衆議院

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第5号 平成18年11月10日(金曜日)

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平成十八年十一月十日(金曜日)

    午前十時一分開議

 出席委員

   委員長 伊藤 達也君

   理事 井上 信治君 理事 竹本 直一君

   理事 林田  彪君 理事 増原 義剛君

   理事 宮下 一郎君 理事 池田 元久君

   理事 古本伸一郎君 理事 石井 啓一君

      井澤 京子君    伊藤信太郎君

      石原 宏高君    江崎洋一郎君

      小川 友一君    小野 晋也君

      越智 隆雄君    木原  稔君

      佐藤ゆかり君    関  芳弘君

      土井 真樹君    中根 一幸君

      長崎幸太郎君    萩山 教嚴君

      原田 憲治君    広津 素子君

      福田 峰之君    牧原 秀樹君

      松本 洋平君    御法川信英君

      盛山 正仁君    安井潤一郎君

      小沢 鋭仁君    川内 博史君

      鈴木 克昌君    田島 一成君

      田村 謙治君    高井 美穂君

      寺田  学君    馬淵 澄夫君

      谷口 隆義君    佐々木憲昭君

      野呂田芳成君    中村喜四郎君

    …………………………………

   財務大臣         尾身 幸次君

   国務大臣

   (金融担当)       山本 有二君

   内閣府副大臣       渡辺 喜美君

   財務副大臣        田中 和徳君

   財務大臣政務官      江崎洋一郎君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  三國谷勝範君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局総括審議官)          中江 公人君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    佐藤 隆文君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 岡崎 浩巳君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    石井 道遠君

   政府参考人

   (国税庁次長)      加藤 治彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           御園慎一郎君

   参考人

   (日本銀行総裁)     福井 俊彦君

   参考人

   (日本銀行理事)     稲葉 延雄君

   参考人

   (日本銀行理事)     水野  創君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十日

 辞任         補欠選任

  大野 功統君     御法川信英君

  木原  稔君     安井潤一郎君

  とかしきなおみ君   福田 峰之君

  広津 素子君     牧原 秀樹君

  北橋 健治君     高井 美穂君

  吉田  泉君     田島 一成君

同日

 辞任         補欠選任

  福田 峰之君     盛山 正仁君

  牧原 秀樹君     広津 素子君

  御法川信英君     大野 功統君

  安井潤一郎君     木原  稔君

  田島 一成君     吉田  泉君

  高井 美穂君     北橋 健治君

同日

 辞任         補欠選任

  盛山 正仁君     とかしきなおみ君

    ―――――――――――――

十一月九日

 出資法の上限金利の引き下げ等に関する請願(横山北斗君紹介)(第三〇一号)

 出資法の上限金利の引き下げ等を求めることに関する請願(小宮山洋子君紹介)(第三〇二号)

 同(小川淳也君紹介)(第三〇九号)

 同(小宮山洋子君紹介)(第三一八号)

 同(広津素子君紹介)(第三三〇号)

 消費者金融の金利引き下げ等に関する請願(小川淳也君紹介)(第三一〇号)

 同(郡和子君紹介)(第三一一号)

 同(近藤昭一君紹介)(第三一二号)

 同(古本伸一郎君紹介)(第三一三号)

 同(松木謙公君紹介)(第三一四号)

 同(池田元久君紹介)(第三一九号)

 同(横光克彦君紹介)(第三二三号)

 同(細野豪志君紹介)(第三三二号)

 同(玄葉光一郎君紹介)(第三九二号)

 事業主報酬制度の創設に関する請願(遠藤利明君紹介)(第三三三号)

 同(森英介君紹介)(第三三四号)

 同(稲葉大和君紹介)(第三五九号)

 同(平将明君紹介)(第三六〇号)

 同(平将明君紹介)(第三九三号)

 同(稲葉大和君紹介)(第四一六号)

 同(冨岡勉君紹介)(第四一七号)

 同(宮下一郎君紹介)(第四一八号)

 同(やまぎわ大志郎君紹介)(第四一九号)

 同(越智隆雄君紹介)(第四二九号)

 同(加藤紘一君紹介)(第四三〇号)

 同(高鳥修一君紹介)(第四三一号)

 同(永岡桂子君紹介)(第四三二号)

 大増税に反対することに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三五〇号)

 同(石井郁子君紹介)(第三五一号)

 同(笠井亮君紹介)(第三五二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三五三号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第三五四号)

 同(志位和夫君紹介)(第三五五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三五六号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三五七号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三五八号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第四二八号)

 被用者年金制度の一元化等に関する請願(野田毅君紹介)(第三八四号)

 同(村田吉隆君紹介)(第三八五号)

 同(瓦力君紹介)(第四三七号)

 保険業法の適用除外に関する請願(木原稔君紹介)(第三八六号)

 同(牧義夫君紹介)(第三八七号)

 同(松本剛明君紹介)(第三八八号)

 同(三日月大造君紹介)(第三八九号)

 同(野田佳彦君紹介)(第四二一号)

 同(馬淵澄夫君紹介)(第四二二号)

 同(太田和美君紹介)(第四三八号)

 同(古本伸一郎君紹介)(第四三九号)

 同(三井辨雄君紹介)(第四四〇号)

 同(吉田泉君紹介)(第四四一号)

 保険業法の適用除外を求めることに関する請願(市村浩一郎君紹介)(第三九〇号)

 同(長浜博行君紹介)(第三九一号)

 保険業法の見直しを求めることに関する請願(荒井聰君紹介)(第三九四号)

 同(金田誠一君紹介)(第四二〇号)

 同(笠井亮君紹介)(第四三三号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第四三四号)

 同(松本龍君紹介)(第四三五号)

 同(三井辨雄君紹介)(第四三六号)

 サラリーマン増税と消費税引き上げのダブル増税反対に関する請願(金田誠一君紹介)(第四一三号)

 消費税の大増税反対に関する請願(金田誠一君紹介)(第四一四号)

 大増税反対に関する請願(金田誠一君紹介)(第四一五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 関税暫定措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第二号)

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

伊藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、関税暫定措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本案に対する質疑は、去る八日に終局いたしております。

 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 関税暫定措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

伊藤委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

伊藤委員長 次に、財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁福井俊彦君、日本銀行理事稲葉延雄君、日本銀行理事水野創君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として金融庁総務企画局長三國谷勝範君、金融庁総務企画局総括審議官中江公人君、金融庁監督局長佐藤隆文君、総務省大臣官房審議官岡崎浩巳君、財務省主税局長石井道遠君、国税庁次長加藤治彦君、厚生労働省大臣官房審議官御園慎一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石原宏高君。

石原(宏)委員 おはようございます。自由民主党の石原宏高でございます。

 本日、財政及び金融に関する件という一般質疑で、日銀の福井総裁と理事の方に日銀の経済見通しと金融政策を中心に御質問をさせていただきたいと思います。

 ぎりぎりになってしまったんですが、朝の理事会で資料の提出を御許可いただいたと思いますので、資料をちょっと皆さんに配っていただければと思うんですが、済みません。

 先週、十月の三十一日に、日銀の経済・物価情勢の展望、いわゆる展望レポートが発表されました。その中で、経済は緩やかに拡大していると評価をいたしまして、前回の四月の着実に回復を続けているから、上方修正をされた評価になる一方で、先行きについては徐々に減速していくとの展望が示されました。

 この十一月で、一九六〇年代後半のイザナギ景気を超えて戦後最長の景気回復局面を迎えたと言われますが、多くの国民にとっては景気回復の実感がないのが実情ではないかというふうに思います。

 まだ資料が配られていないんですけれども、私が配らせていただきました資料一の一項目めに、各、イザナギ景気、平成景気、そして今の景気局面の実質GDP、実質企業収益、また実質雇用者所得の伸びの指数をちょっと載せさせていただいているんですけれども、これを見てもわかるように、実質GDPや実質企業収益と比べ、実質雇用者所得が低迷しているということが数値的にもおわかりになって、戦後最大の景気回復局面といいながらも、国民の方々が実感を感じていないというのがこういう指数からもおわかりになるのではないかと思います。

 そこで、日銀にお聞きしたいと思うんですが、このまま景気回復の恩恵を勤労者が受けることなく景気が減速していくことはないのでしょうか。また、失速するおそれはないのか、御見解を求めさせていただきたいと思います。

福井参考人 おはようございます。日本銀行の福井でございます。御質問にお答えさせていただきます。

 委員御指摘のとおり、つい最近、日本銀行が公表いたしました新しい展望レポートでは、引き続き日本の経済は極めて緩やかではあっても着実な拡大過程をたどっていく、こういうふうに展望いたしております。息の長い成長という言葉が一番当たるのではないかというふうに思っています。

 と申しますのも、需要面で、単に外需が引っ張るというだけではなくて、内需、外需ともに増加をしているというふうに、比較的いいバランスになっておりますし、供給面でも、生産、出荷と在庫とのバランスが、比較的、最近IT関連の在庫がちょっとふえているということを注意しておりますけれども、全体としてはよくバランスがとれていて、目先、在庫調整が急に起こる、大きな在庫調整が起こるというふうにも思われません。

 それから、ストックの方でも、企業の設備投資は非常に積極的ですけれども、過剰設備を目先持つというふうに、資本ストックの調整が大きく起こるというリスクも比較的少ない。そういう意味では、生産、所得、支出の好循環が続きやすい環境になってきている、それが大きなバックグラウンドでございます。そして、さらに申し上げれば、企業部門の好調ぶりが家計部門へ次第に波及していくだろう、こういう想定に立っての見通しでございます。

 委員御指摘のとおり、そうはいっても、イザナギ景気の記録を超えるという長い回復、拡大過程に入っても余り実感が十分でないのではないか、私もそういう声をたくさん聞きます。支店長会議の折にも報告を受けております。

 一つは、やはりこれは、二〇〇二年初頭からの回復というのは、日本経済が非常に深いふちに沈んで、最も悪い状況からの回復でありますので、実感を持つまでに非常に時間がかかった、最近ようやくというふうな感じがあるのが一つだと思いますし、もう一つは、特に個人の実感というふうなお尋ねでございます。

 この点につきましては、既に失業率が四%まで下がっているとか、所定外給与、特別給与を中心に雇用者所得も徐々にふえているというふうに、家計部門への好影響の波及が全くないわけではなくて、既に進んでいるということでありますけれども、肝心かなめのいわゆる所定内給与の伸びがまだ非常に鈍い。

 つまり、個人にとっては恒常所得がふえるという感覚にいま一歩届いていないところがあります。こういったことが大きな理由ではないか。多分これには、企業サイドが人件費抑制姿勢をやはり緩めない、国際競争にしっかり勝っていかなきゃいかぬということを強く意識しているという面と、それから、働く側でも、過去の厳しい雇用環境の経験から、差し当たりは賃上げよりも安定的な雇用の方を望むという傾向がなお残っているためではないかというふうに思います。

 しかし、既に労働力人口が頭打ちとなっておりますし、雇用者数の増加が今後とも続けば、マクロ的な労働需給のさらなる引き締まりは当然避けられないところでございます。恒常的な所得の変化と認識されるような所定内給与を含めた賃金の上昇圧力が、徐々にですけれども、さらに強まっていく、こういうふうに思っていますので、大事なことは、この日本経済の息の長い拡大というものを本当に実現していく、そのことにみんなが確信を持ってくださるということが実感を伴う道に通ずる真っ正面からの王道ではないか、こう考えております。

    〔委員長退席、竹本委員長代理着席〕

石原(宏)委員 まさに、やはり、企業収益はいいんですけれども、個人の方がその恩恵をまだ十分に受けられていないというのが今の実感ではないかと思います。

 企業部門から家計部門へ好影響が波及して進んでいく、今もう既に説明していただいたのかもしれませんけれども、どのような方法で、もしくはあとどのぐらい待てば家計に企業部門の分の利益が波及していくのかということを日銀がどう考えるか、なかなか難しい質問だと思うんですけれども、もしお考えが、日銀として、総裁の個人的な見解でも構いませんが、このぐらいになればというようなところがあると、非常に聞いている者は心強くなると思うんですけれども、御意見があれば教えていただけますでしょうか。

稲葉参考人 少々技術的なお尋ねでございますので、お答えさせていただきたいと思います。

 先ほど総裁の方から申し上げましたとおり、景気回復が長期化しても家計部門でそれが実感できないというのは、やはり賃金、特に所定内給与の伸びが緩やかであるということが大きく影響していると考えております。

 しかし、先行き、少しずつマクロで労働市場の需給が引き締まってまいりますので、いずれは、所定内給与を含めて賃金の上昇圧力というのが徐々に高まって、そして個人消費もよりしっかりとした動きになっていくのではないかというふうに見ております。

石原(宏)委員 国内の景気見通しについては緩やかに拡大していくというお話をお伺いしたんですけれども、やはり、輸出に依存している日本の経済構造を考えたときに、海外の景気というものも考えていかなきゃいけないと思うんですが、日銀は、海外経済の拡大が継続し、輸出の伸びが堅調に推移すると見られておりますが、少し楽観的過ぎないかなというような危惧もあります。例えば、アメリカの七月―九月のGDPの予想がかなり減速という形になりました。また、とりわけ住宅バブルがはじけて惨たんたる状況と聞いております。また、欧州でも、来年にはドイツが付加価値税の増税を行う予定になっておりまして、影響が懸念されるわけであります。

 例えば、米国では、私の資料の一ページ、資料一の項目二のところを見ていただけるとわかるんですが、アメリカのイールドカーブが、短期の方が五%、十年で四・七一五%として、将来の景気の減速を織り込んで逆イールドの形になっています。

 また、資料二を、資料の三ページ目ですが、メリルリンチ、アメリカの証券会社ですけれども、メリルリンチが計量的なモデルを使いまして、来年の米国景気が後退する可能性が五〇%以上あるというような説明、レポートを出しておりますけれども、日銀として、アメリカの景気についてどのように考えていらっしゃるのか、そして、アメリカの景気が減速することによって日本の景気に悪影響が及ぼされないのかどうか、御見解をお聞かせいただきたいと思います。

福井参考人 日本経済は世界経済と緊密な連関を持って動いておりまして、海外経済の動向を常に注意深く見守っていく必要があるというふうに私どもも思っております。最近、米国経済の減速傾向が明確になっております。御指摘のとおりでございます。ただ、そういう米国経済の減速の動きを含みながらも、世界経済は地域的な広がりを持って順調に目下のところは拡大しております。したがいまして、ソーファー、これまでのところは、米国の経済の減速にもかかわらず、日本からの海外への輸出、あるいは、厳密に言いますと、米国への輸出すら幸いにも余り悪い影響を受けていない、今日まではそういう状況が言えると思います。

 しかし、米国経済自身、世界経済に不測の悪い影響を及ぼしかねない、こういう心配がやはりありますので、十分注意して見ていかなければなりませんが、私ども、第三・四半期にアメリカの経済が、住宅投資が大幅に減少して成長率も一・六%まで減速した、非常に注目しています。ただ、現在までのところは、その一方で、アメリカの企業の設備投資は非常にしっかりしている、やはり収益がいいということを背景にしていると思います。

 それから、個人消費が多少減速しておりますけれども、そのペースも、エネルギー価格の下落とか所得の上昇がありますのでブレーキがかかっている、緩やかな減速にとどまっている、こういう状況でありますので、今のところ、アメリカ経済の基本的な成長メカニズムが住宅市場のクーリングオフによって崩れてきているという状況ではないというふうに思っています。

 したがいまして、この趨勢でいけば、アメリカ経済が先行き景気後退局面、リセッションに陥るような事態には至らない可能性がなお高いのではないかというふうに考えられます。

 一方、インフレ圧力の方も、最近の油の値段がひところよりは少し落ちついているということが助けになっておりますのと、景気減速につれてやはりこのインフレ圧力は次第に低下していく可能性がある、こういうふうに見ています。

 したがいまして、標準的な見通しとしては、アメリカ経済は、来年以降でありますが、次第に潜在成長率近傍の安定的な成長パスに戻っていく姿、それがより明確になっていくのではないかというふうに見られるところでございます。

 しかし、御指摘のとおり、市場の中ではさまざまな観測があります。かなり悲観的な見方をなさる方もたくさんいらっしゃいますので、注意深く臨んでいかなきゃいけないと思いますが、一つが、金利面で逆イールドの状況が続いている。私どもも、このイールドの分析、懸命にやっておりますけれども、なかなかわかりにくいところもございます。世界的にインフレ、これだけ油の値段が上がっても期待インフレ率が比較的うまく抑制されているということの反映かもしれない。長期金利は、今、世界的な連動性を持って動いております。そういうことかもしれません。かつまた、強いて楽観的なことを申し上げるわけではありませんが、イールドは逆イールドになっているんですけれども、一方でアメリカの株価はかなり堅調に推移しています。したがいまして、市場が全体として米国の景気後退懸念を強めているとか、支配的な意識としてそれを持っているというふうにはなっていないのではないかととりあえず思っているところであります。

 いずれにしましても、米国経済の基本的なシナリオが崩れた場合には、世界経済に、ひいては日本経済に悪い影響があることは確実です。そういうダウンサイドリスクはしっかり見ていかなきゃいけませんが、一方で、景気が多少減速しても米国のインフレ圧力が想定どおり静まるかどうか、こちらの方についても不確実性が残っています。したがいまして、アップサイド、ダウンサイド、両方のリスクをこれから注意深く見きわめていきたい、こういうふうに思っております。

石原(宏)委員 内外の景気見通しについては今お話をお伺いしたんですけれども、景気見通しとともに、金利政策、金融政策ということになると思うんですが、日銀の金利政策について少しお伺いしたいと思います。

 今、御説明、福井総裁からもありましたように、日本の景気もアメリカの景気も、緩やかに回復というか、成長を続けるという御発言だったと思うんですけれども、そういう見通しの中から、金融市場では、早ければ年内に日銀がもう一段の利上げを行うという観測があるわけですけれども、一方で、日銀は来年度の予想消費者物価上昇率を〇・五%とされているわけであります。

 消費者物価指数は、御存じのように、上方バイアスというものがありまして、それを勘案すると、例えば、もしかすると実質的には消費者物価はゼロ、上昇しないんじゃないかというようなことも考えられるわけでありますけれども、そういう中で利上げを行った場合に、またデフレになってしまうんじゃないか、日本の景気の腰を折ってしまうんじゃないか、そういう懸念があるのではないかというふうに思うんです。例えば資料三の、日経新聞になっておりますけれども、実はIMF、国際通貨基金が、日本のデフレの再発について、そのリスクは無視できないというふうに警告をされているわけであります。

 ちょっとお伺いしたいんですが、日銀は、望ましい物価水準についてどういうふうに考えているのか。日銀の今までの御発言を見ていると、消費者物価上昇率でゼロから二%という、欧米の中央銀行の基準と比較しても、やや幅の広い、そして何か少し高過ぎないかというような印象を受けているんです。

 例えば、ヨーロッパの中央銀行、ECBでは、消費者物価指数のHICPの前年比上昇率で二%を若干下回る程度というふうに望ましい物価水準を明言しております。また、FRBでは、これはバーナンキ議長の過去の発言から推測されるわけでありますけれども、コアの個人消費デフレーターの前年比伸び率で一、二%程度だというふうに説明をしているんですが、それと比べても、日銀のゼロから二%というのはちょっと幅が広過ぎるというふうに思うんですが、これについて御見解をお聞かせいただきたいと思います。

福井参考人 まず、日本銀行の展望レポートで示しました経済見通しは、今年度それから来年度、二年度間の見通しでございますが、経済が長期的に回復し、成熟局面に入っておりますので、成長率自体は緩やかに減速する、一方、物価につきましては、需給が徐々に引き締まっている、ユニット・レーバー・コストの低下幅も縮まってきているということでありますので、物価上昇圧力は目立ちませんが、じわじわと強まる、消費者物価指数で表現すれば、大して上がらないとおっしゃったとおり、ごくわずかに上がる、したがいまして、いわば超物価安定のもとで息の長い経済の成長が続く、こういうふうなシナリオを出しているわけであります。しかも、このシナリオの前提になっておりますのは、今の超金融緩和状態を示しております極めて低い政策金利を、少しずつ上がっていくという前提のもとにこのシナリオができているということでございます。

 したがいまして、見通しのとおり経済が推移するようであれば、政策金利をゆっくりと引き上げていくということと整合的でございまして、景気回復の芽を摘むとか、あるいは引き締め、いわゆる強い引き締めと感じられるような経済状況を現出するというふうなものではございません。むしろ、息の長い経済の成長経路をより強固に確保するための措置、こういうふうに御理解いただきたいと思います。

 お尋ねの物価安定についての考え方でございますけれども、日本銀行では、ゼロから二%という範囲で、中長期的な物価安定と考える物価上昇率、これは九人の政策委員それぞれが、中長期的な物価安定と考える物価上昇率、これを持ち寄って、全体としてこの幅におさまっているということでありまして、したがいまして、ある幅を持っているということでございます。

 このゼロから二%という範囲は、海外主要国よりも、まずレベルとしてやや低目になっています。しかし、我が国の場合は、もともと海外主要国に比べて、過去数十年の平均的な物価上昇率が低いわけでございます。ちょっとうろ覚えで申しわけありませんが、過去二十年ぐらいの日本のCPIの平均上昇率というのは一%に満ちていないと思います。

 そういう状況でございますので、日本経済の中で仕事をしておられる人々は、あるいは生活をしている人々は、そうした低い物価上昇率を前提として経済活動に係る意思決定が行われている可能性がある、そうした物価観と我々の中長期的な物価安定の理解のレベルをそろえながら金融政策をやっていこう、こういうふうになっているわけであります。しかし、我々は、この先は、もう量的緩和政策からも脱却したので、ずっと先を読みながら、フォワードルッキングな金融政策をやろうと言っています。

 したがいまして、過去の物価上昇率の正負が今申し上げましたようなことであっても、将来に向かっては、やはりさらに日本経済の構造改革が進む、その中で物価形成メカニズムも変化していく可能性があると思うんです。この中長期的な物価安定の理解につきましては、そうした経済構造の変化等に応じて、やはりこれは徐々に変化し得る性格のものだというふうに基本的に認識しておりまして、原則としてほぼ一年ごとにしっかり点検していきたい、政策委員会としてもそういう方針でございます。

    〔竹本委員長代理退席、委員長着席〕

石原(宏)委員 ありがとうございました。

 日本はゼロから二%といって幅広いので、ちょっとかた目というか、あと楽観というか、ゼロ%の消費者物価上昇で利上げをしていいのかというような気がしますので、ちょっと質問させていただきました。

 今お話をしていただいたと思うんですけれども、日銀が考える日本の潜在成長力をどういうふうに考えるかということをちょっとお聞かせいただきたいと思います。

 例えば、平成十七年、内閣府の企業行動に関するアンケート調査によると、企業の期待成長率は一・九%というような数字もありますけれども、日銀が考えていらっしゃる日本のこれからの潜在成長力というのは、大体GDPベースで何%ぐらいなのかというのをちょっと教えていただけますでしょうか。

福井参考人 委員よく御承知のとおり、潜在成長率というものを正確に計測するということはなかなか難しいのでございます。各国とも大変苦労しております。日本銀行も悪戦苦闘しながら、現在の潜在成長率は大体どの辺かということを常に探っておりますが、資本ストックの量とか労働力の水準、生産性上昇率がどの程度かというふうなことをいつも点検しながら作業しておりまして、現在、私どもは、日本経済の潜在成長率は余り高くない、一・五%から二%の範囲内というふうに見ています。展望レポートでも、日本経済、昨年度は三・二%成長でございましたけれども、潜在成長率に向かって今年度、来年度は緩やかに下がっていく、むしろその方が息の長い成長が続く、こう思っております。

 しかし、二%に満たない潜在成長率でやはり満足できないであろう、少なくとも二%を超えていく必要がある。しかし、既に人口の減少が始まっております。労働力の供給のパイプはやはり細っていくという中で、この逆風を乗り越えながら潜在成長能力を上げていくというのは大変難しい課題なんですけれども、政府におかれましても、しかし、この点は大事だということで、せめてやや中期的に二・二%ぐらいの潜在成長能力に引き上げていこうというふうに政策の方向性をそろえておられるわけです。

 私どもも、これは非常に重要な政策だ、ぜひそういうふうに実現されることが望ましい、潜在成長能力が上がれば、それをそのまま現実の成長力として発揮し、しかも景気の振幅が大きくならないような経済の姿を国民の皆様に提供する責任がある、金融政策はその面で貢献することはできるだろう、潜在成長能力を上げることには日銀の政策はなかなか貢献できませんが、上がった潜在成長能力をフルに発揮させ、安定的な成長を遂げるというふうな場面においては我々は十分貢献できる、こういうふうに思っています。

石原(宏)委員 時間も残すところ五分になりましたので、一問ぐらいの質問になってしまうと思うんですが、資料の五ページ目、資料四として英国のフィナンシャル・タイムズの記事を載せさせていただいております。

 これはどういう内容かというと、日銀筋のコメントとして、いわゆる円キャリー取引、すなわち、安い金利の円でお金を調達して、円を売って、その他の高金利資産で運用して利ざやを稼ぐ、為替はオープンにしておいて稼ぐ、そういう市場が八兆円から十五兆円あるという記事がここに書かれております。

 これは日銀筋のコメントというふうになっているんですが、これは本当なのでしょうかということと、今、これから金利上昇も徐々にというふうに言われているんですけれども、日銀が金利を上げていく、金利引き締めというふうな形で動いていくときに、この過程で、円キャリー取引の巻き戻しが起こって、円を借りて外貨で運用していたんですけれども、金利が上がっていっちゃうのでさやが稼げないので、外貨を売って円を買い戻すというような取引が急に起こって、円高が急進するおそれはないのか。この点について、日銀の御見解を求めたいと思います。

福井参考人 円キャリー取引とは何かというのは、そもそも余り定義のない取引なんでございますが、委員がおっしゃいましたとおり、普通には、相対的に金利の低い円資金を調達して、為替リスクをとりながらこれを外貨にかえて高金利通貨建ての資産に投資する、こういう取引と理解されております。

 こういった取引は、内外の金利差が大きくて為替相場が安定傾向にある局面では、投資家としてそういう投資行動をとるインセンティブが強まりますので、こういう取引がふえる傾向がある。現在は、我が国の金利が諸外国に比べてかなり低い水準にございます。その状態が続いておりますので、海外との関係次第でありますけれども、円キャリー取引が生じやすい環境にあるのは事実だと思います。現実にふえていると思います。

 したがいまして、私どもの市場担当者も、市場参加者の方々と常時感触を交換しながら、どれぐらい膨らんでいるのかということをつかもうという努力はしています。おっしゃいましたような数字で明確につかんでいるわけではないと思いますが、つかむ努力をしています。そして、かつ、これが非常に膨れている場合には、先行きの金利観に急激な変化が生ずれば急激な巻き戻しが起こり、さまざまなひずみをもたらす、このリスクは非常に大きいものですから、私どもは大変警戒的にここは見ている。

 したがいまして、金融政策の運営に当たりまして、市場とのコミュニケーションを綿密にやらないと、非常にサプライジングなことになればそういう現象が、つまり、まず円キャリートレードが異様に膨らむ、逆にまた巻き戻しが大きくなる、往復のリスクがありますので、常日ごろから市場との政策運営をめぐるコミュニケーションは濃密にやっていって、そういう円キャリートレードのようなものが異様に膨らまないように、逆にアンワインディングが起こる局面においてもスムーズに行われるようにというふうに心がけております。これはなかなか難しい仕事でございます。

石原(宏)委員 ありがとうございます。時間が参りましたので、質問を終わりたいと思いますけれども、最後に一言。

 金利政策については、中央銀行として日銀に独立性があることはよく理解しておりますが、安倍新内閣が成長戦略を上げていることについてもぜひ御配慮をいただき、景気が腰砕けにならないように今後金利政策に当たっていただきますようお願いをいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、谷口隆義君。

谷口(隆)委員 おはようございます。公明党の谷口隆義でございます。

 きょうは、初めに、政府税調についてお伺いをいたしたいと思います。尾身大臣に来ていただいておりますので、尾身大臣に主にお尋ねをいたしたいと思います。

 御存じのとおり、十八年の十一月七日から新たに、税制調査会の総会が開かれまして、石会長から本間会長にバトンタッチをされたわけでございます。

 それで、私も石会長と意見交換したことがございますし、石会長のお考えもよく知っているわけでありますが、石前会長は、経済成長重視の安倍政権の戦略について、このようにマスコミの報道、インタビューにおっしゃっておられるわけであります。「財政が借金漬けという問題を、成長だけでは解決できない。近視眼的だ」このようにおっしゃっておられまして、将来の増税論議は避けることができない、このような立場でおっしゃっておられます。

 一方で、本間会長の方は、合理的な課税体系を目指す最適課税論の代表的な論者でありまして、経済の効率性に、より軸足を置くという立場の方であります。そういう意味においては、安倍総理の目指す経済成長重視政策に違和感がないというような方なんだろうと思います。

 それで、そういう会長の考え方の違い、また、どうもお聞きしますと、従来は財務省の内部で政府税調を開催されておったわけでありますけれども、このたびは内閣府に移すということでございます。そもそも政府税調というのは総理の諮問機関でありますから、そういう意味では本来に立ち返って、これからは安倍総理も出てきていただいてというようなことも報道されておるわけであります。いわば官邸主導でやっていくという方向に転換されたのではないかという報道がございます。

 また、それにつけ加えて、今回の政府税調への諮問事項を見ますと、ずっとありまして、「こうした税制改革の中では、喫緊の課題として、我が国経済の国際競争力を強化し、その活性化に資するとともに、歳出削減を徹底して実施した上で、」ということで、競争力強化ということを強くにじませたような諮問事項になっておるように私は感じたわけであります。

 こういうような、私が今申し上げた状況の中で、今回、政府税調が、会長がかわり開催場所が変わり、こういうようなことになったわけでありますが、これからの政府税調の開催における期待感も込めて、尾身大臣が一体どのようにお考えなのか、御所見をお聞きいたしたいと思います。

尾身国務大臣 安倍政権にかわりましてから、政府税制調査会の委員もいわば一新されたわけでございまして、これは、新しい内閣のもとで、今後、経済、財政一体となって活力ある日本をつくっていく、こういう考え方のもとに、予断を許さず、また新鮮な顔ぶれにしたいという安倍総理の御意向もございまして人選が行われ、本間会長を中心とする新しい政府税制調査会の委員が選ばれたわけでございます。

 新しい税制調査会におきましては、安倍政権の成長と財政再建は両立するという考え方のもとに、公平、中立、簡素、さらに活力という原則に照らしながら、税制が経済や財政あるいは企業、家計にどのような影響を及ぼすかというような視点に立ちまして、あるべき税制の姿というものを御議論いただきたい、このように考えて、私どもとしては大いに期待をしているところでございます。

谷口(隆)委員 また、尾身大臣は、先日大阪でも、減税のことに言及された御発言があったり、減価償却については企業の競争力強化のためにはやっていった方が好ましいというようなお考えを述べていらっしゃったわけでありますけれども、このようなことについて、大臣御自身がどういうふうにお考えなのか、お伺いいたしたいと思います。

尾身国務大臣 経済の成長と財政の再建は両立する、またさせるべきであるというのが私どもの考え方でございます。

 そういう中で、経済のグローバリゼーションに伴いまして、企業が国を選ぶ時代になった、つまり、日本の企業、外国の企業を問わず、世界の中でどこに生産拠点を置くか、どこに事業活動の中心地を置くかということは企業が選ぶ時代になったというふうに認識しているわけでございます。そういう中におきまして、日本経済が発展をし、ここで雇用を確保し、経済の発展と、かつ生活水準の上昇を実現するためには、日本という国が、経済の面において企業活動の拠点として魅力あるところにならなければならないと考えております。

 そのような考え方に立ちまして、少なくとも、税制等に関してはイコールフッティングなものにしていかなければならない。同時に、経済の国際競争力を強化していく必要があると考えているわけでございます。

 そのような考え方のもとにイコールフッティングといいますと、例えばの例示として、減価償却における残存価値を日本は五%は残さなければならないというルールになっておりますのに対して、もうほとんどの外国は一〇〇%償却をする、つまり残存価値は帳簿上残さなくていい、税制上も残さなくていいということでございまして、こういう点で、イコールフッティングという点から見ると今の五%の残存価値は問題があるというふうに考えておりまして、その点について申し上げているところでございます。

 これらについては、もとより税制調査会、政府税制調査会及び与党税制調査会の御議論を伺いながら決定していくわけでございますが、先ほど申しましたような、企業が国を選ぶ状況のもとにおいて、日本だけでこういう特異のハンディキャップというのはなくしていくべきではないかというのが私の考えでございまして、これから関係方面と御協議をしながら検討を進めてまいりたいと考えております。

谷口(隆)委員 経済成長をすると。先ほど日銀総裁のお話を聞いておりましたら、なかなか潜在成長率というのは難しい話だと。大体一・五%から二%程度の潜在成長率で、政府は今実質二・二%を目指してやっているわけですけれども、やはりなかなか難しいというようなお話があったわけであります。私は、個人的にはやはり、例えば減税をするといった場合の経済効果はあるんだろうと思うんですね。だけれども、そのことに行き過ぎた自然増収を期待したような財政当局のあり方ではまたまずいというように思っております。

 実は、私が平成十四年、十五年に財務省の副大臣を務めたときに、財務省の「日本の税制」という毎年出しておる本があるわけです、この本で、どうもレーガン減税、またサッチャー減税のところの評価が非常に否定的な評価であったものですから、財務省の職員の方と議論をし、かなり深い議論をして、十五年度版からは両論併記をしていただくことになりました、レーガン減税のあり方。まあ大臣、一度見ていただいたら結構かと思います。ですから、そういうような減税が与える経済効果というのも私はあると思いますから、そのあたり。

 しかし、一方で、しっかりとした財政を確保するという財務省の非常に重要な役割がありますから、どうなるかわかりもしないような自然増収に頼るということは、これは好ましいことではありません。ですから、そういう観点で、ぜひ大臣に頑張っていただきたいと思う次第でございます。

 それで、その次に、先ほど非常に政策的なことで議論されました日銀の金融政策について、私の方は、むしろこの政治とのかかわりの質問をさせていただきたいと思うわけでございます。

 日銀総裁は、十一月七日の講演で、今後の金融政策で、リスクが起こる前にきめ細かく手を打つというように述べられ、景気拡大が続けば緩やかに金利を引き上げていく意向を強調されたような御講演があったようでございます。

 それで、一方で、最近の景気先行きの不透明感が増しておるというような経済指標が今出てきておるわけであります。例えば、九月の電子部品、デバイスの在庫指数は過去最高で、市場ではIT分野の在庫調整圧力が強まる懸念が強まっておるとか、また、九月の家計調査では、一世帯当たりの消費支出は実質で前年同月比六%減になったとか、こういうような、不透明感がより一層増すような経済指標が出ておるということで、市場関係者は再利上げ時期が後ずれになるんではないかというような考え方が広まっておるという状況のようであります。

 それで、先ほどの話のように、安倍政権は経済成長重視で今やっておられるわけでありまして、この前提は、金融緩和がやはり前提になっておるというように私は思うわけでありますが、新聞報道を見ますと、十一月二日の経済財政諮問会議で、日銀が景気の過熱を指摘したのに対しまして、民間議員から牽制するような意見が相次いだと。それで、八代民間議員の方は、投資は強いけれども消費は強くならない、設備投資だけ注目が当たり過ぎておるというのは誤解を与えるのではないかということ。また、伊藤隆敏議員の方は、上振れリスクより下振れリスクの方が大きい、このようなことをおっしゃったようであります。

 このような中で日銀と政府が対立するというようなことになりますと、これは好ましいことではありません。このような私が申し上げたことを念頭に入れていただいて、日銀総裁が今どういうようにお考えなのか、お伺いをいたしたいと思います。

福井参考人 金融政策の運営に当たりまして、私ども、日本銀行法に規定されましたとおり、常に政府との意思疎通を十分図る、相互の理解の上に立って金融政策を行い、金融政策の効果を高めていく、こういう努力を続けております。

 また、経済財政諮問会議におきましても、私は、一人のメンバーとして率直に意見を申し上げ、率直な意見交換をさせていただいている。ちょうだいしましたさまざまな意見は、私どもが金融政策を考えていく上に大変重要な糧になっている、こういうふうに思っています。

 現在、御承知のとおり、極めて緩和的な金融環境を通じて経済をサポートし続けております。私どもの今年度、来年度の経済見通しは、成長率こそ緩やかに低下するけれども、物価安定のもとに持続的な息の長い成長が確保できる、こういう見通しに立っております。この見通しをより強固なものにするためには、この経済が本当に標準的なシナリオどおり動いていった場合にはゆっくりと政策金利を調整するということと整合的だという見通しになっております。

 そういう意味では、日本銀行としては、何か利上げを急ぐとか、あらかじめスケジュールを心の中に持って、何が何でもある時期絶対金利を上げなきゃいけないというふうな姿勢で臨んでいるわけではございません。

 委員御指摘のとおり、先ほどもちょっと私触れましたけれども、電子デバイス関連部品なんかの在庫が非常に上がっていたり、こんなことは一体何を意味するのかということを丹念に今分析中でございます。それから家計調査も、一番最近時点の数字が、私どもから見ましても少し唐突感のあるぐらい弱い数字であったというふうに思っています。これらにつきましても、先行きの経済にどういうインプリケーションがあるかを懸命に分析中でございます。

 こういうふうに新しく出てきます、今後ともいろいろな指標が出てくると思いますが、いい指標であれ、あるいは必ずしもよくない指標であれ、一つ一つ丹念に分析しながら、経済の基調というものに狂いがないかどうか確かめて、そこに確信が持てればやはりゆっくりと金利を調整していくということが、景気の芽を摘むのではなくて、逆に息の長い成長を確保する道に通ずることができると。

 政府におかれましても、物価安定のもとの持続的な成長確保ということは重要な目標としておられるわけでして、この点について、日本銀行と持っている目標に全く相違はないんじゃないか、こういうふうに考えております。

谷口(隆)委員 市場関係者は、必ずしも政府と日銀の方向が一緒だとは思っておられないような意見を持っていらっしゃる方が多いということはあるんだろうと思います。

 それで、ペンシルベニア大学の名誉教授でL・クライン氏が、日本の潜在成長率、今おっしゃったような一・五だとか二だとかいうようなことではなくて、三%程度の潜在成長率は可能だ、このようにおっしゃっておられて、アメリカの場合はIT革命を生かして生産性を高めて高成長したと。

 このアメリカが高成長した原因は、FRBのグリーンスパン氏が、米国経済の成長について、IT革命による潜在成長率の向上を信じてFRBは利上げを急がなかった、それが米国経済のインフレなき高成長につながった、このようなことをおっしゃっておられまして、まだまだ二%、政府は二・二%と言っているわけでありますが、それを超えるような成長はIT革命を通じて起こり得るというような立場のことをおっしゃっておられました。

 これについて、何かコメントするようなことが総裁の方でありましたら、お願いしたいと思います。

福井参考人 米国の場合も、九〇年代を振り返ってみますと、九〇年代前半の、いわゆるドットコムブームと言われたぐらいのIT関連の猛烈な投資が行われましたけれども、しばらくは生産性の上昇あるいは潜在成長能力の向上に結びつかなかったわけであります。これが生産性パラドックスと言われた時期がございました。しかし、やはりIT関連企業だけではなくてすべての企業が、このIT技術の進歩をみずからのビジネスの効率性の向上のためにうまく活用するような段階になって初めて、生産性が上がってきた、こういうことがございます。

 日本の場合も、バブル経済崩壊後、潜在成長能力は極端に落ちたと思います。八〇年代、三・五ないしはそれを上回っていた潜在成長能力が、恐らく一%台の低いところまで一たん落ちた。しかし、その後やはり、企業はバブル崩壊後の過剰の問題を処理しながらも、結構新しいビジネスモデルの模索ということを前向きに続けた結果、生産性は上がってきております。

 したがって、先ほど私が一・五から二の間と申し上げました潜在成長能力は、非常に低いところに落ちたものから少し回復してきている、その途上のものでございます。したがいまして、今後の努力によって、さらに日本の潜在成長能力を引き上げていくことは十分可能だと。

 一つだけ新しいハンディキャップ要因は、昨年あたりから総人口の減少が始まっている、これは一過性のものではなくて、今後二十年あるいはそれ以上続くというものでありますので、この大きなハンディキャップを乗り越えながらやっていかなきゃいけないというのは、やや日本にとって重い課題です。しかし、これはやはり乗り越えていかなきゃいけない、こういうふうな感じで見ております。

谷口(隆)委員 日銀は日銀の独立性もございますから、はっきりおっしゃっていただいたら結構でありますけれども、そこは政府との間で方向がたがえることのないように、ぜひ頑張っていただきたいというように思います。

 その次に、今度は金融庁の関係でお伺いをいたしたいわけでありますが、東京証券取引所と、ニューヨーク証券取引所を運営するNYSEグループ、どこかで聞いたようなグループでありますが、NYSEグループとの提携協議についてお伺いをいたしたいと思います。

 欧米では、今、取引所の再編の大きな流れがあるわけでありまして、アジアでもこのような取引所再編の流れが及んできたというようなことのようであります。このような流れがあるんですけれども、しかし、このような再編が、提携が利用者にどのような利点があるのか、取引所の再編統合が利用者にどのような利点があるのかということが明確ではありません。むしろ、欧米の再編の波にのみ込まれるのではないかというような危惧の声さえもあるわけであります。

 企業と投資家の活動がグローバル化しておるわけでありますけれども、このようなグローバル化しておる世界経済の構造が今変わってきたというようなところにこの原因があるんだろうということを言われておりますが、実はしかし、足元を見ますと、会計制度も違いますし、法制もばらばらであります。ですから、このような再編統合がどのような効果をもたらすのかというところが明確ではありません。

 このような東証とNYSEグループの提携協議について、金融担当大臣に所見をお伺いいたしたいと思います。

山本国務大臣 谷口先生が御指摘のように、東証とニューヨーク証券取引所の業務提携に関する報道が再三なされていることは承知しております。また、東証は、次世代システム構築等の経営課題への取り組みを着実に進めた上で、海外の取引所との提携について検討を進めていく方針であるということを既に公表しているわけでございます。

 本件におきましては、一義的には個別の取引所の経営に係る事柄でございまして、金融庁としてあえてコメントするということは差し控えるべきだというように思いますけれども、一般論として申し上げれば、谷口議員の御指摘のとおり、取引所間の提携に当たって、各国における法制度や会計制度の違い、そういったものを含めた上での検討がさらになされるべきであるというように思っておりまして、提携等の結果が証券市場の利用者にとって有意義で利便性が高いことになるというような確信を持ったものでありたいというようにも思っておるわけでございます。

 以上でございます。

谷口(隆)委員 この提携協議は、どうも聞いておりますと、東証とNYSEグループの持ち合いが一〇%以内でとどまるというような協議内容になっておるようでありますが、しかし、このNYSEグループが追加出資を求めてきた場合に一体どうなるのかというようなことが考えられるわけですね。

 それで、この六月に成立をいたしました金融商品取引法、これには、あの村上ファンドによる大阪証券取引所の株式の大量取得問題を踏まえまして、議決権が二〇%を超える証券取引所株式の所有を原則として禁じておるというようなことでありますが、地方公共団体とその他政令で定める者に関しましては五〇%まで認めるという例外もあるわけであります。

 それで、追加出資を求められた場合に一体どうするのか、また、その他の政令で定める者に海外取引所が入るのかどうかといったことについて、御答弁をお願いいたしたいと思います。

三國谷政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、金融商品取引法におきましては、地方公共団体その他の政令で定める者は、認可を受けまして、株式会社形態の金融商品取引所の二〇%以上五〇%以下の議決権を取得できることとされているところでございます。この政令でございますが、現段階におきましては、金融商品取引法全体につきまして、来年夏ごろの施行を目指しまして、現在、関係政令あるいは関係府令の整備に取り組んでいるところでございます。

 御指摘の論点につきましても、公共性や業務の健全性の観点などを踏まえまして、今後、関係者の意見も伺いながら検討を進めてまいりたいと考えているところでございます。

谷口(隆)委員 それ以外に、アメリカはニューヨークの取引所がありますし、またシカゴにも取引所があるわけですね。今度、シカゴでは先物と商品取引所が一緒になるというようなこともあるようでありますが、そういう意味において、我が国も、東証だけが非常に大きくなっていいのか。そういう意味で、東証と大証の役割分担をする、例えば、先物の大証、また現物の東証というような役割分担がいろいろ考えられるわけでありますね。それについて大臣はどのようにお考えなのか、御答弁をお願いします。

山本国務大臣 東証のほかに、大阪証券取引所なども、アジアやヨーロッパ等の複数の取引所との間でさまざまな内容の協定を締結されまして、情報交換等を通じた相互連携を進めているということでございます。

 金融庁といたしましても、それぞれの取引所が、みずからの経営戦略のもとで、グローバルな競争力の強化等に取り組んでおられることは基本的に望ましいと考えております。そうした取り組みの結果としまして、利用者の利便性の向上や我が国資本市場の活性化につながっていくということを期待しております。

 また、谷口委員の御指摘のように、東証の特徴と大阪証券取引所の特徴を生かしながら、来るべきグローバルな時代に対して、日本のマーケットが競争力で負けないというような観点も必要だろうというように思っております。

谷口(隆)委員 大臣、ぜひそういう観点で、取引所というのは非常に重要なので、今もう株式会社になっておりますけれども、国の施策と非常にかかわりがありますから、きめ細かく見ていただく必要があるんだろうと思います。よろしくお願いいたしたいと思います。

 それで、若干時間が残っておりますので、あともう一問お聞きいたしたいわけであります。

 国税局または税務署の職員をかたって、所得税の払い過ぎのために還付金がありますといって、金融機関またコンビニエンスストアのATMのところへ行ってATMのボタンを押してほしいなどといって、それで現金をだまし取ろうとする振り込み詐欺が今出ておるというようなことのようであります。

 それで、どうも見ておりますと、これは六月ぐらいから生じておりまして、六、七、八、九、十とだんだんふえてきていまして、これは連絡があるものだけでありますから、現在その被害に遭ったということではありません。この不審電話の連絡状況を国税庁のこの資料で見ますと三千五百件ぐらいありまして、六月は五十一件、七月は二百十四件、八月は五百四十一件、九月が七百七十六件、十月が一千八百七十五件と、徐々にふえております。

 それで、実際に現金を振り込んだ者が、国税庁が把握しているだけですから、これは警察が把握しているものもあるんだろうと思うんですね、国税庁把握分だけで八十五件があったようでありまして、これは断じて許すわけにはまいりませんので、徹底してこれを、こんなことをさせないと。多分これは御高齢の方なんかがだまされてやっているんだろうと思うんですが。

 国税庁に、今やっていらっしゃる対応をお話しいただきたいと思います。

加藤政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘のように、税務職員の名をかたったいわゆる振り込め詐欺が増加しております。六月ごろから徐々に税務署に問い合わせがふえておりまして、先ほども御指摘のとおり、現時点で税務署で把握している、税務署に問い合わせがあった件数が、一般的なもので三千五百件ほどございます。

 また、最近、十一月になって、これは報道等でもされておりますが、国税局の文書の形で詐欺をする。まず文書を発出して、その文書によって誘導してATMのところに来させるという新たな手口も発見されまして、これが今現在八百件ほど問い合わせがございます。実際に被害の方もいらっしゃるようでございます。

 私ども、実際の被害に遭われた方に対する対応については警察、捜査当局の方にお願いせざるを得ないんですが、こういうことを防止するという見地から万全の対策をしたいということで、今回の報道も、我々の方から報道機関に情報提供を行いましてお願いをしております。

 それから、ホームページとかポスターとかを活用して注意喚起をしておりますが、特にこれから我々国税庁を主体として、金融機関等に対して防止のためのPR用のポスターなどを掲示していただくということで、これはATMを使った犯罪でございますので、ATMのところになるべくそういう注意喚起のポスター、チラシ等が張られるようにお願いしたいと思っております。

谷口(隆)委員 ぜひ、国税庁では、このようなことが起こらないように、できるだけの注意喚起をしてやっていただきますようお願いをいたしまして、時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。

伊藤委員長 次に、馬淵澄夫君。

馬淵委員 民主党の馬淵でございます。

 一般質疑の機会をいただきました。きょうは日銀総裁にもお越しいただいております。一時間の時間、日銀の総裁にお尋ねをさせていただく、あるいはまた財務大臣にも同席いただいておりますので、お尋ねをさせていただく、その思いできょうは質疑をさせていただきます。

 まず、日銀の保有資産の見直しについてお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。

 前回私は、十月二十七日、この委員会での大臣所信の質疑をさせていただきましたが、財務省におかれましても、この保有資産の見直しというのは当然ながらにしっかり行っていく、資産・債務改革として、財務省は、宿舎、庁舎も含む国有財産全般の売却、有効活用、これらを積極的に取り組む、こう所信でも明示をされておられます。

 そして日本銀行、もちろんこれはまた独立した機関ではございますが、昨今の厳しい状況の中、より効率的な経営を実現するためにも、その運営を実現するためにも、保有資産の見直しについては当然ながらに取り組みを積極的に行われているかと思います。こうした保有資産の見直しにつきまして、まず全般的な方針ということで端的にお示しをいただけますでしょうか。

水野参考人 お答えさせていただきます。

 私どもでは、従来から、日本銀行法で求められております適正かつ効率的な業務運営の実現を目指しまして、さまざまな改革の努力を続けてまいりました。平成十一年一月には、その一環として、業務、組織運営面からの必要性も念頭に置きつつ、保有資産の合理化に関する方針を公表いたしております。

 その主な内容でございますけれども、第一に保養所及び運動場の廃止、売却、第二に支店長宅のマンション化と保有舎宅の処分、第三に行舎集約化等の推進による遊休不動産の処分、この三点でございます。

馬淵委員 今方針を述べていただきました。この九九年一月二十九日、保有資産の見直しということで、新日本銀行法で求められている適正かつ効率的な業務運営の実現を目指して、保有資産の合理化に関しては、これは今理事の御答弁にありましたように、舎宅集約等によって、これまた処分等によって合理化を図っていくんだということでございました。

 さて、この合理化でございますが、主には支店長の舎宅あるいは保養所及び運動場の全廃、また遊休不動産、ゴルフ会員権の積極的売却、このように方針にも掲げられております。

 こうした方針を鋭意取り組んでいらっしゃることかと思いますが、きょうは、皆様のお手元に、委員長のお許しをいただきましてお配りした資料、その一ページ目から四ページまで、これは週刊現代の二〇〇六年十一月四日号に載った記事でございますが、「日銀の「超豪華施設」一挙公開!」ということで、こうした資産が載せられております。もちろん、これに関しては、単に日銀がこうした資産を持っているということではなく、保有資産の見直しにおいてその処分が進められているということではありましたが、その処分の状況につきまして、これも端的で結構ですので、事務方で結構ですので、お答えいただけますでしょうか。

水野参考人 お答えさせていただきます。

 保有資産のスリム化の状況でございますけれども、例えば、保養所につきましては、既にすべて廃止しておりますほか、支店長の舎宅につきましても、築年数を勘案しつつ、四カ所を除きマンション化を終えております。さらに、廃止しました十三保養所のうち十の保養所、それからマンション化いたしました二十八の支店長舎宅のうち二十三の支店長舎宅につきましては、売却も完了しております。

 こうした取り組みのもとで、遊休化する不動産の処分を推進した結果、十七年度末の保有不動産、これは本店を初めとする営業用の不動産も含んだ日本銀行が所有するすべての不動産でございますけれども、これの面積は、当時、十年度末に比べて二五%程度削減されているという状況でございます。

馬淵委員 今、保有資産の処分状況といいますか見直しの状況についてお答えいただきました。これは、お手元の資料の五枚目に、日銀から提出をいただきました「保有不動産の現状」ということで、トータルでは、こうした見直しの対象になっているものについては、十七年度末で二五%の処分が済んだということであります。四分の一が処分されたということで、今るるお答えいただいた部分はここに載っております。

 さて、こうした保有資産の状況、この週刊現代の記事はこうした処分については余り細かく言及をされておりません。あたかも超豪華施設を持っているかのごとくに報じられておりますが、現実には、日銀の方ではこうした資産の見直しを鋭意御検討されている、進められているということであります。

 しかしながら、これは、七年経過の後、二五%、四分の一でございます。民間の企業、あるいは、今本当に厳しい状況に置かれているさまざまな機関において、無駄なもの、保有資産の中でも本当に有効活用できるものを見直していこうという中で、七年間で四分の一、二五%、これは余りにもそのペースとしては遅過ぎやしないか。一般の庶民の皆さん方から見れば、遅々として進まない、このように指摘をされても仕方がないのではないかと思うわけでありますが、これにつきましては、総裁、こうした業務の運営、そのまさにマネジメントをするお立場の中で、この四分の一の実態というものに対してはいかにお感じでしょうか。総裁、どうかお答えいただけますでしょうか。

福井参考人 ただいま理事が御説明申し上げましたとおり、四分の一ということでございますけれども、これは、日本銀行が持っております保有不動産全体に対して四分の一の削減が既に終わったということでございます。

 ただ、この全体の保有資産の中には、日本銀行の本店、支店など営業所、これは削減対象にならないものが大きく含まれておりますので、一〇〇%に達するということではございません。したがって、一〇〇%を目指していて二五%達成したということではない点は、当然御理解いただいているというふうに思います。

 今申し上げました営業用不動産、つまり本店、支店などのほかに、利用制限など個別の事情から、売却をしようと努力しておりましても、まだうまく進捗していないものも含まれております。こうした点を除きますと、かなりの物件を予定に従って売却してきている、進捗率も相応に進んでいるというふうに評価しています。もっとも、御指摘のとおり、日本銀行として効率的な業務運営を一層厳しく心がけて実行していかなければならない、私は、日本銀行の経営者の立場としてもそういうふうに考えています。

 私どもとしては、今後とも環境の変化を十分踏まえながら、保有資産の効率的な活用に努めることが第一、そして、新たに遊休化する不動産が出てまいりましたら、これは適切に、速やかに対応してまいりたい、こういうふうに思っております。

馬淵委員 全保有資産のうちの二五%、もちろん、これは一〇〇にならないのは当然であります。本支店等々ございますが、しかしながら、進めているその努力はしているんだというお答えを総裁からはいただきました。

 さて、そうなりますと、この五ページ目をごらんいただきます中で、一つ私が思うことがございます。

 この「保養所および運動場の現状」というところで、石神井の運動場というのがございます。これは、お手元の資料の三枚目に石神井の運動場というのがございます。ここは時価百十億円と書いてありますが、この時価というのは実勢価格ですから、不動産鑑定が正確に行われたか否かわかりませんので、これが正しいかどうかは別としましても、この石神井の運動場、これは石神井公園に隣接しております、これについては東京都と売却交渉中であるという御説明をいただきました。しかし、この売却交渉、これについて私も東京都の方にお尋ねをさせていただきました。六枚目をごらんください。

 これは、民主党の東京都議会議員、伊藤ゆう議員が要求して、東京都建設局公園緑地部計画課から提出いただいたメモでございます。ここに、「石神井公園について」ということで概要が示してあるわけでありますが、現在、この石神井公園、細かいことは申し上げませんが、事業認可面積は二十六・三ヘクタール。そこには、日銀のグラウンドは事業認可面積には含まれていないとなっております。そして、今公園となっているのが二十・一ヘクタールということで、事業対象、残りの部分は六・二ヘクタール、これらが今後事業対象として用地取得等々進められなければならない面積であります。

 そして、それに対して、東京都の公園事業における用地費の推移、これは取得等ですね、これを見ますと、平成十八年度予算十六億円、十七年度十八億、十六億。最近の推移を見ましても、大体十六億、十八億といった予算の措置しかできない状況である。

 こうした状況の中で、今、石神井のグラウンドに関しては、日銀のお持ちのそのグラウンドの固定資産の評価額、これが五十八億でございます。五十八億の物件に対して、東京都は、事業認可すら済んでいない中で、すなわち予算の対象にすらならない中で、今、事業対象面積六・二ヘクタール、この用地を取得するだけでも、例えば、固定資産評価額に換算した場合、今、石神井の運動場、五十八億のその坪単価を勘案した場合、東京都が今事業認可が済んでいるものだけですら七十六億の取得費が必要となる。ただ、これは現状を見ますと、三宝寺池という池がありますので、池は対象にならないとしても、実質対象面積三・二ヘクタール、これだけでも三十九億かかるわけですね。

 つまり、遅々として進まないのではなくて、現状、東京都の売却交渉というのは、実態として、これは進まないどころか、その視野にすら入らない状況にあるのではないか。

 そして、この中でのこの日銀グラウンドについての公園緑地部計画課の方々の見解によれば、「都市計画公園の区域内にあるため、今後の公園整備を考える一環として、総合的な検討を行っているが、事業予定などの具体的な検討をする段階には至っていない。 オープンスペースとして有効であることもあり、都が公園事業に着手できるまでの間は、現状がつづくことを期待している。」

 つまり、このまま残しておいてくださいと。実は、売却の可能性すら、それは可能性がゼロということは世の中ありませんからね、ただ、これをもって、こうした現状を踏まえて、私は日銀の担当者の方にお尋ねしますと、三カ月に一度の交渉を行っている。これは余りにもそのアリバイづくりではないんでしょうかね。

 福井総裁、今、鋭意進めておられる。これは確かに細かい。石神井の運動場はどうなったか、これは金融政策とは大きくかかわることではないかもしれません。しかし、金融政策という、国民のその経済活動の根幹をなす政策を決めていただく日銀が、それこそこうした民間の感覚からすればおよそあり得ないようなことを、交渉が進んでいると報じられることがあるからこそ、私はこのような週刊誌の記事になってしまうのではないか。しっかりとした説明責任を果たすことが本来の役割ではないんでしょうか。それこそ、民のかまどに煙は上っているか、ああ、国民の生活はよくなったなと見ていただけることが、総裁のお立場として、金融政策の責任者として本来の役割ではないんでしょうかね。私は、これを見ますと、どう見ても、鋭意進んでいるというふうには見えないんですが、総裁、いかがでしょうか。

水野参考人 今、石神井運動場についてお話をいただきました。

 確かに、石神井運動場につきましては、当初、私どもが売却の方針を打ち出したときに、東京都は前向きの方針を示しましたけれども、その後、十一年八月、石原都知事就任後、不要不急の不動産は購入しないという方針を出され、今のような交渉が続いているということでございます。

 その場合に、それではこの石神井運動場についてほかに適当な売却交渉先があるかということでございますけれども、これは都市計画法上の規制で、公園緑地の区域内に存在するものについては、建物の高さの制限、あるいは構造についての制限、あるいは移転もしくは除去することが容易にできる、そういう要件を満たしている場合に都知事の許可が得られるということで、なかなかこういう対象のものを東京都以外に売却するというのが難しいところでございます。

 さらに、この地域は第一種低層住居専用地域ということで、これの制限もあるということで、おっしゃるように、非常に難しいということではございますけれども、その交渉時点では、先方もいずれはということを言っておりまして、そこで交渉が続いているということでございます。

馬淵委員 状況はわかるんです。都市計画で公園に塗られたという部分ですが、これはもうそれ以外の用途がないということは私もよくわかります。

 しかし、私が申し上げているのは、資産の見直しをしますと言って、現状、全く進んでいないわけですよね。これから先、東京都の予算を勘案しても、なかなか進んでいない状況の中で、現実には、平日、これは開放されているじゃないですか。それこそ、これを売却の見直しの対象資産に上げていくこと自体に問題がないんでしょうか。単に見直す見直すと言って何もやらないことが問題だということを私は申し上げているのであって、いや、これは必要だ、ほかに方法はない、そして民間開放もしているんだということであれば、日銀としても、むしろ皆さんに使っていただきたいという方法で示すのも一つかもしれません。その意味で、この資産が本当に必要なのか不要なのか、これをしっかりと見きわめることが大事だということを私は申し上げたい。

 総裁のお答えをいただけませんでしたが、あわせて次の部分へ移りたいわけですが、この資産の中で、では、必要かあるいは不要か、要不要の部分でいいますと、この一枚目に氷川分館というのがございます。この氷川分館は処分の対象になっておりません。氷川分館については、どのような理由でこれを保有されているんでしょうか。これは事務方の方で結構です。

水野参考人 お答えさせていただきます。

 氷川分館は、主として、海外中央銀行幹部を含む内外要人との間で業務上機密を要する会合等を行うための施設でございます。また、現時点では、本店が被災した際などにおける災害対応拠点としての活用も想定しております。

 以上です。

馬淵委員 氷川分館の年間の維持管理費用と公租公課を合わせると、年間どれぐらいの負担になるんでしょうか。

水野参考人 十七年度中に支払いました維持管理費用は四千百万円、また、公租公課、固定資産税及び都市計画税は八千万円でございます。合計で一億二千百万円ということでございます。

馬淵委員 氷川分館、現代の記事では二百五十億と書いてあります、これは評価の問題ですので。これに関しては、固定資産の評価額は七十四億円と出ておりますが、今お話にあったように、維持するために一億二千万のお金がかかるということであります。当然、そこには職員もいらっしゃるということでありました。

 さて、今、内外要人との業務上の機密を要する会合とおっしゃいましたが、業務上の機密を要する会合とは、具体的に何を示すのでしょうか。

水野参考人 海外中央銀行あるいは国内の要人との間で、具体的な業務及び政策に関して打ち合わせをするということでございます。

馬淵委員 では、海外の中央銀行あるいは国内の要人の方との会議が氷川分館以外で行われていることは一切ないということでよろしいですか。

水野参考人 一切ないわけではございません。本店、その他の場所で行われることもございます。

馬淵委員 業務上の機密を要する会合がここで行われる理由というのは、私はどうもわかりにくいんですね。ほかでもやられるという話ですね。本店や、それ以外の施設もあるんでしょうか。

 業務上の機密を要する会合が開かれるための施設として、どのような要件を備えられていますか。

水野参考人 具体的に申しますと、開催内容について、どういう参加者あるいはどういう内容でやったということについて、参加者以外の人はわからないような形でございます。そういう意味で、日程等についても柔軟な対応がとれるということでございます。

馬淵委員 施設の要件をお聞きしております。施設の要件として、ここでなければ守ることができないような、機密を保持できる施設の要件はどういうものがあるか。ないならばないとお答えください。

水野参考人 正確に御質問を理解しているかどうかですけれども、本店でやった場合ですと、どういう人が入ってきているかほかの職員等にも見えやすいわけですけれども、ここで行われれば、どういう人がどういう目的で来たということがほかの人から見えずにできる、そういう施設であるということでございます。

馬淵委員 お尋ねしますが、では、氷川分館では、職員は一切そこには配置されずに、だれにも見られずに入るんですか。今のお話ですと、本店だと見られるけれども氷川分館だと見られない。では、関係者以外いらっしゃらないんですか。お答えください。

水野参考人 正確でなかったならばおわびしますけれども、ごく限られた管理をするメンバー以外は氷川分館にはおりません。

馬淵委員 今のお話ですと、結局普通の施設じゃないですか。立派な施設ですよ、普通ではありません、豪華な施設じゃないですか。

 年間に一億二千万の維持費をもって、そして固定資産でいえば七十数億、恐らく時価評価額はこれの何倍かになるんでしょう。そして、こうした施設を、業務上機密を要する会議を開くということで維持する。石神井の運動場は、なかなか進まないのはわかっていながら交渉中だと言っている。これはガバナンスなんでしょうか。本当に、保有資産を処分する、売却するという前向きな姿勢、積極的な取り組みと言えるんでしょうか。

 繰り返しお尋ねしますよ。いいですか、ちゃんと答えてください。

 では、ホテル等で、それこそ、だれがどこに入ったか、関係者とかわかりませんよ、これは、いろいろなところでホテルなども会合に使われます、部屋を使うこともできるでしょう、ホテル等で行われた会議というのはありますか、ありませんか。

水野参考人 私がすべての会議、全部を把握しているわけではございませんが、この数年を見て、ないとは言えないと思います。

馬淵委員 あるんですよね。つまり、どこでもできるわけですよ。そして、それが業務上機密を要しないかどうか。

 では、確認しますよ。ホテル等で行われる会議はすべて、報道に付されてもいいようなオープンな内容のものですか。いかがですか。

水野参考人 そういうようなものだというふうに思っております。

馬淵委員 そういうようなものということですから、明確な御答弁とは言えませんね。

 しかしながら、今のお話、これをトータルしますと、氷川分館は何一つ業務上の機密を守るような施設要件があるわけではないんじゃないですか。それこそ、電波の遮断等あるいは、私にはわかりませんが、さまざまなITを駆使した機密漏えいがなき施設ということではないんじゃないんでしょうか。いかがですか。

 これは逆に、お尋ねですよ、私は見たことがないんですからわからないんですが、氷川分館が、それこそ中央銀行として誇る、機密を絶対に漏らすことができないような仕組みになっている施設だと、理事、言明できますか。いかがですか。

水野参考人 今の御質問の、ITを駆使した盗聴あるいは盗撮というようなことまで含めて、完全に機密を保持できるというふうなことを確認されているわけではございません。

馬淵委員 総裁には最後にお尋ねをしたいんですが、いずれにせよ、私が申し上げたいのは、日銀が、そのような施設を必要であるならば必要であるとして、もっとわかりやすい説明をすべきですよ。単に自分たちの施設として、利用回数を見ればわかるように年間六十三回、一億二千万の維持費をかけて、そしてこれだけの莫大な資産を持つ必要があるんでしょうか。

 これに対して、先ほど石神井のグラウンドの話もしました。日銀が本当に信頼に足り得る組織となるためには、こうしたことを一つ一つ丁寧に見直すことじゃないんでしょうか。福井総裁御自身のことに対してもさまざまなことが国会の中でも投げかけられましたが、やはり、ガバナンスという部分においては、それこそ総裁御自身がしっかりとこうしたことに対する意思をお持ちいただかなければならないんじゃないかと私は思うわけであります。

 今のお話、通じてお聞きいただいたと思いますが、総裁、どうでしょうか。こうした処分のありよう、資産の保有の仕方、これは見直すべきじゃないでしょうか。いかがですか。

福井参考人 先ほども申し上げましたとおり、日本銀行の保有資産の効率的な管理運用につきましては、今後とも全力を挙げて取り組んでまいる、このことはかたくお約束したいと思います。

 石神井のグラウンドにつきましても、これは売却処分を急ぐ努力を懸命に続けているということは事実でございます。緑地法の制約とかいろいろございまして、簡単にたたき売るということができないという事情も、これはおわかりいただけるところではないかと思います。

 氷川分館につきましては、私自身も相当活用いたしております。外国の中央銀行総裁が来られましたときに、もちろん私のオフィスでフォーマルな会話は限りなくやっておりますけれども、やはりインフォーマルな会話、そしてよりフランクな会話、そして時には、海外の中央銀行の総裁が、食事をともにしながら、よりインフォーマルな話をしようという場合に、途端に我々は場所がないわけであります。ホテルでとおっしゃいますけれども、中央銀行総裁によっては非常に強いセキュリティーの体制で来られる方がおられまして、ホテルでは不可能な場合が非常に多いのでございます。

 そういったことも含めて、この氷川分館は、やはり中央銀行として、特に海外との連携において有効活用できる非常に重要な場所でございます。

馬淵委員 セキュリティーが必要な方がホテルを使わないかという話は、私はそんなことはないだろうと、お聞きして本当に思うわけですが。

 総裁、わかりましたよ、総裁も含めて、こうした氷川分館は必要だとおっしゃる。ならば、我々財務金融委員会でぜひこれを見させていただきましょうよ。しっかり見て、ああ、なるほどな、中央銀行としてこれは保有すべき資産だなと我々が納得できれば、こういった、巷間出てくる記事に対して、しっかり委員会の委員として責任を持って発言できますから、委員長、ぜひ、これ、氷川分館の視察を委員会として取り上げていただくようによろしくお願いします。

伊藤委員長 ただいまの要望につきましては、後刻理事会で協議をさせていただきたいと思います。

馬淵委員 ありがとうございます。

 それでは、資産保有につきましては以上でございますが、次の質問に移らせていただきます。

 さて、私自身は、前の一般質疑の中でも申し上げましたが、財政再建については尾身大臣にお尋ねをいたしました。いわゆる成長戦略でございます。これは、小泉さんの改革なくして成長なしを受けて、そしてさらに成長戦略ということで、成長なくして財政再建なしということについての安倍総理の所信に対して、尾身大臣はいかがお考えですか、これに対しての矛盾ははらんでおりませんか、こう私はお尋ねをしたわけであります。

 大臣からの御答弁は私の中では十分な理解が得られなかったわけでありますが、少なくともこの成長戦略、イノベーション、いわゆる民にゆだねていくんだという中で財政側のできることというのは、当然ながらに財政政策、それしかない。金融政策は日銀の専管事項ですから、こうした中で財政側ができることは限られる、歳出のカットかもしくは税収増、これはもちろん、民の力が上がって税収増があればいいですが、そうでなければもう一つ、歳出の拡大は増税しかありません。これに対しては、所信の中にも大臣は述べられておられた、その可能性も示唆されている。

 さて、そうした場合に、財政再建というのは成長戦略に大きな足かせになるのではないかという御質問を実は私は前回もさせていただいたわけであります。こうした私の観点、これに対して、まず日銀総裁、いかがでしょうか。この成長戦略というものに対してどのようなお考えをお持ちでしょうか。逆に言えば、私が今申し上げたような論点に対してどのような御感想をお持ちでしょうか。

福井参考人 私は、かねてより、日本経済の潜在成長能力を現在の水準よりもさらに高くしていくということは、日本の将来のために生命線である、ぜひ達成されなければならない課題であるというふうに思っています。

 しかし、その場合に、先ほども申し上げましたとおり、人口が減るという厳しい環境のもとでこれを実現していこうと思いますと、やはりイノベーション、狭い意味の技術革新だけではなくて、知識創造といったよりやわらかい部分まで含めたイノベーションの力を強くしていかない限り、実現が不可能でございます。

 そのために、国の政策がそういう方向に焦点を合わせる、そして、民間セクター、特に事業部門がそういう新しいイノベーションにチャレンジしやすい環境というものを十分つくり上げていくということが大事じゃないかと思います。イノベーションの担い手は、最終的に経済を担う一人一人の人間でありますので、人間力という言葉を使われる方もいらっしゃいますけれども、結局は、教育にさかのぼって一人一人の力をしっかりつけていくというところまで、非常に視野の広い政策体系が必要だというふうに思っています。

 日本銀行は、残念ながら、潜在成長能力を直接押し上げる、そういう政策ツールは持っておりませんけれども、潜在成長能力が上がるにつれ、それをフルに現実の成長として実現させ、かつ、常に持続可能性ということを十分ねらいながら金融政策をやっていくことは可能であり、我々の責任だ、こういうふうなつながりで物事を考えております。

馬淵委員 成長力、これが当然なければならない、そしてそれを高めていくことが必要だ、このことに異論を唱える方はどなたもいらっしゃらないと思います。そして、その旨の発言は、福井総裁が十月十三日の経済財政諮問会議の中でもおっしゃっておられました。

 十月十三日、第二十二回の経済財政諮問会議、これは安倍内閣になって初めての経済財政諮問会議でございます。お手元の資料の八枚目をごらんいただきたいと思います。そこに福井総裁の発言が議事要旨として載っています。

 成長なくして未来なし、これは民間議員ペーパーの一文にあるフレーズだと思いますが、これを見、「私も基本的に考え方に賛成である。」総裁がこう述べられております。そして、その上で、「気持ちの上で少し気になるのは、「成長なくして未来なし」というフレーズが、一般の国民の皆さんにちょっと耳ざわりがよすぎないか。」そして、アンダーラインのところをごらんいただければ、「イノベーション、オープン化、その他ここに掲げられたプログラムを実行していくわけだが、この部分は決して甘い課題ではない。国民の皆さん一人ひとりにとっても決して甘い課題ではなくて、最終的な成長の実現までにまず時間がかかる。」そして、「なお短期的にはこれを苦痛と受け止める方が少なくないのではないか。」「国内で見た場合には、イノベーションを身につけた人と、イノベーションをなかなか身につけられない人との間の所得の差は、むしろ、さらに広がる」「そういう差はむしろ縮まるんだという幻想を余り容易に与えない方がいいのではないか。」こうおっしゃっておられます。

 私は、この福井総裁の意見というのは至極もっともだと思います。先ほどのお話にありましたように、人口減少社会の中で、高齢化の中で、本当に成長力を高めていくのは難しい、その難しい中で幻想を振りまいてしまってはいけないということに対しての懸念を表明されている。このイノベーション、確かに実現できればすばらしいが、これによって、逆に、身につけた人と身につけない人の中での格差が広がる可能性がある。ITのツールを使えない方々がどんどん取り残される、デジタルデバイドということがかつて言われましたが、それこそイノベーションデバイドなるものがここに潜んでいるかもしれない、至極もっともな御発言だと私は思うわけであります。

 福井総裁、この御発言、これは私はまさに正論ではないかと思うわけでありますが、この御発言に対して、御自身の発言として、責任を持ってこの思いを今もお持ちでしょうか。いかがでしょうか。

福井参考人 潜在成長能力を上げていくことは、日本経済の将来にとって生命線である、ぜひ実現していかなければならない、しかし、決して容易な課題ではないということを国民一人一人、我々も含め、十分認識した上で、皆の努力が方向性が合うというふうに持っていかなきゃならない、そういう難しい過程が存在するということは、これは私は、何と申しますか、考えようとして変えようがない。しかし、決してギブアップしないで、あるいは実現可能性が難しいから途中で努力を放棄するということではなくて、やはりやり遂げる方向で国民の意思の統一をぜひ図っていただきたい、こういう希望を込めた発言でございます。

馬淵委員 考えは変えようがないとおっしゃいましたが、私もまさにこれは同意でございます。そして、こうした経済財政諮問会議での福井総裁の御発言、これに対して福井総裁御自身が明確に経済財政諮問会議でのお立場というものを語られています。

 これはお配りした資料ではございませんが、十一月七日でございますが、ロイターの報道には、福井総裁が都内で講演を行ったときの質疑について報道されております。その質疑応答で、福井総裁のお言葉として、「経済財政諮問会議は、政府の政策にアドバイスする会議。金融政策決定会合は、金融政策を一〇〇%自己の責任で決めていく。両者の役割分担は明確に分かれている。諮問会議のメンバーも十分承知している。」ということをその位置づけとしておっしゃっておられます。

 経済財政諮問会議には福井さんが参加される、そして日本銀行、日銀の政策決定会合の場においては政府の代表が二名参加される、まさにこうした具体的なセッティングにおいても、コミュニケーションが円滑に行われるようにでき上がっている。御自身の言葉では、「今のフレームワークは政策目標を自然に共有しやすい枠組みになっているし、具体的な金融政策については、一〇〇%日本銀行の責任ある判断に信頼をおいていただきたい」、こうロイターの報道にありますように、この七日の質疑応答でも言明されておられるわけです。おっしゃるとおりであります。まさに、この政策の目標というものを共有する、コミュニケーションの場である経済財政諮問会議の福井さんの発言、私は、そういったアドバイス的な立場でお話しになられたというふうに理解をしております。

 ところが、これに対しまして、お手元の資料、これの十枚目をごらんいただきたいと思います。これは自民党の中川秀直幹事長の公式サイト、ブログと呼ばれるものでございますが、そこに第一回、これは二十二回のことだと思います、安倍政権になって初めてということで第一回と書いたんでしょう。「経済財政諮問会議について」ということで書かれておりまして、産経新聞の記事を引いて、そしてそこに「中川の眼」として幹事長がこのように書かれております。「志を同じくする同志の集まり」あるいは「「成長のメインエンジンとして引っ張っていく」ことを期待している。」しかし、ここで「成長のメインエンジンにブレーキが組み込まれていることはあってはならない。」このように書かれています。そして、福井総裁が、先ほど私もこの議事要旨でも申し上げたように、「基本的に考え方に賛成である」と福井総裁も述べられている。それについて、「とりあえず、安心した。」と言われながらも、しかし、こう書かれているんですね。中段のアンダーライン、「それに対して「耳ざわりが良すぎる」と公式の場で発言されたことは、単なる経済政策議論を超えた政治的意味合いを含んでいる可能性があるのか。ないのか。」このように述べられています。

 そして、十一枚目をごらんいただきますと、アンダーライン、「党務を預かる私と意見が異なるのは構わない。尊重する。しかし、安倍首相との意見の相違があるのか。ないのか。」これ、普通に考えれば、あると思っているから書かれているんですよね。なければこのような言及はないはずです。

 つまり、与党の自民党の幹事長、いや、もっと言えば、成長戦略を推進されてきた前政調会長、極めて政治的に重要なポジションにおられる中川秀直幹事長は、福井総裁の経済財政諮問会議での発言に対して、政治的意図があるんじゃないか、このように言及されているんじゃないでしょうか。あるいは、安倍さんと意見が違っているのではないのか、このように言及されているわけですが、この二点、政治的意図があるか、そして、安倍総理と意見は食い違っているのか。あるのかないのか、あるんじゃないかとこれは聞いているわけですよね。あるんじゃないのかと聞いているわけですから、これは総裁、どうかここではっきりと端的にお答えいただけませんでしょうか。

福井参考人 中央銀行総裁といたしましては、独立性の観点から、政治とは完全に距離を置かなければならない。したがいまして、私の発言に一切政治的なインプリケーションはございません。

 それから、経済財政諮問会議の場におきます当時の議論におきましても、安倍総理は、私の発言も含めてお聞きになった上で最終的な締めくくりの発言をしておられます。私も十分納得のいける締めくくりの発言だったと思っておりまして、安倍総理と私との間に基本的な意見の相違はないというふうに認識しています。

馬淵委員 これは自由闊達な意見、アドバイスをする場であるという福井総裁の認識、その上で述べられた。そして、それに対しては、議長である安倍総理がそれを受けて、その締めくくりの発言をされたということで、御自身の中で納得されているということでありますが、一方で、中川秀直幹事長は、これはエンジンのブレーキになりはしないか、このように述べられているわけです。

 これは、ある意味、政治的関与はむしろ幹事長の方から日銀に対して、専管事項である日銀に対して物を言われているのではないかと私は思うわけでありますが、これは福井総裁、どのようにこの今の一文を読んでお感じになられますか。いかがでしょうか。

福井参考人 中川幹事長のお考えは、最近だけでなくて以前からもずっと拝聴しておりますし、私も中川さんとお話をする機会が全くないわけではありません。

 経済を物価安定のもとで持続的成長を実現していかなければならないという基本的な方向性について意見の不一致が全くないというふうに、私、今でも思い続けております。そして、日本銀行のこれからやろうとする政策も含めて、決して景気回復あるいは拡大の芽を摘もうというふうなものではなくて、息の長い成長をより確かなものにするための必要な金利レベルの調整をやっていく、こういうことでございまして、この点については中川幹事長とも、必要とあれば、さらに深い議論をさせていただければというふうに思っています。

馬淵委員 今、福井総裁は全く不一致はないというふうにおっしゃっておられますが、しかし、中川幹事長の中では明らかにこれは疑問を呈されているわけですね、これは機会があればということでありますが。

 こうした発言に対して、福井総裁、もっと毅然と、御自身の中では、日銀の独立性を保つという意味において、もっと毅然とした、まさにコミュニケーションをやってこられたわけですから、毅然とした態度で表明されるべきではないんでしょうか。いかがですか。幹事長の発言に対して、明確に総裁としての御発言というのはありませんか。今後お話をしてみたいというレベルなんでしょうか。いかがですか。

福井参考人 私は、今資料としてお出しいただきました中川幹事長のブログも読ませていただいております。

 私の受け取りました感じで、そんなに日本銀行に対して、攻撃してやろうとか、干渉がましいとかいう感じでは読んでおりません。やはり、十分意見交換を続けることが可能な、そういう内容のものであったというふうに理解しています。

馬淵委員 このお配りした資料の十二枚目をごらんいただきたいんですが、ここにはさらに中川幹事長は、「あるのか。ないのか。」の後には、こうした、「経済財政諮問会議では、実質成長率を引き上げることと格差の問題について、管轄外の日銀側から忌憚のない意見が出た。」このようにおっしゃっています。「管轄外の日銀側から忌憚のない意見が出た。次は、政府と日銀の間で名目成長率について忌憚のない意見交換が行われるべきである。」これはまさに金利に対しても私は言及されているんじゃないかなと思うわけです。これはある意味、威圧、それこそこれは、いや、管轄外のおまえらが言うんだったら、では、こっちも踏み込んで言うぞというふうにこれは普通受け取れませんか。いかがですか、総裁。

福井参考人 諮問会議のあり方の基本に立ち返るような話になります。

 私自身は諮問会議のメンバーとして出させていただいておりますけれども、日銀の管轄内の話だけする資格があって、それ以外の発言はしないという立場で参加しているんではないんではないか。福井という、これは決して識者とは言えないんですけれども、何というんでしょうか、福井という立場でメンバーに加えていただいているというふうに思っています。

 したがいまして、構造改革であれ、ほかのさまざまな、例えば教育問題なんかについても、私が自信があればそういう問題についても発言していいんだろうというふうに思っています。

馬淵委員 だからこそ、こうした意見交換、コミュニケーションの場だという御認識をされているわけです。しかし、中川幹事長のこの言葉を見ると、いや、日銀が管轄外を言うんだったら、こちら側も、それこそ忌憚のない意見交換、金利に対しても、これは名目成長率と書かれていますが、これはすなわち金利のことをここに含めておられる、そのことについて意見交換をやろうじゃないかというのは、ある意味、政治的な、これは中川幹事長は政治家ですから、政治的な意味合いでおっしゃっているように私は受けとめられるわけです。

 そして、そのことを示すのがその次の段にあります。「「再度デフレに戻らないための政策手段としても有効と考えられている、望ましい物価安定の参照値などの新しい枠組みに関して、議論をさらに深めていく必要がある」としているところである。」このように、いわゆる物価参照値、インフレターゲットについて中川さんは言及をされています。

 さて、このインフレターゲット論、福井総裁は、これは極めて慎重論をずっととってこられました。慎重論をとってこられた福井総裁の発言に対して、管轄外の日銀が言ったんだ、よし、では今度は名目成長率、それこそインフレターゲット論についてまで議論しようじゃないか、これは私はどう考えても政治的な意味合いが強いと思うわけであります。

 さて、中川幹事長のこのブログの発言の中で、このように名目成長率、そして物価安定ということを語られているわけでありますが、資料の十三枚目をごらんください。これは同じく中川秀直幹事長が書かれた講談社刊の「上げ潮の時代」という本を私は借りてきまして読みました。

 ここに記してありますように、十三枚目では、物価安定目標について中川幹事長は触れておられます。

 物価安定目標については、現在、FRBのバーナンキ議長が、これは物価安定目標の推進論者であり、米国も物価安定目標を導入すると指摘する金融専門家がいるのも事実だ、現状ではこれを採用していないのは我が国とアメリカ、その中でアメリカはバーナンキさんが就任されたんだ、これは、もう間もなく、物価安定目標、少なくともこうした議論が導入されてくるだろう、再燃するだろうといったことを中川幹事長は示されています。またさらには、英国では、こうした導入以来マイナス成長はないんだということで、マクロ経済の安定化に貢献している。これは御持論なんでしょうね。こうした御持論を持って、そして、世界じゅうで物価安定目標を明確に拒否している国は日本と米国だけである、グリーンスパンの後任に物価安定目標推進論者のバーナンキが就任したので、それは日本のみとなるかもしれない。

 つまり、アメリカが踏み切ったときに、いよいよ日本、福井総裁、あなただけですよと。これを読むと、私はそのように読み取れるわけであります。

 そして、その中で、政策目標、政策手段、この部分に関しては、日本では、この原則が必ずしも理解されていないと。この原則というのは、目標は共有するけれども手段は独立するという原則が確立しているにもかかわらず、これが理解されていない、このように評されています。これは、だれが理解していないことになるんでしょうか。

 政府の一員で、少なくとも政府側の与党に立たれる政治家の立場、政調会長でおられた中川幹事長が、理解されていないのはだれなのかと。これは、日本銀行を指しているんじゃないんでしょうか。

 さらには、この後に続きます。現行日銀法四条、これをるる述べられ、「これに基づいて政府と日銀が意思疎通を図り、政策目標の共有と政策手段の独立性を確保するということは十分に可能だと思われるのだが、どうも理解が進まないようだ。」こう述べられています。だれが理解が進まないんでしょうか。

 さて、そこで、るるひもといてみました。現在、経済財政諮問会議、成長戦略、成長路線の、それこそ前大臣だった竹中さん、その竹中さんをバックアップしていた大田さんが経済財政担当大臣になられ、さらには伊藤先生も財政諮問会議に入られている。成長戦略、その中には物価安定目標ということも当然ながらに視野に入れてくるでしょう。しかし、これは日銀の専管事項であるということで一歩距離を置かねばならないが、しかし、中川幹事長は明確に、理解が進まないんだ、理解されていない、こういうふうにおっしゃっている。だれなのか。

 これをひもとくと、今回、内閣の中に入られた内閣参事官、高橋洋一氏が論文の中でも述べられております。

 高橋洋一氏はその論文の中でも、二〇〇三年の十二月十日の経済財政諮問会議における福井総裁の発言を取り上げて、このようにおっしゃっておられます。まず、福井総裁の発言なんですが、ポール・クルーグマン教授が、金融政策で重要なのは将来予想なんだということをお話しされたときに、福井総裁は、「クルーグマン氏は、人々のインフレ期待というのを政策的にマネージしうる、コントロールしうるという理解に立っているが、そこは極めて幻想だと私は思う」このようにおっしゃっているんですね。覚えておられるかと思います。

 そして、同月同日の諮問会議の中でも、さらに、いわゆるインフレターゲティングについても触れられております。このインフレターゲティングについては、「インフレターゲティングは、人々のインフレ心理に直接働きかけようという政策である。この政策は、金融市場においては、短期金利を一生懸命日本銀行がゼロに抑えても、長期金利が直ちに上がる、つまり、イールドカーブが立つことになる」このようにおっしゃっているわけです。

 このインフレ目標に対しては慎重論を発される福井総裁。そして一方で、この金利に対しては、自著の中で明確に、このインフレターゲットが採用されていないのは日本とアメリカだけで、アメリカに関しては、バーナンキが議長になった、推進論者がなったんだから、残るは日本だけじゃないか、そして、手段は独立するけれども目標は一つだということの原則を理解されていない、理解が進まないと。これはだれのことですか。これは、福井総裁のことを言われているのにほかならないんじゃないでしょうか。

 総裁、こうした中川秀直幹事長の発言に対して、独立性を維持する、独立性を守るお立場で、この発言に対してどのようにお感じですか。

福井参考人 余りお答えに長い時間を使うわけにいきませんけれども、二〇〇三年の諮問会議での議論と現在の中川幹事長の御議論とは、少しまた場面も違っているかなというふうに思います。

 二〇〇三年のときは、デフレからいかに脱却するかと。そのときに、クルーグマンさんのように、インフレーションターゲティングを設ければ、あっという間に人々がインフレ心理に変わり、日本経済はデフレから脱却できる、そういう考え方は明確に幻想だというふうに申し上げました。

 それと、今、中川幹事長が言っておられるのは、ここから先、日本経済を運営するに当たって、中央銀行も金融政策の透明性をいろいろな形で工夫をしていった方がいいのではないか、こういうお話だというふうに私は受けとめておりまして、日本銀行も、金融政策の透明性を高めるということは、何かの枠組みをとればそれで宿題が終わりというふうに考えておりません。今後とも継続的に、よりよい方法はないかということは、政策委員会のメンバー挙げて真剣に検討を続けるということであります。

 大事なことは、透明性を高めると同時に、金融政策の生命線である機動的な金融政策の運営を害さない、これを両立する枠組み、しかも、日本経済の今後の姿、実情にマッチするやり方というものをいかに見出していくか。

 私ども、私自身が今のポジションに就任いたしまして以降、三年半が過ぎておりますが、過去三年半、インフレーションターゲティングなるものの物の考え方の基礎にあるもの、あるいは海外の例というものを十分掘り起こしながら、新しい枠組みを模索してまいりました。そして、量的緩和を終了したこの三月の時点で、これは経過時点でありますけれども、一つのタイムリミット、ここでどうしても新しい枠組みを出さなきゃいけないタイミングが来ましたので、今の中長期的な物価安定についての理解、インフレーションターゲティングよりは少しやわらかですけれども、今後、機動的に金融政策の運営を行っていって、先ほど申し上げましたように、景気回復の芽を摘まない、しかし、息の長い景気回復を実現していくための非常に役に立つ一つの道具ではないかということで採用したわけです。インフレーションターゲティングという物の考え方の中に含まれている重要な要素の幾つかは、この中に既にピックアップしています。

 今後とも、将来にわたって長い展開の中では、インフレーションターゲティングの物の考え方あるいは海外における経験のいいところ、これはどんどん取り上げながら、日本独自のいいものをつくり上げていきたいと思っています。

 アメリカにおいて、バーナンキが、新議長が就任されたから、彼はインフレーションターゲティング論者だから、テキストブックのようにすぐインフレーションターゲティングを採用するのかどうか、これはまだわからないと思います。今、懸命に連銀の中で新しい透明性の枠組みを検討中だと伺っております。これは恐らく、アメリカの実情に合うようにということで、非常に真剣な議論が行われているんじゃないか。

 私どもは三年半、時間を費やしましたけれども、アメリカは一体どれぐらい時間を費やすのか、関心を持って見守っているところであります。

馬淵委員 福井さんの御自身の持論は、二〇〇三年、それはデフレ脱却の前だというふうにおっしゃいましたが、少なくとも今のお話の中でも、慎重にこれは考えていくんだ、こうした御意見に変わりない。そしてそれに対して、少なくとも中川幹事長は、いや、明確にこのことに対して踏み込まねばならないという御持論を述べられている。そしてそれは、先ほどのブログの中にもありましたように、経済財政諮問会議の発言もとらえておっしゃっているわけですよ。日銀が管轄外のことを言うならば、こちら側も言うよと。

 この御発言に対して、総裁はどのようにお感じかということを私は改めてお尋ねさせていただきたい。

福井参考人 中川幹事長という非常に重要なポストにあられる方の発言であり、しかも、インフレーションターゲティングというのは、日本銀行の将来の金融政策、この枠組みの上で真剣に考えていかなきゃいけない一つのテーマでありますので、非常に重く受けとめております。

 しかし、インフレーションターゲティングについては、他にも多くの論者がいらっしゃいます。海外でも経験の蓄積というのはどんどん進んでいます。それらを幅広く検討して、責任ある方向性を見出していくというのが日本銀行政策委員会の責任だ、こういうふうに思っています。

馬淵委員 幅広い議論というふうにおっしゃいますが、やはり与党の極めて重要なお立場にいる幹事長のこの発言というのは、これは少なからず政治的な意図を持って、日銀に対する独立性を脅かしかねないと私は感じるわけであります。このことに対して、やはり中川幹事長、これはぜひ当委員会において、この意図というものをぜひ私どもに、この委員会に御開陳をいただきたい、このように思うわけであります。

 委員長、これはぜひ、この経済財政諮問会議の発言に対するこうした御発言、極めて重要だと思いますので、中川幹事長に当委員会にお越しいただきまして、我々委員に御説明をいただきたいということを思うわけであります。これはぜひ理事会で、中川幹事長にお越しいただくことを御協議いただけませんか。

伊藤委員長 ただいまの委員の要望につきましては、後刻理事会で協議をさせていただきたいと思います。

馬淵委員 それで、もう時間も余りありませんが、尾身財務大臣にきょうも御同席いただきましたが、財務大臣は、この経済財政諮問会議の議員として出席をされておられます。本来であるならば、議長の安倍総理にお越しいただきたいわけでありますが、官房長官等も含めまして、この委員会にはお越しいただくことができません。したがいまして、尾身財務大臣にぜひお尋ねをしたいんです。

 その当日、その場におられたお立場として、福井さんのこのような御発言、先ほど私、繰り返し申し上げておりますが、これに中川幹事長は、これはエンジンのブレーキになるんじゃないのか、安倍総理と意見がたがっているんじゃないのか、こうした極めて厳しい指摘をされているわけでありますが、こうした福井総裁の御発言、それをその場におられた立場としてどのように受けとめられたのか。そして、総裁が明確におっしゃっています。独立性を一〇〇%担保しながらコミュニケーションの場として参加しているんだ、こうした福井総裁の御意見を、今後、それこそ抑え込むような力があってはならないわけであります。

 尾身財務大臣、ぜひ、その席におられた方として、そのときの状況に対する御所見と、そして、今後の福井総裁の発言に対する御意見なりを述べていただきたいと思います。

尾身国務大臣 ただいま、一時間にわたりましてお二方のやりとりを聞かせていただきまして、私に与えられた、私の意見の表明、三十秒とかいうことでございまして、このお二人の御議論を聞きながら、いずれかの機会にしっかりと私の考えを述べさせていただきたいと思います。

馬淵委員 まだ時間はございますよ。大臣、お答えいただけませんですか、御所見ですから。政治家として、大臣としてのお立場、その席におられたわけですから、御自身のお言葉で、御感想なり御所見を述べていただけませんでしょうか。

尾身国務大臣 私どもが考えている、ある意味での経済政策の根幹にかかわる問題でございまして、最後に私が、ここで一時間にわたる討論の中身について、政府の代表として一分か二分で答えるのは適当でないテーマであると私は考えております。質問の予告もございませんでした。したがいまして、いずれかの機会にじっくり聞いていただければ、政府の考えを申し述べたいと思います。

馬淵委員 大臣、見解ということで、私、お尋ねしているわけじゃございませんよ。少なくとも、今、私がやりとりをした中で、私が今、福井総裁にお尋ねしているわけです。このような福井総裁の財政諮問会議での発言に対して、幹事長のこうしたブログでの御発言、これはいかがなものかということをお尋ねした中で、幅広い議論と福井総裁はおっしゃっておられましたが、尾身財務大臣、今後、経済財政諮問会議の中でのこうした発言に対してどのようにお感じかと聞いているんですよ。これもお答えできないんでしょうか、財務大臣。あなたは責任を果たすべく財政諮問会議に出られているんじゃないんですか。お答えください。

尾身国務大臣 今後とも、政府としては、日銀とよく連絡をとって、しっかりとやってまいりたいと思います。

馬淵委員 通告の問題じゃないと思いますが。それすらお答えいただけない大臣であるということがよくわかりましたので、私、今後、また時間をいただきまして、これは議論をさせていただきたいと思います。

 時間が参りました。以上で終わります。

伊藤委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

伊藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 民主党の鈴木でございます。

 それでは、私は、まず最初に、四百九十億、そして一万九千人もの被害者を出した平成電電問題について質問をさせていただきたいというふうに思います。

 これは十一月二日に、私、総務委員会でも質問をさせていただいたわけでありますが、四百九十億円、そして一万九千人の被害者という、ここまで被害が大きくなった原因をいろいろと調査していきますと、所管の総務省だけではなくて、実は金融庁にもいわゆるその責任の一端があるのではないか、このように考えまして、きょう質問をさせていただきたいというふうに思います。

 御案内のとおり、平成電電株式会社は、有名俳優を起用したテレビのコマーシャルを打っていました。そして、日経、朝日、読売といった大手の三大新聞に広告を出し、出資を募っておったわけであります。委員のお手元にそのときの新聞広告のコピーをお配りさせていただいておりますが、掲載されました新聞広告では、予定基準配当、年利八%、または一〇%というものまであったわけであります。このように、事実に相違する表示でありまして、個人投資家にその判断を誤らせたということでありまして、このような広告に対して当時どのような対応をなさっておったのか、まずそこからお伺いをしてまいりたいと思います。

三國谷政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の広告は、電気通信事業者に対しまして通信設備のリース事業を行います会社が、当該事業を行うために商法上の匿名組合を組成し、その出資者を幅広く募集した事案に係るものと承知しております。

 この匿名組合形式のファンドでございますが、これは、十六年十二月施行の証券取引法改正によりまして、株式、社債、金銭債権等への投資を行うもの、これを有価証券と位置づけましたことで、その意味では同法の規制の対象とされたところでありますが、御指摘の事案のような通信設備のリース事業を行うファンド、これにつきましては、証券取引法を初めといたします金融法令の規制対象にはなっておりませんで、その持ち分を幅広く販売、勧誘するものにつきましても、広告規制を含めまして、投資家保護の観点からの規制は及ばない状況にございました。

 当庁といたしましては、御指摘のような事案も注視しながら、投資家保護の観点から制度面でのどのような対応を行うべきか検討を進め、その後、所要の措置を講じてきているところでございます。

鈴木(克)委員 当委員会でも、金融商品取引法、これは我々審議をさせていただいた記憶が新しいわけでありますが、この中に、広告規制について、政令事項となっておると思います。今回のようなケースについても今後広告規制がなされていく、こういうことでよろしいんでしょうか。

三國谷政府参考人 私ども、いろいろな事案を注視しながら制度の改正をしてきたわけでございますが、金融商品取引法改正をお願いいたしまして、一般論といたしましてでございますが、商法上の匿名組合契約に基づく権利でありましても、拠出された財産を用いて行う事業から生じます収益等を拠出者に分配するものにつきましては、金融商品取引法の規制対象であるいわゆる集団投資スキーム持ち分、これに該当することとなっているところでございます。

 金融商品取引法上、こうした権利を一般投資家向けに販売、勧誘するものは、今度は業者としての登録が義務づけられまして、御指摘の広告規制を初めまして投資家保護のための所要の行為規制が適用されることとなるわけでございます。これにつきましては、具体的には、顧客に対します誠実公正義務、広告規制、書面交付義務等々の行為規制が適用されることとなるわけでございます。

 したがいまして、今後、金融商品取引法のもとでは、広告規制の内容といたしまして、著しく事実に相違する表示や著しく人を誤認させるような表示が禁止されることになるわけでございます。

鈴木(克)委員 私は、今ここに金融商品取引法を持ってまいりました。広告等の規制ということで、第三十七条であります。その二に、「金融商品取引業者等は、その行う金融商品取引業に関して広告その他これに類似するものとして内閣府令で定める行為をするときは、金融商品取引行為を行うことによる利益の見込みその他内閣府令で定める事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない。」こういうことになるわけであります。今の御答弁はこのことについておっしゃっていると思います。

 それでは、具体的にお伺いするんですが、この場合の規制は、広告を出す方、例えば新聞社に規制をかけるのか、広告掲載を希望する方、つまり今回のケースでいくと平成電電株式会社の方に規制をかけるのか、どちらに規制をかけるということでいいんでしょうか。

三國谷政府参考人 今回の規制は、一般投資家向けにいわゆる持ち分の販売、勧誘等を行います登録業者に対しまして広告規制等をかけるものでございます。報道機関に対する規制はこの法律の対象ではございません。

鈴木(克)委員 いずれにいたしましても、この部分、もっと早くにこういった法律で規制をしておけばこれだけの被害は本当に起きなかったということを感じ、本当に我々もじくじたる思いがいたしておるわけであります。

 いずれにいたしましても、今後は、こういった法の運用をきちっと、本当に責任を持ってやっていただいて、被害者を出さない、そして、仮にそうであっても本当に最小限に食いとめる手だてというものをひとつ真剣にやっていただきたい、このことを強くお願い申し上げる次第であります。

 続いてお伺いをしますが、第二十八回金融トラブル連絡調整協議会が二〇〇五年の一月三十一日に金融庁特別会議室で開催をされておりました。議題は、苦情紛争事例のケーススタディーなどとされておるわけであります。協議会の資料を見ていきますと、東京都消費生活総合センターからの発表で、明らかに平成電電問題を扱ったケースが発表されておるわけであります。

 協議会には、金融当局として金融庁からも総務企画局企画課長が出席をしている、このことが確認をされておるわけであります。これは明らかに平成電電問題を扱ったというふうに認識ができるわけですが、将来的な被害の予測がこの場で、この二〇〇五年の一月三十一日の時点でできたというふうに思うわけでありますけれども、金融庁としてはどのような対応をとられたのか、お聞かせをいただきたいと思います。

三國谷政府参考人 御指摘のとおり、昨年一月に開催されました第二十八回金融トラブル連絡調整協議会におきまして、東京都消費生活総合センターから、最近増加している金融トラブル事例といたしまして、匿名組合への出資に関する事例が紹介されたところでございます。

 この東京都消費生活総合センターの資料では、一つには、当該匿名組合への出資持ち分は証券取引法の有価証券に該当しない、二点目といたしまして、消費者から見て経営状況やリスクの程度が開示されていないにもかかわらず、不特定多数の個人投資家を対象に勧誘が行われている、三点目といたしまして、すべての投資商品を網羅的に規定する投資サービス法を早期に制定しなければこうした事例には対応できないといった指摘がなされているところでございます。

 当時、金融審議会金融分科会第一部会では、このような現行の金融法令の対象とならない商品が出現していることを念頭に置きまして、幅広い金融商品につきまして包括的、横断的な利用者保護の枠組みを整備することを目指して、いわゆる投資サービス法に向けました審議が行われていたところでございます。審議の過程では、御指摘の通信設備ファンドを含めました匿名組合型の集団投資スキームへの規制につきましても取り上げられ、規制の横断化に向けた検討が進められました。

 おかげさまをもちまして、先般成立した金融商品取引法制は、こうした審議の成果を踏まえまして、いわゆる集団投資スキーム持ち分の包括的な定義を設けるなど、投資性のある金融商品を幅広く対象とする、横断的な投資者保護法制を実現したものでございます。したがいまして、東京都消費生活総合センターから指摘をいただいた点にも、それを参考といたしまして、このようにこたえる形になっているものと考えているところでございます。

鈴木(克)委員 私がお伺いしておるのは、この一月の時点で、もう既にこの問題はわかっておったわけですよ。それでなぜ放置をしておいたのかということなんです。この時点では、確かに法律はことしの六月に我々審議してできたわけですけれども、それまでは何もやる手だてはなかったんですか。

 なぜ私がこういうことを申し上げるかというと、実は、この一月から、十月三日に実は民事再生手続を出したんですね、九月いっぱいまでこういう形で募集をしておったんですよ。それで、きょう皆さんのお手元には実は資料は出しておりませんけれども、一月の三十一日にこういう事例があるということで、二月一日に第十三回のファンドの募集をしておるんです。三十六億円ですよ。十四回の募集、三月にやっておるんですが、三十二億円ですよ。四月に十五回の募集で、四月一日が三十九億円、そして二十九億、三十三億、五十億、三十三億、三十七億、二十六億と、まさに十月三日に再生手続を出す本当に直前までこうして集めておったわけですよ。だから、この時点で何らかの手が打たれておれば、三百十七億円というお金がこのファンドに流れずに済んだわけですよ。私はそのところを言っておるんです。

 確かに問題だ、だから法を直したじゃないか、そうおっしゃるかもしれないけれども、ではその間何も手を打っていなかったのかということですよ。その辺はどうなんですか。

三國谷政府参考人 私ども、法令に基づきまして、各種の事案に対して適切に対処してきているところでございます。その時点におきましては、商法上の匿名組合に対しましては規制が及ばない部分があったことは事実でございます。そういったことも含めまして、幅広い横断投資スキームということで、制度面での検討を一生懸命急ぎまして、前回の通常国会にこの法案を提出申し上げ、成立させていただいたところでございます。

 私どもといたしましては、こういった形で精いっぱいの対策を講じてきているところでございます。

鈴木(克)委員 それでは、実は金融庁には、金融サービス利用者相談室というのが去年七月に設置をされましたよね。ここで平成電電匿名組合の出資に関連すると思われる相談が相当あったはずです。現在までにそういった相談があったのか、またその件数はどれぐらいで、どのような対応をなされたのか、そのことを御答弁ください。

中江政府参考人 お答えいたします。

 個別事案にかかわるお尋ねではございますが、御指摘の組合は既に破綻をしておりまして、関係者の権利その他正当な利益を害するおそれ等もなくなっていると思われますことから、あえてお答えをいたしますと、同組合に関連する相談が金融サービス利用者相談室に寄せられていることは事実でございます。

 こうした相談への対応といたしましては、当局は個別取引に係る紛争案件につきましてあっせん、調停、仲裁等を行うことはできないことから、要望に応じまして消費者センターや弁護士会等を紹介することといたしております。

 なお、相談件数についてのお尋ねでございますが、同一の相談者から繰り返し同一内容の相談が寄せられることもございますことから、相談件数を正確に申し上げることは困難であることを御理解いただければと思います。相談件数は複数ございました。

 以上でございます。

鈴木(克)委員 ここで我々は本当によく考えなきゃいけないのは、金融庁に金融サービス利用者相談室というのが去年の七月に設置されました。そして、数多くの相談が持ち込まれました。しかし、今お話があったように、あっせん、調停、仲裁はできない、したがって、いわゆる他の機関を紹介するということなんだ、こういうお話であります。しかし、本当にそれでいいんですかね。国民は、多くの方々は、何のためにこの相談室に電話をし、相談に来られるのか。この原点を考えたときに、あっせん、調停、仲裁はできない、だからほかのところを紹介する、本当にそれだけでいいのか。

 では、具体的に、関係部局との連携だとか、業界型ADR、紛争処理機関との連携というのはどうなっておるんですか。その辺のところをお聞かせください。

中江政府参考人 お答えをいたします。

 まず、金融サービス利用者相談室より各紛争処理機関を紹介するに当たりましては、単に連絡先を紹介するだけではなく、利用者が当該紛争処理機関で円滑に相談を行えるよう、当該紛争処理機関の機能や相談に当たっての留意点等もあわせて情報提供することといたしております。

 また、寄せられた相談につきましては、体系的に記録、保管を行うとともに、速やかに関係部局に回付をいたしまして、企画立案、検査監督に活用することといたしております。

 また、先生御指摘の、いわゆる業界型ADRを有する各業界団体等との連携のあり方につきましては、現在、当庁と各業界の相談機関の実務担当者との間で意見交換を行っているところでございまして、金融トラブル連絡調整協議会における議論も踏まえまして、引き続き今後の連携の強化のあり方について検討してまいりたいと考えております。

鈴木(克)委員 くどいようでありますけれども、ただ他の、特に外部の紛争処理機関を紹介しますというだけでは、私は本当に国民の要望を満たしておるとは思えないんです。だから、そこのところを、やはり何か手だてを打っていただいて、例えば、それじゃ金融庁と総務省の連絡だって本当に緊密にやられておったのかどうか、これはまだ私は調べてはおりませんけれども、その辺でも、決して私はスムーズな連絡ができておったというふうには思えないんですよ、今回のケース。

 これは一つの事例でありますけれども、まさに、いわゆる縦割り行政の弊害、所管の違いの弊害、そして法の壁と言えばそれまでかもしれませんけれども、いずれにしても、くどくなりますけれども、二〇〇五年の一月三十一日に、もう既にこのことは公式の場で、問題だという指摘があった。にもかかわらず、結局何も手を打たなかった。その間に、くどくなりますが、三百十七億というお金がまたこのファンドに集められたということです。法律がなかったから仕方がないとか、権限が及ばなかったからというだけのことではやはり済まない。

 だから、冒頭申し上げたように、今回のこの問題については、総務省だけではない、金融庁にも重大な責任があるんだ、私はこういう視点でお尋ねをしてまいっておるわけであります。どうぞひとつ、きょう大臣、副大臣、お見えでありますけれども、本当にこういうケースを一つ一つ、やはり国民の思いを大事にしていただいて、人ごとではない、一万九千人の方々の中には、自殺、離婚、家庭内争議、本当に悲惨な状況ですよ。老後の蓄えをすべてこれで失ったという方も大勢みえるわけです。本当にそういう方々の思いをいたした行政というものを私はやっていただきたい。

 このことについてはこれでとどめておきますけれども、ぜひひとつそのことを強くお願い申し上げて、次の質問に入らせていただきます。

 次に、消費者金融問題についてお伺いをしていきます。

 自己破産件数は、二〇〇二年、二十一万四千六百八十三件、二〇〇三年、二十四万二千三百五十七件、そして二〇〇四年には若干減少してはおるものの、依然としてこの自己破産件数というのは増大をしております。しかも、長期かつ複数の業者から借り入れをしておる多重債務者の数というのは百五十万から二百万人とも言われておるわけであります。

 警察庁の調べによると、経済・生活苦による自殺者数は、二〇〇三年度は八千八百九十七人、二〇〇四年度は七千九百四十七人と、まさに高い水準にあります。京都弁護士会等が実施した路上生活者に対する聞き取り調査によると、実にその八割から九割が、多重債務が原因で、自宅に戻れず路上等で生活するようになったということであります。そして、長期の借金生活が債務者や家族の心を疲弊させ、離婚や児童虐待を引き起こしたり、財産犯を中心とした、いわゆる犯罪の動機にもなっておる。

 このように、多重債務問題というのは、多重債務者本人にとどまらず、その家族や親族をも巻き込む大変な事態になっておる、まさに深刻な社会問題であるというふうに思うわけであります。

 そこで、この消費者金融問題と、後でまた損保の不払い問題についてもお伺いをしていきたいというふうに思いますが、まず、その消費者金融の背景となっておる資金源から私は伺ってまいりたいというふうに思います。

 銀行及び生保各社は、消費者金融に対して多額の貸し出しを行っている。これは、我が党が要求した資料によって、もう既に明らかになっております。主要五行が消費者金融業者大手六社に対して貸し出しをしている額は二千二百三十九億円、信託銀行四行からは五千七百七十九億円、地方銀行からは三百八十九億円、生保大手七社からは三千三百三十四億円、合計一兆一千七百四十一億円と、一兆円を大きく上回っておるわけです。これだけの額の貸し出しをしておれば、年間の貸出利息というのは数百億に上るのであろうというふうに思います。

 銀行及び生保各社が高い金利の貸し出しを求めてこういったところへお金を出すというのは、ある意味では当然ではないのかなというふうに思います。貸付金を一兆円以上もつぎ込んで、その上、すべての大手業者に役員も送り込んでおる。これでは、消費者金融は銀行及び生保の手先と言われても仕方がない。これはやはり、おいしい貸付先であり、下請になっておると言えると思います。

 資料を見る限りでは、役員への天下りは銀行系及び生保系のみで、官庁出身者はいないということになっておるんですが、そこでお尋ねするわけですけれども、本当に官庁出身者の天下りはないのか。官僚が一たん銀行等に天下って、そこから消費者金融業者に再び天下っているという例はないのか。先ほどの資料の中では、銀行からの天下りが二十六名であったというふうに出ておるわけですけれども、本当にこれは各銀行からの生え抜きだけであったのか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。

中江政府参考人 先生御指摘の資料に掲載されております二十六名の方につきまして、各社の有価証券報告書の役員の状況を確認した限りにおきましては、官庁出身者は見当たらないところでございます。

鈴木(克)委員 私は、これで法案が審議されるわけでありますが、それまでに、ぜひひとつ正確にお調べをいただきたいし、その部分の資料をぜひ、要求を今させていただいておりますので、また委員長の方でよろしくお取り扱いいただきたいというふうに思います。

 続いて、過去に官僚の消費者金融への天下り、そして迂回の天下りがなかったのかどうか、このことをお伺いしたいんですが、現時点ではないということでありますが、過去についてはいかがですか。その辺のところはお調べになっていますか。

中江政府参考人 国家公務員の退職後における再就職の状況につきましては、公務を離れた個人に関する情報でございまして、一般に当局として把握すべき立場にはございませんが、金融庁に在職していた職員で、保存期間内の文書で確認できる期間におきまして、これは平成十五年度以降でございますが、金融庁より国家公務員法に基づく人事院の承認手続を経て貸金業者に再就職した者はございません。

 また、各省庁とともに金融庁で公表しております資料、再就職状況の公表に掲載されている者の中にも、貸金業者に再就職した者はございません。

 なお、他省庁の出身者の貸金業者への再就職状況につきましては、当庁として把握する立場にはございませんので、御理解をいただければと思います。

鈴木(克)委員 いずれにしましても、いわゆる天下り問題、そして特にこういった業界への癒着等々、今、国民の目は本当に厳しいわけですから、それは今後、将来においてもそういうことのないようなスキームというものをやはりきちっとつくっていっていただきたい。このことを強く要望しておきたいと思います。

 続いて、保険の未払いに入りたいと思います。

 保険が売っているのは、言うまでもありません、安心であります。保険料と引きかえに保障が約束をされるということだと思います。ところが、当の保険会社が、保険料をもらったらあとは知らないと言わんばかりに、契約者の面倒を見るのをサボったり、いわゆるこじつけのような理由で保険金を払い渋ったらどうなるか。これは契約者をまさに裏切る行為だというふうに思うわけですね。損保業界で続出している不払いは、まさにこれを絵にかいたような醜態だと私は思うんですね。

 過去に自動車保険でいわゆる大きな未払いが出ました。しかし、今回は、病気のときに入院代や治療費を賄う医療保険についても未払いが大量に出ておるということでありまして、このことについてお伺いをしていきたいというふうに思います。

 時間の関係もありますので。最近、損保各社の第三分野の不払い状況、医療保険等の不払い状況については、四千三百六十五件、十二億二千二百万円という報道がなされておるわけであります。そこで、問題は、一体なぜそのような保険金の不払いという事態が生じたのか。意図的だったというふうには思いたくないのだけれども、まさに先ほど申し上げたように、保険を売り物にして、売り出した保険の保険金を支払わないということは、普通の、物を売る商売に当てはめてみると、代金は払ってもらったけれども、一部商品をちょろまかして、本来引き渡す量よりも少なく渡したというようなものだと私は思うんですね。

 商売というのは、これは経済もそうですけれども、信用で成り立っておるわけですから、会社が、顧客の知らないことをいいことにして、商売をごまかすということまでは言わないかもしれませんけれども、いわゆる顧客の面倒を見るのをサボったり、言いがかりのようなことを言って商品の引き渡しを渋ったりしたら、これは社会に与える影響というのは非常に大きなものがあるというふうに思うんですね。本当に、そういう意味で、今、我が国の経済、特に社会倫理というのはどうなっておるのかということになってくるというふうに私は思います。

 そこで、損保各社のその後の取り組み、そして行政としての対応を説明していただきたいと思います。

佐藤政府参考人 御指摘いただきました第三分野に係る損害保険会社のいわゆる不払いの問題につきましては、去る七月に金融庁の方で、すべての損害保険会社に対して報告徴求をかけました。第三分野商品に関する保険金の支払い管理体制に係る点検及び不払い事案に係る検証を求めたわけでございます。これに関しまして、既に一部の会社では不適切な不払い事案があった旨を公表している。先ほど御指摘いただきました四千三百六十五件というのは、そのうち大手六社の合計の数字であろうかと思います。

 いずれにいたしましても、保険金の支払いというのは保険会社の基本的かつ最も重要な責務であり、契約をきちんと履行するという基本でございますので、こういったことが起きたことは極めて遺憾であると思います。

 各損害保険会社におきましては、まずは被保険者、契約者への未払いの部分の早急な支払いを行うということが重要でございますし、また、保険金支払い管理体制の見直し、整備ということに取り組むことも極めて重要であろうかと思います。各社、既にそのような取り組みを行いつつあるというふうに承知をいたしております。

 金融庁といたしましては、現在、先ほど申し上げました報告徴求の結果が十月末に出てまいりましたので、この報告内容を精査、確認を行っているところでございます。検証いたしました結果、不払いの実態に応じて、あるいは経営管理体制、支払い管理体制の実態に応じて、これらの点を総合的に勘案いたしまして、必要に応じ、適切な対応をしてまいりたいというふうに思っております。

鈴木(克)委員 適切な対応をしてまいりたいというところが問題でして、一年前にも同じように自動車の保険であったわけですよね。それでまた、結局同じようなことを繰り返しておるわけですよ。これはやはり何か背景があるような気がしてならないわけです。

 結局、この不払いの背景は規制緩和とそれからいわゆる競争万能主義ということで、その辺のところがどうもおかしくなってきているんじゃないかなというふうに思います。とりわけ損保業界というのは、今まで黙っておっても契約がふえた、例えば自動車保険なんか、車がふえればどんどんふえていったわけですよ。したがって、私は、まさにその上に長い間あぐらをかいてきたというような気がするんです。

 と同時に、いわゆる旧大蔵といいますか、財務省の護送船団方式みたいなものにもやはり助けられてきた。結局、役所の規制で、例えば保険料は業界横並びで来るわけですよ。それから、事故が起きたら厳しく調べて、さっき言ったように、いわゆる顧客軽視というような形で不払いを続ける。

 本当にこのいわゆるスキームが、経営者は本当に反省をしておるんだろうかというふうに思えてなりません。やはり本当の意味での、経営者がもっときちっと反省をした上で、新しい保険のあり方というものをきちっとやっていかない限り、私はだめだというふうに思うんです。

 どういう形でこの不払いを行政側としては防いでいくか、なくしていくか、その辺の心がけというか、思いをもう一度聞かせていただきたいというふうに思います。

山本国務大臣 利用者保護の観点に立った鈴木先生の御指摘は、大変重要な点であろうというように思っております。

 保険金の支払いは、保険会社の基本的かつ最も重要な責務でございまして、損害保険会社におきましては、適切な保険金支払い管理体制を構築することが重要であると考えております。

 金融庁といたしましても、現在、各社の保険金不払い等に関する報告内容の精査、確認を行っているところでありますけれども、仮に、検証の結果として、経営管理体制、支払い管理体制に問題が認められる場合には、当該事実の内容等を総合的に勘案の上に適切な処分をしてまいりたいというように思っております。これら一連の対応に関しまして、各保険会社に対し、徹底した原因究明、またこれに基づく実効性ある体制の整備、こういったことをまずはとらせていくことが重要だと考えておりますので、御理解のほどよろしくお願いいたします。

鈴木(克)委員 いずれにしても、本当に行政としてきちっと対処をしていただいて、国民がだまされることのないように、ばかを見ることのないように、やはり公平公正な社会にしていっていただきたい、このことを強く要望しておきたいと思います。

 続いて、今後、法律として、貸金業の規制等に関する法律の一部改正ということで審議がされていくわけでありますが、その審議に先立って、金融庁に対して実は資料要求をさせていただきました。そこで、出された資料をもとに少しお話をさせていただきたいと思うんです。

 大手の消費者金融業者はまさに銀行以上にもうかる仕組みになっているということを改めて思い知ったわけであります。十三年度以降の貸付金に対する経常利益率を調べてみました。銀行と比較をしてみますると、明らかに大手の貸金業者の経常利益率は銀行を大幅に上回っておる。銀行にとっても、消費者金融業者は確実に貸付利息が入ってくる極めて有利な貸付先となっているということがわかるわけであります。

 貸金業、これは五千億円以上をベースにいたしましたものと、銀行、全国ベースのですね、貸付金に占める経常利益率を比較をしてみますると、貸金業が最近五年間でおおむね七%から一〇%でいわゆる経常利益が推移しておるのに対して、銀行は十三年度及び十四年度はマイナス、それ以降は一%前後で推移しておる。まさに銀行と貸金業者との収益力は大きな乖離があるというのはこの表で出てきたわけであります。

 さらに、消費者金融業者の営業利益率と銀行の業務純益とを比較してみますると、消費者金融業者の営業利益が七パーから一〇パー程度であるのに対して、銀行は一、二パー程度と、明らかに収益力に大きな差があるわけです。消費者金融業者がこれだけ高い営業利益を出している要因、これはどこにあるというふうに見てみえるのか、御答弁いただきたいと思います。

佐藤政府参考人 御指摘いただきましたとおり、大手の消費者金融業者におきましては、これまで過去数年見てみますと、七%ないし一〇%前後の営業利益を上げてきているということでございます。

 この高い利益率あるいは利ざやの要因でございますけれども、大手消費者金融業者において、特に中小の貸出業者と比べますと営業費用の率が低いということもあろうかと思います。機械化による人件費の合理化であるとか、あるいは規模の経済といったことが働いているのかもしれません。

 ただ、いずれにいたしましても、この収益状況につきましては、市場における需要と供給の関係、あるいはそれ以外にも種々の要因が働いているということでございますので、私どもから立ち入った断定的なコメントを申し上げるのは差し控えたいというふうに思います。

 ただ、御指摘いただきました、この利益率七ないし一〇%の分析をしてみますと、一方で、大手消費者金融業者の営業収益率、これは貸出残高に対する金利収入の割合でございますが、これが平均で二四%程度になっている。他方で、営業費用の方でございますけれども、こちらの方は一七%程度であるということで、この差の部分が利益となってあらわれているということであろうかと思います。

鈴木(克)委員 いずれにしましても、銀行の貸付金利というのは大体二%前後、そして、一方の、消費者向けのいわゆる無担保貸金業者を対象とした貸付金利というのは二〇%台ということですね。これは、いわゆる銀行の利益と貸金業者の利益と、収益率に差があるのは当然なんですよね。

 今回、グレーゾーン金利の見直しの話が出てきたときに、金融庁としては各界からいろいろとヒアリングをしたというふうに思うんですね。その中で、銀行からはどういうような話を聞いたのか、私は、これはぜひ聞かせてもらいたいんですよ。最初、何かとんでもない話が金融庁から出ましたよね、最初の原案というもの、たたき台は。私は、このときに銀行が、このグレーゾーン金利の存廃についてもどういうふうなことを言っておったのか、そして、いわゆる業界として金融庁にどういう回答をしたのか、このところをぜひひとつ聞かせていただきたい、これが一つ。

 もう一つ、先ほど機械化というふうにおっしゃったわけでありますが、これは無人契約機のことをおっしゃっておるんですかね、あの機械化という部分は。ちょっとそこのところだけ補足をしていただきたい。この二点をお願いします。

佐藤政府参考人 先ほど機械化と申しましたのは、一つには、御指摘のとおり無人契約機がございますし、それからもう一つは、ATMのネットワークといったこともあろうかと思います。

三國谷政府参考人 銀行界の御意見ということでございますが、いわゆるグレーゾーン金利を含めました貸金業制度等のあり方につきましては、平成十七年三月以降、貸金業制度等に関する懇談会におきまして、銀行界からもオブザーバーとして全国銀行協会の方に出席をいただいております。精力的な議論をこの懇談会で行ってきておりますが、その中で、金利そのものにつきまして、銀行界から特段の意見は表明されなかったと承知しております。

鈴木(克)委員 ちょっと意外な御答弁だなというふうに思うんですが。銀行界から全然そういった要望がなかったというお話ですけれども、私は、また調べてみますけれども、そんなことはないんじゃないかなというふうな気がしてなりません。

 それで、実は、またこのデータ、皆さんのお手元にないので何のデータかということになるかもしれませんが、事前に私が金融庁からいただいたデータ等を見ておりますと、貸し倒れ率がここへ来て急激に上がっているわけですよね。先ほど申し上げました、大幅に利益を上げる一方で、近年特に、平成十四年度以降は貸し倒れの率が非常に高まっておるというふうに数字の上からは見られるわけです。

 提出をしてもらった資料を見ると、大手五社の貸し倒れ償却率というのは、平成九年度から十二年度までは二%台であったわけですけれども、十三年度に四パー、十四年度が五パー、十五年度が七パー、十六年、十七年度は再び六パー台に、若干落ちたんですけれども、なお非常に高い貸し倒れ率といいますか償却率があるわけですけれども、十四年度以降、なぜこの貸し倒れ率が高まったのか。その原因は、金融庁としてはどのようにとらえてみえるのか、御答弁をいただきたいと思います。

佐藤政府参考人 御指摘いただきましたように、平成九年度以降、この貸し倒れ償却率がトレンドとして上昇してきたということでございます。

 この要因につきましては、さまざまな要素が作用しているということで、一つのことに特定して申し上げるのは困難でございますけれども、一つの参考として、自然人の自己破産申し立て件数というのを見てみますと、平成十年度に約十万件であったものがそれ以降急増いたしまして、平成十五年度にはピークの約二十四万件というふうになっております。その後、十六年度に二十一万件、十七年度に十八万件と、若干の減少を見せておりますけれども、依然として高い水準にとどまっているということでございます。

 こういった自己破産件数が高水準になっている背景でございますけれども、一つには、この期間における経済情勢あるいは雇用情勢といったものがあろうかと思います。また、過剰な貸し付け、あるいは過剰な借り入れを起因とする多重債務者問題が深刻化したといったことも考えられようかと思います。

 この貸し倒れ償却率の高さにつきましても、こういった要因と同様のことが背景としてはあり得るのではないかというふうに思っております。

鈴木(克)委員 最後になろうかと思いますが、貸し倒れ率が高まってきた要因の背景というのは、私はやはり格差拡大だというふうに思うんですね。

 平成十四年は、小泉内閣になって全体として景気が回復していたと言われる時期なんですね。しかし、その一方で、派遣労働、そして請負労働、偽装派遣というような、特に労働市場の規制緩和、大きな流れがあったわけですね。その中で、その陰でといいますか、ワーキングプア、働けど働けど我が暮らし楽にならず、じっと手を見るではありませんけれども、本当にそういういわゆる貧困層という方々が出現をしてきたということ、そういう方々が消費者金融からお金を借りる、そして返せないということになって、貸し倒れの増加になっておるということだというふうに思うんですね。

 やはり私は、そういうような、二〇〇三年四月の労働基準法の改正、職業安定法の改正、労働者派遣法の改正、そういう一連の改正の中に、こういうようないわゆる格差拡大、その結果が、さっきから言っておるような貸し倒れ率の上昇ということになるというふうに私は思っていますが、その点、ぜひもう一度御見解を聞かせていただきたいと思います。

佐藤政府参考人 貸し倒れの増加の背景にはマクロ経済情勢、雇用情勢等さまざまな要因があろうかと思いますので、その原因を特定するということは困難でございますけれども、データ的に見ますと、大手の消費者金融業者の新規顧客に占める年収三百万円未満の方の割合というのは四割以上というシェアになっておりまして、またここ数年、大手各社の顧客一人当たりの平均貸付残高というのも上昇しているということが見てとれます。

 こういった要因をあわせ考えますと、やはり顧客の返済能力を超えた借り入れや貸し付けが貸し倒れ率の上昇につながっている可能性はあるというふうに存じます。したがって、貸金業者が顧客の返済能力を慎重に審査して、過剰貸し付けを防止するということが極めて重要であろうかというふうに存じております。

鈴木(克)委員 貸金業については、また法案が出された段階で詳しく御質問する機会もあろうかと思います。

 最後に、冒頭申し上げました平成電電のこの問題ですけれども、これは実は平成電電だけではないんです。名前は言いませんけれども、本当に同じようなスキームで、もう間もなくというか間近に倒産をするという、新たなまた本当に多くの被害者が出るような案件もあるわけですよね。

 そういうことを考えていったときに、やはり行政が本当に国民の皆さんの思いを先取りをしてやっていくというようなことが必要なんだというふうに私はつくづく思います。ぜひひとつ、二度と出さない、そして起こさせない、こういうような決意でやっていただきたい。このことを最後にお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、川内博史君。

川内委員 民主党の川内博史でございます。尾身大臣、よろしくお願い申し上げます。

 また、きょうは大変お忙しい中を日銀の福井総裁にもお運びをいただきましたことに心から感謝を申し上げさせていただきたいと思います。本当にありがとうございます。福井総裁には後半の部分でお聞かせをいただこうというふうに思っております。

 まず冒頭で、先日、水曜日の議論が時間切れになりましたので、続きをやらせていただきたいと思います。続きをというか、最初からちょっとやってみたいというふうに思いますが、十月六日の衆議院予算委員会の安倍総理と柳澤厚生労働大臣の御答弁が間違っている、政府の見解として不適切な表現をされているという問題についてでございます。

 これはどういうことかというと、我が党の菅直人代表代行が、年金生活者の皆さんの住民税、国民健康保険料、介護保険料の負担が大幅にふえて、年金生活者の皆さんが非常に困っておられる、また非常にお怒りになっているという問題を提起させていただきました。それに対して安倍総理は、「平均的な年金以下だけで生活をしている方々に対しては新たな負担増はないというふうに認識をしております。」と答弁をされました。

 この総理の答弁に柳澤厚生労働大臣から補足説明がございまして、「介護保険料あるいは国保といったものは市町村が大体保険の主体でございますので、自分のところの地方税にスライドしてこれが定められているということがございます。したがいまして、ちょうどこの地方税の課税最低限、課否の境界線でありますが、」要するに課税するか否かの境界線でありますが、「それがおおむね二百六十六万までは今までは非課税だったものが、これが二百十一万に下がるという事態が生じました。 今総理がおっしゃった、通常のモデル年金をもらっている、あるいは年金だけで世帯が成り立っているというところは大体二百万ぐらいでございますから、この中に入って、地方税の変動による影響は受けない階層に属しておられるということを総理はおっしゃった、こういうことであります。」と。「基本的には、今総理がおっしゃったように、二百十一万以内の年金所得者であれば、これは何らの影響を受けない。」と柳澤大臣は答弁をされました。

 私は、この安倍総理と柳澤大臣の認識は間違いであるということを先日の委員会の終わりの方で申し上げさせていただいたわけでございます。

 そこで、まず総務省にお伺いをいたします。住民税の均等割の非課税限度額は地域によって差があるということでございますが、その地域によってどういう差があるのかということについて御説明をいただきたいと存じます。

岡崎政府参考人 お答え申し上げます。

 個人住民税におけます非課税限度額でありますが、地域によっての差というのは、所得割についてはございませんが、均等割の非課税限度額について三つに分かれております。

 これは、生活保護制度において、地域における生活様式あるいは物価の差による生活水準の差等を勘案しまして、大都市等の一級地から町村等の三級地までの三段階に区分がされているということでございまして、これを勘案して、個人住民税の均等割非課税限度額についても、一級地から三級地まで三段階に区分されております。

川内委員 その三段階に分かれている均等割の住民税の非課税限度額について、それぞれお答えください。

岡崎政府参考人 お答え申し上げます。

 平成十八年度の住民税均等割非課税限度額でありますが、一級地につきましては二百十一万円、二級地につきましては二百一・九万円、三級地については百九十二・八万円。いずれも、例えば六十五歳以上の夫婦の場合の非課税限度額ということでございます。

川内委員 この非課税限度額に応じて介護保険料あるいは国民健康保険料も決まってくるという理解でよろしいでしょうか。

御園政府参考人 お答え申し上げます。

 介護保険料につきましては、地方税の非課税限度額と連携した形で介護保険料の設定をさせていただいておりますが、国民健康保険料は、国民健康保険の世界の中で独自の基準で低所得者対策という制度をまた設けて運用しているところでございます。

川内委員 それでは、総務省と厚労省にお尋ねをいたします。

 制度改正によって非課税限度額が変更をされた。特にモデル年金世帯と厚労省が言っている百九十九万八千円の所得以下の世帯でいえば、生活保護三級地、百九十二万八千円の世帯でございますが、これがどのように負担がふえたのかということについて、総務省と厚労省からそれぞれ御説明をいただきたいと思います。

岡崎政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の三級地におけます、例えば六十五歳以上の夫婦の場合には、先ほど申し上げましたように、非課税限度額は百九十二・八万円に十八年度に下がったところでございます。

 一方で、お話ありましたように、厚生労働省がお示しになっておりますモデル年金の受給世帯、これは年金受給額二百七十九・一万円ですが、うち夫が百九十九・九万円とされております。

 したがいまして、平成十八年度から、三級地におけるモデル年金受給世帯の方には、個人住民税のうち、最小限の、地域社会の会費ともいうべき均等割につきましては課されるようになることは事実でございます。ちなみに、十八年度は、年額千三百円というふうになっております。

 ただ、これらの世帯の方につきましても、課税所得金額に税率を乗じて算出いたします所得割については、引き続き非課税になっております。

 また、一級地、二級地におけるモデル年金受給世帯の方については、引き続き均等割も所得割も非課税ということで、変化はございません。

川内委員 ちょっと、千三百円だけじゃないでしょう。平成二十年は四千円になると言わなきゃ。そういうごまかしを言っちゃだめですよ、ちゃんと言わないと。

岡崎政府参考人 失礼いたしました。

 平成十八年度は千三百円ですが、十九年度二千六百円、平年度になりますと、年額四千円ということでございます。

御園政府参考人 まず、介護保険の方の御説明をさせていただきたいと思いますが、生活保護級地三級のところで新たな負担増というものが発生する状況になっておりまして、二級地、一級地については負担は発生いたしません。

 三級地に属するモデル年金世帯の介護保険料の合計額を、これは全国それぞれ地域によって違いますので、全国の加重平均の介護保険料を用いて機械的に試算をした結果でございますが、お許しいただきたいと思いますけれども、これが、税制改正の影響を受けない一級地、二級地であれば五千百円なわけでございますけれども、税制改正の影響によりまして、十九年度は七千八百円に、二十年度は九千二百円にというふうに上がってまいります。失礼しました、平成十八年度は六千四百円。六千四百円、七千八百円、九千二百円と、平年度化すると九千二百円という徴収でございます。(川内委員「月額です、月額でちゃんと言わないと」と呼ぶ)

 国民健康保険料につきましては、どちらかの年金額が百五十三万円を超える場合には税制改正の影響を受けるという仕掛けになっておりますので、この場合、モデル年金世帯の国民健康保険料ですが、一月当たり、影響を受ける場合には、十九年度は八千円、二十年度は八千四百円となりますので、どれぐらい増加するかということになりますと、十三年度と比較しますと、三千六百円、あるいは十九年度で三千六百円、平成二十年度は四千円というような上昇をする額になるというところでございます。

川内委員 今、厚労省から説明があったのは月額ですね。

 だから、住民税の均等割については年額四千円の負担増が生じた。さらには、介護保険料、国民健康保険料については、それぞれ月額についてはっきりおっしゃらなかったので、私がちょっと今計算をいたしますが、平成二十年度においては、国民健康保険料は月額四千円の増加、介護保険料については月額四千八百円の増加ということで、年間トータルすると、いいですか、大臣、ここは大事なところですから。三級地にお住まいのモデル年金世帯の方々は、年間でいうと、十万円を超える負担増が新たに生じているんです。

 生活保護一級地、二級地、三級地というのがどういうぐあいかというと、一級地というのは大都市です。私、全部資料をいただきましたが、一級地に所属している都市は一枚ですね。二級地が二枚。三級地が、先ほど御説明では町村とおっしゃったが、市も含まれます。市町村です、正確に言うと。一、二、三、四枚、五枚、六枚、七枚、八枚、九枚、十枚ですね。大部分の市町村は生活保護三級地に属する市町村である。そういう中で、この三級地にお住まいの方のみが年間十万円を超える負担増が新たに生じたという事態であります。

 私は、政府の認識として、総理大臣あるいは厚生労働大臣の認識として、モデル年金の世帯には新たな負担は生じていないという言い方は、これは極めて国民をミスリードする不適切な表現であるというふうに言わざるを得ないと思いますが、今までの議論をお聞きになられて、改めて財務大臣に、予算委員会の安倍総理の認識、さらには柳澤大臣の認識は、これはちょっと間違っているなというふうに御答弁をいただきたいと思います。

尾身国務大臣 生活保護の区域の問題でありますが、一級地、二級地というのが主として都市部、三級地が農村部といいますか田舎の方だというふうに理解をしておりますが、一級地、二級地の合計が大体三分の二、三級地が人口で三分の一だということでございまして、一級地、二級地につきましては今までどおりということでございますが、三級地につきましては、課税最低限が変わった関係から影響が出てきているということでございます。

 ただし、トータルとしての支払いの額、これは社会保険関係費と地方税でございますが、それの合計は、生活保護を受けている高齢者世帯よりも現役世代の方がはるかに高いということになっている点もぜひ御理解をいただきたいと思います。

川内委員 いや、私はそんなことに文句を言っているのではなくて、それは、税制調査会の中でさまざまな議論が行われて、制度の持続的な可能性とか、あるいは世代間の負担の公平性とか、さまざまな観点から制度改正が行われたということについては承知をいたしております。

 他方、総理や厚生労働大臣の認識として、モデル年金世帯以下の所得の方々には新たな負担は生じていないとおっしゃるので、それは、生じているというところもあるわけですから、その認識については、これは政府の認識ですからね、国の最高の責任者である総理や、あるいは社会保障に責任を持つ厚生労働大臣が、課税限度額以下の人たちは一切負担は生じていないんだという認識のまま行政に当たられるというのは極めて不適切であると私は思います。この予算委員会で示されたそういう認識は間違っていますねということを確認しているんです。

尾身国務大臣 この点については厚生労働省の方から詳細はお答えいただきたいと思いますが、総理が申し上げたのは、多分、一級地、二級地、三分の二のところについて申し上げたわけでありまして、三分の一の三級地につきましては先ほど言われたとおりでございます。私は、そういう意味において、三分の二についてはそのとおりである、三分の一については今おっしゃったような負担分があるということでございます。

川内委員 財務大臣、今の御答弁は極めて不適切だと思いますよ。三分の二については本当のことを言ったけれども、三分の一はごまかしたというんですか。いや、だってそうでしょう。三分の二は本当だが、三分の一は言わなかった、ごまかしたということじゃないですか。

 私が申し上げているのは、モデル年金世帯以下の世帯には新たな負担は生じないとおっしゃっていらっしゃるこの認識は正していただかなければなりませんよねということを申し上げているんです。言いわけしてくださいと言っているんじゃないですよ。正していただかなければなりませんねということを申し上げているんです。

 財務大臣は閣僚の一員でありますし、内閣のメンバーであるわけですから、ぜひ、政府の見解としてその認識は間違っていたということをここでおっしゃっていただかなければ、それは、委員長、おかしいんじゃないですか。委員長、聞いていてそう思いませんか。財務大臣の言うとおりだ、うんうん、それでいいと委員長として思うんですか。

伊藤委員長 私は答弁する立場にございませんので、川内君、引き続き質問をお願いしたいんです。引き続き御質問を続けてください。(川内委員「いや、だから、もう一回答弁してください」と呼ぶ)指名してください。

川内委員 財務大臣にお答えをいただきたいと思います。

尾身国務大臣 私の答弁は、先ほどから申し上げておりますように、一級地、二級地については変わっていません、三級地については変わっていますということを申し上げておりますので、詳細については、厚生労働省の方の担当の人に具体的に細かい数字は聞いていただきたいと思います。

川内委員 いや、私は、数字について、今まで前段の議論で細かくやったじゃないですか。それを踏まえて、予算委員会の総理大臣の御答弁あるいは柳澤厚生労働大臣の御答弁は間違っていますね、正していただかなければなりませんねということを、財務大臣に閣僚として御答弁をいただきたいということを申し上げているんです。

 厚労省、どうですか。何か言うことはありますか。では、言い方を変えますよ。柳澤厚生労働大臣の答弁は正しいですか。

御園政府参考人 さきの予算委員会で私どもの柳澤大臣が御答弁差し上げたのは、ちょっと読み上げさせていただきますと、地方税の課税最低限、課否の境界線でありますが、それがおおむね二百六十六万円までは今まで非課税だったものが、これが二百十一万円に下がるという事態が生じました、今総理がおっしゃった、通常のモデル年金をもらっている、あるいは年金だけで生活が成り立っているというところは大体二百万円ぐらいでございますから、この中に入って、地方税の変動による影響は受けない階層に属しておられるということを総理はおっしゃった、こういうことでありますというふうに御答弁をさせていただいているわけであります。

 私どもの認識といたしますれば、このときに答弁させていただいた柳澤厚生大臣が御説明したのは、言葉が足らなかったかもしれませんが、二百十一万ということを申し上げているわけで、先ほどのここでの御議論の中でございましたように、一級地は二百十一万だ、二級地、三級地はそれよりもう少し低いところに課税最低限がセットされているわけでございますので、私どもがこの柳澤大臣の答弁を聞いておりましたときは、ああ、大臣は一級地のことを言っているんだなというふうに理解をしておりますので、間違った答弁とは私は思っておらないところでございます。

川内委員 いいですか、通常のモデル年金をもらっている、あるいは年金だけで世帯が成り立っているところというのは大体二百万ぐらいでございますから、地方税の変動による影響は受けないという階層に属しておられるというふうにおっしゃっていらっしゃいますよね。別に、ここを一級地のことなんて前提をつけて言っていないじゃないですか。モデル年金世帯以下のところは新たな負担は生じないと言い切っていらっしゃるじゃないですか。これは一級地のことだ、一級地のことと限定して言っているんだという根拠はどこにあるんですか。

御園政府参考人 柳澤大臣の御答弁は、総理の答弁の補足答弁だというふうに私は理解をしております。もうそれは先生もよくお読みになっているとは思いますが、水かけ論になるかもしれませんが、総理の御答弁は、読ませていただきますと、基本的には平均的な年金以下で生活をしている方々に対して新たな負担はないというふうに承知をしているという、基本的にはという言葉が入っておりますので、そういう中で、一級地あるいは二級地、それは、その量の問題もあろうかと思いますし、三分の二が該当して三分の一が該当しないのをどっちをとるかという問題もございますけれども、やはり、基本的にはという総理の御答弁を補足する中で二百十一万円という数字を明示していれば、我々の世界で理解をすると、うそをついたりということではないというふうに我々は理解をしたということでございます。

川内委員 後づけでいろいろな御説明をされるが、この前、厚生労働大臣が委員会を終わられてたまたま私が廊下で行き会ったので、大臣、非課税限度額が変わるのを知っていますかと聞いたら、へえ、それは聞いてみるわと言っていましたよ。

 レクしていないんだろう。そういういいかげんな、国民をごまかすような行政ばかりやっているから国民から信頼を受けないんですよ。負担増をしたら、負担がふえたふえたと文句を言われるんですよ。正直に、正確に、誠実に説明することが国民からの理解を得る唯一の行政だと思いますよ。

 厚生労働大臣は知らなかったですからね。私が、生活保護三級地で負担がふえると知っていますかと。へえ、それは勉強するわと言ったんですから、私に。そんないいかげんな答弁をしているからだめなんですよ。間違ったことは間違ったときちんと閣僚がしっかり認識をして行政に当たる。

 生活保護三級地、田舎に住んでいるじいちゃん、ばあちゃんに課税が生じたんですから。一方、大都会に住んでいるじいちゃん、ばあちゃんは生じていないんですよ。そのことについて、いや、まあ、それは、基本的にはという言葉を使っていますからとか、そんなことじゃないと私は思いますけれどもね。(発言する者あり)いろいろ言われて委員会が盛り上がってきたんですが、またこれは柳澤大臣や安倍総理にも申し上げなきゃいかぬというふうに私は思っておりますし、財務大臣もぜひ、これは認識が、やはりこの予算委員会の認識はちょっと不適切であったな、あるんじゃないかなぐらい、感想ぐらい言ってください。不適切だったとか、であると言い切らなくていいですから、不適切であるかもしれないとか、そのくらい言わないとおかしいと思いますよ、閣僚として。

尾身国務大臣 この答弁について感想を述べよということでありますが、答弁も質問も、一級地、二級地、三級地という単語は全然出てこなかったのはちょっとおかしいのではないかというふうに思っております。

川内委員 本当に残念だなと思いますよ。田舎のじいちゃん、ばあちゃんは年間十万円を超えているんですからね、負担がふえているんですから。田舎のじいちゃん、ばあちゃんは年間十万円以上負担がふえて、都会に住んでいるじいちゃん、ばあちゃんは負担がふえない、そのことが適切だとはとても私は思えない。そのことをごまかすことはもっとよくないというふうに御指摘を申し上げて、私の時間もあと十五分ぐらいですから、せっかく福井総裁にもお運びをいただいておりますので、お聞かせをいただきたいことがありますので、福井総裁にお聞かせをいただきたいと思います。

 私は、福井総裁、村上ファンドに対して福井総裁が御出資をなさっていらっしゃったということに関して、福井総裁は、「日本銀行員の心得」などの内規には違反していない、したがって自分としては総裁としての職責を全うしてまいりたいということを再三にわたって御答弁されていらっしゃいます。ちょっと、何回も何回もこういうことをお尋ねして心苦しいんですけれども、もし内規に違反しているということが明らかになった場合には総裁を辞する覚悟でいらっしゃるでしょうか。

福井参考人 日本銀行の内規につきましては、最近の改正前のもの、それから最近の改正後のもの、いずれも承知をいたしておりますが、少なくとも、最近の改正は非常に最近のことでありますが、今後それに従っていく、以前の内規に対して私の行為が違反していないということは明白でございます。

川内委員 内規に違反していないことは明白であるというふうにおっしゃられました。それでは、今まで何回も聞かれていることであろうと存じますが、再度、総裁の御見解を確認させていただきたいと思います。

 「日本銀行員の心得」「7 個人的利殖行為」の「(1)職務上知ることができた秘密を利用した個人的利殖行為は、厳に行ってはならない。」「(2)現担当職務と個人的利殖行為との間に直接的な関係がなくとも、過去の職歴や現在の職務上の立場等に照らし、世間から些かなりとも疑念を抱かれることが予想される場合には、そうした個人的利殖行為は慎まなければならない。」この「日本銀行員の心得」7の(1)、(2)に違反していないとされる主張の根拠を改めて福井総裁の口から聞かせていただきたいと思います。

福井参考人 今おっしゃいました改正前の内規の規定でございますけれども、職務上知り得た秘密を用いて私は取引行為をしていない、それから合理的に考えて、そうした疑いを抱かれるようなことが予想されるような行為はしていない、こういうことでございます。

川内委員 それでは、村上ファンドへの投資あるいは拠金は一般的な利殖行為であるということはお認めになられますか。

福井参考人 通常の金融資産の保有でありますけれども、私は何回もお答えしているんですけれども、利殖を目的にそういう取引をしたのではなくて、やはり村上氏の当初の志、これを評価した行為だ、こういうことでございます。

川内委員 目的をお聞きしたのではなく、一般的な利殖行為に当たるという認識をお持ちになっていらっしゃいますかということをお聞きしております。

福井参考人 改正前の内規では許容されている普通の金融取引でございます。

川内委員 それでは、同じく「日本銀行員の心得」の「5 職務上の関係者からの利益享受」の欄で(1)、「その他、日本銀行における地位や職務を利用して、職務上の関係者から、一般の顧客に比べて有利な条件での取扱いを受けること。」というふうに書いてあります。

 二〇〇一年、平成十三年四月に村上ファンドは、オリックスファンドと言ってもいい本質が出てくるわけでございます。そこで、オリックスの宮内さんでございますけれども、日銀に当座預金の口座を持っているあおぞら銀行の取締役でございます。同じく、日銀に口座を持つオリックス信託銀行の一〇〇%親会社のオリックスの代表取締役でございます。宮内さんは職務上の関係者に当たるのか当たらないのか。当たらないとすれば、その根拠をあわせてお聞かせいただきたいと思います。

福井参考人 宮内さんは、今あおぞら銀行とおっしゃいましたか、非常勤の社外取締役、日常的に業務執行の責任を負う立場にはあられません。したがいまして、利害関係人ということではございません。

川内委員 総裁、オリックス信託銀行のこと。

福井参考人 オリックス信託銀行の役員ではあられません、宮内さんは。

川内委員 一〇〇%子会社であってもその銀行の役員ではないから利害関係者ではない、職務上の関係者ではないということですね。

福井参考人 オリックス信託銀行がオリックスの一〇〇%子会社であっても、オリックス信託銀行の経営に宮内さんは関与していないということであります。

川内委員 さらには「日本銀行員の心得等の運用基準および解釈」という文書がございます。この中の「18 心得7に定める職務上知り得た秘密を利用した個人的利殖行為とは、次に掲げるものなどをいう。」と書いてございまして、(2)として「金利・為替政策の変更に関する情報を事前に知り得る立場の者による当該施策実施前の関連金融商品への投資」と書いてあります。当該施策前の関連金融商品への投資、投資というのは解約も含むわけでございますが、せんだって私が本委員会で確認をさせていただいたところ、福井総裁が解約のお申し出をされたのは本年の二月十八日である、さらにその後、三月八日か九日に決定会合が行われて金融政策が発表をされたわけでございますが、この規定に解約という行為が違反しているのか違反していないのか。していないということであれば、その根拠をあわせてお答えいただきたいと思います。

福井参考人 職務上具体的な機密を知り得た上で行為をしたということではございません。

 加えまして、解約でございますが、二月の解約とおっしゃいましたけれども、解約につきましては、運用がファンド側に一任されている具体的な取引について一切指図のできないファンドであったということに加えまして、解約を申し入れても実際に解約がなされるのは六月末、相当後になって履行されるという仕組みでございます。したがいまして、利益も損失も、二月時点でいかなる行為をしても確定できないということであります。

 そういう意味でも疑念を抱かれる余地は全くない、改正前の内規に違反していない、そういう認識でございます。

川内委員 さらにもう一つ聞かせていただきたいと思いますが、総裁は日本銀行に対して、内規に従って所得等の報告書を平成十六年度分、十七年度分という形で提出していらっしゃるとお聞きをしております。その中に、村上ファンドからの利益については株取引による雑所得というふうに申告をしていらっしゃるということでございますけれども、一般に、任意組合を通じて、あるいはパススルー組合を通じての課税というのは、納税申告書、確定申告については、金額だけではなく取引の明細を求められるというふうに思います。

 総裁は、確定申告に当たって、取引の明細、個別銘柄というか、村上ファンドがどこにどういうふうに投資をしてこういう利益が出たという具体的な計算書をおつけになられましたかということをお聞かせいただきたいと思います。

福井参考人 まず、日本銀行内部での所得等報告制度でありますけれども、この規程に従って、私自身も所得等に関する報告を行っております。

 所得等報告書をつくる意味は、日本銀行の役職員が職務と関係のある者などからの不適切な贈り物とか報酬などを受けていないかどうかを確認することを目的としたものでございます。したがいまして、どういう項目の所得があり、その所得が発生した原因が何であるか、基因となった事実というところを記述することに意味があるわけでございます。

 私も、ファンドに関係する所得がありますということで金額を記載し、今申し上げましたとおり、ファンドに関連する所得であるというふうに明確に記述して内部に報告しております。

 もう一つのお尋ねは、所得税の申告のことでございます。これは、年に一回、確定申告のときに行っております。オリックスから参りましたステートメントを附属資料として出しております。しかし、個別銘柄についての売買、個別銘柄の売買に伴う損失あるいは利益については、資料はちょうだいしておりません。したがいまして、そういう細目の明細はつけておりません。私自身も承知をしていないことでございます。

川内委員 任意組合を通じての取引の場合には、利益が直接個人に帰属をする、すなわち、株の所有権は福井総裁にもあるということですよね。要するに、組合のものだけれども、組合というのは実体がないので組合員共有の財産であって、福井総裁にも当然にその財産権は生じているということでありますけれども。

 私が税務当局に確認をしたところ、株式の取引として税金を申告する場合、個別銘柄の資料を法令上は義務づけられてはいないが要求すると。要求するというふうに税務当局は答えていただきました。福井総裁が確定申告をされるときに、個別銘柄の資料について要求されましたでしょうか、税務当局から。

福井参考人 毎年、正当に申告をしておりまして、税務当局から疑義を差し挟まれたことはございません。

川内委員 私は、疑義を差し挟まれたかどうかということをお聞きしているのではなく、税務当局から個別銘柄の明細について資料をお願いされましたかということをお聞きしております。

伊藤委員長 申し合わせの時間が過ぎておりますので、簡潔に御答弁をお願いします。

福井参考人 そういう御要請は一度も伺ったことはございません。

川内委員 終わります。ありがとうございます。

伊藤委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 私は、十月二十七日の財務金融委員会で、山本大臣の政治資金パーティーのパーティー券の購入先に金融機関が含まれているかということをお聞きしました。これに対して大臣は、調査してまた御報告したいと思いますというふうにお答えになったわけですが、ここで、その調査の結果を報告していただけますか。

山本国務大臣 調査を行いましたところ、購入先の中に、例年と同様、幾つかの金融機関も含まれておりました。

 そこで、言うまでもないことでございますが、パーティー券の購入の有無等により金融庁の行政が左右されることはあり得ないという考え方のもとにございますけれども、大臣規範等との関連でも、それに照らしても現在のところ問題はないと思っておりますが、国民の信頼確保に万全を期する観点から、金融関係者につきましては全額返金することといたしまして、既に手続を済ませております。

 以上です。

佐々木(憲)委員 その金融機関というのは何社で、幾らですか。

山本国務大臣 何社かはちょっとわかりませんが、銀行十四枚、生保十二枚、損保十三枚、証券五枚で、合計四十四枚でございました。

佐々木(憲)委員 金額は幾らになりますか。

山本国務大臣 一枚二万円でありまして、合計しますと八十八万円でございます。

佐々木(憲)委員 それを返却するということですが……(山本国務大臣「いやいや、返却しました」と呼ぶ)したわけですね。

 従来と同様にというふうにおっしゃいましたが、パーティー券の内容について、金融機関が含まれていたという点については、従来の政治資金報告書には出てきませんが、これは従来どういう形になっていたんですか。

山本国務大臣 多分、想像でありますが、二十万円以下のものについては相手方を記載しない、そういうルールにのっとって記載していないんじゃないかというように思っています。

佐々木(憲)委員 それでは、次に、銀行のあり方についてお聞きをしたいと思います。

 さきの質問で、私は、大手銀行六グループのことし三月期の当期利益について確認をしましたが、三兆一千二百十五億円という膨大な利益が上がっているわけです。ところが、法人税はどうかということでお聞きしましたら、山本大臣は、納税額は発生していない、つまりゼロである、こういうことでありました。

 これは常識的に考えまして、三兆円以上の利益を上げて法人税はゼロ、私はこれはどう考えても納得できないんです。過去七年間の損失の累計が相当あって、それを全部消化するまで税金を払わなくていい、こういう仕組みだというんですけれども。しかも、五年を七年に延長した。このままいきますと、来年も再来年も、これから三、四年は少なくとも法人税はゼロという状況が続くんですよ。私は、国民的に見てこれは納得できないと思うんですが、大臣、どのように受けとめておられますか。

山本国務大臣 金融システム円滑化のために主要行に注入した公的資金につきましては、これまでのところ、資本増強額以上の額で、国に利益が生じる形で回収が行われております。

 また、現状、主要行が法人税を支払っていないことは、先生御指摘のとおりでございます。これは、財務会計上の損失と税務会計上の損金に認識時点のずれがあることが原因でございまして、銀行だけでなく、すべての企業に共通した法人税制に基づくものでございます。

 なお、主要行におきましては、過去、財務会計上赤字という状況の中で税金を納めていた時期もあったことは記憶にとどめておるところでございますが、いずれにいたしましても、主要行は既に不良債権問題を脱却して業績も回復しておりますことからして、今後速やかに、課税上の繰り延べ欠損金が解消されて、法人税が納付できるようになることを私も切に期待しておるところでございます。

佐々木(憲)委員 不良債権処理などで欠損金が出たからという理由で、利益が出ても法人税は払わないというのは、私は理解できないんです。そういう仕組みをつくったこと自体が私は問題だったと思います。

 今、銀行に対する公的資金投入の話がありました。銀行は国民の血税を投入されて、それで破綻を免れたわけです。では、確認しますが、これまでに公的資金は幾ら入ったんでしょうか。そのうち、返還されたのは幾らで、返ってこないものは幾らになりますか。数字をお答えください。

佐藤政府参考人 いわゆる資本注入額に限らず公的資金全体というお尋ねかと思いますが、預金保険機構におきまして、平成十八年三月までに投入された公的資金ということでとらえてみますと、まず一つ目には、破綻処理の一環といたしまして、預金者保護のために、破綻金融機関の受け皿金融機関に対して金銭贈与というものを行いました。これが十八兆六千百五十四億円でございます。また、この破綻処理の一環といたしましたものを中心として、破綻金融機関等から不良債権の買い取りということをやっておりますが、この買い取りとして九兆七千六百二十七億円という規模になってございます。それから、先ほどもちょっと出ました金融機能の安定あるいは早期健全化を図るということで、存続している金融機関に対して資本注入という形で、これまでに十二兆三千八百六十九億円という資金が注入されております。それから、その他、いわゆる特別公的管理銀行に特有な処理等を中心に五兆九千六百六十七億円、こういう資金援助がなされているということでございます。

 それで、金銭贈与、資産買い取り、資本増強、それぞれ性格が異なっておりますので単純に合計するのはいかがかとは存じますが、あえて合計いたしますと、四十六兆七千三百十七億円という数字になります。

 次に、これらの回収の状況でございますが、まず、先ほどの金銭贈与十八兆円余りという部分についてでございますけれども、このうち、ペイオフコストを超える金銭贈与に用いられました交付国債の償還額十兆四千三百二十六億円につきましては、現段階において国民負担として確定をいたしております。残りの八兆一千八百二十八億円につきましては、この部分は、金融機関から徴収いたします預金保険料によって賄われるということでございますが、これまでに五兆七千百六十八億円が既に預金保険料として徴収されておりまして、残りの二兆四千六百六十億円の部分につきましては、今後徴収されるということであろうかと思います。

 それから、先ほどの不良債権等の買い取りでございますけれども、十八年三月末までに、実回収額で八兆五千八百十八億円が回収されておりまして、これに伴う利益として、約一・一兆円の利益が生じているということでございます。

 それから、資本注入につきましては、これは、直近時点、十一月二日現在でございますけれども、実回収額で九兆三千二百四十六億円の回収が行われておりまして、このうち利益に当たる部分が約一・二兆円ということでございます。

 その他につきましては、十八年三月までに四兆八千六十億円を回収しておるということでございます。

 残余の部分につきましては、保有している資産あるいは株式等について、今後の返済あるいは回収の見込みをお答えすることは困難であるということを御理解いただきたいと思いますけれども、いずれにいたしましても、預金保険機構及び整理回収機構におきまして、国民負担の極小化の観点から、引き続き最大限の回収に努めるということであろうかと思います。

佐々木(憲)委員 数字をたくさん言われたんですが、簡単に言いますと、国民負担の確定している総計は幾らなんですか。

佐藤政府参考人 現時点におきまして国民負担として確定している金額は、約十兆四千億ということでございます。先ほど申し上げました十兆四千三百二十六億円、この部分につきましては、現時点で国民負担として確定をしているということでございます。

佐々木(憲)委員 要するに、四十七兆円の資金が投入されたわけでありますが、既に返ってきている部分も一部ありますが、国民負担として確定したのは十兆四千三百二十六億円。

 これは莫大なお金ですよ。だからこそ、銀行は、そういう国民の税金を利用して、今では膨大な利益を上げることができた、そういう状況になった。しかし、法人税はゼロである、何年間もゼロになる。それだけではないんですね。庶民の預金金利もまともに上げておりません。手数料はどんどんどんどん上げる。こういうことで、庶民負担だけはふやしてきた。

 ですから、前の金融担当大臣の与謝野氏は、銀行はまだ半人前だ、銀行はリスクをとって資金を供給するように努力すべきだ、こういう発言をされているわけです。山本大臣、どのようにお考えですか。

山本国務大臣 赤字決算を出しているからといって、悪い会社とか半人前とかいうことではなかろうと思いますが、過去の経過からして、公的負担を得て安定化し、なお活発な業務活動を行っているという銀行に限って見れば、何となく釈然としないという御指摘は、まことにそのとおりであります。

 そして、こういった銀行のビヘービアとしまして、一人前というのを理想的に考えれば、法人税も払い、利用者利便のために預金金利も上げ、サービスもなおよくして、そして企業の社会的責任も全うし、なお労働分配率も高くして従業員の厚生福利に貢献するというところにすべて置けば、なお不満が残ることはあるとは思いますが、こうした点を期待しながら、銀行のビヘービアを見ていきたいというように思っています。

佐々木(憲)委員 なおその銀行は努力すべきだ、こういうことでありますが、私が重大だと思うのは、それだけじゃないんですよ。

 この十月に、日本経団連から全国銀行協会に対して、政治献金の要請というのがなされたんですね。会長行である三菱東京UFJ銀行は、その旨を会員各行に通知した。こういうことは今まで銀行としてはやっていなかったんです。それを、こういうことをやった。献金先というと、大体、自民党が中心ですよね。献金をどうするかは個別銀行の判断だというんですけれども、三菱UFJフィナンシャルグループは、この要請を受けて九年ぶりに政治献金を再開する検討に入った、こう報道されている。

 国民の税金を四十七兆円投入してもらって破綻を免れ、空前の利益を上げた。税金が納まっていない、国民にも還元しない、しかし自民党だけには還元する。こういうことでは二重三重におかしいんじゃありませんか。利益があれば預金者、利用者に返還する、還元するというのは当然だと思いますが、どうですか。山本大臣。

山本国務大臣 ちょうど小泉内閣当時に池田元久先生の御質問があって、小泉総理が、公的資金投入行から献金は受けませんとはっきり申し上げております。さらに加えて、正当な献金というのは政党活動について欠かせないものであるから、それは法律にのっとって堂々と受けたいと思いますともおっしゃっておられます。

 民主主義のコストでございますし、私が金融庁の立場からどうということではありませんが、各行のガバナビリティーに基づいた経営判断というようなことであろうかと思っておりますので、また、監督庁の権限の問題や、監督の姿と、また献金の姿とは、ちょっと次元を異にしておりますけれども、先生おっしゃる点、つまり国民の理解を得ながらという点については、配慮が必要だろうというように思っております。

佐々木(憲)委員 以前は、東京三菱銀行は日本経団連から要請を受けたことがあるんです。そのとき東京三菱銀行は、公的資金は返還して、受けておりません。にもかかわらず、それを各銀行に伝えることをやらなかったんですよ。つまり、献金を拒否したんです。ところが、現在、検討する、しかも通知するということをやっているというのは非常に大きな変化なんです。

 これは、今の銀行の現状からいうと、私はやるべきではないと思います。国民に還元せずに、何でそっちの方ばかり先にやるんだ、こういうことになるわけです。そういう点をよく踏まえて、銀行の言いなりにならないような行政をやっていただきたい。

 次に、尾身大臣にお聞きをいたします。

 先日の質疑で、私は、高齢者の増税、負担増の問題についてただしました。そのとき尾身大臣は、現役世代の給与所得者の方が高齢者年金世帯よりもはるかに大きい負担になっているとおっしゃいまして、高齢者に負担をさせるのは当然であるかのような答弁をされました。

 そのときに大臣は、「所得が三百八十万円の場合、年金世帯の場合は、五年前は四千円の税負担でございましたが、これが十四万円になっております。他方、給与世帯の場合は、五年前十三万円の負担であったものが二十一万円」「同じ所得でありながら、給与・現役世代は一・五倍の税負担をしている」こう答弁をされましたね。

 尾身大臣が答弁をされた際の根拠になった数字は、私が今配付をしております資料の一枚目の、右から二列目の下から二段目。上の場合は年金所得者、十四万一千円。下の場合は給与所得者、二十一万二千百円。この数字を使われたと思うんですが、そのとおりですか。

石井政府参考人 数字をお答え申し上げます。

 今おっしゃられた数字をもとに答弁されたものだと理解しております。

佐々木(憲)委員 今確認したように、尾身大臣の使われたのは、今配付した一枚目の資料です。

 それで、比較するとすれば可能な限り共通の前提を置かなければならないと私は思います。大臣、聞いているのかな。(尾身国務大臣「聞いていますよ」と呼ぶ)同じ前提、できるだけ共通の前提を置かなければならぬと思うんですね。しかし、この表は現役世代の税負担を重く見せる仕掛けになっているんですよ。

 なぜかといいますと、上にある年収三百七十九万二千円の年金世帯の場合は、夫が三百万円の年金収入、妻が七十九・二万円の収入を前提として計算しているんですね。下は現役世帯。妻の収入はゼロなんですよ。年収がすべて夫の分で、三百七十九万二千円。税がかかるのは夫の分ですね。ゼロから七十九万、これはかかりませんから。そうすると、夫の分の年収の三百万円と三百八十万を比較すれば、三百八十万の方が多くなるのは当たり前なんです。これは適正な比較とは言えないんじゃないでしょうか。

 比較するとすれば、妻の年収をパートなどで七十九万二千円稼いだとして、夫の収入が三百万として計算して、高齢者世帯と前提を同じにして比較するというのが当たり前の方法だと思うんです。

 それで比較すると、十九年分の税額はどうなりますか、増税分はどうなりますか。

尾身国務大臣 先日申し上げましたのは、おっしゃるとおり、給与世帯については夫が三百七十九万円で妻の収入がゼロという想定で申し上げました。

 今の御指摘の、夫三百万円、妻七十九・二万円という想定で申し上げますと、年金世帯の場合には税負担の合計が十四万一千円になっております。給与世帯の場合には十三万八千円になっておりまして、年金世帯の方が税負担としては多いという数字になっております。

 ただし、これはどういうことかと申しますと、保険料等の負担が、年金世帯の場合には二十九万二千円であるのに対しまして給与世帯は五十三万二千円と、二十四万円給与世帯の方が余計に保険料等の負担をしているわけでございまして、これは可処分所得という点から見ますと、これが社会保険料控除として所得の課税所得から差っ引かれるということになります。

 したがいまして、実質の課税所得、つまり実質の所得は、この比較におきましては年金世帯の方が給与所得より高くなっているということでございまして、したがって、課税所得がこの社会保険料控除があるために給与世帯の方が少なくなっているわけであります、課税対象所得が。したがって、その結果として、税額は給与世帯の方が十三万八千円となっておりまして、年金世帯よりも税額としては低くなっているわけであります。

 しかしながら、保険料負担と税の負担と両方合わせますと、年金世帯は四十三万三千円、給与世帯は六十七万円ということでございまして、同じ所得でありましても給与世帯の方がはるかに大きな負担になっているという事実があります。

佐々木(憲)委員 保険料の問題を私は今問題にしているんじゃありません。税の話なんです。

 しかも、尾身大臣がこの前答弁をしたのはこの数字なんです、私がさっき紹介した。つまり、税負担がいかにも給与所得者が重い、重い、一・五倍である、場合によっては十倍だとか、そういう話をされるものですから、私はそれでは、収入の前提を同じようにしなければおかしいじゃないかということで、計算を財務省にしていただいたのが二枚目にあるわけです。

 それを見ますと、同じ位置のところを見ていただければわかりますが、世帯収入、年金世帯とそれから給与所得者世帯、そのうち夫三百万円というふうに両方いたします。それを前提として税収の、税負担の計算をしますと、そこにありますように平成十九年分で、年金世帯の場合は十四万一千円、これは変わりません。ところが、給与所得者の場合は十三万八千円なんですね。したがいまして、これは増税の分としても、年金世帯は十三万七千円の増税、現役世帯は五万八千七百円の増税、こういうことになるわけです。したがって、高齢者の負担は現役世帯よりも重くなっているわけです。高齢者の増税額も現役世帯の二倍になっているということなんです。このように計算いたしますと、全く違う結果になるわけですね。

 それから、単身世帯の場合はどうか。次のページをあけていただきますと、単身世帯は、同じようにして、世帯収入三百万の場合、年金世帯、平成十九年分の課税は十九万八千二百円、十三万二百円の増税です。これに対して、現役世帯では十九万二千五百円の課税で、三万四千五百円の増税になる。つまり、現役世帯よりも年金世帯の方がはるかに負担が重いわけです。

 世帯収入が三百二十・八万円の場合、年金世帯は二十二万七千百円の課税で、十四万一千三百円の増税、現役世帯では二十一万一千百円の課税で三万八千円の増税、これも高齢者の負担が現役世帯よりもはるかに重くなるわけですね。

 税ということに限って試算をいたしますと、結果として、尾身大臣が前回答弁されたこととは全く逆の結果になる。この数字自体はそのとおりですね。

尾身国務大臣 今おっしゃった数字は、そのとおりでございます。

 ただ、どちらの負担が重いかということは、税と保険料等の負担を合計したものでございまして、単身世帯の場合におきましても、保険料の方は、年金世帯二十一万七千円に比べて、単身世帯の方は三十八万五千円と、ほぼ二倍近い保険料負担をしているわけでございます。その分を所得から社会保険料控除として差っ引いて、可処分所得といいますか課税所得で計算をすると、同じ所得であっても、社会保険料負担が高齢者の方が少なくて現役世帯の方が多いために、実際の課税所得、これは可処分所得と言ってもいいと思いますが、その課税所得が高齢者の方が高くなる。そして、給与世帯、現役世帯の方が低くなるということの結果として、税そのものの負担は給与世帯の方が幾らか安くなるわけであります。

 しかしながら、社会保険料の支払いと税の支払いを合計いたしますと、単身の場合におきましても、年金世帯が四十一万五千円に対しまして、給与世帯は、世帯というのは単身でございますが、五十七万七千円と、現役世代の方が高齢化世代よりもはるかに高い負担をしている、そういう負担の差というのはあって、そういう意味で、高齢者についての配慮を十分している、そういう制度になっているということでございまして、これは政党のいかんを問わず、事実関係としてしっかりと御認識をいただきたいと思います。

佐々木(憲)委員 私は税金の話をしているんですね。それをまた今度は保険料の話に広げて、しかもその保険料は、それは現役世帯は一定の保険料を払っていますよ、当然。高齢者になると、それは払わないでいいとか、あるいは軽減というのはあります。そういうことを含めて言うなら、それなら、ではそれに対して、特養ホームに入った場合の利用料はどうか。こうなっていくと、高齢者の場合の方が大変な負担になるわけですよ、この前も私はここで申し上げましたけれども。病院に入院した場合もそれに加算される。収入の三分の一あるいは半分近くが、そういう形で負担が飛んでいく、こういうことになっていくわけです。

 したがって、今お認めになりましたように、税の関係でいうと、結局、尾身大臣が、高齢者の税負担は軽い、現役世帯が重いと言っていたことは、それは数字の上の計算の根拠の違いであって、私がこの前提で試算すれば、そのとおりだと。つまり、高齢者の負担は非常に重いということを税の面ではお認めになったわけであります。

 この問題、私、考えると、もともとこういう形で比較をするということ、政府が、つまり尾身さんがこの前盛んに比較をされておっしゃいましたから、そういう意味が果たしてあるのか。つまり、現役世帯の給与所得の場合と高齢者世帯の年金収入というのは、やはりそれぞれ性格が違うわけであります。高齢者の場合は、稼得が減少する、それから体力が減退する。したがって、現役の場合と違うからこそ特別な支援というのが今までもやられてきたし、それが必要なわけですね。老年者控除などの軽減策が設けられてきたわけですね。それを現役世帯と一律に同じやり方で負担を負わせるというやり方が、無理が生じるということなんですよ。

 今、もう本当に悲鳴が聞こえますよ、全国。そういう方々がふえているわけですね。ですから、今こういうやり方で、高齢者の増税を正当化しようとしていろいろな数字を出して説明されますけれども、比較の前提が違う数字を持ってきて矛盾が逆に大きくなってしまう、こういう結果に今なっているわけですから、私は、政府がやっていることは、これはだれが見ても高齢者の生活を直撃する増税だということは明らかなので、負担もふえる、それから利用料もふえる、そういう形で高齢者の生活が大変な打撃を受けているという実態こそ認識すべきだ、このことを指摘しておきたいと思います。

 次に確認したいのは……

伊藤委員長 質問時間が過ぎておりますので、おまとめをいただきたいと思います。

佐々木(憲)委員 わかりました。

 数字だけ確認しますが、全体の負担の数字です。

 公的年金控除の見直し、老年者控除の廃止、個人住民税、老年者非課税の廃止、これで何人の高齢者が負担増になるか。それから全体の税収は、これは合わせて幾らなのか、この点を最後に聞きたいと思います。

石井政府参考人 年金課税の見直し等によりまして税負担がふえる、または税負担が生じる方の数でございますが、約五百万人程度、これは年金受給者全体、約二千五百万人おられますが、それの約五分の一程度になります。

 また、これらの見直し措置によりましての増収額でございますが、平年度で申しますと、国、地方を合わせまして約四千億円というふうに見込んでいたところでございます。

佐々木(憲)委員 わかりました。

 結局、四千億円という数字でどんなに悲鳴が上がっているかということなんですよ。一番最初に私、申し上げましたように、銀行は税金を払っていない、大企業も減税を受けている、こういう状況を変えて、そういう高齢者を支えることをやるのが本当の政治ではないのかということを最後に申し上げまして、質問を終わります。

伊藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時八分散会


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