衆議院

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第21号 平成16年4月23日(金曜日)

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平成十六年四月二十三日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 田野瀬良太郎君

   理事 西野あきら君 理事 萩山 教嚴君

   理事 村井  仁君 理事 山本 明彦君

   理事 島   聡君 理事 長妻  昭君

   理事 上田  勇君

      江崎洋一郎君    木村 隆秀君

      熊代 昭彦君    小泉 龍司君

      河野 太郎君    七条  明君

      田中 英夫君    谷川 弥一君

      中村正三郎君    萩生田光一君

      林田  彪君    原田 令嗣君

      平井 卓也君    増原 義剛君

      松島みどり君    宮下 一郎君

      五十嵐文彦君    吉良 州司君

      小泉 俊明君    鈴木 克昌君

      武正 公一君    津村 啓介君

      中津川博郷君    西村智奈美君

      藤井 裕久君    馬淵 澄夫君

      松原  仁君    村越 祐民君

      吉田  泉君    谷口 隆義君

      長沢 広明君    佐々木憲昭君

    …………………………………

   議員           五十嵐文彦君

   議員           津村 啓介君

   財務大臣         谷垣 禎一君

   国務大臣        

   (金融担当)       竹中 平蔵君

   内閣府副大臣       伊藤 達也君

   財務副大臣        山本 有二君

   財務大臣政務官      七条  明君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   小平 信因君

   政府参考人

   (金融庁検査局長)    佐藤 隆文君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    房村 精一君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    牧野 治郎君

   参考人         

   (日本銀行理事)     白川 方明君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十二日

 辞任         補欠選任

  鈴木 俊一君     西野あきら君

同月二十三日

 辞任         補欠選任

  田中 英夫君     萩生田光一君

  西田  猛君     松島みどり君

  渡辺 喜美君     平井 卓也君

  仙谷 由人君     中津川博郷君

  津川 祥吾君     吉良 州司君

  永田 寿康君     西村智奈美君

同日

 辞任         補欠選任

  萩生田光一君     田中 英夫君

  平井 卓也君     渡辺 喜美君

  松島みどり君     西田  猛君

  吉良 州司君     津川 祥吾君

  中津川博郷君     仙谷 由人君

  西村智奈美君     永田 寿康君

同日

 理事鈴木俊一君同月二十二日委員辞任につき、その補欠として西野あきら君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

四月二十二日

 信託業法案(内閣提出第八五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 金融機能の強化のための特別措置に関する法律案(内閣提出第一八号)

 預金保険法の一部を改正する法律案(内閣提出第一九号)

 金融機能の再生のための緊急措置に関する法律等の一部を改正する等の法律案(五十嵐文彦君外二名提出、衆法第五号)

 金融再生委員会設置法案(五十嵐文彦君外二名提出、衆法第六号)

 証券取引法等の一部を改正する法律案(内閣提出第八三号)

 株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第八四号)

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

田野瀬委員長 これより会議を開きます。

 この際、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名することに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田野瀬委員長 御異議なしと認めます。よって、西野あきら君を理事に指名いたします。

     ――――◇―――――

田野瀬委員長 内閣提出、金融機能の強化のための特別措置に関する法律案及び預金保険法の一部を改正する法律案並びに五十嵐文彦君外二名提出、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律等の一部を改正する等の法律案及び金融再生委員会設置法案の各案を議題といたします。

 各案に対する質疑は、去る二十一日終了いたしております。

 この際、ただいま議題となっております各案中、五十嵐文彦君外二名提出、金融再生委員会設置法案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣において御意見があればお述べいただきたいと存じます。金融担当大臣竹中平蔵君。

竹中国務大臣 ただいまの金融再生委員会設置法案につきましては、政府としては反対であります。

    ―――――――――――――

田野瀬委員長 これより各案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。村越祐民君。

村越委員 ただいま議題となりました政府提案の金融機能の強化のための特別措置に関する法律案及び預金保険法の一部を改正する法律案に反対し、民主党提案の金融再生ファイナルプラン関連法案に賛成する立場で討論を行います。

 これまで、総額四十二兆円の公的資金が投入されながら、銀行貸し出しは百兆円以上も激減し、貸し渋り、貸しはがしによって多くの中小企業が倒産に追い込まれました。小泉・竹中金融行政は、主要行の不良債権比率を下げるという数字合わせにきゅうきゅうとするばかりで、お金を貸せる銀行をつくるという、あるべき姿からはまるで的外れの金融行政を進めています。

 その根底には、金融システムは健全であるという国家的粉飾があることは明らかです。金融システムが本当に健全であれば、銀行は中小企業にお金を貸すはずであります。銀行決算のたびに金融危機対応会議が開催されることもあり得ません。小泉・竹中金融行政は、まさに国家的粉飾と欺瞞の金融行政と言うほかありません。

 以下、政府案に反対し、民主党案に賛成する具体的理由を申し述べたいと思います。

 第一に、政府案は、これまで政府が示してきた、個別金融機関の救済のために公的資金を投入することはないという姿勢を、何ら過去を総括することなく、百八十度転換するものであることです。政府案は、安易な公的資金投入を可能とするモラルハザード法案と言わざるを得ません。

 第二に、政府案は、地域経済の活性化に決してつながらないということです。金融庁は、二兆円の公的資金枠の積算根拠として、九十金融機関の合併を想定しています。このように、お上主導で地域金融機関の合併を推し進めるということは、地域密着という地域金融機関のあり方に明らかに矛盾をするものです。経営責任を問わず、中小企業向け貸し出しの数値目標を課さないということも大いに問題であります。

 第三に、政府案は、かつての護送船団式裁量行政を復活させてしまうおそれがあるということです。再編を行う金融機関については資本注入の条件を緩和するなどというように、金融庁の方針に従うかどうかで条件を変えるような手法は、一歩間違えば恣意的な裁量行政を許してしまうおそれがあるということです。

 これに対し、民主党案は、まさにファイナルプランという名にふさわしい、金融危機を完全に解消する究極の政策であります。

 議員各位におかれましては、不良品の政府案と究極の民主党案とをよく比較された上で、民主党案に賛成していただきますようお願いを申し上げまして、討論を終えさせていただきます。(拍手)

田野瀬委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました四案に対する反対討論を行います。

 まず、政府提出、金融機能強化特別措置法案に反対する理由を述べます。

 反対する第一の理由は、本法案が、システミックリスクのおそれとは全く無関係に、地域金融機関の再編を進め、その体力を強化するために公的資金を投入しようとしていることであります。これまで政府自身が公的資金投入の原則としてきたことさえ捨て去り、国民に損失負担を負わせるやり方には何の道理もありません。

 反対する第二の理由は、資本注入を受ける金融機関に対し、収益性、効率性の向上を数値目標で義務づける一方、中小企業向け貸し出しについては、残高をふやす目標を求めていないことであります。中小企業向け貸し出しよりも収益性強化を重視したやり方は、金融機関の店舗、行員の削減、貸し渋りや貸出金利の引き上げなどに拍車をかけ、地域の中小零細企業への必要な資金供給という地域金融機関の役割を弱めるものであり、認められません。

 本法案は地域経済の活性化をうたっていますが、地域経済を冷え込ませてきたのは政府の金融政策であります。金融庁が監査法人とともに、地域金融機関の資産査定を厳格化し、その経営を締め上げてきたことが金融の円滑化の障害となっています。本法案は、金融庁による資産査定の厳格化と連動して、地域金融機関を公的資金申請に追い込み、整理、淘汰を図ろうとするものであり、反対であります。

 預金保険法等一部改正案は、預金保険法の第百二条第一号措置について、銀行持ち株会社に直接資本注入することを可能とし、注入額の上限である商法上の制限に特例を設け、制約なく公的資金を投入できるようにするものであります。現行の危機対応措置を政府が都合よく使えるようにする本改正案には反対であります。

 民主党提出の二法案は、金融再生法及び金融機能早期健全化法に基づく公的資金投入策を復活、強化しようというものであり、公的資金によって三年間の期限で不良債権を最終処理するという考え方には同意できません。

 以上の理由から、四法案のいずれも反対であることを述べ、討論といたします。

田野瀬委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

田野瀬委員長 これより採決に入ります。

 まず、五十嵐文彦君外二名提出、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律等の一部を改正する等の法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田野瀬委員長 起立少数。よって、本案は否決すべきものと決しました。

 次に、五十嵐文彦君外二名提出、金融再生委員会設置法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田野瀬委員長 起立少数。よって、本案は否決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、金融機能の強化のための特別措置に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田野瀬委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、預金保険法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田野瀬委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田野瀬委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

田野瀬委員長 次に、内閣提出、証券取引法等の一部を改正する法律案及び株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。金融担当大臣竹中平蔵君。

    ―――――――――――――

 証券取引法等の一部を改正する法律案

 株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

竹中国務大臣 ただいま議題となりました証券取引法等の一部を改正する法律案及び株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。

 まず、証券取引法等の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。

 政府は、内外の経済金融情勢の変化に対応し、市場監視機能の強化及び有価証券の販売経路の拡充を行うなど、市場機能を中核とする金融システムを改善強化するため、本法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、多様な投資家の幅広い市場参加を促進するため、銀行等の金融機関が株式等の売買の証券会社への仲介業務を営むことができるよう、所要の措置を講ずることとしております。

 第二に、市場監視機能・体制を強化するため、証券取引における不公正取引や発行開示違反の抑止を目的として課徴金制度を導入するほか、証券取引等監視委員会の検査範囲の拡大等の措置を講ずることとしております。

 第三に、目論見書の交付を受けないことについて同意した一定の者については、目論見書を交付しないことができることとする等、ディスクロージャー制度の合理化を図ることとしております。

 第四に、組合型ファンドへ投資家保護範囲を拡大するため、投資事業有限責任組合契約に基づく権利等を有価証券とみなして、証券取引法の規定を適用することとしております。

 第五に、効率的で競争力のある市場を構築するため、証券会社による顧客の注文の執行に当たり、最良執行義務を導入することとしております。

 次に、株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。

 政府は、内外の金融情勢の変化に即応し、株式等の取引に係る決済の合理化を図るため、株式について、振替制度の対象に加えるとともに、株券不発行制度の整備を行うほか、投資法人が発行する投資口その他の有価証券に表示されるべき権利について振替制度の対象に加えるなど、より安全で効率性の高い金融資本市場の基盤である証券決済制度を構築していくため、本法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、決済の安全性、効率性の向上を図るため、振替口座簿への記載または記録による株式の保有及び移転を可能とすることとしております。

 第二に、券面の管理や受け渡しに係るコストの削減等を図るため、会社は、定款で、株券を発行しない旨の定めをすることができるものとする等、株券不発行制度を創設することとしております。

 第三に、新株の引受権、新株予約権、新株予約権つき社債及び投資法人が発行する投資口その他の有価証券に表示されるべき権利についても新たに振替決済制度の対象とすることとしております。

 以上が、証券取引法等の一部を改正する法律案及び株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案の提案理由及びその内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いを申し上げます。

田野瀬委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

     ――――◇―――――

田野瀬委員長 次に、財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行理事白川方明君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として財務省理財局長牧野治郎君、金融庁検査局長佐藤隆文君、内閣府政策統括官小平信因君、法務省民事局長房村精一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田野瀬委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田野瀬委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山本明彦君。

山本(明)委員 おはようございます。

 自由民主党の山本明彦です。私は、地域の金融について少し質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど金融機能強化法が無事採決をされました。大変いい法案が通ったな、これによって、地域の金融機関そしてまたそれぞれ地域の皆さん方の金融システムに対する安心感が大変ふえた、そんなふうに思っております。また、一昨日、参考人の皆さん方もお見えになりましたけれども、この法案に対する期待が大変強かった、大変感謝をしておる、そんなふうに受け取ったわけであります。

 しかし、この法案のシステムが利用されるのかどうかについては、参考人の方も言っておみえになりましたけれども、差し当たりは恐らく利用されないのではないかな、そんなような印象を述べておられました。

 使われないということは、委員会の議論の中でも野党の皆さん方から、そんな使われない法案は要らないじゃないかというような話がありましたが、使われないということは大変いいことでして、二兆円ものお金が準備をしてあっても、そのお金を使わなくて済む、しかも地域の金融システムが安定をするということでありますから、使われなくて済むということは大変結構なことであります。

 しかも、どうして使われなくなりそうかといいますと、景気も大分上昇をしてきました。これも、小泉総理が、辛抱強くというんですか忍耐強く、最初の、財政そして金融政策というものをぶれることなく遂行してきた、これが大きな原因だというふうに思っております。

 景気浮揚も、今までと違いまして、今までは景気対策というのは財政出動をしながら景気対策をしてきたわけですけれども、今回は財政出動することなく景気が回復してきたということでありますから、これは本物の景気回復だ、こんなふうに思っていますので、これからの日本というのは期待をされる、そう思っております。

 そして、この強化法、使われないということは大変結構なんです、そう願うんですけれども、使われないことはいいんですけれども、せっかくつくった法律ですから、これは使いにくくては困ると私は思います。やはり使いやすくすることがこの法案の価値を高めるということでありますから、もし何があってもいつでも使えるよということだというふうに思っております。

 私も、最初この法案をぱっと見たときに、これは不良債権を処理するため公的資金を注入するから、安心だから不良債権をどんどん処理しろよというような、そういった、強制力を持つものだとか、この前も質問でも、野党の質問が出ておりましたけれども、これは、合併しろよ、そんな意味合いのものかな、そんな感じも私もしておったわけですけれども、そうした誤解を受けないように、ぜひこれからの運用というものをしっかりと気をつけてやっていっていただきたいと思います。

 この中身につきましても、合併等につきましても、参考人の方が言っておられましたけれども、隣の人がどんな状況というのは、中をのぞき込むわけにいかないんだからこれはわからないよ、合併なんかなかなかできるものじゃないよ、そんなことも言っておみえになりました。

 したがって、金融庁として、誤解を受けないように、そしてまた、そうした隣の状況がわからないということですと使いにくいわけでありますから、ぜひこの法案を使いやすくするために、金融庁としては金融機関に指導だとか助言だとか、これが圧力をかけちゃいかぬわけでありますから、どういう形で金融庁としては取り組んでいかれるおつもりか、御所見をお伺いしたいと思います。

竹中国務大臣 山本委員から大変重要な御指摘をいただきまして、ありがとうございます。

 おっしゃいましたように、金融機能強化法、これが執行に移されますと、私は、やはり大変大きな効果が期待できるものであるというふうに思っております。やはり、今の状況、金融機関の自己資本の自力調達がなかなか容易ではないというような状況下で、本当にしっかりと経営を改革して機能強化させたいというようなところ、そういう金融機関側の潜在的なニーズというものはあると私自身は実は相当認識をしているところでございます。

 しかし、同時に、この審議の過程でも御指摘いただきましたように、やはりこれは公的な資金でありますから、いわゆるモラルハザードを防止しなければいけない。そのような仕組みは仕組みとしてしっかりとつくっているわけでございます。申請を行う金融機関の立場でありますとか経営改革の内容等に応じて、審査基準等にきめ細かに合理的な差異を設けている。

 そういうところが逆に、ともすれば使い勝手が悪いのではないかというような印象を持たれて、せっかくのこの法案の本来の目的が十分に発揮されない、そういうことがあっては断じてならないというふうに思っております。

 したがいまして、御指摘にありましたように、金融庁がこれをどのように運用していくのかというのはやはり大変重要なポイントであろうかと思います。このポイントは二つ、二点であろうと私は思っております。

 一つは、何といっても、政令、省令等の策定を通じて、この制度の詳細について、この基準等々を一層明確にしていく、オープンで明確なものに基準をしていく、これがやはり我々にとって、課せられている、まず第一にやるべきことであるというふうに思います。第二に、運用が的確に図られるように、やはり何といっても法案の内容をしっかりと周知徹底させる、そのための努力を我々自身が一生懸命行うということではないかと思います。

 これも委員御指摘のように、我々は、これはやはり強制してはいけないわけでございます。そのためにも、基準等々、政省令の策定を通じて一層明確化を図ること、そして何よりもこの内容についてその周知をすること、そのことに当面我々としては力を入れていきたいというふうに思っております。

山本(明)委員 今言われました、ぜひとも強制することのないように、手を挙げるんであって手を挙げさせないように、ひとつ金融庁としてよろしくお願いしたいというふうに思います。本当に、これが使われることなく、いい法案であったというだけでぜひ終わることをお祈りしたいというふうに思っております。

 一昨日ですか、地方公聴会へ行ってまいりまして、そのときに地元の信用金庫の理事長さんがお二方お見えになったんですけれども、そのときのお話の中で、その信用金庫は、自己資本比率が大体八%前後、フィッチ社の査定がNということで、特別いい銀行ではない、こういう銀行であったわけでありますけれども、その理事長さんのお話で私は感銘を受けました。

 自己資本比率の話をされたわけであります。どういう話をされたかといいますと、自己資本比率についてでありますけれども、リスク対応ということと地域貢献ということが矛盾するんではないか、その辺の折り合いをどうつけるか、考えるかということかと思うんですけれども、私自身の考えは、むしろ地域貢献ということをやることが、地域貢献をすることが、そのこと自体がリスク対応につながるというふうに思ってやってきておりますと。地域貢献の方がリスク対応より優先する、それをやればリスク対応にもつながる。自己資本比率にこだわってやるべきことをやらないというんでは元も子もありません、こういうことです。

 もう一方は、今まで私たちが蓄えてきた資本というのは過去にお客様からお預かりした資本だ、過去にお客様からお預かりした資本だ、そういうふうに感じております、ですから、地域のお客様がこういう厳しい環境の中で困っておられるならば、今のところ四%という基準は超えておりますので、できる限り対応していきたいと。

 四%を超えておりますからいいということですけれども、それでも、やはり七、八%ではまだまだという市場の評価であります。しかし、その数字でも、やはり自分たちの身を守ることも大事ですけれども、それより、やはり地域の皆さん方に、地域との共生が一番ですということを言っておみえになりました。やはり、地域の活力が出て初めて、我々もそれによってリスク対応もできていくんですよと。

 こういうことで、本当に私は感銘を受けて帰ってきましたけれども、こうした、いわゆる自己資本比率というものが今ひとり歩きをしておる時代でありますけれども、この点について、竹中大臣の御所見をお伺いしたいというふうに思います。

竹中国務大臣 御発言の御引用がございました佐藤理事長の御発言、私も存じ上げております。やはり、まさに地域の金融機関の経営者としての非常に高い見識を感じさせる、そういう御発言であるというふうに私も思いました。

 理事長がおっしゃっているように、やはりまず地域貢献、取引先をしっかりと指導して、またそれをしっかりと再生して、ここは再生できるというふうに判断するならば非常に時間をかけてでもしっかりそこを面倒を見て再生させる、それが結果的にまさにリスク対応になるんだ、自分の金融機関としての財務力を強くしていくんだ、私は、これがまさにリレーションシップバンキングの考え方であろうかと思います。今の理事長さんは、そういうリレーションシップバンキングの考え方をまさに肌で感じて実践しておられる方なんでいらっしゃろうなというふうに感じた次第でございます。

 申し上げたいのは、だからこそ私たちも、地域に関してはリレーションシップバンキングという考え方を、アクションプログラムを求めておりますし、主要行のように不良債権比率をまず低下させろという数値目標も課しておりませんし、そこは、私たちも、思いは、基本的な思いは同じであるということだと思っております。

 何といっても、今地域は非常に地域再生が求められていて、そのためにも地域の金融の活性化が求められている。私は、こういう非常に見識のある地域の銀行経営者がさらにリスク対応力を高めて、そして金融機能を強化するというような際の一つの選択の手段として今回の法案についても御検討をいただける可能性があるのではないかというふうに思うわけでございます。

 いずれにしましても、委員御指摘のように、リレーションシップバンキングのまさに理念といいますか、地域をしっかりさせることがみずからの経営基盤を強化させることである、そういうようなやはり経営で、多くの地域金融機関の経営者の方にはぜひ御努力を願いたいというふうに私たちも思っております。

山本(明)委員 竹中大臣からは、地域の金融機関に対する大変よく理解をされた御答弁を今いただきました。これからもそんな姿勢でお願いしたいと思います。

 問題は、何でもそうなんですけれども、銀行でもそうですけれども、トップの方はしっかりしたことを言われますよね。ところが、窓口がどうかということが一番問題、現実はどうかというと、それが一番問題なんです。

 今、私は、地域のトップの方のお話をお伺いして大変感銘を受けてきたんですけれども、そうした地域の金融を検査しておる検査局がどんな姿勢でやっておるか。私らがちまたで聞くには、大変検査が厳しい、検査が厳しいということを言っておるものですから、検査局長じゃ本当はわからないかもわかりませんけれども、検査局長の方から、今の話も聞いて、ちょっと我々は行き過ぎておったかな、そんな反省でもありましたら、どんなイメージかお伺いをしたいと思います。

佐藤政府参考人 地域金融機関による中小企業向け融資との関係で検査の役割ということだろうと思いますけれども、私ども、検査マニュアルについて中小企業融資編、別冊というものをあえてつくって、きめ細かく見るんだということに日ごろ努めておるということでございまして、今の理事長さんのお話のような考え方というのは極めて重要だと思っております。

 金融機関、特に地域金融機関のように、長期安定的な取引関係の中で蓄積をされるさまざまな情報に基づいてその融資判断をするということで、そういう中でリスクテークをしていただくというのが金融仲介機能を発揮していただく際の基本でございますので、そういう御努力をつぶしてしまうような検査というのはやってはいけないというふうに心がけておるわけでございまして、そのためにもきめ細かく見るということが重要だろうと思います。

 ただ、そのときに、私どもとしては、金融機関というのは、不特定多数の預金者、多数の預金者から預金を受け入れている、あるいは決済サービスを担っているというようなことで、金融システムの安定にも直結いたしますので、最低限の金融機関としての財務の健全性も維持していただく必要がある、その両方に目配りをした経営をしていただく必要があるということで、その両面に気をつけながらやっていくというのが私どもの基本的な務めであろうかと思っております。

山本(明)委員 今局長からもお話をお伺いしましたけれども、検査が厳しい厳しいという指摘のもとで、中小企業用の別冊が、マニュアルが、一回目、二回目が今回出された、こんなふうに思っています。

 私は、新しい今回のマニュアルは非常にいいのができたというふうに思っています。

 特に二点ありまして、一点は、金融機関がきめ細かく融資先を回って、そこでお互いの意思の疎通を図り、そして調子が悪ければ再生のための支援を行うということもやっておるわけであります。それによって債務者区分も変えることができるということでありますから、大変これはいいことであります。

 最初、私はこれをさっと見たときに、ちらっと見ただけで地元に行って話したのが、これからはお金を借りたかったらどんどん銀行へ行って、どんどん通えば貸してくれるよと言って話をいたしました。どういうことかといいますと、中小企業、やはり弱者というのは貸してもらうという気持ちが強いんですね、強いんです。そうすると、銀行に、来いよじゃなくて、やはり銀行に通うことによってやっと貸してもらえるというイメージなものですから、それが私すぐ頭に浮かびまして、「訪問」という言葉だけ見まして、これは当然融資先の中小企業の方が銀行に行くんだというふうに思ったんですけれども、逆に、銀行は行きなさいよというマニュアルだったものですから、私はこれは大変すばらしい内容だ、そんなふうに感じたわけでありますので、ぜひこれはしっかりとお使いをいただきたいというふうに思います。

 それと、もう一ついい点では、デット・デット・スワップ、これは私は画期的じゃないかな、そんなふうに感じておりますので、この点について少しお伺いをしたいというふうに思います。

 最初に、まだ私は実際見ていないものですから、デット・デット・スワップの実際の、融資というんですかいわゆる商品設計というんですか、どんな形になるのか、少しお聞かせをいただきたいと思います。

佐藤政府参考人 今回の別冊改定につきましてお褒めの言葉をいただきまして、大変ありがとうございます。

 御指摘のデット・デット・スワップでございますけれども、私どもの問題意識といたしましては、我が国の中小企業金融の実態として、中小企業の資本調達手段が非常に限られている、そういう中で、現実には事業の基盤となっているような資本的性格の資金がいわゆる根雪的融資という形で調達されているケースが多いということで、そこにいわば制度的な枠組みとして光を当てるという問題意識でございました。

 そして、具体的には、検査マニュアル別冊の中に記載をいたしておりますけれども、金融機関が要管理先を含む要注意先の中小零細企業に対しまして、経営改善計画の一環としていわゆるこの根雪的融資を資本的劣後ローンに転換している場合には、当該転換された資本的劣後ローンを資産査定の上で資本とみなすことができる、こういう枠組みでございます。

 この資本的劣後ローンの条件でございますけれども、一つには、資本的劣後ローンの返済の時期、金融機関が返済を求め得る時期というのがほかの債権よりも後になる、劣後するといったこと、あるいは、債務者にデフォルトが生じた場合には請求権に劣後性があるといったこと、それから、逆に、債務者の側は金融機関に対して財務状況の開示を約束している、こんな条件を満たすものというふうにいたしておりまして、いわば、金融機関の側もコミットする、債務者の側もコミットするということで資本的な性格というものを担保している、そういう枠組みの制度でございます。

山本(明)委員 今お話をお伺いした中では余り条件的なものがない、そんな感じを受けたんですけれども、ということは、金融機関の方が相手に対して、例えば、今三%なら三%で貸しておって、これをいわゆる根雪的にずっと貸しっ放しでおる、これは、それじゃ一%足して劣後ローンにしていく、こういう現実的ないろいろな数字が出てくると思うんですけれども、そういった商品というか取引というのは、これはもう金融機関が自由にやっていいのかどうか、ある程度縛りがあるのかどうか、そこら辺を少しお伺いしたいと思います。

 そして、対象が要注意先、要管理先に限るとたしか書いてあったと思いますけれども、破綻懸念先もやはり、破綻懸念先を全部入れろということは、これはやれないわけでありますけれども、破綻懸念先も、わざわざ外してしまうのはいかがなものかと思いますけれども、そこについてお伺いしたいと思います。

佐藤政府参考人 資本的劣後ローンに転換した後の条件等につきましては、返済の期間であるとか金利であるとか、こういった条件につきましては、貸し手、借り手双方の合意に基づくものでございますので、基本的には自由でございます。

 それから、対象といたしまして、当面、破綻懸念先以下というのを除外しているという点でございますけれども、これは、当面の制度としてそのとおりでございます。

 要管理先以上に今回限定いたしましたのは二つほど理由がございまして、一つは、要注意先という、いわば早期の段階で、金融機関が中小企業の再生に向けた取り組みを早目に開始していただきたいという期待が込められているというのが一つでございます。それからもう一つは、劣後ローンに転換した後の債権者側の引き当てに関する会計制度というのが実はまだ発展途上にございまして、そういったことも踏まえまして、金融機関の側の引き当ての金額等に非常に大きな影響を及ぼす破綻懸念先以下については、もう少しこの辺の環境整備の進展度合いといったようなことを慎重に見ていく必要があるのではないか、こういった理由でございました。

山本(明)委員 私、さっきも言いましたけれども、訪問とこのDDSが大変いいシステムだと思ったものですから、大分地元で、今、金融機関や商工会議所等にも宣伝をして、ぜひ使うべきだと言って宣伝をしております。ところが、この前、やはり公聴会に行ったときにお聞きしたんですけれども、理事長さん、うちはそれに取り組む考えは今ない、今までの融資の形態でやっていきたいという話もありましたし、会議所の専務理事の答弁も何か余りぴんとこないような話でありました。したがって、まだまだ伝わっていないのかな、よく理解されていないのかなというそんな感じがするんですけれども、今の全国的なこれの取り組み状況をちょっとお聞かせいただきたい。

 もう一つは、やはりなかなか進んでいないと思いますので、ぜひこれは、我々ももちろん、今話したように地元でいろいろと説明をしたり宣伝をしていきますけれども、やはり金融庁としても、この宣伝というのは大変、物すごく大きいというふうに私は思います。これは金融機関だけでなくて、いわゆる関係者、融資先、逆に融資先の方からこれをやらせてくれよという声が出てくるような形にぜひしていっていただきたいと思いますけれども、その辺のPRについてとか、お聞かせをいただきたいと思います。

伊藤副大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 このマニュアルの別冊を改定させていただきましたのは本年の二月二十六日でございますが、これを受けて、三月の十一日に商工中金が、東京都の中小企業再生支援協議会、こちらと連携をいたしまして、再生計画の策定を支援している中小企業に対して、DDSを活用した再生支援の第一号の案件に取り組む、こうしたことを公表いたしました。また、三月三十日にはトマト銀行が、同行が再生計画の策定を支援しております岡山県内の中小企業に対して、DDSを用いた再生支援に取り組む、この旨を公表したところでございます。

 そして、今委員から、やはり、こうした取り組みを積極的に周知徹底していく、このことは大変重要なんだという御指摘をいただきました。私どもも全くそのとおりだというふうに思っております。

 そして、私どもとして、こうした問題意識の中で、金融機関に対して、こうした内容を現場に至るまで周知徹底してほしい、こうした要請をさせていただいております。

 また、借り手側の中小企業も、こういうDDSを含めた中小企業向け融資に対する検査のポイントを知っておくということは融資交渉の際にも大変役立つことでありますから、重要なことだというふうに考えております。したがって、中小企業の関係の団体あるいは中小企業経営者、こうした皆様方に周知を図っていくために、説明会を開かせていただき、あるいは新聞、テレビにおける政府広報、パンフレットの配布、業界誌への寄稿、さまざまなチャンネルを通じて浸透をさせていきたいというふうに考えているところでございます。

山本(明)委員 このようですけれども、すばらしいシステムでありますので、これは金融機関にとっても借り手にとっても大変いいんですね、両方ともメリットがありますので、ぜひ広めていただきたいというふうに思います。

 一つ、中小企業に対する政治姿勢についてちょっとお聞かせいただきたいと思いますが、今景気がよくなってきたとはいっても、今の景気のよさというのは地域間に大変ばらつきがあるようでありますけれども、どんな地域でも、そしてまたどんな業種でもそうなんですけれども、どんなに悪いところでも、どんな悪い業種でも、一割や二割は頑張っておる企業がある、一割や二割はどうしようもない企業がある、残りの六、七割の企業というのが中小企業では一番多い。

 この人たちというのは、特別な技術力があるわけでもない、特別な営業力があるわけでもない。しかし、昔から、これは特にしにせが多いんですけれども、昔からやっておるから、継続して、とにかく歴史の上に乗っかって営業をしておる。しかし、この時期なかなかうまくいかない。うまくいかないけれども、ハンドルの切り方がわからない。フットワークが悪いんですね、ずっと長い歴史で来ておるものですから、フットワークが悪いわけであります。そうした方が今の中小企業では大半だと私は思っております。

 上の一割や二割は営業力も技術力もありますから、政治が別にそんなに目を向けなくてもやっていける。下の一割や二割は、どうせだめですからほっときゃいい。政治というのはやはり、真ん中の六割か七割で、まじめにやっておるけれども、なかなか自分の力だけでは何ともならない、こういう人たちに手を差し伸べる、目を向けるのが、これは政治だと思います。市場主義に任せるだけであれば何にもしなければできるわけですから、強い人が勝っていくわけですから、これではやはりだめでありまして、政治というのはそのために、その真ん中の人たちのためにあると私は思っております。

 そうした姿勢に対して御所見をお伺いしたいのと、特に具体的に言いますと、ベンチャーとか何かというのはいろいろな援助システムが今大分できてきておりますけれども、いわゆるしにせに対する援助システム、そんなものももしあればお聞かせをいただきたい。両大臣か副大臣、政治家の方にひとつ。

伊藤副大臣 今、委員から、中小企業の実態について詳しく御指摘をいただいたところでございまして、私どももそういう問題意識に基づいて、やはり地域の金融機関というのは地域に密着して、地域の活性化のために果たすべき機能があるだろう、そういう思いを込めて、リレーションシップバンキングの機能強化のアクションプログラムというものを提示させていただいたところでございます。

 このプログラムの中においても、今委員御指摘のように、しにせ企業も含めた地域の中小企業を対象に金融機関がその経営の相談でありますとか支援をしていく機能、こうしたものを強化していく、あるいは早期事業の再生に向けた積極的な取り組みを促進していこう、促しているわけでありまして、こうしたことを受けて、例えば東海地域のある地域の金融機関におきましては、日本政策投資銀行と連携をして、今、先生からしにせの問題についてもお触れをいただいたわけでありますが、地域のしにせの中小旅館向けの企業再生スキーム、こういうものを組成した例も出てきております。

 私どもといたしましては、こうした例が全国で広がっていって、そしてしにせ企業に対する支援の実例というものが生まれていく、こうしたものが促進されることを期待しているところでございます。

谷垣国務大臣 今、山本委員から、トップ、上の方と下の方はともかくとして、真ん中の辺の六、七割、しにせが多いというお話がありまして、これは委員の選挙区でも、お地元でもそうだろうと思いますが、私のところもまさにおっしゃるようなことだと思うんですね。

 それで、この六、七割のしにせをどうしていくかというのは、まさにその地域が元気になっていくかなっていないかというその境になっていくわけですから、我々政治家がそういうことに取り組まなきゃならぬと思うのは当然のことだろうと思いますし、また、そういうところで苦労しておられる方々の話を聞いておりますと、先ほど、地元の金融機関の経営姿勢に感銘を受けたというお話がありましたけれども、私どもも、そういう地域に長く続いているしにせの頑張っておられる方の話を聞きますと感銘を受けることが多いわけです。

 それで、例えば、自分は仕事をしてきてまず何を考えるかというと、やはり、巨利を博そうとかそんなことを全く考えているわけじゃないんだ、息子にきちっと伝えていくことを考えているんだ、実はそれが、地域の雇用を確保したり、お客さんのニーズにこたえたりする道なので、自分は何も派手なことはしようと思わない、地域と共存しながら地道に歩んでいきたい、こういうようなことをおっしゃる私の地元の方に随分会いました。

 それから、やはり一番つらいのは、そういう方が息子を、東京の某会社に勤めている、あるいは役所に勤めている、呼び返したいんだけれども、このごろうちはどうも調子が悪くて、息子の将来を考えると、もうあのまま東京で仕事を続けろと言おうかどうしようかと迷っているなんという話を聞きますとやはりつらいですね。やはり、息子に伝える、そして呼び返して地元のために一生懸命頑張ってもらう、そういう誇りを持って仕事をしていけるようにしたいと私は常々思っているわけです。

 ただ、しにせに着目したってなかなか難しゅうございまして、やはり中小企業対策ということに結局はなるんだろうと思います。

 それで、税につきましては、企業の競争力の強化とか産業の構造改革を進めるという観点から、十五年度では研究開発や設備投資減税というのをやりましたし、それから欠損金の繰越期間の延長というようなこともことしやらせていただきました。それから、しにせもこれは含むわけですが、同族会社の留保金課税の一部停止措置、それから少額減価償却資産の損金算入の特例といったものをやっておりますけれども、そういうものをうまく活用してやっていただきたいと思っております。

 それから、中小企業、しにせ承継というような、先ほど、息子を呼び返すかということを申しましたけれども、承継につきましても随分いろんな手だてを講じてきておりますので、そういうものをうまく活用していただきたいし、私どももそういう相談には積極的に応じていく必要があるんじゃないかと思っております。

山本(明)委員 私どもの地元というのは大変堅実なところでして、信用金庫でもほとんどスリースターなんですよ。それだけ堅実でずっとやってきておるんですけれども、商工会議所の幹部が、しにせから順番につぶれていく時代になったよということをやはり言っておりました。実際にそういった例が大変出てきております。息子さんを呼び返すためには、これは農業でも何でもそうですけれども、やはりもうかれば帰ってくるわけです。もうかれば帰ってくるわけです、もうからないから帰ってこないんです。やはりもうかる形というものを、ぜひ、土台づくり、環境づくりを我々の政治の力でつくっていっていただきたい。

 事業承継も、税制、たくさんあると思います。そのことも少しお聞きしたかったんですけれども、税金を払ったから事業承継ができなくなったというのは、逆に、事業承継をしやすくするんじゃなくてやめさせちゃうわけですから、政治の力で、税金の力でやめさせちゃうわけですから、これはやはり救う方ではなくていじめる方でありますので、やはりぜひ、事業承継の税制というのはしっかりと考えて、いい方向に持っていっていただきたいとお願いいたしまして、終わります。

田野瀬委員長 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 それでは、私からも少しお伺いをしていきたいと思います。

 谷垣大臣は、きょう午後御出発でございまして、さわやかな気持ちでお出かけをいただきたいと思うんですが、その前にちょっと幾つか課題を整理してお出かけをいただけたら、このように思っておりますので、お伺いをしたいと思います。

 私は、日本の将来の姿を財政金融面でもう一度きちっと総括してみたいというふうに思っています。

 新聞報道を見るまでもなく、雇用はよくなったし、株価も上がったし、景気は間違いなく着実に回復に向かっておるということでございますが、先ほど山本委員からも話がありましたように、規模格差とか業種格差とか地域格差とかいうものが厳然とあるわけでありまして、日本全国津々浦々まで景気がよくなったということでは全くありません。本当に私どもの地元も、中小零細企業、全く大変な苦しみを実はしておるところでございまして、そういう中で日本の国が本当にどうなっていくのかと、みんな国民は心配をしておるわけですね。

 三月二十六日の新聞をちょっと引用させていただくわけでありますが。

 「財務省が二十五日発表した昨年十二月末の国の借金は、前年同期より四・二%増えて、過去最高の六百七十兆千二百十二億円となった。このうち、社会保障関係費の増加などに伴う歳入不足を補うため発行した普通国債の残高は、四百四十四兆六千九百億円で、前年より七・二%増えた。また、政府短期証券(FB)の残高が七十兆三千三百億円と、前年末より六一・六%急増した。」

 「FB増加のほぼ全額は、政府・日本銀行による円売り介入の資金調達に発行した外国為替資金証券(為券)だ。景気の回復を後押しする為替介入の必要性は今後とも消えないだけに、政府にとっては国債管理と並んでFBの管理政策が新たな課題になってきた。」

 「昨年末のFB残高は、普通国債の残高の六分の一だが、一年前と比べるとFBは二十六兆八千億円も増え、普通国債の増加額とほぼ肩を並べている。政府・日銀は今年に入ってからも十兆円を超す介入を行っており、現在のFB残高は八十兆円規模に達していると見られる。」

 「日銀の金融緩和政策のお陰で、政府はFBを発行して超低金利で市場から円資金を調達し、介入でドルと交換して米国債を買って運用し、一部(二〇〇四年度は一兆四千億円)は一般会計に繰り入れている。」

 「しかし、米国債の大量売却は米債券市場への影響を考えるとやりにくい上、持ったドルを再び円に替えざるを得なくなって介入の意味がなくなる。このため、FB償還は容易にできず、残高は増える一方だ。一般会計に繰り入れるドルの運用益も円には交換できず、繰り入れ相当額も新たなFB発行で調達されている。FBの実態は長期国債による借金と変わらなくなっていると言える。」

 そこで、FBは根雪のようにたまっており、一時的な資金繰りという本来の趣旨と離れてしまっておるんではないか、こういう指摘があるわけでありますが、大臣、為替特会の借入金を為券という短期借り入れで調達することによりFBが事実上根雪化しているが、このことは問題ではないか、こういうふうに私は思うわけでありますが、このことについての御見解をまずお伺いしたいと思います。

谷垣国務大臣 今の鈴木委員の御質問には、いろいろな角度からのお答えの仕方があると思うんです。

 まず、為替介入が、こういうデフレの出口を一生懸命我々模索しているときですから、為替の乱高下、これはそのぐらいのことはほうっておいても吸収できるという立場に立つとまた随分答えが違ってくるんだと思いますが、やはりある程度乱高下は抑えていかなきゃならぬ、そして安定的にファンダメンタルズを反映していくためには、やむを得ないけれども為替介入が必要だと考えますと、その資金を調達する方法はこのFBというやり方で機動的にやらざるを得ないということがあると思うんですね。

 それで、現実に、昨年からことしにかけて、今おっしゃったように相当巨額の介入というものをしてきたわけですが、根雪になっているという御指摘もございますが、逆に言えば、それに見合う外貨というものを準備として持っていることも事実でございますから、全く空洞化しているというわけではないわけでございます。

 それから、それではFBに対する信用というものが非常に低くなっているかといいますと、これはそういうことはございませんで、現実に市場でFBに対する需要というものもあって、安定的に消化できているという形ではないかというふうに思っているわけで、事実、そのとおりだと思います。

 そうしますと、あとは、これをこういう形で借り入れる金利とか、こういうことはどうなるのかということになるわけですが、これは、外貨準備の運用とFBの金利というものを考えますと、今まで現実にははるかに運用収入というものが多いわけですから、その分で不健全な状況が起きているわけではないというふうに考えているわけでございます。

 これはいろいろな御議論が可能だと思いますが、差し当たって、鈴木委員の御質問に対しては、概括的に申しますと、そんなふうに考えております。

鈴木(克)委員 実際に償還が難しくて、明らかに長期借金になっておるというふうに私は思うわけであります。

 視点を変えると、「二十四日のFB入札の倍率は二十二倍と低調で、平均利回りも〇・〇一%を上回った。FBの金利上昇はほかの国債金利の上昇につながる。景気の本格回復が実現すれば、借り換えるためのFB消化が滞る恐れもあり、金融政策の波乱要因になりかねない。」こういうことが言われておるわけでありまして、私は、今後、このFBの行方というものをきちっと本当に見ていく必要があるんではないかな、このようにある意味で警鐘を鳴らしながらお話を申し上げたいというふうに思います。

 それから、四月十五日の記事をまた一部引用させていただくんですが。

 「デフレ不況を日銀の金融緩和政策で解決すべきだという議論は、民間のエコノミストだけでなく、欧米を含めたマクロ経済学者にも根強く支持されてきた。」

途中抜きますけれども。

 「それでも日銀に「何とかしろ」という意見が強いのは、政府の借金が増えすぎたので、財政政策をこれ以上続けられない、という現実のためだ。政府の政策は限界だから、日銀が何とかしてくれ、というわけだ。」

 「近年、この現実を追いかけるように、経済学界では「ゼロ金利でも金融緩和によって景気回復ができる」という理論がいくつも提案された。金融政策で国民がインフレ期待を持てるようにすれば、デフレから脱却できる、という議論だ。」

途中また抜きます。

 「インフレによる問題解決は、不良債権などの損失を国民全体に広く薄く課税して解消することと同じだ。失敗の責任をあいまいにしたいなら、インフレは好都合なのだ。インフレ政策の人気には、こうした願望が背景にあるのではないか。」

こういうことであります。

 なぜ私が繰り返し繰り返しこういうことを申し上げておるかというと、本当にこの国の現状は、今何ともならないところまで来ておると思うんですね。ところが、みんなそれを先送り、そして、当たらないようにしてその場その場をしのいでおる、こういうふうに思えてしようがないわけであります。

 私は生来の心配性でございまして、本当にこの国は大丈夫かな、だれがその責任をとってくれるんだろうか、それと同時に、だれがこういう結果をもたらしたのだろう、こういうことを時々感ずるわけでありまして、これからもくどくもこのことに徹して私はお伺いをしてまいりたいと思います。

 さて、続いて、私は四月十四日に質問をさせていただいて、その続きという形になるわけでありまして、大臣、ちょうどお見えにならなかったので恐縮でありますけれども、要は、私が申し上げたかったのは、日本の巨額の損失とアメリカの経済構造の悪化という視点で、円高が進んでいく、したがって、政府、日銀はこの一年余り、さっきも言いましたようにTB買い、二兆一千億以上も為替差損をこうむりながら六十六兆のTBを保有する、こういう状況で、私はこれはかつてのあれを思い出すわけでありますけれども、かつて、一九七〇年代後半から八〇年代の半ばまで非常に日本経済はよかった。そこで、貿易でもうけて、さらに余ったお金でドルを買って、海外に貸し付けて二重にもうけようとしたわけでありますね。そこで、合計一千億ドル近いお金で毎年TBを買い続けたわけですね、このころ。ところが、結果として、短絡的に申し上げますと、円高で半分になっちゃったわけです。当時、一ドル二百四十円のレートで買っておったんだけれども、結局八六年に一気に一ドル百二十円になっちゃったわけですね。だから、これは完全に半分になってしまった、あっという間に財産が半分になってしまった。私は、このおそれが今非常にあるんじゃないのかなということをつくづく考えられてならないんですね。

 視点を変えますと、今回、一生懸命アメリカの債券を買いましたよね、日本は。急激な形で買った。そのおかげで、おかげというとあれですけれども、アメリカはイラクの戦争の費用から、そしてアメリカの国民の消費から、皆それを日本がある意味では賄ったと言っても過言ではないというふうに私は思っておるわけでありまして、そういう意味からいって、本当に国会できちっと議論をされてアメリカの国債買いがなされたのかどうか、この辺が私はどうしても納得がいかないんですね。我々国民がみんなわかったと、それではアメリカの国債を買ってきちっと支えてやるという合意のもとでやったならともかく、私はそうじゃないと思うんですよ。

 これもちょっとあれなんですけれども、日本の経済運営は一体どこがやっておるんでしょうか。いろいろ読み比べてみると、どうもワシントンあたりで行われておるんじゃないか。これは皆さん方が聞けば烈火のごとくお怒りになると思います。しかし、本当に国民はそんなふうに見ているんですよ。何か知らないうちに巨額な赤字ができた、そして、知らないうちにアメリカの国債を買い続けておる。ひょっとして、さっきも言ったように、暴落でもしたときにだれが責任をとるんだ、このことを、私は本当に心配性でありますから、頭が薄くなるほど心配しておるわけであります。

 この辺をひとつ、いや、心配ないんだと、何を鈴木はそんなに心配しておるんだということでお教えをいただければ私は本当にありがたいというふうに思います。ぜひ御答弁いただきたいと思います。

谷垣国務大臣 こういう巨額介入について、今の鈴木委員の御質問は、何かアメリカの国債を買って、アメリカ経済を支えることを目標にしてこういう政策といいますか手法が行われているんじゃないかというふうにごらんになっているように私は聞いたんですが、それはそうではなくて、これは、現実にはアメリカ国債をたくさん買っているわけですけれども、目標とするところは、あくまでファンダメンタルズと離れた為替の思惑的な動きといいますかオーバーシューティングといいますか、そういうようなものを抑えるということが目標でやってきたわけです。

 それで、これについての議論は、今まで過去たくさん国会でも行われたと思いますし、ある意味でそういう為替の乱高下を防いでほしい、そういうものはある程度抑えて安定的に推移してもらいたい、こういう気持ちは日本の中にも幅広くありましたし、現在でもそういう議論は幅広く存在しているというふうに私は思っているわけであります。

 ただ、現実には、昨年これだけ大きくなったのは何かということになりますと、それは、イラクを中心とした地政学的な、テロを中心とした地政学的な問題であるとか、あるいはアメリカにも双子の赤字というようなものがあって、そういうようなものに対するいわば過度の思惑的な動きが昨年からことしにかけてあったというふうに私どもは思っておりますので、それを防ごうということになると、やむことを得ざるに出た行為であるというふうに私は思っているわけです。

 それで、それが主としてドルとの関係になるものですから、どうしてもドル買いをする。そうなりますと、米国債というものが結果として多くなることはやむを得ないことでありますけれども、ただ、この間もこの委員会で、参議院の財金委員会でしたか、本当にドルがいつまでも基軸通貨であるのかとかいろいろな議論がありまして、遠い将来のことはわかりませんけれども、現状を見ておりますと、今世界経済は全体として回復基調にあると思いますけれども、やはりいろいろなところで引っ張っているのは、アメリカの堅実な足取りというのが引っ張っている状況でございますから、私は、今委員がおっしゃるような暴落の心配というようなものは、それはいろいろな可能性は、いろいろな議論はあると思いますけれども、差し当たってそういうことを懸念する必要はないのではないかと思っております。

    〔委員長退席、山本(明)委員長代理着席〕

鈴木(克)委員 そこはまさに議論の分かれるところでありまして、それは私が国会に出る前に、おまえが来る前にきちっと国会で議論しているんだからと言われれば、私は申し上げようはないわけでありますが、国民の目には決してそうではない、本当に国民が納得をしてああいう形で進められておる施策であるというふうには思えないということを私は申し上げておきたいと思います。

 くどいようでありますが、ミスター国債と言われるぐらいあれですので、国債についてまたお伺いをしたいんですが、余り数字を言っておると時間がなくなりますので、あれだけで申し上げますと、銀行が国債を百兆持っておる、日銀が百兆持っておる、こういうことですよね。そのほかに、郵貯が七十五兆、簡保が五十兆、民間生保が二十七兆、財投で六十五兆というような形だというふうに私は思っています。数字は若干の違いがあるかもしれませんけれども。

 そこで、私はこのことについてぜひお伺いをしたいんだけれども、前にも伺ったわけでありますが、国債が消化できないときどうなさるんですか。そしてまた、国債が間違いなく消化をされていくという見通しというのはあるんでしょうか。私は、どうしても国債をめぐってどこかで大きな破綻がこの日本の国を覆ってくるのではないのかな、こういう気がしてならないんですけれども、その点はいかがでしょうか。

谷垣国務大臣 国債管理をどうしていくかというのは、これは大きな関心事でありますし、我々も日夜意を用いているところでございますが、一番の根本は、財政規律をもう一回きちっとしていこうという姿勢を財政当局が確固として持つことにあるというふうに私は思っております。

 やや俗な表現で申し上げて申しわけありませんけれども、私は、財務大臣の職をお受けしましたときに幾つか考えたことは、間違っても気前のいい大臣だと言われるような誘惑には乗るまい、けちだと言われても結構だと。もちろん、経済は生き物でございますから、経済を全く無視したところで、経済の実情を無視したところで財政規律だけを申し上げるわけにはいかないことは明らかでございますけれども、やはり財務大臣が財政規律の維持ということに関しては並々ならぬ闘志を持っているということをお示しすることが一番大事ではないかなと思っております。

 その上で、国債管理政策がどうあるべきかという具体的な議論があるわけでございますけれども、昨年、これは審議会で相当議論をしていただきまして、国債管理政策の新しいあり方を議論していただきまして、その上でいろいろな国債の保有主体を広げていこうとか、マーケットをもう少しいろいろ考えていこうとか、いろいろなことはやらせていただいております。それはこれからも一生懸命取り組んでいくつもりでございますけれども、根本は財政規律をきちっとしていこうということにあるんだというふうに考えております。

鈴木(克)委員 私は、本当に国債が消化できなくなったとき、そしてまた、国債が間違いなく消化されていくという見通しというのをやはりもっと皆さん方は出すべきだ、そして、きちっとおなかに置いて日本の国の将来というものを考えていくべきだ、本当にそういうふうに思えてなりません。何か小手先でその場を逃れればいいというような形にしか思えないわけでありまして、このことは本当に今後の課題として私もずっとこれから尋ね続けてまいりたいというふうに思っております。

 それから、話がちょっと変わりますが、来年ペイオフになるわけでありますが、地銀が持っておる国債売りを防ぐために、無利子の決済用預金というんですかね、ちょっと後で教えていただきたいんですけれども、全額保証の決済用預金を認めるようにした、そういう制度があるやに聞いたんですが、このことについてお聞かせをいただきたいというふうに思います。――どなたでしょうかね。(発言する者あり)いや、金融全般で出してありますので。

山本(明)委員長代理 金融庁が来ていませんので。

鈴木(克)委員 金融財政全般で通告してありますから、おらなければ大至急御手配いただいて、まだ私の時間はありますので、お願いいたします。

山本(明)委員長代理 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

山本(明)委員長代理 それでは、速記を起こしてください。

鈴木(克)委員 どうも私の秘書の通告の仕方が悪かったようでありまして、私は、財政金融の通告であれですので、また改めてお伺いしたいと思います。

 それでは次に、視点を変えて、国債を今伺ってきたわけでありますが、今度は、我が国の問題というのはまだたくさんあるんですね、放漫経営の特殊法人に関連して財政投融資と特別会計についてお伺いをしてまいりたいというふうに思います。これはよろしいですね。

 特殊法人改革に関連してなんですが、財投からの特殊法人に対する貸付残高というのは、平成十四年度末で百六十・二兆円になっておるということだと思います。これに対して、特殊法人の財投機関債の発行による資金調達額は、平成十六年度でもわずか四・四兆円にとどまっておる。特殊法人の自立もしくは整理統合を進めるためには、政府として財投機関債の発行を強く促すとともに貸付金の整理回収をスピーディーに進めていくべきだ、このように思うわけでありますが、このことについての御所見をお願いいたします。

牧野政府参考人 お答えをさせていただきます。

 今先生御指摘の平成十三年度から実施されました財政投融資改革でございますが、この中では、先生おっしゃられますように、事業の重点化を図って全体の規模を圧縮していくということが一つの目玉でございましたし、それから、まさに先生おっしゃいました財投機関債を発行することによりまして、機関の業務運営の効率化へのインセンティブを高めるということも非常に重要な柱でございました。

 その結果でございますが、財政投融資の規模は、一時に比べまして約半分近くまで圧縮されております。それと同時に、財投機関債でございますが、改革初年度でございます十三年度には、発行機関数は十八機関、発行額は約一兆円でございましたが、十六年度におきましては、二十三機関とほとんどの機関が発行いたしまして、発行予定額は四・四兆円ということになっております。

 この四・四兆円が少ないではないかという御指摘なわけですが、先ほども申し上げましたように、財投の規模自体を圧縮してきておりますから、財投の規模との対比で財投機関債の発行額を見ていただきますと、平成十三年度では財投の計画額に対しまして財投機関債は一兆円強で、比率でいいますと三・四%にすぎませんでした。それがこの平成十六年度では四兆四千億で、財投計画との比率で申し上げますと二一・五%ということで、十倍は参りませんけれども、ともかく財投規模が圧縮している中で着実に実額で財投機関債の発行額をふやしてきているということで、比率はこのように大きく上がっているわけでございまして、そういう意味で、各般の努力を各機関にもお願いしているということを御理解いただければと存じます。

鈴木(克)委員 数字で御説明いただくとそういうことかもしれませんけれども、私は、やっぱりこれはスピードが遅いというふうに思います。さらにこのことをまた今後伺ってまいりたいというふうに思いますけれども、整理回収をもっともっと速めていただきたい、このことを強く御要望しておきたいというふうに思います。

 それから、特別会計関係でお伺いをしたいんですが、特別会計の事業費の削減問題ということでお尋ねいたします。

 特別会計の数は、昭和四十一年度から四十二年度には四十五会計あった、これは先ほどのお話のとおりであります。平成十六年度には三十一会計にまで整理をされた。しかし、それでも今年度予算における特別会計の歳出総額は三百八十七兆円という巨額になるわけですね。これは一般会計の四・七倍でございます。特別会計の重複計上などを除いた純計でも、二百七兆円という巨額な数字になっておるわけであります。

 特別会計は各省庁が管理するためむだな支出が多いと前から批判をされてきておるわけでありますが、また、一般会計から繰り入れられる資金の使途が見えにくいということで、不要な事業が継続される原因になっておるということも指摘をされておるわけであります。これはくどい話になりますが、例えば、例の年金福祉事業団が全国に展開したグリーンピアに見られるように財源を集め過ぎて不要不急の施設を建設したり、あるいは多額の余剰金を積み上げている特別会計もあるわけであります。これらの特別会計は、各省の既得権化、既得権になっておるわけでありまして、特殊法人などずさんな経営の温床になっておるということが言われております。

 この特別会計については、今年度予算編成において事業費を約五千億円削減した、このようにおっしゃっておるわけでありますが、私はまだまだこれは不十分だというふうに思います。特別会計の事業費削減問題は、来年度予算編成に向けての重要課題の一つであるというふうに考えますので、この特別会計のあり方について、政府の基本認識とその改革への取り組みについて、事業費削減規模の目標も含めて御答弁をいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 特会につきましては、今鈴木委員がおっしゃいましたように、過去いろいろな問題点の指摘というものがございました。この国会でも相当な議論になりまして、塩川大臣が、母屋でおかゆを食べているのに離れですき焼きはけしからぬ、こういうことで、財政審議会でも総ざらえ的な議論を昨年やっていただきまして、大体、見直しに関する基本的な考え方と五十項目を上回る具体的な方策を示していただきました。

 これは昨年の十一月だったわけですので、予算編成の直前で期間が短かったんですが、できる限りのことはやろうということで、昨年、歳出の合理化、効率化ということを事務事業の見直しでやらせていただきましたし、それから、一般会計からの繰り入れの減額とか借入金の縮減というようなこともやらせていただきまして、今委員がおっしゃいましたように五千億、これは性格が違いますので足して五千億というのは果たして適切かどうかわかりませんが、そんなことをやらせていただきました。

 それから、もう一つ大事なことは、委員がおっしゃいましたように、非常に膨大で複雑でございますので、全体を見渡したときに一体どういう状況になっているのかというのがなかなかわかりにくい。一覧性といいますか総覧性といいますか、言ってみれば企業の連結決算みたいに全部を見渡して、国の財政状況をよく把握しながらいろいろな施策を講じていこうということがなかなかできにくいということも従来あったのも事実でございますので、どういうふうにすれば全体を見渡すことができるかという説明責任ということになると思いますが、そういうことも工夫せよということがございまして、これも今鋭意取り組んでおりまして、かなりこっちの方は進んできているというふうに思います。

 ですから、問題提起していただいたところ、取り組めるところは今年度に生かしておりますけれども、さらに残されたところはこれからやっていかなきゃならぬということで、基本姿勢はきちっと維持してやっていきたいということであります。

 ただ、これからの事業費削減規模、特に平成十七年度はどうするかということになりますと、これはまだ各府省からの要求が出てきておりませんので、今ちょっと具体的なことはまだ申し上げられる段階ではないんですが、来年度の予算編成につきましても、見直しで出していただいた基本的認識に立って厳正にやっていきたいと考えております。

鈴木(克)委員 もうちょっと突っ込んでお伺いしたいんですが、実はきょう日銀さんにも来ていただいていますので、もう一つありますから先にお伺いしておきますが、納税者背番号制についてお伺いをしたいと思います。

 納税者一人一人に背番号をつけ、所得や納税、金融取引の実態を把握しやすくする納税者背番号制が導入に向けて動き出した、政府税調の金融小委員会が金融所得の課税一元化に合わせ、新たに希望する個人投資家だけに番号を割り振る選択制納税者番号の導入で一致、財務省は二〇〇五年度にも導入する方針だと。一方、年金制度改革に絡んで、すべての納税者を対象にした完全納税者番号制度も検討課題に上がってきた、こういうことでございますが、現在、この納税者背番号制についてどんな御所見なのか、どのところまで御検討されておるのか、お伺いしたいと思います。

谷垣国務大臣 納税者番号制度は、適正、公平な課税を実現していく上でも、あるいは税務の実務が合理的、効率的に行われるという観点からも必要ではないかという議論が従来からあるわけですね。

 それで、政府税調でも金融小委員会というところで御議論をいただいているわけですが、そこでの御議論というのは、一般的な納税者番号というわけではなくて、金融資産性の所得課税を一体化していこう、その中でその範囲や税率、損益通算というようなことで検討が行われているわけですが、この金融資産性所得課税の一体化に必要な納税環境の整備という観点から納税者番号制、さっきおっしゃったような選択制というような記事がございますけれども、そういうことを議論していただいているわけですが、まだ来年度から導入を決定したというような段階ではございません。まだそういう方針を決定したということには至っておりませんで、財務省としては、この小委員会での御議論を見守っていくという段階でございます。

鈴木(克)委員 これについても、また後日改めてお伺いします。

 それでは、日銀の白川理事さん、申しわけない、お待たせしました。時間の関係もありますので、私は三点お伺いをしたいわけでありますので、三点一挙に御質問をいたしますので、まとめてひとつ御答弁をいただきたいというふうに思います。

 まず第一点は、日銀は、御案内のように、国債をたくさんお持ちですね。百兆円ということでありますけれども、三月末の保有国債が百兆円、長期国債は六十五兆五千七百六十七億円、こういうことでございます。この数字を聞いただけでも、これは大変なことになっておるなというふうに思うわけでありますが、法律では、私もよくわかりませんけれども、日銀は国債を直接引き受けてはならない、こういうふうになっておるということでありますが、直接でなければいいんだ、市中に一遍出たのを買うなら問題ないし、国会の承認を得れば問題ない、こういうことであるようであります。

 いずれにいたしましても、銀行と日銀を合わせて二百兆円、こういうことで、私は、財政規律が失われハイパーインフレになるリスクは非常に大きいのではないかなというふうに思うんですが、その点を一つお伺いしたい。

 それから、国債の補完貸付制度、この点についてお伺いをしたいというふうに思います。

 日銀は九日の政策委員会・金融政策決定会合で、特定銘柄の国債の金利が乱高下して市場が不安定になることを防ぐため、保有する国債を市場に一時的に貸し出す国債市場安定化策の導入を正式に決めた、二月から導入を検討しており、五月半ばからスタートさせるということでございますので、これについてどのような状況なのかということをお伺いしたい。

 それから、最後に、去る二十四日の参議院の財金で、プライマリーバランスの黒字化の前提として、政府は平成十九年度から三年連続で消費税率のアップを想定していたということでありますが、それについて、三月十一日の予算委員会で内閣府政策統括官が消費税率を引き上げることは想定していない、こういうことを答弁されたわけであります。これは全く話が違うわけでありまして、この辺の実態ですね、実際はどうであったのかということをお聞きしたいと思います。

 以上三点、お願いいたします。

白川参考人 お答えいたします。

 日本銀行は、経済の持続的な成長とデフレの克服を実現するために、量的緩和という枠組みのもとで市場に対して潤沢に資金を供給しております。その際、円滑に資金を供給する上で必要な限りにおきまして長期国債の買い入れを行っております。また、長期国債の買い入れに際しましては、この残高が銀行券の発行残高を上回らないという歯どめを設けております。

 こうした歯どめは、中央銀行として先行き十分な政策対応能力を確保することに主眼があるわけでございますけれども、同時に、日本銀行による国債の買い入れが財政ファイナンスを目的としたものではないということを明確にする、そういう趣旨もございます。中央銀行が財政のファイナンスを目的として金融政策運営を行わない、そうした考え方は、これは先生御指摘のように、政策運営に対する内外の信認を維持し、健全な経済発展を目指す上で極めて重要だというふうに考えております。また、そうした趣旨は、財政法にも明確に盛り込まれておるということでございます。

 したがいまして、日本銀行としては、以上申し上げましたような考え方のもとで金融政策を適切に運営してまいりたいというふうに考えております。

 それから、御指摘の国債の補完供給制度でございます。

 これは、四月九日の金融政策決定会合におきまして、日本銀行が保有します国債を市場参加者に対して一時的かつ補完的に供給し得るという制度を導入したことでございますけれども、この背景でございますが、国債市場におきましては、時として特定の銘柄の調達が困難になる、あるいはそうした懸念が生じまして、その結果、市場の流動性が低下するといいますか、市場の機能が低下するということが時々ございます。そうした場合でも、これは市場経済ですから、市場参加者がみずから市場で最大限の国債の調達努力を行うということが求められるわけでございますけれども、しかし、補完的な手段として、市場参加者が日本銀行から国債を一時的に調達できるという道が開かれておりますことは、市場流動性の低下を防ぐといいますか、市場の機能をしっかり維持する上で効果があるというふうに考えております。したがいまして、これは国債市場のいわば基盤を整備するという趣旨でございます。

 日本銀行としては、こうした制度が国債市場の流動性向上あるいは円滑な市場機能の維持に貢献することを期待しておるわけでございます。

小平政府参考人 小平でございます。

 今先生御質問の点でございますけれども、「改革と展望」をことしの一月に閣議決定いたしたわけでございますけれども、その参考資料ということで、経済財政諮問会議で「改革と展望」の審議を行う参考ということで、私ども内閣府の方で参考試算を作成いたしております。これは基本的には経済財政モデルによる試算でございまして、モデルで試算をいたします場合には、さまざまな前提、仮定を置く必要がございます。

 御指摘の点につきましては、基礎年金の国庫負担割合、これは二〇〇九年度に国庫負担割合が二分の一になるようにということで、この関係の仮定を前提として入れているわけでございます。

 まず、二〇〇四年度につきましては、年金税制の見直しによります財源の充当、これは千六百億円、平年度ベースでございますけれども、それに加えまして、二〇〇九年度に国庫負担割合が二分の一になりますように、二〇〇五年度から二〇〇九年度までの五年間、毎年度六千億円ずつ段階的に国庫負担を増額していくという仮定を置いているわけでございます。

 各年度六千億円の中身の前提でございますけれども、二〇〇五年度、二〇〇六年度の六千億円の全額、それから二〇〇七年度の六千億円の半額につきましては所得税、それから二〇〇七年度の残りの半分、それから二〇〇八年度、二〇〇九年度のそれぞれの六千億円、合計一兆五千億円につきましては消費税で手当てをするというように仮定をしているわけでございます。

 これらの前提は、昨年の末に、政府・与党の年金あるいは税制の御議論を踏まえまして、未定の部分につきまして、今申し上げました試算の必要上便宜的に設定をしたということでございまして、政策的にそういうことを決めたということではございませんので、その点御理解を賜りたいと存じます。

鈴木(克)委員 時間が参りました。ふなれなため、通告の不徹底や質問のそごがあったことをおわびを申し上げたいと思いますが、少しずつ国会になれて上手になってまいりますので、ひとつよろしくお願いいたします。

 谷垣大臣におかれましては、どうぞひとつ国益のためにG7で大いに頑張っていただきますようにお願いいたします。

 終わります。

山本(明)委員長代理 次に、馬淵澄夫君。

馬淵委員 民主党の馬淵でございます。本日は、この委員会での一般的質疑ということで質問をさせていただきます。

 私、いろいろな現場に地元などでも顔を出しますと、私の支持者の中で、生命保険の販売員、いわゆるセールスレディーと呼ばれる女性の方々、あるいは中小の保険代理店やまた大手の代理店、こういった方々からはさまざまな声が寄せられます。そして、何よりも関心を寄せられていることがございます。それは、今議論をされておられる、銀行等による保険販売規制の見直しについてであります。

 いわゆる銀行での保険の窓販、この窓販解禁について、私は、きょうこの委員会の場でたださせていただきたいというふうに思っております。法案の改正ではなく内閣府令で改正が行われるということから、この銀行窓販の解禁に関しては国会の場で論点をただす必要性がある、現場の声を聞いて、私は強くそのことを感じたわけであります。

 まず、今日まで、この銀行窓販の解禁についての経緯について少しお話をさせていただいて、また御見解を伺いたいと思っておるわけです。

 そもそも、今、銀行窓販全面解禁に向けて審議を、議論を金融審で進められておるわけでありますが、政策というものは、新しい政策を打ち出すためには、それまでにつくられた、行われた政策の実行、その検証、評価というものが必要であります。マニフェストなどは、そういったことを我々が訴えてきたものであるわけでありますが、日本の行政の弱点であるのは、こうした、過去にどういうことを行ってきたかということに対しての検証が十分でないのではないか、私はそんな気がしてなりません。

 さて、まず、これは事務的なことで結構ですので、この緩和について行ってこられたこれまでの経緯についてお答えいただけますでしょうか。

竹中国務大臣 銀行等による保険商品の販売規制の見直し、これは平成十三年と十四年に一部解禁が行われてきております。

 十三年の四月、それと十四年の十月の二度にわたって、十三年の四月については、住宅ローン関連の信用生命保険、長期火災保険、さらには海外旅行傷害保険の販売が解禁された等々でございます。平成十四年十月に関しては、個人年金保険、財形保険、住宅ローン関連の信用生命保険に関する引受保険会社の限定を解除した等々、その二度にわたって行われてきております。

馬淵委員 今大臣から御説明をいただきました、二度にわたっての解禁、一度目が十三年の四月、これは、銀行業務と一体性のあるものという限定において住宅ローン関連からスタートをした。そして、十四年十月、今御説明のあったるるの保険に関しては、いわゆる業務との類似性、親近性のあるものということで解禁をなされてきた。こうした二度の緩和について、それぞれの検証、評価というものが重要であると考えます。

 この二度の規制緩和、規制の緩和という形で進められてきた、これについて、まず大臣、この検証と評価という点についてお答えいただけますでしょうか。

竹中国務大臣 過去二度の販売規制の緩和等々によって、その販売実績等々を見てみますと、個人年金保険でありますとか住宅ローン関連の長期火災保険など、これは好調な販売実績を示しているものがあるということ、これは販売から見られる評価でございます。その一方で、財形保険、海外旅行傷害保険など、ほとんど実績が上がっていない商品も認められる。好調なのとそうでないのがあるということだと思います。

 一方で、評価のもう一つの基準として、苦情等々が出ているのか、消費者のために本当になっているのか等々でございますけれども、銀行等の一部において抱き合わせ販売等の実例が見られたものの、全般的にはその他のチャンネル、いろいろなチャンネルがあるわけでございますが、その他のチャンネルに比べて大きな問題が生じているわけではないという認識を持っているところでございます。

馬淵委員 販売はまあまあそこそこに上がっておる、そして苦情等もそれほどないというお話であると承りましたが、問題ない、こういった御見解であるということですが、行政処分等がなされた例というのはどんなものでしょうか。

竹中国務大臣 行政処分等の例につきましては、銀行等は大変強い影響力を持っているということで、圧力販売の懸念等々ももちろんあるわけでございますので、そういうことに関しては、もちろんこれは消費者保護の観点から適切でないことは明らかでありますから、既に保険業法において禁止をされています。これまでも、銀行によります住宅ローンと火災保険との抱き合わせ販売等につきまして、保険業法第三百六条及び銀行法第二十六条第一項の規定がございまして、これに基づく行政処分、業務改善命令を行った等の事例がございます。

 当然のことながら、こういう問題に関しては厳しく対応をしていかなければいけないというふうに思っております。三件の行政処分がございます。

馬淵委員 今大臣おっしゃった、三件とおっしゃっていますが、先ほどの話は、これはもうオープンにされておられますね。これは三件でありますが、静岡中央銀行、抱き合わせ販売、また、ほかにも福井銀行、無登録募集等、もう一件、私ちょっと存じ上げない件でありますが、こうした三件ほどがある。そして、今のお話であれば、十三年からこうした解禁を行っていて、非常にスムーズにいっているんだ、問題ないという全体的な金融庁のトーンがあるわけであります。

 私は、そもそも、では今のお話の検証の中のそうした苦情も含めた、あるいは議論の前提として検証、評価というものを十分に何か審議会の中でまとめられたものはおありかということ、まずこれをただしたいと思います。いかがですか。

竹中国務大臣 何かそういうものを統計的に把握してまとめたものがあるかということでございましたら、そういうものは実はないわけでございますけれども、問題意識は我々は当然持っておりますので、この金融審議会の第二部会で、保険の基本問題に関するワーキンググループで非常にさまざまな観点から議論をいただいたということでございます。

 その議論の中には当然いろいろなことが出ておりますけれども、この圧力販売については、たとえ銀行等にその意図がない場合であっても融資先は圧力を感ずるおそれがあるのではないか、そういう意見も出されました。保障性の高い商品については圧力販売がもしも行われた場合に事後的に救済するというのは困難なわけですから、そういった指摘もございました。その一方で、議論の中では、圧力販売については、抱き合わせ販売が既に禁止されている、それで実効性がある程度保たれているのではないか、そもそも契約というのは自由であるべきことで、それを事前に制限することについては慎重であるべきではないのか、そのような御指摘もあったというふうに承知しております。

 そういう形で、さまざまな観点から、さまざまな関係者にお集まりをいただいて議論を賜ったということでございます。

馬淵委員 まとめたものはないということでありましたが、私は、こうした消費者の保護にかかわる部分というのは、非常にこれは丁寧に進めなければならないというふうに思うんですね。

 今、銀行などは問題がないとお話をされている。銀行は、例えば、大きな苦情はないと銀行側は説明をするというふうに報道もされています。そして、一方で、保険の販売の方、これは損保のプロ代理店が組織する日本損害保険代理業協会、これが昨年の六月、七月の会員アンケートを行った結果、回答を得た二十八件のうちの半数が問題事例があったとして、これは金融庁に意見書を提出されています。

 こうした業界側の問題ありという意見、銀行側は当然ながら問題はないと言う。そして、一方で、保険業界は保険業界で、何を言っとるんだ、そもそも銀行業務と一体性があるものあるいは類似性があるものを解禁しているんだから、この段階で、問題ないものを売っているんだから、問題など発生するわけがないじゃないかという声も保険業界の中からは出ている。

 私は、申し上げたいのは、事ほど、スタート段階で、最も丁寧に進めなければならない部分で、先ほど大臣お話にあった、こうした検証、評価を、ワーキンググループで議論はしているけれども、例えば、問題点整理をしながら、そのことに対して徹底的な議論を追及するというような、そうした枠組みをお持ちにならないということがこのことへの取り組みの甘さを如実に露呈していることではないかと思えてならないんです。

 そして、今のお話の中で、問題がないんだ、こうおっしゃる中で、今金融審は全面解禁に向けてどんどん進んでいっています。そして、金融庁の今の御見解の中では、これは安居孝啓さん、保険企画室長さんですか、二〇〇四年三月の金融ビジネスの取材にこう答えておられます、「銀行窓販ではこれまでのところは大きな問題はないというのがほぼみんなの認識ではないか」。こうしてだんだんだんだん世論をつくっているんですね。

 私は、まだまだこれは大きな問題が存在するんではないか、金融庁が一方的に裁量に任せて進めている、そんな懸念が見えてならないんです。

 そこで、お話の中で今、問題ないということをおっしゃっていましたが、お手元に、きょうお配りをした資料がございます。これは、平成十三年七月の公正取引委員会事務総局がお出しになられた金融機関と企業との取引慣行に関する調査報告書というのが出ています。公正取引委員会ですから、まさに消費者保護の観点からごらんになられているわけであります。

 この中の調査において非常に興味深いことが書かれております。開いていただくと、十二ページ目を抜き刷りしておりますが、アンケート調査をされたわけですね。金融機関が取引慣行の中で当然ながら強い立場にいるわけですよ。そのことを利用して、どういう取引が行われているかということを公正取引委員会でちゃんと調べておられる。

 それを見ますと、アンケート調査で、融資の申し込みの際または融資実行後に金融商品やサービスを購入するようにと要請されたことがあるかと聞かれたところ、二三・一%の企業が、要請されたと答えているんです。四分の一の企業が取引慣行の中でこうしたことがあると言っておる。そして、もっと大事なところは、そうした要請を受けた企業が、要請に応じたことがあるかということの質問に対しては、八〇・二%、実に八割の企業が、これはもうしゃあないな、受けざるを得ないということで要請に応じているんですよ。

 私、今、しゃあないな、これはちょっと関西弁で申し上げましたが、なぜそのような言葉がついて出るかというと、さらに、要請に応じたことがある企業に対して、あんた、自分の意思でしたか、合致していましたか、こうお尋ねになっている。優しい聞き方だったなと思いますけれども、私。ほんまは嫌やったんちゃうんですかと聞いたら、もっと多くの方が答えたかもしれないが、合致していましたかという質問に対しては、四七・一%、実に半分の企業が嫌々やった、こうお答えになっているわけです。

 つまり、このように、もう既に各行政の単位の中で、消費者保護という観点、十三年七月ですからそんな昔じゃありませんよ、こういう観点で物事を見ているにもかかわらず、一方で、今日までの規制緩和に対しての検証、評価を十分に行わずに、クレームに対しての処理も三件が行政処分になったというだけで全面解禁。

 私は、解禁の是非を今ここの話で論じているわけではなくて、まず金融庁の姿勢として、政策を立案する上での検証、評価ということについて本当に真摯に取り組んでいらっしゃるかということが大きな問題となるのではないかということをお尋ねしているわけであります。そこで、こうした苦情の処理や分析というのは公正取引委員会でやっていただく話じゃないんですよ。まさに大臣が今お進めになるその行政の中でのかじ取りの中でこれは必死になってやらなきゃならぬ問題です。

 ならば、今日の、現在の苦情の受け付け体制、これはどうなっていますでしょうか。

竹中国務大臣 委員が御指摘になった問題、我々は、まさにアンケート調査に示されているような点の問題意識を持って行政に当たっているつもりでございます。今御紹介くださったアンケート調査も含めて、いろいろな認識があるということだと思います。であるからこそ、いろいろな立場の方にこの金融審にはお集まりをいただいて忌憚なく御議論いただいている、私たちはそういう姿勢で臨む、これは重要なことであろうというふうに思っております。

 ただ、我々としては、行政の立場でございますから、重要なのは、そういった圧力販売等は法律で禁止しているということでございます。禁止する法律があって、その法律をきちっと執行していくように我々は検査も監督も行っているということでございます。信用供与の条件として保険募集を行う行為その他の自己の取引上の優越的な地位を不当に利用して保険募集を行うことを、これは禁止をもうしているわけでございます。

 委員のお尋ねは、そういったことが、本当にちゃんと声が届くようなシステムになっているのか、苦情の話、苦情に対する我々の対応ということになるわけで、これは直接のお尋ねもあるわけでございますけれども、保険商品に係る顧客からの苦情につきましては、まず各保険会社の法令等遵守体制でありますとか、法令違反行為の有無等の検証、モニタリングということで、我々はそれを積極的にしっかりと活用していく、まさにそれが行政の当局としての立場でございます。

 これらの苦情につきまして申し上げますと、文書、電話、電子メール等によって当局に寄せられているわけでございますけれども、これを金融庁及び財務局の保険監督担当部局おいて整理分析を行う、必要なものについてさらにそれを検査監督に生かしていくという形で、我々もまさにそういうような対応体制を持っているつもりでございます。その中から、苦情の中でさらに検査をして、いろいろな監督をして、その中で先ほど言ったような行政処分等々も出てきたということであります。

 我々としては、やはり今のシステムをぜひ積極的にしっかりと活用したい、そのように思っております。

    〔山本(明)委員長代理退席、委員長着席〕

馬淵委員 今まさに大臣のお答えの中に、本音の部分が見えたと思うのですが、法で規制しているからというお言葉がありましたが、この問題は、法で規制しているから大丈夫だという問題ではないんです。いわゆる力のある者が抑え込むという、この圧力というものは表に出てこないんですよ。だからこそ、私は、この受け付け体制も含めた処理体制というものを本当に重要だと思っているんです。このことに真剣に取り組まれるならば、その枠組みをしっかりつくらねばならない。

 今お話のあった、関係部局でお聞きになっているというのは、私はこれは金融庁の方に、担当の方にお聞きしましたよ、どうされていますかと。例えば、特別な窓口はお持ちですかというと、そんなことはしていない、代表電話に電話がかかってくる、代表電話にかかってくれば、部局に三十人ほどいらっしゃるその方々がそれぞれ懇切丁寧に対応していると。これは対応しているとは呼べないんですよ。

 私は、法で規制しているから大丈夫、そして、いや、ちゃんと話は聞いている、こんな木で鼻をくくったような回答、いわゆるお役所仕事のようなお話を大臣からお聞きしたくて言っているわけではないんです。本当に、圧力販売というもの、このことを懸念されるならば、それ相応の体制を準備する。三年後に、後でもお話ししますが、お答えもいただくでしょうけれども、これは解禁に向けて進めているわけでしょう。そのための処理あるいは検証体制というものを明確に役所の中に、行政の中に設けるということの決意を示していただかねばならないんじゃないですか。大臣、お答えください。

竹中国務大臣 先ほど申し上げましたように、我々は苦情を受け付ける体制というのをしっかりと持っているつもりでございます。であるからこそ、現実に、記録に残されたものだけで申し上げましても、保険商品に係る苦情というのは、金融庁で毎年千数百件、財務局にも千九百とか二千件とか寄せられております。先ほど言いましたように、そのほかにも、銀行に対する苦情ということですとホットラインを我々は持っているわけでありますので、それは活用をぜひしていただきたい。これも我々が二年前につくった制度でありますけれども。

 申し上げたいのは、決して我々は通り一遍のことを申し上げているつもりはなくて、そこは、やはり苦情はしっかりと我々としても受け付ける、その上で、今、法律にのっとって我々としての監督と検査の権限をフルに活用して、やはりそういうことは本当に防いでいかなければいけない。ここは、苦情を言うのを何かもっと手軽にできる方法があるかどうか、もし知恵があればぜひまた先生方にも御意見を賜りたいと思いますが、我々としては、とにかく苦情はしっかりと聞く、それを検査監督に反映していく、そういうことは引き続きぜひしっかりやっていくつもりでおります。

馬淵委員 現状の体制でとおっしゃるわけでありますが、千数百件、千九百件とおっしゃっていますが、これは本当にわずかなんですよ。いかにそうした事例が顕在化しないか、いわゆる潜在化、潜ってしまうかということについて、少し現場の声をお話しさせていただきたいと思うんです。

 いろいろなところに私も出張っていきます。地元のみならずいろいろなところに出張っていって、そしてお話を伺う、飛び込んで聞くわけです。

 こんなケースもあります。Aさんという方が、建設中の介護施設についての火災保険契約を当初B保険代行サービスとの間で進めていた、しかし、その建設費の融資元であるC地銀から、火災保険はうちでつけてもらわぬと困ると言われ、もちろんその困るという言葉のニュアンスの中にはもうその先進まないぞということが暗に感じられる、やむを得ず応じることにした。そして、個人でいえば、ある方は、自宅購入のための信用金庫での住宅ローンの申し込みを行ったときに、火災保険がローンに組み込まれているという説明を受け、指定の火災保険の募集に応じた。こういった事例を、本当に、いや、表で私の名前は絶対言わぬでくださいねということの中で、これは日々聞けるんですよ。こういったことが顕在化しないという事実があるわけであります。そして、さらに問題なのは、先ほども大臣御指摘のありました、こうした行為を仮に行った後も事後の規制というのは非常に難しい。

 さて、このクレームそのものが顕在化しないということについてどのようにお考えでいらっしゃるか。例えば、保険代行業者によれば、検査が入ったときのための銀行用のマニュアルを保険会社がつくっているという実態もある。こうした実態がある中で、弱い立場の消費者が、問題となる行為について証言することは到底できない。圧力販売、こうしたものがとにかく徹底的に潜ってしまうんだということ、これについて再度、大臣、御所見を伺います。

竹中国務大臣 まず、先ほどから委員は、苦情処理の受け付け等々、もっともっと工夫する余地があるのではないかという前向きの御指摘をいただいております。

 その点に関しては、先ほども少し述べさせていただきましたけれども、既存の防止措置に加えて、当局においても、銀行等による保険販売の適切な実施をモニターするため、例えば現行のホットラインのような仕組みを直接この分野に導入するなど、監視監督の強化を図るべきとの意見があった、保険会社の経営の健全性の確保のため、さらなる充実を図るべきとの意見もあった、これはワーキンググループの報告でございますけれども、そういう御意見もいただいておりますし、また今委員からもいろいろ御示唆をいただいておりますので、我々なりにぜひさらなる工夫はしてみたいというふうに思っておるところでございます。

 それと、今の実例で御紹介を賜りました、まさに取引先、銀行の優越的な地位がいろいろな形で表に出る場合もあれば、むしろ出ない場合も多い、そういう形で圧力になっているのではないか。

 これは委員御承知かと思いますが、金融審議会の第二部会においてこの問題について御議論をいただいて報告をいただいておりますけれども、その中には、銀行等が販売できる保険商品の範囲を保障性商品まで認める場合には、新たに認められる商品について、従来の抱き合わせ販売の禁止に加えて、圧力販売につながるような融資先に対する保険販売を禁止するのが適当、そのような御意見をいただいております。これも、まさに委員がおっしゃるような問題意識を踏まえて、ワーキンググループにおいてそのような御報告をいただいている。

 我々としては、こうした報告も踏まえてしっかりと検討をしているところでございます。

馬淵委員 今、融資先への販売を禁止する等々のお話もしているんだということでありますが、事前の規制というものが本当に重要であり、消費者保護の観点に立った、具体的な、抜け道をつくらない、ループホール、これはもうそういうふうに審議会でも言われておられますよね、こうしたものをつくらない方策が必要である。

 事後規制がいかに難しいかという例で申し上げておきますと、例えば、仮に苦情を申し立てることができたとしても、その救済が大変に困難な例として、五千万円の定期特約終身保険を解約させられた、そして別の会社の一千万円の終身保険に加入させられたという例、この場合に一体どれほどの金銭の損失があるのか。その金銭賠償の算定というものが、そもそもこれは困難なんですよ。かわらなかったらどうだったかという算定はできないんですよ。だから、算定が困難であるというか、もう本当にこれはできない。さらには、現行法の中では、ではその五千万円の保険の復活をしろという形のこともできない、救済のしようがない。つまり、事後規制は、難しいというよりも現状ではできないんですね。だからこそ、事前の徹底的な消費者保護の立場に立った規制を検討せねばならぬ。

 そして、今まさにお話にあった点が、貸出先に対しての、融資先に対しての販売は認めない、これも一つですが、幾つかあります。

 例えばバンカーインシュアランスの成功した例で言いますと、もうこれはお調べの上だと思いますけれども、私も金融庁さんの方から資料をいただきましたが、これはアメリカが一番いい例ですね、GLB法、グラム・リーチ・ブライリー法ですか、それの施行によって行われたバンカーインシュアランス。例えば保険の販売あるいは年金販売と、預貯金の窓口というのは物理的に分離してしまう、こうしたこと。これは銀行さん、大変なコストになりますよ、嫌がりますよ。でも、こうしたことも一つの方法としてとらえられている、これは現実にやっておられるわけですね。

 私が申し上げたいのは、融資先には売らないというお話で、単にそれがふわっとした形で進められていけばどうなるのか。融資先には売らないわけですから、それは融資の前提に立っている方々にはどうなるのか。

 そして、今申し上げているような、具体的に物理的に非常に足かせとなるかもしれないが、窓口を分離させていく等々の整備が必要となるような方策も、あえて言うならば、消費者にはしっかりとした保護を訴えて、そしてサービス提供者側には厳しい立場を、法をつかさどる立場として、立法する側として取り組んでいかねばならないのではないか、こう思うわけであります。

 さて、まだまだ幾つか御質問させていただきたいというので、今お話のあった点など、事後規制がいかに難しいかという点、そして事前規制に対してはまだまだお取り組みが甘い、こう私は申し上げて、次の点についてお話をさせていただきたいと思うんです。

 この金融審の報告の中でも、横断的ルールということについてお話をされておられました。先ほどの大臣のところでもお話にありました。横断的ルールの整備、これは、単にこの銀行の窓販の問題だけにとどまらない、さまざまな金融商品の問題にかかわっていきます。そして、この横断的ルールについて、金融審の中では、ADR、これは司法改革の中でまさに今議論されている裁判外の紛争解決手段、こんなものを使ったりして苦情処理体制を高めていく等々、横断的ルールが必要だ、こうお話をここではされているわけです。

 具体的に、この横断的ルールについてはどのようなお考えがあるのか。少なくとも今般ある金融商品販売法、いわゆる金販法のレベルではもはや対応し切れないのではないか、こういった懸念が審議会の中でもあるからこそ、横断的ルールと改めて御指摘いただいているわけですよ。これについてどのような方向性を考えていらっしゃるのか、大臣に御意見をいただきたい。お願いします。

竹中国務大臣 横断的ルールの問題につきましては、まさに、一九八六年にイギリスの金融ビッグバンがあって、それで金融サービス法が制定されて、横断的な保護の仕組みが必要であるというのは、これまたやはり世界の一つの潮流であろうというふうに認識をしております。

 我々としても、その意味では、平成十二年に金融審の答申をいただいておりまして、二十一世紀の金融を支える新しい仕組みとして、縦割りの規制から機能別、横断的なルールに転換するという観点に立って金融サービスに関するルールの整備を進めていくということは、これは当然の必要性がある方向だと私は思います。

 今ちょっと、金販法についても馬淵委員御言及くださいましたが、金販法そのものが実は横断的な我々の一つの姿勢を示すものであるという面を持っているわけでありますけれども、基本的には、業法の縦の中で保護されている面というのもまだ残っているということだと思います。今国会に投資事業有限責任組合の出資持ち分をみなし有価証券にするということを内容にした証取法の一部を改正する法律案を提出したところであるわけでございますけれども、やはりこれも、機能別、横断的なルールの法制化というような一つの目標に向かったものでございます。

 委員が直接お尋ねの、より踏み込んだものをどうしていくのかということでありますけれども、平成十五年の金融審の第一部会の報告、「市場機能を中核とする金融システムに向けて」という報告におきましては、これまでやはり投資家保護策の講じられていない投資サービスがある。縦でやっていきますとどうしても次から次へと抜け落ちるところが出てくるかもしれない。さらには、今後新たに登場するであろう投資サービスについて、証取法を中心とした有効な投資家保護のあり方について検討するとともに、証券取引法の投資サービス法への改組の可能性も含めたより幅広い投資家保護の枠組みについて、これは中期的課題として検討を継続していくという提言をいただいております。

 我々としましては、こうした取り組みを重ねていく中で、機能別、横断的ルールの整備が結果的にしっかりとできていくように努力をしたいというふうに思っております。

馬淵委員 私は、やはりまだまだ現行法では不備である、そして、横断的ルールとはどういうものか、これは一つは私たち民主党が訴えている金融サービス市場法、消費者保護の観点に立った完全な、例えば英国の金融サービス市場法、これも検討中であるということだと思いますが、こうしたもの、これを早急に整備すべきである、こう御指摘をさせていただきたいと思います。

 時間もあとわずかですので続いていきますが、もう一つ、消費者保護の観点から。現行の保険業法、これは大変膨大な法律でありますが、その中でも、非常にこれも現場の声として聞くんですが、三百条の一項第六号についてちょっとお尋ねをしたい。

 これは、いわゆる比較販売を禁止したものであるんです。これは例えば、「誤解させるおそれのある」ということ、この一文によって、一言によって比較販売を禁止している。これは私は非常に不思議なんですよ。

 私もメーカーの経営者をやっていました。物の販売もやってきました。いわゆる消費者が品物やサービスを得るとき、買うときに、購入するときに何で選ぶのか。私は物づくりの立場にいましたから、Q、C、D、いわゆるクオリティー、コスト、デリバリー、品質や価格やあるいは納期、こういったもので判断する。

 サービスの場合は、まさに目に見えないものでありますから、この比較が重要になるんですよ。ところが、現行の三百条一項第六号の規定によって、現実には比較というものがほとんどできない。そして、それも行き過ぎた規制になっている。どういうことかといいますと、例えば格付です。いわゆる保険のメーカーですね、保険会社の格付であったり、あるいはその支払い余力を示すソルベンシーマージン比率というものの一覧、こういったものですら示しちゃだめだという形になってしまっているんですよ。

 この三百条の一項六号というものが、極めて、かつての護送船団方式の、業界を丸抱えするかつての大蔵行政あるいは現行の金融行政の中での、その名残と言ってもおかしくないような姿で今運用されているという事実を、大臣、どのように御認識ですか。ちょっと端的にお願いいたします。

竹中国務大臣 私も若いころアメリカに住んでおりましたときに、本当に比較広告が多いな、日本はなぜないのかというふうに素朴な疑問を持ったことがございました。

 しかし、これは委員御承知かと思いますが、保険契約を比較する行為というのは、かつては全面的に禁止されていたんですけれども、今、全面的にこれが禁止されているということではございません。保険契約者等の誤解を招くおそれのあるような形で行われる比較行為というのを、これは保険契約者の保護と募集の公正を図るという観点から部分的に禁止している。この枠組みといいますか形は、実はアメリカ等においても同じことであるというふうに認識をしております。

 どういう場合に誤解を招くおそれがあるかということに関しては、事務ガイドラインがありまして、その中では、例えば、社会通念上、取引通念上同等の保険種類として認識されていないものをあたかも同等のものとして比較したり、他社の保険契約を陥れる目的で、その短所を不当に強調するというような形、まさに誹謗中傷、そういうものは明確に禁止している。ちょっと詳細調べてみますけれども、特定の比率を掲げることをそのまま禁止しているということでは必ずしもないというふうに認識をしております。

 誹謗中傷のようなものに当たる場合はだめだ、そこら辺は運用もきっちりしていかなければいけませんが、今の枠組みは以上申し上げたような形になっていると認識をしております。

馬淵委員 実際、販売、営業、私はやってきましたよ。相手の商品やサービスを誹謗中傷することで自社の商品やサービスは売れないんですよ。そんなことしたら、お客さん、見抜きますわ、ええもん売っとらんねんな、こいつはと。

 そうじゃないんですよ。純粋に比較することすら実際には業界の方で規制されてしまっているんですよ。私が申し上げているのは、そのことを、現場の声を全然お知りにならないんですかということなんです。

 今、手元に、これはある大手の生命保険会社のマニュアルがあります。ここにはこう書かれています。「たとえ、雑誌や新聞に掲載されていたソルベンシーマージン比率や格付けの一覧表をコピーしてお客様に配布するだけであっても、結果として他社の不安をも強調してしまうことは十分予想されますので慎まなければなりません。」つまり、現実的にはこうしたマニュアルを大手の生保が現場に流して、そんなことすら禁止するんですよ。おかしくはないですか。つまり、三百条一項六号というものの運用規定が、このように現行の業界の中で使われてしまっている。それは何なのか。かつての護送船団で、本当に金融行政、がっちりと握られていた、その名残がまさに生きている。

 私は、この三百条一項六号の問題というのは、本当の消費者保護の立場に立ったところで考えたときに、もう一度考え直さねばならない。六号だけではないかもしれない、三百条の問題というのが、もう一度、本当にいわゆる消費者の立場に立った金融商品のあり方というのが、例えば他の不動産のあり方あるいは他の動産のあり方とどのように違うのか、どのように一致すべきなのか、このことを議論しなければならぬと思っているわけです。

 時間も余りなくなってしまってきているわけですが、もう一点だけお伝え、御質問をさせていただきたい。

 それは、このような状況の中で金融庁は政策を打ち出すということは、当然ながらあるグランドデザインを描いていらっしゃると思うんです、保険業界、保険市場がどうあるべきかと。そして、その流れでいいますと、例えば銀行窓販を全面解禁に向けていくということはどういうことか。

 いわゆるレディーメードと呼ばれるような保険、こういったものは窓口で簡便に、ここにも書いています、金融審の中にも。消費者の利便性の向上ということを一生懸命訴えておられる。つまり、簡単なものは簡単にコンビニで買えるような形に変えていこう。そして、それは一つの方向性であるかもしれない。

 確かに、現行の生命保険会社、たくさんの営業職員を抱えていらっしゃいます。御存じのように、全国の生命保険会社の営業職員、二十八万人です。そして、銀行がさあ募集の資格取りなさいと言われて、取った方々四十万人いらっしゃる。これほどまでにたくさんの営業職員を抱えてやっているそのあり方というのは非常に非効率である可能性が高い。だから、銀行窓販のような形に持っていって、レディーメードの保険はそういったところで簡単に購入できるような形、あるいは対応できるようにしていこう。

 そしてもう一方で、いわゆる一生涯のファイナンシャルプランニングをしていくオーダーメード、カスタマイズされた商品に関しては、ライフタイムサイクルマネジメントのような、一生涯その人の金融商品というものについておつき合いする、いわゆるコンサルテーション、これはまた別の、本当にスキルを持った企業が売っていく。

 こういう形に分化されていくんではないかということを、私は、金融庁自身がグランドデザインとして保険市場の中に描かれているのではないか、このように思うわけであります。そして、それに対しての金融庁当局のお話をいただきますと、いや、そういう形になることが望ましいと考えられるのではないでしょうかというお答えもいただきました。

 そこで、もう時間もありませんが、二点。

 今申し上げたようなグランドデザインの問題。

 そして、そのときに、本当にたくさんのセールスレディーの方々がいらっしゃる。この方々がどういう働き方を今されているかというと、一生懸命売りに行かれますが、結局は、スキルが少ないがために、あるいはスキルが不十分であるという状況の中で、親類や友達、縁者に売りに行くだけになります。そして、一年足らずでどんどんどんどん交代させられてしまう。こうした方々、人材への教育とか研修とか、業界を底上げするならばむしろそういった方向での指導なり、あるいは行政の立場としての導く方向性というものがあるのではないか。

 これを二点、御質問とさせていただいて、私、時間も参りましたということですので、お願いいたしたいと思います。

田野瀬委員長 質問時間がもう既に終了し、かなりたっておりますので、簡潔に御答弁ください。

竹中国務大臣 グランドデザイン、なかなか難しいわけでありますが、かつての通産省のビジョンのようなイメージではもちろん委員はおっしゃっていないんだと思います。

 金融審の第二部会の報告、平成十六年三月におきましても、消費者がアクセスできる、そういったものの選択肢をふやして利便性を高めること、そうすることによって、また一方で、チャンネルがふえて商品が開発されて深みのある市場が育成されていくこと、その意味では、今委員がおっしゃったような形、分化するというのは、一つのパターンとしてはその中に入ってくるんだと思っております。

 最後の人材の話、これはやはり、金融に関する人材は各方面で今育成が求められている。これはむしろ経営者の御判断によるところが大きいのかとも思いますが、当局として、そういった何らかの基準に関して、人材育成に貢献できることがあるのかどうか、私たちとしてもしっかりと検討したいと思います。

馬淵委員 ありがとうございました。

田野瀬委員長 次に、中津川博郷君。

中津川委員 民主党の中津川博郷でございます。

 きょうは、財務金融委員会で質問の機会を与えていただきありがとうございます。久しぶりにこの委員会で竹中さんとまた質疑ができるということで、いろいろ、特にきょう質疑をしたいのは、銀行に対する法規制ということを中心に絞っていきたいと思うんですが。

 その前に、最近は景気回復、あるいは地価上昇、物価上昇、企業の業績回復、株価上昇というようにいいニュースが新聞紙上躍っておりまして、これは大変結構なことだと思っております。思い返しますと、小泉政権になったとき、株価は日経平均一万四千五百円、そして七千円台まで下がりまして、今一万二千円ぐらいのところですか、あと二千五百円ぐらいまだ足らないわけでありまして、ここで喜んでばかりはいられないわけでありまして、ぜひ橋本内閣の二の舞にならないように、あれは政策を間違えてがくっと失速しましたから、それを一番懸念しております。結局、小泉内閣は何もやってこなかったわけですから、何もやらない方がいいのかもしれませんけれども。

 とにかくまだまだ消費というものは低迷をしておりまして、今、厚生労働委員会でも議論しております年金の問題とか、日本人は将来に対して不安、不信でいっぱいでありますので、これを取り除かない限り、景気は本当によくなった、明るくなったということは言えないと思います。

 こんな時期に、私たちは、バブルと、その後のずっと続いてきた長いデフレ、これがもたらした負の遺産に対して、今もう一度真剣に向き合わなければいけないと思っております。

 銀行の問題に入るわけでありますが、バブルの時代に銀行が何をしてきたのか。とにかく貸し付けて担保をとる、そういう過剰融資、提案融資、それがどういうようなことをもたらしたかということであります。

 とにかく土地などの資産を持つ個人に対して、土地担保を過剰に評価し、過剰に貸し付けた。借りてくれ借りてくれということで、銀行は熱心であります。支店長が本当によく来て、そして営業をして、とにかく節税対策にもなるんだ、マンションをつくれとかいうようなことで過剰融資、提案融資がたくさんなされてきた。

 そして、バブル崩壊後、その融資が担保割れを起こして債務超過になったわけであります。何かわけもわからぬうちに巨額の借金を背負い込んだたくさんの人たち、銀行や保証会社から容赦のない取り立てによって土地や自宅を差し押さえられ、競売にかけられ、一切の、身ぐるみはがされてしまった。これは日本全国の現象であります。競売、夜逃げ、倒産、こういう連続のこの数年間でありました。

 それで裁判に訴えます。しかし、これが不思議なことに、大体借り手の責任ばかりが強調されて、貸し手の責任というものがほとんど考慮されてこなかった。これは現実です。これは、今この瞬間にもこういう過剰融資に関する悲劇というものは多数存在しているわけであります。不良債権処理が終わったとかいろいろ言われておりますが、バブルの悪夢は終わっていないんですね。まだバブルの夢の中と言っても過言ではないと思います。

 私も地元が下町なものですから、中小零細、個人商店主の方がたくさんいます、代々そこに住まわれたそういう人たちが。本当にしばらくぶりに行ってみたら、全部平地になっていたというような状況が今も続いているわけであります。

 そこで、冒頭に申し上げました銀行の金銭の貸し付けに対する規制についてお伺いしたいと思うのであります。

 数年前に、社会的に商工ローンが問題になりました。その結果、平成十一年に貸金業の規制等に関する法律というのが改正されまして、以後、貸金業に対しては、保証人へのその都度の書面交付の義務づけが行われるようになったわけであります。改正前は保証契約締結時のみの書面交付が義務づけられていたものが、根保証契約において債務者に追加融資が行われた場合は、その都度保証人にも書面交付をすることが義務づけられたわけであります。これは消費者保護の観点から遅きに失したということでありますが、当然の改正であります。俗に言うサラ金とか、消費者金融と言われるものでありますが、そこで、私は常々不思議に思っているんですが、現在、銀行にはこういうような法規制というのはあるのかどうか、まずお答え願いたいと思います。

伊藤副大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 今委員御指摘のように、平成十一年に貸金業の規制法が改正をされたわけでありますが、銀行につきましては、保証人への書面の交付を一律に義務づける明示的な規定というものは定められておりませんけれども、銀行法上、貸し出しを含む業務全般につきまして、顧客の知識、経験及び財産の状況を踏まえた重要な事項の説明に関する十分な体制整備を義務づけているところでございます。

 これを受けまして、金融庁といたしましては、事務ガイドラインにおきまして、金融機関が貸し手としての説明義務、説明責任を果たすよう、内部管理体制の強化を促進する観点から、第三者との包括根保証契約は、保証人の要請があれば債務者の借入残高等の情報を提供する、あるいは契約書等の書面の交付、こういうことにつきまして、金融機関による与信取引に関する説明体制等の検証を行う際の着眼点といたしているところでございます。

中津川委員 伊藤さん、よくそうやって自信を持って言えますね。何が十分な、銀行を、消費者、借り手の立場に立っている、自民党の、与党の議員さんたちも本当にそう思っていますかね。そう思っていたら、こんな問題は出ないじゃないか。ガイドラインじゃないですか。運用上の問題じゃないですか。何で貸金業に規制があるのに銀行に対してはないんですか。これは率直な疑問ですよ。前から私は思っている。そう思っている方は党派を超えてたくさんいますよ。どうですか。これは法改正するべきじゃないんですか。

伊藤副大臣 先ほどお答えさせていただきましたように、私どもとしては事務ガイドラインの中で整備をさせていただいて、このガイドラインというのは極めて規範性の高いものでございます。そして、内部管理体制の実効性に問題がある場合には、必要に応じて報告徴求をいたします。そして、報告徴求をして、その内容を精査して、これは問題だという場合には業務改善命令を発出する、こういう形になっておりまして、このような仕組みの中で監督上しっかり対応して、いろいろな問題が生じないように私どもとして厳正に当たっていきたいというふうに考えているところでございます。

中津川委員 私は常々思っているんですが、日本という国は銀行性善説なんですよ。昔から、銀行というのはまじめでおかたいというイメージの代名詞でしたね。金貸しというと、何か血も涙もない悪いイメージというのがありますが、銀行員というのは信頼と安心感。銀行に就職したというと、よかったねと昔は言われたんです、何か今聞くと、大変なところに就職しているねと言われるというふうにこの間言っていましたけれども。

 確かに、明治以来、日本が発展していく上で銀行が大きな役割を果たしたことは、私も異論はありません。それは恐らく、性善説というものをそういうことがつくってきたんだと思うんです。まさか銀行が庶民を泣かすとかだますとか、悪いことは絶対にしない、これは普通の考えですよ。しかし、実際は残念ながらそうではなかった。銀行は考えられないことをやっているんですよ、竹中さん。

 それは、今お話ししました商工ローンで問題になった根保証よりも範囲が広い包括保証なんというのがあるんですよ。バブル期に多くとっていたんです。恐ろしいんですよ、これは。地獄ですよ、地獄。

 これはちょっと説明したいと思うんですが、資料一から三、皆さんのところに届けてあります。これは実際にあった話であり、実際の数字であります。

 「返済状況集計表」と書かれていますが、この融資を受けられたAさんは、平成元年当時、世田谷区に時価約四十億円と評価される土地を所有していました。資産家であったものの、一主婦です。そのAさんに対して、平成元年から三年の約二年間に、旧富士銀行から目が飛び出るような巨額な金額が貸し付けられているんです。愛想のいい支店長と担当の者が一日じゅう来たと。

 資料の借入金額を見てください。私なんか見たこともない数字が並んでいますが、これは幾らなのかすぐにわからないでしょう。足し算が大変なので、私、計算してきましたが、本人に対して十八億三千百万円、そして、夫や夫の会社への融資を加えると、何と総額で二十五億八百万円貸し付けているんですね。そのうち、変額保険、株式購入資金、その利払いのための融資が十五億四千五百万円です。土地持ちの資産家であるとはいえ、一主婦ですよ、収入のない主婦です。こんな短期間にこのような巨額を貸し付けた、これは高利貸しですよ。銀行も銀行、大銀行の富士銀行さんですよ、これは。驚きますね。

 私は、その手続とか説明についても甚だ疑問を感じているんですが、それにも増して問題だと思われていることは、銀行の主張によると、主たる債務者の子供は相続人であるという理由だけで、彼から連帯保証、それも包括保証をとっているんですよ。その当時、この一人息子は学生さんですよ。にもかかわらず、銀行は包括保証をとった。しかも、契約当初、約六億円のアパート改築資金以降の融資については、保証人の当の息子さんには銀行から一切通知、説明はなかった。また、後に行員は、息子さんを連帯債務者にする気はなくてね、払えなければ不動産を売却すればいいじゃないですかと、大方ほかのところでもこんなようなことを言って、におわせて、認識を示したそうです。

 その後の経過は御想像のとおりでありまして、バブルが崩壊して、あっという間に地価が暴落をして、Aさんは瞬く間に払い切れない巨額の債務を背負うことになったんです。

 これは特殊な例じゃないんです。数字が大きいだけの話で、似たような話がごろごろしている。

 そこで大臣にお伺いしたいんですが、このような問題融資で包括保証をめぐるトラブルは非常に多発していると申し上げましたが、これはやはりバブル期の銀行の提案融資、過剰融資に大きな問題があったんじゃないですか。

竹中国務大臣 今お話を伺う限りにおいては、深刻な問題であるなというふうに思います。ただ、個別の事例については、今、私ちょっと判断できません、承知しておりません。

 また、包括保証、包括根保証をめぐる問題等々について、銀行の過剰融資があったかどうか、これは、それぞれ現実にそこに問題が生じているわけでありますから、まさに当事者間の問題が生じているという意味では、その当事者である貸した側、借りた側、それぞれケース・バイ・ケースでありましょうが、やはりそれなりの問題があったということなのだと思います。

中津川委員 大臣は、いつも質問をすると個別の問題は答えないと言うんだけれども、個別が集まって全体になるんですから、一つ一つの個別のケースが大事なんですよ。

 包括保証の内容を皆さんにぜひ見ていただきたいと思いまして、資料四を持ってまいりました。これは、Aさんへの融資に際して実際に旧富士銀行が使用した保証書なんですが、資料四であります。この左側の一の欄ですね、「内容」として記載されている、「本人が別に差し入れた銀行取引約定書第一条に規定する取引によって、貴行に対し現在および将来負担するいっさいの債務。」こういうふうに書いてありますが、私、これを十回読んだんだけれども、なかなかわからなかった。大臣、わかりますか、これは。

竹中国務大臣 ちょっと済みません、今いただいて目を通しているところなので、よくわかりません。

中津川委員 頭のいい大臣ですから、エキスパートですから、大臣も今見たということで、これは二、三行の、いいですか、もう一回読みますよ。「本人が別に差し入れた銀行取引約定書第一条に規定する取引によって、貴行に対し現在および将来負担するいっさいの債務。」私、文学部ですけれども、ちょっとこんな日本語はわからないね。本当にわからなく書くのね、契約書というのは。役所の仕事もそう。わからなくすることが大事なんだというような。

 それで、これを見てください、いいですか、一番が包括保証なんですよ、二番が根保証なんですよ、三は特定保証なんですよ、ということが私もわかったんです。それで、普通の人が見ると、この包括保証の意味は絶対わからない。根保証の意味だって何となくわからない。しかし、「現在および将来負担するいっさいの債務。」なんというのは、ちょっと考えて、ああそうかと、例えば延滞金とか何かそんなものかなと取り違えてしまって包括保証人になってしまうというケースが、たびたび、たくさんあると思います。

 包括保証がどれほど恐ろしいものであるか、竹中大臣はわかっているのかわかっていらっしゃらないか、僕はわかっていると思うんですけれどもね。これは、いいですか、将来負うかもしれない借金まで全部一切を無制限に保証するということなんです。ある人の借金をエンドレスで、限度レスですよ、保証するということで、想像できますか。まともな感覚なら絶対に引き受けない、引き受ける人なんていないですよ、これは。まさに悪魔の契約ですよ。こんな契約が保証書には当たり前のように入っている。しかも、一番上にあるんですよ、これは。選択で、一番上に、何となく押しちゃいますよね。私なんかも人がいいものですから、一番上に押すと何かいいのかなと思って、銀行を信用していたら余計押しちゃいます。大臣、いかがですか。

竹中国務大臣 これは、私は法律の専門家でもありませんし、解釈権もありませんけれども、民法の第四百四十七条第一項において、「保証債務ハ主タル債務ニ関スル利息、違約金、損害賠償其他総テ其債務ニ従タルモノヲ包含ス」というふうにされておって、一般に、保証債務が主たる債務に関する利息、損害賠償を包括する趣旨の保証契約を締結すること自体が法律上は否定されていないという状況になっているんだと思います。

 ただし、ここは現実の判断として、今申し上げたのは法文にそういうのがあるということを申し上げているわけでありますけれども、そうしたことについて、問題が、社会的に認識されている問題は一方であるというふうにも承知しておりますので、そうしたことを含めて、今法務省において御検討をいただいているというふうに承知をしています。

中津川委員 きのうレクを受けまして、こういう包括保証というのが外国にあるのかどうかと、調べ切れないということで、知る範囲の資料を出していただくということでありましたけれども、私の聞き及び調べ及ぶところでは、外国には余りこんなのはないんですね。

 私のところには、連日、金融被害者の方がたくさん来ます。トラブルですね、そんな話をしますと――当時の背景を考えると、土地は下がらない、土地担保至上主義で保証人の保証能力というのを軽視していた、収入がなくても土地がこれだけあると。ですから、これはあくまで形式的なそういう判断で保証人を決めていた、そう思うんです。例えば子供を保証人にしたというこのAさん、まだ学生だったんですからね、そこでさらにこの問題が現在深刻になっているんですよ。

 そして、そういう包括保証による多額の連帯保証債務に関して、保証人は実際もう弁済不可能な状態がほとんどです。となると、解決の仕方は自己破産、そうでなければ債務免除の方法を考えるべきだ、この二つだと思うんですが。

 このAさんの息子さん、こういう親の苦労を見て、銀行に不信を持ちながら、弁護士になったんですよ。弁護士になった。立派ですね。大変な努力をした。そして、今、銀行は自己破産しろと言ってくるんですよ。自己破産をするということは、法律的に弁護士を廃業しなきゃいけないことになる。当時彼は学生だったんですよ。そして、努力して弁護士になった、法律の専門家になった。正義感もある。しかし、最初四億か五億の保証が、包括根保証で今三十億とも四十億とも、わけがわからないくらい多い。

 こんなような銀行の意地悪、自己破産しろということだけじゃなくて、こういうようなケースはやはり債務免除の手段とかいろいろ人を生かす方法というのを考える。クールな竹中さんでありますけれども、どうですか、大臣の考えを、私は今いろいろお話ししましたが、ぜひお聞きしたいと思っています。

竹中国務大臣 これは御理解いただけると思いますけれども、今のケースに関して、債務免除すべきかどうかというようなことは、これはちょっと私の立場で申し上げることはできないというふうに思います。

 ただ、これはそれこそ、それぞれの個別の事情に基づいて、当事者間でしっかりと話し合っていただく、場合によっては司法の力をかりてその決着をつけていただく、基本的にはそういうような法律行為の問題であろうかと思います。

 ただし、その際に、当然のことながら、銀行としては、やはり社会的に責任ある立場として、一方で預金を預かっているわけですから、債権は回収できるものは回収しなければいけない、そうでないと預金者にも迷惑が及ぶ、そういう意味での銀行の社会的責任がございます。しかし、一方で、生かすものを生かして、それで将来の債権額をさらにふやすというのも、これも経営の一つの判断でございましょうから、そこは銀行として、まさに銀行業を担う、そういう免許を受けた者として、しっかりとした判断がなされるべきであろうというふうに思います。

中津川委員 相変わらず血も涙もない、クールな発言であると思いますが、とにかく気の毒ですよ、気の毒。

 お父さんが土地を持っていた、銀行が金を貸した、おまえもいたから一緒に判こを押しておけ、一番上のところへ押した。あるいは本人が押したかどうか、おれは、本人は押していない、お母さんが押しちゃったと。こういう問題を、竹中さん、しっかりやると国民は理解できますよ。こういうようなケース、本当の一つのケースで、私の身近なところなんです、自己破産させて弁護士をやめさせればいい、そんなことで片づく問題じゃない、それを申し上げておきます。

 そこで、今、判この話をしました。時間が押してきましたので、資料五「ハンコが凶器になる」というのがあります。この判こを、凶器といったって、判こを使ってプロレスみたいに顔をつっつくのじゃなくて、そういうことじゃない。これは詳しく資料を読んでいただくとわかると思いますが、私たちの、前に山田議員がこのことについて質問をし、それに関連をして、私もその後の進捗状況というものを確認したかったものですから、きょうあえて質疑をさせていただいたわけであります。

 ある日、全く身に覚えのない巨額融資の連帯保証人に自分がなっていることを知らされる。契約書を見ると、保証人欄には勝手に自分の名前が使われ、自分の判こが押してある。銀行は、判こがあるんだからこの契約書は有効だ、金を払え、そういうふうに言います。契約書を証拠にどんどん裁判を起こす、判こがあるから。しかも、ほとんどの場合、裁判で九九・九%に近い、これもデータを求めたんですが、なかなか正確なのが出ないということですが、全部銀行が勝っているんですよ。

 旧三和銀行、今のUFJ銀行です。争っている杉山さんの場合は、絶対に間違うはずのない自分の名前が間違っているのに、それでもみずからの意思で保証人になったのだと銀行側は主張しているわけですね。判こを押させればこっちのもの、そういう思いですよ、銀行は。兄弟から判こを貸してくれと言われて、貸したら連帯保証人にされてしまい、金を払えと言われたと。裁判に際して、兄弟は無断で判こを押して筆跡も偽造したことを認めていたにもかかわらず、裁判所は判こが本人のものであることを理由に保証書を有効であると判断し、五億円支払えという判決を出した、こんな判例もあります。

 実は、民訴法二百二十八条四項というのがあります。冒頭に申し上げました、昨年の二月、山田議員が予算委員会で質問をしました。その際に森山法務大臣が、これは古い法律であって、改正を検討する対象になり得ると言ったんですね。改正を検討する対象になると。前向きですね。日本の民訴法の歴史が動いたというふうに、この私の資料の筆者の山田さん、これも山田さんですが、これは朝日関係の人です、この人が書いています。

 この条項は大正十五年ですよ。八十年近くもたった古いものですね。これはもともと判この重要性というのを法的に補完した意味合いがあったと思うんです。昭和三十九年に、最高裁が本人または代理人の印鑑が押されていれば本人の意思に基づいて作成された文書であると推定されると。要するに判こが押してあれば、契約の見た目だけでなく本人の契約するという意思までも認める判決を出してしまったために、判こを押してしまえばもうこっちのものという傾向を金融機関に助長させたという議論、意見があります。

 さあ、この質疑から一年たちました。私はきょうは期待をしております。森山議員、森山大臣ですよ、こういうふうにやるということを言っておりますので、この進捗状況、現状報告、法務省はさぞかし一生懸命取り組んでいると思うんですが、いかがでしょうか。きょうは、いっぱいこれをインターネットで見ていますからね。どうぞ。

房村政府参考人 御指摘の民事訴訟法の二百二十八条の四項、「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」こういう規定が設けられておりますのは、一般に日本で文書を作成した場合に、みずからその文書を作成したということをあらわすためには、その方が署名をするまたは押印をするというのが一般的な慣行である。そういうことを踏まえまして、署名または押印をみずからの意思に基づいてしている場合には、後になって、その文書が自分の作成したものでないということは原則として言えない、こういうことを定めております。

 この条文が「推定」となっておりますのは、署名あるいは押印がされた後に文書が偽造される、変造される、こういう場合もございますので、そのような場合には、署名あるいは押印が本人の意思に基づいていても、変造後の文書について本人が作成したと言えないということは明らかですから、そういう場合にはこの「推定」が破れて、例外的に本人が作成したものではないと扱う。こういう、ある意味では文書の成立に関する日本の通常の、いわば常識的な扱いを法律が定めたものでございます。

 そういう意味では、もちろん非常に古い法律ではございますが、文書の作成について、署名または押印によってみずから真正に作成をしたということをあらわすという一般的な慣行そのものは現在においても維持されておりますので、もちろん古い法律でございますので、一般的に申し上げて検討の対象にならないわけではございませんし、そういうことを含めて大臣も検討の対象にはなるということは国会で答弁を申し上げたわけでございますが、基本的には、この中身自体について、現在の慣行を踏まえても、なお現段階において直ちに改正しなければならないという必要性はないのではないかというのが現在の基本的な考え方でございます。

 なお、御指摘のような最高裁判例がございまして、この法律で言っていることは、署名または押印が本人の意思に基づいているというときにその文書が真正な成立が推定されるということでございますが、いわゆる契約書等に印影が押されていることから、その印影が本人の意思に基づいて押されているということを事実上推定していいかどうかという点について先ほど申し上げたような最高裁判例がありますが、この点については、裁判所において、印影が本人の印章によって間違いなく押されているとしても、例えば印鑑が他人に預けられているあるいは相手方が出入りをして知らない間に勝手に使える、こういうような事情がある場合にはその判こに基づいて押されていてもその推定はできないんだ、こういうような判決例も数多くございますので、そこは裁判所がそれぞれの事情に応じて、単に印影が一致しているというだけではなくて、その事情を調べてそういう推定ができないという場合を認定している例も相当数ございますので、そこは裁判所において適切に判断していただけているのではないか、こう思っております。

中津川委員 長々と言ったけれども、そういうことを聞きたいんじゃないんですよ。大臣が改正の必要があると言った、だから、どの程度役所の中で議論して進んでいるのかと聞くの。あんたたち、いつもできないできないばっかり言って、やる気がない。あんた、大臣の下にいるんですよ、全然きょうの答弁は後退しているじゃないか。後退しているじゃないか。大臣なんだよ、日本の大臣。きのうも、レクが来て偉そうに言うんだよ、こういうのはできない、これはこうだああだって、役人が。だめだよ、そんな答えでは。ちゃんと検討したのかどうか、ちゃんと答えて。それで、どの程度進んでいるのか。それとも、あなたの意思でやらないのか、今の大臣は違った考えなのか、ちょっとそこのところを。これだけマスコミにも載って、これはセンセーショナルになったんですよ。今、時代が違うんだから。判こなんというのは、今はこういう時代で、デジタル化の進歩で判この偽造なんて簡単なんですよ。答えてください。

房村政府参考人 先ほど申し上げましたように、大臣が国会で、このもとになった条文そのものは非常に古い時代にできたものですから、古い法律でもあり、検討の対象になるということは申し上げておりますが、それを踏まえて私どもも内部的に検討いたしまして、先ほど申し上げたように、文書の成立に関する一般的な慣行としては、制定当時から現在まで、やはり署名または押印によって文書の成立をあらわすという慣行は大きく変わっていない。また、当面、電子的なものは別でございますが、文書の作成という意味でいえば今後も余り変わらないだろうということから、少なくとも現段階においてこの民事訴訟法を直ちに改正する必要はないのではないかというのが、現在、大臣の指示を受けて検討した私どもの考え方でございます。

中津川委員 今の大臣はそういう考えということなんですか。森山大臣と今の大臣は考えが違うということですか。

房村政府参考人 これは大臣が国会で答弁したのを受けまして私どもも検討して、森山大臣にもその検討経過は御報告して、了解を得ております。

中津川委員 全然後退じゃない。先ほども申し上げました、八十年前、この法律ができたのは。私は、判こが意味がない、無意味だと言っているんじゃないんですよ。今は、デジタル化の進歩によって、先ほども言いました、判この偽造はすぐできる。それから、契約慣習も変化している。今の民訴法二百二十八条の四項は、連帯保証人に実質的な立証責任を、今言いましたね、立証責任を課していると。これは、要するに、自分が押したんじゃないというのを裁判で言えばいいじゃないかというようなことですよね。しかし、いいですか、立証責任なんというのが難しい。

 局長、裁判、私もやったことないですけれども、やった人から聞いてみると、二、三現場を知ってくださいよ。それは、この立証に関しては債務者は不利なんですよ、判こが押してあると。銀行の内部の文書の提出を求めても銀行に拒否されてしまったり、裁判所も提出を命じることをしないことも大きいんですよ。

 アメリカはディスカバリーというのがある、証拠開示という制度があって、自分が不利益な証拠でも提出が義務づけられているんです。竹中さん、お話もいいんだけれども、アメリカ流のBIS規制とかあんなのをやって、日本の銀行ががたっとしちゃったんだから。こういういいのを何で取り入れなくて、変なのばかり取り入れるんだ、あんたは。それがわからないんだよ、いつも。

 日本の金融機関なんて、昔は、かばんを持ってお兄ちゃんが回って、おやじさん、元気って言って目ききで貸していたのが、BIS規制があるから。昔は、自分のやる気とあれがあれば、銀行の支店長だって心意気で貸してくれたんですよ。そういうのはやるけれども、こういう――こういうのをやらなきゃだめですよ、あなた、銀行に対して。

 これは不利益なものでも提出が義務づけられている。だから、日本にはそういうのがないから、借り手は弱いんです。それで文書の提出を求めて、銀行はその契約書を出せばいいんです、それですべてなんですよ。ほかは何にも要らないんです。裁判では、この判こが、本当に自分が押したか、盗まれたか、お母ちゃんが押したか、そういうことであるわけであります。

 きょう、情けないね。日本はまだ判こ社会ですよ。竹中さん、違うんでしょう。だから、アメリカへ行って――判こはいいんですよ、僕も日本の文化、伝統を守る、判こを否定しているんじゃないんですよ。きょうお話ししましたように、契約で大変な悲劇が、今日本は景気がよくなった、株も一万二千円まで来た、もう一息、そのときに、犠牲になっているこういう人たちがいるんだということ。やはりどこかこれは正常じゃないんです。

 きょうは、私は判この問題を、最初は包括保証の問題、こんなのはアメリカにないんですから。あれは各州ごとにいろいろ――こんなのないはずですよ。全部の州を調べたわけじゃないですけれども、ないはずですよ。何でそういう、今日本で必要なものをアメリカ好みの竹中大臣は取り入れないで、日本人が苦しむことを。だから、あんたは敵がいっぱい多いんだ。

 これで終わります。

田野瀬委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十五分散会


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