衆議院

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第7号 平成19年3月23日(金曜日)

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平成十九年三月二十三日(金曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 伊藤 達也君

   理事 井上 信治君 理事 竹本 直一君

   理事 林田  彪君 理事 宮下 一郎君

   理事 山本 明彦君 理事 池田 元久君

   理事 古本伸一郎君 理事 石井 啓一君

      伊藤信太郎君    石原 宏高君

      江崎洋一郎君    小川 友一君

      小野 晋也君    越智 隆雄君

      大野 功統君    亀井善太郎君

      木原  稔君    佐藤ゆかり君

      関  芳弘君  とかしきなおみ君

      土井 真樹君    中根 一幸君

      長崎幸太郎君    萩山 教嚴君

      原田 憲治君    平口  洋君

      広津 素子君    松本 洋平君

      小沢 鋭仁君    川内 博史君

      楠田 大蔵君    鈴木 克昌君

      田村 謙治君    馬淵 澄夫君

      三谷 光男君    吉田  泉君

      谷口 隆義君    佐々木憲昭君

      野呂田芳成君    中村喜四郎君

    …………………………………

   財務大臣         尾身 幸次君

   財務副大臣        富田 茂之君

   農林水産副大臣      山本  拓君

   経済産業副大臣      渡辺 博道君

   財務大臣政務官      江崎洋一郎君

   政府参考人

   (財務省関税局長)    青山 幸恭君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           佐久間 隆君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長)     押田  努君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十三日

 辞任         補欠選任

  木原  稔君     平口  洋君

同日

 辞任         補欠選任

  平口  洋君     木原  稔君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一二号)


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     ――――◇―――――

伊藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、関税定率法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として財務省関税局長青山幸恭君、農林水産省大臣官房審議官佐久間隆君、経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長押田努君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田村謙治君。

田村(謙)委員 民主党の田村謙治でございます。

 関税定率法等の一部を改正する法律案につきまして、質問をさせていただきます。

 ちょうど二年前に、私もこの法律の改正案につきまして初めて財金で質問をさせていただいて、それから三年連続、ほかにやる人がいないために、結局、私が一人で七十分たっぷりと質問をさせていただきます。

 本題の前に、まだ時間はたくさんありますので、本題は後で、最初に経産省に一点、最近質問主意書を出させていただきましたので、輸出規制の関係で質問をさせていただきたいと思います。

 最近、無線LAN、皆様がお持ちのパソコンにも大体無線LANというものが標準装備をされていると思いますけれども、その無線LANというのは、広い意味でいわゆる暗号装置に含まれるものであります。その暗号装置というのは、やはり、それが輸出をされてさまざまな武器などに悪用されると問題になるということで、いわゆる経産省が管轄している輸出規制の一環に入ってくるものなわけですけれども、そもそも、その無線LANというものが、パソコンに限らず、PDAや携帯電話、皆様がふだんお持ちのさまざまなものにどんどん組み込まれてきている。携帯のゲームもそうですね。そういった中で、現状の日本の規制がどうなのかということを三月二日に質問主意書をお出しいたしました。今、もし御関心がある方は、配付をさせていただきましたので、主意書をごらんになっていただければと思います。

 さまざまな規定を引用しておりますのでややこしいようでありますが、簡単に申し上げると、結局、暗号機能を持つ集積回路または組み立て品を組み込んだ製品を輸出規制するということでありますけれども、質問主意書の方の三ページでありますが、質問の方の一番最後の五番でありますけれども、「米国では「短距離無線の暗号機能をもつ部品またはソフトウェアを組み込んだアイテム」については、一部の国へ向けての輸出を除いて、事実上規制から除外している。諸外国より厳しい規制を設けることは「地域の安定を損なう虞れのある通常兵器の過度の移転と蓄積を防止する」というワッセナー・アレンジメントの目的とは関係なく、輸出者に過度の負担を与え、徒に我が国の競争力を低下させる。」今後、施策を見直す必要はあるのかという質問をいたしました。

 それに対しての回答というものが答弁書の方の最後に出ておりますけれども、その答弁といいますのが、「外為法第四十八条第一項に基づく輸出の許可は、我が国又は国際社会の平和及び安全を維持するための必要最小限の輸出規制として実施しているものであり、今後とも、ワッセナー・アレンジメントを始めとする国際的な枠組みを踏まえ、適切かつ的確な規制を行ってまいりたい。」というのが、経産省、そして、当然、質問主意書ですから、閣議を通過した答弁でございます。

 まず、これについて、「必要最小限の輸出規制として実施している」というふうにお答えになっておりますけれども、そもそも質問の方で、アメリカでは原則として除外をしている、最初に申し上げたように、無線LANというものは極めて一般化をしておりますので、それを一つの部品とみなす、それだけを単独で規制するというのは、まさに、例えばパソコンというものも、商品として販売をする際には当然許可は要らないとしても、その前の試作品の段階で、例えば海外の展示会に出品をする場合にはそれが規制の対象になってしまうというような状況もあるというふうに現場からは聞いております。

 そういった中で、アメリカでは規制から基本的に除外をしている、一方で、日本では除外をしていないというのが、とても必要最小限の輸出規制とは思えないんですけれども、それについてはいかがでございましょうか。

押田政府参考人 お答えをいたします。

 暗号装置の規制につきましては、議員御指摘のとおり、ワッセナー・アレンジメントで規制対象になっているわけでございますが、アメリカにおきましては許可例外という制度がございまして、その対象となっております。これにつきましては、一定の要件のもとで、個別の輸出ごとの許可申請の手続を必要としないという制度でございまして、具体的には幾つか要件がございます。一つは、当初の輸出に当たって、その暗号装置の内容の審査を受けること、これはワンタイムレビューというふうに言っておりますけれども、あるいは、その許可例外を使用して輸出した記録を五年間保存することなどが求められている、こういった制度のもとで運用されているということでございます。

 これに対しまして、日本では、この暗号装置については、やはり一定の要件のもとで、個別の輸出ごとの許可は取得することを必要としない包括許可制度というのがございまして、これを利用できることになっておるところでございます。具体的には、輸出管理を適正に実施していることでありますとか、あるいは輸出に係る文書を五年間保存することといったことが要件となっております。

 こういった形で、暗号装置に係る日米の輸出規制、これはそれぞれ規制体系に違いはございますけれども、手続面では同様に、個別の許可の手続を必要としないということで効率化が図られているところでございます。

 我が国といたしましては、これは外為法の第四十八条に基づいて規制をやっておりますが、この輸出の許可について、我が国や国際社会の平和、安全を維持するための必要最小限の輸出規制として実施をしておりまして、今後とも、そのワッセナー・アレンジメントを初めとする国際的な枠組みを踏まえて、適切かつ的確な規制を行ってまいりたいと思っております。

田村(謙)委員 結局、個別の、例えば無線LANが組み込まれたパソコンという話になりますと、包括許可制度というものが実際どこまで対象になるのかというのは、詳細は私もまだ不勉強で存じ上げませんけれども、例えば、先ほど申し上げたように、試作品とか、そういったものでもその制度というのは適用されるんですか。

押田政府参考人 試作品につきましても、包括許可制度の対象になっております。

田村(謙)委員 基本的に、もちろん世界平和のためというのは当然各国が認識をしているところでありますので、そこはとにかく日本の産業の国際競争力を阻害しないように適切な運用をしていただきますように重ねてお願いを申し上げまして、この質問主意書の関連については質問を終わらせていただきます。

 さて、本題でございます。

 今回、関税法の改正案ということで、さまざまな改正があるわけでありますけれども、皆様が財務省からレクを受けたとき、大体この資料、ポンチ絵というのはごらんになっていると思いますが、最初の資料というのが「日本版C―TPAT(仮称)の推進」というふうに掲げてあって、日本版のC―TPAT、C―TPATというのは、カスタムズ・トレード・パートナーシップ・アゲンスト・テロリズムということだと思いますけれども、アメリカでそういうC―TPATがまさにテロ以降導入をされ、推進をされて、そういったものを受けて日本版を導入する、それに向けての今回の改正だという説明をいただいておりますので、やはりアメリカのC―TPATというものがそもそもどういったものなのかというものを簡単に、かつわかりやすく御説明をいただきたいと思います。

尾身国務大臣 これは、通告がございませんので、答えるのがなかなか大変なんです。

 アメリカにおける税関、民間共同のセキュリティーの強化と物流円滑化の両立策をアメリカで推進したものがC―TPATであると考えております。

田村(謙)委員 確かに、通告は、関税法改正についてというだけしか通告しておりませんので。それだけは通告はしております。

 さらに私は、今、皆さんも最初にごらんになった資料だと思いますけれども、そういった意味では非常に基本的なことから順番にお聞きをしようと思っておりますので、この日本版C―TPATの推進というのは大変大きな命題なんじゃないかなと。そうしますと、当然アメリカのもとのC―TPATが何かというのは最も根本的な、基本的な質問だと思いますので、それを通告がないからといって、それがわからなくて推進ができるはずはありませんので、お伺いをしているわけであります。

 今の大臣のお答えというのは、一番基本的な財務省からいただいた資料にも出ている、セキュリティーの確保と物流の促進、円滑化、それを両立する施策だという、その二、三行しか、私も幾つかの財務省の関税局の資料を見ましたけれども、それしかなかったんですが。

 セキュリティーの確保、そして物流の円滑化というのは、当然、我々日本の税関も昔から推進をしていることでありまして、何もC―TPATが新しい話じゃないと思うんですね。アメリカも、それは各国で当然推進をしている、セキュリティーを確保するのは当然大事だと。そして、その一方で、やはり国際競争、この物流の円滑化、日本企業で見ると、そこはできるだけ物流におけるコスト、時間と費用のコストを削減していきながら国際競争力を強化していく、そういった中でやはり税関としては物流の円滑化を図っていく、その一方で、しっかりと取り締まりもしなければいけない、それは昔からの当然の命題でありますので、それを両立するために、日々、日本の税関さんも、そして各国の税関も努力をしているという状況にあるわけであります。

 このアメリカのC―TPAT、これは、アメリカにしても、当然前からそれをやっているわけですね。ですから、テロがあって、このC―TPATというものを導入した。今のお答えというのはある意味全く説明になっていなくて、もっと、ある意味で前提になるものですから、テロの後さらに何をしたのかというのがC―TPATだと思います。

 ですので、ある程度、私も延々と御講義をいただきたいとは思っておりませんけれども、実際に、この通関制度においてという、まさにカスタム、税関と民間のパートナーシップ、もうそれだけでも、今の大臣の御説明よりも、タイトルを日本語訳しただけでも、もうちょっと説明になっていると思いますけれども、税関と民間がどのようなパートナーシップを結んでいくという施策なのか、そのことを踏まえないと、日本版C―TPATの推進と言われても意味がわからないと思いますので、そこはぜひ基本的なところをお教えいただきたいと思います。

尾身国務大臣 コンプライアンスのすぐれた事業者に迅速な通関を可能とする日本版のC―TPATにつきましては、昨年六月に経済財政諮問会議で決定されました経済成長戦略大綱において、セキュリティーの強化と効率の両立を確保するという観点からその導入が提言されたものでございます。先ほど申しました、アメリカにおける税関、民間共同のセキュリティー強化と物流の円滑化の両立というC―TPATの考え方を我が国でも取り入れたと言うことができると思います。

 関税局、税関においては、従来から、不正薬物、銃砲等の社会悪物品の不正輸入の防止等、適正な通関を確保するとともに、国際物流を阻害することのないよう、迅速かつ円滑な通関の実現を図ることが重要と考え、これまでも税関手続の電子化等の施策を実施してきたところでございます。

 また、二〇〇一年に米国で発生した同時多発テロ以降、各国において、国際貿易の安全確保と円滑化に向けた取り組みがなされてきておりまして、我が国におきましても、輸出入業者のコンプライアンスに着目した簡易申告制度や特定輸出申告制度の導入、あるいは関税の改善を行うなど、セキュリティーの確保と国際物流の高度化に対応した税関手続の実現に向けた政策を実施してきたところでございます。

田村(謙)委員 私が質問しましたのは、C―TPAT、アメリカのもとのC―TPATというものが、具体的な施策としては何ですかとお伺いしたんですね。基本的な理念として、セキュリティーの確保そして物流の円滑化、それは昔からあります、それは税関の最大の使命で、日本でもアメリカでもそうです。ただ、テロの後で、実際さらに新たなことをやったというのがC―TPATですよ。それを、単なるもともとの税関の使命だけを言って、C―TPATの施策の説明、具体的に何をしたのか、それを踏まえなければ、では、日本でどうするのかということは当然考えられないわけですから、前提の基本的なことをお伺いしていますので、アメリカのC―TPATが何か。何度も言いますけれども、別に、セキュリティーの確保と物流の円滑化なんというのは、C―TPATに当然流れている基本理念ですけれども、新たな施策なわけですよね。その施策が何かというのを聞いているんです。

尾身国務大臣 輸出国から米国に至るサプライチェーン全般のセキュリティー強化を目的とした官民共同のボランタリーベースのイニシアチブであり、船会社、通関業者、倉庫管理者、輸入者、製造業者等が米国税関国境保護局に示すコンプライアンスプログラムを二〇〇一年十一月より実施し、二〇〇五年五月より、新しい三段階に分けたベネフィットを与える制度を導入し、貨物検査率の低下等の企業に与えるベネフィットについて、その企業の努力に応じて段階的に提供したものであると承知しております。

田村(謙)委員 ありがとうございます。

 まさにそのような施策、私もいろいろな資料がありますけれども、例えば経団連さんで二〇〇四年に提言した中にも、注意書きで同じような説明があります。ほぼ重なっておりますけれども、個別の企業が、米国税関と覚書を交わしてコンプライアンスプログラムを作成、実行する、米国当局が推奨するボランタリープログラムだと。ボランティアで企業が参加をしていく。そして、輸入者、船社、通関業者、倉庫管理者、製造業者が対象である。その参加者には迅速な通関などのメリットを提供するということでありまして、まさにそのような施策というのがC―TPATですよね。

 アメリカのこの資料、「セキュアリング・ザ・グローバル・サプライ・チェーン」、グローバルなサプライチェーンのセキュリティーを確保していくんだというのがまさにそのコンセプトなわけでありまして、セキュリティーの確保と物流の円滑化というのは、税関さん、財務省さんが前からずっとおっしゃっていることですので、何ら新しいところはありません。

 まさに今大臣が御説明をくださったようなものを踏まえて、では、日本版のC―TPATというのは一体どのようなものをイメージなさっているのかということを、まだ、今後導入を検討している状況なのかもしれませんけれども、日本版C―TPATと名前まで仮称をつけているような話でありますので、そのイメージというものを教えていただけたらなと思います。

尾身国務大臣 我が国におきましては、アジアの成長や活力を取り込むことで我が国経済の活性化につなげていくという観点に立ちまして、国際物流における競争力の強化のための迅速、円滑かつ適正な通関の実現に向けたアジア・ゲートウェイ構想の推進に取り組んでいるところであります。

 このように、国際物流におけるセキュリティーの強化と効率化を通じて我が国の競争力の強化を図ることは重要なことと考えており、通関手続の一層の迅速化等の利便性の向上を図るとの観点から、日本版C―TPATの早期の構築に資するため、平成十九年度関税改正において、コンプライアンスのすぐれた輸出入者等に対する特別措置の改善等を行うこととしているものであります。

田村(謙)委員 済みません、もう先ほど御質問しましたので、経産省の関係の副大臣を初め皆様と、あと財務省も、大臣にずっとお伺いしようと思っておりますので、副大臣にはお伺いするつもりはございませんので、お忙しいようでしたらお帰りをいただいて結構でございます。

 今、日本版C―TPAT、御説明いただいたといっても、結局、いろいろな理念、その前書き、お題目があって、あとは、アメリカの制度を踏まえて、それをどのように導入していくのかというのはほとんど何もお話をいただけませんでしたけれども、ちょっと視点を変えて御質問します。

 アメリカのC―TPATというのは、輸出通関と輸入通関、それぞれに適用されるものなんでしょうか。

尾身国務大臣 輸入だけでございます。

田村(謙)委員 では、輸出はどのようになっているんでしょうか。

尾身国務大臣 アメリカでは、輸出については税関ではなくて商務省への届け出制を採用しているために、御指摘のとおり、貨物をあらかじめ保税地域に搬入することはないと承知をしております。

田村(謙)委員 今、御説明いただいたように、まさにアメリカでは、輸出というのは届け出制ですね。書類を出すだけ。そして、輸入についてC―TPAT、セキュリティーをより確保するために、集中をして取り締まりを強化していくと。

 その中で、まさにサプライチェーンですね、物流の流れ全体をしっかりと管理している企業については基本的には余り検査をしないという優遇措置を与える。それは、裏返して言えば、物流というのは、まさに工場から港あるいは空港を経由して先方に届くまで、その流れでありますけれども、その流れをしっかりと企業で管理している、そういうプログラムをつくっている企業はもういい。それ以外の、逆に、なかなかコンプライアンスがしっかりしていないところに集中をして、そして、そこの取り締まりを強化していこう、そういうコンセプトです。

 そういった中で、まさにアメリカは、輸出については、もう前からでありますけれども届け出制で、ある意味もういい、輸出のものについては見ない。そして、輸入について厳しく取り締まる。それは、テロ対策、まさに国益を考えた場合に、私は昨年も申し上げましたけれども、入ってくるものの中でテロにつながるようなもの、あるいは薬物、そういうさまざまな社会悪物品、そういったものがとにかく入るのを防いでいこう、それは当然、最大の国益だと思います。

 輸出に関して、ほかの国にそういう社会悪とかテロの材料となるようなものが行くのを幾らでも許すという発想はもちろんありませんけれども、基本的に、各国が輸入についてそういう取り締まりの重点化を行っていくという、まさにアメリカというのはその象徴だと思うんです。

 日本版C―TPATを導入するということは、すなわちアメリカのそのような基本的な考え方も導入する、こういうお考えでよろしいんでしょうか。

尾身国務大臣 アメリカのC―TPATは、先ほど私がお話をしたとおりでありますが、日本のC―TPATについては、また、日本固有の事情も考えまして、適切な制度設計をする必要があると考えております。

田村(謙)委員 当然、日本でほかの国の制度をまねする場合には、こういう制度があるのは当たり前なんですけれども、例えば、後でお伺いしますが、EUでも別の形態でやっている、通関制度についての迅速化とセキュリティーの確保という施策をEU全体で推進しているわけですね。その中でアメリカのC―TPATを選んだというのは、日本の事情があるからとかいう話じゃなくて、そういうアメリカの基本的なコンセプトを受け入れるということでなければ、日本版C―TPATとこういうふうに大上段に打ち出す意味がよくわからないですね。

 そういった意味で、先進国というと、アメリカ、EU、そして日本というのがまさに貿易において非常に大きい、あるいは通関手続についても進んでいるわけですから、C―TPATとここまで強調する、裏返すと、では、EUは今どういう状況にあるというふうに理解をしていらっしゃって、そして、日本はなぜC―TPATなのかということを教えていただきたいと思います。

尾身国務大臣 セキュリティーの確保と国際物流の高度化という方向で検討していきたいと考えております。

田村(謙)委員 意義についてはお答えいただけませんでしたけれども。

 それは、大臣がおっしゃるのは、基本的なコンセプトは当たり前なんですが、まさにアメリカは輸入に集中をしているわけですね。輸出は、もう届け出制にしているわけですよ。それは前からです。別にC―TPATに関係なく、前からそうで、さらにこのC―TPATという制度で輸入を差別化して、優良な企業とそうでない企業で差別化して、優良でない企業の関係の物流についてしっかりチェックをしていこうという差別化をさらに進めていく、企業をある意味でランク分けしていくという発想なわけでありまして、輸出についてどうこうという発想はアメリカにないわけですよ。

 そういった中で、日本版C―TPATを導入するといって輸出についてどうこうというのは、アメリカのC―TPATのそもそものコンセプトが全く反映されていないと思うんですけれども、いかがですか。

尾身国務大臣 日本には日本の事情がございますから、日本の実情に合わせた方向を考えていきたいと思っております。

 質問の通告がございませんから、細かいことまで聞かれてもわからないということだけはしっかりと申し上げておかなきゃいけません。(発言する者あり)

伊藤委員長 静粛に。静粛に。

尾身国務大臣 質問の通告をしっかりしていただいた上で有効な議論をしていただきたいというふうに私の方からは希望いたします。(発言する者あり)

伊藤委員長 静粛にお願いします。

 田村君。

田村(謙)委員 繰り返しますと……(発言する者あり)

伊藤委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

伊藤委員長 速記を起こしてください。

 尾身財務大臣。

尾身国務大臣 日本版のC―TPATは輸出輸入の両方でございまして、アメリカは輸入のみということでございます。

田村(謙)委員 ですから、何度も申し上げるように、C―TPATあるいはそれ以前からのアメリカの方針というのは、とにかく輸入の取り締まりを、それも優良でない企業が扱っている貨物に集中をしていこうと。人員は限られているわけですから、日本ももちろんそうです、アメリカも、どこの国でもそうですよ。どこまで調べるか。それはもちろん、あらゆる貨物を全部調べるというんだったら差別する必要はありませんよ。ですけれども、税関の職員が限られている中でいかに最大の効果を生み出すか。当然それは国益にかなった、まさに日本の国土の安全、とにかくそういう悪いものが入ってこないようにする。そのために輸入の、それもコンプライアンスがしっかりしていない企業が扱うものに集中をしていこうというのがアメリカのもともとの発想ですし、C―TPATはさらにそれを進めたものです。

 日本は、輸出についても相変わらず許可制をとっている。このことについては、私は昨年も一昨年も議論させていただきましたけれども、今回アメリカの制度の日本版をつくるということですから、そういう基本的なことを御認識なさらずに、日本版C―TPATとは一体何なんだということになるわけですよ。アメリカは輸出が届け出制だということは、非常に基本的です。まさに保税制度というものはアメリカにはないというのは、私は昨年も一昨年も申し上げました。まあ、昨年の議論はいいとしても。

 とにかくアメリカのそういうコンセプトがあるわけで、では日本の事情、日本がまさにまねをしようとしているアメリカよりも、さらに輸出をしっかりと許可制においてチェックをしなければいけない理由とは何ですか。

尾身国務大臣 日本版のC―TPATは、輸出と輸入の両方の流れに係る事業者をすべて含んで安全と効率化を図るというものでございまして、アメリカだけは輸入だけを対象としておりますが、日本の考え方はEUとほぼ同様でございまして、アメリカが国際的な例外であり、日本は、その他の国とほぼ歩調を合わせて、輸出輸入両方の流れをチェックしようというものであります。

田村(謙)委員 私が申し上げたのは、C―TPATとはアメリカの制度ですから、アメリカが例外だとおっしゃっても、日本版C―TPATを導入するという理由にならないと思うんですよ。でしたら、EUの中でもそういう通関制度の改善というのは進んでいますけれども、そのEUと並びだとおっしゃるんでしたら、EUの輸出輸入についての最近の流れというものも御説明いただかなきゃいけなくなってくるわけですね。

 繰り返しになりますけれども、取り締まりを集中していくと考える中で、アメリカはとにかく前から輸入に特化をしているわけですね。その中でもさらに輸入の中で差別化をしていこうという話です。EUの場合には、昨年も申し上げましたけれども、地続きなんですね。EUがある意味で一つの固まりとして、それぞれの国が輸出も輸入もそれぞれ一生懸命やっていくというのがEU全体としては安全につながるという、まさにそれは日本とは違う特殊事情だと思います。ですから、日本がEUと並びでというのも御説明になっていないと思います。特に、C―TPATなんですから、アメリカのを日本版にするんでしょう。それを、アメリカだけ特殊だというんだったら、その特殊な制度を入れなきゃいいんじゃないですか。

尾身国務大臣 C―TPATといっておりますが、これはアメリカの言葉をかりただけでございまして、日本は日本の実情がある。そういう意味でEUの制度とやや似ている制度でございまして、税関がコンプライアンスが高いと認定した輸出業者、輸入業者に加えまして、倉庫業者と関連業者も含めて対象とするものであります。これは税関の国際的な集まりでありますWCOでも合意されたものでありまして、日本としては、アメリカのような制度でなく、今申し上げたような方向で考えているところであります。

田村(謙)委員 日本版C―TPATとおっしゃって、名前をかりただけで、中身は別のEUのものだというのは全く説明になっていないんですけれども。では、日本版C―TPATというふうに仮称になっていますけれども、仮称なんだと思いますけれども、中身がアメリカと違うんだったら日本版C―TPATと言えないじゃないですか。最初の資料でそれはもう、では、C―TPATというのは本当に名前だけで、中身は違うと。何か、うんとおっしゃっていますけれども、そういうことでよろしいんですか。

尾身国務大臣 アメリカのC―TPATとは違うから日本版C―TPATと言っているわけであります。

田村(謙)委員 余り禅問答してもしようがありませんけれども、名前だけかりて中身が違うんだったら、では名前をかりた意味は何ですか。

尾身国務大臣 いわゆるC―TPATというのは、ちょっとわかりやすいということでそういうふうに俗称しておりますが、これはあくまで俗称でございまして、日本版というのは日本の制度、慣行に適切に適合した制度でありますから、もちろん日本版というのは、ただC―TPATといえばアメリカそのものの制度と同じものという考え方でございましょうが、日本の状況に合ったものをするという意味で日本版とつけたのでありまして、言葉の使い方は適切であると私は考えております。

田村(謙)委員 私が最初にアメリカ版のC―TPATについて説明してくださいと言いましたところ、通告がないのでそんな細かいことは答えられないとおっしゃったんですよ。まさにこれは日本版C―TPATですから、今、C―TPATというのはわかりやすい言葉を使ったとおっしゃいましたよね。大臣も中身を御存じないようなものがわかりやすいという意味がわかりません。もう一度説明してください。

尾身国務大臣 今、後ろの方からレクを受けて、いや、これはわかりやすいなと思ったわけであります。

田村(謙)委員 大臣は、それはもう非常に頭の回転の速い方ですから、一瞬でおわかりになるんだと思いますけれども。

 名前だけかりるわけですよね。それは、まさに我々議員にレクする際に、わかりやすいと思って使ったと。ただ、担当大臣も中身を知らなかったというものがわかりやすいとは到底思えないんですけれども、わかりやすいというのはどういう意味ですか。結局、名前だけ、要はアルファベットで格好いい、それだけですか。中身は全く別物だと今おっしゃいましたよね、EUの制度に倣っているんだ、C―TPAT自体は名前をかりただけだと。わかりやすい、要はアルファベットで格好いいからごまかせる、そういうことですか。

尾身国務大臣 ですから、先ほどから申し上げておりますように、日本版C―TPATと言っているわけでございまして、ただ、C―TPATをつくるということは、先ほどから私も内容の詳細について説明を申し上げなかったのは、まだ博学でないところで反省をしておりますが、説明の基本的な方向としてはきちっと説明をしていると思っております。

田村(謙)委員 結局振り出しに戻るんですけれども、今回、通関のいただいた資料でも、輸入、輸出、保税と。輸出だと例えば特定輸出者制度についての改善をする、あるいは輸入だと簡易申告制度を改善する、あと保税についても規制緩和をする。そういう項目の大前提が、日本版C―TPATの導入を推進していくんだ、だから今のような大きな改正をするんだという基本的なコンセプトの話でありますので、大変重要だと私は思っているし、皆さんも大体そう思っていらっしゃると思うんです。

 結局、アメリカは、繰り返しになりますけれども、輸出はもう届け出だ、輸入については取り締まる対象をさらに絞り込んでいくんだということですよ。それは違って、そういうアメリカの制度は全然関係なく、名前だけかりて、そしてEUの制度だというのは全く不可解ですし、それは永遠に理解できません。

 でしたら、もう一度、名前はC―TPATというアメリカの名前だけかりた、中身はEUのだ、それはEUのどういうところを、どういう流れを今回反映させたのか、御説明ください。

尾身国務大臣 大きな流れとしては、セキュリティーの確保と国際物流の高度化に対応するということが必要でありまして、そういう意味で、アメリカも含めた諸外国の例をいろいろ参考にしながら、アメリカにC―TPATというのがありますが、日本は日本の実情に合わせた形で日本版C―TPATを進めたい、こういうことでございまして、それは輸出輸入両面にかかわるものであるということでございます。

田村(謙)委員 禅問答を続けてもしようがありませんので。

 アメリカは輸入に特化をしている。そして、EUにしても、EUは先ほど申し上げたように地続きですから、また日本とは全く事情が違うわけですけれども、輸出輸入、ただやはり輸入に力が入っているとは思いますが、基本的にはそういうコンプライアンス、コンプライアンスというのはやはりサプライチェーン全体ですよね、全体についてコンプライアンスというのをちゃんとチェックしていこう、そして優良な企業については余り検査をしない、優遇をしていこう、そしてそれによって物流が促進をされていく。

 そういう考え方を入れるというのはわかるんですけれども、今回の特定輸出者制度、私は最初から、輸出についてそういう許可制あるいは保税制度が本当に必要なのかということは三年連続質問させていただいているんですが、改めて、日本の事情があると。輸出についても、もともと原則は届け出制ではなくて許可制にしている、そして保税制度も維持をする、これは通関制度においては基本的なことだと思います。決して細かい話ではないと思いますけれども、そういった原則というのは引き続き維持をするということについては、その日本の事情というのはどのような事情ですか。

尾身国務大臣 輸出の申告は、大量破壊兵器の拡散防止や産業廃棄物の不正輸出といったような税関における輸出貨物の取り締まりと、輸出貨物に係る消費税等の輸出免税制度の適正な運用を図るという観点から、原則としてその申告に係る貨物を保税地域または税関長が指定した地域に入れた後に行うこととされているものであります。

 他方、コンプライアンスのすぐれた輸出者に対しては、昨年三月に特定輸出申告制度を導入し、貨物を保税地域に搬入することなく輸出申告を行い、輸出の許可を受けることができるとともに、輸出許可後においても当該貨物を保税地域に置く必要はないとしたところでございまして、いわゆる輸出の保税搬入原則の一部見直しを行ったところであります。

 この特定輸出申告制度につきましては、利用者の利便性の向上及び利用の拡大の観点等から、制度の改善措置を図ることにより、今後、本制度の利用が拡大することにより、コンプライアンスのすぐれた輸出者に係る貨物については輸出申告をする前に保税地域への搬入が不要となり、結果として、保税地域への搬入原則が適用される貨物はリスクの高い輸出者が取り扱うものが対象となっていくものと考えられます。

 いずれにいたしましても、今後とも特定輸出申告制度については、利用者の利便性の向上及び利用の拡大を図る観点から、利用者の要望等も聴取しつつ、その改善を図ってまいりたいと考えております。

田村(謙)委員 結局お題目になってしまいますので、これ以上繰り返しはしませんけれども。

 重ねて申し上げますが、結局、人員は限られているわけですから、私は、アメリカのC―TPAT、アメリカの制度を何でも導入するというのはいいとは思いませんけれども、今回大上段に、結局は名前だけだったというのは大変残念でありますが、日本版C―TPAT、名前だけかりてそれを推進していくという基本的な考えというのは、もともと名前だけかりた本国のアメリカでは、輸出というのは届け出制にする、ある意味、めり張りをきかせているということですよね。それで、限られた税関の人員は、選択と集中で輸入に集中をする。さらに、輸入の中でも、優良な企業が扱っているものはほとんど見ずに、優良企業以外が扱っている貨物に集中をしていく。それがやはり取り締まりにおいて一番効果的だというのは、それはC―TPATの中身以上に一般の人でもわかりやすい話なんじゃないかなというふうに思います。そこは、税関の人員は幾らでもふやせるわけじゃないわけですから。

 結局、保税制度とも連動するわけですけれども、とにかく輸出についても許可をするんだと。それは、セキュリティーの確保、いろいろな悪いものが出ていくのを防ぐ。理想論はわかります。それは、理想はすべての貨物をチェックすることですから。それが到底できない中で、どうやって集中をしていくのか、より効果的にセキュリティーの確保を図り、そしてまさに物流の円滑化と両立をさせながら世界平和に貢献をしていくかというのは、やはり各国が基本的には輸入についてしっかりとチェックをしていくというのが、それは、先ほどEUのまねをするんだとおっしゃっていましたけれども、EUの中でも、まさに陸続きのEUでも、基本的にはやはり輸入に集中をしていく、輸出についてもある程度は当然お互いにやるという話はありますけれども、輸入に集中をしていくんだという流れがあるというふうに私は聞いております。

 そういった中で、日本の特殊の事情というのが、まさに国際貿易、国際物流の中でどういう事情があるかよく知りませんし、ほとんどないと私は思っていますので、やはり企業の国際競争力をより高めていくというバックアップをする、経産省御出身の大臣であればその思いは大変強いと思いますので、その点については、非常に細かくない基本的な、日本の前からある古い制度をそのままに引きずっているという御認識をぜひとも持っていただきたい、それが私の大臣への強いお願いでございます。

 そういった意味で、今回のこういったC―TPATの推進を踏まえて、この特定輸出者制度についてより利用しやすくするというのは、ある意味もう何か幼稚園のような話であって、それを改善して前よりましになりましたと、わずか二年前に導入したばかり、私もそのとき質問させていただきましたけれども、その二年後に、今回、制度自体をより利用しやすいものにするというのは、ある意味今まで利用しにくい制度を導入してしまったという話で、そもそも輸出についてそんなに縛るのがおかしいという話だと私は思っていますので、そこは大変基本的な話としてぜひとも大臣にもお考えいただきたいというふうに思います。

 そういった中で、ですから、この特定輸出申告制度というのは、まさに日本の昔から引きずっている保税制度を初めとする輸出についての許可制度、そういう古い制度に乗っかった、古い考えに基づいた中でのちょっとした突破口のようなものでしかないと私は思っているわけです。

 では、昨年三月にたしか実施されたばかりですよね。そういった制度でも一応、今回の改正について、ちょっと簡単なところを聞いてみたいと思いますので、利用状況をお伺いしたいと思います。

尾身国務大臣 昨年三月から導入いたしました特定輸出申告制度につきましては、現在までに承認された特定輸出者は、我が国の代表的な輸出企業であります自動車メーカーなど八社であります。さらに、年明け以降、数社の申請がなされていると聞いております。

 今般の改正におきましては、利便性の向上を図る観点から改善を行おうとしておるところでございまして、今後とも制度の活用が推進されるよう、この制度の内容等の周知に努めますとともに、利用者の意見等も踏まえつつ、制度の運用の改善を図ってまいりたいと考えております。

田村(謙)委員 八社ということでありますけれども、ちょうど一年前に質問したときはまさに実施する直前でありまして、そのとき、たしか二、三社とおっしゃっていたような気がしますが、それから五社もふえたのか。八社というのは、その利用状況としてどのように評価をしていらっしゃるのかということ。

 あと、この特定輸出申告制度、それを導入して、導入する効果というものが、改正の効果、二年前の資料を持ってまいりましたけれども、セキュリティーの対策強化、国際物流の高度化に対応した物流促進と、結局C―TPATのきょうの最初のお題目と同じでありますが、そういった効果というのはこの一年間でどのようなものだったんでしょうか。

尾身国務大臣 この制度の導入の当初におきましても、制度の運用状況等を見きわめつつ、随時改善を検討していくとしておりましたが、制度導入から一年経過いたしまして、違反行為等の特段の問題も見られませんし、制度の利便性の向上について利用者から要望があること等を踏まえまして、輸出申告を行うことができる税関官署について、貨物が置かれてある場所を管轄する税関官署に加え、輸出申告に係る貨物を外国貿易船等に積み込むこととなる港湾等を管轄する税関官署に対しても申告することを可能にすること、それから、同一コンテナに複数の輸出者の貨物が詰め込まれている混載貨物を適用対象とすることといった措置が講じられたところでございます。

 いずれにしても、今後ともこの制度の運用状況を見きわめつつ、利便性の向上を図ってまいりたいと考えております。

田村(謙)委員 また細かいからとお答えになれないのかもしれませんけれども、今回、この特定輸出申告制度を二年前に導入して、それがどうなったか、その効果というのは決して細かい話じゃないと思いますので、今結局その八社というのが、私は非常に少ないと思いますよ。結局使い勝手が悪いから、それで利用する者も少なかったんじゃないかな、だから今回、より利用がしやすいように対象を拡大したということなんじゃないかな、実施からわずか一年でということじゃないかなと想像しているわけです。

 ですから、今までこの一年間実施をしたその利用状況についての評価と、そしてどれだけ効果が上がったのかということを聞いているんですよ。別に違反がなかったから問題ないとか、それは当たり前のことで、セキュリティー対策強化、そして国際物流の高度化、もうずっといろいろなところに共通するその観点から見て、どれだけ効果がこの一年であったのかということをお伺いしています。

尾身国務大臣 制度の導入の当初におきましては、本制度の適正な運用を図るため、輸出申告に係る貨物が置かれている場所を管轄する税関官署に当該申告を行うこととするとともに、他の輸出者の貨物と混同されるおそれのある混載貨物については本制度の適用対象外とする措置を講じたものであります。

 この当初におきましても、この制度の運用状況等を見きわめつつ、随時改善策を検討していくこととしているわけでございますが、先ほど申しましたように、制度導入から一年を経過いたしまして、違反行為等の特段の問題も見られないことから、制度の利便性の向上について利用者から要望があることを踏まえまして、先ほど申しましたような措置を講じ、利便性向上に努めているところでございます。

田村(謙)委員 結局すれ違い答弁になっているんですけれども、では端的に聞きます。今まで、この一年間の利用状況をどのように評価するか、八社ですよね。その八社というのは、もともとの見込み、期待、どれぐらい利用されるかという期待というのが、制度を導入する際には当局に当然あると思いますけれども、そういったものと比較をして、多かったのか、予想外に非常に少なかったのか。多かったのか少なかったのか、そういう評価を教えてください。

尾身国務大臣 この制度を通じまして、輸出業者が関税の法令へのコンプライアンス体制が高まったということは私ども評価をしているわけでございますが、まだ会社の数が必ずしも多くないわけでございまして、さらにこの制度を適用する範囲を拡大していきたいと考えております。

田村(謙)委員 大変少ないと思います。日本の事情があるんでしょうか、全く比較にはなりませんけれども、この名前だけかりたC―TPAT、全く制度が違います。そもそもアメリカに輸出のこういうものはありませんので、輸出は届け出制ですから、何の比較にもなりませんけれども、C―TPATだと当然対象の業者も広がるので、それこそかなり古い、一年以上前の資料でも九千社という数字があります。当然アメリカは輸入だけですから、輸入コンテナ貨物の四〇%、私が見ているのはこれは一年以上前の資料ですので、もっとふえていると思いますけれども、そういった中で八社というのは、およそそれと比較がしようがない。名前をかりて何を目指すか結局わかりませんので、お伺いしてもわかりませんので、それは全く別物なんだということだと思いますけれども、いずれにしても、今大臣がおっしゃったように、八社というのは非常に少ないですね。

 私は、二年前、導入をしたときも、そして昨年も、同じことを御質問いたしました。まさに、混載貨物を対象にすべきだ、そしてもう一つ、申告官署をもっと自由化すべきだ、それは特定輸出申告制度の場合に限ってですよ。それは去年もおととしも申し上げて、質問をして、回答がやはり相変わらずの官僚答弁の非常にあいまいなもので、今引用してもそれほど意味はないですけれども、例えば混載貨物。混載貨物はちょっと細かいと言われそうなので、申告官署にしましょう。申告官署はわかりやすいですね。税関のどこに申告をするのか。船に積む港があるところ、例えば横浜港で船に積む場合に、それは横浜税関ですね。ただ、工場がある、本社があるところが名古屋という場合は、名古屋税関ですね。基本的には横浜税関で通関しなきゃだめだというふうになっていたわけですね、この特定輸出申告制度というのは。それを今回は名古屋税関でもいいよと。

 その話というのは、制度導入前、最初から、二年前から、業者から要望はありました。そして、私も質問をいたしました。例えば、今の申告官署、それは昨年、当時の竹内関税局長が、必要に応じ検査を行うということが安全等の観点からして必要であるため、一般の貨物と同様に、どこの税関へも自由に申告させるということは現在では適当ではないというふうに局長はおっしゃっています。

 この一年で、どのような事情で適当になったんでしょうか。どのような事情変化があって今回そうするのか、教えてください。

尾身国務大臣 この一年間の実績を見て、違反行為等の特段の事情も見られず、かつ、利便性の向上についての利用者の御要望もございましたので、このたび、先ほど申し上げたようなことにしたわけであります。

田村(謙)委員 新しい制度を導入するときに、いろいろありましたよね、市場化テストとか、あるいは構造特区とか。何らかの規制緩和をやるときにどこかで試すというのはわからなくはないんですけれども、結局、国際競争ですよね。国際物流も、アジアも台頭してきた、そういう中で、日本の優良企業、この特定輸出申告制度を使えるようなというかコンプライアンスがしっかりした優良企業の物流の迅速化についていかにバックアップをしていくかというのが、基本的に、もうずっと大臣もおっしゃっておられる、国際物流の高度化に対応した物流促進だということだと思います。そのための制度だったわけですよね。それを、私も業者から聞いた話ですけれども、業者も当然優良な業者だと思いますけれども、その業者がずっと、もう導入前から訴えてきたと。それが結局、利用者が少な過ぎたな、ではもうちょっとふやすためにそうしようかと。

 違反がないからと、そもそもこの適用される業者というのはコンプライアンスがしっかりしているんです。審査なさって許可しているわけですから、違反がないのは当たり前のことなので、日本でそういうふうに選ばれた八社が違反を犯しているようでは、そんな国じゃないですよね、日本は。その八社、わずか八社で違反がなかったから、逆に、そんなのろのろの制度の導入で、本当に国際物流の高度化に対応できるとお思いになりますか。

尾身国務大臣 実績をよく見ながら、前向きの姿勢で今後とも対応していきたいと思っております。

田村(謙)委員 前向きというのは、大体官僚答弁だと、前向きというのはほとんどやらないことも入っているわけですけれども。

 実際、本当に国際物流の高度化に対応しようというのであれば、それこそアメリカのように、輸出については届け出制にするというような方向性もあるわけですよね、私はその方がいいと思いますけれども。そうじゃないとしても、何かこの程度の、まさに本当に優良企業、八社とかいったら超優良企業ですね。十社、二十社でも、日本だったら多分百社、二百社でも優良企業だと思いますけれども、そういった企業で違反がない、裏返して言うと、それだけそういった企業のコンプライアンスについて信用していない。もちろん、それぞれ大企業でも不祥事はありますからわかりますけれども、各国の流れを見た中で、やはりアメリカ、EUを見ていると、日本のそういう石橋をたたいて渡るというのが、国際物流の高度化に全然対応していない、後手後手に回っているという一つのあらわれだと思います。

 申告官署を二つ、三つにして、それで違反がないという、逆に言うと、税関さんの中で、それぞれの税関で連携がとれていない、これだけ電子化が進んでいる中で。今までは、特定輸出申告制度を利用できる優良企業が、例えば横浜だったら横浜税関じゃなきゃだめなんだ、本社がある名古屋じゃ心配ですね、違反があるかもしれませんねというのは、全く説明がつかないというのは大臣御自身も十分おわかりなんじゃないかなと思います。申告官署を、自由化じゃないですけれども、若干、二カ所、蔵置場所、蔵置場所ですから置いてある場所、倉庫ですね、会社の倉庫を管轄する税関と、そして船積みの港かあるいは空港を管轄する税関、二カ所にふやしたというのは余りに遅過ぎる。そこまで優良企業を信用せずに石橋をたたいていては、とても国際物流の高度化には対応できないということを強く申し上げたいと思います。

 これは、申告官署というのは一つの例ですので、通関手続のまさに迅速化、あらゆるところにおいて日本はおくれています。ぜひともしっかりと、別に細かいところまで大臣に知っていただきたいと私は思っておりませんので、C―TPATと、あとEUの流れというのはある程度、最低限は把握をしていただいて、日本の制度はどうなのかというのは、ぜひとも大臣から関税局にハッパをかけていただくというのがやはり経産省御出身の大臣の役目だということを重ねて申し上げたいと思います。

 この通関の話についてはこれで終わりにいたしまして、一点、もう時間も限られていますけれども、一つ全く別の、今回の改正の中でEPAについての話がありますよね。経済連携協定関連規定の整備という、全く通関と別の項目、ただ、大きな項目であると思います。

 現在、二国間で経済連携協定などを結ぶ際には、関税暫定措置法において、それぞれ、例えばシンガポールと結ぶと、シンガポールとの間のセーフガードについて第七条の八を追加する、そして、メキシコとまた協定を結べば第七条の九というふうに、一つ一つ追加をしていく。それはそのたびにこの財務金融委員会で審議をして、追加をしていったというものであったと思いますけれども、二国間の、日本と相手国のセーフガード、そして関税割り当て、その二種類について、それぞれ相手国が違ってもかなり共通するから、それをまとめてしまう、ある意味一般規定にしてしまうという改正だというふうに大まかに私も理解をしているわけです。

 これについてお伺いしたいんですが、今までは個別にこの財務金融委員会で審査をしていたわけですよね。それが、一般規定をつくって、要は今後、どんどんEPAというのはいろいろな国と日本は推進をしていくべきだ、日本はまだまだ遅いと私は思っておりますけれども、今後、いろいろな国と経済連携協定を結んでいく際に、結局、財務金融委員会ではもう審議はしないということなんでしょうか。

尾身国務大臣 二国間のセーフガードの発動要件や、あるいは二国間の関税割り当ての対象品目、税率といった経済連携協定の実質的内容につきましては、関税暫定措置法ではなく協定本体において規定されているところでありますが、経済連携協定本体については、今後ともその署名の都度御審議いただくことになるものと考えております。

 一方、経済連携協定が署名される際に、これを実施するための関税暫定措置法の改正が必要となるわけでございますが、その内容は、二国間のセーフガード及び二国間関税割り当てに係る手続の整備を行う技術的なものでございまして、各協定を通じてほぼ同一の内容となっております。今般の改正案におきましては、こうした既存の規定内容を踏まえつつ、今国会中に署名が予定されている複数の協定に対応できるよう規定の整備を行ったものであります。

 仮に、今後の交渉過程におきまして、今般の改正案によっては対応できないような協定が出てきた場合には、改めてこれに対応した改正案を御審議いただくことになるというふうに考えております。

田村(謙)委員 今、経済連携協定の本体を審議するとお答えいただいたと思いますけれども、より具体的に、この国会においてどこで審議をなさるということなんでしょうか。

尾身国務大臣 普通は外務委員会かと思いますが、これは国会の方でお決めになることと考えております。

田村(謙)委員 そうなると、結局、この財務金融委員会の審議から外れてしまうということになると思いますので、その点は、この関税暫定措置法についても関心が高い議員は恐らくたくさんいると思いますので、財務金融委員会で取り上げないのは大変残念だな、それを外務委員会でやるんだったらいいというふうに素直に受け取ることもできないなということを指摘させていただきたいと思います。

 あともう一点、知的財産。

 知的財産侵害物品についても、毎年さまざまな取り締まりの強化というのをしていらっしゃると思いますが、今回は、著作権及び著作隣接権を侵害する物品の輸出してはならない貨物への追加という項目があると思います。これも昨年の十二月の関税・外国為替等審議会の答申を受けたものだというふうに思いますけれども、今回、輸入差しとめ申し立てが受理された商標権等を侵害するおそれのある物品が輸入されようとする際、輸入者から何ら意思が示されない場合には、権利者からの証拠、意見の提出を不要とし、速やかに没収、廃棄できる仕組みを導入するというふうに答申にありますね。

 そして、さらに、これまでの知的財産侵害物品の認定手続には相当の期間を要するとともに、権利者の利益を減損させていたところであり、答申に盛り込まれた手続の簡素化は歓迎されるべきものだというふうに私も思いますけれども、これまで要していた処理の時間を摘発に向ける、ある意味で業務の効率化ですよね、それは非常にいいことだと思います。

 やはり選択と集中ですのでそれはいいと思うんですけれども、認定手続の簡素化については、具体的なところというのが法案に盛り込まれていないようなんですけれども、どのような検討が加えられて、結局どのような簡素化をすることになるのかというのを、もし大臣がおわかりでしたら、教えていただけたらと思います。

尾身国務大臣 知的財産立国の実現を目指して官民挙げて取り組んでいるところでございまして、財務省におきましても、知的財産の保護に関して、水際取り締まりの強化に積極的に取り組んでいるところでございます。

 具体的に申しますと、十五年度以降、取り締まり対象の拡大等、四年連続して知的財産関連の制度改正を行うとともに、厳しい行財政事情のもとではございますが、水際取り締まりの強化のために定員の確保や機構の整備、研修の充実、機器の整備などの体制強化に努めているほか、知的財産取り締まりのための情報交換の規定を盛り込んだ税関相互支援協定締結などの諸外国との連携強化への取り組みも積極的に推進しているところであります。

 こうした取り組みの結果といたしまして差しとめ件数が増加しているところでございますが、今後とも、このようなさまざまな取り組みを通じて、税関における知的財産侵害物品の水際での取り締まりに万全を期してまいりたいと考えております。

田村(謙)委員 ありがとうございました。

 もう時間が終わりましたので、重ねて、先ほど一番議論というか大臣にお伺いをして、私も主張したC―TPAT、これは昨年の経済成長戦略大綱という大変重要な中で一つ掲げられているもので、ただそれが、結局名前だけかりた、中身はまったく別物で、そうすると日本版C―TPATの推進というのがどういう意味なのか結局わからないですけれども、アメリカのC―TPAT、海外の状況を踏まえて、日本の企業の国際競争力が決して損なわれないようにしっかりと制度設計あるいは制度の改善というものをしていただきたいということを重ねて申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

伊藤委員長 午前十一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十時十六分休憩

     ――――◇―――――

    午前十一時二分開議

伊藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 我が国の関税は、国内産業を守る国境措置として重要な役割を果たしてきたと思います。財務大臣にお聞きしますが、関税の役割、これをどのように認識されているか。基本的なことですが、確認をしておきたいと思います。

尾身国務大臣 関税は、WTO協定上認められました国境措置でございまして、現在では、国内産業保護の観点から、国境において内外価格差を調整するという機能を通じ、重要な役割を果たしているものと認識をしております。

 ただし、個別品目に係る関税率水準の策定などの関税政策の企画立案に当たりましては、消費者に与える影響や対外交渉等についても十分に考慮する必要がありまして、国内産業の保護に加え、これらを総合的に勘案することが重要であると考えております。

 今後とも、このような観点を踏まえつつ、適切な関税率、関税制度の設定に努めてまいりたいと考えております。

佐々木(憲)委員 国内産業を保護する、こういう基本的な認識が示されたと思います。

 山本農水副大臣、農業における国境措置について、日本の関税というのはどのような役割を果たしてきたのか、説明をしていただきたい。

山本(拓)副大臣 御案内のとおり、農産品に係る関税は、内外価格差から国内農業を保護する役割を果たしてきていると考えております。

佐々木(憲)委員 農水省が作成した資料によりますと、我が国の農業は、国土条件の制約があり、米国や豪州の農業との間には埋めることができない生産性格差が存在している。関税は、こうした生産性格差を調整するための国境措置としてWTOで認められた手法である。こういうことでよろしいですね。うなずいておられます。

 さてそこで、先月、農水省が、国境措置を撤廃した場合の国内農業への影響という試算を出しておられます。ここにそれがありますけれども、これによりますと、具体的な数字が出ていますが、これはどのような前提のもとで試算したものなのか、試算結果は日本の農産物、農産物加工業にそれぞれどのような影響が出るというふうに見ておられるか、説明をいただきたいと思います。

山本(拓)副大臣 御指摘の試算は、昨年十一月に経済財政諮問会議において、EPAの推進の是非についての議論に関連し、国境措置を撤廃した場合の国内農業への影響に関する試算を早急に公表すべきという要請に基づき、試算をいたしたところでございます。

 その撤廃をした場合の条件、いわゆる前提条件といたしましては、まず一つ目は、何らかの追加的な対策は行わない、二つ目が、国内の農産物需要量は増加しないなど一定の前提を置き、我が国の農産物や農産物加工品等の品質、価格、輸出国の事情等を詳細に分析し、品目別に影響の程度を積み上げる方法により試算を行ったところ、国内の農業生産が約三兆六千億円減少するほか、その影響が国内の幅広い産業に波及し、GDPが約九兆円減少する、これに伴い、約三百七十五万人分の就業機会を喪失する、カロリーベースの食料自給率は現在の四〇%から一二%まで低下するなどの結果になっております。

 また、国境措置を撤廃すれば、こうした直接的な影響だけじゃなく、国土、自然環境の保全など農業が有する多面的機能や、不測時にも、食料を生産し、国民に供給する食料供給力が低下するとともに、農業、食品産業が深刻な打撃を受ける結果、地域社会の崩壊にもつながるなど、農業だけにとどまらず、我が国の社会経済全体に影響が及ぶことが考えられるといたしております。

佐々木(憲)委員 これは、非常に重大な影響が出るということを農水省が試算したものであります。もちろん、一定の前提のもとにですけれども。国境措置を撤廃した場合の国内農業生産の減少が三兆六千億円、GDPの減少が九兆円、失業者が新たに三百七十五万人、食料自給率が四〇%から一二%と、これは本当に壊滅的な、深刻な事態だと思います。そうなってはならないわけであります。

 そこで、もうちょっと具体的に内容について聞きますけれども、この試算の対象としたのは農産物で何品目でしょうか。それから、農産物加工業、これは何業種を試算されましたでしょうか。

山本(拓)副大臣 今回、試算の対象といたしましたのは、米、麦、大麦など二十品目、そして農産物加工業などは、いわゆるそれに関連する十五業種でございます。

佐々木(憲)委員 わずか農産物二十品目なんですね。これはもちろん、国境措置を撤廃すると影響が大きいものを選んだということでしょうけれども。それから、農産物加工業で十五業種ですよ。当然、これ以外にも、農産物、影響を受けるものはあるわけであります。それから、加工業も影響を受ける業種があると思うんですね。

 したがって、これはどちらかといえば比較的少な目に出ていると私は思うんですけれども、そういう影響も全体として考えますと、影響はさらに大きなものになると思うんですが、いかがでしょうか。

山本(拓)副大臣 確かに今回の想定金額は、最低これ以上ということでございまして、そのほかに、日本で余りつくっていないバナナとかパイナップルとか、一部沖縄でつくっておりますが、そこらに与える影響というのはなかなか、責任を持った数字というのがはっきりはじき出せませんでしたので、とりあえずは、最低、責任を持って出せる数字だけ出させていただいて、いわゆるそれ以上というふうに御理解いただければ結構だと思っております。

佐々木(憲)委員 つまり、最低の影響でもこのぐらいの深刻な事態になるというわけでありまして、私は非常に大きな衝撃を持って受けとめたわけです。

 今回提案をされております関税定率法改正案によりますと、後発開発途上国、LDCへの特恵関税制度の改正で、農産物一千品目について新たに無税無枠措置を拡大するということになっております。その中には、高関税で保護してきた農産品が入っております。典型的なのがコンニャクイモであります。

 これは、これまで何%の関税だったでしょうか。

青山政府参考人 お答え申し上げます。

 コンニャクイモでございますが、関税割り当て制度の対象となっておりまして、関税率でございますが、関税割り当てを受けて輸入されるものにつきましては四〇%、それ以外のものが、キログラム当たり二千七百九十六円でございます。

佐々木(憲)委員 関税率でいうと何%になるんですか。

青山政府参考人 約一七〇〇%程度でございます。

佐々木(憲)委員 つまり一七〇〇%であります。まあ、一七〇六%と聞いておりますけれども。これは、国内の産地を守るために、コンニャクイモの国内精粉価格が国際価格と比べて比較的高い、したがって、その国境措置として措置をされているものであります。

 念のために、国内の価格と輸入価格、これはどうなっているでしょうか。平成十七年の数字を示していただきたい。

佐久間政府参考人 お答えいたします。

 平成十七年度におきますコンニャクイモの精粉価格でございますが、全国蒟蒻原料協同組合連合会調べによりますと、一キログラム当たりにいたしまして一千八百四十五円、輸入価格につきましては、貿易統計によりますと、一キログラム当たり三百四十九円となっているところでございます。

佐々木(憲)委員 今お示しいただきましたように、国内価格は一千八百四十五円、国際価格が三百四十九円であります。

 二枚目の資料を、皆さんのお手元にあると思いますが、見ていただければ、右側の方に輸入価格がございまして、その一列左側に精粉価格、この二つが並んでおりますけれども、ともかく、国際価格と国内価格を比べますと、これは高い関税で守らなければ、到底、国内のコンニャクイモの産地は崩壊してしまうというものであります。

 例えば一九八〇年、八三年、このあたりを見ますと、八三年は十八倍であります。その十八倍の価格をベースに現在の高い関税が決められてきたわけです。一九八九年には二十三・二倍、こういう落差も生まれているわけでありますから、当然、国境措置というものは、国内を守るという意味で大変重要な役割を果たしたというふうに思います。

 そのコンニャクイモの関税が今回はゼロになるわけですね。いきなり一七〇〇%からゼロ、こういうふうになってしまうわけで、これは衝撃が極めて大きいと思うんです。

 そこで、農水副大臣に聞きますが、国境措置を撤廃した場合の国内産業、国内農業への影響では、コンニャクの国境措置がなくなったとき、どのような影響が出ると試算をしているか、紹介していただきたいと思います。

山本(拓)副大臣 御案内のとおり、最後は日本の消費者の判断でございまして、確かに内外価格差は、コンニャクで、スーパーに国内産が六百円だったら外国産が百円ですから、みんな国産を買うという人がふえれば影響がないわけでありますが、通常、品質が変わらなければ安い方を選ぶということであれば、仮にコンニャクイモについては、生芋を原料としている品質面等で優位な一部の国産製品を除き、生産量の九割が外国産品と置きかわり、コンニャク精粉加工品については、精粉の内外価格差が大きく、かつ品質格差がないことから、生産量の全量が外国産品と置きかわり、精粉加工業者のほぼすべてが撤退をすると予想されております。

 この場合の生産減少額については、コンニャクイモについては国内生産額の九割に当たる百億円、コンニャク精粉加工業については国内生産額の全額に当たる百三十六億円との試算結果となっております。

佐々木(憲)委員 これは極めて衝撃的な数字であります。

 お配りした資料の三枚目を見ていただきたいんですが、中段から下のところに、品目、コンニャクイモというのがありますね。国境措置が撤廃された場合、国内生産額百十一億円が、百億円が消えてしまうわけですから、九〇%生産が減少するわけであります。

 次のページをあけていただきますと、これは加工業ですが、ちょうど真ん中のところにコンニャク精粉加工業、百三十六億円の生産額ですけれども、減少額が百三十六億円。つまり、一〇〇%これがなくなってしまう、ゼロになるということで、これは非常に大きな衝撃度であります。

 もちろん、これは数字上の、机上の計算だと言えばそれまでかもしれませんが、しかし、全部国境措置を撤廃して、現在の国際価格が国内に入ってきた場合にはこのような影響が出るということですから、非常に私は深刻だと思うんです。

 そこで、コンニャクイモの生産農家の数、コンニャク精粉加工業者の数、これを示していただきたい。

佐久間政府参考人 お答えいたします。

 群馬県におきますコンニャクイモの生産農家数でございますが、農林業センサスによりますと、平成十七年二月一日時点におきまして、二千二百七十二戸となってございます。

佐々木(憲)委員 精粉加工業者の数は。

佐久間政府参考人 申し上げますが、精粉業者につきましては、業者をカウントする悉皆調査といいますか、調査がちょっとございませんので、わかりません。申しわけございません。

佐々木(憲)委員 これは大変大きな影響が出ると思います。先ほどの数字を見ましても、精粉加工業者の方が数字が大きいわけでありますから、農家よりももっと大きな影響が出る可能性がある。

 農家で二千二百七十二戸でありますが、家族を入れますとこれはもっと当然大きくなるわけでありまして、何千人という方々が生業を失ってしまうというわけであります。加工業者も入れますと万の単位であります。

 尾身大臣にお聞きしますけれども、日本のコンニャクイモの産地が一番多いのはどこだと思いますか。

尾身国務大臣 我が群馬県でありまして、しかも、私の選挙区が一番多いと思っています。

佐々木(憲)委員 大臣の地元じゃないですか。地元でこんなに大きな影響が出るわけであります。

 農水省の資料によりますと、全国の生産量の九割が群馬県です。そのほとんどが大臣の地元なんですよ。

 群馬県には六十六の市町村が現在ございます。その中で、コンニャクイモの産出額が農業産出額の一位から三位を占めている市町村、これは幾つあるでしょうか。

佐久間政府参考人 平成十六年の農業所得統計によりますと、当時の群馬県下におきます全市町村数、六十六ございますけれども、このうち、コンニャクイモの産出額が農業産出額の一位を占めておりますのが十市町村、二位を占めておりますのが五市町村、三位を占めておりますのが七町村でございまして、都合二十二市町村におきまして一位から三位のいずれかを占めている、こういうことになってございます。

佐々木(憲)委員 六十六の自治体のうち、二十二の自治体がコンニャクイモの生産が一位から三位です。つまり、それによって成り立っていると言ってもいいほどの非常に大きな産地であります。

 それが非常に大きな打撃を受けるわけで、国内最大の産地であります群馬県で、ミャンマーからの輸入自由化に危機感を持って、これは困るという反対運動を展開されております。輸入が増加すれば、価格が低下し、生産農家や加工業者に深刻な打撃がある、こういうふうに見ているわけです。

 例えば、JA群馬中央会の奥木会長はこういうふうに言っております。安い農産物が入ってくると、生産コストの高い国産品は太刀打ちできない。条件格差解消のため国際的に認められているのが関税措置であり、その大幅な引き下げは生産者に壊滅的な打撃を与えかねない。こういうふうにおっしゃって危機感を表明しているわけです。また、群馬県知事も、あるいは群馬県議会も、危機感を持って、要望書あるいは決議文を出しております。

 大臣はこのことを御存じですか。

尾身国務大臣 存じております。

佐々木(憲)委員 知っていながらこれだけの重大な打撃を与える政策を実行するというのは、極めて私は重大だと思いますね。

 農水省はこれに対してどのような措置をとろうとしているのか、具体的に説明していただきたい。

山本(拓)副大臣 今のミャンマーは、いわゆる先生のおっしゃるLDCの関係でお話をされておられるんでしょうか。(佐々木(憲)委員「そうです」と呼ぶ)LDCということであるならば、御案内のとおり、日本で輸入しておりますコンニャクイモのミャンマーの比率は、全体の一・五%未満でございます。

 そういう中で、今回のLDCの無関税枠の範疇で仮に拡大になった場合、特にミャンマーについては、自生の芋でございますので、大体生産量は決まっております。だから、仮にそれが拡大されていくようになったときには、セーフガードではございませんが、エスケープクローズというものが発動が認められておりますので、農水省としてその発動申請をいたすことといたしております。

佐々木(憲)委員 ミャンマーのコンニャクイモの実態、確かに自然に自生している芋の採取がほとんどでありますし、加工技術が貧弱であるということですから、急には拡大はしないでしょうが、しかし、これは拡大の可能性が非常に高まってくるわけです、ゼロになりますから。

 現地でも、生産をふやしたい、コンニャクイモの出荷をふやしたいという意欲を示しているという情報もありますし、あるいは日本の企業がミャンマーに進出して開発輸入をするということも十分考えられるわけであります。ですから、いや、まだ大丈夫だ大丈夫だと言っても、これはそう簡単に大丈夫論でだまされないと思いますよ、現地の人は。コンニャクイモは、確かに三年周期だと聞いていますけれども、影響はじわじわと、徐々に出てくるわけであります。

 それから、エスケープクローズのお話もありましたが、今までこれを発動されたことは一度もないんじゃないですか。一度かありますか。

山本(拓)副大臣 基本的には、今までございません。

 そして、先ほど先生おっしゃったように、それは日本の企業が資本投下して生産拡大するじゃないかという話でありますが、このエスケープクローズは、WTOのどうのこうのというよりも、国内で、いわゆる財務大臣が最終決定権者でございます。権限は国内に与えられておりますので、今回のLDCの枠を前内閣で決定されたのは、言い方にちょっと誤解があると悪いですが、いわゆるかなり低開発の国に対して少しいろいろな意味で援助しようという政策で決定されたわけでありまして、その意味では、その決定の根拠となりましたのは、数字的に影響を及ぼさない。

 しかし、御案内のとおり、そこに目をつけて、ほかの資本がそこに工場をつくったりということになれば国内問題としてストップをかけられるという仕組みになっておりますので、そういう御懸念はないと考えております。

佐々木(憲)委員 これは全く甘いですね。エスケープクローズというのは一度も発動されたことがないわけですし、セーフガードだって発動されたことがないわけであります。

 だから、そういう意味で絵にかいたもちでありまして、しかも、数字によって、幾らふえたら自動的に発動するというものではないでしょう。今まで、アメリカなどは数字で具体的に決まっていますけれども、非常にあいまいなんですよ。

 ですから、外国から輸入されても、じわじわとふえてくるものに対してはまともに対応できない。みずから農水省は試算をして、国内がもう壊滅的な打撃になると言いながらこれをあけていくということは、私は、全く、実際に説明していることとやっていることが逆だと思うんですね。

 今度こういうことを決めた場合、その影響は大変私は深刻であるというふうに思います。

 それからもう一つ、先ほども議論がありましたが、EPAにおける関税包括規定の問題。これは、今の制度は、署名から発効までの間に、EPAを実施するための関税率の軽減、廃止の規定が置かれている関税暫定措置法を協定の国ごとに国会で審議する、こういう仕組みになっていますが、先ほどの答弁では、これはもう包括的に、一度決めたら一つ一つはやらないんだと。こうなりますと、これは、国会の審査機能が弱体化してしまうわけであります。

 私は、以上の点を考えますと、確かに、今回一定の、沖縄への関税優遇措置の延長など賛成できる部分もありますけれども、全体としていいますと、今回の関税暫定措置法の改正案についてはマイナス面が非常に多いということで、私どもは反対の態度もここで表明をさせていただきたいというふうに思います。

 以上で質問を終わらせていただきます。

伊藤委員長 次に、原田憲治君。

原田(憲)委員 自由民主党の原田憲治でございます。財務金融委員会におきまして初めて質問をさせていただきます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 まず、にせブランド品などの知的財産侵害物品の輸入が増加しておりますけれども、現状において、どの国からの物品が多く差しとめられているのか、また、どのような物品が多く差しとめられているのか。そして、知的財産侵害物品については水際においてしっかりと流入を阻止すべきと考えておりますけれども、税関においてはどのような取り組みを行っておられるのか、お尋ねをいたします。

青山政府参考人 お答え申し上げます。

 知的財産侵害物品の輸入差しとめ件数でございますが、これは年々増加しておりまして、平成十八年におきましては、対前年比四六%増の一万九千五百九十一件と、過去最高になっているわけでございます。このうち、国別に見ますと、中国からのものが九千四百四十件ということで約四八%、韓国からのものが八千七百二十件ということで約四五%ということでございまして、両国からのものがほとんどでございます。

 品目でございますが、件数別で見ますと、ハンドバッグあるいは財布などのバッグ類が全体の約五七%を占めておりまして、次いでキーケース等のたぐいでございますが、これが一二%を占めているわけでございます。点数別で見ますと、バッグ類が全体の二九%、それから、あと衣類等が約一八%となっているわけでございます。

 税関当局におきましては、過去、当委員会におきますいろいろな関税改正の審議等を踏まえて、制度改正なり、あるいは人員の充実なり、さらに、いわゆる検査機器等を含めて、いろいろな形で税関の水際での取り締まりを強化するような形でやっておるわけでございますし、あと、職員のレベルアップということもございますが、これは、研修なり、あるいは弁理士さんの採用ということも行わせていただいております。

 以上でございます。

原田(憲)委員 にせものとわかって買う人も多いように聞いておりますし、実際、そういう専門業者といいますか、露店で売って取り締まりを受けておるようなこともテレビのニュース等でよく見ますので、しっかりその辺は対応していただきたいと思います。

 次に、法令遵守にすぐれた輸出入者に対する簡易申告制度や特定輸出申告制度については、関税関係だけではなくて、一般の国内法令に関しても法令遵守にすぐれた輸出入者であるかどうかを見きわめる必要があると思いますが、そのような基準は持っておられるのか、お尋ねをいたします。

青山政府参考人 御指摘のとおりでございますが、法令遵守にすぐれた輸出入者に対します簡易申告制度及び特定輸出申告制度、これを適正に運用していくためには、当該輸出入者におきまして、関税法あるいはさらに、その政省令だけではなく、関税法関係以外の法律あるいは政省令についても遵守する体制が整っている必要がございます。

 昨年の三月に導入されました特定輸出申告制度、これは輸出の方でございますが、本制度を利用したいとして特定輸出者の承認申請があった場合におきましては、過去の一定期間内におきまして、関税法のみならず、関税法以外の他の法令についても違反したことがないか等を審査いたしまして、違反があった場合は、これは特定輸出者の承認をしないということにしてございます。

 また、簡易申告制度、これは輸入でございますが、輸入につきましては平成十三年三月からやっておりますが、これにつきましては、輸入者におきます法令遵守を高度化するということで一層のセキュリティーの確保を図りましょうという観点から、今回お願いしています法案の中に、税法以外の他の法令につきましても、過去の一定期間内におきます法令違反の有無を審査することとしているわけでございます。

 もちろん、一たんこういうような制度の利用を認められた上で承認を受けたということになりましても、事後的な監査を行うことによりまして新たな違反があった場合につきましては、もちろんその承認を取り消すことができるということになっておりますし、この事後的ないわゆるチェック体制もやるということになってございます。

 いずれにいたしましても、国際物流におきますセキュリティーの確保、さらには効率化ということでございます。こういうことを通じまして我が国の国際競争力を強化するという観点から、簡易申告制度、これは輸入でございます、特定輸出申告制度、これは輸出でございます、これを利用します輸出入者につきましては、その法令遵守が整っているかどうかということにつきまして、今後とも、事前の厳正厳格な審査とあわせまして、事後のチェックを適正に行ってまいりたいというふうに考えております。

原田(憲)委員 次に、最近、金属製品の盗難事件が社会問題になっておりまして、海外へ不正輸出されているのではないかとの懸念もございます。

 金属製品などの盗難品の不正輸出防止について、これは簡単ではないと思いますけれども、税関ではどのような対応をとっていかれるのか、また、きちんと取り締まりがなされるように他省庁とも連携をとるべきではないかと考えますが、その点、いかがでしょうか。

青山政府参考人 委員御指摘のとおり、最近、さまざまな金属製品の盗難事件というのが相次ぎ発生しておりまして、その一部が海外へ不正に輸出されているのではないかという御指摘があるわけでございまして、私どもといたしまして、取り締まりの徹底を図っているところでございます。

 そもそも貨物を輸出しようとする場合におきましては、関税法の第六十七条によりまして、税関長の輸出の許可を受けなければならないというふうになっておるわけでございますが、その際は、関税法の七十条というのがございまして、関税関係法令以外の法令によりまして輸出または輸入に対しまして許可、承認を必要とするような貨物につきましては、その許可、承認を受けているという旨を税関に証明するということになってございまして、この証明がなされない貨物につきましては輸出の許可ができないということになっておるわけでございます。

 私ども税関におきまして、輸出申告されました貨物でございますが、他の法令で規制されているかどうかということにつきましては、書類の審査なり、あるいは必要に応じまして貨物の検査なり現物の確認を行っているというわけでございまして、先生御指摘の他省庁との関係で申し上げますと、金属スクラップ等でありますと、廃棄物等の輸出入規制を所管いたします環境省、廃棄物リサイクル対策法でございますが、そこと、あと経済産業省と十分に連携をとりながら不正輸出の防止に努めているところでございます。

 なお、盗品というような、どうもおかしいなということになった場合におきましては速やかに警察に通報するということで適切に対処することとしておりまして、これらの点につきましては、昨今、こういう盗難事例が発生するということも踏まえまして、改めて全国の税関に指示したところでございます。

 いずれにいたしましても、今後とも、関係省庁の連携を一層密にしながら、盗難された金属製品が不正に輸出されることがないように適切に対処したいというふうに考えております。

 以上でございます。

原田(憲)委員 しっかりと税関の方でチェックをしていただきたいと思います。日本ではごみとして扱われるようなものでも、外国へ輸出して人件費の安いところで十分製品として採算がとれるというようなこともありまして、ごみなのか資源なのかというような議論も起こっておるようでございますので、その辺もひとつ対応をよろしくお願いいたしたいと思います。

 余り時間もありませんので、最後に、深刻化する社会悪事犯、今言ったような問題もそうですけれども、それへの対応、そして、北朝鮮対策等に係る厳格な法執行に対応するために必要な罰則水準の見直しが法案に盛り込まれておりますけれども、北朝鮮に対する制裁措置に伴い、税関においてはどのように対応していかれるのか、お尋ねをしたいと思います。

尾身国務大臣 北朝鮮に対しましては、国連安保理決議の第一六九五号及び一七一八号に基づきまして、あるいは我が国の独自の対応として、一つは、北朝鮮を原産地または船積み地域とするすべての貨物の輸入の禁止、北朝鮮を最終仕向け地とする奢侈品の輸出禁止等の制裁措置がとられてきたところであり、税関におきましては、これらの措置が潜脱されることのないよう厳格な法執行に努めているところでございます。

 特に迂回輸出入の防止を図るという観点から、中国等の周辺諸国から迂回輸入が懸念される輸入申告があった場合には貨物の原産地を、中国等周辺諸国への奢侈品の輸出申告があった場合には輸出貨物の最終仕向け地を一層厳正に確認するなどの措置を講じているところでございます。

 なお、迂回輸出入を防止するための措置につきましては、中国の税関当局等と、原産地証明に関して連携しつつ対応しているところでございます。

 さらに、今回御審議をいただいている関税定率法等の一部を改正する法律案におきましても、北朝鮮対策等に係る厳格な法執行にも配慮しながら、税関の水際取り締まり全般に係る罰則水準の引き上げを行うこととしたものであります。

 今後、この改正の意義を生かしつつ、違反行為が発見された場合には、関係省庁と緊密な連携を図り、より一層厳正に対処し、北朝鮮に対する制裁措置の実効性の確保に努めてまいりたいと考えております。

原田(憲)委員 税関の官吏というのは大変なお仕事だと思いますけれども、先般、北朝鮮へ寄って日本へ入ってきておるのに、寄っていなかったというような申告をした船もありました。大変大きな問題だと思いますけれども、余り国内では大きな問題としてとらえられていないんじゃないかな、私はこんなふうに思いますけれども、大変な問題だと思います。例えば、逆に、中国へ輸出するというようなことを名目にして中古の自転車、放置自転車等を輸出しておいて、その行き先が北朝鮮であったというようなことも出てこようかと思いますので、その辺をしっかりと対応していっていただきたい、このように存じます。

 最後に、豚肉の問題についてお尋ねをしたいんですが、差額関税制度というのを悪用して、関税逃れが後を絶たないということであります。税関では、不正輸入を行う者に対してどのような取り締まりを行っておられるのか、その点について少しお尋ねをしたいと思います。

富田副大臣 税関におきましては、豚肉の輸入申告に係る価格の審査や、必要に応じた現品検査等を慎重に行っております。また、輸入許可後におきましても必要に応じて事後調査を行い、仕入れ書価格の妥当性等についてチェックを行っているところであります。さらに、こうした審査、検査や調査の中で、偽りその他不正な行為により関税を免れた事実があると思料されるときは、関税法違反嫌疑事件として検察当局と協力して徹底した犯則調査を実施するなど、厳正に対応してきているところであります。

 この結果、最近におきましては大口の事犯を相次いで摘発しているところであり、今後とも、差額関税制度のもと、輸入価格を偽ることによって関税を免れる不正輸入に対しましては厳正に対処していく所存であります。

原田(憲)委員 先ほども申し上げましたけれども、北朝鮮への輸出入の問題、あるいは、関税といいますか、税金逃れのいろいろな事案、それから、にせブランド、これも私は申し上げましたけれども、どうも日本の国内において、知的財産侵害商品、にせブランド品、このことに対して国民の皆さんが余り罪の意識を持っていないのではないか。これは大変な問題だと思います。

 先ほど申し上げましたけれども、にせものとわかって物品を購入しておる。例えば、十万円の品を一万円で買えるんだから、それはにせものであるのは当たり前だとわかった上で購入しておる。これは私は犯罪行為に匹敵するものだと思いますし、また、実際、わかって購入した場合には犯罪に該当するということになるのかもしれません。

 そういった問題を多く含んでおりますので、税関の官吏の皆さん、大変だと思いますけれども、入ってくると取り締まりができない、税関ではもう無理なわけですね、ほかの省庁の取り締まり対象になってこようかと思います。そういった点で、しっかりとひとつ輸入製品について、見張ってといいましょうか目を配っていただきたい、このように思います。

 以上で私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

伊藤委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党を代表して、関税定率法等改正案に対する反対討論を行います。

 反対の第一の理由は、経済連携協定、EPAに係る改定の問題であります。

 EPAは、関税率の軽減、廃止により国内産業に重大な影響を与えます。また、その影響が協定ごとに違うことは、この間の締結された協定や農水省の試算でも明らかであります。にもかかわらず、本法案により、EPA締結ごとの財務金融委員会での法改定の質疑が今後不必要とされます。これは国会のチェック機能を低下させることであり、反対であります。

 第二の理由は、後発開発途上国に対する特恵関税制度改定の問題であります。

 今回の措置は、WTO香港閣僚会議の合意に従い、後発開発途上国五十カ国への無税無枠措置の対象品目を、現行の約八六%から約九八%まで拡大するものです。しかし、新対象品目の中に、これまで高関税で保護してきたコンニャクイモなどの農産品が含まれており、国内産地では重大な影響を懸念する声が上がっております。コンニャクイモのように地域を挙げて育成してきた地場産業を壊滅させる懸念を生じる内容には、後発開発途上国への支援とはいえ、賛成することはできません。

 その他にも、UR合意で関税化した米、麦などの暫定関税率の一年延長が日本の農業を弱体化させる一要因となること、簡易課税制度、特定輸出申告制度の緩和措置や保税地域の許可特例措置などが通関行政を弱体化させかねないなど、本法案には重大な問題をはらむ内容が盛り込まれています。

 本法案には、米、麦など十一品目と牛肉、豚肉の特別緊急関税制度の一年延長や沖縄への関税優遇措置の延長など賛成できる部分も含まれていますが、既に述べたように、国民の利益に反する内容が含まれており、全体として本法案には反対をいたします。

 以上で反対討論とさせていただきます。

伊藤委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 これより採決に入ります。

 関税定率法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

伊藤委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、宮下一郎君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党の三派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。宮下一郎君。

宮下委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    関税定率法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。

 一 関税率の改正に当たっては、我が国の貿易をめぐる諸情勢を踏まえ、国内産業、特に農林水産業及び中小企業に及ぼす影響を十分に配慮しつつ、国民経済的観点に立って国民生活の安定に寄与するよう努めること。

   なお、関税の執行に当たっては、適正・公平な課税の確保により一層努めること。

 一 高度情報化社会の急速な進展により、経済取引の国際化及び電子商取引等の拡大が進む状況下で、税関における事務の一層の情報化・機械化を図るとともに、従来にも増した執行体制の整備に特段の努力を行うこと。

 一 最近におけるグローバル化の著しい進展による貿易量、出入国者数の伸長等に伴う業務量の増大、銃砲、覚せい剤等不正薬物、知的財産侵害物品、ワシントン条約該当物品、テロ関連物資等に係る水際取締りの国際的・社会的重要性、経済連携協定の進展による貿易形態の一層の複雑化の様相にかんがみ、高度の専門知識を要する税関業務の特殊性、国際郵便物の通関手続を含めた今後の国際物流のあり方等を考慮し、職務に従事する税関職員の定員の確保はもとより、その処遇改善並びに機構・職場環境の整備・充実、更には、より高度な専門性をめざした人材の育成等に特段の努力を行うこと。

   特に、国民の安心・安全の確保を目的とするテロ・治安維持対策の遂行及び後発開発途上国に対する無税無枠措置の拡充に伴う原産地規則の適正な運用に当たっては、その重要性に十分配慮した定員の確保及び業務処理体制の実現に努めること。

以上であります。

 何とぞ御賛成賜りますようよろしくお願い申し上げます。(拍手)

伊藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

伊藤委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。財務大臣尾身幸次君。

尾身国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配慮してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

伊藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十一分散会


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