衆議院

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第10号 平成21年3月13日(金曜日)

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平成二十一年三月十三日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 田中 和徳君

   理事 江崎洋一郎君 理事 木村 隆秀君

   理事 竹本 直一君 理事 山本 明彦君

   理事 吉田六左エ門君 理事 中川 正春君

   理事 松野 頼久君 理事 石井 啓一君

      石原 宏高君    稲田 朋美君

      亀井善太郎君    後藤田正純君

      佐藤ゆかり君    篠田 陽介君

      鈴木 馨祐君    関  芳弘君

      とかしきなおみ君    中根 一幸君

      原田 憲治君    平口  洋君

      広津 素子君    松本 洋平君

      三ッ矢憲生君    宮下 一郎君

      盛山 正仁君    山本 有二君

      池田 元久君    小沢 鋭仁君

      下条 みつ君    鈴木 克昌君

      古本伸一郎君    吉田  泉君

      和田 隆志君    谷口 隆義君

      佐々木憲昭君    野呂田芳成君

      中村喜四郎君

    …………………………………

   内閣府副大臣       谷本 龍哉君

   財務副大臣        竹下  亘君

   財務大臣政務官      三ッ矢憲生君

   政府参考人

   (財務省国際局長)    玉木林太郎君

   参考人

   (日本銀行総裁)     白川 方明君

   参考人

   (日本銀行理事)     水野  創君

   参考人

   (日本銀行理事)     山本 謙三君

   参考人

   (日本銀行理事)     中曽  宏君

   財務金融委員会専門員   首藤 忠則君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十三日

 辞任         補欠選任

  越智 隆雄君     篠田 陽介君

  階   猛君     吉田  泉君

同日

 辞任         補欠選任

  篠田 陽介君     越智 隆雄君

  吉田  泉君     階   猛君

    ―――――――――――――

三月十三日

 関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一三号)

同月三日

 納税者権利憲章の制定ないし国税通則法の一部改正を求めることに関する請願(穀田恵二君紹介)(第六六五号)

 酒類小売業者の生活権を求める施策の実行に関する請願(井上義久君紹介)(第六六六号)

 同(小野寺五典君紹介)(第七〇四号)

 同(太田昭宏君紹介)(第七〇五号)

 同(稲田朋美君紹介)(第七二〇号)

 同(福田康夫君紹介)(第七二一号)

 同(逢沢一郎君紹介)(第七七〇号)

 同(井澤京子君紹介)(第七七一号)

 同(遠藤利明君紹介)(第七七二号)

 同(土井亨君紹介)(第七七三号)

 同(原田憲治君紹介)(第七七四号)

 同(山本拓君紹介)(第七七五号)

 保険業法を見直し、団体自治に干渉しないことに関する請願(穀田恵二君紹介)(第六六七号)

 同(岡本充功君紹介)(第七七六号)

 消費税増税反対、住民税をもとに戻すことに関する請願(吉井英勝君紹介)(第六六八号)

 消費税大増税の反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第六六九号)

 同(石井郁子君紹介)(第六七〇号)

 同(笠井亮君紹介)(第六七一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第六七二号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第六七三号)

 同(志位和夫君紹介)(第六七四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第六七五号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第六七六号)

 同(吉井英勝君紹介)(第六七七号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第七〇六号)

 同(石井郁子君紹介)(第七二二号)

 同(笠井亮君紹介)(第七二三号)

 保険業法の適用除外に関する請願(仲野博子君紹介)(第六七八号)

 消費税増税をやめることなど暮らしと経営を守ることに関する請願(穀田恵二君紹介)(第六七九号)

 同(近藤昭一君紹介)(第七七七号)

 同(松本龍君紹介)(第七七八号)

 保険業法改定の趣旨に沿って、自主共済の適用除外を求めることに関する請願(松本剛明君紹介)(第七二四号)

 消費税増税に反対、所得税減税を求めることに関する請願(石井郁子君紹介)(第七二五号)

 同(笠井亮君紹介)(第七二六号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第七二七号)

 同(志位和夫君紹介)(第七二八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第七二九号)

 同(吉井英勝君紹介)(第七三〇号)

同月十一日

 酒類小売業者の生活権を求める施策の実行に関する請願(岩屋毅君紹介)(第八四七号)

 同(北神圭朗君紹介)(第八四八号)

 同(滝実君紹介)(第八四九号)

 同(高村正彦君紹介)(第八七五号)

 同(福岡資麿君紹介)(第八七六号)

 同(中川正春君紹介)(第八九五号)

 同(福岡資麿君紹介)(第八九六号)

 同(木村義雄君紹介)(第九〇九号)

 同(小坂憲次君紹介)(第九一〇号)

 同(小宮山泰子君紹介)(第九一一号)

 同(杉浦正健君紹介)(第九四三号)

 同(西村康稔君紹介)(第九四四号)

 保険業法を見直し、団体自治に干渉しないことに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第八五〇号)

 同(石井郁子君紹介)(第八五一号)

 同(笠井亮君紹介)(第八五二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第八五三号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第八五四号)

 同(志位和夫君紹介)(第八五五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第八五六号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第八五七号)

 同(吉井英勝君紹介)(第八五八号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第九一二号)

 保険業法改定の趣旨に沿って、自主共済の適用除外を求めることに関する請願(松本剛明君紹介)(第八五九号)

 同(穀田恵二君紹介)(第九四五号)

 同(市村浩一郎君紹介)(第九七五号)

 消費税増税をやめることなど暮らしと経営を守ることに関する請願(穀田恵二君紹介)(第八七七号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第八七八号)

 同(志位和夫君紹介)(第八七九号)

 消費税増税反対、住民税をもとに戻すことに関する請願(穀田恵二君紹介)(第九一三号)

 納税者権利憲章の制定ないし国税通則法の一部改正を求めることに関する請願(阿部知子君紹介)(第九一四号)

 同(赤松広隆君紹介)(第九一五号)

 同(菅野哲雄君紹介)(第九一六号)

 同(重野安正君紹介)(第九一七号)

 同(辻元清美君紹介)(第九一八号)

 同(中川正春君紹介)(第九一九号)

 同(日森文尋君紹介)(第九二〇号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第九四八号)

 同(石井郁子君紹介)(第九四九号)

 同(笠井亮君紹介)(第九五〇号)

 同(穀田恵二君紹介)(第九五一号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第九五二号)

 同(志位和夫君紹介)(第九五三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第九五四号)

 同(園田康博君紹介)(第九五五号)

 同(高木義明君紹介)(第九五六号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第九五七号)

 同(藤井裕久君紹介)(第九五八号)

 同(吉井英勝君紹介)(第九五九号)

 保険業法の適用除外に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第九四六号)

 庶民大増税反対に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第九四七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 金融に関する件(通貨及び金融の調節に関する報告書)


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     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁白川方明君、理事水野創君、理事山本謙三君、理事中曽宏君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として財務省国際局長玉木林太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田中委員長 去る平成二十年六月十日及び十二月十二日、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づき、それぞれ国会に提出されました通貨及び金融の調節に関する報告書につきまして、概要の説明を求めます。日本銀行総裁白川方明君。

白川参考人 今回、日本銀行の金融政策運営について詳しく御説明申し上げる機会をいただき、厚く御礼を申し上げます。

 日本銀行は、昨年六月と十二月に、平成十九年度下期と平成二十年度上期の通貨及び金融の調節に関する報告書をそれぞれ国会に提出いたしました。本日は、最近の日本経済の動向と金融政策運営について申し述べさせていただきます。

 まず、最近の経済金融情勢について御説明申し上げます。

 我が国の経済を見ますと、海外経済の減速により輸出が大幅に減少していることに加え、企業収益や家計の雇用・所得環境が悪化する中で、内需も弱まっています。金融環境を見ますと、中小企業を中心に資金繰りや金融機関の貸し出し態度が厳しいとする先が依然増加するなど、厳しい状態が続いています。これらを背景に、我が国の景気は大幅に悪化しており、当面、悪化を続ける可能性が高いと予想されます。

 物価面では、国内企業物価は国際商品市況の下落を主因に下落しています。生鮮食品を除くベースで見た消費者物価の前年比は、石油製品価格の下落や食料品価格の落ちつきを反映して足元低下しており、今後は、需給バランスの悪化も加わって、マイナスになっていくと見られます。

 次に、経済、物価の先行きに関するリスク要因について申し述べさせていただきます。

 世界的な金融情勢や海外経済の動向次第では、我が国の景気が下振れるリスクがあることに注意する必要があります。また、企業の中長期的な成長期待が低下し、設備や雇用の調整圧力が高まることを通じて、国内民間需要が一層下振れるリスクもあります。金融環境がさらに厳しさを増す場合には、金融面から実体経済への下押し圧力が高まり、金融と実体経済の負の相乗作用が強まる可能性もあります。

 物価面については、景気の下振れリスクが顕在化した場合や国際商品市況が下落した場合には、物価上昇率が一段と低下する可能性もあります。この場合、企業や家計の中長期的なインフレ予想が下振れるリスクに注意する必要があります。

 以上を踏まえ、金融政策運営について御説明申し上げます。

 日本銀行は、国際金融資本市場や米欧金融システムの動揺が深刻化した昨年秋以降、金融面から我が国経済を下支えするため、第一に政策金利の引き下げ、第二に潤沢な流動性供給による金融市場の安定確保、第三に企業金融円滑化のためのさまざまな措置という三つの柱に基づく金融緩和策を行ってきました。

 まず、政策金利については、昨年十月、十二月の二回にわたって引き下げ、現在は、無担保コールレートの誘導目標を〇・一%前後としています。また、金融市場の安定を確保するため、各国中央銀行と協調して金額無制限でドル資金供給を行っているほか、円資金についても、国債買い現先オペの積極活用や長期国債の買い入れ増額といった措置を講じながら、潤沢な資金供給を続けています。

 さらに、企業金融の円滑化のため、企業金融に係る金融商品の担保適格基準を緩和し、企業債務を担保に低利、金額無制限で資金を供給する企業金融支援特別オペを実施しているほか、CPと社債の買い入れといった中央銀行として異例の措置も開始しています。

 この間、日本銀行は、金融機関による今後の株式保有リスク削減努力を支援し、これを通じて金融システムの安定確保を図る観点から、本年二月に金融機関保有株式の買い入れを再開しております。

 最後に、今後の金融政策運営について申し述べさせていただきます。

 現在は、経済、物価の先行きについて、不確実性が極めて高い状況にあります。日本銀行としては、今後とも、経済、物価の見通しとその蓋然性、リスク要因を丹念に点検しながら、我が国経済が物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰していくために、中央銀行として最大限の貢献を行っていく方針です。

 ありがとうございました。

田中委員長 これにて概要の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

田中委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷口隆義君。

谷口(隆)委員 おはようございます。公明党の谷口隆義でございます。

 今、白川総裁の方から御報告があったわけでございますが、白川総裁御自身も先日、日銀内での会見があったときに、昨年第四・四半期におけるGDPまた鉱工業生産においては、がけから落ちるようなという比喩を使われるような状況であるというお話がありまして、私自身も垂直落下状態と。ある人は戦時に比較されるぐらいの大変な状況になっていると言う方もいらっしゃいます。

 それで、そういう状況の中であらゆる行い得ることをとっていかなければならないというように思っておるわけでありますが、この悪化のスピードというのは予想をはるかに上回る状況なんだろうと思います。それで、日銀では二〇〇九年の成長率を昨年十月末の時点での〇・六からマイナスの二%に下方改定をされたわけでございます。

 今聞いておりますと、白川総裁の方からは、企業支援等、今、日銀のとっている金融政策について御報告があったわけでございます。現況の経済金融状況についてお聞きしようと思いましたが、今若干触れられましたのでそのことは飛ばしまして、これは直接日銀じゃないんですが、昨日の日経新聞の夕刊を読みますと、次のG20の準備会合でガイトナー米国財務長官が、世界経済の回復のために各国がGDPの二%の規模で財政出動の協調を呼びかけようとされておられるようでございます。

 このような考え方について、まず、日銀総裁としての御所見をお伺いいたしたいと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 ただいまのガイトナー財務長官の提案という報道につきましては、その具体的な内容を承知しているわけではございませんので直接的なコメントは差し控えたいというふうに思いますけれども、一般論として申し上げさせていただきます。

 現在のようにゼロ金利に近く、金融システム面での緊張が強い局面では、大幅な有効需要の落ち込み、それがまさに現在直面している状況でございますけれども、そうした状況に対し、金融面からの対応だけでは限界があって、適切な財政政策の発動が必要であるということは、これは前回のローマのG7の声明にもあるとおりでございます。これは現在各国の共通の理解になっているというふうに思います。

 その際、同時に、財政の持続可能性を維持するために、中長期的な財政規律の確保が重要であること、また、財政の運営に当たっては長期的な経済成長に資するべきであるといった原則も各国で共有されております。私自身、ローマのG7に出まして、そうした議論を直接聞きましたし、それを踏まえた声明にも自分自身もサインをしているということでございます。

 こうした基本的な考え方のもとで、具体的な財政運営のあり方は、先ほども申し上げましたような基本原則に照らして、これは国民の選択として政府、国会において決定されるというものが私の考えでございます。

谷口(隆)委員 今のことについては、日銀が直接担当しているわけじゃありませんから、見解をお伺いいたしたわけでありますが、今、総裁御自身が、CPだとか社債の買い入れは今回初めて行う、企業支援をあらゆる手段を講じてやっていくということをおっしゃったわけでございます。今、日銀は、私が見るところ、私の個人的な判断では、やっておられることは違和感がなくて、日銀として最大のことをやっていただいているんだろうと思います。

 後ほど、もう何点かの問題を出して、きめの細かい対応のことをお伺いいたしたいと思いますが、その前に、今おっしゃった、日銀としての現下の大変な金融経済状況の混乱の中でやっていらっしゃることと、FRBも、どうも状況を聞いておりますと、バランスシートが毀損するんじゃないか、その後かなり問題が出てくるんじゃないかと思われるような、あらゆる手段を講じて今やっている、また、欧州中央銀行、ECB、英国中央銀行、BOE、この欧米の中央銀行もあらゆる手段を講じて今やっておられるわけでございます。中央銀行間の国際的な連携を御協議されておられると思いますが、今そのような欧米の中央銀行と日銀のやっていらっしゃる金融政策との整合性といいますか、また違いといいますか、そういうことについてお話をお伺いいたしたいと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 現在の各国の金融政策に入ります前に、実は二〇〇三年に、日本銀行が量的緩和政策を始めまして、その過程で日本銀行はABCP、資産担保のCPを買い入れました。これは当時、中央銀行としては、世界の中央銀行で全く初めてのオペレーションで、開始した当時は非常に異例の政策を中央銀行がとったということで、海外から見ますと、これは日本の特殊なオペレーションであるという感じを多分持ったんだろうというふうに思います。ところが、今回、今谷口先生御指摘のとおり、いろいろな中央銀行がそうした領域に入っているということで、各国が今異例の政策をとっております。

 御質問の、ほかの中央銀行との比較で申し上げたいと思いますけれども、日本銀行を含め、今世界の主要国の中央銀行は、三つの柱で金融政策を運営しているというふうに整理ができると思います。

 一つは、政策金利の引き下げでございます。

 現在、各国とも政策金利を引き下げました結果、例えば、FRBは目標金利でゼロから〇・二五、ECBは一・五%、BOEは〇・五、それぞれ極めて低い水準になっております。日本銀行は、目標金利が〇・一%でございます。現実のオーバーナイトのレートは、日本銀行が〇・一、アメリカが〇・二五、イングランド銀行が〇・五等で、日本銀行が今一番低いということでございます。いずれにせよ、どの国も極めて低い、文学的に表現しますとゼロ金利とかいうような言葉で表現されますけれども、かなり低い水準に今各国が誘導しているということでございます。

 二つ目は、金融市場の安定維持でございます。これは必ずしも狭義の金融政策だけではなくて、いわゆる最後の貸し手として資金供給することや、あるいは通常のオペレーションで潤沢に資金供給を行うことも含まれております。

 この点については、御承知のとおりFRBは、幾つかの大きな金融機関の経営困難に直面して、システミックリスクを防ぐために最後の貸し手としての資金供給を行いました。イギリスも同様でございます。そうしたオペレーションを今各国は行っております。

 日本銀行でございますけれども、幸い、個別金融機関に対して最後の貸し手機能を発揮しないといけないという状況ではございません。しかし、その他の面、すなわち適格担保の範囲拡大、あるいは年度末、年度越え資金の積極的な資金供給、あるいは長期国債買い入れを使っての資金供給、さらには金融機関保有の株式買い入れなどを行っておりまして、これはいずれも金融市場、金融システムの安定ということを強く意識した措置でございます。

 三つ目は、金融市場の機能が低下し、企業金融が全体として逼迫しているときに、その金融市場に対して中央銀行が働きかけるという政策でございます。

 これも、今御指摘のとおり、幾つかの中央銀行が採用しています。FRBは、いわゆる信用緩和、クレジットイージングという言葉で呼んでおりますけれども、コマーシャルペーパー、住宅モーゲージを組み込んだ証券化商品の買い入れを行っています。今月からは、自動車ローンあるいはスチューデントローンだとか、いろいろな証券化商品を組み込んだABSの買い入れも行うということでございます。日本銀行も、CP、社債の買い入れを行っている、あるいは先ほども御紹介しました企業金融支援特別オペを行っているということでございます。

 以上、長々申し上げましたけれども、私の印象として申し上げますと、まず、この三つの柱で点検した場合に、各国の中央銀行の行っている政策は非常に似ているという感じがいたします。もちろん、子細に見ますと若干異なっております。その違いはどこから来ているかといいますと、一つは、現実の金融機関あるいは金融市場の傷み方の違い、これがやはり大きいなというふうに思います。アメリカの状況、これは金融市場、金融システムの面ではやはり一番厳しい状況で、そうしたことを反映しているという感じがいたします。

 それから、先ほどFRBのバランスシートについて若干御懸念を表明されましたけれども、実はFRBの場合、確かに業務的にはFRBが買い入れを行うということを行っておりますけれども、先ほど申し上げたABSの買い入れ、これは総額一兆ドルという巨額の金額でございますけれども、そのうち、ロスが発生した場合最初の千億ドルは、TARPというこの前通りましたアメリカの法律を使って政府が損失を負担するというスキームでございまして、直接FRBの財務面に影響が及ばないような、そういう仕組みをとっているということでございます。

 若干の違いはございますけれども、いずれにせよ、どの中央銀行も現在の厳しい経済、金融の状況を踏まえて、先ほど申し上げたような柱に沿って政策をやっているというふうに理解しております。

谷口(隆)委員 連携をとりながら各国中央銀行間でやっていらっしゃるんだろうと思います。

 ちょっと個別の問題になるのですが、日銀が今やっていらっしゃる企業支援ですね。企業の資金繰り対策の一環として、先ほど総裁御自身がおっしゃったように、異例の措置として、二月の金融政策決定会合で初めて社債の買い入れを決めた。それで、総額一兆円を限度に銀行、証券会社から買い取る計画のようでございますが、三月四日に初めて入札が行われたということで、千五百億円の買い取り予定で四百四十九億円というような応札があったようで、いわば札割れになったわけであります。

 この札割れについて、市場関係者は、非常に日銀の条件が厳し過ぎるのではないかというようなことで、もし仮に日銀の条件が厳し過ぎるようであれば、本来、企業経営をやっていらっしゃるところが資金調達が大変困難な状況を見て日銀はそういう措置をとられたんだろうと思いますので、その目的を達せられないということにもなるわけであります。ですから、いわば少々のリスクを乗り越えてもやっていかなければならない、それが企業支援だということになるんだろうと思いますが、そのことについて総裁の御意見をお伺いいたしたいと思います。

白川参考人 最初に、社債の買い入れにつきまして、先生御指摘のとおり、三月四日に実施しました初回の社債の買い入れにおきましては、応札金額が少なかったわけでございます。その背景としましては、オペ対象先における買い入れ対象社債の保有金額が少な目であったことや、初回の買い入れなので様子を見た先もあったということが挙げられるというふうに思います。

 今先生御指摘の点の繰り返しになって恐縮でございますけれども、今回社債の買い入れを行うということは、もちろん企業金融の支援を行うというために行っているものでございます。その際、企業の信用リスクを直接負担するという異例の措置であるため、買い入れの実施に当たっては、通貨に対する信認の確保、これはこれでまた大事なことでございます。そうした観点から、信用リスクを適切に管理することも重要であるというふうに考えています。先ほど申し上げたFRBのケースも、これはアメリカなりにやはりそういうことを配慮したということであると思います。

 今回の日本銀行のケースに即して申し上げますと、これは買い入れということですから、適格担保の基準よりも要件を一段階厳しくしていまして、シングルA格相当以上というふうにしております。また、流動性供給という中央銀行の機能を踏まえた対応として、残存期間一年以内の銘柄を買い入れ対象としております。こうした要件がありますために、今後も買い入れ金額そのものは確かに大きくならない可能性があるというふうに認識しております。

 そういうことを申し上げた上でなんですけれども、日本銀行のねらいは、社債市場における資金仲介機能を日本銀行自体が大規模に肩がわりしていくということではありませんで、あくまでも、証券会社や投資家が必要な場合に日本銀行に保有社債をいつでも売却できるという安心感をつくり出し、市場における社債売買を促す効果や金融機関の貸し出し余力などを拡大する効果を通じて企業金融全体の円滑化に寄与することをねらった、そういう措置でございます。私の思いとしては、日本銀行が企業金融を支えるときに幾つかのパーツがあって、そのパーツ全体として何とか企業金融を支援したいという思いでございます。

 CPオペにつきましては、これは発表し、実際に買い入れを行いました後、CP市場が明確に状況が改善してきております。

 それから、銀行の貸し出しについても、これはいろいろな意味でまだまだ問題があることも十分認識しておりますけれども、実は欧米では、足元、貸し出しの伸び率が今急速に低下しておりますけれども、日本は、実は秋以降、貸し出し伸び率が逆に上がってきておる。つまり、欧米のように貸し出しを急激に落とすということにはならない状況で何とか今できておる。ただ、これは決して安心しているわけではございませんけれども。

 それから、担保の緩和、あるいはそうしたことも踏まえて、一定の企業債務を持ち込めば無制限で資金供給をするというオペ、これもじわじわと効果を発揮してきたというふうに思っています。

 私も、これは決して一個一個のパートで十分だというふうに思っているわけではございませんけれども、しかし、全体として何とか企業金融を円滑にしていきたい、これからもまた必要な点検を行っていきたいと思っています。

谷口(隆)委員 今総裁がおっしゃったように、CPのオペは非常に効果が出ておるようでございます。ところが、今申し上げた社債は、条件が厳しいということで、そのことについてお答えがなかったんですが、その条件を緩和しようということも念頭に持っていらっしゃるんでしょうか。

白川参考人 社債の買いオペは、これは月一回という形でスタートしまして、先般、第一回を行いました。まだ社債のオペは始めたばかりでございますので、現時点で今これを見直す考えがあるかというお尋ねですと、現時点でその考えはございません。

 ただ、先ほども申し上げましたけれども、最終的に必要なことは、企業金融をどうやって円滑化するか。そのためにどういう方法が一番有効であるかということはやはり常に考えておりまして、その意味では、これからも検討し、必要があれば必要な措置を日本銀行として講じていきたいというふうに思っています。

谷口(隆)委員 市場の状況をよく見ていらっしゃると思いますが、金融市場の安定ということも大きな目的の一つでございますから、金融市場または企業資金調達、こういうことも念頭に入れていただいて、機動的にやっていただければというように思います。

 その次は、先日、預金保険機構主催の会合のあいさつの中で白川総裁がおっしゃったことがあって、これは、失われた十年というのがありますよね、あの失われた十年の原因の一つに会計またディスクロージャーの不備を挙げていらっしゃるわけですね。今回のグローバル金融危機においては格段にこれが整備されているというようにおっしゃっておられます。しかしこの中で、しかし、市場流動性が極端に細った複雑な金融商品の評価のあり方、またオフバランスビークルの扱いなど、新たな課題が生じておるということをおっしゃっておられるわけです。

 これを敷衍したところの議論は、時価会計のあり方について、世界的に今ございます。これをよく理解されていない方は、株も含めて時価会計のあり方を議論していると思っている方が多いんですが、これはそうではなくて、商いのないような債券を中心とした議論なんですが、日本でも時価評価が一部修正されて、今私が申し上げた市場流動性が極端に細った複雑な金融商品の評価のあり方については、従来と異なる方法に変えようということになったわけです。

 こういうことで、今度は実態的なことですが、二月二十三日に初めて変動利付債を日銀は買い取りの対象として実施をされたわけでございます。私がお尋ねしたいのは、会計基準が変更したからこのような変動利付債を買われるということに至ったのか。もっと言うと、本質的な問題で、変動利付債そのものが持っているリスク、不安定さ、このようなことをかんがみられた結果、買い取ろうということにされたのか。そのあたりの状況をお伺いいたしたいと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 多少技術的な話が多くなって恐縮でございますけれども、昨年十二月に十五年変動利付国債を、物価連動国債それから三十年国債とともに国債買い入れの対象として追加することを決定いたしました。その上で、二月に買い入れを行ったということでございます。

 これの目的でございますけれども、これはあくまでも円滑な資金供給を実施する観点から、短期の資金供給オペレーションだけでやっていますとどうしても負担がかかりますから、長目の資金供給となる長期国債の買い入れを拡充するということ、その買い入れの増額に合わせてこれを決定したものでございます。その際、十五年の変動利付国債を追加することになったことでございますけれども、これは従来、日本銀行の国債の買いオペは市場の発展の状況に応じて範囲を拡大してきた、そういう歴史がございます。今回もそういう流れに沿っておるわけです。

 もう少し具体的に申し上げますと、市場中立性、つまり、日本銀行の国債買いオペというものがある国債は買うけれどもある国債は買わないという立場では、どうしてもそれは中立性を阻害していきますから、一般論としては中立的に買った方がいいということでございます。それから、変動利付国債の発行残高、これも一つの要素になってまいります。余り少ないマーケットに日本銀行が入っていきますと、これは池の中の鯨になってしまいますから、やはりある程度規模がないといけない。その点、規模もある程度大きくなってきたということでございます。そうした観点から、従来と同じ考え方に立ちまして、この変動利付国債も買い入れ対象にすることが適当だというふうに判断したものでございます。

 したがいまして、これはあくまでも金融調節ということでございまして、先ほど御指摘になりました時価会計との関係であるとか、あるいはこの金融商品自体にリスクがあるから、したがってこの際中央銀行が買った方がいいという、そういうふうな考え方ではありません。あくまでも金融調節の一環であり、国債市場に対して先ほど申し上げた観点で、これは対象とした方がいいという判断でございます。

谷口(隆)委員 市場では、そういうように変動利付債が評価損を計上しなくてもよくなったというようなことで日銀が買い入れ対象に入れたのではないかというように言っている方がおられるわけです。今総裁は、そうではないというような御答弁だったんですね。

 その次に、きょう財務省に来ていただいていると思いますが、財務省にちょっとお伺いしたいんです。

 財務省発表の二月の投資家部門別対外証券投資において、銀行部門で三兆九千億余りの大幅な買い越しとなっておるわけであります。リーマン・ショックのあった昨年の九月から本年一月まで五カ月間の買い越し額が、五カ月間の累計で二兆一千億余りでございますが、そういう意味では、この二月というのは外貨投資が非常に際立っているわけですね。それで、市場関係者の中では、ドルのインターバンク市場が十分機能していないのではないか、そういうことがあるので担保用の米国債を手当てしておるのではないかと言う市場関係者もおられるわけであります。

 それで、この周辺の背景の話をします。日銀も今、ドル資金を供給するのに大変一生懸命やっていらっしゃると聞いておりますが、日本における外銀のバランスシート圧縮がかなり進んでいる。このまま進めば、その外銀からドル資金を調達しておった邦銀の資金調達が困難になってくる。邦銀のドル資産が圧縮されるということになりますと、米国債などのドル資産の長期金利を押し上げるという要因にもなりかねない。在日の外銀の総資産残高は、一月末現在で約三十八兆円、昨年一月には約五十二兆円であったということで、この一年間で十四兆円程度のバランスシート調整が行われているというような状況なわけですね。

 それで、この二月の特別大きな、大幅な買い越しになったというのは、一体原因はどこにあると財務省は考えておられるのか、お伺いをいたしたいと思います。

玉木政府参考人 財務省で指定報告金融機関ベースでとっております対外及び対内証券売買契約等の状況、二月の居住者による対外投資でございますけれども、三兆九千億の買い越し、うち、中でも中長期債投資の買い越し額がネットで三兆五千五百九十一億円、特に銀行部門が三兆六千五百四十億円の買い越しということになっております。

 こうした銀行部門の、特に中長期債の買い越しというのは、当然のことながら、個々の銀行の投資判断ということになるわけでございますけれども、一般的な背景としては、昨年秋以降の金融危機に対応して欧米が政策金利を引き下げていく中で、債券金利の一層の低下を見込んだ銀行が欧米の国債を中心とした債券を買い増していく、こうした傾向があったものと考えております。

 銀行部門は、昨年九月以降、連続して中長期債の買い越しとなっております。二月はこうした市場を取り巻く環境に大きな変化はないと考えておりますが、御指摘のとおり、買い越し額が二月に一段と膨らんでおります。特に、多額の買い越しをした銀行があったものと承知しております。

谷口(隆)委員 この多額の買い越しをしておる金融機関が一体どこなのかというのは市場関係者の間で今いろいろうわさになっておって、これは、きょう具体個別の名前を言う予定はなかったんですけれども、例えば農中だとかゆうちょ銀行がやっているんじゃないかと。だから、財務省が直接資金介入するということではなくて、そういうようなことをそのような機関を通じてやっておるんじゃないかということを市場で言われておりますけれども、財務省、どうでしょうか。

玉木政府参考人 私ども、統計をとる際に若干の銀行からはヒアリングをしておりますけれども、個別の銀行の投資動向についてはコメントするのは差し控えさせていただきたいと思います。

谷口(隆)委員 要するに、そういう意味では、今申し上げたのはこのところの異常な金融状況の兆しなんですね、いろいろ金融市場が振れていますので。もうほとんどドルが外銀から調達できないというところもあるので、どうも聞くと、円投をして米国債を買っていこう、それで何かあったときにそれを売ってドルを調達したらいいわというようなことさえ考えてやっているというような市場関係者もいるわけです。

 今のところは、日銀はFRBとドルのスワップ等々行われて多額の資金を市場に供給しておりますので、そういう意味では私は何ら問題はないと思っておりますが、そういう刻々と変わる、冒頭お話をさせていただきましたように、まさに垂直落下状態で、がけから落ちるといったような状況に今なっておるわけでございますので、先ほどの総裁のお話のように、各国中央銀行はあらゆる手段を講じてやっているということですから、手段が商品を並べるだけではなくて、これは効果的なことをやっていかなきゃなりません。

 先ほど、社債の買い入れのときに、社債の買い入れもやるよというところで終わってしまえば余りよくないんだろうと僕は思うんです。ですから、少々中に踏み込んでも、一定程度のリスクを持っても、そのくらいやるよということを市場にメッセージを送ることも非常に重要でありますので、先ほどの問題ですけれども、社債の条件緩和等も念頭に入れてやっていただければと思う次第でございます。

 時間が参りましたので、これで終わらせていただきたいと思います。

田中委員長 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 おはようございます。

 それでは、私も、総裁初め、現下の経済動向、景気動向を中心に少し伺ってまいりたいというふうに思います。

 まず、景気動向についてお伺いをしたいわけでありますが、先ほど来いろいろとありました。まさに、百年に一度という言葉が飛び交っているわけでありますが、金融そしてまた経済、本当に世界同時不況の様相を呈しているということであります。

 金融機関が次々と破綻をするというような状況はおさまっておりますけれども、しかし、実体経済には非常に重大な影響が出てきておる、このように思っております。とりわけ、外需に頼ってきた我が国は本当に厳しい状況に直面をしておる、これはもう申し上げるまでもありません。昨年の十月から十二月のGDPの改定値で一二・一%というふうに昨日発表がありましたけれども、いずれにいたしましても、大変厳しい状況にあることは間違いないと思います。

 そこで、現在のところ、二十一年度の経済成長率、政府は実質でゼロ%、そして日銀が実質でマイナス二%、IMFが、これは数値の置き方はいろいろありますけれどもマイナス二・六%、こういうことになっておるわけでありますが、きのう、参議院の予算委員会で与謝野大臣は、一月から三月のGDPも非常に厳しい見通しが出ておるということでございました。それからまた言外に、いわゆる政府の見通しは下方修正をしていかざるを得ないというようなことも巷間言われておるわけであります。

 そういう中で、日銀として、総裁として、経済、景気の現状、そして今後の見通し、現在のところの御認識をまず最初に伺ってまいりたいと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 現在の日本の経済を考えます上で、これは世界同時景気後退でございますので、まず世界経済の見通しということからお話ししたいと思いますけれども、多くの方が御指摘のように、最近の変化は非常に急激でございました。昨年秋のリーマン・ブラザーズの破綻以降、完全に状況は一変したというふうに思っています。国際金融資本市場の緊張が一挙に高まりまして、海外経済も、アメリカだけではなくて、欧州、新興国まで景気減速が明確化しまして、全体として急速に悪化いたしました。

 少し数字で申し上げますと、実はIMFが世界経済全体の見通し、それから地域ごと、国ごとに見通しを折々公表していますけれども、昨年の今ごろといいますか昨年の一月に出した数字を見てみますと、世界経済は四・四%の成長というふうに言っていましたところ、ことしの一月に出した予測では〇・五%、つまり三・九%の下方修正でございます。同様に、先進国も二・一からマイナス二・〇ということで、これは四・一%の下方修正。要するに、世界全体、先進国あるいは国ごとに見ましても、実は大体四%下方修正している。一年間に四%も下方修正するということは、通常の見通し、このIMFの見通しも含めてなかったような、それだけ大きな落ち込みが現在進行中であるというふうに認識しています。

 こうした海外経済の急激な変化を受け、日本経済も輸出や生産が大幅に減少しています。企業収益や家計の雇用・所得環境も悪化する中で、内需の面でも弱まっているということでございます。企業金融も、先ほど来議論がありますとおり、秋以降急激に厳しさを増しております。これらすべてを背景に、我が国の景気は大幅に悪化していまして、当面、悪化を続ける可能性が高いというふうに判断しています。

 数字で申し上げますと、昨年十月の段階で成長率の見通しを一たん修正いたしましたけれども、この一月に政策委員会が中間見通しを行いまして、その十月の見通しに比べて大幅に下方修正しました。その数値は、二〇〇八年度がマイナス一・八%、二〇〇九年度がマイナス二・〇%ということでございます。二〇一〇年度はプラス一・五という見通しを一応出しております。

 ただし、その後発表されました数字は、いずれも非常に経済の状況を、ある程度というかかなりの程度予測はしておりましたけれども、しかし、それを上回る厳しい姿であったというふうに思っています。昨年十―十二月期の実質GDPや輸出、生産などの統計を踏まえますと、我が国経済は非常に厳しい状態が続いておりまして、景気のさらなる下振れリスクに注意が必要な状況というふうに認識しております。

 具体的な予測の数字というのは、これはいろいろな作業を伴いますので、時点時点で公表しておりますけれども、しかし、我々の判断としては今申し上げたようなことでございます。

 日本経済の先行きに関する中心的な見通しを言えということでありますと、中長期的な成長期待やインフレ予想が大きく変化しないというもとでは、二〇〇九年度後半以降、国際金融資本市場が落ちつきを取り戻し、海外経済が減速局面を脱するにつれて徐々に持ち直していくという姿を想定しております。ただ、この見通しは、繰り返しになりますけれども、大変に不確実性が大きいということで、これは日本経済のみならず海外も同様でございます。

 私、先週末、日それから今週の月曜日とBISで会議がございまして、各国の中央銀行の総裁が集まって議論がありました。いろいろなベースでの会合がございましたけれども、そこでの見通しを聞いていますと、標準的な見通しは、年末が一応底でそこから緩やかに上がるとはいいつつも、しかしこれは非常に不確実性が大きい、すべてはやはり、金融システムがいつ回復に向かうか、それにかかっているというのが大方の意見であったように思いますし、私自身も同じような見解を有しております。

鈴木(克)委員 そうすると、総裁、もう一度お伺いをしますが、確かに、IMFを初め世界各国が下方修正、マイナスで今修正しておる、この状況は今お話を伺ってわかりました。日銀としては現在、一月二十二日の政策委員の大勢の見通しがマイナス二%ですよね。現在その見通しになっておるわけですが、これは例えば修正をいつの時点でなさるのか、そしてまた、その見通しはどんなふうになるのか。

 なぜこういうことをお伺いするかというと、やはり目標をきちっと定めなければ、そして状況を把握しなければ、これはやみくもに、暗夜に操縦をしていくというわけにいかないわけですから、日銀の使命というのは、やはり国の非常に大きな部分を担ってみえるので、もう一度そのところをしっかりと御答弁いただきたいと思います。

白川参考人 一月末の数字は、今先生御指摘のとおり、二〇〇九年度がマイナス二・〇%でございます。

 日本銀行は、金融政策決定会合を原則月に一回開いておりまして、毎月毎月見通しについて点検を行っております。先ほど申し上げた定性的な判断は、そうした点検結果を踏まえたものでございまして、先ほど申し上げたことは、一月時点よりも厳しくなっているということを申し上げたわけでございます。

 この見通しの数字というのは、実はGDP全体の数字もそうでございますけれども、GDPあるいはそれを構成するいろいろな需要項目、物価、すべて、かなり包括的な点検作業、数字的な意味での点検作業を行います関係上、実は、ほかの中央銀行もそうですけれども、これは原則、四半期に一回とかそういうタームで数字を公表しようということでございます。その間は、定性的な判断で埋めていくという作業を行っております。

 御質問の趣旨は、日本銀行が現状の厳しい姿を認識していないんじゃないかということでありますと、そこは決してそうではないというふうに私は考えております。一番最新の数字はそうでございますけれども、しかし私どもの方は、必ずしもその数字にスティックすることなく、経済の状況が厳しくなれば、それに応じて我々の定性的な判断を変えていく、政策もそれに従って運営をしているということでございます。

鈴木(克)委員 そうすると、総裁、要するに区切り区切りのときに発表していくと。今度は、例えば半期に一度ということになると……(白川参考人「四半期に」と呼ぶ)四半期に一回ですか。そうすると、それが今度は一月から三カ月後ということになるわけですけれども、そのころはまた新たな数値を出される、こういうふうに理解をしてよろしいわけですね。

白川参考人 包括的な数字という意味でいきますと、今は、まず年二回大きなレポートを出しまして、そのちょうど真ん中の時点で、数字についても含めてもう一回点検作業を行って、それを中間で出している。したがいまして、数字という意味では、現在年四回公表しておりまして、別にほかの中央銀行と同じだからいいというわけではもちろん必ずしもございませんけれども、これ自体は、FRBもECBもそれからイングランド銀行も全く同じ方法でございます。

鈴木(克)委員 わかりました。

 いずれにしましても、確かに経済は刻一刻、日々動いておるわけであります。その辺の実態をきちっと把握していただいて、政策運営誤りなきようにお願いを申し上げたいというふうに思います。政府も下方修正をしていかざるを得ないということだと私は理解をいたしておるわけですから、そういうことを踏まえて、日銀もひとつ、ぜひしっかりとした数値目標を持ってやっていっていただきたいということをお願いしておきます。

 実体経済についてもう少しお話を伺いたいんですが、冒頭申し上げましたように、やはり日本が今これだけ悪いのは、いわゆる外需に頼ってきた、この外需が全くきかない。したがって、内需に切り変えていかなきゃならないんですが、内需になかなか転換がうまくいっていないというのが、今日の経済の足を引っ張っておる状況ではないのかなというふうに思うんです。

 ところが、アジアの中でも例えば中国だとかインドだとか、五%とか八%の経済成長をしているところもあるわけですよね。したがって、そういう国のいわゆる需要というのを我が国はやはり見きわめて、そして政策、手を打ってやっていくということが、今内需に転換をしていく間に急いでやっていかなきゃならないことだ、私はこのように思うんです。

 そういったアジアの成長をしておる国の動向等を踏まえて、今、日銀としては輸出に関してどんなふうな見通しを持ってみえるのか、お答えいただきたいと思います。

中曽参考人 輸出についての御質問ということでございます。

 こちらも、やはり去年の秋のリーマン・ブラザーズの破綻以降、状況が大きく変わってございまして、世界的に実体経済と金融の負の相乗効果が非常に強まる中で、世界経済は大きく落ち込んできてございます。特に輸出という点でございますと、自動車などの耐久消費財、機械類などの資本財に対する支出は大きく抑制されている状況でございまして、こうした製品の輸出比率の高い日本では、輸出が大幅に落ち込む結果となっているわけでございます。

 現在、各国におきましては、金融システム安定化策に加えまして、非常に積極的な金融財政政策を行って景気浮揚に努めているところでございます。ですから、こうした政策効果が実際に実現をいたしまして、住宅市場、生産面での調整の進捗につれまして、二〇〇九年度の後半以降は、海外経済は減速局面を脱していくというふうに見てございます。このような動きに沿って、日本の輸出も徐々に回復していくのではないかと予想しているところでございます。

 特にそうした過程におきましては、近年、日本と経済的な結びつきが強まっておりまして相対的に高目の成長を継続しておりますアジア主要国との関係がますます重要になってくると、私どもとしても思ってございます。

 ただ、世界的な金融経済情勢の下振れリスクが引き続き非常に大きい状況でございますので、今後とも、海外の金融経済情勢の動きについてはよく見てまいりたいというふうに思ってございます。

鈴木(克)委員 確かに、言われてみればそのとおりかもしれませんけれども、私はそういう考え方で輸出が回復をしていくというふうにはとても思えないんですね。しかも現実に、インドとか中国とか、経済成長を続けておるところはあるわけですから、やはりもう一つ何かインパクトのある政策というのを、日銀ばかりということではありませんけれども、やっていっていただかなければ、今言うように、住宅も回復し生産も回復すれば輸出もそれに伴ってよくなっていくでしょう、こういうことでは、それでは何のためにいわゆる日銀として、また金融をつかさどっておる部門として存在をしているかということを私は申し上げたいというふうに思っています。

 いずれにしても、このことばかりではなくて、今は実体経済ということです、今度、いわゆる金融経済の動向についてお伺いをしていきたいと思うんです。

 まさに、実体経済と金融経済というのは主従関係というか表裏一体だというふうに思うんですが、いずれにいたしましても、今回のサブプライムの問題というのは、いわゆる金融経済が実体経済を上回るというのか大変なあれで、暴走に近いような成長をしていったということで、それが結局突然崩壊をした。したがって、言いようによってはしっぽが犬をひっくり返してしまったというか、犬としっぽ、どちらがどっちだということは難しいんですけれども、いずれにしても、主客転倒しておかしな状況になってしまったということだというふうに思うんです。

 そこで、今まさに与謝野大臣はロンドンの金融サミットにお出かけになっておるわけですけれども、そういうところで我々はどういう主張をしていくべきなのかということを踏まえて、若干御質問をしていきたいというふうに思うんです。

 ポール・ケネディという経済学者、これはイエール大学の教授でありますけれども、こういうことを言っておるわけですね。世界の主要な二十カ国が協調をして、それぞれの国の上位二十五の主要銀行に対して、取引先企業を絶対につぶさないということを約束させて政府が全面的にコミットすれば、世界経済は回復するということをおっしゃっておるわけです。

 一見乱暴な説のようにも思えますけれども、しかし私は、やはり今求められているのは、そういう常識では考えられないというか、常識外と言うとしかられるかもしれませんけれども、本当に果敢な、従来の発想と違ったスケールの政策を示していく必要があるんじゃないかなというふうに思うんですね。

 例えば日本で言うならば、上位五十ぐらいの金融機関に対して、あなた方の取引先を絶対につぶさない、そういう政策をとってくれ、そうすれば、政府として、日銀として、あなた方金融機関を徹底的に守っていきますよというぐらいの姿勢を示すべきだ、そういうようなアピールを出せば、国民の皆さんもある種、なるほどそこまで政府は今真剣に考えておってくれるのかということになっていくというふうに私は思うんです。

 今申し上げたような観点で、例えば世界に対してどのように、いわゆる日銀としての考え方を発信していくおつもりなのか。そしてまた、今後段で申し上げたような具体的なことについての総裁の御見解をぜひ聞かせていただきたい、このように思います。

白川参考人 最初に全体的な話を申し上げまして、それからG20ということでお話を申し上げたいと思います。

 現在の世界経済それから金融の状況は非常に厳しいという認識は、先ほど来申し上げておるとおりでございます。

 こういう状況のもとで何が一番大事かということでありますが、私は、金融システムの安定性、金融市場の安定性を維持するということがまず最も大事であるというふうに思っております。

 今、ポール・ケネディの著書からの御紹介がございましたけれども、我々中央銀行あるいは金融機関の監督当局の間で今共通の認識は、システミックに重要な金融機関は破綻をさせてはならないということでございます。この点は、G7あるいはG20等の声明でも繰り返し強調されているところでございます。

 一見、それは当然ではないかというふうにあるいは思われるかもしれませんけれども、実はこの当然のことが必ずしも守られていなかったということが、やはり今回の危機の一つの原因だったというふうに思っています。

 例えば、リーマン・ブラザーズの処理の仕方というのを見ていますと、これはもちろん大変難しい問題であることは承知しております。しかし、ああいう形が本当によかったのか。

 もう過ぎたことを言ってもしようがありませんけれども、今後、システミックに影響のある金融機関は、現在の局面では破綻を許してはいけないということ、そのために各国、これは外貨資金もそうですし、それから自国通貨の資金もそうですけれども、潤沢に供給するということはまさにそのことでございます。これは中央銀行からしますと、中央銀行がなし得る貢献の中で、これが最も大きな貢献だというように思っております。

 その上で、今度は企業の段階でございますけれども、銀行から企業の方に円滑に資金が流れにくいということでの問題意識だと思います。

 中央銀行という立場で考えますと、銀行が不安を持つことなく資金供給ができるという体制を用意するということが一番まず効果的にできることでございますから、それが先ほども申し上げた市場全体の安定でございます。しかしその上で、個々の金融市場で問題が起きた場合にどう対応するかということを常に考えないといけないところでございます。そうした観点から、CPであるとか社債であるとか、そうした個別の市場に今介入を、そこに働きかけを行っているというアプローチでございます。

 それから、もっと、今回の問題が起きてきた背景を考えますと、そもそも金融機関に対する規制、監督のあり方はこれでよかったのかということがございます。これは今真剣に、改めて議論を行っております。今週末のロンドンでのG20も、そこは非常に大きなテーマになってくるわけでございます。

 世の中的にはG20という具体的な場に注目が集まりますけれども、実は、そこに至るプロセスというのはいろいろな会合がございます。いろいろな作業部会がございまして、そこには、日本から財務省、金融庁それから日本銀行も参加しております。日本銀行は、中央銀行という立場で貢献できる分野、特に規制、監督制度の、これは規制、監督制度それ自体の実行主体ではございませんけれども、しかし、規制、監督のあり方ということについて中央銀行としてさまざまな議論を展開、これはかなりさまざまな議論を展開します。そうした貢献が非常に大事であるというふうに思っております。

 今回のG20につきましては、日本銀行からは私にかわりまして西村副総裁が出席いたしますけれども、その場では、最近の我が国の金融経済情勢と、これを踏まえました日本銀行の政策対応について説明をするというつもりでございます。その上で、各国の政策対応について相互理解を深めつつ、世界経済の安定確保に向けた議論に積極的に貢献していく、その上で中央銀行間の協力も深めていくということが非常に大事であるというふうに思っております。

鈴木(克)委員 今おっしゃいましたけれども、私は、いわゆるアメリカでのリーマンの今回の処理がああいう形でなければ、このような状況には至っていなかった、あのリーマンを破綻させたということは、やはり明らかに間違いだったというふうに思っておるところであります。

 いずれにいたしましても、あのときも結局、これ以上の財政支出は避けるべきだという判断をしてしまったわけですけれども、結果的には、その判断が誤ってもっと大きな財政支出を生んでしまったということになるわけでありますから、ぜひひとつ、そういうことを経験則として、日本では絶対にそういうことはさせないという強力な指導力、そしてまた国民に対するアピール、金融機関に対するアピール等をやっていっていただきたいということを私はお願いしたいと思います。

 次に、先ほどもお話がありましたけれども、銀行保有株の買い入れ、これもまさに金融対策の一環であるというふうに理解をしておるわけでありますが、これは五年ぶりに復活というか再開をされたわけでありますけれども、二月末時点でいわゆる買い入れ実績がゼロだったということですね。これは一体全体どういうことなのかということで少し御質問をしていきたいんですが、まず、現在までの買い入れの状況はどうなっているのかお示しください。

山本参考人 お答えします。

 日本銀行は、二月二十三日に株式の買い入れを再開いたしました。その後、三月十日までに私どもが買い入れた株式の累計額は約一億一千二百万円でございます。

鈴木(克)委員 いずれにしても、たしか一兆円ぐらい予定をしておるということなんですが、まあ順番に聞いていきましょう。

 この買い入れは決して順調ではない、俗に言う低調だというふうに私は判断をしておるわけですね。一応、二十三日からだから二月末ではゼロで、現在は一億一千万ということでありますけれども、私は非常に低調だというふうに思っていますが、理由が実はあるんですね。

 各銀行は三月末が決算ですね。今、株を買ってもらうと非常に大きな損失が確定しちゃうわけです。したがって、各金融機関は買っていただくのを見送っているんじゃないのかなというふうに思うんですけれども、これは私が勝手に思っておるわけですが、日銀はその辺をどんなふうに考えておるんですか。

山本参考人 御指摘のとおり、これまでのところ買い入れ額は多くはございません。

 これは一つには、政策投資株の売却に関しては、企業との間の交渉に一定の時間がかかるということが恐らくあるのだろうと思います。

 それから二つ目は、今委員御指摘のとおり、含み損となっている銘柄を売却すると損失が発生して、収益にマイナスになってしまうということなどが背景となっているんだろうと思います。

 今後、日本銀行にどの程度株式を金融機関が売却するかということに関しましては、株式市場の動向に左右される面がございますので一概には申し上げにくいところでございます。もっとも、金融機関の方は、株式保有リスク削減が経営上の重要な課題であるという認識は持っているというふうに理解しております。したがって、日本銀行が金融機関保有株式の買い入れを再開したということは、実際の買い入れ実績が多い少ないということにかかわらず、金融機関にとっては一種の安全弁として機能しているというふうに考えております。

鈴木(克)委員 日銀がそういうふうに動いたことが安全弁なんだ、金融機関にとってはそれが一つの安心につながっていくんだ、こういう考え方もあるかもしれませんけれども、実際にそれが有効な政策として動いていって初めて何ぼであって、それはやはり、決定することだけである意味での期待が達成できるというものでは私はないんじゃないかなと思うんです。その答弁はちょっと違和感を覚えるんですが、そのことはともかくとして、最後に、どうしても総裁にお伺いしたいことがありますので、もう一点だけ。

 先ほどちょっと申し上げましたが、一兆円という額を今用意されていますね。前回は、当初二兆円、そして最終的には、またさらに拡大をして三兆円にしたということだったと思います。

 今回、一兆円にとどめたというその根拠は何かということと、今後の展開次第によってはこの一兆円を前回のようにふやしていくおつもりがあるのかないのか、そこをちょっとお伺いしたいと思います。

山本参考人 お答えいたします。

 前回の買い入れでは、最終的に、三兆円の買い入れ枠に対しまして累計二兆百八十億円の買い入れを行いました。

 今回は、実は前回買い入れた株式の一部、一兆二千億円、これは株式の残高、私どものところが既に保有をしております。そうしましたことや、前回の買い入れ開始時に比べますと、金融機関自身の株式の保有額が大幅に減少しておりますので、そうしたことを踏まえまして一兆円としたものでございます。

 現時点で、買い入れ額の総額を増額するといったことは考えてございません。

鈴木(克)委員 まだ個別のことでお尋ねしたいことはありますが、最後、五分、十分いただいて、私、総裁にどうしてもこの際お伺いをしておきたいことがありますので、少しお聞かせをいただきたいと思います。

 それはどういうことかというと、現下のこの厳しい経済環境の中で、日銀として、日銀総裁としてどのような決意を持ってみえるかということであります。

 白川総裁は戦後十四代目の総裁であるというふうに思うんですが、もう一度現在の状況を復習してみますと、まさに百年に一度の経済危機だ。それから、一月の完全失業率というのは四・一%、二百七十七万人、有効求人倍率が〇・六七倍。そして、三月までの雇いどめや契約の中途解約のために失業する人たちは十五万八千人、非正規労働者ですね。また、正規社員の解雇が一万人。それから、非正規労働者が現在千七百三十二万人、そのうち六〇%の千六万人が雇用保険に未加入だ。そして、自殺者が一月は二千六百四十五人。前年の一月が二千三百五人ですから、相当ふえている。それから倒産ですけれども、この二月の倒産件数が千三百十八件、負債総額が一兆二千二百九十一億ということで、前年比一〇・三%増。いろいろな数字を申し上げましたが、今こういう状況ですね。

 そこで、いわゆる日銀の使命というのは何かということでありますけれども、まさに、我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行う、これが目的でありますね、これはもう釈迦に説法でありますが。

 私が何を言いたいかということなんですが、今、政府紙幣ということが盛んに言われておりますよね。こういうことが言われているということは、逆に言えば、日銀として、総裁として、ある意味ではなぜなんだろうかと。

 例えば、今政府のやっている経済対策、日銀のやっているそういった金融対策が国民の皆さんの中で、一部ではあるかもしれませんけれども、やはりぬるいんだ、ツーリトル・ツーレートなんだというようないわゆる考え方があって、こういうような議論がされておるともしするならば、総裁として、このことに対してどのように感じてみえるのか、そしてまた、どういうふうに今後対処していこうというふうに思ってみえるのか。

 まずこのところを、今の厳しい経済状況と、それからとりわけ政府紙幣なんかが云々されているこの状況について、まず最初に、総裁からお考えを聞かせていただきたいと思います。

白川参考人 非常に大きな問題意識と、それから少し具体的な政府紙幣の話ということもございましたので、少し答弁が長くなってしまうことをお許しいただきたいんですけれども。

 まず、経済、金融の情勢について非常に厳しいという認識を持っていることについては、先ほど来申し上げているとおりでございます。

 中央銀行の使命ということについてのお話がございました。

 私、去年の四月九日に総裁の辞令を拝命して以来常に思っていることでございますけれども、自分の仕事というのは、日本銀行法の使命達成のために全身全霊を挙げて仕事をしていくことだというふうに認識しております。具体的には、物価の安定それから金融システムの安定をしっかり確保して、そのことを通じて持続的な経済の発展に貢献していく、それが日本銀行の仕事である、使命であるというふうに認識しています。

 先ほど、百年に一回の危機というお話がございまして、非常に厳しい状況であるということをあらわす言葉として百年に一回という言葉が今使われているんだというふうに思いますけれども、今回のことを考えてみますと、文字どおり百年か、あるいは五十年に一回かは別にして、大変に異例の事態が今生じているわけです。

 二〇〇七年八月以降に顕在化したいわゆるサブプライムローン問題に端を発する現在の金融危機の背景、いろいろな背景がございますけれども、実は、これに先立つ二〇〇三年、四年、五年、六年、七年、このあたり四、五年間ですか、特に二〇〇四年から二〇〇七年の世界経済の成長が非常に高かった。高い成長率が長期にわたって続いたということで、実はこれも、百年に一回かどうかわかりませんけれども、現在の危機が仮に百年あるいは五十年に一回の危機だとすれば、その前の四年間は五十年に一回の好景気であったということでございます。

 改めて、二〇〇〇年に入ってからのいろいろな経済の展開を考えてみますと、非常に大きな変動をしている。そのときの短期的な状況とそれから長期的な姿というのも、時として随分変わってきているなと。

 改めて日本銀行法を読み返してみますと、要するに国民経済の持続的な発展、つまり持続的ということが書いてあるわけでございます。そういう意味で、私に課せられた、あるいは日本銀行に課せられた使命というのは、物価の安定と金融システムの安定を通じて、持続的に経済が発展するということを常に考えながら、今度は、その時点その時点で経済の状況について予断を持つことなく丹念に点検していく、そういう構えで政策をやっていくということだというふうに思っております。

 現在の日本銀行の政策の枠組みにつきましては、先ほど冒頭の説明で申し上げました。先生のこの後の御質問の展開がございますので、今申し上げますと円滑に答弁ができないかなと思いますので控えますけれども、私どもとしては、現在の政策の柱、体系の柱、つまり政策金利の引き下げ、金融市場の安定それから企業金融の円滑化ということをしっかりやっていこうというふうに思っております。

 その評価というのは自分で行うものではありませんから、しっかり行い、できるだけ早く日本経済の安定的な成長軌道への復帰に努力をしていきたいという気持ちでございます。

鈴木(克)委員 最後、中小企業の資金繰りでもちょっと谷本副大臣にお伺いしたいものですから、もう一点だけ申し上げて総裁への御質問を終わりたいんですが、きょう、私ここに、森永さん初め歴代の総裁の皆さんのずっとやってみえたことを持ってまいりました。

 森永さんは、石油危機から立ち直るということ、そして安定経済成長に乗せた。前川さんは前川リポート。それから澄田さんは、いわゆるバブル経済の引き金になったということはあれですけれども、そういうような状況があった。それから三重野さんは、バブル経済を抑えたけれども、逆に言えば、失われた十年の端緒を発してしまった。松下さんは、不良債権の累積、そしてデフレ経済への突入。速水さんは、いわゆるゼロ金利政策をやり、また戻し、またさらに復帰したというか、そういうような状況。そして福井さんは、そういった状況の中から本格的な回復軌道に乗せていったということで、例えばイギリスのエコノミスト誌が二〇〇四年の二月十四日に、グリーンスパンやトリシェECBの総裁ではなくて、世界で最もすぐれた中央銀行総裁というのは福井俊彦だ、こういうことを書いたことがあります。

 私、何が言いたいかというと、ぜひ、最もすぐれた中央銀行の総裁は白川さんであるというふうに歴史に名を残していただきたいと思うんです。もちろん、名を残すことが目的ではありませんけれども、今未曾有のこの本当に大変な状況を日銀が果敢に、そして勇気を持って、従来の慣例に縛られずに、そして規律に縛られずに、日銀としてやれることはすべてやる、もうこれで本当に大丈夫だというぐらい私はダイナミックにやっていただきたい。

 もう一度申し上げますけれども、物価の安定を図り経済の健全な発展に資する、そして経済システムの円滑な運行を確保し金融システムの安定に資する、これがまさに日銀の使命なんですよね。私は、今まだ十分ではないというふうに思うんですが、最後に総裁、もう一遍決意を聞かせていただけませんか。

白川参考人 中央銀行の政策について、いろいろな評価はもちろんありますし、私自身は常にいろいろな声に謙虚に耳を傾けて、その上で先ほどの使命達成に努力したいという思いであります。

 過去十五年間ぐらいの世界の金融政策の運営、あるいはそれに対する評価というものがどういうふうに変わってきたかということを改めて考えていきますと、私自身が非常に思うことの一つは、評価というのは、そのときの評価とそれから後の評価が実に変わってきているなという感じがいたします。

 例えば、これはまだ議論に決着がついているわけではございませんけれども、今回これだけの危機が起きた背景を考えてみますと、それに先立つ時期のマクロ経済の運営、あるいは金融政策の運営、それから金融機関の規制、監督のあり方、そうしたものが今もう一回問われているというふうに思います。

 FRBの金融政策運営、あるいはグリーンスパン議長のもとでの金融政策運営についても、当時の評価とそれから現在は、また別の評価が出てきているというふうに思います。私自身は、現在の評価が正しいとかあるいは当時の評価が正しいというわけではなくて、結局評価自体もやはり変わってきているというふうに思います。

 もちろん、いろいろな意見があるわけですから、私自身はあくまでも、先ほど議員が御指摘になった日本銀行法の使命達成、そのことだけを頭に置いてこれからも仕事をやっていきたいというふうに思っています。

鈴木(克)委員 谷本副大臣、申しわけない。ちょっと時間がなくなってしまいました。また次回御質問させていただきます。

 どうもありがとうございました。

田中委員長 次に、和田隆志君。

和田委員 おはようございます。和田隆志でございます。

 前にありましたお二人の委員の御質疑を聞いておりまして、私の質問もある程度重なっておりましたので、ここから先、もう少し深掘りさせていただきながらお聞きしてまいりたいと思います。私、白川総裁には初めて質問させていただきますが、よろしくお願いいたします。

 先ほどまでの質疑をお聞きしておりまして私なりに思っておりますことは、きょうの質疑を通じまして、やはり日銀と政府とのかかわり合い、日銀を大きく政府ととらえる考え方も世の中にはございますが、中央銀行がいわゆる内閣との間でどのような関係でおありになるべきなんだろうかという視点から幾つか御質問させていただければというふうに思っています。

 私も行政府に身を置いてきた人間でございますので、こういった未曾有の経済危機に陥っている中で中央銀行が最大限の努力を払っておられることには非常に敬意を表しております。ただ、その中で、もう少し内閣、政府との連携をとっていただければもっと効果が上がるのではないかなと思われるようなところが幾つもございます。きょうは、そういったところを幾つか取り上げながら、中央銀行としての役割、また逆にそれを受けての政府としての役割を考えてまいりたいというふうに考えております。

 そういった観点から、三つほど題材を取り上げてみたいと思います。

 一つは、今現在、中央銀行、日銀が実施しておられる政策の中身につきまして、これを政府としてどのように考えているか、全体としてうまく機能しているかという論点。次は、この経済危機を何とか克服するために国内ではいろいろな政策が提言されておりますけれども、その政策をめぐって、中央銀行である日銀と政府とがどのような関係、またどのような議論を行っていくかという視点。最後には、それこそ、きょうは総裁にはこちら、国内に残っていただいて恐縮でございますが、きょう国際的には大きなG20の会合がございます。世界の経済危機を救っていくのに世界各国が協調しなければいけないということを議論する場でございますが、こういった国際会議の場における中央銀行、日銀と政府とのかかわり合い。こういった三つの視点を持ちながら、質疑をさせていただければというふうに思っております。

 まず、第一の視点でございます。

 今、お二人の御質疑の中で、総裁からもるる御説明がございました。今現在、中央銀行としては、日銀としては本当に異例の措置だったと思います。私も、過去にいろいろと日銀にお伺いして、いろいろな政策の是非について議論をお伺いしていたことがございますが、今回発動されましたCPの買い取りと社債の買い取りにつきましては、本当に、私自身も思い切った措置だろうというふうに思っています。

 先ほど御質疑の中で出てまいりましたが、この二つの内容につきまして、CPの買い取り額はもう事前に資料でいただいておりますので私なりに評価しているところがございますが、CPの買い取り状況とそれから社債の第一回が行われた状況について、今、総裁としてはこういった実績値についてどのような評価を下していらっしゃるか、お答えいただけますでしょうか。

    〔委員長退席、木村(隆)委員長代理着席〕

白川参考人 お答えいたします。

 まず、CPでございますけれども、本年一月に買い入れを開始して以降、現在まで九回、総額で一・九兆円の買い入れを行いました。社債につきましては、三月四日に第一回目の買い入れを行いまして、その際の落札額は四百四十九億円でございました。これは計数でございますけれども、これらの政策の効果についての評価でございます。

 まず、CPについては、昨年の秋にかけてCP市場の機能が大きく低下したということでございますけれども、昨年末以降、このCPの発行レートが低下するとともに、発行金額も徐々に増加に転じるなど、CP市場の機能は明確に回復に今向かっているというふうに思います。直近三回の買い入れでは、応札額が買い入れ予定額に達しないいわゆる札割れということが生じておりまして、これはいわば日本銀行に持ち込むより市場で消化した方がもはや有利になるほど市場環境が好転をしてきているということですから、買い入れ金額が減っているということは状況の改善を示すというもので、むしろポジティブに受けとめております。

 一方、社債の買い入れでございますけれども、これはまだ一回しか実施しておりませんで、その効果をこれ自体として見きわめるにはまだ時間が必要であるというふうに考えております。先ほどの他の議員の質問に対する答えとも若干重複しますけれども、第一回のオペでは応札額が少額にとどまりましたけれども、これはオペ対象先における買い入れ対象社債の保有が少な目であったこと、それから初回の買い入れだったので様子を見た先もあったということが原因だというふうに考えています。

 ただ、いずれにしても、この社債の買い入れにつきましては、日本銀行が社債の機能を全面的に代替していくということをねらっているわけでは必ずしもございません。証券会社や投資家の社債売買を促進して社債市場の機能改善をいわば後押しする効果、あるいは、金融機関の貸し出し余力がその分生まれてまいりますので、そうした効果を通じて企業金融全体の円滑化に寄与するということをねらったものであります。

 ただ、いずれにしても、社債の買い入れについては始まったばかりなので、今後とも注意深く見ていきたいというふうに思っています。

和田委員 今の総裁の評価では、概括すると、コマーシャルペーパーにつきましては、非常に初期の段階で効果があり、これから先は市場において買い入れが進んでいくということで、中央銀行の役割よりは市中銀行の方の役割がふえていくであろうという御認識だというふうにお伺いしました。それから、社債については、始まったばかりということでございますので、これから見きわめるということのようでございます。

 この社債につきましては、先ほどの質疑にも若干関連した部分がございましたが、第一回の買い入れが行われたときのいろいろな報道ぶりでは、市場の声に対してマッチングされていない買い入れではないかという声がたくさん上がっていたようでございます。私自身いろいろな新聞報道等を見てみまして、金融機関からすれば対象を広げてもらえればもらうほど自分たちがやりやすくなるので、そうした意見が出てくることはごく当然のことだろうとは思いますけれども、それにしましても、日銀さんとして千五百億円の買い入れを予定している中で三分の一に終わったという結果からすれば、実施された方からしてもミスマッチが起きているというふうに分析されてもおかしくないのではないかなと思ったんですが、今の時点で総裁はこの点についてはどのようにお考えでしょうか。

白川参考人 実は、CPの買い入れそれから社債の買い入れを行うに先立ちまして、日本銀行は企業金融に係る債務といいますか商品を買い入れる際の基本的な考え方を公表いたしました。今回の社債の買い入れもそうした全体の基本的考え方に沿って買い入れを行ったものでございます。

 その基本的な考え方の骨子でございますけれども、例えばCP市場なりあるいは社債市場の機能が低下をして、これが企業金融全体の逼迫につながっていく、そうした事態を解消する上で中央銀行の買い入れが有効である、中央銀行の買い入れが日本銀行の使命達成に効果的であるという場合に実施するという原則を立てました。もう少し個別の、具体的な原則と考え方ということも公表いたしましたけれども、実は、これは常にトレードオフがあるという感じがいたします。

 つまり、基準を緩和して買い入れ金額を思い切ってふやす、そうしますと、確かに今現実に機能が毀損したその市場を中央銀行が全面的に肩がわりするということになりますから、とりあえずその市場について見るとそれはプラスになるということでございます。しかし、それが余り行き過ぎますと、今度はまたその市場自体が本来的にみずからを回復していくという力、機能を回復していく力それ自体を逆にそいでしまう。そうすると、すべての市場に中央銀行が介入していくということはできませんから、一方で介入しながら、他方で市場の自律的な回復力も、その芽もつぶしてはいけないということでございます。

 それから、買い入れ基準を緩和していってその結果損失が発生した場合には、それは中央銀行の財務の面にも影響してくるということです。これは、日本銀行がみずからのバランスシートをきれいにしたいということ、そういう意味ではございませんで、結局、国民が中央銀行の政策遂行に対してどれだけの信頼を持っていただけるか、その面に影響が出る可能性もございますし、それから、個別の特定企業に係る損失が非常に大きくなってまいりますと、今度はまた中央銀行の中立性に対する信頼感が失われてくる。そうしたことも配慮しながら、実はいろいろな細かな制度設計を行っているということでございます。そういうことをすべて考えた上で、先般、社債の買い入れ要領を発表して、実施したということであります。

 そのときに、今、日本銀行の内部的な評価に照らしてもこれは少なかったのかどうかということでの御質問でございました。これはもちろん、政策委員会で決めますから、またそれぞれいろいろな見方があると思いますけれども、これは多少未達が生じても、しかしこういう枠組みがあるということがやはり安全弁にもなるという話なので、金額は多少多目であってもいい。その限りでは、そのある基準に照らして、その金額は千五百億円であってもいいというふうに思っております。

 ただ、いずれにしても、これはまだ始まったばかりですので、金額的な評価について行うためには、もうちょっと時間をいただきたいというふうに思っています。

和田委員 今の白川総裁の御答弁を聞いておりまして私なりの感想を申し上げれば、御自分の与えられた職務の中で必死にもがいておられるという感じがしてならぬのですが、少し視点を変えて質問してみたいと思います。

 竹下副大臣は、金融政策決定会合にはずっとオブザーバーで御参加されているものと思います。そういったことは何のために行われているのかというふうに考えてみますと、中央銀行が自分の金融政策を遂行していくのに、委員の合議制ではございますが、一つの独立した組織形態の中で政策を決定していくときに、政府側からオブザーバーとして参加されておられる、こうした中で、日本銀行の独立性を維持しながらも、日本全体としてどういうふうに経済危機を克服していくかの観点から、いわゆる財政当局として何をやるかということを考えていただくべきお立場にあるんじゃないかと思うんです。

 そういった意味で、今白川総裁がCPや社債の買い入れについて中央銀行のお立場と分析状況についてお話しになりましたけれども、財務副大臣としては、今の、現在の中央銀行のとっておられる政策を見られて、それそのものにコメントを出されることは非常に難しいのかもわかりませんが、そこから先、今度は政府側として、こういった事態を受けて何をやるんだということをお考えいただくべき責任はおありだと思います。

 今回題材に取り上げましたCPと社債の今の市中からの買い入れ状況をごらんになって、私が勉強した限りでは、二次補正で政策金融公庫を通じてCPの買い入れを行われるという政策を打ち出されましたが、どうも先ほどの中央銀行総裁の御説明をお聞きしますと、既にCPについては市中の力によって何とかできるのではないかというふうにお考えのような御答弁でございました。逆に、今度は社債については、自分のところは日銀の健全性を確保するためにはここまでと思って条件提示をしているけれども、第一回目が終わってみてこれから検討していくとおっしゃっておられます。

 少なくとも、日本全体にとりまして、今、流動性を確保していく上で社債をどのように処理していくのかということについては、財務省としても責任を持ってお考えいただかなければいけないんだと思いますが、このCPと社債の買い入れについて、今財務省としてはどのようにお考えでしょうか。

竹下副大臣 御指摘いただきましたように、日銀の金融政策決定会合に毎回出席をさせていただいておりまして、これは政府側を代表して出席するということで、決定の表決には参加をいたしませんが、議論には積極的に参加をさせていただいておるという状況にございます。

 そして、CPにつきましては、政策投資銀行が買い取りを発表した時期、それから日銀として買い取りを決められた時期、多少のずれはありますけれども、ほぼ同時期にやろうということに踏み切っていただいた経緯がありまして、その結果、先ほど白川総裁がお話しになりましたように、CPの発行環境をめぐる状況というのはかなりよくなってきておる、割とCPは出しやすくなってきておるというふうに認識をいたしております。

 また一つは、CPの買い入れ、二つの機関が今やっているわけですが、政策投資銀行の方は大企業、中小企業の資金繰り対策ということを目的としてスタートした、一方、日本銀行の場合は、極めて低い金利の効果が金融市場や企業金融に十分浸透していくためというねらいがここにあるわけでありまして、手段としては同じCPの買い取りでありますけれども、ねらいにおいて若干の違いがある。大きな目標は日本経済、日本の金融をスムーズに回していくためということでありますけれども、そういう状況にあるのではないかな、こう思っております。

 それから、社債の問題でありますが、先ほど白川総裁がお話しになりましたように、確かにまだスタートしたばかりで、どういう状況にあるか。政府サイドといいますよりも、企業から話を聞いておりますと、社債の買い入れの格付、残存期間についてもうちょっと幅を広げて考えてほしいという要望があることは承知をいたしておりますけれども、それは日本銀行の方で、先ほどお話しになりました日本銀行の財務の健全性も含めて、健全性がすべてではありませんが、健全性も含めて御判断をいただくことだというふうに思っております。

和田委員 今の御答弁をお聞きしておりますと、CPについては私はそれほど大きな違いはないように思いますが、とにかく、今御指摘したいのは、同じような政策を中央銀行と政府側とで提示なさっておられて、一方はある程度役目を終えたように考えているというふうにおっしゃられる中で、一方の政府の方は、この前二次補正で通したばかりでございますので、これからということにメッセージとしてはなるわけでございます。

 もし、政府と中央銀行とでこうしたことについての実態認識がすり合わされていたならば、要するに一気に短期に実施して効果を上げるという方向に向かっているか、もしくは、一方が実施した後あとの一方は、少し時期は遅くなっちゃったけれども、そこから先はどうも市場がテークオフしたようだからということでその財源は、貴重な財源でございますので、ほかの方に回すこともできるのではないかと思って御指摘申し上げたわけでございます。

 それから、社債につきましては、今御答弁になられたのは、日銀の健全性の観点から、その限界があるのではないかということを政府側としても理解するという答弁ではございました。しかし、日本国全体がうまく回らなきゃいけないわけでございますので、では、日銀にはちょっとここまでは踏み越えさせてはいけないなと政府側としてお感じになるのであれば、やはりそこから先、社債の全体の分布図を見られて、この部分についてはだれが救済していくのかということをお考えになるべき責任がおありになるように思うんですが、いかがでしょうか。

竹下副大臣 社債の発行あるいはCPの発行にいたしても、どちらもそうでございますが、リスクゼロではないわけでして、そのリスクをだれがとるかという問題に帰着していくわけであります。

 CPについていいますと、さっきちょっとお話しし忘れましたが、政策投資銀行の場合は、新発債、新規発行の部分を引き受けるという任務を主として背負っております。日本銀行の場合は、既に発行されて市中に出回っている分、あるいは端的に言いますと金融機関が保有している分を買い取るという形になっております。

 それから、今度は社債についてリスクをどうしていくか。これは、CPの場合は割と短い期間のものでありますが、社債は期間が結構長い長期の資金でありますので、長期の資金をどう手当てしていくかという考え方の中で、その中の一つの大きな柱が社債である。あるいは、社債だけではなくて、借り入れでも長期資金の借り入れというのももちろんありますし、いろいろなものがありますが、そういう部分は政策投資銀行の中で長期の大企業、中堅企業に対する資金供給ということも含めて検討していく、リスクをとっていくという姿勢であろうと思います。

 ただ、リスクのとり方については細心の注意が必要であるというふうに考えております。

和田委員 今の御答弁を聞きますと、社債の中長期的な債務であるという性格からして、政策投資銀行等によって、買い取りではないのかもわかりませんが、いろいろなツールを発動されるということを御答弁いただいたように思います。私は、それであれば納得ができるというふうに思っています。

 ただ、一つだけ、この点について最後に政府全体、日銀を含めた大きな政府全体に要望しておきたいのは、こういったことが、国民の皆様方また今問題となっている中小零細事業者の皆様方からすれば、政府は救う救うと言っていながら、だれも自分たちのところには手が伸びていないという御不満が高まっているようでございます。そうした意味で、一つ一つが独立独歩しているという意識も必要かもわかりませんが、政府全体として責任をとり切れていないという自覚をもう少し持っていただければというふうに思って申し上げました。

 それでは、次の論点に移りたいと思います。

 次は、今回、これだけの経済危機でございますので、いろいろなことをやってみるべきじゃないかという意味で、いろいろなところから政策提言が行われているということ、そのこと自体は非常によいことだろうというふうに私は思います。

 そんな中で、今、中央銀行と政府全体、政府としてのかかわりの中で、先ほども話題に出ておりました政府紙幣を発行して全体のマネーサプライをふやしたらどうかとか、それから国債の買い取りを、今までは市中銀行を通じてということでありましたが、直接日銀に引き受けさせてはどうかというような御提言、先般も、有名になりましたので、与党の議員連盟の方から行われたようでございます。

 こういった考え方、とにかくありとあらゆる可能性を考えてみるということ自体は否定すべきものではなかろうと思いますが、少なくともこういった話題が世の中に出るときに、中央銀行と政府の中でどういった議論が行われてきた上でこういったものが出てくるのか。どうも私には、今までの経験上も、中央銀行と政府・与党側が非常に戦っている中で、あいつをとにかく言い負かしてやれと言わんばかりにこういったものが出てきているように思うわけでございます。こうしたものが出てくるときには、公表できる意思のすり合わせと公表できない部分のすり合わせとあるとは思いますけれども、もう少し整合性をとっていただいた上で出していただければというふうに思いながら、この話題を選びました。

 まず、政府紙幣の発行につきましては、国内で通貨供給、流通を担う日銀としては非常にセンシティブな話題だろうと思います。この点について、与党から出ているということを前提にされるのではなくて、一般的に、政府紙幣を発行するという概念について、通貨の総量を調整していらっしゃる日銀としては、今新しくこういった手段が加わることについてはどのようにお考えでしょうか。

白川参考人 一般論として、政府紙幣の議論をどういうふうに考えるかということでのお尋ねでありますので、そういうふうにお答えしたいと思います。

 日本銀行といいますか世界の中央銀行は銀行券、紙幣を発行しているわけでありますけれども、私が日本銀行に、前回いたときもそうですし、今回参りましてから思うことは、銀行券を出す、お札を出すということは、単に出せばそれで終わりということではなくて、そのお札を多くの方、多くの国民の方が安心して使えるという環境をつくって初めてお金が使っていただけるという感じを強く持っております。

 具体的には、例えば偽造券が、にせ札が横行しますと、これはみんな安心してお金を使えないわけですし、あるいはいろいろな機械の対応、これは券売機もそうですし銀行のATMもそうですけれども、そうしたものが十分に整備されませんと、結局お金は出してもすぐ戻ってくるということでございます。したがって、日本銀行は、こういう銀行券が円滑に流通するための基礎的なインフラづくりといいますかその努力を、実は物すごい努力をして行っているということでございます。

 そこに政府紙幣というものを出した場合に、そもそも政府紙幣が国民の方に使ってもらえるかどうか、使ってもらうためにはまた新たに相当のいろいろな準備をしないといけない。そうしたものがない、例えば機械の対応ができていないままで政府紙幣を出しますと、それは多分すぐに日本銀行の方に戻ってくるということになるように思います。日本銀行の窓口に持ち込まれまして、その際、政府が還流してきた政府紙幣を引き取るために資金調達が必要になりますので、その段階で新規に国債を出すということが必要になってくるということでございます。しかも、そのラグが比較的短いという感じがいたします。

 一方、日本銀行がこれを保有し過ぎるという事態を仮に想定しますと、これは日本銀行が無利息の永久国債を引き受けるということに等しいわけでありますから、これは大きな弊害が生じるというふうに思います。まず、収益も生まず、買い手もつかない資産を日本銀行券の裏づけとするということは、我が国の通貨に対する信認を害するおそれがございます。また、政府がこうした仕組みにより資金調達を行うということに仮になりますと、これは国の債務返済に係る方針やあるいは財政規律に対する市場の疑念を惹起し、長期金利の上昇といった事態を招くおそれもあると考えられます。

 こうした点を踏まえますと、一般論として、中央銀行の出す銀行券とは別に政府紙幣を出すということについては、非常に慎重な考慮を要するものだというふうに思っています。

和田委員 財務副大臣、今の中央銀行総裁、日銀総裁の御答弁をお聞きになられて、とにかく景気を底上げしなければいけないという財政的な観点から、財政政策をお預かりになる立場でございますので、いろいろと世の中でそういう方策を考えている動きに対して、財務省として責任ある応対をとられなきゃいけないんだと思います。

 その中で、政府紙幣の発行なり国債の直接引き受けなりということは、とにかく市中に出回るマネーを大量にふやすという政策ではございますが、今まで経済的にいろいろな方々が分析してこられたのは、今回の経済危機というものの最も大きな原因は、流動性が不足しているということよりは、本当の意味での実需が不足しているということであろうかと思うんです。そういう実需を喚起するような政策が相まっていればまだしも、どちらかというと実需の方がおくれにおくれている。その中で、こういった流動性だけが高まっていくというような政策がもしとられるとするならば、今、日銀総裁がお述べになったようなことが非常にリスクとして顕在化してきてしまうということだろうと思うんです。

 世の中、とにかくこういったコメントが出ていく際に、それそのものを悪いというふうには出ていきませんが、非常に日本全体が、世界から見て、流動性だけが高まっていき、実需の部分が追いついていないという評価を下されると、余計に国際的な評価をおとしめていくということにつながりかねないように思うんですが、全体の経済政策を運営される観点から御答弁いただけますでしょうか。

竹下副大臣 与党の検討していらっしゃる議員連盟の方から、要望は確かに財務大臣が受け取っております。その中には、政府紙幣あるいは国債の直接引き受け等々、さまざまなことが書いてございます。いろいろなことをいろいろな角度から検討されること自体、それ自体が悪いことだとは全く申しませんし、こういう厳しい状況にありますので、考えられることすべてを議論してみることというのは、それはそれでいいことだろう、こう思うわけであります。

 ただ、先ほど日本銀行の総裁がお話しになりましたように、まず政府紙幣の発行という観点について言いますと、これは我々、ハイパーインフレを引き起こしたという本当に体のしんまでしみついた苦い経験を持っております。ですから、財政法第五条という規定をつくりまして、日銀に国債を直接引き受けさせない、あるいは日銀から直接資金を借りないということを規定しておるわけであります。

 ですから、その意味で、あくまでも頭の体操でありますが、政府紙幣を出しても、それが日銀に還流したときに、それを買い取る財源をではどうするんだという議論を当然やらなければなりません。さらに、これは財政法第五条との関係で本当は議論すべきでないかもしれませんが、頭の体操として、日銀にそのまま政府紙幣を持たせておくと、先ほどお話しになりましたように無利子、無期限の国債発行と同じということになりますので、これはやってはいけないことだろうなというふうに私どもは考えております。

 それから、実需との関係でございますが、私どもが学生時代に習った経済学は、金利が下がれば企業家がお金を借りて設備投資をする、そしてそこにさまざまな需要も発生をし、経済が活性化していく、金利が下がるというのは、経済活動にお金が回りやすいというか、設備投資が出てくるという図式があったわけです。

 今起きておりますこの世界規模の金融不況あるいは経済の厳しい状況というのは、世界の金利は、日本銀行の〇・一%が一番底ですけれども、アメリカでもゼロから〇・二五、あるいはヨーロッパでも〇・五といったような、コンマ以下の数字であります。しかし、それでも設備投資が積極的に出てこないという大変なジレンマに今陥っているわけでありまして、和田委員がお話しになりましたように、実需を、需要をどう喚起するか。これは金融政策だけでできるものではありませんので、財政政策、特に財政政策も、民間需要を眠っているのをたたき起こすような、そういうもので実はあってほしいなと。

 我々も今まで、一次、二次、そして今御審議いただいておる来年度予算の中で、いろいろな経済対策を盛り込んでおります。かなりのものを、今まででは政府としても考えられなかったレベルのものまでぶち込んだという思いはありますけれども、まだまだ経済の状況を見ながらさまざま検討していかなければならない事態であるなというふうに今痛感しておるところでございます。

和田委員 今お述べになったところを私なりに評価させていただきますが、実需を喚起するということが大事であるという認識は共通いたしました。眠っているのをたたき起こすぐらい、いろいろなものを考えているんだという御答弁も私なりに評価しますが、もう一つ加えさせていただければと思うのは、その眠っているという言葉の中に、将来こんな新しい付加価値を持ちたいというような欲求、希望、こうしたものも喚起していただけるような政策を実行していただきたいというふうに思うわけでございます。

 つまりは、今までの政府が実施してきている需要喚起策というのは、目の前に転がっているものをいろいろ、とにかく設備投資をしてくれという趣旨で拾い上げるということはできているように思うんですが、どちらかというと、十年、二十年、三十年先をにらんで、こういったものが日本の中では内需を喚起する一番付加価値の高くなっていくものであるというものを発掘する努力というものが、どうも諸外国に比べてまだまだ十分でないのかなというふうに思っている次第でございます。そういった新しい分野に対して目を向けていただくような財政運営を御要望したいというふうに思います。

 それでは、時間が残り少なくなりましたので、第三点に題材として取り上げました国際会議について申し上げたいと思います。

 きょう、これからG20がロンドンで行われ、その中でいろいろな提言が諸外国から行われるようでございます。先ほども論点として出ていましたけれども、この未曾有の世界的な経済危機から脱していくために、世界各国が共同して財政政策を、つまり景気対策を発動すべきだという提言、その中に、具体的な数字でいえば、IMFの方からの呼びかけでGDP比の二%を確保すべきだという主張が行われております。

 こういったものを世界各国との交渉の中で、今回は与謝野財務大臣がいらっしゃっていますけれども、財政政策の発動という観点と、それから、議題には入っているようでございますが、今まで金融危機を起こすに至った十数年の歴史を振り返ってみるのに、巨額のマネーが世界じゅうを駆けめぐっているという状況を、本当にそれでいいのかというふうにもう一回見直すべき時期に差しかかっているんじゃないかというメッセージがこの会議には与えられております。

 そういった意味で、今回、財政政策としてそれだけの規模を発動すべきという提言がこれから行われるわけでございますので、その部分について、直接的な責任は財政当局を預かる財務大臣が所管されますが、しかし、今までの十数年間、巨額のマネーフローが生じた上でアメリカ発の金融危機が起こったという観点からすると、今まで世界に流れに流れておったマネーの規模がこれでいいんだろうか、また、流れるペースを規制するためにいろいろなことが考えられてよかったのではないかとか、そんないろいろな論点があります。

 まず、きょうは日銀総裁に最初に御答弁いただきたいと思いますが、そうした世界経済のマネーフローについて、今、日本が世界各国との交渉の場でどのような意思を持って臨もうとされておりますでしょうか。

白川参考人 ただいま和田委員が御指摘のとおり、現在の未曾有の危機に先立つこの十数年間を考えてみますと、世界にお金が非常にあふれていたというお話がございました。私も同じような認識を持っておりますけれども、その場合、お金があふれているということを分解しますと、二つの要素があるというふうに思います。

 一つは、先ほども少し触れましたけれども、経済の高い成長が長期間続く中で、実質的に低い金利が長期間にわたって続くということでございます。そうしますと、こういう状況がこれからもずっと続くというふうに多くの経済主体が思っていく、その結果、リスク評価が甘くなり、さまざまなリスクテーキングがされていく、それで不均衡が蓄積していくという意味でのお金の過剰ということがあったと思います。

 ここで問題になってまいりますのは、一つは、金融政策の運営がどのようなものであるべきなのかということと、金融機関に対する規制それから監督、これがどうあるべきか、二つの論点があるというふうに思います。

 今和田委員から御質問があったのは、主として金融機関に対する規制、監督という世界だと思いますけれども、ここではいろいろな論点があります。今一番大きな論点は、ちょっと英語で恐縮でございますけれども、プロシクリカリティー、つまり、景気と金融が同じように増幅をしてしまう、そういう傾向でございますけれども、そうした傾向を規制が助長してはいないだろうかということでございます。そうした観点から、これをいかに緩和するかという議論を行っておりますけれども、この点は日本銀行も非常に大事だと思っておりまして、議論に今積極的に参加をしております。

 それから二つ目は、金融危機に先立つ時期において、経済全体、金融全体として、マクロ的にどのようなリスクが蓄積しているのかということを的確に分析し、判断し、行動を起こしていくということでございます。今回のサブプライムの問題も、その直前にはいろいろな形で警告は発せられてはおりましたけれども、しかし、ここまでのことは必ずしも十分認識されていなかった、この点はやはり大きな反省事項だというふうに思っています。この点も、いろいろな場で日本銀行としても働きかけを行っていきたいと思っています。

和田委員 時間が来ておりますので、短く申し上げて、最後、もしよければ御答弁を簡潔にいただいて終わりたいと思います。

 今総裁がお述べになったようなことを受けまして、私の気持ちとしては、国際会議に臨む前に、表面的には独立性を保っていただいているんだと思いますが、財政当局と金融当局とで本当にやりとりをしながら、国際会議の場で統一した意思を表明なさっていただきたいというふうに思っています。

 そういった意味で、谷本副大臣と竹下財務副大臣に一言ずつ、この国際会議に寄せる思いを語っていただければと思います。

木村(隆)委員長代理 質疑時間が終了しておりますので、簡潔に答弁をお願いしたいと思います。

竹下副大臣 与謝野大臣が今まさに国際会議に出席をしていただいております。

 日本国としてどういう形で世界の経済の安定に貢献をしていくか、日本独自の経済立ち直り政策と世界に対する貢献というものを同時にあわせて打ち出していかなければならない。IMFに対する一千億ドルの資金供給というのもその一つであると思います。

 そして、先ほど和田委員がお話しになりました世界じゅうを動き回るお金に対する規制について、これは本当に英知を結集してやらなければ、では、どうする、どういう案があるという具体的なレベルにまでなかなかなってきていないという実情がございますので、真剣に議論しなければならぬことだろうと思っております。

谷本副大臣 金融庁といたしましては、現在の金融危機、これが、世界じゅうに国の枠を超えて広がった新しいビジネスモデルに対して適切なリスク管理ができなかったという点にあると考えておりますので、その点を含め、今後国際的に、各国当局あるいは国内の関係当局としっかり連携をしながら、新しい金融の国際分野における規制の再構成にしっかり取り組んでいきたいというふうに思っております。

和田委員 終わります。ありがとうございました。

木村(隆)委員長代理 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 まずは、国際金融危機への対応についてお聞きをしたいと思います。

 きょうからG20財務大臣・中央銀行総裁会議というのが始まろうとしているわけですけれども、前回のG20では、金融危機がこれ以上深刻化しないようにという観点から、各国の協調等が合意された。同時に、新しい特徴として、国際的に活動している金融機関に対する監視を強めるという方向が出された。これは、今までにない新しい方向だと私は思ったわけでございます。

 その具体化が、四月のG20でいろいろな合意が図られようとしている。ですから、今回のG20というのは、それに向けた一つの中間的な議論が行われるんだろうというふうに思いますけれども、このG20に向けて、日銀として、どのような姿勢で何を提案するつもりであるのか、この点をまずお伺いしたいと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 まず、今回のG20では、昨年十一月サンパウロで開かれました前回の会合に引き続きまして、緊張が続く国際金融資本市場と大幅に悪化している世界経済の現状と先行きをめぐって、活発な議論が行われるというふうに思います。また、各国が実施、検討している政策対応や国際的な金融システムの安定に向けた規制、監督のあり方についても率直な意見交換がなされるというふうに考えています。

 日本銀行からは西村副総裁が出席し、最近の我が国の金融経済情勢と、これを踏まえた日本銀行の政策対応について説明することになります。その上で、各国の政策対応について相互理解を深めつつ、世界経済の安定確保に向けた議論に積極的に貢献してもらいたいというふうに思っています。

 今委員が御質問の点の中で、監視を強めていくという話がございました。日本銀行自身はいわゆる規制当局ではございませんけれども、しかし、日本銀行は金融機関に対する考査を行っていますし、それから金融市場を現実に毎日見ております。それから、決済システムを運営しているという立場で、この金融システムの問題は、日本銀行にとっても非常に関係の深い問題というふうに受けとめております。

 したがいまして、このG20の場ももちろん重要なんですけれども、それに向かっていろいろなワーキンググループが実は進行しておりまして、そうした場で、新しい規制、監督のあり方について、積極的に議論に参加をしているというふうに自負をしておりますし、今後もそういうふうにやっていきたいと思っています。

佐々木(憲)委員 今回の金融危機を発生させた原因をどのように見るかという点についてはさまざまな議論があると思うんですが、私、金融機関のこの十年来の変質という問題が大変大きな要因としてあるのではないかと思っております。

 従来、金融機関というのは、釈迦に説法になりますけれども、本来なら、貸し出して利子を受け取っていくというのが基本の活動でありまして、そこで利益を上げていく、貸出先も、企業が安定して発展していく、相互のそういう関係が基本だったと思うんですね。

 ところが、この間の規制緩和で、例えば証券と金融の垣根が非常に低くなる。アメリカではグラス・スティーガル法というのが緩和されて、そして、銀行と証券が融合し一体となるような複合巨大金融機関というものが生まれる。そういうのが国際的にも非常に大きな力を持って新しい金融商品を開発し、それがさらに組み合わさって派生的な商品が次々と生まれる。これは大規模に取引が行われて、価格がつり上げられて、世界じゅうから資金が吸収されていく、こういう状況が生まれたのではないか。つまり、銀行は、利子をもとにした収入ではなく、それはもちろん基本ですけれども、手数料ですとかトレーディング収入とか、そういうものに頼るような状況になった。それから、ヘッジファンドなどは、この巨大金融機関からの資金を大規模に取り入れる、そういうことも可能になって、ますます投機的な市場というものがつくられていった。

 やはりこういう変化というものを見据えて、それに対してどう対応するのかということをやらないと、なかなか新しい今の状況に対応できないのではないかというふうに私は思うわけですけれども、総裁はどのようにお考えでしょうか。

白川参考人 今回の金融危機の発生の原因について、現在いろいろな議論がなされております。もちろん、今コンセンサスが得られているわけではございませんけれども、しかし、だんだん浮かび上がってきた議論の多数説を組み上げていきますと、私は、高成長、低インフレ、低金利という良好な環境が長く続く中で、サブプライムローン問題に代表されるような金融経済活動の行き過ぎが生じ、さまざまな不均衡が積み上がってしまったということが背景にあると。今、その積み上がった不均衡が逆の巻き戻し、修正の過程に入っているということでございます。

 それでは、こうした不均衡がなぜ蓄積したのかということでございますけれども、これはマクロの面とミクロの面、両方に分けて考える必要があると思います。

 今佐々木委員が御指摘のとおり、さまざまな金融機関のいろいろな活動が行き過ぎたということがあると思いますけれども、その背景には、一つは、金融機関がどういう経済環境のもとで仕事をやっていたかということを考えてみますと、やはり経済の実態に比べて低い金利が長期間続いたということが、そういう環境を生み出す一つの要因になったということだと思います。

 一方、どのような環境のもとでも、金融機関は適切な経営を行っていく必要がございます。そういう適切な経営を行っていくためには、金融についてはやや金融の特殊な性格を反映して、やはり規制それから監督というものは大事だというふうに思っております。

 その点では、近年、規制緩和などを背景に金融のグローバル化やイノベーションが急速に進む一方で、市場参加者による金融商品の価値とリスクの適切な評価、ディスクロージャー、それからリスク管理などがやはり十分に機能しなかったという事情があるように思います。この点で大事なことは、金融市場や金融機関が資金の効率的な配分を安定的に行うことができるよう、規制、監督も含め適切な枠組みを再構築していくということが大事だと思っています。

 細かい話は省略いたしますけれども、その際には、個々の金融機関に対する規制、監督の話ももちろん大事ですし、それから金融システム全体として、どこにどういうふうなリスクがあるのかということについて適切に把握するアプローチ、これはよくマクロプルーデンス政策というふうに呼んでおりますけれども、そうしたことが大事だと思っています。

 現在、各国の当局は真剣に議論を行っています。非常に大きな難しい問題であるために、今直ちにすべての問題について答えが出ているわけではありませんけれども、しかし、今回のG20でもある程度の方向性が出てくるということを期待しております。

    〔木村(隆)委員長代理退席、委員長着席〕

佐々木(憲)委員 日本の場合はよく、アメリカ発金融危機の影響を受けたというふうに今の危機の原因を説明される場合があるんですけれども、私は、単に金融危機のいわば被害者のような関係だったのではなくて、実は日本も、この金融危機の大変大きな要因をつくったのではないか、こういう観点も必要だと思っております。

 といいますのは、ゼロ金利政策のような低金利政策、日本が国際的に見て相対的に非常に低い水準を長期にわたって維持した、そのことが、円を調達してドルで運用するといういわゆる円キャリートレードというような状況を大量に発生させて、その資金がアメリカに大規模に供給される。

 その規模がどのくらいかというのは、なかなか計算は難しいと思いますけれども、例えば昨年の日経の七月三日付のコラムには、過去四年間で日本の海外への資金供給は六十兆円以上になった、こういうふうに書かれてもおりまして、そういう意味では、あのバブルを発生させた大変大きな要素として、日本の責任は大きいのではないか、こういう指摘もあるわけです。私もそういうふうに思うわけです。

 日本の中央銀行としての低金利政策、これは必要だった、以前そういう御答弁もいただいたことがあると思うんですけれども、しかし、その反面として、このようなアメリカの金融バブルを発生させていった要因をつくったという面もあるんだ、やはり両面をよく見て対応することが必要ではなかったのかと私は思うわけですけれども、この点でのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

白川参考人 現在の世界的な金融危機の発生の原因につきまして、先ほど申し上げましたとおり、これに先立つ四年あるいは五年の間に世界経済が非常に良好な環境を続けたということが挙げられます。高い成長、低いインフレ、そのもとで低い金利が長期間にわたって続いたということが原因だと思います。

 今御質問の金融政策という面でいきますと、これは世界全体として、そういうふうな金融の行き過ぎが生じた背景に世界的な低金利の持続があったということは、現在、比較的多くの人の同意を得つつある見解だというふうに思います。その世界全体の金利水準の中に日本の低金利も含むということは、それはそのとおりでございます。

 そういう意味で、日本銀行の金融政策も世界全体の金融に影響がなかったかというと、日本の政策も影響はあったと。ただ、これは日本銀行だけではなくて、世界全体がそのような低金利政策を長期にわたって続けたということでございます。

 日本について申し上げますと、日本が低金利といいますかゼロ金利を長く続けたということは、当時の日本経済のことを思い起こしてみますと、企業の過剰債務、過剰設備の解消あるいは不良債権問題、金融システム不安の克服ということが大変大きな課題で、厳しい調整過程にありました。そうした中で、ゼロ金利あるいは量的緩和というものは必要であったというふうに思っています。ただ、そうした政策が長く続くと、またさまざまな弊害を生み出すということは十分に認識しないといけないと思います。

 その点、現在これは世界的に、例えば、改めて二〇〇三年以降のマクロ経済を振り返って、あのころは政策当局者あるいは学者の方、マスコミの方もデフレの危険を非常に懸念して、低金利を続けた方がいいという議論が世界的な規模で展開されたわけでありますけれども、しかし、今日こういう事態を迎えたこともまたもう一つの事実でございます。

 そうしたことも含めて、先ほど佐々木委員がおっしゃった、両方の要素を常に考えながらしっかり政策をやっていくべきであるということはそのとおりだというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 世界的な低金利が発生していたことは、発生といいますかそういう状況がつくられたということはそうだと思いますが、日米関係でいいますと、その間、金利差というものがあったと思うんです。そのために、円で調達してドルにかえてドルで運用するというやり方が非常に膨らんでしまったということなので、そういう意味で私は、日本の低金利政策というものがアメリカとの関係でどうだったのかということを、もう一度再検討する必要があるのではないかという問題提起をさせていただいたわけでございます。

 さて次に、中小企業に対する金融の問題について伺いたいと思います。

 先ほどの概要説明をお聞きしておりましたら、中小企業を中心に資金繰りや金融機関の貸し出し態度が厳しいとする先が依然増加するなど、厳しい状況が続いています、こういうふうに説明をされました。

 お配りした資料の一枚目は、日銀短観の最新の資料を載せてあります。昨年の九月の段階では、資金繰り判断、大企業はプラスの一五、中堅企業が三。これに対して中小企業は、昨年九月の時点でマイナス一一。十二月になりますと中小企業はマイナス一五というふうに、ますます資金繰りが厳しい、こういうことであります。マイナスがずっと続いているわけですね。

 それから次は、下の方にありますのが金融機関の貸し出し態度ですね。これも九月の時点では、大企業が一三、中堅企業が七に対して、中小企業はマイナス三というふうにマイナスになっております。それから十二月では、全体としてマイナスが広がっておりますが、中小企業の場合はマイナス九。ますます、中小企業に対して金融機関の貸し出しが厳しくなっているというのが日銀の調査でもはっきり出ているわけであります。

 次のページを見ていただきますと、企業向け貸し出し前年比ですけれども、これも中小企業の場合は、二〇〇七年の末ぐらいからマイナスがずっと続いているわけであります。大企業の方はそれに反してプラスが続いている、急速に貸し出しがふえている、こういう状況であります。

 このように見ますと、全体として、大企業向けの銀行の貸し出しというものは比較的順調に行われている、もちろん、最近の厳しい状況というのは多少あるんでしょうけれども。しかし、中小企業は、これに比べますと非常に厳しい状況にある、ますます深刻な事態になっているというのが日銀の統計からも明らかになっていると思います。

 そこで問題は、先ほど来、資金供給は潤沢な状況が続いている、しかもそれをいろいろな角度で、いろいろな手段で補強してきた、こういうことでありますが、肝心の銀行から先、これがうまく回転しない、資金が供給されていないというのが今の実態だと思うんです。

 日銀としては、CPとか社債の買い入れということで、これは異例中の異例という説明をされています。しかし、CP、社債というものは比較的大きな会社が発行するものでございまして、しかも日銀は優良なものを購入する、つまり、日銀の資産を毀損しないようにできるだけ優良なものを買い入れるんだ、こういうふうなことが基本原理だというふうに説明を受けました。

 そうなりますと、銀行から先の貸出先は、中小企業は非常に厳しいんだけれども、大手企業に対しては銀行は一定の貸し出しはやっている、しかも日銀はそこに異例中の異例の支援も開始した、しかし中小企業は一体どうするのか、これが残るわけです。しかも、日本経済にとって一番肝心なのは、雇用にしても生産にしても、中小企業の部分が一番の土台になっているわけでありまして、この中小企業向け融資というものを一体日銀としては、ここに資金を供給するどのような手だてがあるのか、あるいはまだ考えられていないのか、まずその点をお聞かせいただきたいと思います。

中曽参考人 中小企業向けの貸し出し拡大策として、日本銀行としてどのような策を講じることができるのか、こういう御質問というふうに思います。

 去年の秋のリーマン・ブラザーズの破綻を契機に、金融の環境は大変急速に悪化してございます。中小企業を含みます企業の資金調達環境は、大きくこの中で悪化してございます。こうしたもとで、日本銀行が現在やっております措置でございますが、大きく分けて二種類ございます。

 一つが、潤沢な資金供給を通じた金融市場の安定確保という点でございます。もう一つが、CPとか社債を買い入れることによりますいわゆる企業金融の円滑化措置でございます。この二つの側面から対応をしてきてございます。

 このうちのまず前者、潤沢な資金供給でございますけれども、こちらは、金融市場の安定を確保することによりまして、金融機関が与信活動を行うための資金調達に安心感を与えているというふうに思います。

 もう一つの企業金融、つまり金融機関からCPや社債の買い入れを行うことにつきましては、金融機関の貸し出し余力を拡大する、そういった効果があると思います。つまり、CPとか社債を引き取って、その分銀行のバランスシートに余裕ができる、そういう効果をねらっているものでございます。

 今申し上げましたような措置は、結局、金融機関の与信活動を支えることを通じまして、中小企業向けの貸し出しにも、最終的にはプラスの効果を及ぼすというふうに私どもは考えてございます。

 今、大変厳しい金融経済情勢が続いているというふうに見ておるわけでございますけれども、私どもとしましては、今申し上げましたような措置を活用しながら、企業金融全体の円滑化に向けて全力を挙げてまいりたいというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 今の説明は、先ほど私が自分なりに説明をしたものと全く同じ説明を受けただけでありまして、私が聞きたかったのは、中小企業に対して、日銀としては新たな手だてがあるのかないのかということをお聞きしたわけなんです。どうも今の説明だと、間接的な効果を期待するという程度の説明はありました。しかし、中小企業向けの資金が流れていくような具体的な施策というものはいまだにとられていないというのが、どうも説明だったと思います。

 そこで、具体的に何かできないのかということなんですね。

 例えば、これは全く私の素人考えですけれども、銀行が、非常に資金繰りのきつい中小企業に対してリスクをとる貸し方をする、その銀行に対して日銀が何らかのその場合の支援を行う。これは何ができるかというのはプロがお考えいただければいいと思うんですけれども、もうちょっと直接的な支援というものですね。

 CP、社債というのは異例中の異例でやっているわけですから、もしそういうことをやるとするならば、私は、それはもうやる必要がないと思うんですよ、大企業は。中小企業向けに何をやるのかということこそ、今検討していくべきではないのかというふうに思うんですけれども、総裁のお考えをお聞かせいただきたい。

白川参考人 最初に、大企業と中小企業に分けて御説明いたしたいと思いますけれども、大企業向けは、確かに資金の貸し先としては、日本銀行が例えばCPの買いオペを行うというのは、これは大企業に対する資金の提供に実質的になってくるわけでありますけれども、しかし、今大企業の資金需要がなぜあれだけ増加しているのかというのを考えますと、これは結局は、グローバル市場が今急速に落ち込み、売り上げが落ちてきている、これは放置しますと資金繰り的に大企業が苦しくなってくる、その結果、中小企業の方に影響が出てくるということでございます。

 大企業の方が今一生懸命資金調達を行っていくというのは、これは最終的に、企業間信用、大企業から見てそれよりも下の企業に対する信用の供与に悪影響が出る、結局、下請のすそ野が崩れてまいりますと大企業自体に影響が出てくるということで、したがいまして、そうしたことも含めて、実は大企業は資金調達を行っておるというふうに理解しております。

 したがいまして、統計分類上大企業というふうになっているわけでありますけれども、実はそれは大企業の資金需要だけではなくて、傘下の中小企業の借り入れ需要も反映したものだというふうに私どもは金融機関からも聞いております。そういう意味でまず、全然とっていないというわけではございません。

 それから、今委員の御指摘は、より直接的に中小企業に対してできないのかということであります。今、日本銀行は、全国にたくさんある中小企業あるいは零細企業と直接取引をするということはなかなかかなうことではございませんから、どうしてもその意味では、金融機関、企業になります。日本銀行として何かできないかというその何かを具体的に考えますと、これは結局つまるところ、一つは流動性、もう一つは資本であります。

 流動性は、日本銀行はいろいろな手だてを使いまして、金融機関に対して流動性を供給して、まさにその何かを今やっておるということでございます。

 民間金融機関が企業に対しての貸し出しについて仮に慎重になるとすれば、それは、最終的に自分たちに発生するかもしれないロス、損失とそれから自分の体力、その面では自己資本の問題でございます。このことについては、政府は金融機能強化法というものを提出し、先般国会で成立をしたわけでございます。そうした事態に備えて、資本が提供できるという枠組みが用意されております。

 日本銀行は、そういう意味で、日本銀行の流動性の供給、それから政府の金融機能強化法による資本注入の枠組み、こうしたもので今対応しているわけでございます。

 ただ、これ以外に本当に方法がないのかということは、これからも一生懸命考えていきたいというふうに思っています。

佐々木(憲)委員 先ほどの日銀の調査の結果を見ても、実際には、銀行から中小企業に対してなかなか流れていっていないというのが実態でありまして、この金融機能強化法というような法律も、期待するというようなことで、最終的には国民の税金で穴埋めするような話の法律なので、我々はこれはおかしいと言っているわけです。むしろ、政府系金融機関などが、今のような民営化をせずにちゃんと役割を果たして、一番困っているところに直接融資が行くような形にするのが一番望ましいと私は思うんですけれども。

 そういう意味では、日銀の役割というのはなかなか、靴の裏から足をかくような感じで、銀行に対しての精査が基本ですから、そこから先の実業の企業に対して何かやるというのは非常に難しいことはわかっております。しかし、異例なこともやっておられるわけですから、私は、その異例なやり方の中身が、やはり大企業に対してやるよりも中小企業に何かやる方法はないのか、これは素朴な疑問でございまして、ぜひそういう点も含めて検討していただきたいなと思っております。

 もう時間がありません。もう一点、日本経済の外需依存型の問題をやろうと思ったんですが、もう時間が来たようなので、きょうはこの程度にしておきたいと思います。ありがとうございました。

田中委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時一分散会


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