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第1号 平成20年10月24日(金曜日)

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本国会召集日(平成二十年九月二十四日)(水曜日)(午前零時現在)における本委員は、次のとおりである。

   委員長 原田 義昭君

   理事 後藤田正純君 理事 田中 和徳君

   理事 中川 正春君 理事 松野 頼久君

   理事 石井 啓一君

      石原 宏高君    江崎洋一郎君

      小川 友一君    越智 隆雄君

      亀井善太郎君    木村 隆秀君

      佐藤ゆかり君    鈴木 馨祐君

      関  芳弘君    竹本 直一君

      とかしきなおみ君    中根 一幸君

      林田  彪君    原田 憲治君

      広津 素子君    松本 洋平君

      三ッ矢憲生君    宮下 一郎君

      盛山 正仁君    山本 明彦君

      山本 有二君   吉田六左エ門君

      池田 元久君    小沢 鋭仁君

      大畠 章宏君    階   猛君

      下条 みつ君    鈴木 克昌君

      古本伸一郎君    和田 隆志君

      谷口 隆義君    佐々木憲昭君

      野呂田芳成君    中村喜四郎君

    ―――――――――――――

九月二十九日

 原田義昭君委員長辞任につき、その補欠として田中和徳君が議院において、委員長に選任された。

平成二十年十月二十四日(金曜日)

    午前九時三十二分開議

 出席委員

   委員長 田中 和徳君

   理事 江崎洋一郎君 理事 木村 隆秀君

   理事 後藤田正純君 理事 竹本 直一君

   理事 山本 明彦君 理事 吉田六左エ門君

   理事 中川 正春君 理事 松野 頼久君

   理事 石井 啓一君

      小川 友一君    亀井善太郎君

      亀岡 偉民君    鈴木 馨祐君

      関  芳弘君  とかしきなおみ君

      中根 一幸君    西本 勝子君

      萩原 誠司君    林田  彪君

      原田 憲治君    平口  洋君

      広津 素子君    松本 洋平君

      三ッ矢憲生君    宮下 一郎君

      盛山 正仁君    安井潤一郎君

      山本 有二君    池田 元久君

      小沢 鋭仁君    大畠 章宏君

      階   猛君    下条 みつ君

      園田 康博君    古本伸一郎君

      和田 隆志君    谷口 隆義君

      佐々木憲昭君    中村喜四郎君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       中川 昭一君

   内閣府副大臣       谷本 龍哉君

   財務副大臣        竹下  亘君

   財務副大臣        平田 耕一君

   内閣府大臣政務官     宇野  治君

   財務大臣政務官      三ッ矢憲生君

   財務大臣政務官      末松 信介君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    三國谷勝範君

   政府参考人

   (国税庁次長)      岡本 佳郎君

   参考人

   (日本銀行総裁)     白川 方明君

   財務金融委員会専門員   首藤 忠則君

    ―――――――――――――

委員の異動

九月二十四日

 辞任         補欠選任

  とかしきなおみ君   竹下  亘君

同月二十九日

 辞任         補欠選任

  竹下  亘君     とかしきなおみ君

  原田 義昭君     平口  洋君

十月二十四日

 辞任         補欠選任

  石原 宏高君     安井潤一郎君

  越智 隆雄君     西本 勝子君

  鈴木 克昌君     園田 康博君

同日

 辞任         補欠選任

  西本 勝子君     亀岡 偉民君

  安井潤一郎君     石原 宏高君

  園田 康博君     鈴木 克昌君

同日

 辞任         補欠選任

  亀岡 偉民君     萩原 誠司君

同日

 辞任         補欠選任

  萩原 誠司君     越智 隆雄君

同日

 理事野田聖子君八月二日委員辞任につき、その補欠として木村隆秀君が理事に当選した。

同日

 理事大野功統君及び奥野信亮君九月十九日委員辞任につき、その補欠として吉田六左エ門君及び山本明彦君が理事に当選した。

同日

 理事田中和徳君九月二十九日委員長就任につき、その補欠として江崎洋一郎君が理事に当選した。

同日

 理事後藤田正純君同日理事辞任につき、その補欠として竹本直一君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

十月十五日

 消費税率の引き上げ・大衆増税反対に関する請願(野田佳彦君紹介)(第八三号)

 保険業法の適用除外を求めることに関する請願(松野頼久君紹介)(第一二一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の辞任及び補欠選任

 国政調査承認要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 一言ごあいさつを委員長として申し上げます。

 このたび、財務金融委員長の重責を担うことになりました田中和徳でございます。

 御承知のとおり、今般の国際金融市場の混乱は、我が国経済にとって深刻な影響を及ぼすことが懸念されております。このような状況において、我が国の財政及び税制のあり方はもとより、金融経済情勢に対しての国民の関心は深く、当委員会に課せられた使命はまことに重大なものがございます。

 委員長といたしましても、その責務の重大さを十分に認識し、微力ではございますが、委員各位の御理解、御協力をいただきまして、公正かつ円満な委員会運営に努めてまいる所存でございますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

田中委員長 この際、理事辞任の件についてお諮りいたします。

 理事後藤田正純君から、理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次に、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 ただいまの理事辞任及び委員の異動並びに私の委員長就任に伴い、現在理事が五名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。

 よって

      江崎洋一郎君    木村 隆秀君

      竹本 直一君    山本 明彦君

   及び 吉田六左エ門君

を理事に指名いたします。

     ――――◇―――――

田中委員長 次に、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。

 財政に関する事項

 税制に関する事項

 関税に関する事項

 外国為替に関する事項

 国有財産に関する事項

 たばこ事業及び塩事業に関する事項

 印刷事業に関する事項

 造幣事業に関する事項

 金融に関する事項

 証券取引に関する事項

以上の各事項につきまして、今会期中国政に関する調査を行うため、議長に対し、国政調査承認要求を行うこととし、その手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

田中委員長 この際、中川財務大臣兼金融担当大臣、竹下財務副大臣、平田財務副大臣、三ッ矢財務大臣政務官、末松財務大臣政務官及び宇野内閣府大臣政務官から、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。財務大臣兼金融担当大臣中川昭一君。

中川国務大臣 おはようございます。

 このたび、財務大臣及び金融担当大臣を拝命いたしました中川昭一でございます。田中委員長、理事の皆さん方、委員の皆さん方、どうぞよろしくお願いをいたします。

 本委員会におきます御審議の開始に当たり、ごあいさつを申し上げますとともに、今後の財政政策及び金融行政等を運営するに当たっての基本的な考え方を申し述べさせていただきます。

 まず、最近の経済金融情勢に対する政策運営について申し上げます。

 去る十月十日に開催されましたG7におきましては、現下の国際的な金融情勢への対応につきまして、集中して議論を行ってまいりました。その結果、現下の危機的状況についての共通の認識のもとで、金融市場を安定化させ、信用の流れを回復するための五項目の行動計画をまとめ、明確なメッセージとして打ち出しました。

 G7では、私から、日本の経験を踏まえた金融機関への公的資本注入の意義や、IMFがこの危機に柔軟かつ積極的に対応すべきであり、必要ならば我が国もIMFへの資金貢献を行う用意があることなどを申し上げてまいりました。

 我が国の金融システムそのものは、欧米に比べれば相対的に安定しており、セーフティーネットも十分に整備されておりますが、金融資本市場の急激な変動が我が国の金融や実体経済に与える影響については、常に高い緊張感を持って対処していく必要があります。このため、当面必要な対策として、自社株買い規制の緩和、取引所における空売り情報開示の拡充及び政府等保有株式の市中売却の一時凍結を実施いたしております。

 現下の経済情勢のもと、中小企業の業況は厳しい状況にあります。民間金融機関におきましては、適切かつ積極的な金融仲介機能の発揮が求められます。中小企業金融につきましては、これまでもきめ細かい実態把握に努めるなどの対応をしてきておりますが、先般、改めて金融機関の代表者を集め、金融円滑化に向けた要請を行いました。

 さらに、本日、国の資本参加による金融機関の資本基盤の強化を通じて、中小企業に対する信用供与の円滑化等、地域経済に対する適切な金融仲介機能を発揮するとの観点から、金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案を、また、保険契約者等の保護を図り、保険業に対する信頼性を維持する観点から、保険業法の一部を改正する法律案を国会に提出させていただくこととしております。何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。

 中小企業に対する円滑な金融は、金融機関の最も重要な役割の一つと認識しており、今後とも、情勢の変化に即応しつつ、適時適切に対応できるよう努めてまいります。

 また、政府は、安心実現のための緊急総合対策を具体化するため、平成二十年度補正予算を九月二十九日に国会に提出し、その後、国会の御審議を経て、十月十六日に成立したところであります。

 さらに、同対策を取りまとめた後の内外の金融経済情勢の変化等新たな事態に対応するため、新しい経済対策、生活対策を早急に策定することとしております。

 本対策におきましては、国民生活と日本経済を守るため、三つの分野、すなわち、生活者、金融対策及び中小零細企業等企業活力向上、地方を重点としております。その際、対策の財源は赤字国債に極力依存しないこととしております。

 続いて、今後の財政政策及び金融行政等の基本的考え方について申し上げます。

 我が国の現状にかんがみれば、国民の不安を払拭するとともに、将来への希望が持てる経済を構築することが重要であると考えております。

 他方、我が国財政は極めて厳しい状況にあり、経済や社会保障に悪い影響を与えないためにも、財政健全化に着実に取り組んでいく必要があります。このため、日本経済の持続的で安定した繁栄を図ることを基本として、これまで政府・与党が掲げてきた財政運営上の基本方針である、二〇一一年度までの国、地方の基礎的財政収支の黒字化という目標に向け、努力をしてまいります。

 また、政府としては、国民の安心を確かなものとするため、持続可能な社会保障制度の構築とその安定財源確保に向けた中期プログラムを早急に策定することとしております。この中には、基礎年金国庫負担割合を二分の一に引き上げるための前提となる税制抜本改革の姿も含めることとしております。

 平成二十一年度予算編成につきましては、従来にも増してめり張りのきいた予算編成に取り組んでまいります。このため、成長力の強化、質の高い国民生活の構築等の重要課題への思い切った予算配分を行うための重要課題推進枠を設け、これに、従来の削減に加え、政策の棚卸し等を通じて捻出した財源を充てることとしております。

 金融行政につきましては、国際的な金融市場の動向を十分注視しつつ、これまで申し上げた施策の策定、実施を含め、引き続き、金融システムの安定、利用者保護・利用者利便の向上及び公正、透明で活力ある市場の確立に向けた諸課題に対し、全力を尽くしてまいる所存でございます。

 以上、財政政策及び金融行政等に関する私の考えの一端を申し述べました。今後とも、与野党の皆様のお力添えを得て、政策運営に全力を尽くしてまいる所存であります。

 田中委員長を初め委員各位におかれましては、御理解と御協力をお願い申し上げます。(拍手)

田中委員長 財務副大臣竹下亘君。

竹下副大臣 このたび、財務副大臣に就任をいたしております竹下亘でございます。

 国際金融を取り巻く状況あるいは我が国の財政を取り巻く状況、高い緊迫感を持って対応しなければならない問題が山積をいたしております。中川大臣の御指示のもと、平田副大臣、末松政務官、三ッ矢政務官ともども、力を合わせてしっかりと財務行政を推進していく決意でございます。

 田中新委員長を初め財務金融委員会のメンバーの皆さん方の御指導、御鞭撻を心からお願い申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

田中委員長 財務副大臣平田耕一君。

平田副大臣 平田耕一でございます。

 竹下副大臣と同じく、懸命に相務めます。

 どうぞ、委員長初め皆様方の御指導をよろしくお願い申し上げます。ありがとうございます。(拍手)

田中委員長 財務大臣政務官三ッ矢憲生君。

三ッ矢大臣政務官 このたび、財務大臣政務官を拝命いたしました三ッ矢憲生でございます。

 末松政務官とともに、中川大臣を支え、職務に専念するつもりでございます。

 田中委員長初め委員の皆様方の御指導、御鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

田中委員長 財務大臣政務官末松信介君。

末松大臣政務官 このたび、財務大臣政務官を拝命いたしました末松信介でございます。

 三ッ矢政務官とともに、大臣を補佐しつつ、微力ですけれども、精いっぱい頑張ってまいる所存でございます。

 田中委員長様初め先生方の御指導のほど、心からお願い申し上げます。参議院で一人でございます。よろしくお願いします。(拍手)

田中委員長 内閣府大臣政務官宇野治君。

宇野大臣政務官 内閣府大臣政務官を拝命いたしました宇野治でございます。金融政策担当をさせていただきます。

 谷本副大臣が現在参議院に行っておりますので、谷本副大臣とともに、中川大臣を支えて、しっかりとやらせていただきます。

 委員長初め委員各位の皆さん方の御指導、御鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

     ――――◇―――――

田中委員長 次に、財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁白川方明君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として金融庁監督局長三國谷勝範君、国税庁次長岡本佳郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田中委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。亀井善太郎君。

亀井(善)委員 亀井善太郎でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。また、本日は、中川大臣、白川総裁、御出席をいただきまして、ありがとうございます。

 先ほど大臣からもお話がありましたとおり、金融情勢、経済情勢、大変厳しい状況があります。その中で、きょうは特に中小企業の金融について、これは大変大きな影響がございますので、この点について幾つか御質問をさせていただきたいと存じます。

 まず初めに、これは委員長の御理解をいただいて、今資料をお手元に配らせていただいております。一枚目が、日銀の短観の、いわゆる貸し出し態度判断DIと言われているものでございます。融資態度が改善しているのか悪化しているのか、ここを見ていただきたいと思います。ここのところ、足元、大変厳しい状況になっておりまして、特に中小企業のところはもう既にマイナスになってしまっている、こういう状況でございます。

 そしてもう一つ、二枚目でございますけれども、これは、商工会議所等の会員企業、ですからこれはやはり中小企業になりますけれども、この資金繰りの現状でございます。大変厳しいのが特に製造業、建設業、運輸業、こういう状況になっておりまして、今資金繰りが相当悪化しておる、こういったような現状があります。

 まず、この点について、政府としての認識がどうなのか、金融庁の方からお伺いできればと存じます。

三國谷政府参考人 お答えいたします。

 アメリカのサブプライムローン問題に端を発しましたグローバルな金融市場の混乱が我が国経済、金融にも大きな影響を及ぼしてきているなどの状況のもとで、中小企業は厳しい状況に直面していると認識しているところでございます。

 日本銀行の統計によりますと、全国銀行の中小企業向け貸出残高は、昨年九月以降、前年割れで推移しているところでございます。また、御指摘のとおり、当庁のアンケート調査あるいは日銀短観によりますと、資金繰りや金融機関の貸し出し態度についての中小企業の判断は厳しいものとなっているところでございます。

 このように中小企業が厳しい状況にある中で、金融機関においては適切かつ積極的な金融仲介機能を発揮することが求められていると考えているところでございます。

 金融庁といたしましては、中小企業に対する円滑な金融は金融機関の最も重要な役割の一つであると認識しており、今後とも各般の施策に取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

亀井(善)委員 ありがとうございます。

 やはり厳しいわけでありますね。特に、今金融庁から話がありましたが、サブプライムというよりは、これは後でちょっと日銀にも聞きたいんですけれども、その手前からもうおかしくなっているんだ、私はそう思っております。

 そういう中で、銀行の大先輩でもあります中川大臣にぜひお伺いをさせていただきたいんですが、資料の三をごらんいただければと存じます。これは、神奈川県宅建業協会、不動産業界でありますけれども、ここでたまたま今の貸し渋りの現状についてヒアリング調査を行ったものでございます。銀行名はちょっと、いろいろな問題がありますので、これは消させていただきました。A、B、C、Dという形で書かせていただいています。その中で、これは結構ひどい事例があるんですね。私も元銀行員でありますけれども、ちょっとひどいなと思います。

 まず一つ目、A、グループ企業で云々ですけれども、定期預金に見合った金額の運転資金の融資を申し込んだが、断られる。それから、Bの銀行の二つ目のところであります。これが私は一番ひどいと思うんですが、総額三千万の融資日取りも決まっていたのに、融資担当が所在不明となる。後日融資不能と通告された。これはちょっとひどい。それからCのところも、これは私、ひどいなと思うのは、Cの一番下であります。当初おおむね大丈夫と回答を得ていた。難しいと言われて融資拒否になった。売却に際し、銀行子会社の不動産会社を中に入れるなどしてオーケーを出す。これは私はちょっとないと思っています。

 これは、実際どうなのか、あくまでヒアリング調査でありますから、どうだというところはあるわけでありますけれども、まず、銀行の大先輩として、そういう御経験のある中川大臣に、こういう現状について御意見をいただきたいと思います。

中川国務大臣 私は亀井委員と同じ職場で仕事をしたことがございます。私は実際融資はやったことがないんでありますけれども、しかし、今御指摘のように、特にバブル崩壊以降いろいろな、日本で十数年前に金融危機を経験した、大変な御苦労をされたと思うんですけれども、それ以来、ある意味では銀行は、さっき申し上げたように、総体的には欧米に比べまして健全的である。ただし、他方、ちょっとしたことで非常に厳しい状況になってくる。これは私自身も、私の地元は北海道ですけれども、にかかわらず、全国でそういう実感を多分ここにいる多くの議員の皆様方は共有しているんじゃないかと思います。そういう中で、こういう、何か融資実行日になったら相手がいなくなっちゃったとか、これは普通、信用をもって成る金融機関としてはあってはならないことだろうと私は思います。

 そこで、私、就任以来、いろいろな声を全国で聞くものですから、金融庁、あるいは政府系金融機関を所管しております財務省に、役所あてで私に直接意見が届くようなボックスといいましょうか、メールでも何でもいいんですけれども、毎日こんなにいっぱい来ているのでありますけれども、場合によって、御本人に迷惑がかからなければ、直接その金融機関に役所の方から、あるいは私自身が行ってもらうようにするというシステムをつくったところであります。

 あるいは、この国会の場で、こういう実例を御指摘していただくことによって、少しでも、仮に理不尽なことがあるとするならば、あってはならないようにしていくということが、今まさに日本の経済を支え、苦しんでいる金融機関に対する政治の役割ではないかというふうに考えております。

亀井(善)委員 ありがとうございます。

 まさにあってはならないことでありまして、本当に大先輩、ありがとうございます。

 中小企業の金繰り、これは極めて大事なところでありまして、経済ももちろん厳しいんだけれども、やはり金繰りで厳しくなっている、こういう面があろうかと思います。これはやはり金融当局として、金融当局としての日銀の政策は後ほどお伺いいたしますけれども、政府として具体的に、今お話があったような、まさにあってはならないことを防止することも含めて、具体的な政策、どのようなことをお考えなのか、その御見解をぜひお伺いしたいと思います。

中川国務大臣 先ほど冒頭申し上げましたように、金融の体質強化をすることによって機能を強化するという改正法案等をこれからぜひ早急に、当委員会あるいは国会で御審議をいただきたいというふうに思っております。

 あるいは、先ほど申し上げました大臣目安箱という、余りスマートな名前ではないんですけれども、そういう形で全国からいろいろな御意見をいただき、即時に対応できるような、またいろいろな情報を集めていかなければならないと思っております。

 また、先日は、全国を代表する金融業界の代表の方にお集まりをいただきまして、ゆめゆめそういうことのないように、さらに金融行政、とりわけ金融監督行政を所管している私としては、やはり金融庁あるいは財務省に、リスク管理も大事ですけれども、余りにもリスク管理に偏った形で、何かちょっとあつものに懲りてみたいなそういうことがあってはならない。バランスのとれた金融行政というものを、日本のシステムそのものが比較的健全なだけに、血管が丈夫なのに血液を送らないということになると、これはやはり体全体がおかしくなっちゃいますので、その辺をぜひ、当委員会からの御指摘もいろいろいただきながら、私自身も注意深く見守っていかなければならないというふうに思っております。

亀井(善)委員 ありがとうございます。

 まさにお話しのとおりで、血液をしっかり流していただくよう、大胆かつきめ細かく、大臣の今お話しのとおりだと思いますので、ぜひよろしくお願いをさせていただきたいと思います。

 本日は、日銀の白川総裁にも御出席をいただいております。ありがとうございます。

 資料の四をごらんいただきたいんですが、これは景気動向指数と金融政策の関係をあらわした内閣府の資料で、日経ビジネス先週号の資料でございます。

 先ほどもちょっと申し上げたんですけれども、ここのところの足元の景気悪化をサブプライムローン、米国金融危機からの問題だ、こういう指摘があります。私はそうは思っておりません。私は、二〇〇六年三月の金融引き締め転換政策というものがどうであったのかな、正直、ここの部分をしっかり顧みなければいけないのかなと思っています。先ほど皆様にもごらんいただいた資料の一、貸し出し判断DIのところもやはり同じような形で反転しておるわけでありまして、この点について、まず日銀として引き締め転換政策に対する評価をぜひお聞かせいただきたいと存じます。

白川参考人 お答えいたします。

 二〇〇六年の量的緩和政策の解除やその後の政策変更でございますけれども、これは設備、雇用それから債務、いわゆる三つの過剰の調整が終了する中で、経済、物価情勢が着実に改善し、先行きも持続的な成長が続く蓋然性が高いという判断を踏まえまして実施したものでございます。

 実際、エネルギー、原材料価格の高騰やあるいは世界経済の減速を背景に我が国の景気が徐々に減速を始めましたのは昨年末ごろからでございまして、それまでは、日本経済は物価安定のもとでの息の長い成長を続けていたというふうに判断しています。

 今、日本の景気後退の主たる要因について、サブプライムローン問題ではなくてその以前の問題であるというお話がございました。

 私ども、特に春先以降目立ちました景気の停滞でございますけれども、これは原材料、エネルギー価格の高騰に伴ういわゆる交易条件の悪化というものが非常に大きいというふうに考えております。そこにこの夏以降、さらにサブプライムローン問題、世界的な金融市場の混乱が加わってきているというふうに思っております。

 問題のエネルギー、原材料価格の上昇でございますけれども、御案内のとおり、ごく最近、この七月まで大変な勢いで上がってまいりました。これは、世界経済全体がいわば巡航速度を超えて非常に高い成長率でこの数年間続けておりまして、その結果、エネルギー、資源価格が大きく上がり、それがある段階を経て下がってきたということだと思います。そういう意味で、その上がる過程というのは、実は世界経済全体の巡航速度以上の成長というものがあって、それが日本経済にも先ほど申し上げた交易条件の悪化を通じて影響してきたというふうに思っております。

 したがいまして、委員御指摘のとおり、サブプライムローン問題だけではないという点については、私も同じような認識を持っております。

亀井(善)委員 今お話しいただきましたが、私は正直そうは思いません。海外発の原料高が起きているときに、本当に金融を引き締めする方向でいいのかどうか。これは白川総裁は金融政策の大権威でございますので、私のような若造が議論を挑もうとは思いませんけれども、ちょっとそこのところは、金融政策、やはり適切にきちんと検証をし、今足元の状況がどうなっているのか、私は、そこは真に顧みることも含めて、ぜひこれはきちんと市場と対話をしていただきたい、また経済の状況をしっかり見ていただきたい、そう思っております。

 そういう中で、まさに足元の金融政策について申し上げれば、十月の八日、欧米の中央銀行六行で協調利下げというものがございました。この協調利下げ、日銀は参加をされませんでした。この後どうなったかといえば、円高、株安であります。我が国はやはり輸出産業が日本全体を引っ張っていく、機関車論とまでは言いませんけれども、そういう国であります。本当は内需を拡大していかなければという、ここはまた別の議論でありますけれども、そういう中で円高というものがこの国にとって当面マイナスの大きな作用になってしまう、これはもう白川総裁に私が改めて申し上げるまでもないことであります。ただ、実態としては、ここの協調利下げに加わらなかったことで円高、株安が起きている。

 これからの経済政策は、世界恐慌との闘いであります。世界恐慌との闘いにおいて、私はやはり国際協調というものがこれからのキーワードだと思っています。これは財政政策においてもそうですし、特に金融政策においては絶対に国際協調はしていかなければいけない。そういう中で、金利差が生まれれば、当然そこはマーケットが見て、これは円を買っていいんだ、円高だ、こういう形になるわけでございます。

 このところ、私は、当然それぞれの中央銀行の判断というのはあるのかと思うんですけれども、果たしてこういう形でよかったのかどうか、これは市場も疑問に考えていますし、経済、実際にやっていらっしゃる皆さんが大変疑問に思っていらっしゃる。そして何より、先ほど来大臣にも御質問させていただきましたけれども、中小企業、零細企業がその金繰りであえいでいる状況なわけでありまして、まさにそういったところ、中央銀行として今足元の金融政策についてどういうふうにお考えなのか、ぜひこの点について御意見を伺いたいと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 金融政策の運営に当たりましては、その政策効果の波及のタイムラグを考えながら、各国の経済、物価情勢に照らして、それぞれが有効と判断する政策を実行していくことが適当であるというのが各国中央銀行に共通した理解であるというふうにまず考えております。今月八日に欧米中央銀行は同時に政策金利の引き下げを行いましたが、これは今述べました理解に立ったものだというふうに私は考えております。

 少し具体的に申し上げますと、今申し上げました欧米の各国あるいは地域では、金融面から実体経済面への下押し圧力が著しく高まっておりまして、こうした共通した事情を背景に、それぞれの中央銀行が政策金利の引き下げが必要だというふうに判断したものであります。利下げの直前の欧米のマーケットを見てみますと、実は、政策金利は横ばいの中で、ターム物、つまり期間が一カ月とか三カ月物はむしろ逆に日本と異なってそうした国の金利は上がっておりました。それぐらいに実は欧米の市場は緊張感を高めておりました。そうした状況の中で、各国、それらの国は、金利引き下げを共同声明という形で市場に対し説明していくことが効果的であると判断したものというふうに理解しております。

 日本銀行でございますけれども、今先生御指摘のとおり、このように非常に世界の金融市場が混乱しているときには国際的な協調が大事だ、私はその点について全く同じ認識に立っております。各国の中央銀行は密接に意思疎通、意見交換を行っておりまして、私自身も、電話会議も含めて頻繁にそうした意思疎通を図っております。日本銀行も、実は、この協調利下げというものには参加しませんでしたけれども、しかし、あの共同声明自体については、これは私はぜひ参加すべきであるというふうに判断して、現に参加をしております。

 今みたいな状況のもとで何が一番大事であるかといいますと、金融市場の安定を確保すること、これが最も大事なことでございます。その意味で日本銀行は何ができるのかということを常に考えておりまして、これはやや専門的な話になりますけれども、国債のレポ市場の流動性改善のための措置、企業金融円滑化のためのCP現先オペの積極化、それからドル資金供給オペの拡充など、早期に対応可能な対応策をとってきております。これは、今の日本の経済情勢あるいは金融市場の動向を踏まえますと、流動性の供給を通じまして金融市場の安定を確保することが中央銀行にとって最も重要な責務であるというふうに判断したものでございます。

 先行きの金融政策の運営でございますけれども、私は就任以来、予断を持つことなく虚心坦懐に経済、物価情勢を見て、その上で中長期的な経済の安定を図る観点から何が正しいのかということを常に真摯に考えていきたいというふうに思っております。そういう意味で、経済、物価の見通しとその蓋然性、上下両方向のリスク要因を丹念に点検しながら、それらに応じまして機動的に金融政策運営を行っていく方針でございます。それから、何よりも国際金融資本市場がこういうふうに今混乱をしておりますので、この安定確保に万全を期していきたいというふうに考えております。

亀井(善)委員 ありがとうございます。

 私は、日本銀行が一番目指さなければいけないのは、日本経済の繁栄であり景気だと思っております。これはもう私が改めて申し上げるまでもなく、マンデル・フレミング理論でしたか、経済学においては、オープンな為替市場、変動相場制においては金融政策が経済において極めて有効である、これはもう常識であります。そういう中で金融政策が担うべき役割は極めて大きい。そうした観点から、さまざまな形で、まさに慎重にかつ大胆に、かつきめ細かく金融政策の運営をぜひお願いしたいと思います。

 以上をもって私の質問を終わります。ありがとうございました。

田中委員長 次に、谷口隆義君。

谷口(隆)委員 おはようございます。公明党の谷口隆義でございます。

 このたび、大臣、大変な時期に大臣に就任されたわけでありますけれども、今回、財務大臣と金融担当大臣と兼職ということでございますが、私は、この時期に大変いいことだ、機動的に行えるわけでございますので、大臣、大変ではございましょうけれども、ぜひこの時期、頑張っていただきたいと思う次第であります。

 それで、まず初めにお伺いをいたしたいのは、来月の十五日に行われる予定の金融サミットの件でございます。ブッシュ大統領も、G20でぜひ日本の教訓をというようなことを総理におっしゃったようでございますが、総理はかなりの意気込みでこれに臨まれるんだろうと思います。その前の段階で財務大臣・中央銀行総裁会議がサンパウロで行われます。そのときにまず中川大臣がどのようなことを御発言されようとお考えなのか、もしよければ、ちょっとお話しいただければと思っております。

中川国務大臣 今、谷口委員御指摘のとおり、来月の半ばに、ワシントンと聞いておりますけれども、G7、プラスロシア、プラス新興国のトップが集まって真剣に金融、世界経済について議論をする、これは非常に重要な会議だと思っております。

 実は、今月の十日にワシントンでG7に出てまいりまして、そこには、世界銀行それからIMF等々も、それからもちろんヨーロッパ中央銀行のトップも来られましたけれども、あの時点で、欧米が非常に厳しい状況にあるという認識は最初からございました。そこで私からは、日本が十数年前に日本だけで苦しんで、もがいて、そして何とか乗り切ったという経験をお話をさせていただきました。

 今はもう、アメリカ発サブプライムローンがきっかけになって、世界じゅうが大変な金融経済情勢に入りつつあるわけでございます。ですから、日本の経験と、それから、委員よく御存じでしょう、十数年前にアジア通貨危機というのがあって、あれはIMFが出動をしましたけれども、はっきり私は各国に言いましたが、あのIMFの出動というのは、果たしてあれはアジアの当該国にとって本当にプラスの面だけだったのだろうかということも申し上げて、もう少し柔軟で積極的な、世界の通貨危機に対応できるようなIMFの組織というものにした方が、よりこの対応に乗り切れるのではないかというふうなことも申し上げました。

 その意味で、日本として、単に提案だけではなくて、IMFが持っている手持ちの資金だけではなくて、必要があれば、これは緊急の場合もございますので、日本あるいはまた日本に賛同するほかの国からも、IMFを通じて、ほかの中心国あるいはまた中小国、あるいは新興国を私はイメージしておりましたけれども、緊急かつ積極的、柔軟にそういった御協力もさせていただきますよと申し上げたのが十日の時点でございました。

 その後、欧米もいろいろとございますけれども、そういった国々でいろいろな金融、経済での出来事がどうも報道されているわけでございますので、十五日のG20サミットに向けて、正式に私のところに来ているかどうかというのは今はちょっと確認しないとわからないんですけれども、G8がサンパウロで行われるとするならば、十日以降にいろいろとまた変わってきている状況もございますので、それらも含めて、また日本の経験、あるいはまた、日本として提案できるものがあれば積極的に貢献していきたいというふうに考えております。

谷口(隆)委員 ありがとうございました。

 今大臣がおっしゃったアジア通貨危機というのがあって、そのときにチェンマイ・イニシアチブという絵をつくったわけですね。それで、我が国もその先導的な役割を果たしておるわけでありますけれども、最初の段階でファンドを積んだらどうかといったところがまだどうもうまくいっていないようで、私は、個人的にはそういうファンドを積んだ方がいいのではないかというように言っておったんです。

 同じように今回も、大臣の所信をお聞きしておりますと、「必要ならば我が国もIMFへの資金貢献を行う用意があることなどを申し上げてまいりました。」ということをおっしゃっておられます。

 この「IMFへの資金貢献」というのは、例えば、IMFの出資で資金貢献を行うというようなこともあるでしょうし、先ほど申し上げましたチェンマイ・イニシアチブ等、まだ実現しておりませんけれども、当初計画されておったこういうファンド、危機管理勘定みたいなファンドを先進諸国がそれで積み上げていって、危ないときに機動的にそれを対応させていくというようなことも含めて今大臣おっしゃったのかどうか、ちょっとお聞きできればと思います。

中川国務大臣 私が申し上げたのは、最終的にはIMFとの合意といいましょうか、IMFが理解、納得してくれなければいけないことではございますけれども、むしろ私の頭の中には、IMFにある緊急流動性、これは、実はIMFの出資額に応じてしかその国に対しては資金的な提供ができないということでございますけれども、むしろそれを超えて、例えば、北欧のある国では金融機関が一斉におかしくなって、その国のGDPの何倍もの資産といいましょうか不良資産が発生しかねなかったというようなこともございますので、私のイメージとしては、日本には幸いにして、もちろん国民の資産ではございますけれども、緊急に、しかもIMFという信用性の極めて高い機関に対して、緊急かつ流動的に、ある程度IMFの判断でその国に対してお金を支援できるような、そんなような形の緊急性の高いお金を、IMFが、そして日本等が後から御支援をするというようなイメージで当時申し上げたということがございます。

谷口(隆)委員 一九二〇年代の大恐慌の教訓を見ても、株価が大暴落して、やっても、信用収縮がその後に起こって経済が縮小するといったことはなかなか回復できないわけです。ですから、株価の暴落は、それはいろいろな手当てがありますけれども、一たんつぶれちゃった金融システムだとか信用収縮は、なかなか再び効率的に動くということはありませんので、そこはないようにやらなきゃいかぬ。

 そういう意味では、我が国でもう既に行ったことは当然アメリカも頭に入っているんだろうと思いますが、資金注入を行っているということですから、七千億ドルのうち二千五百億ドルは米国はそういう資金注入に投入していきたい。九行が手を挙げているらしいですが、このようなことを、今回行かれたら、総理も大臣も、我が国のいろいろないいことも悪いことも教訓を学んだわけでありますので、ぜひ言っていただきたいと思いますし、我が国のそういうリーダーシップをぜひ発揮していただきたいと思うわけでございます。それで、我が国から世界的な大恐慌を発生させないという強いメッセージを出すぐらいの気持ちでやっていただきたいというように思うわけでございます。

 バーナンキFRB議長は、百年に一回の大波が来ていると昨日おっしゃったようでございます。アメリカの金融当局の大混乱、私も先ほどの議員と同じように、二〇〇六年三月九日に量的緩和が解除されたことは正しかったのかどうかという検証もしなきゃいかぬなと思っているわけです。

 いずれにいたしましても、我が国は幸いそんなに傷んでおりませんから、そのようなことを含めて、国内の中でも今は外需が、昨日は貿易黒字が一五%程度落ちているというようなデータも出ております。ですから、なかなか外需に依存するというのは難しいかわかりませんので、内需を刺激していくというようなことも含めて、税収も多分この状況でいくならばかなり減る可能性がありますね。そうなりますと、これは赤字国債を発行せざるを得ないというような状況にもなりかねません。

 大臣の所信では、やはり財政の健全化と言うのは当然でございますので、私も副大臣をやったことがありますからそのことはよくわかっておりますけれども、しかし、ここへ来てあらゆる方策を駆使して、経済の鎮静化、食いとめていくんだという強いメッセージが私は必要なのではないかと思うわけでございます。

 大臣、その点についてどうお考えでしょうか。

中川国務大臣 冒頭申し上げたように、また、先ほどの亀井委員からの御指摘があったように、私自身は、バブル崩壊の後、ずっと元気がない日本が続いているなというのは率直な感じなんです。これは大臣として言っていいかどうかちょっとあれですけれども、私自身はそう考えてはおるんです。

 そういう中で、十年前は、日本発の世界恐慌を起こすなよと世界じゅうから怒られていたんですね。ところが、さっき申し上げたように、日本はどこの国にも迷惑をかけずに、必死になって、本当に中小企業の方から生活者の方からみんなで苦労してこれを乗り切った。この経験というのは、世界に誇っていいと言ったらあれですけれども、私は、お手本になるべきだという、誇りといいましょうか、正直言って自負を持っております。これはもう国民の皆さん方一人一人の御努力のたまものだと私は思っております。

 十日にワシントンへ行ったときも、IMFの方だけではなく、ヨーロッパの方もアメリカの方も、私、ブッシュ大統領に直接お会いしたときにも申し上げましたけれども、ぜひそういう経験をもう一度勉強してみたい。アメリカの通貨、財政当局の中にはこれを随分研究した方もいらっしゃるようでございますけれども、改めて、政府、麻生総理、あるいはまた日銀総裁等々から、オール・ジャパンで、あるいは議員同士の先生方からも含めて、ぜひ私は、九〇年代のことというのをみんなにわかってもらうということが必要だろう、それが貢献だろうというふうに思っております。

 と同時に、今、日本の経済が外からの影響でまた元気がなくなり始めているということでございますから、我々は、国会での御審議をいただいて生活者重視対策というのを上げていただき、一刻も早くあれを実施しなければいけませんが、あれがもう既に二カ月近く前のことでございまして、状況も少し変わっている。悪い方向に世界が変わっているわけでありますから、追加的な措置というものも必要だということで、いろいろな考え得る対策というのを、総理あるいはまた自民党、公明党挙げて、そしてまた国会で御議論いただいてやっていく必要があるというふうに考えております。

 ただし、そのときに、前回のときもそうでございましたけれども、やはり赤字国債を発行するということは、これは前回のときにもしなかったわけでございまして、ぎりぎり建設公債という形でやらせていただきました。今回も、緊急対策をやれという総理の命であると同時に、国債発行は極力これは抑えるようにという命も受けておりますので、その中でのこの二つの指示をどうやってこれから実現していくかということについては、またいろいろと各党、与党あるいはこの場でいろいろと御議論をいただきながら、そしてまた一刻も早くやらせていただきたいというふうに考えております。

谷口(隆)委員 やはり、一番大事なのはスピードなんだろうと思うんですね。それが一歩おくれてしまうと取り返しのつかないような状況になってまいりますので、ぜひそういうスピード感を持って、このように非常に揺れ動いておる金融経済状況でございますので、お願い申し上げたいと思います。

 最後に、先ほども出ておりましたけれども、やはり中小企業に対する対策、今度総合対策で出ておりますけれども、貸し渋りというのがあります。貸し渋り、貸しはがしというのがあって、最近は貸しどめというようなことも言われておりまして、先ほども大変厳しい事例が出てきておったわけであります。このような状況で、大臣御自身が全銀協に行かれて、貸し渋りをやめてもらいたいというようなお話をされたと聞いております。

 その結果、全銀協の方では、中小企業に対してより一層融資をしていこうというようなことのようですが、ただ、融資全体の総枠の中で中小企業の割合を昨年よりこれだけふやしたよということが、果たして中小企業に対する貸し渋り対策になるかということなんですね。非常に業況のいい中小企業にどんどん貸し込んでいく、業況の悪いところにはむしろこの貸し渋りをし、貸しはがしをしていくということになれば、総体としてはふえているかわからないですけれども、入れてもらいたいところに入らないというようなことになるわけで、これは、ディスクローズをどのようにさせるのかというようなことがあるんだろうと思います。

 このことについてお聞きしたいのと、もう一つは、この十月一日から日本政策金融公庫が、四つの公庫が一緒になってスタートいたしました。私自身も、今申し上げましたけれども、やはりスタートした段階でいろいろ機能的にうまくいかない場合もありますから、いざというときには、すぐに中小企業対策をやれよというようにまた大臣の方から言っていただきたいと思いますし、所管の大臣の方からもそれぞれ言っていただければと思うわけでございますが、これについてお願いいたしたいと思います。

中川国務大臣 本当に、厳しいけれども、何とかあと少しという声はもう全国で多分わき起こっているんだろうと思うんですね。そういう中で先ほどからのいろいろな御質問というのは、本当に困っているんだけれどもと。ですから、多分地元のことが一番わかっているのは地元の金融機関であって、その経営者の方とか従業員の方とか、あるいは技術力とか商品力とかいうのが一番わかっているわけですから、単に数字だけで、あなたのところはもうこれは数字目いっぱいですよとか、あるいは、そういうことはないとは思いますけれども、何か知らないけれども金融機関の事情だけで、これはさっきの、貸しますと言って突然融資日にいなくなっちゃったとか、そういうことがあると、それはもうその企業だけではなくて、従業員あるいは地域経済にとっても非常に大きな影響をさらに相乗的に増していくわけでございます。

 ですから、先ほど申し上げたようなことを私自身もいろいろやっておりますし、それから、現在、どちらかというと貸す立場でありながらそういう声がよく聞かれる金融機関と、それから中小企業政策を推し進めております経済産業省の中小企業庁とが一緒になって全国できるだけ多くの地域を回って、何というんですかね、例えが悪いんですけれども、片方では検事さんと片方では弁護士さん、これは余りいい表現じゃないかもしれませんけれども、一緒になって全国をできるだけ見て回って、実態を私と経産大臣の方にまた御報告をいただくということにしているところでございます。

 そして、たまたま十月一日に政府系金融機関の大きな変更がございましたけれども、統合によって何か業務が中断するとかストップするとか、これはあってはならない状況だと思いますので、我々も注意深く見ているつもりでございますけれども、これなんかも、多分先ほどの目安箱なんかでもしも御意見があればいただけるとは思っておりますけれども、ぜひ谷口委員初め当委員会の先生方からも、そういうことがないようにとは指示を出しておるつもりでございますけれども、またあればいろいろと御意見をいただきたいというふうに思っております。

谷口(隆)委員 これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

    ―――――――――――――

田中委員長 ただいま谷本龍哉内閣府副大臣が到着されましたので、一言ごあいさつをお願いいたします。谷本副大臣。

谷本副大臣 このたび、引き続き、内閣府において金融担当の副大臣を拝命いたしました谷本龍哉でございます。

 本来であれば、委員会冒頭ごあいさつ申し上げるべきところ、参議院の本会議出席のためにこのタイミングになったことを御容赦いただきたいというふうに思います。

 中川大臣を支え、職務の遂行に全力を尽くしてまいりたいと考えておりますので、田中委員長を初め委員皆様方の御指導、御鞭撻、よろしくお願い申し上げます。(拍手)

    〔委員長退席、山本(明)委員長代理着席〕

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山本(明)委員長代理 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 早速ですが、中川大臣、金融機関を初め、所管する企業、団体からの政治献金はありますか。政治資金パーティーも含めてお答えをいただきたいと思います。

中川国務大臣 政治資金報告書等々にのっとって適切に処理をさせていただいているところでございます。

佐々木(憲)委員 いや、だから、あるかないかと聞いているわけです。

中川国務大臣 政治資金に報告させていただいております。

佐々木(憲)委員 所管する金融機関などの企業、団体からの献金があるかないかですよ。あるんですか。

中川国務大臣 大臣として、これは私が政治資金にのっとって政治資金をいろいろなところからいただいているということで、それについてはきちっと報告をさせていただいております。

佐々木(憲)委員 調査の上、御報告をしていただきたい。いかがですか。

中川国務大臣 政治資金にのっとって、きちっと公表すべきものは公表させていただいております。

佐々木(憲)委員 帯広信金それから北海道税理士連盟、こういうところから献金ありますね。

中川国務大臣 佐々木委員も御承知のとおり、私の政治資金の団体と、それから党支部というものとあるわけでございまして、個別案件については、これは適切に処理をさせていただいております。

佐々木(憲)委員 大臣が支部長の北海道自民党十一選挙区支部です。ここにあるわけです。私が聞きたいのは、今、金融機関に対して大変厳しい目が注がれているわけです。大臣の銀行に対する姿勢というのが問われているわけです。

 今後、所管する対象からいかなる形であれ政治資金を受けない、そういう姿勢を貫く決意はありますか。

中川国務大臣 法的に問題のないところからの政治資金というのは、私の政治活動にとって極めてありがたい、また、政治活動をする上で大事な原資でございますので、法律的また社会的に問題がなければ、最初から、共産党の佐々木委員の御質問にお答えして、一切ありませんと言う考え方は持っておりません。

佐々木(憲)委員 これは大変特異な大臣だなと思いました。今そちらにいらっしゃる山本有二元大臣は、パーティー券の中身も全部明らかにして、銀行、生命保険、損害保険、合計四十四もありました、返却した、これは大臣として当然の姿勢である、こういうふうにされていました。中川大臣の姿勢は、所管する業界から献金を受けても当たり前、何も問題がない、こういう開き直りであります。よく姿勢はわかりました。

 では次に、中小企業融資についてお聞きします。

 金融庁から要請を受けた全銀協は、二十一日、中小企業に積極的に融資を行うよう理事会で申し合わせを行ったと言われております。ところが、その直後の記者会見で全銀協の杉山会長は何と言ったか。貸し渋りをしている意識はない、貸せないところには貸していないということだと驚くべき発言。これでは、改善する必要はないと開き直っているようなものでありまして、銀行が公的性格を忘れて自己の利益のみを追求し、中小企業がつぶれても当たり前だ、こういう姿勢が見えるわけです。

 大臣、この姿勢は改めさせる必要があると思うんですが、どうお考えですか。

中川国務大臣 その前に、私が全銀その他の金融機関の業界の代表の方をお呼びして、いろいろと私が知っていることあるいは金融庁としてやるべきことを指示というか、要請もしくは指示をしたところでございます。それを受けての全銀協の会長の御発言だろうというふうに思っております。

 その趣旨については、私は報道では知っておりますけれども、どういう趣旨でおっしゃったのかということについては、これは、後で金融庁の方からその趣旨についてお聞きをしたいというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 この発言は開き直りなんですよ。そういう姿勢を改めなさいとこういうところに厳しく言えないところに大臣の姿勢があらわれているんですよ。これは先ほどの献金のことと関連があるんじゃないですか。

 金融不安のもとで、銀行が融資の審査基準を引き上げたり、中小企業を中心に貸し渋りが広がっております。民間調査機関によりますと、貸し渋りや貸しはがしを原因とする倒産がふえております。

 配付資料一を見ていただきたい。この間の中小企業への銀行の貸し出しはどんどん減っております。公的資金を幾ら注入しても、その傾向は直っておりません。公的資金はこの間合わせて十二兆四千億円投入されましたけれども、中小企業への貸出金は、九六年三月から二〇〇八年八月まで、八十四兆円減少しております。この数字は事実ですね。

中川国務大臣 開き直りという言葉は一般的にかなり過激な言葉だと思いますけれども、私は担当大臣ですからいいんですが、新聞報道だけを取り上げて開き直りとここにいらっしゃらない方のことを言うのは、私はいかがなことではないかというふうに思います。

 なお、御指摘のことにつきましては、平成八年、今から十二年半前の残高に比べて、ことしの八月の末の残高が八十四兆円減少しているということでございます。

佐々木(憲)委員 全銀協会長は、貸し渋りをしている意識はない、貸せないところには貸していない、何も直す必要がないと言っているんじゃないですか。それを何か擁護するようなことを大臣は言うべきじゃないですよ。銀行がまともに役割を果たしていないという証拠じゃないですか、今ここに挙げた数字は。是正を求めたい。

 銀行は、国民の血税を投入されて助けられたわけです。その結果、莫大な利益を上げるようになりました。大手銀行三グループだけで二〇〇八年三月期決算の税引き前当期純利益は一兆七千億円、法人三税は三百十三億円しか払っておりません。税負担率はわずか一・八%です。法人税は軒並みゼロですよ、配付資料を見ていただければわかると思いますが。

 これ自体、正確な数字だと思いますが、どうですか。

三國谷政府参考人 お答えいたします。

 二十年三月期におけます税引き前当期純利益、これは三メガグループ六銀行でございますが、合計で単体ベース一兆七千二百十三億円、法人三税は六行合計で四百四億円を計上しております。なお、税の還付を受けている銀行もございまして、これを控除すると三百十三億円でございます。

 この金額の税引き前当期純利益に対する比率は、御指摘のとおり、一・八%となっております。

佐々木(憲)委員 これは、過去の損失で利益を相殺して法人税を払わなくてもいいという仕組みができているからなんですね。これは大銀行ばかりが恩恵を受けるようなシステムなんですよ。一・八%というのは、大盤振る舞いも甚だしい。中小企業の実効税率は三〇%、平均的なサラリーマンは二〇%、余りにもこれは大銀行優遇だと言わざるを得ない。

 その一方、今、中小企業は税務署から非常に厳しい取り立てを受けております。中には、人権を無視した強権的な徴税がございます。幾つか例を紹介したいと思うんです。

 例えば、埼玉県川口税務署管内のAさん。税務署員が突然やってきまして、帳簿などをコピーして持ち帰った。その後、何度も税務署に呼び出された。昨年の十二月になると、統括官が修正申告書を二種類持ってきたというんですよ。これが一千万円の税額の申告書だ、こっちは二千万円の税額の申告書だ、一千万円をとるのか二千万円をとるのかどっちなんだ、こう迫ったというんです。私は、こんなことが果たしてあるのかと不思議に思いました。

 この税務署員は、なぜこういう金額になるのかということについて一切説明しないというわけですよ。Aさんは納得できないので署名を拒否した。それで、ことし四月十五日になって税務署の別室に呼び出されて三名の税務署員に取り囲まれたときは、軟禁状態に置かれたような状態で大変怖かった、ここから早く出たいという思いで修正申告にサインをし、拇印を押してしまったというんです。

 こういうやり方は脅迫だと思うんですが、このやり方はどこの税務署でもこんなことをやっているのか。どうなんですか。

岡本政府参考人 お答えいたします。

 個別の件につきましては差し控えさせていただきますけれども、我々、国税として税務調査を行う場合には、いろいろな情報を収集しながら適正、公平な課税の実現に努めているところでありまして、そういった脅迫とかいうようなことはないというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 これは、やられた方は大変な恐怖を感じたわけですよ。

 広島国税局管内の山口県の話ですが、左官業を営んでいたBさんは、二〇〇四年に病気のために廃業届を出した。その後、税務調査が行われ、過少申告だとして更正処分が行われた。内容に納得がいかないので、二〇〇六年五月三十日に異議申し立てを行い、納税の猶予申告を岩国税務署に提出した。それから一年もたって税務署員が突然訪問し、妻と娘に対して滞納分の納税を迫った。そのときBさんは病気が原因で引きこもるような状態だったので、同居している妻と娘に納税を迫ったんだと思われます。

 納付義務があるかのように言われて支払いを迫られたため、娘さんは自分の預金から合計二百四十八万二千百円を振り込んだ。娘さんが長い間会社勤めをして、将来のためにとこつこつためたものであります。代位弁済する義務はないのに払い込んでしまう、親の滞納分を納税義務のない子供に払い込ませる、これが税務署のやるべきことですか。

 これは調査して返すべきだと思うんですが、いかがですか。

岡本政府参考人 個別の件については控えさせていただきますけれども、今お話しの点は、納付義務を負う者が納付することが国税については原則なんですけれども、滞納者の代理人として親族が納付相談を行う場合もございます。ただ、そういう場合でも、税務署から滞納者の親族に納付を強要することはございません。

 なお、親族を含めた第三者からの納付の申し出があった場合には、納税者の国税を納付することは法令上認められているところでございます。

佐々木(憲)委員 これは、娘さんが自分から自主的に納めますと言ったんじゃないんですよ。税務署が、あなたが払う義務があるんだから払いなさいと、義務がないのにそういうことを押しつけて、細かな法律は知りませんから、払わされたんですよ。こういうやり方はやめるべきだ、調査の上、私は返すのが当たり前だというふうに思います。

 それから、財産の差し押さえ問題、最近これが激増しておりまして、平成十七年三月十五日、私はこの委員会で質問しました。国税庁はこういうふうに答えました。督促後、生計の状況や事業の状況などを聞くなどいたしまして納税者の実情をよく把握した上で、分割納税など自主的な納付を慫慂しております。そして、自主的な納付が見込まれない場合や、分割納付の約束が履行されない場合には、差し押さえが必要かどうかを判断した上で、法律にのっとった適切な処理を努めている。納税者個々の実情を十分踏まえた適切な対処に努めてまいりたい。こういうふうな答弁ですね。

 これは、一時的な滞納があったというだけで、いきなり踏み込んで差し押さえをするということは基本的にないということだと思うんですが、そういうことですよね。

岡本政府参考人 お答えいたします。

 滞納整理に当たりましては、委員御指摘のように、以前御答弁させていただいたとおりでございますけれども、法令の規定に基づきまして、まず、自主的な納付を慫慂して滞納者に納付の意思を確認するとともに、滞納者の事業内容、業績、資金や財産の状況等個々の実情を十分把握した上で、その実情に即しつつ適切な処理に努めているところであり、引き続き適切に対応してまいりたいと考えております。

佐々木(憲)委員 仮に差し押さえを行うという場合でも、慎重に扱うことが国税庁の「滞納整理における留意事項」に書いてあります。

 「財産の差押えを実施することを明確に予告する」となっておりまして、その差し押さえ予告は、「原則として文書で行い、その送付に当たっては、配達証明郵便等を活用するとともに、差押予定財産を具体的に表示する」、こうなっております。間違いありませんね。

岡本政府参考人 御指摘のとおり、当該留意事項におきまして、この差し押さえ予告ですけれども、滞納者に速やかな納付を促すとともに、財産の差し押さえを実施することを明確に予告することによりまして自後の処理展開を速やかに図るということで実施いたしております。

佐々木(憲)委員 配付資料の三を見ていただきたいんですが、これは納税計画書兼誓約書と書いてあるんですね。これは九州の宮崎税務署でつくったものですが、納税計画とワンセットで誓約書を書かせるようになっております。ここには、「納付計画のとおり納付しなかった場合、又は新たな滞納を発生させた場合には、事前連絡なく差押処分等をされる」と書いてある。これは今の答弁と違うんじゃないですか。

岡本政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の納付誓約書ですけれども、これはあくまで、納税者が納付計画を出していただく場合に、納税者の納付の意思を具体的に確認するための書面にすぎませんので、納税者には任意で御提出いただいているところであります。

 国税当局といたしましては、納付約束の不履行を繰り返すような滞納者や、新たな滞納を発生させ滞納が累積しているような滞納者については、一方で期限内に納税した納税者との負担の公平を図るという見地から、財産の差し押さえ等の厳正な処分を実施することにいたしております。

 納付計画書、誓約書の記載は、こうした趣旨について、分割納付の申し出のあった滞納者に対して職員が納付相談の際に説明するとともに、確認的に記載しているものでございます。

 したがいまして、滞納者の個々の実情に即した適切な対応に努めていくという点で矛盾はないと考えております。

佐々木(憲)委員 あなた方がつくったひな形、私も見ておりますけれども、ここには事前連絡なくとは一言も書いてないんですよ。これは何で事前連絡なく強行できるんですか。あなた方の方針と違うでしょう。そのことを聞いているんですよ。

岡本政府参考人 私ども国税庁では、様式については、概要、大枠を各局に示しております。各局ではそれぞれなりに若干の変更を加えて作成しているわけでありますけれども、いずれにしましても、今の御趣旨の点につきましても、職員が納付指導、納付相談をする際に確認的に記載をしていただいているということでございますので、実際にはそのとおりにするかどうか、実情に即した対応をいたしているところでございます。

佐々木(憲)委員 大体、こんな事前連絡なく差し押さえをやるなんというのは、あなた方の方針とも違うんだよ、これは。こういうものは撤回すべきだ。誓約書というのは何の法的根拠もないんですよ。こういうものを書かせるということは脅迫なんですよ。書かないという意思がある、そういう納税者は、例えば納付計画書を出すだけでもいい、これでよろしいんですね。

岡本政府参考人 お答えいたします。

 納付誓約書が提出されなくても、納付意思や納付計画の確認ができれば、分割納付を認めているところでございます。

佐々木(憲)委員 今、この税務署のやり方というのは、本当に過酷な徴収をやっている例が多いと私は思いますよ。実際に差し押さえで自殺をした熱海税務署管内の例、最近では長崎税務署、ことしの三月、差し押さえを行われて自殺されたんですよ。そういう例は全国でもたくさんありますよ。

 私は大臣に最後に聞きたいんですが、この「税務運営方針」には、「納税者に対して親切な態度で接し、不便を掛けないように努めるとともに、納税者の苦情あるいは不満は積極的に解決するよう努めなければならない。また、納税者の主張に十分耳を傾け、いやしくも一方的であるという批判を受けることがないよう、細心の注意を払わなければならない。」このように書いてあるんです。これは今でも税務運営方針の基本だと言われているんです。こういう基本にのっとって今後きちっと税務行政を行う、これが基本だと思いますけれども、大臣はどうお考えですか。

中川国務大臣 納税者の意見に耳を傾けながら、ルールにのっとってきちっとやってまいります。

佐々木(憲)委員 時間が参りました。以上で終わります。

山本(明)委員長代理 次に、中川正春君。

中川(正)委員 民主党の中川正春です。

 まず質問に入っていく前に、一つ一つ私たちの立場をはっきりさせていかなければならないことがありますので、まずそこから申し上げていきたいと思います。

 この委員会は、続いて地方金融機関への資本注入を、あるいは信用収縮というのを防ぐための手だてとして、もっとほかにも総合的な部分も含めた金融機能強化法の改正案、これを審議していくということが前提になっています。私たちも、地方の状況というのを肌で感じておりまして、貸しはがしあるいは信用収縮というのが非常に目前に迫っている、あるいはまた、もう既に地域によってはそれが進んできておって、中小企業にとっては非常に厳しい状況が出てきている、これは緊急事態だというふうな認識は共通をしております。その上で、資本注入を改めてしていくというこの手法については一つの選択肢であろう、そういう意味でも、そこの部分について基本的な認識というのは与党と一にしているんだろうというふうに思うんです。

 ただ、今回の法案の中で、どさくさに紛れてというか、こういうことに乗じて、本来は信用収縮あるいは中小企業の貸しはがしを防ぐためというその大義であるにもかかわらず、金融機関によっては、特に農林中金なんかは、農中あたりが、我々の部会でも指摘をしておるわけでありますが、マネジメント、リスク債権、本来はそこに投資をしてはならない、リスクが大き過ぎてそこまではいってはならない部分へ向いて投資を重ねたために、今回、債券市場が崩壊をしたその影響を受けて、壊滅的な状態あるいは破綻に近い状態に陥っている。そういうところを救っていくスキームとしては、今回の与党から提出をされようとしているこの法案については、これは区別して考えなきゃいけないんじゃないかというふうに思うんです。そこのところを一つは議論の中ではっきりとさせていきたい。

 いわゆる責任の所在というのを、外的要因で収縮してくるものに対してその対応をしていくものと、そうじゃなくて、マネジメントの間違いでリスクの際に立たされている、そういう金融機関等の経営者の責任というのが同じ範疇の中で議論されていいのかどうかということ、こんなことは一度これからの議論でつまびらかにしていきたい、はっきりと区別をしていきたいという思いが一つあります。

 それからもう一つは、本当に資本注入で資金が中小企業にしっかりと渡っていくのかどうか。ここのところは、金融機関の救済だけで終わってしまうということ、これは、従来、こうした政策が発動されたときにはそういう現象が起こりました。そこに対して私たちも、これではだめじゃないかという指摘もしてきました。今回も同じスキームでやるわけですから、そういう意味では、金融機関の救済だけに終わってしまって、税が中小企業の今の金融の円滑化というところに生きてこないという可能性があるんじゃないかということ、こんなこともあわせてぜひ議論をしていきたい。そんな中で、政府の認識と対応策、あるいはまた、本来やらなければならない政策誘導というものについてさらなる議論を重ねていきたい、こんなふうに思っております。

 それだけに、先般から与党の筆頭の申し入れのような形で、早くしてくれ、一日で上げてくれ、こんなような申し入れがあるんですが、これに対しては、ちょっとひどいんじゃないか、何をもって早くしてくれ、一日にするんだ。いや、解散が前提になるんならまたそういう議論にもなるのかもしれないけれども、そういうことでないとすれば、これはしっかりと時間をとって議論をしていくということ、このことが前提になっていくと思いますので、事前にそのことを申し上げておきたいというふうに思っています。

 その上で質問に入っていきたいというふうに思うんですが、これもちょっと質問項目になくて、きのう突然話が出てきてきょうの新聞で取り上げられている課題なんですが、大臣の所見をまず聞いておきたいと思うんですけれども、消費税ですね。これは、総理の方から与党サイドにあるいは事務方サイドに、消費税を上げていくという意味での検討の指示があったというふうにそれぞれの新聞が報じています。

 先ほどの大臣の所信の中では、税制の抜本改革に触れている部分というのは、社会保障制度の構築、いわゆる基礎年金国庫負担割合は二分の一に引き上げる、ここの部分で税制については触れておられるということなんですけれども、これはどういう意図なんですか。総理の消費増税の指示というのは、どういう意図をもってこのタイミングで総理はこれを指示されたのか。恐らく大臣の方にもそういう話があったんだろうというふうに思うんですが、まずそこから聞かせていただきたいと思います。

    〔山本(明)委員長代理退席、委員長着席〕

中川国務大臣 きのうの総理の御発言は、ある意味では所信表明のときに述べられていることだろうと私は理解しているんです。緊急にやるべきことは景気回復であって、そして、財政再建をして二〇一一年という努力目標を何とか達成をして、そして、構造改革をしてさらなる成長をするという工程表でもって総理は所信表明からずっとおっしゃっておられることでございますので、そういう工程表にのっとった形での御発言ではないかというふうに私は理解をしております。

中川(正)委員 一方で、いわゆる景気対策あるいは今の金融収縮に対して手だてを打っていくという議論をしているんですよね。その真っただ中で増税議論をしろというこれは指示なんですよ。それはメッセージとしては非常にちぐはぐなものになっているし、国民に対する印象というのも、一体これ、議論そのものが破綻しているんじゃないかというふうに受けとめられても仕方がないような今のタイミングなんですね。これを出してきているということです。

 そんな意味からいうと、大臣としては、これは総理の所信にあると言いますが、現実、検討しろということですから、恐らく今回の景気対策、第二次補正の前提として将来消費税増税ありますよ、こういうメッセージを含ましながら、それを先に組み込んでくる、いわゆる仮の国債を今発行しておいて、将来は消費税でそこを賄っていきますよというふうなシナリオになってしまうんじゃないかということを我々は懸念するんです、今のタイミングのこの消費増税の話であるとすれば。

 そのことに対して大臣はどういう所見を持っておられますか。

中川国務大臣 ですから、先ほど申し上げたように、この前上げていただいたものは緊急のものであって、八月時点で策定したものでございますけれども、それ以後直ちに追加対策をとれ、極力赤字国債は発行しないようにしなければならない、他方、税収の伸びについても非常に厳しいものもあるという中でどういうふうに仕組んでいったらいいのかということが、今我々に与えられている非常に大きな仕事であるわけであります。

 そしてまた、今後、例のあの三分の一を二分の一にする問題とか、あるいはまた二〇一一年問題とか、いろいろあるわけでございますから、それについての、さっき申し上げた、中期的な来るべき我々の作業について準備をしておけと。緊急にやるべきことは、この追加補正というのが緊急、最重要の課題であって、財源については、さっき申し上げたような方向性でやってもらいたいという指示を私はいただいているところでございます。

中川(正)委員 もう一つはっきりしないんですが、第二次補正では赤字国債には依存しない、発行しないということですね。そういう認識でいいんですね。

中川国務大臣 先週成立させていただいた、第一次と言っていいんでしょうか、生活重視の緊急経済対策では、やむを得ざる措置として建設公債は発行させていただきましたけれども、赤字公債を発行することはしなかった。今回、さらに世界のあるいはまた日本の経済状況が非常に後退をしているという中でやるべきことはいっぱいあるわけでございますけれども、そのときに、赤字公債については、極力発行しないという方向でやれというのが総理からの指示でございます。

中川(正)委員 発行しないんじゃなくて、極力ということがついているところがあやふやな部分なんだろうというふうに思いまして、そういう意味では、このメッセージというのは、今回、第二次補正をいわゆるばらまき型でやった、それに対して批判をかわしていく、あるいは財源としてどこかで確保しなきゃいけない、その苦し紛れの増税論を先送りして、それを見せながら赤字国債を発行するというそんな絵姿になってくるということ、このことが、今の日本の置かれた現状に対して非常に大きく毀損をしていくだろう。財政的にもあるいは経済的にも本当に効き目のある形の、構造改革に結びつくようなそういう景気対策あるいは経済の改革というものに結びついていかない、いわゆるばらまき型の第二次対策であるとすれば、それは非常に大きな禍根を残していくだろうということ、そんなことを懸念しております。

 そのことを指摘をしておきたいということと、同時に、この消費増税については、これは、まずは税金の無駄遣い、あるいは税金そのものが本当に生きているのかどうかという検証、これを徹底的にやる、そんな中から国民の理解を得ていくということがまず先だろう。それをやる前に消費税の増税を出してくるというのは、これは、本来の今日本がやるべき課題あるいは国民からの信頼を得ていく政治のあり方からしたら、邪道だ。とんでもない方向で今政府が迷走をし始めたということをあわせて指摘をしておきたいというふうに思っています。

 その上で、金融関連の質問に入っていきたいというふうに思います。

 与謝野経済財政担当相が、これはロイターの報道なんですけれども、十日の日に閣議後の記者会見で、「世界的な金融危機が広がる中で日本の金融機関の健全性について、サブプライム関連損失は消化可能な規模であり、大きな打撃を受けるわけではない」、日本の状況は大丈夫だ、こういう発言をされた上で、「資本注入の法律を再登場させる必要があるほど、現時点で経営が悪化しているところはない」、今のところは必要ない、十日前に与謝野さんはこういうコメントをしているんです。

 同じ閣僚の中でこれだけ認識が違う。恐らく、今回資本注入するという法案を出してくる中川大臣は違った見解をお持ちなんだろう、その上でこれを出してきているんだろうというふうに思うんですが、まず、この与謝野さんのコメントについてはどのように認識されますか。

中川国務大臣 きょう、願わくば金融機能強化法の説明をさせていただきたいところでございますけれども、そこで申し述べさせていただきたいと思いますが、確かに与謝野大臣おっしゃるとおり、アメリカ発、これはブッシュ大統領も私に言っておりましたが、今回の問題はアメリカ発の問題なんだ、世界に大変大きな影響を与えたということでございまして、日本の金融システム、先ほど健全という言い方をしましたけれども、失礼、ちょっと三日間ほどしゃっくりがとまらないものですから……。システムそのものは非常に健全である。ただし、個々の問題については、午前中から御議論いただいているとおり、いろいろな出来事が起こりつつあり、また、状況も厳しいところもあるということであります。したがって、金融機能強化法で健全な金融システムあるいは健全な金融機関に対してさらに強化をしていくというのが、やがて中小企業に対する融資という形になっていくわけでございます。

 したがいまして、今、中川委員が御指摘のように、資本は仮に健全なところにさらに増強しました、しかし、それが取引先の中小企業に行くことになりませんでしたというのでは、これはもう全く法の趣旨に反するということになるわけであります。そういう意味で、今、日本の金融機関あるいは日本の金融システムがアメリカやヨーロッパのように大変厳しい状況にあるとは私も思っていない、こういうことで認識は同じだと思っております。

中川(正)委員 いや、認識は同じじゃないでしょう。与謝野さんは資本注入は要らないと言っているんです、そんなレベルじゃないと言っているんですよ。これは担当相ですよ。これは閣内不一致じゃないですか。

中川国務大臣 十日前以降、毎日与謝野大臣とお話をしているところでございますけれども、きょうの朝の閣議でもこの法案の提出について閣議決定をしたところでございますので、閣内不一致はないというふうに理解をしております。

中川(正)委員 それじゃ、担当している大臣がこんなこと言っちゃだめじゃないですか。

 これは、こういうメッセージを発するから、国民としてもあるいは金融の現場としても、一体政府というのは何考えているんだ、どこまで危機感があって、どこまでこれがシステミックに広がりを将来持ってくる可能性があるのかというそこの認識が、足りないんじゃないかというよりも、できていないんじゃないか。議論せずに勝手にこれを進めている、そういう現状なんだろうと思わざるを得ないということなんです。だから、ここのところをまずしっかりと議論をしていくというか、はっきりさせるということがまず大事なんだろうと思うんです。

 そういう意味で、さっき大臣が指摘されたように、今回はアメリカ発サブプライムから始まっている、ヨーロッパもそれに乗ってしまっていた、こういうことでありますが、大臣の認識の中でどこまで深刻なんだ。この話は、恐らく日本の現状、今の時点では大丈夫かもしれないけれども、アメリカやヨーロッパの動き方あるいは破綻の状況次第では、日本は大きくそれによって毀損されて、もう日本だけが特別だと言っていられない状況になってくる、そんな可能性もあると私は思っておるんです。

 それを前提にして考えていくと、大臣としては、どうした要件がヨーロッパやアメリカで整えばそうした世界的な破綻にはならない、どこをどのように押さえていったらいいのかということと同時に、その前提になる今の状況というのをどう認識されているか、まずそこから確認をしていかないと、私たちに対しても、今回の法案、あるいはトータルで今度二次補正で出してくると言っていますが、それの規模それから効力というのが判定ができない、いわゆる判断ができない。どんな判断のもとに次の政策をつくり上げてこようとしているのか、まずそこを確認をしていきたいというふうに思います。

中川国務大臣 まず、おわびと訂正を申し上げなければなりませんが、先ほど、けさの閣議と申し上げましたが、閣議ではまだ決まっておりませんで、手続をいろいろ踏んだ上で持ち回りの閣議で決定をさせていただくということで、まだ閣議決定にはなっていないということを、おわびかたがた訂正をさせていただきたいと思います。

 私も、世界の大恐慌とかあるいはブラックマンデー、あるいは、古くは一九〇七年の金融危機等々私なりにいろいろ調べてみましたけれども、やはり、想像ができない、半年後にはどうなるかわからないという状況を繰り返してきているというのが、ある意味では我々にとって最大の教訓、経験ではないかと私自身思っているわけでございます。

 さっき、十数年前の日本の経験を申し上げたと申し上げましたけれども、あのときに比べて今の現状というのは、コンピューターの性能も、あるいはまた新興国の経済的、金融的な力も、さらには、いわゆるコモディティー商品等の市況も随分現在とは違っていた。さらに進化、複雑化していったわけでございます。

 ですから、今、中川委員が御専門の立場で、どうすれば絶対起きないんだと言うことに対しては、はっきり申し上げて、これをやれば日本は少なくとも絶対に世界の荒波に巻き込まれないぞというだけのものを、私自身、現在持ち合わせておりません。

 ただし、私自身が日本の経験とそれからG7等で話し合った結果としては、G7、つまり主要経済金融大国と、それから、特に途上国を見ております世銀、さらには国際通貨基金、そして先ほどの、近々行われますG20等の大きな新興国等が一致協力して政策を行っていく、あるいは一致協力してその政策を評価する、認識をする、これがまず最低条件ではないかというふうに思っております。

 その上で、日本としては、過去十年近くにわたって預金の全額保護もしました、あるいはまた、不良債権をオフバランス化しました、銀行の国有化もしました、そして資本注入等もしましたというようなことが、多少時間はかかりましたけれども、最終的に日本としてあの危機を乗り切ることができました。

 あるいは八十年前も、大恐慌のときに、ルーズベルトのいわゆるニューディール政策の一環として金融政策等をいろいろやってきて、それもある意味ではダブる部分もあるわけでございますので、二十一世紀型の今回の対応というものは、また新たなものが必要になってくるかもしれませんけれども、少なくとも、主要な国々が共通認識を持って、そして対策を同時にやっていくというこの共通認識、共通の理解というものが、最低限にして、ある意味では一番大事なことではないのかなというのが私の認識でございます。

中川(正)委員 私は、今回の特徴は、レバレッジの、簿外で今懸念されている債権、ある意味ではこれから爆発してくるという可能性のある債権が基本的にはポイントなんじゃないかというふうに思っているんです。

 ある専門家の話では、アメリカの金融界というのは、いわゆる預金金融、預金を原資にして、それを運用する形で商業銀行なんかの役割がある。そういう預金金融というのが十兆ドル。それに対して、CDSなんかで象徴されるような、簿外でレバレッジをかけてばっと膨張しているものがあと十兆ドルある。

 その中で、今回、実質的な、いわゆる表の金融についての問題、これは、資本注入だとか、あるいは不良債権を買い取っていくというような形の七十五兆円ですか、こういうアメリカの対応、あるいはヨーロッパでも、資本注入と不良債権を買い取っていくその両方で今対応をしているということ、このことの中でいかにその崩壊が防げるかということだろうと思うんですが、もう一方で、まだそれが十分に効果をあらわすことができない、そして株価が下がり続けている、あるいはまた非常な不安定要素があるというのは、例えばリーマンあたりが破綻をしたその中で、これからCDSの清算といいますか、完全にカバーしなければならない部分というのが起き上がってきて、これまでは全く幻の保証であったのが、その部分が起き上がってきて、三十五兆円になんなんとする清算を繰り広げていく。その過程の中で、次々とこのCDSの中身が崩れてくるというふうなそういう懸念の中でドルが集められて、将来それを支払っていかなければならない準備をするとすれば、今のうちにドルを集めてその対応をしていかなきゃならないんじゃないかという疑心暗鬼があって、それで流動性が枯渇をしてきているということ、こんなことを指摘をしている専門家がおります。

 その上で、CDSの問題をやはり日本でも一遍慎重にこれは考えていく必要があるんじゃないかというふうに思うんです。いろいろなことがこれは報道されていますが、これから、前に国有化されたファニーメイや、リーマンは破綻したんですが、その後の幾つかの金融機関の破綻、ヨーロッパでもそれは起きていますけれども、そういうものが清算されていく過程の中で日本もそれに巻き込まれていく可能性があるということ、これをしっかり頭に置いておかなきゃいけないんだろうというふうに思うんです。

 その認識、一体日本は、これは簿外ですから、まともに金融庁に出してきなさいよと言ったって、その数字というのはつかんでいないんだと思うんです。申告をさせている部分はあるかもしれないけれども、しかし、実際にこの日本に存在するリスクというのがどこまでつかめているかというと、私は実態をつかんでいないんじゃないかなというふうに思うんですね。それをまずしっかりと認識する、一体どのレベルのリスクで今日本は立っているのかということを認識する、ここから始めなきゃいけないんだろうと思うんですが、そこについては、大臣は今どのような情勢にあるんだと考えられていますか。

中川国務大臣 御指摘は非常に重要だと思いますね。さっき、コンピューター化とかスピード化、グローバル化と言いましたのは、まさにレバレッジ商品が、今回サブプライムローン問題をきっかけにして、CDSとかいろいろな、私自身も知らなかったようなものが出てきたわけであります。それが世界の金融に大きな影響を与えたわけでありますけれども、日本は幾ら体質的に欧米に比べて健全とはいえ、コンピューターといいましょうかお金といいましょうか、一瞬にして世界を回っていくわけでありますから、もう既に欧米以外の国々でも大変な影響が出ているわけであります。したがって、私がきょう冒頭申し上げたように、高度な緊張感を持って常に日本は世界を見ていかなければならないというのは、そういう意味で申し上げたわけでございます。

 その一つとして、簿外でしかわからないような高レバレッジ商品的なものが、一体世界じゅうにどのぐらいあるかということ自体もそもそもわからないわけで、GDPの何倍あるのか何十倍あるのかとこう言われているぐらいでありますけれども、日本のシステミックリスクを起こさないためには、今御指摘のような状況といいましょうか、現状をきちっと把握するということも大事な御指摘だろうというふうに今率直に伺ったところでございます。

中川(正)委員 実は民間では、具体的に額もさっきお話があったように、五千兆、六千兆、あるいは七千兆という指摘をする人もいますが、それぐらいの幅を持って言われていることです。これもきょうの日経でありますが、そこでは、全世界で五十四兆ドル、五千四百兆円、日本の残高が八十兆円ある、こういうふうに指摘をしています。これは、大臣自身がこの数字をどう受けとめるかということによって、これからの政策の基本も変わってくるんだろうというふうに思うんです。

 まず聞きたいのは、ここで言っている八十兆円、日本にあるというこの数字についてどういう受けとめ方をしますか。

中川国務大臣 私も新聞報道を見ましたけれども、その新聞報道が、何といいましょうか、どの程度実体なのか、また、場合によってはこれがまた大きくなったり小さくなったり、文字どおりレバレッジがきいちゃうわけでございます。

 いずれにいたしましても、我々としては注意深く注意をして見守っていく、これはまさに、当委員会でのいろいろな御指摘等の重要なアドバイスの一つとして、これからこのCDS商品等々についてきちっと見ていく必要が、きょう新聞でどんと出ましたので、ますます必要なことだろうというふうに思っております。

 これについての評価については、正直言って、コメントは私からは控えたいというふうに思います。

中川(正)委員 新聞にも報道されているように、日米欧で協力をして、CDSに対して損失処理を促していくような清算機関を設立していく、国際的な規模の中で考えていくということ、私は、これは今本当に必要なことだと思っておりますし、日本がそれに対してイニシアチブをとりながら、特にアジアについては対応していくという方向性があるとすれば、それは早急に具体化をさせなきゃいけないということだと思います。

 しかし、さっきの答弁で改めて私も愕然としたんですが、いろいろな対策を立ててくるときに、現状、何が問題なんだ、どれぐらいの規模があるんだということがはっきりしていないと、立ててきた政策が本当に役に立つのかどうか、これはてんで問題にならないわけですよ。今の大臣の認識では、実体経済もそうですが、あるいは実体金融といったらいいのかな、もそうですが、CDS、レバレッジをきかせたこうしたいわゆる影の金融というのかな、ここについても、全然議論もしていないし認識もしていないんだというぐらいの印象しかとれないんですよ。そこのところは、次の対策を立ててくるまでにやはり政府見解としてはっきりさせなきゃいけないところだと思います。そうでないと我々も、何を種にしてこれからの日本を議論したらいいのかということでは、その種がないわけですから議論のしようもないということになっちゃうわけですよ。そこのところを指摘をしておきたいというふうに思います。

 それから、時間の関係で、それはもし答弁をしたかったら後でしていただいたら結構ですが、もう一つだけ最後に指摘をしておきたいんです。

 実は、これは解散あるなしにかかわらず、来年の予算について一月からは入っていくわけでありますが、去年の経験からすると、特に租税特別措置法それから暫定税率、この議論がこの委員会で毎回入り口であるんですよ。去年の例でいくと、個々の法案を個別に議論するんじゃなくて、そっちで全部七十本、八十本を一まとめにして、全体で賛成か反対かどっちかにしろ、こういう出し方を平気でやってきているんですよ。これは、もしことしもこんなこと、こういうプロセスでやってくるとすればこの委員会はとまってしまいますし、議論の俎上にのらないし、この国自体がそこで立ち往生してしまうという結果になります。このことを通告をしておきたいと思うんです。

 それで、そのことを避けるためにどうしたらいいかということをこれは今から話し合っておかないと、このまま事務方だけに皆さんが任せておいたら、これまでと同じような形になっていくということになります。そのことについても、大臣、どういうふうに認識をされているか、これを最後に確認しておきたいと思います。

中川国務大臣 ことしの春の予算あるいは予算関連法案の御審議で、今、中川委員がおっしゃったように、暫定を認めないんだ、それから日切れが重要なんだ、それからそれ以外のものと三つに分けなければ審議に応じられない、これは結果として国会が国民にいろいろな影響を与えたわけでございます。

 いずれにしても、今から二十一年度予算の審議をしていくわけでございますので、そういう意味では、この場でいきなり出てきて、そしてストップして何カ月もとまってしまうというのでは、これは国民に大きな影響を及ぼす可能性がまた出てまいりますので、これは院の方のお話であり、また、政府もやっていかなければいけないことでございますけれども、日ごろからよく話をして御説明させていただきたいというふうに思います。

中川(正)委員 大臣はまだ問題の本質をつかんでいない。私が言っているのは、まとめて一本にして、それで賛成か反対かと言って出してきたら、我々は反対せざるを得ないんです。その中には賛成すべき法案もあるし反対すべき法案もあるし、あるいは、暫定税率というのではなくて本則に入れたらどうかとか、いろいろなオプションがある法案をこれまでは一本にまとめて賛成か反対かどっちか判断してくださいよ、そういう出し方でしかなかったんです。それは、自民党というよりも政府の出し方なんです。ことしはそれをどうするのか。また同じようにしたら、我々は反対するオプションしか与えられないんです。そこのことを指摘をしているので、これは、国会のことは国会でというのではないんです。政府のスタンスをこの先どうするのかということを言っているんですよ。

中川国務大臣 予算編成権は政府にあるわけでありますし、アメリカのように、何かファストトラックみたいに、イエスかノーかということですべてが一か百かで決まるというものでもない。やはり、この国会の審議を通じて私は話し合うべきところは話し合ってよりよいものをつくっていけばいいんだろう。

 いずれにしても、今の段階ではこれはまだ決まっておりませんので、これからの作業の中でまた与野党を通じてよく話し合っていく、現時点ではそういう姿勢が大事なのではないかというふうに思っております。

中川(正)委員 歴代の大臣と同じような答弁なので、これまでとやり方は変わらないんだろうという前提で我々もやらせていただきます。

 以上です。

田中委員長 次に、小沢鋭仁君。

小沢(鋭)委員 民主党の小沢鋭仁でございます。幾つか中川大臣並びに日銀総裁に御質問したいと思います。

 まず、景気及び物価の見通しについて、中川大臣及び総裁からお答えをいただきたいと思いますが、お答えいただく前に、簡単に私の認識をまず申し上げておきたいと思います。

 私は、一言で言えば、先ほど他党でありますが亀井委員の方からもお話がありましたが、いわゆる日本の金融政策が二〇〇六年変更になり、そこで引き締め政策に変わって内需が減速してきたという話がまずあり、そこに加えて、アメリカのサブプライムローンを初めとする、米国を初めとする各国経済の減速が起き、さらに加えて、いわゆる利下げがおくれたこともあり、円高が進んで、なおかつ貿易収支も非常に悪化して、そして内需、外需ともに大変今それが悪化をしているために、日本の景気は悪化をしている、これが私の基本的な認識でございます。

 昨年の夏以来、そういうことを一貫してこの財務金融委員会で指摘をしてまいりました。こういった私の問題意識、基本認識を申し上げて、中川大臣及び日銀総裁から景気の見通しあるいは物価の見通しをお尋ねしたいと思います。

    〔委員長退席、江崎(洋)委員長代理着席〕

中川国務大臣 私がさっき申し上げたように、いわゆるバブル崩壊した後の日本全体が苦しんでいった中で、ある意味では、さっき日銀総裁もおっしゃっておられましたけれども、三つの過剰をなくすために民間セクターが非常な苦労をした、その逆効果といいましょうか、余りにもそれが行き過ぎちゃった結果が、なかなか積極的な方向性に行っていないまま、今小沢委員御指摘のような幾つかの小さなといいましょうか、またリセッションを経験しながら、そしてまた量的緩和の問題、そしていよいよサブプライムという状況、そして世界的に経済が調子が悪くなって、それまで外需に依存していた日本がそれによってまた影響を得つつある、地方はますます影響を得つつある。

 だからこそ、このままいけば日本の経済はほっておくとまた大変なことになりますから、先週、そしてまたこれからいろいろと御審議をいただくような追加的な経済対策をやると同時に、世界的な金融不安をこれ以上大きなものあるいは危機的なものにさせないために、日本はG7あるいはまた世界と協調しながら貢献をしていく必要があるというふうに認識をしております。今、非常に大事な時期だろうというふうに考えております。

白川参考人 お答えいたします。

 最初に景気の現状、見通し、それから金融政策という順番でお答えいたします。

 日本経済でございますけれども、二〇〇二年の初めをもとにしまして緩やかながら息の長い景気拡大を続けてまいりましたけれども、改正建築基準法施行の影響から住宅投資が減少したことなどを背景に、昨年末ごろから減速を始めました。その後も、本年春以降、エネルギー、原材料価格が一段と上昇したことなどから、景気は減速を続けてまいりました。さらに夏場以降は、欧米を中心に海外経済が全体として減速するもとで、輸出の増勢鈍化が明確化してまいりましたことから、景気は足元停滞しております。

 先行きでございますけれども、これまでのエネルギー、原材料価格高の影響に加えまして、欧米を中心に海外経済の減速が明確化するもとで、当面停滞を続ける可能性が高いというふうに見ております。さらにその先でございますけれども、これは、現在世界経済が大きく減速しておりますだけに、世界経済全体の動向に左右される面が大きいというふうに見ております。

 世界経済全体の見通しについて、これはもちろん不確実性に満ちておるわけですけれども、現在、多くの国際機関、エコノミスト、中央銀行等の見通しは、エネルギー、原材料価格高の影響が薄れ、海外経済も減速局面を脱した段階で次第に緩やかな成長経路に復していくという見通しが割合多いように思いますけれども、日本銀行もそうした見通しを現在までのところ持っております。ただ、繰り返しになりますけれども、この見通しは非常に不確実性が大きいというふうに見ております。

 物価ですけれども、エネルギー、食料品の価格上昇などから消費者物価の前年比は足元プラス二・四%ということで、これは一九九二年以来の伸びとなっておりまして、先行き、当面は現状程度の物価上昇が続いた後、徐々に減速していくというふうに見ております。

 先行きのリスク要因について少し詳しく申し述べたいと思いますけれども……(小沢(鋭)委員「いいよ、いいよ、後で。ちょっといいです」と呼ぶ)わかりました。

 あと、金融政策……(小沢(鋭)委員「後ほど質問します」と呼ぶ)はい、わかりました。

小沢(鋭)委員 総裁、一点確認をしたいんですが、今、総裁の説明の中で、昨年末から減速を始め、こういう話がありましたが、ことしの二月に私は福井総裁ともこの場で議論をして申し上げてあるんですけれども、そのときは日銀は、依然として緩やかな回復基調にある、メーンシナリオはそうだと。それはおかしいと私は申し上げましたけれども、そのときはそういう答弁だったんですが、変わったんですか、認識は。

    〔江崎(洋)委員長代理退席、委員長着席〕

白川参考人 景気につきましても物価についても、見通し、これは我々最大限いろいろな情報を集めまして予測を行っておりますけれども、しかし、経済の先行きを一〇〇%正確に予測することは残念ながらできません。したがいまして、我々がいつも心がけていますことは、まず相対的に蓋然性の高い見通しがどういうものであるか、それから、その見通しに対して上振れ方向、下振れ方向、どういうリスクがあるかということを常に認識する、その上で、その都度その都度入ってくる情報に照らして点検をしていく、その段階でもし変更をすべきであれば、そこはちゅうちょなく変更していくというふうにしております。

 今、我々の標準的な見通しですけれども、これは、この春以降、逐次見通しを下方修正して、景気については下方修正を行っております。一方、物価については、これは上方修正を行っております。

 私としては、経済、物価の変化に合わせて常に予断を持つことなく見通しを変えていく、しかし、その時点その時点では最大限努力をしていくという姿勢が非常に大事であるというふうに思っています。

小沢(鋭)委員 総裁、蓋然的な見通しと、それから下振れ、上振れのリスクを云々という話ですが、変わったんですよ、一言で言うと。そこはきちっとお認めにならないと、あれだけ私は二月の時点で日銀に警告を発したんですから、幾らここで議論したって何にも役に立たないじゃないですか、こんなことばかり言っていたら。ということをまず申し上げておきたいと思います。

 中川大臣がいなくなっちゃったので、そうしますと、では、まず日銀の方の話で申し上げたいと思いますけれども、要するに、危機の認識というのが余りにも希薄であったので、ですから政策がおくれてきているわけですよ。

 お手元に配らせていただいた表の中で、「景気と金融政策」という表を皆さんにもお配りさせてもらいました。これは亀井委員が先ほどお配りしたものとほとんど同じなんですが、私の方は先行指数が若干入っている、二本になっている、こういう話だけなんですけれども、これを見れば、明らかなことは、金融引き締めからいわゆる先行指数は一気に落ちて、そして一致指数も落ち始めている、こういう話なんですよ。

 だから、私が冒頭申し上げたように、ここはもう金融政策の失敗だということだと私はこれで思っているんですけれども、これに対しては、この表の意味する私の申し上げていることに対しては、日銀はどのような意見をお持ちですか。

白川参考人 最初に、経済の現状認識でありますけれども、私どもは、経済の現状それから世界の金融市場、金融システムを含めまして、これは危機意識を十分に持って一貫して対応しているというふうに思っております。

 それから、金融政策でございますけれども、金融政策は、二〇〇六年の春に量的緩和を解除しまして、その後、政策金利にして合計〇・五%引き上げました。

 思い起こしてみますと、この間の世界経済でございますけれども、ITバブルが崩壊し景気が落ち込んだ後、世界景気は二〇〇三年ごろから立ち上がってくる過程で、世界のほかの多くの中央銀行は金利を大きく引き上げてきました。その間、日本銀行の引き上げ幅は、これは〇・五%でございます。その中で、日本の金融環境でございますけれども、例えば、信用のスプレッドであるとかあるいは銀行の貸し出し態度、そういった指標から見た金融の緩和状況というのは、非常に緩和的な状況を続けておりました。これは各種のアンケート調査でも明確に裏づけられております。そういう意味で、金融政策の面から引き締め環境をつくったというふうな認識は持っておりません。

 世界経済全体のこの間の景気の動きでございますけれども、二〇〇七年の末ごろから日本の景気は減速をしてまいりましたけれども、世界全体の景気、特に主要国の景気につきましては、現在、同時的に変動する傾向を強めております。その背後にある要因としては、一つは、エネルギー、原材料価格の上昇に伴う交易条件の悪化、それからもう一つは、サブプライムローン問題に端を発します国際的な金融市場の混乱であります。このいずれも、実は、長い期間にわたる景気の拡大、あるいはそのもとでの世界的な低金利の持続ということを背景に持つものであります。

 世界経済が巡航速度を超えて非常に高い成長率を続けて、それがある段階で減速局面に入っているということを考えますと、実は、少し長い局面、長い時間をとらえまして経済情勢それから物価情勢の安定を図っていくということが非常に大事だというふうに思っております。

小沢(鋭)委員 ここの参加している委員の皆さんもそうだと思うんですが、今、それぞれの地域に帰ると景気が悪くて、その景気が悪いのを何とかしてくれ、こう言われる中で、みんな、景気対策を頑張ります、こう言っていると思うんですよ、これは全員。まさにそういう我々の感覚からしたら、もう去年の夏からおかしいという話をこれだけ言った。これだけ言ったにもかかわらず、ことしの二月にまだ緩やかな回復基調にある、こう言っていた。それがおかしいと言っているんですよ、言っておきますけれども。

 我々は今、いいですか、これから中川大臣にも御質問しますが、この間総裁選で、景気対策というのがある意味では大きなテーマになりました。そして、自民党の総裁選でも議論が行われた。しかし、そのときの議論で欠落していたのは金融政策ですよ。だれ一人、金融政策に対するコメントを言わなかった。麻生さんは、景気が大事だ、こう言ったかもしれない。与謝野さんは、財政規律が大事だと言ったかもしれない。そういう構図の中ではあったけれども、いわゆる金融政策に対するコメントは一言もない。

 そういう中で、先ほどの質問にも関係するんだけれども、大臣、財政政策は今やきかないと言われているのが経済学でも大学で教わる第一歩なんです。公務員試験の経済政策の中にもそれは出てくる。マンデル・フレミング、そういう細かいことは大学じゃないから言わないけれども、それは財政政策ではきかないと言われているにもかかわらず、その議論しか出てこない。そして、日銀の金融政策が間違い続けている。ここが最大の問題なんだけれども、大臣の財政政策に関しての景気に対する認識をお尋ねしたいと思います。細かいことは別に構いません。

中川国務大臣 多分、景気が厳しい、小沢委員も私のところも多分厳しい、日本全体厳しいという認識は共通だと思います。そういう中で、私は、景気回復のためにあるべき財政政策というのはあるというふうに思っております。

 なお、金融政策については日銀の専管でございますので、私からコメントは控えたいと思います。

小沢(鋭)委員 財政政策に関しても、やってマイナスになるとか、そういうことはありません。ないと私も思っています。必要なことはあると思っています。ただ、今我々は、とにかく、地域に行けば景気が大変だ、景気対策を何とかする、その最大の政策は何かと、まさにそこの議論を詰めていかないと、余り関係ない話を幾らやったってきかないんだったらしようがないじゃないですか、こういう話を申し上げていて、そして、いわゆる開放経済のもとでの金融政策の重要性に関しては、では白川さんにお尋ねをします。

 もう一言、皆さんにいつも言っていることだけれども申し上げておきますが、いわゆる金融政策は、今や日銀しかできないんですよ。先ほど、中川大臣の最初のあいさつの中にもありましたが、財政政策及び金融行政についてと。金融行政なんですよ。宇野政務官は先ほど、金融政策、こうおっしゃいましたけれども、今や金融政策は日銀しかできないにもかかわらず、そこのところの検証がしっかりできなくていいのかということを言っているんです。今、景気対策に対して最もきくのは金融政策ではないか、こう聞いているんです。白川総裁の御見解をいただきたいと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 今先生の御質問の中にございましたマンデル・フレミングのモデル、理論でございますけれども、これは多くの仮定に基づく単純なモデルではありますけれども、金融財政政策の効果について有益な示唆を与える理論の一つであるというふうに思っております。私も学生時代に、このマンデルの理論は勉強いたしました。ただ、その有効性につきましてはさまざまな状況に応じて変わり得るという点についても同時に留意が必要であるというふうに思っております。

 変動相場制のもとでは、これは多少教科書的な話で恐縮でございますけれども、金融政策の効果は大きいというその考え方は、例えば、金利引き下げを行いますと、為替レートが円安になり輸出が増加する、したがって景気がよくなるという理論でございます。しかし、実際の為替レートの動きを見ますと、もちろん金利差は一つの要因ではございますけれども、いろいろな要因によって動いております。足元は、確かに今、国際金融市場の混乱を受けまして円相場は円高方向に振れておりますけれども、しかし、大きな流れで見てみますと、量的緩和中と量的緩和をやめた後を比べますと、むしろやめた後の方が円安傾向が強まっているということであります。

 そういう意味で、私は、このマンデル・フレミングの理論、もちろん有用な理論の一つだというふうには思っておりますけれども、我々政策当局者は、特定の理論なりあるいはモデルに依拠せず、しかし、もちろん、金融政策はさまざまなルートを通じて経済、物価に幅広く影響を及ぼす極めて重要な政策であるというふうに認識し、自覚しております。

 その際大事なことは、まさに日銀法にうたわれていることではございますけれども、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資するということであります。ここで特に重要なことは、この物価安定ということは中長期的に維持、持続し得る物価安定、したがって経済の成長も持続的に続き得る経済成長であるというふうに思います。その点を十分に認識した上で、金融政策の責任を十分認識して、しっかりやっていきたいというふうに思っております。

小沢(鋭)委員 一つの理論に依拠してはいけないというのは当然のことだと思いますから、それは別にそのとおりやってくれなんて言っているわけではありません。ただ、この図表を見ただけでも明らかじゃないですか、少なくともこの図表は。ですから、日銀が金融引き締めをして、そして景気が悪化した、それにサブプライムローンの問題があって、米国を初め諸外国の経済が減速して日本の輸出が落ちた、それからまた円高になって、さらにそれが加わった、内需も外需もだめ、この認識は私は間違っていないと思いますよ。

 それから、今、白川総裁、物価の安定を通じて国民経済の健全な発展という日銀法二条の話をおっしゃっていましたが、その「健全な発展」というところは、いわゆる景気の安定というのを含んでいるんですか。日銀は景気の安定という話に責任を持つんですか。

白川参考人 お答えします。

 日本銀行あるいは中央銀行がどういう目的を持っているのかということについては、さまざまな議論があります。日本銀行を含めて多くの中央銀行における金融政策の目的については、これはまず物価の安定であるというふうに規定しています。しかし、その物価の安定は、物価の安定それ自体が目的ということではなくて、物価の安定を図ることによって、経済が持続的に成長し得る、そういう環境を整えていくんだという思想でございます。そういう安定的な環境をつくる上で、これは中央銀行の責任が一番大きい。経済成長それ自体は、これはいろいろな要因で決まってきますけれども、その経済成長を実現する上で安定的な物価の環境をつくっていく、金融環境をつくっていくという点においては、これは中央銀行の責任が非常に大きいというふうな規定だと思います。

 したがいまして、日本銀行は、物価の安定を通じて、持続的に発展し得る経済というものに対して責任を持っているというふうに理解しております。

小沢(鋭)委員 責任を持っている割にはしてくれていないので、本当に景気が悪化しています。責任を持ってやっていただきたいと思います。ついでにまた、言わでもいいことかもしれませんが言っておきますと、政府は政策を失敗すると選挙で負けるんです。日銀は責任がないんです。ですから、そこのところが最大の問題なんですね。ですから、それは各委員の皆さんにもぜひ申し上げておきたいと思います。

 時間がなくなってきましたが、答弁を短くお願いしながら、十月八日の世界の協調利下げ、十カ国が参加をしました。日銀は参加しませんでした。支持の表明というのがありました。何が何だかわかりません。

 誘導金利がかなりゼロに近い、張りついている、〇・五だ、こういう話がありました。雑誌で、中川大臣、〇・一でも下げる余地はなかったのかなと首をかしげたという記事がありましたが、そういうことはあったんでしょうか。

中川国務大臣 私は、さっき申し上げたように、日銀の専管事項についてはコメントは差し控えたいと思います。

小沢(鋭)委員 大臣、この際だから申し上げておくんですが、ずっとこの委員会でも議論したんですが、専管事項だからといって議論をしなかったならば金融政策はだれが議論するんですかという話を申し上げてきていまして、いわゆる中央銀行の専管事項というのがあたかもひとり歩きをしてしまっている、そのこと自体が問題だと私はずっと言っているんです。中央銀行の政策の手段に関しては、それはお任せをしているわけだけれども、あるべき経済の姿とか政策に関しては政治家や他の政府の部門が発言をして何らおかしいことはない、私はこう思っております。それを申し上げておきたいと思います。

 それで、白川総裁、こういうふうにお聞きしたいと思います。今回の話で利下げをしなかった、ではどんな条件だったら利下げをできるんですか。それから、私はこの資産デフレはかなり強烈だと思っておりまして、日本経済がまたデフレに陥る可能性もあると思っていますが、そういう話になったら日銀はどうされるんですか。

 そのことを、二点、明快にお答えいただきたいと思います。

白川参考人 金融政策の運営でございますけれども、これは、金融政策決定会合におきまして、先行きの経済それから物価情勢を点検して、予断を持つことなく判断をしていくということに尽きてまいります。先ほど申し上げた日銀法に定められた目的に沿って判断をしていくということでございます。その責任を十分に自覚しております。

 それから、中央銀行の果たす役割でございますけれども、今金利政策ということでお話がございましたけれども、金利政策はもちろん重要な政策でございますけれども、この数カ月の世界の金融市場が示しますように、実は金融市場の安定を保つということ、これが今現在最も重要な課題になっております。もしここで金融市場の安定が崩れますと、世界経済は大きく落ち込んでまいります。この金融市場の安定という面では、日本銀行は、この一カ月間に限って見ましても、さまざまな施策を講じております。これは一つの中央銀行だけでは実現しませんから、これはまさに協調という枠組みの中で政策を行っております。

 それから、デフレでございますけれども、デフレという言葉、これは先生、釈迦に説法ではございますけれども、いろいろな意味で使われております。一般物価の下落、資産価格の下落、それから経済活動の落ち込み、いろいろな意味で使われております。したがって、デフレをめぐる議論も、どのデフレを議論するかによって議論が変わってくるというふうに思います。

 日本経済につきましては、先ほども少し申し上げましたけれども、景気については下振れリスクに注意する必要があるというふうに申し上げています。一方、物価面ではなお上振れリスクに注意すべき状況にあるというふうに思います。

 先行きですけれども、これは景気の停滞が続き、資源エネルギー価格がさらに下落していけば、物価上昇率が大きく低下する可能性は否定できないというふうに見ております。

 ただ、重要なことは、いわゆる内外のデフレの歴史を振り返ってみますと、デフレが経済の大きな落ち込みをもたらしているケースは、これはほとんどすべて実は金融システムが崩壊する、金融恐慌が起きる、そういう状況でございます。そういう意味で、中央銀行がなし得る大きな貢献は、これは金融市場の安定を保つということでありまして、この点については私自身も非常に強い問題意識を持っております。

小沢(鋭)委員 私は、金融システムのシステミックリスクというのは、今の日本は少ないと思っているんです。もちろん、ある程度心配しなきゃいけませんよ。だから、金融機能強化法なんかも、すべて賛成はできないけれども、基本的には必要だと思いますよ。だけれども、問題は、そうではなくて、今はシステミックリスクではなくて、景気の後退、景気の悪化なんですよ。実体経済の問題だということを私は申し上げておきたいんですね。

 それで、きょうの日経新聞ですけれども、「住宅ローン減税「最大に」」麻生総理から追加経済政策の指示が出た、こういう話が載っています。先ほど中川大臣も、追加的な政策が必要だ、こういうお話もありました。今の景気に対しては、やはり手を打たなきゃいけないというのは全く賛成です。ただ、そのときに何をやるかという話が大事なのと、そのときのいわゆる政策目標を明確にすべきだと思っております。

 今の日本経済の最大の問題、目の前で起こっていることは、不動産の下落と株価の下落。これはある意味では、日本が長い不況のトンネル、こう言われていたときの教訓でもあるわけですが、不動産価格の下落と株の下落がとまらない限り、この不況は好転に転じませんよ。新聞にも出ているんですが、住宅ローン減税のねらいは不動産・住宅市場のてこ入れにある、こういう話なんですが、住宅ローン減税が悪いとは言いませんけれども、それはローンを使う人にとってはいいけれども、もっと明快に下落をとめるという旗を掲げるべきじゃないですか。不動産価格の下落をとめる、株式市場の下落をとめる。

 例えば、その不動産価格に関して私が申し上げたいのは、お手元の資料にもお配りをしましたけれども、ずっと下がっているんですね。特に、私のような地方の下落率は、商業地と住宅地の基準地価の動向というのを渡してあると思いますが、これだけ下落をしているわけですよ。さらにまた、この後それが強くなっている。ここをとめるという明快な政策が必要ではないかという点で、私は、土地税制の見直しの提案をしたいと思っております。

 それは、平成三年に行われた税制改正ですが、議事録に残すために正確に読みますと、不動産所得に係る損失のうち、借入金の利子、土地分の損益通算の否認、こういう制度がなされました。租税特別措置法です。これを本則に戻したらどうですかという話を申し上げたいと思います。いかがでしょうか。土地の価格の下落はこれでとまると思います。

中川国務大臣 小沢委員御指摘の土地税制、地価を下げないようにする、あるいは株価を上げるというのは、ある意味では需給の一つの結果であろうと思いますけれども、やはり経済活性化という観点から、いろいろな促進のための施策というものも必要だろうと思います。

 総理からの指示でも、高齢者向けあるいはまた環境向けの住宅促進税制という指示も出ているところでございます。そういう中で、小沢委員のような、節税策を防止する観点からこのような特例措置が必要な措置であるということについては変わりはない、こういうふうに考えております。

小沢(鋭)委員 ちょっと大臣の御答弁がよくわからなかったんですが、私の提案に賛成だ、こういう意味でおっしゃっていただいたんですか。

中川国務大臣 そういう趣旨でございます。

小沢(鋭)委員 これはちょっとすごい話で、後ろで事務方が慌てていますが、なかなかいい答弁をいただきました。これはもう金科玉条に持ち帰って、暮れの税制改正でぜひ御対応いただきたい。追加的な第二次補正の中でもやっていただきたい。

 そして、申し上げておきますけれども、住宅ローン減税もそうだし、先ほどの日銀の話もそうだけれども、問題が起こっていることに対する止血だとかあるいは赤チンを塗るだとか、そういう対症策なんですね。そうじゃなくて、私が言っているのは、土地の価格の下落をとめる、株価の下落をとめる、これが本質論なものだから、そこに直接影響を与える政策を使わなきゃだめですよ、こういう話を申し上げたつもりでおりまして、この答弁は大変、これだけで不動産価格の下落はとまるんじゃないかな、こういうふうに思います。

中川国務大臣 要するに、小沢委員は、借入金の利子と給与所得との損益通算を制限する特例措置を廃止すべきではないか、こういう御指摘だというふうに今理解をさせていただきました。

 これに関しては、共通の認識のように今地価が下落しておりますけれども、このような節税措置を防止する観点から、このような特例措置が必要な措置であるということについては今でも変わらないという趣旨でございます。

小沢(鋭)委員 がくっときたんですけれども、大臣も体調が悪そうなので、余りしつこくするとちょっと痛ましいのでこれでやめます。ただ、でも、これは考えていただいた方がいいと思いますよ。本則がいわゆる損益通算なんですからね。今行われている否認は租税特別措置でやっているだけの話ですから、本則に戻すという話ですから。ちょっと時間がないのでここで割愛しますが、話し出せばこれは本当に理念的な問題にもなって、一言で言えば、企業はそんなことは当たり前にやっているけれども個人は何でできないのというような、そういう問題もはらんだ問題ですけれども、私は、少なくとも土地価格の下落をとめるには有効だというふうに御提案申し上げておきたいと思います。

 それから、中小企業金融についてお尋ねをしたいと思います。

 先ほど来から私が申し上げているようなまさに政策の失敗の波をもろにかぶっているのは中小企業者であります。私はこの場でも申し上げたんですが、中小企業経営者は今日本で唯一命をかけて生きている。それはどういう意味かというと、個人保証も含めて、倒産して個人保証で追い立てられて最後は自殺までいく、そういう意味では、この平和な日本の中で命をかけて生きているのが中小企業の経営者だ、そういうふうに申し上げてきておりますけれども、その中小企業の皆さん方が大変融資に悩んでおられます。

 先ほど来から幾つか質問も出ておりましたが、私は一点、具体的にお尋ねしたいと思います。

 銀行が中小企業融資をします。それの条件変更等を中小企業の皆さんが申し出て行ったりします。そうすると、金融庁の監督指針によれば、すぐにそれはリスク管理債権に落ちる。リスク管理債権に落ちれば、当然銀行は引当金を積まなければいけない。銀行は引当金を積むのが嫌だから、そういった中小企業の融資にまさに二の足を踏む。金融庁の監督指針が中小企業金融をとめているんですよ、今ここで。これを撤廃してもらえませんか。

谷本副大臣 小沢委員の御質問にお答えをいたします。

 金融庁においては、かつては、特にバブル以降、その監督指針として、経営の健全性の向上を柱にずっと行ってまいりました。しかしながら、これに加えて、最近は、本来の金融機関の役割である中小企業、零細企業等に対する金融の円滑化をしっかり行う、このことを検査の指針の柱として取り入れております。そういう中で、今お話がありました、金融機関が借り手に対して返済条件を緩和する、このことは非常に重要な手段の一つであると金融庁の方も考えております。

 なお、監督指針の方では、金融機関が貸し出し条件を緩和した場合であっても、借り手企業の再建見通しが高い場合には、銀行法におけるリスク管理債権、いわゆる不良債権とはしない取り扱いが認められており、検査マニュアルにおいて、これを参照して検証することと現在しております。

 金融庁としては、このような取り扱いに沿って、今後も引き続き適切な対応に努めてまいりたいと考えております。

 いずれにせよ、中小企業に対する円滑な金融は、金融機関の最も重要な役割の一つであると認識をしておりますので、こうした観点から、金融庁としては、大臣が直接借り手等の声を聞く大臣目安箱を設置し、また、中小企業庁と合同で地域の中小企業者との意見交換会を開催する、あるいは金融機関の代表者を集めて中小企業金融の円滑化に向けた要請を実施する等の取り組みを行ってきたところでございます。

 今後とも、情勢の変化を踏まえつつ、適時適切に対応できるよう努めてまいりたいと考えております。

小沢(鋭)委員 これも大変前向きな御答弁をいただいたと思っておりまして、御評価をさせていただきたいし、後から訂正にならないようにぜひお願いしたいなと思うんです。

 大臣、最後に、今のポイント、いわゆる条件変更があってもそのまますぐにリスク管理債権に入れない、そういう特例というかスキームがあるという話ですね。これを全国の金融機関に徹底すると約束してくれませんか。これを徹底しろと。そうしたら相当違うと思いますよ。さっきはちょっとがくっときちゃったけれども、今度は、その方針どおりなんだから、やると言っていただければいいので、最後にその決意を聞かせてください。

中川国務大臣 今副大臣からお答え申し上げたとおり、マニュアルどおりにきちっとやっていれば今小沢委員のような御指摘はないという前提ですので、私も何回か金融庁の方に言いましたけれども、検査マニュアルの趣旨をしっかり、何も監督だけが前提ではなくて、リスクテークも含めてきちっとやるようにということを何回も申し上げましたし、改めてこの院の場ではっきりと申し上げさせていただきたいというふうに思います。

小沢(鋭)委員 ありがとうございました。中小企業にとっては、年末年始、やはり大変な時期を迎えるわけでありまして、ぜひその趣旨を徹底していただきたいと改めて要請を申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

田中委員長 次に、池田元久君。

池田委員 池田元久でございます。

 私は、今話題となっておりますいわゆる定額減税についてお尋ねをしたいと思います。まず財源から聞きたいんですが、この減税の財源はどうするのか、中川大臣に端的にお尋ねをしたいと思います。

中川国務大臣 今まさに政府・与党間でこの議論をしているところでありまして、財源あるいは中身についてまさに今検討しているところでございます。

池田委員 新聞報道によりますと、十月十五日の参議院予算委員会で中川さんは、財源として財政投融資特別会計の準備金の活用も検討するということを示唆したということでありますが、どういうことですか。

中川国務大臣 それは、そういうふうに報道をされると、おっと皆さんお思いになると思いますけれども、我々が持っているといいましょうか出すことのできるあらゆる財源として検討するということでございまして、財投特会の中からそれを出すということを決めて発言したわけではございません。

池田委員 中川大臣は、このときはいろいろ丁寧に説明されておりますよね。金利変動準備金の必要額を超えた部分は概算要求段階で三・〇兆円あるということですが、特別会計法の規定によると、国債整理基金特別会計に繰り入れることになっております。

 要するに、国の借金返済に充てるお金を減税に回すということは、赤字国債の発行と同じじゃないですか。

中川国務大臣 たしか、あのときは、九・八兆円を毎月毎月返せるときに返していくという段階で、六・八兆円まで国債整理基金に入れるということを申し上げて、残り三兆ありますねというふうに答弁をさせていただいたと思います。

 残り三兆円について、先ほど申し上げたように、これは法律改正が必要ではございますけれども、場合によってはそれも対象になり得る、なり得ると言うとまた言い過ぎになるかもしれませんけれども、それも広い意味で、今財源が厳しい中で、しかし生活者対策等もやらなければいけないので、全く最初からそれを除外するというわけではないということを申し上げたつもりでございます。

池田委員 その説明は説明としてはわかりますけれども、私が聞いているのは、要するに、国の借金の返済に充てるお金を使って減税するというのは、赤字国債の発行と同然ではないかということを聞いているわけです。

中川国務大臣 ですから、現時点では、そういうことを最初から排除するわけではないということでございます。

 それはどういうことかと申し上げますと、総理からの御指示で極力赤字国債を発行しないという前提の中での範囲内だと私は理解しております。

池田委員 質疑がかみ合っておりませんが、今私が申し上げたように、国の借金の返済に充てるお金を減税に回すということはどういうことか。もうよくおわかりじゃないですか。これは赤字国債の発行と同然じゃないですか。

 公明党は、将来にツケを回すことになる赤字国債の発行に頼らないと言っておりますが、事実上赤字国債の、新規発行ではありませんが、発行と同じですから、これは詭弁のたぐいだと私は思います。

 そして、今中川大臣がおっしゃったように、金利変動準備金を減税などの財源に使うことは法の規定に反しております。もしやるのであれば、おっしゃったように、特別会計法の本則を改正するか、特例法を新たに別途つくらなければならないと思うんですが、そこはどういう考えですか。

中川国務大臣 ですから、先ほど申し上げましたように、今まさにそのところを与党内で議論しているところでございますので、最初からこれは絶対ないとか、最初からこの方向でいきたいということを、私の立場から今申し上げるのは控えなければいけないというふうに思っております。

池田委員 財務大臣の立場からいえば、財政の節度、規律を守るためにはこのような改正はすべきではないと私は申し上げたいと思います。

 次に、減税の効果についてお尋ねをしたいんですが、定額減税の効果をどのようにお考えでしょうか。

中川国務大臣 これは、前に参議院の予算委員会で直嶋政調会長さんの御質問に与謝野大臣が、仮定計算ですけれども、仮に一兆円の減税というものをした場合のいわゆるマクロ計量モデルでいいますと、一年間で消費支出が〇・〇九%伸びます、実質GDPで〇・〇五%伸びます、名目GDPで〇・〇六%押し上げる効果があるというふうな仮定計算がありますというふうに答えさせていただいております。

池田委員 財政がこれだけ危機的な状況にあるのに二兆円も使うわけですから、効果はどうかということは定額減税の方針が最終的に固まった段階で明らかにしていただきたいと思いますが、大臣どうですか。

中川国務大臣 これは、定額減税が二兆円かどうかということを別にしまして、定額減税に限らず、今度の生活者対策が決まった段階で、この景気あるいはGDPに与える効果というのは当然、これは試算値になるかもしれませんけれども、お示しをする必要があるんだろうというふうに思っております。

池田委員 しっかりと示していただきたいと思います。

 先ほど出ていたのですかね、内閣府の昨年一月にまとめたレポートでは、このレポートに二兆円を当てはめますと、GDPの押し上げ効果は〇・一%。また、民間のみずほ総合研究所、ニッセイ基礎研究所のレポートによりますと、二兆円減税によるGDPの押し上げ効果は、八年度と九年度を単純に足し合わせると、それぞれ〇・二一%、〇・一三%としているわけですね。

 つまり、減税でふえる所得のかなりの部分は貯蓄に回ることになると見ているわけです。二兆円はGDP比で〇・四%ですから、内閣府のレポートによれば四分の三が貯蓄に回ることになるわけです。これで、皆さん、政府・与党としては、そういう施策をやるという自覚を持っていただきたい。

 それから、時間がありませんので、次にお聞きをしたいと思います。

 定額減税は、公明党が重大な決意があると言って自民党にのませたと伝えられております。自民党税調の幹部会では、出席者から定額減税は連立のコストだという発言が出たそうであります。これは建前ではなくて本音が出たと見られるんですが、大臣はどのように考えますか。

中川国務大臣 連立の中でコストだという議論が出たということについては、私はコメントする立場にないというふうに理解しております。

池田委員 自民党の衆議院議員のお立場もありますからお聞きしたわけですが、連立のコストといえば、二〇〇〇年初めに配られた地域振興券があります。自民、公明連立へのお土産と言われました。交付総額は七千億円、事務費は七百億円、七千七百億円を使ったんですが、GDPの押し上げ効果は〇・六%ないし〇・一%。中小企業の多数の社にアンケート調査をしたところ、売り上げにほとんど影響がなかったという答えが大半でありました。

 このときも、連立のコストは大変高くついた。当時の民主党の代表は、七千七百億円の国対費だと言いました。今度は選挙の前に大盤振る舞いをするわけですから、自民党は公明党、創価学会票を当てにしているから、二兆円の選対費用と言っても言い過ぎでないかもしれません。どうですか。

 連立のコストと言うのであれば、この二兆円は国民、納税者にツケを回すのではなく、自民党が払ったらどうですか。そう思いますよ。国民もそう思うと思います。どうですか。

中川国務大臣 数千億とか数兆の国対費とおっしゃいますけれども、あの二〇〇〇年のときも現在も、特に現在は物価が上がり、そしてまた一般の国民の可処分所得というか所得が伸びていない状況の中で、やはりこの減税の効果というのは私はあると思っております。

 確かに、御指摘のとおり、一〇〇%あるかということになりますと、アメリカで二月でしたか、十六兆円規模の戻し税をやりましたけれども、あのときでも貯蓄に回る、借金の返済に回るということがあって、それはそれで経済的効果があるのであって、一〇〇%消費に回るということ、そうなればいい場合もあるかもしれませんけれども、一〇〇%そのまま消費にばっと行くということをもって合格、それ以外は不合格という議論には必ずしもならないのではないかと私は思います。

池田委員 七千七百億円とか二兆円を使う。直接使えば、その四分の一とかそういうお金で済むわけですよ。

 それは効果が全くないとは私も言っていませんよ。そんなことは当たり前でしょう。効果が極めて少ない、こういうことを言っているわけであります。

 二〇〇〇年二月の衆議院の予算委員会で、私が地域振興券を取り上げたんですよ。そうしたら、公明党の続総務庁長官はこう言いました。地域振興券に真剣に取り組み、参議院選挙で八百万票いただきたいとお願いをした、さあどうでしょう、七百七十五万票をいただいた、結果は、キャスチングボートをいただいたわけですと述べて、参議院選挙で八百万票を獲得するための選挙目当てだったことをみずから暴露したわけです。これは会議録にも載っておるし、テレビにも出ましたので、よく御承知おきいただきたい。

 私は、何党という立場じゃなくて、お金をばらまけば国民が喜ぶだろう、国民、納税者を甘く見る政治はいいかげんにしなければいけないのではないかと思う。国民、納税者を甘く見てはいけない。お金をばらまけば国民が喜ぶであろうなんというそういうレベルの政治では困る、そのように思いますが、中川さん、同感していただけると思いますが。

中川国務大臣 さっき池田委員がおっしゃったとおり、これは、財政規律をきちっと守らなければいけないというのは、とりわけ私の立場でございます。

 また一方、国民の生活が先ほど申し上げたように物価上昇その他で大変厳しい状況にあるということも、やはり政治ベースとしては考えていかなければいけないということも大事だというふうに考えております。

池田委員 皆さんは、本音として納得していただけると思いますが、本当に、国民、納税者を甘く見ちゃいけないと思うんですよね。こういう政治はもうやめましょう。やはり、しっかりとした財政政策、金融政策をやっていくということが日本の国にとって必要であると私は強調したいと思います。

 財政政策として、税の増収がある場合などに減税という政策手段があるのは当然です。しかし、今、国、地方合わせて公債残高が八百兆円に迫る現在、国家の財政に二兆円も穴をあけていいのかということを申し上げたいと思います。大臣、いかがですか。

中川国務大臣 減税というのは、ある意味では、景気が悪いときに、あるいは国民の生活が苦しいときにするということも、私は効果のあることではないかなというふうに思っております。

池田委員 公明党の続さんがもう白状しちゃっているわけです。そういう選挙目当ての政策、しかもばらまいて国民の歓心を買うような政治のレベルを、それはやはりみんなで上げていきましょう。我々はそういうことを申し上げたいと思います。

 二兆円も穴をあけていいのかどうか、皆さんによく考えていただいて、私の質問は終わりたいと思います。

田中委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十六分散会


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