衆議院

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第8号 平成16年11月12日(金曜日)

会議録本文へ
平成十六年十一月十二日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 金田 英行君

   理事 江崎洋一郎君 理事 遠藤 利明君

   理事 鈴木 俊一君 理事 村井  仁君

   理事 中塚 一宏君 理事 原口 一博君

   理事 平岡 秀夫君 理事 谷口 隆義君

      小野 晋也君    岡本 芳郎君

      木村 太郎君    熊代 昭彦君

      倉田 雅年君    小泉 龍司君

      小西  理君    砂田 圭佑君

      田中 和徳君    竹本 直一君

      谷川 弥一君    中村正三郎君

      永岡 洋治君    宮下 一郎君

      森山  裕君    山際大志郎君

      山下 貴史君    井上 和雄君

      泉  健太君    岩國 哲人君

      小林 憲司君    鈴木 克昌君

      田島 一成君    樽床 伸二君

      津村 啓介君    中川 正春君

      野田 佳彦君    馬淵 澄夫君

      村越 祐民君    吉田  泉君

      若井 康彦君    石井 啓一君

      長沢 広明君    佐々木憲昭君

    …………………………………

   財務大臣         谷垣 禎一君

   国務大臣

   (金融担当)       伊藤 達也君

   内閣府副大臣       七条  明君

   内閣府大臣政務官     西銘順志郎君

   財務大臣政務官      倉田 雅年君

   政府参考人

   (内閣府産業再生機構担当室長)          藤岡 文七君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  増井喜一郎君

   政府参考人

   (金融庁検査局長)    西原 政雄君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    佐藤 隆文君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務流通審議官)       迎  陽一君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局長)          北畑 隆生君

   参考人

   (社団法人信託協会会長) 古沢熙一郎君

   参考人

   (東京大学大学院法学政治学研究科教授)      神作 裕之君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十二日

 辞任         補欠選任

  田中 和徳君     山際大志郎君

  渡辺 喜美君     小西  理君

  野田 佳彦君     若井 康彦君

  村越 祐民君     泉  健太君

同日

 辞任         補欠選任

  小西  理君     渡辺 喜美君

  山際大志郎君     田中 和徳君

  泉  健太君     村越 祐民君

  若井 康彦君     野田 佳彦君

    ―――――――――――――

十一月十二日

 金融先物取引法の一部を改正する法律案(内閣提出第一三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 信託業法案(内閣提出、第百五十九回国会閣法第八五号)


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     ――――◇―――――

金田委員長 これより会議を開きます。

 第百五十九回国会、内閣提出、信託業法案を議題といたします。

 本日は、参考人として、社団法人信託協会会長古沢熙一郎君、東京大学大学院法学政治学研究科教授神作裕之君のお二方に御出席をいただいております。

 この際、参考人、古沢熙一郎さん、神作裕之さんには、本当にお忙しい中、本委員会に御出席をいただきまして、ありがとうございました。

 今、当委員会では信託業法案を審議しておるのでございますが、審議の参考にするために、両先生に代表していろいろな御意見を陳述していただきたい、そしてまたいろいろな質疑も交わさせていただきたいというふうに思っております。本当に御協力ありがとうございます。委員会を代表して、委員長の金田からお礼を申し上げさせていただきます。ありがとうございました。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、古沢参考人に五分以内で、次に、神作参考人に十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。

 それでは、古沢参考人、よろしくお願いいたします。

古沢参考人 信託協会長を拝命しております三井トラスト・ホールディングスの古沢でございます。

 本日は、信託業法案の審議に当たり、信託業界を代表して意見を述べさせていただく機会をちょうだいし、御礼を申し上げます。

 まず初めに、信託業務の現状について若干申し上げます。

 信託は、資産をさまざまな形で管理、処分できる柔軟性に富んだ制度でありまして、時代時代の多様なニーズにこたえてまいりました。とりわけここ数年は、年金資金の運用管理や資産流動化などにおいて重要な役割を果たしております。

 現在、信託業務は、信託銀行を初めとする、信託業務を兼営する金融機関が担い手となっておりまして、受託残高は、平成十六年三月末現在で四百九十二兆円に達しております。

 昨年七月に取りまとめられました金融審議会の信託業のあり方に関する中間報告書にもありますとおり、財産管理等のすぐれた機能を有する信託が我が国金融システムの基本的インフラとして活用される可能性は、今後ますます高まるものと考えております。

 次に、信託業界として、現在御審議いただいております信託業法案をどのように受けとめているかにつき申し述べさせていただきます。

 信託業界といたしましては、これまでの法案策定の過程で関係されました皆様方の御尽力に深く感謝いたしますとともに、委員の先生方の御理解を賜り、ぜひとも早期の成立を期待するものであります。

 まず最初に、信託業法案に対する基本的認識を申し上げます。

 今回の改正は約八十年ぶりの改正であります。この間の経済社会の進展に伴う信託制度に対するさまざまなニーズに対応するものであり、信託制度のさらなる普及、発展に資するものと考えております。

 次に、改正のポイントとなる点について、三点申し上げます。

 第一に、受託できる財産権に関する制限が撤廃されるということであります。

 経済界には、知的財産権の流動化を初めとして、信託機能を活用したいとの具体的なニーズが存在していると仄聞するところであります。受託財産の制限がなくなることによりまして、我が国経済において喫緊の課題とされております知的財産権に関して、これまで接点のなかった産業技術と金融とのつなぎ役として信託制度を活用して管理したり、流動化して資金調達を実現することが可能となります。

 第二に、信託業の担い手の拡大と、それに伴う業者ルールの整備ということでございます。

 みずからが信託機能を有して活用したいとのニーズに対応して、新たに信託会社が信託業務を行えるようになることは、信託兼営金融機関との健全な競争を促し、より利用者の利便性が向上することになると考えております。こうした担い手の拡大に伴い、業者間で公正な競争が行われるための業者ルールの整備が不可欠となりますが、信託契約の締結の勧誘段階から信託財産の管理運用まで、幅広く適切に規律が用意されておりまして、必要かつ十分な整備がなされているものと考えております。

 三点目として、信託業のいわば周辺業について整備がなされ、信託制度へのアクセスが向上する点が挙げられます。

 具体的には、信託契約の締結の代理、媒介を行う信託契約代理店制度が設けられたこと、及び、信託受益権の販売、その代理、媒介を行う信託受益権販売業制度が設けられたことであります。これにより営業網が補完され、潜在的な信託制度へのニーズをくみ上げることが可能となります。

 最後になりますが、一般法である信託法につきましても、現在、改正に向け法制審議会で検討が進んでおります。一連の信託関連法の改正は、利用者にとって利便性と信頼性の高い信託制度の健全な発展に資するものと考えております。

 これまで申し上げた点について御理解を賜り、ぜひとも本信託業法案の早期成立をお願いする次第であります。

 以上、簡単ではありますが、私なりの意見を述べさせていただきました。ありがとうございました。(拍手)

金田委員長 ありがとうございました。

 次に、神作参考人、よろしくお願いいたします。

神作参考人 東京大学の神作でございます。

 本日は、信託業法の改正につきまして意見を述べる機会を与えていただき、まことに光栄に存じております。

 現代社会は信託ないし信認の時代であるということが日米の識者によって指摘されております。例えばアメリカのボストン大学のターマー・フランケル教授は、社会は、身分制社会から契約を中心とする社会、そして契約を中心とする社会から信託ないし信認を中心とする社会に移りつつある、こういう指摘をされております。この指摘の意味することは、次のようなことと理解しております。

 すなわち、現代社会においては、分業と専門化が特色となっており、人々は専門家に対して一定の権限を授与し、専門家はその受益者のために、専門的な知識、技術を十分に生かしながらさまざまな事務処理あるいは財産管理等を行うというものでございます。

 このように、信託は、プロによる財産管理という機能を提供するのみならず、例えば、委託者、受託者、受益者の倒産から隔離された独立財産をつくる、こういった倒産隔離機能、あるいは、法律関係を単純化する単純化機能、こういったさまざまな重要な機能が認められております。近年、流動化または資金調達のスキームに特に適した法形式として信託は大きな注目を集め、かつ実際の利用も広がっているところであります。

 信託法はもともと英米法に由来し、信託法こそが英米法の真髄であると言われております。我が国は、御承知のように大陸法系に属する国でございますけれども、明治三十八年に社債の担保の管理のために担保附社債信託法という法律を制定し、信託制度を大陸法系の我が国に導入するという一つの決断を下しました。ややおくれて、大正十一年には信託法が制定され、私法上の規律も整備されるに至っております。また、大正十一年には同時に信託業法も制定され、その後、昭和十八年に制定されました金融機関ノ信託業務ノ兼営等ニ関スル法律とともに、我が国における信託法制のインフラを提供する法として重要な役割を果たしてきたものと認識しております。先ほど申し上げましたように、信託というのは本来プロによる財産管理等の制度でございますから、プロに対するルールである業法が重要な役割を担うということは当然のことであると考えております。

 なお、信託の本家の英米におきましても、商事的な信託の利用は主として金融の分野で行われております。また、制定法としての信託法を有しないドイツのような大陸法系の諸国におきましても信託法理は判例法理として認められ、今や、ドイツにおきましても、信託なくしては金融の分野は語れないと言われているほどでございます。

 グローバル化やIT化の影響も受け、金融資本市場が急速に変化し、かつ金融技術の発展が目覚ましい中で、資金調達手法の多様化、運用対象の選択肢の拡大、こういった観点から、信託の機能に対する期待が大いに高まっているというふうに認識しております。

 そのほか、知的財産権の重要性の高まり、これを反映いたしまして、例えばグループ企業内で知的財産権を集中管理する、あるいは大学技術移転事業においてTLOが信託機能を活用したい、このようなニーズも具体的にあらわれているというふうに伺っております。

 ところが、現行の信託業法が、それらのニーズを満たし、さらには信託制度を利用した新しい工夫や技術の開発を促進するということに対する制約となっているのではないかという問題意識が出てまいりました。

 具体的な例を二点申し上げますと、例えば、受託可能財産が金銭等に限定されておりますために、先ほど申し上げました知的財産権を当初信託財産として受託するということが業法上はできないこととなっております。また、信託業の担い手が金融機関に実際上限定されているといった問題もあるわけであります。

 そこで、今回の改正提案は、受託可能財産を信託法上引き受けが可能な財産権一般に拡大するということを提案するとともに、信託業の担い手として金融機関以外の一般事業者等が登場してくるということを前提に、信託の類型に応じた区別を行い、参入基準をきめ細かく設けるものでございます。

 信託と申しましても、その信託が果たす機能はさまざまでございます。受託者以外の第三者からの指図に基づき財産を管理運用し、専ら受託者は財産の保管管理に努める、このように、保管業務に重点が置かれた信託から、より積極的に受託者が裁量権を行使する、このような信託までさまざまな信託がございます。

 そこで、今回の改正提案は、信託がどのような機能を求められているものかという類型に応じて参入基準も区別するという考え方に立つものであり、このような方向は、信託を用いたさまざまな金融商品や金融手法の開発を可能にするとともに、投資家にとってはその選択肢を広げるという点において適切な方向であると考えております。

 もっとも、一般の人々から信頼を受けて財産権を委託されるというこの信託の特徴からいたしまして、受託者が健全かつ効率的に業務を遂行する、そのことを確保するためのいわゆる業者ルールが必要不可欠でございます。

 私がとりわけ重要と考えておりますのは、受託者の義務に関するルールでございます。

 それはなぜかと申しますと、受託者は、単に財産管理権を任されているだけではなく、財産権についての名義まで受託者に移譲されます。したがって、受託者には一般的に言って非常に広大な権限があると言えるわけであります。さらに、受託者に対しましては、実質的な所有者である受益者からのコントロールが必ずしも期待できないという特色もございます。受託者の範囲の拡大に伴い、受託者の財務及び業務の健全性、効率性の確保に対する適切な規律がなければ、信託制度に対する信頼が得られず、信託機能の発揮は阻害されてしまうおそれが大きいと考えられるからでございます。

 他方、信託会社の行為規範を可能な限り明確にするということも必要でございますし、受託者がその専門的な知識やノウハウを存分に生かす、創意工夫を妨げることがないような、このような行為準則を定めることが期待されます。

 このような観点から、本法案は、いずれもこれらの要請を満たすべくルールが置かれているものというふうに理解しております。

 金融のスキームとして信託が利用されるためには、市場と投資家を結ぶ仲介者の役割が非常に重要でありまして、この仲介者の役割の重視は世界的な傾向でございます。

 本改正提案におきましても、信託契約代理店及び信託受益権販売業者という制度を設けまして、市場と投資家とを結ぶ制度、これをあらかじめ道筋をつけ適切な規律を行っており、世界的な、金融を仲介するもの、市場と投資家を結ぶものに対する規律、あるいはその機能を果たすことを積極的に考えていくというグローバルスタンダードにも合致しているものと理解しております。

 最後に、私法としての信託法との関係、及び、現在平成十七年の国会提出を目途として法制審議会信託法部会において議論されております信託法改正の動向との関係について、一言申し上げさせていただきたく存じます。

 先ほど述べましたように、受託者の義務及び責任を初めとし、信託の私法上の規律について、平成十七年を目標として行われております信託法改正により抜本的な改正がなされる可能性が高いように思われます。信託業法は私法上の規律をいわばベースにしているものでございますので、もし信託法の改正が実現するということになりますと、信託業法のさらなる改正は避けられないものというふうに私は理解しております。

 しかしながら、これまで述べさせていただきました理由から、私は、動きの速い金融の分野におきましては、信託法改正を待たずに、いわば第一段階の信託業法の改正として、少しでも早く本法案についての御審議がなされることが望ましいことではないかと考えております。

 以上、私の意見を述べさせていただきました。どうもありがとうございました。(拍手)

金田委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

金田委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山下貴史君。

山下委員 自民党の山下貴史でございます。

 まず初めに、本日、大変お忙しい中、当委員会にお越しをいただきまして、それぞれ貴重な御意見を述べてくださいました古沢参考人及び神作参考人に、心からお礼を申し上げるところでございます。

 議題になっております本法案、これは、お二人のお話にもございましたように、大正時代に制定された片仮名法でございました現行の信託業法、これを全部改正して面目一新する、言ってみれば八十年ぶりと言われている大改正なわけでございます。

 なぜこの時期にこういう大改正をするのかという理由。それは、この提案理由にもきちんと述べられておりますけれども、時代の変化に応じて信託に関するいろいろなニーズが出てきて、それに柔軟に対応するための金融資本整備を行う、それをもって国民経済の健全な発展を図る、こういう観点から、いわゆる信託の引き受け対象財産の制限を撤廃して、著作権あるいは特許権と言われている知的所有権、そうしたものも信託の対象財産に広げる、これが一点。

 もう一点は、これまでの信託取引にもっと新しい多様な担い手を取り込むというか新規参入を促進する、そういった観点から、信託にかかわる業務カテゴリー、これは新たなカテゴリーとして管理型信託業あるいはまた信託契約代理業そしてまた信託受益権販売業といった新たなカテゴリーを設けて、これは免許ではなく登録制で導入を認めていこうという改正。

 そしてまた、これも大事なことだと思いますけれども、いわゆる信託の受益者そしてまた委託者の利益の保護をしっかり図るためのルールをつくる。こうしたことが今回の法律改正の非常にポイントになっていると私は理解をいたしております。

 この法案は、先ほど参考人の発言にもございましたけれども、金融審議会の中の関係部会において、専門家の方々あるいはまた学識経験者の方々が十分集まって検討されてまとめられた結論、それをしっかり踏まえた法律改正になっている、こういうお話でございました。ぜひ、本法案が成立をした暁には、ねらいどおりに国民経済の活性化につながる、そういう効果が上がってほしいものだ、こう願っているところでございます。

 そうした観点から、今お話をいただきましたお二人に、簡単に何点か質問をさせていただきたいと思います。

 まず、古沢参考人に対しまして。参考人は、我が国の信託事業を一手に担ってこられております会社の集まりでございます信託協会の代表、そういうお立場で発言があったわけでございます。しかも、非常に法案に関して前向きの発言をいただいたと私はお聞きをいたしたところでございますが、その信託業界の皆様方の立場から見て、今回の抜本改正法案、これをどのように評価しているかということでございます。

 八十年ぶりの大改正ということでございますので、業界の皆様方がかねてよりいろいろ思っておられた御要望でありますとか要請、そうしたものを十分受けとめて、言ってみれば滞貨一掃の法律改正案になっている、そういうふうにお考えなのか、あるいはまた、積み残された課題がまだある、こういうふうに見ていらっしゃるのか。言ってみれば、百点満点で見た場合に皆様方は何点の点数をつける法案になっている、こういうふうにお考えなのか、ちょっと率直なところをお聞かせいただきたいと思います。

古沢参考人 まず、今回の信託業法の改正に対してどういう評価をしているかということでありますが、先ほどの意見陳述で若干申し上げさせていただきましたけれども、幾つか敷衍してお答えをしたいと思います。

 まず第一に、受託可能財産の撤廃についてでありますけれども、信託業界におきましては、近年、資産の流動化が新たな業務として成長しておりまして、保有する資産を用いて資金調達をしたいという企業側のニーズと、許容できるリスクの範囲内で新たな投資手段を確保したいとする投資家のニーズとを充足するアレンジメント機能を磨いているところでありまして、本法案によってその対象資産に限定がなくなり、知的財産権を初めあらゆる財産についてそれを行うことができるという意味で非常に意義が大きい。

 第二に、信託会社形式での参入が認められることによりまして、新たな発想を持って信託制度を活用するプレーヤーが登場することとなりまして、信託業者間の切磋琢磨によって利用者利便が向上いたしますとともに、潜在的な信託制度に対するニーズの発掘が期待できる。また、銀行、証券、保険という隣接業態では、時代に適合した業法の改正がなされてきたところでありますが、本法案によって、信託の世界にもフェアなルールが導入されるということであります。

 第三に、信託契約代理業制度が認められまして、一般商業における顧客層に対して信託機能を容易に発揮できるようになる。また、信託受益権販売業制度の創設によって新たな投資家の発掘が可能となる。

 これらによりまして、縁遠い存在であった信託制度が身近なものとなりまして、社会に不可欠な制度として定着することが期待できるというふうに考えております。

 今回の法改正に関連して、どのくらいの点数をつけるのかということとか、あるいはまだ何かほかに必要なことがないかということであったかと思います。点数の問題はともかくといたしまして、先ほどもちょっと触れさせていただきましたように、一方で信託法を改正するという必要性がございますので、その信託法の改正と相まって完全な形になるものというふうに思っておりますが、とりあえずは段階的に改正を進めていくことが必要である、こういうふうに考えております。

山下委員 時間配分の範囲内で、神作参考人には後で聞きたいと思います。

 今の古沢参考人の御発言に加えてもう一点だけちょっと、せっかくの機会ですので。

 今お話にもございましたが、金融機関以外の信託業界への参入業者といいましょうか、新規参入が起こる可能性が出てくる、そういう意味でいうと、業界活性化につながる、そういう見方もできるか、こう思います。従来信託業を担ってこられた協会の皆様方からすると、言ってみれば新たなビジネスチャンスというふうに受け取ることもできると思うわけでございますが、この法律ができ上がった後、どのような状況の変化を受けて、言ってみればどのような新しいビジネスモデルを展開していかれることになるのか、あるいはまた、新たな飛躍のためにどのような挑戦をしていこうと思っておられるのか、もし何かお考えがあったらちょっとお聞かせをいただきたいと思います。

古沢参考人 まず、今回の法律の改正によりまして、いわゆる知的財産権の流動化、こういうものの必要性が近年指摘されておるわけでありますが、これには二つの意味があるというふうに理解をしております。

 つまり、一つには、権利者が資金調達ができて、そのアイデアの独自性や表現の創造性の対価を容易に得られるということになりまして、知的財産権に真の意味でのインセンティブを付与できる。もう一つは、権利自体の価値が市場で決定されるということで、その権利を担保とした資金調達が容易となりまして、例えば製品化のための資金確保が可能となるということであります。

 ただ、信託銀行の方は、投資家層や投資商品化するためのノウハウは有しておりますけれども、知的財産権の内容に対する理解であるとか、あるいは知的財産権の利用者のマーケットに関する知識は乏しいということでありますので、知的財産権に関しては、本法案を本当に活用していくためには、知的財産権を保有している者、新たな市場を創設する能力やアイデアを有している者等と連携して、試行錯誤を行いながらこれを普及させていくということではないかというふうに思っております。

 それからもう一つ、知的財産権以外に、私どもにとりまして今回の改正の中で非常に意味が大きいというふうに思っておりますのは、信託の代理店の制度でございます。これは、私どもの場合には、普通の銀行と違いまして店舗の数にかなり差があるということでありまして、信託の制度をより普及させていくためにはこれを積極的に活用したい、このように考えております。

 以上でございます。

山下委員 ありがとうございました。

 次に、神作参考人にお伺いをしたいと思います。

 神作先生は、先ほどちょっと申し上げました金融審議会の中に設けられた信託に関するワーキンググループのメンバーを務めていらっしゃった、こう伺っております。特に先生には、今回の改正案において、委託者あるいは受益者保護の観点から、信託会社の参入規制、参入基準、あるいはまたさまざまな行為規制について規定が設けられておりますが、本法案の中で規定されているこうした保護規定というのは、ほかの、例えば銀行法でございますとか保険業法、証券業法、その他の金融関係の法律の中での規定ぶりに比しまして、そういう保護の面で適切かつ十分なものというふうにお考えかどうか、先生のお考えをまずお聞きしたいと思います。

神作参考人 お答えさせていただきます。

 今回の信託業法の改正法案における受益者保護のための規律が受益者保護にとって真に十分なものとなっているかどうか、そして金融機関一般の規律に比較して信託の特殊性があるかどうか、この二点の御質問であったかと存じます。

 まず、前者の点でございますけれども、受益者保護の確保、これは意見陳述の中でも述べさせていただきましたように、とりわけ重要なポイントであると考えております。

 我が国の信託の歴史をひもといてみますと、当初、大正時代に信託会社がいわば乱立され、非常に不健全な経営を行うものもあった。それが社会問題化し、業法的な規制がかぶせられるとともに、できるだけそういった信託会社を銀行ないし金融機関に限定していこう、こういう動きがあったわけでございます。今回の改正提案は、表面から見ますと昔に戻るということを提案しているわけですけれども、昔のような、それによって信託会社が不健全な経営を行う、それによって受益者を害するというようなことが行われることはできる限り防止する必要があるわけでございます。

 ただ、そうは申しましても、まず第一に述べさせていただきたいことは、信託の受託可能財産が拡大し、また信託会社となるものの範囲が広がることによって、投資家としてはさまざまな信託商品を入手するチャンスが得られる、それによって受益者にとって選択肢が拡大する、まずこういう大きなメリットがあるということは指摘すべきではないかと思います。

 ただ、その上で、そういった信託商品によって受益者が不当に害されることがないよう十分な規律を置く必要があるわけでございますけれども、第二点の御質問と絡みますけれども、とりわけ信託におきましては、受託者に財産処分の権限があるのみならず名義まで移ってしまっておるという特色がございますので、その点も十分に加味して、忠実義務、利益相反行為の規制を初めとする、いわば高度の専門家責任が課されているものと理解しております。

 レジュメにも書かせていただいておりますけれども、レジュメの二ページ目の6の(2)のところでございますけれども、受託者の行為規制につき勧誘規制と行為規制とに分けまして、勧誘段階では説明義務及び不当勧誘の禁止等、また行為準則としては、財産隔離機能を確保するための分別管理義務、忠実義務、善管注意義務、各種の情報提供義務、また受託者に任された業務を他人に委託する場合の責務、こういった問題について業法はきちんと手を打っているものと認識しております。

 ただ、最後にまた一言求めさせていただきたいことは、法で一応きちんと手当てがなされておりましても、エンフォースメント、それをいかに実現するかということが何より大切なことでございます。したがって、もしこの信託業法が改正されました暁には、エンフォースメントに対する十分な配慮が必要であるというふうに考えております。

 以上、私の意見を述べさせていただきました。

山下委員 ありがとうございました。

 時間が参りましたので終わりますが、お二人からは、今回のこの法案に関して非常に前向きの好意的なコメントがあって、早急に成立を望む、こういう趣旨の御発言だったかと思います。二人に心から感謝を申し上げまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

金田委員長 次に、中川正春君。

中川(正)委員 民主党の中川正春でございます。

 お二人の参考人には、ありがとうございました。ちょうど二十分ほどでありますが、もう少し、私自身、先ほどのお二人の説明の中でここと思うところを深掘りしてお話を聞いていきたいというふうに思っております。よろしくお願いします。

 まず最初に、神作参考人にお尋ねをしたいんですが、最後の方で今回は業法の改正で入り口であるということ、本来は、信託というのを日本でどのように発展させていくか、あるいは資産運用の手段あるいは金融手段、あるいはまた、もう少し後でまた聞いていきたいと思うんですが、ほかの分野での活用ということも含めて考えていきたいという流れがあるんだろうと思うんですが、そうした流れの中で今、信託法自体の何が問題になっていて、方向性として具体的にどこをどのような形で改正していこうとしているのかということ。この大枠のところから、もう少し具体的にお話をいただけませんでしょうか。

神作参考人 お答えさせていただきます。

 現在、法制審議会信託法部会において行われている信託法改正の議論の方向性についての御質問であったかと存じます。幾つか論点があると存じますけれども、私が認識しております主要な問題点は、以下のような点ではないかと思っております。

 まず第一は、現行の信託法は非常に強行法規が多いと言われております。強行法規と申しますのは、信託契約を初めとして、当事者間の合意によっては変えることができない、そういったルールが非常に多いと言われております。ところが、この強行法規が信託の自由な発展あるいは柔軟な活用を阻害している面がある。確かに、この強行規定は専ら受益者保護という観点から設けられたものが多いので、それなりに根拠はあるわけです。しかし、逆に受益者保護が形式的な受益者保護に走ってしまう結果となっており、より実質的な受益者保護を図るためには、むしろ信託法を柔軟化、任意法規化していくことが必要である。私の理解では、信託法改正の第一の大きな方向性は、任意法規化という流れであると思います。

 そして、これは先ほどの私の意見陳述の中でも申し述べました、受託者が専門的な知識やノウハウを生かしてさまざまな技術あるいは手法を開発していくということを積極的に私法上も後押ししていく、そういった改正になるものではないかと考えております。

 二点目は、しかし、それでは任意法規化を全く自由に進めていいのか。先ほど来申し上げておりますように、信託というのは本来、第三者、他人のための制度でございます。そして、その他人のために受託者が専門的な知識経験等を駆使し、受託者の名義のもとにその財産管理処分権を最大限発揮しながら受益者の利益を実現する、このような制度でありますので、任意法規化を進める場合にも受益者保護という観点からそれを進める必要がある。

 例えば、現行の信託法の二十二条は、非常に厳格な自己取引の禁止を定めております。これは、裁判所に持っていかなければその禁止を解除できないというのが現行法の規律となっております。しかし、自己取引、利益相反取引の中にも、受益者の利益となるようなタイプの取引も含まれているはずであります。したがって、任意法規化の場合にも、例えば利益相反行為について、受益者に、どういう取引をどういう理由で行おうとしているのか、その理由を開示した上で受益者の承認を得る、そのような形で受益者の関与を進めていくといった方向での改正が第二点のポイントではないかと考えております。

 それから、第三点目のポイントといたしましては、これまで現行の信託法では余り規律が十分でなかった、あるいはほとんど置かれていない、例えば信託契約の変更ですとか信託の併合、あるいは信託の分割。このように、信託をむしろ積極的にさらに展開していくための法的な基礎を与える、そういう方向での改正が第三番目の大きな柱ではないかというふうに理解しております。

 非常に簡単な話ではございますが、以上でございます。

中川(正)委員 なかなか難しい話で、私自身ももう一つ整理することができないんですが。

 一つ典型的に、さっきの流れに対して、今問題として出てきておる、例えばプライベートバンキングですね。さっきのお話で、トータルで考えていくと、もう少しやわらかく受託者が運用できるような方向でいこうというのは一つの流れだというふうに私自身は聞き取ったんです。ところが、今、例えばスイスあたりで始まったような形のプライベートバンキングが日本に来て、シティであれだけ問題を起こして、かつその中で行われていたこと、それは銀行業の業法の違反というのもたくさんあったんだろうと思うんですが、それを乗り越えて、それこそ柔軟に活用していくという前提がプライベートバンキングにあるんだろうというふうに思うんですね。

 これはお二人に聞きたいんですが、このプライベートバンキングの定義というものはどういうものなのかということと、柔軟にしていったときに、今回のような形で、もともとは、証券だとか不動産だとかそれぞれと、金融という、銀行、金を貸し出すとかというのがファイアウオールがあって、そのファイアウオールをつくっておかないとさまざまな形で利益相反が起こりますよということでコントロールしてきたのを、これからは全部取り払っていきますよ、取り払っていって、その中で縦横に資産運用というのをやっていく、その中で信託という手法を使ってそれを可能にしていくとかというふうなことであるとすれば、その前提になるルールというのをどうつくっていったらいいのかなというのは、私もまださっぱりのみ込めてこないのですね。

 そこのところを含めて、業界として、このプライベートバンキング、どのようにとらえておられるのか。神作先生の方からも改めてお話を聞かせていただければと思います。

古沢参考人 まず、プライベートバンキングというものは一体どういうものであるかということでありますが、私どもとしては、一般的には、プライベートバンキングというのは、富裕個人顧客との間で、保有する資産の有効活用や相続対策を個別に提案するという業務である、こういうふうに理解をしておりまして、信託はそのような提案における一つの機能を担うというふうに考えております。したがいまして、プライベートバンキングというのは信託銀行だけが行っているものではありませんで、証券会社であるとかそういうところも同じような機能を果たしているのかなというふうには考えております。

 一方で、そういうものを取り扱う上でいろいろな受益者の保護あるいはリスクの管理、そういうものをどうやっていくかということでありますが、これは取り扱う信託財産の種類や予定されている財産の管理処分の方法に照らして、一つは適切な人材配置をするということと、また市場調査体制などのインフラの整備が前提となるということであります。その上で、信託財産の管理運用を担当する部門と、一方で法令遵守の管理、あるいは内部監査を担当する部門とが牽制関係にある体制が確保されるということが必要であると考えております。

 具体的には、忠実義務、分別管理義務などの受託者責任を果たさなかった場合に生ずるリスクを認識し、そのリスクが生じないための適切な社内ルールを策定し、そのルールの妥当性や遵守状況を監査部門が定期的にチェックする体制を整備している、こういうことであります。

 以上であります。

神作参考人 お答え申し上げます。

 私に対しましては、主として、先ほどから何度も問題となっております、信託の機能の拡大に伴って信託権限を乱用する者が出てくるのではないか、それに対してはいかなる規律があるべきか、そのような問題点の御指摘と承りました。繰り返し申し上げますように、その御指摘はまことにごもっともな御指摘で、信託法及び信託業法もその点について対処するということが最大の課題になると理解しております。

 受託者に対しましては、善管注意義務及び忠実義務、英語ではフィデューシャリーデューティーと言われておりますけれども、このような高度な義務を一般的に課した上で、もしそれを逃れるあるいは免除するという場合には、信託契約の中でそれをきちんと書いておいたり、あるいは受益者に説明をして、受益者から承認を得た上でそういった行為を行う、このように一般的な信任義務と言われる義務を課した上で、個別的、具体的に解除をしていくという方向でルールをつくるのが適切であると考えております。さらに、業法におきましては、受益者保護の観点から、場合によっては一定の制約、さらなる行為準則の明確化、具体化あるいは厳格化、こういったものが期待される局面もあろうかと存じます。

 また、先ほどエンフォースメントのお話を申し上げましたけれども、信託における健全な発展、これを確保するためには、受託者の信任義務が確実にエンフォースされるということが必要でございます。

 そして、このエンフォースメントのためには、監督法が重要な役割を果たす、業者が監督ルール、業者ルールをきちんと遵守しているかどうか、監督官庁、当局がきちんとウオッチし、違反に対しては厳しく摘発し是正していくということが必要であることはもちろんでございますけれども、監督当局のみならず、受益者、委託者を初めとし信託の関係者が私的部門において、例えば受託者に対して民事訴訟を起こす、裁判所が信託法の解釈を通じてそれを実現していくというようなことももちろん重要なエンフォースメントのための手段でございます。そのほか、金融資本市場の分野におきましては、マーケットの存在自体が非常に受託者の行為に対する一種の規律をかける役割を果たすということも期待されます。

 このように、監督法、私法、それからマーケット、こういったものの力を総動員しながら、受託者に対する行為規範が適切に課され、かつそれが遵守されるように確保していくことが重要な課題であると考えております

 以上でございます。

中川(正)委員 先ほどのエンフォースメントということをさらに進めていって、普通はセーフティーネットという考え方でいくと、そのエンフォースメントがすべて一〇〇%完成すればセーフティーネットは要らないのでしょうけれども、どの業界でもそれがなされるということがないから、一〇〇%達成できないからいろいろな仕組みでセーフティーネットを考えていくわけですが。

 今回の場合、新規参入があって、金融関係だけではなくてさまざまな業態の中で受託者が含まれてくるという可能性もあるわけですね。そうすると、それぞれ預かり資産や何かを別に管理をしていくといっても、それが破綻したときに、そうなっていなかった、資産が消えていたというふうな場合も出てくるわけだと思うんですね。それはどの業態でもそういうことを想定して、いろいろな基金であるとかあるいは安全パイを組むんですが、この業界の場合にはたしか供託金しかなかったと思うんですよね。

 それで、古沢参考人に改めてお聞きをしたいんですが、こうして兼営ということだけじゃなくて個別の新しい業態が入ってきてさまざまにこれが発展していくとなると、そうした、業界としても新しいセーフティーネットをつくっていくということが必要なんではないかというふうに私たちは思うんですが、そこのところはどうですか、どのような考え方をお持ちですか。

古沢参考人 まずは、新規参入者に対しては、新規参入者としての適格の要件というのが幾つか定められるということになると思いますので、その上でのチェックが一つかかるのかなというふうに考えております。その上で、適正なる行政の監督ということと、それから、業を行う者については、当然のことながらきちんとした財産についての分別管理をやっていく、そういうものをやっていく上でのいろいろな体制整備もきちんとしていく。そういうものが遵守されていれば、セーフティーネットの必要性はないのではないかというふうに私は考えております。

 以上でございます。

中川(正)委員 そこのところは監督官庁とも議論していかなきゃいけないところだと思うんですが、私はそれは必要だというふうに思います。信託だけ特別、供託で済ませるというのは、これは間違っているというふうに思います。そこのところ、これは議論じゃないんですが、指摘をしておきたいというふうに思います。

 それから、もう一つ御意見を聞かせていただきたいんです。金融という分野で業態を発展させていくということ、それからもう一つはTLOのような新しい商品開発ができるような分野に持っていこうとすること、これは読めてくるんですが、もう一つ、一般的に我々の生活の中であるのは、例えば、御老人がある程度財産を託して、おれおれ詐欺なんかにやられないようにちょっと運用してもらったらいいじゃないかというふうなことから始まって、遺言の中でそういうものを達成していったり、あるいは社会福祉法人がそういうような担い手として立ち上げていったり、そういう分野での信託という考え方の活用というものがもう一つあるんだろうと思うんですね。

 それについて、古沢参考人に一つお聞きしたいのは、これが業態として成り立っていくかどうかという、専門家の観点から御意見をいただきたいのと、それから神作参考人には、さっきの全体の信託を組み立てるときに、そうした分野への活用ということは当然あっていいと思うんですが、どうして出てこないのかということですね。そこのところをお聞きしたいと思います。

古沢参考人 先生から御指摘をいただきましたように、高齢者の方々が例えば持っておりますような不動産を受託する、それを有効活用するというようなことについては、今後社会的なニーズも大変高まってくるというふうに考えておりまして、私どもも前向きにこれについては検討を加えていきたいというふうに考えております。

 それから、私どもで、そういう福祉関連の信託というような意味では、例えば、障害をお持ちの子供さんに対して財産を拠出するというようなことで税法上の恩典もあります特定贈与信託という商品がございますけれども、残念ながら今のところはまだ全体の受託残高の規模は多くございませんで、約三百億弱というような規模でございます。

 ただ、確かに、経済、社会の高度化、成熟化、あるいはいわゆる高齢者の方々がふえていくという社会環境の中にあっては、先生がおっしゃるような問題については、私ども業界としても前向きに受けとめていろいろなことを考えていきたいというふうに思います。

 以上でございます。

神作参考人 お答えいたします。

 私に対する御質問は、先生が御指摘になられましたような信託の使われ方を、学問におきましては民事信託と称しておりまして、金融等の分野で使われる信託を商事信託と称しております、我が国では商事信託の分野で信託が主として活用されているのに、民事信託の分野では信託の活用が目立っていないのはどうしてか、そのような御質問であったかと思います。

 まず第一の理由は、沿革的な理由、これを指摘せざるを得ないと思います。

 御意見の中で申し上げましたように、我が国で信託制度が導入された最初のきっかけは、担保付社債信託という社債の発行、やはりコーポレートファイナンスの分野において信託が初めて導入されたわけでございます。その後、政策もあり、信託をむしろ金融機関に担わせようといった政策がとられてきたこともありまして、我が国においては主として金融の分野で信託が用いられてきた。これが第一のお答えでございます。

 第二に、これも意見陳述の中で申し述べさせていただきましたように、信託の機能がとりわけ金融に適しているということは指摘できるかと思います。財産権に対する権利を受益権という形に転換し、さらに受益権の内容を自由にアレンジすることができる、これはキャッシュフローを自由にアレンジするという金融の手法、ツールとして用いるのに極めて適した法形式であったわけであります。しかし、英米を見回せば、民事信託の分野における信託の利用も非常に活発に行われているわけでございます。

 これについて法制的な問題点を一点だけ御指摘させていただきたいと思いますけれども、信託法によって相続法の規律がいわば回避されてしまうということに対する問題点があるのではないかというふうに理解しております。したがって、民事信託の分野における信託の利用におきましては、相続法、あるいは後見人制度等、さまざまに既に存在しております民事上の法制度との調整、これが必要になると理解しております。

 以上、簡単ではございますが、お答えさせていただきました。

中川(正)委員 時間が来たようでございます。ありがとうございました。

金田委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 お二人の参考人には、大変貴重な御意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございます。

 今度の信託業法の改正のポイントは、先ほどからお話がありましたように、一つは、信託の受託対象財産の制約を取り払って、信託の対象財産を広げていくというのが一つですね。それから、扱う業者として金融機関以外の参入も認めていくという、大変大きな改正だと思いますが、これによっていろいろな商品が生まれる、それから、新たに参入してくる業者も広がりますから、いろいろなトラブルが当然発生し得るわけでございます。

 したがって、これからの信託会社に問われるのは、一般投資家の保護、それから受託者責任、これをしっかり果たすということになるんだと思うんです。

 そこで、古沢参考人にお伺いします。

 例えば、一昨年、変額個人年金保険、十月から銀行での窓口販売を解禁しましたが、この際には銀行で担当する職員にかなりきちっとした研修を行ったというふうにお聞きしておりますけれども、当然、協会あるいは業界として、こういう新しい体制をつくっていくということになりますと、その商品の理解、従業員の、ルールをしっかり守る、そういう教育といいますか、これは大事になると思いますけれども、どのような方策をお考えになっておられるか、具体的にお伺いしたいと思います。

古沢参考人 今回、受託可能財産の範囲が拡大をするということとか、新規参入者が入ってくるということでありますので、業界、協会としても、そういう方々についてはどちらかというと門戸を広げて業界、協会の中に加盟をしていただきたいというふうに考えておりますが、あわせまして、やはり新しい方々に対して、先生御指摘のようないろんな意味での研修であるとか、そういうことを通じて、受益者保護といいますかそういうことがきちんと守られていくような、そういう研修活動みたいなものも今後検討していく必要があるのではないかというふうに考えております。

 以上でございます。

佐々木(憲)委員 今後検討されるということですので、しっかりその点はやっていただければと思います。

 それで、例えばトラブルが発生した場合の対応でございますけれども、現在、信託協会に信託相談所というのがあるそうですが、これから新しい体制になっていくわけですけれども、その場合に今までのようなやり方で果たして対応できるのかどうか、これが問われると思います。商品も非常にバラエティーに富んだものが生まれる、それから金融機関以外の業者がどんどん参入してくる。そうなりますと、想定し得ないようないろんなトラブルが発生することが想定されるわけですね。それに対応するものとして相談窓口のようなものがあったとしても、現在の状況ですと、一応受けて、それを関連する会社に紹介をして、相談をしてくださいよ、親切に対応してくださいよと言うことぐらいだと思うんです。そして、複雑な場合には弁護士にも頼むということだと思うんです。しかし、もっとこれは客観的なトラブルの解決というものが求められていくのではないか。

 したがいまして、業界対応をもう一歩踏み越えて、第三者的な性格を持ったそういう機関も必要になっていくのではないかと思うんですけれども、その点で、古沢参考人、神作参考人、それぞれお考えをお聞かせいただきたいと思います。

古沢参考人 現在、いわゆるお客様のいろんな紛争、トラブルに対する窓口といいますか、そういう面では信託協会の中に信託相談所というものを設けておりまして、そこでお客様と加盟会社との間の合意による問題の解決を目指して、できるだけ早期に解決をするというようなことで臨んでおりますが、先生御指摘のように、新しい参入者あるいは受託財産の可能範囲が広がるということになりますと、従来のような対応だけではちょっと不十分かなという感じもしておりまして、そういう意味では、信託相談所の担当職員に対する教育研修、こういうものももう少し高めていく必要があるかなというふうに考えております。

 以上、回答申し上げます。

神作参考人 お答えいたします。

 受託者の範囲の拡大あるいは信託引き受け可能財産の範囲の拡大等に伴って消費者からのさまざまなトラブルが出てくるのではないかという御指摘、まことにごもっともと存じます。

 信託を用いて金融商品等を販売した場合に、大きく三つのタイプのトラブルがあるのではないかと考えております。まず第一は、信託商品を販売する段階で生ずるトラブル。第二段階は、その信託商品の仕組み自体が問題である、それに起因して発生するトラブル。それから第三段階が、受託者の行為、業務、これが適切であったかどうかという点に起因して生ずる問題。こういった大きく三つに分けることができるかと存じますけれども、特に第一の、勧誘をめぐるトラブル、それから受託者が善管注意義務を果たしたかどうかということにつきましては、なかなか厳密な意味での立証責任を尽くすことが難しい。俗な言葉で申しますと、水かけ論に終わる可能性が非常に高いと考えております。そのような分野におきましては、裁判所において紛争を解決するのではなく、裁判手続外の紛争処理、これが非常に重要な役割を果たすことになるのではないかと考えております。

 したがいまして、このような観点から、消費者のトラブルを幾つかに類型化した上で、ADRに任せるようなものについては、ADRについてのさらに積極的な活用、その充実を図っていくということが必要ではないかと考えております。

 以上、簡単ではございますが、お答えさせていただきました。

佐々木(憲)委員 先ほど神作参考人が最後に意見陳述の中で述べられました、今回の改正はまだ一歩である、さらに改正が必要だというようなお話をされましたので、この法律上どういう部分をさらに改正が必要だというふうにお考えなのか、簡単にお聞かせいただきたいと思います。

神作参考人 お答えいたします。

 私法としての信託法の改正作業が現在進んでいるところでございますけれども、現在行われております信託業法の改正は、現行の信託法をベースにしたものである。逆に申しますと、業法というのは、やはり私法上の規律がどうなっているかということを無視して業法をつくるわけにはまいらないと理解しております。したがいまして、私法としての信託法が改正されましたら、恐らく信託業法の改正も不可避になる、そのように理解しているわけです。

 しかし、私は、意見陳述の中でも申し述べさせていただきましたように、非常に進展の速い金融の分野におきましては一刻の猶予もなく、できる限り速やかに、第一段階の改正だけでも早期に速やかに御審議いただくことが望ましいことではないかと考えている次第でございます。

佐々木(憲)委員 では、終わります。ありがとうございました。

金田委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 古沢参考人、神作参考人、委員会を代表してお礼を申し上げさせていただきます。

 本日は、御多用中のところこうやって貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。委員会を代表してお礼を申し上げます。ありがとうございます。

 参考人のお二方については御退席いただいて結構でございます。

    ―――――――――――――

金田委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局長増井喜一郎君、金融庁検査局長西原政雄君、金融庁監督局長佐藤隆文君、内閣府産業再生機構担当室長藤岡文七君、経済産業省大臣官房商務流通審議官迎陽一君、経済産業省経済産業政策局長北畑隆生君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

金田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中川正春君。

中川(正)委員 引き続き、質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、本題に入っていく前にというかそれと関連をしまして、先般からのシティバンクの不祥事といいますか、それぞれ支店の撤退、取り消し、特にプライベートバンキング部門というのをやめさせたという一連の経緯がございました。それについて話を進めていきたいというふうに思うんです。

 あの部門というのはどれぐらいの規模で、いわゆる顧客数あるいは残高等々、どのくらいの範疇でプライベートバンキングの営業をしていたのかということ、これからまずお聞きをしたいと思います。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 シティバンクでございますけれども、在日支店全体で二十三支店、それから十一の出張所で成っております。

 事業の規模ということで、十六年三月期の在日支店の年次報告というのがございますけれども、これによりますと、在日支店全体で総資産は七兆三千億円、預金残高は五兆二千億円、こういう規模でございます。

 それから、顧客の数でございますけれども、全体では九十万人程度というふうに銀行の方から聞いておりますけれども、このうちプライベートバンキング部門が具体的にどれくらいかということについては、銀行が公表しておりませんので差し控えさせていただきますが、このプライベートバンキング部門は三億円以上の純資産を有する富裕層を対象としているということでございますので、数の上ではかなり限定されるかなというふうに存じます。

中川(正)委員 今回の措置というのは、銀行の業務全体に対して営業停止をかけたわけじゃなくて、あるいは撤退ということを強要したわけじゃなくて、シティバンクの中のプライベートバンキング部門というものに撤退をさせたというふうに解釈しているんですが、それでいいんですか、大臣。

伊藤国務大臣 今御指摘があったとおりでございます。

中川(正)委員 だとすれば、さっきの話というのはおかしいと思うんですね。停止をかけた部分、撤退をさせた部分について、監督当局がどれが対象になっているかわからないというのがさっきの答弁だったと思うんですよ。そんなことではないでしょう。どうですか。

金田委員長 佐藤監督局長。(中川(正)委員「大臣、大臣、これは大臣が答えないと。統計じゃないんだから大臣ですよ、委員長」と呼ぶ)いや、後で伊藤金融大臣に。(中川(正)委員「いや、約束事なの。彼らとの約束事で、私が指名しない限りここに出てこないと。約束を破るの」と呼ぶ)

 佐藤監督局長。

佐藤政府参考人 恐れ入ります。委員長に御指名いただきましたので、一言申し上げます。(中川(正)委員「じゃ、これから参考人として呼ばないよ。そういう約束事なんだから」と呼ぶ)

金田委員長 どうぞ答弁してください。

佐藤政府参考人 可能な範囲で、私ども、できるだけ計数的な分野からプライベートバンキング部門のウエートというのをフォローしていきたいというふうに思っておりまして、お答えさせていただきますが、シティバンクの本部が米国において四半期ごとに公表しているレポートがございます。そこで日本におけるプライベートバンキング部門全体の損益状況というのが管理会計ベースで述べられておるわけでございますけれども、このプライベートバンキング部門の売り上げは、円換算いたしまして、二〇〇三年度、これはカレンダーイヤーでございますけれども、二百八十三億円、それから、税引き後利益が八十九億円ということになっております。

 他方で、シティバンク在日支店の全体の経常収益というのは千三百六十七億円、これは十六年度ということで四月―三月でございますけれども、こういう数字になっております。

 したがいまして、ベースが少し異なりますけれども、千三百六十七億円と二百八十三億円というのを比べますと、プライベートバンキング部門のウエートというのは、単純に割り算をしますと二割程度といった状況になっております。

伊藤国務大臣 今、監督局長からお答えをさせていただきました。それで、正確な数字につきましては、先ほどもお話をさせていただいておりますように、銀行の方から公表されておりませんので、そうした意味から私どもの方からコメントを差し控えさせていただいているところでございます。

中川(正)委員 いや、そういうことを聞いているんじゃなくて、私は、当局から説明を受けたときに、なぜ全体の撤退をさせないんだと。大和のときのように、不祥事が起こってアメリカから引き返してきたということがあったじゃないかということに対して、当局の説明は、今回の場合はそれぞれの業務形態があって、分社化されているというかカンパニー制度になっていて、それがプライベートバンキングという一つのカンパニーで運営をされていたと。そのプライベートバンキングのカンパニー自体の撤退ということに今回の意味合いがあるんだ、こういうふうに聞いたんですよ。それは正しいんでしょう。大臣、どうなんですか。

伊藤国務大臣 正確にお話をさせていただきますと、今回のシティバンク・エヌ・エイ在日支店に対する立入検査、そして報告徴求によって、公益を害する行為あるいは重大な法令違反が確認をされました。また、在日支店が行う証券業務において法令違反が認められたことから、九月十四日に証券取引等監視委員会から行政処分を求める勧告がなされ、これを受けて九月十七日に、在日支店のプライベートバンク部門の四拠点の認可の取り消し並びに個人金融本部の外貨預金業務に係る新顧客との取引というものを一カ月間業務停止する処分を含む行政処分を行ったということでございます。

中川(正)委員 ちゃんと問いに答えてください。私が説明した論理立てというのは、金融庁の中で議論されてやられたことなんですか、それとも違っているんですか。どっちなんですか。

伊藤国務大臣 ちょっと私、質問の趣旨をうまくとらえられていないのかもしれませんけれども、当然、私どもとすれば、検査と報告で確認された事実を、法令に基づいて今回のような厳正な処分をさせていただいたということであります。そういう意味からすれば、金融庁の中で当然こうした行政処分をさせていただいたということであります。

中川(正)委員 いや、もう一回話を聞いてください。そちらの当局から、どういう基準で今回の処分がなされたんですか。さっきのは基準の説明じゃないんですよ、大臣の説明は。経緯の説明なんです。

 私は、どういう基準でこの処分がなされたんですかとお聞きをしたら、当局の方から、これはそれぞれカンパニー制になっていて、シティバンクの中に三つほどのカンパニー制という制度があって、今回不祥事を起こしたのはその中のプライベートバンキングのカンパニーだ、そのところを撤退をさせたということが基準になっているんだ、その意図なんだ、このように説明があったんです。それで正しいのかどうかということを確認しているんですよ。

伊藤国務大臣 私どもが、先ほどお話をさせていただいておりますように、検査をさせていただいて報告徴求をし、そして、事実を確認して、その事実が重大な法令違反があった、そしてそれが悪質であった、そのことに基づいて、二十七条に基づいて今回の行政処分をさせていただいたということでございます。

中川(正)委員 そうすると、私が受けた説明というのは間違いなんですか。間違っているんですか。そういうことでなかったんですか。

伊藤国務大臣 先ほどから、ちょっと私の説明がうまくないのかもしれませんけれども、重大な法令違反が認められたというのは、これはプライベートバンク業務部門で行われた行為が重大な法令違反があって、そしてそれが悪質であった。そのことにかんがみて、今回、それにかかわる部門についての認可というものを取り消すという処分をさせていただいたということでございます。

中川(正)委員 そうすると、そのプライベートバンキング部門に対して、シティバンクはそうした業務をこれからはすることができないということなんですね。プライベートバンクに対して業務停止をかけたということですね。できないんですね。

伊藤国務大臣 今お話をさせていただいたように、それにかかわる四拠点についての認可の取り消しをするということは、これは事実上、免許取り消しと同じ意味合いであります。

中川(正)委員 だったら、そんな推察じゃなくて、事実関係を、どれぐらいのことをやっていたのかということは把握をしておくべきですよ。推察だけで、二度とプライベートバンキングしてはいけませんよと言うんだったら、どの部分がプライベートバンクの業務でやられていたのか、顧客がだれだったのか、こういうのをフォローして、後まで監督をしていくという義務があるでしょう。にもかかわらず、さっきのような答弁で済まされるというのは、そこの辺が中途半端であるし、かつ、話に一貫性がないんだ。

 そういう説明をすることによって、これからの、今度は法人あるいは日本の企業の参入に対してもある程度のルール化というのができてくるんだろうというふうに思うんです。大事なところですから、もう一度これはしっかりフォローするという話をしてください。大臣だよ、大臣。

伊藤国務大臣 今回の行政処分に当たって、具体的にどういうことがあったのか、私たちが情報開示できる範囲内で今回の内容については明らかにさせていただいたところでございますけれども、細かい内容すべてについては、今後の検査一般に与える影響がありますので、銀行が情報開示をしている範囲内で先ほどお話をさせていただいたところでございます。

 ただ、私どもとして、今委員が指摘をされたように、しっかりとしたフォローアップが求められているわけであります。今回の重大な法令違反をした内容、そして、その中をしっかり洗い出して適切な措置をしていかなければいけないわけでありますから、そのフォローアップについては、委員の御指摘をまつまでもなく、厳正に対処をしていきたいというふうに思っております。

中川(正)委員 そのように大臣に言っていただいたわけでありますから、統計上に推察をするんじゃなくて、具体的にどれだけプライベートバンキングがあったのか、顧客数、固定した中でそれがどのように措置をされていくかということ、シティバンクの中で。それぞれのお客さん、全部これは手放さなきゃいけないわけですから、それを改めてフォローした時点でこの委員会に報告をしていただきたい、そのことを改めて確認しておきます。

伊藤国務大臣 私どもとしては、委員から御指摘ありましたように、これはしっかりフォローアップしていくということは監督上大変重要なことでありますので、フォローアップをしっかりやっていきたいというふうに思っております。

中川(正)委員 ちゃんとこちらに報告してくれますね。

金田委員長 佐藤監督局長。(中川(正)委員「言ってない。大臣だ」と呼ぶ)事務的な話だから。(中川(正)委員「いや、事務的じゃないですよ。これは政治判断です」と呼ぶ)佐藤局長。(中川(正)委員「もう参考人は要らないよ。出なさい」と呼び、その他発言する者あり)

 いいですか。伊藤金融大臣。

伊藤国務大臣 まず重要なことは、私どもが厳正にフォローアップをしていくということでありますので、そうした中で御質問をさらにいただくことになれば、その中で私どもとしてやれる情報開示というものをしていきたいというふうに思っております。

 ただ、御理解をいただきたいのは、情報開示をするに当たって、今後の検査や、検査一般に与える影響というものがございますので、その辺は勘案をしていかなければいけない部分があります。そうしたことを踏まえて、私どもとしてできる限りの情報開示というものを行っていきたいというふうに思っております。

中川(正)委員 私がこれにこだわるのは、この後の質問にかかわってくるわけですが、そのプライベートバンキングの定義そのものもはっきり日本の中でしていないということ。それからもう一つは、この中に現在議論をしている信託というスキームが入り乱れていて、それを恐らく全体としてどう整理していくかということにもかかわってくるんだろうと思うんです。そこはグレーゾーンというか、これまで想定をして本当は整理しておかなきゃいけないところなんだろうと思うんですが、急遽こういう形でプライベートバンクというスキームが入ってきて、それが日本の中で法的にも社会的にもちゃんと定着をしていないというか、定義をされてそうした営業形態としてやられていない中で、それぞれが勝手に自分の解釈で進んでいったということ、そんな問題があるんだろうというふうに私は思うんですよ。

 だからこそ、この入り口のところで物事をはっきりさせておいて、恐らく、このプライベートバンクという業態、三億以上のお金持ちをお客さんにしてやるというのは、それは銀行サイドの勝手な定義でありまして、監督官庁サイドの定義というのはまた違うんだろうと思うんですよね。その中の業態をどう見ていくかということがあるんだろうと思う。それをきっかけとしてちゃんとした整理をしていくという意味でも、我々もぜひ議論に入っていかなければいけないと思っておりますし、それだけにこの問題の整理の情報開示というのが大事だというふうに思っているんです。

 ですから、勝手に聞いてくれというふうな話をせずに、ちゃんと結果は国会にも我々にも見せていただくということにしてください。

伊藤国務大臣 情報開示の重要性については、私もこの点についてはよく理解をしているつもりであります。なぜ少し慎重にお話をさせていただいているかというと、先ほどお話をさせていただいたように、今後の検査一般の実効性に与える影響というものがあるものですから、そこに私どもとしても留意をしながら、できる限りの情報開示をしていくために、しっかりとしたフォローアップも必要でありますので、そうしたことをさせていただきながら、国会の皆様方の情報開示に対する要望にこたえていきたいというふうに思っております。

中川(正)委員 こんな入り口の問題で時間をとっているとあとの質問ができなくなりますが、そのことでちゃんと開示をしていただくという解釈をさせていただいて、次に進みます。

 もう少しこのプライベートバンキングをやっていきたいと思うんですが、今、監督官庁レベルでのプライベートバンキングの定義というのはどうなっているんですか。これはどういうものなんですか。

伊藤国務大臣 プライベートバンキングの定義というのは、これは大変難しいものがございまして、各金融機関においても富裕者層をどういうふうにイメージしているかというのは、これはそれぞれ別々であります。

 監督官庁としてというお話がございましたが、法律上の定義はございません。一般的に、プライベートバンキング業務あるいはウエルスマネジメント業務などの名称の業務部門を各金融機関が立ち上げて、そして、特定顧客、金融資産を一定以上有する富裕層などをターゲットに、預金、この中には外貨預金も入ります、貸し金、投資信託、変額保険、そして私募債、仕組み債、デリバティブ関連取引など、多様化する富裕層の資金運用ニーズに対応するため、あらゆる金融商品の販売及び資産管理サービスを提供しようとする業務であるというふうに考えております。

中川(正)委員 シティが撤退をしていく、あるいは、外資というのはそれなりに今苦労しておるようでありますが、いろいろなレポートを読むと、それにかわって、日本の、いわゆる邦銀の方がこのプライベートバンキングに対して参入をしていく流れがあって、それがそれぞれ投資家の方に対しても非常に強い働きかけとなって今展開をされているというふうにそれぞれレポートとしてはあります。それだけに、それなりの定義づけが法的にも必要なんだろうと思うんですが、それはどう思われるかということ。

 それから、もう一つは、信託とプライベートバンキングとの違いというか、ここのところをどういうふうに整理をされていくのか。今、何かここはグレーゾーンみたいなもので、銀行が窓口になってやったときにはファイアウオールがずっと乗り越えられていて、昔あったですよね、バブルのころには追い貸ししてゴルフの会員権を買わせたりあるいは土地を買わせたりというふうな話が過去にあったわけですよね。そんなことがシティバンクのさまざまな、こんなことをやりましたよという話の中にも出てきて、その辺の整理をどこかでやっていかなきゃいけないということがあるんだろうと思うんです。このまま邦銀がずっとコミットしていったときに、またどんな処分をするのかという話の中で、シティバンクの一つの例というのがもとになるんだろうというふうに思うんですが、そういう意味での法的な整理というのはどう考えておられますか。

伊藤国務大臣 プライベートバンキングの定義というものを明確にがっちりしていくというのは、これはなかなか難しいところがあるんではないかというふうに思います。先ほども参考人の先生方と委員が御質疑をされたのを私も聞いておりましたけれども、基本的には、多様化する富裕層の資産運用のニーズに対応するために、あらゆる金融商品の販売及びポートフォリオ管理サービスを提供しよう、こういう業だというふうに私どもの方としては認識をしております。

 他方、信託業務についてのお尋ねがございました。信託業務については、顧客の委託を受けるあらゆる金融資産の運用を行うサービスを提供したり、投資信託といった商品を提供するなど、多様化する富裕層のニーズへの対応といった観点においては、これはプライベートバンキングの業務と同様な機能を有しているというふうに思っております。

 しかしながら、プライベートバンキングは、あくまでも銀行、証券会社等の金融機関の業務の一部として法令で定められる業務の範囲の中で各金融機関の創意工夫のもとで行われているものであり、当局が具体的な定義を定める性格のものではないんではないかと私どもは基本的に考えているところでございます。

 いずれにいたしましても、グレーで、その部分をしっかりしないと投資家保護の観点からも問題があるのではないかという御指摘ではございましたけれども、おのおののサービスについては関連法規がございます。銀行法、そして証券取引法、信託業法、保険業法、投資信託法、多岐にわたっておるわけでありますけれども、その関連法規にのっとって、各金融機関においては法令遵守のための社内規則の整備、そして経営管理体制の整備が求められるのではないかというふうに考えております。

中川(正)委員 まさに問題はそこなんですよね。昔は、銀行は銀行業務、証券は証券業務、こういうことだったわけですが、こういうプライベートバンキングなり、あるいは信託業法で今回いろんな新しい、いわゆる組成といいますか商品も出てくる。あるいはその担い手も出てくる。こういう形になって、それぞれが乗り合いしながら進んでいく中で、さっきのような、縦割りの業法で整備をしていますよという話は、これは役所だけに通じる話であって、いわゆる投資家の方から見たら、業界が勝手にプライベートバンキングという名前をつけたけれども、これは会社によってあるいはその担い手によって中身が全然違うという話なんですよ。こんな危ない話はない。だから、リスクも当然違ってくるんだろうけれども。

 そういう意味合いでの横断的な、ということは、もっと言えば、投資家の立場に立った横断的な一つのルールづくりというのが必要になってきたということなんだろうと思うんですよね。だから、日本の業態の中でそこを考えていかなきゃならないというのは、もうこれまであちこちで指摘があって、その話を十分に大臣も問題点としては理解していただいておるんだろうというふうに思うんです。いつからやりますか。

伊藤国務大臣 まず基本は、それぞれの金融商品あるいはサービスについては関係の法規がございますので、その関係法規に基づいて、金融機関あるいは証券会社がしっかりとした対応をしていく、そのための体制整備をしていくということが基本であるというふうに思っております。そして、委員が御指摘のように、新しい金融商品が開発をされていく、そして多様なサービスが行われていく、それに合わせた利用者保護というものもそのレベルに応じてしっかりやっていかなければいけない、これは委員の御指摘のとおりだというふうに思っております。

 金融審議会においても、そうした問題意識をもとに今議論がなされておりますので、また私どもとしても、そうした今の多様化する金融商品あるいはサービスの流れに応じたさまざまな施策というものも今日まで行わせていただいてきたところであります。こうした問題意識をしっかり持ちながら、これからも対応をしていきたい、努力を重ねていきたいというふうに思っております。

中川(正)委員 これは指摘だけしておきます。

 これは衆議院の調査室から出てきた今回の法令に関する資料の中に、それぞれの業態によって投資家保護がどういう形になっているかというのが一覧表にしてあるものなんですね。保険業法、証券取引法、投資信託法、先物、顧問業法、商品ファンド法、特定債権法、これは全部横書きにしてある。こういう一覧表を見ていても、やはり相当違うんですね、それぞれの業態によって、商品によって。ところが、それがリスクとの関係で整合性があるかというと、またこれも違うんですね。どうもここに矛盾がある、あっちに矛盾があるという話が出てくる。

 だから、我々民主党がかねてから何回も何回も指摘しているように、金融サービス法ですね、横並びで、消費者にとっては、あるいは投資家にとっては、しっかりとその辺の問題点といいますか、その辺の規範というのがわかるというような法律体系というのを考えていく必要がある、このことを改めてこの問題でも指摘をしながら、次の問題に移っていきたいというふうに思っています。

 これは早いところやってください、プライベートバンキングなんていうのはどんどん今広がっているわけですから。そういう意味では、時間の問題です。かねてから、いろんなレポートを見ていると、いや、これはシティバンクだけじゃないよ、あっちでもこっちでも、具体的にはこんなことをやっているというのはどんどん出ているわけですから。そういう意味で、改めてこの問題点を指摘しておきたいというふうに思います。

 それから、この法案についてまず最初に聞きたいのは、セーフティーネットがどうなっているかということですね。これについて答えてください。

伊藤国務大臣 セーフティーネットについてのお尋ねがありました。

 まず基本的には、先ほどの参考人質疑でもありましたように、私どもとして、信託業の担い手の拡大あるいは受託可能財産の範囲の拡大というものをしてきているわけでありますので、信託業を担われる方の参入基準のところにおいてしっかり見ていくということが重要でありますし、また、行為規制を設けさせていただいて、問題が起きないように、投資家保護の観点から、受益者保護の観点から、しっかりとした対応をしていくということが大変肝要ではないかというふうに思っております。

 御指摘のようなセーフティーネットについてもう少し詳しくお話をさせていただくと、信託会社や信託受益権販売業者については一定金額の供託を求めることになっておりますので、これに対する優先弁済権を認める営業保証金制度を採用しているところでございます。そして、信託契約代理店については、一定の場合を除いて、信託契約代理店が行った信託契約の締結の代理等について、これは所属の信託会社が顧客の損害を賠償する責めに任ずる、所属信託会社の損害賠償責任が第八十五条によって定められているところでございます。

    〔委員長退席、遠藤(利)委員長代理着席〕

中川(正)委員 供託で何%ぐらい返ってくるんですか。

伊藤国務大臣 これは分配率に応じるということになります。

 それで、先ほどお話をさせていただいた営業保証金の金額においては、これは政令において定めさせていただきたいというふうに思っておりますが、今現在、運用型信託会社については大体二千五百万、委託型信託会社については一千万、信託受益権販売業者については一千万とすることを一つの水準と考えておりますけれども、この点についてもパブリックコメントに付させていただいて、広く意見を聴取させていただいて、それを踏まえて判断をしていきたいというふうに考えております。

中川(正)委員 それはセーフティーネットというレベルじゃないんだと思うんですよね。

 日本の行政というのは、前から指摘されているように、法律をつくる、あるいは規則、規範をつくる、それを行政指導で徹底させていって業界を従わせる、それによって消費者あるいは投資家の保護にもつながっていくという、それでいいんだという形だったんだろうと思うんですが、それがこのまま残っているんですよね、この業法の中に。

 しかし、基本的には、幾らそれでファイアウオールをつくって、それぞれ信託金は別に管理しなければいけませんよとかいうふうなことを言っていても、それは、法を破って、つぶれたときには何もなかったというのは確実に出てくるわけですよね。破綻というのはそういう種類のものなんだろうと思うんですよ。

 だから、銀行を考えていく場合でも、そうしたことを前提にして、いわゆる預金保険制度というふうなものがつくられて、お互い業界として互助で、あるいはそれに監督官庁も入って制度化をしてトータルでセーフティーネットをつくっていく、そういうふうな流れなんだろうと思うんです。それは、これまでの日本の行政の流れと違ったというか、そういう形にしていかないと、今の業界が立ち行かないぐらいのリスクがそれぞれあるというふうなことなんだろうと思うんです。

 同じようなことがこの信託でも言えるんだろうと。それとも、これはそういうようなものをしつらえていない、あるいは新しいプレーヤーがどんどんどんどん入ってくるという想定があるんだとすれば、そのプレーヤーも、今の銀行よりも安全なというか安定したところだけを想定しているわけじゃないんだろうと思うんです。さまざまな流れを許容していくという、胸を開いたんだろうというふうに思うんですよね。それだけに、そこの部分をなぶらないで従来型でいくという考え方は、これは間違っているんじゃないかという指摘をしておきたいと思いますが、どうですか、大臣。

伊藤国務大臣 委員からは大変重要な指摘を受けたというふうに思っております。だからこそ、信託業を担う方については、財務の健全性というものを確保していく、また業務の適切性というものを確保していくことが非常に重要でありますし、この信託については、分別管理をしていくということが非常に重要なことではないかというふうに思います。そして、ディスクロージャーということも非常に大切な問題だというふうに考えているところであります。

 こうしたものを整備しながら、セーフティーネットについても御指摘がございましたけれども、実施状況を踏まえて、必要に応じて私どもとしても検討していきたいというふうに思っております。

中川(正)委員 こうした形でプレーヤーをふやしていくきっかけにこういう仕組みもあわせて出してくるということ、これが本来の投資者保護あるいは消費者保護ということになってくるんだろうと思うので、そこのところを一つ指摘しておきたいというふうに思います。

 次に、プレーヤーをふやしたわけですが、今想定している新規参入というのはどういう分野、これまでは金融機関だけが兼営という形でこの分野でやってきたということなんですが、新しくどの分野がこれに参入してくるというふうに想定をしておられますか。

伊藤国務大臣 私どもとしましては、この信託業については幅広い業態から参入をしていただきたい、そういうふうに期待をしているところでありまして、その中において、例えば、非常に要望の強い知的財産権や不動産の管理、資金調達のための流動化、中小企業貸し出しの担い手となることを目的としたもの、こうしたものが考えられるのではないかというふうに思っております。このために、受託可能財産の範囲を拡大して、そして信託業の担い手の拡大のための必要な法整備を行うこととしておりまして、多様なノウハウを有する方が信託業に参入していただくことを期待しているところでございます。

中川(正)委員 それは、例えば業態でいえば、不動産業を営む人たちが個別会社、子会社をつくってやるということであったり、あるいは兼営でやるということであったりということなんかも想定されているわけですか。例えば、そういう意味では、不動産、それから証券先物取引等々、金融業態ではさまざまにあるわけですね。こういうところが参入をしてくる。

 よく言われるのは、一般の大手の製造会社や何かが子会社をつくって自分の資産の運用をする、あるいは年金の運用をするとかいうふうな想定はわかりますよ、これはこれでいいんです。そういうことじゃなくて、今業態がさまざまにあって、金融という部分あるいは不動産という部分で活動をしている、そういうところがこの業界に入ってきてトータルでやっていくということも想定されているんですか。そういうところに対しても免許を出す、あるいは登録してもらって結構ですよという想定になっているんですか。

伊藤国務大臣 これは、多様なニーズにこたえていくためには、多様なノウハウを持っている方々に信託業の担い手として参入をしていただくということは非常に大切なことではないかというふうに思っております。ですから、先生が御指摘になられた、事業会社の方だけではなくて金融機関の方々も含めて広く参入をしていただいて、そして、例えば知財権の有効活用でありますとか、さまざまな信託をめぐるニーズというものはあります、そうしたものにこたえていただけるようなサービスというものを提供していただきたいというふうに思っているところでございます。

中川(正)委員 それは、金融という部分あるいは特にTLOなんかの知的所有権を流動化させていくというような部分での考え方なんだろうと思うんですね。

 さっきの参考人質疑の中でも申し上げたんですが、もう一つ、これを活用する分野として、庶民の感覚からいくと、高齢者が自分の財産というのを運用するのに信託をしていく、あるいは遺産相続との関係で、それを前提にしながら、土地や何かを活用して余生を送っていきながら、それを相続との兼ね合わせでうまく活用をしていくとか、さまざまなそうした意味合い、特に福祉関係では、障害者が親が死んでもちゃんと自立をしていけるようにという形での信託を親がしていくというふうなこと、実はこれは期待されていたんですね、この業法の改正のときに。そういう分野というのは、これから先、私たち、高齢化を迎えていく中では非常に大事な分野なんだなと思うんですよ。その議論というのが今回の話ではなかなか出てこないですね。特に、個別会社で一億という基準をつくっていくと、全部これははじかれてくる可能性があるんですが、それはどのように考えておられますか。

伊藤国務大臣 委員が御指摘のように、信託というものを活用してさまざまな対応をしていきたいというニーズがあることは承知をいたしております。

 今御質問をされる前の段階で、委員からは、委託者あるいは受益者の保護が非常に重要である、そのための施策というものをしっかりやらなければいけないというお話がございました。そうした観点から、私どもとしても、信託を行うに当たっては、財産の基礎でありますとか、あるいは適切な業務運営というものを行う、そういう能力があるかどうかというものをしっかり見ていかなければいけないわけであります。

 今お話がございました福祉信託等、これは信託会社というものを株式会社でつくっていただければ、こうした中でそうしたニーズにはこたえていくことができるのではないかというふうに思っておりますけれども、公益法人でありますとかあるいはNPOの問題については、ここも相当に議論があったんですが、やはり委託者、受益者の保護という観点からすると、今回の改正の中でこれを認めていくということはまだできないというふうに私どもとして判断をしたところでございました。

    〔遠藤(利)委員長代理退席、委員長着席〕

中川(正)委員 それは、金融を考えていく場合も、プロを相手にする場合と素人を相手にする場合と、これは当然違ってきますよね、ルールが。それを考えるぐらいですから、金融でないところで、福祉関連でこれを生かしていこうじゃないかということであれば、そうしたルールはつくれるはずなんですよね、工夫すれば。そう思いませんか、大臣。

伊藤国務大臣 福祉関係についても、私どもとしてもいろいろヒアリングをさせていただいたところでございますけれども、もし業として行うのであれば、やはりここは委託者、受益者の保護というものをしっかり図っていくということは大切な視点ではないかというふうに思っております。

 そういう意味からも、委員御指摘のように、こうした実態のニーズというものにどう的確に対応していくかという問題と、そして、今のような利用者の保護というものをどうバランスさせながら制度設計をしていくかということが私どもに求められている視点ではないかというふうに思っておりまして、その中で、今回については、公益法人についてもいろいろ今見直しの作業も進んでおります、その結論も今出ていない段階でありますので、今回は公益法人については委員が要望されているような形をするという判断には至らなかったということでございます。

中川(正)委員 そうした仕組みをつくっていくという方向性といいますか、これはあるんですね、さっきの答弁でいくと。

伊藤国務大臣 公益法人も含めまして、株式会社以外の者による信託業の参入については、その必要性でありますとか、先ほどお話をさせていただいたその妥当性というものを踏まえて、現在、会社法制についても改正の作業が進んでおりますので、その動向や、あるいは他の金融業態の取り扱いとの整合性にも配慮しながら今後の参入の適否を検討していく課題ではないかというふうに考えております。

中川(正)委員 いや、大臣の気持ちを確かめておきたいんですよ。そういう経過はもういいですよ。そんな役人答弁しなくても。

 そこにニーズがあり、そういう社会構成があるということ。これは司法書士なんかも言っている話ですが、福祉だけじゃなくて裁判分野でもあるというふうなことなんですよね。いいスキームなんですよ。だから、それが使い勝手のいいように、そして、さっきの話で、投資家の保護をちゃんとしていくというようなスキームを考えていきましょうよ、大臣。どうですか。

伊藤国務大臣 福祉信託については、この改正案が成立をさせていただければ、信託の会社をつくっていただいて、株式会社であればやることができるんですね。ですから、今の枠組みの中で全くできないということではありません。

 先ほど来お話をさせていただいているように、私どもとすれば、委託者あるいは受益者の保護というものもしっかり考えていかなければいけないわけでありますので、そのニーズと利用者の保護、このバランスの中で考えていく問題であるというふうに思っております。

中川(正)委員 それはわかりましたが、どう考えていくんですか。やるという方向で考えていくということなんですね。答えてください。

伊藤国務大臣 さらに、これは先ほどからお話をさせていただいているように、いろいろな環境の変化がございます。公益法人についても今見直しの作業がされているわけでありますから、そうしたものも見ながら、また、ニーズというものも私どもとしてもさらに的確に把握をしていかなければいけませんし、また、先ほど来お話をさせていただいている、委員も御指摘をされている利用者保護というのも非常に重要なことでありますから、それをしっかりやりながら、どういう形のものができるか、そういうことは検討していかなければいけないというふうに思っております。

中川(正)委員 附帯決議で持っていくなりなんなりということなんでしょうけれども、本当にそれはやっていきましょうよ。

 最後に、もう時間だそうですから、さっきの話で、もう一つの金融の関係の、プロを相手にする場合と素人を相手にする場合との違いというのがこの法案の中には出てきていないんですよね。これはやる必要があるんじゃないかということ。

 それからもう一つは、リスクのレベルだと思うんですよ。信託銀行あたりがやってきた話というのは、いわゆる安全な商品を中心に銀行業務にちょっと変化を与えたというか名目を変えたような業務の中身というのがこれまでの流れだったんでしょうけれども、新しい参入者が出てきて、これがいろんな形で見直されてくると、恐らくリスクの高い、かつ、マネジメントのやり方によっては租税逃避といいますか海外のいろんな投資先も含めたマネジメントというのがずっと展開されてくるんだろうというふうに思うんです。

 そういう意味では、対応する相手によって中身を変えていくという、その手法が大事な点なんだろうと思うんです、これからの金融というのを考えていく場合に。それがどのように表現されているのか、もしあれば。ないとすれば、それは考える必要があるんじゃないかということを指摘しておきたいと思うのです。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 基本は、私どもとして、当該の信託を担う会社が財産的基礎というものを有して、業務遂行能力というものを持ち、受託者責任というものを果たせる体制が備わっているかどうか、この点を十分審査していくということが重要だろうというふうに思っております。プロの中でもこれはいろんなレベルがあろうかというふうに思いますし、私どもとして、こうした面をしっかり見ながら、委託者あるいは受益者の保護を図っていくこととしているわけであります。

中川(正)委員 答えになっていないんですが、もう時間が来たようでありますのでこれで打ち切りますけれども、大臣、技術的なことは私もわからないので、そんなに難しいこと言っているんじゃないんですよね、質問は。だから、恐らく大臣の中にも問題意識がそれぞれあって思いがあるんだと思うので、そんな答弁読んでいないで、もう少し前に出て、しっかり自分の頭の中にあるものを出してください。これからまだ長いつき合いになると思うので、長いのかどうかちょっとわかりませんけれども、解散があったりしたら、そのことを指摘しながら、質問を終わります。ありがとうございました。

金田委員長 次に、馬淵澄夫君。

馬淵委員 民主党の馬淵でございます。きょうは、八十二年ぶりに抜本的な改正となります信託業法、この業法の法案の審議ということで質問の機会をいただきました。

 今回の業法の改正、八十二年ぶりということで、範囲、信託財産の範囲の拡大と担い手の拡大ということで、これは私も大変有意義なことだというふうに思っております。

 この信託業法の改正、信託制度そのものは大正十一年の法制定以来ということでございますが、信託業法とあわせまして信託法というのがございます。いわゆる信託という制度の中での基本法ともいうべきこの信託法、今回は、これは所管は法務の方になると聞いておりますが、基本法となるべき信託法の改正を待たずに信託業法の改正を行うということにつきまして、大臣、その理由をお聞かせいただけますか。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 信託法の改正につきましては、法務省において、この秋から法制審議会で審議を開始したところでございまして、平成十七年度中を目途に信託法改正の関係法案を提出する、このことを目指して現在作業が進められていると承知をいたしているところでございます。

 一方で、信託業法の見直しを先にさせていただきましたのは、これは金融資本市場の基盤整備を進める上で不可欠の課題である、そして政府としても、規制改革推進三カ年計画、これは平成十五年三月に決定をされたものや、あるいは知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画、これは平成十五年の七月の知的財産戦略本部で決定されたものでありますけれども、こうした二つの大きな計画においても、早期に対応してほしい、こうした求めがありました。

 こうしたことを踏まえて、私どもとして、本法案を信託法の改正に先立って国会に提出をさせていただいたところでございます。

馬淵委員 平成十五年、規制改革推進三カ年計画の金融サービス業発展のための基盤整備というお答えでありました。

 規制改革、これがまず日本の金融の制度の中で必要である、こういった観点から進められたということでありますが、私の方からは、そもそも信託制度並びにその制定された法律につきましての歴史的経緯ということを少しお話しさせていただきたいと思います。

 大正の初期でございましたが、経済発展が目覚ましい中で、欧米から信託という新しい業態、その言葉が移入をしてきたわけであります。そして、その大正初期に、いっときブームのような形で信託があちこちで事業としてスタートしました。不動産仲介や高利貸しのような、およそ信託と呼べないような業態まで信託の名をつけて行われていた。大正十年、当時、信託業者が五百十四、そして信託会社は四百八十七社、大正十年にはこうした乱立した状態にありました。しかし、現実には、信託の乱用、信託概念の乱用ということでさまざまな問題が発生してきていた。

 そこで、当時、大蔵省が規制に乗り出したということになります。信託の概念、その理論、法的な定義というものがもともとないままに業が既に動いてしまっている、まずは基本法の制定が必要だということを強く考えられ、当時の司法省、今の法務省に当たるんでしょうか、こちらに働きかけられて、信託法の制定そして信託業法の制定という、この二法をワンセットでつくっていこうということに取り組まれました。

 お手元にお配りをした資料がございますが、その資料の中に「信託の法体系」というものを入れております。これは二枚目でございますが、ごらんいただきますと、信託法並びに信託業法、この公布と施行日に関しましては同じ年月日となっております。つまり、業がスタートをした上で、大蔵当局が当時、この業規制をしなければならないということで大慌てでつくった、これが信託業法であり、そして司法省に働きかけてつくったのが信託法であるという現実でございます。

 つまり、今回抜本的な改正をしなければならない信託制度の法体系の特徴としては、立法の中核、重心が、各法的な信託業法にあったという点にあります。本来ならば、基本法である信託法、こちらから信託とは何ぞやというところを突き詰めていくべきであるはずなのに、業の規制ということが前提にあった。補完的な位置づけとして、本来制定されるべき基本法、一般法の信託法が位置づけられてしまったということになります。

 さて、こうした信託業法が制定された後に、これは大正十一年でございますから、ようやく業法にのっとって、当時の大蔵当局は信託と銀行の峻別ということを考えておられました。ところが、戦争が始まりました第二次大戦下、戦時下の中で非常事態が起きてきたわけです。この非常事態の中で、国家の資源、資本の集約ということが求められるようになりました。

 そこで、昭和十八年、まさに戦時下でありますが、普通銀行等ノ貯蓄銀行業務又ハ信託業務ノ兼営等ニ関スル法律、いわゆる兼営法というものが例外的に規定をされた。分離、峻別するという方針から、戦時下において貯蓄性の資本というものをまとめていこうということで、兼営法をつくって統合を図るということを行われたわけであります。大手銀行、あるいは大手の信託会社、そして都銀、地銀といったものが吸収合併をしていき、信託のいわゆる専業七社というものがこの段階で、戦時下において形成をされていった。この例外的な規定である兼営法。つまり、信託制度においては、信託法、信託業法、兼営法というこの三つの法律によって今日の制度がつくられている。

 そして、戦後になりました。戦後になりますと激しいインフレです。信託の業務は当時金銭信託が中心でしたから、当然ながら、激しいインフレの場合には金銭信託が破綻をします、預け入れが途絶えるということになりました。昭和二十三年に専業の信託会社にも銀行業務を兼営せよという当時の大蔵省からの強い指導があり、そしてさらには、戦後昭和二十七年でありますが長期信用銀行法ができて、長短の分離政策というものがとられるようになった。そして、兼営の銀行に対しては信託業務の放棄を求めるようになったわけであります。この段階におきまして、信託銀行専業七社以外に信託業というものの放棄を求めたわけです。銀行に、一たん兼営してもいいよという形にしたが、その後に、すべて信託業は放棄しなさいという形に指導していかれた。結果として、この兼営法によって専業七社という体制が残ってしまいました。

 信託業法に基づく営業免許取得による信託会社というのはゼロであります。そして、信託業法そのものは死文化をしてしまいました。つまり、基本法である信託法、これが信託業法とセットでつくられていく中で、戦時下の例外規定という兼営法が今日まで信託制度の中心をなす、中核をなす法律であったということになります。

 先ほど大臣は、規制改革三カ年、これと市場のニーズに合わせて見直しが必要だということをお話しされました。信託法の改正を待たずしてやるべきだということで今回の法案の提出となったということでありますが、兼営法、こちらに関しても十分に見ていく必要があるというふうに私は考えております。

 そこで、この兼営法の問題につきましてお尋ねをしたいと思います。

 まず、信託銀行以外、現在不動産売買というものができないということになっております。これはお手元の資料の「金融機関による信託業務について」という表でございますが、これを見ますと、信託銀行以外は不動産業務、売買等々できないということになっております。都銀の子会社、地方銀行、都銀本体、これはバツ、バツ、バツ、できない、こういうことになっております。

 これは、なぜ不動産売買ができないということになっているんでしょうか。お答えください。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきます。

 平成十三年に銀行法の改正を行わせていただいたわけでありますけれども、この中において、信託業務における競争というものを促進して利用者の利便性というものを向上していく、こうした観点から、都市銀行等の本体での信託業務を解禁したところでございます。

 その際、金融機関については、他業を営むことによるリスクの遮断、そして銀行業務に専念すること等による銀行経営の健全性確保、こういった他業禁止の趣旨を踏まえて、不動産媒介業務など金融機関の本業との親近性が比較的小さい業務について、参入を認めないこととしたものであります。

馬淵委員 他業禁止という趣旨だということでございます。

 それではお尋ねしますが、今回の改正で、信託会社の方は不動産売買はできますか。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 信託会社の兼業がどこまで許されるかということでございますが、兼業についてはいろいろな要件を課しておりまして、その要件がクリアされていれば不動産売買ができるということでございます。

馬淵委員 今回の業法改正で、担い手の拡大がされます。その新しい信託会社というのは不動産売買ができる、こういうことでございますか。――はい、できるという御回答をいただいたということでございますが、都銀子会社並びに地銀、都銀、こうした本体、先ほど大臣のお話では、他業務に対してはこれはさせないということで来たんだということでございますが、今回の信託業法の改正といったものを踏まえて、今後、これらの都銀や地銀あるいは都銀の子会社に対して、不動産売買というのを解禁する方向でございますでしょうか。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 銀行の子会社ということで、御質問はそういうことでございますね。

 今の御質問でございますが、今は、信託会社の兼業についてどう考えるかという問題と、それから、銀行がどういった兼業を行い得るかという問題があるかと思います。

 先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、特に銀行、金融機関につきましては、やはり、他業を営むことによるリスクの遮断、あるいは銀行業務に専念すること等による銀行経営の健全性の確保、そういったことから他業の禁止を行っているわけでございまして、そういう観点から、不動産の仲介業務などについて、やはり銀行の本業との親近性が比較的小さいということで、参入を認めないという結論になっているわけでございます。

馬淵委員 銀行の参入を認めない、都銀や地銀、こういったものの不動産売買の参入は認めないということで今お答えをいただきました。

 さて、こうした信託制度の見直しを今されているわけでありますが、一方で、金融のシステムそのものも大きく変わってきました。そして、銀行も形態を大きく変えています。

 今、金融持ち株会社というものがございます。一般にホールディングスと呼ばれる会社です。この財務金融委員会の場でも、さまざまなホールディングスの問題について議論をされてまいりました。例えば、いつもここで話題に上っていますUFJホールディングス、このUFJホールディングスには、その傘下に銀行と信託会社がございます。そして、ホールディングスの傘下にあるこの銀行、信託会社、これらが実体上は一体であります。このホールディングスの傘下にある銀行は不動産売買ができないけれども、このホールディングスの傘下の信託会社はできる。そして、経営そのものはホールディングスで一体なんです。

 先ほどのお話ですと、新たな信託会社の不動産売買は認める、そして、専業七社と呼ばれる信託会社の不動産売買も、先ほどの流れの中で非常にいびつな形で兼営法が残って、不動産売買も認めてきた。しかし、都銀や地銀あるいはそれらの子会社は、その業務のリスクの遮断ということでそれは認めない。でも、一方で、ホールディングスという新たな金融持ち株形態の中にある場合、これは実体上一体なわけですから、不動産売買をしているのと同じことになる。つまり、市場がいびつなままで今日継続しているということにならないですか、大臣。お答えください。

伊藤国務大臣 一連のこの改革の中で私どもがやはり基本的に考えてきたことというのは、今までの金融の縦割り、そうしたものを超えて多様なサービスをしていく、そうしたことにできるだけこたえていかなければいけないということと、そして一方で、金融機関の健全性、その健全性にかかわるリスクというものはできるだけ抑えていく、そうしたことを考えながら今日までの改正が行われてきたというふうに考えております。

 今委員からも御指摘がございましたが、その中でも、銀行法等において、各金融機関はその健全性の確保ということをしっかりやっていかなければいけないわけでありますし、また、私どもとしても、業務の健全性やあるいは適切性というものをしっかり見て検査監督というものが行われているわけであります。

 そうした、今お話をさせていただいた基本的な視点というものを大切にしながら今後の金融行政のあり方というものを考えていく必要があるというふうに思っております。

馬淵委員 ではお尋ねしますが、大臣、兼営法は見直さなければならないものでしょうか。お答えください。

伊藤国務大臣 兼営法の見直しでありますけれども、先ほど委員から非常に詳しく歴史についての御紹介がございました。その中で、やはり、信託の基本法である信託法、これを今、見直しの作業が法制審議会の中で検討をされているわけであります。私どもとしても、こうした信託法の改正の内容がどうなっていくのか、そうしたことを十分注視しながら、その信託法の改正の中で信託業法を見直す必要性が出てくるというふうに考えている面もありますので、その際には兼営法のあり方についても検討していく所存でございます。

馬淵委員 いや大臣、今のお話は、私、先ほどの御発言と一致しない部分があるように感じるんですけれども。

 信託法の改正が行われれば業法も見直さなければならない、そのときには兼営法も当然ながらという今お答えだったというふうに感じるんですが、大臣、最初に、規制改革三カ年のこの計画にのっとって業法を改正しなければならないということで、これを一生懸命頑張ってこられたわけでしょう。それで、先ほどもお話がありましたように、信託法は法務省の話なんですね。だから所管外ですよ。しかし、今私が御説明したように、市場がいびつな形になってしまったこの元凶となっている兼営法は、これは金融庁の所管じゃないですか。金融庁の所管の兼営法を置き去りにして信託業法だけやっている。これは、信託法が変われば変えればいいという話と違うじゃないですか。大臣の所管じゃないんですか、これは。

 兼営法と信託業法が今いびつな形であるから変えようとするならば、兼営法の見直しはなぜやらないんですか。お答えください。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の兼営法でございますが、先生もこれは御承知だと思いますけれども、今回の信託業法の改正に伴いまして、必要な見直しはしておるわけでございます。ただ、もともとの信託法の見直しが作業が進み、しかも、それに伴って信託業法が変わるということになれば、また兼営法のあり方についても検討していくということでございます。

馬淵委員 全然お答えになっていないですね。必要なところを変えていくというのは、それは当然ですよ。信託業法にかかわるところが変われば、兼営法、これは文言を変えるのは仕方ないですよ。附則で変えておられますね。それは知っていますよ。

 そうじゃなくて、私が申し上げているのは、信託業法と兼営法、これは先ほどから申し上げているように、業法の原則があって、例外規定が兼営法なんですよ。その兼営法を今回見直さないのはなぜなんですか。大臣お答えください。そして、兼営法に関しては見直しを早急にされる御用意があるんですか。大臣お答えください。大臣お答えください。

伊藤国務大臣 現行の法体系上、銀行等の金融機関については、その業務の適正な遂行を図るべく、銀行法により厳格な監督を行うとともに、金融機関としての特色を踏まえ、兼営法において、金融機関が信託業務を兼営するに際して、財務の健全性の観点から、特に留意すべき規制、大口信用供与の算定方式等を定めているところであります。このような兼営法は、信託業務を兼営する金融機関の特色を踏まえた規定を整備いたしておりまして、今後とも信託業法とは別に存続させる必要があるというふうに私どもとして考えている中で、今回は、信託業法の改正に伴い必要となる部分の改正を行ったところであります。

 そして、一番重要なのは、この後、先ほど来お話をさせていただいているように、この信託の基本法である信託法の改正が行われているわけであります。その改正がまだどのような形で行われていくかということは、今後、議論の中で検討されているわけでありますから、そうした改正の中身というものを十分見て、その上で、私どもとして、信託業法というものをさらに改正する必要があるかどうか、そこを判断して、そして兼営法についても同じように検討していきたい、そのことを先ほどお話をさせていただいたということであります。

馬淵委員 大臣、もう一度お尋ねしますよ。

 信託業法で担い手の拡大を図っているわけじゃないですか。そして、担い手の拡大を図る中で、今申し上げたように、不動産売買というこの業務そのものが、金融の形態が変化してくる中でいびつな形になっているじゃないですか。先ほど申し上げたように、ホールディングスという金融持ち株会社がすべて実体上一体なわけであって、都銀も信託も実体上一体なわけで、ならば、そこで不動産売買やっているのと同じことになる。このようにいびつな状態であるのを変えていこうということが、担い手の拡大のときに当然必要と考えるべきじゃないですか。

 信託法、基本法を変えなきゃできないんだったら、信託業法だって変えられないじゃないですか。信託業法は、信託法が変われば変えるんだ、そのときに兼営法を変えるんだ。おかしいじゃないですか。今日まで原則この例外規定が生きてきたわけですよ。この信託業法が死文化してきたのを復活させようと一生懸命努力されているのならば、兼営法の見直しがなぜセットで行われないんですかと、私はこう申し上げているんですよ。信託法を変えたときに変える。出てくるでしょう、それは。信託業法も見直さなきゃならぬでしょう。そのことは、私はよくわかっています、理解しています。

 再度、確認ですよ。信託業法と兼営法がセットで改正されなければならぬということを強く御認識されていますか。それとも、信託業法だけ、担い手の拡大だけ言われて、規制改革の三カ年計画にのせるがために、これだけ先に進めたということですか。お答えください。

伊藤国務大臣 私どもとしては、この信託について、受託範囲というものを拡大してそして信託の担い手というものを広げていく中で、金融資本市場の基盤整備というものを一層進めていこう、そうした視点の中で信託業法の改正というものを行わせていただきたいということで御審議をお願いしているわけであります。こうしたものを進めていくに当たって、やはり手順、ステップというものは非常に重要であります。混乱を起こさせない中で、いろいろなニーズにできるだけこたえていきたい。そうした中で、この信託業法を先行して御審議をお願いさせていただいているところでございます。

 兼営法について、この信託業法に合わせて見直しをさせていただいているということは委員御承知のとおりだというふうに思っておりますけれども、兼営法においても、委員からは先ほどいろいろな御指摘がございましたが、この兼営法の意味というものがございました。先ほど来お話をさせていただいているように、金融機関が信託業務を兼営する際に、やはり財務の健全性という観点から、特に留意すべき大口信用供与の算定方式等を定めている、こうしたことは非常に重要な規定だというふうに思っているところでございます。

 したがって、私どもは、そうした健全性というものを確保しながら、どういう形で法全体の整備をしていくことが一番適切なのか、そうした観点から、私ども、まず信託業法というものを改正させていただいて、そして、兼営法についての必要な見直しを行い、そして、基本法たる信託法が今法制審議会で議論されているわけでありますから、その議論をしっかり見て、その上で、信託業法の改正のあり方、そして兼営法についても検討していきたいということをお話しさせていただいているところでございます。

馬淵委員 大臣、答弁をお読みになられて、今の御説明、果たしてどれほどの国民の皆さんあるいはこうした業務に精通される方々が納得されるでしょうか。金融庁の所管というこの業法、そして兼営法、それに対して本当に市場の公正性を保つということを大臣が一生懸命に取り組まなければならない、よく御理解されていると思うにもかかわらず、今のような御答弁は本当に残念です。

 信託会社、新たに担い手を拡大した、不動産の売買もさせていく、そういう一つ一つの市場の拡大を図る中で、小泉さんが提唱している三カ年計画、この中で、金融サービスを発展させるための基盤整備ということで一生懸命にやられたかもしれないが、本来的に、兼営法とセットで見直すべきもの、原則と例外が入れかわったものを直すのであれば、二法同時に正すべきであるということが必要であると私は強く申し上げて、別の論点に移りたいと思います。

 今のお話で、もう兼営法のことは置き去りだということはよくわかりましたが、担い手の拡大の中では、信託会社が新たにできるということ以外に、契約代理店並びに信託受益権の販売業、これらが新たに創設されるということが盛り込まれております。チャネルの拡大ということで、非常にこれも意味があることだ、そういう議論が行われたんだと思います。

 そこでお尋ねをします。

 信託受益権の販売業務というこの制度の創設につきまして、金融審、こちらでは議論はありましたでしょうか。イエス・オア・ノーでお答えください。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 金融審の中間報告というのが出されておるわけでございますが、ここで信託のいろいろな形態についていろいろな議論がございました。

 今回それが反映されておりますが、一つは維持管理型の信託、それから流動化型の信託、それから運用管理型の信託、そういった信託に区分をして、参入基準の内容等に差を設けることが考えられる、そういった御指摘があったわけでございます。

 こういった御報告を踏まえて、今回の法案では、その中の流動化型信託というのがございますけれども、この信託の概念を、信託の引き受けと組成された信託受益権の移転という二つの行為に分割されると考えて、前者を信託業、後者を信託受益権販売業という別々の業務として整理をいたしました。

馬淵委員 区分したというお話ですね。それが議論ということですか。

 ではお尋ねしますが、では、参入が想定される信託受益権業者というのは、具体的なイメージはどういうものでしょうか。お答えください。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 これはいろいろなケースがあろうかと思いますが、まず、オリジネーター、いわゆる原資産の保有者として信託受益権の販売を業とする者としては、例えば特定債権等に係る事業の規制に関する法律に基づきます小口債権販売業者となっております、現在ありますリース・クレジット業者が参入ニーズを有する可能性が高いというふうに考えております。

 それからもう一つ、仲介者といたしましては、例えば、信託業務全般について……(馬淵委員「仲介、要らないです」と呼ぶ)よろしゅうございますか。

 それでは、そういうことでございます。

馬淵委員 具体的なイメージということで、今お話をお聞かせいただきましたが、実際には、知財等などの流動化の市場などということも、これは巷間さまざまな金融経済誌などにも書かれております。

 さてそこで、私は先ほど来、拙速に過ぎる信託業法の制定ということがされていないかということをお尋ねしてきたわけでありますが、今回のこの受益権販売業者ということについて、信託スキームそのものをもう一度見直してみました。つまり、信託スキームを積極的に活用している市場というものはどういうものがあるのか、それを考えますと、今現在、最も活用しているのは不動産の流動化ビジネスだと思われます。

 さて、この不動産流動化ビジネスが行われて、今盛んに信託スキームを使って行われているわけでありますが、受益権販売ということ、先ほど知財などもあると私も申し上げたわけでありますが、受益権販売ということの定義の中で、何をもって業とするんでしょうか。受益権販売業とする、その業とする要件の最大のポイントをお答えください。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 法律では、「信託の受益権の販売又はその代理若しくは媒介を行う営業」を受益権販売業というふうに位置づけてございます。

 具体的に申し上げますと、信託受益権の販売を営業として行うこと、さらに受益権の保有者からその受益権を第三者に移転することの代理または媒介を営業として行うこと、これが該当するというふうに思います。

馬淵委員 その、販売する、営業する、これはつまり、営業するというのは何をもって業とするかとお尋ねしたんですが、つまり反復継続ということが業となす要件である、そういうことでよろしいですか。イエス・オア・ノーでお答えください。

増井政府参考人 そのとおりでございます。

馬淵委員 そこで、受益権販売ということ、これを業となすということは、反復継続性があるということだと今お答えをいただいたわけでありますが、不動産流動化ビジネスそのものの御説明、皆様方よく御存じかもしれないんですが、御説明をそっとさせていただければなと思います。

 お手元の資料の四枚目の方をめくっていただけたらと思いますが、YK・TK方式というのがございます。これは不動産流動化ビジネスの一類型なわけでありますが、この図がわかりやすいので、ちょっとYK・TK方式のものをお出ししました。

 まず、信託財産、信託に供するような財産、今回不動産ということで限れば不動産をお持ちの方、これは一番左端の原保有者という方です。この方が不動産を信託財産として信託銀行、信託会社、今回信託会社等ですね、これも担い手が広がるわけですが、そこに信託します。そして信託受益権を委託者が持ちます。そして不動産の流動化では、この委託者が受益権を持っている。この受益権を、この右にありますSPC、これは特別目的会社というものなんですが、SPCに受益権を譲渡します。そして、流動化ビジネスの方々というのは、このSPC、これは有限会社で大抵やられるんですが、有限会社のこと、これをYKと呼びます。有限会社、会社をつくるには出資をせねばなりません。この有限会社に出資をするところ、これを匿名組合出資者で出資をしていただきます。この匿名組合出資者のことをTKと呼びます。

 まずSPCをつくるというときには、匿名組合、TKから出資をいただく。そして今度は受益権を譲渡されるわけですから、不動産が実質動いたのと同じになるわけです。不動産を担保にしてのデット、借り入れを行います。債務として受け入れます。それをレンダー、銀行から借りるわけですね。これは不動産担保の借り入れですから、不動産担保内ということで、これをノンリコースローンと呼んでいるわけですが、このSPC、有限会社に出資をする匿名組合出資者TK、ここに銀行などの貸し手がノンリコースローンをつける。

 前のページを見ていただければ、資金調達のバランスがここでとられるわけです。YK・TK方式の調達構造、これはバランスシートなんですが、信託受益権という資産に対して、デットとしてのノンリコースローンと、そして資本としての匿名組合からの出資金で、これでバランスしているわけです。この状況がSPCにあります。

 これが一般的に、YK・TKは別としましても、このような何らかの形で、SPC、特別目的会社をもって不動産というのが流動化しています。もう皆さん方はよく御存じだと思うんですが、この流動化ビジネスのスキームは、信託を使った形でこのように行われています。

 さて、この流動化ビジネスの中で、先ほど来、反復継続という形で受益権が売られる、この場合は受益権販売業者だという御説明だったと思います。しかし、私がここで申し上げたいのは、本当に実態というものをよく議論されたんですかということなんです。

 先ほど、金融審の議論の中では、契約代理店と販売業者というのを区分しなければならないという議論があったというお話でした。実態のお話はないと、私はそのように聞いています。十分な市場の実態調査やビジネスモデルのことを確認せずに今回の法制度に盛り込まれているのではないかと思えてならない点が、このSPCのスキームの中に出てくるんです。

 御説明します。

 一件の不動産、例えばビルなんかとしましょうか。ビルをお持ちの所有者が、信託して受益権を得る。そして受益権をSPCに譲渡する。SPCは、これは指図者の契約を、アセットマネジメント会社、AM会社といいますが、AM会社と契約を交わして、売れだの譲渡だのという指図をAM会社がやります。SPCというのは、これはペーパーカンパニーなんです。ただ単にお金が入ってくるだけのペーパーカンパニーです。ここで受益権が譲渡される。ビル一棟が譲渡されれば、SPCの中身は空になります。空になって、これは清算がされます。この場合は、一回の処分で、一回の取引でこのスキームは終了です。

 しかし、現実にはさまざまなバルクの不動産の処分というのをされています。このバルクの不動産、例えば五十件の物件をバルクとして信託した場合には、受益権一号から五十号までが、これは一つの信託財産として受益権が五十分割されたものが出てきます。そして、それを、SPCに受益権譲渡をした場合、このSPCは、最終的にその受益権をすべて処分するまで反復継続の受益権の譲渡をやり続けることになります。このような業務形態というのは、決して特別なものでも何でもありません。この不動産の流動化スキームの中では、SPCを使ったYK・TK方式の業務の中で、反復継続の受益権販売が続くんです。

 となれば、今回、法規制の中で登録制度ということになっています。そして、同僚議員もお尋ねのあった人的要件あるいは営業保証金、さまざまな登録という形の要件の規制がかかってきます。私がここでお尋ねしたいと思いますのは、こうした実態を考えれば、このSPCを使ったYK・TK方式のような受益権販売業と見まがうような取引、つまり、普通にその取引をしているのに、一々一つ一つにすべてこれは登録をしていかなければならぬという話になります。

 会社がそんなたくさんつくられるのかという疑問が皆さんの中におわきかもしれませんが、このSPCは、一回こっきりなんですよ。一回こっきりというのは、一回その受益権をすべて譲渡してしまった後は処分、これは清算なんです。なぜか。二度と使わない。同じSPCを二度使うということは、レンダー、銀行が嫌がります。既にあった受益権、その資産の販売の中で瑕疵があるかないかということがわからないものですから、レンダーはつきません。一つ一つの取引にすべてSPCをつくっていくんですよ。膨大な不動産流動化ビジネスが展開していく中で、このSPCに毎回毎回登録制を設けるということになります。これが現実的な対応と果たして言えるんでしょうか。

 私はここでお尋ねをしたいわけでありますが、こうした実態をかんがみて、大臣、この不動産流動化ビジネスのSPCを用いたスキームに対して、どのような対応をとるべきだとお考えでしょうか、お答えください。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 今の先生の御指摘は、この絵の中のSPCが受益権の販売業者になるかどうかという問題ではないかというふうに思います。

 基本的に、今おっしゃったように、SPCが受益権を譲渡、販売して、最後にいわば清算という形でもとに戻すというようなことになるんだろうと思いますが、そういったことに対して、私ども、よくまた実態を見まして、これは原則としてといいますか、一律になかなか申し上げることはできないかもしれませんけれども、一つ一つの実態を見まして、販売業者に当たるかどうか判断をしたいというふうに思っております。

馬淵委員 いや、だから、私は先ほどから拙速に過ぎないかと申し上げているんですよ。

 いいですか。この不動産流動化のスキームというのは、目の前で不動産屋さんが並んで売っているのとは違うので確かに見えにくいかもしれないが、現実の市場の中ではおよそ三兆近いアセットボリュームがあると言われているんですよ。その中で、このYK・TK方式、恐らく一兆近いアセットボリュームがある。よく事情をかんがみて対応したいなんというのんきなことを言っていて、この法律ができ上がったら、たちまち不動産流動化ビジネスの市場というものの中に大きなボトルネックが生まれかねないんです。

 では、逆にお尋ねします。どういった方法でそのゆがみを取って公正な市場をつくっていくことができるのかというふうに考えますと、私は、一つは、この受益権の販売業の登録の部分に関しては、受益権の販売業そのものを限定列挙するという方法があるのではないかとも思います。また、一方では、こうしたSPCを用いたYK・TKのような信託スキームに関しては適用除外というような形を設ける必要があるのではないかとも考えますが、大臣、これはいかがでしょうか。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど私が申し上げたのは、この法律が仮に成立をいたして施行されてからゆっくり考えるというふうに申し上げたわけではございませんで、この法律の施行までにそれぞれの実態を見ながらよく考えたいというふうに申し上げたわけでございます。

 そういう意味で、先ほどの先生の御指摘も踏まえて、よく実態を踏まえながら考えていきたいと思っております。

馬淵委員 では、確認しますよ。問題があると御認識ですか。そして、それに対して限定列挙あるいは除外規定などを盛り込むべきだとお考えですか。お答えください。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 やり方をどうするかということも含めて、今の除外というやり方もあるかもしれませんし、あるいはもうちょっと別のやり方もあるかもしれません。

 いずれにいたしましても、この取り扱いについてよく検討いたしたいということでございます。

馬淵委員 私がこの委員会の中で明らかにしていきたいのは、結局、この当局の皆さん方、実態をよくごらんになっていらっしゃらない。業法の改正、あと、これは信託法を見直してから、そしてその上に兼営法を見直すというお話ですが、そもそもこれは八十二年間ほったらかしなんですよ。時間がない、間に合わないの話じゃないんですよ。八十二年間そのままにしておいて、そして市場がゆがんだままの状況でこの法律を通して、いや後から見直しますと。今申し上げたように、実態を御存じないんですかと言うと、いや、そういうことに対しては検討せねばならぬと考えていると。それが果たして、本当に法の支配のもとに行政権が正しい行動をとっていると言えるんでしょうか。

 もう時間もなくなってまいりましたが、先ほど来の確認の中で、局長の方で、方法論は限定列挙あるいは除外規定などいろいろと検討せねばならないが、こうしたことについて、市場の実態をよくかんがみて今後進めていく、何らかの方法を考えていくということを御確認したということでよろしいでしょうか。大臣、お答えください。

伊藤国務大臣 委員から御指摘をいただいている点については、実は不動産関連の関係の皆様方からも私どもの方に問い合わせがあり、また、私どもとしても、ワーキンググループのヒアリングの中でやりとりをさせていただいております。

 委員から総括的なお話がございましたが、これはいろいろなケースがございます。その実態というものをよく見ながら、私どもとして判断していかなければいけないというふうに考えているところでございます。

 いずれにいたしましても、本法案の趣旨に基づいて、適切な対応をしていきたいというふうに考えているところでございます。委員の御指摘というものをしっかり踏まえて、関係の方々との調整というものもしっかりやっていきたいというふうに思っております。

馬淵委員 大臣、本当にしっかり実態を踏まえてください。

 私は、この財務金融委員会、素人でございますが、ビジネスの現場からやってまいりました。常に現場に真実があります。現場をよく見て、そして本当に健全な市場の育成ということに取り組んでください。

 私が最も、この委員会の中でいつもお伝えをして、正さねばならないと申し上げているのは、裁量行政なんです。法の支配のもとに行われるべきこの国の中で、裁量行政によってゆがめられてしまっては何もならない。八十二年間も放置して、時間がない、間に合わない、これでは通らないんです。信託法の改正、兼営法の改正、そして市場実態に即した制度設計、こういったものが、今の私のこの質疑の時間を通して、これはできていないという現実が明らかにされている、私にはこう感じます。であるならば、相変わらずの裁量行政をされているのではないか、こう思えて仕方がないわけであります。

 もう時間もございませんので、最後に、皆様方に、そして大臣にお伝えをさせていただきたい。この信託市場の今日の経緯の中で、いかに当局がその市場実態をゆがめてきたかというエピソードを御紹介して終わりにしたいと思います。

 これはどういうことかと申し上げますと、かつてこんなことがございました。先ほど申し上げた経緯の中で、大蔵省が、戦時下の資源集約ということで、兼営法によって銀行に信託業務をさせることを認めたが、戦後再びそれを分離する政策をとった、長短分離政策をとった。しかし、その長短分離政策というのは、法律によらずに行政指導という形で、普通銀行に対して信託業務の放棄を迫った。ほとんどの銀行がこれに従い、その結果として、現在の専業六社体制の基礎というのができ上がったわけであります。

 しかし、このときに一行だけ、有効な法律に基づいて実行している業務を法律の根拠なく停止するようなことを求める不合理な行政指導には、断固としてそれをのむわけにはいかないと抵抗したところがございました。大和銀行でございます。これに対して、当時、昭和四十年二月十八日の衆議院の大蔵委員会で、当時の大蔵省の銀行局長が、大和銀行の信託分離をぜひ実現させたいということの旨を発言されておられます。

 当時の議事録がございます。当時の高橋銀行局長が「私どもとしては多少無理がありましても、この際、ほとんど一行でございますが、」これは大和銀行のことです、「それだけが残っているという点についてはやはりこれは釈然としないものがあるので何とかしなければならぬだろうということで、目下非常に急いで検討しておる段階でございます。」と。国会の場で、銀行行政の責任者が合法的に行われている銀行の業務をとめさせると宣言する、極めて異例な答弁がここに残っているんです。

 このような、まさに裁量行政、際限なき裁量行政と言わざるを得ない、このかつての金融行政当局。今大臣が所管をされているこの金融庁におかれましては、二度とこういったことが起こらぬように、過去の轍を踏むことなく、裁量を振りかざすことなく、健全な市場の育成を目指して政策の実行を図っていただきたいということを最後にお願い申し上げて、私の質問とさせていただきます。ありがとうございました。

金田委員長 次に、中塚一宏君。

中塚委員 民主党の中塚一宏でございます。

 きょうは、谷垣大臣にお越しをいただいておりますけれども、大臣、何かお昼に御予定がおありだということで、まず冒頭、大臣からお伺いをさせていただきたいというふうに思います。

 まず、ダイエーの問題でございます。

 大臣は、産業再生担当大臣、初代でいらっしゃったわけですね。まさに民間の英知を結集した組織だというふうにお述べになったこともあるわけなんで、そういった意味では機構ができるのに立ち会ったということでもあると思いますが、今、この委員会で原口委員も私も取り上げてまいりましたこのダイエーの問題について、今も主務大臣のお一人でございますし、また、かつて担当大臣をされたというお立場で、どちらかというと後者のお立場でお話を伺いたいというふうに思うわけであります。

 十一月九日の私どもの原口委員の質問の際に、担当室長藤岡参考人がお答えになっておられるわけですが、要はデューデリジェンスにかかわる期限の設定ということがありました。

 それについて期限を延ばせとかいう話があるということについて、この期限を設定する、産業再生機構自体が時限存続の機関であるということ、そしてまた、産業再生機構法の中にも公正中立でやらないかぬというようなことが書いてあるということ、そんな中で、この期限の設定というのはやはり業務の根幹にかかわる部分だろうという原口委員の質問に対して、藤岡参考人は業務にとって非常に重要なことだというふうに理解しているというふうに答弁をされているわけであります。

 さて、ここで谷垣大臣にお伺いをいたしますけれども、まず、産業再生機構の設立の趣旨、目的、業務のあり方、それに加えましてこの藤岡参考人の答弁、この期限というのが、存続期限自体が切られている機構にとってデューデリの期限というのは業務にとって非常に重要なことだという答弁をされているわけですが、これについての大臣の御所見を伺いたいと思います。

谷垣国務大臣 産業再生機構が何のためにつくられて、どういう組織であるのかというのは原口さんにも御答弁をいたしましたけれども、不良債権処理を進めていけば必ずその背後に重い債務のくびきで悩んでいる事業がある、その両方を一体的に車の両輪として再生というか処理をしなければうまい方向にいかないという、当時課題がございました。本来、こういう事業再生は民間の論理で、市場の論理で自動的に進んでいけばそれにこしたことはないわけですけれども、なかなかそういう進まない情勢がございました。

 したがいまして、この例えが適当かどうかはわかりませんが、私はよく内部で、かつて富岡でも製糸工場というものが官営工場でできた、それが民間の産業をつくるのに役立った、だから、こういう事業再生みたいなものも、ある程度官が後ろにいるような形で複雑な利害の調整なんかが進んでいくような仕組みをつくる必要があるんじゃないかと考えたわけでございますが、同時に、しかしその手法というのはマーケットを重んじた、市場の規律というものを重んじた姿でなければいけない。その二つを、なかなかバランスが難しいわけですが、できるだけその二つのバランスが調和するような形の組織、中立公正で民間の論理を重んずる組織ということでこれをつくったわけでございます。

 そこで、委員のお尋ねのように、では、支援の期限といいますかそういうものを切ることがどういう意味があるかということでございますが、現在私は主管の大臣の一人でございますが、見ておりますのは、要するに国民負担が余りにも過大にならないように歯どめをかけるという立場から今見ておりますので、個別具体の判断は、ちょっと今遠いところにおりまして、お答えする資格がございません。

 一般論として言えることは、おっしゃいましたように、二年間の時限の機関でございます。来年の三月までですから、それまでに、時限の期限というのは五年間ですが、買い取り、支援を行うのは最初の二年間でございますから、その枠内におさめるにはどうしたらいいかというのは、これは機構が判断することですが、機構にとっては大事な問題であったと私は思います。

中塚委員 加えて、斉藤社長は、要は機構は何が何でもダイエーをやりたいわけじゃないというふうにもいろいろなところでお話になっているわけですね。今大臣がいみじくもおっしゃったように、民間の論理、市場の論理でやるべきものだということなわけですから、そういった意味で、何が何でもやりたいわけじゃないけれども、機構も来年の三月三十一日までということがあるからこのデューデリの期限も設定をしたということになるわけなんですが。

 ということで、ずばり伺いますが、では、機構にとって重要なことだというその期限について、それを延ばせとか延ばすなとか、まあ延ばせと言っているわけですが、延ばせということについて、これは要はいわゆる介入ということではないのかというふうに思いますが、大臣の御所見はいかがでしょうか。

谷垣国務大臣 これは、経済産業省の御判断は私申し上げる立場ではありませんけれども、それぞれの主務官庁が何の立場から主務官庁として役割を担っているのかということを考えなきゃいかぬと思うんですね。

 それで、私の立場からすれば、先ほど申しましたように、国民負担をやたらにふやしちゃいけないわけですから、その観点から機構の担当者と時々連絡をとったり意見を述べたりするということは、これはあり得べきことではないかと思いますが、最終的には、先ほど申し上げたような、機構というものは中立公正で民間の論理を重んじなきゃならないところですから、最終的には機構のそういう論理を、論理といいますか機構のそういう判断を重視するということなんじゃないかというふうに思って、今主務大臣の一人をやらせていただいているわけです。ですから、経済産業省も、恐らくそういうことをお考えになって行動されたのではないかと思っております。

中塚委員 そういうことをお考えになって行動されたということが介入に当たるかどうかということについてお伺いをしたわけなんでありますが、明確なお答えはいただけなかったわけなんですけれども、この件はまた後で、きょうも経済産業省の方にお越しをいただいておりますので、やらせていただくとして、谷垣大臣はこれで結構でございます。

 先に信託業法についてお伺いをしたいというふうに思います。

 先ほど中川委員も質問しておりましたが、いわゆる福祉信託、パーソナルトラストと言われる話について私もちょっと伺っていきたいというふうに思っております。

 中川委員も御質問されたわけですし、私も質疑通告しておりますから、概要についてはもう御存じだと思うんですけれども、さっきの答弁を聞いていて私はちょっとあきれた部分があった。

 それは、要は、今回、参入者の組織形態、株式会社を認めるということがありますが、NPO等の公益法人についてなぜ認めないのかという質問に対して、委託者、受託者の保護ということを御答弁になっていらっしゃったというふうに思いますが、ちょっとここは大事なポイントだと思うんですね。株式会社であるならば委託者、受託者の保護がなされて、NPOや公益法人ならそれがなされないということについて、もうちょっと合理的な説明をいただきたいと思うんですが。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 参入者の組織形態をどうするかというのは、先ほど来御紹介をしております金融審議会の中間報告の中でも出ておりまして、その中では、受益者保護及び信託制度への信頼確保の観点から、信託業の担い手は業務の安定性、継続性や、機関間の監視、いわゆるガバナンス機能にすぐれた組織形態である株式会社を基本とすることが適当である、そういうふうになっております。一方、NPO等の公益法人につきましては、そういった観点から見ますと、例えば財産的基礎の問題、あるいは監事の設置の問題など、法令上求められていないというような問題もございます。それからもう一つは、大臣が御答弁になりましたように、今現在、公益法人についてはいろいろな制度の見直しの議論が行われている。そういったことから、参入者の形態は原則として株式会社に限定をした、そういうことでございます。

中塚委員 株式会社だったら大丈夫だということをおっしゃるなら、また後からこれも伺いたいと思いますが、現実問題として、信託銀行と言われるところでも数々の不祥事というものがあって、過去処分をされた経緯というものもあるということなわけです。そういった意味で、この福祉信託ということについて、まさにそれをやるという意思がおありなのかどうなのかということが一番大事になってくるわけですね。

 では、公益法人やNPOでは不備があるということならば、それはちゃんとそれができるような体制をつくるようにお考えになればいい話だと思いますが、そこはいかがなんでしょうか。

増井政府参考人 お答え申し上げます。

 基本的に、公益法人の問題も含めまして、株式会社以外のものによります信託業への参入の問題につきましては、今御指摘のように、その必要性や妥当性を踏まえまして、現在改正作業中の会社法制の動向、あるいは他の金融業態の取り扱いとの整合性にも配慮しまして、今後、参入の適否を検討していくべき課題だというふうに認識しております。

中塚委員 ニーズというのは、はっきり言ってあるわけですね。きのう質疑通告しておりますからもう御存じだと思うんですけれども。やはり、信託というと、どうしてもお金持ちのものだということになっちゃうわけですね。株式会社ということに限定をされているのも、まさにそういうところで、委託者、受託者の保護ということがある。要は、金額がでかいということがあるんだろうというふうに私は推察をいたします。

 ただしかし、さはさりながら、この福祉信託、具体的には、社団法人の成年後見センター・リーガルサポートというところが提案になっていることなんですけれども、私の選挙区なんかで、例えば発達障害を持たれている方のお母さんたちの集まりとか、知的障害を持たれている方のお母さんたちの集まりに行きますと、常に出てくる声というのは、私が生きているうちはいいということなんですね。ただ、私がいなくなったら、この子はどうするんだという話を本当によく聞くわけなんです。

 だから、そういった意味で、例えば信託財産が、はっきり言って今大変に下限がでかいわけですね。信託財産、そんなに小口の財産を簡単に信託で受けてくれるということはあり得ない。それはもちろん業として営んでいるということになれば、信託銀行であれ、あるいは今回参入する株式会社であれ、やはり利益を上げなければいけないわけですから、そんな小口はやっていられるかという話になるのも、私はある意味理解はできるわけです。

 だからこそ、NPOを含む公益法人がこれをやりたいという話になっているわけなんで、今後の検討という局長の答弁は、聞いていれば、ふうん、そうですかという話で終わっちゃうんだけれども、そこは大臣、ピザをお売りになりながらやってこられた方なんだから、そこはやはり大臣が政治家として、こういったことについてやはりニーズもある、そういう人たちがいるということを踏まえた上でやろうというふうに御決意されなきゃなかなか進んでいかないというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

伊藤国務大臣 私も、知的障害のお子様を持たれる親御さんといろいろお話をさせていただく機会もございますし、この福祉信託についても、お話を私自身も直接お伺いしたことがございます。

 こうした方々のニーズが非常に強いということも十分承知をいたしておりますけれども、そうしたニーズをお持ちの方々からしても、この制度が安心して運用されていくということも非常に重要なことであります。先ほど来、委員からお話をされておられまして、実際に私どももそういうニーズをお持ちの関係者の方々と何回となくお話し合いをさせていただいております。

 今回提案をさせていただいている改正のスキームの中でも、信託会社をつくっていただいて、株式会社、これは一千万で株式会社というものを設立することができるわけでありますから、この枠組みの中で工夫をして、そしてニーズにこたえていただくことができないかどうだろうか、そうしたやりとりもさせていただいているところでございます。

 私どもとしても、さまざまなニーズというものをしっかり把握して、そして先ほど来お話をさせていただいているように、今、公益法人をめぐる環境も大きく変わってくるわけでありますから、そうした状況もにらみながら、本当にニーズに的確にこたえられて、そして安心してこの制度を使っていくことができる、信託制度に対する信頼というものをしっかり堅持しながらニーズにこたえていけるような、そういう検討を私としても続けていきたいというふうに思っております。

中塚委員 何で株式会社にこだわるのかというのがよくわからないんですね。しかも、TLOなんかについては例外をお認めになっているということで、それは、要は政治の方針があるからTLOについては例外をお認めになるということなのかもしれませんが、そうでないなら、何で公益法人が除外されるのかということになると思うんですね。

 検査監督の体制をちゃんとやらにゃいかぬということは、よく理解をいたします。株式会社に比べてNPOや公益法人がそういった財務の面でちゃんとガバナンスがとれてないとかコンプライアンス体制が不備だというふうにおっしゃるのであるならば、それをちゃんとやらせるようにすればいいだけの話であって、そのことをもってしてできないという理由にはならない。大正十一年から本当に久しぶりの大改正だということであるならば、やはりそれをちゃんと盛り込んでおくべきだというふうに思うんですね。

 加えて、会社法の見直しというものも今行われておるわけでありまして、これも本当に大改正になろうとしているわけですから、実は、株式会社というものの形態さえ本当に今とは全然違うものになりかねない、そういうことも含んでいると思います。

 また、信託業法は今回こうやって改正をされるわけでありますが、今度は信託法についても改正の俎上に上がるということであるならば、それならばぜひともその機会にでも、できるだけ早いうちに、この福祉信託、パーソナルトラスト、欧米ではこちらの方が主流だというふうにも言われている。午前中の参考人の御意見の中で、日本は要はコーポレートファイナンスの部分から信託がスタートをしているということもあって、こういう民事信託、パーソナルトラストと言われるものについてはおくれているという大変に貴重な御意見もいただいたわけでありますけれども、であるならば、会社法も、次期通常国会になるのか、あるいは信託法もどういうタイムテーブルで上がってくるのかですが、その際にでも、やはりこの参入の法人形態のあり方、組織形態のあり方ということについては再度御検討をいただきたいというふうに思いますが、最後に御意見をいただいて、この件については終わりたいと思います。

伊藤国務大臣 今委員からも御指摘がございましたように、これから会社法の見直しもございます。そして、公益法人についても、今、政府としても見直し作業を進めさせていただいているわけであります。この福祉信託についても実はさまざまなニーズがありまして、全く純粋に非営利的なもので考えているケースや、あるいは、多少営利的なものも含めて考えていかなければいけない、そう思っておられる方々もおります。

 私どもとしては、やはりこの制度が安定して運用されるためにも、財産的基礎というものがしっかりしている、そして業務の運営についても適切に運営していく能力というものがある、そういうものをしっかり確認しながら制度というものを設計していかなければいけないというふうに思っております。委員からも再三再四この問題の重要性についての御指摘がございました。いろいろな変化の中で、私どもとしても、できる限りさまざまなニーズにこたえていけるように、今後検討をさせていただきたいというふうに思います。

中塚委員 投資家の保護、委託者、受託者の保護、それがなかなか難しいからNPOや公益法人は入れないんだという御答弁だけで終わっちゃうと、余り賛成したくなくなってしまうわけですね。何より大事なのはそのことだというのは当たり前の話なわけで、だから、まずそういう委託者、受託者の保護というものをちゃんとやらなきゃいかぬということはあります。だから、だったらそれをやればいいわけですね。やった上でこういうニーズに対してどう対処をしていくのかということでないと、結局、金融ビッグバン以来いろいろな流れの中で、今回の法改正もその中での位置づけだと思いますが、やはり金融村の中だけでの自由化ということではそれは話にはならないわけで、マーケットをもっとフリー、フェア、グローバルなものにしていこうということであるならば、結局、帰結するのは投資者、投資家の保護のあり方ということになっていくんだというふうに思います。

 続いて、投資者の保護のあり方ということなんですが、金融商品販売法というのがありますが、やはり不十分だなというふうに言わざるを得ないわけです。そういった意味で、繰り返しになりますが、ビッグバン、自由化ということと同時に手当てをせにゃいかぬかったことだというふうに思うわけですね。金融商品自体がどんどんと日進月歩でありますから、はっきり言って制度が実際に追いついていないということはいっぱいあります。外国為替の証拠金取引なんかでも、縦割りの法律になっているということもある。販売業者が悪質な手口を使えば取り締まれないということもあります。また、今業態を超えて販売ルートがどんどん広がりつつあるわけですね。金融機関なんかで株式投信を売る。今度は何か郵政公社で売るというふうな、そんな法律案も出ているよと聞いております。

 そういったことを考えていくと、今の時代にちゃんとした投資者保護というものをやらにゃいかぬ、金融サービス法的なものですね。私は、まずは本当はそっちが先決であって、そのことをちゃんとした上でこの信託業法も改正をするべきだというふうに考えておりますが、今、その投資者保護について政府の方でも御検討されているというふうに聞いておりますけれども、その投資者保護のあり方ということについて、今の法案の検討内容も含めて御所見を伺いたいと思います。

伊藤国務大臣 投資家保護、そして利用者保護が重要だという問題意識は、委員と私も全く共有をしているところであります。

 金融審議会答申におきましても、「二十一世紀を支える金融の新しい枠組みについて」において、二十一世紀の金融を支える新しい枠組みとして縦割り規制から機能別、横断的なルールに転換する等の観点に立って金融サービスに関するルールの整備を進めていくことが重要であると考えている、こうした考え方が示されました。このような考え方に沿って、先ほど委員からも御紹介がございましたように、金融商品の販売等に関する法律を制定させていただきました。

 また、昨年、平成十五年の十二月二十四日でありますけれども、金融審議会の第一部会報告書において「市場機能を中核とする金融システムに向けて」、こういう報告書を出していただいているところでありますが、この中で、これまで投資家保護策の講じられていない投資サービスや、あるいは今後新たに登場するであろう投資サービスにつき、証券取引法を中心とした有効な投資家保護のあり方について検討するとともに、証券取引法の投資サービス法への改組の可能性も含めたより幅広い投資家保護の枠組みについて中期的な課題として検討していく、こうした御提言をいただいたところでございます。

 この提言を踏まえて、先般、金融審議会において外国為替証拠金取引に関する規制のあり方について報告がまとめられ、そして、私どもといたしましても、今国会において金融先物取引法の一部を改正する法律案の審議をお願いいたしているところであります。さらに、金融審議会においては引き続き投資サービスにおける投資家保護のあり方について検討が行われていくものと承知をいたしておりますけれども、私といたしましては、金融審議会において精力的に検討していただきたいというふうに思っております。

 金融庁といたしましても、こうした取り組みを積み重ねることによって、機能別そして横断的なルールの整備を着実に進めていきたいというふうに考えているところでございます。

中塚委員 金融サービスということで、投資家の保護は、それはそれで大変重要なことなんですが、やはりそれは投資家ということだけじゃなくて借り手の問題なんかもあるわけなので、ぜひそこは幅広にやっていかなきゃいかぬ課題だというふうに思います。

 また、今、各党にも実は御提案させていただいているんですが、違法年金担保融資の問題というのもあったりして、要はいかにお金を借りる場合でも悪質な行為が行われているか、そういう実態もあるわけですから、そこは投資家ということだけに限ることではないと思うんです。

 今は本当にいろいろな法律がありますが、役所で縦割りになっているものもある。それを本当に総合的にきっちりとやっていくことが必要で、前の通常国会のときの証取法の改正のときにも、私どもはこの主張をさせていただきましたし、政府がそういったことで投資者の保護のための法案というのを出されるのであるならば、私どもとしては、そういう金融サービス全般にかかわる法律というもの、投資家であれお金を借りる人であれ預ける人であれ、それは消費者ということであるならば、それを保護するための法制が必要であるということで、政府が案を出されるということですから、私どもとしてもその案をつくって、またこの問題については議論をさせていただきたい。順番がちょっと後先なんですけれども、やはり初めにこれがありきだということは重ねて申し上げておきたいというふうに思います。

 続いて、投資者保護ということに加えて、検査の問題と監督の問題になってくるわけなんですが、まず、監督、それともう一つそれに関係して、銀行のコンプライアンス体制の整備ということについてお伺いをしたいというふうに思います。

 特に信託銀行でかねてより指摘をされているのは、信託勘定と銀行勘定というものをちゃんと分別して管理をしておるのかということなわけなんですけれども、信託勘定から銀行勘定に貸し出す、銀貸しというふうに呼ぶんだそうですけれども、この銀貸しの実態について把握をされているかどうかということで、二〇〇三年の銀貸しの実態、そしてまた対前年比ということについて数字があれば御披露いただけますか。

佐藤政府参考人 いわゆる銀行勘定貸し出しでございますけれども、計数的には、十六年三月期末における信託会社の運用資産残高五百二十七・三兆円、このうち銀行勘定貸しの残高は約十一・五兆円という規模でございまして、前年同月比で見ますと一・五兆円の増、率にいたしまして一五・一%の増加というふうになっております。

中塚委員 さて、伊藤大臣、かねてより大変にこれは不明瞭じゃないかという批判もあるわけなんですけれども、今局長から御答弁をいただきましたが、この銀貸しがふえているということですが、これについていかがお考えでしょうか。私は、やはり分別管理ということであるならば、ここはもっと徹底をするべきだというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

伊藤国務大臣 恐らく委員が問題にされている不明朗だというのは、利益のつけかえというものが両勘定の間で行われているんではないか、そういうつながるおそれがあるんではないかということを御指摘されているんではないかというふうに思いますけれども、現在、信託銀行においては信託約款において顧客に対して銀行勘定貸しでの運用可能性及び運用する際のレートを明示しておりまして、この銀行勘定貸しを介して不適切な取引が行われているのではないかと、この部分については指摘は当たらないのではないかというふうに思っております。

 なお、今般の改正信託業法二十九条二項においては、銀行勘定と信託勘定の間で取引を行う場合、信託約款において当該取引を行う旨及びその概要について定めがあり、かつ、信託財産に損害を与えないよう措置することが求められているところでございます。

中塚委員 その答弁は当たり前の話だと思います。大臣も今は建前といいますか、お答えになったことについて私も異論はございませんが、実態はどうかということがやはり問題になってくるわけなので、だからこそコンプライアンス体制をどう整備するか、あるいは監督体制をどういうふうに整備するかということが問題になってくるということになるわけです。

 日興シティとかドイチェ信託について、不祥事件というものが起こっておりますが、この不祥事件の発覚の経緯についてお伺いをしたいと思うんですが。

佐藤政府参考人 日興シティ信託とドイチェ信託につきまして経緯を申し上げます。

 まず、日興シティ信託の方でございますけれども、平成十五年の三月に行内で不祥事が発覚をしたということでございまして、簿外口座を使った取引等が発見されたということでございます。その後、十五年の九月になりまして、私どもに不祥事件の届け出が提出されたということでございます。この後、十一月になりまして、当庁による立入検査の実施をしたということでございまして、この不祥事件届け出を受けまして、行内調査の実施状況や信託委託者等に及ぼす影響等について報告徴求を実施いたしたわけでございますけれども、それと同時に、あわせて立入検査を実施したということでございます。

 そして、立入検査によって把握された重大な法令違反の内容でございますけれども、信託財産の固有財産化あるいは分別管理義務違反といった事実が把握され、また、全体を管理する管理体制の問題も把握されたということでございまして、平成十六年、本年の四月二十三日になりまして行政処分の実施をしたということでございます。

 一つは、銀行法二十七条に基づく業務停止命令でございまして、信託財産の管理、決済業務の新規受託業務の無期限停止を命令した。ただし、命令日から半年以降、業務再開の申し出があれば、業務改善計画の実施状況を踏まえて、停止命令を見直すことがあるという条件をつけてございます。

 それから、引き続き行政処分の内容の二つ目でございますけれども、銀行法二十六条に基づく業務改善命令を発出いたしました。

 当庁の業務改善命令を受けた同社は、翌月、十六年の五月でございますが、業務改善計画書を当庁に提出しておりまして、以後、改善実施の状況を当庁で三カ月ごとに報告をさせているということでございます。引き続き、問題の再発を防止し、適正な業務運営が図られるよう、フォローアップをしていきたいというふうに思っております。

 それから、次がドイチェ信託でございますけれども、こちらにつきましては、平成十五年の八月から立入検査を実施いたしました。その中で、法令違反、業務運営上の問題点が把握されたということでございます。

 そこで、把握された法令違反の概要でございますけれども、信託の共同受託及び再信託契約に基づく信託財産の管理、決済業務等の外部移管を実施する際に、信託委託者の同意を得ないまま移管を実施した、いわゆる自己執行義務に違反するという事実が認められました。また、報告徴求の過程におきましても、善管注意義務に違反する実態も確認されたということでございます。

 これを受けまして、平成十六年の五月二十日、行政処分を打ったということでございまして、銀行法二十六条に基づく業務停止命令、これは信託財産の管理、決済業務等の新規受託業務の三カ月間の停止を命令いたしました。あわせて、二十六条に基づきまして、業務改善命令ということで、所要の改善を求める命令を発出したということでございます。

 当庁の業務改善命令を受けまして、同社は翌月、十六年の六月でございますけれども、業務改善計画書を当庁に提出したところでございまして、以後、当庁におきまして、改善の状況を三カ月ごとに報告を受けているということでございます。これにつきましても、引き続きモニタリングを続けまして、問題の再発を防止し、適正な業務運営が図られるようフォローアップをしていく必要があるというふうに存じております。

中塚委員 大臣、お聞きになったとおりで、一件は内部告発なんでしょうかね、要は会社側からの申し出があった。もう一件は検査でわかったということなんですが。ということで、やはりちゃんとした検査監督の体制ができるかというのは大変に重要な課題だということを指摘しておきたいというふうに思います。

 ちょっと時間がなくなってきたので、ダイエーのお話をさせていただきたいと思いまして、本日も北畑さん、迎さん、そして藤岡さんとお越しをいただいておるわけでありますけれども、まず北畑参考人にお伺いをいたしますが、さきに谷垣財務大臣にお伺いをしたとおりなんですけれども、この期限を延ばせということについては、これは介入に当たるのではないでしょうか。いかがでしょうか。

北畑政府参考人 お答え申し上げます。

 民間の資産査定と民間を補完する公的機関である機構の資産査定が、当時並行して行われておりました。民間の資産査定作業が、十月十八日の入札期限ということで一区切りを迎えようとしておる状況でございました。このような状況で、六日付で十二日の期限とする文書を発出するという機構の業務のやり方、それに関連する情報管理等の問題について、機構の業務運営を監督する立場として、事実関係の確認や問題点の指摘を行ったものでございまして、法の趣旨を超えた介入であったというふうな認識は持っておりません。

中塚委員 事実関係の確認と、意見を述べたと今おっしゃいましたか。事実関係の確認は、それはそれで結構ですが、意見を述べたと。意見を述べるということについて、それを日を延ばせということについては、業務の重要な部分なわけですね、期限を設定してあるということは。その設定をした期限が重要であるということであるにもかかわらず、延ばせという話をされるというのは、それは意見を述べるということではなくて介入をするということではないのかというふうに思いますが。

 まず、藤岡参考人にお伺いしますけれども、この法律に、主務大臣が意見を述べることができると書いてありますね。委員会が支援決定などをする際に、主務大臣の意見を聞く、また事業所管大臣は意見を述べることができるというふうに書いてありますが、この意見というのはどういった意見を想定されているんでしょうか。

藤岡政府参考人 お答えいたします。

 おっしゃいますように、産業再生機構法におきましては、関係主務大臣は、それぞれ支援決定あるいは買い取り決定等に対して意見を述べることができるということとされております。これにつきましては、本来の法律の趣旨におきます産業再生、あるいは、その後困難に陥った企業に対する、本来の法律の趣旨にのっとって適正な行為であるかどうかということについての意見であるというふうに考えてございます。

 以上でございます。

中塚委員 声も小さいし何を言っているんだかよくわからなかったんですけれども、では、具体的に伺いますが、デューデリにかけているというときに、それを期限を延ばせというのは主務官庁として適正な意見なんでしょうか。

藤岡政府参考人 今般の買い取り期限の問題につきましては、まさに外部から見ますと、非常にわかりにくいことでございます。

 我々といたしましては、担当室といたしてでございますが、今回の場合、事業規模の大きさ等を勘案し、あるいは資産査定等に要する時間を勘案した上で、機構が限界の時期であると判断して設定された期限であろうというふうに考えてございます。そういう意味からいたしますと、申し上げましたように、機構の業務にとって重要な問題であるというふうに理解してございます。

中塚委員 だから、その重要な業務だということについて延ばせという話をするというのは、主務官庁として意見を述べるというふうに言われている想定の範囲内なのかそうでないのかということについてお伺いをしているんですが、藤岡さん、どうぞ。

藤岡政府参考人 お答えいたします。

 政府といたしましては、関係省庁におきまして、まさに必要に応じてそれぞれの立場から検討あるいは意見が出されるものだというふうに考えてございます。しかしながら、まさに事業者と金融機関等の検討状況を見守りながら、個別の案件への対応に関しては再生機構の判断を尊重するという統一した立場で対処をしてきております。そういう意味におきまして、経済産業省におきましても、そうしたお立場から検討されているものというふうに理解してございます。

中塚委員 私の質問には何かちゃんとお答えをいただけないようなんですけれども、私が申し上げているのは、あなた自身がこれは機構にとって重要なことだというふうにおっしゃった、その重要なことについて、中川経済産業大臣の意見を代弁されたのか、あるいは北畑局長個人の御意見なのかわかりませんけれども、期限を延ばせというお話をされた。それが、要は、法律に想定をしている「意見を述べる」という意見の範囲内なのか、そうでなければ介入だというふうに、だから、現に高木さんは介入だというふうにおっしゃっているわけですね。要望書も以前お配りいたしましたし、手元には辞任届もございますけれども、その中に介入を受けたということが書いてあるということで、要は、法律の想定をしている意見の範囲内なのか、あるいはそうではないのか。いかがですか、もう一度。

藤岡政府参考人 私どもはそのときに居合わせておりませんので、何とも判断いたしかねることだと思います。

中塚委員 実は、意見を述べたということについて、意見は意見で、確かに私もいろいろな意見は言うんですけれども、それが介入だというふうに思うためには、やはりこれは何かほかにもあったんだろうなと思うわけですね。

 北畑さんにお伺いしますが、九月二日、斉藤社長とお会いになった。理事会で北畑さんは、ビジネスモデルやスポンサーの話をした、再生機構入りした場合の流通政策について話をしたということをお話しになりましたし、あと、配付をしていただいた紙には、これには上下分離の話もしたということが書いてあったわけですが、この際に、イトーヨーカ堂とイオンはダイエーが反対しているということをおっしゃったかどうか、そしてまた、上下分割はダイエーが望んでいないが、上下分割をせざるを得ないのであるならば、ディベロッパーは機構に、食品スーパーは機構でなく丸紅がマジョリティーをとるということは考えられないか、そういう御意見を提案されたことはありますか。

北畑政府参考人 九月二日に斉藤社長とお会いをしたときには、頭の体操、お互いに自由に意見を言い合うということでお会いをいたしまして、お互いに議事録もメモもとらないということで議論をいたしました。

 確かに、具体的な企業名についていろいろな議論はいたしましたけれども、そういう経緯でございますので、今の御質問についてコメントすることは控えさせていただきたいと思います。

中塚委員 きょうの参考人の皆さんは何かすごく声が小さくてよく聞こえないんだけれども、していないとおっしゃったんでしょうか、答えられないとおっしゃったんでしょうか。

北畑政府参考人 これは、広い意味での行政機関の間での意見交換でございます。具体的な中身についてはお答え申し上げられません。

中塚委員 それに対して斉藤社長は、その案では産業再生委員会を通らない、丸紅が株主ということなら、要は、再生機構に入れば一たん減資をせにゃいかぬ、その上にまた出資をする、そんなことはあり得ないというふうにお答えになったということはありますか。

北畑政府参考人 議論をした翌日に、斉藤社長から、機構の内部でさらに議論をした結果ということで、こういう問題点があるという部分がございまして、当日の議論ではございませんけれども、そういう御意見を聞いたという記憶はございます。

中塚委員 ということは、これは三日のやりとりだということですね。はい、ありがとうございました。

 十月八日の朝、北畑局長は斉藤社長とお電話でお話しになられているということですけれども、その際に、民間のデューデリをやめさせろというのはおかしいじゃないか、大臣に文句を言わせるぞ、機構はイオンにやらせるつもりじゃないのかというふうにおっしゃった事実はありますか。

北畑政府参考人 電話でのやりとりでございますので、記憶が少し正確じゃないかもしれませんが、七日の日と八日の日、二度にわたって斉藤社長に電話をいたしました。

 七日の日は、産経新聞の朝刊に、機構が期限を切って通告をしたという文章、それから、五日付の朝日新聞の朝刊に、機構からダイエーの民間入札に参加をしている企業に、暗に入札に参加をしないようにという電話があったという記事がございました。この二点の新聞記事について、斉藤社長に事実関係を確認したという記憶がございます。

 八日の日は、六日付の機構からダイエーあての文書を私ども受け取っておりましたので、主として、委員御指摘の十二日の期限の設定について議論をした記憶がございます。

 期限の設定は、ダイエーにとりまして企業の存立にかかわる重要な問題でございます。十月六日付の機構からダイエーへの文書では、二点書かれておるわけでございますけれども、機構に支援を要請するか否かを決断すること、それから、支援を要請するのであれば民間ベースの資産査定作業を中止することを求めた内容であったと思います。この文書に基づきまして、問題点を指摘いたしました。

 その内容は、ダイエーとしては、この時点では機構に申請するという意思はなかったと思います。機構への支援要請を前提としないで、機構の資産査定を民間の資産査定と並行して始めていたということでございます。その民間の査定作業が数日後である十八日を入札期限として一区切り迎えるという状況の中で、機構としてどうしてこの民間の努力を見守れないかという疑問を私は感じました。機構法の二十二条は、申請主義でございます。ダイエーの方がまず銀行と相談をして機構に申請をするという申請主義でございまして、これが逆回りになっているのではないかということについて議論をいたしました。

 それから二点目は、機構に申請を要請するか否かという極めて重要な経営上の問題について、六日付の文書で、十二日回答期限という文書でございましたから、これは極めて問題だと申し上げました。間に三連休が含まれております。営業日では中二日しかないという通告でございます。

 しかも、この文書は、ダイエーに直接ではなくて、六日の午後に金融機関を通じて手渡されたと聞きました。しかも、六日の午後に手渡されて、七日の朝刊には既に報道がされておったということでございまして、このやり方は余りにもショートノーティスであり、やり方として丁寧さ、丁重さに欠けるということについて、斉藤社長とはかなり激しく議論をいたした記憶がございます。

 こういう問題意識のもとにお電話をいたしましたので、私どもとしては、先生御指摘のような介入ということではなくて、中立公平を旨とする公的機関が適切な業務運営を行う上で、監督官庁であります私どもが事実関係の確認や問題点の指摘を行ったものでございます。その法的根拠は、産業再生機構法四十一条の監督規定、四十二条の報告徴収規定、それから五十四条では報告徴収については主務大臣が単独で行使することを妨げない、こういう規定がございまして、こういう規定を根拠にした私どもの問題点の指摘であったというふうに私は認識をしておりまして、決して介入というものではないと考えております。

中塚委員 いや、法的根拠を聞いているのじゃなくて、大臣に文句を言わせるぞというふうにおっしゃったのか。そのとおりでなくても、大臣に文句を言わせるぞというニュアンスのお話をされたのかどうかということをお伺いしたわけなんですね。

 介入というのはそういうことでしょう。要は、圧力を受けたというふうに思っているから介入だと。意見をお述べになる、聞かないんだったらそれは何を言っても構わないという話にもなるかもわからない。北畑さんは、意見は言ったけれども聞いてもらえなかった、結果としてそうなんだから、私は意見を言っただけだというふうにおっしゃるんでしょうが、でも、高木さんは、この要請書でも辞任届でも、介入を受けたというふうに言われているわけですね。介入というと、それは圧力ということですが、大臣に文句を言わせるぞみたいな話をされたのかどうかということをお伺いしたい。

 そして、迎さん、せっかくお越しいただいて何もお伺いしないのも悪いので、十月十三日午後、ウォルマートに電話をして、十八日の入札にはぜひ参加してほしい、参加してくれれば必ず落札させる、査定など適当にやっておけばいいではないかというふうにおっしゃったことはおありかどうか。お一人ずつ御答弁をいただいて、終わりたいと思います。

北畑政府参考人 電話でのやりとりでございまして、最初申し上げましたように正確に記憶をしているところではございませんけれども、この問題は大変重要な問題だ、大臣も問題意識を持っているという趣旨の発言はしたかもしれません。

迎政府参考人 お答え申し上げます。

 十三日の日に、今お電話という話がございましたけれども、私はウォルマートの関係者とお会いをいたしました。これは、ウォルマートの方から、所管官庁の、私流通を所管している立場でございますので、状況について説明をしてほしいということで、向こうの求めに応じて会ったものでございます。したがいまして、私ども、入札にぜひ参加をしろとか、あるいは参加をした場合に落札をさせるとか、そんなようなことは一切申し上げておりません。所管の企業からの求めに応じて、状況について私どもの認識を御説明したというものでございます。

中塚委員 終わります。

金田委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭です。

 まず、信託業法改正案について聞きたいと思います。

 今度の改正は、信託の受託対象財産の制限を取り払って、知的財産権など新たな財産権を信託の対象に認めるということ、さらに、信託を取り扱う業者として金融機関以外の参入も認めるというものになっているわけです。これによってさまざまなバラエティーに富んだ商品が生まれ、新たに参入してくる業者も広がる、同時にトラブルも予想されるわけですけれども。したがって、これらの信託会社には、一般投資家の保護あるいは受託者責任をしっかり果たすということが大切だと思うわけです。また、そういう資質と能力がそれぞれの会社に求められると思います。

 これを金融庁としてどのように担保していくかということであります。例えば、投資家に対する説明義務、あるいは不当勧誘などの規制、監督規制、そういうルールを定めているわけですけれども、新規参入を含む全業者に対して新たなルールというものをどのように徹底するのか、まずその考え方をお伺いしたいと思います。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 本法案は、今委員からも御指摘がございましたように、受託可能財産の範囲の制限というものを撤廃していく、そして、金融機関以外の者の信託業への参入というものを可能にしていく、こうしたことで、信託の活用に対するニーズに柔軟に対応していく一方、信託サービスの利用者の保護を適切に図るための措置というものをあわせて講じることによって、信託のさらなる発展を目指しているものであります。

 具体的には、免許制あるいは登録制というものを導入させていただいて、その際、業務執行体制や財産的基礎等を個別に審査することにより、不適切な事業者の参入を阻止することといたしております。

 また、信託商品は実績配当が基本でありますので、受益者の自己責任を求められることや、あるいは信託商品スキームは極めて複雑となり得ることを踏まえて、信託に係る取引の公正を確保し、そして信託者の保護に欠けることがないように、信託関係の設定についての勧誘時における一定の行為の禁止、あるいは信託商品に関する説明義務、そして契約時の書面交付義務等の規定を整備して、信託会社にこれらの遵守を求めているところでございます。

 さらには、信託会社については、信託財産の状況報告の交付義務、そして忠実義務等の行為準則を設けるとともに、立入検査やあるいは業務改善命令等の監督上の措置を講じているところでございます。

佐々木(憲)委員 それは法律の説明でありまして、私が聞いているのは、その法律が成立した後、新たに参入してきた業者に対して金融庁としてどのようにこれを徹底するのか、徹底の仕方を聞いているわけです。中身の説明、前提の話はもう結構ですから、どのように徹底するか、そのことについてお答えいただきたい。

伊藤国務大臣 周知徹底をしていくということは非常に重要なことでありますので、これは、審査に当たってもこの法の趣旨というものを十分理解していただいて、そして、新しい参入者に対しても、先ほどお話をさせていただいたようにしっかりとした審査をしていく、あるいは参入に当たっての私どもの考え方というものを明確にさせていただいているところでございます。

 そして、周知徹底を図っていくために、私どもとしてもさまざまな努力をしながら利用者の方々にも理解をしていただくということは大変重要なことでありますので、そうした広報活動も含めて、留意をしながら対応していきたいというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 その際、トラブルをどのようにして適正に処理していくかということが大変大事だと思うわけです。元本保証のない新たなタイプの信託商品が出回るとかいうことになっていきますと、それだけトラブルが発生しやすいわけであります。

 信託協会には信託相談所というのがあるそうですけれども、お話を聞いていると、苦情があった場合に、それを受け付けて、それで関係する会社を紹介して、話し合ってくださいよ、こういうことが中心で、どうも解決能力が備わっていないように感じるわけであります。

 午前中の参考人質疑で神作参考人が、販売をする段階でのトラブル、例えば、勧誘の仕方あるいは善管義務の遂行についてのトラブル、それから商品の仕組みそのものについてのトラブル、それから受託者の行為に関するトラブル、こういう問題がいろいろあり得る、三つのレベルのトラブルがあるというふうにおっしゃいました。

 したがいまして、これを解決するためには、やはり客観的なものをしっかり見ることができる立場の方に参加をしていただいて、第三者的な機関というものがあれば一番いいわけですけれども、そういうトラブルの解決の仕方というのが大事だと思いますけれども、どのような考え方を持っておられますか。

伊藤国務大臣 現在、信託業務に関する苦情につきましては、個別の信託銀行のみならず、業界団体である信託協会においても信託相談所というものを設置して、顧客からの苦情の受け付け、その迅速な解決に努められているものと承知をいたしているところでございます。

 また、信託を含む金融分野における裁判外紛争処理制度の改善については、これは平成十二年の六月、金融審議会の答申というものを踏まえて、消費者団体、各種自主規制機関、業界団体、弁護士会、そして、学識経験者及び関係行政機関の自主的な参加による金融トラブル連絡協議会というものが設置をされ、そしてさまざまな取り組みが行われているところでございます。さらに、裁判外の紛争解決手段については、本国会でいわゆるADR法案というものが審議をされているというふうに承知をいたしているところでございます。

 金融庁といたしましては、以上のような動きを踏まえつつ、新たな担い手となる信託会社が、これらの苦情処理体制の中にどのように位置づけていくことになるかについて十分考慮をしていきたいというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 法体制の整備ですけれども、例えば、横断的な、業界を超えた金融サービス法の制定、先ほども少し議論になったようですけれども、そういうものを展望していくということが非常に大事だと思うんです。私は、これは緊急に必要だと思いますけれども、その予定はあるのか、あるいは検討はどの程度進んでいるのか、お伺いしたいと思います。

伊藤国務大臣 先ほどもお話をさせていただきましたように、多様な商品や多様なサービスが提供されていく中で、利用者の保護をしっかりやっていくということが極めて重要なことだというふうに思っております。

 金融審議会においても、先ほども御紹介をさせていただきましたように、こうした考え方が示され、そして、今、具体的に投資サービスにおける投資家保護のあり方について精力的な議論がなされているところであります。今後のスケジュールにつきましては、来年の春をめどに基本的な考え方を取りまとめていくというふうにお伺いをしておりますので、その後、必要に応じて、より具体的な要綱案の検討に移る方針であるというふうに承知をいたしているところでございます。

 私どもとしても、十分問題意識を持って、よりしっかりとした制度が設計できるように努力を積み重ねていきたいというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 次に、中小企業向け貸し出し問題についてお伺いしたいと思います。

 八月四日のこの財務金融委員会で、私は、公的資金注入行の中小企業向け貸し出し計画の未達成問題について触れました。皆さんにお配りしている資料の一枚目ですけれども、都銀でいいますとUFJ、それから地銀でいいますと、北陸、親和、和歌山、この全四行が対前期比でマイナスである、もちろん未達であるわけです。

 その質疑の際に、金融庁の佐藤監督局長が、「中小企業向け貸し出しが減少した資本増強行に対しましては、銀行法に基づいて報告徴求をいたしておりまして、その中で、なぜ中小企業向け貸し出しが減少したのか、その理由、それから、今後の取り組みの状況等について報告を求めているところでございます。その報告が出てきたところで、それを精査いたしまして、より詳しい分析をしたい」、こういう答弁をされましたね。

 そこで、その詳しい分析の結果というものをここで述べていただきたい。

佐藤政府参考人 ただいま御指摘いただきましたように、十六年三月期におきまして、資本増強行のうち、中小企業向け貸し出しが減少した四行、UFJ銀行、北陸銀行、親和銀行、和歌山銀行に対しまして、銀行法二十四条に基づいて、減少した理由等について報告を求めたところでございます。

 その結果でございますけれども、まずUFJの方でございます。

 UFJにつきましては、企業グループ内の資金効率向上といったことで、調達を親会社に集中させるということの結果、傘下子会社が借り入れが減ったといった、そういうバランスシート改善を目的とした財務リストラによる借入金の圧縮といったこと、あるいは地方三公社等からの資金返済があったということ、あるいは要管理先からの回収が進んだといったこと、こういった点が報告がございました。また、無担保貸し出し商品等多様な新商品の投入とか拠点体制の強化、あるいは新規貸し出し専担部の対象拠点の増設といったことで、新規先の獲得への一層の注力はしているわけでございますけれども、十五年度下期にはその効果が出て、多少下期は増加しておるということなんですが、上期における落ち込みを挽回するには至らなかったというようなことでございました。

 それから、残りの地銀三先でございますけれども、各行からは、貸出先企業における財務リストラによる借入金の圧縮、あるいは大企業グループ全体における財務リストラということで傘下中小企業の資金返済、あるいは信用保証協会保証のついている貸し出しのうち制度融資、具体的には金融安定化保証制度でございますけれども、これが終了したことに伴う約定返済、こんな要因が大きかったというふうに報告を受けております。

佐々木(憲)委員 貸し出しの減少というのはいろいろな要素があって、銀行側の説明はそれはそれとしてあると思いますが、しかし、借り手の中小企業にとっては、貸しはがし、貸し渋り、依然として深刻な事態があるという訴えもありますので、厳しくその点は監視をしていただきたいと思います。また、未達については、そういうことのないようにということを徹底していただきたい。

 次に、銀行の手数料の問題についてお聞きをしたいと思います。

 伊藤大臣にお聞きしますけれども、例えば大臣がみずほ銀行ですとかあるいは東京三菱銀行に行きまして百円玉を一円に両替したと、そういうことはほとんどないでしょうけれども、しかし、中小企業はそういうことは結構あるんですね。その場合に、百円を一円玉にかえたら、手数料は幾ら取られると思いますか。

伊藤国務大臣 私の立場ですと、ちょっと個別行の名前を出してはお答えができないことはお許しをいただきたいと思うんですが、私の経験からしますと、両替機で百円以上の場合に、百円であったり二百円であったりということがあるんではないか。一方で、五十円未満であれば無料であるということではないかな。さまざまな選択肢があるというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 お配りした資料の三枚目を見ていただきますとそれが出ているんですけれども、百円玉を一円に両替いたしますと、みずほ銀行、東京三菱銀行は三百十五円の手数料を取られるんです。百円を一円にかえて何で三百十五円取られるんですか。これはおかしな話ですよね。これは正常な手数料と言えるのかどうか。大臣の感じ方をお聞きしたいと思います。

伊藤国務大臣 これは私の立場で、手数料の設定の適否でありますとか、その水準がいい悪いということは、お話しすることはできないということについては御理解いただきたいと思います。(発言する者あり)

佐々木(憲)委員 いや、そういう立場だから言わなければならぬという話も今聞こえてきましたが、百円の両替で三百円以上も手数料を取られるというのは、これは私は異常だと思うんですけれども、そうは思いませんか。

伊藤国務大臣 これは選択のことだと思うんですね。個別行のことについて私は申し上げられませんけれども、百円、二百円、三百円という手数料が設定されている一方、五十枚以下であれば無料という選択肢もあるんだというふうに思います。各銀行、さまざま、いろいろな手数料の設定の仕方をしておりますので、それをどう選ぶかは、これは利用者の問題であろうというふうに思います。

佐々木(憲)委員 金利自由化で、利子については原則として自由である、交渉によって決められるということですね。手数料はだれが銀行と交渉して決めているんですか。

伊藤国務大臣 済みません、手数料は、今の両替の手数料のことでしょうか、それともほかの手数料……(佐々木(憲)委員「ほかも含めて」と呼ぶ)

 両替の手数料については、それは利用者の方が両替機でどうするかという御判断になると思いますし、ほかの、ローンの借りかえでありますとか手数料については、これは債務者との間での話し合いで決まっていくものだというふうに承知しております。

佐々木(憲)委員 そうじゃないんですよ。手数料を決めるときに、利用者と相談して決めているという事例というのはあるんですか。

佐藤政府参考人 一般的に、手数料につきましては、銀行の側で、こういう範囲の取引、こういう範囲の手続については幾らぐらいというふうにあらかじめ示しているケースと、それから大臣からお答えいただきましたような、相対で、交渉で決まってくるというケースと両方あろうかと思います。

佐々木(憲)委員 ほとんどが銀行が勝手に決めているわけですよ。銀行が私のところはこういう手数料をいただきますよと、それを利用者に押しつけているわけです。預金者あるいは融資を受けている側に、こういう手数料をいただきますと。ですから、選択の余地はないんです、ほとんど。両替の手数料だって、例えば、三百円は高い、百円にまけておきなさいよと言ったって、銀行はまけますか。そういうことはしませんよ、ほとんど。交渉の余地があるといいましても、結局銀行は優越的な地位を持っておりまして、事実上押しつけるわけですね。ですから、そういう点はしっかり監視をして、不当なものはやはり是正するというのが当然だと思うわけであります。

 例えば中小企業あるいは個人に対して融資でさまざまな名目で手数料を取っているわけですが、今の一枚前の方の、二枚目の手数料を見ていただきたい。これは現在金融庁でいろいろ調べていただいているんですけれども、不況が長引いておりますから、返済の期限を少し延ばしていただきたいというような条件変更を求める、そうすると条件変更の手数料を取るわけですよ。それから、逆に、少し資金のゆとりができたので期限よりも早目に返済をしたいということで早く返済したら、それもまた早く返済した手数料を取るというんです。それはおかしいと思いませんか。こういう事実、大臣、知っておられましたか。

伊藤国務大臣 各種の手数料が設定されているということについては承知をいたしております、私もローン等を利用したことがございますので。

佐々木(憲)委員 いや、各種の手数料でなくて、中小業者が融資を受けた際、その融資を返済する条件を変更する、その際に手数料が取られるということを知っておられたかということなんです。

伊藤国務大臣 私もかつて中小企業を経営しておりましたので、そうした手数料があるということは承知をいたしております。

佐々木(憲)委員 都銀ではそういうことはありましたか。

佐藤政府参考人 都銀一般ということでお答えをさせていただきますと、あらかじめそういう手数料を取るということで明示しているケース、あるいはそもそも取らないというケース、あるいは交渉で決めるといったケース、さまざまあろうかと思います。

佐々木(憲)委員 私はこの資料を、これは金融庁で調べたんですよ。みずほ銀行、東京三菱、三井住友、UFJ、りそなは条件変更の手数料を取っていますか。

佐藤政府参考人 済みません。最後のところ、ちょっと聞き落としました。(佐々木(憲)委員「条件変更の手数料を取っているか」と呼ぶ)

 条件変更の手数料につきましては、取っているところと取っていないところがあるというふうに承知いたしております。

佐々木(憲)委員 どこが取っているんですか。

佐藤政府参考人 まさにお示しいただきました資料にもございますように、みずほ銀行の場合には、条件変更の際に、個人向けのローンで五千二百五十円を取っている。繰り上げ返済の分につきましても五千二百五十円を取っているというケースはございます。

佐々木(憲)委員 私が聞いているのは、中小企業向けの融資に関する条件変更の際に手数料を取っている都市銀行がありますかと聞いているんですよ。ないでしょう。

佐藤政府参考人 申しわけございません。ちょっと勘違いをいたしました。

 都銀で中小企業向け貸し出しにおいて、条件変更の際に手数料を取っているというのは今のところ把握しておりません。

佐々木(憲)委員 把握してないというか、ないわけですね。これは金融庁が調べたんですから、それに基づいて私は言っているわけです。ないんです。

 それで、先ほどの、対前期比で中小企業向け貸し出しが減少した銀行だけを取り上げまして、地銀の事例で調べてみまして、私、驚いたのは、北陸銀行なんですよ。これは地銀の中で非常に突出していまして、条件変更をしたら一律に三万一千五百円手数料を取る。私が融資を受けている方から聞いたところ、三万一千五百円というのが最低ラインだというふうに銀行が言っている。このラインから始まって、上限は十万五千円だ。それで、例えば二本の条件変更をしたら、この倍取られるわけですから、二十一万取られる。三本条件変更したら三十一万五千円だ。これは余りにもひどいんで、こういうことは自由にやってよろしいのかどうか、大臣、お考えを聞きたいと思います。

伊藤国務大臣 債務者が融資の条件変更やあるいは繰り上げの返済を申し入れた場合、金融機関が当該申し入れに応じた場合に発生する事務コスト等を勘案して手数料を徴収することはあり得るわけでありまして、一概に、どのような水準が妥当であるか、これを申し上げることは大変困難ではないかというふうに思います。

 いずれにいたしましても、こうした申し入れを受けた金融機関は、取引に係る手数料について十分説明を行って、そして、債務者の理解を得られるよう努めるなど円滑な取引に取り組んでいくことが重要であるというふうに考えております。

 先ほど委員から優越的地位の乱用の問題についてもお触れになられました。この乱用の問題については、所管は公正取引委員会でありますので、私からの答弁は差し控えさせていただきたいと思いますが、金融庁といたしましては、金融機関がその優越的地位を乱用して取引を行うといったことがないように、銀行の業務の適切性を確保する観点から、法令に基づいて適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 コストを反映した適切な手数料であるというんであれば、それは話はわからないでもない。現に都銀はそんなのは取っていないわけですから、コストがかからないという認識なのでしょう。

 何で北陸銀行だけが十万とか、あるいは三本条件変更したら三十万以上だと。そんなにコストがかかるものなんですか。これは異常ですね。どうしてそんなことをやるんですかと業者が聞いたらしいんですね。そうしましたら、それは簡単に条件変更をさせないためなんだと。これは余りにも中小企業いじめではないのか。こういうことを一方的に決めること自体、優越的地位の乱用に当たると私は思うんですね。私、これは、どういう根拠でこういうものを設定しているのか、ぜひ調べていただきたいと思うんですが、いかがでしょう。

佐藤政府参考人 一般論としてこういうふうに感じますというお答えになろうかと思いますが、最初の契約をするときに、条件変更について、どういう条件変更があり得るか、いつあり得るかといったようなことも含めて全体が恐らくパッケージで契約されているというケースがあり得て、その中では条件変更について何らかのブレーキをかけるような条項を織り込むといったことはあり得るんだろうと思います。全体の中の一部としてそういう部分が出ている可能性というのはあろうかと思います。

 ただ、いずれにせよ、優越的地位の乱用に当たるような、そういう合理性のない取引というのは不適切だろうというふうに思います。

佐々木(憲)委員 ですから、この事例について、それに当たるのか当たらないのかぜひ調べて報告をしていただきたいと思いますが、いかがでしょう。

佐藤政府参考人 個別の銀行の個別の手数料についての御指摘でございますので、ピンポイントでそういうところに焦点を当てて調査をするということが、緊急性あるいは必要性あるいは適切であるかどうかを含めてちょっと検討させていただきたいと思います。

佐々木(憲)委員 これは、今並べただけでも、三つの地銀だけですけれども、北陸銀行だけなんですね、こんなに取っているのは。ほかに調べていただいていますけれども、まだその調査結果はわかりませんが、こういうことがどの程度行われているのか、また、不当であるのかそうでないのかという、その検討が私は必要だと思います。したがって、調査の上、是正すべき点がもしあれば、当然それは是正すべきだという点を申し上げておきたいと思いますので、今、調査の点について検討したいとおっしゃいましたから、ぜひぴしっとやっていただきたいと思うんです。

 さて、そこでもう一つ、今度は手数料一般に戻しまして、お配りした資料の次のページなどをあけていただきますと、銀行の手数料収入というのが最近異常に膨らんでおりまして、いろいろな名目で手数料が設定されて取れるようになっているわけです。ともかく収益を上げるために何でも手数料を取るというのがどうも最近の傾向のようで、都銀の手数料収入を見ましても、これは役務取引等収益という形で出てくるわけですが、大変ふえているわけです。

 九一年から二〇〇三年までの間の数字がそこに出されておりますが、九〇年代は、これは都銀全体で大体八千億ぐらいだった。ところが、今や一兆二千七百億になっている。二、三%だったのが一三・九%。全体の利子の支払いというものがどんどんどんどん減って、預金を預けても利子がつかない。そういう中で、取れるところは何だということで手数料ばかり取っていく。それが非常に大きな不満になって、利用者の方々が、余りにも手数料が高過ぎるのではないか、こういうふうにおっしゃっているわけです。

 したがって、私は、この点について、その背後にあるのは、銀行に対して収益性、収益力の向上、こういうことを金融庁が余りにも強調し過ぎる、その点がこういう形で、逸脱も含めていろいろな問題を発生させているのではないかと思います。

 そういう点で、今後の金融行政を考える場合に、銀行の利益はもちろん必要でしょうけれども、同時にまた、利用者の利便性、利用者へのサービス、この点もバランスをとってやっていくことが必要だと思うんですが、最後に大臣の見解をお聞きしたいと思います。

伊藤国務大臣 これは、銀行の経営をしていくに当たって、利用者の方々からの信認を得るということは極めて重要なことではないかというふうに思っております。

 そうした意味からも、委員が後段で指摘されたように、利用者の本当の意味での利便性の向上、そして利用者のニーズに的確にこたえていく、そういう経営をする中で収益向上策というものをつくり上げていくというのが銀行本来の姿であるというふうに私自身も思っているところでございます。

佐々木(憲)委員 終わります。ありがとうございました。

金田委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

金田委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 信託業法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

金田委員長 起立総員。よって、本案は可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

金田委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、江崎洋一郎君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び日本共産党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。江崎洋一郎君。

江崎(洋)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    信託業法案に対する附帯決議(案)

  政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。

 一 受託可能財産の範囲の拡大及び信託業の担い手の拡大にあたっては、受益者保護を図るため、信託会社に対し適切な法令遵守体制を整備するよう指導・監督すること。

 一 過去、一部信託銀行について、忠実義務、善管注意義務及び分別管理義務等の法令遵守体制に重大な問題があったことから、過去の事例を踏まえ、より適正な業務遂行がなされるよう努めること。

 一 さらなる投資家保護を図るため、金融サービス法等の機能別・横断的な考え方に立った投資家保護法制の整備について引き続き検討すること。

 一 投資家保護法制の整備に向けた検討に併せて、金融・資本市場における健全な取引を確保する観点から、米国の証券取引委員会(SEC)を含む諸外国の事例等も参考に、引き続き市場監視機能等の強化について検討すること。

 一 次期法改正に際しては、来るべき超高齢社会をより暮らしやすい社会とするため、高齢者や障害者の生活を支援する福祉型の信託等を含め、幅広く検討を行うこと。

以上であります。

 何とぞ御賛成賜りますようよろしくお願い申し上げます。

金田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

金田委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付すことに決しました。

 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。金融担当大臣伊藤達也君。

伊藤国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨を踏まえまして十分に検討いたしたいと存じます。

    ―――――――――――――

金田委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

金田委員長 次回は、来る十六日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後一時十八分散会


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