衆議院

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第6号 平成16年11月9日(火曜日)

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平成十六年十一月九日(火曜日)

    午後一時三十八分開議

 出席委員

   委員長 金田 英行君

   理事 江崎洋一郎君 理事 遠藤 利明君

   理事 鈴木 俊一君 理事 村井  仁君

   理事 中塚 一宏君 理事 原口 一博君

   理事 平岡 秀夫君 理事 谷口 隆義君

      小野 晋也君    岡本 芳郎君

      木村 太郎君    熊代 昭彦君

      倉田 雅年君    小泉 龍司君

      菅原 一秀君    砂田 圭佑君

      田中 和徳君    竹本 直一君

      谷川 弥一君    中村正三郎君

      永岡 洋治君    宮下 一郎君

      森山  裕君    山際大志郎君

      山下 貴史君    井上 和雄君

      岩國 哲人君    小林 憲司君

      佐藤 公治君    鈴木 克昌君

      田島 一成君    津村 啓介君

      野田 佳彦君    馬淵 澄夫君

      松本 剛明君    村越 祐民君

      吉田  泉君    石井 啓一君

      長沢 広明君    佐々木憲昭君

    …………………………………

   財務大臣         谷垣 禎一君

   国務大臣

   (金融担当)       伊藤 達也君

   内閣府副大臣       七条  明君

   総務副大臣        今井  宏君

   財務副大臣       田野瀬良太郎君

   経済産業副大臣      小此木八郎君

   財務大臣政務官      倉田 雅年君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房長)   永谷 安賢君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 河野  栄君

   政府参考人

   (内閣府産業再生機構担当室長)          藤岡 文七君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    佐藤 隆文君

   政府参考人

   (金融庁証券取引等監視委員会事務局長)      長尾 和彦君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  瀧野 欣彌君

   政府参考人

   (財務省大臣官房総括審議官)           石井 道遠君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   勝 栄二郎君

   政府参考人

   (国税庁次長)      村上 喜堂君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房総括審議官)         玉井日出夫君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 井口 直樹君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         井出 道雄君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房総括審議官)         石田  徹君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務流通審議官)       迎  陽一君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局長)          北畑 隆生君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房総括審議官)         榊  正剛君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 寺田 達志君

   参考人

   (預金保険機構理事長)  永田 俊一君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月九日

 辞任         補欠選任

  田中 和徳君     山際大志郎君

  渡辺 喜美君     菅原 一秀君

  樽床 伸二君     松本 剛明君

同日

 辞任         補欠選任

  菅原 一秀君     渡辺 喜美君

  山際大志郎君     田中 和徳君

  松本 剛明君     佐藤 公治君

同日

 辞任         補欠選任

  佐藤 公治君     樽床 伸二君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 信託業法案(内閣提出、第百五十九回国会閣法第八五号)

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

金田委員長 これより会議を開きます。

 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として預金保険機構理事長永田俊一君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として財務省大臣官房総括審議官石井道遠君、財務省主計局次長勝栄二郎君、国税庁次長村上喜堂君、金融庁監督局長佐藤隆文君、金融庁証券取引等監視委員会事務局長長尾和彦君、内閣府大臣官房長永谷安賢君、内閣府大臣官房審議官河野栄君、内閣府産業再生機構担当室長藤岡文七君、総務省自治財政局長瀧野欣彌君、文部科学省大臣官房総括審議官玉井日出夫君、厚生労働省政策統括官井口直樹君、農林水産省大臣官房総括審議官井出道雄君、経済産業省大臣官房総括審議官石田徹君、経済産業省大臣官房商務流通審議官迎陽一君、経済産業省経済産業政策局長北畑隆生君、国土交通省大臣官房総括審議官榊正剛君、環境省大臣官房審議官寺田達志君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

金田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。原口一博君。

原口委員 民主党の原口一博でございます。

 まず、谷垣大臣に、財政問題について議論をしたいと思います。

 昨日ですか、財政制度審議会財政制度分科会の歳出合理化部会、財政構造改革部会合同部会ということで、試算が出されています。私たちは、今の日本の財政の状況、特に財政赤字の現状、財政審の試算について、きょうその一部をこうやってパネルに持ってきました。一つ一つの前提を見てもそんなに厳しい前提を置いたわけではないですが、今回の試算における一般会計歳出の姿とすると、かなりクリティカルな事実を、これは単純に試算をしただけだと言われればそのとおりかもわかりませんが、大きな一つの示唆が出ています。

 そこで、大臣に基本的なお考えを伺いたいんですが、財政試算についての概要及びその具体的な前提、考え方がどういうものだったのか。それから、試算では今申し上げたように大変厳しい数値が出ておりますが、財政赤字は発散する一方ではないのか、財政再建に向けて具体的にどのような取り組みを行おうとされているのか。

 以上、大きく分けて二つについて、基本的な認識をお伺いしたいと思います。

谷垣国務大臣 今、原口委員が引いていただきました試算は、おっしゃいましたように財政制度等審議会で、今建議案をつくるということで審議をしていただいておりますが、その審議の参考資料として起草検討委員から提出されたものでございます。

 それで、この試算の性質は、これから高齢化が進展していけば当然その社会保障に係る費用は大きく伸びていく、そういうようなことを幾つか一定の前提を置いて、十年後一般会計の姿はどういうことになるのかという、機械的に算出したものであるというふうに承知しております。

 つまり、今の財政構造というのを前提として、何らの改善策を講じずに放置するとした場合に、十年後、二〇一四年度ですが、一般会計の基礎的財政収支の赤字がさらに拡大していくということを示しておりまして、これは、「改革と展望」などで示されたいろんな改革を着実に進めていかないとこういうふうになってしまうという警鐘を鳴らしているんじゃないかというふうに思っております。

 今後、今までも内閣府の試算であるとか財務省としても後年度試算というようなものを出しておりますけれども、こういう財政審で出していただいた試案も材料の一つとしながら、歳出歳入両面からの財政構造改革に向けた議論を深めていくという材料に使っていけるのではないかと思っております。

 そこで、結局、発散するばかりじゃないか、どういうふうにやっていくんだということでありますけれども、先ほども申しましたように、ほっておけばこういう姿になっていくわけですから、我々はこれを克服する努力をしなければならないわけですが、大変大きな課題でございますから大きく申し上げますと、一つは、民需主導の持続的な成長をもたらすような構造改革を推進するというのがまず大前提としてなきゃいけないと思います。それから二番目に、そういうことを前提として、あらゆる歳出について厳しく縮減を図るということですね。それから三番目に、歳入面の改革を進めながら歳入を確保していく構造をどうやってつくっていくかという議論を進めていかなければならないんだろうというふうに思っております。

 ちょっと極めて漠としたお答えで、もっと細かく言えということかもしれませんが、差し当たってこのくらいで。

原口委員 私は、今、もう現在でも、歳入構造改革に思い切って踏み込まないと、この財政赤字の発散というのはとめられないと思います。八年前に財政構造改革法のときに審議をしましたが、あのときにも同じようなパースペクトを出されました。そのときの最悪のラインをもう超えていて、そしてまさにこれは名目経済成長率を二・〇%と置いてみたり、あるいはCPIの上昇率を一・〇%で置いてみたり、賃金上昇率を二・一%。これは、私たちが経済に期待するパフォーマンスからすると相当控え目なものですが、この控え目なものの数字の中でこういう試算が出てきておりまして、平成十五年度当初では、新規債それから借換債も含めて約百四十兆円の国債を回していかなきゃいけない。あるいは、平成十六年度には百六十兆円、そして平成二十年度には二百兆円を超える国債の借換債も含めてでございますが発行をしなきゃいけない。

 こういう状況の中で、では一体だれがこのボンドのマーケット、国債を引き受けると思っていらっしゃるのか。今、三つのことをおっしゃいましたけれども、私は、歳入の構造改革が一番最初に来るんじゃないか。歳出構造ももちろん変えなきゃいけない。しかし、橋本財政構造改革法のときに私たちが学んだのは、単なる歳出カットだけをやってしまって歳入の構造改革に踏み込まないとかえって財政赤字が拡大してしまうということを、あのときも随分主張してきたわけですが、三つ並べられた優先順位が、歳入の構造改革に思い切って踏み込むんだ、そういう決意をお示しになるべきではないか。

 そして、税収の弾性値も、今回の試算で幾らでとっていらっしゃるのか。税収はどれぐらい上がっていくというふうに見ておられて試算が出てきているのか。

 その辺について、二点、またお伺いしたいと思います。

谷垣国務大臣 歳入構造の改革からまず進めるべきではないかという御趣旨。実は、私も財務大臣、今度二年目に入りまして、一年目のときには、まず歳出を徹底的に抑制するという方面を強調しておりましたけれども、二年目に入りまして、歳出歳入両面からバランスのとれた改革が必要であるというふうに、少し今の原口委員のお考えにあるいは近づいたのではないかと思っておりますが。

 こういうふうに申しておりましたのは、まずやはり最初に歳入構造の改革、場合によると税を上げてお金が入ってくるぞということになりますと、どうしても歳出構造に対するメスが入りにくいということがございますので、私は、孫悟空の頭にかかった輪だと言っておりますけれども、ああいうのでやはりきりきり締めていくことも歳出構造を変えていく上では必要だったのではないかと思います。しかし、どうしても高齢化等で社会保障等が膨らんでいく中で、歳出カットだけでは全体の財政構造もゆがんでしまうし、それだけでは財政構造を変えていくということができないということから、歳入歳出両面にわたってという表現にしたわけでございます。

 したがいまして、もちろん、これをどう議論していくかは今までも委員会でたびたび御答弁申し上げておりますけれども、まず、所得税構造というものを見直さなければならないと思っておりますし、それから先に消費税も含めて全体の体系を見直していくという作業に取り組まなければならないと思っておりますが、こういう試算も受けまして、もう少しその辺も我々は明確にしながら進んでいきたいと思っております。

 あと、この試算の前提となる数字につきましては、事務方から答弁をさせます。

勝政府参考人 お答えをいたします。

 税収につきましては、名目成長率掛ける弾性値は、一・一を使っております。

原口委員 いつもこういう試算をされるときは税収弾性値を今お答えのように一・一で計算をされるんですが、じゃ、実質どうだったのか。十年平均の弾性値をとってみると、マイナスの二・二五ですよね。それから、十五年平均でもやはりマイナスであって、税収はこのトレンドを見てみてもふえてはいないんですね。その中でこういう試算をしている。

 私は、単にパースペクトを出せばいいという話でなくて、そこに向けてどう努力をするかということが政治に問われているというふうに思います。ですから、今大臣が御答弁なさったように、歳出構造だけをいじっていたのでは、やはり財政の姿をゆがめてしまう。今すぐにでも歳入の構造改革に具体的に、タブーを設けずに取り組んでいくべきである、私はこのように考えるんですが、大臣の基本的なお考えをお尋ね申し上げます。

谷垣国務大臣 基本的に原口委員のお考えになっていることと、私、違うことを考えているわけではございません。

 確かに、小泉内閣のもとで、小泉総理が自分の任期中は消費税を上げないとおっしゃっているのは事実でございますけれども、議論は差し支えないとおっしゃっている。この考え方は、先ほど申し上げたように、まず、入りの方からだけやってはいかぬというお考えだったと思います。それで、入りの方もそろそろ議論をしなきゃならなくなったということで、今年度、来年度では所得税体系をよく議論して、そちらの面での改革をしていきたい。これは、三位一体の改革で税源移譲を地方にどうしていくかという論点もございますし、また社会保障との関係で基礎年金をどうしていくかという議論との絡みもございます。

 そういう中で、まずそこから入って、平成十九年度を目途に、いろいろな財政需要、どのぐらいの水準のものが必要かということを見据えながら、消費税も含んだ税制体系を議論していきたい、このように考えております。

原口委員 私はもう、議論のときではなくて実行のときであると思います。この財政赤字が中長期的に経済成長の阻害要因となることは確実で、しかもそれは、かなり昔から指摘をされながら、歳入の構造改革にだれも踏み込めないという形が進んできたわけです。ですから、さっきの大臣のお言葉をかりれば、孫悟空の輪っか、この輪っかはだれにはめるべきかということも大体もう見えてきたんではないかというふうに思います。タブーをつくらないということだと思います。

 今後も、先ほど申し上げたように、国債の大量発行が続きます。では、一体ボンドマーケットは大丈夫なのか。これは伊藤大臣のところにも関連をしますが、地域の金融機関は随分国債を持っています。あるいは、日銀の国債保有率も非常に高い。あれは速水総裁のときですか、お尋ねをしまして、一年間に何回か、長期金利が一日のうちで一%上がるというようなことがございまして、果たして長期金利が上昇トレンドに入ったときに、一%上がったら日銀のバランスシートはどうなりますかということをお尋ねしました。そうしたら、速水総裁でしたか、約一兆円毀損するであろうと。たしか、谷口副大臣がそのとき補完するお答えをしていただいたと思います。

 事ほどさように、まさに私たちの経済とこの財政赤字の問題はリンクをして密接にかかわっているところであって、今後も国債発行が大量に続く、郵政民営化も検討されている。民間にじゃぶじゃぶにお金があって、まさに岩國先生御指摘のように、お金が失業している状況の中で、また民間にお金を持ってくる。一体、この私たちの国債の購入主体、これをどのように多様化されようというのか。これだけの大きなマスをだれが引き取ろうというのか。その辺についての基本的な認識をお伺いします。

谷垣国務大臣 今原口委員がおっしゃいましたように、これからも、国債の大量発行、借換債等ございますから、大量発行を続けざるを得ない状況だろうと思います。

 そこで、市場は大丈夫なのかということでありますが、私は繰り返し申し上げておりますが、まず大前提として、財政構造改革を推進していく、やはりこういう姿勢をきちっと示していく、そうして国債に対する信認を確保していくというのが、イロハのイといいますか、基本中の基本であろうと思います。

 こういう観点から、平成十七年度、来年度予算編成に当たりましても、国債発行額を十六年度より減額するということを目標に掲げているということでございます。それが大前提でございますが、その上で、昨年の暮れに、国債管理政策、新たなものを発表いたしました。基本的な考え方は、中長期的な調達コストを抑制しながら確実かつ円滑な消化を図るというのが基本的な考え方でございますが、その際に、今おっしゃったように、我が国では金融機関が保有している割合が非常に高い状況でございますから、安定消化を考えていくためには、保有主体を多様化していくということをどうしても考えていかなきゃならないんだろうと思います。

 こういう観点から、今後とも、金融機関にはある程度持っていただくという状況が続くと思いますけれども、従来、保有割合が相対的に低い、個人であるとか、あるいは海外部門等の保有の促進に努めていく必要があると思います。そういう点、個人国債等も今努力をしてやっているところでございます。

 それから、郵政民営化に関して、確かに郵政事業というものが、これだけ膨大な国債を発行するとき、これを安定的に消化する基本的な、インフラと言っていいかどうかわかりませんが、そういう大きな役割を果たしてきてもらったということはもう紛れもない事実でございます。

 したがいまして、我々としても、おかしなプロセスをたどりますとマーケットに不測の影響があるということを非常に危惧しておりますけれども、先般閣議決定されました「郵政民営化の基本方針」の中でも、この点については、「移行期のあり方」として、「国債市場への影響を考慮した適切な資産運用を行う」、それから、「大量の国債を保有していることを踏まえ、市場関係者の予測可能性を高めるため、適切な配慮を行う。」というふうに記述されまして、具体的な姿はこれから詰めていくわけですけれども、この基本線に従って、国債マーケットに不測の影響のないような形に持っていかなければならないと思っております。

原口委員 今大臣、多様化の御答弁をいただきましたが、実質は、銀行、民間保険会社、企業年金等で持っているのは三三・七%もあります。これは平成十六年度の数字ですが、家計は二・六、海外は三・七ですから、多様化したところで、国債に対する信頼というものが上がらなければ、それを持つ人はどこにもいないわけです。

 それで、今、民営化の基本方針についてもお話しになりましたが、不思議な基本方針だなと思います。基本的な考え方の後に将来の姿があって、一番私たちが知りたい移行期間についてはほとんど触れられていない。きょう民営化の話をする余裕はありませんが、まさにたらいの中に大きな鯨を入れるようなもので、もともとできないことを、金融的にできないようなことをどのように説明されるのか、これはまた後の議論に譲っていきたいと思います。

 ここに、政策コスト分析というものを持ってきました。これは財政投融資対象事業に関する政策コスト分析、平成十六年度版、この後金融の議論をいたしますが、これはだれが書いたのかなと思うと、いわゆる財投の先、つまりそれぞれの特殊法人が自分らでコスト分析をしているものですね。私はこういうものが出てくるということは大事なことだと思いますが、これを一歩進めて、貸し手である、つまり国民の側が、銀行だってそうですね。自分らの自己査定でそれで済むわけがない。貸し手がちゃんとデューデリをして査定をして、どのようになるかということが一番大事であって、ぜひこれは大臣に、御決意だけで結構ですが、借り手である財投機関の自己申告というような政策コスト分析だけでなくて、貸し手責任を果たせるようなコスト、それは財務省に全部やってくださいというようなことを言っているわけではありません。しかし、国民の側からすると、これを一個一個、私も今埼玉県知事をしている上田さんとずっと見てきましたけれども、これをつぶさに見てみると、もうほとんど返せませんねとか、あるいは需要予測が本当にこんな予測ですかなんというのがいっぱいあります。ぜひ、貸し手の責任として、財政をつかさどる財務大臣が、自分たちもみずからこの問題について積極的に、財務諸表をもっともっと公正に透明にそして説明責任のつくものにしていく、そういう御決意を伺いたいと思います。

谷垣国務大臣 政策コスト分析は平成十一年に導入されまして、今お示しいただいたようなパンフレットにまとめられているわけですけれども、どうも財投機関の言い値で書いているんじゃないかという御指摘だったと思います。

 どうしても、分析するときの前提条件が、財投機関のみが有する基礎的データを用いたりする場合が多いわけでございますので、将来金利といった共通前提を除きますと、当該財投機関がまずつくってもらうのが一番ぐあいがよいということがその背景にございます。

 ただ、これをやはり、言い値といいますか、信頼性の低いものであっては意味がありませんので、前提条件といったようなことは政策コスト分析の結果とともに公表して、分析の透明性の向上に努めておりますし、今後とも、どうやったら分析手法というものを高めていくことができるか、透明性を高めていくことができるか、多くの方に利用していただいて多様な議論を、御批判も浴びることができるかというような点についてはさらに工夫をしてまいりたい、こう思っております。

原口委員 国民の大切なお金を預かっている、その預かり手としての責任を果たしていくことが必要であるということを述べて、財政の質問を終わりたいと思います。

 さてそこで、先ほど理事会でも聴取をさせていただきましたが、経済産業省とそれから産業再生機構、ダイエーに関する産業再生機構のさまざまな経緯について、きょう経済産業省も来ていただいておりますが、聴取をした結果なんですが、なかなかわからないことがありましたので、理事会は基本的にクローズドですから、重なるところもあると思いますが、幾つか事実関係を確認したいと思いますので、これは事務方で結構でございます。

 皆さんから経緯については出していただきまして、ありがとうございました。十月八日、機構が六日付でダイエーあてに通告している文書及び再生機構などの各種の報道を受けて、北畑局長から産業再生機構斉藤社長に改めて電話し前日と同趣旨の問題を指摘したと、皆さんの、経済産業省からいただいたペーパーには書いてありますが、このメモややりとりの録音はございますか、まずお伺いいたします。

北畑政府参考人 電話でやりとりをいたしましたので、メモも録音も残っておりません。録音をとるようなことはふだんからいたしておりません。

原口委員 機構が期限として通告した十二日を延長した、延長するように求めたというふうに聞いておりますが、これは事実ですね。

北畑政府参考人 七日と八日両日、斉藤社長に電話をいたしました。その中で斉藤社長に対しまして、民間の資産査定と機構の資産査定が当時並行して開始されておりまして、民間の査定作業があと十日ほどで終わる、こういう状況でございましたので、機構としてこれを見守れないのか、つまり民間の入札期限である十月の十八日の結果が出るまで待てないか、こういう趣旨の発言をしたと記憶をいたしております。

原口委員 ありがとうございます。

 北畑局長や迎審議官が個別名、例えばウォルマートあるいは丸紅、イオンなどという個別企業名を挙げて機構にさまざまな要請をされたということはございますか。

北畑政府参考人 私は、九月二日に斉藤社長とお会いをして、ダイエーをめぐる問題について、どういうふうに着地すべきかということで意見交換を行いました。これは、お互いいろいろな立場がございますので、議事録もつくらないという前提で自由に議論をしたわけでございます。

 その中で、私の方からはダイエーの民間入札に参加をしている企業の具体的な名前を申し上げまして、それに対して斉藤社長のコメントをちょうだいいたしました。斉藤社長からは、機構の方で、仮に将来ダイエーが機構に来た場合に、それについてスポンサーとして名を挙げたいという関心企業について、これも具体的な企業名を挙げて斉藤社長の方からお話がございまして、それについて私の方からコメントをしたという経緯はございます。

原口委員 コメントをなさったという事実、それはどんなコメントですか。例えば、イオンというのは、これは我が党の岡田代表の親族が経営をされている会社で、自由民主党さんの今大臣である村上大臣も御親戚になるらしくて、村上大臣はイオンだから云々というお話をされたんでしょうか。全く関係のないことだと思うんですが、いかがでございましょうか。

北畑政府参考人 今、当時の記憶を思い出しますけれども、さまざまな議論をいたしました。斉藤社長との前提は、それはお互いに自由に議論をするということでございまして、議事録をつくらず、他に口外しないという前提での議論だったと思います。

 さまざまな企業について、具体的な名前を挙げてお互いのコメントをいたしましたけれども、具体的な企業名とそのコメントの内容につきましては差し控えさせていただきたいと存じます。

原口委員 そうすると、村上はイオンで、イオンは民主党だからけしからぬと言われたこともあるわけですか。

北畑政府参考人 そのようなことを申し上げた記憶はございません。

原口委員 記憶をよみがえらせていただきたいんです。

 村上大臣の名誉のために申し上げますが、民主党とは何の関係もございませんし、個別の企業のために、村上大臣がさまざまな判断をゆがめるような大臣ではない、他党でございますが、そういう大臣であるというふうに思っておりますが、御認識はいかがですか。

北畑政府参考人 私が斉藤社長と議論いたしましたのは九月の二日でございまして、村上大臣御就任の前のことでございまして、御指摘のようなことを発言したことはございません。

原口委員 私は就任の後の話をしておりまして、先ほど記憶をよみがえらせていただきたいということをお願いしたのは、まさにそういう事情があるからでございます。

 経済産業省に高木委員長の辞任届が届いていると、これは先日、我が党の中塚委員が配付をされた資料によっても明らかだと思いますが、局長はこれに目を通されましたか。

北畑政府参考人 高木委員長の辞任届につきましては、十月の九日の午前、その時点のもののコピーが機構の担当官から私どもの担当あてにファクスされてきたという事実はございます。そのファクスについては私も目を通しております。

 ただ、これは正式の辞任届ということではないと理解をいたしております。

原口委員 理事会に御出席なさっていた方は、理事会でお話しになったことと今のところが、必ずしも整合性がとれているかと疑問に思われる方もいらっしゃると思います。

 続いて質問をいたしますが、中川大臣、斉藤社長会談に局長は同席をしておられますね。この会談で、経済産業省は、先ほどお話しになったように、期限を延ばすと。

 私は、産業再生機構というのは一体何のためにできたものか、そして私たちは産業再生機構にどういう姿勢で臨めばいいのか、まさに我が国の金融経済の根幹にかかわる問題なので、このことについてお尋ねをしていますが。

 産業再生機構にお伺いいたします。産業再生機構の意義と法的な位置づけは何ですか。

藤岡政府参考人 お答え申し上げます。

 産業再生機構は、表裏一体の関係にございます産業再生と金融再生を、同時にかつスピード感をもって進めるために設立された機構でございます。

 機構の意義でございますが、公正かつ中立的な立場で、民間だけでは困難な案件に取り組むとともに、事業再生の新たなモデルを提示することによって、不良債権の処理と事業の再構築に貢献するということであると認識してございます。

 機構の法的位置づけでございますが、株式会社産業再生機構法に基づきまして、主務大臣の認可により設立いたします株式会社でございまして、主務大臣は、内閣総理大臣、財務大臣、経済産業大臣でございます。主務大臣は、設立の認可等の一般的な監督を行うとともに、個別の案件につきまして、機構が支援決定等を行うかどうかを決定する際に意見を述べることができるということとされてございます。

 以上でございます。

原口委員 ありがとうございます。

 今の趣旨からすると、機構が支援を決定するかどうかについて意見を述べるというふうに書いてあって、機構については、後で質問しますRCCと違ってちょっと複雑なんですよね。RCCは、預金保険機構の一〇〇%出資の子会社であり、金融庁、金融担当大臣のコントロール、さまざまな主管というのが書かれていますが、今の御答弁のように、再生機構は三人の主任大臣、特に総理がいらして、そしてここにいらっしゃる伊藤大臣は総理のいわゆる金融関係のところを委任されている。そして、先ほどお話をした村上大臣はまさに総理を補佐する、そしてこの産業再生に専ら当たる、そういうお役割だというふうに思います。

 そこで、ここでなぜこんな質問をするかというと、さまざまな再生案件に他省庁からその任を越えて圧力がかかるということになれば、適正なデューデリもできないだろうし、適正な産業再生もできないんじゃないか、そのことを危惧するから質問をしておるわけでございます。

 活動の基本方針、産業再生機構はどのような活動の基本方針を立てていらっしゃいますか。

藤岡政府参考人 産業再生機構におけます事業再生のあり方でございますが、基本的には民間主体で進むことが望ましいということが大前提でございます。

 しかしながら、企業が運営困難な事態に陥りますと債務超過に陥りまして、そういたしました場合に、主力行と非主力行、いわゆるメーンバンクとノンメーンバンク間、金融機関の間での利害調整が非常に困難な場合もございますし、また、現実問題といたしまして、我が国の事業再生に関する市場もまだ十分発達してございません。また、異なる銀行間にまたがります事業再生になりますと、かなり民間では現実的に難しい問題も多くございます。ということで、機構は、民間主体では進みにくい部分を補完し、市場が本来の機能を発揮できるようにしていくという役割を果たしてございます。

 機構が、事業再生のモデルを民間に提示いたしますとともに、これまでの活動を通じまして蓄積された知見あるいはノウハウ等を積極的に民間の市場に還元するということによりまして、我が国の事業再生を担う人材や新しい仕組みと申しますものをつくり育てていくということに貢献しているというふうに理解をしてございます。

 以上でございます。

原口委員 基本方針でうたわれているのは、中立性、公平性なんですね。これはまさに小泉構造改革の中核の部分であって、なぜ株式会社にしたのか、なぜ委員会方式にしなかったのか、そして、なぜこの中立性、公平性を前面に出しているか。

 法律を一文一文読んでみますと、株式会社産業再生機構法の十三条、ここでみなし公務員としてのさまざまな守秘義務ですとか、公平性、中立性を機構に求める、そのことを条文の中に明記してある、私はそのように理解をしていますが、この理解でよろしいですか。

藤岡政府参考人 おっしゃるとおりでございます。

原口委員 きょうは、お二人の主任大臣というか、伊藤大臣は総理の権能をまさに委任されてという形でございます、お二人、財務大臣それから金融担当大臣に、この産業再生機構のいわゆる我が国の経済再生における位置づけ、そして皆さんの役割、それぞれの大臣がどういうことをつかさどっているかということについて、基本的なお考えをお伺いします。

谷垣国務大臣 機構の基本的な役割は、先ほど室長から御答弁があったとおりでございまして、やはり産業再生とそれから金融再生を表裏の関係としてやっていこう、それは本来、民間で進められるならそれが望ましいけれども、なかなか民間だけでは進まない、調整も難しいところがあった、したがって、これをどう表現していいかは難しいんですが、準国家機関的という面と民間的な面をあわせ持ったこの機構に推進役になってもらおうということであったと思います。

 そこで、私も主務大臣の一人でございますが、私が主務大臣として果たすべき役割は、この機構が最後に締めたときに、いわば債務超過になっておりますと、それは政府保証がついている形、最後は国庫で補てんしなければならないわけでありますから、産業再生というようなリスクの多い仕事をやりますときにある程度リスクを引き受けるということも必要かもしれないとは思いますけれども、国民負担が過大なものになっていくのはやはり阻止しなければいけない、それをチェックするのが、国庫大臣である私が主務大臣になっている意味であろうと思っております。

伊藤国務大臣 今、室長やあるいは谷垣大臣からもお話がございましたように、バブル崩壊後、負の遺産の重みというものが経済再生をしていくに当たって大変大きな課題になっておりました。そうした中で、民間の力だけで金融と産業の一体的再生というものを実現していくことがなかなか難しい。そうした中で、市場規律というものを大切にしながら、公の役割としての産業再生機構というものが設立されたというふうに考えております。

 その中で、先ほど来原口委員から指摘をされているように、中立性、公平性というのは大変重要な視点でありまして、こうした観点の中から判断が適正に行われているというものと私自身は考えております。したがって、機構の独立性というものを尊重して私どもとしても対応していかなければならないものだというふうに考えております。

原口委員 今まさに私が問題としているのは、両大臣がお答えになりましたように、この機構がパフォーマンスが悪ければまさに国民負担が生じる、それを財政でもって補てんをしなきゃいけない。また、伊藤大臣がお話しになりましたように、これはよそから介入を受けるようなものではないわけです。

 それで、機構にもう一回お伺いしますが、本件、つまりダイエーの件について、事業者と金融機関からの要請があって、そしてデューデリ、つまり資産査定を開始した、そしてもう十二日には資産査定の中途であったというふうに考えてよろしいですか。民間の受け手があろうがなかろうが、デューデリにはお金がかかるわけで、まさにその事実関係をお伺いしたいと思います。

藤岡政府参考人 恐縮でございますが、個別の案件についてはコメントを差し控えさせていただきたいと思います。

 ただ、一般論で申し上げますと、個別の案件におきまして機構を活用するかどうかにつきましては、個々の事業者と金融機関において判断されるべき問題でございます。機構が資産査定を行うに当たっても、そうした民間当事者間の判断が前提になります。

 以上でございます。

原口委員 それはちょっとよくわからないんですが、個別の案件については答えられない、そして、機構がデューデリを行うのは民間機関からの申し出によるものだ、今そういうふうにお答えになりましたか。

藤岡政府参考人 個別の案件についてはお答えできません。

 と申しますのは、機構が担当することにつきましては守秘義務がかかってございます。そういう事情がございますので、よろしく御理解願いたいと思います。

 ただ、査定行為、資産査定の行為をするに当たりましては、申し上げましたのは、個々の事業者と金融機関において判断されるべき、判断されたということが前提になっておるということでございます。

原口委員 守秘義務が、こういう国会に対しての説明責任を遂げないということではありません。ですから、前段についてはなかなか納得をしませんが、後段については、まさに要請があったからこそ資産査定が進んでいた。こういう資産査定が進んでいる中で、まさに権能のない人たちが期限を決めて、それを延ばせの、あるいは待てのと言うのは、私はどういうふうに判断したらいいのか。いや、それは単なる行政間のさまざまな意見の交換であると見るのか、あるいはこれを介入と見るのか、これによって大きく違うわけです。

 どのように理解をすればいいのか、機構のお答えを伺いたいと思います。

藤岡政府参考人 関係府省におきましては、その所掌事務を遂行するために、必要に応じてそれぞれの立場から検討が行われておるということと理解してございます。

 政府といたしましては、事業者と金融機関等の検討状況を見守りつつ、個別の案件への対応に関しては再生機構の判断を尊重するという統一した立場で対処してきたところでございます。私どもも、そうした立場から対処、検討されているものと理解してございます。

原口委員 お一人の方にお伺いするのは酷かもわかりませんが、そこで疑義があるから伺っているわけです。

 機構の判断を尊重して、つまり、業務改善命令に対する改善計画の提出日なんというのも、これもすぐれて金融機関にとっては大事なもので、それが延ばせるんだったら、それは借り手からすれば、金融機関からすると、延ばせたらそんないいことはない。この期限の問題というのはかなり大きな問題で、それを延ばせるか延ばせないかというのは、業務のまさに本質にかかわる問題ではないかというふうに考えているから質問をしているわけです。

 一般論で結構ですから、期限の問題は業務の本質にかかわるものですか、私の理解で正しいですか。

藤岡政府参考人 今般機構が提示いたしました十二日という期限の問題は、機構の機能から見て、これは機構側からの説明なんでございますが、ぎりぎりの日程だったというふうに理解してございます。

 いずれにいたしましても、今回、最終的には個々の事業者と金融機関において判断されて、現在機構との話し合いが進んでおるものと理解してございます。

原口委員 もう一回質問をいたします。

 期限の設定というのは、これはたしかこの機構法の二十三条で、資産買い取りの期限が決まっていますよね、来年の三月三十一日でしたか。その中で国策としてのさまざまなオペレーションが進んでいる中で、今はもう十一月ですよね。この期限の設定というのは業務の根幹にかかわることだと私は理解をしているんですが、それはいかがですか。

藤岡政府参考人 業務にとって非常に重要なことだというふうに理解してございます。

原口委員 今そういうお答えをいただきました。大臣からもお伺いしておきたいと思います。

 直接の、何か報道によると、取っ組み合いがあったとかだれかが仲裁したとか、そんなお話がありますが、まさに、まあ小泉内閣というのはそういう内閣ではないと思いますので、総理はよく、質問をすると、そんな質問するなとかおっしゃいますが、そんなことはなかったんだろうと思います。

 ただ、各省間の縄張りや、あるいは銀行のさまざまな今までの古いしがらみの中で、産業再生というのがうまくいかなかった、だからそれを超えるものをつくる。私たちには、民主党は民主党の意見がありました。果たしてその中で、恣意的に生き残る企業が出てみたりあるいは逆に大変厳しいことになるということが、官の手によってさまざまな裁量の中に落ち込むことはどうだろうかという議論もしてきたわけですが、少なくとも、この期間については業務の根幹である。そこでの中立性を国会がしっかりと担保されているのかされていないのかということを質疑の中で明らかにすることは大事なことだと思います。

 そこで、両大臣にお伺いしますが、さまざまな業務の中立性を担保する上で期限を切る、デューデリの中でも期限を切るということはどのようなものなのか、御認識をお伺いしたい。業務の根幹にかかわるものだという今御答弁がありましたけれども、伊藤大臣、金融担当としてそれでよろしいでしょうか。

伊藤国務大臣 今、室長からお話があったとおりだというふうに私も考えております。

原口委員 とすると、まさにその業務の根幹にかかわるところに経済産業省の方が介入をされている疑いが高まったわけでございます。

 私たちが機構とつるんで反政府運動をしようとしているとかさまざまな雑音が入ってきますが、そんなつもりは全くありません。産業再生が恣意的に行われない、そして先ほど谷垣大臣がお話しになったように、まさに、新たな国民負担が発生しない、金融機関側からすると一刻も早くバランスシートをきれいにして、そして当該企業がまたもとの輝きを取り戻す、このために質疑をしておりますので、あらぬ政治的な動きが耳に入るというのは非常に不愉快千万でございます。

 また、これは理事会でも協議を今進めていますが、ぜひ機構の社長それから委員長を呼んで、そして、私の手元には辞任届と言われるようなものまで出てきていてかなり混乱が見えますので、委員長に再度お願いしますが、本委員会に機構の社長それから委員長をお招きいただきますように要請をいたします。

金田委員長 理事会で協議させていただきます。

原口委員 ありがとうございます。

 委員長のお言葉をいただいたところで、次の質疑に入りたいと思います。

 RCCです。これは、私は、この委員会でも予算委員会でも何回も、RCCに対する検査、これに入るべきだということを申し上げてきました。そして、不適切な回収事案、まさにRCCはやみと結ばない、あるいはRCCは国民負担を極小化する、そういう原則をお立てになっていましたが、私が予算委員会や当委員会で指摘をしてきたことは、まさにやみの手口と似たようなことをなさっていたということでございまして、この不適切な回収事案の責任をとる形で、もとの社長は御辞任をなさいました。これで体質が変わるのかなというふうに期待をしておりました。

 産業再生機構には一定の期限が区切ってありますが、RCCにはそれがございません。また、今回ようやくと申しますか、金融庁はRCCに検査に入り、そしてその中で不祥事がまた見つかる、こういうことがどうして起こるのか。国策会社として本当にRCCというものそのものが存在する価値があるのか。民間のサービサーやファンドがもう出てくる中で、一体どういうことが行われているのか。

 伊藤大臣、RCCの今回の検査、そしてこれも業務改善命令を出されておられると思いますが、その内容について概要をお尋ねいたします。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 委員から御指摘のございましたように、RCCに対しましては、本年の七月に私どもの検査結果及び銀行法第二十四条第一項に基づく不祥事件及び検査結果にかかわる報告にかんがみまして、八月三十一日に業務改善命令を発出し、そして九月三十日にRCCより同命令を踏まえた業務改善計画の概要等について公表がなされたところであります。

 コンプライアンスの確保に関しましては、組織の最高機関である取締役会がコンプライアンス体制や事務リスク管理体制の改善に向けて率先して取り組んでいかなければならないわけでありますが、RCCにおいてはかかる姿勢が不十分であると判断したことから、今般の行政処分を発出するに至ったところでございます。

 また、RCCからは、取締役会の取り組み姿勢が不十分であったことに関しまして、債権回収業務及び企業再生等の機能拡充業務に軸足を置いた業務運営を行ってきたことから、結果として法令等遵守及び事務リスク管理に関する取り組み等に対する各取締役の問題意識が不十分であった旨の報告を受けているところであります。

 公的役割を担っているRCCにおいてこのような行政処分を受けるに至ったことは、まことに遺憾なことであるというふうに考えております。

 RCCにおいては、業務改善命令に基づいて業務改善計画が提出をされているところでございますけれども、ここの中に掲げられた改善策、改善に向けた諸施策を早期かつ着実に実行していくことが大変重要であるというふうに考えておりまして、私どもといたしましても、その実施状況について適切にフォローアップをしていきたいと考えております。

原口委員 今お読みになりましたけれども、本当にそうですか。債権回収に全力を挙げて国民負担を極小化しようとしていて、法令遵守については少し力が抜けていた、本当ですか。

 実際に、この福岡の不祥事事件は、十一月四日の報道によると、当該の職員は逮捕される。これは債務者から集金した現金を二千七百万円横領しているんですよ。どうしてこんなことが気づかれないんですか。

 これは二千七百万だけではありません。法令遵守体制云々の話でなくて、本当に債権の管理がどのようになっているんだろうか。債権の管理会社についてもリストを出してください、金融庁は出していただきました。債権の管理会社がどのようなことをやっているか、もう一回よく調べてください。私が調査をした中では、自己競落、管理会社が自分の子会社に自己競落をして、それこそ安く買い取った不良債権を高く売れればこんないい商売はないわけです。

 今、再生ファンド、たくさんの人たちがここのビジネスに参入してきている。その中で、まさに国策会社たるRCCの管理会社が自己競落あるいは任意契約をばんばん繰り返す。そして、まじめに働いている人たちは、それこそ有無を言わさず息の根をとめられる。こんなことがあってはならないと思います。私は、何回もこれまで金融庁に銀行法に基づく検査に入ってくださいということを言いながら、こういうことが起こるということは極めて遺憾である。

 伊藤大臣、先ほど御答弁いただきましたが、今私が申し上げたような問題意識、また進まないからここで取り上げて、そしてそこの部分だけが逮捕されるなり告発されるなりするというイタチごっこみたいなことを私も続けたくありません。ぜひ、この国策会社、本当にこのまま続けるのがいいのか、それとももうそろそろ別のフェーズに入っているのかも含めて御検討をいただきたい。決意を聞きたいと思います。

伊藤国務大臣 RCCは公的な役割を担っているわけでありますので、今委員が御指摘があったような、RCCの信頼を揺るがすようなことがあってはならないわけであります。したがって、私どもも、検査において委員が御指摘をされた点も含めて検証し、そして問題については業務改善命令を発出させていただくということになりました。そして、これに基づいて業務改善計画というものが提出をされているわけでありますから、私どもとして、この計画がしっかり実施をされているのかどうか、その状況をフォローアップしていきたいというふうに思っております。

 また、随意契約やあるいは自己競売のことについてもお話がございました。これについても明確なルールが決まっております。そのルールどおりに実施をしていかなければいけないわけでありまして、私どももそうした観点から、RCCについて、預金保険機構を通じて、適切にしっかりと管理監督をしていきたいというふうに思っております。

原口委員 そのフォローアップが不十分だから申し上げているわけで、自己競落あるいは競売を不調に終わらせて、そして安く自分の子会社に任意契約する、その一方で、まじめに働いている人たちが泣きを見る、こんなことは絶対に許せないということだけ申し上げて、最後の質問に移りたいと思います。

 平成十六年十月の十三日、有価証券報告書の訂正についてという文書が関東財務局に提出されました。これは、株式会社コクド及び株式会社プリンスホテルが、両者名義でそれぞれ所有している西武鉄道株式のほかに、両者が個別に管理している個人名義株式を実質的に所有していることが判明した、これが理由だとされておりますが、事実関係をお伺いしたいと思います。

伊藤国務大臣 今御指摘がございましたように、西武鉄道等は有価証券報告書の訂正報告書等を財務局に提出をしておりまして、訂正する理由として、個人名義株式の中に関係会社等が実質的に所有する株式が存在していることが判明したためと対外的な説明を行っていると承知をいたしております。

原口委員 両者のいわゆる会社が所有している株式だと言っている中に個人名義の株式があったわけです。私はそのように承知をしています。

 これの報告書を見ると、平成十六年三月期、西武の、株式会社コクド所有の割合、それからその他、十社の合計は、コクドが四三・一六%で合計が六三・六%であったものが、訂正後は六四・八三%、それから十社合計すると八八・五七%となっています。これは本当に、もう一割強の、いわゆるほかの、これ以外の株しかないという中で、本当に市場というのが形成されるのか。不適切な情報開示が市場に与える影響は大きくて、そして投資家の信頼も失墜しかねないゆゆしき事態ではないか。

 また、従来、同社が提出してきた大量保有報告書には、これはたしか平成二年だったと思いますが、法改正の後、名義が欠落していたということになると思います。これは、その投資家の保護のために、先ほど申し上げた、平成二年十二月から導入された、発行済み株式総数に占める保有者株式数の割合が五%を超えるもの、これは五%ルールですね、これに逸脱するもので、市場の透明性、公正から見ても極めて深刻な事態ではないか。そして、なぜこういうことが、きょうは証券等監視委員会の委員長にも来ていただきたいというふうに思っていましたが、事務局長、お見えだと思いますが、なぜ見過ごされてきたのか。

 私たちは、この後の法案の審議でも申し上げますが、日本版のSECをきっちりつくって、投資家の保護、それから受益者の保護、これをやらない限り市場に対する信頼というのは返ってこないんではないかというふうに思いますが、事実関係を伺いたい。

 それから最後に、財務大臣ですが、これだけの個人名義の株式があったということは、そこに配当が生じている可能性もある。配当が生じているということは、税法上の問題も生じているんではないでしょうか。このことについて基本的に、一般論で結構ですから、お尋ねをします。

 そして、証取の、きょうは事務局長ですか、監視委員会の事務局長については、インサイダー取引の要件についてもあわせてお尋ねを申し上げます。

 以上です。

長尾政府参考人 お答えします。

 証券市場の信頼性を確保するために、適切なディスクロージャーあるいは公正な取引の確保というのが行われることは極めて重要だと思っておりまして、私ども監視委員会といたしましても、そうした中で、そういったための調査、証取法違反の犯則調査中心に、日々一生懸命やっているところです。

 それで、御指摘の西武・コクド問題という意味では、恐縮でございますけれども、個別事案に関することなので、これまでの調査の有無を含め、お答えすることは控えさせていただきたいと思います。

 なお、一般論として申し上げれば、監視委員会、この有価証券報告書の虚偽記載についても、仮に法令違反に該当する事実があると疑われる事案については、情報を得た場合には必要に応じて調査を行って、調査を進めた結果、悪質な法令違反が認められれば厳正に対処しているところでございます。

 それと、もう一つ、インサイダーについての御質問だったと思います。インサイダーの制度自体について御質問なので、私がお答えするのが適当かどうかわかりませんが、一般論として申し上げますと、証取法におきまして、百六十六条で、会社関係者等から重要事実の伝達を受けた者が、重要事実を知りながら公表される前にそういう上場株式会社等の株券等の売買等を行うこと、これを違法な取引、インサイダー取引として禁止しているところでございます。

 先ほども言いましたけれども、私ども、常にいろんな形で証券取引、証券市場におけるいろいろな行為に目を光らせておりまして、疑われる場合には必要な調査を行う、こういうことで日々やっているところでございます。

 以上でございます。

谷垣国務大臣 個別の課税関係についてはお答えは差し控えさせていただきます。

 一般論として言えば、課税要件があればきちっと課税するということでございます。

原口委員 もうこれで時間が参りましたので質疑を終わりますが、私は、相対で、市場外で重要事実を秘匿して株の売買を持ちかけているとすれば、これは大変大きなことであるというふうに思います。

 また、今、証券等監視委員会の御答弁は、犯則調査権についても触れられました。今、私たちは、独禁法の改正案、公取にも犯則調査権を渡そうという法律案を、与党さんも我が党も出しています。しかし、これほど大きな権力を与えるのであれば、国会つまり主権者に対するきっちりとした説明責任が必要なはずです。個別の事案だからといって、行政機関が犯則調査権も含めた刑罰を野方図にさまざまなところに適用していっていいというわけではありません。経済における自由、これを守るためには、まさに国会に対する説明責任、国民に対する説明責任をきっちり果たすこと、このことが重要であるということを指摘して、質疑を終えたいと思います。ありがとうございました。

金田委員長 次に、小林憲司君。

小林(憲)委員 民主党の小林憲司でございます。

 本日は、私が春先、一貫して取り上げてきました新生銀行の問題について質問をさせていただきます。すなわち、お手元にお配りしました新聞記事にありますように、新生銀行と株式会社イ・アイ・イ・インターナショナル破産管財人及びイ・アイ・イ関係者との和解金合意に伴う預金保険機構の補償に関する質問をさせていただきたいと思っております。

 新生銀行に対しましては、これまで預金保険機構から瑕疵担保条項により支払われた一兆円近い金額を含めまして、八兆円に及ぶ国民の税金、公的資金が投入されていることは、もう皆様御案内のとおりでございます。これは前回の国会でも、私、予算委員会でたしか四回、決算で一回、あのとき谷垣大臣も伊藤大臣も私の質疑に答弁いただいたと思っておりますので、記憶に新しいと思いますが、いわゆる起承転結と私が言っていたところの、ついに話が結末の部分にやってまいりまして、和解をしたと。和解をして、まず初めは裁判がないから始まって、裁判がある、そして上場に待った、それは待ったできない、上場に問題ないというところからずっと始まったというところを、一さらい今までの経緯を多少御説明させていただきたいと思っております。

 平成十六年二月十九日に、新生銀行の株式は東京証券取引所に上場されました。新生銀行の単一株主であった外資系投資組合は、持ち株の約三分の一を売り出して、何と二千二百億円の売却代金を得たわけでございます。保有全株式の取得コストである株式買い取り代金が十億円、第三者割り当て増資払込金が一千二百億円、合計いたしますと一千二百十億円を差し引いても一千億円の非課税の利益が残るわけでございます。そして、日本において行われたこの新株上場益につき、我が国の国税庁は一銭の課税もできなかったわけでございますが、現在保有している九億一千八百万株はコストゼロという計算になります、数千億の含み利益が残っているのでありますけれども、国民が負担した八兆円の税金を利用してハゲタカファンドと呼ばれる外資だけをもうけさせるような金融行政に対しまして、国民は深い疑念を持っていると思いますが、ここで両大臣にお伺いいたします。

 谷垣大臣におかれましては、前回金曜日の財務金融委員会におきまして、民主党議員の質問に対して、ハゲタカもまあいいんじゃないかなんという容認したような、外資に頼るような発言もございましたので、きょうは席上にハゲタカがいかに詐欺を行ったかという「ハゲタカが嗤った日」という本を一冊ずつお配りいたしましたが、ぜひともその辺を含めましてこのことに対しましての御感想と、そして、伊藤大臣は大変ですね、竹中大臣の後始末をしてこいと、前回は竹中さんがいろいろなことで言ってはぐらかしておられましたが、この問題に対しましての御感想を、小林が言っておりました起承転結が、もう時間を置くごとに明らかになってきたわけでございますが、お答え願えますでしょうか。両大臣、お願いします。

谷垣国務大臣 「ハゲタカが嗤った日」という御本は、質問通告をいただきましてそういう本があるということを承知いたしましたが、中身については、まだちょっと、今届けていただきましたので、ぱらぱらっと見た程度でございます。

伊藤国務大臣 今までの経緯について委員から御説明がございましたけれども、当時、旧長銀の譲渡先の選定につきましては、金融再生委員会において、公的負担の極小化、そして金融システムの安定化、こうした視点から複数の候補先が提示した条件について総合的に検討した結果、譲渡先が決定したものであるというふうに承知をいたしております。

 旧長銀の一連の処理は、金融再生法の趣旨に基づいたものでありますので、当時の当局としては、その定められた枠組みの中で最大限努力したものではないかと考えております。

小林(憲)委員 さて、両大臣から感想を含めましてお伺いをいたしましたが、お手元にお配りしました「ハゲタカが嗤った日」、これは谷垣大臣のお話も、随分、金融再生委員長の時代からずっと出てきます。これに関しましては、私、きょう御質問させていただきますけれども、これをごらんください。これは数週間にわたりまして実はベストセラーのトップでして、既にお読みになった方も多いと存じますが、この本を、まず百五十一ページを開いてみてください。ここに大変わかりやすい図が出ておりまして、いかに日本の国が詐欺事件に遭ったかという、金融詐欺事件の図が出ております。ぜひともお忙しい先生はまずこの図だけでもごらんください。

 そしてまた、さらにお忙しい先生は、百三十五ページから百八十三ページまで、ここに八兆円も国民の税金を使って長期信用銀行の損の穴を埋めさせたことについて書いてあります。そしてまた、瑕疵担保条項について、日本政府のアドバイザーはゴールドマン・サックス社であったこと、そしてまた、日本政府が国民の税金を使用し、日本の財政に大きな損害を与えることを承知の上で、他にも長期信用銀行を買い取りたいという会社が七、八社あったのに、リップルウッドに限って有利な取り扱いをしたいきさつなどが、これは民主党の諸先輩方が大変まじめにこの質問に取り組んでおりますので、この本の中にも浅尾慶一郎、仙谷由人、生方幸夫、五十嵐文彦、中津川博郷、石田勝之諸先輩議員の質疑応答も書かれております。そして、日本政府のアドバイザーについてゴールドマン・サックス社を任命したいきさつ、これもどうしてそうなったのかというところで、谷垣大臣がこれは答えられないという答弁をされていたり、柳澤大臣が、当時、時期が来たらお話をしてもいいと思うというように書いてあります。

 さて、いよいよ時期ではないでしょうか、谷垣大臣。このゴールドマン・サックス社を任命したいきさつ、FA契約の内容などについて、谷垣財務大臣から御説明をいただけたらと思います。

谷垣国務大臣 私は、契約を締結した当時の担当大臣でもございませんし、また、現在の職責もそれをお答えする立場にはございませんので、このぐらいの御答弁でお許しをいただきたいと存じます。

小林(憲)委員 それでは、伊藤大臣、この件に関しまして御存じのことがございましたらお答えいただけますでしょうか。

伊藤国務大臣 今委員から御指摘がございました旧長銀の譲渡にかかわるFA契約の内容でありますけれども、この点については、契約の一方当事者でありますゴールドマン・サックス社が、今後の日本でのビジネスに支障を来しかねないことから開示に反対をいたしております。したがって、当該契約の内容は守秘すべきものでありますので開示することは困難であるというふうに考えておりますが、今後とも、必要に応じて関係者の方々と調整に努めるとともに、その開示のあり方について検討していきたいと考えております。

小林(憲)委員 それは大変、伊藤大臣、一歩進んだお答えをいただきまして、この開示される日に、一体幾ら日本の国はアドバイジング料を払ったのか、そしてまた、幾ら我々の血税が使われて、ハゲタカファンドと言われる方々の詐欺事件に巻き込まれていったかが明らかになる日が来ると、私ども今の御答弁を聞いて楽しみにしております。

 さて、この「ハゲタカが嗤った日」の十七ページをごらんください。シャーマン・アンド・スターリング法律事務所というものの謝罪文が出てまいります。今伊藤大臣がおっしゃいましたように開示ですとか、これは裁判ですとか、私もずっとこの裁判記録を追っての質問を行ってきておりますが、大変法律的な問題が多い中で、このシャーマン・アンド・スターリング法律事務所、これは東京にもございますが、いかに重要かということを追って私の質問の中に出していきたいと思っておりますが、これこそが、問題が浮き彫りになりました、東証に上場前に問題が浮き彫りになったきっかけにもなっているということを皆さん御記憶ください。

 新生銀行は、株式会社イ・アイ・イ・インターナショナル破産管財人及び関連他社から国内、国外で巨額の訴訟を提訴されておりまして、その損害賠償金が予想もつかない状況のもとで東京証券取引所に株式を再上場いたしました。私は、国内並びに海外市場で新生銀行株式の売り出しを行うことは投資家に不測の損害を与える危険性がある、旧長銀の不法行為の損害を預金保険機構が国民の税金を使って補償することは許されないとの観点から、質問を繰り返してきたわけでございます。

 そこで、全体像ですが、預金保険機構の永田理事長にお伺いしたいと思いますが、二月十六日の予算委員会において、これまでの新生銀行に対する巨額の公的資金投入に加え、新生銀行が一兆円訴訟で敗訴した場合または和解調停の場で損害賠償金が発生した場合に関し預金保険機構が補償するとの契約があるのか否かについても質問をいたしましたと記憶しております。預金保険機構の当時の理事長の松田参考人は、サイパン訴訟に関連して、預金保険機構とリップルウッド社との間で偶発的債務の補償という協定を結んでいる、サイパン訴訟で新生銀行に損害賠償債務が発生した場合について最終的判断をする段階にはないが、将来、このような訴訟が我々が言う偶発債務の対象になるかどうかは非常に慎重に考えなければならないので、場合によっては対象にならない可能性もある、新生銀行との民事契約であるから、双方の意見が対立した場合には訴訟に発展するかもしれないと御答弁されました。

 まさか預金保険機構は、今、すんなりと新生銀行からの補償要求をのむおつもりではないでしょうね。もしおのみになるとこの場でおっしゃるのならば、その理由をお伺いしたいと思います。永田理事長、よろしくお願いします。

永田参考人 お答え申し上げます。

 ただいまお話のありました訴訟に関する偶発債務といいますか、それについて新生銀行側から和解に基づきまして請求があった場合にどうするかというお話だと思いますが、御案内かと思いますが、和解は成立したわけでありますけれども、現在のところ、それに基づく正式な請求は当方にまだ参っておりませんので、それを受けましたところで、先ほど先生がおっしゃられましたような、慎重に検討をして判断をしていきたいというふうに考えております。

小林(憲)委員 それでは、新生銀行の方からは、新聞記事にありますような百七十四億円を補償してくださいということは、預金保険機構の方にはまだ一切何のアクションもないということで理解してよろしいんでしょうか。もう一度そこを明確にしてください。

永田参考人 お答えします。

 先ほどお答えいたしましたように、私どもに対して正式な要請は参っておりません。

 ただ、御案内のとおりでありますけれども、新生銀行が和解を結ぶ、和解を締結するというときに、これは法律的に和解をしようというときには当方にも報告といいますか相談がありますので、そういう事実は存じておりましたけれども、その和解と具体的な当方に対する請求とはまた別でございますので、何回も言って申しわけございませんけれども、正式な請求は参っておりません。

小林(憲)委員 この正式なというところが大変私気になるんです。というのは、イ・アイ・イとRCCと新生銀行の、いわゆる和解のときに、RCCにもといた社員の人が、弁護士さんですが、その人が和解の調停の橋渡し役をやっていて、まあまあ、やあやあという話が、もう既に地裁なんかでも聞かれるように、債権者集会にもRCCの人が来ていたように、中で、隠された中でいつもされているんですよ。それが、最終的にRCCの社員の弁護士がやっていたらまずいんだろうということで、RCCの社員の方はやめて、ただの弁護士になって、そして調停役になって表に出ていく。これはいつも何かもう既にできレースで話をしているものが出てきて出てきて、後から知っている知っていないの話になってきているのが、この新生銀行とリップルウッドの話のもとからずっと始まっているんです。

 ですから、ここで永田理事長に再度お伺いしたいんですが、和解をしたときに、和解をしましたよという話は聞いてみえる、二百十八億。そしてまた、そのときに中の内容も多分聞いてみえるでしょう、和解契約の。そしてまた、そのときに、大体どれぐらいのことを預金保険機構に私たちはこれから言いますよという話は非公式ではあったんでしょうか。教えてください。

永田参考人 お答えいたします。

 ただいま委員の御質問の最後の、まさにそのさわりのところでありますけれども、非公式でも二百十八億のうちこの程度の金額を要求するというような話があったかということでありますが、それは一切ございません。

小林(憲)委員 それではお伺いいたしますが、衆議院の予算委員会における質疑におきまして、前理事長であります松田参考人が、理事長が、二月十六日の答弁で、私の質問に対しまして、我々が言う偶発債務の対象になるかどうかは非常に慎重に考えなければならない、裁判になる可能性もあると、これは先ほど申しましたが、示唆されました。それどころか、RCCは確定した破産債権者でないのにかかわらず確定訴訟も提起しない、こう発言されているんです。

 これは確実に間違いだと私は思うんですが、この場をかりまして、松田理事長はもうおやめになって今は自動車の何か安全のところに行ってみえると思うんですけれども、永田理事長、これは私は間違いだと思うんですが、松田理事長にかわりまして訂正をしていただけますでしょうか。

永田参考人 お答え申し上げます。

 委員お尋ねの前理事長とのお話でありますけれども、これは、確定訴訟といいますか、これの中身といいますか、具体的にはどういうものかということを、御存じだと思いますけれども、まずお許しいただいてお話しさせていただきたいと思うんですけれども。

 確定訴訟と申しますのは、破産手続の中で必ず行うべき手続ではありませんで、破産手続におきましては、各債権者が、自己が破産者に対して有する、主張をする債権を届け出まして、それを破産管財人がそれら届け出のあった債権について債権調査を行うわけであります。届け出られた債権の存否について認否をそれで行うというわけでありますが、破産管財人が届け出債権を認めますと、それでその債権は確定する、こういうことになっております。破産管財人が異議を申し述べた場合に、その債権者は債権の存在を裏づける資料を提出して、破産管財人が異議を撤回するように努力するわけであります。それでもなお破産管財人が異議を撤回しないときは、届け出債権者が債権確定訴訟を提起する、こういうことになるんですが。

 事実の問題といたしまして、イ・アイ・イの破産手続におきまして、一時、RCCが届け出ました届け出債権のうち一部に対して破産管財人が異議を出しておりましたけれども、破産管財人の側でその異議を撤回するということになりましたので、そういう状況でございましたのでそもそも確定訴訟を行う必要がなかったということでありまして、前理事長の答弁は、破産管財人がまだいろいろ調べているような段階で債権者の一人が飛び抜けて確定訴訟をするということは通常ないということを踏まえまして申し上げたわけでございます。

小林(憲)委員 永田理事長、今はもうその異議を取り下げている状態だと思うんですが、二月の十六日の段階でその異議は取り下げられていたんでしょうか。いなかったのならば確定訴訟をする。それは、RCCとしてはこれはなぜしないと言ったんでしょうか。もう既にその異議が取り下げられることを知っていたんでしょうか。お答えください。

永田参考人 お答え申し上げます。

 御質問でございますけれども、その段階で異議を取り下げるということを知っていたかと、それにつきましては、その意向は確認されていたというふうに承知しております。

    〔委員長退席、遠藤(利)委員長代理着席〕

小林(憲)委員 意向が確認されていたということは、正式に異議を取り下げる手続は済まされていたんでしょうか。

永田参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになりますが、そういう意向を確認しておりました上で、先ほど申し上げましたように、破産管財人が、ほかにもいるわけでございますので、まだいろいろ調べているような段階で、今後の状況等を推察いたしますと、債権者の一人が飛び抜けて確定訴訟をするというところまではやる必要はないのではないか、こういうことで判断したということでございます。

小林(憲)委員 それでは、少々角度を変えてお伺いいたします。

 三月一日の予算委員会質疑で、新生銀行と預金保険機構の間の関係もきちっとした手続を今後踏んでいかなければならないと竹中金融担当大臣がお答えになっています。新生銀行の要求のままに預金保険機構から補償金が支払われることのないように、国民の負担を強いられないための方策を預金保険機構は検討しておかなければならないとこの質疑からは感じられるんですが、今、永田理事長、どのような方策を検討されてみえますか、教えてください。

永田参考人 お答え申し上げます。

 先ほど来御答弁申し上げましたように、現在、まだ新生銀行側から補償の請求が参っておりません。かつ、それはどういう形で請求をしてまいるのかということもわからないわけであります。新生銀行がどの範囲で、また、どのような根拠によるものとして請求してくるか、いまだ不明であるということであります。

 御案内のとおり、株式売買契約書上、補償の要件を定めた状況はかなり複雑なものであります。要件該当性の判断は、実際請求を受けた内容を極めて慎重に当てはめて判断することになるということで、慎重に判断するため、請求の具体的内容に即しまして我々としては複数の法律専門家による意見も得て判断を行おうというふうに思っております。また、当機構の判断が新生銀行の主張と異なる場合には、裁判所のもとで法律専門家を代理人としてお互いの法律的主張を出し合って、裁判所の判断を仰ぐこともあり得ると考えております。

 しかし、いずれにしましても、具体的な請求内容がまだわかっておらない段階でございますので、お答えとしましては、そういうことで対応したいということでございます。

小林(憲)委員 それでは、伊藤大臣にお伺いします。

 新生銀行の方は訴訟があるにもかかわらず株を上場してハゲタカファンドに大もうけをさせた末に、その後も株式の売り出しのことを考えて二百十八億で手打ちをして、その補償を、かぶったままになっているということでございますが、新生銀行の方は、金融庁、また大臣の知り得る限り、今、預金保険機構に対して幾らぐらいの訴訟を考えているのか、訴訟といいますか補償請求金額を考えているのか、御存じなところがあったら教えてください。

伊藤国務大臣 私どもが今預保の理事長からお話をされた以外のことについて特段承知をしていることはございません。

 これは、基本的には、当事者で締結をされた株式売買契約に基づいて、民事上の問題として、この契約の内容、そして関係法令にのっとって適切に対応されるものではないかというふうに思っております。

 先ほど来預保の理事長がお話しになられているように、いまだ具体的な補償請求がなされていない、そして、今後新生銀行から具体的な補償請求がなされれば、当該の和解の内容の詳細等を株式売買契約に照らし慎重に検討した上で補償請求にかかわる対応を判断していきたいと預保がお話しになられているということを私どもは承知をいたしております。

小林(憲)委員 新生銀行の損害賠償の和解金は、先ほど来申しますように、二百十八億円。表面的にはこれは大きな金額ですが、税効果と、既に計上済みの五十億円、これは有税引き当ての分です、これを考慮しますと、新生銀行の経常利益に対する影響は実質的には少ないと私は考えます。あえて国民に税金による負担を求める必要はないんじゃないかと思いますが、これは伊藤大臣と預保の永田理事長、両方のお考えを聞きたいと思いますが、お願いします。

伊藤国務大臣 重ねてになりますけれども、先ほど来預保の理事長がお話しになられているように、現時点において新生銀行から預金保険機構に対して具体的な補償請求がなされていないというふうに聞いております。

 今後につきましては、新生銀行より預保に対して具体的な補償請求がなされて、預金保険機構においては、その段階において和解の内容の詳細等を株式売買契約に照らし慎重に検討した上で判断するものと考えております。

永田参考人 お答え申し上げます。

 私どもも、契約書の規定等に基づきまして、請求があった場合には、慎重に判断を下していきたいというふうに思っております。

小林(憲)委員 これは簡単な算数の問題だと思うんですよ。二百十八億円から引当金の五十億円を引きますと百六十八億円。それを上回る百七十四億円の補償金額は、これは焼け太りというやつでございまして、こんなものをもし請求してきた場合、必ず預金保険機構はそのことを把握して、今後なされる予定の補償請求を、明らかになっていないとおっしゃるならば、明らかになった場合は必ずこれは闘わなければいけない、裁判にして。国民の税金を八兆円も使って、貸しはがしから貸し渋り、それから債権放棄をしないという、泣く子と新生銀行にはかなわないといって、どんどんどんどん会社をつぶしていったその銀行が、八兆円ものお金を使って、そしてさらに、自分たちが起こした瑕疵による裁判で負けた金額の百六十八億円よりも多い百七十四億円を請求してくる。その可能性があると新聞に書いてあるんですよ。ですから、その場合には必ず、しっかりと私たちはこれは裁判にして闘いますという思いはございますでしょうか。永田理事長、お願いします。

永田参考人 お答え申し上げます。

 報道とかそういうところではもちろんそういうお話はあるわけでございますけれども、私どもとしましては、先ほど来同じことを申し上げて恐縮ではありますが、正式に請求が出てきて、また、どうしてそういう金額になるのか、そういうことにつきましても理由とかそういう内容も含めた請求があると思いますので、その段階で適切に対応していきたいというふうに思います。

小林(憲)委員 どうも理事長のお話を聞いていますと、だんだん、ちょっとは知っているんじゃないかななんて思い出している私でございますけれども。

 お手元の新聞記事の内容をごらんください。これは、新生銀行が、平成十六年五月二十四日、関東財務局あてに提出した臨時報告書の中で述べられているものでございます。

 それによれば、臨時報告書の提出理由といたしまして、一つ目がイ・アイ・イ破産管財人を初めとして、イ・アイ・イ関係者との間で和解の合意をしたということ。これは先ほど永田理事長がおっしゃったとおり、その報告があったと。

 和解金二百十八億円をイ・アイ・イ破産管財人に対して支払うこと。ただし、イ・アイ・イ破産管財人及びイ・アイ・イ関係者により和解条項が履行されることを条件として、その全額を、平成十六年、ことしですね、六月十六日を、クロージング、受け渡し日にして支払う予定であることなどが記載されているわけでございます。

 そしてさらに、三番目、その他の項目の中で、預金保険機構、ニュー・LTCB・パートナーズ・CV及び当行との間で締結された平成十二年二月九日付の株式売買契約書のもとで、当行は、平成十二年三月一日以前の事実に関する訴訟により負担した費用に対する補償を含め、預金保険機構より訴訟に関連して一定の補償を受けることが可能となっている。かかる補償は、当該費用を含め特定の損失について当初の五十億円を超える部分について行われる。当行は、五十億円全額の引当金を平成十三年三月期に計上しています。当行は、上記株式売買契約書上は和解金額の全額が同補償の対象であると考えていますが、今回の和解に至る経緯にかんがみまして、このうち四十四億円については同機構に補償請求することを差し控える予定である。一方、残額の百七十四億円については同機構に補償請求する予定だが、同機構による補償の範囲または補償金額の支払い手続に関して、今後同機構との間で紛争が発生しない保証はあり得ないと。

 ということでありますから、理事長、どこから出た数字ですかなんて寝ぼけたことを言っていただいちゃ困るわけでございまして、ちゃんとここにそういうふうに書いてあるじゃないですか。これはどうお考えですか。

    〔遠藤(利)委員長代理退席、委員長着席〕

永田参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御紹介いただきました財務局に対する報告書でございますが、最後に書いてございますように、おっしゃられたように書いてあるわけでございますけれども、これにつきましては私ども承知はしておりますけれども、先ほども申し上げました、また繰り返しで申しわけございませんけれども、もとへ戻りまして、この四十四億ということについて、当然、何らかの説明とかどうしてかといったことが、請求とともに説明があるかと思っております。

 そういうことで、先ほど申し上げましたように、内容についてもきちんと説明をお聞きした上で、正式な請求を待って私どもとしては判断をしたいと思っておりますし、ここにもございますように、この文章でも、請求する予定ですが、同機構による補償の範囲または補償金額の支払い手続に関して、今後同機構との間に紛争が発生しない保証はありませんとお読みいただいたように、これから正式に出てきたところで具体的な手続に入ってまいりたいというふうに思っております。

小林(憲)委員 永田理事長、だんだん思い出してきはったみたいですね。先ほどは、全然わからない、何も知らない、何のことか全然動きもない、何にもないし隠してもいないと。ところが、ああ、そういえば百七十四億で四十四億と、これは知っていますけれどもその後のことは知らないと。さっきと今とでまた答弁が変わってきていますね。またどんどんどんどん思い出しはるんじゃないですか。

 それでまた、今、これは伊藤大臣にお伺いしますが、長銀処理のための国民の税負担がさらにふえる可能性があることを付記しているわけでございますけれども、簡単に聞きますけれども、この百七十四億円を、これは大臣、いや、大臣に聞いちゃいけないですね、永田理事長、これはお払いになるつもりじゃないんですか。どうも先ほどから、数字もわからないし何もわからない、何も出ていないと言いながら、この関東財務局あてに出した臨時報告書のことを御存じだったでしょう。百七十四億円とか、四十四億で百七十四億になっていることも御存じだったでしょう。だったら、これをなぜ今隠されたのか。初めの答弁と後の答弁と、むにゃむにゃむにゃむにゃとおっしゃいましたが、違うわけでございますが、これは本当は払うおつもりなんじゃないですか。お答えください。

永田参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員がおっしゃられたようなことで受けとめられたといたしますと、私の答弁の拙劣さをおわびするわけでございますけれども、私自身、先ほど来正式な請求は来ていませんということは繰り返し答弁させていただきましたが、具体的に、こういう財務局に出ている話とかそういうものを知らないというふうに申し上げたつもりはなかったのでございますが、そういうことで誤解を招いたとすれば、おわびをいたす所存でございます。

小林(憲)委員 わかりました。これは武士の情けです。わかりました。

 それでは、永田理事長は、先ほど私が言った、四十四億円については同機構に補償請求することを差し控える予定である、一方、残高の百七十四億円については同機構に補償請求する予定だが、同機構による補償の範囲または補償金額の支払い手続に関して、今後同機構との間に紛争が発生しない保証はあり得ないということを知っていたということですね。そしてまた、それに関してはまだ向こうがアクションを起こしてきていないからまだ裁判にはなっていないよということで私は理解していいですね。よろしいでしょうか。

永田参考人 お答え申し上げます。

 裁判になる可能性はもちろんあるわけであります。しかし、ならない可能性ももちろんあるわけでございますので、それだけつけ加えておきたいと思います。

小林(憲)委員 それでは、向こうが、新生銀行が百七十四億円のアクションを起こしたら、それに対して裁判をするおつもりですか、それとも裁判をしないおつもりですか。そしてまた、同じく大臣にもお伺いしますが、伊藤大臣、八兆円ものお金を使ったんですよ、そして、それ以上、この裁判、百七十四億円払ってくれと新生銀行が言ったら、これは払うべきじゃないとお考えにならないですか。大臣のお考えを教えてください。

 では、永田理事長からまずお願いします。

永田参考人 お答えを申し上げます。

 裁判をするのかしないのかというお話は、前提となります、先ほど来申し上げております請求が実際に出てきて、それがどういう内容であるか、どういう説明がついているか、そういうことにかかってまいりますので、するかしないかというのは今の段階で申し上げることはできない性格のものであると考えております。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 先ほどもお答えさせていただきましたように、この問題は、締結をされた株式売買契約はあくまでも民事上の契約でありますので、偶発債務、そして訴訟提起等にかかわる預金保険機構による補償については、当事者間において民事上の問題として株式売買契約及び関係法令にのっとって適切に対応されるものだというふうに思っております。

 そして、先ほど来預保の理事長がお答えになられているように、いまだ具体的な補償請求がされていないわけでありますので、この段階において私どもが何かコメントできる状況にはないというふうに思います。

小林(憲)委員 大臣、私がお伺いしているのは、伊藤大臣、八兆円もの税金を払ってぴかぴかになった詐欺銀行が、名前を変えて、長銀から新生となって上場して、一千億もの利益が海外に流れていき、一銭もの得にならなかった日本の国と日本の国民です、さらに百七十四億円を皆さんの税金から払う、そんな裁判が起こったときに大臣はどうお考えですかということを私は聞いているんです。お答えください。

伊藤国務大臣 この契約の条項についてさまざまな評価があるということは承知をいたしておりますけれども、当時の再生委員会においては、法律に基づいて定められた枠組みの中で最大限の努力をしてこのような契約というものが締結をされたわけであります。

 先ほど来お話をさせていただいておりますように、この問題は民事上の問題であります。したがって、この契約書の中身、そして関係法令にのっとって適切に対応されるものというふうに承知をいたしておりますし、いまだにこの補償請求について具体的な請求がなされていないわけでありますから、具体的な請求がなされた段階で、その和解の詳細、そして契約に基づいて慎重に検討をして判断されるものと考えております。

小林(憲)委員 伊藤大臣、何だかお話を聞いていると人ごとのように聞こえるんですけれども。これは、大臣になられたからには、日本の国の国民を代表するこの財務金融委員会で、金融の問題に対してどう思われているのか。国民はみんな怒っているんですよ。ですから、この本がベストセラーになるんです。どんな仕掛けで我々はだまされたのかと。

 またさらにだまされるんじゃないか、UFJの問題、そして堤王国と言われたプリンスでも。またこのプリンスホテルでも外人が来て買うんじゃないか。またリップルウッドが来て、またシャーマン・アンド・スターリングのような、そんな競合するような弁護士事務所が東京にあって、またそういうふうにしてばらばらになって、日本の国を支えてきた政治と、そして国民の皆さんに親しまれてきたダイエーのような、そしてまたプリンスホテルのような、そういうものが今ばらばらになっているんですよ、これがまたそれによって、詐欺事件のように外資によって買いさらわれるんじゃないか、そんな心配をしているんです。そしてまた、RCCもそうです、先ほど原口議員が言いましたが、もう既に売却の話も出ているじゃないですか。ローンスターが買うなんて話が出ていますよ。

 大臣、どうですか、代表して、これは人ごとじゃないというところで、百七十四億円を新生銀行が払ってくれと預保に言ってきたら、それに対してあなたはどう思われますか。お答えください。

伊藤国務大臣 重ねてになりますけれども、日本は法治国家でありますので、法律に基づいて適切な対応をしていかなければいけないというふうに思います。

 先ほど来お話をさせていただいているように、今回の問題について、この契約の条項についてさまざまな評価があることは承知をいたしております。しかし、当時の金融再生委員会が、法律に基づいて定められた枠組みの中で最大限の努力をしてこのような形の譲渡が決まったわけであります。そして、先ほど来委員がいろいろお話になられておりますけれども、この問題についても、契約の中身、そして関係法令に基づいて適切に対応されるものではないかというふうに思います。

 さらに、委員から、整理回収機構が外資に売却される、そういううわさがあるけれどもというお話でございますけれども、そのような事実はございません。

小林(憲)委員 法律あって政治なしと申しておきましょうか。

 マスコミなどの報道の中で一兆円訴訟とも言われました巨額賠償請求裁判が、当初の予想と違って低額で和解をしたわけです。ですから、ハゲタカが笑った日というのは、いつ笑ったかといいますと、私が思うには、株でもうけた日に笑ったんじゃないんです。一兆円もかかってもくろみがパアになるかもしれない、そしてまた、国会などで激しい追及に遭いながら、東証で上場できないかもしれないというときよりも、いつ笑ったかというと、二百十八億という彼らにとったらはした金みたいなお金で済んだ、でも、これは日本の国民にとっては大変なお金なんですよ、その日にハゲタカが笑ったんじゃないかなと私は全部読んで思ったんですけれども。

 その笑った、低額で済んだときに、これはまた先ほどちょっと触れましたが、イ・アイ・イの破産管財人と清算人、関係者の譲歩、そして協力を引き出した、この協力を引き出したのがRCCだったというじゃないですか。RCCというのは国民のために一円でも多くお金を取らなきゃいけないのに、まあまあイ・アイ・イさんの方もちょっとまけなさい、これぐらいで手打ちしたらどうだねという、その引き出したということをやったのがRCCの弁護士だったというじゃないですか。これは事実でしょうか。これは「ハゲタカが嗤った日」と同じに皆様にお配りしました週刊朝日とかその辺の記事に書いてありますが、そういう皆さんに、まけてくれまけてくれといって感謝されているのがRCC。このRCCというのは、永田理事長が理事長を務めている預金保険機構の一〇〇%子会社なわけでございますけれども、いかがでしょうか。これは本当だったんでしょうか。これは大臣にお伺いします。

佐藤政府参考人 本件の和解の過程におきますRCCによる仲介でございますけれども、当事者である新生銀行の破産裁判所に対する申し出に基づきまして、破産管財人の同意、破産裁判所の了解のもとに行ったというふうに聞いておりまして、特に問題はないというふうに思っております。

小林(憲)委員 わかりました。

 では、特に問題がなく済んでいって、そして、百七十四億円ものお金が国民の負担になっていかないようにしていただきたいものと思っておりますが、もっとRCCのその部分についてもまた後ほど触れていきたいと思っておりますけれども。

 今回の和解は、グローバル・セツルメント、一括決着といいますか世界一括決着といいますか、しておりまして、国内外のイ・アイ・イ関連の訴訟を一括して解決するものであったということは皆さん御承知のとおりだと思います。

 この訴訟の中には平成十六年に提訴されましたシーコム訴訟が含まれていて、この訴訟は通知期間後に提訴された訴訟で、当然補償の対象外と解釈されていると私は思っておりますが、ところが、新生銀行は、グローバル・セツルメントの業務に反しまして、サンフランシスコでまたもやシャーマン・アンド・スターリング法律事務所が依然として証拠書類を日本側の清算人に引き渡さないで、それどころかシーコムの訴訟を種にして日本で秘密情報が漏れて迷惑を受けたといって清算人を訴えているなんという裁判も起こしているわけでございます。

 そんなことを聞きますと、これは伝聞でございますから真偽のほどはまたお確かめいただいて、いつかの機会にお答えをいただきたいと思っておりますが、そのような情報を聞きますと、政府は新生銀行がまじめにこのグローバル・セツルメントを守っていると明言できるでしょうか。

 中にはまだまだ、預金保険機構に負担をかけなくても、負担をかけるべきものでもないものもたくさん入っているんですよ。だから、偶発的債務にならないで、また期限切れになっているものもシーコムのようにあるわけですよ。そういうことを全部一つ一つ精査した上で、その要求を臨時報告書に上げているとは私は思えないんです。このように、新生銀行のサボタージュと言えます、すべてもうこれで払ったからいいだろうと思える、あとはいつか機会を見て預金保険機構に投げつけて国民の税金を使ってやれというようなその態度に対しまして、金融庁は特に厳しい業務監査をしておられるのでしょうか。

 そしてまた、まだいまだにこのような大きな問題、大きな金額になっていて、株もこの間上場したばかりの銀行が、請求も裁判の予定も何も預金保険機構に行っていない、臨時報告書に上げながら何もアクションを起こしていないというのは、これはサボタージュ以外の何物でもないじゃないですか。それとも何か機会を見ているのか、その辺をどうお考えになりますか。金融大臣にお答えいただけますか。大臣、お答えしてくださいよ。

佐藤政府参考人 新生銀行は、御案内のとおり銀行法上の銀行であり、また公的資金も受けているということで、私どもとしては、日ごろ金融行政上の監督に努めているということでございます。ただ、特別公的管理から今の新生銀行へ移行する段階における諸契約につきましては、民事上の契約でございますので、法令にのっとり、この契約を守りつつ、きちんと仕事を進めていくということが趣旨であろうかと思います。その辺を含めましてきちんと見ていくということかと思います。

小林(憲)委員 どうも大臣が答えていただけないので、永田理事長に振らせていただきます。永田理事長、お答えください。

 このように中には、先般から私が言っておりました裁判のことがありますね。例えば、新生銀行が東証再上場時に提出した売出届出書によりますと、預金保険機構、ニュー・LTCB・パートナーズ及び当行との間で締結されました平成十二年二月九日付の株式売買契約書のもとで、当行は、平成十二年三月一日以前の事実に関する訴訟により負担した費用に対する補償を含め、預金保険機構により訴訟に関連して一定の補償を受けることが可能になっております。かかる補償は、当該費用を含め特定の損失について当初の五十億円を超える分について行われます。当行は、五十億円全額の引当金を平成十三年三月期に計上しておりますと記載されています。

 ということは、通知の終了期限は十五年の二月末日であるというふうに松田参考人も答えられているんですね、ことしの……。サイパンの裁判というのは、これは新しい裁判になっているわけですから、これは支払わなくてもいい、偶発的債務の中に入らないものなんですよ。というのは、サイパン訴訟は十三年の七月三日に訴訟がされているわけですけれども、ちょっと時間がないので大変早口になって申しわけないのですけれども、とりあえず永田理事長、このように中を精査するとたくさんいろいろな問題があるんです。

 そして、もう時間がないという紙が来ましたので、引き続き聞きますが、聞くところによれば、新生銀行及びシャーマン・アンド・スターリング法律事務所は、整理回収機構に帰属する十五億ドルの債務を免除したと。これは勝手に免除しているんですよ。新生銀行が、もういいよといって、整理回収機構に帰属をするもの、十五億ドルですね、国民の許可も政府の許可も何もないのにおまけしているんですよ、勝手に。こんなようなことをされていることは御存じだったでしょうか、永田理事長。

永田参考人 お答え申し上げます。

 その十五億ドルの件でございますけれども、私どもそのような事実は認識しておりません。ただ、そもそもRCCが他に対しまして有する債権を新生銀行と先ほどのシャーマンが免除するということは、理論上はあり得ないというふうに私どもは考えております。

小林(憲)委員 時間が過ぎておりますが、そのあり得ないことがあったんですよ。

 私は、グアムの裁判記録を全部見ました。そうしたら、これはおもしろいんです。中はまた後でお渡ししますけれども、ここに二部あります。

 これは、長銀の弁護士をシャーマン・アンド・スターリングが引き受けていた、そして、同じく同じ裁判でイ・アイ・イの弁護士も引き受けていた。これは、谷垣大臣は法律の専門家でございますが、弁護士さんでございますけれども、これは法律上あり得ないですよね、大臣。だけれども、そのことが裁判になったんですよ。シャーマン・アンド・スターリング、おまえは一体何をやっているんだ、両方の弁護人になっているじゃないかと法廷で問題になった。そこでシャーマン・アンド・スターリングは言うわけですよ、いや、同じになっていてもいいんだと。というのは、債権は同じかぶっていて、要するに長銀が持っている債権をイ・アイ・イにまけさせたから大丈夫だと言っているわけなんです、だから、私はその権利がありますと。

 さらにつけ加えて、次の裁判で、先方のオパという、シャーマン・アンド・スターリングのところにいる弁護士なのかその人が使っている弁護士なのか、私はちょっと文章からはわかりませんが、とりあえずシャーマン・アンド・スターリング側の弁護士のオパという人が、ここにずっと書いてあるんですけれども、大体リージェントホテルの資産が一・五ビリオン、十五億ドルになるんです、これを、もう私たちはお互いの話し合いでチャラにしちゃっていますから、私たちが双方の弁護人をやったっていいんですよなんて、自分たちが助かりたいために言っているんです。

 ということは、チャラになっているということがあるわけですよ。こういう事実はあります。そういう事実は、理論的にあり得ないことがあり得る。ですから、このことは、どんなにまやかしが行われて、また、RCCという内部がどうなっているかということをあらわしているわけでございますけれども。

 これは、最後になりますので言いますが、「アメリカン・ローヤー」という、お手元に配りました、このアメリカで出ています大変権威のある雑誌でございますけれども、これを見ますと、「フーズ・ソーリー・ナウ?」今だれが悪いの、ごめんなさいを言わなきゃならないのはだれなのと。このとき、シャーマン・アンド・スターリングという弁護士事務所は、中に入って、さっき言いました、十七ページにあるように謝罪文も出しちゃうし、そしてまた、それによって新生銀行も損をしたわけですから、新生銀行もイ・アイ・イも両方ともごちゃごちゃにされているわけなので、これは絶対こいつらにも金を払わさなきゃいけないんだ、そういう話が書いてあって、そういう要求権がある。私も、今、日本の預金保険機構はこのシャーマン・アンド・スターリングに対してもお金を請求しなきゃいけない、裁判も起こさなきゃいけないと思いますが、そういう請求権はあるんでしょうか。たくさんになりましたが、時間ですが、ということでございますが、最後に永田理事長、伊藤大臣が答えていただけないので最後にお答えいただきたいと思いますが、今後、百七十四億円、来たときは裁判にして闘わなきゃいけないとお思いでしょうか思わないでしょうか、お願いします。

 そしてまた、私が述べましたように、幾らでも新生銀行以外にも金を払わなきゃいけない人たちがいるわけですから、そういうところにいけば、国民負担をこれ以上かけてはいけないという私の質問でございました。

永田参考人 お答え申し上げます。

 重ねて恐縮でございますが、裁判を起こすか起こさないかは今後の話でございますので、今起こすと断言することはできないわけであります。

 それから、シャーマンの方に請求するかしないか、私どもとしましては、裁判の関係でいいますと我々当事者として関係ありませんものですから、この点につきましては、それを請求するということをここで言うこともできないということでございます。

小林(憲)委員 終わります。ありがとうございました。

金田委員長 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 民主党の鈴木克昌でございます。

 きょう私は、財政健全化、そして三位一体の改革という二点に絞って御質問をさせていただきたいと思いますが、これは申し上げるまでもなく、財政を健全化していく上において三位一体は欠くべからざるものでありますし、この三位一体の目的というのは財政健全化であるということでありますから、まさに表裏一体だというふうに思います。そこで、順次それぞれ関係省庁にお伺いをしてまいりたいというふうに思います。ただ、三位一体につきましては、関係省庁が非常に多いので大変御迷惑をかけますが、その点よろしくお願いを申し上げます。

 三位一体改革をめぐる十月二十六日の国と地方の協議会では、二〇〇五年度から二年間かけて七、八兆円の交付税を削減する財務省の案に対して、地方側は自治体への影響額を独自に試算した資料を提出し、国と地方の信頼関係を破壊すると激しく反論しました。

 全国知事会の試算によると、財務省案が実行された場合、都道府県では二〇〇四年度に比べて一団体当たり平均で臨時財政対策債も含め交付税が九百十三億円減少する、これは二〇〇四年度の一団体当たりの平均交付税総額の三八%に相当するという話であります。削減額が大きいのは、北海道の二千四百億を初め、大阪府千九百億など。市町村では、一団体当たり平均交付税額の約四〇%に当たる十二億円が減ることになるという。協議会では、地方側から財務省案に対して、強行するのであれば総選挙をやって国民に信を問うべきだ、全国知事会長、交付税は地方の固有財源なのに、もてあそぶかのような議論だ、全国町村会長、地方の財政はでたらめと言わんばかりだ、全国市長会長、と批判が噴出した。

 そこで、三位一体の改革について、現段階で私の首長の経験を踏まえて総括をさせていただきたい、このように思います。特に、財務省を初め関係省庁にそれぞれ御答弁を賜りたいと思います。

 まず、補助金、交付税、税源移譲が三位一体であるわけでありますけれども、現状の状況は、財務省、総務省、各省庁、そして地方、これが四位ばらばらというような様相だと私は思っております。しかし、ここで一番欠落しておるのは国民の目線ではないのかな、こんな思いも実はしておるわけであります。

 この一連の流れの中で私が思うのは、中央政府のというよりも、むしろ、すべて悪いのは地方だというような議論が展開をされておるのをかいま見るわけであります。私は、これは全く実態と乖離しておる、このように思うわけでありますが、まず冒頭に財務大臣、そして総務大臣に、今私が申し上げたことについてどのような御所見か、お尋ねをしたいと思います。

谷垣国務大臣 委員から、三位一体の受けとめ方について、それぞれ関係するものがばらばらで取り組んでいるのではないか、あさっての方向を向きながら角突き合わせているのではないかというお問いかけでした。

 確かに、一部にそういう受けとめ方もあると思いますし、そのような角度からの御議論もあると思います。しかし、やはりそういう受けとめ方ではこの話が健全な展開は遂げないというふうに私は思っております。これはいろいろな側面がございますけれども、一つは、今委員はお触れになりませんでしたけれども、三位一体の改革の目標とするところは地方分権の推進でありますから、地方の権限と自主性、そして責任も高めていくということが確実にございます。

 しかし、それと同時に、起こっておりますところが地方も国も財政が非常に厳しい中でありますから、どうやってそれぞれ財政の体質をよくしていくか、スリム化も考えながらやっていくかという視点がなければなりません。お互い財政が厳しい中でありますから、財布の中身がお互いよくわかっているわけでありますから、苦しい悲鳴が起きてくるのもある意味では仕方がありませんけれども、私は、大きな意味で言って、お互いに国も地方も財政を立て直して、そしてお互いに自主性を高めていこう、こういう観点でなければこの問題は解決できない、こういうふうに考えております。

今井副大臣 鈴木委員にお答えいたします。

 鈴木委員も実は私も地方自治体の市長の出身ということで、共通の認識を多分共有しているんだろうと思うわけであります。

 今回の三位一体でございますが、これはあくまで、次なる新しい国の形、地方分権型社会をつくっていく、国の形をつくっていく、三位一体はそういう目的に対する一つの手段だろう、こういうふうに思うわけです。

 そういった中で、委員からも御指摘がありましたように、我々も経験上、地方に任せてちょうだいね、責任を持ってしっかりとやっていくよという気概を委員もお持ちだと思うわけであります。そういう意味では、地方の集合体が国ということになるわけでございますので、国と地方がお互いに信用、信頼し合ってこの問題に対処していかなければならない、かように考えているところであります。

鈴木(克)委員 当然そういうような御答弁かというふうに思っておるわけでありますが、少し各論に入って申し上げていきたいと思います。

 先ほど私が御質問の中で申し上げたように、何かいろいろの、特に財務省が出されておる資料を見ておりますと、本当に、地方にすべて問題があるというようなところが見られてならないものですから、その辺のところを順次お伺いしてまいりたいというふうに思います。時間の関係もございますので、少し飛ばして、説明不足のところがあるかもしれませんが、ぜひひとつ的確な御答弁をお願い申し上げたいというふうに思います。

 まず潜在的国民負担率について、財務省は五〇%をめどとする、こういうようなお考えのようでありますが、この問題が一つ。それから、二〇一〇年初頭においてプライマリーバランスを黒字化するという問題が一つ。そして、地方六団体が進めてきておる問題との乖離について、順次お答えをいただきたいというふうに思います。

 まず潜在的国民負担率でありますが、厚生労働省の試算によりますと、二〇二五年度には百五十二兆円にまで達する、これは社会保障給付費ということの視点でありますけれども。そうしますと、先ほど財務省が言っておられる五〇%程度ということと乖離があるわけですね。これはやはり非常に、政府の目標の設定が何か五〇%という数字をもってして国民の目線を欺くと言うと大変御無礼な言い方になるかもしれませんけれども、私は何かそこに作為的なことがあるんじゃないのかなというふうに思います。

 それから、新規国債発行額、話が飛んで申しわけありませんけれども、十七年度予算では今年度以下に抑制するということを財務大臣はおっしゃっておるわけでありますが、しかしながら、これは当初予算をそうおっしゃっておるわけでありますが、では、果たして補正予算はないんでしょうか。当初はそうであっても、補正でまた組んでいかれれば、これは全く状況が違ってくるわけであります。その辺の問題。

 それから、定率減税についてもぜひお伺いをしたいと思いますが、この定率減税が来年度の税制改正に盛り込まれる可能性が高まっておるわけでありますけれども、これは景気、特に家計の消費に非常に大きな影響が出てくる可能性があるというふうに私は見ていますが、家計への影響度はどれぐらいになるのか。

 それから、消費税。これも財務大臣が消費税について近々上げていかざるを得ない、十七年度云々というような話があって、先般、同僚議員の質問に対して、どうもとらえ方が少し違っておるんじゃないかというような御答弁をこの前されておるわけでありますが。

 以上、潜在的国民負担率の問題、新規国債発行額の問題、それから補正予算が編成された場合にどのような形になっていくのか、補正予算は編成されないのか。それから、定率減税に対する影響、そして消費税についてということで、ちょっと多岐で大変恐縮ですけれども、それぞれ大臣からお答えをいただきたいと思います。少し飛ばしておりますので、順番に読み上げておるわけじゃありませんので、その点はひとつ頭に入れて整理して御答弁をいただきたいと思います。

田野瀬副大臣 私の方から、潜在的国民負担率ということに関してお答え申し上げたいと思います。

 御案内のように、税、社会保険料が国民所得に占める割合である国民負担率については、平成十六年度で三五・五%となると見込まれておるんですが、また、これに将来に先送りしております国民負担である財政赤字の対国民所得比を加えた潜在的国民負担率は、平成十六年度で四五・一%になると見込まれております。

 鈴木先生おっしゃるとおり、この潜在的国民負担率については、今後、深刻な少子高齢化の進展もあり、現行制度を前提とすれば将来的には政府が目途としている五〇%を大きく超える見込みであり、このまま放置すれば国民の将来不安を招きまして、我が国の経済社会に大きな影響を及ぼしかねないところでございます。したがいまして、簡素で効率的な政府、活力ある社会を実現すべく、歳入歳出両面からバランスのとれた財政構造改革を強力に推進していく必要があると考えておるところでございます。

 特に社会保障については、現行制度のままでは今後高齢化の進展により給付と負担が大きく増大していくことが見込まれておりますので、今後、年金、医療、介護など社会保障制度全般について一体的な見直しを進め、社会保障給付の伸びを経済成長に見合う程度に抑制し、国民経済の、大臣がよくおっしゃいます身の丈に合った給付、負担の規模としていくことが潜在的国民負担率の上昇を抑制する上でも重要である、このように考えておるところでございます。

 以上でございます。

谷垣国務大臣 たくさんお問いかけになりましたので、まず新規国債発行額を抑制する、これは当初予算で達成しても、その後補正なんかを組んでどんどん出していけばもとのもくあみではないかという御趣旨でしたけれども、補正は確かに、ことしは災害が大変ございます、それから、いろいろなことで補正を組まなければならないということが起きてくるかもしれませんけれども、これは初めから補正を、年度末調整のための補正というのは大抵ございますけれども、初めから何か追加需要のための補正を考えて私は発言しているわけではございません。むしろ、当初予算でまずきちっと考えてやっていく、それから、安易な補正を組むということは慎まなきゃいかぬ、こういう考えでやっております。

 それで、できるのかというお話だと思います。まだ現在の段階では、来年度の税収がどのぐらいあるかというようなことも、今年度もまだ四分の一程度の税収しか明らかになってきておりませんので、その辺もまだ実は明確にわかっているわけではございませんけれども、昨年も当初予定したよりは国債発行額を減らすことができまして、全体景気の調子もややよくなって、今税収も数年前よりは堅調であることが見込まれますので、私は昨年より圧縮していくということは視野に入ってきたと思っております。それが確実にできるかどうかは、正直申し上げてまだこれからでございますけれども、視野に入ってきたときにそれをとらえてきちっと追求していくというのが財政に対する信認を高めるゆえんではないかということで、今から打ち出しまして、何とかそれを来年度の予算案では達成したいと思っているわけであります。

 それから、定率減税につきましては、これは入れましたとき小渕内閣でございましたけれども、当時は景気が大変悪かった、やはり景気を何とか回復させていくために減税を打つ必要があるということが一つ。それからもう一つは、どこかで所得税の抜本改正というものをやらなければならないのだけれども、あのときにはまだそれをやるだけの時期に来ていなかったので、その抜本的な所得税改革をやるまでのつなぎの措置であるという二つの意味がございました。

 まず景気が当時から比べてどうなるかというのは、これはいろいろな見方があって、今も委員はかなり家計に悪影響を与えるのではないかというふうに見ておられるということは伺いました。これは一番慎重に考えていかなければならないところではございますけれども、私はやはり平成十一年度と比べると大きく変わってきていると思います。

 細かなことは省きますけれども、大きく申しますと、一つはバブルの後遺症である不良債権の処理というのがほぼほぼ目鼻がついてきて、全体何か景気がよくなってきたときにそれが足を引っ張る状況からはほぼ卒業ができかけているんじゃないかというのが一つですね。それから、もう一つは、当時は財政を発動して何とか景気を下支えしようとやってきたわけですけれども、今はそういう状況ではなくて、民需主導で景気回復といいますか堅調な状況になってきている。この二点で、私は、定率減税というものを廃止、縮小していくことが議論できる段階になってきたのではないかと思います。

 それから、もう一つ申し上げなければならないことは、先ほど委員がおっしゃいました三位一体の中で、三兆円を目途として税源移譲、これは所得税を中心に基幹税でやっていくんだ、これを地方住民税にやっていくんだということで今取り組んでいるわけですが、そういたしますと、どうしても、三兆円目途で地方財源にしていくとなると、これは所得税体系を見直さないことにはできないという面がございます。三兆円移すとなると、これは根本的にもう一回所得税体系を見直すということでございますから、そうすると、先ほど申し上げたような平成十一年度の定率減税、抜本的改革をするまでのつなぎの措置という意味合いからいいましても議論をしなければならないということで、平成十七年度、十八年度はそれが主たる課題ではないかというふうに考えているわけでございます。もちろん、先ほど委員がおっしゃいましたように、景気の動向等、これからよく目配りをして議論を煮詰めていかなければならないということでございます。

 それから、消費税にお触れになりましたが、まず所得税につきましては、これから平成十七年度、十八年度、いろいろな改革をしなければなりません。そういう中で、財政需要、本当に必要な行政サービスを提供するにはどのぐらいの需要が必要なのかというようなこともよく精査しながら、消費税体系も含めて、これは平成十九年度をめどに議論をしていく。今まだコンクリートに固まった状況ではございませんけれども、そういったことを前広に議論してきちっとしたものをつくり上げていきたい、こういう状況でございます。

鈴木(克)委員 それぞれお答えをいただいたわけでありますが、少し消費税についてさらに突っ込んでお伺いをしたいと思うんです。

 十年後には消費税を二一%に引き上げるか、さもなければ社会保障関係費や公共事業関係費等の歳出規模をすべて三分の二に削減しなければ政府の財政再建目標は達成できない、これが中期財政試算なんですね。このことで、まず、二一%という試算ではあるものの、出た根拠。それから、いわゆる社会保障関係や公共事業の歳出規模を三分の二に削減しなければならない、これは要するに、何かそのときの背景があってこういう試算が出されたわけでありますので、どういう根拠でこの数字が出てきたのかというところをぜひお知らせいただきたいというふうに思います。

谷垣国務大臣 今委員がお示しいただいた試算は、先般財政審で、今建議を審議していただいている、その起草委員会から建議の審議の参考資料として出していただいたものでございます。これは先ほど原口委員にもお答えしたことでありますけれども、十年後にどういう一般会計の姿になっているかということを、もちろん、これだけ高齢化していくだろうとかいう一定の前提はございますけれども、いわば機械的に算定したものでございます、一定の前提を置いて。

 機械的にと申します意味は、一方で内閣府などが「改革と展望」を踏まえた十年ぐらいのいわゆるプライマリーバランス回復の見通しなどを示しておられるわけですが、こちらの方は「改革と展望」等に含まれているいろいろな改革措置をきちっと実行していった場合にこういうことが見込めるという、いわば努力を含んだ数値なわけですね。この財政審でお示しいただいたのは、ちょっとむきむきに言いますと、そういう努力を余りしなかった場合という場合の、どちらかといえば悪いパターンを示した、平たく言えばそういうことなのではないかと思っております。

 したがいまして、これはまだ、そういういろいろな前提がございますので、すべてこのままに推移するというわけではありませんけれども、一つの審議の参考資料としていただいて、「改革と展望」に述べられているような改革をしながら、先ほど申し上げたような十年後の陰うつな姿を乗り越えていかなきゃならないと思います。

 そのときにやらなきゃならないことというのは、これは議論し出しますと切りがございませんけれども、委員もおっしゃいましたように、やはり大きな歳出項目、これはどうしてもふえていくのは社会保障でございますし、それから国と地方の関係、先ほどから御議論いただいておりますけれども、交付税も大きなものになってきている。それから、先ほど公共事業もお触れになりました。公共事業については随分抑えてきているわけでありますが、大きな項目、社会保障、それから国と地方の関係、そこはどうしても今よりも合理的な姿というものを求めていかざるを得ないんではないか、こう思っております。

鈴木(克)委員 冒頭の御回答の中でもう二点だけちょっと確かめておきたいわけでありますが、新規国債の発行を今年度より抑える状況が今できつつあるというお話だったわけでありますが、ただ、これは隠れ借金ですね、このこともちょっと一遍確認をとっておきたいんですが、確かに新規国債は出さないけれども、逆に、いわゆる特別会計から、例えば国債整理基金だとかいろいろなところから流用をして隠れ借金で組んでいったのでは、これは全く同じことになるわけでありますので、その隠れ借金は大丈夫ですねということが一つ。

 いま一つは――それじゃ、それについて。

谷垣国務大臣 隠れ借金と言われるのもいろいろなものがございますけれども、そんなところで表面を糊塗したってなかなか実態がよくなるわけではありません。したがって、これを縮減していくためにはいろいろな手法が必要だと思うんです。一般歳出全体を抑えていくとか、あるいは先ほどからの御議論の地方交付税ももっと合理化していく必要があると思いますし、それから歳入を確保していく、やはり税収が伸びて、先ほどやや少しよくなってきていると申しましたけれども、そういった持続的な経済発展に向けての目配りも必要なんじゃないかと思いますが、そういう努力をしながら何とかすっきりとした姿のものをつくっていきたいと思っております。

鈴木(克)委員 もう一点、定率減税について確かめておきたいんですが、いわゆるこの金額ですね、定率減税を廃止した場合にどれだけ金額が上がるのかということが一つ。もう一つは、与党の方でのというか、自民党での御議論のようでありますけれども、そこで出た金額を基礎年金の国庫負担分に充当すべきじゃないか、現在三分の一のところを二分の一に持っていくために使ったらいいんじゃないか、こういう議論もあるやに伺っているわけでありますが、したがって、定率減税でどれだけの金額が見込めるのか、そして、その使途についてはどんなふうに現在のところお考えになっておるのか、その二点をお答えいただきたいと思います。

田野瀬副大臣 所得税の定率減税による減収額は、十六年度予算で計算いたしますと、約二・五兆円と推計されるところでございます。

 いずれにしても、定率減税の取り扱いについては、仮に見直す場合にどのように実施していくかという点も含めて、今後の政府及び与党の税制改正審議の中で検討していくべきものと考えており、現時点において増収額をお示しすることはちょっと困難である、このように考えております。

谷垣国務大臣 今副大臣から御答弁いたしましたことは、例えばこれからどういうふうに仕組んでいくかによっても違うわけですね。段階的にやっていこうとするのか一遍か、こういうようなことでも違いますし、その辺は景気の状況も見ながら判断しなきゃならぬということだろうと思います。

 それからもう一つ、それは何に充てるのかということでございますが、これも今後の議論でございます。ただ、先ほど申しましたように、背景に、一つは基礎年金の国庫負担をどうしていくのか、三分の一から二分の一にどう持っていくのかという問題が一つございます。それからもう一つございますのは、先ほど申しました三位一体、税源移譲の財源をどこに求めていくのかというのがこの議論の背景にはございまして、まだこれだと整理ができているわけではございませんけれども、今後、そのあたりもしっかり議論して、よいものに仕上げていきたいと思っております。

鈴木(克)委員 それでは、三位一体の方で少し伺ってまいりたいというふうに思うんです。

 地方交付税は本来地方団体の税収入とすべきであるというふうに、これは三位一体の地方交付税改革について伺うわけでありますけれども、どうも私は性格が慌て者なものですから、少し話が飛んでいって大変申しわけありませんけれども、本来、地方交付税というのは地方団体の税収入とすべきであるというふうに私は思っております。しかし、地方団体でもいろいろ財源が強いところ、弱いところがありますので、不均衡を調整して、そして、ある程度地方団体が一定の水準を維持できるような財源を保障する、こういう見地から国が国税として徴収をしていく。しかし、本来は、地方団体共通の固有財源であるというふうに私は実は理解をしておるわけであります。

 そこで、最近は、三位一体の改革で少しその辺のところが流れが変わってきたような気がするわけですよね。そういう観点から具体的にちょっとお伺いしていきたいんですけれども、地方交付税の持つ財源保障機能、それから財源調整機能、これは両方あるわけですよね、これについて、地方交付税の今後の見直し、いろいろ議論されておるわけでありますが、今の財源保障機能、そして調整機能をどのように今お考えになっておるのか、まずその辺の御所見を財務大臣そして総務大臣からお伺いしたいと思います。

今井副大臣 お答えを申し上げます。

 御指摘ありましたように、国が地方にかわって徴収する地方税であるんだ、固有の財源が地方交付税なんだ、これは間違いのないところでございます。財源を保障する機能と調整する機能、その二つが相まってこの交付税の本来の意義が成立するのだと思うわけでございます。

 御案内のように、我々、自治体経営をしてみますと、ありとあらゆる分野の仕事を地方団体がゆだねられているわけでございまして、多くの分野で、実は国の一定の法令の基準あるいは補助負担金制度を通じての一律な行政水準を確保するための仕組みというものが大切になってくるわけでございます。そういったところで交付税が果たす機能というのは、これまた大変重いものがある、こういうふうに思っているわけであります。

 とはいうものの、一定の水準といいましても、各地域でおのおの条件が変わってまいります。経済力の格差というものもございますでしょうし、それに基づく税源の偏在があるわけでございますので、それらをならしていく、そして行政水準を一定に保っていくということに対する交付税の役割、これも大切な機能の一つであるわけであります。

 そういう意味では、一定の水準を維持するために必要な財源の保障をする機能を持ちつつ、あわせて地方団体における財政力格差を調整する、いわゆる財源調整をする、この仕組みといたしましても、交付税制度というものを堅持していかなければならないと思っておるわけであります。現在の国と地方の関係や責任分担を前提とするならば、このような制度は必要不可欠な制度である、このように考えておるわけであります。

 以上です。

谷垣国務大臣 鈴木委員がおっしゃいましたように、地方交付税に財源保障機能と財政調整機能というものがある。それで、財政調整機能は、現実にこれだけ財政力の違いがありますから、財政力を調整していくという交付税の機能というのは、これは極めて大事なものだと私も思います。

 それからもう一つ、財源保障機能というのもあるわけですが、これは委員には釈迦に説法でございますけれども、地方財政計画で歳出と歳入のギャップがあるときにそこを埋めていく、そこでそれを補てんしていく、それにいわゆる交付税の特例加算と赤字地方債でもってそこを埋めていくということにしているわけでございまして、これもいろいろな意味で役割を果たしていることは間違いないと思います。

 ただ、私は、目指すべき姿からするとここに若干問題があるという認識を持っておりまして、やはり自立と申しますか自己責任、権限も拡大していくけれども自己責任という面を強調していこうということになりますと、受益と負担の関係というものが明確に意識されることが必要なんだろうと思います。これだけの財政サービスをそれぞれの地域でするなら、住民がそれだけの負担をしてくださいねというような問いかけが民主主義の基本なんじゃないかというふうに、ちょっと民主主義の基本なんて、急に出刃包丁を持ち出した感じがございますけれども、そう思っております。

 要するに、財源保障機能というのがありますと、そこのところがやや意識が希薄になる面が私はあると思うんですね。そこのところはやはりできるだけ圧縮していくという姿が望ましいのではないかというふうに思っておりまして、いわゆる骨太の二〇〇三にもございますように、そこのところを圧縮していく、スリム化していくという努力が今後求められているのではないかと考えております。

鈴木(克)委員 やはり微妙に財務省と総務省は違うんですね。その辺のところを今から順番にただしてまいりたいというふうに思うんですが、特に財務大臣がただと言った以降の問題、そこのところがやはり今回一番問われておるわけですよ。そのことをちょっと順番に聞いていきます。

 今、財務大臣から地財計画、地方財政計画という言葉が出たわけでありますが、私は、この地財計画において明らかに財務大臣と総務大臣の違いがあるというふうに思っておるわけでありますが、この点について、とりあえず地財計画についての財務大臣の所見と総務大臣の所見をお聞かせをいただきたいと思います。地方財政計画です。

今井副大臣 先輩の大臣が譲っていただきました。

 実は、御案内のように、我々、地方の、鈴木さんの経験なさった立場ですれば、地方財政計画という計画を国で策定され、これはあくまで地方と国との信頼関係のもとでやっていかなければならない重要な計画であるわけです。地財計画にやはり地方が縛られる、これは否めない事実であるわけでございますので、来年度、その次の年の地方の収入、支出、それらについて精査され、それに基づいて地方財政が運営されるものだ、こういうふうに思っております。

 以上です。

谷垣国務大臣 この地財計画そのものについては、私は今井副大臣と違う見解を持っているわけではありません。きちっとそれぞれの地方で来年度やっていくのに必要なものを精査して積み上げていって、標準的なそれぞれの地方で行うべき行政需要についてはきちっと裏打ちをしていくのは当然のことだと思っております。

鈴木(克)委員 当然、財務大臣から、ただという、また何かあると思って期待をしておったわけでありますが、その部分がないわけですけれども、順にお伺いをしてまいりたいと思います。

 また後で地財計画に入らせていただきますが、ちょっと目先を変えまして、財政諮問会議で、地方財政の健全化のために二〇一〇年の初頭までに人口比で三分の一の自治体を交付税の不交付団体に持っていく、こういうお話が出ておるわけでありますが、これは結局、数値目標を変えていくということだというふうに思うんですが、数値目標の値を変えるのか、さもなければ地方の財政を強化していくのか、どちらに主眼を置かれておるのか、こういう視点でお伺いしたいんですが、本当に二〇一〇年代初頭までに人口比で三分の一の自治体を交付税の不交付団体にすることができるんでしょうか。その点をまず財務大臣、総務大臣、順番にお伺いしたいと思います。

谷垣国務大臣 順番にというのは、まず私から答えろということだったと思います。

 不交付団体の数をふやしていくということは、地方交付税に頼らないで自助努力とか自己責任による財政運営を行うという意識を定着させて広めていくためには非常に大事なことで、自治体の、いわばそれぞれ努力はされているわけでありますが、財政的自立を促すということなんだろうと思います。

 こういう観点から、どうしたらそれが達成できるかというのも、今、三位一体の中でいろいろ議論をされているわけでありますけれども、先ほどから申し上げているように、税源を移譲するということもその一つの要素なのではないかというふうに考えているわけでございますが、私の観点からは、それは先ほど申し上げましたような保障機能というものがややルーズに使われて地財計画が膨らみ過ぎている面があるのではないか、それを抑制することによって交付税総額を縮減して、基準財政需要額の中身を真に財源保障すべき水準に対応するものにしていくということが、不交付団体をふやしていくことで大事なポイントなのではないかなというふうに私は考えております。

今井副大臣 お答えをさせていただきます。

 国庫補助負担金や地方交付税への依存をなるたけ抑制していく、これは地方が自立する意味でも大切なことだと思っております。したがって、そのためにも、税源の移譲あるいは経済の活性化に伴いまして地方の税収をしっかり確保していく、そうすることによる地方税の充実確保を図ることによって交付税に依存しない自立的な自治体を運営できるように、そうすることが結果として不交付団体をふやしていく、こういうことになるわけでございます。そのような取り組みを積極的に進めることによって、二〇一〇年初頭までに不交付団体を市町村の人口割合の三分の一程度を目標としているわけでございます。

 いずれにいたしましても、交付税を抑制することが不交付団体をふやす目的ではないということだけは申し上げておきたい、こういうふうに思うわけであります。

鈴木(克)委員 ちょっと掘り返してというか深く議論したいところがあるんですけれども、時間の関係もありますので、先に飛ばさせていただき、また改めてこれは議論させていただきたいと思います。

 三位一体の改革に対する政府の基本方針と補助金削減代替案についてお伺いをしていきたいというふうに思います。

 三位一体の改革に関しては、国と地方の協議の場に臨むに当たり、政府一丸となって地方からの改革案の実現に向けて全力で取り組んでいく姿勢をお示しになっておるということだと思うんですね。にもかかわらず、政府八府省の補助金削減代替案は、その金額において地方六団体の三・二兆円の削減案と非常に乖離があるわけですね。その内容もゼロ回答というようなところもあるわけですね。総理は、経済財政諮問会議の場で、地方六団体の削減案に沿って関係省庁との調整を急ぐようにというふうに指示をされておるやに伺っておるわけでありますが、そこで三点伺っていきたいと思うんですが、まず財務大臣、三位一体改革に対する政府の取り組み、姿勢を、財務大臣としてのお考えを、三位一体についてどういうふうに考えてみえるかということをちょっとお示しいただきたいと思います。

谷垣国務大臣 先ほど鈴木委員も指摘されましたように、総理から六団体の案を真摯に受けとめて、そして十一月半ばまでに成案をつくるようにという御指示でございます。我々は当然それを踏まえてやっているわけでございまして、官房長官のもとで、私、それから総務大臣、それから経済財政担当大臣、竹中大臣ですね、四人で協議をいたしまして、それぞれの補助金の担当大臣も順次来ていただきながら、今議論、調整の最中でございます。何とかこれをまとめて三位一体の山を越えたい、かたい決意で今臨んでおります。

鈴木(克)委員 そこで、きょうは八府省の代表の皆さんにここに来ていただいておりまして、それぞれ、この地方六団体の案と異なる内容の代替案を提出している場合、その理由はいかがかということについて、順次、文科、厚労、国交、農水、環境、経産、総務、内閣府ということで御答弁をいただきたいと思います。

玉井政府参考人 お答えを申し上げます。

 地方六団体の改革案では、文部科学省関係のほとんどすべての補助負担金は廃止対象になっているわけでございますが、これらは憲法の定める教育の機会均等等の観点からいずれも重要なものであり、特に義務教育は国の発展を担う人材育成という国家戦略としても重要だと考えているわけでございます。

 このため、今回の補助金改革につきましては、義務教育のあり方や国と地方の役割など、教育論を踏まえた議論が必要であり、政府全体として検討していただきたいと考えているわけであります。特に、義務教育費国庫負担金の取り扱いにつきましては、これまでの三大臣合意や閣議決定等を踏まえて、平成十八年度末までに結論を得ることとなっておりまして、そのため、総務大臣、財務大臣、文部科学大臣の三大臣に官房長官を含めた検討の場を設置していただきたい、こういった旨を十月二十八日にお答え申し上げたわけでございます。

 その際、文部科学省といたしましても、学校施設整備費の一部交付金化の検討や、あるいは義務教育費国庫負担金につきましては既に平成十六年度に総額裁量制を導入しているわけでございますので、このさらなる改善など、地方の自由度を一層拡大する工夫をしていくこともあわせてお答えを申し上げているわけでございます。

井口政府参考人 私どもに対しましては、地方六団体から約九千四百四十億円に上ります補助負担金廃止案が提出されているところでございますが、我が省といたしましては、そのうち六百から七百億円程度の補助金の廃止についてはお出しをいたしております。それとあわせまして、地方におきます裁量の拡大とあわせまして、国民健康保険、生活保護、児童扶養手当におきます国庫負担率の見直し、それから従来の細分化されました補助金、負担金の交付金化、統合補助金化などを中心とした代替案を示したところでございます。

 こうした代替案を出した理由ということでございますけれども、まず第一に、地方六団体案のまま今後少子高齢化に伴いましてサービスの充実が急がれる少子化対策等の国庫補助負担金が廃止されますと、こうした施策に重大な支障が生じるとともに、一定の水準の社会保障サービスを地域格差なく保障するという国の責任が果たせなくなるというような非常に大きな問題が生じること。

 それから、第二番目に、今後、社会保障制度の改革を進めるに当たりましては、医療費の適正化等、都道府県を初めとした地方団体の役割は大変重要だと認識しておりまして、この際、国庫負担率の見直しと税源移譲をもとにいたしまして、国民健康保険等の分野におきまして、地方の一定の裁量を伴った新たな取り組みをお願いする方がより適当ではないか、こういうことで判断したということでございます。

榊政府参考人 お答え申し上げます。

 国土交通省といたしまして、三位一体改革自体は、国、地方を通じまして、行財政の制度を簡素、効率的なものにしていくという上で重要な課題でございまして、我が省としても改革を推進していかなければならない課題だというふうに考えております。

 地方六団体の改革案は、公共事業関係補助金についても税源が移譲される、みずからの財源で自由に事業が実施したいという考えで提案されたものだというふうに考えております。しかしながら、建設国債を財源とする公共事業関係補助金につきまして、財務大臣の見解なり、平成十六年度の公共事業関係補助金の削減については税源移譲がなされていないということからも明らかなように、税源移譲の対象にはなじまないのではないかというふうに考えております。

 このため、地方六団体の改革案どおりに国土交通省関係の約六千六百億円の補助金を廃止、縮減したのでは、事業実施のために必要な財源が不足するおそれがあります。特に、地方六団体の改革案は、主として都道府県のみが事業主体となるものに限定をいたしておりまして、このため、国が重要な役割を果たすべき地震、台風による災害防止といったような災害防止にかかわります河川砂防事業、下水道、住宅といった特定の分野などの事業がほとんど行われなくなるおそれがございます。

 そこで、私ども二十八日に提出いたしました国土交通省の改革案におきましては、地方六団体の改革案をそのままということではなくて、国土交通省関係補助金全般の見直しに取り組みまして、事業分野ごとに公共施設の広域性、重要性に応じた重点化の見直しを行うこと、地方がより自主性、裁量性を持って事業を実施できるより使い勝手のよい補助制度を実現すること、補助金の削減規模については、事業への影響、これまでの補助金削減の実績等を踏まえて検討するといったことを内容といたした回答をしたところでございます。

井出政府参考人 農林水産関係では、治山事業等の公共事業を中心といたしまして、一部非公共事業も合わせ三千八十九億円の廃止が求められておりますが、農林水産行政の大目的でございます食糧自給率の向上でありますとか、国土、環境の保全につきましては、これは国の基本的な責務でありまして、国が責任を持って施策の実施を確保する必要があると考えております。また、農林水産関係の施策につきましては、総じて財政力が弱い農山漁村で行われておりまして、それぞれの地域におけるこれら農林水産施策の推進に支障が生じることのないような配慮が必要であると考えております。

 したがいまして、地方六団体の提案にございますような農林水産関係の補助金廃止につきましては、これを行うことは困難と考えております。

 他方、農林水産業は、日本の国土事情もありまして、地域の自然条件に左右されますので、それぞれの施策の実施に当たりましては、地域の実情に応じて、地域の自主性なり裁量性が発揮できる仕組みとすることが重要であるとも考えております。このような考え方を踏まえまして、我が省といたしましては、補助金の統合、交付金化、あるいは公共事業については省庁間連携の強化といったことを行い、さらに行政の効率化による縮減等も含めまして代替案を作成し、提出したところでございます。

寺田政府参考人 今回の改革を機に、環境省といたしましても、循環型社会の構築などを目指しまして国と地方が一体となって前向きに取り組んでいく、こういった仕組みをつくる必要があるものと認識しております。

 ただ、環境省の補助金の大半が公共事業でございます廃棄物関係でございまして、これについては、環境省に限らず、財源移譲の対象たり得るのかという議論があるというふうには承知しております。このため、環境省といたしましては、地方六団体案で対象に考えられております一千二百十五億円のうち、地方の事務として同化定着、定型化していない地球温暖化対策など、改革の対象として適当ではないのではないかと思われるものを除外しまして、残り全体の九六%を補助金改革を実行し、百四十二億円の国費削減を行うこととしております。

 内容でございますけれども、大宗を占めます廃棄物関係について申し上げますと、単純な焼却等は廃止いたしまして、リサイクル等のいわゆる三Rの推進とか広域的な廃棄物処理の観点から循環型社会の形成が行われるため、循環型社会形成推進交付金というような、使い勝手のいい交付金制度ということにいたしたいと存じております。

石田政府参考人 地方六団体から廃止、移譲の対象とすべきとの御要望のございました経産省関係の補助金は六項目でございます。このうち、四項目の補助金につきましては、既に地方からの御要望に沿いまして廃止、移譲することといたしております。

 残る二項目、具体的には小規模企業等の支援対策と中心市街地の活性化対策にかかわる補助金でございますが、これにつきましては、中小企業の活性化が我が国経済全体にとっても極めて重要な政策課題であるということから、必要な取り組みが遺漏なく行われることを確保することが重要であると私どもは考えております。現在、こうした点を踏まえながら、その扱いについて真剣に検討いたしているところでございます。

今井副大臣 地方六団体の改革案は、基本方針二〇〇四に基づく政府からの要請によって、地方自治体六団体がそれをしっかり受けとめて徹夜までして取りまとめたもの、このように承知しているところでございます。政府といたしましては、この地方案を真摯に受けとめ、これを実現することを原則として検討することが基本であるという認識を当省としてはしております。

 総務省といたしましては、この趣旨を踏まえ、いろいろな角度から検討した結果、地方案に示された総務省関係の移譲対象補助金、全部で四件、総額にして九十五億円になるわけでございますが、全廃することとさせていただいた次第であります。

永谷政府参考人 内閣府で所管しております三つの国庫補助負担金につきまして、六団体から廃止の対象として提案をいただいています。その三つの国庫補助負担金でありますけれども、総額で十億九千四百万という金額でありますけれども、この三つの事業につきましては、一部を国の責務として行うということにはしておりますけれども、全体としては、三位一体改革の趣旨をも踏まえて、平成十七あるいは平成十八年度、両年度に廃止するということにしております。

 それから、なおということで申し上げれば、沖縄関係の補助金でありますが、地方六団体からは沖縄関係経費として明示はされておりませんけれども、沖縄振興計画のもとで、沖縄の特殊事情に十分配慮し、沖縄の振興に支障が生ずることがないような必要な措置を要望しているというところでございます。

鈴木(克)委員 時間を延長させていただいたことをおわび申し上げて、これで質問を終わらせていただきますが、今伺っておって理念なき改革の難しさというのを痛感いたしております。終わります。

金田委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 私は、定率減税について質問をさせていただきます。

 平成十一年度、一九九九年度から実施されております所得税の定率減税を縮小、廃止ということが議論になっているわけであります。もともと、所得税の定率減税というのはどのような目的で実施されたのか。平成十一年二月四日の衆議院本会議で、当時の宮澤喜一大蔵大臣が、現下の著しく停滞した経済活動の回復に資するという目的で行うのだというふうに答弁をされていたと思いますが、それは間違いありませんか。

谷垣国務大臣 間違いございません。

佐々木(憲)委員 要するに、当時は九七年に実施されました消費税の税率アップあるいは医療費負担で、国民にかなり重い負担が負わされました。九兆円負担増ということで、消費が非常に停滞をする。それから、そういう中で景気が落ち込み、経済情勢が非常に深刻化する。この深刻化した経済活動の回復に資するというのが最大の目的でこの減税が行われたわけです。

 このときに行われていましたのは、所得税については、定率減税だけではなくて最高税率の引き下げ、さらに法人税の基本税率の引き下げなども行われたわけであります。当時の総額で約七兆円の減税ということで、これは全体として経済活動の回復のために実施された。つまり、当時の所得税と法人税の減税というものが全体として景気回復のためという目的であった、これは間違いありませんね。

谷垣国務大臣 今おっしゃいました、当時の所得減税で何を入れたかということは、正確に意図するところはそれぞれ若干違いますが、大きく言えば、やはり景気を回復させようというねらいがあったことは間違いございません。その中で、特別に今のような意味合いが重かったのが定率減税であろうと思います。

佐々木(憲)委員 それで、これらの所得税、法人税の全体としての減税措置というものが恒久的減税ということで、的というふうについているということ、これがみそでありまして、その期間というのは一体どの程度かといいますと、停滞した経済活動が回復する、要するに景気回復、さらに個人及び法人の所得課税のあり方について将来抜本的な見直しを行うまでの間、この二つが恒久的減税を見直すという場合の前提になる、こういうふうに政府の説明があったわけであります。

 財務大臣にお聞きしますけれども、税制の抜本的見直しを行うまでの間というわけですから、抜本的見直しが行われるまでは手をつけないというのが基本的な考え方じゃなかったんでしょうか。

谷垣国務大臣 今、佐々木委員がおっしゃいましたように、この導入には二つの意味がありました。一つは、当時の低迷した景気を支える、何とか回復したいということと、もう一つは、どっちみち将来、所得税に関しては抜本的な見直しをやらなきゃいけないんだけれども、それはそれぞれの時期時期というものがあるから、それができるまではこれでいこうという二つの意味合いがありましたから、当然、そこをいじるにつきましても、今の二つの、導入のときのそういう理由が現在どうなっているのかということを吟味する必要があると思います。

佐々木(憲)委員 そうしますと、税制の抜本的見直しがまだ行われていないわけですから、それが行われるまでの間、定率減税その他は実行するということですから、行われていないんですから、見直しするというのは筋からいうとおかしいんじゃありませんか。

谷垣国務大臣 全然おかしくございませんで、定率減税の見直しが議論になってきておりますことの一つの理由は、先ほども鈴木委員にもお答えいたしましたけれども、地方に税源を移譲するときに、所得税を中心にやろうということで今議論をしつつございますけれども、それだけやりますと、どうしても所得税体系全体をもう一回見直さなければならない、そういう改革をしなければならないということになってきております。

 したがいまして、それはしないで定率減税だけを議論しようという趣旨ではございませんで、所得税全体を見直していく中で定率減税をどうするかという議論になってきているということでございます。

佐々木(憲)委員 ちょっと私はその説明が理解できないんですけれども。税制の抜本的な見直しが行われるまでの間ですから、見直しの議論が行われているだけであって、見直しされているわけじゃありませんから。したがって、その見直しが行われるのが完了していないのに定率減税の縮小とか廃止とかを行う、これは全然整合性がとれていないんじゃありませんか。

谷垣国務大臣 いや、それは佐々木委員らしくない極めてトリビアルな議論をなさったと思いますね。

 要するに、定率減税を見直すということは、所得税全体を見直していく中でともに議論を進めていこうというふうに御解釈いただきたいと思っております。

佐々木(憲)委員 所得税の見直しというものは、所得税の体系というものはどうあるべきかを考えていくというのが見直しであって、今やろうとしているのは廃止、縮小なんですから。ですから、全然これは私はおかしいと思うんですね。

 それはさらに議論をするとして、もう一方の、では景気回復の面はどうかということで、数字をちょっと確認したいんですけれども。企業の景気回復、それからサラリーマンを中心とする個人所得の回復、これは一体どうなっているか。資本金十億円以上の全産業の経常利益、一九九八年から二〇〇三年までの間に幾らふえたかというのと、もう一つ、民間企業が支払った給与総額、これは家計収入の中心ですけれども、それはどうなっているか、お答えをいただきたいと思います。

石井政府参考人 私の方から、企業収益の点をまずお答え申し上げます。

 財務省が公表しております法人企業統計によりますと、これは金融、保険を除く全産業でございますが、資本金十億円以上の企業におきます経常利益、一九九八年度、平成十年度でございますが、十二・四兆円でございました。また、二〇〇三年度、これは平成十五年度でございますけれども、におきましては、二十一兆円でございました。したがいまして、これを単純に差し引きますと、八・六兆円の増加ということになろうかと思います。

佐々木(憲)委員 もう一つ、給与の方をお答えいただきたい。

村上政府参考人 お答えいたします。

 国税庁では民間給与実態統計調査という標本調査を行っておりますが、この統計調査によれば、民間企業が支払った給与総額、今先生がお出しいただいている資料は一年を通じて勤務した給与所得者に対する給与総額なんですが、それを見ますと、一九九八年、平成十年は二百十一兆円でございましたが、二〇〇三年、平成十五年は百九十八兆円と、約十三兆円の減少となっております。これは主として賞与の減少であろうかと思います。

佐々木(憲)委員 給与総額で十三兆円のマイナス。その一方、大手企業を中心に経常利益は約九兆円の伸び。これが現実の景気回復の実態ですよ。そのときに、今議論されているのは、サラリーマンの給与を中心としたこの部分に、いわば増税という形で定率減税の縮小、廃止というものが押しつけられるわけであります。これは大変なことなんです。

 大臣にお聞きしますけれども、法人の方は利益が戻って回復している、あのとき実施したのは所得税と法人税の減税なんです、ところが、法人税はもとに戻さない、しかし所得税の方はもとに戻す、これはちょっとバランスがおかしいんじゃないかと思いますが、これは逆じゃないんでしょうか。法人税の方をもとに戻す、所得税はまだ回復していないから増税というのはちょっとやめておこう、こういうのが普通じゃないでしょうか。どうしてこれが逆になっているのでしょうか。

谷垣国務大臣 恒久的減税と言われたものの中では、定率減税のほかに、今委員がおっしゃいましたような、所得税の最高税率であるとかあるいは法人税の税率の引き下げが規定されたわけです。これは、先ほど景気対策ということを主眼に置いて言われましたけれども、景気対策という、大きな意味では景気をどうやって持続的なものにしていくかということでございますけれども、国際化の進展といったような我が国経済社会の構造変化にどう対応していくかという、その税制の抜本的改革の一部先取りとしてなされたという面があるというふうに申し上げなきゃならないと思います。

 ですから、定率減税は、先ほど申し上げたような景気対策の観点から、それから個人所得課税の抜本見直しまでのつなぎ、こういう二つの面があったわけですが、それとはちょっと違う面があるということをまず申し上げなきゃいけないと思います。

 それで、所得税の最高税率、それから法人税の税率の取り扱いについては、今のような違いも踏まえながら、今後、所得税や法人税のあり方を議論する中で考えていかなきゃならない、こう思っております。

佐々木(憲)委員 当時は景気回復ということが非常に緊急課題ということで、所得税の減税、法人税の減税というのが行われたわけですね。性格が違うと言いますけれども、当時の議論は、それぞれ違う性格のものだがという議論はないのです。景気回復を図るというのが一つの柱、もう一つは、抜本的な税制改革が実現するまでの間やるんだと、こういう二つが決められたわけですから。

 それで、景気回復という点で言うと、法人の方は景気回復が着実に進んでいる、利益が上がっている。しかし、庶民の、サラリーマンを中心とした所得はずっとマイナスが続いているわけで、私がお配りした資料を見ていただければわかりますように、十一年以後毎年毎年前年比マイナスなんですよ。総額でマイナスだけじゃない、平均でも大体この間十七万四千円のマイナスになっているわけです。これは本当に大きなマイナスですから、当然、消費全体が冷え込む要因となっている。GDP全体の中でも五割、六割を占めるわけです。

 したがって、何でそこを税率をもとに戻して増税にするのかということが非常に疑問なわけですね。

 先ほど、法人税あるいは最高税率の問題についても検討するとおっしゃいました。今、議論されているんでしょうか、どこでどのような議論がされていますか、具体的に示していただきたい。

谷垣国務大臣 委員は先ほど、所得税全体の体系を見直していくということも視野に置いて、定率減税だけを着目して議論されているんですけれども、やはり全体の経済構造の変化に伴って、所得税体系のみならず、いろいろな税の体系は不断に見直していかなきゃならない、そういう議論を続けております。それは余りにも一般論ですからちょっと省きますと、結局、先ほどからの委員の御議論は、今回の景気回復局面において、家計をめぐる状況の変化をどうとらえるかという視点から議論しておられるんだと思いますね。

 それで、それを考えてみますと、企業側の雇用に対する過剰感というのがかつては非常にあったと思うんですね。それがようやく解消に向かってきて、有効求人倍率が上がってきている。それで完全失業率も下がってきている。こういう雇用環境の改善がある程度反映して、消費者マインドはよくなってきているという面が一つあると思います。

 それから、所得の面を見ましても、いろいろ資料をお示しになりましたけれども、雇用者所得というのは下げどまってきていると思います。また、勤労収入だけではなく、財産収入とか移転所得も含めた家計の実収入というのはこのところ増加傾向にあるのではないかと思っております。要するに、リストラが一服する中で、企業のキャッシュフローが家計に還流してくる、家計に及んでくるという環境が整ってきたのではないかなと思っております。

 それに加えて、先ほど申し上げたので多くは申しませんけれども、いわゆる不良債権問題、過剰債務問題というのがようやく解消に向かってきて、景気回復が底がたいものになってきている。こういうような状況を踏まえて、定率減税についても所得税全体の見直しの中で議論できる環境になっていると考えているわけでございます。

佐々木(憲)委員 環境が整ったと言いますけれども、実際に議論をしているのは定率減税の縮小、廃止だけじゃありませんか。では、最高税率の引き上げ、法人税率の引き上げ、一体どこでどのような議論をしているか、具体的に言ってください。

谷垣国務大臣 それは、政府税調等の議論を注意深くごらんになっていただければ、随所でそういう議論が行われていることを御理解いただけると思います。

 先ほど定率減税だけが議論になっているというふうにおっしゃいましたけれども、所得税体系全体の中で、やはり基幹税としての国の財政を担っていく機能をどう回復させていくか、それから所得再分配機能というのが所得税の持っている大きな機能でございますけれども、そういったものをやはりもう一回着目する必要があるのではないか、そのようなことが現在でも議論されているわけであります。

佐々木(憲)委員 税調の中での議論で、法人税を上げる議論、それから最高税率の引き上げの議論は、私が見る限り、調査した限り、一切行われておりません。大臣がそれも含めて議論されていると言いますけれども、そんなことないですよ。議論が行われているのは、定率減税の見直しは景気対策としてやったのに、今やることが果たしていいのかどうかという議論はありますよ、もちろん。しかし、やられていないですよ。

 では、どこでやられているんですか。具体的に示してください。では、その資料を出してください。

谷垣国務大臣 いやいや、法人税や何かを見直していくという議論は常に行われていますよ。(佐々木(憲)委員「いや、見直しじゃなくて引き上げですよ、もとに戻すというのは」と呼ぶ)いやいや、そういう中で、税率がどうあるべきかとか、そういう議論はあると思います。

 それからまた、いやいや、そこは委員は……(佐々木(憲)委員「じゃ、具体的に出してください」と呼ぶ)具体的にと言って話をそらしてしまわれるけれども、それは違いますよ。(佐々木(憲)委員「そらしているんじゃなくて、それに答えてないから聞いているんですよ」と呼ぶ)それはよくごらんになっていただきたいと思います。

佐々木(憲)委員 では、具体的に資料を請求します。では、財務省に資料を請求します。委員長、取り計らっていただきたいんですが、法人税のもとに戻すあるいは引き上げの議論、それから、最高税率の引き上げの議論、これが具体的になされているという証拠を資料として、委員長、提出をしていただきたい。

谷垣国務大臣 佐々木委員の御議論は非常に戦略的に組み立てられておりまして、法人税の議論も、私は、佐々木委員がおっしゃったように、最高税率をどうするとかそういうようなことは直接申し上げたつもりではなくて、法人税全体のあり方は常に見直していかなきゃならない、そういう議論が行われているということを申し上げているのでありまして、それで、佐々木さんの議論は佐々木さんの御関心のところだけにスポットライトを当てておられるように私には感じられます。

佐々木(憲)委員 問題のすりかえをやられたら困るんですよ。私が聞いているのは、前回の三点セットで行われた減税措置は先ほど言ったような意義があって、今その見直しはそのうちの一つしかやられていない。あとの二つの議論はどうなっているんですか、やっているんですか、やっていないんですかと聞いているんですよ。やっているとおっしゃるんなら具体的な証拠を出してくださいと言っているわけですよ。極めて明確な質問なので、当たり前のことを言っているだけなんですよ。その証拠があるというふうにおっしゃるんだったら出してくださいと言っているんです。極めて単純明快で、しかも正面からの議論なわけでありまして、何もすりかえた議論をやっているわけじゃありませんよ。大臣がすりかえているのでありまして、私が聞いていることに答えないのはおかしいですよ。

 では、資料を出していただけますか。委員長、では、理事会で諮ってください。

金田委員長 では、理事会で協議させていただきます。

佐々木(憲)委員 もう質問時間がなくなっちゃったな。

 要するに、私は、今の定率減税の縮小、廃止によって景気にどのような影響が出るか、この試算も実はやっているのかどうかというのを聞きたかったんです。やっていないですね。一般的にいろいろな研究所ですとかシンクタンクが試算をやっておりますけれども、それによると、今そんなことをやったら景気が大変なことになるという議論は行われております。

 ですから、私は、今定率減税の廃止によって国民負担をいきなり三・三兆円もやるなんというのは、これはもう全然景気対策からいうと逆行している。むしろやるべきは、担税能力の上がってきた法人税率の引き上げの方が本来やるべきことではないのかということを最後に主張して、時間が参りましたので質問を終わらせていただきます。

     ――――◇―――――

金田委員長 次に、第百五十九回国会、内閣提出、信託業法案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。金融担当大臣伊藤達也君。

    ―――――――――――――

 信託業法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

伊藤国務大臣 ただいま議題となりました信託業法案の提案理由の説明に先立ちまして、一言申し上げます。

 本法案に二カ所の誤りがありましたことにつきましては、まことに遺憾であり、深くおわびを申し上げます。

 今後、再発防止を徹底し、法案作成に当たり万全を期してまいる考えでありますので、よろしく御理解をいただきますようお願いを申し上げます。

 引き続き、信託業法案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。

 政府は、信託の活用に対するニーズへ柔軟に対応するため、信託の利用者の保護を図りつつ、受託可能財産の範囲や信託サービスの担い手の拡大等を行うことにより、信託制度という我が国金融システムの基盤を整備し、もって国民経済の健全な発展に資することを目的として、本法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、あらゆる財産権について信託を可能とするため、受託可能財産の制限を撤廃することとしております。

 第二に、金融機関以外の信託業の担い手である信託会社について、その業務の内容に応じて免許制または登録制のもとで信託業を営むことを可能とするとともに、委託者や受益者の保護を図るため、信託会社に対する行為規制や監督規制等を措置することとしております。

 第三に、知的財産権を初めとした信託活用のニーズにきめ細かく対応するため、グループ企業内での信託業や大学等の技術移転事業を行う承認TLOによる信託業を認めることとしております。

 第四に、信託サービスの提供チャネルの拡大の観点から、信託会社の委託を受けて信託契約の締結の代理等のサービスを提供する信託契約代理店及び信託受益権の販売等のサービスを提供する信託受益権販売業者の制度を設け、これらの者による取引の公正を確保するための規定等を整備することとしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

金田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

金田委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、明十日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十九分散会


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