衆議院

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第4号 平成20年2月20日(水曜日)

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平成二十年二月二十日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 原田 義昭君

   理事 大野 功統君 理事 奥野 信亮君

   理事 後藤田正純君 理事 田中 和徳君

   理事 野田 聖子君 理事 中川 正春君

   理事 松野 頼久君 理事 石井 啓一君

      石原 宏高君    小川 友一君

      越智 隆雄君    木原  稔君

      佐藤ゆかり君    鈴木 馨祐君

      関  芳弘君    谷本 龍哉君

      とかしきなおみ君    土井 真樹君

      中根 一幸君    萩山 教嚴君

      林田  彪君    原田 憲治君

      広津 素子君    馬渡 龍治君

      松本 洋平君    宮下 一郎君

      盛山 正仁君    山本 有二君

      池田 元久君    小川 淳也君

      小沢 鋭仁君    大畠 章宏君

      階   猛君    下条 みつ君

      鈴木 克昌君    田名部匡代君

      平岡 秀夫君    古本伸一郎君

      大口 善徳君    佐々木憲昭君

      野呂田芳成君    中村喜四郎君

    …………………………………

   内閣総理大臣       福田 康夫君

   財務大臣         額賀福志郎君

   国務大臣

   (金融担当)       渡辺 喜美君

   内閣府副大臣       山本 明彦君

   財務副大臣        森山  裕君

   農林水産副大臣      今村 雅弘君

   国土交通副大臣      平井たくや君

   財務大臣政務官      宮下 一郎君

   政府参考人

   (内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部長)   大脇 広樹君

   政府参考人

   (財務省大臣官房総括審議官)           鈴木 正規君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   香川 俊介君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   木下 康司君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    加藤 治彦君

   政府参考人

   (財務省国際局長)    玉木林太郎君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           菊川  滋君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           小川 富由君

   参考人

   (日本銀行総裁)     福井 俊彦君

   財務金融委員会専門員   首藤 忠則君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十日

 辞任         補欠選任

  とかしきなおみ君   馬渡 龍治君

  小沢 鋭仁君     田名部匡代君

同日

 辞任         補欠選任

  馬渡 龍治君     とかしきなおみ君

  田名部匡代君     小川 淳也君

同日

 辞任         補欠選任

  小川 淳也君     小沢 鋭仁君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 平成二十年度における公債の発行の特例に関する法律案(内閣提出第二号)

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三号)

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

原田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、平成二十年度における公債の発行の特例に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。財務大臣額賀福志郎君。

    ―――――――――――――

 平成二十年度における公債の発行の特例に関する法律案

 所得税法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

額賀国務大臣 ただいま議題となりました平成二十年度における公債の発行の特例に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。

 まず、平成二十年度における公債の発行の特例に関する法律案について御説明申し上げます。

 平成二十年度予算編成に当たっては、これまでの財政健全化の努力を緩めることなく、社会保障や公共事業など各分野において、経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇六で定められた歳出改革をその二年目においても着実に実現をし、歳出改革路線を堅持する中で、成長力の強化、地域の活性化、国民の安全、安心といった課題に十分に配慮して予算の重点化を行っております。

 これらの結果、新規国債発行額については、税収の伸びが小幅にとどまる中、歳出歳入両面において最大限の努力を行い、二十五兆三千四百八十億円にとどめて、四年連続の減額を実施したところであります。しかし、なお引き続き特例公債の発行の措置を講ずることが必要な状況となっております。

 本法律案は、こうした厳しい財政事情のもと、平成二十年度の財政運営を適切に行うため、同年度における公債の発行の特例に関する措置を定めるものであります。

 すなわち、本法律案において、平成二十年度の一般会計の歳出の財源に充てるため、財政法第四条第一項ただし書きの規定による公債のほか、予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行することができることとするなどの特例措置を定めております。

 次に、所得税法等の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。

 政府は、現下の経済財政状況等を踏まえ、持続的な経済社会の活性化を実現する等の観点から、公益法人制度改革に対応する税制措置を講ずるとともに寄附税制の見直しを行うほか、法人関係税制、中小企業関係税制、金融・証券税制、土地・住宅税制、国際課税、道路特定財源諸税等について所要の措置を講ずるため、本法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、民間が担う公益活動を推進する観点から、公益社団・財団法人等について収益事業課税を適用するほか、公益社団・財団法人が収益事業から公益目的事業の実施のために支出した金額を寄附金の額とみなすなど、新たな法人類型に係る税制上の措置を講ずることとしております。

 第二に、法人関係税制について、研究開発投資を促進する観点から、試験研究費の総額に係る税額控除制度と控除可能限度額を別枠とする追加的な税額控除制度の創設等を行うこととしております。

 第三に、中小企業関係税制について、一定の特定中小会社に出資した場合に寄附金控除を適用する制度を創設するほか、教育訓練費に係る特別税額控除を教育訓練費が増加しない場合でも総額の一定割合を税額控除できる制度への改組等を行うこととしております。

 第四に、金融・証券税制について、金融所得課税の一体化に向け、上場株式等の譲渡益及び配当に係る軽減税率を廃止し、譲渡損失と配当との間の損益通算を導入するとともに、これらを円滑に実施するため、平成二十一年及び二十二年の二年間の特別措置等を講ずることとしております。

 第五に、土地・住宅税制について、土地の売買等に係る登録免許税の特例の適用期限を延長する等の措置を講ずるほか、住宅の省エネ改修促進税制の創設等を行うこととしております。

 第六に、国際課税について、いわゆるオフショア勘定で経理された預金等の利子の非課税措置の適用期限を撤廃する等の措置を講ずることとしております。

 第七に、道路特定財源諸税について、揮発油税、地方道路税及び自動車重量税の税率の特例措置の適用期限を十年間延長する措置を講ずることとしております。

 その他、入国者が輸入するウイスキー等や紙巻きたばこに係る酒税及びたばこ税の税率の特例措置の適用期限を一年間延長するなど、適用期限の到来する特例措置の延長、既存の特例措置の整理合理化等の所要の措置を講ずることとしております。

 以上、平成二十年度における公債の発行の特例に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げました。

 先般の両院議長のあっせんにおいては、「総予算及び歳入法案の審査に当たっては、公聴会や参考人質疑を含む徹底した審議を行ったうえで、年度内に一定の結論を得るものとする。」との合意がなされたものと承知をしております。両法律案を初めとする予算関連法案につきましては、国民の安全、安心を確保し、地域を活性化させ、成長力を強化する施策が年度当初から円滑に実施されるよう、今年度内に成立させることがぜひとも必要でございます。

 与野党の委員各位におかれましては、御審議の上、速やかに御賛同くださいますよう御理解と御協力を切にお願い申し上げます。

 以上であります。

原田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

原田委員長 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁福井俊彦君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として財務省大臣官房総括審議官鈴木正規君、主計局次長香川俊介君、主計局次長木下康司君、主税局長加藤治彦君、国際局長玉木林太郎君、国土交通省大臣官房審議官菊川滋君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

原田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土井真樹君。

土井(真)委員 自由民主党の土井真樹でございます。

 きょうは、平成二十年度における公債の発行の特例に関する法律案からまず質問させていただきます。

 昨日、大臣が所信の表明の中でおっしゃいました。財政の健全化は、安定した経済成長とともに、経済財政運営の車の両輪となるということでお話しいただきました。今、我が国の財政状況は、るる説明がありましたように、国、地方合わせての借金が八百兆円近くに達するなど、また、対GDP比でも約一五〇%になるなど、大変厳しい。また、主要国の中でも最悪の借金状態という財政状態にあります。

 そうした厳しい財政状況の中で、毎年予算を組むときに政策的に使える経費の財源というのは、大変限られております。そんな中で、今もお話がございました年金、医療等の社会保障あるいは社会資本整備など、国民にとって真に必要なニーズを見きわめて対応するため、予算配分、予算にめり張りをつけていかなければならないということでございます。

 その予算を配分するに当たって、改革と成長、安心の予算ということをきのうまたおっしゃっておりましたが、こうした厳しい歳出改革の中で、総額を抑制して予算の無駄をカットする中で、先ほどお話がありました、地域の活性化、国民生活の安心、安全に重点を置いているというめり張りのついた予算の取り組み、どのような取り組みをしたか、まず大臣にお伺いしたいと思います。

額賀国務大臣 土井委員が御指摘のように、日本の国は非常に長期債務残高を抱えておりまして、先進国の中でも極めて厳しい財政状況にあるわけでございます。そういう中で私どもは、経済成長と財政の健全化の大きな目標を掲げて財政運営、国家運営をしていかなければならないということであります。

 そういう中で来年度の二十年度の予算編成に当たらせていただいたわけでございますけれども、基本的には、基本方針二〇〇六の歳出歳入改革を一体的に進める、そういうことの上に立ってまず無駄を省いていかなければならない、そういうことを、きちっとしていることを前提にしているわけでございます。例えば随意契約の見直しなど、あるいは会計検査院の勧告等をちゃんと踏まえてその無駄を省いてきたことを、実際に数字の上でもあらわせるようにしておるところであります。

 一方で、先ほど言いましたように、成長力の強化、地域の活性化、国民の安全、安心、そういったことを念頭に置きまして、配慮して、予算の重点配分をさせていただいたということであります。

 具体的に申し上げますと、まちづくり交付金などの公共事業について地域活性化対策を重点化させていただいたということ、あるいはまた、地域主体のプロジェクトを支援する地方の元気再生事業を創設いたしたところであります。あるいはまた、国民の暮らしを守るために、防災対策とか医師確保対策等について重点的な予算配分をさせていただいたところでございます。

 そういう中で、できるだけ早く予算を年度内に成立させていただいて、国民の安心した経済活動に結びついていくことができることを期待しております。

土井(真)委員 予算の配分については、めり張りについては今お聞きしましたけれども、今度は財政の健全化に向けての点なんです。

 今お話がございました骨太二〇〇六に基づいて歳入歳出改革を行っているということでございますが、そんな中で、骨太二〇〇六では二〇一一年度の国、地方のプライマリーバランスの黒字化を目標としているということで、昨年も本年も予算をつくっていらっしゃる、そして、新規国債発行額も四年連続減額する、並びに、ことしも国債の残高を減額しているということで、方向性としては、内外に財政の健全化に取り組む姿勢を示されているというふうに考えます。ただ、先月、内閣府の試算が出ております。その内閣府の試算によりますと、今お話しした骨太二〇〇六における二〇一一年度の黒字化に向けての道のりというのは、大変厳しいということが出ております。

 その内閣府の試算の内容をちょっと見てみますと、最大限歳出削減を、骨太二〇〇六に基づいて十四・三兆円の削減を行い、かつ、成長を、ばらつきはありますけれども、二%台半ばから後半の高い成長率を予測したとしましても、二〇一一年度のプライマリーバランスは対GDP比でマイナス〇・一%程度という数字が出ております。すなわち、マイナスということですので、黒字化は無理だ、達成は困難だというふうに数字が出ておりますが、再三国民の皆さんに約束してきたプライマリーバランスの黒字化、今お話ししましたように、実現が難しいという状況に今試算ではなっておりますけれども、大臣はどのように達成していくのか、その数字をもとに今どのように考えていらっしゃるのか、その見解をお伺いさせていただけますでしょうか。

額賀国務大臣 土井委員のおっしゃるように、最近の十九年度の経済見通しも下方修正をするような状況に至ったわけでございますけれども、それに伴って税収が当初予想よりも減額されておったりしている中で二十年度予算編成も行ったわけでございます。私どもは、先ほどおっしゃったように、新発国債は四年連続で減額をさせるというこの基本的な姿勢は崩さずに予算編成に取り組んだわけでございますけれども、やはり、社会保障とか、あるいはまた将来の日本の成長のために、科学技術予算とか、必要な予算はきちっと手当てをしていかなければならないという中で編成させていただいたわけでございますが、結果的には、プライマリーバランスは、おっしゃるように、内閣府の試算と比べるとマイナス〇・一%になったことはまことに残念なことでございます。

 ただ、国と地方を合わせたプライマリーバランスは改善をされているわけであります。

 したがって私どもは、基本的には、この二〇一一年度のプライマリーバランスを達成するために、さらに経済を安定した形に、回復軌道に乗せていかなければならないということ、と同時に、歳出削減についてきちっと無駄を省いていかなければならない。そういう努力をした上で、消費税を含めた抜本的な税制改革を行ってやはりこのプライマリーバランスというものを達成していかなければならないのが国家の責任であるというふうに私は思っておりますので、引き続き、先生方の御協力を得ながら、そういう路線を確実なものにしてまいりたいというふうに思っております。

土井(真)委員 今、消費税等の検討のお話も出ましたけれども、まずは、二〇一一年度というと、四年先、すぐ先の話でございますけれども、二〇一一年度の目標は目標で今努力をされているということでございますが、仮にプライマリーバランスがイコールないしは黒字化したとしても、それで借金の残高が減るわけではない。それ以上ふえなくなるというだけであって、それから、その段階でもまだ借金の残高は残っているわけでございまして、これをやはりある一定の水準まで下げる努力を財政健全化のためにはしなければいけない、このように考えます。

 今現在、歳入の三割以上を公債の発行に依存しております。これは今、残高と合わせて、後の世代、我々のまた子供の世代、孫の世代に繰り越していく、先送りしていくという状況が続いておるわけでございまして、やはりその残高をある水準まで下げないと、子供たち、孫たちの世代が我々のツケで苦しんでいかなきゃいけないということになりますので、やはり二〇一一年の目標だけでなくて、その後借金をいかに減らしていくか、あるいはどの水準まで減らしていくかということをもっと長期で考えて、トータルの財政の健全化に道筋をつけていかなければならないというふうに考えますが、大臣の今後の財政運営の長期の方針についてお伺いさせていただけますでしょうか。

額賀国務大臣 土井委員の本当に極めて健全な御意見、御提言は、まことに的を得たものと思います。

 クリントン大統領がかつて、子供たちの小切手で親たちが勝手に好きなものを買っていっていいのかというようなことを言ったことがありましたけれども、我々もやはり、みずからの責任でみずからの時代でつくった借金は返しておくというふうなのが日本人の矜持だと私は思います。

 そういう意味では、やはりプライマリーバランスは一つの一里塚であります。利払い費を含めてきちっと財政収支のバランスをとっていく、そして元本を返していくというのが、これは先進国の皆さん方の目標であります。我々も、そういう目標を掲げてきちっと前進をしていかなければ国際的な信頼を得ることはできないというふうに思っておりますから、そういう新しい目標をつくってこの国家運営、財政再建に邁進をしていくことが大事であるというふうに思っております。

土井(真)委員 ぜひとも、そういう新しい目標をつくっていただいて、長期の財政の健全化に向けての取り組みをしていただければというふうに思います。

 それでは次に、所得税法等の一部を改正する法律案等についてお聞きいたします。

 本年度、平成二十年の税制改正での課題というのは、今お話がありましたこういう大変厳しい財政事情の制約の中で、幾つかの効果的な、政策的な課題を講じていかなければいけないということでございます。特に、全体として今我が国の経済状況、原油価格の高騰あるいはサブプライムの問題等で、実体経済にも非常に厳しいマイナスの影響が考えられております。

 そして、先ほど大臣のお話にありました、こういう厳しい中で経済を活性化していく、活力ある経済をつくっていくというためには、いろいろな政策的課題を掲げて取り組まなければならないんですけれども、今現在、この日本の経済状況についてどのような認識をお持ちか、お伺いさせていただけますでしょうか。

額賀国務大臣 これはよく言われておりますけれども、十九年度の経済見通しは下方修正をいたしました。これは、改正建築基準法によりまして住宅の着工件数が大幅に減少したことの影響、それから、思った以上に消費が伸びていかない。しかし、企業の設備投資とか収益は非常に底がたいものがある、いいものがある。そういう中で、経済全体としては一部に弱さが見られるものの、基調としては、企業部門が底がたいので景気回復が引き続いて続いているという認識をしているわけでございます。

 ただ、日本の経済は輸出依存が強いところがありますので、これに米国経済が、今後サブプライム問題の影響がどういうふうに波及していくのか、そういうことをよく見ていかなければならない。あるいは、原油高がどういうふうな形で実体経済、日本の経済に影響していくのか、そういうことを見詰めていかなければならない。そういうことを考えながら、きょうは福田総理の主導のもとで、年度末の金融、中小企業対策等について手厚い政策を決定させていただいたところでありますが、そういうことも含めて、我々はきめ細かい対応をしていく必要がある。

 その一方で、もう補正予算は通過させていただきましたけれども、これをできるだけ執行を早くしていくこと、それから、来年度予算案、二十年度予算についても、しっかりと審議をしていただいて年度内に成立をさせていただいて、経済活動の安定に資するようにしていくことが大事であるというふうに思っております。

土井(真)委員 ありがとうございます。

 それでは次に、税制の方に、個別に入らせていただきます。

 特に、今回、いろいろな中小企業税制とかあるいは法人関係税制、大変多くの措置が講じられていると思います。それぞれすべてについていろいろお聞きしたいんですけれども、時間の制約もありますので、幾つか焦点を絞ってお聞きさせていただきたいというふうに思います。

 それで、先ほど来あります経済の活性化、競争力強化といった観点から、今回、非常に充実した税制として、中小企業に対するいわゆるエンジェル税制についてお伺いしたいと思います。

 平成九年度にこのエンジェル税制が創設されたときというのは、まだ私も民間で会計士として仕事をしておる最中でございまして、この税制ができたときは、大変すばらしいものができたと思って、新聞に出たときに非常に喜んだ覚えがございます。ところが、実際に私の仕事上使おうと思って中身を見たときに、ほとんど使えない、全く使えないような内容でございまして、大変失望したことをよく覚えております。

 特に、中小・個人事業者だとかあるいは中小の企業が事業を立ち上げるときというのは、大変苦しい思いをする。そしてまた、資金的にもいろいろな手だてを考えなきゃいけない。今具体的にあるのは、いわゆる国金ですね、国民金融公庫、そして信用保証協会、この二つが、通常起業される方は大体利用しようと思います。さらには、自分で用意したお金等で起業をしていくわけですけれども、なかなかそういう政府系の金融もすぐに資金を融資していただけるわけではない。また、そのためのハードルも幾つかあるということで、大変苦労して資金を調達して起業がスタートしていくというのが現状でございます。

 そのようなときに、このエンジェル、いわゆる資産家とか、あるいは、そういう若い起業家を応援しようという社長さんとか中小企業のオーナーさんとか、何人かいろいろな方がいるんですけれども、その人たちが若い人たちを応援しようと言って投資をしてくれるわけでございますけれども、そのときに、日本はこういうしっかりした後押しする税制がなくて、それで、平成九年の出たときに非常に喜んだ覚えがあるんです。

 その後何度か改正されて、少しずつ使えるようになってきたという意識は持っていたんですけれども、それでもまだ現実に使おうと思うと、大変使い勝手が悪いというか、なかなかそれを使って投資しようというモチベーションの後押しにならないという状況だったんですけれども、今回のエンジェル税制は、そういう意味において大きな一歩を踏み出した、大変使い勝手のいい税制に変わっているのではないかというふうに考えております。

 改めて、今回のエンジェル税制の改正の目的、ねらい等を御説明いただけますでしょうか。

額賀国務大臣 もう土井委員御承知のとおり、今でも、新しい企業を起こすよりも廃業する人の方が多いというのが中小企業の現実の姿であります。日本の元気というか勢いをつくり出していくためには、やはり、新しい仕事、それからリスクを背負ってチャレンジしていく、そういう姿がなければならない。

 そういう意味では、ベンチャー、エンジェル税制というのは多くの人が期待をしてきたところでありますけれども、現場の人たち、これを活用する人たちにとっては、先生がおっしゃるように、余り使い勝手がいい制度ではなかったということをよく聞かされてきたわけでございます。現行の投資段階の優遇措置というのは、株式譲渡所得を有する者のみが利用できる仕組みになっているわけですね。

 今回、起業期のベンチャー企業に対する資金を広く呼び込む観点から、起業期のベンチャー企業への出資を寄附金と見立てて、より多くの方が利用できる寄附金控除の仕組みを新しくつくったわけでございますから、これは、今までと比べれば画期的なことと思っております。これによって、ベンチャーにチャレンジする人たちが勇気を持ってやっていただくことができればありがたいというふうに思っております。それが我が国の経済の活性化に役立っていくことを期待したいというふうに思っております。

 それから、こういう制度は、現場の人の声をやはり活用して直していくことが大事だというふうに思っております。

土井(真)委員 ぜひとも、大臣、今、現場の声を聞いてということでございましたので、現場の声をいろいろ取り入れて、さらにまたよい制度にして、若い、あるいはやる気のある起業家がどんどんチャレンジできるような制度、税制をつくっていっていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いします。

 それでは次に、今回、いわゆる日切れの租税特別措置、何件かございます。その中の一つについてお伺いさせていただきます。

 オフショア市場に係る預金等の利子の非課税措置というのがこの今回の租税特別措置法の日切れ法案の中にございますが、そもそもオフショア市場とは何かということを概要をわかりやすく説明していただいて、そして、このオフショア市場に係る預金等の利子の非課税措置が仮に三月三十一日で期限切れという状況になった場合、どのような影響が生じるかもあわせて御説明いただけますでしょうか。

玉木政府参考人 オフショア市場について御説明申し上げます。

 一般にオフショア市場は、海外から調達した資金を海外で運用する外―外取引と言われるものでございまして、これを国内の金融税制上の諸規制を受けることなく自由に行うことができる市場を指して言っております。

 東京オフショア市場、これは、我が国金融市場の活性化あるいは円の国際化を推進するために、昭和六十一年十二月に創設されたものでございます。

 より具体的には、財務大臣の承認を得ましてオフショア勘定を設けた金融機関は、この勘定を通じて非居住者との間で預金であるとか貸し付け等の取引を行うことができ、これらの取引を国内金融市場と遮断した上で、金利規制や準備預金制度あるいは預金保険制度の対象外とすることができますし、非居住者に帰属する預金等の利子について非課税措置が講じられているものでございます。

 このオフショア勘定、東京のオフショアマーケットで経理されております預金等の負債残高、昨年末で約二十四兆円となっております。

加藤政府参考人 ただいま御説明がありましたように、オフショア市場につきましては、まさに資金調達を海外から行う。そのため、今回、税制の措置といたしましては、その資金調達に係る利子を非課税とするものでございまして、これがまさにオフショア市場の基盤をなしているものでございます。

 この非課税措置の期限が仮に切れることになりますれば、課税を避けるために海外からのオフショア市場への資金流入が大幅に減少し、金融機関の資金調達や金融市場に影響を与えることが懸念されるところでございます。また、国際金融市場の重要な品ぞろえの一つでございますオフショア市場の基盤が失われまして、金融資本市場の競争力強化を目指す我が国の国際的信認が失墜するおそれもあると考えております。

土井(真)委員 さらに、オフショア市場についてもう一点お伺いしたいんですけれども、今、説明がありましたように、このオフショアの制度は、国際金融のマーケットでは大変重要な制度でございます。今まで、こういう大切な制度がなぜ租税特別措置という形で日切れになるような状況であったのか、その点を御説明願えますでしょうか。

 というのは、そういう大切な市場であれば、期限を切らない形できちんと税制上の措置をしていなければならなかったというふうに思いますが、今回そういう状況があるということですので、そこのところを御説明いただけますでしょうか。

加藤政府参考人 御指摘のように、オフショア市場の根幹でございますこの特別措置につきましては、期限を設けておったわけでございます。

 この理由といたしましては、あくまでも、本来課税されるべき利子を非課税にするという特別措置、これはやはり、運用状況を踏まえて適時の見直しが必要であるという考え方で期限を付してまいりました。

 しかしながら、今般、本租税特別措置の期限のあり方につきまして、措置が切れた場合の影響、措置の運用状況、諸外国の状況等を精査し総合的に検討したところ、期限を付さない措置とすべきとの結論に達したところでございます。

 今後とも、本措置の運用状況は適宜監視し、必要な見直しを行いますが、今回、期限を付さない措置ということでお願いをいたしております。

土井(真)委員 ぜひとも、我が国の金融マーケットに対する信頼をしっかりと築くためにも、そのような措置をしっかりと今後もやっていっていただければというふうにお願い申し上げる次第でございます。

 時間が参りましたので、私の質問は以上とさせていただきます。どうもありがとうございました。

原田委員長 次に、中根一幸君。

中根委員 自由民主党の中根一幸です。

 さて早速ですが、平成二十年度における公債の発行の特例に関する法律案に関連しまして質問をさせていただきます。先ほどの土井議員さんの質問と重なる点もあるかと思いますが、何とぞよろしくお願い申し上げます。

 我が国の財政は、御承知のように、先ほどもお話がありました、大変な状態でございます。国、地方の借金が平成二十年度末には七百七十八兆円、これは、国民全体のGDPの約一・五倍に達するという、主要先進国の中でも最悪の状態にあるわけでございます。また、先進国のほとんどの対GDP比では、この借金を八〇%以内に抑えているということからしても、我が国がいかに最悪の状態にあるかということがうかがえるわけでございます。

 そして、今後我が国は、他国には経験したことのないスピードで、急激なさらなる高齢化が来るわけでございまして、これに伴う年金、医療などの社会保障に要する経費が年々増大する中で、財政健全化というのは、これはもう私が言うまでもなく、喫緊な、大事な課題でございます。

 こうした観点から、二十年度予算は、総額を抑制し無駄をカットする中で、地域活性化、国民生活の安心、安全に重点を置いているわけでございますが、めり張りのついた予算とするためのどのような取り組みをしたか、もう一度お伺いしたいと思います。

 また、額賀大臣の先般の所信表明の中でも述べられておりました、予算における無駄の排除のための徹底した取り組みについての詳細も御答弁をお願い申し上げます。

 というのも、昨今の新聞などの論調から察すると、これら政府の改革への御努力が余り国民に伝わっていないのではないかと思えるわけでございます。まだ多くの国民は、国は相変わらずいわゆる税金の無駄遣いをしているのではないか、また、非効率的な税金の使い方をしているのではないかと疑念を抱いているんです。

 ですから、無駄の排除のための徹底した取り組みを行っていることについて、例えば随意契約、先ほどもお話がありましたが、見直しや、また予算執行調査結果、会計検査院の指導事項の反映など、そしてまた予算の効率化のためにどのようなことをやっているか、特別会計の見直しや、また、独法の支出の見直しなどの取り組みについての説明をお願い申し上げます。よろしくお願いします。

額賀国務大臣 今、中根委員がおっしゃるように、来年度予算編成を行うに当たりましては、日本の経済を元気にさせなければならないということ、それから財政再建もしなければならないということ、あるいはまた、参議院の選挙等の国民の声に耳を傾けたときに、やはり地域を活性化させていかなければならないこと、それから、医師不足とか医療の充実というか、医師不足をどういうふうに解消して国民の皆さん方に安心をしてもらうか、そういったことを念頭に置きながら予算編成をさせていただいたということでございます。

 おっしゃるように、社会保障の経費というのはこれからウナギ登りで伸びていくわけでありますから、我々は、そういう中でも無駄を省き、歳出歳入改革をきちっとしていかなければ財政再建にはならないということになるわけでございます。

 おっしゃるように、無駄を省くという意味では、例えば、先生もおっしゃられた随意契約の見直しをして一般競争入札をする、そういった形をとることによって、二十年度予算では三百八十一億円を反映させていただいております。それから、会計検査院のいろいろな勧告、指摘事項、そういったことをきちっと我々も踏まえて査定をし、百五十二億円を予算の上で反映させていただいている。

 それから、我々の主計局で予算執行調査をして、無駄を省き効率的にしていくために、三百四十二億円の無駄を省いた形の努力をさせていただいているわけでございます。

 それから、当然、特別会計とか独立行政法人においても、これはもうきっちりと国会の中でも厳しく、そして激しく論戦が行われていることを反映して、我々も徹底的に無駄を省いていく作業を行っているわけでございます。

 例えば重点配分でいえば、予算配分としては、成長力という意味では、次世代スーパーコンピューターの整備を行うとか、再生医療の実現化に努力をするとか、あるいはまた地域の活性化においては、先ほども言いましたけれども、地方の元気再生事業、あるいはまちづくり交付金、地域再生交付金を引き続いてプラスにしていく、あるいは国民の安全、安心のためには、医師確保対策、災害リスクの増大に対しては、水害とか土砂災害対策をきちっとして災害による死者はゼロにする、そういう総理の考え方も反映をして我々は努力をさせていただいたという経緯があるわけでございます。

 独法の見直しについては、二十年度における独立行政法人による国庫納付額等で逆に財政に貢献をしてもらっているというようなこともあります。これは特別会計でもそうでございます。また、予算においても、特別会計の場合なんかは、十八年度でマイナス〇・五兆円、十九年度でマイナス〇・七兆円、二十年度においてもマイナス〇・三兆円というふうに、効率化、コスト削減をきちっと図らせていただいているということでございます。

 もちろん、公共事業は五年間で一五%のマイナスをしてきて、道路予算なんというのは、もう半減をしているということもあります。

 そういうふうに我々は歳出歳入改革について厳然たる姿勢を貫いているということを、国民の皆さん方にもぜひ御理解をしていただけるように努力をしていきたいというふうに思っております。

中根委員 ありがとうございました。

 随意契約の見直しということで、予算段階での単価の見直し等を含めまして、事業の廃止等三百八十一億円の反映をされていると。ちなみに、十九年度の反映額は百六億円でございます。三倍以上になっているということでございます。また、予算執行調査結果におきましても、三百四十二億円ということです。前年度が二百八十八億円。そして、会計検査院の指導、指摘事項の反映ということで百五十二億円というお話、前年度がやはり八十五億円でございました。

 そしてまた、大臣の方から、特別会計の見直しについて、そして独法の支出の見直しについて確実に予算も削減しているというお話、そしてまた、財政に貢献をしていただいているとのお話もいただきました。また、道路財源予算についてはもう半減しているんだということについて等々、お話をいただいたわけでございます。

 今後も、徹底した予算の無駄の排除、また予算の効率化について積極的に取り組んでいただくよう、心からお願いを申し上げる次第でございます。

 次に、二〇一一年度のプライマリーバランスの黒字化についての関連した質問をさせていただきます。

 先ほども土井議員がおっしゃっておりました。先月発表した内閣府のプライマリーバランスの黒字化に関する試算を見ると、非常に私も心配になりました。この試算を見ますと、二〇一一年度の黒字化に向けた道のりというのは、本当に決して楽観できないと率直に感じた次第でございます。

 平成二十年度から四年間の経済財政見通しを示した内閣府の参考試算をもとにして、成長戦略の効果が上がった成長シナリオと、成果の効果が上がらなかった場合、また、世界経済など外的な経済環境も厳しい場合のリスクシナリオを想定した場合、さらに、各シナリオで歳出歳入一体改革を踏まえ十四・三兆円が歳出削減した場合、そして十一・四兆円が歳出削減した場合のこの二つのケースを試算し、合計四通りの試算から成るものでございますが、今回の試算では、改正建築基準法施行の影響など名目成長率が足元から低下したことや、また、物価上昇のおそれなどにより税収が減少するため、成長戦略と歳出削減が最も効果を上げた場合でも、そのシナリオでも平成二十三年度の基礎的財政収支は約七千億円程度の赤字になるというものでございます。

 これまで国民に累次にわたりお示ししてきた二〇一一年度のプライマリーバランスの黒字化の実現、これが必要なことはもちろん変わりないわけでございますが、このような大変な状況下の中でどのように達成していくのか、改めて見解をお伺いしたいと思っております。

 そして、これは新聞、マスコミ他の論調を聞いていると、小泉内閣、安倍内閣に比べて、福田内閣は改革に後ろ向きになっているように残念ながら言われております。もちろん、私個人はそのようには思っておりませんが、実際の世論はそのように感じているようでもございます。日本には改革ができないんじゃないかといった心理が不安を呼び、これは国内だけじゃなく、国外もそのように見られているようでもあります。先月一月には、外国人投資家が売り越した額も過去最高というふうに伺っておりますし、御承知のように、株価も大変下落をしております。

 こういった状況から、まさに政治のリーダーシップをとっていき、改革の意思を示し、国内外に発していくべきときだと考えております。

 そもそも、プライマリーバランスの黒字化というのは、先ほども話がございましたが、財政健全化のために、これはゴールではなくて、いわゆるスタート、第一歩にすぎないわけでございまして、このことが仮になかなかできないということになると、大田大臣も先日の演説の中で、日本はもはや経済は一流ではないというメッセージとともに、非常に悪いシグナルを国内外に与えかねないと思うわけでございます。

 そういったことから、大臣の改革に対する意気込みと決意をあわせて改めてお伺いしたいと思います。

 額賀大臣におかれましては、経済は一流ではないという一部の意見もありますが、私はこうこうこういう改革を着実にしっかりと行っていって、数年内には一流に戻す、そういった勢いで行っていきたいというような意気込みをぜひとも述べていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

額賀国務大臣 中根委員の熱情あふれた、国を思う気持ちが伝わってきます。

 先ほども言いましたように、やはり、国家財政再建というのは日本の国の大きな目標の一つであります。したがって、プライマリーバランスの達成は、これは実現をしていかなければならない。思い切った歳出削減をつくっていくこと、日本の経済の成長を続けていくこと、それから、社会保障等のこれから増大するそういう経費について我々は負担とバランスをよく考えていかなければならないということ、そういう中で、消費税を含めた税体系をきちっとしていくことが大事であるということ。

 それから、成長による税収は、やはり安定したものを、景気はよくなったり悪くなったりするものでありますから、景気がよくなって税収がふえることは、期待できることは期待はしたいけれども、それだけに頼ってはなかなか財政再建というのはできない。だから、歳出削減をしたり、あるいはまた負担と給付のバランスを考えたり、税体系全体を見直す中で考えていかなければならないというふうに思っております。

 それから、福田総理、この福田政権も、やはり改革の柱は掲げている。小泉政権時代の改革というのは、どちらかというと、既存の権益とか組織を破壊するようなところから新しいものを生み出そうという性格が強かったと思いますけれども、これからは、福田政権が目指すのは、やはり改革をしながら新しいものを生み出す、創造をしていかなければならない。

 そういうものは、内政的にもあるいはまた外政的にも我々はチャレンジ的にいろいろ挑戦を受けている。それは、少子高齢化であり、環境問題であり、あるいはまた資源エネルギー問題である。そういったものをどういうふうにして克服していくのか。

 少子高齢化対策、これは、国内で多くの言ってみれば子供を産んでくれる環境を整えていくこと、あるいはまた労働人口が減っていくから、その労働人口をどういうふうに補っていくのか、そういうことをよく考えていかなければならない。環境問題もそうしなければならない。そのためには、技術革新等もチャレンジしていかなければならない。

 そういうことが我々の努力によって一定の成果を上げることができれば、日本は世界のフロントランナーになれると私は思っておりますから、改革と創造で、そういう少子対策だとか環境問題だとか資源エネルギーの問題にきちっと解決の道を探っていく努力をしていくことが大事であるというふうに思っております。

中根委員 額賀大臣の熱意ある御答弁、ありがとうございます。世界のフロントランナーということで、改革と創造をこれからしていくんだと強い決意を感じた次第でございます。

 歳入歳出一体改革で求められている歳出削減、これは、着実に実施することは当然のこととして、さらなる、それを上回る削減の可能性、この英知を結集してさらに探っていただきたく、またそれを実行していただきたく、お願いを申し上げます。

 また、社会保障等の安定的な財源確保のための税体系の抜本的な改革について、早急の議論は必要だと思っております。ただ、そのときに注意しなくてはいけないこと、これはやはり何といっても、安易な財源確保のための増税とか、また、既得権益を守るための増税と国民の皆様に誤解を招く結果にならないように、これは釈迦に説法で大変恐縮でございますが、十分注意して行っていただきたいと思います。

 今後とも、今まで以上に改革を推し進め、プライマリーバランスの黒字化、そして財政再建化を推し進め、先ほども話がありました、子や孫の代に負の遺産を残さないように、一生懸命御努力のほどよろしくお願いを申し上げます。

 時間がなくなってまいりましたが、続いて質問させていただきます。続いては、所得税法の一部を改正する法律案に関連して質問をさせていただきます。

 我が国の経済活性化、競争力強化、これがこの平成二十年度の税制改正の大きな柱となっていると理解しております。

 そこでまず、我が国経済の持続的な成長を実現するためには、将来の発展の基盤となるイノベーションの創出が重大な課題となっております。このため、平成二十年度税制改正において、研究開発投資へのインセンティブを高める観点から研究開発税制を大幅に拡充していると伺っておりますが、これについての改正の趣旨と概要をまずはお伺いいたします。

額賀国務大臣 中根委員がおっしゃるとおり、やはりイノベーションは、現場から研究開発をして、それを商品化したり現実的に結実させていかなければならない。そのために研究開発投資をふやしていくことは、将来の日本の成長を約束していくことにつながっていくものと思います。その意味で、今回、研究開発税制を拡充することにしたわけでございます。

 具体的には、もう委員も御承知のとおり、試験研究費の総額に係る税額控除制度、現行、法人税額の二〇%を限度としているわけでございますけれども、これに追加をいたしまして、新たに税額控除制度を法人税額の一〇%を限度として加えることとして、最大で法人税額の三〇%まで税額控除ができるようにしたわけでございまして、私は、委員のおっしゃるように、これは研究開発投資への大きなインセンティブになるものと思っております。

 さらに、新たに加えた税額控除制度については、試験研究費を増加させていない場合でも、今までは増加させていた場合だったけれども、増加させていない場合であっても、売上高に占める試験研究費の比率が高ければ税額控除を可能とするという制度にしたというところが特徴であると思っております。

中根委員 よく理解させていただきました。ありがとうございます。

 時間が来ましたので、私の質問を終わらせていただきます。

原田委員長 これより内閣総理大臣出席のもと質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石原宏高君。

石原(宏)委員 おはようございます。自由民主党の石原宏高です。

 本日は、十五分という短い時間ですが、福田総理にも参加いただきました当委員会において質問をさせていただきます。

 まず、道路特定財源の暫定税率の維持に関する議論について質問をさせていただきます。今、ちょっと資料を配らせていただいております。

 一部のマスコミで経済評論家の方々が、道路特定財源の暫定税率を撤廃するとあたかも物価が下がるようなそういう発言をされておりますが、資料の一枚目に載せさせていただいたように、値段が下がるものは自動車向けのガソリンそしてトラック向けの軽油であって、例えば石油ストーブ向けの灯油は、これは暫定税率かかっていませんので下がりませんし、ビニールハウスなんかに使われているのはA重油であったり灯油だったりするわけでありますけれども、こういうものも下がらない。また、原油価格が上がって漁業の方々が漁に行けないという話がありますけれども、そういう漁船向けも重油が使われていて、暫定税率が下がったからといって、こういう方々のコストが下がるわけではありません。

 財務大臣にお聞きいたします。道路特定財源の暫定税率が撤廃されると物価が下がると予想されているでしょうか。また、そういう予測はされていないとしたら、この私の意見の御感想をお伺いいたしたいと思います。

額賀国務大臣 なかなか議論の対象になってはいなかったのでありますが、さすが石原先生、庶民の目線に立ってしっかりと御指摘をいただいたと思っております。

 財務省でもきっちりとこういう分析をしているわけではないんだけれども、特段の計算は行っているわけではないんだけれども、おっしゃるように、ガソリンとか軽油以外の灯油等の石油製品に対しては、税率変化の影響はないわけでございます。また、ガソリンとか軽油以外の財・サービスの物価水準に対する影響というのはそんなに大きなものではないと思っております。したがって、私は、石原先生の御指摘は極めて的を得たものというふうに思っております。

 その意味で、国民の皆さん方にも国民経済、生活の混乱を起こすことがないように、ぜひこの年度内に予算を通させていただくことを心から期待をしたいというふうに思っております。

石原(宏)委員 予算委員会やテレビの討論等で、野党、特に民主党の方々の道路特定財源の暫定税率撤廃の理由を聞いておりますと、暫定税率が三十四年も続くのはおかしいだとか、道路をつくるだけになぜ目的税があるのかといったようなことがあるんですけれども、今まで暫定税率が維持されてきたのは、必要な道路建設の計画があったからであり、また、道路特定財源だけではなくて、電力会社に対する電源開発のための目的税もありますし、今、消費税を社会保障に対する目的税にしようなんというそういう議論がある中で、道路だけの目的税がおかしいというのは、ちょっと私は説得力に欠けるのではないかというふうに感じております。

 ただ、原油高騰の中に、特に生活のために車の依存度が高い地方の方々のためにガソリン代を引き下げる目的に暫定税率を撤廃するという主張は、それなりに私は何となく納得がいくところもあるんですが、ただちょっと耳ざわりがいいような話で、ただ、民主党さんが主張されるように、二・六兆円の規模の減税等を行うとともに、同額程度の公共投資をやめるといったことが本当に経済政策としてあり得るのか、景気浮揚政策としてあり得るのか、私は大変疑問に感じているところであります。

 結果として地方の方々、ガソリン代は下がった、やったと思っていたら、公共投資が全く減ってしまって、いろいろな影響で経済に影響して自分の収入が減ってしまって、えっ、収入が減っちゃったよというようなことにならないかどうか心配でなりません。

 そこで、かつて、これほどの規模の減税と、その見合いの同額の公共投資を削減するといったような政策がとられたことがあるのかどうか、財務省にお伺いいたします。

額賀国務大臣 よく、減税をすれば内需拡大、消費拡大に結びついて景気対策になるという意見もありましたけれども、バブル経済崩壊後、我々も所得税減税とか公共投資をたくさんやってきました。だけれども、その所得税減税が本当に景気対策に結びついたのかどうかということをきちっとこれは検証していかなければいけないんだけれども、いろいろな意見があります。

 このときに、今のように景気が若干下方リスクがあるとき、あるいはまた少子高齢化とか将来に対する不安が若干あるとき、そういうときは、減税をしたからストレートにこれは消費に回るのかどうかということはよくよく考えてみなければならない。

 公共投資というのは、これは仕事が必ず行われるわけですから、それは、景気対策としては公共投資の方が今のような時代は目に見える形になるんだろうというふうに思っておりますけれども、ただ、ある意味では、政府が財政でこれから公共投資をふやして景気対策をしようとする政策がいいかどうかは別にして、一般論で言えば、そういう公共投資は目に見える形で景気に反映をさせることができるということだろうと思っております。

石原(宏)委員 私は、やはり、民主党が言うなら、ある程度公共投資は維持しながら減税をするんだったらいいと思うんですが、ですから、そういう協議をぜひともしていただきたいと思います。

 済みません、総理がいらっしゃるので、一つお願いをしたいことがあります。道路特定財源で国土交通省の職員の方が、福利厚生のスポーツ用品として、例えば平成十八年、十一品目、百三十四万円や、マッサージチェア、一九八九年から二〇〇二年でですが、二十三台、約四百五十万円も購入したということが予算委員会やテレビの報道で報道されまして、多くの国民が、道路特定財源が無駄遣いされているというふうに強く感じております。総理、ほかにもありますけれども、どうかこのようなことがないように、しっかりと冬柴大臣に御指示をいただきたいと思います。

 さて、予算委員会の議論を聞いていて大変気になった点があります。実は、きのうのこの委員会のことにも関連するんですが、政府は、無駄な道路と無駄ではない道路をどう判定しているかという点が大変気になりました。

 国土交通省にお聞きいたしますけれども、十年間で五十九兆円の中期計画がありますが、確かに、今の時点では事業主体や事業内容が未定であるがために、BバイC、費用対効果分析が評価できないのはわかりますけれども、当然、この平成二十年度予算、二〇〇八年度の新規改築事業については厳格な事業評価を行うべきではないかと思いますけれども、その点についてお伺いしたいと思います。

 またさらに、今後も十年間暫定税率を維持して、この五十九兆を見直しをしながらでもつくっていくとすれば、毎年毎年のその新規改築事業についてはBバイCをしっかりと行って、BバイCが一以下の事業は絶対に行わないということで考えていらっしゃるという認識でよろしいか。

 その二点、御意見をお聞かせいただきたいと思います。

平井副大臣 基本的に議員のお考えのとおりでございまして、実際に事業着手するに当たっては、その時点における最新のデータに基づいて新規事業採択基準評価を行うということにしています。

 また、BバイCですね、一以下の事業は行わないのかということでございますが、そのとおりでございます。

石原(宏)委員 しっかりと各年度でこのBバイCの評価を新規改築事業には行っていただいて、まさに、無駄な道路はつくっていないということをしっかりと国民の方々に示していっていただきたいというふうに思います。

 ただ、これは私のちょっと主観的なところかもしれませんけれども、国民が十年の暫定税率の維持に対して少し懐疑的なのは……(発言する者あり)かなり。わかりません、それは民主党の意見かもしれませんが、今から十年間で道路を優先してつくるのか。高齢化社会が進む中で社会保障費が大幅に拡大する時代、その負担を消費税とか保険料に求めなければならないのではないかと考えるときに、一般の国民の方々が、道路は後回しでいいから、社会保障費の増の見合いの国民負担をなるべく減らしてほしいと思うのが私は心情ではないかと感じるんですけれども、最後に、福田総理にちょっとお伺いをいたします。

 総理は、昨日の本会議の質疑に際し、抜本的な税制の見直しについては社会保障国民会議の議論を踏まえて検討されるというふうに答弁をされましたが、今回の道路特定財源の暫定税率が十年間継続されるこの法律が、所得税法の一部改正をする法律が成立したとしても、抜本的税制の見直しをその前に行うときには、この十年間の暫定税率の維持ということを見直すことがあり得るのかどうか、そのことを御意見をお聞かせいただきたいと思います。

福田内閣総理大臣 社会保障問題は、これは年金問題もございますけれども、国民の安心という観点から極めて大事な課題である。そこで、今の日本の社会というのは、これは急速に変わりつつありますね。高齢化が進んでいる、そしてまた人口も減少しているというそういう構造変化が起こっているわけですね。ですから、将来安心できるかどうかということについて、今の若い人も大変な心配を持っていらっしゃるかと思います。

 ですから、その安心を確保するためにも、社会保障制度全体について今ここで考え直さなければいけないのではないかというように思いまして、先般、社会保障国民会議というものを立ち上げまして、そこで大きな議論をしていただこうというように思っております。国民会議でございますから、国民の各層の方々にお集まりいただく、そしてまた、そのメンバーだけでなくて、そのメンバーがいろいろなグループの方々に接していただくというような対話をしながら国民世論の形成に努めていきたい、また同時に、国民の方々に社会保障というのはどういうものかということを理解していただく、そういう場にしたいというように思っております。

 そういう意味で、野党の皆様方にもお声をおかけして、そして参加していただく、自由に御討議いただくというような、そういうような場をつくってまいりたいとも思っておりますのですけれども、ぜひよろしくお願いをしたいと思っております。

 そういうことで、社会保障、まず手をつけます。

 しかし、と同時に、日本の姿というものは、これは今転換期ですね。今、人口の高齢化というふうなことを申し上げましたけれども、しかし、それと同時に日本を取り巻く環境というのは大きく変わっております。今まで、日本は世界第二の経済大国と言っていた。あと五年後にどうなっているかということも考えなければいけない。そしてまた、もっと大きな環境の問題というようなことがありまして、これは世界同じ問題でありますけれども、この問題に対処をどうしていくかというようなこともありますね。

 そういうことを、全体を考えながらこれからいろいろな政策を進めていかなければいけない。そのどれ一つを抜いても、これは将来設計というのはできないんだろうというように思いますので、そのことを総体的に考えて、社会保障も考え、そして道路財源も考える、こういうことになろうかと思います。

 自動車関係の諸税につきましては、昨年の十二月七日の政府・与党合意におきまして、「税制の簡素化が必要」という指摘もあります。「今後の抜本的な税制改革にあわせ、道路の整備状況、環境に与える影響、厳しい財政状況等も踏まえつつ、暫定税率を含め、そのあり方を総合的に検討する。」こういうふうに決めたわけでございまして、こういうふうな考え方を踏まえて適切な対応をしていく。その際には、先ほど来申し上げています、全体のあり方そのものを考えながら進めていくということが大事であろうかと思っております。

石原(宏)委員 時間が参りましたので質問を終わらせていただきます。

 ぜひとも、縦割りではなくて、福田総理におかれましては、大なたを振るって、横断的に国民のことを考えて改革を進めていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

原田委員長 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口善徳でございます。

 きょうは、総理に主に聞かせていただきます。

 私は、二〇〇四年、党の消費者問題のプロジェクトチームの座長をしておりまして、消費者基本法の抜本改正にかかわらせていただきました。消費者というのは保護の対象であって、権利の主体である、こういう理念に基づいて抜本改革、改正をしたわけでございます。

 総理は、生活者、消費者主役の政治を主張されたのはまことに私は画期的なことである、こう思うわけであります。国民生活審議会で生活安全プロジェクトを立ち上げられ、さらに、消費者行政推進会議において、消費者行政を一元化するための強い権限を持った新組織、これの創設の検討を指示されたわけでございます。我が党も長年にわたって主張してきたことでございますので、積極的に御協力、また参画させていただきたい、こう考えております。

 一九六二年三月十五日、時のケネディ米国大統領は、消費者の利益保護に関する大統領教書を発表し、消費者主権の原則を明らかにしました。

 私は、総理が政治姿勢のバックボーンとして、消費者が積極的に創造する社会が掲げられることを期待しております。消費者が安心、安全に住める社会、消費者が政策決定に参画する社会、消費者が地域産業を方向づける社会、消費者が健全な心身と環境を創造する社会、そして、その具体案といたしまして、私は坂口副代表ともいろいろと話し合っておるわけでございますけれども、経済財政諮問会議、この構成メンバー、いろいろ議論されておりますが、私は、民間議員に消費者代表を加えるべきではないか、こう考えております。

 また、税制とは政治そのものでございます。そういう点で、消費者の視点に立った税制改革案をまとめるということ、そして、消費者から見た地域産業の活性化案をまとめること、また、利用者、消費者から見た医療や介護、福祉政策の改善策をまとめること、この点につきまして総理の御見解を賜りたいと思います。

福田内閣総理大臣 消費者重視そしてまた生活者重視といったようなこと、こういう発想の転換というのは、私は、正直申しまして日本はちょっとおくれているんじゃないかと思います。政治も行政もおくれていたということ。これをやはり、これからの、現在もそうですけれども、これからの日本の社会を考えた場合に、そして成熟した社会と言われる我が国の社会を考えた場合には、そういう視点というものを欠かすことはできないと思います。

 あのケネディ大統領の発言も、実は私も坂口先生から伺ったことがあるんですけれども、そういうようなことをアメリカではもう四十年前に考えているということでありまして、日本はそういう意味においては大変おくれてきたということでございまして、これを一挙に取り戻さなければいけない、そういう思いをいたしております。

 ですから、そういった観点から、いろいろな部門についてそういう視点を取り入れていくということは必要だろうというように思います。

 経済財政諮問会議においても委員を入れてはどうかというお話もございますけれども、これは、委員の数も限られておりますので、時に応じてそういう専門の方々においでいただくというようなことをして、考え方を聴取したいというふうに思っております。

 税制とかそれから地方の活性化とか、いろいろな場面がございます。そういうすべての場面において委員のおっしゃっているような考え方というのは、どの場面でも必要なんだろうと思います。その視点を忘れないで政策実現に努めてまいりたいと思っております。

大口委員 ありがとうございます。

 次に、税体系の抜本改革につきましてお伺いをさせていただきたいと思います。

 今、社会保障給付や少子化対策の安定的な財源を確保するためにも、税体系の抜本改革は避けることができません。総理は社会保障国民会議を設置されました。これはやはり、与野党を超えて議論をし合意形成に努力をすべきである、私たちも真剣にこの議論に参加してまいりたい、こう考えておる次第です。

 私は、この税体系の抜本改革に対して、私なりの四点について考え方を申し述べたいと思います。

 まず一点は、税制改革による負担をお願いする前に、徹底した歳出削減、資産売却をすることが必要であるということ、二番目に、税制改革は、特に社会保障などにおける受益と負担の関係を明確にするなど、政策的必要性に基づいてそのあり方を検討すること、三番目に、その裏返しといたしまして、財政健全化に向けた国の借金の返済については、原則として経済成長による自然増を充てることを基本とし、増税分を借金の返済には充てないということ、そして、税制改革に当たっては、基本方針二〇〇七にもあるとおり、消費税だけでなく、所得税、法人税を含めた総合的な改革を行うべきである、こういうことでございます。また今、総理から、消費者の視点そして環境の視点、これも大事である、こう考えておるわけであります。

 公明党といたしましても、格差の固定化、拡大を防ぐという観点や、いわゆる垂直的公平の観点から、所得税における所得再分配機能を強化する、具体的には、最高税率を現行より高くするというようなことも重要である、こう考えております。

 以上のような税制の抜本改革についての私なりの考え方について、総理の御見解を賜りたいと思います。

福田内閣総理大臣 税制を考えるに先立ってまずやらなければいけないのは、やはり歳出改革を徹底して行うということでございます。

 そういう前提に立って申し上げますけれども、これからの社会保障制度を持続可能なものにしていくということも大変大事でございます。その際に、少子化対策とかそれから社会保障の給付、そういった費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合う、そういうふうなことが必要なんでありまして、そのことを実現するために、消費税を含む税体系の抜本的改革というものは、これはぜひとも実現をしなければいけないというように考えております。

 その際に、我が国における所得、消費そして資産等への課税のあり方といったようなことについても、各税目がそれぞれ果たすべき役割等を踏まえまして、そして総合的な見直しを行う必要があります。

 例えば所得税につきましても、所得再分配機能の適切な発揮や個人の多様な選択に対する中立性の確保といったような観点、そういうものを見ながら、税率構造や所得控除のあり方、そういうことを検討していくということも課題として考えておるところでございます。

大口委員 次に、財政健全化と道路特定財源の関係についてお伺いしたいと思います。

 二〇一一年までにプライマリーバランスを黒字化するということについて、前の先生方からもこれについての危機感というものの表明もあったわけでございます。そういう中で、道路特定財源の暫定税率がなくなると、国一・七兆円、地方が〇・九兆円の減収、合わせて二・六兆円の歳入減になるわけでございます。

 民主党は、国の直轄事業の地方分担金を廃止し、地方道路整備臨時交付金については法改正によって七千億円を維持するなどして、地方の道路財源は従来と同水準を確保でき、地方に財政負担を求めない、こういうふうに主張されておるわけでございます。

 ただ、昨日の公開討論会で麻生福岡県知事はこういうふうにおっしゃっているんですね。暫定税率廃止で地方収入が一・六兆円減る、民主党は地方には今までどおりの金を渡すと言うが、国の二兆円の道路予算が四千億円になり、基幹的な高速道路整備がとまる、道路体系が意味をなさなくなる。また、東国原宮崎県知事も、主要都市を高規格道路で結ぶことの重要性を訴えておられます。これは新聞報道でございますけれども、二月八日に上田清司埼玉県知事が民主党の幹部を訪れて、民主党案では国道の完成に時間がかかってしまうと詰め寄ったということが報道されております。

 地方自治体の道路予算が減らなくても、国が整備する幹線道路がつながらなければ意味がないということであります。直轄にしろ補助にしろ、全国各地の道路整備は、国と地方双方の財源によっています。地方の財源を確保しても、その分国の財源が減れば、国、地方全体としての道路整備水準は大幅に低下し、地方における道路整備も大きな打撃を受けるわけでございます。これは、大体すべての都道府県知事の共通認識であるわけであります。

 全国各地域における真に必要な道路整備水準を確保するということを前提にいたしますと、財政的に見ますと、一つとしては、社会保障や教育など他の経費を削減することになるのではないか。これは、東国原宮崎県知事が、道路以外の予算を道路整備に回せば医療や福祉に影響が出る、こう言っております。また、もしそういう他の社会保障や教育にしわ寄せをしないということになれば、国が、あるいは地方が借金をふやして歳入を確保する、こういうことになるわけでございます。

 そういうことで、基本方針二〇〇六で定められた歳出改革、これに悪影響を及ぼすとともに、せっかく四年連続、平成二十年度におきましても、新規国債発行二十五兆三千億円より確実に新規国債発行もふえるのではないか。

 そういうことで、この道路特定財源に穴があいてしまうと財政健全化の流れとの関係ではどうなのか、総理に御見解をお伺いしたいと思います。

福田内閣総理大臣 もう委員御案内のとおり、日本の財政状況というのは極めて厳しい状況にあるということでございます。

 今後は、その上に高齢化が進むという、これは財政にとってはマイナス要因を抱えているわけですね。そういうような状況の中で新規国債の発行を抑制しなければいけない、こういうふうな財政状況で新規国債ということは考えられないというような財政健全化の努力を継続して平成二十年度予算も組ませていただいたということでございます。

 それは、要するに、将来世代にツケを回さないということが我々の責務であるという考えに基づくものでございます。債務残高の累増を避け、そして財政健全化をさらに進めるという観点からも、暫定税率は維持しなければいけないというのが我々の考えでございます。

大口委員 道路特定財源には三つの偏りがあります。油種の中で、揮発油または軽油等に高い税率がかけられている。自動車のユーザーだけに課税されている。そして、東国原知事も主張されていますように、公共機関が発達していない地域、日常生活に自動車の利用が不可欠な方の負担がそうでない方よりも大きいということ。ですから、この偏りを納税者に理解していただくために、使途が極めて大事である、こう思います。

 道路整備にこれだけ必要なので必要な費用の負担をお願いするということが大原則であって、そのための財源措置として暫定税率をお願いするということでございました。受益と負担の関係からも整合性があるわけでありますし、逆に、その費用を道路と直接関係のない一般財源に使用するというのであれば、果たして納税者の理解を得られるのか、こういう疑問があるわけでございます。東国原宮崎県知事が、自動車ユーザーがなぜ一般財源に税金を払わなきゃいけないのか、こういうことを言っておるぐらいでございます。

 昨年の道路特定財源に関する政府・与党の合意に、道路整備予算が毎年シーリングによって特定財源部分を下回ってくるような状況の中で現行の暫定税率を維持するためには、納税者の理解がなければならないという立場から、無駄な道路を廃しコストを縮減するということは当然のことでありますけれども、地方道路整備はもちろんのこと、あかずの踏切の解消、そして使途の拡大分については、高速道路料金の引き下げ等、そしてまた一般財源については、環境対策などに活用することを強く公明党も主張してまいりました。

 平成二十年度の予算において約千九百二十七億円が一般財源として活用されるわけでございますが、納税者の理解を得るということが非常に大事になってきます。この一般財源部分と納税者の理解との関係について、総理にお伺いしたいと思います。

福田内閣総理大臣 道路特定財源につきましては、受益と負担の考え方、これを踏まえまして、暫定税率を維持した上で、その上で真に必要な道路整備を行う、そういうようなことを行うとともに、これを上回る額は納税者の理解を得られる歳出の範囲内で一般財源として活用する、こういうふうな仕組みになっているわけであります。

 それで、二十年度予算におきましても、千九百二十七億円を一般財源として活用するというようにしておりますけれども、これは、従来より一般財源で措置してきております、自動車に関連する、地球温暖化対策とか信号機の整備、交通事故対策といったような自動車関連歳出の範囲内でございまして、納税者の理解を得られるように説明を申し上げているところでございます。

 今後は、一般財源としての活用を図っていくということに際しまして、さらに納税者の理解を得られるような努力をしていくということが必要だと考えております。

大口委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

原田委員長 次に、平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。

 きょうは、本当に重要な法案を審議するということで、総理にも来ていただきましたけれども、これらの法案を審議するに当たって、まず、総理のこの国のあり方についての基本的な認識というものをしっかりとやはり確認しておかなければいけないんじゃないかというふうに思いますので、端的にお聞きしたいと思います。

 小さな政府か大きな政府かという議論がありますけれども、総理の現状認識というのは、今どういう認識でしょうか。また、その理由は何でしょうか。

福田内閣総理大臣 現状がどうかということですか。現状認識ですね。

 私は、我が国の今のあり方というものを見た場合に、大きな政府というわけではないと思います。それは、スウェーデンとか北欧の国々のような、ああいう政府ではない。しかし、小さ過ぎるというわけでもないというように思います。アメリカはそっちの方になるかもしれませんけれども、アメリカよりもちょっと上の、中くらいのところ、中くらいの政府というふうに位置づけておるところでございます。

 ただ、問題は、まあ、それでいいですか、御質問はそういうことですね。

平岡委員 現状認識としてはそうなのかもしれませんけれども、その理由というのは一体何なのか。なぜそういうふうに、大きくもないし小さ過ぎもしないという認識なんですか。

福田内閣総理大臣 ただいまそれはお答えしたつもりでおったんですけれども、大きいか小さいかというのは、これは相対的な問題ですからね。ですから、そういう意味において、国の名前を挙げて、そして日本は中くらいではなかろうか、こういうふうに申し上げたところであります。

平岡委員 多くの国民は、これまでの小泉内閣の改革というような名の政策のもとで、何か我が国はちょっと政府として大き過ぎるんじゃないか、大きいんじゃないかというふうに思っておられる方も私は大勢おられるような気がするんですね。

 なぜ国民は我が国の政府は大きい政府だというふうに思っているのか、その辺の理由について、何か心当たりはありますでしょうか。

福田内閣総理大臣 そうですね、それは皆さんお一人お一人いろいろな考え方があろうかと思いますので、私が申し上げても、それが皆さんの考え方に一致するかどうかわかりません。

 あえて感覚的に申し上げれば、日本は行政の無駄があるんじゃないかとか、そういうものはぜひ削減してほしいとか、それから、独立行政法人がもしかしたら無駄なことをしているんじゃないか、それが肥大化につながっているんじゃないか、そういうような受け取り方もあるかと思います。そういうことについては、今、ここしばらくの間、できるだけスリム化しようということで、いろいろな改革を継続しているわけですね。ですから、そういうようなことでもって、大きな政府とかいったようなことを言われないように努力すべきであると思っております。

平岡委員 今、我が国は膨大な公的債務を抱えているわけですね。このような債務を抱えることになった理由というのはまたいろいろとあろうかと思いますけれども、一つは、今現在非常に膨大な債務を抱えていること、これが一つ大きな政府というようなイメージを与えているのかなということ。それからもう一つ、これは月刊誌に掲載された、北海道大学の二人の教授が調査したものなんでありますけれども、なぜ大きな政府というふうにイメージされているかという問題として、これまで行政裁量と利益政治に支えられた不透明かつ恣意的な仕事の再配分のシステムというのが、やはり大きな政府というようなイメージを与えてしまっているのではないかというふうにも私は思うんです。

 その世論調査の中でも、同じように、これから改善すべき日本型制度というのは一体何なのかというのがありまして、これは政党別にどういうふうに分布しているかということが出ているんです。これは、自民党支持者も民主党支持者も上位ナンバーツーなんですけれども、一つは公的な社会保障を強化すること、もう一つは官僚の力を弱めること、こういうことが非常に高い、上位一、二位を占めているんですね。まさに、今大きな政府というふうにイメージされている部分はこういう部分にあるのではないだろうかと私は思うんです。

 そういう意味で、公的な社会保障を強化するということについては、国民も望んでいる。しかしながら、先ほど言いましたように、行政裁量とか利益政治に支えられた不透明かつ恣意的な仕事の再配分を行っていくというようなシステムについては、直していかなきゃいけない。その典型的なものが道路行政であるというふうに私は思うんですね。

 道路行政については、これから後で、道路特定財源あるいは暫定税率の問題で詳しく質問していきたいというふうに思いますので、とりあえずは総理の基本的認識を踏まえて次の質問に行きたいと思います。

 先ほど来、プライマリーバランスの黒字化の問題がありました。随分質問されたので、私はもう余り質問するつもりはありません。来年度予算でプライマリーバランスが今年度よりも悪化してしまった。五・〇兆円が五・二兆円のプライマリーバランスの赤字になってしまった。それに加えて、ことし一月十八日に閣議決定された「日本経済の進路と戦略」の中で、成長シナリオ、歳出削減Aケースでも、二〇一一年度にはプライマリーバランスがマイナス〇・一%の赤字である、こんなことができてしまった。

 いろいろと責任も追及したいところでありますけれども、私が一つ言いたいのは、今回の道路特定財源制度との関係であります。

 今回、この特定財源制度を十年間維持しようという方針を持っておられるわけですね、政府・与党は。ということは、私は、道路予算については聖域を設けるということになるのではないだろうかと。これから歳出削減ということにしっかり取り組んでいかなければいけないという基本的な方針を持っている以上は、やはり道路特定財源に係る見直し議論というのは、ここでしっかりとやっておかなければいけないんじゃないかというふうに思うんですけれども、総理はどう思われますか。

福田内閣総理大臣 プライマリーバランスの話がございましたが、先般の「日本経済の進路と戦略」の参考試算において、〇・一%の赤字になる、こういう試算がございます。しかし、これは、経済財政の展望というのは種々の変動要因がございますので、と同時に不確実性も伴うということでございますので、相当な幅を持って見る必要があるのではなかろうかと思います。

 平成二十年度末において、政府債務残高がGDP比で一四〇%程度という……(平岡委員「そこの質問はしていませんので。道路特定財源制度、それに対しての」と呼ぶ)わかりました。それでは、それをします。

 それは、道路特定財源について申し上げる場合に、十年間の中期計画というものを提案しているわけでありますけれども、道路建設については多少長い期間というものが必要なんだろう、そういうふうな考え方でもって提示したわけであります。

 それを提示したけれども、しかし、それはそのとおりやるかどうかということは、今後いろいろなデータも出てくるでしょう。そういうことを参考にしながら、そして実際には、二十年度の予算を作成するために、金額を策定するために二十年度予算でもっていろいろな計算をしてこれをお願いしている、こういうことでありまして、その先のことについて、それは毎年度の計画をしっかりと立てていくということが必要なのでございます。それは、国幹会議とかそういうような場面もございまして、そういう中で審議をされて決定していくということでございますから、そのこと自身は、そういういろいろな情勢を踏まえた上で判断していくということが必要だと思います。これが大き過ぎたらどうかということは、全体でもって考えるしかないんだというふうに思います。

 道路をつくるということは、単に道路を建設するということだけじゃないでしょう。それは、その地域がどうなるかという将来のことも展望しながら道路をつくるわけであります。ですから、全体を考えて、そしてまた、日本の国土全体を考えた場合にどうなるか、将来どうなるか、どうしたらいいのかということをあわせ考えていただく必要があるんだろうというふうに思います。

平岡委員 まさに、福田総理が今言われたことというのは、道路特定財源をやめて、一般財源としてすべてのものを並べて検討していきましょう、毎年毎年それをやっていきましょうということを言っているんですよ。道路特定財源を維持しなければならない説明には全くなっていませんよね。私は、まさに聖域を設けるというような今回の措置になっていると言わざるを得ないということを指摘させていただきたいと思います。

 そこで、きょうは日銀の総裁にも来ていただいております。日本銀行の総裁人事については、よく財政と金融の分離とかいうような話の中で議論をされているわけでありますけれども、私は、財政と金融、ある意味では分離されなければいけないところもあるけれども、ある意味では協調していかなければならない部分もある、こんなふうにも思っているわけであります。財政の今の状況を踏まえて、私は、日銀が今どういうふうなスタンスに立っているのか、このことを確認させていただきたいという意味できょうはお越しいただきました。

 これまでの国債の大量発行、平成五年以降、非常に急激に国債が大量発行されてきた。私は、この事態というのは、日銀の金融政策あるいは通貨調整政策においても非常に影響を与えるものであったんだろうというふうに思うんですけれども、こういう大量発行していることに対して、日銀としてはどういう考え方を持ち、そしてそのことをどういうふうに表明してきたのか、このことについて、簡単で結構ですから、総裁からお答えいただきたいと思います。

福井参考人 簡潔にお答えを申し上げます。

 歴史的に見ましても、多額の国債残高が存在している。この中で、財政再建というのは、日本経済が持続的な成長を続けていく上で極めて重要な中長期的課題である、金融政策の大きな前提にもなるというふうに考えています。

 こうしたことを念頭に置きながら、日本銀行は、これまで幾度となく財政再建に関する基本的な考え方を述べてまいりました。国会、審議会、その他の場でございます。

 三つほどございます。

 第一に、財政再建は、今のような状況を前提としますと、かなり長い時間がかかるプロセスだ、それを認識しました上で、着実に取り組むという継続性、これが非常に大事だ。それから、財政再建の道筋や手段について、長期的な方向性を市場や国民の皆様に信頼できる形で示される、そういう透明性が重要だ。これが第一であります。

 第二は、財政再建の方策としては、歳出歳入両面での思い切った見直し、これとあわせて、中長期的に見て経済の成長力をしっかりと高めていく必要がある。これが第二点目であります。

 そして最後に、三つ目ですが、財政再建のペースについては、日本経済が持続的な成長経路を進んでいるということをその都度確かめながら、一歩一歩着実に進めていく、これらの姿勢が大事だというふうに考えています。

 政府におかれましては、そのような方向での取り組みを鋭意進めておられるというふうに認識いたしております。

平岡委員 そこで、私は、これだけ膨大になってしまった国債残高をどう処理していくか、どう縮減していくかという中においては、これは財政的な対応だけじゃなくて、金融調節あるいは通貨調節機能も駆使していくというような考え方もあっていいのではないだろうかというふうにも思うんです。

 まず最初にお聞きしたいのは、日銀は、国債買い入れ、オペの増額という形で国債を買っており、国債を買えばそれだけ金利が入る、金利が入ればそれだけ日銀の収益が上がって国庫納付金がふえていく、こういう過程の中で、ある意味では財政の収支に寄与しているという面があると思うんですけれども、今、どういう方針で、どれだけの規模の国債買い入れを行っているのか、このことについてお答えいただきたいと思います。

福井参考人 日本銀行の長期国債の買い入れでございますが、これはあくまでも円滑な資金供給という金融市場調節上の必要性に基づいて日本銀行が実施しているものでございます。買い入れに際しましては、日本銀行の資産、負債の状況などを踏まえながら、銀行券発行残高を上限として実施いたしております。現実には、毎月一兆二千億円の買い入れを行っています。

 こうした方針につきましては、金融政策決定会合において、政策委員の多数決によって決定しているものでございます。現在の、今申し上げました一兆二千億円の買い入れにつきましては、二〇〇二年十月の決定会合で決定されたものでございます。

 そして、その後、昨年二月の金融市場調節方針変更の際に、長期国債の買い入れについては、先行きの日本銀行の資産、負債の状況などを踏まえながら、当面は、これまでと同じ金額、頻度で実施していく方針を確認いたしまして、これを公表いたしております。あくまで金融調節上必要な範囲内ということで実施をいたしております。

平岡委員 そういう国債買い入れをするに当たっては、政府との間で何か、調整といいますか協議といいますか政府からの了解というか、そういうもの、政府との関係はどういうふうになっているんですか。

福井参考人 金融調節は、金融政策の中の重要な一環でございます。日本銀行の金融政策決定会合において、政策委員の多数決によって決めている。政府と事前に協議をするということは一切ございません。

平岡委員 それで、これはちょっと非常にまだ初歩的な議論で恐縮なんでありますけれども、先ほど言いましたように、この膨大な国債を処理していくために、私は、日銀の果たす役割というのが何かあるのかないのかというふうに、ちょっといろいろと考え悩んでいるところであります。先ほどの国債買い入れというのは、ある意味では、先ほど私が申し上げたような流れの中で、財政にも寄与しているという面があるわけでありますけれども、そのほかに、日銀として、日銀が持っている機能、金融調節機能あるいは通貨調節機能というものを使った形での財政への寄与というのは何かあり得るんでしょうか、どうでしょうか。

福井参考人 私ども、日本銀行法によって与えられております責務は、物価安定を基礎として、持続的な日本経済の安定的成長を図るということでございます。そういう意味で、日本銀行の金融政策は、どういう方法をとるにしても、マクロの経済政策の健全な発展ということ以外の目的で行使するわけにはいきません。政府に対しても、具体的に財政をファイナンスするというふうな形での日本銀行の資金供与はできない、こういうふうに考えております。

平岡委員 日銀総裁の考え方というのは、今まで日銀の歴史というか中央銀行の歴史の中で培われてきた考え方だろうというふうに私は思います。それを前提とすれば、やはり政府は政府でしっかりとやるべきことはやらなければいけないということを日銀総裁からも言われたということであろうと思いますので、福田総理においてもしっかりとそういう対応をしていただければというふうに思います。

 日銀総裁、総裁人事の件もあろうかと思いますので、お忙しいでしょうから、もう結構でございます。

 そこで、これからの、プライマリーバランスの黒字化を含めて、財政の健全化に向けてどういうことをしていくのかということで、歳出の削減というのは常に言われているわけでありますけれども、一つ、税制改正、税制改革の問題ですね。

 今回の、一月十八日に閣議決定された「進路と戦略」の中でも、「消費税を含む税体系の抜本的な改革」というふうに、これは最近ずっと使われている言葉でありますけれども、消費税が明示されているという意味においては、それなりに政府の意図が出ているのかなというふうに思いますけれども、私は、その前に、所得税についてどういうふうにお考えになっているのかということを少し確認したいと思うんです。

 政府の税調の答申の中にも、所得税についていろいろと議論がされていました。その中で、一連の税制改正によって所得税の所得再配分機能が低下しているのではないかというような指摘もされているわけでありますけれども、この点については、現状認識ということでもありますので、財務大臣からお答えいただきたいと思います。どのようにお考えになっていますか。

額賀国務大臣 そういう御意見を伺うことはあるのでありますけれども、我々は、所得税につきましては、累次の税制改正において、勤労意欲とか事業意欲に配慮して累進緩和を行ってきたところであります。

 今後は、所得再分配機能の適切な発揮、それから個人の多様な選択に対する中立性の選択、そういった観点から税率構造とか所得控除等については検討していかなければならないというふうに思っております。

平岡委員 政府の税調の答申の中にもあるんですけれども、今、所得税について言えば、所得控除方式ということで、所得から一定の、例えば配偶者控除とか、そういうものをすることによって税金を計算するという仕組みになっているんですけれども、これを税額控除方式にするということにしてはどうかというようなことも検討に値するような表現がとってあるんですね。

 我々民主党も、こうした税額控除方式というのが、むしろ所得再配分機能を強めることにもなるし、いいのではないかというようなことを考えているんですけれども、総理はどうですか。ぱっと印象的に見て、そういう所得控除方式から税額控除方式に変えていくといったような形での所得再配分機能を高めていくという提案については、どのようにお考えになりますでしょうか。

福田内閣総理大臣 所得控除制度、こういうふうなものも含めて、控除制度のあり方というのは、家族構成などの事情にどういうように配慮をしていくか、そういう所得税制の根幹にかかわる問題であるというように思います。

 税負担の変化を含めまして、国民に対する影響も大きいということもございます。税率構造のあり方の議論ということも含め、所得再配分機能の適切な発揮、それから個人の多様な選択に対する中立性の確保といったような幅広い観点から議論をしていく必要があるのではなかろうかというように思いますので、私から今、こうだというふうに申し上げる、そういう段階ではありません。

平岡委員 役所が用意したものを読まれると、それはいろいろな観点からやらなきゃいけないというのは当然なんです。方向性として、どういう方向性を望むのか、考えるのかということについて総理の見解をお聞かせいただきたかったんですけれども、そこまでしか答えられないと言うなら、それはそれでもうおしまいにしたいと思います。

 次に、税制改正の関係の中で、道路特定財源と暫定税率の問題にちょっと入りたいと思います。

 平成十八年にいわゆる行革推進法というのがありまして、これを見ますと、第二十条のところに、「特定財源制度に係る税の収入額については、一般財源化を図ることを前提とし、」云々、こう書いてあるんです。しかし、今回やっていることは、道路歳出を上回る税収について一般財源として活用するんだという仕組みですね。法律に書いてある「一般財源化を図ることを前提」という言葉と相入れないというか整合していないというふうに私は思うんですけれども、総理はその辺はどういう御理解ですか。

福田内閣総理大臣 経緯をちょっと申し上げますけれども、まず、小泉政権下でこの基本方針が定められまして、今おっしゃいました行革推進法、平成十八年六月で、「一般財源化を図ることを前提とし、」「納税者の理解を得つつ、具体的な改正の案を作成する」、こういうふうになっております。そしてまた安倍政権のもとで、行革推進法に基づき、税収の全額を道路整備に充てることを義務づけている現在の仕組みを改めて、毎年度の予算において、道路歳出を上回る税収は一般財源とするということが決められました。そして今回、こうしたこれまでの見直しの方針に沿って今国会に改正法案を提出しておりまして、これは、今までの流れの中でもってこの方針と整合性というもの、これは合致しているというように思っております。

平岡委員 今のは、閣議決定の中身とかあるいは政府・与党の合意を言われたわけですけれども、私は、法律との関係で整合性がとれていないんじゃないかということを言っているのであって、その辺の整合性がとれていないと。一般財源化を前提としてと言うのであれば、まず一般財源化をするということがあって、さらにその上に立ってどういう形のことをしていくのかという筋道でなければいけない。全く逆の結論が出ているというふうに私は思います。

 そこで、それの端的にあらわれているのが、これまでも何か予算委員会等で議論されているようでありますけれども、道路整備財源特例法案というものですね。そこでは、道路整備に使われなかった、逆に言うと、一般財源として使われた揮発油税等については、翌年度以降道路整備財源として使うことを義務づけた法律になっているわけでありますけれども、いろいろ議論されていますので、ちょっと違う角度から聞いてみたいと思います。後から、翌年度以降道路整備財源として使うこととなる財源については、これはどこから持ってくることになるんですか。どこの財源から持ってくるんですか。これは財務大臣で結構です。

額賀国務大臣 これは、道路整備を上回る予算については一般財源化をするということでございます。そして、翌年度は、その一般財源化した予算については、計数上はゼロから査定をして道路に使う、そのときにまた一般財源化が生まれてくる、毎年毎年一般財源化が生まれてくる形になっております。

 形の上ではそうですけれども、実態的には一般財源化はひもつきでない形で使われていることになっております。

平岡委員 財務大臣、私の質問を予想していなかったのかもしれませんけれども、事前に通告してあるので、ちゃんと的確に答えていただきたいと思うんです。

 今、一般財源化して使えるというものになったものは、翌年度、また道路整備財源として使わなければいけない金額に上積みをされるという形で毎年毎年過ごしていくわけですね。そうすると、仮に道路財源として必要だということになったときには、その財源は一体どこから持ってくるんですかということを言っているんです。既に一般財源として使われてしまった道路特定財源を、使っちゃっているわけですから、その足りなかった分というのはどこから持ってくるんですか。

額賀国務大臣 それは、毎年度毎年度、揮発油税等、もちろん二〇〇六に基づいて歳出削減をしていくこともありますし、その中で道路整備を上回る部分については一般財源にするという形になるわけでございます。

平岡委員 全然質問とかみ合っていないですよね。

 だから、一般財源として使ってしまったものを、翌年度は枠として今度は道路財源の上乗せができるという法律になっているわけですよ。では、それで上乗せされた分について道路財源として使おうと思ったら、その財源はどこから持ってくるんですかと聞いているんです。建設国債ですか、それともほかの税収からですか。どうやって持ってくるんですか。

額賀国務大臣 これは、後年度に繰り越される一般財源化相当額は、当該年度で一般財源として既に活用されているわけですから、計算上の財源として後年度に繰り越されるわけですね。これが後年度において災害復旧費とか真に必要な道路整備に充てられる場合には、その年度において建設国債など一般財源が充てられるということになるわけでございます。

 いずれにしても、特定の年度に道路整備に充てることを義務づけているわけではないわけでございますから、毎年の道路予算の水準の決定に何らの制約を与えることではない。今後とも、毎年度の予算において、真に必要な道路予算については精査をしていくということになるわけです。

平岡委員 今、建設国債で賄うということも考えているというふうに言われましたので、あえて聞きますけれども、これまで道路整備費用で建設国債によって賄われた金額というのは、過去十年程度あるいは十五年程度で結構ですけれども、どのぐらいあるんでしょうか。

額賀国務大臣 今までは、国の道路整備事業の平成五年度以降今年度までの十五年間の補正予算の合計は約五十七兆円となっておりますが、そのうち、予備費とか調整費とか災害復旧費とか補正予算等、建設国債によって賄われた金額の合計は約九兆円になっております。

平岡委員 確認ですけれども、今、それは道路整備で九兆円の建設国債が発行されたということでいいんですか。そうですか、うんと言っているので。そうでしょう。

額賀国務大臣 これは、災害復旧費とかそういうものも含めてのことであります。

平岡委員 今あえて財務大臣が補足答弁をされたというのは、要するに、災害復旧費みたいな例外的なものについては建設国債を発行して道路の手当てもしているかもしれないけれども、そうでないものについては基本的にはしていないということなんですよ。なぜそうなっているかといえば、道路特定財源制度があるからなんですよ。

 これまでやはり、赤字国債がどんどんふえてきていましたけれども、結局、道路については道路特定財源が使えるから国債を発行しないでやってきた。本当であれば、道路整備費用というのは建設国債の対象経費でありますから、必要なときには建設国債でも発行して整備していこうという、ほかの公共事業と同じような取り扱いになるはずなんですよ。しかし、道路特定財源があるために、財政事情が厳しくてもこれをカットしようというようなインセンティブが全く働いてこなかったのが、この道路整備費用なんですよ。

 その意味では、私は、この厳しい財政事情の中で、しっかりと道路整備についても、他の財政需要と比較しながら、赤字国債の発行を少しでも減額していくという方向性の中で、やはりこれを一般財源化して検討していくべきだというふうに思いますけれども、どうですか。

額賀国務大臣 これはもう平岡委員も御存じのとおり、道路予算というのは、この十年、十九年度はピーク時の十年度から比べると四割減ぐらいになっておりますね。ですから、我々も、効率化とか合理化をきちっと図っているということを御理解いただきたいと思います。

平岡委員 だから、合理化とかを図っているんだったら、一般財源としてやっても合理化はできるんです。より合理化ができるんじゃないですか。特定財源として維持しなければならない理由には全くならないんじゃないですか。

 この議論をしてもまた押し問答になるかもしれませんから、とりあえず次へ行きます。

 道路特定財源の話について言えば、もともとユーザーの人たちに受益と負担みたいな関係で負担してもらっているものなんだからということで、一般財源化することについておかしいということを言われる方が大勢おられるようですけれども、もともと、揮発油税については昭和二十四年に導入されましたよね。導入された当時というのは、揮発油に対する課税というのは、どういう根拠で、どういう理由で課税するということになったんですか。財務大臣、お答えください。

額賀国務大臣 もうこれは平岡委員も御承知のとおりのことだと思いますが、お尋ねのことについては、昭和二十四年のときに生まれたんですが、提案理由説明に即して申し上げると、揮発油税については、財政需要に応じるため、揮発油に相当の担税力があると認め、一般財源として導入されたものとなっております。

 ただ、昭和二十八年に道路整備費の財源等に関する臨時措置法が制定されまして、立ちおくれた我が国の道路を緊急かつ計画的に整備する観点から、道路整備五カ年計画が策定されるとともに、その財源として揮発油税収相当額を国の道路整備に充てることとされ、それ以降、道路財源の充実等の理由から、昭和四十九年に暫定税率を設定、今日まで継続してきたということでありまして、これによって我が国の道路の整備が相当進んできたというのが経緯だと思います。

平岡委員 特定財源にして道路建設を進めなければいけないときにそれをやったというのなら、それはそれで、そのときの政策の優先度という意味においては私も認めたいと思いますけれども、もともと受益と負担だから、これは道路以外に使っちゃいけないんだという理屈はやはりおかしい。もともとの導入の経緯からしたら、やはり担税力があるからそこに課税をしたんだ。それは、酒とかたばこと同じですよ。そういうことであるということをまず共通の認識として持って進めていかなければいけないということを言います。

 それから、いろいろと、今回の特定財源制度の問題について地方自治体の首長さんたちが署名をしているという問題があるわけでありますけれども、これはまさに、今、国土交通省と財務省とが、予算ができ上がったときには三月の末までの時点で支出負担行為の実施計画をつくるという過程、すなわち箇所づけの過程の中で、地方公共団体が正直なことを言えないという状況にあるというふうに私は思うんです。

 そこで、財務大臣にお聞きいたしますけれども、平成十九年度で結構ですけれども、この支出負担行為実施計画で箇所づけをした件数というのは、三月末で一体幾らあるんですか。

額賀国務大臣 道路整備事業について、平成十九年度当初実施計画における箇所数はおおむね三千七百カ所ですね。これは、直接的には国土交通省でありますけれども、箇所数としては、直轄事業が二百七十四、補助事業が三千三百九十三、そして合わせると三千六百六十七で、おおむね三千七百カ所ということです。

平岡委員 都道府県について言えばすべての都道府県ですね、多くの市町村がこういう箇所づけという形で財務省なりあるいは国土交通省にお願いをし、頼まなければいけない。こういう過程の中で署名を求められたら、それは当然署名するでしょう。総理、いかがお思いになりますか。

福田内閣総理大臣 道路特定財源は、国だけではなくて地方自治体の貴重な独自財源でもあるんですね。ですから、各地方自治体の判断によりまして道路特定財源及び現行税率の維持の必要性を言っておられるというように私は理解をいたしております。

平岡委員 それは権力側に立った方の発言であって、そうじゃない人たちから見たときには、権力者がいかに力を持っているかということをやはり謙虚に私は受けとめてほしいと思うんです。

 それで、さらにちょっとこの関係について申し上げますと、財団法人運輸政策研究所の研究員の方が、「高速道路と自動車」という雑誌に、二〇〇五年十二月のですけれども、「一般道路整備における財源の地域間配分の構造とその要因分析」ということで研究結果を発表しているんですね。そこで、結論的なところをちょっと紹介すると、こういうふうに書いてあります。

 道路建設については、「全体として地理的要因は統計的に有意ではなく、財源及び政治的要因は有意な結果を得た。」「政治的要因の代理変数である自民党得票率も正で有意な値を得た。」「自民党の得票率が一%高くなると、県管理道路建設額は二・二億円増加する」、「政治的要因が補助事業をより多く当該県にもたらす構造が確認された。」「各説明変数の全体への寄与度を求めたところ、国庫支出金が六六%、自民党得票率が一六%と全要因の大半を占めた。」

 まさに冒頭私が申し上げましたように、非常に行政裁量と利益政治に支えられた不透明かつ恣意的な仕事の再配分ということが、国民が大きな政府というふうに感じている一つの要因であるということの一つのあらわれだろうと私は思うんですね。

 総理、こういう分析結果についてどのようにお考えになりますか。

福田内閣総理大臣 この内容、私もよくわかりません。わかりませんから一般論で申し上げますけれども、道路投資というのは、地域、国民生活の必要に根差して行われるものであるということです。地元の自治体の考え、客観的な評価などを踏まえて適切に判断してきているということであるというふうに私も考えております。それが答えです。

 先ほど、権力者が云々というふうにおっしゃいましたけれども、これがちょっと、私、委員のおっしゃるのはよくわからないんですけれども、権力者というのは一体何なのか。私ども、権力なんか持っているなんてちっとも思ったことないんですけれどもね。そうでなくて、では地方の自治体の長もみんな権力者なんですか。そういうことをおっしゃったんですね、先ほど。そうじゃないでしょう。皆さん民主的な方法で選ばれて出てきている方々です。我々もそうなんですよ。ですから、そういう方々を権力者ということで切り捨ててはいけないと私は思っております。

平岡委員 私は、権力者と言ったつもりじゃなかったんです。権力を持った人というふうに、つまりは、権力を持っている、あるいは権限を持っている、そういう人たちは、常にその権力、権限を使うことについては謙虚でなければいけないということを申し上げたかったのであります。

 まさにそのことについては何も否定されることではないんだろうと思いますけれども、あえてお聞きします。権力を持った人、権限を持った人は、その権力、権限を行使するに当たっては謙虚でなければいけない、どうですか。

福田内閣総理大臣 このことも今、私申し上げたばかりでございますけれども、私は権力者と思ったこともない、謙虚に政治をつかさどっておる立場にございます。

平岡委員 時間が来ましたので、質問を終わります。

原田委員長 次に、松野頼久君。

松野(頼)委員 民主党の松野頼久でございます。

 総理、きょうは当委員会に御出席をいただきましてまことにありがとうございます。

 本論に入る前に一言伺いたいんですけれども、今、日銀総裁の人事というのが非常に話題になっておりますけれども、今総理としてお考えになる日銀総裁にふさわしい方、もし御意見があれば、お聞かせをいただければと思います。

福田内閣総理大臣 日本銀行総裁というのは、金融政策、金融政策の運営、そして金融システムの安定、こういう重責を担っております。と同時に、これは今だからじゃなくて以前からそうでありますけれども、国際金融というか、そういったような面においても非常に大きな責任を負っているということ、その責任は私は年々ふえていると思いますよ。ですから、そういうことに対する識見を持たなければいけないということ。そしてまた、そういうことをやっていくためにはどうしてもやはり経験も必要だというようにも考えているところでございます。

松野(頼)委員 ありがとうございました。

 本論に入りたいというふうに思います。

 今、財務金融委員会でありますので租税特別措置法の法案を審議しておるところでございますが、今回の道路特定財源、特に揮発油税等の暫定税率、これがまず租税特別措置法になるわけであります。

 このお配りをした資料をぜひごらんください。これは、平成十二年の七月十四日に税制調査会が政府に答申をしている答申の文書であります。

 特別措置等と。租税の特別措置とは、特定の政策目的を実現するための手段として、租税特別措置等があります。それで、ずっと飛ばしまして、その後に線を引いている、そもそもその特定の政策目的に対して国民的な合意があるのかどうか、政策手段として税制を用いることが最もふさわしいのかどうか、公平、中立、簡素という原則より優先してまで講じるだけの政策効果があるか、また、政府による裁量的な政策誘導になりはしないかなど、慎重な検討が求められますというふうに、これは税制調査会が政府に対して答申をしている租税特別措置法の考え方であります。

 ぜひ、一枚めくっていただいて、次の資料二をごらんいただきたいと思うんですが、ガソリン税の上乗せ廃止に対する世論調査、幾つかございます。線の引いてあるところをごらんください。

 上乗せ分がことし三月で期限切れになります、二十五円の上乗せを続けるべきだと思いますか、やめるべきだと思いますかという問いに対して、これは続けるべきだという人が二七%、やめるべきだというのが六〇%ということになっております。

 この数字をごらんになって、この租税特別措置法を続けるだけの政策的な目的があるのか、また国民的な合意を得られているのかということを、感想で結構ですから御発言いただければと思います。

福田内閣総理大臣 道路特定財源とか租税特別措置法、難しい言葉ですよね。私も、政治家をしていなきゃとても理解できなかったと思いますよ。

 ですから、これはやはり理解していただくような説明が必要なんだろうというふうに思います。こういうふうな議論が沸き上がって、理解も随分進んでいるんだろうというふうに思います。これは日増しに理解が進んでいく。そうすると、これはもしかしたら、だんだんと理解して、これはわかったという方がふえてくるんじゃないか、こんなふうな期待も持っておるところでございます。

松野(頼)委員 続いて、同じ世論調査の数字なんですけれども、政府の計画では、今後十年間で五十九兆をかけて全国に道路整備をする予定です、あなたは計画どおりに道路整備を進めるべきだと思いますか、計画より減らすべきだと思いますかという問いが、そのお配りしている資料にもついておりますけれども、計画どおりに進めるべきだという方は一四%、計画より減らすべきだという方が七五%。これは、二月五日の直近の数字であります。

 さっき、だんだん世論が盛り上がってくるかもしれないというふうにおっしゃいましたけれども、物には採決という期限が来るわけであります。その採決の時期等でこういう数字がもし盛り上がらなかったとしたら、この税制調査会なり各学者の、税の学者の方たちがある程度言っているように、やはりこの特別措置法というのは特別な措置だから、特例的な措置だから、国民的な理解がなければほかの税との公平性が保てませんよということを言っているわけでありますから、ぜひ今の数字を見ていただいて、私にはとても国民的な理解が今得られているとは思えません。それでもまだこの租税特別措置法を採決される、また、これは必要だというふうにお考えになるのか、もう一回お答えをいただければと思います。

福田内閣総理大臣 私は、今おっしゃるように、五十九兆円、こういうふうに言われますと、十年間なんだけれども、五十九兆円、これは随分多いな、そこまでというふうな感じになります。ですから、五十九兆、十年間の計画を、その数字を言われることが、ではほかの支出項目との比較で十年間でどうなのかといった議論もないと、これはフェアでないというように思います。

 実際問題として、五十九兆は決めるけれども、毎年の予算というのは、これはその枠の中で決めていくわけでしょう。ですから、必ずしもこの金額のとおり計上していくというわけではないんですね。そこのところを、もう少し比較しやすいような形で数字を出す必要もあるんだろうというように私は思っております。

 いずれにしましても、そういうことも含めて、もっと我々が、あと日数余りないんですけれども、努力をしてまいりたいと思っております。

松野(頼)委員 それと、これは平成十三年六月に骨太の方針というのが小泉内閣で閣議決定をされております。たしか総理はそのとき官房長官で、この閣議決定に対して判こを押されたのではないかというふうに思うんですが、そのときに、一般財源化の方針ということが盛り込まれているわけであります。

 ですから、今回は特定財源として五十九兆は守るんだという議論が今されているんですけれども、僕は、どうも総理の本心は一般財源化という気持ちがあられるのではないかというふうに思うんですけれども、そこのところ、御意見を、御発言いただければと思っているんですが、いかがでしょうか。

福田内閣総理大臣 それは小泉内閣からの方針なんですね。一般財源化を図るということで、その方針に沿って、平成二十年度の予算も一般財源化を前年よりもふやすというふうな形で提示をさせていただきました。

 ただ、申し上げなければいかぬのは、今まで特定財源という形でもって、ユーザーの理解を得ながら、こういうふうに言ってきたわけですね。ですから、それをことしからいきなり変えて、何でも使っていいですというようなわけにはいかない。だから、自動車にかかわることで、しかし、今までは一般財源として計上していたものもなるべく取り入れていこうということであるのでありますけれども、今後の方針を言えば、それはまた国会の議論も当然ございますし、いろいろなことを考えていかなければいけない。また、ユーザーに対する説明も十分にしていかなければいけないということもございますので、そういうことをしながら考えていきたいと思っております。

松野(頼)委員 ここで何回もひっかかるわけにいかないんですけれども、さっきの世論調査の中には一般財源化の質問も入ってございます。一般財源化に賛成の方は五四%、反対の人は三五%。これは、自動車ユーザーの方は相当分含まれているというふうに私は思っております。ユーザーの方がどうも一般財源は反対だというような議論がなされていますけれども、私はそうではないというふうに思っておりますので、ぜひそこのところは真摯に、私は福田総理の本音は多分一般財源なんじゃないのかなというふうに推測をいたしますので、ぜひ硬直化した予算にならないように考えていただければありがたいというふうに思っています。

 そして、次の項目に行かせていただきたいと思うんですが、またこれも租税特別措置の問題点の一つとして、ややもすれば既得権化ないし長期化していく傾向があるので、できるだけ短期に改廃をする必要がある。要は、一たんこの特別措置を導入すると長期化をする、既得権化をする、だから、なかなか切れなくなってくるんですよというような議論が実はあるんです。こういうことをおっしゃられている方は、例えば「税についての基礎知識」といって、泉さんという方が、これも資料をつけてございますけれども、資料の六をごらんください。線が引いてあるところですけれども、この人は元国税庁長官、主税局長、日銀の理事、この経歴を見ていただくと、ずっと税の畑を歩いていらっしゃる方がこういうことをおっしゃっております。

 そういう中で、ガソリンの暫定税率の特別措置にしても三十四年間続いておりますし、また、資料の四というのをごらんください。あちこち飛んで申しわけないんですが、創設後長期にわたる租税特別措置法といって、これは五十年以上とか四十五年以上続いているのがずらっと並んでおります。これをごらんになって、財務大臣でも結構ですから、特別措置はそろそろ見直す時期に来ているのではないかと思うんですけれども、御答弁いただけますでしょうか。

額賀国務大臣 特別措置というのは、毎年毎年期限が来たときに、その政策目標にはどういうふうに達しているのか、それから時代の流れに沿っているのか沿っていないのか、そういうことについてきちっとその要求官庁からヒアリングをして、その上で国会で御議論をしていただいて、長年続いてくるものもあるということだと思っております。

松野(頼)委員 いや、これは税制調査会も答申を十二年に出しているんですけれども、その一ページ目にもつけてありますけれども、これも、一たん講じられると既得権化して、政策効果の再検討が十分行われないままに優遇措置が長く継続してしまいがちである、このことに注意をしなければいけないと。

 ですから、私が聞いていますのは、長期化をすること、既得権化をすること。もし本当にこの政策が必要で長い間使うならば、本税に入れればいいわけですよ。特別措置で何年に一度ずつずっと延長、延長としながら、五十年間も続いている、四十五年も続いている、四十年も続いているというのがずらっと並んでいるわけですから、一度ここは整理をするべきではないですかということを質問させていただいているので、そこに御答弁をいただければと思います。

額賀国務大臣 松野委員の御指摘は正しい指摘であると思っております。したがって、そういう形で我々も厳しく査定をし、あるいは政策目標にかなっているかどうか、あるいはまたインセンティブがきちっと働いて国家国民のためになっているのか、そういうことを前提にしていかなければならないと思っております。

松野(頼)委員 それなら、五十年というのはあり得ないんじゃないですか。半世紀ですよ。もう一回御答弁ください。

額賀国務大臣 それぞれの租税特別措置の目的が、やはりその時々、時代背景によって変わってくるものもあると思います。と同時に、時代というのはやはりこれだけグローバル化していく、環境の変化もあります。そういう中で、的確に対応しているのかどうか、あるいはまた周辺の変化に合わせて継続していかなければならない、あるいはまた、その企業あるいは日本の経済基盤あるいは社会基盤、また今後の将来への展望を開く上でも必要であるのか必要でないのかと、その時々にきちっとこれは評価がなされていかなければならないというふうに思っております。

松野(頼)委員 今の答弁を聞いていると、だから見直すんですという結論が来る方が正しいのかなというふうに思うような答弁なんですけれども、五十年間も、要は、四十年、五十年続いて硬直化している特別措置を見直しますかというふうに聞いているんです。いかがでしょうか。

額賀国務大臣 もちろん見直した上で、それぞれ毎年毎年国会に法案として期限が来れば出させていただいているわけであります。

松野(頼)委員 ですから、今回のガソリンに関する特別措置、暫定税率にしても、特に、昭和二十九年に田中角栄先生がこれをつくられた時代、そのときの国の道路状況、社会資本整備の状況を考えれば、私はある意味で非常に知恵のあったいい制度だったなというふうに思うんです。

 ただ、時代は変わりまして、これだけ社会情勢が変わった中で、さらにまた十年、同じ税率で同じようにつくり続けるということに対して、果たしてそれでいいんですかということを伺っているわけです。

額賀国務大臣 道路特定財源に関して言えば、毎年道路予算は削減をして、二〇〇六の方針に従ってマイナスシーリングをしているわけでございます。と同時に、今回は法律を変えて、道路予算を上回る分野については一般財源化をするということで、その方向転換をしているわけでございますから、従来とは違った形に見直したわけでございます。

松野(頼)委員 方向転換ではないというふうに私は思うんですけれども。

 要は、五十九兆は道路に使います、もしも余ったら一般会計に回しますと。まず大前提は、五十九兆は道路なんですよということは決めているわけじゃないですか。例えば、五十九兆の中の、では半分は一般会計に入れるんですよとか、三分の一は入れるようにしましたとかいうことの前提の議論をしているなら今の御答弁はわかるんですけれども、もしも余ったら一般会計に入れるんですよみたいな話は、これはまだまだ特定財源が維持されているとしか言わざるを得ないというふうに思います。

 この議論をずっと予算委員会でも続けておるので、この議論を続けていてもしようがありませんのでこの辺で切らせていただきますけれども、この道路特定財源の暫定税率を含めたほかの租税特別措置法、約二百九十五項目あります。これの全部が本当に必要なのか。また、本当に将来にわたって必要なものは本税を改正してやる。毎年、何年ごとにこの特別措置でやっていくことのおかしさというものはぜひ改善をしていただきたいというふうに私は思っています。

 そしてもう一つ、この租税特別措置、さっきの税制調査会の話でも、税の中立、公正ということに対して疑義があるわけです。その中の一つをお伺いしたいと思うんですけれども、例えば、今回期限が切れる、到来をする中の一つに、肉用牛の売却による農業所得の課税の特例という、要は、牛、畜産に関して、牛に関しての免税がされているわけです。

 私は、決して牛の免税をしてはいけないと言っているわけじゃないんですよ。制度論として、なぜ牛だけ免税されていて、豚、鳥、馬という食用になっているものに対しての免税がなされていないのか、そこの制度上の違いは一体何なのかということをちょっと伺いたいというふうに思います。

額賀国務大臣 この特例は、もう松野委員も御承知でありますが、農業を営む個人または農業生産法人が、その飼育した肉用牛を家畜市場で売却した場合には免税にするものでございます。我が国における肉用牛の飼育頭数の維持、それから肉用牛生産者の経営安定、あるいはまた消費者に対する供給安定、そういったところを考えながらなされているものと思っております。これは、松野先生のお父さんも自民党の政調会長などを務めて、こういう特例措置をずっと継続した基盤をつくっていただいたと思っております。

 他方、本特例の現行制度は、免税対象牛の売却による所得をすべて免税としているものなんですね。適用金額等の制限を設けていないことから、会計検査院からは、大規模肉用牛生産者など高額な適用者が見受けられるとの指摘もあるわけでございます。したがって、今国会に提出した税制改正法案では、こうした指摘を踏まえて、免税対象となる肉用牛の価格や頭数に制限を加えた上で適用期限を延長させていただいたということです。

松野(頼)委員 いや、違うんですよ。私が聞いているのは、私も畜産農家を育成したいという思いは一緒なんですよ。ただ、なぜ牛と豚の税率が違うのかと聞いているんです。

額賀国務大臣 これは、鳥、豚、馬を所管する農水省では、鳥や豚は肉用牛に比して生産までの期間が短い、それから生産基盤の回復に長期間を要しない。馬は、肉用牛と比して食肉としての生産高が極めて小さい、また飼養目的が食用以外に多岐にわたるとしておって、これらの売却による所得については肉用牛の課税の特例と同様の制度的な創設要望はなされていないということです。

松野(頼)委員 要は、肥育期間の長さと生まれる頭数を言っているわけですね。であれば、馬はどうなんですかときのう聞いたら、答えられないんですよ。

 もう一回お答えください。馬は肥育期間も同じ、妊娠期間は牛よりもっと長い、生まれる頭数も一頭なんです。馬と牛の違いは何なんでしょうか。

森山副大臣 松野議員もよく御存じのとおりでありますが、馬の場合には、肉用牛と比べまして食用としての生産高が極めて少ないということが一つあると思います。また、飼養目的が食用以外に多岐にわたること等が考えられますので、そこでの区別がなされていると理解をしております。

松野(頼)委員 要は、私が言いたいのは、品目で切るのではなくて、例えば食用の、鳥も含めたそういうものに関しては、例えばでは飼養期間が長いものに関しては保護しますよとか、そういう形の公平性が税の世界では必要なんじゃないですかというふうに言っているんですよ。わかりやすい基準を設けるべきだという話をしているのであって、決して肉用牛の農家を助けなくていいとか、この税率は廃止しろと言っているわけじゃないんです。だれもがわかる公平性の制度論にするべきではないか、そして、それが長期にわたって必要ならば本税にするべきではないかという議論をしているわけです。

 その辺、財務大臣、いかがですか、今の議論を聞いていただいて。

額賀国務大臣 これまでの長い経験もあって、肉用牛についても条件をつけて今度対応させていただいたわけでありますから、松野委員の御意見等も踏まえながら、今後はよく考えてまいりたいというふうに思います。

松野(頼)委員 今ここで牛と豚がなぜ違うのかという議論を長々やりたくありませんので、そういう、だれが聞いても公平な制度、要は、税は公平、中立、簡素という大原則があって、今、財務副大臣がおっしゃったように、例えば、馬は生産する農家が少ないから。では、少ない農家は育成しなくていいのかという話になるわけですよ。そういうところの観点をしっかり持っていただきたいというのと、もう一つ、この資料の八をごらんください。

 さっきの牛に付随をして、生産量というのをずっと農水省から出していただきました。これは、租税特別措置を行ったことによってすごくこの産業が伸びたのかどうかという政策評価の部分にかかわるところなんです。

 ぜひ数字で追っていただきたいと思うんですが、丸をつけてあります。生産量、平成六年をピークに、租税特別措置は続いているにもかかわらず、生産量は六百五から四百九十五、要は六十万五千から四十九万五千に減っているわけですよ。頭数にしても、平成四年、五年をピークに減っている等々を考えていただいて、これを見て、財務大臣として、この特別措置法を実行している政策評価が上がっているのかどうか、お答えをいただけないでしょうか。

森山副大臣 松野委員もう御承知のとおり、実はBSEの発生が我が国でもありました。また、そのような関係がありまして、かなり牛肉の生産量が低下をしてきたこともそのとおりでありますが、この制度があったがゆえに、幾らかずつ上昇をしてきているということもまた正直なところでございまして、この制度が……(発言する者あり)この数字から見ていただければ間違いありません。BSEの関係が大きく影響していることは間違いありません。

松野(頼)委員 いや、例えばBSEが発生したときには、緊急対策としてまた別途いろいろやられたじゃないですか。BSEと今の生産量、要は枝肉の値段なんかはもうBSEの前に戻っていますよ、ちゃんと価格は。ですから、この生産頭数とBSEの因果関係というのは、私はそうはないと思います、肉の価格はもとに戻っている以上に上がっているわけですから。

 そうじゃなくて、この租税特別措置の目的として、要は、畜産農家の育成というふうにおっしゃっていましたけれども、実際に育成をできているという評価をされているかどうか、この数字をごらんくださいということなんです。もうほかの方法で育成をした方がいいのではないかということを考える時期に来ているんじゃないのでしょうか。

森山副大臣 肉用牛の自給率も、かなりまだ低いわけでございますが、五〇%を切っているわけでありますけれども、どうしてもそれを向上させていくためには、一つの政策としてこの租税特別措置法というのは農家の皆さんには高く評価をされていると思います。

 ただ、先生おっしゃいますとおり、それだけでいいのかと言われますと、まだほかにいろいろな政策を考えていく必要はあるんだろうと思っております。

松野(頼)委員 これもさっきの元国税庁長官の泉さんという方が書かれている論文ですが、税制以外での措置でその主張するところの目的達成のための有効な手段、例えば補助金、財投などがないかどうか検討して、ほかに適当な手段、方法が見出せない場合に限って行うべきであって、決して安易にこの特別措置は新設するべきではないというふうに言っているわけですね。

 要は、効果が本当にこれは上がっているのかという検証も必要であるし、税としての公平中立ということが担保されているということも必要であるし、また、それ以外の方法がなされているのかなされていないのか、それ以外の方法でできるのであれば、補助金なりなんなりということに変えるべきだということをおっしゃられている。税制調査会でもそういう議論がなされている。

 にもかかわらず、今回もまた二百九十五項目、古いものは五十年続いているものからだあっと続いている。今年度改正、三月三十一日に期限が来るものでも四十数項目、これをまだ延長するべきだということを財務大臣はお考えですか。もう一回お答えください。

額賀国務大臣 今の補助金と特別措置の話がありましたけれども、例えば今、肉用牛のことについてお話しなさったんだと思いますけれども、この補助事業については、価格が下がったときの、言ってみれば収益が悪化した場合のセーフティーネットとして使われているわけでありますから、次元が違う問題であると思っております。したがって、補助金と特別措置が同時になされているケースというのも幾つかあるんだと思います。

 租税特別措置については、期限が来れば、これはきちっと、先ほども言ったように、見直していかなければならないと思っております。

松野(頼)委員 これはまた次の機会にゆっくりやりたいと思うんですが、最後に一点、これは総理にお伺いしたいのですが、資料の九、十をごらんください。

 国幹会議のメンバーのことでちょっとお伺いをしたいのですけれども、国幹会議、これが十九年十月十八日現在の国幹会議のメンバーであります。この学識経験者のところをごらんください。いろいろな方が学識経験者として入っていらっしゃるんですけれども、一枚めくっていただきますと、この学識経験者という方が、道路特別会計から仕事を受けていたり、関係をしている財団の役員を兼ねている方が多々いらっしゃいます。

 例えば、張さんという方は、駐車場整備機構の理事長であり、国土技術研究センターの評議員であり、道路システム高度化推進機構の理事長であり、高速道路調査会の副会長である。道路をつくるつくらないということを決める国幹会議のメンバーに、まさにその道路特別財源から仕事を受注している肩書を持たれている方が入られているというのは、これはちょっと中立性から外れるのではないか、どうしても道路をつくるというマインドに進むのではないかと思うんですけれども、このことは改善されるかされないか、お答えをいただきたい。これは政府の諮問機関的な立場ですから、お答えをいただきたいと思います。

福田内閣総理大臣 この国幹会議は、法律に基づいて、衆参国会議員十名と学識経験者十名、こういうふうなことなんですね。

 その学識経験者の委員というのは、各界の代表というような形でございまして、経済界、学界、地方行政、マスコミ、道路利用者といったような、各分野の方々でございますが、その辺の均衡には配慮して決めておるということはございます。

 ここで提示されました資料によりますと、これは国土交通省関係の財団があるじゃないか、こういうふうなことでありますけれども、そういうことと関係のないところの方もいらっしゃるし、道路との利害関係者といったら、政治家も十名いるわけですけれども、この政治家も利害関係者にはなるんですよね。

 ですから、民間の学識経験者の中で道路を全然知らないという方が来てくれても困るんだろうというふうに思いますよ。ある程度の知見を持っておられる方、そういう情報に接することができるような方が参加されることも、これは私は当然だというふうに思っております。

 ただ、一言、それは過度に疑いを持たれるような、疑いを持たれやすいような、そういう人選また全体の構成、それは避けなければいけないと思います。

松野(頼)委員 どうもありがとうございました。

 この方々がこの本当の利害関係者とは思えないので、どっちかの肩書を外れるなりなんなりということが必要ではないかということを最後に指摘させていただいて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

原田委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 まず、基本的なことを確認したいと思います。

 財務大臣、先ほども少し議論がありましたが、戦後、一九四九年に揮発油税が制定されたとき、道路整備目的税すなわち道路特定財源にしようという動きが一部ありましたが、結果的には、特定財源ではなく一般財源として制定されたわけであります。

 確認したいんですが、この一般財源というものは、使い道を特定されずどのような経費にも使用することができる財源、つまり使途が特定されていない財源、こういう理解でよろしいですね。

額賀国務大臣 そのように理解しています。

佐々木(憲)委員 福田総理は、二月八日の予算委員会の答弁で、道路財源を一般財源化できることを私の内閣で初めて法律化し、その金額も昨年よりふやそうとしていると言われました。これは事実ですね。

福田内閣総理大臣 はい。

佐々木(憲)委員 果たして一般財源化したと言えるのかどうか、これをきょうただしたいと思います。

 道路特定財源として入ってくる税収の何%が一般財源化されるんですか。

額賀国務大臣 十九年度が一千八百億円、二十年度予算で一千九百億円台前半を計上させていただいています。

佐々木(憲)委員 これは全体の額が三兆三千億ですから、千九百億円といいますと五・八%。つまり大部分、九四%が道路に使われる。これは、一般財源化といいますが、大部分は特定財源なんですね。

 それからもう一つ。では、一般財源化された部分、これは、一般財源化ということであれば、先ほど言われたように、使途が特定されない、特定されないということは、福祉にも使えるし、医療や介護にも使える。この部分は福祉に使えますか、医療、介護に使えますか。

額賀国務大臣 これは一般財源化をしているわけでございますから、一般会計で、ひもつきでどこどこに使いなさいという形にしているわけではありません。

 ただ、納税者の理解を得なければならないという前提もありますので、一般財源化はするけれども、その範囲については、ひもつきではないけれども、結果論的に、一般財源として環境だとか信号をつくったりとか、そういうところに使われている予算と大体相身互いになっているので、納税者の理解も得られるのではないかという解釈をしております。

佐々木(憲)委員 つまり、福祉や医療、介護、こういうものには使えない、こういうものですね。

額賀国務大臣 いや、そういうことではありません。それはひもをつけておりません。

佐々木(憲)委員 では、道路関係にしか使えないというのが現状じゃないんですか。先ほどの説明ですと、ユーザーの理解と。福祉に使うということが可能なら、福祉に使う、その証明をしてください。今回の予算ではそういうふうになっていないでしょう。

 この間の一般財源化、一般財源化と言われてきたものをずっと見ますと、すべて道路関連、あるいは道路に少し遠いけれども、まちづくりですとか地域再生ですとか、そういうものに使っている。福祉、社会保障に使ったりは一度もないんじゃありませんか。

額賀国務大臣 これは、だから、一般財源化をした一千九百億円のお金については全くひもをつけていないお金であります。ただ、一般財源から、一般会計から結果的に環境だとか信号機だとか、そういった予算が計上されていることになっておりますので、結果的には、納税者の皆さん方に一般財源化しても御理解を得られているというふうに理解をしているわけでございます。

佐々木(憲)委員 実際には、一般財源化といっても、社会保障に使えない、使わないというやり方をしているわけですから、これは真の一般財源ではないんです。特定されたものしか使えない、そういう財源なんですよ。

 しかも、次に問題にしたいのは、今政府が提案している道路財源特例法の改正案、このからくりですけれども、法案の第三条一項ただし書きでは、税収が道路整備費を超えるときには、超えた金額は必ずしもその年度の道路整備費に充てる必要はない、こう書いていますね。つまり、道路整備費で余った部分は道路に使わなくてもよろしい。ところが、第三条三項を見ますと、一般財源化した額に相当する金額を道路整備費の財源に充てなければならない、こういう形になっているわけですね。道路整備費への未充当相当額については、翌年度以降の道路整備費に充当可能なものとして措置する、こういうことになっていますね。

 つまり、一般財源化したと言われているものも限定的なんだけれども、その一般財源化したと言われるものの、同じ金額を次の年度の道路整備に充てる、こういうことになっているわけですね。これは一般財源化したといいながら、実はその金額と同じ金額を次の年には道路整備に充てるわけですから、道路整備に使えるものとして充当するとなっているわけですから、これは、一般財源化したというより、道路特定財源そのものを二年にわたって全く同じように維持しているということになるんじゃありませんか。

額賀国務大臣 これは毎年毎年査定をして、そして一般財源化を図っていく。その中で、次から次へと結果論的には一般財源化として使われているわけでございますから、そして、計算上は、次の年度で新しい予算をつくるときに、改めてまた道路予算を上回る分は一般財源化をしていく。最終年度に当たっては、その分が余った場合はどういうふうになっていくかということだけれども、これは何年までに使い切らなければならないということではないけれども、納税者の理解も得る形で道路予算に使われる場合もあるというふうに理解をしていただきたいと思います。

佐々木(憲)委員 先ほどの議論で、次の年に回した同じ金額の部分は財源はどうするんですかと平岡議員は聞かれました。公債などで充てますと。

 そうしますと、次の年は同じように道路関連の税収が上がるわけです。道路財源としての、特定財源としての税収は上がってくるわけですね。例えば、それがことしと同じ一〇〇だとします。ことしは一〇〇。一〇〇のうちの一〇を次の年に回しました。次の年も一〇〇という財源が同じように上がってくるとします。その回した一〇というのはそれに上積みされまして一一〇になる。その一〇の部分は公債などほかの財源で賄います。そうしますと、道路に使われる部分は、ことしは一〇〇あったけれども、次の年は一一〇になる。実際に使うかどうかというのはまた査定でしょう。それはいろいろあるでしょう。しかし、道路に使う可能性のある部分が一割ふえるんじゃありませんか。そういう計算になるでしょう。

額賀国務大臣 計算の上ではそういうことになります。

佐々木(憲)委員 これは全くのごまかしじゃないですか。

 結局、総理、最後にちょっと聞きたいんですが、これ、一般財源化すると言いますが、私は、今の議論で三つのごまかしがあると思う。一つは、全額を一般財源化するのではなく、極めて一部の数%ですね、まあ六%を一般財源化するだけだ。二つ目のごまかしは、その六%は何にでも使えるかというと、使えない、社会保障には使ったためしがない。三つ目のごまかしは、この税収の分はことしと来年同じだとしても、来年には、ことし使い残した分は上積みされて、道路財源として使える部分はことしよりふえるということになる。

 こんな、でたらめも甚だしい。道路財源を減らして、道路財源を一般財源化して道路整備を見直すというならわかるけれども、道路整備が、その部分の費用がどんどんふえていく形になるんじゃないですか。こんなでたらめなごまかしを、この法律で一体、国民に真っ当に説明できますか。福田総理、どうですか、これは。福田総理に聞いているんですよ。こういう仕組みについて、こういう提案をして、道路予算をふやすような予算じゃないんですか、仕掛けじゃないんですか、この法律は。国民を三重にだますものだと言わざるを得ないですよ。総理、どうですか。

額賀国務大臣 一つ目は、だから、道路整備を上回る分は一般財源化をするということでありますから、十九年よりは二十年度の方がふえているわけでございます。税収が減っている中でふやしているわけでございますから、これはそういう形でその方向転換をさせていただいたということ。

 それから、一般財源化を図ったということが、これはひもつきでやっているわけではないので、もう一般財源として一般会計の中に入っているわけでございますから、これは自由に使われることになっているわけでございます。

 あと、毎年毎年査定をしていくわけでございますから、その中できっちりと道路予算と一般財源化を分けていくという話になるので、御理解をいただきたいというふうに思います。

福田内閣総理大臣 一般財源化は何にでも使えないじゃないか、こういうふうにおっしゃることなんですけれども、今までの経緯もございます。そしてまた、これがユーザーの負担というようなこともありますから、その辺はやはりユーザーの理解を得なければいけないということであります。

 しかし、今現在、そういうようなユーザーの理解を得て一般財源化も進めているということでありまして、今後のことにつきましては、この一般財源の活用というようなことに際して、さらに納税者の理解を得ながらその枠を広げていくというようなことは当然あり得るものと考えております。

佐々木(憲)委員 大体、一般財源化した、したと言って大威張りで答弁もし、宣伝もしていますけれども、実際には一般財源化どころか逆行じゃないですか。一般財源化するといっても、本当の意味の一般財源化ではない。ごく一部、道路に関連するところにはまあ少し使いましょう、しかも、その部分は道路整備には使えないから次の年に回して、次の年の道路整備の財源に回します、その財源は公債を発行してそういうところを確保しますと。今までの道路財源を維持した上にさらに道路財源をふやすようなもので、こんなでたらめな法案を認めるわけにはいかないということを申し上げまして、終わります。

原田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十五分開議

原田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁福井俊彦君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部長大脇広樹君、国土交通省大臣官房審議官小川富由君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

原田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大畠章宏君。

大畠委員 民主党の大畠章宏でございます。両大臣を中心に、大臣所信に対する質問をさせていただきます。

 なお、中川委員が昨日から質疑に立っておりましたが、私も横で聞いておりまして、まことに裏づけあるいは根拠に乏しいこの法律案が提出されておりますこと、大変私も危惧しているところであります。やはり日本国として、また、額賀財務大臣におかれましても、財務省のトップでありますから、まさに裏づけをしっかりと御自分の目で、頭で検証しながらの法案の提出が必要だろうと思いますし、そういう意味では、きのうからこの財務金融委員会も紛糾しているところでありますが、ぜひ確固たる信念を持って、確固たる確証を持って、多分、これから中川委員も質問に立つことがあると思いますが、そのときまでにバックデータ等々をしっかりとそろえていただきたいということを冒頭にお願いしておきたいと思います。

 また、福井日銀総裁におかれましては、昨日から御待機をいただいて、途中、きのうも夜戻っていただいたんですが、きょうも来ていただきまして大変恐縮でございます。後ほど質問をさせていただきますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 さて、私は民主党の次の内閣の金融担当ということでありますから、渡辺大臣を中心に、それを補完する形で額賀大臣にも質問させていただきます。

 まず、私が質問に立とうと思っていろいろ、大臣所信を読んだり、質問の内容というものを整理したんですが、本屋さんでこういう雑誌が目につきました。これは院内でたまたま買ってきたものですが、「没落する日本 幻だった景気回復、止まらない日本株売り」、こういうものがエコノミストという本の表紙を飾っているところであります。

 いろいろ見ると、先ほど財務大臣から幾つかの答弁がございましたが、日本の経済は堅調であるという趣旨のお話もございました。住宅着工件数の伸び悩み、ダウンですね、四割ダウン。消費が伸びない、しかし企業は底がたい、全体的には堅調だ。しかし、輸出が中心でこの経済を支えているのであるから、サブプライムローン問題あるいは原油高等々で、実体経済の推移をこれからしっかりと見ていきたい。中小企業への手厚い対策等も考えたいという趣旨の御発言が午前中の委員の質問に対する答えとして出されておりましたが、この財務大臣の御認識等も一つのお話かもしれませんが、どうも実態としてはそうはなっていないんじゃないかというのが私のきょうの質問の中心になるかもしれません。

 そこで、先ほど申し上げましたように、金融担当大臣を中心として質問をさせていただきます。

 額賀財務大臣からも指摘がありましたけれども、まず、このサブプライムローンというものがいろいろ日本の経済にも、金融市場にも大きな影響を与え始めているということでありますが、そもそも金融大臣として、このサブプライムローン問題というものをどういうふうに受けとめ、それから、サブプライムローンがなぜ金融の先進国と言われているアメリカで起こったのか、サブプライムローン問題の発生と原因、あるいは、サブプライムローンの問題が発生したアメリカの国の金融の社会的背景というのはどういう状態になっているのか、そして、実態がよくわかりませんけれども、サブプライムローン問題を発端として、アメリカの金融業の実際の損失額というのはどういうふうに金融担当大臣としてごらんになっているのか。ここら辺から、まず御所見を含めてお考えを伺いたいと思います。

渡辺国務大臣 サブプライムローンというのは、御案内のように、低所得者向けの住宅ローンとしてスタートしたと承知いたしております。

 日本だったら、恐らく住宅政策あるいは社会政策的な配慮を施して、こういった政策はつくってきたものと思われますが、いわゆるITバブル崩壊以降のアメリカ経済運営の中で、かなり金利を下げて経済運営をやっていたわけでございます。たしか、私の記憶では、FFレートが一%ぐらいまで低下をしたと記憶をいたしておりますが、まさにITバブル崩壊以降のアメリカ経済の牽引になったのが住宅分野であったろうと思います。

 住宅の値上がりを見込んでいろいろな住宅ローンが開発をされ、その中で恐らく最後に出てきた商品がサブプライムローンだったのではないでしょうか。最初は金利の支払いだけ、インタレストオンリーなんという商品がございまして、何年かたつとステップアップでローン金利が上がる。しかし、住宅価格が値上がりしておれば、そういうものを借りかえて、新しいローンに組みかえてしまう。そうすると、例えば二千万円で買ったものが三千万円になれば、三千万円借りて二千万円返しちゃう。荒っぽい話をすれば、手元に一千万残る、そういうものを消費に回す、こういう消費行動が行われていたと聞いております。このような融資の中には、相当むちゃな融資があったという報告もございます。いわゆる略奪的融資などと分類されるような悪質なものもあったようでございます。

 しかし、こうした融資を支える一つのビジネスモデルが、オリジネート・ツー・ディストリビュートと言われる、リスクを分散する、つまり、証券化をして売っ払ってしまえば、その原債権のリスクが分散されてしまうわけでございますから、まさにそれを当てにして、こうした危うい融資を続けることができたのではないか、そういう指摘も聞いたことがございます。

 いずれにしても、日本の不良債権問題は、不動産価格の値下がりのリスクは銀行部門が全部とった、オリジネート・ツー・ホールドというビジネスモデルだったわけでありますが、まさにこの証券化商品というのがリスクを世界じゅうにばらまいてしまう、そういうことになったものと思われます。

 計測可能な不確実性をリスクといいますが、計測不能の不確実性がまさに世界じゅうに蔓延してしまったというのが、恐らくこのサブプライムローン問題の非常に厄介な本質なのではないでしょうか。

 こういった問題を解決していくには、さまざまな切り口から、また、アメリカ一国、国内だけではなくて、国際的な観点からこの問題と取り組んでいく必要があろうかと思います。

大畠委員 その趣旨といいますか、お話の中身はわかるわけですが、一体、金融庁として、このアメリカ国内のいわゆる今回の問題の金融の被害額というのはどういうふうに見ているのかということも先ほどちょっと御質問させていただいたんです。

 まあ、ブッシュ政権は十六兆円規模の減税措置を発表せざるを得ないほど追い込まれていると聞いているわけですが、日本としてもアメリカとの関係が非常に緊密でありますから、金融庁としても、アメリカのサブプライムローンを発端とする金融面での被害額というのはおおよそつかんでいなければならないと思いますが、この件について今どういう御所見をお持ちか、お伺いしたいと思います。

渡辺国務大臣 日本国内の金融機関の被害額については、かなり世界のスタンダードに比べて先を行ったディスクロージャーがもう既に行われておるのは、御案内のとおりでございます。一方、アメリカ、ヨーロッパの巨大複合金融機関と言われるところがどれぐらい損失を抱えているか、それは、それぞれの金融機関のディスクロージャーを待って把握するしかございません。

 では、全体として一体どれぐらいあるのかというお尋ねかと思いますが、残念ながら、我々の把握しているデータでは、その全体像を把握するには至っていないということでございます。

 民間の機関のいろいろな試算がございますが、例えば、ゴールドマン・サックス証券の昨年十一月十五日のレポートでは、住宅ローン関連の損失の見込みがここ数カ月で急増してきている、十一月十五日の話でございますけれども、過去のデフォルト率から推測される損失は約四千億ドルに上る見込みというわけですから、四十兆円を超えるというのが去年の十一月のレポートでございます。

 一方、日本の日本総合研究所、日本総研の本年一月十八日付のレポートでございますが、ここにおいては、最悪シナリオの一では、総額一千四百二十億ドルの追加損失が発生するという試算が出ております。対象をサブプライムだけではなくて、オルトA、オルトB、シンセティックCDOに拡大した最悪シナリオでは、グローバルなサブプライム関連の損失は合計で四千六百二十六億ドルに達すると試算されるという報告がございます。これでいきますと、大体五十兆円というところであろうかと思います。

 しかし、今、ヨーロッパ系の巨大複合金融機関の十二月決算の数字が続々と発表されていますが、中には、日本円換算で二兆円近い損失を発表しているところもあったりして、この問題は予断を許さないと考えております。金融庁といたしましても、引き続き高い警戒水準をもってこの問題を注視してまいりたいと考えます。

大畠委員 私も、金融の世界については、この半年ぐらいずっと注意して情報を集め、自分なりに勉強しているんですが、私は長い間実業の世界で生きてきました。したがって、金融の世界というのはどういう世界になっているのか、私も興味深く見ておったんですが、えたいの知れない動きもございます。

 そして、今、金融大臣から、おおよそ五十兆円ぐらいじゃないかというお話がございましたが、毎日二百兆近いお金が動いているという話も聞いているんですね。株の、証券の売買等では二兆ドルといいますから、大体二百兆ぐらいなんでしょう。すごいお金が動いているんですね。それが世界じゅうを駆けめぐって、いろいろなものを、利益を生むものに集中的に食らいついて、証券化とか債券化のものをゲットして、いかにしてそれを利益を上げるかということで右往左往しているような感じも私は受けるんです。

 今回のアメリカのサブプライムローン問題、日米が基軸というのであれば、日本における土地バブル、あれと全く同じような話なんですね。土地神話とあの当時言われましたが、土地はずっと値上がりする。アメリカの場合も、住宅はずっと値上がりする、それを見越してどうもお金を貸したりあるいは債券化したりしてやってきたんですが、途中からこれが下がり始めたということで大慌てしているわけですね。ですから、日本の金融担当大臣として、アメリカの金融に対する警鐘を鳴らしておく、そういうものが本来はあってもよかったと思うんです。

 そして、アメリカの住宅バブルが崩壊をしてこういう大騒ぎをしているんですが、日米基軸といいながら、アメリカのメッセージは受けるけれども、日本からきちっとそういう過去の経験等を踏まえて何か警鐘を鳴らした形跡が私は見えないんですが、この件について、金融担当大臣として、少し過去を振り返りながら、日本としてどういう警鐘を鳴らしたのか、お伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、奥野委員長代理着席〕

渡辺国務大臣 これは、額賀財務大臣や福井日銀総裁が、G7その他のいろいろなところでもう既に警鐘を乱打しておられると思います。

 私自身も先月、ダボス会議、世界経済フォーラムに行ってまいりました。そこで、デカップリングは可能かというテーマのシンポジウムに出させていただいたのであります。私の隣には、フランスの元財務大臣のストロスカーンIMF専務理事がいらっしゃいました。私の右隣には、フランスのマダム・ラガルド財務大臣がいらっしゃいました。いきなりストロスカーン専務理事がおっしゃったことは、余力のある国は財政出動をすべきである、こういう御主張でありました。こういう話を聞いて私は、両隣がフランス人だったというわけでもありませんが、これはデジャビュだと思わず口走ってしまったわけでございます。

 つまり、九〇年代の日本を振り返ってみますと、一番最初に金融危機が起きましたのが九二年。平成四年、宮沢内閣のときでありました。株価が一万四千三百円ぐらいにまで落ちまして、まさにあのときは日債銀が危ないという話になったんですね。結局、政府内部でも、ワンパッケージのプランを出した大臣もいました。例えば、当時、銀行の株式含み益は大量にあった、そういうものを吐き出させて不良債権の償却を一気にやってはどうか、そのかわり景気対策と株価対策はきちんとやるよ、そんなプランがあったんですね。しかし、残念ながら景気対策のみが採用され、不良債権の償却、それに伴う資本不足の穴埋めとして公的資本の注入というスキームは、何とそれから六年間おくれてしまったわけであります。

 結局、気がついてみたときには、九〇年代を通して百二十七兆円の景気対策が打たれました。公的資金は、金銭贈与で十八兆円を超える、破綻処理銀行への預金者保護のお金が使われました。不良債権処理損失は九十七兆円ぐらいにまで達しました。そのうち七十兆円そこそこは銀行の業務純益で埋め合わせをいたし、十数兆円は株の含みを吐き出すことによって埋め合わせをし、結局、一番効いたと思われるのが公的資本の注入十二・四兆円であったわけでございます。

 結局、日本の教訓から言えますことは、金融危機の背景には金融機関のソルベンシーの問題がある、支払い能力の問題がある、それは個別の問題を超えて金融システム全体がインソルベントになっているおそれがある、したがって公的資金の投入が必要なんだということを我々はまさに九〇年代の教訓から学んだわけでございます。したがって、まさにこうした日本の教訓というのは、今の世界的な金融資本市場の混乱の中で大いにメッセージとして出していくべきものと思います。

大畠委員 そういうメッセージを出すということは大事だと思いますが、結果的には、アメリカにおいて経済が大混乱に陥った。それで今、日本の経済も非常に先行きがよく見えなくなってきてしまった。

 二月十九日の日経新聞の朝刊のところに、「福田政権の経済政策は五十三点」という記事があるんですね。何かというと、何か明確なめり張りのきいたメッセージが出されていない、こういうことでございます。

 額賀大臣にお伺いしたいわけですけれども、額賀大臣は、このサブプライムローンの発端として、日本の株価が下落した時期がありました。そのときに、株価の下落でもって一喜一憂しないというメッセージを出したり、福田総理も、これはアメリカに起因する問題でしょう、だからこれは静観しますよ。この何もしないというメッセージが、私は非常に病状といいますか症状を悪化してしまったんじゃないかという感じすらするんです。

 そこで、今、G7の蔵相会議という話が渡辺さんから出ましたけれども、東京で行われたわけですけれども、ここの席で額賀大臣は、サブプライムローン問題に対してどんなメッセージを各国に発信したのか、これまでの日本の経験を踏まえてどのようなメッセージを発信したのか。

 もう一つは、福田内閣が誕生して以来、五カ月間で、株価は二千八百円下落しているんですね。株価が落ちるということは、日本の経済を支えている企業の体力が落ちるということなんですね。これはもうやはり、一喜一憂しないじゃなくて、非常に重大な関心を持って財務大臣としてはメッセージを出さなきゃならないのではないかと私は思っています。

 そこで、このG7での財務大臣としての世界に対するメッセージ、そして株価の下落というものを受けての財務大臣としてのお考えをお伺いしたいと思います。

額賀国務大臣 今、渡辺大臣もおっしゃっておりましたけれども、G7会議では、サブプライム問題、なぜこういうことが起こったのか、どうしたらいい、これからどうすべきか、実体経済にはどういう影響があるのかということについて率直に議論をいたしました。私も、日本のバブル経済崩壊後の対応、それから金融危機に対する対応、そういったことの教訓について、学んだことをお話をさせていただいたということでございます。

 基本的には、アメリカも、発信地でありますから、これは経済を持ち直すために最善の努力をする、だから、金融政策それから減税、景気対策を講じたし、これから実態をよく把握して万全の策をとるということでありました。

 ヨーロッパはヨーロッパで、アメリカに対して流動性の確保で協力をした経緯があるわけでありますけれども、むしろインフレを懸念しているというような状況でございました。

 日本も、十九年度の見通しが下方修正されたわけでございますから、これはきっちりとしなければならない。金融的には被害度が一番少ないわけだけれども、これは日本経済もしっかりと回復軌道を取り戻さなければならないということでございますから、我々は、まず金融の安定と、それから世界経済の拡大に向けてそれぞれの国が最善の努力をする、最善の経済政策を打って出るということをまず個別にやる。と同時に、お互いに情報等を共有して、そして連携をとって行動していく、そういうことが大事であるというメッセージを出させていただいたわけでございます。それで、世界経済の安定した形をつくっていこうということでございます。

 私は、今、渡辺大臣が言いましたように、きちっと金融機関は情報を開示して、そして国民の皆さん方に、市場の皆さん方に事実関係をオープンにするということ、損失を明らかにしていくということ、それから、資金の調達ルート、流動性確保について万全を期すということ、日本の場合は公的資金をぶち込んで、そして市場の安心、安定を、信頼をかち取ったんだ、そういうことをよく考えてアメリカも欧州も対応していくべきではないかということを暗にわかっていただくためにそういう話をしたということでございます。だから、各首脳も、あらゆることを想定してやっていこうという決意を表明したと私は思っております。

 それから、株価につきましては、いろいろな要因で動いていくことでございますから、直接的にはコメントは差し控えたいと思いますけれども、中長期的には、やはり日本の国の信頼とか、日本の国の経済の動きを象徴しているとも言えるわけでありますから、我々は、何が問題であるのかということをよく把握して、これを克服していくための努力をしなければならない。

 中長期的には、やはり少子化対策だとか環境対策だとか資源エネルギーをどういうふうに確保していくのかとか、そのためには技術革新をきちっとしていかなければならない、労働力確保、質を大事にしていかなければならない。そういうさまざまなことを具体的に政策としてどうしていくかということのメッセージをこれからつくり上げていかなければならない。したがって、福田政権でも成長戦略というものを今つくって、できるものから実行に移していこうということを考えておりまして、これは世界に対してきちっとメッセージを発信していかなければならない。

 大畠先生もおっしゃっておりましたけれども、膨大な借金を抱えておりますから、日本の国は一体どこへ行くのかというもう一つの懸念もありますから、やはり財政再建の旗はきっちりと掲げてこれは実行に移していかなければならない。プライマリーバランス、財政収支の均衡、そういうことを目指していくことのはっきりしたメッセージを伝えていくことが大事であるというふうに思っております。

 そのためにも、これはやはり与野党の協力を得て補正予算もつくらせていただいたわけだし、原油対策だとか、これからの成長をきちっとしていくためには、経済の歩みをしっかりとしていくためには、この二十年度予算を年度内に成立させることも最も大事なことだと思っておりますから、そういうことを一つ一つきちっとできる、政策が決定できる、そしてやるべきことがしっかりとやっていける政治体制であるかどうかということも問われているわけだから、これはしっかりしていかなければならないということだと思います。

大畠委員 実は今ちょっと資料を捜していたんですが、日本の国民の資産は大体千五百兆と言われていますね。これはどのくらいの規模に当たるのかというと、イギリスとフランス、ドイツの三カ国の資産を合わせると大体このくらいになるというので、大変な日本のそういう財政的な国民の資産というのがあるわけで、そこの国の財務大臣ですから、単なる、予算が通ることが一番こういう財政対策ですとか金融対策だなんて、そのメッセージを世界に発表して本当にいいのかなと思うんです。そんなメッセージだからこそ、こういう話になってしまうんじゃないですか。

 日本国内の話じゃなくて、やはり日本としてそれだけの大変大きなベースを持っているんですから、財務大臣として、予算が通ることが最大の対策ですなどという話では、私はまさにこの「福田政権の経済政策は五十三点」というものを裏づけるような話ではないかという、私も茨城県出身ですから厳しいお話をして恐縮でありますが、そんな感じすらしてしまうんですね。

 そこでもう一つ、G7のときに共同声明で、経済の安定と成長を確保するため、個別にあるいは共同して、適切な行動をとるということが明記されたわけでありますが、日本の国としては、この共同して適切な行動をとるというのはどういう意味をなすのか。

 そして、今お話を伺っておりますが、日本政府として何をやろうとしているのか、それが見えないんですけれども、一月二十六日に福田総理はダボスの国際経済フォーラムでスピーチをされました。スピーチ後の質疑応答で、日本の財政政策での対応を否定した。このメッセージが結局は一月二十八日に前日比で五百四十二円の株価の下落を呼んだ、こういうことになっているんです。

 今のお話を伺っておりますと、この福田総理の国際フォーラムでのメッセージというものを転換する、そして何か新たな対策をとるということをおっしゃっているのか、この共同して適切な行動をとるというのはどういう意味をなすのか、改めて財務大臣のお考えを伺いたいと思います。

    〔奥野委員長代理退席、委員長着席〕

額賀国務大臣 これは、米国も欧州も我が国も、アメリカにおける実体経済が、世界がどういうふうにこれから影響を受けていくのか、そしてどういうふうに立ち直っていくのか、あるいはまた世界に対してどういうふうな影響を与えていくのか、そういうことをきちっとお互いに情報を共有し、それぞれの国ができることに最善を尽くすということであります。情報を共有していく中で、お互いが、世界の経済が拡大をし、市場が安定をしていく方策をとっていくということであります。

 日本は日本の立場と事情があります。それは、バブル経済崩壊後のように、あるいは、日本から金融危機を発信するかどうかという九七、八年のころと全く状況が違っていると思います。再びあのころと同じような財政政策をとっていくとか、そういうことは考えられません。したがって、やはり、日本は日本の事情の中で、最善の方策は何をするべきかということを考えていかなければならない。そのために、今、福田政権発足、もう四カ月ぐらいたつわけでございますけれども、新しい、新成長戦略というものを今早急に組み立てて、国内あるいはまた世界に発信をしていきたいというふうに思っております。

 その基本的な考え方は、先ほど言いましたように、少子高齢化社会をどういうふうにしていくか、希望と安心の高齢化社会、きちっと乗り越えていくことができれば、これは日本の、ある意味では世界のモデルをつくることになる。

 環境問題でもそうである。これまで、これは大畠先生も実務の時代に環境問題等に、エネルギー問題に取り組んでこられて、それで、世界に類を見ない蓄積がある。そういうものをさらに伸ばしていく。いいものは伸ばし、悪いものは克服していく。

 それから、もともと資源のない日本の国ですから、資源をどう開発していくのか、新しいエネルギー源をどう開発していくのか。そういう技術革新をどう展開していくのか、そのために、どういうふうに予算なり、企業あるいは大学の連携をとっていくのか、そういうことをしっかりとやっていくことだと思います。

 それから、おっしゃるように、世界の中の日本だから、やはり開かれた日本をつくっていかなければならない。あるいは、世界から対日投資をふやしていく環境づくりをしていくことによって、日本を刺激していかなければならない、日本の発展を新しい段階にしていかなければならない。そういうことをきちっとメッセージとして投げかけていくことが大事であるというふうに思っております。

大畠委員 私は、日本の財務大臣は、財務大臣の発言が世界の経済に大きな影響を与える、もちろん日本の国内の経済にも大きな影響を与えますが、一億二千万の国民だけではなく、六十億の国民の経済環境にも大きな影響を与えるという、そのぐらいの覚悟と度量をぜひ持っていろいろ発言をしていただきたいということはお願いをしておきたいと思います。

 今のメッセージが世界にどういうふうに届いたのか、その影響についてはよくわかりませんが、いずれにしても、現在のところは、この雑誌に象徴されるように、どうも余り日本のメッセージは明確なメッセージが出されていないということは事実だと思うんです。

 そこで、ちょっと視点を変えて金融担当大臣にお伺いしますが……(額賀国務大臣「ちょっといいですか、大畠先生、一言」と呼ぶ)ではどうぞ。

額賀国務大臣 やはりそのためには小泉内閣、日本の改革というのは橋本内閣時代の六大改革から始まったのでありますけれども、それは歴代内閣ずっと継承してきまして、そして小泉内閣が最近では象徴的でありますが、これは既存の権力構造とか組織について破壊的な性格を持ったものであったと思います。

 それはそれで新しい創造を生み出すことになるから、私は結構だと思っておりますが、その改革は続行していかなければならない。今度は、破壊するだけではなくて、しっかりと創造をしていかなければならない、そういう改革と創造の形、あるいはまた考え方が望ましいと思う。そういうことをやり遂げることができれば、政治力があれば、また、没落する日本ではなく、日はまた上る日本になることができると思います。

大畠委員 先ほども改革と創造という言葉を出されましたが、結局、小泉改革というのは、小泉政権でやったのは破壊だけであって、創造がないというところに問題があるんです。

 この午前中の質疑等でもありましたが、言葉はあるんだけれども裏づけがないというのが問題なんですね。ですから、額賀大臣には、改革と創造というお話がございましたが、ぜひそれを実践するように、まさに、発言するということは行動が伴わないと何の意味もありませんから、ぜひ実践するように、さらに精進していただきたいと思います。

 そこで、金融担当大臣にお伺いしたいのは、日本国内でおおよそ六千億という被害額が新聞紙上でも報道されていますが、あれだけ土地バブル崩壊で非常にやけどを負って、十兆円を超す、十四兆円規模ですか、公的資金を投入してまで、金融機関を通して日本の体質を改善しようと努力したんですが、今回の被害額は、四十兆に比べれば少ないとはいいますけれども、これからまた被害がふえる可能性はあると言われているんですね。

 なぜ、金融庁として、このような商品に手を出すようなことを結局許してしまったのか。金融庁はいわゆる監督官庁であって、証券とか金融の正常化、言ってみますと、何か不良なものに対しては警鐘を鳴らすとか、そして誤った道に行かないような形で誘導するとか、あるいはそういうものを活発化させる、そういう努力が金融庁として結局足らなかったんじゃないか。要するに、指導はするけれども、そういう道に再び陥らないような、そういう努力のところが欠けていたんじゃないかと私は思うんですが、金融担当大臣としての御所見を伺います。

渡辺国務大臣 証券化という金融手法そのものがいけないんだという御議論があるのは承知をいたしております。

 今回、結果として大変な損失を世界じゅうにばらまいてしまったその原因については、先ほども申し上げましたように、本来のビジネスモデルであるオリジネート・ツー・ディストリビュートという手法が、十分にこれが機能する仕組みが整っていなかったのではないか、そういう反省も一方においてしているところでございます。例えば、トリプルAの格付を信じてその金融商品を買ったところが、突然この格付が何段階も下げられて、しまいには値段がつかなくなってしまったなどという話も昨年ございました。

 格付会社につきましては、私のところの金融市場戦略チームの第一次報告書というのを昨年十一月に公表いたしております。その中では、例えば、証券化商品に関する格付ビジネスに利益相反の可能性が内在していたのではないか、あるいは、格付モデルの内容やその妥当性について適切なディスクロージャーがなされていなかったのではないか、また、格付に必要かつ十分な情報を組成者、商品を仕組んだ人から適切に入手、聴取していたかどうか、そして、格付情報の意義について投資家に誤解を与えていなかったか、こういった観点から分析をしたところでございます。

 また、今日のサブプライムローン問題について、原資産のリスクが分散してしまったということでありますから、原資産のリスクが計測可能なものになるようなトレーサビリティーというものを確立していくべきではないか、そういう提案も金融市場戦略チームにおいて行ったところでございます。

 いずれにいたしましても、こうしたレギュレーションというのは日本一国だけでできるものではございません。さまざまな、金融安定化フォーラムあるいはG7等々の国際的な会議を通じて、これらの問題について今鋭意話し合っているところでございます。

大畠委員 金融大臣におかれましては、金融庁というところ、私もこの一年ぐらい金融庁の皆さんのお話をいろいろ伺っているんですが、何か目的が狭くなっちゃっているような感じがするんですね。

 いわゆる金融機関の健全化、そういうところにばかり集中しちゃって、国民が千五百兆の資産をどんな形で運用しているのか、どんな形で何をしようとしているのか、それが健全なのか。本来は、金融機関の健全化が目的じゃなくて、日本国民の資産運用という状況全体が健全かどうか、いわゆる詐欺にひっかからないかどうか、あるいはそういうものが入りそうなときには警鐘を鳴らす。もちろん、日本国内だけじゃなくてアメリカとかヨーロッパに対しても、金融機関同士で連携があるんでしょうから、それは日本で経験したことだ、こういうのはおかしいじゃないかと。

 あるいは、格付についても、とにかくもうかるんじゃないかというところに行ってしまうんですね。私は、これは格付会社の責任もあると思うんです。結局、それを信用して入ったところもあったでしょう。しかし、結果的に六千億も、これは広がる可能性があるんですが、現在段階で六千億も損失が見込まれるということ自体は、金融庁は、単に私には責任ないというんじゃなくて、国民に被害者が出た、そのことをもって、もっと自分を律して、一体金融庁というのは何なのかということを改めて問い直すことが必要じゃないかと私は思います。

 同時に、もう一つ伺いますが、サブプライムローンを発端としてのアメリカの株下落は一五・五%。昨年の十月の一万四千百六十四ドルから、一月の二十二日には一万一千九百七十一ドルまで、二千百九十三ドル下がったんですが、これが一五%。ところが、日本の場合には、昨年の七月九日の一万八千二百六十一円から、ことし一月の二十二日には一万二千五百七十三円と、五千六百八十八円下落、三一%下落しているんですね。

 日本を発端とした問題でないにもかかわらず、なぜ、アメリカの株価の一五%下落に対して、二倍の三一%も下落しているのか。このことについて、金融庁としてどのようにこの事実関係について受けとめているか、お伺いしたいと思います。

渡辺国務大臣 まず、前段の話でございますが、日本の金融機関が六千億円ほどの損失を出したとはいえ、これは欧米の巨大複合金融機関に比べますと、けたが一つか二つ小さいということが言えます。その一つの理由が、いわゆるバーゼル2の基準をいち早く日本の金融機関には導入をしたということがあるわけでございます。

 このバーゼル2の基準でいきますと、例えば証券化商品については、旧規制がリスクウエートを原則一〇〇%であったものを、リスクウエートを二〇%から一二五〇%、つまり、ほとんど価値がゼロになるというところまで外部格付を利用してリスクを判定したりしているわけでございます。したがって、こういう世界的な金融市場の大混乱の中にあっても、日本の金融機関がこうした基準をいち早く導入していたことによって比較的軽微で済んでいるということもぜひ御理解をいただきたいと思います。

 また、株価下落が、日本だけ特別に下がっているではないかという御指摘でありました。

 日本の証券市場は、御案内のように、七割のシェアが外人さんで占められているわけであります。そういたしますと、昨年の夏、例えばパリバ・ショックと言われるサブプライムローン問題のショックが広まったりいたしますと、急速に信用が収縮をしてまいります。では、利益の乗っている日本株を売って、その利益を本国に戻そう、こういう動きもあったという解説もございます。ドルベースで日経平均の株価を見ますと大体似たような動きになっているというエコノミストの指摘もございます。一方、円ベースで見ますと、これは円高要因とか、そういったことが逆に輸出企業の収益に反映をして、さらに株価が売られる、こういうこともあったかと思います。

 いずれにしても、残念なことに、日本が名目経済成長率が〇・八%という水準に低迷をしていることが、何といっても株価の足を引っ張っている要因ではないでしょうか。

大畠委員 ちょうどお手元に参考資料をお配りさせていただきましたが、日本の株価が、今担当大臣から、実力値よりも低いという趣旨のお話も最後に出ましたけれども、これはアメリカと日本の国の投資部門別の株式保有比率というグラフです。これは、上はアメリカで、下が日本なんですが、アメリカのケースを見ますと、個人投資家の株主が大体四分の一、投資信託が四分の一、年金関係が四分の一、あとの残りの四分の一の半分が外国人、一三・七%、あとの半分が金融機関、九・一%ですね。

 日本はどうかと見ると、外国人が二八%。アメリカの倍の分野が外国人の投資家なんですね。個人が一八・一%、事業法人、金融機関が二〇%、二二%。個人関係の資金の投資信託と年金信託は、合わせても八%ぐらい。この比率が、結局、外国人投資家の出入りでもって、今、渡辺大臣もおっしゃったように、一日の取引の七割は外国人の株主だというんですが、日本人がなぜ株に投資をしようとしていないのか、ここのところが、私は、日本の企業の株価が実力値に対して非常に低い状態が続いている原因だと思うんです。

 そこで、この際金融担当大臣として、どうやって国民に対して、まさに貯蓄から投資へというメッセージがどこかでちょろっと聞こえたけれども、また聞こえなくなるということで、今回、投資に対する障害になってきているのが、例えば金融商品取引法。これは、よかれと思ってやったんだけれども、一人の投資家に対して二時間も説明するとなれば、個人のお客さんは嫌になって、もういいですというような話になっているという話も現場から聞いています。

 もちろん、いろいろ安全と思ってやっているのかもしれません。これは、建築基準法の改正で、耐震の強化を図るためにしっかりしなさいというので四割も住宅の着工件数が減ったという、これもまた内需を落としていることなんですが、よかれと思っているんだけれども、現場を見ていないでこういうことをやるから投資も進まない。貯蓄から投資へといっても、その流れがうまくいっていないんですね。ですから、日本の優良企業の株価が低迷をし続けている。

 ですから、アメリカぐらいに、四分の一ぐらい個人投資家が株を買うみたいな環境を整えることも、私は金融担当大臣の一つの仕事じゃないかと思うんです。そういう意味で、この問題についてどう考えておられるか。

 それから、日銀総裁がきのうの夜からずっとお待ちいただいて恐縮でございましたけれども、実は、今ずっと論議してまいりましたが、日本の国内の経済というものは、アメリカと中国に大きな影響を受けているんですね。アメリカがあのような形、そして中国も影響するんじゃないかというような状況が出ておりますが、この現状について、日銀総裁として今どういう御認識をお持ちなのか。

 この二つをお伺いして、私の時間は終わりましたので、質問を終わりたいと思いますが、まず、金融担当大臣、お願いします。

渡辺国務大臣 貯蓄から投資へというのは、まさに私、金融大臣としての最大のミッションでございます。

 なぜ日本の家計がこうしたリスクマネーに流れていかないのか。まず、目先の動向でいえば、やはりこれは、株価が低迷をしているというところに最大の原因があろうかと思います。

 金融商品取引法についても言及されましたが、これは、証券会社の窓口では、そんな二時間もかかって説明をするというようなことは聞きません。やはり、金融商品になれていない他の金融機関、例えば銀行の窓口とかそういったところで混乱が見られるのではないでしょうか。同じ人に別の商品を売る場合も、同じように二時間かけて説明し、いろいろ聴取をしたりしている。

 また、笑い話としてよく語られるのは、七十歳を超えた人は、家族を連れていかないと投信を売ってもらえない。そんなことは金融商品取引法のどこにも書いてない話なんですね。つまり、金融商品取引法を過剰に解釈して、過剰なコンプライアンス体制をしいてしまっているということが、昨年、金商法スタート時点で見られた現象だったと思います。

 したがって、こういった行き過ぎに対しては、その是正を今鋭意お願いしているところでございます。

福井参考人 お答えを申し上げます。

 ただいま議論を重ねておられますとおり、アメリカ経済はかなり大きな不良債権問題に直面しているということでございます。

 不良債権の処理というのは、委員つとに御承知のとおり、経済の中で生み出されるキャッシュフローを使って、あるいは、足りなければ既に蓄積された資本を取り崩して損失の穴埋めをするということでありますので、本来前向きに使われるキャッシュフローあるいは資本が、そういうふうに後ろ向きに使われる間は、どうしても経済が前に進む力をそいでしまう。アメリカ経済が今減速過程をたどっているのは、基本的にはそういうことでございます。

 世界経済全体としてその影響が全くないかといえば、それはやはりじわじわと影響が出てきているということだと思います。幸い、世界全体としては、減速しながらもまだ拡大しているという状況でございますけれども、先行き、もう少しダウンサイドリスクが強まっている、こういう状況だろうというふうに思います。

 そして、金融資本市場におきましては、今までリスクを甘く見過ぎていた、委員おっしゃるとおりでありまして、その反省から、今、リスクを避けよう、こういう動きが非常に強くなっておりまして、株式市場などにもその影響が強く出ており、日本の株式市場についても強くその影響が出ている、こういう状況だろうと思います。

 したがいまして、実体経済の方も、それから金融資本市場の方も、しばらくこの調整過程が続く。この調整過程を極力秩序あるものとして、調整過程を全うさせなければいけない、これがこの間のG7の基本的な命題であったというふうに思います。したがいまして、情勢認識を共有しながら、それぞれ自分の国の政策領域の中において最適な政策を果敢に打っていく、このことが認識共有をされたというふうに思っています。

 私ども、金融政策の分野でこれを受け持つわけでございますけれども、意識されましたのは三つぐらいあると思います。

 一つは、金融政策の部分。これは、それぞれの国で最も適切な金利水準を今後ともきちんと設定していくというだけでは不十分で、金融市場が不安定な状況にありますので、金融資本市場すべてのかなめの位置にあるマネーマーケットに必要な流動性をきちんと供給していく、これが一つでございます。

 二番目は、不良債権処理の過程。これは、米国、欧州において今ウエートが高いわけでありますけれども、金融システムの安定性を害しない強いコミットメントを当局としてはしていく。したがって、市中金融機関が不良債権の処理をみずからの努力でどんどん進めるように後押しする。当局としても、必要な手ということはきちんと用意しながら、金融システムが壊れる心配がないということを世界じゅうの人々が認識できるように持っていく、これが二番目でございます。

 それから最後は、これから将来に向かって、委員がおっしゃいましたとおり、そんなに甘いリスクをとるんですかというふうな状況がないように、やはりリスクの評価の仕方、ディスクロージャーの仕方、そして個々の金融機関におけるリスク管理のあり方というものをもっと改善してもらいたい。改善してもらいたいとただ言うだけではできないかもしれませんので、当局も知恵を出して、新しいアイデアを示しながら金融機関の努力を促す、この努力を強めていこうということを明確に打ち出しております。

 そういう状況の中で、日本経済をどう見るかということでありますけれども、日本経済自身、決してそうした世界の経済、金融の調整から無縁な状況にあるわけではありません。日々かなりのショックが及んできていることを我々も感じております。

 ただ、幸いにも、やはり過去の不良債権問題の処理が終わった現在の日本経済は、生産、所得、支出の前向きの循環を何とか基本的に維持しておりますので、これを壊さないように次の局面に持っていかなきゃいけない。

 それから、金融システムの面でも、金融担当大臣がおっしゃいましたとおり、日本の金融機関の今回の新しい不良債権問題は比較的小さくとどまっているし、過去の経験の反省もあって、日本の金融機関のリスク管理能力というのはかなり前進しているところがございます。しかし、これで満足できないわけでありまして、将来に向かってもっとリスク感覚を研ぎ澄まし、新しいビジネスモデルをきちんと築いていってもらいたいということで、この方向でも我々としては、金融庁、日本銀行が努力して促していきたいということでございます。

 一言で申し上げれば、日本経済も今後とも世界経済のダウンサイドリスクをより強く受ける心配は残っている。金融システムの面でも、もう少し問題が大きくなる心配は残っている。これらをうまく包摂しながら、この調整過程を日本経済に関する限りはきちんと全うしたい。これは短期の問題です。

 より長期的には、こういう調整過程の中にあればあるほど、世界の投資家はうんと将来を見て、どこの国の経済が有望かという目で改めて総点検するわけでございます。そういう目で日本経済について将来を洗い直されるということを、やはり強く意識しなければいけません。

 したがって、少子高齢化の問題にせよ、財政再建の問題にせよ、あるいは、金融技術革新だけでなくてもっと広い技術革新を促して日本の潜在成長能力を上げていく、ここに官民挙げての努力が結集されているんだということを世界に見せていく必要がある、こういうふうに思っております。

大畠委員 いろいろありがとうございました。

 最後になりますけれども、やはり、額賀大臣、日本の当面するこの危機を乗り越えるためには、暫定税率を廃止する、そういう意味での減税というものも一つの方策としてしっかりと頭に置くことが大事じゃないか、こういうことを申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

原田委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 所信への質疑ということですが、きょうは財務大臣にお聞きをしますので、金融担当大臣はどうぞ御退席いただいて結構でございます。

 そこで、景気の現状認識と対応策ということでただしていきたいと思います。

 これまで、景気が回復してきたと言われておりましたが、ことしに入りまして後退局面が明確になったという指摘もあります。まず最初に額賀大臣に、どのような認識か、伺いたいと思います。

額賀国務大臣 これは、十九年度の経済見通しも下方修正をしたわけでございまして、これの直接的な原因、理由は、改正建築基準法による大幅な住宅着工の減少によるものと言われているわけでございます。しかし、企業収益がいいし、消費も、伸び悩んでいるところはありますけれども、動いている。その意味では、二十年度は基本的には景気回復の軌道をたどっていくだろうというふうに推定をしております。

 ただ、いろいろな問題がありまして、アメリカの実体経済がどういうふうになっていくのか、そういうものが世界経済にどういうふうに反映をしていくのか、あるいはまた、原油価格とか穀物飼料の上がり方等がどういうふうに実体経済に影響を及ぼすのか、そういった不確定な要因がありますから、よく注意深く見ていかなければならないというふうに思っているところでございます。

佐々木(憲)委員 最近までの景気回復というのが何によって主導されてきたかということを、よく現状を認識する必要があると思います。

 そこで事実関係をお聞きしますが、内閣府にお尋ねします。

 国民経済計算の実質経済成長に対する民間最終消費支出と、財貨・サービスの輸出、その寄与率ですね。八〇年代前半と比べて二〇〇〇年代の前半、これはどういうふうになっていますでしょうか、お聞きをしたいと思います。

大脇政府参考人 お答え申し上げます。

 一九八〇年から八五年の五年間の実質成長率、これは一六・五%でございました。これに対する民間最終消費支出の寄与度は八・八%ポイント、輸出の寄与度は三・〇%ポイントでございました。

 一方、二〇〇二年から二〇〇七年までの五年間の実質成長率は一一・一%となっております。これに対する民間最終消費支出の寄与度は四・〇%ポイント、これに対しまして、輸出の寄与度は六・四%ポイントでございます。

佐々木(憲)委員 私は寄与率をお聞きしたんです。今、寄与度を説明されましたが、寄与率はどうなっていますか。

大脇政府参考人 寄与率を申し上げます。

 一九八〇年から八五年の五年間でございますけれども、民間最終消費支出の寄与率、これは成長率全体の五三・二%でございます。これに対しまして、輸出でございますけれども、一八・一%でございました。

 二〇〇二年から二〇〇七年の成長でございますけれども、この間の成長に対する民間最終消費支出の寄与率、これは三六・〇%でございます。一方、輸出でございますけれども、五七・九%でございました。

佐々木(憲)委員 今お聞きしておわかりのように、民間最終消費支出というのは、その中心は家計支出であります。その寄与率が、八〇年代の前半は五三・二%でありましたが、最近は三六%に落ちております。その反面、輸出の寄与率は、一八・一%だったのが五七・九%。つまり、輸出牽引型経済成長、こういうふうに言えると思うんです。

 そこで、昨日の日経新聞にこういうのが出ております。これは特別編集委員の方の解説ですけれども、「米国の住宅バブルによる消費主導の成長と、中国など新興国の投資主導の成長による世界経済の需要拡大で潤ったのは外需の恩恵を直接受ける大企業・製造業だ。鉄鋼、自動車などの輸出産業は高度成長期以来の二ケタ近い売上高の伸びを続け、設備投資を増やしながら労働分配率を大幅に引き下げて、空前の利益を上げた。」こういうふうに言っているわけですね。

 つまり、日本の経済というのは、内需、つまり家計消費よりも、輸出に依存してきた。その輸出の中心は大企業であり、その大企業は、それで大幅な利益を上げながら、労働分配率は下げてしまった。したがって、内需は労働分配率の面では低迷したわけであります。こういう構造だったと。これが輸出主導型経済成長の一番のかぎになる部分であります。

 この点についての大臣の御認識はいかがでしょうか。

額賀国務大臣 今、内閣府の方から御説明があったように、最近の景気回復の軌道は輸出主導であったと思います。その分析からいっても、八〇年から八五年の五年間と二〇〇二年から二〇〇七年の対比をすると、輸出の寄与度が五分の一から二分の一に、そして個人消費の分野が二分の一から三分の一というふうになっていますから、先生のおっしゃるような形で動いているというふうに認識をしております。

佐々木(憲)委員 外需依存型で景気回復があったけれども、内需は抑えられている。この関係というのは裏腹の関係であります。自動車、電機、鉄鋼、これらの大企業は非常に輸出比率が高いわけです。日本の輸出全体に占める輸出上位十社、これを取り上げますと、私の計算では、一九八〇年には二七・九%、二〇〇五年、これが三三・七%です。つまり、輸出の三分の一がわずか十社、これによって占められているわけであります。

 このようにして利益を上げた大企業は、結果的には、経常利益は、例えばこの五年間だけをとりましても二倍ぐらいになっております。しかし、役員給与は二倍ですけれども、配当金は四倍、従業員の給与はマイナス、これが法人企業統計調査、財務省の調査でございます。

 このようにして、輸出主導型の景気回復というのは、実態は、大企業の利益回復とそれから株主への配当、こういうところに回って、労働者や下請の方にはなかなか回らない。いわば搾取、収奪の上に成り立った企業の利益であった、こういうことが言えるんじゃないかと私は思います。今後、問題は、こういう輸出に依存するこの体質がこのままいくのかどうか。

 そこで問題になるのは、先ほども日銀総裁のお話がありましたが、ダウンサイドリスクが高まりつつある。これは、アメリカの経済の低迷であります。先日、私は財務金融委員会で日銀総裁にお聞きしたところ、「予想以上のものとなるリスクというのはやはり明確にあります。」こうおっしゃっていました。日本のこの輸出依存型経済というのは、今後やはり壁にぶつかるのではないか。

 問題は、そうなりますと、内需がどうなるかです。内需は何がかぎかといえば、GDPの五割以上を占める家計消費であります。この家計消費をどうするのかというところが今後の経済運営の非常に大事な視点になってくると思います。

 福田内閣は生活重視ということをおっしゃっていました。家計に重点を置くというのは今後の経済政策で大変重要だと思いますけれども、額賀大臣はどのようにお考えでしょうか。

額賀国務大臣 共有できるところもあるわけでございますけれども、これだけ冷戦が崩壊してから世界経済が拡大していく中で、やはり、世界の市場を相手にしていかなければならないということが一つあります。中小企業でも、そういう開かれた分野にいるところは元気があると思います。したがって、あと、内需に依存するところの中小企業、中堅企業がどうすれば成長していくかということを考えていかなければならないことが一つあると思います。

 それは、医療だとか教育だとか、あるいは社会福祉の分野だとか、さまざまな分野でそういう企業が活躍できる分野が出てこないのかくるのか。そして、技術革新をもって、技術をもってそういう分野で開拓していくことができるのかできないのかということが一つあるのではないか。

 もう一つは、先生がおっしゃるように、やはりGDPの相当な割合を占める家計部門、これをどういうふうに消費を安定した形にしていくのかということが大事なことだと思います。

 端的には、この前、経済界の人たちとお会いしたときも、収益の上がる企業はやはり従業員に対して給料を上げてもらうようなことが労使間できちっとされていくことが望ましいですよね、それから、非正規雇用の雇用を正規化していくかとか、そういうことについてしっかりと考えてほしいという意見交換をさせていただいたところでございます。

 それと同時に、やはりもう一つは、社会保障制度で将来への不安、少子高齢化社会の不安をどう解決していくのか、道筋をつけていくのか。それは、負担と給付の問題でございます。

 そういうことについて、やはり国民的な理解を得て形をつくっていくことが大事だというふうに思います。

佐々木(憲)委員 総論では何か少し似たような感じでございますが、具体策になりますとかなり根本的に違ってくる、どうもそんな感じがするんですね。

 配付した資料を見ていただきたいんですが、雇用者所得は、例えば一九九六年から二〇〇六年、この十年間、約十兆円減っているんです。可処分所得は八兆七千億円減りました。貯蓄はどうか。二十二兆八千億円減っているんです。つまり、家計部門、この分野は非常に圧迫をされているわけですね。

 ところが、その反面、例えば企業所得を見ますと、約十六兆円増大しているわけです。現に、一昨日発表された昨年分の毎月勤労統計調査、これによりますと、常用労働者の平均月間現金給与総額は三年ぶりに減少に転じた、三十三万になった、こういうことであります。

 つまり、企業と労働者、家計、この関係を見ますと、利益は拡大したが賃金は上がらない、こういうことでございます。もちろん、賃金の引き上げについては、政府が関与してどうこう言うものではなくて、労使間で決まる、いわばそういうことでございます。

 しかし、問題は、先ほど少し触れましたように、全体の賃金水準、これを決めるには、非正規雇用、これをどう解決して正規雇用に引き上げていくか。その際大事なことは、やはり制度上の問題があると思うんです。

 その前に、非正規雇用の賃金に対する関係を見ますと、一昨年の十二月、内閣府の日本経済二〇〇六―二〇〇七、いわゆるミニ経済白書ですけれども、それによりますとこう書いてあるわけです。「非正規雇用者の賃金は正規雇用者に比較すると相対的に低い水準にあり、企業内で非正規雇用者比率が高まることは平均賃金水準を押し下げることになる。」つまり、非正規雇用の比率が高ければ高いほど全体の賃金水準を押し下げてしまう、こういうふうに分析をしているわけです。

 先ほども財界とのお話の一端を御紹介いただきました。その中でも非正規雇用の話がされたと言われていますが、この非正規雇用を正規雇用に変えるということは、企業の努力だけでそれで十分かといえば、制度上の問題がある。例えば日雇い派遣をどうするという問題も、この国会でもいろいろ議論になりました。制度上、政策上、そういう問題を規制して、非正規雇用から正規雇用にきちっと転換し安定した収入が得られる、そういう環境をつくるというのが政府の役割じゃないか、そういうふうに思いますが、どのようにお考えでしょうか。

額賀国務大臣 私は、この非正規雇用の若い人たちというのは、バブル経済崩壊後、企業も元気がないし、就職もできなかった方々が多いんだと思うんですね。そういう人たちがやはり安い給料でいると、幾ら少子化対策といったって、若い人たちがきちっと家庭生活が持て得ないような状況ではこの少子対策も乗り切っていくことができないわけですから、安定した職場につけること、あるいは技術力を持っていくこと、そういうことによって結婚もすることができる。そういう環境づくりをしていくことは、これは政治の役割だと思います。

 だから、いい意見があればどんどん言ってください。

佐々木(憲)委員 では提案をいたしますが、正規雇用を非正規雇用に移すことを可能にした労働法制の今までの緩和がありましたね。やはり、非正規雇用を認める方向に来たことが問題だったと私は思います。それを見直す。もう一度派遣というのを一定の限定した分野にとどめる。これは九〇年ごろには限定されたものでした。それが今はもうどんどん広がって、製造業一般に広がっている。それが全体の水準を押し下げているわけです。したがって、そういうふうに労働法制をもう一度再検討する。こういうお気持ちはありますか。

額賀国務大臣 私の認識は、基本的には、高等学校とか大学の生活自体、やはり世の中が変わっているわけでございますから、従来どおりの延長線上ではなくて、これから企業が求めているところと、それから自分がやりたいこととのギャップをどうやって埋めていくような形をとっていくのか。あるいはまたそして、そういう非正規雇用の人たちにもそういう職業訓練だとか勉強の機会を与えていく。そういう中で自分のライフサイクル、仕事をつくっていく。企業もそういう人材を採用していく。それはお互いさまの努力がなければいけない。制度上の問題だけではなくて、やはり、そういう時代の流れというものをよく見きわめた上で考えていく必要があるのではないかと思っております。

佐々木(憲)委員 突然歯切れが悪くなったんですが、私が言っているのは、制度上の問題があると言っているわけです。労働法制の規制緩和があったからこそ、これだけ、労働者の三分の一もですよ、非正規雇用になっているわけです。それを是正するという方向に政府が踏み出さない限りはもとに戻らない。実際に、二枚目を見ていただければわかりますが、正規雇用も昨年の七―九月期になりますと減り始めております。非正規雇用もふえております。これは、全体として非常に状況が悪化していると言わざるを得ません。

 ですから、企業にお任せしますという話ではないし、職業訓練で何とかなるという話でもないわけです。そこを認識していただきたいと思っているわけです。

 それからもう一つは、家計を活性化するには、家計の負担感を減らす、これが非常に大事だと思います。

 大臣にお聞きしますけれども、資料の三枚目にありますように、これまで、小泉内閣以来どれだけ国民が負担を押しつけられてきたか。これは全部政府が出したものでありますが、これだけの負担を押しつけたという認識はありますか。

額賀国務大臣 それぞれ、税とか社会保険料というのは、社会保障における負担と給付のバランスを考えていくわけですね。あるいはまた、世代内の公平感あるいは世代間の公平感、そんなことを考えながら手を打ってきた政策であるというふうに思っております。

 これは、先ほども言いましたように、医療関係とかそれから社会保障関係が多いわけでございますけれども、年金にしろ医療にしろ介護にしろ、やはり社会的に面倒を見ていかなければならないという形になってきつつあるわけだけれども、その際に、やはり若い世代の負担とそれから給付を受ける側とのバランス、そういうことをよく考えた上で、我々も、公平感をつくりながら、持続できる社会保障制度、社会のシステムをつくるためにいろいろと知恵を出してきたということをぜひ御理解いただきたいというふうに思います。

佐々木(憲)委員 ともかく社会的に面倒を見ると言うのなら、ちゃんと国が財政的に支えるのは当たり前ですし、世代間の負担と言いますけれども、高齢者を中心に非常に大きな負担がかかっているわけです。ここに挙げただけでも何十項目にも上るようなものでありまして、合わせると十二兆七千二十三億円ですよ。十兆円を超える負担をしておけば、これは内需が低迷するのは当たり前ですよ。それを、今お話を聞いても全く反省がない。当たり前のことをやってきたような話をする。

 これは、先ほどの労働法制の緩和の問題もそうですけれども、日本の内需の一番の核になっている、五五%程度が家計消費でございます。その家計消費を支えている賃金ですね。それで、この平均賃金を押し下げる要因である非正規雇用、これを法的にも直そうとしない。あるいは家計に対する負担ですね。この負担は、これだけ負わせていながら全く反省がない。これでは内需拡大になんかつながりませんよ。

 一般論で何か家計重視だとか生活重視と言っていますけれども、現実にやっていることは全く違う。全然違う方向に行っている。これではこの政府にだれも期待できない、私はこういうふうに思います。

 以上で終わります。

原田委員長 以上で両大臣の所信に対する質疑は終了いたしました。

 それでは、速記をとめてください。

    〔速記中止〕

    〔委員長退席、奥野委員長代理着席〕

    〔奥野委員長代理退席、委員長着席〕

原田委員長 それでは、速記を起こしてください。

 次回は、来る二十二日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十五分散会


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