衆議院

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第10号 平成17年3月11日(金曜日)

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平成十七年三月十一日(金曜日)

    午前十時一分開議

 出席委員

   委員長 金田 英行君

   理事 江崎洋一郎君 理事 遠藤 利明君

   理事 竹本 直一君 理事 村井  仁君

   理事 中塚 一宏君 理事 原口 一博君

   理事 平岡 秀夫君 理事 谷口 隆義君

      小野 晋也君    岡本 芳郎君

      木村 太郎君    熊代 昭彦君

      倉田 雅年君    小泉 龍司君

      佐藤  勉君    柴山 昌彦君

      鈴木 俊一君    砂田 圭佑君

      田中 和徳君    中村正三郎君

      永岡 洋治君    宮下 一郎君

      森山  裕君    山下 貴史君

      井上 和雄君    泉  健太君

      岩國 哲人君    小林 憲司君

      田島 一成君    田村 謙治君

      津村 啓介君    中川 正春君

      野田 佳彦君    馬淵 澄夫君

      村越 祐民君    吉田  泉君

      石井 啓一君    長沢 広明君

      佐々木憲昭君

    …………………………………

   財務大臣         谷垣 禎一君

   国務大臣

   (金融担当)       伊藤 達也君

   内閣府副大臣       七条  明君

   財務副大臣       田野瀬良太郎君

   財務大臣政務官      倉田 雅年君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  中城 吉郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  竹内  洋君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局総括審議官)          三國谷勝範君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    佐藤 隆文君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十一日

 辞任         補欠選任

  谷川 弥一君     柴山 昌彦君

  渡辺 喜美君     佐藤  勉君

  鈴木 克昌君     泉  健太君

同日

 辞任         補欠選任

  佐藤  勉君     渡辺 喜美君

  柴山 昌彦君     谷川 弥一君

  泉  健太君     鈴木 克昌君

    ―――――――――――――

三月九日

 関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二八号)

同日

 消費税増税中止、医療ゼロ税率適用に関する請願(下条みつ君紹介)(第三一九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二八号)

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

金田委員長 これより会議を開きます。

 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局総括審議官三國谷勝範君、金融庁監督局長佐藤隆文君、内閣官房内閣審議官中城吉郎君、内閣官房内閣審議官竹内洋君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

金田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馬淵澄夫君。

馬淵委員 民主党の馬淵でございます。本日は一般質疑ということで、金融に関する件できょうは質疑をさせていただきます。

 伊藤大臣が就任をされて、竹中前大臣から受け継がれて、金融再生プログラムからさらに次の段階へ進んだとして、金融改革プログラム、これを伊藤大臣が策定され、推進されるというかたい御決意を示されました。

 この金融改革プログラム、そのポイントとして五点挙げられております。「金融サービス立国への挑戦」ということでの五点、その中で、特に金融行政の公正さをとりわけ確保していかねばならないという強い御決意がおありだと私はこれを見て感じます。

 この「信頼される金融行政の確立」について、一言、これは伊藤大臣の方からお答えをいただけませんでしょうか、お考えの概要をお伝えいただけませんでしょうか。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 政府といたしましては、構造改革をさらに進めていくために、平成十七年度から二年間、重点強化期間と位置づけているわけでありますが、この重点強化期間において金融としての改革を進めていくに当たって、私どもの行政指針として、昨年の十二月に、今御指摘がございました金融改革プログラムというものをまとめさせていただきました。そして、今後進めるべき改革の視点の一つとして、委員からも御紹介がございましたように、「信頼される金融行政の確立」を盛り込ませていただいたところでございます。

 この視点を盛り込んだ趣旨は、今まで、金融をめぐるフェーズというものは不良債権問題に対する緊急対応でございましたが、これからは、将来の望ましい金融システムというものを目指していく未来志向の局面に変わりつつある。そうした中で、利用者の満足度が高く、国際的にも高い評価が得られるような金融システムを、官の主導ではなくて民の力で実現していくためには、金融行政の透明性、そして予測可能性、効率性というものを高め、金融行政に対する信頼を確立することが不可欠であるという点にございます。

 このような認識のもとで、プログラムでは、今後の金融行政当局の基本的な姿勢といたしまして、金融行政は市場規律を補完する審判の役割に徹すること、そのために、現行規制を総点検し、不要な規制を撤廃するとともに、金融行政の行動規範、コード・オブ・コンダクトを確立すること、その一方で、利用者が不測の損害をこうむることのないよう、必要な利用者保護ルールの整備と徹底を図ることを明らかにするとともに、行政の一層の透明化や、あるいはITの活用による電子政府の推進を通じた行政の利便性の向上と効率化においても、金融行政が先進的な役割を果たしていく決意を明らかにしたものでございます。

 今後、こうしたプログラムの趣旨を踏まえまして、金融行政に対する信頼を確立すべく真摯に取り組んでまいりたいと考えております。

馬淵委員 金融行政の透明化、そして予測可能性の確保、公正さ、いわゆる本当に信頼性という観点でこの金融行政にしっかりと取り組んでいきたいというかたい御決意を、今お伺いしたわけであります。

 この信頼性という観点で、私、本日は、日本振興銀行の件につきまして、大臣に一つ一つ御確認をさせていただきたいというふうに思っております。

 この日本振興銀行でございますが、お配りをしておりますお手元の資料に、日本振興銀行、昨年の四月の二十一日に開業された新しい銀行であります。この銀行は、冒頭に、ここにメッセージを載せておりますが、代表取締役木村剛氏がメッセージとして、それこそ御本人が、日銀を辞してコンサルティング会社を立ち上げて、そのときに資金繰りで夜も眠れぬ思いをした、そして、話すら聞いてもらえない現状に憤りを感じた、だからこそ中小企業を元気にする銀行、日本振興銀行をつくったんだ、そして、真の信用創造機能、資金仲介機能を果たすという理念を掲げ、経営理念は一点の曇りもない、こう信じておられる。すばらしいメッセージをうたわれています。

 この日本振興銀行は、どういう業務の概要か。ここの銀行は、通常の銀行とは若干趣を異にします。中小企業を中心とする貸し付けを行う、それには無担保でスピーディーに資金を供給するということを考える。そしてもう一つ大きな点は、第三者の保証人を不要とする。この無担保、第三者保証不要、そしてスピード審査、これを大きく題目として掲げられている。当然ながら、そのような貸し方をするというのは通常の銀行ではなかなかありませんから、金利は通常の銀行の金利より高く設定されています。

 この日本振興銀行は、昨年の四月、まさに鳴り物入りで立ち上がったわけであります。この新銀行の立ち上げのときには、ここに代表取締役として名前を連ねておられる木村剛氏、そしてもうお一方、オレガという、いわゆる卸金融、金融サービス業をやっておられた落合氏、このお二方が中心となって進められた銀行でありました。この新しい形態の銀行に対して、世間は注目をし、そして、どのような中小企業の活性化を実現するのかということに、大きくその動向を見ておられた。

 四月二十一日の開業でありましたが、九月末に中間決算期を迎えます。丸々半期ではありませんが、その中間期の決算として発表されております数字、九月末で、預金残高、いわゆる預かり資産は二百九十四億でございました。そして、貸し付けに関しては四十億、いわゆる預貸率は一三%、予想をはるかに上回るような資金を集めることができた、しかし、十分な貸し付けを行うことができなかった、こう社長御本人も述べられておる。そのうち不良債権は二億、貸倒引当金七億という状況であり、経常利益は十二億五千万円の赤字となりました。

 この日本振興銀行、実は、鳴り物入りで立ち上がったということだけではなく、設立当初からさまざまな点が各方面から指摘をされておりました。この日本振興銀行、実は、一つには、銀行の立ち上げ、いわゆる免許の認可、この許認可が極めて早かったのではないかという点が指摘をされております。私もこれ、ちょっと調べてみました。

 お手元の資料の中に、三枚目でございますが、最近の銀行の免許の取得の日時というのが載っております。日本振興銀行は、平成十五年の八月二十日に銀行設立構想が発表され、それと同日に予備免許審査申請というのがなされました。そして、正式の免許交付は平成十六年の四月でございます。最近の銀行といえば、それ以外には、この右側にありますように、ジャパンネット銀行やアイワイバンク、ソニー銀行、イーバンク銀行、これら新しい銀行は、新たな形態の銀行として設立が済まされました。これを見ますと、それぞれは、設立構想発表から正式免許取得まで、これに関しては少なくとも日本振興銀行よりも時間がかかっている。日本振興銀行は余りにも早いのではないか、こういった指摘が各方面からもなされていた。

 これについては、五味長官がことしの初めに、一月十七日ですが、記者会見でこのように述べられております。この日本振興銀行の免許申請に関しては特別に早かったわけではないという趣旨でお話をされておりまして、銀行法の施行規則で標準処理期間は一カ月と定められているところで、したがってこの標準処理期間内ぎりぎりのところで免許がおりたということだということでお話をされている。

 そして、もう一つ他と比べてというお話で、その部分に関して言えば、新しい形態といういわゆるネットバンク、これについては、今までにこうした銀行の形態というものが想定されていなかったがために、そのガイドラインの設定を申請、事前相談の段階で行ってきた、だからこちらに関しては時間がかかった。逆に言えば、日本振興銀行を一カ月と言っていますが、これらのネット銀行に関しては、本免許審査期間というのは六日間とかあるいは五日間、八日間といった期間になっている、だから、この日本振興銀行は特別に早く免許が付与されたわけではないんだ、こういった趣旨で五味長官はお話をされています。

 そこで、大臣にお尋ねさせていただきたいんですが、この日本振興銀行、大臣の御所見として、この免許付与の期間に関して、これは特別に早くなかった、いや、これはどう考えても早い、どちらでしょうか。大臣の御所見をまずお聞かせください。

伊藤国務大臣 免許審査の基準にのっとって厳正に対処されたというふうに思っております。したがって、今御質問があった銀行に対して私どもが何か特別に配慮をしたということは全くないというふうに認識をしているところでございます。

馬淵委員 大臣、では、もう一点お伺いをします。

 日本振興銀行は、この銀行設立構想発表と同時に予備免許審査申請というのをなされています。その他のネット銀行に関して言えば、設立構想発表の前にいわゆる事前相談というのがある。事前相談、構想を発表する、あるいはその前、あるいは構想を発表してから後に予備免許申請をするまでのいろいろな形で、こういうことを考えているんだという事前相談、こういうことがなされてきた。日本振興銀行に関しては事前相談というのはあったんでしょうか。

伊藤国務大臣 日本振興銀行のケースにおきましては、事前の相談がございません。

 その背景といたしましては、日本振興銀行が、定期預金で調達した資金により中小企業向け貸し出しのみを行うという、伝統的な銀行業を限定的に行うビジネスモデルであったのに対して、他の新規参入銀行、先ほど御紹介ございましたけれども、伝統的な銀行の業務形態とは異なって、主にインターネットやあるいはATMにかかわる取引を専門に行うこととしていたこと。そして、他の新規参入銀行の一部では、日本振興銀行とは異なり、異業種の事業会社等が銀行の経営方針に重要な影響を及ぼし得ると想定される主要株主として存在していたこと。そして、他の新規参入銀行については、銀行設立構想が持ち上がった時点では、伝統的な銀行の業務形態と異なる銀行の参入やあるいは異業種の事業会社等の銀行参入に対する免許審査、監督上の対応についての当局の指針が存在しなかったこと等が挙げられるというふうに考えております。

馬淵委員 今大臣は、伝統的な銀行業務であるということで、これについては他の銀行とは違う、これら四行とは違うというお答えをされました。事前相談はなかった、しかし伝統的な銀行であったから、これは今までの銀行法に定められた手続にのっとって申請を受け、そして免許を認可した、このように大臣も今明確にお答えいただいたと私は認識しております。

 さて、では、違った観点でちょっとお伺いをさせていただきます。

 金融庁には顧問という職務がございます。さて、この金融庁の顧問という職務について、どなたが任命をされ、そしてどのような職務権限があるんでしょうか、お答えください。

三國谷政府参考人 お答え申し上げます。

 金融庁顧問につきましては、金融庁組織規則に基づきまして、「金融庁の所掌事務のうち重要な施策に参画する。」とされているところでございます。金融庁顧問の人選の基準というものは明文化されておりませんが、その時々の重要な施策につきまして御助言をいただく等、ふさわしい方、識見を有する者を任命しているところでございます。任命は長官が行っております。

馬淵委員 金融庁の顧問というのは重要な施策に参画すると。そうですね。今おっしゃったとおり、金融庁の組織規則の十三条にそのように定められている。そして、これらは、人選はどのようにするかというのは明文化されていないが、少なくとも決裁は長官が行われる。そして、当然ながら、長官の任免、これは大臣が行われる。

 人選については、大臣にも相談した上で決められておるんでしょうか、お答えください。

三國谷政府参考人 金融庁顧問の任命自体は長官でございますが、そういった人選する過程におきましては、大臣とも相談しながら決定しているものと承知しております。

馬淵委員 では、もう一点お伺いをさせていただきます。

 木村剛氏は金融庁顧問であった。金融庁顧問は、いつからいつまで顧問をされていたんでしょうか。

三國谷政府参考人 木村顧問につきましては、平成十四年十月三日から顧問と承知をしております。なお、辞任されたのは平成十五年八月二十日というぐあいに認識しております。

馬淵委員 木村剛氏は、二〇〇二年の十月三日から顧問に就任され、いわゆる竹中前金融担当大臣の金融再生プログラムの作成に参画され、そして金融再生の仕事をされている中で、一昨年の二〇〇三年の八月の二十日に顧問を辞されています。顧問を辞されたということの理由は何だったでしょうか、お答えください。

三國谷政府参考人 お答え申し上げます。

 木村氏本人から、その前日の十五年八月十九日に顧問の辞任の申し出がございまして、それを受けまして、二十日に顧問を免ずる発令をしたものでございます。

馬淵委員 木村氏みずから、つまりこれは御本人の意思によってやめられたということがお答えだったというふうに理解をします。

 さて、先ほど私は免許日時の申請の日付の表を見ましたが、銀行の設立構想発表と同時に予備免許審査申請というのが平成十五年の八月二十日、つまり、二〇〇三年の八月二十日、木村氏が顧問をやめられた日に構想が発表され、そして同日に申請が行われています。

 さて、この日本振興銀行はどのような形でつくられていこうとしてきたのか。お手元の資料の中に「中小新興企業向け融資専業銀行設立についてのご案内資料」というのがあります。これは、日本振興銀行がまさにどのような形態でビジネスモデルを構築し、その銀行業務を行っていくかということを検討した上で、これらを内外にお配りし、ある意味では株主や、ある意味ではこうした業務に対しての賛意を得るということで進められた、そのための資料でございます。

 この資料の中には、当然ながら、参加メンバーとして、先ほども社長メッセージとして名前を載せられていた木村剛氏、これを繰っていきますと参加メンバーの中に、木村剛氏は先ほど申し上げたオレガの落合氏の次に、二番目に記されている。木村剛氏はこの時点ではKFiというKPMGグループのファイナンシャルコンサルティングファームの社長をされておられた。KFiの社長をされている中で、この日本振興銀行、当時は中小新興企業向け銀行ということで名前は正式に決まっていなかったんでしょうが、この銀行設立の趣旨、趣意を説明する中に名前を連ねている。そして、この資料を見れば、平成十五年の七月、つまり木村氏が辞任をされる前に、既にこうした資料が内外に配られている。

 さらに、この資料の最終ページをごらんください。十七ページですが、中小企業融資企画株式会社というのは日本振興銀行を設立するための準備会社なんです。この準備会社の連絡先は、木村氏が社長をされているKFiの内部に置かれていました。木村氏は金融庁の顧問である、先ほどの御説明の中には重要な施策に参画をするとおっしゃっている。その重要な施策に参画する木村氏がKFiの社長であり、KFiみずからの会社の中に日本振興銀行を設立するための準備室を置き、そして内外にこうした資料を配りながら銀行設立の準備を進めている。先ほどのお話の中で、事前相談はなかったとお話しになった。しかし、内部の重要な施策に参画する顧問が金融庁内部のその中にいて、事前相談がないというお話でありますが、当然ながら内部の事情をよく御存じです。

 そこで、お尋ねをしたい。金融庁の顧問、これは重要な施策にかかわるということでありますが、当然ながら金融庁の顧問の発言というのはさまざまな施策に影響力をお持ちなんでしょうか、お答えください。

三國谷政府参考人 お答え申し上げます。

 金融庁顧問につきましては、先ほど申し上げましたとおり、金融庁の所掌事務のうち重要な施策に参画するということになっておりますが、個別事案につきまして意思決定またはその実行につきましての法的権限が付与されている、そういった性格のものではございません。

 なお、金融庁顧問は、国家公務員法上の営利企業の役員等との兼業制限、あるいはそういったことは、非常勤の国家公務員であることから適用されておりませんでして、したがって顧問以外の業務活動にその観点からの制約はないということでございます。

馬淵委員 もう一度確認しますよ。重要な施策に参画するわけですから、影響力はあるんですか、ないならないと、はっきりお答えください。

三國谷政府参考人 金融庁顧問につきましては、その時々の施策に応じまして必要な御助言をいただく等という立場で御参加していただいているものでございます。個別の事案につきましては、そのような意思決定または実行についての法的権限が付与されている、そういう立場ではございません。

馬淵委員 木村氏は竹中プラン策定の主要メンバーでした。そして、その竹中プランには銀行免許認可の迅速化というのを掲げておられます。そして、先ほどもお話しされたように、必要な助言、すなわち個別個別の事案だけにかかわることはできないとおっしゃるが、金融政策全般に影響力をお持ちじゃないですか。必要な助言をするということは、すなわちそこでの政策決定にかかわっていくということです。この木村氏が影響力を持って、しかも事前相談はないと言いながらもみずからの社内に振興銀行の設立準備室を設けている。

 私は、もう一方の当事者であるオレガ、落合氏にお話を伺うことができました。落合氏は、KFi内にこの準備室が設置されていることについて、私がお尋ねをしたところ、そうした金融庁向けの交渉、広報、こうしたものはすべて木村氏に任せていた、このように語っておられます。すべて木村氏がその御判断をされていたということである。

 大臣、このような状況を大臣は利益相反する行為であるとはお考えになられませんか。お答えください。

伊藤国務大臣 そのようには全く考えておりません。先ほど三國谷審議官から御説明をさせていただいたように、木村氏の場合には、金融再生プログラムの策定の作業に参加をしていただきました。そういう意味からすると、金融庁の重要な政策、そこに参加をしていただいたわけでありますけれども、個別の事案についてそれを所掌する立場にはございませんし、またその意思決定に参加をしているわけではありません。私も当時副大臣でございましたが、木村氏から事前に日本振興銀行の問題について相談等は一切ございませんでした。

馬淵委員 木村氏は、このKFiの社長をされておられたわけでありますが、落合氏のお話によりますと、当然ながらこの振興銀行設立の準備のために木村氏にはそれなりのコンサルティング料が払われている、そして業務監査もこれはKFiにお願いをしていたという状況でありました。

 そして、そのころの状況でいいますと、〇四年の十月創刊の経済誌フィナンシャル・ジャパンの巻頭大特集は、竹中大臣、福井日銀総裁、そして木村氏の鼎談となっています。この件につきましては、昨年の参議院の財政金融委員会で峰崎議員あるいは大久保議員が追及をされています。また、創刊準備号では、五味金融庁長官が木村氏との七ページの対談企画に登場されています。木村氏が金融庁に顔がきくと繰り返し発言をしているとの関係者の証言もある。

 この状況を見れば、個別の案件に対して当然ながら職務権限がないのは明らかですよ、顧問という位置づけ上それはもうはっきりしていますよ。しかし、一つ一つの施策に適切な助言をする、必要な助言をするという立場、しかも金融再生プログラムの主要なメンバーとして銀行免許の付与の迅速化を語られている、その方が、こうしたみずからのビジネスのために金融庁という看板を使われる、このことが実際に行われていると一般の方が感じるのは当然じゃないですか。国民の皆さんがこのことをおかしいと感じないと大臣はお考えですか。大臣、もう一度御所見をお伺いします。

伊藤国務大臣 先ほども答弁をさせていただいておりますように、木村氏は、確かに金融庁顧問として金融再生プログラムの策定作業に参加をされたわけであります。しかし、個別の銀行免許の審査にかかわることでありますとか、個別の事案について所掌する立場にもございませんし、私どもとして、そうした案件について木村顧問に対してお伺いを立てる、意思決定に参加をしていただきたい、そのことを依頼したこともございませんし、また木村氏の側からみずからのビジネスの問題について事前に御相談になられるということも、私は副大臣でありましたけれども、一切ございませんでした。

 利益相反、あるいは今委員が御指摘をされたように、他の方々からの誤解がないようにということは極めて重要でありますから、そうしたことを認識して、その中で適切な対応をしてきたというふうに考えております。

馬淵委員 いや、だから木村氏は八月二十日にやめたんでしょう。八月二十日にやめられたというのは、まさにこの銀行設立構想を発表して免許審査申請を出した日じゃないですか。そこに経営者として参画しているから、利益相反と疑われちゃいかぬからといってやめられたわけですよね。でも、現実には、七月にこの構想を出して、こうしたペーパーで配られているわけです。事実上は、ここで木村氏は、既に利益相反であることを認識しながら行っていたということになりませんか。大臣、どうですか。

伊藤国務大臣 利益相反になっているというふうに私どもは認識をいたしておりません。繰り返しの答弁で大変恐縮でございますけれども、金融庁の顧問というのは、個別の事案を所掌する立場にはございません。そうした構想が発表されていることは承知をいたしておりますけれども、木村顧問から金融庁に対して一切その件についての事前の相談はございませんでした。そして、実際に免許の予備審査に係る申請を行われるということで、木村顧問みずからが辞任をされて、そして審査につきましては、私どもは、木村氏が顧問であったか否かにかかわらず、免許審査の基準にのっとって厳正、適正に審査をし、そして免許を交付させていただいたところでございます。

馬淵委員 では大臣、もう一点、もう一度確認しますよ。

 では、この木村氏が八月二十日以降も顧問を務められておるというのは、これは妥当なことだとお考えですか。これは八月二十日にやめられていますよ、仮にです、八月二十日以降も顧問でおられるというのは、これは妥当なことでしょうか、大臣。

伊藤国務大臣 これは、金融庁と交渉される立場になった、したがって顧問をおやめになられたということでありますし、交渉に立たれるということであれば、顧問でおられるということは適切ではないというふうに思います。

    〔委員長退席、遠藤(利)委員長代理着席〕

馬淵委員 交渉に立つ立場になったからやめた、だからそのときには顧問についていることは適切ではないと。しかし、現実には、その交渉の準備をしている段階でもこれは顧問におられるわけですよ。内部のことがわかる立場にいらっしゃるわけです。これが適切でないというのは私はどうも合点がいかない。

 ちょっと違った観点で次はお話を伺います。

 この日本振興銀行の銀行免許取得に対しては、先ほど来、伝統的な銀行業務だというお話がありました。無担保の中小企業向け融資市場、これについて少しお話をさせていただきます。

 いわゆるミドルリスクと呼ばれるこの市場。一説には、ミドルリスクローン、これらの市場というのはビジネスモデル的に成立しないのではないかという指摘もあります。しかし、理論上はミドルリスクというものは存在します。

 このお手元の資料、振興銀行の準備室の資料の中に「ミドルリスク・ミドルターン金融の不在」という、四ページの番号を振ったところがございますが、市場は、このグラフのように、金利水準の高く、そして信用リスクの高いところは消費者金融が担っている。そして、その下は商工ローンが担っておられます。銀行は、いわゆるローリスク、信用リスクは低く、かつ金利水準が低いというところで御商売されている。

 中小企業はこうした銀行からのローンはなかなか受けることができない。したがいまして、商工ローンで多少高い金利を受けるか、あるいは消費者金融に手を出すかといったところになる。いわゆる担保を持たない中小企業は、まさにこのミドルリスク、ミドル市場と呼ばれる真ん中のところ、大きな真ん中の円のところでございますが、ここにいる中小企業の方々は、貸し渋り、貸しはがしによって資金の供給というものがなされていません。そこで、こうした市場に対して、さまざまな銀行、あるいはノンバンクも含めて、新しい市場の開拓ということで商品を開発し出しております。

 七ページと振ってあるそのところを見れば、中小企業向けの融資商品、幾つか載っています。三井住友銀行のビジネスセレクトローンや東京三菱銀行の融活力、みずほアドバンスパートナー、UFJビジネスローン等、また、都民銀行なんかのスモールビジネスローンなんかも、これも結構使われているものだと言われています。こうした商品が次々に出てきている。

 これらのスモールビジネス向けのローンというのは、十数%という利息を取るようなところもありますが、しかし、現実に考えれば、金利を一五パー、一六パーお支払いになるような、それだけの体力がある中小企業、零細企業というのはどんな企業か。単純に言えば、粗利ベースでも三〇%、四〇%といった利益がないとこれらの金利負担に耐えられないのです。こうしたミドルリスクというのは、確かに市場は存在はするけれども、そこで資金を供給する側としては、余り金利を高く設定してしまうと、その中小企業が支払い切れないような状況になってしまう。つまり、不良化させてしまうリスクがあります。

 では、どんな形のビジネスモデルが成立するんだろうか。

 もう一枚、別物で配りました、「ミドルリスク金融のビジネスモデル」という一枚物の絵をごらんください。

 例えば銀行、ある程度のリソースをお持ちの銀行であれば、コールセンターなどの大規模なところから電話などによってマスプロモーションをかける。中小企業の皆さん方に、それこそ電話で、融資を必要とされませんかといったじゅうたん爆撃のようなプロモーションをかけられる。そして、見込み客がいれば、これらを専門拠点に移して、そして、個別のプロモーション、いわゆる営業をかけていく。さらには、中小企業ですから、なかなか担保もない、営業力も収益力も十分でない可能性がある。そんな中で貸し付けをしても大丈夫かということは、本部がしっかりと一括管理したポートフォリオ管理をする。また、不良化した債権に関しては、営業の部分とは切り離して、延滞先の管理チーム、債権回収のチームをつくって一括集中管理をさせる。

 このように、銀行のような大きなリソースを持ったところ、人的リソース、あるいは店舗、また資本というようなリソースをお持ちのところであれば、こうしたビジネスモデルは十分に成立する可能性はあります。

 そして、もう一つ成立する可能性があるところは、極めて高い金融専門性のスキルを持った、専門の金融の、そのプロがいるという場合であります。消費者金融などは、それこそ、この人は貸して大丈夫かということを、その人の言動あるいは会社のその姿、単に決算書だけではない、会社の中での従業員の顔色まで含めてこれを判断するという高いスキルをお持ちの方々がたくさんいらっしゃる。

 つまり、ミドル市場の成立というのは、実は、一つは大きなリソースをお持ちのところ、そしてもう一つは、高い専門性を有した方々が集まったところ、この二つで成立すると考えられます。

 このことを担当されている方々にお話を聞きますと、非常におもしろいお話が返ってくる。

 かつての銀行の貸し出しというのは、いわゆる決算書を見ているだけでした。決算書ではその会社の中身というのはよくわからない。しかし、膨大な、それこそじゅうたん爆撃のような形でどんどんどんどん貸し付けを行う先を探して、そして個別にそこに営業をかけていく、そして、時には貸し倒れも起こるという状況の中で、膨大な情報が集まってくる。この情報の中から、貸してもいい先、悪い先というのはだんだん見えてくる。いわゆるデータマイニングというものです。そうすると、会社の状況というのは、決算書以外に、倒産するかしないかということが大きくわかる情報というのがあるんだということがはっきりしてきた。それこそ、借りるタイミングや借りる時期、年齢、性別、さまざまな情報によって、ここは大丈夫、ここは大丈夫でないということが見えてくる。かつての伝統的な銀行業務ではない、新たなリスク管理ということが出てきたんだというお話を、私は伺ってきました。

 例えば、ちょっとだけ赤字の決算の会社と、ちょっとだけ黒字の決算の会社、どちらが倒産率が高いか。一般に考えれば、ちょっとだけ赤字の方がこれは倒産率高いんじゃないかと思われる。しかし、実態はそうではありません。ちょっとだけ黒字の中小企業というのは粉飾決算をしている場合があったりする。ちょっとだけ赤字の会社というのは、それこそ節税のために社長などの役員が大きな給料を取っていたりする。つまり、決算書には見えないところがあるんだということ、こういうことがわかってきたと、ミドルリスクの市場にかかわってこられている金融マンの方々はお話をされています。

 このことを考えると、日本振興銀行への免許の付与というのは、先ほど大臣は、伝統的な銀行業務であった、確かに、預金を集めて貸し出すということでは伝統的な銀行業務であったというお話ではありました。しかし現実には、伝統的な銀行業務ではない、新しい領域に踏み込んだ、新しい市場向けの銀行業務であるということ。それを考えれば、今回の免許付与というのが、本当に十分に議論をされてきたのか、あるいは議論をしなければならなかったのではないかということを、私は問題提起をしたい。

 先ほど申し上げたように、九月の中間決算、経常の利益は十二億五千万の赤字となっています。この十二億五千万の赤字を出した日本振興銀行、今申し上げたようなビジネスモデルの中では、大規模なリソースを持った銀行ではありません。本来なら、極めて専門性の高い人間が集まって金融業務を行わねばならないような形態の銀行のはずであります。しかし、それができていない状況であるかもしれない。銀行という公器の中で、社会性の高いその器の中で、果たしてそれが行われているのかどうか。ある意味では、免許付与の段階で市場に対する体制というものを十分に厳しくチェックする仕事が金融庁に求められていたのではないかと私は思うわけであります。

 さて、大臣、そこでお尋ねですが、このような市場を考えた場合に、ミドルリスク市場などといった新しい市場に進出していく銀行など、伝統的な銀行業務だという一くくりの話ではなくて、それに合ったガイドラインなりの認可基準というのを設けなければならないと私は考えるわけでありますが、いかがでしょうか。

伊藤国務大臣 今さまざまな角度からお話をいただいたわけでありますけれども、私どもがその銀行のビジネスモデルを評価するということについては、これは十分気をつけてお話をしなければいけないというふうに思っているところでございます。

 今委員が御説明されたのは、まさに伝統的な銀行のビジネスモデルのお話をされたのではないかというふうに思います。ミドルリスクに対して日本の金融機関が貸し出していたかどうかという問題はあろうかというふうに思いますけれども、審査体制をしいて、与信管理をして、そして回収体制を求める、これが伝統的な銀行のビジネスモデルではないかというふうに思っております。

 私の個人的な経験をお話しするのは余り適切ではないかもしれませんが、アメリカにおりましたときに、アメリカの金融機関においては、やはりこうした中でミドルリスクに対して評価をして、そして融資をしていくということが日常当たり前のように行われているわけでありますので、何か特別なことがここで起きているということではないというふうに思います。

 新しい銀行が設立をされる動きの中で、私どもとして異業種参入についての一つのガイドラインをつくらせていただいたのは、先ほど御説明をさせていただいたように、そのビジネスモデルがインターネットを活用したものであったり、あるいはATMを活用したものであったり、今までの銀行のビジネスモデルとは違うものであったために、これに対するガイドラインというものを策定させていただいたところでございます。

 日本振興銀行の場合には、今まで私どもとして銀行免許の審査をしてきているわけでありますけれども、そうした審査の経験に基づいて、同じように、審査基準に基づいて厳正に審査をさせていただいて、そして免許付与を行わせていただいているところでございます。

馬淵委員 伝統的な銀行業務だとおっしゃいますが、先ほど申し上げたように、銀行の中では新たな領域に踏み込んだということであり、そして、専門性を持ったこの日本振興銀行というのは、実は、銀行免許の認可の段階で厳しくそこをチェックすべきではなかったか。そして、そのチェックができなかったがゆえに、この中間期の決算、十二億五千万の赤字で、先ほど申し上げたように、三百億近く集めたお金を四十億しか貸すことができない。当初予想は、二百三十億の預かり資産の中で百八十億の貸し付けをやろうとしていた。これは結局は、先ほど申し上げた、また、この日本振興銀行というのはリソースを持っている銀行ではありませんから、高い金融専門性を持った人間を集めて、そして与信機能を持った金融マンが貸し付けを行うことによって収益を上げていくことをその目的としていた、その方法としていた銀行が、現実にはできていないということになる。

 大臣、では、この九月の中間決算の結果について、大臣はどのようにお考えですか。どのようにお感じでしょうか。

伊藤国務大臣 同行より発表された平成十六年九月期の中間決算の状況が当初の収支計画を下回る結果になっていることは承知をいたしておりますけれども、金融庁といたしましては、同行の免許審査に際しまして、銀行法に規定されている審査基準、特に、申請者が銀行の業務を健全かつ効率的に遂行するに足りる財産的基礎を有し、かつ、申請者の当該業務に係る収支の見込みが良好であること等の審査基準に合致しているか否かについて、厳正に審査したところでございます。

馬淵委員 もう一度お伺いしますよ。

 私は、最初からずっとお尋ねをしているのは、木村剛氏が、金融庁の顧問という、重要な施策に参画するというそのメンバーにいる中でこの銀行をつくられ、そして、その銀行のビジネスモデルというのは、私が今申し上げたような形でつくられ、大きなリソースを持ったところが行うか、あるいは高い専門性を持った方々がやるかという形でしか成功し得ないようなビジネスモデルである。そこを、ガイドラインを設けずに、伝統的な銀行業務だといって迅速に、これは普通にと言ってもいいのかもしれません、免許を出した。ここに本当に透明性が図られているのですかということを一貫してお尋ねしているわけなんです。金融庁が改革プログラムとして出されている中で、金融行政の信頼性を高めるということを大臣がおっしゃっているにもかかわらず、実は、行われていることは全く逆ではないかということを御指摘させていただいているわけです。

 大臣、竹中前大臣が木村剛氏を顧問として迎えられた、しかしその後やめられた。しかし、今、伊藤大臣は私的アドバイザーとしてお迎えになられた。それも、今もそういう形で大臣が木村氏とのおつき合いがあったということを示す事実であります。これを考えれば、透明性を確保する、信頼性の高い金融行政をつくるという大臣のお話と、今私がるる申し上げたこの日本振興銀行の設立経緯から免許の認可の状況を踏まえれば、果たして本当に高い透明性を図るということが一貫してなされているんでしょうか。

 繰り返しお尋ねをします。

 大臣、この九月の中間決算で赤字を出している日本振興銀行の状況、本来ならば、新たな銀行免許の付与に対して厳しいチェックがなされなければならなかったのではなかったか。木村氏がかかわっているということ、これによってそこがねじ曲げられてしまっているのではないかということ。顧問の段階で既にもうこの構想をお持ちで動き回っていた木村氏がいるという現実を考えれば、大臣がもう一度透明性の確保ということをこの場で明らかにしていく、それが必要ではないかということを私はお尋ねしているわけです。お答えください。

佐藤政府参考人 私の方から、九月の中間決算についてだけちょっと補足をさせていただきます。

 銀行法上、免許の審査を行う際の基準といたしまして、先ほど大臣からもございましたように、申請者の当該業務に係る収支の見込みが良好であることということが求められているわけでございます。その一環といたしまして、銀行法上、免許審査を行う際に配慮する事項の一つといたしまして、営業開始後三営業年度までに黒字化するということが規定されておりまして、同行に対する免許審査につきましても、収支見込みは当該事項を踏まえて厳正に審査をしたということでございます。

 御指摘のとおり、同行の平成十六年九月期中間決算が赤字となり、当初の収支計画を下回っているということになっているのは事実でございますけれども、これは開業後五カ月の実績でございまして、先ほど申し上げましたような銀行法の規定からいたしますと、まだ最初の時期ということであろうかというふうに思います。

 いずれにいたしましても、同行が一層の経営努力を行っていくように促していく必要はあろうかと思います。

    〔遠藤(利)委員長代理退席、委員長着席〕

馬淵委員 三月の決算をまた迎えなければそれはわからないというところはあるのかもしれません。しかし、木村氏が顧問でかかわってきたときに立ち上げを画策されてきた銀行がこのような状況に陥っているということを考えれば、やはり、当初の設立の段階で木村氏がかかわってきた、そこに何らかのゆがみはなかったのか、このことをこの国会の場で明らかにしていかねばならないのではないかと思います。

 透明性ということをうたわれるのであれば、ぜひこの国会の場で木村氏を参考人として呼ばれ、そして、当時の大臣であった竹中さんもぜひこの場に来ていただいて、その振興銀行の設立の経緯も含めて明らかにしていただきたいと私は思うわけであります。ぜひ、木村氏の参考人招致と、そして竹中大臣もこの場に来ていただいて、日本振興銀行設立当初の経緯を含めての議論をしていただきたい、かように考えます。

 委員長、ぜひ木村氏の参考人招致をお願いしたい。

金田委員長 ただいまの馬淵君のお話は、理事会にて協議させていただきます。

馬淵委員 大臣、もう時間もありませんので、最後にもう一点、もう一度だけ確認をさせていただきますが、大臣がおっしゃっている、透明性を確保するというのは、少なくとも国民が見て理解ができなければ何にもならないんですよ。国民が見て、ああ、なるほどな、これほど透明性を高めて公正な仕事をしているなということが理解されなければ、幾ら透明だ透明だと言っても何の説得力もない。木村氏が顧問をされていた銀行がこうした状況に陥っているところにある。ここはもう一度、設立当初から影響があったかなかったかということを含めて、この国会の場でもしっかり確認をしていくこと、それが伊藤大臣の語られる、金融改革プログラムの大きな柱の一つである、透明性の高い、信頼性のある金融行政の確立であると私は信じております。

 大臣、最後にその決意だけもう一度お聞かせください。

伊藤国務大臣 重ねての答弁で大変恐縮でございますけれども、繰り返しになりますが、木村氏が顧問をしていた、そのことによって免許審査がゆがめられたということは全くございません。私どもは、免許審査の基準にのっとって日本振興銀行の審査を厳正に行わせていただいたところでございます。

 透明性は非常に重要だというのはそのとおりでありますけれども、こうした免許審査の具体的な過程を明らかにすると、そのことが、当該金融機関の競争上の地位でありますとか、あるいは正当な権利というものがあります、そうしたものを害することになりますので、その点についてのコメントは差し控えさせていただきたいというふうに思いますが、私どもとしては、公正というものを旨にして、また、その公正に対する信頼感というものが失われれば行政全体の信頼というものが損なわれるわけでありますから、委員の御指摘のその点については心してやっていかなければいけないというふうに思っているところでございます。

 私どもとしての具体的な取り組みについては、冒頭お話をさせていただいたコード・オブ・コンダクトを初めとして、金融行政のこれからのあり方について金融改革プログラムで示させていただいたその一つ一つを真剣に実施していきたいというふうに思っております。

馬淵委員 個別の審査の過程をということではなく、先ほど申し上げているように、顧問という重要な立場にいる方がこの設立の経緯にかかわってきたところを、この国会の場で、いや、そうではない、あるいは、いや、こういう部分で問題があったのかもしれないということを明らかにするのが透明性の確保だと私は思います。この場で一つ一つ明らかにしていく姿勢を大臣がお見せになることが、新大臣としてこうして頑張っていかれる中での姿勢のあらわれだと私は信じておりますということを最後に申し上げて、私の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

金田委員長 次に、中塚一宏君。

中塚委員 民主党の中塚一宏でございます。

 本日は、まず、偽造キャッシュカードの問題をお伺いしたい。

 この委員会でもたびたび取り上げましたし、また予算委員会でも取り上げました。私、この問題は党において検討もしておりまして、私ども独自の案をつくりましたので、間もなく皆さんにお示しをできるようになります。請う御期待というところですが。

 この問題をずっとやってきて、初め、本当に、預金をなくされた方が被害者にならないということから始まって、いろいろ御対応いただいていることは承知しています。金融庁からもいろいろ説明をいただいておりますが、最近、銀行も何か補償に応じるなんということを言い出しているということで、新聞にもそういったことが載るようになったわけなんですが、ただ、そのことについていろいろ聞きますと、では、これでは一体今までと何が変わっているんだというふうに思わざるを得ない部分というのが大変に多いんですね。だから、きょうは、そのことをちょっとただしながら、この偽造キャッシュカードの問題について本当に一体何が必要なのか、何をするべきなのかということをお話ししたい、議論をしたいというふうに思っているんです。

 というのは、この問題は、もちろん預金のなくなった方は本当にお気の毒ですが、それだけにとどまらなくて、やはり銀行への信頼、ひいては金融システムの問題にもかかわってくるわけですね。そのことは、もう一つは、銀行のあり方、金融機関のあり方ということにもかかわってくる、そういう根源的な問題を含んでいるというふうに考えておるわけなんです。そういった趣旨、観点からお伺いをしてまいりたいというふうに思います。

 金融庁からヒアリングをいたしまして、預金者への補償というのも行われているということのようです。この預金者への補償については、いただいた資料によれば、今、主要行等でいくと、全額補償が九件、一部補償が三件、補償されていないのが百二十九件、不明が八件。これは二月に金融庁からいただいた資料なんですけれども、今は三月ですが、その後はどういうふうになっていますでしょうか。これは参考人の方で結構です。

佐藤政府参考人 先般私どもで実施をさせていただきました実態調査でございますが、これは、平成十六年九月までに起きた被害につきまして、その後の対応といたしまして、調査時点まで、すなわち、年明けまでの間に被害補償等が行われたという件数でとってございます。被害がございました二百八件のうち十八件において全部または一部の補償がなされております。そのうち十一件が全部補償、七件が一部補償ということでございます。

中塚委員 というわけで、いただいた資料の時点から変わっていないということなんですけれども、私は、やはりこれは極めて不明朗だと思うんですよ。全額補償をする場合、一部補償をする場合、そして補償がされない場合、不明というのもありますけれども、では、一体どういう場合なら全額補償されるのか、どういう場合なら一部補償なのか、どういう場合なら補償がされないのかということが全くもってわからないわけなんですね。というのは、それが明らかにならなければ、何が金融機関の責任で、何が預金者の責任なのかということがわからないわけですね。そうすると、銀行も対応の立てようがない、預金者も対応の立てようがないということになりはせぬかということなんです。

 だから、私は、やはり大事なことは、では、全額補償をされた場合には、一体どういう要件だったから全額補償だったのか、一部補償だったら、それはどういう要件だから一部補償だったのか、あるいは、補償されない場合はどういう場合なのかということを全部オープンにするべきだと思うんですね。

 それでお伺いいたしますが、では、補償をした具体例と、補償をした理由ということについてお聞かせをいただけませんか。

佐藤政府参考人 補償したケースでございますけれども、典型的には、キャッシュカードないし暗証番号について、管理につきまして預金者の責に帰すべき事由がなかったといったことを確認して、約款に基づいて補償を行っているというのが一般的な現状であろうかと思います。

 その際に、もう少し具体的に申し上げますと、例えば生年月日等の類推されやすい暗証番号以外の暗証番号を利用していて、その後の管理にも預金者の責に帰すべき事由が見当たらなかったといったケースには補償をしているということがあるでしょうし、あるいは、ATMの管理について銀行側が必ずしも完全ではなかったといったことが推測されるようなケースということについては補償がなされているということだろうと思います。

 それで、全部か一部かというところにつきましては、これも個別にはなかなかお話ししにくいわけですけれども、例えば預金者の側にも明らかに一部落ち度があったんじゃないか、こういった場合には一部補償になっている傾向があるのではないかというふうに思います。

中塚委員 例えば、暗証番号が誕生日でなかったから預金者の責任ではないとか、あるいは銀行にもATMの管理責任というものがあるということで、これは預金者の責任じゃない、補償するということなんだけれども、では、一体、銀行のATMに対する管理責任というのは何なんですかということなんです。私が知りたいのはそこなんですね。だって、そうでなければ、預金者が自分には過失はなかったということを証明することが極めて難しいわけでしょう。銀行のATMに対する管理の責任というのは一体何なのか。

 では、暗証番号を管理していたというけれども、自分の誕生日でなかったとしたって、例えば電話番号の下四けただった場合もあるでしょうし、お父さんやお母さんの誕生日の場合だってあるわけで、誕生日でなかったからとか、あるいはATMの管理責任ということだけでは、やはりそれはまだ全然あいまいなんですよ。そこをもっとクリアにしていかなきゃいけないということだと思うんですね。

 お話しになれないというのは、成り済ましというのが銀行は怖いと。要は、その基準なんかが公開になったら、成り済ましによって犯罪が起こってしまうんじゃないかということが怖いというふうに言うから、皆さんはこの基準というものを公開できないということだと聞いていますが、そこはいかがなんでしょう。

佐藤政府参考人 まず、ATMの管理につきまして、銀行がATMによるサービスを提供している以上、社会全体の技術の水準とかあるいは犯罪の手口の巧妙化、こういったことに対応して、それに見合ったセキュリティーの水準を確保していくということは、一般的に銀行に対して求められていることであろうというふうに思っております。そういう中で、現在は個別行による対応というのが先行しているという状況でございます。

 それで、私どもの方から個別の基準についてなかなかお話をしにくいという事情でございますけれども、一つは、先ほどまさに委員御指摘のとおり、成り済まし犯罪などに対して、一定の手口に関する情報を提供する結果となるおそれもある。これは、この成り済まし犯罪に対する対策というのが今はまだ必ずしも確立していないという事情も大きいかと思います。それが一つでございます。

 あと、今般私どもが行いました実態調査が、そもそも、個別の被害に関する情報は公にしないという条件で任意に金融機関から提供してもらったものであるといったことがございます。それから、さらには補償に至った経緯というのは個別のケースによって異なりまして、かつまた、補償に応じた件数が限られておりますので、特定の個人や金融機関が識別されることになりかねず、そういった方々、個人あるいは金融機関の権利利益を損なうおそれがあるといったことも考慮点でございます。

中塚委員 この話は、ある意味金融機関も被害者ですから、おっしゃることの被害者のプライバシーの問題とか利益の問題ということはわからないではないけれども、大切なことは、これ以上被害を拡大させないということなわけですね。もっと大切なのはそこなんですよ。いみじくもおっしゃった成り済まし対策ができていないということに一番の問題があるわけで、だから、成り済ましになったら困るから基準は公開できないと言うんじゃ、この話は全然前に進んでいかないということだと私は思うんです。大臣、いかがですか、そこのところは。

伊藤国務大臣 委員からは、この問題についてさまざまな重要な御指摘をいただいているというふうに思っております。

 先ほど委員が言われましたように、この偽造キャッシュカードの問題というのは、金融システムの信頼性、銀行の信頼性というものをまさに問う大変重要な問題でありますし、私どももそうした認識の中でこの問題の対応をさせていただいているところでございます。

 委員がいみじくも今言われましたように、この被害を拡大させない、被害を防止するということは、この問題の重要な観点の一つだろうというふうに思っておりますし、また委員が今御指摘されましたように、この成り済ましも、やはり成り済ましの新たな犯罪が起きないようにしていくということも非常に重要な観点だというふうに考えているところでございます。

 こうした観点を踏まえまして、委員御承知のとおり、私どもといたしましては、監督局内にスタディグループというものを設置させていただいて、そして専門家の方々に参加をしていただいて、補償のあり方も含めて今検討作業を進めさせていただいているところでございますので、この検討を踏まえて、私どもとしては、随時さらに金融機関に対して要請を行っていきたいというふうに思っているところでございます。

中塚委員 お手元に資料をお配りしているんですが、一枚目が、これは東京三菱銀行の広報室が出した「偽造キャッシュカード被害の補償について」ということですね。二つ目の段落、パラグラフのところに下線を引いてありますが、「今般、当行は犯人検挙の有無等にかかわらず、一定の基準によりお客さまの責に帰すべき事由がないと当行が判断した場合には、偽造キャッシュカード被害に遭われたお客さまに対して、具体的に補償を実施させていただくことといたしましたので、お知らせします。」と書いてある。「一定の基準」という言葉があるわけですね。

 一枚めくっていただいて、二ページ目、これはUFJ銀行ですが、4のところですけれども、これは「犯人が検挙され偽造の手口が解明されたことなどにより、お客さまに責任を求める理由がないことを確認できた場合、被害の補償を真摯に検討させて頂きます。」ということが書いてある。

 金融庁からいただいた資料によれば、「被害発生後の対応」「預金者への補償」ということで、金融機関がなぜ補償をしないのか、補償がなされない理由ということについても書いてあるわけですが、不明なものを除けば、補償をしない理由というのは、「偽造の経緯が不明である」というのが一番多くて六三%なんですね。次に、「進展を待つ」、「預金者の暗証番号管理」の順になっておるということなんですが。

 今、二つの銀行のこの取り組みについて資料をお示ししたわけなんですけれども、東京三菱は犯人の検挙の有無にかかわらずということになっているが、「一定の基準」という言葉が入っている。UFJの方は、これは犯人の検挙が条件のような書き方にもなっているわけですが、要は偽造の経緯が不明であるということのままだと補償には応じないということなのか、それとも偽造の経緯がどうであれ補償に応じるということなのか、やはりわからないですね、これははっきり言って。

 だから、一定の基準というのを公開させることがやはり重要なんですよ。そうでないと、どういうふうに預金者は身を守ったらいいのかわからないし、どういう場合に補償してもらえるのかということもわからないわけですね。やはりこの一定の基準というのをちゃんと公開させる。東京三菱は、一定の基準を、ある、設けると言っているんだから、これはちゃんと公開をさせるべきだ。

 成り済まし対策は、それは別の問題なんです。成り済まし対策は成り済まし対策でちゃんとやらなきゃいけないのは当たり前の話であって、それはちゃんとやってもらう。でも、そのこととは別に、一定の基準というものはちゃんと公開をさせるべきではないかというふうに思いますが、大臣、いかがですか。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきます。

 成り済ましの対策というものをしっかりやって、そして一定の基準を定めるべきではないか、こうした御指摘を今委員からいただいているわけでございます。

 委員からも御紹介ございましたけれども、一部の金融機関においては、一定の基準により預金者の責めに帰すべき事由がないと金融機関が判断した場合に、被害に遭った預金者に対して被害の補償を実施する旨発表していることは承知をいたしておりますし、また、全国銀行協会が偽造キャッシュカード対策に関する申し合わせというものを一月二十五日になされているわけでありますけれども、その中で、「補償の検討」として、「規定や法に照らした真摯な対応」を申し合わせたことを受けたものであり、私どもといたしましては、まずこれらの表明に沿って預金者の責めに帰すべき事由がない場合において被害の補償がなされることを期待いたしておりますし、こうした対応策が実効的なものかどうかを注視いたしているところでございます。

 さらに、先ほど私の方からも御説明をさせていただいたように、各金融機関の個別の判断、対応により補償が行われている状況でよいのか、より共通の一般的な枠組みが必要でないかということについての問題意識は私どもも有しておりますので、こうした認識のもとで偽造キャッシュカード問題に関するスタディグループというものを監督局内に設置させていただいて、そして、被害者の補償に関する約款の運用基準の明確化についても同スタディグループにおいて御検討いただいているところでございます。

 私どもとしては、こうした同スタディグループの検討結果を受けながら、さらなる偽造キャッシュカード対策を検討し、逐次実施に移していく所存でございます。

中塚委員 要は、カード約款というのは、どんな銀行も似たり寄ったりになっているんですね、今。それで、そのカード約款に何が書いてあるかというと、これもたびたびお披瀝しておりますけれども、カードまたは暗証につき偽造、変造、盗用その他の事故があっても、そのために生じた損害については当行及び提携先は責任を負いませんと書いてある。ただし、というただし書きがあって、この払い戻しが偽造カードによるものであり、カード及び暗証の管理について預金者の責に帰すべき事由がなかったことを当行が確認できた場合の当行の責任についてはこの限りではないということが書いてある。

 つまり、要はいろいろと、この東京三菱とかUFJとか、補償についてこういうステートメントを発表されて、新聞なんかも派手派手しく取り上げておりますけれども、実態は何にも変わっていないじゃないかということなんですよ。銀行でクローズドの一定の基準というものを設けて、しかも、その一定の基準に合うかどうかというのは銀行が決めるというふうに言っておったら、はっきり言って何にも今と変わっていないということじゃないか。いかがですか。

佐藤政府参考人 先ほど大臣からも御答弁いただいたように、まさに今この補償のあり方につきましては、対応が銀行によって差が出ている、個別行ごとの対応になっているということであろうかと思います。それで、私どもとしては、こういった銀行ごとの個別対応、それぞれ努力していただくことは結構なことだと思いますけれども、個別対応のままでいいのか、それともより共通の一般的なルール、枠組みというのが必要ではないかといった問題意識は持っているところでございます。

 こういった問題意識をまさに持っているからこそ、私ども金融庁の中にもスタディグループというのをつくって、ここで議論をさせていただいている、週一回のペースで精力的にやっていただいているということでございますし、さらに、予防策よりも補償のあり方を先行して議論していただく、こういうようなことになっているところでございます。もしもここで先ほどのような御議論のあった個別対応という問題について何がしかの報告をいただくことができれば、それに沿ってより具体的な対応を考えていくということがあり得るというふうに思います。

中塚委員 私、この問題をこの委員会で取り上げて、銀行はちゃんと被害届を出すようになったということで、犯人も捕まって、それはそれで大変結構なことで、そこは本当に頑張って御努力いただいたというふうに思っておりますけれども、最近の新聞なんかを読んで国民の皆さんが受ける印象というのは、ああ、この偽造キャッシュカード対策は進んでいるんだな、今まで銀行は補償に応じていない、応じないということだったけれども、銀行も補償に応じるようになったんだなというふうに思う方が圧倒的に多いんですよ。それで、私は、それは国会でこうやって取り上げたら変わるんだねと、ある人から、いろいろな人からそういうふうに言われる。でも、これを読めば、結局今と何にも変わっていない。そうでしょう。

 もう一回申し上げますが、一定の基準、オープンにしない銀行内の内部規定によって、銀行が認めたら払いますよということだったら、今の約款と何にも変わっておらぬじゃないかという話ですよ。だから、この一定の基準というものをちゃんとつくってあるんだとするならば、オープンにさせる。これは大事なことですね。させればいいかどうかということではない、させるべきなんです。それがまず第一点であります。

 もう一つは、各行個別の対応ということでありましたが、それはやはり共通の対応にするのが当たり前の話。当然なんです。だって、法のもとにみんな平等なんですから。それは、過失責任の割合はおのおののケースによっていろいろあると思います。預金者が全く無過失の場合もあれば、預金者に過失がある場合もあるでしょう。それは、補償の額というのはケース・バイ・ケースだと思いますけれども、その補償をするかしないかということの基準については全部同じにしておかないと、かえって混乱をもたらすことになるというふうに思いますよ。だって、資金移動だって起こりかねない話ですよね、この銀行は安全だけれどもこの銀行は安全ではないというふうなことになった場合に。やはりこれは大問題になってくる。だから、私は、日本の銀行にはもっとしっかりしてもらわなきゃいかぬし、その上で、これは金融システムの安定ということにもかかわってくる話なんだから、今検討されているということですけれども、やはりこの点は大変に重要なポイントだと思います。

 私は、できればぜひ今すぐにでもこの一定の基準というのは公開させるべきだと思いますよ。そうでなければ預金者は助からない。銀行だって、結局、こういうふうに補償するなんというふうに言っておいても、何だ、やはり補償せぬじゃないかという話になってしまったら、かえって銀行の信頼だって傷つくわけだから、この一定の基準というのは今すぐにでも公開をさせるべきだ。それは成り済まし対策とは全く別の話なんだから、一定の基準というものを公開させるべきだということを申し上げているわけですが、いかがでしょうか、一定の基準を公開させるということで。

佐藤政府参考人 多少繰り返しになって恐縮でございますけれども、現状のように個別金融機関ごとの対応になっているという状況のもとで、それぞれの銀行が恐らく異なる詳細な基準というのを公表いたしますと、成り済まし対策というのはまだ確立をしていないこの状況でそういうことになりますと、いわば補償に対して積極的に取り組んでいる銀行がむしろ犯罪者にねらわれやすいといったようなこともあり得るかと思います。

 いずれにいたしましても、私どもとしては、共通の枠組みが必要ではないかという委員の御指摘、この問題意識はまさに共有しておるところでございまして、それであるがゆえに、先ほど申し上げましたスタディグループにおける検討というのも本当に精力的にやっていただいて、とにかく、もし共通の枠組みが必要という結論になりましたら、それを速やかに実行に移していくということが何よりも重要ではないかというふうに思います。

中塚委員 中身は本質的に何にも変わっていないのに、銀行が補償しますみたいな紙をばらまくということ自体、私は本当に論外だ、心外だというふうに思います。

 もう一つは、実はこれは、政府でも投資サービス法ですか、何か御用意をされていると聞いていますが、私どもは金融サービス法というものをつくるべきだということを提案しています。そのことにもかかわるんですけれども、これは結局、行政はどっちを向いてやるのかという話ですよ。銀行を向いてやるのか。銀行の成り済まし対策ができていないからやらないということじゃないでしょう。預金者の方を向いて行政をやるということであるならば、やはり一定の基準とか公開させなきゃいかぬ。統一基準をつくるというのは、それは預金者の保護のためなんですから、当然のことですよ。だから、ぜひそこのところは、これからいろいろ勉強されておやりになるということのようですけれども、それは重く受けとめていただかなきゃいかぬということだと思います。

 もう一つは、今私どもの方で用意をしている案についてちょっとお話をしたいんですが、何が一番の問題かということですね。偽造キャッシュカード対策等の問題で何が問題か。それは、要は、本来権原のない人がお金を引き出すということについて、銀行が、まあ銀行だけじゃありませんが、余りにも甘過ぎるということですよ。いかに本人確認をちゃんとやっていないかということが根源的な問題なんですね。

 例えば、大臣はクレジットカードでお買い物をされることもあるでしょう。クレジットカードで買い物をしたらサインしますね、そのサインと、クレジットカードを裏返してサインを照合している店員を見たことありますか。いかにこの本人確認ということがずさんになっているかということだと私は思う。だから、偽造キャッシュカード対策ということで私も始めたんですけれども、結局、行き着くところは、偽造キャッシュカードの問題じゃないんです、本人確認をちゃんとすればいいということなんです。

 成り済まし対策をやるというのは、それは当たり前の話、金融機関として当然なんです。それができていないということに問題があるわけで、まさに、いかにその正当な権原を持っている人であるかどうかというのを金融機関なりなんなりがちゃんと確認をしていくことが必要かということに尽きるわけなんですよ。

 ですから、私は、要は、今は原則的に全額預金者の負担ですね、キャッシュカードの偽造の問題では預金者が損するわけだ、それで預金者に帰すべき事由がなければ銀行がその損した分を補償しましょうということになっているけれども、逆にするべきだと思っている。要は、偽造であれ変造であれ盗難であれ、それによって生じた損害というのは全額金融機関の負担にするんです。金融機関が預金者の責任というものをちゃんと立証できた場合には、そうではないというふうにするべきだと思っている。というのは、それをやらないことには、この成り済まし対策というものに銀行は本気になって取りかからないですよ。そうでしょう。だって、預金者が全額負担なんだから成り済まし対策をちゃんとやらないですよ。金融機関が原則全額負担するんだというふうになって初めて、これは大変だという話になって、銀行は成り済まし対策をちゃんとやるようになる、本人確認をちゃんとやるようになるということだと思いますが、この考え方についていかがでしょうか。

佐藤政府参考人 立証責任をどちらが持つかという点は、法律論として非常に重要かつ難しい問題だろうと思います。その点につきましては、我が国の刑法、民法を含めた法体系とのかかわりもあろうかというふうに思います。

 ただ、委員御指摘の中で、金融機関に対して、セキュリティーの水準を時代の要請に合わせて高め、かつ、犯罪に対する防衛力というんでしょうか免疫力というんでしょうか、それを高めていく、そういうインセンティブを与えることの重要性ということは、私どもも共有しているところでございます。

中塚委員 そういうインセンティブが必要だというふうにお考えになっているんだったら、やはりやるべきことは何かといえば、それは、要は無権原による取引は無効であるということを決めればいい。それだけのことです。偽造であれ盗用であれ変造であれ、本人でない人が引き出したものは無効だ、全額金融機関が責任を負うんだというふうにすれば、銀行はおしりに火がついて一生懸命成り済まし対策をしようということになっていきますよ。その中で、例えばATMの引き出しの限度額の引き下げ等のことについては、どういう商品を設計するかというのは、それは銀行が、金融機関が考えればいい話であって、原則をまずぱちっと確立をしていくということが何よりも重要である、私はそういうふうに思います。間もなくそういった考えを取りまとめて皆さんにお示しをいたしますので、ぜひとも、ここにいらっしゃる各党の方々にも御検討をいただきたいというふうに思います。

 本当に、預金者をどう保護するかという視点が大切です。金融庁は、常に業法を経由して、それで預金者なり投資者なりを保護するというやり方をやっていらっしゃる。銀行法とか預金保険法とか証券取引法なんかみんなそうですが、業法によって、業界を通じて保護をするというふうなやり方をやっていらっしゃるわけだけれども、私は、そうじゃなくて、ストレートに預金者あるいは投資家を保護する仕組みに変えていかなきゃいかぬというふうに思うんです。ですから、その一環として、間もなく無権原取引は無効であるという趣旨の法律案を提出いたしますので、ぜひとも御検討をいただきたい。それとは別に、行政として対応できることはどんどんとやっていただかなければいかぬというふうにも思います。

 この件については、これぐらいにとどめておきたいというふうに思います。残りの時間で、不良債権の処理とかかわる我が国の金融システムの問題についてお話をしたいというふうに思うんです。

 間もなくペイオフも解禁になるということで、不良債権の処理を進めていくということをずっとおっしゃっていて、その目標ということについては、大手行に限った話ですが、この目標を達成するというところにまで来ております。

 ただ、政策には目的があって手段があるということなんですね。不良債権の処理をするということの本来の目的、一体それは何だったんだということに立ち返らなければいかぬ。前任の竹中大臣、その前の柳澤大臣もいらっしゃいましたけれども、不良債権の処理は一体何のためにするのかということですね。

 竹中大臣のときには、要は、不良債権処理がデフレ対策になるというふうなことを言っておられた。私は、何で不良債権処理がデフレ対策になるのか、そのことを全然理解できなかったから何度もやりました。もう一つは、不良債権の処理をするということで金融仲介機能を改善するんだということも政策目標の一つであったというふうに思いますが、今、この二〇〇五年の三月に至って、大手行の不良債権の比率が皆さんの目標どおりに減ってきたということではあるけれども、では、果たしてその政策目標が達成できているのかということなんです。それをやはり検証しなきゃいかぬですね。

 だから、私は、それを見ると、とてもじゃないが、確かに不良債権の数字は減ったけれども、皆さんの掲げた政策目標というのは達成できていないと思う。まずデフレが収束をしたかということになると、日本銀行の政策態度なんかを見たって、まだまだ金融緩和をやめるということではないわけですから、不良債権を処理したからデフレが収束をしたというところまで言い切れる状況にはまだないですね。もう一つ、資金仲介機能という意味でいくと、不良債権を処理した、では目詰まりがなくなってお金がすいすい流れるようになったか。なっていないですね、銀行貸し出しはずっと減り続けておる。

 では、一体何のための不良債権処理だったんだ。会社を倒産させ、失業者もいっぱい出てきた。結果、政策目標であったデフレからの脱却ということも不十分だし、また、資金仲介機能というものもちゃんと機能していないということになると、一体この不良債権の処理というのは何のためにやってきたのかということだと思いますが、大臣はいかがでしょうか。

伊藤国務大臣 今、中塚委員から極めて本質的で重要な御質問をいただいたというふうに思っております。

 今委員御指摘のとおり、政策目標に向かって順調に進捗しているかどうか、そのことを検証していくということはとても大切なことだというふうに思っております。

 そういう意味からいたしますと、私どもは、不良債権処理の促進というのは、金融機関の収益力改善や貸出先企業への経営資源の有効活用などに寄与して、新しい成長分野への資金の供給や資源の移動を促すことにつながるものであるというふうに認識をいたしておりますし、そして、構造改革を進めていくためには、金融改革だけではなくて、その他の構造改革とあわせてこれを加速していくことが大変重要でありますので、そうした観点から、不良債権問題に対する対応というのは、日本経済の再生に不可欠なものだというふうに考えているところでございます。

 先ほど委員からは、デフレの問題と、それから貸し出しが伸びていないではないか、こういう御指摘がございました。貸し出しが伸びていない要因についてはさまざまな要因があろうかというふうに思いますけれども、バブル前の状況と今日を比べてみますと、例えばGDP比で貸し出しの比率を見てみますと、バブル前は大体七〇%ぐらいでございました。それがどんどんふえて、バブルのときには一〇〇%近くになってしまう。そして、バブルが崩壊をして、金融機関にとっては大変大きな不良債権というものが生じたわけでありますし、このことが金融機関の健全な経営あるいは資金仲介機能において大きな足かせになってしまったわけであります。

 また、不良債権は、一方で企業側から見れば、これは過剰の債務の問題であり、過剰の設備の問題であり、そして、バランスシートにはあらわれませんが、過剰の雇用の問題であります。したがって、やはりこのバランスシートの大きな毀損というものを調整せざるを得ない。その中で、今日までそれぞれが一生懸命努力をして、この過剰の問題というものを是正していくために、そして解決をしていくために、その調整が行われてきたというふうに思っているところでございます。

 中小企業におきましても、平成五年では、有利子負債と事業から生み出されるキャッシュフローを比較してみますと、十八・五年分の借金を抱えていました。それが、平成十五年には十一・九年まで是正をしてきたわけであります。中小企業も借りたお金を一生懸命返済をしていくための努力を続けてまいりました。このことによって、日本経済がバブルが崩壊をして大変大きな負の遺産を背負ったわけでありますけれども、その負の遺産を解消していくための構造改革というものが進捗してきているのではないかというふうに思っています。

 金融機関においては、不良債権問題が正常化していく中で、業者の方々のさまざまなニーズに的確に対応していくために、資本を含めて経営資源をそのために投入をするということで新しいビジネスモデルも構築をいたしております。先ほども少し議論がございましたが、中小企業のニーズとして、非常に高いスピード審査で、無担保、第三者保証なし、こうした新しい商品を開発して投入をしていく。そして、その残高というものは着実にふえてきているところであります。

 また、「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」というものを推進して、中小企業の再生と地域経済の活性化に貢献をしながら不良債権問題を解決していくということで、さまざまな取り組みを続けております。この中で、大変地道な取り組みでありますけれども、経営改善の支援についても地域の金融機関は取り組んで、そして十六年九月期を見ますと、地域銀行の、七千三百社近い債務者企業においては債務者区分が上位遷移する、アップグレードする、こういう成果も出てきているところであります。

 あわせて、過度に担保や保証に依存しない融資の取り組みというものも進んできておりますので、そのことによって、最近の日銀短観を見ましても、中小企業に対する融資態度というものは改善をしてきた、そして、それが徐々に徐々に積極的な傾向が出てきているということでありますから、こうした取り組みというものがさらに浸透していくように私どもとして一層の努力をしていかなければいけないというふうに思っているところでございます。

中塚委員 今大臣がお話をされたのは、それは政策の手法の問題であって、目的については私もお話をしているとおりですが、その目的が達成されたかどうかということが大事で、もちろんそれは不良債権の処理だけでその目標が達成されるということではないと思いますよ。ないと思いますが、であるならば、皆さんが八を四にするという目標を達成されて、なおかつ資金仲介機能がちゃんと機能していない、あるいはデフレも収束していないということだったら、ほかのことにもっと原因があるんじゃないですかという話をしているんです。今やっているものは間違っていないからずっとやっていきますと、皆さんはそういうスタンスでやってこられたんだろうから、これからもおやりになると思いますけれども、そういう話をしているんじゃない。

 もう一つは、率の問題と絶対値の問題を常にすりかえてお話しになられる。すぐバブル前とかいう話。例えば労働分配率の話。私が賃金が上がっていないという話をすると、労働分配率の話をする大臣がいて、そんなこと聞いていない。率の問題じゃない、絶対値で伸びていないことがどうなんだという話なんですね。

 貸し出しの話でいくと、きょうお配りしている資料の三ページ目ですけれども、この失われた十年と言われている時期を考えたって、預金は実は三百兆ふえているんです。預金は三百兆ふえているのに、貸し出しは伸びていないわけでしょう。それを解消するための不良債権処理だったんじゃないんですか。不良債権の処理目標が達成されても、いまだに貸し出しがマイナスになっておるというのは、これは要は、その目的、手法が間違っていたのか、あるいはそのほかに原因があるんじゃないんですかということをお尋ねしているわけであって、今までずっとやってきたことをこれからやっていきますというのは、それは政府・与党として当然そういうことだと思いますけれども、そういうことを聞いているわけじゃない。

 それで、きょうはもう時間がなくなってしまってあれなんですが、ここで郵政の民営化にもちょっと触れておかなきゃいかぬというふうに思っているんです。

 要は、不良債権を処理した、でも銀行の貸し出しは伸びていないという状況の中で、郵便貯金を民営化する。それで政府の広報なんかを拝見していると、要は、国の持っているお金を民間に流すんだということを盛んに言っていらっしゃる大臣がいるということでありますが、果たしてこんな状況で郵便貯金を民営化して本当に金が民間に流れるんですか、そういうことをお尋ねしたいと思います。

 この「採算性に関する試算」というのをいただいて、貯金のところですが、新規貸し付け等想定条件、今後の景気回復による資金需要増大、公的金融改革などを考慮し、段階的に貸し付けその他の信用リスクをとる業務を拡大し残高三十五兆円、信用リスク調整後スプレッド一%の利ざやを確保。まあ、本当に大変にすばらしいことが書いてあるんですけれども、一体、今の我が国のこの金融の状況を見たときに、郵便貯金を民営化して何でこんなにもうかるんですか、郵便貯金の会社が。

 きょうは準備室からもお越しをいただいていますけれども、この想定条件も、今後の景気回復による資金需要増大とかいろいろなことを書いてあるけれども、この程度の話は別に条件でも何でもない。こういったものをお出しになったからには、バックデータというものだってあるはずなんです。それについてちょっと御説明をいただけませんか。

中城政府参考人 お答え申し上げます。

 「採算性に関する試算」につきましては、新規業務として可能性のある業務のうち幾つかを選定して、民間準拠の前提を置いてその効果を算定したものでございます。これは、具体的な事業をどのように行うか、どのぐらいの範囲でやるかということについては経営者の判断によるものでございますけれども、一つの可能性として計算したというものでございます。お尋ねの郵貯銀行の新規業務につきましては、二〇一六年度時点で、総資産の約四分の一に相当する三十五兆円の貸し出し等が信用リスク調整後のスプレッド一%で行われる前提で試算しております。

 金融を取り巻く環境というのは近年急速に変化しておりまして、十年後の貸し出し市場の姿というものを正確に予測することは困難でございますけれども、景気回復による資金需要の増大、シンジケートローンの増加等の金融のビジネスモデルの変化、それから住宅金融公庫の廃止等公的金融の縮小といったようなことで、新規参入会社が貸し出し市場で相応のシェアを確保するという機会はあるものと考えられるわけでございます。

 また、金融技術の発展により、顧客に対する直接融資だけでなく、貸し出し債権を証券化した商品への投資等を通じて、信用リスクに見合う収益を上げることも可能と考えております。利ざやにつきましても、十年後の水準を正確に予測するということは困難でございますけれども、民間金融機関の現状等から、信用リスク調整後の利ざやとして一%程度を確保することは可能と考えております。

中塚委員 伊藤大臣、聞きましたか、今の話。こういうのは採算性に関する試算じゃないんです。こうなればいいなという話なんです。本当にこんなことが起こるんですか。

 きょう、四ページ目に、ちょっと資料をおつけしてあるんですが、「国債・地方債の保有者別残高」という資料がありまして、金融機関というところで、一九八九年から二〇〇四年九月末まで、ちょっとこっちは引き算していないものですから、ぱぱっと大ざっぱに引いてほしいんですが、要は、この八九年から二〇〇四年までの間に、国債、地方債の金融機関の持っている保有残高が四百兆ふえている。この中で簡易保険はちょっとカテゴリーが違いますから、それをのけますね。また、財政融資資金も、いろいろなお金が、大部分は郵貯だと思いますが、これものけますね。そうすると、四百兆からこのふえた分を引きますと、それでも三百五十兆超。要は、金融機関というのは国債を買っておるんですよ。一ページ前に戻っていただくと、預貯金というのは三百兆ふえている。三百兆ふえた預貯金で、今、日本の金融機関というのはみんな国債を買っているわけじゃないですか。

 ということは、要は、資金需要がないというふうに金融機関の人は言う、でも、企業は貸してほしいんだけれども貸してくれないというふうに言う、現実問題として貸し出しは伸びていない、貯金は、金はいっぱい金融機関に集まってきているけれども貸すところがないから貸し出しはずっと下がっているわけですね、その分で国債を買っておるんです。そんな中で郵便貯金を民営化して、十年先だか何だか知らないけれども、それでこの民営化された郵便貯金会社がちゃんとやっていけるというふうに金融を所管する大臣としてお考えなんですか、本当に。いかがですか。

伊藤国務大臣 先ほど準備室から「採算性に関する試算」について御説明があったわけでありますし、私どもとしては、先ほど準備室からもお話がございましたように、これはあくまで一定の仮定のもとでの可能性、そのことに対する試算をされたものと認識をいたしているわけであります。今政府は与党と民営化に向かっての具体的な制度設計について議論をさせていただいているところでございまして、その中で、どのような形の経営の可能性があるかということで、こうした試算をもとにさまざまな議論をさせていただいているところでございます。

 私どもは、民間金融機関を監督する立場でございますので、そういう意味からすると、この民営化に当たっては、民間金融機関とのイコールフッティングの問題でありますとか、あるいは金融資本市場に対する影響、金融行政の観点から基本方針にのっとって適切に対応していかなければいけないというふうに思っておるところでございます。

 具体的には、この民営化に当たっては、新しい事業への拡大を段階的に進めていくということが基本方針の中で明示されているところでございますし、また、そうした事業を適切に行っていくためには、ノウハウというものを培って、それを身につけながら自立をしていくということがとても重要なことでありますので、そうしたことに対して金融行政として適切に対応していきながら、この郵政の民営化に対して私どもとしてもしっかりとした対応を行っていきたいというふうに思っているところでございます。

中塚委員 もう大臣はわかっていらっしゃると思うけれども、お金を集めるのは割と簡単なんですよ。集めるのは割と簡単なんだけれども、その集めた金をどう運用するかというのが一番難しいわけでしょう。それが民営化して十年でここまでなりますか。

 そもそも金融のマーケットというのが限られているわけじゃないですか。どんどんどんどん間接金融から直接金融にシフトしているわけだから、銀行だって貸すところがないわけでしょう。それで、ちゃんと相手の経営内容なりなんなりを見て利息をつけるというやり方だってできていない。民間金融機関だってできていないのに、郵便貯金を民営化して十年で何でこんなになるんですか。

 民営化したらどうなるか。それは、郵便貯金を民営化したら、きっと小さな金融機関はつぶれますよ。だって、マーケットが限られているのを食い合うんだから。弱小金融機関はみんなつぶれますよ。あるいは、郵便貯金が民営化されて、この会社がつぶれるかですよ。そうしたら、結局、それを助けるだの何だのということで財政資金を使わなきゃいけなくなるでしょう。

 だから、金融所管の大臣として、小泉総理やら竹中大臣の趣味につき合うことなく、おっしゃらなきゃいけないことはちゃんとおっしゃった方がいい。そのことを申し上げて、私の質問を終わります。

金田委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 西武グループに君臨してきました前コクド会長の堤義明氏が証券取引法違反容疑で東京地検に逮捕された事件というのは、大変大きな衝撃を与えております。

 昨年十二月一日の財務金融委員会で、私はこの西武グループの有価証券報告書虚偽記載事件を取り上げまして、そのときに、親会社であるコクドが非上場企業である、そのために経営内容が不透明になっている、上場企業と同じ程度の水準まで当然開示すべきじゃないのかという質問をさせていただきました。これに対して伊藤大臣は、金融審議会で専門家の議論を踏まえて対応したいというふうにお答えになっておられたわけです。

 その後、証券取引法の改正案というものが検討されて、きょうですか、閣議決定をされたそうですが、非上場企業である親企業の情報開示というものはどのようにするおつもりなのか、内容についてお答えいただきたいと思います。

伊藤国務大臣 この点については、委員から前回も御質問をいただいたところでございますし、私どもといたしましても、昨年の十一月十六日に公表した、ディスクロージャー制度の信頼性確保に向けた対応の中で、本年三月期から、継続開示会社である子会社の有価証券報告書において、親会社の株主、役員、そして財務の状況等に係る情報の開示を義務づけることとし、現在そのための内閣府令の改正案について広く一般の御意見を求めているところでございます。

 しかしながら、子会社の有価証券報告書において親会社に係る情報の開示を求めても、親会社が協力をしない、こうした場合があるわけでありますが、そうした場合にその実効性が限定されてしまうことになります。

 したがって、私どもとして、親会社に当該親会社自身の株主、役員、財務の状況等に係る情報の開示を義務づけるべく、今般証券取引法改正案を閣議決定し、そして国会での御審議をお願いさせていただきたいと考えているところでございます。

佐々木(憲)委員 問題は、この有価証券報告書虚偽記載をどのようにして防ぐことができるかという点であります。今回の改正案によってこの虚偽記載を防ぐ手だてというものはどういう形で盛り込まれているのか、そういう手だてはあるのか、お聞きしたいと思います。

伊藤国務大臣 これは今回の改正案だけではなくて、先ほどお話をさせていただいた、私どもとしてこの一連の不適切な事例に対する対応策を発表させていただいたところでございますけれども、本年の七月より、有価証券報告書の虚偽記載等に係る検査監督権限等を、関東財務局から証券取引等監視委員会に移管するなど、有価証券報告書に係る審査体制の強化を目指した措置が盛り込まれているところでございます。

 さらに、この対応策の中では、情報をしっかり集めていくために、ディスクロージャー・ホットラインというものも設置をさせていただきましたし、また、情報分析能力を向上させていくということも非常に重要でありますので、EDINETの機能充実という対応策もこの中に盛り込ませていただいたところでございます。

 これらの方策というものを生かしながら、証券取引等監視委員会と密接に連携をしながら、有価証券報告書にかかわるチェックの強化に努めてまいりたいと考えているところでございます。

 なお、本日閣議決定させていただきました証券取引法改正案におきましては、先ほど御説明をさせていただきましたが、上場会社等の親会社が継続開示会社でない場合に当該親会社に情報開示を義務づける等の内容が盛り込まれており、これによりまして、上場会社等のコーポレートガバナンスの状況の把握に関して一定の進展が期待されているというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 具体的にお聞きしますけれども、例えば今回のコクドの事件ですけれども、実際に西武鉄道の発行済み株式の六四%余りを事実上持っていたわけですね。しかし、西武鉄道社長らと共謀して一部を隠して、有価証券報告書には四三%という、いわばうその保有率を記載していたということであります。

 こういう事態というものを今度の新しい対応策によって事前にチェックできるのかどうか、そういう権限があるのか、まずそれをお聞きしたいと思います。

伊藤国務大臣 先ほど少し答弁をさせていただきましたけれども、本年七月以降、有価証券報告書の虚偽記載等に係る検査そして報告徴求権限については、関東財務局から証券取引等監視委員会に移管することになっているわけであります。したがって、七月以降は監視委員会が、検査、報告徴求権限に基づき、公益または投資者保護のために必要かつ適当であると認められるときは、有価証券報告書等の提出者やあるいはその関係者に対して立入検査を実施することが可能となるわけであります。

 監視委員会におきましては、今後とも、有価証券報告書等の虚偽記載の事案に対して新たに付与されるこれらの権限というものの行使を含めて、厳正に対処を行っていくものと考えております。

佐々木(憲)委員 その際問題になりますのは、課徴金の問題なんですね。つまり、虚偽記載が行われていた場合、これを調査をし発見をした、その際、具体的な罰則あるいは課徴金というものがなければ、これは中途半端な問題でうやむやになってしまう。

 したがって、昨年末まで、たしか金融庁は、この虚偽記載に関連をして課徴金制度を設ける、こういう案を検討されていたと思うんですが、それは一体どうなったんでしょうか。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきます。

 金融庁はこれまで、有価証券報告書などの継続開示書類の虚偽記載に対する、委員お尋ねの課徴金制度の導入に向け、法制面の詰めの作業を行ってきたところでございます。

 現行の証券取引法の体系のもとで継続開示義務違反に対する課徴金を導入するためには、継続開示義務違反により会社に生じる経済的利得を定量化する必要がありますが、継続開示義務違反による利得は抽象的、間接的であり、利得があるとは言えないのではないか等の指摘があるところでございます。

 このように、経済的利得をめぐり政府部内で調整が現在ついておりませんので、本日閣議決定した証券取引法改正案では継続開示義務違反に対する課徴金の導入は盛り込んでいないところでございます。しかしながら、金融庁といたしましては、継続開示義務違反に対する課徴金の導入の検討自体を断念するわけではございませんで、今後さらに検討を深めていきたいというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 この課徴金制度というのは、アメリカでもそういう制度も採用されているということでありますし、極めて重大な、こういう虚偽記載の事件を受けた後の対応として、当然金融庁自身も検討されていたということでありますし、これからも検討するというんですけれども、これは政府として当然この程度のことはやるべきだと。

 問題はその計算方法ですよね。それは技術の問題であって、例えば有価証券報告書の虚偽記載に関連をした課徴金は違反企業の株式時価総額というものを基準にするとか、検討されていると思うんですけれども、当然そういう具体的な計算方法というのはあるわけで、例えばアメリカの場合は一体どうなっているのか、そういう事例なども参考にすればこれは十分可能だと思いますが、いかがでしょうか。

伊藤国務大臣 今委員からも御指摘がございましたし、私も先ほど御答弁させていただいたように、この継続開示義務違反に対する課徴金制度を導入していくためには、継続開示義務違反により会社に生じる経済的利得を定量化する必要があります。この定量化に当たって政府の中で今さまざまな議論がなされているところでございまして、そのことについて、政府部内での調整が今日までまだつく状況ではございません。

 したがって、私どもとして、この継続開示義務違反に対する課徴金制度の導入ということを断念したわけではございませんので、引き続き、この経済的利得をめぐる議論をしっかり検討していきながら、対応を考えていきたいというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 こういう事件を引き起こさないために、証券取引等監視委員会の権限の強化というのは大変重要だというふうに私は思っております。

 これはよく比較されるわけですけれども、日本とアメリカの違い、アメリカの証券取引委員会、SECは大変強い権限を持っているというふうに聞きますけれども、このアメリカのSECの権限というのは一体どういう内容になっているのか、それについて説明していただきたい。

七条副大臣 この点について、私の方からお答えをさせていただきます。

 日本の場合、証券取引等監視委員会、これは平成十六年度末の定員が今財務省を含めて四百四十人になっております。権限についてということでございますけれども、権限としては、インサイダー取引の犯則事件の調査あるいは証券会社に対する検査を所掌する、そういうようなことを委員長及び委員が独立して職権を行うということになっております。

 一方で、米国、アメリカのSECはどうなっているかといいますと、合議制の独立行政委員会であり、二〇〇四年会計年度の定員は三千五百九十一名と聞いておりまして、権限の方につきましては、制度の企画立案から検査、監督、調査などを含め、証券行政を一元的に所掌しておられるということを聞いております。

佐々木(憲)委員 日本の場合、相場操縦あるいはインサイダー取引などの犯則事件についてというふうに、ほぼ確実にこれは法違反であるということが認定されて初めて捜査権限が認められているということなんですね。つまり、疑わしいというだけでは捜査権限は発動できないということになっていると思うんです。

 しかし、アメリカはもっと広い権限があって、そういう情報を得た場合、独自に調査を行うという権限がある。あるいは、資料の押収などについても、裁判所との関係でそういう権限がある。こういうことで、日本の場合とアメリカでは権限の内容について随分決定的な違いがあるというふうに私は思うわけです。

 今後の法改正で、この権限というのはふやされたんでしょうか、強まったんでしょうか、日本の場合。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきます。

 委員は、アメリカと比較をして日本の監視委員会が十分な権限を持っていないのではないか、そういう点から御質問いただいたというふうに思っております。

 先ほどもお話をさせていただいたように、有価証券報告書等の虚偽記載等に係る検査そして報告の徴求権限、これは今まで関東財務局にございましたが、本年七月から関東財務局から証券取引等監視委員会に移管することになります。したがって、七月以降は監視委員会が、検査、報告徴求権限に基づきまして、そして公益または投資者保護のために必要かつ適当であると認められるときは、有価証券報告書等の提出者やあるいはその関係者に対して立入検査を実施することが可能となりますので、そうした意味からすると、アメリカの当局と比較しても、機能的には基本的には同じ権限を有するものになるというふうに考えておりますし、こうした新しい権限というものを活用しながら監視委員会は厳正に対処していくものと考えております。

佐々木(憲)委員 権限がどこからどこに移行したとか、それは権限の場所の移動であって、権限の中身が強まったということではないと私は思います。ただ、証券監視委員会が持つということは、それはそうかもしれない。

 しかし、例えば先ほど言ったように、まだ課徴金自体もどうなるかわからない。それから、不当利益の場合の返還、あるいは違反行為の差しとめ命令、排除命令、こういうことはできるんですか。それはできないですよね。

七条副大臣 先に、先ほどお答えさせていただきました、アメリカの場合の二〇〇四年度の会計年度の定員が、三千五百九十一と言いましたけれども、三千五百九十二であったということだけ、ちょっと訂正させていただきたいと思います。

伊藤国務大臣 ディスクロージャーの問題に差しとめということはないというふうに思います。

 ただ、先ほどお話をさせていただいたように、監視委員会は、関東財務局から権限の移譲を受けて、そして検査と報告徴求の権限を持つことができるわけでありますから、こうした権限というものを活用しながら、市場に対する信頼性、公正性を確保するために厳正に対処していくことができるというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 ディスクロージャーに限ったわけではなくて、広い、違反事件、法違反に対する権限、それに対応する権限のことを私は言っているわけです。先ほど大臣はアメリカと遜色ないような状況になるとおっしゃいましたから、ではこういう点はどうなんですかと聞いたわけです。それは日本にはないわけです。課徴金もない、あるいは不当な利益を得た場合にはその返還、あるいは違反行為そのものの差しとめ命令とか、そういう権限は日本にはまだ与えられていない。したがって、私は、アメリカのそういう権限を参考にして、日本も質的に権限の中身を強める必要があるという点を提案しているわけです。

 それからもう一つは、先ほども数字をおっしゃいましたけれども、体制が余りにも貧弱である。この点についてもきちっとした対応策をやらないといけない。こういうさまざまな問題点が日本の場合はまだ非常に多いというふうに私は思いますので、抜本的な改善をする必要がある。

 例えば、人員を抜本的にふやすという方向は、はっきりと目指すということを言わないとこれはふえないわけであって、金融担当大臣自身が、アメリカ並みに、アメリカを目指してこの証券監視委員会のメンバーをふやすんだ、そういう決意があるのかどうか、その点をお聞きしたいと思います。

七条副大臣 人数ということでございましたから、私の方からお答えさせていただきます。

 平成十七年度における、いわゆる今度の予算案の中にも入っておりますけれども、証券取引等監視委員会全体で四十四名の増員をしたい、あるいはさらに、証券会社等の検査の一元化に伴い、検査局から三十五人を振りかえることといたしておりまして、証券取引等監視委員会の定員は、平成十六年度末の二百三十七人から、平成十七年度末には総勢で三百七名に増員することといたしておりますが、それも含めまして、先ほど申し上げました四百人等々ということで、財務局を合わせていきますとこれは五百名を大きく突破することになるのではないか。今のところ、推測でございますが、局のことでございますから、その程度でございます。

伊藤国務大臣 今副大臣からも御答弁をさせていただきましたが、私といたしましても、やはり市場の信頼性というものを確保していくために監視委員会の機能というものを充実させていく、そのために、その体制面の整備、また組織としてのやはり質の向上ということは極めて重要だというふうに思っております。

 したがって、十六年度から十七年度にかけて、人員状況も大変厳しい状況でありますけれども、全体として七十名増員することができましたし、また、質の向上のためにもさまざまな努力をいたしておりますので、こうした努力というものを引き続き続けていきたいというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 時間が参りましたので、以上で終わります。

 ありがとうございました。

金田委員長 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

金田委員長 速記を起こしてください。

     ――――◇―――――

金田委員長 次に、内閣提出、関税定率法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。財務大臣谷垣禎一君。

    ―――――――――――――

 関税定率法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

谷垣国務大臣 ただいま議題となりました関税定率法等の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。

 政府においては、最近における内外の経済情勢の変化に対応する等の見地から、関税率等について所要の措置を講ずるほか、税関における水際取り締まりの強化及び通関手続の迅速化等を図ることとし、本法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。

 第一は、暫定税率の適用期限の延長等であります。

 平成十七年三月三十一日に適用期限が到来する暫定税率の適用期限の延長等を行うこととしております。

 第二は、知的財産権侵害物品等の水際取り締まりの強化であります。

 特許権等を侵害するおそれのある貨物の認定手続において、権利者からの申請に応じ、当該貨物の見本を分解して検査することを承認する制度の導入等を行うこととしております。

 第三は、テロ対策等に係る水際取り締まりの強化及び通関手続の迅速化等であります。

 爆発物等の輸入禁制品への追加、法令を遵守する体制を整えている輸出者に対する輸出通関手続の迅速化のための制度の導入及び関税についての重加算税の導入等を行うこととしております。

 その他、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の提案の理由及びその内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

金田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十分散会


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