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第16号 平成15年5月21日(水曜日)

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平成十五年五月二十一日(水曜日)
    午後一時開議
 出席委員
   委員長 小坂 憲次君
   理事 金子 一義君 理事 七条  明君
   理事 林田  彪君 理事 渡辺 喜美君
   理事 生方 幸夫君 理事 松本 剛明君
   理事 上田  勇君 理事 中塚 一宏君
      上川 陽子君    倉田 雅年君
      小泉 龍司君    坂本 剛二君
      砂田 圭佑君    田中 和徳君
      竹下  亘君    竹本 直一君
      中村正三郎君    萩山 教嚴君
      林 省之介君    増原 義剛君
      山本 明彦君    山本 幸三君
      五十嵐文彦君    井上 和雄君
      上田 清司君    小泉 俊明君
      佐藤 観樹君    仙谷 由人君
      中津川博郷君    永田 寿康君
      平岡 秀夫君    石井 啓一君
      遠藤 和良君    東  祥三君
      達増 拓也君    佐々木憲昭君
      吉井 英勝君    阿部 知子君
      植田 至紀君    江崎洋一郎君
    …………………………………
   財務大臣         塩川正十郎君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     竹中 平蔵君
   内閣府副大臣       伊藤 達也君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   財務大臣政務官      田中 和徳君
   政府参考人
   (金融庁総務企画局参事官
   )            西原 政雄君
   参考人
   (日本銀行総裁)     福井 俊彦君
   参考人
   (預金保険機構理事長)  松田  昇君
   財務金融委員会専門員   白須 光美君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月二十一日
 辞任         補欠選任
  達増 拓也君     東  祥三君
同日
 辞任         補欠選任
  東  祥三君     達増 拓也君
    ―――――――――――――
五月十九日
 相続税に関する請願(高橋一郎君紹介)(第二一五一号)
 国民に大増税をもたらす税制改革中止に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第二一五二号)
 消費税の大増税に反対し、税率を三%に引き下げることに関する請願(松本善明君紹介)(第二一八五号)
 消費税の大増税に反対、税率を三%に引き下げることに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第二一八六号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第二一八七号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 財政及び金融に関する件(金融危機に対応するための措置の必要性の認定に関する報告)
 財政及び金融に関する件

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     ――――◇―――――
小坂委員長 これより会議を開きます。
 財政及び金融に関する件について調査を進めます。
 この際、昨二十日、預金保険法第百二条第六項の規定に基づき、国会に提出されました金融危機に対応するための措置の必要性の認定に関する報告につきまして、概要の説明を求めます。金融担当大臣竹中平蔵君。
竹中国務大臣 五月二十日、預金保険法第百二条第六項に基づき、株式会社りそな銀行に対する同条第一項第一号に定める措置の必要性の認定の内容に関する報告書を国会に提出申し上げました。
 本日、本報告に対する御審議をいただくに先立ちまして、本報告を提出するに至った経緯及び本報告の内容等について御説明申し上げます。
 株式会社りそな銀行については、平成十五年三月期決算における同行の自己資本比率が健全行の国内基準である四%を下回る二%程度となるとの報告を受け、五月十七日、金融危機対応会議の議を経て、同行に関して、預金保険法第百二条第一項第一号に基づく資本増強を講ずる必要性の認定を行うとともに、同行が資本増強の申し込みを行うことができる期限を平成十五年五月三十日と定めました。
 今回の株式会社りそな銀行に対する認定につきましては、破綻処理やいわゆる国有化ではなく、金融危機を未然に防ぐために、同行に資本増強を行って十分な自己資本を確保し、同行の再生を図るものであります。
 また、認定の後、同行からの申し込みを待って、資本増強についての具体的な決定を行うこととなりますが、経営の安定を図り、預金者等の不安を招かぬよう一〇%を十分上回る自己資本比率を確保したいと考えております。
 今回の資本増強及び徹底的な経営改革により、同行の健全性の確保、収益性の向上が図られるものと期待しております。当然のこととして、同行においては、引き続き通常の営業が行われ、預金につきましても全く問題は生じません。
 ただいま御説明申し上げましたとおり、今回の株式会社りそな銀行に対する必要性の認定は、金融危機を未然に防ぐための万全の措置として講じたものであります。現状においては、金融システム全体に影響が及ぶ状況にはありませんが、政府としては、今後とも、金融システムの安定を確保していくとともに、日本銀行とも緊密な連携をとりつつ、預金者の保護、信用秩序の維持に万全を期してまいる所存であります。
 御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。
小坂委員長 これにて概要の説明は終了いたしました。
    ―――――――――――――
小坂委員長 この際、お諮りいたします。
 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁福井俊彦君、預金保険機構理事長松田昇君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として金融庁総務企画局参事官西原政雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小坂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
小坂委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹本直一君。
竹本委員 ただいま竹中大臣から御報告がありましたような経緯で、りそな銀行がこういう事態に至ったわけでございますけれども、もともとこの銀行は弱者連合とうわさされもしましたけれども、当初は自己資本はたしか八%ぐらいあったと思います。それが、最近の予測では六%ぐらいあるんだろうと言われておったのが、どうもよく調べてみると二・三%とか二%台だ。こういうようなことで、今回こういうことになったわけでございます。
 その直接の原因になったのは、繰り延べ税金資産、要するに査定を厳しくしたからそうなったのだ、こういうことでございます。査定を厳しくすることにどのような意味があるのか、後ほど竹中大臣にお聞きしたいと思っておりますけれども、さはさりながら、きっちりとした信頼できる査定をやって、その結果、こうでございますということを対外的にはっきり言える数字を出すことが信頼につながり、それをもとに日本経済の信頼が上がっていくというのが理想の展開だろうと思うんです。
 まず差し当たり、今御説明のあったようなことで今回の公的資金の導入が行われるわけですが、冒頭に、五月三十日までということでございますけれども、今後、どのような手続、経緯でもって、どのように持っていかれるのか、その具体的な実務の御説明、スケジュールをちょっとお聞きしたいと思います。
西原政府参考人 お答えさせていただきます。
 具体的な実務ということですが、このりそな銀行への公的資金の注入に関しましては、具体的な資本の増強額あるいは商品性等につきましては、実際にりそな銀行からの申し込みを受けて、それで精査をした上で、後日決定をするということになっております。
 この資本の増強に当たりましては、まず十分な額の資本増強を可能とするということ、これが一つ。それからもう一つは、ガバナンスの強化を図ることが可能となるような仕組みとする。こういう二点があろうかと思います。
 それで、ガバナンスの強化という点でいいましたら、例えばでございますが、役員の選任解任権を有する議決権制限株式の活用、こういったようなことも含めて商品性については検討していくということになろうかと思います。
 スケジュール的な点について申し上げますと、この預保法の規定に基づきまして、まずは、今般定めました申込期限の五月三十日までにりそな銀行から申し込みがなされる、その申し込みの後、政府としては、その申し込みとあわせて提出していただいた経営健全化計画を審査する、その上で、内閣総理大臣による資本増強の決定がなされる、こういう運びになろうかと思います。その資本増強の決定の際に、具体的な増強額あるいは商品性というものが決まってくる、こういうことになろうかと思います。
 その後、株主総会、これは六月の二十六日を予定しておりますが、それを経て、月末、六月末には資本注入が実際に行われる見込みということでございます。
竹本委員 わかりました。
 さて、このりそな銀行でございますが、もともと大阪の大和銀行と埼玉の埼玉銀行が合体したわけでございます。私の選挙区は大阪であり、塩川財務大臣も大阪でございますが、大和銀行は、三十二の指定金融機関になっておりますし、また、全融資額に占める割合が約二〇%ぐらい、旧埼玉銀行の場合は約四〇%をあの地域で占めておるということで、しかも、対象先が、八割以上が中小企業関係だということでありまして、今一番問題になっております中小企業対策という意味では、これは本当にほうっておけない問題であります。
 そこで、このニュースが伝わったときに、国有化だとか銀行破綻だとか大騒ぎになるんじゃないかとマスコミは騒ぎ立てておりましたけれども、実は私はそれほど大騒ぎにならないんじゃないかと思っておったんです。というのは、国が公的資金を入れて、国が全責任を持つと言ってしまえば、お金を預けている人はそんなに危惧をしないんじゃないかと思っておりましたところ、どうも両様の反応があるように私は感じておるわけでございます。
 ただ、これからどうなるのかという問題の中で、預金は保護されるけれども、今まで「りそな」から借りておった中小企業が、これからも同じようなつき合いをしてくれるのかどうか、そこが一番心配だという声が地元から非常に強く上がってきております。
 そこで、この見方についても二つあります。一つは、従来より以上に、国有化されて、国は中小企業への貸し付けを奨励しているんだから、もっと積極的に貸してくれるだろう、かえって国有化の方がいいんじゃないか、こういう説もあれば、逆に、これは銀行の倒産なんだから、全然貸してくれなくなるのではないか、こういう二つの説がありまして、この辺についての見通しをぜひ当局からお聞きいたしたいと思っております。お願いします。
伊藤副大臣 お答えさせていただきたいと思います。
 今、先生から御指摘ございましたように、りそな銀行は、大阪そして埼玉を中心に大変厚い顧客基盤を持っておりまして、貸し出しの内容を見ますと、中小企業や個人に対する融資の比率の極めて多い銀行でございます。したがって、私どもとしましても、預金者だけではなくて、取引先の皆様方、そうした皆様方の不安を解消できるだけの十分な健全性基準を超えるだけの資本増強が必要だというふうに考えております。
 先ほど説明をさせていただきましたように、これから資本増強の申し込みがりそな銀行からございます。それにあわせて、経営健全化計画を策定し、提出することになっているわけでありますが、当局としては、その計画を審査し、資本増強を決定していきたいというふうに考えております。
 そのときに、これまでの地域金融に力を入れてきた同行の特徴を踏まえて、こうした経営健全化計画の検討がなされるというふうに私どもとしては考えているところでございます。
竹本委員 そこで、これからこの銀行の立て直しをどのようにやっていくのか、それが次の問題になるわけでございます。経営陣はより経営能力のすぐれた人をお迎えしてやるということになるんだと思いますが、これだけの金を入れるわけですから、今後は、そういう資金ショートを起こさないような、そして信頼を失わないような、かつ中小企業を含めた融資の要請にはきっちりとこたえられるような銀行にしていかなきゃならないわけであります。そういったビジネスモデルをどのように構築していかれるのか、それをぜひお聞きしたいなと思います。
 特に、この件に関しては、今回、伝えられるところによりますと、勘定を分けまして、再生勘定と新勘定に分けて、再生勘定の方には悪い債権を集め、新勘定の方にはいい債権を集め、そして自己資本比率一〇%を目指すということでございますけれども、諸外国の例を調べますと、スウェーデンで、かつてゴーダ銀行とかノード銀行とか、こういった銀行が破綻に瀕しました。このときにスウェーデン政府がとったのは、全株式を政府保有にし、そしてその中で不良債権を一くくりにして、バッドバンクという悪い銀行に一まとめにして、結局は民間に売ってしまった。
 ところが、今伝えられているりそな銀行のビジネスモデルというか経営再建の方策というのは、新勘定と再生勘定に分けて、なおかつ一つの銀行の中でその勘定を運営していくということなので、その辺、悪いところを補うのにいい勘定が使われるのではないか、こういった不安もあるわけでございます。こういったことも含めまして、新しい生き残り、かつ社会に役立つ銀行に立ち直るためにはどういうビジネスモデルを考えておられるのか、お聞きいたしたいと思います。
竹中国務大臣 竹本委員御指摘のように、今問われているのは、公的な資金を入れた後のりそな銀行がどのようにしっかりとした銀行業務を地域に根差して発展させていってくれるのか、本当にその一点であろうかと思います。
 自己資本を充実させる、その意味では公的資金の役割は大きいわけでありますが、これだけではもちろん物事は解決いたしません。その意味では、経営の立て直し、ガバナンスを発揮できるような、本当に今までとは違うしっかりとした仕組みをつくって、これは我々の重要な責務だと思います。その上で、経営者に思う存分手腕を発揮していただく、その体制づくりをしっかりとするというのが今の時点での我々の最大の務めであるというふうに認識をしております。
 その上で、特にお尋ねのありました勘定の話でございますけれども、金融再生プログラムの中に、今回のようにいわゆる預金保険法百二条の第一号の措置を使って資本注入する場合、これは特別支援の枠組みというふうに呼んでおりますが、その場合に、新勘定と再生勘定に分けて管理していくという記述がなされております。
 これはぜひとも御理解賜りたいのでありますが、よく言われるグッドバンクとバッドバンクに分けるということではございません。新たな経営者が出まして、その新たな経営者に関しては、新勘定をもとにしてしっかりと収益を上げていく、いわば内部の管理会計として、その新経営者の収益を上げる責任を明確にするために新勘定と再生勘定に分ける。もちろん、新しい経営者は、再生勘定に関しては再生させるという責任を負う、新勘定についてはそこをしっかりと活用して収益を上げるという責任を負う。そういう内部管理のものでありますので、その再生勘定を外に持っていくんだ、RCCに持っていくんだというように誤解されると実は大変困るわけでございます。
 もちろん、いわゆるオフバランスに関しましては、既に金融庁は、「りそな」だけではなくてどこの銀行にも適用を求めていますルールがございます。二年・三年ルール、今ある不良債権は二年で、新たに発生したものは三年で。五割・八割ルール、一年目に五割、二年目に八割。それはほかの銀行にも同様に、ここは「りそな」にも引き続き守っていただきたいと思いますが、再生勘定に入ったからといって、それがいわゆる外に分離されるということではございません。
 我々としては、したがって、そういうふうに分けるのも、新しい経営者にしっかりとガバナンスを発揮してもらって、経営をしっかりしていただくこと。繰り返しますが、新勘定に関してはしっかりと収益を上げてくださいよ、再生勘定についてはしっかりと再生させてください、そのような形も組み合わせまして、全体として注入された自己資本が真に生かされて経営が立て直されていくように、そのような仕組みをつくっていきたいというふうに考えております。
竹本委員 その再生の中には民間への売却ももちろん含まれているんだと思いますが、それはそういう解釈でよろしいですね。今のお話の最後のところ。
竹中国務大臣 先ほど申し上げましたように、これは「りそな」だけではなくてすべての銀行に対して、不良債権に関してはできるだけ早期にオフバランス化をしていく二年・三年ルールというのがございます。それと全く同じでございます。
 したがって、それは、民間に売却するもの、証券化するもの、いろいろな形があるわけでありますけれども、それについて今回「りそな」が特別にどうこうということではございません。民間も含め、証券化も含め、しっかりと対応をしていっていただくということです。
竹本委員 さて、先ほど言いました、今回査定を厳しくしたためにこうなった、その対象は繰り延べ税金資産の扱いだということでございます。当局から聞いたわけではないんですが、幾つかのジャーナルで見た数字なんですけれども、各銀行が持っている繰り延べ税金資産がどれぐらいあるか。全資産に占める割合をちょっと言いますと、「りそな」が三八%、「みずほ」が二五%、UFJが二八%、三井住友が三〇%、三菱東京一七%、こうなっておるわけでございますので、こんなに大きいシェアを繰り延べ税金資産が占めておるということは、これの評価、扱いを厳しくすれば、途端に自己資本がぐっと下がってくる、やわらかにしておけば何とかもつ、こういうことになるわけであります。
 そこで、竹中大臣のお話も私もお伺いするわけですが、国民一般は、なぜそんなに今厳しくしなきゃいけないんだということについて、どうも完全な納得をしていないように私は思うわけなんです。
 それで、ある方が言うには、そんなに厳しくしなくても今までやっていた数字でいいではないか、それが日本のやり方として国際的に認知されているのではないか。他方の人は、いや、そうじゃないんだ、それじゃ国際的な信用を得られないから今厳しくしなきゃいけないんだ。こういう議論があるわけですけれども、今なぜ厳しくしなきゃいけないかということについて、ぜひ竹中大臣から御説明をいただきたい。まずそれを先にひとつお願いします。
竹中国務大臣 繰り延べ税金資産というのは、非常に技術的で、専門家でも、特に一般の方にはなかなかぴんとこない概念なものですから、いろいろな報道なんかを見ていましても、若干の議論の混乱があるように思われております。竹本委員から大変重要な御指摘もいただきましたので、ぜひ明確にさせておきたいと思うのでありますが、政府が、金融庁が繰り延べ税金資産に関する評価の基準を厳しくしたという事実は全くございません。
 繰り延べ税金資産については、これは間違いなく会計上の資産であります。しかし、これは、将来税金を払うときに回収できるはずの資産でありますから、回収可能性について、本当にそれが確かかどうかということに対しては、マーケットの中からは常にいろいろな評価がなされていたわけであります。
 昨年の秋に金融再生プログラム等々を議論する際に、この繰り延べ税金資産というのは重要だけれども、よって立つ基盤が脆弱ではなかろうか、これに対してルールをつくる方がよいのではないかという議論も出されました。しかし、そのときに、御承知のように、ルールを変えるべきではない、今までやってきたんだから日本のルールを急に変えるべきではない、しかし、これはどうするか、問題点があることも事実だから、だから専門家を集めて金融審でワーキンググループをつくって、そこで議論していこうということになったわけでございます。今現実に、多方面の専門家を集めて議論をしております。その意味では、今までと同じルールでやっているわけです。
 では、今までのルールはどういうルールかといいますと、平成十一年に公認会計士協会が定めた実務指針というのがございまして、その実務指針に、こういう基準でやるんですよというふうに範囲が定められております。ただ、現実には、今回の場合ですけれども、五年以内とか、公認会計士が実情に合わせてきっちりと判断するという仕組みになっているわけです。今回生じたことは、まさに実情に合わせて、公認会計士がまさに独立の立場でその点を判断した結果、保守的に見積もったというか、そういう見積もりが示されたということでございます。
 その意味では、我々としては、金融審でこの制度全体についてしっかりと議論をしていただきたい。しかし、今は現状の制度で動いているわけですから、それに関してはまさに現状の制度。解釈、判断の幅は公認会計士にかなりゆだねられておりますけれども、しかし、公認会計士がその社会的機能を発揮して独立の判断をしてやっていっていただきたい、そういう仕組みになっておりますので、この点の理解も含めまして御理解をよろしくお願いしたいと思います。
 最近、ここ数日間、公認会計士協会の奥山会長がいろいろなところで発言をしておられますけれども、奥山会長も、公認会計士が独自の判断で、こういうルールにのっとってしっかりと判定しているんですということを繰り返し述べておられます。
竹本委員 公認会計士協会が独自の判断をしたということでございますが、保守的なとおっしゃいましたけれども、ただ、厳しい判断をしますと今回のような結果になることは公認会計士といえども十分予測できたわけでありますから、その場合、事前に金融庁に対して、こうなりますよという相談はあったんでしょうか、なかったんでしょうか。
竹中国務大臣 今も申し上げましたように、これは公認会計士ないしは監査法人が、一種の重要な社会的機能として、プロフェッショナルな立場から、独立して判断することになっております。その意味では、もちろん金融庁はそれに全くかかわる立場にはございませんし、そういったような形での金融庁に対する問い合わせ、こちらからの話し合い、そういうのは一切ございません。
竹本委員 そこで思うんですが、今回の問題は、税の問題と自己資本計算の経理の問題と、ちょっとずれているところがあります。加えて、日本の制度と、参考にしますアメリカの制度とまた違うわけです。特に税制が違います。ですから、民間の方では、日本では何かやろうとすると税金がかかってしまうからできない、アメリカのように、繰り戻し還付を手厚く認めてほしいというようなことが民間の代表者の声として強く聞こえてくるんですけれども、この問題については、竹中大臣、どのように考えておられますか。ちょっとお聞きしたいと思います。
竹中国務大臣 御指摘のとおり、この繰り延べ税金資産の問題、こういうのがなぜ発生するかということに関しましては、会計基準の問題、会計上の考え方、それと税務上の考え方、そこに金融監督の考え方も絡んできまして、ある意味ではこれまでの経緯、制度を引きずった大変難しい問題でございます。そういう点を踏まえて、金融審議会においては、法律の専門家、会計の専門家、税制の専門家等、幅広い観点から検討する必要があるということで今検討をしているわけでございます。
 我々としましては、これは金融再生プログラムにも明記しておりますけれども、繰り延べ税金資産に関する税制について改正を考えていただけないだろうかということで、企業会計上の貸し倒れ償却、引き当ての全額損金算入、欠損金の繰り戻し還付制度の凍結解除及び繰り戻し期間の延長、これは一年から十五年に、欠損金の繰越控除期間の延長、これは五年から十年に。大変これも技術的ですけれども、一つやっても実は余り効果がないわけで、ないしは逆な弊害も出てくる可能性もあるわけで、一括して実施することが必要だと考えまして、そうしたことを内容とする税制改正要望を昨年十一月に提出をしております。
 きょうは財務大臣お見えでございますけれども、税制に関するトータルな判断がそこでもちろん当然なされるわけでありますが、この点に関しては、昨年十二月における与党の税制改正大綱におきましても、繰り延べ税金資産の取り扱いを初め、金融行政、企業会計制度を含む全体としての対応策とあわせて検討を続けるということになっております。
 アメリカでは、過去、一九七六年から九三年までの間、金融機関のみについて十年間の欠損金の繰り戻し還付が認められた例がございます。その意味では、即効性のある金融システム回復に向けての措置として、このような税制改正がやはり必要であると我々も考えておりまして、引き続きその実現に向けてしっかりと要望して、努力をしていきたいというふうに思っております。
竹本委員 さて、今回のりそな銀行の事案ですけれども、このような公的資金注入に至った状況には、景気の低迷や株価の下落といったような、銀行の自助努力を超えたものがあるように思うわけであります。
 特に、国民の目から見ておりますと、二兆円をぽんと投入するというんだけれども、一年間かかって税制改正で、かりかりやってやっと一兆八千億減税したじゃないか、簡単に二兆円ぽんといくのか、こういう感じもございますし、「りそな」については、合わせて三・一兆円ぐらいの金が行っているわけでありますから、そんなに金があるんなら公共事業でもやってくれた方がいいじゃないか、こういう単純な発想も当然あるわけでございます。
 これに対しては、いやいや、金を出したんじゃないんだ、貸しただけで、またもうかったら返ってくるんだ、こういうような答弁になるんだろうと思いますけれども、事ほどさように、繰り延べ税金資産といった手続のことではなくて、こういう事態が起こる背景には、このデフレという現時点ではどうしようもない大きな荒波があるということが一番大きいのではないかな、そのように思うわけであります。
 そこで、要は景気を回復しないとこういった問題がまた発生する可能性が十分あるわけでありますから、景気回復のためにもっと潤沢な資金供給が必要と考えるわけですけれども、これは、金融庁、あるいはきょう日銀総裁お見えでございますけれども、潤沢な資金供給というのはどのようにしてこれからなされるのか、その方策について、それぞれお聞きいたしたいと思います。
 特に、私思いますのは、株価の大変な下落を見ておりますと、ETF初め、公的資金を入れて株を買い上げれば株価対策になるのではないかという議論を我々もしてまいりました。そういう問題も含めまして、ひとまず答えていただきたいと思います。
竹中国務大臣 御指摘のとおり、今の困難な経済状況を解決するに当たって、マクロ的な経済運営というのは極めて重要であるというふうに思っております。銀行の経営、しっかりと経営努力をしていただきたいし、不良債権の処理もしなければいけない。しかし、今のようなマクロ環境で、大変経営者が苦しんでいるということも間違いなく事実であろうかと思っております。
 マクロの経済環境に関しては、何度かこの委員会でも御答弁させていただきましたけれども、結果的に見ると、実体経済面といいますか、実質成長率といいますか、そういう面で見ると、そこそこのところを、厳しいながらも、そこそこ維持、狭い道を歩んでいるんだけれども、名目については、名目成長率が大変低い。要するに厳しいデフレが続いている、物価の下落が続いている。このデフレに対して、引き続き果敢に取り組んでいくということが何よりも必要であろうかと思います。とりわけ、名目の数字で銀行の貸し付け、税収等動くわけでありますから、デフレに対して日本銀行とまさに一体となって厳しい姿勢で臨むということが必要であろうかと思います。
 資金の供給については日銀総裁の方から御答弁があるかと思いますが、それに関して、政府としては、持続的なペースで、つまり一時的な財政拡大とかではなくて、持続的なペースで需要を拡大していけるようなさまざまな工夫はできないだろうか。規制改革、その一環としての特区などもその一例ではありますけれども、そういうことを引き続き懸命に続けていかなければいけない。
 同時に、資金に関しては、実は日本銀行がベースマネーをふやしても、その後金融仲介のプロセスで、銀行のプロセスでとまってしまってなかなかその先に行けない。気がついてみると、その最大の要因はやはり不良債権である。不良債権を処理するためにはマクロ経済がよくなければいけないけれども、資金供給がふえるようにするためには不良債権を処理しなければいけない。そこは同時解決を図らなければいけないという難しい問題に直面するわけでございます。
 日本銀行と協力して、この難問にあらゆる手段を講じて立ち向かって、これを克服していきたいというふうに思っております。
福井参考人 お答え申し上げます。
 デフレ脱却ないしは現在続いております長期の不況からの脱却のためには、何と申しましても、マクロの経済政策の効果が十分浸透して企業の活動が活発になる、その企業の活発な活動を支えるために、資金の面から、金融機関がやはり新しいリスクテーク能力をきちんと身につけて、金融機関の活動も活発になる、こういう条件をそろえる必要があるということだと思います。
 日本銀行の責任事項になっております金融政策について申し上げますと、金利がほぼゼロという状況のもとでの金融政策でございますので、金利機能が活用できない。したがって、金融市場に流動性をたくさん供給する、その流動性が企業のお手元に早く届いて、企業の活動に有効に使っていただく、こういう経路を想定せざるを得ないし、現に、その経路で緩和政策の効果浸透を図る努力を続けているところでございます。
 つい昨日も、御承知のとおり、日本銀行は流動性の供給目標額、もっと厳格に言いますと日銀当座預金の目標額を最大三十兆円というところまで引き上げました。
 ことしの経済について考えますと、この先、海外の経済環境が、イラクとの戦闘終結後、多くの世界の人々が予測しているとおり、ことしの後半にかけてスムーズに立ち上がっていくということを前提にすれば、日本の経済の場合も、生産、また輸出の立ち直りをきっかけにして好循環につなげていける可能性が十分あるということで、その手前のところでさまざまなリスク要因を十分克服しながら、そこにつなげていく必要がある。そういう意味で、きのう、流動性の追加供給に踏み切ったということであります。
 流動性を追加供給いたしましても、本当に企業のお手元にきちんとお金が届かなきゃいけないということで、そこで、今竹中大臣お話がありましたとおり、お金の運び屋さんというのはやはり金融機関なんでございます。したがいまして、金融機関が健全性を回復して、かつまた新しくリスクをとっていく力をきちんと身につける、つまり金融システムの健全性回復ということがどうしても不可欠。
 したがって、マクロの景気対策と金融システムの機能向上政策、不可分の一体だというふうに思っておりますが、日本銀行ではさらにそれに加えまして、日本銀行が用いますマーケットオペレーションの政策手段そのものについても新しい工夫を凝らしながら、直接企業のお手元になるべく早くお金を届ける努力もしたいということで頑張っているところでございます。
竹本委員 話は変わりますが、実は五月のゴールデンウイーク前半、私は、ワシントンへ三日間、ニューヨークに二日間行ってまいりました。
 それは、ワシントンでは日米国会議員の討論会のようなもので、外交、経済、防衛等々につきまして三日間議論したわけで、委員長も実は一緒だったわけでございます。その最後に、アメリカ連邦議会の下院議長が出てきまして、四十分近く大変な感謝のスピーチをいたしました。最後に、アメリカ政府は日本に対して大変感謝しておる、イラクに対するイギリスとの攻撃について真っ先に積極的な支持をしてくれた、今じゃ世界の信頼すべき指導者はブッシュと小泉とそしてブレア、三人だけだ、こういうようなスピーチをいたしました。
 我々はそれをお世辞がほとんどだろうなと思っておりましたところ、その二週間後に、国連の用事で私はヨーロッパへ行ったわけでございますけれども、そのときに、最初にイギリスに行きましたら、実はエコノミストの何ページかにブッシュと小泉さんの写真がこのように出ておりまして、表題がアクシス・オブ・グッドなんです。善の枢軸と書いてございます。
小坂委員長 時間が終了しております。
竹本委員 時間がないようでございますが、要は、今まで外交で余り褒められたことがなかったはずの日本が、外交、政治でえらく褒められておる。逆に、今まで一番強いと言われておった経済が、私は実力はあると思うんですけれども、非常に低く評価されている、得意わざで失点を重ねているような感じさえするわけでございます。
 ぜひとも、日本の経済が大変元気であるということをきっちりと示す意味においても、答えは要りませんけれども、時間がありません、要りませんが、例えば昔……(発言する者あり)
小坂委員長 時間が超過しております。
竹本委員 笑わないでよ、ちょっと、まじめな話。
 国債の日銀の直接買い入れというような方策をも含めて、ぜひ、日本の経済のデフレ脱却策を真剣に考えていただきたいなというふうに思います。特に、この国債の日銀での直接買い入れについては、欧米の識者が非常に強く関心を持って、なぜ日本がそれをやらないのか、こういったことをしょっちゅう言うことも含めますと、改めてそういった方策も再検討していただきたい、そのように御希望申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
 どうもありがとうございました。
小坂委員長 次に、石井啓一君。
石井(啓)委員 公明党の石井啓一でございます。よろしくお願いいたします。
 まず、繰り延べ税金資産について、まとめて何問か御質問を申し上げます。
 今回の「りそな」の公的資金注入申請の経緯において、この繰り延べ税金資産の評価がどういうふうになったのかということが今の時点では明確でない、ここが一つ問題である、このように思います。
 そこで、この「りそな」の繰り延べ税金資産についてどのように厳格に評価をされたのか、その中身、内容、それから、どういった理由でそういう評価になったのか、また経緯についてまず確認をいたしたいと存じます。
伊藤副大臣 お答えをさせていただきたいと思います。
 同行が五月十七日に発表したところによると、不良債権処分損の増大、そして監査法人の監査の過程における繰り延べ税金資産計上の厳格化等により、当期利益の赤字が大幅に拡大したことから、十五年三月期のりそな銀行の自己資本比率は単体で二・三%、連結で二・一%となりました。また、これを受けて、りそなホールディングスの自己資本比率も三・八%となったところでございます。
 これは先生、繰り延べ税金資産、公的資金その他、内容をお話しした方がよろしいでしょうか。(石井(啓)委員「できれば」と呼ぶ)はい。
 りそな銀行、りそなホールディングス両社に関する諸計数について具体的にお話をさせていただきたいと思います。
 まず、自己資本比率規制上の自己資本でございますが、りそな銀行単体でございますけれども、これは約四千八百億円でございます。りそな銀行連結で、これも約四千八百億円であります。そしてりそなホールディングス、これが約一兆四百億円であります。
 次に、繰り延べ税金資産でありますが、りそな銀行単体で約三千九百億円、そしてりそな銀行連結で約四千億円でございます。そして、りそなホールディングスが約五千二百億円になります。
 公的資金でございますけれども、資本増強額は全体で一兆一千六百八十億円でございまして、優先株が八千六百八十億円、そして劣後ローンが三千億円ということになります。
 繰り延べ税金資産の減額の理由につきましては、銀行からは、厳格に将来の不確実性を排除し、将来の所得見積もりをより保守的に見積もったことによるというふうに聞いております。
 これは勝田社長が記者会見でお話しになられていることでありますが、記者から、繰り延べ税金資産の算出のもととなる収益の見積もり期間、今回の取り崩し額はという問いに対しまして、通達では五年程度となっている、しかしながら、あくまでこれは個別の収益力が要素としては大きいわけで、何年分見積もるということよりも、今年度以降の収益計画が過大であると見られたものである、結果として七千九十二億円から二千七百三十億円減額し、適正化したものだというふうに記者会見で述べられております。
石井(啓)委員 報道によりますと、この繰り延べ税金資産、五年分計上が、今回、三年分ということになったのではないかという報道がありますけれども、これはいかがでございましょうか。
伊藤副大臣 今もお答えをさせていただきましたように、これは、銀行からは、厳格に将来の不確実性を排除して、将来の所得見積もりをより保守的に見積もったことによるというふうに私どもとしては聞いております。
石井(啓)委員 それでは、ちょっと質問の順番を変えて、当初の質問の七番の方から先にやります。
 この繰り延べ税金資産の評価でございますけれども、今回の「りそな」を担当する監査法人が厳しい評価を行った、その結果、公的資金注入の申請になったということでございますけれども、この評価が監査法人任せでよいのかという問題意識がございます。これは、監査に行政が介入する、あるいはなれ合い監査を求めるということではなくて、監査法人ごとの評価に大きなばらつきがあっていいのか、こういう問題意識でございます。
 先ほど大臣の御答弁でございましたように、公認会計士協会で実務指針をつくっているということは承知しておりますけれども、評価をより明確化する、あるいは安定化するということは、私はこれはぜひ必要ではないかというふうに考えますが、この点、いかがでございましょうか。
伊藤副大臣 この点については、先ほども大臣がお答えをさせていただいたように、税効果資本については、平成十一年に公認会計士協会によって実務指針が策定をされ、そしてこの実務指針にのっとって、繰り延べ税金資産の回収可能性を、個々の企業の状況に従って、その妥当性について判断をしているところでございます。
 そして、一般論として申し上げれば、これは、それぞれの企業において計上される繰り延べ税金資産の金額、そして各企業の業況や将来の収益見通しによって異なるものでございまして、独立した監査法人が、これは専門家の立場として、実務指針にのっとって、そして厳正な監査が行われているものでございまして、一般的なルールが変わったということではないというふうに思っております。
石井(啓)委員 ただ、「りそな」については、かつて計上していた「りそな」の合計でいうと七千九十二億円の繰り延べ税金資産が、今回は連結で五千二百億円、「りそな」単体でいくと三千九百億円まで圧縮されたわけですね。ですから、指針が変わらずにやっていたら、なぜかつてはそんな大きくやっていたんだ、こういうことになりますね。ここは変化があった。
 それは、昨年、竹中大臣が金融再生プログラムのところで問題提起をされた、あるいは、ことし、公認会計士協会の会長から大きな監査法人に対していろいろな通達が出された、そういう経過の中でより厳しく評価をしていく、こういうことだったんじゃないんでしょうか。
竹中国務大臣 まさにこれは、公認会計士が独立した立場で、専門家の立場で判断した結果でございますので、それについて、なかなか私の立場でこういうことではなかろうかということを申し上げるのは難しいのでございますけれども、これは、先ほども紹介いたしました公認会計士協会の奥山会長の発言等々で、以前からも公認会計士はしっかりとやっていた、改めて実務指針に基づいてというようなことを会長の通牒では出しているわけです。ないしは、我々の金融再生プログラムによって何か方針が変わったということではないんだ、これは会計士協会の会長もそういった趣旨のことを言っておられたと思います。
 これはあくまでも実態判断でございます。特に、これは資産の回収見込みでございますから、個別の事情を的確にプロフェッショナルとして判断をしていただくことに尽きるんだと思います。我々としては、そのような判断を、やはり今回、独立した立場で監査法人はなされたということだと思っております。
伊藤副大臣 今の大臣の答弁を補足させていただきますと、勝田社長が記者会見でもお話しになられているように、今年度以降の収益計画がやはり過大であると見られたということでございまして、「りそな」の場合には三年連続の赤字になるというような状況があり、「りそな」を取り巻く経営の環境が非常に厳しい、そうしたことも踏まえて、監査法人が会計実務指針にのっとって、今のルールの中で厳正な監査がなされたというふうに考えております。
石井(啓)委員 それでは、先ほども大臣がちょっとおっしゃっていましたが、金融再生プログラムの中で、金融審が繰り延べ税金資産の算入上限を検討されることになっていますけれども、これは今どんな検討状況になっていて、いつごろ、どんな結論が出るのでございましょうか。
竹中国務大臣 今議論していただいているのは、繰り延べ税金資産に関する算入上限も含めて、自己資本比率の全体のことを議論していただいているという状況でございます。
 これは当然のことながら、先ほどから申し上げているように、繰り延べ税金資産そのものが税務、会計の双方にかかわるものですから、法律、会計、税務等の幅広い観点から専門家を集めておりまして、慶応大学の池尾教授に座長になっていただいておりまして、議論をしていただいているところでございます。今のところ、既に四月末までに四回会合が開かれておりますけれども、半年ぐらいでお願いしたいというふうに申し上げておりますので、まだ議論の途中ではございますけれども、七月とかそのぐらいには経過報告をぜひしていただきたいというふうに私の立場では今思っております。
石井(啓)委員 それでは、税制の問題、前の質問者で竹中大臣がお答えになっていたので、今度は塩川大臣に、直接の税の担当者でいらっしゃいますから、お聞きしたいと思います。
 我が国の金融機関は不良債権の無税償却が広く認められていないがために、不良債権処理をどんどん進めようとすれば、その結果として繰り延べ税金資産が大きく積み上がってしまう、こういうことになっておりますから、ある意味で、金融機関は不良債権処理を一生懸命やればやるほど実態としての自己資本が薄くなってしまっている、こういう状況にございます。
 したがって、こういう状況を解消するために、やはり無税償却を拡大する、あるいは欠損金の繰り戻し還付の凍結を解除する、あるいは欠損金の繰越期間の延長、こういった税制はやはりぜひやらなければいけないというふうに考えておりますけれども、財務大臣、税の担当者としていかがでございましょうか。
塩川国務大臣 石井さん、実はこの税の問題が、金融機関の、金融の問題とついたとき、必ず出てくるんですね。そこで、私はかねてから思うんですけれども、日本の会計学が非常におくれておるがために、企業会計というものと税会計、それから金融の信用会計、こういうようなものの整合性はきちっととれておるんだろうかどうか、それが非常に心配なんですよ。そこらがきちっとしていないで、税ばかりがこうだああだと御都合主義でつまみ食いされたら非常に困るんです。一体となって解決されるべき問題だと思うんです。
 私は専門家じゃないから一般の感覚から申しますと、破綻懸念だと言われる、破綻資産だと言われる、要注意だと言われる、いろいろなランクがありますが、これなんか会計学上で、あるいは企業会計と、それから税会計の面と、そういうようなものはきちっとしておるんでしょうか。私はそこが一つ問題だと思うんですね。
 そういうことがきっちりしておらないで、それでこういうことが起こったというならば、私は「りそな」の場合なんかはとんでもないことだと思うんですよ。だって、「りそな」の場合、公認会計士のいわゆる解釈論が銀行側と違っておる。こういうことが本当にあり得るんだろうかと不思議でしようがない。
 ですから、まず私は税の方を考えます、考えますけれども、企業側と金融側と、償却を無税にしろという基準も違ってきますよ。これは、考え方も違う。ましてや御都合主義で十五年にしろなんて、そんな勝手なことを言うて、話にならぬと思うんですよ。その前にきちっと会計原則を、企業会計それから税会計、そしていわば金融会計というのでしょうか、そういうようなものをきちっと透明にしてわかりやすく、ここだからこうしたらどうだということを税会計で言っていただきたいと思うんです。
 税について、十五年に延長しろという話、これはもう話になりませんわな。そうすると、五年のものを七年にしろとおっしゃるの、これも検討もしてみようと思います。そのかわりに、この際にいわば法人税全体のあり方というものを変えていかなきゃならぬし、この際にそれだけの猶予を、五年から七年に延ばすならば、法人税のベースそのものもきちっと見直してもらわな困る、私はこう思います。何も金融機関だけが経済じゃないのでございますから。
 それから、一年のものを五年に、一年を無税にしろ、あとはいわば積み立て方式ですか、こういうことをおっしゃいますけれども、そうならば、一年を無税償却にするということになってきたら、企業側とそれから金融側と、意見が違ってきますよ、これは。そうした場合、どこでとるのかということ等がございますから、私は、全体として考えてもらわないと、税をここだけ直せという話は、これはむちゃくちゃな話だな、私はいつでもそう感じておるんですが、そこら、よく相談していただくようにお願いいたします。
石井(啓)委員 企業会計と税会計、差があるから困る、この答弁は、私は副大臣にしてもらえれば一番、公認会計士でいらっしゃるからよくわかっていらっしゃるとは思うので。まあ、答弁は求めませんけれども。
 要は、無税償却の範囲が小さいからそう差が出てしまっているわけでございまして、そこはぜひ拡大の方向でお願いをいたしたいと思っております。
 ところで、先ほど若干質問にあったようですけれども、今回「りそな」については資産を新勘定と再生勘定とに分離をする。そういう分離をするそもそもの趣旨とか目的、またその線引きをする基準というのがどうなっているのかを確認いたしたいと思います。
 また、自分のところが再生勘定に行くんじゃないかというふうに心配をされている企業は結構ありまして、特に、従来の基準より何か厳しくされてどんどん再生勘定に送られるんじゃないかというような不安だとか、あるいは、RCCも最近は再生の方もやりますから、必ずしもRCC送りが破綻ということではありませんけれども、何かRCC送りになりやすいんじゃないかとか、あるいは新規融資がとめられちゃうんじゃないか、こういういろいろな懸念が出ておりますけれども、再生勘定に分類された企業の扱いがどうなるのか、この点についても確認いたしたいと思います。
伊藤副大臣 この点についても、先ほど大臣から御答弁がございましたように、今回の勘定の分離というのは、これはあくまでも管理会計上の分離でございます。これは、新しい経営陣のもとでデューデリジェンスをして、そして勘定の分離を行うわけでありますが、その目的は、新旧の経営体制の責任の明確化を図り、そして貸出債権についての適切な管理を通じることによって特別支援金融機関の経営の再生を図るということが目的でございます。
 今一番御心配になられているのは再生勘定の扱いではないかというふうに思いますが、この再生勘定は各資産について適切な管理を行う、このことによって不良債権というものをやはり早期に適正化をしていくということが必要であるというふうに考えております。具体的には、個々の資産について、正常化していく、そういう視点を持ちながら、それぞれについて対処方針というものを決めて、そして対応していきたいというふうに考えているところでございますが、再生勘定に分類をされた企業の扱いがこのことによって、会計管理上分離されたからといって厳しくなる、そのことを求めていく、そういうことではございません。
石井(啓)委員 この点については、「りそな」と取引をしている企業については不安の声も出ておりますので、丁寧に御説明をお願いいたしたいと思います。
 ところで、今回「りそな」への公的資金の注入ですけれども、報道によると二兆三千億円という報道がございますが、自己資本を、「一〇%を十分上回る」というふうにした理由がどういうところにあるのか。「りそな」は国内だけの業務ですから本来四%以上あればいいところを、「一〇%を十分上回る」というふうな自己資本比率を目指すわけですね。
 そういたしますと、八%行、BIS基準適用行、国際決済銀行については、現状でも一〇%あるいは九%台ですけれども、本来どれぐらいの自己資本比率の水準が望ましいのか、この際御見解を伺いたいと思います。
竹中国務大臣 注入の額につきましては、新聞等々でいろいろ報道がなされておりますが、これはもちろんまだ決まっておりません。金融危機対応会議は資本の注入の必要性を認定するための会議でございますので、今の時点では、必要性が認定された、その後申請を待って、申請を受けていろいろ決定されていく。そのプロセスは、先ほど事務方から御説明させていただいたとおりでございます。
 ただ、今回の金融危機対応会議の答申の中に、一〇%を十分上回る自己資本比率を実現することが望ましいというようなことを申し添えるという意味で、一〇%という自己資本比率の数字は出てまいります。これはあくまで申し添えるということでございます。
 それを実現するとしてどのぐらいの金額になるかというのは、これは商品設計とも絡みますので金額はまだわからないということでございますが、どうして一〇%を上回るということなのか、八%の基準と四%をどう考えるのかということでありますが、我々の考え方としましては、これは一度は過少資本になったということで、市場からの信認がやはり非常に厳しいものになりがちである。そういった意味では、資本を注入する以上、これは非常に十分な自己資本を持っている、そういうような、一度は過少資本になったということを受けて、十分な信頼を確保する水準にぜひともしたいという強い思いがございます。その十分な自己資本に基づいてしっかりとした経営改革を行って、先ほど申し上げたような再生を果たしていただきたいと思うわけでございます。
 地銀等々で優良だと言われているところの自己資本比率は、一一%とか一二%とかそういうところでございます。そうした点を踏まえて、我々としては、十分なといいますか、余裕を持った、ゆとりを持った形での再出発を保証したいという意味でそのような答申の数字が申し添えられたわけでございます。
石井(啓)委員 ちょっと後半の方の問いなんですけれども、「りそな」の方は一〇%を上回るというのはそれでわかりましたけれども、ほかの国際決済銀行、四メガバンク、ここの自己資本比率は、まだこの三月期の決算は出ていませんけれども、九%台だとか一〇%台でしょう。そういうところは、「りそな」で一〇%を上回るということであれば、本来もっと高い水準が望ましいのではないのでしょうか、そういった望ましい水準というのはあるんでしょうか、この点について、いかがでしょう。
竹中国務大臣 これは、いわゆるBISの規制で最低限クリアすべき基準八%でございますから、それとは別に何か望ましい水準があるかということになりますと、それはそういうふうに、少なくとも監督の立場からは考えていないということだと思います。自己資本をどのぐらいに保ってどういった経営戦略をとっていくかというのは、まさにそこは経営判断の問題であろうかと思います。
 重要な点は、八%の基準というのは今基本的には多くの銀行はクリアしているわけで、「りそな」の場合は、一度は過少資本になったという事実を受けて余裕を持ってということでございますので、直接のお尋ねは、望ましい水準はあるかということかと思いますが、それに関しては、満たすべき基準としての八%というものが監督上はあるだけだということでございます。
石井(啓)委員 恐らく、これはなかなか難しい問いだと思いましたので、そういうお答えにならざるを得ないかとも思います。
 それで、今回の「りそな」の公的資金注入という事態を踏まえまして、改めて、公的資金の予備注入についてどういう御認識を持たれたのか、確認いたしたいと思います。
 一つは、今回、金融危機対応会議を初めて招集して、破綻ではなくて過少資本の状況という中で金融危機勘定を活用する、こういう事態になったわけですが、その後の預金者あるいはマーケットの動きも非常に安定して、混乱なく進んでいるということで、なかなかうまくいった、ここの仕組みを柔軟に活用すれば、いわば予備注入ということも実質的にできるのではないかということで、別に制度をつくる必要はないというふうにお考えになったのか。
 あるいは、金融危機対応会議というような大げさな仕組みではなくて、もっと機動的に公的資金が投入できるような仕組みがやはり必要だなというふうにお考えになったのか。その点についての御認識を改めてお伺いいたしたいと思います。
竹中国務大臣 石井委員も御指摘のように、今の枠組みというのは、いわゆる危機の場合ないしは危機を予防する場合、危機が起こる、そういう懸念がある場合に金融危機対応会議を招集して、申請を待って資本の注入を行うということでございます。
 これは、金融担当大臣に就任させていただいた当初から申し上げているわけでございますけれども、一般的には危機ではない、預金の取りつけ騒ぎとかそういうことが起こっている、起こりそうだ、そういう意味での危機ではない、しかしやはり健康体ではない、何らかの問題を抱えている、そのような場合に、いかなる自己資本の充実の枠組みをつくるべきかどうかというのは、一つの議論すべき重要な課題であるというふうに当初から認識をしております。
 そういった問題意識に立って、例の金融再生プログラムの中にも、新たな公的資金投入の枠組みの必要性も踏まえて検討するということで、既に金融審の中にワーキンググループを発足させております。今、非常に精力的に審議を行っていただきまして、六月中には審議会としての、ワーキンググループとしての結論を出していただくことになっておりますけれども、今回の事案も踏まえながら、我々としては、引き続き、新たな枠組みが必要かどうかも含めて、予断のない多面的な議論がこの金融審で行われていくというふうに考えております。
石井(啓)委員 では、最後の質問になります。
 今回、「りそな」も含めて金融機関の再生を進めるためには、やはり収益性の向上というのは欠かせないというふうに思いますが、本業で利益を出しても、不良債権処理あるいは株式の含み損で特別損失を出している。こういう状況が続くようでは、とても収益回復ということにならないわけでありまして、やはり、地価あるいは株価の下落をとめることが必要だと思いますし、また不良債権の新たな発生を抑えるということも必要でございます。マクロ政策として、やはりデフレ克服に全力で取り組むべきというふうに考えますが、この点について、最後、竹中大臣に確認をいたしたいと思います。
竹中国務大臣 先ほども申し上げましたように、金融機関には、みずからの収益性を高め、資産査定をきっちりとして不良債権を処理していく、その速度をぜひとも加速させてしっかりと運営していただきたいと思っております。
 しかし、それをサポートするためにも、やはりマクロ的な環境の整備というのは、これは当然のことながら大変重要でございます。現下の場合、特に平成十四年度に関しまして言うならば、実質成長はプラスだったけれども名目成長はマイナスであった、この事実はやはり厳しく受けとめて、デフレの克服に向けて、日本銀行と一体となって、ありとあらゆる手段をとっていかなければいけないと思っております。
 与党の政策プロジェクトチームでも、大変有用な御提言をいただいております。そうした点も踏まえながら、しっかりと力強い対応をしていかなければいけないというふうに思っております。
石井(啓)委員 時間が参りました。以上で終わります。
小坂委員長 次に、五十嵐文彦君。
五十嵐委員 民主党の五十嵐文彦でございます。
 まず、預金保険法第百二条の発動を決めたその根拠を伺いたいと思います。
 預金保険法第百二条は、内閣総理大臣は、次のような措置が講ぜられなければ、「我が国又は当該金融機関が業務を行つている地域の信用秩序の維持に極めて重大な支障が生ずるおそれがあると認めるときは、金融危機対応会議の議を経て、当該措置を講ずる必要がある旨の認定を行うことができる。」これが第百二条でございます。
 すなわち、これを素直に読みますと、システミックリスクにつながるおそれがある、そういう重大なおそれがあるときに金融危機対応会議を開いて認定するんだ、こういうことになるわけですが、繰り返し竹中大臣は、これは危機ではないんだとおっしゃっているわけですね。これは金融危機対応会議という名前でもありますし、それとは矛盾したお話をされているのではありませんか。
竹中国務大臣 先ほども御説明させていただきましたように、「りそな」の十五年三月期の自己資本比率が国内基準である四%を下回るということになった。もちろん、預金の流出とか市場性資金の調達が困難化するといったような問題は生じておりません。破綻という事態には至っていない、現状認識としてはそういうことでございます。
 しかし、このような事態を放置した場合には、日本の金融システムに対して内外の信認が損なわれるのではないか、日本経済全体と、りそな銀行が業務を行っている地域の信用秩序維持に極めて重大な支障が生ずるおそれがあるというふうに懸念される、そのような金融危機の発生を未然に防止するために今般万全の措置をとったものでございます。何度か申し上げましたけれども、金融からの経済の底割れを防がないと、そのような趣旨に立って今回、百二条一号の適用の判断をさせていただきました。
    〔委員長退席、七条委員長代理着席〕
五十嵐委員 昨年九月以前と、あるいは十月時点と、今何が変わったわけでもないんですね。これは厳格な査定といいますか、実はこれは厳格な査定じゃないんですよ、実は、条文どおりに、公認会計士協会の実務指針どおりにやれば、この数字が昨年の九月にもその以前にも出ていたということなんですね。ですから、これは、金融危機をどう考えるか。
 今おっしゃったのは、流動性の危機、決済機能の不全といったものが広がるおそれがある、すなわち、そういう意味でのシステミックリスクが起きればこれはやるんだという話であったわけですけれども、そうではなくて、私どもは、もともと、信用創造機能だとか金融仲介機能、これは不全なんだから、それまででも、今の時点でも、あるいは例えば昨年十月の時点でも金融危機じゃないかということを申し上げてきた。だから、むしろ公的資金を思い切って注入して、この不安をなくして貸し渋りをなくしなさいということを申し上げてきたんですが、それに対して、政府側の答弁はそうではなかったんですね。システミックリスクというのはやはり厳格に考えて適用すべきであって、そう軽々に使うべきではないというようなことをおっしゃった。全く矛盾しているんではないですか。
竹中国務大臣 五十嵐委員が何度かこの場でも、やはり既にもう金融危機ではないのか、自分はそういう危機という認識を持っている、そういう御発言を私も何度も拝聴しております。そのときも少し申し上げたかと思いますが、私は、危機ではないが健康ではない、病んでいる、その病んでいるのを治したいんだというような言い方を申し上げました。
 今、前の決算からそうだったんじゃないかという御指摘ですけれども、これはしかし、いかがでしょうか。公認会計士が独立した立場で、前回は前回のベストの判断をしているというふうに我々は考えております。
 公認会計士協会の奥山会長もおっしゃっているように、その後の環境の変化、さらには決算が三期連続で赤字だとか、そういったその後の状況変化を踏まえて今回公認会計士の判断が下されたというふうに理解をしております。
五十嵐委員 そのことについては、間もなく、この後でちょっと議論をいたします。
 まず、今お伺いしているのは、過少資本に陥ったこと自体が百二条適用の条件なんですか。必要十分条件なんでしょうか。百二条適用がどうして行われたという説明を十分にしていただきたいんです。二兆三千億円にも達しようとする公的資金が注入され、これは税金の形で、なくなってしまうかもしれないわけですから、十分な説明責任が国民に対して必要であります。
 ところが、金融庁の中で、随分簡単にお考えになっている。先ほど、我々は危機だと言ったんだけれども、危機ではないとおっしゃっている割には、随分簡単に注入されるなと思うわけです。金融庁の中には、冗談で、去年の暮れあたりから、「りそな」はなくなりそな銀行だと。「りそな」というのは理想的なと思ったんですけれども、なくなりそうだと。そういうような冗談が平然と金融庁の中で語られていた。
 随分簡単に考えているんじゃないですか、国民の税金を使うかもしれないという重大事態に対して。百二条をどうして発動したかという十分な説明が国民に対して必要であります。
竹中国務大臣 我々としては、事態を重く受けとめ、重大な判断をしたつもりでございます。
 まず、御判断の一つの材料として考えていただきたいのは、りそな銀行は、資産規模四十兆円の規模を持つ、我が国でメガバンクに続く規模の銀行である。
 実は、自己資本比率が二%程度になるという報告を受けてすぐ、我々としては報告徴求を求めております。ルールとしては、求められている四%の水準を下回ったならば、それはどういう事情なのかということを一応報告を受けて、それを早期に是正するように我々としては措置をとるわけであります。
 しかし、今回の場合、その報告を求めた段階で、早期にこれを回復する能力は、みずからでやることはできないというふうに「りそな」がその意思を伝えている。これを受けて、資産規模四十兆円、特に大阪、埼玉等々で非常に密な金融ネットワークを持つ銀行を、自己資本比率二%のまま、かつ自力でこれを四%に回復するということが難しいとその当事者が言っている中で、このまま、二%の自己資本比率のままマーケットの中にさらすことができるかどうかという判断を我々は迫られたわけでございます。
 その意味では、これを放置すべきではない。報告徴求、早期是正の命令、そういった手続を踏んだ上で、繰り返しますが、我々としては、実態的に金融から経済を底割れさせてはならないという強い決意のもとに、今回の決断を行ったわけでございます。
五十嵐委員 それは、皆さんの論理でも、すぐにでも破綻に至ると。我々は、もう実質破綻していると思っているわけですが、皆さんの論理でも、すぐに破綻してしまうからという、それはまさにシステミックリスクが来ているということじゃないですか。みずから、危機じゃないと言うのとは、言葉の遊びでごまかされている。
 確認いたしますけれども、すなわち、過少資本であったこと自体が直ちに百二条適用の条件ではないということですね。日付まで言いますよ。十七日に早期是正命令を出されたんですね、そして、その早期是正命令に対して、自力では回復能力がありませんという回答があったからこういうことになった、そういう前提のもとに百二条発動になったという認識でいいですか。厳密に言ってください。
竹中国務大臣 まず、最初の問いでございますけれども、自己資本がいわゆる基準を割り込んだだけで、もちろんそれだけで今回の措置がとられたということではございません。総合的な判断であるという点は御理解いただけると思います。
 十七日の十一時に決算取締役会の報告を我々はもらいまして、十一時に報告を受けた段階で、我々としては二十四条報告を求めました。それを受けて、十四時に二十四条報告が提出されました。その時点で、我々としては、先方は自力での回復を非常に困難と見ているという事実を確認しております。それで、十六時に早期是正措置命令、業務適正化命令を発出いたしまして、同時に、日本銀行に対していわゆる特融の要請を行っております。それを受ける形で、十八時三十分から金融危機の対応会議を開いております。
 以上が踏んだ手続でございます。
五十嵐委員 極めて重大な事態が切迫をしているという認識がなければそれはあり得ないということが事実上話されているというふうに理解をいたします。
 そこで、私は、この百二条を決定するに当たって、一体どれぐらい対応会議の席上に十分な説明がなされたのかということを知りたいわけですが、実は、けさほど私どもの党においでをいただいてこの説明を受けたときに、すぐその場で数字が言えないんですね。先ほど副大臣がちょっと言われた数字ですけれども、それよりは少し詳しい数字を聞きましたけれども、すぐに数字が出てこない。数字なしでこんな重要なことを決めたんですか、ですから、説明責任が足りないんじゃないですかという話をさせていただいたわけです。
 これは実質破綻なんです、何と言おうと。
 いいですか、今、隠そうとしたから数字が出てこなかったんだろうと私は解釈していますが、先ほど、副大臣が丸めておっしゃいましたけれども、りそなホールディングスの一兆四百十億円の自己資本、そしてティア1は、おっしゃらなかったけれども、五千二百七十億円しかないんです。これに対して、繰り延べ税金資産は五千二百二十億円なんですよ。ティア1との差はほとんどない。五十億円しかない。四十兆円の資産規模を持っているところのそういう資本の実態で、これは深刻でないと言えるのか。
 もっとひどいのは「りそな」。「りそな」の連結、二・一%の自己資本ですけれども、全体が四千七百七十億円の自己資本で、ティア1二千四百五十億円、そして繰り延べ税金資産は四千十億円です、四千十億円。ティア1を上回り、「りそな」の自己資本全体の四千七百七十億円のうちの四千十億円が繰り延べ税金資産というんですよ。ほとんど自己資本はない。
 もう一つ、単体の方も言いますね。単体の方も、四千八百三十億円の自己資本で、ティア1が二千五百五十億円、繰り延べ税金資産は三千九百十億円なんです。
 これは、先ほど石井先生の方から疑問があったのに、ごまかして答えられておりました。これは三年分なんですか、どうですかと石井委員が聞かれたけれども、ちゃんと答えられなかった。前年の八千億円前後というあれから見ると、繰り延べ税金資産全体は、こういうふうに見ていくと、やはり大体三年分なんですよ、三年分。それは、三年分であるということがばれちゃまずいからごまかしている。
 なぜばれてはいけないか。
 先ほどから与党の議員の皆さんも議論がありましたけれども、誤解をしておられるんですね。
 ルールというのは一年なんです。繰り延べ税金資産というのは、まだ未実現の損失、その未実現の損失が、確定していないから、確定すれば返ってくるんです、これは無税償却になりますから。有税償却で一たんしておいて、無税になるから戻ってくる。それを、この差があるから、これは一部を自己資本として認めよう、返ってくる可能性がありますねということを認めようということなんで、原則は一年なんですよ。実務指針の原則は一年なんです。
 それを、特殊事情があるときは五年分まで認めてもいいですよ。特殊事情は何かといったら、特別検査だと言っていたんです。特別検査で厳格にやるから、これは今までといわば違った状態が起きたことになるので、これは五年分まで認めましょうという話だった。
 これは、特別検査を二年続けてやるということになったし、先ほどお話があったように、将来の収益計画が上がらなければ返ってこないわけですから、そちらの面からも、これは十分な収益が上がらないのであればだめであり、いわんや三年連続の赤字だったら、これは一どころかゼロなんですよ。いいですか。赤字企業は、一年どころかゼロ年ですよ、ゼロ年。一年かゼロ年かという選択でなければならないのを、三年分認めるというのはとんでもない話なんです、実は。
 ということは、この三年分を一年分に引き直しただけで、あるいはゼロ年に引き直したら、実質債務超過なんですよ、これは。認められますか。
竹中国務大臣 繰り延べ税金資産については、これは、会計士が実務指針に基づいて独立した立場で判断をしたものであります。それを、仮定の問題として、これがなければどうだとか、これが何年であったらどうだかというような議論は、やはり非常に注意をして行わなければいけない問題であるというふうに私は思います。
 まさにこれは資産であります。その資産性をどう認定するかということは、まさに、繰り返し言いますが、公認会計士の判断で監査を行うことになっているわけですから、それについて、我々は、その公認会計士の判断、決算を行うのは企業です。企業は決算を行う、そのときに、当然のことながら企業も実務指針に基づいて行う、特殊事情についての判断は独自に行う。それを監査する立場の人が監査をして、これで認められるかどうかということを認定する。これは、実は会計の社会のルールの仕組みであります。
 それに基づいて今回こういう数字が出されているという点については、やはりこれは一つのルールとして公認会計士の役割も重視しながら、我々はそこはしっかりと受けとめなければいけないというふうに思っております。
五十嵐委員 公認会計士の監査、ですから、なぜそれでは急に厳しくなったのかという話になってしまうんですよ。
 それはそうじゃないんですよ。ルールどおりにやれば、公認会計士の監査も今までとは違ったもの、これまで当然認めてきたものと違ったことになるはずなんですね。そこを指摘されているから、この三月から、ゴーイングコンサーンで、公認会計士、監査法人の社員の皆さん、無限責任で大変な責任を負わされる、そこで、急に怖くなって、今まで粉飾を認めてきたけれども、認められなくなっちゃったねということで、激しいやりとりがこの銀行のみならずあちこちで起きているという話を皆さん認められているわけでしょう。
 このりそな銀行の自己資本比率については、六%台半ばと三月十一日には公表していたのを修正したわけですが、繰り延べ税金資産の厳格化で実は二・六%強下がりました、それから、リスクアセットの増加で〇・三%下がりました、株式相場の下落の影響は〇・四%でしたというような数字は、実は「りそな」側から公表されているわけです。これを見たら、結局、繰り延べ税金資産の判断だけではなくて、全体的にやはりかなり粉飾臭い行いが行われていたんではないかなということが疑われるわけです。
 かつ、繰り延べ税金資産については、勝田社長、ホールディングスの社長が、監査法人に裏切られたという話をされているわけでしょう。これはどういうことなんですか。まるで雇い人だという感覚じゃないですか。背信行為だということを言っているわけですね。これは、今までがなれ合いでやっていたということを、言わず語らずというか言ってしまったんですが、語るに落ちてしまったわけですね。これは、まさに粉飾が常態だった。これは、よその銀行についても同じですよ。
 これは本来、監査法人に全部押しつけるのではなくて、特別検査もしているわけですから、もっと厳格にやれ、やりなさいということを、当然金融庁としては、監査法人の監督権限も持っているわけですから、やるべきであったし、今まではやっていなかったということを認めざるを得ないはずですよ。
竹中国務大臣 繰り返し言いますけれども、まさに今委員おっしゃったように、監査法人、これは無限責任を負っているわけですから、それで一生懸命判断して今回の数字も出てきた。公認会計士というのは常にプロフェッショナルとしてそのような判断を行っているのではないだろうか、これは私はそのように思っております。公認会計士協会の奥山会長も、繰り返しそのような発言をしておられる。
 勝田社長が何をどう言われて、その真意は、これは私がどうこう申し上げるべきではありませんが、もちろんなれ合いがあっていいはずはないんであって、これは繰り返し言いますが、公認会計士の役割は重要です。そこで独立した判断を持ってやってもらいたいし、今回、彼らとしては、やはりしっかりとした判断を下したものだと思っています。
五十嵐委員 この間、さまざまな報道がなされておりますけれども、れっきとした大新聞等も、この間金融庁が監査法人に陰にひなたに圧力をかけて、五年分認めるようにというようなことを押しつけてきた、これに対して監査法人は、無限責任を恐れてこれを押し返してきたというような経緯があったとされているわけですが、そういうようなことについて、大臣はどう認識しているんですか。
 それから、大臣にこの「りそな」の過少資本問題の報告が上がってきたのはいつですか。
竹中国務大臣 まず、二つ目の、いつ上がってきたのかということでございますけれども、この「りそな」の決算について、会計監査法人との間でいろいろな議論があるということを私が初めて聞いたのは五月七日であったと思います。その前の日に銀行側からそういう話があった、これはしかし、その時点では、そういう話し合いが行われているということで、引き続き、銀行と、決算をやる会社とそれを監査する間での話し合いでございますから、それはしっかりと続けていくということでございました。
 その時点で、金融庁の対応でございます、第一の点でありますけれども。これは、私も答弁しましたし、委員もおっしゃいましたけれども、会計士というのは、本当に独立して、しっかりとした社会的役割を果たして、客観的な判断をしてもらわなきゃ困るわけです。そういったことに、間違っても金融庁が何らかの影響を与えるということがあっては絶対にいけない。だから、この点は金融庁の皆さんはわかっているだろうけれども、特に注意して、そういうことが絶対にないようにしましょう、そのことを、これは幹部会ないしはそれぞれの場でかなり強く申し上げました。私は、金融庁の職員はそれをしっかりと受けとめて対応したというふうに思っております。
 これは五月七日でございますけれども、その後、五月の十四日に、その一週間の間にどういうやりとりがあったか、これは考え方としてどのように整理されるべきかという事務方からの今度は詳しい報告を、この十四日の時点で私は受けました。それを受けて、話を聞いた段階では、これはあらゆる可能性に対応しておく必要があるというふうに私自身判断をいたしまして、このことは、すぐ総理に、その十四日の日に報告を申し上げました。総理からは、まさしくあらゆる事態に対応できるように万全の準備をしておくようにという強い御指示がございました。最終的に、これは十七日に最終的な取締役会が開かれるわけですけれども、その前の深夜に、これは二%程度という数字が出ることは確実であるというような報告を受けた次第でございます。
 繰り返し言いますが、その間、公認会計士の判断に金融庁、金融当局が、監督当局が何らかの影響を与えるようなことがあっては絶対にならない、その点はしっかりと対応していこうと金融庁の諸君にも申し上げましたし、彼らもそれをしっかりと守ってくれたものというふうに思っております。
五十嵐委員 竹中大臣は正確に正直に言われていると思うんですね。私どもも、金融庁の事務当局が竹中大臣に、監査法人が判を押さない、四%割れだということを最終的に報告したのは十四日だということは、実は内部的な話を聞いております。ちなみに、我が党がこの問題を知ったのは前日の十三日でありました。
 その間、ですから、竹中大臣に上がるまでの間、かなり激しいやりとりがあったんだと思います。それは、建前上監査法人にげたを預けるということだったけれども、実際にはそうではなかった。だから、奥山さんがテレビの画面の中で言っているじゃないですか。竹中大臣に、ここは我々の方で、いわゆる公認会計士協会の方で判断していいんですかと聞いたら、竹中さんがそれで結構ですと言ったので判断しました、だから独自の判断ですと。
 お伺いを立てたんですよ、やはりそれは。竹中さんが介入しないという態度をとったということは認めますよ、それは。それから、総理にもそのように伝えたということもそうだろうと思います。だけれども、それは、その以前にそういうことが行われていたから、監査法人の方も、いわば金融庁をパスするような形で、竹中さんに上からの指示を求めた。ですから、「りそな」に引導を渡したのは実は竹中さんと政府の方であって、監査法人ではなかったのではないですか。
竹中国務大臣 ちょっと正確に申し上げますが、十四日に私が報告を受けた段階では、まだ「りそな」と監査法人はいろいろな話を継続中だという報告を受けております。しかし、可能性としては、五〇%と言っていいかどうかわかりませんけれども、可能性としてはそういうことの可能性も視野に入れなければいけないというふうに思いまして、四%割れが確実になったという報告を十四日に受けたわけではございません、そういったことも視野に入れなければいけないということで総理に上げたわけでございます。
 ちょっと、奥山会長がテレビでおっしゃったことについては、今の時点で確認できませんですけれども、タスクフォースの会合で、いろいろな話し合いをその中で行います。これは、タスクフォースでは、そんな個別の、「りそな」の話とか何々銀行の話とかということはもちろん行っておりません。一般的な話で、どういう文脈で出てきたのかはちょっと正確に記憶しておりませんが、これは会計士が今のルール、実務指針に基づいて判断をするんだ、そういうお話は確かに出ました。私は、これはもうかねてから申し上げているように、そのとおりだというようなことも発言したかと思います。
 いずれにしましても、ちょっと経緯の御説明等、それと、基本的には金融庁はそういった判断に立ち入ることがあってはならないし、そういうことはないということをぜひ申し上げたいと思います。
五十嵐委員 そういう白々しいお話を伺うと笑っちゃうんですね。都合のいいときだけ公認会計士や監査法人は独立だ独立だとおっしゃるんですね。
 先ごろ衆議院を通過いたしました公認会計士法の際に、本当に独立を保つなら日本版SEC、我が党はもう法案を出しておりますけれども、日本版のSECをつくって、その監督下にむしろ公認会計士協会や監査法人は入るべきだと。なぜなら、ここは監査の世界では、会計の世界では裁判所とか検察の機能を果たすわけですから、これは金融庁というコーチ役をしたりするところと一緒にやるのはおかしいじゃないかと言ったけれども、そうではないということをやっているわけですね。
 都合のいいところだけ独立だ独立だと言って責任を押しつけて、陰では、おまえ、三年分認めろよ、五年分認めろよと言っているのは、これは極めてひきょうな態度だと言わざるを得ないと思います。
 これまでの緊張関係のないなれ合いの監査体制の継続が実際にこのように急激に自己資本比率が落ちるという事態を招いたんだというふうに思います。前から厳格に、まさに公認会計士協会の実務指針どおりにやっていれば、事前に早期警戒ができて、早期是正ができて、こんなに二兆三千億円とも言われるような国民負担を一挙に生じる前に手当てがされて、健全な銀行に戻る道があったと思うんです。やはり、独立だ独立だとおっしゃるけれども、監査のあり方、ルールを守らなかったということです。そして、それを守らせなかった金融庁に問題があると言わざるを得ません。
 この際ですからまとめて申し上げますけれども、公認会計士法改正案の監査のローテーション、七年・二年。私が質問したら、連続して七年であれば二年休んでまた同じ会計士が復活できるということですが、これは実際には、連続七年ということは、六年でやめればたった一年休むだけで、交代するだけで、同じ人がまた六年やれるというルールだというふうに聞きました。これはまさに癒着を生む、勝田さんが当てにした監査法人とのなあなあの関係を招くような癒着構造につながるんじゃありませんか。そのときも厳しく私どもは申し上げた。
 だから、独立性だ独立性だと言うんだったら、都合のいいときだけ言わないで、ちゃんと独立させてあげなさい。奥山会長も、実は本当は我々は、金融庁ではなくて、監督官庁は日本版SECになるべきではないでしょうかというような考え方も示されていたかと思いますが、その辺は、都合のいいところだけ独立性と強調するのはおかしいんじゃありませんか。
    〔七条委員長代理退席、委員長着席〕
竹中国務大臣 五十嵐委員のお話を伺って、五十嵐委員が本当に独立性を強調されます、その思いは私も全く同じでありまして、今回そのように私自身は強く金融庁の諸君にも指示をしたつもりでございます。
 特にお話のあったSECの話、それと、この間の公認会計士法改正のルールの話、それぞれについては、これはそれぞれ過去にも御答弁させていただいたことがございますけれども、独立性とともに、やはり機能の強化、一方で、SECに関しては、各国の状況は、金融サービスがコングロマリット化して総合化する中で、むしろ証券だけを切り離すのではなくて、いろいろな分野を統合する方向に動いているような動きもある。アメリカは違います。それで、どういう方向がよいかということは、我々としても謙虚に勉強はしなきゃいけないと思っておりますが、いずれにしても、この独立性と、何よりも機能の強化、それは私としてもしっかりとやっていくつもりでおります。
 それと、五年か七年かという点でありますけれども、今回の事例もひとつやはり、今の御指摘も、ないしは先般の御指摘も踏まえまして、我々としては、当初政令で七年ということでスタートしますが、今後これを五年にするということも視野に入れてしっかりと対応していきたいと思っております。
五十嵐委員 おっしゃいますけれども、先ほど、金融庁の事務方と大臣との間に十分な情報が上がっていないのではないかということも申し上げましたけれども、SECに関しては、私どもが提案をし、本会議で提案をしたときも、小泉総理大臣にちょこちょこっと、十分に理解をされているとは思えないと思うんですが、金融庁事務方からある意味では手を回して、こんなもの問題にならないというような答弁を本会議答弁でさせているんですね。これは私は、ふざけた態度だ、自分たちの縄張りを守るための卑しい態度だと言わざるを得ないと思うので、それは、SECというものの必要性を十分に検討し、前向きに対処する必要があるというようなことを、ぜひ答弁を変更していただきたい、こう思います。
 問題がいろいろありますから先を急ぎますけれども、私の先ほどの問いかけ、たくさんしましたから、わざとか偶然抜けたのかわかりませんけれども、公認会計士の監査で、繰り延べ税金資産、これは三年分を「りそな」に対して認めたとして、それは公認会計士の判断だから妥当だという答弁だったけれども、もし実際に、先ほど私が申し述べた実務指針にのっとったら、それはどういう判断になるんですか。それから、よそのメガバンクについても同様のことが言えると思うんですが、私が言ったことは誤りですか。
竹中国務大臣 今の仕組みというのは、委員もよく御存じのように、それぞれの指針に基づいてまず企業が判断をして、それを監査を行う、これは当事者によって行われるものでありますが、それについて、我々は事後的な検査を行います。その検査の中にはさまざまな項目が入ってまいります。金融再生プログラムの中には、今回から繰り延べ税金資産についても検査をしっかり行うということを去年の秋にあえて書き込んでおります。そうしたことに基づいて、今度は我々の、金融の検査業務の中でそういった問題は判断していくということになります。
五十嵐委員 それだったら、竹中さん、何も繰り延べ税金資産の厳格な適用を改めて求めるというようなことを昨年の十月に言う必要はなかったんですね。要するに、竹中金融担当大臣の判断として、今までのあり方が甘い、適正でない、実務指針に沿っていないという私と同一の見解があったからそのような立場をとられたはずだと思うんですよ。
 私は、先ほど申しましたように、原則は一年、そして、特殊事情があれば五年以内でその判断ができる。それは公認会計士が判断する。しかし、原則が一年であり、特殊事情が認められなければ、それは五年だろうが三年だろうが認められないというのが本来でなければならない。それをお認めになるかならないか。これは「りそな」に限らずです。
竹中国務大臣 ちょっと二点、やはり申し上げなければいけないと思うんです。
 一つは、実務指針の解釈をどのように行うかということなのかと思いますが、これについては、「経営環境等を勘案した結果、五年以内のより短い期間となる場合が」あるということはここに書いているわけです。したがって、それについては、まさに公認会計士が客観的に判断をすることになるのだと思います。
 それと、再生プログラムの中で、これの問題の取り扱いでありますが、これは再生プログラムをつくる段階から、繰り延べ税金資産というのは会計上の重要な項目である、特に、税務会計と企業会計のギャップがあるこの国において、資産項目としては極めて重要である、しかしながら、委員が御指摘の点も含めて、市場からは、その回収可能性についていろいろな違った見方がある、したがって、初期の段階で、これについてもっと明確なルールをつくるという議論も出されたわけです。ところが、そのルールに関しては、これは、それこそルールの変更は、急に変更されるのはよくないのではないだろうかと、さまざまな意見がありました。確かにこれは非常に複雑な問題がありますから、金融再生プログラムを最終的に取りまとめる段階で、わかりました、であるならば、これはその根本的なあり方を金融審で専門家を集めて議論をいたしましょう、とりあえず現状では、今の実務指針があるんだから、それにのっとってきちっとやっていきましょうということを確認したわけでございます。それがそこの条文になっている。
 十分なお答えになっているかどうかわかりませんが、今の二点を申し上げたいと思います。
五十嵐委員 「りそな」の件でも申し上げましたけれども、自己資本の大部分が繰り延べ税金資産だというあり方が、とても、だれが見たってまともとは思えないわけですね。それは認められると思うんですよ。
 それで、では、同じように厳格にした場合ほかはどうかというのを、何度も私どもも言わせていただいております。税効果を五分の一に引き直した場合の自己資本比率は、「りそな」以外に、もう一つのホールディングスが二・一一%、二%台前半まで落ち込みます。そして、住友信託以外のすべてのメガバンクグループが八%割れするんですよ。ですから、これは異常なんです、異常、まさに金融危機の状態になっている。そして、信用創造機能や金融仲介機能はまさに不全状態が続いている。ですから、かなり日銀さんはずっと心配をされているわけですね。
 この「りそな」の状況が現実化したことを踏まえて、お待たせして大変恐縮でありますけれども、福井日銀総裁に、今の金融界の状況がどのような状態と御認識をされているか、伺いたいと思います。私はもう金融危機、もしくは、百歩譲っても金融危機前夜の状態にあるというふうに思いますが、いかがでしょうか。
福井参考人 お答え申し上げます。
 日本の金融機関は、大きな不良債権の問題を抱え、かつ抱え続け、それに対して克服の努力をし続けてきております。
 当初から、金融機関の最終的なゴールというのは、不良債権の問題を克服すると同時に、将来に向かって収益性をしっかりと確立していく、ここに最終目標があるということであります。そして、不良債権問題、当初は全く後ろ向きの問題処理ということで始まりましたけれども、時の経過とともに、ようやくこの段階に来て、前向きのと言うと少し言葉があれですけれども、将来に向かっていかに金融機関の収益性確立が大事かというふうに、視点がやはりこれだけ将来に向いてきている。私にあえて言わせれば、それだけ問題処理の前進が図られてきているということだと思います。
 将来に向かって金融機関の収益性いかんというふうに考えましたときに、いろいろな項目をきちんと、マーケットの評価に即した点検が行われなきゃいけない。今そういう時点にあって、将来に向かって金融機関の収益性を判断するときに、繰り延べ税金資産の評価についても、恐らく、やはりより厳正に、マーケットの評価にたえるようにというふうに変わってきているんだろう。これは客観的な事実だと思います。
 そういうバックグラウンドのもとにおいて考えれば、日本の金融機関が本当に立ち直るまでに抱えている問題はまだ相当に深いわけであって、したがって、金融機関の基盤は引き続き脆弱である。したがいまして、問題の処理の適切性を欠けば、いわゆる金融危機という状況をいつ何どき引き起こしかねない状況にあるということは事実だと思います。したがいまして、適正な処理が今後とも必要だ、そこには一刻の注意も怠れない、こういうふうに認識しております。
五十嵐委員 微妙な表現ですけれども、当局のお立場としては金融危機だとは言えないでしょうから、極めてそれに近い発言があったというふうに思うんですね。その認識が、予防注入論者と伺っておりますけれども、そういうことになっているんだろうと思います。
 私ども民主党の立場も、今を危機と認定して思い切って公的資金を注入してしまいなさいと言っているのはほぼ同じような意味ですけれども、予防注入とは私どもは言っておりませんが、そういう意味で、予防注入論が今でも必要とお思いかどうか、それにはどういう方法が考えられるか、アイデアがあったら日銀総裁にお示しいただきたいと思います。
福井参考人 お答え申し上げます。
 ただいま申し上げましたとおり、一番大事なことは、金融機関の健全性を早く取り戻して、一刻も早く市場に金融機関を戻す、そして、しっかりとしたその役割、つまり、企業が新しいビジネスに立ち向かっていくときのそのビジネスの価値とビジネスが背負っていくリスク、この評価をきちんとできる金融機関、そして、そのリスクの一部をみずから背負いながら信用供与していける金融機関として旅立たせるということが一番大事だと思います。
 先ほど申し上げましたとおり、非常に困難な問題を抱え続けている金融機関でございますので、その健全化に復させるための必要な措置というのはなるべく早い方がいい。危機直前の段階、つまり自己資本が非常に欠落するという状況を待ってからでなければ措置ができないというよりは、もっと早い段階で処理はした方が市場に対する金融機関の開放の速度も速まるのではないか、基本的にはそういうふうに考えております。
五十嵐委員 私もそうだと思います。
 与党は、「りそな」を実質破綻に追い込んだことがけしからぬとおっしゃっているわけですね。私どもはそうじゃないんです。実質破綻したことは、これはもうある意味では当然のことなんです。むしろ、もっと早く厳正な検査、監査をしていれば破綻は避けられただろうということと、この後、きちんとした再生をしなければならないということを主張しているわけです。
 その際に問題なのは、高木金融庁長官がはっきり発言をされているんですが、これは認められると思うんですが、資産の再査定はしない、こう述べられているわけですね。これは私はとんでもない話なんだろうと思います。先ほど言いましたように、国民の貴重な財産をこれに費やして使うわけですから、どこまで返ってくるかわからないわけですけれども、使うわけですから、これは再査定をきちんとして、実態を国民の前に明らかにするということが極めて重要だと思いますが、この発言は撤回を、大臣として、上の立場からさせるというおつもりがあるかどうか、伺いたい。
竹中国務大臣 いわゆるデューデリは、例えば、債務超過になって破綻して、そういうところを別の経済主体が購入するときに一体幾らで買うのかということをはっきりさせる、そういう場合に通常行われるわけです。しかし、今回の措置は、これは資本増強でありまして、この銀行の自己資本の充実を図って、同行が業務を行っている地域の信用秩序の維持に重大な支障が生じることを未然に防ぐためのものである。
 もちろん、資産査定は、これは重要であります。これは既にディスカウントキャッシュフロー等々の新しい手法を導入して厳格化を図っておりますし、三月には特別検査を行って、その結果は十五年三月期決算に反映されるということになります。今回、監査法人も、こういった問題等々含めて非常に厳格な議論をしながら決算を作成したというふうに聞いております。
 したがって、今回の資本増強の決定においては、十五年三月期決算をもとにいろいろな判断をしていくのが適切であろうというふうに思っております。
五十嵐委員 木で鼻をくくったような御答弁をありがとうございます。
 先ほど指摘しましたけれども、三月十一日には六%台半ばだったんですよ。それが、五月の十七日に、たった二カ月でこれだけ変化しているんですよ。それは、繰り延べ税金資産の厳格化だけではないということを先ほど私指摘したじゃないですか。つまり、これは三月末決算してやっているからいいんだということではなくて、やはり、国民の財産をこれから使う以上、厳格に査定をし直すということは当たり前のことじゃないですか、それは。無責任な態度ですよ、それは。デューデリなしでこんな実質破綻処理をするというのはふざけた話なんですよ。
 これは、正攻法で今までやってきた、やってくるというふうに称していられる竹中さんの看板に、また悪い癖が出て、ぶれが出ちゃったかな、こう思うんですが、どうですか。
竹中国務大臣 繰り返しますが、破綻処理ではございません。これは、百二条の第一号措置でありますが、第二号、第三号措置とは違う。
 資産査定はもちろん重要でありますから、それについての検査を含めた資産の評価は、これはきっちりと行います。
 それと、三月十一日の報告との差でありますが、これは、委員、手元に資料がおありだと思いますが、二・六%分が繰り延べ税金資産、そのほかに、株価の変動でありますとか、さらに処分損を処分したとか、そういうその後の環境変化でありますから、何か隠していたものが出てそうなったということではないというふうに認識をしております。
五十嵐委員 資産査定はちゃんと行いますとおっしゃったんですが、それは、高木長官の発言は撤回されるということなんですか。
竹中国務大臣 これは、検査等々でそういった資産査定がきっちりと行われていきますという意味でございます。
五十嵐委員 いきますというのはどういうことなんですか。これから金融庁の手によって資産査定を、再査定をいたしますということではないんですか。
竹中国務大臣 特別検査が行われます。その検査の中で資産査定がしっかりと行われますという意味です。
五十嵐委員 ということは、投入する前にやるということですよね。要するに、もう目をつぶって投入しちゃうんだ、こういうふうに高木長官はおっしゃっているんですが、それは、そうではないということですね。
竹中国務大臣 我々としては、通常のペースで検査を行って、その中でしっかりと資産を査定していくという意味です。
五十嵐委員 ごまかしておられるんですね。高木長官が先走って言われたことを大臣が直されるというのは、何もおかしなことじゃないじゃないですか。
 大事なことは、これは、「りそな」を実質的に準国有化される、実は国有化に準ずる銀行になるわけですよ、これは。否定をされても、そうでしょう。大体、破綻じゃないといったって、二兆三千億円もつぎ込まなきゃいけなくて、どうして破綻じゃないんですか。そんな、国民に聞いたら、本当にそれは詐欺師の言葉だと言われちゃいますよ、野中さんじゃないけれども。そうでしょう。国民の財産を二兆三千億円もつぎ込まなきゃまともにならない銀行がどうして破綻じゃないと言いくるめるんですか。これは実質破綻なんですよ。それをそういうことでごまかしちゃだめですよ。幾らお言葉が上手だからといって、それで全部、国民のすべてを言いくるめようというのは、これは間違いですよ。
 問題は、この「りそな」にせっかく国が資本家となって国の資本が入るわけですから、これをいい銀行にしなきゃいけないということだと思います。
 そこで、これまでの経営者は総退陣するんですが、あの程度の総退陣じゃおかしいんじゃないですか。やはりかなりの部分までやめていただいて、ビジネスモデルを全く変えていかないと難しいんだろうと私は思います。例えば、徹底したプロジェクト融資に転換し、個人保証や連帯保証は原則としてとらないというような、中小企業に喜ばれるような、いわゆるリスクを金利で取って、目の高い、収益力もあるけれども、ちゃんと貸すべきところにはちゃんと貸せるという銀行をこの機会につくっていくということでなきゃ、国のお金が入った意味がないじゃないですか。
 それには、民主党として何度も提言していますけれども、もっと思い切って若返る。むしろ、一番若い支店長クラスをトップに連れてくるとか、あるいは、製造業で活躍してきた、最先端の競争社会で国際競争の荒波をくぐり抜けてきたような人を経営者に据えるとか、そういう思い切った転換をしなければ、ただ順送りで、二番手を一番上に持ってくる、三番手を二番に持ってくるというような、そういうようなものでは、私は、国民の税金が入るかいがない、こういうふうに思いますが、どうですか。
竹中国務大臣 まず、ガバナンスの御質問でありますけれども、その前に、繰り返しぜひ御理解いただきたいですが、これは百二条の一号措置でありますから、破綻というふうに言われましたが、二号、三号のそれとは厳密に違うということをぜひ申し上げておきたいと思います。
 その上で、ガバナンスをしっかりと発揮させて、つまり、自己資本を厚くするだけでは、これは問題の解決には明らかにならないわけです。この自己資本、厚くなった自己資本に基づいてしっかりとした経営がなされるように、我々はその枠組みをつくる非常に大きな責任を負っていると思っております。
 しかし、これは同時に、我々が求めるガバナンス、コーポレートガバナンスと、経営者が経営を行うときの自主、オートノミーとを、ガバナンスとオートノミーのルールづくりをどうするかという、非常に新しい、難しい問題に直面していると思っております。
 その意味では、オートノミーの非常にわかりやすい例は、どこの企業に幾ら融資するか、これは経営判断ですから、例えばそんなところに国が、公務員が口出しするようなことがあってはこれは最悪なわけですから、我々としては、ガバナンスをきっちりとして枠組みをつくる、その上で、経営のオートノミーはしっかりと保たせる、そのルールづくりをぜひ急いでやりたいと思っております。
 その際に、やはり人が重要だというのも私は全くそのとおりだと思いまして、今、幾つかの指示を出して検討をさせております。特に、やはり外部からの人材の登用というのは絶対に不可欠であります。それを活用して、そのガバナンスの枠組みづくり、かなり思い切った枠組みがつくれるように、それができるかどうかが今回の資本注入が結果として後々評価されるか評価されないかの重要な分かれ目であるというふうに思っております。
五十嵐委員 それと同時に、過去の一時期国有化した銀行の失敗を繰り返してはならない、こう思っているわけですね。
 そこで、厳しいデューデリジェンスをやるというのは当然なんですが、それと同時に、やはりはっきりと、いい資産と悪い資産と再生すべきグレーの資産というのを三つに分けて、きっちりとやっていく必要がある。これは、私どもの金融再生ファイナルプランの案なんですね。
 我々は、新しい銀行を幾つかつくって、国有化した中から分割をし、あるいは再編統合して、ぴかぴかの銀行、それから切り離すべきもの、それから再生すべきものを集めて、再生を懸命に図る、そういう再生専門銀行、あるいは新しい企業を起こす起業支援の銀行をつくったらどうかということを提案させていただいているわけですが、企業再生のための新たなシステムなり仕組みなりをつくるお考えがあるかどうか、伺いたいと思います。
竹中国務大臣 これは、「りそな」の融資先の中でのそれを再生させる機能、そういう御質問なんでございましょうか。
 御承知のように、全体に関しては、再生機構を今度つくっているわけでありますから、この点に関しましては、まさにどのようなビジネスモデルをつくっていくかということで、経営健全化計画の中で、これはまず「りそな」自身に考えてもらって、我々はそれを厳しく審査するということになろうかと思います。
 それ以前の問題として、今、我々で、少なくとも再生プログラムに基づいて認識をしているのは、先ほどから議論されていますように、新勘定と再生勘定に分けて、そこの経営の責任を明確化する、それぞれに、新経営者は、収益を上げる、再生させるという責任を負うわけですが、それは再生プログラムに基づいてしっかりとやらなければいけないと思っております。
 それの先に向けての御質問等々については、これは健全化計画の中で、まず「りそな」の経営者自身がどのように判断するか、それを受けて我々がどのように審査するか、その中で答えを出していきたいと思います。
五十嵐委員 産業再生機構は、御承知のとおり大企業しかやれないんです、事実上。折しも、このりそな銀行というのは、スーパーリージョナルバンクを目指すとして、地域の銀行、中小企業専門の銀行ということを目指しておられるわけですから、ちょうどいいわけですね。私どもは、商工中金等といろいろ再編をすれば、いわゆる中小企業に対する貸すノウハウを持っている銀行として再生機能を重点的に担える余地がある、こういうふうに思っているわけですが、これはまた別途議論をさせていただきたいと思います。
 大臣をお呼びして質問しないのは失礼ですから、お待たせして申しわけなかったんですが、先ほどもちょっと出ておりましたが、いわゆる未実現の損失との関係で、大臣もおっしゃったとおり、これは税金の仕組みと会計上の仕組みとの間にずれがある、そのずれを繰り延べ税金資産という形で補っている仕組みになっているものですから、これをうまく一致させる方法をやはり至急にお考えいただきたいということです。
 無税償却の範囲と方法を変える余地があるのかどうか、あるいは、最近では、交付国債で処理するとかいろいろな新たな手があるじゃないかという新提案も出されているようですが、いつまでも税金をまけるのはもったいないからというような話ではなくて、税務上の扱いと会計上の扱いを一致させる努力は、人ごとのように大臣言われないで、自分が当事者なんですから、御自身が当事者ですから、どのように一致させるかということを真剣に御検討いただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
塩川国務大臣 会計原則の問題等は所管でございますけれども、金融関係は私ども所管じゃございませんので、金融関係の会計についてはやはり金融庁で相談してもらうようにしてもらわなきゃいけないと思います。
 それにしても、私は、こういう大きい問題が、解釈違いが起こってくるということは、やはり企業会計の原則で言うところの処理の仕方と、それから税法上の処理の仕方、そしてまた金融上の処理の仕方、基準がしっかりとされていないんじゃないかなという、そこが私は非常に心配なんです。ですから、税の問題を議論いたしますけれども、同時に、そういう会計上の問題もきちっとしてもらわなければ解決できないよということを言っておるんです。
 それから、五年の問題を十年に延ばせという話がございます。これも意味は全くないことはないと思います。けれども、それによって本当に金融機関が健全化するのかということが第一の問題。そして同時に、それでは金融機関以外の一般企業との関係はどうなのかという問題も起こってまいります。ここらは検討する必要があると思っておりまして、私は、全面的に否定はしていないんです、十分考えさせてもらいたいということを言っております。
 それから、繰り延べ、一年。一年を五年に。先ほど来おっしゃっている、特殊な事情があれば五年までというお話でございました。この一年の分について交付国債でやったらどうだということでございますけれども、しかし、これは身勝手な話で、その税金の相当分を国民の負担で賄っておけ、交付国債ということはやはり国民の税金になって、見返りになってくるんでございますから、そのことについては、私は、非常に否定的であります。
谷口副大臣 塩川大臣がおっしゃったことでいいわけでございますけれども、ちょっと私が、いわば公認会計士という資格を持っている者として、若干お話をさせていただきたいんですが、税金を計算する目的でやる場合と、いわばディスクロージャーといいますか、株主なり投資家なり債権者なり、このようなことに開示をするといった目的でやる場合とは違うということで、これを一律に合わすということはまず考えられないということを申し上げたいと思います。
五十嵐委員 終わります。
小坂委員長 次に、仙谷由人君。
仙谷委員 予期されておったこととはいえ、ついに「りそな」が実質的に破綻をした、こういうことだと思うんですが、そこで、預金保険法の百二条の認定をしたという報告をきょうされたわけですね。
 先ほどからお伺いしておりまして、竹中さん、これはだれが、総理大臣なのかあなたなのか知りませんけれども、もうちょっと国民に対して謙虚な恭順の意を示すような御発言があってしかるべきなんじゃないですか。だれも、申しわけなかったと言わないのはどういうことなんですか。どうですか。
竹中国務大臣 現実に、一度公的資金を注入した銀行で、再び投入しなければいけなくなっている、しかもその金額が、金額はもちろん確定しておりませんけれども、相当の多額になる、こうしたことが起きたことに関しては、これは甚だ遺憾なことである。我々としては、金融問題を、さらに不良債権処理を加速して、この問題を真に二年程度で解決するために、新たな決意を持って金融再生プログラムをつくっているわけでございますけれども、それに向けて全力を挙げるのが我々の仕事だと思っております。
 再び公的資金を注入することになって、こうしたことを招いたことについては、甚だ遺憾であるというようなことは記者会見でも申し上げさせていただきましたし、NHKで申し上げる機会もありましたので、同じような発言をさせていただきました。
仙谷委員 きょう配られた報告とか概要説明とか拝見しても、極めて事務的なんですね。これは、そういう事務的な報告だからそれでもいいのかもわかりませんけれども、大臣とか政治の立場にある者が、簡単に公的資金とおっしゃるんだけれども、これは税金ですわね。今の状況からすると、税金じゃなくて、生まれていない子供のツケ回しみたいな、カードローンを使って二兆三千億ですか、早々と、承諾も得ないで使ってしまう、こんな話になりかねない。もう少し緊張感を持って、税金をこう使わせていただくということじゃないと、もう国民は白けちゃってどうにもならないんじゃないですか。
 それで今、一度どうのこうのとおっしゃったけれども、ここは一度じゃないんです、御存じのとおり。仏の顔も三度までと言うんだ。居候、三杯目はそっと出しと言う。堂々と、二兆三千億円公的資金注入しますなんということを言われたんじゃ、これはタックスペイヤーとして、何言ってるんだこのやろうという感じになりますよ、本当に、私みたいな上品な男でも。
 ましてや、本件の場合、二回資本注入をやったという経緯のほかに、ことしの二月に、今から考えてみると、弱者連合だなんということを本人が言うふざけた合併を認めた。さらには特別検査もやっている。さらには三月十一日に、りそなホールディングスは一千二百億円の新株発行をやる。これも金融庁は認めているじゃないですか。そんな会社が、二カ月程度たったら、あれよあれよ、先ほどの五十嵐さんの質問を聞いていたら、全く自己資本が空洞化しているような銀行になっちゃっている。計算上の繰り延べ税資産だけが自己資本のほとんどを占めるなんという、こんなふざけた話がどこにあるんですか。
 これを監督当局として、ここまでひどくない事例でももうちょっと、あなたの責任じゃないかもわからぬけれども、恭順の意を示して、国民に、まことに申しわけない、特別検査もやったけれども抜かりがありましたということを認めなきゃどうにもならぬじゃないですか。
 私、もう二年前になると思うけれども、三十六兆円も使って何やっているんだという質問を予算委員会で柳澤さんにしたら、当時の柳澤金融担当大臣、烈火のごとく怒った。私は、お金がどのぐらいかかったかというよりも、かけた上で、この日本の金融システムなり、資本注入を受けた銀行が、金融機関としてもちゃんとした機能を果たせているのかどうなのか、ここが問題だということを言い返したでしょうが、あのときに。全く、その当時言った杞憂というか危惧が、現実化しているじゃないですか。
 これだけの金をつぎ込んで、決して少ない金額じゃないですよ。一兆幾らですか、あさひ、大和、近畿大阪含めて。全部で一兆一千六百八十億円だ、つぎ込んだ金が。国民の税金つぎ込んだらこういうことですよ。それが現時点でこうなったということについては、もうちょっと謙虚な気持ちで、あるいは税金を使うことについての緊張感を持ってやっていただかなきゃいけないんじゃないですか。いかがですか。
竹中国務大臣 我々は、公的資金、貴重な、今すぐ税金を使うわけではないにしても、国民の負担になる可能性のあるその公的なものを使うことに関しては、当然のことながら、これは非常に重く受けとめております。緊張感がないというふうに言われましたが、それはちょっと私たちのここ何カ月間かの働きの中で、もう少し御表現の仕方もあるのではないかなというふうに、はっきり言って思います。そんなことはございません。
 私たちの今回の措置に至ったこの重い気持ちは、記者会見でも、先ほど言いましたテレビでも、私なりに表現をさせていただいたつもりでございます。
 日本の金融に問題があると、私自身、金融担当大臣に就任した直後から申し上げている。その上で、これまでの検査は十分であったのか、これまでのガバナンスの仕組みは十分であったのか、過去の資本注入のお金は本当に有効に生かされたのか、そうしたことを含めて、反省すべきは反省して、もう一度高い目標を立てて、不良債権問題を二年で終結させるという目標を立てて、それで、それを実行するためのプログラムをつくるということを現実に我々は行ったわけです。その過程で、資本不足の銀行が生ずる可能性もあるだろう、したがって、それに対しては公的支援の枠組みもつくって、その際の混乱がないようにぜひともしたい、そういう強い決意のもとで金融行政を行ってきたつもりでございます。
 今回、結果として、こういうふうに公的資金、これはそういうことをやらないで日本の金融機関が健全化していってほしいと、私も本当に思います。しかし、今回、さまざまな検査、繰り延べ税金資産に対する評価の中でこういうことが起きたということに対して、我々は今の持っている枠組みの中でしっかりと対応して、しかし同時に、繰り返し申し上げますが、二年でこの問題を終結させるという目標、これを必ず実現させるために必要な措置をとっていく。今回の措置もそのために必要な措置であるというふうに思っております。その辺はしっかりと対応をさせていただきたいと思うし、その辺の我々の思いと実際の行動については、もちろん厳しく評価していただくと同時に、御理解もいただきたいと思います。
仙谷委員 結局、国民に対して申しわけないの一言が言えないんですね。
 二年でこの不良債権問題処理すると大見え切られたけれども、私は、こんなやり方で、二十年かかると思っています。二年でやるなら、こんなやり方じゃ絶対できない。それは、あなただったら、大臣だったら、この不良債権問題の深い深い深淵というのを知っているはずだ。業務純益だけでこなすようなやり方で、二年でできるなんて、そんなばかな話は絶対ない、私はそう思っていますから、余り大見え切らない方がいいですよ、そんなところで。
 私は、緊張感あるとおっしゃったけれども、緊張感、本当にあるのかどうか疑わしいから言っているんですよ。どういうことかというと、さっき五十嵐代議士も申し上げておったけれども、要するに、数字が我々のところに届かないんですよ、この百二条一号認定をする。どういう数字をあなたが見てやったのかが全然我々のところに明らかにならない。ということは、私に言わせれば、金融危機対応会議の中で、あるいは総理大臣は数字を見てないんじゃないか、竹中さんも数字をちゃんと見ないでこの認定をしたんじゃないか、今疑っているんですよ。
 つまり、対応会議に出した数字があるんだったらちゃんと持ってきてちょうだいと、きのうから言っているんですよ。例えば、私がきのうから要求したのは、三年ぐらいの業務純益の変動、不良債権額の変動、貸出資産の残高の変動、不良債権処理額の変動、預金の変動、株式償却損の変動、税効果会計の変動、国債保有額の変動、異動と言ってもいいけれども、三年ぐらい持ってきてちょうだいときのうから言っているけれども、全然できないじゃないですか。
 それで、失礼にもほどがあるけれども、ホールディングスがいろいろ発表してきた生の書類を送ってきた、余り忙しくてできなかったのかもわかりませんけれども。ということは、塩川さんはいなかったけれども、金融危機対応会議で、あなたなり総理大臣はどんな資料をもとにしてこの認定をしたのか、極めて疑わしい。極めて疑わしいと思うんです。
 対応会議に出した書類があるんであれば、企業の極秘にかかわるような事態があれば消してもいいから、ちゃんと国会に出してくださいよ、国民に明らかにしてくださいよ。ひとり二兆注入とか、二兆三千億とか、わけのわからぬ数字が走るだけじゃないですか。今回、基本になる数字、何にも我々も知らされていないし、メディアの方も報道していませんよ。どうですか。
竹中国務大臣 金融庁に資料を請求したけれども数字が出てこなかったと今先生おっしゃいましたですね。ちょっとその辺の事情、私よく理解できないのでございますけれども、その対応がまずかったということでありましたら、おわびを申し上げなければいけません。
 当然のことながら、数字に関しては、その都度その都度、すごいいろいろな細かい数字も含めて、私も当然見ておりますし、それは全部というわけにいきませんが、重要なエッセンスは事前に総理にも御説明をしております。金融危機対応会議そのもので、そういった数字を精査するという場ではございませんですけれども、これは事前に担当の御出席の方々にもそのような御報告は行っております。
 数字を出せ、こういう数字を出せという御指示がございましたら、もちろん、出せない数字はともかくとして、我々の判断の材料になったもの、御参照いただくもの、これは当然のことながらお出しできると思いますし、しっかりと対応させていただきたいと思います。
仙谷委員 いや、自民党の先生方も多分持っていないと思いますよ、今私が申し上げたのは。持っていないでしょう。業務純益から、不良債権から、貸出残高から、不良債権の処理額から、預金、それから株の償却損益、税効果会計、つまり繰り延べ資産の異動、国債の保有額の異動、各決算期のですよ、こんなもの、何かありますか。自民党だけに出して我々に出していないんだと、これはまたけしからぬ話だけれども。(発言する者あり)
 ええ、極めて基本、つまり、素人が見ても経営状態がどう移っていっているのかがわかる、私でもわかる数字を要求したわけですよ。できたら一覧表にして出してくれ。出てこないじゃないですか。どうも、ないんじゃないかと思っているんですよ。どうですか。
西原政府参考人 お答え申し上げます。
 大変申しわけありません。実は作業が間に合いませんで、ディスクロージャー誌とか有価証券報告書、こういったものを中心に御提示をさせていただきまして、今先生のおっしゃるような項目に従って一表にまとまったものをちょっとつくる余裕がなくて、そういったものを御提出させていただいたわけでございますが、非常にわかりにくいということで、改めてそれを整理させていただいて、表にした形でつくり直させていただきたいと思います。
仙谷委員 今回の審議だけやり過ごしたらいいと思ってネグったんじゃないかと私は思っているんですよ。
 例えば、じゃ今の、りそなホールディングスの株式の時価総額を出してこいと言ったら、だれも出してこないじゃないですか。こんなもの、どうして出ないんですか。幾らですか、時価総額。
西原政府参考人 お答え申し上げます。
 五月二十日時点で、りそなホールディングの株価が終値五十一円でございましたので、これに基づいて発行済み株式数にそれを掛けますと、時価総額が二千八百八十三億円となります。
仙谷委員 この数字は大事な数字だと思って、きのうから聞いている。さらに大事な数字は、例の、先ほど申し上げた資金注入した優先株が今どのぐらいの価格なのか、今どのぐらいの価値を持っているのか。これも教えてくれと言ったら、来ました、来ました。提出会社の状況という、一回ごと中を読んで、転換比率を計算して、転換株がどのぐらいになって、全部私が計算しなきゃできないものを送りつけてくれましたので、しようがありませんから、昔とったきねづかで計算しました。きょうお出ししてある資料の二枚目です。
 私は、五十一円とか四十九円とか四十八円とか、ぶらぶらぶらぶらこの株がしているものだから、五十円で計算すると、先ほど西原さんがおっしゃったのとほぼ近い、二千八百十七億円というのが普通株式の時価総額。
 優先株式、計算してみました。間違っていたらまた後で訂正をいただきたいのでありますが、要するに、八千六百八十億円を優先株として資本注入したわけですね。
 一枚目の方に返っていただきますと、そこにある乙、丙、戊、己ですか、この四回分、払込額が、それぞれここに記載してあるように、六百円、五百円、千二百五十円、千二百五十円、こういう払い込みの優先株式の引き受けであったわけでありますが、それぞれの転換比率というのは、百六十六円を下がったときには、百六十六円で五百を割って、そこで転換比率を出すんだというふうなことが書いてある。あるいは、戊と己は、三百五十九円八十銭以下の株価になったときには、その千二百五十円払ったのを三百五十九・八〇で割ってやると、そこに転換比率が出てくる。
 こういうふうになっておりまして、それを計算すると、普通株としては大体三十八億株を取得するということになるであろう、多分、株価が三百五十九円以上にはね上がる、あるいは百六十六円以上にはね上がることがない限り、大体こういう株数になるだろうということだろうと思います。
 これに五十円を、つまり現在の時価を掛けてみますと、千九百一億円。つまり、八千六百八十億円ほうり込んだその国民の税金は、現在価値で一千九百二億円になっている。六千七百七十八億円吹っ飛んだ。つまり、注入したお金はその七八%がどこかへ行ってしまった、こういう計算になるわけですね。
 これは、私どもが九八年の金融健全化法をつくるときに、佐々波委員会で失敗しているんだから、厳しい、その後デューデリジェンスという言葉がはやったけれども、そのときは資産査定と言っていた。資産査定をやらないと、結局佐々波委員会の失敗をもう一遍繰り返すことになりますよと。厳しい資産査定こそが必要だ、減資も必要だ、減資をやらない限りむちゃくちゃになりますよ、株主責任を問えないだけじゃなくて、モラルハザードを起こして、とんでもないことになりますよと。ところが、無理やり通してしまった、自民党を中心に。我々は反対しましたけれども。
 その結果、一九九九年の資本注入と称するものが約一兆円かけて行われたという、そのときの分まで含めると、そして今になってみると何と七八%飛んでいるじゃないですか。これはだれが責任をとるんですか。どうですか、大臣。
竹中国務大臣 価格をどのように設定するかとかで数字の若干のやりくりはあるにせよ、過去の投入した分について、今このような厳しい経営の中で厳しい評価をしなければいけないという事実はあるというふうに認識をしております。
 これは、今後我々としては、先ほどから何度も申し上げていますように、しっかりとしたビジネスモデルを再構築する。過去、資本を注入したけれども十分な収益性を確保することができなかった。したがって、我々は、自己資本の充実に加えて、資産査定とガバナンスの強化というのを再生プログラムの中核に置いているわけで、今回においても、しっかりとしたビジネスの体制をつくって、それによってこの公的な資金が回収されるような道をぜひともつくっていく必要があるというふうに思っております。
 今後、経営健全化計画を新たに提出して、それを着実に実行して、その価値が増大していく。これはとりもなおさず、この銀行が社会の中で大きな役割を果たして、地域全体に貢献するということ、さらには、国民の負担を小さくして、公的な政策としての役割を果たすことにつながっていくと思いますので、こうした点を、反省すべきところは反省して、しっかりと打ち立てていきたいというふうに思っております。
仙谷委員 いや、私は、じゃ次にこういうことを申し上げたい。
 現在の普通株の時価総額、これは二千八百億でも二千九百億でもいいんだけれども、何で二兆三千億も出すんですか。TOBをかけて買い取ればいいじゃないですか。全面国有化で買ってあげればいいじゃないですか。この会社の株式を持つよりも、国が例えば七十円で買ってあげると言ったら喜んでみんな持ってくるかもわかりませんよ。二兆三千億なんか要らないじゃないですか。そんな資本建てする必要、どこにあるんですか。
 何で、そういう簡明なシステム保全というか危機管理の方策をやろうとしないで、まだ二兆三千億もどこにお金があるのか知らぬけれども、自分の金のように簡単にほうり込むみたいな、注入するみたいなことを言うんですか。どうですか。
竹中国務大臣 我々としては、この資産規模四十兆円の銀行を、銀行というのは極めて重要な、特に今回の場合、大阪、埼玉地域の、地域の中小企業に根差した非常に重要な機能を果たしている。これを、マーケットの中でしっかりと十分な資本を持って活動していけるような立派な銀行として機能をさせたいわけです。
 例えば、自己資本を厚くしないことには市場の中で過少な資本ということで影響を受けるわけですし、過少な資本であれば地域に対して十分な貸し出しを行うこともこれまたできなくなるわけであります。そういった意味でのマクロ経済へのインパクトを考えて、日本の経済全体の中で銀行機能が十分に発揮されて、中小企業等々が影響を受けないように、預金者が迷惑をこうむらないように、それをまさに行うことが、危機的な問題を、信用秩序の崩壊を未然に防ぐことになるというふうに判断するわけです。
仙谷委員 今のは絶対間違っていますよ。マーケットの中でも、民間銀行だから資本が要るので、国有民営銀行だったら全然要りませんよ。何を言っているんですか。日銀が流動性を保障して、ちゃんとそこは信用創造すればいいだけの話じゃないですか。民間だからBIS規制の八%が必要だとか四%が必要だということになるんじゃないですか。
 それで、竹中さん、もうちょっと考えてもらいたいのは、二兆三千億円という話は、一株五十円にしたら何株になるんですか。簡単に計算したら四百六十億株じゃないですか。先ほどお答えがあったように、普通株はこの会社は五十六億株なんですよ。そこへ今四百六十億株の資本注入を行おうとしているんですよ。これは何かおかしいと思いませんか。
 つまり、常識的に考えたら、減資をしないでも九五%ぐらいは国有になるじゃないか、国が普通株を持つことになるじゃないですか。何でそんな国有の仕方があるのかということを僕は言いたいわけですよ。これは全くおかしいと思う。計算上、これは、私の頭がおかしいのか、金融庁の頭がおかしいのか、どちらですか。
竹中国務大臣 基本的にまだ金額が確定しているわけではもちろんございません。これは我々何回も言いました。
 繰り返し言いますが、十分な自己資本を持って、民間の中で、つまり国立の銀行ではなくて、民間の経営の柔軟さを発揮して、かつマクロ経済に貢献できるような銀行活動を維持させたいというのが政策のねらいです。繰り返しますが、一〇%を上回るような自己資本比率を持ちたい、金額は決まっていない。
 今の仙谷委員の計算は、ちょっと私も暗算でついていきましたけれども、これは普通株でやったらこうなるということでございますけれども、当然のことながら、今までに比べて新規に発行できる株式の数、これは商法上の制約等々ございます。そうして、金額等々に関しては、いわゆる種類株で、金額が高い種類株を組み合わせるということも考えられる。そうすると、株式の株数は当然のことながら違ってくる。そういったことを組み合わせて、もう一つ、種類株と普通株の比率についても、これは制約が設けられている。実は計算上は大変難しい計算になっているわけでありますけれども、そうした中で、そういった組み合わせを適切に行って、今申し上げましたような政策的な目的、目標を達成したいというふうに思っているわけです。
仙谷委員 余り、専門用語を並べて、いろいろ種類株とか何とかそんなわけのわからぬことを言っても、資本がほとんどなくなっているところへ二兆三千億ほうり込むんだから、こちらの資本の方が圧倒的に優位なことになるのは当たり前じゃないですか。わざと何でその影響力を少なくさせようとしているのかわからない。
 つまり、あなたは何で最初から減資はしないなんということを堂々と言うんですか。国民の金はそんなに粗末に扱ってもへっちゃらなんですか。何で、国民の税金だけは値打ちがないように扱って、こんなつぶれかかった銀行の株主の責任は問わない。何で株主でない国民が株主の責任をとらなきゃいけないんですか。
 福井さん、福井さんは記者会見で、モラルハザードにならないために、株主が責任を全うするよう答えを出すと思う、こういうふうにちゃんとお答えになっているわけですね。
 先ほど予防注入の話もございました。くしくもアメリカで、もう二十年ぐらい前になるのかしら、コンチネンタル・イリノイ銀行の、要するに予防的な注入と再建ということがございました。私も今思い出しました。あのときは、ちゃんと減資をして、そして足らざるところに、国だったか公社だったか忘れましたが、そこが資本注入をして、資本建てをして、そして再建をした、こういう経過だったと思うんですよ。
 私は、資本注入をするときには、これは必ず、経営者責任はもちろんのこと、株主責任もとるという原則はそのままやりませんと、国民の税金を公的資金と言いかえて、ずるずる何をやってもいいみたいな話がまかり通り過ぎている。こんなことは許されるべきじゃない。
 そして、改めてこの余りできのよくない預金保険法の百二条、百五条というのを読んでみました。基本的には、株主の責任の明確化のための方策というのをちゃんと経営健全化計画の中に書かなきゃいけないと百五条の中に書いてあるじゃないですか。株主の責任を明確化するための方策というのは、減資以外に何かあるんですか。何かネグるような話が、合理化されるような話があるんですか。(発言する者あり)
 いやいや、だから、福井さんはまず株主責任をとると思うというふうにおっしゃったんだけれども、この種の問題については、コンチネンタル・イリノイの問題もあって、御存じだと思うけれども、まずは減資をすべきだというふうにお考えになっているんですねということを聞きたいんです。どうですか、総裁。
福井参考人 私が記者会見でお答え申し上げましたのは、国が公的資本注入を金融機関に対して行う場合にも、あるいは日本銀行が特別融資いわゆる特融を実行する場合にも、金融機関側において、あるいは金融機関のガバナンスに責任を持っている株主の側において、モラルハザードを起こしてもらっては困るということを明確に申し上げました。
 そして同時に、ただいま委員が御指摘になられましたとおり、公的資本注入の場合には、預金保険法百五条の条文の中身も意識して申し上げました。この条文の中身としては、経営責任の明確化のほか、株主責任の明確化を含む経営健全化計画の策定というのを義務づけている。今回のりそな銀行の場合にも、当然この経営健全化計画というものがこれから具体的に策定されていくわけでありますので、どういう形の株主責任の明確化になるか、これは減資の可能性ということも含めてきちんとなされていくであろう、ぜひ明確にしてほしいという趣旨のことを申し上げました。
仙谷委員 改めて申し上げますと、こう書いてあるんですよ、預金保険法百五条は。
 三項、「内閣総理大臣は、」つまり金融担当大臣は、「次に掲げる要件のすべてに該当する場合に限り、」と書いてあるんですよ。「限り、第一項の申込みに係る第一号措置を行うべき旨の決定をするものとする。」と書いてある。「限り、」ですよ。
 それで、その三項の二号には「次に掲げる方策の実行が見込まれること。」、イ、経営合理化方策、ロ、経営責任の明確化、ハ、株主責任の明確化の方策と書いてあるじゃないですか。
 では、株主責任の明確化の方策が、その実行が見込まれることがちゃんとできる場合に限らないで、一号措置、資本注入が何でできるんですか。どこに、早々と、減資をしないでもいいとかなんとか、記者会見でぺらぺら言えるんですか。法律違反だよ、そんなのは。
竹中国務大臣 今、第百五条の第三項、お読みいただきました。そのとおりです。これが必要条件になっているわけですね。それで、株主責任を明確化する。
 これを受けて、預金保険法施行令第二十五条というのがございまして、この百五条第二項に規定する政令で定める方針は次に掲げる方策とすると、具体的に、この株主責任の明確化の方策は何かということを書いております。それによると、「配当等により利益が流出しないための方策」、つまり、この場合の想定されている株主責任というのは、配当の抑制であるというふうに書いているわけでございます。
 それで、一連の仙谷委員いろいろお話しになったのを伺っていますと、要するに、これは実質強制減資を求めて、それで、恐らく想定しているのは、かつての長銀のような、そういう形に近いのかと。つまり国有化ですね。これは、預金保険法百二条の第三号です。三号を適用しろというふうに言っておられるのか、しかし三号というのは、これは、破綻してかつ債務超過になっている銀行ですから、そういう状況には今ないわけですから、それは法律的には、今の状況を受ける限り、百二条の一号を適用するというのが今の法律の枠組みの中で可能な方法なのだというふうに私は理解をしております。
 それで、減資を求めないというのは、つまり、記者会見で申し上げたのは、長銀のときのように、自分が持っている株が取り上げられてゼロになってしまう、そういうふうにもし株主が思ったら、「りそな」の株が投げ売られるではないか、そういう誤解を与えないために、いわゆる株主責任としての減資、株式を取り上げるとか、そういうことはやらないというふうに申し上げたわけで、これは当然のことながら、この百五条、御指摘の第三項に基づいて株主責任は明確にしていくわけでありますが、それはこの政令を受けて、まず配当を抑制、それによって責任を求めていく、これが法律のつくりでございます。
 そのほかに、現実にはダイリューションが起こるかもしれない。さまざまな問題が考えられると思いますけれども、そうした形での株主の責任の明確化というのが実行されていく。実は、今の法律のつくりが、今申し上げたような仕組みになっているということでございます。
仙谷委員 いやいや、そういうこともできるかもわからぬけれども、減資したって全然悪くないじゃないですか。百六条に書いてあるじゃないですか。何で減資しちゃいかぬのですか。あなた方が、減資じゃなくて、そういう生ぬるい、株主に甘いことを選択しようと思ったら、政治責任でできないことはないよ、それは。政治責任とってくださいよ、そのかわり。冗談じゃないよ。今、マーケットの中で一株どのぐらいの値打ちと思われているか知っていますか。二十八円じゃないですか。それに見合うだけ減資してもらわなければ、国民は救われない。
 それで、一時国有化の話をされたけれども、こんな大部分普通株を取得すれば、発行済み株式のうちの国の保有が五〇%を超え、七〇%を超え、九〇%になんなんとするような普通株の保有の仕方をするような資本注入であれば、私は、ちゃんと対価なく、先ほど申し上げたようにTOBをかけるか、あるいは、対価なくちゃんと破綻認定をして一時国有化した方が早いと思いますよ。きれいに整理できると思いますよ。
 それで、先ほど申し上げたように、ちゃんと、グッドバンクは早々と株建てして、マーケットで売ってしまうぐらいのことをやった方が簡単です。簡単だし、お金を貸す銀行ができる。幾らこんなことをやっても、毎年毎年業務純益が全部不良債権処理に取られてしまうような銀行が十も二十もあっても、どこにも貸し越し残高がふえてないじゃないですか。毎年二十兆円ずつ貸し越しが収縮しているんですよ、今。このことに思いをいたさないと。金融仲介機能、信用創造機能をどうやってつくるのか、そのために金融庁はどういうポリシーのもとにどういうメスの入れ方をするのかというのが問われていたんじゃないですか。中途半端なことばかり幾らやったってだめですよ。
 やるべきことは、原則に従って、資本主義の原則、マーケットの原則、資本充実の原則、真実性の原則、あらゆるところにプリンシプルがあるんだから、それをごまかすようなことばかりやって、持ち合い株の反対の株式所有者のことをおもんぱかってかなんか知らぬけれども、そういうことをやるから、いつまでたっても病気が悪化するだけでよくならないんじゃないですか。みんなうなずいてるじゃないですか、自民党の人も。
 私はいいかげんなことをやれと言っているんじゃないんですよ。当たり前のことを素直に法律解釈して、金融庁の連中がどこでこんな政令をつくったのか知らぬけれども、国会にも提出しない政令を勝手につくって、やみからやみへ何かうまく、減資をしないでも配当しなければ株主責任を問うたなんて、冗談じゃないですよ。そんなことをやられたんじゃ、税金を使われる方はたまらないということを先ほどから申し上げているわけです。
 これは本当に竹中さん、早々と減資をやらないなんということをおっしゃっているんだけれども、これは考え直してください。こんなことを、我々にちゃんとした数字も見せない前に、減資をやらない。
 それで、私が申し上げたように、四百六十億株分なんですよ、二兆三千億というのは。これも、ちゃんとあなた方がリスクアセットの金額をここに出していればすぐわかる金額ですよ。二十七、八兆円のリスクアセットがある、八%相当分は二兆三千億だ、極めて単純な割り算じゃないですか。そういう児戯にも似たことで、わざとそれを新聞社にリークして、二兆三千億もかかるんだ、二兆三千億かければうまくいくんだみたいな話をあおり立てているけれども、今までのこの五年間、少なくとも五年間の経験からいくと、全く、やり方といい、何といい、そのときは新聞では何かうまくいくように、これで日本の金融機関は金融機能は再生されるみたいなことを言って、全部反対じゃないですか。
 幸い私がこの七年間議席を引き続いて持っておるからこうやってわかるけれども、一遍でも落ちておったら、ああもう仙谷もいないから何やっても自由だみたいな話になるんじゃないですか。ここは本当に、減資の問題を含めて、ちゃんとした原則に従って処理をしてくださいよ。
 別に、幾らつぎ込むか、その金額についてまだ我々は知らされていませんし、まだ決まってないと言っている。金額が大きかろうと少なかろうと、危機をちゃんと封じ込めて、さっき申し上げたように、金融機関が金融機関としてお金を貸せるようになる、リスクマネーを貸せるようになる、そのためにはどうしたらいいのか。
 そのために最も少ない金額でやれれば一番いいけれども、それはしかるべき金額がかかるだろうということを、あなたは五年も前から認めておるじゃないですか、その点は。
 七十兆に賛成したのは、菅直人と私が泥をかぶって言ったんですよ、あのとき。本当ですよ。世間からどれだけ非難を浴びたか。必要なものは必要なんだという、そのぐらいの構えは私もありますから。どうですか、ちゃんとやってください、ちゃんと。
竹中国務大臣 九八年ごろ、九九年ごろ、私は当時学者でありましたが、まさにこの問題を仙谷先生と一緒に、この問題の解決策はどうあるべきかということを議論させていただきました。よく記憶しております。
 今先生幾つかのことをおっしゃいました。原則に忠実であるべきだ、全くそのとおりだと思います。我々はこの半年間、今までの公的資金注入の点で、改めるところは改めよう、その上で、原則に忠実に、今度こそ不良債権問題を終結させるということで金融再生プログラムをつくりました。私は、金融再生プログラムのつくり方というのは、非常に原則に忠実に行ったつもりでございます。
 もちろん、その過程で、法律、制度の不備がまだあるかもしれない、その不備は不備としてしっかりと変えていこう、少し時間がかかるかもしれないけれども変えていこう。繰り延べ税金資産のあり方に関してはワーキンググループをつくった。さらには、新たな公的資金の枠組みが必要かどうかということについても、その議論を今進めて、間もなく結論を出す。その意味では、原則に忠実に、いろいろな制度を整えながら、かつ金融再生プログラムにのっとってこの事態の改善を図りたいと思っているところでございます。
 しかし、今回の措置は、預金保険法百二条の、何度も申し上げますが、第一号の事例です。第二号、第三号を適用するような状況にはない、このように判断される。第一号にのっとって我々は今処理をしているわけでございます。
 繰り返し言いますが、公的資金の入れ方そのものが今のままで、枠組みだけでよいのかという問題は、これは問題意識を持って金融審等々でも議論をさせていただいております。その意味では、原則にのっとって、我々は引き続きしっかりやっていくつもりでございますので、その点について、大いに御指摘もいただきたいと思いますが、御理解もいただきたいと思います。
仙谷委員 時間が参りましたので終わりますが、また引き続いてこの問題は議論させていただきます。
小坂委員長 次に、東祥三君。
東(祥)委員 自由党の東祥三でございます。
 塩川財務大臣、そしてまた竹中金融担当大臣並びに副大臣の皆さん、初めて財務金融委員会で質問に立たせていただきますけれども、本日ずっとテレビを見ておりました。基本的には、多分多くのテレビを見ている――放映されていませんから、ここでの議論を聞いていて、何が問題なのか、そしてまた、政府当局は実経済を行っている方々の気持ちを本当にわかってくれているのか。難しい専門用語が飛んでいきますから、そういう中で、何を金融当局はやろうとしているのかわからないんじゃないのか。
 とりわけ、余りにもでかい額で、二兆円、二兆三千億円、こういう話でありますから、財務大臣、二兆円というお金は見たことあるんですかね、金融担当大臣である竹中さんも。北朝鮮のGDPが一兆五千億円あるいは二兆円と言われている。一国ですよ。そのお金を、事も簡単に、情報開示をしないままに注入するという感覚それ自体、また、それを、本来ここで議論しなければならないにもかかわらず、先ほどの仙谷議員のお話を聞いていてもわかるとおり、ちゃんとした情報が開示されていない。めちゃくちゃなんじゃないのかというふうに、素朴に私は印象として持たせていただきました。
 我が自由党には、この金融委員会に中塚さん、プロフェッショナルでありますが、また経済、金融のプロフェッショナルである鈴木淑夫先生もいらっしゃいますが、彼が指摘しているとおり、今回のこの問題の本質は何なのか。それはまさに、小泉政権の金融改革というものが既に破綻していることを端的に示す事例じゃないのか。
 なぜならば、不良債権処理、あるいはまた自己資本比率の維持、銀行経営の合理化という三つの目的が今のデフレ経済下において相互矛盾を来していることは、すべてのここにいらっしゃる方々はみんな知っているんじゃないのか。知っていた上で議論しているんですよ、多分。
 にもかかわらず、小泉政権は需要喚起政策というのを一切とらない。デフレを進行させてしまっている。この政策の誤りが、大手銀行の中で最も弱い、みんな知っていた、「りそな」を直撃したと言わざるを得ない。この問題はこれで終わるはずがない。今竹中大臣のお話をずっと聞いておりましたけれども、何ら説得力なくて、またこの問題がどこかに波及していくな、みんなそういう不安に陥ってきているんじゃないのか、このように思います。
 他方、「りそな」は、大手銀行の中では、従来からリテール部門に活路を見出そうとしておりました。最近では、海外部門から撤退して、国内の個人や中小企業向けに特化しつつあったと言われているわけであります。関東を地盤とする旧あさひと関西を地盤とする旧大和が一つのグループを形成して、まさに日本全国をカバーする巨大な、強いて言えば庶民銀行、あるいはまた大衆銀行が誕生したそのわずか二カ月後にこの事態に立ち至ってしまった、こういう認識を私は持っているわけであります。
 小泉政権は、金融システムの維持、安定をうたいながら、情報の開示はおくれにおくれて、国民はいつも、情報開示されていませんから、不安に駆られてしまっているんではないのか。
 そしてまた、金融当局は現場を全然知らない。金融当局は常に大手ばかりを視野に置いて方針を打ち出すだけで、地域に密着した中小の金融機関は悲鳴を上げている。そして、ついに大手の一角にも破綻の危機が表面化してしまったということなんじゃないのか。日本の経済を支える九八%の中小零細企業、この企業は、一体どこに自分たちは頼っていったらいいのか、そういう悲痛な叫びがある意味で聞こえてくると言っても過言ではない。
 財務大臣、今の小泉政権は中小零細企業を破綻させようとしているんですか、もう死んでしまえというふうに言っているんですか。それだったならば筋は筋として、いい悪いは別として、通りますよ。しかし、それを、そうじゃないんだと。竹中さん、答えてください。
 竹中さんに聞きたいですけれども、今回、資本注入をすることによって、いわゆる貸し渋り、貸しはがし、これは解消されるというニュアンスのことを言われていますけれども、金融当局に現場を知っている人はいるんですか。地域に密着した金融機関をばたばたと倒しておいて、だれがそのようなことをできるんですか、ノウハウ持っているんですか、不可能じゃないですか。この点についてまずお聞きしたいというふうに思います。
塩川国務大臣 後で金融担当大臣、お答えがあると思いますけれども、現在、小泉政権が中小企業を無視してきた、あるいは少なくとも中小企業に対して対策を講じなかったということは、それはちょっと私は認識を改めてもらいたいと思っておるんです。
 といいますことは、かなりな措置はしてまいりましたし、特に、二年前に特別融資制度を発足させまして、二十七兆円の特別融資をして、非常に中小企業の救済に役立ったということもございますし、いずれの予算のときにも、あるいは補正予算のときには必ず中小企業に対するセーフティーネットを講じてきております。
 したがって、企業全体を見ました場合に、いい中小企業と、立ち直りがおくれておる中小企業との間に歴然と、だんだんと差がついてきた。いい中小企業は、活力のある中小企業は、いわばグローバリゼーションの波に乗りまして相当な活力を持ってきておりますけれども、それに乗り切れない、いわば転換しにくい業種に属しておる中小企業は非常に苦しんでおることは承知しておりまして、その面に対するセーフティーネットを今後とも十分にしていかなきゃならぬと思っております。
 「りそな」は、私も大阪でございまして、いわばなじみの非常に深い銀行でございまして、中小企業には本当に一生懸命やっておる銀行でございますけれども、なかなかいわば利益を上げる体質にない、私はそういうふうに前から思っておったんです。それは何かというと、小口金融というものに徹しておることと、それからなかなか不良債権の処理が大和銀行の中でも進んでいなかったんではないかなと思ったりしておりまして、利益を上げる体質になっていないなということが、今回、自己資本の比率のこういうところに出てきたのかなと思ったりしております。
 しかし、あの銀行の行風を見ましたら、私は、必ず立ち直っていくし、そしてまた立ち直ったら、必ず中小企業を重点に置いた銀行として、それだけの地域性の貢献をしてくれるところだと思っておりまして、そこを一途に期待をし、我々も応援していきたい、こう思っております。
竹中国務大臣 中小企業をどのように位置づけているかと。
 私自身も関西の地方都市で中小企業の息子として生まれて、銀行とのやりとりをずっと見てきております。金融を担当するようになってから、実は、いわゆるグローバルバンキングとは違う、地域に根差した、中小企業を対象としたリレーションシップバンキングのあり方について、むしろ別の視点から新しい取り組みを行おうというふうに申し上げまして、金融庁の対応そのものも、地域、中小に根差した新しい方向を目指して、かなりかじを切ったつもりでございます。ぜひ、これはこれでしっかりと成果を出していきたいというふうに思っているところであります。
 貸し出しが本当に行われているのか、貸し出しの実務を知っているのかと。
 これは、もちろん当局として知り得ることと知り得ないことがあるんだと思いますが、今財務局等々の連携も密接にとりながら、かつ金融庁の中にも、検査等々に民間の専門家、民間人も入れて人の風通しもよくしながら、そういった情報に対して敏感であるように日々努力をしているつもりでございます。
 一番最初に東委員が指摘された、デフレ状況の中で、マクロ的な中での今回の金融の再生という、大変難しい状況であることは認識をしております。しかし、一方で財政の赤字が拡大しているという制約の中で、非常に狭い道を追求しながら、しかし、マクロ的な環境の好転と、ミクロでいいますと企業の再生、不良債権の処理というものの同時解決を図るために努力をしているつもりでございます。
東(祥)委員 竹中大臣、言葉ではおっしゃっているんですよ、いつも。新しい関係をつくり上げていく、それは言葉ではいいんですよ。しかし、これまでに六十数行に及ぶ地域の金融機関を破綻させてきたんでしょう。地域のことを一番わかっているのはどこなのかといえば、その人たちでしょう。今の金融当局にそういうことがわかっている人たちはいるんですか。個々の問題をすべてわかった上で、この人は将来間違いなく、ある意味で第二の松下をつくれるかどうか、そういうことを判定できる人はいるんですか。
 よく日本はベンチャー企業が成り立たないというふうに言っていますけれども、今の日本の大手の企業は全部ベンチャーだったんじゃないんですか。しかし、それを見事に今の小泉政権は全部つぶしているんでしょう。どうするんですか。資本注入二兆円強をやって、どのようにして地域に密着した金融方向を目指すことができるんですか。どういうノウハウなんですか。
 竹中さん、それを明確に言わない限り、言葉だけで言っていたとしてもだめですよ。六十数行をつぶしておいて、国のお金を十兆円以上つぎ込んじゃっているんでしょう。それはもう回収できない問題でしょう。つぶしているんですよ、人材を。でも、それにかわるものを具体的に示さない限り、中小零細企業の人たちはどこに頼ったらいいかわからない。それに対して答えをくれと言っているんですよ。その答えを出してください。
竹中国務大臣 定期預金に関するペイオフ解禁の前の時期に、信組を中心に破綻等々が相次いだということは事実でございます。
 先ほど申し上げた、新たな地域の金融に根差したリレーションシップバンキングのあり方、これについて新たな取り組みをする。これはどういう新たな取り組みかというのは、中身は非常に細かいですから今は申し上げませんが、そうした問題意識というのは、まさにそういう地域の金融機関が破綻したりしないように、新たな地域に密着したビジネスを前向きに展開していただけるように政策当局としても努力をする、そういう意思で幾つかのプログラムを用意したわけであります。
 今回の「りそな」については、これはまさに「りそな」が、先ほどから破綻とかいう言葉も出ておりますが、「りそな」は破綻させてはいけないわけですね。その意味では、地域にしっかりと根差して融資を活動してもらえる、その融資のノウハウとか地元の経営者のノウハウというのは、これはまさに銀行、しかもその支店の最前線の人しか持っていないわけですから、その資源が散逸しないように、「りそな」は「りそな」としてしっかりと地域に根差した営業ができるように、今回しっかりとした資本の注入を行うわけです。
 これは、まさに今委員がおっしゃったような問題を防ぐために今回の措置をとっている。しかも、かなり大きな金額を入れることによって、自己資本比率のことを余り心配しないでどんどん貸し付けていけるような環境を財務面からつくって保証したいという思いが、答申された一〇%を上回る自己資本比率を保証するという中に示されているわけです。これは我々の、決して言葉ではなくて、一つの行動だと思っておりますので。
 しかし、後は経営がやはりしっかりして、本当にやる気と能力のある中小企業にお金が回るような、そういう社内の体制をつくり、そういう意思決定をしてもらうことですから、我々としては、そうしたことが可能になるようなしっかりとしたガバナンスの構築を行わせたいというふうに思っております。
    〔委員長退席、渡辺(喜)委員長代理着席〕
東(祥)委員 なぜ中小零細企業の経営者たちは地域の金融機関を頼らざるを得なかったのか。大手の金融機関が相手にしてくれないからでしょう。
 大手の金融機関は、竹中さん御存じのとおり、地域に密着していませんから。少なくとも、いわゆるグローバリゼーション化の中で一つのルールに基づいて、要するに現場の人と接触するのではなくて、データでもって判断して、そこで切っていくわけでしょう。それを基本的に中小零細の金融機関にも当てはめたのは政府それ自体でしょう。どうすればいいんですか。
 現場で働いている人が中小零細企業の実情をよく知っていて、その人の過去の経歴まで全部知っていて、そして本部に持ち上げたとしても、現場で知っているその情報を加味して、よし、それでいこうと。それは決断しかないんじゃないですか。でも、その土台になる部分を竹中さん、あなたは全部切り崩してきたんですよ。
 だから、それをどういうふうにするんですかということに対して答えが出ない限り、あなたがやっていることは、これから二兆数千億円の資本注入に対して、自分が責任を持つと言うならば、それは迫力が出てきますよ。そんな覚悟もないままに、それは言えることじゃないのだろう。それほど厳しいんですよ。だから、きょうはあえて、中小零細企業の問題を取り上げていかない限り、日本経済というのは立ち上がっていかないと。
 さらにまた、それがよって立っていた地域金融機関は、破綻された後どうなっているのか。金融機関が破綻した後、私は専門家ではありませんけれども、基本的には金融庁の大臣が総理大臣から委託されて管財人を任命しますね。そして、破綻した金融機関が受け皿銀行に営業が譲渡されていく過程までの間、管財人がその問題を処理するわけですね。そして、健全な債権が譲渡された後、いわゆる残った不良債権、これをどのように回収したらいいのかということでRCCが出てくるわけでしょう。乱暴な言い方をして申しわけありませんが、そういう意味で、きょうもRCCの社長にも来ていただいているわけですけれども。
 そういう、まさに金融機関が破綻したときに、一番困るのが中小零細企業ですよ。新たな受け皿銀行ができるまで一体どうしたらいいのか、そこの問題ですよ。それに対して竹中大臣、あなたはどのような配慮をしているんですか。小泉政権としてどのような考えをしているんですか。どういう方針に基づいてやろうとしているんですか。その答えが出てこない限り、中小零細企業の方々は安心できないんですよ。それがあるならば教えてもらいたい。ないならばないと、そういうことを明確に言っていくべきですよ。
竹中国務大臣 金融行政全般に対する御批判であろうかと思います。
 私自身は、七カ月前に金融担当大臣に就任させていただいたわけでございますけれども、それ以降、実は御指摘のような中小の金融機関の破綻というのは起こってはおりません。ただし、ペイオフの解禁の前の時期に中小の金融機関の破綻が相次いだというのは、これは御指摘のとおりの事実でございます。
 私としては、であるからこそ、こうした中小金融機関が破綻するようなことにならないような新たな、委員御指摘のように、これは計数ではないわけですよね。この経営者について、貸し付け担当者がどういう情報を持っているか、極めてその人柄とか間柄ですね。だから、リレーションシップバンキングというふうにさっき申し上げましたけれども、その間柄を重視した経営ができるような一つのジャンルをきちっと確立して、そのために金融庁としてどういうことができるかということをリストアップしていったわけでございます。
 繰り返しますが、ちょっと細かいことを随分我々としても今準備しております。それについての説明は詳細にいたしませんが、そのリレーションシップバンキングの中で、ないしは、私が大臣に就任してからここで通させていただいたものでありますけれども、財務基盤を強化するための再編の特措法等々で、必要であるならば公的な資金も入れて基盤を強化して、その地域への金融が滞らないようにする。そういうような中で、その地域への金融が回るような仕組みを我々なりにつくっていっているつもりであります。
 さらには、しかしそれでも、銀行の貸し出し全体がバブルの時期に膨らんでから、かつての水準に向かって減っていっているというマクロ的な環境があります。同時に、したがって、それに対しては、いわゆる政府が直接乗り出したセーフティーネットも当然のことながら必要になる。セーフティーネットの保証、セーフティーネット貸し付け、これは塩川大臣が先ほどお話を少しされましたけれども、そういったものも用意する。総合的に中小企業に対する金融が円滑に進むように、そういった政策を組み合わせて提供しているわけでございます。
東(祥)委員 きょうは、もう五分しかなくなってしまったんですが、要するに、多分、個別具体的な形で議論していかないと、何が何だかわからなくなってしまうんだろうというふうに思うんですね。
 僕は江東区という下町に住んでおります。御案内の、極めて地域に密着した信用組合が強制破綻されたと一方で言い、一方においては、強制破綻してしまった。中小零細企業は嘆き苦しみ、さらにまた自殺者数も大変ふえているところであります。
 そういう状況の中で、まずRCCという、いわゆる不良債権を回収していく、それは最大の株主が預金保険機構というところにあって、何でこれが株式会社なのか私はよくわからないんですけれども、すべて国丸抱えでもって回収機構が存在する。まず、そこの、これまでに投入してきた資金額は一体どれだけあるのか。そして、それに基づいてRCCが買い取った物件、いわゆる債権をさらに売却したり、さらに別の処理をすることによってどれだけ回収されてきたのか。全部ある意味で国の金ですよね。
 そして、それが出てくるまでの間、いわゆる金融整理管財人というのが、先ほど申し上げましたとおり、預保法の七十四条ですか、そこで総理大臣の任命のもとに整理管財人というのが存在する。実質的には総理大臣が任命することはできないわけでありますから、それを金融担当大臣が委託されて、金融機関が破綻した場合の金融整理管財人を任命する、こういうふうに理解していいですか。
西原政府参考人 お答え申し上げます。
 金融整理管財人はだれが任命するのかと、任命権者のお話でございますが、預金保険法によりますと、先生御指摘のとおり、七十四条でございますが、金融庁の長官が金融整理管財人を選任しなければならない、こうされております。これは、内閣総理大臣権限が金融庁長官に法定委任をされております。
 そういうことで、金融機関が債務超過等の所定の要件に該当する場合には、当該機関に対し金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分を行うことができることとされておりますが、管理を命ずる処分と同時に、金融整理管財人を選任しなければならない、こうされております。
東(祥)委員 竹中大臣は、金融庁長官が最終的に総理大臣の任をかわって選ぶ過程に入るんだろうと思うんですが、その選んだ後、その報告というのは受けるんですか。――受けていないね、聞いているんだから。
竹中国務大臣 法律上の手続については、今私に法律的な権限があるわけではありません。ただ、私は担当大臣ですから、必要に応じて、重要なことは常に報告を受けて判断していくということにはなります。
東(祥)委員 でも、大臣、もう時間が来たからやめますけれども、先ほどから大臣が言っている、地域に密着した形で中小零細企業のことを考えているとするならば、金融機関が破綻して打撃を受ける極めて重要な部分というのは中小零細企業ですよ。中小零細企業が金融機関が破綻した後どうなるのかというところに思いをいたさなくちゃ、竹中大臣の仕事は務まりませんよ。それを受け皿銀行ができるまで担っていくのは、それは管財人なんですよ。管財人がどういう資質で、どういうことをやっているのかということを竹中大臣が知らない限り、先ほど言っていることはただ言っているにすぎないという話になってしまうのではないのか、こういうふうに申し上げているんですよ。
渡辺(喜)委員長代理 竹中大臣、時間が来ておりますので、手短にお願いします。
竹中国務大臣 管財人の任命のときは、当然のことながら大臣に上がります。私になってからまだ破綻した例がありませんので、私はそういったことを認定したケースはございませんけれども、前任において、当然のことながら、担当大臣としてそういう責任が果たされていたというふうに思います。
東(祥)委員 時間が参りましたので、次の機会にこの続きをやらせていただきたいというふうに思います。
 ありがとうございます。
渡辺(喜)委員長代理 次に、佐々木憲昭君。
佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 まず、金融情勢の認識ということで、日銀総裁にお聞きをしたいと思います。
 りそな銀行がこういう状況になったということで、現在の金融情勢は大変厳しい局面にあるということは事実だと思うんですね。福井総裁は、今の金融情勢について、システミックリスクのふちに立っているというふうにごらんになっているのか、それとも、厳しい情勢だけれどもまだそのような危機的な状況には至っていないという認識なのか、お伺いをしたいと思います。
福井参考人 お答え申し上げます。
 非常に大きくとらえますと、日本の金融システム、かつての高度成長を支えた金融メカニズムから、これからの新しい時代、つまり、かつてのような高成長は期待できないけれども、イノベーションのスピードがうんと速い時代に適応しなければいけない新しい金融メカニズムへ移行のまさに途上にあるというふうに思います。
 その過程で非常に重要なことが起こっていまして、一つは土地神話の崩壊、かつて金融機関が土地を担保にさえとっていれば安全に融資ができるというシステムは過去のものになって、企業が新しい仕事にチャレンジしていく場合に、その企業価値とリスクというものをきちんと評価できる金融機関に変わっていかなきゃいけない。
 もう一つ重要なことは、株式の持ち合い構造が急速に崩れているということでありまして、これは将来に向かう正しい方向だと思うんですけれども、その過程では、株価の変動が金融機関の経営を大きく揺さぶる、こういう現象が起こっています。
 したがいまして、その株価変動のリスクを遮断しながら、不良債権の処理もやり、そして将来に向かって企業価値とリスクをきちんと評価できる経営体制を整えた金融機関に仕立て上げる、つまり、みずから変容を遂げていかなきゃいけない、そういう過程にあると思います。
 したがいまして、現在は、その過程において金融機関の体力が相当衰えてきている。しかし、金融機関自身も、それからこれをサポートしていく金融当局も、方向性はしっかり確認しながらその努力を進めているところでありますので、基本的に危機状況にあるとは思いません。
 しかし、金融機関が押しなべて共通の問題に苦しみ、そして程度の差はあれ、現在はやはり体力をかなり減退させている状況でありますので、問題の処理を誤ると、一つの問題が大きく不安感を呼んで、他の金融機関に波及しかねない状況というのは潜在的にいつもある。そういう意味では、潜在的な危機というもののリスクを常に含んでいる、そういう状況だというふうに思います。
佐々木(憲)委員 銀行は体力が衰えてきていて、危機的状況にあるとは言わないけれども、潜在的には危機と言ってもいいかもしれない、こういう答弁でありました。
 そこで、竹中大臣にお聞きしたいんですが、昨年の十月三十日の記者会見で、大臣は、預金保険法百二条についてこういうふうに言っておられますね。「これは、金融危機、広い意味でのシステミック・リスクが発生した場合の対応措置です」というふうに述べておられますし、また、昨年十一月十三日に、この委員会で私の質問にお答えになりまして、「現行の預金保険法百二条というのは、いわゆる危機を想定して、その危機時の対応の中で、危機宣言をした上で対応するということになっているわけでございます。」こういうふうに答弁をされています。
 そうしますと、今回のりそな銀行に対する措置は、危機時の対応の中で、危機宣言をした上での対応だ、こういうことになると思うわけですが、そうしますと、竹中大臣は、今回はシステミックリスクの中にあるという情勢認識だったというふうに見ていいわけですね。
竹中国務大臣 制度の御説明などを申し上げますときに、百二条は危機のときに発動するんだ、そういうほわっとしたといいますか、一般的な言い方をすることは確かにございますし、そういうことを今御引用してくださったんだと思います。しかし、これは言うまでもありませんが、条文そのものは、危機ないしは、それを放置する場合はそのおそれがある場合という場合でございます。
 今回の場合は、「りそな」自身に取りつけ騒ぎが起こっているとか、資本調達が難しくなっているとか、そういう意味での危機ではございませんが、このまま放置しておくとそういった信用秩序の崩壊につながりかねないおそれがあった、そういう認識のもとに今回金融危機対応会議を開いたものでございます。
佐々木(憲)委員 システミックリスクという問題について、何度もここで議論になったわけですが、三年前の国会で、当時の林芳正政務次官はこう言っているんですね。「ほかの金融機関の連鎖的な破綻が発生するような場合ですとか、連鎖的にほかの金融機関の資金繰りが困難になる場合、またあるいは大規模な貸し出し抑制や回収等資産の圧縮を進める動きが生じるようなおそれがある場合、」こう述べているわけです。
 また、当時の福田政府参考人は「ある金融機関の破綻または経営悪化によりまして連鎖的にほかの金融機関の資金繰りが困難となる場合がやはり該当すると思いますし、あるいは、ほかの金融機関の連鎖的な破綻あるいは大規模な貸し出し抑制、回収等、資産の圧縮を進める動きが生じるおそれがある場合」と答弁しているわけですね。
 今回は、こういう状況にあるほど、今の金融情勢は不安定化している、そういう認識だということですね。
竹中国務大臣 当時の林政務次官の御答弁は、例えばということで例示をされていたというふうに認識をしております。あらかじめこれと限定的に決めておくことは難しいんだということを先におっしゃった上で、例えばということで今おっしゃったようなことの御説明を林政務次官はなさっていると思います。
 御質問の件でございますが、今回の場合は、総資産規模四十兆円を超える銀行を自己資本比率二%程度で市場の中にさらす場合には、やはり信用秩序に重大な支障が生じるおそれがあるというふうに判断したわけでございます。
佐々木(憲)委員 例えばということは、極めて具体的な事例としてこれが起こるおそれがあると、具体的に述べているわけであります。
 この今回の発動は、百二条の規定からいいますと、私は、大変拡大解釈ではないかという感じを持っております。システミックリスクにつながるおそれがあるというのは、非常に危機的な、危機のふちに立っているというような状況でありまして、果たして今回はそういう状況だったのかどうか、これは大変疑問に思います。
 当時宮澤大蔵大臣は、この百二条についてこう言っているんですね。「このシステムの、この制度の意図するところは、いわゆる百二条の意図するところは、十年、二十年あるいは三十年に一遍でも起こっては困るような、そういうことを言っておるわけでありまして、」と答弁しているんです。二十年か三十年に一遍起こるかどうかわからないような大変まれな危機的状況、こういう状況に対応するものだというふうに答弁しているわけです。非常に狭いんです、これは。つまり、危機でないときには使わないという姿勢だったわけですね。
 ところが、あれからわずか二年ほどで、十年も二十年もたっていないわけでありまして、しかも今度は、危機ではないけれども未然に防ぐんだ、こういうことであります。これは、百二条にある「おそれがあると認めるとき」、この「おそれ」という条項を使って、さじかげん一つでどうにでも拡大解釈ができるような、そういう対応をしている。ですから、この委員会で危機的な状況に対応するんだというふうに提案されたこの法律を非常にいわば拡大解釈をして、危機ではない事前の段階で適用する。私は、これは非常にいいかげんな対応ではないかというふうに言わざるを得ないと思うんです。
 次に、今度の事態の直接の引き金を引いたと言われている監査法人の問題についてお聞きしたいと思うんです。
 金融再生プログラムの「繰延税金資産の合理性の確認」というところで、こういうふうに書いてあります。主要行を取り巻く「不確実性が大きいことを認識し、翌年度を超える将来時点の課税所得を見積もることが非常に難しいことを理解した上で、外部監査人に厳正な監査を求めるとともに、主要行の繰延税金資産が厳正に計上されているかを厳しく検査する。」これは、これまでとは違う、新しい厳しさをもって対応するんだ、こういうことであります。
 このもとで外部監査法人に繰り延べ税金資産についても厳正な監査を求めまして、その方針を受けて監査法人がりそな銀行をより厳格に監査をした、こういう経過であった。これは大臣、このとおりですね。
竹中国務大臣 まず、前半で御指摘になられた百二条の解釈でございますけれども、おそれがある場合ということでありますから、当然のことながら、幅がある問題であろうかと思います。しかし、我々の判断としまして、もしも四十兆円規模の銀行が二%になるまま市場に放置して、それで百二条を発動しなかったら、それは正しい判断と果たして言われたかということを考えますと、やはり私にはそうは思えないわけでございます。その意味では、ここは我々としては正しい判断を行ったつもりでございます。
 それと、繰り延べ税金資産の話でありますが、これは先ほども答弁させていただきましたように、過去の問題で改めるべきところは改めて、二年半後に不良債権問題を終結させる、そのために何をすべきかということの議論の中で、この繰り延べ税金資産という非常にわかりにくい問題に関して、何か明確な基準を設けたらどうかというような議論も出されたわけでございます。しかし、ルールを短期間に変えるということを結論するのはいかがなものかという議論が非常に幅広く出された。それで、この問題については引き続き専門家を集めて金融審で検討する。
 であるならば、当面は、今までルールがあるわけでありますから、そのルールどおりにやりましょうということを金融再生プログラムにうたっている。これはまさに厳正にやろうということでありますから、厳しくやる、厳格にと書いてあればこれは厳しくというようなニュアンスもあろうかと思いますが、ここは厳正にやるということを書いているわけでありますので、まさにルールどおりにしっかりとやりましょうということをそのプログラムには書かれているわけでございます。
    〔渡辺(喜)委員長代理退席、委員長着席〕
佐々木(憲)委員 百二条の問題については、今言われたように幅がある、そういう認識が問題なわけですよ。この委員会ではそんな幅があるような話はなかったわけですから、この法律がつくられるときには。それをわざわざ幅がある解釈が可能なんだという、そこが私は問題だと言っているわけです。
 それで、外部監査人の監査の問題ですけれども、これは厳正にというわけでありますが、厳正にということは厳格な検査を行うということでありまして、何か厳正と厳格が違うかのようなことを言っていますけれども、より厳しくということは当然なことであります。大体、金融再生プログラムにも書いているわけです。主要行を取り巻く「不確実性が大きいことを認識し、翌年度を超える将来時点の課税所得を見積もることが非常に難しいことを理解した上で、外部監査人に厳正な監査を求める」と言っているわけです。
 つまり、金融再生プログラムに基づいて、今までのようなやり方ではなくて、より厳密に、より厳格に監査をやるんだ、それを公認会計士協会に求めているわけです。
 現に、公認会計士協会、二月二十五日の記者会見ありました。そこで発表された文章は、こういうふうに書いているんですね。「金融庁からの要請に基づき、」と。新たに金融庁が要請したわけです。「要請に基づき、「金融再生プログラム」で示されました金融機関の資産査定の厳格化に関する施策のうち、」ここでは「厳格化」とはっきり言っているんですね。「主要行において、暫定的に定められている一年基準及び三年基準について、米国等の扱い等を踏まえ検討を行ってまいりましたが、別紙のとおり、」「取りまとめましたので、お知らせいたします。」こういうふうに新しい方針が出されたと言われているわけです。
 それから、二月二十四日の会長通牒、公認会計士協会の会長の通達です。ここでは、金融再生プログラムに掲げられている「繰延税金資産の合理性の確認」と「外部監査人の機能」ということで、金融庁の要請を受けて、「主要行の財務諸表監査を担当する会員に対して、これらの諸点について、より一層の厳正さを求め、監査に当たり留意すべき点を明らかにするものである。」
 こういうことで、つまり、金融庁が要請をして、公認会計士協会がより一層厳格な監査を実施するということになった。こういう経過は極めて明確だと思うんですが、いかがですか。このとおりですね。
竹中国務大臣 繰り返し申し上げますが、私が申し上げたいのは、ルールそのものを変えたわけではないということですね。そのルールに関しては、公認会計士は常に厳しくこれを適用している。
 当面、ルールは変えないからそのルールどおりに、従来どおりですけれども、これは従来どおりのルールで厳しくやってもらいたいということを、これは金融再生プログラムにも書かれておりますし、それを受けて我々は、それをアクションプログラムといいますか、工程表に移していく段階で、これについては公認会計士協会の方でよろしく御対処いただきたい、これについては例えばRCCについて御対処いただきたい、その工程表をつくりましたから、それに基づいてそのようなお願いを公認会計士協会にしたということでございます。
佐々木(憲)委員 私は、ルールを変えたと言っているんじゃないんです。ルールを変えないままに、金融再生プログラムの中で、それを厳正に厳格に適用するんだよ、今までのような適用はだめなんだよ、簡単に言うとそういうことを決めて、そして公認会計士協会にそれを要請し、公認会計士協会はそれを受けて、そして今まで以上の厳格な監査をやります、通達を出す、方針を出す、それでやらせていった、こういうことになっているわけであります。だから、ルールは変えないけれども、運用を厳格にしたわけですよ、運用を。そのことによって、今までと違う監査結果が出た、こういうことなんですね。
 具体的に言いますと、繰り延べ税金資産をどこまで認めるかということに尽きるわけでありまして、五年を主張したりそな銀行と、三年しか認めない監査法人の間で激しい議論があった。結局、三年になった。そのために自己資本比率が大幅に低下した。自己資本比率低下の理由の七割が、繰り延べ税金資産の評価の厳格化によるものだった。自己資本比率が、三月には六%台前半だった、ところが五月十七日には二%台の前半になった。下落幅は四ポイントですね。このうち二・六ポイント、約七割が繰り延べ税金資産の厳格化、これが理由になっているわけです。これは事実ですね。
竹中国務大臣 三月の時点からの変更という意味でのお尋ねでございますけれども、六%台と予想されていたものが二%台になった、約四ポイントの低下、そのうち繰り延べ税金資産の評価に係るものが二・六、あと株価の下落等々で〇・四ポイント、御指摘のとおりでございます。
佐々木(憲)委員 今言われたように、繰り延べ税金資産の厳格化ということによって、自己資本比率のうちの七割が低下をする。それから、さらに、不良債権処理で〇・四ポイント、株安による影響が〇・四ポイントであります。
 つまり、一つは経済情勢が悪化して、りそな銀行の経営困難を引き起こしたということは、これは外側の要因として、つまり、外側といいましても、これまでの小泉内閣の経済政策の結果でありますけれども、ともかくそういう形で経済的圧力が加わった。
 もっと言いますと、小泉内閣の経済政策は、不良債権の早期最終処理というものを期限を切って強引に進めてきているわけです。そのために倒産と失業が増大する。政府も、不良債権処理はデフレ要因だというのは認めているわけであります。その上で、ことしから来年にかけて四兆四千億円の負担増、これを国民に押しつける。小泉総理も、この数字はそのとおりですと認めているわけです。
 こういう形で小泉内閣の政策がデフレを加速させているということははっきりしているわけですね。そのことが銀行経営を困難にした一つの要因になっている、このことはお認めになりますね。
竹中国務大臣 先ほどの「りそな」で数字が出ておりますので、その例で申し上げさせていただきますと、六%台が二%台になった、その中でデフレに直接絡む要因、株価の下落という要因がございますが、四%低下のうち、株価の下落要因というのは確かにありますが、数字は〇・四%でございます。その意味では、その要因はあることはもちろんあるわけですけれども、今回の「りそな」の問題に関して決定的であったというふうには思えない。
 今回の場合は、あくまでも繰り延べ税金資産に関する公認会計士の評価の変化ということにあると思います。しかし、マクロ的な要因が重要であるということはもちろん私は否定をいたしません。マクロ経済の安定によって不良債権処理も進む。しかし、不良債権処理が進まないとマクロが安定しないという難しい関係にあるというのが今の現状であろうかと思います。
 今、四兆円を超える負担増の話もございましたが、そういった意味では、負担増を解消するという意味も含めて、マクロでバランスさせるために、昨年度末の補正予算及び先行減税等々を実施しておりまして、マクロのバランス維持には我々としては細心の注意を払ってこれを運営しているつもりでございます。
佐々木(憲)委員 マクロのバランスを図っていると言いますけれども、実際上、国民の消費生活にかかわる部分はどんどん負担がふえているわけです。あるいは、リストラが進んで労働者の所得が大幅に減っている。雇用不安が広がり、失業がふえている。そういう状況が現実に進んでいるわけです。そういう状況をつくってきたのは、政府のまさに構造改革路線と言われるこのやり方なんですよ。
 ですから、先ほど「りそな」の問題で数字をおっしゃいました。〇・四ポイントというのは大きくないと言いました。しかし、〇・四ポイントというのは、一割あるわけです。不良債権処理要因がさらに一割あるわけです。合わせて二割なんですよ。つまり、資産査定の厳格化、繰り延べ税金資産の評価を厳しくしたということと、これを合わせて六%台から二%台に減ったわけですから、まさに金融再生プログラムで述べていますように、主要行を取り巻く「不確実性が大きいことを認識し、」と言いますが、不確実性をつくり出したのは政府の政策なんです。「翌年度を超える将来時点の課税所得を見積もることが非常に難しい」、こういうふうに言っているわけですけれども、そういう状態をつくったのは政府の責任なんですよ。
 主要行を取り巻くこういう状況をみずからつくっておいて、そして今度は、内部の経営の実態について査定をさらに厳しくする。こうなってきますと、銀行は、政府によって外側から追い込まれ、そしてまた、状況が悪化したらその悪化した以上に査定を厳しくする、両面から追い込まれていく。
 だから、政府のやり方というのは、これは銀行の経営を回復させるんじゃなくて、まさに銀行の経営を非常に困難にさせ、金融そのものの破壊を促進することになるというのが我々の見方でありまして、どうもその辺が全く発想が逆転していると思うんです。
 ですから、私は、不良債権処理をやり、銀行を厳しくしたら、ますます日本経済がおかしくなって奈落の底に沈むような状況になってくるということなので、この点の根本的な転換を、もう時間が来ちゃいましたけれども、要請しまして、質問は終わらせていただきます。
小坂委員長 次に、植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。
 まず、竹中担当大臣に伺いますが、今回の公的資金の投入については、竹中大臣なりには、とりたてて、不測の事態であるとか緊急事態が起こったなどというふうには考えておられないと。私は、危機であるかないかということを問おうとしているのではなくして、竹中大臣が思い描かれているところの不良債権処理の加速策の、その一つの範疇の中に今回のような事態というものは当然入っておった、織り込み済みの話であったと。これは、「りそな」のことが織り込み済みだったかどうかということを問おうとしているのではありません。そうした事態が起こるというのは織り込み済みであったので、その意味で、竹中大臣としては非常に平静でいらっしゃるというふうに御理解をさせていただいて結構でしょうか。
竹中国務大臣 決してこうした事態を具体的に想定していたわけではありませんし、それゆえに、決して冷静でいるわけではありません。
 先ほどから申し上げていますように、日本の金融システムは、取りつけ騒ぎ等々の意味での危機的な状況ではありませんが、決して健全な状況ではない。福井総裁の言葉をかりれば、非常に脆弱な基盤の上にあるというふうに私もずっと認識をしております。だから、それを直すために、しかも、今度こそこの問題を終結させるために金融再生プログラムを作成したわけでございます。
 我々としては、金融再生プログラムをつくる段階で、したがって自己資本の充実も図らなければいけない、そうした過程でもしも問題が起きたときは、この百二条の発動、それによって特別支援の枠組みをつくっておいて、事態がうまく収束するように持っていきたい、そういうことで幾つかのあらゆる可能性を考えてあの再生プログラムをつくっております。
 その意味では、可能性としては否定していたわけではございませんが、決して、具体的に想定をしていたということでもございません。
植田委員 具体的にどんな事態を想定していたのかどうかということを私は別に問わないですよと申し上げておりましたので。要するに、竹中大臣の構想の範疇の中にそういう可能性に対する対応も入っておったわけですから、容易にこうしたことが想像できたでしょうというだけの話をしただけなんですよ。
 むしろ私は、こうした事態になって、まさに竹中大臣がやろうとしているいわば実験台のようなものができて、そこで大なたを振るうことができるという、恐らくやる気満々だろうと思いますので、御同慶の至りですという思いで冒頭聞かせていただいたわけでございます。何か首を横に振っておられますけれども、金融再生プログラムやもともと竹中プランを見ていたら、大体こういうところに追い込まれていくというのは想定されるわけです。それはもうこれ以上しつこく言いません。
 ただ、実際に、例えばこれから、これも具体的に想定しているんですかということを聞くわけじゃありません、次にどこが危ないとか。ただ、やはり、今回のこうしたいわば「りそな」ショックの影響が、例えば九月の中間決算あたりで出てくるかもしれないという可能性については、当然否定できないですね、竹中大臣。
竹中国務大臣 今回は繰り延べ税金資産の話が直接的なきっかけでありますけれども、これについては各行が公認会計士の実務指針にのっとって処理を行って、監査法人がそれを厳正に監査する、そうしたことは現状において各行において適切に対応される、今後とも対応されていくというふうに私は承知しております。
 これが今後、九月の決算がどうなるかということは、これはまさに新年度が始まったばかりでありまして、その中で、銀行は銀行でしっかりと経営改革をしてその体制を整えていくであろう、収益力も向上させていくであろう。したがって、今の時点ではお答えのしようもございませんけれども、しっかりとぜひ対応していただきたいというふうに思っております。
植田委員 というのは、なぜそういうことを聞いたかといいますと、今おっしゃったように、今回の直接的な要因が繰り延べ税金資産の厳格化ということになるわけでございますが、そうなると、それは何もりそなグループ固有の問題というよりも、例えば今回の監査法人が「りそな」に示した、収益見通しが不確実性だ、その根拠は、例えば赤字・無配が続いておるとか、不良債権の処理損失が予想より拡大したとか、株安で財務が不安定とかといったようなことは、多かれ少なかれ大手銀行も抱えておるでしょうと。だから、今の竹中大臣の話は、そんなことにならないように頑張りますという話でしたけれども、頑張らなきゃならない不安は蔓延していますねということを私は伺っているんです。いかがですか。
竹中国務大臣 日本の金融の状況が非常に脆弱な基盤にあるということは、私も日銀総裁もお答えしております。しかし、それに向かって、金融再生プログラムで今しっかりと強化をしてその問題を克服していこうというプロセス、我々もしっかりとやっておりますが、銀行も大変努力をしているというふうに思っております。そうした中で、こうした問題をしっかりと乗り越えていきたいというふうに思います。
植田委員 そこは、可能性が否定できない以上、決意を何度もお伺いすることにしかならないわけですけれども、各銀行も別に小泉内閣を長く繁栄させるために頑張っているわけじゃないので、幸い総裁に再選されても、九月にかかる危機が起こったりして解散ができなくなっちゃったりとか、そういう事態も想定されるように、九月はちょっと危ないよということを申し上げているわけでございます。現実に、今申し上げたような端的なところからもですね。
 そこで、実際、危機対応会議の記者会見でも、自己資本不足の銀行がほかにあるとは承知していないとお答えになっていたようですけれども、それは承知するまでは承知していないわけですから。例えば「りそな」の件かて、内々聞いていたというのがいつであったかは別にしても、少なくともここで答弁されるに当たって、いつの段階で聞いたかという日にちをもし聞いたとしたら、かなり押し迫ってからの話になるかと思いますので、先ほど二回ほど答弁を伺いましたけれども、ゆめゆめお忘れなきようにお願いしたいと思うんです。
 あと何点か、簡単なことを伺いたいんですが、今回、公的資金の注入に当たって、過去は議決権のない優先株の活用が中心であったわけですけれども、普通株での資金注入をやられるというふうに伺っておりますけれども、その場合の商法との兼ね合いについて、要は、新規の普通株発行が既存株数の三倍まで、この場合、実際、上限を超えるような状況になったときはどんな対応をされるのかということを一つ教えてください。
伊藤副大臣 お答えをさせていただきたいと思います。
 資本増強について、これからどのような株式の商品性をもって対応していくかということにつきましては、りそな銀行からの申し込みを受けて、精査した上で、後日決定をするものでありまして、現時点で確たることを申し上げられないことは御理解をいただきたいと思います。
 今委員から、商法上の制約があるではないかというお話がございました。今御指摘のとおり、新たに発行する株式数は既に発行している株の三倍以内であるとか、あるいは、資本増強後のいわゆる種類株、これは資本増強後の普通株の株数以下にしなければいけない、こうした制約要因がございます。
 そうしたことを踏まえて、私どもとしましては、十分な額の資本増強が可能で、なおかつ、ガバナンスの強化を図ることが可能になるような商品性というものを検討していきたいというふうに考えております。
植田委員 要は、上限を超えない範囲で最大限やりますという話ですね。
 次に、先ほども質疑でありましたけれども、予防的な注入の仕組みづくりにかかわっての話ですが、これは私も聞こうと思っていたんですが、先ほどの質疑で竹中大臣が御答弁されていますので、これにかかわっては福井日銀総裁の方にのみお伺いしたいと思います。
 先ほどの竹中大臣の御答弁でも、今の枠組み、例えば危機、もしくは危機ではないような、そういう場合のものでも、一般的には危機ではないけれども健康体ではない場合、いかなる枠組みかということは重要だと考えているということで、ワーキンググループで六月中にまとめるという話でありました。もちろん、ここのオブザーバーには日銀の方も入っておられるわけですけれども。
 福井総裁自身、「りそな」への公的資金の注入に至った状況は危機的状況に直面しているわけではないという御認識ではあるようですけれども、実際、百二条の中の一個目ですよといっても、百二条の枠組み自体は、やはりこれは危機対応の枠組みであることは否定できないわけです。現実に金融危機対応会議が開かれて、枠組みが発動されたわけですから。
 むしろ、総裁かねて言われてきたような、かつて第二部会長もなさっておられたわけでございますが、枠組みが整備されていないということについては、やはり一方ならぬ思いがあろうかと思いますけれども、六月までワーキンググループの議論を見守りますということなのか、それとも、総裁なりに積極的に政府に対しても問題提起、提言をなさるおつもりなのか、いかがでございますでしょうか。
福井参考人 この席でも幾たびかお答え申し上げておりますとおり、現在の預金保険法に基づく枠組みに加えて、より早い段階で金融機関の健全化を図れるようなフレームワーク、枠組みがあった方が望ましいというふうに、依然として考え続けております。
 金融審議会の方での御議論の様子を、私どもも確かにオブザーバーとして出席させていただいておりまして、議論の進捗状況もよく理解しております。現在までの議論の進捗状況は、私が希望しております方向と相違ないというふうに思っておりますので、議論が十分尽くされた上、なるべく早く結論が出るということを期待しております。
植田委員 私にとっては、ともかく百点満点のお答えではなかったかと思います。
 もう一点、これも先ほど議論になった点、お伺いしたいんですが、いわゆる新勘定と再生勘定にかかわって、質疑で先ほどもあったと思うんですが、私も同様のことを伺いたいわけです。
 新勘定と再生勘定に分ける。これは内部の管理会計の責任を明確化するんだ、そういう竹中大臣のお話でありました。ただ、「りそな」の場合、こういう枠組みを使うわけですが、当然、新勘定は、「りそな」の銀行としての性格からしても、やはり中小企業向け融資ということを念頭に置かれるだろうと思います。そして再生勘定は、当然、不良債権の早期処理を模索するということですけれども、「りそな」の置かれている客観条件、言ってみれば地理的条件を考えたときに、埼玉もありますけれども、基本は関西ですわな。関西、実際、大変なわけでして、失業率も高い、景気も悪い。失業率は七ポイントを大阪は超えておるわけです。
 そんな状況で、正常債権が中心の新勘定にもかなり影響を及ぼすようなことがないのかということが、私、非常に気になるわけです。すなわち、新勘定で再生勘定を補てんするような、そういう事態になるような可能性は否定できないんじゃないのかなと思うわけですが、それは、そういうことはあり得ないというふうに認識させていただいていいのかどうなのかという点、御教示いただけますか。
伊藤副大臣 先ほどもこの問題についてお答えをさせていただいたように、今先生からも御指摘がございましたように、これはあくまでも管理会計上の区分でございまして、そして新旧の経営者の責任というものを明確化し、貸出債権の適切な管理をするために、こうした勘定区分の分離というものを行うわけであります。
 先生御指摘をされましたのは、再生勘定のツケを新勘定の利益で補てんするんではないか、こうした御疑問ではないかというふうに思いますが、これは、すべての新経営体制が経営責任を負うことになりますので、勘定分離も、管理会計として、内部の経営管理上取り扱うことになりますので、御指摘のように、一方の勘定の損失を他方の勘定で補てんする、そういう性格のものではございません。
植田委員 そこだけ確認しておきたかったわけですが、要は、旧勘定に当たる再生勘定も内部に置いているわけですわね。スウェーデンのようなやり方をとらなかったということで、私はそこの点、ちょっと確認したかったということでございます。
 あと、淡々ともう一点伺いたいわけですが、りそなグループ、改めて、集っている銀行、私の地元の銀行もあるわけですけれども、よくぞこれだけ傷病兵を集めたな、まさに野戦病院のようなところだなというふうなりそなグループ。あるところでは、弱者連合というふうにも呼ばれているようでございますが。固有名詞は挙げませんけれども、確かに、なかなか大変そうなところが集まったなというふうに思うわけですが、別にそういうことを茶化すつもりではありません。りそなグループの持っている特性をいかに大切にするのかという点で、金融庁の姿勢を伺いたいわけです。
 というのは、さきの勝田社長が記者会見の中でも、地域銀行の連合というビジネスモデルを維持するのかという、そういう質問には、新しい経営陣にゆだねたい、大株主となる国の意見も伺うという趣旨のお話をされているわけです。
 そういう意味で、ビジネスモデルとしての地域連合というのは、私は大切にすべきであると思います。なぜか。それは、全体としての資金需要がないけれども、例えばりそなグループが相手にしている中小企業というのは、これは金額的には多くはないかもしれませんけれども、短期的な、中期的なことも含めて、やはり資金需要のある中小企業を抱えているという、その特性をどう生かすかといった場合、先ほどの質疑でも、中小企業に対してどんな手当てをしていくんだというときに、大株主である国として、何を積極的に進めていくのか。とりわけ、中小企業と個人に的を絞った戦略というのは、先ほども必ずしも明示的ではなかった。
 私は、一点だけ申し上げたいのは、要は、融資に対する姿勢を基本的に転換させる、それを促すものでなければならない、そこに尽きるだろうと思います。現実にはそれは行員がやるわけですけれども、融資の姿勢を転換するというのは、担保主義から、企業の将来性なり、また、実際に借金はあるけれども、本業の経営内容がどうなのかといったところにどれだけ着目し得るか。何か、経産省のさまざまな検討会なんか見ていると、そうしたことについてのリスクがどれぐらいかということもある程度までは予測できるような、そんなことも出ているようですけれども、まさに大株主さんとしては、そこにピントを合わせないことにはあかんと違うやろかと思うわけです。
 その意味で、この今回の「りそな」の再生というものが、いい意味でのモデルになればという思いで私は聞いているわけですが、竹中大臣、いかがですか。
竹中国務大臣 植田委員御指摘のように、いい意味での再生のモデルにぜひしたいと思っております。
 基本的には、どういうビジネス戦略を立てるか、ビジネスモデルを打ち立てていくか、これは経営上の問題でありますから、新しい経営陣にぜひ積極果敢に挑戦してもらいたい問題で、それに対して詳細に我々が物を言うというのは、逆に控えなければいけない問題であろうかと思います。
 ただ、これは、経営健全化計画を出して、それを審査する過程で比較的自然に予想されるというふうに私が思うのは、一〇%の厚い自己資本を生かして、前向きに地域に貢献していく。中小企業に対する比率も、主要行では六一%なのに対して、中小企業の貸し出しのウエートは、「りそな」の場合七六%あります。そういった特徴を生かして、前向きにその厚い自己資本を生かして対応していくというのが、やはり自然な姿として出てくるのではないだろうかというふうに私は思っております。
 前向きの対応、それと地域の金融、そうしたことを踏まえて、あくまでも新しい経営陣に、そうした経営戦略を打ち立てて、それで経営健全化計画を提出していただいて、我々の方でしっかりと審査をしたいと思います。
植田委員 それ以上の話はないんだろうと思うので、つけ加えて伺いはしません。ぜひそこは頑張っておくれやすと言うしかない話ですので。
 それで、最後、時間も迫ってまいりましたが、日銀総裁、この間、私もこの「りそな」にかかわっての各紙の論調なんかも見ましたけれども、基本的には不良債権の処理加速策ということを前提にしながら、その手法にかかわっていろいろな論陣を張っているような報道が多いような気もいたしました。有効な景気対策が示されない中で、ルールを突然厳しくする政府の手法に不満が高まるのはもっともな話とも言えるという読売の社説なんかもありましたが、ここだけ切り取れば、私はそんなものかいなと、割かし肯定的なんです。
 そこで、総裁、これまで量的緩和をずっとやってきた、それがきかない。そのきかないのは、恐らく総裁も、量的緩和が生ぬるかったからきかないというふうには心の中では思ってへんやろうと思うわけです。
 そこで、量的緩和、日銀の金融政策の実効性を減殺せしめるのが、そもそも小泉構造改革と言われる政策の中に内包されているのではないのか。されていないとおっしゃるのであれば、されていないと。現実に、ベースマネーをふやしてもマネーサプライの増加に結びつかぬというのは、これは不良債権処理の加速の結果ではないのかというふうに問われたときに、どうお答えになりますか、総裁。
福井参考人 私自身は、日本経済が直面しております現在のこの困難な問題克服の道は、長期不況、デフレ脱却のための基本政策と、それから、不良債権問題処理といいますか、金融機関の健全化を図る政策、この両輪がやはり並行して進められなければ達成されないというふうに思っています。実際、日本銀行で金融緩和政策をいたしておりましても、量的な緩和をしても、金融機関の体力が衰えていればその効果が末端に行かないということで、その点は立証されているというふうに思います。
 不良債権問題の処理の促進につきましては、時に、金融機関の経営者には大変苦しい努力を迫るという面があることは避けられないというふうに思いますが、しかし、その苦しい努力の中にあっても、なおかつ金融機関経営者の前向きの経営努力を引き出していくというところに真の難しさがある。恐らく、金融庁におかれましても、あるいは私ども日本銀行におきましても、その難しい努力、つまり、金融機関の経営者に苦しいことをやっていただかなきゃいけないが、なおかつ前向きの努力を引き出す。ここに焦点を絞りながら、今後、効果がより強く出るような仕事をやっていきたい、こういうふうに思っているところでございます。
植田委員 随分前ですけれども、同じことを聞いたら、同じようにさきの速水前総裁もおっしゃっておられましたけれども、要は、政府、日銀統一した見解は、不良債権問題が景気の制約要因であるというふうに考えているとしか理解ができないわけです。バランスとってやります、バランスとってやりますと。そのバランスをとってやること自体が、アクセルとブレーキを同時に踏んでいるんとちゃうかということをずっと言ってきたわけです。
 現実に、金融緩和で供給された資金が行く先失っているわけですよ。今回の公的資金の投入も、実際、言ってみれば、最終的には、またデフレを加速させる、また新たな不良債権の再生産のためにやっているようなということにもなりかねない。いや、そうなると私は断ずるわけですけれども、その点についての竹中大臣の御見解は伺いません。
 時間がありませんので、最後、塩川大臣、一方で供給構造改革を言いながら、実際に、バランスをとって需要喚起策をやらざるを得ない。また、バランスとってやるというのは、要は、デフレの一般的性格をやはり認識せざるを得ないからでしょう。そのときに、私は一貫して、消費の向上に直接つながるような総需要の創出のための財政出動をやってほしい、やりなさいということをずっと言い続けています。
 それは、単に財政出動イコール従来型公共事業という、それを一回取っ払ってほしいわけですよ。構造改革と言うのであれば、財政支出の構造改革をやって、どこに重点を置くか、国民の生活再建でしょう。そろそろそっちの方にハンドルを切りかえて、踏んでいたブレーキを放してアクセルだけ踏みませんかと。恐らく、まだしません、バランスよくやるんですという答弁が返ってくると思いますけれども、ぼちぼち転換されたらどうですか、塩川大臣。
塩川国務大臣 社民党の政務を担当しておられる植田さんでございますから、ええ知恵があったら教えていただきたいと思うんですが。
 我々、追加の財政出動についていろいろ研究しておりますけれども、なかなかこれという決め手が出てこない。けれども、私はこういうことが言えると思うんです。めり張りのある財政運営をしていくことによって、相当有効に財政資金を使える。これはひとつ、ぜひやっていきたいということが一つございます。
 それから、もう一つは、税制を改正いたしましたことの効果を着実に実体経済の中に反映させていきたいということでございます。
 それと同時に、先ほど来問題になっております、金融機関がさらに一層元気出して、もうける金融機関に脱皮してくれるように活動を起こしてくれるようにしむけていくことが一つのやり方だ。
 そういうことを総合的にやって経済をよくしていくということで、責任を持って運営いたします。
植田委員 終わります。
小坂委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時八分散会

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