衆議院

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第9号 平成18年11月21日(火曜日)

会議録本文へ
平成十八年十一月二十一日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 伊藤 達也君

   理事 井上 信治君 理事 竹本 直一君

   理事 林田  彪君 理事 増原 義剛君

   理事 宮下 一郎君 理事 池田 元久君

   理事 古本伸一郎君 理事 石井 啓一君

      井澤 京子君    伊藤信太郎君

      石原 宏高君    江崎洋一郎君

      小川 友一君    小野 晋也君

      越智 隆雄君    大塚  拓君

      大野 功統君    木原  稔君

      佐藤ゆかり君    関  芳弘君

      とかしきなおみ君    土井 真樹君

      中根 一幸君    長崎幸太郎君

      萩山 教嚴君    原田 憲治君

      広津 素子君    牧原 秀樹君

      小沢 鋭仁君    川内 博史君

      小宮山泰子君    鈴木 克昌君

      田村 謙治君    寺田  学君

      馬淵 澄夫君    吉田  泉君

      谷口 隆義君    佐々木憲昭君

      野呂田芳成君    中村喜四郎君

    …………………………………

   財務大臣政務官      江崎洋一郎君

   参考人

   (慶應義塾大学教授)

   (貸金業制度等に関する懇談会座長)        吉野 直行君

   参考人

   (未来バンク事業組合理事長)           田中  優君

   参考人

   (全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会事務局長)            本多 良男君

   参考人

   (弁護士)

   (日本弁護士連合会上限金利引き下げ実現本部本部長代行)          宇都宮健児君

   参考人

   (独立行政法人国民生活センター理事)       田口 義明君

   参考人

   (東京都産業労働局金融部長)           塚田 祐次君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十一日

 辞任         補欠選任

  萩山 教嚴君     牧原 秀樹君

  松本 洋平君     大塚  拓君

  小沢 鋭仁君     小宮山泰子君

同日

 辞任         補欠選任

  大塚  拓君     松本 洋平君

  牧原 秀樹君     萩山 教嚴君

  小宮山泰子君     小沢 鋭仁君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇号)


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     ――――◇―――――

伊藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、慶應義塾大学教授・貸金業制度等に関する懇談会座長吉野直行君、未来バンク事業組合理事長田中優君、全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会事務局長本多良男君、弁護士・日本弁護士連合会上限金利引き下げ実現本部本部長代行宇都宮健児君、独立行政法人国民生活センター理事田口義明君、東京都産業労働局金融部長塚田祐次君、以上六名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 急なお願いにもかかわらず本委員会に御出席を賜りまして、本当にありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜りますようよろしくお願いを申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願いいたします。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、まず吉野参考人にお願いいたします。

吉野参考人 おはようございます。慶應義塾大学の吉野でございます。

 私は貸金業に関する懇談会の座長を務めさせていただきましたので、その立場から、今回の法案に関しまして私見を述べさせていただきたいと思います。

 今回の法案は、私たちがずっと考えてまいりましたほぼすべての点に関しましておこたえいただいておりまして、さらにこれから進めるべきことはあるとは思いますが、私は今法案には賛成でございます。

 お手元の方にきょう配付資料をお配りさせていただいておりますが、学士会の会報と書いているものでございます。それの次のページをごらんいただきたいと思います。三十ページと三十一ページに図がございますので、これを見ながら御説明をさせていただきたいと思います。

 では、ただいま配付していただいておりますので、表紙のページの一ページをおあけいただきますと、右側に三十ページ、それから左側に円グラフの図がございます。私は、この右側の図を使いながら、きょう、約十分間でお話をさせていただきたいと思います。

 三十ページの図を見ていただきますと、左側の方に利用者、借り手、それから右側の方に貸金業、いわゆる供給者、こういう二つのグループがございます。

 まず、利用者の立場の方から申し上げたいと思いますが、私が見るところでは、大体三つの利用者のグループがおられます。貸金業に関しましては、一番左側の「生活苦」の方々、それから「浪費者」、それから私が掲げております「健全な借手」、この三つのグループが現在貸金業を利用されているということでございます。

 ただ、本来的にこの貸金業を使われるべき方々は「健全な借手」、こういう方々が最も重要でありまして、残念ながら、現在のところは「生活苦」あるいは「浪費者」の方が使われている、こういうところが一つ問題だと思います。

 それから、最近グラミン銀行の話がございますが、このグラミン銀行は日本の消費者金融とはちょっと違いまして、生活者が物をつくるためにお金を借りるというのがグラミン銀行であります。ですから、生活苦のためにお金を借りる銀行ではない、このことが、やはり多重債務があるかないかという大きな違いではないかと思います。日本の場合には、残念ながら、生活苦の方々あるいは浪費者の方々がこういう消費者金融を利用されるというところに問題があったと思います。

 それから、今後でありますけれども、下の方を見ていただきたいと思いますが、こういう生活苦の方々には、やはりこういう貸金業から借りるのではなくて、何らかの公的扶助あるいは事前のカウンセリング、こういうことがぜひ必要ではないかと思います。それから、真ん中の「浪費者」のグループに関しましては、下の方にずっと線がございますけれども、中学校、小学校、高校を通じて金銭教育、こういうものがぜひこれからも必要であると思います。

 三番目の、右側のところの「健全な借手」というところでございますが、これは一番大きいところは、例えば新規の企業というようなところが多いと思います。

 なかなか最初の起業、新しく企業を起こそうといたしますと、銀行から借りられません。こういうところはやはり最初は貸金業に行かれる。そして、そこでうまくやっていかれますと、二年、三年すると銀行から借りられるということになります。特に、新規企業の場合には成功する確率が非常に低くなっておりまして、一万数千社に一件だけ新規企業は成功する、こういうような統計がございます。ですから、なかなか銀行としては、最初に、初めて来られても貸せないということがあると思います。

 それから、ほかの健全な借り手としましては、つなぎ融資、短期的にお金を借りたい、こういう方々がおられるというわけであります。

 次に、今度は右側の貸金業の方に参りたいと思います。

 現在は参入が非常に自由でありまして、登録制というふうになっております。このために、一万六千とか一万八千、こういう業者が、右の上の方でございますが、ございます。今回はここに資本金を課すことによりまして、五千万あるいはそれに近い資本金、こういうことによりまして参入を制限していく、いい業者だけが入るようにする、こういうことでございます。

 今後でありますけれども、例えばペーパーテストを課すというようなこともあると思います。暴力的にいろいろ取り立てをする方々はペーパーテストに弱い、よくこういうふうに言われておりますので、試験をこういうときにやるといいんではないかというふうに思います。

 それから、参入のところでありますけれども、フランスとかイギリスの場合には非常に厳しく、免許制になっておりまして、これは銀行と同じように、免許を取らないとできない、こういうような国もございます。

 それから、右の方の、丸が書いてございますが、「信用情報機関」というところをごらんいただきたいと思います。

 現在、三つの大きな信用情報機関がございます。必ずしも全部の業者がその信用情報機関に入っているわけではありません。このために、信用情報機関の情報が足りませんので、多重債務に陥る、何回も借りて多重債務を繰り返す、こういうことになります。

 今後は、やはりこの信用情報機関にある程度強制的に入っていただく、こういうことが必要ではないかと思います。そのためには、やはりいい業者が参入して貸金業に入るということがもう一つ重要であります。そういたしませんと、その信用情報を利用してまた悪いことが行われるということになると思います。

 さらには、この信用情報機関、現在三つございますが、情報の交流をしっかりすることによりまして、ホワイト情報それからブラック情報、いい情報、悪い情報、これをしっかりとモニターするということが重要ではないかと思います。

 次に、下の方の「行為規制」でございますが、これはやはり、これまで悪い業者の方は取り立てを相当厳しくされていたわけであります。これに関しましては、地道にこの取り立てに対する罰則を科していくということが必要ではないかと思います。

 次に、右の下の図をごらんいただきたいと思います。金利の問題でございます。

 金利に関しましては、一つの見方としましては、アメリカやヨーロッパ、イギリスのように、均衡の金利、交点のところで決めるべきである、金利を規制するのはおかしい、こういう考え方が一つあると思います。

 ただ、消費者の場合に、リスクの高い人に対しては高い金利を課すべきである、こういう御意見の場合には、リスクの高い借り手というのは生活苦の方々であります。そうしますと、均衡の金利で金利を決めるべきであるということは、生活の苦しい方は高い金利、それからある程度お金のある方は低い金利、こういうことになると思います。

 私どもの懇談会の議論の中では、そういうふうに日本の中で消費者に対していろいろ区別するのはおかしいんではないか、こういう議論になりまして、今回はやはり金利を引き下げるということになったわけでございます。それで利息制限法と同じ、上限が二〇%、こういうふうになりました。

 そういたしますと、この図を見ていただきますと、必ず借り手はふえてまいりますし、貸し手の業者は少なくなってまいります。そういたしますと、経済学の言葉で申しますと超過需要、つまり、借りたくても借りられない人たちが出てくる、こういうことになります。

 そこに対しましてはやはり二つございまして、もう一度一番左の上を見ていただきますと「生活苦」、こういう方々は市町村の窓口あるいはそのほかの公的な扶助を通じて手を差し伸べる、こういう手段をつくること、それからもう一つは、この超過需要の方々が、下の方にありますブラックマーケットに流れないようにする、こういうことが必要ではないかと思います。その際には、警察の例えばOBの方々でこういう専門の分野の方々を再雇用していただきまして、その方々にブラックマーケットの取り締まりをしていただく、こういうようなことが必要ではないかと思います。

 それから最後に、カウンセリングに関する問題点、この重要となる点を申し上げたいと思います。

 事前のカウンセリング、つまり借りる前にカウンセリングする、それから今度は借りてからカウンセリングに来る、こういうカウンセリングの充実もぜひ必要ではないかと思います。

 以上、ありがとうございました。(拍手)

伊藤委員長 ありがとうございました。

 次に、田中参考人にお願いいたします。

田中参考人 おはようございます。

 私は、未来バンク事業組合というNPOバンクの代表をしております田中優といいます。

 きょう、お手元の方の資料に「NPOバンクを改正貸金業規制法から適用除外されることを希望します」というペーパーをお出しさせていただきました。

 私たちは、基本的に、今回のこの改正案に対して非常に賛成しております。今回、ああ、ようやっとここまで来られたのかというふうに非常に思っているんですけれども、ところが一方で、これによって、特に財産的要件の部分で、私どもの方の非営利でやっている貸金業の方が影響を及ぼされてしまうということを非常に懸念しております。

 まず、私たちがどのようなことをしているかですけれども、今話に出ましたバングラデシュのグラミンバンク、今回ノーベル平和賞をとったユヌス博士のところですけれども、このユヌス博士から、私たち、十二年前に未来バンクを設立するときにお祝い状をいただいています。ユヌス博士とはその以前からのおつき合いがありまして、こちらの方を若干紹介させていただきましたけれども、私たちは未来バンクの船出を心から祝いたいと思います、私たちは飢餓と貧困から解放された世界を創造するため皆さんとともに働いていけることを楽しみにしていますというふうなことで、お手紙をいただいています。

 そこにありますように、私たちが目指しているのは、非営利でお金を借りられる状況というのをつくっていきたい。特に、社会の中で融資を受けることが非常に困難なところにお金を回していくことによって、非営利の経済を発達させたいという思いがあります。

 例えば、一般的に言うところのNPO、非営利団体は、残念ながら、現時点では、どこかからお金を、融資を受けようと思ったとしても、なかなかその融資が実現することはありません。というのは、もともと財産的にも乏しいですし、NPOはそもそも出資を受けることができませんから、基礎的な財産がほとんどできにくいという構造の中で、融資を受けることが極めて困難。法的にも無責任構造になっていますので、いざというときに個人的な債務を引き受けるわけでもないという中で、NPOが融資を受けるのは極めて困難になっています。そういうところに私たちは融資をしていこうという思いのもとに十二年前につくったものです。

 未来バンクが融資する相手は、福祉、環境、市民が社会をつくろうとする市民事業、そこだけに融資をするという形で運営していまして、金利は三%の固定、単利で、物的な担保は一切とらずという形でやっています。もちろん、私ども、取り立てというようなこともしていませんし、そこら辺は信頼関係の中だけでやっていくという形でこれまで続けてきています。

 幸いなことに、私たち、とにかく進めていく中で、顔の見える関係でお金の貸し借りをやっていく中では貸し倒れは発生しにくいというふうに考えて進めてきたんですが、果たして結果はそのとおりでした。これまで十二年間やってきて、これまでに七億円以上融資をしましたが、貸し倒れはゼロ。当初はたった七人、四百万円出し合って始めたものなんですけれども、現時点では一億七千万の出資が集まり、そして十二年前は私たち一つだけだったんですけれども、現時点では全国に九つのこういった非営利のバンクができ上がり、そして今つくろうとしている団体に至っては、ほぼ全国の都道府県すべてに存在しています。

 そういう状態に今なれたところなんですけれども、今回の規制が、たまたま規制の要件の部分が私どもの非営利バンクの方にもかかってしまうという事態になってしまいました。今回の金融商品取引法、金取法の方では、私たちのお金については、これは配当を予定しない出資であるから投資とは呼ばないというふうに、らち外に位置されております。同じように、今回の改正貸金業規制法の中であっても、私たちとしてはらち外の扱いを受けたいというふうに考えています。

 と申しますのは、私たちが希望するのは、日本じゅう各地が、地域自立した形で金融が成り立っていくというのが望ましい形だというふうに考えています。ですので、未来バンクは、十二年前からそうですが、全国に一つ大きくなるという方向は全く考えていません。そもそも各地域の人たちが、各地域で自分たちの貯金を集めていって、その中で地域に回せるお金を持っていくということが一番重要だというふうに考えてこれまで続けてきています。そのために、各地域でバンクをつくりたいんだがという話があると、私たちは常にそれに参加して協力してきました。もちろん私たちは、すべての活動が手弁当です。全く一銭のお金も受け取りません。そういう中で、各地域の中で始まろうとしている小さな運動、そしてまた社会的な企業家の人たち、そういった人たちに小さな可能性を提供していくようにしたい、それが高い金利のもとでつぶされることなく発展していけるようにそのインフラを提供したい、そういう思いで続けてきています。

 その中で、今やっと各地の中に生まれ、また有名なところでいいますと、APバンクといいまして、ミスターチルドレンの桜井さん、小林武史さん、坂本龍一さんが出資してやるというような非営利のバンクもスタートしております。そこも私は監事としてかかわっておりますけれども、そこの融資も着々と毎年ふえてきて、そういう中から各地域に、そこは環境のことをやっていますので、環境活動をする緑の拠点が日本じゅう各地域に今生まれてきたところです。

 どうか皆様にお願いしたいのは、この可能性を、この小さな芽のような可能性をぜひはぐくんでいただきたいというふうに思うんです。私ども、残念ながら、こういったことについて、法案とかについて決して詳しいわけではありません。しかしながら、皆様、立法府の方々にぜひそういうものがあるということをお考えいただいて、それにうまく適合する形での法律の適用の仕方を実現していただけたら幸いだというふうに思っています。

 そのNPOバンクの方でも幾つか、変なことにならないようにということで、自主規制的なことも既に考えております。幾つか紹介したいんですけれども、三つだけきょうは紹介します。

 私たちNPOバンクの方では、現在、融資先について基本的にすべて公開しています。どこに幾ら貸して現在どの程度の返済が来ているということについては、融資の時点で、あらかじめ相手との話し合いの中で、特に個人情報として問題にならない部分、個人以外のものについては、最初からお互いの了解のもとに公開するということを約束にしています。といいますのは、融資を受ける側のグループも、基本的には社会的な意義のあることをやりたいと思っているグループですので、極力知られたいという思いがあります。それで公開をしているということ。

 そして、その中で、例えば私たちが無理な取り立てをしたりとか高い金利を取ったりとかいうことが絶対ないように、公認会計士の皆様、弁護士の皆様、今協力いただいている方々がいらっしゃいますので、その方々に検証して報告していただくという準備が既にございます。

 そして三つ目に、私たち、NPOバンク連絡会というのを現在持っていまして、全国九つあるグループについてはすべて連絡をとり合っております。そういう関係の中で、NPOバンク連絡会がこういった制度の状況について保証していくということを準備したいと思っています。

 具体的に言いますと、そういった非営利のバンクが出てきたいといったときに、私たちの団体の方に連絡を下さい、私たちの団体としてそのグループがそぐうのかどうかについて判断させていただきたい、以上のように考えております。

 そのような方向の中で、私たちとしては、変な方向に進むことがないよう進めていく所存でありますので、ぜひ今回の法案の中で私たちの扱いを適正に考えていただけると幸いです。

 ありがとうございました。(拍手)

伊藤委員長 ありがとうございました。

 次に、本多参考人にお願いいたします。

本多参考人 おはようございます。

 私、全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会事務局長をしております。通称被連協というふうに言っておりますので、よろしくお願いします。

 私自身は、昭和五十三年、一九七八年、今から二十八年前ですが、法律事務所の事務員という立場で弁護士さんの事件にかかわり、その当時は第一次サラ金地獄と言われた時代がありました。私は、事務員としてサラ金事件にかかわるようになり、その後、二十一年前に、被害者の会、太陽の会というものをつくって相談員をしております。

 全国クレ・サラの被連協というのは、被害者の会の集まりです。全国で三十七都道府県、七十九の被害者の会があります。私たちの太陽の会はその一つです。今、この太陽の会は、神田で事務所を設けて毎日相談活動をやっています。各地の被害者の会では、サラ金被害、とても高金利のために支払いができずに途方に暮れ、そしてやがては破産あるいは自殺にまで追い込まれるという感じの、本当にあすをもわからないような感じの困った人たちが本当に毎日相談に押しかけてきている状況です。

 そういう中で、私たち、二十四年前に被連協を結成したわけですけれども、その当時はまだサラ金規制法がありませんでした。金利が一〇九・五%、それこそ今のやみ金の取り立てと同じ、本当にひどい内容でしたし、私たちは、弁護士さんからいろいろ御指導を得、利息制限法を武器に債務者の救済ということで取り上げ、運動をしてきました。

 そういう点では、金利引き下げというのは、本当に、我々が運動を始めたときからの悲願でした。こうしてきょう議論をしていただき、多重債務者をなくすための、金利引き下げを中心とする、そしてさまざまなセーフティーネットを初め施策を議論されている、御討議していただいているということについて、大変私はある意味で感動といいますか、この悲願がいよいよ達成できそうだという立場で、皆さん方に本当に感謝を申し上げておきたいと思います。

 そして、この国会、会期末はもう間もなくですけれども、ぜひこの臨時国会の中で、十二月十五日までに、今提案されています貸金業規制法の改正案、ぜひ実現、成立をしていただきたい、このことをまず強くお願い申し上げたいというふうに思います。

 私たちは被害者の会ですから、やはり被害の実態を訴える、そのことで法律の改正を求めるということで運動をしてきております。今でも私たちは、利息制限法を武器に生活を立て直す、困った人たちの、破産をしないでもしっかり立て直すことができるということで運動をしているわけですけれども、一方では、自殺や破産、そのほか犯罪にまで走ってしまうというケースがあり、心を痛めているところです。

 皆さん方は御承知かと思うんですが、ついこの前、群馬県の太田市というところで、現職の警察官が郵便局に強盗に押し入った、強盗を働いたという事件がありました。この方も、約四千六百万、複数のサラ金などの負債を抱えて借金苦で困ったということを自供しております。

 もう一つ、実は郵便局の強盗なんですが、これは二〇〇一年、五年前の話なんです。盛岡で起きた事件でございまして、二〇〇一年に郵便局に強盗に入る、それから昨年にはコンビニなど四件の強盗に入る凶悪犯です。一審では懲役十一年の実刑判決が出て、今、仙台高裁にかかっているわけですけれども、仙台に青葉の会という被害者の会があるんですが、そこの会長さんを長年やってくださっていた小野寺弁護士さんが国選弁護でその事件をお引き受けしました。

 そして、その被告人の方から、実は私はサラ金から借金を抱えているんだというお手紙をいただいた。小野寺先生は念のため取引経過を出させて、利息制限法で引き直し計算すると、この方は四百万の借金を抱えていたんですが、実は三百五十万の過払い金があった。その被告人の方は、過払い金があったということを知らされて、私はそのことを知っていたら強盗なんかせずに済んだのにということで大声を上げて泣いた。本当に悲しい事件、泣ける事件です。

 まさに、高金利の被害というのはそういう問題も抱えているんですね。私たちは、生活を立て直すために積極的に過払い金返還請求の運動をしております。払わなくていい利息があるんだ、利息制限法を超えては払わない、こういう運動をしていまして、先日では、全国で二千九百八十一件、三十二億円の過払い金返還請求をしております。

 それから、過払い金返還請求をするともう一ついいことがあるんですね。

 実は、尼崎あすひらく会というものがあるんですが、そこの被害者の方が、三十五年間サラ金にずっと支払いを続けてきて、もう破産しかない、三百万ぐらい借金を抱えている。実は、計算してみますと、二社で四百万の過払い金がとれた。親族その他の借金も返済して、実は国民健康保険料金の八十二万を滞納していた、そして市民税も十三万円滞納していた。合わせて九十五万余りを一括して尼崎市に返納、完納しようとしたんです。そこの尼崎の担当者の方は、前例がないということで当初受け取りをちょっと戸惑っていたようなんですが、実は何も好きこのんで滞納したわけじゃないんだ、払おうと思ってもそのお金がサラ金に行っちゃっていたんだ、それをこうして取り戻すことによって払うことができたんだということを言い、そのことが市議会でも話題になり、行政として多重債務対策を進めるという方向に進んでおります。

 長野県や岐阜県、あるいは奄美大島でも行政として取り組みが始まっておりますし、今度のセーフティーネット、それからカウンセリング等の問題についても、すべての市町村議会、市町村の行政で相談窓口を設置していただきたいということを強くお願い申し上げたいというふうに思っています。

 それから最後に、やみ金の問題です。

 やみ金は、本当に取り締まりをしっかりやらないといけないと思います。私たちは、不法原因給付を主張して、借りたお金についても返還しない、払ったお金は不当利得だから返せ、これは札幌高裁の判決及び最高裁での上告棄却で確定しております。ですから、私たちは、払わない、全件被害届を出すということで運動をしておりますが、本当に残念なんですが、警察官は、借りたお金については払えばいいじゃないか、それでおさまるじゃないかという対応しかしてくれないんです。深川警察署のある警察官はしっかり対応してくれますけれども、ほとんどの警察官がそういう対応です。これではやみ金の撲滅はできません。これは本当に、あすをもわからないような状態に来ていますから、一刻の猶予もならないんです。すべての警察官がきちっと対応していただきたいというふうに思っております。

 それからもう一つ、済みません、貸金業協会によるカウンセリング、債務整理の問題です。これは今度の法案の中にもそういう位置づけがなされておりますけれども、そもそも、貸し手がカウンセリングするというのは本当におかしな話です。これは愛媛県でも現在裁判になっています。本来過払いのはずなのに払わせる、破産状態であるにもかかわらず払わせていく。十五万の収入しかない人に、毎月六万ずつ払わせていく。そして、二次被害なんです。

 ですから、私は、このカウンセリング、相談というのは、中立を持った行政がしっかりやるべきであって、貸し手たる貸金業協会はタッチさせるべきではない、このことを強く求めたいと思います。

 ちょっと長くなったようですが、どうも失礼しました。ありがとうございます。(拍手)

伊藤委員長 ありがとうございました。

 次に、宇都宮参考人にお願いいたします。

宇都宮参考人 どうもおはようございます。日本弁護士連合会上限金利引き下げ実現本部の本部長代行をしています弁護士の宇都宮といいます。

 まず最初に、今回の法案の全体的評価について意見を述べさせていただきます。

 今回の法案につきましては、多重債務問題を解決するために、金利規制を強化するとともに、参入規制を強化し、それから行為規制を強化し、過剰貸し付け規制の強化、あるいは罰則とか監督の強化なども図られておりまして、私たちは基本的には高く評価しております。

 特に、金利規制に関しましては、日本弁護士連合会や被害者団体それから労働団体、消費者団体等が強く反対してきた、利息制限法の金額刻みを変更することによって利息制限法の制限金利の実質引き上げを図る、あるいは特例高金利を盛り込む、こういうようなことが盛り込まれておりません。みなし弁済規定を撤廃し、出資法の上限金利を利息制限法の制限金利の上限である二〇%に引き下げる、それから利息制限法の制限金利と年二〇%の間は行政処分の対象とする、そしてまた、日賦貸金業等の特例金利を廃止して、保証料等についても金利と合算して規制することになっております。

 我が国は、一九五四年から民事的規制と刑事的規制を分離する二元的な規制をやってきたわけですけれども、ここで、基本的にはほぼ民事的規制と刑事的規制を一元化する、半世紀ぶりに大きな改革を行ったことになります。この点は高く評価しております。

 また、それ以外の、金利規制以外につきましても、財産的基礎要件の引き上げによる参入規制の強化とか、借り手の自殺により保険金が支払われる保険契約の締結の禁止、公正証書の委任状の取得の禁止とか、利息制限法の制限金利を超える貸し付けについての公正証書の作成の禁止、年収の三分の一を超える過剰貸し付けの禁止など、各種業務規制が強化されております。それから、やみ金に対しての罰則の強化、業務改善命令の創設、行政処分の強化などの監督の強化が図られております。こういう各種業務規制も高く評価しております。

 それから、現在の多重債務問題の深刻な状況ですけれども、今、被害者の会の代表として、本多参考人の方からも意見を述べられましたけれども、このところ消費者信用団体生命保険の問題が大きな問題になって報道されております。

 金融庁の調査によりますと、消費者金融十七社が、消費者信用団体生命保険で、昨年一年間で借り手が亡くなったことによって受け取った保険金の支払い件数は延べ五万一千九百九十七件、支払い額は三百二億円に上るということです。その中で死因が判明しているケースは二万四千七百九十件で、全体の四七・七%、そのうち自殺は四千九百八件で、一九・八%を占めているということが明らかになっております。これで、もし死因が判明していないケースもほぼ同じ割合だとしますと、借り手が自殺によって保険金が支払われたケースは一万二百九十五件になります。つまり、一万人以上の人が昨年は自殺しているわけです。

 こういう深刻な多重債務問題は一刻も早く解決する必要があるかと思います。したがって、私たちは、この法律案はこの臨時国会において速やかに成立させることを強く要望しております。

 それから、この法律案の問題点、課題について述べさせていただきます。

 まず、金利規制に関する問題なんですけれども、これは見直し規定が置かれております。二年半以内に検討を加えるということになっております。ただ、私たちは、この見直しの中で、金利規制を緩和したり、あるいは問題になった特例高金利を復活させるということについては強く反対しております。

 それから、金利の引き下げ、みなし弁済規定の撤廃、日掛け金融の特例金利の廃止まで、施行から二年半以内、それから公布からおおむね三年の経過措置が置かれておりますけれども、この深刻な多重債務問題の現状を考えますと、出資法の上限金利の引き下げ等はできるだけ速やかに行うべきだと考えております。

 特に、過剰貸し付け規制等につきましては、信用情報機関等の整備から、準備期間がかかるのは理解できることなんですけれども、金利の引き下げ等について果たしてこれだけの時間をかける必要があるかどうか、疑問に感じております。

 それから、多重債務者対策本部がいずれ内閣官房に設置されるということになっておりますけれども、これを実効性のあるものにしていくことが極めて重要だと思っております。

 私たちは、多重債務者対策本部につきましては、まず最初に、自治体や政府系金融機関などの低利融資制度、生活保護、社会保障の充実などセーフティーネットの拡充強化、それから多重債務者に対する弁護士会、司法書士会、それから十月からスタートしております日本司法支援センターなどの相談窓口の情報の提供と相談窓口の拡充強化が図られる必要があるかと思います。この点については、日弁連も重い責任の一端を負担しなきゃいけないという覚悟でおります。それから、やみ金融対策の強化が図られる必要があるかと思います。それから、内閣官房に多重債務者対策本部をつくるだけではなくて、都道府県とか市町村、こういう自治体においてこういう多重債務者対策の組織をつくる必要があるのではないか、そういう方向でぜひ政府は指導していただきたいと思っております。

 それから、今後の課題ですけれども、今回の法規制でまだ十分規制対象になっていない問題として、おまとめローンの規制とか顧客等の居住用不動産の保護、それから消費者ローンにおいて保証人をとることの制限、それからクレジットも含めた過剰与信規制。これは、今回の過剰与信規制については消費者金融に限られているものですから、実際弁護士等が多重債務者の相談を受けておりますと、クレジット債務も含まれる多重債務者が一般的です、クレジット債務をあわせてどう規制していくかということをぜひ検討される必要があるかと思います。

 それから最後に、利息制限法の制限金利の引き下げ等もぜひ検討していただきたいと思っております。

 御承知のように、利息制限法は一八七七年、明治十年に制定されております。当時は、制限金利は一二%から年二〇%となっております。これが、銀行の貸出平均金利、市場金利等が下落しましたので、一九一九年、大正八年には、制限金利は一〇%から一五%に引き下げられております。この利息制限法が戦後、一九五四年、昭和二十九年に改正されて、制限金利が一五%から二〇%になって現在に至っているわけです。ところが、当時の銀行の貸出平均金利は年九・〇八%でしたが、現在は、銀行の貸出平均金利は一・六%になっております。こういう状況を考えますと、現在の制限金利がこれでいいのかどうか、こういう点も十分検討していく必要があるかと思います。

 いずれにしても、今回の法案については、先ほどお話ししましたように、こういう問題点はありますけれども、私たちはぜひこの臨時国会で成立していただくよう強く要望するものです。

 以上です。どうもありがとうございました。(拍手)

伊藤委員長 ありがとうございました。

 次に、田口参考人にお願いいたします。

田口参考人 貸金業規制法等の改正案につきまして、意見を申し上げます。

 私ども国民生活センターは、各地の消費生活センターなどと連携いたしまして、消費生活に関する情報の収集、提供、苦情相談の処理などの面で中核的な機関としての役割を果たしております。

 そうした中で、消費者の方々から全国の消費生活センターに寄せられます多重債務に関する相談は、お配りいたしました資料にもございますように、平成七年度は約六千四百件でございましたが、昨年度は約六万三千件に増加しております。これら相談には、消費者金融等からの過剰与信の問題、支払い能力の乏しい人や判断能力の十分でない方々への貸し出し、さらには強引な取り立てなどの実態があらわれております。多重債務者が置かれました現状は極めて深刻でございまして、多重債務問題の解決が急がれております。

 そこで、国民生活センターにおきましては、多重債務問題を抱え返済に困っている方々の実態を明らかにし、多重債務問題への対応のあり方を検討するために、昨年十一月から十二月にかけまして、弁護士事務所や司法書士事務所等への相談者五百八十五人を対象といたしまして実態調査を行い、その結果を本年三月に取りまとめました。本調査の結果、多重債務に悩む相談者の方々が複数の貸金業者から借り入れをしているという実態に加えまして、貸金業者の過剰融資あるいはグレーゾーン金利の問題、さらには借金が債務者の生活に深刻な影響を与えている状況などが明らかになったところでございます。

 そこで、この調査結果のポイントと、それを踏まえました課題、提言を三点申し上げたいと思います。

 第一は、債務に関する相談者が消費者金融あるいは信販会社等から借り入れるに当たりましての勧誘方法などについてでございます。

 相談者の回答結果によりますと、勧誘に際し、「貸付可能金額の増額を提案された」が六一・七%、「必要な金額以上の借入れを勧められた」が三八・六%、「ATMで借入れ限度額が表示されるので、つい必要以上の借入れをしてしまった」が三七・八%でございました。また、借り入れ理由のうち、借金返済のためとする比率は、借り入れを始めたころは一九・八%でございましたが、返済が困難になってきた時期には五一・五%にふえております。

 このように、多重債務の背景には、借り手の返済能力を超えた過剰な融資の実態があると考えます。また、近年、無人契約機やATMが普及しておりますが、手軽に借り入れられますことから、借金意識が希薄化しており、過剰融資に拍車をかけております。こうした点を踏まえますと、借り手の返済能力を超える過剰融資の防止ということは極めて重要な課題でございます。

 ポイントの第二は、借入金利についてでございます。

 実態調査によりますと、借入金利に上限があり、それ以上の金利については支払う義務がないということを相談者の九割が知らなかったと答えております。また、知っておりましても、借り手の多くは生活費や借金の返済資金に困って借り入れをせざるを得ないという実態も浮き彫りとなりました。

 こうした実態を踏まえますと、制度をわかりやすいものとするために、みなし弁済規定を廃止するとともに、出資法の上限金利を利息制限法の上限金利まで引き下げることが必要と考えます。

 ポイントの第三は、貸付金利等の認識についてでございます。

 多重債務の背景には、大量の広告宣伝により借り入れを勧誘するという事業形態の問題などに加えまして、消費者の不用意な借り入れ行動もございます。調査において、貸付金利に対する認識を尋ねましたところ、「貸付の金利はわかっていたが、返せると思った」が五一・五%、「貸付の金利はよくわからなかった」が三二・一%であるのに対しまして、「初めからこの金利で返すことが厳しいと理解していた」は三・二%にすぎません。

 消費者にとって借り入れは、日々の生活に必要な場合もございますが、合理的な判断に基づく確実な返済がその前提でございます。このため、金利等の制度面の解決が何よりも重要でございますが、同時に、クレジットや現金借り入れに係る消費者教育の充実が欠かせません。高い借入金利のもとで返済負担がどのように高まっていくのか、また、そうした中で、借入額が増加すると、家計の可処分所得が急速に低下し、返済を困難にしていくということを理解できるように、実践的な消費者教育を行うことが重要だと考えます。

 国民生活センターが実施いたしました実態調査の主な結果と、それに基づく課題、提言は以上のとおりでございます。

 今回の貸金業規制法等の改正は、こうした当センターの調査に基づく提言にも沿ったものでございまして、消費者の利益を擁護する観点から適切な内容だと考えます。特に、本法案の過剰貸し付けに係る規制強化とみなし弁済制度の廃止、上限金利の引き下げについては高く評価するものでございます。

 本改正案の速やかな成立、施行を強く期待いたしまして、私の意見陳述とさせていただきます。(拍手)

伊藤委員長 ありがとうございました。

 次に、塚田参考人にお願いいたします。

塚田参考人 おはようございます。東京都産業労働局金融部長の塚田祐次でございます。本日は、発言の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。

 私は、地方自治体の立場で、貸金業の登録、指導を担当するという立場で意見を申し述べさせていただきます。

 まず、東京都の状況について申し上げますと、ことしの三月末現在、都知事登録の事業者数は三千百六十七でございまして、これは、財務局登録を除く全国の都道府県知事登録業者一万三千五百三十四の約四分の一を占めております。

 東京都におきましては、平成十四年六月の都議会における所信表明におきまして、石原都知事が、業務の停止や登録の取り消しなど厳格な処分をかつてない規模で行い悪質な業者を排除したいと発言されるなど、貸金業対策の強化に取り組んでおりまして、同年八月には、違反情状が特に重い業者に対し、全国で初めての登録取り消し処分を行いました。現在では、産業労働局金融部の中に貸金業対策課を設けまして、三十七名の体制で業務を進めております。

 東京都が受けております相談や苦情の件数は、平成十四年度に二万件を超えました。これがピークでございまして、その後、平成十五年度の貸金業規制法の改正により減少し、平成十六年度には七千件を切るまで減少いたしました。一方、平成十七年度には一転して増加に転じまして一万件を超え、本年度も月平均大体一千件程度で推移をしております。

 その増加した原因を考えてみますと、これは無登録業者による融資保証金詐欺、これを私どもは貸します詐欺と呼んでおりまして、貸しますと申しますのは、大手金融機関や登録貸金業者を装って、お金を貸しますといいながら、実際に融資をせずに、逆に保証金や保険料名目でお金をだまし取る、こういう手口でございます。この増加に対応しまして、昨年十一月に、貸します詐欺被害ホットラインという電話相談窓口を開設し、全国にこのホットラインをPRしたことなどによるものと考えております。

 相談、苦情の最近の傾向について申し上げますと、二つほど例を挙げてみます。

 まず一つが、複数の貸金業者からの債務を一社に借りかえたいけれども、こういう名前の会社は大丈夫だろうかという御相談でございます。これは、よく話を聞きますと、実は多重債務者の方の場合が多く、関係の弁護士会等を紹介している次第でございます。

 また、もう一つ主なものは、契約書の見方がわからない、さらに、どうも返済金を払い過ぎているような気がするけれどもどうかと。これは、東京都内の方であれば、窓口に来て一緒に計算をしてさしあげることもできますが、対象の方が全国に広がっておりますので、それぞれの相談機関を御紹介するなどしております。

 また一方、取り消し処分の内容を見ますと、やはり高金利の事例が多く、例えば、二十万円の融資を申し込んだ男性に対しまして、一カ月当たり一万八千円の利息を二十三回、約二年近くでございます、これで支払わせ、法定利息の二・六倍に当たる四十一万四千円の利息、融資は二十万円、利息が四十一万四千円でございます、これを支払わせたという事例があります。これにつきましては、法定利息の超過分を返還するよう指導いたしますとともに、業者の登録を取り消す処分を行いました。

 また一方、東京都におきましては、本年の三月に、東京都議会が国会及び政府に対しまして、出資法及び貸金業規制法の改正に関する意見書を提出するなど、行政、議会を挙げた取り組みを行っております。

 最近の登録の状況を見ますと、若い人たちが安易に登録をするという傾向があります。この間の事例では、繁華街を一人で歩いていたらば、一緒に事業をしようと誘われた、それで、手続を、一緒に登録をしたと。起業家精神が旺盛なのは結構でございますけれども、その辺は十分事業の内容を吟味していただきたいと思います。

 貸金業の健全化のためには、法制度や事業の内容をきちんと理解しているか否かを登録の段階でチェックする必要があると考えます。そうした意味から、特に、貸金業務取扱主任者の制度の充実が有効というふうに考えております。この制度は、平成十五年度の法律改正で設けられましたが、資格取得まで登録後六カ月の猶予期間があることなどから、法令に対する知識などの検証が十分になされないままに営業が行われる例も見受けられます。

 東京都が最近行った行政処分の状況を見ますと、平成十七年度には、違反情状が特に重い者に対する取り消し処分を二百六十六件行いました。そのうちの約八二%、二百十七件が登録後三年未満のいわゆるトイチ業者でありました。昔は、トイチといいますと、十日で一割の利息ということで定説でございましたが、最近は、東京都の一回目の登録業者もトイチという名前で関係者の間では有名のようでございます。

 東京都は、かねてから、貸金業務取扱主任者制度につきまして、資格試験を実施すること、貸金業務取扱主任者の配置を貸金業の登録及び更新の条件とすることなど、制度の改正を国に要望してまいりました。このたびの改正案でこれらの要望を改正案に反映していただき、感謝申し上げる次第でございます。

 また、東京都に寄せられる相談の八割が、実は都外在住者からのものでございまして、都道府県知事登録業者と申しましても、ダイレクトメールや電話勧誘、インターネット上の広告など、業務の範囲は全国に広がっております。まさに、北は北海道、南は沖縄から相談を受けております。

 その中では、遠隔地で情報が少ないことを悪用しまして、東京都知事登録の業者の登録番号をかたる者、実在しない登録番号を使う者なども少なくありません。こうした不心得な者に対する対策についても、ぜひ実現していただきたいと思います。

 都民を初め、国民の皆様から数多くの声を聞かせていただいている行政実務に携わる者といたしまして、被害者を一人でも少なくするため、そして登録業者の健全化を速やかに進めるため、このたびの法律改正を一日も早く成立させ、また、一日も早く実施していただきたいと切に望む次第でございます。

 貸金業の健全性を確保するためには、まじめに事業を行っている事業者が事業をしやすい環境を整備する必要もございます。そういった点で、東京都といたしましては、今後とも、東京都貸金業協会、関係行政庁と十分な連携をとりながら、貸金業の適正化を進めてまいります。

 以上で私の意見陳述を終了させていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

伊藤委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。牧原秀樹君。

牧原委員 おはようございます。自由民主党の牧原秀樹でございます。

 本日は、所属していない財務金融委員会において質問の機会を与えていただいたことを大変光栄に存じます。

 この問題に同じく一生懸命取り組んできた同僚の早川、柴山、大塚、あるいは木原稔、土井亨等々の各先生がいる中、私に御質問の機会をいただいたことを改めて感謝申し上げます。(発言する者あり)先輩もいっぱいいます。

 今回の法律改正に至るまでは、長い長い過程がございました。私たち与党の間でも、さまざまな角度から法改正について徹底的な議論を行ってまいりました。自民党の中でも、金子金融調査会長、そして増原小委員長のもと、本当に春先からいろいろな議論があって、いろいろな過程を経て今回の法提出まで至ったわけでございます。

 いろいろな意見がありましたが、私たちの議論の中心的な課題、思いというのは共通でございまして、多重債務者問題というのは、これは何としても解決したい、しなければならない、このことは共通の思いであったわけでございます。

 この多重債務者問題というものにつきましては、私たち政治が今回の法提出ということでさせていただいておりますが、その背景には、本日お見えの宇都宮弁護士や、あるいは新里弁護士あるいは拝師弁護士など日弁連の各先生方、あるいは私の地元埼玉県でも、久保田弁護士など埼玉県弁護士会も一生懸命やられておりましたし、各地区の弁護士会の皆様もそうだと思います。また、本日お見えの井口さんを中心とする夜明けの会など、いわゆる被害者の会、きょう被連協の本多事務局長、お見えでございますが、この被連協の皆様、あるいは司法書士などの専門職の皆様、そして多くの被害者の皆様、こうした方々がとにかく一致団結してこの運動を続けてこられた、そして最後には運動を盛り上げてこられた、こうしたことがあったわけでございます。

 こうした長い与党の議論の経過、あるいはこの運動、とにかく長い間、最前線に立って取り組んでこられた宇都宮先生に、この経過を踏まえた思いというものを、ぜひこの場をとらえておっしゃっていただければと思います。

宇都宮参考人 今回の法案の評価につきましては先ほどお話ししたとおりですけれども、これは大変な改革だと思います。特に、金利規制につきましては、一九五四年以来、日本は、民事的規制をやっている利息制限法と、刑事的規制の出資法の二元的な規制をやってきたわけですけれども、それをほぼ一元化するという大改革をやったわけですね。それから、貸金業制度につきましても、規制の強化、これは今回の改正というのは、一九八三年の四月に初めて貸金業規制法が制定されましたけれども、それ以降の大改革だと思います。しかも、先生がおっしゃっているとおり、この改革の方向性というのは、多重債務問題の解決、それから消費者保護、こういう視点に立った解決であったと思います。

 私も、自民党の金融調査会の貸金業制度の小委員会に日弁連の代表として参加させてもらい、先生方の議論をお聞きしておりました。これは大変な激論がありました。さまざまな立場からの激論ですけれども。

 私が感動しましたのは、自民党の若手議員、一年生議員であっても、国会議員をもう何年も経験されている先生に対して堂々と意見を言って、自分たちの意見を開陳していく。まさに自由で民主的な政党だと改めて感じました。

 実は、そういうような場に、一九八三年の改正のときは私たちは立ち会うことができなかったんですね。それで、与党の中でどういう議論が行われているかわからなかったんですけれども、今回すごくそういうのを間近で経験しまして、感動もしました。

 そして、今回の改正は私たち多くの、日弁連、あるいは日弁連だけではなくて司法書士の団体である日司連や全青司、あるいは先ほど意見を言われた被害者団体、労働団体、消費者団体の願いだったわけですね。それがこういう形で実現するというのは、実は私も何かそう簡単に実現することは考えてなかったんですけれども、非常に厳しいんじゃないかと思ったんですけれども、そういう思いを受けとめていただく議員の先生方が与党の中にもたくさんいらっしゃったということで、本当に感動しております。

 そして、先ほどお話ししましたように、一番こういうことを待っていたのは、今も多重債務を抱えて苦しんでいる人じゃないかと思うんですね。そういう人のためにも今回の法案は早く成立させていただいて、また、我々の集会で大塚議員が、出席していただいて、法案というのは仏だ、形式的な法律が成立しただけではだめだ、この法案に、仏に魂を入れるのは、弁護士会、被害者団体あるいは司法書士さん、こういう人たちの活動であるということを言われたこともすごく胸に残っております。

 私たちは、この法律を本当に生きた法律、中身のある法律にするためにまた頑張っていきたいと思いますので、ぜひ先生方の御指導をよろしくお願いしたいと思っております。

牧原委員 ありがとうございました。そうした思いを私たちも受けとめていきたいと思っております。

 私たちが議論をしている中、今、確かにけんけんがくがくとした意見がたくさん出ました。その中で、私たちの意見として最も問題となったのは、今回の法改正によって、借りたい人が借りることができなくなってしまうのではないか。つまり、信用収縮というものが起きて、そしてその結果、かえって貸しはがしや貸し渋りのようなものが横行し、そしてやみ金が勢力を拡大してしまうのではないか、そうした意見が出されております。

 私たちも、そうした声には真摯に耳を傾けながら、健全な金融市場というものは考えていかなきゃいけない、そうした悩みと常に闘ってきたわけでございますが、こうした見解について、改めて今の段階でどのように考えるべきなのか、考えていらっしゃるのか。この点について、もう一度宇都宮弁護士、そして、国民生活センターの田口さんはこういう被害の現場を見られて、電話等々で受けられて相談に乗られてきた方と思いますので、そうした経験も踏まえながらおっしゃっていただければと思います。

宇都宮参考人 よく、金利を下げれば信用収縮が起こって、そしてやみ金が発生する、こういう議論がなされていますけれども、必ずしも一概にそうは言えないんじゃないかと考えております。

 御承知のように、出資法の上限金利は一九八三年から順次下げられてきております。当時は一〇九・五%だったわけです。それが、七三、五四・七五、四〇・〇〇四、それから現在の二九・二に至っているわけですけれども。

 私はこの問題に関し三十年近く取り組んできていますけれども、一番信用収縮が起こったのは、貸金業規制法が制定された翌年、一九八四年だったんじゃないかと思います。当時は、中堅の消費者金融会社、サラ金会社がばたばたと倒産して、いわゆるサラ金冬の時代と言われた時期があったんです。貸付残高も大幅に減少したわけですけれども、このときはやみ金は発生していないんですね。ただ、今回のやみ金問題というのは、二〇〇〇年前後から、一九九〇年後半から、一部暴力団が多重債務者をターゲットにしたやみ金融を資金源化していったということが大きな背景としてあるんじゃないかと思っております。

 それから、よく、金利を下げると信用リスクの高い人が借りられない、そういう人はやみ金に行くしかないというふうな議論がありますけれども、実は、今我々が相談している中には、パート、アルバイトあるいは年金生活者と言われるような低所得層の方もいらっしゃるわけですけれども、こういう方も初回は大手の消費者金融会社に借りられているわけですね。

 なぜそうなのかといいますと、御承知のように、今無人契約機でお金を貸しておりまして、本人のチェックというのは、本人の身分確認をするための健康保険証とか、あるいは運転免許証でやられております。必ずしも給与明細とか源泉徴収票の提示は求めていない。そうすると、そういう低所得層に対して融資をしないようなシステムをとるとしたら、対面審査をやるしかないんですね。ところが、今のこういう業界について無人契約機を一斉に廃止するというふうな動きは出ておりませんので、少なくとも最初の借り入れ等については、低所得層であっても、それだけ排除されるかどうか、これは疑わしいと思っています。

 むしろ、金利が下がった方が返済は可能になるわけです。実は、平成三年から平成十八年まで、全情連という消費者金融系の信用情報機関に登録されている顧客の数というのは、千百万人ぐらいから二千二百万人ぐらいに倍増しているわけですね。ところがこの間、出資法の上限金利は五四・七五%から二九・二と半分に減っているわけですけれども、利用者層はほぼ倍増している。なぜなのかというと、金利が下がる方がより所得の低い人も返済可能性が出てくるわけですので、単純に、金利を下げたら排除される、信用リスクの収縮が起こるということは言えないんじゃないかと思います。

 ただ、今の消費者金融、貸金業者というのは、どういうところで与信チェックをしているかというと、他店借り入れが多いか少ないかでチェックしているわけですね。つまり、信用リスクの高い人というのは、低所得層じゃなくて、多重債務者であるかどうか、そういうところでチェックしています。例えば、大手五社会というのは、四社以上は貸さないというような方針を決めているようです。中小はもっと件数が多くても貸しているようですけれども。

 そうすると、そういう現在多重債務を抱えている人に対して、金利を下げれば貸さなくなる業者が多くなる可能性はあります。それがやみ金にねらわれる可能性は出てくるわけです。そういう意味で、やみ金がまたふえ始める危険性はある。だけれども、考えてみたら、そういう他店借り入れの多い方、多重債務者というのは、新たな借り入れというのは返済資金の借り入れですから、健全なニーズじゃないわけですよね。そこで、むしろそういう多重債務者に対しては相談窓口を情報提供する、これが非常に重要な役割になるかと思います。

 これをぜひ、今回の中では、例えば広告なんかについても監督官庁が指導できるようになっていますから、今テレビではコマーシャルで、御利用は計画的にとか借り過ぎ注意なんて言っていますけれども、ぜひそこで、本当に返済に困った人はこういう窓口があるという情報提供をさせるような指導をお願いしたいと思いますし、それから、業者は多重債務者に貸さないというだけじゃなくて、むしろそういう人たちに貸さない方が借金は膨れ上がらないので、その段階で相談窓口を紹介するような、こういう立派な業者を育成するような指導をしていただきたいと思います。

 また、そういう多重債務者をこれ幸いとターゲットにするようなやみ金に関しては、これは犯罪者集団ですので、今度は罰則も強化されております、これを徹底的に摘発する体制を、ぜひ、官邸につくられる多重債務者対策本部、これは警察の役割が重要だと思います。私たちも今度十二月十三日にやみ金の一斉告発をやる予定ですけれども、どうもいろいろ聞いてみますと、警察庁の幹部はやる気だろうと思いますけれども、現場の警察官の意識がやはり十分じゃないんですね。先ほど本多参考人が言われましたように、相談に行ったら、借りたものは返すのは当然だとか、返さないから取り立てを受けるんだというような指導をしている警察官も多いようですので、そういうことを徹底すれば、私はやみ金は根絶できるというふうに思っております。

田口参考人 お尋ねの点につきましては、まず、多重債務問題の根源的要因は高金利とそれに伴う過剰融資体質にあると考えております。私ども国民生活センターの調査結果にもございますように、債務に関する相談者の多くは借金返済のために借金を重ねるということで、いわば雪だるま式に多重債務に陥っているという状況にございますので、その解決のためには、上限金利の引き下げと過剰融資の防止、この二点が極めて重要であり、また基本になると考えております。

 また、この上限金利の引き下げによりまして債務者の金利負担が軽減されることになりますので、宇都宮先生もおっしゃっていられましたように、借り入れを重ねる必要性ということが低下いたしますし、ひいてはやみ金に流れるケースもむしろ低下するのではないかというふうに考えております。

牧原委員 ありがとうございました。疑問が解けたような気もいたします。

 こうした問題につきましては、このようにやみ金をしっかり取り締まる等々の話とともに、先ほど宇都宮先生だったと思いますが触れられた、セーフティーネットを構築していくということもやはり必要であろうと思います。セーフティーネットは、公的セクターがやるべきもの以外にも、民間というものがあり得るだろうということがあります。その関係からいきまして、きょう田中さんの方から御報告ありましたいわゆる民間のNPOバンクみたいなもの、こうしたものが今回の法改正を契機としてこのようなセーフティーネットとなり得るものなのかどうか、その点について御見解あるいは御決意を伺いたいと思います。

田中参考人 はい、ありがとうございます。

 NPOバンクが今回の件でかかわりを持ってしまったのは、全体としてこれは非常に重要なことをやって、これに対しては私たち大賛成なんですね、それがたまたまそのすその方でひっかかってしまったというのが一点。

 そのことがあるんですけれども、その逆に、私たちは、セーフティーネットの側としては恐らく役に立ち得る存在になるだろうというふうに考えています。現実に、日本共助組合という団体が、これはクリスチャンの団体の中でのサラ金被害を救うための団体として存在しております。そしてまた、我々と仲のいい団体として、岩手信用生協というところが多重債務者の問題を解決するために動いておりますし、今また東京でも福岡でも、多重債務者の問題を解決するべくNPOバンクを立ち上げたいというグループが既に出てきております。

 私たちが思うのは、日本の中でこういった問題を解決していくときに、営利セクターだけでは無理ではないかということなんです。私たちは、やはり非営利セクターということでの解決策というのが重要になってこざるを得ないだろうというふうに考えています。もちろん公的セクターも非営利ではありますけれども、公的なところからの融資というのは残念ながら返済率がいま一つ厳しくなってしまいます。

 それを私たちはなぜ返済率が高くやってこられているかというのを言いますと、実は顔の見える関係、地域化の結果なんです。私たちは、とにかく地域で小さく、極力小さなバンクを各地域にという方向で考えています。その方向で各地域に顔の見える関係で小さなバンクができてきたら、さすがにそれを裏切ってまで返済をしないという人は減ってきます。恐らくは、私の側からすると、こういうところがカウンセリングの効果として一番大きな効果を持ち得るのではないかというふうに感じております。そういった方向にNPOバンクは伸びていきたい。

 NPOバンクというのは、別にNPOだけに融資するわけでもないし、NPOそのものでもないんです。私たち、非営利のバンクです。その目的は、別に環境に限るわけではない、各地域の中のニーズにそれぞれに成り立ち得るものです。その中の一つ、非常に重要な社会的な問題としての多重債務者問題、ここに対してのセーフティーネットとしてNPOバンクが伸びていくこと、これは私たちとしても非常に重視しているところであります。ですので、ぜひ、そのジャンルに対しての御協力、御検討をお願いしたいと思います。

 ありがとうございます。

牧原委員 ありがとうございました。民間のこうした団体に対する参入障壁というのをしゃくし定規に適用するのではなく、育てていくという視点が必要かなというふうに思います。

 きょうのこの法改正に当たりまして、私は、政治の使命というのは、当たり前のことですが、国民の生命そして幸せを確保していく、そのことにこそあると思っております。そして、今回の法改正に、私も議論に参加をさせていただきながら、そうした使命を果たしていきたい、その思いで取り組んできて、今日の法案提出というところまで至っていることについて、個人的には大変感慨深いものもございます。

 しかし、この法案提出はまだスタートです。この法案が法律になって施行されて、そしてまだ施行の猶予期間もございます、経過期間もございます、こうした過程を経ていくときに、結局多重債務者の解決にならなかったということにならないように……

伊藤委員長 申し合わせの時間が過ぎておりますので。

牧原委員 私たちだけでなく皆様の協力も必要ですので、この点をお願い申し上げ、法案の一刻も早い成立をお願い申し上げ、私からの質疑とさせていただきます。ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、石井啓一君。

石井(啓)委員 おはようございます。公明党の石井啓一でございます。

 本日は、参考人の先生方には早朝から本委員会にお越しをいただきまして、私からも心から御礼を申し上げます。

 今度、先ほど宇都宮先生からもちょっと御紹介いただきましたとおり、内閣官房に多重債務者対策本部を設置いたしまして、いろいろな対策をとっていくわけでございます。まず、本多参考人と塚田参考人、お二人にお伺いをしたいと思うのですが、この多重債務者対策本部でやみ金融対策をしっかりこれから取り組んでいくということで、これは関係省庁が協議しながら取り締まりを強化していくという方向になると思いますけれども、このやみ金融対策として何か具体的な御要望があれば、御参考としてお伺いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

本多参考人 その件について答弁したいと思います。

 やみ金融対策というのは本当に迅速に対応しないとだめなんです。というのは、きょう払え、きょう取り立てに来ているということで、もう本当に青ざめて来られています。弁護士さんや司法書士さんあるいは被害者の会が入ったとしても、ある面では効果はない。本人の方に直接取り立てする、おれはおれのやり方で取り立てするよと。あるいは、関係ないのに隣近所にまで、あるいは職場まで、あるいはその親族までめちゃくちゃに電話をかけて困らせて、やるんですね。ですから、この関係では、私は、やはり警察がしっかり取り締まる、相談に行ったらば直ちに対応してもらう、そのことがどうしても必要だと思います。

 その関係では、今、行政の中では埼玉県あるいは熊本県、長野県では、私たち被害者の会も一緒になって、行政とあるいは警察、生活センターなどの方々と一緒にやみ金対策会議をつくって、被害者の会の意見も聞きながら運動を進めていっていただいております。この関係を、私は全四十七都道府県でぜひつくっていただきたいというふうに思っております。

 どうもありがとうございます。

塚田参考人 実は、私どもも、いわゆる登録業者の検査に入るような場合に、たまたまその該当者がいないので、では、隣の人に様子を聞いてみようと思ってノックしてみると、あれ、何かここも貸金業らしいな、しかし、うちに登録ないな、では、これはやみ金じゃないか、いわゆる無登録業者じゃないかという場合が間々ございます。そういったような形で見つかる例はまれでございまして、彼らの一番の手口というのは二つございますので、この手口に関して何か手を打っていただけるとありがたいと思います。

 一つは、専ら転送電話を使いまして、どこに所在しているのかがわからないような手をよく使われます。業者の名前は違うんですけれども、実は大もとでは一つじゃないかというようなこともあれば、名前は似ているんだけれども全然経営者も違うこともあるので、その辺で具体的に、これをすれば決め手だということはなかなか、まだ私に発想はないんですが、そのあたりを一つ。

 それからもう一つが、私設の私書箱を使いまして、そこに現金を送らせる。そこから、いわゆる私的なバイク便を使ってどんどん転送されて、最後はどうも路上で受け渡しがされているんじゃないか、そのような事例も見受けられます。

 したがいまして、今の電話の転送の関係と私設の私書箱についての悪用という、本来使われるべき用途でない悪用方法を何とかうまく規制していただけると、問題解決に一歩近づくのではないかと思っております。

石井(啓)委員 大変貴重な御意見、大変ありがとうございました。

 引き続いて、宇都宮参考人と田口参考人にお伺いいたしますが、同じく、多重債務者対策本部で、カウンセリング体制の充実をしっかりやっていこうということで今後取り組ませていただきますが、これに関しまして具体的な御要望があれば、お伺いをさせていただきたいと存じます。

宇都宮参考人 まず、カウンセリング体制は、カウンセリング機関の充実もそのとおりなんですけれども、現在、多重債務者と思われている人というのは、私の推定では、全情連という消費者金融系の信用情報機関では、今、三カ月以上にわたって延滞になっている人が二百六十七万人ぐらいいらっしゃる。それから、五社以上借りている人が二百三十万人ぐらいいるということですね。そうすると、弁護士として多重債務相談に乗ってきた経験上、これらの人はほとんど多重債務者じゃないかと思うんですね。現在、恐らく、いろいろなルートで、弁護士会とか司法書士会あるいは被害者団体等に相談されている人は四十万人ぐらいじゃないかと思います。弁護士の大体の感覚では、そのうちの半分ぐらいは任意整理等で処理している。あるいは、あと半分ぐらいは破産申し立てをしているんですね。現在、ちょうど破産が二十万件ぐらいです。

 だから、多重債務者の中の大体一割とか二割ぐらいしか相談窓口に今たどり着いていないんですね。そういう残りの多重債務者に対してどうして相談窓口の情報提供をするか、これが非常にまず大きな課題になると思います。その点で、先ほどお話ししたんですけれども、何とか広報で、御利用は計画的ににかえて、返済に困ったらこういう窓口があるということを貸金業者の団体の方に広報させるようにしてもらえないか。あと、多重債務者に対しては与信が厳しくなるというのであれば、その段階で業者にそういう相談窓口の情報提供をしてもらうということをやらないと、一般的な広報だけではなかなか相談窓口にアクセスできないというような状況が引き続きあるんじゃないかと思っております。

 それから、当然、この相談窓口の充実強化というのは、一番責任を負わなきゃいけないのは弁護士会とか司法書士会といった専門家集団だと思います。現実にも、今の相談の多くは弁護士会、司法書士会、あるいは弁護士、司法書士が関与している事案だと思います。ただ、これまで以上に、その辺のネットワークを強化しなきゃいけないと同時に、片方で、今こういう相談というのは地方自治体の消費者センターなんかに集中しているんですね。

 あるいは、それだけじゃなくて、先ほどちょっと、過払い金を取り戻して社会保険料とかも払っているということですけれども、実は、社会保険料とか税金の滞納者というのは多重債務者が多いんですね。ところが、そういうところというのは一方的に取り立てをするだけで、実は、払えない人、なぜ税金とか社会保険料が払えないかというのは、多重債務者の場合は、そこの税金の窓口から多重債務者の相談窓口へ誘導するようなシステムができていないので、先ほどお話ししましたけれども、内閣に対策本部をつくるだけじゃなくて、都道府県とか市町村に多重債務の横断的なネットワーク、消費者相談、それから社会保障の窓口あるいは税金の窓口、さらにそこに警察等も入ればいいと思います。警察もやみ金を取り締まるだけじゃなくて、やみ金から借りている人は多重債務者の場合が多いですから、警察がそういう相談窓口と身近な存在じゃないと、その人は救済できないですよね。

 だから、そういう地方自治体の窓口をきっちりつくり上げる。そことこういう弁護士会、司法書士会、それから、十月からスタートした日本司法支援センター、こういうところの窓口との連携をいかに強化するかということがすごく重要なことだと思いますけれども、今はそれぞれの団体がばらばらに、それから、特に役所の場合は縦割りで、横の情報交換がなされていない。一部、埼玉県等については効果的な対応をやられているところもあるようですけれども、それをやはり全国に広げていくということが重要かと思います。

田口参考人 国民生活センターにおきましては、多重債務問題でございますとか、あるいは住宅とか自動車とかといったような問題についての相談、こういう専門度の高い問題につきましては、定期的に弁護士さんの法律相談でありますとか建築士さんの住宅相談とか、こういう形で特別の相談を行いまして、消費者からの苦情相談への対応を行っているところでございます。

 しかしながら、独立行政法人ということでございますので、予算の制約等もございまして、なかなかこれを充実していくということがしにくい状況にございますが、こういった点を何とか改善していければというふうに思っております。

 それから、各地の消費生活センターでございますが、全国で約五百カ所ほどございます。この各地のセンターにおきましても、それぞれの自治体によりまして差がございますが、月に数回、弁護士さん等そういう専門家の方々を配置して、苦情相談への対応を行っております。

 この各地の消費生活センターにつきましては、これは地方公共団体の組織でございまして、人員配置、予算配分といった点で各自治体の問題になるわけでございますが、なかなか財政事情が厳しい中で充実していくという点に、しにくい点があろうかと思います。

 ただ、自治体によっては、この多重債務問題への対応を大変熱心にやっていただいておりますセンターもございます。こういう例も参考にしながら、この深刻な多重債務問題への専門的な相談に対応できる人員なり予算配分といったような点での御配慮をいただけるとありがたいというふうに思っております。

石井(啓)委員 それでは次に、NPOによる非営利の金融ですか、この関係につきまして、吉野参考人と田中参考人、お二方にお伺いしたいと思います。

 先ほど、田中参考人の陳述で、大変有意義な金融をおやりになっているという実態を御紹介いただきましたが、今回、この非営利の金融に対して参入要件の緩和等を行う、その際のネックになると思いますのが、それを利用して潜脱行為が行われる可能性があるということだと思うんですね。本来営利の貸金業が非営利と装って、参入要件をくぐり抜けて営業を行うというようなことをいかに阻止していくかということが課題になろうかと思いますけれども、そういった点でお考えがあれば、お伺いをさせていただきたいと存じます。

吉野参考人 非営利の団体の場合、先ほどのグラミン銀行などは、やはり地域で、五人ごとに集まりましてお互いに見ながらやっていくということだと思います。それで、参入要件を下げれば下げるほどやはり好ましくない業者の方が入る可能性がありますので、私は、資本要件はある程度、五千万とか厳しくしましても、各地の地域の業者の方々とNPOが一緒になりまして一つの大きな組織、ただし実行部隊は各地域でやっていくというような解決方法もあるのではないかと思います。

田中参考人 どのようにして、我々の、非営利のふりをして営利企業が入ってしまうことを防ぐかというところについて、我々何度か考えてきているんですけれども、その中で、やはり私たちは情報を徹底的に公開するということが一つ重要なポイントだというふうに思っています。

 それと同時に、その公開した情報を確実に検証してもらうために、資格を持った、言うならば、その検証が誤ったものであったとしたらその資格を奪われかねないような、公認会計士の皆様、弁護士の方々、そういった方々に御協力いただいていますので、その方々に検証していただきながら進めていくことができたらいいというふうに考えています。

 あともう一点ですけれども、私たちはやはり、非営利貸金業協会とでも呼ぶべきものをつくっていかざるを得ないだろうというふうに今は考えております。そういう中で、結局、非営利目的というのは、水と油ぐらいかなり性質が異なってしまうので、その性質の異なったところでの業界団体をつくって、そこの中に所属するものだけが非営利であるというふうに認められるような仕組みをつくっていく。その中では自主的な基準を設けて、万が一にでも取り立て行為の違法なものがあったり、金利が我々の想定する、法的に必ず今回の法案の半分以下になりますので、それを超えるようなところがあった場合には、そこについて、私たちの団体を出ろと勧告するなりすることによって解決していきたいというふうに考えています。

 ただ、参入要件の五千万のところなんですけれども、これがやはり私たちにとってはとても厳しいポイントになっています。というのは、やはり私たち、十年繰り返していくことによって初めて信頼がかち得られるという団体なものですから、最初の時点で五千万というのがとてもハードルが高いんです。未来バンクは最初四百万でスタートして、その後どんどんどんどんふえていったという経過ではありますけれども、それが五千万を超えたのはどの時点かというふうにとらえたとすると、恐らく十年近い年月がかかったと思います。その十年目までの間が入れないとすると、とてもやりにくい。

 もう一点あるのは、私たちが希望し理想とするのは、各地域の中に自分たちでつくる非営利の枠組みなんです。ですから、従来の言い方で言えば頼母子講と呼べるような形での、近代的な法的な仕組みを持った頼母子講として、各地域の中に顔の見える金融機関をつくっていきたい、そのために非営利の枠組みで何とか設立したいという思いで考えております。

石井(啓)委員 時間がなくなってきましたので、最後の質問にいたしますけれども、今回、出資法の上限金利を二〇%に引き下げますのは、公布後おおむね三年後をめどにとしておりますけれども、一方で、直ちに引き下げたらどうかという意見もございますが、これについて、吉野参考人、宇都宮参考人、お二方に、直ちに引き下げるということについてどうお考えか、伺いたいと思います。

吉野参考人 いろいろ規制をしたり、それから制度を変えるときに、どれくらいの期間をもってそれを変えたらいいかということが私は非常に重要だと思います。特に制度の改革の場合には、やはりそこで既に働かれている業者の方々もおられますし、それによって調整、経済学では調整スピードというわけですけれども、それを直ちにやめることによるいろいろな混乱もあると思います。

 ですから、私は、三年程度という期間を設けて、それで徐々に供給の業者の方々がそれに対応していくということが現実的ではないかと思います。もちろん、理想でいえばすぐに変えるのが一番いいということはあるとは思いますけれども、現実はやはり、それぞれやっている業者の方々の調整ということがあると思いますので、私は、三年程度が妥当であると思います。

宇都宮参考人 私は、先ほどお話ししましたように、例えば過剰貸し付けの規制をやるためには、例えば年収の三分の一を超えているかどうかというのをチェックするための信用情報機関の整備とか、それに貸金業者をほとんど加入させないとチェックできないわけですね。このための準備期間は必要だと思いますけれども、この金利規制については、そのくらいの期間をかけなくともいいんじゃないかと思っております。

 例えば、今のみなし弁済規定の撤廃等については、これはもう最高裁の判例で、二〇〇四年の二月二十日に現在のような方向性が出されておりますし、それに従って過払い金請求等もやられていますので、多くの業者は既にそれを覚悟して営業展開を本当はしなきゃいけなかったし、現在、こういう金利規制の方向が打ち出されておりますので、既にクレジット会社の一部とか多くの業者は、事実上グレーゾーン金利を廃止して利息制限法以下の営業を開始しております。

 それから、特に西日本等でいろいろ問題になっている日掛け金融ですね、五四・七五まで容認されている。こういうような問題とか、それから保証料の規制、現に被害が起きていますので、こういう問題については、速やかに特例金利を廃止する、保証料の規制を行うということをやった方が、むしろ多重債務問題の発生を防ぐことができるんじゃないかと考えております。

石井(啓)委員 時間が参りましたので、以上で終わります。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、吉田泉君。

吉田(泉)委員 民主党の吉田泉です。

 参考人の皆様、きょうはありがとうございました。私の方からも、今回の貸金業法改正に関する皆さん方のお考えについて何点かお伺いをいたします。

 まず最初に、そもそも、この利息をなぜ制限する必要があるのか、利息を制限する是非について、吉野参考人にお伺いしたいと思います。

 実は、先週の第一回目の参考人質疑で、貸金業協会連合会の石井参考人の御意見としては、日本は市場経済なんだ、利息を制限したり融資の総量を規制したりということは間違っているんだという趣旨の発言がありました。確かに外国でも、イギリス等では規制をしていないということでありますが、我が日本国においては、明治以来、利息制限法というのをつくって利息を制限してまいりました。そして戦後は、出資法をつくって刑事罰も加える、こういう体制でやってきたわけでございます。

 そこで、なぜ日本で利息を制限しなければならないのかということなんですが、先ほど吉野先生のお話ですと、生活苦の方とそうじゃない方と分けるのは、平等の国日本に反するというような御趣旨の御発言があったと思うんです。私の経済学的な理解を申し上げると、リスクが違う人に対して金利も違えるのはいいんだ、ただ、その違え方が、貸す方にとってはわからない、正確な借り手の状況がわからない、したがって、ある程度のグループ化をせにゃいかぬ、そのときに、そのグループの中でより健全な借り手は、高い金利を嫌がって借りない、逆選択をしてしまう、こういう理論が経済学の中にあって、それが利息制限の学問的な根拠だ、こう理解しておるんですが、改めて先生のお考えをお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、林田委員長代理着席〕

吉野参考人 今御質問のように、イギリスとかアメリカでは、金利というのはマーケットで決まるべきである、こういう議論があると思います。

 私どもの懇談会の中では、先ほどちょっと申し上げましたけれども、どういうグループがリスクがあるか、どういうグループが安全か、こういう問題があると思います。これまでは、銀行の住宅ローンでも、それほど日本では差がありませんでした。本来であれば、安全なグループの方それから少しリスクの大きい方というのはもっと金利の差があってよかったんだと思います。ところが、やはり日本の考え方は、九割以上が同じグループの中産階級である、こういう社会でありますので、リスクの大きい方々は、恐らく貸金業の場合には生活苦の方々というグループが多くなると思います。ですから、そういう方々から高い金利を取り、それから安全な借り手からは低い金利を取る、こういう考え方はやはり日本では受け入れられないのではないか、こういう議論だったと思います。

 すべてがマーケットメカニズムというのがいいかどうかという議論に帰着するような気が私はいたします。そこでやはり、消費者金融の場合には一律で下げた方がいい、こういう議論であったと思います。

 以上です。

吉田(泉)委員 学問的な根拠については、別途またいろいろ勉強したいと思います。

 次に、金利のすき間の問題について、宇都宮参考人にお伺いします。

 今回の改正によって、出資法の上限金利が二〇%に下がる。しかし、下がっても利息制限法は一五とか一八とか二〇、こうあるわけですから、どうしてもすき間が残るわけですね。そのすき間については、金融庁は、業務改善命令とか業務停止などの行政処分によって無効化するんだ、そして利息制限法も守らせるんだ、こういう説明をしているんですが、私の疑問は、このすき間の金利が結局見過ごされないか、それから、行政が処分するといっても、どうしてもこれは後追いになりますので、おくれが生じないかというような心配をしております。

 そもそも、なぜこの二つの法律の金利を完全に合わせないのかということも含めて、先生の御意見をちょうだいします。

宇都宮参考人 私は、利息制限法の制限金利、一五、一八、二〇、それぞれに処罰規定をつけた方がすっきりするのではないかと思っております。

 ただ、どうもその点については、出資法は刑罰が科されますので、それぞれそういう規制をすると刑罰法規としてどうなのかということが、本省サイドからそういう意見が出されたと聞いております。二〇で一本化した方が刑罰としてはすっきりするということですね。ただ、実は、フランスなんかでもそういうような段階的な金利規制と処罰がありますので、規制の仕方としては、それぞれの制限金利に罰則をつけてもよかったのではないかと私は思っております。

 それと、あと、すき間金利の問題については、参入規制とかそういうことがきっちりやられれば、それから監督権限も強化されているようですから、事実上は、すき間金利で営業する業者はいなくなるんじゃないかと思っております、現在の規制でも。

吉田(泉)委員 ありがとうございました。

 同じ問題について、行政処分をする立場におられる東京都の塚田参考人、いかがでしょうか。つまり、すき間の部分の行政処分ですね。

塚田参考人 現在も共通するところはございますけれども、行政は、とにかく事実関係をつかみ取るということがまず第一の使命でございまして、そういった例が一件でも出てくれば、現在でも、処分すべきところについては、一件で厳しいじゃないかと言われることもございますけれども、実態を把握した上で対処しております。

 したがいまして、今回も、きっちり法律で決まれば、私どもとすれば、実際の利用者の声を聞くなり、我々で調査できるところは速やかに積極的に調査をするということはこちらで宣言させていただきますということで御理解をいただければ幸いでございます。

吉田(泉)委員 それでは、三つ目の問題ですが、先ほども石井委員の方からも質問が出ましたけれども、金利を引き下げる時期の問題です。これについて、被害者の会の本多参考人にお伺いしたいと思います。

 今回の改正法は、大きく四段階に分かれて施行されるというスタイルになっております。そして、この金利引き下げについては一番最後の段階で、つまり大体三年後ぐらいに施行される。なぜそんなにおくれるのかと、前の委員会の質疑でも同僚の田村議員も取り上げたんですが、なかなか釈然とした答えが返ってきませんでした。

 既に、カード会社などでは利息制限法以下での貸し付けに実際シフトしているという動きもある、そんなことを考えても、本体施行、つまり、この四つの段階のうちの二段階目で金利については引き下げて何が問題があるのかなと。むしろ、今これだけ深刻になっている多重債務問題を考えれば、なるべく早く、本体と同時に引き下げるべきだというふうに思います。

 そして、もしこのまま三年引き下げないんだということが続くと、一体この三年でどういう事態が起こるのか、本多参考人の立場からお話を聞かせてください。

本多参考人 お答えさせていただきます。

 金利引き下げは直ちにやる、これが当たり前だというふうに僕は思います。

 というのは、利息制限法を超えて払う必要がない、これはもう司法の世界では確定していますね。それで、各サラ金業者も、過去五年分の利息制限法を超えて受け取っている部分の過払い金返還請求に対応するんだということで、一千億とか二千億とかという単位のお金を引き当てしているんです。ですから、過払い金返してください、私の過払い金返してと窓口に行けば、本来返すべきものだと僕は思っている。ところが、弁護士さんや司法書士さんが入って司法手続でやらないとなかなか取れないというのは、これがおかしいんだと僕は思いますし、少なくとも貸金業者はそういう状態なんですから、引き当てているんですからね。これはいただかないといけないと僕は思う。

 同時に、三年を待たずに、もう利息制限法で貸し付けをするべきじゃないかというふうに、自主的に。ですから、何でそんな払わなくていいお金を三年も先に実施するのは、これはちょっとおかしいというふうに僕は思っています。

 それで、法律がどうなるのかわからないんですが、仮に一年なり何年なり先になったとしても、私たち被害者は一切払わないよ、利息制限法を超えては払わない、したがって、過払い金返還請求、これをどしどしやる、利息制限法を超えてはもう一切払いませんという運動を、世論を盛り上げてやる。そのことによって、実質的には金利引き下げが実現する形にはなるというふうに思いますので、僕はこんな、三年も一年もというのは全くおかしい理屈だなと。

 確かに、いろいろな信用情報の関係だとか、必要な経過措置というのはあるんだと思いますけれども、金利引き下げはもう直ちに実施してほしいというふうに、それが当たり前じゃないかというふうに思っています。

    〔林田委員長代理退席、委員長着席〕

吉田(泉)委員 ありがとうございました。

 続いて、自動契約機の問題について、本多参考人そして塚田参考人にお伺いします。

 先日、当委員会で都内の自動契約機を視察に行ってまいりました。きょうお見えの東京都の担当課長さんもお付き添いいただきまして、ありがとうございました。

 行った先の銀行の担当の方のお話では、今まで実際に、有人対面式といいますか、人が審査をして相談に乗って条件を決めるというよりも、自動契約機で自動的にびしびしと審査をした方が実は判断が的確だと思っている、それから設置費用も一台五百万円程度で経済的だ、また、借り手にとっても非常に手軽であって、特に若い人なんか気おくれがないということもあって、借り手、貸し手両方にとってこの自動契約機というのはいいんだ、大変評価しているという話を担当者からは聞きました。

 ただ一方で、余り便利過ぎて、特に若い人たちが気軽に、不用意に借り過ぎてしまうという弊害も常識論として指摘されているところでございます。全国では今七千台以上の自動契約機がもう実際に存在しているわけですけれども、最初の契約ぐらいは人間同士でやるべきではないかという意見もあります。

 それから、銀行の支店は厳しく規制されているわけですよね。許可制になっている。しかし、この貸金業の自動契約機、実質支店と同じことになるわけですが、これは全く野放し状態で、自由に設置できる。ここもバランスが非常に悪いというふうに思うんですが、この自動契約機の問題について、お二方から御意見をちょうだいします。

本多参考人 お答えいたします。

 自動契約機、ATMの関係ですよね。これはまさに、過剰融資を助長する、あるいは借金漬けを助長するものになっていやしないかというふうに思います。

 今、ATMがコンビニなどにもついていますから、本当に二十四時間借りられちゃう、あるいは返済もできるという、便利といえば便利ですけれども、僕は、借りるには、やはり何年払いでどのくらい払っていけるのかというようなことを自分なりにきちんとやっていけるようなシステムじゃないといけないと思うんです。あの契約機というのは、実際自分の預金をおろす感覚なんですよね。何かあたかも、借金なのに自分の預金からおろすような感覚さえ持たせてしまうものなんです。

 これはやはり、借り入れに当たってはきちっと対面して、それは便利さはないかもしれませんけれども、そういうことによることで過剰融資や借金漬けを防ぐことにつながっていくというふうに思いますし、そこは規制していくべきじゃないかというふうに思っています。

塚田参考人 実は、東京都の登録業者、先ほど三千幾つと申し上げましたけれども、今先生御指摘の点は、登録業者といっても小ぢんまりしているので、自動契約機を使っている業者が本当にうちの範囲ではいるのかなというくらい、日ごろでは話題になっていないんですね。いわゆる全国的な展開の方ではないかと思います。

 ただ、一般に、借り受け人の傾向というか、いろいろ電話で御相談を受けたところを聞きますと、やはり人の顔を見ずに、できれば家の者にも内緒で借りたいというぐらいの方が多いものですから、私も自動契約機を見たことがございますが、要は、対面はしないけれども審査は普通の窓口どおりやりますよということもたしか書いてございましたので、その審査をどれだけ的確にやるかというのが決め手かなと。

 あとは借りる方の意識の問題もあるので、とにかく、本当は対面の方がいいんですよというような雰囲気をつくっていくぐらいの働きかけも逆に必要ではないかというふうに感じている次第でございます。

吉田(泉)委員 ありがとうございました。

 今度、五番目になりますが、量的規制の問題について吉野参考人と宇都宮参考人にお伺いしたいと思います。

 総借入残高が年収の三分の一を超えると、これは原則禁止だ、返済能力を超えている、こういう規定が入ったわけであります。しかし、これはあくまで貸金業の範囲であって、知人、友人から借りている分とか銀行ローンで借りている分とか、それについては考慮されていないということですよね。

 先ほど申し上げた自動貸付機による審査の項目をこの間現地で聞いてきたんですが、もちろん年収というのはあるんですが、それ以外に、学歴から始まって、入社年月、それから持ち家かどうか、勤め先はどこか、家族の数はどうだ、そして他社からの借入金はどうだと、さまざまな項目で自動契約機はチェックしているわけですよね。

 それを考えると、この貸金業だけの借入金を、しかも年収だけと比べて三分の一云々するという今回の規制の考え方は、ちょっと私は、部分的過ぎて本当にこれは現実的な意味があるのかなという疑問を持っているところでございます。

 この点について御意見をちょうだいします。

吉野参考人 借り入れの年収との関係なんですけれども、実は、消費者のシミュレーションをやってみますと、借り入れの残高と所得の比率、何年ぐらい借り入れるか、それから金利がどれくらいであるか、その方の所得の増加率、伸び率ですね、これがどれくらいであるか、こういうものを全部合わせた形でシミュレーションの結果は出てまいります。

 そういたしますと、大体、三分の一以上を超えられますとなかなか返済できなくなりますし、それから、二年以上になりますとまた返済できなくなります。そういう意味では、私は、三分の一というのは、現在のところはそれは非常にいいことだと思いまして、ただそれは、信用情報の機関の、お互いの信用情報の交換が充実し、それから銀行といわゆる消費者金融の情報も全部交換ができる、そういうふうになりましたときには、先生のようなお考えもあると思いますが、現実的には、やはりまず信用情報に加盟していただいて、貸金業から始めるということが重要じゃないかと思います。

 それから、一番最初のときの、逆選択の金利との関係だけをちょっと御説明させていただきますが、逆選択と申しますのは、金利が高くなればなるほど、本来であれば貸し手の方は非常に供給をふやす、貸したいというわけですけれども、リスクが大きくなりますと、やはり貸し手の方々が減ってきてしまう。つまり、供給曲線が普通は右上がりなんですけれども、あるところを超えますと供給が減ってきてしまう。これがまさに逆選択だと思います。

 そうであれば、金利を下げることによって供給の量をふやす、こういう考え方があるというので、金利を引き下げるということになったと思います。

 ただ、申し上げましたように、借り入れの比率と所得比率、どれくらいの期間で返すか、金利それから所得の伸び率、そういうものを全部勘案しませんと、全体としての返済の能力というのは計算できないということでございます。

宇都宮参考人 過剰融資の規制につきましては、現行法でも、貸金業規制法十三条で支払い能力を超えた貸し付けは禁止されています。ただ、問題なのは、これに違反しても罰則も行政処分の対象にもならなかったということなんですね。

 それから、この貸金業規制法十三条に基づいて、金融庁がガイドラインを出しています。これは、無担保融資の場合、簡易な融資の場合は、一社当たり五十万か本人の年収の一割以下ということになっています。ただ、これは一業者についてのガイドラインですので、一人五十万ずつ十社借りたら五百万になるわけですね。こういうような問題もありまして、先ほどお話ししましたように、今の全情連、消費者金融系の信用情報機関では、五社以上借りている人が二百三十万人もいるということが大きな多重債務問題の要因になっているわけです。

 それで今回は、年収の三分の一の過剰貸し付けを規制して、しかもそれに違反すると行政処分の対象にもなっていますので、これまでよりかは過剰貸し付けについては規制は強化された、大きな前進だと思っています。

 ただ、先生がおっしゃるとおり、現在の多重債務者は、貸し金債務だけではなくて、クレジット債務も抱えておれば銀行債務もあるわけです。そういうところが把握できなければ、十分な、完全な過剰与信規制は行われないわけですね。だけれども、では今すぐそれができるかというと、信用情報機関の統合等も行われていませんので、まずこういう形でスタートするしかないのかなと思っております。

 ただ、先ほど意見でも申し上げましたとおり、クレジット債務、これは来年、割賦販売法の改正が予定されているようですから、そういうところの改正とか、あるいはさらには銀行債務等も含めて、将来的にはトータルな過剰融資規制が行われるべきだと考えております。

吉田(泉)委員 もう最後の質問になると思いますが、救済法について田口参考人に伺います。

 先ほどの御意見で、利息制限法を知らないという借り手が九〇%いる。この人たちに知らせないままにしておいていいのかという問題があると思うんですよね。何とか知らせて救済したいというふうに思うんですが、その知らせる主体はどこがいいのか。国民生活センターなどがいいのか、弁護士会のようなところがいいのか、なかなか行政がというわけにはいかないかなと思うんですが、その辺の御意見を下さい。

田口参考人 国民生活センターや各地の消費生活センターではあらゆる消費生活に関する問題を受け付けておりますので、この多重債務の問題のようにかなり専門的な問題というものについては、最終的にはその専門的な機関で対応していただくということになろうかと思いますが、第一次的には、身近な消費生活センターにまず言っていただく。その上で、その相談者の方々の個別の事情に応じて適切な機関に振り分けられていくということが有効ではないか。

 そういう窓口機能みたいなものも、消費生活センターなり国民生活センターで果たせていければいいのかなというふうに思っております。

吉田(泉)委員 ありがとうございました。

 終わります。

伊藤委員長 次に、田村謙治君。

田村(謙)委員 民主党の田村謙治でございます。

 本日は、参考人の皆様、お忙しいところお越しをいただきましてまことにありがとうございます。心よりお礼を申し上げます。

 まず最初に、NPOバンクのことについてお伺いをさせていただきたいというふうに思います。

 今回の法改正によりまして金利を引き下げるということで、貸し渋り、貸しはがしを初めとして与信が収縮をする、要は、借りられなくなる個人や事業者が出てくるという、どの程度の影響かというのはなかなかはかりがたいという議論になっているわけであります。

 例えば、吉野先生でいらっしゃいますと、この論文の方にも、本来は、病気ですとか失業とか、そういった生活苦の人たちについては、消費者金融に頼るのではなくて、むしろ生活扶助といったような制度をより拡充して、そちらを利用すべきだということを先生もおっしゃっておられますし、そういう方向というのは私も正しいというふうに考えております。

 ただ、確かに、経過措置として三年後といいましても、先ほどからお話がありますように、いわゆる与信収縮というのは既に始まっていて、なかなか消費者金融の方から借りられなくなっている消費者というのも出てきているというのが現実でありますし、これからその経過期間の三年間においても、やはりより一層ふえていくんだろうと。ただ、それは程度はちょっとわからない部分がありますけれども。

 そういった中で、吉野先生がおっしゃるような生活扶助ですとか、そういう公的な地方自治体の貸付制度ですとか、そういった制度は拡充をしていくのが望ましいとは思いますが、現状ではまだまだ不十分な中で、要はどの制度も利用できないという人が出てきてしまう可能性は多々あるというふうに私は考えております。そういった中で、先ほど来話がありますように、財産要件を引き上げることによってNPOバンクというのをおよそ締め出してしまうというのは、私は大変よくないのではないかなと。

 やはりこの経過措置においても、まだまださまざまな公的制度が不十分な中で、NPOバンクの果たす役割というのはより一層大きくなるのではないかなと思うんですけれども、その点につきまして、吉野参考人と田中参考人に御意見をお伺いしたいと思います。

吉野参考人 御指摘のように、これから金利が下げられますと、やはり生活苦の方が、借りられなくなる方々が少しふえてくると思います。ですから、私は最初に申し上げましたけれども、それに対しては、公的扶助なりあるいは市町村の窓口を通じてまず充実するということが第一前提だと思います。

 それから、おっしゃいますように、新しい業者の方、いい業者がこの業界に入ってこられるということも、供給をふやすという意味ではもう一つ重要だと思います。ただ、そのときに、どういう要件で入っていただくかということがもう一つの重要なところでありまして、一番最初に申し上げましたけれども、非常に暴力的な取り立てをする、こういう業者の方が入っては困るわけですから、そういう意味では、参入要件をどのようにするかということはもう一つ重要だと思います。

 おっしゃいますように、五千万円が本当にいい数字かどうかということはあると思いますけれども、私は、NPOバンクの場合には、地域でやっていただくということには非常に重要な意義があると思います。ただ、そこでも、やはり非常に弱いNPOバンクさんが入ってこられますと、あるいは悪い業者のNPOバンクさんが入ってこられると悪いということがありますので、私の提案としましては、NPOバンクの方々が、全体、全国ネットとしては一つの組織になる、しかし各地域では一生懸命それぞれの地域に合った与信をしていただく、こういうことが望ましいと思います。

 グラミンバンクも、各地域で五人ずつ借り手が組んで、その中でお互いに見ながら返していくということでありますので、地域性と、それから全国のネットで、ある程度の資本金の確保ということが望ましいような気がいたします。

田中参考人 今の御質問の件なんですけれども、私たちが融資をしている中で、私たちのようなことを本来であれば公的なセクターがやればいい、それは基本的にあるべきだと思いますし、それは必要なことだと思っています。

 ところが、公的セクターと私どもとやはり違いが出てきます。どこが違いが出るかといいますと、公的セクターの融資というのは、よくよく調べてみると、実は焦げつきが三割近くあったりします。それはなぜかというと、私たちの考えでは、信頼の年輪というものが世の中にはあるんだというふうに考えているんです。

 それは何かといいますと、私たちが、例えばすごく大きな借金を抱えてしまった。そのときに、たまたま宝くじに当たってお金が入った。そのときに、だれから順に返すかというのは優先順位がある。一番最初に、最も信じていてほしい人に返す。そしてその次に、今後もおつき合いをしてほしい、地域の例えば信用金庫とかに返す。その次に、今後おつき合いをしてほしい銀行とかに返す。それでも余ったら自治体に返すというような順序になっているのではないか。

 だから、お金に関しては信頼の年輪というものがあるので、その信頼の年輪をもう一度つくっていくことによって、社会を、おれは一人だから借金しても構わないというような考えではなく、コミュニティーの中に戻していくことによって解決していくという方法が重要なんではないかというふうに考えています。

 そして、今の参入規制の問題なんですけれども、今の提案、大変いい提案だとは思ったんですけれども、ただ一方で、私たちがやっていることというのは、例えば金利三%固定ですので、一億円を一年間丸々融資したとしても、三百万円しか入りません。ですので、その中から人件費を出すことすら困難な団体。ですから、我々人件費も取らずにやるという方針でやってきているんです。

 その規制によって金利が上がるようなことが起こってしまったら困りますし、そしてまた、こういうふうなやり方というのは、ほかにまねができないことですので、営利セクターでは絶対まねができないことですので、そこの部分での絞りという形で解決していただくことができたとしたら、その方がありがたいというふうに考えております。

田村(謙)委員 ありがとうございました。

 もう一度田中参考人にお伺いしたいんですけれども、そもそも今回のこの法案における最低純資産要件、五千万というのはまだ法律には書いていないわけですけれども、経過措置を経て、徐々に五千万まで引き上げるという方針だという話のようでありますが、そうした際に、今活動していらっしゃるNPOバンクさんは、まさに存続も含めて、どの程度影響を受けるというふうにお考えになっていらっしゃいますか。

田中参考人 現在、全国に、私どものグループというか、非営利のNPOバンクでは九つありますけれども、今の時点で存続可能なのは三つだと思います。ほかの六つについては、その五千万という要件に達しないという問題があります。

 それと、それ以上に実はもう一つ重要なのが、いろいろな手間によって、規制によってかかってしまう費用の方が大きくなり過ぎてしまって、金利を上げざるを得なくなってしまうということが非常に問題になってきます。金利を上げてしまったとしたら、私たちの理想とするやりたいと思うことというのが実現できなくなってしまうので、ほかにまねができっこない非営利の枠組みに関しては、極力そのまま余分な費用をかけさせずに存続させてほしい。そういう方向であれば、九つともが、今後もどんどんふえていく形で各地域に根を張っていくことができるのだがというふうに考えております。

田村(謙)委員 どうもありがとうございました。やはり財産要件、資産要件を上げていくと、なかなか、現在活動しているNPOバンクも非常に活動が難しくなるところが多いと。

 確かに、吉野先生おっしゃるように、全国各地でNPOバンクがよりふえて、それが全国組織のような形になれば理想だとは思いますけれども、やはりまだまだNPOバンクが、活動初期と言うとちょっと逆に失礼になるのかもしれませんけれども、各地域に根差した団体ではなくて、今、ある意味成長というかふえつつある段階で、水を差すというか、ある意味でシャットアウトしてしまうというような状況になってしまうと、全国の統一的な組織で五千万をクリアするというのは、もちろん理想としてはわかりますが、まだ現状としてそこまで至ってはいないのではないかというのは、先ほど田中参考人からもお話があったところでも私は思うところでございます。

 そういった中で、我々民主党の方は、明確な方針というのは打ち出してはおりませんけれども、やはりNPOバンクを何らかの適用除外にできないかということを考えておりまして、例えば、非営利、さらに低金利で融資をしている、その低金利も非常に低い金利で融資をしているといったような条件をかければ、その上で、先ほど田中参考人からもお話がありましたように自主規制もしっかりとしている、融資先を公開して、さらに公認会計士等のチェックがあって、また全国の連絡会もやっている、そういったような自主規制をしっかりとやっているようなところであれば適用除外にするというような考え方もあると思うんですけれども、それについては吉野参考人はいかがお考えになりますか。

吉野参考人 やはり一番重要なことは、いい業者にこの業界に入っていただく、いいNPOに入っていただくということが大前提だと思います。ですから、先生がおっしゃいますように、そういう要件をクリアしたNPOの方々が、資本金は低いわけですけれども、いい業者であるかどうかということを的確に把握するということがないと、やはりせっかくのいい活動が悪い影響を与えてしまうように思います。

 ですから、私は、やはり、資本金である程度大丈夫だというのを見ることは一つかもしれませんし、そこまで行く間の段階では徐々に引き上げていくということもあると思いますけれども、私の理想は、全国のネットでNPOができていただいて、そこで大きな組織としてはクリアするというのが本来としては一番いいと思います。

 ただ、先生のおっしゃるようなことも非常に理解できると思います。

田村(謙)委員 政府案側、ある意味で政府サイドで参考人はお答えになっていると思いますので、余りはっきりとおっしゃれないんだと思いますけれども、今の吉野参考人のお答えの中に、そういう経過措置ですとか、あるいは、確かにこのNPOバンクというのはNPOでは実際ないわけですので、NPO制度自体の方で手当てをする制度というのもあり得ると思いますけれども、とにかくNPOバンクというものがしっかりと、吉野参考人のおっしゃるようないい活動をしているという審査を経た上で認められるのであれば、五千万という要件を適用除外するやり方はあるのではないかということを参考人はおっしゃっていると、我々民主党としては理解をさせていただきたいというふうに考えます。

 若干時間が残っておりますので、ちょっとこれは事前にお知らせをしていなかったんですが、もしその場でお答えできるようでしたら吉野参考人にお伺いをしたいんですけれども。

 免許制について。我々民主党も、やはりとにかく参入規制を厳しくするということで、免許制というものを提唱しているんですが、実際フランスではやっているというのは先生の論文にも書いてあって、日本で免許制を導入してはいけないというふうには先生の論文でも読めないんですけれども、そこは、日本においても免許制を導入するというのは、参入の規制強化としてよりいいのではないかと民主党としては考えているんですが、参考人はその点についてはいかがですか。

吉野参考人 やはり参入規制のところは、いい業者に入っていただくということと、こういう消費者金融とか貸金業の業界が銀行と同じかどうかということがもう一点あると思います。

 銀行は免許制によりましていろいろな規制を受けながらやっていく、貸金業の方は、もう少しそこよりは規制は緩いわけですけれども、貸し出しをして、銀行から借りられないお客さんたちにお金を貸していく。もしそういうのであれば、参入のところは現在のような登録制からさまざまな形での参入の障壁を設け、いい業者が入るということは必要だと思いますが、もし免許制にしてしまいますと全く銀行と同じである、こういうことになると思います。そうしますと、またもとに戻りまして、では、そういう銀行が少しリスクのある方々にお金を貸せるんだろうかと。先ほど先生のおっしゃいましたように、NPOもそういうところに入ってきてほしいというふうになりますと、銀行と同じような免許制ですと、そういう業者の方々も入ってこられないような気がいたします。

 ですから、やはり私は、一番のここの重要なところは、参入要件は銀行よりは少し弱くていい、しかし、いい業者だけが入ってきてください、そして情報をはっきりさせ、それから中の事業活動に透明性を設ける、それによって外からの監視ができる、そういういい業界になっていただくのが一番いいと思いまして、そういう方向での法律の改正というのを望んでおります。

田村(謙)委員 ありがとうございました。もう時間が参りましたので、質問はこれで終わりにいたしますけれども、重ねて申し上げますが、NPOバンクについて何らかの、やはりいい活動をしているいい業者が入ってこられるような制度にするためには、一律でない部分が、そういう適用除外的な部分があってもいいのではないかというお話をいただいたと理解して、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

伊藤委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 民主党の寺田学と申します。

 まず、きょう、本当に御多忙のところ、このような質疑の機会に足を運んでいただきましたことを心より感謝申し上げたいと思います。

 いただいた時間で、カウンセリングのことについて御質問したいと思っておりますが、今、同僚の田村委員の方から質疑されていた中の、いわゆるNPOバンクのよさを何とかして存続させていきたい、そういうような活動をどうにかしてこれからも、法改正後も残したいという話がありましたので、NPOバンクの考え方、役割というものの重要性は重々承知しておりますので、それを何とかして生き残らせることができないかどうかということを吉野参考人の方に追加して質問したいと思います。

 先ほど御答弁の中で、ある種、悪い業者が入ってきてはよくないんだ、よい業者をある程度選別するために、言葉そのものではないかもしれませんけれども、資本金の一つの基準を出して、今回は五千万ということですが、やって、よい業者を選別するんだという話がありました。それは一つのやり方かなと思うんですが、少しうがった考え方をすると、それは単なる資本金が五千万以上あるだけの話であって、よい業者であろうが悪い業者であろうが生き残ることはできると思うんですよね。

 ですので、我が党が常々話していることではあるんですが、活動の内容に関して定義をして、よい業者である悪い業者であるという考え方の選別もできると思うんです。資本金だけで一線を引くのではなくて、活動内容ということで一つ定義をつくって適用除外という方法もあると思うんですが、そのような考え方はやはり難しいとお考えになられているんですか。いかがですか、どうですか。

    〔委員長退席、林田委員長代理着席〕

吉野参考人 いろいろな金融の業界でも、やはり資本金がある程度あることが、その金融業の健全性ということにはあると思います。例えばBIS規制というのは、まさに自己資本比率規制でありまして、各銀行がある程度の自己資本を持つことによって、不良債権に対しても十分に対応できるということがあると思います。

 ですから、そういう意味では、貸金業の新しい法律でも、例えば何年かして五千万というのは、自己資本を充実することによって、それぞれの貸金業界の経営が安定するという意味もあると思います。それからやはり、新しい業者がこういう業界のところに入ってきてくださる、それもいい業者が入ってくるという意味では、NPOの方々が入ってきてくださってそこでいいお仕事をするということもぜひ重要だと思いますが、ただ、私の理想としては、全国ネットでつくっていただいて、ある程度の資本金を確保していただくということが理想ではないかと思います。

寺田(学)委員 まさしくBIS規制の話も出されましたけれども、資本金で一つの線引きをする、振り分けをするというのも一つのやり方だと思います。

 私自身、資本金で分けることが不適切だということを申し上げたいのではなくて、それ以外の方法で何かないか、それ以外の考え方で、本当に資本金が少なくともよい業者であると認定して、地域活動のために、まさしく国民の生活のために活動される方を何とか残していく方法はないのかという御質問をしたいと思っておりました。

 資本金で分けることの正当性はもう重々承知いたしましたので、それ以外の方法で、何かよい業者を残していくようなやり方というのは考えられないのかどうか、もう少し教えていただければ。

吉野参考人 いろいろ金融業を見ていく場合にはあると思いますが、自己資本比率が一つだと思いますし、それから、その中の経営状況とか業務状況とか、そういうものを見ていくこともできると思います。

 やはり一番重要なことは、今いろいろなNPOがありますが、NPOでも非常にいいNPOと、それからいろいろな、ほかの分野でも悪いNPOもあるというふうに言われておりまして、ですから、もし条件を緩和した場合にそこをいかにスクリーニングをするかということがもう一つ重要だと思います。

 ですから、一つのやり方としては、資本金ということが、まさにこの金融業にとっては、これまで世界的な動きとしても新しいBIS規制も出てきておりまして、リスクに応じた資本金が充実できるということは、大きな動きの中ではやはり一つの重要な指標ではないかと思います。

 ただ、それ以外に、おっしゃいますようにさまざまな信用情報の交流によって、それによって多重債務者にならないようにするというようなさまざまな方策もあるとは思います。

 以上です。

寺田(学)委員 本当にやろうとしたカウンセリングの話に移りたいと思うんですが、NPOのスクリーニングの話もされましたけれども、低金利で貸しているとか、そもそも貸し付ける相手の活動に対してどのようなところに着眼しているとか、さまざまなことを、まさしく言われるとおり、NPOをスクリーニングをかけてやることによって選別することはできると思うので、一律に五千万円以上じゃなきゃだめだということだけでばっさりとやってしまうことは、選別にはなるかもしれませんけれども、それはよい業者、よい活動をしている人たちの機会を大きく失うことも甘受しなきゃいけないんだという発想に立ってしまうと思いますので、そこら辺は柔軟にいろいろ考えることが必要であろうと思います。

 本題のカウンセリングの方に入りたいと思います。

 今回の貸金業法の改正に関しては、やはり金利を下げるということが主眼となりました。まさしくそこが一番大事だと思うんですが、結局のところ、幾ら金利が下げられたとしても、自分の返済能力以上の借り入れをしてしまった、または業者が以上のものを貸し出してしまったということがある限り、多重債務者の救済ということにはつながらないんだと思います。ですので、本当にるる言われていることですけれども、事前のカウンセリングというものが非常に大事で、その人間自身がどのような返済能力があるかどうかをしっかりとカウンセリングし、適正な貸付額、借入額にとどめるということにやはり注力していかなければいけないと思います。

 吉野参考人の方にまず基本的なことをお伺いしたいんですが、この事前カウンセリング、事後に、多重債務に陥ってそれをどう処理するかということは、ある程度弁護士さんの方を含めてそれなりの制度が、まだ周知徹底されていないとはいえあると思うんですが、事前のカウンセリングというのは非常に大事だと思います。その点について、参考人はどのようにお考えになられていますか。

    〔林田委員長代理退席、委員長着席〕

吉野参考人 私は、借りたい、こういう方々がまず安心して中立的に相談できる場所、こういうものをやはりいろいろ確保することが必要だと思います。

 そのときには、各市町村あるいは都道府県で窓口を通じてやっている部分、それからもう少し、最近ではテレビ電話なりインターネットでの、画面を見ながらいろいろカウンセリングができますので、全国ネットで、非常にカウンセリングにたけた地域あるいはたけた方々が、例えば沖縄の方が東京との間でテレビ電話を通じながらカウンセリングをできるというようなことで、全国ネットのカウンセリングというのをぜひ充実していただきたいと思います。それから、借りたくなったときに、ではどういうところに相談すればいいんだろうか、これをやはり周知徹底するということが重要だと思います。

 ですから、事前カウンセリング、それからどこでカウンセリングが受けられるか、それからカウンセリングの質、非常に高い質のカウンセリングが全国を通じてできるようにする、こういう制度が必要ではないかと思います。

 以上です。

寺田(学)委員 今回、そういう要請を受けまして、法案の方では、貸金業者は資金需要者等の利益の保護のために必要と認められる場合には、資金需要者等に対してカウンセリング機関を紹介するように努めなければならないという話が再掲という形で載っておりますけれども、今お話しされた中でもありましたけれども、どこに相談するのか、カウンセリングをどこで受けるのかということは非常に重要だと思います。

 今回の法案においては、そのカウンセリングの一義的な役割を貸金業者がつくる貸金業協会というものにゆだねている部分が法案を見ると読み取れるんですが、今、吉野参考人が言われた、どこに相談するのかということにおいて、貸金業者がつくる貸金業協会というものがふさわしいと思われているのかどうか、その点についてお話しいただければと思います。

吉野参考人 まず、消費者の方が借りに行くときは貸金業者に借りに行くわけですから、その貸金業者のところにすべてのカウンセリングの情報が整っている、こういうことが重要だと思います。そこが業者寄りのカウンセリングをするというのではなく、中立的なカウンセリングの情報もそこに流す。そして、業界のまさに健全性のためには、そういういいカウンセリングに我々は紹介するんだ、そして、利用された方々が困ったときには、そういうカウンセリングに行けば本当に中立的なカウンセリングが受けられる、こういう情報をつくることが重要だと思います。

 やはり消費者の方々は、一番最初に行くのは貸金業の方ですから、そこに情報提供の場をしっかり設ける。その情報提供の場が、貸金業者寄りではなく、中立的に借り手の方々を考えたカウンセリング協会を紹介する、こういう制度にしていくことが大切だと私は思います。

寺田(学)委員 田口参考人の方にお伺いしたいんですが、きょう提出されました資料の中に、調査の結果のポイントと課題と提言、「借入れに際しての勧誘方法等」「どのように勧誘されたか」という項目がありました。その中で、複数回答可ということですけれども、「貸付可能金額の増額を提案された」六一・七%、「必要な金額以上の借入れを勧められた」三八・六%。

 いわば、多重債務に陥る本当に一番目と二番目の要因が、業者側がその方の許容額、払える限度より上を勧めたことによって、もちろん借りる側にとっても意識が低かったこともあるんでしょうけれども、多重債務に陥ってしまったということを考えれば、こういうところから読み取れるのはやはり、先ほど吉野参考人の方が、中立的なカウンセリングを貸金業界が行わなければいけないんだというお話をされましたけれども、この結果一つとってみても、貸金業界というものが、やはり商売でありますから、その方の資金能力、返済能力を超えて貸し付けを行ってしまうことが往々にしてあり得るんじゃないかな。現に今、そういうことが原因となって多重債務の問題が引き起こっているということが国民生活センターから言われているわけですよね。

 こういうような現状がありつつも、貸金業界が中立的なカウンセリングを行えるんだと言えるのかどうかというのは、私は非常に難しい問題があると思いますので、我が党としては、第三者機関をつくってそこにカウンセリングを本当に一元的にお願いしていくという方法は一考あるんじゃないのということを提案申し上げています。

 今、消費生活センターから出されているこの資料、本当に貸付業者の方が必要以上の額を貸し付けようとしたということを踏まえた上で、中立的なカウンセリングが貸金業界には可能であるとお考えになられるかどうか、吉野参考人に教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。

吉野参考人 私は、一番重要なことは、借り入れをされた方がどこに相談したらいいだろうかということがまだ今までわからなかったということだと思います。

 そういう意味では、貸金業の方が、まずこういうところに御相談くださいということをお知らせする、こういうことは必要だと思いますし、それから、さらに必要なことは、そこのカウンセリングの協会から紹介されたところが中立的であるということを担保することをこれからは考えればいいと思います。ですから、やはり借り手の方はどうしても貸金業の方に行くわけですから、そこにある、こういうところに相談に行きなさいというところが貸金業の立場だけのところであれば、それは本来のカウンセリングではないと思います。

 ですから、おっしゃいますように、そこに行けば中立的なところのカウンセリングの情報もわかる、そして、それがだんだんに皆さんにわかってきて、あそこのカウンセリング協会は本当に利用者の立場に立ってやってくれるんだ、こういうことがわかってくると思いますので、おのずとそこのところでのスクリーニングというのはできてくると思います。

 やはり重要なことは、では、どこに行ったらいいかということを利用者の方が本当にわからないといけないということではないかと思います。

 以上です。

寺田(学)委員 最後に力説された部分は、周知徹底をしなきゃいけないんだ、カウンセリングの行き先をちゃんと教えなきゃいけないんだということは、別にそのカウンセリングの主体がどこであるかということとは全く関係ない話だと思っています。どのカウンセリングの主体であろうとも、まさしく周知徹底すればいい話だと思うので。中で言われていた、中立であることを担保できるかどうかが問題なんだということは、非常に大事な話だと思います。

 その点に関して、中立であり続けることは、結局、組成される、その構成である貸金業者の方々が中立なカウンセリングを行うということに難しさがあるのではないか。別にそれは主観的なことで言っているのではなくて、今多重債務で苦しんでいる方々の原因を調べてみると、やはり業者側が過剰に貸し付ける嫌いがあった。もちろん、それは今新しく団体を設立してやるんだから中立になるんだと言いつつも、やはりカウンセリングを受ける側が、金を貸す側の方々でつくった団体から中立なカウンセリングを受けているという気持ちになるかどうか、私は非常に微妙な問題があると思います。

 この点に関して、本多参考人の方からも、どのようなカウンセリングの主体がいいのか、貸金業者がつくっている主体がいいのか、はたまた第三者機関がいいのか、どのようにお考えになられているか、お話しいただければと思います。

本多参考人 お答えしたいと思います。

 そもそも、貸し手側が中立になるというのは考えにくいというふうに思います。

 現実に、貸金業協会がカウンセリング、債務整理として、現在、愛媛県で裁判になっている件があるんですね。債務者が、もうとても支払いできないということで相談に行ったわけです。だけれども、相談を受ける人は武富士の社員なんです。貸金業協会といいながら、どこで相談を受けるかといったら、宇和島支部では武富士のお店で受けるんですよ。そこでもし相談を受けたら、本来は過払いであっても、あるいは破産状態であっても、あるいは本人の収入は本当に十六万ぐらいしかなくても、六万、五万、さらに利息もつけて払わせていく、これが今の実際に行われている、愛媛県貸金業協会がやっているカウンセリング、債務整理なんです。

 ですから、本人が、もうとても支払いできません、大変ですということで相談に行くわけですから、それはやはり国民生活センターなり行政がきちっと中立的な立場に立ってやるべきであって、貸金業協会には全く期待できないし、タッチさせるべきではないと僕は思います。

寺田(学)委員 私も、その点に関して、やはり同意見の部分を持っております。

 この間行われました参考人の質疑の方でも、正確な言葉ではないと思いますが、全金連の石井会長が、サラ金を原因とした、資金繰りを苦とした自殺というものは少ないんだとか、ないんだとか、そういうようなお話をされていました。しかし実態は、消費者金融によって多重債務に陥って命をみずから落とされる方は、現に私の周りでもいますし、報道でも上がっているとおり、やはり多くの方がいるわけです。

 そういう意味でいうと、もちろん、独自の中立的な団体をつくってやるんだとは言いつつも、この間の答弁をお伺いした限りは、やはり、申しわけないですけれども、謙虚さがないですし、中立性を担保するような信頼感というのは伴っているのかなというのは、私は非常に危なっかしい部分があると思っていますので、その点も考えなければいけないと思います。

 もう一点、この中で、「必要と認められる場合には、」という言葉を入れております。ある種、百歩譲ったとして、中立であるところが必要である場合と認めるかどうかというのは、私は少しゆだね過ぎているのではないかなと。我が党の方では、四件目の借り入れを行う際とか、何かしらのカウンセリングを受ける定義を最低限そろえた上で、まさしくその後は、必要と認められる場合もカウンセリングを受けさせましょうということにしています。

 この場合、吉野参考人にお伺いしたいんですが、「必要と認められる場合」という、かなり広範な、そしてもうすべてをゆだねているような形になっているんですが、何かしら定義づけをして、こういう場合はカウンセリングをまず受けなきゃいけないというような定義づけを行う必要はなかったんでしょうか。いかがですか。

吉野参考人 やはりカウンセリングの場合には、先ほど申し上げましたけれども、利用者の立場、それに立ったカウンセリングができる中立な機関というのが特に重要だと思います。

 ですから、私は、利用者の方々も、もし何かあれば割合自由にカウンセリングが受けられる、そういう体制が必要だと思いますし、それから、利用者の方々から業界に対しても、今ちょっとここで私は疑問があるのでカウンセリングを受けたい、そういうことがあれば、そのときには、必要に応じてきちんと業界が中立的なカウンセリングを紹介する、そういう形でいけばいいと思います。

 それから、業界のところが紹介したといたしましても、悪いカウンセリング、もし供給者、いわゆる貸し手の立場だけのカウンセリングであれば、そこは利用者の方々が、あそこはどうも違ったカウンセリングをしている、もう少し中立的なきちんとしたカウンセリングを紹介してほしい、やはりこういうようなことで、どんどんどんどん、改善の余地というのは幾らでもあると思います。

 ですから私は、どこからカウンセリングというところに糸口として入るかという段階では、現在のように貸金の業者のところからの情報をいただいて、ただし中立的なところでカウンセリングを受けられる方向に持っていくということが私は必要だと思います。

寺田(学)委員 お話しされることの意図、本旨は本当に十二分に承知するんですが、何分、今、多重債務の被害というのがこれほど拡大している中で、ある種、業界側、業者側が、こうなっていればいいんだというような、言い方はおかしいかもしれませんが、性善説に立ってやられている部分があって、性善説にすべて立って今行われているのであれば、このような問題というのはもっと減っているはずであるわけです。

 そういう意味で考えると、いや、カウンセリングを受けるべき人がいたら、業者側が必要と認めてちゃんとあっせんすればいいんだと言いますけれども、それがなされていないからこそこうなっていて、参考人が先ほどから言われているとおり、周知徹底されない理由も、そういうふうに業者側の自主努力によってあっせんすることもしないからこそ周知徹底もされないわけです。

 ですので、本当に業者側が善意を持って、借り入れをする人の気持ちに立って、財産状況をちゃんとしんしゃくした上で貸すのであればいいんでしょうけれども、それが行われないこともあり得るので、何かしらの定義を含めて、定義で義務づけられているんだとしたら、業者側がどう思おうとも、すぐさまカウンセリングに行くわけです。カウンセリングに行って、適正であれば借りられるわけですし、適正じゃなきゃ借りられないわけですから、別に借り手側の利益も失うこともないわけですよね。

 そういう意味において、何かしらの定義をつけるということは検討される必要があるのではないかなと思うんですが、時間が最後になってしまいましたが、質問は、最後にそれを御答弁いただいて終わりたいと思いますけれども、いかがですか。

吉野参考人 私は、これまでは、やはり借り手の方々が、何か困ったときにだれに相談していいかということがわからなかったんだと思います。だから、そういう意味では、どこにまず相談に行きなさい、こういうことが情報として提供されるということが重要だと思いますし、それから、今後は、やはり借り手の方々が、何か問題が起こればあそこに相談に行けば本当に中立的に答えてくれるんだ、こういうカウンセリングの協会は安心できるんだ、そういうことが皆さんの間に周知徹底されることがこの業界をよくしていくというふうに思います。ぜひそういうふうに先生方も努力していただければと思います。

 以上です。

寺田(学)委員 終わります。

伊藤委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 参考人の皆様方、長時間にわたり大変御苦労さまでございます。なるべく重複を避けてお聞きをしたいと思います。

 まず、吉野参考人にお伺いします。

 先ほど、利用者の側を三グループに分けまして、生活苦から借りる、浪費的に借りる、健全な借り方、こういう三つのグループにお分けになりましたけれども、私は最近、生活苦の要因が非常にふえているのではないかというふうに思いますが、まずはその点の認識をお聞きしたいのと、多重債務が発生するのは、借りる側の問題もありますが、同時に貸し手の側の責任、これが非常に大きいのではないかと思います。その辺の認識をお伺いしたいと思います。

吉野参考人 御質問、ありがとうございます。

 先ほど私、この左側のところで図を書かせていただきましたが、同じページの左側の三十一ページというところに円グラフがございまして、今先生の御指摘のように、ここでは一九九〇年と二〇〇四年の多重債務の原因というものを見ております。

 これを見てみますと、二〇〇四年の右側を見ていただきますと、三一%が生活苦の方であります。それから、左の方に行きますと、失業とか倒産、それの収入の減少が一番左の二五%というふうに書いてございます。ですから、もう半分以上の方が生活費あるいは失業、倒産、これは一九九〇年のバブル直後と大分違った様相になっております。ですから、そういう意味では、生活苦の方々が現状ではこういう貸金業からお金を借りているというのは事実でございます。

 それから、今の御質問ですけれども、多重債務に陥りやすいと。これは、銀行とこういう消費者金融がこれまで違いましたところは、銀行は最終的に、お客様に貸しますと全部自分のところの不良債権として返ってきます。ところが、一部の消費者金融の場合には、返さないと、ほかのところへ行って借りてこい、こういうことをしましたから、幾らでも貸すことによって自分のところには不良債権が返ってこない。ここが銀行とこれまでの消費者金融の違いだったと思います。

 そういう意味では、今後、三回以上借りないようにする、それから情報を緊密にしまして、ブラック情報、ホワイト情報を交換する、こういうことによりまして、多重債務、何回も借りられる方々を防止するということがぜひ重要ではないかと思います。

 以上です。

佐々木(憲)委員 次に、今回の法案の提出に至る経過のことについてお伺いしたいと思います。

 これは吉野参考人と宇都宮参考人にお伺いしますが、ことしの四月の段階では、グレーゾーンをなくすということでほぼこの懇談会では一致していたというふうに聞いておりますが、九月に出された案が、特例高金利を認めるとか、それから利息制限法を実質的に引き上げる、こういう内容になっておりました。

 私も何でこんなのが出てきたのかなとびっくりしたわけですが、私は、これは一時的な揺り戻しがあったと思うんです、またもとに戻りましたからいいんですけれども。なぜ、そういう懇談会の意向と違うものが出てくるのかよくわからないんです。

 そこで、お二人にどういうふうにお考えかをお聞きしたいと思います。

吉野参考人 私のお示ししました図には、まさに需要曲線と供給曲線がございまして、それで、需要者から見ますと、やはり金利は低ければ低いほどいいわけです。ですからゼロ金利で貸していただくのが一番いいわけですし、供給者の側としますと、自分の供給するためのコスト、人件費、物件費がありますから、そこにある程度のリスクを上乗せすることによって金利を設定する、こういうことになると思います。

 最終的な懇談会の判断では、先ほど申し上げましたけれども、やはり日本人の場合には、借り手、いわゆる消費者の、借り手に対しては金利を区別すべきではない、こういう最終的な議論にはなったと思います。

 一部の議論の方には、欧米のように、金利というのは均衡の交点のところで決まるべきである、ですから、リスクの高い方には高い金利でいいのである、こういう議論もあったわけです。まさにそれは、こういう貸金業の市場をどういうふうにやって今後日本で見ていくのかという議論だったと思います。ですから、そういう中では、リスクの高い方には高い金利というのであれば、やはりある程度の高い金利、二〇%以上になる、そういう議論になったと思います。

 最終的には、やはり、我々国民は九割以上が中産階級である、そういう人たちに対して、消費者である限りは金利を差別すべきではない、こういう結論になったということでございます。

 以上でございます。

宇都宮参考人 九月五日に出された金融庁案というのは、金融庁の懇談会の議論を正しく反映していない議論だと思っております。

 御承知のように、四月の中間整理では、金利引き下げの方向性、グレーゾーン金利の撤廃の方向性が打ち出されています。それから、七月六日に与党の方から貸金業制度に関する中間的な取りまとめが行われていますけれども、その後、七月の二十七日と八月の二十四日に金融庁の懇談会が開かれています。

 私も日弁連の上限金利引き下げ実現本部の本部長代行として、オブザーバーとしてこの会議に参加していたんですけれども、大体、この特例の問題が議論になったときは、ほとんどの委員がこれは反対であるという意見になっております。

 それから、利息制限法の制限金利の問題について金額区分を変えることについても、それを変えるのであれば、先ほど私がお話ししましたように、金額区分だけを変えるんじゃなくて、制限金利についても検討しないとバランスを失する。といいますのは、一九五四年の銀行の貸出金利というのは九・八%、今は一・六%ですから、それに合わせて制限金利を下げないといけないのではないか。それから、利息制限法の金額区分等を考える場合も、利用者が本当に返済できる金利であるかどうか、こういうところを考えて検討すべきだということで、全体的には金額区分の変更も否定的な意見が大勢だったと思います。

 ところが、そういう意見を全く反映されない法案が出されましたので、後藤田政務官なんかも抗議して、政務官自身が辞任されたわけで、こういう意向、法案が出されるというのは、我々は全く予測はしなかったんですけれども、やはり業界側の圧力とか働きかけ、それからアメリカ政府なんかの働きかけがあったと聞いていますから、そういう意向も反映された法案になったのかなというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 吉野参考人にお伺いしますけれども、金融庁懇談会の座長をされているわけでありますが、吉野さんは、金融庁の座長と同時に、消費者金融サービス研究学会の理事もされておられるということをお聞きしました。この学会の中にはプロミスの社長も参加しておられて、特別賛助会員として消費者金融サービス振興協会というのがありまして、プロミスの社長がその理事をされている、そこから助成金を受け取っている、こういう学会だというふうに理解をしておりますが、この学会というのはどんな役割を果たしているのか、確認のためにお伺いしたいと思います。

吉野参考人 私はそこから一切お金はいただいておりません。

 それで、さまざまな学会がございまして、それぞれ事務局がございます。私は学者としていろいろな学会に参加しておりまして、消費者金融の側の学者としての勉強をずっと続けてきております。一番最初は、例のノンバンク問題が盛んになりました一九九二年のときに、東大出版会の本に「ノンバンクと金融政策」という章を書きました。それで、ある先生から御紹介いただきまして、消費者金融の学会ができるのでそういうのに参加してぜひ活動を続けてくれということでございますので、私は活動しているということでございます。

 一切、どういう業者がそこに入っているとか、どういう学会だからそこに入る入らないというのは全く私は関係ございません。ですから、中立的に、私は学者としてずっと研究を続けております。

 以上です。

佐々木(憲)委員 業者との癒着関係を言っているわけじゃありませんで、こういう学会というものがサラ金の業界から助成金を受け取ってやるというのが果たして真っ当なのかなというふうに私は思ったものですから、お聞きをしたわけでございます。

 それから次に、本多参考人にお伺いしますけれども、全国クレ・サラ被害者連絡協議会、被連協が中心になりまして、全国一斉に過払い金返還請求を訴訟されておられるというふうにお聞きしました。全国で約三千件、三十数億円ということなんですが、その目的と効果といいますか、どのようにお考えか、お聞きしたいと思います。

本多参考人 お答えいたします。

 目的は、直接的にはサラ金被害に、私生活の立て直しに役立てるということで、払い過ぎたお金を取り戻し、生活する上での立て直しに使うことということですが、集団的にやるという意味は、一つは、払わなくていい利息があることを広くアピールするということにあります。

 払わなくていい利息があって、それを取り戻すことによって、実は金利引き下げを先取りするような効果にもなるということで、三年前から運動しておりまして、マスコミの方々もかなり注目していただいて、新聞、テレビでも報道していただくことによって、今、私も過払い金があるのではないかということで相談が非常に多くなっています。

佐々木(憲)委員 それは大変重要なことだろうと思うんですね。

 先日、私も、第一回目の参考人質疑の際に、業界の関係者に、弁護士を代理人として請求しなくても、本人が自分で計算をして、これは過払いではないかということで利用者自身が直接請求をした場合、どう対応するのかということを聞きました。その際、過去の借金の経過全部を開示するというのを業界にやらせるのは当然のことなんですが、それに基づいて請求した場合、誠実に対応するかというふうに聞きました。そうしましたら、アイフルの社長は、誠実に対応するというふうに言ったわけです。

 ただ、実態はどうなのかというのは、実際に請求されておられる、そういう運動をされておられる本多さんの方でどう感じておられるか。こんな事例があるとか、そういうのがありましたら、お聞きしたいと思います。

本多参考人 お答えします。

 十七日のここでの福田さんの答弁ですよね。私たちも非常に励まされました。

 実際どうなるかということなんですが、本人請求の場合は、大体、アイフルさんもそうなんですが、弁護士さんを立てなさいとか、司法書士さん、代理人を立てなさい、本人だとなかなか、取引経過の開示も渋ったりします。

 今、いろいろな情報もあって、福田さんがそういうふうに誠実に対応すると言うならば直ちにやってほしいというふうに思いますし、六年、七年、サラ金から借りている人、少なくとも十年だとかだったら完全に過払いですから、私は過払いになっているはずです、過払い金を利息制限法で計算していただいて、払い過ぎたお金は返してくださいということを窓口に行ってやってみたいと思っています。そのときにどういう対応をとってくれるか、ちょっと私たちも、実際に行ってみたいというふうに思っています。

 実は、本人でやっているケースが一つあります。それはきちっと法律にのっとってやるというのが誠実な対応であって。債務者の人は完全に過払いになっていると思っている。ところがアイフルさんは、過払いになっているとは思われない、根拠があるんだったら示してくださいみたいな形で対応がなされているやに聞いています。

佐々木(憲)委員 国会で質問をされて、誠実に対応するというふうに言ったわけですから、当然そのようにしてもらわなければ国会にうそをついたことになりますので、これは引き続き、私ども、事実関係を調査した上で、また問題にすることがあればやりたいと思います。

 それから次に、利息制限法の金利の水準なんですけれども、これ自体まだまだ高過ぎるという声もあります。本多参考人の感想をお聞かせください。

本多参考人 利息制限法、本当に高いと思います。二〇%、一五%、一八%ですね。石川県の県議会、石川県のほとんどの市町村の議会の決議は、金利引き下げを求める意見書、これは利息制限法も引き下げろという意見書になっています。

 実際、百万、五十万を借りて一八%というのはやはり高いですよ。せいぜい一〇%以下にしていただきたいな、それだったら何とか生活もしっかりやっていけるんじゃないか、実際の感覚としてはそういうふうに思っています。

佐々木(憲)委員 最後に、吉野参考人と宇都宮参考人にお伺いします。

 高金利の被害というもの、日本国内でもいろいろ問題になっていますが、例えばアジア地域ですとか、国際的にいろいろ広がっている。それは、高金利で貸す業者が出ていってやっている場合もあるでしょうし、また、向こう側の業者が日本のそういうのをまねてやっている場合もあると思うんですが、その辺の実態がどういうふうになっているのか、また、それに対する規制の動きというものは一体どうなのか、これらの点について、国際的な広がりの問題についてお聞きしたいと思います。

吉野参考人 ちょうど先週、中国に行きまして、中国の人民銀行の方と、農業に対するいわゆるコミュニティーバンクというのを中国ではつくりたい、こういう議論でした。それで、そのときに、今日本では、金利を低く、二〇%ぐらいに引き下げると言ったんですが、中国は自由金利でやると。全く逆でした。驚いたのですけれども、思想と反しないのかというんですけれども、自由金利でやると。それで、農家の方々にマーケットメカニズムでやっていくことを今考えているけれども、日本は引き下げようとしているけれどもどうしてなんだ、こういうことだったわけです。

 なぜ日本と中国が違うかと申しますと、ちょっと申し上げたのですけれども、中国の場合は、農家が生産をするためにお金を貸すわけです。これまで米のところで機械がなかったものですから、そこのちょっとした機械を買うために貸す。ですから、彼らは生産性を上げられるわけです。つまり、自由金利であっても、いいことをやる人たちにはどんどんお金が行くメカニズムがいいんだ、こういうのが中国だと思います。日本は、消費者の借り手でありまして、その方々が生産のために借りるわけじゃないわけです。ここがやはり一番のポイントだと思います。だから、コミュニティーバンクとかグラミンバンクが成功しているのは、消費者が生産のために使って自分の所得を伸ばす、だから少しぐらい高い金利でも返せる、こういうメカニズムだと思います。

 ですから、先生のおっしゃいますように、高金利で苦しむというよりは、借りて自分の将来のためにやろう、こういうような形でぜひ日本の消費者金融も進んでいただくということが必要じゃないかと思います。

宇都宮参考人 実は、日弁連では昨年三月に韓国の調査をやっています。韓国は、一九九七年にアジア通貨危機の影響で経済危機に陥り、IMFの管理体制下に置かれます。その翌年、一九九八年に、日本と同じような、韓国は一元的な規制ですけれども、利子制限法が撤廃されます。これは消費を活性化させるという目的だったようですけれども、その後、韓国の中では国の統制下に置かれていない私金融というのが爆発的にふえまして、これは数百%から高いのは数千%、こういうのが横行しまして、四千八百万人の人口の中で三百六十万人から三百七十万人の信用不良者が出て大きな問題になっております。

 それで、私金融は、お金を貸すときに身体放棄覚書という念書をとって貸すらしいんです。これは、お金を払わない場合は、腎臓とか肝臓を本当に売って回収している、あるいは女性を売春街に売り飛ばすというようなことをやっていまして、これが大きな社会問題になって、急遽、二〇〇二年に貸付業法、日本の貸金業規制法に似たような法律をつくりまして、この中で、登録をした貸金業者については上限金利は六六%に規制するということになっています。ただ、無登録業者については金利規制がないわけですね。

 私は、先週の十一月十五日に韓国の方に呼ばれまして、ハンナラ党、ウリ党それから民主党と民主労働党の議員とこういう討論会があったんですけれども、そこでも日本の金利規制の状況を報告したんですけれども、韓国でもどうしたらいいかという大きな議論に今なっています。

 実は、問題なのは、一九八〇年ごろ、金利規制が撤廃した後に、日本の消費者金融、サラ金の韓国進出が始まっています。当時は、日本のサラ金は一〇〇%から一五〇%で貸しています。

 昨年三月に私が韓国を訪問したときに、韓国の金融庁に当たる金融監督院に調査に行ったんですけれども、そこに寄せられる苦情は、韓国の私金融を上回るぐらいの苦情が日本のサラ金業者の関係で寄せられている。さらに、ことし十一月十五日、先週行ったときは、驚くべきことに、山口組の関係者が韓国に出てやみ金融を始めようとしている。つまり、日本で金利規制を強化すれば、金利規制が甘い韓国に進出して悪いことをやろうとしているということがわかってきたんですね。

 それで、あと、先週の土日に、本多さんたちの被連協とクレ・サラ対協のメンバーがやっている全国交流集会、この問題の交流集会があったんですけれども、その前日に、台湾と韓国のこの問題に取り組む弁護士とか関係者の会議があったんですけれども、台湾にも同じような問題が起こっているんですね。

 だから、ぜひ国会の先生方は、日本が規制をすると甘いところに行く、だから我々は、アジア的な観点から、この規制の情報交換それから取り締まりが必要だと。だから、私は、できるだけ韓国とか台湾でも日本のような金利規制とか貸金業規制が必要だ、ぜひそういう立法をやってもらいたいと訴えているんですけれども、日本で規制をしている関係者が韓国に出て悪いことをやったら日本の免許を剥奪するというようなこともやらないと、日本が悪い業者をどんどん輸出していることになりますよね。

 こういう問題がありますので、こういうアジアの問題をぜひ先生方も関心を持って調査して、必要な規制をやっていただけたらと思います。

佐々木(憲)委員 どうもありがとうございました。

伊藤委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二分散会


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