衆議院

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第15号 平成18年5月9日(火曜日)

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平成十八年五月九日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 小野 晋也君

   理事 江崎洋一郎君 理事 七条  明君

   理事 宮下 一郎君 理事 山本 明彦君

   理事 渡辺 喜美君 理事 小沢 鋭仁君

   理事 古本伸一郎君 理事 石井 啓一君

      井澤 京子君    伊藤 達也君

      石原 宏高君    小川 友一君

      越智 隆雄君    河井 克行君

      木原  稔君    佐藤ゆかり君

      鈴木 俊一君    関  芳弘君

      平  将明君  とかしきなおみ君

      土井 真樹君    中根 一幸君

      西田  猛君    萩山 教嚴君

      広津 素子君    藤野真紀子君

      松本 洋平君    小川 淳也君

      田村 謙治君    長安  豊君

      平岡 秀夫君    松木 謙公君

      三谷 光男君    吉田  泉君

      谷口 隆義君    佐々木憲昭君

      中村喜四郎君

    …………………………………

   議員           田村 謙治君

   議員           古本伸一郎君

   議員           三谷 光男君

   議員           吉田  泉君

   国務大臣

   (金融担当)       与謝野 馨君

   内閣府副大臣       櫻田 義孝君

   内閣府大臣政務官     後藤田正純君

   法務大臣政務官      三ッ林隆志君

   財務大臣政務官      西田  猛君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  三國谷勝範君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局総括審議官)          中江 公人君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    佐藤 隆文君

   政府参考人

   (金融庁証券取引等監視委員会事務局長)      長尾 和彦君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大林  宏君

   参考人

   (株式会社東京証券取引所執行役員)        深山 浩永君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月九日

 辞任         補欠選任

  大野 功統君     平  将明君

  鈴木 克昌君     松木 謙公君

同日

 辞任         補欠選任

  平  将明君     大野 功統君

  松木 謙公君     鈴木 克昌君

    ―――――――――――――

五月八日

 知的障害者の入院互助会を改正保険業法の適用除外とすることに関する請願(吉井英勝君紹介)(第一八六一号)

 大増税に反対することに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一八六二号)

 同(石井郁子君紹介)(第一八六三号)

 同(笠井亮君紹介)(第一八六四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一八六五号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一八六六号)

 同(志位和夫君紹介)(第一八六七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一八六八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一八六九号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一八七〇号)

 大衆増税反対に関する請願(笠井亮君紹介)(第一八七一号)

 同(仲野博子君紹介)(第一九〇九号)

 同(鉢呂吉雄君紹介)(第一九一〇号)

 同(松原仁君紹介)(第一九一一号)

 共済年金の職域部分の堅持等に関する請願(江藤拓君紹介)(第一九七五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 証券取引法等の一部を改正する法律案(内閣提出第八一号)

 証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第八二号)

 証券取引委員会設置法案(古本伸一郎君外六名提出、衆法第四号)


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     ――――◇―――――

小野委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、証券取引法等の一部を改正する法律案及び証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案並びに古本伸一郎君外六名提出、証券取引委員会設置法案の各案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、参考人として株式会社東京証券取引所執行役員深山浩永君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として金融庁総務企画局長三國谷勝範君、金融庁総務企画局総括審議官中江公人君、金融庁監督局長佐藤隆文君、金融庁証券取引等監視委員会事務局長長尾和彦君、法務省刑事局長大林宏君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小野委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。広津素子君。

広津委員 質問の機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。

 今回の証券取引法等の一部を改正する法律案に関しましては、金融商品ごとに異なっていた縦割りの規制から投資性の強い金融商品やサービスにすき間なく同等の横断的な規制をかけるという意味で、私は、大変画期的でよい改正が行われていると思っております。そのため、全体としては、今回の改正案を大変高く評価しております。そこで、きょうは公認会計士である私の専門分野である開示と公開買い付け制度に関しまして重点的に御質問いたします。

 まず、柔軟化について、情報開示の観点からお伺いします。

 証券取引法等の一部を改正する法律案では、一律規制から差異のある規制に改正されており、情報開示においてプロの投資家と個人投資家を差別しております。しかしながら、一般の個人投資家とプロの投資家は移行可能であるため、本来一般投資家として扱われるべき個人をプロの投資家として扱い、開示すべき情報を開示しないという脱法的使われ方をされるおそれもあります。こうなっては投資家保護が不十分になってしまいますので、この点についてどういう対応を考えていらっしゃるのか、お伺いします。

三國谷政府参考人 お答え申し上げます。

 議員御指摘の投資者への情報開示の観点からの規制につきましては、これは二つに整理することができるかと思います。

 まず一点目は、公衆縦覧を通じました投資家への間接的な情報開示でございまして、これは、有価証券の発行者に有価証券報告書等の提出を義務づけまして、これを公衆縦覧に供するなど、企業内容等の開示制度を整備しているものでございます。

 次に、投資家への直接的な情報開示といたしまして、有価証券その他の金融商品の販売、勧誘等を行います業者に対しまして、投資者が取引の特性、とりわけリスクを十分に理解した上で投資判断を行えるよう、顧客への書面交付等が義務づけられている等の制度がございます。

 今回の法案におけますいわゆる特定投資家制度でございますが、これは後者の、投資家への直接的な情報開示のために金融商品の販売、勧誘等の局面において業者に課される規制に関しまして、顧客が特定投資家かあるいは一般投資家かに応じましてその適用を区別するものでございます。

 具体的には、業者が一般投資家との間で取引を行います場合には、投資者保護の観点から十分な行為規制を適用する一方で、特定投資家との取引におきましては、例えば契約締結前の書面交付義務など、顧客と業者との間の情報格差の是正を目的とする規制等につきまして適用を除外しているものでございます。

 今回、御指摘の点でございますが、法案につきましては、個人投資家の保護を徹底するという観点から、個人は基本的にはすべて一般投資家と位置づけることとしております。その上で、一般投資家でありましても、その選択により特定投資家への移行を申し出ることができる制度設計としているということは御指摘のとおりでございますけれども、一つには、特定投資家への移行の申し出を行うことができる個人は、知識、経験、財産の状況に照らしまして特定投資家に相当する者といたしまして内閣府令で定めます要件に該当する者に限ることとしております。さらに、個人投資家が選択による特定投資家への移行を行おうとする場合には、その保護に欠けることのないよう厳格な手続を整備しているところでございます。

 このように、特定投資家制度の導入による規制の適用の柔軟化は、投資者保護の徹底ということを前提として制度を提案しているものであることを御説明申し上げたいと思います。

広津委員 どうもありがとうございました。個人の選択であるということになっていればかなりオーケーだと思います。

 次に、四半期開示ということについて御質問いたします。

 証券取引法等の一部を改正する法律案では、流動性の高い流通市場を持つ上場企業の有価証券については、より頻繁に密度の濃い投資情報が必要であるとの観点から四半期開示を行うこととされています。多くの諸外国においても四半期開示は進展しておりますし、タイムリーなディスクロージャー、つまり適時な情報開示は投資家保護に有益です。また、我が国の証券市場の国際的競争力を向上させるためにも、私は、四半期開示の法定化を大変意義あることと評価しております。

 しかしながら、開示する以上、開示される情報の正確性を検証し担保しなければならないことは明らかです。そのためには、監査基準を改正し、四半期報告書に公認会計士または監査法人の監査を義務づけることが不可欠となります。諸外国では、四半期報告書にはレビューという、オーディットよりも一段緩い監査がなされていますが、これは被監査会社に過度の負担をかけず必要十分な監査を行うための工夫です。

 なお、オーディットというのは、実地棚卸しや債権債務の外部確認など証明力の強い外部の監査証拠を集めて適正意見を表明することができる監査です。これをやりますと、粉飾をやっているときに経営者が言わなくても発見することができる、そのくらい強い監査証拠です。

 また、レビューとは、実地棚卸しや債権債務の外部確認などの証明力の強い外部の監査証拠を集めることは省き、帳簿のレビューなどの内部証拠を中心として監査を行って、有用性程度の監査意見を表明する監査です。これは、内部証拠のみを集めますので、経営者が本気になって粉飾しようと思えば全部改ざんすることができますので、外部証拠ほどの強い証明力がないわけです。

 そこで、我が国では、四半期開示の法制化に当たり、四半期報告書に記載される四半期財務諸表の信頼性を確保するために、公認会計士または監査法人による監査にどのレベルの監査を行うように措置されているのかをお伺いしたいと思います。

三國谷政府参考人 御指摘の四半期開示でございますけれども、これは、企業業績等に係ります情報を適時、迅速に開示することを求めるものでございますが、一方で、投資者の投資判断に資するよう、四半期財務情報の信頼性を確保することも重要でございます。このため、四半期財務情報につきましては、その信頼性を確保する観点から、公認会計士等によります監査証明を義務づけることとしているところでございます。

 この監査証明に係ります基準のあり方につきましては、現在、企業会計審議会監査部会において、四半期財務情報の適時性、迅速性と信頼性とのバランスを考慮しながら検討を行っているところでございます。現在、御提案しております法案をお認めいただきました際には、適時性、迅速性の要請にこたえながら、どのように四半期財務情報の信頼性を確保していくかにつきまして、さらに検討されていくことになるものと考えているところでございます。

 なお、現行の半期報告書に係ります中間監査におきましても、年度監査に比較しまして簡便な手続が認められているところであります。四半期財務情報に係ります四半期監査におきましても、年度監査に比べまして簡便な手続を認める方向で検討が進められるものと考えております。ただ、その場合であっても、四半期監査は年度監査と一体となって実施されていくものでございます。両者を適切に組み合わせること等によりまして、四半期財務情報の信頼性が確保されていくよう検討してまいりたいと考えているところでございます。

広津委員 どうもありがとうございます。かなり充実した準備が進んでいると思います。よろしくお願いいたします。

 次に、内部統制報告制度について御質問いたします。

 証券取引法等の一部を改正する法律案では、有価証券報告書を提出しなければならない会社のうち、金融商品取引所上場会社は、事業年度ごとに、内部統制報告書を有価証券報告書とあわせて内閣総理大臣に提出しなければならないとされています。そして、内部統制報告書は、公認会計士または監査法人の監査証明を義務づけることとされています。

 そこで、この財務諸表監査に加えて内部統制監査を求める目的及び趣旨についてお伺いします。

櫻田副大臣 お答えさせていただきます。

 証券市場に対する投資者の信頼性を確保するためには、投資者に対して企業情報が適正に開示されることが重要であると考えているところでございます。ディスクロージャーをめぐる最近の不適切な事例については、開示企業における財務報告に係る内部統制が有効に機能していなかったのではないかということが指摘されているところであり、ディスクロージャーの適正を確保していくためには、財務報告に係る内部統制の強化を図っていくことが重要であると考えているところでございます。

 こうした観点から、本法案では、上場会社に対し、財務報告に係る内部統制の有効性に関する経営者の評価と、その評価結果が適正であるかどうかについての公認会計士による監査、いわゆる内部統制監査を義務づけ、財務報告に係る内部統制の強化を図るものとしたものでございます。

広津委員 どうもありがとうございます。よくわかりました。

 今までも、監査を行うに当たりましては、内部統制の評価を行うことが必要不可欠であったため、内部統制の評価はやってきたことではありますが、ここで、経営者による内部統制の整備と運用が必要であり、それに関して監査人が意見を述べるということが法律に明文化されることは、内部統制制度の充実のために極めて重要で大変すばらしいことであると感じております。

 しかしながら、日本公認会計士協会の調査によってもわかりますように、我が国では内部統制の評価に費やされる時間が海外に比べて大変少ないわけです。これは、日本における監査報酬、特に監査時間が諸外国と比較してかなり低いレベルであるため、監査手続をできるだけ省かざるを得ない状況であるということが理由と聞いています。そのため、監査の充実に関する根本的な解決策としては、諸外国並みの適切な時間をかけて内部統制の評価をできるだけの監査報酬及び監査時間が必要ということになります。

 この点につきましては、諸外国の監査及び監査報酬との比較も考慮した上で、いかがお考えでしょうか。

三國谷政府参考人 お答え申し上げます。

 監査報酬につきましての調査は、これは日本公認会計士協会などにおいても実施はされておりませんが、監査時間につきましては、日本公認会計士協会において調査を行っているところでございます。

 この調査結果によりますと、我が国の監査時間数は、海外におけます監査時間に比べまして、一般に少ないものとなっているところでございます。さらに、その内容を見ますと、とりわけ監査計画、内部統制の評価にかける時間数が少ないとの調査結果となっているところでございます。

 監査の充実強化を図りますためには、公認会計士や監査法人において、的確な内部統制の評価に基づき適切に監査計画が作成され、監査が実施されていくことが重要であると認識しております。このため、必要な監査時間数等の確保が行われますよう、必要な環境の整備に努めてまいりたいと考えているところでございます。

 なお、こういった意識を幅広く醸成していくという観点から、証券取引法対象会社につきましては、平成十六年三月期から、有価証券報告書におきまして監査報酬の総額等の開示を求めることとしているところでございます。

広津委員 どうもありがとうございます。

 ただ、監査報酬の開示をしただけでは、むしろ安い監査法人の方に顧客が殺到することになりまして、さらにコストダウンをしていかなきゃいけないということで、必ずしも解決にはならないと思いますが、状況を見守ってまいりたいと思っております。

 次に、公開買い付け制度についてお伺いします。

 最近、企業の合併や買収が盛んに行われています。ライブドア事件や村上ファンドの阪神買収など、買収会社の利益目的の強引とも思われる敵対的買収の事例が多くマスコミに報道されるため、日本では、とかく企業の合併や買収に対して悪いイメージが持たれがちです。しかし、本来は、合併、買収などの組織再編は企業再編の有効なツールであって、それ自体が悪いということはありません。つまり、使い方の問題です。ただし、使われ方によって、被買収会社の利益を著しく損ねたり、一般投資家の利益や株主間の公平を害したりすることがあるわけです。

 そこで、公開買い付け制度については、一般投資家や株主保護の観点から制度設計を行うことが必要と考えられますが、今回の法案において、公開買い付け制度についてはどのような見直しがなされているのか、お伺いしたいと思います。

三國谷政府参考人 公開買い付け制度につきましてのお尋ねでございますが、近年、我が国におけます企業再編行為等の件数は増加してきており、その態様も多様化してきているところでございます。こういった中で、市場の透明性、公平性を確保する観点から、公開買い付け制度につきましては各種の見直しを提案させていただいているところでございますが、これらの検討に当たりましては、御指摘いただきました一般投資家や株主の視点に最大限配慮をしているところでございます。

 まず、投資者、株主に的確な判断材料を提供し、それに基づき応募の是非を的確に判断してもらう観点から、公開買い付け者によります情報開示の充実を図るとともに、公開買い付けの対象会社による意見表明の義務化、対象会社が公開買い付け者へ質問する機会の付与などの措置を講じているところでございます。

 また、投資者、株主の熟慮期間を確保する観点から、現行、日数ベース、これは二十日から六十日ということで規定されております公開買い付け期間につきましては、営業日ベース、二十営業日から六十営業日に変更することとしているところでございます。

 さらに、公開買い付け期間が短期間に設定されました場合に、対象会社の請求に基づきまして公開買い付け期間を延長する制度を導入する措置を講じているところでございます。

 さらに、投資者、株主の公平性を確保する観点から、買い付け後の所有割合が一定割合以上となるような公開買い付けにつきましては、案分比例方式による部分的公開買い付けではなく、全部買い付けを義務づけることなどの各般の措置を講じることとしているところでございます。

広津委員 どうもありがとうございます。十分な措置が行われていると思います。

 大量保有報告制度は、株式の大量保有状況に関する情報開示を確保することで市場の透明性を高めることに寄与しており、一般投資家が安心して投資活動を行うことができるようにするために必要不可欠な制度であると考えます。

 しかしながら、最近の実務の動向を見ますと多くの疑問の声が投げかけられているところであるため、今回の改正法案におきまして、大量保有報告制度に関してどのような見直しがなされているかに関してもお伺いいたします。

櫻田副大臣 お答えさせていただきます。

 近時の実務の動向を見ますと、議員御指摘のとおり、短期間に大量の上場株券等を保有するに至る事例がふえつつあります。そんな中、大量保有報告制度の迅速性、機動性についてもさまざまな指摘がなされているものと承知しているところでございます。また、いわゆる買収防衛策との関連等におきましては、大量保有報告書による株式保有割合に係る開示を迅速、正確に行うことへの要請が高まっていると認識しているところでございます。

 これらの状況を踏まえ、本法案においては、機関投資家に認められる特例報告の制度について、報告期限、頻度を現行の原則三カ月ごと十五日以内から二週間ごと五営業日以内へと短縮することとともに、株式保有に関する特例報告制度が適用されない事業支配目的がある場合について、これを、事業活動に重大な変更を加え、または重大な影響を及ぼす行為を行う目的がある場合へと明確化を図ることとしているところであります。

 また、証券市場の効率性向上の観点から、これまで紙媒体による提出も認められていた大量保有報告書について、電子提出を義務化し、EDINET、電子開示手続を通じた迅速な公衆縦覧の一層の促進を図ることとしているところでございます。

広津委員 どうもありがとうございます。

 今回の法改正におきまして、大量保有報告に関する特例報告制度を見直し、報告頻度を短縮することとされております。これは、株式の大量保有状況に係る透明性を高めることとなる一方で、諸外国よりも厳しい規制となり、合併や買収などの企業組織再編を阻害するのではないかという危惧もありますが、このような厳格な規制をされた理由についてお教えいただければ幸いです。

三國谷政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の大量保有報告制度の見直しでございますが、これは、公開買い付け制度にあわせまして各般の見直しを行っているところでございます。

 この中で、特例報告制度に関しましては、ただいま副大臣からもお答え申し上げましたとおり、報告期限、頻度の短縮等。あるいは、それ以外にも、一〇%超保有の状態から保有割合が一〇%を下回る取引を行った場合、これは一〇%からそれ以下になった場合でございますが、この場合には一般報告を義務づける。あるいは、特例報告制度が適用されない事業支配目的につきまして、事業活動に重大な変更を加え、または重大な影響を及ぼす行為を行う目的へと明確化するなどの措置のほか、大量保有報告書の電子提出の義務化、いわゆるEDINETを通じた迅速な公衆縦覧などの措置を講じているところでございます。

 この中で、大量保有報告の特例制度に係ります報告期限の頻度の大幅な短縮などにつきましては、御指摘のとおり、諸外国よりも厳しい規制となっているのではないかなどの指摘があることは承知しているところでございます。一方で、大量保有報告制度の本来の趣旨であります株式の大量保有の状況につきまして、必要で正確な情報を投資者に対して迅速に開示するとの要請も強く存在するところでございます。

 両者のバランスを踏まえて議論することが必要であると考えているところでございまして、金融審議会の公開買付制度等ワーキング・グループにおきましては、このような観点を踏まえまして真摯に御議論いただきました結果、全体として、特例報告に係る頻度、期限につきまして、現行の三カ月ごと十五日以内を二週間ごと五営業日以内へと短縮することが適当であるとの結論に至ったところでございます。

 投資者に対する適切な情報開示、及び、そうしたことを通じました証券市場に対します信頼の確保を図ることが現下の状況の中では大変重要なことと考えておりまして、金融庁といたしましては、御提案の法制上の所要の見直しを講じさせていただいているところでございます。

広津委員 以上です。丁寧な御説明、どうもありがとうございました。終わります。

小野委員長 それでは、これで広津素子君の質疑を終了いたします。

 続きまして、谷口隆義君。

谷口(隆)委員 おはようございます。公明党の谷口隆義でございます。

 きょうは、金融商品取引法の審議ということであります。

 まず初めに、会社法の改正のところを申し上げたいと思いますが、御存じのとおり、この五月一日から会社法が改正をされたわけであります。この会社法というのは企業社会の基本法とも言われるべきもので、大変企業社会にとっては影響の大きいものであります。

 そんなこともありまして、私ども公明党は、この会社法の審議に入る前の法制審議会に提言を出しておりまして、この提言の内容をごく簡単に申し上げますと、一つは、従来の商法の理念、例えば債権者保護だとか株主平等の原則であるとか、商法の持っておる非常に重要な理念を大きく逸脱するようなことのないようにしてもらいたいということと、あとは、中小企業に十分配慮した対応をお願いしたいということと、あとは、ガバナンスの観点から十分配慮されたものであるように、あとは、企業買収の問題であります。

 今回、一年繰り延べられたわけでありますけれども、合併のときの対価の柔軟化というのがあるわけでありますけれども、これは、従来であれば、合併をいたしますと、被合併会社の株主に対しまして合併会社の株を交付するというのが一般的でありましたが、今回、この改正がありまして、被合併会社の株主に現金で交付する場合もできますし、また、親会社の株式で交付する場合もできるというような形で、いわばMアンドAが非常にやりやすくなったわけであります。それは組織再編という観点で一歩進んだと言えるわけでありますが、一方で、企業を中心にして考えますと、後で申し上げますが、阪神電鉄をめぐる問題等、今出てきておりますが、やはり企業の防衛策も十分に検討していく必要があるだろうというような、この企業の防衛策も検討してもらいたい。

 あとは、従来の企業観。従来の企業観と申しますのは、我が国の一般的な企業の考え方というのは、これはいろいろ持っていらっしゃるんだろうと思いますが、会社というものは株主のものだけではなくて、従業員、また地域社会、また債権者、このような周りの利害関係者も一体となった社会的実在としての企業という考え方があったわけであります。それを、株主至上主義といいますか、株主がイエスと言えば何でもできるというようなところの考え方、企業観に持っていくということについては若干問題がある、このように申し上げたわけでありますけれども、このような会社法が、先ほど申し上げましたように、五月の一日から施行されたわけであります。

 それで、私申し上げました商法と、今回審議されておりますこの証券取引法、今回は金融商品取引法といいますが、これの違いについて、まず初めに申し上げたいと思うわけであります。

 商法は、先ほど申し上げましたように、取引の安定を図るという観点で、債権者保護の立場に立っておるわけであります。淵源は、これはドイツ法を中心にして、大陸法を淵源といたしております。一方で、証券取引法は、アメリカ法を中心にして、これは投資家保護の立場の法律であります。債権者保護と、また投資家保護との間の違いが従来から言われておったわけであります。

 今申し上げました会社法の審議の状況を見ておりまして、既にでき上がって今もう施行されておるわけでありますけれども、やはり企業価値を高めることはいいことなんだということでございます。ですから、いわばこの証券取引法に近づいていくというんですか、株主を中心とした企業社会のありよう、より一層そういう考え方が浸透してきた法律になっておるということについては、若干の危惧をいたしておるところがあるということを、まず申し上げたいわけであります。

 それで、先ほど申し上げました阪神電鉄、村上氏を中心とする村上ファンドが大量の株を取得して、五月の初めに、取締役の過半を交代せよという提案をしておるようであります。その状況、マスコミの報道によりますと、労働組合もこれに対しては反対だということのようでありまして、社会全般的に見て、やはり違和感があるというようなことであるんだろうと思うわけであります。

 先ほど申し上げました企業観、企業は一体だれのものなのかということを会社法の審議のときにいろいろやりとりをいたしたわけでありますが、やはり株主だけが企業の方向を決めるということではなくて、あらゆる利害関係者が一体となった企業、こういう考え方がむしろ日本社会の中では好ましいのではないか、私はこのように思っておりますが、大臣お着きになりましたので、まず初めに、大臣の持っていらっしゃる企業観についてお伺いいたしたいと思います。

与謝野国務大臣 法律的にいえば、株式会社は出資をしている株主のものであるというのは、あくまでも法律的には一つの考え方であると思っております。

 しかし、企業というのは、また一面、社会的存在でございまして、多くの従業員を雇用し、また多数の取引者を持ち、また場合によっては下請関連企業も持っておりますから、やはり社会的存在としての企業という側面は大変重要であると私は思っております。株主価値を増加させる、増大させる、これも一つの重要な考え方でございますけれども、やはり株主も従業員も取引先もそれぞれ応分の繁栄をする、これが私は大事なことだろうと思っております。

 また、株主はもともと配当を受けるという機会も与えられておりますし、また取締役会を構成する取締役を選任する権利も持っております。そういうものも当然の権利でございますけれども、やはり社会的存在であるということも頭に入れながら、そういう商法上、企業関連法上の権利は行使されるべきものと私は考えております。

谷口(隆)委員 今大臣おっしゃっていただいた考え方は、私も全く一緒でありまして、株主がすべてを決めるというわけではなくて、今回のこの阪神電鉄も、電鉄でありますので公共的な色彩を持っておりますし、たくさんの従業員の方がいらっしゃるわけであります。市場で大量の株を取得し、経営陣の中でいろいろな問題があるというようことで、非難されるべき経営陣も中にはあるんだろうと思いますが、今回の状況を見ておりますと、さして経営上の問題があるとは思えませんし、株を大量に取得したということだけで大きな混乱を起こせしめるということについては、私は問題があるんだろうというように思うわけであります。

 そこで、次に、今回のこの改正で、公開買い付けであるとか、また大量保有報告書が整備をされたわけでありますが、今私が申し上げたような状況等にも十分配意をされた改正となっておるのかどうかということについて、御答弁をお願いいたしたいと思います。

三國谷政府参考人 制度の一般論としてお答え申し上げたいと思います。

 今般の法案におきましては、一つは公開買い付けの制度の見直しがございます。最近、市場内外を組み合わせましたさまざまな態様の取引がふえてきております。こういったことから、市場内外における買い付けなどの取引を組み合わせた急速な買い付けの後、所有割合が三分の一を超えるような場合、これも公開買い付け規制の対象となることとしているところでございます。従来までは、三分の一を超える段階かどうかで、それが市場外か市場内かということが基準でございましたが、これを一定の期間内に組み合わせるような場合にも対象とするというようなことで、制度の整備を図っているところでございます。

 次に、大量保有報告制度につきましては、これも今回の法案におきまして、一つは、株式保有に関します特例報告制度が適用されない事業支配目的がある場合につきまして、事業支配目的を、事業活動に重大な変更を加えまたは重大な影響を及ぼす行為を行う目的がある場合というぐあいに明確化を図っているところでございます。

 また、特例報告制度によりまして大量保有報告書の提出が猶予されている期間に、実際に重要な提案行為等を行おうとする機関投資家につきましては、事前に迅速な開示を求めまして、一層の透明性の確保を図るなどの措置を講じることとしているところでございます。

谷口(隆)委員 いずれにいたしましても、組織再編だとか、企業の大きな方向性を変えるような株の取得について、この株の取得が、経営に大変関心があって経営の方向を変えるんだというようなことでは一歩譲って了としたいところがあるわけでありますけれども、短期的に株価をつり上げてこれを売り抜けるといったことで、この企業また企業の従業員また周りの利害関係者に大きな迷惑をかけるというようなことについては、私は大変問題であると。ですから、そういうことも念頭に入れた法の運用のしぶりをお願いいたしたい、このように強く申し上げたいところであります。

 それで、次でありますけれども、きょうの朝の報道、NHKにも出ておりましたが、新聞報道でも出ておりました中央青山監査法人の問題であります。カネボウの粉飾事件が契機で、担当の公認会計士が起訴事実を全面的に認めたというような報道がなされております。それで、どうも金融庁は処分を考えておるのではないかというような報道がきょう出ておったわけであります。

 そもそも、この中央青山監査法人というのは四大監査法人のうちの一角を占める大きな監査法人であります。公認会計士が一千六百名を超える、会計士補を含めますと二千五百名を超えるというような大世帯の監査法人であり、上場企業が八百社を超えるというような大監査法人であります。それで、この行政処分が行われた場合には数カ月業務停止になるんではないか、このように言われておるわけでありますけれども、このようになりますと、監査契約をすべて一たん解約をして、業務停止後にまた新たに契約を結び直す、こういうようになるわけでありまして、この監査法人だけの問題ではなくて、監査を受けている上場企業にも多大な影響が出てまいるわけでございます。

 現状の中で、金融庁、今どのように考えておられるのか、確たるところはまだ言えないのかもわかりませんが、今の方針についてお伺いをいたしたいと思います。

与謝野国務大臣 刑事事件につきましては、公判が進行中でございますから、私から何もコメントすべきことはございません。

 ただ、粉飾決算にかかわったということに関しましては、それなりの処分というものはあり得るわけでございます。ただ、処分という社会的制裁と、処分を行うことによります経済社会的な混乱というものをやはり比較考量しながら、どこまでが適正な処分であるかということも、今先生が言われたようなことも拳々服膺しながら考えていかなければならないことであると思っております。

谷口(隆)委員 今の段階では大臣もなかなかそれ以上の御答弁できないんだろうと思いますが、いずれにいたしましても、先ほど申し上げた、経済界に与える大きな影響もございます。そういうこともございますので、十分そのところを御配慮いただいて、大きな立場で行っていただきたい、そういうように強く望むものであります。

 次に移りますが、今回のこの法案についてお伺いをいたしたいと思います。

 英国の金融サービス市場法というのがありますが、今回のこの法案は、貯蓄から投資への流れを促進するということで、投資家保護法制について、従来縦割りの業法となっておったものを、だれが行うかということではなくて、むしろ何を行うかという機能面に着目をし、横断化また柔軟化をした法案だというようなことなんだろうと思います。

 それで、世界の中でやはり一番進んでおると言われておるのが、今申し上げました英国の、二〇〇〇年に成立をいたしました金融サービス市場法、FSMA、こういう法律が言われておるわけであります。金融市場を内外の金融サービス業者にとって魅力のあるものにするということについては、自由な市場を維持しなければなりませんが、それと同時に、公正の確保の手段を整備し、一貫性のあるわかりやすい法体系をつくり上げていく必要があるということであります。

 それで、冒頭お話をいたしました英国の金融サービス市場法と現下審議をされております金融商品取引法、比較の上で大きく異なっておる点を述べていただきたいと思います。

三國谷政府参考人 御指摘のとおり、イギリスで二〇〇〇年に制定されました金融サービス市場法は、銀行法や保険会社法等も統合いたしまして、ほぼすべての金融サービスを単一の法的枠組みに取り込んだものと承知しております。

 具体的には、イギリスの金融サービス市場法は、その規制対象商品を投資物件といたしまして、株式、社債、国債等の証券、証書や集団投資スキーム持ち分のほか、保険契約や預金等を含んでおり、また、その規制対象業務にも預金の受け入れ業務等を含んでいるものと承知をしております。

 一方、今回の私どもの法案でございますけれども、ここは、現行の証券取引法を金融商品取引法に改組する中で、一つは、いわゆる集団投資スキーム持ち分が包括的に有価証券の定義に含まれるよう規定を整備し、また、デリバティブ取引の定義に、有価証券以外の資産、これも原資産とするものとするなどの措置を講じ、規制対象の拡大を図っているところでございます。

 なお、預金や保険につきましては、銀行法、保険業法等におけます販売、勧誘ルールが適用されているため、金融商品取引法の直接の規制対象とはしておりませんが、同じ経済的性質を有する金融商品には同じルールを適用するという基本的な考え方のもとで、外貨建て商品や変額商品など投資性の強いものにつきましては、銀行法及び保険業法等において、金融商品取引法の販売、勧誘ルールを準用いたしまして、規制の同等性を確保することとしているものでございます。

谷口(隆)委員 詳細なことは今三國谷局長がおっしゃったようなことがあるんだろうと思いますが、私が申し上げておるのは、英国の、二〇〇〇年に成立をした金融サービス市場法と言われるものは、いわばフレームワーク法ということで、現実には、金融サービス業者の具体的な行為規制は全面的にFSA、英国の金融庁が定めるルールにゆだねられておるわけであります。包括的に、また横断的に網をかけるといったような場合にはこのような方式がむしろ望ましいと思われるわけであります。

 このような観点で、今回の法規制がそこまでいわば至らなかった、先ほど局長がおっしゃったように、具体的に、個別に、対象の品目だとか分野だとか、これを規制を行うということではなくて、むしろ、抽象的な言いぶりでの基本法をまずつくり、それを金融庁の業務の中で定められるルールに基づいて行っていくというようなことになりますと、すべてが包括的に行えるというように思うわけでありますけれども、そこまで至らなかった理由を御答弁お願いいたしたいと思います。

与謝野国務大臣 先生御指摘のように、イギリスの金融サービス市場法は、まず第一には、預金、保険等を含む幅広い金融商品・サービスを包括的に規制対象にする一方、第二には、規制内容の詳細については、法律で定めるのではなく、金融サービス機構、FSAに広範な規制制定権限を認めている、そういうふうに私どもは理解をし、承知をしております。金融商品・サービスの販売、勧誘に際して業者が遵守すべき行為規制も、基本的には、法律レベルではなく、FSA規則によって定められているものと承知をしております。

 一方、我が国においては、国民に義務を課し、また国民の権利、自由を制限する規制を設ける場合には、基本的には国会に議決をいただき、法律によって定めるべきものと考えられており、したがって、今回の金融商品取引法でも、業者が遵守すべき行為規制を含め、具体的な規定をしっかりと整備させていただいているわけでございます。

谷口(隆)委員 そうなんですね。まさに大臣がおっしゃるように、具体的な行為を規定いたしておるわけでございますので、そのあたりで、国会承認の問題も今あるということでございましたが、私は、どうも一歩劣っているような気もしないこともないわけであります。これからの金融行為は大きく変容するだろうと思いますし、いろいろなところも、いろいろな商品も出てくるだろうと思うわけでありますけれども、そのようなことも含めまして、将来の動きも含めて、大きく包含するというような法体系の方がむしろ望ましいというように思うわけであります。

 それで、次に移りますが、マーケットアビューズ規制、これは金融市場の機能を阻害する行為をマーケットアビューズと申しますが、英国の金融サービス市場法はこのマーケットアビューズ規制を設けておるわけでございます。これは、具体的に申し上げますと、情報の誤用であるとか、虚偽または誤解を招くような印象のある行為だとか、また市場の歪曲であるとか、このような行為に対しまして制裁的な対応をいたしておるわけであります。

 一方、我が方のこの法案につきまして一体どうかと申し上げますと、これは前回の議員立法で行ったわけでありますけれども、課徴金制度が制裁的な意味合いで導入をされたわけであります。私もこの提案者の一人で、課徴金制度を検討したものでありますが、現在の課徴金制度は独禁法の問題等々も絡んでなかなか難しいところがございまして、不当利得の返還というところでとどまってしまうわけであります。それを制裁的な意味というような観点で見ますと、不当利得にプラスアルファをするようなものがなければ、これは制裁的な意味合いにはならないわけであります。

 ですから、そういう意味で制裁的な意味合いが我が方の法律では薄いというところが言えると思いますが、このようなことについて御見解をお伺いいたしたいと思います。

与謝野国務大臣 イギリスの場合は、市場不正行為に対する制裁金について上限額の定めがない、具体的な金額については、金融サービス機構が違法行為の深刻さ等の諸要素を総合勘案し決定することとなっております。

 日本における課徴金制度につきましても、一昨年の改正で導入され、また、その金額水準として利得相当額の金額を法定しているところでございますけれども、課徴金制度の金額水準については、抑止力として不十分ではないかという議論があることは十分承知しております。

 特に、本年二月の公明党金融問題調査委員会の申し入れにおいても、課徴金制度について「その活用状況等も踏まえつつ見直しを検討すべき」との御指摘をいただいているところでございます。こうした御指摘のほか、昨年の証券取引法改正において継続開示義務違反を新たに追加した際、おおむね二年を目途として、課徴金に係る制度のあり方等について検討を加える旨が規定されていることを踏まえ、市場の公正性、透明性を確保する観点から、課徴金制度のあり方等については、さらに検討してまいりたいと考えております。

谷口(隆)委員 大臣がおっしゃっていただきましたように、やはりこのようなマーケットアビューズに対する規制をしっかりとしていかなければなりません。ルールをしっかりと決めて、そのルールの中では自由にやっていただくということですが、ルールをはみ出したような場合、また市場を混乱させるような場合、これについてはしっかりとした制裁を設けるという断固たる措置を講じなければいけない、このように思うわけであります。

 そういうことで、今後この課徴金の問題はまた議論になってくるんだろうと思いますが、やはり制裁的な意味合いの強い課徴金制度をつくり上げるのに、議員立法で前回は行いましたけれども、金融庁におかれましてもそういう観点での対応、これをぜひお考えいただきましてやっていただきたいということを申し上げまして、時間が参りましたので、これで終わらせていただきたいと思います。

小野委員長 以上で谷口君の質疑を終了いたします。

 引き続きまして、長安豊君。

長安委員 長安豊でございます。

 証券取引法等の一部を改正する法律案につきまして御質問させていただきます。広範な法律でございますので、財務報告に係る内部統制について重点的に御質問をさせていただきたいと思っております。

 ただいまルールと制裁というお話がございましたけれども、いかにルールを守るように体制を構築しているか、またそれを監視しているかというのが今回の法律、内部統制の部分に当たるのかなと思うわけであります。

 今般のこの法改正によりまして、従来までは財務諸表の監査というものが行われていたわけですけれども、それだけではなくて、内部統制に関しても監査人が関与するということになったわけでございます。監査を厳しくすれば不正が、不正といいますか、不正やそういった見逃しというものの確率が減ってくるというのは当然でありますけれども、一方で、不正がゼロになるわけではないのは予想されるわけであります。そういう意味では、監査の手続の追加、またこういった厳格化によって、企業が少なからぬコスト的な面で、また手間という面でも負担を強いられるということは予想されるわけであります。

 そういう意味では、コストに見合うだけの効果が得られるのかということが重要になってくると私は考えておりますけれども、こういった財務報告に係る内部統制の強化に関しまして、今回の法改正に盛り込むこととなった背景、また意義についてまずお伺いしたいと思います。

与謝野国務大臣 背景でございますけれども、ディスクロージャーをめぐる最近の不適切な事例については、開示企業における財務報告に係る内部統制が有効に機能していなかったのではないかとの指摘がなされているところでありまして、ディスクロージャーの適正性を確保していくためには、財務報告に係る内部統制の強化を図っていくことが重要と考えております。

 こうした観点から、本法案の中で、上場会社に対し、財務報告に係る内部統制の有効性に関する経営者の評価と公認会計士による監査を義務づける措置を設け、財務報告に係る内部統制の強化を図ることとしたものでございます。

長安委員 ありがとうございます。

 今回、この法改正というのは、今お話ございました内部統制がうまく働いていなかったというような不祥事があったことも一つ起因しているということだと思います。また一方で、米国の企業改革法ですか、米国SOX法の影響もある程度受けたのではないかなと思いますけれども、これも、米国で一部企業の粉飾決算というような問題があったわけでございます。

 まず、そういう意味では、米国のSOX法の概要をお伺いしたいのと、また、このSOX法が制定されたことによって、どのような利点あるいは問題点があったのか、どう評価しているのかということをお伺いしたいと思います。

三國谷政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、エンロン事件などの不正会計事件を背景といたしまして、アメリカにおきまして二〇〇二年七月に企業改革法、これがSOX法でございますが、成立いたしました。ここにおきましては、企業責任の強化、それから監査人の独立性の強化、もう一つは、会計事務所に対します監視体制の強化、こういったことを内容としているものでございます。そのうち、企業責任の強化の方策の一つといたしまして、財務報告に係る内部統制の有効性につきまして、経営者の評価と公認会計士による監査を求めているものでございます。

 企業改革法におけます内部統制報告制度の導入をめぐりましては、アメリカにおきまして、経営者の意識改革、投資家の財務報告への信頼性の向上、業務の効率性の向上等に資するものであるとの評価があるものと承知しております。一方で、同制度につきましては、評価、監査にかかりますコストが過大になっているとの指摘もございます。

 現在、私どもは、企業会計審議会内部統制部会におきまして、評価、監査の基準のあり方等について検討を行っているところでございます。法案を今御審議いただいているわけでございますが、お認めいただきました際には、制度の施行までにはさらに検討を重ねていきたいと思っております。その際には、先行して導入されましたアメリカにおけます制度の運用の状況、こういったものも検証し、評価、監査の有効性が確保される前提のもとで、コスト負担の観点にもできる限り配慮してまいりたいと考えているところでございます。

長安委員 今回法律案が出されているわけでございますから、ちょっと今の、アメリカでの施行状況を検討してというのは遅いのかな、逆に、もう検討した結果こういう案を出しているんですよというお答えをいただかないと、今後負担を強いられるような企業にとってみると、どうなるのかなという不安にさいなまれてしまうのかなと思うわけであります。

 次の質問に入りたいと思いますけれども、今回の法改正によりまして、有価証券報告書の記載内容の適正性に関する確認書というものを会社の方から出すことが義務化されるわけでございます。現在までは任意の制度でございました。

 義務化されることによって、当然、企業側としますと、この内部統制に関して、みずからの責任において対応が促されていくのではないかと思うわけです。一方で、今回の法改正では、さらに踏み込んで、内部統制報告書の作成と、また、公認会計士または監査法人の監査証明という厳しい手続を課すということになっておりますけれども、これはどうしてなのか。つまり、それほどまでに日本の企業の財務諸表に関する内部統制というのに問題があるという認識なのかどうか、お伺いしたいと思います。

櫻田副大臣 財務報告に係る内部統制の強化を図っていくに当たっては、御指摘のように、各開示企業の経営実態に応じた適正な開示に向け、おのおのの開示企業みずからの取り組みが最大限確保されていくことが重要であると考えておるところでございます。

 一方で、適正なディスクロージャーを確保するために、開示企業における内部統制の強化が重要な課題になっているところであり、これを確保するためには、これら各企業の取り組みに加え、経営者による内部統制の評価と第三者による監査について、ある程度、各企業共通の制度的な枠組みが必要であると判断したところであります。このため、今般、本法案の中で、上場会社に対し、財務報告に係る内部統制の有効性に関する経営者の評価と、第三者である公認会計士が行う監査、内部統制監査を義務づけることとしたものでございます。

 いずれにせよ、このような制度的枠組みのもとで、開示企業においては、財務報告に係る内部統制の強化に向けてみずから積極的な取り組みを進めていただくことを期待しておるところであります。

長安委員 おっしゃるとおり、監査を厳しくする、新たな制度を導入することによって当該企業の財務の健全性、内部統制を監視できるようになるわけでありますけれども、本来、そういった内部統制というものは、企業が独自でみずからの責任のもとにやり、また、これはある意味企業の戦略の一つの柱ではないのかなと私は考えております。

 そういう意味では、内部統制のやり方というのは相当程度の自由度があってしかるべきかなと私は考えておるわけでありますけれども、今回、この財務報告に係る内部統制の範囲が余りにも不明確で、本来、財務報告に係る内部統制といたしますとBS、PL、キャッシュフロー等だけに限定されるのか、その辺が不明確であるために、企業からしてみると、余りにもコストが大きくなってくるのではないかというふうに私は考えるわけであります。

 この範囲について、具体的に、また、わかりやすく御説明を賜りたいと思います。

三國谷政府参考人 今般、導入を提案させていただいております内部統制報告制度でございますが、これは、適正なディスクロージャーの確保という観点から、企業の内部統制の中でも財務報告に係る内部統制、ここに焦点を絞りまして、経営者による評価と監査人による監査を求めるものでございます。財務報告に係る部分を超えまして企業が内部統制の仕組みを整備することにつきましては、これは評価、監査の対象とはしていないところでございます。

 次に、この内部統制報告制度に係ります基準等のあり方につきましては、昨年十二月に企業会計審議会内部統制部会報告におきまして、財務報告に係る内部統制とは、財務諸表及び財務諸表の信頼性に重要な影響を及ぼす開示事項に関する内部統制とされているところでございます。

 この財務諸表及び財務諸表の信頼性に重要な影響を及ぼす開示事項の範囲につきましては、個々の企業の置かれた状況などに応じまして個々の企業ごとに判断される面があるものと考えておりますが、御指摘の点も踏まえまして、今後、可能な限りその明確化が図られるよう、実務上の指針等の整備に努めてまいりたいと考えているところでございます。

長安委員 ぜひこれは具体的に、本当にわかりやすい指針をつくっていただくということをしていかないと、本当に企業経営者の方からしますと、どこまでを内部統制と呼ぶのか、これは不安になるわけであります。報告書、確認書を出すわけですけれども、一歩間違えば、これが経営者にとってみると無限の責任を負うようなことになってはならないわけですから、ぜひよろしくお願いいたします。

 一方で、先ほどお話ししました米国のSOX法に関してですけれども、SOX法で義務づけた内部統制評価のために、大企業の中には、例えば十億円を超えるようなコスト、負担増があったというような報告もされておりますし、また、対象企業全体では平均五億円程度のコストをかけているというような情報もございます。

 これは、日本の内部統制報告書では、IT対応の部分についても踏み込みなさいというようなことが言われておりますけれども、これは、先ほどもお話ありました、財務にかかわるところといってくると、ITの部分も実は含まれてくるのではないかと私は思うわけです。

 単純に会計のお話をさせていただきますと、昨今の企業では、売り上げが上がればパソコンで入力するわけですよね。パソコンで入力したときに、当然決算につながっていくわけですけれども、その途中の段階で、どこまで改ざんができない仕組みなのか、また、改ざん等があったときに、ログ等で足跡が残るような仕組みになっているのかということまで含まれてくると、当然、IT投資だけでも膨大なコストがかかることが予想されるわけであります。

 おまけに、今回、公認会計士等への報酬が増大するであろうとも見込まれる。また、この内部統制自身が、指針が出てもどうしたらいいのかわからないという企業が大半だと思います。そういう企業はコンサルティング会社にコンサルティングを依頼する、当然そういう費用も発生してくるわけであります。

 アメリカでは、こういった費用に耐えられないということで、上場をやめる、つまり非上場を選択するという企業も出てきているわけであります。これは逆に言うと、こういった監視が重くなり過ぎた結果、ある意味市場の活力が失われてしまうというような悪循環というのも可能性としては残るわけであります。

 そういう意味では十分な配慮というのが必要かなと思うわけでありますけれども、こういった企業のコスト負担の増加について、金融庁さんはどのぐらいのお見積もりをされておるのか、また、負担を軽減するそれなりの措置というのをどのように講じていこうと考えておられるのか、お伺いしたいと思います。

三國谷政府参考人 財務報告に係ります内部統制に関します経営者による評価と公認会計士の監査、これを実務に適用していくためには、企業などにおきまして体制の整備などの準備が必要でございまして、企業等に相応のコスト負担が必要となることは御指摘のとおりかと思います。

 その際のコスト負担の具体的な額につきましては、これは企業の内部統制の整備状況等により異なると考えられますことから、その額を見積もることは困難でございますが、一般論として申し上げまして、過大なコストというのは、ひいては投資家の収益の低下にもつながるものでございまして、経営者による評価と監査を実務に適用していくための基準などの策定、整備に当たりましては、こうした点にも十分留意していく必要があると考えております。

 こういった点を踏まえまして、昨年十二月の内部統制部会報告でございますが、ここでは、先行して制度が導入されたアメリカにおきます制度の運用の状況、これも検証いたしまして、コスト負担が過大とならないための方策といたしまして、一つはトップダウン型のリスクアプローチ、二つ目は内部統制の不備の区分の簡素化、それからダイレクトレポーティングというものの不採用、四点目といたしまして内部統制監査と財務報告監査の一体的実施、五点目といたしまして内部統制監査報告書と財務諸表監査報告書の一体的作成、六点目といたしまして監査人と監査役、内部監査人との連携といった提言がなされているところでございます。

 こういった具体的な評価、監査手続等の詳細につきましては、こういった提言を踏まえまして、これから御指摘の点も十分踏まえまして、引き続き検討を進めてまいりたいと考えております。

長安委員 これは、本当に監査法人等の監査証明等も考えたときには、これから走り出すわけです、どこまでをやるのかというのは今の段階では具体的に見えていないというのも事実だと思いますけれども、企業の負担が余りにも重くなり過ぎないような配慮というものをぜひ御検討いただきたいなと思うわけでございます。

 一方で、こういった内部統制の強化をしていくということは、投資家にとっては立場は複雑だと私は考えるわけであります。財務諸表の健全性というか信頼性が顕著に改善するのであれば当然プラスになる、しかしながら、本来、上場しているような企業が出すような財務諸表というのは、信頼性があって、正しいものであって当然なわけなんです。

 今回、不祥事があったというお話でございました。もう特定の企業名は避けますけれども、数社のいわゆる不届き者のせいによって、ほかのまじめにやっている企業がすべて負担を強いられるというのは、ある意味いかがなものかという考えもあるわけであります。

 投資家にとってみれば、そういった企業に対しては、そんな内部統制のためにもうこれ以上お金を投資してくれなくてもいい、もっともうかる分野に投資してくれ、あるいは会社のROIが上がるような分野にお金を使ってもらった方がプラスになる。あるいは、もっと直接的には、そんなお金があったら配当してくれ、そこまで考える方も当然出てくるわけであります。

 そういう意味では、私は内部統制を否定しているわけではございませんけれども、重要性というのは当然ありますけれども、ある程度範囲を絞り込んだ形でステップを踏みながら導入していくというのが実務上は必要ではないのかなと私は考えております。

 おまけに、今回、この内部統制の監査に関しては、公認会計士、監査法人、今、一体的に行うというようなお話がございましたけれども、一体的に行うから具体的な事務量、仕事量がふえないのかというと、当然ふえるわけであります。現状の公認会計士の数、また監査法人の数を見たときに、サプライサイドの制約もある程度あるのではないかと思うわけでありますけれども、そういう意味では慎重な運用が大切だと思いますが、今後、どのような導入のプロセス、対応を予定しておられるのか、お伺いしたいと思います。

三國谷政府参考人 プロセスでございますけれども、財務報告に係ります内部統制の有効性に関します経営者による評価と公認会計士の監査、これを実務に適用していくためには、この評価や監査の基準それから実務指針が策定されますとともに、企業や監査人におきまして体制の整備など相応な準備期間が確保される必要があると考えているところでございます。内部統制報告書制度につきましては、こういったことから、平成二十年四月以降に始まる事業年度から適用することを考えているところでございます。

 この財務報告に係ります内部統制の評価、監査に関する基準などのあり方につきましては、これは先ほどもお答え申し上げましたが、企業会計審議会内部統制部会において検討を行っていただいているところでございます。法案、現在御審議中でございますが、これがお認めいただけますと、最終ステップに向けまして、御指摘の点も考慮しながらさらに検討を深めてまいりたいと考えているところでございます。

 いずれにいたしましても、この内部統制につきましては、やはり企業がその会社の財務報告につきまして適正な管理をしていく、そういったことから、そういった企業の財務報告の信頼性、それから御指摘いただきましたようなコスト等、こういったものを全部勘案しながら適切な制度を構築してまいりたいと考えているところでございます。

長安委員 ありがとうございます。

 今、内部統制に関する監査というお話をさせていただきましたけれども、いわば財務報告の作成のプロセスの適正性というものを今後評価するものになるわけです。そういう意味では、今までの公認会計士あるいは監査法人が行っていた財務諸表の監査というところからは、ある意味大きく一歩踏み出すことになるわけであります。

 こういう新しい分野を与えるといいますか、与えるに当たりまして、公認会計士の質であったりまた量というものが当然充実されなければなりません。そのために現在どのような具体策を考えられているのか、お伺いしたいと思います。

櫻田副大臣 現行の監査基準において、公認会計士は監査計画の策定及び監査の実施段階において企業の内部統制の整備及び運用状況を評価しなければならないこととされており、今般の制度の導入がこれまでの監査の基本的枠組みを大きく変更するものとは考えておりません。

 一方で、今回の法案による措置が円滑かつ適切に実施されるためには、公認会計士の質、量両面での充実が必要であることについては御指摘のとおりであり、しっかりとした対応が必要であると考えております。

 このため、まず、内部統制監査に関する基準や実施指針のあり方につきましては、企業会計審議会内部統制部会において検討を行っていただいているところでありますが、法案をお認めいただいた際には、内部統制報告制度の施行までに適切な内部統制監査が実施されるよう、さらに検討を深めていく考えであります。

 その上で、これらの基準等も踏まえ、制度の施行までに監査法人等の内部において内部統制監査のための体制の整備など相当の準備が行われるとともに、日本公認会計士協会が実施する継続的専門研修などを通じまして内部統制監査に対する研修等が実施されていくものと考えているところでございます。

長安委員 中央青山監査法人の業務停止命令というのがきょうの朝刊にも出ておりました。先ほども御指摘ございました。監査法人がいかに適切に監査を行っていくかということが一番重要であります。やはり、不祥事を見てみると、監査法人までもが一緒になって不祥事を起こしている。これはやはり、罰則ということで減らせる部分もあるでしょうし、また、必要なのは、具体的な監査の指針をつくってやる、また監視をしていく、また教育をしていく、こういったことすべてが組み合わさって初めてシナジー効果となって不正を減らしていけるのかなという気がいたします。そういう意味では、ぜひ今後とも、そういった監視についても、金融庁の方、取り組んでいただきたいなと思うわけでございます。

 続きまして、金融経済教育についてちょっとお伺いしたいと思います。

 昨今、マスコミ等でも、貯蓄から投資へというような言葉が叫ばれます。これは大きな流れになっていると思います。実際、国民の金融資産、一千四百兆円と言われておりますけれども、これが貯蓄からリスクの高い投資というものに回っていっているというデータももう出ているわけであります。

 一方で、多くの国民の方々は、金融に関する知識を、ある意味、平等に享受できるような機会に恵まれたかというと、必ずしもそうではないと感じるわけであります。現在、インターネットの普及、IT技術の振興によりまして、ネットで株を取引するというようなことも普及しております。こういった金融の知識が全くないまま、全くというかほとんどないまま、ギャンブル感覚でそういったネットトレーディングというようなものを行っている方も少なくないわけであります。景気回復期、株価の上昇期、こういうときには問題は明らかになってこない、顕在化しないわけでありますけれども、市場動向によっては当然これは大きな問題をはらみかねないと私は懸念しております。

 やはり、株式投資というと、原則は当然自己責任の世界ではありますけれども、これまで教育を受けてこなかった方にいきなり理解しろといっても、それはなかなか酷な話ではないのかなと思うわけであります。これまで、税制等を見ましても、やはり貯蓄から投資へという流れを後押しするような政策が中心であります。結果として投資家のすそ野が広がったということは当然いいことでありますけれども、その反面、先ほども申し上げました、素人のような個人投資家が頻繁に株式を売買してリスクマネーに貯蓄、自己資金をつぎ込むということは、ある意味、私は、この急激な進展は異常ではないのかなと思うわけであります。

 先般も、この委員会におきまして、東証、野村証券等を視察に行かせていただきました。そのときに、金融教育というのに取り組んでおられるという話を野村証券の古賀社長の方からお話があったかと思います。私もテキストを読ませていただきましたけれども、そういった教育は本当に今まで欠けていたのかなという気がいたします。昨今話題になっている方なども、子供のときに突然親から百万円を渡されてこれで株をやってみろということで、自分で訓練を積まれたということだと思います。私なども、若いころに、もちろん今もまだ若いんですけれども、若いころに株をしたことがございます。書籍等を斜めに読んで株式を取引したものの、実は、株、金融のことに詳しくなったというよりも、一種のギャンブルを楽しんだというのが私の自己の回想であります。

 そういう状況にあって、現在のような多くの方が株式に投資、自己資金をつぎ込んでいるという状況を、金融庁としてどのようにとらえておられるのか、お伺いしたいと思います。

与謝野国務大臣 全体として、貯蓄から投資へ、こういうスローガンはございます。

 今、日本の家計の金融資産構成比というのを見ますと、株式、投資信託で一〇・九ですから約一一%、現金、預金として大体五二%持っておりますから、日本の家計の主流はまだ貯蓄であると私は思っております。

 委員が御懸念のように、投資という場合には、やはり相当な知識を持っていなければなりません。商品知識を持っていなければなりませんし、一方では、例えば株に投資する場合には、会社の方が正確性の高い、真実性の高いディスクロージャーをしていなければならないということもあります。それから、投資を勧誘する業者、この人たちも、きちんとした説明を投資家たちにしなければならない。リスクの大きさ、元本の保証があるかどうか、それからリターンの大きさ、こういうものをきちんと説明しなければならないと思っております。

 また、金融庁としては、インチキ投資がたくさんあるわけでございまして、一時期、外国為替の証拠金取引というような、全くその実体のない投資勧誘をやる会社がたくさん出てきたとか、こういうものはやはり排除していかなければなりません。

 したがいまして、貯蓄から投資へというときには、いろんな条件がそろっていなければなりませんし、やはり自分の責任で、少しリスクは高いけれどもリターンも大きいところに投資をしてみようかな、こういう気持ちに個人個人になっていただかないとそういうことにはならない。それの環境整備は、やはり金融庁が中心となって、法律を整備し政省令等を整備して投資家を守る、そのことが私は大事なことであろうと思っております。

 ただ、貯蓄から投資へといったときに、やはりお金が経済社会全体に適切に配分される、資源が有効に配分されるという部分からも物を考えなければいけないわけでして、ある意味では間接金融から直接金融の世界に移るための大事なステップというふうに考えてもいいのではないかと私は思っております。

長安委員 まさに、間接金融から直接金融へ、これが貯蓄から投資であります。経済の活性化のためにやはりある程度の投資が必要なんだという専門家の御意見も当然あるわけであります。私も、昨日、金融庁の方とレクをしたときにお話をさせていただきました。

 さはさりながら、貯蓄をされていても、それはあくまでも金融機関に預けられている。それが当然、郵便局の場合は今までは財投という形、銀行等の金融機関に関しては融資という形で間接金融が行われていたわけです。それが、逆に言うと、今株式投資されているような形できめ細かな融資が行われていれば、経済の活性化は同等に行われるはずであります。

 そういう中にあって、当然、金融機関の企業に対する評価といいますか、あるいは業界、産業に対する知識不足というものがあるのかなと私は思うわけであります。

 従来まで、金融機関が融資をするときには当然与信というものを行っていた。私、大学を卒業して商社に入ったわけですけれども、商社におりますと、一番最初に学ぶのが与信であります。与信というのは何か、信用を与えるんだということを習うわけであります。一方で、バブル崩壊前の日本の金融機関を見たときに、何をしていたか、果たして与信ということが正常に行われていたのかというと、実はそうではなくて、ただ単に、土地のような担保をとって、それに対して貸すだけ。はっきり言って、ノウハウも何もないんじゃないかという気が長年しておりました。

 私の後輩なども、立派に大学を出て金融機関に入ったにもかかわらず、何をしているのかというと、担保の土地の写真を撮りに行っている。そんなことをしている暇があったら、もっと産業のことを勉強するなり企業のことを勉強して、きめ細やかな金融というものを行えるようなノウハウづくりを本来しなければならないんじゃないかということを痛感したことがございました。

 今、株式に投資をされると当然企業にお金が回るわけでありますけれども、問題は、投資家の方は、企業に投資をしているという認識を持ってやられている方は少ないと私は思うんですね。要は、株には投資をしている、でも、その株というのはあくまでも、企業側に流れているというよりも、また株を売ったら自分にお金が戻ってくるから、株までしか見えていない。結果、株に投資するときにはチャートを見て、今、上げトレンドなのか下げトレンドなのかということだけが判断基準になっている。もちろん財務諸表も評価基準の一つにはなっているでしょうけれども、あくまでも、その会社が将来的に成長してほしいから、この株を買うことによってお金を供給しているんだという認識を教えるということが金融教育の基本ではないのかなと私は思うわけであります。

 そういう意味では、初等中等の教育においての金融経済教育というのが不足していると私は思っているわけであります。いわゆる勝ち組といいますか、お金持ちになられた方を悪く言うつもりがあるわけではございません。しかしながら、経済社会の仕組みとして、お金を稼ぐことの意味、あるいは経済人としての倫理というものをしっかりと教え込んでおく、教育しておかないと、堀江さんのように、お金の稼ぎ方あるいは使い方を誤られる方というのも当然出てくるでしょうし、また、報道もされましたけれども、そういった方をあがめてしまうというか尊敬してしまうというような社会になってしまうというのは、これは大問題であります。

 本法案では、金融経済教育の担い手として、いわゆる自主規制機関を想定しているわけでありますけれども、それでは金融経済教育の中立性、最も大切な、先ほど申し上げました倫理観というようなものを日本人の中に伝える、あるいは教えることができるのかなという気がするわけであります。すぐれた経済観、倫理観を持つ日本人を育てることは、これは国家にとっても十年、二十年かけて全力で取り組んでいかなければならない問題だと私は考えております。

 そういう意味では、教育に関しても、人、物、お金とよく言いますけれども、しっかりと投資していかなければならない分野だと考えますが、御所見はいかがでしょうか。

与謝野国務大臣 金融教育といいますと、すぐ何か、お金でお金をもうけるというのがすばらしいことだというふうに教育しがちなんですけれども、私はそんなことはないと実際思っております。やはり、額に汗をして物やサービスをつくり出すということが社会価値を生んでいるわけでして、お金は昔から、しょせん物やサービスの交換手段でしかすぎないんだろうと私は思っております。そういう意味では、やはり経済の基本は何かということが金融教育の基本でなければならないと思っております。

 ただ、こういうふうに金融の世界あるいは投資の世界が複雑になっておりますと、一般の国民の方々、今まで投資に縁のなかった方々も、一定水準以上の金融知識というものを持った方が多分生活しやすいんだろうと私は思いますし、また、だまされなくて済むという側面もあって、そういう意味では、金融教育というのは、まず経済とは何かというその根本のところをやはりお教えするということが大事なんだろうと。それから、投資とか貯蓄に関するリスクとかリターンとか、そういう概念を持っていただくということが私は基本であると思っておりまして、ただ外形的に、株に投資しましょう、何に投資しましょうという表面的な教育というのはほとんど意味のないことだと私は思っております。

長安委員 まさにそのとおりだと思います。

 昔のことわざに、お金は天下の回りものということわざがございます。つまり、やはりお金に執着するのではなくて、今大臣からも、お金はあくまでも物を交換する手段、道具なんだというお話がございました。そういう意味では、お金を稼ぐこと、金融に対する倫理観を今後いかに教育の中に取り入れていくかということが重要であると思います。私からも、ぜひよろしくお願い申し上げたいと思います。

 これで終わります。ありがとうございました。

小野委員長 以上で長安豊君の質疑を終了いたします。

 引き続きまして、古本伸一郎君。

古本委員 民主党の古本伸一郎でございます。

 大臣におかれましては、連日の御対応、大変お疲れさまでございます。そしてまた、金融庁を初め役所の皆様も、本法案、重要広範議案ということで、これまで議論を進めてまいっておるわけでありますが、お答えをいただいておりますことに感謝を申し上げる次第であります。そしてまた、本日は法務省もお越しをいただいております。一方で委員会も立っておりますので、初めに法務省関連を少しお尋ねしながら議論を深めたいと思います。

 御案内のとおり、過日、堀江氏、容疑者と言った方がいいんでしょうか、が保釈をされ、一部報道によれば、一連のライブドア事案につきましてはもう終局ではないかという報道もなされておるわけであります。

 これまで、この委員会におきまして、私ども民主党といたしましては、証券取引委員会の必要性、これは、現在の監視委員会の機能を強化する必要性があるんじゃないかとお訴えをしてまいりましたし、過日は与党からも御質問をいただき、議論を深めたわけでありますが、残念ながら、強化する必要には当たらないという御指摘ではなかったかというふうに理解をいたしております。

 そういう中で、ライブドア事案が今回の金商法の改正とたまたま時を一にしておるという中にあって、少し示唆に富んだ部分がございますので、改めてひもときながら議論を深めたいと思っております。

 さて、そこでお尋ねをするわけでありますが、このライブドア事件の起訴事実によれば、いわゆるライブドアマーケティング株式会社の風説の流布について、監視委員会が告発をし、そして検察の方で今起訴に至っている。もう一つは、株式会社ライブドアに係る虚偽の有価証券報告書の提出の犯則事案。この二つに関し告発をし、そして起訴がされているというふうに理解をいたしておりますが、これは正しいでしょうか。

大林政府参考人 御指摘のとおりでございます。

古本委員 そういたしますと、この証取法百五十八条違反を初め、この二つの事案において、これから公判が予定されているというふうに伺っておりますので、三権分立でありますので、立法府からはとやかく申し上げられませんが、仮に有罪となれば、どういう罪が予定されるんですか。

大林政府参考人 御指摘の問題が有罪となれば、法定刑の御趣旨でございますか。上限が。ちょっとお待ちください。

古本委員 いや、これは通告していますからね。

 委員長にお許しいただいて、この間に資料もお配りをしたいと思いますが。

小野委員長 配ってください。

 よろしいですか。それでは、大林法務省刑事局長。

大林政府参考人 百九十七条によりますと、「五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」ということになろうと思います。

古本委員 では、仮に併科があった場合はどうなりますか。

大林政府参考人 通常の場合は、ここに書いてありますように、懲役または罰金ということでどちらかを言い渡す形になるわけですけれども、併科の規定がありますので、懲役を言い渡すと同時に罰金の言い渡しもできるという形になっております。

古本委員 つまり、保釈されて、部屋に戻られて、広いなとおっしゃったというふうに報道がありますね、堀江容疑者が。それは広いでしょう、六本木ヒルズのすごいお部屋で、広いなと。片や、二十何万人の個人投資家が、多分、奥様が小遣い銭で、ちょっとおもしろそうだと、御党の幹部まで一緒に手を握り合わせて、堀江君はいい青年だと言う中にあってですよ、きょうはその議論は余りやりませんが、それは思わず買っちゃった奥様もいる。いわゆる素人ですよ。そういう人から見れば、どういう思いでそれを眺めていたんでしょうかね。ビールおいしかったと言っておられましたね、報道によると。

 今法廷闘争はまだ始まっていないというふうに理解いたしておりますが、きょうは法務委員会立っておりますので、政務官にお越しをいただいております。

 資料の三の一をごらんいただきたいと思います。保釈をされた直後の閣議後の、何と法務の責任者でおられる、最高責任者です、杉浦正健氏はこうコメントされています。読み上げます。元気そうだ、若いし裁判をきちっとやってほしい、あの姿を見たら再起してもらえるのではないかという印象を受けたと。

 再起ってどういう意味ですか。まだ刑期が確定もしていない。有罪かどうかもわかっていない。なけなしのお金をつぎ込んだ投資家から見れば、一体何なんだこれはという思いであります。どういう意図を持って御発言されたか、御所見を伺います。

三ッ林大臣政務官 お答えいたします。

 御質問は、四月二十八日の閣議後記者会見における大臣の御発言に対するものでありますが、大臣は、記者から堀江被告人が保釈されたことにつきまして質問がなされたのに対し、裁判所の判断に関することであるのでコメントは差し控えると述べた上で、報道された保釈時の堀江被告人の様子を見て、思いのほか元気そうであり、また裁判が行われた後、再起されるのではないかとの印象を受けたとの一般的な感想を述べたにとどまるものと承知しております。

 したがいまして、同被告人に対する保釈の当否であるとか、有罪、無罪についてコメントをしたものではなく、先生のような御批判は当たらないというふうに考えております。

古本委員 一般論じゃないでしょう、これは。堀江さんについてどうかと聞かれ、再起してもらえるのではないかと。これは、再起ってどういう意味ですか。再び選挙に出てもらえるという意味ですか。それとも、再び上場企業の役員になれるという意味ですか。それとも、再びライブドアの経営に復帰をしていただけるんじゃないかということですか。再起の意味をお尋ねします。

三ッ林大臣政務官 この再起の意味に対しましては、大臣の発言でありますので、私が直接答えられる立場にはないと存じております。

古本委員 これは一般論でお答えいただいたというお話でありましたが、前後の文脈をきちっとごらんになった有権者といいますか視聴者の皆さんも含め、これはライブドアの個別の話にお答えになっているのは紛れもない事実であります。そして、こうやって、実は立法府にある人間が発言をすることによって司法に大きな影響を与え続けてきたのが今回の事案なんですよ。

 少しその例を引きたいと思います。

 ちなみに、資料の三の二もおつけしましたので、その前にごらんをいただきたいです。

 逮捕された当時に、総理、武部幹事長以下、このようにコメントをされておりまして、率直に言えば、おれたちもだまされたというタッチの趣旨で全体に言っておられました。

 一方、保釈時です。さすが、安倍さん、竹中さんは次をねらっておられるだけありますね。慎重ですよ。公判の行方を見守りたいと。余計なことを言っていませんよ。杉浦さんだけですよ。しかも法務大臣ですよ。これは意外とメディアも余りとらえていませんし、多分、先生方の中にもお気づきにならなかった方も多いかもしれませんが、あごが外れたというのはこういうのを言うんじゃないかなと私は思いました。

 このことを強く指摘しておきつつ、実はこのように立法府が一言言ったために司法に予断を与えた今回の事例をひもときたいと思っておりますが、資料の二の一をごらんいただきたいと思います。

 これは、当時、伊藤担当大臣が、昨年の二月八日にニッポン放送株をいわゆるToSTNeT1を、これは、当委員会といたしましても東証並びに証券会社の視察も参りましたので、当然、先生方お勉強していただいているという前提で申し上げますが、このToSTNeT1を使って時間外の市場内取引において取得した直後の記者会見であります。

 TOB制度、つまりは公開買い付け規制が形骸化するという懸念があるけれども、どうかという記者の尋ねに対し、当時、伊藤大臣はこう答えておられます。「ライブドアの公表された資料によりますと、立会外取引において買付けを行ったということでありますので、そういたしますとこれは取引所における取引に該当するということになりますから今御指摘のありました規制の対象とはならない」と言っておられる。

 では、この公表された資料というのはどれかというと、資料の四をごらんいただきたいと思います。これは、ライブドア社の当時堀江社長の名前で発表した「株式買付けに関するお知らせ」の資料であります。この資料の六です。「備考 ToSTNeT―1による時間外の市場内取引による買取りを実施いたしました。」

 これは、きょうは東証もお越しをいただいていると思いますが、ToSTNeT1というのは市場内のシステムなんですか、市場外なんですか。

深山参考人 まず、結論から申し上げますと、市場内取引でございます。

古本委員 これはそうなんですよ。当たり前の話なんですよ。ToSTNeT1というのは、東証が設置をしている、東証の中における時間外取引をするために用意したシステムなんです。したがって、これを使って取引をしましたということの事実だけをとらえれば、すぐれてこれは市場内で取引しておるわけでして、市場外には当たらないという主張を当時ライブドア社はなさっておられるんですね。

 ところが、これは、伊藤大臣は同時におもしろいこともおっしゃっておられるんです。いいことを言っておられる。二の二をごらんいただきたいと思います。これは、その後の委員会での質疑でありますが、昨年の四月二十日の当委員会での大臣の御答弁であります。

 これはToSTNeT1を利用しての取引に対しての言い方でありますが、伊藤大臣、「事前の合意が成立をしている、それが具体的にどういう場合かということなんですが、」ということで、「契約が成立をしているかどうかというところでありまして、契約が成立をしているということであれば、合意があって契約が成立しているということであれば、これは市場外の取引ということになるんではないかというふうに思います。」と。

 これは非常に大事なことを言っておられます。つまりは、事前に合意があれば契約は成立をしておると。そこまではいいですね、これは民法上の概念で、これは正しいと思います。事前に合意があった場合は、いかにToSTNeT1といえども、これは市場外に当たるという言い方の見解をここで示されているんです。

 だとすれば、これは金融庁にお尋ねします。

 二の一の資料に戻っていただきまして、二月十五日の会見のときにおいて、伊藤大臣は、ただ、このToSTNeT1というもの、立ち会い外取引ですが、使い方いかんによっては相対取引に類似した形態になり得ると考えられるところもございますので、規制の対象とすべきか否かについて今後検討していく必要があると。

 これは、八日の買い付けが行われてから営業日ベースでわずか四日後ですよ、祝日挟みましたので。もう伊藤大臣は既にここまでわかっていたんです。多分、事務方も大分レクチャーなさったんでしょうね。つまり、ToSTNeT1というのは、事前に契約が成立していたならば、これは市場外になるかもしれないということまで言っておられるのに、実は、この後の訴訟も含め、金融庁がお墨つきを与えたということを再三主張しています、ライブドアは。

 ここまで、一年前にちょっと戻らなきゃいけませんので、少し記憶の整理をしたいと思うんですが、伊藤大臣がこの当時、このように御発言されたことが司直に予断を与えて、司法の判断に予断を与えたのではないかと思うんですが、与謝野大臣、その懸念は当たりませんか。

与謝野国務大臣 日本の司法制度、検察、裁判所というのは、そんなやわなところではございませんで、立法府の者が何を言おうが、あるいは政府の者が何を言おうが、やはり法と証拠に基づいて判断をするという歴史を検察も裁判所も私は持っていると思っております。

古本委員 資料の十四をごらんください。東京地裁と東京高裁のニッポン放送の新株予約権の発行の差しとめ、これを仮処分の申請をしたライブドアが勝訴したときの決定の文書であります。(1)番が東京地裁の方、(2)番が東京高裁であります。

 東京地裁の仮処分決定の文意によれば、本件ToSTNeT取引は、東証が開設する有価証券市場における取引であり、証取法上の取引と認められる、つまりは市場内取引である。これは伊藤大臣の最初の御発言のままじゃないですか。与謝野大臣、いかがですか。

与謝野国務大臣 私は、この取引が行われたときに、自民党の政調会長をしておりまして、時間外取引でこれだけの大量の株が一瞬のうちに成約されるというのは不自然だなということを感じておりました。これは、場合によってはTOBのいろいろな規則というものが不十分ではないかなという印象を実は持っておりました。

 そういう印象を持っておりまして、東京地裁、東京高裁と二度にわたって仮処分に対する判断が示されまして、その判断を読みますと、ああ、こういうふうに物を考えるのかなというふうに私自身、納得をしたわけでございます。

 この東京高裁の決定は、本件ToSTNeT取引は、東京証券取引所が開設する、証券取引法上の取引所有価証券市場における取引であるから、取引所有価証券市場外における買い付け等には該当せず、取引所有価証券市場外における買い付け等の規制である証券取引法二十七条の二に違反するとは言えない、売り主に対する事前の勧誘や事前の交渉があったことが確認されるものの、それ自体は証券取引法上違法視できるものではなく、売り主との事前売買合意に基づくものであることを認めるに足りる資料がないことから、この点の証券取引法違反という主張は、その前提において失当である、高裁はこういうふうに判断をしたわけでございます。

 しかし、党としては、やはりこういうものは、TOBの規則をきちんとしておかなきゃいけないということで、立法府におかれまして、証取法の改正がなされたものと私は承知をしております。

古本委員 今大臣が読み上げていただいたのは高裁の決定ですね。これは、大事なことが一つ抜けているんです。これは何かというと、二十七条の二の公開買い付け規制に対して、単独では判断していないんです。つまりは、ライブドア社による、ニッポン放送社による新株予約権発行つき転換社債の発行差しとめの仮処分を判断するに当たっての材料としては足りないということを言っているわけで、二十七条の二を単独では実は東京地裁も高裁も判断していないんですね。

 したがって、この財務金融委員会として、この証取法二十七条の二、結果として、その後法改正されましたが、これは実は、大変この金商法の議論につながる大きなポイントだと私は思っているその理由は、脱法行為があったときに、我々として、法改正をしてその事実に合うようにする、これは当然のことかもしれない、しかしながら、一方で、行政庁は、現在の法律の解釈の運用の中で、これは何か行政を発動していかなきゃいけないという場面がこれから多々あるんじゃないか、今回、いろいろな面で盛り込んでいただいておりますけれども、そこから漏れていることがあれば、では何でもやれるのか、こういう議論になってしまうわけであります。

 したがって、金融庁並びに、私は監視委員会と申し上げたいですが、当時、一体何をしておったのかということを議論することを通じて、現在の監視委員会では、残念ながら、その組織の機能において少し不足があるんじゃないかという点を指摘してまいりたいと思っております。

 法務大臣政務官、済みません、ありがとうございました。

 今大臣が読み上げていただいたところで、類推するもののとか、いろいろな判断がありますが、これは実は、監視委員会の高橋委員長も同じようなことを言っておられるんですね。

 十三の三の資料をごらんいただきたいと思います。これは堀江容疑者が逮捕された以降の、新聞社のインタビューに答えたものでありますが、TOBの公開買い付け規制についてでありますが、売買というのは意思の合致が双方にあって初めて成立する、そこに意思の合致がなければ問題にはならない、つまり合致があれば問題になる、これを証明するのは大変難しい問題だと。

 ここで言う意思というのは何なんですか、監視委員会。

長尾政府参考人 ライブドア、先ほど冒頭ありましたように、私ども、地検と合同で三回にわたり告発したわけですが、それ以前に、この一年以上前にニッポン放送株をめぐる問題があったということでございますけれども、そのときの私どもでございますが、個別の話なので具体的に申し上げられないということは御理解いただきたいんですが、御案内のとおり、私ども常日ごろから証券市場に関する資料、情報を幅広く収集、分析しておりまして、必要な場合には調査をする。

 本件、一般論の延長でございますけれども、そういうときでも、市場における新しい動きであったり、あるいは取引が不自然であったり、ちょっと特異な形態の値動きとか、特にそういうのを重点に見ているということで、当時、これも大きな話題になったときには、私どもきちっとフォローしていこうじゃないかということでフォローしていった。

 そうした中で、私どもなりに……(古本委員「意思とは何かと尋ねているんです」と呼ぶ)はい。

 それで、今御質問でございますけれども、そうした中で、私どもの役回りとしては、事後的に検査、監視をするということでございますから、そうすると、こことの関係でいえば、委員長のところに出てくるのはそういう意味合いの流れの中なんですが、事実関係として事前に合意があったかどうかというところが、私どもが調査をするとすればというか、一般論で申し上げますと、そういうところが私どもの役回りだろうということで、そこら辺についてが監視委員会としての役回りだろうという認識を述べたということであろうと思います。

古本委員 いや、これは一般論じゃないですよ。高橋委員長が、ライブドア事案についてどうだと聞かれたことに対し、具体的に答えているんですよ。

 この意思というのは、では、私が介添えすると、単価とか数量とか時期とか、そういうことがお互い折り合えばということですか。もうイエスかノーかでお願いしますよ。単純な質問です。

長尾政府参考人 そういったことも含めて、しかも意思の合致ということで、それがきちっと売買として成立しているかというところまでだと思います。

古本委員 つまり、何万株を単価幾らで、だれとだれが、いつのToSTNeT1、ToSTNeT1は午前とお昼休みと後場があけた後と三回ありますので、その三回のうちのどこでやるかということを事前に確認し合うということをもって意思の合致という理解でいいですか、もうこれでフルオプションだと思いますが。

長尾政府参考人 私どもいつも、刑事罰の事件を、慎重な運用をやっておりまして、そういうときに、あらかじめいろいろ聞かれたときに、正直申し上げまして、やはり個別事案との関係でいろいろ判断をしていくということで、今ので基本的にそう違うとかいうことではございませんけれども、もう少しその事実関係との関係でいろいろなことをきちっと確認していくというのが私どもの職責ということでございます。

古本委員 全然答えていないですよ。

 少なくとも、さっき数量や単価、時期、そういうことも判断の一つだという趣旨のことをお答えいただいたんで、その確認をとった上で、資料の五をごらんいただきたいと思います。これはライブドアによるニッポン放送株の取得経緯を少し拾ったものであります。これは公表されている数字ベースで拾ってまいっておりますので、こういうことかなというふうに理解をしております。

 問題のニッポン放送株をフジテレビが公開買い付け開始をしたという宣言をしたのが一月十七日、この瞬間に、フジテレビさんはTOBの規制のもとに入ったということであります。その間、何とライブドア社はせっせとせっせとこつこつと買い進みました。十七日時点ではわずか十七万五千六百株しかなかった。割合でいけばコンマ五です。これを何とも見事に二月四日の日に五%を超える買収をなさっておられます。百六十五万八千八百四十株。

 監視委員会、金融庁でもいいです。五%超えをした場合は、何日後に報告義務が発生しますか。

三國谷政府参考人 五営業日まででございます。

古本委員 五営業日後ということは、問題の大一番のあった八日の日が終わったその後なんです。

 資料の方をごらんいただきたいと思いますが、六の一であります。ライブドア社による五%超えは、報告義務発生日、(4)、二月の四日、提出日、これは二月の十日。まんまと大一番は終わっています。そして、この三〇%を超える、三分の一を超える議決権保有割合を有する八日の大一番でありますが、少し分析をしてみたいと思います。

 八時二十二分から八時五十分まで、最初の三つの取引は実に一分間隔でToSTNeTにほうり込まれています。これは与謝野大臣の言をかりれば、これだけの大きな商いが出会い頭にあるものかなと実に率直なコメントを一年前おっしゃっておられました。

 きょう東証に来てもらっています。こういう出会い頭というのはあるんでしょうか。

深山参考人 出会い頭という表現が適当かどうかという問題はございますけれども、ToSTNeT1による取引というのは、売り手と買い手がパソコンの画面を使いまして、いわゆるメールのやりとりをする、こんなイメージで交渉するという仕組みになっております。したがいまして、たまたまこういったことがあれば、メールのやりとりでございますから、一分間隔であっても取引をつけるということは理屈の上では可能かと思います。

古本委員 実は、予算委員会で私は東証からその話を聞いて本当かなと思って、現地、現物でこの目で見てきました。ToSTNeT1の端末をごらんになった方、この中にいらっしゃいますか。そして、もっと言えば、監視委員会の中で、今、長尾さんですか、ToSTNeT1の端末、さわったことはありますか。

長尾政府参考人 見たことはございます。

古本委員 見たことがあって、ではどのようにオペレートしているかということまで承知していますか。

長尾政府参考人 私ども日常的に、日ごろのさまざまな売買審査ですとか、あるいはToSTNeTですか、いろいろなのがありますけれども、それぞれ担当の方に専門がおりまして、そういう者がやっておりますという状況でございます。

古本委員 実はToSTNeT1というのは、すぐれて場の提供なんですよ、大臣。私はこれは聞いてきてわかったんです。つまり、証券会社同士が互いに相対でやってしまった場合には、その後の譲渡益報告書やら、あるいはフェール、契約が不成立だったときの担保がとれない等々があって、東証が提供する、時間外ではありますが、市場内と言われるToSTNeT1を経由して取引をすることによってオーソライズされるんです、取引が。場の活用ですよ。

 日当たりどのくらいありますか、ToSTNeT1の取引は。そして、ライブドアは、わずかこの数十分間の午前中の取引だけで実に八百億の買い物をしていますよ、こんなことはあるんですか、単一銘柄に対して。

深山参考人 単一銘柄の昨年一年間の取引、一日平均でございますけれども、金額で六百億円程度ございます。

古本委員 では、その際の売り方と買い方は、事前にさっきでいう意思の合致はあったと思われますか。

深山参考人 私ども、事前に当事者がどういった話をしているかといった問題については基本的に存じ上げておりませんので、その内容についてはちょっとお答えできないかと思います。

古本委員 では、意思の合致がなくて一分間隔でできると思いますか。

深山参考人 先生、東証にもおいでいただきましたし、それから証券会社の店頭でも実際の商いを見ておられる、そういった中で、一分間隔では無理ではないかという御指摘かと思います。

 ただ、私どもとしては、現実にこの値段がついておりますし、理屈だけで申せば、非常に裁量権を持って、オペレーションにたけた人間であれば、全く不可能ではないのかな、かように考えております。

古本委員 私は不可能とは言っていないんです。一分間隔でやる唯一の方法があるんです。ある特定の証券会社がクロスに振ればいいんですよ。売り方、買い方が同一証券で、隣にオペレーターが並んでやればいいんです。これが一番最短でしょう。

 ただ、現実的にはそういうことも、もちろん、自分のところの出来高を見せるために証券会社のクロス取引というのは認められていますね。はい、認められている。だけれども、今回の事案でいけば、大一番ですよ。ここを逃しちゃったらフジテレビにとられちゃうかもしれない。しかも、東京地裁、高裁の判断の中に、すぐれて不特定多数の一般投資家が参加できるToSTNeT1において取引されているんだから、これは市場内だという判断までついちゃっている。

 これは、現に、A社とB社、証券会社があって、売り方、買い方、ToSTNeT1でやる、そこに第三者のC社が割り込むことはできますか、東証。

深山参考人 ToSTNeTで交渉が始まりますと、それが終了するまでは他の参加者が割り込むということはできません。

古本委員 できないんですよ。つまり、A証券が、ある売り主さんから何万株売りたいよという注文をまず受けるんです。そして、受けたらそれを掲示板に載せるという、メールみたいなものだとは言っていますけれども、その瞬間に買い主はだれですよとささやくんですよ。ついては、買い方の証券会社はここですから、ここからの買いにヒットさせてくださいよまで打ち合わせしないと、第三者が割り込んできちゃってすっと買われちゃったら困るじゃないですか、条件が折り合いませんもの。何万株を単位幾らで売るということはもう折り合っていないと、ToSTNeT1は使えないんです。

 したがって、ToSTNeT1に参加をする証券会社のほとんどは、これは万が一には例外はあるでしょうけれども、ほとんどのケースにおいて、指示書を朝受けて、その指示書に基づいて売り注文を出すときには、売り主はだれですよなんて、何々ファンドですよなんていうことは言いませんが。少なくとも買い主である証券会社はどこかということを決めておかないとこれはできない、一分間隔で。

 つまり、そこで、契約の成立の合意がなければ、まず数量が決まりませんね。次に単価も決まらない。そして時間帯も決まらない。なぜなら、朝とお昼休みと後場があけた後の、その日でも三回あるんです。一体どの場を使って利用するか。現実問題、証券会社のこのToSTNeT1のオペレーターの人、日がな一日画面の前で、ニッポン放送の売りが出ないかなと座っていますか。そんな証券マンおるんですか、東証。つまり、事前に契約が成立していないとあり得ないんでしょう。

深山参考人 御指摘の点でございますけれども、その辺の事情については私把握しておりませんので、あったかどうかという点は、ちょっとお答えは難しいかと思います。

 一般論で申し上げますと、先生の御指摘のとおり、いわゆるクロスという取引が多うございますから、それは言ってみれば、ある証券会社でお客同士をぶつける、こういったものは多いのは事実でございますけれども、ただ、このケースがそうであったかどうかというのは、これはまた別のお話かと思います。

古本委員 いや、これは細かく言えば、例えばA証券会社から、顧客が具体的な銘柄を指定して何万株売りたいという話がまずあるんですね。朝注文を受けた後に、買い主を探すために照会書を同業他社に切るんです。その上で、同業他社は照会書をもとに買いの注文を掲示板に出すんです。そして、買い主がやっと見つかって、B証券が引き受けてもいいという人を探し出して、やっと条件交渉ですよ。それじゃ、単価は今千五百円で来ているけれども、これは千四百五十円まで下がらぬかねと。これがまさにToSTNeT1を利用した交渉でしょう。

 この一連の作業をやって最終的に約定するにしても、今度、注文ナンバーを照会し合わないと、別な人にぱくっととられてしまいますから、電話回線をつなぎっ放しで慎重なやりとりをする。担当者だってトイレに行くこともあるので、それは午後の取引に流れる場合もある。

 したがって、大体平均的には、本当になれたオペレーターでも、丸々新規で出会い頭をねらうというのであれば、これは小一時間どころか一日仕事なんですよ。そして、数分間でやり遂げるには、事前にすべての条件が整っていないとできないんですよ、これは。そうでしょう、東証。

深山参考人 事実関係は……(古本委員「一般論でいいんです」と呼ぶ)はい。先生のおっしゃるとおりですが、この案件に関してそうであったという確信は全く私持っておりませんので、それはちょっとお答えできないかと思います。

古本委員 委員長、これは業界の常識だそうです。ToSTNeT1というものはどういうものかというのは常識だそうです。こんなものは、こんなものと言っては失礼ですが、こういう話は監視委員会は先刻承知なんですよ、恐らく。

 今言ったような話は知っているんでしょう、監視委員会。知っていましたか。

長尾政府参考人 個別の事案にかかわりまして、しかも、今の先生の大変いろいろな御指摘なり手続、仕事の進め方ということで、私どもも仕事をするに当たってそういうところをいろいろ見ているわけですけれども、ちょっと詳細には、どういうやり方をやっているかというと、私どもの調査手法の話になるので、控えさせていただきたいと思います。

 いずれにしましても、私ども、そういうさまざまな資料、情報の収集というときには、情報の収集、外からの収集あるいは仕事の流れ、そういったものを幅広く、あるいは深く掘り下げてということでやっているということでございます。

古本委員 いや、これは通告していますし、一般論で答えてもらったっていいんですよ。

 ToSTNeT1というようなものは、すぐれて事前に意思の合致がなければ成り立たない、東証の中に設置された市場内時間外取引のシステムである、これは正しいですか。

長尾政府参考人 私どもは、事実関係の解明ということですので、決めつけ的なことはちょっと控えさせてもらいますけれども、いずれにしても、そういうことが言われておる、あるいはそういう可能性があるということは承知しておりまして、また、そうした中で私どもとしてはどういう調査をするかとなりますと、また、これも一般論でございますけれども、幅広く関係者の供述だとか書類とかそういう形で進めていく、こういうことでございます。

古本委員 巷間そう言われているということは承知していると言っていただいたので、ToSTNeT1というのは、すぐれて事前の意思の合致がなければ、少なくとも一分刻みでほうり込むことなんかはできないとおっしゃった、こういう理解でいいですね。

長尾政府参考人 繰り返しになって恐縮ですが、その一個一個というよりも、私ども、先ほども言いましたように、さまざまな資料を集めていますから、一般論としてそういう議論が行われているということはよく承知しておりまして、また、そこら辺も私どもは一つの情報として使って次に進むということを常日ごろやっているということでございます。

古本委員 いや、委員長、なぜここまで私がこう言わなきゃいけないかというと、証券取引委員会の必要性がないというふうにけんもほろろに一笑に付されたわけですよ、先回。御党からも御質問いただきましたけれども。このていたらくですよ。

 もっといきますよ。資料の五を見てください、引き続き。

 八時二十二分、三百四十八万三千二百二十株、実にニッポン放送が発行している株式総数の一〇・六%です。これほど巨額の株が一分間で取引されています。これはだれが売り主ですか。監視委員会、承知しているでしょう。承知していますか。

長尾政府参考人 この五の資料に関しまして、あるいはほかの資料からでいろいろなことを私ども承知しているのもございますが、ちょっと私どもの方から申し上げるのは控えさせていただきたいと思います。

古本委員 これもまた介添えいたします。資料の八の一をごらんください。

 これは、原因発生日が二月二十八日で、提出日、三月二日となっておりますが、売り主、サウスイースタン・アセット・マネージメント・インク、一〇・六二%、端数がちょっと出ていますが、実にぴったりです。この人じゃないんですか。この人は、二月二十八日に取引したと言っておられますが、実は、二月八日の取引だったんじゃないんですか。

 こういうことが、仮に指摘されたならば、東証は、当局から指摘があれば、パソコンの裏側に入っちゃって調べることはできますか。これは、二十八と言っているけれども、実は八日の取引じゃなかったんですか。調べることができるかどうかだけ答えてください。

深山参考人 具体的な委託者につきましては、問題があれば、一般論としてですけれども、証券会社を経由して、だれであるかということを調べることはできます。

古本委員 では、監視委員会は、それを通じてデータをとりましたか、調べましたか。やったかやってないかだけでいいですよ。

長尾政府参考人 大変恐縮です。私どもの調査のやり方の一つ一つになりますので、ちょっと控えさせていただきます。

 ただ、ちょっと申し上げれば、今のこのデータ自体は公衆縦覧の大量保有報告ということで、先ほど言いましたように、私ども、そういうオープンに、縦覧になっている資料とか、そういうものは常に取り寄せるようにしておりますので、その意味で、いろいろなやり方を考えながらやっているということで、恐縮ですが、そういうことで控えさせていただきます。

古本委員 このサウスイースタン社は、巷間ここが売ったんじゃないかと言われていますが、実はこの一月の十九、二十日、二十一日にかけて、合計八十四万株、二・六%、これも売却しています。

 ところが、これの大量保有報告の変更届ですね、五%を超えてその保有の変更があった場合には、残り一〇%を維持した場合には、特例会社といえども報告義務が発生するという法律の縛りを正しく行政庁が指導したならば、八日までおくれるなんていうことにならなかった。これは、なぜ八日までおくれたのか。そして、そのことにどういう行政処分を下したんですか、サウスイースタン社に対して。

 二月八日まで遅延させたということは、サウスイースタンが水面下でこういった動きをとっているということをフジテレビは知る由もなかった。ずらしたんですよ。今回の金商法の改正の中に、大量保有報告も厚目に今度していくということで入っていますが、幾ら法律に書いたって、こうやって違反している人がおるじゃないですか、どういう処分を下したんですか。監視委員会。

長尾政府参考人 今御指摘の資料、大量保有報告書の遅延でございますけれども、これは、先生御案内のとおり、これも、縦覧されている中ですから、一部につき遅延で提出されていることということは承知しておりますけれども、ただ、私ども、検査、監視という立場でどうしたかということにつきましては、個別事案にかかわることでありますから、それ以上のコメントについては控えさせていただきたいと思います。

古本委員 いや、与党の先生方も聞いていてどうですか。監視委員会、縦覧されている資料ですよ、これは、インターネットで、ホームページにも出ているような資料ですよ。飛び道具でも何でもないですよ。出ているんですよ。これは、証取法二十七条の二十六違反じゃないんですか。五百万円か五年の罰則規定もあるんじゃないですか。適用したんですか、告発したんですか、何をやったんですか、監視委員会。それとも放置したんですか。それとものっぴきならない関係でもあるんですか。

長尾政府参考人 二点、ちょっと実情を申し上げさせていただきますと、一つは、私ども今、昨年の七月から有価証券報告書に関する行政検査というものが私どもに来るようになりました。そういう意味では、今、私どもは、常にディスクロージャー関係についても非常に幅広くやるように進めております。ただ、これは、それ以前の、去年の有報検査、要するにディスクロージャーの提出、また、それに対する行政的な対応というところは私どもにまずなかったということで、ちょっとそこら辺の初動の対応みたいなところには私ども権限が当時はないということが一つ。

 ただ、先生御案内のとおり、その場合、刑事罰があるだろうということが二つ目でございますけれども、遅延ということ自体については罰則が、遅延じゃなくて提出していないということですね、済みません、罰則があるわけですね。ただ、これもちょっと一般論になって恐縮ですけれども……(古本委員「一般論じゃないよ、個別の話だよ。ホームページに載っている」と呼ぶ)一般論も踏まえながらの考え方ですけれども、こういう場合ですけれども、大量報告書の、これはちょっと、数日、五日ですから、二十八日という期限が八日まで延ばされたという中を、これをどうとらえるかということになろうかと思います。

 私ども、個別の犯則調査についての、ちょっと言い方が難しいんですけれども、一般論というのはそういう意味なんですけれども、非常に日ごろからこういうさまざまな資料、情報を分析しておりまして、こうした中で悪質な法違反があれば、やはり法と証拠に基づいて厳正に対処するということでやってきているということでございます。

古本委員 これは、フジテレビという公器ですよ、公の器であると言っていいと思います。メディアを買収するという大変大きな話で、日本じゅうがひっくり返ったときのさなかに、実は水面下で、片やフジテレビはTOB規制のもとに公明正大に買い付けを進めた、片や六本木ヒルズの一室で、これは想像ですが、密談してやったんじゃなかろうかという人が目の前におるかもしれない。数字はそろっている。監視委員会は何をやっていたかと問うているんです。

 こんなの、私がちょこっとインターネットを見ただけで、そろうんですよ。おたくら何百人体制で、十分なんでしょう。与謝野さん、ちょっと起きていただいて、与謝野さんも今の監視委員会で十分だと再三おっしゃっておられる。これが実態ですよ。いや、まだ質問していませんから。これが実態ですよ。

 まだありますよ。八時四十六分から五十分にかけての、この合計二百七十二万六百四十株、これは資料の十の一をごらんください。全部インターネットを見れば出ているんです、大量保有報告変更届。これは、いわゆるM&Aコンサルティング、代表者村上さん、これは借り株していたんですね。同じくMACジャパンに返しています、二百七十三万九千株。ほぼ符合します。そして、これは二月八日に取引した場合の決済日である十五日にぴったり符合します。

 どうですか。監視委員会、何をやっていたんですか。今現在、今政務官お帰りになりましたが、堀江容疑者の起訴事実の中に二十七条の二が入っていますか。つまりは、公開買い付け規制は入っていますか。入っていますか、入っていませんか。入っていないんですよ。

 こういう事実がある中で、監視委員長はこう言っておられる。監視委員長のコメント、語録集の十三の一をごらんください。一番上の段落ですが、監視委員会は値動きの激しい取引があればすべて見る、ライブドアは約三年前から十件ほどの案件をチェックしており、その都度、刑事事件として摘発できないか検察と相談した、向こうからも話があった、構成要件が固まったのは昨年の秋ごろだ、こう言っておられます。これは、各論じゃないですよ、具体論でここまで言っておられるんです。長尾さんは必死で、いや、個別には答えられませんと言っていますが、自分のところの親方はぺろっとしゃべっていますよ。

 この十件の中に二十七条の二も入っていますか。入っていますかというだけです。早く答えて。

長尾政府参考人 個別の話なので控えさせていただきたいと思いますけれども、ちょっと委員長の実情を申し上げさせていただいてもよろしいでしょうか。

古本委員 よろしくないですよ。結構です。

 つまり、監視委員会の委員長としては、逮捕権もない中で、この後にいろいろ言っておられます。逮捕権を持つ検察と十分相談してからやる、過去の四十七件のうち四十件が検察と合同だと。つまり、証拠隠滅等を避けるためにこういう連携をとっておられる。したがって、あの日の強制捜査が出おくれたとかいろいろな世論はありますけれども、僕はそう思いませんよ。こういう逮捕権を持っていない中で連携してやっておられるということはいいんですが。

 これは、もうライブドア事案が終局に向かうんじゃないかという一部報道がある中で、今現在二十七条の二の話がなければ、これはお蔵入りですよ、これだけ疑惑の塊がてんこ盛りの状況で。そのことを問うているんです。お蔵入りにしても全く痛みもしない、良心の呵責にも耐えられるという監視委員会でいいんですかと、そのことを問うているんです。何が足らないんですか、監視委員会。何を気にしているんですか。何があってやれないんですか。

 先ほど確認いたしましたが、意思の合致がなければいけないと、その意思の中に、数量、単価、時期、ありましたね。それも判断の一つになると、長尾さん、あなたはお認めになった。資料の五を見れば全部そろっていますよ。

 ちなみに、二月八日、昨年のあの事案があったときに、例えば、渦中の人であるサウスイースタン・アセット並びに村上ファンド、当事者にこの件で事情聴取されましたか。

長尾政府参考人 大変恐縮ですが、個別の調査の中身、どういうことかについては控えさせてもらいたいと思います。

古本委員 この事情聴取をしようと思えばやれる権能は、金融庁ですか、監視委員会ですか、どっちにありましたか。これだけ情況証拠はそろっているんですよ。これは一年前からわかっていた話。これだけのことがあって、当事者である堀江容疑者はもとより、村上氏あるいはサウス・アセットのオーナーであるんでしょうか、その方にお会いをし、事情聴取をかける、あるいは立入検査をする。だって、これはTOB違反の可能性もあったわけでありますから。この権能は、金融庁、監視委員会、どちらにありましたか。

長尾政府参考人 立入検査等々を行う権限は私ども監視委員会の方にございます。(古本委員「事情聴取は」と呼ぶ)報告徴求権及び立入検査権ということで、その中に事情聴取も入っているということでございます。

古本委員 やろうと思ったらやれたんですよ。やった形跡はないですね。当時、これだけ注目を集めていた事案で、連日メディアの人も追っかけていた。仮に御庁が今言っている当事者の方々にコンタクトをとろうものなら、当然すっぱ抜かれる。やっていないんですよ。やっていないんです。やっていたら新事実が出るでしょう、と想像するしかないんです、目の前にこれだけの事実がありながら、我々立法府としては。

 監視委員会の人々の苦労ぶりは常々承知をいたしておりますが、何が足りないのか、これは議論の余地が十分にあると理解をするところでございます。したがって、我々は、今、証券取引委員会の設置をこの委員会にも提案申し上げているところでありますが、残念ながら、監視委員会は今のままで十分だというふうに思っておられる。

 そこで、大臣、どうですか。こういう事実がある中で、片や監視委員長は、結構、インタビューで具体的に答えていますよ、片や事務局は、いや、語れません、語れませんと、必死に守秘義務を貫き通される。

 先日も、私は、現地、現物と申し上げた。金融庁の……(与謝野国務大臣「委員長」と呼ぶ)もうちょっと待ってください。監視委員会というのは一体どんな現場の雰囲気かと、東証の見学もいいんですけれども、一度監視委員会を見に行きたいとお願いしたんです。断られました。守秘義務がある。物が置いてあるかもしれない。いかに議員といえども入れさせるわけにいきませんと。

 バッジを外して行きました。普通に入っていけました。フロアの中にも入っていけました。そして、この金商法の法律改正をしておられる担当者に会うことさえできました。ずるずるです。監視委員長のお部屋の前まで入っていけました。これは、ライブドアの関係者が何かに変装して入ってこられたら入れたんじゃないですか。一体どうなっているんですか。

 この人たちが守ろうとしているほどセキュリティーもなっていないし、この人たちが守ろうとしているほど監視委員長は守秘義務なんか守っていないじゃないですか。十件の事案があった、一年とちょっとかけて挙げたことは比較的早いと思っていると、結構具体的なことを言っていますよ。何かちぐはぐしていませんか。片や、金融担当大臣とは一年に一回か二回、盆暮れしか会いません、こう言っておられる。それで距離があるということを言っておられるんでしょうけれども。片や事務局はべっちょりですよ。なぜならば、監視委員長が言っておられるじゃないですか。これ、資料を見てください。資料の十三の一、二を見てください。一番下のパラグラフですが、建議という形で法律や制度の立案を行い、金融庁に動いてもらえる、行政処分についても勧告すれば金融庁が処分に動くと。金融庁、金融庁ですよ。

 事務局はべっちょり。トップは一年に一回か二回しか会いません。それで、この人たちの事務局体制がどれだけ逼迫していて、どれだけ人が欲しくて、セキュリティーだと言いながら、つるっと入っていける。これは本当ですよ。ちぐはぐ、めちゃくちゃ。そのあげくの果てが昨今も噴出しているいろいろな事件なんじゃないですか。アイフル、三井住友、目を覆うばかりじゃないですか。どこかがたるんでいるんじゃないですか。それを強化しようじゃないかという提案をしているんですよ。

 直接金融なんて冗談じゃないですよ。悪知恵が働いて、そして法のすき間をすっとついた人だけが六本木ヒルズに住めるという、そういう世の中をつくりたいんですか。一般投資家の奥様が、自分のへそくりで、おもしろいなと思った銘柄に投資をする、応援したいなと思った人の会社を応援する、これが直接金融の原点ですよ。そういうことをねらっているんでしょう。とても危なっかしくて参加できませんよ。一蓮託生で、みんな隠そうとしている。どうですか、大臣。

与謝野国務大臣 監視委員会というのは、やはり、法と証拠に基づいて調査をし、また法と証拠に基づいて告発すべきものは告発するという組織でございます。当然、告発をするわけですから、起訴権を持っている検察庁とは十分打ち合わせをしながらやっていくということを今までも繰り返してやっております。

 そこで、委員の御主張は、なぜ犯罪として切り取らなかったのか、多分、こういう御主張だと思います。これは、告発する方ともあるいは起訴権を持っている検察とも、やはり、これで公判が維持できるかどうか、あるいは犯罪として切り取れるかどうかということをその都度判断するんだろうと私は思います。

 そういう意味で、先生の御指摘の点についても、私の想像ですけれども、恐らくいろいろな観点から検討はしたと思います。しかしながら、判断としては、告発、起訴には至らない案件という判断をされた、それも、調べた事実関係、持っている証拠、こういうものに照らして、そこには至らないという判断を独自にしたのではないかと私は想像をしております。

古本委員 先ほどの資料の十三の三の監視委員長が述懐されておられるところに戻っていただきたいんですが、大臣とあうんの呼吸なんでしょうか、法律の解釈と証拠の問題で立件は困難だったというふうに言っておられますね。十三の三です。TOB、買い付け規制をもとに二十七条の二を適用して立件まで持っていけるかどうかという過程において。もちろん着目はされていたんですね、あれだけ騒いでいたわけですから。法律の解釈と証拠の問題で立件は困難だったと。

 法律の解釈というのは一体何か。証拠というのは一体何か。これは、法律の解釈に関して申し上げれば、ToSTNeT1はすぐれて東証が設置する市場内におけるシステムでありますから、それは市場内の取引であるという判断を盾に持ってこられたら、これはどうしようもないですよ。まず、解釈論の一ですね。

 現に、ライブドア側も、当時、仮処分を求めたときの裁判、彼らは勝訴しましたけれども、証拠説明書類、東京地裁民事第八部保全係御中で出しておられる。これはライブドア側が出した資料の、証拠説明書類の甲の二四号。御丁寧についていますよ。金融庁が、債権者、つまりはライブドアの行ったToSTNeT1による本件株式の取得について、違法でないとの見解を明らかにしている事実。添付書類までついていますから。お墨つきつけているんですよ。司法の判断をゆがめているんですよ。ついていますよ。いや、日本の司法は立派だと大臣おっしゃったけれども、見事に、伊藤大臣、きょういらっしゃらなくて残念ですけれども、伊藤大臣が言ったコメント、そのままついていますよ、証拠書類に。判決文にも出ていた、さっき紹介したとおり。つまり、予断を与えたんですよ。与えたでしょう。

与謝野国務大臣 裁判所というのは、そんなやわなところではないと私は思っております。

古本委員 それで、監視委員長は、法律の解釈という意味で困難だったと。さらに、証拠。証拠というのは何ですか、これ。意思の合致があればいいわけでしょう。伊藤大臣が丁寧に答弁で答えてくださっていますもの。さっき資料でお示ししました。資料の二の二ですよ。合意があって契約が成立しているということであれば、これは市場外の取引ということになるんではないかと思いますと。法律の立てつけによるとと、与謝野大臣、いつもおっしゃる。その立てつける責任者がこう言ってくださっているということは、意思の合致があったかどうかが最大の争点だったわけですよ。

 でも、人の心の中はわかりません。ましてや、どこかの部屋の密室で、売ったとされる人とライブドアの関係者が密談したなんて、もうこれは、それこそおとり捜査でもせぬことにはわかりませんよ。だけれども、少なくとも、そんなことがあったんですかぐらいのことを聞いてもいいんじゃないですか。

 監視委員会が、きのう質問取りに来てくれた人がおもしろいことを言っていました。本当に悪いことをしている人は、私たちは目を見ればわかりますとおっしゃった。会えばいいじゃないですか。何で事情聴取をしていないんですか。全く理解できない。

 二十七条の二、もう一遍やり直す覚悟はありますか、監視委員会。告発すればいいんです。検察は、今、手をこまねいておられるのか、水面下で物すごい証拠を握っておられるのか、まあこれはおいておいて、監視委員会独自で、今まさに、大丈夫なんでしょう。我が国の直接金融へ誘導していく政府のその御意向を受けて、まさに監視委員会ここにあり、任せておけと、そうおっしゃっているんです、与党の先生方は。おれたちに任せておけというなら、二十七条の二で告発したらどうですか。

長尾政府参考人 インタビュー等で、報道でもありますけれども、委員長の方で、法律の解釈と証拠の問題で立件困難だという、こういう発言も出ております。その趣旨なりですが、ちょっと補足させていただきますと、監視委員会は、この犯則調査でございますけれども、今大臣からも話がありましたが、事実解明ということが私ども一番の重要なところと。それを踏まえて法律を適用するわけですけれども。事実解明をふだんやるときに、その後にまた告発をするわけですが、私どもは一般の告発権、公務員の告発権とは違いますもので、御案内のとおり、事実解明の結果、犯則の心証が得られた場合に告発するという規定、権限になっているわけです。

 そうしますと、刑事罰に関することであるだけに、やはり、そこは法と証拠に基づいて、これは十分精緻に、厳格に行う必要がある。我々も、事実関係、これはまた公判で維持されなくちゃいけないというと、正直相当難しいところがございます。

 それから、そういうときに、いろいろな端緒、一言で端緒といいましても、実はいろいろなレベルがあるんですけれども……(古本委員「難しいとおっしゃるのなら、一般論」と呼ぶ)一般論です。一般論として述べさせていただいております。それで、そういう端緒というのも、一言で端緒といいますけれども、これはいろいろなレベルがございまして、そういうとき私どもがどういう形で作業を進めていくかというと、ちょっと詳細はまた申し上げかねるところは恐縮なんですが、やはり、事案に応じてあるいは情報に応じてあるいは相手に応じて、いろいろな形で詰めております。

 また、このライブドアについていえば、先ほど先生も引用されましたけれども、いろいろな形でいろいろフォローしてきた。フォローしてきたというか、追っかけてきた。どこで立件できるかというようなことで、苦慮しながらいろいろやってきたということもございます。

 そうした流れの中で、ニッポン放送の話については、私ども、非常に幅広く、いろいろな意味で見、また、先ほど来出ているように、いろいろな資料も見て、また、必要なところに話も聞きとかやっておりますけれども、それ以上につきましては、恐縮ですけれども控えさせていただきたいと思います。

古本委員 やっと本題にたどり着きましたよ。何が足りないんですか、監視委員会の機能に。監督権がないからでしょう。そのことをおっしゃりたいんでしょう。行政庁として行政処分権を有していないから、機動的に動けないんでしょう。私たちは、証拠を調べるだけです、常に段取り屋さんですと。その証拠をそろえた、その後はお伺いを立てるんです、金融庁様に。そう言っているようにしか聞こえないんですけれども。監督機能をともに持った方が、今回のライブドア事案のようなものに直面したときに、さあっと立ち入って、このToSTNeTの取引状況なんて東証に聞けばすぐわかる。だれが売り方でだれが買い方なんてすぐわかる。どうなっているんですかぐらいの聞き込みなんてすぐできる。できない何かがあったんじゃないですか。それは、ちゅうちょをした心の中に何かがあったのではなくて、機能として限界があったんじゃないですか。

長尾政府参考人 ちょっと誤解があったら恐縮でございましたけれども、今、これは刑事罰の犯則調査という視点で私どもやっておりまして、私ども監視委員会の機能、先生もちろん御案内のとおり、いわゆる証券会社等の検査という行政的な検査で……(古本委員「行政から入っていって、刑事に持っていけばいいじゃないですか」と呼ぶ)ええ。これは、金融庁の方の監督に結果を投げていく。もちろん、そのときでも、私どもとしての事実関係に基づいた法解釈を出して勧告していくということになっているわけですが。

 それから、もう一つ、今、一連のずうっとは、これは刑事罰としてやっておりますので、犯則調査ということでやっております。そうすると、やはりその性質からして、私どもの連携の対象は、相手は検察当局ということになります。そしてまた、事案を、事実関係を詰めるわけですけれども、最終的には告発する。また、それが公判維持されなくちゃいけないということで、綿密な連携をするということでやっているということでございます。

古本委員 監視委員長が言っておられる法律の解釈と証拠の問題で立件が困難だったという法律の解釈において、まさに、さっそうとここにありという存在感を示すチャンスが去年の二月にあったんですよ。伊藤大臣も言っておられるじゃないですか。法律の立てつけからすれば、ToSTNeT1というのは市場内のシステムですから、これは市場内。これは裁判所もその判断の材料に引用しているぐらいですから、そのとおり。一方で、事前の意思の合致があったかどうかは解釈の幅があったんですよ。なぜ、やらなかったか。なぜ、やらなかったんですか。やれなかったんですか。

 片や、先日、何か櫻田さんは、解釈の幅、えらいおっしゃっていますよね。民事の責任規定の見直し、二〇〇四年にありました。今回のライブドア事案における被害者をどうやって救済していくか。これは、公表された日を基点にして、その前後一カ月で判断をするという議論がありますよね。公表日というのは一体いつか。これは、検察が強制調査に入った日なのか、それとも、ライブドア自身が、ある意味罪を認めて、こんなことをやりましたということを吐露した日なのか。それで、滑った転んだで、今はっきりしていませんよね。法改正したはいいけれども、金融庁、この運用で、監視委員会といった方がいいんですかね、困っちゃっている。

 そうしたら、櫻田さん、委員会で何て答弁したか。あらゆる事態を想定するのは難しく、投資家保護の観点から、立法趣旨に応じて裁判所が判断してもらいたいと。もう、解釈の幅、目いっぱいじゃないですか。だったら、もう最初から立法府なんて要らないんじゃないですか。裁判所にやってもらえばいい。

 一年前だって、ToSTNeT1はすぐれて東証のシステムですよ。しかしながら、事前に意思の合致があったならば市場外とみなすこともあると伊藤さんは言ったんですよ。それを受けて何で監視委員会はやらなかったのか。この問題を乗り越えられない限り、証取法を幾ら改正したって、法律に書いていないことはやってもいい、あるいは法律に書いていることだけやれるのだと、非常に窮屈な日本になっちゃう。そういうことを目指しているんですか、大臣。法律というのはそういうものなんですか。ちょっと大きな話を問いたいと思います。

与謝野国務大臣 国民に義務を課し、また国民の権利を制限する場合には、法律によるというのは当然のことであります。また、金融行政も、事前調整型あるいは護送船団方式と言われたような時代から、きちんとルールを決めて、事後チェック型に変わってきたわけでございます。

 先生の御指摘の点は、多分、法律の書き方が十分でなかったと私はその当時思っておりました。したがいまして、証券取引法は、その部分を補う形で立法府によって改正していただいたものと私は思っております。

 このToSTNeTによる市場内取引と言われる時間外取引は、決して褒められた取引ではないと思っております。これは、これだけの大量の売買が瞬間成立するということは、普通、常識ではあり得ない、私はそのように判断をしておりました。

 しかし、その後、私も解釈に迷っておりまして、極めて脱法的な取引であるというふうに考えておりましたら、地裁、高裁と立て続けに裁判所としての御判断が出ましたので、私はその裁判所の判断に従って物を考えていこうということを、去年の春、考えていたわけでございます。

古本委員 いや、それはおかしい、大臣、最後がおかしい。三権分立じゃないんですか。裁判所がどう判断しようとも、法律の立てつけをする立てつけ係の大臣がこうだと思えば、やればいいじゃないですか。やればいい。もちろん、司法の判断は尊重した方がいいとは思います、これは事実ですから。一方で、法律の立てつけ役として、かくあるべしというものを持っておかないと、三権分立は教科書に書いているだけになっちゃいますね。

 そのことを指摘しつつ、資料の十五を最後に、ちょっと二、三、資料を見ていただきたいんです。

 これは、巷間言われています、事前に金融庁の了解を得た上でToSTNeTを使ったんじゃないかということに対し、当時、堀江容疑者がこういうふうにコメントしています。事前に金融庁に合法かどうか確認し、お墨つきをもらった、証取法に従い行動した、あるいは、時間外取引について事前に金融庁に相談した、あるいは、ノンネーム、匿名で事前に金融庁にも確認している、それは我々もちゃんとやっていると。

 これに対し、金融庁も火消しに大変でしたね。五味長官以下、立ち会い外取引は公開買い付け規制の対象外であるという趣旨のお答えを一般論としてやっていると。要するに、それをとらえてこう言われても困るということなんでしょうけれども、どうしてこのとき事前の合意の話を言っていないんですか。ToSTNeT1は東証のシステムですよ、そのとおりですよ。でも、事前の合意があったかどうかは争点であるので、これは精査の必要があるぐらいのことを言えばよかったじゃないですか、金融庁。

 この時点で、もう既にこれはお墨つきを与えているんですよ。事前の合意が争点からなくなっちゃっている。大臣は言っているんですよ、大臣は。その下、伊藤大臣、そういうことで言っておられるんですね、買い付け規制の話。

 ですから、これはまんまとしてやられたケースなんですよ。それを、今回公判がどういうふうになるかわかりませんが、二十七条の二は、正直、ちょこっと私が調べただけでこれだけの話が出てくるんですよ。本当にちょこっとですよ。監視委員会はよっぽどデータを持っていると思いますよ。それで二十七条の二を適用しないとしたならば、これは委員長、監視委員会は何をやっているんだという議論なのか、やろうにも機能において何か問題があるのではないかというところに行き着かざるを得ないわけであります。

 最後に、資料の一と十六を順番に見ていただきたいんですが、最初の一の資料を見ていただくと、まさに市場法制に関する規制緩和の流れが二〇〇〇年代初頭からずっと行われてきたのとともに、ライブドアという会社は成長してきているんですね。三分割、十分割、百分割、十分割、都合三万分割。そして、それから後追いをするようにルールも強化していった。まさにライブドアとの戦いじゃないですか、こうやって見たら。

 二十七条の二、改めて告発をする決意で臨んでいただきたいということを強く申し上げ、そして最後に十六ページをごらんいただいて、終わりたいと思います。

 監視委員会の使命、立派なことを書いております。取引の公正の確保を図り、市場に対する投資者の信頼を保持する、これが使命だそうであります。ぜひ国民の皆さんが、直接金融だと与謝野さんがおっしゃるのであれば、そう信じてやれるような体制になるように、我が党が今提案している証券取引委員会の設置法案、そしてこの金商法も、実は法律の立てつけを幾らよくしたって、法律の解釈論が、現場の方でそのエンフォースメント、力を与えてあげないとなかなかできないということを、その事例のほんの一端を紹介し、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

小野委員長 以上で古本伸一郎君の質疑を終わります。

 次回は、明十日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十七分散会


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