衆議院

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第7号 平成18年3月10日(金曜日)

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平成十八年三月十日(金曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 小野 晋也君

   理事 江崎洋一郎君 理事 七条  明君

   理事 宮下 一郎君 理事 山本 明彦君

   理事 渡辺 喜美君 理事 小沢 鋭仁君

   理事 古本伸一郎君 理事 石井 啓一君

      井澤 京子君    伊藤 達也君

      石原 宏高君    小川 友一君

      越智 隆雄君    大野 功統君

      河井 克行君    木原  稔君

      佐藤ゆかり君    鈴木 俊一君

      関  芳弘君    とかしきなおみ君

      土井 真樹君    中根 一幸君

      西田  猛君    萩山 教嚴君

      広津 素子君    藤野真紀子君

      松本 洋平君    鈴木 克昌君

      田村 謙治君    高井 美穂君

      長安  豊君    野田 佳彦君

      三谷 光男君    吉田  泉君

      鷲尾英一郎君    谷口 隆義君

      佐々木憲昭君    野呂田芳成君

      中村喜四郎君

    …………………………………

   財務大臣         谷垣 禎一君

   財務副大臣        竹本 直一君

   財務大臣政務官      西田  猛君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   浜野  潤君

   政府参考人

   (財務省大臣官房総括審議官)           杉本 和行君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   松元  崇君

   参考人

   (日本銀行総裁)     福井 俊彦君

   参考人

   (日本銀行副総裁)    岩田 一政君

   参考人

   (日本銀行理事)     小林 英三君

   参考人

   (日本銀行理事)     白川 方明君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十日

 辞任         補欠選任

  平岡 秀夫君     高井 美穂君

同日

 辞任         補欠選任

  高井 美穂君     平岡 秀夫君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 独立行政法人酒類総合研究所法の一部を改正する法律案(内閣提出第三五号)

 金融に関する件(通貨及び金融の調節に関する報告書)


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     ――――◇―――――

小野委員長 これより会議を開きます。

 金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁福井俊彦君、日本銀行副総裁岩田一政君、日本銀行理事小林英三君、日本銀行理事白川方明君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として財務省大臣官房総括審議官杉本和行君、財務省主計局次長松元崇君、内閣府政策統括官浜野潤君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小野委員長 去る平成十七年十二月十三日、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づき、国会に提出されました通貨及び金融の調節に関する報告書につきまして、概要の説明を求めます。日本銀行総裁福井俊彦君。

福井参考人 おはようございます。日本銀行の福井でございます。

 日本銀行では、ただいま委員長からお話のございましたとおり、昨年の十二月、平成十七年度上期の通貨及び金融の調節に関する報告書、半期報と呼んでおりますが、これを国会に提出させていただきました。日本銀行の金融政策運営について詳しく御説明申し上げる機会を本日ちょうだいし、まことにありがたく、厚く御礼を申し上げる次第でございます。

 日本銀行では、御承知のとおり、一昨日、昨日、二日間にわたり開催されました政策委員会・金融政策決定会合におきまして、いわゆる量的緩和政策の枠組みを変更いたしまして、短期金利を金融市場調節の操作目標とする、いわゆる通常の金利政策に移行することを決定いたしました。本日は、こうした決定の背景にある経済、物価情勢や金融政策運営について、御説明を申し上げたいというふうに思います。

 最初に、最近の経済金融情勢について御説明を申し上げます。

 我が国の景気は着実に回復を続けております。この点をやや詳しく御説明申し上げますと、輸出や生産は増加を続けております。また、企業収益は高水準で推移しております。こうしたもとで、設備投資も引き続き増加をしております。家計部門では、雇用者数の増加が続き賃金も上昇に転じていることから、雇用者所得は緩やかに増加しております。雇用所得環境が着実に改善しているもとで、個人消費は底がたさを増しているという状況でございます。

 先行きについて見ますと、海外経済の拡大を背景に、輸出は増加を続けていくというふうに見られます。また、企業の過剰債務などの構造的な調整圧力がおおむね払拭されたもとで、高水準の企業収益や雇用者所得の緩やかな増加を受けて、国内民間需要も引き続き増加していく可能性が高いと考えられるところでございます。

 このように、外需と内需、そして企業部門と家計部門がともに回復し、前向きの循環メカニズムが働く環境が整っているということから、息の長い景気回復が続いていくだろうというふうに見ております。もとより、高騰を続ける原油価格やそのもとでの海外経済の動向など、景気に対するリスク要因については、引き続き十分注意を払っていく必要があると考えております。

 景気回復が続くもとで、物価をめぐる環境も好転しております。

 消費者物価指数、これは生鮮食品を除く全国のベースで見た消費者物価指数でございますが、昨年十一月から小幅の前年比プラスとなりまして、本年一月の前年比は比較的はっきりとしたプラスになりました。経済全体の需給ギャップは緩やかな改善を続けておりますし、ユニット・レーバー・コストの下押し圧力は基調として減少いたしております。さらに、企業や家計の物価見通しも上振れてきております。こうしたもとで、消費者物価指数の前年比は、先行きプラス基調が定着していくというふうに見られます。この間、国内企業物価は、国際商品市況高などを背景に上昇しておりまして、先行きも上昇を続けるというふうに見られます。

 金融面では、企業金融をめぐる環境は総じて緩和の方向にございます。民間銀行の貸し出し姿勢は積極化しておりまして、民間の資金需要は下げどまりつつあるという状況でございます。こうしたもとで、民間銀行貸し出しは、貸出債権の流動化や償却を調整したベースで見ますと、昨年八月に前年比プラスに転じた後、プラス幅が拡大してきているという状況でございます。

 次に、日本銀行の金融政策の運営について申し述べさせていただきたいと思います。

 日本銀行は、二〇〇一年三月、物価の継続的な下落を防止し、持続的な成長のための基盤を整備するという観点から、当座預金残高を主たる操作目標として潤沢な資金供給を行う、いわゆる量的緩和政策を導入いたしまして、この政策を、消費者物価指数、全国ベース、除く生鮮食品というベースですが、その前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで継続すると明確な約束を行いました。以後、約五年間にわたり、この約束に沿って粘り強く量的緩和政策を継続してまいりました。

 こうしたもとで、日本経済は大きく改善し、着実に回復を続けております。物価面でも、消費者物価指数の前年比はプラスに転じまして、先行きプラス基調が定着していくと見られる状況でございます。

 こうした経済、物価情勢の好転を踏まえ、日本銀行は、一昨日、昨日と開催されました政策委員会・金融政策決定会合において、量的緩和政策の枠組みを変更し、無担保コールレート、オーバーナイト物のレートでございますが、これを金融市場調節の操作目標とする金利政策に移行することを決定いたしました。あわせて、金融政策の透明性を引き続きしっかりと確保する観点から、物価の安定についての明確化を含め、金融政策運営の新たな枠組みを導入いたしました。

 この点を若干詳しく御説明申し上げますと、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、操作目標である無担保コールレートをおおむねゼロ%で推移するように促すということを決定いたしました。量的緩和政策の経済、物価に対する効果は、既に短期金利がゼロであることによる効果が中心になっておりますため、今回の措置により非連続的な変化が生じるものではないと考えております。先行きの金融政策運営としては、無担保コールレートをおおむねゼロ%とする期間を経た後、経済、物価情勢の変化に応じて徐々に調整を行うということになります。この場合、経済がバランスのとれた持続的な成長過程をたどる中にあって、物価の上昇圧力が抑制された状況が続いていくと判断されるのであれば、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境が当面維持される可能性が高いと考えております。

 また、日本銀行は、金融政策運営の新たな枠組みを導入いたしました。そのポイントを申し述べますと、第一に、日本銀行としての物価の安定についての基本的な考え方を整理するとともに、金融政策運営に当たり、現時点において、中長期的に見て物価が安定していると政策委員が理解する物価上昇率を示すことといたしました。第二に、先行き一年から二年の経済、物価情勢の点検と、より長期的な視点を踏まえつつ金融政策運営に当たり重視すべきリスク要因の点検、この二つの柱に基づいて経済、物価情勢の点検を行うことといたしました。第三に、こうした点検を行った上で、当面の金融政策運営の考え方を整理し、定期的に公表していくことといたしました。

 日本銀行といたしましては、こうした新たな枠組みのもとで、透明性の高い形で適切な金融政策運営を行い、物価安定のもとでの持続的成長に貢献してまいりたいと考えております。

 以上でございます。ありがとうございました。

小野委員長 これにて概要の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

小野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。越智隆雄君。

越智委員 おはようございます。自由民主党の越智隆雄でございます。

 ただいま福井総裁から半期報告書についての御説明がございましたが、本日は、昨日の量的緩和の解除、これが決定されましたので、この点に絞って、持ち時間をフルに使わせていただいて、福井総裁初め日銀の幹部の皆様の御見解をじっくりとお伺いさせていただきたいというふうに思います。

 まず、昨日は、今御説明ありましたけれども、二つの決定がなされた。一つ目は、量的緩和の解除の決定であります。二つ目は、量的緩和解除後の新たな枠組みを設定するということでありました。

 この量的緩和政策というのは、二〇〇一年から五年間、デフレスパイラルに陥ることを回避するためにとられた政策でありますけれども、福井総裁におかれましては、二〇〇三年の就任以来、日銀の総裁として、当座預金残高の目標金額の引き上げなど、デフレファイターとして御活躍をいただいた、この政策に取り組んでこられたというふうに理解しております。

 この政策変更につきまして私は基本的に評価をするものでありますけれども、ただ、しかし一方で、慎重に留意しなければならない点が幾つかあるんじゃないかというふうに思っております。

 その一つ目は、量的緩和政策というのが、総裁もおっしゃっていますけれども、異例な政策であったということであります。実施が異例であったということは、この量的緩和政策を解除する、そして正常な状態に戻すということについても、恐らく過去に例のない、異例なプロセスを経ることだというふうに思います。そんな中で、経済や物価情勢に大きな混乱を来すことなくこのプロセスを完了することが、今我々が取り組むべき重大な、最大の課題ではないかというふうに考えております。

 二つ目は、物価の安定でございます。これはもう申すまでもございませんけれども、イザナギ景気が五十七カ月でございました。これに迫ろうとする今の景気拡大の局面を、腰折れさせることなくしっかりと運営していく、このことが大事だというふうに思っております。

 これからの持続的な経済成長を果たしていく上で、デフレ脱却にかわって物価の安定を目標として掲げることとなりますけれども、異例なプロセスにおいて、そしてまたその後の環境においても、物価の安定に資する政策をしっかりととっていかなきゃいけないというふうに思います。

 こんな問題意識に立って、きょうは、新たな枠組みに基づく今後の金融政策運営について質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、一つ目の質問でございますけれども、新たな枠組みの中で、いわゆる目安というものが示されたというふうに思います。この示し方について今までさまざまな議論がされていまして、一方では、透明性を重視して数値型にすべきだという議論がございました。また一方では、日銀の政策運営の柔軟性を重視して、文章型、メッセージ型にすべきだという議論がございました。

 今回の目安の示し方について、福井総裁は昨日の会見で、透明性の確保と機動的運営が両立する枠組みだというふうにおっしゃったと報道がされておりますけれども、この示し方について、どのような考え方に基づいて考案されたのか、具体的に透明性と柔軟性をいかに両立されるおつもりなのか、この点について御説明をお願いしたいというふうに思います。

福井参考人 まず最初に、ただいま委員がおっしゃいましたとおり、金融政策は、経済状況が非常に悪い状況から、先行き、すべての国民がごらんになって望ましいと思われる状態まで、円滑に改善の方向をたどっていかなければならない、そのプロセスを金融政策は一貫して支えていかなければならない、こういうふうに考えております。

 量的緩和政策が導入されました五年ぐらい前、まさに日本経済がデフレスパイラルに陥るリスクというものを強く感じていたころでございました。その後、デフレスパイラルに陥るリスクは次第に軽減しつつも、物価が継続的に下落する。最近は、物価がプラスの状況に戻って安定的に推移する状況に非常に近づいてきている。今後は、物価安定のもとで持続的な景気回復というのをより確かにしていく、さらに、それを長期にわたって実現していけるように基盤をさらに整えていく、こういう長いプロセスでございます。

 量的緩和政策というものは、そういう日本経済が危機的な状況にあった状況に対して、緊急避難的に対処するための異例な措置としてやってきたものでございまして、経済がここまで正常化の過程を歩んできた段階において、昨日、この枠組みは解除させていただきました。今後は通常の金利政策に戻りますけれども、当面、ゼロ金利政策というところから再スタートするということでございまして、私どもとしては、まだ、金融政策が最終的に実現を目指すべき状況に対しては道半ばの途上にあるというふうに考えています。最終的には、持続的な景気回復を物価安定のもとで継続的に実現できるような状況にこぎつけたい、今後ともそういう長い努力をしたいということでございます。

 量的緩和政策の枠組みのもとでは、消費者物価指数が安定的にゼロ%以上となるまでという強いコミットメントをいたしまして、これは、日本銀行自身がみずからの手足を縛ってこの難局を乗り切るためのコミットメントでございました。

 金利政策に戻りました後は、金融政策の機動性ということで、非常に大事になってまいります。経済の上振れリスク、下振れリスクともに機動的に対応できるということが金融政策の生命線でございますし、先ほど申し上げました、より望ましい経済に持っていくための金融政策運営というのはまさに、荒わざでなくて、最も適切なタイミングできめ細かい金融政策を連続的に打ち出していくということで実現できる可能性が強いわけでございます。そういう意味で、機動性が大事と。

 しかしながら、一方で、金融政策については透明性が大事と。日本銀行から発するメッセージと行動が国民の皆様方、市場参加者の皆様方から見て十分理解できるということがあって初めて政策の効果も高まるし、日本銀行として説明責任、アカウンタビリティーも果たせる、こういうふうに考えております。したがいまして、量的緩和政策から通常の金利政策に戻るこの時点で、新しい金融政策の枠組みを私どもとして新しく設計いたしまして、きのう打ち出した。その柱は、透明性と金融政策運営の柔軟性の両立ということでございます。

 諸外国におきましても、そうした点ではさまざまな先例がございます。いわゆる厳格な意味でのインフレーションターゲティングというふうなことから始まり、いろいろな例がございます。かつまた、インフレーションターゲティングをとっていると言われている国の場合でも、実際の金融政策の運営の仕方は、その枠組みの中でその国の実情に応じてさまざまであるということでございまして、日本銀行といたしましては、海外のさまざまな事例、そして国内におきましても各界の識者の方々のすぐれた御見識、すべて私どもよく勉強をさせていただきまして、いいところはすべて拝借する、そして、最終的にはやはり日本の実情にきちっと合ったものということでつくらせていただいたのが、きのうの例でございます。

 したがいまして、物価安定につきましても、国民の皆様が今後経済活動をしていく場合に、デフレもインフレも心配することなく、安心して経済活動ができる状況ということに明確に定義をさせていただいた上で、各政策委員がそういう物価安定の概念を数字であらわせば当面どういうイメージを持っておられるか、これは中長期的に見て物価の安定というものをどういうふうに認識しているかということを映し出して、これは今後の金融政策運営上、十分念頭に置いて我々がやっていくということを明らかにさせていただいた。国民の皆様方の物価観と本当に合っているかどうか、今後ともすり合わせをしながらやっていきたいということで、したがいまして、一年置きぐらいには我々のイメージも再点検しながらやっていこう、こういうふうな仕組みになっております。

越智委員 総裁、ありがとうございました。今、総裁からは、金融政策の機動性と透明性の考え方についてお答えをいただきました。

 ちょっとここでお伺いをしたい部分がございます。それは何かというと、〇%から二%の間で、中心値が一%というふうに実際に数字を出されています。ただ、この数字というのが、中長期的な物価安定の理解ということでありまして、実はこの数字は、足元の物価水準とは概念上全く異なるものじゃないかというふうに私は理解をしております。そういった意味で、量的緩和の解除の三条件に比べるとかなり性質の違ったものとしてこの基準を出されているものだというふうに理解をしています。

 そういった意味では、それぞれの市場参加者が、日銀が示される中長期的な物価上昇率と足元の物価上昇率をどうやって関連づけて考えるのか、これが異なることによって市場の期待形成にも幅が生じるんじゃないかというふうに考えます。別の言い方をしますと、いわゆる今まで時間軸効果というふうにマーケットでは言われていたようなものが、量的緩和政策におけるものとは大きく変わってくるのではないか。

 こうした点を踏まえると、安定的な期待形成をするためには、より一層十分な市場との対話というものが必要になってくるんじゃないかというふうに思うんですが、この点についてはどうお考えでしょうか。お願いいたします。

岩田参考人 それでは、ただいま時間軸効果についてのお尋ねがございましたので、お答えを申し上げたいと思います。

 先ほど福井総裁の方から申し上げましたけれども、私どもの量的緩和政策と申しますのは、二〇〇一年の三月導入したわけですけれども、物価が下落するもとでデフレスパイラルのリスクが強く意識されていたということで、足元の消費者物価指数と結びつけて金融政策の継続ということを約束した。

 具体的には、消費者物価、除く生鮮食品の前年比が安定的にゼロ以上となるまで継続するという、これは政策持続効果とかあるいは時間軸効果というように申し上げておりますが、こういう効果を通じまして市場の金利を低目に安定させる、こういう効果が生まれたというふうに考えております。

 しかしながら、金融政策というのは、本来、十分長い先行きの経済、物価の動きをいわばフォワードルッキングな形で予測しながら、弾力的かつ機動的に運営すべきだというふうに考えられます。

 したがいまして、今回の新しい枠組みのもとにおきましては、現時点におけます政策委員の中期的な物価安定の理解を示す、それから、二つの大きな柱に従いまして経済、物価情勢を点検していく、さらに、これを前提といたしまして、当面の金融政策運営の考え方を整理して公表する、こういう新しい枠組みのもとで市場との対話を円滑に行っていきたいということであります。

 こういう新たな枠組みのもとで、透明性の高い形で適切な金融政策運営を行う、その結果、物価安定のもとで持続的な成長を実現するということに貢献していきたいというふうに考えております。

越智委員 今の市場との対話の点についてなんですけれども、中長期的な物価安定の理解というものを掲げた場合に、やはり、今までと比べたら決定的に違ってくるといいますか、より市場に綿密にメッセージを発しなきゃいけない、ここが展望レポートでカバーされる部分ではないかというふうに思うんですけれども、この辺のことについて、できれば総裁からコメントをいただければというふうに思いますが。

福井参考人 量的緩和政策のときと違います一つの点は、先ほども申し上げましたとおり、コミットメントによって日本銀行がみずから手足を縛るということはしない、フリーハンドでタイムリーな金融政策をできるようにした。

 コミュニケーションの仕方も変わってまいります。これが二番目でございます。我々は、政策委員の一人一人が持っておられる物価観というものを正直に出して、世の中の人々の物価観と十分すり合わせができるようにした、これは大きな透明性のバックグラウンドでございます。

 かつまた、金融政策運営の具体的なチェックポイントとして柱を二本立てた。

 それは一つは、我々は一年、二年先までの経済のアウトルックを出しますが、その標準的な見通しが持続的な経済の拡大というパスにきちんと乗っているかどうかという評価を、原則として展望レポートの都度、明確にみずから評価を出していきますし、その評価を、言ってみれば世に問うという形になります。

 かつまた、仮にそのシナリオがそういう正しい方向性に乗っているとしても、どういうリスクがあるかということをきちんと点検する。そのリスクは、発生する可能性が大きいリスクであれば当然対処するわけですけれども、発生する可能性が小さくても、一たん起こればロスが非常に大きい、国民経済的なマイナスが非常に大きいというものに対しても、あらかじめ指摘して、それは当然早目に対処していく。こういうやり方できちんとチェックしていくということでございます。

 第三の違いがございます。

 それは、量的緩和政策のときは市場金利の動きは原則的には封殺されている、特に短期金融市場でございますね。今後は、金利が生きてくるということでございますので、マーケットとのコミュニケーションという場合に、金利の動きというものが仲介項になってまいります。言葉のやりとりだけがコミュニケーションではない、本来のマーケットとのコミュニケーションでございます。我々が情勢判断について見解を述べ、市場の理解するところは市場が先行きのレートということで示し出してこられる、見解のすり合わせの中でそういう市場レートが敏感に動くということで、市場レートを仲介項としてダイナミックなコミュニケーションが行われる、これが本来の中央銀行とマーケットとのコミュニケーションでございます。

 そういうふうに変わっていくということでございます。

越智委員 詳しく御説明いただきまして、ありがとうございました。

 それで、今回の新たな枠組みなんですけれども、今までとは違ったものであります。この枠組みは、量的緩和政策の解除に際して、今回、日銀がその政策運営のあり方、考え方として整理を示したものだということだと思います。

 ただ、一方、内容を見てみますと、私はとても画期的だなと思ったのは、物価というものについて、日本人の文化といいますか社会性とか、そういうものまで踏み込んで検討していて、ある意味では、普遍的な意義を示すことを試みられたのじゃないかというふうに思っています。物価の安定は持続的な経済成長を実現するための不可欠の前提条件であるというふうに述べられているというふうに思います。

 こうした点を考えると、今回の新たな枠組みというものは、量的緩和政策という異例な政策から脱却する時期において使われる暫定的な枠組みではなくて、ある程度中長期的に利用可能な、いわば半恒久的な枠組みを今回御提示されたのではないかという印象を覚えたんですけれども、この点について、御見解をいただければというふうに思います。

福井参考人 金利を軸とする金融政策の運営の仕方というのが本来の金融政策の運営の仕方であり、そういうやり方に、幸いにも日本も戻ることができたということでございます。

 こういう枠組みで世界の中央銀行がともに政策成果を競っている、そして透明性の打ち出し方についても、どこがすぐれているか、懸命な努力でこれも競っているということです。中央銀行というのは競争に関係のない世界にいるのではありませんで、グローバルには大変競争し合っております。日本銀行も世界のナンバーワンでありたいというふうに、日本銀行政策委員会のメンバーは強く希望を持って日々仕事をさせていただいておりますが、そういう方向性をにらんで、今回勇気を持ってこういうフレームワークを打ち出したわけでして、十分かどうかはわかりませんが、こういう方向でさらに改善努力を重ねていけるんではないかという確信を持って打ち出したものでございます。

越智委員 ありがとうございました。

 多分最後の質問になりますが、次に、ちょっと先のことを申し上げたいというふうに思うんですが、量的緩和の解除のプロセスが、数カ月経て、その後にゼロ金利政策になっていき、そのゼロ金利政策が終了する局面についてお伺いしたいというふうに思うんです。

 先ほど申し上げましたとおり、量的緩和政策というのは異例な金融政策であるというふうに総裁もおっしゃっておりました。その後、一定の期間とられるゼロ金利政策も私は異例な金融政策だ、その部類に入るというふうに認識しております。

 以前、総裁は会見の中で、量的緩和が終わって景気回復が着実であれば、当然中立的な金利を目指すというふうに述べられておりました。将来、量的緩和とかあるいはゼロ金利といった異例な金融政策をとる必要がなくなって、金融政策運営が中立的な金利を目指すようになる局面というのは、どのような経済、物価情勢なのか。今回のペーパーでも「緩和的な金融環境」という言葉が使われていますけれども、それが中立的になるというのはどういう条件が整ったときか、その点についてお伺いして、質問を終わらせていただきたいというふうに思います。

福井参考人 金利と申しますものは、経済、物価の情勢に見合った金利水準というところにセットされて初めて金利機能が最大限その効用を発揮する、資源の再配分機能というのを最も有効に発揮することによって経済の活力を最大限引き出し、いい経済のパフォーマンスを実現していく道につながる、こういうことになります。したがいまして、いずれは日本の金利も日本の経済、物価の状況に見合った水準に段階的には引き上げていく必要があるわけでございます。

 しかし、何分にも日本経済、非常にいい状況になってまいりましたけれども、長年のデフレ的な色彩のもとでの苦しい過程を経ての現状でございますから、さまざまな後遺症も残っているかもしれない、外から及んでくるショックに対してまだ十分強靱であるとは限らないということでございますので、さらにそうしたショックに対する脆弱性が消えていく過程というものは、大事にそのプロセスを運んでいく必要がある。

 もう一つ、グローバルエコノミーの伸展の中で、日本経済、外からの強いローコストコンペティションといいますか競争圧力にさらされておりまして、企業としてはなかなか値上げをしにくい環境というのが続いております。そうしたことも含め、今後の物価環境というものが、経済が回復過程をたどる中でも物価上昇圧力が高まりにくいという状況であれば、比較的低い金利を長く続ける余裕というものが我々に与えられているかもしれない。

 この両面を考慮しながら、しばらくはゼロ金利ないしは極めて低い金利水準というものを保てる期間があるのではないか、こういうふうに想定しております。しかし、いずれは中立的な金利水準に徐々に戻すということがこれからの日本の経済の活力を真に引き出す道につながる、こういうふうに考えております。

越智委員 御丁寧な答弁をありがとうございました。

 時間ですので、これで質問を終わります。ありがとうございました。

小野委員長 それでは、続きまして、佐藤ゆかり君。

佐藤(ゆ)委員 自由民主党の佐藤ゆかりでございます。本日は参考人として、福井総裁初め日銀の御関係の方々にお越しいただきまして、御礼を申し上げます。

 本日は、量的緩和の解除、その後の政策運営についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 我が国経済は、長期にわたるデフレ経済から脱却の兆しが見えておりまして、昨日日銀は、五年に及んだ量的緩和政策というのを解除の決定をされたわけでございます。

 振り返りますと、五年前ですけれども、実は私も、量的緩和の推進論者でおられました当時の中原伸之審議委員のブレーンの一人として、実は量的緩和の導入に向けてサポートをさせていただいた一人でございました。そういう意味で、五年前と比べますと、今の経済情勢ですけれども、確かに企業の収益性も向上してきた、あるいは金融危機も去った、そしてコアCPIも四カ月連続で前年比プラスに出てきた、賃金上昇も見られてきているということで、デフレ経済からの脱却というのが少しずつ見えてきているところではなかったかと思います。

 そうした中で、昨日、日銀が独立性を持って解除の御決定を下されたということは敬意を表したいと思いますが、ただ、その一方で、今後の政策運営につきましては、ややあいまい性が量的緩和の政策の時代よりは増したのではないかという実は印象を私は受けております。それについて、今後の方向性について御質問をさせていただきたいと思います。

 まず一番目ですが、「中長期的な物価安定の理解」という表現が説明書きの中に書かれておりますけれども、これがインフレターゲットを意味するのかしないのか、福井総裁にお伺いをさせていただきたいと思います。

福井参考人 インフレターゲティングというのも一定の定義がないものですから、なかなかお答えがしにくいわけなんですけれども、仮に、中央銀行の政策決定会合において一つの物価数値目標というものを設定し、そして、長いか短いかは別にしまして、一定期間内にその目標を達成するという期間の概念が入っているというふうなもの、仮にそういったものをインフレーションターゲティングと考えれば、そういうものではないということでございます。

 現在、日本銀行の各政策委員がそれぞれ物価安定というふうに認識している内容を数字的に映し出せばこういうものだということを持ち出して、全体として中心点に近いものは何かというふうなものをまとめたものがきのうでございます。

 ただ、政策委員の頭がばらばらということではなくて、物価安定そのものをどう考えるかという点については、企業も家計も物価の変動に煩わされることなく安心して経済活動ができるような物価の状況という点では完全に一致しているわけでして、それを、過去の物価の変動から今日に至るまでの経緯などをそれぞれ頭の中に置いた場合に、実際に現状において今後長い目で見た物価安定の姿はどうだろうということを数字で表出すると委員によって多少差が出てくる、こういうふうなものでございますが、いずれにしても、それを念頭に置いてこれから金融政策を行っていく。

 実は、世の中の方々も、一人一人持っておられる物価観は違うと思います。簡単に、二から三であるとか、一とか、これで国民の皆さんがみんなそういうふうに思っているわけではないと我々も思っておりまして、国民の皆様が思っておられる一種標準的な物価観というものと我が政策委員が抱いておられる物価観というものがおおむね合っているとすれば、今後の金融政策を行っていく場合に、物価安定を目指すと我々が言った場合と国民の皆様方が物価安定を目指してほしいと思われた内容とが一致していくであろう。したがって、金融政策を行う場合にそれを念頭に置くということは、機械的に一定期間内に無理にある数値を実現するということよりは経済的効用が結果として大きいものになるのではないか。

 そして、物価観というものは、国民の皆様方もあるいは政策委員のメンバーも、経済構造の変化に伴って変わる可能性があります。したがいまして、一年ごとにこれは多少点検しようというフレキシビリティーをそこに残しているということでございます。

佐藤(ゆ)委員 ありがとうございます。

 それでは、御回答を受けまして、岩田副総裁の方にお伺いをさせていただきたいと思いますが、説明書きにあります「中長期的な物価安定の理解」という表現ですが、その中の「中長期的な」というのは大体どのぐらいの期間を想定されているのか、お伺いしたいと思います。

岩田参考人 中長期といいますのは、なかなか厳密に何年ということをお答えするのが難しい場合がございます。

 ちなみに、ヨーロッパの中央銀行におきましても、中長期的な観点から、数値的な物価安定の定義というのを与えておられます。そのときに、それは何年なのでしょうかというようにお伺いしたことがあるんですが、お答えは、その時々の経済状況によって、それは三年の場合もあるし、あるいは四年の場合もある、五年の場合もある、こういうお答えでありまして、これは、言ってみますと、何らか経済にショックが、需要のショックでもあるいは供給のショックでもいろいろなショックがあり得るわけですが、そういうものをおおむね吸収し得るような範囲というのが一つの理解の仕方かというふうに思っております。

佐藤(ゆ)委員 ありがとうございます。

 大体、今お伺いした限りでは、中長期的な、きっちりとした定義はないということですが、大体三年ですとか四年、五年、そういうタイムスパンでお答えいただいたと思います。明らかに半年とか一年後という想定ではないということではないかと思います。

 そうしますと、そういった大体三年から五年の幅のそういう中長期的な期間の中で、物価の安定の理解として、今回、日銀がCPI、ゼロから二%のレンジをお示しされた。そして、中央値が一%前後という理解になるかと思いますが、そうしますと、結果としては、結局、福井総裁はインフレターゲットではないという御回答をされておられますけれども、三年、四年、五年先にこれがあるべき姿であるということで、ある種のインフレターゲットではないかと解釈もできるのですが、そのあたりはいかがでしょうか。

福井参考人 いわばそういう望ましい姿を念頭に置きながらしっかり金融政策をやっていく。もしこういう物価観が国民の皆様の物価観と合っていれば、それを実現していくということは金融政策の効用が最も高いものが実現できるということであります。

 そういう意味では、広い意味での目標ということになるわけでございますが、インフレーションターゲティングというふうにこれを言いますと、一定の期間内にこれをかなり、何と申しますか、機動性を奪うといいますか、金融政策の縛りを強くして数字を専ら実現するというふうな形の金融政策になりかねない。それは必ずしも全体的な経済の効用を実現するという道に通ずるかどうか、まだ問題が残っている。海外の各国の中央銀行の政策運営を見ておりましても、インフレターゲティングというものを明確に持っている国でも、実際の経済運営、金融政策の運営は、バブルの発生を予見するとか、いろいろなことで非常に機動的にやっております。

 その辺の幅を持たせるという意味では、今回私どもが出しましたこの理解という新しいやり方が、きっとすばらしい金融政策の運営の道を開いていく端緒になるのではないか、我々自身は希望と確信を持って始めたばかりでございます。今後、運営に磨きをかけていきたい。外国のインフレーションターゲティングよりもすばらしいものだというふうになればいいな、こう思っているんです。

佐藤(ゆ)委員 ありがとうございます。

 ただ、せっかく御回答いただいたんですが、諸外国でインフレターゲットを導入して、そのルールの上にのっとって裁量を使いながらうまく運営をされている中央銀行は多々あるわけでございます。日本銀行の今回御回答された形では、ルールなしに裁量だけが前に出ているという気がしてならないわけですけれども、やはり金融市場にとりましても、それではなかなか期待が収れんしにくいという問題がありまして、期待が収れんしにくいということであれば、ますます最終的な物価の目標も達成しにくいということになるのではないかと思います。

 特に、ルールの上での裁量ではなくて、裁量だけになりますと、具体的に問題として想定されますのは、これまで量的緩和の時期に言われておりました時間軸効果ですが、これが今後コミットメントがないルールなしの裁量政策になりますと、まずこの時間軸効果が失われてきてしまうということがあると思います。

 例えば、大まかにも三年後あるいは四年後にCPIをゼロから二%のレンジで、一%を中央値として目指すというようなルールのもとで、裁量をつけながら運営をされるということであれば、そういったコミットメントのもとで、ある程度時間軸効果というのも確保されるのではないかと思われますが、そこは今回、そうしますと、日銀の御決定のもとで時間軸効果というのはあえてあきらめる、そういった御決定というふうに理解してよろしいのでしょうか。

福井参考人 先ほどからも申し上げておりますとおり、物価安定についての理解ということだけが私どもの新しい枠組みの道具立てではありません。二つの大きな柱を立てて、標準的な経済の見通し、これが本当に正しい軌道に沿ったものであるかということをチェックし、リスクの点検もきちんとやり、それらはすべて市場に映し出される市場金利の姿、あるいは市場関係者の方々の情勢判断と綿密にすり合わせをしながら金融政策の運営を行って、ベストパフォーマンスを目指す、こういう構造になっております。

 一つのシングルインジケーターに焦点を当てながら縛りの強い金融政策を行うことが本当に経済のベストパフォーマンスに結びつくかどうか、それはなかなか立証できないし、各国の中央銀行は、多かれ少なかれ、その点については疑念を持って、フレキシビリティーを十分保ちながらやっている、そういう状況だと認識しております。

佐藤(ゆ)委員 議論がやや平行線のような印象を受けるんですけれども、ぜひともやはり期待の収れんに向けて、期待が発散しないように、ある程度明確なメッセージをぜひとも金融、経済に向けて出していただいて、そして早期の安定的なインフレ経済の実現に向けて御努力いただきたいというふうに思います。

 少しテーマがミクロ面にかわりますけれども、次に、金利政策を復活させた後の具体的な政策運営についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 当座預金残高の削減ですが、先ほど、朝の自民党の部会では、日銀関係の方から、大体おおむね三カ月、向こう三カ月程度で当座預金残高を下げるというようなことを御回答いただきました。三カ月近辺ですと、大体六兆円程度まで下げるのに月々八兆円近くずつ当座預金を引き下げるという急激なペースが予想されるわけでございますが、これが少し急過ぎるのではないかという議論もあると思います。

 実際のところ、短期の金利がかなり金融市場では、金先を含めて、ことし利上げを既に織り込んでしまっている状況ですが、短プラ、短期プライムレートが上がりますと、当然ながら今後貸出金利が上がってくるという状況になると思います。

 その一方で、利上げあるいはこの当預の引き下げのペースが速いと、預金金利の方はなかなか上がらないというラグの問題が出てきますが、その結果、貸出金利が上がって預金金利はそのままというような、やや国民生活にとってマイナスとも思われるような状況もあり得るのではないかと思われますが、このあたりのペースについて少しお伺いしたいと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 今回、金融調節の主たる操作目標を日本銀行の当座預金残高から短期金利に変更するに伴いまして、日本銀行当座預金残高を所要準備の水準に向けて今後削減していくということになってまいります。

 現在、金融機関は法律に基づきまして約六兆円という金額の準備を持つことを今義務づけられておりますけれども、それに対して、きのうまでは三十から三十五兆円という目標のもとで運営しておりました。金融機関は、必要とする金額をはるかに上回る金額を持っている。そういう中で、日本銀行としては、銀行自身がそれほど多くの実は準備預金に対する需要がない中で、これを供給するのに大変な努力を行ってまいりました。基本的には、銀行の中には今大変大きな超過準備が存在するということでございます。

 この当座預金残高の削減でございますけれども、基本的にこれは短期の資金オペレーションで対応するということでございまして、長期の国債オペについては、これは当面これまでと同じ金額、頻度で実施していくということでございます。

 御質問の当座預金の削減のスピードでございますけれども、これは昨日の発表文でも公表しましたとおり、短期金融市場の状況を十分に点検しながら進めていく必要があるというふうに考えておりまして、私どもこの十分に点検するということを強調しております。

 先ほど委員御指摘の三カ月、あるいはきのうの公表のときの数カ月ということでございますけれども、これはあくまでもそうした注意深い調整をやっていく際の一応のめどでございまして、現在、この点について何か特定の予断を持っているということではございません。

 いずれにしましても、金融機関においては量的緩和政策採用以降、長期間にわたりまして多額の当座預金あるいはそのもとでの多額の資金供給オペレーション、これを前提とした資金繰りを行ってきたという事実がございますので、これを十分に念頭に置いて短期金融市場の状況を点検しながら当座預金残高の削減を進めていこうというふうに考えております。

佐藤(ゆ)委員 今いただきました御回答では、貸出金利の上昇ペースと、それから預金金利の調整ペースの格差について余り明確な御回答が伺えなかったような気がいたしますが、ぜひとも、これは、貸出金利だけが先に上がって、どんどん上がっていくというような状況にならないように、ペースを十分に御検討いただきながら調節をしていただきたいというふうに思います。

 それから、次に移りますけれども、今度は、やや資産バブルの醸成の可能性、そういったリスク要因の観点からお伺いをさせていただきたいと思います。

 まず、福井総裁にお伺いさせていただきたいんですが、今後、金利政策に戻りまして、そうはいいましてもゼロ金利政策というのは続ける、当面続けるというような政策変更をされたと思いますが、そうした中で、今後、日銀が描きます金融経済全体、これは株価、金利、為替など、すべて含めました金融、経済全体としての望ましい調整軌道、こういったものが、イメージがおありでしたらお伺いしたいと思います。

福井参考人 昨日発表いたしました公表文の中にも、リスクは十分点検していかなきゃいけないというふうに書いております。なかんずく、具体的には、例えば、発生の確率は必ずしも大きくなくても、バブルやデフレスパイラル、あるいは、発生した場合に経済、物価に大きな影響を与える可能性があるリスク要因というふうなものは、つぶさに点検して対処していくということは明記しております。

 現在の状況から即していいますと、目先すぐにバブルのリスクが非常に大きいというふうに私どもは考えておりません。しかし、委員御指摘のとおり、量的緩和政策の枠組みそのものは大変なビハインド・ザ・カーブの金融政策でございます。そして、金利レジームに戻っても、ゼロ金利からの再出発ということは、引き続きかなりのビハインド・ザ・カーブの金融政策でございますから、そうしたリスクの発生する可能性ということは、やや長い目で見れば否定し得ないわけでありますので、十分注意しながらやっていかないといけない。

 しかし、当面は、景気が順調に回復してもインフレ圧力が容易には高まりにくい経済であろう、そして、バブル発生のリスクもまだそう大きくはなかろうという前提のもとにスタートする。したがって、当面は極めて緩和的な環境を維持できる公算が強いというふうに判断してスタートするわけでありますけれども、今後の情勢点検については、おさおさ怠りがないようにしたいというふうに思っています。

佐藤(ゆ)委員 そうしますと、安定的なそういう金融経済の確保に向けて点検をしながら進めていかれるということなんですが、日本経済の構造変化を受けまして、少子高齢化も進んでおりますけれども、一つの指摘には、経済全体に対する所得効果よりは、資産効果が相対的に高齢化とともに高まってきているという指摘もあると思います。

 そうした中で、この日銀の政策運営として、資産効果のメカニズムというのはどのぐらい重点を置かれておられるのか。ここ五年、十年ぐらいでどのぐらいその重点が変わってきているのか。それに対する、資産価格変動に対する許容度、このあたりが、もしイメージがあれば、五年前と比べて例えばどのぐらい変わっているのか、変わっていないのか、お伺いさせていただきたいと思います。

岩田参考人 金融政策運営におきまして、これは先進国の中央銀行が皆直面している問題なのですが、資産価格の動きと、例えば一般物価水準、こういうものが、関係が非常に複雑な場合がございます。これは、日本の場合も一九八〇年代半ばに資産価格が急騰いたしましたが、そのときに、一般物価水準というのは比較的安定した状況にございました。

 現在も、アメリカ経済を見ますと、住宅価格、かなり、一〇%程度上昇しておりますけれども、その中でコアの個人消費デフレーター、これは連邦準備が重視しておりますが、それは割合落ちついているというようなことがございます。イギリスの方を見ましても、これは住宅価格、非常に高かったのですが、早目に金利引き上げをするということで、いわばうまく住宅価格の高騰をコントロールするというようなことがございました。これは、そういうことで世界の中央銀行、どこを見ましても、この資産価格とそれから一般物価の関係をどのようにうまく、両方うまくコントロールするのか、重大な課題だというふうに思っております。

 私どもの今度のフレームワーク、先ほど福井総裁から申し上げましたけれども、まさに新しいフレームワークのもとで、中長期的な観点から見て、何かそういう資産の急騰ですとかそういったことがないかということを厳格に点検しながら、そしてこの二つの、時によりますと、政策運営が非常に困難な問題を、フォワードルッキングな形でもって、いわば、資産価格といいますのは、ある意味では一般物価の先行きを示すという側面もございます。そういうことに留意しながら金融政策を行っていきたいというふうに考えております。

佐藤(ゆ)委員 ありがとうございます。

 足元、やや銀行貸し出しが、昨年の八月から特殊要因調整ベースで上がってきているというような状況の中でも、その牽引役となっておりますのが不動産向け貸し出しであったり、あるいはノンバンク貸し出し、これも大方は不動産向けというふうに報じられているとおりだと思いますけれども、ややその貸し出しの回復というのが一部の業種に限られている、資産市場向けに限られているというような報道もあるとおりであります。

 そうした中で、特に今、日本経済がデフレから脱出しつつある中、まだ価格の調整スピードが実体経済においては非常にスローである一方で、資産価格の方が、やや、一部の業態においてバブルのような形成をし始めているのではないかという指摘があるわけですけれども、このCPIと資産価格のスピードの格差の問題、これについて、実は、このCPIのゼロから二%の安定的な、中長期的な物価安定の理解というだけでは、資産価格形成の方が十分にコントロールできないのではないかと思われるわけですけれども、この点に関しまして、ある意味で、実体経済のCPIを最終目標としながらも、それに向かって、ガイド役として、一つ中間参照値のような形で、金融市場の指数を足し合わせたコンポジットインデックスのようなものを使うということについてはいかがお考えでしょうか。

 金融業界では、よくMCI、マネタリー・コンディション・インデックスですとか、ファイナンシャル・コンディション・インデックスですとか、そういったものが通常よく使われておりまして、それを見ながら金融条件の変化というのを見て判断していると。広く使われているものでありますが、これを参照値として日銀として使うということについての、検討課題になるのかどうか、そのあたりをお伺いしたいと思います。

岩田参考人 ただいま御質問のございました中間参照値に当たるものですね、マネタリーコンディションのインデックスと言われているようなものであります。

 これは、一般的に申しますと、金融政策のいわば政策手段であります、普通は政策金利ですね、それから最終的な目標であります経済活動、あるいは物価の動きという、その中間の、いわばインジケーターとして、その中間的な、何らか、インデックスのようなものはないだろうか。これは今御指摘ございましたように、民間のシンクタンクだけではありませんで、過去、中央銀行、ニュージーランド等も、こういう中間的な参照値を参照しながら金融政策をとったことがあるというように伺っております。私どもも、そういう合成指数というものは、一つのデータとしてこれまでも計算をしてきておりますし、見てきております。

 ただ、現実に、それを公式の中間参照値というような形で使うことがどこまでできるかということについては、これはなかなかいろいろな問題がございまして、政策金利とその中間的な参照値との関係、あるいは中間参照値と最終的な経済活動、あるいは物価の動きというようなところの関係がどこまで安定的なのか。これはマネーサプライについても、多くの、こういうことでマネーサプライを中間的な参照値にしたらどうかというような考え方もあって、現実に、ヨーロッパの中央銀行は、M3というのを参照値という形で見ながらマネタリーアナリシスをやるというような体制になっております。

 ただ、私ども、現在のように、日本経済、グローバル化が進んでおりまして、しかも経済構造が大きく変化するという中で、この中間参照値を、特定の指標を取り出して、それを公式に採用するということはやや難しいのではないかというふうに考えております。

佐藤(ゆ)委員 岩田副総裁にこれを申し上げるまでもないと思いますけれども、特に、マネーサプライと所得、マネー・インカム・コーリレーションの関係が壊れたというような、そういう最終目標と中間参照値の問題についてはもう八〇年代後半から言われている問題でありまして、これは問題というよりはむしろモデルが悪いのであろう、時代に即していないのであろうということではないかと思います。より時代に即した相関性の高い指標をつくり上げるという努力はやはりしていただきたいと思いますし、そうした中で、ぜひとも市場に向かってわかりやすいメッセージを出していただきたいというふうに考えている次第でございます。

 それからもう一つ、テーマがかわりますけれども、最後に、昨日の記者会見で福井総裁が、国債の買い入れ額を将来的に減額も視野にというような御発言をされているというふうな報道がされております。この観点の絡みで御質問させていただきたいと思います。

 これは実は財政再建との絡みになりますが、今後中期的に財政再建をしていく上で、中央銀行との協調的な政策、政府と中央銀行の一体化した政策というのがやはり重要になってくるのではないかと思います。当面は、ゼロ金利政策をいずれは解除していくというような中長期的な方向性に向かう中で、長期金利の急伸というのは避けなければならないという状況にあると思います。そうした中で、一つの目安として、例えば市中に流通している国債発行残高、市中保有額ですけれども、これの対名目GDP比率を極力抑制して上昇するのを抑えていくというようなやり方もあるかと思います。

 これは、比率ですから、分母につきましては、名目成長率を上げるという日銀と政府の共同した努力が必要であると思いますが、それと同時に、分子の市中に流通する国債残高につきましては、これは一つには政府が発行を抑えると同時に、日銀も、最終的にはこの比率を何とか抑えるために、最終調整役としては国債買い入れ額をもう少し弾力的に決定してはいかがなものかということがあると思います。

 当然ながら、恐らく日銀側の反論としては、そういった国債買い入れをしてマネタリゼーションを進めれば、長期金利が逆にはね上がるというような御回答があろうかと思いますが、金利が正常化する前の段階では、当然はね上がることを避けるために、むしろ財政構造改革法などを復活させて、物理的に国債の発行に対する上限を設けるなどの財政規律を担保した上で、その上で日本銀行として、この対名目GDP比率を極力一定にするための御努力というのはないものかどうか、そのあたりをお伺いしたいと思います。

福井参考人 なかなか難しい議論でございますけれども、日本銀行が長期国債を買い入れておりますのは、極めて目的がはっきりしておりまして、日本銀行の金融調節の必要上これをやっている、つまり、マーケットに対して円滑な資金供給を行う一つの道具立てとしてこれを有効に使っているというものでございます。短期の金融資産と長期の金融資産、これはバランスよく日本銀行の金融調節の手段として取り入れていかないと、日本銀行のバランスシートが硬直化しまして、先行きの金融調節に円滑性を欠くという問題がございます。

 したがいまして、日本銀行の資産、負債の状況、あるいは、こういった長期国債を道具として資金を供給していくということになりますと、市中で長く滞留する資金、つまり銀行券の発行残高のいかんというふうなことと深く関連させながら、適切な判断をしていかなければいけないということでございます。

 そういう観点から、今後とも国債の買い入れにつきましては、銀行券の発行残高や日本銀行保有資産の状況などを踏まえ、市場の予測可能性にも配慮しながら適切に対応していかなければいけないと思っておりますけれども、当面は、昨日も申し上げましたとおり、これまでと同じ金額、頻度で実施していく、こういう方針でございます。

佐藤(ゆ)委員 ぜひとも国債買い入れ額については、減額の方向性で将来的に御検討されるのみならず、やはり弾力的に、市場に対するインパクトをなるべくならすために、増額も時にはあり得るというような弾力的な運営の方で御検討をしていただきたいと思います。

 最後になりましたけれども、財務省の方にお伺いしたいと思います。この関連で、財政構造改革法の復活、これは弾力条項つき、景気が悪くなればそれを外すというような弾力条項つきで今後御検討される余地があるものかどうかお伺いして、終わりにさせていただきたいと思います。

松元政府参考人 お答えいたします。

 財政構造改革法の停止の解除につきましては、同法停止法附則の第二項におきまして、この法律が施行された後の我が国の経済並びに国及び地方公共団体の財政状況等を踏まえて講じるものとされております。したがいまして、現時点におきましては、まず我が国の経済並びに国及び地方公共団体の財政状況等を勘案いたしまして、この財政健全化に向けて今後どのような取り組みが必要かとの実体的な議論が必要であると考えております。

 政府といたしましては、本年六月を目途に、歳入歳出一体改革についての選択肢及び改革工程を明らかにすることといたしておりまして、これらの取りまとめに向けまして、経済財政諮問会議等において精力的に議論を行っているところでございます。

佐藤(ゆ)委員 これで私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

小野委員長 以上で佐藤君の質疑を終了いたします。

 引き続きまして、谷口隆義君。

谷口(隆)委員 おはようございます。公明党の谷口隆義でございます。

 昨日、五年にわたる量的緩和政策を解除されたわけでございますが、先ほどの福井総裁の御答弁にもありましたけれども、過去を振り返りますと、デフレスパイラルというような大変危惧された状況がありまして、また景気低迷が長く続いたわけでありますが、九九年の二月にゼロ金利政策が実施をされまして、二〇〇〇年の八月にこれが解除されたわけでございます。この解除されたときに、政府の方は、決定会合で議決延期請求権を新日銀法のもとで初めて行使をいたしました。そういう意味では、このゼロ金利の政策の解除というのは政府と日銀が一体でなかったというようなところもあったわけでございますが、今回、この二〇〇一年三月から実施をされました量的緩和政策、昨日の決定会合の状況を聞いておりますと粛々と行われたわけでございますし、本日の報道ぶりを見ておりましても、政府もまた国民一般も大きな違和感がないというような状況で、政府、日銀一体としてなされたということに対しまして、評価をするところでございます。

 この量的緩和政策というのが、これは極めて異例な政策でありました。海外でもこういう政策はなかったわけでありまして、本日の報道を見ておりましたら、海外の市場関係者においても、量的緩和の解除とゼロ金利の解除と混同しておる方もおられるというようなことのようでございます。

 このような極めて異常な政策が解除されたということは、徐々に平常な状況に戻っていく過程に入ったということでございますが、しかし、考えますと、このゼロ金利政策の実施からスタートしまして七年間、間半年ほど解除された時期がありましたが、こういう超低金利政策が行われた結果、国民生活の中ではいわば日常的にこれがビルトインされているというような状況があるわけでございます。ですから、非常に低金利の中で年金生活者が大変困窮をしておったり、また、中小企業の経営者が今度また金利が上がるのではないかというようなことで大変心配もされているというような、いずれにいたしましても、市場とまた国民との間の対話を慎重にやっていただきたいというふうに思うわけでございます。

 また、もう一つは、近々福井総裁もBISの総会に行かれて、バーナンキ議長と意見交換をするということを聞いておりますが、今回のこの量的緩和の解除が世界的な過剰流動性への幕引きかというような金融関係者のとらえ方もあるわけでございます。まだFOMCの方では二回程度金利が上げられるんじゃないかというようなこともありまして、金利差が拡大をするというようなことで、国内の金融関係者はこのゼロ金利がしばらくは維持されるだろうというようなことで、むしろ円売りというような動きもありますし、海外の方は、むしろこれからいよいよ金利が復活してくるというような中での動きも出てくるというようなことで、ぜひこのあたりを市場と、また国民との間の対話を十分にやっていただきたいと思うわけでございます。

 先ほどの質問にも出ておりましたが、今回、目安を、枠組みの中で数値を明示されたわけであります。このことについて、先ほどの質問にもありましたように、これはインフレターゲティングなのかといったようなことがありました。私の個人的なことをまず申し上げますと、現在このインフレターゲティングを採用しておる国が、デフレのところで採用したというのは、一九三〇年代にスウェーデンが一国行ったきりでありまして、あとは、インフレを抑制するという観点でこのインフレターゲティングを導入しておる。上がった風船をひもで引き下げることはできるけれども、ガスの抜けた風船を上に上げることはできない、こういうようなことで、私はインフレターゲティングに対しましては非常に否定的なことを持っておるわけでございます。

 それで、日銀の方は、今回の枠組みの中で、ゼロから二%が各委員の中長期的な物価安定の理解の範囲内だ、また中心値をおおむね一%前後だというような、数値を明確化されたわけでございます。それで、安倍官房長官が先日の記者会見で、消費者物価上昇率のゼロから二%については、この政策を進めていく上で国民に対する説明責任を果たす透明性について評価できる、こういうように言及されておるようでございます。これらについては、政策判断をする、政策決定するという者には責任が伴うんだというような御発言がございます。

 今回の、先ほどのゼロから二%、またおおむね一%前後という明確な数値に対しまして、総裁、達成責任という観点で御答弁をお願いいたしたいと思います。

福井参考人 日本銀行が負担しております最大の責任は、適切な金融政策の運営を通じて物価の安定を達成すること、そのことに非常に大きな責任を有している、そのことは日本銀行の政策委員会のメンバー一人一人が強く認識しているところでございます。

 この場合、その物価の安定とは、今回の公表文にも明確に記させていただきましたけれども、家計や企業等のさまざまな経済主体が物価水準の変動に煩わされることなく消費や投資などの経済活動に取り組んでいただける、意思決定を行うことができる、そういう状況のことを指しているということでございます。

 また、中央銀行がさまざまなショックに伴う物価の短期的な変動をすべて吸収する、モグラたたきのように、短期的な変動をすべて抑え込もうとすると、逆に経済の変動がかえって大きくなる、経済的な福祉を損なうということになります。したがいまして、物価の安定につきましては、中長期的にこれを実現していくという考え方が非常に重要でございます。

 こうしたことを踏まえまして、今回採用しました新しい枠組みにつきましては、物価安定の数値的な目標を定めて、ある期間内にこれを達成するということを目指す枠組みとはしていないという点が重要な点でございます。

 私ども、繰り返して申し上げますけれども、物価の安定、そのこと自身については強い責任を負担しておりますけれども、中長期的にこれを実現することによって、経済的な福祉を最高なものとして実現していくということに貢献したいと思っております。

谷口(隆)委員 大体総裁のおっしゃっていることは理解できたわけでありますが、ゼロから二%、またおおむね一%前後という中心値、この明確な数値が、御存じのとおり今コアのCPIが〇%近傍でそんなに大きく動いておりませんが、どうも市場関係者の中では、これらの挙げられた明確な数値で早期の利上げが行われることはないだろうというようなことであるとか、CPIが一%を超えないという状況にならないと利上げは困難ではないのかというような市場関係者の声があるようでございますが、このような声に対しまして総裁はどのようにお考えなのか、お伺いいたしたいと思います。

福井参考人 中長期的な物価安定についての理解という打ち出し方は、日本銀行が初めてでございます。これから、この新しい枠組みの趣旨というものを多くの方々に正しく理解していただく必要があります。私どもも、十分説明を重ねながら、単に狭い意味の市場関係者だけでなくて、国民一般の皆様方とも理解を共有しながら、金融政策についての物の考え方をともに共有できるように努力していきたい。

 今、発表しました直後ですから、市場関係者が、一部の方が、短期的な市場の中の行動として、これに強く結びつけて行動される方が出てくる可能性、それは否定し得ないと思いますけれども、長い目で見て、より正しい理解が浸透していけるんではないかというふうに考えております。

谷口(隆)委員 今申し上げた、昨日の本日でありますから、いろいろ市場の動きも十分見ていかなければならないと思いますが、いろいろな考え方が先走るといったこともございますので、そこはしっかりまた市場との対話をお願いいたしたいと思います。

 それで、今回、昨日量的緩和が解除されたわけでございますが、私は、四月の月末の展望レポートの四月二十八日ぐらいがよかったのではないか、このように個人的には思っておったわけでございます。なぜならば、一つは、この三月末に各企業の三月決算が参るわけでありまして、株価であるとかまた債券相場であるとか、このようなところに大きな影響を与えない方がいいのではないかというようなことを考えておったわけでありますが、昨日、日銀当局はこの解除を行われたわけでございます。

 それで、先ほど私、冒頭申し上げましたように、ゼロ金利を解除したときに、日銀の執行部の皆さんが当時私のところに来られて、それをにおわすようなことをおっしゃったわけでございます。それで、私自身は、ちょっとまだゼロ金利の解除は早いのではないかと申し上げた記憶があるわけでございます。今回、新日銀法の中で日銀が独立性ということを強く意識した法改正が行われたわけでありますが、今回の福井総裁の、三月、四月の中で三月の九日に行われたといったようなことは、強く日銀の独立性を意識した結果行われたのではないか、これは私自身がそのように考えておるわけでございます。

 このことと、また、総理は先日委員会で、二度の失敗は許されないというような意味合いのことをおっしゃったようであります。これも日銀当局にとっては大変なプレッシャーになったのではないかと。昨日はどうも予想を超えるような長時間の決定会合であったようでありますが、このような総理の発言に対する日銀が受けたプレッシャー、また総裁自身が日銀の独立性ということを強く意識された結果、昨日の解除の決定となったのではないかと私は思っておりますが、そういう感覚を持っておりますが、どのようにお考えなのか、お聞きいたします。

福井参考人 量的緩和解除のために必要な三つの条件ということは、毎回の政策決定会合で政策委員会のメンバーの中できちんと議論を重ねてきたことでございます。昨日の決定会合で、最終的にこの条件が満たされたという判断に至りましたものですから、これはその情勢判断に素直に従って、直ちに全員でもって決議をしたということでございます。

 期末という要因を全く考慮しなかったわけではもちろんございません。しかし、条件が満たされたということで量的緩和解除の判断が確立したという状況のもとで、期末なるがゆえにこれを先送りいたしますと、確定要因をあえて不確定要因として市場の中で持ち続けるということになります。このことは、期末要因以上にこれが市場において攪乱要因になりかねないというふうにも考えられます。したがいまして、確定した以上は直ちに市場に確定要因として出すというのが金融政策の鉄則ということでやらせていただきました。

 それから、日本銀行の独立性ということで、そんなに我々肩に力を入れているということではございません。淡々と経済、物価情勢の判断、そこに全力を注いで、その判断に忠実に従って政策運営をやっていくという意味では、肩の力は抜けているというふうにお考えいただいていいと思います。

 総理の御発言は、いつも私どもとして正確にこれを受け取るために理解する努力をいたしておりますし、経済財政諮問会議の折にもしょっちゅうお目にかかります。私自身も総理のお考えは直接伺う機会が多いわけでございますが、少なくとも経済、物価情勢の基本的な判断について、日本銀行の情勢判断と基本的な相違はないというふうにいつも確認をさせていただいております。

 先般の国会答弁につきましても、私すぐそばで拝聴しておりまして、引き続きそういう印象を持っておりました。政府と日本銀行との間では、経済、物価情勢の判断、政策の大きな方向性について不一致がないように、今後ともしっかりコミュニケーションの努力をしていきたいというふうに思っております。

谷口(隆)委員 当初、総裁の会見録等を拝見しておりますと、三月、四月というような発言も総裁御自身がされておられて、それが、三月がもう既に非常に可能性が高いというようなことを強くにじませた発言があった結果、市場関係者が、三月に多分やるだろうというような、このことにつながったんだろうと私は思っておるわけでございまして、いずれにいたしましても、今度の三月のこの決算に大きな影響のないようにというように私は思っておりますので、政策運営におきましても、そのようにぜひお願いをいたしたいと思います。

 それで、これも先ほど出ましたが、長期国債、この金利が非常に気がかりであります。先日も一・七%近くまで上がったことがございます。きょう見ておりませんが、若干落ちつきを見せておるようでございますが。この長期国債、これについて動向が非常に気がかりなんですが、現在、日銀におかれては、月に一兆二千億の長期国債を買い入れておられるわけでございます。当面はこれを維持するということで、会見でも既に総裁がおっしゃっておるわけでございますが、昨日の記者会見では、いずれは一兆二千億の買い入れ額が縮減過程に入っていかなければならないというような報道ぶりもあるようでございます。

 昨日、財務省から参加をいたしました赤羽副大臣が、財務省等の意見を決定会合の場でおっしゃったようであります。まず第一点は、デフレ脱却を確実なものにするよう解除後もゼロ金利の継続により金融面から経済を十分支えるとともに、解除後の、一つは適切な金融調整、二番目が透明性の確保、三番目が長期国債買い入れ額の維持などにより市場の安定を確保されたいとの申し入れを行ったというような報道ぶりがあります。

 この長期国債の買い入れ額の維持ということについて、先ほど総裁の御意見では、もうお考えは理解しておりますので、本日財務省から来ていただいておると思いますが、長国の買い入れについて財務省として一体どのようにお考えなのか、御答弁をお願いいたしたいと思います。

    〔委員長退席、江崎(洋)委員長代理着席〕

杉本政府参考人 お答えさせていただきます。

 先生の御指摘ございましたように、長期国債の買い入れにつきましては、昨日の日本銀行の決定会合によりまして、当面はこれまでと同じ金額、頻度で実施していくとされているところでございます。したがいまして、当面、現在の買い入れ額が維持されていくものだと私どもは理解しております。

 谷口先生御指摘になりましたように、長期金利の動向というものは、我が国経済にとって大変重要な意味を持っているものであるものと認識しております。長期国債の買い入れの先行きにつきましては、日本銀行におかれまして、長期金利の動向を視野に入れながら、市場の安定を損なうことのないよう適切に実施いただけるものだと私どもは期待しているところでございます。

谷口(隆)委員 アメリカもバーナンキ議長にかわられたところでございますし、今回の日本銀行の政策変更、大きな変更があります。こういうような、人がかわった、また政策が変わったときに大きな動きが出てまいる場合が非常に多いわけでございますが、どうか福井総裁を中心にして、日銀当局におかれましては、冒頭お話をしたような、市場との対話また国民との対話を非常に小まめに慎重にやっていただきたいということを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

江崎(洋)委員長代理 次に、小沢鋭仁君。

小沢(鋭)委員 民主党の小沢鋭仁でございます。

 きのうは、我が国にとって、我が国景気に、経済活動にとって大変重要な決定が行われたわけでありまして、その翌日にこうした質疑ができること、大変うれしく思います。お越しいただいた福井総裁初め日銀の皆さんに心から感謝を申し上げたいと思います。

 先日、一般質疑の中で、福井総裁と若干金融政策の議論をさせていただきました。時間が足りなくて歯がゆい思いをしたんですが、きょうは約一時間ほどございますので、じっくりと議論をさせていただきたい、こういうふうに思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 まず、冒頭、昨日の量的緩和解除の決定、それに対する、ある意味ではゼロから二のいわゆる数字の目安等の決定、それに対して目標と達成時期を明示することが説明責任、こう政府の一員が言っているわけですね、不十分だ、こう批判をしておりますが、そのことに対して福井総裁のお考えを聞かせていただきたいと思います。

福井参考人 日本銀行におきましては、通常の金融政策、つまり金利を軸とする金融政策に復帰をすることができた。この機会に、今後、金融政策の運営の透明性を高めることによって政策効果を高めたいし、また日本銀行の説明責任についてもよりよく果たしていきたい、こういう趣旨で昨日の新しい枠組みを打ち出したわけでございます。

 日本銀行としては、中長期的に見た物価の安定確保、それを通ずる経済のよりよきパフォーマンスの実現に貢献していくということで、みずからより重い責任を担うという姿勢できのうスタートしたわけでございます。

 先ほども申し上げましたとおり、物価の数値的なイメージというものは、短期的にこれを実現しようとするとかえって経済の振幅を大きくする、そういう性格のものではないということも改めて明確に説明を申し上げながら、きのうスタートしたというふうにお考えいただきたいと思います。

小沢(鋭)委員 それは先ほどお尋ねの中で福井総裁がお答えになっていたんですが、私が聞いたのは、政府の中からそういう声が上がっている、そのことに対して福井総裁はどうかと。

 もっと具体的に言うと、竹中大臣が今私が申し上げたことを端的に言っているわけですね。不十分だ、説明責任が不十分だ、こういう話を言っていることに対して、福井総裁の御意見を聞かせてください。

福井参考人 世の中のいろいろな識者の御意見、これからも私どもとしては謙虚に拝聴しながらやっていくということでございます。

 説明責任が十分であるかどうかは、新しい枠組みのもとでこれから我々が実際に行っていきますこと、少し時間をかけてきちんとした評価をちょうだいしたいというふうに思っております。

小沢(鋭)委員 私はこの間も申し上げたんですが、今のは説明責任、しかし日銀は結果責任をどうとるのか、こういう話を先日もお尋ねをして明快な回答がなかったわけですが、この説明責任すらも果せていないと政府の中から声が上がる。

 これから、一時間ありますから、この間の日銀の金融政策を振り返って、私なりの意見を申し上げながら、皆さん方の意見を聞かせていただきたいと思いますが、その結果責任、まさにこの失われた何年、こう言われる中で、私はこの間も申し上げましたけれども、今回の不況の最大の要因は、資産デフレに端を発したデフレのわなに日本経済が陥り、金融政策を日銀が失敗し続けたことによってこの長期の不況が続いている、これが基本認識であります。

 しかし、この間も申し上げましたように、二〇〇三年、福井さんが日銀に入られた、武藤さんと一緒に入られた。そこから日銀の政策は人によって変わった、いわゆるシステムではなくて人によって変わったから、まあ、私はよかったとそこは素直に評価をしているという話を申し上げましたけれども、少なくてもその間の日銀の結果責任という話はある。それにも増して、まだ説明責任すらも果たしていない、こういう話があるんですね。

 そして、政府と日銀は一体となってと、こういう話がありますけれども、率直な話、政府と日銀はテレビとか新聞を通じてしか話をしていないような話じゃないですか。大体、一体となっているのかどうかなどという議論が出ること自体がおかしいんじゃないですか。私は、まず率直にそう思っています。

 そこで、政府にお尋ねをしますが、政府の金融政策の責任を持つ部門は一体どこですか。

浜野政府参考人 お答えをいたします。

 金融政策につきましては、先生御案内のように、日本銀行法に基づいて、基本的には日本銀行の責任のもとで判断されることでございますけれども、政府との関係につきましては、日本銀行法第四条で、「日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」というふうにされておりまして、政府と日本銀行は、経済政策運営に関しまして一体となった取り組みを行うように努めているところでございます。

 このため、日本銀行法第十九条第一項に従いまして、金融政策を定めます日本銀行の金融政策決定会合には、政府側から内閣府と財務省の代表が出席をしているところでございます。

小沢(鋭)委員 先般も申し上げましたけれども、日本銀行の政策決定会合で政府から出ている二人の人は、いわゆる決定権を持っていないんですね。採決権を持っていない。そして、さっきから話が出ているように、日銀のこれだけ重要な、きのうは、ある意味では政策レジームを変える決定だったんですよ。そうですね。政策レジームを変える決定の際に、政府と日銀がまともに話ができない。

 景気をよくしなきゃいけないというのは、今、国民の願いでしょう、すべての願いでしょう。そのときに、そのある意味では大きな柱である金融政策を政府は責任を持たない、政府はそんなことでいいんですか。もう一回答弁してください。

浜野政府参考人 先ほど御答弁いたしましたように、政府と日本銀行は、経済政策運営に関して一体となった取り組みを行っているところでございます。金融政策につきましては、日本銀行法に基づいて、基本的に日本銀行の責任のもとで判断をされて行われているところでございます。政府といたしましては、日銀法の定めによりまして、内閣府と財務省の代表が出席しております。

 政府と日銀が意思疎通を図る機会は幾つかございまして、日本銀行総裁は、経済財政諮問会議の委員でございますし、政府が景気判断を行います月例経済報告等に関する関係閣僚会議にも御出席いただくなど、さまざまな機会があるというふうに承知しております。

小沢(鋭)委員 システムとしてのいわゆる金融政策、いわゆる景気対策、マクロ経済政策の中で金融政策をどうするのかというまさにそのメカニズムが、ある意味では決定的に欠落していると私は前回も申し上げましたが、今回もまさにそういう話が目の前で起こっているというふうに私は思います。

 それがまさに先ほど申し上げたような政府の閣僚の中から、あるいは官房長官もたしかそうだったですね、まだ何となく不十分だ、こういう話がある。日銀の政策決定会合の前に、隔靴掻痒という言葉がありますが、靴の底からかいているような総理の予算委員会の答弁がある。何ですか、これは。そういう話で本当にいいんだろうか、日銀の独立性というのはそういうことなんだろうかということをもう一回根本から考えないと、有効なマクロ経済政策というのは打てないんじゃないか、こういう話だと思います。

 それはそれとして話を進めたいと思います。

 なぜこんなことを言うかというと、やはりそれは、景気判断の何が今回のこの長いトンネルの不況の最大の要因なのか、いろいろな要因のコンプレックスだというのはわかります。しかし、最も本質的な最大の問題は何かということに関して、私は、それはデフレだ、こういうふうに認識をしている一人でありますけれども、そういう認識が、まさに政府の中にも希薄だったし、あるいは日銀の中にも希薄だった。だから、こんなになっちゃった。

 その一つの例として、日本銀行はかつてよいデフレ論という話を言っておりました。これは今、撤回されているんですか。

岩田参考人 デフレの原因につきまして、よいデフレがある、あるいは悪いデフレがある、こういう議論が行われたことがございます。私ども、二〇〇〇年の十月に、物価安定の考え方という文書を出したこともございます。そこではどういうことを議論したかといいますと、九〇年代の物価の変動を分析しまして、需要が弱いということで物価が下がる要因になる、それに加えて、技術革新でありますとか、あるいはグローバライゼーション、規制緩和、こういったような供給側の要因で物価が下落している面もあるのではないでしょうか、こういう議論をしたことがございます。

 ただ、私ども、そのときに公式の見解として、よいデフレであるとか悪いデフレであるかとかという、そういう定義はしたことはございません。個別の委員、それぞれ御意見がおありになって、これはよいデフレであるということを強くおっしゃられた方はおいでになると思います。

 いずれにしましても、物価が大きく変動する、これは、需要の要因であろうが供給側の要因であろうが、大きく変動する場合には、資源配分でありますとか、あるいは所得分配に大きな影響が及びます。特に、物価が下落する場合どういうことが起こるかということなんですが、名目賃金の下方硬直性でありますとか、あるいは金融政策運営で言いますと、ゼロ金利の制約、あるいは債務負担が実質で見ますとふえていってしまう、名目が一定であってもふえていってしまう。そういうことで、物価の下落と景気の悪化が同時的に進行する、こういう悪循環が起こる、こういうような問題があるわけであります。

 現実に、我が国におきましては、二〇〇〇年の末ごろから、海外経済の急激な減速の影響ということもございまして、需要の弱さを反映した形で物価低下圧力が強まった、そしてデフレスパイラルに陥るリスクが懸念されるような状況になったというふうに考えております。そうした背景のもとで、私ども、量的緩和政策というのを導入したわけであります。

 今日におきましては、どうやらこのデフレスパイラルに陥るリスクというのは払拭されているということでありまして、新たな政策の枠組みのもとで、十分に長い先行きの経済、物価の動向を予測しながら、中長期的に見て物価の安定を実現する、こういうことが最も重要なことだ。私どもの日本銀行法第二条では、物価の安定を通じて健全な経済発展を促進するという、これが私どもに課せられた任務だというふうに考えております。

小沢(鋭)委員 岩田先生、個人的見解として、そういう話があった、こういう形であっさりとおっしゃられて、そしてその後はデフレのデメリットをるる述べられましたが、デフレのデメリット等々はもうみんな承知しているところでありまして、私がお尋ねをしたのは、日銀が政策判断としての基礎になるその認識を誤ったでしょうと。岩田先生は、一番そこを改善するのに苦労されてきたんじゃないんですか、こういう政策が成功したか失敗したか、まさに政策の検証というのは学者としても大事なんじゃないんですか、先生。

岩田参考人 私個人に対する御質問ということかと思うのですが、私、現在、副総裁という任務を拝命いたしておりまして、その立場でしかお答えができない状況でございます。

 それで、副総裁という立場から考えますと、もちろん、過去の政策についてどうであるとか、あるいは現在の政策についてどうであるとかは、これは副総裁の立場として簡単に申し上げることはできないわけであります。

 いずれにしましても、私どもが量的緩和政策という異例な政策をとったということは、これは、デフレということに対して、これの多くの弊害があって、これから一刻も早く抜け出さなければならないというその認識のもとでこれまで政策を行ってきたわけであります。これからもそうしたことが起こらないように、新たな政策枠組みをつくって政策運営をやりたいということでございます。

小沢(鋭)委員 岩田先生は副総裁としてきょうはここに立っていらっしゃるわけですから、そういう立場での判断は留保させていただく、これはもう本当にそのお立場であることはよくわかっておりますので、それは結構だと思います。いずれかの時点で、また学者として見解を述べていただく機会が来るのを待ち望んでいたいと思います。

 ただ、問題は、政策の失敗をいいかげんにしておいたらば、これからも間違う可能性があると思うものだから聞いているわけですね。

 先ほど、いわゆる量的緩和の政策に関して、異例の、こういう話が総裁からも、岩田先生、副総裁からもありました。確かに、異例の政策だという話は私も理解をいたします。しかし、何でそこまで追い込まれたんですかという話でしょう、問題は。

 ゼロ金利政策は、九九年の二月ですか、今はっきり覚えておりませんが、資料を見ると。そして、さっき谷口先生の質問でもありましたけれども、日銀がゼロ金利解除をしたのは二〇〇〇年の八月。これは、政府が反対をする中でゼロ金利解除をしたんですよ。それで量的緩和政策に踏み切らざるを得なかったんじゃないんですか。そういう認識は日銀にはないんですか。

福井参考人 金融政策というのは、やはり十分先を読みながら経済の変動をなだらかにしていく、最大の使命でございます。時に、経済に及ぶ非常な大きなショックから経済の大きな変動が起こった場合には、果断な政策をもってこれは対処する。量的緩和政策の採用ということは、その最も典型的なケースであったというふうに思っております。

小沢(鋭)委員 確かに、果断にという話はいいんですが、私がお尋ねしたのは、その前の政策の失敗がそこまで追い込まれることになったんではないんですかとお尋ねをいたしました。いわゆるゼロ金利政策を政府の反対を押し切って解除したことが、さらなる景気の悪化をもたらして、そして量的金融緩和までやらざるを得なくなった、そういうことではないんですか、こうお尋ねをしております。原因と結果をお尋ねしております。

福井参考人 二〇〇〇年の世界的なITバブルの崩壊、そのタイミングとか、崩壊後のショックの大きさというのは、だれしも予見できなかった、グリーンスパン議長もそれは予見できなかったと明確に言っておられます。そのショックの大きさというものが日本経済に及んできた、それに対しては、やはり異例な政策をもって対処してきたということに尽きると思っています。

 私どもは、先ほども申し上げましたとおり、金融政策の本来あり得べき姿としては、経済の波をできるだけ小さくして安定的な成長ないし拡大を図るということでございます。したがいまして、きめ細かい政策運営、タイムリーな政策運営というのが生命線でございます。

 そういうことを今後は確実に実現していくために、きのう、新しいフレームワークをつくり上げたということでございます。

小沢(鋭)委員 二〇〇〇年のそういったITバブルの崩壊を初めとするいわゆるデフレ圧力をだれしも予見できなかった、こういうお話でありましたが、福井総裁、それは違うと思いますね。少なくても、我田引水で恐縮ですが、私は大変な危機感を持って当時、日銀の皆さんと議論をしました。ここにいらっしゃる先生の中でもいらっしゃいますよね、そういう認識で議論をした人たちがいっぱいいますよ。それにもかかわらず、日銀はやったんですよ。それにもかかわらずやったんですよ、予見できなかったんではないんですよ。日銀が予見できなかった、あるいは、わかっていたかもしれないけれども、目をそらした。

 グリーンスパンの話が出ましたが、この間も見せましたよね、FRBのこの検証レポート。僕は、この間の日米の経済の運営というのは、アメリカにグリーンスパンがいて、日本にグリーンスパンがいなかったからこういう結果が出た、ある意味ではそう思っています。

 福井さんには、ぜひ、これからの、きょうも何か、日経新聞、「金利復活へ試される手腕」「金融緩和修正はグリーンスパン前FRB議長のような手綱さばきが試される。」こう新聞報道にも書かれていますが、福井総裁には、ぜひ、そうした道を歩んでいただきたい、こう思っているんです、日本のために願っているんです。

 だけれども、過去の失敗を直視しなければ、それは出てこないですよ。そして、もしかしたら、今この三月解除は、ある意味では、もともと失敗をした日銀の旧勢力が息を吹き返しているのかもしれない、こう感じる部分もあるんですよ。こう感じる部分もあるから、これは杞憂かもしれないけれども、こんなにしつこく言っているんですよ。

 そして、こういうことを言われる機会というのは、恐らく日銀の人たちはだれもないんですよ。物すごくマスコミのコントロールがうまい。僕はテレビを見て驚きましたよ。どこのテレビを見ても、いわゆる量的緩和政策に関しては、じゃぶじゃぶ政策と言っている。どの局も、じゃぶじゃぶ政策ですよ。金をじゃぶじゃぶ流すじゃぶじゃぶ政策。だれかがそういう表現を使って流しているから、そうなるんです。

 これは本当にじゃぶじゃぶ政策だったんですか。必要不可欠な政策だったんですか、じゃぶじゃぶ政策だったんですか、どっちですか。

福井参考人 これは、誇張した表現でじゃぶじゃぶ政策とおっしゃる方があったんだろうと思いますが、私どもとしては、もちろん必要な政策としてやってきたわけでございます。

小沢(鋭)委員 それは日銀がやったという確証はありませんし、確証がないことを言って我々も苦労しましたから、ここの場では言いません。

 しかし、じゃぶじゃぶ政策という言葉に反映されるのは、物すごくこれは誤った政策だ、こういう話なんですね。異例な政策だというのは私は認めるけれども、しかし、そこまでいってしまったのは、まさに日銀の政策判断の誤りだし、そういう意味では、この異例な政策は、今総裁がおっしゃっていただいているように、もう必要不可欠な政策だ、こう私も確信をしているんですが、そのじゃぶじゃぶ政策という話からはそういう言葉が出てこない。

 そして、さらに言いますと、マスコミで見ると、これは笑っちゃうんですよ、量的緩和の五年間を日銀はまさに屈辱の思いで過ごしてきたと。これはマスコミが書いているので、では聞いておきましょうか。福井総裁は屈辱の思いでこの量的緩和政策の間を過ごしてきたんですか。

福井参考人 私どもは必要な政策をきちんとやらせていただくということであり、量的緩和政策が客観的に見て必要な政策であったとすれば、我々は屈辱というふうな気持ちになるはずはございません。

 ただ、量的緩和政策というのは、金利メカニズムという重要な機能を犠牲にしながらの政策でございます。国民の皆様に別の面では大変な御負担をかけながらの政策でありました。大変心痛む政策であったということは事実であります。

小沢(鋭)委員 しかし、景気回復のために必要不可欠だったんじゃないですか。そのことももう一回ちょっとお尋ねしたいと思います。国民の皆さんに大変な負担をかけた、こういう話をしていますが、トータルにしたら、負担をかけたんですか、これでよかったんですか。

福井参考人 私どもは、異例な政策でございますけれども、必ずこれは一定の効果を発揮するものだ、少し時間はかかるけれども、一定の効果を発揮するものだというふうに考えて実施をいたしました。抽象的な理論だけが頼りとか、何か偶然の効果にかけるというふうなことは一切なしに、我々が予見し得るだけの効果はきちんと計測しながら政策をやってまいりました。その後の我々の情勢判断、大方、当初の見通しのとおり経済も推移しているということは、やはり一定の成果があったというふうに私どもは理解をしております。

小沢(鋭)委員 やはりそこの姿勢をしっかり表明してもらわないと、要するに、確かに預金金利がほとんどゼロに近くて、皆さんからは金利がなくて大変だとかそういう話があって、そういった意味では、そういう皆さんたちに負担をかけたというのはわかりますが、日本経済全体を考えたときに、これが必要不可欠だ、そして日本経済のためにはこれがプラスに働いた、それを堂々と言わないから、いつでも政策をリラクタントにリラクタントに聞こえるような言い方しかしないから、これは政策を間違う、本当に。

 ここにもありますよ。日銀OBから、いつ金利を上げるのか、こういう話が日銀にしょっちゅう問い合わせが来ている、こういうような新聞報道があります。本当かどうかはわかりません。そういう体質が問題なんですよ。必要なことは何でもやる。それは、福井総裁が就任のときに、あるいはまた武藤さんが論文で書いたじゃないですか。必要な金融政策は徹底的にやると言ったじゃないですか。だから、トータルに言って、これはよかったのかどうか、もう一回、端的に答えてください。

福井参考人 必要な政策を果断にやらせていただきました。

 それから、あえて申し上げますけれども、OBのだれかが日本銀行の政策委員会の議論に影響を及ぼすことができるということは全くございません。そういう報道は信じないでいただきたいと思います。

小沢(鋭)委員 ある意味では、報道のバイアスに関しては、我々も苦労している身でありますから、そこはお互いに理解をしたいと思います。

 もう一つ、量的緩和の解除がありましたが、これだけもう一回確認をしておきますが、現在、デフレはまだ続いているんですか、それとも、いわゆるデフレの深刻さが減少したから量的緩和を解除したんですか、そこの認識をお聞かせください。

福井参考人 いわゆる経済がデフレスパイラルという非常に大きなリスクに陥る、こういう危険性は大幅に後退いたしました。なお、物価が継続的に下落するということをもってデフレと仮に定義をいたしますと、そういう状況から脱して物価がプラスの世界に入り、かつ安定的に動く、そういう方向に次第に接近している、その方向性が定着していくことがほぼ確実というふうに展望できる状況になってきているということだと思います。

小沢(鋭)委員 大変慎重に言われているので、ここはいわゆる政治家の委員会ですから、そういう意味では若干乱暴に聞くんですが、要するに、デフレの深刻さはかなり減少したけれども、依然としてデフレは続いていて、心配だからまだゼロ金利は解除しないんだ、こういう一般的な理解でいいですか。

福井参考人 デフレとおっしゃるときに、おっしゃる方によりまして、どういう側面をごらんになってデフレとおっしゃっているかということにかなり差がございます。

 したがいまして、私ども、デフレという言葉で現状を一色で塗りつぶして表現することはなかなか難しゅうございます。物価が安定的にプラスの状況で推移して、経済の円滑な拡大の大きなバックグラウンドにこれがなるという状況、この状況を目指しておるわけでございまして、その状況の実現の可能性が非常に高まってきている、そういうふうに厳密に申し上げさせていただきます。

小沢(鋭)委員 デフレに関してはいろいろな意見があると思いますから、それで結構かと思いますが、今回の量的緩和解除の議論を若干おさらいさせていただきたいと思います。

 まず、コアCPIが安定的にゼロ以上を示している、こういう認識だと思うんですが、ゼロ以上だったのは四カ月でしたか、これがいわゆる安定的にと、こう判断をした根拠は何ですか。

岩田参考人 私ども、量的緩和を解除する条件としまして、三つの条件というのを二〇〇三年の十月に明らかにいたしました。

 一番目の条件が、足元の物価が基調としてゼロ以上になるということでありまして、今御指摘いただきましたように、十月以降、ゼロを含めまして四カ月、一月の場合ですと、コアの消費者物価指数で〇・五%の上昇ということになっております。もう一つの二番目の条件は、予測をする場合に、審議委員の多数がゼロを上回る先行きという予測をするというのが二番目の条件ということになっております。三番目は、二つの条件が満たされた場合でも量的緩和政策を続けるということがあります、こういう三つの条件なのですが、全体の三つをまとめますと、コアの消費者物価指数が安定的にゼロを上回る、そういうことが量的緩和解除を決める基本的な判断材料だというふうに考えております。

 そして、先行きのことにつきましても、私ども、二〇〇六年度について、コアの消費者物価指数が〇・五%上昇する、こういう予測をいたしておりまして、足元とあわせて、先行きについても、これはプラスで、安定的にプラスで維持できるのではないか、そういう判断を昨日いたしまして量的緩和を解除した、こういうことでございます。

小沢(鋭)委員 〇・五くらいが先行き見通せる、こういう話を今おっしゃっていただいたわけですね。

 本当にそれで安定的にいっていただければ私も大変結構か、こう思いますが、ここもある意味では大変違った判断があったところですから、そこは日銀の皆さんもしっかりと御認識をいただく中で、さっきも冒頭申し上げましたが、政府は、まだ早い、こう言っていた人たちも結構多いわけですから、その中で安定的にゼロ以上、こういう判断をしたんだということをしっかりと覚えていただいてやっていただきたい、こういうふうに思います。政府のことばかり言っちゃいけないんで、ちなみに、私もまだ早いという思いの一人であります。

 それから、今回はゼロ金利の解除はしなかったわけですが、いわゆるゼロ金利解除、先ほども質問にありましたが、福井総裁のお答え、少し、いわゆる条件的な話がなかったんですが、かつて、福井総裁の言葉でしょうか、道しるべ、ゼロ金利解除の道しるべというような言葉も使ったやに聞いているんですが、今回の量的緩和解除の三条件のような、そういう明快な基準はお示しにならないんですか、ゼロ金利解除に関しては。

福井参考人 これからの経済、物価情勢の展開次第という以上に申し上げようがないのでございますけれども、しかし、ゼロ金利そのものは、経済の現状、実情、それから物価の実情に合わせますと、非常に緩和的なレベルの金利水準であるということは御理解いただけると思います。

 したがいまして、いつまでもゼロ金利政策というわけにはいきません。しかし、おっしゃいましたとおり、ようやくデフレ的な状況から経済が脱却しつつある、その方向性は確かであっても、これから物価安定のもとでより確かな足取りで経済が前進しようというやさきのことでございますので、しばらくはできる限り緩和的な金融環境を提供したい、また、物価上昇圧力が高まってくるということでなければそれも可能であろうという前提に立ちまして、当面、ゼロ金利、ないしは極めて低い金利水準をもって緩和的な金融環境を提供し続けることができるであろう、こういうふうに申し上げているわけであります。

 期間を明確に申し上げることは、今後の経済情勢の展開次第でございますので、なかなか難しいということでございます。

小沢(鋭)委員 後ほど、最後に、インフレターゲットの話をして、いわゆるその条件の話もしたいと思いますので、今はそれだけ、今の答弁でとどめさせていただきます。しかし、これも、量的緩和解除のときにあれだけはっきりと三条件を示して市場にシグナルを送ったんですから、ゼロ金利解除に関してもやはりシグナルをきちっと送るという話は、私は必要だと思いますよ。それを一言申し上げておきたいと思います。

 為替との関係をちょっとお尋ねしておきたいと思いますが、今回の〇から二の物価上昇率、〇―二の望ましい、望ましいというか、中長期的に物価が安定していると理解するというこの数字、〇―二ですが、前回、実はこの委員会で総裁と議論をしたときに、日本は諸外国に比べてやや低目の物価上昇率を国民は持っているのではないか、こういうお話があって、そして、今回もそういった言葉がここに、今回の発表の文書の中にも載っておりますね。

 だから、それはそれで、そういう理由で〇―二にしたのかな、こう思いますが、〇―二というのはちょっと、先進国と比べると、確かにそういう理由もあって、低いですよね。これは、いわゆる通貨を高く評価する、こういう話につながりますから、為替の面でいうと円高要因になるんじゃないですか、景気に関してはいわゆる下振れ要因になるんじゃないですか。これはどうでしょう、私、ちょっと心配しているんですけれども。

福井参考人 為替相場は、短期的にも非常に振れますし、長期的にどういう水準に落ちつくかということも、なかなか理論的には、一定の算式に従って答えが出るものではございません。

 やはり、大事なことは、物価安定のもとで経済の安定的な成長パスをきちんと確立していく、それが一番経済の実勢に見合った為替相場ということを形成しやすいそういう地合いをつくりますし、為替が不規則な変動をした場合にも、経済が受けとめる力、ショックに対する強さというものも備わってくる、こういうふうに動態的に物事を考えていく必要があるのではないかというふうに思っております。

小沢(鋭)委員 もちろん、経済の安定的な運営が為替にとっても最も重要なことの一つだ、為替を考える場合でも必要だというのはそのとおりだと思いますが、これを、中長期的、〇―二、こうしたものですから、それは、いわゆる諸外国から見ると円高要因になるんではないですかと。中長期的に、そういういわゆる景気の押し下げ要因になるのではないか、こういうふうに心配をしております。

 日銀の方からしましても、〇―二の物価水準に対する名目金利というのはそんな高くならないですよね、整合的に考えれば。ということは、日銀の金利のいわゆる操作幅のことを考えても、これはやはり、ちょっと、いわゆる操作の幅が狭過ぎるんじゃないか、こういう意見がありますが、いかがですか。

福井参考人 〇から二と申し上げましたのは、中長期的に見て物価が安定しているという状況を、各政策委員が頭の中で認識しておられるその状況を、あえて数字で表出すればこういう姿になるということでございます。物価安定は中長期的に実現していくものということでございますので、短期的にこれを実現していく、そういう大変窮屈な政策運営をするという意味ではございません。

小沢(鋭)委員 その政策は、窮屈な政策ではなくて、透明性が高い政策と言わなければいけないんじゃないでしょうか。

 〇から二におさめるとか、期間を明示しておさめる、これはインフレ目標の話にも入っていきますが、先ほどから福井総裁のお話を聞いていると、先ほど佐藤委員が言っていましたが、要するに、日銀の裁量の幅を広げるという話が窮屈ではない、こういう話に聞こえるんですね。

 それよりも、今大事なことは、まさに日銀の政策の透明性だ、先ほどの意見もそういう話だと思いますし、そうして、その条件を明示することによって、例えばインフレ目標の話もそうなんですけれども、マーケットにそれを示すことによって、先ほどは期待の収れんという言葉をお使いになりましたけれども、まさに期待インフレ率をしっかりとそこのところに押し込んでいく、そのことが重要なんじゃないんですか。

 日銀の、窮屈だとか窮屈じゃないとかいう話よりも、そっちの方が今は期待される政策のような気がしますが、これは岩田先生、どうですか。

岩田参考人 御指摘のございました御質問、私も、日本経済が健全な発展を遂げていくためには、中長期的な観点から見て物価が安定しているということがとても大事で、量的緩和政策をやっておりましたときも、コアの消費者物価指数が安定的にゼロを上回るという約束をするということを通じて、実は、人々の期待を安定化させ、そして市場を安定化させ、そしてデフレ脱却というところまで持ってこれた主な要因だったのではないかというふうに考えております。

 今回のフレームワークで、やはり中長期的な物価の安定ということをどういう形で市場やあるいは国民の皆さんとコミュニケーションしていけば、それが最終的にこの中長期的な物価の安定ということを実現する上で最もいい仕組みはないかということで、これはある意味私も含めて、委員の方々は必死の思いで、実は、どういう形であればこの最終的な目標を最もうまく実現できるかということである意味では知恵を絞りまして、それで出てきた結論がきょうお話ししたようなことであります。

 ですから、私どもの審議委員の間で、こういうある意味で中長期の物価の安定ということについてその理解の仕方を集約するということ自体が、これはある種の物価安定のいかりと私は呼んでいるんですが、の役割も果たせるものだというふうに考えております。

小沢(鋭)委員 その物価安定のいかりを本当に、先生、果たせるんですか。

 いや、これはいいんですよ。ここに、これがインフレ目標ですという話を明快にして、そして冒頭申し上げた、日銀はこれを達成することに全力を挙げるんだ、結果責任、そのときは全員首を洗って、とにかくやめるんだというくらいの、そのくらいの話だったらいいんですけれども、審議委員の皆さんたちが合意をできたインフレ率という話でしょう。何でこれが、先生、いかりになるんですか、物価安定の。何も日銀としてのコミットメントは認めないんでしょう、これは。

岩田参考人 物価安定をどういう形で図るかということは、各国、とても違っておりまして、例えば、イギリスの例ですと、これは一つの典型的な例なのですが、達成の期限をある程度明示して、しかしその物価目標を決めるのは政府だという形になっております。しかしながら、政府としては財政政策でそれを全面的に協力する、こういうような、ある意味でそうした仕組みのもとでイギリスのような形のインフレーションターゲティングが行われているというように、私、理解をいたしております。

 それから、また違った金融、財政の仕組みのもとで、これはマーストリヒト条約というようなものに基づいて、ヨーロッパの中央銀行は、中長期的に見て物価の安定というのは数値的に定義すればこうですというような形で、これも一つ、私、国民とコミュニケーションする上で、これも実は達成期限を明示しておりません。これは中長期的にと言っているだけであります。ですけれども、それは、ある意味でマーケットに対して、そういう中長期的に見れば物価の安定というのはそういうことなのですねということについて、必要なメッセージを送っていると思います。

 それから、アメリカの場合には、明示的にそうした目標を外には公表しないで、これは新しいバーナンキ議長のもとでどういう形になるか、私も注目いたしておりますが、そういうことは表には出さない、内部では持っておられるというふうに私は思いますけれども、そういうことを出さないで、物価の安定というのでそれを図る。

 これは、国によりまして、制度の違い、法制度の違いですね、政府と例えば中央銀行の関係でありますとか、あるいは財政政策と金融政策の関係でありますとか、これはさまざまな違いがあります。それから、歴史的な経緯というのもそれぞれ違う。

 これまで日本経済が経てきた経済的な出来事、それを、デフレを克服して、それから、これからいよいよ安定的に中長期的に物価安定を図るにはどうした仕組みが一番ふさわしいのか、日本の直面しております現実から出発して考え出したものがこの今の仕組みでありまして、透明性、言ってみますと、透明性というのは国民との対話ということなんですが、わかりやすく説明する。そして、その透明性ということがありますと、これは予見可能性を高めるわけですね。予見の可能性を高めるということを通じて、実は期待の安定化というようなことが実現されてくる。

 ですから、これは、透明性ということと、そしてもう一つは、金融政策というのは柔軟性を備えていなくちゃいけない。この両方の課題を同時にどうやったらうまく実現していけるのか、こういうことを考えた末に、こういう形で、現在のような枠組みでやるのが最も中長期的に考えて物価の安定ということが実現しやすいということで今回の政策に至ったということでございます。

小沢(鋭)委員 数値を今回日銀が示したことは、今までの日銀から考えるとすごい進歩だと私は評価をしています。しかし、その数値の示し方は、先ほど来議論がるるあるように、政府からも意見が出ているように、極めて中途半端で、とても物価のいかりになんかはなり得る話ではない。岩田先生も、お立場上今のような御答弁ですが、個人としてはそれはよく理解をされていると、日ごろの学説からしてそういうふうに思っていますし、そして、今も岩田先生から話がありましたが、イギリスの場合なんかもそうです。私も去年、イギリスに行っていろいろ議論をしてまいりました。

 その前に、一言言っておかなきゃいけないのは、このインフレターゲットの話をするときに、調整インフレ論と全く区別がつかない議論をする人たちがいまして、さっきもちょっとこの委員会の理事会で、雑談のときにそういう議論になったんですが、もう本当に、そういう意味では、学者の皆さんも日銀の皆さんも、もうちょっとインフレターゲット論を、もちろん我々も、いわゆるばかげた政策だと、そういえば、昔、速水前総裁はインフレターゲット論をばかげた政策と呼んだんですよ。それは国民にそのまま伝わっていくわけですよ。だから、そうではないんだという話は、もう全くそこははっきりと区別をさせるように努力する必要があるんだろうとまず思います。それはそれとして申し上げておいて。

 そして、政府が物価上昇率の目標を定め、中央銀行がその政策のために万全を尽くす、私はこれが基本的なデモクラシーの国の姿だと思います。いかがですか。

福井参考人 各国中央銀行、さまざまな形で透明性、そして機動性をフルに発揮しながら政策目標の万全を期している、政策目標達成の万全を期しているという状況でして、政府と中央銀行との関係、基本的には独立性ということを重んじながら、政府と中央銀行の役割分担というのはそれぞれに多様性があるわけでございます。一つのパターンが絶対というふうにはなかなか言えない。それぞれの国の実情に合ったやり方でなければならない。

 現状におきましては、日本銀行法で政府と日銀の役割は明確に規定されております。政府もそれを尊重していただいておりますし、日本銀行も、日銀法の精神にのっとって、政府と十分緊密な連絡を保ちながら政策運営を果たしている。そういう枠組みの中で、今回の私どもの新しいフレームワーク、物価安定についての理解ということも含め、これから活用していけるというふうに考えています。

小沢(鋭)委員 僕は、デモクラシーの国の姿だと思う、こういう言い方をしまして、そういったことに対してお答えをいただけなかったんですが、いろいろな国やいろいろな制度がある、こういう話でありました。

 これは前のこの委員会でも申し上げましたように、政府は選挙があるんです。失敗をしたらそこで責任をとる仕組みがあるんです。中央銀行は、例えば委員も、五年のいわゆる切符があったらそのままなんですね。それで、説明責任だ、こうおっしゃる。説明責任だけでいいのか。説明責任だけで本当にいいんですかね。政府というのは結果を問われるわけでしょう。だから、毎日こうやって委員会もやって、政府はやっているわけです。

 そういった意味において、政府が物価上昇率の目標をマクロ経済政策の中で立てる、当たり前のことだと思いますけれども、内閣府はそういうことに対してどんな見解を持っているんですか。

浜野政府参考人 お答えいたします。

 中長期的には、持続的な成長と両立するような安定的な物価上昇率を定着させるということがマクロ経済運営の基礎であると思います。その実現に向けて政府、日銀が一体となって取り組んでいく必要があるということであると思います。

 先生今御指摘のインフレ目標政策につきましては、私どもとしては幅広い観点から研究していくことが必要だというふうに思っております。

小沢(鋭)委員 政府が物価上昇率を策定することは必要不可欠だと思うがいかがか、こういうふうにお尋ねをいたしました。

浜野政府参考人 政府といたしましては、経済財政政策の運営につきまして、短期的には政府経済見通し、中長期的にはいわゆる「改革と展望」と言っておりますが、その中で政府としての考え方を示しております。

小沢(鋭)委員 何か話がちょっと違うんですよね。本音で本当に、まあ統括官は本音でしゃべれないのかもしれないけれども、話をしておかないと、やはり、繰り返しになりますけれども、この十何年、デフレ経済で物すごく国民は苦しんでまいりました。そちらにいらっしゃる先生は、審議委員の給料は約三千万だろう、三百万の年収の国民が苦しんでいるんだ、その苦しみがわかるかという質問も私はかつて聞かせていただきました。

 きのうと同じように額に汗して働いても、きのうと同じだけの売り上げが上がらないから国民は本当につらい思いをしてきたんですよ。きのうと同じように働くんですよ、頑張って。だけれども、きのうと同じだけの売り上げがデフレの中では上がらないんですよ。借金は、借金の額はまさに当然のことながら減らない、デットデフレーション。こんな話は、先ほど岩田先生もおっしゃったけれども、そういう苦しみの中で国民はきているんですよ。

 そのまさに大もとの金融政策が、国として責任を持たないのはおかしいじゃないかと僕は聞いているわけですよ。いわゆる金融政策という薬はどこで売っているんだ。日銀で売っているんだ、政府で売っているんだ。先ほど副総裁が、いわゆる物価上昇率を立てたときに、政府がそのための財政出動も含めてあらゆる手だてをとるということも前提としてと言いましたが、当たり前ですよね。

 だけれども、今のこの財政悪化の中でどこまでやれるかという議論はもちろんありますよ。政府も全力を尽くす、中央銀行も全力を尽くす、そういう中で初めてマクロ経済政策が運営されるというのは当たり前の話じゃないですか。日銀はそんなに偉いんですか。

 私が本当に言いたいのはそこですよ。結果責任を、最後に福井総裁、日銀はどうとるのか。結果責任は考えていないのか。そこをぜひお答えください。

福井参考人 私どもはそんな無責任な主体ではないというふうに考えています。どれほど日ごろ真剣に政策委員会で議論しているかということは十分おわかりいただいていると思いますけれども、今後とも政策について誤りなきを期して全力を尽くしていく、こういうことに尽きると思います。

小沢(鋭)委員 もう時間ですから、これで私もやめますが、大変生意気を申し上げて、言葉が行き過ぎた点はおわびを申し上げながら、しかし同時に、ずっと日銀が誤りを続けてきたことも事実ですよ。先ほど来申し上げてきたように、ゼロ金利の解除もそうだし、よいデフレ論をずっと言い続けた。福井総裁のそのグループは一生懸命されているかもしれない。結果もいい結果が出ている。これは私もちゃんと認めているわけですよね。

 ただ、この失われた十年、十五年、こういう話の中で、その失敗を、これは福井総裁も認められない、先ほど来。でも、そこをしっかりと検証しなければこれからも同じような誤りが起こるんではないですかと思うものだから、そしてそういう体質がやはり私はデモクラシーの国としておかしいと思うものだから、マスコミも政府も、日銀に対して物を言うときは、何か隔靴掻痒のような形でなければ物が言えない。金融政策を堂々と議論するのは当たり前のことじゃないですか。そういう話が行われないことは物すごくおかしいということを最後に申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

    〔江崎(洋)委員長代理退席、委員長着席〕

小野委員長 続きまして、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 民主党の鈴木克昌でございます。

 私も少し、日銀の金融政策論を初め今回の量的緩和の解除についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 きょうのテレビそしてマスコミ等を見ておりまして、九九年の二月以降、ゼロ金利政策が実施されて以来、家計に及ぼす影響というのが、いわゆる利子、国民が本来受け取るべき利子が二百八十三兆円失われた、そして一方、企業には利子の負担減ということで二百六十兆円、そして銀行には利子所得増といいますかということで九十五兆円、また公的資金が五十一兆円投入されたというような数値が出ておりました。また、果たしてこのいわゆる量的緩和というのは期待どおりの効果があったんだろうかとか、失敗ではなかったんだろうかとか、企業などに本当の意味での恩恵はあったんだろうかとか、量的緩和の解除で今からどんな影響が出てくるかというようなことが言われておるわけであります。

 そこで、私もそういう目線の中で何点かお伺いをしてまいりたいと思うんですが、我々はきのう、この量的緩和の解除についての党としての見解というのを出させていただいたわけでありますが、その中で、今後、金融政策検証委員会というのをつくって、この問題をしっかりと国民の皆さんにお訴えをしていきたいし、一緒に検証していこうというようなことで考えています。

 そこで、順番にお伺いをするわけでありますが、まず私は、デフレについて少しお伺いをしてまいりたいと思います。今小沢委員からもかなりデフレについてのお話がありましたので、重複を避けて伺ってまいりたいと思います。それから今回の量的緩和の解除についての問題、最後にシステムトラブルについてお伺いをしていきたい。以上三点について大きく伺っていきたいというふうに思うんです。

 まず、歴史上まれに見る異例なというか異常な政策というふうに言ってもいいかと思うんですが、この量的緩和を導入された二〇〇一年以降五年間というのは、まさにデフレとの闘いの五年間だったというふうに言えるわけですね。それは小泉内閣の五年間であったということも言えるわけであります。経済白書で、その当時、日本経済は戦後初めてのデフレ状況にあるとの認識が示され、デフレは企業の売り上げや利益を減らし、負債を抱える企業を苦しめる悪だ、このように経済白書でも書かれておったわけでございます。

 もちろん私もおおむねそのような意見なんですが、先ほど小沢委員からありましたように、一方では、よいデフレ論ではないというお話だったかもしれませんが、デフレについていろいろなことが言われたわけですね。ある意味では日本経済の体質を強化するというような一面もあったんじゃないかとか、それから衰退産業から成長産業へ切りかえることができたのではないかとか、非効率な企業が効率的な企業に転換していったのではないかというようなことを言われる方もあります。

また、最近ちょっと私も聞いてびっくりしたんですが、日本人がデフレの間に立ちどまって生き方を見詰め直したという面もあるんだと。これは、デフレのおかげで働き過ぎが是正をされて、日本人の寿命が延びたんじゃないか、こういうことを言われる方もあるわけです。

 何が申し上げたいかというと、先ほど総裁も、デフレをどういうときにどういう側面を見るかということによってデフレ論というのは変わってくるんだ、こういうお話が先ほどの御答弁であったと思うんですが、私もここで、デフレ論に対する日本銀行のいわゆる評価といいますか見解というのを改めて一度お伺いをしたい、このように思うんです。

 なぜかといいますと、冒頭総裁から御報告がありました報告書の概要の説明の中で、いわゆるデフレという言葉は一文字もなかったわけですよね。これは、あえてそれをお外しになったのかどうか、私はわかりませんけれども、まず、デフレというものに対してどういうふうにお考えになっておるか、もう一度聞かせていただきたいと思います。

福井参考人 日本銀行の目的は物価の安定を確保するというふうに言っておりますけれども、平たく言えば、インフレにもしない、デフレにもしない。インフレもよくなければデフレもよくないという判断に立っているからでございます。

 デフレ、これは識者によって定義の仕方は異なっておるようでありますけれども、一般的に言えば、継続的に物価が下がる状況。継続的に物価が下がる状況というのは、ビジネスにとっては非常に先々の計画が立てにくいし収益も上がりにくいという状況でありますから、経済が落ち込むリスクがある。時には信用不安を巻き込んで、一層経済の下方、下向いていく力を加速するモーメンタムさえ秘めているということであります。それが最終的にはデフレスパイラルという、経済を破綻させかねないような状況をも感じさせる、そういう悪いものだというふうに私どもは認識しております。

鈴木(克)委員 総裁のデフレに対するお考えというのは今伺ってわかったわけでありますが、いずれにいたしましても、今回の状況をデフレを脱却したと見るのか見ないのかということが非常に大きな問題になってくるのではないかなというふうに思うわけであります。

 まず二つ目にお伺いをしたいのは、量的緩和政策の目的というのは、金融システム対策から要するにデフレ脱却に変容したんだ、変えたんだということが私は言えるのではないかなというふうに思うんですね。もしそうなると、いわゆる政府と日銀が歩調を合わせてデフレ脱却を宣言するというものでなくてはならないんじゃないかなというふうに思うんですね。

 先ほど小沢委員からもあったわけでありますが、政府と日銀の間でいわゆる見解が違う、また政府の中でも見解が違う。例えば、谷垣大臣なんかは今回の解除について認識を共有するというふうにおっしゃっておるわけですが、先ほどありましたように、竹中大臣は残念な結果だというふうに言っておるわけですよね。総理も、デフレはまだ脱却したとは言えない、こういうことをおっしゃっておられるんですね。

 いわゆる政府、日銀は一体となって取り組む、これはずっと、例えば「改革と展望」の中にもそういうふうに書かれておるわけですよね。そうなると、一体全体、これは果たしてどうなんだろうかなと。政府の中でも意見の相違はあるし、日銀と政府の間で仮に相違があるとすれば、では国民は今回の政策変更を果たしてどのように受けとめていけばいいのかな、こういうことになるのではないかと、私の頭ではそう思うわけですよね。それに対して日銀の皆さん方はどのように思ってみえるのか、私はぜひお伺いをしたいというふうに思います。

福井参考人 政府も日本銀行も、ともに同じ目標に向かって経済を運営しているということは間違いないというふうに思います。物価が継続的に下落し経済を悪い状況に一方的に引きずり込むというふうな状況から脱して、むしろ、物価が安定し景気が安定的に拡大するというふうな方向に経済を引っ張っていく、この目標は不一致のある部分が全くないというふうに思っております。

 現実の経済の動きを見ておりましても、数年前にそういうデフレスパイラルに陥るという強いリスクがありました状況から、現在は、次第に安定的な物価状況のもとで、より持続的な景気回復が展望できる状況に移ってきているということでございます。

 政府は過去五年間、今委員がおっしゃいましたとおり、小泉内閣のもとで構造改革ということをポイントにしながら経済政策を進めてこられました。日本銀行は量的緩和政策という陣立てで金融政策を運営してまいりましたけれども、経済がいい方向に動いてきた背景には、構造政策の効果と量的緩和政策の効果が両々相まってここに実現してきたことがあるというふうに思います。構造改革だけでも実現し得ない、量的緩和政策だけでも実現し得なかった成果が着実に出てきているというふうに私どもは認識しておりまして、そういうふうに、長い目でとらえ、そして大きな政策の組み合わせをとらえて、政府と日銀が一体となって行動しているという表現であれば、私は当たっているというふうに思っています。

鈴木(克)委員 そうすると、結局、脱却したというのかしつつあるというのか、その辺がちょっと私の頭ではよくわからないんですが、いずれにしても、もし脱却したとかしつつあるという判断をされたとするならば、それはどこでどういう形で判断をされておるのか、その辺をちょっとお教えいただきたいと思います。

福井参考人 日本銀行は連続線上で政策運営をしております。きめ細かく経済に対して政策的な手当てをしていくのが仕事でございます。どこかで何かの宣言をするというふうに、経済をイベントづけて、色づけて、区切りを持ちながら政策運営をするということになじまない性格のものでございます。したがいまして、私どもは、ある優劣の中で経済が着実にいい方向に向かっていくということをもって政策のパフォーマンスをはかっている、こういう状況でございます。

 その尺度からいきますと、経済が物価安定のもとで着実な拡大過程、それにもう既にたどり着きつつあるし、その基調がより定着していく、そういう移行過程に今明確にあるというふうに思っています。

鈴木(克)委員 そうすると、あくまでも、デフレからは脱却をしたんだ、そしてこの政策を解除したということは金融政策の連続性が維持をされておる、こういうことでよろしいんでしょうか。もう一遍お聞かせください。

福井参考人 すべての人が納得し得るような一つの時点をもってデフレ脱却宣言というふうにイベントづけることは非常に難しいということを私は率直に申し上げました。経済は目に見えないような変化を積み重ねて動いている。今は幸いいい方向に動いています。無理に区切りをつけて宣言をするということは、デフレの認識の中身が人々によって違っているということを考えますと、非常に難しいであろうと。特に日本銀行の立場からは、それが難しい。

 したがって、我々は、デフレ脱却をいたしましたというふうなことは今後とも申し上げないと思いますけれども、現時点で言えますことは、物価安定のもとで経済が着実に回復する、その基調がさらに強まりつつある、そういうことだけは申し上げられると思います。

鈴木(克)委員 総裁、本当にくどいようで申しわけないんですが、何遍も申し上げるように、「改革と展望」には、いわゆるデフレからの脱却を確実とするために政府、日銀は一体となって取り組んでいくんだ、こういうことが毎回書かれていましたよね。それはそのとおりだと思うんですよね。

 にもかかわらず、今回、見ようによっては、今私の理解がちょっと不足しておるのか、要するにデフレから脱却したのかしないのかわからない、それは見る人が見ればいろいろな見方がある、こういうようなお話だったように思うんですが。そうして一方では、政府の中でも、先ほどから言っておるように、認識を許容するという大臣もおれば、残念な結果だという大臣もいるということで、国民としては、これはやはりなかなかわからないんですよ。だから、その辺を何かわかりやすく国民に対してメッセージを発していただけないかな、こういうふうに思うんですが、もう一度お願いします。

福井参考人 経済が明確に好ましい方向に向かっている、着実にそういう方向で歩を進めているということは明確に申し上げられると思いますし、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比変化率が安定的にプラスの状況に入りましたということは明確に申し上げられるということだと思います。

鈴木(克)委員 わかりました。

 次に移らせていただきますが、この五年間の量的緩和政策の効果ということでお伺いをしたいんです。

 今言われたように、解除するとした大きな理由は、消費者物価が安定的にゼロ以上になり、今後も消費者物価が再びマイナスに戻らないということで今回の決断をされた。そのことはわかるわけでありますが、では、五年間のいわゆる量的緩和政策というのは、果たして本当にどうだったんだろうかということで、冒頭に私は申し上げましたよね、マスコミでは、期待どおりの効果があったんだろうか、失敗ではなかったのか、企業などに恩恵はあったのかというような論調があるわけですよね。その辺をわかりやすくひとつ御説明をいただきたいと思います。

岩田参考人 ただいま御質問のございました量的緩和政策の効果いかんということでございます。量的緩和政策と申しますのは二つの柱から成り立っておりまして、一つは、金融機関の必要な準備、日本銀行の当座預金に積み上げる準備でありますが、それを上回る日本銀行当座預金を供給する、つまり流動性を市場に対して潤沢に供給するというのがこの一つの柱であります。もう一つの柱は、こういう潤沢な流動性供給を行うということを、消費者物価指数、これは生鮮食品を除く消費者物価指数でありますが、この前年比の上昇率が安定的にゼロ以上になるまでやります、こういう約束の部分と二つから成り立っております。

 こういう所要準備を上回るような潤沢な流動性の供給ということは、ごく短期の金利、これはコールレートですね、こういったマーケットの金利を、短期の金利をほぼゼロ%まで低下させる効果があった。そして同時に、金融機関は流動性が十分あるということですので、量的緩和政策を始めたときは金融不安のリスク等がございまして、金融機関の流動性に対する不安というようなものがあったんですが、潤沢な流動性を供給するということでこの不安を払拭するという効果を持ったというふうに考えております。

 それから、二番目の柱の、長い期間、ある意味では消費者物価指数がゼロ%以上になるまでこの潤沢に流動性を供給するという政策を続けますということを約束することによって、ごく短期の金利だけではなしに、少し長目の金利も低いところで安定化させる、こういう政策持続効果あるいは時間軸効果というふうに呼ばれておりますが、そういう効果を通じて、企業部門が、例えば借り入れが非常に多かったわけでありますね、過剰債務、過剰な設備、それから過剰雇用というような三つの過剰を抱えて企業部門は苦しんでいたんですけれども、少なくともこの過剰の債務というようなことについて、低目の金利でもって実は資金調達が可能になるということで、企業部門の金利の負担というものが大幅に削減されたわけであります。

 金融の緩和的な状況というものを維持する、金利も低いわけでありますから投資活動もやりやすい、そういうことでありまして、企業部門のリストラクチャリングといいますか、再構築ですね、新しく生まれ変わるための事業の展開というようなことを金融面から大幅にこれを後ろ押しする、こういう効果があったんだというふうに考えております。そういう効果があったがために、今回の息の長い回復、あるいは物価も次第にプラスの方向に、消費者物価指数の上昇率もプラスの方向に動いてきた、こういうことにつながってきたんではないかというふうに考えております。そういうことで、量的緩和政策を五年間採用して、私どもとしては、金融面からは日本経済が再生するための条件を十分に整えてきたんではないか、それが改善にもつながったんではないかというふうに考えております。

鈴木(克)委員 またそのことについてはお伺いする機会もあるんではないかなというふうに思っていますが。

 ちょっと技術的というか具体的なお話をさせていただきたいんですが、量的緩和を解除する、そして今までの三十兆円、三十五兆円という巨額な預金の積み立てを行ってきたのを、一気に緩和政策以前の水準に戻すというわけにはいかないわけですよね。これはある程度段階的に解除をしていかれるということでありました。

 それでは、具体的にどのような解除をされていくのか、可能な限りひとつ、せっかくの機会ですから、詳細に国民の皆さんにわかりやすく説明をしていただきたい。なぜそういうことを言うかというと、バランスシートで、いわゆる左側の負債の部分、つまり当座預金の減少に合わせて右側の資産の部分を同じ額だけ下げていかないとバランスがとれないわけですよね。では、具体的に何を下げていくのか。それは、例えば国債はいわゆる引き下げの対象になるのかどうか、そういうことについて御答弁をいただきたいと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 今後の金融市場の調節でございますけれども、まず、無担保のコールレート、これは金融機関が日々その資金の過不足を調整する市場のレートでございますけれども、このレートを操作目標としました上で、これをおおむねゼロ%とするように促すということが昨日の決定でございます。

 従来、量的緩和のもとで目標でございました当座預金残高は三十から三十五兆円程度でございました。この金額をこれから金融機関が法律に基づいて求められている金額に向けて削減をしていくということになってまいります。この金額は約六兆円ということでございます。

 この削減といいますのは、今先生御指摘のとおり、この削減を急激に行いますと市場が混乱いたします。したがいまして、私どもとしましては、数カ月程度の期間をめどとしまして、短期金融市場の状況を十分に点検しながら進めていこうというふうに思っております。マーケット全体には資金が十分ありましても、ある特定の機関にはたくさん資金がある、ほかの金融機関にはないということがありまして、そういう資金のいわば偏在といいますかばらつき、こうしたものが摩擦的にレートを上げるということがあるわけでございますから、そうしたことがないように十分点検しながら進めていくということでございます。

 当座預金残高の削減の仕方でございますけれども、これは、供給の場合もそうでしたけれども、日本銀行の資金のオペレーションは短期のオペレーションと長期オペレーションの二つございます。短期のオペレーションといいますのは、主として日本銀行が、金融機関から預かっています国債であるとか手形であるとか、そうした金融資産を担保として金融機関に対して資金を供給していく、その期間は一年以内である、そういうオペレーションでございますけれども、今回この削減に当たりましては、短期の資金オペレーション、これを減少させていくということで対応していこうというふうに思っております。

 長期国債、この買い入れにつきましては、当面はこれまでと同じ金額、現在、月一・二兆円、月四回でございますけれども、同じ金額、同じ頻度で実施していく方針でございます。

 これを今委員御指摘の日本銀行のバランスシートという観点からいいますと、当然、当座預金というのは日本銀行の負債でございますから、負債の減少に見合って資産が減少するということになってまいります。負債サイドで当座預金残高が減少しますと、資産サイドではおおむね、今申し上げました短期の資金オペレーションの金額が減ってまいります。短期の資金オペレーションは日々変動しておりますけれども、大体ここのところ六十兆円というのが残高でございますから、この残高が向こう数カ月程度をめどとしまして減少していく、そういうプロセスをたどるというふうになると思っております。

鈴木(克)委員 続いて、金利について少しお伺いをしたいと思うんですが、御案内のように、市場は、量的緩和解除の節目を越えたということで、この引き上げを先取りして一部の金利が上昇を始めておるというのは御案内のような状況でございます。そうなってくると、せっかく復調しつつある景気が再び腰折れになっていくというような、ますますゼロ金利の解除、その時期をめぐる期待が膨らんでいくとということですが、当然、そうすると再び腰折れになる可能性があるというふうに思うんですね。

 そのことで、今度新たな金融政策運営の枠組みというのを出されたわけですね、先ほどお示しをいただいたわけでありますけれども。では、この新たな金融政策の枠組みというのは、従来のやり方とどう違うのか、そしてどの点が明確とされておるのか、世の中に、国民の皆さんにどのような安心感を与えておるのか。何か、先ほどの御説明だけでは私はまだわかりづらいのではないかなというふうに思うんですが、その辺のところを、いわゆる透明性を高めるという意味においても、ぜひ一遍、この際、わかりやすく御説明をいただきたいというふうに思います。

福井参考人 量的緩和政策の枠組みが終了して、金利を中心とする金融政策になってまいりますと、マーケットにおいて金利が従来よりも活発に動くようになる。現に、委員おっしゃるとおり、経済の先行きを市場自身が読みながら、従来よりは少し市場金利がきめ細かく動き始めている、こういう状況でございます。

 しかし、市場は、日本銀行が当面はゼロ金利ないしは極めて低い金利水準でもって緩和的な環境を提供し続けるであろうということは明確に読み取っておりますので、市場が不安定になる、ましてや、委員おっしゃるとおり、景気の足を引っ張るというふうな条件づくりが市場で行われるということはないというふうに考えています。

 それを申し上げました上で、日本銀行の政策運営としては、さらに大きな枠組みとして、金融政策の運営に当たり、政策委員が頭の中で持っている物価観というものを数値であらわして、それを中長期的な物価安定についての理解という形でお示しして、この点についても、今後、幅広く市場との対話をしていく場合の大きなバックグラウンドとして、透明性の支えになる。

 それに加えまして、日本銀行は、これまでもややロングラン、二年ぐらいの経済見通しを出しておりますけれども、そうした経済見通しが物価安定のもとの持続的な経済の拡大のパスということに合っているかどうかという評価をこれからきちんと加えながら、展望レポートで絵解きをしていきたい、そのことがまた市場で有力なそしゃく材料になっていくだろうと。

 市場条件が経済の先行きに対して邪魔になるような条件形成がなされないような枠組みというものを今回用意したということでございます。

鈴木(克)委員 ぜひひとつその辺を十分きめ細やかにやっていただきたいというふうに思います。

 時間もあれですので、最後に戸田の発券センターのシステムトラブルについてお伺いをしたいんですが、これは、御案内のように、三月六日にトラブルが発生して、一日半ほどストップしたということであります。

 今、こういったトラブルが、東証を初め日本の金融システムの基本的なインフラの部分でのトラブルというのは非常に続いておるわけですが、日銀はまさに最後のとりでであってほしいというふうに思うんですが、残念なことに、こういうトラブルが発生したわけであります。

 これは、何か二年前にも更新時にこういうトラブルがあった、こういうふうに聞いておりますが、いわゆる日銀のシステムトラブルに対する認識をぜひお伺いしたいと思います。

小林参考人 お答えいたします。

 私どもの日本銀行券の発行というのは、日本橋における本店のほかに、ただいま委員御指摘のように戸田の発券センターで行っております。大口の取引につきましてはこちらの方を中心に行っておりまして、日本橋の本店がそのバックアップをする、こういう体制でやっております。

 ただいま御指摘の今回のシステムのふぐあいというのは、この戸田のセンターの方の情報系のシステムにおきまして、先週末に一部のネットワークを更新した際に、その新しく更新したネットワークの処理スピードが上がったことに対してほかの周囲の機械がそれについていけなくなったというようなことが原因になりまして、これに対して応急措置を講じまして、一昨日、八日の朝からは支障なく稼働している状況にございます。

 戸田の発券センターが行っております銀行券取引につきましては、ただいま申し上げましたようにバックアップ対応ということを行っておりまして、今回の場合、ふぐあいが発生しました六日の午後から日本橋の本店に作業を移行いたしました。その結果、戸田の発券センターを御利用いただきました金融機関の関係者の方には大変御迷惑をおかけいたしましたが、取引自体は無事結了をさせていただいたと認識しております。

 先生御指摘のとおり、戸田の発券センターは銀行券の円滑な供給のために大変大事なシステムでございますので、そのシステムの円滑な運行を確保していくということは極めて重要であると認識しておりまして、今回のようなふぐあいを生じさせないよう、システムの更新作業等々については念入りな対応をして、遺漏なきを期していく所存でございます。

鈴木(克)委員 以上で終わらせていただきます。

小野委員長 それでは、以上で鈴木君の質疑を終了いたします。

 引き続きまして、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 五年にわたった量的緩和政策を解除して、当面はゼロ金利を継続すると言われました。今の時点で、これまでの超低金利政策がどのような影響を与えたか、これを振り返る必要もあると思います。

 国民経済計算に基づいて三菱総合研究所が試算したところによりますと、九一年の金利水準をもとにしますと、これまでに家計が失った利益、逸失利益は累計で二百八十三兆円に上ると言っております。きょう来ておられる白川理事も、一九九一年の利子収入が続いたと想定して推計すると、二〇〇四年までに国民が失った利子は三百四兆円に上ると言われたことがあります。

 その反面、この三菱総研の試算では、企業の利子負担が約二百六十兆円軽減され、金融機関が利子所得を九十五兆円ふやした。低金利を通じまして、企業、金融機関に家計から巨額の所得移転が進んだということになると思うわけです。

 この傾向を福井総裁として確認していただけますでしょうか。

福井参考人 量的緩和政策並びに超低金利政策は、いずれも、日本経済が非常に悪い状況、それをさらに悪い状況に突き進むということを防ぐために大変なコストをかけて行った政策だ、したがってこれはなるべく早くやめなければいけない政策ということは、基本的な性格としてあるというふうに思います。

 市場メカニズムを犠牲にする、あるいはそういうふうに家計にも重い負担をかける、しかし、マクロ経済全体として新しい前進のパスをつかむためには、やはり経済の機動力を発揮するのは企業であります、企業の投資力というものを回復させるために、経済全体としては払うべきコストを払いながら政策を進めてきたということだと思います。

佐々木(憲)委員 大きな数字として、先ほどのような状況があるということは確認をしていただけると思うんですが、どうですか。

白川参考人 お答えいたします。

 今先生御指摘の数字でございますけれども、これは、先般の国会におきまして、一定の前提でこうした計算をしてほしいという御依頼を受けまして計算した数字でございます。

 具体的に申し上げますと、国民所得統計における家計の受取利子額を用いて、これは一九九一年における受取利子額がその後二〇〇四年まで同じ額で継続するというふうに仮定した場合と現実の金利所得との比較でございます。そうしたベースで逸失金額を計算してほしいというふうに言われまして、そうした金額につきましては、累計で三百四兆円であるというふうに申し上げました。

佐々木(憲)委員 家計に大変な負担を負わせたというふうに思います。

 それで、今後ですけれども、このゼロ金利政策を解除するという場合、どのような条件が整った場合にその解除が行われるのか。その条件についてお伺いしたいと思います。

福井参考人 量的緩和政策の枠組みを解除したばかりでございます。これからゼロ金利を起点として金利政策が再スタートした段階でございますので、ゼロ金利解除の時点を今から正確に見通すということはなかなか難しゅうございます。

 しかし、ゼロ金利政策というのは、引き続き、かなり異例の政策だということは間違いございません。いずれ、経済、物価の実勢に見合った金利水準に徐々に修正していく最初の出発点として、ゼロ金利を修正する時点を迎えるだろうというふうに思いますが、これはやはり、デフレ的な状況に長く苦しんだ経済が活力をどれぐらい取り戻していくかということをもう少し冷静に見きわめながらその時点を正確に判断していきたいというふうに思っています。

佐々木(憲)委員 今、条件そのものについては余り具体的におっしゃらなかったんですけれども、それもぜひ、詰めた形でお知らせをいただければと思います。

 そこで、金利が上昇する局面というのは当然今後出てくると思うんですが、さまざまな部門に影響が及ぶと思います。例えば企業では、これは企業規模によって随分また違いますし、あるいは家計の場合も、世代別に見ますとまた違ってくる。いろいろあると思うんですが、この影響、金利が引き上がることによる影響というものはどのように考えておられるか、お聞きをしたいと思います。

福井参考人 まず大前提として、今後金利を調整していく過程は、でき得れば、できる限りなだらかなものにしていきたい、急激な金利の調整というのを避けるというふうな金融政策をしたい、こういうふうに思っております。もちろん、経済ですから、いかなるショックが外から及んでくるかわかりませんので、そういう場合は別でございますが、通常であれば、できる限りなだらかに持っていきたい。

 そうしますと、量的緩和政策から脱却いたしました今の時点では、余り非連続的な変化が生じない、しばらくゼロ金利でございますので生じない。いずれゼロ金利が修正され、極めて低い金利水準になり、それがさらに徐々により高い金利水準に上がっていくという過程でございますけれども、私どもやはり、まず企業部門について言いますと、おっしゃったとおり、大企業だけでなくて、中小企業の資金繰りの円滑性ということがいかに保たれているかということは十分検証しながらやっていかなきゃいけないというふうに思っています。

 それから、家計部門については、そういう金利上昇のペースが緩やかであれば、預金金利という形で十分均てんできるというのはかなり時間がかかるだろうなというふうに思いますけれども、一方、雇用や所得環境の改善から雇用者所得が緩やかな増加を続ける、それを実現するために金融政策をやっているわけですから、そういうことは十分期待できるだろう、こういうふうに思っています。

 それから、政府部門でありますけれども、これは最大の資金不足主体であります。財政再建を着実に進めていただく必要があるわけでして、そのためには、まず、一層の規制緩和などを通じて構造改革をさらに進めていただく、民間の活力を引き出して日本経済の潜在成長力そのものを高めていくという本質的な対処が大事だというふうに思っております。それが最終的には安定的な歳入の確保につながる。

 それらすべての過程を円滑に進めるために、私どもは、できる限り不連続性の伴わない金融環境、変化はいたしますが不連続性を大きくは伴わない金融環境の提供ということでサポートさせていただければ、それが最高だというふうに思っています。

佐々木(憲)委員 今後を見通す上で、民間の資金需要がどういうふうになっていくかということと、それから、今も触れられましたように、財政の赤字が一体どうなるのか。これは大変大きな要因だと思うんです。

 国、地方の財政の状況は、長期債務残高が六百五兆円に上っておりまして、地方が二百四兆円ですから、合わせまして、重複を除きましても七百七十五兆円という大変な規模になるわけで、この債務残高は、減るというよりも、当面中期的にはふえていくという見通しでございます。これは、全体として金利を引き上げていく大きな要素になっていくのではないかと思うわけです。

 七百七十五兆円の債務残高は、GDPの一五〇%ですから、膨大な金額であります。仮に金利が一%上昇しても、それだけで七、八兆円の負担増、財政的には大変大きな負担増になる。それが回り回って国民の増税とかさまざまなマイナス要因としてはね返る可能性もある。もちろん財政運営というのは政府の問題ですから日銀に責任があるわけではございませんが、今後、政府の予想によりますと、普通国債の発行残高、今は五百四十二兆円ですけれども、二〇一二年では七百五十三兆円、二〇一七年に八百九十二兆円、どんどん増加していく。地方債も合わせますと、二〇一二年に九百四十八兆円、二〇一七年に千百二十兆円、これは大変な予測でございます。政府自身がそんな方向を見通しているわけでございます。

 そうなると、一体これだけの膨大な公債をどう消化するか、その際の金利はどうなるのか、これは大変大きな課題になっていくと思うんです。もちろん、我々はその政府の財政政策を容認するわけではありませんが、今の状況が続くとそういう状況になる。

 そこで、これは岩田副総裁にお願いしたいんですけれども、一体、消化の展望あるいは金利の傾向をどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

岩田参考人 ただいま御指摘をいただきました点でありますが、政府部門におきます債務が増加する、その結果、金利にはどういう影響が及ぶんだろうか、こういう御質問であったかと思います。

 御指摘のように、金利といいますのは、一つは供給面といいますか、どのくらい国債等が新たに発行されていくかということと、それから需要の面、そういう債券に対する需要の面、両面で決まっております。

 私どもが、長期金利が例えばどういう形で基本的には決まっているというふうに考えているかということを申し上げますと、これは主として市場参加者の、将来の経済あるいは物価に関する市場の見方、成長率でありますとかあるいは物価の上昇率でありますとか、こういうものが将来どういう推移になるのかな、こういうことに対する市場の見方と、それに加えまして、今御指摘もありましたけれども、財政部門の例えば不安定性に由来するリスクプレミアム、あるいは、経済が大幅に変動いたしますと、これも先行きの成長率とか物価の上昇率が大幅に変動してしまう。そうしますと、これもやはり長期金利に不安定性が拡大しますとリスクのプレミアムがふえてしまう、その結果、長期金利が上昇してしまう、こういうふうに考えております。

 したがいまして、先行き、長期金利というのが安定的な形で、いわば経済のファンダメンタルズに見合ったような形で形成されていくということが極めて重要なことだ。マクロ経済的な経済とか、物価の環境というものを安定的な状況に保っておくということが、一つ極めて重要だ。

 それから、もう一つは、財政部門におきましては、財政再建の長期的な方向性というのを透明な形で示す、そういうことによりまして、財政赤字に伴いますリスクプレミアムをできるだけ大きくならないようにしていく、こういうことが極めて重要だ。つまり、これほど大幅な国債残高を抱えた経済で、今後どういうふうに政策運営するかということを日本銀行の任務の方から考えてみますと、金融経済情勢というものをできるだけ安定的な形で保ちながら、とりわけ重要なのは、長い目で見ました物価の安定そして持続的な成長というのを実現する、こういうことを通じて、いわばリスクプレミアムの部分をできるだけ小さくする、その結果、安定的な金利形成が行われる、こういうことが望ましいというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 なかなか抽象的な答弁で、かみ合った感じがしないんですけれども。

 官と民の関係で、単純に言いますと、今後の資金の流れというのは、明らかに民から官に流れるんです。経済財政諮問会議に出された資料をもとに、二〇〇三年と二〇一七年を比較いたしますと、民から官に流れる資金量は、六百五十兆円だったものが九百五十兆円にふえるんです。これは、福井総裁も出席された、その会議に出された資料でございます。そうでなければ、これは財政を支えられないという状況なんですね。果たしてそれが可能かという問題になるわけです。

 そこで、郵政の民営化によって新たな問題が出てくると私は思うんですが、これまで郵政公社の資金運用は、基本的に国債またはそれに準ずるものというふうに限定されてまいりました。つまり、信用リスクをとるような運用はできなかったわけです。だからこそ、国債発行の受け皿に郵政事業がなっていたわけですね。日銀が公表した資金循環統計から見た国債保有者別内訳の変化という資料がありますが、それを見ましても、一九九四年と二〇〇四年を比べますと、郵便貯金の比率は五・四%から一四・七%に上がっております。簡保は二・五%から七・七%に上がっている。つまり、それだけ郵政事業における国債の保有率が急増したということでございます。

 しかし、この民営化によってリスクをとる運用が行われる。そうなると、国債を安定的に引き受ける公的な部門というものが失われていくわけであります。しかも、今回の量的緩和解除に伴って、最大の引き受け手である民間金融機関が債券離れを始めている。残高の圧縮、保有期間の短期化ということが行われている。そうなると、これだけ膨大な国債の発行、一体どのようにこれは消化されていくのか、どこが引き受けていくのか、こうなってきますと、これは日銀に、これが引き受け圧力として政府からかかっていくのじゃないか。

 先ほども、いろいろな議論がありました。つまり、膨大なこのような公債発行の受け手として、日銀は引き受けなさい、引き受けなさい、こうなってきますと、これは逆に、財政規律がますます失われていく可能性がある。そこで日銀の姿勢が問われていると思うんです。そういう意味で、総裁として、今後この問題にどのように対応されていくのか。私は、安易な引き受けをどんどんやっていくということは正しくないと思っております。

 総裁のお考えをお聞かせいただきたい。

福井参考人 郵政の民営化に伴いまして、郵便貯金、そしてストレートに国債運用というふうに流れていた資金が、どういうふうに多様化した流れを示すかというのは、よく注意していかなければいけないというふうに思っています。

 いずれにいたしましても、最終的に日本銀行が国債の引き受けを迫られるような市場環境になるかどうか、それはわかりませんけれども、仮になったといたしましても、日本銀行としては、国債の直接引き受けということは、文字どおり、財政規律に真っ向から反するというふうに考えております。引き受けるということは、法律的にも禁じられておりますし、私どものディシプリンとしてもそれはあり得ないというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 現在も、既に日銀の保有比率が一三・五%ということでして、これを無制限に引き受けるようなことは絶対私はあってはならないと思っております。

 今、福井総裁から基本的なお考えをお聞きしましたので、以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

小野委員長 以上をもちまして質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

小野委員長 次に、内閣提出、独立行政法人酒類総合研究所法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。財務大臣谷垣禎一君。

    ―――――――――――――

 独立行政法人酒類総合研究所法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

谷垣国務大臣 ただいま議題となりました独立行政法人酒類総合研究所法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。

 政府は、独立行政法人酒類総合研究所がその業務を一層効率的かつ効果的に行うことができるよう、民間及び大学等との人事交流等の連携を促進するため、本法律案を提出した次第であります。

 本法律案の内容は、独立行政法人酒類総合研究所を特定独立行政法人以外の独立行政法人、いわゆる非公務員型の独立行政法人とするとともに、同法人の役職員の秘密保持義務等について所要の措置を講ずるものであります。

 以上が、この法律案の提案の理由及びその内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

小野委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十五日水曜日午後五時理事会、午後五時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十八分散会


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