衆議院

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第11号 平成20年3月25日(火曜日)

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平成二十年三月二十五日(火曜日)

    午後一時三十一分開議

 出席委員

   委員長 原田 義昭君

   理事 大野 功統君 理事 後藤田正純君

   理事 田中 和徳君 理事 野田 聖子君

   理事 中川 正春君 理事 松野 頼久君

   理事 石井 啓一君

      石原 宏高君    小川 友一君

      越智 隆雄君    木原  稔君

      佐藤ゆかり君    鈴木 馨祐君

      関  芳弘君    谷本 龍哉君

      とかしきなおみ君    土井 真樹君

      中根 一幸君    萩山 教嚴君

      林田  彪君    原田 憲治君

      広津 素子君    松本 洋平君

      宮下 一郎君    盛山 正仁君

      山本 有二君    池田 元久君

      小沢 鋭仁君    大畠 章宏君

      笹木 竜三君    階   猛君

      下条 みつ君    鈴木 克昌君

      古本伸一郎君    大口 善徳君

      佐々木憲昭君    野呂田芳成君

      中村喜四郎君

    …………………………………

   国務大臣

   (金融担当)       渡辺 喜美君

   内閣府副大臣       山本 明彦君

   財務大臣政務官      宮下 一郎君

   参考人

   (日本銀行副総裁)    白川 方明君

   参考人

   (日本銀行副総裁)    西村 清彦君

   参考人

   (日本銀行理事)     水野  創君

   財務金融委員会専門員   首藤 忠則君

    ―――――――――――――

三月二十五日

 国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 金融に関する件


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     ――――◇―――――

原田委員長 これより会議を開きます。

 金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として日本銀行副総裁白川方明君及び西村清彦君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

原田委員長 この際、日本銀行副総裁白川方明君及び西村清彦君の発言を許します。

 まず、日本銀行副総裁白川方明君。

白川参考人 このたび、日本銀行副総裁を拝命いたしました白川方明でございます。本日は、所信を述べる機会を与えていただき、光栄に存じます。

 私は、平成十八年七月まで日本銀行に三十四年間勤務し、最後の四年間は理事として、担当した金融政策、金融市場、決済システム等の面で総裁、副総裁を補佐するとともに、政策、業務の執行に当たりました。その後は、京都大学の公共政策大学院で教育と研究に当たっておりました。これから任期の五年間、日本銀行の役職員と力を合わせて、適切な政策運営と業務の遂行に邁進する所存です。

 日本銀行の使命は、日本銀行法に規定されていますように、物価の安定と信用秩序の維持を達成することであります。経済が安定的に発展する上でこの二つは必要不可欠の基盤です。それだけに、日本銀行に負託された使命はまことに重大であると認識しています。独立性と透明性という日本銀行の政策運営を律する基本原則をしっかり踏まえて判断、行動し、この使命を達成するよう全力を尽くす覚悟でございます。

 次に、金融政策運営についての考え方を申し述べます。

 現在、日本経済は、国際金融市場の動揺や世界経済の減速、エネルギー・原材料高による中小企業の収益環境の悪化や生活関連物資の値上がりなど、内外ともに多くのリスク要因を抱えています。金融政策の運営に当たっては、経済、物価情勢を謙虚な姿勢で幅広い角度から分析することが常に求められますが、特に現在のように不確実性が高い状況では、その必要性が大きいと思っています。

 また、判断を行う際には、金融政策の効果波及のタイムラグは長いこと、金融と実体経済の間には複雑な相互依存関係があることから、足元の動向だけでなく、中長期的なリスクについても十分な目配りをする必要があると考えています。

 このように、経済、物価の見通しと上下両方向のリスク要因を丁寧に点検した上で、必要な政策を機動的に実施することを通じて、長い目で見た物価と経済の安定に貢献していきたいと考えております。

 金融政策は、金融市場や金融機関の行動を通じて効果を発揮するものであり、その透明性は、政策の有効性を確保する上で重要な前提となります。適切な政策を積み重ね、これをしっかりと説明していくことで、国民の皆様の信頼をいただくよう努力する所存でございます。そのことが日本銀行の独立性を支える大切な基盤となると考えております。

 日本銀行は、金融政策だけでなく、中央銀行としてのさまざまな銀行業務を行っています。銀行券が国民に安心して利用されること、さまざまな事故や災害が生じても決済が安全に、迅速に行われること、金融システムの安定が脅かされるときには最後の貸し手として流動性を供給すること、そのために、考査等を通じて金融機関の状況を的確に把握することを初め、日本の金融システムを支えるためにさまざまな業務、実務を行っています。

 こうした中央銀行としての業務が日々円滑に実施されるよう、適切な組織運営を図っていく責任も大きいと思っています。組織は人であり、このことは日本銀行についても全く同様であります。この点、日本銀行に長く勤務した経験を生かし、職員の顔を思い浮かべながら、モラールを高め、専門的能力が最大限発揮されるような職場づくりに努力するとともに、公的機関として組織運営の効率化に取り組む必要があると認識しています。

 日本の経済、金融が大きな変化に直面している中で、全身全霊を傾け職務に誠実に取り組みたいと考えております。どうか、よろしくお願い申し上げます。

 御清聴をありがとうございました。(拍手)

原田委員長 次に、日本銀行副総裁西村清彦君。

西村参考人 このたび、日本銀行副総裁を拝命いたしました西村清彦でございます。本日は、所信を述べる機会を与えていただき、光栄に存じます。

 私は、東京大学で長く理論経済学と経済統計学の研究と教育に携わってまいりました。平成十七年四月に日本銀行の審議委員を拝命しましてから約三年間、政策委員会での討議を通じ、金融政策運営を初め、広く、政策、業務、組織運営全般に関する意思決定に参画してまいりました。これまで蓄積した学問上の知識と日本銀行における実務上の経験を融合して、全力で職務を果たしていきたいと存じます。

 日本経済は、現在、足元のデータを見ますと、かなり減速しつつも、基調としては緩やかな拡大を続けております。しかし、同時に、米国サブプライム住宅問題に端を発した国際金融市場の動揺、原材料高を背景とする中小企業の収益環境の悪化やガソリン、食料品などの値上がり、また、特に米国で顕在化している経済の減速傾向の強まりなど、数多くのリスク要因を抱えております。こうした中で、日本経済が物価の安定のもとで経済のしっかりとした成長を実現していけるよう、金融政策でも極めて注意深い政策運営が必要であると考えています。

 これまで私は、金融政策決定会合において、執行部から提供される多種多様の情報をもとに、自分なりの経済、物価の現状認識と先行きの見通しを構築し、それに応じ、最も適切と考える政策を提案してまいりました。日本銀行の組織としての経済金融情報の収集・分析力は極めて高い水準にあり、これを十分に生かして適切な政策決定につなげていくことが、副総裁としての私の第一の役割だと思っております。

 そうした丁寧な経済、物価の分析を前提とした上で、当面の金融政策運営に関する私の考え方は、これまでも講演を通じて明らかにしております。

 すなわち、第一に、現在の景気を動かす基本的なメカニズムに変調が見られないのであるならば、これまでの基本的な考え方を維持するのが正しいと思います。

 しかし、第二に、先ほど述べましたように、リスクが現実化する蓋然性が高まるような場合には、その影響の深さ、広がり、期間を勘案して柔軟な対応を考えていくということであります。

 また、私は、これまでの経歴を通じて、内外の学界、実業界、中央銀行などに多くの知己を得ております。経済と金融のグローバル化が進展し、しかもその変化のスピードが極めて速い中で、こうしたネットワークを使って、日本銀行が国際的な役割を果たす上で貢献していければと考えております。

 この三年間の審議委員としての仕事を通じて、日本銀行の組織や人についても多くを知ることができました。組織、業務運営の面でも、白川副総裁と協力しながら、日本銀行が組織としての総合力を十分に発揮できるよう努めてまいります。

 日本経済を取り巻く環境が大変な時期にある中で、私の持つすべての力を今後の五年間に注いで職務を遂行していきたいと考えております。

 御清聴どうもありがとうございました。(拍手)

    ―――――――――――――

原田委員長 質疑の申し出がございますので、順次これを許します。佐藤ゆかり君。

佐藤(ゆ)委員 自由民主党の佐藤ゆかりでございます。

 本日は、日銀の新しい副総裁二名に所信をただす機会をちょうだいしましたこと、まことにありがたく存じます。時間も限られておりますので、二十分で四問御質問させていただきたいと思います。

 まず、今回の日銀の副総裁への質問ですが、総裁不在のままでの二人の副総裁への質問の機会となりましたことは、まことに異例であると思います。そういう意味で、今回、総裁人事がうまく行われなかった理由に挙げられておりました財金の分離についてお伺いをまずさせていただきたいと思います。

 日銀は、従来から長期国債の買い入れオペ等につきましては非常に慎重な姿勢を維持してきたというのは、私もエコノミスト時代から拝見をしていたとおりであります。財政難に国庫はあるわけでございますけれども、だからといって財務省の言いなりに日銀がなるというのは、やや非現実的な考え方ではないかと思われるわけでございます。

 そこで、今回議論に上っております財金分離について、日銀法上やあるいは日銀政策運営上、日々のいわゆる慣習、慣例に基づきまして財金分離がどのように担保をされているのか、具体的に白川総裁代行にお伺いしたいと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 中央銀行の独立性は、過去のさまざまな教訓を踏まえまして、世界各国の中央銀行で認められた重要な原則でありまして、日本銀行法におきましても、その第三条に、「日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない。」というふうに明記されております。

 また、政府から、これは金融政策決定会合に毎回御出席になっておりますけれども、意見を述べることができることになっておりますけれども、その内容は、毎回、この決定会合の議事要旨の公表などを通じまして明らかにされるという透明な手段が用意されております。

 議員御質問の長期国債の買い入れでございますけれども、この日本銀行による長期国債の買い入れは、あくまでもこれは、円滑な資金供給という金融市場調節上の必要に基づいて実行しているものでございます。決して、財政の支援や国債発行の円滑化、あるいは長期金利に影響を与えることを目的として実行しているものではこれはございません。

 中央銀行が金融政策をやりますときには、これは、経済、金融の状況に応じましてバランスシートの規模を自在に伸縮する必要がございます。そうした観点から、日本銀行は、資産・負債の状況などを踏まえつつ、銀行券残高を上限としてこの国債買い入れを行っております。こうした考え方につきましては、日本銀行の対外公表文やあるいは国会での答弁などを通じまして繰り返し説明してきてございます。

 日本銀行としましては、今後とも、長期国債の買い入れにつきましては、物価安定のもとでの持続的な経済成長を実現する、そのための金融調節の必要性という観点から判断していくことになってまいります。

 当面は、既に日本銀行が公表していますとおり、先行きの日本銀行の資産・負債の状況などを踏まえつつ、これまでと同じ金額、頻度で当面は実施していくという方針でございます。

佐藤(ゆ)委員 ありがとうございます。

 実際に日銀の長期国債買い入れオペの増額については、最後に切り上げたのが五年前でありまして、そのころに、一年強を費やして四千億から一兆二千億円まで二〇〇二年に段階的に引き上げたのが最後と記憶しております。以降この五年間というのは、非常に対外的な圧力が時にかかったこともありましたけれども、国債買い切り額は引き上げていないというのが現状というふうに認識しております。まさに御答弁いただきましたように、長期成長資金を供給するという位置づけである買い切りオペでありますので、必ずしも、すぐにマネタイゼーションというようなおそれは出てこないものと私も認識をしている次第でございます。

 それからもう一点、今度は西村副総裁の方にお伺いをさせていただきたいと思います。

 引き続き、この総裁人事の混迷によりまして実は金融市場がやはり反応を示しているということであります。二月に日銀総裁人事が本格的に始まりましたけれども、それからこの足元に至るまでの一カ月強の期間で、株式市場は一〇%弱下落をしているわけであります。当然サブプライムローン問題もありますが、日本がややそこから切り離されているという認識に基づきますと、この直近の株式市場の下落というのは、やはり、政治によって引き起こされているいわば政治不況ではないかというような気もいたすわけでございます。

 実際のところ、株式市場でどういう方々がこの下落によって影響を受けるかと考えますと、例えば、株式の譲渡益課税あるいは配当課税の優遇措置がこれまで導入されておりました。その結果、二〇〇二年から二〇〇六年の間で、平均年収が四百十三万円の方々で株式投信に対する投資が九七・四%増加、そして平均年収五百五十二万円で九一%増加、そして、個人投資家の七割が年収五百万円未満という状況に達したわけでございます。

 したがいまして、今や我が国でも、株式投資をする方々は金持ちということではなくて、中低所得層に定着、より増加をしてきたというのがここ数年の動きであったわけであります。

 そういう現状に踏まえて、この政治不況で仮に株式市場の下落がこの一カ月強引き起こされていたとするならば、これはやはり、国民資産の減価について政治としての問題があるのではないかというふうに思われるわけでございますが、この政治不況を、金融市場を観測され、適切な対処を必要とされる日銀の御関係者として、西村副総裁、もし政治に対する御注文があれば、何か御意見をおっしゃっていただきたいと思います。

西村参考人 それではお答えさせていただきます。

 最近の市場動向を見ますと、国際金融市場では、米国のサブプライム問題に端を発した不安定な状況が続いております。株価も、世界的に非常に振れの大きな展開となっております。米欧金融機関の損失拡大や米国実体経済の先行きへの懸念というものを背景に、投資家のリスク回避の動きというのが引き続き強いというふうに考えております。

 我が国でも株価が低迷しておりますが、こうした海外市場の動向に加えて、やはり、円高の進行の影響などが指摘されております。株価の動向は、企業のバランスシートやマインド面など、さまざまなルートを通じて実体経済に影響を及ぼす可能性があります。委員の御指摘のとおり、家計も、投信などの間接的な形態を含めて株式を保有しております。したがいまして、株価の動向の影響を受けると考えるのは自然であります。

 したがって、株価を含め金融資本市場の動向については、引き続き注意深く見ていく必要があるというふうに考えております。

 一般論として申し上げれば、株価は市場参加者による企業業績の将来の見通しのもとに形成されるものであります。したがいまして、日本経済の先行きについての見方がそれに影響を与えるということは十分に考えられます。その意味で、日本経済の持つ潜在的な力を発揮できるよう環境を整えていくというものが、公的部門の大切な役割ではないかと思います。

 日本銀行も、その一員として環境を整えるべく努力していきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

佐藤(ゆ)委員 ぜひとも、これは私の個人的な見解でもありますが、今回の日銀総裁人事、これほどまでに政治によって引き起こされた混迷の続くことのないように、やはり海外の投資家から見れば、このようなごたごたが起きた後にだれが日銀総裁になろうとも、その新しい総裁の方の指導力に対してはなかなか金融市場は直ちに信認を与えないものではないかと危惧されるわけでございます。そういう意味では、いち早い総裁人事の決定についてやはり願うところでございます。

 次の残りの時間、景気とデフレ脱却についてのお考え、それから、通貨の番人として最近の為替の動き等について、それぞれ御質問してまいりたいと思います。

 まず、金融政策の目標としてのデフレ脱却についてでございます。最近は、資源高などがあります一方で、円高も進みまして、一部のスーパーでは円高還元セールというようなものも進んでいるようでございます。そういう意味では、CPIの中でも品目によっては、エネルギー関連は価格上昇が見られ、その一方で、消費関連の一部の項目では円高還元セールというふうに値下げが行われているという、混在する状況がCPIの中に見られるわけでございますが、こういう中で、実際にはこの資源高というのは、ある意味、間接税の増税のようなものに消費者の観点から見れば匹敵をするわけであります。

 そういう意味で、資源高になりますと、企業収益が圧迫され、その結果、所得がスクイーズされて消費の減退につながる。賃金抑制が起こるわけでありますが、購買力が低下してくる。その結果、結局、資源高になりますと、購買力の実質的な低下を通じて、需給ギャップに対しては供給過多に持っていくような圧力が生じる結果、デフレ圧力が回り回っては及んでくると見られるわけであります。しかしながら、実際のところ、足元のCPIは、資源高の影響で上昇基調にあるわけであります。

 日銀として、このあたりの物価を実際にどのように何を見てデフレの状況を判断されるのか、その点についてまずお伺いさせていただきたいと思います。日銀としてのCPIの、特に物価安定の理解の適切な上昇率は、西村副総裁にお伺いいたしますが、例えばこの物価安定の理解の適切な上昇率をどのあたりに今ごらんになっておられるのか、お伺いしたいと思います。

 また同時に、今度、四月に展望レポートが出されるわけでございます。来月に迫ったわけですが、十月の展望レポート、中間レポートの時点では、まだ景気動向が二〇〇八年度もそこそこに成長軌道が維持されるというような見通しが出されておりました中で、当時の審議委員の方々の二〇〇八年度の実質GDPの予想の中央値が二・一%、コアCPIがプラス〇・四%でございました。

 しかしながら、今月の二十四日に内閣府と財務省から出されました法人企業景気予測調査等によりますと、ことしの一―三月期の景気の企業の景況感は極めて低下しているわけであります。大企業でもマイナス九・三、中小企業になりますとマイナス三二・七、大変な下落でございます。

 このあたりの景況感も含めまして、二つ目として、この二〇〇八年度の見通し、どのように改定され得るのか、お伺いしたいと思います。

西村参考人 お答えさせていただきます。

 まず、物価の点についてお答えしたいと思います。

 日本銀行法は、金融政策の理念として、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」と定めております。これを踏まえて日本銀行は、二〇〇六年三月に、委員御指摘のように、物価安定についての考え方を公表しました。その中で物価の安定を定義しております。それはどういう形であるかと申し上げますと、「家計や企業等の様々な経済主体が物価水準の変動に煩わされることなく、消費や投資などの経済活動にかかる意思決定を行うことができる状況」というふうに定義しております。

 これがまず物価の点ですが、それに加えまして、金融政策に当たりましては、金融政策の効果が波及するには、長い時間、しかも可変なラグがかかるということ、また、さまざまなショックに伴う物価の短期的な変動をすべて吸収しようとすると、経済の変動がかえって大きくなるということがあります。そのために、十分長い先行きの経済、物価の動向を予測しながら、中長期的に見て物価の安定を実現するように努めるという所存でございます。

 ただいま委員御指摘の資源価格の高騰というのは、これは極めて大きな問題でありまして、我が国の景気に対しましては、交易条件を悪化させ、所得形成を弱める方向に働く一方で、物価の上昇要因になっているということも事実であります。したがって、その経済、物価両面の影響を考えた上で先行きの経済、物価の姿を見通していく必要があるというふうに考えております。

 このように、金融政策運営においては物価を考えなければいけないんですが、その物価としては、ヘッドラインのCPI、つまりCPIの総合指数ですが、その総合指数、それからコアのCPI、つまり、生鮮食料品を除くコアのCPI、それから、さまざまな短期的な変動を除いてつくられるいわゆる刈り込み平均、それから内需のデフレーター、それから輸出や輸入のデフレーター、こういったさまざまな物価指標をあわせて、その背後にある経済の動きを丹念に点検して適切な政策判断につなげていくという必要があるというふうに考えております。

 それから、物価安定の理解における物価の安定の範囲ということですが、あの物価安定の理解で示しましたのは、政策委員会のメンバーのそれぞれの考え方がゼロ%から二%の間に散らばり、そして、セントラルテンデンシーと申し上げますか、中央値は一で、その周りに散らばっている、こういうふうにあらわしております。

 それから、景況感ということに関してですが、一―三月期の景況感がよくないということは私どもも認識しております。十―十二のGDPの成長率が比較的高かったということもありまして、その反動や、それから、足元のさまざまな不確実性ということから景況感が弱くなっているということは事実であります。

 今後の見通しにつきましては、これから展望レポートを四月の終わりにつくることになります。その中で、政策委員会の中で活発な議論をしながら基本的な考え方をまとめていきたいというふうに考えております。

 以上です。

佐藤(ゆ)委員 ありがとうございました。

 足元の景況感は急速に悪化が続いているわけでございます。ぜひとも注意して御対処願いたいと思います。

 最後になりました。為替について最近急な変動がドル・円で起きておりまして、お伺いしたいと思います。

 問題認識としましては、今回、サブプライムローンでアメリカの米ドルが独歩安になっているというような状況があるわけでありますけれども、サブプライムローンのストック調整の方ですが、当初、昨年の夏あたりは十兆円規模の損失額であったであろうというふうに言われていたものが、最近になりまして、IMFの試算ですけれども、いわゆる即時開示義務のない年金やヘッジファンドが抱えてい得る損失額まで入れますと、七十九兆円ぐらい損失額があるのではないかというような試算も出ているわけでございます。

 これほどの大規模の損失になりますとストック調整もやや時間がかかるということではないかと思いますが、その間にドル安が持続しますと、これはひょっとすると、やはり、為替市場で起こり得るヒステリシスのような、その間に構造調整が続いてしまって為替がもとに戻らない、ある意味で、ドルが基軸通貨としての役割を失い得るような大きなリスクも抱えているのではないかというふうに認識しております。

 そういう意味で、新しい時代におけます為替の秩序について、どのように構築していくかという観点で御意見をお伺いしたいと思います。

 一つはアジアの通貨でありますけれども、資料をごらんいただきたいんですが、時間もないので手短に御説明したいと思います。

 対ドルでは確かに円高が進んでおりますが、対アジア、ユーロでは進んでいないので大丈夫だという意見が実際ございます。しかしながら、対外証券投資の動向をごらんいただきますと、この左側の上下のグラフですが、まず左上のグラフで、西欧向けの地域別対外証券投資、真ん中の一番棒線の高いところであります。青、グレー、黒、これが二〇〇五年、六年、七年のそれぞれの棒線ですが、三年合わせますと、対西欧で日本からの投資が十九・五兆円ありました。対外証券投資のこの同じ三年間の合計が四十六・二兆円なので、シェアで見ますと、この三年間で四二%が何と西欧向けであったということであります。

 一方、左下、投資家別の対外証券投資をごらんいただきますと、一番左側の、投信に対する対外証券投資、これが三年間の合計で二十八・九兆円、大きな額であります。

 要するに、この二つを見比べますと、どうも、対外証券投資で西欧向けは投信が多く、投資で西欧向けが全体の大体四二%でありますから、投信と組み合わせると、西欧向けの投信への外国証券投資というのが、大体この三年間で十二兆二千億円ぐらい流出としてあったのではないかと思われるわけであります。

 そういう意味で、対外証券投資額をベースにした、ウエートにした新しい例えば実効為替レートの指標をつくるとか、今、実効為替レートは貿易の輸出額をウエートにしてつくることが多いわけでありますが、実際、輸出も大事ですけれども、こういう資金の流れが証券投資でも起きている今、為替の経済全体に対するインパクトという意味ではさまざまな指標を持っていた方がよいかと思いますが、この証券投資額をベースにした実効為替レートをどうお考えになるか。

 あるいは、アジア通貨単位のACUというアイデアがありますが、日本円も含めた通貨バスケットで対ドルで管理をする、こういう構想についてもしお考えがあれば、お伺いして終わりにしたいと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 最初にドルの問題でございますけれども、短期の問題と長期の問題を分けてお話しさせていただこうと思います。

 まず短期でございますけれども、国際金融市場におきましては、米国のサブプライム問題に端を発しました動揺が続いております。そうしたもとで、為替市場についても振れの大きな展開となっております。こうした動きは、基本的には、さまざまな金融資産のリスク再評価の過程でございまして、これは、日本の経験からしましても、ある程度時間のかかるプロセスだというふうに思います。したがいまして、その間は金融市場の調整が経済の調整とあわせて秩序立って進むということが大変大事だというふうに思っております。

 そのために今、各国中央銀行は、流動性の供給の面でも、その対応を円滑に進める努力をしておるというふうに理解しております。

 一方、長期的な問題でございますけれども、国際的な貿易取引や金融取引にどのような通貨が用いられ、あるいはその準備資産としてどの国の通貨を保有するかということは、基本的には、各国の短期的な経済の状況だけではなくて、その国の持っている基礎的な力、国際社会における地位や、厚みのある強固な金融市場の存在、さまざまな要因に依存してまいります。そうした要因を反映しましてどの通貨を選んでいくのか、これまではドルが基軸通貨として使われておったわけでございますけれども、このドルの基軸通貨としての地位がどういうふうになっていくのかというのが、委員の御質問の背後にある一つのまた大きな問題意識かというふうに理解いたしました。

 この面でいきますと、当面、今申し上げたような基礎的な条件が大きく変わるというふうには見ておりませんけれども、しかし、こうした中長期的な側面も含めまして、今後の国際通貨情勢、為替相場の動向については注意深く見ていく必要があるというふうに思っております。

 それで、実効為替レートでございますけれども、委員が御指摘のように、今、各国の中央銀行、国際機関、実効為替レート、つまり貿易量で加重平均をしました為替レートの数字を計算し、定期的に公表をしております。日本の場合にも日本銀行が公表をしておりますけれども、現在のところ公表されておる実効レートは、これは、すべて実は輸出金額でもって加重平均しております。したがいまして、輸入金額も反映していませんし、それから、委員が御指摘になった資本取引についても反映しておりません。

 なぜ、そうした実効為替レートが現状において計算されていないのかといいますと、結局、加重平均をするときのウエート、これをどういうふうに計算するのかというのがなかなか難しくて、多分それは、局面局面で変わっていくという性格のものでもまたあるというふうに思います。

 貿易の場合ですと、例えば、アメリカ向けの輸出ウエートあるいは中国向けの輸出ウエートが短期的に大きく変わるということは、これはございません。金融取引の場合には、これは、その通貨、為替レートに対する信認でもってまた大きく変動してまいりますし、なかなか機械的に加重平均レートを計算することが難しいということでございます。

 ただ、委員が御指摘のような、単に貿易量だけ見てはだめなんだ、資本取引も含めて、あるいは先ほど御指摘のあった投信、つまり、機関投資家の動きも含めて資本の動きを十分見て為替レートの動きを判断しないといけない、背後にある資本の動きを判断しないといけないという問題意識自体は、これはどの中央銀行にも共通でございます。日本銀行もそうした角度でもって分析をしているというふうに理解しております。

佐藤(ゆ)委員 これで質問を終わります。ありがとうございました。

原田委員長 次に、石井啓一君。

石井(啓)委員 公明党の石井啓一でございます。

 まず、両副総裁にお伺いをいたしますが、今回の総裁、副総裁人事におきましては、財政と金融の分離という観点からいろいろ議論されたところでございますけれども、そもそも日銀の金融政策におけます財政と金融の分離というのはどういうふうなことというふうに理解をされていらっしゃるのか、お伺いをさせていただきたいと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 金融と財政の問題、その問題は、突き詰めていきますと中央銀行の独立性という問題意識に帰着いたしますけれども、中央銀行の独立性ということは、過去の教訓を踏まえまして、現在、先進国、エマージング諸国を問わず、世界じゅうで認められている重要な原則であります。これは、目先の景気やあるいは目先の財政事情だけに焦点を当てて金融政策を運営しますと、結局、長い目で見た経済、物価の安定が脅かされる、そういう経験に基づいたものであります。

 したがいまして、中央銀行が、中長期的な持続的な物価安定を実現するという観点から専門的な立場に立って経済物価情勢の分析を行う、これに基づいて自主的な判断と責任において金融政策を運営することが適当だというふうに思っております。このような観点から、日本銀行法においても自主性という形で規定されておるわけでございます。

 今委員御指摘の財政でございますけれども、財政と金融の基本的な関係につきましては今申し上げたとおりでございます。一方、短期的な財政政策ということで申し上げますと、財政政策によって生じます有効需要、総需要というのは、これは個人消費や設備投資と並びまして、さまざまな民間需要とともに需要項目の一つを構成するものでございます。日本銀行におきましても、金融政策運営上、経済物価情勢を点検していく上で、財政の動向は丹念に把握するように努めております。このような情勢分析の上に立ちまして、最終的には経済全体の動向を判断しまして適切な金融政策運営を行う、このことは実は財政にとってもよりよい結果をもたらすことだというふうに思います。

 このように、金融政策と財政政策は一定の相互依存関係を有しております。しかし、繰り返しになりますけれども、金融政策の役割自体は、これは長い目で見た経済、物価の安定を図ることでございます。日本銀行法の第二条に、日本銀行は、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念と明記するというふうにうたわれていますのは、まさにそのことを指しているというふうに思っております。

 以上でございます。

西村参考人 お答えさせていただきます。

 今白川副総裁から申し上げたことで尽きていると思いますが、一点だけつけ加えさせていただきますと、金融政策の非常に重要な点というのは、いわば長期にわたる経済政策が働く背景をつくるということがやはり金融政策の役割であります。そのことは何かと申し上げますと、これは物価の安定ということでございます。物価の安定のもとで初めて、さまざまな財政政策それから短期的な金融政策というものが有効に働くという形になりますので、この長期的にわたった物価の安定というのが日本銀行にとってのやはり最大の使命であるというふうに考えております。

 以上です。

石井(啓)委員 このたびの総裁人事に関しましては、財務省の事務次官OBということで財政と金融の分離に問題がありということでありましたけれども、私はそういう出自だけで判断するのは短絡的だと思うんですね。やはり人物や識見で判断すべきだというふうに考えておりますけれども、この点について両副総裁の御意見を伺いたいと思います。

白川参考人 お答えします。

 日本銀行の総裁及び副総裁は、これは両議院の同意を得て内閣が任命するものでございます。したがいまして、決定のプロセスに関しまして、私の立場から具体的に申し上げることは適当ではないというふうに思います。いずれにせよ、政府及び国会におきまして日本銀行の総裁としてふさわしい資質を有する方をお選びいただけるものというふうに考えております。

 以上でございます。

西村参考人 日銀法の精神に基づいて申し上げますと、「総裁及び副総裁は、両議院の同意を得て、内閣が任命する。」ということですので、この決定のプロセスについて私から申し上げるのは、白川副総裁と同様に、やはり適当ではないというふうに考えております。政府および国会において日本銀行の総裁としてふさわしい方をお選びいただけるというふうに確信しております。

石井(啓)委員 何か随分遠慮されておっしゃったような気がしますけれども、もう副総裁におなりになったんだから余り遠慮をされずに、自分の御意見をおっしゃっていただいても構わないんじゃないかと思います。ちなみに福井前総裁は、人物、識見で選ぶべきだというふうにおっしゃっていたと思います。

 それでは、今度は総裁代行をされている白川副総裁にお伺いしたいと思います。

 総裁の人事は一日でも早く決めていただきたいというふうに思っているとは思いますけれども、いつごろまでに決めてほしいというふうに思っていらっしゃるのか、その理由とあわせて御希望をお伺いしておきたいと思います。

白川参考人 副総裁になったわけですからもう少し堂々と意見を述べるようにという御指摘でございましたけれども、やはり総裁の人事につきましては、日本銀行法の規定というのは非常に重うございます。したがいまして、先ほど申し上げたこと以上に、タイミングにつきまして申し上げることはなかなか難しいと思います。

 ただ、私の総裁代行という立場で申し上げますと、現在総裁が空席という事態はもちろん異例の事態でございます。できるだけ早く日本銀行の総裁としてふさわしい方を選んでいただき、通常の姿に戻ることがもちろん望ましいというふうに考えております。私としましては、総裁が任命されるまでの間、西村副総裁と力を合わせましてしっかりと業務を遂行してまいる所存でございます。

 経済、金融は一日も休みはございません。総裁がいないことによって、あるいは私が代行であるがために、日本の経済、金融に対し迷惑をかけるということは絶対にあってはならないということで、私自身はそのことをまず大きく胸に置いて仕事をやっていきたいというふうに思っております。

石井(啓)委員 もちろん白川副総裁が役不足ということではありませんけれども、総裁が早く決まるにこしたことはないと思うんです。四月の日程を考えますと、上旬には金融政策決定会合がございますよね、それから中旬あたりにはG7がありますね。ここら辺までにはやはり総裁人事は決めておいた方がいいのではないかと思いますけれども、重ねて御意見を伺いたいと思います。

白川参考人 重ねての御質問でございますけれども、私としましては、現在の姿は異例の姿であろう、できるだけ早く通常の姿に戻ることが望ましいというふうに考えているということでもって御質問に対するお答えとさせていただきたく、申しわけなく思っておりますけれども、そういうふうに思っております。

石井(啓)委員 それでは、政策的なことをお伺いしたいと思います。

 両副総裁にお伺いしますけれども、今後の金融政策の基本的なスタンスについてお伺いしたいと思いますが、現在の低金利状態、異常とも言える低金利状態だと思います。この状態から、金利正常化に向けて着実に金利を上げていく、こういう意向でいらっしゃるのか、あるいは、今後の経済情勢によっては金利引き下げも含め柔軟に判断する、そういう意向で臨んでいらっしゃるのか、基本的な方向性について両副総裁にお伺いしたいと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 金利というのは、これは二つの側面があるというふうに考えております。一つは、金利を変更することによって経済に働きかけていく、そういう能動的な側面と、それからもう一つは、経済の実態に合わせて経済の体温である金利が変動する、そういう二つの側面があります。実際の金融政策の運営に当たっては、この二つの要素を常に考えておく必要があるというふうに考えております。

 前段の話、つまり金利の現在の水準をどういうふうに考えるのかという話とも絡むんですけれども、考えてみますと、五年前、三年前あるいは現在というふうに比較してみますと、経済は緩やかながら拡大を続けている。確実に経済活動の水準は上がってきております。そういうふうに考えますと、経済の長期的なバランスと整合的な金利水準というのは、だんだんに上がっていくというのが経済の実態を反映した動きであります。しかし一方で、経済は短期的にさまざまな変動を繰り返しております。そうしたことも十分に配慮する必要がございます。

 その点で、現在、日本の経済の先行きを展望した場合に、標準的な見通しとしましては、これは緩やかな拡大を続けていくという姿を日本銀行としては想定しておりますけれども、しかし一方で、国際金融市場の動揺や世界経済の減速、あるいはエネルギー、原材料高による中小企業の収益環境の悪化や生活関連物資の値上がりなど、さまざまなリスク要因、不確定要因がふえてきているということも事実でございます。このような状況のもとでは、内外の経済金融情勢に幅広く目を配り、見通しとそれから上下両方向のリスク要因をつぶさに点検する必要があると思っています。そうした丁寧な情勢分析に基づいて必要な政策を機動的に実施していくということに姿勢としては尽きるというふうに思います。

 もう少し具体的に申し上げますと、日本の経済が物価安定のもとで息の長い成長を続けていくという見通しであれば、これは今度四月の決定会合、特にまた四月の末は展望レポートによって入念に点検を行いますけれども、そうした見通しであれば、これまでの金融政策の基本的な考え方を維持することが適当だというふうに考えております。

 もっとも、経済の先行きは常に不確実性がありますし、特に現在はその不確実性が高いという状況でございます。したがって、私自身が自分に課していますことは、予断を持つことなく見通しの蓋然性やリスクを点検し、その上でそれに基づいて機動的に政策対応をしていくという姿勢に尽きるというふうに思っております。

 具体的な金融政策そのものにつきましては、毎回の決定会合ではしっかり判断をしていきたいというふうに思っております。

西村参考人 お答え申し上げます。

 日本経済は緩やかな拡大を続ける蓋然性は引き続き高いが、内外ともに多くのリスク要因を抱えているという現状認識は、白川副総裁の説明と同じであります。同じく、現在の金利に関しての見方ということについても大きな差はないというふうに考えております。

 当面の金融政策運営に対する考え方は、先ほど所信表明のところで御説明いたしましたように、第一に、現在の景気を動かす基本的なメカニズムに変調が見られないのであるならば、これまでの基本的な考え方を維持して、見通しの蓋然性や上下方向のリスクを点検しながら徐々に金利水準を調整するというのが正しい見方だというふうに思います。

 しかしながら、同時に、さまざまなリスクがございます。先ほど申し上げましたように、このリスクが高まっているということも事実であります。したがいまして、さまざまなリスクが現実化する蓋然性が高まるような場合には、その影響の深さ、広がり、それから期間を勘案して柔軟な対応をとっていく、これは何かあらかじめ特定に決められたものではなくて、柔軟な形で対応を決めていくということが望ましいのではないかというふうに考えております。

 今後とも丁寧な経済、物価の分析に努めて、適切な政策判断につなげていきたいというふうに考えております。

石井(啓)委員 そこで、日本経済の先行きの最大のリスク要因の一つが、米国のサブプライムローン問題の影響でございますけれども、我が国の経済、ここ数年、輸出主導で経済を引っ張ってきたという実態がございますから、アメリカあるいはアジア、ヨーロッパ等の海外経済の影響というのを非常に大きく受けるわけでございます。サブプライムローン問題は、アメリカのみならず、ヨーロッパを中心としまして世界経済に深刻な影響を与えているというふうに認識しておりますけれども、今後のアメリカ及び世界経済の見通しについてどういうふうにお考えになっているのか。これは日本経済の見通しとじかにつながってくると思いますので、その点、確認しておきたいと思います。

 それから、このサブプライムローン問題につきましては、我が国の金融危機のときの教訓を踏まえると、最終的にはやはり公的資金の注入ということが避けられないのではないかというふうに私は思っておるんですけれども、両副総裁の御見解はいかがなものか、確認をさせていただきたいと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 世界経済でございますけれども、地域別に御説明したいと思います。

 まず、アメリカの経済でございますけれども、このところ減速傾向が一段と強まっているというふうに見ております。住宅市場では価格の下落傾向が強まっております。住宅投資は大幅な減少を続けております。設備投資は緩やかな増加基調を維持していますけれども、個人消費は減速傾向が明確となっていまして、足元は横ばい圏内の動きというふうになっております。こうしたもとで、雇用や生産関連にも弱目の動きが見られております。何よりも金融面では、銀行の与信態度が、住宅向けだけではなくて、商業用の不動産や一般企業、消費者向けについても厳しくなってきております。

 こうした状況のもとで、FRBは大幅な利下げを行ってきたほか、アメリカの政府は減税など景気刺激策を実施することになったことは御承知のとおりであります。

 アメリカ経済、当面は低成長が見込まれるわけですけれども、問題の住宅市場の調整に底入れ感が出まして、金融環境のタイト感というものが和らいできますと、これらマクロ政策面の措置の効果と相まって、次第に潜在成長率近傍の成長経路に戻っていくというふうに見られます。

 ただ、先ほど申し上げました金融環境のタイト感が和らいでいけばという前提条件の限りでございますけれども、住宅市場の調整やサブプライムローン問題に端を発しました金融市場の動揺がおさまる兆しがまだ見られておりません。銀行の貸し出し態度が一層タイト化するリスクもありますから、米国経済の回復についてはやはり不確実性が大きいというふうに私は見ております。

 欧州経済ですけれども、緩やかに減速しながらも拡大を続けています。輸出や個人消費が減速していますけれども、設備投資は増加傾向を維持しております。ただしこれは、アメリカとまた同じでございますけれども、国際金融市場の動揺が金融環境に及ぼす影響次第では景気が下振れするリスクもあるというふうに認識しております。

 一方、中国や産油国等のエマージング諸国では高成長が続いているということでございます。

 このように世界経済全体としては、エマージング諸国の高成長に引っ張られる形で、減速しながらも拡大を続ける可能性が高いというふうに考えておりますけれども、アメリカ経済の減速傾向が一段と強まり、国際金融市場の動揺も続いている中で、下振れリスクが高まっているというのが総括的な認識でございます。

 それで、公的資金の話でございます。

 国際金融市場の動揺に対しましては、これは何よりも金融機関が十分な自己資本を確保し、信頼回復に努めるということが最も基本となってまいります。その際、日本の経験に照らしてアメリカにおける公的資金投入の必要性いかんということでございますけれども、現在アメリカの中央銀行が行っていますことは、流動性を供給して、流動性の問題がソルベンシー、つまり基本的な支払い能力の不足という問題に転化しないように、まずその条件をつくるために今努力をしようという段階でございます。

 具体的に、公的資金が必要かどうかということでございますけれども、これは各国が自国のセーフティーネットの仕組みの中で、対象となる金融機関の状況や金融システム全体の状況を踏まえて決定していくべき問題でございます。大切なことは、金融システムの安定を維持するという明確な意思でありまして、それに向けた取り組みが着実に行われるということだというふうに認識しております。そうしたもとで国際金融市場の安定が確保されていくということを強く期待しております。

 以上でございます。

西村参考人 お答えいたします。

 今白川副総裁が申し上げたことに尽きると思いますが、一点、公的資金について私の考えを述べさせていただきたいというふうに思います。

 公的資金には、これはタックスペイヤーのお金ということで、非常に重いものがあります。したがいまして、これをどういう形で使うか、そういうことについては、その国その国の制度、その国その国の金融の状態、そしてその国その国の住宅市場それからその他の市場の状態ということにやはり全面的に依存するんだというふうに考えます。したがいまして、その国その国に応じて最も望ましい形で対処されるということが、この金融市場の大きな困難の中で極めて重要ではないかというふうに考えております。

 以上です。

石井(啓)委員 時間が参りましたので、以上で終わります。ありがとうございました。

    ―――――――――――――

原田委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、参考人として日本銀行理事水野創君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

原田委員長 池田元久君。

池田委員 民主党の池田元久でございます。

 まず、白川さんと西村さん、御就任おめでとうございます。国民のために重要な職責をしっかりと果たされるよう、お祈りをしたいと思います。

 まず、総裁不在という事態の中で就任されたお二人に就任の抱負をお尋ねしたいと思います。端的にお答えをいただければ幸いです。

白川参考人 お答えします。

 日本銀行の使命は、これは物価の安定と信用秩序の維持でございます。私は日本銀行の副総裁として、この日本銀行に課せられた使命を達成するために最大限の努力をするということだと思います。

 あわせて、私の場合、現在は総裁が不在という状況でございますので、総裁がいない間、しっかりと日本銀行の機能が低下しないようにやっていくということが私に課せられた使命だというふうに認識しております。

 以上でございます。

    〔委員長退席、田中(和)委員長代理着席〕

西村参考人 お答えさせていただきます。

 白川副総裁と気持ちを全く共有いたしております。

 サブプライム住宅ローンに端を発した国際金融市場の動揺、原材料高を背景とする中小企業の収益環境の悪化、ガソリン、食料品の値上がり、それから米国経済の景気減速傾向の強まりなど、日本経済を取り巻く環境は大変な時期にあります。そうした中で、総裁の空席という異例の事態での出発となったわけですが、私の持つ力をすべて注いで、白川副総裁と力を合わせて、しっかりと職務を遂行していきたいというふうに考えております。よろしくお願いします。

池田委員 白川さんにお尋ねしますが、お二人の仕事の割り振りは当面どうなっているんでしょうか。

白川参考人 お答えいたします。

 私、副総裁という立場と、それから総裁が不在の間代行を務めておるということでございますけれども、まず、現在総裁が不在ということで、私が総裁の代行という役割を果たしております。あわせて、政策委員会の議長という立場を果たしております。したがいまして、例えば、本日は定例の政策委員会がございましたけれども、私は政策委員会の議長として議事をつかさどりました。

 それから、業務の執行という面でございますけれども、これは副総裁は総裁を補佐すると。今回の場合、たまたまその総裁が不在ということでございますけれども、業務執行に当たりましては、この二人の副総裁が共同して当たっているということでございます。

 あと、個別の担当局ということでございますけれども、従来から副総裁は基本的には局は担当せずに、ただ、局の性格上、個別の理事が担当するのは必ずしも適切ではないと思われる局室、具体的に言えば検査室と金融研究所、これは副総裁が直接担当をしております。現在の場合ですと、私は検査室、それから西村副総裁は金融研究所を担当しております。

 しかし、副総裁としては、日本銀行全体の仕事をきっちり見てこの遂行をしている、そういうふうな体制になっております。

 以上でございます。

池田委員 新日銀法の施行直後に審議委員を務めた中原伸之さん、御存じだと思いますが、東亜燃料工業の社長、会長を務めた中原さんは、著作の中でこう言っています。

 政策委員会の構成も、見直すべきだと思います。総裁はともかく、副総裁の二人制は機能しているとは思いません。一人で十分ではないでしょうか。このように言い切っています。

 白川さん、どう考えますか。

白川参考人 現在の日本銀行法の規定でございますけれども、日銀法の第二十一条には、総裁一人、副総裁二人を置くというふうに定められております。

 副総裁が二人とされていますその背景、理由でございますけれども、現在の日銀法を制定するときにいろいろな議論がなされましたけれども、当時の金融制度調査会の答申、この答申には次のような表現がございます。これは、「副総裁は、現在、一名であるが、国際会議等への総裁・副総裁クラスの出席が求められる機会が増大していること等にかんがみ、副総裁は、二名に増員することが適当と考えられる。」というふうに書かれております。

 最終的に、こうした議論も踏まえた上で、現在の日銀法ができているというふうに理解しております。

池田委員 日銀法の改正に私も多少かかわりはあるんですが、改正前は総裁一人、副総裁一人、中原さんは十分機能すると。しかも、副総裁を内外それぞれ分ける、そういう話もやっていらっしゃらないようでありまして、今の総裁代行と副総裁一人で十分に実務はできる、こう評価していいと思うんですが、いかがでしょうか。

白川参考人 私の経験に基づく発言ということになりますと、私、きょうが就任三日目でございます。したがいまして、自分の体験に裏づけられて、今、委員の御質問に対してきっちりと答えるという時間的なものはございません。

 ただ私、従来、一年八カ月前まで日本銀行の理事を務めておりまして、そのときに総裁、副総裁の仕事を間近で見ていたときの経験からしますと、副総裁が二人いらっしゃるという体制のもとで、いろいろな分業をなさっているというふうに思いました。そういう意味で、将来法律を改正するときにいろいろな議論がもちろんあると思いますけれども、現状では、総裁一人、副総裁二人の体制は、私が勤務していたころは非常にうまく機能していたなというふうに思います。

 その上で、どういうふうに運用していくかということは、これは常に総裁、副総裁、それからボードメンバーがしっかり考えて運用すべき問題だというふうに理解しています。

池田委員 日銀といえども、組織のスリム化といいますか、そういう視点はやはり大変重要だと私は思います、しかもベテランの中原さんがおっしゃるわけですから。

 その中原さんの著書を、ついでと言っては恐縮ですが、少し引用しますが、「今や「世界の中央銀行」化しているFRBと比べても、日銀の幹部の報酬はかなり高い。FRB議長は年収十八万三千五百ドル、副議長を含む他のメンバーは十六万五千二百ドル」、最近はほんのわずか上がっているようですが、「これに対して、日銀総裁は、旧法時代は五千万円以上でしたが、新日銀法施行時で約四千万円となり、その後少し下がって現在は三千六百万円ほど。二人いる副総裁はそれぞれ二千八百万円クラス、審議委員が二千七百万円ほど。こうした報酬水準が、金融政策運営の実態や、政府の財政赤字状況などを踏まえて、妥当かどうか見直しの議論が必要です。」ちょっと長いですが、中原さんの発言を引用いたしました。

 中原さんがこのように述べているわけですが、後で低金利の影響を取り上げますが、低金利のしわ寄せを受けた庶民からすれば、アメリカの二倍近い日銀総裁の報酬に目をむくかもしれません。ここで取り上げたのは、財界出身で、実際に審議委員を務めたことのある中原さんの発言ですから、また重みがあると思いますが、どのように考えますか。

白川参考人 お答えをいたします。

 日本銀行役員の給与につきましては、外部の有識者による諮問委員会の答申を受けて策定しました役員の給与等の支給の基準に基づきまして、毎年、政策委員会で決定いたしております。

 具体的には、第一に、必要な人材を確保する観点から、民間企業における処遇の実情を勘案するとともに、第二として、総裁の給与につきましては、特別職国家公務員の最高給与を上回らないようにこれを定め、また、総裁以外の役員の給与につきましては、総裁との均衡を考慮して決定するという枠組みとなっております。

 日本銀行における役職員給与決定の考え方は以上のとおりでございますけれども、いずれにしましても、私としては、給与に見合った職責をしっかり果たしていくということが責務だというふうに考えております。

 それから、今委員御指摘の海外の中央銀行の役員の給与との比較でございます。

 各国、状況はまちまちでございますから、もちろん単純な数字の比較に意味があるというふうには私は思いませんけれども、しかし、事実として申し上げますと、例えば昨年、これはもちろん為替レートの影響もございますけれども、日本銀行の総裁は約三千五百七十八万、それからFRBの議長は、委員御指摘のとおり日本銀行よりも低くて、これは二〇〇八年でございますけれども二千二百三十八万。しかし、ニューヨーク連銀あるいは欧州中央銀行、イングランド銀行、これはいずれも日本銀行の総裁よりも給与はかなり高い。

 日本銀行の給与が少ないと言っているわけではもちろんございませんけれども、いろいろ比較してみますと、いろいろな国が存在しているということで申し上げた次第でございます。

池田委員 これからよく考えていただきたいと思います。

 次に、お二人の就任に合わせて残念なことが起きました。内部資料の流出問題であります。金融政策等について私は議論したかったんですが、先週末、日銀松江支店の検査資料が流出し、金融機関が破綻懸念先とした企業の名前が明るみに出たという大変な事態が起きたわけです。事実の経緯を聞きたいと思います。

水野参考人 事実関係の御質問でございますから、私からお答えさせていただきます。

 三月二十一日の午前十時半ごろ、私どもの松江支店に対しまして、インターネット上に松江支店のものと思われる資料が掲載されている旨の連絡が匿名でございました。松江支店で内容を確認しましたところ、松江支店の職務関係資料であるということが判明いたしました。掲載情報の中には、特定の金融機関等に関する情報が含まれておりました。

 これらの金融機関等に対しましては、個別に事情を説明させていただき、謝罪いたしました。また、情報の掲載が確認されたサイトに対しましては、情報の削除依頼を行いました。これらを行いました後、二十二日土曜日の十二時から対外公表をさせていただいたところでございます。

 以上でございます。

池田委員 その私物のパソコンに入っていた情報の内容と数はどうですか。それから、流出した資料の内容と数もあわせておっしゃっていただきたいと思います。

水野参考人 お答えいたします。

 パソコンの中に入っておりました金融機関等の情報のファイルの数でいいますと、三十九でございます。このうち、流出を確認したものが六つでございます。

 以上でございます。

池田委員 大事なところが欠けていますよ。その三十九のファイルのうち、要注意としたファイルが十五もあったということであります。

 白川代行、この事実を知ったのはいつですか。

白川参考人 私、三月二十一日に国会内で総理から辞令をいただきまして、国会のあいさつを終えまして、その後銀行に戻りまして、これがお昼過ぎでございました。それで、お昼を過ぎましてすぐ、総務人事、こういう案件を担当します局の局長から報告を受けまして、私の方からは、それは直ちに調べて、その上で公表をするようにというふうに指示をいたしました。

池田委員 同じようなケースが去年もあったんです。日銀本店で去年十一月です。日銀本店の職員が、同様に、国庫出納業務を委託している金融機関の顧客の名前などの入った資料を持ち出して、上野駅ですか、かばんごと盗まれてしまったということが起きている。このとき、顧客の氏名、住所などのほか、信用情報も含まれていなかったのかどうか、端的にお尋ねをしたいと思います。

水野参考人 お答えいたします。

 個人の名前と金融機関の名前等が含まれておりました。

池田委員 こういった内部資料の持ち出し等について、日銀の内部ではどういうふうな定めになっているんですか。

水野参考人 お答えいたします。

 内部の資料につきましては、重要度に応じて取り扱いの区分が定められておりまして、機密度の高いものについては、内部で格納して保管するようにというふうに定めているところでございます。

池田委員 そのルールの要点だけ言ってくださいよ、これは内部資料の持ち出しですから。

水野参考人 お答えいたします。

 公文につきましては、専用のキャビネット等により公文以外のものと区別の上保管する、それから機密資料等を保管する場合には、キャビネット等に格納の上施錠する、そういうふうに定められております。

池田委員 今は職員の資料の持ち出しの話ですからね。

 その前に、こういう資料の持ち出しが続くのはどういうことですか、原因はどこにあるんですか、お尋ねをしたい。

水野参考人 お答えいたします。

 個々のケースについては、それぞれ事情を調査して確認しないといけない面があると思いますけれども、一般的に全体を通して申しますと、やはり個々の職員が、よりじっくり考えて仕事をしたいとかよりよい資料をつくりたいとか、そういうようなことで自宅に持ち帰って仕事をするということが行われているということではないかと考えております。

 以上です。

池田委員 全然とんちんかんですね。自宅持ち出しの理由を説明するだけで、どうしてそういう事態を防ぐかという観点はない。非常に残念な、ちょっとレベルを考えざるを得ない答弁で、びっくりしました。そういうところが、コンプライアンス担当の理事さんがそういう考えじゃちょっとお寒いなと私は率直に思います。

 日銀のルールというのをほんのちょっとだけ調べてみたんです。そうしたら、ルールといっても、日銀では、パーソナルコンピュータ等管理事務取扱要領。取扱要領ですよ。規則でも何でもないですよ、取扱要領に規定されているだけです。そして、資料の持ち出しは原則禁止となっているものの、上司が認めれば、外部記憶媒体持出届を出せば資料を持ち出せるということになっているわけです。

 私は、少なくとも融資や信用情報にかかわる資料は明確に持ち出しを禁止すべきだと思いますが、いかがでしょうか。白川さんにお尋ねしたい。

白川参考人 私、これから総裁代行としまして、コンプライアンスも含めまして、日本銀行の体制をもう一回しっかり点検して、今委員から御指摘の点も含めまして改めて検討して、その上で日本銀行としての職務をしっかり遂行し、かつ、こういうコンプライアンスの問題が生じない体制は何であるかということをもう一回検討したいというふうに思っております。その意味で、きょうこの席で具体的にお答え申し上げることはできませんけれども、その点は私ども、これを大きな責任だというふうに思って、しっかり取り組んでまいります。

池田委員 また、〇六年三月に日銀の総務人事局長が全所属長に出した通知によりますと、私物のパソコンを業務に使わないようお願いしますとしています。

 そして、ちょっと長いんですが、ウィニー等セキュリティー上危険なソフトをインストールしたパソコンがウイルスに感染した場合、新たに作業するファイルばかりではなく、過去にハードディスクに保存したファイルも広く流出してしまうおそれがある。したがって、過去、私物パソコンで作業を行った業務上のファイルがハードディスクに残存していないか、速やかに悉皆的な自己調査を実施し、万一、該当ファイルが確認された場合は、直ちに消去してくださいと呼びかけているわけですよ。

 これは危ない話ですね。これでは、松江に限らず、情報流出がこれからも起こるおそれがあるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

白川参考人 まず、ちょっと前後いたしましてまことに恐縮でございますけれども、今回、松江支店での内部資料の流出事故を発生させたことにつきまして、大変御迷惑をおかけしまして、関係者の皆様と国民の皆様に深くおわびを申し上げたいというふうに思います。

 多少説明が前後いたしますけれども、代行という立場で、今の委員の御質問も含めまして、改めてお答えしたいと思います。

 今回流出しました資料は、これは、金融機関の過去の決算分析に関する資料と日本銀行が金融機関に委嘱しています国庫国債事務の事務検査の資料の二種類でございますけれども、このうち決算分析に関する資料には、金融機関の融資先である企業、個人に関する情報が含まれておりました。

 こうした事態が発生した原因、背景や責任の所在につきましては、現在既に調査を行っていますけれども、今後さらに詳細に調査してまいります。

 資料流出の経緯としては、支店職員が内部資料の記録されたフロッピーディスクを無許可で持ち帰り、自宅の私物パソコンで作業を行っていたところ、そのパソコンにインストールされていましたファイル交換ソフトを経由してインターネット上に情報が流出したというふうに見ております。

 私どもとしましては、職務関連資料の無許可での持ち出し、私物パソコンでの業務処理及びファイル交換ソフトのインストールのいずれについても行わないように行内で周知し、役職員を指導してきました。今回、こうした内部ルールが守られず、情報流出事故を引き起こしてしまったことは極めて遺憾であり、事態を深刻に受けとめております。

 今後は、役職員に対しまして、情報管理の重要性や機密情報が万一流出した場合の影響の大きさを改めて認識させるとともに、情報管理体制の見直しや執務環境の整備等について検討し、今後このような事態を二度と引き起こさないように万全の対策を講じてまいる所存でございます。

 以上でございます。

池田委員 ちょっと調べてみると、これに関しては取扱要領というのと所属長への通知、それで、所属長への通知はお願いしますモードですよ。何々してください、お願いします。いいですね、いい会社ですね、それでうまくいけば。ですから、これは私が言わなくても、明瞭で厳正な規則を新たにつくるべきであると私は思います。

 それからもう一点、今度の問題について調査をするということですから、責任を明確にすべきだと思います。

 以上、二点について、端的にお尋ねします。

白川参考人 現在既に調査を行っておりますけれども、今後早急にさらに詳細な調査を行いまして、その結果を踏まえまして、厳正に対処したいというふうに考えております。

池田委員 時間が余りありませんが、低金利の家計への影響について若干取り上げたいと思います。

 総裁交代の時期に当たりまして、日銀の金融政策を検証する必要があると私は思います。きょうは時間がありませんので、多くは申し上げられません。低金利の家計への影響を取り上げたいと思います。

 まず、国民生活に身近な預貯金の金利でありますが、我が国の預金金利は、九五年に公定歩合が〇・五%に引き下げられたことを契機に、超低金利時代に突入しました。その後、量的緩和政策を含めた金融緩和政策によって家計はどのような影響を受けたか、見てみたいと思います。

 お手元に資料が行っていると思います。きのう日銀に頼んでまとめてもらったものであります。最新のデータですが、家計の利子の年間受取額は、「受取」の一番左の欄でございますが、九一年の三十八・九兆円から年々減り続け、〇六年には四・六兆円と、九分の一まで減ってしまいました。

 そして、資料の受け取り欄の右側、「九三年との対比」という欄をちょっと見ていただきたいんですが、九三年の利子受取額がその後も継続したと仮定した場合、その累計は、一番下、二百二十兆九千億円となり、この間家計から二百二十兆九千億円もの利子が失われたことになると思います。もっと金利の高かった九一年との対比では、累計で三百六十四兆四千億円の利子が失われた計算になります。

 こうした計算でいいと思うんですが、確認をしていただければと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 金利の変更が家計部門に対してどのような影響を与えるかというときに、経済全体はいろいろな複雑な相互依存関係がございますから、金利の部分、受取利子あるいは支払い利子というその部分だけに焦点を合わせて分析することはできませんけれども、家計が受け取った利子所得は幾らかということでありますと、一定の前提を置きますとこういう計算になる。

 ただし、経済全体への影響を評価するときには、このことが持つ意味もまた評価する必要があるというふうに思います。

池田委員 数字の確認をしたいと思ったわけであります。

 福井前総裁は、金融政策の評価は、その家計の利子所得の減少という面だけではなく、一方で借入金金利の低下の影響などを含め総合的に判断する必要があると言いました。しからば、家計について、借入金金利の低下の影響はどうなのか、それをこの資料で見ていきたいと思います。

 資料の右半分の「支払」の下の欄を見ていただきたいと思います。家計の利子の支払い額は、九一年の二十二・九兆円から、〇六年には十三・七兆円と減っています。少しずつ減っているわけですね。支払い利子は、受取利子と違って減り方は少なく、この期間、半分も減らなかったことになります。

 そして、資料では、右側の支払い欄の「九三年との対比」に出ていますが、九三年の借入金の利子の支払いがその後もそのまま続くと仮定しますと、累計で五十三・九兆円、利子を余計に支払わなければならなかった勘定になると思います。

 以上でよいと思うんですが、この点、確認をしていただければと思います。

白川参考人 数字についてのお問い合わせだというふうに理解いたしまして、一定の前提を置いて計算しますと、この数字自体はこういうふうに計算をされるというふうに思います。

池田委員 それでは、トータルで家計全体の利子収入の収支はどうか。低金利により失われた受取利子から同じく低金利により軽くなった支払い利子を引くと、九三年対比で見ますと、二百二十兆九千億円から五十三兆九千億円を引いて、差し引き百六十七兆円の利子が失われた計算になります。同様に、九一年との対比では、差し引き二百七十三兆円の利子が失われた勘定です。

 百六十七兆円と一口で言いますが、日本のGDPの三分の一。個人金融資産が最近発表されましたが、一年前より少し目減りして、昨年末で千五百四十四兆八千億円ということでありますが、その個人金融資産の一〇%以上がなくなった計算になると私は思います。

 いつも受取利子の方でよく議論するんですが、きょうは支払った利子の方も含めて議論をしておりますが、これはやはり金融政策の担当者、当事者として当然考えていらっしゃると思います。この辺に対する感想といいますか感覚を聞きたいと思います。

白川参考人 これまで数字についてお答えいたしましたけれども、今感覚ということで御質問がございましたので、感覚といいますか、私自身この問題についてどういうふうに考えているかということをお話ししたいと思います。

 これは、釈迦に説法でございますけれども、金融政策あるいは金利の変更といいますのは、債権者と債務者、あるいは輸出企業と輸入企業、それぞれ立場によって全く相異なる影響を及ぼしてくるものでございます。そうした異なる影響を及ぼすものでございますけれども、中央銀行といたしましては、常に物価安定のもとで経済が持続的に成長をしていく、そういう姿を念頭に置きながら金融政策を運営していくということになってまいります。異なる影響を与えていくことにつきましては、大変痛みをいつも負いながらも、しかし、最終的には経済全体のバランスを考えていく。

 それでは、経済全体のバランスということはどういうことなのかという御質問になると思いますけれども、先ほど、金利の受取収入と支払い収入、その差し引きで見て、ネットの数字はこうであるという御説明がございました。これはこれで、一つの重く受けとめるべき数字でございます。

 ただ一方で、この十数年間を振り返ってみますと、日本の経済、金融は、バブルが崩壊して、金融システムが崩壊の危機に瀕していたというふうに私は思います。もちろん、そうした事態それ自体を防ぐように努力をしないといけないわけでございますけれども、現実に金融システムが大変な危機に直面していた。そういう中で金融システムが不安定になっていくとなりますと、これは本格的なデフレスパイラル。各国、アメリカの一九三〇年代もそうですし、日本の金融恐慌もそうでしたけれども、金融システム自体が動揺してしまうと、これは経済自体が根っこから大きな動揺を来します。

 日本銀行としましては、この金融システムの安定をしっかり維持していく必要があるというふうに感じました。これは、具体的な中央銀行のアクションとしましては、流動性を潤沢に供給していく。そのことの結果として金利も大きく低下をしていった。その結果として金利についてもこういうバランスになりましたけれども、しかし、この潤沢な流動性の供給それから金利の低下ということは、第一には金融システムの安定、それから第二には、企業部門の調整を円滑にやることを通じて最終的には国民の、家計の雇用をしっかり確保していくということを強く念じながらやってきた政策でございます。

 長くなって恐縮でございます。

池田委員 感覚をと申し上げたんですから、痛みという言葉も使われたので、ちょっと安心しました。何か、昔、経済学者が言ったようでありますが、やはりウオームハートというものも大変大事ですから、この痛みがわからないとやはり金融政策の当事者として資格がないと私は思いますよ。そういう感覚を僕は聞いたわけです。

 それで、九二年から〇三年度の全国銀行の預金貸し出しの利ざやの累計額が九十六兆円、また同時期の全国銀行の不良債権処理額は百兆円余り。我々も金融再生法で大きなマネーセンターバンクの二つの銀行の処理をやったわけですが、銀行の利ざやはそのまま不良債権の処理に使われたと言ってよいだろうと思います。ちょっとその辺、コメントしていただきたい。

白川参考人 今、私の手元に正確な数字があるわけではございませんけれども、大きな感覚としましては委員の御指摘のとおりだというふうに理解しております。

池田委員 この低金利は銀行を助けたというのは紛れもない事実なんですね。しかし同時に、速水さんが前によく言っていたんですけれども、超低金利、金融緩和は重い債務を抱える従来型の古い産業を助けた。我々庶民には利子所得の減少を通じて家計に犠牲を強いながら、改革とは裏腹に従来型の産業構造を延命させたのではないかと思いますが、いかがですか。

白川参考人 若干繰り返しになるかもしれませんけれども、九〇年以降の日本の経済を考えてみますと、大変大きな不良債権を抱えておりました。この不良債権を円滑に秩序立てて処理をしていきませんと、これは経済全体が大混乱になってまいります。その結果、そのもとで行われました低金利がどういう作用を果たしたかということでございますけれども、不良債権が大きく発生したその時点での産業構造それ自体が、今議員の使われた言葉ですと従来型の産業でございます。そういう意味では、結果として、そうした産業も含めて、しかし全体として秩序立てて処理をしていくためにこれは必要な政策であったというふうに認識をしております。

 その間の痛みはもちろん認識しておりますけれども、しかし、最終的に経済全体が大混乱になってきますとその結末は国民に及ぶものだというように思って、この政策を遂行してまいりました。

池田委員 最後に、時間がないのですけれども、デフレから脱却できたかどうかお尋ねをしたいと思います。

 福井前総裁は就任当初は、日本銀行の持てる知恵と力をフルに発揮して、日本経済の持続的成長軌道への復帰とデフレ克服のために、中央銀行として最大限の貢献を果たしてまいる決意ですと述べたり、翌年春には、日本銀行はデフレから日本経済を脱却させる、この一点に絞って懸命の努力を継続中ですと答弁して、力を込めてデフレ脱却の決意を述べていたんです。

 しかし、その後、〇六年三月、量的緩和政策解除の記者会見、節目のときに、デフレについてはみずから言及しなかった。質問に答えてこう言ったんですよ。デフレは論ずる人によって随分観点が違う、これを一律に論じることは難しい。話をまぜ返しちゃったわけです。政府の方は、その直後にデフレの定義を発表いたしました。

 そういうふうに態度を変えたんですが、その前に、まずデフレから脱却できたかどうか、白川さんにお考えを聞きたいと思います。

白川参考人 先ほどの福井前総裁の発言と若干重なる部分がございますけれども、しかし、デフレという言葉は使っている人によって意味が随分異なっているというのが実態だと思います。一般物価の下落、資産価格の下落、それから経済活動の落ち込み、いろいろな意味で使われているというふうに思います。また、どの程度の幅や期間の物価指数の下落をもってデフレと呼ぶのか、これもまた人によって定義が違っているというふうに思います。

 ただ、デフレを心配したときの問題意識を今思い起こしてみますと、これは、物価の下落が景気の悪化をもたらし、その景気の悪化がさらに物価の下落をもたらす、そういう経済活動の大きな収縮、これをよくデフレスパイラルと呼んでいますけれども、そうした意味でのデフレの危険といいますかデフレスパイラルの危険は、これはかなり以前にもう過ぎ去ったというふうに認識しております。

 それで、中央銀行の立場から見ますと、ある人に対してある特定のデフレの定義を押しつけるということではなくて、中央銀行の目的である物価の安定のもとでの持続的な経済の成長を実現するという観点に照らして、足元の物価情勢それからこの先の物価情勢を判断していく、そういう姿勢にやはり尽きるのではないかというふうに思っております。

池田委員 そういうことじゃ困るんですよね。

 では、内閣府が定義したデフレからの脱却というのはもう達成したんですか。

白川参考人 内閣府の定義で、これは内閣府のことですから、私が内閣府にかわって答えるのは適切ではないかもしれませんけれども、物価指数、例えば消費者物価指数の場合でも、この消費者物価指数の中で、例えば一時的な要因、生鮮食品を除くのかどうかとか、いろいろな議論が現実に内閣府の中でもあるんだというふうに理解しております。

 したがいまして、私の立場で内閣府の定義に従ってどうであるかということを申し上げるのは適切ではないというふうに思っております。

池田委員 総裁代行でいらっしゃるからそれ以上詰めませんけれども、そこが一番大事なところで、別におっしゃっても何も差しさわりはない。内閣府の定義自体に異論を唱えるわけではなくて、それに沿えば、もう後戻りしないんだ、もうデフレは脱却できたと言うか、まだできないと言うか、そういう非常に言葉の明瞭なことが中央銀行のトップとしては、私、大変重要だと思っております。

 なぜこの問題を取り上げるかといえば、デフレの脱却が大変大きな問題であると同時に、中央銀行の総裁が、最初あれだけかねや太鼓でデフレ脱却と言いながら、途中から定義云々と言い出した。驚くべきことですね。言葉というのは大事ですから。これはもう中央銀行の信認性を著しく下げますよ。

 そのことを白川さんに申し上げて、これから一層明瞭な言葉で金融政策、そして日銀のスタンスを明瞭に伝えていただきたいということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

    〔田中(和)委員長代理退席、委員長着席〕

原田委員長 次に、下条みつ君。

下条委員 民主党の下条みつでございます。

 まずは、お二人の副総裁、御就任おめでとうございます。また、きょう、お忙しい中御足労いただきまして、ありがとうございました。

 また、きょうは、副総裁についてそれぞれ同僚委員の方々からいろいろ御質問がありましたけれども、私は、実を言うと、日銀の方として把握する関係、そして非常に責任のある、例の新銀行東京について時間の範囲内で御質問させていただきたいと思います。

 また、大臣におかれましては、恐縮でございます。抜け出していただいてお時間をちょうだいしたことに対しまして、感謝を申し上げたいと思います。

 それではまず、言うまでもなく、この全く同じタイムテーブルできょう都議会で四百億円の追加出資、四百億円ということは、都民の一世帯当たり約六千五百円負担してくれ、そういう要請をする議会が今あと二時間ちょっとで終了します。あした採決なんです。その件についてまず御質問したいと思います。

 まず時系列でいうと、言うまでもなくて、十七年四月に新銀行東京ができた。十八年六月にまずは赤字が二百九億、十一月に累積赤字が四百五十六億、そしてその十二月に、銀行法第二十四条に基づいて報告しなさいということがまず金融庁から新銀行東京に行った。これは時系列です。事実であります。そして、その一カ月後の一月に報告が新銀行から金融庁に提出された。これはそのまま事実でありますね。そして、その次の月に、日銀さんが四十四条に基づいて新銀行に考査を実施した。これは事実そのままを言っていることであります。そこで、報告をしなさいということで新銀行が報告を金融庁にし、その報告があった次の月と次の次の月に、去年の二月、三月にかけて日銀の考査が入った。これは事実であります。言うまでもない。

 ということは、簡単に言えば、副総裁、これは来たてで申しわけないのですが、理事もしていらっしゃってあれなので、ともかく日銀として、この考査の結果、そしてまたその後の経営悪化に追随する対応について、当然金融庁の方と綿密に連絡をとっていた、これは業務の一つでございますけれども、まずそこからお話をお聞きしたいと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 個別金融機関の具体的な経営内容につきましてはお答えを差し控えさせていただきますけれども、日本銀行は、個別金融機関の経営動向につきましても、必要に応じて、金融庁との間で緊密な連携をとるように努めているところでございます。

下条委員 内容について聞いているわけじゃなくて、綿密に連絡をとっていますねという話について、内容は聞いていません、教えていただけるのはいいんだけれども、要するに、今言いましたように、金融庁、親分の方から報告しなさいよと新銀行に言って、その報告があった次の月に日銀の考査が入っていて、その結果については金融庁と綿密に御連絡をとっているのは当然だと思いますが、それについてイエスかノーかお答えいただきたい。

白川参考人 先ほど先生の御指摘にありました日銀法の第四十四条の第三項に規定がございますとおり、金融庁長官から考査の結果を記載した書類その他の考査に関する資料の提出の要請があれば、これを提出しております。

 ただし、金融機関の考査結果について、どのような要請を受けたかについては具体的には明らかにしないこととなっており、この点についてのお答えは差し控えさせていただきたいというふうに思います。

下条委員 内容を聞いているのではなくて、綿密にこの件について連絡をとっていますか、イエスかノーか、これだけであります。お答えいただきたい。

白川参考人 綿密に連絡をとっております。

下条委員 ありがとうございます。

 副総裁、私のおやじも政策委員で理事でおりましたので、よくわかっております。個別のことは聞きませんから、イエスかノーだけで結構です。ありがとうございました。

 それでは、今お答えいただいたので、綿密に連絡をとっているということであります。そこで、今の副総裁の御回答をもとに、お越しいただいた大臣にちょっとお聞きしたいと思います。

 まず、大臣が今まで御発言の中でこの新銀行東京については、経営モデルが非常に画期的だ、また、大量の不良債権を抱えたのか、失敗の教訓を考えるべきだ、ミドルリスク・ミドルリターンの世界でリスク管理が不十分だった、ビジネスモデルがうまくいかなければ経営悪化は当然だ、これは大臣が実際に御発言なさったことであります。

 そこで私は、都の方の意見、この四百億は何に使う、これについて発表されたものを見ると、自己資本の維持に八十億、そして不良債権の増加などのリスクに対して二百八十億、風評被害の対応に四十億、全部で四百億必要なんだ、こういう話であります。これはもう全部都から発表されている話であります。

 一方でこの経営縮小計画、これはもちろんもう金融庁にも日銀にも入っておりますけれども、つまり減資をすると言っているんですね。一千億の部分のうち七百億を減資にしたいと。例えば、その減資を今年度中、つまり二十年度中にやるとすると、一千億のうち三百億は都債以外で、これは、七百億減資にする場合は都債以外が三百億で都債が七百億ですね。そうすると、都債全部を償還して減資するとしたら、これは大変なお金が必要になってきます。簡単に言えば、減資は大変なお金が必要になります。返さなきゃいけない。では、一千億のうち都債以外の三百億をそのままお返しして、都債を七百から三百、ちょうど四百億、ぴったり合っちゃうんですね。私も引き算だけはできるものですから。

 そういう意味では、ちょっと考えると、これは減資に使うんじゃないのというふうにも僕もちょっと考えちゃうんですね。なぜかと言えば、逆に言えば、この減資の話は一体どこでどういう経営判断があって、どういう金があって七百億の減資をできるのかなと私は思います。そういう意味で、足し引きしていくと、はっきり言って物すごく臭い。においがする。そういうこの四百億であります。

 大臣、それ以外に問題なのは、デフォルト、焦げつきであります。これはもう貸した金は返ってこないということであります。旧経営陣、旧経営陣と言うけれども、銀行というのは、旧経営陣がやったことはずっと残っているわけです。証券会社と違って、そのときの売買でなくなるものじゃなくて、ずっと残ってしまう。旧経営陣が悪いといっても、デフォルトは残るわけであります。このデフォルトが、実に今後四年間で三百億円以上の焦げつきがあり、既に生じている回収不能デフォルトを含めると約六百億円まで膨れる可能性があるということです。この状態の中でどうやって七百億円の減資をして、その元を返していけるのかなという単純な疑問が僕の心にはわいてきます。

 そこで、ちょっと時間が余りないのであれなんですが、御党の、元金融大臣で元自民党政調会長の与謝野さんが二十日の民放テレビで、これはやめた方がいいぞ、今までやっていたことを整理整頓するならわかるが、まだチャンスだと思って出すなら、無駄だからやめた方がいい、明快に公共の放送で宣言いたしております。

 そこで大臣、私は、この問題は今都議会が全く同じタイムテーブルで行われていますけれども、一つは、何でそんなに急ぐのかと思っています。何でこれを三月の二十八日に決裁しなきゃいけないんだ。

 委員長、恐縮でございます。これはやはり、旧経営陣を含めてぜひ参考人の方をお呼びして、集中審議をこの委員会でやっていただきたいと御要請したいと思います。

原田委員長 本件については、理事会で別途協議させていただきます。

下条委員 よろしくお願いします。

 というのは、そんなに急がなくていいわけですよ。もっと明白に、今どういう状態、今言いましたように、減資といって七百億どこから出てくるのか、単純に僕は思います。それから、いろいろな商品で預金を集めると言っていますけれども、大臣も含めて皆さんも、つぶれそうな銀行に金を出しますか、預金しますか。違う銀行に行くじゃないですか、無理です。ただでさえ高い金利を圧縮する方向で動く、四千二百億の預金を圧縮して二百億にするような経営体制をとっているわけであります。

 そこで私は大臣に、これはもう期限が実を言うとぎりぎりであります。ぜひ国民に見える形でこの問題について大臣の英断を振るって、もうちょっと待て、参考人を呼んで、もう少し経営状態をきちっとして、金融庁の検査もきちっと入ってその上で、私は何でこう言うかというと、さっき言った一世帯当たり六千五百円です。金融庁の働いている皆さんも都税を払っている人はたくさんいると思いますけれども、その方たちが一世帯ごとに払わなきゃいけない。民間とは違うのであります。このあしき習慣に何とか御英断を大臣の方からいただきたいと思っております。大臣の御意見をお聞きしたい。

渡辺国務大臣 先ほど減資の話をされましたが、減資が決まっているという話は聞いたことはございません。

 いずれにしても、経営が悪化をした銀行について、大株主が経営改善のために計画を出し、増資計画を実現しようということでございます。したがって、金融庁としては、こうした自主的な取り組みを促してきているのが最近の事後チェック型の金融行政の本筋でございます。まずは、こうした取り組みを見守っていきたいと考えております。

下条委員 私も随分歩きましたが、都民の方々が果たしてこの部分をほとんど理解していないです、これは大臣。与党ということもありますが、都議会の知事のみが急いでいらっしゃる。これは例えば三月なんかでなくても、四月だろうが五月だろうが、きちっと今綿密に日銀から連絡をとっていますよと副総裁はおっしゃっていますけれども、そういう中で行われている話なんで、何でここでこんなに急がなきゃいけないのか、私はいろいろな余計なことを考えてしまいます。

 そしてこの件については、大臣以外に今リーダーシップを置ける人はいません。私は、ここでぜひ今大臣がおっしゃった言葉をさらに強めていただいて、御英断をしていただきたいと再要請いたします。

 というのは、今のやり方で、店舗を減らして、預金をおろして返して、さらに縮小して人数を四百から二百か百か知りませんが、そのぐらいにするというだけで今までの部分が全部黒字に変わると到底思えません。

 きょうはちょっと細かい話ですが、都議会でも、付帯決議にもう追加はしないということを言っております。釈迦に説法ですが、既に前回の一千億のときの付帯決議は追加出資なしになっています。それが今度また追加出資して、それで付帯に追加出資なしでは、絵にかいたもちであります。これは、ざるのように、どんどん都民の税金が走っていくことはかなり明白ではないかというふうに私は思っています。

 ここでもう一つ、この議事録に残していただくために申し上げておきたいと思います。

 そして、時間の関係があってもう終わりなんですが、今、この銀行は自己資本比率が一七・四なんですよ。何でこれを今やらなきゃいけないのか僕はわからない。頭が悪いのでわかりません。もう少し時間をとってきちっと把握すべきではないかなということが一つ、もう一度申し上げます。

 それともう一つは、地方自治体が二〇%以上の株主の問題については、銀行法上検査しないということであります。私は、これは非常に危険な悪例だと思っています。つまり、地方自治体が皆さんの税金を入れて出資したものが二〇%を超しても、これについては地方自治体だから一切チェックしなくていいんだ。でも、私に言わせると、今度のこのパリバから買った銀行の新銀行東京も、言いにくいですけれども、相当に素人の人の関与だと思っています。

 したがって、私が大臣に申し上げたいのは、先ほどの英断と同時に、今後、こういう悪例の制度をぜひもう少しきちっとチェックする制度に切りかえていただきたい。でなければ、また同じように自治体が外資系のいろいろなカムフラージュしてある商品を買ってしまって、都がこれをパリバから買ったわけですから、ノンリコースということで買ってしまった。その後がこの実態になっているわけであります。

 ですから、いかに自治体であったとしても、これはきちっと制度上チェックしていくべきではないかと私は思いますけれども、その辺についてぜひ大臣の所見をお伺いしたいというふうに思います。ぜひ、制度上でチェックしていくように変更すべきだと私は提言したいと思います。

渡辺国務大臣 下条委員御案内のように、検査につきましては、一般的には、予告の上検査に入るというのが普通でございます。予告の予告というのは行っておりません。金融検査というのは、御案内のように、自己責任原則に基づいて、金融機関自身の内部管理それから会計監査人による厳正な外部監査を前提にいたしております。いわば、市場による規律を補強する補強性の原則でやっているわけでございます。

 経営改善に向けた取り組みが行われているような場合には、まずはそれを尊重する。一定期間経過後に検査で検証するということはあり得るかと思いますが、いずれにしましても、総合的な判断において行われるということでございます。

下条委員 済みません、もう時間が来ているんですが、大臣、これは日銀から金融庁と綿密に連絡をとっているということですから、もしくはこのまますうっとスルーして四百億がぼこんと入った、その後いろいろな問題がどかどかどかっと出てくると金融庁の方に非難が向くので、親心と言ったら失礼でございますが、私は心配して言っているお話でございます。

 それともう一つ、最後にもう一度だけですけれども、二〇パー以上自治体が払ったものについては、一切許可しない、検査しなくていいという法制度はやはり前向きに変えていくべきだともう一度御提言しますけれども、いかがでございますか。これで最後にいたします。

渡辺国務大臣 検査をするとかしないとか、そういったことを申し上げているわけではございません。総合的に判断をして決めてまいります。

下条委員 もう時間が参りました。本当に副総裁と大臣、御足労ありがとうございました。

 以上にします。ありがとうございました。

原田委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。私は、これまでの日銀の政策とその役割、これをお二人がどのように評価をされているか、お聞きをしたいと思います。

 まず、八〇年代のバブル経済、それと金融政策の対外的な自律性の問題についてお聞きしたいと思うんです。

 一九八五年九月、プラザ合意というのがありました。アメリカのドル高是正で各国が協調するということで合意されたわけですけれども、このとき日本は、円高への誘導それから超低金利政策、こういう方向に転換をするというのが求められました。日本は、既に当時、地価の上昇が発生しておりました。にもかかわらず、連続的な公定歩合の引き下げがありまして、五回にわたって、五%だった公定歩合を二・五%、当時としては超低金利政策であります、そういう状態に引き下げたわけです。

 ところが、日本は二年間その状態を続けましたが、ドイツなどは早々と低金利政策から脱却をしておりました。したがって、この日本だけが、いわば対米協調を最優先させる形で超低金利政策を長期間に続け、結果として、国内のバブルの火に油を注ぐ形になったというふうに私は思います。

 それで、元日銀総裁の三重野氏は、九四年二月にこういう話をしております。当時の経済活動の過熱全般について金融政策面からもう少し早くブレーキをかけることができたら、経済活動の振幅はもう少し小さなものとなっていただろう、こういうふうに言っているわけです。

 そこでお聞きしますけれども、バブル経済を発生させた要因として日銀の超低金利政策があった、そういう認識がおありかどうか。

 それからもう一つは、国内経済、とりわけ国民の生活、この面にマイナスの影響が及ぶということが想定されるような政策、例えば超低金利政策、こういうことが、国際的な協調ということでアメリカとの協調を優先させて、いわば国内を二の次に置くような、私はそういうことをやってはいけないと思いますけれども、そういう局面に至った場合に、軸足を、自主的な方向でかじを切るのか、それとも対外的な協調ということを最優先させるのか。

 これはなかなか判断は難しいかもしれませんが、私は、国民の生活、経済のところに軸足を置くのが基本であるというふうに思いますが、この二点についてそれぞれお答えをいただきたいと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 八〇年代のバブルの経験は、私にとっても大変大きな経験でございました。当時はまだ中堅の職員でございましたけれども、金融政策を担当する局の調査役という肩書でございました。十数年前に私は銀行の同僚と一緒にバブル経済に関する論文を書き、本を出版いたしましたけれども、実は、そのときの強烈な思い出があっての話でございます。

 今の委員の御質問についてお答えをいたします。

 八〇年代後半のバブルでございますけれども、このバブルの発生につきましてはいろいろな要因が作用しているというふうに考えられますけれども、そのいろいろな要因の中に、一つとして、長期にわたる金融緩和、これもその一端があったというふうに認識しております。

 では、なぜそういうことになったのかということでございますけれども、バブル発生に至る金融政策を振り返りますと、国内経済は、八五年のプラザ合意以降の急速な円高進行の影響が懸念されるという状況でございました。このため、日本銀行は公定歩合を二・五%まで引き下げ、委員御指摘のとおり、この政策が一九八九年まで二年以上続いたということでございます。

 こうした金融緩和がなぜ続いたかというその背景でございますけれども、これは事実の分析としてのまず説明でございますけれども、第一は、景気の回復傾向が次第に強まる中、足元の物価上昇率がこれはゼロ%台でございました。したがって、物価上昇が今目に見えていないじゃないか、そういうふうな議論が強かったというのが、これが第一の要因でございます。

 第二の要因は、国際的に大幅な経常収支の黒字の是正あるいは円高の回避が優先的な課題として考えられていたということが指摘できると思います。そうしたもとで金融緩和が長期にわたって継続するという期待が生まれたということがその原因だというふうに考えます。

 このことは非常に多くの教訓を、これは苦い教訓でございますけれども、提供しているというふうに考えております。先ほど、冒頭も少し申し上げましたけれども、金融政策は効果波及のタイムラグは長いこと、それから、金融と実体経済の間には複雑な相互依存関係がありますことから、足元の動向だけでなくて、中長期的なリスクについても十分な目配りをする必要があるということが、これが大きな教訓であります。この教訓は、日本銀行自身にとってもこれは忘れてはならない教訓でございますけれども、しかし、社会全体としてもこれは忘れてはいけない教訓だというふうに思っております。

 それで、御質問の国際協調でございますけれども、私は、国際協調あるいは国際的な政策協調という言葉が、多少人によって都合よく解釈されているなという感じがいたします。一国の中央銀行が責任を持って対処すべきは、これは、国内の物価安定のもとでの持続的な経済成長というふうに思います。このことは、世界経済がどうなってもいいということではもちろんございませんで、世界全体の金融、経済の安定、これは常に意識いたしますけれども、しかし、最終的に責任を持つべきは、国内の経済、物価の安定であるというふうに思っております。

 そういう意味で、中央銀行が常に何を基軸に持たないといけないかということですけれども、それは、日本銀行法に書かれていますとおり、物価の安定を通じて国民経済の健全な安定に資するということに尽きるというふうに思います。

 問題は、そのことをその時々の状況においてどういうふうに解釈していくかということでございますけれども、例えば、ある為替レートを固定的に維持していくとか、あるいは経常収支の黒字額を減らしていくとか、そういうふうに、何か物価安定のもとでの成長以外の目的をそこに外から入れ込みますと、これは長い目で見て必ず経済は不安定になっていくというのが、私自身が常に心にとめている大きな教訓だということでございます。

西村参考人 お答えいたします。

 私自身、九二年か三年か自分でも忘れましたが、「日本の株価・地価」という本を出しまして、その中で、バブル経済についての、株価それから地価の方から分析したことがございます。私はあの時点ではもう既にバブルであるというふうに申し上げたんですが、随分いろいろな方からいろいろな御批判を受けたということを感じております。

 事ほどさように、あの時期において、実態が、バブルの中においてバブルであるというふうに感じるということは極めて難しいということが言えるのではないかというふうに思います。そういうことから考えますると……(発言する者あり)お答えさせていただきますと、そういう問題の中で、例えば金融緩和というものがどういう影響があったかということですが、それに関しましては、金融緩和がそういった全体の流れの中の一つのいわば底流をなすような動きをしたということは間違いないのではないかというふうに思います。

 そういうことから考えますと、やはり金融政策の効果のタイムラグというのは極めて長くて、かつ可変であるということから考えて、先を見た、先を見据えたしっかりした判断、それから丁寧な分析、そして機動的な政策というものがやはり重要であるというふうに考えております。

 それから、その後の金利政策の問題ですが、これは私も非常に心に重いものは感じておりまして、低金利政策の副作用というものは、先ほども御質問がありましたけれども、利子の収入の減少、それからもう一つは、年金などの機関投資家、特に、将来の社会保障の問題に関してのやはり運用難というようなものは極めて大きなものが生じてしまったということがあります。こういった副作用というようなものが今も続いているということは認識しております。

 それから、そうではありますけれども、こういった低金利によって、逆に言えば、非常に危険な状態にあった日本経済がようやくある程度自分で歩けるようになったということも事実だと思いますので、雇用環境の改善や設備投資の増加といったものについてのこの効果というのを見据えながら、少しずつ、望ましい経済政策のポリシーミックスというのをうまく考えていかなきゃいけないのではないかというふうに考えております。

 その中で、軸足のものですが、これは、国際協調とそれから日本経済も見るということは、私は矛盾するものではないというふうに考えております。やはり、日本経済が国際化しているということは、国際の中で日本ということを考えなきゃいけないということですし、それと同時に、やはり、日本経済の中で日本銀行が考えるべきことは国民の経済厚生ということですから、国民の経済厚生を考えて、そして、日本という国家の中の制度ということを考えて望ましい政策を考えていくというのが正しい考え方だというふうに考えております。

 以上です。

佐々木(憲)委員 国際協調と国内経済に対する政策とどちらを優先させるか、それは矛盾するものではないという状況ももちろんあるでしょう。しかし、矛盾する場合もあるわけですね。その場合にどちらに軸足を置くかということが問われるわけでありまして、それは、国内経済、基本的にはそういうことだというふうに先ほどの答弁ではおっしゃったと思います。

 さて、それで次に、今の景気を景気回復の軌道に乗せていく、その場合、今までのような輸出依存型の景気回復あるいは経済成長、これは、統計上も寄与度は輸出寄与が非常に高いわけですね。しかし、これは今や、国際的な景気の実態からいいますと、なかなかその輸出依存型では景気回復というのは望めない。そうなりますと、国内経済、とりわけ内需、これをどう拡大していくかということになろうと思うんです。

 そこで、先日、聴聞の際、白川副総裁にはお聞きしたんですが、GDPの六割は個人消費でありますが、この個人消費と、それから公共投資、それから設備投資、この点、白川副総裁のお話はお聞きしました。西村副総裁の見解をお聞きしたいと思うんですが、この三つのうち、どこに軸足を置いて今後の景気回復を図っていくのが望ましいか、この見解をお伺いしたいと思います。

西村参考人 お答え申し上げます。

 先ほど白川副総裁も申し上げましたように、六割は個人消費、これはGDP以上に極めて重要なものであります。それと同時に、個人消費というのは、比較的安定した動きをするという性質を持っています。ということはどういうことかといいますと、個人消費はいわば日本経済の底を決める、底というか底流を決める非常に重要なものです。と同時に、長期的にこれを押し上げていかなきゃいけないというものであります。

 それに対して設備投資というのは、これは極めて変動の激しいものであります。輸出もそうなんですが、こういうものに関しては、やはり短期的な動きに関しては十分な注意を払って、これに対して対応していなければいけないというふうに考えます。

 したがって、マクロ経済運営にありましては、特に長期に関しては、この個人消費をいかに底上げしていくかということを第一の、第一といいますか、プライオリティーの高いところに持っていかなきゃいけないというふうに考えていますし、それから、短期的な変動ということを考えれば、設備投資が安定した動きをするような対応をする必要があるというふうに考えております。

 以上です。

佐々木(憲)委員 西村副総裁にもう一問お聞きしたいんです。

 二〇〇二年の十月に、エコノミックレビューというもので、小泉内閣の構造改革路線についてこういうふうにお述べになっているんですね。「金融の面は重要であるが、それを強調しすぎると日本経済の真の問題を見えなくしてしまう。」という表現があります。これはどういう意味でおっしゃったのかという点が一つと、それから、二〇〇四年に出された著書で「日本経済 見えざる構造転換」という本がございます。その中にもありますが、諮問会議民間委員の主張する法人税率引き下げも、経済産業省の主張する投資優遇政策減税も、税引き後収益率の若干の上昇をもたらすが、過去を引きずる日本の低収益率を劇的に改善することにはならない可能性が高いと指摘されているんですね。

 この意味は、法人税率の引き下げというのは効果が低いからやっても余り意味がないということなのか、それとも、いや、大胆な減税をやらなきゃいけないんだ、そういうおつもりでこのように述べておられるのか、ちょっとよくわかりませんので、その真意をお伺いしたいと思います。

西村参考人 お答え申し上げます。

 まず、私の論考を読んでいただきまして、ありがとうございます。

 この二つ、二〇〇二年も二〇〇四年も、実は、この書いた時期はちょうど日本経済が一番悪かった時期であります。その時期といいますと、基本的には、いわゆる三つの過剰、私は過剰という言葉は余り好きではないんですが、よく使われておりますのでそれを申し上げますと、雇用、設備、債務の過剰、この状況のもとで不良債権問題に直面していたということが私のこの議論のもとになっております。

 そのもとになっておりますのは、日本に投資をする、これは世界のどこかに日本企業が投資するというのではなくて、日本に投資をする、その日本に投資をするときのリターンが、私的なリターンといいますか、企業の収益という意味でのリターンが小さいということが問題であるということで申し上げたわけです。

 この状況そのものは、三つの過剰は解消はしたんですが、これが劇的に変化したというふうには私は思っておりません。したがいまして、まだ依然として日本に対する収益率はやはり低いということだと思います。

 そういうことから考えますと、その収益率がそもそも余り高くないというところで法人税率の引き下げや投資優遇税制を行ったとしても、それが極めて劇的に、劇的にというのは、非常に高くなるということではないだろうというふうにこの時点では申し上げたわけです。

 それで、その状況が現在のところ変化しているかどうかというのは、そのときそのときの状況に応じて、これから十分に精査して考えていかなきゃいけないというふうに思っておりますけれども、この時点において私が申し上げたかったのはそういうことです。

 逆に言えば、日本で今本当に必要なのは何かというと、これは金融政策と離れてですけれども、必要なのは、日本に投資をする、この投資をすることの重要性というものを我々が見て、そして、その幅を広げるようないろいろな措置をすべきではないかということをこの時点で申し上げたということでございます。

 以上です。

佐々木(憲)委員 時間が参りましたので終わります。

原田委員長 次回は、明二十六日水曜日午後四時五十分理事会、午後五時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十九分散会


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