衆議院

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第14号 平成15年5月9日(金曜日)

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平成十五年五月九日(金曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 小坂 憲次君
   理事 金子 一義君 理事 七条  明君
   理事 林田  彪君 理事 渡辺 喜美君
   理事 生方 幸夫君 理事 松本 剛明君
   理事 上田  勇君 理事 中塚 一宏君
      上川 陽子君    倉田 雅年君
      小泉 龍司君    坂本 剛二君
      砂田 圭佑君    田中 和徳君
      竹下  亘君    竹本 直一君
      中村正三郎君    萩山 教嚴君
      林 省之介君    増原 義剛君
      山本 明彦君    山本 幸三君
      五十嵐文彦君    井上 和雄君
      上田 清司君    小泉 俊明君
      佐藤 観樹君    中津川博郷君
      永田 寿康君    長妻  昭君
      山田 敏雅君    石井 啓一君
      遠藤 和良君    達増 拓也君
      佐々木憲昭君    吉井 英勝君
      阿部 知子君    植田 至紀君
      金子 哲夫君    江崎洋一郎君
      山谷えり子君
    …………………………………
   財務大臣         塩川正十郎君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     竹中 平蔵君
   内閣府副大臣       伊藤 達也君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   財務大臣政務官      田中 和徳君
   政府参考人
   (金融庁総務企画局長)  藤原  隆君
   政府参考人
   (金融庁監督局長)    五味 廣文君
   政府参考人
   (金融庁証券取引等監視委
   員会事務局長)      新原 芳明君
   政府参考人
   (厚生労働省年金局長)  吉武 民樹君
   参考人
   (日本銀行総裁)     福井 俊彦君
   財務金融委員会専門員   白須 光美君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月九日
 辞任         補欠選任
  仙谷 由人君     山田 敏雅君
  平岡 秀夫君     長妻  昭君
  阿部 知子君     金子 哲夫君
  江崎洋一郎君     山谷えり子君
同日
 辞任         補欠選任
  長妻  昭君     平岡 秀夫君
  山田 敏雅君     仙谷 由人君
  金子 哲夫君     阿部 知子君
  山谷えり子君     江崎洋一郎君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 証券取引法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇五号)
 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――
小坂委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、証券取引法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局長藤原隆君、金融庁証券取引等監視委員会事務局長新原芳明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小坂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
小坂委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。生方幸夫君。
生方委員 おはようございます。民主党の生方でございます。
 両大臣には、朝早くから御苦労さまでございます。
 それでは、質問時間が十五分というふうに限られておりますので、早速質問に入らせていただきたいと思います。
 当委員会で、一昨日、参考人の方をお招きいたしまして、この証券取引法の改正案についての御意見をいろいろ伺いました。その中で、参考人の皆さん方は、それぞれ、この改正そのものについては前向きな発言をなさいました。しかし、最終的には、証取法を改正するだけで個人投資家がすぐに戻ってくる、あるいはふえるというような状況にないということは認識が一致をいたしておりました。
 その中で、特に強い要望が出されたのは、証券税制の改正がもう行われたんですけれども、やはりさらなる改正をすることが個人投資家をふやすためにはどうしても必要ではないかという意見が三人の方から強く出されました。
 新聞報道によれば、塩川大臣は、さらなる改正には反対だというような御意見を述べられているようでございますが、今般の株価の下落に何とか歯どめをかけるためには、私も、やはりさらなる税制の改正というのが、すぐにとは言いませんが、その方向性だけでも示すことが大事ではないかなというような感じがいたしますが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
塩川国務大臣 最近、経済三団体の方から、新しく証券税制についての改正の意見書が出てまいりまして、それは拝見いたしました。しかし、おっしゃることは大体盛り込んで昨年の暮れにまとめました税制改正、そして、この三月末に国会において成立させていただきました新しい所得税法改正の中に盛り込まれておる証券税制等と、趣旨はそんなに違わないと思うております。
 そこで、私は、今証券対策の一つとして、税制の改正も確かに必要でございますけれども、しかし、現在いろいろなセーフティーネットなり、あるいはまた売りの抑制措置等を講じておりますことを、機構等ございますのを、正確に発動されて機能しておるかどうかということを検討して、それが有効に働くようにして、株価対策に効果があるようにいたしたいと思っておりますので、今の段階においては、せっかくお申し出ではありますけれども、私としては、これはお断りするということでございます。
生方委員 政府が株価対策を打っていないとは私も思いませんが、いろいろ打っていながらも何の効果もないのも、これも事実であって、今大臣おっしゃるように、いろいろな手を打っていて、いろいろなことでよくなってきて、だんだんいい方向に向かっていればいいんですけれども、残念ながら、方向は余りいい方向に向かっていないんで、やはり、株価がこれ以上下がれば本当に取り返しのつかないような経済状況になるということも考えられますので、私は、税制改正も含めてあらゆる措置をとっていただきますように重ねてお願いを申し上げます。
 それから、これも関連をいたしますが、株式取得機構の改正については大臣は積極的な発言をなさっているように新聞では報じられておりますが、この八%の拠出金があるからなかなかうまく株が買い取れないというような意見が出ていて、この拠出金の撤廃について、大臣は割と積極的な発言をしているように新聞では報じられているんですが、この御真意はどういうことでございましょうか。
塩川国務大臣 今、株価対策の方で、売りは、できるだけ売らないように抑制するために、保有機構で買い上げる。買いの方については、買いを積極的に支援するために、税制であるとか、あるいはまた公的資金の活用とかいろいろ言われておりますが、私はここにつきまして、来週早々にでも、やはり内閣として、株価対策を中心とした新しい経済活性化対策について関係閣僚の知恵を一回絞って対策を練り直してみようということを思っておりまして、きょうも、閣議の席で総理から、来週早々にでも株価対策を中心とした新しい経済の活性化への勉強をしてくれという指示がありましたので、すぐにそれに取り組んでまいりたいと思っております。
生方委員 拠出金の撤廃については、大臣、いかがなんでございますか。
塩川国務大臣 私は、この八%条項が、やはり後でリスクのしっぽがついてきますので、そういうこと等を考えまして、これは一応撤廃したらいいんじゃないかと思うております。
 そして、十年間と法律で規定がございますから、この十年間という期限の利益を十分に利用したら、リスクの回避に私は十分役立つと思っております。
生方委員 これは、十年間の期限を延長するという理解でいいんですか。それとも、そうではなくて、十年間の中で十分、八%の拠出金を取らなくても、取るということは、株価が下落をしたときのリスクをだれが負うのか、八%で補うというのが前提ですから、八%の拠出金がないということは、下落した場合は、最終的には公的資金で穴埋めをしなければいけないということになるわけですけれども、それが、十年間あればそういうリスクを負わなくて済むという御理解なのか。
 一部新聞では、取得機構の存続期限を十年間よりももっと長くしてもいいんじゃないかというようなお考えもあるやに報道されておるんですけれども、その点はいかがでございましょうか。
塩川国務大臣 これは私の独断で決めるわけにはまいりません、所管じゃございませんので。
 けれども、過去のいろいろな買い取り機構が発動しました実績を見ますと、大体四、五年で精算がつくようになってきております。しかし、十年間ということをとりましたので、十分な期間があると思っておりまして、これを延長してとかいう考えは持っておりません。十年の間に、株価が上がったときには精算をどんどんして、上がらなかったらじっともちこたえて、十年間辛抱する。
 その間にどういうことが起こってくるかわかりませんが、最終的には、その精算の責任は政府が持たなきゃならぬと思っております。
生方委員 八%の拠出金を廃止するのは、これは一時的なものなのか。八%を四にするとかじゃなくてゼロにして、しかも、一時的なものじゃなくてずっと廃止をしてしまうお考えなのか。それとも、一時的に八%を、例えば一年なり二年なり廃止するというお考えなのか。そこの点をお伺いしたいと思います。
塩川国務大臣 これは相談でございますけれども、私は、一時的にやった方がいい、例えばおっしゃるような二年とか。二年の間は八%は免除するとか、一時的にやってもいいと思っておりますが、その効果につきましては、これから関係者とちょっと相談をさせてもらいたいと思います。
生方委員 これは、そうすると、来週早々にも決定をして、決定をされたら速やかに実施するというふうに理解してよろしいわけですか。
塩川国務大臣 もちろん、来週早々の検討の一つの大きい項目でございます。
生方委員 それでは、あと、証取法改正そのものについて二、三点確認をしたいことがございますので、そこだけお伺いしたいと思います。
 まず、ラップ口座について、これまで、証券会社側が自己売買の記録を書面で顧客に開示をしなければならないことになっていた。これが非常に負担になって、ラップ口座、つくれるんですけれども、実質的にはつくれないということになっていた。今回の法改正で開示義務を撤廃したというふうになっております。
 もともと、開示を義務づけたのは、顧客資産を証券会社が穴埋めに使うなどの不正が行われないためにということでこの開示義務というのがなされたわけですが、これを撤廃することによって、こうした顧客の不安を取り除くことができるのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
竹中国務大臣 ラップ口座につきましては、先般も少し既に御議論いただいているところでございますけれども、証券会社が資産管理型営業へ移行するというような制度をつくった、しかし現実にはそれがなかなか進んでいない。その要因の一つとして指摘されているのが、自己売買に係る書面の顧客への交付義務が過大な負担になっている、そういった点があるわけであります。
 今回、その点に着目して改正をしてはどうかというふうに提案しているわけですけれども、これは、その場合に、いわゆるファイアウオールが整備されていないような場合は要するに利益相反が起こる、そういう御指摘、御懸念はあるわけでございます。その点、我々もちゃんと考えておりまして、あくまで不正行為が発生しないような体制が整備されていることについて当局の承認を得た場合にのみ自己売買に係る顧客への書面開示義務を免除する、そういう形にしているわけでございます。
 また、既に投資顧問業法においては、そのような有価証券の自己売買を行う証券会社が投資一任業務等を兼業した場合に、投資者保護を図る観点から、例えば兼業に伴う弊害防止措置を講じている等々、幾つかの措置を講じている。
 こういったことを組み合わせて、御指摘の、御懸念のような点がないような制度にしたつもりでございます。
生方委員 ただでさえ証券でいろいろな不祥事が相次いでおりますので、顧客の方にそうしたことを十分説明して、安全であるんだ、大丈夫なんだということがわからないと、せっかくこういうふうにしてもまた広がらないということになりますので、ぜひともその辺は、もちろん、不正が行われないということがきちんとシステム的に確立をされているということも大事ですし、それが補償されるんだということを顧客の側にもきっちりと説明をしていただきますようにお願いを申し上げます。
 それから、今度は証券仲介業というのが新たに設けられるということになっておりますが、その資格について、内閣総理大臣への登録というふうになっておりますが、これは登録をするだけで、本当にその方が証券仲介業者として適格かどうかという判断はどんな基準でするのかということをお伺いしたいと思います。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 証券仲介業者の登録に当たりましては、一つには、過去に行政処分歴あるいは犯罪歴がないか、当該登録申請者が法人である場合はその役員を含んで、それを審査いたします。それから二つ目は、ほかに営んでいる事業が公益に反していないか。それから三つ目は、証券仲介業を適切に遂行できる知識及び経験を有しているか。さらには、業務委託を行う証券会社等が証券業協会に加入しているかどうか。こういう点を確認することといたしております。
生方委員 証券仲介業者について、事故などで顧客に損害が起きた場合の責任は証券会社がとるというふうになっておりますが、事故などで損害が発生するというのは、具体的にはどういうようなことを予想されておるんですか。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 証券仲介業者が顧客に損害を与えるような場合としましては、例えば証券取引に関して虚偽の表示を行う等の法令違反を行う場合、あるいは注文の執行に係る事務処理ミス、こういうもの等によりまして顧客に損害を与えるような場合が想定されるところでございます。
生方委員 時間がないので最後にもう一点だけお伺いしたいんですが、新聞では、証券仲介業者が取り入れられると、コンビニなんかでも証券会社の端末機を置いて株が売買できるようになるかもしれぬというような報道がなされておりますが、その場合、証券仲介業者というのは、そのコンビニとの関係はどうなるのか。コンビニに証券仲介業者が常時駐在をするのか、あるいは、どういう形に顧客とコンビニと仲介業者と証券会社の関係がなるのかということをちょっとお伺いしたいと思います。
藤原政府参考人 極めて詳細、具体的な話でございますので、私の方からお答えさせていただきます。
 証券仲介業者は、証券市場に係る販売チャンネルの拡充を図るという観点から新たに創設する制度でございまして、欠格要件に該当しないで、証券仲介業を適切に遂行できる知識、経験、こういうものを有する者であれば、個人、法人を問わず営めることといたしております。ただし、証券仲介業務による勧誘行為は外務員登録を行った者のみが行うこととされております。
 そういうことも踏まえながら、証券仲介業の具体的な業務運営の方法、これにつきましては、適切な外務員の配置方法等も含めまして、あるいは法令遵守体制の確立も含めまして、委託を行う、最終的には責任を負う証券会社との間で検討をしていただく必要があると思っております。
 したがいまして、ここでなかなか具体的に申し上げることができないことを御理解いただきたいと思います。
生方委員 きのうも金融庁から説明を聞いたんですけれども、販売チャンネルを広げるという意味では、コンビニは非常に有力なツールだとは思うんですね。ただ、それについて具体的に今はほとんど何も検討なさっていないみたいなので、もしそういうことをやるのであれば、もっと具体的に検討して、どういうふうにすればどうなるんだということをやはりしっかりしないと、せっかくつくって販売チャンネルを広げるといっても、結果として広がらないことにもなりかねないので、大臣、その辺はやはり、せっかくつくるのであればしっかり、どういうふうにするのかというあらあらのイメージでも出せるようにしていただきますようにお願いいたします。
竹中国務大臣 この証券仲介業というのがどのようなビジネスモデルを提示してくれるかというのは、これは我々もある意味で期待をしておりますし、その中で、我々自身もいろいろなサジェスチョンを、必要な場合はしていかなければいけないと思っております。
 御指摘のように、これがうまく機能するように我々も全力を挙げたいと思っております。
生方委員 時間ですので、終わります。
小坂委員長 次に、中塚一宏君。
中塚委員 おはようございます。
 今、証券仲介業の質問がありましたが、今般改正は、証券市場の透明性、信頼性を向上させて、個人投資家を呼び込んでいこうということが目的だと思うんですが、同様に、協同組織金融機関の書面取り次ぎについてまず伺いたいわけです。
 協同組織金融機関といえば、やはり日本じゅうにいっぱいあるわけですね。これが書面取り次ぎができるようになるということは、それだけ利便性が増すことになるんだろうと思う反面、書面取り次ぎですから勧誘は伴わないということでもあるんでしょうけれども、でも、これだけたくさんのものが一遍にばあっとやれるようになったときに、果たしてちゃんとそれが進んでいくかどうか。その実効性とか有効性という観点から、それを確保するための施策というのは万全なんでしょうか。あるいは、何か考えていらっしゃるんでしょうか。いかがでしょう。
伊藤副大臣 お答えをさせていただきたいと思います。
 書面取次業務についての実効性、有効性の確保のための施策いかんというお尋ねだと思いますけれども、信用金庫や農業協同組合などの協同組織金融機関から、顧客から書面による注文を受けて株式や社債を取り次ぐ当該業務を行いたいとの要望が総合規制会議に対して出されておりまして、そういう意味からも、私どもは一定のニーズがあるものと考えております。
 当該業務はみずから勧誘行為を行わない受動的な業務であるが、勧誘とされない行為の範囲が必ずしも明確でなかったことを踏まえまして、昨年の九月に事務ガイドラインを改定して、そして顧客に対する業務内容の説明やチラシの掲示等は勧誘行為に当たらないことを明確化し、当該業務が円滑に行えるように処置をいたしたところでございます。
中塚委員 いずれにいたしましても、数がふえるということは、それだけ検査したり監督したりすると大変になるんだろうというふうに思うんです。ですから、その辺はぜひともしっかりやっていただきたいというふうに思います。
 次に、先ほども申し上げました、資本市場、証券市場の透明性を向上させていくということが本法案の目的だと思いますが、今の政権の政策の方向性ということについて伺いたいわけなんです。
 構造改革ということで、やはり市場原理を徹底させていくというのは一つ大事なことなんだろうと思うんです。戦後の日本が、競争原理ということに基づかずに、どっちかというとシェア争いというか、要は競争するのがマーケットじゃなくて場であったというふうなことが大変に多い。その中で、競争がないから強いものが出てこないというふうなところもあった。そういったことを、ちゃんと市場原理を徹底させていくということが必要だと思うわけですし、また、そうすることが透明性を向上させていくことにもつながるわけですね。ですから、ディスクロージャーの問題とか、あと、これの後に公認会計士法の改正案の審議等が行われますけれども。
 ただ、そういうことを考えていきますと、産業再生機構なんですが、ここ何日かで動き出すというふうに聞いておりますけれども、産業再生機構というのは、そういう意味でのマーケットの中の市場原理はバイパスをしてやっていくというやり方になっていく、私はそういうふうに思います。そういう意味で、市場原理を徹底させていく、それで公明性、透明性を高めていくということと、この産業再生機構によって企業再生するというのは、政権としての政策の方向性が逆なんじゃないかというふうに思うんですが、財務大臣、いかがでしょう。
塩川国務大臣 私は、ちょっとそれは思い過ぎなお考えじゃないかなと思いますが。
 産業再生機構というのは、一つは、企業間におけるところのいわゆるあっせんといいましょうか、そういうのが任務であって、要するに、直接の損得を争うところの経済行為をするというものではないと思っております。ですから、いわゆる損得の計算をする市場原理というものはそこで働くのではなくて、枠組みづくりの問題であるからして、もちろん、そこにいわば意見の一致がなければ再生機構のいわゆるあっせんも効果は出てこないと思いますけれども、ちょっとおっしゃるのは、思い過ぎのような感じがいたしますが、いかがでしょうか。私はそう思いますが。
中塚委員 同じ趣旨なんですが、竹中経済財政担当大臣にも伺います。
竹中国務大臣 中塚委員の御質問のように、一つの政策に対する考え方を、市場原理対政府介入というような対立構図でとらえるならば、それが今回どのような位置づけになるのかという御質問はやはり出てくるのだろうと思います。
 しかしながら、現実に、これは例えば公的金融のときにも同じような議論をさせていただいたと記憶しておりますけれども、これは民間でやるんだと。しかし、今見ればわかるように、DIPファイナンスとか、本来民間でやるようなものが民間から出てこない、結局政府系金融機関がそれを担っているという現実がございます。
 政府が介入する場合というのは恐らく二つの場合があろうと思いますが、一つは、今の政府系金融機関の例のように、現実問題として、民間でいるはずのプレーヤーが現実にはしかし何らかの理由でいないというような場合。もう一つは、意思決定が非常に複雑で、よく言われる囚人のジレンマのように、例えば今回の場合のように非メーンのプレーヤーがたくさんいて、本当はこうしたらいいと思っているんだけれども、自分が先にやるとあっちに持っていかれるんじゃないだろうかということでなかなかまとまらない、そのような場合には、例えば公的部門がこうしようではないかというような指針を示して、意思決定を速やかにする。そういう場合の、まさに市場メカニズムをうまく機能させるために政府が介入するということは、これはやはり必要なのだと思いますし、現実に世界各国でもやられた例があるというふうに思っております。そのように私自身は位置づけております。
中塚委員 今大臣の御答弁の中で、DIPファイナンスなりなんなりというのが出てこないというふうなお話がありました。だから、それがなぜ出てこないのかということだと思うんですけれども、御答弁の中でもちょっとお触れにはなっていると思いますが、出てこないのはなぜだとお考えですか。
竹中国務大臣 銀行の場合は、基本的に体力が非常に消耗していて、リスクのあるような分野になかなか出ていけないという、まさに今の日本の金融業界が置かれた一つの状況があるんだと思います。それと、現実に、いろいろな銀行の中身を見ていると、不良債権の処理という後ろ向きの仕事にやはり必死になって追われていて、そういった前向きのところになかなか人員を割けない、そのような事情もあるのだと思います。したがって、官がある程度やっていく。
 ただし、委員も御指摘のように、注意しなければいけないのは、それで官がやり過ぎると、いつまでたっても民が育ってこないというようなことになる。その意味では、官は、最初はある意味で行動を示すけれども、それをやはりいつまでもやらない、引くときには引く、それで民間部門が育ってくるようなシステムにつなげていく、そのような観点は大変重要になっていると思います。
中塚委員 例えば会社更生法とか民事再生法なんかでも、適用されると、新聞なんかには事実上倒産というふうにばっと出ちゃうんですが、でも、結局、更生なり再生というのは、また新しい会社になるわけですね。悪いところをつぶすのが構造改革だとは私は思いませんが、それは構造改革というよりは、それよりもっと以前の話として、当たり前、だめなところがつぶれるのは当たり前、それが市場原理なりマーケット原理ということですし、そのときには、ちゃんとしたルールにのっとって行われていけば、私は、かえってその方が信頼性、透明性というのは向上していくんだろうというふうに思うんです。
 そういう意味で、今般の法律改正をする趣旨と、産業再生機構を設立してやっていこうというのは、どうも方向性が違うような気がして、そういったことがマーケットへの信頼というものをなかなか生んでいかないんじゃないだろうかというふうに考えております。
 次に、株式市場の需給要因について伺いたいと思います。
 もちろん、株価ということですから需給が関係するのは当然の話なんですが、これも今、持ち合い構造の解消ということもあります、あともう一つは年金基金の代行返上というふうなこともあります。そんなことで、どっちかというと売り物がかなり出てくるというふうなことになっているわけなんですが、このことについて、私は、需給要因解消のために何かつくって何か買えというふうに考えているわけではありませんが、要は、新しい個人投資家がどんどんと入ってきてそれを買ってくれれば問題はなくなっていくわけなんです。
 前の質疑者の答弁の中にも、また来週以降、株価の対策をお考えになるというふうなお話がありましたけれども、こういった需給要因ということについてはどういうふうにお考えか、まず財務大臣からお聞かせをいただきたい。
塩川国務大臣 私も専門的なことは余りわかりませんけれども、ちょうど三十九年前の昭和三十九年当時の株価対策、共同証券で買い上げましたし、また証券の組合をつくって買い上げる。あの当時のことと比較してみますと、規模が三十倍に膨れ上がっていますね。そうすると、GDPあるいはいろいろな経済指標と比べてみると、証券業界に流れ出してきている証券のボリュームというものがやはり過剰じゃないかなという感じがしておりまして、そこらにやはりこれからの株価対策上検討する一つの焦点があるのではないか、私はそう思っております。
中塚委員 同じ質問なんですが、竹中大臣、いかがでしょうか。
竹中国務大臣 昨日の経済財政諮問会議で、財界人の委員の方が次のような議論をされました。実は企業の収益は、昨年度回復している、今年度も回復の見込みである、そうした指標から見る限り、株価が下がるというのは実はなかなか納得できない状況である、しかし現実には、株価は、株式市場は非常に軟調である、その要因は一にも二にも、御指摘のような、持ち合い株の解消とかさらには代行返上とか、短期的な売りがあって、それを吸収するような買いの力がないと。
 マーケットメカニズムというのは大変重要なわけですけれども、マーケットメカニズムがうまく完璧に働くようにするためには、なかなかいろいろな努力が要るということだと思っております。
 その意味では、前回も申し上げましたけれども、これまで株式市場の中で大変大きな役割を占めていた機関投資家、銀行や生保の力が弱って、そうした力がなくなっている。そのような中で、やはり民間の健全な家計の貯蓄資金をこの市場に呼び込んでいくという努力は大変重要である。先般の税制改正もそうでありますし、その意味では、今回お願いしている証取法の改正等々もまさにそうした観点に立っているものでございます。
中塚委員 それでは、最後に一つお伺いして終わりたいんですが、連休が明けまして、株価もちょっと持ち直している、それでも八千円前後ですが。
 竹中大臣、地政学的なリスクが遠のいた、OECDの閣僚会議なんかでもそういうことが議論になったというふうに伺っておりますけれども、今度は、我が国特有の地政学的リスクといいますか、やはり北東アジアの問題というのがあるというふうに思います。この北東アジアの地政学的なリスクが東京株式市場に与える影響ということについてどういうお考えをお持ちか、それをお伺いして終わりたいと思います。
竹中国務大臣 安全保障上の問題そのものに十分にお答えする立場ではございませんですけれども、日本の場合特に、もう一つ、地政学的だという観点では、やはりSARSの問題があろうかと思います。その意味では、欧米に比べて地政学的なリスクはやはり減じていない、それが株価にも反映されている可能性があると思っております。この点、ぜひ慎重に見ていきたいと思っております。
中塚委員 終わります。
小坂委員長 次に、佐々木憲昭君。
佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭です。
 証券取引所の持ち株会社化と自主規制の関係、この点についてまずお聞きをしたいと思います。
 持ち株会社がつくられて、複数の市場が傘下におさめられる。そういうときには、自主規制部門というのは、直接利益を生まない部門でありますから、一体どうなるのかという疑問が出てくるわけです。例えば、市場ごとに自主規制の部門を置くことが負担になって、統合されるということもあり得るのではないか。そうすると、市場と自主規制部門が切り離されて、日々の業務の関係で、直接不正行為がチェックできるような監視体制が後退するのではないかというおそれを持つわけであります。そうなっていくと、いろいろな不正事件が多発している状況の中で、ますますそういう不正取引を見逃すような状況にならないか。
 この点について、竹中大臣の見解を伺いたいと思います。
竹中国務大臣 自主規制の御指摘でありますけれども、私も改めて、証券に係るいろいろなことを勉強させていただいて感じますのは、証券業協会でありますとか取引所であるとか、そういった自主規制が市場の秩序の維持に対して非常に大きな役割を果たしているし、果たしてきたということであろうかと思います。
 今般、持ち株会社制度を導入するというのは、これは言うまでもなく、国際的な市場間の競争が激しさを増している、海外で現実に取引所間の提携が急速に進められている、こうした状況を踏まえて、日本の取引所の国際競争力の強化、取引の流動性の向上を図ること、これはやはりどうしても避けられない。その一つの手段として、有力な手段として、持ち株会社制度を整備するというふうに考えているわけでございます。
 その場合に、今までの公益性なり自主規制のような社会的な機能がどのように担保されるかという御懸念を示しておられるわけでありますけれども、この持ち株会社については、取引所の議決権の過半数を所有できる存在であることから、取引所の公正性等を確保するために、設立等を当局の認可にかからしめる、これは当局が認可するということ、それと、検査監督の対象とするということ、業務範囲を専ら取引所の経営管理に制限するというような、その意味では厳しい規制を課しているというふうに考えております。
 こうした措置を講ずることによって、取引所が取引所持ち株会社の傘下に入る場合においても、引き続きその自主規制機能は適切に発揮されるものというふうに考えている次第でございます。
佐々木(憲)委員 証券取引所というのは、会員自治のもとで、会員相互の信頼と協力を基礎にして成り立ってきた、そういう自主規制的機能を持っていたということでありますが、株式会社が可能であるということになりまして取引所そのものが利益志向になっていくということになりますと、性格が変わっていって自主規制機能を後退させるんじゃないかという感じを私は非常に強く受けております。
 そこで、前回、株式会社化される法案が出されたときに、金融庁としては、公共的性格、公共的機能が適切に発揮できるよう次の措置を講じるということで、何人も発行済み株式の五%を超える株式を保有してはならない、こういう措置をとってきたと思うんです。だから心配要らないという説明だったと思うんですが、これはまず確認しておきたいと思います。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 前回の証取法の改正に際しまして、株主ルールにつきましては、諸外国の例等を勘案しまして、五%というようなルールを策定したところでございます。
佐々木(憲)委員 今回の提案された法案によりますと、保有制限五%から一気に五〇%と、非常に超緩和でありますが、そうなりますと、五%で規制をするから大丈夫なんだという論拠が崩れるのではないか。
 特定の株主の支配力というのが非常に強力になりまして、公共性をゆがめるということにつながることは明らかだと思うわけです。有力な一部の株主が影響力を強める。そうしますと、大口取引先に有利で小口取引先に不利な手数料制度を導入するとか、あるいは自分たちに都合のいい方向に証券取引所等をゆがめるというようなことも起こりかねない。
 ですから、こうなりますと、自主規制機能が大事だと言いながら、後退させることになりかねないと思うわけでありまして、公共性が放棄されてしまう、そういう懸念を持つわけであります。この点について、私は、今回の法案の非常に大きな問題点として指摘をしておきたいというふうに思います。
 次に、大阪証券取引所に対する検査の問題についてお聞きしたいんですが、一昨日の参考人質疑で、大証の社長に対しまして、参考人として呼ばれたのかとお聞きしました。ところが、それは断じてないというお話でありました。
 私は、昨年の質問で、大証をめぐる仮装売買疑惑で、現大証社長のオーナー会社である光世証券が疑惑に関与していた疑いを指摘いたしました。証券監視委員会の事務局長は、その点も調べる、こういうふうに答弁されたわけであります。
 それから一年たつわけですけれども、当事者である巽氏本人から事情を聞くということをやっていないんでしょうか。
新原政府参考人 お答え申し上げます。
 私ども証券取引等監視委員会は、証券取引に関するさまざまな資料、情報を収集、分析いたしまして、仮に取引の公正を害する違法な行為が認められれば、法の定めに従い厳正に対処しているところでございます。
 ただ、だれから事情聴取を行っているかということにつきましては、今後の証券取引等監視委員会の活動を円滑に進めるためにお答えできないということについて御理解を賜りたいと存じます。
佐々木(憲)委員 巽氏はこう述べておるわけです、一昨日の参考人質疑の中で。
 光世証券といたしましては、そのことに対しましては、証券取引等監視委員会から十一月十日に検査がありました。証券業協会から十一月二日にありました。その問題は全部ごらんになりましたけれども、指摘を受けた事実はありません。
 こういうふうに答弁されているわけですが、これはこのとおりなんでしょうか。
新原政府参考人 お答えを申し上げます。
 具体的な聴取の有無等につきましてお答えすることになりますと、調査の過程でいろいろと、私ども、この事案に限らずいろいろな事案で幅広くお話を伺っているのでございますけれども、監視委員会はそういったことについて公表するというようなことになりますと、いろいろな過程で御協力を得られないということになりかねませんので、お許しをいただきたいと存じます。
佐々木(憲)委員 全然質問に答えられないとなると、これは質疑ができないわけでありますが、例えば、証券取引等監視委員会の光世証券に対する検査というのは、実際に行われたのはいわゆる子会社問題が発生する前だったと思うんですけれども、子会社問題が発生した後はやっておられないと思うんですが、その時期の問題についてだけお答えいただきたい。
新原政府参考人 お答え申し上げます。
 大阪証券取引所に対する検査は、昨年の五月九日から開始をしております。
佐々木(憲)委員 証券取引所はそのとおりだと思うんですね。光世証券に対する検査の件。
新原政府参考人 光世証券につきましては、現在検査を行っておりません。
佐々木(憲)委員 現在ということは、要するに、子会社問題が発生した後はやっていないということですよね。
新原政府参考人 平成十一年から十二年二月にかけて検査をしておりますが、それ以降、検査を行っておりません。
佐々木(憲)委員 結局、その検査があったというのは子会社問題が表に出る前の段階の話でありまして、それ以後は実際行われていないわけですから、一昨日の巽社長の答弁は、検査があったけれども指摘を受けた事実はないというような話をしていました。しかし、それは、問題になるずっと以前の検査の話でありまして、今これだけ大きな問題になっていることについての検査が実際に行われていないわけですから、これは、何かそれで潔白を証明したということにはならないというふうに私は思っております。
 参考人質疑の中で巽氏は、大証がつくったペーパーカンパニーであるロイトファクスと光世証券の取引について、大変重要な証言をしました。
 昨年、参議院で行われた参考人質疑の中では、巽氏は、ロイトファクスと取引があったことを調査委員会の中で初めて知った、こう答弁されていたわけですね。自分は一切関与していない、一切知らなかった、こういう答弁でした。しかし、一昨日の参考人質疑で、巽氏は、ロイト社と光世証券が取引を開始した経緯につきまして、野口氏から私のところに電話があり、顧客として紹介された、個人の名前と電話番号だったと答えたわけですね。つまり、みずから関与していたということをお認めになったわけであります。つまり、そうなりますと、参議院での答弁は、これは虚偽の答弁だったということになるわけであります。
 個人の名前というのは何かといいますと、大証の元部長であり、ロイト社のたった一人の役員であった八木二郎氏のことであります。野口氏とは、当時大証の専務で、仮装売買疑惑の中心人物とされている方であります。八木氏と巽氏は、大証の理事と部長の関係で、これはもう旧知の仲であります。巽氏がこの八木氏とは長年苦楽をともにしてきたという人物ですから、したがいまして、巽氏が、ロイトファクスが大証の関連会社である、ペーパーカンパニーであるということを知った上で取引を開始した、こういうことになるわけです、一昨日の答弁からしますと。これは大変重要な証言だったと私は思うわけですね。
 そういう点で、これは、監視委員会は、この事情を当然巽氏からしっかり聞くべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
新原政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほども申し上げましたように、証券取引等監視委員会は、証券取引に関するさまざまな資料、情報を収集、分析をいたしまして、事実関係の解明を進めた結果、仮に取引の公正を害する違法行為が認められれば、法の定めに従い厳正に対処しているところでございますので、御指摘いただいたことにつきましても、このような監視委員会の活動の中で適切に対応してまいりたいと存じます。
佐々木(憲)委員 適切に対応、しっかりやっていただきたい。
 この法案では、取引所の組織形態についての改正というのがなされるわけでありますが、取引所幹部が仮装売買を繰り広げるような疑惑というのは、これは極めて重大な問題でありまして、こういう問題の解明なしに、やはり証券市場の信頼というのは確立できないと私は思うわけです。ですから、大証の取引高を見ましても、年々下がっているわけです。東証の方は上がっていますけれども。そういう点からいいまして、やはり大証の証券取引所そのものの信頼を回復するということは大変重要な課題であるというふうに思います。
 そういう点で、今回検査に入るまで、非常に長い間この疑惑を放置してきたという政府の責任も非常に重大であると私は思うわけです。これ以上こういう疑惑をそのままにしておくわけにはいかないわけでありまして、厳正な調査の上、しっかりとした対処を行っていただきたい。
 最後に、こういう点について決意をお聞かせいただきたいと思います。
竹中国務大臣 日本の証券市場というのが、非常に大きな潜在力を秘めていると言われながら、なかなかそれが現実に結びついていかない。いろいろな要因があろうかと思いますが、そのうちのやはり一つの大きな要因が、こういった市場そのものないしは市場の関係者に対する不信の問題があろうかと思います。
 これは大変重く受けとめておりまして、検査も今しっかりとやっておりますし、御指摘のような点を踏まえてぜひしっかりとやらせていただきたいと思っております。
佐々木(憲)委員 終わります。
小坂委員長 次に、植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。
 先日に続いて、百三条にかかわる部分を伺っていきたいと思うわけですけれども、二〇〇〇年の法改正によって、証券取引所に株式会社という形態ができることになったわけです。これは大きな一つの転換であった。その際に、公共的な機能を害してはならぬ、そういう獲得目標で現行の百三条が定められているわけでございます。改めて読み上げませんけれども、その際の、改正案の国会審議でも、政府側が何遍も、特定少数者が経営を支配しないよう、公平性、中立性、信頼性を損なうことがないようということは議事録に残っているわけです。
 とするならば、今回の百三条の改正の妥当性というものの判断基準は、百三条における「何人も、株式会社証券取引所の総株主の議決権の百分の五を超える議決権を取得し、又は保有してはならない。」というこの原則よりも、今回の改正の方が、言ってみれば、公平性、中立性、信頼性、特定少数者が経営を支配しないという観点から優位であるということが言い得なければならないのではないかと私は素朴に思います。
 いかなる点で現行よりも今回の改正案の方が適切であり、また、今申し上げたような、証券取引所の存在意義にかんがみたときに信頼に足る原則になり得るのか、その理由を教えていただけますか。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 取引所の株主ルールにつきましては、今般の法改正におきまして、近年の取引所をめぐる国際的な動向を踏まえまして、取引所間の資本提携を可能にするため、現行の五%超の議決権の保有を一律に禁止するという株式保有制限を廃止することといたしております。
 他方で、取引所の運営の公正性を確保する観点から、新たな株主ルールを整備することといたしておりまして、具体的には、五%超の議決権の保有者に対しまして、保有目的等の届け出の提出を義務づけております。それから、議決権保有の目的等を当局が把握できるようにいたしております。
 さらに、原則二〇%以上の議決権の保有者、これを主要株主と位置づけまして、事前の認可にかからしめることといたしております。取引所の適切な運営を図る観点から、さらに主要株主として不適格と考えられる者を排除することといたしております。さらに、認可を与えました主要株主に対しましては、報告徴求、検査を行えるようにいたしておりますほか、主要株主が法令に違反した場合等には、認可取り消し、その他、監督上必要な措置をとることを命ずることができるようにいたしております。
 さらに、過半数の議決権の取得、保有は原則禁止いたしております。
 また、取引所持ち株会社の株主につきましても、取引所と同様の株主ルールを設けることといった措置を講ずることとしております。
 こうした新しい株主ルールを整備することによりまして、証券取引所の自主規制機能は引き続き適切に発揮されるものと思っております。
植田委員 今の御説明、大きく二つあったでしょう。前段の話は、要するに使い勝手の話をされているにすぎない。後段の話は、るる丁寧に改正案の内容について御説明をいただいたわけでございます。
 私が伺っておるのは、現行百三条よりも改正案の方がより適正な運営に資するという、その優位性について伺っているんですけれども、恐らくそれはお答えできないんでしょうね。それは、あくまで原則は百分の五と百分の五十ですから。五%で届け出、二〇パーで主要株主といったところで。だから、それはもう答えられないというふうに私は伺ったというふうに理解しておきます。
 この改正案の百三条で、「何人も、株式会社証券取引所の総株主の議決権の百分の五十を超える議決権を取得し、又は保有してはならない。」原則がここで規定され、これは基本原則ですね。そして、その後段、「ただし、」とただし書きがありまして、ありていに言うと、証券業協会、証券取引所、証券取引所持ち株会社、金融先物取引所持ち株会社、この四つは、言ってみればこの原則の適用外ということですね。
 当然、原則を定められているんですから、まさかこの四つ以外で原則をはみ出るようなところはないわけですね。というか、むしろ、この四つ以外で五〇パーを超えるようなことは想定されていない、原則規定を超えるようなものは想定されていないわけですね。
藤原政府参考人 今回の改正案の百三条第一項におきましては、証券取引所の議決権につきまして、過半数の議決権の取得、保有を原則禁止することとしておりますが、ただし、今先生御指摘のように、証券業協会、証券取引所、証券取引所持ち株会社、さらには金融先物取引所及び金融先物取引所持ち株会社については例外にしておりまして、それだけでございます。
植田委員 そこでお伺いしたいわけですが、事の是非はともかくとして、今回の改正案で、今度は持ち株会社という制度も創設しようということになっているわけですね。その証券取引所持ち株会社の項目の中の百六条の十四で、「何人も、証券取引所持株会社の総株主の議決権の百分の五十を超える対象議決権を取得」してはならない、ここでもこういう原則が定められているわけです。
 要は、端的に伺いますと、今回のこの法案をこしらえるに当たっての問題意識は、持ち株会社をまず導入するために、法案のここの部分を、法律の整備をした、そして、それに合わせて、それと整合するように、百三条について、現行の百分の五から百分の五十という原則規定に改正をした、そういうふうに理解していいんでしょうか。
藤原政府参考人 先ほど大臣からも答弁ありましたように、現下の国際的な証券取引所間の競争ということを踏まえまして、資本提携なりあるいは業務提携、こういうものがやりやすくなるようなことをまず念頭に置きまして、そのために現行の五%超保有禁止のルールがネックになっておるということも勘案いたしました。
 他方、海外におきましても、例えば、五%超の保有禁止を導入したときに参考といたしましたオーストラリアにおきましても、その後、二〇〇一年七月に制度が変更されまして、一五%までの取得を認可制とするとか、あるいは当時、ロンドンの証券取引所におきましても四・九%を上回る議決権の保有は制限されておりましたが、これも二〇〇一年七月に撤廃されておりまして、世界的な流れといたしましてはやはり、提携等に向けましてかなりこういう制度を整備していくという方向の流れになっております。我が国におきましても、その流れにおくれてはいかぬということでございます。
植田委員 お話しされている趣旨はわかりますけれども、法律をこしらえた責任あるお立場、政府の側として、先日の参考人の、業界の方がおっしゃったことと同様のことをオウム返しにおっしゃってもらったら、そこは困るんです。
 大証、東証、証券業協会、この件について、それぞれ伺いました。それは、業界の方にしてみれば、こういうふうに、ありていに言えば、まとめれば、持ち株会社というものは、当座は別に喫緊にそれをこしらえないかぬというほど緊急性は要してへんけれども、今回こんな法改正をしてくれるのは、後々使い勝手がよくて便利でございます。そういう話ですやんか。その話を今局長もしてはるんですよ。
 私が申し上げているのはまさにそこのところでありまして、要は、持ち株会社をそういうことで制度として整備するがために百三条をいじったんですねと言ったら、それについては、そうですという答えで受けとめていいわけですよね。
 要するに、今の証券市場のさまざまな現状にかんがみということは、持ち株会社をこしらえる、そういうあり方がそれに合致したものだというふうにお考えだから、持ち株会社を創設され、その制度との整合性をとるために百三条をいじった、そういうふうに理解していいんですねということだけなんです。それはそういうことでいいですね。長い御説明は結構ですから。
藤原政府参考人 先ほどから繰り返し御説明申し上げておりますが、やはり、世界の取引所をめぐる環境の変化それから動き、そういうものに対応することと、取引所、株主のあり方、こういうものの調和を図る必要があるということで、金融審議会におきましてさまざまな御意見をいただいたわけでございます。その中には取引所の関係者も参加しておりましたし、さらに学者の方々、それから産業界の方々も含めまして、いろいろな方々が金融審で御議論いただいた結果、今回のように、こういう点で調和を図っていくべきではないかというような御答申をいただいたわけでございます。
植田委員 幾ら聞いても同じだろうと思うんですが、私は、そこは本末転倒しているのと違うかということなんですよ。
 というのは、冒頭申し上げましたように、株式会社という新たな形態を証券取引所が持つことにしたのが二〇〇〇年、その二〇〇〇年のときに、株式会社にする以上、証券取引所の持つ公共的機能というものを害さないがために百三条をこしらえた。こういう百三条になっているわけですね。これが基本原則でしょう。要するに、この基本原則の枠組みの中で、事の可否は別として、持ち株会社というありようというのが追求できるのかどうかということで本来は検討すべきなんじゃないのか。
 海外の状況が日々いろいろ変わっていきます、それは当たり前の話です。それに対応しなければならないというのも、それは言わんとすることはわかります。ただし、根本原則、要するに証取が持っているところの公共的機能、公平性、中立性、信頼性、そこにメスを入れるというのはいかがなものかということを申し上げているわけです。その原則の範疇の中で何ができるかということをお考えになったのかどうなのか。これならまるで、要は持ち株会社をつくりますから、それに合わせて百三条をいじりましたよ、そういうことにすぎないじゃないですか。
 株式会社にする以上に、持ち株会社というものがあってその子会社としての証取があるといった場合、まさに、それこそ持ち株会社の、言ってみれば公正、中立性、信頼性というものがより現行以上に問われなければ、現行法での原則以上に適切に問われなければならない。にもかかわらず、こういう条文のいじり方をするというのは本末転倒でしょう。私の言っていることはそんなにとっぴなことでしょうか。
竹中国務大臣 先ほどからの、植田議員の御懸念になっている、まさに取引所の公正性、中立性をどう確保するかというのは、もう言うまでもなく、我々にとっても極めて重大な関心事です。しかし一方で、これは植田委員もお認めくださったように、グローバルな競争環境の激化という問題もある。結局のところやはり、それをどう調和させていくか。
 前回の改正のときは、公正性、中立性を保つための一種の形式基準のようなものを五%ということで導入したというふうに理解をしております。
 今回、そういう意味では、五%超の議決権の保有を一律に禁止するという保有制限を廃止するわけですが、これも委員御指摘のように、主要株主、原則二〇%以上に対する認可制度、これは新たに、形式ではなくてその中身をチェックするという、質のチェックそのものを厳しくやるということが入っているわけであります。我々としては、そこはやはり、新しい国際環境に適応するために、しかし一方で、公正性、中立性を確保するために、単純な形式を少し緩めることではあるけれども、質について厳しいチェックを行う。そのような形で、しっかりと公正性、中立性の確保ということを図ったつもりなんです。
 この点の、環境の変化と、そういう意味では新たな次元の、新たなディメンションでの公正性、中立性の確保という観点、この点をぜひとも御理解賜りたいと思います。
植田委員 もう最後に申し上げますが、性善説に立ちたいわけですが、性善説に立てばその答弁を素直に受けとめたい。けれども、現実にさまざまな不祥事は起こっているわけです、慣行化を含めて。
 逆に、今回こういう形でこういう制度改正をしてしまうと、今でこそそういう問題が浮上するけれども、やり方次第によってはやみに葬られてしまう、隠ぺいされてしまう、そういうおそれなしやということを私は非常に危惧しているわけでございます。
 適正に運用する、するとおっしゃっていますけれども、現状においても、先日の参考人質疑において問題になったような事案があるわけでございますので、今回のこの法改正、とりわけ、原則の規定を設けながら、その後ただし書きで、その原則を超えるものが全部入る仕組みになっている立法構成というのも、本来、ただし書きというのは例外規定のはずなんですよ。それが、例外が全然例外じゃなくて常態化するような法律のつくりになっているというのも、私はちょっとこういう改正案というのはやや筋が悪いんじゃないかと思います。
 終わります。
小坂委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
小坂委員長 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。佐々木憲昭君。
佐々木(憲)委員 私は、日本共産党を代表して、証券取引法等一部改正案に反対する討論を行います。
 反対理由の第一は、本法案が、個人金融資産を預貯金から株式等証券市場へシフトする目的で、証券会社の要求に沿って、投資家保護規制を一層後退させ、販売チャンネルの多様化を進めるものだからです。
 多発する証券不祥事が示すように、現在の金融市場は極めて不公正な状況にあります。証券市場の健全な発展のためには、消費者保護法制を整備し、国民の信頼を回復することこそ求められています。
 反対理由の第二は、証券仲介業の解禁が、仲介を行う外務員の不祥事を防ぐ方策が不十分なまま実行されようとしていることです。しかも、損害が発生した場合の認定や証券会社による補償の実行に関し、証券会社に有利、消費者に不利な制度となっていることです。
 また、本法案は、ラップ口座に関し、不正行為防止の対応措置を図らないまま、一方的に現行の書面交付義務を撤廃しており、反対であります。
 第三は、証券取引所の保有株式制限の緩和についてであります。
 自主規制機関である証券取引所は、当然、公正中立な存在でなければなりません。しかし、株式会社化後の大阪証券取引所が上場審査、取引参加者審査などで不正行為を働いた上、自浄能力を発揮できないでいる状況が示すとおり、株式会社化によって取引所の公正性、公共性が弱まる状況が生まれております。その中で保有株式の制限緩和を行えば、特定株主の支配力を強め、今以上に取引所をゆがめることになります。これは認められません。
 なお、いわゆるリモートメンバーシップや取引所持ち株会社の導入については、規制、監督が困難になって不正取引を防ぐ機能が弱まり、一般投資家に被害が及ぶ懸念があります。
 以上の理由から本法案には反対であることを申し上げ、討論といたします。(拍手)
小坂委員長 植田至紀君。
植田委員 私は、社会民主党・市民連合を代表して、ただいま議題となりました証券取引法等の一部を改正する法律案について、反対の立場から討論を行います。
 本法案に反対する第一の理由は、現行法の百分の五を改正して百分の五十とする株式会社証券取引所の議決権についての改正部分であります。
 このルールは、二〇〇〇年の法改正時に、取引所の経営が特定少数者にゆだねられることにより取引所の公正な運営に支障を生じるリスクを未然に防止するため設けられたものでありました。しかし、百分の五ルールで何ら不都合がないにもかかわらず、改正から三年を経ずして再改正することのみならず、百分の二十の主要株主ルール等を設け一定の歯どめをかけるとはいえ、ルール制定時の目的を大きく逸脱しているものと言わざるを得ません。
 金融審報告によれば、「経営に対する市場のチェック機能が一層有効に働くようにするため、この規制を廃止する」とありますが、リスクを未然に防止するのであれば、改正案の百分の五十よりは、現行法の方が効果的なのは一目瞭然であります。
 実際、当面、証券取引所の総株主の議決権の百分の五十を超える議決権を取得、保有する株主は想定しがたく、改正案の百分の五十ルールというのは、その前提に、持ち株会社形態による証券取引所の統合や親子形態による提携が先にあってのルール改正にほかなりません。
 第二に、証券取引所への持ち株会社制度の導入については、我が国の場合、遠い将来はアジアのシンガポール、香港等との提携が考えられるにしても、当面はそういった条件にはなく、また、ナスダックの撤退に象徴されるように、国境を越えた取引所の提携や合併が進むような環境にはなく、緊急性を要する必然性があるとは考えられません。
 また、金融審のワーキンググループの報告によれば、今後の課題として、自主規制のあり方を挙げており、証券取引所の自主規制の機能を一カ所に集めた統一の自主規制機関も展望されているわけであります。
 取引所の歴史を顧みれば、自主規制機関としての取引所が取引の公正と円滑な有価証券の流通に寄与するために存立しなければならないことは明らかであり、自主規制は、取引所の外に置かれるのではなく市場開設者と一体となってこそ力を発揮するものであります。健全な証券市場の育成という観点からも大きな弊害があり、取引所からの自主規制機能の切り離しを展望した持ち株会社の導入は断じて容認できません。
 第三に、今回の改正によって新たに導入される証券仲介業制度も、その業務範囲は、あくまでも取引の勧誘であり、従来型の証券会社に所属する外務員との取引等と何ら変わるものでもなく、答弁や参考人の方の意見を聞いても、証券仲介業という制度を新たに創設することの積極的意義を見出すことはできません。
 証券仲介業と証券会社との関係においても、一つの証券仲介業者が複数の証券会社と業務委託をすることができるとなっておりますけれども、いわゆる複数制をとるということは、法令遵守の観点からすれば責任の所在をあいまいにする危険もあり、投資家保護という点においても重大な危惧を持たざるを得ません。
 いずれにせよ、今回の法改正は、だれもが投資しやすい市場の整備と言いつつも、結局は供給側の論理、証券会社サイドの論理で貫通されており、国民にとっての証券市場改革とは言いがたいものであり、我が党といたしましては反対するものであります。
 以上で終わります。(拍手)
小坂委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
小坂委員長 これより採決に入ります。
 証券取引法等の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
小坂委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小坂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
小坂委員長 次に、財政及び金融に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁福井俊彦君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として金融庁監督局長五味廣文君、厚生労働省年金局長吉武民樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小坂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
小坂委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井啓一君。
石井(啓)委員 おはようございます。公明党の石井啓一でございます。
 まず、株価対策について質問を申し上げます。
 今、十時過ぎの株価を見ますと、八千八十四円、五十三円高、きのうの経済財政諮問会議の中身が評価されたのかどうか、これがこのまま続けばいいんですけれども、反転して失望売りなんということにならないように、これからしっかり質問をさせていただきたいと思います。
 与党も緊急金融・経済対策を出させていただきましたし、また、昨日の経済財政諮問会議でも民間議員からの株価対策の提案があったというふうに承知をしておりますけれども、政府として、こういった提案を受けてどういう対応をなさるおつもりなのか、まずお聞きしたいと思います。
竹中国務大臣 株価の問題は、本当に皆様方にも御懸念をいただいている問題であるというふうに承知をしております。この問題に関して、与党等でも大所高所から非常に積極的な御議論をいただいておりますし、また、御指摘のように、昨日の経済財政諮問会議でも非常に包括的な議論をさせていただきました。
 今後、昨日の提案を受けてどのように議論を進めていくのか。それぞれに今日の市場の活性化に資する非常に重要な提言がなされておりますが、同時に、それを実現していくのはそれなりに障壁があるという性格の問題でもあります。これは、しかし、決して言いっ放しではなくて、何とか突破して、私の希望としては、そこに掲げられた項目すべてを何らかの形で、時間がかかるものがあっても実現するように持っていきたいという決意を持っております。
 昨日の諮問会議では、塩川大臣の方から、来週早々にでもこれは一度関係閣僚で集まって、閣僚ベースで、これまで動かなかった問題を進めようではないかという御提案をいただきまして、それに対して全員が賛同をいたしました。けさの閣僚懇談会で、それを受けまして総理から、しっかりと、集まって前向きに議論するようにというような御指示もございました。当面、この関係閣僚の場で、具体的にその成果が出るような形を生むように、ぜひ努力をしたいと思っているところでございます。
石井(啓)委員 けさの各新聞あるいはテレビ等でも、昨日の経済財政諮問会議の概要は報道はされているんですけれども、まだ議事録等も発表されていませんし、株価対策でどのような議論があったのか、もうちょっと御説明いただければありがたいんでございますけれども。
竹中国務大臣 来週の前半に議事録の要旨が公表されると思いますけれども、その議論の中身について簡単に御紹介させていただきたいと思います。
 基本的な考え方は、株価は市場において決定される、この市場のメカニズムをやはりゆがめるようなものであっては当然ならないわけであります。しかし、現実、足元では、株式配当利回りが長期債の利回りを上回っている、企業業績の実績や見通しが大きく改善している、にもかかわらず株価は低迷しているという状況にある。こうした株価の低迷には、先々の不透明感とかさまざまな問題もあるわけでありますけれども、現実問題としては、やはり民間セクターがリスクを背負えなくて、なかなかリスクマネーが出てこない、そこに株式の相互持ち合いの解消や年金の代行返上など短期的な売り圧力が強まっている。リスクマネーがなかなか出てこないという構造的な問題に加えて、そうした短期の需給が価格形成をゆがめている。しかし、これは単に価格がゆがんでいるというだけではなくて、それが実体経済にはね返ってくるという点を踏まえてしっかりと対応していかなきゃいけないということでございます。
 検討すべき課題としてさまざまなものが提案をされておりますけれども、郵貯、簡保による積極的な株式の運用、年金による積極的な株式の運用、つまりこれは、公的なルートに流れているお金をより私的なリスクマネーに持ってくるような工夫がないかという点でございます。企業による自社株買い取りの円滑化、確定拠出年金の普及や、ESOPすなわち従業員株式保有プランの創設、銀行等保有株式に関する措置、年金の代行返上に当たってのさまざまな点、将来的な問題としての税制の問題、証券市場の信頼性の向上のための証券取引法の改正等々、そのような問題が幅広く議論されました。
 同時に、しかし、これは民間企業の問題でもある、各民間企業がやはり配当性向をしっかりと上げなければいけない。これは、財界人の方から、みずからの御意見として表明されまして、この点も大変重要なポイントであったかと思っております。
石井(啓)委員 大臣の先ほどの答弁の中で、けさの閣僚懇で総理から、関係閣僚で前向きに議論してほしい、こういう指示があったということでございますが、来週から始まります関係閣僚での議論、いつまでにどんなことを決めるという、スケジュール観といいますか目標観といいますか、そういうものはございますでしょうか。
竹中国務大臣 これはまだ煮詰めている段階でございまして、閣僚が集まるといいましても、では具体的に一体だれが集まるのか、関係閣僚というのはだれなのかということ、それと、私は、時期としては来週の前半にはぜひ集まりたいと思っておりますけれども、その後どのようなペースで議論を進めていくのか、そうしたことに関してはまだちょっと今後の課題でございます。
 ただ、これは、いろいろなことをやればよいというメニューは既にある、しかし、これがなぜできないか、これがいかに難しいかという言いわけ、弁明も既にたくさんある。こういったことがむしろ前提になっておりますので、しかし、それを乗り越えて、全員が汗をかきましょう、難しいのはわかっているけれども何らかの結論を出しましょうということでありますので、それには制度改正等時間のかかるものもございますし、比較的早くできるものもある。そういった点も含めて、スケジュール観もしっかりと出していきたいと思っております。
石井(啓)委員 それではしっかりと議論をいただきたいと思います。
 竹中大臣、具体的な問題、ちょっとこれは質問通告していなかったんですけれども、大臣に直接関係するテーマとしては、銀行保有株取得機構の機能改善も問題がございますね。
 いわゆる売却時拠出金の軽減あるいは撤廃ということで、先日の当委員会での答弁では、与党内における議論の推移を見守るという趣旨の御答弁だったと思いますけれども、与党の緊急金融・経済対策の中では、その売却時拠出金も含めて検討するというふうになっておりますし、昨日の与党の政策責任者会議での議論では、この際撤廃してもいいんではないかという議論が大勢であったということでございますけれども、この点については、大臣はどういうふうにお考えでいらっしゃいますか。
竹中国務大臣 銀行の株式保有に関して、それをティア1の範囲まで減らすという圧力がかかっている、それに対する一つのセーフティーネットとして御指摘の制度が用意された。一方で、金融市場の安定化という観点から、これを補完するような形で日本銀行の制度がある。しかし、これは委員の皆様方にたびたび御指摘をいただきましたけれども、保有株式の買い取り機構の方の買い取りは、実績として見る限り、日銀に比べてかなりおくれている、そのような事実がございます。
 これは、そうした観点から、与党の方で大所高所から御議論をいただいているということに対して、私はもちろん大変感謝をしております。もちろん、その場合の最大の課題は、国民負担というのをどう考えるかということでございますけれども、これは、現下の状況にかんがみ、先ほど、財務大臣みずから、財政当局みずからが、そのような問題に関して前向きに考えるという御指摘をいただいておりますので、我々としては、これは極めて歓迎すべき財務大臣の御答弁であったというふうに思っております。
 そうした観点から我々としても努力をしたいと思いますし、与党の方でもぜひ前向きに、積極的に御努力をいただければありがたいというふうに考えております。
石井(啓)委員 本来、これは閣法で出しましたので、与党に期待されるというより、実は私は役所みずからやってほしいなというのが本音なんですけれども、まあそこは、ストライキしてもしようがありませんから、与党の方でしっかりやるということになるかと思います。
 それでは、もう一つ具体的な問題、厚生年金基金の代行返上、きょうは年金局長に来ていただいています。
 まず、代行返上による株式売却が、これは三兆とか四兆とか言われておりますけれども、一体どの程度の規模なのか、どのように把握されているのか、それを確認いたしたいと思いますし、また、与党の提案の中でも、この現物株の返上を認める条件の緩和、あるいはその返上時期、ことしの十月一日からというふうに予定をされているようでありますけれども、この前倒しについて検討を要請しているわけでございますけれども、この点について改めて見解を伺いたいと思います。
吉武政府参考人 五月一日現在で、代行返上の認可につきまして、まず、将来返上を行います、その認可を受けた基金が五百二十三基金ございます。それで、この基金につきまして、十三年度末でございますけれども、これは確定をいたしておりますので、その時点におきます株式を実は保有いたしておりますが、代行部分とプラスアルファ部分と一体に保有いたしておりますので、どこが代行部分だということは特定はしがたいんですが、代行の比率とプラスアルファの比率というのはわかりますので、その比率で案分をいたしますと、約二兆九千億という状態であります。
 しかし、先生御案内のとおり、十四年度に入りまして、国内株式、外国株式は時価が落ちておりますので、私の推測で申し上げますと、十四年度末の決算、これは七月ごろ出てまいりますけれども、その状態では、多分、株式の評価額は相当落ちているだろうというふうに思っています。
 それからもう一つ、これはちょうどゴールデンウイークの前に、代行返上の売りによって非常に市場に悪影響が出ているというような報道がございました。個別の基金はなかなか確認ができないわけですけれども、主にこの基金の資金運用に携わっていますのは信託銀行でございますので、信託銀行に幾つか聞いておりましたところでは、四月の時点で申し上げますと、企業年金関係の売買については通常の売買だということを聞いております。非常に大きく売りが上回っているようなことはないであろうというふうに言っております。
 それで、十三年にこの法律が制定をされましたので、一応今のスケジュールで申し上げますと、ことしの十月から積立金の移管を開始するということでございますが、これは十四年度決算を見てみなければわかりませんけれども、基金は機関投資家でございますので、市場への影響をある程度考慮しながら株式の売却をするというのが大体基金のスタイルでございますので、むしろ割と分散しながら売却をしているようでございます。
 そうしますと、中には、十四年度にある程度売却を終えているところもございまして、そういう全体像というのは十四年度決算を見ないと明確に申し上げられないということでございますが、先ほど申し上げました、株式の実際の、例えばTOPIXの価格の変動みたいなことを申し上げますと、約二兆から二兆半ばぐらいというのが一つの非常に大ざっぱな推計ではないか。いずれにしましても、これは決算を見て精査をする必要があるだろうというふうに思っています。
 それから、十月に一気に返上が行われる、あるいは株式売却が行われるというようなことが言われることが多いわけでございますが、現実の基金の状況を申し上げますと、十四年度で、責任準備金に対しまして資産運用結果が非常に厳しい状況でございますので、責任準備金をそろえるためには企業は実は追加負担をする必要があるわけでございます。したがいまして、十四年度決算の基金の状況を見、それから母体企業の、御自分のところの十四年度の決算なり十五年度の経営の見通しを見ながら、いわゆる追加の拠出をしていただいて、そのことによって実際に返上が完成するという形でございまして、今申し上げました五百二十三基金につきましても、では、これは十五年度に実際に返上をされるのか、あるいは十六年度以降に選択をされるのかということは、今後の決定になるだろうというふうに思っております。そういうこともございまして、どちらかといいますと、なだらかに、分散されながら返上がされるんじゃないかというのが私どもの今見通しでございます。
 それから、二番目の先生の御質問でございますが、まず返上時期でございますけれども、積立金の移管というのは、市場なり経済的には非常に大きな要素でございますが、もう一つ忘れてなりませんものは、積立金を移管しますと、代行部分につきましては、基金には給付に必要な原資がなくなってまいります。
 したがいまして、これを社会保険庁が受け入れる形で引き継ぎまして、例えば、返上いたしました月までは厚生年金基金が代行部分の給付をいたしますけれども、その次の年金分からは社会保険庁が給付をするということになっています。実は、二年半の猶予をいただきましたのは、そのためのシステム開発を行ってきているところでございます。そのシステム開発は、現在もまだ完成に向けてやっておるところでございます。そういう意味で、これは、資金の移管と給付の引き継ぎは同時に適切に行われることによって返上が完成するという形でございます。
 それで、最近でごらんいただきますと、こういう事態のときに、システムのミスによっていろいろ御迷惑がかかった事例がございますが、私どもは、決してそれが起こらないように、年金受給者にこのしわ寄せが来ないようにやらなければならないというふうに思っておりまして、そういう意味から申し上げますと、代行返上の時期の問題というのは非常に難しい問題がございまして、システムと両方あわせて、受給者にとって安全な形でどう考えていくかという問題でございます。
 それから、物納要件の緩和につきましては、御案内のとおり、公的年金はパッシブ運用が中心でございますから、十三年に国会でも御審議をいただきました法律上の要件としましては、有価証券指数と連動することが要件となっております。したがいまして、基本的にはパッシブが対象となるということでございますので、そのパッシブの要件につきまして、既に私どもの案を示させていただきまして、パブリックオピニオンをお聞きいたしておりますけれども、これまでの御議論も踏まえまして、さらに検討することがあるかどうか、これは考えてみたいというふうに思っております。
 いずれにしましても、昨日、与党三党の対策、それから経済財政諮問会議の御審議のこれからの状況につきまして、私ども事務当局の方から坂口厚生労働大臣にも報告をいたしておりますし、来週に向けましても、大臣に御報告をし、大臣とよく御相談をしていきたいというのが今の私どもの状態でございます。
石井(啓)委員 返上時期の前倒しについてはシステムの問題もあるということであります。私どもも、物理的に無理をしろというふうに主張するつもりはございませんけれども、大臣も五月六日の記者会見では、各界に対してプラスになるということであれば、それは十月というふうにこだわる必要はないというふうにもおっしゃっておりますから、可能な限り前倒しをしていただきたいと思っております。
 それからもう一つ、きょうは福井総裁にお越しをいただきましたので、日銀の銀行の保有株取得についても与党の方で提案をしておりまして、買い取り枠、二兆から三兆に広げていただきましたけれども、さらにそれを広げられないかということ。あるいは、今銀行株の購入についてはやらないようになっていますけれども、これはやっても構わないんではないか、こういうことを提案しておりますが、この点についてはいかがでございましょうか。
福井参考人 日本銀行が銀行保有株の買い取り措置に踏み切っております理由は、既に委員御理解いただいておりますとおり、株価変動が金融機関の経営に大きなリスクを及ぼしてくる、これを遮断する、そのために、金融機関が保有株式の削減努力をしているのを強力にバックアップしよう、そういう趣旨に立ったものでございます。特に、株式を自己資本のティア1を超えて持っている部分について緊急の対応が必要だということを強く意識した措置でございます。
 今日までのところ、日本銀行は一兆二千億円強の買い入れを既に実施しておりまして、当初の目的をかなり達成しつつあるという感じを持っておりますが、現時点での調査によりますと、なお二、三兆円ぐらい、ティア1を超える額の株を金融機関が保有し続けている。これについてもその削減努力をさらに促していく必要があるという点が私どもの基本的な認識でございます。
 私ども、昨年の秋にこの措置を初めて実施しましたときに、二兆円という枠を用意いたしました。十分かなと思って用意した枠でございますが、それは、市場における売却とか政府の買い取り機構による吸収とかというふうなものも相当額を想定しながら、日銀としては二兆円用意すれば相当十分かなと思ったわけですが、その後の状況を見ておりまして、さらに一兆円日銀として枠をふやした方が、今後、なお残っている二兆円強の市中の保有額をかなりの程度、日本銀行自身で吸収し尽くせる可能性があるということで、一兆円増枠したわけであります。
 こういう経緯からもおわかりいただけますとおり、日本銀行としては、できる限り実情に即した対応をしようということが基本的な考え方でございますが、現在ただいまの時点ではなお二兆円近い枠のゆとりを持っておりますので、今直ちにこの枠を引き上げる必要は必ずしもないのではないかというのが率直に感じているところでございます。
 それから、銀行株の購入についてどうかという点でございますけれども、私どもの銀行保有株の買い取り目的が、今申し上げましたとおり、株価変動リスクが金融機関経営に悪い影響を及ぼすことを遮断するという意味でございますので、金融機関が持っております株の多くは銀行株以外の普通の株でございますので、それを吸収していくことによってほとんど目的が達成されるであろうということがあります。
 それから、強いて申し上げれば、日本銀行が銀行の株を直接取得することについて、日本銀行というのは、金融機関に対しては、金融政策上、直接の与信を行う対象先でございます。お金を貸す立場と株を保有する立場というのは、一般の市中の場合でも、株主と貸し手というのは、いわゆるエージェンシー問題といいますか、利害対立が起こる関係にあるということがございます。日本銀行と金融機関との間でも、貸し手の立場と今度は株主の立場というのはやはり基本的に利害相反の部分があるというふうに認識し得るわけでございますので、この点については慎重に考えさせていただきたい、これが基本的な立場でございます。
石井(啓)委員 買い取り枠については、確かに総裁のおっしゃるのも私も理解できます。ただ、銀行株については、信託銀行を通じて購入しているということもありますからインサイダーの心配もありませんので、そんなにこだわる必要はないんじゃないかなというふうに率直に私は思っております。
 それから、ちょっと質問を飛ばさせていただいて、公的資金の問題、福井総裁に続けてお話を伺いたいと思います。
 三月十八日、総裁に就任される前に参考人としてお呼びいたした際にも、積極的なお考えの披露がございました。また、その後の、総裁になられてからの記者会見等でもお話をされているようでありますけれども、金融危機に至る以前の公的資金のいわゆる予備注入といいますか、そういったことについて積極的なお考えに立っていらっしゃる背景なり認識なりというのをもう少し詳細にお伺いいたしたいと存じます。
福井参考人 不良債権問題の処理に関する私の基本的な認識でございますけれども、今この問題は大きな局面、変化の時期に差しかかっているというふうに思っています。
 つまり、過去の問題処理としての不良債権問題の処理、そこ一点に視点を凝集して考えていた時代から、今や、産業再生機構が新しい業務を開始されて、不良債権問題の処理と産業の再生ということが一体的に考えられるようになってきた。これは、経済の新陳代謝のメカニズムを円滑に動かしていくという前向きのイメージを持った処理の段階にこれから移ってきているということがございます。
 それから、日本の大手の金融機関が民間から大幅な増資をして、今、その増資に応じた投資家から、金融機関というのは、単に後ろ向きの不良債権の処理だけではなくて、前向きに新しい収益性モデルを早く確立するようにという投資家の声が金融機関に届くようになっている。これもやはり、経済全体としては将来に向かっての新しい新陳代謝のメカニズムが強く作動するような方向にみんなで進みましょう、そういう動きが感じられるようになってきているわけでございます。
 したがいまして、今お尋ねの金融機関に対する公的資金の投入というのも、延期はされましたけれども、この次にいよいよ最終的に来るペイオフ解禁の時期、これを乗り越えることによって、その次は、本当に日本経済の将来展開につながるような、金融の世界でも新しいダイナミックスが働くような世界に進むんだ、その前段階の準備を完璧にしなければいけない。
 恐らく、金融機関におかれましては、これからさらに、体質改善、さらにはいろいろな再編、あるいは新しいビジネスモデルの確立というふうに、激しい前段階の準備作業が進むと思いますけれども、その過程で改めて自己資本の不足ということを感じられる金融機関が少なくないのではないかと私は考えております。そのときの受け皿が、現在の法律で、つまり、金融危機が起こったときに対応するというかなり後ろ向きの物の考え方での対応が用意されている法律の枠組みよりは、やはり新しい経済の新陳代謝のメカニズムにしっかり移っていくんだ、その過程での一里塚として、前向きの装いを持った公的資金注入のフレームワークというのが必要なのではないか、国民に、将来への明るい希望につなげるもう一枠欲しいのではないかというのが率直な気持ちでございます。
石井(啓)委員 それでは、竹中大臣に同じく公的資金のお話を伺います。
 金融再生プログラムの中で、新しい公的資金に関する検討をやるということで、今金融審議会での検討が進められているというふうに承知をしておりますけれども、今その検討状況がどうなっているのか。
 また、そもそも、金融再生プログラムの中に盛り込んだということは、大臣自身が公的資金注入については前向きなお考えであるというふうに思っておりますけれども、大臣自身のこれについての御見解というのはどうなのか、お伺いをいたしたいと思います。
竹中国務大臣 今、石井委員御指摘くださいましたように、昨年の十月に金融再生プログラムを取りまとめます段階で、やはり自己資本の充実は不可欠である、自己資本の充実の手段として、政策の枠組みとしてどのようなものを考えるべきかということ、大変強い問題意識を持ったところであります。
 御承知のように、今は、危機が起こった場合に危機宣言をして、その上で危機対応として、申請に基づいて公的資金を入れるという枠組みだけが存在しているという状況になっております。危機のときはそういうものが必要である。しかし、そうでないときは、通常のケースであるならば、市場において、経営判断において、経営努力においてすべての問題が片づけられるべきであるということになるのだと思っております。
 しかしながら、危機ではないけれども必ずしも健康体ではない、もちろんそのような状況が続いていること自体が大変この国の経済の問題であるわけでございますけれども、そのような場合に一体どのような対応が必要になるのかということは、やはり予断を持たずに真っすぐに考える必要があるというふうに考え、そうした考えに基づいて、再生プログラムの中に、金融審のワーキンググループで、この問題について、新しい公的資金の枠組みが必要かどうかということを含めてしっかりと検討していただきたいということを明記した次第でございます。
 検討状況についてのお尋ねでございますけれども、このワーキンググループは昨年の十二月十九日に設置をされておりまして、一月の十六日から四月の十八日まで既に五回の会合が開かれております。これは今まさに、どういうことが可能かということについて日本を代表する専門家に知恵を絞っていただいておりますので、しっかりとそこで議論がなされるものというふうに考えております。
 いずれにしましても、危機ではないけれども健康体ではない、そういう日本の経済の現実を受けとめた上で、一体どのようなことが考えられるのかということについて、ぜひともこのワーキンググループでは知恵を絞っていただきたいというふうに思っているところでございます。
石井(啓)委員 それでは、金融審議会の検討ですけれども、いつまでに結論を出すおつもりなのか。また、その結論というのは、例えば新しい公的資金の制度であれば、制度設計まで含めての内容まで期待をされておるのか。その点について伺いたいと思います。
竹中国務大臣 まず、期限でございますけれども、これは金融再生プログラムで期限を切っております。可及的速やかに行いたい、しかし、拙速な議論はとてもできない大問題でありますのである程度の時間をかけたいということで、ことし前半、今もう五月でございますから、六月の末までにはしっかりとした答申をいただきたいというふうに思っております。
 その答申の中身そのものにつきましては、具体的な、どのような枠組みが必要かということの骨格に関して、ぜひ明快な方向を示していただきたいというふうに思っているところでございます。
石井(啓)委員 最後、ちょっと時間がなくなって恐縮なんですが、竹中大臣にお伺いします。
 銀行と生保の資本の持ち合い、いわゆるダブルギアリングと言われているものが最近とみにあちこちで指摘をされております。これは両業界が健全であれば何も問題はないんですけれども、銀行業界もあるいは生保業界もなかなか健全性に対して厳しい見方がなされているということで、これが持ち合いをするということが逆に資本を脆弱にしているのではないか、あるいは、片方が倒れればもう片方に大変な影響を及ぼすということで危険性があるのではないか、こういう指摘がございますけれども、今の持ち合いの状況がどうなっているのか、また、脆弱性、危険性というのはどういうふうに認識をされているのか、最後に伺いたいと思います。
伊藤副大臣 お答えをさせていただきたいと思います。
 大手生命保険会社十社は、先般の、平成十四年度上期の報告がなされておりまして、この報告に基づいて単純に計算をしてみますと、十四年九月末において、生命保険会社が銀行等から調達している基金及び劣後ローン等の額は、それぞれ、八千二百八十億円、そして一兆百十億円になります。また、大手生保十社が保有している銀行株式の額及び銀行等に対する劣後ローンの額は、それぞれ、二兆六千四十六億円、五兆六千九十三億円となっているところでございます。
 このように、銀行は生保会社に基金や劣後ローンを拠出している一方で、生保会社は銀行株式や銀行に対する劣後ローンを保有していることは事実でありますが、いずれにいたしても、銀行、各生保会社は、その与信や運用について的確にリスク管理をしていくことが当然でありまして、当局においても、各生保会社そして銀行の経営の健全性確保の観点から、適切に監督に努めていく必要があるというふうに考えております。
石井(啓)委員 時間が参りましたので、以上で終わります。
小坂委員長 次に、山田敏雅君。
山田(敏)委員 山田敏雅でございます。
 きょうは、銀行の貸し手責任、これをちょっとお伺いしたいと思います。
 去年の十一月二十七日に、竹中大臣は私の質問に対して、金融消費者、金融機関からお金を借りて被害に遭った人たち、この消費者を守る法体系が日本は諸外国に比べておくれている。私は、アメリカの例、イギリスの例、ドイツの例を申し上げました。それらの国では、銀行が優越的な地位を持ってやった契約は無効である、あるいはアメリカの場合は、銀行と消費者の裁判のときに、たとえ銀行に不利な証拠であっても出さなければいけないというディスカバリー制度がある、これは日本にはありません、そういうことを申し上げまして、竹中大臣が、これは法改正を含めて、金融の消費者を保護する観点が日本には全く欠けているから、これから検討していかなきゃいけない、こういうふうに答弁いただきました。
 きょうはその延長で、きょうもたくさんの被害者の方が来ていらっしゃるんですが、銀行の貸し手の責任というのが日本の法体系の中では問われない、こういう体制になっています。
 後でちょっとゆっくり申し上げますけれども、例えば、ここに来ておられる方で、年収二百万円の人に五億円の融資をしました、こういうことがありました。それから、脳梗塞で痴呆状態の方に二十四億円の融資を繰り返した、こういう常軌を逸した融資行動があるんですね。
 これについて、もちろん皆さんは裁判を起こされているわけですが、アメリカでは、こういう常軌を逸した融資行動というのは、貸し手に厳しく責任が問われています。日本の法体系ですと、銀行法というのがあって、銀行法の中に、銀行は公共的ものである、非常に高度な公共性がある、いろいろな大衆の方は自由に信用して取引をするわけですから、非常に高度な公共性があるわけですね。これは銀行法の中でうたってある。
 そうすると、銀行法を管理する監督局長、まず銀行の貸し手責任についてどういうことを今までやってきたのか、そして監督局として責任を問うたことが一度でもあるのか、これを答弁してください。
五味政府参考人 お答えいたします。
 一般的に、銀行の公共性あるいは業務の適切かつ健全な運営ということが求められておりますので、この貸し手責任というのが、具体的なケースがどういうものかということによるわけでございますけれども、これは一般論で申し上げますと、こうした業務の健全かつ適切な運営という観点から実態把握をいたしまして、問題があるようであれば具体的に報告を求める、あるいは、そこでさらに法令違反等の事実が確認されれば行政処分を含め適切に対応する、こういうことでこれまで対処をしてきているところでございます。
 ちょっと、貸し手責任ということでも、具体的な案件にもよりますので、一般論でしか申し上げられないと思います。
山田(敏)委員 バブル後に、恐らく百万人近い方がこの金融被害に遭っているんですが、それ以来、国会でこの問題が取り上げられるたびに、今の局長の答弁、個別の案件だから答えられない、民事裁判をやっているから私には関係ありません、こういうことを繰り返してきたんですね。
 私が今質問したのは、アメリカの裁判では判例がたくさんあるんですが、はっきり銀行の貸し手責任を問うたことがありますか、ありませんかという質問です。竹中大臣、どう思われますか。
竹中国務大臣 銀行の貸し手責任を問うということの意味なんだと思います。さまざまな問い方がもちろんあるのだと思います。契約等々で、ある意味では不当な契約を故意に導いて何らかの不法性が認められるような場合、これは裁判所が責任を問うわけでありますけれども、我々は金融監督当局という立場で何ができるか。
 前回、委員から御質問をいただきましたときに、私が御答弁申し上げましたように、これは金融のみならず、日本の法風土といいますか、法の枠組み全体の問題が絡まっておりますので、まず法務省の方でもいろいろ御議論いただいておりますけれども、我々も同じような問題意識を持って制度の進化に努力したいというふうに考えているわけでございます。
 例えば、我々が検査監督をするわけでございますから、リスク管理体制等々で貸し手に問題があった場合、これは我々は責任を問うわけであります。したがって、山田委員の御指摘の責任問題というのは、具体的にどのような問題なのかということにも依存するのかと思いますが、繰り返し言いますけれども、我々は、その業務、財産の状況について的確な実態把握、これは我々の仕事でありますし、仮にリスク管理体制等の問題点を把握した場合には検査結果等々において通知する、それに基づいて報告を求めたり、必要に応じて行政処分をやる、これは常にやってきたことでございます。
山田(敏)委員 大臣は、銀行の貸し手責任というのは何のことかよくわからぬと今おっしゃったんですね。アメリカの裁判所で、はっきりこの基準があれば銀行の貸し手責任ですというのが五つございます。今申し上げます。
 一つは、普通でないような借り手に対するコントロール。要するに、この人に貸して大丈夫かというのを判断しなかった。それから、先ほど言いました常軌を逸した貸し付け。年収二百万円の人に五億円貸しますというのは常軌を逸した貸し付け行動だ。三番目は、プロフェッショナルとしての態度が欠如している。要するに、数字の見通しとかそういうのがきちっとできていないのにやる。それから、貸し手と借り手に特別な関係がある場合ということです。あと、利益相反行為というのがございます。これが銀行の貸し手責任を厳しく問われるケースなんですね。
 今おっしゃったのは、リスク管理、要するに銀行が貸して損するかしないか、これはやりましたということなんで、私の質問に答えていらっしゃらないんですが、では、なぜ銀行の貸し手責任が非常に問題になるかということをよく聞いていただきたいんです。
 日本の場合は、今百万人の方が被害を受けられて、私の知っている裁判は千件ぐらいあるんですが、ほとんどのケースは原告側、要するに被害を受けた人が全部負けています、千件のうち一件か二件しか、よほどの証拠がない限り。自宅を競売にかけられる、あるいは家族が全員ホームレスになる、こういうことが現実に全部起こっているわけですね。
 それはなぜかというと、民事訴訟法は、訴えた原告に立証責任があるんです。さっきのおかしなケース、一つ言いますけれども、ほとんどのケースは、例えば、変額保険でしたら銀行がついているから間違いないですよ、だから三億円借りてください、変額保険。でも、変額保険は破綻する危険があるんですね。破綻したら、あなたの自宅は競売にかけられて、あなたたち家族はホームレスになりますよ、これは説明していないんですよ。しかし、裁判になると、銀行が出てきて、いや、ちゃんと説明しましたと。それは、銀行がうそをついているのを原告側が立証しないと、この裁判は、裁判官は判決を下さなきゃいけないから、立証できない人の方が負けるという判決を下しているんです。真実はどうであったかというのはやっていないんです。
 だから、民事訴訟法等、要するに裁判の中では、銀行の貸し手責任というのは一切問われないんですね。問われるのはどこかといったら、金融庁が監督する銀行法という中に、今言いましたように、銀行というのは非常に高度な公共性がある、それから、大衆が信頼している、それで、高度な専門知識がある、圧倒的な情報量がある。
 これはアメリカの文章を引用しているんですけれども、だから、金融機関は顧客に対して非常に注意をして融資をする、あるいはそういう金融等の取引をする注意義務がある、これははっきり言っているんですね。これが、今おっしゃったように、金融庁の中には全く欠けているんです。
 リスク管理が出ていたら、それは検査して大丈夫ですということなんですが、監督局長、今あなたは、銀行法に疑いのある場合は報告を求めますとおっしゃったですね。今まで私が質問しているのは、その報告を聞いて、銀行の貸し手責任、今僕の言ったことを聞きましたでしょう、こういうケースは貸し手責任がありますということを本当に指導して、あなたに貸し手責任がありますと言ったことはありますかという質問です。わからないならわからないと言ってください。
五味政府参考人 例えば、一つ一つの苦情案件などにつきましても、そうしたことについて、銀行にどのようなことを言ってこられたか、それについてどのような報告が私どもに来たかというようなことを開示いたしますと、これが銀行のいわゆるプライバシー、あるいは銀行の経営の問題ということに直結いたしますので、これは開示はしないということになっております。
 ただ、申し上げたいのは、問題になりそうだぞ、これはどうも法令違反かどうかを確認してみる必要があるのではないかというものについては事情を聞くということがございます。それは、今、貸し手責任という包括的なお話でございましたけれども、例えば過剰融資というお話でありますれば、それは銀行の方が、返済能力、どういう原資から、貸したお金からお金が生まれるわけですから、必ずしも、年収比何倍以上貸してはいけないというような、そういう規制をするべき性格のものではありませんので、一つ一つの契約の中で、そうした経済合理性に基づく貸付行為であったのかどうか、これが、今大臣が答弁いたしましたようなリスク管理上の問題として、私どもは、必要があればその事情を聞く、こういうことでやっておるということでございます。
山田(敏)委員 銀行法の中に、今僕が言った銀行の貸し手責任というのがはっきりあらわれてこないんですね。ですから、今言ったような答弁になるんですが、実は去年、監督局に、個別のことでよくわからないとおっしゃったので、ちゃんと僕は担当者に説明してあります。
 こういうケースがあります。これは、武内さんというケースですが、年収二百万で、盆栽をやっております。多少土地があります。ここに相続税の問題があるから借金をした方がいいですよと。盆栽の美術館をつくればいいです、伊豆の山の中に五億円で盆栽の美術館をつくりなさい、ついては、事業計画書がありますと。事業計画書は、では五億円をどうやって返済するのかと書いてあるわけですね。毎日三十台バスが来ます、その入場料の収入でこの五億円の返済ができますと。だけれども、それは伊豆の山奥ですから、もちろん担保価値がないから、東京の自宅、約三百坪あるんですけれども、今まで長年盆栽をやってきていらっしゃるから、広い土地が要るんですよ。
 これを私も、普通の博物館、美術館を建てる方のコンサルティングをやる方の意見を聞きました。博物館や美術館で、単独で収益が上がっているところは日本にはありませんよ、何でこんな美術館をつくることが五億円の返済ができるんですかと皆さんおっしゃいました。実際、調べてみたら、公機関の補助金なしで収支が成り立っている博物館や美術館はないんですよ。
 これは銀行が判断したから構いません、担保があるから構いませんと。だけれども、実際に起こっていることは、この五億円を、六人の保証人をとって、借りた本人はもちろん、娘さんも家族も親戚の人も、これは保証人ですから、どういう意味かおわかりになるでしょう。自分たちの財産、自分の預金、もちろん土地、建物、すべて競売にかけられて、なくなるんですよ。
 銀行の貸し手責任があるんですか、ないんですか。答えてください。
五味政府参考人 ただいまの答弁の繰り返しになりますけれども、具体的な案件について、その適否を、こうした場で私どもがコメントをするということはできません。
 ただ、銀行においてそうしたプロジェクトについての融資を行うについて、適切なリスク管理が行われているのかどうか、つまり、そうした与信を行った場合に、その与信の管理はどういうふうにすれば適切であるのか、あるいは、その返済が確保できるような計画になっているのかいないのかをきちんと審査しているかどうか、こういった点が問題になるわけでありまして、今のお話であれば、そうしたいわゆる与信決定、与信管理における審査の体制なり、あるいはその実行の問題として、監督上、検査上これが適切であったかどうかということが見られる、こういうことになるわけでございます。
山田(敏)委員 大銀行というのは、何十人も弁護士がいて、訴えられたら、裁判で幾らうそをついても、偽証罪というのは今までないんですよ。記憶間違いでした、これは事業計画もまともでした、担保価値もちゃんとありました、それで終わりなんです。ところが、訴える方は個人でやっているんだから弁護士費用が大変だ。そんな、控訴できるなんてお金のある人はいないんですよ。圧倒的に強い者の立場と弱い者の立場がある。これは国としてちゃんと考えなきゃいけない、これは政治家としてやらなきゃいけないと思うんですけれども、竹中大臣。
 ではもう一つ、これは杉山さんという人、UFJ、三和銀行のケースですけれども、この方は重症の脳梗塞で倒れました。入院をしました。入院をした途端に、次から次に融資が行われました、合計十九回。融資をすると、四日後には定期預金に入れる。そして、その定期預金を担保にしてさらに融資をする。自分の株を売った売り上げが入ると、直ちにそれを担保に融資をする。融資をすると、直ちに定期預金に入れる。定期預金を担保にまた融資を繰り返す。十九回、入院している間に三和銀行はやりました。二十四億円融資をされました。
 今、御主人はもちろん禁治産者なんですが、奥様が保証人になった。この保証人の書類も銀行がつくった、本人の自筆じゃない。印鑑も持っていない。これは裁判をやっているんですよ、民事訴訟。銀行は、いや、本人は元気でした、いや、ありました。これはうそなんですね。お医者さんが来てやっているんですが、裁判官はこれを、原告は立証できない、うそか本当かを、真実を判断するんじゃなくて、立証できたかどうかというのをやるんですね。
 これは明らかに、金融庁が銀行の貸し手責任ということに余りにも無責任、余りにも無神経。これについてきちっと、法律の適用を含めて、検査をやって、そして監督局がやらなきゃいけない。今答弁いただいたように、先ほどの武内さんのケースですと、これは明らかに変な融資ですね。これは、ちゃんと報告を求めて、是正をするということをやってもらわないと、民事裁判ではどうしようもないんですね。
 これについて、大臣、いかがお考えですか。
竹中国務大臣 委員が御紹介いただいた二件のケース、個別の話になりますと、もちろん、こちらの言い分、あちらの言い分ありましょうから、私は個別のことに立ち入る立場ではありませんが、しかし、少なくともお話を聞いている限りは、やはりこれはひどい話だなというふうに感じます。
 こういう場合に、政策的にどのように対応が可能かということを、しかし、ぜひ冷静に考えなければいけないと思うんですが、金融庁として、このようなものに対して何らかのことをやるような権限というのは、これは今の法体系では与えられていないわけですね。その意味では、リスクがある場合に関しては、金融の判断について、金融のリスク面での検査監督はしっかりやっております。したがいまして、局長の答弁はある意味で私たちの立場を今非常に誠実に示しているものだ、この点は御理解をいただきたいと思います。
 私も、アメリカに住んで、裁判に巻き込まれたことがあります。その中で非常に感じるのは、委員は先ほど、レンダーライアビリティー判例の御紹介をしてくださいました。これはまさに判例なんですね。アメリカの金融当局が、こういうことを、法律をつくってどうこうしていることではなくて、これは一つの判例の中で出てきた。
 私、前回の答弁で申し上げましたように、これは委員自身が大変お詳しい点だと思いますが、日本の場合、なかなか判例が出ないという法風土そのものに大きな問題があって、この点については、我々としては、金融の問題というのはどんどん事態が変化していくので、毎日毎日新しい事例が出てきますから、成文法だけではとてもカバーできない。判例が新しい法の枠組みをつくっていくというスタイルを何らかの形で取り入れてもらわないと、事態には対応できない。その一つのひずみが今御指摘のような形になっているんだと思います。
 これは、我々としては、骨太方針の中で、司法のそういった意味での強化ということは一方で考えて、法務省にはお願いをしているわけでございますけれども、金融庁としてできることは、現状では少なくとも限界がある。そうした点を踏まえた上で、法制度の整備という点に関しては、これは骨太の方針にも示されているように、法務省等々で、やはり日本の将来のためにも、ぜひしっかりと整備していってもらいたい問題だというふうに思っております。
山田(敏)委員 きのう法務大臣に申し入れに行ってまいりました。これは金融被害の方と、それから貸し手責任のこと、もう一つは、「ハンコが凶器になる」というアエラの最新の記事です。この方、印鑑の問題で大きなトラブルが起こっているんですが、そのときに今の議論をしました。
 そうしたら、何と森山法務大臣は、今大臣がおっしゃったことと同じことを言われまして、そんなひどいケースがあるんですか、それは金融庁の仕事でしょうと。今答えられたら、いや、そんなひどいケース、それは法務省がしっかりやってもらわなきゃ。
 僕が言っているのは、金融庁は、銀行法という法律があるんだから、銀行が貸し手責任というものをしっかりやっているかどうかということを、ある程度ルール、内規でもいいんですよ、法律を今つくれと言っているんじゃないですよ、こういうことがあったときはこうだと。例えばアメリカではこういうふうに、判例がたくさん出ているから、ある程度ルール化されているわけですよ。これをしっかりやってほしいということを言っているんですが、いかがですか。
竹中国務大臣 法務大臣のお話が、お言葉がありましたけれども、ちょっと我々、その点は確認をしておりませんので……(山田(敏)委員「きのう言われたんですよ」と呼ぶ)きのうですか。
 委員の問題意識としては、今の業法の枠組みでそういうことができるかどうかということに集約されているのかと思います。ただ、我々の認識では、我々に与えられた権限というのは、民事の訴訟の分野と我々が行う検査監督の間にはやはり一定の線引きがあるということなのではないかと思っております。
 繰り返し言いますが、したがいまして、そういったアメリカの事例も、それはある意味で判例でそのことが示されて、金融行政の中で示されているということではない。この点は、我々なりに勉強はいたしますけれども、なかなか難しい問題ではないのかなというふうに思っております。
山田(敏)委員 ちょっとゆっくり考えてもらわないと。きょう僕が質問したから、責任を転嫁して、いや、難しいですからと、そういう問題じゃないんですね。百万人の方が被害を受けているんですから、真剣に、これは指針でも政令でも何でもできるじゃないですか、大臣なんだから。ちゃんと議論してやったらいいじゃないですか。
 それで、今民事裁判でやっているんだから見守るしかないんだ、こう今まで言われたんですが、「ハンコが凶器になる」という問題、これは、千件のケースでほとんど全部敗訴した原因の一つは、日本の百年前の、民事訴訟法二百二十八条に、印鑑が押してあると、だれが押したかわからなくても、それが偽造されていても、本人のものだと推定するという規定があるんですね。この規定があるから、裁判官は、ここに保証人の印鑑が押してありますと。いや、僕が知らない間に押したんですと裁判所で言っても言わなくても、本人の意思を示した真正のものであると推定という法律があるから、これは百年前の、まだ印鑑が偽造するのが非常に難しいときなんですね。だから、裁判官は直ちに判決を下すんです。
 でも、それは法務省の問題だと。もちろんこれは法務大臣に言いましたけれども、やはり金融庁が、これはほとんど金融被害なんですよ。
 これは銀行の払い戻し書なんですね。今ピッキングが一日に二十件から三十件起こっています。ピッキングの目的は、預金通帳を盗むんですね。預金通帳の中に印影があります。これはもうコンピューターで自動的にプログラミングできまして、銀行の払い出し書を入れると、印鑑がついたものが出てくるんです。これで銀行の窓口に行って、全財産がなくなったという人が毎日二十件から三十件起きているんです。これは、印鑑があればこれは真正なものとみなすという法律があるんですね。
 ところが、外国では、こういうのが来ても、必ず銀行は本人の確認をするんですよ。これはだれだれさんですかと、住所、免許証あるいは生年月日。窃盗団だから、こんなの、本人確認されたらできないんですよ。全財産、何百万円というのが全部なくなった人が、これは銀行の責任じゃないんですかという裁判を起こされているんですね。
 これも、それは法律の改正は必要ですけれども、やはり金融庁が銀行の責任ということを明確にやらなきゃいけない、そう思います。いかがですか。
竹中国務大臣 今の個別の御質問はちょっといただいておりませんでしたので、私の不確かな法律の知識になると思いますが、当然のことながら、善良なる注意管理義務、善管注意義務というのはみんなにあるわけでありまして、例えば非常に大きな金額の引き出しを、いきなりぽっと来て、それで通帳を見せてやっても、これはそういうことをやる義務というのは日本の法風土の中でも確立しているのだというふうに私は思います。
 きょうの一連の委員の御指摘は、問題として大変よくわかります。大きな問題があるということも理解いたします。
 ただ、同時に御理解をいただきたいのは、仄聞するところ、不動産取引にも同じような問題があるし、例えば商品取引にも、割賦販売取引にも同じような問題がある。そういう問題の中で、金融庁として何ができるかということを、これは前向きに考えていくべき問題であろうかと思います。
 これだけ多くの事例を御指摘いただきましたので、こういった問題に対して、その法体系、委員も御指摘いただきましたけれども、これはやはり基本的には法務省の法体系の問題だとは思いますが、そうした問題についての議論は一度しかるべき場でやってみたいというふうに思います。
山田(敏)委員 外国の銀行はコンプライアンスというのがあるんですね。会社の中に、自分の銀行の中で、銀行員が変なことをしたり、変な融資をするのを事前に防ぐ。日本の場合は、これは法務部となっているんですよ。銀行員が何か罪を犯したとか、不正なことをやったとか、それを銀行の中で監視するコンプライアンスというセクションがありますね。これが機能しているんですよ。
 さっき言いました杉山さんのケース。脳梗塞で倒れて入院している方に、十九回にわたって融資と定期預金を四日後に、それは歩積み両建て、融資してすぐ定期預金にするとこれは違反でしょう。これは銀行の人に言いました。言いましたけれども、いや、本人の意思があったんですよ、本人が定期預金にしてくれと言ったら、私はやりますよと。それで、本人はどこにいたか。入院していますと。
 これを聞いたら、銀行の中のコンプライアンスは、これは、君、やっていることがおかしいよと。銀行がまともじゃない、健全じゃないし、公共性を持っていないと。また、こういうのは、そういう指導をやっていないということなんですよ。日本の銀行は、法務部が自分の銀行を守るために存在しているのであって、それを内部の不正、あるいは今言いました貸し手責任、さっきおっしゃったでしょう、善良な注意義務があると。全然ないじゃないですか。どう思われますか。
竹中国務大臣 ちょっと議論が、いろいろな点を御指摘いただいていると思いますけれども、基本的には、コンプライアンスというのは、我々の銀行の検査においても、さまざまなコンプライアンスの体制が十分機能しているかどうかというのは最大の検査項目の一つになっております。したがって、重要なのは枠組みの話というふうに、私はあくまでも理解をさせていただきます。
 今、本人確認の話もありましたけれども、これは本人確認法で、一定金額以上のお金を受ける場合には、別途、別の方法でいろいろな確認をすることというのは、そういう形になっているわけでありますし、そういう意味での銀行に対する枠組みというのは、最低限のものを我々は整備している。しかし、あとは、委員の御指摘の中に、あるものは本当に詐欺まがいかもしれませんし、それに関してはやはり法律の場で争っていただくしかない問題もある。
 我々としては、そうした枠組みの問題について、引き続き法務省等とはお話し合いをいたしますけれども、現行の金融庁の範囲でできることと、それ以外の法体系全体の話があるという点を改めて御理解を賜りたいと思います。
山田(敏)委員 大臣、全然現場をわかっていないね。今おっしゃった、コンプライアンスがちゃんと、今何とおっしゃったか、非常に重要な検査項目に入っているとおっしゃったね、コンプライアンス。では、三和銀行のコンプライアンス、どういう基準で、どんな条件でやったのか、それを教えてください。
五味政府参考人 法令遵守体制と申しますのは、金融検査マニュアルの冒頭に相当の紙数を費やして掲げられております。個々の案件についてどういう審査が行われたか、あるいはそれに法令上の問題がないかどうかということを審査するのも、これは内部管理の中での重要な要素であるし、そのための体制は、例えば御指摘に上がっているような銀行においてとられているわけでございます。私どもは、その体制が十分であるかどうかということを検査において確認いたしますし、また、検査マニュアルでも非常に重点を置いておりますのは、そうした体制が機能しているかどうかをチェックするというのも当然のことであります。
 こうしたチェックを経た上で、問題があれば指摘をするし、あるいはそうしたチェックが十分機能していない結果として、具体的に法令違反行為が行われているということが明らかになるようであれば、これに関する具体的な報告を徴求する、あるいはその内容を見まして、事実が確認できるのであれば必要な行政上の措置もとる、こういう体制になっておるわけでございます。
 おっしゃるように、銀行の法務部門が全く機能していないというような認識は私は持っておりません。もちろん、その機能が個々の場面において十全に機能したかどうかということは不断に我々はチェックする必要がございますし、そうしております。
山田(敏)委員 法令違反があるかどうかチェックしますなんて、そんなのんきなことを言っている場合じゃないですよ。法律に書いてあることがどうこうというんじゃなくて、今僕が言っているのは、アメリカの例のように、本当に銀行の貸し手責任が日本では問われていないということを言っているんですよ。それについて、ではコンプライアンスの検査をそういうふうにやりかえるのかどうか。やりかえるべきだと僕は思いますけれども、それは、ちょっと時間が参りましたけれども、大臣、本当にそう思いますよ。今後ろで一生懸命言われて、今までやってきたのは問題ありませんなんて、そんなことを言っている場合じゃないんですよ。お願いします。
竹中国務大臣 いろいろなことをやり過ぎるなという御批判も受けておりますけれども、繰り返し申し上げますが、今の日本の制度が完璧であるというふうには私は全く思っておりません。その点は山田委員と思いは同じだと思います。
 アメリカのように、さっきのような、さまざまなライアビリティーに関する法整備が整っていない、体系になっていないということは、これは現実問題としては事実であろうかと思います。したがって、残念だけれども、多くの方がそういった状況に追い込まれているという事実も、これは現実として直視しなければいけないと思います。
 ただ、その場合に、きょう御議論いただいた問題は大変重要な御指摘であるというふうに私自身痛感いたしますが、金融庁の、ないしは金融行政の、銀行法のそうした枠組みの中でできることとそれ以外のこと、まさに判例がもっとたくさん出るような仕組みをつくっていくとか、そういったものとの識別をしっかりとやらなきゃいけないなというふうに思います。
 これはしかし、現実としてそこに問題があるわけでありますから、法務大臣等ともこうした問題について、これは諮問会議等々の場で話し合うことは話し合っておりますけれども、金融行政の中で何ができるかということは、改めてしっかりと我々は不断に見直していきたいというふうに思います。
山田(敏)委員 金融大臣ですから、今おっしゃったことをはっきり聞きましたので、金融庁でできること、これを具体的にいつまでにやるんですか。もう一回言ってください。
竹中国務大臣 金融庁でできることを不断に私たちは見直しておりますけれども、きょうの御指摘を受けて、さらに意を固めてしっかりと見直していきたいと思います。
山田(敏)委員 時間が来ましたので終わります。
小坂委員長 次に、長妻昭君。
長妻委員 民主党の長妻昭でございます。よろしくお願いいたします。
 本日は、貸し渋り、貸しはがしについてお尋ねをしたいと思うんですが、今皆様方の手元に資料をお配り申し上げておりますけれども、これは金融庁が作成いたしました、これは現物ですけれども、金融再生プログラムの中から資料一は抜粋したものでございますけれども、その中の(2)の(オ)というところに、モニタリング体制の整備ということで、「金融機関による不当な「貸し剥がし」等が発生しないように」という言葉がありますけれども、この「不当な「貸し剥がし」」という言葉は、具体的にはどういう貸しはがしでございますか。
竹中国務大臣 以前もお尋ねをいただいたことがありますが、貸しはがしの定義はあるのかということに関連しているかと思います。厳密に、これが貸しはがしでございますということを定義するのは困難であるというふうに思っております。
 しかしながら、一般にそれでも貸しはがしという言葉がこの世の中に存在して、そういうことが現実の問題になっているということは事実でございます。そうした意味では、そういう貸しはがし的なものをやはり行政の中にも視野として置いていかなければいけないと思います。
 具体的な一つの考え方として私がイメージしておりますのは、本来であればきちっとした取引先であり、ここに銀行が貸すはずである、貸すはずであるにもかかわらず、銀行が貸さない。(発言する者あり)はい、御指摘のとおり、これが貸し渋りでありまして、貸しはがしというのは、今まで貸していて、約定どおりいろいろな金利も払い続けている、それが急に貸してくれなくなる、ないしは金額を大幅に減らされる。かつ、こういった問題が社会問題化していく背景には、余り十分な説明がなく急にそういうことを言われて、資金繰りに大変支障を来す、そのような問題が現実にはあるのではないかという、その問題意識が強く社会にあるからだと思います。
 私たちも、その点に関してしっかりと、こういったことが生じないようなさまざまな体制づくりをしていかなければいけないというふうに思っているところであります。
長妻委員 これは非常に重要なことだと思うんです。金融行政の最高責任者の大臣が、貸し渋りとか貸しはがし、ここにも書いてあります不当な貸しはがしとか貸し渋りはいけないんだということでありますけれども、今定義らしきものを言われました、本来は貸すはずであるのに貸さないと。非常に抽象的でありますね。貸していて、金利もちゃんと払っているのに、ロールオーバーというか更新をされない。そして三つ目には、急にそういう今のようなことを言われたと。
 三つ定義らしきことを言われましたけれども、今申し上げたようなことに当てはまるものは、これは不当だということで、金融庁のトップとして、そういう定義でよろしいんですか。もうちょっと細かい定義があってもしかるべきだと思うんですが。
竹中国務大臣 そこは本当に個別の非常に細かな現実的な事例ということになるのだと思います。
 恐らく、これはしかし、今申し上げたのは、借りている側からの一種の懸念、不満、不安として、そういう概念が存在するというふうに考えなければいけないと思います。
 今度は、貸し手の方に聞くと、これは当然のことながら違う答えが返ってくるわけでございます。いやいや貸しはがし、貸し渋りなんかとんでもない、我々は必死でいい貸し先を探しているんです、貸せるところがないんですということを言う貸付担当者も多いわけでございます。したがって、そこにはどうしても主観的な判断がある。
 したがって、客観的にこれを定義することは難しいということになるわけでございますけれども、しかし、借り手の御懸念、御不満というものをやはり現実問題として受けとめなければいけないということで、金融再生プログラムにもしかるべきその対応策をとっていくということを明記したわけであります。
長妻委員 本当に一般論の話じゃだめだと思うんですね。ここの金融再生プログラムに、「不当な「貸し剥がし」等が発生しないように、」ということや、あるいは実際に、「金融機関から貸し渋り、貸し剥がし等の不当な扱いを受けた」、こういう言葉があるわけでありますから、客観的に示せない、先ほどの定義は借り手の側の定義だ、貸し手の側はまた違うんだというお話じゃ困るわけであります。金融庁の、行政のトップとして、具体的にこういう貸し渋り、貸しはがしは不当だという、具体的、では、典型例を、どういうような例なのかというのをちょっと知りたいんです。
    〔委員長退席、渡辺(喜)委員長代理着席〕
竹中国務大臣 貸し付けの事案というのは、極めて個別具体的です。相手の債務の状況、相手の資金需要の動機、それと財務内容等々、極めていろいろなものがありますので、これを具体的にというのはなかなか難しい。冒頭で申し上げましたように、そういった意味でこれを定義するのは難しいということでございます。
 ただ、重要な点は、なかなか円滑に資金が回っていかないという、これはやはり政策的にしっかりと認めていかなければいけない問題だということで、さまざまな形でその防御策を考えたいというふうに思っているところでございます。
 少し説明が長くなって恐縮ですが、貸し渋り、貸しはがし等々のいろいろな事象がどういうものがあるのかなということを見てみますと、言われているものに関しては三つぐらいあるのかなというふうに思うわけです。
 一つは、銀行が、バブルのときに非常に大きく貸し込みを行いました。バブルの前までは、銀行の貸付残高というのは、GDP比に対して七〇%ぐらいだったのが、バブルのピークには一一〇%ぐらいまで行くわけですね。これが実は主として中小企業に対して貸し込みを行っています。
 銀行は、体力からいっても、そういった長期の貸し付けを続けることは、これは長期的に、体力的にできないわけで、これを今どんどん収縮させざるを得ないような局面にバブル崩壊以後立ち至っている。特に九〇年代後半からこれが収縮していて、その過程で、貸し渋り、貸しはがしというような言葉が出てきた。これは、ある意味で銀行の規模の適正化の中で起こっている問題。(長妻委員「不当なんですね」と呼ぶ)これが不当かどうかということに関しては、評価がいろいろ分かれるところであろうかと思います。
 第二の問題、これは、ある意味で割とわかりやすい例だと思いますが、不良債権を抱えている、つまり、もうからないところにお金を貸し込んでしまっている。だから、そこで焦げついてしまっていて、本来貸せるはずのところにお金が回らない。これはやはり解決すべき重要な問題であろうかと思います。
 これは、借り手から見ると明らかに不当に見えるでしょう。であるからこそ、我々としては、不良債権の処理を加速してこういう状況をクリアしていきたい。しかし、それはやはり時間がある程度かかってしまいますから、それまでの間は、セーフティーネットの問題はしっかりと拡充しなければいけないというふうに思うわけです。
 第三番目が、これが実は最も不当に近いかもしれませんけれども、いわゆる銀行の本当に目ききの、貸し出しの能力が低下してしまっている。おかしい、うちの企業はしっかりとしているはずなのに、銀行の方が全然そのことを理解する能力がない。これは不当かどうかはともかくとして、借り手からは不当に見えますし、これは銀行の能力をしっかりと高めてもらうしかない。
 本来、貸せるところに貸してこそ銀行はもうかるわけですから、これはまさに銀行のガバナンスの問題。銀行の株主はもっとしっかりとこういった点を見てもらわなきゃいけないし、何よりも、銀行の経営者はこういった点をしっかりと取り締まってもらわなければいけない。そういった意味では、ガバナンスの強化というのもその中に入ってくるわけでございます。
 委員が御指摘のような個別の話にはなかなか至りませんが、類型としては今のような形でとらえて、それなりに対応をしていきたいというふうに思っているところでございます。
長妻委員 それでは、もうちょっと具体的にお伺いします。
 このお配りした資料一の金融プログラムの抜粋でございますが、その中に、一番下の2のところに、「「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」によって通報された内容を吟味した結果、重大な問題があると判断される場合には、その金融機関に対して報告を徴求する」。まず報告を求める、これが一番目のアクションですね。「必要があれば検査を実施」、二番目。三番目、「適切な行政処分」。こういう三段階の言葉がありますけれども、このお配りした資料の二には、三月末までに金融庁に、貸し渋り・貸しはがしホットラインに寄せられた情報の一覧表でございますが、六百二十八件寄せられたと。
 この六百二十八件のうち、今私が申し上げました、重大な問題があると判断をして、その金融機関に対してまず第一段階目の報告を求めた、この報告を求めたケースは何件ぐらいありますか。
竹中国務大臣 ホットライン、これは金融再生プログラムを作成するに当たって、貸しはがし、貸し渋りについてはしっかりと対応していきたいということで、私自身が発案しまして設けたものでございます。これをしっかり活用していくことは、行政上、私にとっても大変重要な問題であるというふうにぜひ前置きをさせていただきたいと思います。
 個別事案に関する紹介ということになりますと、これは風評リスクを生じせしめるおそれがあることから、差し控えさせていただきたいのでありますが、この中で、まず、貸し渋り・貸しはがしホットラインで受け付けた情報の活用の仕方についてでありますけれども、これは、監督検査部局において、体制を整備して、内容を整理分析するとともに、これら情報をもとに、法令等違反のおそれがある場合に個別にヒアリングを実施して、それで注意喚起を行っている。それと、金融機関に対する検査においてこれらの情報を参考にする、そういう手順を今決めたところでございます。
 これについては、今、体制をつくって実行を開始したところでございますので、その状況についてつぶさに報告する状況にはまだございませんけれども、ヒアリングを実施して注意を行ったのは幾つかあるということを申し上げておきたいと思います。
長妻委員 いや、これはちょっと、この貸し渋り・貸しはがしホットラインというのは、まだ三月末に受け付け分で六百二十八件、それよりもかなり前に受け付けられた件数も当然あるわけでありますから、これは緊急ですよ、受けた企業側としては。もう切迫して相談していて、まだ何も何かよくわからない、統計もとっていない。
 だから、この金融再生プログラムに書いてあります、「「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」によって」「重大な問題があると判断される場合には、その金融機関に対して報告を」求めるという第一段階がありますが、報告を求めたのは何件ありますか。これを明確にお答えください。お答えいただかないと、本当にこれは何もやっていないという疑念が生じますよ。
    〔渡辺(喜)委員長代理退席、委員長着席〕
竹中国務大臣 報告徴求、それ以降の行政処分については、コンプライアンスの問題についてはこれを公表しておりますけれども、それ以外の問題については公表をしないというのが建前でございます。
 六百二十八件、これまでの累計でございます。この累計を、今、そういう形で幾つかのルールをつくって、ヒアリングを行う、それで今後検査に生かしていくというルールをつくったところでございますので、これをある程度軌道に乗せた段階で、ぜひとも、こういう形で活用したということをもっとはっきりと御報告させていただきたいと思います。
長妻委員 いや、これは私は、本当に、ちょっとおかしいと思いますね。だって、金融再生プログラムで、十月三十日に策定したそこの中に書いてあるわけですよ、「重大な問題があると判断される場合には、」
 この貸し渋り・貸しはがしホットラインに通報するというのは大変勇気が要るわけですよ。というのは、実名を出す方もおられますから、全部自分の情報を金融庁に上げるわけですから、非常にリスクがある。でも、もう本当に切迫して、相談するのは金融庁しかないということで相談している。
 それで、今、この金融再生プログラムには、問題があると判断される場合は金融機関に対して報告を求めるというふうに書いてあって、その報告を何件求めたのか、この件数をある程度お答えいただかないと。それが風評リスクを呼ぶというのはどういうことですか。これをお答えいただけないと質問できません、これ以上。
竹中国務大臣 まずホットラインを設けまして、それで順次体制を整備していきました。四半期ごとにその状況を取りまとめて、それに基づいてヒアリング等々をして、それで、重大な問題がある場合はということを、ルールをつくったわけです。三月末に最初の取りまとめを行いまして、今五月ですから、それに基づいてヒアリングを開始しているわけでございます。それについて、今、漸次ヒアリングを行いながら今後の状況を把握しようと思っておりますので、それが一巡した段階で御報告できるというふうに思います。
長妻委員 質問できません。(発言する者あり)
小坂委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
小坂委員長 速記を起こしてください。
 竹中金融担当大臣。
竹中国務大臣 報告徴求を行って、行政処分を行う等々の問題については、これまでもすべての事案についてそうでありましたけれども、それがこういうことに至ったという結果が確定するまでは、これはやはり御報告できないというふうな立場をずっととらせていただいております。
 かつ、中身についても、例えば、これはコンプライアンスの問題については報告をするけれども……(長妻委員「中身は聞いてないですよ」と呼ぶ)いやいや、ちゃんと聞いてください。コンプライアンスの問題については……(長妻委員「中身は聞いてないんですから。質問の答えを言ってください。件数ですよ」と呼ぶ)中身ですよ、コンプライアンスは中身ですよ。
小坂委員長 委員長の指名を受けて発言してください。
竹中国務大臣 ちゃんと聞いてください。
 コンプライアンスの問題については、これは事後的に、すべてが確定した段階で御報告をいたしますが、それ以外の問題についてはこれまでも報告をしておりません。したがって、これは行政の一つのルールだとしてそのようにずっと行っているというふうに御理解をいただきたいと思います。
 それと、それが進んでいるのかという御指摘に関しましては、これは三月末に最初の取りまとめを行う、これは四半期ごとに取りまとめるというルールをつくったわけで、それの取りまとめを三月末に初めて行いまして、今五月で、その最中でございますので、それが進捗した段階でしっかりと、報告できることについては御報告をするという形をとらせていただきたいと思います。
長妻委員 納得できません。
 だから、これは初めてなんですよ。前例があるとかなんとか言われていますけれども、初めてホットラインというのがあって、それに対して行政処分を行ったかどうかとか、行政処分をする予定かと聞いているんじゃなくて、その一番初めの、金融再生プログラムに書いてある、問題があると判断される場合には、その金融機関に対してまず報告を求めると。だから、何件ぐらいの金融機関に報告を求めたんですか、何件のケースに。まず、その件数だけお答えください。件数だけですよ、大体の、今までの。
竹中国務大臣 私が申し上げていますのは、基本的には、ヒアリングを行って、報告をとって、それに基づいてさらに行政処分、これが一連の私たちの行政のルールである、行政のプロセスである。それが確定するまでは外に対して御報告できないということを申し上げておきます。
 それに基づいて、基本的には今ヒアリングを行っている段階でございますので、ヒアリングを随時行っておりますので、それに基づいて必要な報告徴求等々のプロセスに入っていきたいというふうに思っております。(長妻委員「質問できません。件数を教えてください」と呼ぶ)
小坂委員長 質問者に申し上げます。今、大臣からの答弁は、現状を説明したものと理解できますので、質問を続行してください。(長妻委員「現状までの件数を教えてください」と呼ぶ)
 竹中金融担当大臣。
竹中国務大臣 情報を寄せられた案件に関しては、すべてヒアリングを行っております。(長妻委員「何件ですか、件数を教えてください」と呼ぶ)
小坂委員長 長妻昭君、挙手の上質問してください。もう一度質問してください。(長妻委員「件数を言ってください」と呼ぶ)
 竹中金融担当大臣。
竹中国務大臣 六百二十八件です。
長妻委員 何でそれを最初に言われないんですか。
 では、もう一回、再度念押ししますけれども、いろいろ漏れ聞くところによると、対応を全然していないケースもあるやに聞いているんですが、そうすると、大臣、もう一回確認しますよ、これは。本当に、議事録に残りますから。
 この六百二十八件すべてに関して事情を当該金融機関にヒアリングをした、六百二十八件全部。こういうことでよろしいんですね。
小坂委員長 答弁願います。――竹中金融担当大臣。
竹中国務大臣 ちょっと細かいことで、申しわけありません、確認をいたしました。
 もう一度申し上げますけれども、六百二十八件の情報のすべてについて、その当該の金融機関に確認をしております。
長妻委員 そうしましたら、その次の段階、第二段階として、必要があれば検査を実施するというのがこの金融再生プログラムに書いてありますけれども、では、当該金融機関、六百二十八の案件について報告を求めたと。その次の段階まで進んだ案件は何件ぐらいありますか。検査を実施した案件。
竹中国務大臣 基本的には、先ほど申し上げましたように、これはホットではないという御指摘もありましたけれども、私たちは、三月末に最初の取りまとめを行うという形でルールをつくりました。それに基づいて、今、最初の段階のヒアリングを行っております。そのヒアリングに基づいて、必要があれば、重大な問題があれば報告徴求とか、次なる行政のステップに進んでいくということでございます。
 お尋ねの検査の問題に関しても、したがいまして、今まだヒアリングを行っている段階でありますので、検査そのものについて、それが正面からその問題を取り上げたという段階ではございませんけれども、逐次、重要な問題については検査にも反映していきたいというふうに考えております。
長妻委員 そうすると、確認しますと、報告はこの六百二十八件すべての案件について金融機関に求めたと。そして、検査に関しては……(発言する者あり)報告を求めた、報告までいっていない、ちょっと待って。
 ちょっと私の認識が、ヒアリングと報告、今、二つ言葉がありましたけれども、私が聞いたのは、この「「貸し渋り・貸し剥がし検査」の実施」という項目が金融再生プログラムにありますね。その中で、「重大な問題があると判断される場合には、その金融機関に対して報告を徴求する」という言葉がありますね。だから、報告を徴求したのは何件ですかと。ヒアリングじゃないですよ。では、違うんだ。私は、ヒアリングと報告、同じだと思っていましたけれども、では、報告は何件ですかということです。
小坂委員長 ヒアリングと報告の違いを明確に答弁してください。
竹中国務大臣 報告というのは、銀行法に基づく報告徴求であります。これは極めて重いものでありますけれども、この報告徴求にはまだ至っておりません。その段階の、報告徴求を行うかどうかということの判断をしなければいけないわけで、そうした観点からのヒアリングを行っているということであります。
長妻委員 随分のんびりしているといいますか、そうすると、六百二十八件の中でここの金融再生プログラムにある報告を徴求したというのはゼロ件だということですね。では、六百二十八件の中で、本当に悪質で、緊急にこれは報告を求めなきゃいかぬ、そういう事例がないということですね。これはしようがないな、六百二十八件は、大した悪質なものはない、ここで言う不当なものというのはそうないな、そういう認識でよろしいんですか。
竹中国務大臣 いや、それはまだわかりません。それをはっきりさせるためにヒアリングをしているわけでありますので、しっかりと情報を活用したいと思っております。
長妻委員 そうしましたら、大臣、ヒアリングをしている中で、では、六百二十八件のうち、これは報告徴求するまでもない、こう判断しているもの、仕分けがありますね。まだ報告徴求するかしないか迷っている判断、これもありますね。この六百二十八件のうち、これは問題ないから報告徴求までいかないよというのは何件ぐらいなんですか。
竹中国務大臣 それは申し上げられません。それに基づいて報告徴求のプロセスに入っていくのか、さらにはそれ以上の行政処分に進むのか、これは極めて重要な問題であって……(長妻委員「件数だけです」と呼ぶ)件数も申し上げられません。これはまさに、先ほど申し上げましたように、そこが先ほど私が申し上げた部分でありまして、そういったすべての手続が完了した段階でコンプライアンスに関するものは公表している、そういう事情でございます。
長妻委員 だから、結局は、私もそういう疑念を持っていますけれども、いろいろ世間でも、その六百二十八件を本当にきちんとやっているのかどうかと。まだ報告徴求さえ一件もしていない。
 では、一番長く期間がかかっている案件というのは、何カ月ぐらいですか。これは三月末の統計ですけれども、この六百二十八件の中には、三月末どんぴしゃに寄せられたのもありますね。ところが、それよりも前に寄せられたものもありますね。そうすると、一番長く徴求するかしないか迷っている案件というのは何カ月かかっているんですか。
竹中国務大臣 先ほども申し上げましたように、ホットラインをつくってそれを活用しよう、その活用の体制をはっきりとつくったのが三月の末であります。三月の末で最初のまとまった報告を行って、それに基づいてこれからヒアリングのプロセスにある。ヒアリングを行って、必要なものは報告徴求以降のプロセスに入っていこうということでありますので、このプロセスが正式に始まったということであります。
長妻委員 これは私、本当にひどいと思いますよ、大臣。そのホットラインというのは、受け付けをずっとしていて、それをほったらかしにして、三月末にきちんと何かまた見て、三月末締め切りでそれで初めて見て、ヒアリングをかけて、そして徴求するかどうか三月末から考え始めたと。そして今、五月ですよ。
 大臣、もう一回聞きますけれども、この数字はちょっと言ってください、この数字は必ず。ちょっとお役人の方、ちょっと。大臣、この数字は言ってください。
 ですから、六百二十八件ヒアリングをして、ああ、これは問題ないな、六百二十八件のうち、これは徴求するまでいかないでしょうという件数は大体何件あるんですか。これは別に秘密でも何でもないと思いますよ、件数ですから。
竹中国務大臣 まず、そのホットラインにどのような情報が寄せられるか、これはある程度プールして、それを活用していく方法を考えなければいけないということで、そういった体制をつくるということを、三月三十一日にシステムをある意味では稼働させたわけでございます。これを今、適宜活用しながらやる体制、これは我々としても、つくった体制を活動する始動期に当たっておりますので、その中でしっかりとヒアリングを行って、必要なものについては報告徴求を行っていきたいというふうに思っております。
長妻委員 いや、これはちょっと納得できません。数字を言ってください。問題ないのは、徴求までいかないのは何件だと判断したのか。その数字を言ってください。(発言する者あり)ちょっと、速記とめてください、委員長。
竹中国務大臣 今の委員のお尋ねは、報告徴求が必要ないもの、それと結果を言えということですから、その結果を出すために今ヒアリングをやっているわけですから、これはヒアリングをしっかりとやって、報告徴求をするもの、しないもの、しっかりと仕分けをしていきたいと思います。
長妻委員 まだ仕分けになっていないということですね。
 では、一点だけ。六百二十八件はまだヒアリング中で、仕分けはまだ何にもなっていない。報告徴求するかしないか、六百二十八件はまだ白紙の状態、こういうことでよろしいんですね。
竹中国務大臣 報告徴求するかどうかを判断するためにヒアリングを行っているわけです。
長妻委員 いや、本当に、これは泣くに泣けないですよ。このホットラインという名前、貸し渋り・貸しはがしホットラインという名前、これは名前を変えてください、あした、きょう。これを信じて、最後の頼みの綱でファクスを出している人もいるんですよ、自分の名前も明らかにして。そんな対応したらこれは本当に怒りますよ、大臣。だめだよ、これは本当に。
 それで、私は一点だけ、時間もないので申し上げますけれども、この金融再生プログラムの書き方も含めて、貸し渋り、貸しはがしの責任というのはだれの責任でこういうことが発生しているんだというのを大臣、一言教えてください。
竹中国務大臣 先ほど申し上げましたように、貸し渋り、貸しはがしと言われるような問題が起こっているのは、三つぐらいの要因がある、それぞれの要因についてそれぞれの責任が存在しているということだと思います。
 まず、あれだけ融資がふえてしまった、貸し込みを行ったということに関しては、これは銀行の責任もありましょう。しかし同時に、安易に借りたという側の企業の責任もあるかもしれません。同時に、そういった金融環境をつくってしまった政策当局にもそれなりの責任があるのだと思います。それぞれ、銀行としてはなかなか不良債権の処理ができずに、それでよいところにお金が回らないという二番目の要因に関しては、これは金融機関の責任が大きいというふうに思います。それぞれの問題、それぞれの立場で責任を重く受けとめなければいけないと思います。
長妻委員 私は、一番責任が重いのは金融庁だと思っているんですよ、大臣の責任だと思っているんですよ、一番責任があるのは。銀行は、自己資本の比率も含めて、自分でいろいろ経営判断をできない状態に、特に主要行、四大メガバンク等はなっているというふうに私は思っておりまして、そこに対してもっと中小企業にお金を貸せ貸せといっても、それはなかなか難しいんじゃないか。
 だから、これは私の持論でもありますけれども、先ほど福井総裁からも公的資金の話がありましたけれども、一刻も早く公的資金を強制注入して、経営者の責任を問うて、それを原資にきちんと不良債権処理をする。一時的には沈むかもしれないけれども、それによって最終的には貸し渋り、貸しはがしはなくなる、今よりはひどくなくなる、こういうことなんですよ。
 だから、早くやらないとどんどん沈んでいく。その過渡期の措置としてホットラインというのが設けられたにもかかわらず、ホットラインじゃないじゃないですか。大臣、ホットラインという意味だけ言ってください。どういう意味か、ホットラインの。
竹中国務大臣 貸し渋り、貸しはがしというものを私たちは行政の対象に持ち込んだつもりであります。そういった意味での、しかし初歩的な、基本的なデータを蓄積して、しっかりとした行政対応を行っていきたい、データに基づいてしっかりと判断をしていきたい、そのように考えているわけです。
長妻委員 資料三を見ていただきますと、資料三には中小企業向け貸し出しの現状で、みずほ二行が五兆円、中小企業向け貸し出しが減っている。例えば、このみずほの減った五兆円の中に不当な貸しはがしというのも入っている可能性もあるんですか。
小坂委員長 竹中金融担当大臣。手短に答弁してください。時間が経過しております。
竹中国務大臣 これは定義、数量的な把握は困難であるというふうに私は申し上げましたけれども、可能性があるかと聞かれれば、可能性はあると思います。
小坂委員長 長妻昭君。時間が終了しております。
長妻委員 はい。ホットラインなりのホットラインという、名前のとおりの対応をぜひしていただきたいと思います。ありがとうございました。
小坂委員長 次に、永田寿康君。
永田委員 きょうは、順番としては日銀さんに先に聞くことになっているので、日銀さんへの質問を先にしたいと思いますが、その前に竹中大臣、今の民主党の二人の議員の質疑を聞いていて、私が感じたことを一言だけ冒頭に申し述べたいと思います。
 イラクで戦争が起こりました。戦争が終わった後、大変な混乱が起こって、略奪が起こって、治安が悪化して、美術品が荒らされて、そして人類の文化遺産が失われるという事態になりました。あれをわき目で見ながら、アメリカの軍隊はあそこにちゃんといるにもかかわらず、これはイラクの民の問題だといって、一部放置して、全部じゃないですよ、でも、一部放置していた部分がある。
 僕は、これは責任があると思うんですよ。アメリカ軍に責任があると思うんです。なぜかというと、あの事態を収拾できるのはアメリカ軍をおいてほかにないからです。現地の警察は機能していません。我々が美術館を守りに行こうと思ったって、できない話です。あそこにいるアメリカ軍しかあの事態を収拾することはできないということから、その状況の当然の帰結として、米軍はあれを収拾する責任を負っているんですよ。
 今回の山田さんの質問と長妻さんの質問もそうなんですよ。年収二百万円の人に五億円の貸し出しをする、脳梗塞の人に二十四億円の貸し出しをする。そして、自分の身が危険にさらされるかもしれない、実名を明かして貸し渋りホットラインに意見を寄せてくる。これは、大臣しか助けてくれる人がいないから、最後の手段として、あなたしか助けられないから、そういう声を寄せるんですよ。貸し手責任の問題もそうなんです、あなたにしかできないから。法律がどうとかそういう問題じゃないんですよ。あなたにしか助けられないからお願いしますと言っているんです。そういうことについては、社会的責任が当然の帰結として発生するということを自覚してください。大変重要な問題です。ぜひそのことを一言申し上げてから、日銀さんの質問に参りたいと思います。
 何回か質問をする予定だったが、通告をしても空振りになってしまって、新しい総裁のもとでも、前回ほんのちょっとしか触れられなかったことについては、まず冒頭、おわびを申し上げたいと思います。
 日銀が国債を買い、そして民間銀行が保有していた株を買うことによって財務体質が劣化するおそれが出てきているという部分について、私、大変強い懸念を抱いておりますので、そのことについて質問したいと思います。
 まず第一問目、日銀が民間銀行から株を購入している、三兆円までこの間枠を広げたというのが新総裁のもとで行われたわけでございますが、株を購入するということの事柄の是非、善悪はどうお考えなのかということを、まず冒頭、新総裁の認識をお願いしたいと思います。
福井参考人 日本銀行に与えられた使命、つまり、日本銀行法によって明確に与えられた使命というのは、健全な通貨を国民経済に提供することによって経済の発展を図る、そして国民生活の安定を図るというところにあります。その目的達成のために必要な日本銀行の政策というのは、そのときの経済情勢、それから今後予想される経済情勢に最も適合するようにやっていかなければいけない。それは、過去の一定のパターンにとらわれず、状況によってはかなり大胆な政策もとらなければならない、こういう思想に立っております。
 昨年秋以来行っております、日本銀行による金融機関保有株式の買い入れ措置というのは、日本の資本主義が、持ち合い構造が非常にプラスに働いていた時代から、それがマイナスに働く時代に大きく変わろうとしているときに、持ち合い解消の過程で株価変動のリスクが金融機関経営に大きな打撃を与えて、金融システム全体の安定性を害する、これは将来の国民生活にとって好ましくない材料である、ここを身を挺してでも防ごうというねらいに立っております。
 そういう意味では、これが適切かどうかというのは御批判をいただかなければいけないと思いますが、日本銀行としては、必要な措置だということで実施をいたしております。
永田委員 必要であることと正しいことであるというのは違う概念なので、事柄の性質の善悪を私は質問したわけであって、善か悪かと言われたら善でもないという答弁でよかったのかどうか、一つ確認をしたいのと、もう一つは、今の総裁の答弁の冒頭に、日銀の使命は、健全な通貨を供給することによって国民経済の発展に資することだというふうにおっしゃいました。しかし、日銀のバランスシートに民間企業の株を計上するということは、健全な通貨の供給ということに逆行するんではないかと私は思うんですけれども、この二点。
 事柄の善悪として、善でもないという答弁だったのかという確認、それから、健全な通貨の供給という点から望ましくないことなんではないかという二点、お願いします。
福井参考人 まず、善悪とおっしゃる点でございますけれども、日本銀行として、将来の日本経済の姿を考えた場合に、必要な措置と認定する場合には、日本経済にとってよかれと思っている措置でございます。そういう意味では、善というふうに私は理解しております。
 それから、日本銀行の健全性との関係で申し上げますと、私どもにとって、日本銀行の一番大事なポイントをついていただいた御質問だと思っておりますが、日本銀行はお札を発行しておりますけれども、打ち出の小づちではない。日銀は打ち出の小づちではないです。それは、お札を発行できるという点では普通の銀行と違いますけれども、自己資本の範囲内で日本銀行の業務を運営していかなければならないという点では通常の銀行と変わりがありません。打ち出の小づちではなくて、銀行でございます。
 したがいまして、自己資本の基盤を害さない範囲内で必要なリスクをとっていかなければいけない。通常は、日本銀行がとるリスクは最も少ない範囲で業務を展開する、それで事が足りるというのが普通の姿でございますが、現在のような厳しい経済情勢のもとでは、通常よりもより高いリスクに踏み込まなければならないと私どもは判断しています。それでも自己資本の基盤を突き破るというふうなリスクは冒せない、そこに限界があるというふうに思っております。
永田委員 ニッポン銀行と発音してくださいという声が多々こちらから上がっているので、ぜひ気をつけていただきたいなというふうに思っているわけでございますが、今の答弁を要約すると、恐らく、まず国民生活、国民経済を発展させるために、必要なリスクをとっていくことは善であるというお考えでありました。株を買うということがリスクをテークすることだということは明確にお認めになっているわけですね。
 もともと、事柄の発端は、民間銀行が株を持っている、株があって、価格が上下する、上下することによって民間銀行の体力が上下する、このような、マーケットによって民間銀行の経営体質というか財務基盤が左右されるようなことがあってはいかぬということで、まず株を売却しなきゃいかぬという話になりました。そうすると、マーケットにインパクトも少なからずあるので、日銀も買いましょう、あるいは銀行等株式取得機構なんというものも政府の施策としてはつくりましたけれども、日銀が重い腰を上げて迅速に株を買っているわけですよ。つまり、民間銀行が持っていたリスクを日本銀行に移したということですね。
 通貨の健全性という観点からは、できるだけリスクは小さくしなきゃいけないということは、総裁が今お認めになったとおりであります。ということは、そういう概念を持ちながら、つまり、リスクをできるだけとらないようにやらなきゃいけないけれども今回はとったという話であれば、この程度のリスクならば大丈夫だという判断をしたのかというふうに思うんですけれども、そういう考え方でいいんですか。一たん、ここでちょっと確認をしたいと思います。
福井参考人 民間金融機関の背負っているリスクをある程度中央銀行に移転したということは事実でございます。
 ただし、そのリスクを移転するに当たりましても、我々は、引き取る資産の将来可能性として起こり得るリスクというものをかなり厳密に計算しながら引き取っているということと、それから引き取るに当たって、銘柄その他の面においてリスクの分散を図りながらとっているというふうに、やはり日本銀行の自己資本への打撃を最小限にとどめるように慎重に配慮しながら行っている。それでも、こういったことを行わないよりは余計リスクをとっているということは事実でございます。
永田委員 やはり僕は、日銀が経済政策にそこまで踏み込むのは控えるべきだと思いますよ。それは、個々人の判断ですから、総裁がそういうふうに判断されるのであれば、それは立場が違うということにしかならないと思いますけれども、せっかく選挙に通って議員になったので、議事録に私の考え方を一言だけ残しておきたいと思います。
 やはり、経済政策にそこまで踏み込むべきじゃないですよ。だって、経済産業省だってあるし、財務省だってあるし、それは政府の責任ですよ。通貨の発行主体としての日本銀行がそこまで踏み込むのは、日銀法の範囲を逸脱しているというふうに僕は思いますよ。そして、まず経済政策として踏み込むのはおかしいと思うし、さらに、社会政策上も余りよいことではないというふうに思っています。
 というのは、もともと、銀行の経営基盤があそこまで毀損されている、そして経済的な意味でも、国民経済の考え方からしても、民間銀行があそこまでリスクを持っているのはけしからぬということで、株を売却しなきゃいかぬという話になったわけですよ。これはやはり、その当時の政策当局者の責任もあるし、また銀行経営者の責任も当然のことながらあるわけですよ。そこまで株を買ってしまった。持ち合いという名に甘んじて、大量に株を発行し、また引き受けてきた、そのことを問われる責任というのは当然あると思うんですね。
 その責任を、日銀が株を買うことによってどうなったかというと、その責任が国民全体でシェアされる事態に立ち至ったわけですよ。これは大変ゆゆしき事態でありまして、やはり、僕は、社会政策上は、どこかに責任が発生したら、その責任者に責任をとらせるのがまず第一だと思うんですよ。
 だけれども、今の日本の構造というのは、どこからどこまでもそうですよ、はっきり言って、みんなの責任にしちゃうんです。結果、だれも責任をとらないということになっている。責任をとらない社会と、責任をとった後にその失敗の教訓を生かして再チャレンジしてもらう社会というのは、似て非なるものなんですよ。
 僕は、日本というのは責任をとらない体質が蔓延し過ぎていると思います。簡単に言えばモラルハザードですよ。社会政策上、大変好ましくないんです。この社会政策上の考え方について、総裁の御意見を伺いたいと思います。
福井参考人 私は、ただいまの委員の御意見に対して反論する立場にございません。多くの部分についてシンパシーを感じているということでございます。
 日本銀行の政策が、仮によかれと思ってやっても、世の中のモラルハザードを増長するということになれば、それは、反面において副作用を伴っているということだと思います。私どもも、こうした通例でない政策に踏み込みます場合には、そういった副作用の面についても大変悩みながら決断している。
 副作用があるときに、副作用があるがゆえに、これを全部、私どもが政策として踏み込まないという場合のデメリットと、副作用があっても、ある限界の範囲内で、やはりあえてこれに挑戦するという場合のメリット、デメリット、これは大変難しい問題ですけれども、私どもは、そこは悩みながらも判断して、この株式買い入れ措置については、少なくともここまでは我々は責任を持って前進しよう、こういう苦しい判断をしているということでございます。
永田委員 この株の買い取りの話をすると必ず、要するに、株価の上下によって日銀の財務体質が上下する、結果、通貨の信用も上下してしまうという論議をすると、いやいや、国債も買っているんですと。国債も大量に持っていて、株とは比べ物にならないぐらい膨大な国債を買っていて、それの価格も日々変動しているんですという話になるわけですね。
 たしか日本経団連でしたか、日銀が保有している国債は変動債に切りかえるべきである、そうしないと価格の変動リスクは看過できないほど大きくなる可能性があるという指摘を、もはや民間団体からも受ける始末なんですよ。僕は、日銀の財務体質というものは、もうそのぐらい危機的な状況に今近づきつつある、まだ危機だとは僕も思っていません、だけれども、危機的な状況に近づきつつあるというふうに思っているんですよ。
 そこで、我が同僚議員が指摘しているとおり、ボーダーラインはどこまで、上限はどこまで設定するのかという議論を当然していかなきゃいけませんね。もうすぐ、日銀が自主ルールとして定めている国債の買い取り上限、つまり、通貨の発行高と同額までしか国債を買わない、このルールの上限に近づきつつあるわけですよ。そこの天井に至ったときにこの上限をどういうふうにするのかということは、今の時点で国民に説明する義務が総裁にはあると僕は思うんですけれども、ぜひそのお考え方をお示しください。
福井参考人 日本経団連が国債に関してどういう論文を発表されるか、まだ内容をつぶさに承知いたしておりませんけれども、これから先の日本経済を考えました場合に、膨大に蓄積されつつある国債残高というものをどうマネージしていくか、広い意味での国債管理政策の見直しということは非常に重要な課題だ。日本銀行としても、これは日本銀行の立場から見ましても重要なテーマになるというふうに考えております。
 それはそれといたしまして、日本銀行自身が、長期国債の買い入れオペレーションということで、大量の国債を日本銀行のバランスシートに沈めてきている。この問題について、日本銀行自身のバランスシートの内容、そのリスクファクターいかんということはよく考えておりますし、それから、国債のオペレーションに集中し過ぎるということが、日本の金融・資本市場にどういうプラスの影響があり、マイナスの影響がありというふうなことも常々慎重に考えながら、日々のオペレーションに臨んでいるところでございます。
 差し当たり、銀行券の発行残高の範囲内で我々は国債を買っていきます。つまり、そこに天井を設けているわけですけれども、これまで私どもが吟味し、評価しましたところ、この上限というものは、やはり、日本銀行による国債買い入れがストレートに財政のファイナンスを意識しているものではないんだというふうな理解を賜る上に役に立っている。それから、あえて言えば、そのこと自身が国債に対する信認維持にもある程度寄与しているのかなというふうに、みずからここは評価しているところでございます。
 そういったことでございますので、今後、将来にわたってもこの上限というのは安易に撤廃できない、こういうふうに考えています。
永田委員 日銀の財務体質というのは、それは通貨の発行主体ですから物すごく強固なもので、ほかの民間銀行に比べればはるかにはるかにまだ僕は健全度が高いとは思っていますけれども、その日銀が保有している国債の額を見て、これはもう容易ならざる事態になっている、日銀の財務体質ですらもはや耐えられないような水準に近づきつつあるんじゃないかという指摘を民間団体から受ける始末なわけですよ。
 ましてや、民間銀行が保有している国債の民間銀行の財務基盤に対する影響というのは、日銀の比ではないんですよ。今でも民間銀行は国債を買い続けています、保有高をふやしています。その結果、下落リスクというのは、日銀の持っている下落リスクよりもはるかに大きな影響を民間銀行は受けるような事態に今立ち至っているわけですね。
 これは、金融担当大臣がいらっしゃるので、ちょっと通告していませんが、改めて、民間銀行が保有する国債の額も規制すべきだというふうに僕は思っているんですよ。ちょっとお考えをお聞かせいただけませんか。通告なしでごめんなさいね。あれば、お二方にお答えいただきたいと思います。
福井参考人 ニッポン経団連と言うのか、ニホン経団連と言うのか、そこはちょっと私わかりませんが、多分、これもニッポン経団連かもしれませんが、恐らく、日本銀行の保有国債だけに限らず、金融機関の保有国債も含め、広く日本の経済社会に残高として蓄積されつつある国債、これが今後、我々が希望する経済の健全な回復の過程が始まった途端に大きな問題をもたらすという大変皮肉な材料になっているということは、今から一〇〇%予見できていることでございます。
 したがって、非常に早い段階から、この国債に対してどういう管理政策を施すか。これまた、従来、世界各国で過去の経験として蓄積されている国債管理政策のあり方、その知識の範囲を超えた考え方を今から練っておく必要がある。日本経団連がそのサジェスチョンを最初に我々に与えてくださるというのは非常にありがたいことですけれども、我々はさらに、それを一つの材料としながらも、より進んだ考え方を早く練り上げていく必要がある、こういうふうに考えています。
竹中国務大臣 永田委員がかねてより、銀行の国債保有、一つの資産に偏ったポートフォリオを持ち過ぎないように、何らかの規制が必要なのではないかという御意見をお持ちだ、以前も拝聴して、一つのお考えかなというふうにも思いました。
 現実問題として、銀行には今、できるだけ、自己資本比率の規制はありますけれども、そのあとのポートフォリオについてはまさに自己責任でやってもらいたいというふうに思っておりますので、今すぐそういうことを考えるということでは必ずしもないのでございますが、マクロの問題としては、まさに、日本の国債がここまで累増したということが、今の日銀総裁のお話にもありましたように、非常に大きな足かせになりつつある、ここは極めて厳しく認識しなければいけないと思っております。
 昨日の経済財政諮問会議でも、今、例えば、公債七百兆だとして、しかも財政赤字が今後続いていくわけでありますから、八年後ぐらいには実は大変な数字になるというふうな御指摘もあった。それが、金利が変動して価格が変動することのリスクを日本経済は間違いなく負ってしまった。ことしの諮問会議の一つのテーマとしまして、まさにこうした公的なお金、これは国債という形で、フローだけでなくストックの部分についての管理をどのようにしていくかということを一つのテーマにしたというのも、そういった趣旨からでございます。
 なかなか妙薬はないとも思いますが、例えば、イギリスなどでは国債の管理を一つのエージェンシーをつくってやっているという、非常に大きな問題として位置づけている、そういったことも念頭に入れながら、やはり抜本的なことを考えていく必要があると思っております。
永田委員 福井総裁におかれましては、前総裁よりもはるかに言葉がかみ合う答弁をいただけるので、私、非常にありがたいと思っておりますので、今後もぜひその調子で御答弁いただきたいと思います。
 総裁、きょうはもう御退出いただいて結構でございます。ありがとうございました。
 次いで、竹中大臣に質問を移したいと思います。
 生命保険の予定利率の引き下げについて、与党との調整が始まったというふうにも報道されております。
 昨日、お役所の方にお越しいただいて御説明を受けたところでございますが、やはり契約者以外の債権者との調整というか、契約者の負担と契約者以外の債権者の負担が、どういうような形で分配されるのかということにまず大きな関心があるのですが、そこについての考え方はどのようにまとめられるつもりなんでしょうか。
竹中国務大臣 まさに、我々なりに非常に慎重に勉強してきまして、論点を整理したところでございます。
 今回の取りまとめた論点整理においては、保険会社、保険契約者間の自治的な手続により、契約条件を変更する仕組みを前提にした上で、経営責任を問うかどうかとか、あるいは基金や劣後ローンをカットするかどうか、こういった問題は、保険会社の経営陣の方針、説明と、保険契約者がそれを納得するかどうかという自治的な手続の中でみずから解決されることになるのではないかというふうにしているところであります。
 経営責任、基金等の取り扱いのあり方については、個別のケースにより異なるということになるわけでありますけれども、保険契約者の理解が十分得られるよう、そういった理解の深め方、議論の深め方が必要であるというふうに思います。
永田委員 論点整理の紙はいただきまして、まだどういうふうな形にするのかというのは決めていないということだと思うので、こういう方針でいくとかということはなかなかおっしゃりにくいのは私も理解しているんですが、一応、議論のための議論という感じになりますが、ちょっと進めたいと思います。
 予定利率の引き下げをする場合、これは破綻したというふうに考えていいんでしょうか。それとも、破綻ではないんでしょうか。
竹中国務大臣 こうしたことを議論するのは、基本的には、破綻に至らない段階で、もう少し安定的に契約者の利益を図りながら経営を安定化していく方法はないか、そこがそもそも発想の原点なのだと思います。その意味では、これは破綻ではない、破綻に至らないように、むしろ第三の道を模索して、こういう議論がなされているというふうに思います。
永田委員 破綻と呼ぶかどうかという言葉の議論をするつもりはありませんが、政府が幾ら強弁したところで、これはやはり破綻と考えざるを得ないと思います。
 なぜかというと、その一番大きな理由としては、大手格付会社、スタンダード・アンド・プアーズを初めとして、予定利率を引き下げたら債務不履行とみなす。トリプルC以下の格付にすると、SDにもするというようなことを言っているわけですよ。そうなったら、当然借金もそこそこできなくなりますし、債券発行なんかできなくなる。
 僕は、事実上破綻と同じ扱いにならざるを得ないと思うんですよ。それを、政府が破綻じゃないと言ったって、多分世の中では通らないですよ。やはり破綻と言うのが適切なんじゃないですか。
竹中国務大臣 ちょっと、今御紹介をいただいた、格付会社がどのような立場をとるのかというのは、これは格付会社もいろいろでありましょうから、今後いろいろな議論がなされてくるんだと思います。
 ただ、破綻の場合には、既に積み立てられた責任準備金が最大一〇%カットされる可能性があるほか、その後の予定利率についても大幅に引き下げられる可能性がある。一方、予定利率の引き下げの場合には、責任準備金がカットされない、また予定利率の引き下げに一定の下限を設けるというふうにすれば、そういった意味では安定感を与える。そういった意味での、どのように経営が推移していくかということについてのトータルな判断が、これはやはりマーケットでなされることになるんだと思います。
 そのトータルの判断を格付会社がどのように受けとめていくかというのは一つの判断になろうかと思いますが、先ほど申し上げましたように、破綻に至らない、前の段階での、より安定的な道があり得るかどうかということを今まさに議論しているのだと理解しております。
永田委員 恐らく、政府の方針も決まっていないし、与党の方針も決まっていないし、正直言って民主党も最後の最後まで詰め切った問題ではないので、本当に議論ということになるかと思いますが。
 ちょっと、僕がこの政府の論点整理のペーパーを見たときに、奇妙な印象を受けたのは、銀行の破綻処理に比べて政府の関与が著しく小さいんですね。要するに、まず生保の方から申請してもらわなきゃいけない。それから、契約条件を変更する、予定利率を引き下げる、そして契約者以外の債権者との調整も自治的な枠組みの中でやってもらう、みんなが納得するように債権者間の調整をするのは、それは生保の責任であると。それで、まとまったものを国に対して申請をするというような手続は、日本長期信用銀行や北海道拓殖銀行の破綻処理に比べて、僕は政府の関与が著しく小さいと思うんですよ。
 なぜ、このような自治的な、自主的な処理スキームを中心に今検討されているのかということを、ちょっと、生保と銀行と、どういう違いがあるのか、それははっきり教えてほしいんですね。
 というのは、銀行は例えばペイオフという制度がありますね。これは、預金の一部を、預金の金利の部分、元本も含めてカットするということですけれども、これは現在の財産をカットするということなんですよ。生保の予定利率を引き下げるということは、将来の財産をカットするということなんですね。結局、僕は、貯蓄性の保険が多い今の日本では、極めて同質性の高い問題だと思っているんですよ。
 なぜ、銀行はあんなに政府が関与していて、生保の場合は関与しないのかという明確な説明をお願いします。
竹中国務大臣 そこは一つ、特に契約者の皆さんには、いろいろな見方があるところだというふうに思います。
 ただ、これはちょっと一面的な説明に過ぎるかもしれませんが、銀行の場合は、預金というシステムがあって、そこでそれが決済を行っている、決済機能という一つの社会インフラを担っている。生保は生保で別のインフラを担っているわけですが、決済機能が崩れたら、これは当該銀行の預金者だけではなくて、ほかの銀行の預金者も影響を受ける。さらには、銀行の場合の公的資金注入に象徴されるわけですけれども、やはり国民の負担の問題が出てくる。
 今回の生保の場合、今問題にしているのは、基本的には、繰り返して言いますけれども、生保は生保の非常に重要な社会的役割はあるわけでありますけれども、ネットワークとしての決済インフラというものに直接かかわっているわけではない。それと、国民負担が直接生じるものではない。そういうようなものから、やはりおのずと政府のかかわりというのは違ってくる、このように理解すべきではないかと思います。
永田委員 生命保険会社も、最近の口座は決済機能を持っているものがある。事業資金を何億という単位で決済するようなものではありませんけれども、やはり決済機能を一部持ちつつあるし、また金融マーケットに対する影響も、別に銀行の破綻と生命保険会社の破綻でそんなに違いがあるとも思えないので、僕は、それだけでは説明がつきにくいのかなという印象は正直言ってあります。
 ただ、民主党の方針として、政府がもっと関与して、予定利率を引き下げるべきだという方針にはなっていないので、今のところは、質問はこのぐらいにとどめたいと思いますけれども、どうして銀行のときとそんなに違う制度になるのかということは、もう少し明確にお考えいただいた方がいいと思いますね。そうでないと、生命保険会社にお金を出す場合と銀行にお金を預ける場合では、安全度が著しく違うということになると、国民の側にも混乱が起こりますので、そこは明確に意識をして制度を組み立てられた方がいいのではないかという指摘をしておきます。
 そして、予定利率の引き下げという事態になったら、責任を追及するということは当然必要なものでありまして、それは政治の責任と、そして経営者の責任、特に過去の経営者の責任も当然あると思うんですけれども、その辺の、責任追及の仕組みはどのようになさるのか、お考えをお願いします。
竹中国務大臣 前半の御指摘に関しては、確かに、むしろ金融部門、金融の業態の垣根がなくなっているという問題の中で、ぜひしっかりと議論の整理をしたいと思います。
 これは、まさに今の論点の整理でありますので、論点の整理をした中でさまざまに御議論をいただくということになるわけでございますけれども、経営責任を問うかどうか、あるいは、先ほど申し上げましたように、他の債権者との関係、そうした問題は、保険会社の経営陣の方針や説明、それと保険契約者がそれをどう納得するかという自治手続の中でおのずから解決されることになるのではないか、論点整理はそのように書いているわけで、これはまさに、今申し上げましたように、自治的な手続の中で、適切な判断がなされていってほしいというふうに思います。
永田委員 最後にしますけれども、生命保険会社がバブルのころ、特に今の予定利率の高い契約を獲得していった中で何をやっていたかというのを見ると、ろくにいい商品を開発することもなく、ただちょっとだけ予定利率が高いような新商品を、これを開発したというふうに宣伝をして、保険の外交員は何をやったかといったら、いやいや、今お持ちの保険をこっちの保険に切りかえたら、切りかえた瞬間はちょっと損をするけれども、後々得になりますよということをやって、切りかえた瞬間の利益を追求していったわけですよ。それで、何と外交員は、切りかえることに対してインセンティブまで与えられていた話なんですね。こんなものが長続きするわけがない、いずれ破綻に至るのは明白ですよ。
 そんな予定利率の高いところにどんどん持っていって切りかえることにインセンティブを与えるような話というのは、これはもう商売とは言えないですよ、はっきり言って。こんな怪しげなことをやっていた、許していた経営者の責任を全く放置するということは、これは国民感情として絶対に許せないことであるということを肝に銘じていただきたいので、そこを一つ指摘して、きょうは、十二時を過ぎていますから、質問を終わりにしたいと思います。
 またよろしくお願いします。
小坂委員長 この際、暫時休憩いたします。
    午後零時二十一分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時四十分開議
小坂委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。達増拓也君。
達増委員 私は、まず最初、いわゆる時価会計凍結問題について伺いたいと思います。
 この時価会計、それまでは簿価、取得原価を原則とした会計から、おととし三月期から売買目的株について、去年の三月期から持ち合い株などの長期保有の有価証券について、それぞれ時価会計の対象にしたということであります。これについて、今、凍結すべきだという問題が出てきているわけでありますけれども、まず伺いたいのは、そもそもどういう趣旨でこの時価会計制度というものが導入されたのか、伺いたいと思います。
伊藤副大臣 これは、投資家や債権者の保護の観点から、企業の財政状況を適正に財務諸表に反映するため、国際的な動向も踏まえ、平成十一年に金融商品に係る会計基準が定められ、このうち、売買目的有価証券については平成十二年四月一日以後開始する事業年度から、そして、持ち合い株式などのその他有価証券については平成十三年四月一日以降開始する事業年度から時価評価が実施されたものでございます。
 なお、株価が著しく下落した場合の強制評価減についてでございますが、これは取得原価法の世界の問題でありまして、昭和三十七年以来、商法に規定されているものでございます。
達増委員 国際的な動向にも対応ということで、そういう金融システム改革の一環の中で、経済の改革の一環として行われたんだと思いますけれども、この時価会計原則が導入されるのと軌を一にしまして、企業会計基準について、それまで旧大蔵省時代には大蔵省証券局が原案をつくって企業会計基準というものを定めていたのが、財務会計基準機構という民間の組織、この財務会計基準機構のもとにある企業会計基準委員会が企業会計基準をつくるようになった、そういう制度の改革がなされたわけですけれども、この改革の趣旨は何だったんでしょうか。
伊藤副大臣 今委員御指摘のように、企業会計基準の設定、改廃につきましては、旧大蔵省時代、企業会計審議会が行ってまいりました。民間団体が会計基準を設定している主要先進国の状況を踏まえて、我が国におきましても、政府から独立した主体で会計基準を議論すべきという当時の強い社会的認識を背景に、平成十三年七月に経済団体連合会、日本公認会計士協会等の民間団体が中心になりまして、民間の会計基準設定主体として、財団法人の財務会計基準機構、企業会計基準委員会が設立されたものと理解をいたしております。
達増委員 主要先進国の例も参考にしつつ、政府から独立した主体として民間団体が財務会計基準機構、企業会計基準委員会というものをつくって、そこで企業会計基準をつくるようになってきたということで、この民間団体による、政府から独立した主体がそういう作業をすることについて、これが今もちゃんと機能しているのかということについて伺いたいと思います。
 ホームページを立ち上げていまして、この企業会計基準委員会そして財務会計基準機構、あわせて一つのホームページを開いていまして、最近の活動についてもオープンに報告されております。その下に六つのワーキンググループを抱えた国際対応専門委員会というのがあって、我が国の会計基準の国際対応について精力的に活動しているようであります。
 一方、減損会計及び時価評価の適用に関する緊急検討といった今日的な課題についても取り上げて対応しているようでありますけれども、こういうこの委員会の活動について、政府としてどのように評価しているでしょうか。
竹中国務大臣 先ほど伊藤副大臣からの御答弁にもありましたように、国際的な動向を見据えながら、政府からも独立して、特定の民間の利害からも独立してこのような機構をつくった。まさに、御指摘のように、今与党からの御要請の近々の問題も議論していただいておりますけれども、さらには、国際基準審議会におけるリエゾン国の会議のメンバーとしても国際的にも活躍している。二つの会計基準、十五の実務指針等をこれまで公表している。そのような意味では、これは新しい制度としてスタートしたものでありますけれども、非常に活発な活動を積極的にしてくださっているというふうに私は評価をしております。
達増委員 今、全体として肯定的な答弁だったと思うんですけれども、答弁の中で、減損会計及び時価評価の適用に関する緊急検討については、与党の要請もあって行われているということがありました。
 調べてみますと確かにそのとおりでありまして、第一回の減損会計及び時価評価の適用に関する緊急検討、これは企業会計基準委員会第二十九回会合としてことしの四月十七日に行われておりますけれども、議事要旨を見ますと、冒頭、金融庁の方から次のような紹介があった。
 これは、与党金融政策プロジェクトチームから金融庁及び財務会計基準機構(企業会計基準委員会)への要請というものがあって、どういう要請かといいますと、「長期保有の有価証券の時価評価及び強制評価減の見直しを、金融庁・財務会計基準機構(企業会計基準委員会)に強く要請する。」
 こういう要請が金融庁から紹介されて、そういう与党のプロジェクトチームの要請によって開かれたようなんでありますが、わざわざ政府から独立した主体として設けられた機構のはずであります、その委員会のはずであります。これが、与党の要請で会合が開催されたりということなんですけれども、そういうのは、この企業会計基準委員会の規則に、与党の要請があれば開催するなどというふうに決められているんでしょうか。
伊藤副大臣 審議テーマにつきましては、その選定の透明性を確保するために、財務会計基準機構の中に、市場参加者の声を吸い上げるテーマ協議会というものが設置をされております。当協議会からの提言を受けて、企業会計基準委員会が決定される、こういうふうになっております。
 今般の与党の要請についても、テーマ協議会から、企業会計基準委員会で取り上げるのに相応のテーマであるとの提言を受け、そして委員会が審議事項としたものと承知をいたしております。
達増委員 今回のこの第一回減損会計及び時価評価の適用に関する緊急検討の会が開かれたに当たっては、企業会計基準委員会の方でも混乱が見られているというふうに思いますよ。
 といいますのも、先ほど紹介したような、与党プロジェクトチームからの要請があったという金融庁からの紹介に対して、この進行役を務めているんでしょうか、西川副委員長が、「早急に検討することであっても、当委員会での検討においては公開での議論や公開草案の公表などのデュー・プロセスが必要であり、今回の運営についても同様とすることで良いかとの質問があった。」ということでありまして、これに対して金融庁側からは、「特に異論はないが、早急な検討が与党より要請されている趣旨を勘案いただきたいとのコメントがあった。」と。
 これで、委員のいろいろな発言を見てみますと、「企業会計基準委員会のテーマとして取り上げること自体は賛成である。」という声もあれば、「本テーマについては、一般論として議論する必要があるのか疑問である。特定業種の問題なのではないか。」という意見も出ています。また「現在の不況・デフレといった経済環境を踏まえた上で、マクロ経済政策の視点からも検討する必要があると思われる。」というコメントも出ています。また「長期保有の有価証券の強制評価減を見直すことは、強行法規である商法の規定を越えることにもなり、会計上、本質的な議論となる。これには相当の時間が必要であり、早急には検討できない。」と。早急に検討ということをめぐっても、いろいろな意見が出たようであります。
 ところが、この日、この議事要旨を見ますと、「本日の議論は、一般的に関心の高い事項であるため、委員会における確認事項については、文書化して本日中に公表することとした。」ということで、次のような紙が出ております。
  本日の第二十九回企業会計基準委員会において、
  与党金融政策プロジェクト・チームから要請があった以下の点について、企業会計基準委員会のテーマとして取り上げることと致しました。
   1固定資産の減損会計に係る強制適用開始時期の延期について
   2長期保有の有価証券の時価評価及び強制評価減の見直しについて
  なお、上記のテーマを取り上げるにあたって、以下の方針を確認致しました。
 一、当委員会は、市場関係者の意見を集約する立場から、参考人聴取などを行い、可及的速やかに検討する。
 早急な検討が与党から要請されているというのに対して、しかし、デュープロセスは必要だ、また、早急な検討は無理ではないかといろいろな意見が出る中、きちんと集約したのか。その日のうちに、こういう「可及的速やかに検討する。」というような方針が確認されたという、かなり企業会計基準委員会に無理を強いたような格好になっていないのかなということを懸念いたします。
 もともと与党の金融政策プロジェクトチームでいろいろな政策の議論をするのは問題ないのでありますけれども、その結果は恐らく二つのルートがあり得るんだと思います。一つには、政府に対して働きかけ、与党が政府をつくっているわけですから、政府を動かして、政府の政策として実行していく。もう一つは、与党は、国会の中に議席があって、議員立法提案などできるわけですし、この財務金融委員会の議事を決めることもできるわけですから、この委員会で議論をする、小委員会をつくってそこで議論することもできるでしょう。参考人を呼んで意見を聞くことも、議会の中でできるはずであります。
 議院内閣制が期待している、そういう、与党が政府を動かすか、あるいは国会に提案して議会の中で話し合うかという手法をとらないで、どうも、金融庁に要請し、そして政府から独立した主体としてわざわざつくられたこの団体に対してまた要請する。政官業癒着したような中で、議院内閣制が想定していないようなプロセスで、重要な問題について検討、そしてそれがまた決定に結びつくようであれば、これは非常によくないと考えます。何度も繰り返しますが、せっかく政府から独立した主体として民間団体がこういう企業会計基準委員会というものをつくっているのだから、その趣旨を生かした運用がなされるべきと考えますが、この点、政府、いかがでしょうか。
竹中国務大臣 今、達増委員、非常に詳細にこの間の経緯を御紹介くださいました。
 無理を強いているのではないかという御指摘がありましたが、委員会そのものは月に一度とかそのぐらいのペースで開いているわけですが、緊急にということで、その頻度も上げてくださっているようでありまして、その意味では、日程の調整等、さまざまな無理というか御負担をおかけしているということはあろうかと思います。
 しかしながら、まさに今御紹介してくださった議論の中にもありましたように、これはやはりプロセスをしっかりと踏んでいただくことが重要であるというふうに、私も当然のことながら考えております。
 まず、そのプロセスの一番重要なポイントは、そもそも、どこからか要請があったとして、それを取り上げるかどうかというのは、あくまでもこの財団の主体的な判断に基づいているということでございます。四月十七日にこの委員会があったという御紹介がありましたが、それに先立つ四月の十一日にテーマ協議会というのがありまして、この財団の運営、何を取り上げるかということをまさに主体的に判断する場でありますけれども、そこで、こういった要請があるけれども、これを財団のテーマとして取り上げるのが適切かどうかということを、まさに主体的に御検討いただいて、相応のテーマであるという提言を受けて、十七日の基準委員会の開催に至っているということでございます。
 一体、こういったものをどのようなルートで、政府を通じてか、国会を通じてかという御指摘ありましたが、これはまさに会計の問題という非常に重要なインフラの問題である。先ほどから何回も申し上げていますように、政府からも独立して、特定の民間の利害からも独立してということで、諸外国の動向も見ながらこの財団法人がつくられているわけでありまして、我々としては、これは、政府が何か、政府の判断で行うということではなくて、独立した主体で、かつ、そこの当日の意思決定にもありましたように、広く民間の意見を伺って、それで決めるんだというプロセスを踏んでいただいているわけで、我々は、その点はぜひとも尊重したいというふうに思っております。
達増委員 議会は議会、政府は政府、そして民間団体は民間団体ということで、きちんとやるべきことをやっていけばいいんだと思います。
 そこで、この議会において、政府に伺いますけれども、このいわゆる時価会計の凍結ということについて、今の経済情勢等々、こういう背景の中で、政府としてどのように考えるのか、伺いたいと思います。
竹中国務大臣 これは、今、まさに独立した立場で議論をいただいているところでございます。
 基本的な我々のよって立つ立場でありますけれども、そもそもこういうような考え方がどうして出てきたのか。
 先ほど、副大臣の答弁にもありましたように、これは非常に利害関係者が多い。一般には若干の誤解があるのでございますけれども、言うまでもなく、時価会計が適用されるのは一部の企業でございます。三百万ある会社のうちの約一万社、上場企業ないしは商法で言うところの大企業のみである。そういったところに対しては、多数の投資家、下請企業、従業員、債権者、そうした保護すべき対象が特にあるということで、そうしたところを念頭に置いて、大会社においても、一般に公正妥当と認められるところに従って、財務諸表を作成して、外部監査を受けろと。
 商法は、そもそもこうした資産の評価方法などは、「公正ナル会計慣行ヲ斟酌スベシ」というふうになっている。その「公正ナル会計慣行」とは何たるか。これもやはり社会のいろいろな出来事の中で形成されていくものだと思いますが、我々は、この財団法人財務会計基準機構で幅広く議論をしていただいているところが、大変重要な、一般に公正妥当なる会計慣行に相当するものであるというふうに思っております。
 したがって、今、我々としてもそこにお願いをしておりますので、私の立場として、こうあるべしという予断を与えるのは避けなければいけないと思っておりますが、ぜひとも、この会計基準機構で幅広く議論を吸収しながら、一般に、まさに公正妥当な会計基準のあり方を示していただきたいというふうに思っております。
達増委員 では次に、これもいわゆるですけれども、生保の予定利率引き下げ問題について伺いたいと思います。
 テレビでも盛んにこの問題が報道されるようになってきておりまして、この前、見ていて興味深く思ったのは、自民党財務金融部会長を務められている塩崎恭久議員がテレビに出ていまして、そんな破綻前の生保の予定利率の引き下げを定めるような法律は諸外国にはないというふうに言っていたんですけれども、それはそのとおりなんでしょうか。
伊藤副大臣 お答えをさせていただきたいと思います。
 諸外国における予定利率の引き下げに関する法律につきましては、アメリカ、イギリス及びフランスにおいては、法令上、既契約の予定利率の変更を可能とする規定はないものと承知をいたしております。また、ドイツにおいては、保険監督法の第八十九条において、監督官庁は生命保険会社が永続的にその義務を履行することができないことが明らかになった場合には、保険契約に基づく義務をその財産状況に応じ削減することができる旨の規定がありますが、破綻と同様のケースを想定しているものと承知をいたしておりまして、この八十九条が使われたということはないというふうに承知をいたしております。
達増委員 この予定利率引き下げ問題は、これは数年前から議論されてきていることでありまして、例えば一昨年の九月にも政府の金融審議会がこの問題を検討し、そのときには、生保の予定利率引き下げについてはその時点ではすべきでないというような結論を出したようでありますけれども、その経緯や、またそういう結論の論拠について伺いたいと思います。
伊藤副大臣 今委員からお話がございましたように、生命保険の予定利率の引き下げの制度に関しましては、生命保険をめぐる総合的な検討の一環として、金融審議会第二部会において検討が行われ、十三年の六月に中間報告が取りまとめられたところでございます。
 この中間報告には、保険会社そして保険契約者自身の意思決定による契約条件の変更について、保険契約者の権利保護に配慮した適正な手続のもとで、保険契約者の理解を得て行うことは否定されるべきものではないが、このような制度は、その内容について国民・保険契約者の理解の上、社会的な認知が十分に得られてこそ初めてその導入が可能となるものであり、十分な議論が何よりも望まれることとされたところでございます。
 この中間報告の取りまとめを受け、金融審議会の第二部会においては、中間報告の内容について広く一般からの意見を求め、それも踏まえ、十三年九月、「生命保険をめぐる諸問題への対応―今後の進め方―」が取りまとめられたところでございます。
 この中で、契約条件変更の制度については、国民・保険契約者の理解や生命保険会社のあらゆる経営努力がその前提となること、そして、意見募集の結果、各生命保険会社の経営努力の不足等を主たる理由に、制度の導入に反対する意見が多数を占め、各保険会社の経営刷新の努力等も現時点では必ずしも明らかでないこと等を踏まえ、契約条件変更の制度導入の環境が整っておらず、まず先に取り組むべき事項が多く存在しており、各保険会社、行政当局による必要な対応を求めるところとされたところでございます。
達増委員 一昨年の九月、そういうことだったわけでありますけれども、またここに来て、生保の予定利率引き下げは絶対必要だというような議論が報道でもいろいろ取り上げられるようになってきております。超低金利という異常事態にして非常事態、そういう背景があるわけですけれども、そういう意味では、何か非常な対策、異常な対策、諸外国でやっていないようなことをやらなければならないのではないかという発想でそういう提案がなされているんだと思います。
 しかし、実際やろうとすると、非常に弊害も多いと思うんですね。そういった弊害がある中で、どの国もやったことがないようなことに我が国が挑戦するのかといえば、むしろ我が国としてやるべきなのは、超低金利という状態を克服、是正する。どの国も体験したことがないというのは、まさにその超低金利が続いているということですから、景気の回復、そういったまさにマクロ的な、総合的な経済政策によって超低金利という異常事態をなくしていく、是正していくことが問題の根本的な解決だと思うんですけれども、政府として、この生保の予定利率引き下げということについて、現時点でどのようにお考えでしょうか。
竹中国務大臣 達増委員御指摘のように、やはり超低金利という異常なマクロ政策を比較的長期にわたって継続しなければならないような状況にある、これは何といっても大変厳しい経済的な背景であるというふうに思います。
 低金利政策そのものは、もちろんこれは日銀の政策でありますけれども、これはあくまでもマクロ的な配慮からこうせざるを得ないという状況認定のもとで行っているわけであります。それが、金利が通常想定されているより非常に低いことによって、例えば特定の業界に大きな影響を与えているという事実は否定できないのだと思います。その典型の一つとして生保がくるわけでありますけれども、現実問題として、しかしながら、生保をめぐる経営環境は、前回中間報告が出てきたとき以上に深刻化しているという事実も認めなければいけないのだと思います。
 したがって、こうした問題にどのように対応するかということで、我々としては、逆ざや問題はやはり経営上の構造的な問題というふうに認識をして幅広く検討してきました。しかし、まさに委員御指摘のように、あちらを立てればこちらが立たずということで、その弊害のような面も十分に配慮をしなければならない。
 したがって、我々としては今般、これまでの検討の成果を論点として整理したところでございます。これをもとに、あくまでも保険契約者の保護を図るという観点から、さらに議論を深めていきたい、ここは幅広くできるだけ議論をしていただいて、与党とも相談して、しっかりと対応していく基盤をつくっていきたいと思っているところでございます。
達増委員 論点を整理したということで、論点整理は何か政府から与党に対して提出されたと聞いていますけれども、これは金融新聞等にはもう載っておりますので、そういう政府・与党間だけで議論させておくにはもったいないので、この場でも若干取り上げたいと思います。
 将来にわたって経営状況に問題がないような会社が、制度を悪用して予定利率を引き下げて、引き下げなくてもやっていけるのに引き下げて、それでもうけよう、そういうこともあり得るんだと思います、ということが論点にもありました。また、関連して、問題ある会社に利率を引き下げさせて、そしてそこを買収、合併しようとかいう動きもあるということを仄聞しております。これもやりようによってはかなり、予定利率の引き下げがなくてもやっていける会社が、制度を悪用してさらにもうけてしまうようなことにつながりかねないと思うんですが、この点、いかがお考えでしょうか。
竹中国務大臣 まさに論点として我々が整理して、これから幅広く御検討をいただきたい問題を今指摘してくださったと思います。
 基本的な考え方としては、そういうことにならないようにやはり手続をきちっとしなければいけない。もしそういう必要がある場合には、手続をきちっとしなければいけないということではないかと思います。したがって、そうしたことをもしもやる場合は、その決議の方法についてどのように考えていくか、これも論点整理の中にさまざまな視点を入れております。
 今御指摘のような点を踏まえて、この論点整理をさらに深めていくという形を我々としてはとりたいと思っております。
達増委員 政府の総合的な経済そして財政政策のグランドデザインとしては、超低金利政策をせざるを得ないような景気の低迷や経済の回復といった課題については、財政政策と、あとは規制改革を含む産業政策、そういったところで景気回復を図り、金利を高くしてもいいような経済情勢をつくっていき、この生保のあり方、そして会計基準についてもそうだと思いますが、そこのシステム改革についてはまだまだ、国際対応でありますとか、さらなる透明性や国際的な基準との適合性を図っていくような改革というものがむしろ必要とされているんじゃないかと思うんです。
 思えば、小泉内閣の構造改革路線というのは、そういうシステムの改革は、これは逆に徹底的に進めることでかえって経済成長にもつながっていくという発想だったと思うんですけれども、そういう意味からすると、金融関係のシステム改革も積極的に進めていくという結論になると思うんですが、これはいかがでしょうか。
竹中国務大臣 二年前の最初の骨太方針に書かせていただきましたが、まさにこれは委員の今の御指摘と同様でありまして、国際的な流れの中で、市場の活力を活用しながらこの四つの改革を進めていかなければならないという認識を持っております。
 ただ、その場合に、恐らくこれは金融の問題、特に公的金融のあり方等に象徴されておりますけれども、そういうものを目指しながら、それに至る過渡期において、若干その順番を、シーケンスといいますか、政策の順位をどのように整合的にやって混乱をなくしていくか、こうした視点も取り入れながら着々と進めていかなければいけない問題であるというふうに思っております。
達増委員 時間ですので終わります。ありがとうございました。
小坂委員長 次に、佐々木憲昭君。
佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 午前中に、山田議員から銀行の貸し手責任の問題について質問がありました。私は、銀行の融資に対する規制問題、この点についてお聞きをしたいと思います。
 四月十八日の財務金融委員会で、私は、貸金業の問題、武富士問題を取り上げました。まず、基本的なことを確認したいんです。
 貸金業者が貸し出す場合、貸金業規制法十三条で過剰融資というのが規制されております。「貸金業者は、資金需要者である顧客又は保証人となろうとする者の資力又は信用、借入れの状況、返済計画等について調査し、その者の返済能力を超えると認められる貸付けの契約を締結してはならない。」これは法律でしっかりと書かれているわけであります。
 そこで、お聞きをしたいのですけれども、銀行の融資について、過剰融資規制、過剰融資について規制をしている法律上の規定はありますでしょうか。
五味政府参考人 銀行の場合と貸金業でちょっと事情が違うかもしれませんが、過剰融資というのを、経済合理性から判断して、その必要とする融資額を著しく超えるような、そういった融資を例えば押しつけのような方法で貸すというような、こういう不適切な融資行動というふうに、私なりにちょっと、銀行の場合ですので、理解をさせていただきますと、こうした過剰融資というものについて、それを特掲して銀行業務を直接規制するというような規定は、銀行法あるいはその関連法令にはございません。
 ただ、ちょっとお時間をいただいてお話し申し上げますが、銀行法は、そもそも第一条の銀行法の目的のところで、銀行業務の公共性でありますとか、金融の円滑、あるいは銀行の業務の健全かつ適切な運営といったようなことを定めております。また、十二条の二では、銀行は、業務に係る重要な事項の顧客への説明を確保するための措置を講じなければならないといった旨の規定もございますので、銀行法の前提としては、いわゆる過剰融資というものは不適切なものであるということがまず前提となっているという理解だというふうに思います。法律としてはそういった形になっております。
佐々木(憲)委員 つまり、過剰融資そのものを直接規制する銀行法上の条文はない、しかし、精神的な意味で不適切な貸し出しという枠組みの範囲には入る、そういう話でありました。
 しかし、私は、これが大変おかしいと思うわけです。つまり、過剰融資を、貸金業者に対しては規制する、銀行法上は規制がない、極めておかしなことであります。例えば、金融庁の事務ガイドラインというのを見ましても、銀行向けのガイドラインのところには、不健全な先に対する融資、過剰な財テク融資、投機的不動産融資というようなことは規制しなければならない、こういうことになっております。しかし、返済能力のない個人に対して融資してはならない、こういう規定は明文化されていないわけであります。
 貸金業の場合には、大変具体的に書かれておりまして、例えば事務ガイドライン、貸金業に対するガイドラインでは、「過剰貸付けの防止」というのが3―2―1のところでありまして、先ほど私が紹介しました貸金業法第十三条、これに対応する「過剰貸付けの判断基準」というのが書かれております。ここで、
  貸金業者が貸付けを行うに当たって、当該貸付けが資金需要者の返済能力を超えると認められるか否かは、当該資金需要者の収入、保有資産、家族構成、生活実態等及び金利など当該貸付けの条件により一概に判断することは困難であるが、窓口における簡易な審査のみによって、無担保、無保証で貸し付ける場合の目処は、当該資金需要者に対する一業者当たりの貸付けの金額について五十万円、又は、当該資金需要者の年収額の一〇%に相当する金額
前回、私これを紹介しましたけれども、比較的具体的に個人に対する融資の規制、上限が書かれているわけですね。
 しかも、こういうふうに規定されております。「顧客に対し、必要とする以上の金額の借入れを勧誘したり、借入意欲をそそるような勧誘をしてはならない」、こういうふうになっているわけであります。
 こういうふうに具体的に、貸金業者の場合には、過剰融資に対しての規制というのはかなり厳密にされているわけですが、銀行に対してこの規制というものが、どうもはっきりしたものがないわけであります。
 しかも、回収という点についていいますと、貸金業者には、貸金業規制法二十一条で、「人を威迫し又はその私生活若しくは業務の平穏を害するような言動により、その者を困惑させてはならない。」これは、回収行為に対する規制、明文化された法律でこのようにはっきりされているわけですね。
 また、事務ガイドラインではさらに具体的な規制が盛り込まれておりまして、暴力的な態度をとってはならぬとか、大声を上げたり乱暴な言葉を使ったりすることなどを規制しておりますし、あるいは、「債務者、保証人等の私生活又は業務の平穏を害する次のような言動を行ってはならない」として、「正当な理由なく、午後九時から午前八時まで、その他不適当な時間帯に、電話で連絡し若しくは電報を送達し又は訪問すること。」あるいは「反復継続して、電話で連絡し若しくは電報を送達し又は訪問すること。」「勤務先を訪問して、債務者、保証人等を困惑させたり、不利益を被らせたりすること。」こういうことが禁止されているわけですね。
 銀行が仮にこういう回収行為を行った場合に、これに対する規制の法律というのはあるんでしょうか。
五味政府参考人 お尋ねは、不当、不適切な資金回収について法律上の規定があるかというお尋ねというふうに理解をいたしますと、この点も先ほどと同様でございまして、不当な資金回収というものを特掲してこれを法律で直接業務として規制していくといったような規定は、銀行法あるいは銀行法の関連法令にはございません。
 同じように、今お話ございましたけれども、そうしたものは、当然のことながら、銀行法にも定められております銀行法の目的、銀行の業務の公共性ですとか金融の円滑ですとか、こういった視点からすれば不適切なものでありまして、したがいまして、免許制で参入規制というのをあらかじめ銀行はとっておりまして、その上で、銀行の業務については経営の自主性というものを尊重する、こういう構成の法律でございますので、当局の監督といたしましては、あるいは検査といたしましては、事務ガイドラインの方に、こうした不当な回収行為が行われないような経営姿勢や内部管理体制ができているかどうかということをチェックするということで、事務ガイドラインあるいは検査マニュアル――検査マニュアルには、不適切な資金回収が行われていないかということを審査管理部門が営業部門に対してきちんと検証しているかといったような項目がある、こういうような構成で検査監督が行われているということでございます。
佐々木(憲)委員 今の答弁でも明らかなように、銀行の回収行為に対する規制というのは、法律上はないわけであります。これは、私は非常に不思議だと思うんですね。銀行の場合も、具体的な実例を聞いてみますと、職場に何度も返済を求める電話をしてくる、こういうことが実際にあるわけです。つまり、そういうことは貸金業者はしてはならないということを規制しているんだけれども、銀行に対しては規制がない。一般的な、抽象的な話は今されましたけれども、具体的な行為規制がないわけであります。
 例えば、過剰融資を行う。例えば収入の何十倍の貸し付けを行う。返済能力は初めからないのははっきりしている。そういうことに対して、サラ金がやったらだめですよ、銀行がやったら、それは何も規制はありませんからどうぞおやりください、こういうことになっているこの法体系というのは一体何なのか。私は、非常に法体系上アンバランスであるというふうに思うんです。これは大変おかしな法体系だと思いますが、大臣、どのように思われますか。
竹中国務大臣 貸金業と銀行業の法体系の整合性がこれで保たれているのかという御指摘であるわけでございます。
 この法体系、監督するための体系というのは、法律、それから、今局長からの答弁もありましたような事務ガイドライン、検査のマニュアル、やはり総合的にぜひ考えるべき問題ではないかと思います。
 とりわけ、法律をつくるに当たって、その法律をつくるに至ったプロセス、例えば貸金業規制法の立法の経緯を見ますと、これは、高金利、過剰貸し付け、過酷な取り立て等を原因とするいわゆるサラ金問題を背景に、昭和五十八年に、議員立法によりこの貸金業の規制等に関する法律が制定、施行された。まさに過剰な貸し付けや高金利を取り締まる目的でこの法律がスタートしているという一つの立法の経緯があろうかと思います。
 それに対して、銀行の場合は、銀行という一つのインフラを維持していくに当たって、まずやはり預金者の保護をしっかりとやろう、そのために、銀行の業務の公共性にかんがみて、最低資本金の制度とか、非常に厳格な参入規制を設けている。業務の運営については、参入の規制を厳しくする分、その分自主的な努力を尊重するような配慮で、トータルとしてのシステムがうまくいくように機能させている。
 その意味では、この一点の規制の法律上の整合性、コンシステンシーということではなく、今申し上げたような法律の趣旨、背景、それに加えて、それを補強するためのさまざまなガイドラインでありますとかその他の仕組みをやはりトータルで判断していく必要があるというふうに思っております。
    〔委員長退席、渡辺(喜)委員長代理着席〕
佐々木(憲)委員 今の答弁はちょっと納得できませんね。銀行は自主性を尊重する、したがって、内部の管理がしっかりしているかどうかということが問題だと。しかし、サラ金は、過剰貸し付けが問題になったことがあるので、そちらの規制の方が重要だからという話でありました。
 しかし、今や貸金業といっても上場企業があるわけですね。極めて巨大化しているわけであります。それから、銀行もさまざまな問題を起こしております。したがって、同じ過剰貸し付けという行為、全く同じ行為、これに対して、サラ金の場合にはこれを規制しなきゃならぬ。銀行が全く同じことをやっても、いや、そういう規制はないんだ、法律的には。これは幾ら何でもちょっとバランスを欠いていると思うんですね。全くこれは整合性あるというふうに私は思えないんですけれども、大臣、これは非常に食い違いが大き過ぎると思いませんか。やはり同じような状況でしっかりと銀行の場合も規制するというのが、これは当然の流れだと思いますけれども、いかがでしょうか。
竹中国務大臣 先ほどの答弁とほぼ同旨になってしまうかもしれないんですが、基本的には、銀行に関しては、御指摘のように非常に厳しい参入障壁が求められている。恐らく、今、時代の大きな変化としては、我々としてもできるだけ新規の参入を呼び込もうとしているし、その参入障壁を低くしていく、そういった観点から、非常に非常に長期で考えるならば、銀行業と貸金業の間の今御指摘のような問題がやはり問題にされてくるべきなのだというふうに私も思います。
 しかし、ただし、これは恐らくかなり長期の話であって、私としては、今の参入障壁の中で、これは銀行法の最初の条文にも書いているわけですけれども、その分きちっと自主的な判断を尊重してやらせるんだ、そういった法体系を我々としてはしっかりと運用して、先ほどの事務ガイドラインでありますとか検査マニュアル、そういったことをしっかりと活用する中で、今問題のバランスをぜひ図っていきたいというふうに思っているところであります。
佐々木(憲)委員 それが、実際に銀行が行っている行動を見ますと、そうはなっていないんですね。
 具体的な事例をいろいろと御紹介したいと思いますけれども、お配りした資料を見ていただきたいんですが、銀行の融資行為に対する規制がないためにいろいろな被害が起こっておりますが、八〇年代後半から九〇年代の前半にかけまして、銀行による個人向け融資というのは、そのグラフのように大変急増しております。七兆円から四十七兆円というふうに、これは本当に、七倍近い、大変な急増であります。
 その一方、二枚目をあけていただきますと、銀行に対する被害が急拡大でありまして、国民生活センターの統計では、銀行に対する相談が八九年から十年間で三・六倍、そのうち、融資に関する相談というのは何と十三倍になっております。四年間だけでも、銀行融資に関する相談、二倍になっております。
 大臣にお聞きしますけれども、個人向け融資がずっと拡大していく、それと銀行被害が急増していくというこの関係は、やはり密接な関係があると私は思うんですが、いかがでしょう。
竹中国務大臣 今、図を見せていただいたばかりでありますが、私も直観的には、業務分野が新しい分野に広がって、そうした面での制度の整備といいますか、体制を確立していくことがやはり必要になっているということはあるのだと思っております。
 今まで、一般的なイメージとしては、特に大銀行は企業に対する貸し付けを重視してきた。バブルの崩壊とともに新たな貸付先を見つけるということで、個人にその対象を広げている。しかし今度は、企業に対するときと個人に対するときと、情報量の格差が随分と違いますから、そこでいろいろな苦情といいますか、トラブルもふえているのかな、この図からは、やはりそういうふうに読み取るのが素直であろうかと思います。
 我々としては、そういった御指摘も踏まえて、先ほどから申し上げていますように、ガイドラインをしっかりと運用して、検査のマニュアル等々もしっかりと運用して、こういったことが拡大していくのをぜひ防ぐように努力をしたいというふうに思います。
佐々木(憲)委員 銀行は、八〇年代の後半から九〇年代にかけまして、個人をターゲットにしまして大変な貸出策をやってきたわけです。提案型融資、先ほども午前中に山田議員がこういうことを、博物館ですか、美術館ですか、そういうものをつくったらどうでしょうとかいって具体的な提案をして、それでどんどん貸し込んできた。
 私は、ここに「金融被害者の怒りの手記」というのを、三冊ありまして、これを持ってきたんですけれども、ここには九十人の被害者の直接の生の声が載っておりまして、後で大臣にこれをお届けします。それから、椎名麻紗枝弁護士が書いた「百万人を破滅させた大銀行の犯罪」という本もありまして、具体的な事例を載せておりますので、ぜひこれもお読みいただきたいと思うわけです。
 この中にこういう事例があります。例えば
  平成二年、五月か六月頃、用事で第一勧銀千歳船橋支店に行きましたらカウンターに出ていた行員のN・Kが「良い保険がありますので入りませんか」と申されましたので私は「保険は他に入っているから必要ない」と言ってことわりました。
  数日後自宅に行員が来て、「先日申し上げた相続の保険に入って戴きたいので来ました」と言います。私は相続とは主人が死んだ時のこと、そんなこと現在考えたくないので入らないとはっきり断わったのに、その後数回来て、話しだけでも聞いて下さいと言って、三井生命五反田支社のO・Tを連れてきましたので、仕方なく上がってもらいました。
  「こんな良い保険ですから是非入って下さい。お勧めします。」と一流の銀行と生命保険の社員が口をそろえて執拗に勧めるので、根負けして契約することにしましたが、主人はいつも血圧が二百位になっているので健康診断が通らないでだめになるだろうと思っていましたら、すんなり通りましたので驚きました。そして保険の金額を聞いてまたびっくり。それは本当に驚きの金額でした。
  保険料一億五千三百万円、保険金が契約者七千万、妻五千万、子供二人四億円
  ところが、行員があれほど固く保証すると言っていたのに、契約後ずっと運用はマイナスでしたので、平成七年四月契約を全部解約いたしました。その際損害金、解約返戻金の損金、支払利息、手数料その他で約七千万円位の損害金となり、現在銀行に一回も支払して居りませんので、その利息がまた加算され、解約後も借金は日々大きくなっていきます。
  こんな途方もない借金を作ってしまって、担保で家を取られるのでしょうか、これからどうして生きていけばよいのでしょうか、騙された私が悪いのでしょうか、頭がおかしくなりそうです。
こういう手記です。
 こういう方々が、ここには本当にたくさんの被害者がいらっしゃるわけであります。午前中からきょう傍聴に来ている方も、そういう方がたくさんおられます。
 共通しておりますのは、被害者の方から融資を申し出たのではありません。銀行の側から、相続税対策ですよと、これをうたい文句にしまして、マンションを建てませんか、あるいは立体駐車場を建てませんか、変額保険に入りませんか、資金は銀行で全部融資しますから安心してください、こういうふうに言って融資のセールスに来ているわけです。まさに提案型の融資ですね。借金を抱えるのは嫌だと断っても、いや、絶対に損はさせませんと何度も家に来る。これは明らかに借金の押し売りであります。
 こういうことは、例えば貸金業法では、「顧客に対し、必要とする以上の金額の借入れを勧誘したり、借入意欲をそそるような勧誘をしてはならない」、ガイドラインで、貸金業の場合は規制されている。銀行の場合には、この規制は全然ないんですよ。だから、銀行は大手を振ってこういう提案融資をあのバブル時代にどんどんやった、バブルが崩壊してもやった。その結果、本当に百万人近い被害者が全国でふえているわけであります。
 私は、少なくとも、こういう勧誘の仕方を規制しないで放置してきたことが被害を拡大する要因の一つになったんではないかと思いますけれども、大臣はどのように認識されていますでしょうか。
    〔渡辺(喜)委員長代理退席、委員長着席〕
竹中国務大臣 私の郷里の、親の知人で、実は、銀行から過剰な融資を勧められて、トラブルに遭った知人がおります。その意味では、やはり今のお話を聞いても、本当に心痛むものがございます。委員のその三冊の本は、ぜひ私ももう一度読ませていただきます。
 今は、これはバブルの時代の保険商品の話の御紹介だったと思いますが、その後、金融商品販売法等々がつくられて、今日、当時に比べれば事態は改善しているというふうに思っております。当時の反省を受けてそういった法整備を今進めつつあるわけでございますけれども、午前中のお話にもありましたように、現実に困っていらっしゃる方は今もおられるわけで、その意識等々を背景にしながら、これは午前中も申し上げましたけれども、我々金融庁の範囲でできること、日本の法体系そのものの問題、さらには、もっと言えば、これはいわゆる投資家教育といいますか、消費者教育、消費者保護、そうしたもの全体の話にかかわる問題だと思っております。
 もう一度、先ほど言いましたように、金融商品販売法等々で、当時に比べて進歩している面はあるわけでありますけれども、それで十分かどうかということは、常に厳しく反省しながらチェックをしていきたいと思います。
佐々木(憲)委員 この融資の金額というのは余りにも過剰なわけでありまして、変額保険被害者の会が行ったアンケート調査の結果が今お配りした資料の三枚目に載っておりますけれども、例えば、融資金額一億円、二億円という人が四割を占めております。二億円から五億円という人が三割、五億円以上という人もおります。
 こういう人たちが資産家だったのかというと、そうじゃないんですね。たまたま祖父母の代から都心に住んでいたというだけで、普通の生活をしていた方々であります。それが、バブルの地価が高騰する中でどうやって子供に家を引き継ごうか、そういうことを考えて、そこに、相続税対策だといってセールストークでいわばだまされて、銀行につけ込まれて、過剰な融資を受けてしまう。
 被害者の会のアンケートでは、借入金と年収を比較したアンケートがありまして、一番少ない人で年収の十倍、二十倍ですよ。これが四六%。三十倍から四十倍、五十倍から六十倍、年収の二百倍以上という人もいる。これは、明らかに返済能力を度外視した過剰融資を銀行がやったと言わざるを得ません。大臣の知り合いの方もそういう方がいるというふうにお聞きしましたけれども、これは正常な貸し方ではないわけであります。
 しかも、高齢者がターゲットになっているんです。高齢者なんというのは収入がありませんからね。子供や孫に囲まれて余生を楽しもうかというときに、銀行にだまされて、子供に家を残すどころか、家を失うことになる。悲観して自殺に追い込まれた人も一人や二人ではありません。
 銀行融資に対する規制の必要というのは、七〇年代の後半から、政府の審議会でも繰り返し指摘されてまいりました。
 例えば、一九七九年六月に金融制度調査会がまとめた「普通銀行のあり方と銀行制度の改正について」という報告があります。そこにはこういうふうに書いているんですね。「法制面に関しては、各国の金融取引における消費者保護のための立法の状況にかんがみると我が国では整備が進んでいるといえない」。あるいは「金融取引における消費者保護規制について、今後、早急に具体的な検討が行われる必要がある」。具体的に指摘をしているわけです。
 同様の提言は、一九八七年七月十四日の金融制度調査会専門委員会の報告でも行われております。各国の立法例を研究した上で、欧米に倣って「統一的に規制する法律をできる限り早期に制定すべきである。」こう明記しているわけです。
 それから、最近では、一九九七年六月十三日の金融制度調査会の答申で、「我が国金融システムの改革について」、こういうふうに書いているんです。これは非常に大事なことが書かれておりまして、
  個人の利用者が銀行、貸金業者をはじめとする金融機関等を利用する場合、その専門的知識や損失負担能力に限界があるなど、実際には、金融機関等に対して全く対等の立場にあるとはいえず、当事者間の取引関係を全てその自治に委ね、最終的には司法手続を通じてトラブルの処理を図ることとすれば、個人の利用者にとって、現実的には、費用等の面で著しい不利益が生じる場合があると考えられる。
  こうしたことから、利用者が金融機関等を安心して利用できるようにするため、利用者保護のためのルールのあり方を検討する必要がある。
こう述べているわけです。
 そして、「銀行等の消費者ローンに係る利用者の保護」ということで、
  個人利用者の保護という視点を重視する観点から、銀行等の消費者ローンについては、従来の通達を中心とした規制の形式で十分と考えられるかという問題があるほか、書面の交付など通達によっても規制が行われていないといった問題もあり、銀行等の消費者ローンに係る更なる行為規制について、今後所要の措置を講ずる必要がある。
こう述べているんです。
 さらに、「今後の検討」として、
  以上の消費者信用保護の諸施策については、今後検討を進めて九七年度中に結論を得、速やかに所要の措置を講ずることが望ましい。
と述べているわけです。つまり、九七年でこれは結論を出しなさい、こういうふうに言っているわけですね。
 私は、このことをなぜやってこなかったのかと。やはり今大事なのは、こういうことを、例えば、八七年にそういう提言があったわけですから、そういう規制を直ちにやっていれば、今のようなバブルの金融被害は防げたわけであります。そういう意味で、私は、行政上非常に大きな責任があるというふうに思います。
 竹中大臣にお聞きしますけれども、消費者信用保護策、これについて、この答申どおり、直ちに検討を開始して、おくればせながら、これはすぐやる必要があると思いますが、いかがでしょうか。
竹中国務大臣 消費者保護のための制度整備というのは大変重要であり、その意味では、金融庁としても、また内閣府としても、それなりの努力は、少しずつではあるが、進みつつあるというふうに思っております。
 今の御指摘等も踏まえて、平成十三年から金融商品販売法が適用されている、これは先ほど申し上げたとおりでございます。さらには、その九七年の御指摘も踏まえまして、銀行法の中に、必要な場合の説明責任の明記等々も行われた、そういうような形で、これまでの反省を踏まえて、消費者の保護のための行政を一歩一歩進めているというのが現状でございます。
 御指摘の、より包括的な制度の整備ということでございますが、比較的最近の、平成十二年の金融審議会の報告でもそのことについての一部言及がございます。「いわゆる「日本版金融サービス法」の理念型は、すべての金融商品に横断的な取引ルール、業者ルール、市場ルールが整備されることである。今後も、これに向かっての着実な努力が必要とされる。」と。そのような長期的な努力を促しながら、一方で、金融当局に求められる今後の対応としては、「今後の新たな金融商品の登場や取引実態等を踏まえた迅速な対応を行うとともに、なお縦割りの法制が残っている業者ルール、市場ルールについて、横断化の努力を継続していくことである。」と。
 別の委員会でも御答弁申し上げましたけれども、将来的には、金融サービス法のような一括的なものに集約されていくというのが一つの理想であろうかと思いますが、今の制度は、既にある法律が現実問題として存在をしていて、その中でそれを横断化していくというような努力を積み重ねていくことが、我々にとっては現実的に重要な対応であろうかというふうに思っております。
 しかし、平成十二年の金融審の答申にもありますので、長期的なものとしては、日本版金融サービス法、理念型としては、こうしたものに向けた努力は、長期的な課題としてはぜひ続けていきたいというふうに思っております。
佐々木(憲)委員 これは、長期的というよりも、金融消費者保護というのは緊急の課題として答申の中で述べられていたわけでありまして、もうあれから六年たっているんですよ。だから、これは直ちにやるということを要望して、質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
小坂委員長 次に、植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。
 きょうは、日銀に、全般的に金融政策運営の方向性ということで伺いたいわけですが、まず、先月三十日の政策決定会合の中身を読ませていただきましたので、それについてまず冒頭伺っていきたいと思います。
 三月二十五日の臨時政策決定会合において、当座預金残高の目標値を二兆円ばかり増額した、そのときは、技術的な理由という政策変更であったわけですけれども、今回は、その意味では明確な政策変更と私は理解するわけですが、そういう理解でいいのかどうか。
 同時に、文章を読んでみますと、「当面、不確実性の高い状況が続くとみられることを踏まえ、」という文言があるわけですけれども、当然これは、とりわけアジア経済におけるSARSの影響というものが懸念されるということなんだろうと思いますが、SARSの影響については、どれぐらいの重大度というか、どんな影響を想定されておられたんでしょうか。まず冒頭、その点、御教示いただけますか。
福井参考人 お答え申し上げます。
 今般の措置は、おっしゃるとおり、技術的な調整措置ということではなくて、経済の先行きのリスクというものを先取りして、実態的に金融緩和効果をより深めた、実質的な、追加的な緩和措置ということでございます。
 先々の予想されるリスクを先取りしたと申し上げましたけれども、その中の一つがSARSの影響。これはなかなか、明確にどういう影響が出るかは、予測は基本的には不可能でございますけれども、私どもが把握しておりますところ、あるいは多少予測しておりますところを申し上げますと、現在ただいまの時点では、中国、香港など東アジア地域を中心に、まず観光ビジネスに強い影響が出ている、それから、小売業の売り上げに多少影響が出ている、こういう段階ですし、強いて言えば、さらに、物流生産活動にも一部支障が出始めているというふうな状況だと理解しております。したがいまして、そういう地域では、株価の低迷など、金融資本市場面にも影響が及び始めているというふうに考えております。
 こうした経済とか金融面への影響が今後どのように推移していくのか、冒頭に申し上げましたとおり、現時点で正確に予測することは難しいわけですけれども、仮に病気の感染がさらに長期化する、深刻化するというふうなことになりますと、東アジアを中心とする海外経済全般により悪い影響が及ぶというふうに心配されます。ひいては、日本からそうした地域への輸出にも大きなインパクトが及んでくるのではないか、こういうふうに考えております。
 御承知のとおり、先般、世界銀行が、これは四月下旬に公表されました世銀の半期報告書の中でそのことに触れておられまして、観光関連のビジネスを中心にしたダメージというものを軸に、日本を除いた今後の東アジア地域の実質成長率予測の中で、〇・三%程度、その影響ということで、下方修正しなければなるまいかというふうな試算を出しておられます。
 これはあくまで観光事業を中心にしたダメージを軸にそういう計算をしたということでございますが、私が今心配の種として申し上げましたような広がりを持って影響が出てまいりますと、こうした試算を上回って悪い影響が出る可能性があるというふうに考えています。
植田委員 今回の決定の中で言われているところの不確実性の一つが、このSARSをめぐるアジア経済、堅調に推移しているけれども、この問題が非常に、今おっしゃるように懸念されると。
 もう一点、この変更等についてというペーパーの中の三点目の部分、「株式市場では、銀行株を中心に株価が不安定な動きを続けており、これが先行き金融市場や実体経済活動に悪影響を及ぼすリスクには、十分な注意が必要」だ。こういう問題意識も不確実性のもう一つの要素として読み取れるわけですけれども、そういうことであれば、今回の措置が、当然、株価を非常に意識されたものだということを想像するにかたくないわけですが、これから聞くのは、では、日銀として、今回の措置を含めて、これまでどんなことをしてきたんですかということを聞こうというわけではありません。金融機関の株価が全般で下落しているということの基本的な要因というのは、当然、これは収益性が上がらないという問題です。
 それに対して、この間、日銀はこんなことをやってきましたよということではなしに、今度、この収益性の問題にかかわって、日銀としては日銀としての金融政策をとってきました、政府に対して、では、何を物申されますでしょうか。その点、お伺いします。
福井参考人 御指摘のとおり、株価下落の問題は、基本的に、これが企業の株価であれば企業の将来の収益性、銀行株であれば銀行の将来の収益性に対するマーケットの評価というものが基本的なファクター、要因でございます。
 したがいまして、企業ないし金融機関の将来の収益性を高めるというふうなところに基本的な視点を置いた政策の枠組みをしっかりさせていくということが根本でなければならない。
 非常に短期的な株価対策ということも時には重要な面がございますけれども、経済政策の基本は、あくまで企業の将来の収益性、それを全部集計すれば経済全体の将来の潜在成長能力を高めるというところに視点が据えられなければならない。金融政策も、広い意味で申しますと、そういった大きなバックグラウンドを踏まえながら、民間の努力を後押ししていくという要素を常に強く意識していなければならないというふうに思っております。
 政府の方の政策に関して申し上げれば、やはり、規制緩和政策、あるいは規制を撤廃する政策、あるいは税制改革などの面におきましても、そうした資源を常に新しい方向に向けて、より高い付加価値に結びつけていく民間の努力をサポートするような政策、そこにより強力なエネルギーを注いでいただければというふうに強く期待しているということでございます。
植田委員 後の方でもう一度、政府に対して何を物申すのかという観点から聞きますけれども、この三十日の決定会合にかかわって、続けてお伺いいたします。
 実際、当座預金残高のこの間の現状を見ていると、今回の措置も現状を後追いしたという印象もぬぐえないわけですね。四月一日には三十四兆に一たん積み上がり、大体この間も二十五、六兆ということで積み上がってくるわけで、今回二十二から二十七兆ということでいけば、現状を後追いしているような感はぬぐえないわけです。
 実際、この「不確実性の高い状況」というのは、極めて日本語としては伸縮自在の言葉でございまして、いつどこの時期の情勢をとっても不確実性という言葉は常に妥当性を帯びると思うわけですが、実際、今回こういう形で不確実性という言葉をお使いになってやらはったわけですが、経済情勢が、この間、このような情勢がずっと続けば、やはりまた引き上げが必要な事態は必ず生ずるということも予想されると思います。
 そこで、これまで積み上げてきた過程、当初は五兆円から始まったわけですけれども、そうした過程の中での金融政策をどういうふうに検証されてきたのか、これまで積み上げてきた結果がどのような効果を持ったかということがまず検証されなければならないという点。その点についてどうお考えかということと、もう一点、あわせて、今回の引き上げ額の五兆円、この五兆円、なぜなのと、どういう定量的な検証を行って五兆という数字をはじき出されたのか。というのは、これは、二つの質問は両方とも、双方連関すると思いますので、あわせてお願いいたします。
福井参考人 御質問に対して三つばかりお答えしなければならないかなと思いますが、まず、既に多額に積み上げた流動性の追認という色彩が濃いのではないかという点でございますが、これはちょうど三月末の期末直前にイラクとの戦争が始まり、戦争要因と期末要因、技術的なことをさらに追加的に申し上げれば、郵政公社が移行の過程で日銀当座預金を当初大きく積み上げる、こういう一時的な要因というものを、金融政策との整合性をとれる臨時対応ということで対処しました結果が一時的な流動性の積み上がりということでございました。
 しかし、根っこのところは、従来の政策方針からいきますと、最高二十二兆円というところで政策意思を明確に示しております。この根っこの部分を五兆円かさ上げしまして二十七兆円ということでございますので、イラク戦争に伴う一時的な要因、あるいは郵政公社の要因というふうなものが収束しても、根っこのところは二十七兆円までかさ上げしますという意味で、実態的な政策方針の変更、緩和であるということでございます。
 それでは、五兆円というのはどうやって計算したのか、大変厳しい御質問だというふうに思います。それは、限界的な政策追加の五兆円というものを、数学的な意味での算式でこの根拠をはじき出すということは、率直に申し上げまして非常に難しいということでございますけれども、将来を見通した、さまざまな不確定要因等を頭に置きながら、政策委員会のメンバー、私も含めてでございますけれども、頭の中の脳細胞を活用したコンピューターは十分回らした、こういうことでございます。つまり、ICチップによる計算ではないですけれども、生きている脳細胞をフルに回転した、それで計算した結果が五兆円。これは、政策判断というのは常にそういうものではないかというふうに御理解賜りたいと思います。
 それから、こうして量的な緩和を重ねてきております。振り返ってみた政策評価ということでございますが、この点は、つい先般、四月末に公表いたしました日本銀行の、これは半期のレポート、展望レポートと俗称しておりますが、この中でも比較的明確にお示ししたつもりでございます。
 つまり、量的緩和政策のもとで潤沢な資金供給というものを累積させてきておりますけれども、これまでのところは、マーケットにおける流動性懸念というものを払拭した、それから、長目の金利を含め、かなり金利低下という意味で効果を持つ、さらには、信用スプレッドの縮小というふうなことにも寄与してきたというふうに思います。
 これは金融面の現象として申し上げましたけれども、こうした緩和政策のもたらしたところは、さまざまなショックが日本経済に対して外から及んできたときに、流動性不安につながるルートを遮断したということでありまして、結局のところ、金融市場の安定確保という当面の目的はかなり十分に達成されている。
 さらには、それを通じて経済全般を下支えする力はかなり発揮してきたのではないか。物価の下落幅がどんどん大きくなり、したがって経済全体をどんどん下方に引きずり込んでいくというふうな、いわゆるデフレスパイラルの進行ということに対して、かなり歯止めをかける効果を出してきたのではないかというふうに思っています。
 しかし、日本銀行としては、それだけでは決して満足していないわけでございまして、何回も申し上げておりますけれども、金融システムの信用仲介機能がかなり不全な状況が続いている中ではございますけれども、何とか努力をして、経済活動に対して我々の金融緩和政策がより刺激的な効果を及ぼしていくように、さらに一段の努力をしたい、こういうふうに考えている段階でございます。
植田委員 えらい丁寧な御説明で恐縮いたしますが、ただ、三点のうち二点はとりあえずお伺いしたということで結構なんですが、五兆円、ありていに言えば、要するに政策判断なんだということに尽きるわけですね。
 そうなると、やはりいろいろとイフの話、もしもの話というものを幾つか聞いておきたくなるわけなんですが、一つは、こういう積み上げの推移を、今回五兆円ですけれども、見ていますと、しつこいようですけれども不確実性、この言葉は伸縮自在ですので、情勢のいかんによっては、今までの要領で、またそれぞれの脳細胞が活発に働いてぽんぽんと積み上げれば、当座預金残高が三十兆円という大台を超える事態だってあり得ると思いますね。これは、もしも、そういう脳細胞の働き方もあり得るんでしょうかという点。
 そして、もう一つ続けます、時間がありませんので。今回は長期国債の買い切りオペは見送ったわけですけれども、短期的にはともかくとしても、安定的な状態を確保するに当たっては、買い切り増額によらずに済まなくなる場面も想定できるんじゃないのか。
 この二つのもしもについて教えていただけますか。
福井参考人 私どもの仕事で実は一番難しい点を御指摘になったと思います。
 我々は、実際に経済の変化が起こってから手を打つというのでは遅過ぎると基本的に思っているわけです。常に情勢を先取りしながら判断して、前もって手を打っていくということでなければ本当の使命を果たせない、こういうふうに思っているわけですが、そうかと申しまして、早とちりはいけない。もうちょっと適当な表現があればいいと思うんですが、要するに早とちりはいけない。要するに、予断を持って臨むということは絶対に慎まなければいけないわけです。
 つまり、予断を持って臨まないという意味では、我々の脳細胞はかたくしていなきゃいけないですけれども、しかし、我々は、先を読まなきゃいけないという点では、十分脳細胞にマッサージを施していなければいけない。つまり、かたい頭とやわらかい頭と両方持って物事に的確に対処していく、これが実は我々がふだん一番悩んでいるところですが、日常の業務、それから非常に重大な局面における政策判断、この経験の積み重ねの上で、脳細胞がかたい方向にもやわらかい方向にも機敏に対応するというふうなことで結果を出していく。もちろん、さまざまなデータを客観的、理論的に分析するという道具を十分踏まえた上での話ではございますけれども、頭の中の細胞の働きについてだけ言えば、そういうことだと思います。
 したがいまして、流動性供給と申しますか、当座預金残高目標について三十兆円以上に引き上げることはあるんじゃないかと言われますと、そういう予断は持って臨んでいません、そういう必要があるというふうに前もって予見はしていません。しかし、今後の情勢の変化があり、さらに先行きのリスクの判断が我々が変われば、それはあり得ることなんですけれども、あり得るという予断を持っては臨まない、こういう大変難しい状況でございます。
 国債のオペレーション等についても全く同じ考えでございます。
植田委員 よくわかりました。
 それで、これまで、長期国債の買い切りオペと当座預金残高の目標値の引き上げ、これはセットでやってきたわけですけれども、今回は当座預金の目標値の引き上げのみということですけれども、これはどういう理由なんでしょうか。
福井参考人 御承知のとおり、日本銀行の流動性供給手段といたしましては、長期国債の買いオペレーションというのが実際問題としてかなり太いパイプになっていることは事実でありますが、しかし、我々の持てる手段というのはこれに限られておりませんで、もっと短期のオペレーションの手段もございます。
 そして、いわゆる政府債に限らず、民間の証書、手形その他の債券というふうなことも対象になり得るわけでございまして、そういう幅広い道具立ての中から、市場の状況をよく判断して、最も適当な道具を使って流動性を供給していくという対応をとっております。
 そういう観点からいきますと、今回の流動性供給目標増加を考えたときに、長期国債のオペレーションの枠をふやすということがなくても十分やっていけるというふうな判断になりました。実際、四月三十日以降の我々のオペレーションをごらんいただきますとおわかりのとおり、必ずしも国債オペをふやさなくても、円滑に流動性の供給を全うできているというふうに思っております。
植田委員 今の御説明でいけば、要は、銀行券ルールがあるからというよりは、長期国債の方をやらずともできるという判断でしたと。私なんかは見たとき、一昨年のあの政策決定会合でのルールが手かせ足かせということにもなっているのかなというようなこともちょっと推察しておったのですけれども、そういうことではないよということですね。うんということならば結構です。
福井参考人 手かせ足かせというのはどういう意味かによって非常に難しいのですが、我々は、銀行券発行残高を上限とするというルールは実は強く意識しております。これは、日本銀行の流動性供給が直接財政へのファイナンスをしているということではないということをおわかりいただくため、そして、これを守っているがゆえに国債の信認がマーケットでも保たれている、この点は非常に大事にしたいというふうに思っています。
植田委員 とすると、これも同じようなやりとりになると思うんですが、強く意識されているけれども、今後の展開いかんによっては、これはいいか悪いかとか、すべきとかすべきでないとかじゃなくて、例えば五月以降の政策決定会合の中で、この銀行券ルールにかわる新たなルール等々について、その可否を含めて議論されるような場面も、もしもということであれば、やわらかい頭の部分ではそういうこともあり得る、かたい頭としてはそういうことを意識しないけれども、それぞれの状況をぴぴっと察知すれば、そういうことも出てくる可能性は否定はしないということですね。
福井参考人 日本銀行の政策決定は、九人のメンバーの合議体による意思決定でございます。したがいまして、今後の情勢展開の中で、長期国債のオペレーションの増額が必要であり、かつまた、この上限との関係でどう考えるかという議論がメンバーの中から起こり得る可能性がないかというと、それは起こり得る可能性はあると思います。
 しかし、現在、ただいまの政策委員会を構成しておりますメンバーのそれぞれの方々の心のうちを私が推測しました限り、そして私自身の心のうちを申し上げれば、このルールについてはそう安易に撤廃すべきでないという気持ちが非常に強いのではないか、私自身は強いです、ほかのメンバーの方々も強いのではないか、こういうふうに推察をいたしております。
植田委員 ありがとうございました。
 三十日の分は時間がありませんのでこれで終わりまして、実は、せんだっての一般質疑でちょっとやり残した部分がございました。それは、資産担保証券の買い入れにかかわる話でございます。
 これは、とりわけ中小、中堅企業の金融面の目詰まりを何とか日銀なりに工夫をしようという一つのお知恵だろうと思うわけですけれども、一つは、そういうことは直接、第一義として意識されていないとは思うんですけれども、実際、まだ日本の資産担保証券の市場は小さい、ABSにしろABCPにせよ。例えば、アメリカと比較した場合、それこそ十分の一以下ですから。ABSだって、アメリカだったら約二百兆に対して、日本は一兆五千億程度というところで、潜在力に期待はかけておられるだろうと思いますけれども、思惑どおりに市場が育つかということ自体がそもそも未知数なんじゃないのかな。
 まして、今回、中小企業向け及び中小企業の売り掛け債権を特定目的会社が買い取って、それをまた買い取るということですけれども、そもそも、そういう直接金融になれ親しんでいない中小企業でございますから、目詰まりを取っ払うという意味での一つの工夫だろうとは思うんですが、実際のところ、なかなか使い勝手が悪いんじゃないかと私は思うわけです。
 というのは、そもそも、日銀が期待しているような中小企業金融の円滑化のためには、売り掛け債権の譲渡にかかわっての法律面、まずそれを整備しなきゃなりませんし、とりわけ民間の間でのいわゆる商いの慣習の中で売り掛け債権がどういうふうに扱われてきたかという問題、また、その譲渡手続のコストの面、この点がまず乗り越えていかなければならないハードルとしてあると私は思うんです。
 というのは、今回取り扱う、売り掛け債権ということになれば、例えば一件当たり数十億とかいう大企業の売り掛け債権ならまだしも、数百万とか数千万単位の中小企業の売り掛け債権をわざわざ資産担保コマーシャルペーパーにする。そうなってくれば、採算面で、中小企業にとっては資金調達の手段としてはむしろコストがかかってしまうのと違うだろうかという点が、私は非常に疑問なわけです。
 ですから、私は、これをやるというこのお知恵は、別にあかんと言っているわけじゃないです、いいことだと思っていますけれども、そのためには、冒頭申し上げましたような幾つか乗り越えなければならないハードルも含めて、日銀として幾つかの問題提起をこれとあわせてやっていく必要があるんじゃないかと思います。
 それと、実際、中小企業の側からすれば、こういうツールがあっても使い勝手が悪いよということ、この辺については、総裁、どんなお考えでしょうか。
福井参考人 こうした新しいことをやっていこうではないかということを政策委員会で決定いたしまして、それを公表させていただいて、最初の記者会見のとき等にも私、こういったマーケットは、日本においては、まだほんのはしり、揺籃期だ、赤ちゃんが揺りかごの中にいるような段階だから、これを大事に育てていかなきゃいけない、こういうお話を申し上げました。
 確かに、その後よく考えてみましたら、揺籃期どころか、もうちょっと前か、まだ赤ちゃんがお母さんのおなかの中に入っている段階かもしれない、そういうふうに思います。この子を大事に産み落として立派に育てていく過程を考えますと、今委員がおっしゃいましたとおり、さまざまな障害があることは事実でございます。日本でこういうマーケットを育てた経験がないわけです。外国で十分育っていても、日本で同じように育つとは限らない。心配の種は私もひとしく共有しているところでございます。
 ただ、これは、日本銀行が、あるいは日本銀行の思惑だけでこういうものをつくりたいと思っていることではないという点が非常に重要でございまして、日本の経済の中におきましても非常に多くの方が、これから先の日本の金融を考えると、こういう市場をつくっていくことが非常に大事だということで、日本銀行が発想する前に、こういう市場をつくろうという発想を持って動き始めている方が既に相当いるということでございます。それを我々は後押ししながら、本当にいいマーケットにしていこうということでございますので、多分、みんなの知恵をうまくそろえることができれば、心配の種も時間の経過とともに消していけるのではないか。
 今おっしゃいましたように、さまざまな制度的障害あるいは法律的障害、まあ税法上の障害があるかどうかですが、何がしか従来の制度の枠組みの中で決められていて、このマーケットの発展のために阻害要因になるようなものは、このマーケットが勢いをつけて伸びていくんだという実績をつくり上げ始めますと、解消もそれだけ容易になってくるのではないかというふうに考えているわけでございます。
 将来につながるという意味は、銀行貸し出しを通ずるファイナンス、この一本やりのルートでは、これから中小企業といえどもますます高いリスクに挑戦しなければビジネスの社会ではきちんと成功しないという世の中になっていきました場合に、銀行貸し出し一本やりという太い金融のルートを、だんだん市場を通ずる金融という方向に橋渡しをしていかなければいけない。この方向性は非常に明らかになっているわけで、方向性はやはり将来のあるべき姿に沿っている。
 そういう努力を人々がし始めたときに、日本銀行は、金融政策の効果の伝達経路、目詰まりを解消していくという場合にも、この方向性に沿った人々の努力と日本銀行の努力が力を合わせられるというふうな場面からまず努力を開始するということは意味があるのではないか、こういうふうな理解に立っているわけでございます。
植田委員 済みません。丁寧に御説明いただくのは非常にありがたいんですが、時間がぎりぎり超えそうですけれども、もう一問質問させてください。
 この資産担保証券の買い入れ、こういう知恵を出していただいたことは、私はあかんと言うているわけやのうて、それは一定評価しますよ。その上で幾つか話を申し上げているわけです。その意味で、今の御答弁は、確かに巨視的なお話やったと思うんですが、やや今のお話を伺っていると心配なのは、要するに、新たなそうしたマーケットを育成していくという問題意識と、今度中小企業金融を円滑化していくという問題意識が、どうも混然となりながらお話しされているような、そこが非常に気になったわけです。
 そこで、最後。本来的には、中小企業の金融の円滑化にしろ、とりわけ中小企業対策全般にわたっては、それは日銀としては側面的にさまざまな政策を打ち出せばいいわけであって、本来は政府の仕事であるわけですね。だから、そこに深入りして、日銀がそれこそ不良債権まで抱えないかぬということになったら大変なことになるわけです。
 先ほども話題に上りました「経済・物価の将来展望とリスク評価」の中でも、「日本経済の持続的成長軌道への復帰とデフレ克服の展望」……
小坂委員長 手短にお願いいたします。
植田委員 手短にやります。
 デフレ脱却には、需要や成長期待を高めることが大前提ということを踏まえた上で、民間経済主体、政府、日銀それぞれの持続的な取り組みと。一体と言わずに、日銀さんは、それぞれと。政府も日銀もそれぞれとおっしゃっておられるわけですが、ここで、政府による規制、税制、歳出改革ということが書かれているわけですね。日銀は当然ながら金融政策をやると。
 そこで一々、三点聞くわけにはいきませんので、歳出改革、これについて具体的に、政府の政策に対して、歳出の中身まで含めて、いかに適切な財政出動をどこでやるべきか、そしてどこを削るべきか、そういうことを含めて、言われっ放しやのうて、むしろ日銀の側から意見を言うべきじゃないでしょうか。
 今必要なのは、具体的な、需要や成長期待を高めるために、限られた財政の中でどこに適切に財政出動するのか、それのめり張りをつけることが日銀のやる金融政策を実効あらしめるために負うべき政府の責任だろう。そのことを総裁としては、具体的にこれから、とりわけ歳出の内容まで立ち入って意見を申されてもいいんじゃないでしょうか。
 その辺、最後に伺って、もう手を挙げませんので、お話しいただくだけで結構ですので、終わります。
福井参考人 大企業だけでなくて中小企業も、これからの世の中におきましては収益力の強化、体質改善、場合によっては思い切った経営の転換ということが避けられない、これは必要だということでございます。
 したがいまして、一言で言えば、企業が競争力をつけていくために必要な技術革新というものを政府がしっかりとバックアップする、そして、こうした中小企業を含め、企業が経営の転換を図っていく場合に、さまざまな摩擦現象が出ます。したがって、セーフティーネットをきちんと政府がしく、これは重大な仕事だというふうに思っています。
 日本銀行は、あくまで金融資本市場を整備しながら、企業が新しい前進をしていくステージをきちんと用意していきたい。役割分担はかなり明確になっているというふうに思っております。
小坂委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時十五分散会


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