただく、これはやはりしなければいけない、それが金融当局の仕事であろうかというふうに思います。
中塚委員 大臣、こういうことじゃないんですか。
 そのお話の前に、大臣と私が査定して違うということは、それはやはりおかしいですよ。やはりそれは同じにならなきゃ。それは、行政の立場でやるとしたら一緒にならなきゃおかしいはずなんで、大臣と私がやって違うなんていうことは、それは本当にそんなことがあれば本当に金融システム不安みたいなことが起こってしまうんでしょうから。
 そうじゃなくて、要は、当局は今までちゃんと検査というものをしてきたということを前提にするならば、マーケットにはマーケットの違う見方があるということなんじゃないんですか。
竹中国務大臣 ちょっと誤解のないように申し上げておきますけれども、マーケットの見方というのも全然違うわけですね。だから、このラインより高く売りたい、安く買いたい、それぞれに物すごくいるわけです。
 私が申し上げたのは、一般論として、一つの物に対するプライシング、つまり、プライシングというのはどれだけの価値を見出しているかということでありますから、これは当然千差万別になる。したがって、組織と組織でいろいろ評価を突き合わせても、これは違ってくることは理屈の上ではあり得るということを申し上げているわけでございます。
 その意味ではマーケット、マーケットにもいろいろな評価がありますから、その平均値的なものと、それと我が金融庁の査定と自己査定というのがもしあったとした場合、私は、その金融庁の検査というのは、かなりこれは厳しく行って、きちっとしたものになってきているというふうに認識をしている、そのように申し上げているわけであります。
中塚委員 プライシングというのは、それは、マーケットの中で民間の方がどういうふうに値段を決めるかというのは、それは確かにプライシングに差が出たり、違いが出たりすることはあり得ると思いますよ。でも、そのプライシングという問題と行政が検査をするということは、それは別の問題じゃないですか。
 だって、行政のプライシングということで検査をして、自己査定と行政の検査の結果が余りにも違っているということは、それはおかしいんじゃないですか。だって、ちゃんと監督当局として検査をした上で銀行の財務内容というのを決めていくわけでしょう。また、それによって自己資本比率だって決まっていくことになるわけですよね。違いますか。
竹中国務大臣 いや、これはそのプライシングというのをどのような幅で見ているかということになってしまうのではないのでしょうか。
 これは、例えば個別の債権について、これは将来どのぐらい返ってくる価値があるのかということを見るわけでありますから、ここはいろいろなやり方を組み合わせるにしても、非常に微妙な、今後の例えば不動産の価値の上昇率をどのように見ていくかということとか、これも評価の仕方ですけれども、売り上げとかをどう見るだろうか、金利をどう見るだろうかということになるわけでございますから、これは、資産の査定というのはそんなに画一的に単純にできるものではないというふうに私は認識をしております。
 その中で、銀行は銀行で自己査定にさまざまな観点から努力し、金融庁は金融庁でさまざまな観点から厳しく見るように努力しているということを、そういう意味でプライシングという言葉を使わせていただいたわけでありまして、これは繰り返し言いますが、私が申し上げたいのは、金融庁の検査そのものは、特別検査の導入等々を踏まえつつ、かなり厳格なものになってきているという認識を持っているという点でございます。
中塚委員 プライシングということが、要は、今そのプライシングの方法も大臣は変えようというふうにされているわけですよね。厳格にしようというふうにお考えになっているわけで、それはそれで一つの考え方なのかもしれませんけれども、ただ、変えなきゃいけないということと、今まで行政が検査をしていたことが、それがおかしかったということとは、また違うと思うんですね。おかしいべきではない、ちゃんとやらなきゃいけないという話で、そういう意味で、行政がプライシングをするときに、見方によってこういうふうに値段が変わるようなことはおかしいんじゃないかというふうに私は考えているんです。
 それで次に、その査定等の結果、税効果会計なんかもルールを変えるということも、その結果として資本注入ということが今言われているし、その資本注入というのを考えるときに、日本銀行の速水総裁もきょうお越しいただいていますが、過去二回資本注入を行っておりまして、その資本注入をしたけれども不良債権の処理ができたというわけではないし、金融システムが安定したというわけでもないし、だからこそ今また資本注入という話が出てきているわけなんです。
 では、どうして、過去こういうふうに資本注入をしたけれども、今また資本注入を議論に、話題にしなきゃいけなくなっているのか。要は、過去の資本注入というのが失敗だったということだと思うんですが、何で失敗したというふうに竹中大臣はお考えになっていますか。
竹中国務大臣 早期健全化法に基づいて、御承知のように、三十四行に対して約十兆円資本増強をした。これはこれで、失敗という言葉を使われましたけれども、金融システムに対する内外の信頼を回復するための緊急措置として、例えば当時ジャパン・プレミアムも解消したわけですし、やはりそれは当時の現状から考えて、それなりに効果は上がったのだというふうに思っております。
 しかし、その後、現実問題として日本の金融システムはまだ病んでいる、幾つか改善すべき問題があるということは事実でございますから、それを議論する際に、私はかねて申し上げているように、もう一度資産査定のあり方、自己資本のあり方、ガバナンスのあり方を総体的に見直す必要があるだろうという問題意識で今取り組んでいるわけでございます。
 そういう今申し上げた三つの観点を踏まえて、総合的に、まさに持続可能な金融システムをつくるための方策をぜひ打ち出したいと思っております。
中塚委員 ということは、資産査定のあり方とおっしゃったということは、あのときは資産査定が甘かったということですね。ガバナンスということをおっしゃったけれども、それは、要は金融機関の経営者のガバナンスということに問題があった、そういうふうな御認識なわけですね。
 では、同じ質問を日本銀行の速水総裁に。
速水参考人 最近の不良債権の中身を見ますと、かつてのバブルの負の遺産というものだけでなくて、産業構造や企業経営の転換、調整圧力、そういったものを背景にして、かなり新規に不良債権が発生してきているんですね。こういう性格が、あの時点ではそんなにはっきり出ていなかったはずだと思います。
 それからもう一つは、これまで金融機関というのは、公的資本注入を受けながら巨額の不良債権処理を実施してきたわけですね、九十兆円といったような。こうした不良債権の新規発生といったようなものが、問題の根本的な解決にはプラスになっていないということではないかと思います。
 また、株価の下落もあって、金融機関の経営体力も改善を見ていない、株価が世界的な影響で下がってくる。しかも、かつての簿価で決算をするのが時価に変わってきたといったようなこともあります。そういうことで金融機関の体力が低下してきているのだというふうに思います。
 御指摘の問題は、基本的な背景は、今申し上げたようなことではなかろうかと思っております。
中塚委員 総裁は、新規の不良債権の発生ということをおっしゃった、また株価の下落ということもおっしゃったわけですが、ということになれば、あのときの資本注入というのはバブルのころの後始末として一定の役割を果たしたけれども、ただ、要は、その後新規の不良債権が発生をした、それでまた株価も下落をしておるということで、今また必要かどうかということはこれからまた議論をしていかなきゃいかぬと思いますけれども、資本注入というふうなことが言われている。というか、お二人はもう資本注入をするという前提のお話のように私は受け取りましたが。
 ということは、やはり新規の不良債権の発生というのは、これは何といっても、株価の下落にしても同じですけれども、やはり景気の悪化ということが一番大きな要因じゃないかというふうに思いますが、そこは速水総裁、いかがですか。
速水参考人 今申し上げなかったかもしれませんけれども、やはりおっしゃるように、デフレで国内の需要が伸びなかったということは大きいと思います。不安定な需給が続いたということは言えると思いますし、そういう情勢の中で、金融機関が、自己資本が低下していくことを恐れると同時に、新しい、あるいは前向きの借り手を見つけていくというようなことができない情勢であった。借り手サイド、ボロアーのサイドにもやはり再生の必要性があるというふうに思います。
 先ほど財務大臣が産業再生の委員会をつくるとおっしゃいましたけれども、こういったことも今必要なことではないかと私も思います。
中塚委員 資本注入というのが、例えば危機的な状況になったから資本注入をするとか、あるいは不良債権を最終的に処理するということのために資本注入をするということなのか、それはどういうふうな形で資本注入になるのかは別にしても、やはり過去の経験から照らしても、たとえ資本注入をしたとしても、なかなかそのことだけでこの不良債権問題が終結するということは思えないわけですね。資本注入ということだけでは不良債権問題はなかなか片づかぬなと。
 そういうところで、やはり資産デフレに歯どめをかけるとか、あと金融機関の収益性を改善するということとか、産業構造転換の支援とか、それをひっくるめた上でのやはり景気の下支えということもやっていかなきゃいけないということなんですが、最後に一つだけ、簡単で結構ですので、産業再生でなくて、産業構造の転換ということについて、竹中大臣の御所見を伺って終わります。
竹中国務大臣 産業構造が、より生産性が高く、収益率の高い方向に資本や労働が向いていく、そのアロケーションが変わるということがまさに産業構造の転換でありますから、そういうものを阻害している要因をとにかく取り除くという意味での規制の改革、これは大変重要であろうというふうに思います。
 実は、不良債権の処理というのは、非効率なところに塩漬けになっている可能性がある資金を、より高いところに回すという意味でまさに産業構造の転換を促進する中心的な役割を担うわけでありまして、これまた先ほどから申し上げておりますような、いわゆる四本柱の改革をやはり同時にバランスよく進めていくことが、結果的に産業構造の転換を促して、我々が持っている経済社会の活力を最大限に発揮させるということにつながっていくのだと思っております。
中塚委員 終わります。
小坂委員長 次に、吉井英勝君。
吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。
 私は最初に、いわゆる貸しはがしの問題から質問したいというふうに思います。資本注入を受けた大手銀行の中小企業向け貸し出し増加計画と増加実績というのを金融庁の方から資料もいただきまして、これを見ました。
 ことし三月の増加計画に対する増加実績というので見ますと、みずほと住友信託以外は全部目標未達成、それどころか非常に大きなマイナスというところがあるということがわかりますが、つまり、貸しはがしを随分やってきたということですね。
 実は、昨年九月の中間期の実績というのも持ってきてもらいました。大臣ももちろんそういう資料はもう目を通してこられたと思いますが、それで見ると、昨年三月に対することし三月の増加計画、それから来年三月の増加計画というのもあるんですが、この増加計画は半期ごとにどれぐらい実現されていっているかということも見ることができるわけです。
 それで、昨年九月の半期の実績というのを見てみますと、実は、目標を達成したみずほは昨年の九月でも目標に近づいていたんですが、住友信託は六十億の増加計画に対して百億マイナス、だから貸しはがしをやっておったわけですね。しかし、それがことし三月には三百八億円の実現ですから、増加計画は達成したわけですね。そういうふうに、半期の成績ながら、ちゃんと進んでいるのかどうかというのをこれはきちんと見ていくことが大事だと思うんです。
 それでいきますと、UFJは、昨年の九月の増加実績で見たときに一兆四千五百四十七億円実は貸しはがしをやっておったわけですね。だから、五百億円の増加計画に対して増加計画どころか物すごいマイナスなんですから、その時点できちんと、業務改善命令を出すとまではいかなくても、きちんとやりなさいということであれば、ことしの二兆五千二百四十七億円ものマイナスという貸しはがしということにはなっていなかったと思うんですね。
 あさひも同様に、昨年九月で千七百六十一億円も貸しはがしをやっておったわけですから、そのときに手を打っておれば、ことしの三月の一兆四千三百五十四億円もの貸しはがし、つまり、昨年の九月期よりも十倍近い貸しはがしをやっている。UFJは、もともと額が大きいのは、二倍ほどやっているんですけれども。そういうふうなことにはならないようにさせることはできたと思うんですね。
 それぞれの銀行ごとの資料もいただきましたが、これは私がここで数字を挙げて言わなくても大臣の方がよく御存じのところだと思います。
 そこで、竹中大臣に伺っておきたいんですが、昨年九月の中間期の実績をもとに、目標達成への努力を求めて貸しはがしをやめよと指示をしてきたのか。あるいは、大臣のお立場から、もちろん前任者からの引き継ぎということはありますが、指示したんだけれどもUFJの方が言うことを聞かなくて二兆五千二百億円も貸しはがしをやったのか。あるいは、あさひについても一兆四千三百億円もの貸しはがしがされたのか。つまり、指示したのか、指示したんだけれども言うことを聞かずに貸しはがしをやったのか。ここのところは一体どういうふうになっているのかということを、大臣もきちっと見ておられると思いますから、貸しはがしのこの問題について最初に伺いたいと思うんです。
竹中国務大臣 委員御指摘の公的資本増強行について、特に中小企業に対する貸し付けを見ていくというのは、とりわけ貸し渋り、貸しはがしの問題が指摘されている中で、これはやはり重要なことであろうというふうに思っております。
 これまでに、御指摘のように十四年七月に十四年三月期の履行状況の報告を受け、公表しておりますけれども、中小企業向け貸し出しについては、大手行ではみずほと住友信託を除く全行が減少になっているわけでございます。
 理由については、業況悪化に伴う資金需要の低迷に加えて、大企業グループに属する中小企業がグループ全体の財務リストラに伴って資金返済を積極的に進めたというようなのが、一般的な報告としては受けております。
 お尋ねの、経営健全化計画の中小企業向け貸し出しの増加計画をこれは半期でどのようにチェックしているのか、できるのかという御指摘だと思いますが、この計画は三月末のベースで策定しているということから、実は業務改善命令といった行政処分は三月末の残高実績を見た上で判断するものであると。十三年上半期の中小企業向け貸出実績に基づく業務改善命令の発動は、したがって検討はされなかったというのが実情でございます。
 けさも御紹介しましたが、そのモニタリングを貸し渋り貸しはがしのホットライン等々で始めておりますので、これは一つのルールに基づいて、今業務改善命令は年度ベースで行われているわけでございますけれども、モニタリングを多様化させる等々で、中小企業に対する金融が滞ることのないように多様な広がりのあるチェックをしていくことが大変重要であるというふうに思っております。
吉井委員 年度を通じてということは、もちろんわかった上での話なんですけれども。
 ただ、半期で見て明らかに貸しはがしが極端に進んでいた、これはUFJにしてもあさひにしても見られるわけですし、三井住友にしても非常に大きな貸しはがしがあったわけですね。ですから、その時点で、業務改善命令とまではいかなくても、どういうふうなことをきちんと指示していくかということはやはり大事なところで、しかし、今の御答弁では、やっていなかったということはわかりました。
 なお、今相談ホットラインというお話をされましたけれども、それじゃちょっと、途中になりますが、この相談ホットライン、伺いますけれども、これはあれですか、相談ホットラインで貸しはがしなら貸しはがしについての相談を受けたら、個別の問題について解決のためにこのホットラインは動いてくれるんですか。
竹中国務大臣 これは、聞きっ放しではホットラインを設けた意味がないわけでありますので、その情報を集約しながら、金融庁としてできるべき対応策を当然検討していくということになろうかと思います。
 究極的には、こうしたホットラインからの情報も銀行検査の中に生かしていくということはこれはしっかりやるつもりでございまして、先週末に始まったばかりでございますけれども、これを実効あるものにするための工夫を実務の中でぜひしていきたいというふうに思っております。
 先ほど、済みません、委員がお尋ねの、上半期の状況がわかった段階で何もアクションをとらなかったのかということに関しましては、銀行法二十四条に基づきまして、上半期の中小企業向け貸出実績が前年期比で減少した理由、十三年下半期の中小企業向け貸し出し評価に向けた対応策等々について報告を求めているということ。
 それで、減少した理由につきましては、先ほど言いましたような、資金需要の低迷や大手企業のグループに属する中小企業グループ全体の財務リストラに伴う積極的な資金返済というような報告を受けているということでございます。
吉井委員 まず、相談ホットラインの方は、検査に生かすということだけで、ホットラインに電話する人は個々に自分が困っているから相談で電話しているんですが、これはさっぱり解決されないものだということがよくわかりました。
 前段の方ですが、報告を受けたということですが、それにしても、報告を受けた時点で、目標が例えばUFJで五百億増加するという計画が、一兆四千五百四十七億円貸しはがしをやられているんですね。その報告を受けてそのままで、それをきちんとさせるということをしていないから、およそ二倍近い二兆五千二百四十七億円に貸しはがしが膨らんでしまった。
 私は、こういう点では、金融当局の貸しはがし問題に対する取り組みが極めて甘かった、きちんと貸しはがしに対応していないということがここに見られるというふうにまず指摘しておきたいと思います。
 計画未達成どころか貸しはがしを行った違反銀行に、早期健全化法七条一項三号の基準違反として、せんだって業務改善命令が出されました。しかし、日経の八月二十二日付を見て驚いたんですが、「銀行に融資増加計画の提出を求める金融庁。これに対し、複数の銀行が「達成できない計画を出すと現場が混乱する。業務改善命令を受けるからマイナス計画を組ませてほしい」と訴え、金融庁をあわてさせた。」とありました。不良債権処理に苦しむ銀行は「「不良化するような融資はもうできない」と開き直り始めた。」ともありました。銀行はなめたことを言っているわけですが、しかし、これまで半期の状況を見ても改善させなかった、ここはやはり大きい問題だと思うんです。
 では大臣、重ねて伺っておきますが、今後、これからの取り組みとして、ことし三月期の貸しはがし分を取り戻して、さらに来年三月期増加計画を達成させるように金融担当大臣としては取り組んでいかれるのかどうか、これを伺いたいと思います。
竹中国務大臣 これは、ルールにのっとって計画を達成してもらうというのがやはり政策上も大変重要なことでありますので、今後、こういう大幅な未達成が生じないように厳しく指導に徹していくことが必要であると思います。
吉井委員 次に、中小企業向け貸付金利の引き上げ問題について伺いたいと思うんです。
 ある大手行の十月五日に出された〇二年度下期経営方針会議での頭取の発言というのを私、読みました。その中では、リスクに見合ったリターンを追求し、貸出金利の引き上げを図っている、これは必要なことだ、従来に比べコストアップになるが、それはお客様が本来支払うべき必要コストなんだ、貸出金利の引き上げが最重要課題でありましたが、計画を達成し、相応の成果を上げることができましたと。
 だから、今大手都銀は中小企業に対する貸出金利の引き上げ、随分熱心に、これはもう方針として取り組んでいるんですが、それぞれの銀行が内部通達で問答集というのを出しております。
 例えばみずほの場合、お客さんから、引き上げ金利で納得しないときはどうしたらいいかという場合には、今回お示しした金利は適正な水準だ、御社に御理解いただけるよう努力してまいりますというふうに答えなさい、これがあります。それから、当社と取引したくないということかと聞かれたら、あくまでお取引させていただくに当たり、弊社が適正と考える御融資利率の適用をお願いするものですと答えなさいと。
 これはみずほのマニュアルですが、UFJが六月に作成した格付開示マニュアル、すなわち貸付金利引き上げマニュアルと言われる問答集を見ますと、中小企業も大企業も同じ基準で格付決定されているのかと聞かれたら、最終的には金利設定は相対交渉で決まるものですが、どのような企業でも金融機関としてはリスクに応じたコストがかかっていることを御理解いただきたく存じますと答えなさいと。
 それから、我が社は長いこと取引させていただいている、そして貴行からの要請事項にもこたえてきた、貸出金利の決定において、こうした過去の取引経緯は評価されないのか、これを聞かれたら、過去の取引経緯をないがしろにするつもりはございません、過去の取引経緯も踏まえ、今後とも末永いお取引をいただくために当行の内部基準を開示し、お客様と対等で透明な交渉をさせていただいておりますと答えなさいと。答えながら、要するに金利引き上げを押しつけろというわけです。
 それから、金利引き上げは当社の業績にダイレクトにはね返ってくるじゃないか、負担余力があると思っているのか、金利引き上げの結果、業績が悪化し、格下げ、金利引き上げの悪循環に陥ると思わないのか、当社の利益を貴行につけかえするだけのことだ、お客様とともに成長するという貴行の経営ビジョンは全くうそではないかと聞かれたら、信用コストに応じた適正な金利を提示させていただくことにより、貴社との末永い取引を図っていきたいと考えておりますと答えなさいと。
 それから、我々の税金まで投入されている銀行が、小さいながらも自力で頑張っている我が社を格付し、その財務内容についてとやかく言ってくるのはおかしいではないかと言われたら、格付を開示させていただくことにより、銀行による企業信用の見方、そしてこれに対応する形で設定されている適用金利の考え方についてお客様に理解を深めていただくためのものです、こう答えなさいというわけです。
 三井住友銀行のマニュアルでは、しょせんは金利を引き上げる口実にすぎないのではないかと言われたら、金利引き上げが主たる目的ではなく、金融本来の使命である資金の円滑供給をするためのものと考えていただきたいと回答しなさいと。
 だから、全部の大手の銀行が今、中小企業に対して金利引き上げに応じろと。これを本当にああ言えばこう言う式で屈服させて、高金利を押しつけるというマニュアルなんですが、言葉は非常に丁寧です。しかし、高圧的に押しつけるんですね。言質をとられないようにしなさいというのが内部の指導なんですが、それは昨年七月の公取の優越的地位の利用は独禁法上の問題を生じやすいという、この指摘を受けてのことなんです。だから、表現は丁寧な問答集ですよ。しかし、本当にえげつないやり方でやられているんですが、そこで竹中大臣、伺いますが、このようなマニュアルで大手銀行が中小企業に高金利の押しつけを行っている、この実態というものを把握しておられるのかどうか、これを伺いたいと思います。
竹中国務大臣 今伺って、営業用のマニュアル、問答集とおっしゃいましたが、これは恐らくいろいろなものが現場では存在しているのだろうなというふうに思います。
 本質的に重要なのは、これは基本的には金融の問題でありますから、リスクとリターンが見合ったような形で、対になっていることによって、そうすることによって、むしろきちっと持続的に金融が保障されていくという面は、これはやはり確かにあるのだと思います。リスクに見合って十分なリターンのないようなところに資本を投下しても、これはやはり長続きしませんですから、それは中長期的にはそういったリスクに見合ったリターンが実現していくということは必要だろうと私も思います。
 しかしながら、今まさに委員が御指摘になったように、それが非常に安易な形で、これはやはり借り手と貸し手は違いますから、優越的な立場を利用して弱者に対して不当な圧力がかかるようなことになってはこれはいけないわけでありますから、この点の問題点というのは正確に我々も認識をして、しかるべく対応を必要によってやっていかなきゃいけないのだというふうに思います。先ほど申し上げたホットラインなんかも、その中の一つの活用にはなってくると思っております。
 もう一つは、今不良債権処理に関していろいろ御議論をいただいておりますが、当面はこれは主要行を対象にするわけですが、やはり、その主要行に象徴されるような非常に厳しい市場メカニズムの中で生きていくべき分野と、いわゆるリレーションシップバンキングというか、間柄の中で生きている地域のいわゆる中小企業に、そういった分野もやはり経済の中にはあるわけでございますから、この分野についてどのようにするかということに関しても、まずこの主要行の問題について枠組みをつくった上で新しいきちっとした考え方を示していかなければいけないというふうに思っております。
吉井委員 十月号の、第一生命経済研究所のレポートに、「銀行の貸出金利の引き上げを問う」というのが出ておりますが、優良大企業の方は、もともとプライムレートを下回る金利なんですね。これの引き上げを求めたら、他行に乗りかえられてしまうか社債発行など、別な調達に走るわけですね。銀行から信用懸念のある企業にはもともと引き上げ要求は無理だからないんです。結局、健全な中小、中堅企業に貸出金利引き上げが集中しているんですね。そうすると、不採算貸し出しのコストを転嫁させられているということになるわけです。これでは優良企業も体力を弱めることになりかねないし、健全企業が体力を弱めるということになったら、これは本当に日本経済にとって深刻な問題だと思うんです。
 そこで、改めて大臣、大手銀行の貸出金利の引き上げの押しつけは、これは仕方のないということで見るんじゃなくて、やはり大臣としても、そういう今の日本経済の中でこういうやり方は改めなさいということはやはりきちっと言うべきだと思いますが、端的に、これは一言だけ大臣の答弁を聞いておきたいと思います。
竹中国務大臣 繰り返し申し上げますけれども、リスクとリターンに見合ったような体系を中長期的にはつくりながら、しかし、弱い立場の借り手が不当に優越的地位が乱用されるようなことのないようにしっかりと行政をしていかなければいけないというふうに思います。
吉井委員 私は先日、銀行関係者の方とも懇談したんですけれども、不良債権処理を進めるためには原資が要る、そのため金融庁は各行に収益性強化を強く指示してきているんだが、この貸出金利引き上げもその一つだと。小泉内閣の不良債権処理加速の方針のもとで、他の銀行がやっているのにうちだけやらないわけにいかないということを言っているんですよ。これはみずほの場合ですが。
 UFJの人と話したら、今、中小企業への貸し付けは即不良債権だ、それに事実上近くなると。だから、不良債権処理加速と言われたら貸し渋りに走るのは仕方がない、貸しはがしも当然だ、処理原資には金利引き上げで収益を上げるのも当然になってくるというふうに言っていますよ。
 それぐらい今、貸しはがし、そして金利引き上げという問題が、日本経済にとって、中小企業にとって、地域経済にとって深刻な問題になってきているんですが、そういう中での竹中大臣の今進めていこうとしておられる加速策ですが、二十五日の日本総研の「税効果会計による繰延税金資産の自己資本計上について」というレポートの中で、「竹中案のもたらすわが国金融・経済への影響」、竹中案を仮に実行した場合には、銀行の自己資本比率の急激な低下が確実視されるため、個々の銀行サイドでは、リスクアセットの急激な圧縮や、貸出金利の大幅な引き上げによる収益強化によって対応せざるを得なくなる。この場合、九七、八年に発生した急激な信用収縮が引き起こされ、ひいては企業倒産、失業の増大など、社会的に発生するコストは甚大なものになるおそれがあるということを指摘しています。
 そして、この資産圧縮で九十三兆二千億円もの圧縮が必要になるという試算も出し、デフレ圧力が強まり、三百三十二万人の失業増加、さらにGDPを六・四%押し下げる圧力となると試算されているという、これは日本総研の試算ですが、仮に、実施時期を一年後ないしは二年後に延ばしても、その間は、同様な動きが強まることは必定であり、基準見直しは日本経済を金融恐慌に突入させるリスクをはらんだ危険な政策と言えようという指摘をしております。
 既に、大臣と十二行の首脳が会った中での銀行側の話というのがマスコミ等で紹介されておりますが、みずほが三十兆円圧縮しなければならなくなるとか、三井住友がクレジットクランチに陥るとか、三菱東京の人が貸し渋りが出ると発言したり、それから、東京新聞が二十五日付で伝えておりますが、複数のトップが、ルール変更で自己資本比率が下がれば貸し渋りや貸しはがしをすると主張しているということがそれぞれ紹介されております。
 どういうやりとりがあったかは、会議録が公表されているとか、そういうものじゃありませんが、竹中案で加速させれば、貸しはがしあるいは金利引き上げ圧力はさらにひどくなると思われます。銀行関係者はそのことを言っているわけですが。
 この一年間の不良債権処理の中で、進めてきた中でも、十兆円処理して不良債権二十兆円新たに発生して、事実上十兆円ふえたということもありますが、問題は、その間に貸しはがしがどんなにやられてきたか、それから金利引き上げがどんなに今やられているかということを、私は、きょうはそのことを取り上げてまいりました。
 これまで、それはやられてきたんです。さらに九十三兆二千億ものリスクアセットの圧縮が必要ということになってくると、銀行関係者は、もっと貸し渋り、貸しはがし、金利引き上げということにならざるを得ないということ、処理原資としてはそれが必要なんだということを、それがないとやっていけないということまで言っているわけですが、やはり、竹中加速案は撤回をしていく。
 不良債権については、もともとこれはなくさなきゃいけないものなんですが、しかし、こういうやり方でやっていったときには、これは本当にデフレスパイラル、危機的状況を生みかねないということで、経済を冒険にゆだねることはできないと思います。
 私は、最後に、竹中大臣の方に、この竹中加速案はやはり撤回をして、きちんとしたことをじっくり考えて、何をどうするかはお考えになるべきじゃないかというふうに思いますが、このことを質問して、何か時間が来たようですから、塩川大臣への質問、予定しておったのをできなくなって大変申しわけないし、それから、日銀総裁にはこの間のこの問題に関連して読売の会見のことだけ、ちょうど今の話なんですね、お聞きしておりました。だから、具体的にしゃべりますと時間とっちゃうので、その会見の内容、それについて総裁の方から、お話しになったことについて、つまり「銀行に貸し出しを増やしてもらわなければいけない時に(急激なルール変更では)逆の動きになる可能性がある。銀行が貸し出しを減らして信用が収縮し、クレジット・クランチが起きては困る」というこの御発言の真意はどこにあるのかというこの点を総裁にお聞きして、質問を終わるようにしたいと思います。
 大臣と総裁の方の答弁、お願いします。
竹中国務大臣 まず、竹中案云々でございますが、そういうものは存在はいたしませんので、その上で、御指摘のように、貸し渋り等々が起こらないようなよいシステムをつくっていくということをぜひ申し上げたいと思います。
 ただ、今御指摘になったのは、やはり非常に、一般にはどちらかというとゆがんだ議論が行われているようなことを私自身も懸念をいたします。これまで貸し渋りをやっていないと言ってきた銀行が、そんなことやったら貸し渋りがひどくなるぞという議論を行っていて、かつ、大変なことになる、大変になるというような数字を銀行の子会社であるシンクタンクがもっともらしく出している。そういうような、私はやはり議論一つ一つはきちっと検証をしなければいけないというふうに思います。
 いずれにしましても、本当に一生懸命やっているよい中小企業にお金がきちっと回るようにするということが、この金融システム改革の目指すところでありますので、そういう混乱が生じないようにきちっと対応したいと思っております。
小坂委員長 速水日本銀行総裁、手短にお願いをいたします。
速水参考人 十月二十六日の読売新聞とのインタビューのことをお聞きのことと思いますけれども、あそこでいろいろなことを申しましたけれども、恐らくお聞きになりたいのは、繰り延べ税金資産についてはこれまでもいろいろ問題提起されてきたところであって、これはかねて申し上げているように、計上が多額に及ぶ場合にはその前提として対応する十分な収益力が必要であるし、この制度はやはり制度自体が甘いといって海外から批判されていることでもあるし、いずれは直していかなきゃいけないものだということを言いました。しかし、それはいつやるかということはなかなか難しい問題だということで、そこは何も答えておりません。
吉井委員 時間が参りましたので終わります。
小坂委員長 次に、植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。
 きょうは大きく二点。一つは、ありていに言えば、不良債権処理を今急ぐということについてのその妥当性、この点について。もう一点は、実際に出てくるわけですから、不良債権処理策のいわば枠組みにかかわって、竹中大臣を中心に塩川大臣、また速水総裁にも関連してお伺いしたいというふうに思っておりますが、ただ、とりわけ質問として予定しています二点目にかかわって、時間の関係でそこまでお伺いできるかどうかわかりませんので、いずれ、どっちにしてもそれぞれデフレ対策なりアクションプログラムなりが出てきたところで改めてそのテキストをもって議論させていただく、また御教示いただく機会があろうかと思いますので、きょうは質問は用意いたしましたけれども、そこまで及ばない場合があるかもしれないと思います。
 大きな一点目で、まず竹中大臣にお伺いしたいわけですけれども、この間、小泉首相がそれこそいつもいつも、構造改革なくして景気回復なしと。それは私ももう何遍聞いたかわかりませんけれども、結果、現実問題としては、株価の指数にしても不良債権の残高にしても失業率にしても、どの指標をとっても景気回復の兆しというものの数値が見られないということは事実であろうというふうに思います。このことは否定できないだろうと思います。むしろ、どんどん加速しているデフレが景気回復の足を引っ張っているということはこれまた明らかではないだろうかというふうに思うわけです。
 一番初歩的なことで竹中大臣、お伺いしたいわけですけれども、一般論として、不良債権の処理というのは早目にやった方がいいに決まっているわけですけれども、デフレの解消なくして不良債権の迅速な処理というものはそもそも困難だろうと私は思っておるわけです。
 その意味で、この間、さまざまな各種の論調を見ましても、要するに、不良債権の処理を早く、可及的速やかにやらなければならない、だからどういうスキームをつくるんだというような議論が、例えば各種の社説なんか見ても、それを前提にしてそれぞれ主張なさっておられるようですけれども、私は、ちょっと個人的に、その常識と常識的に言われているそこをちょっと疑問符をつけながらお伺いをしたいということでございます。
 まず、入り口で、デフレの解消がない限り不良債権の処理というものは困難でしょうということについて、竹中大臣の御所見を聞くところから始めさせていただきたいと思います。
竹中国務大臣 植田委員の御指摘は、この政策問題を考える出発点として極めて重要であるというふうに思います。
 植田委員の御指摘は、不良債権が償却しても償却しても次から次へ出てくるのはデフレがあるからである、このデフレをとめなければいけないという御認識に立っているわけでありますが、もう一つ、やはりぜひ重要だと思いますのは、じゃ、デフレの要因は何なのか、私はやはりそこに行き着くのだと思います。
 デフレ、物価下落の要因は、これは一つではありません。需給ギャップの要因も、需要不足の要因もあるし、供給側の要因もある。しかし、これは物価の問題である以上やはり金融的な要因であって、日銀がどんなに頑張ってもマネーサプライがふえないというような、やはり金融仲介機能の傷みの問題がそこには厳然として存在している。
 したがって、不良債権問題はデフレによって深刻化している可能性はあるわけですけれども、デフレは不良債権によって実は深刻化しているわけで、その悪循環を断ち切るためには、つまり、このままほっておくとデフレと不良債権の増加という悪循環が続いて、ますます体力が毀損されていくのではないだろうか。その悪循環を断ち切るために、まさに植田委員もおっしゃった原点に戻って、不良債権の処理をやはり早く進めるということがどうしても必要になっているのであるというふうに認識をしております。
 そうした視点に立って、総理からも御指示をいただいているわけで、ここはやはり日本経済の正念場、しっかりと見据えてやっていく必要があると考えております。
植田委員 ということであれば、要するに、不良債権があるから資金を供給できないのかということなんでしょうか。
竹中国務大臣 まず、不良債権とは何か。銀行から見ると、非稼働な、稼働をなかなかしない貸付資産であるわけですけれども、その裏には、過剰な債務を抱えて収益力が十分でないという企業が存在しているわけで、つまり、そういうふうにバランスシートに非常に硬直的なものを抱えている段階で、企業として新たにリスクをとって前向きの投資ができないような状況に日本の経済はこの十年間置かれてきたということなのだと思っております。
 日本が持っている資本力、労働力、それで技術力を組み合わせれば、これは多くの専門家も議論しているように、平均して二%とか二・五%の成長ができるはずなのに、ゼロとか一、場合によってはマイナスというような状況が続いてきた。つまり、経済というのはよくなったり悪くなったりいたしますが、十年間も本来の力を発揮できないでいるというのは、やはりそこに根本的に治癒を要する問題があるということを意味しているのだと思います。
 これは我々の認識としましては、やはり日本経済がこの不良債権問題によって健全にリスクをとって前向きにその潜在力を発揮することがこの十年間できない状況に置かれてきた、そこをやはりブレークスルーしたいというのがこの今の改革であり、不良債権処理の加速を含む全体的な構造改革の目指しているところでございます。
植田委員 お話は非常によくわかるんですが、今もう一遍伺いたかったのは、銀行の資金供給能力が不良債権を抱えているがために落ちているんですか、そのことが本当に実証できるんでしょうかということに尽きているわけです。今のところ、ちょっと背景の話も含めてあったかと思うんですけれども、銀行、金融機関が不良債権を抱えているために資金不足となっている、だから資金供給能力が落ちているということが不良債権問題の一つの問題であるとするのであれば、実際に、では、大量に資金供給しているじゃないか、量的緩和しているじゃないか。しかも、不良債権を処理したからといって、そのことによって銀行の手持ちの資金がふえるわけでもないわけですから、果たして、資金供給能力が落ちているということが問題になっているのではなくして、ということについて私は伺ったつもりだったんですよね。
 だから、その点ちょっと、今の御説明は一つの背景説明として、竹中先生の御説明として理解はしますけれども、不良債権を銀行が抱えておるから銀行の資金供給能力が落ちているんですということが言えるのか言えないのかということだけで結構です。
竹中国務大臣 私はマクロ的に御説明しましたが、金融機関という一つのミクロの単位で一体どういうメカニズムが起こっているのかという御質問だと思います。
 これは、金融機関自身がリスクテークがなかなかできない状況になってきて、リスクテークができないということは資産の運用効率が落ちるわけでありますから、収益力も低下していく。収益力が低下していく中で、これは自己資本の厚みが減っていくという中で、さらに有効な資産を投資する余力を失っていく。その意味では、私はやはり不良債権、つまり効率の低い、非稼働な資産を抱えているということが金融機関の一種の縮小均衡メカニズムを間違いなく生み出す、そういう懸念を持っているというふうに思います。
植田委員 それともう一つ、要は、言ってみれば不良債権があって、それが回収がどんどん困難になっていく、それで自己資本が減少していくというような話になるのかと思うんですけれども、実際、不良債権がふえれば損失も出てきます。そうすれば、自己資本も落ちていきます。
 現実に、私は、柳澤さんから竹中さんに大臣がかわったからといって別に、公的資金を注入するかしないかというのはあくまで政策手法の問題だと思っていますから、そこで政策が転換されたと思いません。現に柳澤さんの時代から、不良債権の処理はがんがんやれやれとやってきているわけです。
 その結果どうなってくるか。不良債権はふえる、損失が発生する。自己資本が減少すれば、おっしゃるように貸し出しを抑制することになるでしょう。その貸し出し抑制というのが、全体の不良債権の処理の中では希少かもしれないけれども、中小企業や地場の産業に対する貸し渋り、貸しはがしという形で如実にあらわれているんじゃないかと思うわけなんですよね。だから、その意味で、不良債権処理をやっていけば、そうした一番弱い立場に立たされがちな中小企業や地場の産業にしてみれば、むしろ不良債権処理は、銀行側からすれば貸し出しをより困難にする側面があるわけですから、ですから、そこに、一番弱いところが一番しわ寄せを受ける。
 そこで、自己資本の減少したところを公的資金の注入によって補てんして、一瞬のうちに、金融機関は一瞬身ぎれいになるかもしれません、一瞬の姿として。ただ、そこで問題になってくるのが、公的資金注入に意味があるのかどうかということなんですが、実際に不良債権がそれ以降もふえ続けるのであれば、あくまでばんそうこうを、とりあえず血どめを張ったにすぎないということになってしまいはしないか。要するに、不良債権処理に伴って金融機関の資本不足が出てくる、そしてそれを補てんしたとしても、借り入れの需要がなければ意味がないだろうというのが一番最初の僕の出発点、一問目の問題意識や質問と、初歩的な質問と言いましたけれども、つながるわけです。
 そもそもの問題は、これは中小というよりはおおむねの大企業になってくるかもしれませんけれども、企業の過剰債務の問題をどう解決していくんだということがやはり一番念頭に、要するに、不良債権問題の処理というのが、不良債権を処理させて銀行を健全化する、身ぎれいにするといっても、やったとしても、結局資金の需要がなければ、一瞬身ぎれいになったかもしれへんけれども、また新たな不良債権が雨後のタケノコであらわれてくるじゃないですか。その根元を絶つに当たって、この企業の過剰債務の問題をどういうふうに見るかということだろうと思うんです。
 その場合、確かにこの間、企業の過剰債務が、バブル崩壊以後、折れ線グラフを経ていますけれども、たしか、今ちょっと資料を持ってこなかったんですが、財務省の財務総合研究所の資料によると、大体九九年以降、企業の過剰債務はかなり減少傾向になっています。恐らく九二年ぐらいの水準なんじゃないのかなと思います。そういうときに、要するに企業が過剰債務を解消しようと努力をしている、これは企業の経営者としては正しい、まさに健全な経営判断だと思います。しかし、その過剰債務を解消しようと努力していることは、すなわちこれは結局資金の需要を縮小するわけですし、それで景気を悪化させている。そういう流れにあるときに不良債権の処理だということになると、企業のそうした努力に対しても水をぶっかけることには現段階でならないのかなという疑問もあるわけなんです。
 その辺、まず大ざっぱに言えば、一つは、そもそも不良債権処理に当たっての根本問題というのは、企業の過剰債務の問題をどう解決していくかという問題。そして、それが今どう解決に向かっているかということを見据えたときに、私は、これは今先ほど長妻先生が配られた資料がだれがこしらえたペーパーかどうかということを問うつもりはない。いずれ何かの形で出てくるんでしょう。そこに書かれているアクションプログラムが中身としていいか悪いか以前に、今の段階でそれをやるということがいわば時宜にかなっているかどうか、そういう疑問を持っているわけなんです。
 その二点について、では、大臣、お願いできますでしょうか。
竹中国務大臣 申し上げてきましたとおり、今回の一連の不良債権処理加速の中で、企業の再生というのがやはり大変重要になってくると思っております。その再生の中身は、今植田委員御指摘になったような形で、債務を抱えた企業の中身をより強くして、その際、資産、債務の中身をよくして、さらに競争力を高めている。
 きょうは、ずっと一貫して、私は、資産査定、自己資本、ガバナンスというふうに申し上げてまいりましたけれども、実際に報告をまとめるに当たりましては、企業の再生の話とかというのはかなりしっかりと議論をすることになると思っております。そんな意味では、債務の問題だ、過剰債務の問題は、マクロでは解消しつつも、解消というか減額しつつも、やはりそれを、残された部分を再生させていくということが重要であるという強い認識を持っております。
 二番目の御指摘は、要するに、そういうことをするのであるならば、やはりマクロ的な観点からの需要への配慮を含めた適切な経済運営、管理がどうしても必要であろうかという御指摘につながっていくのだと思いますが、その点はもう全く同感でございます。であるからこそ、四つの、四本柱の改革とあわせて、総合的な対応策として金融もその中に含めて月末までに発表しようというふうにしているわけでございます。
 ただし、需要を刺激していく、また適切にコントロールしていくというのは、実は政策手段からすると、やはりそんなに今の状況は簡単ではない。恐らく安易に国債を出して需要をふやせという議論ではないと思いますが、これはこれでまた国債の市場に対して非常に問題を与える可能性もある。したがって、規制改革でありますとか、さまざまな活性化のための税制でありますとか、そういうものを組み合わせて、まさに四本柱の改革でそれを加速させることによって状況に対応しようというふうにしているわけでございます。
植田委員 御答弁のうち、一点目にかかわっては、恐らく出されたものを見せていただけばそこで企業再生のプログラムもあるんでしょうから、またそこで論じさせていただければと思いますが、二点目にかかわって、私は、正味のところ、要は今の時期に、これは本会議でもやりとり、自由党の藤井幹事長でしたか、緊縮財政だと言ったら、総理が何で緊縮財政なんだと言って気色ばんだ場面がありましたけれども、これだけ厳しい不況下において、デフレが進行している中において、やはり政府の積極的な財政出動、需要政策が必要だろうという基本スタンスに立って言っているわけです。
 だから、竹中大臣初め今の内閣というのは、恐らくはそうした、言ってみれば政府の財政出動、いわばケインズ政策というのはもはやきかないんだ、乗数効果は働かないんだというところから当然出発されているがゆえにいろいろな知恵も働かせているんだろうと思うんですけれども。
 いずれにしても、そうした財政出動を伴う景気対策というものがもはや景気を浮揚させる効果がないということを前提とするには、やはり、この失われた十年の中で行われた、個別の内閣におけるいわば経済政策の変遷というものをそれなりに分析しておく必要があるんじゃないかなと私なりに思いまして、まず次の点、またこれも竹中大臣にお伺いしたいんですけれども。
 九〇年代、株価が急落した局面がおおむね四回ありました、九二年の八月、九三年十一月、九五年の七月、九八年の十月と。そして、この四回いずれの局面も、当時の内閣が大規模な景気対策を打ち出した。九二年の八月というのは、これは宮澤内閣が十・七兆。九三年の十一月は、これは九四年二月に細川内閣が十五・三兆。そして九五年七月の株価の急落に対しては、その九月に村山内閣が十四・二兆。そして九八年の十月には、これは一番最近ですけれども、小渕内閣での十八兆。それぞれの財政出動がきいたのかきかなかったのかということをそれぞれやはり検証していかなければならないんだろうと思います。
 ある論者によれば、これが、それぞれの施策が抜群の成果を上げたというふうにおっしゃる論者もいらっしゃいますが、抜群であるかどうかは別にいたしましても、例えば、九六年、これは村山内閣時、何も当時我々が与党だったからそのときの例示を出すわけじゃないですが、その当時は九六年の前半で、この景気対策の結果、少なくとも三・四パーの実質成長率は達成できているわけです。ですから、こういうことはとりあえず事実認識としては持っておく必要があるんじゃないか。
 これは小渕内閣のときでもそうです。もし小渕さんが亡くなっていらっしゃらずに森内閣にかわってなかったら恐らく、小渕さんが亡くなって森内閣になってから、少なくとも今の小泉内閣の前提となる緊縮路線にもう既に転換しているわけですから。ですから、ひょっとしたら、どうなったかわかりませんが、例えば九六年の段階でもこうした状況があるわけですから。
 これをまず事実として我々は認識しておりますが、そこからやはり景気対策の有効性というもの、要するにこれは今、かつてやった、いわゆる従来型と呼ばれるものですらやはりこうした形での効果というものがあったんじゃないかという過去の事例を検証したときに、こうした成果というものを見た場合、その都度その都度、次にかわった内閣が締めにかかった、結局その繰り返しであったことがこうした財政出動を結局むだにしてしまったと私なんかは考えるわけですけれども、まず事実関係はそれでいいか。そしてその事実関係が、私なりに導出している認識が間違っているならもう間違っているということでおっしゃっていただいて結構ですので、竹中大臣なりのお考えをお聞かせいただけますか。
竹中国務大臣 財政を拡大することによって総需要にどのような刺激を与えるかというその一点に関して言うならば、いわゆるケインズ政策は効果がないという言い方もありますけれども、これは明らかに、短期間、需要を押し上げる効果は、これは今でも間違いなくあるというふうに私は思っております。
 問題は、その時々でそういう効果があったにしても、それはやはり持続的ではないということに尽きているんだと思います。これは実は専門家の間でも意外と認識をされておりませんのですが、例えば、二年目に乗数効果一・三、しかし、三年目に乗数効果一・一というふうになるということは、そのままやってくれば、実はGDPは減ってくるということを意味するわけですね。だから、例えば一年とか一年半とか、限られた期間のものを押し上げるという効果はこれはあるわけですけれども、それ以降についてはさらに財政を追加しないと成長はできないというのは、実はこれは乗数効果を考える場合の大変重要なポイントであるというふうに思っております。
 したがって、一時的に需要が落ち込んで、それが原因であるからそれを持ち上げるという意味でそういう政策を使うのは間違っておりませんし、スパイラル的に経済が悪化する場合は、これはもうなりふり構わずそういうことをやらなきゃいけないという局面はこれはあるわけでありますけれども、しかし、その後間違いなく、一回の効果が終わったらGDPは減りますよと。結局のところ、したがって、持続可能な形で経済を持ち上げていくような、まさに自律的なメカニズムを経済が持ってこない限り、それはしょせん一回限りの効果のものになってくる。
 繰り返し言います。そういうことをやらなければいけない局面が、非常に危機的な状況のときはこれはあり得るわけです。だから総理は、そういう場合は柔軟かつ大胆にというふうにおっしゃるわけだけれども、そういうものに本当に頼っていたら、結局経済は強くならないで、財政赤字だけが残るんだ。幾つかの御事例を挙げられましたけれども、九〇年代の非常に重要な教訓は、もう一つそこにあったと私は思います。
植田委員 私も、では、九〇年、一貫してそうした大規模な財政出動を続けていればいいんですよと言っていないんです。ただ、要は、例えば九六年の村山内閣の後、橋本内閣にかわる。要するに、恐らく今おっしゃっていることは、竹中さん、実に正しいと思うんですが、言ってみれば、まず財政出動をやる。景気の動向を見きわめる。そして、やはりこれは、これも小泉さんのおっしゃっている構造改革を私はすべて否定するものではありませんから、ある段階で構造改革をしなければならない。その見きわめをその都度誤ってきたんじゃないですかということを申し上げているわけです。
 これは私が言っているんではなくて、村山内閣を引き継いだ次の総理大臣が、橋本元総理が自民党総裁選出馬に当たって、あのときは間違っていましたということをはっきりとおっしゃっているわけです。だからこの時期のことを例示したわけですけれども。
 例えば当時でも、この間ずっと、個人消費、九〇年代ずっとやはり低落、横ばいながら下向いていますよね。景気が、例えば実質成長率が三・四パーだといったとしても、結局、この都度、そのときの賃金の上昇には結びついていなかったわけなんですよね、これは。賃金上昇はなかったというようなこともあるわけですから。
 要するに、その辺の見きわめを誤って、カーブを早く切り過ぎたんじゃないのかな。そして今、しかもそうしたさまざまな教訓がありながら、どうも、言ってみれば供給サイドに偏したと言ったらそうじゃないとおっしゃるんでしょうけれども、そうした改革路線にいっているということがますます景気を悪くする要因になっているというふうに私は思わざるを得ないわけです。
 そこで、これは時間もありませんので日銀総裁に端的に伺います。
 先日も総裁に同じような趣旨で、量的緩和の効果に限界があると、やはり政府が適切な財政出動によって景気対策を打つべきじゃないか、そのことの方が量的緩和の政策と整合性を持ち得るんじゃないかということを私が質問したときに、最終的に速水さんは、第二の骨太の提言は決してサプライサイドだけじゃないんです、いかにして活性化させていくかということに重点が置かれているんですとおっしゃっているわけです。
 あと、ずるずる続くんですけれども、ちょっと時間がないので省きます。
 そこで、速水総裁は、今般の小泉構造改革というものは、そうした供給サイドを重視しつつも、同様の比重で需要政策も重視しつつ、言ってみれば二頭立ての馬車でバランスよく進んでいくべきなんだ、そういうお立場なのかどうなのかということだけお教えいただけますか。
速水参考人 日本経済はやはり構造改革しなければだめです。十年間、ずっとやってこなかったわけですから。グローバリゼーションというふうになって、競争社会というものを、競争原理でやはり経済というのは伸びていくんですから、資本主義経済。そこのところはやはり、おくればせながら一刻も早く構造改革をやって、規制緩和とか税制の緩和とか、それからもう一つは老齢者等の福祉施設ですね、こういうようなことを固めていく必要があると思います。
 それと同時に、おっしゃるようなデフレ、物価がじわじわと下がっていくのをどうするかということとは必ずしも矛盾しない。矛盾する面ももちろんありますが、しかし、ここまで来てしまうと、経済成長、よく総理が言われるように、改革なくして成長なしというのは、私はそのとおりだと思います。公共投資などで一時ふえてもそれはだめなんです。長続きしません。だから、構造改革をやりながら痛みはなるたけ少なくするように政策面で両立させていく必要があると思います。
植田委員 最後、両立させていくとおっしゃいましたので、あとは席でうなずくか横向くかでいいんですが、要は、デフレ対策、景気対策と供給サイドの構造改革というものを二頭立てで、お互いが、どっちかがどっちかを、相互補完の関係にあるけれどもどっちが主でどっちが従とかいう関係性ではないよということでいいわけですね。
 とおっしゃったんで、そこで、塩川財務大臣に伺いたいんです。
 今、速水総裁が、デフレ対策、いわゆる需要政策と供給構造改革を二頭立ての馬車で、どっちが主でどっちが従でもないということの認識をお示しになったのですが、同じことを、もう随分前なので塩川さんお忘れかもしれません、二月の二十七日の財金の委員会で、私が、要するに、小泉構造改革というのは供給構造改革ですよねと尋ねたときに、需要面の景気対策も必要だし、否定しないし、それも必要だけれども、「根本的には、供給サイドを改革しなければ真の経済成長は望めない」とおっしゃっておられます。
 だから、今の日銀総裁の話でいくと、供給構造改革も景気対策も二頭立てですよ、お互いどっちが主でどっちが従という関係ではないということははっきりうんとおっしゃっていただきましたが、塩川大臣の場合は、根本的には供給サイドの改革だということですから、この答弁によれば。
 だから、供給サイドの改革を進めていく、それを補完する意味で、また、そのときに起こる痛みをとりあえずばんそうこうでも赤チンでも塗る意味で需要政策があるんだという認識で当時おっしゃったのかどうかだけ、イエスかノーで教えていただけますか。
 ちょっと日銀総裁とこれは言っていることが違いますからね。
塩川国務大臣 どっちも二頭立っていることは同じですね。
 ですから、これは、昔から驂馬、副馬と言いまして、馬車は、引っ張る馬と、驂馬、副馬というのはその横について一緒に引く、副馬、驂馬、これで馬車を引っ張っているんですから、結局そういうことになっていると私は思います。
植田委員 時間がないからやめますけれども、これは次もやりますが、要するに、「根本的には」と塩川さんおっしゃっているわけです。
 それは、二頭立てであっても、言ってみれば、速水総裁がおっしゃっているのは二頭立ての馬車ですわ。それでパッパカパッパカ走っているわけです。塩川大臣は、根本的に供給サイドの改革があって、需要政策も重要だから否定はしませんよと言っているわけですから、その場合の二頭立ては、供給サイドは馬が走り、同じ二頭立てでも需要の方はロバで走らせているということになるでしょう。そういうことじゃないですか。根本的にはなんということをそうやすやす使わないはずでしょう。
小坂委員長 塩川財務大臣。
 時間が来ております。
塩川国務大臣 いや、同じような能力の馬です。
 ただ、むち打って走っておるのは、それはやはり構造改革なんですね、それをやる。横で同じように引っ張ってついてきておる、要するに驂馬の方は景気回復です。
小坂委員長 植田君、時間が来ております。
植田委員 終わりますけれども、ここはちょっと大事な問題だと思います。
 要するに、需要政策と供給構造改革のバランスをとってやるというのか、供給構造改革をやったらウオンツがニーズに変わるんだよと立てるのか。その辺が、今、政府やまたそのブレーンの中の経済政策のさまざまな論者が混在して論じているように私は思います。
 ですから、これは総理に聞いたってわかってへんと思うので、今お三方いらっしゃったから聞いたので、馬の話はちょっと残念だったと思いますが、次、第二ラウンドもあるでしょうが、きょうは、時間が来ましたので終わります。
小坂委員長 次回は、明三十日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時五十三分散会


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