衆議院

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第24号 平成15年6月27日(金曜日)

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平成十五年六月二十七日(金曜日)
    午前九時一分開議
 出席委員
   委員長 小坂 憲次君
   理事 金子 一義君 理事 七条  明君
   理事 砂田 圭佑君 理事 林田  彪君
   理事 生方 幸夫君 理事 松本 剛明君
   理事 上田  勇君 理事 中塚 一宏君
      荒巻 隆三君    上川 陽子君
      倉田 雅年君    小泉 龍司君
      左藤  章君    坂本 剛二君
      田中 和徳君    竹下  亘君
      竹本 直一君    中村正三郎君
      永岡 洋治君    萩山 教嚴君
      林 省之介君    増原 義剛君
      山本 明彦君    山本 幸三君
      五十嵐文彦君    井上 和雄君
      上田 清司君    小泉 俊明君
      佐藤 観樹君    仙谷 由人君
      中津川博郷君    永田 寿康君
      平岡 秀夫君    石井 啓一君
      遠藤 和良君    佐々木憲昭君
      吉井 英勝君    阿部 知子君
      植田 至紀君    江崎洋一郎君
    …………………………………
   議員           熊代 昭彦君
   議員           上田  勇君
   議員           江崎洋一郎君
   財務大臣         塩川正十郎君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     竹中 平蔵君
   内閣府副大臣       伊藤 達也君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   財務大臣政務官      田中 和徳君
   政府参考人
   (金融庁総務企画局長)  藤原  隆君
   政府参考人
   (金融庁監督局長)    五味 廣文君
   政府参考人
   (財務省大臣官房総括審議
   官)           津田 廣喜君
   参考人
   (日本銀行総裁)     福井 俊彦君
   財務金融委員会専門員   白須 光美君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月二十七日
 辞任         補欠選任
  上川 陽子君     左藤  章君
  竹本 直一君     荒巻 隆三君
同日
 辞任         補欠選任
  荒巻 隆三君     竹本 直一君
  左藤  章君     上川 陽子君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律の一部を改正する法律案(熊代昭彦君外三名提出、衆法第二八号)


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     ――――◇―――――
小坂委員長 これより会議を開きます。
 熊代昭彦君外三名提出、銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁福井俊彦君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として金融庁総務企画局長藤原隆君、金融庁監督局長五味廣文君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小坂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
小坂委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。生方幸夫君。
生方委員 おはようございます。民主党の生方でございます。
 まず、提出者にお伺いしたいんですが、この法案は、当初は閣法として提出をされ、昨年の十二月に衆法として一回改正がなされ、また今回改正ということになっているんですが、今回改正案を出された最も大きな理由から御説明をいただきたいと思います。
熊代議員 お答え申し上げます。
 現在、かなり厳しいデフレスパイラルの兆候がある。そういうような状況の中で、与党三党で、この三月の二十四日に緊急金融対応策を取りまとめました。さらに、五月八日に、当面講ずべき緊急対策としまして、当面の緊急金融・経済対策を取りまとめたところであります。
 その中で、銀行の保有株式の市場への放出が株価の下げ圧力となっている見方がある、そういうことを踏まえまして、加えて、新BIS規制が二年延期されたということもございまして、保有制限の施行を二年延期する、それから、銀行等保有株式取得機構の利用拡大を促すために、その機能の拡大を図るということを決定されましたので、議員提案として出させていただくということでございました。
 法律は、御承知のように、必ず立法府が定めるものでありますから、議員立法などという妙な言葉もございますけれども、内閣提案であり議員提案ということでございますので、我々の問題意識からしまして、この法律と現在の状況を見まして、議員提案として出させていただいたわけでございます。
生方委員 大臣がきょう、五十分で退出されるということでございますので、提出者の方には後ほど聞かせていただきます。
 まず、竹中大臣にお伺いしたいんですが、今度の法律そのものが、一番最初にできたときに、八%の拠出金というのがあって、これはなかなか機能しないのではないかというのはこの委員会でも論議したわけですね。だから、当初から、今回の八%の拠出金云々という問題はもともとあったわけですね。それから事業会社の株を買えないというようなことも、当初からいろいろ問題があった。それに関連して昨年改正をして、また今回改正をするということは、そもそも閣法として出したこの法案そのものが、最初に欠陥があったんじゃないか。最初からこういう欠陥をちゃんと克服しておけば、二度も三度もこんな審議をする必要はないわけですよ。これは、だから金融庁の方の当初の案がおかしかったんじゃないですか、いかがですか。
竹中国務大臣 生方委員御指摘のとおり、閣法で出して、その後、今回を含めて二度、議員立法という形で改正の御議論をいただいているということであります。
 この間の経緯、日本の経済にもいろいろなことがございました。我々としては、一方で、例えばですけれども、八%の拠出金いかんに関しましては、これはやはり国民負担との考えもあるだろうということで当初の設計をいたしました。しかし同時に、実際にこの機構の活用をしていく中で、ここはやはり使いづらい部分なのではないかというような議論がいろいろ出てきたのも事実だと思います。その意味では、この間に、さらに日銀の方でも、これの補完的なような政策を準備してくださった。経済の状況が変わり、さらには政策の枠組みも進化する中で、この使いづらい部分が少し目立ってきたというのが現状なのではないかと思っております。
 そうした意味で、今回、先ほど熊代議員が御答弁されましたように、与党の方でまさに大所高所から、ことしの三月、ことしの五月、それぞれ非常に建設的な議論をいただいて今回の提出になったというふうに承知をしております。
生方委員 使いづらい部分というのは最初から予想されたわけで、まず最初に何となくぼやっとしたものを出して、修正をして修正をするということは、最初の案がおかしいということで、これはやはり金融庁の責任じゃないですか。それで、その次の改正もきちんと金融庁の責任で出すんならいいですけれども、次の改正からは今度は議員立法という形で、いわば議員に責任を押しつけるような格好で改正をするというやり方が私はおかしいと思うんですよ。
 当初から使えないのはわかっていて、実績を見ても、最初の二カ月間だけある程度の実績があって、その後はずっと、もうほとんど機能しなくなっているわけですね。こんなことはわかり切っているわけですから。当初から、拠出金をなくすというのであれば、国民負担をどういうふうに考えるのかということを考えていればいいのに、当初は拠出金を出しておきながら、今度はなくすというのは、最初からもともとなくす考えがあったのかなかったのかということも含めて、わからないじゃないですか、それじゃ。
 最初から、出すとき、きちんと精査をして出していただかないと、こんな、二度も三度も同じ法案を一年足らずのうちに改正改正で審議すること自体が時間のむだだし、法律の機能からいっても、最初からきちんと機能するものを提出する必要が金融庁にあるんじゃないですか、いかがでございますか。
竹中国務大臣 これまでの議論の中で、国民負担をどのように考えるかというのは、与野党通してさまざまな御意見があったというふうに承知をしております。最終的な国民負担がどのようになるのかということに関して、これはやはり十分な配慮が私は必要であるというふうに思いますし、そうした観点からこの八%の拠出金の議論は出てきたのだというふうに承知をしています。
 先ほど申し上げましたように、しかしその後、日本銀行の方でも、補完的な、もちろん法律のつくりないしは目的は同じではないわけでありますけれども、まさに今の日本経済、特に株式市場の状況にかんがみて、補完的な政策の枠組みを提供してくださった。そうした中で、より柔軟に、よりその時々の状況に適切に対応するために、まさに大所高所から与党の方で今回の御議論をいただいているわけでありまして、我々としては、そうした与党側の建設的な議論には敬意を表している次第であります。
 いずれにしましても、この国民負担の問題、それと、一方で、やはり使い勝手がいいようなシステム、それの模索を我々もしているつもりでありますし、与党の方でもそうした観点から御議論をいただいているというふうに承知をしています。
生方委員 拠出金の話は後でいたしますが、私が言っているのは、最初から欠陥ある法案を出すべきじゃないということを言っているんですよ。二度も三度も改正しなきゃいけないような法案だったら、それは金融庁が出した最初の法案がおかしかったという反省をきちんとしてくれということを言っているのであって、反省しなければ、二度あることは三度あるで、また近いうちにこれは変えるのかという話にもなりますわね。例えば、今BBBマイナス以下の株を買えないことになっていますけれども、これもだめだから将来的に変えようなんということになるんじゃないかというふうに我々は不信を持つわけですよ。
 もともと、法律を出すんなら、完璧なものを出す努力をするのは当たり前でしょう。そうした反省があるのかどうかということを伺っているんですよ、いかがですか。
竹中国務大臣 当初から、さまざまな要因を織り込んで、完璧な法律を出す努力をすべきだ、これはもう、委員の御指摘はそのとおりであろうかと思います。
 しかし、先ほど申し上げましたように、今回、この間に、持ち株解消等々に向けた売り圧力、その需給関係が市場を、価格形成をゆがめているのではないだろうか、そういった懸念が当初予想されたより強くなったというようなこと、それと、繰り返しになりますが、日本銀行の方でそうした補完的な仕組みも用意してくださって、それとの相対的な関係もあって、やはり使いづらさが目立ってきたという経緯があったのだと思います。
 委員の御指摘は、そういうことは当初から見越せなかったのか、そのようなことだと思います。当初からそういったさまざまな動きが見越せれば、それにこしたことはなかったのだというふうに思いますが、当時の閣法提出の時点では、それなりの合理的な判断のもとに提出がなされたというふうに思っております。
生方委員 今の答弁にもありましたけれども、やはりそれは金融庁の見通しの甘さなんですよ。見通しが当初からおかしいからこんな法案を出さなきゃいけなくて、二度も三度も変えなきゃいかぬということになるわけでしょう。それをきちんと反省してもらわなきゃ困りますよ。
 一昨日、質問の準備がありますので、この機構の決算書を見せてほしいと金融庁の方に言ったら、金融庁は、まだそれは出されていないという返事だったんですね。調べてみたら、機構法の四十七条には、事業年度終了後三カ月以内に内閣総理大臣に決算報告をしなければいけないことになっているという規定がございまして、今月末ですから、そんなもの出ていないのはおかしいじゃないかというふうに考えていたら、今度は、きのうになって急に、もう既に機構の方から決算書が出ているという話が来た。これは一体どういう意味なんですか。大臣が見たのはいつ見たんですか、この決算書は。
竹中国務大臣 今委員御指摘くださいましたように、株式保有制限法の四十七条の規定があります。この四十七条の規定では、機構は、毎事業年度、通常総会の承認を受けた財務諸表等を、当該事業年度の終了後三カ月以内に内閣総理大臣及び財務大臣に提出して、その承認を受けなければいけない、さらに、承認を受けた後、機構は、遅滞なく財務諸表等を官報に公告し、かつ、機構の事業所に据え置いて一般の閲覧に供しなければならないというふうになっているところであります。
 先生の方から情報の開示を求められた六月十七日の時点において、上記の手続が終了していなかったということで、財務諸表等に関する情報を御提示することができなかったというふうに聞いております。これは、先ほど言いましたような一連の手続が、公告、事業所に据え置いて一般の閲覧に供する、そういう手続が六月中には終わらないかもしれないというような趣旨の御返事をさせていただいたようでございますが、これについては六月二十六日に承認の決裁を完了しております。
 我々としても、今回このような御審議をいただくに当たって、提出されてから、できるだけ急いでこの処理をしたい、承認をしたい、金融庁及び財務省における決裁を完了したいということで急がせておりまして、私も一昨日、この財務諸表に目を通す機会がございました。
 この過程で、先生に対する御説明が必ずしも十分ではなかった点があったのかもしれません。その点がもしありましたら、おわびを申し上げたいと思います。
 いずれにしても、一般の閲覧に供するという手続まで含めて、少し時間がかかるというようなことを担当の方は言いたかったようでありますが、今申し上げたような経緯で、私自身は一昨日にそのことを確認して、それで二十六日に決裁を完了しております。
生方委員 私が決算書を出してくれと言わなきゃ、大臣も見なかったんじゃないですか。だって、最初ないと、来ていないと言ったんですから。来ていないということ自体がおかしいじゃないですか。
 担当の方を私はレクと質問取りで呼んで、まず決算書を見なきゃこれは話にならないから、決算書を見せてくれ、普通の会社だって三月に締め切れば二カ月ぐらいで出るのは当たり前なのに、まだ出ていないのかと言ったら、いや、向こうから来ていないんですという話だったんですよ。来ていないのを大臣が見ているわけないんだから。それで、向こうが慌てて何か調べたら、きっとどこかの机の上か何かに置いてあったんじゃないですか。そういうずさんな管理をしているんじゃないですか。おかしいじゃないですか。
 大体、こんな重要な問題、これから後で質問しますけれども、大臣だってどういう決算内容になっているのかというのは関心を持って見守っていなきゃいかぬでしょう。それが、我々の方から決算書はどうなっているんだという質問が出て初めて大臣が見る、慌ててきのうになって内閣総理大臣にそれを提出するという手続をすること自体が、管理責任が非常にあいまいだというふうに思わざるを得ないですけれども、いかがでございますか。
竹中国務大臣 繰り返しになりますが、担当の方で、先生の方にどのような、来ていないというふうなことをもし申し上げたとしたら、これは本当に何かの行き違いであったのだと思います。
 これはまさに、委員言われたように、決算、大変重要だと思っています。したがって、私の方にも必ず上がるようにしておりまして、一昨日、私はその決算について目を通す機会を得ております。
 さかのぼって申し上げますと、十四年度決算の通常総会は六月十三日にありました。財務省と金融庁への決算書の提出、六月十三日に行われております。それで、金融庁及び財務省における決裁の完了は六月二十六日でございます。この間においては、まさに委員言われたように、これは大変重要な決算書であり、かつ、こうした重要な法案を御審議いただくということで、我々としても、急いでその決裁を完了するようにということで、事務方にも努力をさせたわけでございます。
 繰り返しになりますが、来ていないというようなやりとりがもしあったとしましたら、これは何かの行き違いで、しっかりと、どういうことだったのか、私も担当者には確認したいと思いますが、今申し上げたような形で、我々としてもこの決算を重視して、しっかりと対応しているつもりでございます。
生方委員 今の確認ですけれども、十三日に来たということでいいんですか、決算書は。
竹中国務大臣 六月の十三日に通常総会における承認を得て、機構から、その六月十三日に金融庁及び財務省への決算書の提出が行われております。
生方委員 ということは、大臣は、十三日に来てから、きのう見るまで見ていなかったということですね、十何日間か。これはこういうものなんですか。
 私が大臣だったら、こういう法案も出るし、どういう決算内容だったのかというのは気になるはずで、来たらすぐ見るというのが私は普通だと思うんですけれども、せめて二、三日後に見るというのが普通だと思うんですけれども、十日以上も放置していたということは、だからその書類の管理がずさんだったということの証明じゃないですか。それじゃなきゃ、普通、大臣としたら、いや、私わかりませんが、大臣もいろいろなお仕事があるでしょうからわかりませんけれども、十三日から、見たのが一昨日ということで、遅いというふうには思いませんか。それぐらいが当然だというふうにお思いになりますか。
竹中国務大臣 私のところに上がってきたのは、一昨日ですから、二十五日でございます。それを踏まえて、昨日、決裁の完了をしているわけですが、これをどうしてもっと早く見なかったのだという御指摘に対しては、もっと早く見る機会があればよかったというふうに素直に思います。
 しかしながら、そもそもこれは組織として、局長を経て、長官を経て、大臣のところに上がってくるまでいろいろなプロセスがございます。ましてや、向こうから出てきたものについては、我々としてはそれを精査する時間が要るということもございます。御承知のように、金融庁として今物すごくたくさんの事務を抱えておりまして、担当者としてもなかなか大変な中でこの作業をしているという面も、これは一面としてはぜひ御理解を賜りたいと思います。
 いずれにしても、大事であるということは我々としては十分に認識をしておりますので、その業務をできるだけ円滑に遂行するように引き続きぜひ努力をしたいと思います。
生方委員 この問題ばかり長くやっているわけにはいかないですけれども、どう考えても、普通に考えれば、十三日に来ていたのが放置をされていた、私の方から決算書どうなっているんだと言ったので、慌てて、決算書か、ああ、ここにあったというので、大臣に持っていったというふうにしか考えられないですよ。だって、私が一昨日言っているわけですから、決算書どうなっているんですかと。そのときにないと言ったんですから。それで、急遽大臣に持っていって、きのうはありましたという話になっているんですからね。だって、十三日に来ているのが、担当者が私のところへ来て、この法案がかかっているのに、決算書来ていないという話になるわけないじゃないですか。
 どういう書類の管理をしているんですか、一体。十何日間か大臣に見せないで、放置して、その書類がずさんに管理されていたということですからね。これはやはり管理体制の問題ですよ。きちんと大臣が掌握していないからこういうことになっちゃうんですよ。これはもっときちんと調査をして、一体、書類が十三日にどこへ来て、その後どういう扱いになっていたのか調べるべきですよ。私には少なくとも来ていないという返事だったんですから、その担当者は。お調べになることをちゃんと確約してください。
竹中国務大臣 十三日に金融庁の方に届いて、それで、この決算について、それを精査しなければいけません。その時間は当然に要るわけでありまして、そうしたことを考えますと、私のところに上がってきたのに十日ないしは十二日、それは、通常の業務から考えて、異常に例えばそれが放置されていたというふうにはちょっと私は判断されないと思います。
 ただ、先生がおっしゃる決算書はないというふうなこと、これがもし本当であれば、これは本当に何かの行き違いであったんだと思います。
 私としましては、きちっとそれが、まあ、十日ぐらいのペースでございますから、日常の非常に多量な仕事の中で、決してこれは放置されたということではなくて、精査の上、各課長、局長、長官を経て私のところに上がってきた。これはやむを得ない時間のペースではないかというふうに思っておりますが、その決算書がないというようなことに行き違いがあったのかどうか、これについては、ぜひ私の方でも確認をさせていただきたいと思います。
生方委員 私のところへ一人の人が来て、ないと言ったんならともかく、複数の人間が来ているわけですよ。複数の人間がないと言っているんですよ。それで、調べて、その日のうちに返事が来なかったということは、ないと言って、もしあったんなら、戻って、ああ、ありましたと返事がすぐ来るでしょう。一日たってから来ているんですよ。おかしいと思わないですか。
 いや、もうこれ以上この問題を言ってもしようがないから、私は調べてくれと言っているんであって、私がおととい言って、ないと言って、戻ったらあったというんなら、本来すぐ、ありましたと返事が来るでしょう。きのうになって来ているんですよ、きのうになって。おかしいですよ、そんなことは、どう考えたって。あなたはそれにいろいろ言いわけするけれども、きちんと調べなきゃ。ちゃんとした情報がスムーズに大臣のところへ伝わっていなければ、適切な判断で適切な施策が打てないじゃないですか。それを言っているんですよ。
 それは、十日や十何日かかる部分もあるでしょうし、必要な部分だったらもっと先に見るという判断だってあるし、それも重要ですよ。大臣にどういう資料を何番目の順番で見せるのかということだって行政の大事な仕事ですよ。それがずっと何日も放置されてきたということになれば、それは問題だから私は言っているんであって、返事は、ないというふうに確かに言ったんだから。それで、来たのはきのうなんですからね。おかしいんですよ、確かに。
 だから、それは調べていただく。ここで幾ら私と竹中さんでやりとりしたって、これはわかる問題じゃないですから、竹中さんにきちんと調べてもらって、適切だったかどうかということを後日また御報告いただきますようにお願いを申し上げます。
 それで、決算書の内容でございますが、三月末の時点で機構が買った取得価額が二千百三十五億円で、期末の時価、三月末の時価が千七百八十五億円で、この時点で既に三百五十億円の含み損が発生しているわけです。いわば債務超過の状態になっているわけですね。これに対し、当初拠出金が百七億円あって、売却時拠出金が百七十五億円、計二百八十二億円が機構が用意をしている金額ですから、三月末の時点で全部を売り払うとすると、既に六十八億円の国民負担が生じているということになります。
 今度の法案は、この拠出金をゼロにしようという法案ですから、ただでさえ、今の時点で六十八億円の国民負担が生じているわけですから、これから先、またさらに株を買い続けていくということになれば、国民負担がさらにふえる可能性があるところで、何でこの拠出金をゼロにしなきゃいけないんだろうか。もともとの状況でいえば、国民に負担をかけないということであれば、拠出金の額をふやす方が当然じゃないですか。もう既に六十八億円が国民負担になっているんですから。それが、全く逆行する法案を出すということは、国民にさらにこれ以上の負担を押しつけてもいいというふうに金融担当大臣はお考えになっているんですか。
竹中国務大臣 今、生方委員から評価損についての御指摘がございました。
 ただ、こういう機構を大変私は評価が難しいと思いますのは、基本的には、株式を買って、それをバランスシートに計上するわけですから、まあ、バランスシートは、ある意味で、全部ではありませんが、そのほとんどがいわば株式資産の塊みたいな、そういう資産項目になります。したがって、株価が日々変動する以上、含み益が生じたり含み損が発生したり、毎日そういう宿命を負っている機関であるという点がやはり重要な点だと思います。三月三十一日での評価損についての言及がございましたが、含み益でいうならば、例えばきょうの時点でやってみると、これはかなり違う数字が出てくるということになります。そういう観点からいいますと、含み損だけで議論をするということは、場合によってはやはりミスリーディングであるのだろう、こう思っております。
 しかし、我々としては、国民負担を大きくしてはいけない、これはそのとおりであろうかと思います。今回の法案では、その意味では、この存続期間を延長するという形で、より長い期間で、期間が長くなれば、含み損が発生する可能性も含み益が発生する可能性も、それだけ可能性としては高まるわけでありまして、有利な環境下で株式の放出ができるということを可能にして、それでもって国民負担の軽減を図ろうというような仕組みが今回の議員立法の法案の中には取り込まれているというふうに考えております。
 今申し上げましたように、株式保有機構という、バランスシートが株式の塊になるような基本的な性格、それと、今申し上げた、期間を延長することによって国民負担の軽減を図るという仕組み、それをあわせて御理解を賜りたいというふうに思っております。
生方委員 株は日々動くわけですから、今たまたま上がってきていますから、この数字もきっと、違うことは違うと思いますけれども、また将来、これはもちろん下がるかもしれないわけで、我々としては、国民負担をゼロにするというのが当然の話なんですね。
 財務大臣にお伺いしたいんですけれども、私、ここで質問したとき、二年ぐらい拠出金をゼロにしてもいいんじゃないかというような財務大臣の答弁が多分あったというふうに思うんですけれども、当初は、期間を二年とか三年に限ろうとか、八%を四%にしようとか、いろいろな案があったと思うんですね。
 それが、拠出金を出さない期間が、いわば終わりまでずっと拠出金を出さないというふうに変わって、八%を四%にしようなんという案も全部すっ飛んじゃって、ゼロにしようというふうになっちゃったんですけれども、間っこというのは考えられなかったんでしょうか、財務大臣。
塩川国務大臣 私は、あのときの答弁では、まずは、とりあえずこの機構が機能を発揮しやすいように、つまり銀行がこれに乗ってきやすいようなことを考えにゃいかぬというので、したがって八%という拠出金は銀行側にとっては相当な負担ではないかということを申し上げておったと思っております。その緩和策の一つとして、一時的な措置として二年あるいは三年の間ということを申し上げたと私は思っておりますが、現在でもそういう気持ちは変わっておりません。
 要するに、これは長い期間をかけて処理しなければならぬ問題でございますので、先ほど竹中大臣の答弁の中にございましたように、毎日毎日の決算をしていくという性質のものじゃございませんので、そういう長い目で見るならば、私は、こういう臨時的な措置も講じていいのではないかと思っております。
生方委員 国民負担をできるだけ少なくしながら機構をスムーズに運営させるという点から考えると、私は、当初拠出金が百七億円ですね、この当初拠出金を三倍ぐらいまでに積み上げる、そのかわり八%はなくすというような措置だってあっていいと思うんですね。
 これは当初拠出金ですから、最後に清算したときに株価が上がっていれば、出資した人に戻ってくるわけです。そのかわり、三百億円あれば、三百億円まで仮に損失が出たとしても、それは国民負担にならない。銀行にとってみても、資本金として上増した部分であれば、拠出金を八%ずつ一々払うということになればこれは足かせになるけれども、当初のお金を少し多目に積み増しておくということの措置をすれば、国民だって多少の納得はあると思うんですけれども、財務大臣、いかがでございましょうか。
塩川国務大臣 いろいろなことは理論的にあろうと思いますけれども、当面、とりあえず、発足しまして一年ちょっとのことでございますし、まあ、これを十年の保有期間というもので切る、さらに今回、期間を五年延長しようというような構想も実は法案に盛られておりますので、もう少し長い目でもって見ていただいて、十分な機能を発揮するような運用をさすようにしていただいたら結構かと思っております。
生方委員 日銀総裁にお伺いしたいんですが、日銀が株の買い取りを始めて、株式取得機構の実績というのが、日銀が始めたのが十四年の十月ですね、だから、十月は取得機構はゼロになっちゃうんですね。ゼロになって、翌月は三億円という格好で、ことしの三月期末には四百十四億円と非常に多かったですけれども、日銀とこれがいわば競合しているという格好になっている。
 日銀さんの場合はティア1までしか株は買わないということになっていますが、取得機構の場合はティア1を下回った部分でも買っていいということになっている。日銀さんがティア1以下の株は買わないというふうにしているその理由は何なのかということをまずお伺いしたいと思います。
福井参考人 お答え申し上げます。
 日本銀行が銀行保有株式の買い入れを開始いたしましたのは、おっしゃるとおり昨年の秋で、厳密には十一月からでございますが、基本的な判断は、日本の金融と経済の基盤が引き続き脆弱である、株式市場から生じてくるショックが銀行経営に強い影響を及ぼして、金融システムに不安感をもたらすリスクが非常に高いということで、緊急対応として、中央銀行としては非常に例外的な措置として踏み切ったということでございます。
 したがいまして、例外的と申します意味は、中央銀行として過大なリスクはとることができない、日本銀行の財務基盤に厳しいひび割れを起こしてまでこういう措置はできないということでございますので、法律で銀行が強制されているティア1相当額を超える部分の売却と、これに伴うショックをとりあえず急いで吸収するというところに的を絞ったという意味で、ティア1を超える部分ということに絞らせていただいたわけでございます。
生方委員 既に大手四銀行グループのうち、今、グループとしては三グループまではティア1の範囲内まで株の所有が減少してきていますよね。一行だけが残っているということが大手の四グループではあるということなんですが、これでいくと、さらに一兆円も積み増す必要があるのかどうかということと、さらに取得機構の方で、こういった形で新たにまた株を買い取る仕組みを拡大する必要があるのかどうかというのはちょっと疑問に思うんですが、その辺はいかがなんでございましょうか。
福井参考人 日本銀行が買い入れ限度枠というものを二兆円から三兆円に拡大いたしましたのは三月末でございますが、その時点に立って考えますと、ティア1を超える銀行の保有株が二兆円を上回っていたということでありまして、日本銀行の買い入れ余裕枠との対比では、まだ銀行がたくさん持っているという感じが少しございましたのと、当時の株式市場の動き、イラクとの戦いが始まった後でございまして、非常に不安定な状況にありました。
 したがいまして、ショックを早く十分に吸収する、場合によってはティア1を超える部分はすべて日本銀行に吸収できるだけ我々の受け皿を大きく広げようという趣旨で、三兆円まで拡大したということでございます。
生方委員 ちょっとそもそも論をお伺いしたいんですけれども、日本の場合は、ティア1を超えて所有しないようにするというのが二年間延長されましたから、最終的に二〇〇六年までに達成するということになっていますが、ほかの国の例を見ますと、御承知のように、ドイツやフランスではティア1の六割以内というふうにしている。アメリカはグラス・スティーガル法があるのでもともとゼロなんですけれども、持ち株会社は大体三割ぐらいまでは持っていいことになっている。イギリスは慣例法で、法律的にはないけれども、持たないことになっているということがございます。
 そうすると、大体、ティア1の何割まで持っていれば適正であるというふうにお考えになるか。日銀総裁だったら、何割までだったら、例えば五割までならいいとか六割まではいいとか、今のティア1まで持っているなら別に大丈夫だとか、その辺はどういうお考えをお持ちでしょうか。
福井参考人 ティア1相当額を超える部分を早く解消させようという法律の趣旨は、とにかく緊急的に急いで、限界的にリスクが大きく及ぶ部分を早く摘み取ろうという趣旨であろうと私ども理解しております。
 これから先の日本の市場経済の行き着く姿を想定いたしますと、恐らく株式の持ち合いというのはどんどん解消される方向でしょう。そして、金融機関のバランスシートの観点からいきますと、株式を保有していることに伴う価格変動リスク、それをこうむる度合いというのはやはり少なければ少ないほどいいんだろうというふうに考えています。
 したがって、ティア1に対して何掛けがいいか、そういうふうに数字で具体的に申し上げることは非常に難しいんですが、私は、なるべく少ない方がいい、できれば株式保有はないぐらいにまで極端に解消されていくのが望ましいというふうに思っています。
生方委員 同じ質問を金融担当大臣、いかがでございましょうか。
竹中国務大臣 基本的には福井総裁と同様の考えを持っております。当面はティア1の範囲に抑えるということ、ティア1の一〇〇%ということを当面の政策目標とすべきであるというふうに思います。
 この議論の本質は、株価の変動の結果、それが銀行の貸し出し姿勢に反映して、銀行の貸し出し政策がいわばプロサイクリカルといいますか、景気のいいときには拡大、景気の悪いときには縮小というような効果を持っているという面がある。さらには、銀行の財務そのものを傷つける可能性もある。その意味では、私は、やはり極力減らしていくというような努力が当面の政策目標の次に求められるべきであろう。したがいまして、私自身も福井総裁とほぼ同様の考えを持っております。
生方委員 これは法的に縛るということではないんでしょうけれども、ゼロがいいですか、二、三割までならいいというか、どちらでございましょうか。
竹中国務大臣 それは、ちょっと一義的に今の時点で申し上げるのは難しいというのは御理解をいただけると思います。
 ただ、当面ティア1の一〇〇%を目指して、その後もそれを極力減らして、先ほど申し上げましたような、銀行経営上のリスクを回避していく。それは同時に、日本経済のマクロ的なリスクを軽減していくことにもなる。方向の問題としてそのように考えております。
生方委員 私も、一たんはゼロにまでして、それから先、やはり運用という点で株は重要ですから、それは各自銀行の判断で株をどのぐらいふやすのかというのは必要だと思うんですけれども、とりあえず、今の金融システムの不安を解消するためには、一たんゼロにするというぐらいの思い切った措置をした方がいいと思うんですね。その後、別に法律で縛る必要はないですけれども、あとは銀行の各自の判断で、自信があるところは株を持っていっぱい運用すればいいわけで、そういうふうにするべきではないかなと。ただ、それを全部買い取るということになると、もっとお金が必要になるかもしれないので、その辺は難しい問題があるというふうに思います。
 次に移らせていただきます。
 今の株のリスクウエートは一〇〇%というふうになっておりますが、これは新BIS規制でも将来的にも一〇〇%のままなんでしょうか、それとも変わるのでございましょうか。ちょっと教えていただきたいんです。
伊藤副大臣 お答えさせていただきたいと思います。
 見直し後のBIS規制案では、銀行は銀行の保有株式のリスクウエートについて、内部格付手法と標準的手法のうちから、みずからに適した手法を選択することとなると思います。
 まず、主要行等が採用すると見込まれる内部格付手法においては、発行体の信用リスクの把握に重点を置いた方式と、そして価格変動リスクを中心に把握する方式の選択制としつつ、既存の保有株については、最終案の合意後から十年間の標準的手法の適用を認める方向となっております。
 他方、地銀等が採用すると見込まれる標準的手法においては、銀行の保有株式のリスクウエートについては、現在のところ、現行規制と同様一〇〇%とされているところでございます。
 いずれにいたしましても、新BIS規制における銀行の保有株式の取り扱いについては、今後、市中からのコメント等を踏まえながら、年内の最終合意に向けて検討が進められることになります。
生方委員 株の保有リスクもさることながら、国債の保有にももちろん当然リスクがあるわけですね。現在、金融機関が保有している株の保有額と国債の保有額は幾らになっているか、教えていただけますか。
伊藤副大臣 済みません、資料に手間取りまして。
 今、株式等の保有額が十五年三月期で約二十兆ということになりまして、国債の保有額が十五年四月期で八十四兆円強ということになります。
生方委員 最近、長期金利が暴騰するという話があって、そのときに国債は暴落をしたわけです。国債も必ずしもリスクがゼロというわけじゃないわけで、今の数値を見ますと、大体株の四倍保有しているわけですね、国債を。大量の国債を金融機関が保有しているわけで、国債を保有しているリスクというのはどのようにヘッジすればいいというふうにお考えになっているんでしょうか。
伊藤副大臣 今お答えさせていただきましたように、銀行が大量な国債を保有しておるわけでありますが、各銀行がその資産内容、ポートフォリオをどのように構成するか、このことについては、その時々の経済情勢を踏まえて、みずからの経営判断によって決定されるものだというふうに思っております。その際に、委員御指摘のように、国債の投資にかかわる市場リスク、金利リスクについては、各銀行でリスク量の定量的な計測、把握を行うなどによって、適切なリスク管理に努めていくものだというふうに承知をいたしているところでございます。
 いずれにいたしましても、私どもといたしましては、各銀行によるリスク量の定量的な分析結果の把握やヒアリングを通じて、また市場の金利の動向を注視しながら、各銀行の健全性の確保に向けて一層の努力に努めてまいりたいというふうに考えております。
生方委員 これは、国債の保有に関しては何の規制ももちろんないわけですね。国はどんどん国債を発行しているわけですから、銀行に片方ではどんどん買い取ってもらわなきゃ困るという事情はあるにはあるんでしょうけれども、国債の暴落のリスクというのはいつもあるわけですよね。
 そうなりますと、株の方はリスクが大きいから、取得機構やら何やらつくって、日銀さんやら何やらにどんどん買い取っていく、一方で、暴落のリスクもある国債をどんどん買わせるというんじゃ、銀行総体のリスクとしては余り変わらなくなっちゃうんじゃないか。国債のリスクは全部銀行さんの独自の判断でやってくださいと言っておきながら、株の方のリスクは一生懸命国がいろいろな機構をつくって買いますというんでは、ちょっと何か矛盾しているんじゃないかというふうに思うんです。
 国債のリスクをどのように減らすのか、それについて、やはり国が責任を持たなきゃいけないと思うんですけれども、これは財務大臣にお聞きしたらよろしいんでしょうか。大変な額の所有をお願いしているわけですから、これは長期金利が暴騰する可能性だってもちろん将来的にはあるわけですから、国債が下がってしまえば、せっかく銀行に買ってもらって、銀行が株がなくなって健全になったと思っても、大量に買っていた国債が暴落してしまえば、またぞろ金融システムの危機ということが言われるようになってしまうかもしれないということで、国債の暴落を防ぐためには、政府はどのようなことをお考えになっているのかということを財務大臣にお伺いしたいと思います。
塩川国務大臣 国債にいたしましても、それから株式でも、要するに証券、こういうようなものは今完全に市場操作で動いておりまして、余り人工的に手を加えることはかえってゆがめてしまう、効果をゆがめてしまうと思っております。
 国債につきましては、先ほど伊藤副大臣が言いましたように、金融機関それぞれの判断においてリスクの回避をやっておるわけです。現に、ちょうど一週間ほど前でございましたでしょうか、急に長期金利が上がった現象がございますね。あれは何かといったら、やはり、長期国債を、リスク回避のために銀行が、何か偶然でございましたけれども、売りに出たということが長期金利を上げた一つの原因であった。ああいう操作が銀行の自由判断のもとに行われておる。
 私どもの方は、あれに対しまして、十分な監視はしておりますけれども、あのこと自体に対して一々コメントしたり、あるいはその成り行きについて指導するとか、そういうことは一切やっておりませんで、市場の連動に任せておるということでございます。そういうことの繰り返しの中に、銀行自身がリスクを回避する方法を着実にとっておるように思っておりますので、株式とちょっと違うなという状況で私は判断しております。
生方委員 これは、財務大臣としては言いづらいんでしょうけれども、どれぐらいまで保有しても大丈夫だというふうにお考えになっているんですか。無限に保有してもいいというふうにお考えになっているんですか、それとも。
 幾ら国債とはいえ、今もう八十四兆円にもなっていますから、百兆も二百兆も銀行が、国債を保有しても大した運用にはならないわけで、本来はこれは企業に回って、きちんと企業がそれ以上のお金を稼いでくれるというふうに回らなきゃいけないわけで、銀行が国債だけ保有しているんじゃ、私は困った状況だというふうに思うんです。
 さはさりながら、一方で、国は借金がたくさんあるわけですから、国債を発行しなきゃいけないという事情もわかるんですけれども、適正な所有額というのがあるのかどうかわかりませんが、その辺も含めていかがでございましょうか。
塩川国務大臣 現在、国債が余りにも投資機関に保有をお願いしておるということは、これは私としてはちょっと、もっと多様化した方がいいんじゃないか。
 つまり、国民自身、個人がもう少し持ってくれれば一番いいと思っておりますが、現在、国民の国債保有額はたしか二・四%ぐらいだと思っておりまして、これをもう少し投資対象として国民も考えてくれたらいいと思っております。国債を持つということは何か国策に協力してくれというような義務的な観念を持って見られるということではなしに、そうではございませんで、銀行貯金に比べたら有利だという、要するに貯蓄の一形態だということを見てくれてもいいんじゃないかと思っておりまして、個人の消化に努めております。幸い、郵便局で窓口を開きましたところ、割と好評であるということで、このことを続けていきたいと思っております。
生方委員 私は、銀行が大量に国債を保有し続けるのは、金融の健全性という意味からも余り適当だというふうに思わないので、やはり、金融機関は広く集めたお金を企業に貸して、企業が金利以上のお金を稼いでくれるというんじゃなきゃ意味がないわけで、リスクが少ないかわりにリターンももちろん少ないわけですから、そういうものだけを大量に保有している消極的な姿勢では、なかなか金融機関が本来の機能を果たすというところにまで至らないと思いますので、その辺も御考慮の上金融政策をとっていただきたいというふうに思います。
 それからもう一点お伺いしたいんですが、大臣はあと二、三分ですね。では、最後にお伺いしたいんですが、これはきのう質問したんですが、返事が返ってこなかったので伺いたいんです。生保が保有している銀行株、これを機構は買い取ることができるようになっているんですか、それともなっていないんでしょうか。
竹中国務大臣 申しわけありません、ちょっと聞き取り間違えまして、政府がじゃなくて、生保が……(生方委員「生保」と呼ぶ)これは対象にはなっておりません。
生方委員 きのう聞いたときは、なっているんじゃないですかというような返事だったので、いや、なっていないんじゃないですかと私は聞いたんですけれども、なっていないのでよろしいんですね。
 将来的には、生保が保有している銀行株をお買いになるつもりはあるんですか。それは将来的にもないというふうに考えてよろしいんですか。
竹中国務大臣 基本的には、今回議論しているそもそもの枠組みは、銀行の株式保有を制限するというところに出発点があるわけであります。生保の場合は、それに対して、株式等々を中心に長期運用をするということでありますので、基本的には、ポートフォリオに対して政府が強い規制をかけていくということは、原則としてはすべきではないことだと思います。
 その意味では、銀行という特殊な業態で、株式という特殊な資産について一種の保有制限をかけるというのが政策の基本的な考え方だと思っておりますので、生保に対してそのような同様の制限というのは、これは当面は考えられないことなのではないかと私は思っております。
生方委員 それでは、両大臣、結構でございますので、参議院の方へ。
 質問の順番がちょっと逆になりましたので、提出者にまた再度お伺いしたいんです。
 そもそも銀行の保有している株を買い取ろうというのは、銀行が保有していることによって、リスクが大きくなることによって銀行の本来の機能を果たせなくなる。したがって、銀行の株をどんどん機構あるいは日銀が買ってくれれば、株を保有するリスクが少なくなりますから、本来であれば、そのお金が中小企業に回ってしかるべきだ。
 この間ずっと保有株は少なくなって、先ほども申し上げましたように、四大グループに限っていえば、もう三グループがティア1以下にまで株の所有が減っているわけです。だから、当然、そういう改善がなされたのであれば、中小企業に対する貸し出しがふえてしかるべきだと思うんですけれども、実際問題としては、御承知のとおり、中小企業に対する貸し付けはどんどん減っているわけです。
 株を減らしているのにその効果が全く出ていないというのは、どこに原因があるというふうに提出者はお考えになっていますでしょうか。
熊代議員 これはさまざまな原因がありまして、一概に申し上げられないと思いますけれども、要するに、先ほどお話もございましたように、銀行が国債をやたらに買うというのは、一面ではBIS規制の影響があるんですね、御承知のように、リスクがゼロですから。そういうこともございますので、株式を売ってBIS規制上の比率が改善されることで中小企業に回っていけばいいんだろうということでございまして、私どももそれは望ましいことだというふうに思います。
 しかし、統計上は、御指摘のように確かに減っておりまして、それは一概にわからないわけですけれども、推測しますに、例えばちまたで聞きますと、業績のいい企業に対しては、金を借りてくれ、借りてくれと、中小企業であっても、本当に銀行が頼みに来るということでありますから、そういう企業が割と少ないというふうに銀行が判断しているのかなということでございまして、もう少し銀行もリスクをとるということを考えていただければいいんじゃないかというふうに理解しているところでございます。
生方委員 副大臣はいかがでございますか。
伊藤副大臣 先生御指摘のように、現在に至っても中小企業をめぐる金融経済環境は大変厳しいものがございまして、こうした状況を踏まえて、私どもといたしましても、金融機関に対して、中小企業に対する資金供給の一層の円滑化、あるいは貸し渋り、貸しはがしがないように、繰り返し繰り返し要請を行っているところでございます。
 さらに、政府といたしましては、中小企業貸し出しの重要性にかんがみまして、特にセーフティーネット、この点につきましては、セーフティーネット保証でありますとか、あるいは売り掛け債権を担保にした保証制度の機能強化、拡充というものをしておりますし、また、借りかえ保証制度という新しい制度を創設しているところでございます。
 先生御指摘のとおり、株式の保有の額が減ってきてそのリスクが軽減をされてきているわけでありますし、一方で、金融再生プログラムに基づいて、銀行経営の大きなリスク要因の一つであった不良債権問題についても積極的な対応がなされてきているわけでございます。そうした中で、これから金融機関は、利用者やあるいは中小企業を含む事業者の多様なニーズにこたえられるように、ヒューマンリソースを初めとしたあらゆる経営手段というものをそうした前向きの方向に投入していく、そのことによって多様なニーズにこたえていくことが極めて重要ではないかというふうに思っております。
 資金仲介機能を強化していくためには、審査能力を上げていくことも必要であります。今までの日本の金融機関というのは、どちらかといえば担保でありますとか保証、こうしたものに過度に依存してきたわけでありますので、そうしたものから脱却して、経営の内容でありますとか経営者の能力、そうしたものを十分審査して貸し出していける能力を高めていかなければいけないわけであります。
 今、主要行を中心として、こうした中小企業のさまざまなニーズにこたえるための新しい商品も投入されてくるようになりました。こうしたものがしっかりとした成果を出せるように、私どもとしても、中小企業に対する資金の円滑化の確保に向けて、さらに一層努力をしてまいりたいというふうに考えております。
生方委員 いろいろおやりになっていることはわかるんですけれども、不良債権だってだんだん減りつつあるわけですね。株の保有も減りつつある。だから、普通であれば多少はプラスの効果が出てこなきゃいけないのに、実際に起こっていることはどんどんマイナスになっているというのは、どこかやはり根本的に私はおかしいところがあるんじゃないかと思うんですよ。
 今おっしゃったように、いろいろやっているというのを並べて、確かに、一個一個考えていけば、当然これはプラスになる効果があるだろう。それが、プラスがずっと積み重なっているのに結果はマイナスになっているというのは、やはりどこか根本的におかしいところがあるんじゃないかという点検をしないと、一つ一つの手を打って、確かに株の保有はティア1以下に抑えられました、だけれどもその効果はどこにも見えないというんじゃ、何のためにこれをやっているのか。これは、国民負担があるというところの危険にまで踏み込みながらこういう政策をとっているわけですからね。
 だから、それはやはり一つ一つ検証してもらわないと、これもやっています、あれもやっています、あれもやっていますと、一つ一つはもちろんそれはプラスになるでしょうけれども、トータルとして、中小企業に対する貸し渋りどころじゃなくて、貸しはがしというのが現実に起こっているわけで、日本経済はそれによってどんどん縮小傾向に入っちゃっているわけですから、どこが一番問題であって、どこをポイントにするのかということを絞ることがむしろ重要であって、先ほどの指摘にもございましたが、そういうことが絞り切れていないから、総花的にいろいろな対策を打って、結局それが後手後手になって大きな効果を発揮しないことに私はなっているように思えてしようがないんですよ。
 だから、それは、副大臣が今おっしゃったように、いろいろなことをただ並べて、これもやっている、あれもやっているというんじゃいけないのであって、これをやれば確実にこうなるんだという成果があるのが見えれば、国民も、ではそれに応じた負担を我々もしようじゃないかということになると思うので、それが見えないでやっているのが一番大きな原因だと私は思うんですけれども、いかがでございましょうか。
伊藤副大臣 今委員御指摘のとおり、この問題は大変重要な問題でございますので、私どもとしても、現在までの取り組みを総点検し、そして中小企業に向けての貸し出しを円滑化していくためには、先ほどお話をさせていただいたように、金融機関が抱えているリスク要因を軽減していく、それとあわせて、金融機関の資金仲介機能を強化していくことが必要であります。
 中小企業者の方々に聞けば、資金ニーズがあるにもかかわらず、銀行の方々にお願いをしてもなかなか貸し出していただくことができない、そして、銀行の方々にお伺いをすれば、中小企業の資金ニーズは後ろ向きなもので、そうしたものにはなかなかリスクが高くて貸し出すことができない、こういうギャップがあるわけであります。
 そうしたギャップを埋めていくために、私どもとしての政策手段がどうなのか、また、金融機関としての努力が適正に行われているのかどうか、そうしたことを先生の御指摘も踏まえてしっかり点検して、私どもの努力をさらに積極的に、しっかりとしたものとして取り組んでいかなければいけないというふうに思っているところでございます。
 日本経済を再生していくためにも、中小企業の再生が極めて重要だということを認識いたしておりますので、私どもといたしましては、中小企業庁、経済産業省を初めとした政府系のいろいろな機関とも今まで以上に連携をとって、そして施策の効果が十分発揮できるように、今後ともしっかりとした対応をしていきたいというふうに思っております。
生方委員 時間ですので、最後に日銀総裁にもう一問だけお伺いしたいんですが、機構の場合はティア1を下回った部分の株まで買うことができるというふうになっておりますが、先ほど総裁は、銀行が所有している株の額は少なければ少ないほどいいというお考えをお持ちになっていると聞きましたので、日銀がティア1を下回った部分を将来的に買うというようなことがあり得るのかどうか、その一点だけお伺いして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
福井参考人 日本銀行では、昨年秋以降のかなり厳しい状況に対する緊急避難的な対応ということでやらせていただきました面が非常に強うございます。
 ティア1を下回る部分まで日本銀行が踏み込むということは、日本銀行としては余りにもリスクをたくさんとり過ぎて、それ以外、必要な仕事の局面でリスクをとれる度合いが小さくなっていくということがございますので、ティア1を下回る部分まで私どもが踏み込むということは考えておりません。
生方委員 機構の方は今政府保証が二兆円枠ですね。だけれども、少なければ少ないほどいいということになると、二兆円枠、これはもちろん国民負担の問題がございますので、無限にそんな政府保証をふやしていいということにはならないと思うんですけれども、その二兆円という額は柔軟にお考えなんですか、それとも、二兆円以上ということはあり得ないというふうにお考えでしょうか。
熊代議員 二兆円の枠は一応政令にゆだねておりますので、法律は、我々立法者でございますから必ず定めますけれども、一応政府にゆだねておりますが、基本的には、現在の状況をにらんで、現在のところ二兆円でいいだろうということでございますので、状況が大いに変わったときに、全くこれが不変のものであるというふうに我々も考えておりませんし、執行者としての政府も恐らくそのように考えてくれているだろうと思います。
生方委員 終わります。
小坂委員長 午前十一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十時一分休憩
     ――――◇―――――
    午前十一時開議
小坂委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として財務省総括審議官津田広喜君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小坂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
小坂委員長 質疑を続行いたします。永田寿康君。
永田委員 伊藤副大臣もお越しになったということで、金融庁に対する質問もしていきたいと思います。大臣はもう少し時間がかかるみたいなので、お待ちしたいと思います。
 まず、提出者にお伺いしたいと思います。
 今回の法案の大きな柱、二点挙げれば、それは八%条項の撤廃と残存期間の延長、この二つが非常に大きな柱だと思いますが、まず八%条項の撤廃について、なぜ必要だという判断に至ったのか、御説明ください。
上田(勇)議員 お答えいたします。
 今回、今委員がおっしゃったとおり、大きな変更点は二カ所ございますけれども、一つは、売却時拠出金の今おっしゃった八%を撤廃するということでございますが、これは、これまで買い取り機構が業務を行ってきたわけでありますけれども、ここまで買い取ってきた額が当初期待していたものを相当下回っているわけでございまして、本来の目的のように正確に適切に機能させていくためには、いろいろな検討を加えさせていただいた結果、やはりこの売却時拠出金が障害になっているというようなことも考えられたことから、今回、この八%の拠出金につきましては撤廃するということを決めた次第でございます。
永田委員 当初期待した額よりも買い取りの実績が少ないという点が判断の大きな根拠の一つになったというお話ですが、当初はどれぐらい期待していて、当時、これじゃ足りないと思った瞬間の実績はどれぐらいあったんですか。
上田(勇)議員 期待していた額というか、用意されている枠としては二兆円の枠があるわけでありますが、現在のところの実績は二千百八十一億円ということでございますので、具体的にどれだけ期待していたかということになりますと、その二兆円の枠全部と同じということでは必ずしもありませんが、それに比べても、二兆円の枠に対して二千億円ということでありますので、私たちとしては、これは期待していたものよりは相当少ないんではないかというふうに判断をしているところです。
永田委員 二兆円というのは枠でありまして、要は、政策の効果というのは、実際に買い取った額ではなくて、金融機関の経営の安定性を確保するためにこの政策を発動したわけでありますから、どれぐらい金融機関の経営体質が強化されたかということを検証することが大切なんだというふうに思っております。
 むしろ、二千億円しか買い取りの実績がなかったということは、金融機関に対してそれぐらいのニーズしかなかったというふうに判断をすれば、かえって望ましいことなんではないかというふうに判断するわけですけれども、どうしてこれ以上買い取る必要があるというふうに判断したのか。それは金融機関の経営体質の精査なくして判断できることじゃないと思いますけれども、判断の根拠を教えてください。
上田(勇)議員 金融機関、そもそもこの銀行の株式保有制限法というのは、導入するに当たりまして、これはまずBIS基準におきます適用がティア1以下に銀行が保有している株式を制限しなければいけない。そこまで少なくするために一時的に市場にそれが全部放出されると、市場の需給関係が悪化するということも想定されたことから、そういうことを取り除くためにこうしたスキームが考えられたわけであります。
 その間、そうしたことが決まってから、金融機関は相当程度、市場、また、日銀の買い取りスキーム等もありまして、そういう株式の保有額は減ってきているわけでありますが、依然としてまだ二兆円を超える額の株式を金融機関が保有しているわけでございます。
 金融機関の経営の中で、こうした株式の変動リスクが非常に悪い影響を与えているということが想定されることから、やはりこれは、一つには、期限が延長されたとはいってもBIS基準を満たさなければいけないということと、株式の変動リスクに対して経営の安定化を図っていくということから、そうした株式の売却をさらに進めてもらわなければいけないわけでありますので、そういう意味からは、この買い取り機構の果たすべき役割というのは依然として重要なものがあるというふうに考えておりまして、それを使い勝手がいいように、今までいろいろと支障になっていた部分について変更、修正をするという趣旨で今回の法案を提出させていただいております。
永田委員 定性的に言えば、日銀が持っている株をマーケットに放出すれば需給悪化の要因になり得るというのは、それは猿でもわかる話なんですよ。そうじゃなくて、実際に、これは八%拠出金が障害になって認可法人に買い取りをしてもらうことができないがゆえに需給要因が悪化した、要するにこの機構に買い取ってもらうことができない、それが嫌だからマーケットにやむなく放出をした、その結果、マーケットの需給関係が悪化したということが、完全にではなくても、ある程度定量的に議論されていなければ、僕は、マーケットの需給要因の悪化につながったという部分は多少怪しいものだというふうに思っているんですよ。
 昨今の株式市場の動きを見ていると、下がるときも上がるときもありますけれども、完全にとは言わないが、かなりの部分が外国人の買いなんですよ。外国の証券会社がいかに買うか、売るかということが株価の上下の要因になっていて、国内の要因というのは、それに比べれば大分小さい要因だというふうに僕は判断しています。マーケットの需給悪化の要因につながるということがある程度定量的に僕は検証されていなければならないと思っているんですが、そこの検討はどうなっているんですか。
熊代議員 先生御指摘のように、正確なことはわからないわけでございますけれども、当初、BIS規制の二〇〇四年の施行を前提としての持ち合い解消を念頭に置いたときは、ティア1オーバー額は十五兆円ございました。
 それで、私ども、一般に言っていたことは、日本の銀行等が持ち合いを解消したら日経平均は八千円ぐらいに行くだろうというようなことを言ったわけですね。二年七カ月の短い期間をセットしたわけでございますが、早目に売った方がいいだろうというのはだれも考えることでございますので、八兆円を売った段階で既に八千円台になってしまったということでございました。
 それで、海外の要因、国際的な要因もございますけれども、やはりこの売り圧力、売ったり買ったりの八兆円ならばいいけれども、一方的に売っていく。しかも、こちらで買われたのは、現在のところでも二千二百億でございますし、日銀も一兆四千億ぐらいですからね。相当に市場に出ているということでございますので、これは定性的に、正確なことはわかりませんけれども、かなり大きな大きな影響があった。これに対しまして、その阻害をしているのは八%という拠出金要件でございますが、これがあればBIS規制上は売ったことにならない。BIS規制をクリアするためにつくったけれども、BIS規制上売ったことにはならないということでございますので、まだまだこれは大きな大きな役割があるというふうに我々は考えているところでございます。
永田委員 別にいいんじゃないですかね。先ほども、金融担当大臣も、銀行のポートフォリオは銀行が考えるのだ、株を持とうが国債を持とうが、それは銀行が考える、あるいはどこに売ろうが、それは銀行が主体的に考える話ですという話をしている。
 実は、平成十三年の十月二十六日の財務金融委員会で我が党の佐藤観樹先生が質問をしたところによりますと、村田副大臣や当時の柳澤国務大臣が答弁をしているわけですが、この八%条項について、要は、株の銘柄によって、売ったときの売り圧力というのは、マーケットの厚みとかいろいろ銘柄によって違うので、インパクトは大分違うだろう。物によっては、売ることによって大きなインパクトをマーケットに与えるものがある。だから、そういうものはマーケットから隔離するために八%払ってでもこの機構に売った方が有利だ、そういう判断がなし得るということを平成十三年十月二十六日の答弁でしているんですね。
 つまり、八%条項が必要だというその根拠はどういうことかというと、八%払ってでもマーケットに売るよりはこの機構に売った方が有利だ、マーケットに対するインパクトが小さくて済む、そういう場合があり得る、だから八%条項があるんだ。つまり、マーケットに売ってもインパクトが小さいものはマーケットに売るという判断を自主的に銀行がするわけですよ。
 ですから、それに対して我々がどうこう言う筋合いはないんですね。ほとんどマーケットにインパクトがないだろうというものばかりマーケットに売るわけですから、それは我々がどうこう考える筋合いの話じゃないんですよ。実際に八兆円売った時期と株が値下がりした時期とが合致するからといって、この八%条項が問題だというふうに考えるのは、それは、僕は、論理構成として間違っていると思うんですけれども、どのようにお考えだったのか、もう一度お聞かせください。
熊代議員 機構に売るかマーケットに売るかは銀行の判断でございますけれども、しかし、究極的といいますか、二〇〇四年ですからそんな究極でもありませんけれども、目標は、当時の判断としましては、BIS規制が二〇〇四年には厳しくなるということでもございましたので、それをクリアしなければいけないということですから、その観点で、八%条項があればBIS規制上はオフバランスをしたことにならないということでありますので、これは銀行の売り行動に大きな影響を与えたというふうに思います。
 今後もまだ与えるだろうということでございますので、これは長い期間をかけて、十年、二十年かけてやるなら話は別でございます、マーケットに任せていればいいわけでございますけれども、短期間で集中的にやらないといけないときにはやはりいろいろな配慮をしなければならない、こういうことだと思います。
永田委員 ちゃんと議論してくださいよ。柳澤さんの答弁では、マーケットに売ったら大きなインパクトがあるような銘柄は機構に売ってマーケットから隔離する、そのかわり八%払う、そういう答弁をしているんですよ。つまり、この八%条項があった今までの期間、銀行がマーケットに売ってきたものは、マーケットにインパクトが少ないと自主的に銀行が判断した銘柄ばかりだったはずなんですよ。
 であるならば、売ってもマーケットにインパクトがないんだったら、何も機構に持っていく必要なんかないんですよ、それは銀行が自主的に判断しているんだから。自分たちがどれぐらいリスクをかぶるか、その後株価が下がって、少しは下がるんでしょう、下がったところで自分がどれぐらい被害をこうむるか、自己資本がどれぐらい減るかということは、それは計算した上でやるわけですから、我々がどうこう口を出す話じゃないじゃないですか。
 もう一回言いますよ。八%条項を残したままでも、マーケットに売ったときにインパクトがないものばかり、少ないものばかり売っているんですよ。だから、撤廃する必要はない。もっと言うと、八%条項が存在している、規定されている法案を自民党は賛成したんです。何で判断を変えなきゃいけないのか、ちゃんと納得いく説明をしてくださいよ。そうじゃないと賛成できませんよ、この法案には。説明なんかできないだろう、要は。
熊代議員 八%条項があっても、市場にインパクトを与えないものは市場に売って、インパクトを与えるものは機構に売るということでございましょうけれども、しかし、市場にインパクトを与えないと思って、銀行がそういう意図で売ったとしても、結果的にそれがインパクトを与えるということはあるわけですね。意図したとおりに物事は起こるわけではございませんから、客観的な情勢を見ると、銀行の意図とは別に相当に市場にインパクトを与えた。
 銀行の判断の方は、市場にインパクトを与えることも考えたでしょうけれども、やはり八%で、BIS規制上はオフバランス化しない、そういうことも大きな大きな要素であったろうということでございます。
永田委員 銀行の判断も間違えることがある、そういう答弁だったというふうに思いますけれども、じゃ、柳澤さんの答弁は、これは間違っていたということですね。柳澤さんは、自主的に判断をしてそれを尊重するということを言っているわけですから。当時の大臣である柳澤さんの答弁は、これは的外れだ、そういうお話ですね。銀行も間違えるときがあるんだから、国の判断の方が正しいんだから、銀行がいかにマーケットに対するインパクトが小さいと思っていようが、根こそぎ機構が持っていくのが正しいんだ、そういう判断ですね。
熊代議員 物事は、プレーヤーが、主体が意図したとおりに必ずしもいくとは限らないということは申し上げたところなのでございますけれども、根こそぎ買うということも一つの方法ではございましょうが、現実問題としては、二兆円という枠をセットしてありますので、根こそぎということではないわけでございます。
 また、日銀の方で二兆円、そしてまた新たに三兆円の枠をセットしていただきましたので、相当部分ということでございますけれども、当初、銀行は市場をしっかり考えてくれるだろう、八%があるけれども、市場のことを考えれば、八%を拠出してもこちらに売ってくれるだろうという見込みは、やはり激しい株価下落があったということで、客観情勢が大きく変わってきたんじゃないかと思うんですね。
 そういうことも含めて、これだけ激しく下がったならば、やはりそういう新しい事態で新しい適用を考えた方がいいのではないかということでございます。
永田委員 お話にならないですね。当初の法案で、八%条項が入っていたものに賛成票を投じた方々の答弁とはとても思えない。どうしてこんなに方針の変更が起こるのか、説明してください。
熊代議員 二つの点があると思うんですね。一つは、やはり客観情勢の大きな変化ということです。
 八%条項の主たる目的は、税金に負担をかけないということが大きかったというふうに思います。株価が高い状況では、税金に負担をかける確率は高い。しかし、株価がここまで下がってきた場合に、税金に負担をかける確率は少なくなる。しかも、機構が売る期間を五年間延ばせばさらにそのリスクは低くなってくるということでございますから、判断を変えたということは、当初のときと現在と株価をめぐる客観情勢が極めて変わってきて、したがいまして、機構の株購入に関するリスクの状況も変わってきたということだと思います。
永田委員 提出者、どなたでもいいですから、一個だけクイズを出しますから答えてください。
 広辞苑で、ある四文字熟語の定義が載っていますから、この四文字熟語はどういう言葉かというのを教えてください。
 その定義は、「統一もなくばらばらに乱れて、筋道が立たないさま。めちゃめちゃなこと。」これをあらわす四文字熟語は一体何でしょう。――支離滅裂というんです。今の答弁はまさにそうですよ。支離滅裂です。統一もなくめちゃめちゃに乱れている。
 日銀総裁、株を買っていますね。機構が余り株を買ってくれないんで、あるいは銀行が機構に株を余り売りたがらないんで、日銀が、民間銀行が保有している株を買っている。先ほど、金融担当大臣からは、機構が本来持っている役割、民間銀行から株を買い取るというこの役割を補完するものだというふうに答弁されていましたが、日銀としては、補完するという気持ちでなさっていたんですか。
福井参考人 日本銀行が金融機関の保有株の買い入れ措置を開始しましたのは、昨年の十一月二十九日であります。それ以後の情勢は、御承知のとおり、非常に日本経済あるいは金融に対してショックが起こりやすい、降ってかかってきやすい状況になったということで、ショックを相当程度吸収しながら経済の次の局面に移行していかなければならないということが基本的な判断でございまして、日本銀行の措置は、あくまで金融機関が早急にさばいていくことを義務づけられているティア1を超える部分、ここに対して日本銀行が手を差し伸べようということでございますので、ある意味で緊急避難的対応という色彩が政府の措置以上に強かったということだと思います。
 そういう意味では、補完的だというふうに申し上げられると思います。
永田委員 竹中大臣がお帰りになったんで。
 やはり補完なんですか。教えてください。
竹中国務大臣 我々、補完的な役割というのはこれまでも答弁の中で何回かお話しさせていただいておりますが、補完の反対は代替、つまり、代替というのは競合という意味でありますから、その意味では買取機構と日銀が競合的だということでは全くないと思っております。
 とにかく、利用者から見ますと、それぞれ使い勝手、いろいろな場合があると思います。それぞれについて、利用者から見た場合に、それは補完的な役割を果たすものになっているというふうに思っております。
永田委員 補完と代替という言葉を使いながら、経済学の大家がこんな答弁をするとは、僕は驚きを隠せないんです。
 コーヒーと砂糖、これは補完ですよ。コーヒーを飲む人がたくさん出てきたら、コーヒーの需要がふえたら、砂糖を入れて飲む人も多いだろうから、砂糖の需要もふえていく、これが補完ですよ。代替というのは、コーヒーと紅茶ですね。嗜好品としてはコーヒーか紅茶どっちかしか飲まない、紅茶を飲む人がコーヒーの方に移っていったら、紅茶は減っていく。片っ方がふえたらもう片っ方もふえるのが補完で、片っ方がふえたらもう片っ方が減るのが代替ですよ。
 これは補完じゃないでしょう。日銀が株を買い取ったら、機構に売りたくなる需要が減っていくでしょう、売る需要というのは変ですけれども。代替じゃないですか。経済学的にいったら、これは明らかに代替ですよ。答弁を修正してください。
竹中国務大臣 今の御議論は、総量が一定であるという強い仮定を置けば、片方がふえれば片方が減るということになりますが、これは、双方が利用者にとって使い勝手のいいようなそれぞれの役割分担をしておりますので、その意味では補完的であるというふうに思っております。
永田委員 違うでしょう。日銀に売れば売るほど機構にも売りたくなる、そんなばかな話じゃないでしょう。どうやったらそういう現象が起こるんですか。
 総量が一定だという強い仮定を置いたらと言いましたが、当たり前じゃないですか。民間銀行が持っている株というのは、新たに買い増さない限りは一定なんです。売らなきゃいけない総量も一定なんです。これは強い仮定も何もない。今回のケースでは、明確にこれは当てはまる仮定ですよ。(発言する者あり)でしょう。
 その売らなきゃいけない株を日銀に売ったら、もっと機構にも売りたくなる、そんな現象はどうやったら起こるのか、ちゃんと具体例を挙げて説明してください。
竹中国務大臣 私が申し上げたいのは、こちらへの売り上げがふえれば、必ず一方への買い取りが減るという関係にはないということを申し上げているわけです。日本銀行と買い取り機構がそれぞれの特性を発揮しながら、全体として、非常に速やかに、銀行が株式を保有することによってリスクを抱えるわけでありますから、そのリスクの軽減が進む。そういうようなそれぞれの役割分担を私としては意味しているわけでありまして、片方がふえれば片方が必ず減る、そういう意味での代替関係にはないというふうにやはり思っております。
永田委員 だからそれは、経済学でいうと相関関係を見るんでしょう。片っ方が一ふえたらもう片っ方も必ず一ふえる場合は、完全な相関というんですね。一ふえてももう片っ方は〇・八しかふえなかったら、それは弱い相関というんですよ。一ふえてもゼロしかふえなかったら、これは完全に相関がないというんですね。マイナス一だったら完全な逆相関というんですよ。完全な代替関係にあるというんですね。
 だから、僕は、完全な補完関係とか、完全な代替関係とか、そういうことを言っているんじゃなくて、強いか弱いかわからないけれども、正の相関があるか負の相関があるかという話をしているんですよ。民間銀行が日銀に株を売ったら、機構に対する売ろうという気持ちは弱まっていくでしょうという話をしているんですよ。そこは負の相関があるんですよ。
 正の相関があるんですか。正の相関があるのかどうか、ちゃんと教えてください。正の相関があるというんだったら、どうしてそういうふうに考えるのか教えてください。
竹中国務大臣 非常に厳密な議論をしておられますのであえて申し上げますけれども、代替・補完というのは、相対価格が変わった場合に、要素の集積比率がどのぐらい変わるかという概念でありますから、そういう代替・補完の議論を、今永田先生がおっしゃるような経済学的な概念としてこの二つの機構の役割について当てはめるという議論は、厳密にはやはりできないということだと思います。
 私が申し上げたいのは、日銀と買い取り機構がそれぞれの役割を発揮することによって、全体として、できるだけ速やかに株式の保有を銀行が減らしていくような役割を果たすということが必要なんだと思っております。
 その意味で、それぞれが役割を補完しながらといいますか、そういう意味で使わせていただいているわけでありまして、永田先生がおっしゃるような経済学的な要素間の代替性ないしは偏代替率とか、そんなことを議論しているわけではございません。
永田委員 大丈夫ですか。先日は、高校の数学の先生が、高校入試の試験が解けなかったといって首になりましたよね。学力が足らないと先生が首になっちゃう時代なんですよ。大丈夫ですか。ハーバードとかコロンビアとか言っている場合じゃないと僕は思いますよ。代替か補完かというのは、これは重要な議論なんですよ。
 では、そんなに補完という機能を強調するならば、どうして、この機構の設立法案を出すときに、日銀に株を買わせるという制度をセットで出さなかったんですか。補完だということを主張するんだったら、セットで出すべきじゃないか。出さなかったんでしょう。
 この機構の活用の度合いが小さい段階で、まだ株が全然買い取れない段階で、日銀が買い取るということを表明したら、大喜びしたじゃないですか、あなたは。もう喜んで、それを業務として認可して、枠をふやすときにも、いいですよという話をしたわけでしょう。それは、やはり機構が働きが悪いから、日銀にやってもらうということにあなたは安堵したわけでしょう。そういうのを代替というんですよ。
 だから、要は、両方必要か、片っ方でいいのかという議論をしているので、経済学的に厳密に当てはまらないとか当てはまるとか、そんな議論をしているんじゃないんですよ。これは政策なんですから、しかも何兆円という金が動く政策なんですから、もう少しまじめに答弁してください。もう一回お願いします。
竹中国務大臣 日本銀行がこの案を出したときの金融担当大臣は私ではございませんので、そのときの認可云々のことはどういう経緯だったということは、今私は承知をしておりませんが、基本的には、株式買い取り機構は株式買い取り機構としての趣旨にのっとって、政府としてやっていった。日本銀行は日本銀行としての独立した立場で、まさに金融システム全体のリスクを軽減するという形でこの政策を打ち出した。
 結果的に、利用者である銀行等から見ると、それぞれの背景を持った機構が重要な役割を果たしているのであって、それぞれ補い合うような形になっている。私が申し上げている補完というのはそのような意味でありまして、これは委員よく御承知のように、政府としてのつくった経緯と、日本銀行としてのいわば他業として緊急的な措置としてこれをお決めになった経緯、それぞれを踏まえて、言うまでもありませんが、今の制度が存在しているということであります。
永田委員 日本銀行総裁にお伺いしたいんですが、民間銀行が保有している株を買っていますよね。この政策の総括をしていただきたいんですが、多分含み損が出ていると思います。どれぐらい含み損が出ているのか、数字があったら、直近の数字を教えていただけませんでしょうか。
福井参考人 三月末の数字で申し上げますと、六百五十八億円でございます。
永田委員 この調子でいくと、株を持ち切れなくなる、最後、売却するときにも潜在的な損失が顕在化する可能性はあるんですけれども、そのときに一体だれが負担するんですか。総裁ですか、それとも大臣ですか。
福井参考人 日本銀行が株式買い入れに伴います潜在的損失というのは十分には計測し切れませんけれども、買い入れの段階からいろいろそういうリスクをなるべく少なくするように買っておりますということと、それから、将来、これは市場で売却し尽くしていくわけでございまして、その将来の売却の期間というのは非常に長くとっております。したがいまして、いいタイミングで売っていくことによって、損失が起こる度合いを極力小さくしたい。
 それでも、最後に損失が残る可能性があるではないかとおっしゃれば、それは否定いたしません。しかし、そういうものを最小限にとどめること、そして、それは日本銀行の財務の中で極力吸収できるようにということを考えております。
永田委員 ただ、日銀の財務とおっしゃいますけれども、剰余金があれば国庫納付するのが制度化されていますよね、日銀の場合には。それがある程度減額されるという話なわけで、そうすると、国庫収入が減るというのは、最終的には国民の負担とほぼ同値だというふうに僕は考えているんですけれども、この理解は間違っていますでしょうか。
福井参考人 御理解は正しいと思います。
 ただ、私どもは、日本銀行のバランスシートの上に、損、益、この両方の幅をある程度持っていかないと機動的な金融政策はできない。この点もぜひおわかりいただきたいと思います。
永田委員 六百五十八億円の損失を出したということですけれども、やはりこれがないと、金融市場は激しく動揺したというふうにお考えですか。
福井参考人 先ほど申し上げましたとおり、昨年秋以降の、かなり激しいショックが予想されるという前提のもとでの、緊急避難的色彩の強い対応だというふうに申し上げました。
 結果として、振り返ってみますと、平成十四年度の下期中に、銀行は大体五兆円ぐらい株をさばいておりますが、日本銀行で一兆円を超える額を吸収して、ショックアブソーバーといいますか、ショックを吸収する機能はかなり果たせたというふうに思います。そのほか、いろいろな条件もありましたけれども、金融市場の平穏を今日まで保つことができている、その中でやはりかなり大きな力を発揮したんではないかというふうに考えております。
永田委員 これは重大な答弁ですよ。日銀の総裁が国会で発言した、六百五十八億円の損失を出したこの政策のおかげで動揺は抑えられたと。わずか六百五十八億円のインパクトで日本の金融市場は動揺したかもしれない、そういう認識を日銀総裁が示されたわけで、これは大変重要な発言であったというふうに私は思いますね。
 総裁、僕は思うんですけれども、損失は日銀が株を売った段階で確定するわけですよ。これからも株を買うだろうし、何年後でしたっけ、随分先に売るわけで、売ったときに損失が確定しているわけで、そのときの金額が幾らだか知りませんけれども、数百億から場合によっては一千億、二千億になるかもしれない。幾らかわからないけれども、とにかく金額は確定するわけですね。
 確定したら、それを国民負担にするんじゃなくて、可能な範囲でやはり銀行に負担してもらう方がいいんじゃないかなと思うんですよ。だって、損失は確定しているわけですから、銀行が倒産しない範囲で、ローンで毎年十億とか二十億とか返してもらう、そういうやり方というのは僕は大いに検討していいんじゃないか、何も国民に押しつけるのが唯一絶対の正しい道だというふうには思わないんです。
 買い取った銀行、今、簡単に言えば、民間銀行から株を買って六百五十八億円の含み損が出ているわけですよ、日銀に。それは、日銀が株を買わなかったら民間銀行がそれだけの含み損を持っていたかもしれないということなわけですね。そうであるならば、今の場合は、損失は潜在的なもので、日々上下するわけですから、どのぐらいの割合で何年間のローンで銀行に負担してもらうというのは言いにくいかもしれないけれども、確定した段階では、僕はそれは検討してもいいんじゃないかと思っているんですけれども、お考えはいかがですか。
福井参考人 私が強く申し上げたいのは、日本銀行の政策は、日本の経済を将来よくしよう、そこに的を一点に絞ってやっている政策でございます。経済が悪くなるという前提で株を買っているわけではありません。経済を必ずよくしようという前提。したがって、将来、時間をかけて損失を最小限にするということを前提にこういう措置をしているということであります。
 それから、委員のお尋ねの点でございますけれども、もし将来起こった損失を全部改めて金融機関に転嫁するということであれば、金融機関が日本銀行に株を売却してもリスクアセットとなり続けていて、今回の措置の意味を全くなさない。プラス、将来、売却の判断について金融機関が関与できない状況でロスだけ負担するということは、市場経済の中ではほとんど不可能なことではないかというふうに考えます。
永田委員 それは、いいじゃないですか、利益が出たら返してあげるという方向でもいいんですよ。だって、どの銀行からどの銘柄の株をいつ幾らでどれぐらい買ったかということは明確に記録が残っているわけですから、それを売却した段階で損が出た、得が出た。できるだけ得をしようとする気持ちはわかりますよ。だけれども、結果的に得が出たら、利益が出たら、それはみんなに分けてあげればいいし、損失が出たら銀行に負担してもらう。
 別にそんな変な話じゃないですよ。だって、それだけのメリットを銀行は受けているんだもの。今、この瞬間に、株という価格が日々上下するような不確定な資産を持っていたら倒産したかもしれない、破綻したかもしれないというリスクを、日銀にそのリスクを移すことによって倒産を回避しているわけですから、それだけのメリットはありますよ。
 結果的に日銀が、一番有利な条件で株を売れなかったかもしれないけれども、一番じゃないかもしれないけれども、ある程度努力をして、一生懸命頑張って銀行の負担が小さくなるように売ってあげたという努力だけ見せれば、そのロスは民間銀行が負担するのは、そんなに僕はおかしな話じゃないと思いますよ。
 一方で、僕は金融担当大臣、竹中さんにお伺いしたいんですけれども、この機構ができるときの当初の法案審議の中で、八%条項は絶対必要だということを柳澤さんは繰り返し答弁していました。我々野党は、むしろ八%条項があったら使い物にならないんじゃないかということを指摘していた立場なんですよ。
 そんな中で、柳澤さんは、絶対必要だ、なぜかといったら、それは、株が下がるかもしれない、下がったときに損失をいたずらに国民に押しつけるわけにはいかないから、すぐに国民に押しつけるわけにはいかないから、だからそのためのバッファーとして八%条項が必要だということを言っていたんですよ。
 今回それが撤廃されるということになったら、当時の発想からすると、八%条項がない、バッファーがない、拠出金がもらえないような株は買うことができないという判断に至るのが僕は常識的なラインじゃないかと思うんですが、いかがなんですか。僕は、買わないという選択肢は大いにあると思いますよ。八%条項がなかったら買えないという判断、買わないという判断です。
竹中国務大臣 この法律を最初に御議論いただきますときに、今まさに委員が御指摘のようなやりとりがあったということは承知をしております。
 言うまでもありませんけれども、政府の思いとしては、国民負担を何としても最小化しなければいけない、そこはまさに今議員が御指摘していらっしゃる点でもあろうかと思います。そういった点から、あの当時、この八%という議論がしっかりとなされたというふうに思います。
 しかし同時に、その後のいろいろな機構の活動の中で、先ほどからも議論されておりますけれども、使い勝手がどうなのかという議論も現実問題としては出てまいりました。我々の目的はあくまでも、先ほど福井総裁が言われたように、日本経済をよくすることである。そのよくする過程で、株価の変動のリスクをこの政府の機構が背負うことになるわけでありますけれども、このリスクを背負う背負い方について、できるだけ国民負担を少なくしたいという思いと、しかし、この機構そのものを有効に機能させるために、やはり使い勝手のよいものにしておきたいという一種のトレードオフの中で、我々は新しい選択をしなければいけなくなったということなのではないかと思っております。
 しかし、いずれにしても、国民負担を最小化するという努力は必要でありますから、今回の御提案の法律の中でも、存続の期間を延ばすことによって、その間で有利な売却ができるようにという配慮が行われているものというふうに承知をしております。
永田委員 別に、今回の八%条項が法律上撤廃されても、それでも拠出金を任意に銀行が出したいと言ってきたときには、それを断る理由は僕はほとんどないと思うんですね。だから、別に八%じゃなくてもいいですよ、ゼロでも買い取れるということが制度化されただけであって、八パー出しますよとか、四パー出しますよとか、そういうようなことを条件にして銀行が売りに来るということは、僕は理論的にはあり得る話だと思っているんです。
 つまり、ゼロだったら買わないよ、あなたのこの銘柄は四%だったら買ってあげるよ、八%だったら買ってあげるよ、そういうような条件をつけるということは、僕は法律違反にはならないと思っているんです。ゼロだったら買えないというのは、国民負担を最小化することが必要だという先ほどの大臣の答弁もそうだし、前任の柳澤さんの答弁でもそうでした。ゼロだったら買えないという発想は当然だと思うんですけれども、加えて、四パーだろうが六パーだろうが、妥当な金額の拠出金を任意で持ってきてくれたらそれは買ってあげる、そういう姿勢も、国民を守るという観点から僕は十分にあり得ると思っているんですが、検討の余地はありませんか。
竹中国務大臣 私、先ほど使い勝手という言葉を申し上げましたけれども、二通りの意味があるかと思います。一つは、拠出金を出すということで、これはコストを伴うというのが、現実に、使う方から見ると、一つの使いづらさになっていたんだと思うんです。しかし、もう一つ、拠出金を出すことによって、バランスシート上いつまでもその資産がつながっている、オフバランス化にならない、この点も実は使い勝手の問題としてはあったのではないかと私は思います。
 今の委員の御指摘は、任意で何か出すといった場合にどうするかということでありますが、これは現実問題として、任意に積むというのは、どうなるんでしょうか。一種の預け金のようなものになるのか、むしろそれは寄附というふうにみなされるのか、税制上の問題もちょっとクリアしなけりゃいけない点よくわかりませんが、現実問題として、使い勝手が悪いということで今回のような議論をしていただいているわけでありますので、委員の国民負担の最小化というお気持ちはもちろんわかるわけでありますが、現実の政策論としてはいかがでしょうか。そういうことは余り想定されないということなのではないかと思っております。
永田委員 短く答弁してください。ゼロだったら買えない、要するに拠出金がなかったら買ってあげないというのは、国民負担を最小限にしようとする政府の立場としては僕は当然だと思うんですけれども、そういう判断はしないんですか。拠出金がなかったら買わない、申し込みがあっても受け付けないと。
竹中国務大臣 拠出金というのは売却時拠出金ですね、当然。それがゼロであれば買わないか。まさにそういうことはこの法律の中では想定していないわけであります。
永田委員 ということは、柳澤大臣が繰り返し答弁をしていた、国民負担の観点からしても、八%条項が必要だというふうに言っていたあの答弁を修正されるわけですね。あれとは方針が変わるわけですね、金融庁としても。その変わるということを確認したいんです。
竹中国務大臣 今回法案を提出していただいている趣旨というのは、その後のさまざまな状況変化にかんがみて、システムを新しくしよう。そのシステムを新しくする中で、八%の拠出金はなくすけれども、先ほど申し上げましたように、存続期間、つまり売却可能期間を長くすることによって、もって国民負担の軽減を図っていこう。そういう国民負担をできるだけ軽減したいという思いは変わっていないわけで、その仕組みを実情に合わせて今変更しようとしているというふうに理解をしております。
永田委員 提出者にもお伺いしたいんですが、存続期間が十年と定められていて一年ちょっとしかたっていないものが、九年近くも存続期間が残っているのに五年延長するというのは、僕は聞いたことがないんですね。そんな延長の仕方をしている制度というのは前例があるんでしょうか。なぜそのようなことが必要なのか。
 今回のテロ対策特別措置法だってそうですよ。最後の期限切れの直前になって、いやいや、過去に行ってきたがこうこうこうだった、それを総括すればこれからも必要だと、現状判断も加えてやっていくのが普通の延長のあり方だと僕は思いますけれども、九年残っているものを五年延長するというのは僕は聞いたことがないんですが、どういうような考え方でそれをやっているのか、教えてください。
上田(勇)議員 今いろいろな御質問がありましたけれども、その中で、存続期間、今の時点で五年間を延長するのはどういうことかという御質問だというふうに受けとめました。
 今回の改正でこれを延ばす理由は、できるだけ売却する期間を長くとることによりまして、その時々の情勢、市場等を勘案した上でできるだけ有利な条件で売却できるように、そうした選択肢を拡大するという意味から売却の期間を延長したという趣旨で今回延長させていただいております。
永田委員 違うんですよ。九年残っているものを五年延長したというケースを僕は見たことがありません。そんなことはあり得るんですか。普通は、最後の一年ぐらいになって、今までは何をやってきたかを総括して、現状認識を加えてこれからも必要だという判断をするんでしょう。どうして今から五年間延長することが必要だという判断になるのか、教えてください。
上田(勇)議員 あらかじめ想定していた期間でそれを処理するよりも、できるだけ期間を長くとって、その中でできる限り有利な条件のもとで売却できる可能性をあらかじめ想定していくということでありますので、それをぎりぎりにならなければ期間を延長してはいけないというようなことではなくて、できる限り選択肢を広くとっておくという意味から今回の期間を延長しているということでありますので、今委員がおっしゃったように、最後の年にならなければそれまでの継続をしてはいけないというようなことはないんだろうというふうに思っております。
 事例とかについては、私、ちょっと今承知いたしておりませんけれども、必ずしも、全部最後の年に期間を延長するように、あらゆる制度がそれに限られているというふうには思っておりません。
永田委員 過去において、存続期間が一年以上あるようなものが延長されたという事例があったら、調べてこの委員会に報告をしてください。これは重要なポイントです。
 先ほど御本人がおっしゃったとおり、今回の法案の改正の大きなポイントは二つあって、一つは八%条項の撤廃と、もう一つは存続期間の延長ですから、この大きな柱の議論をする上で、過去において、そんな一年以上ないしは九年でも、あるいは存続期間の半分以上が残っているようなものが延長されたという事例があるのかどうか、ぜひ調べてこの委員会に報告してください。これは議論の前提になりますので、それが終わるまでは質疑は終局しないということを指摘しておきたいと思います。
 それから、ちょっと竹中大臣に、昨日骨太の方針が発表されたので、これは通告はなかったんですが、お答えできる範囲でいいので質問をしたいというふうに思っております。
 今回の骨太の方針は、当然、経済財政諮問会議の中で議論されて出てきたわけで、骨太の方針というのは、閣議決定もする、政府における重要な方針だというふうに考えています。
 政府が重要な方針を決定するに当たって、我々が重視するのは施政方針演説なんですよ。例えば、通常国会の冒頭で、これから予算が審議される、そのときに、ことし一年間はどういうふうに政治をやっていきますということを政府が方針を表明するわけであって、これは大変大事なものなんですよ。これと比べると、この骨太の方針はどれぐらい重要なんですか。何か重要度に優劣があるんですか。
竹中国務大臣 施政方針演説は、もちろん総理御自身の政策に向かう姿勢を、御自分の言葉でお話しになるものである。議会に向けて、その向こうにいる国民に向けてお話しになるものである。骨太の方針というのは、内閣としての意思、基本方針でございます。諮問会議で議論しますが、諮問会議の議長は総理御自身でいらっしゃって、閣議決定も、もちろん総理が議長をされる閣議で決める。その意味では、まさに総理主導の政策を支える重要な枠組みになっているというふうに考えております。
 どちらが重要だとか、役割分担とかということに関しては、これは、総理がまさに総理としての方針を施政方針演説で示す。閣議決定でありますから、今度は、それをより具体的な姿で各省とも相談をしながら、また、与党の皆さんとも相談をしながら、一つの方向として、まさに内閣としての決定をする。その意味では、施政方針演説の枠に沿って、総理がリーダーシップを発揮されて、政策の基本方針であるけれども、具体的な基本方針を決めたのが骨太の方針であるというふうに理解をしております。
永田委員 僕の受けた印象からすれば、これはどっちも非常に重要だ、どっちもないがしろにしていい話ではなくて、かなりプライオリティーの高い、非常に強い方針だというふうに思っているので、本当は本会議で発表して質疑をするべきじゃないかなというふうに僕は思っているんです。やはり手続としては、内閣がこれだけ重要な方針を発表したわけですから、その方が僕はいいのじゃないかと思っているのですが、大臣の個人的なお考えはいかがですか。これは国会運営の話なんで、言いにくいかもしれませんけれども、これはここだけの話という感じで。
竹中国務大臣 今回、骨太の方針にあわせて、実は各省庁の十一の審議会、委員会が中間報告や報告書を出して、この骨太の方針の中に盛り込んでほしいと。骨太の方針がそれだけ重要な基本的な枠組みであるということが定着してきたものというふうに思っております。
 もちろん、委員言われましたように、我々は、国会の運営の御方針に沿って前向きに、どのような問題についても対応させていただく立場にあると思っておりますので、これまでも骨太の方針が出た後、いろいろな委員会で御議論をいただいてきたというふうに思っておりますし、我々としても、ぜひ前向きに対応すべき問題であると思っております。
永田委員 これは自民党の了承をとっていますね、閣議決定する前に。どうして自民党の了承をとる必要があったのか、教えてください。(発言する者あり)与党と言ってもいいんですが。
竹中国務大臣 御指摘のとおり、自民党だけではなく、公明党、保守新党、与党の了承をいただいております。これは、閣議決定をするということでありますので、内閣と与党は一体で政策を責任を持って遂行していくという立場にありますので、従来も閣議決定のものに関してはこのような手続をとらせていただいたというふうに思っておりますし、骨太についても、まさに政府・与党一体で議論を重ねて閣議決定に至ったわけでございます。
永田委員 けさの新聞、これはたしか読売だったかな、インタビューにお出になられていて、「法律改正を伴うものもあり、議院内閣制である以上、具体的な制度設計の段階で与党と相談するのは自然なことだ」というお話をなされています。
 まあお気持ちとしてはわかりますが、実は、今まで提出された内閣提出の法案で、民主党が賛成するものが六〇%以上に上っているわけで、閣法の中で民主党が賛成するものもかなり多いんですね。
 そこで、自民党の中で一部の人が反対しているようなものも、野党の賛成を得て成立させていくというような意思はないんですか。
竹中国務大臣 私は、政策全般についてそのようなことを申し上げる立場にはありませんが、総理は国会答弁で、協力してくれる方は皆味方であるというふうに言っておられると思います。
永田委員 だから、別に民主党の了承をとれとは僕は言いませんけれども、ある程度説明をして、今回の自民党の修正点の中にも、もっともだと思うところもあるというふうに大臣はおっしゃっていますね、要するにお知恵を出して。うちもそれなりに知恵は持っているつもりなので、民主党が了承しなかったら閣議決定できないという、そこまで縛るつもりはありませんけれども、事前にちゃんと説明をして、うちの知恵も入れたものを閣議決定したら、より一層成立しやすくなるんじゃないかと僕は思うんですけれども、そういう手続をとるつもりはないんですか。
竹中国務大臣 就任して一年目の骨太のときから、もちろん与党も野党も、それと民間のシンクタンクも一般の方々も労働組合も、政策提言があれば、どうぞインプットをしていただきたい、そのようなインプットを踏まえて諮問会議で議論をして、いい案を練り上げたいということは申し上げてきたつもりでございます。
 その意味では、永田先生初め先生方の議論も我々も勉強しているつもりでありますが、そういう提言、提案があれば、我々もぜひしっかりと勉強をさせていただきたいと思っております。
永田委員 いや、そうでなくて、せっかく方針を決定するんであれば、その方針が国会でより一層円滑に審議されて実現できるように野党にも説明をして、なおかつ注文をある程度聞くという機会をつくった方が、何も民主党の了解がなかったら閣議決定してはだめだ、そんなことを言うつもりはないんですよ。知恵を出す機会ぐらい与えていただいた方が親切なんじゃないのかなというふうに思っているんですが、今後そのような手続に変更するつもりはありませんか。
竹中国務大臣 我々としては、まず政府としての基本方針を決めるということでございますので、政府の中での手続、与党とあわせた手続を粛々ととっているというのが現状でございます。
 ただ、これまでもそうでありましたが、こういった問題について説明するようにというのは、これは内閣府のみならず各省に対して御要請があるときは、そうしたケースに応じて、積極的に御説明の機会は持たせていただいているのではないかと思っております。
 そのような説明をせいというようなことがありましたら、我々としても、説明するということに関しては積極的に御説明をしなければいけないと思っておりますので、お呼びかけをいただければありがたいと思います。
永田委員 政府としての方針を決定するわけですからという言葉を使われましたが、与党は厳密に言うと政府ではないんですね。内閣が政府なんであって、与党は厳密に言えば政府ではないんですよ。ですから、与党の了解をとる必要は手続上はないんですね。法律上、どこにもそんな根拠はないんですよ。そんなことをやらなければいけない根拠というのはどこにも書いてないんですね。
 特に、経済財政諮問会議というものがつくられた背景、社会的な議論とか国会での議論というものを思い起こしていただければわかると思いますが、まずは内閣主導の政策決定というものが強くうたわれた時期だったんですよ。今でもその熱は衰えていないと僕は思います。
 そして、内閣主導の政策決定をするために、構成員についても、十一名以下ということになっていますが、内閣官房長官と経済財政担当大臣以外の議員は法定しない、民間有識者の人数を議員数の四割以上確保するということまでうたわれているわけですね。つまり、民間有識者の意見をできるだけ酌み取っていこう、そして、そこで決定された内閣の方針を総理のリーダーシップのもとに強力に推進していこう、これが経済財政諮問会議に期待された役割なんですよ。
 それを、いやいや、決定された方針はできるだけ円滑に実現されなければならないから、事前に、決定する前に与党と相談しておこうというのは、当時の議論をないがしろにするものになるんですよ。わかりますか。それについて、内閣主導の政策決定を期待されてつくられた経済財政諮問会議の方針を決定する上で、事前に与党の了承をとることがどうして正当化されるのか、答えてください。
竹中国務大臣 委員御指摘のように、今、与党の先生方と相談して、政調、政審、自民党でいいましたら総務会等々で御了承いただいて、それで閣議決定する、そのような手続が何らかの法律的な枠組みで決められているというわけでは全くございません。これは言うまでもありませんが、まさに議院内閣制の運営をどのように考えるかという、その判断の問題に帰着するということになると思います。
 委員御指摘のように、内閣主導、特に総理のリーダーシップが発揮しやすいように、そのために知恵の場としての内閣府がつくられ、そこに、その知恵の集積の場としての経済財政諮問会議が設けられている。そこには民間人も一定割合以上入れるという枠組みを決めている。
 我々としましては、そもそも骨太の方針をまず閣議決定する必要があるかどうか、これは判断であります。閣議決定しなくてもよいのではないかという議論も当初はもちろんございました。しかし、これを内閣として、全体の方針として位置づけるという意味では、閣議決定をやはりさせていただきたい。閣議決定をするということに当たっては、議院内閣制のこれまでの円滑な運用のもとで、やはり与党の了承を得て、基本方針として決めたからには、これが円滑に運用されるようなものにしていきたい。
 我々としては、そもそもこの骨太の方針を閣議決定するかどうか、閣議決定するに当たって、議院内閣制のもとで与党とどのような協力体制をとっていくか、これは、それぞれについて円滑な実施をできるだけ保証できるようにということを前提に、具体的には総理の御判断で今のような運営を行っているわけでございます。
永田委員 これはまことに罪深いことなんですよ。
 議院内閣制の運用についてどのような形が望ましいと考えるか、判断の問題だというふうに先ほどおっしゃいましたけれども、まさにそうなんですよ。議院内閣制のあり方として、この経済財政諮問会議がつくられた当時は、内閣主導の政策決定が望ましいという判断があったわけですよ。それは小泉総理が誕生したときに試みられたような、与党の事前審査制の廃止というところまで熱は高まっていたわけですよ。
 それを与党の事前審査制にかけるということはどういうことかというと、経済財政諮問会議のメンバーを十一人に限り、民間有識者の人数を四割以上にしなければいけないと定めた規定をないがしろにするものなんですよ。何の権限があって与党の人が口を出すんですか。経済財政諮問会議のあり方を根底から覆してしまう、根本から変えてしまうものなんですよ。だから罪深いと言っているんです。こんなことをやってはいけないんですよ。わかりますか。どう思いますか。
 これは何のために委員の人数を限り、何のために民間有識者の人数を四名としているのか。与党の事前審査の中で四十カ所も修正させたら、この制度がないがしろになってしまうということについて、どういうような見解をお持ちなのか教えてください。
竹中国務大臣 経済財政諮問会議というのは、まさに総理から諮問されたことを調査審議する場所でございます。調査審議する場所で、総理のリーダーシップのもとで骨太の方針というのが決定される。それをまさに総理の御意思で、与党と協力しながらこれを実践に移していきたい。これはまさに、内閣としての意思、判断でございます。そうした観点から、与党での議論も十分にいただいて閣議決定をさせていただいて、それを着実に実行に移していけるようにしたい。
 これはまさに、諮問会議をどのように活用するかという、総理御自身の一つの方針に基づいて今運営が行われているというふうに理解をしております。
永田委員 「経済財政諮問会議について」という諮問会議のホームページに載っている文章の、一番の「性格」と書いてあるところに、「内閣総理大臣のリーダーシップを十全に発揮することを目的として、」と書いてあるわけですよ。
 内閣総理大臣のリーダーシップを十全に発揮するということは、当時の議論からすれば、これは与党じゃなくて内閣が主導してやるんだ、総理大臣が内閣を主導して、リーダーシップを発揮して政策を決定していくんだ、そういう議論の中から生まれてきた文章なんですよ。それを、総理のリーダーシップのもと、与党と協力しながらというのは言語矛盾なんですよ。
 説明してお知恵を拝借するのはいいですよ。我々の知恵も入れてくださいというのはそういう意味なんですよ。与党だけと事前に、しかも、調査審議する場所だといいますけれども、調査審議するだけだったら、何も与党に説明する必要なんかないんですよ。これは、方針を決めて閣議決定するから与党と相談をするわけでしょう。単に調査審議した内容を報告する、諮問に対して回答するだけだったら、多分、与党も何も言わないと思うんですよ。問題なのは、政府の経済運営、財政運営について、重要な方針を決定して閣議決定するから与党が口を出してくるんでしょう。
 だから、そこのところは、当時の政治改革の議論をまことにないがしろにしかねない、罪深い話なんですよ。ぜひ、本来あるべき姿に直していただきたいというふうに最後に申し上げておきますので、大臣からの答弁、最後にいただきたいと思います。
 それと総裁、随分長い間お待ちいただきましたが、ありがとうございました。提出者の方々、さっき申し上げた前例の部分、ぜひ御報告いただきたいと思いますので、お待ちしております。
 大臣、最後に一言お願いします。
竹中国務大臣 諮問会議は、まさに知恵の場として調査審議する場所でございます。それに関しては、永田先生初め皆様方から提言等々、インプットがございましたら、ぜひいろいろとお教えをいただきたいというふうに思っております。
 諮問会議の運営に関しましては引き続き総理と御相談をさせていただきたいと思いますが、総理は、今の枠組みでしっかりと運用するようにという基本的なお考えをお持ちであるというふうに理解をしております。
永田委員 終わります。ありがとうございました。
小坂委員長 次に、植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。
 きょうは、この議員提出の法案の審議も最後の方でちょこっとできればと思いますが、幾つか、その前提についておさらいをさせていただければなと思っております。
 まず、御足労いただきました財務大臣、お昼のときに大変済みません。冒頭、財務大臣にお伺いしますよと通告をいたしておりましたが、今回のこの取得機構という制度そのものにかかわって、昨年の七月十七日なんですけれども、議事録をおさらいしますと、当時、自由党の中塚委員の質問に答えられて、財務大臣は、この取得機構という制度そのものにかかわって、これも一つの非常に有効な手段である、たしかそういうふうにおっしゃっておられるんですが、その一方、「この制度は、決して市場原理を尊重する現在の資本主義社会から見たら余りいい制度じゃないとは私も思います」というふうに御答弁をされておられるわけです。
 要は、昨年、改正案が出たときに、当然、提案者にそんな水差すようなことも言われへんから、まあ非常に有効な手段だなということも言わなあかんけれども、やはり内心のところは、現在の資本主義社会から見た場合、余りいい制度じゃない、そういう正直かつ正常な感覚でお話をされたというふうに承ったわけですが、その御認識は現在においても御同様であられますか。
塩川国務大臣 去年の七月でございましたか、私、答弁したと思っております。
 現在でも、その考え方、大して相違はございません。
植田委員 ありがとうございました。
 要は、「この制度は、決して市場原理を尊重する現在の資本主義社会から見たら余りいい制度じゃない」、そういうお考えにも変わりがないというふうなことでございました。
 私が財務大臣に確認したかったのはその一点でございますので、お昼でもございますので、あとはお昼ゆっくりお食べいただければと思います。どうぞ御退席ください。
 だれが見ても、別に財務大臣の答弁をとらなくても、少なくとも、程度の差はあれ、余りいい制度じゃない制度が約二年前に出発したということは共有できるわけです。
 そこで、これもおさらいです。これは金融担当大臣に伺いたいと思います。
 約二年前になりますが、当時、柳澤金融担当大臣の時代でございました。幾つか当時の立法趣旨にかかわっての柳澤大臣の答弁を拾ってみますと、銀行保有株の円滑な処理、銀行の株式の保有制限という、そういう措置からする論理必然的な帰結、株式の保有制限をスタートにして考えた措置、保有制限から系として出てくる命題、いろいろと難しいことをおっしゃっているわけですが、要は、銀行保有株を制限する、それに当たっての対応として取得機構を創設したんですよというのが政府の立法趣旨だったわけですね。
 それについてはそのとおりという答弁だろうと思いますが、竹中大臣、一応お願いします。
竹中国務大臣 当時の柳澤金融担当大臣の御答弁、昨年の十一月のものかと思われますが、基本的には、今おっしゃった、保有制限ということからということについては、そのとおりであろうかと思っております。
植田委員 ということは、この法律というのは、そもそも、銀行等保有株式取得制限法というべきでありまして、当然ながら、決して取得機構のスキームが先にあったわけではない。あくまでも取得機構というものは、銀行の保有株取得制限を円滑に促進する、進める道具であるというふうに理解させていただいてよろしいんでしょうか。
    〔委員長退席、林田委員長代理着席〕
竹中国務大臣 おっしゃるとおりでございます。
植田委員 ならば、まず昨年七月、政府提案の法律が成立して一年を経ずして改正案が出たわけですが、昨年七月の議員立法の趣旨というものは、竹中大臣はどう御理解なさっているんでしょうか。
竹中国務大臣 昨年の議員提案による改正の趣旨のお尋ねでありますけれども、保有制限の導入によって銀行による事業法人株が処分される、そのいわば反射的な影響といいますか、それに対応する形で、事業法人が持ち合っている銀行株を処分するという動きが現実にはやはり存在しているわけであります。
 したがって、株式保有制限の導入に伴って、それの反射的な影響に対応するため、機構の役割の延長線上として、事業法人の保有する株式を買い取るということを機能として追加した、それが昨年の改正の趣旨であったというふうに思っております。
植田委員 当時、このことを柳澤大臣に聞きますと、恐らく本音のところでは非常に内心不服だったような答弁が多かったわけですが、当時の柳澤担当大臣は、機構ができて以降の延長線上というおっしゃり方はなさりませんでした。
 政府提案の法律は株式の保有制限ということに着目した、恐らくは、推察するところと当時の柳澤大臣はおっしゃっていましたが、推察するところ、議員立法は持ち合いの解消の動きに着目をして出されたんだろうと思うというふうにおっしゃられていたわけです。
 その点、ややこれは、柳澤大臣の当時の幾つかの答弁と今の竹中大臣の御答弁が、特段整合性がないということで聞き返すわけではありませんが、政府案の延長線上に持ち合い解消の促進というものがあるというのは、一体どういうところに、要するに連結しているとおっしゃるわけですから、その点について御教示いただけますか。去年の七月のものですよ。
竹中国務大臣 先ほど申し上げましたように、一種の反射的な動きがあるんだというふうな表現をさせていただいたつもりでありますけれども、そもそもは、銀行の株式保有制限というのであの議論はスタートしています。しかし、現実問題としては、それにちょうど反射的に呼応する形で、相互の持ち株を放出する。事業会社から見ると、事業会社自身は別に持ち株比率の制限をかけられているわけではありませんけれども、銀行の放出に伴って、相互の持ち合いを解消していこうという動きが当然のことながらある。
 我々としては、政策目標である銀行の持ち株保有制限を実現するために、それのリアクションとして出てくる事業会社の行動に対してもきちっとこれをカバーしていくことが、まさに法律本来の目的を達するために、したがって、当初の法律の延長線上でやはり必要な措置であるというふうに考えたわけでございます。
植田委員 というと、そこは去年の答弁とは別にそんなに乖離しているわけじゃないんですが。
 そこで、持ち合い解消の動きに着目して、それが、取得機構をこしらえて保有制限をかける、かけてそれを促進する、その延長線上で持ち合い解消の動きに着目しなければならないということであるとするのであれば、当然、政府案が提案されたのが一昨年の十月でしたか、約二年前と去年の七月との間で、少なくとも、持ち合い解消に光を当てた法改正をしなければならないような、持ち合い解消の促進に向けて障害があったということが当然立証されなければならなかったと思うんですが、その点はいかがでございますか、竹中大臣。
竹中国務大臣 委員のお尋ねは、私が申し上げた、反射的な行動としての事業会社の本質のようなものをどのように立証するかという、ないしは立証できるのかというお尋ねであろうかと思います。
 こういった行為についての立証というのは、統計的に何かやるというのは大変難しいわけでございますが、これは経済実態を踏まえた一つの判断として、現実に当事者もそういった意見を随所でいろいろおっしゃっていたというふうに思いますし、まさに経済の現象として、我々としてはそのように判断できる状況にあった、私はそのように思っております。
植田委員 もちろん、去年の七月当時法案を出された方々がその立証責任を第一義的に持つだろうと思いますので、そこは酷かもしれませんが、そもそもは政府の責任で出された法律をその都度いじっているわけですから、そのことについての御認識はやはり政府の責任者たる竹中さんに伺わなければならないんです。
 今おっしゃったような抽象的な御説明をなさらずとも、では、現実に持ち合いの解消がどんな流れをたどっているかということは、これは一つの、いわばそれを理由づける根拠になるだろうと思うんですよ。
 しかし、これは、それこそ一昨年の十月、そもそも政府案が出されたときに、当時の村田副大臣に私自身尋ねたんですけれども、これは政府案が出された段階ですよ、取得機構をこしらえる段階、十月の二十六日ですけれども、例えばこういう言い方をされていたんですよ。「株式の持ち合いにつきましては、企業と銀行との関係を含みます昨今の社会経済情勢の変化等を踏まえまして、銀行と事業会社双方において、双方の経営戦略に基づきましてポートフォリオの見直しが行われてきた、その結果、持ち合いの解消が進んでいる」と。要するに、民間レベルで持ち合いの解消はそれぞれ主体的になさっておられるというのが政府の認識だったわけです。
 ですから、先ほど伺ったように、そうした政府案の段階では、持ち合いの解消に着目するという問題意識が、要するに持ち合い解消は進んでいるわけですから、そういった問題意識が必ずしも政府案には投影されていなかった。投影されていないがゆえに、一昨年の十月にこうして審議された後成立したこの法律が、七月になったら、今度は持ち合いの解消に着目しなければならなくなった。延長線上でとおっしゃいましたから、当初、政府案が出た段階での問題意識から、大きく事実認識が変わっていなければならないと思うんです。
 少なくとも、議員立法であろうが、それを了とされている政府としては、どういうふうに一昨年から昨年の七月までの間で変化を見たのかということは、いろいろ見ました、いろいろありますということではやや首肯しかねますので、もう一度、竹中大臣お願いします。
竹中国務大臣 今御指摘をいただきました、当時の村田副大臣の答弁そのものをちょっと今私は確認できないのでありますが、現実問題として、株式持ち合いの解消というのは、九〇年代以降、時間をかけてかなり大きなスケールで進んできたと思っております。村田副大臣は恐らく、そういったことは進んできているという御認識を事実として示されたのだというふうに思いますが、私の認識では、その後、持ち合い株の解消が、銀行の持ち株保有制限を契機に、さらに事業会社の方でも積極的に進めるというようなアクションをとったのではないかというふうに思っております。
 今回の法律、この措置は、あくまでも、株式が一気に出てくることに対するセーフティーネット、福井総裁はショックアブソーバーが必要だというふうにおっしゃいましたけれども、そういった意味では、事業会社から見た持ち合い解消がさらに進んで、それがショックとして認識しなければいけないということが昨年の段階で強く認識されたのではないかというふうに思っております。
 どのぐらい事業会社が持ち合い株を持っているか、いろいろな議論があるようでございますけれども、実際のところ、先ほどから申し上げておりますように、銀行の保有制限の導入に伴って、銀行株を持っている事業会社の反射的な売りというものを、現実問題としてかなり大きく認識しなければいけない状況に昨年の時点では立ち至っていたんだというふうに思っております。
植田委員 今の竹中大臣のお話ですと、昨年七月段階で、相沢先生が議員立法として法案が出された時点で、今竹中大臣が御説明されたような現状にあったという理解が、少なくとも立法者でも、立法趣旨としてもそういう認識だったし、同様に、竹中大臣もそうした現状認識を持っていたという御説明としてまず理解いたします。
 そこで、実は昨年七月のときも、この持ち合いについて、政府案の議論のときは村田副大臣に伺ったんですが、昨年の七月段階で、持ち合いの解消は現実に進んでいるという認識ですねということを柳澤大臣に伺いました。
 といいますのは、去年のデータですから古いですけれども、私はこう聞いたんですよ。平成十年段階で全上場企業の発行株式に占める金融機関の保有株式の割合は三四・三%、それが十二年度に三〇%。着実に進んでいる。要は、民間レベル、社会経済情勢の変化によって、それぞれの経営戦略にのっとって持ち合い解消を進めているという現状にあるんですねと私は柳澤大臣に伺った。
 すると、柳澤大臣は、「そのように認識しております。」というふうに申し上げたわけです。現状認識は持ち合い解消が進んでいると。ただし、柳澤さんがおっしゃったのは、持ち合い解消が進んでいるという事実認識は持っているけれども、いずれ、言ってみれば、だんだん進むと難しい局面に入ってくるのではないか、そういう変化もあるんじゃないだろうかと。柳澤さんがおっしゃったんではなくて、柳澤さんの答弁の中では、そんなふうに提案者が考えてはるんと違いますやろかね、そういう御答弁やったわけです。
 となると、現状においては持ち合い解消が進んでいるけれども、そのうち何か困った事態になるかもしれないなという意図があるんでしょうねと柳澤大臣は推察されていました。要するに、柳澤さんは未来予測をされたわけです。
 そこは竹中さん、どうですか。というのは、今の話、ずっと私は現状認識を聞いていた。昨年七月段階での現状がどうかということと、その現状に立ったときの将来がどうなるかという心配と、これはちょっと違う話やろと思いますので、そうなると、御答弁の仕方によっては、柳澤大臣と竹中大臣の認識にはずれが出てくるなというふうにも思うんですが、それを埋めるのであれば、御答弁いただけますか。
竹中国務大臣 先ほどから私は、昨年の議論、説明者はこういう趣旨だったのじゃないだろうか、一昨年こういう趣旨だったのじゃないだろうかという一種の推察を申し上げているわけでありますけれども。
 今から振り返ってみましても、持ち合い解消に関しては、その時点で、かなり進んだという認識を当然持っていたんだと私は思います。しかし、その後、持ち合い解消がそれで終わるわけではなくて、さらにそれがどんどん進んでいく、そういうことをここ数年我々は見てきたのではないでしょうか。その意味では、柳澤大臣も、かなり現実には進んでいるという昨年の時点での認識と、しかし、今後さらにそういうものが進んでいくかもしれない、そういう認識を当然おっしゃったのではないかと思っております。
 ちなみに、銀行と事業法人の株式の持ち合いというのは、持ち合いの定義をどうするかによって、実はいろいろな人がいろいろなことを言っておられるんですが、なかなか正確な実態はつかめておりません。したがって、議論そのものが、大変印象的な、かなり進んだ、しかしこれからもとか、そういう議論になるわけでありますが。
 昨年の三月にあるシンクタンクが出した一つのめどとしては、銀行が持っている事業法人株十に対して、事業法人が持っている銀行株は大体三七%、四割弱だというのがありまして、その意味では、銀行の株式売却が進むにつれて、先ほどから申し上げているように、反射的にそのぐらいの、四割ぐらいの株が出てくる、それがやはりここ数年続いてきたということなのではないかと思っております。
    〔林田委員長代理退席、委員長着席〕
植田委員 よくわかる話なんですが、わからないところがありまして、さっきから私いろいろとぐちゃぐちゃと聞いていたんですが、要は、持ち合いの解消が進んでいるという認識が、そもそも政府の法案を提出した段階の政府の問題意識、現状認識としては持ち合い解消は進んでいたわけですね。進んでいるという認識を示しておられたわけですね。ですから、事業法人の株云々という話は、当初はそうしたことは入っていなかった。
 ですから、今回熊代先生等が出された法案と昨年七月の法案というのは、これは私は質的に同質のもので、昨年の法案を、言い方は、私、これで答弁されると困るんですが、いわば使い勝手のいいものにしようというようなものだろうと思います。
 ただ、昨年七月と政府が提案された法律の間には断絶があるんじゃないんですか。反射的にとか延長線上にとかおっしゃいますけれども、少なくとも、本来の取得機構が銀行保有株の制限を円滑に進めるためのいわば道具であるということからは、昨年七月以降は変質をしたというふうに認識せざるを得ないわけですが、その関係性はどうなんですか。断絶していないというのは先ほどからの答弁の繰り返しになるのかもしれませんけれども、もう一度、念のためお願いします。
竹中国務大臣 断絶という言葉でありますけれども、全く性格の違う法律になったというふうには、もちろん先ほどから申し上げているように思っておりません。
 ただ、当初の、銀行の株式保有の制限ということからスタートして、しかし、それを円滑に進めるためには、その向こう側にある、対面している事業会社について、より直接的な配慮が必要だということが明示的にこの法律の体系の中に昨年取り入れられた。そういう意味では、当初、必ずしも十分手当てがなされていなかったことについて、昨年以降、そのような手当てがなされてきた、そういう変化といいますか、違いといいますか、それは御指摘のとおり、私はあるんだと思います。
植田委員 その辺のところが、言ってみれば猫の目のように、年中行事みたいに、この法案、その都度その都度審議せないかぬ背景説明されたつもりかもしれませんが、私はそもそもの政府案にも反対しておりますので、取得機構を使い勝手よくするなんということ自体、私は容認はできないわけです。
 私の主観なり、いい悪いは別にしても、猫の目のように、この二年の間でころころと、ましてや期限延長までするような中身を持った法案が出されているわけです。要は、こうなると、逆に言うと、政府が出されたそもそもの法律がそれだけの生命力しか持ち得ていなかったということを、議員提案が去年そしてことし出されるということは、いみじくも示しているんじゃないでしょうか。
竹中国務大臣 二年前にお出ししてお認めいただいた当初の閣法が、その後の非常に厳しい経済の状況になかなか対応できなくて、それを補う観点から、大所高所から与党の方で御議論いただいて、議員提案をしていただいた。そういう意味では、先生がおっしゃっていることは理解できることだと思っております。
植田委員 まあ、そこはお認めになられるわけですから。状況が変わったから、こういうことになったんですと。私は、今回だって、それは、与党の提案の中の一点目のBIS規制に係る部分はどこかで手当てせぬとあかんわけですから、それ一つだけぴゅっと出してもらって処理すれば、こんな、野党が十五時間も質疑時間を要求するなんということはなかったように思うわけです。少なくとも、今の、やや気楽に竹中さん述べられたように、言ってみればそれだけの政府の法律の生命力というものがなかったということ自体は御理解いただけたと思います。
 そこで、実際に金融庁さんとしては、法律を執行する側でありますから、その法律に基づいて取得機構がいかに機能しているのか等々を含めて、当然、その都度検証していかなければならないわけでございますが、幾つか教えていただきたいわけです。
 といいますのは、今から聞くことも、これは当然、その後質疑をさせていただく議員提案に係る法案についてのいわば立法事実ともかかわってくると思うから、きのうも質問通告させていただいたんですが、事前から色よい返事はいただいていないんですが、改めて伺います。
 銀行の保有株式の処理状況にかかわって、まず、市場売却を含めた保有株式の処理状況。二点目、取得機構への売却状況。日銀への売却状況は、日銀に聞いてもわかるわけですが、当然把握されているでしょう。その三つが、少なくとも、取得機構が設立される以前、取得機構が設立されてから昨年七月の法案が施行されるまでの間、そして今回改正案が出されていますが、現行法が成立して以降、どういう動きになっているのかという点はどこまで把握されていますか。
伊藤副大臣 お答えさせていただきます。
 先生から三つの時期に分けてということでございますので、まず、平成十三年の三月期決算における主要行の株式の保有高は約三十三兆円でありまして、これを起点といたしますと、政府提出の法律が成立した平成十三年十一月二十一日に最も近い決算期であります平成十三年九月期決算における保有高は約二十七兆円でございまして、六兆円の減少となっているところでございます。
 次に、一部改正法が成立した平成十四年十二月十二日に最も近い決算時期であります平成十四年九月期決算における保有高は約二十一兆円でございまして、平成十三年の九月期決算から見ますと六兆円の減少となっております。
 さらに、直近の決算時期であります平成十五年三月期決算における保有高は約十五兆円でございまして、平成十四年九月期から見て五兆円の減少となっているところでございます。
 この数字は時価ベースによるものでございまして、減少額は売却や価格変動などの要因から構成されるものでありますので、市場への売却によるものだけを抽出するということは困難でございますので、その点は御理解をいただきたいというふうに思います。
 なお、銀行等株式取得機構の株式購入については、政府提出法案が施行されてから一部改正法の成立までの買い取り期間に対応する買い取り額が一千四百九十六億円、その後の買い取り額は六百八十五億円となっているところでございます。
 また、日銀においては、一部改正法の成立日に近い平成十四年十一月二十九日以降買い取りを実施しておりまして、これまでの買い取り実績は、平成十五年六月二十日現在、一兆四千六百六十八億円になっていると承知いたしております。
植田委員 これは昨晩もやりとりさせていただいたので、取得機構の買い入れの実績と保有残高の推移、これしか答えられませんねんという話でしたが、法執行上必要な数字というものについては、例えば保有株式の売却状況、これは銀行に聞けばわかる話と違うんでしょうかね。
 まあ、一つの目安にはなりますよ。目安にはなりますけれども、取得機構の購入実績は私も随分前にいただいていますから、そのとおりですが、実際、金融庁として答弁はできないとおっしゃいますが、少なくとも、法執行上、具体的に取得機構がどうした成果をおさめているのか、いないのか、それを検証するためのバックデータをそろえること自体、やる必要がないのか、やれないのか。もしやれないにせよ、やる必要がないにせよ、その理由は那辺にあるんでしょうか。
伊藤副大臣 売却は日々行われておりまして、私どもとしては、残高ベースで監督上見ているところがございます。そうした観点の中で、委員御指摘のような形の数字をお話しすることができないことについては御理解をいただきたいというふうに思います。
植田委員 御理解できませんと言っても、出てこないんですよね。それは昨晩もさんざんやりとりした話ですから、余り私もここで、今の話自体が、私は直接法案の審議にかかわる一つのバックデータになると思っておるということだけ申し上げておきます。
 むしろ、今申し上げた話は、今伊藤副大臣御答弁いただきましたけれども、本来でしたらば、提案者がそうしたことについても当然精査され、また掌握されているんだろうと私も確信しておりますので、それは後で立法事実にかかわるところでお伺いできればというふうに思います。
 時間がたってきましたけれども、あと幾つか、政府、そして日銀総裁にもお越しいただいているので、お話伺わなきゃならないんですが。
 これも昔の話になりますが、政府案が出たとき、この取得機構のスキームにかかわって、特別勘定、一般勘定にかかわって、当時の柳澤担当大臣がどういうふうにおっしゃっていたか。幾つかよったんですが、一番明確に述べておられる参議院の財政金融委員会で、公明党の山本保議員の御質問に答えて、柳澤大臣は、「特別勘定よりも一般勘定の方が順番からいっても先に出てくる話でございまして、一般勘定を我々は大いに活用したいという気持ちを持っているわけでございます。」というふうにおっしゃっておるわけです。あくまで当時の政府、提案者は、一般勘定が主であり、特別勘定は従である、当然ながら特別勘定には国民負担がついて回るわけですから。
 そこで、一般勘定の実績はいかがですか。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 機構の一般勘定での株式の買い取りは、主に証券会社によるETF等の組成あるいは事業法人による自社株取得のための買い取りを念頭に置いておりますが、去る六月三日に初めて六十七億五千万円の買い取りが行われたところでございます。
植田委員 えらいかわいらしい金額ですね。かわいらしい例ですね。
 柳澤さんは、順番からいっても一般勘定の方が先に出てくる話でございましてと。最近やっと出てきたんですね。そもそも政府が出された法案の趣旨とは違う実態になっている、これは事実として認めなければならないでしょう。
 なぜそうなったのかという話を伺うわけですが、ただ、いずれにせよ、事実上、この間、一般勘定の実績はなかったわけですね。となれば、当然ながら、特別勘定ばかり使われたということですが、これは国民負担という方向が結局強まっていると理解する以外にないと思いますが、いい悪い別ですよ、そういう方向に事実としては推移しておりますということは見てとれると思いますが、それだけ確認させてもらえますか。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 柳澤大臣が御答弁なさった当初、私どもも主体はまず一般勘定であるべきだと思っておりましたし、一般勘定でETFの組成でありますとか自社株買い取り、こういうのを大いに期待しておったところでございますが、実際には、組成するのに必要な株式、組成する側が必要とする株式と持っている株式とのミスマッチ等がございまして、あるいは価格面で問題があったりしまして、ETFの組成がなかなか進まなかった。
 その理由としましては、特にこういう株式下降局面では玉が足りないということもありますし、また、なかなか売ってこないというような状態もありまして、なかなか一般勘定がうまくいかなかったわけでございますが、今回、こういう新たな動きも出てまいりまして、これから、証券市場の発展という観点も踏まえまして、一般勘定が大いに活用されることを私どもとしても祈念しておるところでございます。
植田委員 正直なお話やと思うんですけれども、今私が伺ったのは、一般勘定が当てが外れたという話じゃのうて、当てが外れた結果、国民負担の方向が事実として強まってきているでしょうということを伺ったんですよ。その事実認識はどうなんですか。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 一般勘定がそういうふうに不振なことから、結果的には特別勘定の方が主体となっております。特別勘定の方の買い取り額が膨らんでおるわけでございますが、これは、今回の改正でも期間が延長される等、要するに、かなり長期にわたりまして有利なタイミングを見て売却することでございますので、一概に国民負担が増大するという方向にはならないと思っております。
植田委員 一般勘定で予定しているETF等々も、これは柳澤さんがおっしゃったように、実にテクニカルなことで難しいとおっしゃっていまして、要は、一般勘定というスキーム自体、こしらえはったときは、当時の柳澤大臣の答弁のように、何か期待をされていたのかもしれませんが、まるっきり空振りなわけですね。そもそも一般勘定というスキーム自体、結局は画餅やったんと違いますか。どうですか。
藤原政府参考人 私ども決してそういうふうに思っているわけではございません。
 いろいろな要因があると思います。ミスマッチがあったこともありますし、また、株価低下局面におきますとなかなか玉が出てこないというような、いろいろな要素が組み合わさった結果、こういう状況になっておりますが、最近におきまして第一号案件が出てきたわけでございますし、最近の若干の株価上昇の局面も踏まえますと、こういうものが今後出てくることを期待しておるところでございます。
植田委員 今まで当てが外れた、これからも期待していますと。
 いや、それはまあ、正直にお話しされているんで、その正直さは買いますけれども、そもそも政府が出された法案でしょう。それで状況が変わって、ミスマッチを起こしているの何のって、人ごとみたいに言うてもろたら困るんですよ。
 もし、政府提案で一昨年の秋に出した法案、それで十分に効果が見込めないと思うんやったら、議員立法で二回も今回みたいにやらぬでも、その都度政府の責任において法案を出せばいいわけですよ。でしょう。今みたいな局長の認識がおありならば。
 やはりそれは、役所にしても、それをいじったり何だりするのは、余りにこれは筋の悪い法案やなと内心思っているさかいに、言ってみれば、議員立法ということで提出されるのを、我々としても見詰めさせていただきますという姿勢になっているわけですよ。
 しかし、それは、議員立法は立法で、中身はともかく、出すのは自由ですわ。そもそも出した政府案に対する責任というものの所在は政府にあるわけでして、法を執行するのは金融庁ですから。今のような御答弁でいけば、そもそも一昨年出された法案自体が瑕疵あるものだと言わざるを得なくなります。それは申し上げておきます。
 最後、日銀福井総裁にお伺いをしたいんですが、いわゆる日銀の株の買い取りとこの取得機構の関係性は、先ほどかなり細かい議論がありましたので、そこは私の方は伺いません。
 二点だけ伺って終わりたいと思いますが、一つは、先ほど、そもそも政府が提案した段階での法案の趣旨は、銀行株式の保有制限法だなと何度も何度も竹中大臣に確認しましたが、当然ながら、日銀としてもそうした立法趣旨として理解をされているんだなということを確認した上で、現実に、取得機構と日銀を比較すれば明暗は明快なわけですけれども、日銀が後発であるにもかかわらず、先ほど伊藤副大臣が御説明いただきましたように、日銀の方の実績は非常に上がっておる、その一方で取得機構がなかなか進まない。明暗を分けた理由は那辺にあるとお考えか。この二点、日銀総裁に最後に伺って、終わります。
 提案者には、ちょっと時間がなくて申しわけございませんでした。
福井参考人 私どもも、政府の機構の当初の構想、これはやはり金融機関保有株式の削減努力を促す、そこを出発点にしてああいう仕組みができたというふうに理解しております。
 ただ、政府の機構の場合には、私どものやっております措置と比較していただきますとおわかりのとおり、買い入れ対象機関にしても、あるいは買い入れ対象株式の範囲にいたしましても、より範囲が広いということであります。
 私ども、昨年の秋以降、市場の状況を見ながら、ショックに対してより厳しく対応する、つまり緊急避難的色彩をより強めて市場に対する対応をしたということでありますので、金融機関保有株式のうちティア1を超える部分、しかもその株式の範囲につきましてもかなり限定的に絞り上げながら、スピードを上げて刈り取る、そういう措置をいたしました。つまり、一番問題の先鋭なところに早くはさみを入れてヘアカットをする、政府の方はもう少しじっくりと構えて、より幅の広い範囲でヘアカットしていただく、こういう組み合わせを意識しながら対応したということだと思います。
 そういう意味では、市場に対してより強く我々の方が乗り出していました。金融機関に対して株式の売却を促すインパクトはより強かったのかなというふうに今思いますけれども、これは両方相まって本当の効果が発揮できるというふうに考えております。
植田委員 終わります。
小坂委員長 次に、中塚一宏君。
中塚委員 株式買い取り機構なんですけれども、平成十三年でしたか、森内閣の緊急経済対策の中に株価対策としてこの機構が入っていまして、そういう意味では株価対策なんでしょうという話を、十三年の十月か十一月のこの委員会だったと思うんですが、聞かせてもらったことがあります。そうしたら、いや、株価対策ではありません、構造改革関連で銀行の保有株制限というのがかかるものだから、それを買っていくんですというふうな議論があったわけですね。
 私はそのときに、持ち合い解消というんだったら、事業法人の持っているものも買わなきゃだめなんじゃないですかと言いましたら、当時、柳澤担当大臣は、いや、その必要はないというふうに明確におっしゃいまして、大臣が明確におっしゃったものだから、翌年の改正案は政府提案ではなくなって、議員提案でしか出せなくなっちゃったわけですよ。
 それでまた今回、こうやって議員提案で改正案が出てくるということなんですが、どうも、本当にそのたびそのたびということで、つけ焼き刃的な印象が残るんですが、まず提案者の方にお伺いしますが、結局、今回の改正をすることによって、この株式保有機構の目的、それは一体何なんですか。株価対策なんですか、それとも金融システムの安定のためなんですか。そこは一体何なんでしょう。
熊代議員 この法律の目的は、目的に書いてありますとおり、BIS規制等、環境が厳しくなってまいりますので、それに対して持ち合い解消を図るというようなことでございまして、構造改革に資するということが一つの目的だと思いますが、同時に、構造改革をすれば、それは短期間に株式が市場に大量に、自然のままにしておけば出てくるということでございますから、それはディスターブ要因になる。そうすると、株価を下げる圧力が非常に強くなるだろうということでございますから、そういう面でのセーフティーネットの役割も果たさなければいけない、この両面だと思います。
 今回の改正も、その線に沿った改正だというふうに理解しております。
中塚委員 というわけで、BIS規制が変わることをにらんだ銀行の保有株の制限のためのものであるということと、あともう一つ、株価対策であるということ、その二つという御答弁ですね、今のですと。その二つのことということでよろしい、うなずいていただければ結構なんですが。
熊代議員 若干のニュアンスの違いがございますので。
 株価対策というのは、株価を維持するだけの対策という意味合いもありますので、そういう趣旨ではない。結果的に、構造改革を厳しく推し進めれば、株価が通常では考えられないほどの影響を受けるということですので、そのディスターバンスを避けるためのセーフティーネットという意味で株価にも関係ある、そういう趣旨でございます。
中塚委員 その二つの趣旨からいきますと、今回の改正は存続期間の延長ということと売却時拠出金の廃止ということが中身になっているんですが、まだ九年残っているものを五年延長するということで、それはBIS規制自身が延長されるかもしれないということもあってこういうことになっているのかもしれませんが、では、売却時拠出金をなくすことと今のお話というのは一体どういう関係があるんでしょう。
熊代議員 売却時拠出金が存在しますと、御承知のように、BIS規制上はオフバランスされないということでございますので、一番の目的からすると、かなり厳しいものがございます。
 そういうことで……(発言する者あり)いや、それは、税金をそこに注ぐ可能性をできるだけ少なくしようということであったわけでございますが、当時と株価の水準は相当変わってまいりました。そして、それとともに、八%を拠出すればオフバランス化されないということが銀行に非常に大きく意識されるということが当時よりは明白になったということでございますので、これをむしろ廃止しまして、使い勝手のいいものにして、そのかわり五年間延ばす、最終買い取りから十年間という十分な期間をとりまして、いいタイミングで株式を売却して、税金の損失を最小限にする、あるいはプラスになる可能性もあるわけでございますので、そういう趣旨の改正でございます。
中塚委員 何か今の話を聞いてもよくわからないんですけれども、八%の拠出金があるとBIS規制をクリアすることにはならないと。株価が下がっているということを、今株価のお話をされましたね。株価の状況もあり、それで八%をやめるんだということなんですが、今もう一つおっしゃったのは、税金による最後の穴埋め、国民負担ということとも関連をして八%というのがあったというお話なんですが、ということは、株が下がったら国民負担はやむを得ないということですか。
 今、株価が下がってきたから八%を廃止する、BIS規制もクリアせにゃいかぬ、そのためには八%がなくても、つまり国民負担がふえるリスクが大きくなってもやむを得ない、そういうふうなことなんですか。
熊代議員 あくまで可能性の問題でございますが、株は高いときに買えば損をこうむる可能性は高い。株が非常に低い段階になりますと……(発言する者あり)ですから、あくまでも確率の問題だと申し上げております。一〇〇%確実なことは株についてはないわけでありますからね。
 そういうことでありまして、今低い水準になりまして、例えば東証の平均の配当利回りというのは一%を超えておりまして、一・一八、ちょっと古いデータでございます、そういう状況でもございます。ですから、利回りだけで考えれば、かなり買いどきでもあると。
 そういう状況の中で、なおかつ株価のディスターバンスはあるということでございますので、株が安くなったので国民負担はやむを得ないという判断ではございません。国民負担を最少にする、あるいはプラスといいますか、むしろ収入の方が上回るということにするということも念頭に置いての措置でございます。
中塚委員 保有機構をそうやってつくって、初めは八%拠出金もあり、事法の株は買わないと言っていたのを買い、今度拠出金を廃止するということになったんですが、その間に、日本銀行の方でもこの株を買うということになって、さすがに後発組はいろいろなニーズをちゃんと受けとめていたのかどうかはわかりませんが、拠出金がなかったということもあって、大変好調のようですね。
 日本銀行の福井総裁にお伺いをいたしますが、好調である、買い入れ枠もふやしたということですけれども、この買い取り期限の延長ということについてはどういうふうにお考えなんでしょうか。議員提案では九年残っているのを五年延長するということですけれども、日本銀行の方は、この買い入れ期間はどういうふうにお考えなんでしょうか。
福井参考人 私どもは、昨年の秋以降、緊急避難的な対応としてやらせていただいております。したがいまして、期限はことしの九月末ということになっております。ただ、政策委員会の議決があれば一年間の延長は可能ということになっておりますけれども、現在の時点では、原則どおり九月末で買い入れを終了したいというふうに思っています。
中塚委員 緊急避難ということで、もうそれは終わるということですね。緊急避難の緊急というのは何が緊急なんでしょうか。
福井参考人 金融機関に対して、ティア1を超える株式保有を削減することが強制されたという状況、それから、昨年秋以降の持ち合い解消の動きがやや加速して、それもあって株式市場が不安定になった。したがいまして、株価変動の金融機関経営に対する悪い影響が増幅している、ひいては金融システムに対して悪い影響が及ぶ可能性がある、そういうふうなこと全体をひっくるめまして緊急的に対応する必要がある、こういうふうに考えた次第でございますが、今日までのところ、ティア1を超える部分の金融機関保有株式の処理というものが相当進んできている、こういうふうに判断しております。
中塚委員 今の御答弁ですと、さっき提案者の方にもお伺いしたんですが、やはり日本銀行としても株価対策という側面はあるわけですね。株式市場の、いろいろなアクシデントですか、今おっしゃったようなことをお聞きしていると、株価対策としての意味合いもあったというふうにお聞きしましたが、それはそれでよろしいんですか。
福井参考人 株価対策とおっしゃる意味が、株価の水準を一定のところで維持するとか、さらに株価の水準を押し上げるとかいうふうな意味の操作であれば、そういう意図ではございません。あくまで持ち合い解消の動きが株式市場に不安定な動きを加速する、そうしたことに対するショックを吸収する、和らげるというふうな意味合いでございます。
中塚委員 不安定な動きを与えないようにするというのは株価対策ということじゃないんですかね。株価対策というのは、上げることだけが株価対策じゃなくて、下がらないようにすることだって株価対策なんだと思いますよ。だって、普通はやらないことをやっているわけだし、先進国の中でも、それこそどこもやっていないようなオペレーションをされているわけですね。であるならば、上げることだけが株価対策ではなくて、やはり下がらないようにすることだって株価対策ということだと思うんですね。そこのところはいかがですか、今うなずいていらっしゃいますけれども。
福井参考人 私どもの措置の本当のねらい、究極のねらいは、繰り返し申し上げておりますとおり、株式市場に不規則な動きが生じて、それが結果として、金融システムあるいは日本の経済全体に対して強い悪い影響を及ぼす、金融システムでいえば、システムの不安を呼ぶリスクがある、そこを遮断するというのがねらいでございます。
中塚委員 今のところは延長しないというふうに、これから金融政策決定会合等でお話し合いになって、そこで決まればということなんでしょうが、延長はしないというお話が今あったと思うんです。ただ、買い取り枠自体にはまだ余裕ありますね。たしか設定したものの半分ぐらいだったと思うんですけれども、余裕がある。延長も考えていないというふうなお話だったと思いますが、そういう意味では、日本銀行がやってきた株式買い取りの目的というのは、一応これで所期の目標を達成した、そういうことでよろしいんでしょうか。
福井参考人 所期の目的を達成したとまではまだ言えないというふうに思いますが、当初懸念いたしましたような大きなショックは起こり得ないで済んでいるという意味では、相当程度目的は達成してきているということでございます。
 三兆円持っております今の限度というのは、ティア1を超える金融機関の保有株を、極端な場合には日本銀行が全部吸収してでも危機に対応しようという最大限の枠でありますので、最大限の枠を使い尽くすということはいいことでは必ずしもないわけでございます。それより以前の段階で目的のかなりの部分が達成されるということが私どもの本当のねらいでございます。
中塚委員 でも、結果として、当初設定した枠内でおさまっているわけですね。拡充した分までは食い込んでいませんよね、買っている株というのは。ということは、その枠を見せるという意味ではふやした効果はあったのかもしれないけれども、それでも、もう株式の買い取り申し込み自体はそんなにないということで、だからこそ期間も延長しないというふうなお考えだと思うんですけれども、そこのところは、所期の目的自体は大体達成できたということじゃないんですか。
福井参考人 ことしの春の状況では、かなり、毎月多額の金額で、日本銀行に対して株式の売却希望がございました。それに比べますと、月々の売却希望の額は減ってきておりますけれども、しかし、今でも引き続き売却が続いていることだけは事実でございます。
 したがいまして、今の時点で目的を全うしたというふうに必ずしも思っておりませんで、まだ九月まで少し時間の余裕もございます。九月末までの状況をよく見きわめながら、最終的に政策委員会で判断するということになろうと思います。
中塚委員 ちょっと違う話を伺いますが、この間、この委員会で生命保険の予定利率の引き下げ法案というのが審議をされまして、福井総裁は、金融審の生保の部会長をされていたことがありますね、以前。そのときに予定利率の引き下げのことを議論されていた責任者というか、部会長というお立場だったと思うんですが、銀行から買ってきた株の中に生命保険会社の株式というのは大体どれぐらいあるんですか。
福井参考人 日本銀行が買い取りました株式の銘柄につきましては、株式取引への不測の影響を避けるという趣旨から、対外公表はしない扱いにさせていただいております。その点は御容赦いただきたいと思います。
 ただ、御承知のとおり、もともと、大手の生命保険会社は相互会社の形をとっておりまして、株式はございません。上場株式銘柄自体、非常に少ないということで御推察いただきたいと思います。
中塚委員 予定利率引き下げ法案というのを審議会で議論する責任者であられ、今は日本銀行の総裁ということで、生保の株も、今のお話だとそんなにないのかほとんどないのかわかりませんけれども、株を持てるお立場にもなっているわけですね。そういう意味で伺いますけれども、予定利率引き下げ法案に対して、福井総裁はどういうふうなお考えをお持ちでしょうか。
福井参考人 御指摘のとおり、たしか二年前でしょうか、金融審議会の部会長として、生命保険会社の予定利率の引き下げに関する中間報告を出させていただきましたが、あのときの前提は、政府の措置によって一律予定利率の引き下げ措置をとるということは法制的にできないという前提のもとでの審議でございまして、そういう非常に限られた範囲内で、生命保険会社が自助努力で経営の刷新を行っていく過程に、予定利率の引き下げというものが、契約者の理解を得ながらそういう方法をとることが適当な場合があり得るのかあり得ないのか、あったとしてどういう方法が適当かという大変難しいテーマで、審議会のメンバーの知恵をすべて出していただいて、ああいう形の中間答申を出したということでございます。
 大前提は、契約者が直接参加できる意思決定のプロセスを確保するということと、経営者の判断の基礎となる生命保険会社のディスクロージャーの拡充というふうなことが重要だという点でございました。私個人、あるいは日本銀行の立場からいきましても、そうした物の考え方については今も首肯し得るところでございまして、現在国会に提出されておられます保険業法の改正案はこうした考え方を踏まえたものだというふうに考えております。
中塚委員 次に、今政府もどんどんと国債を発行して、国債バブルと言われるような状況になっているわけですが、金利がぽこんと上昇するような局面もありまして、将来、国債価格が下落する、あるいは金利が上昇するというときには、やはり金融機関の経営にも大変大きな影響を与えることになるのは間違いない。金融機関だけじゃなくて、日本銀行にも大きな影響を与えることになるんだろうというふうに思います、これだけ持っているわけですから。
 というふうに思いますが、今、日本銀行が金融システムの安定のために株を買っているわけですね。目的、そういうことですよね。金融システムを安定化させるために株を買っているということであるならば、将来、国債価格が下落をするというふうな局面に立ち至ったときに、今度は日本銀行に、国債をもっとたくさん買え、あるいは直接買えというふうな要求等が出てこないとも限りませんよね。
 そういう意味で、私は、株を日本銀行が買うということについて本当に心配しているわけです。いいか悪いかは別にして保有機構というのもあり、それに加えて日本銀行が買わなきゃいけないというふうな状況でもありますが、これで、株を買ってしまった日本銀行というのは、将来、国債が下落をするような局面に、国債だって買えばいいじゃないかというふうに言われかねないし、そして、そのときにちゃんと断ることができるのかどうかということがあると思うんですね。そこはいかがでしょう。
福井参考人 金融機関の保有国債だけでなくて、国債の増発とともに金融市場全体に国債発行残高が蓄積されつつある。これは、将来を展望いたしますと、それだけ金利変動リスクを大きく抱えた市場である。しかも、金融機関の消化のウエートが高いということは、改めて、将来、金融機関のバランスシートの上で金利変動リスクが顕現化する、そういう危険をはらんでいるというのはおっしゃるとおりだと思います。
 こうした問題は、しかしながら、今の時点から、すべての市場参加者、政策当局者、私どもも含めて、将来をある程度予見しながら動いていることであります。大前提としては、国債を大量にポートフォリオに組み込んできている金融機関自身がそのリスク管理の体制をより強化していく、これが大前提だろうと思います。
 もう一つは、政策的な立場からいきますと、長期金利の上昇というふうな現象が、日本経済全体が、今のような基盤が脆弱、将来の不確実性が高いというふうな状況でなくて、将来に向かって経済の状況がよくなっていくという展望、つまり経済の基盤もより強くなりつつ、将来展望がよくなるという背景のもとに金利上昇が始まる、それ以前の段階で不規則な金利上昇ということが起こらないようにしながら、いい形で金利上昇が起こっていくというふうに持っていくことが次の大きなテーマであります。
 しかし、そういうふうに経済のバックグラウンドがよくなりつつ、長期金利が上がる局面にありましても、国債の発行残高が多い場合には、市場の中で期待が期待を悪い方向に呼ぶという形で、これはリスクプレミアムが上がるという形で、金利の反乱を招くリスクはやはりあるということでございます。
 したがいまして、その点についても、金融政策としては、単に国債を買えばその問題がおさまるというほどストレートな問題ではないというふうに思っておりまして、経済がよくなる情勢の中で、金利との関係の中で期待の安定化を図るためにさまざまな工夫がいる。同時に、政府の方におかれましても国債管理政策の面ではやはり十分に知恵を出していただければ、そういうふうに願っているところでございます。
中塚委員 もちろん、景気がよくなりながら金利が上がっていくというのは一番望ましい状況なわけなんですけれども、そういった中でも気になるのが日本の貯蓄率の低下ということなんです。少子高齢化ということが言われておりますから、その方向で貯蓄率も低下していくということになるんだと思うんですね。先進国なんかと比べて、貯蓄率低下のトレンドは割と早いようになっているというふうに見ておりますが、そのことについて、日本銀行としてはどういうお考えをお持ちでしょう。
福井参考人 貯蓄率の統計、いろいろな見方があるんですけれども、一番代表的なSNAベースの貯蓄率の推移を見ますと、日本の貯蓄率は他の先進国よりもレベルとしては高いんですけれども、一九七〇年代以降の推移を見ますと一貫して低下している、御指摘のとおりでございます。
 背景を分析することはなかなか容易でないんですけれども、私どもは、一応、相対的に貯蓄率が低い高齢者人口が趨勢的に増加している、これが一番大きな背景ではないか。それから、ごく最近における貯蓄率の低下には、所得が全般的に伸び悩んでいる中で、消費性向が高まっているということが影響しているんではないかというふうに考えております。
中塚委員 そういう中で、国債の価格の先行きも大変に重要な問題になってくるわけなんですが、国債も買いながら、今度、資産担保証券をお買いになるということですね。それをオペレーションに加えるということなんですが、その資産担保証券について伺いますけれども、これは株式買い取りよりもより投機的ランクまで買い取りの範疇に入るということですけれども、そういうふうにされたのはどうしてなんでしょう。
福井参考人 資産担保証券の買い入れ措置に日本銀行が踏み込むことを判断いたしました理由は、最大のものは、やはり今の金融緩和効果の浸透力を強めていく、つまり緩和効果の波及過程をより改善していくということでございますが、より大きな目的といたしましては、日本の金融全般として、銀行貸し出しを通ずる一本やりのルートということでなくて、これから将来の姿を展望すると、市場を通ずる金融、このパイプを広く太くしていく、そして、銀行貸し出しを通ずるルートと市場を通ずる金融のルートとの間に相互に連関をつけていく、こういう大きなねらいを持っております。
 なおかつ、申し上げますれば、けさほどからも、中小企業に対する金融、中小企業の方から見れば、銀行は貸し渋る、銀行の方から見ると、貸し出しに値する需要は非常に少ない。ここに非常に大きなギャップがあるということなんですけれども、私どもは、この問題の基本的なポイントは、この日本の金融システムにおいては、ビジネスのリスクをきちんと評価して、そのリスクに見合った金利がつく、そういう仕組みがうまくでき上がっていないというところにも非常に大きな理由があるというふうに考えています。
 資産担保証券の市場をうまく発展させることができれば、この日本の金融の仕組みの中において、リスクに対する正しい評価、そしてリスクに見合った金利の設定、こういう新しい金融慣行を自然にうまくつくり上げていくことも可能ではないか、こういうふうに考えたからでございます。
中塚委員 今るる御説明がありましたけれども、それは日本銀行の仕事なんですかね。市場を通ずる金融ですか、そういったものをつくっていくというのは日本銀行の仕事なんでしょうか。
福井参考人 大変厳しい御質問をちょうだいしたと思っています。
 日本銀行の仕事は、市場を舞台に金融政策をやっていく、これが本来の姿でございます。ただし、市場が十分発達していなければ、いい金融政策はできないということも事実でございます。
 そして、市場というものは、市場関係者の努力で市場が形成され発展していく、市場自身が市場の論理で自己回転的に発展していく、これが一番望ましい姿でございます。しかし、日本の場合には非常に、戦後五十年間あるいはそれ以上、銀行貸し出しを通ずるファイナンスのルート、これがかなり太くて、市場の発展という点ではかなりおくれをとってきたということでございます。
 これを急速にこれからキャッチアップしていく過程にありますが、したがって、多くの市場関係者は既にその方向で努力を開始しておられますけれども、特に資産担保証券といったような、これから最先端を担うような市場につきましては、まだほんのはしりの時期と申しますか揺籃期にありまして、まだ市場が自己回転的に発展していく状況になっていない。
 したがいまして、日本銀行が市場をつくるなんというふうな考えは全くありませんが、何らかの形で口火をつけるということによって市場の発展を促すことができれば、市場のためにもいいし、日本銀行にとっては将来の金融政策の舞台を築いていくことにもなる、こういう考えでございます。
 したがって、この目的を達成するためには、私どもがどこで口火をつけるか。一番投資家が、潜在的な需要は持っていても、この市場の中できちんとした価格の発見ができない部分、つまり信用度のある程度低い部分について価格の設定メカニズムが欠けている、そこでそのかけ橋をするために入ろう、こういう目的のためにはBB格まで入らざるを得ない、こういう判断になったわけであります。株式の買い取りの場合はBBBまでの介入で目的が相当達成できる、こういうふうに判断いたしました。
 目的とそれの達成可能性との比較考量で、結果として、株式の場合と資産担保証券との場合で私どもが取り上げるレーティングに差が出ている、こういうことでございます。
中塚委員 政府が頼りないから日本銀行がやってやる、BBBよりもBBまで買うというふうな御答弁だったというふうに思います。独立性は結構なんですけれども、余り妙な独立性で突っ走ってもらっても、逆に私は、日本銀行まで大変なことになるんじゃないか、そういうふうに心配をしておりますが、加えて、ABSを買い入れる目的、今総裁からお話がありました。
 他方、だから国債を買えというふうに言われている。もっと買い切りを増額しろというふうな声もある。その中にあって、もう国債はこれ以上は持ちたくない。では何を買うかということで、また国債と同じぐらいに日本銀行に対する購入期待の高いABSを買ってみようということなのかなというふうな気もするんですね。
 そういう意味で、BBであってもABSを買うということなんですが、その背景には国債の信用低下、あるいは将来に向けた国債の信用の低下リスクということがあるんじゃないのかなという気がするんですが、そこはいかがですか。
福井参考人 私どもは、現在でも、国債につきましては、市場に流動性を大量に供給する場合に最も重要なオペレーションの手段として活用しております。現に、毎月多額の国債を買い入れているということでありまして、決して日本銀行の目から見て国債の信用が落ちている、あるいは日本銀行がそれゆえに国債を買いたくない、毛嫌いするというふうな発想から出ているものではございません。
 しかし、日本銀行のオペレーションの手段を多様化し、いろいろなマーケットを発展させていくということが将来の日本の望ましい金融市場と望ましい経済の発展によりよく資する、こういう考え方で対処しているわけでありまして、日本銀行のリスクのとり方としては、トータルとして少しリスクをとる度合いが強くなるとは思いますけれども、しかし、それが行き過ぎないようにきちんと歯どめを持って対処したいということでございます。
中塚委員 財務大臣に伺いますが、国債を買うのが伝統的な手法で、ABSを買うのは非伝統的な手法ということなんですけれども、要は国債がそでにされた背景には、やはり将来の信用低下というふうなことがあるんじゃないのかなという気がしますが、そこはいかがでしょう。
塩川国務大臣 私は、そんなことを全然考えておりません。
 それよりも、やはり日銀自身が多様性を持って金融の緩和並びに市場対策を講じておられると思って、私は高く評価しております。
中塚委員 次に、先ほどもちょっと質問があったと思うんですが、日本銀行が株を買ったりABSを買ったりすると、それに応じて引当金を積めば納付金が減っていくということですね。そうなると、国民負担ということにもなるわけで、本来得べかりしものがないわけですから、それは必ず国民負担という部分になってはね返ってくるわけなんですけれども、結局、今回改正された八%の売却時拠出金の廃止にしたってこれは全く同じことで、そういう意味では、株価の変動リスクを国民に、財政につけかえるということには変わりないと思うんですが、竹中金融担当大臣、そこはいかがでしょう。
竹中国務大臣 先ほどから国民負担のことを、もともとの閣法からの経緯も踏まえて随分といろいろと御議論をいただいていると思います。
 国民負担をできるだけ小さくしなければいけないということと、一方で、いわゆる株式の保有制限を実現するという本来の目的をいかに調和させるかというところで、現状に合わせていろいろな苦労があるわけだと思いますけれども、今回の措置は、先ほども申し上げましたように、その意味での使い勝手をよくして、本来の株式保有制限の目的を達するようにしよう、しかし国民負担に関しては、売却可能期間を長くすることによって、将来の回収可能性を高めようというところで、そのトレードオフのバランスをとろうとしたものであるというふうに認識をしております。
 国民負担を本当に減少させるように、そういった意味での努力は大変重要なポイントであるというふうに思っております。
中塚委員 いろいろ問題あるんですが、この法案自体は審議するのが三回目ですから、そのたびにずっといらっしゃるのは塩川大臣だけで、金融担当大臣はおかわりになっていますから、おかわりになられた金融担当大臣に御意見を伺います。
 いろいろ問題があって、国民負担の問題もある、マーケットをゆがめるのではないのかという問題もある、価格形成をおかしくするのではないのかという問題もある。その中で、公的機関が、これは日本銀行であってもそうだし、株式保有機構であってもそうなんですけれども、株式を保有することによって、結局株式を発行する会社というのはコーポレートガバナンスが低下してしまうんじゃないのかということです。
 正しい姿というのは、株がちゃんと株主の手に渡って、株主がその企業の経営とか財務とかをチェックしていくというのが当たり前の話ですね。これは、それをそうしない仕組みですよね、公的機関が買い上げる、あるいは日本銀行が買い上げるということで。そういう意味で、このやり方でやっていくことのコーポレートガバナンスの低下懸念ということについては、どういうお考えをお持ちでしょう。
竹中国務大臣 まさしく、株主総会がたくさん行われている日に、コーポレートガバナンスの重要な問題を提起されたわけですが、買い取り機構が持つことによってコーポレートガバナンスが発揮されない、それが機能しないということではないのではないかと私は思っております。
 機構が買い取った株式の議決権行使については、この株式を信託された信託銀行が行使するという仕組みになっております。機構には運営委員会というのがございまして、この運営委員会が議決権行使の基本的な考え方を策定することになっている。信託銀行は、議決権の行使を行うに際して、この基本的な考え方に従って、機構や株主の利益の最大化、企業活動に関する情報開示を求めるといった株主としての適切な行動をとることになっておりまして、その仕組みの中で、我々としても、コーポレートガバナンスのしっかりとした、よい意味でのプレッシャーをかけていくような努力をしたいと思っております。
中塚委員 仕組みはそういうふうになっていても、その仕事を信託銀行とかにやらせて、それでうまいこといくんだったら何の苦労もないわけで、やはりそれは、ちゃんとマーケットを通じて、それによって株価だって決まっていくわけだし、株を持っている人だって、損するか得するかと必死になってちゃんと見ていくというふうなところもあるわけですから、そういう意味では、私は、やはりこのやり方はコーポレートガバナンスを低下させるということだと思うんですね。
 今まで、日本では、こういうふうな仕組みを三回つくったことがあるようですね。三十五年前にもつくったことがある。あと、戦争中にもつくったことがある。その前、金解禁のときにもつくったことがあるということで、今まで三回つくったことがあるようです。ちょっと調べてみましたけれども、株式の買い取り機構というか保有機構ですね、財務大臣はうんうんというふうにおっしゃっていますが。過去を見ても、ではこれで株価が上がったかというと、別にこのことで株価が上がったことは一回もないわけですね。それは、景気がよくなったから株価はみんな上がっているわけです。
 あと、加えて、今の持ち合いあるいはコーポレートガバナンスという話に関連して言えば、こういう機構が株を持ってしまう、それで、解散するときにぱんと株を売るということが、逆に安定株主にはめ込まれるようなことになって、今の持ち合いをつくった原因の一つにもなっている、そういうふうな検証もあるわけなんです。そういう意味で、この株式買い取り機構で株を持つということの弊害のもう一つですけれども、解散時に、売却の方法にもよりますが、売却の方法いかんによっては、かえって持ち合い構造を強めるようなことにもなる懸念もあるということについて、どういうふうな意見をお持ちでしょう。
竹中国務大臣 ちょっと金解禁の事例にまではさかのぼれないんでありますけれども、昭和四十年の証券不況時に株式買い上げ機構があって、いわゆる日本共同証券、そういうものがあった。そのアナロジーは、確かに、我々も今の問題を考えるときに重要なんだと思っております。
 ただし、それで株価は上がらないというふうに今委員おっしゃいましたが、私は、先ほどから福井総裁は非常に正確に御答弁をされていると思うんですが、それによって株価を維持しようということではない、しかし、一気に売り物が出てきた場合に、その需給が崩れることによって、これが一種のショックとなって、市場での需給で決まる価格が均衡価格から大きく離れてしまうような、そういう攪乱がある、そのショックをアブソーブするのが目的だ、福井総裁はそういう趣旨でおっしゃっているんだと私は思いますが、その意味では、株価の維持云々とか、株価が上がるかどうかということではまずないということだと思います。
 お尋ねの、その後の、それが新たな持ち合いをつくったのではないかということでありますが、今までの、例えば四十年代の例にしても、株式の市場全体が非常に小さくて、今の規模でいうととてつもなく大きなある意味での介入を行った。今回のショックアブソーバーというのは、当時の介入に比べますと、総体規模から考えまして極めて小さいものでありまして、その意味でも、それが持ち合いにつながるとかということでは必ずしもないと思います。
 ただし、売却に当たっては、先ほどから申し上げているように、損失を生じさせないということも含めて、やはりそれなりの、御指摘のような点も踏まえたケアといいますか、注意は必要であるというふうに思っております。
中塚委員 では、終わります。
小坂委員長 次に、佐々木憲昭君。
佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 今回の改正案の最大の問題は、既に議論もされておりますけれども、銀行の負担する売却時拠出金を廃止するというのが一つの大きな柱であります。
 まず、与党提案者にお聞きしますけれども、前回の委員会で提案理由説明がありました。この中に、こういうふうに書かれているんですね。「関係者からは制度を利用しやすいものとしてほしいという要望が寄せられております。」ここに言う関係者というのは、だれでしょうか。
    〔委員長退席、砂田委員長代理着席〕
熊代議員 申し上げましたように、BIS規制の計算上、オフバランス化しないというようなこともございまして、総体的に魅力の小さい状況であるので、これは改善してほしいというような話がございました。例えば、全銀協の会長の会見などでもそういう御意向が表明されていたというのが一つだと思います。
佐々木(憲)委員 要するに、銀行から言われたというわけですね。例えば、寺西会長の記者会見、四月十五日を見ますと、「株式市場が低迷している中、売却に際し八%の拠出金が必要となることは心理的にも相当な負担に感じられるということはある」、こういうふうに言っていますし、三木会長、会長就任の記者会見、四月二十二日ですけれども、「保有株式の円滑な圧縮に向けて、もう一段の枠組みの工夫・整備が必要ではないかと考えている。」「銀行等保有株式取得機構が現時点では使いづらい点もあり、その改善をお願いしたい気持ちはある。」
 要するに、ことしに入りまして株が下がった、そういう事態に直面しまして、銀行業界から、助けてくれ、こういうふうに言われて、銀行業界救済のために出してきたということが今の答弁でよくわかりました。
 この法案は、まさに銀行業界の言い分を丸のみしたものだと言わざるを得ないと思います。株式売却額の八%相当を拠出するというこの売却時拠出金というのは、買い取り株式から損失が出た場合の穴埋めに使われていくというものでありました。八%を超えて損失が出たら、これは二兆円の政府保証に基づいて国民負担が発生する、仕組み上そういうふうになっているというふうに思いますが、現行の仕組みはそういうことで間違いないですね。
熊代議員 一つお断りしておきたいのは、私ども、いろいろな要望をお伺いしますけれども、それはいろいろな団体がそれぞれの希望をお持ちでしょうけれども、その団体の御要望が国民経済上あるいは国民の福祉上大切な点である、役立つという観点で整理せざるを得ないですね。いろいろな要望がありますから、そんなものを全部聞いていたらどうにもならないわけでありまして、やはり、国民の福祉のために役立つということで判断するわけでございます。それを一つお断り申し上げたいと思います。
 先ほどの八%のことでございますけれども、確かに、出資金、設立時の拠出金と売却時の拠出金、これは万一損害が出た場合の穴埋めに使うわけでございますが、逆に利益が出た場合は、その倍まで、一六%までお返しする。ですから、基本的には会員銀行等の自主的なものでございますが、これは政府保証をつけておりますけれども、そういうことでございます。
 私どもが今回の改正で意図しましたことは、期間を長くすることによって、八%の拠出がなくても、税金で穴埋めする確率は極めて低くなる、逆に、ある程度お返しして、税金にもプラスになる可能性も高いと判断したところでございます。
佐々木(憲)委員 「関係者からは制度を利用しやすいものとしてほしいという要望が寄せられております。」というのが提案理由の説明でしたね。今の説明ですと、いろいろ聞いているとどうにもならないので、やはり銀行の意見だけ聞いた、こういうことがよくわかりました。
 それで、八%を超えて損失が出ると、私は損失が出た場合の話をしているわけです。そうすると、当然、国民負担になる、仕掛けはそうなっているわけです。八%の売却時拠出金が廃止されるというのが今回の法案でありますが、仮に買い取り株式から損失が出た場合に、金融機関による当初拠出金というのがありますね、その残高があればそれは使われるにしましても、株式の損失は大半が国民負担になるというわけでありまして、仕掛け上、これは否定できないことだと思うわけです。
 この八%がなぜ盛り込まれたかということでありますが、機構設立の法案審議の中で、先ほどからも少し出ていますが、柳澤金融担当大臣は、機構に公的支援を行う場合であっても、最終的には国民負担に極力つながらないようにすることが重要である、このような考え方に基づく諸方策を講じたものだと。つまり、国民負担に極力つながらないようにするためにあらかじめ銀行から八%の拠出金を積んでおくんだ、こういう説明をしていたと思うわけであります。つまり、売却時拠出金というのは国民負担最小化の方策として盛り込まれていた、このことは間違いありませんね。
竹中国務大臣 当初の考え方というのは、御指摘のような点であったと思います。
佐々木(憲)委員 そこでお伺いしますけれども、売却時拠出金というのは、国民負担に極力つながらないようにするために盛り込まれたものであるということは今確認しました。今回それを撤廃するわけですから、銀行の側の負担はなくすわけであります。つまり、その分はすべて国民にかぶってもらいます、そういう仕掛けに変えたということになりますけれども、これはこれでそのとおりですよね。
熊代議員 先生は損したときばかりをお考えですが、私はもうかったときのことばかりを考えるタイプでございまして……(発言する者あり)いやいや、そういうことでございまして、両様の可能性があるということでございますから、万一損失が生じたというときには、それは国民負担になる。それは売却時拠出金と当初拠出金を超えれば国民の負担になるというのは間違いないわけでございますけれども、二倍まではお返ししますけれども、一六%を超えて利益があれば、それは国民の所得になる、そういうことでございます。
佐々木(憲)委員 つまり、今は当初拠出金と売却時拠出金と二つあるわけですね、拠出金が。それで、損が出た場合、もうかった場合もあるとおっしゃいましたけれども、一六%までもうかったときは、それは銀行が持っていくわけでしょう。八%以下に下がった場合には国民負担になるんですよ。
 ですから、これは本当に銀行本位のものだと思うんですが、それも今回八%分は廃止しますというわけですから、銀行負担がその分は吹き飛んでしまって、銀行負担がなくなるわけですね、その分。これは仕組みからいったって、だれが考えたってそういうことなので、つまり、今度提案してきたものは、銀行負担を国民負担に転嫁する仕掛けをつくった、これしか言いようがないわけであります。
 それで、具体的な数字を聞いてみますけれども、現在、三月末時点で結構ですけれども、買い取り総額、それが時価で幾らで、含み損が幾ら発生したか、それから、売却時拠出金が幾らありまして、当初拠出金が幾らあるか、この点、数字を示していただきたいと思います。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 特別勘定におきましての買い取り業務で買い取りました実績は、約二千二百億円程度でございます。三月三十一日時点でございますが、評価損としまして三百五十億円、売却時拠出金が百七十三億円、当初拠出金百七億円。したがいまして、仮にその時点で締めたとしますと、差し引き七十一億円の赤ということになっております。
佐々木(憲)委員 つまり、その時点で締めたとしますとということなんですが、これは仮定ですけれども、結局七十一億円というのが当初拠出金と売却時拠出金を超えているわけですね。今で締め切ってしまえば、国民負担が七十一億円というのが今の説明でありました。
 そうしますと、売却時拠出金をゼロにする、つまり、百七十三億円をゼロにするということになると幾ら国民負担になるかというと、二百四十四億円ということになりますね、計算しますと。つまり、最初、三月末の時点で締め切ったら国民負担は七十一億円だった、しかし、売却時拠出金を、八%だったのをゼロにして、すべてこれは国民に負担してもらいますということになりますと、二百四十四億円の負担になる、こういうわけでして、三倍以上の国民負担になるということになるわけです。この数字は間違いないですね。
藤原政府参考人 先ほど申し上げましたのは、三月三十一日末時点のお話でございまして、その時点で清算するわけではございません。ずっと持っておりまして、今回……(佐々木(憲)委員「それは前提として言っているんですよ」と呼ぶ)かなりの時間を持つわけでございます。それから、その後株価等も回復しておりまして、例えば六月二十四日時点で申しますと、評価損は百六十一億円まで戻っておりまして、差し引きまだ百二十四億円、売却時拠出金とか当初拠出金を充てればプラスという状況に今なっております。
佐々木(憲)委員 でたらめなことを言わないでくださいよ。百七十三億円というのが売却時拠出金だと先ほど言ったわけでしょう。結局、差し引き国民負担になるのが七十一億円でありました。それがすべて国民負担になれば、二百四十四億円の国民負担になる。これは、そこで締め切った場合の数字を私は言っているんですよ。その数字自体は否定できない数字でしょう。それを聞いているんですよ。
藤原政府参考人 先生御指摘のとおり、その時点で締めればそういうことでございますが、まだ現実に売っているわけではございませんで、したがって、最近の時点で評価すれば、そこは随分株価の上昇に伴いまして縮まってきておりまして、先ほど申しました三角七十一億円というのに合わせますと、例えば六月二十四日ベースでいいますと、それはプラス百二十四億円という状況であるということを申し上げたわけでございます。
佐々木(憲)委員 本当にいろいろごまかそうと必死になっておりますが、根本的にはこれは変わらないんですよ、多少株が上がっただけですから。そうでしょう。国民負担が本来の三倍ぐらいになるという事実は、これは何も変わらないわけです。多少株価が三月から比べると上がった、それはありますよ。この先下がるかもしれませんからね。
 ですから、私は仕掛け上の問題を聞いているわけであります。だから、六月四日付の読売などを見ますと、今回の改正によって「金融庁も「国民負担が生じるリスクは高まった」」こう言っているわけです。「銀行にとって使いやすくなる反面、国民負担が生じやすくなる懸念もある。」こういう記事が載っているわけでありまして、これは、国民負担をふやそう、銀行負担を軽くした分を国民にかぶせる、こういう仕掛けだということは、だれが見たってこんなものははっきりしているわけであります。
 次に、機構の買い取り実績についてお聞きしますけれども、特別勘定、一般勘定、この二つがある。特別勘定には政府保証がつくけれども、一般勘定にはつかない。このそれぞれの買い取り実績、数字を示してください。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 まず、特別勘定の方でございますが、平成十四年二月十五日から買い取りを三回にわたってやっておりまして、平成十五年の四月二十五日までの間にわたりまして、合計で二千百八十一億円の株式買い取りを行っております。また、新たに平成十五年の四月二十八日から平成十五年十月三十一日までの買い取り期間を定めまして、現在買い取り業務を実施しておりまして、現時点での特別勘定での買い取り実績は二千二百億円となっております。
 また、一般勘定でございますが、一般勘定につきましては、主に証券会社によるETF等の組成、あるいは事業法人による自社株取得のための買い取り、これを媒介することを念頭に置いてやっておりますが、去る六月三日に、民間証券会社によりますETFの組成に際しまして、初めて六十七・五億円の買い取りの媒介が行われたところでございます。
佐々木(憲)委員 結局、一般勘定はほとんどなくて、大部分が特別勘定ということになっているわけですね。法律の制定時の審議の中で、政府は、極力国民負担につながらないようにする方策として、特別勘定というのは特例的なものである、一般勘定の買い取りが機構の中心だ、それが業務の中心だと言っていたわけですね。これは間違いありませんね。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 一般勘定と特別勘定がございまして、極力、証券市場の育成等も踏まえまして、一般勘定で媒介を行っていきたいというふうに言っておりましたし、またそういうことを望んでおりました。
 しかし、残念ながら、一般勘定につきましては、買い取り希望の株と売り出し希望の株、そのミスマッチ等がございましてなかなかうまくいかなかったところでございますが、先ほど申しましたように、最近におきまして新たな事例が出てまいりましたので、今後それがますます伸びていくことを期待しているところでございます。
佐々木(憲)委員 一般勘定が使われなくて特別勘定が使われた、その理由は何ですか。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 一般勘定がなかなか使われなかったのは、先ほど申し上げましたように、買い取りを希望する銘柄と売り渡しを希望する銘柄の、なかなかそのマッチングがうまくいかなかったというようなところが大きな要因だと思っております。
 もう一つは、例えば、銘柄が合わなかったものもありますし、保有している銀行サイドが、株価低落の局面で、こういうものはまだ売りたくないというようなこともあったやに聞いております。
佐々木(憲)委員 今の説明はよくわからない説明でありまして、実際上、特別勘定が使われてきた理由は政府保証があるからであります。どんどん下がっていけば国民負担になってしまうから、銀行は負担しなくていい、こういう仕掛けがあるから、当然、そちらに行くわけですよ。しかも、この特別勘定に買い取り拠出金が八%ついている、これも邪魔だ、それも外してしまえ、これが今回の法案の性格でありまして、余りにもこれは、銀行にとって使い勝手はいいかもしれないけれども、国民にとっては迷惑な話なんですよ、それだけ国民に対して負担が広がるわけですから。本当にひどい形になっていると思うわけであります。
 一たん国民負担の道をあけるとどんどんこういう財政資金頼りに改悪されるというのが、今回の経過で非常にはっきりしてきたと私は思うんです。これはとんでもない話であります。これをモラルハザードというわけであります。
 次に、銀行株式保有規制と機構の株式買い取り業務の関係についてお聞きしますけれども、機構の設立は、銀行の株式保有制限を新たに課すから、その放出した株を買い取るためだというふうに言われていました。これが立法の趣旨だったと思いますが、まずそれを確認したいと思います。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 当初政府で閣法として提出しました法律につきましては、銀行に対しまして新たに株式保有制限を課す、その際の、市場に与える不測の事態を避ける、いわばセーフティーネットとしてこの買い取り機構の買い取りを行うということでございました。
    〔砂田委員長代理退席、委員長着席〕
佐々木(憲)委員 法律の条文でも、機構の目的として、銀行等による株式等の保有の制限の実施に伴う銀行等によるその保有する株式の処分により、「株式の価格の著しい変動を通じて信用秩序の維持に重大な支障が生ずることがないようにするため、銀行等の保有する株式の買取り等の業務を行う」と、第五条、こういうふうに確かに明記されております。
 当時、政府は、機構の設立の必要性を説明するために、大手十六行で保有制限を超えて株を保有している、保有制限以上持っている、その額はティア1の一・六倍になるというデータを示しておられました。
 そこで、金融庁に聞きますけれども、現在、保有制限を超えて株を保有している銀行は何行ありますか。その銀行名を述べてください。
五味政府参考人 十五年三月期の決算短信に基づきまして、その他有価証券のうちの株式の保有額がティア1の額を超えている銀行、これを拾ってみますと、七行ございます。
 銀行名は、みずほコーポレート銀行、三菱信託銀行、UFJ信託銀行、りそな銀行、中央三井信託銀行、足利銀行及び京都銀行、以上でございます。
佐々木(憲)委員 そうすると、大手で五行ということになりますね。地銀で保有制限を超えたところは当時からほとんどなかったわけでありますが、当時、私は、この法案審議の中で、機構を活用する必要があるのはほとんど大手銀行ではないかというふうに聞いたことがあります。大銀行支援策そのものだということで批判をしたわけですけれども、その大手行もこの二年の間に売却が進んで、保有制限を超えて保有しているのは今五行にとどまっているわけであります。
 今回の改正案は、株式保有制限の実施時期の二年延期というのを盛り込んでいますけれども、結果的に、この特定の五行のための支援策ということになるのではないかと思いますが、提案者、いかがでしょうか。
上田(勇)議員 委員御指摘になったように、今、ティア1を超えて株式を保有しているのは、大手では五行でございます。まずは、その五行がティア1の範囲、制限の規制を満たすように株式を売却していくということが最優先の目的であることはそのとおりであるというふうに思っております。
 ただ、それだけじゃなくて、銀行が、ティア1以内であったとしても、多額の株式を保有しているということは、価格の変動リスクに対して、経営の安定性に対するリスクを伴うということでありますので、この保有機構におきましては、ティア1の制限を満たしている部分につきましても一定の要件のもとで買い取ることになっておりますので、そういう目的もあわせ持っているということを御理解いただきたいと思います。
佐々木(憲)委員 そうしますと、今の答弁を聞いて大変驚いたんですけれども、株式をティア1の水準を超えて保有しているので、それを放出する、その受け皿といいますか、その対処のためにこういう機構が必要なんだということで提案をされていたんだけれども、しかし、今の説明を聞きますと、それだけじゃないと。つまり、銀行が持っている株式を、危ないところならみんな買ってあげるんだ、こういう説明に聞こえたわけであります。つまり、ティア1をクリアして、それ以内の株式も買い取る、これはもう一度確認しますけれども、事実ですね。
藤原政府参考人 当初の閣法の仕組みでございますので私の方から御説明させていただきますが、ティア1を超えない銀行からも株式を買い取ることができるとしておりますのは、株式市場の動向等、株価が上がったりしますと銀行の自己資本に対する株式保有割合が変動する可能性があることなどを踏まえまして、銀行による株式処分に柔軟に対応できるようにするためにこういうことにしておるわけでございます。
佐々木(憲)委員 要するに、できると、つまり銀行が持っている株なら何でも買える、こういうことですね。
 これはまたひどい話でありまして、この法案の趣旨は何なんですか。銀行が保有している株式の保有制限の実施に伴う、銀行等による、その保有する株式の処分を進めるために機構をつくったわけでしょう。制限があるから、その制限に対応してこういう機構をつくった。それなら、法案そのものの名前がおかしいんじゃないんですか。銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律の一部改正法案、これは、条文というよりも、この法案のタイトルそのものを変えなければならぬのじゃないですか。銀行株式買い取り法案、こうすべきじゃないんですか。いかがですか。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 当初の法律におきましては、最終的には各銀行の株式保有額をティア1以内におさめるということでございますが、実は、その間に株価が上昇しましたり、あるいは不良債権処理に伴いましてティア1が減少したり、そういうような変動要素がございますので、最終的にはティア1におさめるという株式保有制限でございますが、その間の変動に対しまして、あるいはその状況の変化に対しまして柔軟に対応できるようにこういうふうにしているところでございます。
佐々木(憲)委員 提案者に聞きますけれども、今回のこの改正は、結局、銀行が持っている株式を自由に買ってあげましょう、その制限はありません、こういう内容だということですね。
熊代議員 銀行等の持ち株をティア1の範囲内におさめるという規制をするに伴いまして、しかし、それの間接の影響も含めて、株価の著しい変動に対してセーフティーネットをつくるというのが目的でございます。
 日銀の方は、ティア1を超えては買わないということははっきりしていますが、私どものこの法案の方は、ティア1を超えて買うこともある。しかしそれは、今答弁もございましたように、株価は常に変動するものでございますから、それに柔軟に対応できるようにということでございまして、そういう趣旨でございます。
佐々木(憲)委員 本当にびっくりしましたね。この法案は、株式保有を制限する、そのために受け皿としてつくった機構だと思っておりましたら、銀行が持っている株はすべて買ってあげましょう、こういう法律だと。
 だから、東京三菱グループなんというのは既に保有制限をクリアしておりますが、その東京三菱の三木社長は、決算発表の記者会見で、機構が売却額の八%を徴収する拠出制度を撤廃したら利用するか、こう聞かれまして、利用していきたいと。なるほど、ティア1を超えている株ではなくて、ティア1をクリアして、その枠におさまっていても利用したい、こう言っている意味が大変よくわかりました。
 要するに、保有制限をクリアした銀行からも株を買いましょう、こういうことになっているということであります。結局、株式保有制限の実施という建前は全くどこかに行ってしまって、いわば方便でありまして、法律の目的に照らしても全くおかしな方向に中身が変わっている。銀行支援のためには何でもやる、こういうものだということが今の説明ではっきりしたと思います。
 私は、これはとんでもない話だ。何でそういうところに、国民の税金負担がふえる可能性があるのにどんどんつぎ込んでいくのか。よっぽど銀行から、いわばひもがついているというか強い圧力があったというか、そうとしか考えられない。
 もう一つお聞きしたいんですけれども、改正案にある、事業会社保有の銀行株式買い入れ上限の拡大についてお聞きしたい。
 現行法は、機構の買い取り対象として、持ち合い解消に伴い事業法人が放出する銀行株等も認めております。ただし、事業会社から買い取る銀行株式の価額は、銀行から買い取る事業会社株の価額の二分の一を上限としている。
 上限を設けた理由について提案者にお聞きしますけれども、昨年の改正案の審議の中でこれはどう説明していたんですか。
上田(勇)議員 昨年の改正時の提案者ではありませんので、そのときの記録等に基づきましてお話をさせていただきます。
 昨年の株式保有制限の改正時には、銀行と事業法人が相互に保有し合っている株式のうち、銀行が保有する事業法人株と事業法人が保有する銀行株のトータルの比率を勘案して、機構が事業法人から買い取る銀行株を当該銀行から買い取った当該事業法人買い取り価額の二分の一に限定したとしても、持ち合い解消の動きにはおおむね対応できるのではないかというふうに判断をしてこのような上限を設けたものだと承知いたしております。
佐々木(憲)委員 おおむね対応できるのなら、何でこれを拡大するんですか。対応できたらそれでいいんじゃないですか。
上田(勇)議員 今回、この二分の一の上限を廃止する理由でありますけれども、それは、個別の持ち合い関係を見てみますと、持ち合い比率はそれぞれ異なっておりまして、トータルとしてはおおむね二分の一で対応できるわけでありますが、事業法人の持ち合い保有する銀行株の価額が、その銀行の持ち合い保有する事業法人の二分の一を上回るというようなことも十分あり得るわけでございます。そうしたことを踏まえて、このような場合に、機構による事業法人からの銀行株の買い取り額の上限を拡大いたしまして、銀行による事業法人株の売却額と同額までとすることによりまして、持ち合い解消の動きをより適切に、機動的にできるようにしようというふうに考えましてこのような改正案を提案させていただいているところでございます。
佐々木(憲)委員 どうも説明が、それこそ支離滅裂でありまして、この提案をされたときの議事録を見ますと、昨年七月十七日の衆議院財務金融委員会で、これは公明党の石井啓一議員が答弁されていますけれども、「事業法人から買い取る場合は売却時拠出金を求めないというふうにしたわけでありますけれども、その際、なるべくそれが将来の価格変動リスクで国民負担に極力つながらないような工夫をやはりすべきではないかという法案制定のときの議論がございました。」
 つまり、銀行は八%拠出金を出すけれども、事業会社は出さない。そこで、国民負担が余り大きくならないようにしなければならない、そういう工夫をまずすべきだと言っているんですよ。
 それで、「今現実に、全体的に見ますと、銀行が持っている事業法人株と、あるいはその事業法人が持っている銀行株、持ち合い株ですね、その全体の総量が大体十対四ぐらいの割合であるということも参考にいたしまして、二分の一にしようという議論にさせていただいた」こういう説明をしているわけです。
 つまり、二分の一にした理由は、一つは、国民負担になるべくつながらないようにする、もう一つは、現実に保有している株式の量を見ますと、銀行が十だとすると事業会社は四だ、そういうことで二分の一という上限にしたんだ、こういうふうに言っているわけですね。
 今回、これを全部外すというのは、つまり、国民負担は結構です、負担は回避しなくてもいい、国民負担に直結しても結構なんです、それから、銀行と株式会社の持ち株の大きさはどうでもいいんです、ともかく上限を外すんだ、こういうわけですから、これは全く筋が通らないんじゃないですか。これをどう説明するんですか。
上田(勇)議員 お答えいたします。
 上限を外すというわけではなくて、従来二分の一までとしていた上限を同額まで広げるということでございます。これは、先ほども申し上げましたように、全体のトータルの数字からいえば、銀行の保有している事業法人の株式と事業法人が保有している銀行の株式との比率は、先ほど先生からもお話がありましたように十対四の比率であるということでございますけれども、個別の銀行と事業法人との関係を見たときに、それを超えているというようなことも想定されるわけでございまして、持ち合いを解消することを促進していくという観点から、その二分の一という上限を、今回は同額までという上限に拡大するということを提案させていただいているところであります。
佐々木(憲)委員 全然答弁になっていないですよ、それは。なぜそういうふうにしなきゃならぬという説明になっていないでしょう。
 国民負担を極力回避するということで設けた二分の一という制限、それを取り払うということは、国民負担も大いに結構です、こういうことになるんじゃありませんか。しかも、量的にいっても、十対四だからまあ二分の一、それを撤廃してしまうと。要するに、銀行のためには何でもやってあげましょう、銀行株を持っている事業会社のためにもどんどんやってあげましょう、負担はすべて国民にかぶせましょう、こういう態度だということが非常に今の答弁ではっきりしてしまったと私は思います。
 今回の改正案は株価対策だと言っていますけれども、与党金融政策プロジェクトチームが五月八日に、当面の緊急経済対策というもので、銀行の保有株式の市場への放出が株価の下げ圧力になっている、だからそれを支えるんだと。要するに、公的資金によって株価操作を行うようなものでありまして、しかも、国民負担はどんどんふやすが、銀行負担は軽減する。
 一体これが、前回の改正案のときの説明とも、全く支離滅裂で一貫性がない。こんな法案を通せなどというのは全く信じられないような状況でありまして、我々は、これは徹底的な審議を要求したい。これは二、三回で終わるようなものじゃないということをはっきり申し上げまして、時間が参りましたので、質問を終わります。
小坂委員長 次に、松本剛明君。
松本(剛)委員 日銀総裁がきょう海外へ出られるということなので、まとめて総裁に先にお聞きをしたいと思いますので、竹中大臣、もしあれだったら十分か十五分は、後でまとめてお聞きさせていただきます。提案者も、よろしいですか。
 福井総裁、それでは、この後BIS会議ですか、海外へお出になられるということですので、先にまとめてお伺いをさせていただきたいと思います。
 二年前にこの法案はつくられ、昨年改正をされ、ことしまた改正をされるということでありますが、このそもそもの目的については今までも何度も議論があったわけでありますが、まず一点、総裁の御認識を確認しておきたいと思います。
 日銀でも今株式を買い取っておられます。先ほどの御答弁を聞いていましても、総裁がおられるから申し上げるわけではないんですが、日銀の場合は、非常に目的と手段と、期限を切っておられて、健全なマーケットを育てるという意味で、これはやはり異例な措置だと。特別な措置であるだけに、非常時の対応としてやむを得ない部分だけやるんだということが非常に見えてくるわけであります。
 先ほど、代替か補完かということで永田議員と議論がありましたけれども、今回のこの法案の方は、ある意味同じような目的を持っているように見えるわけでありますけれども、今回の改正は、むしろ日銀の考え方とは逆行するもののように見えるんですけれども、この法案、今回の改正に対する総裁の御認識をまずお伺いさせていただきたいと思います。
福井参考人 お答え申し上げます。
 日本の市場経済は今大きな変換の局面にあるということだと思いますが、株式の持ち合いが当然の前提になっていて、むしろそのメリットがあった市場経済から、株式の持ち合いと市場経済とがもう相入れない時代に急速に変わりつつあるということで、持ち合い解消が市場の中で急速に進んでいる。
 日本銀行の認識からいたしますと、その持ち合い解消の動きが市場に強いショックを及ぼして、今、脆弱な金融システムとか経済の基盤に強い打撃を与える、そこのところを、やはり限界的にある程度吸収することによって次の局面にうまくつなげていきたい。そういう意味で、緊急避難対応的に日本銀行はリスクを少し余計とって対応させていただいているということでございます。
 したがいまして、対応する範囲も限定的でございますし、期間も限定的にやらせていただきたい、かつまた、将来株式を市場に戻します場合には、むしろ長く時間をとって市場にショックを与えないように、こういう対応をとらせていただいております。
 政府の機構の場合には、買い入れ対象先の範囲が少し広い、それから、対象株式の範囲も日本銀行の場合よりは少し広い、そして、機構という特別の仕組みをつくっておられるということであります。
 日銀のやり方が、ある意味で、一番問題が先鋭なところに絞って、そこに直接はさみを入れてヘアカットをするというのに比べますと、政府の措置は、もう少しじっくりと構えて丹念にヘアカットをする、そして株式の持ち合い解消のプロセスを円滑にしていく。株式市場に対するセーフティーネットという色彩が日銀の場合に比べれば少し強いのかな。
 しかし、私どもも、株式持ち合い解消のプロセスは進めなければならないし、進めていく過程で無用の摩擦はやはり少ない方がいいと思っておりまして、両方の措置をあわせて最終的な目的が達成されていくんではないか。私どもは、自己資本にも限界がありますので、その一番とがった部分だけ対応させていただいている、そんなふうな感じでございます。
松本(剛)委員 持ち合いを解消するべきである、そして、日本にしっかり健全な証券市場を育成していくべきであるということについては、私も同感なのであります。
 私、実はきょう午前中法務委員会で、金庫株のさらなる緩和に関する質疑を一時間させていただいてきたのでありますが、実は、この金庫株の緩和の話と銀行の保有株式の買い取りというのは、いつもとは申しませんけれども、セットのように市場対策で出てくるというような傾向があります。毎回、恐らく、思いつかれる方は、需給対策の発想ということで出てくるのであろうというふうに思うわけであります。
 今回も、実は三月の金融庁の六項目の市場対策という中では、金融機関の株式売却について市場への配慮を要請するというような言葉が入っている。どういうこっちゃろうなと思います。市場に売るに当たって配慮をしろと監督官庁が言う。しかも、金融庁は証券市場の監督もかかわりがある。証券取引監視委員会は内閣総理大臣の所管という形になるわけですけれども。こういう形が行われるということであります。そしてまた、五月に株安歯どめの追加の緊急対策ということで、この拠出金八%の話が出てくる。また、このときに自社株の話というのが出てくるわけなんですけれども。
 こういう形で、総裁は、持ち合い株の解消、日本の本来のあるべき姿をつくるための一過程だ、こういう話でおっしゃったわけでありますが、看板はそうでありながら、そして日銀はその感覚でおやりになっておられるのかもしれませんが、実は、この法案が出てくるとき、またこういった、昨年の緩和、ことしの緩和、裏というんでしょうか、毎回起こってくる経緯を見る限り、そういう非常に崇高な使命があるとは私にはちょっと思いにくいところがあるわけであります。
 今ヘアカットに例えておっしゃいましたけれども、私自身は、これは日銀と機構との分担をどうするかという問題は残ると思いますけれども、百歩譲ってその目的のためだとすれば、やはり目的に限定をしてしっかりやるべきではないか。まあ総裁のお立場ではそれ以上は踏み込んでおっしゃれないのかもしれませんので、答弁はこれ以上求めませんが、その点はぜひ申し上げておきたいと思います。
 もう一点は、この法案というか、銀行の株式を買い取る最大の眼目は、銀行が株価変動リスクのある株式を大量に保有していることによって、銀行自身の信用リスクが発生する可能性がある、この信用リスクを軽減する、そして、そういったものから金融システムの安定性を遮断するために銀行の保有株を落とさせる必要があるということでお話があったと思うわけであります。
 今回、ちょうど銀行の決算が出て株主総会も行われたところであろうと思いますが、金融システムの問題というのは、この保有有価証券、先ほどから国債の話も何度か出ておりましたけれども、国債、債券のリスク、そして株式のリスク、もちろんあると思いますけれども、同時に、そのほかの、銀行そのものの経営のあり方ということがまず根幹の問題としてあるんであろうというふうに思います。
 先ほど、金融庁の方からでしょうか、ティア1をオーバーしている七行の実名挙がっておりました。不良債権の問題にしても、株式の保有にしても、全体として、日本の構造が持っているがゆえに、株を持っているとか、不良債権がふえているとか減っているとかいうことはあると思いますが、個々の銀行の多寡というのは経営の問題の範囲に入ってくるわけであります。先ほどの七行の名前を、私のもと所属していたところも名前が挙がっていたような気がいたしますので、所属時代に株を買ったかどうかを一生懸命思い出しているんですけれども、個々の経営の判断の要素がやはり入ってくる。
 どこまで本当に公的な立場から救わなきゃいけないのかという問題は常に残っていると思うんですが、そもそもまず銀行の決算。今回、りそな銀行が決算の前後をめぐってああいう処理が行われるようになりました。その背景には、直接は繰り延べ税金資産のことが取り上げられているわけでありますが、やはり収益見通しが一つ大きなポイントになったんではなかろうかというふうに思います。
 実は、私ずっと追っかけているんですが、一つは不良債権の処理額。実は、毎年毎年、金融機関は、期初の予想された不良債権に比べて、最終的に処理する不良債権処理額というのは、この三年間だけ見ても全く合わない、物すごく極端に違ってきているわけであります。昨年一年の分だけを見ても、いわゆる主要四行だけ見ても、三菱東京グループぐらいなんですね、ほぼ予想と同じようなけたと言ってもいいようなところ。みずほグループの場合ですと、当初の予想は六千億、これは与信費用ベースですけれども、六千億程度が最終的に二兆になった。三井住友は、五千億の予想が一兆になった。UFJ、これは信託銀行を含むベースですけれども、やはり四千八百が七千四百億になった。
 果たして、では、ことしの不良債権の処理の予定額を見たときに、昨年二兆の不良債権の処理をしたみずほがまた六千億の予想をしている。東京三菱グループは、まあ昨年も大体予想どおりですから、ここはある程度信頼性があるという仮定が成り立つかもしれませんが、昨年の半分にしている。三井住友、UFJともに、昨年の最終的な結果というよりは、むしろ期初の予想に近いような数字を不良債権の処理の予定額にしている。
 これは、昨年一年間だけ狂ったんだったら私もここまで申し上げませんが、少なくとも三、四年戻ってみてずっとそうなんですね。毎年、デフレ経済の中で思ったより不良債権がふえたとか、そういう説明をいただくわけでありますが、本当にこの三、四年、そんな何倍も不良債権がふえるほど経済が悪化しているんでしょうか。経済財政担当の竹中大臣、お戻りになられましたけれども、もしそうだとしたら、政府の経済運営は極端に失敗を続けているということになります。
 いい状態ではないけれども横ばいだ、もしそうだとすれば、銀行経営者側の予想が全く当たらない、極めて経営者として資質を欠いているということになるか、もしくは、残念ながらいまだ隠されていた不良債権が毎年毎年少しずつ顕在化せざるを得なくなって顕在化をしてくる。
 この点について、不良債権の処理の予想、そして銀行の今期の見通しについて、福井総裁の御所見を承りたいと思います。
福井参考人 御指摘のとおり、一番最近の銀行決算、二〇〇二年度決算でございますけれども、私どもが見ております限り、中核をなす業務純益につきましてはほどほどの成果を上げているという感じもしないではないわけでございますが、一方、高水準の不良債権処理、それから株価下落に伴う大幅な株式関連損失の発生というふうなことで、全体としては大幅な赤字になったということでございます。かつまた、御指摘のとおり、不良債権の見通しが非常に多くの銀行で期初の見通しよりも、決算してみるとふえている、しかもふえ方が非常に著しいというふうな状況がここ数年続いてきているということも確かでございます。
 確かに、現在の厳しい経済環境の中で、企業自身がどんどん脱皮を図らなければ生き残れないという厳しい環境になり、結果として、脱皮のきかない企業の破綻、そして不良債権の新規発生ということも決して少なくないというふうに思いますが、それよりもやはり、金融機関自身が、持てる不良債権の経済価値の正確な把握、これが、過去数年の努力のうちに、おくれていたものがだんだんキャッチアップしてきた、つまり、不良債権の査定が非常に厳格化してきたというふうなことと合わせわざになっているというふうに思います。
 今始まっております新年度、来年の三月末の決算を目がけては、もし大幅な株価下落というふうなことがなければ、引き続き比較的高い業務純益を上げながら、一方で、不良債権の処理額についてはことしほど大きなことになるかどうか、うまくいけば少しずつ低減できるんではないかというふうな銀行も出てきておりまして、来年の決算については、黒字を目指していくというふうなところが去年に比べると少し大きくなってきているのかなというふうな感じがいたします。
 そして、銀行の不良債権問題を見ます一般の目が、過去極めて後ろ向きで、つまり、不良債権というのはいつまでたってもふえるものだ、処理しても処理しても処理し切れないものだ、かつまた、査定というものは一体どこまで厳格化すれば適当なところまで来るのかというふうな目で眺められ続けてまいりましたのが、最近はだんだん企業の再生ということとあわせて考えられるようになった。
 本当に個々の企業についてうまく再生処理をすれば、要注意先とかあるいは破綻懸念先であった企業が再び正常債権の方にランクアップできる。そうしますと、企業の収益性も回復するし、金融機関の収益性も回復する。今、大きな銀行だけでなくて、中小の銀行あるいは中小金融専門機関に至るまで、企業再生をいかにうまくやっていくか、そのためのノウハウをいかにみずからつけていくかというふうに、かなり視点が変わってきているということも事実でございます。
 さらには、金融機関自身の収益性をこれからどうやって高めていくか、そういうふうにだんだん視点が前向きに変わってきているということも事実でございまして、「りそな」の問題について、繰り延べ税金資産の評価が急に変わったというお話を今なさいましたけれども、金融機関の問題を後ろ向きに見ている時期には、繰り延べ税金資産の問題について、評価が市場の目から見て仮に甘かったとしても、それが余り問題にならなかった。しかし、金融機関の将来に向かっての収益性に多くの方々の関心が移ってくれば、繰り延べ税金資産についても、市場の目から見てもきちんと納得できる厳正なものであるべきだというふうに変わってきておりまして、そうした動きの一つが「りそな」であったというふうにも見ることができると思います。
 決して楽観的なことを申し上げているつもりではありませんけれども、やはりこれまでの苦しい努力の成果が少しずつ実ってきて、将来に目を向けながら、この困難な問題に対処していける段階に少しずつ変わってきているというふうに考えております。
松本(剛)委員 いい方向に少しずつ変わってきているとしても、このスピードで間に合うのかどうかというのが大変懸念をするところであります。
 加えて、この法案は、私たちは、いい方向に変えようとしている法案だとはちょっと思えない部分があるわけでありまして、ぜひ総裁には、日銀のこの銀行株式の買い取りにしても、先ほどおっしゃったように、極めて限定的に御使用になるという当初の予定どおり、今回のこちらの法案のように延長延長になったりとか、我が国は時限立法も毎回延長するような国でありますが、そういうことのないようにということが一点。
 それから、総裁御就任前の御発言をいろいろ拝見させていただきましても、この国の金融に関しては、相当抜本的に変えていく必要があるという御認識をお持ちいただいておるだろうというふうに思います。今、総裁に御就任をされて三カ月ほどであろうと思います。当然引き継いでいかなければならないものもあると思いますけれども、変えられるとすれば、この就任をしてからしばらくの間だろうというふうに思いますので、ぜひそれをお願いさせていただきたいと思います。
 私たちは、直接この法案とはかかわりがありませんが、証券の市場に関しては、例えばアメリカのSECのような強力な市場監視体制をつくるべきであるということを主張してまいりました。こういう公の部分が出ていって、直接マーケットなり会社の経営にかかわる、株式を買い取ることにかかわるという部分は、あくまで極めて限定的に、かつ責任を明確にして行われるべきであるというふうに思っております。ぜひそのことを御理解いただくようにお願いいたしまして、BISの会議は国際会議で、日本を代表して出ていっていただくという部分もあろうかというふうに思いますので、お願いを申し上げておきたい。
 もし何かあればあれですけれども、なければどうぞ御退出ください。
 では、提出者の方に順次お伺いをさせていただきます。
 提出者の方を目の前に置きながら、法案に対していろいろ申し上げさせていただきました。順次、御反論というか意見を伺ってまいりたいと思います。
 今も申し上げましたが、株式市場対策ではないかということに対しては、先ほど、ひいては需給の調整、株式市場の対策になるというようなお答えであっただろうというふうに思いますが、これも先ほど御指摘申し上げたように、毎回、出てくる経緯は、株が下がって、市場対策が要るぞということになって、必ず出てくる話であります。
 日本の株式の保有構造が法人に極めて偏っていて問題があるということは、きのうきょう指摘をされた話ではないわけでありますので、この株式保有機構についても、しっかりその目的を達成できる、目的に合った形でやっていただきたい、このように思うわけであります。
 もう一度確認をさせていただきますが、そもそもの目的は、銀行が大量の株式を保有している、そのリスクを遮断する、そのためには銀行の株式は減らしてもらわなければいけない、それも速やかに減らしてもらわなければいけないと柳澤大臣は当初のときに言っておられたはずなのでありますが、その理解でよろしいでしょうか。
熊代議員 御承知のとおり、我が国の株式市場というのは大変広範な持ち合いが行われておりまして、銀行の経営からすると、持ち合いを解消した方がいいだろう。加えて、BIS規制があるということでございます。BIS規制が二〇〇四年に強化されるということですが、これは二〇〇六年になりました。
 最初、この持ち合いを当面はティア1のところまで解消しようということでございました。しかし、二年七カ月、今度提案申し上げている二年を延ばしても四年七カ月と非常に短い期間でございますので、市場に対する影響というのは極めてドラスチックだというふうに思います。
 それに対しまして、少しでも市場の安定を図るという意味で株式を機構で買い取るということでございますので、臨時の措置としまして市場の安定を図るということで、株価をキープする意味での市場対策ではない、そういう趣旨でございます。
松本(剛)委員 柳澤大臣は、一昨年のこの法案制定のときには、「私どもとしては、既定方針でできるだけ早くにこの保有制限というものを実現すれば、早ければ早いほどいい、こういうのが実情なわけであります。」こうお答えになっております。
 BIS規制との関係もいろいろ質疑をされていますが、基本的に、銀行のリスクを遮断するという意味で、BIS規制よりもむしろ銀行の信用そのものにかかわる、こういう認識で柳澤大臣は答弁しているんではないかと私はお聞きをしていたわけでありますが、今回の法案の提出に当たっては、そこの考え方は変わって、銀行自身は本来速やかに株式保有を減らしていくべきだという考え方を変えて、ゆっくりでいいよ、こういう考え方に変わったという理解でよろしいんですか。
熊代議員 ゆっくりでいいということではございませんで、申し上げましたように、二年七カ月というのは非常に短い期間でございますが、これはBIS規制というものがありましたから、十五兆円をただ売りに売る期間というのは、二年七カ月というのは短かったわけですけれども、BIS規制はそのときまでに強化されるだろうという見込みでございました。それは二年延期されるということでございますので、ネットで四年七カ月ということも、十五兆円を売りに売るということを考えれば非常に短い期間でございます。
 そういうことでございますから、ただ、目前に迫るよりも、やはり四年七カ月の方がもっと自由度があるだろうということでございますので、別にゆっくり売れということではございませんが、余り厳しい状況ではなくて、ある程度の自由度がある。しかし、銀行の経営から株式の価格のリスクを遮断するという目的のためにやるということで、当初の目的から変わっているものではございません。
松本(剛)委員 先ほども申しましたように、本来リスクをどのぐらいとるかというのは銀行の経営判断の問題が入ってくるはずでありまして、銀行自身がこのように大きなリスクを抱え込むのがいいのかどうかを判断するべきであったし、結果として抱えてしまったということは、やはり経営の問題はあると見るべきだろうというふうに私は思っておるんですが、しかし、それを結局抱えてしまって、言うなれば、政府が法律で言わないと減らさないだろうということが、保有制限をかけた理由ではないのですか。私はそうだと思うから、もし個々の判断で減らしていくのであれば、法律はこんなところまで縛る必要は逆にないわけでありますが、やはりやっていかないとだめだということで保有制限をかけたんだろう。
 とすれば、銀行のビヘービアが根本的にこの二年で変わったというのであれば別でありますけれども、二年延ばしたとすれば、ああ、二年かけてやればいいんだ、残念ながらそういうことになるんではないか、このように思います。そんな中で、あえて二年延長されたその理由を伺いたいと思いますが、提出者の方。
熊代議員 大量の株式をただ売りに売るという場合にどういうビヘービアが考えられるかというと、最初二年七カ月でセットいたしましたけれども、最初の一年の間に八兆円を売りに売るということがございました。それも、市場に主として出されたということもございます。
 そういうことでございますから、できるだけ早い機会に売りたい。それは売り急ぎにもなるわけでございまして、逆に値を下げるということもあるわけですね。そういうこともございまして、期限を延ばさないでそのままということもあると思いますけれども、BIS規制があるので、二年七カ月という、それほど厳しい期間をセットいたしました。
 私もアメリカへ行きまして、グラス・スティーガルを変えたグラム・リーチ・ブライリー法のリーチさんにお会いしましたけれども、二年七カ月というのは非常に短いじゃないか、幾ら何でももう少し考慮するべきではなかったかというような話もございました。そういうことも勘案いたしまして、四年七カ月というのは決して長い期間ではない。この中で、やはり企業としてもタイミングをはかりたいことはあるだろう、しかしきっちりと法律は守っていただく、そういう趣旨でこの二年を延ばしたわけでございます。
松本(剛)委員 では、少し違う角度から聞かせていただきましょう。
 先ほどもお話があったように、そしてペーパーを拝見させていただきますと、主要行でいわゆるティア1を超過している額は二兆五千億ほどというふうに伺いました。りそな銀行を除けば既に一兆五千から六千ぐらいの金額であろうというふうに思います。やはり二年ほど前に、当時、保有制限に係る株式の量が約十一兆円、毎年市場で三兆ほど売って、三・五年ほどということでいくと、三年と見て九兆で、二兆足らないから、二兆の政府保証枠を設けるんだ、こういうお話でありました。
 私の方が手元で調べた限りでは、昨年持ち合い株式を売却した額は主要行で六兆二千五百九十億ほどある、決算発表の数字を合わせますと六兆ほどある。このうち、先ほどお帰りになりましたけれども、日銀がお買いになった分があると思いますし、この機構が買った分があろうかと思いますが、十分に市場で三兆、四兆は売れているという計算は成り立つと思います。
 「りそな」の分を入れても二兆五千億ということになると、今までの計算どおりであったとすれば、そしてここ数年、もう今までの計算以上に順調に減ってきているように思われますので、そのことを考えるとわざわざ延長する必要はないということになりますが、いかがでしょうか。提出者の方にお伺いしたいと思います。
江崎議員 お答え申し上げます。
 松本委員おっしゃる、その二兆五千億が十分一年間で売却できるんではないかということでございますが、これはあくまで、私ども提案者は、持ち合い解消という制度改革を行うに当たっての受け皿づくりをこの機構に任せようという趣旨でございまして、この二年間の延長につきましても、あくまで銀行の自主的判断に基づいて売っていただくということであります。
 しかしながら、先ほど来、提案者の熊代議員からもございましたように、激変緩和、いわゆる売り急ぎということも含めて、余裕を見て二年延長しようということでございます。そういった意味で御理解をいただきたいと思います。
松本(剛)委員 そういうことであれば、先ほどもありましたが、法案の名前をやはり変えることも提案をしていただきたいですね。これは、銀行の株式の保有の制限等に関する、名は体をあらわさないという話が多過ぎるのは国民に対しても非常に失礼な話ではないかというふうに思います。これも実は、先ほど自己株の取得に関して法務委員会でも申し上げたんですが、市場の厳格な、適正な運用についてということで、自己株式の取得に関する規制をばさっと緩める、厳格、適正にやっていこうといって、実は中身は規制を緩める、こういうことがこの国ではあちこちまかり通る。もし持ち合い株解消のためということであれば、銀行の持ち合い株解消のために国が銀行を助ける法律とか、非常にわかりやすく、やはり名前を変えていただきたいということをぜひ提出者に求めてまいりたいと思います。
 もう一つ、別の角度からお伺いをしたいと思います。
 これは銀行の株式変動リスクから遮断をするためということでありますが、今期の決算を見てもわかるように、相当この株式の変動リスクが、いろいろな意見がありますけれども、小泉政権になってから株価はこれだけ下がってまいりました。変動リスクがいわば表に出ちゃったわけですよ。今さら、さらに大きな変動リスクがまだまだあるか。もうそんなには下がらぬ、こういうことだとすれば、これは背景に国民の負担、政府保証がかかわっている話だから、政府保証をつけてまで政策目的としてやらなければいけない理由がまだ本当にそんなに残っているのかということを私は疑問に思うから、お伺いをしておるわけであります。
 株価変動リスクがこれだけ具現化をしてしまった中で、まだ機構によって買い取る必要がどのぐらいあるのかということに関する認識をお伺いしたいと思いますが、提出者の方、よろしいですか。
江崎議員 先ほどちょっと延長の件で、株式持ち合いの制度改革と申し上げましたが、それは結果論でございまして、保有制限が第一義的に、結果として持ち合い解消につながるということでございますので、御理解いただきたいと思います。
 そこで、今の議論でございますが、やはりこれからまだ二兆数千億という規模で市場で株式を売却しなければいけないという事実がございます。そういった意味で、市場売却を補っていくという意味でのセーフティーネットの役割は、この機構は相変わらず持っているんだと思うんです。そういった意味で位置づけているという認識でございます。
松本(剛)委員 余りここで時間を割いていてもしようがないのでこれ以上申し上げませんが、もう一遍申し上げますが、百歩譲って、保有制限が第一の目的だとすれば、そしてそのために政府保証をつける、保有制限に関するからこそ政府保証をつけて、国民負担が起こり得ることも甘受されるというのがこれまでの構成だっただろうというふうに思います。だとすれば、しかし、保有制限の分に関してはおおむねゴールに近づいているんですよ、どっちから見ても、どこから見ても。それなのに延長しなきゃいけないということは、全く合理的な説明がない法律だ。
 私は、そのままそうかどうかは確認をとっておりませんけれども、議論を聞いている限りは、むしろそれは、先ほど佐々木議員の議論にあったように、だれかに頼まれたからじゃないかということの方が納得がいってしまいそうだなというふうに思えるということを御指摘申し上げておきたいと思います。
 それから、事業法人からの買い取りのことについても先ほど既に質疑がありました。前のときも、国民負担の観点から二分の一にしよう、十対四だから二分の一にしようという話だという、議事録の読まれた部分があったわけでありますが、過去二回、三回の議論を聞いていても、最初に言ったときから、一番最初のこの設立をしたときに、これは銀行の保有の制限に係るものだから、事業法人から買い取ることはありませんと柳澤大臣が答えている。半年か一年たって、事業法人が買い取ることになる。二分の一にする理由は、国民負担を考えて、持っている量もそうだから二分の一にしましたといって、また全額、一〇〇%にする。
 こういう情けない、議事録の矛盾を毎回追及をしなきゃいけないような法案を出すのはもうやめていただきたいわけでありまして、国会で、ある意味では、聞いている私自身が非生産的だと思えるような、非生産的だから黙って通せというのではなくて、非生産的だからこの法律はやめるべきだというふうに私は申し上げたいわけでありますが、そういうことをぜひお願いをさせていただきたいと思うんですが、この事業法人に関して一つだけお伺いをいたします。
 今まだほとんど実績ゼロですね、たしか、記録を見る限りは。後ほど八%の話を聞きますが、八%をやめれば多少はインセンティブが出るというのはまだわからなくもないんですが、ほとんどないのにかかわらず、あえてこういう形でわざわざ枠を倍にしなきゃいけない理由、枠を倍にしたからといって利用がふえるとは思えないんですけれども、その理由はなかなか私には理解をしがたいんですけれども、もう一遍御説明をいただけませんでしょうか。
上田(勇)議員 お答えいたします。
 今回、上限を二分の一から同額まで引き上げた理由につきましては、先ほどの質疑の中で御説明をさせていただいたわけでございますけれども、前回の改正の折には、いわゆる銀行が保有している事業法人の株式と、それから事業法人が保有している銀行の株式の比率、それがおおむね十対四であることから二分の一という上限を設けたということであります。
 確かに、それは銀行全体あるいは事業法人全体が持っている株式の比率からいえばそういうような比率になっているわけでありますけれども、個々の銀行が持っている事業法人の株式あるいは個々の事業法人が持っている銀行の株式を見るときに、必ずしもその全体の比率の中におさまらないものもあるわけでありますので、そうしたことを勘案いたしまして、今回、その比率を一対一まで拡大をしようということであります。
 先ほど委員御指摘のあったとおり、この事業法人からの銀行株の買い取りというのは、いまだ件数、金額とも非常に少ないというのは事実でございまして、何とかそういう意味でいろいろと利用の障害となっている部分について修正をすることによりまして、持ち合い解消を進めるという方向でこの制度が活用されることを期待して、今回こういう提案をさせていただいているところでございます。
松本(剛)委員 同じ説明を二度聞いたけれども、結局わからないというのが正直なところで、恐らく説明をされた上田議員も納得をされていないのではないかと私の勝手な推察をさせていただきますが。
 この法案はそもそも、実は設立の当初も何度も言われていますが、セーフティーネットなんですよね。セーフティーネットとしてこういう機構を設けるんだと。セーフティーネットであるということは、使われなかったら使われなくてもいいじゃないか、こういうことに私はなるべきではないかと思います。そのことから考えたら、事業法人が別に使ってないことを私は直接どうこう言おうとは思いませんが、逆に言えば、二分の一あれば十分じゃないですか。
 それから、銀行に対しても、八%の話は随分今までも議論が出ましたので、少し話を先へ行かせていただきますが、八%も、これはセーフティーネットを利用する一種のコスト負担として持ってもらう、また、自己資本比率が八%だから、ちょうどその分資本コストがというような説明を柳澤大臣は当時されておられたというふうに思います。セーフティーネットなんですから、使い勝手をよくするとかというのは、これは完全に使おうとする銀行のためのものであって、わざわざ政府保証をつけてセーフティーネットを設けたわけで、別に何かのために使えればいいわけで、使い勝手をよくしてあげよう、その結果として国民の負担がふえるような形をとるべきではないということを申し上げたいと思います。
 先ほど、これも議論がありました。含み損が幾ら出ているのかという話で、六月の時点であれば、株価が回復しているから少しは含み損が減っている、こういうお話でありましたが、そういったことを、私たちはあらかじめお伺いをして、質問をさせていただきたかった。
 冒頭、生方議員が言われて、決算書を見せてくれという話がありました。金融庁と財務省の共管というふうにお聞きをしておりますので、まずは手順を事務方の方にお聞きをしたいと思います。筆頭理事と次席理事が、質問の内容については余り細かく打ち合わせをしておらなかったんです。
 先ほど、生方議員に対してはないという説明だったというお話でしたが、私の方については、七月の半ばごろに出る、こういうお話でありました。そのころでは法案審議が終わりかねませんな、そうかもしれませんね。まさか法案審議が終わるころに出そうというようなことであったとは思いたくないわけでありますが、一つ一つ確認をしていきたいと思います。
 機構の総会は六月の十三日に行われた。そして、機構から書類が届いたのは同日六月十三日である。それから、六月二十五日に竹中大臣はごらんになった。そして昨日、六月二十六日に内閣総理大臣承認の手続がとられた。
 総理大臣承認の手続はいつ起案されたものなんでしょうか。これは、財務省と金融庁と両方から上げるんですか、それとも、まとめて判こ押して、どっちかから上げるんですか。手続だけお伺いしましょうか。
藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 先生御指摘のように、機構の平成十四年度決算書の通常総会における承認は六月十三日でございます。それで、金融庁及び財務省への決算書の提出も同じ日でございます。それで、大臣の方から先ほど御答弁ありましたが、大臣には一昨日御報告いたしておりまして、決裁として、金融庁及び財務省において決裁が完了いたしましたのが六月二十六日でございます。
 起案は、ちょっと今調べております。
松本(剛)委員 内閣総理大臣に承認を出すに当たっては、判こを押すのは竹中大臣ですか、それとも金融庁長官ですか。
藤原政府参考人 金融庁長官から総務企画局長であります私の方におりております、委任されております。私でございます。
松本(剛)委員 ということは、藤原局長から総理に上がるという理解でいいですか。
藤原政府参考人 総理から金融庁長官に委任されておりまして、それをまた私に委任されております、局長に委任されております。
松本(剛)委員 ということは、局長が判を押せば終わりということですか。大臣が二十五日に見られて、藤原局長が二十六日に判を押したと。
 財務省の方はどういう手続になっていますか。
津田政府参考人 私どもの方は、取得機構から財務諸表等の提出を受けたのは六月十三日でございます。それから財務省における決裁を完了いたしましたのは六月二十六日でございます。
 起案の日は、ちょっと手元に今ありませんので、よくわかりません。
松本(剛)委員 参考に伺いますが、財務省はどなたが判こを押されるのでしょうか。
津田政府参考人 これも財務大臣の権限でございますが、内部規定では、担当の信用機構課長におりております。ただ、すべて、私も聞いておりますし、大臣にも御説明はしております。
松本(剛)委員 だまされたという言葉は適当でないので余り使えないんですが、私、ぜひこの機構の決算を見せていただきたいということをお願いをさせていただいて、昨日の午後になってから拝見させていただきました。
 私自身の理解では、これはいわば監査のようなものだろうと思いますので、各銀行とか企業は、決算は決算でそれぞれ発表されて、その上でいろいろな形で、株主総会とか承認を受けたり監査を受けたりという形になってくるのではないかと理解をしております。
 ですから、機構から決算が出ているなら、すぐに私たちに見せてくれたらよかったじゃないかと言いましたら、これは内閣総理大臣の承認が要るから、やはりその承認をとってからでないと、松本さんにそう見せるわけにはいきませんと。聞いたら、藤原局長と信用機構課長じゃないですか。
 率直に言って、見せられる状態にあったのか。先ほど生方議員の方から、ひょっとして相当ずさんな処理だったのではないかというような問いかけをさせていただいたと思いますが、ずさんであるとすればこれも大変問題だと思います。幸いにしてというか、この審議をしている六月ごろ若干株価が戻したから、先ほど拠出金でカバーできるというような答弁を局長ができる状態に戻っておりましたが、この決算だけ見たら、だれが見ても、ありゃあ、決算ではカバーできない、拠出金ではカバーできないという数字になっているわけですよね。できたら見せずに済ませたいという誘惑に駆られないことはないと思うんですが、そういうことはないということでよろしいんですか。
竹中国務大臣 これは本当に重要な審議をいただくわけですから、金融庁としてとにかく手続は早くやれ、何事も隠すな、これは徹底して金融庁の諸君にも言ってありますので、間違ってもそんな、できれば隠したいとか、そういうようなことは一切ございません。その点はどうぞ信じていただきたいと思います。
松本(剛)委員 大臣にもこれは真剣にお願いをさせていただきたいと思いますが、この八%の話、この法案をやろうという話になったのは、先ほど申しましたように、遅くとも五月の段階にはかなり具体的に出てきているわけですね。八%の拠出金、あのときは一時撤廃という言葉だったのが、いつの間にか恒久的撤廃の法案になっておりますけれども。
 となれば、当然、この法案の審議を行うに当たっては、この決算を求められるということも想定がつく。認可法人のはずですから決算を督促することも可能だろうと思いますし、六月十三日に出たら、法案がもうかかるという状態になっておれば、速やかに手続をとっていただいて、通常の事務はいろいろな事務がある、これはわかりますが、まさに今審議をしようとしているということがはっきりしている案件に恐らく必要になるであろう書類なわけでありますから。
 これは、一番最初に決算書をぜひ見せていただきたいと言ったのは、きのうおとといよりもうちょっと前だったんではないかと思います。生方さんや私が質疑のスタートと言ったのは、三日ぐらい前だろうと思いますが、あったらすぐ見せられる話だと思うんですね、私自身の方からすれば。承認がとれてない、藤原局長と信用機構課長さんの判がないという話でありましたけれども、それだったら、すぐ押せるように、そこまでの段階でぜひ押せるようにしておいていただくとか、そういうふうにぜひしておいていただきたい。
 これは、「りそな」問題でもいろいろなところでも出てまいりましたけれども、どうしても疑いたくなるようなことが次々と残念ながら起こってくるんですよ。本当に七月中旬まで見せられない――よほど審議を、それが出てくるまで待たせていただきたいと私は申し上げたかったぐらいであります。
 この中身については私もばらばら拝見させていただきました。幾つかお聞きしたいところもあるんですが、改めて精査をして、同僚議員がお伺いさせていただくことになるであろうというふうに思います。
 ぜひこの中身についてお伺いさせていただきたいのと、この場でお願いさせていただきたいのは、途中で、既に特別勘定で株式の売却等も行われているようであります。売却益が出ているようでありますので、この経営と、株式を買い取って、どう売っていくのかというのは極めて重大な、国民の損失がどのぐらい出るかということにかかわってくる問題でありますので、保有機構の理事長にも次回の審議には御同席いただきたいということを私の方からお願いをさせていただいて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
 以上です。
小坂委員長 次回は、来る七月四日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後二時五十一分散会


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