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第1号 平成21年1月9日(金曜日)

会議録本文へ
本国会召集日(平成二十一年一月五日)(月曜日)(午前零時現在)における本委員は、次のとおりである。

   委員長 田中 和徳君

   理事 江崎洋一郎君 理事 木村 隆秀君

   理事 竹本 直一君 理事 山本 明彦君

   理事 吉田六左エ門君 理事 中川 正春君

   理事 松野 頼久君 理事 石井 啓一君

      石原 宏高君    小川 友一君

      越智 隆雄君    亀井善太郎君

      後藤田正純君    佐藤ゆかり君

      鈴木 馨祐君    関  芳弘君

      とかしきなおみ君    中根 一幸君

      林田  彪君    原田 憲治君

      平口  洋君    広津 素子君

      松本 洋平君    三ッ矢憲生君

      宮下 一郎君    盛山 正仁君

      山本 有二君    池田 元久君

      小沢 鋭仁君    大畠 章宏君

      階   猛君    下条 みつ君

      鈴木 克昌君    古本伸一郎君

      和田 隆志君    谷口 隆義君

      佐々木憲昭君    野呂田芳成君

      中村喜四郎君

平成二十一年一月九日(金曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 田中 和徳君

   理事 江崎洋一郎君 理事 木村 隆秀君

   理事 竹本 直一君 理事 山本 明彦君

   理事 吉田六左エ門君 理事 中川 正春君

   理事 松野 頼久君 理事 石井 啓一君

      石原 宏高君    稲田 朋美君

      越智 隆雄君    亀井善太郎君

      後藤田正純君    佐藤ゆかり君

      鈴木 馨祐君    関  芳弘君

      とかしきなおみ君    中根 一幸君

      林田  彪君    原田 憲治君

      平口  洋君    松本 洋平君

      三ッ矢憲生君    宮下 一郎君

      盛山 正仁君    山本 有二君

      池田 元久君    小沢 鋭仁君

      大畠 章宏君    後藤  斎君

      階   猛君    鈴木 克昌君

      田村 謙治君    福田 昭夫君

      古本伸一郎君    谷口 隆義君

      佐々木憲昭君    野呂田芳成君

      中村喜四郎君

    …………………………………

   議員           大野 功統君

   議員           加藤 紘一君

   議員           津島 雄二君

   議員           野田  毅君

   議員           柳澤 伯夫君

   議員           山本 明彦君

   議員          吉田六左エ門君

   議員           上田  勇君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       中川 昭一君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   与謝野 馨君

   内閣府副大臣       谷本 龍哉君

   財務副大臣        竹下  亘君

   財務大臣政務官      三ッ矢憲生君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 梅溪 健児君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  内藤 純一君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 佐藤 文俊君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   木下 康司君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    加藤 治彦君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    佐々木豊成君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局次長)           大槻 勝啓君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  石井 博史君

   政府参考人

   (国土交通省道路局次長) 西脇 隆俊君

   参考人

   (日本銀行理事)     山本 謙三君

   財務金融委員会専門員   首藤 忠則君

    ―――――――――――――

委員の異動

一月六日

 辞任         補欠選任

  小川 友一君     稲田 朋美君

同月九日

 辞任         補欠選任

  下条 みつ君     後藤  斎君

  鈴木 克昌君     福田 昭夫君

  和田 隆志君     田村 謙治君

同日

 辞任         補欠選任

  後藤  斎君     下条 みつ君

  田村 謙治君     和田 隆志君

  福田 昭夫君     鈴木 克昌君

    ―――――――――――――

一月六日

 銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律の一部を改正する法律案(柳澤伯夫君外八名提出、衆法第一号)

 平成二十年度における財政運営のための財政投融資特別会計からの繰入れの特例に関する法律案(内閣提出第一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 国政調査承認要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 平成二十年度における財政運営のための財政投融資特別会計からの繰入れの特例に関する法律案(内閣提出第一号)

 銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律の一部を改正する法律案(柳澤伯夫君外八名提出、衆法第一号)


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     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。

 財政に関する事項

 税制に関する事項

 関税に関する事項

 外国為替に関する事項

 国有財産に関する事項

 たばこ事業及び塩事業に関する事項

 印刷事業に関する事項

 造幣事業に関する事項

 金融に関する事項

 証券取引に関する事項

以上の各事項につきまして、今会期中国政に関する調査を行うため、議長に対し、国政調査承認要求を行うこととし、その手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

田中委員長 次に、内閣提出、平成二十年度における財政運営のための財政投融資特別会計からの繰入れの特例に関する法律案、柳澤伯夫君外八名提出、銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。財務大臣中川昭一君。

    ―――――――――――――

 平成二十年度における財政運営のための財政投融資特別会計からの繰入れの特例に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

中川国務大臣 ただいま議題となりました平成二十年度における財政運営のための財政投融資特別会計からの繰入れの特例に関する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。

 平成二十年度の一般会計補正予算(第2号)においては、急激な内外の金融経済情勢の変化に対応し、国民生活と日本経済を守る緊急の備えを万全にする観点から策定されました生活対策及び生活防衛のための緊急対策に盛り込まれた施策を実施するための経費を計上しております。

 これらの措置に必要な財源を確保するため、臨時の措置として、財政投融資特別会計の積立金を活用することとしております。

 本法律案は、これを受けて、平成二十年度における財政投融資特別会計財政融資資金勘定からの一般会計への繰り入れに関する特例措置を定めるものであります。

 以上が、この法律案の提案の理由及びその内容でございます。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

田中委員長 次に、提出者柳澤伯夫君。

    ―――――――――――――

 銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

柳澤議員 ただいま議題となりました銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案者を代表して、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。

 現在、世界的な金融資本市場の混乱のもとで、我が国の株式市場は、本来の企業価値からは考えられないほどの不振な状況に陥っております。このような株式価格の著しい変動が、銀行、企業の財務内容や金融システムに影響を与え、銀行の健全性を損ね、また、過度の信用収縮を招くことが懸念されます。こうしたことを通じて、経済や国民生活に重大な支障が生ずることのないよう、対応を図っていくことが必要であります。

 このような観点から、銀行等保有株式取得機構の活用及び機能強化を図るため、本法律案を提出することとした次第であります。

 以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。

 まず、現行法上、平成十八年九月末までとされていた銀行等保有株式取得機構による株式買い取りについて、平成二十四年三月末まで延長することにより、機構の株式買い取りを再開することとしております。

 また、あわせて、機構による株式買い取り機能を強化する観点から、事業法人からの株式の買い取りについて、新たに事業法人から先行して銀行株を機構に売却することを可能とするなど、制度の柔軟化を図ることとしております。

 以上が、銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律の一部を改正する法律案の提案理由及びその内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

田中委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

田中委員長 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、参考人として日本銀行理事山本謙三君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣府大臣官房審議官梅溪健児君、金融庁総務企画局長内藤純一君、総務省大臣官房審議官佐藤文俊君、財務省主計局次長木下康司君、主税局長加藤治彦君、理財局長佐々木豊成君、厚生労働省職業安定局次長大槻勝啓君、社会保険庁運営部長石井博史君、国土交通省道路局次長西脇隆俊君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田中委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。越智隆雄君。

越智委員 自由民主党の越智隆雄でございます。

 本日は、ことし初めての委員会で、通常国会で当委員会初日でございます。実りある、前向きな議論をこの委員会でしてまいりたいと思っておりますので、どうか委員長を初め皆様にぜひ御指導をよろしくお願い申し上げて、質問に入りたいというふうに思います。

 さて、本日は、先ほど御説明のありました予算関連の二法案の審議でございますけれども、百年に一度の危機だということでありますから、百年に一度の対策が必要だというふうに思います。きょうのお話は、財源の話としては、財投特会の金利変動準備金を活用する、そして金融の話としては、銀行等保有株式取得機構を再活用するという趣旨の話だというふうに思います。こういうときには、発想を自由に豊かにして、あらゆる手段を検討して対策を打つべきだというふうに考えておりますけれども、この二法案ともにクリエーティブでイノベーティブな対策でありますので、一日も早く成案を得るべきだというふうに思っております。

 私からは、ここでは主に株式取得機構についてお伺いをさせていただきます。

 この改正案は、まさにこの危機に際して、ここに並んでおられる諸先輩が知恵を絞られてつくられた法案だと思います。特に柳澤先生におかれましては、閣法として提出された当時の金融大臣であられますので、きょうはぜひ先生方に制度のねらいや内容についてお伺いをさせていただきたいというふうに思います。

 まず一つ目のところでありますけれども、同機構は二〇〇二年に設立されて、その後二回法改正が行われて現在に至ったわけであります。今回は三度目のバージョンアップというふうに思います。運営につきましては、役員が理事長を初め監事まで六名、また運営委員が委員長を初め五名、この中で、健全性を保ちながらこの七年間運営をされてきたというふうに私は自負をしております。

 ただ、これまでの機構の最大の目的というのが、法案がつくられたときに、法案の名前が銀行等による株式等の保有の制限というふうになっているように、当時は、銀行の株式保有を制限しよう、そこで、銀行が売らなきゃいけない株式を買い取る機構だということで設立されたわけですけれども、この保有制限は現状ではもう既に達成されているわけであります。

 そんな中で今回なぜ延長するかといえば、それはまさに金融危機に対応して延長するということだというふうに思いますけれども、この点について、今回の機構の活用、強化の趣旨並びに目的について改めてお伺いできればありがたいと思います。よろしくお願いします。

野田(毅)議員 役割分担ですので、この質問には私から答弁をさせていただきます。

 ただいま柳澤先生から趣旨説明でも申し上げましたとおり、今日の金融資本市場の情勢は率直に言って異常な姿になっているということは、昨年の秋以来の状況を見て御案内のとおりであります。そうした環境の中で、少なくとも、特に外国のファンドを中心としてかなり集中的に日本株を売る、こういうような要因もありますし、特にまた、過度な変動ということが銀行の信用機能にも大変影響を与えてくる。さまざまなことがあります。特に、それらの結果、いわゆるPBRそのものが企業の純資産価値を下回るような株価が発生しているというようなことを考えますと、やはり正常な姿であるという形にはならない。しかも、これがこれから先どういうふうに変動していくのかというようなことをも考えますと、ここでこのまま放置しておれば、金融機関自身の財務内容のみならず、いわゆる企業をも含め、経済情勢全体に大変な悪影響を及ぼしかねないというようなことから、今回の提案をすることになったわけでございます。

 既に御承知のとおりの、いわゆる銀行の株式保有制限ということは達せられましたものの、今なお多くの株を保有しておることも事実でありますし、同時に、カウンターパートであります企業の持っている銀行株、これの株価の下落ということも大変気になるところでもあるわけでありまして、それらのことを両々頭に置きまして、今回の提案をさせていただいている。

 できれば、こういったことが現実に動かなくてもいいような状況に、市場機能が健全な形に回復していってくれるということが一番望ましいことでありますけれども、これから先どう展開するかということは決して予断を許さぬところもあるというようなこともありまして、今回の提案をさせていただくということになったことを申し上げておきます。

 以上でございます。

越智委員 野田先生、ありがとうございました。

 次にちょっとお伺いしてみたいことが、そうだということだと思うんですけれども、実際に銀行が機構に株式の買い取りを求めるというのはどういう状況なのかなと。どんな銀行が、どんな状況のときに、何のために買い取り請求をするかというところについて、具体的なイメージをお持ちでしたらお伺いしたいと思っております。

 時価が簿価をある程度上回っている場合は、買い取り請求のモチベーションはわかないわけでありまして、逆に時価が簿価を下回ってしまうと、評価損ですとティア1、自己資本が六〇%控除になりますし、実際に売ってしまうと一〇〇%実現損が出てしまうわけであります。ですから、多分、時価が簿価を下回りそうなときに売ってくるというふうに考えるのが自然ではないかと思うんです。

 特に、これは期末対策ということで、これから三月の間というのが一つの大きな時期なのかなというふうに思っておりますが、この点について教えていただけたらありがたいと思います。

大野(功)議員 風邪を引いておりますが、失礼します。

 この点につきましても、柳澤代表を差しおいて私の方から答弁させていただきますことをお許しください。

 現在の世界的な金融経済不安の中で、日本の株式市場、どういう特色があるか。野田先生がおっしゃってくださいましたけれども、一番は、やはり外国人投資家のシェアが多いんですよね。したがって、今現在のところは、海外投資家が換金売りをやっているということで、先ほど御説明がありましたけれども、PBRが一を割る、株価純資産が一を割るというような状況になっている、こういうことは十分御認識のことだと思います。それからもう一つは、やはり日本の特色として、持ち合い株があるということだと思います。

 そういう中で、実際、考えてみますと、減損処理をしなければならないほど株価が下がった場合、自己資本が毀損してしまうじゃないか、あるいは不良資産を処理しなきゃいけないというような場合に、やはり自己資本を毀損してしまうじゃないか、そういう場合に株を市場に売り出しをするとどういうことになるんだろうか、こういう問題だと思うんですね。

 そういう問題を解決していくために、こういう方法、マーケットメカニズム外で処理をしていこう、こういう問題になってくるわけですけれども、先ほど申し上げましたように、持ち合いになっていますから、銀行が処理をすると、また銀行株を持っている事業法人もやはり売りたい、こういうことになってくる可能性が十分あるわけでありまして、十分あると言えるかどうか、それは将来のことでわかりませんが、どんな場合があっても、どんなことになっても安心だよ、この安心のメッセージを送ろうというのが大きな大きな趣旨であります。具体的にどういう場合かと聞かれますので、そういう場合があるだろうと申し上げておりますけれども、大きな大きな目標は、やはり安心感のメッセージを出していこう、こういうことで議員立法にしているわけでございます。

 なお、株価低落の場合以外にも、株価が上昇する場合にも、一般の市場で株を売り出しますと、せっかく上昇していこうという機運を、おもしをかけて引っ張っていく、こういうことにもなりかねないので、やはりそこはこういうメカニズムをつくって防いでいこう、安心感のメッセージを与えていこう、こういうことでございます。

越智委員 大野先生、ありがとうございました。

 私も銀行に数年間おりまして、また証券会社にも数年間おりました。銀行にとっても、今回の制度というのはまさに安心のセーフティーネットになると思いますし、株式市場からしても、本当に前向きに受けとめられる制度だというふうに思っております。

 次の質問に参りたいんですが、もう少し具体的になってしまうんですが、株価の水準がどのぐらいになったときにこの機構が使われるようになるかということでありまして、メガバンクの今の含み損益がゼロになるポイントというのが七千円台から九千円台ぐらいというふうに言われているんですけれども、この辺、もし何かお考えがあれば、伺えたらありがたいと思います。

大野(功)議員 先ほど申し上げましたとおり、いかなる場合でも大きな安心のセーフティーネットを張っていこう、こういうことでございまして、いわば、機構は市場売却を補完するセーフティーネットの役割を果たす。

 具体的に、機構への売却というのは全くの任意でございます。したがいまして、あらかじめ、どのぐらいの株価になったら売れよ、買えよ、こういう話は全くございません。

越智委員 ありがとうございました。

 それでは、具体的なことを一つお伺いさせていただきたいと思います。

 今回の改正点、幾つかあったわけですけれども、その中で、保有株式等の買い取り限度については、現行の平成十三年三月時点の株式数を上限とするということを見直すというふうにされているわけでありますけれども、この上限について見直して、具体的にどういう形にするのかということについて、お考えがあれば教えていただきたいと思います。

大野(功)議員 現在では、御指摘のとおり平成十三年三月の保有株式ということになっております。しかし、もう情勢が変わっていますから、古い話はおいておいて、新しい時代に直面してどういう解決策をしたらいいか、これを考えなきゃいけない。

 これは府令で行いますけれども、議員立法ですから、我々、こういうふうにやったらどうか、当然こういうことで議論をいたしております。しかも、スピーディーにやらなきゃいかぬ。このことも府令をつくるに当たって金融庁に言っているわけでございますが、現在のところ、六カ月以上保有、こういうふうにさせていただきたい、こう思っています。これはやはり、短期で利ざや稼ぎというか、第二のマーケットですから、そういうことに利用されてはかなわない。かといって、長期になるとまた有効性の問題が出てくる。こういう問題がありますから、六カ月ということでやらせていただきたい。

 なぜ六カ月か。これは難しいんですけれども、例えば金融商品取引法におきまして、上場会社等の役員等には六カ月以内の短期売買利益の返還という条項が委員御存じのとおりあるんですが、これが六カ月となっております。したがいまして、その六カ月に平仄を合わせているという点もございます。

越智委員 ありがとうございました。

 この点については、事業会社と銀行の持ち合いが、どうも二、三年ぐらい前からまた事業会社から、多分買収防衛ということもあるんでしょうけれども、ニーズが高まって、実際に銀行との持ち合いを進めているところもありますので、そういう実態から考えると、今、大野先生がおっしゃっていただいたように、平成十三年にさかのぼるんじゃなくて、六カ月以上というこの保有制限をつけるということは、現実に即した改正だというふうに思います。

 今回の改正では、期間が延長されただけではなくて、事業法人から先に買い取り請求をすることができるとか、あと、今の買い取り限度額の緩和など、かなり使い勝手がよくなったというふうに思っております。

 そういう意味で考えますと、今回、買い取り請求することで株式の評価損やあるいは減損を回避できるということで、銀行にとっては、資本の毀損を防ぐということでアセットの減少を抑制できるというふうに思いますし、また、相場にかかわらず、株式を簿外にする、売却してしまうということで資産の調節をしやすくなるという意味では、貸し金を減らさなくて済むというような状態もつくれると思いますので、総論としては、銀行のアセット管理がしやすくなるというふうに思っております。

 もう一点、昨年の秋からこの一連のいろいろな対策が打たれてきたわけですけれども、十一月にBIS基準の見直しというのがありました。あのときに、国債等の含み損益については算入しなくていいという話があったわけですが、国際基準適用行の株式については当然時価ということだったわけです。そこの部分について、今回の機構の延長ということである意味ではカバーできたということで、パッケージがこれでできるんだというふうに理解しているところでございます。

 機構について最後の質問をさせていただきたいんですが、今回の見直しで、それに加えて、政府保証の枠取りが二兆円という数字から二十兆円ということで十倍になったわけであります。この二十兆円という根拠は、お伺いしてみると、銀行が持っている事業会社の株式十七兆円と、事業会社が持っている持ち合いの銀行株五兆円、合計二十三兆円というのをある程度カバーできる数字だというふうに伺っております。

 そこで、今回お伺いさせていただきたいのが、今回の改正、内容的にもまた量的にもかなり拡充されました。いわば日本の銀行持ち合い、この大半を全部解消するにたえ得る制度ができたんだというふうにも考えられるわけなんですけれども、ここでちょっと哲学みたいなところをぜひ聞いてみたいんです。銀行が株式を保有するということは、価格変動で金融に悪影響が出る可能性があるのでできる限りしない方がいいんじゃないかというような哲学があって今回の制度がつくられているというふうに考えることが正しいのかどうか、その辺についてぜひ御教授いただけたらありがたいと思います。

大野(功)議員 大変すばらしい御質問をありがとうございます。

 そういう哲学をもっともっと議論してつくり上げられたらよかったなと思いますけれども、これはいろいろな議論があると思いますね、今の哲学については。

 今回は、そういう問題ではなくて、例えば持ち合い株につきましては、法律の第一条を修正しております。前の法律では持ち合いを解消するということをうたっておりましたけれども、今回は持ち合いの解消に資する、こういうふうになっております。哲学というよりも、むしろ今回は、百年に一度の金融危機、経済危機、これに対して、どんなことがあっても、金融機能強化法、これは昨年通していただきましたけれども、金融機能強化法と相まって、どんな大津波が来ても大丈夫だ、こういうメッセージを出して、日本の金融、信用の安心感、これをつくっていきたい、こういう趣旨で、別の観点からでございますけれども、つくらせていただいております。

 今御指摘の点は改めてもっともっと我々で議論すべき点かもしれませんが、今回はそういう哲学は議論されておりません。

 ありがとうございます。

越智委員 ありがとうございました。

 今回の、今の最後の質問の点ですけれども、私も金融機関に勤めているころに、株価の変動によって金融機関経営が本当に大きく左右されるということ自体、やはりある程度抑制しなきゃいけないという思いもありましたので、今回の取得機構の三回目の改正によって、この仕組みがさらにバージョンアップしているというふうに考えておりますし、また、これは市場も強く好感するものだというふうに思っているところであります。

 時間も限られております。最後に端的に一点、財投特会についてお伺いをしたいと思います。これは財務省の方にお伺いしたいと思います。

 今回の変更は大きく二点あると思っていて、国債整理基金特会への繰り入れじゃなくて一般会計に繰り入れできるということと、あと、千分の五十を守らなくてもいいということを金額で定めた、この二点であるというふうに思うんですが、この特例措置、危機対応としては妥当だと思いますし、私は大賛成であります。ある意味では、この特会の準備金を積極的に活用するという前向きな取り組みだと思っています。

 ただ、これはちょっと確認したいのが、平成二十一年度予算と二十二年度予算でまたこの特会の準備金を活用するということがもう決められているというふうに理解をしています。特に、基礎年金の国庫負担割合の引き上げなどに使うというふうに聞いております。そうだとすると、千分の四十三がまたどんどん減っていくわけでありますけれども、そうすると、今まで千分の五十を守ってこようという話とどうやって整合性をとるのかということは、これからちゃんと納得しておかないと議論が混乱するというふうに思いますので、その点についてお伺いしたいと思います。

 それで、多分一つの考えは、リスク管理が精緻化できたから千分の百から千分の五十になった、それをもっと精緻化できたからもっと減らせるんだという議論もあるかもしれませんし、場合によっては、リスク管理がうまくいかなくてリスクが顕在化しちゃったら一般会計から繰り入れるんだという思い切った整理があるかもしれませんけれども、この辺をどうお考えなのか。

 多分、千分の五十は守るという中で、短期的には金利リスクがそんなにないから大丈夫じゃないかというふうに思っていらっしゃるんだと思うんですけれども、だとしたら、千分の幾つまでは持っておかなきゃいけないとか、そういう議論の整理をしていただいた方が国民としてはわかりやすいと思うので、その点についての今のお考えをお伺いしたいと思います。

佐々木政府参考人 財政投融資特会の準備金についてのお尋ねでございます。

 財投特会におきましては、今後の金利変動に伴う損失に備えるために、毎年度、利益が発生した場合に、金利変動準備金として積み立てております。その上限の千分の五十につきましては、長期的に見まして、その水準まで積み立てておけば将来の大幅な金利変動に対しても財務の健全性が保てるという水準として設定しているところでございます。

 今般、極力赤字公債を発行せずに生活防衛緊急対策等の財源を確保するというために、金利変動準備金の取り崩しを行うことといたしておりますけれども、これは臨時的、特例的な措置でございまして、金利変動準備金の基本的な考え方は維持しているところでございます。

 財投特会におきましては、引き続き、このような基本的な考え方のもとで、基本方針二〇〇六におきます資産・債務改革に沿って財投特会の総資産の圧縮に努めるとともに、利益が生じた場合には、これを金利変動準備金に積み立てるということによりまして、金利変動準備金の確保に今後とも努めていきたいと考えております。

越智委員 時間が参りましたので最後にコメントだけ申し上げますが、今の御答弁でございますけれども、今回の補正予算については千分の四十三ということですので、私は、これは特例的な措置としていいんじゃないかというふうに思っておりますが、今後のことについては、今、中長期的には千分の五十は守っていくんだというお話がございましたが、では、短期的なことを考えたときには、千分の十だとか二十だとかその辺の議論はやはり整理していただいておかないと、国民に対する説明としてはなかなか成り立たないんじゃないかと思っているので、そこは私から財務省にお願いさせていただいて、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

田中委員長 次に、鈴木馨祐君。

鈴木(馨)委員 きょうは、二つの非常に大事な法案の審議でございます。そんな場において質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。自民党の鈴木馨祐でございます。

 さてきょうは、私は、越智隆雄議員に引き続きまして、主に財政の方の金利変動準備金の関係の質疑を中心に進めさせていただきたいと思っております。ぜひともよろしくお願いいたします。

 まさに、だれしも予想しなかったというか、予想以上の大きな金融の大混乱、そして、それに伴って実体経済がだんだんと傷んでいく中でどうやって民間需要をつくっていくか、そういった非常に厳しい政策運営、そして同時に、財政の赤字も非常に大きいといった状況でございます。そういった中で、恐らくは、今回の法案によって金利変動準備金から機動的な運用を図っていくということで、非常にこれは前向きな御提案だと思いますし、そこのところはぜひとも早急に、きちんとこの委員会の場で結論を出していただきたい、そう思っております。

 そういった中で、基本的なところについて幾つか整理をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、今回、緊急の財政の対策の財源というものを、赤字国債ではなく、この準備金の取り崩しというところから求めるようになった理由というかお考えというものを、まず竹下副大臣に伺いたいと思います。

    〔委員長退席、木村(隆)委員長代理着席〕

竹下副大臣 今回の第二次補正予算で措置されるもの、生活対策、緊急経済対策、この中には、恒常的な対策ではなくて一時的な対策、定額給付金など一時的に必要となる政策を盛り込んでおります。でありますし、その際、世界的に今金融市場は混乱をいたしております、こういう中で、赤字国債の増発、あるいは増発圧力がさらに強まるということになりますと、結果として、国際市場というものへの懸念も増大をするという懸念ももちろんございます。

 そして一方では、総理の強い意思、対策の財源としては赤字国債に原則として依存しないということで組んでくれないかという総理の御指示もございました。

 そういうこともございまして、臨時的、特例的に財投特会の金利変動準備金の活用を行うことが適切であると判断したものでございます。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 確かに、赤字国債の発行ということを行えば恐らく、マーケットへのインパクト、これは国際市場も含めてさまざまな影響があるというのは事実だろうと思います。しかし、実態の方を見てみると、この金利変動準備金の余剰分というものについては、恐らく本来はそうした国債の償還といったものに充てられるはずのものでございましたわけでして、ましてやマクロで見てみれば、結果的には、赤字国債発行と同じとは言いませんけれども、近いような影響が出ることも一部にはあるのかなというふうに思っております。

 そういった中で、長期的に見た場合のいわゆる基礎的財政収支の、今後、二〇一一年にプライマリーバランスの均衡を達成するということでずっとやってこられたわけですけれども、今非常に厳しい経済状況でございます。税収も大きく減ってきます。そういった中で、この見通しについて、今実際、率直なところどうお考えなのか。

 そして恐らくは、ほとんどの有識者、あるいは世間、あるいは金融マーケットにおいても、二〇一一年のPBの達成というものが非常に危ぶまれている、そういった状況にあるわけであります。そういった中で、一つの考え方として、これを少し現実に達成ができるような新しい目標に、この危機の状況の中ですから理解も得やすいというところで、そういった議論もしていくということも一つの考え方かとは思われますけれども、そういったところについてどういった御所感を今お持ちなのか、伺えればと思います。

中川国務大臣 今、第二次補正予算、そしてまた、きょうから財投特会の繰り入れの法律をここで御審議いただいているわけでございます。

 なぜ、一次、二次という補正をやらなければいけないのか、あるいは、去年当委員会で大変お世話になりました金融機能強化法、あるいは株式買い取り機構法案をきょう御審議いただいているかというのは、まさに世界の金融危機、経済の悪化、そして日本におきましても経済が悪化しているという中で、とにかく国民生活、日本経済を少しでも早く立ち直らせよう、そして成長過程に行こう、やるべきことは何でもやっていかなければならないということで本日も御審議をいただいているわけでございます。

 他方、日本は先進国の中で一番公債の比率が高い、大きい国でございますから、後世への借金の先送りをできるだけ小さくしていかなければいけないということもやはり我々の責任であろうというふうに思っております。

 したがいまして、今回、本来であれば余剰分については国債の償還に充てられるべき財源を、臨時異例の措置として、今回の補正予算の財源として使わせていただきたいということで御審議をいただいているわけでございますが、他方、今鈴木委員がおっしゃった、プライマリーバランスをできるだけ早く、二〇一一年という目標もやはり大事なことであろうかと思っておりまして、その目標というものは、我々としては引き続き維持をしております。

 ただ、残念ながら、その達成の可能性というのは、非常に日に日に困難になってきているというのが率直なところでもございます。そこで、今回新たに、では新しい目標をつくるかというには、数年かけた目標でございますから、それをつくるには、現在の日本をめぐる経済金融情勢というのは余りにも変化が大きい、あるいはまた悪い要素が大きいということでございまして、今この段階で、中期的なあるいは先を見た計画に変更するという状況にはございませんし、とにかく、現在のプライマリーバランスの黒字化の計画、原則というものを維持していくという中で日々の対策をとっていかなければいけないというふうに考えております。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 まさに、今大臣がおっしゃったとおりでございまして、今、内外の金融経済情勢が非常に厳しいという中では恐らく、法人税収ということを考えても、まずもって景気の回復ということをあらゆる対策をもってやっていかなくてはいけない、そのためには臨時的な、緊急的な措置というものもいろいろなところでやはりとっていかなくてはいけないんだと、私もそこは思っております。そのためにも、ぜひとも、今回の法案については早急な成立というものを、こちらで審議をした上でお願いしてまいりたい、そう思っております。

 その上で、今回、金利変動準備金ということが大きなテーマとなっているわけでございます。先ほど、越智先生の御質問の中でもございましたけれども、これの適正な水準というのは果たしてどうなのか。

 マーケットは生き物ですし、これから長期的な金利の動向というものはどうなるかわからない状況でございます。しかし、幸いにしてというか、ついこの前、平成十九年度になるかと思いますが、ちょうど金利変動準備金の準備率というものを千分の百から千分の五十に引き下げた、そういった経緯がございます。そのときに、どの水準が適正なのか、そういった議論というものを恐らくは尽くされているのかと思いますけれども、平成二十年度ですか、十九年度に成案を得て二十年度からだと思いますけれども、千分の百から千分の五十に準備率の引き下げをしたその判断根拠というか理由というものをこちらで御説明いただければと思います。

佐々木政府参考人 現行の準備率の上限といたしております千分の五十につきましては、先ほど御指摘ございましたように、平成十九年度で郵貯、年金の預託金の払い戻しがおおむね終了したということもございまして、金利変動リスクが相当低下したということを勘案いたしまして、平成二十年度の予算編成過程におきまして、今後の収支状況につきましてシミュレーションを行ったところでございます。

 ケースを分けましてシミュレーションを行いまして、金融の専門家を含めました外部有識者から成ります財政制度等審議会財投分科会における意見を踏まえまして検討した結果、従前の総資産の千分の百から千分の五十に引き下げることとしたものでございます。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 この判断をする際に、先ほども議論にありましたけれども、どういう形でリスクというものを評価するのか、あるいは今後どういう形でリスクが変わっていくのか。そのリスクというものが恐らく大きく二つに分かれるわけでございまして、一つは貸し付けの規模、財投の規模ということでございます。もう一つは、貸し付けと調達とのいわゆる期間のずれ、こういったものも恐らくリスクの評価としてあるのかと思います。

 今後、財投改革も進んでいくと思いますけれども、今後のこうした流れの中で、貸し付けの規模あるいは期限の問題、今後どういった形の推移を見込んでおられるのか、御答弁をいただきたいと思います。

佐々木政府参考人 財投の今後の貸付規模及び貸し付けと調達の平均年限等についての御質問でございます。

 今後の貸付規模につきましては、基本方針二〇〇六におきます資産・債務改革の中で、平成二十七年度末の財政融資資金貸付金残高の圧縮目標というものが掲げられておりますが、基本的にこの目標に沿いながら、時々の経済情勢等に対応して必要な資金供給を行っていくということにいたしております。

 また、貸し付けと調達の平均年限につきましては、貸し付けの平均年限は時々の資金需要に影響されるものでございますが、調達の方、財投債の年限を調整することによりまして、貸し付けと調達の平均年限をなるべく合わせるように努力したいと考えております。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 前回の見直しのときには、これは先ほど御説明もいただいたところでありますけれども、いろいろな前提を置いたシミュレーションをして、千分の五十で大丈夫、そういった判断をされていると伺っております。

 そのシミュレーションについて一つ伺いたいんですけれども、これの前提条件というもの、これが一体どういったものだったのか、そこの御説明をお願いします。

佐々木政府参考人 千分の五十に引き下げる際のシミュレーションの前提でございますけれども、まず貸し付けの規模につきましては、シミュレーションの当時の直近の計画でございます平成十九年度の財投計画と同等の約九兆円の規模、それでそれ以降も推移するというふうに前提を置いております。

 また、貸し付け、調達の平均年限につきましては、これと同様に、十九年度計画と同程度で推移をするということといたしております。

 また、今後の金利動向につきましては、確率的な金利モデルによりまして、三千本のランダムな金利シナリオを発生させて推計をいたしております。

 以上の前提のもとに、金利変動準備金の上限を千分の四十とした場合、五十とした場合、六十とした場合というそれぞれにつきましてシミュレーションを行った上で、信頼区間九九%において債務超過がほぼ発生しない水準ということで決めております。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 話を若干前に戻しまして、今回の千分の四十三までの措置ということについて伺いたいんですけれども、今回、これは一年限りの措置ということで法案の提出をいただいているわけでありますけれども、これは一年限りということでやっていますと、千分の五十というところ以上のものが国債の整理基金の方に回すことができるという規定が依然として生きておるということであろうかと思います。

 そうなりますと、今経済状況が非常に悪い中で、全治三年と言われる、恐らく、来年非常に景気がよくなっているということをおっしゃる方は今のところは少ないわけでございまして、そういった中で、来年度における財政のことを考えた場合、果たしてこうした千分の五十というものを今後とも維持していくというか、少なくともここ三年間について、景気回復がきちんとするまでの間、ここをきちっと維持していくということが果たして妥当なんだろうか。

 具体的に言えば、そのことを維持することによって、金利変動準備金に充当しなくてはいけないお金というものが出てくるわけであります。そのお金というものは、国債の償還にも、あるいは財政の出動にも使えないお金となってしまう。

 そういった中にあって、今後少なくとも景気回復時に至るまでの間については、千分の五十というものをある程度柔軟に考えていく必要もあるんじゃないかという議論は、当然これはあってしかるべきなんだと思います。

 そういったことについてどのような御見解をお持ちなのか、伺えればと思います。

竹下副大臣 おっしゃいましたように、まさに世界経済がこういう状況にあります。そういう中で、私たちは、生活対策あるいは生活防衛のための緊急経済対策、全治三年というお言葉を総理は使っておられますが、景気回復を最優先に実現しようということで取り組んでいるところでございます。

 このために、平成二十二年度までの臨時的、特例的な対応として、財政投融資特別会計の金利変動準備金を活用いたしまして、これらの対策の財源に充当するとともに、この間の基礎年金の国庫負担割合を二分の一とするための財源とすることといたしておるところでございます。

 これについては、現在関連法案を通常国会に提出すべく検討を進めておるところでございまして、先生がお話しになりましたように、激動しておる経済状況に対応する、いかようにでも対応する、一つのことを決めてどうしても守るというのではなくて、これだけ激しく動いている世の中でございますので、いろいろなことに対応しようという心構えでやっていく。ただし、最初から全部外してしまいますと大変ですので、しっかり見定めながら対応していこう、こう考えておるところでございます。

鈴木(馨)委員 どうもありがとうございます。

 当面の経済情勢あるいは財政の状況を考えれば、ここのところはきちんとそうした対策というものを政府の方でも取り組んでいっていただきたい、そう思っております。

 そしてここで、最後になるかと思いますけれども一つお伺いをしたいのは、金利変動準備金というもの、先ほど越智委員の方からその適正な水準という御質問もありましたけれども、これはさまざまな議論が世の中ではされているわけであります。国の信用というものをバックとしている以上、本当にこの金利変動準備金というものは必要なのかどうか、そういった議論も一部にはあるわけでございまして、そういった中でなぜこれが必要なのか。

 そして、先ほどシミュレーションのことも伺いましたけれども、恐らく長期的に考えれば、財投の規模というものはだんだんと圧縮をしていく方向にある、そして期限の差異が生ずることによるリスクというものもだんだんと圧縮をしていく、そういったリスク管理もされているという中で、これから長期的に見たとき、果たして今の千分の五十という水準というものが、これは先のことはどうとも言えないということになるかと思いますけれども、本当に今後、多少下の方向に持っていくことも考え得るのかどうか、そういったことも含めまして、この金利変動準備金の必要性、そしてどういった理由でこれを維持しなくてはいけないのか、そういったことについてぜひとも御説明をいただければと思います。

中川国務大臣 この仕組み自体は鈴木委員の方がよく御存じなのではないかと思うわけでございますけれども、今の財投制度というのは、調達、その調達の中には、さっき理財局長からも答弁いたしましたが、郵貯とか簡保とかいうお金があったわけでございますけれども、それがなくなってきたということもありまして、調達と貸し出しとの整合性がよりとりやすくなったということはございます。

 ただし、五年、十年、二十年という長いタームのものを貸し出すわけでございまして、その調達との関係において必ずしもそれが一致しない、したがって金利変動の可能性が出てくる。これは、プラスにもマイナスにも出てくるわけでございます。そういう意味で、財投の制度の趣旨からいいましても、完全にそのリスクというか変動がゼロではないという以上は、やはり金利変動準備金というものは必要であろうと。

 必要であるならば、さっき局長からも答弁いたしましたように、きちっとした専門家の御判断をいただいた上でやっていくということで、さっき鈴木委員からも御質問、御発言ございましたように、本年度、千分の百から千分の五十に変えたところでございます。

 今後も、御専門家の御判断もいただきながら、中長期的な観点で、必要があれば、これは可能性としては減らすこともありますし、また、ふやさなければいけないということもあろうかと思いますが、いずれにしても、財投の安定的な運用の観点から、この準備金というものを引き続きまた考えていかなければいけないというふうに思っております。

鈴木(馨)委員 以上で質問を終わります。

 ありがとうございました。

木村(隆)委員長代理 次に、石井啓一君。

石井(啓)委員 公明党の石井啓一でございます。

 まず、法案の質疑に先立ちまして、定額給付金に関して質問を申し上げたいと思います。

 昨日の予算委員会の質疑で私どもの北側幹事長の方から、定額給付金は給付つき税額控除の先取りである、こういう指摘がなされました。

 この給付つき税額控除といいますのは、今導入している各国ではいろいろなやり方をしております。民主党さんがおっしゃるような税額控除と給付とを組み合わせているやり方もございますし、また、全額給付でやっているケースもあります。

 例えば、アメリカとかフランスは、税額から控除して、控除し切れない額は給付をするというやり方ですけれども、イギリスでは、税額から控除をせずに全額給付をしている。ドイツでは、給付と所得控除といずれかを比較して、納税者が有利な方を選択するというやり方等々、いろいろなやり方があるわけでありますけれども、いわば今回の定額給付は、イギリス式の全額給付の給付つき税額控除、これに非常に似通ったものである。

 もっとも、単年度の措置でありますから、制度的にやるものとは違いますよ。制度的にやるものとは違うんだけれども、先行的な事例としてやるということには間違いがないわけでありまして、先取りの事例であるということであるわけであります。

 ところで、イギリスは、現在は全額給付をしているんですけれども、当初は、実は税額控除と給付との組み合わせでありました。しかしその後、控除をしている分も給付に変えて、全額給付に変えております。どういった経緯でこの税額控除を全額給付に変えていったのか。この点、これは政府参考人で結構でございますので、御説明をいただきたいと思います。

 それから、このたび与党でまとめました税制抜本改革の基本的な方向性の中では、所得課税について、給付つき税額控除の検討を位置づけております。私は、将来我が国で給付つき税額控除を導入する場合にはイギリス型の全額給付方式が有力ではないかというふうに考えますけれども、この点については大臣から御見解をいただきたいと思います。

中川国務大臣 まず、イギリスがなぜ制度を途中で変えたのかということについては後で事務方から補足説明させますけれども、事業主を通じて給付をするのと税額を控除するのと二通りあったもので、事業主に事務手続の負担がかかるということで、今石井委員おっしゃったように、実質的に同じであるだけに、給付の中で一律やってしまおうという形にしたというふうに承知をしておりますが、いずれにしても、給付つき税額控除方式であるということでございます。

 それから、石井委員がおっしゃったように、大綱の中に検討するということで、既に与党内において御検討をされているというふうに承知をしておりますが、それはあくまでも恒常的なものでございますから、政策目的というものをはっきりしなければいけないということでございます。

 きのうの北側幹事長の御質問の中で、先行としてという御発言がありましたが、私の立場からは、臨時異例のものとして今回給付金というものを実施したいというふうに考えておりますが、経済的に言えば、これは給付つき税額控除と同じであると私も思っております。

 いずれにしても、今後どういうふうになるかにつきましては与党内での御検討ということになると思いますが、第二次補正予算の中で、ぜひともこの法案が一日も早く成立をしてこの定額給付が実施できるように、御審議のほどをよろしくお願い申し上げます。

加藤政府参考人 事実関係だけ補足させていただきます。

 先ほど御指摘の英国における事例でございますが、英国で現在実施されている就労税額控除、ワーキングタックスクレジット、これがいわゆる給付つき税額控除でございます。

 これは二〇〇三年四月に制度が導入されましたが、今大臣から御説明申し上げましたように、当初は、源泉徴収の段階でまず税額を控除し、控除し切れない部分について、源泉徴収義務者である雇用主を通じて給付する仕組みになっておりました。しかしながら、先ほど御指摘されましたように、このような仕組みは雇用主の事務負担が重いということで、二〇〇六年の四月に、納税の金額とは切り離して全額直接給付する仕組みを採用したというふうに承知しております。

石井(啓)委員 この税額控除の提唱を始められた中央大学の森信茂樹教授でいらっしゃいますけれども、私どもの公明党の公明新聞という機関紙のインタビューにこんなふうに答えられていらっしゃいますね。今回の二兆円規模の定額給付金を本格的な給付つき税額控除へのステップと位置づけてほしい、こういうエールを送っていただいておりまして、国民の皆さんの御期待の強いこの定額給付金をしっかりと実施して、将来の給付つき税額控除の先駆けとしていきたい、こういうふうに考えております。

 続いて、銀行株式保有制限法の改正案の方につきまして質問をさせていただきます。

 今回、機構が株の買い取りを再開されるわけでありますが、補正予算で設けられました政府保証枠は二十兆円でございます。従来の政府保証枠は二兆円でございまして、非常に大きな額が今回設定をされておりますけれども、その算定根拠について、これは金融庁の方に確認をいたしたいと思います。

 あわせて、機構による株式の買い取り再開にはどの程度のニーズがあるというふうに想定をされているのか、この点について、提出者に確認をいたしたいと思います。

内藤政府参考人 お答えをいたします。

 昨今の世界的な金融資本市場の混乱の影響を受けまして、我が国株式市場におきましても株価が著しく変動する中、機構がセーフティーネットとしての機能を適切に果たすためには、十分な規模の買い取り枠の確保が必要と考えているところでございます。

 このような考え方に基づきまして、昨年十二月十九日の経済対策閣僚会議において決定をされました生活防衛のための緊急対策におきまして、銀行等保有株式取得機構の市中からの借り入れに係る政府保証枠を二十兆円とすることが盛り込まれたところでございます。

 この政府保証枠二十兆円の根拠でございますけれども、まず、二〇〇七年度末の直近時点の数字でございますが、この時点での銀行等は事業法人株を約十七兆円、これは、本スキームの対象となりません子会社等は除きまして計算をいたしますと十七兆円保有をしているということがまず第一点。それから、事業法人が持ち合いによりまして銀行株を約五兆円保有している、これは推計でございますが、こうした数字が推計されるということでございまして、こういった要素を勘案いたしまして、このような銀行や事業法人の保有株式額を十分にカバーし、市場に対して安心感、メッセージ性を強く発するという観点で必要と考えて、この水準にしたものでございます。

柳澤議員 ニーズがどの程度と見込むのか、こういうことでございます。

 率直に言って、金融機関の各方面から、最近ちょっと小康というかそういう市況にもなっているかとも思うんですけれども、いずれにせよ、急速に株価の変動が見られる中では、セーフティーネットが全く張られていないという状況についてはやはり不安を漏らす向きが現にあるわけでございます。そういうようなことを考えますと、やはりここでセーフティーネットを張っておく必要がある、こういうように私どもとして考えたということでございます。

 どの程度のニーズがあるかということにつきましては、我々が持っていた、十八年の四月末でしたか、それまでの状況を見ますと、これは日本銀行の買い取りのことも含めてでございますけれども、やはりかなりのニーズがあるというふうに見られるということでございます。

 それで、先ほど金融庁の方からの説明がありましたように、そういうことに加えまして、私どもとしては、安心感、それから市場に対するメッセージ性というものを考えてこの保証枠を設定させていただいたということでございます。

 今現在において、ニーズがどの程度あるかということについて確たることを申し上げるのは困難であるということを申し上げる次第です。

石井(啓)委員 それでは次に、財投特会からの繰り入れ特例法案に移らせていただきたいと思います。

 昨日の予算委員会の質疑の中で中川大臣は、埋蔵金という言葉は不適切だと。確かに、埋蔵金というのは埋めて隠してあるお金ですからね。財投特会の積立金は公にされているものですから、別に隠していないお金ですから、私も必ずしも埋蔵金というふうに言うのは適切ではないと思いますけれども、一般的に埋蔵金、埋蔵金と言われちゃっているので、私もいわゆる埋蔵金というふうに使わせていただきます。

 この財投特会の積立金、金利変動準備金を一般会計に繰り入れるということは、いわゆる霞が関埋蔵金に手をつけるということになろうかと思います。となると、ほかにも活用できる埋蔵金があるんじゃないか、こういうふうな疑問が生じるわけでありまして、今回特に特別会計の積立金に焦点を当てて確認したいと思いますけれども、特別会計全体の積立金の実態がどうなっているかということと、財投特会のほかに一般会計に繰り入れることができる積立金がないのか、この点について大臣の方から御説明いただきたいと思います。

中川国務大臣 まず特別会計は、先ほども政府答弁がございましたけれども、骨太二〇〇六でできるだけ少なくするようにという前提で我々も作業をしているところでございます。

 全体で、十九年決算で約二百兆の特別会計の積立金がございますけれども、このうち百五十兆は年金等に使われるものでございまして、これは将来百年タームで考えていかなければいけないものでございます。そのほかに、外為特会あるいは国債整理基金特会がございますけれども、国債整理基金特会に手をつけるというのは、これはなかなか難しいと先ほども申し上げたわけでございます。為替リスクにつきましても、こういう今の金融状況でございますから、非常に変動が大きいということもあるわけでございます。

 いずれにしても、特会というのは、それぞれの目的にのっとって、きちっと公にされて、そしてその目的に資するようにして使われるべきものであることは言うまでもございません。ただし、今回、財投特会については、先ほど申し上げたような事情でこれを使わせていただくということでございます。

 ほかに何かあるのかということで、私としては、ぎりぎりのところでこの財投特会を今回使わざるを得ない、あるいはまた二十一年度、二十二年度においても使わざるを得ないというふうに考えておりますが、今のところは、何かあるかと言われれば、なかなか、外為特会を二十一年度予算の中では一部使っておりますけれども、それ以外には、あるかと言われれば、いろいろ考えても今のところは頭に浮かばないというのが正直なところでございます。

石井(啓)委員 今大臣から御説明ありましたとおり、特別会計の積立金は二百兆円以上あるわけですけれども、年金等の積立金とか国債整理基金の資金というのは使いようのないお金でありますから、あとは小さなものはありますけれども、焦点になるのが今回の財投特会と、あと外為特会ということになるかと思います。特に、外為特会がどういうことか、この積立金が本当に使えないのかどうかということが今後恐らく議論になるかと思います。

 外為特会の積立金というのは、為替及び金利の変動による損失への備えということでありますが、金利の変動ということを考えると、調達しているのは短期の証券で調達しておりますけれども、運用の方は、ポートフォリオがはっきり出されていないので、どういう運用をしているのかよくわかりません。恐らく、貸付金じゃなくて有価証券で運用しているケースがほとんどだと思いますので、換金性が高いということを考えると、金利変動の損失というのは余り考えなくてもいいのかなと。主に為替の変動による損失ということかと思います。

 ただ、外為の資産を、損失が出るというのは外貨を円に戻すときに可能性があるわけですけれども、なかなか円に戻すということもめったにないというか余り考えられないので、この積立金、本当に要るのかしらという疑問もありますけれども、その点いかがでございましょうか。

中川国務大臣 もちろん、今すぐ円転するという予定はございませんけれども、まさに、金利変動準備金にいたしましても外為特会の積立金にいたしましても、変動リスクあるいは時期の違いによるリスクというものがあるという以上は、やはりそのためのリスクに備えた積立金というものは積んでおく必要があるというふうに思います。

 現に今、外為特会に約二十兆の積み立てがございますけれども、一ドル九十九円の水準で、仮にそれを全部円転した場合には正味積立金を全部使い切ってしまうということでございます。現在、一ドル九十円台の前半という状況でございますので、さっき申し上げたように、これを今すぐ円転する予定はございませんけれども、可能性がゼロかといえば、何が起こるかわからない今の世界状況の中で、やはり必要な積立金というものは外為特会においても用意しておくべきものではないかというふうに私は考えております。

    〔木村(隆)委員長代理退席、委員長着席〕

石井(啓)委員 では、最後の質問になります。

 今回、財投特会の積立金を活用しますけれども、これは本来、所要の準備率を上回る分は国債整理基金に繰り入れて国債消却に使うということでありますから、それを活用するということは、赤字国債の発行と変わりないんじゃないかという批判がございます。しかし、私は、実はそこには大きな違いがあると思うんです。

 といいますのは、仮に赤字国債の発行に頼るとなりますと、その発行額は理論上は制限はありませんけれども、特会の積立金ということであれば、その流用についてはおのずから制限がありますから、財政規律を守ろうという姿勢は全く違うということになると思いますし、新たに赤字国債を発行するとなると国債市場に対する負荷もかかるということになりますので、私は、今回の特会の活用ということと赤字国債の発行ということは全く違うものであるというふうに考えますが、その点について御答弁いただきたいと思います。

竹下副大臣 御理解を賜り、大変ありがたく思う次第でございます。

 ただ、我々としましても、非常に苦しい厳しい決断でございます。世界的に金融市場が混乱している中でございますので、税収減に対応する赤字国債に加えて、新たな政策対応として赤字国債を発行して対応していくということは、御指摘のように、市場に増発圧力というものが加わりまして、市場の混乱も含めた影響も懸念されるところでございます。さらに、総理の御指示もございましたので、対策の原資としては赤字国債に依存しないことといたしまして、臨時的、特例的に金利変動準備金の活用を行うことが適切であると判断をいたした次第でございます。

 お話がございましたように、積立金の活用はストックの取り崩しでありますので、一時的な財源であるということは御指摘のとおりでございます。

    〔委員長退席、木村(隆)委員長代理着席〕

石井(啓)委員 以上で終わります。ありがとうございました。

木村(隆)委員長代理 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 民主党の鈴木克昌でございます。

 少しお時間をいただいて、私は、財政投融資特会からの繰り入れの特例に関する法律案について、少し突っ込んでお尋ねをしてまいりたいというふうに思います。

 実は私は、この財政融資特会については少し思い入れがあります。委員の中で御存じの方もあるかもしれませんけれども、三年余り前に、私はこのことについて相当深く御質問をし、議論をさせていただきました。そのときの経緯を若干お話ししないと御理解いただけないかもしれませんけれども、いずれにしましても、この特会の積立金が過去何回使われたのか、幾ら使われたのかということを当時の谷垣大臣にお伺いしました。

 そうしたら、これはたしか昭和二十六年に始まっておる制度なんですが、半世紀の間、三回使われただけなんですね。しかも数億円、多いときでも二百数十億ということなんですね。過去三回使われただけです。詳しく言えば、四十七年、五十三年、五十四年ということなんです。しかも、今のそういった額だった。

 私が当時質問したときは、二十二兆円余りこれが積み立てられておったわけです。全くこれだけ積んでおく必要はないんじゃないか、もっと違う使い方をすべきだということを相当強く申し上げました。そうしたら、谷垣大臣は、これはいわゆる赤字の穴埋め以外には、その目的以外に使うことは断じてできないということをはっきりこの委員会でおっしゃったわけですね。このとき私は、それ以外に使えないんだ、こう大臣がおっしゃれば、これはある意味で仕方がないということだったんです。

 ところが、後段がありまして、私は十七年の十月の質問なんですが、十八年度の予算で、今申し上げた二十二兆あったのが、十二兆を返済に回されたんですよね。そして、その次の年には、先ほど来も鈴木委員から御質問がありました、千分の百を千分の五十にするということで、たしか九兆八千億、約十兆円ぐらいまた返済に充てられたわけです。

 まず一つは、二十二兆あったのを、それはそんなに持つ必要ないんじゃないかということでお尋ねをしたんですが、そのときは、必要なんだ、しかも目的以外に、返済以外に使うことはできないということをおっしゃった。しかし、その翌年、今言ったような十二兆とか、そのまた次の年には約十兆ということで返された。

 これは、返すことは別に、本来の目的かもしれませんけれども、千分の百が千分の五十になった経過というのは、先ほど自民党の鈴木委員がいろいろとお尋ねになって御答弁をされておったわけでありますが、いずれにしましても、そういう経過の中で、今回は特例法をつくって一般財源にするということなんですよね。では、一体全体、三年ちょっと前のあの議論というのは何だったんだという、私は特にこのことについては思い入れがあるわけですよ。

 千分の百から千分の五十にした、これも先ほど来いろいろな事情の説明がありました。では、今度この特例法で一般財源にして、千分の五十といういわゆる規律というものは、ではどうなっていってしまうのか。今後、こういう特例法をつくりさえすれば、極端なことを言うともう何でもありということになるというふうに、事の経過、ずっと三年半やってきた私にしてみると、そういうふうに申し上げざるを得ないわけです。

 このことについて、大臣、どんなふうにお感じになっておるのか、まずそこからお尋ねしたいと思います。

    〔木村(隆)委員長代理退席、委員長着席〕

中川国務大臣 私も、鈴木委員の今のお話をお伺いしておりまして、この過去三回というのは、多分オイルショックとか、その時代だからだろうと、今、五十四年とか五十七年とかというのを見て、多分、第一次、第二次オイルショックのときだろうなと思ったんですけれども、あのときも、ある日突然石油の値段がぼんと上がって経済が混乱してということだろうから使ったんだろうと想像しております。間違っていたら、後で委員の方から御指摘いただきたいと思います。

 谷垣大臣が、平成十七年でございますか、やりとりの中で、これは変えることができないというふうに答弁された趣旨というのは、つまり、財投特会の剰余金というのは積み立てしなければいけない、最低限度千分の百なり千分の五十なりをしなければいけませんということが一定のルールで決められて政令で決められているわけでございまして、それ以外のものについては国債整理基金の方に入れなさい、こういうふうに決まっているわけでございます。したがって、そういう前提で、これはそれ以外のものには使うことができませんというふうな御趣旨で谷垣大臣は御答弁されたのではないかと私は今思っているわけでございます。

 しかし、今回、この財投特会の金利変動準備金から第二次補正予算の財源の方に繰り入れさせていただくということを法律改正してまでお願いするほど、一年前というよりは過去半年か八カ月ぐらいの間に、世界が、そして日本の経済、生活が、激変といいましょうか悪化といいましょうか、なってきて、緊急に生活対策、雇用対策、地方対策、学校耐震化等々やるべきことをやって経済と生活を守っていかなければいけない、そして定額給付金も差し上げなければいけないということで、法律改正をしてまで、この財投特会の千分の五十を割ってすら、使わせていただかなければいけないということでございます。

 他方、では千分の五十なんかどうでもいいのかということに関しては、これはやはり中長期的に見て、専門家の方々から見て、やはり持っている財投のお金の千分の五十ぐらいは、金利変動、つまりリスク対応のために常にとっておかなければいけませんよということは、これはもうルールとして、それはそれとして引き続き我々は守っていかなければいけないというふうに考えております。

鈴木(克)委員 大臣、確かに百年に一度の危機を我々は、危機に入っておるかどうかは別としても、まさにそれを目前に、ありとあらゆることをやっていかなきゃならない、これはわかります。しかし、やはり私は幾つかあると思うんですね。だったら、今までのそういう答弁というのは実は違っていたんだということであるのか、それから、財政規律というか、いわゆる法令を超えてでも今回はやっていかなければならない状況なのかということと、もう一つは、私は後でまた順番に質問していきますけれども、このお金を今から年金の方にも使っていこうというような計画がありますよね。

 それだったら、まさに私は三年半、だからそういうふうにお使いになれるようにしたらどうですか、持つ必要ないんじゃないですか、変える必要があるんじゃないですかということを言ったにもかかわらず、くどいかもしれませんけれども、目的以外に一切使えないんだということをはっきり言っておいて、この次から次へ出てくる提案というのは、私はこれはおかしいと。もしそうであるならば、私は、今までのことは間違っておったんだということをきちっとやはりあらわしていただきたい。

 と同時に、本当にこれに頼らざるを得ない、それ以外の無駄遣いはないんだ、だからこれなんだというところも、ぜひひとつ私の悪い頭に理解をするように御説明をいただきたいと思います。

中川国務大臣 当時の谷垣財務大臣の御答弁は、当時のといいましょうか、今でもルールとしては、これはもう法律で決められていることでございますし、そうだと思っております。だからこそ、法律改正を今お願いしている。

 なぜお願いをしているかといえば、過去三回、実際使われた例があるという冒頭の御指摘、大変勉強になりましたけれども、そのときと同じような、あるいはそれ以上の、世界的そして日本的な経済の悪化、生活、雇用等の不安というものがあるからこそ、法律改正をしてまで、本来千分の五十を積み立てておくべきであろうという専門家の御判断に基づいた我々の決定を変えてまで、やはり使わなければいけない。

 そしてまた、これが平成二十一年度、二十二年度についても、今御指摘のように基礎年金の二分の一というものを、これは本来は社会保障ですから、医療も介護も少子化も含めまして制度的に、半永久といいましょうか、きちっと構築されなければいけないわけですから、こんな財源を毎年毎年手当てするわけにはいきません。

 したがって、そのときにはまた安定財源というものをきちっと確保していかないとこの社会保障の制度は維持できないわけでございますが、とにかくこの平成二十三年度までの、二十一、二十二の二年間の間の社会保障を中心とする財源、そしてまた一年前には想像できなかったような今の経済情勢、金融情勢、世界情勢というものを勘案したときに、この財投特会の、委員から見れば、本来ならば使ってはいけない、あるいはこういうことがあるのだからもっとそのときに使っておけばよかったのにというような、制度を変えておけばよかったのにというような御指摘も、確かに今から見ればまさに炯眼だなと思いますけれども、しかしその当時は、こんな世界金融危機、サブプライムが発生してアメリカの投資銀行が全部なくなっちゃうか銀行に変わってしまうかみたいな状況というのは、正直言って私には想像ができなかったわけでございますので、その辺をぜひとも御理解いただきたいと思います。

鈴木(克)委員 くどいようですけれども、ではもう一遍確認をしておきたいのですが、この千分の五十という準備率を下回るわけですよね。先ほどのお話だと千分の四十二ぐらいになるということですか、今回のこの措置で。ということは、これは特例法を通せば、いわゆる法令上の規律は問題ないのかどうかということがまず一点であります。

 それからもう一つは、そうなってくると千分の五十といういわゆる準備率というのは一体全体何なんだろうか。千分の五十の準備率を取っ払って、私が先ほど申し上げたような弾力的に使えるような仕組みにこの際しておくというようなお考えはあるのかないのか。

 以上二点、お答えをいただきたいと思います。

中川国務大臣 千分の五十を政令で決めていることと、財投で余ったお金を積み立てておく、そしてその中から千分の五十以上の部分について国債整理基金に繰り入れることができるという法律の次元とは、私は別だろうというふうに考えております。

 千分の五十というのは、中長期的に、先ほどから何回も申し上げて恐縮でございますが、金利が変動したときにロスが出る、つまり借りてきたお金が返せなくなっちゃうということが万が一起こったときのための準備金として千分の五十を積み立てておくべきであるという政令に基づくルールであり、他方、剰余金を積み立てておく、そしてまた一部を国債整理基金に、逆に言いますと移すとすれば国債整理基金にしか移せないという法律とは、私は別の次元のものであろうと思います。

 したがいまして、今回、こういう経済状況でございますから、法律改正をお願いしてまで、日本の国民の皆様方の暮らしや日本の経済を何としても危機に陥ることなく対応していくために使わせていただきたい、こういうことでございます。

鈴木(克)委員 準備率をこの際廃止して、もっとこれから弾力性を持って使えるような形にしておくというお考えはないわけですね。

中川国務大臣 廃止するというのは、要するに、もう準備率をなくしちゃって、万が一金利変動が必要なときには一般会計から随時繰り入れればいいという考えかということでございますか。

 それについては、先ほどから申し上げておりますように、中長期的な金利変動に備えるということも、特に今の財政状況からいえば、きちっとリスク対応として準備金を積んでおくということがやはり必要ではないかというふうに考えております。

鈴木(克)委員 大臣は埋蔵金というお言葉についていろいろとあるようでありますが、これは明らかに埋蔵金なんですね。世論もいわゆる埋蔵金をもっと活用せいと。恐らく自民党の党内でもそういう議論も出てきて、そういうものに対して、ここを取り崩してやっていこうという、私は一連の流れのような気がしてならないわけです。

 いずれにしましても、冒頭申し上げたように、くどくなりますけれども、過去五十年間で三回、しかも数億円、数百億円使っただけというこの事実をぜひひとつ直視していただいて、今後のありようというものを一遍検討していただく必要があるんじゃないかな、たんびこういう議論をしなきゃならないというのはいかがなものかなという思いが私はいたしておりますので、申し上げておきたいと思います。

 さて、ちょっと論点を変えさせていただきまして、今回は財政融資資金のいわゆる積立金から四兆一千五百八十億円を取り崩して、その約半分の二兆円をいわゆる定額給付金の支給財源として使おう、こういうことであります。

 これも今まで議論をされてきたわけでありますが、これは一体全体、緊急対策、いわゆる生活対策なのか景気対策なのかというところをもう一遍私は確認をしておきたいというふうに思うんですね。

 なぜこんなことを言うのかということなんですが、実は、今回の効果について、総理はたしか、実質国内総生産、GDPの成長率を〇・二ポイント押し上げる、こういうことを衆議院の代表質問でおっしゃったわけです。ところが、別の報道によりますと、〇・一%だという報道もあるわけですよね。

 一体全体どちらが本当なのかということもさることながら、本当にこれは政策目的が何なのかというところを、まず総務省にきちっと一遍ただしておきたいというふうに思います。

佐藤政府参考人 今回の定額給付金は、景気後退のもとでの生活者の不安にきめ細かく対処するための家計への緊急支援という目的を持っております。あわせて、広く給付することによって、消費をふやす経済効果も期待されます。生活対策における重要な施策の一つという位置づけをしております。

中川国務大臣 今答弁がありましたように、八月の末に緊急対策の中でこの原型とも言える定額減税というものをやろうと与党で決めたときは、あのときは石油の値段が百四十ドル、百五十ドル近くまでいって、輸入の、例えばえさとか肥料がどんどん上がってきてという状況でございましたから、物価高に対応する生活支援というような色彩が強うございました。あのときは、日本の経済そのものが、世界の方はもう大変なことになっている、何か対岸の火事的な状況であったわけでございますけれども、現時点というか、特に十月以降は日本の方も経済が急速に悪化をしてきたという新たな状況にもなってきたわけでございます。

 したがって、総理も私も申し上げておりますように、この定額給付金というのは、生活支援と、日本経済を回復するといいましょうか、に対しての効果がある、つまり、GDPの六割を占める内需というものを通じての景気回復という面も、両面あるんだろうというふうに思っております。

 〇・二と総理が申し上げましたのは、地域振興券のときの利用率を前提にして、二兆円のうちの四割が消費に回ったとして計算をしていくとGDPのプラス要因が〇・二%になるという、これは内閣府の方の統計を前提にした御発言でございます。

鈴木(克)委員 今の御説明で、当初は油も高かった、原料も高かった、そして生活対策の色合いが強かった、しかしここへ来ていわゆる景気対策だ、こういうことだというふうに思うんですが……(中川国務大臣「両方」と呼ぶ)もちろん両方でしょうけれども、色合いとしては景気対策の方が強くなったということだと思います。そこで、景気対策ということになると、もっと効率のいい、国民が望む景気対策がたくさんあるんじゃないかということを申し上げたいわけです。

 私は、昨年の災害特別委員会で、むしろこの二兆円を、全国にある小中学校で耐震工事の済んでいないところ、約一万校ある、そこへ二兆円を配れば各校当たり二億円ですから、これは本当にすごい景気対策になるんじゃないか。

 それから、私は地方自治体の長をやってきたわけですが、今全国の自治体病院が赤字ですよね。これは二兆円を配れば一挙にその赤字を解消することができるわけですよ。だから、抜本的に日本の医療を変えることもできるわけです。そのほかに、例えば、介護に回すとか、それから環境問題とか農林水産とか、もう本当にいろいろと考え方としてはあると私は思うんですよね、景気対策ということを中心に考えていくならば。

 そういうような使い方というのを全くお考えになっていないのかどうか、その辺は一度ぜひお聞かせをいただきたいと思います。

中川国務大臣 鈴木委員の全くおっしゃるとおりでございます。

 今回の第二次補正予算におきましては、総額四兆七千億円ほどでございますけれども、その中には、介護従事者の処遇改善と人材確保対策、出産・子育て支援の拡充、障害者支援の拡充、医療対策、中小企業対策、高速道路の大幅値下げ、強い農林水産業の創出、住宅投資の促進、学校耐震化、集中豪雨・耐震対策、地域活性化臨時交付金等々と並んで定額給付金がございますので、そういう趣旨でこの二次補正予算を組ませていただいております。

鈴木(克)委員 もちろん、メニュー的にいろいろあるということは私もわかってはおるわけですが、問題は費用対効果の問題ですよね。だから、定額給付に回す二兆円もそういった方でお使いになった方がさらにいわゆる景気対策、経済波及効果があるのではないかということを申し上げたいわけであります。したがって、我々は補正予算の修正案を出させていただいておるというのは御案内のとおりでございます。

 そこで、内閣府も来てもらっておると思うんですが、先ほど大臣は、総務省の調査で〇・二%の……(発言する者あり)内閣府ですか。内閣府はむしろ〇・一%ということを言っておるんじゃないですか。(発言する者あり)改めたんですか。改めた、間違いないですね。その辺はもう一遍ちょっと確認をしておきます。

梅溪政府参考人 お答え申し上げます。

 実質GDPの押し上げ効果が〇・一%ポイント程度とかつて示したことがございます。これは、内閣府におけるマクロ計量モデルの個人所得税を名目GDP一%相当額だけ減税した場合の試算を用いた結果でございます。

 先ほど来答弁が続いておりますが、今回の定額給付金は、課税最低限以下の方を含め、所得の低い方にも定額で支給されるものでありますので、私が申し上げましたマクロ計量モデルの個人所得税減税の乗数を用いるのではなく、過去の地域振興券の例を参考にして、定額給付金のうちおおむね四割程度が追加的な消費に回ると想定いたしまして、来年度の政府経済見通しにその経済効果〇・二%程度を織り込んで見通したものでございます。

鈴木(克)委員 いずれにしても、政府の中で見解が違っておるということで、今統一見解にしてもらったということなのかもしれませんけれども、私はやはり、そんなに思われているほどの効果は出ないんじゃないか。

 それは、言うまでもありませんけれども、国民の側から見ると本当に先行きが不透明ということなんです。そうなると、確かに、使ってください使ってくださいと総理もおっしゃっていましたけれども、御自分はどうされるかわかりませんけれども、いずれにしても、国民の側からしてみれば、これだけ先行きが見通しが暗いということになれば、やはり財布のひもを締めざるを得ないということですから、私は、今お考えになっているような波及効果というか景気対策にはなっていかないんじゃないかなというふうに思っております。

 それから次に、先ほど来のお話で、基礎年金の国庫負担二分の一への引き上げということで、この財源として、先ほど来のお話の財政融資資金の積立金、いわゆる金利変動準備金を二十一年度及び二十二年度とお使いになっていく、こういう報道を見ておるわけですけれども、この方針が事実であるかどうか、一度確かめたいと思います。

中川国務大臣 平成二十一年度予算につきましては既に閣議決定をしておりますが、この中で、基礎年金の国庫負担を二分の一にするための財源として、この財投特会のお金を使うということを決めております。それから、二十二年度につきましても、二分の一にするための方のルールで、二〇一一年までにきちっとした安定財源を確保して、そして二分の一にする。

 二〇一一年以降は安定財源がございますけれども、もう来年度から二分の一にしていかなければいけないということでございますので、その間はどうしても、二十一、二十二というものについてはどこかから財源を持ってこなければならないわけでございます。二十一年度については、財投特会からのお金等を含めてこの財源というものをつくっていかなければいけないと考えておりますし、多分二十二年度も、やはり同じような作業をしていかなければいけないことになるんだろう、こういうふうに思っております。

鈴木(克)委員 そうなりますと、二十一年、二十二年は今言われたような状況であるが、それ以降についてどのようにお考えになっておるのか、この国庫負担の二分の一への引き上げの分を財源的にどのようにお考えになっているのか、御答弁いただきたいと思います。

中川国務大臣 それは、この前決定いたしました中期プログラムで示されておりますけれども、二〇一一年に安定的な財源をもって基礎年金の二分の一というものにして、安定的、恒久的と言ってもいいんだろうと思いますけれども、そういう制度にしていきましょうということであります。そのための財源としては、消費税を含めた税の抜本改正というものをしていかなければならないということでございます。

 ただし、その場合には、今のような経済状態から一刻も早く景気を回復していって、例えば税収の観点からも、あるいは国民経済、あるいは国民の暮らしの観点からも含めて、景気、経済がよくなるという前提で、今申し上げたような形で、二〇一一年以降はそういう形で二分の一にしていくというふうに、我々は今そういう方向で決めたわけでございます。

鈴木(克)委員 消費税のお話が今出てきたわけですが、これは景気が回復をしたらという前提がたしかついておったと思うんです。消費税は我々、抜本的に今導入すべきではないという考え方なんですが、いずれにしても、景気が、では本当にその時点で回復をしていくというふうにお考えなのか、それから、いわゆる世界的な金融不安の状況がこの三年以内に回復するというのは可能なのか。大臣は、どんなふうに今その点をお考えになっておるんですか。

中川国務大臣 まさにそこがわかれば、私も、また本委員会も苦労しないだろうというふうに思います。

 冒頭、鈴木委員がおっしゃられましたように、平成十七年時点での鈴木委員と当時の財務大臣とのやりとりの中で、あるいは私も含めて、平成二十年から急速に景気が悪くなる、世界じゅうで金融機関が破綻をする、あるいは大企業が倒れていく、あるいは倒れる可能性があるというような状況。日本においても、金融の破綻はございませんけれども、急速に経済が悪くなってくる、昨年の一時期は本当に国内においても資金繰りの問題が出かかったぐらいでございますから。それだけではない、過去オイルショックもそうだったと思います。

 したがって、二〇一一年に、おまえ、本当に日本の経済がよくなっているのか、世界の経済がよくなっているのかと言われれば、それは私も、まして専門家でもございませんし、そうだと断言することはできません。しかし、とにかく、二〇一一年どころか、もう来年にも、あるいはことしにも、日本が景気回復をしていくんだ、あるいはまた生活が少しでもまたよくなっていくんだというために、我々は、あらゆる政策手段、あるいはまた財政手段、あるいは制度等々を発動して、一刻も早く、何も三年後によくなればいいんじゃなくて、一刻も早くよくなっていくためにあらゆる手段をとっている。その一つが、この第二次補正予算でございます。

鈴木(克)委員 大臣のおっしゃったその思いというのは、私もよしというふうに思いますし、当然国民の一人として、また政治家の一人として、かくあってもらいたいし、かくあらねばならないということを考えておるのは一緒なんです。

 またここで少し視点を変えさせていただいて、例のプライマリーバランスについてお伺いをしていきたいというふうに思うんですが、二十年度の補正で、七兆一千億ですか、減額修正を余儀なくされておるということです。それから、二十一年度の当初でも四十六兆一千億というふうに聞いておるんですが、そうすると、二十年度の当初に比べて七兆四千五百億下回るということになりますよね。

 そういう状況になっていくと、プライマリーバランスは果たして平成二十三年度、黒字化できていくのかというところ、大臣の現在の御見解を聞かせていただきたいと思います。

中川国務大臣 御指摘のように、今御審議をいただいております第二次補正予算においても、当初に比べて減収見積もりが七兆一千二百五十億ということでございます。二十一年度の予算においても、厳しい税収を前提にした予算ということになるわけでございます。そういう中で、二〇一一年にプライマリーバランスの黒字化ができるかといえば、現下のこの経済の悪化という状況の中で、率直に申し上げて、日に日に厳しくなってきているというのが正直なところでございます。

 しかし、他方、先ほども申し上げましたけれども、それでは、プライマリーバランス、つまり、与謝野大臣のお言葉をかりれば初期的財政収支というものの黒字化という目標を捨てていいかということになれば、やはりそれは、将来に対する責任というものも我々は負っているわけでございますので、そういう意味で、先ほど申し上げましたが、では新しい計画をつくるかというには余りにも今条件が不安定過ぎて計画というものをつくりにくい、財政健全化はもとよりやらなければいけないということでございますので、現時点での二〇一一年の黒字化という今までの方針、これは変えておりません。

鈴木(克)委員 しかし、後になって、結果的にやはり二十三年度のプライマリーバランスの黒字化が難しかったと言うぐらいなら、今むしろ、非常に厳しい状況だ、したがってこれを、二十三年が無理なら例えば二十四年、二十五年にしていくということを明確にお示しになった方がいいと私は思いますよ。

 ここであいまいな、努力をします、目標は目標で頑張っていきますということではなくて、むしろ新しい旗幟鮮明な旗をきちっと立てて、それに向かってまた国民みんなで努力しましょうというふうな形の方が、今の世情というか世相に対してはるかにその方が効果的であるというふうに私は思いますけれども、大臣、いかがですか。

中川国務大臣 鈴木委員は、平成二十年度第二次補正予算におけるこの財投特会の繰り入れの法律をわざわざつくってなんてということをやらないでいいように、既に平成十七年において予測されていたということが結果的にわかるわけでございますから、そういうことも今後、ひょっとしたらまた鈴木委員の御指摘のとおりになるかもしれませんし、さっき申し上げたように、目標そのものが日に日に困難になってきていることも率直に言って事実でございます。

 しかし、では、ちょっと延ばさせてくださいというと、では一年なのか二年なのか、それでまた一年なのか二年なのかと。こういうことにするということも、我々としては決して責任ある対応とも言えませんし、また、さっき申し上げたように、それはそれとして、とにかく一日も早く景気をよくするということが我々にとっての最優先の課題である。

 率直に言って、二〇一一年に黒字化することも大事ですけれども、今景気をよくしなければますますその達成が難しくなっていくということでもございますし、何よりも、日本経済、国民の暮らしを少しでも早く、少しでもよくしていきたいというためにこの補正予算の御審議をいただいておるということを、ぜひとも鈴木委員に御理解いただきたいと思います。

鈴木(克)委員 時間も迫ってまいりましたので最後にさせていただきますが、私は、少し大臣と見解を異にするところがあります。一つの旗を掲げてきたわけです、二〇一一年、プライマリーバランスを黒字化するという。これは、国民もそういう方向で見てきたし、努力をしてきたわけですが、ここへ来てやはり明らかに難しいということであれば、別の形のものを掲げて、新たにこういう方向で進みましょうと。

 アメリカのオバマ氏が本当にはっきり言っていますよね。この数年間は一兆ドルの財政赤字が発生する可能性があるんだ、それでも国民の皆さん、一緒に努力をしてください、こういうことを言って、現在、八二%ですかのアメリカの国民が、わかった、ではオバマを信じて一緒に行こうじゃないかという方向が出ておるわけですよ。私は、やはりそこだと思うんですよ。そこを、新しい旗を立てられるかどうか、ここにやはりかかってきておると思うんですね。

 私は、財務大臣に、ぜひひとつ新しい旗を掲げて、国民に実態を理解してもらって、そして協力をしてもらうということを宣言してもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。

中川国務大臣 ありがとうございます。大変いい発言の機会を与えていただきました。

 多分、アメリカの経済というのは、日本の二・五倍とか三倍とかというGDPベースになってまいりましたけれども、アメリカはことしだけでも相当の対策をとっているわけでありますし、オバマ新政権が、一兆ドル、百兆円規模の対策を単年度とは言わずやるんだというふうに宣言をされております。

 翻って、我が日本におきましても、麻生内閣になりましてから幾つかの対策、そして一次補正、二次補正、そして二十一年度予算に係る分もございますけれども、総額七十五兆円規模の緊急対策を既に決定しているところでございます。

 きのうの報道によりますと、ある民間の経済機関、シンクタンクによりますと、この七十五兆円がうまく回転していけば、GDP押し上げ効果が一・五%、あるいは雇用で四十一万人分の雇用が確保できるというような報道もあるわけでございまして、ぜひともこの二次補正予算が一日も早くひとつ成立をして、そしてまた間断なく二十一年度本予算につなげていって、間断なく対策を、これはもう与野党のレベルを超えて一緒になってやっていくことが、国民が一刻も早く安心な生活、そして雇用ができるのではないかと私は思いますので、私も、またきょうもいろいろと鈴木委員に教えていただきましたけれども、引き続き御指導のほどをよろしくお願い申し上げます。

鈴木(克)委員 終わります。

田中委員長 次に、階猛君。

階委員 民主党の階猛でございます。

 本日は、お忙しい中、与謝野大臣にも来ていただきました。ありがとうございます。また、御尽力いただきました委員長初め各理事の皆様、本当にありがとうございます。

 早速、与謝野大臣に御質問させていただきたいと思っております。

 その前にまず、私ごとで恐縮なんでございますが、私は東大の野球部の出身でございまして、与謝野大先輩のはるか後輩でございます。与謝野先輩はマネジャーということで、僕はピッチャーだったんですけれども……(発言する者あり)今おっしゃったとおりで、六大学野球のマネジャーというのはプレーヤーよりも偉いんです。キャプテンよりも偉いのがマネジャー。マネジャーというか、正確には主務という言い方をされます。

 与謝野大臣も、以前、日経新聞の「こころの玉手箱」というところで東大野球部時代のことを書かれていました。私も、非常に感激しながら読ませていただきました。その中で、経営者のような感覚でマネジャーの仕事をされていたということを言われていました。

 翻って、今の内閣の状況を見ておりますと、まさに今、麻生さんは内閣でいえばキャプテンみたいなものでしょうけれども、キャプテンより偉いマネジャーの地位にあるのが与謝野さんなんじゃないかなというふうにも思えるわけです。言わせていただければ、与謝野さんはまさに内閣の中では本当に中心的な仕事をされていらっしゃると思うんですけれども、名実ともに中心となるお考えとかあられるんじゃないかと思いまして、その辺をまずお聞かせ願えますか。

与謝野国務大臣 麻生総理に任命された閣僚ですから、麻生総理の大きな方針に従って自分の守備範囲の仕事をきっちりやるというのが私の信念でございます。

階委員 そういう中で、今回、麻生内閣の一員として、定額給付金についてもいろいろと御議論があるわけでございますけれども、その定額給付金に関して与謝野大臣のスタンスをお聞かせ願いたいんですが、当初から、高額所得者がもらうのはおかしいということをおっしゃっていました。

 六大学野球に例えて言えば、東大などというのは弱いわけですよ。法政とか明治とかは最初から強い。法政とか明治とかと同じ食事をして東大が勝てるわけないわけですよ。だから、リーグの発展というかリーグの活性化とか、そういう観点からいえば、やはり東大のようなチームにたくさんいいものを食べさせて、そして東大を強くする、そういう方がいいわけです。

 ちょっと例えがあれですけれども、経済も同じことでございまして、強いものと弱いものと同じように給付をしていても活性化にはつながらない。やはり、格差の是正ということを図って、弱いものに厚く給付をする、それが本来のあり方なのではないかということを、多分与謝野さんも、東大野球部の経験なども踏まえて、頭の中のどこかにあって、高額所得者がもらうのはおかしいというようなお考えを示されたのではないかなと勝手に想像しております。

 ところがその後で、景気対策であるとか、あるいはきょうも公明党の方からもお話がありましたとおり、給付つき税額控除、こういうようなお話も出ております。

 結局のところ、こういういろいろな議論がある中で、どういうふうな目的であるとお考えになっているのか、そこをまずお聞かせ願えますか。

与謝野国務大臣 もともと、この件が出てまいりましたのは八月の末、原油価格の高騰、また穀物類の高騰、食料高、こういう中で、やはり生活支援というものが必要だと。そのとき出てまいりましたのは、定額減税をやるべし、こういう意見だったわけでございます。

 ところが、議論をどんどん進めてまいりますうちに、定額減税というのはやはり難があるだろうと。それは一つは、課税最低限以下の方に定額減税の効果が及ばないという部分と、仮に課税最低限以上であっても、高い所得税を払っておられない方にもまた効果全部が及ばない、しからば一律給付の方がすぐれているのではないかということです。

 議論の過程で、それではやはり所得制限を設けた方がいいのではないかという意見も出ましたし、私もそういう意見の持ち主でございました。ただ、これを実施するとなると、所得制限を設けて一律給付というのは非常に難しいということが判明をいたしました。

 これは地方自治体が窓口になって給付の実務を行うわけですけれども、地方自治体は所得に関する資料を持っていないということもありますし、一体どの年度の所得をいうのかということもわからない。そういういろいろな難点がありましたし、また、夫婦で共働きの場合はどうなるのかとか、そういう極めて技術的な難しさがありましたので、一律給付にしようということになったわけでございます。

 これは、制度としては受け取ることも受け取らないことも全く自由でありまして、それは受け取る方の、あるいは受け取らない方の自由なる意思に基づくわけでございまして、あんたは受け取るのか受け取らないのかというような話とは全く違う話だ、そのように思っております。

階委員 もう一つ、法案の内容に入る前にお聞きしたいのは、今回の金融危機についてのお考えです。

 十年前にも金融危機というのがございました。先ほど、「こころの玉手箱」のお話をしましたけれども、その記事の中で大臣も触れられているのは、長銀の元副頭取でおられました上原さんのことです。私も長銀でその上原さんには大変お世話になって、経営破綻の後にみずから命を絶たれたときには本当に私もショックで、以来、私は、何とか上原さんの無念を晴らさなくちゃいけない、まさかこういう立場に僕がなるとは思っていませんでしたけれども、そのときは本当にそういう思いでいたわけでございます。

 そういう意味では、本当に与謝野さんも同じ気持ちでいらっしゃるんだろうなと思いながら、十年前の金融危機のことを思ったりするわけでございますけれども、それから十年たって、また同じようなことが繰り返されているわけでございます。

 本当に、こういう危機はもう二度と繰り返したくないというふうに思いながらもこういうことがあるわけでございまして、こういう危機が二度と起きないためにどういうことを我々政治としてやっていく必要があるのかということをひとつお聞かせ願えますか。

与謝野国務大臣 前回の金融危機と今回の金融危機の全く違うところが幾つかあると思っております。前回は、日本独自の金融危機であった。今回は、アメリカやヨーロッパを中心としたところの金融・証券の危機から日本にも信用不安という形で伝わってきた金融危機だと思っております。

 前の金融危機のときには、やはり日本の銀行それ自体の資本、財務、これが大変悪くなっていた。しかし今回、前回に比べますとはるかに日本の金融機関は健全であるというところが全く違っておりますけれども、不安の連鎖というのはやはり起きているわけでして、短期市場での貸し渋り現象、あるいは中堅企業が黒字なのに借りられないとかいろいろな現象が起きていまして、こういう危機に至りましたときにはやはり公が、公と申しますのは日本の中央銀行たる日本銀行、あるいは日本政府自体がきちんと行動を起こすべきだというふうに思っております。

 ただ、この際はっきりしておかなければならないのは、やはり金融も実業の部分と虚業の部分があって、欧米の諸銀行、諸証券会社、特にインベストメントバンクは、実業というよりは虚業の方に走り過ぎていたのではないかという感じがいたします。日本の銀行あるいはインベストメントバンクは、余りそちらの方に行く暇がなかったのか、行く度胸がなかったのか、行く考えがなかったのかわかりませんけれども、行かなかったというのが、現在私が感じているところでございます。

階委員 ありがとうございます。

 法案の内容に入りますけれども、今回の財投特別会計の積立金の使い方についてなんですけれども、先ほど来、埋蔵金という表現でも言われていますので、埋蔵金という言葉を私も使わせていただきますけれども、議論を二つに分けて考えるべきだと思っております。まずもって、この積立金は使えるのかどうか。もう一つは、使えるとして何に使えるのかという二つに分けて議論させていただきたいと思います。

 まず、前者の、使えるかどうかということなんですけれども、ここに与謝野大臣の著書、「堂々たる政治」というのを持ってきました。百六十五ページのあたりにこの積立金について書かれているところがございまして、「財政投融資は、独立行政法人などに長期固定金利で資金を貸す仕組みである。金利が急上昇して逆ザヤになれば、損失が出る。こうした金利変動リスクに備えるのが、財投特別会計の積立金である。」要は、埋蔵金のようなものではないということを言われています。

 この積立金を使うということについて、これは間違っているかどうかということについて御認識を伺ってもよろしいですか。

与謝野国務大臣 特別会計には絶対手をつけてはいけないものがあると私は思います。例えば、年金特別会計のお金は国民からお預かりしている特別会計のお金ですから、こんなものに手をつけるわけにはいかない。地震保険特会というのがありますけれども、こんなものも、地震のときに備えたお金ですから手をつけてはいけない。本来、特別会計のお金には手をつけてはいけないというふうに私は思っております。

 今回使います財政投融資特別会計のお金は一回使ったことがございますけれども、そのときの使い方は、ストックからストックへという原則で使っております。今回はストックからフローに使うということで、果たしてこれは許されるのかどうかという御趣旨の御質問だと思いますけれども、歳入がこれだけ落ち込んでいる、経済危機に直面をしているということ、また財政規律を辛うじて維持するという観点から赤字国債は出したくないということで、財政投融資特別会計の中の金利変動準備金の一部を使わせていただく、しかも使わせていただく先は、国民年金に入れるお金と、それから今回の給付金であって、辛うじて許していただける限度ではないかと私は思っております。

階委員 今、後段の方の質問にも答えられていると思うんですね。

 そもそも、金利変動準備金というのは金利のリスクに備えるものですから、それを千分の五十というぎりぎりのところまで減らしていたわけですけれども、その千分の五十をさらに下回って使うというのはそもそもできないんじゃないか。先ほど、特別会計にも使えるお金と使えないお金があるとおっしゃっていましたけれども、その使えないお金に手を出したんじゃないかというふうに思うんです。

 その使えないものに手を出したんじゃないかということについて、どういうふうな御認識であるのかお聞かせ願えますか。

与謝野国務大臣 金利変動準備金はある一定の見通しを持って決めているわけでございまして、現在の見通しでは、この金利変動準備金のお金を使わせていただいても、リスクに対応できる水準は残るという考え方であると考えております。

階委員 ということは、千分の五十を現在のリスクに対応するような数値に変えるというのが本来のやり方ではないでしょうか。

 これだけ財源が必要だからこれだけ使いますというのはちょっと筋が違うような気がしますけれども、千分の五十を千分の四十にとか、そういうふうに下げていくのが今までの経緯からしてもあるべき姿ではないでしょうか。

中川国務大臣 特会のあり方というのは、今与謝野大臣から答弁があったとおりでございます。

 今回、今大臣からもお話がありましたように、やむを得ざる措置として法律改正をして、つまり、多分本来使っちゃいけないんだろうと思うんですね。千分の五十であろうが千分の百であろうが、余った部分は国債整理基金に入れなさいという法律になっているわけですから、それ以外には法律上は本来使ってはいけないというものを今回は、さっき大臣もおっしゃられたように、国民生活、日本経済のためにやむを得ざる措置として、法律改正をお願いしてまで使わせていただくということでございます。

 しかし、先ほども申し上げたように、それと、中長期的な金利変動に対するリスクのためにとっておくお金として必要な最低限のもの、つまり千分の五十を維持するか維持しないかということとは別の問題でございまして、千分の五十を維持するという基本といいましょうか、我々、政令としてみずからに決めておりますその水準を変えていいということとは別の話だというふうに理解しております。

階委員 そこは異論もありますけれども、百歩譲って、そこは緊急の事態だから使いますということにしましょう。

 問題は使い道なんですけれども、その取り崩したものを、先ほど与謝野大臣も、ストックからストックへという原則がある、積立金は借金の返済に充てると。もう一つ、ストックからストックへということで考えるとすれば、フローの消費に回すのではなくて、国の財産として残るものに使う、それもある意味ストックからストックだと思うんですね。ですので、今回のやり方というのは、そういう使い道の観点からも、ストックからストックへの原則をストックからフローへというふうに変えているという意味でもおかしいと思うんですが、与謝野大臣、いかがでしょうか。

与謝野国務大臣 先生のおっしゃる意味はよくわかりますけれども、今は、極端な歳入欠陥が生じている、また赤字国債はなるべく出したくない、金融情勢は御存じのような状態だ、経済はどうなるかわからない、こういうときですから、異例のこととしてこれを使わせていただきたいという法律をお願いしているわけでございます。

階委員 率直なお答え、ありがとうございます。

 本当に、私のような若輩に対して大先輩からいろいろとお答えいただいて、ありがたかったと思っております。私も、与党と野党という立場で余りお話しする機会がないのでございますけれども、本当に、与謝野大臣という方が野球部の先輩にいるということを誇りに思っています。ぜひ今後ともよろしくお願いします。済みません、私ごとで恐縮でございます。

 ここまでで与謝野大臣への質問は終わらせていただきますので、もし御都合があれば……。

 それでは引き続きまして、持ち合い解消の話に移っていきたいと思います。

 持ち合い解消といいますか、株式保有制限法の改正案の方でございますけれども、これは議員立法ということでございます。

 この法案なんですけれども、私、この法律ができた当時は銀行におりました。平成十三年だったと思います。当時は、持ち合い株のリスクということが非常に言われていました。銀行が自分の自己資本に比べてたくさん株を持っている、それを持っていることによって、株価が下がったときに大幅な含み損になって、そして財務体質に悪影響を及ぼすということで、当時は各行とも、いかにしてこの持ち合い株を減らしていくか、こういうことが大目標であったわけです。

 その大目標を実現するためには、何といっても市場がそれを吸収するだけの力がなくてはいけない。ところが、銀行が持っている株というのはたくさんありますから、なかなか吸収できるような余力はないということで、こういう保有機構ができたということでございます。つまり、銀行が自己資本の範囲にまで株の保有量を減らしていく、その手助けをするために機構はつくられた、こういう認識がございます。

 資料をお配りしております。一枚目をごらんになってください。

 一枚目を見ていただくと、今回取得機構に対して売却を予定している各金融機関の業態というのが一番左側にございまして、その各業態が持っている株の保有額というのが真ん中の欄、縦一列、そして、その各金融機関の自己資本額というのが一番右側の列、こういうふうに並んでおります。

 そして、見ていただくとわかるんですが、真ん中の欄の一番下の欄を見ますと、全金融機関の合計で、株式の保有額が十七兆円である、自己資本がそれに対して約四十兆円だ。これは二十年三月期現在の数字でございます。ということは、もう自己資本の半分以下の水準まで株の保有量は抑えられている。つまり、当初の、この法律ができた平成十三年当時の目的は既に達成されているわけです。ということは、目的が達成されたにもかかわらず、この期に及んで株の取得を再開するというのはおかしいのではないかということです。

 この点について、ぜひ立案担当者の方から御意見をお聞かせ願いたいと思います。

野田(毅)議員 お答え申し上げます。

 今御指摘ありましたとおり、この表で見ますと、主要行等については二十二・五兆に対して十一・七兆、やはり多いですね。ですから、やはりこれは、決してこれでいいということではないのでしょう。

 特に、先ほど冒頭に柳澤先生からも趣旨説明で申し上げましたが、今日の経済情勢、金融情勢はまことに異常な状況にある。そういう中で、少なくとも、いわゆるPBRが一を割っているような銘柄が多数出てきているという、しかもその原因が海外の投資ファンドの換金売りだとかそういうことによってかなり市場がオーバーシュートしている、非常に変動幅が激しくなってきている。そのことによって金融機関自身の財務状況も激変するわけだし、それに伴って過度な信用収縮ということ、特に決算期を展望しながら、株価がさらに先行き下がっていくぞという展望を持ったときには、かなり足元、売り急ぎということも当然起き得るわけだし、しかも減損処理をしなきゃならぬというような話になるとますますそれに拍車がかかっていくということは、当然、金融機関に在籍された階委員であればおわかりいただくことだと思います。

 そういう点で、未然に異常な変動幅を極力除去できるような方策はないのかということが基本で、今回、そういったことのないように、できれば株式市場の市場取引の外で、市場に影響を極力与えないような形の中で、市場外で買い取りをしていくということによって対処するということで今回の提案ということにさせていただいたところでありまして、これでもってセーフティーネットの一翼を担っていくということにしていくということでございます。

 なお、冒頭おっしゃいましたが、もともと、この金融機関の株の保有制限の話は、十五年ぐらい前までよかったんですよね。逆に言うと、持ち合い株のスタートのときには取得価格は低かったわけで、言うなら、それを益出しのために高い取得価格に切りかえてしまった。そのことが、銀行の保有株の取得価格が高どまりしてしまっている。という幾つかの変遷の中で、その時点における銀行の持っている保有株をこれ以上、その保有株によって銀行の経営状況にダイレクトに悪影響を及ぼさないようにしようということが趣旨であの保有制限ということになり、それを株価に悪影響を与えないような形でいくために保有機構をつくってきたという背景であったということも頭に置きながら、今回の買い取り機構の機能を拡充するということの提案をしているということであります。

階委員 私、銀行時代に総合資金部の政策投資担当というところで、まさに株の持ち合いをするところ、持ち合い株式を売ったり買ったりするところにおりました。それで、今おっしゃったような、銀行が持っている株が多過ぎるかどうかというところもさんざん議論して、当時は、自己資本の比率まで下げましょうということでいろいろなオペレーションをやっていました。この辺は細かくなりますので割愛して次に行きますけれども、そういうことをやっていたわけです。

 今の御答弁にもありましたけれども、株価の急激な変動、下落を抑えるということであれば、今の相場を見ておりましても、買い取り対象を持ち合い当事者に限定するのは必ずしも適切じゃないのじゃないか。

 それは、まず一つの理由としては、持ち合い当事者に限定するということは、事業会社の側から見ると、上場している会社は、自分の株が上場しているから持ち合いされているわけですよ。ところが、大多数の中小企業、非上場の会社については、自分の株を持ってもらうことはできないというか、市場で売却する株は持ってもらうことはできない。ということで、上場会社と非上場会社との間で売却機会を差別することになります。極端に言えば、法のもとの平等の原則にも反するのじゃないかと思うんですけれども、なぜ持ち合い当事者に限定しなくてはならないのかということをお聞かせ願えますか。

柳澤議員 我々は、株価が確かに下がることが銀行の財務状況に大きな影響を与えて、それが銀行の仲介機能を著しく阻害する、こういうことから、株価に対して非常に大きな関心を払っているわけでございます。しかし、さればといって、私どもは、株のようにマーケットがしっかりしていて自由に株式の取引ができるというところで例外をつくるということについては、やはり非常に慎重でなければならない、このように考えているわけでございます。

 そういう意味で、今回、事業会社が、銀行が事業会社の株を売るに先行して、みずからの保有に係る銀行株を機構に対して売却するということを認めることにいたしましたけれども、それはあくまでも持ち合い関係にある銀行の株に限るべきだ、このように判断をしたわけでございます。

 それも、今申したように、銀行株についてはどの事業会社もこれを機構に売ることができるなどというようなことになって、銀行株について、あたかも市場外の取引が主流になるというようなことは断固あってはならない、このように考えて、そういう制約を引き続いて維持するということにいたしたわけでございます。

階委員 ということは、合理的な差別ということになるわけですか。これはおかしいと思いますよ。

 本来であれば、資金繰りに困って、持っている銀行株、換金性の高いものを売りたいのはむしろ中小企業、上場していない中小企業だと思いますよ。むしろ、そういうところに売却の機会を提供すべきであって、これだと大企業だけが機構に売却できる。この売却には手数料も何にもかからないんですよ。ただで売却できますよ。一般の中小企業がもし銀行株を持っていても、証券会社に手数料を払わないと売却できないですよ。

 これは、中小企業に対しては厳しい、売却の機会を制限するということで、私は、これは合理的な差別、合理的な区別とは言えないんじゃないかと思いますけれども、もう一度御見解をお願いします。

柳澤議員 これは、先ほど階委員の方からは、極端に考えると法のもとの平等に反するとも言えるのではないかという御指摘をいただきました。

 しかし、私どもは、これは人的な差別をしているものだとは考えておりません。企業によっての差別ではなくて、事業会社が持っている銀行株につきましても、持ち合い関係にない銀行株については買い取りを求めることはできないということになっているわけでございまして、やはり我々が、銀行株について何か別のマーケットを設けるというような事態に至らないためには、このことをもって一つの限界を画しておくのが適切ではないか、このように考えたということでございます。

階委員 今僕が不合理な差別という見解を申し上げた背景には、今までは、銀行から売られました、その見返りに売りますということだから、おっしゃるような持ち合い株の当事者だけに限るのもわかったわけですよ。ところが今回は、売るときは、事業会社の側から、銀行が売るかどうかにかかわらず一方的に売ることもできるわけですよ。

 そうすると、はっきり言って、持ち合いされていない中小企業だって売りたいニーズはあるわけですし、もし今回のような改正にして、事業会社からも先行して、銀行が打ち返しで売ってくるかどうかに関係なく売れるのであれば、ほかの事業会社、中小企業、非上場の会社も売れるようにするのが筋なんじゃないかなと思うんですけれども、どうですか。

柳澤議員 中小企業の持つ銀行株について、銀行株が下がっていくというような状況のとき、あるいはみずからが流動性を必要とするというような状況のときに、そういう資産の処分をしたいというニーズがないと我々が判断しているわけではありません。それはまた、別途手当てされるべきことであるというふうに私どもは考えているわけでございます。

 この銀行等保有株式の買い取り機構の仕組みをもって、先ほど来申しておりますように、いわば株式のような、全くある意味で確立された自由市場というものの原則は維持しつつ、今回何ができるかということで限定的にこのことを考えた場合には、今言ったような持ち合い関係というものをきちっとそこで歯どめとして考えていく、こういうことが適切であるというふうに考えたということでございます。

階委員 持ち合い当事者に限定するということですけれども、果たして、持ち合い当事者に株式売却のニーズはあるのかどうかというのも、私は疑問に思うわけです。

 一時は、株を持っているのはリスクが高いということで持ち合い解消の動きもありましたけれども、今ではむしろ、敵対的買収の防衛という観点や、あるいは売却するということは、もしそこに含み損があれば、損が実現して決算上はマイナスになるわけです。そういうことを回避したいということからすれば、むしろ今の状況で、持ち合い当事者で株を積極的に売りたいという人は少ないんじゃないかなというふうに思うわけです。

 むしろニーズがあるのは、換金の関係で売りたいと思っているのは、生保とか損保とか機関投資家、あるいはヘッジファンド、そういったところじゃないかと思っていて、ターゲットが違うような気がします。株式相場の下落を防ぐという目的との関係でターゲットが違うような気がしますが、その辺についてはいかがでしょうか。

柳澤議員 今回の目的が、売却のニーズにどうこたえていくかということではなくて、銀行株、銀行の持っている保有株が連鎖的に価額の低落を来すというようなことについて、それが信用収縮を最終的には招いてしまう、これをどう防ぐかということが我々の今回の措置の基本的な理由であります。

 加えて、もちろん、事業会社が持っている銀行株の株価が低落していくこともまた非常に銀行の信用ということにかかわりを持って、例えば流動性の確保に懸念をもたらすとかそういうようなことがありますので、これらいずれにしても、金融機関あるいは銀行の信用秩序の維持、あるいは金融機関による業務の正常な運営ということを基本に置いて今回の仕組みが考えられているということでございまして、ぜひその点を御理解賜りたいと思います。

階委員 資料二をごらんになってください。

 今回、二十兆という政府保証枠が設けられたわけです。今までは二兆円でした。それで、二兆円の根拠をこの資料二では言ってあるわけでございます。先ほど資料一では、もはやティア1を大幅に保有額が下回っているということを示しましたけれども、この資料二では、十三年三月末当時、ティア1、自己資本を超えて銀行が持っている株の金額は十一兆円強あったというふうにあります。そして、その十一兆円強のうち年二兆円から三兆円程度市場に放出されるだろうということから、政府保証枠として保守的に二兆円にしたという、極めて保守的な考え方から二兆円というのを設けているわけです。

 ところが、もはや自己資本の超過額というのはなくなりました。自己資本の半分ぐらいしか銀行は株を持っていません。そういった中で、単純に考えれば、当時よりは市場への売却圧力というのは小さいと思うわけです。そうだとすれば、なぜ二十兆なのかというのが全くわからないんですけれども、二十兆円と算定した根拠を教えてください。

柳澤議員 委員の資料で昔のことを思い出したりしているわけですけれども、必ずしも私は、この委員の提出の資料の出所等をまだ教えていただいていないので、また後ほど勉強してみたいとは思うんですけれども、要は、当時は非常に、金融危機に対する政府の介入というべきか関与の程度というものに対しては、今委員がまさにお使いになられたように、極めて保守的な考え方が強うございました。したがいまして、ここにありますように、恐らく、超過額として処分しなければならない金額から通常銀行が処分しているものは差し引きまして、今回の保有制限を設けたことによって銀行が処分を迫られる分、この分について手当てをしよう、こういう考え方があったということであろうかと思うわけであります。

 ただ、今回の場合は、むしろ今回の金融危機については、ありとあらゆる考えられる手段、もちろんそこには、先ほど来私が触れさせていただいておりますように、ある限界というものは画してかからなければならないけれども、基本的には、どちらかというと、定性的に許されるものだったら定量的には思い切った大胆な措置を講じて、何としてもこの金融危機の深刻化を回避しなければいけない、こういう考え方が基本にあろうかと私は思うわけでございます。

 そういうようなことから、先ほど政府委員がお答えを申し上げましたとおり、現在の金融機関が持っている事業会社の株十七兆円に加えまして、事業会社の方からの想定される銀行株というものも念頭に置いて二十兆円というものを算定した、こういうことでございます。

階委員 今、政府委員から答弁とありましたけれども、きょうはちょっと時間の関係で政府委員にはまだ聞いておりません。済みません、時間の関係で政府委員からの答弁はちょっと省略させていただきます。

 最後の質問に行きます。資料三をごらんください。

 当然、株を持てば株主総会での議決権というものが生まれるわけですね。その議決権の行使方法について、株式取得機構のホームページにはこういうものが載っておりました。議決権行使の基本的な考え方、二つ目を見ますと、「株主の利益を最大にするような企業経営が行われるよう議決権を行使すること。」

 平成十三年当時であれば、当時は株主資本主義というのが極めて流行していたといいますか、そういう時代でしたから、こういう表現は違和感がないんですけれども、今この御時世の中で、株主の利益を最大にするというのを政府の取得機構が言うことはいかがなものか。

 これだけ、株主の利益をおもんぱかる余りに雇用とかがどんどん削られている、そういう中で、株主の利益追求をさらに促進するというかお墨つきを与えるというか、そういうことを大々的に公表しているというのはちょっとおかしいんじゃないかなと思うわけです。

 ここの点について、見直す必要があると思うんですが、どうでしょうか。

柳澤議員 確かに御指摘のように、取得機構の議決権行使の基本的な考え方というのは、ここで資料をお示しいただいたような三つの原則にまとめられております。その中に、株主の利益を最大にするというようなことも書かれておりますけれども、その他の項目もそこに触れられているところでございます。

 基本的な考え方は何かといいますと、取得機構が株式を有するというのは、これは基本的に一時的なものであるというようなこともございます。

 それからまた、取得機構のような、ある意味で公的な機関による株主たる地位というものについては、やはり企業支配であるとかあるいは民間企業としての経営判断というようなものに立ち入って、そこに介入をしていくというようなことは基本的に避けるべきであるという考え方を持っているわけでございまして、この株主の利益を最大にということは、今委員が御指摘のように、当時の株主重視の考え方というものを反映している面もあろうかと思うんですけれども、そういう短期的な株主利益の追求ということではなくて、ごく中長期的、むしろ長期的な株主利益というものを考えていくという、ごく普遍的な意味での考え方ということで御理解を賜りたいと思うわけであります。

 いずれにしても、私どもといたしましては、経営判断に介入していくとかいうようなことについては極めて慎重でなければならない、このことを従来とも推進してまいりましたので、その方向で考えてまいりたい、このように考えております。

階委員 終わります。ありがとうございました。

田中委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 アメリカ発の金融危機、これが日本にどのようなショックをもたらすかという点について、先ほどまでここにおられた与謝野大臣は、ハチが刺した程度だと言われたわけであります。

 中川大臣は、昨年の十月に古本議員の質問に対して、クマンバチに刺されてショック死しないようにしたいというようなことを言われました。今はどのような認識をお持ちですか。

中川国務大臣 何かそういう答弁をした記憶はございますけれども、それはやはりハチに対しておまえはどう思うかという御質問に対してでしょうか。ハチが前提なんですね。(佐々木(憲)委員「いやいや、今」と呼ぶ)いや、ですから、そのときの話。(佐々木(憲)委員「そのときはハチです」と呼ぶ)はい。

 きのうも小池議員がその後、ハチにもいろいろありますからというふうに言っておりましたけれども、日本の金融システムは引き続き安定している、破綻している金融機関も、また破綻しそうだというような報告も私は受けておりません。

 そういう意味では、ハチにも蚊にも、マラリアの蚊も刺されたら大変なことになりますし、クマンバチも大変なことになりますけれども、とにかく、日本の金融システムというものは、これは安定してはおりますけれども、引き続き、どんなハチであろうが、蚊であろうが、クマであろうが、ライオンであろうが、襲われないように緊張感を持っていきたいと思っております。

佐々木(憲)委員 この法律についてですが、もともと、二〇〇一年、平成十三年の秋に政府が提出した閣法だったわけですね。ところが、その後、早くも次の年の七月、半年ちょっとで修正を提案された。これは閣法ではなくて、そのときは議員立法で衆法として提案をされたわけであります。

 その内容は、事業会社の保有する銀行株を、それまで買えなかったんだけれども、百八十度方針を転換して買えるようにした。ですから、閣法で出したとき否定をしていた中身を、それをひっくり返して、買えなかったものを買えるようにした。したがって、閣法でもう一度半年ぐらいで出すというのは、余りにもこれは格好が悪い、こういうことで多分議員立法で出されたのではないかと思うわけです。そのとき柳澤さんはたしか大臣だったと思うんですね。私もその質疑をした覚えがございます。

 その後、さらに修正が行われて、銀行が売るときの手数料、これは廃止される、あるいは、それまでは持ち合いの相手の事業会社保有の銀行株は二分の一までしか売れなかった、それを持ち合いの一対一という関係に広げて、銀行株がさらに売れるようにしたわけであります。

 そして、今回また修正。何が修正されるかということで見ますと、さらに銀行の使いやすいものに変えていく、あるいは銀行株を持っている事業会社が使いやすいものにと。こういうふうにどんどん広がってきているわけであります。

 まず提案者にお聞きしますけれども、流れとしてはこういうことで理解してよろしいですね。

山本(明)議員 流れとしては委員御指摘のとおりだというふうに思います。

佐々木(憲)委員 そこで、具体的に今回出された内容を確認したいんですが、法案では、二〇〇六年九月末までとされていた買い取り期間を二〇一二年三月までに延長する、こういう内容になっております。それから、銀行と株式の持ち合い関係にある事業法人が保有している銀行株、これを機構が先行して買い取ることができる。つまり、銀行株だけを先に買い入れるということができるわけでありまして、一層の緩和策であります。現行の場合は、それはそうなっていなかったわけですね。そして、これまでできなかった持ち株会社である事業法人の子会社からの銀行株の買い取りもできるようにする。機構が市中からの買い入れを行うことができる政府保証枠を、二兆円だったのを二十兆にする。こういう仕組みになっているということで理解してよろしいですね。

山本(明)議員 委員御指摘のとおりでありまして、大体、主に大きな二つの改正点というのは、今御指摘がございましたように、機構が株式購入を再開できる、十八年九月末までを二十四年三月末までできる、そして機能強化をするということで、今お話がありましたように、事業会社の方から先行して売却ができるというふうになっております。

 そしてもう一つ、事業法人についてでありますけれども、最近、事業再編というのが盛んになっておりまして、持ち株会社ができてきたということもありますので、実態に即応するために、持ち株会社の持っておる方の株も売却ができる、購入ができる、そういうふうに変わってきたわけであります。

 今、最後に御指摘がございましたけれども、さらに、昨年十二月十九日に決定されました生活防衛のための緊急対策において、機構に対する政府保証枠を二十兆にする、こういうふうに定められたところであります。

佐々木(憲)委員 このように、この中身を見ますと、ともかく、規模は広げるわ、銀行株はどんどん買えるわ、非常に銀行に対する支援策としては至れり尽くせりという状況でありまして、果たしてそういうものが必要なのかという疑問を感ずるわけです。

 次に、買い取った株式、これは一定期間保有後、株式市場の状況に応じて処分を行う。処分期限は、二〇一七年三月末とされていましたけれども、二〇二二年三月末まで延長する。その処分先は、お配りした資料の右の方を見ていただきますと、株式市場、それから証券会社、発行会社、発行会社というのはいわば自社株を買い戻すということですね。この三つのルートがあると思いますが、これは確認できますか。

山本(明)議員 委員御指摘のように、売却先につきましては、スキームは現行法と変わりはないわけでありますので、御指摘のとおりでございます。

佐々木(憲)委員 そこで、比較のために、日銀でも似たような株式買い取りの仕組みがつくられております。これは、銀行が保有している株式を買い入れるものでありまして、買い入れの実施期間は二〇〇二年十一月から二〇〇四年九月までで、処分は二〇〇七年十月から行われてきたわけですが、参考までに、日銀にその実績をお聞きしたいと思います。

 日銀ではこれまでに銀行が保有している株式を幾ら買い入れ、幾ら売却したか、売却損益は幾らになっているか。

山本参考人 お答えいたします。

 日本銀行が平成十四年十一月から十六年九月末までに買い入れました銀行保有株式の累計額は二兆百八十億円でございます。

 このうち、二十年九月末までに、日本銀行が取引所市場での売却や発行会社による自社株買い入れ要請に応じた売却などを通じまして処分しました買い入れ株式の累計額は、簿価で六千七百四十六億円であり、売却益の累計は六千三百十三億円となっております。また、二十年九月末時点での保有株式の簿価は一兆二千七百三十四億円となっております。

佐々木(憲)委員 では、銀行等保有株式買取機構、この機構の場合、実績はどうなっているか。同じような数字を同様に示していただきたいと思います。

    〔委員長退席、木村(隆)委員長代理着席〕

内藤政府参考人 お答えいたします。

 機構がこれまでに買い取った株式の累計額は一兆五千八百六十八億円でございます。この数字は二十年三月末の簿価ベースでございます。また、機構が売却した株式の額につきましては、約定ベースで一兆一千百二十二億円となっております。保有株式の処分に伴う実現株式売却益は累計で八千七百二十六億円となっております。

 なお、処分額のこの計数につきましては、売却形態という区分での計数管理は行っておりませんので、この点の内訳についてはお答えはできないということを御理解いただきたいと思います。

佐々木(憲)委員 この処分額の売却実績は、市場売却実績という数字があるはずですが、これはいかがですか。それから、市場以外の内訳、先ほど三つのルートと言いましたが、証券会社それから発行会社ですね。それぞれ数字を出していただきたい。

内藤政府参考人 お答えいたします。

 先ほども若干申し上げましたけれども、私ども、計数におきましては、処分額の計数の中で、売却形態でどういう売却を行っているかという数字についての計数管理は行っておりませんので、この点についての内訳はお答えできないということで御了解いただきたいと思います。

佐々木(憲)委員 先ほど、この法律では、三つのルートで売却できる、こうなっているわけですよ。それでいながら、その中身がわからない、出せないというのはおかしいんじゃないですか。市場売却の実績は八千六百十五億円じゃありませんか。

内藤政府参考人 繰り返しの答弁でまことに恐縮でございますが、私どもとしては計数は把握しておりません。区分管理していないという状況でございます。

佐々木(憲)委員 法律上は、株式市場に直接売却できる、もう一つは証券会社、ここに売却できる、それから自社株の買い戻しもできると、三つあるわけですよ。何でその数字を出さないんですか。

 私どもの調査によると、先ほど言ったように、市場に販売しているのが八千六百十五億円で、それ以外の数字が一兆一千二百三十四億円、こういうふうになるんじゃありませんか。

内藤政府参考人 繰り返しの答弁でまことに恐縮でございますが、私どもとしては数字を把握しておりませんが、今のおっしゃった数字につきましては少し調べたいというふうに思います。

佐々木(憲)委員 これは公的資金を使って株の売買をやるわけですよ。市場外の取引ということでやるわけでしょう。法律ができて、そして買い取ったその株を三つのルートで売ることができます、しかしその中身は言えません、そんなばかなことがありますか。当然、こういうものはここに報告するというのは当たり前じゃないですか。

 では、もうちょっと具体的に聞きますね。一方の、買い取ったのは、銀行からも買える、それから事業会社からも買える、相互の持ち合い関係にある場合。買い取った今までの実績が一兆五千八百六十八億円、そのうち、事業会社から幾らで、銀行からは幾ら買い取ったんですか。

内藤政府参考人 お答えいたします。

 実際には、買い取りの株式の銘柄各種類ということによって内訳になろうかと思います。銀行株あるいは事業法人株等の株式の買い取りの内訳というお尋ねでございますけれども、これにつきましては、私どもといたしましては、仮に、この数字が、どういう規模の金額あるいはどういう銘柄のものを買い取って、あるいはまた売却をされたというような内訳が公表されますと、個別銘柄の取引についての市場への影響というものが懸念をされますので、従前よりこの数字につきましては公表しないということで御理解をいただきたいと思います。

佐々木(憲)委員 いや、別に個別の企業の名前を言えと言っているわけじゃないんですよ。大枠で、事業会社から幾ら買いましたか、銀行から幾ら買いましたかと。法律で、持ち合い関係にあるそれぞれの銀行と事業会社、その株を買えるわけでしょう。買えるんだから、それぞれの金額を言えばいいじゃないですか、大枠で。

 総合計が、先ほど言った数字が一兆五千八百億なんでしょう。その内訳ぐらい何で言えないんですか。法律では二つ買えると言っているんですよ、銀行と事業会社。そんなものも言えないんですか。そんなことを言えないような、こんな内容なんですか、これは。何のための法律なんですか。具体的に出してください。

内藤政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますけれども、こういう株式の内訳というものを公表することによる市場への影響というものを懸念して、これまで公表してこなかったということでございます。

 トータルの購入の金額、あるいはまたトータルの売却の金額といったようなものを公表してまいったということでございます。

佐々木(憲)委員 では、メガバンクの株は幾ら買いましたか。

内藤政府参考人 お答えいたします。

 同様の理由でございまして、メガバンクから幾ら株式を買い取ったかということにつきましては、やはり銀行の財務の問題、あるいは市場への影響等も懸念されておりますので、この辺については私どもとしては慎重にこれまで対応してきたということでございます。

佐々木(憲)委員 余りにもこれはひどいですよ。こんな数字を出さないようでは審議できないじゃないですか。初歩的な数字ですよ。

木村(隆)委員長代理 では、ちょっととめてください。

    〔速記中止〕

    〔木村(隆)委員長代理退席、委員長着席〕

田中委員長 速記を起こしてください。

 佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 もう一度確認しますが、事業会社、銀行、それぞれの大枠の数字はすぐ出るそうなんですが、個別の企業名というのは難しいでしょうから、A、B、C、Dとかそういうような形で出していただく、それはこの法案の審議中、採決までに出していただくということでよろしいですか。

内藤政府参考人 数字につきましては、どういう形でこれを分類するかということも含めまして、数字のその区分といいますか、カテゴライズする、どういうカテゴリーをつくるかということも含めまして速やかに検討いたしまして、提出をすることに努めたいと存じます。

佐々木(憲)委員 では次に、この仕組みの上で、この勘定を締め切った場合、利益が出た場合の配分の仕方と損失が出た場合のその損失の負担の仕方、それぞれお答えいただきたい。

内藤政府参考人 お答えいたします。

 まず、機構の解散時に残余財産がある場合でございますが、当初の拠出金の総額、これは百七億円ございます。それから、売却時拠出金というものがございまして、これが総額百七十八億円ございます。この合計額から、一般勘定における損失額というものが若干ございまして、これを控除したものの二倍に相当する金額、これが法令上、分配限度額というふうに定められておりまして、これを限度として、拠出金を出した銀行等にまず分配をするということになっております。さらに残余財産が残るというような場合に、当該超過額を国庫に納付するというふうになっております。

 また、機構の運営に当たりましては、機構が買い取った株式を市況を踏まえて処分できるよう、ある程度の期間保有をしておく、それから、株式買い取りの期間につきまして運営委員会の議決を要するということ、買い取り対象株式を限定することにより機構に極力損失を生じないようにするということが決められております。

 さらに、万が一、機構の解散時に損失が生じた場合においても、まずもって機構が保有する拠出金というものが充当されます。それでもなお不足するというような場合には国庫負担というふうになる、こういうふうなことでございます。

佐々木(憲)委員 つまり、この仕組みは、公的資金を使って、つまり政府保証を使って株を買い取り、そしてその株を売却して、上がったときは利益が出るけれども、下がったときは損失が出る。勘定を締め切ったときに損失があった場合に、国民に負担を回す、ツケを回すという仕掛けなんですよ。だから我々は、このやり方はおかしいじゃないか、何で関係ない国民に負担を回すのか、こういうことでずっとこの法案については批判をしてまいりました。

 もう一つ別の問題で聞きますが、では、株を買うことを決めるのは一体だれが決めるのか、売るときはだれが決めるのか、その決定をするのは一体だれなのか、提案者にお聞きしたいと思います。

山本(明)議員 基本的な考え方というのは、運営委員会が処分案等を決めますので、運営委員会が基本的な考え方を決めることになっております。

佐々木(憲)委員 基本的な考え方というのはどういうことですか。

 つまり、この株について買ってほしいという申請がある、そのときの申請を判断する最終決定権を持っているのが運営委員会だ、こういうことでよろしいんですか。

内藤政府参考人 お答えします。

 運営委員会が買い取り期間というものを設定いたしまして、その間に銀行あるいは事業法人から今回は申請を出してもらいまして、その申請を受けて、その中で適格性のある株式かどうかということについて速やかに審査をいたしまして、それで決定をして買い取っていく、こういう手続でございます。(佐々木(憲)委員「どこが審査するんですか」と呼ぶ)運営委員会が行います。

佐々木(憲)委員 では、その運営委員会はどういう構成かということでありますが、次の資料を見ていただきたい。

 この買い取り機構はすべてメガバンクから代表が出ておりまして、役員は六名、さらに運営委員、これは学識経験者と言われている人たちでありますが、運営委員会を構成するのは、このうちのどの部分が構成するんですか。

内藤政府参考人 この表でまいりますと、下に運営委員というのがございます。このメンバーが運営委員会を構成するメンバーでございまして、有識者でありますとか中立的な立場の方々を任命いたしまして、この運営委員会で決めていくということでございます。

佐々木(憲)委員 役員とこの下の運営委員が運営委員会を構成して、十一名で構成しているんじゃないんですか。

内藤政府参考人 申しわけございません。若干私の言い方の誤りを訂正させていただきます。

 運営委員会は、役員と下にございます運営委員、この両者でもって構成をされるということでございます。

佐々木(憲)委員 そうすると、提案者に聞きますけれども、株式を買い取る意思決定を行うのは運営委員会である。その運営委員会には銀行の代表が全部入っているんですよ、頭取が。自分の銀行が持っている株を買ってもらいたいと申請を出すのは銀行であります。はい、買いましょうと決定するのはその銀行であります。おかしいじゃないですか、これは。しかも、売却する場合も、売却するのも、運営委員会、つまり銀行が入っているここが決めるわけですよ。銀行による、銀行のための、銀行の買い取り機構じゃないですか、これは。どうなんですか。

山本(明)議員 買い取りにつきましては、市場へ出すのも機構へ出すのも、これはそれぞれ自由でありますので、そういった意味では、こういうセーフティーネットをつくったということであります。

 処分につきましては、運営委員会は処分方針を決めるわけでありまして、実際の処分は信託銀行が任されて最終的な処分はしております。

佐々木(憲)委員 運営委員会が最終決定権を持っているんじゃないんですか、その実務をやるのは信託銀行かもしらぬけれども。どうなっているんですか、これは。

山本(明)議員 先ほども申し上げたように、運営委員会が基本方針を、処分方針を決めまして、それに沿って信託銀行が処分をしておるということであります。事務的にやっておるということであります。

佐々木(憲)委員 つまり、処分する方針を運営委員会が決め、それを実行するのが信託銀行、そういう関係ですよね。意思決定、最終決定は運営委員会なんですよ。その運営委員会に銀行の代表が入ってきて、自分の株を買ってもらおう、こういうのはおかしいんじゃないですか。それで、では自分の株をうまく売りましょうと。これは余りにもお手盛りの公的資金を使った株価買い支え、インサイダー取引という言葉を使いたくないですけれども、そういうようなことさえ疑わせるような事態ですよ。

 こんな機構で、国民に最終的にツケを回すようなことをやるというのが果たして真っ当なのか。私はこんなやり方はおかしいと思いますが、どうですか。

山本(明)議員 そうした銀行だけの意思に左右されないように運営委員という学識経験者が入っておるわけでありますので、信頼ができるというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 それは余りにも答弁になっていないですね。全部入っているんですから、銀行の代表が。これだけ銀行の代表が入っていながら、何で客観的な審査ができるんですか。圧倒的に銀行の意見が通るじゃないですか。

 私は、この機構自体も非常におかしな機構だと。株価を買い支える、株価維持のために公的資金を使ったこんなやり方はやるべきじゃないということを指摘して、資料については、ぜひ後で理事会でも確認をしていただいて、採決の前には必ず提出するように。採決は多分来週早々にはないと思いますから、しっかりと資料を用意して出していただくということでよろしくお願いしたいと思います。

田中委員長 佐々木憲昭君の申し越しについては、理事会で御協議をさせていただきます。

    ―――――――――――――

田中委員長 この際、ただいま議題となっております両案中、平成二十年度における財政運営のための財政投融資特別会計からの繰入れの特例に関する法律案に対し、中川正春君外三名から、民主党・無所属クラブ提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。松野頼久君。

    ―――――――――――――

 平成二十年度における財政運営のための財政投融資特別会計からの繰入れの特例に関する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

松野(頼)委員 平成二十年度における財政運営のための財政投融資特別会計からの繰入れの特例に関する法律案に対する修正案の趣旨説明。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました平成二十年度における財政運営のための財政投融資特別会計からの繰入れの特例に関する法律案に対する修正案につきまして、その趣旨及び概要を御説明申し上げます。

 サブプライムローン問題に端を発する世界経済金融危機は、我が国経済に大打撃を与え、昨年来、雇用をめぐる環境は、内定取り消し、派遣切りが相次ぐなど、深刻な状況に陥っております。一刻も早い対策が望まれる中、民主党は、前臨時国会に矢継ぎ早に、緊急雇用対策関連法案を含む経済対策関連法案を提出いたしました。しかし与党は、党利党略ばかりを優先し、民主党提出法案の成立を阻むばかりで、国民生活を顧みることはありませんでした。麻生総理に至っては、福田前総理がまとめた案に基づく第一次補正予算で年内は大丈夫とうそぶくばかりでありました。

 年が明け、ようやく政府・与党は第二次補正予算案及び関連法案を国会に提出いたしました。提出までにこれだけ時間をかけたにもかかわらず、政府・与党案は、真に国民生活を救い、そして将来の産業と雇用を生み出す内容となっておりません。しかし、危機的な国民生活を考えたとき、一刻も早く何らかの対策が必要なことは明らかであり、何もしないよりましという点で、政府・与党案成立に民主党として協力することはやぶさかではありません。

 ただし、第二次補正予算案の中で大きなウエートを占める定額給付金については、選挙目当てのばらまきにすぎず、到底容認できるものではありません。経済対策として効果が薄いと多くのエコノミストから指摘されているところであります。このようなものに対して二兆円もの国費を使用することは無駄遣いにほかなりません。このような無駄遣いにストップをかけることが本修正案提案の趣旨であります。

 以下、修正案の概要を申し上げます。

 第一に、平成二十年度第二次補正予算案により追加される、歳出の財源に充てるための同年度における財政投融資特別会計財政融資資金勘定からの一般会計への繰入限度額について、定額給付金給付事業助成費の額に相当する額を減額し、二兆一千百八十五億円といたします。

 第二に、これに伴う所要の規定の整理を行うこととしております。

 定額給付金という巨額の無駄遣いを撤回していただければ、民主党としても、速やかな補正予算及び関連法案の成立に協力したいと存じております。現に、第一次補正予算案については、国民生活にかんがみ、賛成し、速やかな成立に協力をさせていただきました。

 委員各位におかれましては、私たちの主張の真意を御理解いただき、何とぞ本修正案に御賛同賜りますように、よろしくお願いを申し上げます。

田中委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十二分散会


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