衆議院

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第13号 平成16年3月30日(火曜日)

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平成十六年三月三十日(火曜日)

    午後三時開議

 出席委員

   委員長 田野瀬良太郎君

   理事 鈴木 俊一君 理事 萩山 教嚴君

   理事 村井  仁君 理事 山本 明彦君

   理事 島   聡君 理事 中塚 一宏君

   理事 長妻  昭君 理事 上田  勇君

      江崎洋一郎君    江藤  拓君

      木村 隆秀君    熊代 昭彦君

      小泉 龍司君    河野 太郎君

      佐藤  勉君    七条  明君

      田中 英夫君    谷川 弥一君

      中村正三郎君    西田  猛君

      西銘恒三郎君    林田  彪君

      原田 令嗣君    三ッ矢憲生君

      宮下 一郎君    渡辺 喜美君

      五十嵐文彦君    小泉 俊明君

      鈴木 克昌君    津川 祥吾君

      津村 啓介君    永田 寿康君

      藤井 裕久君    馬淵 澄夫君

      松原  仁君    村越 祐民君

      吉田  泉君    谷口 隆義君

      長沢 広明君    佐々木憲昭君

    …………………………………

   国務大臣        

   (金融担当)       竹中 平蔵君

   内閣府副大臣       伊藤 達也君

   財務大臣政務官      七条  明君

   政府参考人

   (内閣法制局第一部長)  宮崎 礼壹君

   政府参考人

   (金融庁検査局長)    佐藤 隆文君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    五味 廣文君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月三十日

 辞任         補欠選任

  田中 英夫君     西銘恒三郎君

  原田 令嗣君     佐藤  勉君

同日

 辞任         補欠選任

  佐藤  勉君     三ッ矢憲生君

  西銘恒三郎君     田中 英夫君

同日

 辞任         補欠選任

  三ッ矢憲生君     原田 令嗣君

    ―――――――――――――

三月二十四日

 消費税の増税反対に関する請願(志位和夫君紹介)(第一二五四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 金融に関する件(破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告)


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     ――――◇―――――

田野瀬委員長 これより会議を開きます。

 金融に関する件について調査を進めます。

 去る平成十五年六月六日、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律第五条の規定に基づき、国会に提出されました破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告につきまして、概要の説明を求めます。金融担当大臣竹中平蔵君。

竹中国務大臣 昨年六月六日、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律第五条に基づき、平成十四年十月一日以降十五年三月三十一日までを報告対象期間として、その間における破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告書を国会に提出申し上げました。

 本日、本報告に対する御審議をいただくに先立ちまして、簡単ではございますが、本報告の概要について御説明申し上げます。

 初めに、破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容について御説明申し上げます。

 十三年十二月二十八日に金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分がなされた石川銀行については、昨年三月二十四日、日本承継銀行を経て、北陸銀行、北國銀行、富山第一銀行、金沢信用金庫及び能登信用金庫への営業譲渡が行われ、管理を命ずる処分が取り消されております。

 また、十四年三月八日に管理を命ずる処分がなされた中部銀行については、昨年三月三日、日本承継銀行を経て、清水銀行、静岡中央銀行及び東京スター銀行への営業譲渡が行われ、管理を命ずる処分が取り消されております。

 さらに、被管理協同組織金融機関について申し上げますと、報告対象期間中に、五信用組合について事業譲渡が行われ、管理を命ずる処分が取り消されております。

 次に、新生銀行及びあおぞら銀行からの預金保険機構による瑕疵担保条項に基づく債権買い取りの状況について申し上げます。

 報告対象期間中に預金保険機構が引き取った案件は、新生銀行については五十四件で、債権額千四百三十二億円、支払い額千二百四十三億円であり、あおぞら銀行については三十一件で、債権額千三百五十六億円、支払い額八百六億円となっております。

 最後に、預金保険機構による主な資金援助等の実施状況及び公的資金の使用状況について御説明申し上げます。

 破綻金融機関の救済金融機関への営業譲渡等に際し、預金保険機構から救済金融機関に交付される金銭の贈与に係る資金援助の額は、報告対象期間中には四千八百九十二億円、これまでの累計で十八兆六千八百四十一億円となっております。

 また、預金保険機構による破綻金融機関からの資産買い取り額は、報告対象期間中には千九百八十一億円、これまでの累計で六兆三千六百六十三億円となっております。

 これらの預金保険機構による資金援助等について、十五年三月三十一日現在における公的資金の使用状況について申し上げます。

 一般勘定、特例業務勘定、金融再生勘定及び金融機能早期健全化勘定における政府保証つき借り入れ等の残高は、各勘定合計で二十兆八千七百三十六億円となっております。また、特例業務勘定の特例業務基金に交付された十三兆円の交付国債の償還額の累計は、十兆四千三百二十六億円となっております。

 なお、平成十四年度末において特例業務勘定は廃止され、償還されていない二兆五千六百七十四億円の国債は政府に返還されております。

 ただいま概要を御説明申し上げましたとおり、破綻金融機関の処理に関しては、これまでも適時適切に所要の措置を講じることに努めてきたところであります。金融庁といたしましては、今後とも、我が国の金融システムの一層の安定の確保に向けて万全を期してまいる所存でございます。

 御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。

田野瀬委員長 これにて概要の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

田野瀬委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として金融庁検査局長佐藤隆文君、金融庁監督局長五味廣文君、内閣法制局第一部長宮崎礼壹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田野瀬委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田野瀬委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中英夫君。

田中(英)委員 自由民主党の田中英夫でございます。

 ただいま竹中大臣より破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告の概要説明がなされたところでございます。

 本日、私は、この報告と、それに関連して、特に地方経済活性化のための地方金融機関の機能強化等々についてお聞きをしたい、このように思っております。

 まず、基礎的なことについての質問であります。

 ただいまのは平成十四年十月一日以降十五年三月三十一日までを報告対象期間として報告をされたものについての審議ということでありますけれども、この三月三十一日から一年がたっておるわけであります。どこか最近の期間で結構ですけれども、これまでで金融機関がどれくらい破綻しているのかという意味で、九〇年以降に破綻した金融機関の数についてお聞きをしたいと思います。

 また、その中でどれくらいの公的資金を投入したか改めてお聞きをして、そのうち国民負担が確定している額についてお答えを願いたい、このように思います。

五味政府参考人 御説明を申し上げます。

 まず、平成二年、一九九〇年以降に破綻した金融機関の数でございますが、銀行が二十行、信用金庫二十七金庫、信用組合百三十四組合、以上三業態の合計で百八十一金融機関となっております。

 また、公的資金の投入累計額でございますけれども、預金保険機構による平成十五年九月末までの主な資金援助の累計額で申し上げますと、預金保護のために投入されました金銭贈与が十八兆六千六百八十六億円、次に、破綻金融機関からの資産の買い取りが六兆三千六百六十三億円、資本増強が十二兆三千八百六十九億円でございます。

 このうち国民負担として確定した金額でございますが、預金保険機構がこれまでに行いました資金援助等のうち、ペイオフコスト超の金銭贈与、預金者保護のために用いられました金銭贈与、このための交付国債使用額が、特例業務勘定が廃止されました平成十五年三月末の時点で十兆四千三百二十六億円でございます。これにつきましては、現段階において、国民負担として確定をいたしております。

 以上でございます。

田中(英)委員 ただいまのものに加えて、この六カ月期間の中での数字についてわかりましたら、お教えをいただきたいと思います。

五味政府参考人 ただいま御審議をちょうだいしております、いわゆるFRC報告、平成十四年十月一日から十五年三月末までにおける預金保険機構によります主な資金援助等の実施状況でございますが、これは、預金保護のための金銭贈与が四千八百九十二億円、また、破綻金融機関からの資産の買い取りが千九百八十一億円となっております。

田中(英)委員 大臣から最初に御報告いただいた数字もかぶっておるのでありますけれども、この数字を見ておりまして、九〇年から今日までの累計、今日といいますか先年三月三十一日までの累計、そしてその六カ月間の数字を見ておりまして、同じグラフではないとは思っておるわけでありますけれども、基本的に、これは次第に減少、下降して安定化の方向に向かっているというふうに考えておられるのか、その御認識をお聞きしたい。

 それから、国民負担につきましては、今言いました十兆何がしのもの以外については新たな負担とはならない、このように御認識をされているのか、その辺についてもお聞かせをいただきたいと思います。

竹中国務大臣 今、数字として申し上げましたとおり、バブル崩壊後の金融面での被害というのがいかに大きかったかということを私自身も改めて実感をいたしております。

 そうした中で、昨今の状況は、御承知のように、不良債権問題を終結させるという総理の御指示のもとに、我々、主要行に対して金融再生プログラムを策定し、その諸施策の推進に今全力を尽くしているところでございます。そうした中で、不良債権の比率は着実に今減少しているというふうに認識をしております。主要行の自己資本の比率もいずれも健全性の基準を満たしているということでありますので、我々としては、とにかく今の状況をしっかりとさらに加速していきたいと考えているところでございます。

 一方で、中小・地域の金融機関に関しましては、これも委員御承知のとおり、リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラムに従いまして、これは主要行のように不良債権を減らせという数値目標を課すことではなくて、まず、中小企業の金融の再生に向けた取り組み、健全性確保、収益性向上といった、地に着いた、しっかりとした着実な進展を期待しているところでございます。

 この中小・地域の金融機関の経営状況につきましても、最近の財務状況を見ますと、足利銀行を除きましてすべてが健全性の基準を満たしておりますので、現状において特段の問題があるわけではないわけでありますけれども、引き続きこのリレーションシップバンキングの枠組みでしっかりと対応していきたいと思っております。

 もう一点、委員がお尋ねになりました今後の問題でございますけれども、今後、金融機関の破綻が生じるか否か、また、新たな国民負担が発生するか否かについては、将来にわたる事項でありますので、確たることはもちろん申し上げられないわけでございますけれども、金融庁としては、今後とも、より強固な金融システムの構築を目指しまして、金融再生プログラム、そしてリレーションシップバンキングのアクションプログラム、この諸施策を推進するということに全力を尽くしたいというふうに思っているところでございます。

田中(英)委員 ただいまありましたように、多分、スタートからのグラフでいえば、一定減少、そして下降、安定方向へ行っておるというふうに思うわけでありますが、もうないのかと本当は聞きたいところでありますけれども、今おっしゃいましたように、今日まで投入した分について、国民負担についても新たなものが発生しないように努力をしていこう、こういうことでありますから、その方向に向けてひとつ頑張ってやっていただきたい、このように思うわけであります。

 そんな方向に進んでおるということで、今、少し地方の金融機関の状況についてもお話をいただいたわけでありますけれども、実際、金融機関と地方の景気状況というのは当然リンクしておるというか、逆に、地方の経済の再生、地域地域の再生、トータルとしての日本の経済の浮揚というもののベースのために、当然金融機関の安定というものもあるわけであります。

 そういう意味において、景気が少し上向くという単語が出るたびに、私は京都でありますけれども、それぞれ地域地域における有権者、国民の感覚からいいますと、本当にそうなっておるんだろうか、今日まで余りに長い時期そういうふうに来ておるので、今の方法のままでずっといくことによって我が国の経済が本当に浮揚していくのであろうか。期待もあるわけでありますけれども、半分、不安、不信に近いところもある、こういう状況が事実だろうというふうに思うわけであります。

 そんな意味で、今おっしゃった地域経済の活性化のための地域金融機関のリレーションシップバンキングの強化のことについてお聞きしたいんでありますが、その前に、大臣、景気が上向いていくというか変わっていくときに、当然、中央また大都市と地方というものにタイムラグがあるというのは、私もそのように認識をいたしておりますし、そのタイムラグがありながら、常に、いやいや、我々のところはまだそこまで来ていないのだと言いながら、今日までグラフが上がったり下がったりしてきたということも事実なんでありますけれども、ただ、今回、余りに長い期間そういうことがありながら、これから上向きかけておるところに少し期待は持っておるわけでありますけれども、果たして、これがそのまま上昇が続いていくとしても、確実に今までと同じようにタイムラグがあるものだということで、おくれて地方がついてくるということにつながるかどうか。私はかなり地方の疲弊というのは大きいというふうにも感じておるわけでありますけれども、そういう意味で大臣の景況感について少しお聞かせをいただきたい。

 その上で、リレーションシップバンキングの機能強化、これについてより具体的に今後どのように進めていくのか、こんなことについてお聞かせをいただきたい、このように思います。

竹中国務大臣 委員御指摘のように、地方の、地域の経済問題というのは、我々も一生懸命いろいろなところに目配りをしているわけですけれども、目配りをすればするほど、やはりこれは厳しい問題であるという認識を私自身も持っております。私自身も地方都市の出身者でございまして、そういった実感からも、かなりこれはしっかりと対応しなければいけない問題であると思っております。

 地域経済の状況を見ますと、方向としては、各地域経済とも今までよりはよい方向に向かっているというのが、例えば景気ウオッチャーの調査等々、一年前に比べてほとんどの地域で景気の現状判断というのは改善をしております。これは事実なんですが、しかし、例えば九〇年代に入りまして、これまで三回目の景気回復局面になるわけですが、そういった過去の局面と比べますと、実は今回は地域ごとに非常にばらつきがある。今まで二回の場合はある程度全体が動いて各地域も同じように動いてくるという状況が見られたんですが、今回はそういう状況に非常にばらつきがあるというのが、これはやはり直視しなければいけない問題であるというふうに私自身も考えております。

 こういう問題意識を非常に早い時期から我々も持っておりましたので、この問題は、景気が回復して自動的に地域に浸透していくという性格のものではない。地域の問題、地域間格差というのを新たな構造問題として位置づけて、しっかりと対応していかなければいけないという思いのもとに、昨年、地域再生本部を設置しまして、ことし二月に決定した地域再生推進のプログラムなどを通じて、地域経済の活性化、そして地域雇用の創出を強めていかなければいけないというふうに思っております。

 また、特区等々も、今二百三十六件の構造改革特区を認定したわけでございますけれども、こうした地域再生と特区、そういうものを組み合わせて、さらに新たな地域格差という構造問題に強力に対応していかなければいけないというふうに考えているところでございます。

田中(英)委員 今お話があったように、単なる従来の、従来もいろいろあったかもしれませんけれども、中央と地方とのタイムラグということだけでなくて、地域間においても差異が出てきている。それが、地域それぞれがまた新たな形になっていく、躍動の芽かもしれませんけれども、自然に置いておけばついてくるということではなさそうだというふうに今大臣もおっしゃったんであろうというふうに思っております。

 経済全般を議論するとたくさんあるんでありますが、その中でも、例えば今回の景気回復で、指標的には、いわゆる大企業の数字が相当な比率を占めておるということで、それによって景気の上昇機運がある、こういうことになるわけでありますけれども、それが相当なる、言いようによれば雇用の切り捨て、そして効率化へ走ったということによって、それが中小企業ということもありますし、地方におけるそれぞれの住民に対する、なかなかすべての人がよしと思えるようなところに行きにくい、そんな回復の仕方になってきておる、こういうふうに思うわけです。

 例えば、それを金融機関の問題でも当てはめてみますと、大手銀行も経営を改善していかなきゃならぬ、こういうことで再生の計画を立てて、当然公的資金が入っておりますのでやっておられるわけでありますが、聞くところによりますと、これは私自身も経験したことでありますけれども、その計画の中に、頑張らなあかん、こういうことで中小企業に対する融資等々の比率を目標として持っておる。それが逆に、今度は、本来地域金融機関がきめ細やかに見ておった顧客のところにもどんどん入ってくるというような現象もあるやに聞いております。

 私も最近の五年間市長をしておりましたら、たまたま住宅公社とか外郭団体とか、そういうところに対して非常に結構な条件でオファーがあった。それはありがたいのでありますけれども、しかし、地域金融機関のことも考え、バランスをとっていく。そして、地方金融機関が弱ってしまうと、大手行が、すぐに帰ってしまうとは言いませんけれども、最後までつき合って面倒見るのかというと、やはり最後のところ、細やかな、特殊の、特別の地域事情を知っておるのは地方機関である、こういうことに相なると思いますので、その点についても、やはり両方をよく考えながら経済の浮揚策を考えていく、金融機関の再生も考えていくということでないと。まずこれをしっかりやったら、その次地方でやっていく、少ししんどいところはやむを得ぬなというようなふうになってもらっては困る、こんなことが一つあるというふうに思っておるんです。

 今のお話の中、先ほどからの御答弁もありましたけれども、いわゆる先に走り得る大と名のつく企業も、金融機関もそうでありますけれども、そういうところと、地方とか小と言われるところとの形が従来とは変わってきていた。ちょっとその辺について何かあればお教えください。

竹中国務大臣 個別には本当にいろいろな状況があろうかと思いますので、個別についてなかなか申し上げることはできないのでありますけれども、一般的な、例えばそれこそジャーナリズムでの情報等々もいろいろ勘案しますと、まさに今委員御指摘になられたように、貸し渋りは非常に困る、しかし、逆にちょっとまた時代が変わると、いろいろなところがどんどん借りてくれ借りてくれと言ってきて、その中で、大手の銀行が地元の従来から取引している金融機関を排除するような強引なことをしているのではないだろうか、そのような議論がジャーナリズム等々でなされているということは承知はしております。

 しかし、これも委員御指摘のように、実は、地域金融機関が地域に根差してしっかりと長期的な観点から取引をしていく、その基盤をやはり強化していくということは、これは地域の中小企業にとっても、また地元の金融機関にとっても、双方にとって大変重要なことであると思っております。そういう観点から、やはり地域金融機関には、リレーションシップバンキングのアクションプログラムにのっとって、地元に張りめぐらされた情報網を活用して、長い観点からのリレーションシップを重視した基盤をしっかりと確立していっていただきたいということだと思っております。

 一方で、我々は銀行監督の立場がございますから、万が一にも大銀行が何らかの優越的なといいますか強力な地位を乱用して貸し込みをしているような状況があるんだったら、これはしっかりと監督しなければいけないことであると思っておりますし、一方でまた、同じように一部の銀行が、自分の信用リスクを無視して、とにかく一部の中小企業に対する貸し付けだけをふやせばいいというような単純な行動を行っているようなことがあれば、これは厳に我々としてはしっかりと見ていかなければいけないというふうに承知をしております。

 個々の事例、数はいろいろあるんだと思いますけれども、いずれにしましても、中小企業に対する金融の円滑化がしっかりと図られるように、全体のバランスを見てまいりたいというふうに思っているところでございます。

田中(英)委員 今おっしゃいましたように、金融監督上、異常な大手銀行の突っ込みがあれば、それについてはやはり是正していかなければならないということでありますが、本当はそんなことにはならないわけでして、今のパイの小さい中でできるだけの、いわゆる正常なる営業努力というものの能力が高いということで既に競争関係に差が出てきておる。

 私の心配しますのは、単に弱いとか負けたら困るというようなものではなくて、いわゆる地域地域の経済というものについて、最終的に、言葉は悪いですけれども、よいところ取りになってしまうと困るという部分を、新たな、こうした小さい、縮小局面からこれから拡大していく今の中でのとり合いになっておるところで十分に気をつけておかなければならないという要素があるのではないか、こんなふうに思っておるわけでありまして、またひとつその辺について御記憶をいただきたい、このように思っております。

 ところで、今おっしゃいましたような金融監督上の話も絡むのでありますけれども、今、これからできるだけ、不動産担保の確保ということだけをいわゆる金融機関の融資のベースにするということをできれば変えていこうというふうな動きがある。また、そうであらねばならないというふうに思っておるわけであります。

 このリレーションシップバンキングのプログラムの中でも、担保、保証に過度に依存しない資金調達をするとか、金融機関の目ききというようなことが言われておるわけでありますけれども、これがビッグプロジェクトだけでなくて、でき得れば地方金融機関においても、例えば地方の中小企業や、これから業を起こそうとしているような、そういう担保能力の一時的にないところについてこういう担保偏重でない有効なシステムというものが今後生まれていくのか、また生まれていくような芽が出ているのか、そんな指導についてはどのようにされているのか、お聞かせいただきたいと思います。

伊藤副大臣 今、委員から大変重要な点について御指摘があったわけでありますが、特に、委員から今お話がございました、新しい事業を起業していく場合に、そうした企業の場合にはある意味では資金力が十分ではない、あるいは経営ノウハウについても不足している面がある、そうした創業企業に対するニーズというものを踏まえて、資金供給者としての役割、こうしたものとともに、事業計画の作成のためのアドバイスでありますとか、あるいは事業展開に資する情報というものを提供していく、そうした役割をも発揮していくことが重要ではないかというふうに考えております。

 そのためにも、委員からもお言葉がありましたように、目ききの能力というものを上げていかなければいけないわけでありますが、金融機関が企業の将来性や技術力というものを的確に評価できる、そういう体制というものを整備していく、こういうことが必要であるというふうに考えているところでございます。

 このため、アクションプログラムにおきましては、創業、そして新しい事業支援の機能を強化していくために、業種別の審査担当者の配置等融資審査体制というものを強化していこう、あるいは企業の将来性や技術力というものを的確に評価できる人材の育成を目的とした研修、いわゆる目きき研修というものを実施していく、こうしたことを要請しているところでございます。

 この点につきましては、十五年度上期の各金融機関の取り組みの実績を見ますと、多くの金融機関において、例えば、約六割の銀行が専門部署の設置、強化、約三割の銀行が業種別審査体制の構築、強化、そして、半数を超える金融機関が企業の将来性や技術力を的確に評価できる人材の育成を目的とした外部研修への派遣、そして、約五割の銀行が中小企業診断士等の専門性の高い人材の育成の取り組みを行っているところでございます。

 金融庁といたしましては、機能強化計画、このフォローアップを通じて、こうした取り組みというものを一層推進をして、そうしたことに努めてまいりたいというふうに考えております。

田中(英)委員 今ありましたように、それぞれ金融機関においても新たな時代へ向けての相当な努力をしているということは、数字的にわかるわけであります。

 ただ、一つのエピソードとしてお話をさせていただくならば、ベンチャーという言葉があるのでありますが、ベンチャーというものに対しては新たな創業ということで、大いに頑張ろうということで、国を挙げてベンチャーベンチャーと言うけれども、従来から頑張ってきたところに対しては担保割れやと言われると。その辺はやはり押しなべてそういう形のものを考え方としてとっていってもらいたい、こういう地場の意見もありますので、そこらあたり、先ほどからずっと断片的に御質問させていただいている状況というのは、要は、従来の形のままで、それぞれが今までからあったような形で、多少おくれつつでも経済は戻っていくんだというようなパターンとはこれからは少し違うという認識を当然金融庁も皆持っておられると思いますけれども、そういう時代だということで、ひとつさまざまな面に目配りをお願いしたい、このように思っております。

 最後に、ペイオフについて少しお聞きをしておきたいというふうに思うわけであります。

 このペイオフにつきましては、完全実施は、前回完全実施をするということになっておったのでありますが、金融システムの安定と金融の円滑化に配慮する観点から、不良債権問題が終結した後の十七年四月、一年後に実施する、こういうことになっておりまして、たしか二年のうちの一年が過ぎたかというふうに思っておるわけでありますけれども、先ほどからの続きにもなりますけれども、まず第一点としては、不良債権問題というのは終結しつつあるのか、ここ一年で終結するのか、そういう意味では予定どおり実施するのか、まずお聞かせをいただきたいと思います。

竹中国務大臣 金融再生プログラムにおきまして、十七年三月までをその集中的な調整期間と考えた上で、そのときまでにこの金融再生プログラムをつくったときに比べて不良債権の比率を半減させるという目標を立てて、今それに向かって、正常化に向かって一生懸命金融機関にも頑張っていただいております。

 その上で、不良債権問題を終息することができるかどうかというまずお尋ねでございますけれども、この目標としての不良債権比率の半減というのは、何とか、引き続き上り坂はきついですけれども、各行も努力をしておりますので、これを実現させる方向で我々もぜひ努力をしたいと思います。

 現在までのところ、不良債権比率はおおむねこの経路に乗って低下をしているという状況でございます。十五年九月期の不良債権比率は、ちなみに六・五%になっております。同時に、これは主要行の話でありますから、中小・地域の金融機関に関しましては、やはりこれはリレーションシップバンキング、これも集中改善期間、集中強化期間というふうに位置づけて、その上でしっかりとこの対応を今していただいているところでございます。

 ペイオフというのは、預金者が銀行を選別する、そういう健全な競争環境のもとで金融機関もしっかりと経営していくという状況でございますから、これはやはりそういう状況になるのが通常の状況であろうと思っております。その通常の状況に持っていけるようにするためには、今申し上げた二つのプログラムをしっかりと実現していくことである、それに今我々としても全力を挙げているところでございます。

田中(英)委員 もう一分余りしかありませんので、少し意見だけ述べて終わりたいと思いますが、今おっしゃいますように、当然、完全実施が通常のパターンであるというふうに私も思います。ただ、実際私も直接地方の行政にかかわっておって、よく外郭団体であるとか一部事務組合であるとか、そういうところで前回の延長をされたときにいろいろ議論をしたのでありますが、結果的に普通預金に持っていっている部分というのが結構あるのではないかというふうに実は思っておるのであります。

 私の今言っている例示のようなものは、理事会とか組合議会とかいうのは年に一遍か二遍しかありませんから、その一遍か二遍かあったときに、しかし、いつまでもそうしておくわけにいかぬな、安定的なところを考えたらどうか、次までに考えてくださいと言うたら、それで二年たつわけですよね。そういうパターンで考えてみたら、相当の期間普通預金にあって、今回完全実施をされると、だあっとそれが金融機関を選別しながら移っていく。そして、弱いところにやや資金的な預け入れの問題が起こるというようなこともあり得るのではないかなという気がいたしますので、まだ一年間の中でしっかり指導をし、よきものとしていただいた上で完全な実施ができるように御努力を賜りたいということを申し上げて終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

田野瀬委員長 次に、長妻昭君。

長妻委員 民主党の長妻昭でございます。

 破綻金融機関の処理の内容の御報告をいただきましたけれども、もう一つ、不良債権とともにリスクとしてあるのは国債の保有の問題でございますけれども、竹中大臣は、今の長期金利、どう思われますか。

竹中国務大臣 金利は市場の中で決められるものでございますから、水準について私がコメントするというのはなかなか難しいわけでございますけれども、恐らくお尋ねの趣旨は、察しますに、国債の赤字が、これだけ累増して抱えている中で、何らかのショックで長期金利が上昇して、その結果、国債という資産の価値の下落、それがさらに資産、市場全体ないしは企業、金融機関のバランスシートを何か傷める懸念があるのではないかという点だと思います。

 我々はそういう、ある意味では健全な危機意識を持ってしっかりとした財政の運営、国債管理の政策をやっていかなければいけない状況であろうかと思っております。幸いにして、今、経済全体はよい方向に向かっておりますので、そういう中で、異常な金利高騰等を招かないようなしっかりとしたマネジメントをしていかなければいけないというふうに考えております。

長妻委員 一度竹中大臣にお伺いしたかったんですけれども、国の借金、史上最高になったということを言われておりますけれども、国の借金を最終的にはゼロにする、政府として、日本として、国の借金は最終的にゼロにする、こういう意思は持っておられると理解していいんですか。

竹中国務大臣 最終的にというのをどのような時間をとるかという問題なのかもしれません。ただ、少なくとも、私たちが見通せる経済のスパンの中で借金をゼロにするというのは、これはやはり至難のわざであるというふうに思います。

 以前、これは長妻委員でしたか、一度お答えさせていただいたこと、この場でお答えしたことがあると思うんですけれども、日本のように、公的な部門のとんでもない借金を抱えてしまった国というのは、歴史を見ますと、第二次世界大戦の後のイギリスというのが典型でございますし、もっとさかのぼれば、ナポレオン戦争の後のフランスがそれに当たるんだそうです。そういうところは、実は借金そのものはやはりなかなか返せない。言うまでもありませんが、借金を全部返そうと思ったら、ネットで返そうと思ったら、相当額の黒字を何十年も、場合によっては相当額の黒字を百年も続けなきゃいけないということになるわけでございますから、そういうことはやはりなかなかできない。

 であるからこそ、どこの国でも、とにかく借金をふやさないようにして、経済の成長をその間待って、相対的な借金の負担を減らすということに徹しているんだと思います。そのための一つの方法がプライマリーバランスを回復させるということでありますので、非常に長い期間をとれば、委員がおっしゃるようなことも一つの理想的な政策としては視野に入ってくるのかもしれませんが、当面私たちが見通せるスパンの中ではなかなかそれは困難な問題であるというふうに思っております。

長妻委員 もう一つ心配なのが、特殊法人とか独立行政法人というのは、民間の銀行、金融機関からもお金を借りているということでございまして、それに政府保証のついているものもありますけれども、ついてないものもたくさんあるというふうに聞いておるんですが、特殊法人、独立行政法人の民間銀行からの借入額で政府保証がついてないものの総額というのは幾らでございますか。

竹中国務大臣 そうした点について非常に鋭い問題意識をお持ちで、平成十四年の七月二十六日に質問主意書をお出しいただいているというふうに理解をしております。

 この答弁書において書かせていただいておるところでありますが、政府保証がついていない民間からの特殊法人に対する融資について、平成十二年度末における融資残高をお答えしておりますけれども、その総額は約六兆六百六十億円というふうになっております。

 直近の数字もできれば調べたいところなんでございますけれども、これは、特殊法人に対して政府保証のついていない融資を行っている先というのは極めて多数でありまして、実は、金融機関でないところ等も含んでおります。ちょっと時間的にあれでございまして、今手元にあるのは、平成十二年度末六兆強という数字でございます。

長妻委員 政府保証のついていない民間銀行からの借り入れが六兆六百六十億円もあるということでございまして、これは政府保証がないのでありますから、貸し倒れというか返済できなくなったらば、国は責任を負わない、お金を返さない、これは当然そういうことでよろしいんですね。

竹中国務大臣 少なくとも、政府はそういった意味での保証債務を持っているわけではない、これはもう明らかであると思います。

長妻委員 何でこういうお話を申し上げるかというと、郵政の民営化というか改革議論の中で竹中大臣が中心におられるということで、政府保証をつけないような議論が郵政で行われていると認識をしておりまして、ところが、政府保証をつけなくても、何か、貸し倒れになったらば国が結局は面倒を見る、こういうような風潮が、ほとんどの金融機関はそう思っていますよ、いや、政府保証はついていないけれども、焦げつくことは絶対ないと。彼ら、査定していないですよ、はっきり言って。きちっと、それがどういうようなリスクがあるのか、そういうリスク管理が非常に甘いわけであります。

 ということは、政府保証なしの借り入れというのは、本当に返せなくなった場合は国は助けない、こういうことで、郵政も含めて、よろしいんですね。

竹中国務大臣 債権者、出資者、いろいろな立場での責任というのは、当然、場合によって負うわけだと思いますが、先ほど言いましたように、少なくとも保証債務というのは負っていないということは事実でございます。

 委員の問題意識として、相手がとにかく公的なセクターであるから信用リスク管理をしっかりしないで貸し出してしまう、実はこれは、国際金融危機のときのソブリンローンというのは、相手が政府だからということで対外的にいろいろやって、それをパリ会議等々でリスケジュールをどんどんせざるを得なくなったということがかつても国際的にはあったというふうに思っております。

 いずれにしましても、これはケース・バイ・ケースで、公的な機関に対して政府が出資者としてかかわるのか債権者としてかかわるのか、いろいろなケースがあろうかと思いますけれども、少なくとも保証債務は負っていない、これはもう明らかなことだと思います。

長妻委員 そうすると、返さないでいいということですね、もしそうなったら。返せなくなったら。

竹中国務大臣 ですから、これは保証債務としては、その保証債務を負って返すということはないということでございます。

長妻委員 さきの委員会でも参考人招致がございましたけれども、UFJの問題についてお伺いしますけれども、UFJ、騒動があったというふうに私は認識しておりますけれども、竹中大臣、どういう騒動があったというふうに認識しておりますか。

竹中国務大臣 マスコミ等々でさまざまな報道がなされているということは承知をしております。そのマスコミの報道をもって騒動とおっしゃるならば、それは確かに騒動かもしれません。

 ただ、我々としては、銀行に対する検査当局、監督当局として、責任を持って粛々と対応していくのが我々の務めであると思っております。

長妻委員 お配りした資料の二ページに、日経新聞の一面に出たこの記事が一つの始まりだったわけでございます。

 そして、三ページ目にこういうメモがございますが、ここに検査忌避を疑わせるような中身が書いてあるわけでございますが、今、金融庁は、検査忌避をUFJがしたんではないのか、それに対してきちっとした対応をとっていないんではないのか、こういうような疑いがかけられているんではないのか。私自身もそういう疑いを持っている一人でありますけれども、それに関して、これはきちっと対応して、この中身は検査忌避でない、一連の騒動はこういうことであるというような、疑いを晴らすような説明責任を金融庁というのは果たさないんでございますか。

竹中国務大臣 先ほども申し上げましたように、いろいろな報道がなされているということは承知をしておりますが、我々としては、当局として、法令、会計基準等々のルールに照らして問題がないか、厳正な検査を行っておりまして、金融庁がちゃんとやっていないというような批判は、これは全く当たらないというふうに考えております。

 ただ、その説明責任を果たせ云々でございますけれども、個別の金融機関の検査については、これはやはりコメントはできない。この点は、長妻委員は、金融のこと、大変お詳しい方でいらっしゃいますから、これはぜひとも、個別の金融機関に関してのコメントはできないということは御理解を賜りたいと思います。

長妻委員 これは、竹中大臣、経済の専門家ですから、国政調査権とか説明責任、国会でのどういう説明責任が必要なのかとか、こういうことが、御存じない部分もあるんではないかというふうに私は思うんです。何でもかんでも、説明責任を果たさない、検査だからということが金科玉条のごとく言われているんですが、それは私は間違いだと。厳正な検査をしているしていると言っても、きちっとした説明責任は、それは限界はあるかもしれないけれども、ある程度の説明責任は果たさなきゃいけないということだと思うんです。

 実はこれは、UFJの寺西頭取も、この委員会に来て、ある一部の事実は認めておられるんです。

 この三ページ目にあります、「内部情報」とか「資料確保。」とか、いろいろな記述がございますけれども、寺西頭取の議事録が十七ページにございますけれども、この十七ページには、寺西頭取はこういうことを言っておられます。

  ただし、個別案件等の、担当者が作成しました手控えあるいはメモの類につきましては、別途保管をしている場合がございます。御質問いただきました資料といったものにつきましては、そのような趣旨のものではないかな、こう思います。こうした資料は、通常倉庫として使用しているような部屋に保管しておりますので、一部報道にございました検査官に開示しなかった部屋というのは、こうした部屋のことを指しているのではないかという報告も受けております。

 ということで、図らずもといいますか、このマスコミ報道の一部を認められているんですよ。内部の倉庫をその部屋ではないのかということと、担当者が作成した手控えあるいはメモの類、こういうものではないかということで、一部認めておられるわけであります。

 その意味では、この三ページにございますような、じゃ、内部のメモを倉庫で金融庁は見つけたのか。三ページの九日の木曜日というところでございますね、「内部情報接受」とか「資料確保。」とか、その部分、こういう事実があったかどうかぐらいは、何にもコメントできないんですか。おかしいんじゃないですか。UFJも認めているんですよ。

竹中国務大臣 私も寺西参考人のあれを手元に持っておりますが、寺西参考人は、何か、報道に一部出ているようなことについて、何らかそれを認めたとか認めないとか、そういうことではないというふうに私は理解をしております。

 一般論として、これは当然いろいろなメモはあるでしょう、いろいろな資料は保管をしているでしょう、そういうことについて、この参考人という状況の重みを踏まえて、できる限り具体的に述べようと努められたというふうに思っておりますけれども、そこは、例えば検査を忌避したような事実はないとか、そのことは明確に言っておられるわけでございますので、そういった、報道に書いてあるような検査忌避等々の事実を寺西頭取がこの参考人のお話の中で認めたということは、これは全くないというふうに理解をしております。

長妻委員 私も、検査忌避を認めたなんということは一言も言っていませんよ。違うような形で私の質問を引用しないでください。

 十九ページを見ていただきますと、これはUFJのホームページです。ホームページでQアンドAが出ておりまして、クエスチョン、「報道によると、昨年秋の特別検査の際に金融庁に提出していた資料とは内容の違う「内部資料」があったとのことですが、本当ですか。」。これはUFJのホームページです、そこで「報道で言われている「内部資料」とは、そうしたシミュレーションを含む内部での検討資料を指しているのではないかと思われます。」と。ですから、内部資料はこういうものではないかというふうに認められているんですよ、この部分は。ですから、これは、内部資料はあったということですよね。

 それに対して金融庁は、検査忌避ではないと。UFJも、それは検査忌避でないと言うでしょう、UFJは。

 本当にそういう事実があったのか、そしてどういう状況なのか、それをきちっと言っていただかないと疑いが晴れないわけですよ。

伊藤副大臣 これはぜひ委員に御理解いただきたいんですけれども、ある事項について個別の金融機関の立場で言及する場合と当局の立場で言及する場合とでは、その影響度、意味合いというものは異なります。

 また、検査に関する事実関係については、金融機関が何らかの言及をした場合に当局としてその正否を明らかにしていくことは、当局から常時検査情報を公開することとこれは同じことになりますので、このような場合には、将来の検査一般において正確な事実の把握をしていく、こうしたことは困難になっていく。つまり、検査の実効性を損ねるおそれがあります。

 したがって、私どもとしましては、個別の検査の内容については言及を差し控えさせていただきたいというふうに考えているところでございます。

長妻委員 今理由をいろいろるる述べられたと思うんですが、一ページ目に、これは金融庁に御持参いただいた資料でございますけれども、ラインマーカーがこうなりましたけれども、今のような、上の二のイ、「公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」は出せませんよ、こういう金融庁の説明。あと、六のイ、今言われた、検査に関して「正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ」と。

 今、ここの、多分「イ」のところを引用されたんだと思うんですが、具体的にはどういうおそれですか。具体的にはどういうことになるということですか、予想として。

竹中国務大臣 そういう具体的な仮定のお話をすること自体がさまざまな風評を招くリスクを持ちますし、それに対して、利益を害するおそれがあるということでございます。

 繰り返し言いますけれども、これは情報公開法においても、当該金融機関や取引先の権利、競争上の地位等正当な利益を害するおそれがある、さらには、我々は、もう一つ、検査をやるわけですから、それが、常時これはやった、これは言わないとか、そういうことを我々が言っていくと、事実の把握を困難にして適正な遂行に支障があるわけでございますから、いわば、我々は国家公務員として知り得た秘密に対しては守秘義務がかかっているわけでございますから、これはやはり個別の金融機関に関しては申し上げられないということでございます。

長妻委員 やはりこれは、竹中大臣、国政調査権ということを一度じっくりと調べていただきたいと思うんですよ。

 それで、今言われたのは、金融庁の説明では、今のこの一ページ目の二つと、もう一つ、ここには書いてありませんけれども、銀行法による、風評リスク、これを防ぐ、この今三つのケースではしゃべらなくてもいいんだ、守秘義務だ、こういう説明なんですけれども、もう一回、その三つのケースのどこの、ではこの文章でもいいですけれども、どの部分で公表できないんですか、この三つの。

竹中国務大臣 三つのすべてに該当する懸念があるというふうに思っております。

長妻委員 そうすると、例えば一番目、申し上げますけれども、公にすることにより、当該法人、UFJですね。UFJの権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると。

 これは、もうUFJも、内部のメモはこういうメモではないのか、その部屋はこういう部屋ではないのか、こういうことを言われているんです。当然、報道では、そういうメモや、部屋に金融庁が入ってそれを持っていった、こういうことで、UFJはそういう弁明というか説明をしているわけですから、そのメモの中身も明らかにある程度UFJは言っておられますし、倉庫もあるという部屋の状況も言っておられるわけでありまして、公にすることにより、UFJの競争上の地位その他正当な利益を害するということなんですか。例えばどういう、もうちょっと具体的に言ってください。

竹中国務大臣 私たちは、金融当局として、責任を持って検査を行い、監督をする立場にございます。そうした過程においては当然のことながらさまざまな問題が生じる、それぞれについて、個別の件等について言及をして、これがこの点で問題が生じると言うこと自体が、実は、先ほどから申し上げましたような、競争上の不利益をもたらす、さらには風評をもたらすというふうになり得るわけでございます。

 我々としては、金融の当局として、責任を持って検査監督を行う立場として、個別の金融機関に関して、今御指摘のような問題に言及することは困難でございます。

長妻委員 内閣法制局に来ていただいておりますけれども、八ページに、国政調査権と守秘義務との関係というので、かつてこういう答弁書が出ているんですけれども、基本的には、これは一方的に何でもかんでもだめだという話ではないわけでありまして、その関係について簡潔に御答弁、御説明いただきたい。

宮崎政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの国政調査権と申しますのは、御案内のとおり、衆参の両議院とその委員会に与えられた権能でございまして、憲法の六十二条に明文の根拠がございます。これにつきまして、国政の全般にわたってその適正な行使が保障されなければならないことは言うまでもないわけであります。

 お尋ねの問題は、まだそこまで、ハウスの権限ということではなくて、個々の国会議員の調査活動ということについてどうだという趣旨であろうと思いますけれども、これも国政調査権を背景としたものであって、一私人としてのそれではもとよりなく、国会がその機能を発揮する上で重要なものであるというふうに従来も答弁しております。したがいまして、国会議員から国会における審議のために必要な資料の要求があった場合には、政府としてはこれに可能な限り協力すべきものである。

 ただ、要求された事項が職務上の秘密に属するものである場合などには、資料の提出を控えざるを得ない場合があってもやむを得ないものであります旨、従来もお答えしてきているところでございます。

長妻委員 ここの答弁書には、「比較衡量」ということがあるんですね。二つの公益を比較考量するということなんですけれども、この「比較衡量」というのはどういうふうに考えればいいんですか。

宮崎政府参考人 ただいま申しましたように、この答弁書自体は国政調査権と国家公務員の守秘義務についての関係を述べたものでございますけれども、先ほど申し上げました理由で、いわば国政調査権を背景とした個々の国会議員の調査活動と守秘義務との関係につきましても、やはり比較考量という考え方が基本的に当てはまるものであろうということはお尋ねのとおりだと思います。

 具体的に、その基準といったことになるわけでございますけれども、これは、個々の事案についての問題は、事案の性格が千差万別でございますので、基本的に、その事案を所管します省庁においてその時点で個別具体的に判断せざるを得ない、あらかじめ一定の基準を示すことは困難である旨、これまでも申し上げてきているところでございます。

長妻委員 そして、例えば、省庁が判断して出さないというふうに決断したときには、なぜ出さないのか、そういう説明責任というのはあるんですか、理由を説明する責任というのは。

宮崎政府参考人 一つには、議院証言法といった手続がございますので、そこでぎりぎり、理由を求め、また内閣声明を求めるというふうに手続を踏むことが当然一つ想定されております。

 それとは別に、一般的に出せないというときに理由を述べる義務があるかというお尋ねでございますが、この点については、特に明文の規定があるわけではございませんけれども、先ほど述べましたように、できる限り協力すべきものであるという政府側の考え方からいたしますれば、理由があってといいますか、要求に応じられない場合にはやはりそれなりの理由をお示しするべきものであろうというふうに考えております。

長妻委員 それなりの理由をやはり示さないといけないんですよ、竹中大臣。記者会見と違うんですよ、ここは。国政調査権を背景に、国政調査権は今の説明のように院の意思の発動ですけれども、私個人が、個人というか個人の国会議員がここで質問しているときも、その背景には国政調査権という考え方があって私がここで質問できるわけです、そして、お答えになられるわけですから、記者会見のと全然違うんですよ、国会というのは。記者会見でべらべらべらべらしゃべって、ここでしゃべらないという傾向がある大臣もおられますけれども、そういうことじゃないんですよ。国政調査権に基づいて我々はここで質問しているんです。

 二十ページをごらんいただきますと、かつて佐賀銀行で非常に悪質な事件が起こりました。二十ページの下でございますが、これは佐賀銀行の資料でございます。「悪質なメール(抜粋)」「緊急ニュースです!某友人からの情報によると二十六日に佐賀銀行がつぶれるそうです!」こういう悪質なメールが流れて、佐賀銀行は、そのメールを、抜粋も文書に載せて、こういう悪質なものは事実無根ですよと、こういうものを出されたわけですね。

 それで、竹中大臣は翌日記者会見をされて、二十一ページでございますが、「同行にかかる悪質な電子メール記載のような事実は全くないこと、同行の経営内容、健全性、資金繰りはいずれも問題ないということ、」こういうふうに会見されておられるんです。

 確かに、世の中全く同じことというのはありませんから、このデマメール、今回流出しているメモと言われるようなものがデマメールと同じとは言いません。言いませんが、これは個別のことを大臣、翌日記者会見で言われている。そういうケースもあるわけですよ、風評リスクを抑えるために言うという。

 これは、金融庁にお伺いすると、風評リスクというのは目に見えないではなくて、目に見えるものがあって風評リスクというんだ、こういうお話もありました。三つあるということでございますけれども、預金が流出する、もう一つは株が下がる、市場での資金調達に支障が出る、この三つがあると実際に風評リスクが起こっているのではないか、こういうふうに考えられる、こういうお話でありました。

 UFJに当てはめてみると、当然このデマメールでは今三つがある程度当てはまったんだと思いますけれども、UFJで見てみますと、預金が流出したか。これは、金融庁のお話だと、UFJは全面否定はしないけれども、心配する状況ではない、こういうお話があった。

 二番目、株が下がったかといいますと、これは五ページを見ていただきますと、株がストップ安寸前まで行きました。この新聞記事が出た一月の二十四日の土曜日、急激にグラフが下がっておりますけれども、ストップ安寸前まで行った。

 そしてもう一つは、市場での資金調達に支障が出た。これも実際に、七ページでございますけれども、御存じのように劣後債の発行が延期になった。こういう紙も出しております。「しかしながら一部報道により」、これはこの紙に書いてあるんですが、「一部報道によりUFJ銀行につき、事実とは異なる報道がなされたことを受け、」ということで延期をする。こういう理由で資金調達にも支障が出たということで、ある意味では、こういう報道がなされたことによって、非常に風評による被害が出ている、そしてまだ今もってその実態が晴れていないということが継続しているわけです。

 そういう意味では、逆に言えば、竹中大臣が説明責任を果たすことで、その風評のリスクを減らす、こういうこともあるんではないですか。

竹中国務大臣 長妻委員からいろいろと御指摘をいただきました。

 まず、国政調査権のことについては、当然、我々国会でいろいろ責任を持って御答弁させていただく以上、そういうことを常に念頭に、真摯な態度で臨んでいるつもりでございます。金融庁の中でも、とにかくお示しできるものは全部お示ししようではないかということで常に話し合っているわけでございます。その意味では、長妻委員そして各委員に対して常にそのような姿勢で臨んでいるということをぜひ御理解を賜りたいと思います。

 その上で、佐賀銀行との対比も含めて、もっといろいろ言うべきではないかというお話が今長妻委員からございました。

 しかし、佐賀銀行のこと、現に何が起きたかということでありますけれども、これは、ちょうど去年のクリスマスのとき、十二月二十五日に、御指摘のように悪質な風評が発生して、何が起こったかというと、佐賀銀行において預金引き出しのために長蛇の列ができた、本店で数百人が並んで、夜遅く、具体的に夜の十時半ごろに全店で行列がようやく解消して、そのときまでATMを稼働させた、そういう状況が現実にやはりあったということであります。

 それを受けて、これを所管する福岡財務支局においては、その日の夜に、風評にあるような事実はないんだ、同行の経営内容、健全性、そして資金繰りは問題がないんだ、預金者には冷静な対応をお願いしたいと、これはまず支局長のコメントを発表してその風評を広がらないようにするという、これもまた、我々としては、しっかり当局としてはやらなければいけない行為であったと思います。それを受ける形で、翌二十六日に、御指摘のように私からも同趣旨のコメントを行いまして、重ねて預金者に対して、冷静に対応するように要請をお願いしたところでございます。

 UFJについていろいろ今御指摘ございましたけれども、UFJの株価でございますけれども、御承知のように、一月末の報道前の水準を大きく上回るレベルに今ございます。報道後の預金の流出があったか、そういうものはありませんでした。また、日々の資金調達についても特段の支障は生じていないというふうに理解をしております。風評被害や信用不安というような状況ではございません。

 我々は、繰り返し言いますけれども、責任を持って検査をして監督をしなければいけません。その意味では、しっかりと風評を抑えるために、言うべきときには言わなければいけません。しかし、逆に、不利益を一部もたらすとか風評が生じないように、やはり言わないようにしなければいけないときには言わないようにしなければいけない。これはやはり、責任ある検査当局、監督当局としての重要な姿勢であるというふうに思っております。

 その上で、冒頭にありましたように、お出しできるものは、それは国政調査権を我々としても重視をして、しっかりと御対応できるように日々努めているところでございます。

長妻委員 これは佐賀銀行とUFJ、当然、規模が全然違う、与える影響も全然違う。UFJ、何か非常に小さな話のような認識を持たれているかもしれません、株が前より上がったと。ただ、これはずっとそういう懸念が市場には今もあると私は懸念しているわけでありまして、ですからその懸念を晴らしていくというのが一つ。

 もう一つは、金融当局の信頼性という意味で、検査忌避に当たるような行為があったんではないか、そして金融庁はそれに対して厳正に対応していなかったんではないのか、こういう疑いがかけられて、私もそういう疑いを持っている一人なわけでありますから、それについてきちっと、検査の、中身を出せと言っているわけではなくて、この九日の事実、内部の書類もこういう書類ですと寺西頭取言われて、部屋もこういう部屋ですと言われているわけですから、そういう事実があったのかどうか、それをお答えいただきたいわけです。

 そして、検査の中身とか経緯とか内容を公表しないというふうにずっと言われていますけれども、先ほど法制局の答弁どおり、比較考量するわけですよ、利益を、公益を。

 実際した事例があるんです。九ページを見ていただきますと、大蔵委員会時代でございますけれども、いろいろな経緯を経て、三月の十八日、大蔵委員会の理事会において、会派ごとに時間を決めて閲覧することを決定した、大蔵委員長室において、委員全員対象、コピーとメモは不可だけれども、その検査の報告書あるいは検査内容及び検査示達書並びに回答書のような、こういうものを閲覧、これは一部は黒塗りだと聞いておりますけれども、こういうこともあるわけですよ。

 その意味で、九日の、こういう事実があったのかどうか、その確認というのは何でできないんですか。これは検査忌避の疑いがさらに強まりますよ、否定しないと。否定すればいいじゃないですか、否定すれば。

竹中国務大臣 我々の、当局の信用も含めて、しっかりと信用を得るようにしなければいけない、それはもうそのとおりだと思います。であればこそ、責任ある当局として、しっかりと検査監督を行って、そうした上で説明すべきことは説明をしていく、守秘義務を守るところは守秘義務を守るという毅然たる対応をとる必要があると私自身は考えております。

 その上で、寺西頭取は認めているじゃないかとおっしゃいましたが、これは私申し上げましたとおり、寺西頭取は検査忌避があったということは否定している上で、その上で、メモ等々、保管等々の一般的なお話をしているわけでございます。

 それと、かつての、平成十年の事例についても御紹介を賜りましたけれども、このときは、大蔵省の金融検査そのものに対して、その信頼性について疑義が生じたということの中で、国政調査権に基づいて、議院証言法及び国会法に規定する厳格な手続を経た上で、秘密保持のための厳密な措置のもとで閲覧に供したものである。これは、先ほどから繰り返し申し上げていますように、本件とは性質が基本的に異なるものであるというふうに理解をしております。

長妻委員 まさに今言われたように、検査の信頼性が疑われているんですよ。同じなんですよ。全く同じとは言いませんけれども、検査の信頼性が疑われているんですよ。これは九日の、こういう事実があった――なかったのならば何で即座に否定できないんですか、ないですと。それこそ風評リスク、検査の信頼性が損なわれますよ。ないんならないと言えばいいじゃないですか、何でないと言えないんですか。

竹中国務大臣 我々はしっかりと、責任ある当局として検査を行い、監督を行ってまいります。その検査に関して今疑義が生じているというふうには私は考えておりません。当時の大蔵省の疑惑に対する事情とは根本的に異なっておるというふうに理解をしております。

 その上で、ある事項について、例えばそれを肯定する、否定する、そのこと自体が検査に対する内容を示唆してしまうということは十分にあるわけでございますので、そういうことも含めまして、我々は個別の検査に関してお答えはすることはできない、これは基本的な姿勢でございます。

長妻委員 疑義が生じていないというのは、疑われている方が、いや、疑いはありませんと言っているのと同じなんですよ。そうじゃなくて、疑義が生じているわけですよ。これだけマスコミも報道があり、私どもも疑義を持っているわけでありますから。

 十月九日、こういう事実があったのかどうか、ないんならないと否定してください。

竹中国務大臣 マスコミの報道はいろいろございますけれども、その中で、例えば、私がこういう発言をしたとか、報道等もございます。これは疑義なのでございましょうか。私は、今その雑誌社に対しまして、弁護士を通じて、内容証明郵便での抗議を行っております。その意味では、客観的な、そういう事実があるかどうかということについて、しっかりとやはり判断をしていかなければいけないというふうに思っております。(長妻委員「何を言っているんだ、全然私は言っていないよ、質問を。話を別の方に持っていくなよ。おかしいぞ、大臣。何で話を別に持っていくんだ、マスコミが判断をして云々なんて言っていないよ、質問」と呼ぶ)

田野瀬委員長 答弁中ですから静かにしてください。

竹中国務大臣 繰り返し申し上げますけれども、この正否を肯定する、否定する、そのこと自体が一つの事実に対して示唆を与えてしまうということは、これはあり得るわけでございますので、その上で我々は個別の検査については言及できないんだということをぜひとも御理解いただきたいと思います。(長妻委員「これは質問できませんよ。答弁させてください、ゼロ回答じゃないですか」と呼ぶ)

田野瀬委員長 はい、どうぞ、再度。――速記をとめてください。

    〔速記中止〕

田野瀬委員長 速記を起こしてください。

 それでは、再答弁を、もう一度竹中大臣にしていただきます。竹中大臣。

竹中国務大臣 そのことそのものについて答弁ができないのかという長妻委員のお尋ねでございますが、これは、答弁、その一つの事実を肯定する、否定する、そのこと自体が検査の内容について一つの示唆を与えてしまうというふうに考えております。

 そうしたことも含めて、我々は、先ほどから何回も申し上げておりますように、特定の利益を侵害してしまう可能性があるといったようなこと、風評リスクをもたらしてしまうのではないかということ、検査の実効性を損ねてしまうのではないかということ、こうしたことを踏まえまして、個別の金融機関に関する検査の内容についてはお話しできないということを御理解いただきたいと思います。

長妻委員 ですから、疑義が今金融庁に生じているんですよ。疑義を晴らさないとリスクがふえるというふうに私は申し上げているわけです。

 三ページ、先ほどのメモですけれども。そうしたら、易しい方からいきましょう。十月七日の火曜日、「実地調査(一次)実施(十日に資料返却)」これは言えるでしょう、十月七日。

竹中国務大臣 従来から、検査の内容、スケジュール、体制等々についてはお答えを差し控えさせていただいております。(長妻委員「何でもかんでも秘密じゃないか、国会をなめているんだよ、これ。何でもかんでも全部言えない、自分たちは絶対正しいから何にも言えない。そんなばかな話はないよ、自分が絶対正しいと」と呼ぶ)

田野瀬委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

田野瀬委員長 速記を起こしてください。

 それでは、竹中大臣の再答弁を求めます。竹中大臣。

竹中国務大臣 検査に関しましては、これまでも、検査の予告日、立入検査の開始日、それと立ち入りの終了日、それと検査結果の通知日、それについてはお話をしておりますけれども、それ以外の詳細なスケジュール等々についてはこれまでも公表しておりませんので、御理解をいただきたいと思います。(長妻委員「ちょっと時間とめてください、時間」と呼ぶ)

田野瀬委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

田野瀬委員長 速記を起こしてください。

 それでは、再度、長妻君。

長妻委員 昨年十月七日の火曜日、UFJ銀行に「実地調査(一次)実施(十日に資料返却)」、こういう事実はありましたか。

竹中国務大臣 実地調査の有無についての答弁は差し控えさせていただきます。

 そもそも実地調査といいますのは、資産内容の健全性に係る検査に当たって、本店、支店または各本部におきまして、自己査定のための個別の債務者に係る自己査定の関連資料を適宜抽出しまして、自己査定の正確性について実態を把握するというものでございます。したがって、この実地調査というのは、立入検査をしている間の一つの検査手法を示す用語でございます。

 これをいつ、例えば、やったかやらないかとかいうことを認めれば、個別行の立入検査中、どのような具体的な検査をやっているかということが明らかになるわけでございます。

 今まで我々が公表してきましたのは、検査の予告日、立入検査の開始日、立入検査の終了日、それで通知日、これはすべての検査に共通しているものでございまして、これについては今までも公表してきております。しかし、実地調査については、やる場合もやらない場合もある、これを明らかにすることは、その中身を、ある意味、わかる人にはわかってしまうという性格のものでございますので、今までも答弁を差し控えさせていただいております。

田野瀬委員長 長妻君。――ただいま答弁がありましたので、長妻君、どうぞ質問を続けてください。(長妻委員「聞いていることに答えてない」と呼ぶ)答えていないんでしたら、答えていないという主張をしてください。

長妻委員 聞いていることに答えていません。

竹中国務大臣 再度答えさせていただきます。

 実地調査の日時、有無についてお答えすることは差し控えさせていただきます。

 実地調査というのは、資産内容の健全性に係る検査に当たって、本店、支店または各本部において、自己査定のための個別の債務者に係る自己査定の関連資料を適宜抽出いたしまして、自己査定の正確性等について実態を把握するというプロセスでございます。この実地調査というのは、したがって、立入検査を行ったときの検査手法の一つというふうにお考えいただければと思います。

 これを、個別行について立入検査中、いつ、どのような具体的な検査をやっているかということが明らかになってしまいます。

 それに対して、先ほど御答弁申し上げましたように、我々は、検査予告日、立入検査開始日、立入検査終了日、その検査結果の通知日、これは従来から公表させていただいております。これは押しなべてすべての検査に共通したプロセスでございまして、これについてはしっかりとお知らせをしております。

 しかし、実地検査については、やる場合もやらない場合もある。それをやっているかどうかということ自体が、実はその筋の専門家に関しては一種の検査の内容を示唆するものでありますので、御答弁を差し控えさせていただいている次第でございます。

長妻委員 全く納得できないですね。

 今問題になっているのは、基本的には、内部の資料、一つの資料があった、UFJは手控えとかシミュレーションと主張しているけれども、それが倉庫にあった、そういうことは言っているわけです、UFJは。この後は報道ですけれども、それを金融庁が、そういう資料、認めているんですよ、UFJは認めている資料を、その倉庫に行って金融庁が持っていった、内部情報に基づいて持っていったと。こういう報道がなされていて、そういう行為があったのかどうか。それをきちっと説明しないと、金融庁としては、検査忌避の疑いがあるにもかかわらず、それに対してきちっと対応していない、こういう疑義が生じるわけですよ。それに対して説明してほしい。

 内部の資料はこういう資料だと、その資料の中身までUFJの頭取が言っているんですよ。ホームページでも言っている。内部の資料というのはこういうのだ、マスコミで報道されている内部の資料はこういうものだ、こういうふうにUFJも認めている。部屋というのは、金融庁が入っていった部屋というのは恐らくこの部屋じゃないか、こういう倉庫だ、こういうことも認めている。それで、金融庁は否定も何もしない。検査忌避の疑いは晴れないと思います。

 そして、これは通常検査でありますけれども、金融庁はそういうことを考えて通常検査をやっているのかはわかりませんけれども、UFJ銀行に関して去年の八月の二十八日から通常検査に入っておりまして、今現在も継続している、通常検査を。これは多分、二百十六日の検査期間でありますから、史上最高の長さの検査だと思いますけれども、そういうことをきちっとやはり、この中でやっているのかどうかわかりませんけれども、精査をして、厳しい判断を金融庁は下さないと、国民の皆さんから本当に疑いが晴れないと思いますので、ぜひやっていただきたいというのと、もう一回お尋ねしますけれども、内部の資料を……

田野瀬委員長 質問時間が終了しておりますので、簡単に質問してください。

長妻委員 では、内部の資料を見て、そこでその資料を確保したという事実はあるんですか、ないんですか。

田野瀬委員長 簡単に答えてください。質問時間が終了しております。

竹中国務大臣 個別の検査に関連するお話は、答弁を差し控えさせていただきます。我々としては、与えられた権限に基づいて、必要があれば適切に、法にのっとって厳正に対処してまいるつもりでございます。

 なお、一点、検査期間が史上最長という御指摘がございましたが、最長ではございません。

長妻委員 最長でないとしたら何位ですか。史上何位ですか。

田野瀬委員長 いや、もう質問を認めません。時間が来ております。――それでは、最後、どうぞ、大臣、答えてください。

竹中国務大臣 現状で二位だそうでございます。

田野瀬委員長 いいですか。

 それでは次に、松原仁君。

松原委員 松原仁であります。

 今、長妻議員もるる質疑をしてきたわけでありますが、金融機関というのは大変に社会に影響を持っているわけであります。金融機関の公共性というのは極めて高くありまして、それは、借り手、貸し手、預金者にしても、またそれを借りる中小企業にしても、金融機関というのは言ってみれば一番の根っこであります。預金者にしてみれば、その金が、ペイオフになった後、もしその金融機関がポシャってしまうようなことがあって飛んでしまえば大変な損害をこうむるし、そこからお金を借りている中小企業にしてみれば、自分のところの業務を熟知している金融機関が倒れるということになれば、これは大変に厳しい環境になるわけであります。

 自分のつき合っていた金融機関が大手と合併したと、そのときに、私も地元でよく聞く話でありますが、言葉は適切かどうかわかりませんが、いわゆるまま子扱いというんですか、従来と貸すときの空気が極めて変わってきてしまって、従来は貸す状況だったものが貸せなくなった、こういった話はよくあります。

 私も、ある中小企業の関係で、前の金融機関の支店長はその中小企業が新しい土地を買って新しい工場をつくることに対して了解をしていた、しかし、合併をいたしまして新しい金融機関になった途端に、その話はもう全くけんもほろろになってしまったということがありました。そのときは、私の選挙区の外の話でありましたが、私は話をしまして、従来の支店長との間ではもう成約寸前まで行っていて、おたくの会社であればこれに関して当然お金を貸しましょうというところまで議論が行っていたのに、金融機関の合併によってそういった行動がとれなくなるというのはいかがなものか、こういうふうなサジェスチョンをしたわけであって、結果としては、その企業は予定どおりというか、その企業はしっかりしておりましたし、当初からそのフレームというのはきちっとしていたわけであって、できたわけでありますが、もしそういった話を私が聞くことがなければ、結果として、前の支店長とはそこまで来ていて、全部業務計画もそのようにしてきたのにポシャってしまった可能性があるわけであります。

 そういうふうなことが現実にあるということに対して、大臣はどうお考えでしょうか。

竹中国務大臣 今、松原委員が御指摘になった点、まず銀行の公共性の問題、大変大きいと思います。その上で、まさに御指摘の点は、いわば金融機関が持っている情報の非対称性の問題であろうというふうに思います。

 理屈からいけば、たとえある銀行が、支店長がかわっても、ないしは、その銀行の経営がかわっても、いい会社であればお取引いただけるはずではないかというのは理屈かもしれないけれども、現実にはそうではない。それは、情報というのはそんなに簡単に人がかわったらついていくものではなくて、やはりそこで培ってきた支店長との人間関係とかそういうおつき合いの中で、情報というのは非常に固有なものとして持たれているんだ、私は全くそのとおりだと思います。

 実は、そういう情報の非対称性があるからこそ、私たちは、リレーションシップバンキングというジャンルをしっかりと確立して、まさに地域金融はこの中で生きてもらいたい、この中で頑張っていただきたいというふうにも考えているわけでございます。

 その意味では、地域にしっかりと根差して、短期的な経営指標だけではなくて、リレーションシップに根差した、情報をしっかりと踏まえた、金融機関と借り手企業との関係を築いていただかなければいけないというふうに思っておりまして、地域・中小の金融機関に関しましては、今委員御指摘のような点が現実問題としてうまく機能するように、我々としても、今回の検査マニュアル、中小企業編の改定におきましても、そういったことがきちっと反映されるような、そういうことを念頭に置いて改定をしておる次第でございます。

 一般的にどう思うかというお尋ねでございますけれども、そこら辺の情報の非対称性、情報の偏在というのは極めて現実には重要であって、それに対応した金融行政をしっかりやっていかなければいけないというふうに考えております。

松原委員 今、竹中さんがおっしゃった中で、一つはいい会社という表現を使われました。これは非常に難しい概念でありまして、世の中の会社というのは、いろんな会社があるんですが、いい会社というのはどういうことになるでしょうか。

竹中国務大臣 私が申し上げたのは、いいか悪いかということではなくて、一つの事例としてあくまで申し上げたわけでありますけれども、支店長がかわっても収益力が高いないしは将来の採算が見込まれるというような会社については、一般には取引が継続されるだろうと思われるかもしれないけれども、それはそうではない場合が多いということを私は申し上げたかったわけです。

 それは、まさに委員お尋ねの真意はそこにあるかもしれませんけれども、何がいいか悪いかというのを知るのは、特に非常に長い時間軸でどうなっていくかというのを知るのは大変難しい。

 例えば、私は、単に今期、当期の利益率が高いとか、キャッシュフロー、有利子負債の比率がよいとか、そういうことではなくて、そこの商店の店主さんのお人柄であるとか後継者になるであろう息子さんの人柄であるとか、そういうことを踏まえて、本当にこの企業がしっかりとやっていける企業なのかどうか、そういう強い意思と心構え、能力を持っている企業なのか、そういうところで判断していかなければいけないというふうに思っております。

松原委員 今、情報の問題、先ほどの竹中大臣の答弁で、一つは情報が、新しい金融マニュアル、リレーションシップバンキングというのがあるわけですが、企業と金融機関がつき合ってきた従来の経緯というものは、切りかわった場合、どのぐらい新しい金融機関にその情報が伝わるのか。それに対して具体的な指導というか、具体的にこうするべきだというその引き継ぎの内容というのは、きちっと決めがあるのか、イメージとして言っているのか、これを一つお伺いしたい。

 もう一つは、いい企業という表現は非常に難しいわけでして、ただ、世の中の企業というのは、今大臣おっしゃったように、その場で決まらない、長い期間見ないとわからない、こういうことでありますが、この長い期間というのは、漠然とした議論ではあるけれども、どのぐらいの期間なのか。

 つまり、今、この企業はだめだ、この五年間赤字だ、税金もろくすっぽ払っていない、金利も利息しか払っていない、これは要注意先だと。しかし、その企業も、歴史をひもとけば、例えば二十年、二十五年ある企業であれば、かつて十七、八年の間はばんばん税金も払い、利息も払い、そういった意味では、法人二税、これは東京都のと国とあるわけですが、そういったものに貢献をしてきた企業かもしれない。そういう過去の栄光というものはどういうふうに評価されるのか。

 本題の質問に入る前で恐縮なんですが、その辺、幾つかお答えいただきたい。

竹中国務大臣 委員お尋ねの点はどれも極めて重要だと思いますが、これは金融担当大臣として、その引き継ぎがどのようになされているか、なされるべきであるか、ないしは、どのぐらいの期間をやるべきか、まさにこれは個々の銀行の経営の判断の問題でございますので、私の立場から何かかちっとしたお答えをさせていただくのは、これはなかなか難しいのかなというふうに思っております。

 ただ、いずれにしても、地域の金融機関に関しては、利益率とかそういう経営指標にはあらわれない定性的な情報、それを駆使してしっかりと融資活動、関係、リレーションシップを確立することがいわばコアでございますから、そこは各金融機関において、まさに目ききの問題も含めて、今しっかりと取り組んでいる、最重要の問題として取り組んでいる課題であろうかというふうに思います。

 期間の問題も、実はこれはどのような対応策をとるかによって違ってくるんだと思います。当面赤字かもしれないけれども、例えばここでデット・エクイティー・スワップのような、デット・デット・スワップのようなものを行って、いろいろの施策を講じると、つまり再生のスキームをこれに組み合わせると、この期間の見方も変わってまいりましょうし、現実に、多くの中小・地域金融機関においては、場合によっては地元のコンサルタントと、地元の税理士さん等々といろいろ再生のスキームを組みながら、そうした中で、時間軸も含めていろんな御判断を今本当に御苦労なさってやっているんだろうというふうに思います。

 なかなか一概には答えられない問題でございますが、委員の御指摘のような問題が、まさに地域の金融機関の経営判断の非常に中心的な重要な部分になっているというふうに認識をしております。

松原委員 それぞれの金融機関の判断である、それは最後はそうですが、今は特に地域の金融機関が淘汰されたりしている流れというのは、金融庁がかなり一つの指導をしながらやっているというふうに私は思っているわけなんですね。その中で、個々の金融機関の判断であるということでは、私は金融庁としては対応が不十分だと思うんですよ。

 この部分に関して、今しかるべきそういった指導がないならば、情報を最低限きちっと引き継ぐためにどういうふうなことをするかとか、金融庁としてそういうふうな指導をするのが大事だろうと思うんですよね。そういったものが必要であると思っているのかどうか、お答えいただきたい。

竹中国務大臣 指導ということに当たるかどうかはともかくとしまして、リレーションシップバンキングのアクションプログラムというのは、実はかなり細かく、こういうことをしてもらいたいというような一つのガイドラインを決めております。これは一面では逆に、細か過ぎるのではないか、国がここまで言うのかというような御批判を言う金融専門家もいらっしゃるのでありますけれども、我々としては、リレーションシップバンキングの基盤がまだまだ弱い中で、目ききをするための研修をしてほしいとか、いろいろ非常に細かいアクションプログラムを定めております。

 そうした中で、例えば引き継ぎはこのようにしなさいとか、そういうことまではもちろん決めてはおりませんですけれども、その中で例えば資産査定、信用リスク等々については早期警戒制度に大口与信等に係る信用リスク改善措置を導入するでありますとか、地域貢献に関する情報開示としましては、地域貢献に関する各金融機関のディスクロージャーを地域に向けて行ってくださいでありますとか、実は、現実にはこれはかなり行っております。それと、コンプライアンス、法令遵守については、このコンプライアンスの体制について監督上の措置を厳正に運用するし、しっかりと対応してもらいたいと。

 実は、ガイドラインは非常に細かく、その意味でこのアクションプログラムはつくられておりますので、我々としてできる範囲の、委員は指導というふうにおっしゃいますが、そのようなプログラムは示しているところでございます。

松原委員 これは事実論ですから大臣じゃなくてもいいんですが、引き継ぎのことに関して、新しいそういったマニュアルの中で書いてある部分をちょっと御指摘いただきたい。

五味政府参考人 御説明申し上げます。

 具体的に債務者の状況をどのように引き継ぐべきかというようなことは、このアクションプログラムあるいはガイドラインに特段の記述はございませんけれども、ここでは健全性確保に向けて、重要な部分として資産査定や信用リスク管理の厳格な管理といったものが述べられておりまして、今大臣からも御紹介ございましたけれども、こうした信用リスクを管理していくということを組織として継続的に行っていく、供与いたしました信用がその後どういう状況になっているかということを継続的にフォローしていくということは、金融機関の基本的な機能の一つでございます。これがきちんとできていませんと、リスク管理も問題があるということになりますので、いわば銀行経営上の当然の前提といったような認識でおります。

松原委員 要するに、これについては直接的に指導か何かで行わない限りできないのかもしれません。私は、極めて重要な部分だと。冒頭言った事例は事実ですから。その人に了解をとっていないから名前は言いませんけれども、事実ですから。

 これはやはりきちっと、リレーションシップバンキングでやっていた地域金融機関がどこかに吸収されるときなんかは、そういったものがある程度、法的か行政指導かその辺はちょっとわかりません、どういう指導を金融庁としてやるのか。これは、やっぱりやっていただかないと元気なところもだめになってしまう。こういういいところ、さっき竹中さんがおっしゃったいいところもだめになってしまうと思うので、これはやはりきちっとそういったものをおつくりいただきたいと思うんですが、どうですか、大臣。

竹中国務大臣 引き継ぎに特定して何かそういうものをつくれるかどうかというのは、ちょっと私も今の時点で判断ができませんけれども、そもそもリレーションシップバンキングの考え方というのは、地域にしっかりと根差して定性的な情報を大切にして金融機関としてもやっていけ、それが地元の企業のためになるし金融機関のためにもなるんだという、これが基本思想でございますから、その中にどのように位置づけられるか、私たちなりにぜひ検討をしてみたいと思います。

松原委員 具体的にそういったものは現実的に可能かどうかわからないけれども、それは言ってみれば、例えば吸収される金融機関の支店長とこちらの新しい支店長が、三日、四日、一週間きっちりと情報交換するとか、極めて具体的なフェース・ツー・フェースの話ですよ、条文がどうだこうだではなくて、そこにやっぱり隠された情報というか、それがあるわけですから、それは自主的にやれと言ったってなかなかやらないと私は思うんですよ。

 その辺で、仲裁役というわけではないですが、金融庁がそれなりの役割を果たすことは間違ってないと僕は思うんですよ。御検討いただきたいと思いますが。

竹中国務大臣 今、特に委員の念頭におありになるのは合併等々でそういう人の入れかえとかがある場合と、そのように理解してよろしゅうございますでしょうか。

 合併等々については、合併そのものがスムーズにいかなければいけない。合併そのものをスムーズにいかせるという具体的な中身、内容としては、委員がおっしゃったことは、これは極めて重要なことだと思いますので、問題意識は承りましたので、どのようなことが可能か、少し勉強してみたいというふうに思います。

松原委員 ぜひ研究して、具体的な言葉、文字にしないとこれはなかなかしませんから、それをお願いしたいと思いますね。これが第一点。

 あと、いわゆる中小企業、いい中小企業云々という議論があったときに、これは難しいと思うんですよ、日本の企業というのは、本当に自転車操業的に、なかなか法人税が高い中で、もうかるときはみんな持っていかれちゃうみたいにして頑張ってきたわけでありまして、西洋とは、前にも私は言ったように、経済、文化の風土が違う。手形があるとかこういうのも含めて。それはさまざまな意味で経済、文化の風土は違うわけですが、日本の中において、中小企業が、さっき大臣おっしゃったように、今は赤字であってもかつてはいいときもあっただろうし、それは長い時間軸の中で、一つの公器たる中小企業が、もちろん税金を上げるということで国にどう貢献するか、地域に何か――いかにして雇用で貢献をするか、雇用の問題というのは当然同じぐらい大きな問題ですよね、雇用の面でどのように貢献するか。そしてさらには、その他社会活動においてどのように貢献するか、文化においてどのように貢献するか、極めて多様に考えていかなければいけないわけであります。

 それが短期的に、言い方はいろいろとありますが、その企業の責任ではない、ある種の経済の大きなうねりの中で厳しくなってしまった。では、一体、それは何年ぐらいは許してやるのかという議論になると思うんですよ、変な話でありますが。それを許すのは一年だけしか見ないのか、いや、五年ぐらいは見てやろうかとか。ただ、そのときに内部留保もなくなっている。それは個別のさまざまなケースがありますよ。だから、そういった意味で、私は、いい企業だけお金を融資するという議論にはならぬのじゃないかという気がするんですね。これは非常に難しい議論でありますが。

 竹中さんはいい企業というふうに言いましたが、いい企業といったら、今、日本では、例えば私の品川、大田の企業で経営的にいい企業なんて、ほとんどみんな毎月毎月金を持ち出していますよ。そうしたら、品川、大田の企業は九割ぐらいは厳しいですねと、こういうふうな話になってしまう可能性、私はなると思うんですよね。だから、その辺を含めて、いい企業というよりもよくなる可能性も含めて、一定の企業にはそういう援助を、援助というかリレーションシップバンキングでやるべきだと私は思うんです。それは書いてあると言うかもしれないけれども、それに関して大臣の御所見を伺いたい。

竹中国務大臣 委員御指摘のように、日本の企業風土、特に地域に行った場合の企業経営の風土、ビジネスの風土というのをしっかりと我々は現実のものとして踏まえることは、これはぜひとも必要なことであろうと思っております。

 その中にはいろいろな要因があると思います。これも委員今るる御説明くださいましたけれども、やはり時間軸というのがあると思います。その時間軸について、これは、その企業の地域への貢献度でありますとか、文化をどのように継承しているのか、さまざまな観点からその地域に根差した金融を行う金融機関は判断をしていかなければいけないと思っております。

 先ほどからのお尋ねの中で、例えば今回の金融検査マニュアルの話を少しさせていただきましたけれども、日ごろの企業訪問であるとか経営指導などの債務者との密度の高いコミュニケーションを通じて債務者の経営実態を適切に把握しているかというのを検証する、これは検査においてもそういうことを我々は重視しているわけでございます。

 しかし、これは非常に地域に貢献して文化を継承している企業であると、そこが万が一にも赤字を出し続けるということになりましたら、市場経済の中で私企業として存在している場合には、ここはやはり困ったことにはなるわけでございますから、そこはやはり、そういうことが生じないように企業も金融機関もいろいろな知恵を出さなきゃいけないということであろうかと思っております。

 そこで、例えば、一例でございますけれども、今回、これも日本の企業風土の特徴でありますけれども、極めて長期の運転資金を根雪のような形で企業に金融機関は貸していっております。特に中小企業に関してはそういうことであります。これは実態的には出資のような意味を持つんですけれども、出資を受け入れるというのは、逆にオーナーからいうと、自分がオーナーであってほかの出資者がいるというのは余り心地よいことではないということで、長期の運転資金で今まで来ている。しかし、この長期の運転資金というのは、すぐ回収を求められることもあり得るので非常に不安定である。実は、そういうものを資本的に劣後ローンに転換した場合にはこれを資本とみなすとか、そのようなことで日本の風土に照らして我々の検査マニュアルも変えてきているわけでございます。

 委員が御指摘、御提示の問題というのは非常に大きな問題でありますので、私、とても全部お答えできる能力はありませんが、やはり日本の企業文化、企業風土というものをしっかりと市場経済の中でも両立できるように、我々としても引き続きぜひ知恵を出したいと思っております。

松原委員 今、いわゆる長期、ずっと貸し付けている運転資金、いつ期限が来るのかわからないですね。ほとんどエンドレスのものがある。まあ、それもいろいろとまざっているわけですけれどもね。その他のきちっと返済するべき融資とそうじゃないのがまざったりして、ぐじゃぐじゃになっている。これも、日本は今までそれでやってきたので、現実がそうなっている。こういったものを判断していろいろと費目、課目を変えていくと。つまり、西洋流のバランスシートでとらえ切れないものが日本の今までの経済文明にたくさんあったということをまず認めていかなきゃいけないと思うんですよね。

 そのときに、さまざまな、金融庁が判断する場合の判断というのは、そういった意味では非常に難しい判断になってくる。客観的な判断がそこにあり得るのかどうかというのは、私は非常にわからないんですよね。それは、竹中さんは客観的に極めて厳正な判断だと言っているけれども、本当にそうなのかと。やはりそういう今までの流れをみんな知っている中で議論が起こっているわけですよね。

 例えば、りそな銀行と足利銀行の話、こういうふうになってくるわけでありますが、このりそなと足利がそれぞれ百二条の一号と三号というふうな違いで処理をされたわけでありますが、なぜこれがこういった違いになったのかというのを冒頭お伺いしたいと思います。

竹中国務大臣 りそなと足利、ともに預金保険法の百二条でありますけれども、一号、三号との適用の違いは何かという御質問であります。

 りそな銀行につきましては、十五年の三月期における自己資本比率が国内基準であります四%を下回ることとなりました。四%を下回ったけれども、その時点で最も信頼できるバランスシートにおいては債務超過ではなかった。また一方で、預金の流出とか市場性資金の調達困難といった問題もなかった。つまり、破綻ではなかったということでございます。資本は国内基準を下回っているが、破綻ではない。

 しかし、このような状況を、事態を放置するということは、日本の金融システムに対する内外の信頼を損ないかねない。つまり、資産規模が四十兆に達する大きな金融機関が過少資本のまま存続するということになると信用秩序の維持に極めて重大な支障を生じるおそれがあるというふうに判断をいたしまして、そのような金融危機の発生を未然に防止するために、金融危機対応会議の議を経て一号措置、すなわち、資本増強を講じたものでございます。

 一方、足利の方ですけれども、同行から、十五年九月期決算において債務超過になるという旨の報告及び破綻の申し出がなされました。これは、同行の規模、栃木県における融資比率が極めて高い、五割であることなどから、現下の金融環境のもとで同行が果たしている金融機能の維持がやはり地域にとって必要不可欠であるといったことを総合的に勘案しまして、これも金融危機対応会議の議を経て三号措置というふうにしたわけでございます。

松原委員 一号と三号ということで、さすがに足利銀行の場合は二号ということにはならないで三号になったわけでありますが、りそなの場合は信頼できる監査によってなったと。最終的にりそなを百二条の一号に決めたときの数字的な根拠というのは、監査法人の監査の数字がデータになったということですか。

竹中国務大臣 決算の報告そのものは、会社、この場合でありますとりそなが作成するものでございます。しかし、これは会計慣行に基づいているかどうか等々、独立した会計監査人の監査を受けなければいけないということになっている。監査法人の監査を受けたりそなからの決算報告書、これを我々としては報告を求めまして、それに基づいて過少資本になるというものが出されてきた、それに基づいて我々は判断をしたということでございます。

松原委員 金融庁の検査は最終段階ではしていないわけですよね。そして、一方の足利銀行が百二の三で行われたというのは、数値は、監査法人の監査の数字によったのか、金融庁の検査の数字によったのか、どちらでしょうか。

    〔委員長退席、山本(明)委員長代理着席〕

竹中国務大臣 基本的には、会計の数値というのは、先ほど申し上げているように企業、銀行がつくった数字、それを監査法人が適正に監査した上で出された数字でございます。

 りそなの場合は検査をしていないという御指摘でございますけれども、大手の銀行の場合は通年の専担の検査をやっておりますので、そうした検査の結果が反映されて決算がつくられております。もちろん、特別検査等々も行っているわけでございます。

 足利の場合は検査に基づいたのかということでございますが、足利の場合は、その年の三月期に対象とした検査を行って、その検査の結果を反映して九月期の決算がつくられております。

 これは、繰り返しますが、原則としては、決算は企業が行って、監査人が監査をするものでございます。時々に検査を行って、その検査は一番近い決算に反映させてもらうように我々としては指導をしている、そのような性格のものでございます。

松原委員 足利の場合は、金融庁の検査でかなり厳しいと、こういうふうな話になって監査法人がそれを追認したのかどうか、その辺はあれですが、結果として、三月期に比べたら一気に数字が悪化したということは既にもういろいろな報道がなされているわけでありますが、半年間でそれだけ数字が悪くなったのか、それとも三月の監査法人による監査というのは、これは金融庁から見ると生ぬるかったと、そんなことはないですか。

竹中国務大臣 これもいろいろ御議論をいただいているところでございますが、監査と検査というのは当然目的も違いますし、カバレッジも違います。投入されるものも違います。したがって、監査と検査というのは、これは常に何らかの乖離があるものでございます。

 我々としては信用秩序を想定した検査を行って、その検査の結果を決算に反映させていただくというものでございますから、監査は監査として、そのときの企業から与えられた情報に基づいて、適正に、独立した立場で行われたものであるというふうに認識をしております。

松原委員 短期間でそれだけ数字が変わるということは、それを本当にそのまま額面どおりに考えるならば、りそなの場合だって、少し前にやった特別検査からその後がらっと変わっていたかもしれないし、その判断は非常に難しいと思うんですよね。私が言いたいのは、この辺がどうも多くの人たちがやはり納得し切れていない。

 このりそなの問題、そしてまた足利の問題を含めて、こういった金融の問題に関しては、厳正な対応というか厳正なチェックをしていると言うけれども、常に、これはおかしいんじゃないか、これはおかしいんじゃないかと、さまざまな後で議論が起こってくるわけでありまして、足利銀行に関して、足利銀行が言っていることを踏襲して債務超過という結果になるのかどうか、これは金融庁の方は債務超過と言ったわけでありますが、りそなの場合も厳密に調査をしたら債務超過になった可能性があるんじゃないかという声があるんですが、これはどう思いますか。

竹中国務大臣 繰り返しになりますけれども、りそな、足利、それぞれ決算においては企業が責任を持って決算を行う、その上で監査法人がしっかりとそれを独立した専門家の立場から監査するという形で対応がなされているというふうに考えております。

 ただ一点重要なのは、百二条を適用する状況というのは極めて緊急性が高いということであります。緊急性が高い、このままでは放置できないという差し迫った状況のもとで、直近で利用できる最も信頼性のある会計情報に基づいて判断をせざるを得ない、これが百二条の私は一つの宿命であるというふうに思っております。

 であるからこそ、我々としては、我々の資本の査定、検査によるものと、銀行が行う自己査定ですね、自己査定に基づいて決算をする、それを監査人が監査するわけでございますから、自己査定と金融庁の査定との乖離をやはりどんどん縮めていただかなければいけない。こういうところが、実は日本はその意味では現在その緒について、いろいろまだ改善のための努力をしている最中だというふうに思っております。

 これは私自身が担当大臣に就任しましてから、この自己査定と金融庁の査定の差を公表して、この公表があるんだからしっかりと対応してくれといういわばパブリックプレッシャーのもとで、金融機関にもこの自己査定と金融庁の査定の差を縮めてもらう努力をしております。これは一巡目と二巡目では随分違ってきておりまして、それがやはりかなりのところ縮まってきてはおります。しかし、引き続きそういう努力は続けていかなければいけない状況にあるというふうに思っております。

松原委員 足利銀行というのは、この法律が適用される前の段階というのは、利益は上がっていたんでしょうか。

五味政府参考人 ちょっと手元に資料がございませんが、私の記憶では、年間の業務純益が三百億円強ぐらいは上がっておった銀行だと思っております。

松原委員 利益が、物によっては五百億とかいろいろと書いてあるわけでありますが、利益がそれだけ上がっていて、それでもやはりこういったシステミックリスクのおそれがあるという判断をせざるを得ないということだったわけですか、これは。

五味政府参考人 ただいま申しましたのは年間の業務純益のお話でございますけれども、銀行の健全性と申しますのは、利益が上がっておりましても、資本の状況というものが健全性の基準を下回りますと問題が生ずるわけでございます。バランスシート上どういう状況になっているかということが監督上非常に重要な要素でございまして、この足利銀行の場合には、平成十五年の九月期の決算において債務超過という状況に陥っているということが銀行側から申し出がございました。その結果としての破綻処理ということになったわけでございます。

竹中国務大臣 今の局長の答弁のとおりでございますのですが、業務純益は、つまりフローとしてはある程度の利益は稼いでおりました。しかし、ストックの面で、バランスシートで非常に傷んでいる面があった。これは法律によって債務超過になるという状況は銀行は許されないわけでございまして、この債務超過、ストックの面での傷みを回復できない場合は破綻ということになります。

 そういう状況を受けて、それをそのまま放置しておく方がよいのか、地域のシステミックリスクが起きないように百二条を適用すべきであるかどうか、これは政策の判断になります。我々は、先ほど申し上げましたように、この銀行が地域において貸し付けで五割という非常に高いシェアを持っているということにかんがみまして、これをやはり地域に放置していくことはできないということで百二条の適用を決定したという次第であります。

    〔山本(明)委員長代理退席、委員長着席〕

松原委員 なかなかここがわかりづらいところなんですよ。竹中さんは優秀な方ですからわかっておられるのかもしれませんが、わからない方が多くいるわけですよね。わからない人が多くて、たくさんの金融の評論家もわからないからおかしいと言ってますよ。当時の雑誌を見てもたくさん出ていますよ。なぜなんだと。

 少なくとも最初の段階では、監査法人がやった段階では一応合格の三月だった。九月でずどんと来た。しかも利益は上がっている。やはりこういうものは事前のアナウンスメント効果もあるわけだし、例えば、これからは、預金者がそこを信頼して預金するときに、監査法人もそれを見て預金するかもしれぬ。中小企業がそことつき合うときは、これは大丈夫だ、利益が上がっている、監査法人のデータも一応いっています、オーケーですとやっているかもしれぬ。それが半年たったらずどんと。こういうふうな話は、特にそういったことで地域の中小企業者には、優越的立場を使うかどうかは別にしても、株主になる人もいるでしょう、預金をかえて株主にならざるを得ない人もいるでしょう、そういうふうなことの判断基準が、半年後にずどんと来たら、これはわからぬわけですよ。

 例えば金融機関を、今この御時世だからなかなか移せないけれども、Aという金融機関から次に移すとしたってそんな簡単にはいかないわけであって、そういうのを考えると、なぜこうなったのかというのが多くの識者も納得していないですよ。

 私は、金融庁が、公的な、公の組織である金融機関を、言ってみればお家お取りつぶしというんですか、そういったことをする権限を持っているということになれば、それだけのめり張りがついた、明確な、言ってみれば、少なくとも、ほとんどの人間がそれはそうだなと納得する要素がなきゃいけないと思うんですよ。

 例えば交通信号で赤とか青とか黄色がある、あれは赤のように見えるけれども青のようにも見えるといって突っ込んだやつがいたら困るわけですよ。だれが見ても、基本的にはそれがわかる、だれが見てもわかるということが極めて重要なんだけれども、なぜかというのは今回なかなか理解されていない。理解されていると思いますか。

竹中国務大臣 我々は、当局として職権でもって破綻をさせるという場合はないわけではないわけですけれども、今回の場合は、先ほど申し上げましたように債務超過になった。我々は、債務超過のまま金融機関が存続することは許されませんので、それを復元することを求めるわけですが、それができないということで足利銀行自身が破綻を申し出たということであります。

 なぜこうなったのかというのは、委員御指摘のとおり、極めて重要な問題だと思っております。これは、こういう措置になったわけでございますから、責任問題も含めまして、今、足利の中で委員会がつくられておりまして、その委員会の中でいろいろなこれまでの経緯について調査が今後進んでいくというふうに認識をしております。

 もう一点、なぜこうなったかということの関連で、一つ示唆があるとすれば、やはり監査と検査の乖離をどのように縮小していくことができるかという問題だと思います。

 この乖離の問題につきましては、公認会計士協会自身に、大変問題意識を持っておりまして、実態調査を行っていくためのプロジェクトチームを設置しまして、先般、三月の二十三日に調査報告の概要を公表したというふうに承知をしております。

 やはりこういう努力をいろいろなところで積み重ねていかなければいけないというふうに思いますが、我々としても、この調査報告が今後の監査に生かされて、監査の信頼性の確保に資する、そういう状況になっていくということを期待しているところでございます。

松原委員 この委員会にはあそこに渡辺代議士もいるわけでありますが、足利銀行の地域だと思っておりますが、恐らく渡辺代議士はそうは思っていないと思いますよ、わからないけれども。何で三号なんだ、おかしいじゃないかというふうに思っている人が多いわけですよ。時間がもうすぐ来てしまうのであれですけれども、これはだれが見てもわかるという議論ではなくて、極めて恣意的に映っているんですよ。

 例えばりそなの場合は、生かしたのは、大臣が、実はこれは政策的に、厳密に、厳格にこれを数字でやっているんじゃありません、我々はその企業の社会的な影響とかそういうものを考えてやっているんです、その中で自分の政治的な判断というか、そういう判断をしてやっていますと言うんだったら、それはそれでいいんですよ。何か時間が来ちゃいましたが、恐らく、この問題というのは、だれが見たって納得するような今状況になっていない。

 そうなると、これからの監査法人の数字を信じて例えば預金者は預金をしていいのか、もしくは中小企業も監査法人の数字を信じてやっていいのか。突然半年後に変わってしまったりする。株主になっていいのか。何をどう信じていいのかという議論になってくる。しかも、どうもこれは今言ったように恣意的な要素があってならない。

 それは、渡辺さんがある雑誌で書いているのは、第一号で云々というのも書いてありますよ。これは一号で僕は十分に対応できたと思うんですよ。対応できたと思うんですよ、本来は。それを意図的に、スケープゴートにしようとしたか何か知らないけれども、つぶそうという意図があったような気がしてならない、本音はなかなか言わないと思いますけれども。

 しかし、私は一つだけ言いたいのは、そういった透明性があって、少なくとも半年前の数字が半年後にがらっと変わって百二条の三号を適用しますみたいな話になったら、預金者は一体何を信じて預金をすればいいのかわからなくなってしまうわけですよ。今後、特に来年のペイオフは。

田野瀬委員長 時間が参りましたので、簡単に。

松原委員 だから、そのことについてどう思っているのか、おっしゃっていただきたい。

竹中国務大臣 今恣意的とおっしゃいましたが、これは私も今のポジションについて改めて思いますが、そういう恣意的なとか裁量的な余地というのは今の行政にはほとんどありません。これは非常に透明なルールで、極めて事後的なチェックを行うシステムになっている。しかも、決算そのものに象徴されるように、極めて分権的な形でいろいろな情報が積み上げられるような形になっている。そういうシステムになっているということを、我々としては、ぜひしっかりと粘り強くいろいろな形で御説明をしていきたいというふうに思っております。

松原委員 もう質問を終わりますが、一つ言いたいのは、一般の金融に関係している方々みんながそう思うぐらいのめり張りを持ってしなければ、それは大臣がそうおっしゃっても、認識は違うということなんですよ。一市場や、それに関係する人や学識経験者の認識は違うということですよ。やはりそれはひとりよがりであって、行政は不十分であるということですから。もしそうならば、それが全員に貫徹できて、わかるように、めり張りをつけてこれからやっていただきたい。

 以上です。

田野瀬委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 きょうは、信用金庫、信用組合の問題についてお聞きをしたいと思います。

 信金、信組は、これまで地域密着型のいわば顔の見える金融機関として、大変大きな役割を果たしてきたと思います。しかし、この間、信金、信組の数は大きく減少しております。

 まず、数字を確認したいんですが、二〇〇一年三月から最近までの三年間で、信金、信組の数はどうなったでしょうか。

五味政府参考人 申しわけございません。いつからとおっしゃいましたでしょうか。

佐々木(憲)委員 二〇〇一年三月です。

五味政府参考人 二〇〇一年三月におきます信用金庫の数は三百八十六金庫でございます。それで……(佐々木(憲)委員「三百」と呼ぶ)失礼いたしました、二〇〇一年四月でございますね。二〇〇一年の当初、二〇〇一年四月の信用金庫数が三百七十一金庫でございます。それから、十五年度でございますから二〇〇三年四月の信用金庫数が、三百二十六金庫でございます。

 それから、信用組合でございますが、二〇〇一年四月の頭の信用組合数が二百八十信用組合。それから、二〇〇三年の四月当初、年度当初の信用組合数が百九十一でございます。

佐々木(憲)委員 一番新しい数字、私、調べまして、二〇〇三年十二月の数字でいいますと、信用金庫が三百十四、信用組合が百八十八、合わせて五百二。二〇〇一年四月の段階の、今おっしゃった数字を合わせると六百五十一でありますので、百四十九マイナスになっているわけです。それだけ減ったわけです。二三%のマイナスというわけですから、小泉内閣になって、信用金庫、信用組合の減少は破綻も含めて極めて多かった。

 きょう報告がなされました破綻処理の報告ですけれども、この中にも九十一の管理命令を受けた一覧表が示されているわけです。このことは大変重大でありまして、地域経済が中小企業を中心に成り立っておりますが、その中小企業にとっても大変マイナスの影響が生まれております。目の前の信金、信組の支店がつぶされた、サービスが低下した、厳しい査定で中小企業がつぶされる、RCC送りになるというようなことが次々と起こっているわけであります。

 金融庁は収益性を強調しまして資産査定を厳格化し、引当金を積み増しさせるということで信金、信組を追い込んできたと言わざるを得ません。その結果がこの数字にあらわれているんだと思うんです。いわばつぶすための検査は厳格にしたけれども、この信金、信組の法令遵守の体制あるいは内部管理体制のあり方、こういう点でまともなチェックが行われてきたのかどうかというのも大変重大でありまして、私はきょうはこの点をただしたいと思うんです。

 今まで金融庁は、何度も通達を出すあるいはガイドラインをつくりまして、融資を行う場合に、不健全な融資先に対しては融資をしてはならない、あるいは社会的批判を受けるおそれの強い融資は慎むように、こういうことを言ってまいりました。さらに、融資を行う場合には、どのような事業計画なのか、資金を何に使うのか、返済の財源、方法はどうなっているのか、これをきちっと審査をし管理するという体制ができているかどうか、あるいは、融資を実施した後もそれらがしっかり行われているかどうかを確認する、こういうことを掲げてやってこられたわけであります。

 融資手続が例えば本人抜きで第三者によって勝手に行われるというようなことがないように、これをしっかりと監督するというのは当たり前でありますが、まず大臣にこの点で、こういうことをきちっと行うというのはガイドラインの基本精神でありますが、大変重要だと思いますけれども、まず基本姿勢をお聞きしておきたいと思います。

竹中国務大臣 佐々木委員のお尋ねは、まさにコンプライアンスが銀行にとって極めて重要であろうというお尋ねでありますが、我々は全くそのように思っております。

 我々の、金融庁の顧問であります久保利弁護士、この面での日本の権威でいらっしゃいますが、金融というのは、取引も、また行政もコンプライアンスの塊である、その法理的な手続そのものをしっかりと法令遵守の精神をもってやっていくことが基本であり、また極めて重要なことであるというふうに認識をしております。

佐々木(憲)委員 もう少し具体的に聞きますけれども、例えば、本人が全く知らない間に口座が開設されていたなどということは、これは当然規制されなきゃならぬ対象だと思いますが、いかがでしょうか。

五味政府参考人 御説明いたします。

 金融機関につきましては、平成十五年の一月から、金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律によりまして、預金口座の開設に際しましては、顧客について氏名、住所、生年月日の確認を行わなければならないというようにされております。また、預金口座を開設しようとする顧客の側においては、この法律におきまして、これらの事項について偽ってはならないという規定がございます。

 この法律を受けまして、金融庁といたしましても、十五年九月、事務ガイドラインを改正いたしまして、本人確認など預金口座の不正利用の防止に資するための内部管理体制が構築されているかどうかについて、金融機関の健全性に関して報告を求める場合の着眼点ということで規定をしたところでございます。

佐々木(憲)委員 今、十五年一月の法律で本人確認の重要性について法的には決められたと。その以前の段階は、どういう規制が行われていたんでしょうか。

五味政府参考人 それ以前におきましては、マネーロンダリングの防止に関しますさまざまな議論の過程の中で、通達の形で規制がございます。

 最初は平成二年十月一日でございますが、これは平成二年の六月に出ました通達におきまして、平成二年十月一日から、この場合の規定の仕方は架空名義預金及び特別定期預金、いわゆる匿名預金の受け入れについて引き続き自粛する、そして、口座の開設等を行う場合には公的または他の信頼できる証明書類等に基づき本人確認を行うよう努めなければならない、こういう通達がございます。

 その後、サミットなどでこのマネロンの議論というのが進展をいたしましたのを受けまして、新しい通達ができました。平成四年の七月一日からはこの規定が改定をされております。それによりますと、口座の開設の際には本人確認を行わなければならないというように通達で規定がございます。

佐々木(憲)委員 それでは、今、本人確認あるいはコンプライアンスの問題、これは大変重要であるということは言われましたが、仮にこういうことがあるというルールに違反する情報を寄せられた場合、その場合には当然、検査の際に、念頭に置いて検査を行うということになると思うんですけれども、それはいかがでしょうか。

佐藤政府参考人 金融機関の業務の中で、問題のある業務運営が疑われるようなケースについて情報が寄せられた場合でございますけれども、一般的に、そういう情報が寄せられたケースで金融機関に対する検査に立ち入るという場合には、検査を受けている金融機関に関する、その他の情報を入手いたしますので、その他の情報も含めまして業務または財産の状況について実態把握に努めるということになろうかと思います。

 一般論として、仮に今おっしゃったような情報が寄せられた場合には、それを参考にするということが通例であろうかと思います。

佐々木(憲)委員 それで、具体的な事例についてこれから紹介をしたいと思うんですが、今、ルールが定められていて、そしてまた検査の際にもそういうことがないようにということを念頭に置いて行うということで対応していると言われました。

 そこで、具体的には、きょう取り上げたいのは、甲府信用金庫をめぐって相次いで起こっている事件であります。甲府信金では、融資を行う際あるいは預金口座を開設する際に、本人確認を行わず、トラブルになっている事例が相次いでおります。その中には、支店長が第三者と共謀して迂回融資した疑いのある事実もあります。

 具体的に紹介をしておきたいと思うんですが、山梨県甲府市に住む古屋嗣雄さん、芳子さん親子の事例であります。

 事件が始まったのは一九九五年、平成七年のことであります。当時、嗣雄さんは七十四歳、長年地元でスーパーまるいちというのを営んでおられました。このスーパーは、隣接する長屋で店舗を四軒貸しておりました。そこへ、当時、娘の芳子さんがつき合っていた造園業を営む社長、これはNさんと言っておきますけれども、このN社長が、スーパーと長屋を解体してビルに建てかえる話を持ち込んできたわけであります。嗣雄さんは、建てかえのための書類だというN社長の言葉を信じまして、言われるままに、たくさんの白紙の書類に署名捺印をしました。この書類が後々一連の不正融資に使われることになるわけです。

 N社長は、嗣雄さんに無断で預金口座を開設しております。皆さんにお渡ししたこの資料でありますが、この資料の一ページ目を見ていただきますと、これはN社長が勝手につくった預金口座の取引明細書であります。甲府信金塩山支店が発行したものであります。一番上の名前の欄に注目していただきたいんですが、これはフルヤツギオとなっております。古屋さんの名前はツグオであります。ですから、本人がつくった口座なら、こんな名前を間違うはずはありません。この預金口座が一連の不正融資に使われたわけであります。

 スーパーの建てかえの話は実行されませんでしたけれども、融資は、店舗、借家解体資金として、一九九六年九月二日に実行されました。

 資料二を見ていただきたいんですけれども、八月三十日付の一千二百万円の融資申込書であります。右上の業種・職業欄に有限会社まるいち代表と書かれております。しかし、こういう会社はないわけでありまして、正しくは有限会社古屋商店代表と書くべきであります。本人が書いたのなら、絶対にこれは間違うはずはないわけです。

 コピーでわかりにくいんですけれども、この融資申込書の題字の下に、「専決」と、少し薄いですけれどもそういう文字があります。つまり、この支店長が、これはUという支店長ですけれども、この支店長が専決で実行した融資であります。つまり、本人確認もなく勝手に口座をつくり融資を行う。融資した金はN社長が自分の会社の資金として使ってしまっているわけであります。本人確認もなく口座が開設されている。しかも、名前も不正確で、融資も第三者が手続を行い、資金使途以外に流用されているわけであります。

 そこでお聞きしますけれども、これははっきりルールに違反しております。ガイドライン違反ではないかと思いますけれども、あるいは法律違反に当たると思いますが、いかがでしょうか。

五味政府参考人 私、お示しいただきました資料を今初めて見せていただきましたが、この案件と申しますのは、個別特定の金融機関と特定のお取引先との取引のお話ということでございますし、それから、これは裁判で、司法の場で係争中の案件だというふうにも伺っております。したがいまして、この件について、今の御質問にストレートにお答えすることはちょっと難しいと存じます。

 ただ、一般的には、金融機関の法令遵守に関しまして、その業務運営の適切性に疑義が生ずるというような場合には、これは必要があれば銀行法に基づいて報告徴求命令を発する、あるいは、その報告の内容を精査した上で、さらに場合によれば銀行法に基づき業務の改善を求める命令を発するといったようなこともございます。

 ただ、本個別の案件については、今申し上げましたような事情がございますので、ちょっとコメントを控えさせていただかざるを得ないと思います。

佐々木(憲)委員 私は、具体的な事実を示しまして金融庁の監督検査の姿勢について今伺っているわけでありまして、裁判で係争中ということは、それは裁判でやってもらえばいいわけでありますが、具体的な事実を示しましてこのような疑いを提起しているわけです。これを受けとめて調査をするのは私は当たり前だと思っております。また後で具体的に聞きます。

 このN社長とU支店長による不正融資というのはこれだけじゃありません。九六年十二月、N社長は丸政住建というペーパーカンパニーをつくりまして、この芳子さんを代表に据え、自分が監査役に就任したという形になっております。U支店長に丸政住建に融資をさせまして、このペーパーカンパニーを通じて自分の会社に融資金を迂回させ、事業資金として使い始めた。数回にわたって二千万円以上が融資されております。このような迂回融資も、これはあってはならない融資だと思うのですね。

 次の年、九七年の夏に、このU支店長は塩山支店から山梨市の加納岩支店へと異動いたします。ところが、その際に、古屋さんのこの口座の一連の融資もすべて加納岩支店に移動しているのですね。つまり、本人の異動に伴い、それも同時に移動している。これは極めて奇妙なやり方であります。

 資料の三を見ていただきたい。

 この資料三は、これは加納岩支店でつくられた口座の預金通帳でありますが、やはり名前がツギオとなっておりまして、これはツグオが正確なのに、こういう全く違う名前を記載しているわけであります。このN社長は、このツギオ名義の口座を自分のもののように勝手に使っていた。この加納岩支店で行われた九九年七月六日の取引は極めて不正常なものであります。

 資料四を見ていただきたい。

 この資料四は払戻請求書、本人の名前に、実はこれは名前に違う漢字が使われております。古屋ツギ雄というのが、正確には下の欄外に書いてある漢字が正確なわけでありますが、実際には、上に書かれている文字は違う文字が書かれております。似ているけれども、違う。これは極めて異常でありまして、しかも、本人の判こもないまま、左側に「仮」として、四千万円が引き出されております。こういう形で次々と奇怪なことが繰り返されております。

 資料五を見ていただきますと、これは合わせて一億一千六百万円になるわけですけれども、その内訳を言いますと、N社長の保証人にされたものが四千三百二十万円、融資として、古屋嗣雄融資分五千万円、それから丸政住建分として、これはペーパーカンパニーですが、二千二百八十万円、融資合わせまして七千二百八十万円、全部合わせまして一億一千六百万円になるわけです。

 このような形で、本人が全く関知しないところでこういうことが行われ、そしてその後、本人に対していきなり返済を要求してくる。これは余りにもひどいわけであります。当人はショックのためにうつ病になりまして、二〇〇一年の十一月に発作的に殺虫剤を大量に飲むという自殺未遂まで引き起こしているわけです。大変な被害者であります。

 これは明らかに法令にもガイドラインにも違反した明白な違法行為だと思いますけれども、金融庁として当然調査すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

五味政府参考人 本件につきましては、当事者の方から役所の方へもお話がございまして、関東財務局におきまして、甲府信用金庫から事実関係等の事情聴取というのを行っております。行っておりますけれども、現在司法の場で争われているというようなお話でもございまして、いわばその場での御主張がそれぞれ出てくるということで、大変に隔たりがあるという状況でございます。

 今いただきました資料はこれとしてちょうだいをいたしまして、今後の私どもの監督上のさまざまな決定をいたしてまいります際の参考にさせていただきたいと思いますが、いずれにいたしましても、内部管理体制に重大な問題があるというような認識を持ちました場合には、先ほど申しましたような監督上の適切な対応をとってまいるというのが一般的な扱いでございます。

 ちょっとそれ以上のことは申し上げかねると。

佐々木(憲)委員 今裁判という話をされましたけれども、しかし、金融庁はこの裁判になる前に訴えを聞いているんじゃありませんか。二〇〇一年八月二十二日に当事者から訴えを聞いて、関係資料を入手されているはずであります。

 甲府信金に対する金融庁の立入検査は、その情報を得た後の平成十四年、二〇〇二年二月五日から三月七日まで約一カ月間行われております。一体、この具体的な情報はどのように扱われたのか、生かされたのか握りつぶしたのか、そこをはっきりしてください。

佐藤政府参考人 個別の金融機関の個別の取引に関する話についての検査のお話でございますので、具体的な言及は差し控えさせていただきたいと思います。

 一般論として申し上げれば、金融機関に対する検査において、仮に法令遵守の体制あるいはリスク管理の体制に問題があることが明らかになった場合には、検査で指摘をするという対応をとっておるところでございます。

佐々木(憲)委員 検査で指摘をしていれば是正されていたわけでありますが、何も是正されていないじゃないですか、これだけ具体的な事例が、二〇〇一年の時点で既に資料も手渡されて、調査の依頼が行われていたにもかかわらず。検査のときには当然それを参考にしてやるというのが先ほどの答弁にあったでしょう。具体的なチェックが行われていない。そのために、私はこれは一例を挙げましたが、ほかにもたくさんあるんですよ。

 例えば、山梨県甲府市在住の渡辺清美さんの件。これは、甲府信金国母支店の事例でありますが、支店が本人の確認を怠ったために、一九九七年六月、他人に預金口座を開設されて保険金をだまし取られた。勝手に口座を開設した男性は流用の事実を認めております。これは間違いないんです。

 それから、山梨県南アルプス市在住の藤巻孝太郎さんの件は、甲府信金の竜王南支店の事案でありますが、これは名義を勝手に使われて本人の関知しないところで融資が実行され、債務の返済を迫られた。返せと言われて初めて知ったと。甲府信金は藤巻さん本人には一度も融資に関する確認をとらず、契約の際にも立ち会いも求めておりません。この点については裁判で争われて、今月十七日に甲府地裁で判決が下されております。

 判決は、「直接原告本人の意思を確認しないままに融資の手続を進めたのであると認めることができる。」こう認定をしまして、「実印が押捺されているというだけでは、これらの書類が原告の意思に基づき作成されたと認めることはできない。」としまして、「原告が本件貸金の借主であるとの被告の主張を認めることはできない。」と甲府信金の主張を否定し、債務は存在しない、不存在と認定をしたわけであります。

 同じようなことがこのように次々と起こっているんです。これは、甲府信金が明らかに、融資の際のチェック体制あるいは口座開設の際の本人確認、こういうものをおろそかにしていたということを示しているわけであります。これだけ共通して起こっているわけですから、これは明らかに問題があるということはだれが見たってはっきりしているわけです。偶然起こったわけじゃないんです、これは。

 当然、今、これだけ私が資料を提供しましたので、調査をし是正する、そういう姿勢をはっきりさせていただきたい。これは大臣に最後にその点を確認しておきたいと思います。

竹中国務大臣 個別の取引については、これは局長も申し上げましたように、司法の場において係争中ということも含めて、コメントを具体的にはできないわけでありますけれども、金融機関においてコンプライアンスが重要だというふうに私申し上げましたけれども、コンプライアンスに関して、業務運営の適正性、健全性に疑義が生じる場合には、これは我々としても責任を持って、必要に応じて銀行法第二十四条に基づき報告を求めて、内容によっては銀行法第二十六条に基づき業務改善を求めること、これは我々の一貫した方針でございます。

 裁判の係争中、まだいろいろ隔たりがあるということ等も個別にはあるようでございますけれども、一般論としては、我々としては厳格な立場で、疑義が生じた場合には必要に応じて二十四条、二十六条に基づきしっかりとした対応をしていくつもりでおります。

佐々木(憲)委員 裁判は裁判、監督検査は、それはそれとして、金融庁の独自の責任というものがあるわけです。みずから決めたルールがあるわけです。それに基づいてしっかりとやっていただく。これは先ほど五味さんの答弁にありましたように、この資料を参考にして、今後それを生かしていきたいとおっしゃっているわけでありまして、私は、この事例はここまではっきりしているわけだから、はっきりした是正措置をとられるように要望して、質問を終わりたいと思います。

田野瀬委員長 次回は、明三十一日水曜日午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四十五分散会


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