衆議院

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第18号 平成17年4月13日(水曜日)

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平成十七年四月十三日(水曜日)

    午後四時三十分開議

 出席委員

   委員長 金田 英行君

   理事 江崎洋一郎君 理事 遠藤 利明君

   理事 竹本 直一君 理事 村井  仁君

   理事 中塚 一宏君 理事 原口 一博君

   理事 平岡 秀夫君 理事 谷口 隆義君

      小野 晋也君    岡本 芳郎君

      木村 太郎君    熊代 昭彦君

      倉田 雅年君    小泉 龍司君

      鈴木 俊一君    砂田 圭佑君

      田中 和徳君    谷川 弥一君

      中村正三郎君    永岡 洋治君

      宮下 一郎君    森山  裕君

      山下 貴史君    渡辺 喜美君

      井上 和雄君    岩國 哲人君

      大島  敦君    小林 憲司君

      園田 康博君    田島 一成君

      津村 啓介君    中川 正春君

      野田 佳彦君    馬淵 澄夫君

      村越 祐民君    吉田  泉君

      佐藤 茂樹君    長沢 広明君

      佐々木憲昭君

    …………………………………

   国務大臣

   (金融担当)       伊藤 達也君

   内閣府副大臣       七条  明君

   内閣府大臣政務官     西銘順志郎君

   財務大臣政務官      倉田 雅年君

   参考人

   (全国銀行協会会長)   西川 善文君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十三日

 辞任         補欠選任

  鈴木 克昌君     園田 康博君

  田村 謙治君     大島  敦君

  石井 啓一君     佐藤 茂樹君

同日

 辞任         補欠選任

  大島  敦君     田村 謙治君

  園田 康博君     鈴木 克昌君

  佐藤 茂樹君     石井 啓一君

    ―――――――――――――

四月十三日

 庶民に対する課税強化の取りやめに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第八六一号)

 同(石井郁子君紹介)(第八六二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第八六三号)

 同(吉井英勝君紹介)(第八六四号)

 消費税の大増税反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第八六五号)

 同(石井郁子君紹介)(第八六六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第八六七号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第八六八号)

 同(志位和夫君紹介)(第八六九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第八七〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第八七一号)

 同(山口富男君紹介)(第八七二号)

 同(吉井英勝君紹介)(第八七三号)

 消費税の大増税など、税制を悪くしないことに関する請願(山口富男君紹介)(第八七四号)

 同(志位和夫君紹介)(第九二三号)

 庶民大増税反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第八七五号)

 大増税中止に関する請願(穀田恵二君紹介)(第九二〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第九二一号)

 消費税の増税反対に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第九二二号)

 旧租税特別措置法の規定の復活に関する請願(小泉龍司君紹介)(第九二四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 保険業法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七〇号)

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

金田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、保険業法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本案につきましては、他に質疑の申し出もありませんので、これにて質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

金田委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。野田佳彦君。

野田(佳)委員 私は、民主党・無所属クラブを代表して、保険業法等の一部を改正する法律案に対し、反対の立場で討論いたします。

 近年、保険に比較して割安な共済が消費者の人気を集めています。しかし、その中には悪質な共済事業者が存在するのも事実であり、対策が急務となっていました。

 本法律案は、そのような事情を踏まえ、保険契約者の保護の一層の充実を図ることを理由に掲げています。しかしながら、その内容を見る限り、根本的な考え方が間違っていると言わざるを得ません。

 以下、本法律案に反対する理由を申し述べます。

 第一に、本法律案に限らず、業法を通じて行政当局が消費者を保護するという基本的な考え方が、我々とは異なっているということです。民主党は、昨年、消費者保護基本法の見直しに関する基本的な考え方を明らかにしました。消費者は権利の主体であり、消費者政策は、消費者の自立を支援することにより消費者の権利が確保されることを基本として行わなければならないと考えます。その意味で、問題が起こるとそのたびに法整備を繰り返すというモグラたたきのような対応には終止符を打ち、我々が強く主張してきた金融サービス法の整備を急ぐべきです。

 第二に、本法律案に限らず、最近の金融庁提出法案は、法制度の根幹にかかわる重要な規定の多くを政令に委任するケースが多いことです。これでは国会審議は形骸化するほかなく、金融庁の恣意的な裁量行政を許すおそれがあります。

 第三に、既存保険業者への配慮ともとれる過度の規制が見られることです。例えば、少額短期保険業者に対して商品内容や運用方法にも保険会社とは異なる規制をかけていますが、これが本当に必要な規制なのでしょうか。

 最後に、生命保険契約者保護機構の財源措置について、二つの問題があることです。そもそもこの制度は九八年の金融危機に際して創設されたものですが、保険会社の経営がかつてよりは安定していることを考えれば、政府補助は廃止すべきだと考えます。また、個別の保険会社の破綻に際して業界が資金を負担する奉加帳方式を現行のまま継続することについても、問題があると考えます。

 以上で、反対の討論を終わります。(拍手)

金田委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党を代表して、保険業法等の一部を改正する法律案に対する討論を行います。

 本改正案は、根拠法のない共済の契約者保護を目的として、原則、根拠法のない共済を保険会社もしくは少額短期保険業者制度のもとで監督する仕組みを導入するものです。近年、国民生活センターなどに寄せられる相談件数が急増している無認可共済は、根拠法も監督官庁もなく、被害者が泣き寝入りをしている実態があります。本法案は、このような実態に対応するものであります。

 しかしながら、審議を通し、本法案には幾つかの不十分な点が明らかになりました。

 第一の点は、制度の具体的な内容が十分に決まっていないことです。私の質問で、政省令に委任している箇所が百十カ所に及ぶことが明らかになりました。このことは金融庁の調査不足を示しており、速やかに具体的な基準を公表し、現在健全な共済活動を行っている関係団体の不安を解消することを求めるものであります。

 第二の点は、共済にはそもそも相互扶助という基本理念があり、これをより尊重する必要があることです。本法案はその観点から、小規模の共済や労働組合、企業内共済、町内会による共済活動などは新制度の対象から外し、従来どおりの活動を保障すると金融庁は説明しています。しかしながら、実際の共済は、より広範囲な団体が本来の共済の理念に基づき自主的に運用しており、本法案の除外規定がその実態を十分に反映しているとは言えません。今後さらに、除外する範囲を政令で定めることになりますが、その実態が公正に反映されることを求めます。

 第三の点は、本改正案は根拠法のない共済に限定した応急措置であり、今後、国民が望む共済問題全体の解決に踏み込むことが必要です。例えば商工共済の破綻など、制度共済にも問題が起こっており、今まさに省庁横断的な対応策が求められています。五年以内に見直す中で調整すると言われますが、早急な対応を求めるものであります。

 以上のとおり、本法案には不十分な点もありますが、根拠法のない共済問題への対応は被害者を救済する緊急かつ重要な課題であり、全体として本法案には賛成の態度をとることといたします。

 なお、本法案には、一、破綻の際の生命保険契約者保護機構の負担を軽くするため、高い予定利率で契約している契約者について、資金援助等による補償率を現行の九〇%から八五%ないし九〇%に引き下げること、二、政府補助による税金投入の仕組みが温存されるなどの問題が含まれています。契約者や国民に負担を押しつけるこの部分については反対であるということをつけ加えておきます。

 以上です。

金田委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

金田委員長 これより採決に入ります。

 保険業法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

金田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

金田委員長 次に、財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 本日は、参考人として全国銀行協会会長西川善文君に御出席をいただいております。

 この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、西川参考人に十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。

 それでは、西川参考人、よろしくお願いいたします。

西川参考人 ただいま御紹介をいただきました全国銀行協会の西川でございます。

 本日は、私どもの意見を申し述べる機会をちょうだいいたしましたことに対しまして、まずもってお礼を申し上げたいと存じます。

 それでは、偽造キャッシュカード問題に関しまして、全国銀行協会としての取り組み及び現時点での考え方を申し述べさせていただきます。

 私どもといたしましては、偽造キャッシュカードによる預金引き出しは、お客様の預金の安全性を脅かし、銀行業のかなめであるお客様からの信頼を根幹から崩しかねない重大な問題と認識をいたしておりまして、特に昨年来、さまざまな取り組みを進めてきたところでございます。

 まず、昨年三月には、警察庁や法律の専門家をお招きして会員行向けにセミナーを開催いたしまして、本問題への理解を深めますとともに、お客様に対しましては、キャッシュカードの暗証番号管理に関する注意喚起を行いました。具体的には、推測されやすい番号、例えば、生年月日、電話番号、住所地番、車のナンバーといった番号を暗証番号として使うことは避けていただきたいといった内容のチラシを五百万枚、ステッカーを十三万枚作成いたしまして、会員行に配付をいたしました。全銀協ホームページにおきましても同様の注意喚起を継続的に行ってきております。

 昨年四月には、偽造キャッシュカード問題を専門に取り扱う検討部会を全銀協内に設置いたしました。この部会では、まず、警察の捜査への積極的な協力を業界全体として行うため、被害届提出のルールを明確化いたしました。これは、昨年の通常国会の当委員会質疑におきまして、偽造キャッシュカードによる払い出しを行ったATMの管理銀行、これは出金銀行でございますが、管理銀行が窃盗罪の被害者となるとの見解が法務省より示されたことを受けまして対応したものでございます。

 その後も、キャッシュカード取引の技術的な課題、銀行の民事的責任、また会員行における偽造キャッシュカード対策の取り組み状況につきまして情報交換等を行いまして、その概要を取りまとめて、昨年十一月に全会員銀行あてに通知をいたしました。

 さらに、ことしに入りまして、大規模な偽造カード犯人グループが逮捕されまして、具体的な犯行手口が明らかになったということを踏まえまして、業界としての対策を加速させる必要があるとの認識から、一月二十五日に、偽造キャッシュカード対策に関して、会員各行が積極的に検討し、一層取り組み強化を図るよう申し合わせを行いました。

 その内容は、大きく分けまして、第一に、偽造キャッシュカードが使われないための対策、第二に、偽造キャッシュカードがつくられないための対策、第三に、被害が拡大しないための対策、第四に、万が一お客様が被害に遭われた場合の対応という構成になっておりまして、おのおのにつきまして具体的な対応例を挙げて、あらゆる対策を積極的に検討するよう呼びかけたものでございます。この申し合わせを受けまして、各銀行においてはさまざまな取り組みが行われております。

 また、本年二月には、金融庁の偽造キャッシュカードに関するスタディグループが立ち上げられまして、約款や立法のあり方なども含めて精力的な検討が進められておりまして、偽造キャッシュカードに関する被害補償の問題につきましては、三月三十一日に中間取りまとめが公表されたところでございます。

 御承知のこととは存じますが、現行のカード規定は、ATMの操作に当たりまして、電磁的記録によってカードを当行が交付したものとして処理し、入力された暗証と届け出の暗証との一致を確認すれば銀行は免責されるとなっております。ただし、偽造キャッシュカードの場合は、銀行がカード及び暗証の管理について預金者の責めに帰すべき事由がなかったことを確認できた場合は、銀行が補償するという規定になっております。

 この規定にのっとっても偽造キャッシュカード被害に対する補償は可能でございまして、各行においてこの規定を前提に積極的な補償への対応がなされておるところでございますが、預金者の責めに帰すべき事由がないことの確認には、預金者の御協力も得まして、ある程度の時間もかかりますため、実際に補償が行われるまでには若干時間を要しているというのが実情でございます。

 また、補償の公平性や透明性を確保するという観点から、どのような場合が預金者の責めに帰すべき事由となるのかを明示することを検討する必要もあると考えております。

 これら諸般の状況を踏まえまして、今般、全銀協といたしまして、カード規定試案の改定を含め、見直しを行うことといたしました。見直しに当たりましては、主として三点でございますが、第一に、偽造キャッシュカード被害につきましては、預金者に責任がない限り原則金融機関が補償することとし、第二に、預金者に責任があるという事例につきましては、あらかじめ例示することによってルールの透明性、公平性を確保すること、そして第三に、預金者の責任があるということの立証責任は金融機関が負うこと、この三点をポイントといたしまして、さらに、銀行自身が被害拡大防止策を積極的に実施するインセンティブをどのように含ませていくのか、そして一方、預金者のモラルハザードをいかにして回避していくのかという観点も重要と考えております。

 三月三十一日に公表されました金融庁スタディグループの中間取りまとめにおいて記されました、望ましい損失補償のあり方についてという点も参考にさせていただきながら、現在、カード規定試案の改定作業を進めているところでございます。

 偽造キャッシュカード問題につきましては、被害の補償のみならず、ICキャッシュカードの発行やATM画面ののぞき見防止対策など、その他の被害防止策を含め、幅広い観点から実効ある施策を早急に打っていくことが重要な課題と考えております。引き続き、業界といたしましてしっかりと対応してまいる所存でございます。

 以上をもちまして、私どもの意見陳述とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

金田委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

金田委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。江崎洋一郎君。

江崎(洋)委員 自由民主党の江崎洋一郎でございます。本日は、お忙しい中、全国銀行協会会長であられます西川三井住友銀行頭取にお越しをいただきまして、まことにありがとうございます。

 それでは、早速でございますが質疑に入らせていただきたいと思います。

 私ども自民党も、この偽造、盗難キャッシュカード、この被害が非常にふえているということを深刻に受けとめまして、社会問題化しているこの問題を、どのように対策を練り、対応していくかということにつきまして、一月から調査を始め、また二月には、偽造・盗難キャッシュカード問題に関する小委員会、これを政務調査会の中に設置いたしまして、そして三月に、中間取りまとめ報告及び全銀協さん初め全預貯金取扱金融機関に対して申し入れを行わせていただきました。

 私どもはこれを立法化させるという前提で動いてございますが、その立法趣旨は、偽造、盗難キャッシュカード被害については、預金者等の責めに帰すべき事由がない限り金融機関が補償すること、また、預金者等の責任を問う場合は金融機関が立証責任を負うこと、また、預金者等に責任がある場合は、その事例を明示し、運用基準の透明性、公平性を確保するということで、偽造、盗難ともに対応するという立法化を現在考えているわけでございます。

 そして、今会長からもございましたが、約款につきましても、同様の趣旨を踏まえて、これら約款を改定していただくということを前提に強く要望してきたわけでございます。

 今お話しの中では、偽造に関しましては、私どもの要望に近い形での趣旨で約款を改定するということにつきましては理解ができました。しかし、私どもの現在の議論では、偽造、盗難、これは被害者の方々から見ますと、どちらも、自分の預金口座から、偽造カードあるいは盗難されてしまったキャッシュカードを使われて、ある日突然、残高が百万円、二百万円、多い方は数千万円にも上って被害に遭われるという大変深刻な問題でございます。これはいわゆる、預金者が金融機関に対して信頼を裏切られたというようなことであるのではないかと考えております。

 そういった意味から考えますと、偽造ということだけでは今回の約款変更では不十分ではないかと考えております。そのためにも、私どもは立法化を今検討しているということでございます。

 そして、今、全国銀行協会さんからの陳述でございましたけれども、これらはすべての預貯金取扱金融機関で対応されなければいけない。そういった意味では、範囲は当然、メガバンクであり、地方銀行であり、第二地銀であり、信金、信組、そして郵便貯金であり、労働金庫、農協、漁協を含め、幅広く対応がされなければいけないということでございます。

 そういった意味も含めて現在立法化を考えておりますが、偽造だけではならない、盗難が当然入ってこなければいけないというふうに私どもは確信しておりますが、全銀協会長行とされて、この盗難の問題について今後どのように考えておられるのか、まずお伺いしたいと思います。

西川参考人 それではお答えをいたします。

 偽造キャッシュカードの問題は、スキミングなどの偽造技術の進化等によりまして、キャッシュカードによる支払いシステムを脅かすものでございまして、緊急課題という認識のもとでさまざまなセキュリティー対策を講じるとともに、被害に遭われたお客様への補償対応やカード規定試案の改定作業を進めているものでございます。

 先生御指摘の盗難キャッシュカードによる被害は、偽造キャッシュカードによる被害と類似する側面もありまして、両者を区別する必要がないといった御意見があることも承知をしておりますが、やはり盗難キャッシュカードによる被害につきましては、窃盗被害の一類型ということでありまして、どういう状況でお客様が窃盗に遭われたのかといった点におきまして、お客様の過失の度合いも異なりまして、さまざまなケースが想定されるわけでございます。補償のあり方も、したがいましてキャッシュカードの場合とは異なるのではないかというふうに考えておるわけでございます。

 これらを含めまして、この盗難カードの問題につきましては、今後検討すべき課題が多いというふうに考えておりますが、スタディグループの検討も見据えつつ、全銀協におきましても、いかなる対応が適切かということを今後急いで検討してまいりたいと考えております。

江崎(洋)委員 金融機関の立場として今おっしゃっていることはあるでしょうけれども、基本的には、預金者の立場、預金者本位の立場でこれらへの対応策が必要だと私どもは思っております。そういった観点から、どうかこの盗難、早速に対応を検討していただきたいと思っております。

 さて、この偽造、盗難キャッシュカード、補償があれば終わるという問題ではございません。むしろ、預金者の方が安心して銀行を使えるという環境をどのようにつくっていくか。それは、今までATMシステムというのは、三十年来、四けた暗証番号で磁気テープという仕組みで今日まで来ているわけでございます。これらについて、本当はセキュリティーが甘かったのではないかという見方も既に出てきているわけでございます。それを踏まえて、ICキャッシュカード化ですとか生体認証にするというような議論も出ておりますが、これも、ただ導入したということではなくて、普及し終わるということが大事ではないかということでございます。

 私どもも、この中間取りまとめ及び皆様への申し入れに対しまして、未然防止策ということで、預金者等の利便性を損なうことなくリスクを極力回避し、また一方で預金者等のコスト負担にならないような形で預金者を保護していくという、我が国が強固で世界に冠たるATMシステムをつくろうという姿勢を見せるような今後の未然防止策が必要だと感じております。

 不良債権処理に追われて、前向きなセキュリティー対策という最も大事な部分に投資を怠ってきたのではないかと私は感じておりますが、今後、これらのATMシステム、どのように安全に確保していこうとお考えなのか、全銀協会長行のお立場としてぜひ御意見をいただきたいと思います。

西川参考人 お答えをいたします。

 これまで銀行が、お客様のニーズを踏まえまして、ATM取扱商品の拡大でありますとか、ネットワークの利便性を高めるということでございますとか、そういったことに注力をしてきたということでございますが、同時に、ATMのセキュリティー対策にも注力をいたしておりまして、不良債権問題等があって投資ができなかったというわけでは決してございません。

 ただ、従来は、我が国特有の現金社会におけるニーズを踏まえつつ、多額の現金引き出しを幅広いネットワークで可能とすることによりまして、預金者の利便性を確保するということに重きを置いてきたという面があることは事実でございます。スキミング等の偽造技術の進化でございますとか、近年、一部組織化され、大変巧妙化している犯罪態様を踏まえまして、いろいろな側面からいかにセキュリティーレベルを上げていくかということが喫緊の課題であるということは申すまでもございません。

 御指摘のとおり、我々は、お客様のサイドで利便性、セキュリティーレベルの選択をいただけるような商品やサービスを提供していくということも、預金者保護という観点から必要になるのではないかというふうに考えておりまして、既にその取り組みを始めているところでございます。

 以上でございます。

江崎(洋)委員 もう時間が参りましたので終わりますが、最後に二点、要望を申し上げます。

 今、セキュリティーのレベルアップということもございましたが、今言われているICカード化、生体認証、これらについていろいろな方式が出てまいりました。そして、ICカード化も、自分が口座を持った銀行でしか使えないということで、今までは、どこのキャッシュカードをどこのATMに行っても使えた。これは互換性がないと聞いております。これは一日も早く互換性をつけていただきたい。

 そして二点目は、きょう被害者の方もおいででございますが、盗難に遭われた、銀行に相談に行った、そのときにどういう対応をとったかというと、何と保険商品を勧めたというんです。とんでもない話ですね。まず、どんな状況で被害に遭われたのか、きちっと真摯に対応していただいて、それから先にまたいろいろな対応はあるかと思いますが、きちっとそこはどこの銀行でも対応していただきたい、そのお願いを申し上げまして、私からの質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

金田委員長 次に、中塚一宏君。

中塚委員 民主党の中塚一宏です。

 西川会長、本日は御苦労さまでございます。

 この偽造キャッシュカード問題ですが、先ほど会長からお話もございましたが、昨年の三月三十一日に私がこの委員会で取り上げまして、本当にこんなに哀れな話はない、お金をとられた人、こんな気の毒な話はないと思ったわけですね。それ以来、行政でも対応された部分もある。今回は全銀協としても御対応になる部分があるということで、その対応についてまずはお話をお聞かせいただきたい。

 私どもは、実はもう議員立法で法案をつくりまして、国会に提出をいたしております。きょうは委員会の配付資料ということでお配りをしておりますので会長のお手元にもあるかと思いますけれども、そういった形でもう法案を提出しているわけでありますが、銀行の自主的な取り組みを一切否定するというつもりもありませんので、一体どういったことをどういった理念に基づいて実行しようとされるのかということをお伺いしたいというふうに考えております。

 まず一番最初に、私は会長にお願いをしたいことがある。

 去年の三月三十一日、この件、初めて私が伺いましたときに、本当にひどい話だと思いました。日本には民法四百七十八条というのがあり、それに加えて銀行約款というのもあるわけですけれども、銀行の対応は本当にひどい。私の選挙区でも、現実問題、偽造キャッシュカードの被害にお遭いになられた方がいらっしゃる。私は、この問題をこの委員会で取り上げた後でしたから、相談を受けました。とにかく銀行に行ってちゃんとかけ合ってきなさい、私が質問をした際の議事録もありますから、それも持って行っていらっしゃいというふうに申し上げました。その方は、某地方銀行ですが、そこへ行ってお話をされた。そのときに、その某地方銀行の支店長が言ったことは、訴えられるものなら訴えてみろ、そういうふうな対応なわけですね。

 まず私は一つお伺いをし、一つお願いをしたいと思うんですが、今回、全銀協として被害補償をするということに大方針を転換されたということだと思います。その背景として一体何があるのかということ、それがまず第一点。そして第二点目に、今までの銀行としての対応について、日本の銀行を代表する立場である西川会長、ぜひとも、遺憾であったと、その一言をお願いしたいと思います。

西川参考人 お答えを申し上げます。

 偽造キャッシュカード被害をお受けになったお客様への対応におきまして、全部の銀行では決してないと思いますが、一部に先生御指摘のような対応の銀行もあったかと存じます。我々は、被害者に対しましては、被害者の立場に立って真摯に対応する、よく御事情をお聞きして対応を考えるということが必要だというふうに考えております。そういう対応が行われていたということに関しましては、大変遺憾に存じます。

 第二に、方針転換というふうにお受けとめいただいておるようでございますが、確かに転換はいたしておりますが、踏み込んでまいっておりますけれども、もともと現在のカード規定によりましても被害者に対する補償は可能であるというふうに考えてまいりました。先ほども意見陳述で申しましたように、そういう規定になっております。

 しかし、その預金者に責任がないということを確認いたしますには、預金者の協力も得て、ある程度時間がかかりますために、実際に補償が行われるまでには、現状では若干時間を要しておるというのが実情でございます。さらに加えて、補償ということになりますと、その公平性や透明性というものを確保していくということが必要でございまして、そういう観点から、どのような場合が預金者の責めに帰すべき事由になるのかということを明示することを検討する必要もございます。また、一方におきまして、ちょうど金融庁のスタディグループにおいて、まさに補償のあり方を中心に精力的な検討が行われていたところでございます。そういった背景から、今般、全銀協として、カード規定試案の改定を含めまして見直しをさせていただくということにいたした次第でございます。

 以上でございます。

中塚委員 SMBCでどういう対応がとられたかということについて私は申し上げませんが、私は当選して五年になりますけれども、やはり政治家というのは本当に人の人生をしょって仕事をしなきゃいかぬなと、この件をやっていてつくづく思うんです。被害者の皆さんが私の目の前で急に泣き出されたりされるわけですね。それこそ、なけなしの退職金をとられた方もいらっしゃる。だから、そういった方のお気持ち、ただでさえ被害に遭われてどうしていいかわからないという方が銀行に行かれるわけですから、そういった方々に対して、今後は、もう一切今までのような対応はとらずに、きっちりと被害者の立場に立ってお話をいただくということ、それをまず御確認申し上げたいというふうに思います。

 さて、今のお話の中で、現行のカードの約款規定でも補償は可能であるというお話がございました。現行の約款でも確かに補償はできるということは、前いただいた資料においても明らかであります。ただ、現行の規定でも補償ができるにもかかわらず、今まで一切されてこなかった、一切とは申しませんが、ほとんどされてこなかった。今回、こういったことでいろいろ社会問題化した。冒頭の御意見の中にもございましたが、預金の安全性とかあるいは銀行への信頼性ということをお考えになった上で方針を転換した、私はそういうふうに理解をしているわけなんであります。

 ということになると、やはり、これは自主的な取り組みを否定するものではないけれども、法律が必要なんではないかと私は思いたくなってくるわけですね。今の約款でもできる、まあ約款も今度お変えになるということですが、今の約款でもできるにもかかわらず、ほとんどされてこなかった。でも、社会問題になったからやるんだということであるならば、やはり私はこれは法律が必要なんではないのかというふうに考えますが、その件についてはいかがでしょうか。

西川参考人 お答えいたします。

 確かに法律で規定されるということも大変有効なことであろうと考えますが、一律に法律によって例えばこの無権限取引、偽造カードあるいは盗難カード、あるいは盗難通帳等含めて、無権限取引全般が無効であるといったことになりますと、銀行の実務面で大変大きな問題が生じてくる、一件一件本人確認ということに大変時間を要するということが懸念されます。スムーズに銀行の窓口等で事務が処理されないといったことになりまして、国民の皆様に御不便をおかけするといったような懸念もございます。

 そういったことになりますと、我が国は先ほども申しましたように現金社会でございまして、例えばATMによりましても一日の引き出し限度が大変大きな金額に設定されておるというケースが非常に多いわけでございますが、こういったものを欧米並みに、例えばアメリカの場合は一日一千ドルが限度というふうに聞いておりますけれども、そこまでいかなくても、限度を大幅に引き下げるといったような動きも生じてきやしないかということを懸念するわけでございまして、私どもといたしましては、本当に真摯に検討いたしまして、カード規定の改定、そしてそれの運用、こういうことにつきまして真摯に対応してまいりたいというふうに考えておりますので、まずは自主的な取り組みを見守っていただきたいというのが私どもの考えでございます。

 以上でございます。

中塚委員 利便性を追求する余り、結果として預金者が犠牲になる、そういう仕組みであっては、私は全然これは問題の解決にならないと思うんですね。会長みずからが預金の安全性、銀行への信頼性ということをおっしゃった。銀行への信頼性というのは、あるいは預金の安全性というのは、預かったお金をちゃんと預かっておいてくれるということですよね。それが引き出されてしまう、他人によって。偽造カード、盗難カードを問わず、他人によって引き出されてしまうということが問題なわけであって、利便性の問題とは私はこれは別だと思いますよ。だから、そこのところは、やはり、まず預金者をどういうふうに保護するのかということが根底の考え方でなければいけないわけですね。

 続いてお伺いいたしますが、実現方法が法律でなく約款の改定あるいは業界の自主ルールによるということになると、果たしてこれは全金融機関が約款を改正することになるのか、全国銀行協会の傘下の金融機関がすべて約款を改正するということになるのかどうかということについてお伺いをしたいと思います。

西川参考人 お答えいたします。

 全銀協のカード規定試案は、これはカード規定の方向性を示す、いわば約款のひな形という位置づけでございます。従来から各金融機関はこのひな形に沿っておのおの約款を定めているわけでございます。

 今回の改定内容を、全銀協の正会員、準会員合わせて百八十行ございますが、これのすべてに対して採用することを強制するということは、これは独禁法上の問題もありまして、それはできないのでございますが、事実上各行においては積極的に採用をするということになるものと理解いたしております。

 なお、信用金庫、信用組合、農林中金、労働金庫といった全銀協の会員でない他業態につきましても、それぞれの現行カード規定試案は全銀協のものと同様のものを採用されておりまして、今般全銀協が改定するということになりますと、やはり同様の改定をされるものと理解いたしております。

 以上でございます。

中塚委員 独禁法云々の話は、法律によって定めればそこはクリアできるわけですね。私どもの法律をお手元にお配りいたしてありますが、要は、この法律に反するいかなる約款も無効であるということを法律で決めてあるということでありますから、今のように銀行が過度に保護をされるようなそういう約款については、それはすべて無効である。そして、法律の中に原則を打ち立ててあるということでありますから、そういった意味で私は懸念をぬぐい去ることはできない。

 三月二十三日の日経金融新聞で西川会長がインタビューにお答えになっているわけでありますが、例えばセキュリティーとかあるいは補償ということでは金融機関が足並みをそろえる必要があるということではありますけれども、ただ、生体認証とかICカード化は各行の業務戦略とも深くかかわるのでばらつきが出てくるのはやむを得ないということになっておりますが、各行の本人確認をどういうふうにするかというのは各行の問題です。それは各行がどういうふうにお取り組みになるかということだと思いますが、原則として大事なのは、要は、銀行がまず負担をするということを決めるということなんですね。ただ、それを約款でやるということになると、やはり対応にばらつきが出るのじゃないかという懸念を私は抱かざるを得ない。

 もう一つ、約款で対応するということになりますと、全部個別対応になるのではないのかという懸念をまた持つわけですね。A銀行とB銀行で、全額補償になったり、あるいは八割の補償になったりするのではないか。あるいは、A銀行に対して、イという預金者の事件とロという預金者の事件で、これもまた補償の割合というのが違うようになるのではないか。そういう懸念を抱かざるを得ない。

 まず第一点目は、補償というのは全額補償が原則であるということなのかどうか。そして二点目は、約款改正によって対応するということになりますと、これは各行によってばらばらになるのではないか、あるいは事件の案件によって補償の程度がばらばらになるのではないか。そういう懸念を抱かざるを得ないわけですが、そこはいかがでしょうか。

西川参考人 お答えいたします。

 今、カード規定試案を見直し中でありまして、ここで確定的な、具体的なことは申し上げられませんが、一般論として申し上げますと、原則金融機関が補償するとし、そして、預金者の過失が立証できなければ一〇〇%補償するということでございます。そして、その預金者に過失があるケースはどういうケースかということを具体的に明示いたします。そういったことを総合的に考えますと、偽造キャッシュカード被害におきましては、預金者に責任があると金融機関側で立証できるというケースは本当に限られたものになるのではないか、多くのケースでは裁量の余地が乏しいのではないかというふうに考えておりまして、補償がばらばらになるといった懸念はまずないのではないかというふうに思われます。

 ただし、預金者の過失が立証できるということになりますれば、その過失の割合に応じて過失相殺等によりまして補償額を勘案するということも、これは恐らく例外的であろうと思いますけれども、あり得るかなというふうに考えております。

 以上でございます。

中塚委員 欧米なんかの例を見ても、レピュテーショナルリスクというのがあって、ほとんどの場合は全額銀行が負担をするというのが習慣になっているということでありますし、例えばこれを法律で決めれば、銀行と預金者の間で過失責任の割合あるいは賠償額の程度ということについては最終的には裁判で決めるということになると思うんですが、その方が外から見た場合に透明性が高い、公平性が高いというふうに思います。銀行が預金者の過失があるかどうかを認めるということについても、透明性が確保されるというのであるならば、やはりそれは法律で決めるべきだというふうに私は考えます。

 そして次に、この偽造カード対策を打ち出した背景ということで伺いたいのですが、冒頭お答えになったのとは違って、偽造カード対策をお打ち出しにはなるけれども要は盗難カードの対策はされないということですけれども、その背景には一体どういった考え方があるのかということについてお述べをいただけますか。

西川参考人 お答えいたします。

 先ほども申し上げたことでございますが、盗難キャッシュカードによる被害につきましては、これは窃盗被害の一類型ということでございまして、どういう状況でお客様が窃盗に遭われたかということにおきまして、お客様の過失の度合いも異なりまして、さまざまなケースが想定されるわけでございます。したがって、補償のあり方も偽造キャッシュカードとは異なるのではないかというふうに考えております。

 これらを含めまして、偽造キャッシュカードの問題につきましては今後検討してまいりたい、急いで全銀協の内部におきましてもいかなる対応というものが適切であるかということを含めまして検討を進めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

中塚委員 今のお答えで私はよくわかりました。やはり全銀協の考え方というのは、銀行というのは悪くなくて、預金者に落ち度があるかあるいは犯人が悪いという考え方なんですね。まあ、偽造カードは犯人が悪いということだと思いますが、盗難カードで預金者の側の過失があるというお話を今されましたけれども、要は銀行は悪くない、預金者に過失があるかないかということが大事だ、そういう考え方に立っていらっしゃる。

 私も実は偽造キャッシュカードの問題で考え始めたのですけれども、いろいろな方のお話を聞いているうちに、金融庁も、日弁連も、被害対策弁護団も、被害者の方も、そして欧米の例なんかもいろいろ調べていくうちに、根本のポイントは何なんだろうということになると、一番大切なことは、やはり無権限取引なんですね、要は正当な権限のない者による預貯金の引き出しということについて銀行がちゃんと本人確認をするということが、こういった事件を避けるために一番重要な課題であるわけなんです。だから、そういった意味で偽造と盗難を分ける必要というのはないのですね。加えて、カードと通帳、印鑑を分ける必要というのもないのです。ポイントは、無権限の取引、正当な権限のない者の取引をいかに銀行が排除をするか、そういう仕組みをつくるか、そういうシステムをつくるかというところにすべてある、私はそういうふうに思います。

 だから、そういう趣旨にのっとってお手元にお渡しをした法律案というものを作成いたしておるわけです。

 また、お手元の資料に、これは金融庁からいただいたものですけれども、「諸外国のキャッシュカード等の紛失・盗難・偽造等に対する消費者保護策」というものがございますが、大体、欧米の先進諸国を見ても、紛失、盗難、偽造というものを分けているところはないですよね。全部同じカテゴリーですよ。同じカテゴリーというのはどういうことかというと、その根底の考え方には無権限取引というものを排除せねばならない、そういう理念というか哲学というものが流れているからこういう形になっているのですね。

 ですから、今回、偽造キャッシュカードということで社会的な問題になっておりますけれども、問題の本質はそこにはない。やはりこれは銀行がきっちりと本人の確認をされるということが何よりも重要であって、盗難カードも当然含めるべきだし、あと通帳、印鑑の場合であっても同様に含めるべきであると考えますが、西川会長はいかがですか。

西川参考人 お答えいたします。

 先ほども申しましたが、金融機関におきましていわゆる無権限取引全般が無効ということ、これがポイントかと思いますけれども、こういうことになりますと、当然それは窓口における相対の通帳取引も含めまして幅広い取引がその対象となるわけでございまして、そういうことになりますと、先ほども触れましたように、金融機関における実務への影響は極めて大きいわけでございます。

 我々は、窓口における通帳、印鑑によります取引におきましては、印鑑の印影が同一だということだけではなくて、そのお取引の態様、どういう姿のお取引かということ、それから、引き出し等に来られたお客様の御様子なども確認をした上で、必要であれば本人確認資料の提示を求めるようにしておるわけでございます。金融機関のこういう実務の現状を踏まえますと、預金者の利便性確保ということと安全性の向上、この双方の調和の観点から、幅広い視点からこの問題は慎重に検討されるべきことだというふうに考えております。

 以上でございます。

中塚委員 最後のお答えは利便性と安全性の問題を二律背反でお考えになっているようですが、私はそれは違うと思います。やはり第一は安全性ですよ。安全性があった上で、次に利便性です。その利便性の程度は銀行のお立場ならいろいろな対応が考えられるでしょう、二十四時間やっているATMが果たして本当にそのままでいいのかとか、そういった問題はあると思いますが、まず第一は安全性の問題に特化するべきである。だからこそ今これだけの問題になっているわけなんですから、そこが一番大事なポイントであるということは再度申し上げておきたいと思います。

 時間がだんだんなくなってきたのですが、最後にお伺いをいたしますけれども、私どもはこうやって法律を提出しているわけなんですが、偽造キャッシュカードだけに限って言えば、この法律であっても、恐らく西川会長のおっしゃっていることがすべての銀行で徹底されるということであるならばほとんど変わらないと思いますけれども、しかし、それでもなお、法律を制定されるということについては、やはり法律を制定するのじゃなくて自主的なルールに任せてくれというふうにお考えになるのかどうか、それを最後にお聞かせをいただきたい。私はやはり法律を制定するべきだと思います。

 冒頭申し上げましたとおり、日本では民法四百七十八条、これは岩原紳作先生の意見でもありますけれども、それが余りにも裁判でも拡大解釈をされて使われているということでもあるわけで、そういった意味で、やはりこれは法律をつくってちゃんときれいに定めた方がクリアである。当然、その中には盗難のカードや、あと通帳、偽造印鑑等も含めてということでありますが、法整備ということについてはあくまで避けたいというふうに全銀協としてはお考えになっているのか、そこをお聞かせいただけますか。

西川参考人 お答えをいたします。

 こういった事柄につきましては、これまでも、銀行界、金融界におきまして、自主的なルールを設けまして、それによって運営をしてきたという経緯がございます。

 今回も、いろいろな環境の変化、犯罪の発生といったことにも考慮をいたしまして、カード規定試案の大幅な改定を考えておるわけでございます。こういったカード規定というものは民法の四百七十八条に優先するというふうに理解をいたしておりまして、この私どもの自主的な対応というものをまずは見守っていただきたい。それが効果を発揮しないということであれば何をか言わんやでございますが、我々は、本当に危機意識を持って、強い危機感を持って、この問題に対応をしているつもりでございまして、必ず実効性のあるものにしてまいりたいというふうに考えております。

 以上でございます。

中塚委員 最後に申し上げますが、私は、この話は、日本の金融機関、銀行が本当にグローバルスタンダードに立っていただけるかどうかという大切な問題だと思うんですね。さっきお配りした資料の中でも、世界の銀行というのはみんな盗難も偽造も分け隔てなくちゃんと補償しているわけですね。これがグローバルスタンダードなんですから、カードに対する信頼、銀行に対する信頼というものがぐらつけば、それはやはり日本の銀行の国際競争力ということについても大変大きな影響があるということを最後に申し上げまして、私の質問を終わります。

金田委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 偽造キャッシュカードの被害救済について、先ほど、新しいカード規定というものを検討しているというお話がありました。ただ、その中で、その規定というものは方向性を示すものであって、独禁法上強制はできないんだという答弁がありました。そういうことであるならば、約款に任せるということになると、同じルールをすべての銀行に適用できるということにはならないと私は思いますが、その点はいかがでしょうか。

西川参考人 お答えをいたします。

 強制することができないということを確かに申しましたが、それは、厳密に解釈すれば、そのとおりでございます。

 ただ、全銀協が作成いたしております約款のひな形というものは、全銀協傘下の銀行、現在百八十行でございますが、もちろん、これにはすべて周知することになります。各行においては、事実上、従来どおり全銀協のひな形を採用していくということになるものと理解をいたしております。他業態につきましても、先ほどもお答えいたしましたが、現在もカード規定試案は全銀協のものと同様のものを採用されておりまして、今回も全銀協が改定すれば、やはり同様の改定をされるものと理解をいたしております。

 どうしても対応されない、そのとおりやられないといったようなケースがもし生ずれば、これはスタディグループの中間取りまとめにおきましても、実効性の担保のための行政上の対応が必要というふうに記載されておりますが、行政側での対応ということもあろうかと思っております。

 以上でございます。

佐々木(憲)委員 結局、厳密に言えば、一律の原理原則に基づく被害者救済の対応というものができないということなのであって、そういう御答弁がありました。

 行政的措置といいますけれども、そんな簡単にそんなものができるわけではありませんから、法律を決めて、はっきりとそれにすべてが従うということが一番すっきりとした対応であって、それに抵抗されるという姿勢が非常によく出ているわけですが、それでは、銀行自身が裁量に任せてほしい、勝手にやらせてほしいということにしかならないのであって、やはり今すべての質問者が提案をされているように、法的な措置というものが必要だという点を指摘しておきたいと思います。

 それからもう一点は、被害者の救済ですけれども、既に被害者はたくさん出ております。新しい規定がそういう方々に適用されるのか、これから発生する人に適用するのか。私は、既に被害者はたくさん発生しているわけですから、そういう方々にまずは適用するというのが当然だと思いますが、その姿勢をお聞きしたいと思います。

西川参考人 今般、規定の改定を行いますと、当然のことながら、これまでに既に被害に遭われた預金者の方々についても同じルールを適用して、そして、預金者に故意であるとか重過失であるとかこういうものがない場合につきましては、原則全額を金融機関が補償するという取り扱いにさせていただくということでございまして、平仄を合わせていくということでございます。

佐々木(憲)委員 先ほど来議論がありますように、偽造カードだけではなくて印鑑の偽造もありますし、さらに、預金通帳も含めた盗難とか紛失、これら原因はいろいろあれ、銀行が本人以外の人に支払うということがやはり一番の問題だろうと思います。そこのところが、十分本人確認ができていないところに、こういうさまざまな問題が発生している。

 したがって、私は、こういう被害が生まれた一つの原因として、銀行側の過失ということもあるのだという点をやはり自覚していく必要があると思います。そういう点で今後、欧米では偽造カード以外のものも含めて対応されているわけでありますが、やはりそういう被害者の対象範囲を広げていくという点を検討されることがきちっとあるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

西川参考人 お答えをいたします。

 被害を受けられた預金者に対する補償の問題というものも極めて重要な問題でございますが、それ以前にも、いかにしてセキュリティーレベルを上げて被害を防止していくかということも大変重要な課題でございまして、盗難カード対策にも、例えば生体認証でありますとか、あるいは預金取引の実際のモニタリングといったことも効果の大きいものであるというふうに思います。

 それから、盗難キャッシュカードによる被害につきましては、これは先ほども申しましたが窃盗被害の一類型ということでありまして、さまざまなケースが想定されるわけでございますので、補償のあり方というものはおのずから偽造キャッシュカードとは異なるのではないかというふうに考えております。

 そこで、偽造キャッシュカードのように、これは原則すべて金融機関が負担するんだという考え方ではなくて、金融機関サイドで盗難保険を付保するということによりまして、被害に遭われた預金者の救済をさせていただくということも被害補償の選択肢の一つと考えられるのではないかというふうに思っております。

 これらを含めまして、偽造キャッシュカード問題のみならず、盗難キャッシュカードの問題につきましても、今後、全銀協内で急いで検討をしてまいりたいというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 今、生体認証というお話もありましたが、金融庁が二月二十二日に「偽造キャッシュカード問題への対応について」という文書を出しました。この中に、高齢者、身体障害者を含む顧客の多様なニーズに配慮するというふうになっておりまして、これはやはり全銀協としても、新しい機器やシステムを導入する場合に、やはり障害者あるいは高齢者にとって使いやすいものにする、ユニバーサルデザインというふうに言われておりますけれども、常にそういう点を念頭に置いて検討するということが必要だと思いますので、その点どうかという点。

 それから、障害者は、例えばどこに障害者対応のATMがあるかというのがわからないわけです。ですから、各銀行のホームページにどこどこにありますよというのをお知らせするようなことは、これは簡単にできるわけでありまして、この点の改善などについてお答えをお聞かせいただきまして、終わります。

西川参考人 お答えをいたします。

 障害をお持ちの方への対応をきちんと行うということも大変重要なことだと認識をいたしております。

 今後、セキュリティーの強化のためにICカード、生体認証の導入などを進めていくことになりますが、例えば、生体認証を導入しております銀行では、複数の生体情報をICチップ内に記録することを可能というふうにしておりまして、障害をお持ちの方の代理人による使用も可能としているケースもございます。このように、障害をお持ちの方を含めまして、幅広く預金者のニーズにおこたえできるように対応をしてまいりたいというふうに考えております。

 それから、どこへ行けばよいのかということでございますが、全銀協におきましては、ホームページ上に「視覚障害者向けサービスお問い合わせ先」として、届け出のありました銀行の照会窓口と電話番号を掲載いたしております。照会を受けました銀行では、御連絡をいただいたお客様に対しまして、そのお客様の状況に応じたATM等が設置されております最寄り店を紹介いたしております。

 こういったサービスによりまして、どなたでも簡単に御利用いただけるように、先生のおっしゃるユニバーサルデザインということを念頭に置きまして対応策の検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

 以上でございます。

佐々木(憲)委員 以上で終わります。ありがとうございました。

金田委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人におかれましては、御多用中のところ御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございます。(拍手)

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四十六分散会


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