衆議院

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第8号 平成21年2月26日(木曜日)

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平成二十一年二月二十六日(木曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 田中 和徳君

   理事 江崎洋一郎君 理事 木村 隆秀君

   理事 竹本 直一君 理事 山本 明彦君

   理事 吉田六左エ門君 理事 中川 正春君

   理事 松野 頼久君 理事 石井 啓一君

      石原 宏高君    稲田 朋美君

      越智 隆雄君    亀井善太郎君

      後藤田正純君    佐藤ゆかり君

      鈴木 馨祐君    関  芳弘君

      土屋 正忠君  とかしきなおみ君

      中根 一幸君    西本 勝子君

      林田  彪君    原田 憲治君

      平口  洋君    広津 素子君

      松本 洋平君    三ッ矢憲生君

      宮下 一郎君    武藤 容治君

      盛山 正仁君    池田 元久君

      小沢 鋭仁君    大畠 章宏君

      階   猛君    下条 みつ君

      鈴木 克昌君    古本伸一郎君

      和田 隆志君    谷口 隆義君

      佐々木憲昭君    野呂田芳成君

      中村喜四郎君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       与謝野 馨君

   内閣府副大臣       谷本 龍哉君

   財務副大臣        竹下  亘君

   財務大臣政務官      三ッ矢憲生君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 梅溪 健児君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 西川 正郎君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 湯元 健治君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   木下 康司君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    加藤 治彦君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    佐々木豊成君

   政府参考人

   (財務省国際局長)    玉木林太郎君

   政府参考人

   (国税庁次長)      岡本 佳郎君

   参考人

   (経済アナリスト)    藤原 直哉君

   参考人

   (慶應義塾大学経済学部教授)           吉野 直行君

   参考人

   (東京大学法学部教授)  中里  実君

   参考人

   (日本銀行総裁)     白川 方明君

   財務金融委員会専門員   首藤 忠則君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十六日

 辞任         補欠選任

  鈴木 馨祐君     武藤 容治君

  とかしきなおみ君   土屋 正忠君

  山本 有二君     西本 勝子君

同日

 辞任         補欠選任

  土屋 正忠君     とかしきなおみ君

  西本 勝子君     山本 有二君

  武藤 容治君     鈴木 馨祐君

    ―――――――――――――

二月二十五日

 消費税の大増税に反対することに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第五一八号)

 酒類小売業者の生活権を求める施策の実行に関する請願(伊藤信太郎君紹介)(第五一九号)

 同(石田真敏君紹介)(第五二〇号)

 同(高木毅君紹介)(第五二一号)

 同(中井洽君紹介)(第五二二号)

 同(柳本卓治君紹介)(第五二三号)

 同(小野寺五典君紹介)(第五四三号)

 同(北村茂男君紹介)(第五四四号)

 同(棚橋泰文君紹介)(第五四五号)

 同(谷畑孝君紹介)(第五四六号)

 同(森喜朗君紹介)(第五四七号)

 同(岡本芳郎君紹介)(第五六二号)

 同(加藤勝信君紹介)(第五六三号)

 同(平野博文君紹介)(第五六四号)

 同(福井照君紹介)(第五六五号)

 同(安住淳君紹介)(第五七六号)

 同(金子恭之君紹介)(第五七七号)

 同(河井克行君紹介)(第五七八号)

 同(萩原誠司君紹介)(第五七九号)

 同(平口洋君紹介)(第五八〇号)

 同(福島豊君紹介)(第五八一号)

 同(河本三郎君紹介)(第六二一号)

 同(谷公一君紹介)(第六二二号)

 同(盛山正仁君紹介)(第六二三号)

 消費税の大増税反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第五二四号)

 消費税大増税の反対に関する請願(石井郁子君紹介)(第五二五号)

 同(笠井亮君紹介)(第五二六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第五二七号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第五二八号)

 同(志位和夫君紹介)(第五二九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第五三〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第五三一号)

 同(吉井英勝君紹介)(第五三二号)

 保険業法を見直し、団体自治に干渉しないことに関する請願(金田誠一君紹介)(第五四八号)

 同(近藤昭一君紹介)(第五六六号)

 消費税増税をやめることなど暮らしと経営を守ることに関する請願(筒井信隆君紹介)(第五七五号)

 同(古賀一成君紹介)(第六二五号)

 同(志位和夫君紹介)(第六二六号)

 同(鈴木克昌君紹介)(第六二七号)

 同(日森文尋君紹介)(第六二八号)

 消費税増税に反対、所得税減税を求めることに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第六一九号)

 庶民大増税反対に関する請願(古賀一成君紹介)(第六二〇号)

 保険業法改定の趣旨に沿って、自主共済の適用除外を求めることに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第六二四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行及び財政投融資特別会計からの繰入れの特例に関する法律案(内閣提出第四号)

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第六号)


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     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行及び財政投融資特別会計からの繰入れの特例に関する法律案、所得税法等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 本日は、両案審査のため、参考人として、経済アナリスト藤原直哉君、慶應義塾大学経済学部教授吉野直行君及び東京大学法学部教授中里実君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からそれぞれ十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願いいたします。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、まず藤原参考人にお願いいたします。

藤原参考人 皆様、おはようございます。経済アナリストの藤原直哉でございます。本日はお招きいただきまして、まことにありがとうございます。

 私は、経済アナリストという立場から、大きな視点で、財政その他、国家の金融等の運営に関しますお話をさせていただきたいというふうに思っております。

 まず、私の基本的な認識といたしましては、今の経済の状況は、やはり未曾有の経済危機と言ってよろしいと思います。百年に一度という言葉もございますが、それは、ただ単に不況だということを超えまして、構造的に今までの経済システムが成り立たない部分が出てきたというような意味におきまして、かなり深刻な問題だと私は受けとめております。

 レジュメのところに三点ほど要点を書いてございますが、私は、まず直接的には、金融あるいは貿易が日本の経済を主導する時代は終わったのではないかなと思っております。

 どういうことかと申しますと、皆様御案内のとおり、二年前にアメリカでサブプライム危機が発覚いたしまして、株の暴落あるいは金融機関の破綻その他がその後相次いでおります。それと同時に、昨年ぐらいから、製造業を中心といたしまして極めて深刻な需要の不足、すなわち、もう工場が動かない、仕事が余りにも少ないという状況が発生しているわけであります。

 なぜ金融と輸出産業にかくも重大な変化が起きたのか、ここに今何が起きているかのすべての答えがあるわけでございますが、皆様御案内のとおり、これは震源地がアメリカでございますけれども、アメリカは約三十年ほど前から実は産業界の衰退というものが目に見えてきておりまして、今経営危機と言われております自動車産業は、もう三十年ぐらい前から実は経営が大変でございました。そこでアメリカ政府は、基本的には産業の立て直しをある意味ではあきらめたというふうに私は見ております。産業を立て直すよりも、中国、日本、ヨーロッパから物は輸入すればいいという経済体制にしまして、その分、金融を充実させまして、世界じゅうから資金を集めて国家を回す。だから、輸入大国、金融大国の道を選んだのが三十年前のアメリカだったと思います。

 しかしそうやって、いい仕事がない、産業を衰退させますと、どうしても働いている人が十分な給与を得られません。そのため、この三十年間のアメリカ人の言ってみれば庶民の生活というのは、だんだん生活が追い詰められてまいりまして、いつ首になるかわからない、株を買ってもよく下がる。十年ぐらい前から、もう何かアメリカの庶民たちも本当に困りまして、いわゆる住宅バブルに乗っていったわけであります。

 アメリカでは住宅の値段が右肩上がりで上がり続けるというのは余り前例がなかったことだと思いますが、十年ぐらい前から、とにかく住宅の値段が上がっていった。住宅さえ持っていれば、値上がりするから生活できるという、ある意味で非常に悲惨な方程式がアメリカの経済全体に広がっていたと思います。しかし、それが限界に達しまして、ついに住宅の値段の下落が始まり、限界的な借り手から破綻が始まったわけであります。

 そうすると、アメリカはこの三十年ぐらい、借金をして、国も借金、庶民も借金、企業も借金をして投資をする、消費をするという体制を整えておりましたために、巨大な不良債権が発生したために、もう市場がお金を貸さない、銀行がお金を貸さないという状況になりまして、企業も庶民もお金を借りられなくなったわけであります。そのために、家と車、経済を支えております二本柱、これは全部ローンで普通買いますが、こういう買い物がばたりととまったわけでございます。そういたしますと、アメリカに物を輸出しております日本、ヨーロッパ、中国など、こういう国にもばったりと注文が入らなくなったわけでございます。

 したがいまして、アメリカ人が借金できなくなった途端にアメリカで物が売れなくなって、アメリカに物を輸出している国の産業もとまってしまった。現状を簡単に申し上げれば、こんな状況ではないかなと思うんですね。

 事の本質を掘り下げてみれば、三十年ぐらい前からアメリカがとにかく借金に借金を重ねて不均衡の上に巨大な需要を成り立たせていた部分、これが崩壊したわけでありますから、私は、アメリカを中心にとにかく金融を発展させ、輸入大国を続ければいいというアメリカの国策は事実上破綻したんじゃないかなというふうに思っております。

 金融の問題等も、今回アメリカで金融破綻が起きておりますが、私は、見ていて非常に気がつきますことは、八十年前の世界大恐慌のときアメリカ政府は、もっと果敢に問題の本質追求をやっていたように思います。

 委員の皆様御案内のとおり、八十年前の世界大恐慌のときにアメリカの上院でペコラ委員会という委員会ができまして、なぜこんな金融破綻が起きたのかという構造分析と、それからその後の対処を非常に積極的にスピーディーにやってまいりました。しかし、今のアメリカを見ておりますと、そういう本格的な金融、経済再建のための制度の見直しについての議論がなかなか進んでおりません。ああいうのを見ておりますと、随分衰退したなと私は思っている次第でございます。

 こうなりますと、我々日本といたしましても、アメリカにお金の運用を任せればうまくいくというようなことはもう通用しないと思います。さらに、アメリカ型金融システムをそのまま導入してくればうまくいくということはもうないと思います。アメリカであれだけシステム的な問題が起きたわけでございますから、もう一回我々も考え直さなければならない。

 さらに、特に貿易、これは非常に重大な問題でございます。委員の皆様御案内のとおり、つい昨年ぐらいまで我が国は、非常に長期にわたる景気回復を統計上していたわけでございます。しかし、それは輸出産業を中心とした景気回復であったことは否めなかったと思います。

 したがいまして、輸出がとまった途端に、我が国のGDP成長率は先進国の中でも最も大きな落ち込み幅を示しております。世の中を見ておりましても、輸出産業の一部は調子がよかった、しかし、内需関連、サービス業その他は大変厳しい経済状況であったというのが、この五、六年の状況であったと思います。

 日本経済は、昔から輸出依存体制が強過ぎるから、もっと内需中心の経済にしなければならないと言い続けられてきたわけでございますが、結果的にこの十年ほどの間、我が国は輸出産業に極めて偏重し、そして金融産業に極めて偏重した国家づくりになってしまっていたんだと思います。

 それが今回、このようなアメリカ発の危機に陥りましてこんな状態になったわけでございますから、例えば税収一つとりましても、輸出産業頼みの税収では国家が回らないと思います、金融頼みの税収では回らないと思います。税金を国民の皆さんに払ってもらうためには、まず景気がよくなって、お金を稼いでもらわなければならないわけで、今回ばかりは小手先の対策ではどうにもならない。みんなが本当に、国民がお金を稼げる体制に国家としてもう一回システムをつくり直さない限り、これはもとに状況が戻るということはないんだろうというふうに私は思っております。

 そして、政府というものの行動を考えた場合、私は二点あると思います。政府は、基本的に、当面の対策と抜本的政策という二つがやはり必要だと思います。

 当面の対策というのは、絶望の回避と私はあえて言いたいと思います。

 本当に、民間経済人はリスクがあるとは申しますけれども、それにいたしましても、この金融の物すごい混乱、さらには輸出産業の物すごい落ち込みは、多くの人の想像あるいは多くの経営者の実力を超えたものがあります。少なくともことし、来年ぐらいは何か政府が突っかい棒を入れてつぶれるものをとめないと、将来の産業の種火が消えてしまいかねない、それぐらいの状況でございます。

 ですから、二年ぐらいは突っかい棒を入れて、とりあえず絶望を回避して、その間に、先ほど申しました、もう金融依存、輸出依存の体制が続けられないということであれば、やはり新しい国家ビジョンをつくるしかないんだろうというふうに思います。

 委員の皆様も御案内のとおり、アメリカのオバマ政権は、グリーンインフラストラクチャーというような言葉を使いまして、新しい社会基盤をつくり直そうというようなことを言っております。私は、今国民が求めておりますのは、細かい部分の手直しではなくて、大きな、五十年先まで見通せるような国家ビジョンだと思います。

 民間の企業でもそうなんですが、こういう厳しいときに小手先の対策を打っております会社はまずうまくいっておりません。やはり大きなビジョンのもとに積極的なリーダーシップを発揮するということが必要でございまして、これはもう、ここまで来ますと、経団連のような輸出系を中心としました会社の経営者に任せておきましても、なかなか物事ははかどらないと思います。あるいは、中小企業の経営者の自助努力だけでも問題ははかどらないと思います。やはり国家の指導者が、それはただ一人のだれかという意味ではなくて、政治全体がもう少し、こっちの方向に行くから皆さんついてきてくださいということをはっきり言ってほしいんだと思います。

 それは海外も同じではないかなと思います。例えばアジア諸国は、今回の金融危機、経済危機、日本以上に厳しい状況になっているところもございます。日本なんかまだ余裕がある方でございます。したがいまして、世界各国からも日本のリーダーシップを皆さん求めているんだと思うんです。

 やはり内需主体に、金融ももう少し、投機的な金融、ばくち型金融ではなくて、産業と金融が一体になったような形でこれはつくり直すべきなんだと思うんです。私は、アメリカが三十年ぐらい前から経済をゆがめていったということは、逆に言えば、三十年ぐらい前までの姿を少し思い起こしてみると答えは出やすいと思います。

 例えば、今、貿易赤字が急速にふえております。貿易赤字がふえておるということは、今までのように、この三十年間のように、一方的な黒字がたまるということはないということでございます。一方的な黒字がたまるということでないということは、日本は金満大国の看板をいよいよおろさなければならないということであります。お金も、下手をすれば赤字になってしまう。黒字と赤字を行ったり来たりで必死になって金を国全体で稼ぐという、三十年前までの我々の先輩が直面していた現実に我々はいや応なく戻るんだと思います。

 私は、最近の日本を見ておりまして、どうも現状認識が甘いような気がいたします。何か、怖い話をあえてしないような感じがいたします。それは、怖い話に遭遇して怖いことに直面しなくても、何となく豊かさがあるからやっていける、そんな感覚が官にも民にもみんな何かしみ渡ってしまったような感じがするんです。私は、それは大変危険なことではないかなと思うんです。

 今、金融なんかに関しましても、年金の運用、退職金の運用、皆さん、貯蓄から投資へということで運用しておられます。しかし、もうかっている人というのはほとんど見ることがございません。やはりこれだけ厳しい世の中で老後の資産がなくなってしまったということは大変なことでございまして、ですから、これはその損失の責任という話もあるでしょうけれども、しかしそれ以上に、では、これから少子高齢化社会を生き抜く元手はどう確保するか、これはやはりもう一回、国の中で考え直さなければなりません。アメリカ頼みというわけにはもういかないわけでございます。それから、少子高齢化の中で人の数も減ってまいります。

 したがいまして、我々は、過去十年間のとにかく引き締めに次ぐ引き締めをしていたこの時代をよく反省いたしまして、市場原理主義ではもうだめなわけでありますから、私は政治家の皆様に方針を変えるとはっきり言っていただきたいと思うんです。やはり、方針を変えると政治家の方に言っていただきませんと、民間企業も何となく昔の、グローバリゼーションだとか市場に任せておけばいいという頭から抜けられないわけでございます。それが民間の実情だと私は思っております。

 そして、私は、この二年間ぐらいの間に新しい金融システムをぜひ政治主導で立て直していただきたいと思います。もう民間の金融機関だけでは未来をつくる大規模な投資ができないと思います。私は、こういうときこそ、十年、二十年、三十年のスパンで何十兆、何百兆円という投資を政治主導で行っていただきませんと、我が国の新しい形はできないと思います。

 要するに、もう貸し渋り、貸しはがしがひどくて、これでは経済は縮小する一方なんです。そこに一歩勇気を持って、国民のお金をもう一回集めて、それは税金という形ではなくて、私は政策金融がよろしいと思っているわけでございますが、もう一回、こういう方向で国づくりをするからお金を出してくださいと言って、預金でも債券でもいいですから集めて、ぜひ大々的な投資をしていただきたいと思います。

 とにかく、国がここは積極的な投資に動くということをしませんと難しい。それが日本版のいわゆるニューディール政策になるんだろうというふうに私は思っておりまして、短い時間ではございましたが、私の思ったところを述べさせていただいた次第でございます。

 委員の皆様のますますの御活躍を御祈念申し上げて、お話とかえさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 次に、吉野参考人にお願いいたします。

吉野参考人 ただいま御紹介いただきました吉野直行でございます。

 私だけたくさん資料を用意いたしまして、大部でございますが、表を使いながらまず御説明させていただきたいんです。

 大きな字で「バブル経済の発生と経済政策の対応」という紙がございます。それを一ページおめくりいただきますと、右の下に二ページと書いてございますが、きょうお話しさせていただきたい内容を一から三に掲げさせていただきました。

 一つは、世界的な金融危機が発生したわけですけれども、私は、今後ともこういう危機というのは発生するんじゃないか、では、なぜこういうことが発生したかということをまず最初に申し上げます。それから、一―五、一―六というところでは、民間の資金を用いたケインズ政策というのをもっと推進していただきたいというふうに思います。ケインズの時代は国債を発行しながらケインズ政策をするということだったわけですけれども、PPPとかさまざまなインフラボンドなどを活用しまして、今中国やインドでは、民間資金を用いていわゆる地方と中央を結ぶ道路や鉄道をつくろう、そういう動きがございます。それに関しても、日本に関しても同じように民間資金を活用した政策というのをお願いしたいと思います。

 それから二番目、二ページの下の方の二番目でありますが、やはり、アジアがこれからの一つのエンジン・オブ・グロースといいますか、成長の大きな源泉があると思います。中国やインドあるいはASEAN、こういう国々と日本がうまくタイアップしながら、その成長に対して日本が協力し、また日本がベネフィットを受けていく、こういうことが今後必要ではないかと思います。

 最後は、大量国債の発行と金利変動準備金の活用というのを御説明いたします。

 それでは、三ページをごらんいただきたいと思います。これがアメリカの急激な株価の下落で、御承知のように、二〇〇七年をピークに株価の下落が、左の数字を見ていただきますと、一一〇が六〇ぐらい、こういうふうに減ってきております。

 四ページは、ちょっと私間違えて、住宅価格と株価と同じだったんですけれども、住宅価格もほぼ同じような下落をいたしております。

 五ページをごらんいただきたいと思いますが、特に五ページの下の方ですけれども、二〇〇八年のサブプライムローンが急に起こりますと、やはり金利が非常に上昇いたします。それから、貸し出しが滞る。こういう金融市場への大きな影響があるというのが五ページ目でございます。

 次は、六ページ目の七と書いてありますが、こういうことによりまして、アメリカでは銀行業の、大分問題のある銀行がふえてきておりまして、短期的な政策としては、この銀行に対する公的資金の注入あるいは株式の資本注入、こういうものを行っております。

 次に、七ページをごらんいただきたいと思います。ちょっと見にくく三つ書いてございますが、では、日本では資金の循環がどうなっているかというのを見たものでございます。ここの三つの表をごらんいただきますと、一番上が八四年から九〇年のバブルの時期、真ん中が九〇年から二〇〇〇年、一番下が二〇〇〇年から二〇〇五年のところでございます。

 この図の見方は、左側の部門から右側にお金が流れるということを言っております。例えば、一番上の行をごらんいただきますと、金融機関からどういうところにお金が流れているかということでございます。金融から民間企業には、バブルのときには、年平均五十五・六兆円もお金が動いております。今度真ん中をごらんいただきますと、金融から民間企業にマイナス二・八兆円、つまり、金融機関から借りない、または金融機関が引き揚げている。一番下をごらんください。マイナス十六・九です。つまり、日本の企業がお金を借りて設備投資をするということをしていないということです。これは、やはり日本の成長にとってマイナスであるということがわかると思います。

 さらに、一番上の一番右ですけれども、今度は金融機関がどれくらいお金を全体で運用しているか。縦をごらんいただきます。金融機関全体では、お金を集めて運用して、百九十三兆円です。それから、上から三行目に民間企業、六十四兆円の資金を運用しております。それから、五行目の家計、一番右ですけれども、七十七・六兆円です。これくらいみんな活力があったわけです。次に、九〇年から二〇〇〇年をごらんください。特に三行目の民間企業、マイナス八・五兆円。これはお金を引き揚げているということであります。それから、家計をごらんいただきますと、一番上の右側ですが、家計は全体で七十七・六兆円運用しておりました。一九九〇年から二〇〇〇年の、真ん中の五行目の一番右、三十九・四兆円。それが一番下に行きますと十六・三兆円。こういうふうに、みんなが貧乏になってきてしまっているわけであります。

 結局、ではだれが一番お金を吸収しているかといいますと、四列目の縦のところをずっと見ていただきます。それの一番下の数字をずっと見ていただきますと、政府が一番お金を調達している。つまり、政府が一生懸命国債を発行してお金を調達して、それで国民の方々に分配していただいている、こういうことであります。

 ですから、今の金融の危機のときには仕方ないですけれども、将来的にはやはり上の姿に戻らなければ、日本経済の回復はないということであります。それをするためには、やはり私は、アジアと共存しながら、日本のメリットを生かして、それで日本がアジアにいろいろお手伝いをし、それからそこでいい形で回転していくということが重要だと思います。

 では、それができているかというのが八ページでございます。これは、東アジアの資金の流れをあらわしております。ちょっと汚いので申しわけないんですけれども、一番左側、真ん中、右側、三つの円グラフがございます。

 まず一番左側は、東アジアの諸国が、高い貯蓄率なんですが、どこに投資をしているかということです。アメリカに四二%投資をしております。ヨーロッパに三七%投資をしております。アジア域内では、一番左が八・二%しかありません。つまり、アジアで集められた貯蓄のほとんどは、アメリカやヨーロッパに主に長期の債券として流れております。

 では、今度真ん中をごらんいただきまして、どこからアジアにお金が来ているかといいますと、アメリカから三七%、ヨーロッパから三〇%、これが株式とか短期資金で戻ってくるわけです。つまり、せっかくアジア人が貯蓄したものを、失礼な言い方をしますと、テラ銭をアメリカやヨーロッパに稼がせて、それで結局短期のお金ですぐ入ってきたり出ていったりする。ですから、せっかくまじめにアジア人が貯蓄をしたものがうまく活用されていない。どうやったらアジアの中で我々のお金が回るかということも、今後はぜひ考えていただきたい大きな問題だと思います。

 では、なぜこのようにアメリカに行くかといいますと、一つは、アメリカにたくさん金融商品がありました。このために、アメリカにまず一度行って、それからアメリカの資金が戻るというのが一番目です。それから二番目は、これまでやはりアメリカの債券というのは非常に信用度が高かったわけであります。それで、アメリカあるいはヨーロッパに流れました。それから三番目は、皆様もニュースでごらんになりますと、なかなかアジアの情報というのは入りません。大体ニュースで出るのは、ユーロと円の関係、円とドルの関係、アメリカの株、ヨーロッパの株、これくらいしかありませんから、アジアの情報が余りありません。そういう意味では、もっとアジアの情報をお互いに交換する、それからアジアの中でいろいろな債券のようなものをつくっていく、こういうことが必要だと思います。

 八ページの一番右側をごらんいただきますと、ヨーロッパはヨーロッパ域内で六五・五六%も回っております。ですから、ヨーロッパは自分たちの中でお金を回しているわけです。だから、アジアがやはりこういうふうになっていかなくてはいけないと思いますが、そのためには四つぐらいのレベルのいろいろな方策が必要だと思います。

 一つは、政治家の先生方の間での、政治レベルでのアジアとの協調が第一番目であります。それから二番目は、政府の間での、政府間のさまざまな結びつき、これが二番目です。三番目が、ビジネスの間での結びつき。それから四番目が、学者とかいろいろなところを通じた学問的な交流。この四つがうまくバランスをとりながら、アジアとの共存ということがぜひ必要ではないかと思います。

 日本では、三番目のビジネスの動き、これは非常にアジアと結びつきがございます。これは、製造業が円高の中でアジアにどんどん出ていきました。そして、アジアの生産ネットワークができたわけであります。ところが、一、二、四がまだまだこれからだと思います。ぜひ、先生方も含めて、アジアとの共存を図り、その中からアジアで資金を回し、さらにアジアの活力を日本と一緒に享受していくということが必要だと思います。

 次は、九ページをごらんいただきたいと思います。

 先ほど、アジアの資金がアメリカに流れ、それからアメリカから日本あるいはアジアにたくさん資金が流れると申し上げましたが、九ページは、東京証券取引所の、どういう人たちが売買をしているかというのをフローで見たものであります。

 ごらんいただきますと、二〇〇八年の中ごろは、半分以上、六五%ぐらいですね、七〇%近く外国人が取引をしているわけです。つまり、日本の証券市場ですら外国人のシェアが多い。最近ですと五三・八%と下がってきておりまして、これが日本の株価の下落にもつながっているわけであります。もう少し日本の国内でうまく回す、それからアジアで回すということが必要ではないかと思います。

 次に、十ページをごらんいただきたいと思います。

 今、特別会計の積立金を取り崩しながら、これからの景気対策にしばらく使っていこう、こういうことでございますが、これはやはり、百年に一度の景気の悪化でございますので、ある程度こういう積立金を使うということは必要であると思います。ただ、もっと重要なことは、長期的には民間の資金をさまざまな政策のために調達していただきたいと思います。それは最後に申し上げます。

 この特別会計の積立金の中では大きいものが三つございますが、一つは年金の積立金。これは大体百五十四兆ぐらいございますが、これは将来のお年寄りのためにとっているわけですから、この積立金を取り崩すことは絶対できないと思います。それから二番目の外国為替特別会計の積立金。これも、これまでためてきた黒字の資金でありますけれども、これは為替レートが変動したり金利が変動するときに大きく動きます。この外為の大半は、アメリカの国債を買っているというのが現状でございます。さらに最近の円高で、もし時価で評価しますと、残念ながらこの積立金はほとんどないというのが現状でございます。そうしますと、使えるのは三番目の財政投融資の特別会計の積立金ということになります。

 財投の場合、なぜこういう積立金を持っているかと申し上げますと、財政投融資が自立採算で、自分の中で集めた資金を中小企業あるいは海外のために貸し出す、こういうのが財政投融資のやり方であります。そして、一番最後に書いてありますけれども、万一金利の変動があっても、自分のところである程度留保を積んでおいて、絶対に外からは借り入れをするようなことがないようなやり方の規律づけをつけるためにこういう積立金を積んでおります。

 ところが、これまで千分の百というのがあったんですが、それを五十まで減らすということになりました。これは、シミュレーションしますと、三千本のうちの大体三本程度がこれですと赤字になる可能性があるということであります。

 なぜそんな積み立てが必要かと申し上げますと、これまでは長期で貸して、それで短期でお金を集めておりましたので、その資金のミスマッチというところがあります。それから、現在は、長期の貸し出した資金がありますので、金利が低いですから収益が上がっているわけです。ところが、これが逆転しますとこの積立金も赤字になって、だんだん減ってくる、そういう可能性がございます。だから、そういう意味では、現在、この一部を景気対策に使うということは必要だと思いますが、長期的にはやはり千分の五十のあたりまで戻す必要があると思います。

 最後に、こちらの図を使いながら、世界的な金融危機とそれから今後の日本というのを少し御説明させていただきたいと思います。

 資料と書いてございまして、カラーの図がございますが、まず一番下をごらんいただきたいと思います。下の方に、一ページから、一番最後が五ページと書いてございます。

 これは日本の図でございますけれども、赤いところは銀行の貸し出しでございます。日本の一つの問題点は、やはりバブルで銀行の不良債権が大きくなり、それで五百兆円あった銀行の貸し出しが四百兆まで減った、これくらい、百兆円も銀行の貸し出しが減ったところに、日本の景気回復がおくれたところがございます。アメリカはこれを回避するために、公的資金を非常に短い期間に入れております。ですから、そういう意味ではアメリカ、ヨーロッパは、日本の経験を踏まえ、金融機関、特に銀行の貸し出しが滞らないようにするという短期の政策は今のところ成功していると思います。

 下の図は、地価と株価の変動でございます。

 時間の関係で、三ページをごらんいただきたいと思います。

 三ページの下の方に、これは中国の上海の株価でございます。これもごらんいただきますと、中国も約三分の一程度まで株価がピークと比べると下がっております。ところが、中国と日本の違いは、三ページの一番下ですけれども、銀行部門は中国は傷んでおりません。日本の場合は、先ほど一ページにありましたように、五百兆円あった貸し出しが四百兆になる、こういうふうに減ってきたわけですが、中国の銀行が傷んでいない理由は、一つは、銀行が株式を持っていない。それからもう一つは、地価の下落を中国政府が抑えておりまして、高どまりさせております。そういう二つの理由で、中国の株式の下落は銀行に影響を与えていないということでございます。

 最後に、四ページ、五ページでございますが、短期の政策と中長期の政策というのがあると思います。現在、各国では、短期の政策としまして金融機関の援助というのをしております。

 最後の五ページをごらんいただきたいと思います。これが私がきょう申し上げたい、民間の資金を活用したケインズ政策というのをぜひ今後日本でもどんどん進めていただきたいと思います。

 では、どういうようにやるかということですが、五ページの図がございますが、例えば高速道路だったといたします。そこから料金収入が入ります。例えば、現在ですと、高速道路の建設などはすべて国の資金、財投の資金でやっているわけですけれども、一番下のように、三〇%程度は税金あるいは国債のお金で調達いたします。しかし、上の、七〇%は民間の資金を集めます。高速道路から集まってきた料金を民間の投資家に配分する、こういうやり方であります。これがいわゆる、民間の資金を一部持ってきて、それによって公的な仕事をするというやり方です。

 このいいところは、民間の投資家に配当の率がわかります。そうしますと、効率のいい道路であれば、この配当の率が高くなる。そして、効率の悪い道路であれば、配当の比率が低くなる。さらに、余りにも悪い道路であれば、民間の資金が来ない。こういうように民間から、ある程度公的な仕事に対してもチェックができるということであります。

 実は、これは中国でお話ししましたところ、中国はこれを使いながら地方と中央の間の鉄道とかあるいは高速道路網をつくろうということを考えております。インドでも始めております。そういう意味では、アジアでこういうことが始まっておりますので、日本でも、先生方のお知恵を拝借しながら、どういう事業にこういうものができるのかということをぜひ考えていただければと思います。

 ちょっと時間をオーバーしてしまいましたけれども、以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 次に、中里参考人にお願いいたします。

中里参考人 本日は、意見陳述の機会をいただきまして、ありがとうございます。そこに簡単なレジュメをお配りいたしましたけれども、その順番でお話をいたします。

 ちょっとテクニカルになりますけれども、まず、改正案全体に対する所見でございます。

 現下の我が国の経済は、明らかに景気後退局面に入っておりまして、今後、下降局面が長期化、深刻化するおそれが、先ほどのお話にもありましたように指摘されているわけです。こうした危機的な経済状況から脱するためには、もちろん、持てる政策手段を総動員して、景気回復に向けて取り組む必要があることは言うまでもございません。

 しかし、他方、少子高齢化やグローバル化といった経済社会の構造変化の中で、我が国の直面するさまざまな課題を解決するために、税制の抜本改革を行うことが緊急の課題であるということも忘れるわけにはまいりません。とりわけ、社会保障の安定財源の確保は、国民の安心を確保するために、決して避けて通ることのできない問題でございます。

 こうした中、今回、本委員会において審議が行われております平成二十一年度税制改正案においては、私がざっと見ただけでも、過去最大規模の住宅ローン減税や省エネ等に関する投資促進税制など、随分と思い切った政策税制が盛り込まれております。また、これらのほか、外国子会社からの配当を益金不算入とする制度の導入など、これまでの政府税制調査会における議論等を踏まえた税制改正も盛り込まれているわけでございます。

 そして、何よりも重要な点として、本年の改正税法の附則におきまして、今後の税制抜本改革に関する道筋が示されている、この点が注目に値するわけです。これは、一昨年における政府税制調査会の答申「抜本的な税制改革に向けた基本的考え方」を踏まえたものでございまして、私、これを画期的なものとして高く評価している次第でございます。本年度の税制改革に盛り込まれた種々の政策税制とあわせまして、こうした将来の税制改正のあり方を一体的に示すことは、国庫を預かる政府といたしまして、その責任を示すものではないかと考えております。

 この中で、私は、国際課税に関する改正、さらに消費税を含む税制の抜本的な改革について所見を述べたいと思います。

 まず、国際課税に関する改正でございますが、今般の法案に盛り込まれております外国子会社に関する外国税額控除制度の見直しについて触れたいと思います。

 進展するグローバル化や事業形態の複雑化、多様化のもとで、クロスボーダーの経済活動に対する課税については、我が国の適切な課税権の確保と経済活動に配慮いたしまして、日本の経済の活性化とのバランスを保つ必要がございます。この観点を踏まえ、本法案におきましては、国際的な二重課税排除の制度について、外国税額控除制度の大枠を維持しつつ、親会社が外国子会社から受ける配当を益金不算入とする制度を導入する改正が盛り込まれました。

 配当還流につきましては、一定の分野に使途を制限するといった政策税制的な観点ではなく、企業の判断によって配当を戻すタイミングや使途をみずから選べるということ、すなわち、企業の配当政策に対する税制の中立性という観点が重要でございます。また、間接外国税額控除制度につきましては、これは法科大学院等で講義していると頭が痛くなるほど制度が複雑でございますし、また実務的にも書類提出の煩雑さが言われておりましたが、この制度が導入された結果として制度を大幅に簡素化できるということで、望ましい改革ではなかったかというふうに思っております。

 次に、消費税を含む税制の抜本的な改革の道筋についてでございますけれども、この法案で最も注目される附則第百四条に規定された消費税を含む税制の抜本的な改革に関し所見を申し述べます。

 税制の抜本改革の必要性については、私も特別委員として参加しております政府税制調査会において、一昨年、集中的な議論が行われました。ここで指摘されたのは、我が国における経済社会の全般にわたる激しい構造変化、すなわち、主要先進国の中で例を見ないほどの速さで急速に進行している少子高齢化と、経済のグローバル化の急速な進展という疑いもできない事実でございます。

 少子高齢化は、年金、医療、介護などの社会保障給付の増大を必然的に招いているわけでございますが、これを賄う財源のうち、公費負担につきましては、現在、その約三分の一程度を将来世代へのツケ回しということで、それに依存している状況です。国、地方の債務残高は、二〇〇九年度では対GDP比一五〇%を超えることが見込まれておりまして、こうした状況が続くならば、社会保障制度の持続可能性に対する国民の不安感、これを惹起するばかりか、国際的にも我が国経済への信認を損ないかねません。

 他方、経済のグローバル化の進展やバブル経済崩壊後の我が国の経済停滞と軌を一にして、都市と地方、大企業と中小企業、あるいは正規雇用と非正規雇用といった、さまざまな側面で格差の問題が指摘されるようになったことも重大な変化でございます。

 こうした問題意識から、政府税制調査会におきまして、一昨年の十一月に税制の抜本改革に関する網羅的な答申を取りまとめまして、政府に対しては、適切な時期にこれを実施していただくよう求めてまいりました。また、昨年十一月の答申においては、さらに一歩進みまして、当時、政府において議論が進められていた中期プログラムにつきまして、政府税制調査会の提言内容が同プログラムに十分に反映されるとともに、その実施時期が明示されるよう強く求めていたところでございます。

 今回の改正税法附則の内容は、中期プログラムを踏まえまして、抜本改革の実施時期及び基本的な考え方を明示したものであると理解しております。具体的には、消費税を含む税制の抜本的な改革について、経済状況の好転を前提として、税制抜本改革が遅滞なく実施できるよう、必要な法制上の措置を二〇一一年までに講ずることとされておりまして、こうした道筋が法制上明確化されたことは実に大きな進歩ではないかと考える次第でございます。

 次に、税制抜本改革の基本的な考え方でございますが、今般の附則第百四条の第三項におきまして、消費税を含む税制の抜本的な改革を行うに当たって、具体的にどのような基本的方向性で各税目の改正を行うのかといった具体的な論点が実は掲げられております。

 まず、個人所得課税につきましては、所得再分配機能の回復の観点から、高所得者の税負担の引き上げと、中低所得者世帯の負担の軽減の検討が述べられております。政府税制調査会における議論でも、我が国の所得税は、これまで幾たびかにわたる税制改正によって、勤労意欲や事業意欲を阻害しないようにとの観点から所得税の累進緩和が行われてきた結果、その財源調達機能や所得再分配機能が低下しているとの認識でございまして、私も、社会保障制度とともに所得再分配を担う存在として、所得税の役割を適切に発揮させていくことは重要な課題であると考えている次第でございます。

 なお、附則で、給付つき税額控除を今後検討することとされている点について一言所見を述べさせていただきます。

 いろいろお考えはあるでしょうけれども、この制度は、税金を支払った者に税金をお返しするというのみならず、支払っていない方々についても給付を行うというものでございます。仮にこれを我が国で実施する場合には、特に執行面で相当大きな壁を乗り越える必要があるものと考えます。

 端的に言いますと、税務署は、お金持ちについての情報は持っていますが、そうでない方に対する情報は余り持っていないということでございます。適正な給付を行うためには、現在所得税を納めていない者も含めて、所得を正確に捕捉する必要がございますが、我が国において、徴収の大部分を源泉徴収に頼っており、また納税者番号制度も整備されておりません。今般の附則においても、「歳出面も合わせた総合的な取組の中で」ということにされておりますけれども、少なくとも実行可能な制度が仕組まれるよう、今後、幅広い観点からの検討が行われる必要があると考えております。

 法人課税につきましては、政府税制調査会の議論においては、経済のグローバル化の進展に伴い、国境を越えた経済活動が活発に行われるようになってきている中で、企業の税負担面での国際的なイコールフッティングを図るべきであり、法人課税の国際的な動向に照らすならば、法人実効税率の引き下げが必要であるとの意見が強かったかと記憶しております。

 他方で、課税ベースや社会保険料負担を考慮した企業負担を考えてみますと、これは国際的に見て日本は必ずしも高い水準にあるわけではないとの試算も行われました。こうした中で、今後の検討に当たっては、厳しい財政事情も踏まえまして、今般の附則にもあるように、課税ベースの拡大といったものについて検討が行われるべきなのではないかというふうに思うわけです。

 消費税についてですが、政府税調におきましても、経済の動向や人口構成の変化に左右されにくく、世代間の公平の確保に資するといった観点から、税制における社会保障財源の中核を担うにふさわしいとの認識でこれは一致しております。

 消費税につきましては、低所得者の負担が相対的に大きいとの指摘があるわけでございますが、再分配政策を語る上では、一つの税目の負担のみに着目するというのは誤りでございまして、ほかの税目や社会保険料を含む負担全体、さらには社会保障給付等における受益全体をも考慮に入れた議論が行われる必要があると考えます。

 仮に、消費税収のすべてを社会保障給付として還元するのであれば、当然のことでございますけれども、社会保障の所得再分配効果が結果として高まるということになります。したがいまして、社会保障の受益は一般的に低所得者で大きいということがあるわけですから、逆進性の議論についても、受益と負担を通じて考えればさほど重要な問題とはならないという指摘も理論的には可能でございます。

 附則におきましては、複数税率の検討についても述べられておりますが、この点に関し、政府税調におきましては、再分配効果や制度の簡素化、中立性、事業者の事務負担、執行コスト等を考慮すれば、極力単一税率が望ましいとの結論でございます。また、社会保障の安定財源として一定規模の税収確保が必要となることを考えますと、軽減税率による減収分だけ標準税率を高くせざるを得なくなるというような心配もあるということに留意する必要があります。

 附則では、また、複数税率の検討について、「歳出面も合わせた視点に立って」「総合的な取組を行うことにより低所得者への配慮について検討する」という形で、非常に注意深い規定ぶりとなっておりますが、これはこれまで私が申し上げたような視点を踏まえたものと解しております。

 相続税につきましては、所得税と同じく、最高税率の引き下げを含む税率構造の見直しが行われてきたことに加え、基礎控除の水準が引き上げられてきた結果、年間死亡者数のうち相続税の課税が発生する割合が四%程度まで減少するということで、資産の再分配機能が低下しているという議論が税調では行われました。

 こうした状況に加え、相続税をめぐる今日的な課題として、格差の固定化の防止や老後扶養の社会化の進展への対処が挙げられます。つまり、相続を機会に高齢者世代内の資産格差が次世代へ引き継がれる可能性が増してきているのではないかといった点や、公的な社会保障制度が充実し、老後の扶養を社会的に支えていることを踏まえ、被相続人世代が生涯にわたり社会から受けた給付の一部を相続税という形で社会に還元することを求めることができないかといった議論がなされているところでございます。

 以上のような点も踏まえ、今後、相続税の税率構造や課税ベースを見直していくことが必要であると思います。

 以上、平成二十一年度改正税法に関する所見を述べてまいりましたが、今般の税制改正には現下の危機的な経済状況に対し政策的な処方せんを示したものが非常に多く含まれておりまして、これが所期の効果を発揮するためには、平成二十一年度予算とあわせて年度内に法律として成立し施行される必要がどうしてもございます。もたもたしている暇はございません。

 将来行われる税制改正の検討の基本的方向性をこのように法律の形で具体的に示すというのは、恐らく初めての試みなのではないかと思います。その意味で、今回示された基本的な方向性は、政府税制調査会が一昨年に示しました答申であります「抜本的な税制改革に向けた基本的考え方」と軌を一にするものであって、この答申の取りまとめに参加した一員として、ぜひ今後こうした方向性で議論が先生方により熱心に進められることを強く希望するものでございます。

 ありがとうございました。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

田中委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲田朋美君。

稲田委員 自由民主党の稲田朋美でございます。

 財務金融委員会での初めての質問が三先生に対する参考人質疑であることを光栄に思っております。大変有益なお話をありがとうございます。

 藤原先生には、小手先の政策ではなくて大きな国家ビジョンを語るべきだと言われました。大変共鳴を覚えました。また、吉野先生には、民間の資金を活用すべきだという非常に画期的な提言をいただきました。また、中里先生からは、消費税の議論など有益なお話を伺いました。

 私は、まず、この委員会でも大変議論になっております消費税の問題について、中里先生にお伺いをいたしたいと思っております。

 当委員会でも、今、百年に一度と言われる経済危機において思い切った景気対策をしなければならない、そのときになぜ附則で消費税の増税のことについて書くのだ、これはまるでアクセルとブレーキを同時に踏むものではないか、そういった批判もあったわけであります。しかしながら、私は、やはり責任ある立場としては、景気回復の後には財源の手当てというものは、伸び行く社会保障費の中で必要ではないかと前向きに考えております。

 特に、社会保障の経費が、税負担分と保険料負担分を合計いたしますと毎年毎年約二兆円の伸びがございます。これに対して、例えば行革ですとか無駄を排除すべきであるという議論がありまして、地元に帰りまして、国民の皆さん方の、地元の方々の意見を伺いますと、消費税を増税する前にまずやるべきことがあるんじゃないか、無駄を排除すべきではないか、もっと改革を進めるべきではないかという御指摘があるんです。

 しかし、冷静に考えますと、毎年毎年二兆円の伸びの社会保障経費、そしてそれを賄うために二兆円ずつ無駄を排除していくとしますと、ことしは二兆円、来年は四兆円、その次の年は六兆円と膨大な無駄の削減が必要になると思うんですけれども、こういった点について、中里先生はどのようにお考えでしょうか。

中里参考人 稲田先生のように国家の将来を憂えて選挙民に必ずしも受けがいいとも思えないことをおっしゃるということは、非常に志の高い話ではないかというふうに感動いたしております。

 アクセルとブレーキとおっしゃいましたけれども、人間の体も、交感神経と副交感神経で、一方に偏らないように両方使ってバランスをとっていくということ、これは常に必要でございます。景気対策、これも必要です。しかし、社会保障財源の充実、これも必要でございまして、そこに、こうすればみんながハッピー、景気がよくなって笑いがとまらないというような打ち出の小づちは残念ながら存在しない。苦しい中を何とか狭いすき間をすり抜けていく、その中に多少の負担の問題というのも入ってこざるを得ないわけですね。こういう状況の中で、バラ色の未来だけを語るというわけにはいかないんだろうと思います。

 そうやって狭いすき間をうまく通り抜けていけば、日本人は、黒船がやってきたときも、関東大震災があったときも、それからB29の爆撃にさらされたときも、そういうすべての場合に何とかこれをすり抜けてきたということがあるわけですから、自信を持っていけば何とかなるんじゃないかというふうに思っています。

 過度に悲観的にならず、過度にバラ色の夢もばらまかず、中庸でいくということなんじゃないかというふうに思っております。

稲田委員 ありがとうございます。

 さらに中里先生にお伺いをいたしますが、少子高齢化社会、世界一の水準とスピードで高齢者は年々ふえております。また一方で、勤労世代が年々減っております。社会保障経費の多くの部分が高齢者にかかっているということを考えますと、そういった減り行く所得課税、所得税収とか法人税収で賄うには、勤労世代一人当たりの所得課税負担率がどんどん高くなってくるのではないかと思っております。

 こういった点から、消費税についてどのようにお考えでしょうか。

中里参考人 意見の非常に対立する問題でございまして、これだけが唯一正しいというようなことを申し上げることはできないわけでございますけれども、常識的に考えまして、政府は財源の手当てなくお金をばらまくということはできないわけです。それをもしやりたいのであれば、日本が基軸通貨国になって借金の証文と円をやたら印刷して外国にばらまくという方式もないわけではないでしょうけれども、今の日本ではそれはできませんし、そういう国家が今後出てくるかどうかも非常になぞなわけですよね。

 そうしますと、消費税については、かつて大平総理がなさったように、国民に理解を求めていくという方向をとらざるを得ないのではないかというふうに思っています。

 ここの問題をしくじりますと、赤字だけがどんどんたまっていく。どんどん借金ができるのであればいいんですが、私、金融取引の課税を専門としておりますが、どんどん借金はできないのでありまして、いつか国債が暴落する、借金ができなくなるときが来るわけでございまして、そうならないためにも、要するに日本が国家破産に陥らないためにも、一定程度の財政規律を保っていくということが必要だろうというふうに思っております。

稲田委員 それから、先ほど先生のお話の中で、所得税についても改革を考えるべきだというふうなお話があったんですが、今よりもやや累進課税を強くする、そういった考えについてはどのようにお考えでしょうか。

中里参考人 地方税、国税合わせた最高税率が五〇%を超えるというのは、それは極力避けた方がいいことなんだろうと思います。ただ臨時的に、この不景気を脱するための財源措置として、そういうことも場合によってはあり得るかもしれません。

 一番大切なのは、高所得者についてだけ税率を上げても税収はさほど上がらないという点でございまして、みんなから千円ずつでも一万円ずつでもよろしいんですけれども、ほんのちょっとずつ集めることによって、多くの人に広く薄く負担していただくことによって、必要な税収も確保できる。それ以外に方法はないわけでございまして、天からお金が国に降ってくるわけではございませんので、所得税も聖域化しないで一つの議論の対象に加え、消費税とのバランスを考えていくということです。

 普通の私の理屈からいうと五〇%を超えるのはちょっとと思うんですけれども、しかし、臨時的な措置としてはいろいろなことを考えないと、国民の納得を得られないということでございます。

稲田委員 広く薄くということ、私も同感をするんですけれども、これ以上所得税を低中所得者の方から取るということはなかなか難しいんじゃないかなというふうにも思います。

 消費税は一%で二・五兆円と非常に規模も大きく、また高齢者の中で消費余力のある人にはしっかりと負担をしていただくことで、所得はない豊かな高齢者に負担をしてもらいやすいという意味から、世代間の公平も図れるのではないかと思っておりますし、また、所得税と違って、執行方法も非常に公平感があるのかなということを思っておりますが、そういった点からはどのようにお考えでしょうか。

中里参考人 ヨーロッパ流の厚い福祉というのを前提とする国家運営を考えるのであれば、消費税の税率五%というのはあり得ない水準ということになります。所得税で集められる税収、相当今集めていますけれども、それよりは消費税の方がいろいろな意味で不公平性が少ないということもそのとおりだと思います。

 しかし、この国会の中でそれに反対する先生方が非常に多くいらっしゃいますので、これは先生方が御判断なさる話でございまして、消費税の税率を上げる苦渋の選択を国会が、すぐとは申しませんけれども、近い将来できるかできないか、これが志の問題でございまして、それができないならば日本国の将来は相当苦しい、厳しいことになるのではないか。バラ色の未来を根拠なく語るということに関しては、非常な抵抗感を持つものでございます。

稲田委員 ただ、この委員会の中でも非常に議論になっていたのが、中低所得者に対して逆進性なのではないかという議論です。それに対して、この間与謝野大臣は、社会保障費を充実させればその逆進性が反対になるのでということもおっしゃいました。

 先ほど中里先生もそういった点をおっしゃったんですけれども、セーフティーネットを強化することによって中低所得者に対して有利だから、消費税を上げるということも必ずしも中低所得者に対して逆進性ばかりではないんだということを、もっともっとアピールすべきではないかなということを感じているんですけれども、そういった点をもう少し詳しくお話しいただけないでしょうか。

中里参考人 高齢者とか非正規雇用に従事している若い人たちのことを考えますと、なかなか理屈だけで世の中のことをあれこれ提言するというのは厳しいものもあるわけですけれども、逆進性云々というのを局部的にとらえるというのは、これは間違っているだろうというふうに思います。この税目だけ考えて逆進的だとか、そういう話ではございませんで、税制トータルでどうなっているかということを考えなきゃいけませんし、また税制だけじゃなくて、社会保障負担も考えてどうなっているのかということを考えなきゃいけませんし、さらには受益も考えてどうなっているかということを考えるということでございます。

 そのトータルで考えますと、逆進性の問題というのはかなりの部分解決できるのではないか、その程度のノウハウは我々も理論的にも持っておりますし、それからいろいろな専門家がそれをするやり方というのは心得ているんじゃないかというふうに思っておりますので、先生のおっしゃるとおりだと思います。

稲田委員 ただ、先生が先ほどお話しになった中で、唯一複数税率については消極的な御意見なのかなと伺ったんですけれども、私は、食料自給率を上げたりそれから日本の食文化を守るという点から、例えばお米に関してだけ消費税率を下げるというようなことも考えるべきではないかなということを、ちょっと先生のお話の中で一点だけ指摘をしたいと思っております。

 次に、吉野先生に、景気対策の財源についてお伺いをいたしたいと思います。

 先ほど民間資金の活用という非常に画期的なお話もあって、そのことを私も大変もっともっと聞きたいなと思ったんですが、今回、この法案に関連をいたしましては、財政投融資特別会計の積立金を取り崩すという点について、先生先ほど少しお話がありましたけれども、私は、こういったいわゆる埋蔵金の取り崩しというのは、毎年毎年できるものでもないし、緊急避難的に行うべきものではないかな、そしてまた、今の段階でこの埋蔵金を取り崩してしまうことが、やはり将来世代にツケを回すことにもなるし、借金返済に本来なら回すべきものではないかなと思っているんですけれども、この点について先生のお考えを伺いたいと思います。

吉野参考人 今御指摘のございましたように、これだけ財政が大変な状況でございます。

 まず一つは、国債にうんと頼ることがなぜいけないかということをちょっと申し上げますと、日本の国債の大半は民間の金融機関が保有しております。外国人とか個人の保有というのは数%ずつにすぎません。そういう意味では、国債がこれからますます発行されますと、銀行あるいは保険会社がそれを持ちますから、貸し出しが減るということになります。

 先ほど、民間の企業に対する資金が随分細ってきたと申し上げましたけれども、現在、なぜこれだけの大量国債が非常にうまく消化できたかといいますと、それは貸し出しがなかなか需要がなくて、その分金融機関は国債を持っていたので、ちょうどこれが保てたというのがぎりぎりだと思います。

 民間の金融機関の方にお聞きしますと、もう今、国債をたらふく食べたという感じである、これ以上国債が来るとすると、国債の金利を上げてもらわないと買えないと言うわけです。ですから、ほかの金融資産よりも高い金利にして国債を売る。そうしますと、今度は国債の、国家の財政の金利負担がふえることになります。だから、そういう意味では、なるべく国債に依存しない形で何とか急場をしのがなくちゃいけないということだと思います。

 それで、この積立金の千分の百というのを千分の五十まで引き下げ、さらにそれを一時的に引き下げるということですけれども、では、財政投融資の特会がなぜこういう準備金を持っているかといいますと、これは別に眠っているお金じゃないんです。実は、この準備金の部分は中小企業なんかの貸し出しに回っているんです。だから、負債の側としては準備金と書いてありますけれども、資産の側では中小企業なんかに回っていますから、別にそこにたまっているお金ではありません。まず、それは御認識いただきたいと思います。

 それから、では、今余分があるからこれを少し取り崩しましょうということですけれども、今ちょうど運がいいのは、長期で貸したお金が少し高い金利で残っております。短期の金利は非常に低い金利ですから、その部分のさやがありますので、少し準備金を抑えても、今のところは大丈夫そうです。しかし、これが今度逆に金利が上がってきますと、長期の金利は変わりませんから、逆転することがあります。そうしますと、この準備金が、余り下げますと赤字になってしまう。

 では、赤字になったときどういうことが困るかといいますと、財政投融資というのは特別会計で、その中で全部自前でやっていこうという会計ですから、ある程度バッファーを持ちながら、金利の変動あるいは期間のミスマッチというのがございまして、それに対応するという制度です。ですから、今はもうこれだけの危機ですから仕方がない、だからその部分を少し下げましょうということはいいことだと思いますけれども、長期的には千分の五十程度、ある程度まで確保しないといけないと思います。

 それより、私がさっき申し上げました、これからいろいろ政策をしていただく場合には、国のどこかにあるお金というばかりじゃなくて、何とか民間の資金を持ってきて、それを合わせた形でできないだろうか。まさに中国やインドは、彼らは税収はそんなにないわけです。ところが、田舎というか地方が全然都会と結ばれていない。彼らの経済成長のためには、鉄道、インフラをもっと敷きたい。そのためには民間資金をもっと持ってこようと。その民間資金も、国内の民間資金ばかりじゃなくて、日本人の貯蓄とか海外からの資金も持ってきて頑張ろう、そういうことですから、うまい形で日本の地方に対しても民間の資金を一部持ってきて、そこで活力をつけた形でいい事業をしていくということをぜひ考えていただきたいと思います。

稲田委員 ありがとうございます。何か非常に元気の出るお話だったと思います。

 ただ、今、その積立金の取り崩しに引き続いて最近議論をされていることに、例えば政府紙幣を刷るとか、また無利子国債の発行をしたらどうかという議論が活発に行われております。私は、まるで空気から札束を生み出すような、そんなうまい話があるのかなというような気持ちでその議論を聞いてはいるんですけれども、国民の皆さん方にも非常にアピールをしている議論でもあります。この政府紙幣とかそれから無利子国債を発行するという考えについて、どのようなお考えをお持ちでしょうか。

吉野参考人 景気対策といいますか、結局、政府の財政というのはどこから主に入ってくるかといったら、やはり税金で入ってきて、それを支出するわけですから、どこかから打ち出の小づちでお金が出てくるというわけではない。それで、税金で足りない部分を国債を発行しながらしのいでいくということなわけです。

 国債は、現状では税金が少ない中で国債が発行できますが、アメリカ人の考え方は、国債で頼っているということは将来世代に負担を残しているんだ、こういう意識が強いと思います。

 そういう中で日本では、では国債で、ゼロ金利の国債を発行したらいいではないかということですけれども、もしそれを民間金融機関が今のように買うとしますと、ゼロで買うことになります。ということは、預金金利はゼロにしないと、金融機関は買えません。ですから、ゼロ金利の国債というのは、例えば特定の目的でやるというのであればいいですけれども、一般に販売したとしても、普通の方は買わないというふうに思います。

 それから、政府紙幣の発行ですけれども、これはやはり、余り間違えますと、紙幣を乱発して、結局はインフレを起こしてしまうということになりますので、我々が考えなくちゃいけないことは、財政を最終的にはバランスさせて歳出と歳入を合わせていくということをしませんと、一時しのぎで何かやろうということになりますと、後で必ずそのツケは回ってくるというふうに思います。

稲田委員 時間が参りましたので。どうもありがとうございました。

田中委員長 次に、古本伸一郎君。

古本委員 おはようございます。民主党の古本伸一郎と申します。

 きょうは、参考人の皆様、委員会にお越しをいただきまして、ありがとうございます。

 まず最初に、お三方、学者でいらっしゃる前に、おうちに帰れば、それぞれ一消費者でいらっしゃると思います。先ほど来、消費税の話が随分出ておりましたが、いわば税金を上げるということは、消費税に限らず、所得税でもいかなる税でもそうだと思いますが、お父さん、もうちょっと残業して頑張って稼いできてよと言われているようなものだと思うんです。他方、家に随分へそくりがあれば、そのへそくりがまずあるじゃないか、こういう思いもあると思うんですね。

 今、我が国のお財布の状況を家計になぞらえて少し全体を鳥瞰していただいて、今、さらにアルバイトに行ってこいよと言われて、行ってきますという気になれる状況かどうか、つまりは、消費税の増税をただいま議論できる状況かどうかということについて、それぞれお願いいたします。

藤原参考人 お答え申し上げます。

 私は、今の段階で消費税率の引き上げを政府が言うことは非常に不見識であると思っております。

 税金は、国民が所得を得ればちゃんと払います。それほど日本人は納税意識が低くないと思います。払えないわけであります。年金も払えない、健康保険料も払えない、果ては給料も払えない。そういう状況で、どうやったらお金がもうかって生活が安定するのかもわからない前に、いただきますという話を政治がするのは、国家の財政運営の前に、国家のリーダーシップとしては甚だ不見識なことだと、私は正直言って思っております。

 私は、もっと積極的な話をしていただきたいと思うんです。ただ単に無駄を省くだけではなくて、どうやったらみんな財布に金が入ってくるか、その算段を政治にしていただきまして、お金がもうかってから、いただくものはいただくというお話をしていただきたい、かように思っている次第でございます。

吉野参考人 私は、やはり長期的には、財政というのはバランスさせないといけないと思います。

 ヨーロッパでユーロができるときに、イタリアは非常に赤字だったわけです。そのときに、残高で六〇%以上、マーストリヒトの取り決めがありますけれども、それでイタリアは、こんなことでは我々はEUの中に入れない、そういう形で、やはり長期的に財政をバランスさせていこう、そういう努力があったと思います。そういう意味では、私は、日本においても、将来の子供たちあるいは孫に負担を残さないということはぜひ必要なことだと思います。

 ただ短期的に、こういう非常に、百年に一度とかいう危機のときに税金をすぐ上げていいかどうかというのは、私は、こういうときはやはりしっかりとした景気対策をするということがまず重要だと思います。

 それから、やはり先ほど申し上げましたが、では、景気対策も全部国債でやるのかということではなく、できるところはPPPという民間の資金を用いながらやっていくということがぜひ必要だというふうに思います。

中里参考人 これは難しいですね。今の経済状況で税金を上げるというのは非常に難しいと思います。

 ただ、国会の改正案の方で、将来的にそれを考えなきゃいけないという警笛を鳴らした、このことに非常に大きな意味があるのではないかというふうに思っています。

 具体的にどの時期にどれだけということに関しては、今後こちらで先生方が御議論なさってお決めになる話だと思いますけれども、いずれにせよ、国債をふやし続ければ国債価格が暴落する、金利が異常に上がるということでございますから、その時期がおわかりになるのであればその時期までになさればよろしいのでしょうけれども、そうならないための予防措置というのを常に考えておくという意味で、消費税等に関して考えておくということは、国民にとっても非常に意味のある話ではないかと。

 経済が破綻してしまえば、国家が破産してしまえば、税金がゼロになったところで意味はないのであるということです。

古本委員 先日、与謝野大臣が、中川前大臣の時代からも継続して御説明されておりますけれども、実は今回の定額給付金は一種の給付つき税額控除である、こういう御説明をなさっているんですね。これは参考人からもお話があったように、納税をなさっておられない課税点以下の方についても何がしかの給付をするという意味では、給付つき税額控除の一つの理念だと思うんですけれども、そのことを少し前倒ししているんだというようなお話がございました。与党の先生方からもその御主張はあるようでございます。

 少し疑問に思いますのは、政府税調の特別委員でもいらっしゃる中里先生におかれましては、所得の再分配機能が少し低下しているんではないか、少し税がフラット化し過ぎたんじゃないか、累進性が少し緩み過ぎたんじゃないか、こういうお話もあったわけですが、給付つき税額控除というのは元来、所得の再分配機能をならす役割がもしあるのであれば、今回の定額給付金というのは、実は所得の再分配機能には当たらないんですよね。なぜならば、財源は財投特会の切り崩しでありまして、再分配にはならないと思うんですね。

 このことについて、まずは中里さんにお伺いしたいと思います。

中里参考人 一回ぽっきり非常事態に配るというのと、毎年税制の中に組み込んで配るというのとは、本質的な差があるのではないかというふうに思っております。

 給付つき税額控除の難しさというのは、納税者個々人の情報がないと適正な給付の額を決められないという点にあるわけで、今回配る二兆円云々という話は、全員にということ、民主党の先生方は御辞退なさるようですが、全員にということでございますから、これはこれで、執行のやり方としては難しい点もあるんですが、給付つき税額控除よりはやりやすいということですね。その点は御理解いただきたいと思います。

古本委員 これで最後にしますけれども、給付つき税額控除というのは、所得の再分配機能の見直しに資するものかどうなのかだけ聞いております。

中里参考人 私自身が給付つき税額控除に余り賛成ではないものですから、何とも言えないんですけれども。

古本委員 いや、それは失礼いたしました。

 ただ再分配機能が、今フラット化が進み過ぎて、その対策として一つに給付つき税額控除というのがあるんじゃなかろうかということは、税調としてそういう見解が出たということであったということで、先生のお立場をフォローさせておいていただきたいと思います。

 少し観点を変えまして、冒頭藤原参考人がおっしゃったかと思うんですが、内需へのシフトが大事であると。

 これはお三方にお尋ねしてまいりたいと思うんですが、実は我が国は、男の人も女の人もやがて最後は土に返っていくときに、棺おけに持っていけないお金というのが、金融資産全部ならしまして約三千四百万円ぐらいあるらしいんですね。これは欧米と比べると突出しております。ということは、いわゆる預貯金も含めた日本じゅうのストック全部かき集めますと、個人部門、家計部門で一千四百兆円あると言われていますよね、皆様の方がお詳しいと思いますが。そうしますと、この一千四百兆円の約六割から七割、どうやって計算するかによって若干ぶれると思いますが、大方は、六割から七割は高齢者の方、六十五歳以上の方が持っておられると言われているんです。

 ということは、税は社会をつくる力があるというふうに私は承知いたしております。民間のいろいろな活力を呼び出したり、あるいはそのお金でみんなで内需を拡大したり、そういう御提案を各参考人から示唆をいただいたと受けとめましたので、この一千四百兆円をどうやってフローさすかという意味において具体のアイデアがあれば、税制という意味で、当委員会は歳入委員会でありますので、どういう税制をつくっていけば、ずばり言えば、お年寄りが安心して、蓄えているものをフローさせていただけるようになるのかということについて、ぜひ御教示を願いたいと思います。

藤原参考人 お答えいたします。

 基本的に、高齢者の方々、この十数年のゼロ金利あるいは低金利で資産収入も減っておりますところへもってきまして、息子さん方、お仕事されている方々も、お仕事がうまくいかないということで家に戻ってきたりしておりまして、大変な目に遭っているわけでございます。

 私は、これは必ずしも税制だけで解決できる問題ではないとは思いますが、まずお年寄りのことでいいましたら、昔のマル優制度ではございませんけれども、ほんのわずかな金利からさらにまた税金を取るというのは、心情的にもなかなか難しいものがありますし、やはり社会保障のことを含めまして、お金を持っている方はいらっしゃいますけれども、さまざまな社会保障サービスなんかをもう少し、政治あるいは公の機関が負担するようなことをして、お年寄りがもう少し安心感を持てれば、お金を持っている方もお金を使い始めるんじゃないかな、そんな感じがしておりまして、そういうお年寄りの消費意欲、投資意欲をかき立てるための税制が要ると思います。

 あるいは、ベンチャーキャピタルに対する税制なんかも私は必要なんだと思うんです。お仕事を御引退される方はこれからふえてまいります。そうしますと、現役の世代に何かやってほしい、元手はある、頑張ってほしい、こういう意欲を持った高齢者の方もいらっしゃいますので、そういう方が例えば投資等を支援するときの税制なんかも十分にしていただくということが大事じゃないかな、私はかように思っている次第でございます。

吉野参考人 先ほど、千四百兆円、家計の金融資産があるということなんです。そのとおりなんですけれども、実は、国債残高が六百兆ちょっとで地方債が二百兆ちょっと、それからそのほか住宅ローンを抱えている方も、全部足しますと九百五十兆ぐらい、これくらい負債があるわけですから、実は千四百兆あるように見えるんですけれども、それを差し引けば、ネットというのはやはり日本は少ないんです。

 ですから、ああいう指標だけ見て、ほかの国と比べるとすごくあるじゃないかというのは、ちょっと我々気をつけた方がいいのではないかというのが第一点でございます。

 では、ネットではなくグロスであるその千四百兆円をどうやって地方のために活用したらいいだろうかということですけれども、アメリカでは、地域のレベニューボンド、収入債というのがございまして、これは少し免税になっております。

 地域のいろいろな事業をするのに、いろいろな方々がそこに投資をするという形で、まさに民間の資金を持ってくる。レベニューボンドですと、この事業は収益率が高いというのがその金利からわかるようになるわけです。そうすると、この地方は随分いい事業をやっているじゃないか、それと比べてこちらは、同じような事業なのに何で金利が低いんだということで、マーケットの人から事業の評価ができるようになります。

 そういう意味では、さまざまないい事業を各地方で考えていただいて、そこに民間の資金を持ってくる。最初はそこを少し優遇税制みたいにして、だんだんになれてくればそれを普通の税制にするということが一つあると思います。

 それから二番目は、地域で、いろいろなお金で、少しリスクのある自分の地元の中小企業などにお金を回せないかということです。

 現在、郵便局や銀行を通じて投資信託の販売というのが可能になりました。そうであれば、それぞれの地方で、自分の地元の中小企業のベンチャーファンドというようなことをつくりまして、それを地方の金融機関あるいは郵便局を通じて販売するということも可能ではないかと思います。

 そういう意味では、地方でさまざまな金融的な手法を用いることによって自分の地方の中に資金が流れる、こういう方策もぜひ必要だと思います。

中里参考人 安心感が得られないから、お金を多額に抱えなければ心配でしようがないという、日本は貧しい中からここまで豊かになりまして、特に高齢の方々は、その貧しい時代を荒波をくぐってここまで来られた方々ですから、将来に対していろいろな不安を抱かれるというのは、もうこれは当然のことだと思います。

 要は、若い人もそうなんでしょうけれども、高齢の方々の抱いていらっしゃる不安感というものをなくして安心感を醸成するという措置をとれば、少し財布のひもは緩むし、それが内需につながるのではないかというふうに思っています。

 矛盾するようですが、安心感を醸成するためには財政がしっかりしなければいけない。そのために、これは苦渋の選択ではありますけれども、どの程度の負担を国民にお願いするか、それを何に使うかということに関して先生方が各納税者に御説明なさる、その努力が今随分なされてきていると思いますので、そう悪い結果にはならないだろう、意見の対立はあると思うんですが、結果としては、そうひどいことにはならないんじゃないかというふうに思っております。

古本委員 去年の今ごろは、実は暫定税率をどうするかということで、随分当委員会でも御議論がありました。このたび、政府提出の案によりますれば、暫定税率を残したままで一般財源化するということなんですね。

 先日、与謝野大臣におかれましては、自由民主党の中で、受益と負担という考え方とはもう決別したんだという御説明がこの場でございました。はてと。たしか、受益と負担の関係があるからこの暫定税率というのは維持させてほしいんだというふうな旗印をどんと立てて、与党の先生方はずっと暫定税率を維持してこられたような気がしておりますし、私の記憶が正しければ、そうだったと思うんですね。

 その意味では、かつての道路建設目的であった自動車関係諸税というものが一般財源化をされたにもかかわらず、道路建設目的を専らとするこの暫定税率が残っている状態で、さらに不足いたしますれば、地方ほど車を持っておられる、きょう格差の話もございましたが、台数、世帯当たり担税額という意味では、都会の人より地方の人ほど御負担になりますね。等々を考えますと、果たして受益と負担と決別できる税目であるかどうか。この点について、それぞれお三方にお伺いしたいと思います。

藤原参考人 お答え申し上げます。

 実は、私ども、長野県の一番南にももう一つ支社を持っておりまして、そこは南アルプスのふもとで、本当に道が細くて狭いところでございます。ですから、住んでおられる方々が、何とかあのトンネルがあけばというのは、それは悲願であります。ですから、そのお気持ちもよくわかります。しかし、日本全体を見たときに、もっとほかに使ってもいいお金は結構たくさんあるような感じがするのでございます。

 実は、道路特定財源の暫定税率だけではないと思いまして、私は、この際、政府の帳簿をもう一回全部改めていただきまして、金が余っているところ、足りないところ、社会保障を含めて全部一度明らかにしていただきたいと思います。そうしまして、余った金は足りないところに回す、当然のことでございます。

 ですから、ただ単なるどこかの一部の利権の話ではなくて、私は、道路特定財源の暫定税率のことも含めて、国民の思っているところは、本当にお金が余っているのかいないのかわからないという不信感なんだろうと思うんです。

 ねんきん特別便も、結局私のところには来ませんでした。家内のところは間違っておりました。こういうことが積み重なっておりますと、例えば税源の問題等を国会で御議論なされましても、我々国民といたしましては、本当に、金が余っているのかいないんだか、どこにあるんだかないんだか、さっぱりわからない。

 私は、道路特定財源の暫定税率の受益負担のことも含めまして、もう一回お金の使い方を徹底的に見直す以外に抜本的な手はないと思いますので、その前提といたしまして、ぜひ、財政、社会保障、帳簿の徹底開示をお求めしたいと思います。その上での議論ではないかなというふうに思っております。

吉野参考人 日本の場合はある程度、中央のお金を地方交付税とか国庫支出金という形で地方に回しながらバランスをとってきたということだと思います。それはやはり、税収が多く、成長している時期には非常に成り立つ制度だと思います。しかし、それが、これからだんだん高齢化して税収が伸びなくなるところでは、少しそれを考え直さなくちゃいけないと思います。

 その場合には、二つのレベルのさまざまな公共の政策というのがあると思うんですが、一つはナショナルミニマムレベル。例えば、小学校、中学校の教育とか最低限のところ、これは、私はバランスよくやるべきだと思います。しかし、それ以上のところは、やはり受益と負担というものをはっきりさせながらやる、あるいは、先ほど申し上げましたインフラボンドのような形で民間から資金を持ってくる。現在は、すべてがごちゃまぜになりながら、あるときには公平を議論し、あるときには効率を議論するということだと思います。

 特にスウェーデンでは、しっかりと、どこまでがナショナルミニマムなんだ、そこは必ずみんなで見よう、しかしそれ以上の水準については、自分で独自の財源を持ってきてやろうと。そういうやり方で、ぜひ先生方にも、ここまでは絶対必要だというところのレベルをなるべく最低限にしていただいて、そこで決めていただくということが今後必要だと思います。

中里参考人 格差の問題は、道路関係諸税、地方に負担がということはそのとおりだと思います。他方、相続税の負担はほとんど都会に来ている、これも事実でございまして、だから、特定の税目を取り上げてどこまで格差と言うかというのは、これは全体をならしてみませんとなかなか言えない話でございまして、ただ、先生のおっしゃるような格差があるのは、これはそのとおりだというふうに思います。

 ただ、暫定ということなんですけれども、法律というのはいつでも国会の方で変えられますので、所得税法もある意味暫定でございます。暫定と名のついたものだけが暫定ではないという不思議なところがございまして、要は、今度の話というのは、一般財源化の方向にかじを切ったということの中に、それは賛成、反対いろいろあるとは思うんですけれども、消費税の増税、所得税云々のことがそう簡単に決められない状況の中で、暫定税率だから切ってしまうということにならないように、一般財源の方に、様子を見ながら、とりあえずそれでやっていくというのは、一つの賢明な措置だったのではないかというふうに思っております。

古本委員 様子見という割には、割を食うのは納税者の方ですから、そういう意味では、政治がきちっと結論を出せるように精進してまいることを申し上げまして、終わりたいと思います。

 勉強になりました。ありがとうございました。

田中委員長 次に、石井啓一君。

石井(啓)委員 公明党の石井啓一でございます。

 参考人の先生方には、本日は早朝から当委員会にお越しをいただきまして、大変ありがとうございます。

 それでは質問に入らせていただきますが、まず吉野先生に、財投特会の積立金、金利変動準備金の準備率千分の五十に関してお伺いしたいと思います。

 本日、先生が提出していただいた資料の十ページ目にもございますけれども、もともと千分の百だった所要の準備率を千分の五十に変えた。その際は、三千本の金利シミュレーションをやって、九九%信頼区間で三本赤字になるのが千分の五十というレベルだった。としますと、三千本の九九%ですから、二千九百七十本のシミュレーションのうち三本赤字だ。約千分の一の確率ということになりますね。万が一にも赤字にならないようには及びませんけれども、千が一にもならないようにということなわけです、これは。

 私は、この千分の一というのが余りにも厳格過ぎるんじゃないのか、そこまで厳しく積み立てなくてもいいのではないかというふうに思っておりまして、ちなみに、千分の四十までなると、信頼区間九九%で赤字になるのが三十五本ということですから、ほぼ百分の一の確率になるんですね。

 この際見直してはどうかということを財務省の方に申し上げると、いや、これは二十年度の見直しでやったばかりなのでということで、やったばかりだからなかなか、朝令暮改という批判を恐れて財務省の方はちょっとやりにくいようなところがあるようですけれども、私は、この際は見直してもいいのではないかなというふうに率直に思っておりますけれども、吉野先生、御見解はいかがでございましょうか。

吉野参考人 随分お詳しい数字を御存じなのでびっくりしたんですけれども。

 財投の会議では、シミュレーションで三千本いろいろ回しまして、実は、現在非常にいい状況にありまして、調達金利が非常にゼロ金利に近いものですから、短期の金利が低く、それから財政投融資はどうしても長期で今まで貸しておりましたから、長期の金利との差がありますので、この幅が非常に大きい状況です。そういう状況で、千分の五十のときには三千本のうちの三本が九九%で赤字になる。全体で考えますと二十四本ぐらいになります。

 しかし、少し長期を考えますと、だんだんに短期金利が上がってきた場合には、今のような余裕のある状況ではなくなってくる可能性があると思います。そういうときに、またこの何千本というシミュレーションをやらなくてはいけないことは確実にそうでございます。

 ただ、冒頭のときに申し上げさせていただきましたけれども、財政投融資はとにかく規律づけが必要だと思います。ある確率だから大丈夫だろうというので、もしそれを下げて、万一短期金利などが非常に高騰したときに、赤字になったときに、ではそれだったら一般会計から借り入れればいいじゃないか、こういうことになりますと全く規律づけがなくなります。

 そういう意味では、私は、非常に保守的かもしれませんけれども、ある程度大丈夫なところで見るというところでありまして、統計の数字上九九%の信頼区間をどう見るか、もちろん、両方に正規分布で分布しまして、その端をどう見るかということだというふうに思います。

 ただし、規律づけのあるような形で、そしてこういう積立金が赤字にならないような状況ということが必要だというふうに思います。

石井(啓)委員 ありがとうございました。そこのところは若干私と見解を異にするようでございますけれども、先生のお話を伺わせていただきました。

 続いて、無利子非課税国債について、吉野先生と中里先生にお伺いしたいと思います。

 この無利子非課税国債、特に非課税という部分は、過去フランスで実施された例等を念頭に置いて、相続税非課税ということが念頭にあるようでありますけれども、無利子にするかわりに相続税非課税というメリットを与えて、主に個人にこれは買ってもらうという、特にたんす預金等を引き出すために使ったらどうかというような議論があるようなんです。

 私は、当委員会でも指摘したんですけれども、相続税非課税というメリットのある方は非常に限定をされます。先ほど中里先生がおっしゃったように、今、相続税を払う方自体が亡くなった方の四%ちょっとでありますし、そのうちさらに、普通の国債を買うより相続税非課税の方がメリットがある方はさらに限定されてくるわけでありますから、ごく少数の方にしかメリットが及ばない政策を考えるのはどうかなということで、私自身は慎重論なのであります。

 仮に、この無利子非課税国債が意味があるとすれば、現状では非常に考えにくいことではありますけれども、通常の国債が市場消化しにくくなった場合には意味があるのかなとは思うんですけれども、この無利子非課税国債についての御見解をお伺いしたいと思います。

吉野参考人 日本の国債市場は、先ほどもちょっと申し上げましたが、ほとんどを金融機関が今まで持っておりまして、日本では個人の保有というのが数%でございます。それから、外国人が持っているのがやはり数%で、ほかの欧米の諸国と比べますと、その二つの比率が非常に低いということになっていると思います。

 そういう意味では、もしこういう無利子国債を出せば、今御指摘のとおり、相続税のために持たれる方はいると思います。しかし、もしその方々が、今まで預金をされたり、それから保険などを買われているお金をこちらに回すのであれば、一切金額は意味がありません。だから、そういう意味では、今おっしゃったたんす預金に本当に全部が入っているのであれば効果があるということだと思います。

 ただし、これが出ることによって、全額国債を買ってくださるという方が出ることはあると思います。

 一番私が恐れていますのは、各国とも国民は、どうしても税金は低い方がいい、それから歳出は十分な方がいいというのは、みんなそう思うわけです。ですから、どんどん赤字がふえていくのが現状でして、ある日突然、急に高金利になる、それでだれも買えなくなったときには、国債の金利を高くしなければだれも買ってくれません。しかも格付が悪くなりますので、さらにそれで高い金利にするということになりますから、そういうことがないようにするのがまず大前提であります。

 今、委員の御指摘のように、そうなったときにというのは、それよりまず前を考えていただいて、最悪のときにこういうのを出すというのは、それは一案かもしれませんけれども、資金全体の流れでいけば、ただ今まで持っていたお金が民間金融機関からこちらに行くというのであれば、余り効果はない可能性もあると思います。

中里参考人 常に正しい政策、常に間違っている政策というのがあるわけではございませんので、時々によって違うと思うんですが、無利子非課税国債につきましては、いい点も悪い点もあるだろうというふうに思います。

 ただ、私ども法律の人間からしますと、これを使いますと、例えば私が相続財産十億円ほど、持っていないですけれども、仮に持っているとして、そうしたら、十億借金してこの国債を買うとどうなるかと。そうすると相続財産をゼロにすることができるわけでございまして、おいしいということになってしまうと非常にまずいわけですから、債務控除について相当の制限をしなきゃいけませんね。そこでは制度が非常に複雑になる可能性がございます。

 また、たんす預金、あるいは今まで所得税等を逃れたお金がどっとこの国債に向かうとしたときに、実は過去に所得税をごまかしていましたというような感じで申告する方はいないと思うので、なかなかその扱いとかいろいろな問題が出てまいりまして、手続的には大いに問題なんですね。

 ただ、臨時的な措置として、その欠点を十分に把握した上で穴をふさぎながら使うということは、もしかすると臨時的にはあり得るかもしれません。

石井(啓)委員 ありがとうございます。

 続いて、吉野先生と中里先生にお伺いしたいんですが、今度は、消費税を含む税制抜本改革によって社会保障の安定財源を確保しようということが中期プログラムにうたわれて、それが今回の税法改正の中に、附則に盛り込まれているわけであります。

 この安定財源の充当のあり方について、二つのアプローチがあります。

 一つは、現在の社会保障が、中福祉・中負担といいながら中福祉がほころびているという観点から、これを機能強化していこうと。実は、社会保障国民会議の吉川先生なんかはそういうアプローチを主張されておりまして、例えば、基礎年金の最低保障を強化するだとか、あるいは医療だとか介護の体制をさらに充実していくとか、子育て支援をもっとやっていくとか、そういった社会保障の機能強化に優先をすべきという考え方が一つ。

 もう一つは、今の社会保障財源も、公費でやっている部分の三分の一程度は国債でやっているので、要するに、赤字の部分の穴埋めをまず優先してやろうという考え方と、二つのアプローチがあります。

 これは、一〇〇かゼロかという議論ではなくて、どうバランスをとるかという議論だと思いますけれども、私は、これから国民の皆様に御負担をお願いするということを考えると、やはり社会保障の機能強化を優先してやるというアプローチの方がいいのではないかというふうに考えておりますけれども、両先生の御見解を伺わせていただきたいと思います。

吉野参考人 私は社会保障の専門ではないので……。

 ただ、思いますのは、一つ日本の場合には、退職年齢が健康的な年齢に比べると今は若過ぎると思います。今でいくと六十五歳の方は、しばらく前の五十歳の健康です。ですから、そういう意味では、私は、抜本的に日本の今の定年の年齢というものを考えないとやはりこれは全然だめだと思います。

 しかも、年功序列賃金というのをある程度でやめて、その後はそれぞれの方々の能力に応じて、あるいは七十、七十五でも一日置きに働くとか、そういう形で社会参加を皆さんにしていただいて、それで社会保障の支出を減らすということを抜本的に制度的に考えていただきませんと、みんな若くてもったいなく、それでゴルフをしているというふうなことでは、やはり日本の社会はもたなくなるんではないかと思います。

 そういう意味では、スウェーデンなどでは、まさに北欧は高福祉・高負担、そこでの考え方は、これだけの歳出が要るのであれば、ではどれくらいの税率が必要だろうかということを、常にバランスを考えています。

 ですから、日本でも、皆さん方の社会保障はこれくらいにするというのであれば、例えば消費税でいけばこのパーセントになります、そういうことで国民の皆様よろしいですかという形で、両方でぜひ議論をしていただきたいと思います。そのことがやはり、では我々は中福祉・中負担でいくのか、あるいは高福祉・高負担でいくのかというのが国民の選択になると思います。現在は独立に議論されていますから、それは我々だってみんなそうで、低い税金で高い福祉が一番いいことになってしまいます。

 ですから、バランスをとることと、やはり高齢者の方々が働ける限り働けるように、そして、日本人の多くの方々は皆さん働きたいと思われているわけです。ですから、そういう社会のニーズも考えていただければと思います。

中里参考人 安心感の欠如というのが国民全体の気持ちを暗くしてしまいまして、そのことが消費を抑制し云々という悪循環に陥っているということだろうというふうに思います。

 老後を安心して暮らせるということが確保されれば、高齢者の方も安心する、それから、その高齢者の方を介護している我々のような年齢の人間も安心できる、若い人間も将来に対して明るい展望を持てるということですから、何はともあれ、社会保障云々の充実というのは、程度問題はもちろんありますけれども必要で、みんなが安心して暮らせるということがポイントになってくるんじゃないかというふうに思います。

 その先に、制度の細目についていろいろな御意見の差はあると思うんですけれども、常にこれが正しいというわけでもないと思いますので、試行錯誤を経ながら、その都度その都度、ちょっとぐあいが悪くなったら変えていくというようなやり方でやっていけばそういうことにはならないんじゃないかというふうに、割と楽天的な性格のものですから、そういうふうに考えております。

石井(啓)委員 それでは最後に、三先生にそれぞれお伺いしたいと思いますけれども、追加の経済対策の話でございます。

 今、政府は、昨年十月の一次補正と、ことしの一月に成立させた二次補正と、今審議しております来年度当初予算、この三段階で合計七十五兆円規模の景気対策をやろうということで考えているわけですけれども、昨年十月から十二月のGDPの速報値が年率換算で一二・七%という大きなマイナスを記録した。GDPギャップでも約二十兆円ぐらいある。こういう状況を踏まえて、追加の経済対策が必要なんではないかという指摘もございます。

 この必要性についてどうお考えか。その際、もしあるとすればどのような対策が望ましいのか。アドバイスがあればぜひお示しをいただきたいと思います。

藤原参考人 お答え申し上げます。

 私は、やはり追加の経済対策は必要だろうと思います。

 まず、減税が私は必要だと思います。もちろん、財政が厳しい中で減税をすることは非常に大変なことなんでございますが、減税というのは、いろいろな意味でアナウンスメント効果がございます。政府もいよいよ背水の陣で臨んだという姿勢を明確にすれば、また政府の言うことも国民は本当にそうかと思うようになると思いますし、第一、本当に少し税金ぐらいまけないと、この十年間ぐらいのめちゃくちゃな時代が終わって国民も怒っておりますから、国の統率もままならない事態になると思いますので、まず私は、消費税でも法人税でもここは減税をしていただきたいと思います。

 しかし、二つ目は、やはり財政投融資をもっと積極活用していただきたいと思います。お金の取る方を減らすだけではだめでありまして、投資をやりませんと国には回りません。民間の金融機関、それから金融市場ともに激しい金融機能不全に陥っておりますから、ここは、現状では、政策金融、財政投融資以外に積極投資をできる主体がないわけであります。したがいまして、ぜひ財政投融資には背水の陣という覚悟で、新しい国のインフラづくりのために投資をしていただきたいと思っている次第でございます。

 以上でございます。

吉野参考人 日本の景気の状況が非常に悪かったわけですが、ここはやはり、円高によりまして輸出が大分低迷してしまった、それから地域経済もそれによって元気がない、こういう大きな二つの状況があると思います。

 今、世界的な景気のエンジンとしてまだ残っているのは、アメリカ人もヨーロッパ人もそう言っているんですが、やはりアジアであると。中国やインド、あるいは東南アジアを中心としたこれらの国々は相当の成長があると思います。ですから、やはりそこと一緒になりながら、日本が日本の景気を高めていくということがまず大きな流れとしては大事であると思います。

 そのためにやはり、政治のレベル、国のレベル、ビジネスのレベル、それから学者のレベル、こういうところで常に交流をしながら、海外との対話をしながら、どういうものが必要だろうかということをぜひ見ていただきたいと思います。

 それから、資金の運用につきましても、アジアでは、先ほどのインフラボンドのようなこれから収益性が上がる対象がございますから、アジアの中で資金を回すことによって安定的な成長を遂げていくということが二番目です。

 三番目は、日本の地域の経済をやはり格上げしていく。その中では農業も、日本はこれまで、戦後すぐのときに農地改革がありまして、皆さん地主になられて、しかし残念ながら、小さい土地で生産をしているということになっていると思います。乳牛でも何頭かずつやっているわけです。

 ですから、そういうものをもう少し、信託などのいろいろなスキームを使いながら集約化していく、そして効率的につくることによって日本の農業の生産性も上げる、それから地方にも民間の資金が行くという形で、地方の元気を出すような方策も必要ではないかと思います。

 そういう意味では、アジアとの連携、それから地域の経済の活性化、そして民間の資金の活用、これがぜひ必要だというふうに思います。

中里参考人 アメリカもヨーロッパも物すごく財政赤字をふやして景気対策をしていて、世界じゅうが今とんでもないことになりつつあるんじゃないかという状況です。

 そういう状況ですから、日本も一定程度、その都度その都度それは違ってくると思いますが、迅速にしかるべく財政支出をふやしてこの経済危機に対応するということは、当然に必要なのではないかと思います。税制だけではなくて、支出も金融もすべてをひっくるめて危機にどう対応するかということなのではないかというふうに思います。

 特に心配しているのは、例えば大学でも高校でも中学でもそうでしょうけれども、新卒者の方が就職云々のことで大変に厳しい状況にあるわけでございまして、若い人たちが将来に希望を抱けないということは、国としては非常に末期的な状況でございまして、この点、何に使うかということですよね。そういうことに振り向けるような支出ということであれば、ある程度支出をするというのは、これは必要なことじゃないかというふうに思っております。

石井(啓)委員 以上で終わります。ありがとうございました。

田中委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 今回提案されている国税法案の附則に、「消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成二十三年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする。」こういうことが書き込まれたわけであります。

 与謝野大臣とも私はこの場で何度も議論をいたしましたが、大臣のお考えはもともと、消費税を一度にどんと上げた方がいい、こういうお考えのようでありまして、来年の国会にも提案をしたい、つまり、この附則にある法律上の措置を講ずるということを提案したい、こういうふうにおっしゃっておりました。

 そうなりますと、九月までに行われる総選挙の最大争点の一つになる、このようにもおっしゃっていたわけであります。つまり、自民党と公明党は、消費税の増税というものを総選挙の大争点として国民の前に提示をし、私どもはこれに当然反対という立場で選挙をやることになると思うわけであります。

 そこで、二〇一一年度から実施をするという消費税の増税について、国民的に言いますと、さまざまな世論調査では大体六割前後が、社会保障のためという理由であってもそれはやってはならない、反対であるという声であります。

 今のタイミングで、今度のこういう法案の中に附則を書き込むということ、このことについて、それぞれ三人の先生方の御見解、御感想をお聞かせいただきたいと思います。

藤原参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、私は、この時点で消費税率の引き上げのお話、政治家、政治の方からお話しになることは、甚だ不見識なのではないかなと思っておる次第でございます。国民は、お金が財布に入ってくればお金を払うと思います、そんな納税意識の低い国民とは思えませんので。まず二年なら二年、三年たって、景気が本当によくなって、ああ危機を脱したと思って、それからお金をいただく話をしなきゃならない、それが第一点でございます。

 それから第二点目といたしまして、消費税そのものの構造には多大な問題があると思います。課税をされて、顧客からお金を集めているのに納税しない人もおります。徴税漏れも甚だしくあるわけでございます。したがいまして、不公平な税制にもなっているかなと思います。ですから、そういう面について、適正な課税を行うということを担保されないままに、いたずらに消費税率の引き上げをするということはおかしいと思います。

 さらに、社会保障負担等を税で賄おうという御議論もあるわけでありますけれども、先ほど申し上げましたように、財政それから社会保障、一体お金はどれだけあってどれだけ足らないのか、まずその数字を国民に示さなければ、私は、国民は新たなお金を出すということに対して本能的に拒否反応を示すんだと思うんです。

 それは、いたずらに納得させるというよりも、情報開示をしていただきまして、その上で、これはどうしても足りないと言えば、説得にも説得力がわくものだと思います。増税がもし必要であれば、ぜひそういう帳簿の徹底開示をした上での議論をすべきだ、そのように考えておる次第でございます。

 以上でございます。

吉野参考人 日本の財政の支出を見てみますと、戦後すぐのときには社会保障が一五%か二〇%、低かったと思いますが、それが三〇、四〇%にやはり高齢化の中で出てきているわけですから、そういう意味では、財政の歳出に占める非常に大きな割合を持っているということは否めないと思います。

 ただ、社会保障がこれだけ必要だから、ではそれに対してどうしようというよりは、まず最初に、社会保障はこれくらい将来かかるかもしれないけれども、先ほど申し上げましたように、高齢者でも働ける人たちにもっと働いていただいて、何とかそれを低くしようという努力はぜひしていただきたいと思います。

 日本では、退職された後も働きたいという方がたくさんおられます。現在、いろいろな労働市場と言うと変な言い方ですけれども、大学卒のところでは非常にマーケットがございますが、そうでないところでは余りないわけです。そうであれば、退職された方々のところでまた一つ大きな労働の市場といいますか、そこで需給を考えるというようなこともぜひ必要だと思います。

 ですから、まず一つは、社会保障の歳出で減らせるところ、そして働ける方々には皆さんに働いていただくということがまず第一だと思います。

 それから最終的には、税金で集めたお金で歳出をしなければ、国家は必ず破産します。そういうことを言っていて、ブラジルとかアルゼンチンとか、みんな最後はそれになってしまったわけです。ですから、最終的には税金で歳出を見る。

 それからもう一つ、私が指標としてつくっていただきたいのは、歳出と歳入の何倍ぐらいなのかという指標が国民が全然わからずに、自分たちはただいろいろな便益をいただいているという形式ですから、現在、税金の部分がどれくらい、そして国債の部分がどれくらいということが、歳出を受け取る方々にもわかるような指標というのは必要ではないかと思います。

 以上です。

中里参考人 今回の附則の意味でございますけれども、財政規律について国会が真剣に考えているということを内外に示したという点に意義があるのではないかというふうに思っております。

 アメリカもヨーロッパも、先ほど申し上げましたとおり、どんどんこれから国債の発行をふやさなければいけない状況です。日本も、今までそうでしたが今後もそうなるという中で、財政規律のない国の国債というのは暴落するであろう、それから通貨も暴落するであろうということでございまして、そういうことが起こらないようにするためには、一定の財政規律について我々が真剣に考えているということを内外に示すということは必要になってくるんだろうと思います。

 あの附則については、テクニカルに申しますと、さまざまな読み方ができるのではないかというふうに思いますけれども、いずれにせよ、消費税について全く考えていないわけではなくて、将来的に上げる可能性が十分あるし、それを真剣に考えているんだということ、この点を国民にも示し、外国にも示すことができたのではないかというふうに考えておるわけです。

佐々木(憲)委員 財政規律が必要だというのは、私もそのとおりだと思うんです。ただ、それを消費税で賄うのかどうかというのが問われているわけであります。

 少し過去にさかのぼりまして、大ざっぱな統計ですけれども、消費税が導入されましてから二十年たつわけでございます。この間消費税をどのくらい国民が払ったか、累計ですけれども、二百十三兆円消費税を払っております。これに対して法人三税、法人税、法人住民税、事業税ですね、この法人三税の場合は、この二十年間で減収になっておりまして、累計で減収分が百八十二兆円なのでございます。さまざまな減収の要因があると思いますけれども、私は、その中に法人税の減税というのがあったと思います。

 そういう意味では、消費税の方はこの間増税が行われました。法人税は減税がありました。簡単に言いますと、二百兆円国民が払って二百兆円近く企業の減税に回った、こういうふうにも言えないことはないわけでございます。またそのほか、高額所得者の減税あるいは証券優遇税制、こういうことも行われてきたと思うんです。

 したがって、税金のあり方ということを考えますと、どうも、大きな利益の上がっているところには減税が行われて、家計が赤字の家庭にかなり重い負担がかぶさってきたのではないか、このように思いますけれども、この点、三人の先生それぞれ感想をお伺いしたいと思います。

藤原参考人 お答え申し上げます。

 私は、この十年、十五年の、先生今御指摘の税のことを含めまして、企業の運営をしておりました企業経営者には重大な責任があったと思います。不景気だということで、減税その他さまざまな施策を国からいただいたわけでございます。しかし、それに十分にこたえていなかったんだと思います。

 もし、減税をあるいは財政投融資を十分に生かしていれば、今我が国は景気がよくなっているはずでございます。ところが、景気は非常に悪い。おまけに、最近になりましてどんどん雇いどめとかいうことを言いまして、どんどん行政の方にコストを押しつけてくる。あなたたちは今まで幾ら減税をもらって幾ら優遇税制をしていただいたんですかと、私は企業経営者の方にもぜひぜひ反省をしていただきたいと思うんです。

 企業経営者が公の金を使うということに対してもっと真剣な意味を持って、貧しい人から集めたお金を自分たちが使わせていただくということの責任、貧しい人たちにもお金が還元されなければそれは国民は怒り出しますから、そういうことを総合的に経営者にやっていただかなければならない。

 私は、この十年、十五年間の日本経済を見ておりますと、この間を担っておりました特に大企業の経営者には重大な責任があったと思うわけでありまして、ですから、政治だけではなく、企業経営者がもっと襟を正してお金の使い道を改めていただきませんと、幾ら減税をしても景気がよくならない、したがって取りやすいところから取る、悪循環が絶えないのではないか、私はかように思っている次第でございます。

吉野参考人 先ほど、消費税は二百十三兆円、それから法人税は下がっているというお話でしたけれども、日本の法人税が下がっておりますのは、私のレジュメでも御説明しましたけれども、日本の製造業の国内での生産が相当落ちてきております。これは、円高の中で、最初は東南アジアに直接投資をし、それから中国に行き、最近はベトナムに行く、これがアジアの発展につながったわけでございます。ですから、ただこの数字だけで、日本の法人税が減ってけしからぬということにはならないと思います。

 さらに、法人というのは海外との競争をしておりますから、日本がそこで非常に不利な税制をしますと、今後ますます、日本の法人企業は海外に出ていってしまうと思います。やはり最終的には、日本で産業があってこそ、日本全体の消費者も、それから収入が入るということでありますから、ただ短期的にだけ見て、ここをゼロにすればいい、こっちからうんと取ればいいというふうになりますと、長期的に日本の産業構造は全くだめになると思います。

 そういう意味では、やはり税のバランスを考えて歳入を考えていかないといけないというふうに思います。

中里参考人 余り外国との比較をあれこれ申し上げても、そのこと自体が国民の方々にすぐ理解していただくわけにはいかないというところはあるんでしょうけれども、ヨーロッパの北欧、デンマークとかスウェーデンとか見ておりますと、二〇%を超える消費税を負担していらして、その分福祉も厚くて、消費税の税率が高いから住みにくい国でだめだという、これは一種のプロパガンダでございまして、北欧に行けば、消費税の税率が高いから我々は老後も安心だ、そういうことになっているんだろうと思います。

 ですから、問題は、消費税がいいか悪いかではなくて、その税収を何に使うかということなんだと思っておりまして、それを社会保障の充実のために使うのであれば、これはいい税金だということになりますし。

 ただ、忘れてはならないのは、佐々木先生何もかもおわかりの上でおっしゃっているんだろうと思いますが、法人税や所得税につきましても、さまざまな特別措置がまだございますので、この整理は十分に行った上でということは当然のことではないかというふうに思います。

佐々木(憲)委員 私もいろいろな議論をしていきたいんですが、きょうは参考人の御意見を伺う場なので。

 ただ、一言申し上げますと、法人税が高いから外国に日本の企業が出ていくというふうにおっしゃいましたが、経産省の調査によりますと、その比率は非常に低いんです。外国に出ていく最大の理由は、アジアの労賃が日本の六分の一、十分の一、こういうところが一番理由が多いわけであります。あるいは、アジアの市場に近いところに生産拠点を持ちたい、それから、資源、原材料が近くにある、こういうものが海外進出の最大の理由に挙がっているわけですね。したがって、何か税金だけで、高くなったらぱっと出ていって、低くなったら帰ってくるなんて、そんな簡単なものではないということだけは申し上げておきたい。

 それから今、OECDなどでも、法人税の引き下げ競争というのは各国の税収にとってマイナスである、こういう指摘もされているわけでございますので、その点は指摘をしておきたいと思っております。

 それから、ヨーロッパの点について言いますと、例えばスウェーデンなどは税率が二五%ですから、非常に高いですね、付加価値税。しかし、社会保障の財源としてそれがどの程度使われているかといいますと、その分は八・六%の分でございます。

 つまり、社会保険料の事業主負担あるいは法人税その他、所得税などの税金が社会保障財源として比率は非常に高いわけでございまして、ですから、何か消費税を上げなければ社会保障が充実しないとか、ヨーロッパは消費税で社会保障をやっているんだとか、こういう議論は実態とはちょっと違うわけでございます。その点は少し指摘をしておきます。

 その上で、日本の消費税の増税がこれから行われようとしておりますが、政府の側は、いや、その分は社会保障に回す、社会保障に回せば低所得者に厚く回るので、逆進性というのは解消されておつりが来るんだ、こういう議論をされているわけですね。

 しかし、私は、その前提というのが非常に架空の前提だと思うんですよ。といいますのは、過去の事例で見ましても、消費税が導入され、それから増税をされました。そのときの理由は、すべて社会保障のためでありました。あるいは、この間、所得税、住民税の増税が定率減税の廃止で行われましたね。この増税分は、国は、二・八兆円国に入りますよ、これは年金の基礎年金の部分、二分の一に引き上げのために全部使いますと。政府税調もそのように言っていたにもかかわらず、これは五分の一程度しか使われない。あとはどうしたんですかと聞いたら、赤字の穴埋めに使いましたと。

 だから、今度はまた消費税、当面は埋蔵金でやりますが、三年後は消費税でやります。こういうことで、次から次と、理由は社会保障を挙げながら、実際には違うことをやっている。こういうことでは、なかなかこれは国民から信用されないわけですね。だから、先ほどの世論調査のような批判が非常に強くなっているわけです。

 ですから、私は、今回のこの附則ということを考えますと、さまざまな角度から議論はあると思いますが、やはりもう少し国民の立場に立った税制というものを考えた上で提起をすべきだったと思います。この附則には私は反対でございます。

 最後に、日本の税制のあり方について、やはり所得あるいは利益のあるところが応分の負担をしていくということが非常に大切なことだと私は思いますので、今後の税制を考える場合どうなのか、時間がありませんので、藤原参考人にお伺いをして、終わりたいと思います。

藤原参考人 お答え申し上げます。

 私は、やはり国民的視点から申し上げるならば、狭い意味での税以外に、社会保障負担も税と同様に国に納めているお金ということになると思います。さらに最近は、地域おこしその他で皆さん独自にお金を使うケースもふえてきております。やはり私は、この辺で、広い意味での税の抜本的な見直しはどうしても必要になるかなと思います。公のためのお金をどう集めてどう使うかという議論でございますね。

 ですから、例えば税制改正等も今先生御指摘のとおりでございまして、どうも何か議論と結果がよく見えない部分がある。あるいは、例えば国会の閉会間際に、何か見えないところのこそくな増税の一条が加わっちゃうことがよくあるんですね。税制改正がまとまりましたと、えっ、だれがこんな一条を入れたんですかというようなことで、こそくな増税が中小企業に迫られる。本当に多いんです。ですから、そういうことが積み重なりますと、本当に不信感が消えません。

 私は、何度も申し上げるようでございますが、日本国民の納税意識はそんなに低いことはないんだろうと思うんです。したがいまして、ぜひ信頼感の回復という形で、制度をまず全部透明に、帳簿の公開をしていただきまして、その上で、社会保障あるいは町おこしその他公のお金の集め方という観点で抜本的な見直しをしていただきたいと思います。

 そしてやはり、委員の皆様が的確に行政を監督していただきまして、国民があっと驚くようなことのないようにお仕事をしていただくことを切にお願いしている次第でございます。

 以上でございます。

佐々木(憲)委員 大変貴重な御意見を三人の先生方にお伺いいたしました。ありがとうございました。

 以上で終わります。

田中委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 午後三時十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時四十分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時十一分開議

田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行及び財政投融資特別会計からの繰入れの特例に関する法律案、所得税法等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁白川方明君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣府大臣官房審議官梅溪健児君、大臣官房審議官西川正郎君、大臣官房審議官湯元健治君、財務省主計局次長木下康司君、主税局長加藤治彦君、理財局長佐々木豊成君、国際局長玉木林太郎君、国税庁次長岡本佳郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田中委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。池田元久君。

池田委員 民主党の池田元久でございます。

 きょうは、悪化している経済状況についての政府の認識と見通し、今後の財政状況、さらに消費税の引き上げ等について論議をしていきたいと思います。

 まず、一月の十九日に閣議決定されました政府の経済見通しですが、国内総生産の実質成長率は、〇八年度マイナス〇・八%、〇九年度〇・〇%となっています。これについて、経済の状況認識をまず与謝野大臣にお伺いしたいと思います。

与謝野国務大臣 二十一年度の政府経済見通しは、昨年十二月の閣議了解時点までに公表された経済指標等を踏まえて、政府の経済財政運営のもとで想定される経済の姿を描いており、これに向けて政府は政策を推進していくこととしております。その一方、日本銀行、IMF、最近の民間機関の見通しには、一月時点で参照可能となった世界経済の一層の減速、我が国の輸出や国内の生産の急速な減少等が反映されていると考えられております。こうした内外経済動向の大幅な変化が、政府と日本銀行、IMF、最近の民間機関の見通しとの違いの大きな原因となっているものと考えております。

 政府としては、その時点における最新のデータに基づき、最善の作業により十二月時点の見通しを作成したものでございますけれども、その後は経済は大きく変化をしていると考えております。

池田委員 日銀にお尋ねをしたいと思います。

 日銀の見通しは、景気、物価の中心的な見通しと言っているようですが、一月二十二日に公表されました見通しについて、その要点を白川総裁にお答えいただきたいと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 来年度の実質GDPの成長率の見通しでございますけれども、一月の時点では、今先生がおっしゃった中央値で申し上げますと、マイナス二・〇%という予測数字を出しております。

 この見通しの背景を申し上げますと、海外経済の急速な落ち込み、減速によりまして輸出が大幅に減少していること、企業収益や家計の雇用・所得環境が悪化する中で内需も弱まっていること、また金融環境も厳しい状態を続けるということでございます。これらを背景に、我が国の景気は足元大幅に悪化しておりまして、当面、先行きも悪化を続ける可能性が高いというふうに見ています。

 その後の姿でございますけれども、来年度の後半以降は、国際金融資本市場が落ちつきを取り戻し、海外経済が減速局面を脱するにつれて我が国経済も持ち直すという姿を想定しております。ただ、急いで申し上げないといけませんのは、世界的な金融情勢の悪化や海外経済の下振れリスクなどがございまして、こうした見通しをめぐる不確実性は高いというふうに考えております。

池田委員 資料一をごらんになっていただきたいと思います。IMF、国際通貨基金が一月の末に公表した我が国の実質経済成長率の見通しは、これは暦年ですが、二〇〇九年はマイナス二・六%、また、資料のそれ以下にありますが、民間のエコノミストの最近の見通しは、二〇〇九年度は平均するとマイナス四・一%、日本経済新聞の報道も内閣府のまとめも、いずれもマイナス四・一%となっています。

 今年度、〇九年度、日本の実質成長率ゼロ%という政府の経済見通しは、これを見ていろいろおっしゃると思いますが、その幅からいっても非常に甘いのではないか、こう思いますが、いかがでしょうか。

与謝野国務大臣 政府が見通しを立てましたのは昨年の十二月でございまして、これはそのときの最善の知識と通常の方法で計算をしました数字でございまして、これに何らかの加工をしたわけではありません。自然な計算の結果を見通しとして出しました。

 ただし、先生御懸念のように、その後、経済状況は変わってきているということも我々十分認識をしております。

池田委員 日銀総裁にもお伺いしますが、日銀の見通しじゃないですよ、〇九年度ゼロ%という政府経済見通しは甘いのではないかと思いますが、白川総裁はどのように考えますか。端的にお答えいただきたい。

白川参考人 政府の見通し自体についてコメントをするというよりか、見通しの性格について短い言葉で申し上げたいと思いますけれども、今先生の御指摘になったその民間の予測も、実は今、厳しい数字を出している……(池田委員「政府経済見通しについて」と呼ぶ)はい。実は、時点によってかなり違ってくる。最近の見通しになればなるほど、これは公的セクターも民間も最近の見通しは厳しくなっております。

 そういう意味で、作成後の経済情勢の変化は非常に大きかったというふうに見ております。

池田委員 予想された答えで、予測した時点が政府経済見通しは与謝野さんがおっしゃったように十二月、それから日銀の見通しは一月で、ずれがあるということです。それは認めましょう。

 しかし、政府経済見通しで政府がゼロ%、日銀がマイナス二%というその差。二%という乖離は甚だ大きいと思うんですが、与謝野さん、どうでしょうか。

与謝野国務大臣 先ほど申し上げましたように、十二月の時点で入手できる最善のデータ、最善の知識、それから通常の計算方法、これは、手を加えたものでなく、毎年、例年どおりの方法できちんと計算した結果を率直に公表したものでございます。

池田委員 毎年やっているからという話ですが、これは見直すというか、やり方を含めてちょっと考えた方がいいんじゃないかという印象を今受けました。

 時点のずれとかいろいろおっしゃいますが、見通しに織り込まれる米国経済の二〇〇九年の見通しは、十二月時点のマイナス一・一%から、一月時点ではマイナス一・六%、〇・五%下方修正されたわけです。しかし、政府と日銀の経済見通しの差二%という乖離をこれでは説明できないと思うんですよ。

 私も、政府の経済見通しは政府の経済財政政策を前提にしているということはわかっていますよ。それを考慮しても二%という乖離は僕は説明できないと思いますが、いかがでしょうか。

与謝野国務大臣 日銀の見通しは日銀に聞いていただきたいのですが、十二月に政府が経済見通しを出すに当たって使った基礎の数字を申し上げますと、世界経済見通しにつきましては、IMFが十一月に発表いたしました、世界全体としては、暦年で、〇八年三・七、〇九年で二・二という数字を使ったわけでございます。それから、米国経済の見通しにつきましては、〇八年一・三、〇九年マイナス一・一。鉱工業生産あるいは通関輸出、それぞれ実績値を使いました。また、有効求人倍率、完全失業率につきましては十月の数字を使い、円相場の平均につきましては十一月の平均を使わせていただきました。

池田委員 民間の予測ではなくて、政府の経済見通しは、それをもとにして、ベースにしていろいろな施策を検討、実施するわけです。時期のずれというのもわかります。しかし、それだけでは説明できないと私は思います。政府の経済見通しは極めて甘いと私は思います。

 しかし、これだけの世界同時不況の中でこれからいろいろな施策を打っていくんですから、今後の新しい政策を打ち出すときには、やはり新しいベースとなる経済見通しをつくっていく必要があるのではないか。これは余り今まで例はなかったんですが、そういうこともやっていいんじゃないかと思うんですが、与謝野さん、いかがでしょうか。

与謝野国務大臣 現時点では、平成二十一年度の当初予算の御審議を国会にお願いしておりますので、軽々に次の経済対策ということを言えないということも御理解をいただきたいのですけれども、十二月の見通しとは現実の世界は大幅にずれてしまった、これは率直に私は認めたいと思っておりますし、そういう現実の姿は、今後の経済に対する考え方を大きく左右すると思っております。

池田委員 政府の状況認識ということでは、麻生総理の発言についてちょっと取り上げざるを得ないと思うんですよね。

 麻生首相は、二月九日の予算委員会で、ここに出席している我が党の中川委員ら二人の質問に答えて、我が国の経済の状況は他国に比べたら傷は浅い、日本の場合は痛みは少ないと述べています。本当ですか。さきに公表された四半期のGDP成長率を持ち出すまでもなく、状況は深刻だと私は思います。与謝野さんの見解をお尋ねしたいと思います。

与謝野国務大臣 そもそもこの金融危機というのは、おととしの八月のサブプライムローンの問題のときから、世界じゅうの経済は一定の危機を迎えるということはみんな予想した。そのときの議論というのは、デカップリング理論というのがあって、先進国はちょっとアメリカを中心にして傷むけれども新興経済国は大丈夫だから、日本もそんなに大きな影響を受けないというのが多くのエコノミストの見方だった。それは全然違ったわけです。

 それで、去年、リーマン・ブラザーズが破綻したときに我々が考えましたことは、日本の金融機関あるいは証券業界がこれで影響を受けるのかと考えたときに、リーマンに対する債権はさほど大きくなかった、致命的な打撃を与えるような債権を持っていなかった。この影響も小さく見ていたわけですけれども、その後の世界の経済の落ち込みというのは予想をはるかに超えたものであったことは率直に申し上げたいと思います。

 ただ……(池田委員「それで、総理の発言は」と呼ぶ)総理の発言は、多分、総理が持っている日本の金融機関、証券会社の傷み方の話がもともとの考え方にあって、日本の金融危機というのは全く起きないだろうということを前提に御発言になったと思いますけれども、実際は、去年の十、十一月、物すごいマイナスになって、昨日発表された貿易統計なんかも前年同月比四八%ぐらい多分減少しているはずで、これは通常の予想を超えた状況ということで、総理のあの時点の認識というのはあの時点の認識としては正しかったと思いますけれども、数字は別のことをその後物語ったということだろうと思っております。

池田委員 率直な物言いで、何か党内から批判が出ているような報道もありましたので、与謝野さんも慎重になっていらっしゃると思うんですが、やはりこの総理大臣の発言は、これはいただけませんよね。日本の場合は痛みは少ないとか、今、実体経済、特に雇用とかそういう面で起きていることに対する認識は本当に甘いんじゃないかと私は思います。

 先に話を進めますが、この点について言えば、アメリカの大恐慌のときにフランクリン・D・ルーズベルトが、恐怖それ自身を恐れると言った。これは有名な言葉ですが、逆に私は、麻生首相に対しては、いいかげんな認識を恐れる、このように申し上げたいと思います。

 次のテーマに移りたいと思うんですが、プライマリーバランスについて取り上げていきたいと思うんです。

 十年展望というのがありますね。「我が国の財政収支は急激に悪化しており、二〇一一年度までに国・地方の基礎的」、初期的というのが初めて括弧の中に入りましたが、「財政収支を黒字化させるとの目標の達成は困難になりつつある」と。初めて目標達成は困難と明記したわけです。

 与謝野大臣は当委員会で、二〇一一年に到達できるということは、あらゆる数字を見るとそんなはずはない、ほとんどすべての方がわかってくださるものと思うと述べていらっしゃる。ということは、官僚的な表現は別として、目標が達成できないということですね。

与謝野国務大臣 これは正直に申し上げまして、昨年の予算編成時、考え方が二つに分かれまして、到達できるわけないだろう、だからこの目標は外すべきだという議論が一方でありました。それからもう一方では、確かに達成は困難になりつつあるんだけれども、やはり財政規律を維持するという観点から、この旗は非常にぼろになったけれども、ぼろの旗でも、やはり財政規律を考える、そういう観点からは旗は立てておく必要があるのではないか、そういう議論、両方ありました。

 達成は困難になりつつあるということは正直に申し上げている。ただ、一応その目標は、財政規律という観点から残してある。それは象徴的な意味しかないということは我々実はわかっているわけですけれども、財政規律というものも大事ですよということを表現するために残してあるということだと私は思っております。

池田委員 私は昨年から、政府、内閣府の〇八年の参考試算のシナリオは生産性の上昇率や名目成長率を高目に見積もっているので、二〇一一年にプライマリーバランスを黒字化するというのはできない、このように考えておりました。

 さて、こういった大目標、政策課題が達成できないときはどうすべきか。やはり政策目標をおろして、いわゆるレビューといいますか、総括を行ってけじめをつけるのが筋ではないかと思うんですが、端的にお答えをいただきたい。

与謝野国務大臣 これは、先生御主張のとおり、いずれは総括しなければならないことだと思っております。

池田委員 つけ加えるのもなんですが、できもしない目標を、失礼ですが、旗はやや破れぎみ、汚れぎみだが、旗は立てていく必要があると。これは文学的とも言えないと思うんですが、政策になじまない表現で努力目標として維持するというのは、明確に、はっきり言って無責任だと私は思います。財政の現状認識について、やはり国民は与謝野さんの今のその考え方と逆ですね。このことが逆に国民をミスリードするものではないか。この前、大臣の答弁を聞いて、正しい対応とか正しい態度というのをおっしゃっていたと思うんですが、これは正しい態度とは言えないんじゃないかと私は思います。

 それで、次の私の質問をしたいと思うんですが、財政健全化の目標について、資料二を見ていただきたい。十年展望の比較試算の抜粋ですが、多くのシナリオの中から、現実可能性が相対的に高いと思われる、代表的とも言える三つのシナリオを選んだものです。他の与件はほぼ同じとして、Aは二〇一一年度から一五年度にかけて消費税を五%引き上げる場合、Bは、二〇一三年度三%、一四年度、一五年度それぞれ一%消費税を引き上げる場合、Cは消費税率を据え置いた場合となっております。

 AとBはごらんのように、下の方にありますが、プライマリーバランスは二〇一八年度に黒字化します。そうであれば、今の政府の立場からいえば、二〇一八年度にプライマリーバランスを黒字化することを新しい目標にしてはどうか。新しい目標に掲げることはおかしくない。消費税の引き上げについて言う方がいらっしゃるかもしれませんが、消費税の引き上げについては、所得税法改正案の附則で二〇一一年度あるいはその近傍で実施することを宣言しているわけですから、これは新しい目標になるんじゃないですか。

与謝野国務大臣 実は、二〇〇六年の骨太方針というのがありまして、それを書いたとき私は経済財政担当をやっておりまして、そのときもやはり、成長率を高く見過ぎているんじゃないかとか長期金利を安くし過ぎているんじゃないかとか、さんざん議論があったわけですが、みんな議論が分かれるところの中間ぐらいのところで将来見通しをつくったわけでございます。

 明らかにこういう見通しというのはどんどんずれてきまして、先生おっしゃるように、仮にプライマリーバランスの目標を次にどうしてもつくるんだということになれば、先生のお考えも一つのお考えであろうと思いますし、財政再建目標としてはもう一つは対GDP比債務比率一定という目標も実はその次の目標としてあるわけです。

 ですから、どれを目標にして財政再建を図っていくかというのは、今後、国会でも十分議論をしていただきたい課題であると私は思っております。

池田委員 ぜひ私の提案を採用していただきたいと思います。破れぎみ、汚れぎみで、意味のないと言っては失礼ですが、今の目標よりずっとブランニューの新しい目標ですから、国民に対するメッセージでも非常にいいんじゃないかと思いますので、その点をよく考慮していただきたいと思います。二〇一八年度というのでなくて、もうちょっと慎重に幅を持って考えたいというのであれば、二〇一〇年代後半にプライマリーバランスを黒字化するという目標でもいいわけです。財政規律を保っていくためには、やはりそういった目標を置く必要があると私は思います。

 さて、今、少し与謝野大臣がおっしゃいましたが、長期金利と名目成長率の関係についてちょっと議論していきたいと思います。

 財政健全化と重要なかかわり合いのあるこの二つの数値ですが、仮にプライマリーバランスがゼロとなっても、名目長期金利が名目成長率を上回れば、債務残高対GDP比は増加します。また、長期金利が名目成長率を下回れば、債務残高対GDP比は縮小するという関係にあることは御存じのとおりです。

 与謝野さんは、推測はできますけれども、長期金利と名目成長率の関係について、そのトレンド、傾向をどのように考えていらっしゃるか、端的に聞きたいと思います。

与謝野国務大臣 あるスパンをとりますと、金利が名目成長率よりいつも低いということはあり得ないと私は思っております。金利の方がいつも低いということはあり得ないと。

池田委員 資料の三を見ていただきたいと思います。各国のこれまでの状況でございますが、主要国では、一九八〇年前後から押しなべて長期金利が名目成長率を上回っている、もう一目瞭然ですね。

 〇四年の二月の予算委員会で、この問題について、私、当時の竹中大臣と論争、論議をしました。ちょっと手間がかかりましたけれどもね。竹中氏はここにいないから、多くは私申し上げません。しかし、彼は、過去三十年等、長期的な傾向で見ると私は名目成長率の方が高いと認識していると述べ、最後に、長期的な姿として名目成長率の方がわずかに高い姿ではないかなと言ったんですけれども、結局、誤った認識を認めようとしませんでした。その結果いろいろなことがあって、また別の機会に取り上げたいんですが、私はここで、やはり事実認識が何よりも重要であることを強調しておきたいと思います。

 さて、長期金利が名目成長率を上回るという傾向が続けば、プライマリーバランスの黒字幅が大きくならなければ債務残高対GDP比は拡大をします。もう一つの財政再建の目標である債務残高対GDP比を安定的に引き下げることはできなくなる。その点、どうでしょうか。

与謝野国務大臣 先生のおっしゃるとおりでございまして、プライマリーバランスを仮に到達しても、発散型になって、いわば借金が借金を生むというプライマリーバランスの到達の仕方、それから先生が言及された、債務残高が対GDP比一定になり得るようなカーブを描くという二つあるんですが、財政再建を考えるときには、やはり楽観型の財政再建の取り組みはだめなんで、イギリスでは、プルーデントという言葉があって、用心深さというんですか、そういう前提で財政再建の設計をしないと、長期金利が成長率より低いなんという楽観的な見通しのもとに財政再建計画を立てると、多分落とし穴に落ちると私は思っております。

池田委員 その点は、与謝野大臣と私、全く見解を一にします。しかし、長期金利が名目成長率を上回る、こういう傾向が続くと、悲観論を言うわけじゃありませんけれども、プライマリーバランスの黒字化を達成しても、よっぽど黒字幅が大きければ別ですけれども、財政再建というのはもう至難のわざではないかと思うんですが、どうでしょうか。

与謝野国務大臣 これだけ公的債務がふえますと、自然な姿で財政を健全にするということは非常に難しい。しかも、その中で社会保障費というものがふえ続けるということで、これはやはり国民の御理解を得て、歳出改革も必要ですけれども、歳入改革もあわせて行わないと、成長期待とかインフレ期待とかいうことで財政再建を語ってはいけないんだろう、私はそういうふうに思っております。

池田委員 私も地道な歳出歳入改革は当然必要だと思うんですが、この財政状況を打開するのは生易しいものじゃありませんよね。どうすべきか。何か抜本的な対策というものはお考えですか。

与謝野国務大臣 そんな手品のような方法は多分ないんだろうと思っております。これは、歳出削減の努力を最大限にする、それから成長政策もきちんとやる、あわせまして税制の抜本改革を行って歳入改革も行いませんと、実際は財政の健全化というものは図れないと私は思っております。ただ、この税制の抜本改革というのは、政治としては大変国民に対して申し上げづらい話なわけで、ここで政治としては悩むところなわけでございます。

池田委員 これに関連して、消費税の引き上げについて少し取り上げてみたいと思います。

 所得税法改正法案の附則に、消費税を含む税制の抜本改革を行うと明記していますが、消費税の引き上げの時期は、しからばいつになるのでしょうか。

与謝野国務大臣 この法律の書き方は、どんなに早くても二〇一一年と。しかも、二〇一一年というよりは、まずは経済が回復してからだということを言っておりますし、それからもう一つは、段階的に実施をしていくんだという、この段階的という意味はいろいろなふうに解釈できますけれども、これは、経済にショックを与えない、国民生活に理不尽な打撃を与えないという意味での段階的な実施というふうに私は解釈をしております。

池田委員 実施に当たっての判断基準として、附則には「景気回復過程の状況、国際経済の動向等を見極め、」と挙げておりますが、暮れにつくった、年末につくった中期プログラムでは、潜在成長率の発揮が見込まれる段階に達しているかどうかを判断基準に挙げているわけですね。

 比較試算のこのAシナリオでは、一番上段の方でありますが、二〇一〇年度には実質成長率が潜在成長率を上回ってくる、一・三に対して一・五。BとCのシナリオでも、二〇一〇年には潜在成長率と同程度になってきます。

 そうしますと、潜在成長率という判断基準を重く見れば、二〇一〇年度末までに引き上げの実施を判断して、そして二〇一一年度に引き上げ実施ということになると思うんですが、どうですか。

与謝野国務大臣 実は党内でもさんざん議論があって、そんな、二〇一一年から引き上げられるはずはないという議論が実は大勢を占めていたというのは、正直に申し上げます。全治三年と言っているけれども、日本の経済は先のことはわからないんだと。実際の税法を書くときには経済回復ということが書かれていまして、潜在成長力という中期プログラム本体に書かれていることは落とされているわけです。

 これはなぜかといいますと、数字だけで判断するんじゃないでしょう、やはり政治として、いろいろな国民の生活、経済の実態、そういうものを総合的に判断して税制抜本改革をお願いするかどうかということを判断するべきであって、潜在成長力発揮とかなんとかという数字だけで決めるものではない、やはりそこには政治としての総合的判断がなければならないということで、今のような表現になっております。

池田委員 総合判断ということは認めるにしても、よく総合判断と言うときは、余り判断基準を示さないでえいやでやるときが多いんですが、ただ、潜在成長率を中期プログラムに明記した、その当否は別として、それをカウントするということは客観的な指標としては悪くはないですよね。これから類推すれば、私がさっき申し上げたように、一〇年度末に判断して二〇一一年度から実施するというふうにも読み取れるわけです。ですから、せっかく中期プログラム、年が明けたら忘れたというんじゃ困りますので、その辺の判断基準というのはもっと明確にして、実際適用する場合にはよく縦横考えてやらなければいけないと私は思いますよ。

 それから、消費税の引き上げ率の問題です。

 このシナリオ、去年に比べても何通りも、たくさん書いてくれましたけれども、私は可能性からいってこのA、B、Cで大体尽きていると思うんですが、消費税の引き上げ率を五%にするということを中心に置いている。三%、七%はつけたりですよね。引き上げ率というのは五%を想定しているんですか。

与謝野国務大臣 いろいろな議論はありましたけれども、そういうことを前提で、五%だろうという予断を持って今の税法改正をお願いしているわけではありません。

 ただ、この税制抜本改革をやるときに国会でお考えいただかなければならないのは、税率の問題、それから一遍にその税率を実現するのか、段階的に実現していくのかという問題、それから、消費税の世界で、ヨーロッパの例なんかですと複数税率の話があります。こういう、例えば消費税一つとっても、まだ議論が尽くされていない課題はある。これは、実際に消費税を国会で御審議いただくときまでの政府の課題であり、また実際、消費税が国会で議論になるときにはそういう問題が課題になるだろうと私は思っております。

池田委員 今、段階論に言及されましたが、附則では「段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行う」と言っているわけですね。また、比較試算のシナリオでは、毎年度段階的に消費税の税率を引き上げていくというものが多くなっている。

 これは、シナリオ作成上そうなったかもしれませんが、実際の消費税の引き上げというのは段階的に行うんですか、与謝野さん。

与謝野国務大臣 党内でも、一遍に上げなきゃかえって国民に御迷惑をおかけするという議論と、経済に対する影響をなるべく少なくするためには段階的に上げていくべきだという議論、両方ありました。

 実は、この税法に書いてある「段階的に」というのは、税制の抜本改革全体にかかっている言葉でございまして、消費税のことだけを言っているわけではありません。

池田委員 資料四をごらんになっていただきたい。財務省に頼んで、主要国における付加価値税の推移をまとめてもらいました。日本、イギリス、ドイツ、フランス。これはシナリオにあるような段階ではないですよね。例えば、八%をずっとやっていて一五%にして一七・五%にして、ブラウンが今度、果断に二・五%下げた、これはイギリスの例ですけれども。

 ですから、今回実施するのは、五年間も逐次上げるという段階論ではなくて、もっと、単年度かあるいは二、三年度とか、どんな形になりそうなんですか。

与謝野国務大臣 私も党の税調におりましたので、個人的には、一%ずつぐらい上げた方が有権者にしかられなくていいんじゃないかなんという主張をしたことがあるんですけれども、税の専門家からは、与謝野、おまえ、わかっていないといって、ややせせら笑われる。段階的にやっても二段階じゃないか、与謝野が言うみたいに五段階なんというのはとんでもないなんということも言われますし、ここはいろいろな見解がある。正直に言ってあると思う。

 それから、経団連の提言なんかは、一%ずつというような提言もあったり、いや、そんなことない、一遍にぼんといかなきゃいけないという議論もあって、これはやはり皆様方で御討議いただくことの大事なテーマだと私は思っております。

池田委員 シナリオにはBのケースを用意してあるんですよね、二〇一三年度に三%、その後に一%ずつと。これは、やはり消費者の行動を予測して考えなきゃいけないと思います。

 自民党の方では、先ほどちょっとおっしゃいましたけれども、複数税率を検討すると言っていますが、これはどうなんですか。

与謝野国務大臣 生活必需品に軽減税率を適用しろという有力な意見がございます。ただ、複数税率というものは技術的に非常に多くの難しさを含んでおりまして、どの水準で複数税率を入れることが合理的かという問題もあって、きょうは主税局長がおりますから、そういう技術的な問題はぜひ主税局長の方に御質問をいただければと思っております。

池田委員 それは改めてお聞きすることになると思うんですが。

 ちょっと与謝野大臣に聞きたいんですけれども、この所得税法の附則、大分論議されましたよね。自民党の伊吹元幹事長は、これは税制抜本改革を断行できる法律の整備を一一年度までにしておくだけのことだ、施行は景気の状況を見て別途法律を出せばいいと言いました。多分与謝野さんの考えと大きく違うと思うんですが、こういうことが伝えられておりますが、与謝野大臣のお考えはどうか、端的にお答えをいただきたいと思います。

与謝野国務大臣 伊吹さんのお考えも立派なお考えだと思いますけれども、この法律が意図しているのはそういうことではないと思っています。

池田委員 こういう大事なことを附則に書くというのがそもそもおかしいので、しかも、解釈といいますか、それもばらばらでは困ります。やはりもうちょっとしっかり経済財政運営をやっていただきたい。

 冒頭申し上げたように、政府経済見通しも甘い、それから麻生総理大臣も危機感がない、そういう点を厳しく受けとめて事に当たっていただきたい。それから財政再建ですが、これまでの手法といいますか、こういうやり方でいくと極めて暗い、トンネルからなかなか出られない。ブレークスルーがあるはずですから。我々はいろいろ考えていますよ。ぜひその点もよく考えていただきたいということを申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

田中委員長 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 民主党の鈴木克昌でございます。

 二十四日に続いて、大臣、またさらに少し御質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 二十四日の委員会で大臣は私に、金融機関の皆さんに集まっていただいて、そして中小企業への貸し出しを要請する、そういう場をつくるというお話でございました。その後、ニュースを拝見しますと、銀行側で十八名そして当局側で十四名の、まさに経済関係の皆さんが一堂に会されて、大臣のあいさつから始まって、そういった要請があったというふうに承知をしておるんです。

 このときにいろいろな意見も出たと思うんですが、その意見をお聞きになって、大臣が率直にどんなふうにお感じになったのか、ちょっと質問外ではありますけれども、お聞かせをいただきたいと思います。

与謝野国務大臣 私と二階経済産業大臣、両方とも金融界にお願いを申し上げ、それに対しまして、私は所用がありまして全部の会議に出ておりませんが、後の議事録、議事要旨は全部目を通しました。金融界の皆様方は会議では、我々の要請には積極的にこたえてくださるということを、全銀協も地銀も信金も信組も全部そういうお答えでございましたけれども、実際の金融の現場というのは、やはり厳しいものは残るわけでして、そういうものをよく見ながらやっていかないとだめだなと。ただ、我々がお願いした、それに対してきちんと答えてくださった。

 それで、そのまま放置しておいていいものかといったら、放置はしておけないと思っております。

鈴木(克)委員 大臣、ぜひ今後の推移をきちっとまた見守っていっていただきたいと思います。

 と同時に、これはこれで終わりますが、その場で、政府による追加の経済対策をぜひひとつ出してくれ、こういうような要望もあったやに伺っております。そのことはお伺いしませんけれども、やはり今それほど経済全体が大変な状況にあるんだということをまず御認識いただいて、質問に入らせていただきたいというふうに思います。

 現在の状況を知る上において、どうしても理解をしていかなければならない、共通の理解を持たなきゃならないのは、いわゆるアメリカの状況そして世界の状況だというふうに思います。

 そこでまず、質問に入るに当たって、今回の株価の暴落で世界の損失額というのは一体全体どれぐらいになるのか。それから、世界の金融機関の損失額というのは一体全体どれぐらいになるのか。これを、いわゆる株価とそれから金融機関、別途にお示しをいただきたい。

 と同時に、日本の株価の損失そして金融資産の損失、これも同じように分けてお示しをいただきたいと思います。

谷本副大臣 お答えさせていただきます。

 まず、世界全体の方です。

 まず、金融機関に関してですが、IMFの試算によりますと、今般の金融危機による世界の金融機関等の損失は、本年一月時点の推計で約二兆二千億ドル、日本円で約百九十八兆円と見込まれているものと承知をしております。

 次に、株価についてですけれども、サブプライムローン問題が顕在化した一昨年八月と比べて、例えば米国のダウ平均が約四五%、英国のFTSE一〇〇指数が約三九%、ドイツのDAX指数が約四八%下落していると承知をしておりますが、ただ、この株価下落が世界の金融機関全体にどの程度の損失をもたらしているのか、この点については、国際機関等で行われた試算があるとは現時点では承知をしておりませんので、その具体的な額を申し上げるのは難しいかと思います。

 次に、日本の場合ですが、我が国の預金取扱金融機関全体における証券化商品等については、直近の調査が二十年の九月末時点になっておりまして、この時点で、保有額全体で約二十二・三兆円ありまして、そのうち実現損の額は約一・八兆円というふうになっております。

 また、直近の二十年十二月決算期における株式等の関係損益は、主要行十一行及びこれまで公表を行っている地域銀行百九のうちの百一行、これらの合計で約一・一兆円の損失となっております。

 このように、グローバルな金融資本市場の混乱は、金融機関の収益状況に非常に大きな影響を及ぼしておりますが、我が国の金融システムに与える直接の影響は、欧米と比較をした場合には、相対的には限定的であると考えております。ただし、国際的な金融市場の動揺の影響が実体経済に今非常に大きく波及をしておりますので、早目早目に情報収集を行って、きめ細かく金融庁としてもフォローしたいというふうに考えております。

鈴木(克)委員 どうもありがとうございました。

 今の額をお伺いしまして、アメリカを初め世界が本当に大変な状況になっているということは共通の認識だというふうに思います。

 そこで、ちょっと大臣にお伺いをしたいんですが、余り大臣を責めても申しわけないなと思っていまして、実は家内から余り大臣をいじめないように言われておりますので、私は相当遠慮して質問をさせてもらいたいと思うんですけれども。

 昨年の九月に大臣は、今の経済状況はハチが刺した程度だ、こういうことをおっしゃったわけですね。それで、先ほどもうちの池田議員が、麻生総理は二月九日に、我が国は他国に比べたら傷は浅いんだということを言われたということであります。しかし、今お聞きになったような状況で、相当早い時点で相当厳しい状況というのはわかっておったというふうに私は思うんですよ。

 そこで、具体的に大臣にお聞きするんですが、昨年の九月十七日に、ハチが刺した程度だ、こうおっしゃったわけです。それからことしの一月九日、まさにハチに刺された程度だろうと今も思っているとおっしゃったわけです。それでことしの一月二十日に、ハチにもいろいろな種類があって、死に至るものもある、こうおっしゃったわけです。二月十六日に、戦後最悪、最大の経済危機だ、こうおっしゃったわけですよ。

 これは一体全体どういうことなんでしょうか。ということは、現在、ハチに刺されたということで、ハチで例えるならどんなハチに刺されているというふうにお考えでしょうか。

与謝野国務大臣 信用の世界は、大変だ大変だと言うと本当に大変になっちゃうという性質がありまして、私は、九月にリーマン・ブラザーズが破綻したときに大変な衝撃を受けました。ただ、経済財政担当をやっておりましたので、いたずらに騒ぐということは好ましくないと思っておりました。蚊に刺された程度とは言わなかった。やはりそれよりは重傷であるということを申し上げたつもりですけれども、余り大変だ大変だと言うことは、信用秩序、金融の秩序からいって好ましいことではないとそのとき思っておりました。

 ただ、リーマン・ブラザーズに対して直接債権を持っているところというのは、そんなに日本は大きくはない。そういう点では、ある程度の傷は受けたけれども致命的なものではなかったと思いますけれども、やはり、リーマン・ブラザーズ一社が破綻したことによる世界全体の不安の連鎖の広がりというのは、先生からおしかりを受けるように、不安の連鎖が生じたその大きさというのは、私の想像以上だったということは素直に認めるところでございます。

鈴木(克)委員 ハチで例を出されたわけです。そのときに、蚊ではないと言ったことで状況を理解できるだろうというようなお話であったかもしれません。

 しかし、確かに、いたずらに騒げばいいということではありませんけれども、一国のやはり経済の方向のかじ取りをしていくという立場であれば、例えば去年の九月にハチが刺した程度だと言われて、ことしの一月九日ですよ。先ほどずっとお話がありましたよね。いろいろな数値、データも相当悪いのが出ておったわけですよ。そのときに、まさにハチに刺された程度だろうと今も思っていると。これはやはり、認識に少しずれがあるんじゃないのかなと。確かに、それは騒いではいけないということかもしれませんけれども、私は、このいわゆる半年間の違いについて、これではやはり実態を十分把握されていないんじゃないのかな、このように思います。

 あえてもう一度お伺いしますが、現在はどれぐらいのハチに刺されたというふうに思われているんですか。例えば、ゴジラと戦ったのはモスラという大きな、ハチかガかよくわかりませんけれども、あれぐらいなんですか。国民にわかりやすくひとつ説明していただきたいと思います。

与謝野国務大臣 リーマン・ブラザーズから直接受けた傷というのは限定的なものだったと私は今でも思っております。しかし、リーマン・ブラザーズの破綻によって広がった不安の連鎖、これは私の想像以上だったということは率直に認めているわけでございます。

鈴木(克)委員 ハチに例えては言いにくいようでありますのでこれ以上お伺いしませんけれども、私は、金融に関する金融バチなのか、それとも、需給ギャップを埋めていく需給ギャップバチなのかということを本当にお尋ねしたいなと思っておるんですね。ということは、今、日本の需給ギャップというのは二十兆円ぐらいあるというふうに伺っておるわけですよ。これは本当に大変な状況だというふうに思っております。

 これについてもう一度、いわゆる金融と需給、要するに景気ですね、この両方をどのように大臣としては見てみえるのか、お聞かせください。

与謝野国務大臣 最近、経済学者のクルーグマンが書いた恐慌の経済学という本があるんですけれども、その本に、先生が言われたように、この状況を脱却するためには、クレジットフロー、すなわち金融の側面と、ディマンド、需要の側面と両方一遍にやらなきゃいけない、こういうことを書かれております。その後、いろいろな識者にお伺いしますと、やはりこの両方をやらなきゃいけないと。

 クレジットフローの方は、政府単独ではできない話で、やはり日本銀行の金融政策に依存するところも非常に大きいのではないかと思います。

 日本銀行と政府というのは、その政策が整合的になるようにしなさいということが日本銀行法に書いてありますので、これからも、金融の側面と需要の側面と両方を考えながら経済運営をやっていかなければならないと思っております。

鈴木(克)委員 そこで、きょう白川日銀総裁にもお越しいただいていますので、少し関連でお伺いをしていきたいというふうに思うんです。

 私は、昨年の一月の当委員会で実は当時の福井総裁に、サブプライムの問題で日本経済への影響はどうでしょうか、こういう趣旨の質問をさせていただいたところ、結論から言うと、影響は大きくならないだろうと。ここに議事録がありますので、詳しくはあれすればいいんですけれども、流れとしてはそういうことをおっしゃったわけです。しかし、その後は御案内のように大変大きく状況が変化をし、悪化をしておるわけであります。

 現在の、いわゆる日銀としての経済状況に対する現状認識、と同時に危機認識というのをお聞かせいただきたいと思います。

    〔委員長退席、木村(隆)委員長代理着席〕

白川参考人 お答えいたします。

 今先生が御指摘になりました議事録も、実はけさ方拝見いたしました。

 改めて、この一年の経済の変化というのを振り返ってみたいと思いますけれども、昨年の一月時点では、アメリカでは景気の減速感が強まっていましたけれども、欧州では景気の拡大が続き、新興国も高成長を続けるなど、海外経済は地域的な広がりを持って拡大していたというふうに判断しておりました。こうした中で我が国経済も、生産、所得、支出の循環メカニズムが基本的には維持され、緩やかながら拡大を続けているという判断をしておりました。

 しかし、昨年の春以降を見てまいりますと、まずエネルギー、原材料価格が大変に上がりまして、その影響から経済の減速傾向が明らかになってまいりました。

 それから、昨年の秋から、先ほど来の話にもございますリーマン・ブラザーズの破綻を契機に、国際金融市場の緊張度も一気に高まったということでございまして、その結果、海外経済も、米国だけじゃなくて欧州、新興国の景気減速が明確化し、全体として急速に悪化するに至ったというふうに思っております。

 先の認識でございますけれども、日本経済、足元が大変悪化しております。海外の金融経済情勢の急激な変化を受けて輸出や生産が大幅に減少しておりますけれども、この先も、当面悪化を続ける可能性が高いというふうに見ております。一言で申し上げますと、大変厳しいというふうに思っております。

 そうした危機意識を持ちまして日本銀行が行っている政策の枠組みということで申し上げますと、三点に分かれます。

 一つは、政策金利を引き下げるということで、現在は〇・一%の金利になっております。よく、アメリカはゼロ金利を行っているというふうに言われますけれども、正確に言いますと、今アメリカの金利は、オーバーナイトは〇・二五でございます。日本銀行は、〇・一という金利でオーバーナイトの金利を運営しております。

 それから二つ目は、金融市場の安定をしっかり維持するということが一番大事なことでございます。この面では、ドル、円両面において潤沢な資金供給を行って、市場の安定に努めております。

 それから三つ目は、CP市場に特に代表されますけれども、企業金融を担う市場の機能が今低下をしております。そうした機能の低下した市場に対して働きかけていく、つまり、CPを買い入れる、あるいは残存一年以内の社債を買い入れる等の措置によりまして、企業金融の支援を行うという形で対応を図っております。

 いずれにせよ、非常に厳しい情勢でありますので、日本銀行の使命をしっかり受けとめて政策をやっていきたいというふうに思っております。

鈴木(克)委員 現下、大変厳しい状況であるという御認識であります。私は、全くそのとおりだというふうに思っております。

 続いて、何点か伺っていきたいと思うんですけれども、そういう厳しい状況の中で、株価が現在急落をしております。ところが、為替についても異常な円高、若干戻してはおるものの、やはり基本的には異常な円高が続いておるわけですよね。

 そこで、その円高の原因というのは、円キャリートレードというのがいわゆる逆回転をして、そして円高が生じているというふうに言われておるわけでありますけれども、実際に円キャリートレードの金額というのはどれぐらいの規模なのか、また、現在どれぐらいの逆回転が起きているのか、そしてまた、逆回転が続くとすれば、まだどこまで、いつごろまで続くのか、その辺の御見解をお示しいただきたいと思います。

玉木政府参考人 いわゆる円キャリートレードにつきましては、一般的に、低金利、この場合は円でございますけれども、低金利の資金調達を行って、それを一時期高金利でありましたドルやユーロ等の通貨で運用するという取引のことを指しますけれども、それ以上の具体的、明確な定義があるわけではなく、さまざまな取引形態があって、その規模や内訳について見方が定まっているという状況にはないと思っております。

 一昨年、二〇〇七年の夏まではかなりの金利差があったこと、それから為替相場が全体として安定していたことを背景に、リスク感覚がやや低下して、円キャリートレードの規模が拡大基調にあったと言われてきていますが、その円キャリートレードが二〇〇七年の夏を境に、金融市場の混乱が続く中巻き戻しが起こったということは、直接的な円キャリーの指標とは言えませんけれども、例えばシカゴでの円やドルのポジションの変化を見ても、それは明らかなことだと思っています。

 ただし、その規模、あるいは逆回転がまだ続くのかという点について具体的にお答えするには、円キャリートレードの規模とか内訳とかいう点が非常に明確な定義を要求するものであることから、ここで確たることを申し上げることは難しいと考えております。

鈴木(克)委員 そういうような御答弁になるのかもしれませんけれども、やはり私は、今の円高の状況を考えていくと、この問題は避けて通れない非常に重要な問題だというふうに思っていますので、さらにひとつ慎重にその動きを追求、調査そして研究をしていただきたいな、このことを申し上げておきます。

 それでは次に、御案内のように、二月の十七日にアメリカ・オバマさんのいわゆる経済対策が通過をいたしました。全部で七千八百七十億ドルですか、日本円で七十二兆円の対策が打たれたわけでありますが、この際ぜひひとつ、この対策の内容をお示しいただきたい、どこまで把握をされてみえるのか。

 ということは、アメリカの状況が今後どういう手を打っていくのかということは、我が国にとっても非常に大きな関心事だというふうに思いますので、例えば減税がどれぐらいなのか、失業保険給付がどれぐらいなのか、高齢者医療補助はどれぐらいなのか、食券給付というのはどれぐらいなのか、道路補修は幾らか、州政府への教育の支援は幾らか、環境対策は幾らかというような形で、具体的にお示しをいただきたい。

 そしてさらに、それは、かつて日本がやってきた施策と比較して、どこがどう同じなのか違うのか、そのところをお示しいただきたいと思います。

湯元政府参考人 お答えいたします。

 二月十七日、アメリカの財政刺激策としまして、総額七千八百七十億ドル、約七十二兆円の経済対策が発表されております。

 この内訳でございますが、まず減税措置、これが約三七%を占めておりまして、二千八百八十億ドル、二十七兆円規模でございます。それから、それ以外の政府支出、これが六三%、四千九百九十億ドル、約四十六兆円でございます。

 減税につきましては、詳細な金額を把握するのはなかなか難しいわけでございますが、家計向けの、一人四百ドル、夫婦で八百ドルの支援というのが一千億ドルを超える規模だというふうに、報道等も含めて考えますと、言われてございます。それ以外にも、家計向けに細かな減税が幾つかあるようでございます。

 それから、企業向けに設備投資関係の減税、環境関係にかかわる企業向けの減税、こういったもの等々が、合わせて、先ほど申しました二千八百八十億ドルでございます。

 それから、歳出の方も、非常に細かな計数はなかなか把握できないのでございますが、大まかに申し上げますと、まずインフラ整備、それから科学技術振興政策費として一千百十億ドル、約十兆円でございます。それから、失業給付、フードスタンプ等々で八百十億ドル、約七兆五千億円、医療関連支出で五百九十億ドル、約五兆四千億円、教育関係で五百三十億ドル、約四兆九千億円、エネルギー対策費で四百三十億ドル、約四兆円ということでございます。

鈴木(克)委員 大臣、なぜ私がこのアメリカの政策を、我が国は日本なんだからアメリカとは関係ないというふうにお感じになる方もあるかもしれませんけれども、アメリカがどういう方向を向いて今経済回復をしていこうとしておるのかというのは、やはり我が国にとっても非常に大きな問題なんですね。したがって、アメリカの動向を見ながら、やはり我が国としても一つの進む道というのを、何もまねする必要はないし追随する必要はないけれども、あくまでも、そういったことを参考にしながら政策、施策をやっていかないといけないんじゃないかなというふうに私は思っております。

 これは非常に判断しにくいかもしれませんけれども、アメリカがやられたこの経済対策や金融対策を見て、今、大臣として、どのような効果がある、どのような効果はやはりちょっと問題じゃないのかなということをもしお感じになるところがあれば、お示しをいただきたいと思います。

与謝野国務大臣 他国の政策を評価する立場にありませんけれども、我が国としては、やはりアメリカも経済回復に真剣である、また日本も真剣でなければならない。これは、日本経済を国民のためによくするというだけではなくて、やはり日本の経済を立て直すということは、世界全体に対するある種の貢献であるという意識を持たなければならないと思っております。

 それから、まねをするというわけではありませんけれども、例えばアメリカの経済対策の規模というのは、やはり一定のメルクマール、基準というか指標に私はなり得るものだと思っております。

 それから、もう一つやはり特徴的なのは、環境問題とか、従来の景気対策というと、日本ですとすぐ公共事業という方に行ったわけですけれども、やはりこれから日本が考えなきゃいけない方向性の一部は、アメリカの経済対策の中にも示されているのではないかと思っております。

鈴木(克)委員 一つ特徴は、先ほど一番最初に報告があったように、減税が約三七%、そして歳出で六三%ということは、これはやはり一つの大きな特色であるというふうに思います。

 それと、今大臣がおっしゃったように、いわゆる従来型でない景気対策というのが積極的に織り込まれているということ、私は、やはりこのところは我が国も注意深く見ていく必要があるのではないのかなというふうに思っております。

 また別のところで少しこの議論をさせていただくとして、次に入らせていただきます。

 さて、アメリカの話ばかり言って申しわけないんですけれども、今回の経済金融危機でアメリカの経済が大きく落ち込んでおる、これはもう御案内のとおりであります。そして、税収の大幅な減収は当然避けて通れない状況である。〇九年度のアメリカの財政赤字というのが一兆六千億ドルというふうに私は聞いておるんですが、さらに一兆ドルを超えるアメリカの赤字が今後数年間続いていくのではないかということです。これは御案内のとおりだと思うんですが。

 そこで、アメリカとしては、国内だけでは消化し切れないいわゆる国債ですね、これは当然、中国を含めたアジア諸国にも期待をしているというふうに思うんですけれども、このアメリカの巨額な財政赤字に対して、日本はどのようにつき合っていくお考えなのかということであります。

 そこで、クリントン長官が見えたという、これは日本に最初に立ち寄られたということの裏に、どうもそういうような期待感もあってお見えになったのではないかとか、それから、総理がお帰りになったばかりでありますけれども、最初にホワイトハウスに日本の総理が招かれたということも、そういうような期待感があってのことではないかというふうに言われておるわけでありますが、この事実はわかりません。これからまた総理にお伺いをしていくということになると思うんですが。

 私は何が言いたいかというと、二〇〇三年に我が国は三十二兆円のドルを買い支えたんですよね。そういう実績があるわけであります。今回のオバマ・麻生会談でどうであったかというのはわかりませんが、ただ、はっきりしておるのは、いわゆるドルの基軸体制を維持するための協力ということははっきりうたわれておるわけですよ。これは言ってみれば、日本はそれなりの貢献をしてくださいよということのあかしではないのかなと私は思っておるわけであります。

 まずその辺について、今回、クリントンさんが見えた、そしてオバマさんと総理が会見をされた一連のところに、アメリカのある種期待が、ぜひ日本に国債、ドルを買い支えてくれというような期待感があったかどうか、大臣はどのようにお感じになっていますか。

与謝野国務大臣 麻生総理とオバマ大統領の会談でも、そのような話題には一切触れられておりません。

 ただ、現に米国のドルが世界の基軸通貨でありますし、それに取ってかわるべきものがないという状況では、やはりドルの価値が維持されるというのは日本にとっても利益であると思いますし、ドルの価値が不安定になるということは好ましいことではありません。

 そういう意味では、アメリカ自身が強いドルということを維持するという決意を表明されておりますし、我々としては、世界経済に対して貢献していくという間接的な手法で全体としての現在の世界の通貨制度を維持していく、そういうことだろうと私は思っております。

鈴木(克)委員 もちろん、表向きには、ドルの基軸体制を維持するため協力を惜しまない、こういうことでありますけれども、裏を返せば、今アメリカが必要になっている国債発行額というのは二百三十兆、そしてまた財政赤字が百三十兆というふうに今言われておるわけですよね。となると、当然のことながら、日本にその部分の協力要請が必ずや、今あるかどうかは別としても、これは今後出てくるというふうに私は思います、正直言って、過去の日米関係の流れの中からいっても。

 そうしたときに、日本の経済をそして金融を預かってみえる大臣として、果たしてどれぐらいまで買い支えることが可能なのか、幾らまでなら最大日本が現在買い支えることができるのか、当然その辺の腹づもりというか、言われたわけじゃないけれども、まるっきりそういったことを考えずに今後日米の間をやっていくということは私はできないというふうに思うんですが、今大臣は率直に、これぐらいなら日本が受けられるんじゃないのかなとか、これぐらい要求があるのかなとか、何かその辺はお感じになっていることはありませんか、またお考えはありませんか。

与謝野国務大臣 そういうことは全く考えたことはありません。

鈴木(克)委員 しかし、大臣、全く考えたことがないといえば、それは、日本の経済、財政、そして世界のこの状況の中で日本が果たしていくことに対して全く考えていないということを宣言したと一緒ですよ。私は少し納得いきませんね、そのお答えは。いかがですか。

与謝野国務大臣 どういうふうに米国が資金調達されるかということはわかりませんし、そういうことが現実になってからそれは考えるべきことでありますけれども、現時点ではそういうことは一切考えておりません。

 ただ、IMFなどの国際機関、一千億ドルの融資をするということになりましたが、やはりドルを基軸通貨とした世界の通貨というもの、決済手段としての通貨、これに対しては日本は貢献していかなきゃならないと思いますけれども、先生が言われたようなケースについて、私は実際は考えたこともないと思っています。

鈴木(克)委員 それは、考えていない人にどうだと言ってもどうしようもないということかもしれませんが、私は、やはり考えておくべきだということを申し上げたいわけですよ。

 ここにもあるように、アメリカの日本厚遇、要するに厚いもてなしは、ねらいはお金だ、こういう記事もあるわけですよ。恐らく国民の多くは、そうじゃないのかなというふうに思っているわけですよ。経済を、財政を一番操作している、ある意味では握っている大臣が、全く考えていませんということで国会の場でこうして国民の前に言って、本当にそれで通るんでしょうか。

 例えば、そういう要求があればそのときにしかるべく考えます、前回の例はこれぐらいなんだから、これぐらいのことは恐らくあるかもしれないけれどもとか、何か力強い、いや、全然考えていません、わかりません、これじゃ私は、やはり日本の経済、金融のかじ取りをお任せするわけにはいかないと思いますが、いかがですか。

与謝野国務大臣 御忠告がありましたので、頭の体操はしておきます。

鈴木(克)委員 わかりました。余りいじめるなという話でありますので、このぐらいで終わっておきます。

 さて次に、一つお伺いをしたいんですが、アメリカの財務省が日本の金融機関に、アメリカの住宅公社債を売らないように要請してきた、こういうことをちょっと私聞いたことがあるんですが、まず、この事実があるかどうかお尋ねをしたいと思います。

与謝野国務大臣 御指摘のような要請が米財務省から我が国金融機関に対して行われたとの報告は、金融機関からは受け取っておりません。

 なお、個々の金融機関がそのポートフォリオの中で運用しているさまざまな資産をどのような形で保有するのか、または売却するのかについては、あくまでも各金融機関の経営判断に属する問題であると考えております。

鈴木(克)委員 それでは、ちょっと聞き方を変えまして、まず、アメリカの住宅公社債を政府はどれぐらい持ってみえるのか。そして、日銀さんにお伺いしたいんですが、日銀はどれぐらい持ってみえるのか。その金額をお示しいただきたい。保有主体、要するに会計面も含めて明らかにしていただきたいと思います。

玉木政府参考人 御指摘の米住宅公社債というのは、ファニーメイとフレディーマックというアメリカの機関の発行した債券であると思いますが、外国為替特別会計は、その運用対象としてこれら二機関の発行した債券を保有しております。ただし、これまでも申し上げておりますように、個別銘柄の保有状況について詳細をコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 ただし、我が国全体のアメリカ政府機関債、これは必ずしもフレディーマック、ファニーメイだけではなくて、広くエージェンシー債と呼ばれるものですが、我が国の米政府機関債全体の保有額は、これは米財務省が推計して発表しておりまして、若干古くなりますが、二〇〇七年六月末時点で二千二百八十二億となっております。

白川参考人 お答えいたします。

 日本銀行は外貨資産を一定程度持っておりますけれども、昨年九月末時点におきまして、米ドル資金供給オペレーションに係る貸付金を除きましたベースで見てみますと、約五兆四千億円持っております。

 御指摘のありました米国住宅関連のいわゆるGSE、住宅公社債というふうに先生がおっしゃった債券でございますけれども、これにつきましては、投資判断を外部の業者に委託しています、いわゆる外部委託ポートフォリオという形で保有しております。

 その外部委託ポートフォリオの残高でございますけれども、九月末時点では約千四百億円でございます。このすべてが米国住宅公社債ではもちろんございませんけれども、この千四百億円の中で個別銘柄をどれだけ持っているかということにつきましては、金融為替市場において無用の憶測を招くおそれがありますことから、コメントすることを差し控えさせていただきたいと思います。

鈴木(克)委員 わかりました。

 いずれにしましても、要するにアメリカの住宅問題から今回の金融問題、経済問題というのは端を発しているわけでありますので、私は、その辺のところをきちっと把握しておくことが、いわゆる対策おくれにならない、早く手を打っていくということになるのではないのかな、こういうことでお尋ねをしたわけであります。

 いずれにしても、今出された数字というか、これはいろいろと影響もあるかというふうに思いますので、この場ではこれぐらいにさせていただきたいと思います。

 日銀総裁、御苦労さまでした。ありがとうございました。

 続いて、原油高の話で少しさせていただきますが、去年の原油価格の急上昇というのは、一人のトレーダーの売りと買いがきっかけだった、このように巷間言われております。

 現在、金融資産の残高というのが約百六十兆ドルと言われておるわけでありますが、そのうちの約七十兆ドルぐらいが有利な投資先を求めて行き場を探している、こういうことも言われておるわけであります。今後、こうした資本がどのような動きをしていくのかということを政府はどんなふうに考えてみえるのか、お示しをいただきたいと思います。

湯元政府参考人 お答え申し上げます。

 今後の国際的な資金の流れにつきましては、各国の経済情勢及びその先行きに対する見方、あるいは各国の当局の政策対応、さらには金利、為替、株価など市場の動き、こういったさまざまな要因によって瞬時に大きく変動しているということから、先行きを正確に見通すというのは難しいというふうに考えております。

鈴木(克)委員 それはそうかもしれませんが、やはりこれは、本当に一国の経済がぶっ飛ぶとかひっくり返るぐらいの大きな流れなんですよ。ここをやはりきちっと見て、そして、ある意味で予測を立てていくということが私は本当に最も大事な部分ではないのかな、このように思っております。それはわかりませんと言ってしまえばそれまでのことですけれども、恐らくいろいろとやってはいただいておると思いますけれども、この巨額なお金の動きによって本当に世界が大変な状況もまたあり得ると。

 現に、さっき申し上げましたように、一人のトレーダーの売り買いであれだけの原油の高騰が始まったというふうに言われておるぐらいなんですから、ぜひひとつ、その辺の動きを本当にきちっと見ておっていただきたいということを申し上げておきます。

 最後の質問になるかと思いますけれども、大臣、四月二日にはロンドンで金融サミットが開催されますね。これはお出かけいただくということになるんじゃないかな、まあわかりませんけれども、その当時どんなあれになっているのか先の話でありますけれども。

 問題は、何が言いたいかというと、先ほど言ったように巨額な投機マネーというのがあって、今、いわゆる国際的なルールというのは決められていないわけですよ。食料に行ったり油に行ったりというようなことが全く野放しになっておるわけですけれども、やはりこの際、こういった金融サミットの場で、ある意味では日本が提案をして、こういうような無謀な投機とかこういう野方図なあれはやはり規制しましょうというようなことを私は発信していくべきではないかと。

 ルールなき自由化というのは再び金融危機を招く危険がある、こういう観点から、大臣が、今現在どのような国際ルールというものをお考えになっているのか、お示しをいただきたいと思います。

与謝野国務大臣 昨年の十一月十五日に行われた首脳会合では、麻生総理から、一つは金融規制・監督における国際連携の強化、第二は格付会社への規制と監督体制の導入などの提案を行ったわけでございます。

 日本としては、こうした提案も踏まえ、金融危機の再発防止のため、市場の透明性の向上や金融のグローバル化への対応など、国際的な場におけるルールづくりへの議論に積極的に参加してまいりたいと思います。

 ただ、ここで注意しなきゃいけないのは、こういう状況になって規制派が物すごく強い立場をとっていますが、規制のし過ぎもだめですし規制のなさ過ぎもだめだという、どこが中庸であるかということが多分大事なんだろうと思っております。

鈴木(克)委員 世界の金融資産の規模がどれぐらいなのかなということで私も調べてみたんですが、一京五千兆円ぐらい、一京五千兆円という、ちょっとどれぐらいなのか私も判断がつかないぐらいの金融資産があるんだそうであります。

 まさに、この動きによって世界じゅうが大変な渦に巻き込まれたり、ある意味では、うまくいけば、地球環境を含めて本当にすばらしい世界が誕生する可能性もある、それがやはり私は金融という大きなものだというふうに思っております。

 くどくなりますけれども、そういう意味で、大臣が今御所管されておる三省庁というのは本当に、まさに重要な部分を担っていただいておるわけでありますので、ぜひひとつ、これからもそういう目線で頑張っていただきたい、このことを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

木村(隆)委員長代理 次に、下条みつ君。

下条委員 民主党の下条みつでございます。

 大臣におかれましては、午前中から長丁場でございまして、お疲れさまと申し上げたいと思います。また、私も大臣の選挙区の小学校を出ておりますし、祖母の代からのおつき合いでございますけれども、ぜひ、論客としてでなくて、実のある温かいお答えをいただきたいなというふうに思っております。よろしくお願いいたします。

 まず、私の方からの質問は、財確法についてちょっと御質問をさせていただきたいと思っております。

 今まで同僚議員を含めて多くの御質問をいただいていると思いますけれども、結局、赤字国債と埋蔵金取り崩しで財源確保を行う法案である、はっきり言ってこういう形だと思うんですね。

 そんな中で、八カ月前ですけれども、去年の参議院の決算委員会で時の額賀大臣が、これの積立金については、国債の残高の解消に使わせていただくのが正しい、これは子々孫々のためにツケ回しでいくものではないと明解にそのときに大臣としておっしゃっておる、これは議事録にきちっと残っております。

 ところが、これは、その後のいろいろな経済環境その他情勢が変化して、当然、二次補正から二十一、二十二年度を含めて繰り入れをしていった、これが現状だと思うんです。そこで、二年後には要するにプライマリーバランスを黒字にしなきゃいけないという政府の目標がありますから、私としては、その目標に対して非常に今厳しくなっちゃったというのが現状だと思うんですね。そんな中で、余り今回の財源確保をやみくもに赤字国債に頼るのもなんだというので、要するに埋蔵金からの財源を一部やってきたように僕たちには思えております。

 そこで、何で四兆二千三百五十億なのかという質問をしたいと思っているんですが、まず一つは、いろいろなエコノミスト、きょうの午前中も、私どもの同僚議員を含めて参考人の方々からいろいろないい意見をいただいたと思うんですが、例えば東北公益文科大学の教授の北沢栄さんという方は、エコノミストで、特会のやみはまだまだ発掘できる、特別会計の毎年の不用額十兆円の大部分は積立金になっており、積立金の適正水準を精査すれば、一般会計への繰り入れは大幅に拡大できるとおっしゃった。また、東大の醍醐聰先生は、「増税なき増収財源としての特別会計余剰金」という論文の中で、一般会計への繰り入れ原資となる十兆円の純剰余金は、翌年度繰越額を控除したものであり、繰り越しの実態を精査することで活用可能な純剰余金はさらに拡大するんじゃないか、こういうふうにおっしゃっています。

 そこで、まず最初の質問は、プライマリーバランスの黒字化目標があるから一部四兆引っ張ってきたよという言い方もできると思うんですが、なぜここで四兆二千三百五十億円という数字が埋蔵金の特会の方から繰り入れになったかの根拠を大臣にお聞きしたい、これが第一の質問です。

与謝野国務大臣 昨年額賀大臣が御答弁になったとおり、財投特会からのお金はストックからストックへという原則を多分額賀財務大臣が御答弁になったと思います。私も、望ましくはそうであるべきだと思っております。今回、いろいろなことを考えて、なるべく国債は出したくない、そういう思いもあって、財投特会の金利変動準備金は使ってもお許しをいただけるお金ではないかという判断をして、国会にお願いをしているわけでございます。

下条委員 お許しいただける範囲ということであります。

 そうしますと、大臣、お許しをいただける範囲というのは、総資産が財投特会に約百八十六兆ありますから、その中でこの四兆数千億を使うと、簡単に言えば、今総資産の千分の五十というあれが千分の三十五ぐらいになっちゃうんですね。つまり、使った後は三・五%になる。ですから、その三・五%、千分の三十五になってしまうことをお許しいただける範囲として継続していくのか、それとも、これは御省がお決めになった枠なので、これからも千分の五十を目指してどんどん積み上げていくのか、この二つにまた議論が分かれるわけです。

 今おっしゃったお許しいただける範囲というのは一体、千分の三十五なのか千分の二十なのか、千分の五十まで一、二年で持っていかなきゃいけないか、この方針を大臣にお聞きしたいというふうに思います。

与謝野国務大臣 まず、特別会計の中で、見かけお金があるように見えますけれども、絶対に使っちゃいけないという特別会計があるわけです。例えば年金特会のように年金としてお預かりしているもの。特別会計の中には使ってはいけないというお金はいっぱいあります。

 この前も質問がございまして、外為特会のお金はどうかと。これは、金利変動よりもっと為替変動の方がリスクが高いので、為替のレベルが変わりますと、含み益に見えるときもあるし含み損になるときもあるということで、そうやたらと手をつけてはいけない、現に使っている部分もありますけれども。しかし、今回、私がなぜお許しいただけるのではないかと申し上げたかといいますと、これはいわば金利差から生じたお金でございまして、人様からお預かりをしているお金ではないという意味から、お許しをいただけるのではないかと。

 そこで、それではどの程度を準備金としてとっておいたらいいのかという問題がもう一つあります。準備率の上限は、中長期的な観点から、その水準まで積み立てておけば将来の大幅な金利変動に対しても財務の健全性を保つことができる水準として設定されているものであります。今般の取り崩しによりまして、金利変動準備金は総資産の千分の五十の水準を下回ることになるわけでございますけれども、当面は過去の比較的高い金利の貸付金残高から利益が生じることになりますから、財投特会が債務超過となる可能性はかなり低い。即座に財投特会の財務について問題が顕在化するわけではないと考えております。

 いずれにしましても、財投特会においては、引き続き総資産の圧縮に努めるとともに、利益が生じた場合には、これを金利変動準備金に積み立てることにより、金利変動準備金の確保に努めてまいりたいと考えております。

下条委員 そうしますと、非常に丁寧にお答えいただいてありがたいんですが、今の大臣のをちょっとまとめますと、当面はいいけれども、今後はまた千分の五十まで戻していくことも非常に考えていく、こういう話だと承りました。よろしゅうございますか。

与謝野国務大臣 上限が千分の五十であって、金利差から生じる収入というものがあるわけですから、そういうものは金利変動準備金として積み立てる、こういうことを申し上げたところでございます。

下条委員 ありがとうございます。

 そこで、よくお出になるお名前ですが、高橋洋一さんという東洋大学教授が、大きな積立金を持つ財投特会と外為特会については、金利リスクや為替リスクを減らすことで積立金の取り崩しが可能になる、こういうふうにおっしゃって、これは前からの持論で、私もそう思います。

 そこで、私が今までの時間を使って何を言いたかったかというと、この積み立ての部分にメスを入れるべきだ、こういうふうに思っています。

 そこで、ちょっといきなりの質問で、もしあれだったらあれなんですけれども、大臣は、財政投融資に関する基本問題検討会の平成十九年の十二月の「財政投融資の在り方について」という中間報告でデュレーションギャップという言葉が出ているんですが、このデュレーションギャップというのは御存じでしょうか。

与謝野国務大臣 英語ですから、正確にどういうふうに訳したらいいかわかりませんけれども、期間のギャップというふうに考えております。

下条委員 そこで、デュレーションギャップというのは、簡単に言えば期間の加重平均ということなんですね。簡単に言えば、特会の調達と運用、これが例えば調達が二%で十年、運用つまり貸し付けが二%で十年なら、これはデュレーションギャップはゼロです。単純に言うとそういうことですね。ところが、調達が、今までいろいろな郵貯の預託があってばらばらだった。これについて、例えば調達が五年で二、貸し付けが十年で二、ところが、五年たったところで金利が上がっちゃっていると逆ざやになってマイナスになるから、準備金を用意します、これがデュレーションギャップのもとになる理論であります。これはもう御存じだと思います。

 そこで、このデュレーションギャップが出たときと比べて、まず何が変わったかということなんですね。

 まず、郵貯からの預託が、七年が基本だったのが、これの払い戻しが十九年度でおおむね終わり出している。貸し付けの方も、三十年、二十五年、二十年、十五年、十年と多様性が出てきている。このデュレーションギャップを出してみると、一番最初に出したころ、千分の五十とか百のころ、平成十四年は千分の百ですけれども、このときはデュレーションギャップで一・六八年あった。つまり、ギャップが一年と〇・六八年あったわけですね。だから、千分の百を置いたということだと思います。ところが、平成十八年の末には、既にもうデュレーションギャップというのは〇・〇三になっちゃっている。つまり、加重平均の資産と負債が五十六分の一になってしまっているわけなんですね。

 そこで、こういうことを言うと、恐らく後ろのプロ集団の方から、いやいや、これはモンテカルロ法というのがあって、これは統計のやり方なんですけれども、三千通りの金利の動きを出して、そのうち二十四の金利だけが赤字になったんですよ。つまり、残りの二千九百七十六通りは黒字になったわけです。したがって、千分の五十なんというのはどうなんですかというのがこのデュレーションギャップの原点になるわけです。

 私は何を言いたいかというと、今までこの時間を使って申し上げたかったのは、例えば民間の企業会計、これはもう大臣はプロだと思いますけれども、国債価格変動準備金、これは平成八年で千分の十、つまり一%の準備金はだめですよと平成九年の四月一日から変わっているわけです。もう民間ではないんです。もしそれを置くとしたら税金逃れの過剰引き当てになりますよという指摘を民間は受けているんです。そうですね。

 もう一度申し上げると、金利変動準備金というのが何で今千分の五十必要なのか、例えば三十五でも要るかというところを僕は議論しているわけなんです。デュレーションギャップも、その当時から比べて五十六分の一になっている。民間でも十三年前にやめさせている。その中で、さっきの大臣のお答えは、よければまた積んでいくよという答えを僕はちょうだいしているものだから、いや、それはちょっと違うんじゃないですかという質問なんですよ。

 もう一度申し上げると、デュレーションギャップが既にもう五十六分の一になっている段階、そして、民間ではこれは過剰引き当てに相当して、金利変動準備金はやめさせているわけです。なぜかというと、国債は金利が高くなれば価格が安くなります。価格が安くなれば金利が高くなる。そこで相殺して、過剰ができてしまうのであります。

 したがって、申しわけないけれども、財務省さんの、特会にこれを置いて赤字国債をふやすんじゃなくて、そもそも去年、額賀大臣が参議院の決算委員会でおっしゃった、これは特会に置くんじゃなくて、やはり国債の方の償還に充てるべき時期が来ているんじゃないか。つまり、積み立てをもうそろそろやめるべきじゃないか、これが私の意見です。

 もう一度、デュレーションギャップは落ちています。五十六分の一に落ちている。企業でもやめさせている。そこで、大臣の、論客としてではなくて、今の私の質問に対するお答えをまずちょうだいしたいというふうに思います。

    〔木村(隆)委員長代理退席、委員長着席〕

佐々木政府参考人 前提となります技術的な点につきまして、まず私の方からお答えをさせていただきます。

 デュレーションギャップは先ほどおっしゃいましたようなことでございますが、デュレーションポートフォリオやイールドカーブの形状の変化によりましてデュレーションも変化するというわけでございますので、現時点でデュレーションギャップがないということは、金利変動によって将来にわたって金利リスクがないということを保証しないということでございます。

 財融資金の場合、その回収と償還の方法の差によりまして、デュレーションギャップが非常に縮まりましても、マチュリティーギャップはやはり存在しているというのが第一点でございます。

 もう少し具体的に申し上げますと、そういう金利変動リスクを縮小するような努力を私ども大変、今行っているところでございます。これは過去からずっと行っております。ただ、どうしても残るリスクというのがございまして、郵貯あるいは年金の預託がなくなりました後におきましても、まず調達の方の、完全に自由といいますか、国債と一緒に発行しておりますので、国債と同じ年限、二年、五年、十年、二十年、三十年の年限という形で資金調達をしております。

 もう一つ、貸し付けの償還のキャッシュフローが違う。貸し付けの方は元利均等あるいは元金均等という形でございますけれども、調達サイドの財投債の方は元金一括償還というキャッシュフローの違いもございます。

 さらに言いますと、郵貯とか年金の預託がなくなりましても、まだ預託というのは残っております。今申し上げていますのは、デュレーションギャップが非常に縮まりましても、そのほかの金利変動に伴いますリスクが残っているというのが第一点でございます。

 それから、先ほどモンテカルロとおっしゃいましたので、この説明をさせていただきます。(下条委員「わかっている、僕はやっていたからいいです」と呼ぶ)よろしいですか。

下条委員 だから、そこに金利スワップを入れるんですよ、マチュリティーギャップのところを。私もアメリカでやっていましたので、ですからここで今技術論を言いたくないんですよ。ですから、財務省の方はそうやっておっしゃって、マチュリティー、つまり資質のギャップがあるから、それを金利スワップをかけるのが民間企業で努力している内容なんであります。

 私が今言っているのは、本当に、民間でやらせていない、変動準備金はやらせていないわけですから。民間は調達は一種類とか二種類だけじゃないですよ、幾らでもやっています。ですから、そのとき、十三年前にやめさせたのに、なぜ今ここで、赤字国債をこっちで発行しておいて、こちらで積立金をまた積んでいこうとしている姿勢を僕は非難しているわけです。逆に言えば、必要だったら、そのときに赤字国債を発行すればいいじゃないですか。そういうことですよ。

 三千分の二十四のモンテカルロ法の結果、これはちょっと専門的な話になっちゃうんですけれども、ただ三千通りやって二十四回だけ赤字になっただけのために、国民の貴重な税金を積み立てて、こちらで赤字国債を発行して、埋蔵金をさらにふやしていくのはおかしいですよと僕は言っているのであります。大臣のお答えを聞きたいと思います。大臣にです。技術論はもういいですから、大臣にお伺いします。

与謝野国務大臣 あるお金を使っても、あるいは借金してお金を使っても、本質は多分同じだろうと私は思っております。

下条委員 本質は同じということは、ですから大臣に対しての私の質問は、もうそういう情勢になっている中で、これからも特別会計に積み立てをしていく姿勢が必要なのか、それとも負債となる赤字国債の部分について圧縮していく方に使うべきかの方針を僕は大臣に聞きたいのであります。

与謝野国務大臣 財投特会がリスクゼロとは判断できないわけでして、積み立てられる間は積み立てが生じても別に不思議ではないと思います。

 ただ、先生言われるように、お金が必要なときには使った方がいいんじゃないか、あるいはそれを借金を返した方がいいんじゃないかと。私は、やはり本筋は、そこで生じたお金は、できればストックからストックへということで整理基金に入れた方がいいということは長年思っておりました。今回は、こういう状況ですから、このお金を使わせていただくということは許していただけるのではないかということでお願いしているわけでございます。

下条委員 なかなかお答えいただけないと思うんですけれども、要は、国民の負債を減らしていく方を、これは大臣の持論ですよね、やるべきか、それとも、今ほとんど民間でも行われていない、そして預託の部分からのお金も相当、おおむね払い戻している、この状況の中で、千分の五十とか、今三十五になりそうです、これが通れば三十五になりますけれども、という部分は、もっともっと圧縮できますよという提言であります。ここはどう思いますか。

与謝野国務大臣 もちろん、現に千分の三十まで下がっちゃうわけです。先生はもっと下げてもリスクはないよということであれば、それも一つの重要な考え方ではないかと思っております。

下条委員 やはり政治家として尊敬すべき回答の仕方だと思いますけれども、なかなか返答いただけない。まあ、これは押し問答しても、どんどん時間がたっちゃうので。

 ただ、私は、これは議事録に残りますのであれですけれども、そろそろ圧縮していいと思いますよ。私はそう思う。それと、ここで財務省の方と議論をしても永久に議論の平行線になると思いますけれども、私は、民間にはもうそういうのがなくて過剰引き当てになっているんだからということを最終的には申し上げて、次の話に移っていきたいと思っております。

 次は、所得税法の問題にちょっと移らせていただきたいと思うんですけれども、例の住宅ローンの、適用期限を五年延長して、最大控除可能額を五百万まで引き上げるという件であります。

 そこで、実際の数字を私がちょっと引っ張ってきますと、もし自民党が選挙に勝ちたいというのであれば、やはり最も苦しんでいるサラリーマンの人たちに一体何がきくんだというのを政策で持ってくるべきですよ。私はそう思います。

 それで、住宅ローン減税の適用を今最も受けているのが、年収が五百万から八百万で平均約六百万円の所得層の方です。そして、平均のローン残高は約千六百万円ですね、それで大体五、六百万円の年収の人たち、この人たちが僕は最も苦しんでいると思っています。

 それで、政府がおっしゃっている今度の新しいものについては、二十一年に居住を開始して、ローン残高が五千万以上何だらかんだらと。その一%、五十万円以上の所得税額が今後十年間継続したらやってあげようじゃないかというのを出している。これはそのまま法律を読んでいるだけなんですが。

 そこで、私は思うんですけれども、もう一度申し上げますが、もう選挙は近いわけですよ。あと半年かわかりません、二カ月か知りません、そのとき与謝野さんが総理大臣になっているかもしれませんし、それはわかりません。ただ、私は、最も苦しんでいるところの懐に手を入れるのが、これは政策の原点だと思っています。

 そこで、今度の五千万円以上、それはもう僕はわかります。だけれども、一方で、今最も減税を受けている、要するに、例えば平成十八年に住宅ローンで家を建てた人の場合は、三千万円を限度に七年間は一%、その後の三年が〇・五%控除というのが出ていますね、これは今やっているもの。どうですか、大臣。私に言わせてもらうと、この部分をもう少し膨らませてあげることの方が、今おっしゃっている五千万円以上が前提で五十万円というよりもずっと、一番苦しんでいる人に効果的だと僕は思います。なぜかというと、千六百万で一番苦しんでいる人たちの部分について、最後の三年が〇・五%ですからね、それで十年間ですから。

 大臣も御存じだと思いますけれども、大体、住宅ローンを十年で返すのはほとんどいないですよ。短くて十五年ぐらい、長ければ三十年とか二十年。それを十年ですぱっと切ってしまう。そのときになって延長という考え方はあるかもしれませんが、私は、その最も苦しんでいるところの住宅ローン減税こそ、今与謝野大臣が判断すべき部分じゃないかと思います。これはいかがでございますか。

加藤政府参考人 まず、制度の趣旨からちょっと御説明させていただきたいと思います。

 この住宅ローン減税、実は、一般的なまさに個人の資産形成に対する援助でございまして、税制としては極めて異例な政策税制でございます。ただ、その趣旨は、やはり日本の政策として、持ち家に対して一定の支援をするという基本的な政策、これを一つの柱にしております。それで、先生おっしゃいましたように、一般的な普通の方がローンを組んで持ち家を取得するというところをアシストするという性格。

 それからもう一点は、今回特に大きくそこを拡大したわけですが、これが結局、住宅というものが波及効果の大きい投資でございますので、それを拡充することによって経済全体の底上げを図る。この二つの趣旨が含まれておるわけでございます。それで、今回は特に後段の趣旨を重視して、かなり大型の家をつくる方まで視野に入れた形になっております。

 先生おっしゃいますように、過去の方々についての支援ということになりますと、これは住宅を取得する段階でその方が計画を立ててローンを組む、その前提としての住宅ローン減税はもう当然念頭に置いておられるわけでございますから、すべてその段階で一定の考え方のもとに取得をされております。それを逆に過去にさかのぼるということは、そういう方々にむしろ支援をするということでございますので、支援という意味では、これは住宅にかかわらずいろいろな形で支援を求める必要のある方がたくさんいらっしゃると思いますので、今度は住宅取得というよりは後々の生活支援ということになりますので、ちょっとそこは、この住宅の制度の趣旨と異なるのではないかと考えております。

下条委員 だから僕が言っているのであります。今苦しんでいるのは、五千万円で二十一年度に入っている人じゃなくて、千六百万とかそういう残高の人が一番苦しんでいるわけですよ。例えば派遣だったり、御主人と奥さんで働いていたり、それから所得が、正社員かはあれだけれども、おまえ、働く機会、落としちゃうよということが何十万人もいる世界の人たちが、一番多くこの住宅ローンの残高として借りている人たちだ。そこにメスを入れるから、僕は政策の意味があると言っているんです。そこを大臣にお聞きしたいんです。お願いします。

与謝野国務大臣 住宅ローンを借りている方だけに援助が行くという制度はちょっと困るというのが加藤主税局長の最後の部分のあれなので、我々としては、今回の住宅ローン減税というのは、やはり住宅建設によって経済に対して非常に大きな波及効果がある、そういうことを目指してやっているわけでして、特定の所得階層あるいは特定の値段の住宅を取得した方を目指して援助をするというのは、やはりなかなか政策としては難しいんじゃないか、私はそういうふうに思っています。

下条委員 大臣、それでは、一般で苦しんでいる、何十万人、何百万人いる方々の懐には手が届きませんよ。

 私が言っているのは、政策というのは、釈迦に説法で申しわけないですが、社会情勢が変わるから。私がさっき言った、十年中七年が控除、その後、最後は〇・五%になった人は、今ここで苦しんでいるわけですよ。五千万でこれから二十一年に入って、大金持ちの人たちにやるのも、それは構いません。だけれども、最も苦しんでいる人が多いのは、さっき言いましたけれども、六百万円ぐらいの所得の方々で住宅に今払っている方々が最も苦しんでいるから、だからそこに配慮が必要ですよという話をしているのであります。

 いかがでございますか。もう一度御質問させていただきます。

与謝野国務大臣 ですから、既に住宅ローンも組み、住宅も取得している方に一体どういう減税の方式がありますか、こういう問題がもう一つあるわけです。(発言する者あり)

下条委員 また押し問答になっちゃうんですけれども、ちょっとアメリカの話が今同僚議員から出ましたが、アメリカの話も後でしようと思っているんですが、時間の関係で、そういうところに与党がもし、残りの三年も〇・五%じゃなく一%、まあ、いいじゃないかというふうにやっても、そんなにこたえないですよ。

 なぜかというと、御省が出している、住宅ローン減税の拡充で減収見込み、御省の減収見込みというのは、大臣、どのぐらいか御存じですか、住宅ローンでこの手を使うので。それじゃ、そっちに答えてもらうと長くなるのでこっちで言います、局長。百十億円ですよ。百十億円で、国交省が言っていて、何か何万人のというのは、私はちょっと甘いんじゃないかなと思いますよ。

 そういう、非常に優秀な方々をお抱えになっているが、それも今までのいい時代はわかります。悪い時代はもうちょっと目線を落とさないと、結果的には全然使えない減税になると僕は思いますよ。宣言しておきます。いいです、時間がないのでいいです、ありがとうございます。それは宣言しておきます。百十億円です。たったの百十億円ですよ、減収見込みが。

 次の質問に移りたいと思います。ちょっと時間の関係があるので、申しわけないです。次は中小企業減税です。言いたいことは山のようにあるんですけれども、時間が五十分ですので。

 まず大臣、中小企業で法人税を納めていないのは一体何割ぐらいあるか、御存じでございましょうか。割で結構でございます、大体何割。

与謝野国務大臣 六七%でございます。

下条委員 六七、そうです。別にクイズをやっているわけじゃないんですけれども、大体そういうものだと思っていただいて、そうすると、逆に言えば残りの人たちが税金を納めているわけです。ですから、全国の中小企業が約五百六十万社とすると、逆に、納めている方々が、中小企業、零細、百八十五万社になるわけです。

 そこで、今回、八百万円まで、二二%から一八%に引き下げる、例のものですね。これはもう何回もこの委員会でも言っておりますけれども、私はこれを見たときに、予算を見ると、この軽減税率の引き下げに対しては、御省の減収見込みが千百億円なんです。千百億円、そうですね。それで、千百億円を百八十五万社で割るんです。そうすると、一社六万円ですよ、大臣。ここが自民党が選挙に勝てない理由です。

 こういう言い方をするとすごく嫌な言い方ですけれども、選挙が近いから許してください。いいですか。一社六万円の減税をして、その会社が元気になる、つまり、六万円ということは平均ですよ、月当たり平均五千円だ、それで足りますかという話を僕はしたいわけです。

 そこで、私は、これまた論客じゃなくて温かいお答えをいただきたいと思っているのは、大臣、もう思い切って下げたらいいんですよ、これは。もっと下げちゃうんです、今一千百億円しか使っていないんですから。後で言おうと思ったけれども、オバマという話がさっきあったので、二日前に一時間だけ議会演説の前に会った総理大臣がいらっしゃいました。どういう話をしたか知りません。だけれども、一千百億円だったらさっきの、私は言いたい、赤字国債じゃなくて、こっちに積み立てる分を少し渡してあげたりして、それは二二が一八で一千百億円ですから、例えば一〇%落として、一〇%なら二千七百五十億円ですよ、単純計算ですけれども。そういう英断をすることによって中小零細は、月五千円じゃなくてぐっと払う金が少なくなるということなんです。

 私は前の渡辺喜美大臣と中川さんにも申し上げたんですけれども、保証枠が広がったって、大臣、千代田区を実際歩いてみましょう。まあ千代田区はまだいいけれども、印刷関係はひどいと思うんですよ。今銀行からがんがんに借りられるかどうか、保証枠を広げて。それよりも、むしろ払う金を少なくしてあげる減税が優先ですよ。今の景気対策は絶対にそう、私はそう思っています。

 したがって、今決まっているのは、確かに一千百億円出してやる、減収しても仕方ないと財務省はおっしゃっている。その一千百億円だけじゃなくて、もっと法人税を減税すべきときが今私は来ていると思います。これが、やはり百年に一度に対応する、本当に効き目がある減税策だと僕は思いますけれども、大臣、いかがでございますか。このままでいいと思うか、もう少し下げるべきなのか、お答えいただきたい。

与謝野国務大臣 選挙に勝つために税率を下げたわけではないので。我々も、むしろ民主党のように大胆に一一%というのを提案したいくらいなわけですけれども、それでは法人税の基本税率とのアンバランスとかその他の税制の税率との均衡を欠くということで、この辺がぎりぎりではないかという判断です。

 確かに、算術的に割るとたった六万円とおっしゃいますけれども、これでもかなり主税局としては気前よくやったつもりでございます。

下条委員 取る側に立っていらっしゃるので、どうしてもそういうお答えになると思いますけれども、さっき申し上げた、なぜ私がデュレーションギャップから申し上げたかという原点はそこなんですよ。ここでためていくのがいいのか、塩川元財務大臣が委員会で言いましたけれども、これだけ苦しんでいるんだから、何であと一千億出せないんですかと言いたい。

 それは、赤字国債を発行しなくてもいいんですよ。デュレーションギャップは既に五十六分の一まで落ちているんですから、危険性が。その中であと一千、一千五百をやるだけで、それだけで法人税率がぐっと落ちて助かるんです、払う金が少なくなって。今、選挙がなくてもいいです。ずっとないわけじゃないから、近いうちにあるわけですから。だけれども、本当に今必要なんです。そうだという声が、僕の事務所にも会館にもがんがん来て、民主党にも来ています。僕は、ここにいらっしゃる自民党の方にも来ていると思いますよ。

 今こそ英断をして、一千百億円じゃないじゃないですか、準備金はまだまだ何兆も残っているんです。だって、大臣だってそれを減らせと言っているんですから、もう一つ英断して、準備金を出すつもりはありませんか。あと一千百億円ぐらいでいいんですよ。

加藤政府参考人 恐縮でございますが、一点だけ事実関係を御説明させていただきたいと思います。

 ただいま大臣の方から御答弁ありましたように、この一八%という御提案は、法人税の基本税率との関係、そして私が申し上げたいのは、個人の事業主の課税との関係もぜひ考慮をいただきたいと思います。課税所得八百万円の個人事業主の方、限界税率は国税だけで二三%でございます。平均税率でも一五%でございます。したがいまして、どういう事業形態でやっているかということのバランスもこれはぜひ考慮に入れていただきたい。

 それから減税額のカウントも、確かに千百億という数字でございます。これは、赤字法人が多い、それから逆に所得の少ない法人が多いということも影響しておりますので、そういった点も御考慮いただきたいと思います。

下条委員 政治家の使命というのは、私は、論客である与謝野大臣には言いにくいんですが、やはり優秀な国家公務員の言うことを聞くことではないと思っています。やはり政治家が自分の指針を持って、一体どういう目線で自分が選ばれて、そしてそれを政策で実行するかだと僕は思うんですね。ですから、局長からおっしゃるのはそういう答えに決まっている、僕が部下だったらそうじゃなきゃ飛ばされちゃいますから。

 ですから、それはわかるんですが、何兆もあるんですから、今必要なのは、例えば、これはもうお答えにならなくていいですけれども、アメリカのオバマがやったのは二年間で五十兆円ですよ。十年で七十三兆円、二年間で五十兆円の景気対策をやる。そのうち三六%が減税です。もうこれは釈迦に説法です。このぐらいやらないと動かないですよ。やれば民主党は大変だと思いますけれども、私は本当にそう思う。

 今苦しんでいる人がたくさん、皆さん、これは私なんかの選挙区の人たちもいますよ。私はこれは議事録に残していただいて、どうなるか。去年新銀行東京のことも言いましたけれども、ああいう結果になりました。必ずこの件は近いうちに出てくると思いますけれども、もう少し減税を、後で、あのときは下条にああ答えたけれどももうちょっといったらということがこれから出てくれば、温かい回答かなと思っております。

 ちょっと時間がないので、次に移ります。

 次は、時間の関係でちょっと法案から離れますが、もう一つだけ私が言いたいのは、昨年の十一月に本会議場で私は麻生総理に、IMFについて、約十兆円の融資をしますという話を出しました。麻生さんに私が申し上げたのは、ほかの国が、百八十数カ国が一カ国も一円も出さないと。外貨準備は、もう釈迦に説法ですが、中国の方がずっと多いですから。中国は今大変な状態で、きょうも予算で中国の軍事のことについて私どもの前原委員の方から話したとおりで、そういう状態になっている中でも、中国は自国を守るために、金を出しませんよ。その中でなぜ十兆円出すかというのを、去年の中川前大臣と麻生総理に本会議場で質問させていただいたんです。

 実を言うと、新聞その他で非常に隠れてしまっていたんですが、この二月十三日に前大臣の中川大臣が、イタリア・ローマにおいて、IMFのストロスカーン専務理事とこの融資の調印を終わっちゃったんです。これはちょっと申し上げにくいけれども、いろいろなことが前大臣はあったので、その部分で完全にカムフラージュされていて表に出なかったんですよ。私は非常にこれは危惧しているわけですよ。

 それで、私が与謝野現大臣にお伺いしたいのは、十兆円ですからね。いいですか、大臣。まあ、お聞きになりながらやってください。要するに、個人の住宅ローンには百十億円しか使えないよ、そして法人税も千百億円しか使わないぞと。もっと下げてあげればいいのにというときに、外貨準備とはいえ、それを担保にして十兆円、ほかの国が一円も出さないのに出している。

 この条件は、もう釈迦に説法ですけれども、金利が〇・六四とか、何かいろいろ出ています、私もちょっと読ませていただいたけれども。その中で、このIMFの融資資金の条件というのは、一年が期限、そしてIMFの要請によっては五年までは延長できますよという条件ですね。そうですよね、大臣。

 そうすると、私が何を言いたいか。五年でちゃんと返してもらえますかをここで議事録に残してもらいたいんです。この十兆円の融資資金は、IMFとの間で調印したと思います、前大臣が。だけれども、本当に一年と最長五年で返してもらうんですか、ここで約束してください。

与謝野国務大臣 ほかの国が一円も出さない、ほかの国が出さないから日本が出すということも言えるわけでして、それだけの国際的な責任を果たすということも大事である。特に、日本の経済というのは世界の経済とつながっているわけでして、一国だけで成り立っているわけではありません。

 他の国が決済不能に陥るようなことを放置していいわけはないわけでして、そういう意味で、IMFに対して融資を一千億ドル出したというのは、やはり日本として国際的な責任を果たしているということになると思います。

 それから、これは別に隠してやったわけではなくて、きちんと表に出してやったわけです。

 それから、IMFのような確立された国際機関を信用するなということはやはり言えないんだろう。確立された国際機関というものを信用して行動するというのが、やはり日本の行動の仕方の一つだろうと私は思います。

下条委員 もう時間が来てしまったんですけれども、私が言っているのは、信用するしないじゃなくて、ほかの国が一円も出さない、そして交渉しているかどうかは見えていない。審査条件はマクロとミクロの違いがあります。今までマクロですから。ミクロの部分の話になります。そして一年ですから、向こうの言いなりに五年で返してもらうんですかの確約を僕は欲しいわけですよ。決して、困っているところに払うなと言っているわけじゃないんです。三十二兆のうちの十兆円を日本だけ出すということ自体が不自然だという話を私はしているんです。

 ちょっと時間が来ちゃっているんで、もう最後で結構でございます。そこはきちっと財務大臣として、後を継がれた財務大臣として確約をとる、五年後にはきちっと融資額を返してもらうということをここで明言していただきたいと思います。最後にお願い申し上げます。

与謝野国務大臣 融資でございますから、ちゃんと期間の定めがあるわけですから、当然その期間の定めを日本としては信用して融資するということでございます。

下条委員 ありがとうございます。ぜひ、そうすることを含めて、私はウオッチしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 時間が参りましたので、以上にします。ありがとうございました。

田中委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 きょう最後の質問でございますので、よろしくお願いをいたします。

 今の日本経済の危機の性格をどのように見るかという点からただしていきたいと思います。

 一昨年のサブプライムローンに始まり昨年のリーマン・ブラザーズの破綻、アメリカ発の金融危機というふうに言われますけれども、日本の場合は、金融危機から始まったというよりも、その後の製造業の生産の急激な低下、これが非常に激しいのが特徴だと思うんです。

 それは、日本経済の構造が、内需というよりもむしろ輸出の側に非常に偏っていた、こういう経済構造に、つまりアメリカへの輸出に依存する形での経済成長といいますか、そういう構造があったためにそのショックが大変大きかった、私はそのように思いますけれども、大臣はどのような御認識でしょうか。

与謝野国務大臣 先生が御指摘のように、金融危機が直接我が国のこの不況に打撃を与えたわけではないと思っております。製造業が、特に輸出が不振になったということが引き金で、株価も急落し、すべてがうまく回っていないというのが現状でございます。

 それで、多くの方が、内需中心の経済をやれ、こうおっしゃるんですけれども、その場合の内需というのが何かというのは、なかなか名案というものはないわけです。ただ、ここ十年間ぐらい賃金が伸び悩んでいるということは事実でありまして、それがやはり、一つの大きな問題ではないかと私は思っております。

佐々木(憲)委員 日本経済の弱点といいますか一番弱いところが、今大臣もおっしゃいましたように、内需の中の特に賃金を中心とする家計消費、これが大変低迷しているというところに大きな問題があると私は思っております。

 お配りした資料を見ていただきたいんです。

 実質GDPを押し上げている項目ですが、特に民間最終消費支出、これは家計中心であります、それから財貨・サービスの輸出。家計は、GDP全体の五五%程度を占めているわけですが、GDPの押し上げ効果を見ますと、一九八〇年から八五年、この五年間は、寄与率を取り上げますと五三・二%だったわけです。これが、輸出を見ますと一八・一%で、当時、八〇年代の前半は家計消費が全体を支えていたことがわかるわけです。

 ところが、二〇〇二年から二〇〇七年、この五年間は、民間最終消費支出、この部分が三六%に落ちておりまして、逆に、財貨・サービスの輸出が五七・九%、このように上がっているわけです。つまり、日本経済の体質が、内需、とりわけ家計が非常に深刻な事態になっている中で、国内に売るよりも外国に売る、とりわけアメリカへの輸出が急増する形で日本の経済そのものが支えられていた。この表はそういうことを意味していると私は思うわけでございます。

 なぜこういうことになったのか。これが、根本問題を考える場合大変大事だというふうに私は思うわけです。

 一つの要因として、日本の大手企業がこの間非常に力をつけて巨大化したというのが一つであります。巨大化してただ大きくなっただけではなくて、外国に進出をする、とりわけアジアを中心に、いわば多国籍企業という形で進出を始める。このことが、国内の経済にとって大変マイナスの影響をもたらしたのではないかというのが私の考え方でございます。

 私は二年前に、「変貌する財界」という本を出しまして、日本経団連を中心とする日本の大企業の構造というのは、一体どのように変化したのかという分析を統計的にやったことがございます。

 これによりますと、結論的に言いますと、総資産はこの三十数年間で十倍にふえているわけであります。売上高もほぼ同じぐらいふえておりますが、労働者は、大体二倍ぐらいに常用雇用はふえているだけでございます。売上高に占める輸出それから海外生産、この占める比率は一八・七から三九・四%に非常に大きくふえております。つまり、日本の大企業が巨大化すると同時に、輸出と海外生産、これが非常にふえるという形で、日本の経済が外需依存型に大きく構造的に変わってきた。

 しかもその上に、もう一つだけつけ加えますと、大手企業の発行している株式は、この間、外資の占める比率、外資保有が三%程度だったのが現在三〇%になっているわけです。つまり、日本の財界、特にその総本山と言われる日本経団連の中枢が、アメリカ資本によってかなり株式が押さえられている。これが、今の日本の経済を主導している日本経団連の企業の姿でございます。

 そういう状況で一体何が起こるかということなんです。

 アジアに進出をしますと、アジアの労働者の賃金は当然日本よりも低いわけですね、六分の一あるいは十分の一と。それを目指して日本の企業は進出をして、利益を上げようとするわけです。それが進めば進むほど、日本国内の労働者の賃金というものは、アジアと比べてまだ高いじゃないかと。

 つまり、高コスト構造が国内につくられているので、これを何とかしなければならぬ、そういう動きが起こってきて、そのためには、日本の労働政策を従来より流動化させて、非正規雇用をどんどんふやしていく、そういう方向に労働法制の規制緩和というものが行われて、その結果、今大臣がおっしゃったように、賃金が事実上下げられていくという傾向が生まれた。

 私はそのように思うわけですけれども、大臣はどうお考えでしょうか。

与謝野国務大臣 やむを得ない部分もあったと思うんですけれども、やはりバブルの後始末、あるいは国際競争の中で、日本が生き残るためにはいろいろなことをやらざるを得なかった。

 しかし、振り返ってみますと、やはり会社経営なんかを、会社は株主のものだというような誤った考え方というのがあったと思うので、やはり会社というのは、そこで働いている人たちの生活のためということは、基本的な考え方として経営者は持っていなきゃいけない、私はそういうように思っております。

 もちろん、会社のステークホルダーというのは、従業員でもあるし株主でもあるし、関連企業もあります。しかし、株主を最も重視した経営というのは、日本の風土にはなじみのないものだというのが私の最近の心境でございます。

佐々木(憲)委員 その点についてはどうも、私も同じ考えで共通する部分があるわけですね。

 つまり、日本の巨大企業は、従来は国内の株主が中心だったわけです。それが、現在は三分の一がアメリカに握られている。そのアメリカ的な発想から、株主の利益をまず優先させなさい、そういう圧力が当然加わってくるわけですね。そうしますと、株主への配当をまず優先する、労働者の賃金は二の次、三の次になっていく、そういう構造に変わってきたのではないか。

 ですから、私はそこを根本的にもう一度見直す必要があると。つまり、経営のあり方、それから日本の政策の方向というものを、一体だれのためのものでなければならぬのかという点を根本的に考え直していく必要があるのではないか、そういう時期に今来ているというふうに思うわけでございます。

 賃金の押し下げという点でいいますと、これは二年ほど前にミニ経済白書ということで出されたものですけれども、これは内閣府の文書ですが、この中ではこう書かれているわけです。「非正規雇用者の賃金は正規雇用者に比較すると相対的に低い水準にあり、企業内で非正規雇用者比率が高まることは平均賃金水準を押し下げることになる。」こういう形で、今、平均賃金が押し下げられてきた。押し下げられただけではなくて、雇用そのものも切りやすい派遣という形が非常にふえてきた。そのために、今、日本の大手企業を中心とした製造業における大規模な雇用の削減が行われる。

 しかし一方で、株主の配当は、上場企業の三分の二は横ばいかあるいは増配なんですよ。これは余りにも、ギャップを拡大する方向に行っているのではないかというふうに私は思うわけでございます。

 もう一つの問題は、内需を冷やすという点でいいますと、家計の負担が重くなったというのがこの間の特徴だと思います。その家計の負担、細かいことは言いませんけれども、この間、医療にしろ年金にしろ介護にしろ、私が小泉内閣以来の負担増をずっと調べてみますと、四十六項目ありました。四十六項目合わせて十二兆七千億円になるんです。赤ちゃんからお年寄りまで、一人当たり十万円ですね。四人家族で四十万円の負担。森内閣のときになかった負担が小泉内閣以来積み重なって、今、年間そのぐらいの負担増になっているわけです。

 この賃金の引き下げと国民に対する負担増というものが、国内の需要を家計中心に押し下げてしまって、国内で物が売れないからますます外国依存、その構造が悪循環として繰り返され、結果として、アメリカのあの金融バブルの崩壊のもとで日本経済の実体経済そのものが直撃を受ける、こういう状況になっているわけです。

 そこで問題は、この内需をどう拡大するかという点で、先ほども少し触れられましたけれども、やはり雇用の安定をどう図っていくか。企業はまだ内部留保が二百三十兆ほどあるわけです。その内部留保を、これは全部が現金ではもちろんありません。しかし、現金化できる部分はかなりあります。その内部留保を利用して雇用の安定に努力をする。国は国で、これに対して安定した雇用確保のための法的な改正を行う。それから、社会保障その他、生活の不安を解消するための政策を実行する。これが内需拡大の基本になければならぬと思います。

 そういう方向への転換というのが私は一番大事なことだと思いますけれども、大臣のお考えをお聞かせいただきたい。

与謝野国務大臣 経済を活性化させるために、どの部分で内需が発生し得るかということをずっと勉強していきますと、なかなか公共事業もない、この分野もない、やはり行き着くところは、医療とか介護とかという社会福祉の分野の内需というものが残された日本の内需ではないか、私は最近そう思っております。

 これはどうやって使えるかというのも、また財源との関係で非常に難しいわけですけれども、やはり内需を振興する、どこでできるのかといえば、残された分野はそういう分野であると。もちろん、雇用対策という分野も一つそうですが、なかなか昔のような物の考え方ではいけないのではないか、今そう思っているわけでございます。

佐々木(憲)委員 賃金の引き上げというのも、これは労使関係でというのが基本だとよく政府は言いますけれども、しかし、派遣労働という形態を転換して、常用雇用を中心とした雇用体系に変えていく、これは法的な整備も伴って必要なものだと私は思いますし、それが行われれば、安定した雇用に転換していくきっかけになると思います。

 そういう意味で、私どもは、労働法制の抜本的な改正、特に派遣労働の法制の抜本的な転換ということを要求しているところでございます。九九年以前に戻せというのが多くの国民の共通の声だという点を、ぜひ御理解いただきたいと思います。

 さてそこで、今度は税制の面ですけれども、輸出依存型になって大企業の輸出が伸びれば伸びるほど、消費税は、日本の大企業が自動車やテレビを外国に売ると、外国から消費税をもらえないという理由で消費税分を還付するというのが日本の制度でございます。

 結局、日本の大企業は、自分で納税した分の還付を受けるというのではなくて、実際上、例えば自動車をつくる場合には膨大な部品が必要なわけですね。その部品を、下請、孫請、そういう形で広大な下請業者から調達するわけです。その際に、下請の単価の中に当然消費税は含まれなければならぬわけですね。ところが実際に、力関係で、下の中小企業に対しては、消費税分はまけておきなさいよ、それはこっちに回さないでくれよ、こういうことをしょっちゅうやっているわけです。

 今、そういう形で消費税を親企業に上乗せできない中小企業がたくさんあるわけです。そういう形で消費税を中小企業に押しつけておいて、しかし輸出をしたんだから還付は受けますよと。こうなりますと、自分の払っていない、つまり他人に払わせた消費税分の一部の還付をみずから受ける、こういう部分は、丸々、大手企業にとっては、いわば寝ていてもお金が転がり込んでいるようなシステムでありまして、日本の大企業のかなりの部分がこういう形で還付を受けているということになりますと、これもやはり非常に重大な不平等な状況ではないかと私は思います。

 そこで、数字を確認します。

 消費税の国税分だけで結構ですけれども、還付が一体どのくらいになっているか、特に大手企業、十億円を超える部分というのはどのくらいの金額なのか、数字がわかりましたら示していただきたいと思います。

岡本政府参考人 お答えいたします。

 売り上げが十億円を超えている法人の平成十九年度分の消費税の還付税額は約二兆五千億円、正確に申しますと二兆四千六百二億九千四百万円というふうになっております。

佐々木(憲)委員 これは全体でも二兆七千五百億円。皆さんにお配りした資料を見ていただければわかりますが、約九割が大企業、十億円を超える大企業に還付されているわけです。

 この九割分というのは大体輸出関連の企業でございまして、具体的に言いますと、次のページをあけていただきますと、例えばトヨタ自動車だけでも、日本最大の輸出企業でありますが、年間の還付金額が三千二百十九億円です。ソニーが千五百八十七億円、本田技研千二百億円、日産自動車千三十五億円、キヤノン九百九十億円、マツダ八百三億円、松下電器産業、パナソニックですね、七百三十五億円、東芝七百六億円、三菱自動車工業六百五十七億円、スズキ五百十八億円。この十社だけでも、一兆円を超える膨大な消費税の還付が行われているわけです。

 これもかなりの部分が、中小企業に対して、消費税の負担を自分のところで負担せずに押しつけている、そういうやり方をしているところが圧倒的に還付を受けている、こういう関係になっているわけですね。

 私は、この消費税の還付の実態というものを大臣はどのように認識されているのか、または、これをどう是正する必要があると感じておられるのか、この点をお聞かせいただきたいと思います。

与謝野国務大臣 日本の消費税はヨーロッパの付加価値税に近いものでございますが、諸外国でも、輸出をした場合には、付加価値税は還付しているというのが通常の制度であると思います。

 ただ、消費税分だけまけろというのはいかにもお行儀の悪い話でございまして、これは、実は税の名前を使った値引き交渉であって、やはり下請にいろいろなことのしわ寄せをしているという典型的な例であると思います。

 我々としては、消費税を導入した当初から転嫁、特に中小企業がこの転嫁問題で苦しまないようにいろいろ周知徹底をしてまいりましたし、消費税の名をかりた値引き交渉というのはやはりやってはいけないことだと思っております。

佐々木(憲)委員 転嫁という点でいいますと、経済産業省が調査をしたことがあります。私は今でもやるべきだと思うんですが、少し前なんですけれども、転嫁できていない企業が大体半分ですよ。それから中小企業の場合は、場合によっては七割ぐらいの企業が転嫁できていないんです。小売業で消費者に転嫁できないという場合もありますし、それから下請で、親企業からこの分をかぶれと言われて負担させられている面もありますし、結局、弱いところが一番しわ寄せを受けているわけであります。

 その一方で、大手企業の方は、消費税をみずから納めなければならないのにそれをやらない状況というのが圧倒的に多いわけです。その場合には、当然その還付を受けたら自分の懐に入れてしまって、中小企業なんかには配りませんからね。結局、その点、ぼろもうけといいますか、税金を回り回って懐に入れてしまう。

 この大企業が、今や日本経団連は、消費税をもっと上げなさいと。今、二〇二五年度一七%にするという提案が、経団連が社会保障制度に関連して報告書を出したというんですね。

 寝ていて懐に入ってくる消費税分の還付金が、税率が上がれば上がるほどふえていく。こういう今のゆがんだあり方というのは、私は直す必要がある。消費税を上げること自体に私は絶対反対でありますし、こういうものを根本的に見直すということが必要だと思います。

 最後、大臣、どうですか。

加藤政府参考人 今、御指摘いただきました輸出免税、還付につきましては、先ほど大臣から答弁申し上げましたように、消費税の基本的な課税のあり方は、これは各国、国際的に共通ですが、消費地で課税するということでございますので、前段階、仕入れの段階で負担している税金につきましては控除する、控除し切れない分は還付するというのは基本だと思います。

 先生先ほどから御指摘の点は、まさに大臣申し上げましたように、値決めの問題だと思います。この問題につきましては、御案内だと思いますが、下請代金支払遅延等防止法の法律によって、これは運用も、消費税、地方消費税相当分を支払わないということにつきましてはこの法律に違反するということで、公正取引委員会の方で事務運営されているところでございますので、いわゆる消費税というものを使った値引きということについては、やはり法律上きちっと対応する必要があると考えております。

佐々木(憲)委員 法律上対応していれば、こういう問題が起こってこないわけです。

 中小企業は、今のこの経済危機のもとで大手企業にどんなに下請単価をたたかれているか。大体、発注そのものが大幅に減らされているわけです。下に行けば行くほど、七割減った、九割減った、仕事がゼロだ、こういう状況でありますから、値上げ交渉で消費税分上乗せなんというのはなかなかできないわけです。しかも、それをチェックする体制だって整っていないわけですね、行政の側だって。そういう中で一方的に押しつけられているというのが現状なんですよ。

 ですから、今大事なことは、そういうことをよく調査して、消費税をただ上げればいいということではなくて、私は消費税は減税した方がいいと思っているんです、逆に。そういうふうに政策そのものを、やはり発想を根本的に転換して対応すべきだというふうに私は思っておりますので、今後ともこの議論は続けていきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

田中委員長 次回は、明二十七日金曜日正午理事会、午後零時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時十三分散会


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