衆議院

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第6号 平成21年2月20日(金曜日)

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平成二十一年二月二十日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 田中 和徳君

   理事 江崎洋一郎君 理事 木村 隆秀君

   理事 竹本 直一君 理事 山本 明彦君

   理事 吉田六左エ門君 理事 中川 正春君

   理事 松野 頼久君 理事 石井 啓一君

      石原 宏高君    稲田 朋美君

      越智 隆雄君    亀井善太郎君

      後藤田正純君    佐藤ゆかり君

      杉田 元司君    鈴木 馨祐君

      関  芳弘君    平  将明君

      とかしきなおみ君    徳田  毅君

      中根 一幸君    長島 忠美君

      西本 勝子君    林田  彪君

      原田 憲治君    平口  洋君

      広津 素子君    松本 文明君

      三ッ矢憲生君    盛山 正仁君

      安井潤一郎君    池田 元久君

      小沢 鋭仁君    大畠 章宏君

      階   猛君    下条 みつ君

      鈴木 克昌君    古本伸一郎君

      和田 隆志君    佐々木憲昭君

      中村喜四郎君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       与謝野 馨君

   内閣府副大臣       谷本 龍哉君

   財務副大臣        竹下  亘君

   財務大臣政務官      三ッ矢憲生君

   財務金融委員会専門員   首藤 忠則君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十日

 辞任         補欠選任

  とかしきなおみ君   安井潤一郎君

  松本 洋平君     松本 文明君

  宮下 一郎君     徳田  毅君

  山本 有二君     西本 勝子君

同日

 辞任         補欠選任

  徳田  毅君     杉田 元司君

  西本 勝子君     山本 有二君

  松本 文明君     長島 忠美君

  安井潤一郎君     とかしきなおみ君

同日

 辞任         補欠選任

  杉田 元司君     宮下 一郎君

  長島 忠美君     平  将明君

同日

 辞任         補欠選任

  平  将明君     松本 洋平君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行及び財政投融資特別会計からの繰入れの特例に関する法律案(内閣提出第四号)

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第六号)

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中川正春君。

中川(正)委員 おはようございます。民主党の中川正春です。

 この世界、あすは一体何が起こるかわからない、そういったことでありましたけれども、与謝野大臣、非常に重要なポストを兼任という形で頑張っていただかなければならないわけでありますが、早速にASEANプラス3、この蔵相会議へ向いて、本来は、一番大事なときですから出席をして、それなりの日本の貢献といいますか、特にASEAN諸国の経済の立て直し、あるいは金融という分野での日本の役割というものをしっかりと主張する、それでリードをしていくということ、そういう役割を担っていかなければならないときだと思うんですが、それを欠席しなければならないという状況が起こってきておりますね。

 私は、出席すべきだと思うんですよ。そのために、この国会の中で何を努力したらいいか、そこだと思うんです。最初からもう欠席というような形でスケジュールを組んでいかれるというのは、私は間違っていると思うんですが、どうですか、出席されたら。

与謝野国務大臣 実は、私が総理から就任を要請されましたのは夕方の六時半ごろでございまして、その後、総理にお目にかかって辞令をいただくということになったんですが、直ちに財務省の方々とお打ち合わせをして、それは先生おっしゃるとおり極めて重要な会議であって、過去も財務大臣が出席していることの方が多い、しかし予算の見通しが全く立たないということで、どういうことがあっても予算が大事なので、やはりこの際は政務官で対応しようということにいたしました。そのときに既に決めておりましたのは、国会の予算審議の見通しが立たない、そういうことがあったからでございます。

 先生おっしゃるとおり、このような時期、また日本の立場を考えれば、できれば私も出席した方がよかったと思っております。

中川(正)委員 ぜひ再考をされて、出席をしていくという意思を固めていただきたいというふうに思います。ただし、恐らくそのためには、国会のスケジュール等を含めて、与党の方としてもいろいろ妥協をしてもらわなきゃならない部分が出てくるんだろうと思いますが、その価値はあると思うんですよ。そのことを申し上げておきたい。御本人が、出る必要がある、出るべきだと思っているんだったら、そのようにやるべきだというふうに思っております。

 その上で、何を日本が主張していくかということだと思うんですね。IMFにドルを供給したということがありました。いわゆる通貨バスケット的な、チェンマイ・イニシアチブも一つ活用ができるんだろうというふうに思うんですよ。同時に、また続いて議論もしていきたいと思うんですが、円の国際化ということから考えていっても、流動性を高めていくために、各国の、円を活用してもらう、そういう枠組みのようなもの、そんなものもこちらの、いわゆる日本が考え出していくスキームとして、いろいろ今工夫ができる時期だと思うんですよ。

 そういうものも恐らく皆さんの中でいろいろな議論をしていただいておるんだろう、それは当然そういう戦略的な思考というのはあっていいと思うので、そこのところを何を主張していくのかということ、これをお聞きしたいと思います。

与謝野国務大臣 日本経済とアジアの経済とのよき関係をどう構築していくかということですが、日本側から見ますと、先進諸国の消費がどんどん落ちているという中で、やはりアジアの新興経済圏の中での需要というのは極めて日本経済の将来にとって重要であるということが一つ。それから、先生が言われるように、以前一度アジア・マネタリー・ファンドという構想が出ました。これは、IMFも重要であるけれども、アジアに限ってのいわゆる国際通貨基金をつくろうという構想がありました。幾つかの国が反対をして、これは実現できなかったわけでございますが、そういうことを含めて、円というものがアジア経済にどう役に立つかということは、先生の御指摘のように、今後真剣に検討していかなければならない課題であると思っております。

 これは、流動性の供給もさることながら、資本不足に陥る新興経済国にどうするか、そういう問題もありますし、発展途上国にどう資本を供給するのかという幾つかの問題、それからまた、そういうものを通じて少なくともアジアに日本が貢献できる、そういうことも考えながら国際金融をやっていかなければならない時代になってきたと私は認識をしております。

中川(正)委員 ぜひこの機会に、そうした日本のイニシアチブを具体的な提案として出していくべきだというふうに思うんです。

 さっきの方向性、今がその具体化をするというタイミングなんだろうと私は思うんですが、大臣はどう考えられますか。そして同時に、さっきのお話を具体化するとすれば、日本は何を提案していこうとしているのか、これを聞かせてください。

与謝野国務大臣 まだ提案しておりませんので、ここで具体的にお話はできないわけでございますが、末松政務官が日本の立場を御説明し、日本がどうアジアの諸国に協力していくかということはきちんと表明する予定になっております。

中川(正)委員 本来は、そうした戦略といいますか方向性というのは、今の時点でしっかり出して、それをもってこの国会の中でも議論を尽くすということ、これは当然だと思うんですよね。それを、これからだと。もう会議はそこに開かれようとしているわけで、そこについて、これからだというふうなことは、これは何にも考えていないということと同じじゃないですか。

与謝野国務大臣 既にチェンマイ・イニシアチブというのがあることは先生よく御承知でございますが、ここではもう既に二国間の通貨のスワップを相当やっておりますし、また、こういうことに関しましても日本は今後とも積極的に協力をしていく、これは非常に大事な点でございまして、結局は、せんじ詰めていけば、流動性の供給ということに関してはちゃんとやります、そういうことを表明するということが主な点でございます。

中川(正)委員 具体的には、私は、せっかくのチェンマイ・イニシアチブで個々の、二国間の通貨スワップの集合体といいますか、そういうスキームというところにとどまっていくということじゃなくて、具体的な通貨バスケットあるいは共通通貨へ向いてもう一つ進んだ議論をしようじゃないかというふうなことを提案していくいいタイミングだと思うんですよ。そこのところを指摘しておきたいと思います。

 大臣、どうですか、その意思を持って今回のASEANプラス3、進めていくという決断をしてください。

与謝野国務大臣 既に先方にも末松政務官がこの会議に出席されるということを決めて申し上げておりますので、私がかわって行くということはないわけでございますけれども、日本の立場をきちんと説明し、日本として果たすべき役割、責任については、日本の立場をきちんと表明してまいる決意でございます。

中川(正)委員 後ろで秘書官がうなずいていますけれども、日本の立場がわからないんですよ、さっきの答弁では。だから、ここで本当は議論しなきゃいけないのは、私はこういうことを主張していこうと思っているんだということを日本の国民にも今説明しなきゃいけないときなんですよ。そのことを指摘しておきたいと思います。

 さらに進んで言えば、これはアジア諸国との関係というのは物すごく大事だ、中国も含めての話ですが、ということと同時に、アメリカがあるんだろうと思うんですね。クリントン長官が先日訪日をされました。非常にいい印象を残して帰られたんだと思うんですが、耳を傾ける、日本が何を考えているのかというのを模索していかれたんだろうと思うんです。

 大臣、どう思われますか。日本は外需型の産業構造から内需型に変えていかないと、将来の世界の経済構造の中でも、こういうことが起こるたびに、いわゆるアメリカが風邪を引けば日本は肺炎になる、あるいは今回はもっと厳しい状況になっているんだろうと思うんですが、そういうことをたびたび繰り返していかなきゃならないから内需型にしていこう、こういうふうに経済の政策、基本姿勢というのはあるんだと思うんです。しかし、もう一方で、今回のGDPの年率にして一二・七%の落ち込みが予想される、あるいはまた次の期もそういう厳しい状況になるというときに、やはり輸出の関連が極端に落ち込んでいるということがどうにもならないということだと思うんです。

 緊急的にもここは何とか起こしてこないといけないということだと思うんですが、そうなると、アメリカそれからヨーロッパ、こうした国々も同時に起き上がってこないと、日本の経済も、幾ら内需型、内需型といっても、これは中長期的にはそういうことは考えられるけれども、しかし基本的に、今何とかしなきゃいけないという形で政策を考えた場合に、やはりアメリカの経済に何ができるか、ヨーロッパの経済に何ができるかということも、これは重要な要素になってくるというふうに思います。

 その上で聞きたいんですが、アメリカの現状に対して、日本は今、内向きになるな、バイ・アメリカンではだめなんだということを言っているわけですけれども、それはどっちかというと日本も後ろ向きな話で、日本のものも世界のものも買ってくれよ、貿易が縮んじゃだめなんだ、それを言っているだけで、これはまだ消極的なというか内向きな話なんだと思うんですよ。それを超えてもっと大きな、手をつないでいこう、あるいはやれることをお互いやっていこうじゃないかというメッセージを発するとすればどういうことがあるとお考えですか、アメリカに対して。

与謝野国務大臣 こういう状況になりますと、必ずエコノミックナショナリズムというものが勃興してくる。特に、保護主義と呼ぶことが正しいかどうかわかりませんけれども、自国のものを使おう、やはりそういう動きが出てくるというのは自然なことなんですけれども、一九二九年の経験から見れば、そのような保護主義に走るということは世界経済全体を縮小させる、そういうことがありますから、先般のG7でも、保護主義ということに対しては全面否定の姿勢を各国ともとったわけです。日本も、アメリカから買うべきものは買う、ヨーロッパから買うべきものは買う、そういう意味ではやはり自由貿易というのはきちんと守るべきだと思っております。

 それで、外需頼りの話ですけれども、統計を見ますと、実は、景気回復をする過程で内需と外需がどっちが貢献したかという数字があるんですけれども、一九九〇年ぐらいまでは景気回復過程はほとんど内需が貢献していた。外需ではない。ところが、それ以降は専ら景気回復の過程は外需が主導している。今回の一二・七という数字は、三・三という十―十二の数字ですけれども、このうち三が外需、〇・三が内需ということですから、この局面では圧倒的に外需の影響が大きい。それから、一―三も、やはり先生が御指摘のように、アメリカやヨーロッパを中心としたところの経済が回復するということが日本の経済の回復の一つの前提だという多分お考えであろうと思うんですけれども、私はそういう前提は極めて正しいと思っております。

 したがいまして、日本だけよくなるということは考えにくいことで、やはり国際協調の中で、世界各国が協調関係の中で初めて景気回復が可能になる、そういうことを前提に日本政府も政策を考えていかなければならないと思っております。

中川(正)委員 私が尋ねたのは、その具体的な政策というのは何なんだということを尋ねたわけですよ。何だとお考えですか。

与謝野国務大臣 日本の為替をまず安定させておくということであると思っております。

中川(正)委員 よくさまざまな人から今話が出ているんですが、七十一兆円の財政出動をアメリカは決めた。恐らく、それでおさまらないだろう、もっと大きな形で、いわゆる財政赤字を覚悟しながらアメリカというのはやっていかなければならない。その中で、今のところはまだ米国債で金利が極端に上がってくるということはないけれども、将来それをどこが引き受けるということになると、日本、中国あるいはアラブの産油国、その辺で引き受けていかざるを得ないだろう。直接的にあるいは間接的に、両方あると思うんですが、見えた形でということよりも、資金の流れからいって、間接的に、恐らくそういうことになっていくんだろうということ。

 よく憶測が飛んだんですが、クリントンさんが日本に来るときには、そのことをよろしくお願いしますという意味合いも込めて、例えば間接的にといえば、米国債を引き受けなくても、いわゆる基地の移転あるいはグアムへの転換ということの中で日本の受け持つシェアを高めていくとか、あるいはさまざまな、これまでの国際協力の中でアメリカが負担していく分を私たちが逆に負担をしていく。それは、アフガニスタンやイラクということも念頭に置いてという意味合いもあるんだと思うんですよね。

 そういう受動的なというか、向こうからいろいろなことを言われて、仕方ないから日本はつき合うんだというような形というのが恐らくこれまでの日本の外交だったんだろうというふうに思うんです。

 私は、今回のこのサブプライムの破綻を契機に、日本の外交もそこのところは転換したらどうだというふうに思っているんですよ。だから、逆に、米国債を日本は引き受けますよと。それは、向こうが引き受けてくれ、あるいはくれなくてもいい、そういう具体的な環境とかなんとかにかかわらず、日本からのメッセージとしてそういうことをこちらから打ち出していく。協力しようじゃないか、一緒にやっていこうじゃないかと言うこと自体が、世界の経済を、いわゆるマーケットとして受けとめる形というのは変わってくるんだろうと思うんです、我々がそういう意思表示をすることによって。

 さっきの米国債を引き受けようじゃないかというのは一つの例ですけれども、もっとそれ以外にも、日本が能動的に、主体的に意思表示をしていけることというのはあるんだろうと思うんです。それを、大臣、政府がやはりメッセージとして発しなきゃいけない。何か考えなきゃいけないんでしょうねとか、あるいはそこは大事なところですねで終わってしまっていたらだめなんだと思うんです。そういう意味で、何をするのが一番いいかということを具体的に示してくださいというのはそういう意味なんです。

与謝野国務大臣 先生御指摘のように、アメリカの経済対策というのはなかなか大きなものでございますし、恐らく長期資本市場からこの資金は調達される。一方、アメリカの長期資本市場は現在のところ極めて安定をしていて、国債、TBという形で必要な資金が調達できるような環境が整っているというふうに私どもは判断をしております。

 また、アメリカ政府のTBを日本が引き受けてくれというような具体的な話は来ておりません。おりませんけれども、やはり、世界の経済を安定させる、また日本の経済の長期的なことも考えながら、いろいろな判断をしていかなければならない局面が来るかもしれない。しかし、我々は、世界のことを考え、日本のことを考えて物事を判断する、そういう立場であろうと思っております。

中川(正)委員 全く具体的な話になっていないので、私も何を言われているのかわけがわからないんですよ。日本の主張というのはいつもそうなんです。恐らく国際会議へ行かれてもそんなことしか言っていないんじゃないかなという、そんな推測をしています。ここでそんなことしか言っていないんですから、国際会議へ行って、日本は何を考えているんだろうという話になっているんじゃないかな、そういう思いがしますね。

 同時に、逆にこちらから米国債を引き受けますよと言うときに、例えば戦略的に、ただし円建てですよ、円建てで米国債を引き受けていくということを能動的にこちらから言うことによって、逆にドル建てのいつもの米国債を引き受けてもらいたいんですよという話が向こうから来たときにも、いや、前に申し上げたようにうちは円建てですよ、それだったらしっかり引き受けますよという、いわゆる外交カードをつくっていくということにもなっていくわけですよね。

 どう思われますか、円建てで米国債を引き受けるということについては。

与謝野国務大臣 過去、アメリカが外国通貨建ての国債を発行したのは、ドイツでやった例とフランスでやった例とございます。今のところは国債を発行するための条件は整っておりますから、現時点でそのような判断は多分ないのであろうと思っております。

 もちろん、円建てにすれば為替リスクはなくなるということはだれもが承知していることでございますが、恐らく、アメリカの市場はアメリカのTBをまだ消化できる余力を持った市場であるというふうに我々は判断しております。

中川(正)委員 大臣の判断というのはアメリカのサイドに立った判断なんだと思うんです。日本のサイドに立ったときに、いろいろな戦略がこれからあるんだろうと思うんです。ドルが基軸通貨であり続けるということを本当に前提にしていいのかどうか、あるいはその世界がこれからも正しいのかどうか。

 私は、ある意味では、ドルが基軸通貨であったために、三百六十円の時代から今九十円の時代に落ち込んできた、そのたびに、日本というのはせっかく蓄えた富というのをどんどん吐き出して、アメリカへ向いて還流させてしまったという、それがあったからアメリカは実は成り立ってきたんだろうというふうに思うんです。そういう基軸通貨のメリットを使ってアメリカ自身はこれまで生きてきたということだと思うんですね。それがこれ以上成り立っていけるのかどうか。

 そのことに対して、ヨーロッパというのは、三十年前、四十年前から一つの戦略を持って、ユーロという通貨をつくってきたということだと思いますし、日本も、そうした将来の展望に立っていったときに、何らかの意思というのを持っていいんだろうと思うんです。

 円建てで米国債というのは、これまで我々はドルが基軸通貨だからドルで受け入れるのは当たり前だろうと思っていたけれども、例えば、円というのをもっと国際的に流通させたい、あるいはさっき為替の話を出されましたけれども、今の為替のレベルというのは、恐らく政府が介入していく場合には、極端に揺れたときにその揺れを緩和する意味で介入をしていて、どこでバランスするかというそのバランスについては、いわゆる直接の介入はしなかったということが建前ですよね。

 ところが、今日本の経済の状況を見ているときに、この円高というのが、本当に円高メリットとして産業構造を変えていけるのかどうかというと、私は行き過ぎているんじゃないかというふうに判断しているんです。その中で、例えば米国債を円建てでするということは、ある意味で円キャリーを官製で導くということと同じ結果になって、為替についても日本にとっては有利に働いていくという結果も出るんだと思うんですね。

 そういうような意味で、日本の立場に立ったときに日本の国益と日本を中心に考えたときに何を主張するかということがないと、アメリカはそれに乗ってこないだろうということで、アメリカのペースでこちらはそろえていったらいいんだということが、これまで与党筋の物の考え方、あるいは、その体制にどっぷりつかった形で国を運営してきた、一つの保守政権の基本みたいなところがあったんじゃないかというふうに思うんですね。

 そういうことから考えていったときに、もう一回聞きますが、アメリカがそれを受け入れるかどうか、あるいはアメリカにとってメリットがあるかどうかということ以上に、将来の日本の戦略、円の位置づけ、こういうことを考えてそうしたことを主張する気持ちはないのか。これは間違っているという考え方なのか、それとも、いや、それは日本にとって大事な視点でしょう、やっていきましょう、今でなくても主張するタイミングがあったらそれは主張していきましょうというふうに考えておられるのか、これはどちらですか。

与謝野国務大臣 これは、債券を発行する方が自国通貨でやるか外国通貨でやるかということを市場の状況を見きわめて決められる話でございます。

 ただ、基軸通貨という言葉は、これは基軸通貨と決めたら基軸通貨になるかといったら、そんなに簡単な話ではないし、また、円がアジアでたくさん流通するから基軸通貨になれるかといったら、そんな話でもなくて、多分基軸通貨というのは、やはり経済のほかにいろいろな力を持っていることによって成り立っているんだろうと思います。

 今回の金融危機の後、フランスを中心に第二ブレトンウッズ体制をつくろうというような話があって、これはアメリカのドルのほかに他の基軸通貨ということはあり得ないのかという一つの模索でもあったと思うんですけれども、いずれもなかなか皆さんが信用しない、基軸通貨たり得ないということで、そういう話は最近余り議論されなくなっております。

 むしろ、基軸通貨であるアメリカのドルの価値を維持するべきだという意見の方が現実的であり、具体性のある議論であるというのが最近の傾向だというふうに私は理解しております。

中川(正)委員 大臣、それは評論家の言葉だと思うんですよ。日本の国家としてどういう意思を持っているか。基軸通貨たらんとする、それはアメリカの国益なんですよ。そのことに対して、日本としてどういうビジョンを持っておくかということが大事なので、世界で今動いていることは、所与、与えられた環境なので、日本はそれに合わせていったらいいんだという時代はもう卒業したいと思う。これまでそういう生き方をしてきたよ、日本は。世界の環境を与えられたから、それで要領よくその環境に合わせて生きていったらいいじゃないかということだった。

 ところが、アメリカもヨーロッパも、日本に求めているのはそれだけじゃなくて、世界の地図をつくる、世界の構造をつくっていく中に日本も積極的に参加してくださいよということを今言ってきているわけですから、それに対して、いや、日本はいいんです、あなた方がつくっていただいたその世界観に合わせて日本は生きていきますからということは、これはもう卒業していかなきゃいけないねということだと思うんです。

 そういう意味で、アジアということも念頭に置いて、今このタイミングで日本の意思をしっかり表明していかないと、そういう意味ではフランスはおもしろい国だと思うんですけれどもね。だめだということはわかっていても自分の意思をしっかり主張していくわけですよ。そんなことから比べると、日本は対極にあるような感じがします。大臣のさっきの答弁もそういうことだと思う。

 同時に、日本が例えば日本の国債を海外で売りたいというときに、円建てで売るのかドルにかえて売るのかというと、これはやはり日本の場合は謙虚にドルにかえて売っているんじゃないですか。そんなような話からいくと、しっかり戦略性を持って日本を運営しないと、本当に埋没してしまうなという危機感を持っています。

 さっきの話は、だから、アメリカがどうこうということじゃなくて、日本として今そうした意思を表明していくという気持ちはないのかという問いかけなんですよ。ないんですか、やはり。

与謝野国務大臣 今回の経済危機はなぜ起きたのか、いろいろな解説があるんですけれども、やはり一つは、アメリカが経常赤をほったらかしにして過剰消費に陥っていた。いわゆる双子の赤字と言われる財政赤字、経常赤字をほったらかしにしてずっと来た。いずれこれは審判の日が来るというふうにアメリカの識者も言っていたわけで、今回の経済危機というのは、やはりそれはアメリカの過剰消費、それからドルの垂れ流しと言われているもののもたらした現象だろうと私は理解をしております。

 円の地位を強くするということは大事でございますし、国際的な取引で円が国際通貨として多く使われているということは望ましいことですし、円という形で借款が多く行われるということも為替リスクがないという面では望ましいことでございますけれども、そういうことに向かって日本政府は努力を少しずつしているということはぜひ御理解をしていただきたいと思っております。

中川(正)委員 どこで努力をしているのか見えていません。同時に、だんだん卑屈になってきていまして、これは具体的な数字、ここに出ているんですが、二〇〇一年でいわゆる外貨取引に占める円の割合というのは一一・四%、この数字がどんどん落ちてきているんです、今。日本のそういう意味での存在感も円とともに落ち続けているんですよ。それはさっきの話のように戦略性がないからということを指摘させていただいて、ぜひASEANプラス3、行ってきてください。何を言うかその前にちゃんと日本の国民に説明をして、それでぜひ参加をすべきだというふうに思います。

 以上、時間が来たようでありますので、質疑を終了させていただきます。

田中委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 中川大臣の突然の辞任で急遽、財務大臣、金融担当大臣という大変な大きな仕事をするということになられたわけですけれども、この間の一連の事態、あのようにろれつの回らない状態での記者会見、きょうも放映されていました。もう毎日放映されているわけです。これはまさに日本の信用そのものを失墜させる極めて重大な事件であったというふうに私は思いますし、またそれに対する政府側の対応も、麻生総理が最初慰留をする、それから、予算が通ってからやめる、こう言ってみたり、そう言ったその日の夜に辞任する、二転三転、こういう状況が続いたわけです。

 この一連の事態について与謝野大臣としてどのように見ておられるのか、感想をまずお聞きしたいと思います。

与謝野国務大臣 実は、私は中川大臣がやめられるまであの映像は見ていなかったのですが、やめられた後の七時のNHKのニュース、これを見まして、やはりこれは日本の代表としてあるべき姿ではないということを確信いたしました。職を辞するということは当然のことであったというふうに思いました。

 ただ、中川さんは私の友人ですので、友人としては極めて残念なことであったとも思っております。

佐々木(憲)委員 それで、中川大臣のお仕事を引き受けられたわけですけれども、先日、記者会見で与謝野大臣の発言を聞いていまして、能力はないかもしれないが、体力には自信があるというふうにおっしゃったんですけれども、私は逆じゃないかなと思って聞いておりました。

 これだけ大変な三つの大臣を兼ねるというのは今までほとんど例がない、重要ポストを三つ兼ねるということはないと思うんです。そういう意味で、体には十分気をつけてやっていただきたいと思います。

 そこで、内容について、具体的な政策について考えていきたいと思いますが、まず、麻生総理が十月三十日、昨年の秋ですけれども、記者会見をいたしました。その記者会見の隣に与謝野さんがお座りになっていたと思うんですが、いかがですか。

与謝野国務大臣 座っていたのではなくて、立っていたんです。

佐々木(憲)委員 なるほど、立っておられたわけですね。

 それで、そのとき麻生総理は、三年後には消費税引き上げをお願いしたい、このように発言をされました。私は、この記者会見をその後ニュースで見て、とんでもないことを言ったな、突然あのような、国民の負担をふやす、消費をいわば冷やすような、三年後とはいえ、今の時点でそういう発言をされるということは、景気対策のため、経済対策のためと言っていながら実際には消費税を引き上げるという発言をすること自体が消費意欲を冷やすものであるというふうに感じました。

 こういう重大な発言をする場合は、当然事前に、与謝野大臣、隣に立っておられたようですから、相談もあり、かつ財務省等と打ち合わせをして、こういう発言をいたしますよ、これが普通だと思いますが、これは十分な打ち合わせのもとでそういう発言をされたんでしょうか。

与謝野国務大臣 もともと私は、日本の社会保障制度、年金、医療、介護等を続けていくためには財源が必要であって、財源なしでこういう制度は維持できないと思っておりまして、やはりある時期が来ましたら国民に御負担をお願いするということを政治は勇気を持って言わなきゃいけない、そのように思っておりましたし、総裁選挙の最中もそのことははっきりいろいろな演説会で申し上げてきたところでございまして、総理の発言には全く違和感もなく、当然のことを言われたと思いました。

 ただ、我々と事前のお打ち合わせではなく、総理独自の財政、税制、日本の経済に対する見通しの上に立った御判断であったと思います。しかし、この御判断は私の考え方とも一致しますし、その後、総理が発言された内容をどういうふうに担保していくかということに腐心をしてまいったわけでございます。

佐々木(憲)委員 今お認めになったのは、事前の打ち合わせはなかった、こういうことですね。

 事前の打ち合わせなく、三年後には消費税を上げるということを総理が自分の考えだということで突然述べる、これは私は極めて異常な事態ではないかと思います。違和感がないと言われましたけれども、本当に違和感はなかったんですか。私は、突然、事前に打ち合わせなしにこんなことを言われたらびっくりすると思うんですが、どうだったんですか。

与謝野国務大臣 実は、総理は別に根拠がなく言われたわけではなくて、自由民主党に税制調査会というものがございまして、最終的には自民、公明で話し合って与党税制改革大綱というのをつくります。累次に渡る税制改革大綱には消費税を含む税制の抜本改革をやるということをたびたび書いてありまして、これは与党も、税制改革、抜本改革をやるということは党議として承認していることでございますから、それを具体的な年次をもって申し上げたということは特段、党の方針あるいは今までの政府の方針と違背したものであるわけではありません。

佐々木(憲)委員 私は、与謝野さんが書かれた、これは最近のある雑誌ですけれども、ここにこう書かれているのを見ました。「十月三十日には首相官邸における経済対策発表の記者会見に同席。ここで麻生総理がいきなり「三年後に消費税引き上げをお願いしたい」と言いだしたのである。この時は私にも財務省にも何の相談もなし。」「私も会見の時に麻生総理の隣にいて「このおじさん、いったい何を言い出すんだ」と驚いたぐらいなのだ。」と。

 これが実際の感想だったんじゃないですか。

与謝野国務大臣 そのおじさんという話はちょっと余り正確じゃないので……(佐々木(憲)委員「いや、書いてある」と呼ぶ)私が書いたんじゃなくて、それは口述筆記なものですから、私がそういう発言を使ったかどうかというのは、多分使っていないと思うんですが、まあ、びっくりしたことは間違いない。これは手順を踏んでいってそこまでやろうと思っていました。しかし、やろうと思っていた我々にとっては、総理がまず決断してくださったということは、ある意味では大変いいことだったと思っております。

佐々木(憲)委員 このおじさん、何を言い出すんだと。これは口述筆記であろうが、当然原稿にする場合には最終的にチェックをするわけですよね。つまり、こういうことでよろしいということで活字にして世間に発表しているわけですよ。それを何か、そんなことを言った覚えがないというのは、これは全く言い逃れにもならない弁明だと私は思います。

 それで、私、こういうやり方を見まして、麻生総理というのは、アドリブでこういうことを言うというのはどういうことなのかなと。例えば二兆円の給付金の問題も、麻生さんの発言が二転三転ということで大変な問題になってまいりました。

 この定額給付金については、与謝野大臣は最初は、高額所得者の所得制限を設けるべきである、こういう発言をされていましたよね。もらう人が高額所得者だと思えば辞退せよというのは政策ではない、だから制度的に決めなさい、制度をつくるのが政策である、本人がもらうかもらわないか、どうぞ御自由にというのは政策ではない、こういう発言をされました。これはどういうことなんですか、正確には。

与謝野国務大臣 このおじさん、何を言うんだというのは愛情を込めた表現ですから、お間違いないようにしていただきたいと思っております。

 それから、今の定額給付金の原型というのは定額減税ということだったわけです。定額減税という形でずっとやろうということにしておりましたけれども、定額減税の欠点を我々は指摘をしました。これは、所得の低い方には、また納税をするに至らない所得しかお持ちでない方には定額減税の効果が及ばない。また、納税はしているけれども十分な納税をしていない場合には、定額減税の効果が全部及ばない。これはやはり、定額減税をやると、高くない所得の方に不公平になる。それじゃ、定額減税と給付金という形に組み合わせてやるか、これが次の議論だったんですけれども、それもまた事務的に大変だと。結局、定額給付金というものに一本にしよう、こういうことになったんです。

 ですからそのときに、定額給付金の政策としての性格というのは一体何なのか、これは経済対策としての消費喚起なのか、あるいは社会政策としての給付金なのか、こういう議論に当然なったわけです。私は、やはり社会政策的な意味を持たせた方がいいというので、所得制限を設ける方が政策としての性格がはっきりするという議論をしておりました。

 ところが、これはなかなかできないという論者が出てまいりまして、それは総務省の方で、実際給付するのは市役所、町役場、村役場、窓口だ、こういうところはなかなか所得税に関する税務情報というのはその場では持っていない、所得制限をすると膨大な事務量が発生し、なおかつ所得に関しての個人情報を市町村が知ることになる、知るためには個人の了解が必要だとか、非常に何か大変な話になるという話で、それでは所得制限を設けるのはやめようと。でも、私がそのとき申し上げたのは、しかし、市町村によっては所得制限を設けた方がいいという市町村が出てきたらどうするんだという話をしましたら、そういう市町村が出てきたら、自治体の意向を尊重して、市町村の意向を尊重することにしようということで、市町村の意向でも所得制限を設けることはできるというふうにしたわけです。

 ですから今は、あの政策は何か、こういうことになりますと、やはり定額減税の変形したもの、定額減税が発展したものということと、当初は社会政策的な意味を持っていたけれども、あわせて経済政策的な意味も持っているというふうに私は理解しております。

佐々木(憲)委員 実務的な大変さがある、だから基本的には所得制限など設けずに全体に分配すると。

 ということは、この程度のことは、事前に実際にこれをどのように給付するかということを検討していれば当然想定されることなんですよ。それを全く想定もしないで、いきなり二兆円給付金とばんとアドバルーンを上げて、それで解散すると思ったのかしないのかわかりませんけれども、いずれにしても、十分な政策的検討なしに実行した、つまり決めた。それから、基本的な性格についても、一体低所得者への生活支援なのか景気刺激策なのか、これもはっきりしていない。つまり、基本的な理念も具体的な実施の細目についても十分な議論なしにともかく決めた、今のお話でそのことが非常によくわかりました。

 そしてその上で、与謝野大臣自身は、実際にこれが給付される場合、受け取るのか受け取らないのか。社会政策的な意味をかなり主張されていたのであれば、当然断るというのが私は筋だと思いますけれども、どうですか。

与謝野国務大臣 私の今までの答えは、これに対する財源法案が通過してからゆっくり考えたいというのが今までのお答えでございます。

佐々木(憲)委員 通過してから考えるというのはおかしいんじゃないですか。提案をしているわけでしょう。提案をして、こういうふうに実行しますよと、通過するのを前提に今政府はやっているんじゃないんですか。だったら、通過した後どうするかというのは、当然今考えてしかるべきであり、それを言わないというのは極めて無責任だと言わざるを得ません。

与謝野国務大臣 この定額給付金というのは、受け取るか受け取らないかというのは個人それぞれの自由な制度になっていまして、お金を送りつけたり強制的に受け取っていただくという制度ではありません。そういう給付金の性格を明確にするためには、私はこれから判断するということを申し上げているわけでございます。

佐々木(憲)委員 全く無責任ですね、これから明確にすると。与謝野大臣自身が何を考えているのかというのを私は聞いているわけなんです。

 もう時間がありませんからこれ以上やりませんが、この一つをとりましても、麻生内閣が実際にいろいろと打ち上げて、目玉であるかのようにいろいろな政策を出していますけれども、どうも極めて無責任であり、細目も明確じゃない、そういうやり方が続いていると思うんですよ。

 午後の質疑では、この法案の附則を中心に、消費税の問題について少し詳しくお聞きをしたいと思います。午前中は以上で終わりたいと思います。

     ――――◇―――――

田中委員長 次に、内閣提出、財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行及び財政投融資特別会計からの繰入れの特例に関する法律案、所得税法等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。古本伸一郎君。

古本委員 民主党の古本伸一郎でございます。

 大臣におかれましては、御就任おめでとうございます。

 これはたしか重要広範だと思うんですけれども、よろしいでしょうか。

竹下副大臣 そのとおりでございます。

古本委員 これは本当にこの間の騒動は、国民の皆様からごらんになっていると、ただただあきれるばかりですよ。それで、これは重要広範議案で、この与党の皆さんの出席状況はどうなっているんですか。本当に思いますね。大臣の責任じゃないんですよ。大臣に言っているわけじゃないんですが、政府・与党一体としたならば、大臣としてもこんな状況で答弁するのもさぞかし情けないだろうと思いまして、最初に申し上げました。

 それから、これは早速夕刊紙に、「これはもうメチャクチャ 「与謝野内閣」になってしまった」と出ていますけれども、大臣、正直言いまして、お友達で中川大臣を選んだというふうに巷間言われていますけれども、どういう理由で大臣は選ばれたと思いますか。

与謝野国務大臣 お友達じゃないからじゃないですか。

古本委員 そうしますと、ますます、本当に苦言を呈しながら、本当に規律しながら、なおかつ国民の皆様の方を向いていろいろなことに当たっていただきたいと思います。ただ、せっかく巷間、報道によれば与謝野内閣なんということも出ていますので、二、三、それに備えた、財務大臣の所管を超えたところを最初に聞いておきます。

 今、小泉さんがいろいろ御発言なさっています。今の与党の先生方の、ちょうどこの辺まであります三分の二の議席は、郵政民営化の是非を問うた、そのことによって得られた議席ではなかろうかということを小泉さんは言っておられますけれども、それに反することを麻生さんは真っ向からおっしゃっているわけですから、小泉さんは合点がいかないということでああいうことを御発言されているというふうに推察をいたします。与謝野さんはどう感じられますか。

与謝野国務大臣 ここにおられる一年生議員の方は、郵政問題一点で当選したわけではありません。それぞれの議員が候補者として優秀であったために有権者に選ばれたわけでございまして、郵政選挙だから選ばれたというのは、有権者の判断をやや軽視しているのではないかと思っております。

古本委員 そうしますと、今、小泉元総理が、現在の与党の三分の二の再可決ができ得る議席を得たその専らの原動力は、郵政民営化の是非を問うたあの選挙にあったんだと言うことについては、小泉さんがいささか有権者を誤解しておる、こういうことをおっしゃっている、そういう理解でよろしいですか。

与謝野国務大臣 あのとき、郵政は一つの大きな問題でありましたけれども、私はその当時自民党の政調会長をいたしておりまして、郵政の問題以外にたくさんの政策を掲げて戦った選挙でございます。

古本委員 さりとて、僕は忘れもしないんですよ、大臣と初お手合わせというんですか、御指導を賜った予算委員会での質問、もう随分前になりますけれども、はっきり覚えています。当時、ライブドア事件がありまして、いわゆるニッポン放送株を東証のToSTNeT1というのですか市場内時間外取引で、何百万株もの株がぽっといきなり画面に出て、契約が成立したわけですよ。そのことについて違和感を覚えませんかとお尋ねしたところ、当時担当大臣として与謝野さんは、出会い頭にそれだけの株が出てそれを買ったということは、要するににわかには信じがたい、正確な表現は私も覚えていませんが、出会い頭にそういったことがあったということは考えにくいということを素直におっしゃっていたんですね。

 ということは、与謝野さん、三分の二の議席を得ているこの現実は、今全国で惜敗されておられる議員はもとより、それからあの選挙で本当にいろいろな離合集散がありましたよね、また戻られて入閣されている人もいらっしゃいますけれども。いろいろな動きがあった最大の争点は郵政民営化の是非だったと思うんですけれども、これは違うんですか。

与謝野国務大臣 もちろん郵政民営化の是非、小泉総理のリーダーシップ、自由民主党の政策の優秀性、こういうものを判断した上で、候補者それぞれの資質を見ながら有権者は選択をされたということで、郵政は大きなテーマであったわけですけれども、この人が郵政に賛成か反対かということだけで決めたわけではない。

 ただ、郵政の問題が非常にドラマチックな展開をしましたので、そういう雰囲気の中で選挙が行われたことは間違いがない。そういう中で私どもは多数の議席をいただいたわけでございますけれども、そういうドラマチックな効果の中で選挙をやったことが議席の増につながったことは、もちろん私は率直に認めます。

古本委員 そちらのコップの中のもめごとですから、これから先はお任せいたしますけれども、大臣、国民は見ていますからね、わかっていらっしゃると思いますよ。

 もう一つ、陰の総理だそうですから、大きな話を聞いておきたいと思うんですけれども、麻生さんは全治三年としょっぱなにおっしゃったんです、今回のこの経済・雇用危機に対して。逆に言うと、三年間は回復しないということをもう言っちゃったということなんですね。今、先生方が地域を歩いておられて、三年も待っていられないというのが実感なんじゃないでしょうか。

 その意味においては、あれは三年と言っちゃったのは実は間違いだったんじゃないか。もうこれは命を賭して、例えば何が何でも一年以内に、あるいは半年以内にと。その具体の目標設定を間違えていたんじゃないのか、日程観において。このことについてはどのような御所見を持たれますか。

与謝野国務大臣 中国の言葉に白髪三千丈という言葉があります。これは長いという意味でございまして、全治三年というのは、今回の不況を克服するためには非常に長い時間がかかるということを表現しているので、三年という数字自体が数学的な意味を持っている表現ではない。

 ただ、一九二九年の恐慌の状況をずっと研究してみますと、こういう状況から立ち直るのにはそう三月、半年、一年ということではなくて、相当の時間がかかるということは間違いない。今までも、経済の予測で全治三年なんということを言うということは、非常に長い回復期間が必要だ、そういうことを総理は表現されたかったのではないかと私は思っております。

古本委員 数学的な日程観、物理的な日程観を言ったわけではないと思う、ただ大変回復に時間がかかるんだろうという相場観として言われた、そう受けとめました。

 もしそうとすると、先ほど来も出ておりましたけれども、景気が回復した暁には消費税の議論もしたいんだ、あるいは、今いろいろな矢継ぎ早の政策を打っておられる、こういう御提案でありますけれども、それぞれは日程観のないままにやっているわけではないですよね。つまり、三年もかかるということをやはり言ってしまったこと、つまり三年間はあるんだと。もう今年度中にはけりをつけるんだとか、そういうものをむしろ言うべきではなかったんじゃなかろうかと私は思うんですけれども、ちまたの中小零細の本当に運転資金に困っておられるような皆様からすると、三年も待っていられないというのが私は実感だと思うんです。

 改めてお尋ねいたします。与謝野総理だったらあんな、三年なんということを言いましたか。

与謝野国務大臣 全治三年という表現は、完全に治るまで三年という意味で、徐々に回復していく過程があるという表現でもあるわけです。

古本委員 洒脱で、結構ぽろっと本音を言ってくださるので、意外と人気がある与謝野さんかなとお見受けをいたしておりましたけれども、やはり本音を言っていただかないと、まあ弊党の代表も、巷間、与謝野さん頑張っているじゃないかと言われているようですから、何か妙なシンパシーも感じながらきょうお尋ねしていますけれども、ではもう一つ、ちょっと全体の、各般にわたる話をお尋ねします。

 今、日本では物が売れなくて困っています。これは、耐久消費財がまさに壊れないから買いかえない、非常に性能がよくて長もちするからまだいいんだ、こういう話もあるんでしょうけれども、他方で、欲しいんだけれども先立つものがない、あるいは、新技術や新しい環境技術やいろいろなものに魅力を感じてパンフレットまでは手にとるんだけれども、その一歩先に進めないというのは、やはり可処分所得が減っているという現実があると思うんですね。

 家計、お財布にお金を戻す方法は、一万二千円の給付金も結構ですよ、一万二千円もらったからといってそれで液晶テレビのローンの頭金になると思えませんけれども、ずばり、家計の財布にお金を戻すには、私は幾つか方法があると思うんですけれども、大臣の所管でいえば減税しかないと思うんです。もう一つは、所管外ですけれども、全体でとらまえたならば、やはり労働条件の改善しかないんじゃないかと思うんです。

 この二点について御感想を聞かせてください。

与謝野国務大臣 この十年間ぐらいの企業経営の風土というのは、だれが言い出したのか知りませんけれども、会社は株主のものというようなことで、配当性向はどんどん高くなった、内部留保も厚くした。また一方では、労働分配率は若干ではあるけれども下がった、これはやはり格差を生み出しましたし、また派遣社員というような非正規労働がふえたということは格差を拡大したと思っております。

 中長期的には、やはり所得税の税制を少し考えなきゃいけない。昔は、所得税というのは所得再分配機能というものを非常に大きく持っていたわけですけれども、世界の所得税がフラット化していく中で、日本の所得税もそれに倣って今の所得税体系になっておりますけれども、果たして所得税が所得再分配に対して十分な機能を発揮しているかどうかというのは、税制の抜本改革の中できちんと議論をしていただかなきゃいけない。

 それから、当然、民主党が提案されている給付つき税額控除というものも、一つの類型としてはやはり検討に値するのではないか、私はそういうふうに思っております。

古本委員 そうしますと、給付つき税額控除というのは一種の減税である、こういう理解でよろしいんですか。

与謝野国務大臣 給付つき税額控除というのは、今やっている定額給付金と中身は非常に似ております。私にとりましては同じじゃないかなと思うくらいでございますけれども、我々は、今後所得税制を改正するときには、最高税率のあり方あるいは子育て世代に対する税をどうするかということは、やはり歳出面とあわせて考えていかなきゃいけない課題であろうと思っております。

古本委員 労働条件の改善についてははっきりお答えにならなかった気がするんですけれども、分配率を上げていくということについての言及は何かありましたか。もう一度お願いします。

与謝野国務大臣 実は、民主党を支持されている連合という組織、立派な労働組合ですけれども、全国の働く方々を五千五百万人だと仮にしますと、そのうち連合がカバーしているのはわずか八百万でして、やはりこういうところが連合以外の働く方々、未組織労働者、こういうことも代弁していただかないと、労働側の声が五十年、二十年、小さかったのではないかと思います。

 それから、非正規雇用というのは社会保障の面等でやはりできる限り少なくしなければならない雇用形態だと私は思っております。これは、宮本太郎先生という北大の先生が書いた「福祉政治」という本があるんですけれども、その中で宮本先生が言われているのは、ここ十年で日本人が失った最大のセーフティーネットは終身雇用というものだと。やはり会社、家庭が社会保障の重要な部分を担っていたと私は思います。これは宮本先生の御主張ですけれども、私はそのとおりだと思って、こういう雇用制度が与えている働く方々に対する不安というものは非常に大きいのではないかと私は思っています。

古本委員 今非正規の方のお話も出たわけなんですけれども、今、いわゆる働く方々の三分の一が非正規だと言われていまして、そうしますと、失業保険一つとりましても、あるいは生活保護のありよう一つとりましても、日本人の勤労者というのはみんな正規雇用で、終身雇用で、六十歳で定年退職して老後は年金で安心してというモデルがもう崩れているわけですね。この崩れている中での税や社会保障を再構築、一度本当にゼロからつくり直すまでやらないことには、恐らく、消費不安を払拭して、お金を使うことがまさに今不安になっている状況を取り除くことはなかなかできないと思うんですね。そのことは恐らく大臣も同じ考えだと思うんです。

 そうしますと、今のお話の中で、正規雇用ももちろん大事なんだけれども、非正規の方々の所得も上げていかなきゃいけないんだ、労働分配を上げていかなきゃいけないんだ、こういうニュアンスと受けとめたんですけれども、簡潔に、そういうニュアンスでいいかどうか。その際、最低賃金についても意見を聞かせてください。

与謝野国務大臣 オランダの例をとりますと、雇用形態のフレキシビリティー・プラス・セーフティーネットという考え方があって、そういうものを見ますと、日本の労働市場は、バブル以降はある種の柔軟性を持ったことは間違いないんですけれども、そのときに十分なセーフティーネットを構築していないといううらみが実はあるのではないかと思います。

 最低賃金というのは、最低賃金が高ければいいわけですけれども、最低賃金を上げていきますと、実は打撃を受けるのが中小零細企業でもありますので、そういうところの経営状況と考え合わせながらやはり物事を決めていく必要があるのではないかと思っております。

古本委員 幾つかお尋ねしたいものですから、ちょっと前に進みます。

 大臣は、年末の御党の党税調、政府税調はどうだったか、党税調でも御議論があったと思うんですけれども、たばこ税ですね。たばこ税というのはかつての戦費調達に起源があるというふうに承知をいたしておりますけれども、これはすぐれて財源であるという御理解でよろしいですか。

与謝野国務大臣 私も、やめろと言われるのになかなかたばこをやめられないんですが、たばこが一箱千円になったらやめようと実は思っていました。ある国では一箱千円ぐらいになっているんですけれども、この国で消費されるたばこの六割近くは密輸品か密造品になっているそうでございます。

 それから、たばこを財政物資だと思って税を上げていきますと、実は消費が減って収入がそんなに上がらない。ですから、たばこの税を仮に将来考えるとしましたら環境問題、健康問題から上げるということであって、たばこで稼いで消費税のかわりにしよう、そういうのはよこしまな考えだと思っています。

古本委員 そうしますと、今御省が所管されていますたばこ事業法という法律がございます。この事業法によれば、たばこ事業を涵養し、それによった収益がまさに税に寄与するということで、たばこ事業法がある限りは、これは今大臣がおっしゃった健康目的やあるいは環境目的では法の趣旨が合わなくなってしまうんですね。大臣はすごく本音で言っていただいたと思って、ナイスショットですよ。非常によかったです。

 というのは、今、千何百円のところという例を出されました。恐らくイギリスとかを想定されておっしゃったと思うんですけれども、若い子が例えば一時間、どこかのファストフードでレジを打って足を棒にして働いて得られる時間給で計算した場合に、恐らくロンドンの学生の方が、アルバイトをして得られる時給をたばこでいうと、本当に一時間足を棒にして立ちずくめで仕事をなさって、やっと一箱買えるか買えないかなんですね。ところが、日本の場合は恐らくもっと買えるんですよ。つまり、若年層が手を出しやすいんですね。私は若い人でも二十以上になれば、嗜好品ですから吸いたい人は吸えばいいと思うんですけれども、これはWHOの勧告で、まさにたばこ規制枠組み条約の締約国に日本はなっているんですが、その中からも、価格政策によって喫煙率を下げることによって国民の健康を守るべきだという指導も受けているんですね。

 これはちょっと余計な解説をしましたけれども、そういう中で、実は健康目的と環境目的というふうにしつらえを変えようと思いますと、これは財務省から厚労省に所管がえした方が恐らく事が進むんじゃないかなと思うんですけれども、にわかのお尋ねですから、少し感想だけ聞かせてください。

竹下副大臣 たばこ事業法につきましての御質問でございましたけれども、確かに担税物資であるということを否定するつもりは全くございませんし、それから、それだけではなくて、たばこ産業あるいは葉たばこ農家といったようなものが厳然として存在するということも事実でございますので、そうしたことを総合的に考えなければなりませんし、そういう意味で、国民経済全体の発展ということを考えて、それがたばこ事業法の目的になっているということでございます。

古本委員 たばこに関してはこれが最後です。大臣が答えてください。

 財務省の所管されているたばこ事業法の法の趣旨を逆さに読んでも表から読んでも、どこから読んでもやはりたばこ事業を涵養していくということになっているんです。それで得られた財源を国庫に対して貢献させる。要するに、財源として見ているわけですよ。これは実は大臣が冒頭おっしゃった本音とずれているんです。これからは健康と環境から課税していく、消費税に代替するようなものと思うとそれはよこしまなものであるというのは、まさに本音で言っていただいたと思うんですよ。

 だから、ぜひそういった研究を、これは本当にいがみ合ってもしようがないので、御省としてもその研究を始めていただきたいし、これはやはり財務省がその気にならない限りは、厚労省もそんなこと余裕がないと思うんですね。このことに関して、みずから千円になればやめたいと思っていたというお気持ちも吐露された中で、この研究を進めることについての御決意を。

与謝野国務大臣 役所がかわったからといってたばこのおいしさが変わるわけでもないと思いますけれども、財務省がやっていた方が万事穏やかではないかと思っています。

古本委員 では大臣、今失業されて、本当にきょうの食事に困っている人が随分いらっしゃいますね、雇用不安の問題。これは今、実は、住民税の課税のタイミングの問題があるんです。つまり、所得税は現所得に対し課税されますので問題ないんですけれども、住民税の場合は残念ながら前年所得に対して課税されるために、前年所得があった人がことし失業なさった場合には、税を払いたくても払えないという現実があるんですね。

 これは精査が必要だと思うんですけれども、国税から各市町村へのデータがどういう形で出されているかということもどうやら原因があるらしいんですよ。今、セーフティーネットやら非正規の労働の方も賃金を上げていきたいとか、いろいろなことを言っていただきました。大臣、技術的なことは聞きませんから、大御所なんですから慌てずに泰然自若でどんとしていただいて。要は、現実問題、住民税と所得税は、恐らく日本の課税のIT化のおくれやらいろいろな問題が悪さして、どうも前年の所得で徴収するということをこのまま放置してきているのが今日的課題じゃないかなと思うんですね。

 租税の原理からいえば、現所得に対して課税した方がはっきりしています。なぜならば、一月一日時点で居住地で課税ですから、場合によっては、一月一日時点で外国に居住地を移した人は住民税を取り損なうんですよ。こんな問題もありまして、これは問題だと思いませんか。大臣の任期中にそのことについていろいろな議論を進めていくということの御決意を今言ってください。

 今、派遣の労働の皆さんや非正規の皆さんが本当に苦しいと言っていることの大きな要素の一つに、前年の所得で住民税が課せられちゃって、徴収が来て、納税おくれになる、本当に申しわけないと。まじめな方は、本当に納めたいんだけれども、先立つものがないので払えない。このずれちゃっているという問題に何とか手を打つ。これは国税の担当大臣としてどうでしょうか。

与謝野国務大臣 まず、根本的な問題として、やはり納税者が番号で整理されていない、社会保障番号もない、このITの時代に何たるおくれかということは常に私は思っております。これは、それをやるだけで事務も相当迅速になりますし、国税と地方税のタイムラグという問題も、そういうことをやらないと恐らく解決できない問題だろうと思います。

 ただ、国税と地方税は、制度もちょっと違っていまして、控除する部分なんかの数字が違うので、そういうものを計算する手間もありますので、同時というわけにはなかなかいかないんだろうと思いますけれども、きちんとコンピューターで管理すれば相当なスピードで物事が処理できることは間違いないと思います。

古本委員 これは大きいです。力強い御答弁をいただきましたし、これは与野党でも本当に知恵を出して、今、手を打つときに本当に来ていると思いますね。大臣、正規が当たり前で終身雇用だったというモデルですべてが設計されているんですよ。今や三分の一が非正規です。そういう意味では、いつ派遣どめに遭うかもしれないという不安の中の皆様からすれば、納めたくたって納められないんですよ、この住民税の問題。ですから、ぜひ議論を前に進めていただきたいと思います。

 もう一点、ちょっとおまけで、サービスで答えてください。実は、退職金は特別に控除してもらえますね、住民税。どんといきなり来ちゃったら、前年所得が一千万円もあったということになっちゃうので大変じゃないですか、一時所得としてあったということで。これは、ある一定の要件を満たして、本当に今住民税がどうしても払えないんだという状況に陥っている人については、総務省の所管のことを言っていますが、だけれども何か知恵は出せないかと救済する方法を調べましたら、雇用を失った方に対する住民税の前年所得課税については、失業という観点からは恐らく救済の措置は今は十分ではないんですよ。

 実は、この後、予算の分科会で総務大臣にこれを質問してきますので、ぜひ閣内でも御議論いただきたいと思うんです。お約束していただけませんか。

与謝野国務大臣 もちろん我々も研究しますけれども、党の方でも検討するようにお願いをしておきます。

古本委員 ありがとうございます。五年間質問していまして、何か具体的な回答を得られたのが初めてのような気がしまして、私はすごくうれしいですよ。やはりこういう議論を国会でぜひしたいですね。よろしくお願いします。

 さて、本題に入りたいんです。自動車関係諸税です。

 これは、今回、政府におかれましては、いわゆるクリーン税制というか、そういう電気自動車とかハイブリッド車に対する税がある。きのうも与党の委員が質問をされていましたけれども、受益と負担の大原則に照らしたときに、少なくとも国税である揮発油税と自動車重量税に関して言えば、大臣、技術的なことは聞きませんから大丈夫です、財源特例法ということで、その財源を道路目的に取り込むことによっていわゆる財源の特定財源化を図ってきたわけなんですよ。ところが、今回、財源特例法をもうやめてしまう。

 ついては、揮発油税に至っては、昭和二十四年に創設されたときには、あの戦後の混乱期に油を買うことができたような人は恐らく相当裕福な、何か特殊な事情のある人だったんだと思うんです。したがって、そこに応能負担、つまりは担税力があるだろうという考えで負担を求めたのが揮発油税の始まりだったと思うんですよ。

 ところが、自動車重量税に関しては少し趣を変えまして、昭和四十六年来議論が始まって、やはり道路を損壊するのは専ら自動車だから、歩行者も自転車も削るといえば多少は削りますけれども、専ら道路を損壊するのは自動車であるので、その自動車ユーザーであるドライバーに負担をしていただこうということで、現在は本則税率一トン五千円に対し、暫定税率一万二千六百円がかかっているわけなんですね。今、紙に書いていることを解説していますから。ということは、やはりこの自動車重量税に関しては、随分、権利創設税的なニュアンス、意味合いがあると思うんですよ。

 つまり、車を買い、車庫に置いておくというだけで課税される重量税、このありようを考えましたときに、まず財務省の所管に絞ってお尋ねしますけれども、昭和四十九年、暫定税率を導入したときには、道路建設を促進させるのであるということを専らの目的で創設した経緯を踏まえますと、相変わらず暫定税率を維持したままで自動車重量税を一般財源化してしまうというのは、納税者への裏切りではないかなと思うんですけれども、いかがでしょうか。

与謝野国務大臣 まず特定財源に関する考え方ですが、先生お話しになられたように、揮発油税は、スタート当初は一般財源としてスタートして、多分、田中角栄さんの時代に特定財源に法律上格上げをしたわけです。一方、自動車重量税は、見かけは一般財源として立法をされましたけれども、答弁によって特定財源化したわけです。これは、その当時はやはり道路の建設に対する需要が非常に大きくて、道路を建設するということは日本の社会経済にとって極めて大事なことであったことは間違いない。また、必要性もあった。

 ただ、道路の特定財源の一般財源化をしようという議論はそもそもどこから起きたかというと、入ってくるお金の分だけ全部道路をつくっちゃおう、そういう考え方をやめようと。この道路は必要かどうかということを一本ずつ精査していって必要な道路をつくろうということで、入ってくるお金によって決まるんじゃなくて、必要性によって道路を建設しようという考え方に変わったんだと思います。

 そこで、受益者負担だと言って本税プラス暫定税率を取っていたのに、暫定税率を残しておいたのはひどいじゃないかという議論は、自民党の中にも物すごくたくさんあったわけです。これはやはり、こういう財政が非常に厳しい折であるし、今までも道路財源は道路に接続する部分の安全性に関する施設とかいろいろなものに使ってきました、これはまげて、お台所が苦しいので、暫定税率をそのまま維持させていただきたいということで、受益と負担の議論は実はそのときから消えているわけでございます。

古本委員 ちょっと最後が聞こえにくかったんですが、受益と負担の議論は、御党の中でもうそのときから消えた、こういうことでいいんですか。

与謝野国務大臣 受益と負担の関係は、そのときから消えたということです。

古本委員 そうしますと、大臣の、昨年の総裁選に出られたときの与謝野公約をちょっと拝読いたしておりますけれども、この中でこういうふうにおっしゃっておられます。「自民党の再生」という項目で、「国民政党として、都市だけ発展すればよい、人の痛みがわからない政党であってはならない。」と言っておられるんですね。

 数字を紹介しますと、今都道府県別に見ますと、これは圧倒的に地方ほど車の保有台数は多いですよ。東京都民の平均保有台数は、コンマ五以下ですよ。なぜならば、公共交通がこれだけ整備されているからです。駐車場も高いし、持ちたくても買えないという方もいらっしゃいますよね。ところが、地方は、車が好きで好きでしようがないという人ももちろんいらっしゃると思いますけれども、生活のために運転していらっしゃるわけですよ。これは、自民党の先生方も選挙区に帰れば、もう一家に一台、二台どころか、家族の人数分、車がありますというところは幾らでもあるはずなんです。世帯別に見た、都道府県別、市町村別に見た自動車保有台数を一度精査してください。

 その上で、実は、租税公平主義、これは憲法十四条に照らしたときに、何人も税は公平でなければならないと書いてあるわけですよ。そうしますと、例えば千ccのお車を買った人がおる、あるいは千五百ccのお車を買った人がおる、これは年収二千万円の人が買った場合と年収三百万円の人が買った場合と、それは明らかに担税力は違うんですけれども、ぎりぎり、これまで大義として許されたのは、受益と負担の関係があったからですよ。それは皆さん、道路を使うんですから負担してくださいと言ってやってきたわけです。ところが、今や、その受益と負担の関係は、御党の中で消滅したとおっしゃったんですよ、今。大臣をしておっしゃったんです。

 ぜひ委員長、これは一度、この場は数字はもうきょうは一切聞きませんので、都道府県別あるいは市町村別の保有台数を精査していただいて、世帯当たりの税の負担を調べてください。それで、この委員会に報告してください。委員長、これはお願いします。

田中委員長 後刻、資料等については御協議をいただき、また報告できるものはぜひ報告をしていただきたいと思います。

古本委員 委員長のお計らい、ありがとうございます。ちなみに、これは絶対に出るデータですから、またお願いをしたいと思います。

 ということは、実は租税公平主義の中で、特に垂直的公平性というんでしょうか、つまりその人の資力であったり、あるいはそういう環境であったり、いろいろなことで税というのは担税力がある人、ない人、ありますね。そういう中で、実は自動車という商品に関しては、その人の担税力いかんにかかわらず、乗らないと暮らしていけないという人がこの日本には随分いらっしゃるわけですよ。そのおかげで学校にも行ける、病院にも行ける、職場にも行けるという人が山ほどおるんです。それらが負担した税は、やはり公平性がないといけないと思うんです。

 その意味では、今回、例の社会保障の二千億円の財源圧縮を政府がなさる中で、この中にするりとまた六百億円ほど自動車諸税を入れておられますけれども、東京の丸ノ内線で通勤している人の医療費に、なぜ九州や東北で車でないと暮らせないという人が納めた税金を回さなきゃいけないんですか。受益と負担の関係とは決別したんだということを宣言されましたけれども、これは有権者は見ていますよ。納税者は見ていますよ。本当にこんなことでいいんでしょうか、大臣。

 課題の提起としながら、改めて、一般財源化するなら、やはりせめて国民との約束として暫定税率は廃止しなきゃいけないと思いますよ。いかがでしょうか。

与謝野国務大臣 国の財政の状況から見てもそれはなかなか難しいということのほかに、やはり知事会、市町村会からの強い御要望は、現行の税率水準を維持しろと。地方の声は、実はそういうことであったわけでございます。

 かてて加えまして、税の公平ということを議論しますと、私の選挙区は東京でございますけれども、それでは地方交付税というのは一体何なんだという話になって、それから、おととし、私が税調の小委員長をやっておりますときに東京都の石原知事と交渉して、悪いですが三千億ほど東京都の税金を地方に回してください、こういういろいろなことをやっていますけれども、揮発油税あるいは自動車関係諸税だけに着目をして公平かどうかということを論じるのは、ちょっと議論の幅が狭過ぎるのではないか。やはりいろいろな、もろもろの交付税の問題等々あわせてそれぞれの地方の財源論や住民の生活ということを論じる必要があるんじゃないかと思います。

古本委員 大臣、数字だけ紹介しておきますけれども、千八百ccの車、一・八リッターだから、大臣のイメージでいくと、昔でいうコロナとか日産でいうところのブルーバードみたいなあのクラス、あのクラスのお車で、買っていただいて五年間乗っておられたとして、税を計算しますと、一年間で台当たり大体十二、三万円負担するんですよ。一年でですよ。それに駐車場代もかかった日には、ランニングコストはもう言うまでもありません。

 つまり、今、自重税と揮発油税は国税で財務省所管なのでそこに限定いたしましたけれども、車を買ったときには取得税、車庫に置いておるだけで自動車重量税、そして排気量だけで自動車税、走らせてガソリン税、軽油引取税。もうこれは、かつての高級品であった、戦後の焼け野原で車を買うことができたという本当に特殊な人に担税していただこうという時代に創設された税が、現在の日本人の生活実態に合っていないということなんです。その税のモデルチェンジをせずして使い方だけ変えちゃったものですから、今回の話は、全国七千万台の車が走っていますから、多くのドライバーは見ていますよ、財務省、御省の動きを。これは見ていますよ。それはないんじゃないかという思いですよ。だって、この道路は皆様のガソリン税でできていますという看板を、ではこれから引っこ抜くんですね。そういう話になりますよね。なるんですよ。

 ですから、大臣、きょうは全体の、まずお手合わせの第一回目ですので、私も自重税と揮発油税だけの狭い話はするつもりはなくて、自動車というものを持ち、走るという、日本人にとって地方ほどなくてはならない必需品に対する課税としては、余りに租税公平主義に反していないかという観点で少し議論をさせていただきましたので、また次回にその続きをお願いしたいと思うんです。

 もう時間が来ちゃったので残念ですけれども、最後に一つだけ、済みません。

 今、久しぶりに堺屋太一さんの「平成三十年」をもう一回読んでみましたら、本当に当たっているんですね。何となくそういう感じになってきていますよ。平成三十年の日本というのは、物価が上がって、対米ドルレートも二百五十円ぐらいの時代になるというふうに予測されているんですけれども、平成三十年の日本の世の中の法人、会社というか、要するに付加価値の四番バッターはどうも製造業じゃなくなっている感じなんですよ。

 我が国における付加価値の四番バッターは製造業であり続けるべきではないかと僕は思うんですけれども、与謝野さんは十年後の日本の四番バッターはどのセクターになっていると思われますか、あるいはどのセクターであるべきだと思われますか。

与謝野国務大臣 何年か前から、日本は金融大国になって金融で飯を食え、そういうことを主張されていた方、我が党の中にも何人もおられましたけれども、そういう幻想がいわばこの一年ほどで打ち破られたと私は思っております。

 日本の生きるすべというのは、やはり愚直なもの、サービスづくりであるんだろうと思っていまして、日本みたいに資源のない国にそんなうまい話が転がっているわけがない。今のような状況ですけれども、将来花開く分野、例えば研究開発その他、そういうものに現代に生きる人はなるべく多くお金を使わないと、やはり将来花開くものにできるだけのことをするというのが現代を生きる我々の責任ではないかと思っております。

 どの分野で生活の糧を得られるかというのは、実は日本人にとって最大の課題であると思っております。どの分野でも、中国初めあらゆる分野との、あらゆる国々との競争関係に入ってまいりました。どの分野で生き残るかというのが、実は日本にとって私は最大の課題であるというふうに考えております。

古本委員 製造業が四番バッターではない平成三十年を堺屋さんは予測されていますけれども、大臣もそう思うということなんですか。それとも、四番バッターであり続けられるようにみんなで頑張った方がいいと。どういうふうに最後言われたのか、念のため確認しておきます。

与謝野国務大臣 ですから、世界が受け入れてくださる製品、サービスを競争力ある価格で提供できる国であり続けるためにあらゆる努力をしなければいけない、こういうことでございます。

古本委員 ありがとうございました。

田中委員長 次に、松野頼久君。

松野(頼)委員 民主党の松野頼久でございます。

 大臣、御就任いただいて初めての質疑になるんですけれども、正直、きょう私もほとんど準備をしておりません。というのは、この委員会がいきなり立ち上がったということで、大臣に申しわけないんですけれども何も通告もしていないのと同時に、私も何の準備もしておりませんので、こういう質疑もいいのかなと、本来の形で。ですから、余り細かいことは聞きませんので、どうか御安心をいただきたいと思います。

 それと、これは大臣にというよりも先輩の議員として聞いていただきたいんですが、毎年こういう形で税法の審議というのが実は行われているんですね。要は、一月、補正予算を組む。補正予算が終わると本予算の審議に入る。その本予算の審議で財務大臣がとられるものですから、予算委員会のあいている時間にちょこちょこと税法を審議する。例えば、きょうは分科会であるからとか、あと公聴会とか、多分その後は来週の参考人のときにやるんでしょう。それで、税ですから、今回のこの法律も重要広範議案に当然指定をされているんですが、ことしどれだけの審議時間が確保できるかわかりませんけれども、おおむね十時間いくのかいかないのかということであります。

 一方、歳出の方の予算委員会は、毎年六十時間、七十時間という審議時間をやって一月の終わりから二月の終わりまでというのが大体、毎日それが行われるというのが予算委員会、歳出の方であります。

 これは、私、議運の筆頭をやっているときから常々議会の中で申し上げているんですが、やはり税というのは議会のそもそもの始まりではないか、そして国民生活全般にかかわる最も大事なものではないかというふうに私は思っているんですね。そういう中で、毎年こういう予算の合間にどたばたとという審議で、審議の時間だけとにかく消化をして、予算と一緒に所得の、国税、地方税を上げるんだといって、三つ合わせて参議院に送るという、私は非常にこの審議のやり方というのは納得ができないんです。

 行政府の大臣にどうこうしてくれということを言っているわけじゃないんですけれども、立法府としてやはりそれは、議運のときに僕がずっと提案しているのは、秋は歳入委員会をやって、どっしりと予算委員会並みの税及び社会保障等の歳入の委員会をやろう、その議論を踏まえて、政府税調にかけて学者の先生方が手直しをして、ことしの通常国会に出して、それで今ぐらいの審議時間をかけて上げていくというのが、私は議会としての筋ではないかというふうにずっと言い続けているんですね。

 ことしは、民主党の政策の中にこれを入れてもらいました。ですから、たとえどの政党が政権をとっていようとも、税の扱いは僕は変わらなくていいのではないか、しっかり歳入歳出を議論して、そして参議院に送るなら送るという姿勢をとっていこうということを実はずっと訴えておるんです。

 行政府の大臣に御意見を伺うのはちょっと変な話かもしれませんけれども、行政府から見ていただいても結構ですので、ちょっと御意見をいただけないでしょうか。

与謝野国務大臣 私も議運、国対に長い間所属をしておりましたし、大蔵委員会にも所属をしておりまして、昔の大蔵委員会は、夜なべと称して、予算委員会が終わった後審議をしている。なかなか、国会のしきたりというのは変えられるようで変えられない、難しいものだなと思っておりましたが、先生がおっしゃるように、もう少し効率がいい審議の方法はないか。また、審議されている内容というのは相当高度なものでございますから、この財金委員会なんかの税の議論の本質等は、やはりもう少し広く国民に知っていただいた方が私は多分いいのであろうと思っております。

松野(頼)委員 ありがとうございました。これはぜひ議会の中でしっかりもう一度、僕はひたすらこれは言い続けていこうというふうに思っておるので、ぜひ応援をしていただければありがたいと思います。

 もう一つ、ちょうど少し前にこの財務金融委員会におきまして、韓国の財務金融関係の議員との懇談会を持ちました。私はその場におりまして、諸外国から日本は今どういう形で見られているんだろうかということを非常に考えたんですね。今、テレビや新聞では、割とおもしろおかしくポスト麻生ということが言われているんですが、ただ私は、これはとんでもない話なんじゃないかと思うんですね。

 というのは、まず財政的には、以前イタリアがEUに参加をする前に、財政赤字が膨らみ過ぎて財政破綻をしているかのように言われておりました。ただ、そのときでも公債発行比率、対GDP比で百三、四十だったと思うんですね、二、三十の間だったと思うんです。今、日本は一五〇をはるかに超えているんです。ですから、非常に財政的には厳しい状況。それで、毎年総理がかわるということであります。

 国内で見れば、次のポスト麻生はだれがいいかというのはおもしろい話かもしれませんが、諸外国から見た場合に、この日本の姿というのは非常に恥ずかしいものになっているのではないか、日本は大丈夫なんだろうかという心配を与えるような国になっているのではないかというふうに私は思うんですが、その辺、大臣の御意見はいかがでしょうか。

与謝野国務大臣 総理大臣は、ここ二十年ぐらいの総理大臣を全部言えと言われても、なかなかすらすら言えないぐらいたくさんの総理が生まれた。これは、政治の安定性からいっても諸外国との関係からいっても、必ずしもいいことではないというのが一般的なことだと思いますけれども、なかなか、民主党を初め野党の皆様も厳しいのでもたないという面もありますので、その点は御寛容のほどをお願い申し上げたいと思います。

松野(頼)委員 そこで、先ほどの公債発行残高なんですが、私は以前に議事録を取り寄せて、当時の福田赳夫大蔵大臣、野党の木村禧八郎さんかな、それが最初に赤字国債を発行したときの議論を議事録で取り寄せて読んだことがあるんです。

 そのときには、当時の福田大蔵大臣は、公債発行をしても、それが膨大に膨らんで収拾がつかなくなるようなことはないんだというふうにおっしゃっていたんです。当時の野党は、いや、公債発行を一度認めると、公債に依存をすることによって野方図に公債残高が上がってしまうから、発行はだめだという議論を、これは予算委員会で三時間か四時間の、長編の読みごたえのある議論だったんですけれども、今の状況を見るとまさにその状況なんです。

 例えば、今審議されている予算、歳出八十五兆、税収四十三兆です。毎年毎年三十兆から四十兆の、特にことしは景気の悪化があって一番悪い状況ですけれども、要は、本予算を組むたびに公債発行がなければ本予算は組めない。過去の公債発行に対する返済が、公債発行分と同額以上にあるという非常に不健全な状態に私はあると思うんですね。

 要は、これだけのさまざまな税法をつくって税源を確保しているんですけれども、果たして、今の法律で集められる税というのが先細ってきているから僕はこれだけ税収が上がらないのではないかと。

 例えば、二年前に定率減税の廃止も行いました。扶養控除のカット等々、各種の控除も廃止をしました。ずっと増税路線を続けているんですね。橋本内閣のときには、消費税の増税及び社会保障の増税をしました。小泉内閣においても実は、消費税こそ上げていませんけれども、定率減税の廃止、扶養控除のカット等々、小さく小さく上げてきているんですけれども、にもかかわらず、税収は毎年下がっているんですね。

 もちろん、一時的に上がるんです。ただ結果的に、ことしの四十三兆という衝撃的な数字を見れば、下がってきているということは、どこからどういう形で税を徴収しようという課税標準をもう一度考え直す時期に僕は来ているんじゃないかと思うんですが、大臣、その辺のお考えはいかがでしょうか。

与謝野国務大臣 税は、所得のところで取るか消費のところで取るか、そういう分け方もあります。

 ただ、松野先生のマクロの議論を進めてまいりますと、やはり国民負担率という概念をもう一度検討する必要がある。国民負担率を通じて、国のありようというものを皆様方に議論をしていただかなきゃいけない。ですから、あるべき税制を議論する前にあるべき社会というものを議論しないと、多分結論が出ない話です。

 ですから、今単純に、国民負担率、すなわち税と社会保険料を足したものを比べてみますと、一番上はスウェーデンで七〇前後、アメリカが三六とか、そう両極端にあるわけで、国民負担率からいって日本の国はどの辺にあればいいのか、そういう問題があるんですけれども、実際は、日本の国民負担率というのは四八から五〇になっていますが、実は問題なのは、国民負担率のうちの一二%ぐらいは将来世代に回しちゃっている潜在的な国民負担率であって、現代の問題は現代の人が解決しなきゃいけないという意味では、やはり国民負担率を後の世代に回すということはそろそろやめにしようというコンセンサスができないと、後の世代がたまらないというふうに私は思っております。

松野(頼)委員 後の世代に回さないというのは全く同感であります。

 では、これだけ公債発行を毎年ふやしながら歳出歳入がバランスが合っていない、歳入が四十三兆で歳出が八十五兆であるという状況をやはり改善をしなきゃ僕はいけないと思うんですね。

 それと同時に、今国民負担率のお話をされましたけれども、各種の税を比較すると日本は実は国民負担率そんなに高くないんですよというような表がよく出てくるんですよ、スウェーデンに比べたらこうですと。ただ、そういう国民負担率の中に日本独特の負担というのが実は含まれていないんですね。

 例えば、生活をしていく上で電気をつける、電気の中に、大臣御存じだと思いますが、電源開発促進税という税金がインクルードされているんですね。また、例えばこういう事業所をつくると防火責任者を置かなければいけない、防火責任者を置くためには研修を受けなければいけない、研修の費用が幾らです、いわゆる官製ビジネス的なもの。また、特別税的なもの等々。また、例えば御飯を食べる、その食べるお米の中に検査費用が含まれている。

 さまざまな目に見えない国民負担率というのが実は日本には入っているんです。消防の検査もそう、何もそう。そういうのを合わせると相当な高コスト体質に陥っているのが、僕は今の日本の姿だと思います。それが数字に出てくる国民負担率に入っていないんですね、よく言われる諸外国との比較の中で。だから、ある程度所得は高いけれども、高コスト体質に陥っているものですから、そういう見えない負担というのが物すごくこの国は多いんです。

 外郭団体、特別会計、特別税、また官製ビジネスみたいな形のものが、例えば免許を取りに行きました、運転免許を取ります。アメリカのカリフォルニア州では免許を取るのに、日本みたいに何十万もお金かからないんですよ。車検もありません。等々、そういう目に見えない国民負担というのが入っているわけですから、日本の単純な税と社会保障費を足し合わせただけの国民負担と実際の生活環境の中の国民負担というのは、僕は圧倒的に違うと思うんです。その辺もやはり少し整理をしていかなければいけないのではないか。

 もちろん、一般の今の税法で徴収される税と目に見えない負担の部分の整理を行うこと、これが私は大事だと思うんですが、大臣、その辺ちょっと、もし御意見がありましたらお願いをいたします。

与謝野国務大臣 これは規制緩和ということで随分やったつもりでございます。やったつもりです。だけれども、松野先生言われているように、社会の方々に要らぬ規制というものが残っている可能性はある。これはやはり、丹念に取り除く作業は続けなきゃいけない。

 ただ一方では、国民は物事の安全とか安心とかというものを求めるわけですから、やはり社会的規制で必要なものはどうしても、むしろ強化しなきゃならないものも実はたくさんあって、橋本龍太郎さんがよく言った言葉で、経済規制はなるべくやめよう、社会規制は必要なものは強化していこう、こういうことを言っておられましたけれども、そこまで極端にいくかどうかは別にして、必要以上の規制というものは、今松野先生御指摘のように、国民の負担となる、企業の負担となる、やはりこれは、やめていいものはどんどんやめなきゃいけないと私は思っています。

松野(頼)委員 よく、天下りの問題また外郭団体の問題がテーマになります。私は、時代時代で、それがすべて悪いとは言い切れないと思います。例えば、日本が高度成長を続けている時代であれば、行政の補完機関としてそういうものがあっても、経済成長がそういうものを吸収して大した負担にならなかったと思うんですね。ただ、バブル崩壊以降ずっと、日本はある意味ではデフレに陥っている。そこで、その肥大化した、例えばそういう部分の見えない負担が余りにも大きくなっている。よく、四千六百から七百の法人に対して毎年十二兆の支出が行われているというような話が出てまいりますけれども、もちろん、それはすべてが無駄だとは言いません。ただ、一度そこは総ざらいをして、どこまで国民の負担を下げることができるのか。

 例えば、先ほど電源開発促進税という特別税の話をしました。私、以前に、経済産業委員会でこの議論をしたことがあるんですが、当時なので今の数字と正しいかどうかわかりませんけれども、約四千億円ぐらい、一家庭、年間大体千五百円から二千円ぐらいの実は負担をしている。それが電源開発特別会計に四千億ぐらい毎年集まってくるんですね。

 何のためにつくられた税かというと、名のごとく、電源立地の地域に対する補助を行うためですね。それで立地地域を確保する。その目的は僕はいいと思います。

 ただ、実際に四千億集まっているお金の中で、電源立地地に行っているお金が八百億程度なんです。残りは何をやっているかというと、外郭団体を二十なり三十なりぶら下げて、そこでいろいろな事業をやるという形になっているんですね。

 であれば、その八百億も確かに、果たして五千人の町にゲートボール場が三つあったり体育館が二つあったり等々、それも随分議論をされましたけれども、それは百歩譲っていいにしても、八百億なら八百億で、残りの三千二百億は減税できるじゃないですか、例えばですよ。そうやって見ていけば、もっとその税負担を私は限界まで抑えることができるんじゃないかということをずっと国会の中でも唱えているんです。

 特に、この苦しくなった状況の中で、また、シャウプ勧告以来ずっとこの税制を約六十年使っています、手直しを手直しをしながら。ある時期に、根本的にそういう見えない負担も含めたものを一回総ざらいして、どこから税の負担をお願いするか、なるべく国民負担を低くしながら税収を上げていくという努力を、やはりこの国はしなきゃいけない時期に来ているんじゃないかと僕は思っておるんです。

 大臣、御意見はいかがでしょうか。

与謝野国務大臣 今先生が出されました電源開発促進税は、今はどうなっているかわかりませんけれども、立地勘定と電源多様化勘定と多分二つに分かれていたと思います。多様化勘定は、多くは研究開発に使われていて、これは使い方としては正当なものだと私は思っておりました。ただ、それが適正かどうかというのは、やはり国会で研究をされる必要もあると思います。

 ただ、実は公益法人に対する天下りの問題がたくさん議論をされておりまして、私は閣僚席で黙って聞いておりますが、天下りの先の公益法人、財団、社団その他がどういう団体で、社会的な効用性を持っているのかどうか、あるいは国家の行政を進めていく上で有益性を持っているのかどうか、そっちの方がむしろ大事な話になるのではないかと実は思っているわけです。

 場合によっては、行政で手に負えないのでアウトソーシングをしている場合もありますので、公益法人というのが本当に有効に働いているかどうかということのやはり点検は、私はぜひとも必要だと思っております。

松野(頼)委員 私も、この天下りの議論というのは、天下りの議論というよりも予算の無駄遣いの話だと思うんですね。

 もちろん、僕らもいろいろ役人の方とつき合って、大変優秀です。正直に言って、よく働いていると思います。そういう中で、その人その人がどういう働きをしているかということを追っかけるよりも、例えば、予算がもうそこの外郭団体に一円も出なくなりました、予算執行がなくなりました、それでも天下りを雇われるなら雇われるで、それはその人の能力を買って雇うことですから、僕はそれはそれでいいと思うんですね。予算も行きません、仕事の発注も行きません、それでも雇われるなら、それは僕はいいことだと思っているんですね、職業選択の自由で。

 要は、何が問題かというと、十二兆円というお金がそこに投入をされていることが問題なんであって、天下りが問題でも外郭団体の存在が問題でもなくて、要らない仕事が出ている、要らないお金が出ていることが問題なんだというふうに僕は思うんです。だから、そういうところに予算も仕事の発注もしませんよ、それでも雇われるならどうぞというスタンスに変えて、この天下りの問題は予算の無駄遣いの話ではないかと僕は思っています。

 ですから、さっき財政赤字の話をしたのも同じなんですけれども、これだけ財政赤字を抱えている状況ですから、もう一度、無駄な予算、必要な予算を点検する、それを総ざらいすれば、おのずと天下りの問題も解消するんじゃないかと僕は思っているんですね。別に、役所にいた人が第二のステージの人生を歩むことは決して悪いことじゃないんですよ。そこに予算と仕事がくっついていくから問題なんです。

 ですから、ぜひその辺、もう一度総予算の……(発言する者あり)違う違う、これは持論。お金が行かない、仕事も行かない、それでも雇われるならどうぞというのが本論の議論じゃないかと私は思うんですが、もし御意見があったらお聞かせをいただきたいと思います。

与謝野国務大臣 ですから、そういう公益法人等が国の行政を進めていく上で役立っているかどうかということが問題なので、ただ就職先として財団をつくったり公益法人をつくったり、ただ惰性でそういうところにお金を出している、これはやめなきゃいけないのは当然だと思っています。

松野(頼)委員 それがたくさん見えるから僕らは委員会で追及をさせていただくんですけれども、それによってそこの予算がなくなって、少しでも一般会計の予算に入って今の財政に寄与すればそれはいい。また、それぞれの補助金についても、僕は同じ角度で見直すべきだと思います。ぜひ、大臣、その辺を認識していただければありがたいと思います。

 あともう一点、多分最後になると思いますが、今回の税法の中で、去年大変大きな議論になりました租税特別措置法というのがあるんですね。これも、去年から私どもが申し上げているのは、租税特別措置法は約三百ぐらいあるんですね。ことしは何項目か、ちょっと見ていないからわかりませんけれども、ことしはほとんど減税物であります。

 ただ、一番長いのは、去年の段階で五十四年というのがあるんですよ、多分、ことしになって五十五年たっているんでしょうけれども。ガソリンも三十四年だった。というのがぞろぞろと、五十四年を筆頭にずっと長いのがあるんですね。

 租税特別措置法が、減税するのがけしからぬと僕は言っているんじゃないんです。もし、三年なり四年なりやってみて、必要ならば本則に加えるべきじゃないですかというのをずっと言っているんですよ。要らなくなったら廃止をする。必要ならば本則に入れる。ですから、本当に三年とか四年、二、三年の間だけ租税特別措置法が残って、あとは、長いのは全部きちんと整理をするべきじゃないかということをずっと言っているんですけれども、ことしも相変わらず同じ形で出てきているんです。

 大臣、もうことしは出ちゃっているからあれかもしれませんが、きちっとそこはやっていただきたいと思うんですけれども、ぜひ御答弁いただけないでしょうか。

与謝野国務大臣 本則は、一般普遍的な税のルールを決めているわけでございます。ただ、税である一定の政策を誘導しようというときに、例外措置として、例えば償却制度なんかも例外的なものを決めるというわけなので、なかなか基本則の方にそれは決められないという問題があります。

 したがいまして、租税特別措置という形をつくっておりますが、租税特別措置というのは、始終見直すという意味では、いわば常に見直しの対象になっているという意味では、私は割にいい制度じゃないかと思っております。

松野(頼)委員 五十五年はちょっと長過ぎるんじゃないですか、半世紀以上ですから。それであれば、本則に入れてきちっとすればいいのではないかというふうに私は思うんです。

 来年はそういうのをぜひなくしてもらいたい。今年度だって本則の改正をしているじゃないですか。必要な時期に本則の改正をすればいいのであって、特別措置のまま毎年、三年に一度とか五年に一度ずつ更新をして、それが十年を超えていくようなものはぜひ整理をしていただきたいと思いますが、もう一回答弁いただけないでしょうか。

与謝野国務大臣 五十何年というのは長いことは長いと思いますけれども、太政官令でもまだ残っているのもありますから、百何十年残っているものもあるので、そう長いとは言えないんじゃないかなと思います。

 ただ、先生の御指摘は重要な点なので、省内で少し議論をさせていただきたいと思っています。

松野(頼)委員 やはり税は、公平かつ中立性を求められているという中で、その公平公正であること、中立的であることと特別措置というのはどうしてもそぐわないんですね。もちろん、一時的にはそういうことがあってもいいと思います。一時的にはそういうことがあってもいいと思う。ただ、なるべくそれは原則としてきちんと入れる。

 というのは、これも去年随分議論させていただいたんですが、一体幾らの税金を、どの会社がその特別措置を使って、どれだけの減税が行われているとか増税が行われているというデータを出してくださいと言っても、ないんですよ。申告のときに別項で書かないから、それぞれわからないんです。おおむねこれぐらいじゃないですかみたいな書類を持ってくるんですね。

 でも、それは増税なり減税なりを受けるわけですから、それを利用する例えば会社なり個人なり、申告のときに一項目書き出して、私はこの特別措置を使います、ひいては税額は幾らですということを言えば、全部きちんと全国から集計が上がってくるんですよ。それも書かない。

 特別措置で、公平、中立性も五十年間、何十年もの間崩れている。やはりそこはきちっとするべきだと僕は思いますよ。ぜひ、来年度はきちっとそれがなされていることを心から期待するものであります。

 最後に、もう時間がありません、金融のことを少し、外れますが伺いたいと思います。

 現下の経済状況の中で、僕は、金融庁はこの間よくメニュー出しをやっていると思います。金融検査のやり方も、この間新聞に書いてありましたけれども、今までは何でここに貸したんですかという検査が、今はなぜ貸さないんですかという検査に、逆を向いて、真っすぐ進んでいたものがバックギアに入れるぐらい、全く今までの検査と逆をやっています。大変僕は金融庁を評価しているんです。

 例えば今まで、条件変更をした債権は破綻懸念先、要注意先にして、その分の資本を積み増しをしなさいと金融機関に指導していたのを、検査マニュアルと監督指針を変更して、今条件変更をしてもそういう債権に入れませんよ、金融機関に対して資本の積み増しをしませんよみたいな、こんな画期的なことも実はやったんです。

 借り手の中小企業にとっては大変ありがたいことなんです。さっき大臣がおっしゃった特に物づくり、日本は物づくりでやはり生きていかなければいけないという状況の中で、そういう会社が今悲鳴を上げている中で、金融庁は僕は本当によくやっていると思うんです。あとは、それをきちんと金融機関に伝える、政府系金融機関に伝える、その努力をぜひやっていただきたい。もちろんやってはいるんですけれども、受け取る側がびっくりしてまだ体がついていっていないというところもありますので、ぜひその辺、大臣から一言御答弁をいただいて終わりたいと思います。

与謝野国務大臣 金融庁はよくやっておりますけれども、さらに、経済の実態を危機感を持って把握するようによく指導していきたいと思います。

松野(頼)委員 どうもありがとうございました。

田中委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 先ほどの質疑に続きまして、消費税の問題について伺いたいと思います。

 十二月二十四日に閣議決定をされました中期プログラム、ここでは、「消費税を含む税制抜本改革を二〇一一年度より実施できるよう、必要な法制上の措置をあらかじめ講じ、」こういうふうに書かれているわけであります。これは、二〇一一年四月からでも実施できるように法律をつくる、こういう意味だと思いますが、そういうことでよろしいですね。

与謝野国務大臣 そこには幾つかの条件が書いてありまして、最も早くて二〇一一年。しかしそれは、経済の好転を条件としております。しかも、実施をする場合には段階的に実施をしていくということでございまして、二〇一一年から必ず実施をするということを書いてあるわけではありません。

佐々木(憲)委員 いや、ですから私が聞いているのは、条件はついているというのは知った上で言っているわけです。可能であれば、二〇一一年四月からでも実施できるよう法整備を行う、そういう意味ですねと聞いているわけです。つまり、その条件とかいろいろなものはありますけれども。

与謝野国務大臣 法律をつくっておきたいと書いてあるわけです。

佐々木(憲)委員 それで、今度の国税法案の附則には、平成二十三年度、つまり二〇一一年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとすると書かれているわけでありまして、これは、この中期プログラムの考え方を法律の上に書き込んだ、こういうことなんでしょうか。

与謝野国務大臣 党の意見も聞きながら、できるだけ忠実に法律の方に書いたわけでございます。

佐々木(憲)委員 与謝野大臣の書かれた、先ほども御紹介した雑誌の論文では、消費税増税の時期については、経済回復を前提に二〇一一年からの実施も可能なように書かれている、こういうふうにされているわけです。つまり、二〇一一年の四月から増税が可能であるということは、それまでに法制上の整備をするということになるわけですよね、今の説明ですと。

 ということは、再来年の四月、二〇一一年四月、それまでに法制上の整備をするということは、その法律を国会に提案する時期は、これはつまりその時期までに法律ができていなければなりませんから、来年の通常国会、あるいは再来年の通常国会の冒頭、最初ですね、再来年だとちょっときついと思いますけれども、来年、大体そういうタイミングというふうにお考えなんでしょうか。

与謝野国務大臣 これは専ら国会の皆様方のお考えによるところでございますが、いずれにしても、遅くとも二〇一一年の通常国会というのは、その法律に書いてあるとおりということを目指せば、遅くとも二〇一一年の通常国会、場合によっては来年、そこは、どちらも確定的には書いてないというふうに解釈しております。

佐々木(憲)委員 そうしますと、国会を構成する議員というのは、この法律を通すか通さないか、当然それにかかわるわけであります。決定権をいわば国民から付与されるわけですね。そうなりますと当然、今度九月までに行われる総選挙で選ばれる人がそれを決めるということになるわけですね。したがって、今度の総選挙の一大争点になる。これはもう確実だと思うわけですが、大臣、どうお考えでしょうか。

与謝野国務大臣 大きな幾つもの争点の一つであると思います。

佐々木(憲)委員 大臣が書かれたこの論文ですと、「次の総選挙では消費税の増税が争点にされることは疑いもない。」疑いないというふうに言っておられるわけでありまして、我々は、この消費税の増税というものは絶対に反対であります。それは、今から幾つか質問してまいりますけれども、いかなる理由であれ、消費税という税制を増税ということになりますと、大変な、低所得層に対する負担増、あるいは中小企業に対する負担、税制全体の再配分機能の低下、そういうことを考えますと、この増税はやるべきではないと我々は考えております。

 そこで具体的に、消費税の税制の性格といいますか、この点を確認したいと思います。

 消費税は、所得の低い方、収入の低い方ほど、収入に占める消費税の負担の比率というものは高いわけであります。所得の高い方、収入の高い方は当然、消費税の負担、額は大きいけれども比率は低いわけですね。したがって、税制としては当然逆進性を持っているということになると思います。

 竹下さんのときも、一番最初にこの消費税を導入されたときに、九つの懸念というものを出しました。この九つの懸念というのは、大臣御承知かどうかわかりませんけれども、一番最初のところで、逆進性があるということを述べているわけです。何回か私も大蔵大臣、財務大臣に質問しましたけれども、この税制の持っている逆進性はお認めになりました。大臣も当然それは認められると思いますが、いかがでしょうか。

与謝野国務大臣 消費税だけに着目して逆進性を論じるかどうかは別にいたしまして、低い所得の方の方が、所得に対する消費税の占める割合は当然大きくなる。

佐々木(憲)委員 今お認めになりましたが、私たちがいろいろ試算をしてみましても、例えば総務省の全国消費実態調査のデータで推計をしますと、例えば一番所得の低い階層、これは十分位の第一分位ですが、年収二百十四万円の方の負担率、四・二%なんです。しかし、年収がふえますとどんどん負担率は下がりまして、例えば千六百四十六万円の年収の方、一・六%であります。

 したがいまして、消費税の負担というのは、所得の低い方ほどその率は高くなり、高い人ほど低くなる、そういう性格を持っていますから、今大臣お認めになりましたようにそういう逆進性を持っているわけですから、これを引き上げるということになりますとその負担の格差は当然拡大する。我々が試算してもそうなりますけれども、大臣、お認めになりますか。

与謝野国務大臣 それは一面的な見方ではないかと私は思っておりまして、実は社会的な、社会保障を通じての給付ということを考えますと、消費税を上げて社会保障給付を充実すると逆に、低い所得の方が手厚い社会保障給付を受けますので、恩恵の方が逆進的になるという計算もございまして、ただ消費税の部分だけとらえて議論するのでなくて、社会保障給付とあわせて考えたときに公平性が維持できているかどうかということをやはり考えないといけないんじゃないかと。

 我々は既に計算しておりますので、もし必要であれば、そのカーブをお見せいたします。

佐々木(憲)委員 社会保障が充実した場合はという仮定ですよね。しかし現実に、これまで社会保障の負担は低所得者に非常に重くのしかかってきているわけでありまして、小泉内閣以来さまざまな名目の国民負担が行われました。

 例えば医療保険の負担増、これも大変なものでありまして、本人負担が一割だったのが今や三割でありますし、あるいは老人医療の自己負担、外来月四百円が今は毎回一割または三割という状況であります。国民年金の保険料の負担も、七千七百円だったのが一万四千四百十円であります。あるいは厚生年金の支給開始年齢もおくらせました、六十歳から六十五歳。さらに介護保険導入で、保険料の徴収が今まではなかった方々が、全国平均で四千三百円取られるようになる。あるいは障害者福祉の自己負担、今まで応能負担でありました。しかし、障害者自立支援法というものができまして、これまで無料だったのが、今は定率一割応益負担。しかも、後期高齢者医療制度という大問題で大変な批判が起きました。

 一体、これまで政府は、社会保障に対してどれだけの負担の軽減をやってきたのか。全く逆ではないですか。これまでどんどん負担がふえてきたわけであります。なぜそうなったのか。これは、毎年、社会保障の自然増二千二百億円をカットするということをやってきているからそうなるわけです。仮にこれがふえていけば、大臣のおっしゃったようなことも数字の上では出てくるでしょう。例えば、今までやってきたものをもとに戻す、そういう政策を実行するつもりはありますか。今まで小泉内閣以来やってきた、構造改革という名で国民にこれだけの負担を負わせてきた、それを全部もとに戻しますというならまだ話はわかりますよ。やるんですか。そういうことをやるならまだわかりますけれども。

 しかし私は、消費税というものを、いかなる理由であろうが、逆進性があるわけですから、これを上げるということになりますと、これは、今までの社会保障の負担の上にさらに低所得者に負担を重くかぶせるものであって、社会の格差を拡大し、大変な国民負担、国民の被害というものが広がるということを言わざるを得ないと思いますが、いかがでしょうか。

与謝野国務大臣 ここに試算がございますけれども、消費税を上げて社会保障を賄うことになりますと、ネットの収入は、低い所得の方の方がはるかに高い、所得の高い方はマイナスになる。これは一見、常識とは離れた直観だろうと思いますけれども、実際はそうであるという試算もありますので参考にしていただきたいと思います。

佐々木(憲)委員 数字の上でそういう数字も用意されているんでしょうけれども、今までもそういうことをやってきたんです。例えば消費税を導入したときも、社会保障のためです、高齢化社会のためですと。あるいは消費税の増税のときも、その分は社会保障に回すんですから、そう言って、国民には何か社会保障が充実するかのような幻想を与えながら、実際には、先ほど言ったようにどんどんどんどん削ってきているじゃないですか。

 ですから、今度の増税も、社会保障のために使いますよと言ったって、全然信用できませんよ。しかも、今の状況からいいますと、赤字がもうこんなになっているんだ、税収も減っている、これは社会保障をどんどん減らすというのは当たり前という方向がいまだに続けられているじゃないですか。

 二千二百億円という枠をカットする、では、もう来年からはやらないと、与謝野大臣、約束できますか。

与謝野国務大臣 これは二〇〇六年の骨太方針の中に書いてある原則でございまして、ここで、来年からやめますということはなかなか申し上げられないんですけれども、現実に、平成二十一年度当初予算についてはいろいろな工夫がなされているということは事実でございます。

佐々木(憲)委員 枠を外さないでいろいろなことをやっても、これは根本的には変わっておりませんので。

 国民世論はどうかといいますと、そういうのをみんなわかっているわけです。社会保障のためですよと言っても、もう信用しませんよ、現実に被害を受けているわけですから。

 今、例えば読売新聞などでは、社会保障のためというようなことで麻生内閣が消費税の増税について言ったが、評価しますか、余り評価しない、二三・四、全く評価しない、三五・七、合わせて五九・一%ですよ。あるいは、産経、FNNの調査ですと、今言うべきではない、五一・五%、将来も引き上げるべきでない、二一・五%、合わせて七三%が消費税の増税には反対だと。あるいは日経も、これは昨年末ですけれども、評価しない、五八%。朝日も、評価しない、五六%。大臣が消費税増税を幾ら強調し、あるいはこの国税の附則に書き込んでも、国民の大多数は、それはもうやめてくれ、そういう増税の仕方には反対である、こう言っているわけです。

 先ほど大臣は、今度の総選挙の一大争点の一つになる、こうおっしゃいました。したがって、消費税増税ということを掲げて選挙を、多分与党の方々はやられるんでしょう。これは国民の圧倒的多数から批判をされて、厳しい結果が出る、私は、このことははっきりと主張しておきたいと思います。

 次に、では消費税の増税について中小企業はどうか。

 今、日本の中小企業というのは大変深刻な事態にあります。これは単に景気の落ち込みだけではない。この十年来、中小企業そのものが成り立たないという状況が続いてまいりました。したがって、中小企業の数が減っております。

 中小企業白書によりますと、一九八六年には中小企業が五百三十二万七千社ありました。二〇〇六年の統計では四百十九万八千社。大変な減り方なんです。その理由は、廃業がどんどん続いている、しかし開業、新しく業を起こすという中小企業がなかなか出てこない。したがって、全体として中小企業の数が減っている。

 そういう中で今度は、中小企業に対する消費税の納税義務を、今まで売上高三千万だったのが一千万ということで、非常に零細な中小業者に消費税の納税義務を負わせるという形になりました。それでまた大変な廃業ということで、中小企業の方々は苦しんでいるわけです。その上にさらに増税ということになりますと、これはもう本当に、日本の経済基盤、圧倒的多数が中小企業ですけれども、その経済基盤を壊すようなものであります。

 今、中小企業で消費税を転嫁できないと言っている方々が、経産省の調査でも大体半分です。転嫁できないという状態があるということは、間接税ではないですよね。性格的に言いますと直接税になっているわけです。間接税というのは、自分に来たものを次の消費者に負担してもらう、自分自身は基本的には負担しないという性格のものですけれども、今、中小企業が消費税を払えないと言っているのは、転嫁できない、自分の手元にない、経営が苦しい、そういう状態の中でもう納めることもできないという状態になっているわけです。

 今のこの中小企業の消費税の税のあり方について、与謝野大臣はどのようにお感じでしょうか。

与謝野国務大臣 もともと、消費税が初めて導入されるとき、私は党におりましてこの問題をやっておりました。最初は、売上税という売り上げを外形にした課税という考え方だったんですが、やはり最終的には、消費者が負担するという形にするべきだという中小企業団体の意見が非常に強かったものですから、消費税という名前に実は変えて転嫁しやすくしたわけでございます。

 転嫁の問題は、税制の問題なのか企業間の力関係の問題かという問題がありまして、なかなか結論が出ません。しかし、力の強いところが転嫁を拒むというのは許せないことだろうと私は思っております。したがいまして、円滑な転嫁というものは、相手方がコストとしてそれを快諾するということなわけですから、通常の会社はそのようにやっていただかないといけないと思っております。

佐々木(憲)委員 中小企業が転嫁できないというのは、消費が非常に落ち込んで物が売れない、したがって、その分転嫁するということになりますと上げざるを得ない、しかし、そうなれば物が売れなくなって経営が成り立たない。したがって、身銭を切るわけですね、自分で。自分で負担をしなきゃならぬわけです。持ち出しなんですよ。そういう中小企業が全体の中で半分以上を占めているわけですね。だから、これはいわば中小企業の営業破壊税ですよ。そういう性格を持ったものだと言わざるを得ないですね。

 今回の消費税増税の急先鋒で、ともかく、ちびちび上げて何回も負けるんなら、一回どんと上げて負けた方がいいという与謝野さんの持論のようですけれども、やはり国民のためにそういうことはやってはいけないと私は思います。

 今回の、消費税を附則に書き込んで、何が何でも来年の国会か再来年か、こういうところで増税のレールを固めようとするこの法案自体も我々は反対でありますし、現に今、国際的に言いましても、日本の中小企業というのは、ほかの国と違って数が減っている。ほかの国では数がふえているわけです。これだけ日本の中小企業というのは厳しい状況になっているわけであります。

 国際的に言いますと、例えばイギリスの場合は、昨年十二月に景気対策ということで消費税を二・五%下げたわけであります。EUも、イギリスと同じような措置をとるように勧告をしている。

 こういう状況ですので、やはり今回の消費税の増税というのはやるべきではない。棚上げして、これは与党としても政府としても、今の百年に一度と言われているような状況の中で、これだけ国民が疲弊しているときに何で来年、再来年に、まだ回復していないですよ、三年後といっても。三年後までには回復しているだろうと言うんだけれども、先ほどの答弁ですと、回復する前にともかく増税だけの法案、時期は決めていませんよ、しかし増税をするという法案を通そうというわけですから、これはやはりやめた方がいいと思います。いかがですか。

与謝野国務大臣 先生は一つだけ誤解されているんですけれども、私がどんと上げろという論者のように言われていますけれども、私は、日本の経済や国民生活に影響を与えないように段階的に上げた方がいいのではないかという論者でございましたので、その点は誤解なきようお願い申し上げます。

 それから、いきなり消費税を上げるというようなことを言っているわけではありませんで、やはり景気回復があった後に負担をお願いする、また、入ってきたものは社会保障費に全部使う、こういうことを言っているわけでございます。

佐々木(憲)委員 消費税の増税をしますよという法律を先に通すわけですよね。それだけでレールが敷かれますよ。その上で、回復を見てと言うけれども、いずれにしても増税なんですよね、消費税は。

 この消費税というものは、先ほど言ったように、低所得者に重くかかる大変な逆進性を持った性格のものであり、しかも中小企業にとっては、営業を破壊する性格を持った税金なんですよ。それを上げると言うこと自体、私はやるべきじゃないと。

 財政が大変だというなら、いろいろな方法が私はあると思います。例えば、今まで減税をやり過ぎたんですね。法人税、大手企業は非常に税金の負担が軽くなっております、四三・三%だったのが今三〇%に下がっていますし。あるいは、証券優遇税制をやめると言ったのにまだ証券優遇税制を継続して、株の売った買ったをやり、あるいは配当を受けた、そういう人たちの税金だけは軽くしてやる。これは全く、国民全体からいいますと、金持ち、大金持ち、大企業優遇で、庶民に対しては負担ばかりふえる、そういう政治でいいのかというのが今根本的に問われていると私は思うんです。

 そういう意味で、今回のこの税制法案についても、根本的な批判を我々持っていますし、消費税については絶対にやるべきじゃないということを今後ともしっかりと主張し続けていきたい、このことを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

田中委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三分散会


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