衆議院

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第21号 平成15年6月10日(火曜日)

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平成十五年六月十日(火曜日)
    午前九時三十二分開議
 出席委員
   委員長 小坂 憲次君
   理事 金子 一義君 理事 七条  明君
   理事 砂田 圭佑君 理事 林田  彪君
   理事 生方 幸夫君 理事 松本 剛明君
   理事 上田  勇君 理事 中塚 一宏君
      上川 陽子君    倉田 雅年君
      小泉 龍司君    坂本 剛二君
      田中 和徳君    竹下  亘君
      竹本 直一君    谷畑  孝君
      中村正三郎君    永岡 洋治君
      萩山 教嚴君    林 省之介君
      増原 義剛君    山本 明彦君
      山本 幸三君    五十嵐文彦君
      井上 和雄君    上田 清司君
      小泉 俊明君    佐藤 観樹君
      仙谷 由人君    武正 公一君
      中津川博郷君    永田 寿康君
      平岡 秀夫君    石井 啓一君
      遠藤 和良君    達増 拓也君
      佐々木憲昭君    吉井 英勝君
      阿部 知子君    植田 至紀君
      江崎洋一郎君
    …………………………………
   内閣総理大臣       小泉純一郎君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     竹中 平蔵君
   内閣府副大臣       伊藤 達也君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   財務大臣政務官      田中 和徳君
   政府参考人
   (公正取引委員会事務総局
   経済取引局長)      上杉 秋則君
   政府参考人
   (金融庁総務企画局長)  藤原  隆君
   政府参考人
   (金融庁監督局長)    五味 廣文君
   参考人
   (生活経済ジャーナリスト
   )            高橋 伸子君
   参考人
   (株式会社ニッセイ基礎研
   究所代表取締役社長)   正田 文男君
   参考人
   (保険評論家)      大地 一成君
   参考人
   (東京大学大学院法学政治
   学研究科教授)      岩原 紳作君
   財務金融委員会専門員   白須 光美君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月十日
 辞任         補欠選任
  渡辺 喜美君     谷畑  孝君
  平岡 秀夫君     武正 公一君
同日
 辞任         補欠選任
  谷畑  孝君     永岡 洋治君
  武正 公一君     平岡 秀夫君
同日
 理事渡辺喜美君同日委員辞任につき、その補欠として砂田圭佑君が理事に当選した。
    ―――――――――――――
六月九日
 消費税の大増税に反対、税率を三%に引き下げることに関する請願(中林よし子君紹介)(第三二〇八号)
 同(松本善明君紹介)(第三二〇九号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 理事の補欠選任
 政府参考人出頭要求に関する件
 保険業法の一部を改正する法律案(内閣提出第一一九号)


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     ――――◇―――――
小坂委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、保険業法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、参考人として、生活経済ジャーナリスト高橋伸子君、株式会社ニッセイ基礎研究所代表取締役社長正田文男君、保険評論家大地一成君、東京大学大学院法学政治学研究科教授岩原紳作君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、高橋参考人、正田参考人、大地参考人、岩原参考人の順序で、お一人十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。
 また、その後の質疑につきましては、挙手の上、御答弁をお願い申し上げます。
 それでは、高橋参考人、よろしくお願い申し上げます。
高橋参考人 生活経済ジャーナリストの高橋伸子でございます。
 本日は、保険業法の一部を改正する法律案につきまして意見を申し述べる機会を設けていただきまして、ありがとうございます。
 私は、金融分野の規制緩和と消費者政策並びに個人や家庭の生活設計、資産運用につきまして、取材、分析に基づく言論活動を行っております。生命保険の予定利率につきましては、十年前よりさまざまな発言をしております。
 行政とのかかわりの点では、九六年に保険審議会委員、九八年に金融審議会委員に任命されました。また、今回の法案の下敷きとされました、契約条件の変更の検討を行いました保険の基本問題のワーキンググループのメンバーでありましたことを申し添えます。
 それでは、本題に移らせていただきます。
 まず、結論から申し上げますと、今回の法案は、契約者保護の観点から問題が多いと認識しておりまして、法制化には反対でございます。
 一番の理由は、この制度が、将来的な破綻回避を目的とするものでありながら、早期破綻を招く可能性を内包した大変に危険な制度だというふうに思うからでございます。
 破綻に比べて契約者の損失が少ない、予定利率が三%より低い九六年度以降の契約者には影響がないという説明が、金融庁発マスコミ経由で国民に伝えられておりますけれども、想定のシナリオどおりに手続が運ばない場合のリスク、これにつきましてはほとんど説明がされておりません。その場合の契約者の損害及び国民経済に与える影響ははかり知れないものがあるというふうに危惧しております。
 具体的に申し上げますと、まず、予定利率の引き下げを私的自治で行う過程におきまして、総代会等の特別決議で変更案が否決されれば、その会社はもうもとへは戻れず、直ちに破綻ということになるのではないかと思います。破綻の蓋然性を内外に公表したわけですから、残された道は限られてくるわけです。そうしますと、新契約はストップしたままになりますし、既契約も、逃げるが勝ちの様相を呈して、保険会社にとって優良な契約がどんどん流出することが予見されます。その場合に、病歴とか高齢を理由にほかの保険会社で再契約ができない人々が残されることになるのではと思います。
 もし無事に総代会がクリアできたとしましても、異議申し立てが一割以上に及べば、もとに戻れず、同様のリスクにさらされます。保険版取りつけ騒ぎのようなことが想定されます。
 予定利率引き下げが無事に実施されたとしましても、その後解約が進まない保証はありません。この法案の手続は、契約者にノーと言わせない、ノーと言ったらひどい目に遭うという仕組みでございますので、心の中では異議申し立てをしたいと思っている人、いち早くこの保険集団から離脱したいと思っていても、我慢をする、様子を見る、異議申し立てが成立してから破綻処理に移行した場合の逃げおくれを考えて、異議申し立てをしないで解約を選択する、いろいろあると思います。
 ですから、予定利率引き下げが実施できたからといっても安心できないと思います。新契約が見込みよりも大幅に減少する危険性もあり、破綻懸念から優良契約の流出がずるずる進んで、保険の基本原理である大数の法則が崩れ、資産劣化が進み、更生特例法を申請すると救済会社から買いたたかれてしまう、こういう最悪シナリオも考えておかなくてはいけないと思います。
 ここにおきまして、破綻より有利という事前説明が覆るわけでございまして、国に対する信頼性も著しく低下するのではないかと思います。
 そうした事態を見て、ほかの大手生保の契約者が損を承知で解約行動に走ることも考えられます。ここでも、保障が必要だけれども再契約が容易でない人たちが経営不安のある保険会社に取り残されることになると思います。
 つまり、このような一か八かのかけごとのような申請をさせずに、ストレートに更生特例法を適用するのが真の意味での契約者保護ではないかと私は思います。生命保険は、預金のように預かったお金を返せばいいという話ではありません。保険の契約者保護というのは、再加入困難な人への思いやりが基本になくてはいけないと思います。
 ところが、更生特例法に比べて短期間に手続を実行しなければならないため、条件変更案で弱者保護が図られる可能性は極めて低く、基金の拠出者や一般債権者よりも個人契約者の権利が弱い立場に置かれることは必至でございます。恐らく、基金の拠出者などに対しては、保険会社が、この制度利用の申請を行う前に一般債権放棄のお願いもするでしょうし、彼らがそれが気に入らないということでしたらば、保険契約を引き揚げるというふうな行為もできるわけでございます。どう見ても、弱者はもとより一般の契約者がないがしろにされる危険性が高いと思っております。
 そうしたことを考えますと、契約者にとっては、司法のもとで公正に破綻処理手続をすることの意義は大きく、一昨年のパブリックコメントでも、たとえ多少の損があっても司法のもとで公正な処理を望むという意見が消費者から数多く寄せられたことを忘れてはならないというふうに思います。
 これまでの破綻処理における契約者保護のレベルは、業法処理の四社と、法改正によって更生特例法が利用できるようになってからの三社とでは大きく変わりました。今回金融庁が破綻処理との比較資料に用いました、責任準備金の一〇%カット、引き下げ後の予定利率一・五%というような悲惨な破綻処理にならないように、金融庁の検査監督のレベルは相当に向上したと聞いております。
 更生特例法にさらなる改善を加えると同時に、契約者保護機構の大幅な見直しを行いまして、行政が的確な監督を行えば、生命保険の契約者保護も預金保険制度のように国民の認知度が高まり、より信頼性のあるものになると私は思っております。
 以上、るる述べましたように、私的自治による契約条件変更手続がまさにもろ刃の剣であることは、金融審議会ワーキンググループの平成十三年の四月の議論の時点で各委員が共通認識として持っておりました。私的自治である以上、契約者が意思決定できる手続が保障され、計画を円滑に遂行するためには、国民・契約者の理解、社会的認知が十分であることが大前提であるというわけで、パブリックコメントをとる形で国民的議論をすることになったわけです。
 ですから、ワーキングのその議論を踏まえた金融審の中間報告というのは、契約者が納得しやすい手続フロー、すなわち、将来収支分析や三利源の開示、経営責任の明確化、基金や劣後ローンのカットはもとより、契約者集会に先立って個々の契約者に保険金カットの具体的な数値を示すなど、現在の法案よりも相当厳しい条件を保険会社に課しておりました。その後、パブリックコメントを受けて部会で討議がなされ、法制化が断念されたことは御存じのとおりだと思います。
 ところが、お蔵入りしたはずの案がいつの間にか持ち出され、加工され、法案として提出されたことに対しましては、私は全く納得できません。金融庁からは金融審議会案をワーカブルにしたという御説明をいただいておりますけれども、現在もなお非公開になっております金融審第二部会の第六回、第八回の議事録が公開されますと、この法案が相当に無理筋であることが私は明らかになると思います。
 行政の関与につきましては、二年前の金融審議会には入っておりませんでしたが、新たな案では、行政が、申請の承認、変更案の承認など、相当に関与するようです。しかしながら、万一失敗して契約者に多大な損害を与えたときに、行政が責任をとってくれる保証はないのです。手続開始の意思決定には契約者は関与していないのに、私的自治による手続だからと言われて、失敗したときの責めは契約者に帰すというのはおかしくないでしょうか。
 そもそも、生命保険商品というのは複雑な仕組みのものが多く、商品性や保障額の見きわめすら個人には容易ではございません。とりわけ、保険の価格を構成する料率や配当は、死亡率や予定利率など高度な数理的計算に基づいて算定しておりまして、一般の人々には大変わかりづらいものです。過去の破綻事例でも、責任準備金の積み立て方式が標準責準方式から全期チルメルに変更されても契約者は文句を言えなかったのです。
 また、今回の法案は、予定利率という保険料の計算基礎の一つを変更可能にするというものですけれども、自分の保険料がどのような基礎率で決まっているかを契約者は知りません。
 私は、逆ざやが発生した当初から、保険証券や毎年契約者に送る契約内容のお知らせ文書に予定利率等を記載するように保険会社に要求をしてまいりましたけれども、保険会社は、契約者に理解してもらうのは困難であるという理由で渋っておりました。その後、私がかつて総代、評議員をしておりました二社につきましては、一社は契約内容のお知らせ、一社は保険証券に記載を始めましたが、ことし二月に主な生保各社に対してアンケート調査を行いましたところ、やはり固定型の予定利率に関しては記載を追随した会社はないということが判明いたしました。
 誤解を呼ぶとか製造原価の一部に当たるという理由で契約者に知らせていない数字の一部を持ち出しまして、破綻よりましということで保険金をカットするのはいかがなものでしょうか。少なくとも三利源の詳細開示まで行った上でないと、とても持ち出せない話ではないかというふうに思います。基礎率を見直すのであれば、死差、費差についても開示し、過度に安全率を見込んでいる契約については保険料を引き下げる必要も出てくると思います。法案では、そうしたことも私的自治にゆだねられておりますけれども、保険会社と保険契約者には相当の情報の格差があることが配慮されていないと思います。
 今回の法案の問題点はほかにもいろいろありますが、早期破綻の危険性や裁量行政が行われるおそれがあることから契約者保護に欠ける、選択肢として存在させること自体に反対であるということを再度繰り返させていただきまして、意見陳述を終わります。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
小坂委員長 どうもありがとうございました。
 次に、正田参考人、よろしくお願いいたします。
正田参考人 ニッセイ基礎研究所の正田でございます。
 本日は、保険業法の一部を改正する法案審議に当たりまして意見を申し述べる機会をちょうだいいたしまして、まことに光栄に存じております。まずもってお礼を申し上げたいというふうに思います。
 ニッセイ基礎研究所は、一九八八年に設立されましたシンクタンクでありまして、国内外の経済、金融問題を初め、年金、介護等社会保障の関係、あるいは住宅、都市問題等につきまして、中立公正な立場で、基礎的かつ問題解決型の調査研究を実施し、必要な発信を行っております。本日もそうした立場から意見を申し述べさせていただきたく存じますが、同時に、私自身、日本生命の役職員として長く生命保険の実務を経験しておりますので、そういった実務体験をもベースにいたしまして、率直に見解を述べさせていただきたい、かように思います。
 初めに結論を申し上げますと、私は、今回の保険業法改正案に賛成でございます。
 御高承のとおり、世界史上に類例を見ない、中世のジェノバにあったやに聞いておりますが、まず考えられないような超低金利が長期継続いたしております。また、御案内のように、ピーク時から見ますと、日経ダウで八〇%余りの下落を示しております非常に厳しい株価の低迷、こういうものを受けまして、公私を問わず、将来の給付を約束いたしております制度貯蓄は、いずれも非常に厳しい状況に追い込まれております。
 例えば、これも御高承のとおりでございましょうが、企業年金におきましても、その積み立て不足が大きな問題になっており、給付額の削減、あるいは確定拠出型への移行、さらには最近問題になっておりますいわゆる代行返上問題、こういうものにつながっておるところであります。
 生命保険におきましても、古くからの、二十社体制と申しておりましたが、二十社中七社が既に破綻をいたしております。さらに、実質的に破綻前に外資系等の救済を受けた内国会社が二社ございます。まさに半減いたしておるわけでございまして、これらの破綻は、若干の事情の相違はございましても、根本的には、予定利率と実際の運用パフォーマンスの逆転、いわゆる逆ざやでございますが、逆ざやによるものと言って差し支えございません。
 そして、その逆ざやは、現在健全に継続している会社にも大きな圧力となってのしかかっているわけでございます。場合によっては、そのレベルは、それぞれの会社の自助努力の枠を超えかねないという状況下にあると考えております。
 ちなみに、破綻生保の契約者は、破綻会社の資産劣化を受けまして、経験的には、例えば五・五%であるといった予定利率から一・五%程度の予定利率に、大幅な引き下げを受けております。また、保険料積立金の一〇%カットなどを通じまして大きな痛手を受けることになります。
 そうして、そうなることを懸念いたしまして、経営不安がささやかれるような会社の契約者は解約に走ることが現実には多いわけでございますが、解約行動は当該会社をますます窮地に陥れるだけではなく、解約契約者自身も不利益をこうむることになります。改めて加入する場合には、予定利率は普通一・五%程度の水準でございます。また、高齢の場合には再加入が困難になるというようなことがございまして、本当に保険が必要なときに保険不足になったり、場合によれば無保険になることさえ心配される次第でございます。
 したがいまして、今本当に必要なことは、何としても生命保険の逆ざやを会社の自助努力でマネージできる水準までに圧縮し、生命保険会社ないしは生命保険制度に対する信頼を回復することでございます。そして、そのことを、契約者の受ける痛みをどのように極小化しながら行うかということであろうかと思います。
 一方、私的な契約でございます保険契約の契約条件の変更に対しましては、私的財産権の侵害の懸念や、あるいはその法的安定性の阻害になるのではないかという指摘があるのも事実でございます。それだけに、予定利率の引き下げのような、いわば重要な契約条件の変更は、会社と契約者間の自治的な意思決定の仕組みの中で行われることが基本的に大切であろうかと思います。
 かつまた、一見不利益のように見えましても、変更しない場合に生ずる不利益に比較すると、実質的には契約者にとって有利に作用する蓋然性が高い、そういう場合に限られる必要があろうかと思います。そしてまた、健全かつ公平な保険制度の維持を可能とし、ひいては契約者集団の利益に貢献するというものでなければいけないというふうに思います。
 今回の業法改正案は全体として、以上のような観点を踏まえられて、慎重かつ穏当に設計されたものであるというふうに考えまして、賛意を表するものであります。
 次に、更生特例法と契約条件変更との比較について一言申し述べさせていただきます。
 今回のような法案は不要であり、早期に更生特例法を適用すれば足りるのではないかというような有力な御意見がございます。例えば、先日参考人として見えられました慶應義塾大学の深尾先生などが主張しておられます。確かに、現在のソルベンシーマージン基準を厳格化いたしまして、早期に更生特例法の適用を行えば、理論的には、破綻前に予定利率の引き下げを行うこととの間にそれほど大きな違いは一見ないように思われることも事実であります。
 しかし、経験的に申し上げますと、少なくとも次の三点から更生法処理には難点がございます。結局、契約者の痛みを極小にすることには一般的にはならないというふうに考えられる次第であります。
 まず、更生特例法を適用した場合には、これは破産法制の一環でありますから、基本的には清算価値ベースの資産評価になります。加えて、必要条件としてスポンサーが期待されるわけでありますが、スポンサーの立場からすれば、これは安く買えればいいわけでありますから、買いたたきといったような事象が生じます。先ほどの高橋参考人も、この点はおっしゃっておられたように思います。その結果、債務超過額が大きくなりがちであることは否定できないところであります。また、関係者間で評価に差があるというような場合には、資産を市場で売却するという形をとらざるを得ません。その場合、非常に短期間の競売というようなことでありますから、大きなロスが生ずる可能性が高いわけであります。
 この点、契約条件の変更でございますと、これは破綻の未然防止ということでございまして、企業のゴーイングコンサーンがベースになるわけでありますから、著しい評価減というようなことは発生しないといいますか、少なくとも相対的には小さいと経験的には言えるかというふうに存じます。
 次に、更生特例法の場合には、高い予定利子の契約者といいますか引き下げ対象契約者だけでなくて、一般の、例えば最近お入りの契約者の方は一・五%といったような、しかも若い、比較的中堅以下の層が、いわば公的年金の世代間の負担の問題と似たような現象が起こっております。そういう引き下げ対象の契約者以外の、つまり全契約者に痛みが及ぶのが一般的なケースでございます。もちろんこれは場合によるわけでありますが、資産の劣化がございますので、そういうことになるわけであります。責任金の一〇%カットというようなことが行われたケースもありますし、早期の解約控除というようなものが実施されておることも事実でございます。
 最後に、一昨年の金融審議会の中間報告書でも指摘がございますように、更生特例法は、これは司法が介入いたします破産制度でございますので、早期適用をしたいといいましても、おのずと限度があるということでございます。強制命令に属するものでございますから、おのずと限度があるというふうに考えられます。したがって、問題が延引される結果、資産の劣化がさらに進むことが懸念される、そういうことが実際には起こるわけでございます。
 なお、契約条件変更の場合に、銀行などが拠出されております基金、劣後ローンの取り扱いが問題になりますが、私は、契約者の理解を得るためには、これらの一般債権につきましても、応分の負担といいますか、縮減は当然であると考えております。事態を放置いたしまして破綻に至り、更生特例法の適用ということになりますと、基金、劣後ローンの全額が毀損するという可能性が非常に高いわけでございまして、そういうようなことを私的自治の枠の中で十分に話し合えば、銀行等の理解も得られるのではないかというふうに考えております。
 以上申しましたが、更生特例法は、破綻処理という点では、従来の保険業法による処理から大きく前進したすぐれた制度でございます。しかしながら、破綻を未然に防止して生保の再生を図るという点から申しますと、今回の予定利率の引き下げ制度は契約者保護の選択肢をふやすものであり、大きな意味があるというふうに思います。生保各社の経営実態を日常的に把握することが可能な監督当局におきまして適切な運営が行われることにより、この制度が有効に機能することを切に希望しまして、私の意見陳述といたします。
 ありがとうございました。(拍手)
小坂委員長 どうもありがとうございました。
 次に、大地参考人、よろしくお願いいたします。
大地参考人 大地でございます。
 私のフィールドは保険評論家となっているわけですけれども、主には生命保険、これを約十年、いろいろな角度から評論活動をさせていただいております。特にこういう場を設けていただきまして、ありがとうございます。
 ちょっと立場が違いますので、私なりに四点、今回の業法改正について、違った角度から意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず一点目なんですけれども、この業法改正の生じた理由、何でこういう業法改正を行わねばならないという案が出たか。
 これは、ベースが、今、特に国内生保十社、ここが非常に対象になっているかと思いますが、この十社がすべてこの案、いわゆる予定利率の引き下げが必要かということに関しましては、そうではない。俗に言えば、経営内容が甲乙丙丁あります。
 その甲乙丙丁の厳しいところ、これはどういう経営を行ってきたのか。
 例えば、バブルの真っ最中に予定利率の高い保険契約を大量契約した。当然、バブルの最中で運用利回りがいいときは、これはどんどん保険料収入がふえて、総資産がどんどんふえていく。いわゆる新規契約高競争、総資産競争、この中では勝ち組だったかもしれないです。
 ところが、バブルが崩壊しますと、これはもう言うまでもなく逆ざやに苦しめられる。いわゆる利差損の発生です。となると、その穴埋めをせんがためにリスク性商品を大量に抱え込まざるを得ない。端的に言えば、株式に投入して利ざやを稼ぐ、あるいは外国証券に投入して利ざやを稼がなきゃいけない。
 ところが、これはうまくいけば結果オーライだったんでしょうけれども、残念ながら、世の中の金融情勢は逆に走ってしまった。特にそういう二重の逆回転症状が起きた。さらに、そういう生保においては、社内の改革、うちは健全なんだということを世間に、あるいは社内に広く知らしめるために、社内改革におくれをとった。つまり、この三重苦がどんどん回転していって、いわゆる経営体力がどんどん疲弊していった。
 片や、その十社の中の甲乙丙丁のいい方は、バブルの真っ最中に、確かに高い予定利率を標榜して保険料を集め、総資産をどんどん増加させることができたにもかかわらず、全く逆の商品、いわゆる定期性商品をどんどん販売した。当然これは総資産もふえない。しかしながら、定期性商品を売ったがために、無理な運用をする必要が全くない、いわゆる保険料率の基礎になるもとが全く心配要らない。当然、こういう生保は今でいうところの勝ち組生保というふうに評されます。もちろん、無理な、予定利率の高い契約を集めなくてきた生保は、無理な運用をしなくていい。そういう生保が十社の中に複数あります。
 やはりこの違いをまず前提としてとらえなければ、十把一からげにすべて国内生保はそうなんだ、あるいは外資系生保、これも全部が今予定利率の問題とは関係ないわけではなくて、やはりそれを内包した生保もあります。だから、各社いろいろな事情がある。
 では、その中で、その生保のどこに問題点があったのか、これを分析しない以上、単に予定利率を下げればいいではないか、これは、病気でいうならば、どこかから血が出た、とりあえず塗り薬を塗っておいて血をとめればいいじゃないか、ところが、開いてみたら内臓疾患でもう傷んでいたよ、当然これは命が助からない、こういう小手先の論法ではないかなというふうに私は考えます。
 そして、二番目なんですけれども、破綻処理、いわゆる更生特例法、保険業法のいずれでもいいんですけれども、それから今回の予定利率の引き下げ、この両方を比べますと、今回は三%に仮に下げたとしても、果たしてこれでその生保が健全な生保の仲間入りだというふうに評価されるか。
 例えば、破綻した生保の場合、当然予定利率は下げます。過去例、七社ありますけれども、その大概が、それに責任準備金のカット、二社はゼロ%ですけれども、大半がカットした。
 それから、早期解約控除。これは、営業再開後すぐに解約に行かないように抑制するために、解約返戻金を二〇パーとか一五パーとかカットしていく。ちなみに、一番最初に破綻した日産生命、ことしが早期解約控除の最終年度になります。そういう手を打った。
 さらに、責任準備金の積み立て型。先ほどちょっとお話がありましたけれども、今、平準払いを前提としてやっているんですけれども、破綻した生保の場合は、全期チルメル、いわゆる責準の積み立て方が一番少なくていいよ、こういう積み立て型にして、二重三重に二次破綻がないような仕組みをつくっています。
 さらに、破綻した場合には当然スポンサーが入りますので、幾ばくかの資金投入を行います。当然この中には基金であるとか劣後ローンも入りますので、かなり経営体質としては強固になる。こういうことをやって初めて、二次破綻、破綻から次の破綻は絶対ないんだよという烙印を押される。
 ところが、たった、予定利率を三%に下げて、しかも今の運用環境が三%を優に超える状況ならいいですが、国債利回りが〇・五%の時代に、三パーになったからどこがどういうふうに安全なのか、極めて考えにくい。この辺を考えますと、生保の健全性という問題からいきますと、単に三%に下げることがどういう問題を持つのか、こういう大きな疑問を持っております。
 それともう一つは、破綻処理生保と、それから予定利率を引き下げた生保、そこの境界線は何なのか、どういう条件なのか、これが全く見えない。つまり、どこのラインまで行くとこちらは破綻で、どこのラインまで行くとこちらは予定利率を三%に下げれば済むのか、この境界線が全く見えない。
 それでは、単に下げればいい。これは契約者はどうとるかといいますと、三%に下げた時点、これでこの生保は安全だ、健全だととるか。私は、一〇〇%とらないと思います。しかも、早期解約控除がありませんから、営業再開後、恐らく殺到するでしょう。それがどうなるかということは、私が説明するまでもないと思います。
 つまり、この予定利率を下げるという案は、一回、予定利率を下げるということで、契約者に一つのショックを与えます。さらに、その生保に加入している契約者は、この契約が破綻するのではないかという不安を思いながら、毎月保険料を払わなきゃいけない。結果として、これはわかりませんが、しかし、破綻という結果をもし招いたとするならば、二重に契約者は精神的ダメージを受けなくちゃいけない。
 しかも、これが一社で済むか。悪い意味のいわゆるビジネスモデルになりかねない。次はどこだ、次はどこだ、こういう状況に追い込まれることが果たして是か非か。私は、これはとても賛成できない。
 それから三番目なんですが、今言ったこととほとんど重複しますけれども、要は、今いろいろ言われている、単独個社で引き下げをやりますよ、これはほとんど私は無理だと思います。これは今まで言った理由と同じなんですけれども、強いて言うならば、どこかの生保、健全と言われている生保と統合して救済の道を探すということになるかと思うんですけれども、これとても、契約者の意思がどう動くか、非常にこれは不安定な話だと思います。
 それから四番目、最後になりますけれども、まず、金融庁でいろいろな資料をつくっていただきました。これを全体的に眺めますと、非常に資料として不足している。
 例えば、どういうところが問題かといいますと、これはもう再三この場でも議論になっていますけれども、いわゆる三%に下げた場合のシミュレーション、それから一・五%、いわゆる破綻した場合のシミュレーション、ここに使われているデータが一般の契約者に一番マッチした内容かどうかということ。数字が云々というのはあえて言いません。
 まず、ここの中に個人年金保険が入っておりません。今回の逆ざやの大きな問題点は、商品としては個人年金保険です。終身保険とか養老保険とかは、まだ死亡率、いわゆる死差益がとれます。個人年金保険はこれがとれません。まさに逆ざや問題の根幹をなす保険商品です。これのデータが全くない。果たしてこれで論議をすること自体がいかがなものか。
 しかも、この中には、関係ないと私は思うんですが、定期保険、三十年満期が載っています。定期保険の三十歳加入の三十年満期という契約者、どれほど実態いるのか。非常に微々たるものです。なぜならば、この期間に加入した契約者の大半は、定期保険は定期保険特約、いわゆる定期つき終身保険の定期保険特約、これの十年更新型、もしくは十五年更新型、もしくは二十年更新型が大半です。つまり、データとして実務性がないデータ、これを並べてどうのこうの言っても、非常に説得力が弱い。そういう面では、このいろいろな資料、つくるのが大変だったかと思うんですが、個人年金保険の問題が一切触れられていないこと。
 それから、ほかには、時間がありませんのでポイントだけ言いますと、平均予定利率、これも非常に私はいかがなものかと思います。それと、あとまだいろいろ何点かあるんですけれども、これをベースにして論議される一番肝心な部分が欠落して、結果だけ、とにかく下げりゃいいじゃないか。まさしくこれは、生保が破綻してもらっちゃ困るよ、いわゆる、俗に言う銀行救済、これが前提にあるのではないか、そういううがった発想を私は考えております。
 まとめますと、私としてはこの法案に当然反対ですし、むしろ、この法案が成立して、試しにやってみたらいいじゃないかということでもし実行されるとするならば、生保としては全体的に信用を失うことと、それから日本の金融マーケットがどういう反応を示さざるを得ないかということは、間違いなく契約者の解約は急増します。そのときに生保はどういう資金準備をすればいいのか。今ですら、現金預金、コールローン、かつかつでやっています。ところが、それを準備しなければ保険金を払えといっても払えない。解約に行ったけれども保険金はすぐ手に入らない。さらに、その相乗効果で、あそこの生保は金がないんじゃないかというような風説が流布される。いわゆる悪循環になる危険性が非常に高い。マーケットはそのときどういう反応をするのか、非常に私は危惧しております。
 契約者に余計な心配をさせるような法案には私は反対であるということを述べさせていただいて、終わりにしたいと思います。御清聴どうもありがとうございました。(拍手)
小坂委員長 どうもありがとうございました。
 次に、岩原参考人、よろしくお願いいたします。
岩原参考人 東京大学の岩原でございます。
 本日は、本委員会にお招きいただきまして、意見陳述をする機会をいただきましたこと、大変光栄に存じております。
 最初に申し上げたいことは、表面的な現在の生保の公表財務内容以上に日本の生保会社の財務内容が悪化している、極めて厳しい状況にあるということを申し上げたいと思います。そのため、一刻も早く抜本的な手を打つことが望ましいと考えております。
 大手生保十社の平成十四年度決算速報を見ますと、基礎利益は全社黒字で、黒字総計は二兆円近くに上り、公表逆ざや額の一兆一千六百七十億円を大きく上回る、そしてまたソルベンシーマージン比率も一社を除いて四〇〇以上で、予定利率引き下げの必要性がどれだけあるのかという疑いを持たれる向きもあるかと思います。
 しかし、さきの深尾参考人の御指摘にございましたように、現在の公表財務情報は税効果会計等の算定にやや問題がありまして、利益やソルベンシーマージンが過大に算出される傾向にあります。また、公表逆ざや額や基礎利益は、有価証券の評価損一兆五千八百二十三億円が算入されておりません。生命保険会社の収支は有価証券の評価損益を含む総合的なリターンで評価されるべきものでございますので、逆ざや額や利益には本来これを含めて考えるべきものと思われます。
 そうしますと、逆ざや額は二兆七千四百九十三億円に上る一方、利益は大手十社でわずかに四千百七十一億円にすぎません。十四年度の大手十社の当期利益は三千五百四十三億円にすぎないわけであります。
 しかも、会社間でばらつきがあり、中には一千億円近い損失を出している会社もございます。その会社は、一千百億円を超える危険準備金を取り崩してやっと当期利益を出している状態であります。株価、地価の値下がりで、大部分の会社の資産はむしろ含み損になっております。そのような中で、もはや危険準備金を取り崩すほかなくなっている会社が出てきているわけであります。平成十三年度決算では、経常損失を危険準備金取り崩し額を含めて考えますと、二千億円の損失を出した会社もございました。後期の逆ざやがいわばすべての会社の利益をほとんど奪いつつあって、中には債務超過に近づいている会社もあるわけであります。
 しかも、より重大な問題は、新規契約の減少、それから解約の激増による現金の流出であります。
 平成十三年度の数字で申しますと、現金の流出、いわゆるキャッシュフローの流出が全社でほぼ三兆円に上っておりまして、特にある会社一社で二兆三千億円のキャッシュフローの流出が起きております。十四年度におきましても、その会社はなお七千四百億円ものキャッシュフローの流出がございました。
 現金の流出が起こりますと、現金の不足をカバーするために、まず優良資産を大量に売却することになります。それが資産内容、資産の質の劣化を引き起こしまして、巨額の特別損失を生んでおります。キャッシュフローの面から、支払い不能そして債務超過の危機が忍び寄っているわけであります。近い将来、経済、金利あるいは株価の状況が劇的に変化することは期待できないとしますと、そのような危機は多くの生保会社に共通していると言って過言ではないと思います。
 大手生保会社が破綻いたしますと、何十万あるいは何百万という契約者に損失が及ぶことになります。さらに、それだけでなく、生命保険契約者保護機構による救済のために、他の生保会社やその保険契約者が負担をすることになります。それは、場合によっては連鎖倒産を引き起こすことになりかねません。また、場合によりますと、公的資金、この間の改正によりまして、いわば税金をつぎ込むことも必要になるわけであります。
 そして、さらに悪いシナリオとしては、金融危機の引き金になり、我が国経済全体を一段と厳しい状況に追い込みかねないことが危惧されるわけであります。
 それは第一に、大手生保会社が、株式や基金あるいは劣後債務の持ち合いによりまして、銀行と生保がもたれ合う関係にあるからであります。いわば、生保の危機が銀行の危機に飛び火する可能性があります。第二に、従来の生保の破綻処理の経験からいたしまして、破綻生保会社が所有していた株式などが大量に市場で処分されることになるわけでありますが、それが株価暴落などにつながる危険もございます。これに対してはなるべく早く手を打つべきだと考えております。
 先ほど申しましたように、キャッシュフローの流出が続き、資産内容の劣化が急速に進む可能性が、危険性が大きいからであります。対策がおくれればおくれるほど、処理したときの財務内容が悪化し、処理費用が巨額になります。日産生命、東邦生命など、今までの破綻処理の経験からしますと、破綻に着手した途端に損失が異常に膨らむということが明らかであります。いわば、ぐずぐずしている間に財務の質が急速に劣化したわけであります。それは、当然のことながら、契約者に大きい損失をもたらすことになります。
 これに対しまして、予定利率の引き下げがそういった状況に対処するために必要であるけれども、現在の法案に含まれておりますような制度では公正な処理が期待できず、むしろ更生特例法によるべきだという御意見があることは十分承知しております。
 確かに、更生特例法と比べますと、本法案のスキームでは基金や劣後債務を強制的にカットするということはできないという点で、公平感からしますと、保険契約者に若干の不利だという印象があるのではないかと思います。確かに、更生特例法の早期適用ができれば公正な手続が期待できますし、更生特例法の適用実績は今まで大変好ましいものでございました。しかし、一方で、更生特例法も万能ではないということは銘記していただきたいと思います。本法案のようなスキームもあった方が望ましい場合も中にはあるというふうに考えます。
 第一に、更生特例法は正式の破綻処理の手続でありますので、破綻の認定が必要でありまして、裁判所の認定はどうしても慎重になっております。また、経営者の申し立てや監督当局の対応もおくれがちであることが現実であります。これに対し、破綻処理ではない本法案のスキームの場合には、より早く着手できる可能性がございます。このことは、りそな銀行の例からもうかがわれるところであります。一刻も早い対策への着手が、資産の劣化を防ぎ、損失拡大や金融システムの危機などへの波及を防ぐかぎでありますので、そういうことを考えますと、こういったシステムもそれなりの意味があるかと思います。
 第二に、更生特例の破綻処理の場合、市場で資産の売却処理がされますので、どうしても売却損が出ます。これは、先ほど正田参考人も御指摘になったところでありますけれども、あるいはそれがさらに、さっき申しましたように、株価の下落等を招く危険もございます。また、破綻処理の場合には、関連会社への融資などが、いわば関連会社の連鎖倒産を引き起こすことによって一気に不良債権化し、損失がさらに膨らむといった問題も生じます。
 第三に、更生特例法の手続ですと、大体半年間は業務を停止しなければならないといった技術的な問題もございます。今まで以上の大規模会社の破綻になったときに、更生特例法のスキームが予定しております救済会社がうまくあらわれて、スムーズに破綻処理手続が進むかどうかは、なお不安のあるところでございます。
 以上のような諸点を考慮しますと、場合によっては、本法案のようなスキームを利用した方が、利用せずに倒産手続に行った場合よりも多くの契約者にとって有利になる場合もあり得る、経済全体に望ましい場合もあるということは言えるのではないかと思います。
 他方、本法案の欠点として強く主張されております、基金や劣後債務の権利者に強制的に負担を求めることができず、保険契約者ばかりが損失を負担するのではないかという問題でございますが、これは、実際には、本法案のスキームを発動する場合には、本法案に関連規定が盛り込まれておりますように、基金などの権利者と個別に交渉して債権放棄等の形で負担を求めることになるのではないかと思います。また、そうでないと、契約者の異議が成立することになると思われます。
 しかし、そうなりますと、更生特例法のときのように基金の権利者等の債権額全額の劣後を要求できないのではないかという御疑問もあるかもしれません。しかし、それは交渉次第でありますし、また一方で、いわばそれらの権利者であるところの金融機関に過大な負担を求め過ぎること自体が、場合によると金融危機の引き金になることも考えられるわけであります。
 むしろ、処理のスキームとしては、時にはですけれども、金融機関を巻き込んだような形の再建スキームを立てる方が、より実効的な、あるいはより幅広い問題解決になり得る場合があるのではないかと思います。単に生保会社の破綻処理にとどまらない、関係金融機関を含めた再建処理を進める一つの手段として、本法案のスキームを利用するといったことはあり得るのではないかと考えております。
 もっとも、本法案の予定利率引き下げのスキームは、各会社の経営者による申し立てがないと開始されないとか、幾つかの点で、私も、うまく機能するのかどうか、若干危惧を抱いている点はございます。しかし、本法案を政府提出法案として国会に提出されたということは、金融庁が検査監督権限を適切に行使することによってそのような懸念にこたえていくという決意を示されたものと理解しておりまして、果断に生保会社の危機や金融危機に対処していただくためには、本法案の成立に期待を持ちたいところと考えております。
 以上でございます。(拍手)
小坂委員長 どうもありがとうございました。
 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
小坂委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小泉龍司君。
小泉(龍)委員 自由民主党の小泉龍司でございます。
 四人の先生方、早朝から、お忙しい中お越しをいただきまして、本当にありがとうございます。厚く御礼を申し上げる次第でございます。
 今回の法案は、先生方の御指摘にもありましたように、諸外国に類例はない、前例がないわけでございます。また、何人かの先生がおっしゃいましたけれども、国民の保険制度そのものに対する信任、こういうものに動揺を与える、非常に重要な法案であろうかと思います。
 保険制度というのは、言うまでもなく、国民生活のまさにセーフティーネットでございまして、このセーフティーネットがあらかじめ変更されることあり得べしということを行政が、政治が事前にアナウンスをするという、大変大きなインパクトを持つ、国民生活に動揺を与えかねない、そういう懸念を持っているわけでございます。
 一方で、我が国及び世界経済の情勢を見ますと、デフレが長期化をしておりまして、これがいつ収束するかわからない。経済のベースが変わってきているわけでございます。その中で、長期間にわたって設計されてきた制度、これは年金制度あるいは銀行制度、あるいは場合によっては財政制度もその中に入ると私は思いますけれども、そしてこの保険制度、そういう長期の制度の存立基盤、こういうものが構造的に揺れ動いてきている。これをまた無視もできない。特に、生保と銀行の巨額な資本の持ち合い、こういうものが信用不安として銀行システムにも波及する、こういう懸念を考慮しますと、やはりこういう私的整理の方策を事前に用意するというその必要性も一概には否定できない、このように思います。
 しかし、一方で、失われる可能性がある保険契約者の利益、あるいは金融システムに対する信任、これをどういうふうに考えたらいいのか。大変難しい比較考量、金融システムというよりも社会制度にかかわる重要な比較考量の判断の場であると私は思いますので、前置きが長くなりましたけれども、ぜひ忌憚のない御意見をお聞かせいただきたいと思う次第でございます。
 金融審議会の委員を務めていらっしゃいました高橋伸子先生にまずお伺いをいたします。
 繰り返しになりますけれども、マイナスの大きなアナウンスメント効果を持つ。これは、予定利率引き下げを申請しました当該保険会社のみならず、保険業界全体に対する、保険商品全体に対する信任が揺らぐ。どれぐらい揺らぐんでしょうか、どれぐらいのインパクトがあるんでしょうかね。
 具体的には、保険契約全体の新規契約の減少傾向、これが加速されるか。あるいは解約、今大地先生からお話ありましたけれども、急速な解約が全体として進むのか。優良な企業についても進むのか。どういうふうに、どのようにお感じになっておられますか。率直に、保険契約者のお立場からお聞かせをいただきたいと思います。
    〔委員長退席、七条委員長代理着席〕
高橋参考人 お答えいたします。
 ただいまは、新契約の減少なのか、解約なのか、どちらかというようなことなんですが、私は両方あるというように思っております。
 新契約の減少に関しましては、今全体の保険市場で起こっております新契約の減少というのは、まさに景気悪化、デフレという中で、非常に収入リスクも抱えて、徐々に進んでいるということなのですけれども、それとは別に、保険の信頼性が揺らぐということでの新契約の減少というのは、特定の、言ってみれば伝統的な大手生保の中で行われることでありまして、保険会社は今非常にたくさんの数がありますので、そちらで新契約をしなくてもほかで新契約をすることができますので、新しい保険市場の担い手である生命保険会社であるとか共済制度であるとか、そちらの方には流れると思いますので、契約者にとってはほかに行くことができるというふうに思った方がいいと思います。
 解約に関しましては、解約というのは、ろうばい解約であるとか、保険会社に腹を立てて損切りして解約するというケースもありますし、これはまさにケース・バイ・ケースであろうというふうに思いますが、最近、二月から、この報道が、予定利率引き下げの法案が検討されているという報道が始まってからもまた解約がかなり進んでいるというふうに、保険会社を取材していまして聞いております。
 今、結了のものというのは昔のもので、数字が出ていないんですが、特に五月十二日の金融審議会以降のものは受け付け件数ということで、それを統計している会社もしていない会社もあるようなのですけれども、これは数字が出てくるのがかなり後になると思うんですが、きょうの審議とかこういうものを見守っている契約者がかなりおられて、それによって解約ということが出てくるかなというふうに思っております。
 量としては、申しわけありませんが、予測することはできません。
 以上です。
小泉(龍)委員 ありがとうございました。大変正確な御判断をいただきました。
 今後の審議の状況、また、国民にこれがどういうふうに伝わるのか、この法案を含む経済政策体系全体、内閣としての姿勢、そういうものが大きな影響を及ぼしていくというふうに私も思っております。
 岩原先生にお伺いをしたいんですけれども、先生は、先ほど、更生特例法をより早期に適用するという選択肢と、今回の私的整理の方法、これを比較していただいたわけでございますけれども、制度論として、今、高橋先生からお話がありましたように、未知の部分がある、どういうインパクトが返ってくるのか。世界に例がない、我が国にも例がない。金融危機という大きなベースの中で、どういう影響が出てくるかわからない。そのリスクと、こういう私的整理の方法を法的整理の前に用意するというメリット、そのリスクとメリットの比較考量、この点を先生はどういうふうに御判断をされているのか。賛成論のお立場だというふうに伺っております。金融審の部会長代理としてのお立場でお話を伺えればと存じます。
岩原参考人 お答え申し上げます。
 確かに、更生特例法を早期適用するというのが危機に対する一つの非常に有力なやり方であり、さっき申しましたように、手続の公正さ等ですぐれているところがあると考えております。しかし、さっき申しましたように、更生特例法の適用については、どうしてもいろいろ関係者が慎重になり、破綻の認定が必要になりますので、おくれがちになっているということは否定できないところであります。
 それに対しまして、新しい法案の制度によりますと、これは、要件が、破綻の前の段階で、蓋然性だけで済むわけでありますので、より早い時期での手続の着手が期待できるというふうに考えております。
 その他、先ほど意見で申し上げましたように、何点か、更生特例法の方がやや手続が、きちっとしているだけに面倒なところもございまして、柔軟な処理ができないところがあることも否定できませんので、それを考えますと、確かに、一方で先ほどから他の参考人が御指摘になっているような懸念のある面もありますけれども、逆に、柔軟な対処ができるという面で、新しい制度の方が活用できる部分もあるのではないかと私は考えております。
 以上でございます。
小泉(龍)委員 ありがとうございました。
 もう一点、法律の専門家のお立場として岩原先生からお話をお伺いしたい点がございます。
 これはこの委員会でも倉田委員から質疑があった問題に関連するんですけれども、今回の予定利率引き下げの手続に関する問題でございます。
 今回は、総代会における決議とそして異議申し立ての手続、この両方をセットにしまして、これが保険契約者全体の意思を確定し得る手続であるという法律構成になっているわけでございますけれども、保険契約者全体の意思を尊重するという観点から、こういう手続で本当に十分であるのか、契約者集会というようなものを招集することを義務づける必要性はないのかどうか、法律の専門家のお立場からぜひ御意見をいただきたいと思います。
岩原参考人 お答え申し上げます。
 確かに、この法案の手続によりますと、相互会社の場合は総代会と異議申し立てによっていわば契約者の意思を問うという形になっております。このような手続は、従来の保険業法上既にある破綻処理手続にいわば準じたものでありまして、その点でいえば、従来の制度と、形式的な手続ではまず特に大きく変わるところはないということは言えるかと思います。
 できれば契約者集会を設けた方が、より契約者の意思を問うという意味では確かに望ましいことは先生御指摘のとおりだと思いますけれども、一方で、実際にそれを開くときの手続を考えてみますと、さっき私が申しましたワーカブルかどうかということを考えると、実際にはかなり難しい。何百万人もいる契約者を大体どこに集まっていただいていいのかわからないような状態でありますので、それを考えますと、確かにそちらの方が理屈としては望ましいわけですけれども、実際にはそれがかなり困難なことを考えますと、やむを得ない一つの代替案として本法案のそのような制度も考えられるところではないかと思う次第でございます。
 以上でございます。
小泉(龍)委員 ありがとうございました。
 理解はいたしますけれども、保険という制度の根幹にかかわる部分を私的自治で変えるというその重みを考えますと、法理論的にはやはり従来の法制よりもより手厚い手続を置くべきであるという点については、理論的には先生は今肯定されたという理解でよろしいんでしょうか。ワーカブルかどうかという点において今回の法案に落ちついたんですけれども、法理論的にはより手厚く手続を置くべきであるという点についてはいかがでしょうか。確認でございます。
岩原参考人 先生御指摘のとおり、理論的にいいますと、それは、契約者集会を開けた方がより望ましいと私も考えております。
 ただ、一方で、もう一つ申し上げたいことは、この問題は、契約者個々によって、ある面、いわば契約者間の利害対立がある問題でもありますので、一面、多数決になじみにくい部分もあることも実は否定できないところだと考えております。
 以上でございます。
小泉(龍)委員 ありがとうございました。
 保険の業界の専門家、正田参考人にお伺いしたいと思います。
 今回の法案の目的は、保険契約者の利益の保護にある、これが首尾一貫した金融庁当局の、大臣の御説明でございますけれども、実際に金融情勢を見ておりますと、やはり、実質的なその背景には、いわゆるダブルギアリングの問題、銀行と生保の資本の巨額の持ち合いの問題、九兆円とも十兆円とも言われておりますけれども、この問題があって、生保が連鎖的に破綻をする、それが信用不安として銀行システムに波及していく、この圧力を減殺したい、減殺するべきである、こういう要請、またそういう法案の性格、そういうものは否定しがたいんだろうと私は思っております。
 金融庁には、どうなんですかと聞くんですが、いや、これは契約者の保護ですというお答えしか来ませんけれども、客観的にごらんになって、この法案にそういう性格、そういう要素を期待しているという点についてはいかが、そういう議論があるという点についてはどのようにお考えでございましょうか。
正田参考人 お答え申し上げます。
 ただいま小泉先生からの御指摘の点でございますが、ダブルギアリングというのはどういうことかということもございますが、恐らくこれは双方が持ち合って、いわば資本をかさ上げし合っておる、あるいは、その結果、どちらかが破綻するようなことがあれば影響が及ぶのではないか、こういう御趣旨のことかと思いますが、事実としまして、先生御指摘のとおり、生命保険会社から銀行へ、銀行から生命保険会社へという形での、お互いの資本の投入はございます。
 数字は、生命保険会社から銀行へ出されておる金額は、この決算で六兆円、うち、株式が二兆、あと四兆が劣後ローン等でございます。一方、銀行から生命保険会社に投入されておる資本性の資金は二兆でございます。劣後等が一兆、それから基金が一兆でございます。株式会社もございますが、これはネグリジブルでございますので、以上のようなことでございます。したがって、形の上では、先生御指摘のような懸念があるというふうにも思われます。
 ただ、金融機関あるいは生保がこういった資本の出し手としての行為は、これは昔からあることでございまして、なかんずく生命保険会社から銀行に出す場合は、ほとんど資産運用としての見地が従来から非常に濃厚でございます。株式の持ち合いということは元来ないわけでございますので、そういうことでもあります。そういう意味では、今申し上げましたように、数字的にも、例えば六兆と五兆とか、そういう関係でなくて、二兆、六兆というふうになっておることも間接的にこのことを物語るものではないかというふうに思われます。
 私は、個々の会社の情報につきましては正確に承知しておりませんが、日本生命とは関係がございますので比較的知り得る立場にありますので、例えば日本生命の状況を申し上げますと、日本生命も九千億程度のお金を出しております。うち、劣後が五千億、あと四千億が株式、こういうことでございますが、一方、劣後あるいは基金について、日本生命は取り入れを行っておりません。ゼロでございます。したがって、個社によりましては全くそういう関係がない、つまりダブルギアリングはないということでありますが、生命保険会社から銀行へというのは、これは大手十社、すべてございます。
 そういうようなことでございますので、私は基本的には、生命保険会社が出す場合には特に、資産運用上当然のことでございますが、いかに運用上のリスク管理を正確にしておるかどうかということが問題になろうかと思います。この点につきましては、これは個社のことではございますが、おおむねそれなりの努力をいたしておるというふうに私は承知しております。
 したがいまして、この法案自体は、銀行に対する波及を恐れて、そのことを主たる趣旨として恐らく提出されたものではなかろうかというふうに私は思いますが、私は、やはり契約者保護といいますか、あるいは破綻の未然防止というところへ力点があるというふうに思いますが、ただ、そのことを通じて、お互いに出しておる関係による破綻の波及というようなことが同時に小さくできる、そういういわば反射効果があるという点は先生御指摘のとおりかと思います。
 以上でございます。
小泉(龍)委員 もう時間があと一分でございますので、大地参考人にお伺いをしたかったんですけれども、さっきおっしゃった点、政令で三%に定めるということを前提とした議論でございますけれども、これから三%に下げたとして、予定利率を三%に下げた後、新規契約がとれない、また解約がふえる、そういう経営状況の中で、本当に十年も二十年もまた三%を維持できるんだろうかという点は大変大きな問題だろうと思います。東京生命の破綻後の予定利率が二・六であったから、契約者保護をうたう以上それより高くしなきゃいかぬという点があるのかと思いますけれども、この点について大変私は懸念を持っておりまして、正田参考人に実はお話をお伺いしたかったんですけれども、ちょうど時間が参りましたので、問題意識だけお話を申し上げまして、質問を終わらせていただきたいと思います。
 大変ありがとうございました。
七条委員長代理 次に、生方幸夫君。
生方委員 民主党の生方幸夫でございます。おはようございます。
 参考人の皆さんには、お忙しい中、朝早くからお越しいただきまして、貴重な御意見をお伺いさせていただきまして、ありがとうございました。
 まず高橋参考人にお伺いしたいんですが、今回の予定利率の引き下げの問題ですけれども、国民の九割が生命保険会社と契約をしているという中で、この予定利率の引き下げがどの程度国民の皆様方に理解されているのか、それから、予定利率が引き下げられると自分たちの保険がどういうふうになるのかをどの程度理解しているのかということ、高橋さんがいろいろ接する中でどのぐらいの理解が進んでいるかをまずお伺いさせていただきたいんですが。
高橋参考人 お答え申し上げます。
 数量的にとらえるというのは非常に難しいのですが、私が感じているのは、正確に知っている人はもちろん一割もいないという状況であろうかと思います。
 今までも、破綻してから自分の保険の内容ですとか破綻処理を勉強するというのが、残念ながら起きている状況でございまして、今回の予定利率引き下げがどういうものかということは、先ほど申し上げましたように、予定利率というものをまず知らないわけですから、これが何なのか、非常に怖いものであるということ、保険金がカットされるものであるということはいろいろ報道等でわかっているんだけれども、その手続的なことであるとか、先ほど申し上げましたように、下げればそれで済む話ではなくて、破綻につながるかもしれないなどということはほとんど理解していないのではないか、そのように思っております。
 これは、二年前のパブリックコメントのときの状態とほとんど変わっていないというふうに私は理解しております。パブリックコメントのときには、当時、国民的議論ということでしたので、金融庁の方とか私の方に報告書の説明を求めて、消費者の集会などが開かれたのですけれども、そこのところにも参りましたけれども、やはりほとんどわかっていなかったというのが現状でございました。
 以上でございます。
    〔七条委員長代理退席、委員長着席〕
生方委員 私も地元でこの話をすると、ああ、そういうことだったのかということで、新聞だけを見たのではなかなか、今現在どういう法案が審議をされていて、この法律が通るとどういうことになるのかというのが理解できないと思うんですね。
 これは、法律が通ってしまって、実際にこの法律の適用をする会社が手を挙げるというとき、風評のリスク等がございますので、実質的に契約者の方たちが知るというのは、解約ができませんよというのが発令されて初めて契約者が知るという格好になりますよね。それで、もちろん解約はできるんですけれども、一定期間はできないという格好になってしまって、異議を申し立てる方が一割あれば予定利率の引き下げ自体が無効になるということなんですけれども、これをもって金融庁は私的自治だというふうに言っているんです。
 果たして実際に、いきなり解約はできませんよという知らせが来て、それから異議を申し立てるまでの期間で、きちんと、多い生命保険会社だと一千万人以上、数百万人の方たちが契約をしている内容がスムーズに今の状態で伝わって、しっかりとした判断ができて、自治的な決定だということになるのかどうか、高橋参考人の御意見をお伺いしたいと思います。
高橋参考人 今の御質問の点は、私が一番懸念しているところでございまして、解約ができないときに初めて情報収集を始めるということだと思うんですが、そこではさまざまな風評リスクがあるでしょう。ですから、解約しない方がいい方も解約の申し込みをしてしまうとか、いろいろなケースが考えられてくるのではないかというふうに思います。
生方委員 高橋参考人も金融審議会の委員でございますが、私も委員の議事録を読ませていただきました。竹中さんは解釈の仕方がいろいろあるんだというようなことをおっしゃっておりましたけれども、普通に読めば、やはり今度の予定利率の引き下げ法案に関しては反対意見が多かったような気がするんですね。
 今度の場合も、一回だけ審議会が開かれただけで、こういう言い方がいいかどうかわかりませんが、いわば、委員長が強引に取りまとめて、引き下げる法案を出すことについては、まあ何となく了解をしたというような形で締めくくってしまったようなんですけれども、実際に、審議会の委員として、そのような会の運営の仕方と審議会のあり方そのものに対して高橋参考人がどのような感想を持っているか、お聞かせいただきたいと思います。
高橋参考人 まず、会の運営の仕方なんですけれども、保険に関するこの問題というのは、一昨年の九月以降、セーフティーネットも含めて、金融審議会では話し合われておりません。私は、やはり重大な問題だと思いますので、話し合いをしてほしいということを席上あるいは金融庁の方に直接申し上げているんですけれども、非常にデリケートな問題だからしないというまま、二月の新聞報道で動き出したということを知ったわけなんです。そのときに金融庁に問い合わせましたらば、これは行政の方の責任あるいは政治との形でやるので、金融審議会にはかけないで、法案ができてから報告する、実はそのようなお答えをいただいていたんです。
 ところが、事情が大分変わってまいりまして、五月に緊急招集のようなものがかかりましたので、そこからスタートするのかと思いましたらば、そうではないということですので、金融審議会でも、まさかここで了承を取りつけるのではないでしょうねという発言をさせていただいたわけです。
 ですので、金融審議会の位置づけに関しましては私は非常に疑問に思っておりまして、今回の法案、金融審議会の一昨年九月の、あのときにつくりました手続フローに基づいたものでなければ行政と政治の方でということが言えると思うのですけれども、先ほどの意見陳述でも申し上げましたように、それを加工して出してくるということに関しましては、やはり委員の一人といたしましては異議ありということになろうかと思います。
 ですので、審議会でも申し上げましたけれども、これが破綻前処理なのか、二年前に議論したように破綻の懸念の非常に遠いときのお話なのか、そこのところがまずはっきりしていないというところで、金融審議会をああいう形で通過したように報道されていることにつきましては、非常に残念といいますか怒りのようなものを感じております。
 以上でございます。
生方委員 私も、本当に何のために審議会があるのか、あれじゃわからない、審議会の多数意見が慎重であるにもかかわらず強引に手続を進めるというのはおかしいということで、この委員会の中でも申し上げてきました。
 それで、もう一点なんですが、中間報告の中では、少なくとも契約者の意見を聞くための契約者集会は持たなければいけないというのがたしか盛り込まれていたはずなんですが、今度の法案を見ても、契約者集会というようなものが全く位置づけられていないで、契約者の方たちは、恐らく生命保険会社から一方的に、これこれこういう理由で今回予定利率を引き下げることになりましたと、多分一番後ろの方に、異議のある方は申し込んでくださいというような格好でしか契約者の意見を述べる機会がないと思うんですね。だから、私も、この法案自体を、筋の悪い法案ですから廃案にしなきゃいけないというふうに思いますが、万々が一通る場合は、最低でも契約者の意見がきちんと述べられる契約者集会というのをきちんと位置づけるべきだというふうに考えておりますが、高橋委員はいかがでございましょうか。
高橋参考人 全く同感でございます。
 先ほど解約のところで、私的自治と言えるかどうかというお答えをしそびれてしまったのですけれども、やはり今の手続は私的自治というふうに言えないわけでございまして、金融審議会では、ワーキンググループで非常に精力的な議論をやったわけでございまして、そこの結果というのは、先ほども申し上げましたように、第六回という金融審議会のところで部会の方に報告をしておりまして、そこの議事録をお読みいただければ、これがぎりぎりの選択でナローパスなんだけれども、その契約者集会、ぎりぎりワーカブルな線を探ったというのが金融審議会ワーキンググループ及び部会が了承した結論でございますので、その契約者集会というのが抜けて私的自治だということはやはり言えないというふうに思います。
生方委員 これは金融庁の方も聞いていると思いますので、金融審議会がある、設置されていて、そこで意見を聞くということは、それを聞いたのをちゃんと法案なりなんなりに反映しなきゃいけないんで、意味がないわけで、ぜひとも金融庁の方にも審議会の進め方についてもう一回御検討いただきたいということは、この委員会でもこれから言っていきたいと思っております。
 次に、正田参考人にお伺いしたいと思います。
 正田参考人は生命保険会社に長いこといらっしゃったということですが、この法案の必要性があるということは先ほどの意見陳述でもよくわかりましたけれども、我々もこの委員会の中で、法案はつくったはいいけれども、実際にこれが適用されるのか、自分の会社が将来破綻する蓋然性があるなんということを手を挙げる会社が一体あるのかどうかというのが大いに議論になったんですけれども、今の状態のままで本当に自分の会社は将来破綻しますよというようなことで手を挙げる会社があるとお考えになりますでしょうか。
正田参考人 お答え申し上げます。
 既に金融庁からも案をお示しされているというふうに聞いておりますが、ガイドラインのようなものが用意されておるようでございますが、私は、かねて、破綻の未然防止と申しますか、あらゆる経営努力をした上で、長期的に見て当該会社の収益がどうなるかというようなことを監督官庁の方で定期的にモニタリングする必要があるのではないかということで、現実に、例えばアメリカ合衆国の場合は、個別保険につきましては二十年という長期のキャッシュフローテストを各社に課しております。
 これは、キャッシュフローテストの前提としまして、もちろん、経済環境である、あるいは運用環境である、あるいは商品構成がどう変わっていくだろうかとか、各種のファクターを指定しまして、ある種のモンテカルロ方式のような形でシミュレーションをさせるわけであります。その場合に、実際にソルベンシー責任をどういう状況下で、どのあたりで果たせなくなる蓋然性があるかというようなことを、これは当該会社と監督官庁の間で共有するわけであります。
 しかし、現実には、アメリカの場合は、こういった低金利というようなこととか、あるいは、アメリカは、例えば株式につきましてもピークからほぼ二〇%程度の下落でもありますから、そういう例は現実にはございませんが、そういうことをやっているということに私もヒントを得まして、そういうキャッシュフローテストを課すことによって、行政は日常的な面でも接触しておるわけでありますから、あわせて、事業の継続性について非常に困難が大きい、あるいは続けていくことが難しいという蓋然性が非常に高いというような判断が可能になる、客観的基準があるということであります。
 今回、私ども仄聞しておりますガイドラインというものは、これから恐らくもう少し精密に詰めていく必要があろうかと思いますが、志向されておる点は、ただいま私が申し上げましたような点と同じようなスタンスになるというふうに思っております。そういうようなことを前提にいたしますと、実際にこういう制度はワークするんではないかというふうに思われます。
生方委員 ワークするんではないかというふうにおっしゃっていますが、実際に、正田委員が現在も所属しているのかな、日本生命ほか各社十社は自分のところは手を挙げないよというふうに言っているので、自分のところは手を挙げないよと言って、では、どこが一体手を挙げるのかなという気がいたします。
 さらにもう一点お伺いしますが、とにかくこの逆ざやを解消しない限り生命保険会社の経営は安定しないんだというような先ほどの御意見、したがってこういう選択肢も用意をしておくべきではないかと先ほどおっしゃったと思うんですが、確かに、今の低金利は異常な低金利でございますし、今現在逆ざやであることは間違いないわけで、それから、八〇年代に結ばれた契約でいうと五・五とか、五%とか四・五とか、それまでの高率の運用が今できないというのも確かだと思うんです。
 これは、確かに八〇年代に契約を結ばれた方たちの契約であって、何年かすれば、こういう言い方はよくないでしょうけれども、いずれなくなることはなくなるわけですね。当然、生命保険会社ですから、その契約を結ばれた方がお亡くなりになればこれはなくなるわけですから。そうして、今現在入っている方は、そういう状態ではなくて、一・五とか一・二で入っているわけですね。したがって、未来永劫逆ざやは続くんだという説明はおかしいのであって、何年かたてばこの逆ざやは解消するでしょうし、今のような異常な低金利というのも未来永劫これは続くわけじゃないわけで、それを、今の時点だけ区切って、このままいったら生命保険会社の経営は危機になるから予定利率を下げたらいいと。
 これは、元来は、生命保険会社と国民というか個人個人が契約を結んでいるわけですね。まさか、契約をしたときにその契約内容が将来法律で変わるなどということはだれも予想していないわけです。これはやはり、生命保険会社の経営にとっても、経営の根本にかかわる不信を生む内容だと思うんです。それを法律でいわば無理やり通してしまうことが本当に生命保険会社のためになるのかどうかということを私は考えているんです。
 だからこそ、有力十社と言われるところはどこも自分のところは手を挙げない。自分のところは手を挙げないと言いながら、その法案に賛成だというのは、何か論理矛盾なようにも聞こえるんですが、今の私の意見に対して、いかがでございましょうか。手短にお願いします。
正田参考人 お答え申し上げます。
 まず、逆ざやが継続するのかどうかというお尋ねにつきましてでございますが、確かに、保険契約が目的を終了いたしましたりあるいは解約があったりしましたら減少するわけでありますが、現在五・五%等の非常に極端な高い予定利率の契約の影響は、大体十社平均して見まして、毎年〇・一%程度しか平均利回りが落ちてこない、減少等による影響は。でございますので、これは、五・五%とか、あるいは場合によりますと六%というようなことで利殖されるわけでございます。一方、一・五とか一・二%で入られた新しい契約は、これはまた一・五とか一・二%で複利増殖されますのでなかなか平均コストが下がらないというようなことがありまして、決してこれは一過性のものではない。そういう意味で、平均予定利率の問題は、恐らく、私は、将来、十年というようなタームで余り大きく変わらないということになろうかというふうに思います。
 そのことを前提にいたしますと、やはり、この運用環境下でこのまま放置して、そして破綻に至らしめるというようなことは、これは契約者の利益にも反する、こういうふうに考える次第であります。
生方委員 次に、大地参考人にお伺いしたいんですが、今お話にもございました、いろいろな会社がこの不況の中でいろいろ苦しい思いをしているわけですね。いわゆる三利源と言われているものの中で死差益や費差益というものがある。死差益は、これは死亡率ですから努力によって変えられるものじゃないと思うんですけれども、費差益の部分、これは各社、いろいろな、リストラをやったりしてできるだけ引き下げようという努力を、いろいろな会社が、生命保険会社以外のところがやっているわけで、これは生命保険会社さんが求めたわけじゃなくて金融庁がそのスキームをつくっているんですけれども、生命保険会社がその経営努力が足りているのかどうか。
 八〇年代に高い金利をお約束したのは、生命保険会社がそれだけの金利で運用できるという自信があってやっているわけで、将来金利が下がったのは自分たちの責任じゃないというのは、まさに責任転嫁だと思うのであって、そういうことも見越した上で超長期の契約をしているわけで、今現在それを法律によって予定利率を引き下げていいというようなことができるのかどうか。
 生命保険会社のそういう経費削減の努力なり経営努力なりというのが十分であるのかどうかということをお伺いしたいと思います。
大地参考人 端的に言いますと、今、わかりやすい数字を説明しますと、内勤職員数それから総資産、総資産を内勤職員数で割りますと、いわゆるその会社の大体の効率が読めると思うんですが、十社の中、一番コストがいい生保、一人頭約四十億円です。それから、悪い生保、十七億円ぐらいです。つまり、経営努力している中で、俗に社内リストラといいますか、その辺を考えますと、やはり危機感のある生保は早く着手した。ところが、まだうちは大丈夫だというふうに外にも内にもやってきた生保は、そういうところが後手に回った。同じことが、いわゆるシステムインフラ、それから営業職員に対するコスト問題、この辺にも同じようにあらわれていると思います。
 そういう面では、先ほどちょっと触れたんですけれども、経営体質の危機感を、早く着手した生保は、当然運用もそうなんですけれども、そういう社内改革、そういうものに早目に着手して身軽になっている。ところが、それにおくれをとった生保は、コストが高いまま、しかも運用リスクを抱えたままですから、なかなか方向性としては改善しないというのが現状であるというふうに判断しております。
 以上です。
生方委員 結局、手を挙げるところは非常に経営内容が悪いところだということで、予定利率を下げるということを決定したとしても、その一社で立ち行くことはできないはずですよね。そうなりますと当然スポンサーがつかなければいけないということになりますが、今金融庁が予定をしているのは、実際これはどうなるのか、政令で決められるということで、わかりませんが、仮に三%に予定利率を引き下げて、それならば大丈夫だと、今おっしゃったように経営内容が極めて悪い会社が三%まで予定利率を引き下げるということを決定した場合、スポンサーとして手を挙げるような会社があるというふうにお考えになりますでしょうか。大地参考人に。
大地参考人 少なくとも、三%に下げて、かつ、ちょっとこれは言いづらい表現ですけれども、命令系統がはっきりできるならば、あらわれる可能性はあると思います。
 つまり、単なるA社とB社が統合という形であるならば、これは命令系統がそれぞれ錯綜しますので、なかなか、俗に言う、いわゆる健全であるという生保があるとするならば、そちらが、経営内容が厳しい生保と一緒に統合した場合には、命令系統、これはまだ両立していますので、なかなかそこで両社、総合的な社内改革、いわゆる効率化ができるかというと非常に難しい。ところが、更生特例法等の場合には命令系統が明文化しますので、やはりそこの中においてはむだなものは一切切り捨てるとかいろいろな効率化ができる。
 そういう面では、三%に下げたから、それだけで、もし手を挙げて統合する可能性というならば、する側は非常に難しい選択だと思います。
 端的に言うならば、それだけでのんだ場合には、早い話が、引き下げをやった生保は、今の格付会社、スタンダード・アンド・プアーズもムーディーズも、それから先日フィッチも、いわゆるデフォルトであるという判断をするということを明言していますので、そういう生保を抱え込んだ段階で、形では破綻はしていないんだよ、だから今の我々の経営方針でやっていきますよという、経営としては非常に難解な作業を抱え込まなくちゃいけない。
 果たしてそういうことが現実的に可能かとなると、私は、これははっきり言って否定的な見解を持っております。
生方委員 岩原参考人にお伺いしたいんですが、先ほどの一番最初の意見陳述の中で、生保自体の経営は非常に今悪化しているというふうにおっしゃいました。
 我々が生命保険会社の経営が大丈夫なのかどうかを見る場合は、ソルベンシーマージンという数値を見るしかないわけですね。現実に、金融庁も、ソルベンシーマージンが二〇〇%を割った場合にいろいろな行政指導を行うというふうになっているんですが、少なくとも数値を見る限り、一番悪い会社でも三七〇ぐらいあって、普通の、ごく一般の国民の方たちが見れば、二〇〇でようやっと何かしらの措置をとらなきゃいかぬということがあるにもかかわらず、みんな三七〇とか四〇〇とか、あとは五〇〇以上、一〇〇〇以上のところもたくさんあるわけで、そういう状況の中で、何で今こういう法案が出てきたのだろうかというふうに素直に疑問に思うんだと思うんですね。
 そうしましたら、やはり、アメリカのRBC方式でやればその数値はかなり減るんだというようなことも言われておりますが、ソルベンシーマージン自体が、積算方法そのものがおかしいんじゃないか。それであれば、やはりそれをきちんとしたものにして、国民が理解できるようにするというのが第一歩じゃないかというふうに思うんですが、いかがでございましょうか。
岩原参考人 お答え申し上げます。
 先生御指摘のとおり、我が国のソルベンシーマージン基準につきましてはいろいろ問題点が指摘されておりまして、深尾参考人の御意見にもあったと伺っております。私も、実態よりはやや甘い数字が出ているのではないかと思っておりまして、そういったソルベンシーマージンの規定をもっと厳しいものにするといったことをまずやるべきだという点では、先生と同じ意見でございます。
生方委員 例えば、どこの部分をどういうふうに変えたらいいというふうに御意見をお持ちですか。それをお伺いしたいと思います。
岩原参考人 むしろ運用の方が問題だと思っておりまして、例えば税効果会計にしましても、「りそな」の場合にも問題になりましたけれども、むしろ、ルールそのものよりは、それがきちんと適切に会計監査され、そして、本来の会計ルールどおりにきちんとそれが適用されているかどうかといった点が問題ではないかというふうに認識しております。
生方委員 普通の国民が、契約者が知る場合、ソルベンシーマージンしか生命保険会社の経営を理解するあれがないんですね。いわゆる三利源と言われているものについても、我々もこの委員会で、公表するべきだということを再三申し上げたんですけれども、それを公表すると風評被害につながるとか変に誤解を与えるからというような形で逃げてしまうんです。
 そうなりますと、契約者が、本当に今自分が契約をしている会社がまともなのかどうか判断する基準が何もない、そういう状況、情報公開を十分していない段階で、いきなり予定利率を下げるといっても、では何をもってそれが適切なのかどうかということを国民が理解したらいいかということになると思うんですが、その点はいかがでございましょうか。
岩原参考人 確かに、こういった新しい制度を導入する前提としては、生保会社の経営の実態をよりよくディスクローズして、契約者の理解を得なければならないということは当然だと考えております。
 以前に比べますと随分改善したと思っておりまして、先ほど私が申し上げましたような数字も前には全然出ていなかったわけですけれども、それが出るようになったということではその実態の認識がより可能になっておりますが、先生御指摘のような三利源等については、私も開示するのが望ましいと考えております。
生方委員 重ねての質問なんですけれども、そういう情報公開がない時点で、現在まだ三利源を公表するとは言っていないわけですね。言っていない段階で、それに先行してこの法案が通ってしまえば、では、国民がどうやって何を理解すればいいのか。自治的な決定だというふうにいっても、何をもって理解していいのかというのが明らかにならない以上、少なくともこの法案に賛成するわけにはいかないんじゃないかというふうに思うんですが、いかがでございましょうか。
岩原参考人 具体的にどの点についてどうということは、私もちょっと申し上げられませんけれども、先生御指摘のように、よりディスクローズを充実させるということが、この制度を実際に定着させ、実際にうまく機能させる上で必要なことだと理解しております。
生方委員 定着させると言っても、今現在、まだ三利源が公表されていない時点ですから。法律が仮に通ってしまえば、七月から発動するというようなことも言われておりまして、そうなりますと、そういうものが十分に発表されていない時点で、セーフティーネットですからいつ発動するかわかりませんが、発動してしまう可能性があるわけですよね。
 そうしましたら、先生のお考えとして、少なくとも国民が十分判断できる情報を生命保険会社が開示するまでの間は、この法律は適用されるべきじゃないというふうにお考えだと理解してよろしいでしょうか。
岩原参考人 私は、よりディスクロージャーを進めるとともに、この制度も同時に導入するのが望ましいというふうに考えております。
生方委員 余り納得ができないんですけれども。
 正田参考人にお伺いしたいんですが、今私が述べましたこと、国民の皆さん、契約者の方たちに予定利率を引き下げてもらうということをやる場合、どういう数値をもとに契約者が判断すればいいのかということで、今現在生命保険会社が公表している数字が十分であるというふうにお考えになっていますか。
正田参考人 それぞれの会社が随分とディスクローズ資料は強化しておるように私は承知しております。
 御指摘の三利源につきましては、これも、実は部分的に公表されていないという程度のことではないかというふうに思います。現在、ディスクローズ資料によりますと、逆ざや額は出ておるわけですね。同時に、基礎利益の総額も出ておるわけです。そこからしますと、当然、先生御指摘のように確かに完全には出ていないわけですけれども、いわば死差益と、つまり死亡率差益と、販管費差益のようなものでございますね、費差益、これは合計としては把握できるわけでありまして、これをさらに二つに割れというのは、現実的にどういう効果があるのかなというふうに私は思います。利差の部分を補てんしておる財源がその二つにあるから二つの総量がどうかという話はともかく、もしもこれをさらに細分化しても、これは内部管理資料でありまして、一般の契約者はあるいはますます混乱するかもわからない。
 現実に、ある会社は、営業店舗を借家物件で賄うという会社もあるわけです。これを自家用の営業不動産として所有している会社もあるわけです。長期的な損益は、なかなか難しいところですけれども、実は自分の会社を自分で、つまり自家用物件を持っておりますと、そこは利差効率の中に入っちゃうわけです。今度、賃貸物件で持っていますと、これは費用になりますから、費差益は小さく出てくるわけです。そのかわり、利差が大きく出ておる、こういうようなことがありまして、いわば二つに分けることによってやや無用の誤解が生ずるというのは、そういうところにございます。
 では、これは全部統一基準でやればいいじゃないかといいましても、これは各社の経営政策で、そちらを是とする、各種、多面的な理由があろうかというふうに思います。
生方委員 高橋参考人にお伺いしたいんですけれども、私もこの委員会で質問をしたときに、予定利率の引き下げは一回だけですかというふうに聞いたら、一回だけとは限りませんよと。竹中さんは、恐らくこれは一回しか適用はできないでしょう、まさか二度も予定利率を下げるわけにはいかぬだろうというような答弁だったんですけれども。それならば、法律の中で、これは一回限りしか下げられないんですよというふうに盛り込めばいいじゃないかと。先ほども申し上げましたように、我々は廃案を目指しておりますので、修正を目指しているんじゃないので、そういう意見を言いようがないんですけれども。
 仏の顔は三度までなんでしょうけれども、これは、一回じゃないとなると、契約者の方が、仮に今三%になったとしても、この先また経営が悪くなれば、また予定利率が引き下げられるかもしれないという不安があるとすると、保険本来の持っている意味そのものが私は失われてしまうと思うんですね。この先また下がるのかというふうになれば、将来設計をみんなそれぞれ考えているわけですよね、養老保険に入っている方なら幾ら入ってくるというのが、今度の法律ができてしまうことによって、保険の機能そのものに疑問符がついてしまうんじゃないかというふうに懸念するんですけれども、いかがでございましょうか。
高橋参考人 今の御意見ですけれども、私も全く同感でございます。
 ただ、一回だけ下げるということが実際にできるのかというと、多分これはできないでしょうから、こういう法律の構成そのものが無理があるのではないかなというふうに思います。
 これがもし通ったとしましても、引き下げがあるのかなということに、それが一回で済まないかもしれないということになりますと、やはりそこのところは、契約者は、そういう逆ざやを抱えるような会社からは契約を引き揚げた方がいいのかなと。引き揚げる場合に、いわゆる予定利率の高い、保険会社が本来ならばやめてほしい、やめていただいてもいいですよという契約ではなくて、ほかの、保険会社にとっての優良契約といいますか、死差、費差の大きい契約の人たちが逃げ出すことによって、まさに生保が窮地に追い込まれるのではないかなというふうに思っております。
 以上です。
生方委員 岩原参考人にお伺いしたいんですけれども、これは先ほども申し上げましたように、三%かどうかというのは政令で決められることで、我々もわからないんですけれども、仮に今三%まで予定利率を引き下げることができるとすると、生命保険会社の経営というのはこれから先十年ぐらいは大丈夫だというふうにお考えでございましょうか。
岩原参考人 私は、法律家の方であって、経営の専門家でないので十年先までの見通しはとてもできないわけでありますけれども、例えば東京生命の場合は二・六%だったわけでありまして、本当に早目に手を打つことができて、そして東京生命のような経営環境の場合であれば、それでもうまく回っていくわけでございますので、そういったスキームであれば、三%で、十年先はどうかまではちょっとわかりませんけれども、近い将来は多分動いていくのではないかと思います。
生方委員 重ねて法律家の立場ということでお伺いしたいんですが、もともと予定利率の引き下げというのは業法の中にあって、それが九六年の業法改正の中で、予定利率を行政命令によって引き下げることをできなくする、これはもちろん財産権の侵害に当たるおそれがあるからということで、一たんなくなったわけですね。それを今回再度引きずり出してきた。
 その前に更生特例法というのをわざわざつくっているわけですよね、生命保険会社をいかにスムーズに破綻させるのかと。実際、更生特例法を適用して、幾つかの生命保険会社が、スムーズにといったらいけないんでしょうが、少なくとも大きな混乱がなくして、破綻というかスポンサーが引き取られて、契約者は、予定利率は引き下げられましたけれども、そのままの状態で来ているという事実がある。
 そうしましたら、私は、本来であれば、更生特例法がもし問題があるというのであれば、それの改正を先にやるべきであって、いわばいきなり国民の財産権にも及ぶような予定利率の引き下げというところまで一気に行ってしまって、現実にそれが使えるのか使えないのかというと、ほとんどの方たちが使えないという法律をここで論議しているというのも全くおかしな話になってしまうんじゃないかなという気がするんです。
 現在の更生特例法を変える部分があるとすれば、どの部分を変えなければいけないというふうに思っておられるのかということと、財産権を侵害するおそれがあるということで一たんやめた法律をまたここでつくり出してくる、わずか七年ぐらいしかたっていないで持ち出してくる政府の失政についての御意見というのをお伺いしたいと思います。
岩原参考人 お答え申し上げます。
 まず、更生特例法の問題でございますけれども、指摘されている問題としては、例えば更生特例法ですと、大体六カ月ぐらい業務停止をしなければなりませんで、その間にいわばのれんの価値とかそういったものが減少していく。あるいは、これは業法改正によって契約者に対して先取特権を認めたこととの関係で、それ以外の一般の債権者の立場が非常に厳しくなってしまって、再建にどこまで協力してもらえるのか。これはいわゆる双務契約に関する破産法の一般規定ともかかわってくるんですけれども、そういった幾つかの技術的な問題がございまして、そういった点については、私も更生特例法はなお改正の余地があるのではないか、ただ、いずれも難しい問題でありますけれども、そう考えております。
 ただ、もう一つ言えることは、更生特例法はやはり裁判上の手続であって、権利をきちんと確定して、契約者の債権額はどれだけであって、そしてどれだけカットしたらいいかということをきちんと債権表をつくってやっていくといったようなことが必要でありますので、どうしても司法制度としてのいわば厳しい形式あるいは手続が要求されるところがありますので、そういった点については、より柔軟な手続としての今回のようなスキームも別にあってもいいのではないかという意味で先ほど申し上げたところであります。
 それから、現在の保険業法を制定するときに、それまであった予定利率の引き下げの制度、かつての十条三項、それから四十六条でしょうか、それを廃止しておきながら、なぜまた復活するようなことをするのかという御指摘であります。
 私自身は、平成七年の業法改正のときにも加わりまして、実は私は少数派で、あの制度を残した方がいいんじゃないかと言っていた人間だったのであります。
 いわば、経済というのはいつもいい天気ばかりではなくて、かつての旧業法は、まさに昭和恐慌で生保会社が非常に破綻した、それに対する非常な危機感からつくられた法律でありまして、七年の業法の改正作業中はまだ現在ほどの経済状況でなかったために、なるべく、できれば法律の大原則に戻って、契約は守るということにしたいというのが多数派で削除されたわけでありますけれども、私は、やはり経済には一方で非常な危機の場合もあるので、そういった備えはあった方がいいということで、私一人が実は少数派だったのでありまして、その意味では、今回の改正は、ある意味で本来あってもいいものを復活させるものだと個人的には考えております。
 以上でございます。
生方委員 これで終わりますが、更生特例法を適用すれば予定利率は確かに三%よりは低くなるかもしれませんけれども、私は、契約者はそれで納得すると思うんですよね。わけのわからない形で法律で一方的に引き下げられるより、きちんとした法的手続のもとで透明になって、破産したんだからこれだけの損をこうむるのは自分たちの責任があるということであればはっきりすると思うので、今のような状態で、法律で一方的に決めて、十分の一の異議がなかったからこれでみんなが納得したというのは、私はやはり民主主義の原則にももとるんじゃないかなというふうに思っております。
 きょうは、ありがとうございました。
小坂委員長 次に、中塚一宏君。
中塚委員 自由党の中塚でございます。
 参考人各位には、大変御苦労さまでございます。
 この法律、提案の理由というか目的が、超低金利が継続する中で、逆ざや問題を解決し、保険契約者の保護を図るための制度としてということが書いてあって、一体何を目的としているか、ちょっといまいち私にはよくわからない部分があるんです。
 そういう意味で、四方に順にお伺いをしたいんですけれども、同じ質問を四方に伺いますが、契約者の保護ということ、契約者の保護というのは一体何なんだろうか。
 というのは、そもそも生命保険というのに、契約者の保護をする必要があるのかどうか。
 例えば、セーフティーネット、特例措置の議論を四月にいたしました。そのときも、生命保険というのは別に金融システムに関係があるわけでもないという意味で、では保険契約者の保護というのをする必要があるのかねというふうな議論もあったわけなんですが、セーフティーネット自体は延長ということになりました。
 ただ、こういう経済状況でもありますので、社会不安等を助長しないために一定の配慮みたいなものが必要なんじゃないかというふうな議論も他方あるわけなんですが、今回の法律のように、ある一部の保険契約者に泣いてもらって保険システムというふうなことを竹中大臣はよく言うんですが、これも全く新しい言葉で、金融なら金融システムという言葉はありますが、保険に保険システムというのは、ちょっと耳なれないような言葉まで持ち出して保険契約者の保護を図る必要があるというふうな議論までしているわけなんですけれども、この法案と関係をして、保険契約者の保護というのは一体どういうことだとお考えなのか、高橋参考人からお伺いをいたします。
高橋参考人 冒頭の意見陳述でも申し上げましたように、私は、保険契約者の保護というのは、保険契約の継続困難性といいますか、お金を返せばいいのではないという話に対してきちんと対処することだと思っております。
正田参考人 契約者の保護とは何かということでございますが、これは、保険システムというふうに大臣がおっしゃったということで、私どもは保険制度というふうに考えておりますが、健全な保険制度の中に契約者として集団を形成して、ライフスタイルの各部署に必要な保障ニーズを、合理的な保険料で、保険金等の給付を受ける、あるいは受ける期待を継続して持つというふうに考えております。
 したがって、会社が破綻等をしますと、なかなか現実には、今申し上げましたような関係が難しくなる。ですから、ゴーイングコンサーンを前提にした方が契約者保護上は現実には有利に作用することが多い。具体的には申し上げませんが、そういうふうに考えております。
大地参考人 一言でいいますと、約束した保険金をちゃんと払ってもらえること、これだけだと思います。
 それで、経営上もし不可抗力、破綻であるとかもろもろが生じた場合には、それが再生不可能であるならば、いわゆる毀損した部分をカットして保険金額を減らすとか、これは契約者は、過去七社破綻していますけれども、納得している方々は、それは心情的にはどうかわかりませんが、保険料をちゃんと払い続けておりますので、そういう二段構えといいますか、ちゃんとした、そういうふうな筋の通ったルールが明確化されるならば、それが保険会社の契約者に対する大きな責務であるというふうに考えます。
岩原参考人 お答え申し上げます。
 保険というのは、いわば、我々人生で直面するいろいろなリスクを担保するのが保険制度であります。とりわけ生命保険であれば、人間の生死という、例えば一家の大黒柱が亡くなられてもう一家の生活が成り立たなくなるとか、あるいは年をとってもう働けなくなるので年金として受け取りたいというような、いわば人生のリスクを担保するためのものが保険だと考えております。
 いわば、人間生活の上の一番基礎的なセキュリティーを守るのが保険制度でありまして、したがいまして、確かに、金融システムのような意味での、それを守らなければ社会全体が困るというのとは意味は違いますけれども、我々が生活していく上での一番のベースになるセキュリティーを守ってもらうという意味で、やはり保険も社会的に特別に保護する必要のある制度だと私は考えております。
 そこで、契約者保護は何を意味するかというと、そういう意味での、最低限の社会生活の上での安全を守るという意味での保険制度がきちんと提供されて、そして保険に入った人がそれなりの保険サービスをきちんと受けられていくということが保険契約者の保護だと考えております。
 それなのに、なぜこういうふうな制度をつくって保険給付の内容をカットするようなことをするのかという御質問だと思います。
 私も、できればそのようなことはなるべく避けるべきだと思いますが、一方である人たちだけが高い利率で入って早目に満期が来て非常に高い予定利率の保険金を受け取れるのに対して、残った人たちが、そういう人たちのために高い保険金を払ったために保険会社の経営が傾いてしまって、保険給付をほとんど受けられなくなるというようなことが起こるとすれば、それはまずいことだと考えておりまして、保険契約者全体としてそれなりのきちんとした、セキュリティーを守るための保険給付が受けられるような仕組みがなければいけない。
 その意味で、一部の、特に予定利率が高くて高い保険金を受け取れる人に少し削ってもらって、それによって保険会社の破綻を防いで、それ以外の人たちが給付を受けられなくなるというようなことを防ぐということは、私はあっていいことだ。本当にきちんとその手続をし、そして最低限の公正さを守るという条件の上でありますけれども、そういうことはあり得るのではないかと考えております。
 以上でございます。
中塚委員 保険契約者の保護というのは、保険会社と保険契約者の間で情報の非対称性みたいなものがありますから、そういったところをきちんと行政側が監督するということをもって、ちゃんと保険契約を履行させるというのが、そもそも金融庁の仕事、金融行政のとるべき態度である、私はそういうふうに考えております。
 次に、保険契約者の保護というふうに言うんですけれども、この法律が施行されて、では保険会社がぱっと手を挙げて、うちの保険会社は実はこのままではやっていけないんですということを言ってくるわけですね。
 破綻した方が得か、この法律をやった方が得かという議論をよくされるんですが、実は、そうじゃなくて、両方とも損なわけですね。結局、予定利率は下がるわけだし、破綻したって損になるということで、どっちが得かの問題じゃなくて、両方とも損だ、そういう種類の法案だと私は思っていますが、両方とも損であるにもかかわらず、こっちの、今審議している法律というのはいかにも入り口のところが不明朗であって、将来にわたって保険業継続が困難となる蓋然性があるというふうなことを申請してくる。
 他方、これだけ保険会社の経営内容等がディスクロージャーされていない、逆ざやの問題は大分前から逆ざや、逆ざやといろいろな人が言いますけれども、ただ、それだって実態的なことについてはきっちりと言われているわけではない。では、申請をしてきた保険会社が、果たして本当に保険業の継続が困難な蓋然性を持った会社なのかそうでないのかというのは、見きわめるのには大変に困難がつきまとうのではないかというふうに思うんですが、このことについて、同じように高橋参考人からお一人ずつ御意見を。
高橋参考人 お答えいたします。
 保険会社の破綻の蓋然性、その蓋然性というところは、私も、当初から、非常にあいまいであって困りますということを申し上げております。やはり、合理的な判断基準がないといけないと思います。契約者にとってその辺の手続の透明性というのを確保していただかなければいけないわけで、保険会社とそれの申請を承認する行政との間で内々にやりとりをしてというふうなことに関しては、一般契約者・国民は納得がいかないのではないかというふうに思います。
正田参考人 お答え申し上げます。
 保険業の継続が困難となる蓋然性を何で見るかというお尋ねかというふうに思いますが、これにつきましては、将来を見通しまして、経営上のあらゆる一般的努力を傾注してもなおかつ保険業の継続が困難になるというような、いわば合理的な予測ができた場合であるというふうに考えます。
 合理的予測につきましては、先ほども申し上げましたが、将来収支予測等、現在ガイドラインが示されておりますが、もう少しこれを精密に検討いただきまして、情報を共有する中からおのずとその必要性が浮かび上がってくるのではないか、かように思っております。
大地参考人 経営責任とか、それから現在持っている責任準備金の精査はやるわけでもないわけですから、これでもって、蓋然性という漠然とした方程式でとらえ直しをして、これがどうだこうだということを言うならば、全くこれは判断すること自体が私は予測不可能だと思います。
 少なくとも、こういう基準値でこうであった場合はこうなりますよと、それなりの、破綻した場合には当然精査をやりますので持っている資産すべてわかるわけですけれども、それすらもやらなくて、ただ表面上の、三%に切り下げだけをやったとするならば、経営責任であるとかそれから中身の資産の精査であるとか、これをおろそかにしてやること自体がいわゆる実効性という面では全く意味をなさないというふうに私は思っております。
岩原参考人 お答え申し上げます。
 確かに、蓋然性というようなことを判断していくのは大変難しいとは思いますが、ただ現行法でも、先ほど正田参考人が御指摘になりましたように、業法百二十一条一項三号に基づきまして、施行規則七十九条の二による将来収支分析というものを行っております。現在は五年間の将来収支分析と理解しておりますが、それをさらに十年程度のものにし、そしてそこに幾つかの与件を定めることによって、少しでもより明確なルールのもとでの将来収支分析を行って、それによって蓋然性をはかっていくということがなされるべきではないかと考えております。
 以上でございます。
中塚委員 次に、仮に保険契約者の保護のためにこの法律をつくる必要があるとするならば、ある意味、再建とか破綻前の私的整理的な意味合いを持つんだろうというふうに思います。賛成するわけではありませんが。
 ただ、その場合であっても、契約者の保護ということをうたっている以上、保険会社が優先的に弁済しなければいけない債務というのは、一番は保険契約、二番が一般債権、三番目が基金なり劣後ローンということで資本に当たる部分ということになるわけですから、契約者の保護ということをうたう以上、真っ先に崩さなきゃいけないのは基金なり劣後ローンというところでなけりゃおかしいわけですね。
 そのことについても、実は、この法律というのはそういう明確な記述というのがないわけですけれども、このことについてまた同じように、高橋参考人からお一人ずつ御意見を伺います。
高橋参考人 お答え申し上げます。
 契約者がまさに劣後してしまうというものは契約者保護でも何でもないわけでございまして、少なくとも、こういうものの制度を取り入れる場合には、債権の先取りの順番につきましてはきちんと、明確に法律にうたっていただくということが私は必要だと思います。
 以上でございます。
正田参考人 お尋ねの点につきましてお答え申し上げます。
 契約者の理解を得るために、基金、劣後ローンの合理的な縮減は、これは私は必須であるというふうに思っております。
 ただ、この法案は、基本的にはいわば企業を再生、発展させるという、ベースがゴーイングコンサーンにあると私は思っております。一方、更生特例法の場合は、これは基本的には破産法制である。そういうところから、例えば資本性のものの扱いにつきまして、若干、継続を前提にした場合とそうでない場合とは、実質的には幾らかの取り扱いの違いが生じてしかるべきではないかというふうに思います。
 継続するわけですから、その資本が全くなくなるわけにはいかない、では、どういうふうにして注入するか、こういう問題が生ずるわけであります。さりとて、まさに一般債権でありますから、そこのところの折り合いが大変でございましょうが、これは現実には私的な話し合いの中で徹底的に進めていくところである、かように思います。
大地参考人 予定利率の引き下げそのものが、これは格付会社も言っているんですけれども、約束不履行であるということから考えますと、経営責任、これは問われないこと自体がおかしいわけでして、やはり経営のやり方が失敗したからここに至ったわけですから、まずそこの部分はしっかり明文化する必要がある。
 もう一つは、基金と劣後ローンというのは、特に劣後の場合は、それが条件で資金提供をやったわけですので、そこを踏み外すとするならば、どこが法律なのか。非常にあいまいもことした経営が成り立つ。これは、契約者保護という観点からしても全く意味をなさないというふうに考えます。
岩原参考人 先ほど申し上げたところでもございますけれども、実際上の運用といたしましては、事前に基金の権利者あるいは劣後債権者と協議した上で、債権放棄をするような形で行われると理解しておりますし、そうでないと契約者の理解が得られず、異議が成り立つようなことになるのではないかと考えております。
中塚委員 それでは最後に、正田参考人と大地参考人、お二人にお伺いをいたします。
 仮にこの制度が成立をしても使われなかった場合というのはあると思うんですけれども、ただ、こういう制度が日本に存在する、しかも世界じゅうどこにもないわけですね。ということになると、やはり日本の生命保険会社は大丈夫なのかというふうなことを世界から言われかねない、マーケットから見られかねないんじゃないか、そういう危惧を持っておりますが、その点についておのおのの御意見を伺いまして、終わります。
正田参考人 お答え申し上げます。
 確かに、こういった保険金の削減であるとかあるいは保険料の増徴であるというようなことを行った経験は、内外含めましても非常に少のうございます。それは制度の有無とも関係するわけでありますが。
 これは、ドイツ法には現にありまして、ドイツ法を使ってオーストリアで、ここは予定利率とかなんとかいうんじゃなくて、保険料そのものを何%引き上げるというような漠とした改正を、保険料の構成自体が違うということもございます、そういう例は一つある。日本の場合も、戦後、ローディングですね、費用につきまして変更した経験を持っております。
 いずれにしても、緊急避難的な性格のものであったわけでありますが、現在のこの予定利率をめぐる環境といいますのは、場合によりますと事情の変更の原則であるとか、あるいは先ほど申しましたドイツ法で言うところの、契約当時の基盤の喪失の理論というようなものに相通ずるような状況があろうかと思いますので、私は、よく説明をすれば、しかもこれは選択肢として入れるというようなことでございますから、その合理性を御理解いただけるというふうに思っております。
大地参考人 基本的に、破綻でもない、かつ健全でもない、そういう非常に中途半端な生命保険会社に対して契約者が保険料を払い続けること自体非常におかしい。
 実際はそういう、契約者がいわゆる新規契約をしてどんどん増加するか、これは非常に考えづらいと思います。かつ、現在、そういう生保であるだろうというところに入っている契約者は、むしろ増加しないで減っていく。だから、まさしく明文化して定義をしっかりしたものならいざ知らず、非常に中途半端で、不安を感じながら保険料を払い続ける生命保険の制度そのものは、私は成り立たないというふうに思います。
中塚委員 ありがとうございました。終わります。
小坂委員長 次に、吉井英勝君。
吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。
 四人の参考人の皆さんには、きょうは大変お忙しいところ、ありがとうございます。
 順番に伺っていきたいと思いますが、最初に高橋参考人に。
 ことし五月十二日の金融審の会議録で私は見せていただいておりまして、契約者集会について、「これは絶対入れないとこの手続自体を私的自治にゆだねることはできない」と、ワーキンググループのことが紹介されたような話もお引きになって結論を紹介しておられますが、高橋参考人のお考えと、当時、審議会でこうした結論を出した理由、それを伺っておきたいと思うんです。
高橋参考人 それは、この契約条件変更の制度自体が私的自治にゆだねるというものでございました。今回の法案は私的自治にもゆだねられていないのではないかという部分があるんですが、少なくとも、二年前の議論のときには私的自治にゆだねるということが大原則でございましたので、私的自治をきちんと全うするためには契約者それぞれの方々の意思決定が非常に重要になるわけですから、その意思決定の場ということで契約者集会が必要でしょうと。人数が多い会社その他ありますけれども、そこは工夫で何とかやってください、これがクリアできませんとこの制度自体がまさに申し出ることはできないんじゃないでしょうか、そういうふうにワーキングでは私は意見を申し上げた記憶がございます。
吉井委員 それから、高橋参考人、引き続いて、解約制限の問題について伺っておきたいんですが、ことし一月三十一日の金融審第十七回総会・第五回金融分科会合同会合で、「金融審議会第二部会及び作業部会のメンバーとして当時検討に加わったのですけれども、司法手続によらない条件変更時に解約を停止するということはできないというのが当時の結論だった」と発言しておられます。これに対する金融庁側の答えが、要するに議事録で見当たらないわけです。この点についての参考人の御意見と、金融庁の方からどういう御説明があったのか、伺っておきたいと思うんです。
高橋参考人 お答え申し上げます。
 一月の審議会のときに納得できる御回答がいただけなかったものですから、その後も金融庁の方に何度かお問い合わせをさせていただきまして、いただいていますお答えは、内閣法制局の方の見解ということで、離脱の自由を保証すれば解約を停止してもよい、そういうふうな形で解約停止をかけることが考えられるというようにお答えをいただいております。
吉井委員 それから、高橋参考人に再編の問題についても伺っておきたいんですが、この法案は、予定利率引き下げと生保業界再編がセットになって行われる仕組みになっておりますが、竹中大臣もこういうふうに言っているんですね、「合併を含む再編等々とうまく組み合わせるような形でこれを活用していただく」、あるいは、「結果としてそれが業界の再編や合併等々を促すということも、これはあり得ることだ」と。これは、六月三日のこの委員会で大臣も答弁をしているわけです。
 これまでの再編劇については、いろいろな問題があったことが指摘されております。要するに、これまでの破綻例では、破綻処理の実態が、再建支援者による生保の買収という側面が強い、結果として支援者に有利なように破綻処理をしてきた可能性があるという問題など、いろいろな指摘がマスコミ等でも行われておりますが、こういう現状を放置して、契約者無視の再編を奨励するような法案をつくっていいのかどうかということが、今問われている一つの問題だと思っているんです。
 この点で高橋参考人は、毎日新聞五月十六日付で、「「救済予定会社」の意向が契約条件変更案に色濃く反映されそうだ」ということも指摘しておられます。この点についての御意見を伺っておきたいと思います。
高橋参考人 更生特例法による救済方法というのは非常に悪く言われているんですが、私は、更生特例法が利用できるようになってからは、回数を重ねるごとに改善してきているというふうに思っておりますし、競争入札のような形で行われるということであれば、救済する会社も、救済した後、一般の国民に信頼性が得やすいというふうに思うのですけれども、それが、救済してほしい会社とそこを買いたい会社との間のお話し合いで、こういう制度も使ってみてやろうかということになりますと、非常に、その後、その会社に対しての一般消費者・契約者の信頼性というのも余り大きく持てないというふうに思います。
 競争入札になっていったり、救済会社が変わっていったというのは、やはり保険業法の処理のときに、非常に買いたたいて、解約控除がかけられ、しかも保険金がカットされ、もろもろ考えると、三割もカットされても解約していった契約者が多かったというような実態を見てもわかりますように、それでは商売が成り立たないということでございますので、更生特例法を使って、なるべく資産劣化しないうちに買うといいますか、救済する方法を今探っている段階だというふうに思いますので、そういうところがせっかく進み始めたところに、この、わけがわからないといいますか不透明な救済劇が出てくるということに関しては、国民の信頼が得られないのではないかなというふうに思います。
 先ほど御紹介いただきました新聞記事のように、今回の私的自治による手続を使った場合には、もちろん救済会社を先に用意しておかないとこれはスタートできませんので、救済会社というのは、もしかしたら基金の拠出者であったりとかいうことが考えられるというふうに思います、あるいはグループ会社であるということが考えられると思いますけれども、そこのところが非常にいい条件で引き取るということがどうしても前提にならざるを得ない。
 ただ、そこのところで決まったものが、例えば総代会とかいろいろなところに出されて説明されたとしても、残念ながら、情報の非対称性、格差ということで、契約者はそこのところを見破れないし、仮に見破ったとしても、それを拒否したら破綻ということになりますから、我慢せざるを得ないということになってしまいますので、やはり制度としてかなりゆがんでいるというふうに見ております。
 以上でございます。
吉井委員 大体、予定利率を引き下げますと、手を挙げるときには、手を挙げると信頼を失いますから、普通ならば、引受会社があって、その辺の話し合いが多分先に進行していってのことではないかと思いますが、そうなりますと、結局、合併、再編を前にして、高い利率の契約者を持っているような保険会社は、再編としては難儀だから、余計なものといいますか、それはできるだけ始末をつけておいてくださいよというのが、多分、利率引き下げで手を挙げるときの話になってくるんでしょうが、私は、今のお話を伺っておりまして、これは本当にひどいなと思うんです。
 別な角度から大地参考人に伺いたいんですが、あるホームページで、なぜ金融庁が必死かということについて、大地参考人が、「「株安」による銀行の経営問題があります。 表向きは「生保救済」ですが、急を要する背景には「銀行救済」が大きな目的なのです。」そういう指摘をしておられるのをお見かけしておりますが、この点についての御所見を伺っておきたいと思います。
大地参考人 単なる生保の問題だけであれば、ここまで急ぎ、かつ、いろいろな条件を無理やり通す必要はないと思うんですが、生保の破綻を、従来の更生特例法、保険業法でもいいんですが、やった場合には、間違いなく、基金、劣後ローン、先ほど来出ています銀行との持ち合い構造、やはりここにどうしても火の手が及ぶ。
 としますと、銀行の場合は公的資金投入で何とか目鼻が立つ可能性が高いんですけれども、生保の場合はそういうスキームが全くできませんので、もし業法改正もしくは特例法申請で処理がなされた場合には、銀行から生保に出されている基金と劣後ローンの資金が、俗に言えば紙くずになってしまう。これは間髪置かず、出資している銀行の方の資本の部分が毀損することになりますので、生保の破綻がイコール銀行破綻へ直結しかねない、そういう意味で、恐らくそのホームページ、私のホームページだと思うんですけれども、書かせていただきました。
吉井委員 あわせて、大地参考人に伺っておきたいんですが、二次破綻の問題ですけれども、二次破綻のおそれについて、過去の破綻処理では、予定利率等の計算基礎率の変更、責任準備金のカット、生命保険契約者保護機構からの資金援助、責任準備金積み立て方式の変更、早期解約控除、経営陣の退陣など、数多くの二次破綻が生じないための手当てが講じられた、しかし今回は予定利率引き下げのみで、これだけで二次破綻が防げるのか大いに疑問であるということもホームページの方で書いておられますが、仮に二次破綻した場合、契約者がダブルパンチを受けるだけじゃなしに、やはり債務超過額が拡大して金融機関への影響そのものも大きくなるのではないか、ここも問題ではないかと思うのですが、この点についてのお考えも伺っておきたいと思います。
大地参考人 これは、俗に言う連鎖反応が間違いなく起きるであろう。
 一つには、二次破綻を防ぐためのいろいろな処理策の中には先ほどおっしゃられた内容が含まれておりますので、そう簡単には破綻しない。もし仮に解約が集中したとしても、早期解約控除がありますので、逆に言うと生保としては収益が上がる。
 ところが、三%だけですと、三%引き下げ前も引き下げ後も、そこに積み立てられている、専門用語では責任準備金になりますけれども、解約返戻金の額は変わらない。とするならば、実際引き下げた後に、確かに三%という数字が現在の予定利率の一・五%前後よりもいいから、では契約者はその机上の計算で解約を思いとどまるかといいますと、過去の七社の破綻の実例から判断しますと、間違いなくそういう机上の計算ではない行動が起きるであろう。当然、これはイコール解約の急増である。それはもうとめられない状況になることは過去の七社が実証済みですので、今回は三%に引き下げて、ではこれが何とかなるか、これはもう全くナンセンスだと思います。
 やはりそういうことを前提にして考えた場合には、今おっしゃられたような、要は、仮に一つの生保が手を挙げて、それで、実際契約者からすると非常にショックを受けた、これが一社で終わるのであればまだいいんですが、構造的には同じ構造を特に国内生保の大半が持っていますので、次はどこだ、次はどこだということで、非常にそういうような、俗っぽく言ったら風評の被害というんですけれども、これは、ディスクロージャーを見ればわかるんですけれども、事実なんですね。ですから、その事実を追っかけられることによって、次から次へとそういう破綻連鎖が生じる危険性が非常に高い。
 それは、とりもなおさず、銀行との持ち合い構造、これは今の段階ではやめるわけにいきませんので、少なくとも、銀行の株式を生保は持っている、それから銀行に対して劣後ローンをかなり大量に資金導入している、同じことが生保に対しても、全生保ではありませんけれども、そういう資金提供が入っている。としますと、生保が一社ずつ、いわゆるドミノ倒し的にいく可能性が高くなればなるほど、銀行の基盤そのものがより弱くなっていく。まさに、それこそ今回の「りそな」ではありませんが、順次公的資金を別の意味で導入していかなければ、銀行のシステムそのものが狂いかねない。
 そういうふうに、いわゆる食物連鎖的に、今の生保の問題というのはその根っこにある問題だというふうに考えております。
吉井委員 解約率、解約が増加する問題、一方契約率が落ちる問題については、これは金融審議会でも議論がされたようですので、高橋参考人の方に伺って、その後、正田参考人にも関連した質問を後ほど行いたいと思います。
 五月十二日の金融審で、「予定利率を引き下げると解約率が今の一〇%が二割から三割になる、あるいは、新規契約が五割から七割ぐらいに落ちてしまうのではないかというようなシミュレーションもあって、損益影響を見るとその方が大きいのではないか」という川本委員の発言などもありましたが、この解約増、新規契約抑制がふえるのではないかという点について、まず高橋参考人に伺いたいと思います。
高橋参考人 新規契約抑制についてでございますけれども、これは、これを申請した会社ということでよろしゅうございますか、それとも全体のお話でございますか。(吉井委員「個々の会社。個々の会社が難しければ全体で」と呼ぶ)
 まず、個々の会社でいえば、先ほど大地参考人もおっしゃっていますように、やはりこういうものを申請した会社、あるいは、全体から見ると、こういう制度があること自体で新契約が抑制されていくということがあるというふうに思います。
 当然、それと解約率増というものは同時に進行するわけで、先ほど自民党の方の御質問にも申し上げましたように、新契約の抑制と解約増が同時に起こったときというのは非常にまた効果が大きく出てしまうわけなんですが、私はこれがかなりいくのではないかと。多分、川本委員もその辺を心配しておられましたし、ほかの委員の方でも国民経済的にどうなんだというお話があったわけで、この辺はいろいろシミュレーションをしてみた上で、それでもこういう制度を盛り込む意味があるのかどうかということを金融審議会として話し合うべきではないかという議論があったということでございます。
 よろしいでしょうか。
吉井委員 正田参考人に伺いたいと思うんです。
 実は、ニッセイ基礎研の方、昨日も来ていただいたときに少しお話をしていまして、お考えを伺っていまして、更生特例法の場合、基金、劣後債務を全額毀損させることができるという点で契約者にとってメリットがあるというお話なども伺ったわけですが、ただ、更生特例法の適用よりも予定利率引き下げの方が契約者にとって有利である可能性が高いというお考えも持っておられるということは伺っております。
 いろいろなケースについて、やはりそれを論ずるからには基礎的な数値データ、シンクタンクのことですから当然それを持ってお考えのことと思いますので、その点を伺いたいというのが一つなんです。
 それからもう一つは、日生その他の生保で、今より一割あるいは二割解約が増加した場合、本当はそれに、契約率が落ちてくる方、合わせてなんですが、経営にどういう影響があるのかということについて、やはり試算した数値、計算データがあってこそこの点でも議論できると思うんです。
 金融庁の方は、ずっとそのデータを出すということでやり合っているんですが、平行線という感じでまだ出てこないんです。シンクタンクの皆さんの場合、当然プログラムを組んで、大体前提条件をいろいろ設けて、計数を幾らにして、境界条件を幾ら、どういう条件を設定してとかいうことでスパコンをはじいていろいろな試算はやっておられると思うんです。その上で、解約が一割あるいは二割増加した場合に経営にどういう影響が出てくるのか。
 これは、日生の問題についてとなればそれはなかなか機微な問題で、営業上の問題もおありでしょうから、日本の生保業界全体について、一般的な、ある程度一般化しないと公表する数字にはしにくいにしても、やはりそういうものを持って議論をしないと、なかなか、先ほど言いました更生特例の適用よりも予定利率引き下げの方が契約者にとって有利だとか、そんな話にはなってこないし、一割、二割解約がふえたときにどうなるのかとか、やはりきちっとした、かなり大きな前提を置かないと難しいにしても、その前提条件の中でどうなんだということをやはりやらないとなかなかこの判断は難しいというふうに思うんですが、データをお持ちであれば、そのデータをお示しの上、少しお聞かせいただきたいというのが最後の質問です。
小坂委員長 質問時間が終了しておりますので、端的に御答弁願います。
正田参考人 お答えします。
 解約等のシミュレーション数値というのは、残念ながら持ち合わせておりません。
 一般的には、解約がふえますと、御承知のように、解約控除等がございまして、短期的には経営の収支は好転するものであります。したがって、解約がふえた会社は、そのために、解約益のために経営を少し持ち直したという、何かJカーブ効果のような側面が出ることがあります。ただ、長期的には、これは明らかにローディング枠を失うことでもありますから、徐々に徐々にその影響は出てくるということは事実であります。シミュレーション数値は、今持っておりません。
 それからもう一つ……(吉井委員「それで結構であります」と呼ぶ)はい、そうですか。それじゃ、これで終わります。
吉井委員 では、後ほどまたデータを出していただくようお願いして、終わります。
小坂委員長 次に、植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。
 本日は、四名の参考人の各先生方におかれましては、忙しいところ、貴重なお話を伺う機会をいただきまして、まず御礼を申し上げたいと思います。
 では最初に、四名の参考人の方にそれぞれお伺いをしたいわけでございますけれども、今かかっておりますこの法案、予定利率の引き下げをすることのよしあしはまずともかくといたしまして、なぜかかる法案を提出しなければならなかったのかという、その背景にかかわって一点伺いたいわけです。
 そもそも、小泉構造改革なる政策体系が国民の期待にこたえ得るような成果を上げ、そして現下のデフレ不況、デフレを克服しているならば、かかる法案を提出するいわれはなかったであろうというふうに私は考えているわけでございます。その意味で、そもそも、今回のように予定利率引き下げを行わざるを得ない背景には、小泉内閣の政策に実効性がなかったことをいみじくも示しているのではないかと私は考えておるわけですけれども、その点にかかわって、各四名の方々からの御意見を伺いたいと思います。よろしくお願いします。
高橋参考人 お答え申し上げます。
 提出の背景ということは私も非常に不思議に思っているわけなのですけれども、逆ざやだけであれば、年々減少しているとはいえ、基礎的な利益で賄われているわけでございますから、今回の背景は、やはり、株式の下落、資産デフレということが非常に大きいのではないかというふうに思っています。年初から株価に非常に不透明感が出てきて、三月の問題がありまして、早目にやっておこうかというふうに私は予測をいたしましたけれども、実際のところはよくわかりません。
 以上でございます。
正田参考人 私も、背景的な経済事情としましては、デフレの深刻化というのが大変な問題で、これがいろいろなところに影響しておるというふうに理解しております。
 ただ、これはGDPデフレーターで見ましてももう八年近く続いておることでございますので、これは、何としても早く、金融、財政あらゆる政策をそこへ集中して、デフレ対策を構造改革とあわせてひとつお願いしたい、こういうふうに思う次第であります。
大地参考人 非常にうがったとらえ方かもしれないんですけれども、いわゆるグローバルスタンダードという言葉がはやりまして、非常にそれが流布されて、その中で小泉政権が誕生したわけですけれども、やはり破綻という、企業が破綻というものに対する表面上の怖さ、これを非常に私なんかは感じます。ですから、もし経営が失敗したのであれば、それの対応を素早くやることの方が結果としてはいいかと思うんですけれども、とにかく表面上の問題に重きを置くがためにすべての政策が後手後手に回っているんじゃないか、それの一環がこの生保問題であるというふうに私は個人的には思っております。
岩原参考人 確かに、根本的な背景としましては、先生御指摘のとおり、経済状況全体の問題、まあ構造の問題もありますし、そして異常な低金利、そして株価、不動産価格、その他の資産デフレがあることは当然のことではございます。
植田委員 ありがとうございました。
 むしろ、今申し上げたところは我々が対政府の質疑の中できちんとやるべきことでありまして、今の参考人のお話といいますのは、そういう意味では、参考人としての役割と立場を踏まえられてお話しされたんだなというふうに思うわけです。
 次に、正田参考人にお伺いをしたいわけですけれども、いずれにしても、解約の一時停止という規定は、これは契約者の個人の自由を侵すものであるということは否定できないだろうと私は思うわけでございます。実際、予定利率の引き下げが、当初の契約を履行できないという意味においては一種のデフォルトである、これは契約にかかわる法の定理に反するものであるということは理解していただけると思うわけですけれども。
 ここでお伺いしたいのは、何度か対政府質疑でも伺ったんですけれども、あくまでもこの解約停止の権限が及ぶのは生保会社に対してであって、個々の生保の契約者の権利をそのことによって奪うものではないというのが、御承知のようにこれは有力な見解としてあるわけでございます。ですから、解約をしたいと言っても、いや、停止命令出ていますからできませんのやと言ったら、それはけしからぬといって仮に訴訟を提起されたら、本当にその裁判、乗り切れるんかいなという指摘は、御承知のように、なされているところだと思いますけれども、その点についての御見解、お伺いできますでしょうか。
正田参考人 お答え申し上げます。
 解約権に制約を加える、あるいはそれを奪うというようなことができないことは当然のことでありまして、しかも、その停止命令が会社に対するものであるということについても、私は同感であります。
 ただ、今回の措置は、解約の手続のいわば停止といいますか、凍結というふうに理解いたしておりますので、仮に、停止命令期間中といえども解約の申し出をするとか、あるいは停止命令前の解約申し出の効力とか、そういうものにつきましては、これは原則的には、事務の取り扱いの凍結期間が終わった後は当然に生きておるというふうに考えられますが、ただ、それにつきまして、会社が実際立派になって、解約することが損だということを冷静に御判断いただきますと、これはわかるところが十分あると私は思いますから、その場合には、解約の申し出を、合意の上、撤回するというようなことがあり得ると思います。
植田委員 そこを正田参考人にもう一点だけ御教示いただきたいんですが、あくまでも、解約停止命令、解約停止ということが出れば、生保会社としては、それは要するに解約を凍結するというわけですよね。ですから、当然ながら契約者が解約を申し出ることを拒むものではないけれども、凍結しているのでちょっとお待ちあれと。凍結が解除された段階で、その申し出があったところまで、要するに遡及をして解約をなされる、そういう理解をしていいんでしょうか。そうじゃなければ、その辺のところの手続を教えていただけますか。
正田参考人 お答え申し上げます。
 そのように理解しております。
植田委員 次に、岩原参考人にお伺いをさせていただきたいわけですけれども、先ほども、いわゆる銀行と生保との持ち合いの関係、ダブルギアリングの関係についての質疑もあったかと思いますけれども、先刻の岩原先生のお話をお伺いしておりますと、実際問題、生保の状況というのが非常に悪いということをおっしゃっておられた。すなわち、法案の必要性の一つの前提条件として、今置かれている生保の客観的な状況の悪さ、それを指摘されていたと思うわけです。
 その上で、現実問題、そのことが、実際、生保と大手の銀行というのは持ち合いで深くつながっているわけですから、一方が破綻すれば当然一方に累が及ぶという関係が指摘されるわけですので、当然これは金融システム全体に悪い影響を与えるんだ、そういう御趣旨のお話をなさっておられたと思います。
 もし、私の理解に間違いがあれば、そのことも御指摘していただいた上で御教示賜れればと思うわけですが、今そうした形で、岩原参考人がおっしゃられたことは、大地参考人の方はうがった見方で悪いが銀行救済という面があるというふうなこともおっしゃっておられましたけれども、まさに岩原参考人は、今回の予定利率の引き下げが、ほうっておけばそうした金融システム全体に悪影響を及ぼす、言ってみれば、持ち合いの関係等々の中で金融機関にまで累が及ぶということであるのですから、金融機関、銀行救済と巷間言われている話が今回の予定利率引き下げの重要なポイントであるということを先ほどのお話でいみじくも主張されたと私は伺わせていただいたわけですけれども、そのような理解でよろしゅうございますでしょうか、御教示いただきたいと思います。
岩原参考人 お答え申し上げます。
 確かに、先ほど、私、最初に申し上げましたように、生保を取り巻く環境は非常に厳しいものがあり、かつ、銀行との間の持ち合い関係があって、生保の破綻が銀行に影響を及ぼし、さらに金融システムの危機になっていく危険性があるというふうに思っております。
 それを何と呼ぶかはそれぞれの価値観によって違ってくるんでしょうけれども、むしろ、銀行救済というよりは、金融システムを守って、日本経済全体のメカニズムが崩れないようにするという意味で、私はその事態に対する対処が必要だと思っておりまして、個々の銀行を救済するというのではなくて、金融システム全体を維持していくという上での対処が必要だと考えている次第であります。
 以上です。
植田委員 岩原先生のお話、趣旨は非常によくわかるわけですが、再度は質問いたしませんけれども、むしろそこは、そういう形で、非常に大きな話をされればされるほど、では、金融システムの再生のために、国民の九割を占めるような保険契約者、とりわけ生保の契約者を沈め石にするのかという批判は出てくるだろうと思うわけです。むしろそこは特定の金融機関を念頭に置いていた方が実は素直な話になるんじゃないのかというふうに、そのことによって、今回の予定利率の引き下げの意図というものが那辺にあるかというのが透けて見えるような気がいたします。そこは岩原先生にそれ以上の追及をする立場ではありませんし、それはむしろ政府に対してやるべきでしょうから、真摯な一研究者としての御見解をお伺いしたということで、敬意を表したいというふうに思います。
 さて、これも四人の方に伺いたいんですが、今回、実際問題、決まってしまっているので、きょうの六時ごろにはこの法案が採決されるということで、私は決して納得はしていないわけですが、採決されるということでございます。この年明けぐらいから、一月半ばあたりから、この予定利率引き下げの話がずっと出ていました。半年ぐらいですね。やはりこれで契約者の不安が高まってきたことは言うまでもありません。それが、いわゆるろうばいによる解約の増加というものも、実際、現場からの報告があるやに聞いております。
 政府がどんな法案を出そうが、契約者にしてみれば、対面するのは、実際、保険会社の営業職員さんなわけです。営業職員さんだって、大丈夫だと言う以外ないわけですよね。国のそんな法案の提出過程に対してそれぞれの営業職員さんが責任を持っているわけじゃないんですから、大丈夫だ、いや、あんたのところほんまに大丈夫か、信用できへん、大丈夫か、そんなやりとりの中で、やはり契約者の方が非常に不安になっている、これは事実だろうと思います。
 そこで、こういう意見もあるわけです。契約者を、不必要に、安易に解約に走らせないような状況をつくる意味で、法案審議を余り長引かせるとますます不安が高まってしまうんじゃないかという意見もあるわけでございます。それは、むしろ、実際に営業職員の方々からすれば不安でしようがないということも私はわからないではない。私はもともと出さなきゃよかったと思うわけですが、出さなきゃそんなことにならなかったと思うわけですけれども、そうした、言ってみれば、この件については、余り寝た子を、もう十分寝た子は起きているんですけれども、もう一回寝かして、早くさっといった方がいいんじゃないかというお考えについては、四人の参考人の方々どんなお考えでしょうか。
高橋参考人 端的に申し上げると、この議論を終わりにするには、成立させるのではなくて廃案にしていただく以外に方法はないというふうに思っております。法案が成立すれば、今だらだらで、営業職員の方、あるいは一般の契約者の方々が不安を持っている状況がもっと現実のものとなってきて、いつこれが解約停止されて自分のところに及ぶかわからないということで、不安がまさに現実的なものになってくるというふうに思いますので、私はぜひ、自民党の方も含めて、廃案で頑張っていただきたいと思います。
正田参考人 お答えします。
 ただいまのお尋ねですが、私は、一般に、具体的にこれまで七社が破綻いたしましたが、その破綻前後は本当に、揣摩憶測といいますか、いろいろな流言飛語も飛びますし、契約者の皆さんは大変心配しまして、私も個人的にもいろいろ尋ねられたようなこともあります。本来の不安というのは実はそういうことでありまして、したがって、何とか未然に破綻を防いで会社をよくしようという措置、これに対する不安の方がさらに大きいというようなお話には、何となく少し納得しかねるところがあります。
 私は、本法案は、選択肢をふやす意味でも、岩原先生がおっしゃっておられますように、更特法は更特法としての立派な機能があるわけでございますが、これとの単純な損得比較というようなことではなくて、ゴーイングコンサーンを中心目的とした制度を一つ追加するという意味で、これは急いでいただきたいというふうに思います。状況も緊迫しているというふうに思います。
大地参考人 これまでの体験則でお話ししますと、七社破綻したわけですけれども、急に破綻したわけではなくして、その破綻に至る前提の段階で、新契約がだんだんとれなくなる、既契約の解約、失効が増加する、当然、総資産が減少する、ひいては運用環境がより悪化していく、こういう相乗効果がどんどん増加していくことが最終的に破綻へ至る。
 つまり、ればたらといういわゆる悪い前提を出すこと自体が問題である。ですから、一等最初に言ったんですけれども、金融庁がつくりましたこの資料そのものが非常にいかがなものかと私は思っておりますので、こういう論議そのものが非常に意義がない。むしろこういう案を出すべきではなかった。粛々と、経営である以上は、それなりの経営責任と、それから、どうしようもなかったらばこれはそれなりの対応、処理をするのが経済のいわゆるルールである、そういうふうに思います。
岩原参考人 お答えを申し上げます。
 契約者の不安は、要するに生保会社の経営、財務内容が悪化しているところにあるわけでありまして、仮にこの法案が成立しない、あるいは法案を提出しなかったからといって、その現実が変わるわけではありません。結局その場合は、更生特例法の手続かあるいは業法上の手続によって、最終的には破綻処理をせざるを得ないわけでありまして、新しいスキームができるのとそういった事態と、どちらが安心できるかという問題ではないかと思っております。
 一番大事なことは、こういった危機を直視して、目をそらすのではなくて直視して、そしてなるべく早くそれに対処することに手をつけるということが一番大切だ、それがまた契約者を安心させることだと考えております。
 以上です。
植田委員 ありがとうございました。
 もうあと一分ぐらいでしょうから、時間もあれですので終わりますけれども、きょうは午前中長時間、四人の先生方には本当にありがとうございました。
 以上で終わります。
小坂委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人各位におかれましては、御多用中のところ御出席を賜りまして、貴重な御意見をお述べいただきましたこと、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時三十一分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三十分開議
小坂委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 この際、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小坂委員長 御異議なしと認めます。よって、砂田圭佑君を理事に指名いたします。
     ――――◇―――――
小坂委員長 午前に引き続き、保険業法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局長藤原隆君、金融庁監督局長五味廣文君、公正取引委員会事務総局経済取引局長上杉秋則君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小坂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
小坂委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。仙谷由人君。
仙谷委員 まず、保険業法の問題に入る前に、一、二点、「りそな」に対する公的資金注入に関連してお伺いをしておきたいと思います。
 竹中大臣が、金融庁の課長以下のところから「りそな」を介して監査法人にああしろこうしろというふうなことをやったんではないかという我々の疑念に対して、調査をした、報告をしていただきました。
 平岡委員の方から、先般、金曜日の日に、その報告に対する質疑をさせていただいたところでございますが、それをお伺いしておって、やはり平岡さんが申し上げておるように、どうも、大臣の方がやや逃げておるというか、回避されておる部分があるように思います。それは非常に大事な点でございますので、私の方から確認的にお伺いしたいと思います。
 大臣の部下といいましょうか、金融庁当局の職員に対する調査の中で、五月九日に重松さんという新日本監査法人の代表社員の方がつくられたメモというものがあるようでありますが、それを、「りそな」を介して、金融庁の銀行一課長以下は入手をしておったんでしょうか。いかがですか。その点については、竹中大臣の調査の結果はどうなっておったですか。
竹中国務大臣 先般、御指摘のように調査をさせていただきました。
 回避している、逃げているという御表現がございましたが、私自身は、本当に金融行政の信頼性を回復するために、逃げることなくきっちりとぜひ調査をしたいと思っておりますし、そのつもりでございます。
 お尋ねの五月九日付のメモ云々でございますけれども、これに関して、具体的なやりとりについて、私、詳細なコメントをする立場にはないと思っておりますが、いずれにしましても、職員に対して、金融行政の信頼性を損なう疑念があるという御指摘をいただきましたことについては、いろいろな形で先方に対して圧力をかけるとか、ないしは圧力をかけているような誤解を与えるような、そういったことは一切なかったという回答を得ておりまして、そのような旨を報告させていただいている次第であります。
仙谷委員 だから、その結論部分、圧力をかけていないとか恫喝をしていないとおっしゃっている部分が、具体的に見ると、どうもそこのところをすっ飛ばして、結論部分だけで、やっていないと否定されても、それは、我々、いろいろな尋問とか調査するときに、いや、だけれどもこの点はどうなっているの、つまり、だから、否定をされる根拠が、そのことを認めることによって全部崩れる可能性があるから聞いているんです。
 つまり、あした参考人の方も出てこられるわけですよ。「りそな」の方に聞いて、新日本の方に聞けばわかる話なんですよ。うそであることがわかっちゃった、もしそういうことになったら竹中大臣の顔がないと思うから聞いているんじゃないですか。そんないいかげんな調査だったらしない方がいい、こういうことになるんじゃないですか。
 だから、そのぐらいのことは、つまり、どこまで疑わしいと思って調査をするかどうかは別にして、一応、こういうことも、相手さんが、「りそな」の方がこんなことを言っている。結論としてこれは、妙ちきりんなことに、繰り延べ資産の三年編入みたいな話になっているわけですよ。ここは、金融庁の課長が言うように、非常に論理的におかしいわけだ。つまり、こんな新しい会計基準が勝手につくられるんじゃ困るという話になる可能性があるわけですよ、これは。
 なぜそうなったのかという話は、やはり談合以外に考えられないと僕はにらんでおるんだけれども、談合がどこでどういうふうに行われたかという、その徴憑としては、割とこれは具体的で、非常に核心部分なんですよ、この重松メモというのは。だから聞いているんじゃないですか。
 だから、あなたの方も、もし今の段階で聞いていないんだったら、改めて聞く、重松メモというものがあったのか、それから、重松メモというのを間接的でも見たのか、あるいは、「りそな」からファクスか持参、手渡しで渡されているのか、見てから、そのことについてどういうことを言ったのか、言わなかったのか、これが今回の核心じゃないですか、五月九日の。いかがですか。
竹中国務大臣 御指摘のように、私なりに一生懸命調査をしておりますけれども、それが結局違ったじゃないか、そんなことになると、これは私自身も大変困るわけであります。
 調査の基本的な原則については、以前もお話をさせていただいたのでありますけれども、その出所等々が確認できたものについては、かつ、それが十分に証拠性があるというふうに判断した場合には、これは、我々としてはきっちりと検査、調査をするつもりでございます。
 例えば、一例として申し上げれば、議員もこの間御質問くださった、大塚耕平議員に対して出された手紙でございます。これは、申し上げましたけれども、私はもう大塚先生に既に私の住所をお知らせいたしました、ここにどうぞ知らせてくださいと。コンプライアンス室もつくって、そこに弁護士も置いて、そこにお知らせしていただくというルートも近いうちにつくろうと思っております。そういうところできちっと、証拠性があって、かつ、だれが申し出るか、確認できるようなものがありました場合は、これは、当然のことながら、調査をしなければいけないというふうに思っております。
 ただ、確認のできないメモに関しましては、やはり私としては、私のできる範囲で部下に問いただして、それに対して疑義がないかということを確認するというのが、私ができることであるというふうに思っております。
 そうした点に関して、また先方との個々のやりとりについては、これはいろいろな報道がなされているのは承知をしておりますけれども、それについては、私たちとしては、確認できないものについて一つ一つさらに立ち入ってというのは、ないしは、それについて具体的に言及するというのは、これは差し控えさせていただかなければいけないと思っております。
 繰り返し申し上げますが、ぜひ御理解いただきたいのは二点でございます。一つは、証拠性があって、相手も確認できるようなもの、これは、私に対するホットライン、弁護士に対するホットライン等々で確認できたものにつきましては、必要があると認めたら、これはしっかりと調査をさせていただきます。
 しかし、確認のできないメモ等々について、私たちがやるべきこと、できることというのは、これはやはり私の部下に対してしっかりと、問題がないか、疑念がないかということを確認することであって、それについてはしっかりとやらせていただいたつもりでおります。
仙谷委員 竹中大臣は裁判をされたことはないですか。裁判されたことないですか、原告とか被告で。裁判当事者になったことはない――今はない。それは幸せなことでございます。
 要するに、今大臣がおっしゃった、証拠とすることができるかどうかとおっしゃいましたね。この種の書証というものは、成立について、まず、相手方が確かに争うか認めるかということ、そういう手続があるわけですよ。だから、例えば私がこういうコピーがあるよと出したときに、金融庁の方で、確かにどうもあったようです、そういうものが存在したことを認めますと言ったら、これはもう証拠になるわけですよ。
 今存在が争われているけれども、これは裁判手続ではありませんから、もし大臣がその気になれば、「りそな」に部下をして電話をかけさせて、こういうものをつくったことがあるかないか、つくったものと異同があるかないか、コピーの段階で変造的にコピーされているかどうかということを聞けばわかる話なんですよ、この程度のことは、本当は。
 そこで、成立に疑いがなくなった段階では、今度は、ここに記載されていることが本当かどうかという吟味に入らなきゃいけないんです。書面が真正に成立されておっても、書かれてあることが全部本当だとは限りません、うそを書いている人もおります。ある人が書いた書類であることを認めても、書いた人が夢に見たことを書いたり作り話を書いたり、講釈師見てきたようなうそを言いというのを書く人もおるんです。だから、それは吟味をすることが重要なんです。
 しかし、本件の場合は、私が言っているように、その中で、五月九日の重松メモというものがどうも「りそな」までは提出をされて、さらに金融庁の方でそれを読んで、ああじゃらこうじゃら、こうしてこい、ああしてこいという議論が行われて、結局言われたとおりになっておる。言われたとおりではないけれども、足して二で割ったような話になっておるということからすると、どうもこの重松メモというのは存在したんではないか、現に金融庁にも写しがあるんではないかというふうに私は経験則に基づいて合理的に推測しているんですよ。(発言する者あり)いや、蓋然性より高い、これは。
 そこで申し上げておるのだから、コンプライアンスも弁護士が入ってどうのこうのも当然のことなので、余りそういうことを、本当は今の段階でまだそれを公にしたくないのか、そこを認めたらほころびが出るからそうおっしゃっているのか知らぬけれども、要するにこの点があしたも核心部分になりますので、どうぞひとつ、今のような中途半端なお答えならば、もう一回調べてこの委員会で報告をいただきたい。この問題について最後までしらを切り通そうとしたって、竹中さん、これは通用しませんよ、本当に。どうですか。
竹中国務大臣 冒頭で、あなたは裁判をしたことがあるかというふうに言われて、ちょっと私の勘違いで、裁判で、私、原告で、今名誉毀損で訴えている件が三件か四件かありますので、その意味では裁判をしております。大臣になる前は裁判に携わることはありませんでしたが、大臣になってからそういうことがございます。
 それで、私の記憶違いでなければ、重松メモというふうにおっしゃいましたが、その重松メモについてこの委員会で御議論いただいた、ないしはお示しいただいたことはなかったのではないかと思っております。その意味で、この重松メモとおっしゃるものがちょっと確認できないというふうに私は先ほど答弁をさせていただいたつもりでございます。
 繰り返して言いますが、ごまかすとかうやむやにするとかいうつもりは全くございません。私としてできることが何かということで、精いっぱいやっているつもりであります。
 繰り返しますが、確認するんだ、相手がこれを否定するかどうか確認するんだ、そのとおりであろうかと思います。ところが、確認できない紙があるわけですね。その確認できない紙に関しては、これは情況証拠だからということで、それ以上のことをできるかというと、これはやはり私たちとしてはできないということなんだと思うんです。
 これは、確認できて、相手が、否定しますか、否定しませんということでありましたら、次の段階として我々は調査をしなければいけないんだと思っております。そのために、確認するために、先ほど言いましたように、私の住所もお知らせして、それで弁護士を通してということも考えているわけで、我々としては精いっぱい、行政に対する信頼性を持っていただくための努力をしているつもりでございます。
 その原則はしっかりと守りながら、解明すべきは解明して、行政に対する信頼性を高めていきたいと私自身強く思っておりますので、その点も含めて、明日また午前中も御審議いただくと思いますが、ぜひとも我々の立場というものも御理解賜りたいと思います。
仙谷委員 きょうは時間がございませんので、それでは、重松メモを、今金融庁の中に存在するかどうか、そういうもののコピーなりファクスを受けたことがあるかどうか、これを改めて調べてください。
 ちょっと話題を変えますが、きょうの新聞でもそうでありますが、ニュースで、いよいよ「りそな」に対して公的資金の注入をするという報道がされております。
 私は先般も、注入するときの一株当たりの株価はどうするんだと。現在の時価、きのうであれば六十六円であったようでありますが、これを前提にするとたかだか三千億弱にしかならないんじゃないかと私は計算しておりますが、そういう資本金で、一株当たり六十六円の株価というときに、二兆円の資本注入をする、これは株式の数としては、単純に普通株で計算しますと、簡単に言えば二百億株以上の金額ということにならざるを得ない。片や「りそな」が発行済みの株式総数は五十六億株ぐらいですから、これはどうするんだろうか。新聞を見ると、しかし、普通株の株式が同じぐらい、フィフティー・フィフティーになるぐらいの数を入れるんだと。何か変なことを言っているな。全然根拠ある数字が発表されていない。
 このごろの経済部の記者かどこの記者か知りませんけれども、ほとんど勉強不足か何か知らぬけれども、財務省か金融庁か知らぬけれども、ここの数字もない発表を平気で流して書く、あるいは揣摩憶測で一部書く。そもそも、根拠のある数字を前提にした議論が新聞の紙上でもこの場でもほとんど行われていないんじゃないかという危惧を私は持っているんですね。
 これは一株どのぐらいの金額で、国が買うことになるわけですが、預金保険機構が買うことになるわけですが、どういう計算で買おうとするんですか。それから、当然のことながら、転換株式、優先株の転換価格というふうなものをどういうふうに設定しようとするんですか。私が前回質問するときにお示しした資料だと、今までは、安いので五百円、高いのでは千二百五十円もつけて買っているんですよ。言っておきますけれども、今六十六円ですから、これはどういうつもりなんですか。
竹中国務大臣 まず、最初の方で委員が重松メモについて調査をしろという御指摘がございました。
 我々としては、いつ、何を受け取ったか受け取らないかということは、監督上知り得たことに関しては全部申し上げるわけにはいかないのでありますけれども、委員の方でそういうものをこの委員会でお示しをいただいて、それに基づいてということでありましたら、それは考えさせていただくということになろうかと思います。
 それと、「りそな」の公的資金に関してはまさに憶測記事が多いということに関しては、これは本当にそうだと思っております。憶測が多くて、私自身も、新聞を見て、知らないことがいっぱい出ていてびっくりすることが多々あるわけでございます。
 直接お尋ねの、これは確かに非常に大きな金額の増強を行う。商法等々のさまざまな規定をクリアする、しかも我々としては、方向としては三分の二の議決権シェアを占めたい、特別決議で決議ができるような議決権シェアを占めたいと思っている。その場合の商品設計といいますか、普通株、種類株をどのように組み合わせるのかといった問題でありますとか、その場合の価格をどのようにするかというのは、これはまさに今我々が審査している大変中心的な議題でございます。これはしかし、今申し出をいただいて、まさに経営健全化計画とあわせて審査しているところでございますので、その商品性につきましては、審査が終わった段階まで少しお待ちをいただかざるを得ないというふうに思っております。
 ただ、いずれにしましても、その価格づけにしましても、これは、フィナンシャルアドバイザーといいますか、専門家の意見も聞きながら市場の動向とそごを来さないような形でしっかりと行わなければ制度設計が成り立たないというふうに思っておりますので、繰り返しになりますが、先方からの申請を受けて、しっかりと今審査をしているところでございます。
仙谷委員 当然のことながら、六十六円の株価を、普通株で前提にするわけですから、御承知だと思いますが、商法二百八十の二、「新株ノ発行」という項目がありますね。そこの五項では、「市場価格アル株式ヲ公正ナル価額ニテ発行スル場合ニ於テハ第一項第二号ノ発行価額ニ付テハ其ノ決定ノ方法ヲ定ムルヲ以テ足ル」というふうになっているわけですよね。つまり、これは新株発行に際して、取締役会の決議の方法のときの規定でありますが、市場価格がある株式は当然市場価格が前提になるんだ、ここがまず一点ですね。
 それを前提にして公正なる価格を決めなきゃいかぬ、こういうことでありますから、当然こういう常識的というか、当たり前の基準はお守りになって、まさか一株が六十六円の時価のものを百円で買ったり千円で買ったり、そんなばかなことはしないでしょうねということを申し上げておるんです。
竹中国務大臣 仙谷委員が御指摘になった商法の細部の条文をちょっと持ち合わせておりませんが、公正なる価格で決定されなければならない、これは当然のことであろうかと思います。
 その場合に、上場されてマーケットがあるものでありますから、市場価格が前提になる、市場価格と矛盾するような価格で売買するということはあり得ないことである、これはもう明確に申し上げておきたいと思います。
仙谷委員 それでは、保険業法の方に移りますが、先般、金融庁の事務当局の方にこういうデータをつくってほしいということをお願いしたんです。現在の低金利政策で生保各社がどのぐらいの利子収入を失っているのか。つまり、長期金利が一%、あるいは一・五%、二%、三%というふうなケースの場合に、生保各社はどのぐらいの利子収入を得ているはずなのか、このシミュレーション、それから、長期金利が何%になったら逆ざやが各生保会社ごとに解消するのかというのをつくってほしい、こうお願いしたんです。その時点では、そんなものありまへん、こういう話だし、そのとおり、現時点でもございませんでしょうか。
竹中国務大臣 委員御指摘の問題意識というのは大変重要であるというふうに私も思います。ただ、技術的には難しいということも同時にございます。
 まず、生保の資産運用の方法、大変これは多様でありまして、低金利が運用収入に与える影響について、これを一律に把握するのは難しいというのが一つであります。ただ、概算で何か示せないか、何らかのメルクマールはないのかということでございましたら、これは、十三年度末における生命保険会社の総資産残高は百八十兆円であります。その中で、預貯金とか公社債、外国証券、貸付金、つまり金利型の資産、金利を直接生み出す資産というのは約百三十兆円ございます。したがって、例えばですけれども、金利が一%上昇したら、単純計算いたしますと一兆三千億円収入が増加するということになります。そういうめどは一つ我々も持っています。しかしながら、先ほど難しいと申し上げましたのは、他方で、金利が上がりますと、債券価格が下落するという資産の面での影響が出てきて、それでキャピタルロスを生じる。したがって、直ちにこれがどのような影響をもたらすかということは総合的に判断するのは難しい。
 お尋ねの第二点目でありますけれども、長期金利がどのぐらいになれば逆ざやは解消するのか、このお尋ねもあったというふうに思いますが、これも同様に大変難しい。これも、運用方法がさまざまであって、新規契約の動向がどうなるかとかいうこともあるわけでございますが、これもあえて一つのめどを申し上げれば、非常にマクロのざっくりとした数字にはなりますけれども、十三年度末において生命保険会社の平均予定利回りというのは三・五六%であります。一方で、運用利回りが二・三一%。そのギャップが一・二五%ということになりますから、今の新しい試算ではなくて、総平均で見て、運用利回りが一・二五%改善すれば逆ざやは解消する。大変ざっくりとした数字で申し上げれば以上のようになります。
仙谷委員 先ほども申し上げたんですが、本当に数字を前提にしない議論が多過ぎる。もう再三再四数字を、金融庁の方に算出をお願いしても、そんなものはない、あるいは、非常に私のところへ来るのが横着な、いっぱい白抜きのところがあったり。まあ、今回の「りそな」問題と、特に大騒ぎしている生保の予定利率の引き下げ問題についても、基礎的なデータなしで、何か揣摩憶測、蓋然性と、何か推測の世界で議論をしている、そういう気がしますね。私は、こんなことがあってはならないと思うんですね。
 時間がもうほとんどなくなりましたが、一点だけ、さらに契約のことについてお伺いするのでありますが、実際問題として、とりわけ株式会社という形態をとっている会社で、株主総会の議決で予定利率の引き下げの決議をした場合に、なぜそのことが保険者と保険契約者の契約内容の変更をもたらすのか。団体法的な決議がなぜ個人の当事者間の契約の中身を律するというふうなことができるのか。
 代表なければ課税なしというのは、これはアメリカの独立革命でありますが、代表のないところに、いいですか、契約者がだれにも委任していない。委任をした人が代理人とか代表者として何らかの法律行為をして、そこで決議がもしされたんだったら、それが契約内容を律するということは、そういう論理展開、法律構成をとることはできないわけではないと思いますが、代表を私はだれにもされていません、されていない人がどこかへ行って株主総会だと称して決議をした、それがなぜ法律関係上、個別契約の中身を律することができるのか、それも不利益処分ができるのか。これは、単純な民法の理論からいっても、商法の理論からいっても、こんなことがあり得てはならない。こんなことがあり得るんだったらもう資本主義やめた方がいい。いや、本当ですよ、これ。統制国家しかあり得ない。あるいは、もう少し言えば、危機管理のとき以外にはあり得てはならない。私は、こういう観点から、もう自民党で勇気ある十八人の若い人が、きょう首になった人もおるみたいだけれども、ちゃんと問題提起をした、こういうふうに理解をしておるんだけれども。
 いいですか。なぜ、団体法の規制というか法律的行為がなされたときに、個別の契約関係を律することができる法律効果を持つのか。これは、あなた、我妻大先生でも、こんな難しい議論というよりも、こんなことはあり得てはならない、単純に言い切ると思いますよ。これはどう解釈し、どう説明するんですか。どうですか。
竹中国務大臣 仙谷委員の御指摘、これまでの答弁の中でもいろいろ議論させていただいたつもりでありますが、これは、主体的な判断、自治的な手続というふうに言う、ところが、今のお尋ねは、特に株式会社形式の場合に、株主総会というのが契約者と全く違う実態になっている、それに対してどのようにこれを正当化するのか、極めて重要な御質問だと思っております。
 これは何度か御説明をさせていただきましたけれども、今回のスキームでは、これは条件変更でありますから、その条件変更の意思決定の手続として、二段階で考える。
 一つは、保険会社として、会社としての機関意思決定、これは株式会社の場合は株主総会になる、相互は総代会になる。もう一つの方法として、保険契約者の権利の保護のための手続ということで異議申し立ての手続をとっている。これに対しては、保険契約者が膨大であることとか保険の団体性にかんがみて、異議申し立ての手続を行う。実際に、異議申し立ての手続というのは、その他の条項についても現実には既にこれまでの法律でも定められているわけでございます。そうすることによって、御指摘のような問題に対して一つの解決策を提示したつもりでございます。
仙谷委員 これはこの間もおっしゃっていて、今もおっしゃったんだけれども、会社の意思が決定された、その意思は相手に対して表示されなければならない、表示して到達されなければならない、到達しても効果は発しない、つまり、契約の内容の変更の申し出にしかすぎない。申し込みなんですよ、これは。意思表示の申し込みなんですよ。承諾という行為が要るんですよ。承諾という行為がないと、意思表示の、そこで合致ということはありませんから、新たな意思表示、新たな意思表示の合致、新たな契約内容ができるということにはなりません。
 これは僕は、決定的に、会社が通知を出したら意思表示になる、それはそうかもわからない。相手方、契約者の承諾がない限り、こんなものは、新たな契約条件の変更なんというのは成立しない。いいですか。それを、異議がなければ黙示の承諾があったとみなすというふうなこういう擬制は、こういう明示の法律契約があらかじめ前提になっている場合には、絶対にあり得ない。これは、もし法廷へ出たら必ず負けます。必ず勝てない。これは、契約が変わっていないということにしかならないと思います。
 この大命題は、改めてこの法律をもう一遍考え直して出し直さない限り、この法律はいろいろな欠陥がありますけれども、法律的にも大欠陥、新たな意思表示の合致がない、このことだけは申し上げておきます。
小坂委員長 次に、中津川博郷君。
中津川委員 民主党の中津川でございます。
 きょうで質疑が五日になるんですね。いろいろ議論を拝見してまいりました。また午前中は、きょうは参考人の具体的なお話も聞けて、だんだんと見えてきているんですが、どうも何か雲をつかむような内容で、我々がはっきりしないわけでありますから、国民はますますわからないんじゃないだろうか、そんな思いで今まで参りました。
 そこで、私は、今までの質問とダブるかもしれませんが、もう一度基本的、初歩的なことを質問させてもらいます。ですから、私に答えるのではなくて、国民に、おじさん、おばさんたちにわかるように、ひとつ明快にお答えをしていただきたいというふうに思います。
 そこで、ちょっと切り口を変えて、今回、保険業法の一部改正ということですが、背景として、経済全般について、何度か竹中さんとも議論しましたが、もう一度お伺いしたいと思っているんです。
 この法改正の必要となった背景として、バブル崩壊後、恒常的に生じてくる生保各社の逆ざやの存在ということがあるわけですね。保険契約時に約定した予定利率以上の運用利率を上げることができなくなってしまった。かつては世界の金融市場を牛耳って、日本のザ・セイホというのはすごかったんですよ。だけれども、今はもう見る影もない。これはやはり我が国の都市銀行の栄華とその没落と相まって、情けない今現状になっているということだと思います。
 生保もバブルに踊って、今までは考えられないような高い予定利率で保険契約を集めて、そしてその資金をマーケットでさらに高い利率で運用しようとしたんですね。ただ、そのバブルがあっけなく崩壊した。しかし、その後も、財務状況の将来的な悪化については深刻に考えない、株式への依存を減らすなどという抜本的な運用姿勢の転換もしないまま、ずるずると今日、いつか土地は上がる、いつか株は上がるというような、そんなことで、今のこの悲惨な状況を招いているということだと思うんです。
 遠い将来のリスクを考えている生命保険を販売するプロであるはずの生保が、みずからの将来の財務リスクを予期することができない、気づいても、その後も責任逃れで、その対処を行ってきた。その責任はまず真っ先に問われるべきだと思うんです。
 しかし、私は、生保だけ責めればいいという問題じゃないと思うんですね。逆ざやが解消しないのは、本当にいつも私は指摘するんですが、長引く資産デフレなんです、その根本は。
 小泉さんになってから、竹中さん、一緒にやってから、どのぐらい資産デフレが進行しているかわかりますか。きょう、文芸春秋でいい記事が載っかっていますよ、堀内さんと丹羽さんの。お読みになって、後で感想を聞かせてもらいたいんですがね。私なんかも同じ考えですよ。株だけで、アメリカがいいから今ちょっと上がってきましたが、約百六十兆円ですよ、すっ飛んじゃった。土地が百五十兆円下落、三百兆以上ですよ、さようならと行っちゃったんですよ。
 だから、生保の財務を窮地に追い込んでいるのは、逆ざやだけではなくて、保有株式の評価損の拡大であるということもはっきりしているのと、それから、土地や株式の下落がどれだけ多くの被害を今日本全般にもたらしてきているかということにほかならないんですね。
 その間、政治が何にもしてこなかったじゃないですか。そもそも、このような予定利率を途中で下げることを、政府公認ですよ、公権力が介入するんですよ、それで認めるようなことが起こるというこの異常な事態、こういうふうになったのは、生保の責任はもちろんですけれども、今申し上げているように、何よりも政府の経済政策の失敗なんだと。ごめんなさい、間違えました、これをまず前もってあなた方が言わなきゃだめなんですよ。いかがですか。
竹中国務大臣 今回、逆ざや問題が一つのきっかけにはなっておりますが、その背後に、日本のマクロ経済そのものがまさに十数年来非常に著しく停滞をしてきて、その低下傾向といいますか悪化がなかなかとまらないという問題は、背景として間違いなくあると思っております。
 しかしながら、そこで、ここからはいつも中津川委員と意見が違ってくるのかもしれませんが、そういう状況をとめるためには実は構造改革しかないのだ。これは規制改革を中心として、民間部門にしっかりとした活力を発揮してもらう。本来、日本の民間部門は活力を持っている。さらには、銀行、企業がしっかりとリスクをとれるように、不良債権の処理、その背後にある企業のバランスシートの調整をやって、苦しい時期はあるけれども、それをやっていかないと本来の力を発揮できない、次の段階に行けないのだ。財政に関しても、極めて厳しい財政赤字の状況の中で、これを放置しておくことなく、苦しいけれどもそれを立て直さなければいけないのだ、まさに構造改革が必要なんだということに尽きるのだと思っております。
 そうした意味で、小泉総理御自身、民間でできることは民間に、地方でできることは地方に、そういう観点からの改革を今進めているわけでありまして、それが例の四本柱の改革を進めることによって、十数年来続いてきた日本経済の一種の悪い循環に何とかストップをかけたいというふうに我々としては思っているわけであります。そうした全体のマクロの経済運営というのは、これはしっかりと本当にやっていかなければいけないと思っております。
 その中で、金融システムが安定化していくということは大変重要なことであって、その中の、生命保険に関する逆ざや問題に対応する一つの選択肢としてこの法律の御審議をお願いしているわけでありまして、マクロの経済運営の努力とあわせて、日本の経済を少しでもよい方に導きたいというふうに思っているわけでございます。
中津川委員 竹中さん、構造改革が必要なんですよ。必要だと最初に言ったのは我々民主党なんです、いつも言っているんだけれども。構造改革という日本を大手術するには、経済の下支えが必要で、景気がよくなる政策を出さなければ、緊縮財政ばかりやっているから税収が減っちゃっているじゃないですか。
 先日の報道で、四月末時点での二〇〇二年度の国家税収が、補正予算後の目標である四十四兆円から七兆円も下回るんでしょう。三十七兆円。びっくりしましたよ。私が思っていた以上に下がっている。五月まで税収は見込めるんですけれども、これは大変な落ち込み。法人税、企業がだめなんですよ。今年度の税収も、これは目標四十一・八兆円でしょう。これはすごい数字になると思いますよ。
 構造改革なくして成長なしじゃないんです。成長なくして構造改革なしなんですよ。経済を小さくして、税収を減らして、そしてまた補正予算を組んで借金していく、これが間違えているんじゃないの。政策転換しなきゃ日本がつぶれちゃいますよ。いかがですか。
竹中国務大臣 政策転換の意味が、今のお話にありましたように、やはり当面、景気を支えるための直接的な景気対策、それを、一時的に財政赤字を拡大してもいいから、財政を拡大すべきである、そのようにもしおっしゃるのであるならば、そこはしかし、大変慎重でなければいけないというふうに私は思います。
 財政の赤字は、今日本のプライマリーバランス、基礎的収支、つまり金利部門、国債費を除いただけでGDP比の五%を超えます。これがマイナスである限りは、どんどん国債残高のGDP比は際限なくふえていくわけでありますから、これは理屈抜きに、どこかでゼロに戻すしかありません。しかし、この五%を超えているのをゼロに戻そうと思ったら、毎年毎年GDP比〇・五%ずつ改善していかなければいけない。そういう状況にある中でさらに財政赤字を大幅に拡大するというのは、私たちの未来、もっと言えば子供たちの世代の日本に対して非常に危険な状況になってくるというふうに思うわけです。
 現実問題として、しかし、急激に赤字を収束させますと、短期的なデフレ、不況が非常に進捗する。したがって、これを十年程度で非常にモダレートにやっていこうというのが、今の「改革と展望」で示された一つのシナリオでございます。大変目の前苦しいという面もありますが、そこは短期と長期とのバランスをしっかりととりながら、狭い道を経済運営していくしかないのではないかと思っております。
 ただ、一点、税収の落ち込みに関しては、昨年度も申し上げましたけれども、実質経済成長率は一・六%でした。しかし名目はマイナス〇・七でした。つまり、それだけ物価の下落が大きい。このデフレをとめるという点に関しては、日本銀行とさらに協力して、これはさらに政策を強化していかなければいけない分野であるというふうに思っております。
中津川委員 ここで経済論議ばかりはしていられませんけれども、きょう発売のこの文芸春秋、ぜひ竹中さん読んでいただいて、「小泉改革の「逆」をやるしかない」丹羽宇一郎さん、「竹中平蔵経財相を直ちに更迭せよ」自民党の総務会長の堀内光雄さん。いいこと書いてありますよ。国民のほとんどはこう思っているんじゃないかしら。経済よくしてほしい、景気よくしてほしい、将来に夢と希望を持ちたい、みんなそう思っているんですよ。
 ぜひ、竹中さん、小泉さんと心中するのはいいんですけれども、その後のことはどうなろうと、めちゃめちゃにして、アメリカに行くかどうか知りませんけれども、本当に非は非と認める、自民党の中にも良識ある人はいっぱいいるわけですから、国民の聞く耳を持って、いいじゃないですか、政策転換して。これにはもう答えなくて結構であります。
 次に、今回の法改正、これを認めないのは、これは実は銀行救済ではないかという、これが先ほど来から出ておるわけでありますが、不良債権の処理、破綻防止のための公的資金注入、健全なはずの金融機関の突然の破綻など、バブル崩壊後、国民は政府の金融行政の犠牲になってきましたよ。「りそな」の問題もそうであります。
 では、なぜ今回が銀行救済なのかというと、それは生保に対する銀行の貸し出し状況からもう明らかだと思うんです。調べてみましたら、日本の主な生保には例外なく数百億から七千億以上の金融機関の資金が入っておりますね。例えば日生の場合、基金に四千五百億円入っております。住友生命には一千六百九十億円の基金、それから五千四百五十億円の劣後ローンが貸し付けられています。各生保の資本における大手行のシェアは、日生で五七%、朝日生命に至っては九五%という異常な高さですよ。
 ですから、当然ながら、生保は銀行の大株主ですよ。この資本の持ち合い構造が、午前中にも話がありました、生保と銀行が一蓮託生となっているということですね。生保が破綻すれば、更生特例法により、銀行の貸し出した基金や劣後ローンは焦げつきます。その結果、銀行には莫大な不良債権が生じるという仕組みになります。これこそが生保破綻を何としても避けたいという金融業界あるいは金融庁の法改正の真意ではないかなと私は思っているんですが、国民もそう思っているんじゃないんですかね。それを答えてもらいたいんです。
 それと、破綻するよりましですよなどというのは建前のことで、例えば今回の措置によって一番助かるのは、生保にお金を貸している銀行ですよ。こんな見え透いたことまでして銀行をなぜ守りたいんだろう、大臣。銀行を守るのは結構です、金融システムですから。だけれども、国民の大切な金融資産であり、命を守るすべでもある生命保険が犠牲になっていくことに対して、何か感じないですか。いかがですか。
竹中国務大臣 委員の御指摘、お言葉の中で、これは、今回、銀行を守るためなのではないか、銀行を救うためなのではないかという御指摘がございましたが、法案提出者の私自身の意思としまして、銀行を守るためにというような意識は全くございません。これはあくまでも、保険契約者にとって、破綻のような措置になるのと今回のような措置と一体どちらがよいだろうか、保険契約者の保護にやはり長期的にはなるのではないかという点に立脚をしております。
 銀行が拠出しているさまざまな資金動向でありますけれども、これはまさに自治的な手続、自主的な手続の中で決められているわけでありますから、必要とあればそういうようなことを意思決定する場合も出てくるでありましょうし、そこはまさに長期的に考えて、契約者にとってどれが一番よいかということを自治的に決定していただくということになるのではないかと思っております。
 これは、繰り返しになりますが、銀行を救うためにこういうことをやっているということは全くございません。むしろ私は、銀行に厳し過ぎるというふうにいろいろなところで言われておりますけれども、銀行もしっかりしていただきたい、生保もしっかりしていただきたい、そうした中で預金者、保険契約者が長期的にやはり少しでもメリット、利益があるような、そういう形で政策を運営したいというふうに思っているわけでございます。
中津川委員 この状況を見ている国民にそれを判断してもらえると思います。
 予定利率を途中で引き下げるということは、保険に入っている人の身からすれば、契約時に約束していた保障が、事情が変わったから、できなくなったから削りますということでしよう。契約者にとっては命のかわりにもなるという大切な生命保険、その契約の不履行となる予定利率の変更を国が法律で認めて制度化しようというのですから、どう考えてもめちゃめちゃ、まともなことじゃない。
 大臣の好きな言葉にコーポレートガバナンスというのがあるんだけれども、大臣、この法案ができてからはコーポレートガバナンスなんて使えない。説得力がない。この法案がこれからどういう形になるかわからないけれども、コーポレートガバナンス、コーポレートガバナンスと横文字を言うけれども、もう言う資格もない、そう思っていますよ。
 それで、例えばこれが成立した場合、海外の金融のプロが見たらどうなると思いますか。どう思いますか。日本はどうなっているんだろう、日本の金融制度、保険制度は崩壊している、腐っているんじゃないだろうか、それは思いますよ。財務省、これは同じことが、我が国の国家として、評価は下落ですよ。国債の格付、引き下げを呼ぶことになりますよね。これはどう責任をとるんですか。
谷口副大臣 今の中津川委員のお尋ねでございますが、先ほどから竹中大臣もおっしゃっておられるように、今回の保険業法の改正は、生命保険会社を取り巻く逆ざや体質の問題があって、そのようなことで、保険契約者を保護するというような観点から行われるものであり、また保険業界の継続という観点で今回行われるものであって、これは保険、金融制度に対する信頼をこれによって確保されるというように考えておるわけでございまして、そういう観点からいたしますと、国債の格付に影響があるというようなことはないと考えております。
 またさらに、付言させていただきますと、従来から国債の格付については、私はちょっと疑問を持っておるわけでございますけれども、アメリカの、今、対外の債権で、これが三百兆円を超えるような純債務国でございますし、経常収支赤字が五十億ドルも出ておるというような状況の中でこれがAAAということで、対外純資産が百七十兆円を超えておる我が国がAAマイナスというのは、どうも解しがたいというふうに思っているわけであります。
竹中国務大臣 委員の御指摘は、こういう制度をつくると、要するに契約条件を変更するということによってかえって全体の信頼が損なわれるのではないか、その点を御懸念だということであろうかと思います。
 しかし、究極的には、私は、やはり保険会社が逆ざや等々を反映して破綻していく、そういう破綻するようなケースに比べれば、今回の契約条件の変更を可能にしてその破綻を避けていくということの方が、むしろ信頼の回復につながるのではないかというふうに考えております。
 実は、格付の話がありましたけれども、フィッチは利率引き下げそのものは契約上大変厳しく見るということを言っているわけですが、同時に、多くの保険契約者にとっては結果的に最悪よりはましなシナリオであると思われると。最悪よりましという言い方をするかどうかはともかくとして、繰り返し言いますが、保険会社の破綻によって受ける契約者のデメリットよりは、今回のような選択肢を一つ用意しておくことの方が、私はやはり一つシステムの安定という観点からもメリットがあるのではないかというふうに思っております。
中津川委員 簡潔に質問しますので、簡潔に答えてもらいたいと思うんですが、生保各社は経営状況が厳しいと口をそろえて言いますが、客観的なデータが私たちには何もわからない。経営情報でありますと、三利源、費差、死差、利差というのがありますね。これも実は明らかになっていない。基礎利益というのが一般企業でいうと営業利益になるんですか、これはプラスなんだけれども、今申し上げた三利源の内訳を明らかにしていない。なぜ明らかにしないのか、これが一点です。
 それから、金融庁は、生保各社についてこれらの情報を公開するように指導する意向はあるのか。大事ですよ、これだけの法案をつくるんですから。国の権力が介入して民間の契約に踏み込むんですよ、これは。
 それから三番目、今回の措置で予定利率の引き下げを申請する場合、申請会社は今言ったようなことを含めて、どこまで本気で経営情報をディスクローズするのか、明快に答えてください。
伊藤副大臣 私どもといたしましても、保険会社が情報開示をしっかりやっていく、その充実は大変重要な課題だというふうに認識いたしております。
 しかし、先生御指摘のいわゆる三利源の問題につきましては、これは各社の競争戦略にかかわるいわゆる内部管理指標でありますので、その公表を義務づけるということについては慎重な対応が必要ではないかというふうに考えているところでございます。
 予定利率の引き下げについてでありますけれども、これは主体的、自治的な手続の中で契約内容を変更していくわけでありますから、その趣旨を踏まえれば、契約者の方々に対して十分な説明をしていくということは大変重要なことでございますし、その上に理解というものが成り立っていくわけでありますから、そのために先生御指摘の情報開示をしていくことがあり得る、これを否定するものではありません。しかし、この点についても、公表を義務づけるということについては、やはり私どもとしては慎重な対応が必要ではないかというふうに思っているところでございます。
 いずれにいたしましても、契約者の方々が十分納得していただけるような情報開示が必要でありますから、そういう意味で、みずからが積極的に情報開示をしていくことが求められるというふうに思っております。
中津川委員 いや、すごい矛盾ですよ。今声が聞こえてきましたけれども、これはデフォルトなんです。申しわけない、ごめんなさいでしょう。それは、こういう内容だから、こうなっているからこうなんですというのを見せないで、一方的に、さっきの仙谷議員じゃないけれども、こっちから通達して、それであとは個々の会社の事情によるなんて、そんなばかなことが市場主義経済ではありっこない。これは国民が見ていれば、伊藤さんのそれはおかしいと思いますよ。
 時間も迫ってきましたので、最後に、責任のとり方について、これは金融機関も、それから生保の経営者責任というのも今回はっきりしないんですね。経営を支えてきた金融機関の責任というものが明記されていない。目立つのは、契約者の不利益ばかりが決まっていく、こういう感じですね。
 同じように、この法改正には、生保の経営者責任についても明確にされていないんですね。なぜかなと思うんです。これは異常な措置なんですから、クレージーな措置なんです。経営責任をとらないということは公正さを欠く社会政策だと僕は思いますよ。予定利率引き下げの申請に具体的な経営責任を問う要件も課されていない。
 大臣、これを詳しく説明してください。
竹中国務大臣 このスキームの基本的な考え方は、保険会社と保険契約者の自主的な判断、自治的な手続によると。そうした流れの中で、委員御指摘のとおり、経営の責任についても、全体の自治的な合意の中で決すべきことを決しろというふうにゆだねられているわけでございます。
 ただ、この点に関してはケース・バイ・ケースなのだと思います。本当に私は、経営に長年携わってきた経営者で、経営の手腕が問われるような方の場合は、今回、条件変更の変更案の作成に当たっては、経営者責任をどうするかということを明記しなければいけないことになっています。それを明記する中で、私は、先ほど言いました自治的合意の中で解決が図られていくと思っております。
 経営者にもいろいろな方がいらっしゃる。そういうふうに、本当に責任を負わなければいけない立場と、非常に新しく経営者につかれて、まさにこれからこうしたスキームも活用しながら前向きに経営改革をやっていこうというふうな方もいらっしゃる。
 いずれにしても、契約の変更案の中に、事前に送付する書類の中に、経営の責任についても明記するということを義務づけているわけでありまして、その自治的合意の中で適切な対応が、私は、現実問題としてはなされていくであろうというふうに思っております。
中津川委員 金融庁の責任も明確になっていないんですよ。あいまいなままで、個別に決めてくださいと言って何かぼかしてある感じ。本当に消費者、国民・契約者を保護するという一番大事な視点が欠けているんですね、それが不足しているんです、そう言わざるを得ないですよ。
 大臣、本当にこれは国民が納得するとお考えですか。大臣の答えを聞いて私の質問は終わりにします。
竹中国務大臣 逆ざやの問題、大変難しい多くの問題を含んでいるというふうに思っております。以前から申し上げていますように、魔法のつえのようななかなか解決策がなくて、さまざまな改革の手法を駆使していかなければ解決できないんだと思っております。そのための一つの経営の選択肢として、破綻に至る前の予防的な措置として、今回の一つの選択肢を提供するという法律を提供させていただいているわけです。
 これで国民の合意は得られるのか、この点はもちろん大変重要な問題だと思っております。我々としては、この委員会での御審議を通じて、精いっぱいの説明はさせていただいたつもりでございますけれども、これは引き続きいろいろな形で我々としても説明をしていかなければいけない、そういう責任を負っているというふうに思っております。
中津川委員 終わります。
小坂委員長 次に、五十嵐文彦君。
五十嵐委員 民主党の五十嵐文彦でございます。
 この法律ぐらいたちの悪い、モラルに欠ける、でたらめな法律はないな。口のうまい竹中大臣の話を聞いていても、つじつまが全然合っていないじゃないですか。我が国は自由主義経済国家ですよ。銀行であろうと、生保であろうと、一般事業会社であろうと、約束は守らなきゃいけないし、それを勝手にデフォルトしていいなんということはどこにもないんですよ。銀行が危なくなったときに国として救済する仕組みがあるというのは、銀行を救済するんじゃないんでしょう。預金者を保護するという、国民を保護するという、後ろにシステムの危機というものがあって、いわば危機管理としてこれはやりますという話なんですよ。
 だったら、今まで、生保の契約者を守ると言うけれども、契約者保護機構というあのセーフティーネットは何だったんですか。つい最近やったばかりじゃないですか。自己責任原則と組み合わせた中で最低限の保護はそこでしましょうねという、そういう仕組みなんじゃないですか。これがあったら、保護機構が要らなくなっちゃうじゃないですか。何であんな法律を出してきたんですか。でたらめなんですよ。
 それから、契約者を保護すると言うけれども、契約者の保護にもなっていない、大体が。例えば、生保会社が倒産した場合と予定利率を引き下げた場合とを比べてどっちが得ですかということで、こっちを選ぶ選択肢を提供しますという理屈づけになっているんですが、引き下げをしたいと生保会社が言ってきたとき、一体どれぐらい解約が出ると見込んでいるんですか、解約率を。それは見込めていないんでしょう。解約率によっては直ちに倒産をしてしまうし、そのときの得か損かの状況も変わってしまうんですよ。
 あなた方は契約者にとって得か損かで言っていると言うけれども、実際に言っているのは銀行にとって得か損か、生保経営者にとって得か損かだけを言っているのであって、契約者には解約という別の選択肢があるわけですから、解約した場合とそのまま甘んじて予定利率引き下げを受けた場合とどっちが得かという計算があるわけですから、そこを無視して、一方的に、倒産した場合と予定利率を引き下げた場合だけの比較をして、こっちの方が得なんです、それも絶対的に得だと言えないのに、こういうスキームに国が介在して民間のデフォルトを認めるようなことをどうしてするんですか。全く理屈になっていないんですよ。
 時間が短いですから、簡単にお答えください。
竹中国務大臣 五十嵐委員から今三つの点、御指摘があったというふうに思います。
 一つは、我々は自由社会にいるんじゃないか、契約というのは勝手に変えてはいかぬものだろう。その点は御指摘のとおりだと思います。しかし、まさに、契約を決して一方的に勝手に変えるのではなくて、自治的な合意の中で変えるような道を残そうというのが今回の措置でございます。大変難しい仕組みではありますけれども、その中で考えられる幾つかの有効な手段は準備したつもりでございます。
 二番目で、セーフティーネットがあるじゃないか、それとの関連はどうだ。これはまさに、破綻した場合はそのセーフティーネットが必要になると思います。今回の措置は、破綻を予防するような措置の一つの選択肢として提供しているわけでありますし、これがあればセーフティーネットは要らないのか、いや、そういうことではないと思います。今回の措置で、破綻を防げる場合もあるし防げない場合もある。破綻に至った場合は、セーフティーネットが必要ということでありますから、これはあくまでやはり選択肢なのかなと思っております。
 最後に、解約がふえるじゃないか、それがむしろこのシステム全体の運用を難しくするのではないか、そういう趣旨の御指摘であったかと思いますが、これは要するに、この措置だけでは、同僚の海江田議員からの御指摘にもありましたように、なかなかうまくいかない場合もあり得るんだと思います。だからこそ思い切った経営改革、その経営改革の中には、新しいビジネスモデルをつくる場合もあるでしょうし、また、合併とか再編の場合もあるでしょうし、そういうものとうまく組み合わせて、まさに経営戦略の一つの選択肢として使っていただける場合が、私はやはり有効にはあるのであろうというふうに思っております。その辺の、大変難しい道ではありますけれども、一つの選択肢として御用意させていただいたということでございます。
五十嵐委員 私が申し上げた根本は、契約社会では、倒産をするかあるいは危機管理でなければ、一方的なデフォルトは認められないということなんですよ。そこをきちんとお答えになっていない。苦しいからお答えになっていないんだろうと思うんですが、後でもゆっくりまたさせていただきますからね。
 きょうで審議議了なんというのはふざけた話だと思いますよ。十分な質疑が行われていない。私は、何点かこれから申し上げますけれども、簡潔にお答えいただきたいと思うんです。
 まず、公取委にせっかく来ていただいているんですから、公取に聞きたいと思うんですが、この法案では、契約者への不利益になる変更を一カ月以内に発効するという仕組みになっているんですね。一カ月以内の周知でこんな一方的に不利益処分を契約者に押しつけるというようなのは、私は、一般的にも公正な取引とは言えないと思うんですね。一方的にそういうことをもしできたとして、ほかの業界であったとしても、一カ月以内に急に、あなたたちのことを、得るべきサービスを半分にしますと。
 だってこれは、場合によっては四八%カットされるんですよ。国民の皆さん、まだ気がついていない方もあるかもしれないけれども、契約によっては、女性の場合ですけれども、十五年掛けてきて、長い間掛けてきて、ここで急にこの法律が決まって申請されたら、得られるべき返戻金が四八%カットされるんですよ。こんな不利益を一カ月以内にぱぱっとやって、申請があったらすぐ認めてしまうというようなことで、本当に公正な取引なんですか、これが。
 それから、続けて公取に、もう時間がないのでまとめて申し上げますけれども、談合をして一斉に生保会社が引き下げを申請してきた場合、私は、独禁法に触れるんではないかなと思うんですが、そういうケースを排除できない法律になっているんじゃないかなと思うんですが、この点についてはどうでしょうか。
 それから、引き下げは必要ないですとみんな生保会社は今言っています。いや、引き下げるというところがあったら危ないから入るのやめようかなという、新規契約をしようとしている人もいると思うんですね。あるいは、早いうちに逃げ出そうとしている人もいると思うんですが、引き下げは私のところではいたしませんとどの生保会社も言っているんですね。
 こういう誤った情報を故意に与えておいて、最後にぱっとやってしまう。その間に、こんな会社だったら新規契約するつもりはなかったという人たちは訴訟を起こすと思うんですが、そういううその、不当表示に近いような、虚偽の広告に近いようなことを言っていて、これを突如やるようなことがあったら、これは私は、公正取引という面で問題があるんじゃないかな、こう思うんですが、いかがでしょうか。
上杉政府参考人 お答えいたします。
 一般論になりますけれども、法律に規定された仕組みというのがございまして、その仕組みに基づきまして行われた事業者の行為に対しまして独占禁止法を適用するというのは非常に難しいのではないかと考えております。
 ただ、公正取引委員会といたしましても、保険会社が契約条件を変更する場合に、公正かつ自由な競争が確保されることが重要だと考えておりますし、また国民の関心の高い問題でもございますので、我々としても十分問題意識を持って対応したい。すなわち、優越的地位の乱用等の不公正な取引方法に該当するようなことがないかどうか、これは注視してまいりたいと考えております。
 それから、予定利率の引き下げに関して、談合といいますか話し合いが行われた場合、これは当然独占禁止法が適用されるということでございますので、独占禁止法上問題となるということでございます。
 それから、最後の御質問は、そういう予定利率の引き下げを行わないということを言っている場合の虚偽表示の問題でございますけれども、私どもの所管している法律では、不当な顧客の誘引ということが問題となりますので、あるいはそのような行為によって不当な顧客の誘引があるのかどうかという問題もございますし、また法律に基づきます所要の手続を経て行われるものであるということにかんがみますと、直ちに私どもの所管しております景品表示法違反というような問題が出るのは疑問ではないかというふうに考えております。
五十嵐委員 使いようによっては独禁法上の問題になるようなこともあるし、当然、独禁法という狭い法律の範囲内ではひっかかる分野は少ないかもしれないけれども、実際に、公正な取引という考え方からは、本質的に問題点が非常に多いわけです。
 契約そのものは双務的なものですから、本来ならば。契約者の側が一生懸命保険料を払ってきたけれども、景気が悪くて払えなくなったということであれば、これは一方的に、生命保険会社側からは、契約の不履行であるということで会社側からの契約打ち切りが通知されて、ペナルティー的な手数料が取られるということがあるわけですね。利益は享受しておいて、自分たちの方は何のペナルティーもなく、相手方に損害を与える契約変更を行えるというのは、どう見たっておかしいんですね。
 それから、先ほどから出ていますけれども、三利源は一応全体としては公表されているんですよ。前の柳澤大臣にしても、いや、確かに逆ざやはあるけれども心配ないんです、死差、費差があって、合わせれば利益は十分上がっているんですと説明し続けているじゃないですか。しかも、逆ざやというのは、新規契約をとれば相対的な重荷は下がってくるんです、時間がたてば下がってくるんです。今までやらないで、ここで逆ざやだけをクローズアップして、逆ざや対策としてどうしてもこれは欠かせないという理屈は成り立たないはずなんですよ。
 しかも、逆ざやだけじゃないの。失敗しているところはいろいろなことにある。みずから逆ざやを高めていることもあるんですよ。最近の超長期国債二十年債以上のものをどこが買っているかというと、生命保険会社が大体買っているんです。いわゆる国内債券の、国債の残存期間はふえる一方なんですよ。しかも、勝ち組は少なくて、勝ち組といえば富国生命とか太陽生命は逆に残存期間を短くしている、国債のリスクがあるから。ところが、いわば危ない会社と言われているところは逆にふやしているんですよ。ソルベンシーマージン比率の低い二つの生命保険会社は残存期間を延ばしていますよ。要するに、長期国債を買い足しているんですよ。
 長期国債は、今どうなっているんですか。新発債の二十年債は利回り〇・八三%ですよ。これは逆ざやの拡大であり固定じゃないですか。みずから逆ざやを拡大し、固定化する政策をとっていながら、逆ざや問題があるから予定利率引き下げてくださいというのは筋が通らないじゃないですか。どうですか。
竹中国務大臣 今五十嵐委員御指摘のように、確かにいろいろな問題があるというふうに私も認識をしております。
 ちょっと戻って恐縮なんでありますが、契約は双務的であるというのは全くそのとおりであります。しかし、一方的ないわばデフォルト宣言という御表現もありましたけれども、ぜひとも御理解いただきたいのは、今回、異議申し立て等、それをカバーするようなしっかりとした制度を、考えられる制度を取り入れたということでございます。
 それと、ちょっとお尋ねで恐縮ですが、四八%下がるという御指摘がございました。これはちょっとよく理解できませんでしたので、後ほどまた御指摘をいただければと思っております。
 それと、お尋ねは大きくその二点、今まで問題ない、問題ないと言ってきたのに、なぜ今なのかということ。これは一言で言えば、環境がこの二年間さらに著しく悪化してきたという点に集約されるというふうに思っております。もちろん、ソルベンシーマージンで示される今の健全性、自己資本の問題については、今すぐそれを問題にするような状況にはないという認識は変わらないわけでありますけれども、それが将来にわたって、逆ざやが厳しい環境下でじわじわと保険会社の体力をむしばんでいるという状況にかんがみて、やはりこの逆ざや問題に対して一つの解決の選択肢を提供したいというのが、今般この法案を提出させていただいたあくまでも趣旨でございます。
 それと、後半御指摘がありました、どうも生保の資産運用行動がおかしいのではないか、特にソルベンシーマージンの低いところで国債を買い増しているというのは一体どういうことなのか。これは各社のポートフォリオ戦略でありますから、必ずしも明快に私が申し上げられませんけれども、今、短期的には、株をたくさん保有しているところについては、その株式の放出をやっているという状況があろうかと思います。その株を放出した後の一つの受け皿として国債が買われているという側面があろうかというふうに思いますが、いずれにしても、しっかりとした経営戦略を持ってポートフォリオを組んでいただかなければいけないわけで、これは監督の立場としてしっかりとぜひやっていかなければいけないと思っております。
五十嵐委員 女性が二十五歳で、五十歳払込期間満了の終身保険に入って、九〇年に加入して十三年保険料払って、この三%への引き下げを受けると、カット率は四八%になる、そういう試算が出ております。同じように、これが男性だった場合にはカット率は四四%という試算が出ておりますので、それだけの大損害を与えるんですよ。生活設計、みんな狂っちゃうじゃないですか。これは後でまた申し上げますけれども。
 それから、一〇%超の異議申し立て条項があって否認できるというお話を何回も使われるんですが、一たんこれを申請した場合、異議申し立てようとしても、生命保険会社がやってきて、異議申し立てしてこれが通っちゃったら、必ず倒産してしまうんですけれどもと言うに決まっているんですよ、そうだから。事実上、異議申し立て制度というのは形式上で、封じ込められるんですよ。そうでしょう。異議申し立てて申請がひっくり返ったら、それはもう解約の嵐に遭って、その会社はもつわけがない。だって、これをやらなきゃもたないんですと言っているところがやれなくなるんだから、もつわけがない。
 すなわち、論理的に言って、異議申し立て条項はあるというだけで、使えない伝家の宝刀になるんですよ。そうじゃありませんか。でたらめですよ、こんなものは。これが民主的手続だというのはでたらめ。こういうのを詭弁というんです。
竹中国務大臣 異議申し立ての手続というのは本当にきちっと機能しないのではないか、そういう御指摘、御質問かというふうに思います。
 ここは、この制度、システムの中でも大変重要な部分でありますので、我々も行政の、これは行政の承認も絡んでまいりますから、契約者に不当な利益を強いるものではないか、そういうような点は行政としてしっかりとチェックする仕組みを持っております。
 また、第三者の保険調査人を活用するということもその中では可能でありますので、そういった点も積極的に活用して、委員が御懸念のようなことが本当に契約者・国民に起こらないように、我々としては全力を挙げたいというふうに思っております。
五十嵐委員 私は、論理的にそうなるじゃありませんかと言っているんですから、今のは運用上そういう懸念がないようにしますと幾ら答えたって、それは意味がない話なんですよ。これは本当にごまかしだけの話。
 それから、たくさんあるんですが、この契約社会、日本の資本主義の社会では、会社がデフォルトをするというようなときは、基本的に、第一に責任を負わなきゃいけないのは出資者、株主、そういったところですよ。それは当たり前じゃないですか、それで有限責任の世界を形づくっているんですから。出資者責任、株主責任というのが第一に来なきゃいけない。その次が経営責任ですよ。それは、出資者や株主が委託をして経営させている者の責任が二番手に来るんです。その次が消費者なんですね。
 ところが、いきなり契約者に責任が来て、逆転しているんですよ。出資者には、責任とってもいいんだけれども、それは自治の範囲内でと言っているんですね、皆さんがおっしゃっているのは。これはでたらめなんですよ。こんなことはモラルハザードのきわみですよ。通告すればいいと言うんでしょう。契約者に対して、こういう責任のとり方をしましたという通告をすればいいと。それは、スキームとして責任をとらせる仕組みになっていないということなんです。これはでたらめ、まさにモラルハザードを生むしかない、こういう仕組みなんですね。
 これは、日本社会のみならず、世界じゅうの資本主義の仕組みを壊す話になるじゃないですか。これは世界じゅうから評価されないですよ。こういうことをやれば、先ほど中津川先生からもあったけれども、コール市場で日本の金融機関が資金を調達しようとかいったって、本当に、できなくなりますよ。日本の資本主義というのは異質な資本主義なんですね、そうなるに決まっているじゃないですか。いかがですか。
竹中国務大臣 今の五十嵐委員の御指摘の中で重要なポイントは、デフォルトの場合は、出資者が真っ先に責任を負うんだ、次に経営者だ、デフォルトの場合はそうだというのは、私は全くそのとおりだと思っております。しかし、繰り返しになりますが、これはまさに、破綻、デフォルトを回避するための、デフォルトを予防するために、ゴーイングコンサーンとして引き続き営業を行えるような状況をつくり出すということを前提に、今回のスキームを議論しているわけでありますので、そこは単純にデフォルトの場合と比較をするべきではないのかなというふうに思います。
 しかし、もちろんこれは、モラルハザードを回避して、けじめをつけてゴーイングコンサーンとしての活動を続けていくためには、場合によっては出資者も責任をとらなきゃいけないし、場合によっては経営者も責任をとらなければいけない。そういう場合は、当然のことながら出てくるのだというふうに私は理解をしております。
 いずれにしても、そうしたことも含めて、一つの経営の選択肢として今回のスキームを活用できる範囲で活用していただいて、それによってモラルハザードを回避しながら、究極的には破綻をする場合に比べて保険契約者の利益が守られるような、そういうような仕組みとして、実際にそういうような使われ方をぜひしていかせたいというふうに思っております。
五十嵐委員 契約者の利益を守るというのは全くのフィクションなわけですね。何回も深尾先生も指摘をされていますけれども、まず出資者の責任をカットしないわけですから、劣後しない劣後ローンの仕組みをここでつくっちゃったことになるわけです。基金や劣後ローンをカットしないで契約者にだけ負担を負わせたら、契約者の負担というのは最終的には重くなるでしょうよ、それは。全然そういう、基本的に契約者を保護する仕組みになっていない。
 それから、十分の一超の異議がなければこれを否認できないわけですから、否認をしたくても、異議を唱えたくても、無理やり意に反して自分の契約を強制的にいわば変更させられる人が出てくるわけで、ただし、この人たちの利益というのは法律的には当然保護されますから、裁判に必ず打って出ると思います。私だったら裁判しますね。そのときに、こういうスキームをつくった金融庁、それを認めた国に対して私は訴訟を起こしたい、私だったらそう思います。物すごい数の訴訟が起きると思うんですが、訴訟リスクという検討はされたんですか。
竹中国務大臣 以前も御質問の中で、五十嵐委員は深尾さんの御意見を引用されました。これは繰り返しになりますけれども、深尾さんは債務超過の場合を議論されているわけで、債務超過になっていない状況で、それを避けるためにやっている措置との単純な比較はできないんだというふうに思っております。
 お尋ねの中心であります、こういうことをして本当に法律的に大丈夫なのか、国は訴訟リスクを負っているのではないかという御指摘がございました。我々としては、そういうことがないようにしっかりと法的な枠組みをつくったつもりでありまして、これは当然のことながら、法制局とも相談の上、今回の法案を提出させていただいております。
 いずれにしましても、まさに契約者の立場、権利を守るということが大変重要であります。そのためには、契約者にちゃんと御理解をいただいて、自治的な決定の仕組みが本当に有効に機能する、活用するような状況をつくっていかなければいけないと思っておりますので、その点は、この枠組みに加えて、我々のこれの運用の姿勢が大変重要である、しっかりとやらなければいけないという認識を持っております。
五十嵐委員 運営の姿勢じゃなくて、法律そのものがでたらめなスキームになっているということを申し上げているんで、全然納得できないですよ。
 それから、ソルベンシーマージンというのは、今まで唯一の我々にとっての安全性をはかる指標だったんですが、これを全く意味のないものに皆さんのお力でされてしまったんですね。ソルベンシーマージンというのは支払い余力ですから、突然の何かが起きたときでも、不測の事態が起きた場合でも財務的には耐え得るという数字なんでしょう。それだったら、ソルベンシーマージンが下がってきていて危なくなりますねという警戒警報が出てから、そのほかの倒産させないための措置をすればいいんじゃありませんか。ソルベンシーマージンの意味がなくなりますよ、こんなことをやっていったら。私はおかしいと思いますね。
 さらに、もう締めくくりの質問に近くなっているものですから、私、矢継ぎ早に申し上げますけれども、大体、将来の業務及び財産の状況を予測してやるんだというようなことを言っているわけですが、そんな予測できるようなところは危ない生保会社になっていませんよ。一期先のこともわからないんじゃないですか。
 その中に書いてあるガイドラインというのは、慌ててこれからつくるようですけれども、にわかづくりをしてきたものだから、でたらめじゃないですか。金利や株価や為替レートを考えるんだと条項の中に書いてあるんですが、金利や株価や為替レートの条項というのは、予見できるんですか。できるわけないじゃないですか。でたらめですよ。
 それから、新契約進展率や保険契約継続率を見るんだと言うけれども、こんなのは予測ができないんでしょう。だって、手を挙げちゃうんだから。うちのところは将来継続が不可能になる会社かもしれないんですと手を挙げておいて、新契約進展率を今までの率に従って計算しようとか、保険契約継続率を今までの既存の率に従って、それを前提にやっていこうというのは虫のいい話にすぎないじゃないですか。でたらめですよ、こんなこと、スキームそのものがでたらめそのもの。
 私は、この法案、先ほどのお返事もいただいていない、こんな重要な不利益処分をするのに、一カ月以内で公示して発効するというやり方も含めて、アンフェアだということを申し上げているんですけれども、大体、こそく過ぎるんですよ。自分たち行政側の責任を回避するために、自治システムにこれを押し込めて、そして逃げてしまおうというやり方もこそくですし、私は、これはリトマス法案だと言っているんですよ。
 要するに、まともな政治家はこれに賛成できません。できないはずです。それから、曲学阿世の、行政におもねる学者は賛成するかもしれないけれども、それ以外の、腹に一物のない学者は反対するはずですよ。これは、まともな人なら反対をするけれども、まともでない人、腹に一物ある人たちは何らかの政治的思惑や何かで賛成をなさるという、完全にはっきりしたリトマス法案ですよ。
 今まで私が申し上げた、最後に残った二、三点についてお返事をいただくとともに、本当に心の底から言いますから、今からでも遅くないから撤回してください。心の内で、こんな法案つくりやがってと事務局に対して腹を立てていらっしゃるだろうなと。だって、私がやじを飛ばしていると、うなずいているんですよ、竹中大臣は。お粗末な法案ですねと言うと、うなずいているんだから。副大臣もそうですよ。本来ならば改革派のはずなんですが、あなたたちの改革派のレッテルもこれでなくなりましたよ。これは、抵抗勢力はあなた方自身だということを申し上げますが、最後にお返事だけいただきたい。
竹中国務大臣 いろいろな御指摘を賜りました。
 一つは、ソルベンシーマージンとの関係でありますけれども、これは、現時点での支払い余力、支払い能力の指標と、問題は、それが将来ダイナミックにどのようになっていくか、会社全体が、支払い余力だけではなくて、ソルベンとかどうかだけではなくて、流動性も含めてどうなっていくか、その点を勘案するということだと思います。
 二番目の点は、第一点に関連するんですけれども、そんなことができるのか、将来が予想できるのかと。そこの点は大変難しい重要な問題であろうかと思っております。
 先般示しましたのは、ガイドラインの検討状況ということでお示ししておりますので、我々としてもしっかりとガイドラインをつくっていくつもりでありますが、為替レートが予測できるのかと。もちろん、そんな予測はできないわけでありまして、それはリーズナブルな想定のもとで、為替レートに関する合理的な想定のもとで経営がどうなっていくかということを見ていく、そういう意味で使わせていただきました。
 最後に御指摘になりました、まともな人は云々ということでありますが、我々としては……(五十嵐委員「一カ月以内はどうした」と呼ぶ)
 一カ月以内に関しては、法律は決定いただいたら直ちに施行するというのが原則であろうかと思いますが、今般は、これは罰則の規定が一部入っておりますので、一カ月程度の猶予を持って政令で定める日というふうにしたということでございます。
 いずれにしても、御指摘は御指摘として踏まえまして、しっかりと行政を進めていきたいと思っております。
五十嵐委員 終わりますけれども、当初の案は四月一日施行だったはずなんですよ。これは何らかの意図があるあれで、すぐに実行したりしたら大変な問題になりますから、それだけ言っておきます。
 終わります。
小坂委員長 次に、中塚一宏君。
中塚委員 前回、ガイドラインの考え方というんですか、そういうのをいただいたんですが、ちょっと吟味する時間がなかったので、きょう引き続きその問題から入らせてもらいます。
 このガイドラインの、契約条件変更の申し出の承認に当たって、以下の点に留意することとすると。「第一に、現時点では保険業の継続が困難である状況にはないこと、」とありますが、現時点というのはどれぐらいのタイムスパンのことなんですか。
    〔委員長退席、林田委員長代理着席〕
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 先般、ガイドラインの検討状況ということでお示ししました中で、現時点では保険業の継続が困難な状況にないということでございますが、まさしくこれにつきましては、破綻の場合の判断ということで、おおむね五年以内ということを想定しているような状況でございます。
中塚委員 ということは、五年以内はつぶれないということですね。五年間は保険業が継続できるということが前提なわけですね。
藤原政府参考人 そういうことでございます。
中塚委員 「第二に、将来の業務及び財産の状況を予測した場合に、契約条件の変更を行わなければ、当該保険会社の財産をもって債務を完済することができないなど」ということになっていますが、では、この「将来の」というのは五年以降ということでよろしいんですか。
藤原政府参考人 今回の措置について考えております、破綻の蓋然性をはかる際については、もう少し将来のことを考えてございます。
中塚委員 五年以内にはつぶれないけれども、では、将来というのはどれぐらい先のことなんですか。保険契約というとかなり長いですね、二十年、三十年、四十年、あるいは死ぬまでというのもいろいろある。そういう保険契約期間が多岐にわたっている中で「将来の」というときに、一体将来というのはどれぐらい先の将来なんですか。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 契約条件の変更の申し出を行うに当たりまして、策定する将来の予測というのは極めて合理的なものであることが必要であるわけでございますが、したがって、おのずとその期間についてもある一定の限度があるわけでございます。しかしながら、このスキーム自体が自主的、自治的な手法であるということの性格からしまして、画一的な基準を設けることにはなじまないと。いずれにいたしましても、個々のケースにより判断をせざるを得ないということで考えております。
 なお、現在、日本アクチュアリー会の実務指針によりまして、十年間については将来収支の分析を行うような実務が定着しておりまして、いわばこれが一つの参考になり得るものと考えられますが、ただ、そうはいいましても、それ以上の期間の分析を一律に排除するものではないというふうに考えております。
中塚委員 ということは、五年はつぶれないけれども、あるいはアクチュアリー会では十年というふうなこともあるという今局長からの答弁がありましたが、大臣に伺いますけれども、ということは、現時点でつぶれないということは、五年は生きていられる、そういう保険会社で、「将来の業務及び財産の状況を予測」する、加えて、「金利、株価、為替レート等金融経済動向にかかわる事項」と。
 五年先あるいは十年先、そういったものの金利、株価、為替レートを予測しろということなんでしょうか。そしてまた、それを添えて提出しろということなんでしょうか。
竹中国務大臣 先ほども少し申し上げましたけれども、正確な予測というのはだれにもできないものであります。しかし、一般に、例えば物価動向等々から考えて、為替レートというのはこういうふうに想定されるとか、幾つかの幅を持った想定が、通常、こういう長期の見通しにはなされるんだと思います。そういう長期の、通常の手法に基づいて想定されるその為替レートないし金利動向、さらにはマクロのもろもろの指標の中でどのように経営動向が予測されるか、そのことをこのガイドラインの検討状況の中では議論しているというふうに理解をしております。
 それともう一点、先ほどから年限についてのお尋ねがありましたけれども、これは単純に年限だけではなくて、むしろ破綻の場合の議論云々と、今回の選択肢の議論云々の重要なポイントは、期間の概念もございますけれども、予定利率の引き下げという選択肢がどのような効果を持つか、その点なのだと思います。その選択肢が効果を持つ場合と持たない場合がありますから、それによってそれがどのように見通されるかということの中に反映されてくる、私はそのように理解をしております。
中塚委員 いや、お尋ねしているのはそういうことじゃなくて、五年は大丈夫なわけですね。五年は金利、株価、為替レート等と関係なく大丈夫。ところが、五年以降十年ということになると、金利、株価、為替レート等金融経済動向にかかわる事項を書いて出さなきゃいけないということなんでしょう。
 それで、五年以降十年先のそういう金融経済動向をちゃんと予測することは、竹中大臣はできるというふうにお考えなのか、竹中大臣自身はそれがおできになるのか。今、構造改革、改革なくして成長なしなんでしょう。だから、改革をして成長させようと。まさか五年先までこんな景気が悪いということじゃないですよね、竹中大臣。そのころ大臣をやっておられるかどうかわからないけれども、五年たったら景気がよくなっているんでしょう。そうしたら、そのときの金利、株価、為替レートというのは、今よりもはるかによくなっていますわな。ということは、破綻しないじゃないですか、保険会社は。どうなんですか。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほども大臣からちょっとお答え申し上げたんですが、金利、株価、為替レート等々につきまして客観的かつ妥当な前提を置くということを申し上げたのでありまして、それを予測するという話ではございません。こういう客観的、妥当な前提を置いた上で、その上で算定をするというようなことでございます。
 ただ、それでは客観的な前提がどういうものがあり得るのかということについは、これはさまざま考え方があるんですが、例えば、現在、日本アクチュアリー会が実務基準を策定しておるわけでございますが、そこで使われているような一つの基準、前提の置き方というのも一つの客観的な基準ではなかろうかということでございます。
 ちなみに、どのようなことを日本アクチュアリー会が実務基準で定めておるかと申しますと、例えば、金利、株価、為替レートにつきましては、直近の水準で分析期間中一定だというふうに仮定するとか、例えば、新契約進展率とか保険継続率あるいは保険事故発生率などにつきましては、直近年度または過去三カ年度の実績の平均で分析して、期間中は一定で置くとか、こういうような、前提の置き方として客観的な、合理的なものを置いておるというわけでございます。
中塚委員 局長、日本アクチュアリー会がそういうのを出しているのかどうかは、私はそれは見たことがないからわからないけれども、日本アクチュアリー会というのは、この間参考人で来られた、随分昔からあるんですよ。今までも保険会社の保険の商品設計の中にはかかわっているわけでしょう。かかわってきてこのていたらくじゃないですか、保険会社が。どこがどういうふうに客観的、合理的にアクチュアリー会の指針で金融経済動向というのが予測できるんですか。
 竹中大臣、さっきの質問なんですけれども、どうですか、五年、十年先の金融経済動向というのは予見できるんですか。竹中大臣は、私に任せればわかるということなんですか。そこはどうですか。
竹中国務大臣 一般に、長期の貸し付けを行う場合、例えば住宅ローンもそうでありますし、ODAもそうでありますけれども、そういう場合は、十年、二十年、場合によっては三十年の予測を行うんです。行えなきゃ貸せないですよ。したがって、そういう場合には、それにふさわしい、しかるべき想定というのがあるわけです。
 もちろん、正確に、今から十七年後の為替レートを幾らと予測するのか。そんなものは予測いたしません。しかし、今局長が答弁しましたように、現実問題として、そういう長期のローンは存在するし、長期に見通さなければいけない、そうしなければ投資の意思決定ができない場合というのは世の中にあるわけで、そのような場合に、常識的にとられている手法でこの先を見通していく。これはもう、私、それ以上のことは申し上げられないというふうに思いますが、その中で、先ほどから言いましたように、合理的な想定のもとで今後の姿を描いている、そのように申し上げているわけです。
中塚委員 今の答弁は、一見、それだけ聞けば、客観的に妥当かもしれないけれども、そういうふうな金融経済動向を予測して失敗した会社というのはつぶれるんですよ、みんな。今回はつぶさないんでしょう。破綻じゃないと皆さんがおっしゃっているから、私は聞いているんですよ。今はつぶれないけれども、将来もつぶれないんでしょう、けれども経営が厳しくなるということでしょう。その前提としての金融経済動向を予測すると言われるから、では、五年先、十年先、ちゃんとそういうのが予測できるんですか。
 つぶれてしまう会社で、破綻処理をするところと、そうでない、不明朗な、私的整理のようなことをやる、こういう法的なスキームの立て方というのは、それは全然違うはずですよ。だから、ちゃんと予測できるんですかと聞いているんです。どうですか。
竹中国務大臣 今、その二つのものが全然違うというふうにおっしゃいましたけれども、全然違うというふうには私は思いません。将来に対してどのような想定がなされ得るのか。これは、今のベストの情報に基づいて最善の予測をすると言うしかないわけで、それに基づいて、しかし、このまま自然体でいったら何が起こるであろうか、ここで例えば契約条件の変更という一つの条件を織り込んだ場合に、それがどのように将来の経営の姿を変えるであろうか、そこがやはり重要な議論のポイントになるわけです。
 しかし、そういうことを行った上で、まさにここは蓋然性の問題でありますけれども、非常に長期的な観点から、しかし、有効な、ベストの情報に基づいてそのような判断をしていこうというふうに我々は考えているわけです。
中塚委員 だったら、今までつぶれた保険会社というのは一体何だったんですかね。そういうふうな妥当な金融経済動向というのは、みんなが予見していたわけじゃないんですか。そういうのは、客観的、妥当なと言わないで、もっともらしいと言うんですよ。とにかくもっともらしい数字さえ並べればいいということなんでしょう。あとは行政の方が、言ってきたらこっちで判断してやるから、そういうことがこれに書いてあるんじゃないですか。
 続いて伺いますが、この客観的かつ妥当な前提を置いて申請してきたものというのは公表されるんですか。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 保険会社の方から申請がなされるわけでございますが、申請がなされまして、それが承認された段階で、保険会社の方から公表されます。
中塚委員 その承認をされた段階で、承認というのは、予定利率変更手続に入る段階ということですね。――今うなずいていらっしゃるのはそういうことですね。それで、それが公表されて、では、それが認められるのか認められないのか、今度は行政側の客観的な基準というのがあるはずですね。それを公表できない理由というのは何なんですか。こっちが公表できて、何で行政の方が公表できないんですか。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 まさしく今議論されております事務ガイドラインというのが、行政サイドがどういうふうに、どういう基準で判断するか、その考え方、これを今これから事務ガイドラインとして作業しようとしているわけでございまして、まさしくそれは、決まりましたら、事務ガイドラインは公表いたしておりますので、公表されます。
    〔林田委員長代理退席、委員長着席〕
中塚委員 では、数値等の基準というのも公表されるんですか。申請に応じて、認める認めないということについての数字の基準も公表されるということなんですか。
藤原政府参考人 事務ガイドラインはこれから検討するわけでございますが、具体的な個別の数値的な基準というのはなかなか難しいということを先般来申し上げさせていただいております。
中塚委員 でも、やはりそれだったらおかしいですよ。申請側は客観的にいろいろな数字を並べなきゃいけないんでしょう、金融経済動向であるとか、あと、業務及び財産の状況ということについてもちゃんと数字で報告してくるわけですね。何年たったらもうだめですというふうに言ってくるわけでしょう。それについて、行政側は何でその判断の基準を公開できないんですか。
藤原政府参考人 まさしくその事務ガイドラインというのが、行政側がどういうふうに判断していくか、その場合の考え方の基準を示すものでございまして、これは公表することといたしております。
中塚委員 公表するんですか。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 事務ガイドラインと申しますのは、まさしく、監督サイドで行政を行う際に、こういう観点から物事を考えていきますというようなことをやっておりまして、現在既に事務ガイドラインというのはあるわけでございますけれども、その中に、今回の措置に係ります事務ガイドラインについても追加していくというような考え方でございます。
 これは事務ガイドライン全体としまして公表されております。したがいまして、これを見て、保険会社の方は、仮に行政の方に申請すれば、行政はこういう観点から審査してやるというのがあらかじめわかっておるということでございます。
中塚委員 その事務ガイドラインの判断の基準となる数字、申請者側に、客観的、妥当な前提を置け、要するに数字を書いてこいという話ですね。そうでしょう。申請者側には数字を書いてこいということでしょう。株価がどうとか、金利がどうとか、為替レートがどうとか、数字を書いて持っておいでという話ですね。
 では、その数字をどういうふうに判断するのかというのは数字でしょう。だから、行政の方の、事務ガイドラインなのか何なのか、そのガイドラインのさらに下なのかもわからないけれども、判断基準というのは数字にならなきゃおかしいんじゃないですか。それも公表されなきゃおかしいんじゃないですか。
藤原政府参考人 事務ガイドラインにつきましてはこれから検討するわけでございますが、先ほど来ちょっと申し上げておりますように、例えば一つの考え方として、日本アクチュアリー会が実務基準というのを定めておりますので、これと類似の方法であるとか、いろいろな定め方はあると思いますけれども、先ほど御説明申し上げましたような考え方を示せば、あるいはそのとおりになるかわかりませんが、いずれにせよ、一つの基準を、直近であるとか、あるいは三カ年平均であるとか、そういうものを前提にしてはじいた場合どうなるかというようなことでございますので、これは申請者側の方でも十分判断がつくものだと思っております。
中塚委員 大臣、申請させる方は、客観的、妥当に経済状況を予測して申請してこいというわけですね。保険会社の経営内容、業務とか財産の状況というのもちゃんと客観的によくわかるように持ってこいという話ですね。それを判断する行政側もその基準というのは必ず必要ですよね。そうでなきゃ、蓋然性が高いのかどうか、蓋然性があるのかないのかというのは判断のしようがないわけですね。
 では、事務ガイドラインということだけれども、相手が数字で持ってきたものについては、やはり行政側としても数字で判断しなきゃいけないでしょう。その数字というのは公表されるんですか、されないんですか。
竹中国務大臣 コミュニケーション、別に食い違ってはいないと思いますが、ガイドラインというのは、我々が審査する場合の留意点なわけですよね。
 中塚委員が言っておられるのは、例えば、向こうが五年後とか十年後の数字を持ってきました、そのときの金利は何%というふうに想定して、こういうふうな経営状況になりますという数字を持ってきましたと。それを我々は審査するわけですね。その場合に、金利、為替レートについてはきちっと見ましょう、そういう趣旨のガイドラインを我々は持っているとします。
 中塚委員のお尋ねは、そのとき向こうが、金利、例えば二%とか三%と言ってきましたと。それを我々は審査していいかどうかというのを判断するわけですが、そのとき我々は、二%がいい、三%がいいという金利の数字を何か持っていてそれを公表するのか、そういう趣旨でおっしゃっているんでしょうか。
 これは、我々は審査する立場でありますから、この金利が特に重要かどうかというような場合も想定されますでしょうし、いやいや、金利ではなくてもっと別の要因が重要かということも想定されますでしょう。ですから、そういう場合がありますから、我々がすべての変数について一覧表を持っていてそれを公表するというようなことは想定されないと思います。
 ただ、これは、何%ぐらいの想定に基づいてどういう見込みになったということを向こうが出すわけであって、それを我々が審査して、それを了としているということであるならば、それは少なくとも、我々が考えている想定基準と大きく違わないと思っていただいていい、そういう形で我々の基準を判断していただくしかないと思います。
 我々としては、繰り返し言いますが、ガイドラインというのは審査を行う場合の留意点です。向こうが言ってきたものに対しておかしくないかどうかをチェックする、それを我々が承認して先方が公表するということになりますれば、それは、少なくとも我々が考えている基準と大きな差はない、そのような形で我々の基準を判断していただくということだと思います。
中塚委員 申請してくる会社は、近い将来というか、五年以上十年未満ぐらいなのか、もうだめになるということを言いに来るわけですね。そのだめになる理由というのがいっぱい書いてあるわけでしょう。そのだめになる理由というのが書いてあって、それをだめだというふうに認めるか認めない行政がその基準を公開できない。相手側はいろいろな客観的な数字を書いて持ってきているにもかかわらず、行政は、それを見て、基準なしに、うん、まあこんなものなんだろうな、やはりおたくは十年はもちませんな。では、そういう話ですね、この法律は。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 まさしく今回の措置と申しますのは破綻に至る前の話でございまして、破綻に至ったときの話でありますとかなり明確にいろいろなことがわかるわけでございますが。
 十年前後といいますか、十年、そのあたりまで、いろいろなさまざまな経営努力、これは個別会社ごとにさまざまでありますから、私どもうかがい知ることはできなわけですが、いろいろなことも織り込んだ上で、なおかつ保険業を継続することが困難となる蓋然性ということでございますので、ここは一律の基準というのはなかなか難しいというふうに再三再四申し上げておりまして、具体的にその中身を見せていただきまして、それで判断していかざるを得ないという部分だと思っております。
中塚委員 今の質疑を通してよくわかりました。この間いただいた紙というのは、要は、これは願書に何を書くかというだけのことで、書いてあることは関係ないわけですね。それは、皆さんのところでそれを見て恣意的に判断をする、ここはだめだなということを皆さんの方で判断する。それにもっともらしい数字が必要だ、結局それだけのことじゃないですか、今の答弁だったら。
 要は、言えないわけでしょう。これが五年先、十年先にだめになる、だめにならないというのは、それはいろいろなケースがありますというふうにおっしゃるけれども、相手が数字をもって提出してくるものをこちらが数字で判断できないなんというのは、それだったら、何のことはない、結局のところ、裁量行政そのものというか、それを見て適当にやっていくということ以外の何物でもないですね。
 ということであるならば、結局、手を挙げてくるところは、行政から言われて手を挙げるしかないわけですよね。だって、申請をして断られた日にはえらい目に遭いますよね。うちは五年先、十年先にはつぶれる、そういうふうな申請をして、もし行政が認めてくれなかった場合、いやいや、おたくは大丈夫だ、まだまだ頑張れというふうに言われてしまったら、その保険会社は大変なことですよね。ということは、やはり裁量行政を復活させるということ以外何物でもないというふうに思いますが、そこはいかがですか。
竹中国務大臣 それをもって裁量と言うのは、私は、意味が全く違うと思います。これは、やはり判断です。判断すべきことというのは当然のことながらあるわけで、しかも、今回の場合のように、中長期にわたって幾つかの想定の中で総合的な判断をしなければならないことがある。判断をなくせというのであるならば、これは現実問題、行政はできないと思います。
 今回、例えば「りそな」の問題も、このまま放置しておけば重大な懸念が生じるというように我々としては判断したわけです。これはやはり判断しなければいけないところなのであって、その一つ一つの、委員のお話を聞いて、私が少し曲解しているかもしれませんけれども、五年後、十年後の為替レート、金利、そういったものに対してすべてこちらが一覧表を持っていて、それをぱぱっと当てはめて、何か判断できない、そうしなければルールに基づく行政にならないのじゃないだろうか、申しわけありません、ちょっと私は極端に申し上げているかもしれませんが、それはやはりできないと思います。
 現実問題として、そういう判断の基準というのはシチュエーションにおいて変わるであろうし、金利といっても、その企業の体力等々を勘案して、直面する金利は変わってきます。その意味で、我々は、自由勝手にやるわけではない、しかし、判断をしなければいけないというポイントはあると思っております。
中塚委員 私が言っていることは、五年、十年先の為替とか金利とかを予測できないんだったら、こんなばかな法律はおやめなさいということを言っているんですよ。そうでしょう。相手が客観的に出してきたものを、行政の方は客観的に判断をしない、恣意的にしか判断できない。今大臣いみじくもおっしゃったじゃないですか、五年、十年先の金利や為替はわからないと。それだったら、こんなばかな法律はおやめなさいという話をしているのであって、何もそれをきちんと用意して申請の合否を判定しなさいというようなことを言っていませんよ。できないことをやろうとしているんだから、こんな法律はやめなさいということを言っているんです。おわかりいただけましたか。
 これから竹中大臣も、春秋に富んでいらっしゃるから、アメリカの大学で教鞭をとられることもおありでしょうし、そのときに、世界で一つも通っていないような法律をプロフェッサー・タケナカが日本で大臣をしているときにつくったなんということになったら、こんなに恥ずかしいことはない、私はそういうふうに思いますよ、本当に。うつむいてふんふんと言っていらっしゃるけれども。
 それより、あなたのやらなきゃいけないのは、五年、十年先は、改革なくして成長なしなんだから、景気がよくなっておる、こんなもの必要ないじゃないか、こんな必要ない、こんな法律つくらなくたって、できないと思うけれども、小泉内閣はちゃんと景気をよくするんだと言うことがお仕事じゃないですか。いかがですか。
竹中国務大臣 御指摘のように、マクロの運営をしっかりとやって、経済環境そのものが、あえて言えば、こういう逆ざや問題で保険会社がどうなるかというようなことを心配しないでよいような状況をつくっていくことは、間違いなく経済財政政策担当大臣として、私の大変重要な仕事であるというふうに思っております。
 この問題に関しては、非常に大きな逆ざや問題という特殊な環境下、かつ、日本の保険の場合は変動商品ではなくて非常に長期の固定であって、諸外国とは非常に違う経済環境、商品構成、経営環境の中に置かれているという状況下で、一つの選択肢として考えているわけでありまして、諸外国に余り例がないというのは事実としては事実でありますけれども、こういった経営環境、経済環境そのものがまず諸外国に例がないという点もやはり重要な点ではないかというふうに思っております。
 そうした点を踏まえて、我々としては、総合的に、経営の選択肢として今回の法案を用意させていただきました。
中塚委員 前回もちょっと伺いましたけれども、保険契約者等の保護のための特別の措置等に関する命令、大蔵省令第百二十四号、これの第一条の二の三項に、ここにも「将来の収支」という言葉が出てくるわけですね。この場合の将来というのはどれぐらいのスパンなんですか。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 これは、破綻の場合でございますから、五年ということを想定しておると思います。
中塚委員 破綻だから五年を想定している。書いてあること自体は、要は同じことですよね、五年とか十年ということを除けば。ここに書いてあることは全く同じことですね。「将来の収支を保険数理に基づき合理的に予測した結果に照らし、保険業の継続が困難である旨の意見が記載されている場合であって、」ということですね。今審議されている法律の方は、予定利率を引き下げれば何とかなるでしょうというふうな計画を出すということですけれども、今回の法律によるガイドラインでも破綻の場合と同じものを出させるということですよね。破綻しているのと、五年先、十年先に破綻をしますというのと、年限は違っても、中身的には同じようなものを出させるという理解でよろしいんですか。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 保険会社におきましては、負債が長期にわたるため、将来の収支がある程度見通せるということでございまして、将来、五年以内に債務超過となって、その要因の解消を図るために必要な措置を講ずることができない場合には、いわゆる保険業の継続が困難である場合、すなわち、事態がこのまま推移すると債務超過等が生ずることが客観的に予想される場合に該当するわけでございます。
 したがいまして、将来の収支につきまして、日本アクチュアリー会の実務指針にのっとり、合理的に予想して行った上で債務超過等が生ずることが客観的に予想されるものであれば保険業の継続が困難である場合に該当するものとしておりまして、日本アクチュアリー会の実務指針におきましては、五年先までを見通して判断することにいたしております。
 一方、今回のスキームにおきましては、申し出の要件であります「保険業の継続が困難となる蓋然性がある場合」とは、現時点で破綻の要件であります保険業の継続が困難である状態には至っておりませんが、将来を見通して、契約条件の変更を行わなければ、他の経営改善努力を織り込んでも保険業の継続が困難となることが合理的に予測できる場合が該当するというふうに考えております。客観的と合理的の違いがございます。
中塚委員 私はかねがね思うんですけれども、法律というのは、日本語で書かないで数式で書いた方がいいと思いますね。客観的とか合理的とか、そういうのは本当に言葉の遊びですよ。
 いずれにしても、保険業法の「業務の停止、合併等の協議の命令並びに業務及び財産の管理」というのにしたって、やはり五年先なんでしょう。だから、五年先の収支が保険数理に照らしてもうだめだということなわけですね。こっちの方は五年じゃなくて五年以上、十年よりもうちょっと先ということなんでしょうが。要は、結局同じことですよ。両方とも今の時点では大丈夫ということなんでしょう。だったら、こっちだって、破綻ではないとはいうものの、もうほとんど破綻に近い状況ということじゃないですか。どうですか。
藤原政府参考人 先ほども申し上げましたように、まさしく破綻の場合は客観的なあれをもちまして推測できるというのと、こちらは、ある一定の合理的な条件を置いた上で、また合理的に予測できるという違い。したがって、客観的と合理的というのは、かなり法律的には違う使い分けをしております。
中塚委員 客観的、合理的、でも、こっちの方の合理的にも客観的な数字というのが入っているじゃないですか。だから、客観的、合理的というふうにおっしゃるけれども、それは全然客観的でもないし、合理的でもないですよ。要は、両方とも、現時点では大丈夫だけれども、五年先につぶれるか十年先につぶれるか、それだけのことなんでしょう。それだけの違いしかないわけですよ。こっちだって、将来、五年ではないけれども十年先にはつぶれる。それだけの違いしかないということじゃないですか。
藤原政府参考人 破綻のケースの場合は、五年以内に債務超過となって、その要因の解消を図るために必要な措置を講ずることができない場合という、客観的といいますか、本当にかなりの確度で予測できるという話でございます。
 他方、今回のスキームはかなり長期の話でございますので、その間にいろいろな経営努力とか何か、かなり不確実な要素、ぶれの大きい部分がございまして、そこは、先生のおっしゃっている、全く同じではないかというのとはちょっと違うと思っております。
中塚委員 でも、今回だって予定利率を引き下げなきゃやっていけないんでしょう。いろいろな要因があるとおっしゃるけれども、予定利率を引き下げるということだけは初めから決まっているわけじゃないですか。破綻の方は、これからどんな努力をしたって五年先はつぶれるということでしょう。こっちの方は、いろいろな条件があるというふうにおっしゃったけれども、予定利率を引き下げるということだけは決まっているわけでしょう。だから、予定利率を引き下げるのはつぶれたときなんだから、要は、こっちだってつぶれるのと同じということじゃないですか。
藤原政府参考人 今回の措置に関しましては、ある程度長期の時期にわたりましていろいろな営業努力その他、予定利率引き下げ以外の努力をやっても、なおかつ予定利率の引き下げを行わないと将来において保険業を継続できない蓋然性が強いということでございまして、そこは、破綻の場合、直近に明確にかなり見通せる話とかなり違うことでございます。したがって、今回の話は、破綻ではない、破綻を予防する措置だということで措置させていただいているところでございます。
中塚委員 そうしたら、ちょっと角度を変えて伺いますが、例えば保険業法で、第百三十二条「業務の停止等」というところで、経営の健全性を確保するために改善計画の提出を求める、もしくは提出された改善計画の変更を命じる、またはその必要の限度において、期限を付して当該保険会社の業務の全部もしくは一部の停止を命令するというふうなことが書いてある。それに加えて、今お話ししている二百四十一条のところでは、業務の停止、合併の協議の命令及び業務及び財産の管理ができるというふうになっていますね。でも、今回のこの法律ができてしまえば、こんなことはもう一切必要なくなるんじゃないですか。
 だって、そうでしょう。今大丈夫な保険会社が将来にわたって、保険会社も全部今大丈夫だと言っているわけです。この法律ができたって使わないとさえ言っているわけですよ。ということは、十年先だって大丈夫だということをみんな言っているわけですね、保険会社は。そうでしょう。であるならば、予定利率引き下げ法案というのが通っちゃったら、業務停止命令とか合併の協議の命令とか、あるいは業務改善命令がどうたらはあたらというのはもう全部要らないということですね。
藤原政府参考人 今回の措置は、先ほどから繰り返しになりますが、ある合理的な前提を置いた上で推測した場合に、いろいろな経営努力をした上でも、なおかつ予定利率の引き下げをやらなければ将来において保険業継続が困難になる蓋然性が強いという話でございます。
 他方、ソルベンシーマージン比率を中心とします早期是正措置につきましては、足元の状況の変化というものを今見ておるわけでございますが、そこは、将来の長いスパンの予測とはまた違った要素で日々いろいろなことが動いてくるわけでございまして、今回の措置が選択の制度として仮に成立いたしましても、ソルベンシーマージン比率を中心といたします早期是正措置の重要性が失われるものではないというふうに考えております。
中塚委員 いや、だから、制度上は早期是正措置があったり業務改善命令が発出できたりするということになるわけだけれども、現在、日本の生命保険会社はこの法律は使わないと言っているじゃないですか、今審議している法律は。使わないでしょう。今も大丈夫だ、十年先も大丈夫だ、これの厄介になることはないと言っているのなら、なおさら、業務改善命令だとか経営健全計画の提出とか、そんなことは一切必要ないじゃないか。何かあった場合、万が一、保険会社が、業務改善命令とかあるいは経営健全化計画なんか出させられるぐらいだったら、いっそのこと予定利率を引き下げてやれということで、今審議している法律の方を使おうとするんじゃないですか。だから、保険業法を本当に根底から変えるような話ですよ、今審議している法律というのは。どうですか。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 今回の措置と申しますのは、あくまでも保険会社と保険契約者の自治的な手続の中で一つの選択肢として用意するものでございまして、これが本当に永久に使われないという状態であればそれにこしたことはないと思っておりますが、まさかのときの備えとして、そういう備えを置かせてもらうということでございまして、そこの辺をよく御理解いただきたいと思っております。
中塚委員 何か、何回お話ししてもよくわかってもらえないみたいなんだけれども、まさかのための措置というのは、まさかのための措置になり得ないということは先ほど申し上げたとおりですけれども、でも、この法律が通っちゃったら、今までやってきた行政は何の関係もなくなるということですよね。
 だって、ふだんから検査監督をして、ちゃんと早目に業務改善命令を出すなり経営健全化計画を出させて、ちゃんと保険会社に契約者に対して契約を履行させるというのが監督官庁のお仕事でしょうが。そのお仕事を一切うっちゃって、予定利率を引き下げるという話を持ってきた。それも十年先だ。十年先、金融経済動向なんてとてもじゃないけれども予測ができない、それは大臣がおっしゃったとおり。そういうふうなものを客観的かつ妥当というふうにして、それを見て、ああ、これは予定利率を引き下げなきゃおたくの会社は十年先にはつぶれますねというふうな判断を行政がするということですよね。保険業法、ほかのところは要らないんじゃないですか。これだけでいいんじゃないですか。どうですか。
藤原政府参考人 繰り返しになりますが、この措置は、かなり長いスパンで考えた場合に、そういう選択肢もあり得るということを用意するものでございます。
 他方、早期警戒措置等につきましては、保険会社の日々の営業活動、そういうものについてチェックを行って、必要があれば、あるいは危機があれば早期の対応を促すという話でございまして、全く制度の趣旨、内容が異なっておりまして、これが、片っ方があるから片っ方は要らないというような関係にはないと思っております。
中塚委員 竹中大臣、保険会社というのは、外部にシンクタンクまで持っているようなところがいっぱいあるわけですね。けさも、午前中来られていましたけれども、保険会社、シンクタンクまで持っておるわけですよ。そういうところが、客観的かつ妥当な前提であるかないかどうか別にして、いろいろな数字を並べて持ってくるわけですね。それについて行政が、ああ、もうこれは、おたくは十年先つぶれますねということで認めてしまうのなら、もうこんな早期是正措置とか、全部要らないじゃないですか。どうですか。
竹中国務大臣 早期是正措置にしましても、早期警戒の制度にしましても、これは我々のまさにチェック、行政の監督です。今回審議をお願いしているのは、我々の監督は監督でしっかりとやっていきますけれども、保険会社の一つの経営の選択肢を議論していただいているわけですから、これはやはり両立するわけです。
 我々は、しっかりと行政の監督はしてまいります。行政の監督をして、いろいろな命令を出します。命令を出したときの一つの経営の選択肢としてこういうものが入ってくるということでありますから、これは、今委員がおっしゃったように、オール・オア・ナッシングということでは決してないというふうに思っております。
中塚委員 経営の選択肢というのをふやす前に、行政には今でもできる選択肢がいっぱいあるわけですよ。だから、そっちから先に使えという話をしている。
 終わります。
小坂委員長 次に、吉井英勝君。
吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。
 私の質問で使いたいと思っております保険種類別・契約年度別契約件数調べを、資料の配付の方をお願いします。
 その資料の配付をしてもらっている間に、今の中塚議員のやりとりの中にもありましたが、要するに、五年、十年先を考えてとか、いろいろおっしゃるわけですね。客観的、合理的判断。この客観的、合理的判断をして、要するに、破綻しないが、予定利率引き下げをしておかないと業務の継続が困難となる蓋然性という、この議論でもってこの法律を出しているわけですが、そうすると、やはり、客観的、合理的判断の、この言葉だけじゃなくて、主観的、抽象的な言葉のやりとりじゃやはりだめなわけで、この法律審議の中で、その判断できる根拠がやはり必要なんですね。
 私は、そういう点で、せんだっても佐々木憲昭議員の方から提起がありましたが、解約率が一割ふえた、二割ふえた、あるいは、けさも私、シンクタンクの方にも伺っておりましたが、新規契約が落ちてくるわけですね、どうも、予定利率の引き下げだとか。
 そうすると、そういう場合に一体どういうことになっていくのかという、かなり大胆な前提条件が必要かもしれませんが、条件をいろいろ置いたにしても、いろいろなケースについても、やはりきちんとしたケーススタディーも行って資料を出さないことには、法律の審議をやりながら、しかも将来の問題だといいながら、業務の継続が困難となる蓋然性だという、蓋然性という、昔懐かしい、プロバビリティーかポシビリティーか、この議論についてやるのに、根拠もなく、はっきりさせないで議論というわけにはいかないと私は思うんです。
 それで、採決を、あしたになるのか金曜日になるのか、いつが採決か私はわかりませんが、採決までにはやはりこの資料はきちんと出してもらわなきゃいけないというふうに思うんです。これをまずお答えいただきたいと思います。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 今の、委員のおっしゃっているような資料をつくりますとしますと、前提となります保険会社の経営モデルを構築する必要がございまして、変動要素も複雑多岐にわたることからも、なかなかそれは困難であるということを御理解いただきたいと思います。
吉井委員 私は、そういうのは私も言っているんです。いろいろなケースがあり得るんだから、いろいろな前提を置いての試算になるというのはわかった上なんです。
 しかし、そういうものをきちっと、午前中も参考人の方ともお話ししたんですけれども、皆さんの場合だって、一定の方程式を立てて、こういう係数を、境界条件、こういう条件を入れてというのは前提条件のもとに置いて、スパコン等ではじいて出すわけですよ。そういうのも出して、それを本当に、皆さんが客観的、合理的判断と言うからには、やはりそういうものも示してもらわないことには、これは判断ができない。
 そういう中での、よもや採決強行なんというようなお考えはないと思いますが、そういうことがあっちゃならないということを申し上げまして、資料も配付してもらいましたので、質問に入っていきます。
 一つ、今回の予定利率引き下げでどれだけ影響が出るかについて、これをお尋ねしていたんですが、なかなか資料が出ませんでした。しかし、先週の四日の日に資料が出てまいりましたので、まず最初に伺っておきますが、今回対象となる一九九五年以前の契約件数、保有高、それぞれの占有率について、契約種類別にお答えをいただいておきたいと思います。
五味政府参考人 お答えを申し上げます。
 平成七年度以前と八年度以降に分けて申し上げますと、全社ベースでの……(吉井委員「九五年以前だけで結構です」と呼ぶ)九五年以前だけ。失礼いたしました。
 九五年以前だけを申しますと、主なものを申し上げますが、終身保険の保有が五百二十九万一千件、これは終身保険全体の四七・五%。また、定期保険につきましては、平成七年度以前の契約件数は百六十万四千件、定期保険全体の一三・三%。また、養老保険につきましては、平成七年度以前契約件数は六百四十四万五千件、養老保険全体の五二・〇%。総契約件数で申し上げますと、十五年三月末時点で、合計、平成七年度以前の件数が、個人保険、個人年金合わせまして五千百四十四万三千件、全体に占める割合が四二・〇%となっております。
吉井委員 それで、今お答えいただいたのは、順番は前後したり、漏れていたのもありますが、私の配付しましたのが、大体いただいた資料でもって提出したものでありますから、数字はそういうところなんですが、具体的な変更対象が初めて明らかになったという点で、これは私も見ていて、大変な影響が出るなということを強く思いました。特に予定利率引き下げの影響が大きいのは、貯蓄性の商品で影響が大きいと思うんですが、この点はどうですか。
小坂委員長 答弁願います。――藤原総務企画局長。
藤原政府参考人 影響につきましては、先般私どもの方から機械的な試算というのでお示ししましたとおりでございますが、まさしく貯蓄性の預金でありますとか残存期間の長い預金でありますとか、そういうところに影響が多く出るような形になっております。
吉井委員 そこで、この表を見ても明白なように、まず、貯蓄性の一番高いものは個人年金保険なんですが、これは、契約件数でいくと六〇・四%、そして二番目に貯蓄性の高いもの、養老保険で五二・〇%、三番目に大きな終身保険で四七・五%。保有契約高の方で見ても、貯蓄性の一番高い個人年金保険で何しろ四十五兆円を超えるものであり六六・一%、養老保険で二十三兆円を超えて六〇・六%、終身保険で五十二兆一千百五十九億円で六一・二%。
 ですから、貯蓄性の高いものについて非常に影響が大きい、変額性のリスクの多い商品よりも貯蓄性の高いもの、そこに非常に大きな影響が及ぶことは明白だということが今のこの資料を見ても明らかだと思います。
 生命保険文化センターが出しております二〇〇二年度版の生命保険ファクトブックによると、終身保険は、全契約の保有件数構成比でいいますと一〇・八%なんですね。定期付終身保険が二一・五%、養老保険が一二・五%、定期付養老保険が四%。ですから、これらを合わせますと、保有契約件数で四八・八%、つまり五割はそういうものなんですね。ここは予定利率引き下げで一番大きな影響を受ける部分。
 さらに、保有契約高で見ますと、その影響は一層深刻なことがよくわかるわけで、終身保険の全契約の保有契約高構成比が七・一%、定期付終身保険は五二・六%、養老保険は三・四%、定期付養老保険は三・一%ですから、合わせますと保有契約高で見たときに、これらだけで六六・二%になるんです。つまり、六割が引き下げの影響を受けるところになってくる。
 だから、この法律の仕組みをつくるということは、国民の生活設計を大幅に狂わせるものになるということを言わなきゃならぬと思うんですが、この点をまず伺います。
藤原政府参考人 今委員御指摘のように、予定利率の引き下げの影響というのは、貯蓄性に大きく、それから、残存期間の長い保険について長くなるというような傾向がございます。
吉井委員 貯蓄性の高いものというのは、みんな国民は老後に備えて、将来の生活設計を考えて本当にこつこつ保険を掛けてということでやっているわけなんです。そこに一番影響が及んでくる。ですから、一人一人の国民生活の将来設計を大きく狂わせるものになるということを重ねて言わなきゃならぬと思うんです。
 こうした大変な影響があるにもかかわらず、法案審議が始まった先週末に初めて出てきたというのがこの資料なんです。法案提出前からずっと言ってきたんですが、これはなかなか出なかったんです。
 こうした影響をきちんと検討したのか。金融庁も今になって初めてこういうデータを入手したのかどうか。これをもっと前から入手しておられたならば、これだけここに大きな影響を与えるものについて、本当に事前にまともな影響調査もやならいで、これで破綻よりましだとか、契約者の納得が前提だなどと言っていられるのかどうか。私は、ここのところは、まず、この法案審議を考える上で、取り組む過程からして随分問題があるということを言わなきゃいけないと思うんです。これは竹中大臣の方に伺っておきます。
竹中国務大臣 今委員が貯蓄性の預金のウエートの高さをお示しになって、これが国民生活に及ぼす影響、利率が仮に引き下げられた場合に云々という話をされました。
 事実、それは私は否定するつもりはございませんけれども、しかし、これはとりもなおさず、別の言い方をすれば、万が一にも保険会社が破綻した場合にその人たちに非常に大きな影響があるということを意味しているんだと思っております。であるから、我々としては、その破綻に至る前の一つの予防的な措置として予定利率引き下げを可能にする今回のスキームを準備しておく方が、保険契約者に対してむしろ安心感を与えるというふうに考えているわけです。
 その法律の制度、スキームについてはいろいろ御議論をいただいておりますけれども、そうした点の問題意識、危機意識というのは我々は持っていたつもりでございます。
 吉井委員御指摘の数字の把握等々、これは概略の数字としては以前からお示しをしていたわけでありまして、我々としては、マクロ的には、詳細をお出ししたのは比較的最近かもしれませんが、大枠としてはそういった問題意識を非常に強く持っていた、であるからこそ今回の法案を用意させていただいたということでございます。
吉井委員 大体、受け取り保険金が減ってしまって将来の生活設計が狂ってくるのに、安心が得られるなんというような話は、とてもそんなことにはならない、とんでもない話だということを言っておかなきゃならぬと思います。
 こうした資料は法案提出の前にもともと出すべきものだったんですが、前回の佐々木議員の質問、前々回の私の質問のときにも関係するんですが、やはり今回の審議の特徴というのは、事実上国民への説明抜きに法案を強行しようとしている、そこは非常に大きな問題だと思っているんです。
 二〇〇一年の六月の中間報告、予定利率引き下げについて、このような制度はその内容について社会的認知が十分得られてこそ初めてその導入が可能になる、これはこの前からも議論しているところですが、また、六月四日の参考人質疑で、私の質問に対して、金融審議会の堀内昭義第二部会長自身が、「社会的認知が得られているというふうには判断しておりません」と認めておりました。
 竹中大臣は、佐々木議員の質問に対して、行政として作業を進めるということに関して了解が得られたということを繰り返していたんですね。つまり、金融審議会で了解が得られたのは、行政として作業を進めるという点であって、内容については金融審議会での了解はない、内容については社会的認知が必要な法案を、社会的認知は得られていない、これが、今日に至るもその段階だと思います。竹中大臣に伺います。
竹中国務大臣 一昨年の金融審の第二部会においてなされた議論、これは御紹介してくださったとおりでございます。
 枠組みとしての必要性は認めながらも、国民・保険契約者の理解の上、社会的な認知が十分得られて初めて導入が可能となるんだということを明記しているわけでございます。
 何度かこの場でも答弁をさせていただきましたけれども、その後、中間報告に盛り込まれた多くの事項、財務基盤の強化でありますとか情報の開示についてかなりの対応が進んだということ、その一方で、保険会社を取り巻く経営環境は一層厳しくなった。そうした点も踏まえて、予定利率問題を昨年来金融庁としても検討してきたところでございます。
 今堀内部会長のお話がございましたけれども、堀内部会長は、この国会でも、御自身としては、この改正案には基本的に賛成であるということ、それと部会長の責任で了解していただいたということを明示されたというふうに理解をしております。
 もちろん、国民の理解を得るということは大変重要であります。最大のポイントは、この国会での審議を通じて、私たちの方からもこの中身について一生懸命説明をさせていただいているつもりでありますし、そういったプロセスを通じて国民に理解をしていただくということであろうかと思っております。さらに我々として理解を得てまいりたいと思っておりますので、その努力は引き続きしたいというふうに思っております。
吉井委員 堀内さんの言っているのは行政として作業を進めるということについての了解だけなんですね。堀内さん自身は、社会的認知が得られているというふうには判断しておりません。それが参考人質疑のときのお答えでありました。
 前回、山下東大教授が賛成派のようなお話をされましたが、山下さんは二年前に、予定利率引き下げは、国際的には他国ではほとんどない、国民的コンセンサスを得ないとできないということを言っておられたんですが、賛成とおっしゃるからには、この二年間に他国でも例が生まれたというふうに山下さんが言っておられるのか。それから二つ目に、国民的コンセンサスを得なくてもこの法律はできるんだというふうに立場を変える発言をされたのかどうか。ここのところ、竹中大臣に伺っておきます。
竹中国務大臣 委員の個人の発言でありますので、私がすべてカバーできるわけではないというふうに思っておりますが、私の手元の資料、これは金融審の資料でありますけれども、二年前から生命保険経営の状況が改善したかというと、それはノーと言わざるを得ない、事態はむしろ深刻な方向に移っている、二年たってどうかと言われると、私は当時ワーキングの座長をしていたわけですけれども、選択肢の一つとしてこういうものを置いておこうということは、現時点でも意味があるのではないかと思っている、そのような意見を述べていらっしゃるというふうに承知をしております。
 御当人でもありませんので、この人は賛成か反対かというのを余り確定的に申し上げるのはいかがかというふうに思いますが、議事録等で拝見している限り、この制度の枠組みについては、さらには、経営環境が悪化した、その枠組みの必要性等については御理解を賜っているのではないかというふうに私は判断をしております。
吉井委員 ですから、余り明確でないところで賛成派だ、反対派だとか中間派だとかいうその前に、私が言っているのは、二年前には、国際的には他国でほとんど例がないとおっしゃった。これが、その例が生まれたということを言っておられるのかどうかということと、国民的コンセンサスを得ないとできないと言っておられたのが、国民的コンセンサスを得なくてもできるというふうに立場を変えられたのか。この二点だけ、非常に明確なところだけ伺っているんです。
竹中国務大臣 その点について、直接私は委員からお話をお伺いしておりません。したがいまして、明確に申し上げるのは難しいと思います。
吉井委員 だから、そういうことを、大体、会議録その他には出ていませんから、二年前から変わっていないんですね。
 次に、自民党デフレ対策特命委員長の相沢さんが、雑誌にも登場して、「できれば行政命令で一斉に予定利率を下げさせるべきというのが本音だが、内閣法制局では財産権の侵害として反対」だ、旧憲法下ではできても新憲法では認められないということを言っておられるんですね。だから、国が行政命令で利率引き下げを一斉にやらせるということはできないと。それは財産権の侵害だということなんですね。
 では、会社からの申請であれば財産権の侵害にならないという根拠はどこにあるのか、伺います。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 今回のスキームにつきましては、まさしく保険会社と保険契約者の自治的な手続の中で決めていくというスキームでございまして、行政命令のように一方的に行政の効果を契約者に及ぼすものではないということから、妥当なものであるというふうに解釈しております。
吉井委員 契約者は一人一人が、だから、皆さんは計算が難しいとおっしゃるのも、その契約年度、契約の商品、それぞれにおいて、みんな違うんだというんでしょう。つまり、契約というのは、保険会社と個人がそれぞれに契約しているんですよ。それを会社の方が、全契約者の分を勝手に財産権の取り上げをやるようなことはできない、そういうことで、今のは全く答弁になっていないということを申し上げます。
 次に、保険業法の今日の、要するに優先関係の問題について伺いたいと思うんです。
 九五年と二〇〇〇年に改正されました。その間ついに問題になったのは、当事者の優先関係でしたね。当時は、株式会社の生保会社と相互会社の生保会社で当事者の優先関係にねじれ現象と言われる未整理の問題があった。これを整理したのが九五年と二〇〇〇年の保険業法改正ですが、破綻時の当事者の優先関係についてどのように整理されてきたのか。これはごく簡潔で結構ですから、端的にお答えください。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 保険業法における一般債権等につきましては、平成七年改正及び平成十一年改正によって、その取り扱いが変更されているところでございます。
 まず、平成七年の改正前でございますが、改正前には、生命保険相互会社の清算時の財産処分における社員の債権は一般債権に劣後する旨の規定がございましたが、平成七年改正におきまして、この規定が改正されまして、一般債権と同様とすることとされております。
 同時に、生命保険株式会社の保険契約者または保険金受取人は、被保険者のために積み立てた金額につき会社の総財産の上に先取特権を有する旨の規定がありましたが、これが削除されております。
 これらは、相互会社と株式会社の同質化が進んでいること等を踏まえたものでありまして、こうした改正によりまして、相互会社あるいは株式会社を問わず、保険契約者は一般債権者と同様に取り扱われることとなったところでございます。
 その後、平成十一年の改正で、平成十一年十二月の金融審第二部会報告を踏まえまして、保険契約者保護という社会政策的観点及び諸外国の動向等にかんがみまして、相互会社、株式会社ともに、生命保険会社の保険契約者に一般先取特権が認められることとなったところでございます。
吉井委員 ですから、これまでの法改正で、株式会社、相互会社ともに、保険契約者を最優先し、銀行などの資金拠出者は劣後するという法律関係が確立されてきた。金融庁の方も、「劣後債務については、一般に、保険会社が破綻して破産及び会社更生手続に移行した場合には、保険契約上の債務に劣後すると考えられ、保険金等の支払いに充当することができる」と。これが、パブリックコメントの結果についての、一昨年三月三十日にお答えされていることだと思いますが、これは確認しておきます。
    〔委員長退席、七条委員長代理着席〕
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 そのとおりでございます。
吉井委員 それで、要するに、今回の法案というのは、これまで積み重ねてきた保険業法のルールをゆがめていく、そういう内容を持っているんですね。
 二百四十条の二で、先ほど来の議論の「業務又は財産の状況に照らしてその保険業の継続が困難となる蓋然性がある場合には、」こういうことにして、保険金額の削減その他の契約条項の変更を行う申し出をすることができるとしているんです。
 つまり、継続が困難となる蓋然性がある場合ということで、これは破綻ではないというフィクションをつくって、銀行の基金が全額カットされる事態を回避する、こういう内容を持っているんですね。だから、契約者保護を口にしながら、契約者よりも銀行を優先するために、これまでの保険業法のルールをねじ曲げる。ここにこの法律の核心の一つがあるんじゃありませんか。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど先生の御指摘の例につきましては、それはまさしく破綻のケースでございますが、いみじくも先生御指摘のように、今回の措置につきましては、破綻ではなく、破綻の予防ということでやっておりますので、そこは全く構成が異なっておるところでございます。
吉井委員 破綻でない場合ということにして、破綻してしまうと劣後するものが劣後しない。結局、そのツケはどこへ来るか、それは一般の契約者、保険契約者に来る。ここに今度の問題の非常に恐ろしいといいますか、問題の核心の一つがあるということを言わなきゃならぬと思います。
 それで、そういうことをやりながら、選択肢がふえるということを言っているんですね。
 そこで、伺いますが、要するに銀行の分は劣後しないで助かるわけなんですが、ところが、一般契約者はどうなるか。解約業務の停止で解約返戻金がなかなかもらえなくなってしまう。不況のもとで当座の生活に充てようと思っている人がふえている中で、破綻時と同じ、事実上の解約権の制限そのものになってしまう。
 解約期間も破綻したときより短縮される。破綻時には、破綻処理のための業務停止命令が出されるまでに解約すれば、契約条件の変更の影響は受けない。しかし、今回の法案によれば、業務停止命令以前の解約停止命令が出されるまでに解約しておかないと、契約条件の変更の影響を受けてしまう。だから、解約可能な期間が破綻時よりも短縮されてしまうという問題がありますね。
 それから三つ目に、異議申し立ても破綻時とほぼ同じ厳しい要件。
 つまり、選択肢がふえるふえると言うんだけれども、契約者にとっては、選択肢がふえるんじゃなくて狭まるんじゃないですか。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 今回のスキームは、保険契約者の保護の観点から、保険会社と保険契約者の主体的な判断、自治的な手続で契約条件の変更を行うものでございます。保険契約者の十分な理解を得ることが前提となっております。
 このため、今回のスキームにおきましては、保険契約者数が膨大であることや保険の団体性にかんがみ、意思決定手続を会社の機関意思決定手続と保険契約者の権利の保護手続に区分しまして、機関決定手続につきましては、総代会または株主総会の特別決議、それから保険契約者の権利の保護につきましては、異議申し立て手続の活用、十分の一を超える異論があった場合に予定利率の引き下げは行わないこととしているものでございます。
 また、予定利率の引き下げ手続につきましては、異議申し立て手続等ある程度時間を要するものでございますから、その間、手続を混乱なく粛々と進めて保険集団の維持を図ることが保険契約者の保護に資すると考えられるために、一定の期間、解約に係る業務の停止について行政命令を行うことができることといたしております。
 ただ、いずれにいたしましても、解約に係る業務の停止につきましては、あくまでも手続進行過程における措置にとどまるものでございまして、手続終了後においてなお解約を希望する者につきましては、速やかに解約が実行されるものであることを御理解いただきたいと思っております。
吉井委員 私が聞いていることは、あなたが長々としゃべったことと全然違うわけよね。暇を持て余してあなたはここへ出ておられるのか何か知らないけれども、困るね、そういうことは。
 大体、主体的に契約を結んでいるのは、いわゆる生保レディーと言われている方たちが会社から来られて、団体で会社等は契約するにしても、個人個人は個人として主体的に契約しているんですよ。契約するときは個人個人が主体であって、選択肢が狭められるときは、あなたの個人としての主体は認めないよ、今回の問題はそこでしょう。
 だから、竹中さんに伺いたいんだけれども、契約者にとっては選択肢が狭まるんじゃないですか。
竹中国務大臣 先ほどから一貫して、我々の自由な社会でのまさに自治自由の原則、それを貫くことが重要であるということをいろいろとお話しになっておられると思います。
 これは、契約は自由でありますし、その決めた契約を守るというのが我々のルールであります。しかし、同時に、先ほどの自治、自由でいいますと、合意に基づいて契約を変更する自由もある、これまた我々の自由な社会のルールであろうかと思います。
 その問題に関して、合意に基づいて変更する自由を、その意味では一つの選択肢を与えようではないかというのが、この法律の基本的な考え方であろうかと思います。
 御指摘がありましたけれども、その場合に、合意に基づいているのかという御指摘、これはしかし、保険が持っている集団性、保険が持っている特殊性を考えた場合に、今の我々の社会が持っている最大限の知恵を活用して、今回の合意、つまり異議申し立ての制度を活用する。これは、現実問題として、保険という集団には、その契約の内容を変更するという制度が今の法律の中にも実はあるわけであります。そうしなければいけないときもあります。それに基づいて、今回の選択肢を提供しようとしている。
 吉井議員の御指摘は、例えば、今回の手続の中でいろいろ不便があるではないかということ、その意味での問題は確かにあろうかと思いますが、結果的には非常に大きな、守れない契約を続けるよりは、今まさに契約を変更できるものなら変更して、それでゴーイングコンサーンとして最終的に利益を少しでも確保する方がよいではないか、そう判断する場合はそのような選択肢を活用していただいたらよい、それが今回の法の本来の趣旨であります。
吉井委員 竹中さんがおっしゃった選択肢が広がるというのは、保険会社と金融庁ですよ。銀行の方も、さっき言いましたように、これは「予定利率引下げ問題と生保業の将来」というのが昨年春に出されております中でも、さっきの優先順位の問題について、要するに、保険契約者、債権者、所有者という一貫性のある関係が確立されてきたのがこの間の保険業法の改正の中での流れですね。それが、これは破綻の場合はそうなんだが、破綻処理すると劣後してしまうものが、破綻前にこういうやり方、仕組みを組むと、銀行は非常に助かるわけですよ。だから、銀行にとっては選択肢はふえる。銀行と生保と金融庁は選択肢はふえる。
 しかし、契約者の方は、契約者もさまざまなんですから、今のこの不況の中で、本当に生保を解約して生活に充てなきゃいけないとか、中小企業の経営者の方が、自分のところの社員の方に給料を払うために、もう二カ月も待ってもらったけれども、これ以上滞ることはできない、保険を解約して払うとか、いろいろなケースがあるわけですよ。しかし、解約返戻金を受けようと思っても、これが妨げられてしまう。
 だから、契約者にとっては、これは選択肢が狭まるんじゃありませんか。私はそのことを竹中さんに聞いているんですよ。金融庁やら生保会社の話をしているんじゃないですよ。
竹中国務大臣 これはしかし、この法律の根本論でありますけれども、私は何度か申し上げさせていただきましたけれども、本当に逆ざや問題という大きな問題がある。その逆ざやがなぜ起こったかとか、それはそれで重要な議論であるとは思いますけれども、逆ざや問題がある中で、今のままでいくと保険会社の経営が持続可能ではない。そのような状況のもとで、これをこのまま破綻に、これは破綻するかどうかわかりませんけれども、破綻した場合と、そうではなくてゴーイングコンサーンとして生きる道を残して、その中で保険契約者を、これは、責任準備金のカットとか、現実に破綻した場合の後の予定利率を見ると、私はやはりこういう選択肢がうまく機能する場合は間違いなくあると思うわけです。
 そういう選択肢がある場合に、何もしない方がよいのか。私はそうは思いません。その意味では、これは契約者にとっても一つの大きな選択肢がふえているということになろうかと思います。
 吉井議員がお尋ねになったのは、返戻金が受け取れないとか、それは一つの手続の中で出てくる問題でありますけれども、私は、根本的なところで、破綻を回避して、破綻する場合はこれはやはり大変だと思いますよ。資産が劣化するし、いろいろな問題が生じるし、そういうものがあり得る場合に、それを回避する一つの方法を用意しておくということは、私はやはりこれは考えるべき一つの方策だというふうに思います。広い意味で、契約者の選択肢は広がるというふうに思います。
吉井委員 これは、普通の人が聞いたら、国民の皆さんが聞いたら、とてもじゃないけれども、あなたの今の話は本当に詭弁としか聞こえませんね。べらべら長くしゃべったけれども、中身は全くない。
 大体、銀行や経営者にとってはどうかといえば、銀行の劣後ローンは全額カットを逃れてくるわけだし、経営者の責任もあいまいで、なぜかといったら、それは破綻じゃないからという理由なんですよ。
 今回のスキームは、破綻ではないと言いながら、保険契約者にとっては、破綻時と同じか、それ以上に厳しいスキームになっていますよ。他方、銀行や経営者にとっては、破綻時よりも優しいスキーム。確かに金融庁、銀行、生保会社は選択肢はふえるんですよ。しかし、実際に解約したい、解約返戻金を充てて生活を何とか補いをつけたいという庶民にとっては、選択肢は狭まるんですよ。それが実態ですよ。
 それを、金融庁と会社にだけ使い勝手のいい選択肢を設けておいて、何か自治だ何だというお話までされたけれども、私は、最後に申し上げておきますが、竹中さん、この間も、六月四日の審議の中ででしたが、中塚議員に対して、これは吉井委員であったかと記憶しておりますが、自治的な手続を重視しながらも、しかし、ボトムラインとしての保険契約者の利益が大きく損なわれないような、保険の特殊性にかんがみて今回の法律は整備されておりますと、私の名前を使って別な論を展開しておられるんですが、とんでもない話です。
 私の言っている趣旨というのは、行政が命令で一律に契約条件の変更をすることはできない、これは財産権の侵害に当たるからそもそもできないんだということが大前提での話なんです。その上で、私は、私的自治なら引き下げられるのかという問題について議論したんです。保険会社、保険契約者という当事者間の力関係、判断能力が違うことなどから、私的自治に任せると契約者に不利な変更がなされるおそれがある、今回の予定利率引き下げはまさにこれに当たる。したがって、予定利率引き下げは強制手続でも私的手続でもだめなんだ。
 そのことを私はフランスなど世界各国の実例を引きながら、そして、私が御紹介した法律学全集の大森さんの「保険法」などでもそのことが示されていますからね。この契約当事者の私法関係についても強行法的基準を設ける必要があると強調されているのは、物すごい力の差があるからなんです。その力の差があるのに、あなたのお話を伺っていると、一方的に契約者の方は選択肢が狭められ、金融庁と生保と銀行の方は選択肢が広がっていく。全く世間様では通用しないようなこんな議論を詭弁を使って展開するのはとんでもないことだ。
 私は、この法律案は採決なんて論外であって、まず撤回することをお考えになるべきだ、このことを申し上げまして、残念ながら時間が来たというので、終わります。
七条委員長代理 次に、阿部知子君。
阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
 私も、ただいまの吉井委員の御指摘のごとく、先週来この法案を審議しておりますが、本当にこれで国民保護あるいは契約者保護のための法案かというと、全く似て非なるもの。竹中大臣は先ほど、契約者にとっても選択肢が広がると。ある種善意でお思いなのかもしれませんが、質疑の中でやりとりされることを聞いていますと、根本的な視点が欠落していると思うところがありますので、冒頭、そのところから御質疑をさせていただきます。
 先回の私の質問でも指摘いたしましたが、この法案の提出に当たって、本法案のポイントというような説明書きをいただきまして、この法案がまず第一に目的とするところは、保険契約者の保護を図るためであると。これは、先回私が竹中大臣に御質疑いたしましたときも、第一義的には保険契約者の保護だというお話が出てまいりました。
 では、なぜ、本当はそうであるといってもそうなっていないかというところの大きな一点目に、個々の契約者の知る権利というものが全く実は保障されていないからだと私は思います。
 竹中大臣は、それを、先ほど、保険という一つの仕組みの中で、ある意味個々人の権利が制約されることもあるやに御答弁でありましたが、例えば、このスキームの当初から、保険会社が契約条件の変更を申し出て行政当局が申し出の承認をするまでの間、これは先回私どもの植田至紀が質疑いたしましたが、朝十時に申請してそれが承認されるのが夕方五時である場合もあるし、あるいは十日、一週間かかる場合もある。この間、実は契約者は自分の契約している保険がそのような状態にあるということは全く知らされない、それでいいのですかと植田至紀が質疑いたしましたときに、藤原局長が、「そういうことだと思います。」という御答弁でした。六月三日であります。
 竹中大臣も同じお考えでしょうか。その間、全く知ることができない。それは、金融庁は知っているでしょう、あるいは当の生命保険会社は知っているでしょう。しかし、契約した個々人は全く知ることがない。それでよろしいでしょうか。
    〔七条委員長代理退席、委員長着席〕
竹中国務大臣 申しわけありません。その六月三日のやりとり、必ずしも定かに記憶はしておりませんが、今のお尋ねは、契約条件の変更を会社が申し出る、申し出をまだ役所は承認しておりません、それまでの期間、契約者は何も知らないではないか、そういうお尋ねなのかというふうに思います。
 これは、もちろん承認をしておりませんし、通知をしておらない段階でありますので、その会社の中での経営の可能性をまだ検討している一つの段階ということになろうかと思います。そのこと自体をその時点で契約者が知らないというのは、ある程度この手続上やむを得ない点があろうかと思いますが、もちろん、それの背景となる会社の経営状態、これはまさに情報開示を通して可能であるわけでありますが、そういうものは常に契約者に対しては十分知らしめるような状況になければいけないというふうに思います。
阿部委員 今の大臣の御答弁は、経営の可能性を検討して生命保険会社は申請するわけですから、ちょっと違うんじゃないでしょうか。経営の可能性を検討して、さっき言った五年、十年はもたないと判断したから申請なさるわけです。
 もう一度確認させてください。経営の可能性を検討途中であるから、契約者は知る必要がないのか。
 私は、吉井委員がおっしゃったように、確かに保険ですから、無用な解約が引き続いたりしてはいけないということも理解しておりますが、だがしかし、これだけ世の中的に論議され、保険の利率の引き下げもあるかもしれないということが行き渡ったときに、なおかつ寝耳に水のように、金融庁が申請を受け付けたというところから始まるよりは、うんと誠実に、その申請をした段階から、しかしながらあなたの生命保険はこれこれで、私たちは保障しますよということを言って、そしてその個々人のいわば選択に本当の意味でゆだねる方が、むしろ事ここにまで至った場合、この審議、国民が全部見ているわけです。しかしながら、この七日、十日、あるいは十時から五時は全く蚊帳の外ということが、どうしても私はおかしいと思いますが、いかがでしょうか。
竹中国務大臣 ちょっと私の聞き間違いでなければ、委員が問題にしておられますのは、その申し出が承認される前の段階、つまり手続に入る前段階のお話なんだと思います。そうした前段階で情報がすべて外に出てしまった場合のデメリットというのは、こういった金融機関の場合、間違いなく私はあるのだと思います。
 委員おっしゃったように、これは大丈夫なんだというようなことが人々にきちっと理解してもらえるような状況であるならば、それはそれで一つの解決策かもしれませんが、現実にはやはりそういうことは難しい。
 したがって、今回、手続に入ることを承認した上で、きちっと、こういうふうになります、書類を今度は出すわけですね。書類を出すに当たっては、今後の業務の改善の見通し等々も出すわけですから、そういうものが整った段階で初めてきちっと見ていただく。それで見ていただくのが、無用の混乱を避けるためには、私は必要な手続であるかというふうに思います。
阿部委員 今のは、突き詰めて言えば、風評被害に乗りやすい、余り知識を持つことのない国民に対して、ある種パターナリスティックに、いい手だてが出るまでは、選択肢が出るまでは黙っていようという考え方なんだと思うんです。
 私もそうした仕組みというものがあり得ることは理解しますが、何度も申しますが、これだけ国民的論議になって、国民はある程度この現実を知っているわけであります。本当にこの政策に自信がおありであれば、私は逆に、この初動作の段階から事を明らかにして、むしろ起承転結、全部に至るプロセスを国民に開示した上でこの法案の成立を見るべきだと思いますが、あるところでは国民保護という名をとって、実はお金の問題は国民は非常に敏感ですし、自分の掛金の問題ですし、自分に返ってくるお金の問題ですし、開示されれば本当にきちんと判断するだけの力も持っていると思います。
 しかしながら、これとこれとこれの手だてができるまでは開示しないというのが先ほどの藤原局長の御答弁ですし、今、竹中大臣もそのようにおっしゃいました。私は、やはりこの出発点というものが実は大きくゆがんでいると思います。
 こういう論争のときに比喩を用いると余分なものが入ってくるとは思いますが、あえて言わせていただければ、その方ががんだったとします。医療の世界では、今ではすべからく告知する、そして治療肢を並べて人生の選択をしていただく、その方法がやはり一番よいんだということが長い歴史の中で、昔は医療も今の竹中大臣のように、言ってしまったら不要な混乱を招くんだ、不幸にするかもしれないんだと。
 もちろん、医療は個人だけにかかわることですから、先ほど私が申しました、業界全体、保険という全体の枠のことを私が今問題にしているものでないことは御理解していただいた上で、個人の保護という意味であればやはり伝えるべきであると思います。そして、それを超えて、保険という仕組みの保護からしてこれは伝えられないという御答弁なら、それはそれでまた次の質問に移りますから、どちらのお考えであるのか教えてください。
竹中国務大臣 情報の開示は、基本的にはしっかりと行わなければいけない、そのことを否定するつもりはございません。
 しかし、非常に微妙な問題については、どのようにそのことを知らしめていくかというのは、特に金融行政の場合、非常にナイーブな部分があると思います。したがって、その意味ではケース・バイ・ケースであるということになると思います。
 委員は、その御職業も踏まえて、がんの告知に例えられました。私は、基本的には、専門家ではありませんが、そのことをやはり告知して、しっかりと認識を持っていただくというのは反対ではありません。しかし、告知するには、恐らくお医者さんの世界でも告知するマナーがあるんだと思います。いきなり何かの壁に、この人はがんだというふうに張り出すわけではないでしょう。非常にきっちりとした状況下で、きっちりとした説明を行う。それに対して、単にがんだと言うだけではなくて、この場合、今後どうなっていきますよ、こうなれば手術すれば可能性はありますよ、これは難しいですよ、いろいろなことを整えて、情報がきちっとわかるようにしてから告知をされるのだと思います。
 金融の場合もやはりそういう、一般的に、世界じゅうであるルール、マナーのようなものがあると私は思います。例えば、一つの金融機関が何か破綻とかの状況を迎えたときには、やはりこれは金曜日にマーケットが閉まってからその作業に入るわけです。これも決して、では隠しているのかというと、知らしめるに当たっての一つのマナー、手続なんだと私は思います。
 繰り返し言いますが、今回は、そういうことはきちっと通知を出して知らせます。しかし、それまでの期間、きちっと条件が整って、行政もそれを承認して、内容が整った上でその手続に入る、私は、そのような一種の手続論としては必要なのではないかと思います。
阿部委員 私ががんの例えを出しますときにあえてお断りいたしましたが、例えばがんであると壁に張るわけではないたぐいの問題であるという認識は竹中大臣と同じです。しかしながら、この法案全体を通して透けて見えるものは、やはり個々の契約者に対しての保護が極めて不十分であるという実態があるゆえに、私は、最初の初動作からそのようなものとして組み立てた方がうまくいくのではないかという質疑をいたしました。
 例えば、このスキームの後半で、保険会社による契約条件の変更案が作成されまして、その次に「行政当局による契約条件の変更案の承認」という一文がございます。そしてこのときに、「行政当局は、必要に応じ保険調査人による調査を実施」すると書いてございます。この保険調査人による調査の実施に当たって、個々の契約している個人から、自分の場合はこんなに損なんじゃないかというふうな訴えがあったときに、それはどこが受け皿になるのでしょうか。
 スキームの下の方でございます。「行政当局による契約条件の変更案の承認」のところで、「行政当局は、必要に応じ保険調査人による調査を実施」となっております。それで、「保険契約者の権利が不当に害されていないか等をチェック」という、ここにはあくまでもマスとして見た場合のチェック機能しかないのではないかというふうに私は思うわけです。しかしながら、あくまでも個的、私的契約であります。個人にとって、自分の場合不利益なんじゃないかと思う人が当然発生します。その方たちの声は一体どこに窓口を持っているのか、お答えいただきたいと思います。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 先生御指摘の、そのスキーム図の中の、下から三段目の「行政当局は、必要に応じ保険調査人による調査を実施」というところでございますが、括弧の中で「保険契約者の権利が不当に害されていないか等をチェック」する。ここは、まさしく先生御指摘のように、集団として、一部の保険契約者に過度に負担を強いて一部がよくなっているとかいうようなもろもろの、不公平がないかとか、そういうものをマスとしてチェックするということを想定しておるわけでございます。
 また、先生御指摘の、個々の契約者について、では、だれがどこで対応するのか。基本的には、それは保険会社が対応する。どういうふうな対応になるかというのはちょっとあれでございますけれども、基本的には保険会社のマターだというふうに思っております。
阿部委員 私は、そうであれば、先ほど来指摘されている圧倒的な知識の差、力の差、それからやはり第三者機関的なものがきっちり受け皿になれるような仕組みがないと、本当に個が守られたかどうか。
 何度も申しますが、保険というのは一つのグループで機能しなければいけないところがあることはわかっております。しかしながら、その中で、グループのために逆に個が犠牲になるということもまたおかしいし、そのことを自分が疑問に思ったときに、保険会社とのやりとりだけでは解決しないことが当然あろうと思います。そして、これは明らかに初期の契約、個と個で交わされた契約、保険に入るときは、個人で入っている今の終身保険とかを問題にしているわけです。
 そして、その解決策のときになると急に、入った私という個はなしで、グループとして入っているあなた方について、不可分がないか検討して情報を出しますということになっている機構の中では、国民の一人一人が納得してこれにイエスと言えないのではないかということであります。例えば第三者機関を設けて、その声の相談に乗るとか、そういうことも金融庁として、あるいは竹中大臣としてお考えでありますか。
藤原政府参考人 私の方から先にお答え申し上げます。
 先生も御指摘のように、保険契約と申しますのはあくまでも個人と保険会社との間の私契約でございますので、基本的には、一対一の契約更改というのが原則だというふうに思っております。
 他方、保険集団の特性といたしまして、非常に膨大な数の社員がおるとか、あるいは保険の集団性とかそういうこともございまして、なかなかそれがうまく機能しないということも事実でございます。
 したがいまして、現行の保険業法におきましても、破綻の際の契約条件の変更でありますとか合併でありますとか、そういうものにつきまして総代会で発議し、最終的には異議申し立て制度を活用するというようなことで、いろいろとそういうことを工夫して成り立っておるところでございまして、その辺について御理解を賜りたいと思っております。
阿部委員 それは破綻という法的処理に入った段階でのお話で、ずっと金融庁がおっしゃっているのは、これは破綻という、そして更生法を利用した法的措置じゃない、私的契約の中でやることなんだと言っているわけです。だから私は、私的契約の中で、そうすれば当然、そこは法的な明確さもないわけであります。そのときに起こることだから、弱い契約者の一人一人について、何らかの窓口、第三者機関があったらいいんじゃないですかとお尋ねしているわけです。
 そして私は、非常に答弁上ずるいと思うのですけれども、あるところは破綻処理ではないと言いながら、急に破綻処理の話にして、私が聞いたこれは、破綻処理でないところの私的契約の中で、こんな私的契約を公が勝手に変えるなんというむちゃくちゃをやっておいて、そこに取り残された個人については、逆に、私的契約であることの不安とか疑問とかに何ら受け皿がないじゃないかという指摘をしているわけです。
 私は、結論から言えば、法的措置をとった方が明確であると思います。それはそれで一つの選択肢ですから。しかし、あくまでも私的契約の変更でやるんだとおっしゃるから私の質疑があるわけです。大臣、いかがでしょうか。
竹中国務大臣 少し誤解があるかもしれないんですが、委員御承知だと思いますが、今の保険業法の中にこの異議申し立ての手続があるわけです。これも、もちろん言うまでもなく、個々の契約です。しかし、個々の契約であるにもかかわらず、例えば保険契約の移転とか合併の場合、それで中身が変わる。そのような場合には、しかし、保険集団の特殊性を考えて、これは異議申し立てをせざるを得ない、この手続しかないだろうということで、今ここに保険業法は既に存在して、その中に異議申し立てという保険の特殊性を考えた手続が準備されています。それを援用しようということなわけで、今回、特別にこの枠組みができたわけでは決してありません。
 その意味では、そもそも、保険業においては、個人の契約というものと、一方で集団性との調和というのが、以前から当然のことながら根本的な問題として大きな問題になっているわけであります。今回のような条件変更では、それが特にクローズアップされるんだという点も大変理解できるところではありますけれども、今までの法体系の中で使われてきた、整備された一つのシステムなんであるという点は、その点、局長からの答弁であったものだというふうに理解をしております。
阿部委員 整備されたシステムの中では担い切れないような大混乱を、今回、このことで来すであろうということから質疑をしているわけです。今までの個々人の不服申し立ての仕組みがあるからそれでよしという答弁であれば、余りにも不実であると思います。
 一方で大きな変更を来すわけです。個々人は、自分の契約とどんなふうに違ってくるんだろうかということを当然疑問に思いますし、そのために、いろいろなところに相談したいとも思います。それが、自分が契約している保険会社しかない、そこへの不服申し立てしかない。そのような不備な中で今論議されていることは、五年後、十年後、A生命保険会社は傾くかもしれない、傾くことの理由が逆ざや問題であるから、そこに手だてをするんだと。極めて見通しの悪い視界の中で判断をしなくちゃいけない。
 何度も言いますが、破綻とか合併であれば明確なわけです。しかし、ずうっと質疑の中で言われてきて、先ほども中塚委員が御質疑でありましたが、一体、現在は破綻しないという現在はどれくらいといったら、五年と言った。しかし、将来的にという将来はどうかと聞いたら、十年と言った。五年と十年、そのようなものが本当に予測され得るのかという問題もありますし、不明確であるということから、保険を契約した個人は漠たる不安を抱えざるを得ないと思うのです。
 こういう不明朗な仕組みを導入することによって混乱ばかりが生じてくるのではないかという指摘をして、それに対しての消費者保護の枠が従来のものしかないというのは、どうしても私は不備だと思いますが、いかがでしょうか、大臣。
竹中国務大臣 先ほどから出てまいりましたし、委員も御指摘のように、会社に比べて、保険契約者一人一人は非常に弱い立場にある、情報量の格差もある、それはそのとおりであります。
 したがって、今回は、今までの異議申し立てのスキームを活用するわけでありますけれども、同時に、行政が介入してそれを承認する、チェックするというシステムを入れているわけです。その中には、必要に応じて保険調査人も活用するということも明示をしている。その意味では、これは先ほどからも御質問がありましたが、保険契約者の利益が損なわれることがないように、行政がチェックするというきちっとしたシステムを入れたつもりでございます。
 それにかわるシステムが何かあるのかなというと、これはなかなか難しい。そういう意味で、今回、そのようなトータルとしての契約者をできるだけ保護しようというスキームがあるという点も御理解をいただきたいと思います。
阿部委員 端的に言えば、この法案は常に、ある大きなもの、それが銀行業界でもいいですし、それから、トータルなものという言葉の中に、個人が契約して、個人の運命と個人のお金がそこにかかっているという視点がすごくないんだと思います。そして、例えば、この法案を提出なさるのであれば、それに伴って個人に起こる混乱もあえて受けて立つくらいの覚悟がなければ、国民の納得を得られないものと私は思います。
 これだけ繰り返せば、言わんとするところは御理解いただけると思いますし、そうしたある意味での受け皿をつくっていないこの法案自身が問題であるという指摘をさせていただいて、次の質問に移りたいと思います。
 同じく、「予定利率引き下げスキーム」の中の表を用いて質疑させていただきます。これは、やはりせんだって、私どもの植田至紀が質疑いたしました点で藤原局長の御答弁にもあったことですが、先ほどの五年、十年、長期的なものと、それから現在の破綻処理ということの比較をさせていただきながらの質疑です。
 日ごろから金融庁と生保業界は、早期警戒制度あるいは早期是正措置などを用いながら、生保会社の運営が健全であるべく御尽力、指導されているんだと思いますが、そのことに関して、藤原局長の御答弁からまた引かせていただきます。
 ある程度長いスパンを見た場合に、「契約条件の変更をしない場合、ほかの営業努力をいろいろやってみても将来において保険業を継続できない蓋然性がある、」これは、先ほどの中塚委員の五年、十年のところで、「その部分でございますので、短期の話ではございませんので、これからの、どのような営業努力をするとか、あるいはどのような改善努力をする、そこの部分は、まさしく会社しかよくわからない。」会社しかよくわからないから予定利率を引き下げるという結論になっているのです。会社しかよくわからないことを、どうやって金融庁は申請があった場合にきちんと見きわめができるんでしょうか。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 どういう文脈で私がそういう発言をしたか、ちょっと定かでないんですが、いずれにいたしましても、私が申し上げたかったのは、今委員が御指摘になりましたように、将来的に長いスパンで見て、営業努力とかいろいろな改善努力をしても、なおかつ予定利率を引き下げなければ、将来において保険業の継続性が困難になる蓋然性があるということが今要件になっておるわけでございますが、営業努力でありますとか改善努力につきましては、それは個々の会社によってさまざまなバリエーションがあるんだというふうに思っております。
 したがいまして、そういうものを踏まえた上で保険会社が行政の方に申請をしてくる。それは、私どもとしては、それが出されるまでは、どういうことかというのはよくわからない。したがって、それが出た段階でよく見させていただくということだと思っております。
阿部委員 もうたくさんの委員から指摘されていますが、ふだんから早期是正制度を用いていろいろな是正措置をしたり、あるいは早期警戒制度といってウオッチングしているわけですよね。しかしながら、将来の計画についてはわからないというふうに言ってしまっては、何のためにふだん金融庁の行政が監督して健全性をきちんと評価しているのかの役割が、もう金融庁の自滅だと思いますが、その点はいかがですか。将来性において、将来の事業計画がわからないという一点だけですか、今の理由は。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 監督当局におきましては、ふだんから、ソルベンシーマージン比率を初めとします早期警戒措置あるいは早期是正措置というようなもので生命保険会社の健全性に留意しているところでございますが、私の先ほど申し上げましたのは、要するに、もう少し長いスパンで見て、今までやっている努力に加えて、さらに新たなる最大限のことをやっても、なおかつ予定利率の引き下げを行わなければ将来的に保険業を継続することが困難となる蓋然性があるということでございまして、常日ごろ、当然のことながら保険会社も努力しておりますし、監督当局もそれをウオッチングしておると思いますが、その状態を超えてさらに何か新しいこと、何か画期的なことを考えても、なおかつそこが難しいというようなことでありますので、そこは通常のレベルの話とちょっと違うというふうに思っております。
阿部委員 藤原局長の答弁は絶えず変わるように思います。
 なぜなら、先ほど中塚委員の御質疑の中で、私もきょうこれを聞こうと思っていましたが、出していただきました資料によりますと、「第一に、現時点では保険業の継続が困難である状況にはないこと、」いわゆる破綻ではない、しかしながら、将来の業務及び財産の状況を予測した場合には、契約条件の変更を行わなければならないというのがこの予定利率の引き下げのガイドラインのもとになる資料だと思います。
 その中で、中塚委員も御指摘でありましたが、金利とか株価とか為替レート等、そういうものの変動が問題になって、五年、十年というスパンで見た場合に非常に問題が出てくるんだというふうに先ほどは御答弁でしたし、ここでもそのようにペーパーの上では出てございます。それについて、五年、十年なんて、大体金利だって株価だって予測できないじゃないか。
 私、きょう大臣の答弁の中で一番印象的でしたのは、この二年間の環境の悪化であると今おっしゃいました。予定利率の引き下げ、この二年間の環境の悪化、何だ。小泉政権の発足だ。この二年間、一番大きな環境の変化は小泉政権の発足で、株価が非常に下落した。ああ、そうか、これはそのための法律かと思ったくらいでありまして、先ほどおっしゃったような、個々の生命保険会社が将来に向けていろいろな企業設計をするところの問題が企業しかわからないからというのは、ある種とってつけた答弁であると私は思います。
 そして、藤原局長も、御自分の答弁をずっと繰り返し読んでいただくと自己撞着がはっきりしますので、私は、申しわけありませんが、次は大臣に質問したいので、今のことをちょっと指摘させていただいて答弁の検証をしていただきたいと思いながら、お返事をいただかないで恐縮ですが、竹中大臣にもう一度伺わせていただきます。
 これは先回の私の質疑の中で、逆ざやという構造問題が続いているがと竹中大臣が繰り返しておっしゃるので、では、逆ざやという構造問題は既に九二年から始まり、九六年からは保険の保有契約高が減少したというふうに御答弁でありました。しかしながら、私はきょうの御答弁の方が正直だと思うんですね。この二年間の環境の悪化、株価、金利、為替、この三つ、三重苦。その中で、何とかせねばならないと思ったところが本音ではないかと思いますが、そう憶測させる理由は、例えば、九二年から逆ざや、九六年から保険の契約高の減少、そして、実は一九九九年からゼロ金利政策をとっておられます。
 再度伺います。この逆ざやが構造的問題として認識され、今回のような予定利率を引き下げなきゃいけないと思われた決定的なエポックメーキングなもの、あるいは環境の変化は何でありましょう。
竹中国務大臣 私、先ほど過去二年間の悪化というふうに申し上げたことを踏まえて、阿部委員の御指摘がございました。
 申し上げたかったのは、言うまでもありませんが、中間報告が出されたのが二年前であります。二年前になぜこういう問題が議論されてきたかというと、その前から悪化してきたからであります。その前で悪化してきた。しかし、それ以降幾つかの努力を講じてはいるんだけれども、残念ながら逆ざやというのは厳然として存在していて、その間体力がじわじわとむしばまれている、そのように考えているという趣旨で申し上げました。
 御質問の趣旨でございますけれども、この問題、いつごろから発生していると認識しているのか、それで今回このような法案を提出した理由やいかん、そういうことだと思いますが、これは、委員自身、前の私の答弁を御引用くださいましたように、やはり九二年ごろから実際は逆ざやになっている、利回りが逆転している。これは、バブル崩壊、九一年ぐらいが地価のピークであったというふうに思いますから、その直後からこのような問題が続いているという非常に根深い問題だということが第一点。それと、九六年からは、そうした意味での日本経済全体の体力が弱ってきて、保有契約高の減少、人々の将来不安の高まりというのが出てきたということだと思います。
 今回なぜということでありますが、これは二年前の中間報告でもありますように、この問題は放置できないというような問題意識はずっとあったわけです。今回、こうした問題を改めて法案という形で我々がまとめて提起させていただきましたのは、二年前の中間報告では留保事項というようなことで指摘された問題について、その間かなりの進捗があったということ、それと、引き続き逆ざやの中で体力がじわじわっとむしばまれている。そのような認識の中で、やはり早い時期に、今、別に金融機関、保険会社、どこか特別問題があるという認識ではありませんが、しっかりとした準備のための選択肢を用意しておきたい、そのように判断したからでございます。
阿部委員 再度伺います。この二年間の環境の悪化という内容は何でしょうか。
竹中国務大臣 いろいろな要因があるかと思いますけれども、この十何年間ずっと日本経済の体力そのものが低下してきている。低下していく中で、実は、身を削れば削るほど環境そのものは厳しくなっていくわけです。
 そうした中で、財務が中長期的に持続可能かというようなことを明示的に問題にせざるを得なくなった。世界的な株安の中で、株安が日本を覆って、その結果、そうした面でも金融機関の損益に反映をされている、そのようなことを総合的に勘案したということです。
阿部委員 でも、私、今のは答弁になっていないと思うんです。
 だって、失われた十年と言われるように、経済のグローバル化に伴って、それから不良債権問題もずうっと引きずってきながら、大臣はさっき、この二年間の環境の悪化とおっしゃったから、ではこの二年間に起きたものは何であるかと私はさっき必死に考えて、思いついたのが小泉政権だと思ったわけで、そして私は、竹中大臣の登場は、もし構造改革がそれなりの財政措置を伴って一体となってやられていた場合は効果も違ったかもしれないと思うのです。ただ、いずれも中途半端であり、なおかつ株価ばかりはどんどん下落し、実体経済を反映しないほどに下落し、銀行株との持ち合いが生保業界を苦しめる。
 私はもう一言聞きたいですが、この二年間の悪化とは何ですかと、でも次の上川委員がもう座られましたので、そして総理が御出席でありますので、では一言だけもう一度、二年間の悪化とは何ですか。
竹中国務大臣 構造改革に真剣に正面から向かい合って、その中で、一つの産みの苦しみとして、今まだ厳しい状況が続いております。しかし、次第に構造改革はその芽を出して、その成果が着実にあらわれてくるというふうに思っております。
阿部委員 そうであれば、まさにこの法案は無用の長物で、生保業界にとっても迷惑、国民は保護されない、一切御無用の法律と思います。
 私は、これで終わらせていただきます。
小坂委員長 これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上川陽子君。
上川委員 自由民主党の上川陽子でございます。
 当委員会に総理をお迎えするということ自体が大変異例なことである上に、私自身、発言をする機会を与えていただきまして、大変ありがとうございます。光栄に存じます。
 さて、日本では世帯当たりの生命保険加入が約九割を超えているということでございますし、また、金融資産に占めます保険というものも、四分の一を占めているということでございます。仮に今回の法律改正が実現します場合に、保険金が大幅に削減される事態も予想されるわけでございまして、国民の多くが不利益をこうむることになるわけでございます。こうしたことから、生保の予定利率に対する国民の関心は大変強いものがございますし、よほどのことがない限りは、その引き下げについて理解を得ることはなかなか難しいということも言えるかと思います。
 現に、平成十三年にこの問題が金融審議会で取り上げられまして、国民からのパブリックコメントということで集約した結果、圧倒的多数の反対で法制化を断念した経緯がございます。当時、金融審議会第二部会長でありました現在の福井日銀総裁でございますけれども、パブリックコメントの結果を踏まえて、生保会社のディスクロージャーとガバナンスが不足しているため、これらの点について契約者・国民の理解が必要というような総括をしていらっしゃいまして、生保、保険会社の透明性並びに経営規律の向上を強く求めたという経緯がございます。
 さて、今回の法案提出に際しましては、前回のようなパブリックコメントはしない、また、金融審議会での議論も十分尽くされてはいないというような御議論もございますが、総理は、今回の法改正による生保の予定利率引き下げについて、国民の皆さんの理解を得られるとお考えでしょうか。また、生保会社が、経営努力の結果、既にそうした要件を満たしていくように努力をしているというふうにお考えでしょうか。率直な御意見をよろしくお願い申し上げます。
小泉内閣総理大臣 財政金融委員会、昔は大蔵委員会でしょう。久しぶりですね。よく一緒に理事として夜遅くまで審議をしていたころを思い出しながら、きょうはやってまいりました。そのころ一緒に汗をかいた方々がこうして毎日御苦労されている姿を見まして、敬意を表したいと思います。
 上川議員の、今回の法案につきまして国民の理解が得られるかどうかというお尋ねでございます。
 今回、私は、生保あるいは契約者に対して選択肢を広げたということでありますので、これに対して国民の理解を得られるように今後も努力が必要だと思っておりますが、現在の世の中、歴史的な長期で見ても、予期せぬ出来事が多い世の中であります。今までの高度成長時代と違って、超低金利時代、あるいは物価が下がる時代というのも、私は大蔵委員会で理事としてインフレ撲滅のために苦労してきたころを見ると、まさか物価の下がる時代なんか来るわけがないと思っていたんです。それが、現実に物価が下がる時代が来ているわけですからね。
 いろいろ予期せぬ出来事に対して対応しなきゃならないのも、国も企業も準備しておかなきゃならないと思います。そういう意味において、今回、予定した利率のとおりうまくいかないなと思うときに対しては、できるだけ保険契約者を保護する観点からも、必要な選択肢を与えるというのも一つの方法ではないかなと思っております。
 そういう意味において、今回、このような法案を提出したわけでございますが、それぞれ予定のとおりいけば、これは問題ないわけでありますが、予期し得ない変動が起こった場合にどう対応するかという法案でありますので、この点はよく御理解いただけるように、今後も努力する必要があると思っております。
上川委員 二問目ということでまたちょっとお伺いいたします。
 総理はこれまで、民間にできることは民間に、こういう基本姿勢で、民間の主体性を尊重しながら、経済発展の起爆剤として規制緩和を進める、こういう政策を一貫してとってこられました。そうした総理が、生保の予定利率については業界保護に腐心しておられるようにも見られるというような状態、これには多少違和感を感じないわけにはいられないわけでございます。
 民対民の契約に基づく正当な経済行為に対して、その一方の肩を持つような形で国が事後的に介入するということについては、国民の理解を得るというのは、よほどのことでないと得られないということでございます。まして、それを政府の責任があいまいな私的自治によって処理しようという仕組みは、先進国のどこにも見当たらないとの厳しい指摘もございます。
 一方、多くの国民にとりましては、もしかしたら国にだまされたというような印象を与えることになるかもしれません。かつて、戦時国債が紙くずと化したことへの恨みが、敗戦後、国民感情の中で長く尾を引いたように、一たん国が国民に対して約束したことを破れば、再び信頼を回復するまでは相当の時間と努力を要します。私は、国民に対する国の約束というのはそれほど重いものだと考えています。
 そうした極めて異例な、また、国民の信頼を失うおそれもあるかもしれないというような今回の法律改正を、先ほど総理の方からおっしゃったとおり、予期せぬ事態という今日本の置かれている環境の中で通すということについては、総理としてのよほどの覚悟、また、それなりのお考えというものがあってしかるべきだと思うし、また、その上でおやりになっていらっしゃる、こう信じておるわけでございます。
 また、国民としては、総理のそうした覚悟について、総理の言葉でその状況についてぜひ聞いておきたい、こう思っているとも思います。私も、そういう意味で、国民を代表して率直にお聞かせさせていただきました。ぜひ、そこの思い、覚悟につきまして、総理の言葉でもう一度お聞かせいただければ幸いでございます。
小泉内閣総理大臣 生保会社を保護するというよりも、保険契約者を保護するというのが主眼であります。これは、金融機関でも似たようなことが言えます。どうして金融機関を保護するのか。結局、預金者を保護する、これが主眼であると同じように、破綻を予防するためにはどういう選択肢があるかということでありますので。
 では、破綻した方がいいのか、あるいは破綻を防止するためにこのような予定利率を下げた方がいいのかというのは、やはり契約者と保険会社とのよく話し合いも必要でしょうし、理解を得る努力も必要だと思います。
 現に、幾つかの保険会社が破綻しております。破綻して、そんなに損害を受けない方もいたと思いますが、損害を受ける方もいるわけであります。それは、各生保会社も努力しなきゃならない、その点は私も当然だと思っておりますが、いわば今回の法案は、破綻を防止する、そして保険契約者を保護するという一つの選択肢を提供しているということについて、より一層国民に理解を求める努力が必要だと思います。
上川委員 大変時間が短いので、最後ということでありますが、こうした異例の法改正に踏み切らざるを得なかった背景であります現下のデフレ問題についてお伺いいたします。
 国民にこれだけの負担を求める以上、国民の理解が得られるようなデフレ対策、原因の根幹ということでございまして、これに真っ正面から取り組む必要があるというふうに考えます。
 それにつきましての総理のお考え、お伺いできれば幸いでございます。
小泉内閣総理大臣 デフレ克服のために政府はいろいろ手を尽くさなきゃならないということは申すまでもございません。財政政策、金融政策、また日銀と協力しながら、現下のデフレ状況を一日も早く克服するために今後も努力していかなきゃならないと思っております。非常に厳しい状況が続いておりますが、こういう状況を打開するためにも構造改革が必要だ。
 そういう中で、限られた選択肢ではございますが、また狭い道でありますが、今までの、小泉内閣発足時の私の主張をいかに実現していくか、一歩一歩実現に向けて努力をしていかなきゃならない。当分、厳しい状況が続いておりますが、この厳しい状況を打開した後に民間主導の持続的な経済成長が達成できるように、デフレ克服ができるように、さらに努力を続けていきたいと思っております。
上川委員 ありがとうございました。
小坂委員長 次に、五十嵐文彦君。
五十嵐委員 民主党の五十嵐文彦でございます。
 今のやりとりを聞いていまして、小泉総理はこの問題の本質をおわかりになっているのかなというふうに大変疑問に思いました。(発言する者あり)私はわかっていますね。
 まず、逆ざやがあるから、逆ざやが将来の大変な不安要因になるから、それを除去するために三%への予定利率の引き下げが必要だというのがまず発端にあるんですが、金融庁からいただいた資料を見ましても、総理、公表逆ざや額は年々減少しているんですよ。十三年度の公表逆ざや額、一兆三千六百六十三億。生命保険会社全体の利源別の状況というのが発表されているんですが、利差損は一兆五千百九十八億。年々減少しています。これに対して、柳澤前大臣が、いや、費差、死差というのもあるんだから、それをみんなカバーしていて、日本の生命保険会社、大丈夫ですとずっと言い続けてきた。
 なるほど、死差益というのがありまして、これは二兆七千六十七億、年々増大しているんです。今言われている逆ざやの総額よりも死差の方が額がうんと大きくて、しかもそれは年々増大しているんです。先へ行けば行くほど逆ざやが負担になるというのは、これからは証明にならないんですね。証明にならないんです。
 そのほかに費差というのがあって、費差は今約八千億弱あります。少し減少している傾向にありますが、これはリストラをすればふえるわけですから、企業努力によってふやすことができるわけで、死差益はかなり利差の損より大きいわけですから、逆ざやが根本問題だ、これが敵なんだから、ガンをやっつけなきゃいけないという理屈は成り立たないと思うんですが、いかがですか。
小泉内閣総理大臣 逆ざや状況が続いて、生保会社にとっては厳しい状況が続いていると思いますが、これは強制じゃありませんから。できるという、予定利率を下げることができる。判断は生保会社の判断ですから、これをやらなくてもいいし、やってかえって悪くなる企業も出るかもしれない。それは現実だからわからない。保険契約者が減る場合もあるかもしれない。そういう危険を承知でやる場合は、生保会社が決断しなきゃならない。
 これは、生保会社にとっても非常に私は厳しい状況だと思いますよ。苦しいと思いますよ。政府が強制するものじゃありません。一つの選択肢を提供しているんだから、あとは生保会社が判断する。予定利率を下げなきゃならない生保に対して、果たして保険契約者がまた、ああ、この会社はいいから安心して契約しようという状況になるかどうか、これは非常に難しいですよ。あくまでも一つの選択肢を提供している。強制じゃない。
五十嵐委員 いや、法律をつくるんですよ。法律でこういった、本来なら、我々は自由主義経済社会、契約社会に住んでいるわけですから、契約を守らすのが国の役目じゃないんですか。これは、破ってもいいのを保障するのはないんですよ。
 実は、破綻した場合とシステミック危機があるときは、これはしようがないんですよ。これは、銀行も、先ほど、銀行は預金者保護のためにと言ったけれども、そうじゃないんですよ。結果として預金者保護になるんですけれども、システミックリスクがあるから特別に守る仕組みをつくっているんです。システミックリスクもないのに、ないと言っているんですから、ないのに、破綻の危機にも直面していないのに、破綻と同様に企業を救うという論理はないはずなんです、本来。ないんです。
 それだったら、どこの世界だって、一般事業会社だって、それはそれぞれ債権者が債権放棄し合えば、そっちの方が破綻させるより得だというものができてしまうじゃないですか。どこだって同じですよ。生保会社だろうが、銀行だろうが、一般事業会社だろうが。そういうことなんです。しかし、それはやらせないんですよ、法治国だから。契約は守らなきゃいけないものだ。
 逆に、契約者の方が、貧しい収入の中から苦労して保険料を払い続けて、しかし、とうとう払い切れなくなったときに、保険会社側は断固として権利を主張して、契約を解除して、いわばペナルティーを科すわけですよ。解約の返戻金がカットされるわけです。自分たちの方はそれをやっておいて、自分たちが経営失敗して悪くなったら、自分たちの方は今度は助けてほしい、そして、一方的に契約者に損を負わせるというのは、これはおかしい制度なんです、どう見ても。
 ですから、世界じゅうにこんな制度はないんです。これをやれば、逆に生命保険会社の信用度は世界じゅうでなくなります。日本じゅうでもなくなります。それはそういうものなんですね。そこは、選択肢を広げるんだからいいんだという理屈で通すには通せない大きな法的な私は壁があると思うんですが、御認識をいただきたいと思うんです。
 もう一つ、例えばこれをやった場合に、細かい話を総理に聞いても失礼かと思いますので、総理の持論と比べてみてもおかしいなというところを一つ指摘させていただきたいと思うんです。
 簡易保険というのがありますね。郵便局、今、郵政公社になりましたが、やっております。これは民業圧迫だから、なるべく小さくすべきだとか改革すべきだというお話が総理の基本的な考え方だと思います。
 ここで、簡保の方はいわば政府保証がありますから有利なんですね。イコールフッティングされていないのがけしからぬと生保会社はずっと言ってきましたよ。税金払っていなかったり政府保証があったりするのは我々とイコールじゃない、我々の客がとられている、こう言ってきたんですが、ここで生保会社の方が、いや、私のところは約束を破ることがあるかもしれませんという法律をつくっちゃったら、簡保とみずからイコールフッティングしないということになるじゃないですか。自分たちの条件を下げるんですから。総理の今までの持論とは整合性が全然とれないんじゃないんですか。いかがですか。
小泉内閣総理大臣 簡保の問題は、これはまた別の問題としてさておきまして、郵政公社になって、今、民営化の実質的な第一歩を踏み出しましたから、いずれ民営化の議論が起こってくると思いますが、この生保の予定利率の引き下げの問題につきましては、あくまでもこれは選択肢を提供しているわけで、例えば、予定利率を引き下げるからけしからぬということについても、契約者が、この保険会社は安心かな、どうかなという、そういう判断もしなけりゃならないと思います。
 先ほど申し上げましたように、それでは、予定利率を下げた場合に、果たしてその会社は信用を維持できるかどうかという危険を冒さなきゃならない。破綻させた場合に、それは、先ほど申し上げましたように、保険契約者が損害を受ける場合と損害を受けない場合が出てくると思います。破綻しても構わないよという契約者もいるでしょう。しかし、破綻するよりはまだ予定利率を下げてもらった方がいいという契約者も出てくる。
 どっちかの、好ましい選択じゃありませんが、そういう点から、各会社も、保険契約者との理解を得られるような話し合いも必要でしょうし、努力も必要だと思います。もし、予定利率を下げようとした場合、契約者が反対が多くて下げられなかった場合の危険はどうなるのか、メンツ丸つぶれだという状況も保険会社は判断しなきゃならない。
 そういう点も考えると、私は、あくまでもこれは強制じゃない、一つの選択肢を与える、保険契約者保護のためだということをやはり御理解いただくように、今後よく国民に説明する必要があると思います。
五十嵐委員 それは、全然保護にならないんですね。例えば、もしこのままだったら破綻しちゃうんだから破綻より得でしょうと言うとしても、契約者には、むしろ破綻しそうなところだったら早々と契約解約して、よその破綻しそうもない保険会社にかわるとか、あるいは掛け捨ての片仮名保険にかわるとか、あるいはその分貯金をするとか、その方がいいわけですよ。そういう選択肢もあるわけですから、何も破綻したケースと破綻しないで利下げをしたケースだけに限って比較する必要はないわけですね。
 どれぐらい損をするか、総理はおわかりなんでしょうか。終身保険に二十五歳で男性が一九九〇年に加入したとして、十三年間今日まで掛け続けて、五十歳に払い込みが終了するという場合に、予定利率が三%に引き下げられると、カット率が四四%なんですよ。物すごいでしょう。生活設計をしていて、もらうべきお金が四四%カットされて、それでもこっちの方がいいやと思う人は多分少ないと思うんですね。女性の場合はもっとひどくて、同じ条件で四八%ですよ。五・五から三%にというとほんの少し下がるだけかと思い込んでおられる方がおられるかもしれないけれども、そんなことじゃないんですよ。
 年金保険の場合もそうですよ。二十五歳で九〇年に加入して、六十歳で払い込み終了で、六十歳から十年間年金を支給してもらう、そういう契約をした人は、カット率三七%です。老後の設計が全然狂っちゃうじゃないですか。これは、全然選択肢の問題じゃないんですね。破壊されてしまうんですよ、もともとの設計が。
 これを、官が力をかして、強い方の生命保険会社側に選択肢を与えるというのは、道義的に許されないことだと私は思います。どちらが強いかといえば、契約者より会社側の方が強いんです、情報量が豊富なんですから。これをいきなりやってしまおうというのは、非常に乱暴。私は、訴訟リスクが避けられないと思います。どんどん内閣総理大臣小泉純一郎さんあてに訴訟が日本じゅうで起こされる。私だったら起こしますよ。
 これは、日本の契約社会の根幹を曲げてしまう、揺るがしてしまうことで、選択肢が広がるのは銀行と生保会社だけでありまして、得をするのは銀行と生保の経営者だけなんですよ、責任を負わなくていいから。そのことが本当におわかりになっているのかどうかをもう一度お伺いいたしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 国民も、自分のうちにお金を持っていた方がいいか、あるいは金融機関に預けた方がいいか、生保と契約した方がいいか、株に投資した方がいいか、国債を買った方がいいか、いろいろ選択肢はあると思います、将来の。そういう中で、一つの選択肢ですから、強制じゃないんです、これはあくまでも、先ほどから何回も申し上げているように。だから、どのようなプラスがありどのようなマイナスがあるかということは、それぞれ国民が判断するでしょう。生保だけでなくて、株がいいか国債がいいか預金がいいか、あるいは生保の中でもどの会社がいいか、どの会社が安全か危険か、そういうのもやはり国民がそれぞれ判断しなきゃならない。
 そういう中で、私は、今回の生保の場合に、それでは生保と契約する場合には、ある程度契約した会社が悪くなった場合に、破綻した場合どうなるのか、破綻しないで予定利率を下げた場合どうなるのかということに対しても国民は関心を持つようになるでしょうし、契約する場合にも、生保は契約者に対してそのような説明を十分なさなければなりませんし、あるいは、生保はもう契約しない方がいいという人は生保から離れていくでしょうし、それは国民の選択の問題です。
 今回も、政府としては強制じゃありませんから。このようなことができる、するしないは生保各社の判断であり、また、保険契約者の信用を回復するために、信用を維持するためにどのような体制を会社がとるか。また、破綻しないために、国民は、どのような生保を選ぶかというより厳しい目を持つでしょう。また、国民自身が、契約した場合に、破綻した場合と予定利率を下げられた場合とどっちが得か損かということに対してもこれからはより関心を持つでしょうし、あくまでも今回は強制的に下げろというわけじゃありませんから、一つの選択肢を提供するということであるということを、ぜひとも御理解いただきたいと思います。
五十嵐委員 まず、新規契約じゃないんです。既に約束したものが破られるという話ですから、それは自由というのとは違うということが一つ。
 それから、強制じゃないと言うけれども、事実上の強制になってしまうんです。なぜなら、申請を出すのは会社側が一方的に出すわけですが、そのときに異議申し立て制度があるというんですが、異議申し立てをして否認しちゃったら本当に倒産するわけですから、先ほど総理が言われたとおり。それは事実上の倒産を選ぶということと同じになってしまうので、それは選択の余地がなくなるんです、事実上。それは、選択させることにならないんです。そういうことになるわけですね。
 それから、それを防ぐためにソルベンシーマージンという仕組みを今までしていたわけですね。ソルベンシーマージン比率が二〇〇%以下になれば、そういう倒産が起きないように金融庁が指導し、早期是正措置を発動し、改善命令を出す、そして資本を回復させて倒産しないようにするという制度があるわけですよ。今や、それは二〇〇%以上のところ、一番悪いところでも三七〇%といっているんですから、その制度が意味がなくなってしまいますね。だって、三七〇%で安心していたら、いきなりそういう申請が出てきて、申請を認めなければ倒産してしまうということになるんですから。それは、まさに、選択の余地が広がるのではなくて選択の余地がなくなる方策なんですね。
 総理、私は、これは大変なことをおやりになろうとしているというふうに言わざるを得ないんです。総理は抵抗勢力、抵抗勢力ということを言われるけれども、オイディップス王の物語というのがあるんですが、犯人を捜していたら自分だったというものなんですが、抵抗勢力は、この法案を出す限りにおいて小泉さん自身ではないか。
 これは国民生活を破壊し、国民の味方、契約者の味方にならない、そういう法案だというふうに思いますが、今私が申し上げた、異議を申し立てたくても、異議を申し立ててそれが本当にそのとおりになってしまったらその生保はつぶれてしまうという事実から見て、これは事実上、つぶしたくなかったら反対できなくなってしまう。そういうことをお考えになったら、この制度のスキームが本当に自由主義経済、契約社会の今のモラルあるあり方に合っているかどうか。これはとても疑問どころか、最初からそうではないということが言えると思うんですが、もう一度お考えをいただきたい。
小泉内閣総理大臣 もう一度お答えを繰り返しますが、破綻した場合と予定利率が下げられた場合とどっちがいいかということになると思います。その場合にどのような選択肢があるか、それを提供する場でありますので、その辺は保険契約者も深刻な問題で、悪い方の選択ですから、いい方の選択はないんだから、それは困るのはわかります。また、生保にとっても危険を冒すわけであります。
 しかし、あくまでもこれは一つの選択肢を提供するということでありますので、今回の法案も、こんな法律は必要ない、破綻するものは破綻させればいいんだというのも一つの考え方であるということは理解できます。それは、立場が違うんですから。私は改革なくして成長なし路線を行っていますが、それではいかぬ、改革をおくらせてでも景気対策をやれという人もいるわけですから、それはいろいろ立場が違います。それはわかります、五十嵐さんの言い分もわかりますけれども、政府としては、一つの選択肢を提供して、保険契約者を保護するということに主眼を置いたものであるということを御理解いただきたいと思います。
五十嵐委員 契約者にはそういう判断ができない。なぜなら、破綻のときとどっちがいいかと言うけれども、破綻したときは清算してみなければわからないからです。実際に東京生命などのケースを見れば、早期に処理して破綻したときの方が契約者は得です。そういうことなんですよ。だから、それは全然判断ができないんです。
 とにかく、まともな自民党の専門委員は、まともな方は反対です。まともな方は反対ですから。一人一人聞いたってそうなんですから。ぜひ考え直して、撤回をしていただきたい。総理、撤回をしてください。総理の名誉を守るために、こういうできの悪い法案は撤回をするのが当然である。まともな人は反対するのが当然であります。そのことを申し上げて、終わります。
小坂委員長 次に、中塚一宏君。
中塚委員 総理、この世の中はおおよそのことは契約というもので成り立っていまして、政党は規約というのがあるし、会社は定款というのがあるわけですね。選挙も、ある意味、公約を提示して、それで有権者と契約を結ぶというのがこの契約社会の大原則。
 生命保険の契約者というのは、確定拠出、確定給付というのを信じて契約をしたわけですから、その人にとって予定利率が下がる、あるいは破綻の場合でも同じですけれども、要は、もらえると思っていたものがもらえないということは、事実上のデフォルトですね。債務不履行ということになってしまうわけですよ。
 そういう契約社会の大原則をねじ曲げてまで、契約が履行できなければ本来は更生手続をちゃんと使えばいいわけですね。そのために裁判所だってあるわけですし、更生特例法という法律だってあるわけです。ところが、その契約社会の大原則を曲げてまで、更生手続によらないで予定利率を引き下げる理由、これは一体何ですか。
竹中国務大臣 契約したものは守らなければいけない、それはそのとおりだと思います。しかし、その後の非常に大幅な条件変更によってその契約が守れない可能性がある、それを続けた場合には、契約者により大きな負担がかかるような場合が現実にあり得るわけです。そうした場合には、結局、保険会社と契約者が新たな合意のもとでその条件を変更するということの方が、結果的には契約者の保護になるのではないだろうか、そのようなことを実は想定して、先ほどから総理も御答弁していますように、一つの選択肢を与えるんだ、そのような観点から今回の法律を御審議いただいているわけでございます。
 その意味では、契約はもちろん重要であります。その契約を結び直すに当たっては、当事者の合意をしっかりと確認するという意味で、今回のような異議申し立ての手続を含めたそういった手続をこの法案の中にしっかりと位置づけているわけであります。
中塚委員 私がお伺いしているのは、そういった損得の話じゃなくて、契約社会の大原則を曲げてまで予定利率をこういう不明朗な形で引き下げる、その理由は一体何なんですかということを総理にお伺いしているんです。
小泉内閣総理大臣 これは、保険契約者を保護するために一つの選択肢を与えたということであります。破綻した場合と予定利率を下げた場合とどちらがいいか、選択肢を与えるんです。強制的じゃないんです。
中塚委員 それならお伺いしますが、総理御存じだと思いますけれども、この予定利率の引き下げというのは、生命保険会社の基金なり劣後ローン、いわゆる資本に相当する部分の取り扱いというものが明確になっておりません。
 保険契約者を保護するということであるならば、何でその保険契約者の予定利率を引き下げるということから真っ先に入っていくのか。そうではなく、保険契約者を保護すると言うのであるならば、通常であっても、保険会社というのは、第一に優先的に弁済しなきゃいけないのは保険契約です。次に一般債権、一番最後に基金なり劣後ローンというのが来る。ということであるならば、契約者を保護するならば、真っ先にこの基金なり劣後ローン、つまり出資者ですね、銀行が多いわけですが、そこの責任、これを取り崩すのが当たり前だというふうにお思いになりませんか。
竹中国務大臣 それは二十数時間の議論の中で何度か答弁をさせていただいていると思いますが、最優先である、劣後であるというのは、それは破綻の場合の議論をあくまで中塚委員はしておられるわけです。破綻の場合はそのとおりだと思います。
 しかし、今回の措置は、破綻を予防するために、ゴーイングコンサーンとしてきちっと保険会社が契約を営むようにするためにはどうしたらよいか。その中には、場合によってはその基金についても放棄をするというような場合は当然あり得るわけです。しかし、ゴーイングコンサーンとしてやっていく場合に、基金を放棄してしまったら、その後の営業はどうするんだという問題も出てまいりますから、これは破綻をあくまでも予防するために総合的な戦略の中で基金はどうすればよいか。基金を取り崩さないとも言っておりません。それはまさに契約者と保険会社との自治的な合意の中で、どのように行っていくのが最適であるかということを選択する、それもまた選択肢の中の重要な一つであるということです。
中塚委員 お伺いしたいのは、保険契約者保護のための選択肢だというお話をさっきから総理、されていますね。保険契約者保護のための選択肢であると言うならば、予定利率を引き下げるということが前提であるにしろ、まず保険会社自身がやらなきゃいけないことがあるでしょう。その場合に、基金なり劣後ローンというのは真っ先に取り崩さなければいけない性格のものじゃないんですか、契約者を保護すると言うならばそうでなきゃいけないんじゃないですか。お考えはいかがですか。
竹中国務大臣 その場合に、まさに破綻の場合はそうだということを申し上げているわけです。(中塚委員「同じ答弁なら結構です。いいです」と呼ぶ)そのような形で……(発言する者あり)
小坂委員長 静粛に願います。
竹中国務大臣 どのような形で経営の最適な選択肢を選ぶかというのは……(発言する者あり)
小坂委員長 静粛に願います。
竹中国務大臣 まさにこれは自治的な合意の中で決定されていくということです。(中塚委員「
同じ答弁なら結構です。もうそれは聞きましたからいいです。結構です、それは」と呼ぶ)
小坂委員長 答弁者が答弁中です。
小泉内閣総理大臣 それは担当大臣がいるんですから、一緒に出ているんですから、私より竹中大臣の方がはるかに詳しいんですから、親切を込めて竹中大臣に答弁してもらった方がいいと思います。
中塚委員 私は、もっといろいろほかに総理にも聞きたいことはあるけれども、まず原理原則の問題、考え方の問題ということをお伺いしているわけです。
 この法案の一番の問題点は、契約者を保護するといいながら全然契約者の保護になっていないということなわけです。一部の契約者を犠牲にして、そして保険というもの、保険会社への信頼がきっちりと成り立つというふうにお思いか。なおかつ、保険会社の向こう側にある金融システムの安定がちゃんと得られるというふうにお考えかどうか。いかがですか。
小泉内閣総理大臣 これは破綻を予防するための一つの考え方ですから、破綻した場合と予定利率を下げた場合と、どういう形にしていくか、それは選択の問題ですから。破綻した場合どうなのかということもあり得ると思います。しかし、破綻しないで、予定利率を下げることによって破綻を予防することもあり得る。それは選択の問題ですから。
中塚委員 では、次に伺いますけれども、先ほど来いろいろ答弁されている中で、年金の問題、これは公的な年金の問題、今財政審等で年金を引き下げるというふうなことが議論されているようですが、一般の人は自助努力でこうやって生命保険に加入をしているわけですね。公的年金制度も、自分が払った保険料に見合った給付が将来受けられるかどうかわからない。国民年金は、未納、未加入、免除を入れれば三割の人が払っていませんよ。その一番の理由は、払った保険料に対して、将来ちゃんと給付が受けられるかどうかわからないというのが理由なわけですね。
 であるならば、今回、この生命保険も、予定利率を引き下げることができるようになってしまうと、結果として国民年金と同じようになる。制度自体への安定性、安心性が確保できなくなるんじゃないですか。
小泉内閣総理大臣 それは国民年金に加入しない方の理由はさまざまでしょう。信頼できるできないという問題もあるかもしれません。国民年金未加入の中には、国民年金の方が民間よりもはるかに有利にもかかわらず、民間の保険会社に加入している方もいるわけです、よく調べてみると。国民年金というのは、税金が投入されていますから、民間保険に比べて有利なはずなんです。にもかかわらず国民年金に未加入者がいるという、これは一つ深刻な問題です、未加入者が多いということは。
 そういう中で、信用できないから入らない、予定利率が下げられる可能性があるからもう契約しないという方も出るでしょう、当然。それはやはり、いかにこれから、そのような信用を確保するために生保会社が努力しなきゃならない問題点だと思います。
 また、保険契約者もよく見きわめて、どういう会社と契約を結べば、より有利な形で自分の金銭が保障されるか、将来が保障されるかというのに対してより厳しい目を持つことが必要だと思いますし、私は、今回の予定利率の下げにつきましても、これはあくまでも選択の問題であって、強制ではない、お互いその点をよく理解できるように、今後も説明しなきゃならないと思っております。
中塚委員 選択の問題と言うなら、その選択が必要ない、選択肢が必要のないような経済情勢にしていくというのが総理の仕事のはずですよ。
 先ほどの午後からの審議においても、今は破綻しないけれども、十年程度のスパンで破綻するかもわからない、そういうふうな保険会社なわけですね。十年も景気が悪いわけじゃないでしょう、改革なくして成長なしなんですから。だから、そういうふうな経済運営をするのがあなたの仕事じゃないんですか。
小泉内閣総理大臣 予期せぬ出来事にどのように対応していくかというのも、やはり政府として大事だと思っております。こういう点から考えても、より成長できるような経済に持っていくのが政府としても重要な役割であると認識しておりますが、同時に、今後、予期せぬ、願わしくない事態にどう対応をしていくかというのも、これは政府として大事な役割だと私は思っております。
中塚委員 最後に、保険会社のこんな自爆テロみたいな法律は一切無用であることを申し上げまして、終わります。
小坂委員長 次に、吉井英勝君。
吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。
 資料の配付をお願いいたします。
 ことし三月期決算でも明らかになっていますが、生保は、本業のもうけ、これに当たる基礎利益は、三月期で、大手十社で一兆九千九百九十一億円に上っています。これは逆ざやの一兆一千六百六十九億円を埋めた後の数字ですから、かなりの収益力を示しています。しかし、同じ時期に、株価の下落による売却損、含み損、合わせて二兆一千三百十四億円に達しています。
 つまり、基礎利益がすべて株価下落で吹き飛んだということになるわけで、せんだって参考人で来てもらいましたが、横山生保協会会長も、おっしゃるとおりと、生保の基礎利益、フローの収益はほとんど株安で吹き飛ぶという状況にありますという答弁でした。
 つまり、生保の経営が非常に厳しくなってきている、あるいは破綻につながっていくような危機的状況ですね。これをつくり出している大きな要因は、小泉内閣自身の経済政策にあるのではないか、こういうことが関係者の間から言われているわけです、私が一方的に言っている話じゃないんです。生保を追い詰めているのは、株価下落一般の話でもないんですね。
 そこで、資料をお配りさせていただいておりますが、やはり持ち合いの大半を占める銀行株の下落ということが大きいんですね。
 TOPIXで、小泉内閣発足直前の二〇〇一年三月三十日、それからことしの三月三十一日、二年後を比べますと、下落率を見ていただくとよくわかるんですが、全体としては三八・三%、四割の下落ですが、銀行業に関しては五九・四%、六割下落ですね。
 ですから、株が、何か世界的な現象で、どこもかもみんな落ちているからというだけじゃなくて、やはりこれは、小泉内閣が進めている期限を切った不良債権処理等が銀行を追い詰めている。それが、持ち合いで銀行株を大量に保有している生保の経営を直撃しているというこの事実をやはり見ておかなきゃいけないと思います。
 つまり、小泉内閣の経済運営そのものが生保経営を追い詰めてきているんではないか。この点では、総理は、そのことに総理として責任を感じていらっしゃるのかどうか、これを総理に伺っておきます。
小泉内閣総理大臣 私の内閣におきまして進めている政策が失政だという御意見は、野党のみならず与党内から一部に出ているということは承知しております。
 今、吉井議員が言われましたように、不良債権処理を進めているからこういうことになるんだ、一方では、不良債権処理を進めろ、遅過ぎるという声が野党の中にもあるのも事実でございます。同じ批判も、よって立つ立場が違うとこうも違ってくるのか、いかに小泉内閣の進めている改革が正しいかというあらわれだと思うのでございます。
 さまざまな批判はできますが、一つ基準に立ちますと、いろいろ見方はあります。不良債権処理を進めているからこんなデフレになるんだということを言いますが、では進めなかったらどうなるのか、そういう点もやはり考えていただかなきゃならない。
 確かに株価も下落しております。恐らく、私の政策が誤りだったら、もっと野党頑張れと、野党に対する激励の声がもっと起こってもよさそうなものなんですけれども、私は、いまだ小泉内閣に寄せる国民の期待も大きいというものを認識しながら、この期待にいかにこたえるか。改革なくして成長なし。不良債権処理を進めて、その間、痛みを緩和する対策も打ちながら、何とかこの改革を進めて、将来展望ができる姿に一日も早く持っていきたいと思っておりますし、現在の小泉内閣が進めている政策が過ちだとは思っておりません。
吉井委員 私は、失政だとかどうとか、評価の話を今しているんじゃないんです。事実の問題として、経済運営そのものが生保経営を追い詰めていっているという、これは、生保の会長が参考人質疑のときに、株価の下落で基礎利益が全部吹き飛んでいるんだということを言っているわけですから、その事実の問題について責任を感じているのかということを聞いたわけです。
 大体、生保危機にしても株価下落にしても銀行株下落にしても、これは何も保険契約者の責任ではありません。しかし、今度の法律によって、契約者は保険金の削減という、これをやられるわけですから、これは、さっきのような答弁で話が済むというものじゃないということを指摘しておきます。
 次に、逆ざやの問題はまたもう一つの理由に挙げられておりますが、もともと、逆ざやの根底には超低金利政策があることは、この間のこの委員会での議論でもありました。それから、竹中大臣自身が、既に、逆ざやの問題というのは、むしろ金利構造の日本経済全体の構造問題であるという答弁も行っておられます。
 さっきも、九二年からという話もありましたが、実は、九四年に西村銀行局長が、超低金利によって生命保険の仕組みに無理が生じていることは非常に重要な問題である、逆ざやによって生命保険会社の経営は危機に瀕しているが、これも低金利政策の副作用である、これは当時の銀行局長の指摘であります。
 ですから、総理は、この逆ざやは、超低金利政策を進めてきたことが大きな要因の一つだ、日本全体の金利構造であるという認識を総理もお持ちかどうか、伺います。
小泉内閣総理大臣 何事も、政策については一長一短あります。超低金利政策をとっても、できるだけ借りやすい環境をつくっていくという状況でありながら、そのような状況が生まれない。あるいは、国債も三十兆円以上発行していながら、その効果が出てこない。財政政策、金融政策、これほど積極的に手を打っている国はないと思うのであります。にもかかわらず、なかなか経済状況がよくならないからこそ、構造に問題があるというので、構造改革しようということで、私は、構造改革を進めているわけであります。では、高金利になるといって手を挙げて喜ぶ状況かというと、高金利になれば、そのときは物価も上昇していますし、また、企業も借りにくくなります。どのような政策を進めても、いろいろ一長一短あるんです。
 そういう点を考えながら、今はちょっと低過ぎるという御意見もよくわかります。しかしながら、現在の状況で、では金利を上げていいかというと、またそういう状況でもないでしょう。そういう難しい道を歩いていかなきゃならないというのも、今の日本経済の状況だと思います。そういう御批判も覚悟しながら、私は改革を進めていかなきゃならない。
 確かに、今の生保会社なり銀行の皆さんが、小泉内閣の失政によって自分たちは苦しんでいるんだという言い分もわかります。しかしながら、進めていかなきゃならない路線であると私は信じながら進めているわけでありますので、この点についても、私としては、今後も御批判を受けながらも、この道が正しいと思って説得することが重要であると認識しております。
吉井委員 要するに、超低金利政策を進めてきてこの問題が出ているということについては、これは、竹中大臣自身が、日本全体の金利構造に問題ありということを言ってきているわけですから、この超低金利政策のもとで……(発言する者あり)いや、ちゃんとまだ一分あると言っているんだから、あなた慌てなくていいんだから。国民所得は銀行へ、つまり、銀行は所得移転によって巨額の利益を享受してきたんです。本法案のスキームでは、銀行の劣後ローンなどは全額カットされるという保証がないわけですから。四日の参考人質疑でも、要は出資者である大手の金融機関の保護という指摘がありました。
 つまり、本法案は、超低金利という銀行救済策にさらなる銀行救済策をかぶせて、ツケを契約者に押しつける。このやり方では、国民への負担押しつけ政策によって、所得の減少、将来不安、消費不況の拡大と、これはますます経済全体を悪循環に追い込む道だということで、根本的にこれを正さない限りこの生保問題は解決しないと思うんですが、最後に一言だけ総理に、この点についてあなたのお考えを伺って、質問を終わりにしたいと思います。
小坂委員長 質問時間が終了しておりますので、簡潔に答弁願います。内閣総理大臣。
小泉内閣総理大臣 経済状況を好転させることによって諸問題の解決を図っていかなきゃならないという御意見はわかります。できるだけ早く経済状況を好転させるよう努力をしていきたいと思います。
吉井委員 時間が参りましたので、終わります。
小坂委員長 次に、植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。
 冒頭申し上げますが、きょうのこのわずか一時間、対総理質疑でございます。野党の各議員も対総理の質疑を組み立ててまいりましたので、先ほどの中塚委員に対するああいう答弁のあり方というのは納得いきません。それは冒頭申し上げておきたい。我々野党側も、真摯にかつ丁重に総理をお迎えして、この一時間の審議に臨んでいるということを御理解いただいて、御答弁いただければと思います。
 まず、総理に、これはむしろこの今回の法案の周縁部分について一言伺いたいわけですけれども、私は、今回の法案の評価以前のところで、幾ら保険業界を頑張れ、頑張れとたたいても、やはり公正なルール、公平なルールのもとで健全な市場がなければだめだ。その意味において、今大きな社会問題になりつつある無認可共済、これについて、法令上の規制、監督体制の整備というものは少なくとも喫緊の課題であると認識しておりますが、その点について総理の認識を伺いたいわけです。委員御指摘の点については、適切かつ可及的速やかに対処したいと存じますという答弁をいただければ結構です。どうぞ、総理。
小泉内閣総理大臣 一般論として申し上げれば、無認可の共済については、一律に規制を課して、一元的に所管するということについては問題があるのではないかと私は思っております。
 無認可というのは、どちらかといえば、自発的な助け合いの精神で共済事業をやっているところが多いと思うのであります。そういう点について、政府として一元的に規制した方がいいのかどうか、これはまた、もしそういうようなことになると別の批判が起こってくるのではないかと思います。
 そういうことを考えまして、違法な共済については厳正な対応が必要だと思いますが、具体的な事例ごとに問われれば具体的な判断を下すことになると思いますが、一般的に言われた場合には、お互い助け合いという精神でやっている共済事業でありますから、その点にまで関与していいのかなという問題があることもおわかりいただけるんじゃないかと思っております。
植田委員 私が言うているのは、今社会問題になっている、要するに不特定多数を相手にしている、そうした無認可共済を言っているんですよ。一般論として言っているわけじゃないわけです。助け合いでやっていることを言っているわけじゃないんですよ。
 ここで私時間をとりたくないので、そうした今社会問題と化している、そしてまたいろいろな、健全な真摯にやっている保険業に抵触するような、問題になっている無認可共済については、可及的速やかにかつ適切に対処したいとお答えいただいて結構でしょうと。一般論を聞いたんじゃないんです。もう一回言うてください。
小泉内閣総理大臣 これは、詐欺まがいの不特定多数の者に対して違法な行為を行っている特定の機関に対しては、政府、関係機関連携して厳正に対処しなきゃならないと思っております。
植田委員 さて、今回の法案については、もう既にさまざまな議論が出ているわけですけれども、総理に込み入った話を聞くつもりはありません。ただ、素朴に、今回の法案はいわば債務不履行を国がお墨つきを与える、そういう法律ですね。それ以上、以下でもない。それがイコール保険契約者の保護になりますと。選択肢と保護という言葉、先ほどからの答弁でかなり出てきたけれども、一点教えてほしいんです。
 私は素朴に、今回は債務不履行を国がお墨つきを与える、それを国民の、言ってみれば国民の九割が保険契約者ですから、その保護に資すると少なくとも総理はおっしゃっている。ならば伺います。いろいろなこの間のパブリックコメント、審議会の議論があった。その経緯については私は言及しません。ただ、今提案をなされた政府の最高責任者として、今回の予定利率引き下げというものが、国民、ひいては生保の契約者にとって喜びを持って迎えられている、よくぞ今まで待ち望んでいた予定利率引き下げを今小泉総理がやっていただいたと保険契約者の皆さん方が大喜びされている、まさに今出すべきだということでお出しになられたんですよね、この法案は。まさに国民の理解を得て出したということですね。教えてもらえますか。
小泉内閣総理大臣 それは、当初の予定の利回りどおり自分のお金が返ってくる、契約したとおり返ってくる、これは望ましい姿だと思います。しかし、今回の法案につきましては、より望ましくない事態が起こってきた場合に、どのような選択肢を提供するかという問題だと思うんです。破綻した場合と自分の予定した利回りどおり返ってこない場合と、どちらがいいのかという。
 そういう場合に、保険契約者も生保会社も、どういう対応をするかということについては非常に苦しむと思います。しかし、できれば起こってほしくないような事態になった場合に、破綻がいいか、破綻した場合に自分の貴重なお金がどういう状況になってくるのか、利率が下げられた場合と破綻した場合とどっちがいいかというのは、保険契約者にとっても深刻な問題でありますし、また生保会社にとりましては、そこまで契約が守れなかった、この信用をどうやって維持するかというのも苦しいでしょう。
 そういう場合に、どういう判断を下すかという選択肢を与えた法案だということを何回も繰り返しておりますが、その辺はよく理解されるように、これからも国民に説明していかなきゃならないと思っております。
植田委員 さんざんこの間、十数時間議論して、とりわけ局長のようわからぬ講釈をさんざん聞いてきたので、今さら総理の講釈を聞くために質問しているんじゃないんですよ。契約の反故が契約者の保護につながる、ホゴの漢字はそれぞれ違いますよ、契約を反故にすることが契約者の保護につながると総理は断言されておられるわけですよ。
 だから、私、最後にもう一点聞きます。かかる法案が、国民に歓迎されて、今迎えられているからこそ自信を持って、最高責任者たる小泉総理、提案されたと断言されるかされないか。イエス、ノーだけで結構です。それだけ聞けば終わります。
小泉内閣総理大臣 何度も繰り返し答弁しているように、それは、破綻した方がいいのか、予定利率を下げた方がいいのかという選択の問題ですから、これは選択肢を提供した、これについてこれからも理解を得られるような努力が必要だと思います。
植田委員 まだ一分前ですが、同じことを何ぼ言うても小泉総理は同じ答えでしょう。要は、今の、契約をほごにすることが契約者の保護につながるんだ、それを国民が歓迎していますかと聞いたときに一言も答えられない、答えられなかったということは、これは議事録に残るでしょう。
 以上で終わります。
小坂委員長 これにて質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
小坂委員長 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。小泉俊明君。
小泉(俊)委員 民主党の小泉俊明でございます。
 私は、民主党・無所属クラブを代表いたしまして、ただいま議題となりました保険業法の一部を改正する法律案につきまして、反対の立場で討論をいたします。
 まず、同じ法律を一国会で二度も改正するという異例な事態となったことにつきまして、政府・与党に猛省を促します。多くの国民に負担を強いる破綻前の予定利率引き下げに関する部分を統一地方選挙後に後回ししたことは、余りに国民を愚弄した選挙対策であります。
 しかも、金融審議会やパブリックコメントの実施など、金融庁が我が党に約束しました国民的議論もほとんどないままの法案提出は、近年まれにみる拙速な手続であります。アリバイづくりのために行ったわずか一回の金融審議会の議論でも、反対論が続出し、意見集約ができなかったではありませんか。
 本法律案は、このように提出の経緯からも審議に値しないものでありますが、審議を重ねれば重ねるほど、重大な矛盾や問題点が明らかになりました。
 まず第一に、政府がなぜ法改正を急ぐのか、説明が全く不十分であります。金融庁は、すべての生保は健全だと強調しています。生保の側も、制度が導入されても申請するつもりはないとしています。矛盾だらけではないでしょうか。
 第二に、破綻前の予定利率引き下げは、憲法に定める財産権を侵害する疑いが強いことです。私的自治によります手続としながら、契約者は異議申し立てしか意思表示をするほかなく、他方で行政の強い関与を設けていることからも、無理に無理を重ねたものと言わざるを得ません。公共の福祉に適合するようにとされていますが、生保全体または金融システムの危機への対応であれば議論の余地はありますが、一部の生保だけを救済するのが目的であれば論外です。
 第三に、更生特例法という法的整理の仕組みがありながら、破綻前の予定利率引き下げという新たな仕組みをつくる必要性があるとは考えられないことであります。過去の例から見ても、問題生保を早期に発見し、更生特例法によって処理すれば、契約者の負担も軽く済みます。
 第四に、予定利率引き下げにより破綻を防ぐ方が、更生特例法を適用するよりも保険契約者の負担は軽くなるとは言えないことであります。更生特例法であれば基金、劣後ローンは優先的にカットされますが、破綻前の予定利率引き下げならばすべての負担が保険契約者に押しつけれられる可能性が高いことから、更生特例法を適用した方が保険契約者の負担が軽くなることもあります。
 第五に、予定利率を引き下げても、本質的な問題解決にはつながらないことであります。生保全体で一兆五千億円の利差損、いわゆる逆ざやを抱えている一方で、三兆五千億円もの費差益や死差益を上げていることから考えれば、問題は、逆ざやではなく、個別生保の経営の失敗にあります。
 第六に、本法律案の手続では、現実には機能しない可能性が高いことであります。予定利率引き下げを申請した生保は危ない生保と見られるので、現実にはどこも申請できないという見方が有力であります。
 第七に、本来であれば優先的にカットされるべき銀行の出資による基金、劣後ローンが事実上全額保護され、何ら罪のない保険契約者のみに負担が押しつけられるおそれが大きいことであります。結局のところ、本法律案の真の目的は、銀行救済にあるのではないでしょうか。
 第八に、本来であれば厳しく追及されるべき経営者の責任が、事実上不問に付される可能性が高いことであります。
 第九に、本法案によって更生特例処理、保険業に基づく破綻処理、早期是正措置に加えて予定利率引き下げ手続を設けることになりますが、それぞれの関係、監督官庁としての金融庁の責務がますますあいまい、不明になるばかりで、到底国民のための制度づくりとは思えません。
 この四月からサラリーマンの医療費の自己負担が五割もアップするなど、小泉経済失政による国民負担の増大が国民生活を苦しめています。国民の将来設計に不可欠な生命保険を一方的にカットし、何の罪もない保険契約者に不利益を押しつける、まさに強きを助け弱きをくじく悪法の典型であります。
 私は、本法律案に強く反対することを申し上げ、討論を終わります。(拍手)
小坂委員長 達増拓也君。
達増委員 私は、自由党を代表して、保険業法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
 りそな銀行への公的資金注入を初めとして、我が国の金融システムが揺らぐ中、求められているのは、経営者、株主、行政それぞれの立場における責任の明確化です。それなくして公的資金を注入したり、一度決めた利率を安易に引き下げて、その場しのぎの解決法に終始するのでは、いつまでたっても真の金融システム安定にはつながりません。
 今回の保険業法の一部改正案による予定利率引き下げも、景気を下支えし、株価もそれなりに推移し、運用が見込まれれば、生命保険会社もここまでの悲鳴は叫ばなかったはずです。無責任な政策運営のツケ、無責任な監督行政のツケを、法的整理の前段階で予定利率を引き下げる不明朗な私的整理の道を使い、契約者である国民に負担をさせていると言わざるを得ません。しかも、契約者保護の名のもと、全体の利益という大義名分のもと、少数の契約者の自由意思を踏みにじり、ルールを途中で変更するというのは、近代デモクラシーの原則に反するのはもちろん、小泉総理の、信なくば立たずという座右の銘にも反するものであります。
 以下、反対する理由を申し述べます。
 反対の第一の理由は、監督官庁である金融庁及び政府の身勝手な政策判断でこの法案が成り立っていることです。予定利率引き下げ問題については、金融審議会分科会第二部会で、平成十三年における議論、さらに急ごしらえで法案作成を試みた今回でさえも、慎重、反対の意見が多くを占めています。役所の隠れみのと言われる審議会でさえ、予定利率引き下げには慎重に扱うべきとしています。それを軽視してまで法案提出に踏み切ったのであれば、相当の政治責任や行政責任を説明しなければならないのにもかかわらず、提出背景や金融政策全体との関係など、何ら明らかになっていません。
 反対の第二の理由は、自治的手続とは名ばかりで、実際には、民間契約変更が金融庁による監督指導体制で行われることです。本法案では、契約条件変更の申し出について、保険業の継続が困難となる蓋然性がある場合を条件にしていますが、保険会社の申し出、計画変更案の作成、決定も含めて、行政当局の承認が必要となっています。いわば厳正中立な判断を行政当局が行うということですが、その自信がどこにあるのでしょうか。りそな銀行の監査法人への行政介入を見れば、業の継続困難性、利率引き下げ計画などが、生保会社・契約者間の自治的判断ではなく、行政の恣意的な判断になることは明らかであります。
 反対の第三の理由は、この民間契約の変更に当たって、だれも責任をとる必要のない引き下げスキームとなっていることです。この法案は、いわば契約者の保険料を引き上げ、保険金額を削減しようとするものです。しかし、契約相手の生命保険会社の経営責任や、生保に出資している銀行などの責任は明確に問われていません。ましてや、早期是正措置などを通じて厳正にチェックし、それでもだめなら更生手続に移行するようにすべきであった監督官庁の責任も全く問われることがありません。
 デフレ長期化、史上最低の金利継続、株価低迷とそれによる保有株式評価損と逆ざやの発生、そうした金融を取り巻く危機的状況は小泉内閣の経済失政がもたらしていることは明らかです。抜本的な改革が求められているにもかかわらず、小手先、その場しのぎ、無責任な政策しか小泉内閣は打ち出していないことを強く申し上げ、私の反対討論を終わります。(拍手)
小坂委員長 佐々木憲昭君。
佐々木(憲)委員 私は、日本共産党を代表し、保険業法一部改正案に反対する討論を行います。
 本法案に反対する最大の理由は、いわゆる逆ざや問題を専ら契約者の犠牲によって解消しようとしているからであります。これは、契約者が受け取る保険金を大幅に削減するものであり、国民の生活設計を根本から狂わせるものであります。
 しかも、質疑の中で問題点が次々と浮き彫りになっているにもかかわらず、本日採決を強行することは、到底容認できません。
 新規契約が落ち込み、高い水準の解約が続いている生保業界にとって、今一番求められているのは、契約への信頼性を高めることであります。本法案によって破綻前の契約変更を認めることは、生保業界に対する不信感を広げ、保険業界をますます危うくするものであります。政策の方向が全く逆行していると言わざるを得ません。
 生保会社の経営を追い込んでいる最大の原因は、デフレを加速し、金融の機能不全を引き起こし、まともな資産運用を不可能にしている小泉内閣の経済大失政にあります。
 保険業界全体としては、本源的利益はプラスになっております。それを株価の下落が食いつぶしているのであります。本法案は、小泉内閣の経済政策の失敗を契約者にツケ回しするものにほかなりません。
 金融庁は、今回のスキームを自治的手続だなどと言いますけれども、実際には、行政命令による申請の促進、解約の停止命令などを盛り込み、予定利率引き下げを上から推進しようとしております。しかも、形骸化した総代会を会社の意思決定機関とし、異議申し立ての要件を厳格にするなど、契約者の意思を踏みにじるものになっています。これでは、とても自治的手続とは言えないものであります。
 さらに、本法案は、生保会社を破綻前に処理することにより、銀行が拠出した基金などの毀損を回避しようとするものであります。これは、本来銀行や受け皿会社が負担すべきコストを免れ、何の責任もない契約者だけに一方的に負担を押しつけながら、生保業界を整理再編するねらいを持つものであり、認められません。
 予定利率の引き下げについて検討した二年前の金融審議会は、国民・契約者の理解、すなわち社会的認知が制度導入の前提だと強調し、現時点では環境が整っていないと結論づけていました。
 この状況は、今日でも全く変わっておりません。世論調査では、予定利率の引き下げへの反対の声が過半数を超えています。五月の金融審議会でも、反対意見が多数であり、法案の内容についての合意は一切ありません。審議の中でも、政府は、社会的認知が得られた証拠を全く示すことができませんでした。
 にもかかわらず、あくまで法案を押し通そうという政府・与党の国民無視の乱暴な態度を厳しく批判し、反対討論といたします。(拍手)
小坂委員長 阿部知子君。
阿部委員 私は、社会民主党・市民連合を代表し、政府提出の保険業法の一部を改正する法律案に対して、反対の立場から討論を行います。
 本法案に関しましては、これまで当委員会で議論を行ってまいりましたが、我が党を初め野党委員から多くの質問、疑問に対し、政府は明確に答えようとせず、本当に不誠実な答弁を繰り返してまいりました。生命保険会社の経営が、とりわけ銀行との株式持ち合いによって危機的になりつつあることは既に明らかになっておりますが、こうした問題にメスを入れることなく、すべてを多くの国民・保険契約者に押しつけることを是認する本法案を是認することはできません。
 反対理由の第一は、本法案の提出をめぐる不明朗さです。一昨年の金融審議会第二分科会では委員の大半が反対ないし疑問を呈しており、さらに、その後のパブリックコメントでも圧倒的に反対の声が多いのです。政府が法案提出までに行う通常の手続さえもきちんと行っていないことは明らかです。にもかかわらず、政府は、社会的認知は得たと勝手に決めつけて、本法案を提案しました。本法案は、内容以前に、提出のプロセスに不明朗かつ不自然さが際立っているとしか言いようがありません。
 第二は、予定利率の引き下げは、生命保険会社が金融庁に契約条件の変更を届け、金融庁が審査した上で承認することになっていますが、申請要件になっている、契約条件の変更を行わなければ保険業の継続が困難となる蓋然性があるというのは、五年、十年の長期は当然ながら予測しがたく、正しく破綻の蓋然性を証明しようとすれば、限りなく破綻が間近でなければなりません。しかし、破綻が間近であれば、当然、再生特例法による破綻処理を行えばよいわけです。
 すなわち、そもそも、法が想定しているような、破綻する前に生保会社が予定利率を引き下げること自体が可能なのか、極めて疑わしいと言わざるを得ないのです。しかも、保険契約者の了解は異議申し立てのみであり、さらに、実際に予定利率の引き下げが申し出があり、承認されれば、解約が殺到する可能性も想定されます。そうなれば、申し出た生命保険会社の経営はさらに悪化し、場合によっては、この利率引き下げ後にも生保会社が破綻するようなことも起こり得ると思います。その場合は、どのような責任をだれがとるのでしょうか。
 第三は、保険契約者保護の視点が全く欠落していることです。契約変更に対する保険契約者の意思は、先ほど申しましたように、異議申し立てだけであり、それも、十分の一以上となっています。加えて、保険会社すらも本法案には内心反対、その思いを強くしています。しかしながら、大手各社は、この間の金融庁の介入行政になびき、逆に、予定利率の引き下げ制度を使うことはないと言明しながらも、本法案についての参考人意見では賛成の旨を述べられました。内心だれも賛成しない法案を強権的に政府の主導においてつくり上げていくといったこのような手法は、全く了解し得るものではありません。
 このように、小手先だけの予定利率の引き下げは、保険契約者のみならず、生保業界の抜本的再生のためにも反するものであることは明確と思います。現下の情勢において問われているのは、保険契約者の保護と生保業界の再生に向けた明確なビジョンを打ち出すことであります。また、そのことを通じて金融行政のあり方のさらなる透明性を強めることでもあります。
 そうした努力を一切せず、国民に負担のみを押しつける本法案は、最後に、私どもが到底承認し得ない、この後の採択も承認し得ないことを申し添えて、反対する討論を終わります。(拍手)
小坂委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
小坂委員長 これより採決に入ります。
 保険業法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
小坂委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小坂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
小坂委員長 次回は、明十一日水曜日午前九時四十分理事会、午前九時五十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後六時二十一分散会


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