衆議院

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第12号 平成22年4月9日(金曜日)

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平成二十二年四月九日(金曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 玄葉光一郎君

   理事 岸本 周平君 理事 篠原  孝君

   理事 鈴木 克昌君 理事 高山 智司君

   理事 中塚 一宏君 理事 後藤田正純君

   理事 竹本 直一君 理事 石井 啓一君

      網屋 信介君    池田 元久君

      今井 雅人君    小野塚勝俊君

      小原  舞君    大串 博志君

      岡田 康裕君    小林 興起君

      小山 展弘君    近藤 和也君

      下条 みつ君    菅川  洋君

      富岡 芳忠君    豊田潤多郎君

      野田 佳彦君    橋本  勉君

      福嶋健一郎君    藤田 憲彦君

      古本伸一郎君    皆吉 稲生君

      山尾志桜里君    和田 隆志君

      田中 和徳君    竹下  亘君

      徳田  毅君    野田  毅君

      茂木 敏充君    山本 幸三君

      山本 有二君    竹内  譲君

      佐々木憲昭君

    …………………………………

   財務大臣         菅  直人君

   国務大臣

   (金融担当)       亀井 静香君

   内閣府副大臣       大塚 耕平君

   財務副大臣        野田 佳彦君

   財務大臣政務官      大串 博志君

   財務大臣政務官      古本伸一郎君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    畑中龍太郎君

   参考人

   (日本銀行理事)     中曽  宏君

   財務金融委員会専門員   首藤 忠則君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月九日

 辞任         補欠選任

  荒井  聰君     藤田 憲彦君

  和田 隆志君     皆吉 稲生君

  渡辺 義彦君     小原  舞君

同日

 辞任         補欠選任

  小原  舞君     渡辺 義彦君

  藤田 憲彦君     荒井  聰君

  皆吉 稲生君     和田 隆志君

    ―――――――――――――

四月八日

 消費税率引き上げ・大衆増税反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第六三五号)

 同(笠井亮君紹介)(第六三六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第六三七号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第六三八号)

 同(志位和夫君紹介)(第六三九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第六四〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第六四一号)

 同(宮本岳志君紹介)(第六四二号)

 同(吉井英勝君紹介)(第六四三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 金融に関する件(破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告)


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     ――――◇―――――

玄葉委員長 これより会議を開きます。

 金融に関する件について調査を進めます。

 去る平成二十一年六月十二日及び十二月十一日、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律第五条の規定に基づき、それぞれ国会に提出されました破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告につきまして、概要の説明を求めます。金融担当大臣亀井静香君。

亀井国務大臣 破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告書を国会に提出申し上げました。報告の対象期間は、それぞれ、平成二十年十月一日以降平成二十一年三月三十一日まで、平成二十一年四月一日以降九月三十日までの二つであります。

 これらの報告に対する御審議をいただくに先立ちまして、その概要を御説明申し上げます。

 初めに、管理を命ずる処分の状況について申し上げます。

 今回の報告対象期間中に、金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分は行われておりません。

 なお、今回の報告対象期間中に、預金保険機構と新生銀行の間で行われていた訴訟において裁判上の和解が成立したこと等から、預金保険機構は新生銀行に対して、その補てんとして、百六十二億円の支払いを行っております。

 次に、預金保険機構による主な資金援助等の実施状況及び政府保証つき借り入れ等の残高について申し上げます。

 破綻金融機関からの救済金融機関への事業譲渡等に際し、預金保険機構から救済金融機関に交付される金銭の贈与に係る資金援助は、今回の報告対象期間中にはなく、これまでの累計で十八兆八千六百七十億円となっております。

 また、預金保険機構による破綻金融機関からの資産の買い取りは、今回の報告対象期間中にはなく、これまでの累計で六兆四千六百六十二億円になっております。

 これらの資金援助等に係る政府保証つき借り入れ等の残高は、平成二十一年九月三十日現在、各勘定合計で五兆七千四百七十七億円となっております。

 ただいま概要を御説明申し上げましたとおり、破綻金融機関の処理等に関しては、これまでも適時適切に所要の措置を講じることに努めてきたところであります。金融庁といたしましては、今後とも、我が国の金融システムの一層の安定の確保に向けて万全を期してまいる所存でございます。

 御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。

玄葉委員長 これにて概要の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

玄葉委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として日本銀行理事中曽宏君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として金融庁監督局長畑中龍太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

玄葉委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

玄葉委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小林興起君。

小林(興)委員 きょうは貴重なお時間をいただきまして、この委員会で質問の機会を与えていただきましたことを、まず関係者の皆様に感謝申し上げます。

 御承知のとおり、日本の経済がなかなかよくならない、というよりは、もう低迷というよりは低落の傾向をたどっている。そういう中で、政府としては一生懸命財政の出動等も考えているわけでございますが、なぜ日本の経済がこんなに長い間だめになってきたのかということは、いろいろあると思うんですけれども、その一つは、やはり金融政策の大失態、それがずっと続いているということがあったかと思うんですね。やっと政権が交代して亀井大臣になられて、その金融政策を大きく変えることによってこれからは期待ができるという状況になってまいりまして、大臣の御奮闘にまず敬意を表するものであります。

 翻ってみますと、とにかくこの国は、世界一優秀な人々といいますか人材を持ちながら、世界の経済が発展しているときも全然だめ、今のような状況になればさらに一層だめ。それはもう国民のせいではなくて、頑張っている国民がいるにもかかわらず、まさに政策によって、わざわざ日本にある貴重な金融資産を外国に持っていかれるとか、あるいは日本の中でお金が回らないというような金融政策の失態が続いてきた。逆に言いますと、政治がしっかりすれば直ちにこの国を立て直していくことができるということではないかと思うわけでございます。

 そういう中で、亀井大臣になられましてから、これまでの小泉・竹中金融政策の大失敗を大きく修正する、まさに政権交代の意義がここにあるのかなということでございますが、金融円滑化法ということで、やっと中小企業に対する円滑な金融ということに手がついた。そして、金融マニュアル、こういうものをしっかりと見直していくという動きが出てきたのは、まず一番大きなよかった点だと私は思っております。

 そして、次に大臣が言われております、大きく手がけた今の郵政民営化法、この見直し、これも、大臣がよく言われるユニバーサルサービスをきちっとするためには、これまでできた民営化法を見直さなきゃいかぬということであります。

 私は、もう一つ、力点を金融ということに置きますと、やはり小泉、竹中がつくった郵政民営化法の大きな問題、一つはユニバーサルサービスが危ないということでありますけれども、何といったって、あの法律は、民営化するときの株式を全部マーケットに出す。マーケットに出せば、それは自由にだれでも買えるんですから、だれが買うかといえば、このことを要求してきたアメリカの巨大な金融資本が当時でしたら買いまくることはわかっていたわけですから、郵貯、簡保の金、三百兆が外国金融資本の手に落ちる可能性があった。つまり、外資規制をかけていなかった。このことに大変な反対を私は当時いたしましたが、しかし、それを強行突破して、そして法律ができた。これを今回の見直しでもって、国が三分の一、しっかりと持つことになって、外資規制が事実上かかったと同じことでありますから、日本のお金は守られたということが言えると思うのであります。

 金融的に見ればそういうことでございますけれども、この間の委員会で、きょうはいらっしゃらないんですけれども、若い自民党の議員さんがいらっしゃって、非常に大臣に対してああだこうだということを言っておりました、政党の支持率がどうだこうだと。だから、あえてこの委員会で言うべきことかどうかわかりませんけれども、申し上げておかなきゃならぬのは、亀井大臣も小林興起も昔自民党という政党にいた。では、なぜ自民党に今いないのか。自民党を出たのではなく、たたき出された。自民党をみずからの意思で出ていくのとたたき出されるのとは全然違うんです。こういう粛清が行われた。それをやったのが、あの若い議員さんのお父さんだったんじゃないですか。そういうことを反省もしないで、よくもあんなことが言えたと思ったので、あえて申し上げたわけであります。それで自民党は貴重な人材を失って、政権からもおっこっちゃったということでありますから。

 そして、マスコミだって問題ですよ。日ごろ言論の自由なんて言っておきながら、政治家の言論の自由を全然問題にもしないということが今日のこの政治のていたらくだということは、蛇足ですが、つけ加えておきたいと思うのであります。

 それで、金融問題に戻るわけでありますが、そういうことで、マスコミが余り報道していない、郵政民営化法はまさに金融に深くかかわっている、ここにあるということをしっかりと申し上げて、そして大臣にやっていただいているのが、今、共済の見直し。

 あれも大臣、ひどいですよね。アメリカの保険会社が、日本の共済をつぶそうとして、共済と保険を一緒にしろと。これを一緒にして、違うものを一緒にしているから、もう共済はめちゃくちゃになっちゃった。これも国民生活に大変悪影響を与えているので、今しっかりと大臣がこの共済を見直すように金融庁に指示をしていらっしゃるというふうに伺っておりますので、これもいい成果が出るでしょう。

 きょうは、メーンの問題はもう一つ、今、これも前政権の悪法ですけれども、改正貸金業法というのができたんですね。しかし、これがすぐ完全に実行されるのではなくて、六月にですか、これを完全実施するということで、若干時間がある。

 この間、金融の政策委員会というんですかね、大塚副大臣のもとで、民主党の国会議員が集まって自由に討論する会合が開かれた。これで、完全実施ということを言わされているんだがどうかというお話があったんです。副大臣、覚えていると思うんですけれども、立った人は全員、座っている人の意見はわからないですけれども、立って意見を言った人は全員、この六月実施に反対したわけですよ。その理由は非常に簡単であって、こんなの実行されたら、もう中小企業のお金を借りようと思う人が借りられなくなる、こういうことになったら、つくったのは前政権で、実行するのが現政権で、どっちが悪いかと言われると、つくった前政権ではなくて実行する現政権になる。だから、こんなことを、これはもう亀井大臣の剛腕でひっくり返して、立派な新しい法律をつくってもらいたいというのが、お話しした人まず全員の意見でございました。

 それを、時間がありますので、若干のお話をさせていただいて、大臣にしっかりと考えていただきたいと思うのであります。

 今、改正貸金業法を、この悪法を何とか完全に実施しようとして、多分大塚副大臣のもとでPT、そういうのが開かれまして、いろいろ勉強会を開かれている。それで、見直ししていくのに十の方策を考えたという紙があるんですね。これをやれば何ともなく実施できるのかなということで出したんでしょう。しかし、これは残念ながら、大塚副大臣も頑張られたと思うんですけれども、やはり皆さん、民主党の議員の方がこの間の政策会議でお話しになったように、いろいろな問題がたくさんある。今は時間がありませんので、十について全部はお話ししませんけれども、大きなものについて言うならば、一つは、総量規制というものを入れたんですね。

 この総量規制という細かい議論に入る前に、せっかく大臣おいでですので、大体、大きく問題になっているのは、皆さんにお配りしたと思うんですけれども、貸金業者数がもうこれだけ減ってきている。こんなに減るというのは異常な事態でありまして、こういうのが、お金が日本の中に、国内に回らないということを示している。余りにもひどい。

 どんどんどんどん経営が悪くなってきているからつぶれていくわけですけれども、その中に、大臣は余り電車に乗らないかもしれませんけれども、電車に乗りますと看板があって、そこに出ているのは、大臣、弁護士ばかりなんですよ、来てください来てくださいと。テレビを見ても、時々弁護士事務所がテレビに出る。そんなお金がどこにあるのかというぐらいやっているんですよ。しかし、何かと見ると、全部この話ですよ。

 過払いという変なことがありまして、何か最高裁が判決を出したらしいんですね。そうしましたら、それに従って、はいはいはいと言って全部言いなりになって、今までのお金を返してくれと言いますと全部返さなきゃいけないという変なことになっているらしいんですけれども、大臣はこの問題について御存じなのかどうか。

 そして、これはひどいなということであれば、最高裁の裁判官も優秀な人が行っているんでしょう、しかし大臣、金融庁の役人も優秀な人がたくさんいるはずなんで、その優秀な人間に、あの最高裁の判決、我々は司法じゃないのでおかしいとは言えないでしょうから、しかし、あんなのでみんなが困っているんだったら何か助けてやらなきゃいけない、おまえ考えろというようなことを言えば、きっと金融庁の頭のいい役人が考えてはくれるんでしょうけれども、まず大臣、この過払い問題について、ちょっと所見を伺いたいと思います。

亀井国務大臣 過払い問題については、私なりに、また金融庁としてもそうした実態について強い関心を持って情報も集めておるわけでありますが、残念ながら、今の実態を見ますと、極端なモラルハザードを起こした弁護士の方々が、簡単に言うと、零細な金をある意味では血のにじむような努力をする中で借りておる方々に返るべき金を、世話をすると称して自分たちが食い物にしてしまっている、言葉が悪いが、私は言葉が悪いのが特徴ですから、しているという状況が、残念ながら相当広範囲に行われているという。

 先日、今度日弁連の会長になられた方ともちょっと話をしたんですけれども、そうした契約関係、弁護士との契約関係についても、立場の弱い無知な方々に対して、もう地獄で救い手があらわれたというような、そういう感情を利用して、実質的には借りた人に金が余り渡らない、実質的に弁護士がそれをとってしまうような実態が非常に広範に起きている。

 私は、弁護士会の会長に、これはやはり弁護士というのは人を助けるというのが本来のあれでなければならぬのに、最近はいろいろ広告まで打って、そうしてある意味であくどい弁護士としての仕事をしておられる方が目に余るんじゃないですかということを率直に申し上げましたら、会長も、非常にそういう面の問題があることを私も承知しているんで、弁護士会としてもこの問題についてはきちっと指導をしていくということをやりたいというような意味の発言を、私に対して、しておられました。

小林(興)委員 大臣がそういうお考えでございますので、きっと何か、この過払い問題についてもきちっとした道が開かれるんじゃないかなということを期待させていただきます。

 そして、戻るんですけれども、必ず何か法律ができるときは、一応大義名分がある。だからみんな、いいかなと思ってやる。郵政民営化なんか、大臣、郵便局が便利になるというから、そうかなとつい行っちゃう。全然ならない。しばらくたつと気がつく。貸金業も一応、前につくったときに多重債務者問題というのがあって、これやるこれやるというと、みんな、そうかなという。これはおっしゃるとおり大事な問題ですから。しかし、この多重債務者問題なんというのは、この間のPTでもいろいろな専門家がお話をしておりましたけれども、これは心の問題もあるわけで、いろいろあるわけだから、別に貸金業という金融の分野だけでやれる問題ではないということを皆さん言っていらっしゃいました。

 そういうことをまず考えて、この貸金業というのはお金を普通に貸して普通に借りる人の話をするわけですから、それがスムーズにいくようにするためにはどうしたらいいかという原点に戻ってこの法律を考えるという中で、この間、多分多重債務者問題を引きずっているんでしょうけれども、この十の方策が何かいろいろと、総量規制というへんてこりんなことを考えて、お金を貸すのに年収があるかないかを考えましょうなんというのが総量規制らしいんです。しかし、あのときも、政策会議で民主党の皆さんから意見が出ましたが、副大臣、世界でこの総量規制なんということをやっている国はあるんですか。先進国で結構です。

大塚副大臣 私どもが承知をしておりますイギリス、フランス、ドイツ、韓国等においては、特段設けられていないというふうに認識しております。また、米国においても、ニューヨーク州法等主要な州法には定められておりません。

小林(興)委員 世界の国がなぜ設けないのかというのは、私も別に理由はわかりませんけれども、ただ、推測できるのは、この間の話を聞いていましても、年収の三分の一貸そう。しかし、貸金業の狭い話をしているんですね。

 今、御承知のように、信用経済の中で、よくも悪くも普通の方が、デパートに行って買い物しても、全部その場では払わない、何回払いで払うとか、それから、毎日テレビを見ると、朝、いいものですよ、何回払いで払いなさいと。みんな何回払いというので分割で払っているわけでしょう。言ってみれば、我々みたいな素人から見れば、みんなそんなのは借金であって、ずっと払っていかなきゃいけない。そういうところに持っている借金も貸金業で借りるお金も、借りることに変わりがないんですから、もし総量規制をやるのであれば、すべて、その人がそういうことにお金を使っているかどうかということを集めて見なきゃいけない。でないと、本当に返還能力があるかどうかわからないわけでしょう。

 だから、総量規制なんというのはできないし、やろうと思えば全体を集めるということになって、国民について政府がえらい介入してくることになる。だから、自由主義諸国ではどこの国も総量規制なんということは、やりたいと思ったって、そういうのは大学院生レベルの話であって、世の中を知っている大人から見ればそんなことはできないよ、こういうことは一番亀井大臣がわかると私は思いますので、こういう総量規制問題についてもぜひまた考えてもらわなければならないと思います。

 それから、もう一つの問題で、上限金利という話があって、何か昔二九・二が今は二〇になっちゃったらしいんですけれども、こんな二〇%程度でできないよというのは、それができないからこうやって業者がどんどん減ってきている。お金を貸すのに、貸して全部返ってくるならこんな楽なことはない。返ってこない、そういうものがある率で発生するということが常識だからこそ、普通の率に、大もうけしようというんじゃないけれども、多少のものがないと貸出業というのは成り立たない。

 この間のPTなんかでも、大塚副大臣、自分で主宰されたんですから聞いておられたと思うんですけれども、そういうものでは、みんな二〇じゃ無理だと。世界の国だって、どうなんですか、みんな二三とか五とか、そういう数字になっているんじゃないですか。

大塚副大臣 まず事実関係を、認識を共有させていただきたいんですが、きょうせっかく小林委員が御用意いただいた先ほどのグラフでございますが、改正貸金業法が施行されたのは平成十九年からでございますので、十九年以降、業者数が減ってきていることと、それ以前のトレンドとの違いについて、これは今の御質問ともかかわる点なので、ちょっとだけ付言させていただきたいんです。

 このグラフの一番最初の六十年、六十一年のころは、ちょうどバブルのころに、大変高利で借りてでも株でもうけられる等の動きから一気にそういう業が成り立って、数がふえたわけであります。その後バブルが崩壊した後、借り回しをしながら平成七、八年ごろまで続いたわけでありますが、このころ、きょうの審議の主題でもあります金融機関の破綻等が生じ、その後、平成八、九年ごろから十五年ごろまでの、減りながらもやや高い棒グラフの状態のころに多重債務者問題が徐々に社会問題化していき、そして多重債務者問題が表面化したことにより、そこから抜け出さなくてはいけないという人たちが借りることを抑制して、一気に業者数が減ってまいりまして、そして改正貸金業法が成立をして平成十九年から施行された。

 こういう流れの中で、では他国ではなぜ先ほどのような規制がないかと申しますと、規制のないイギリスなどでは、消費者金融のうち、銀行が八割を行っております。また、ドイツにおいては、日本のような消費者金融業者とか商工ローンのようなノンバンクが一般には存在しない。したがって、本来の金融がこの分野を担っているウエートが日本よりは高いということもあります。

 そういう違いを認識を共有させていただいた上で、御下問の金利について申し上げれば、上限金利は他国においても日本より若干高い水準に位置づけられております。

小林(興)委員 特に問題は、大臣が非常に気にしていらっしゃる中小企業者向けの事業者金融なんですよね。

 この間PTで私も教えていただいたわけですけれども、大臣、大塚副大臣のもとで、PTで非常にいい方を呼んでずっと勉強会を開かれておった。なかなかこれだけのいい方を呼んで精力的にやるというのはないので、ぜひ評価してやっていただきたいと思うんです。私はただ聞いていただけですけれどもね、そういうところに行って。

 すばらしい講師が話をして、例えば、実態として、何か仕事が来たときに、植木屋さんなんかは道具を百万円で購入して仕事をして、百五十万か二百万もうかる。そういうときに、すぐにやって一カ月後にはお金が入るんだけれども、その間、百万をぱっと借りて、その金利を次の月に百三万払う。大臣、百万で次に三万足したって大したことないでしょう、百三万。だけれども、これは年利にすると、三掛ける十二だから三六になるわけでしょう。三六%なんて今は借りられないわけですよ、二〇%ですから。百万円で、翌月返すのに一万、二万、三万は事業者にとって大したことない。

 同じように、大企業からお金がもらえると思って待っていたら、いきなり今月もらえなくなった。もうちょっと待ってくれと言われたときに、どこからかお金を借りてこなきゃならない。そのときは百万で例えば百五万だって、貸してもらえれば、必ず次にお金が大企業から中小企業に来るわけですから、耐えられる。

 つまり大臣、申し上げたいのは、事業者金融と普通の、まあサラリーマンが借りると言ったらあれかもしれません、国民が借りるのと違いますので、そういうものについて手当てをするということを考えないと、この間も大阪の民主党の議員が言っていましたよ、これができると大阪で大変なことになるとみんなが言っていると。だれが大変なことになるかというと、中小企業者が金を借りられなくて大変なことになるということなんですね。ですから、そういう事業者金融というのがここに入っている。

 こういうのは多分、今イギリスの話をされましたけれども、日本は、さっきの共済もそうですけれども、共済も日本の文化、事業者金融にこういうことをするのも日本の文化。世界の大企業相手にぬくぬくと生きているような国家とは違って、日本は、大臣、中小企業でもっているわけですから、中小企業金融ということを考えたときに、貸金業は中小企業の金融も扱っているわけですから、これについて例えば別に法律をつくるとか、一カ月だけ借りるものについては、そういうのは年利で言わずに月利と言うんですか、そういうものは幾らでいいとか、そういうことを一緒に入れ込んでぜひ考えなきゃいかぬ。

 ということになりますと、この間の政策会議で民主党の皆さんが言っていたとおり、六月完全実施なんて、現政権がつくっている話ですから、これはひっくり返して、大臣、別に慌てて六月にやる必要はないのであって、七月でも八月でも、皆さん方のようなよく勉強している人たちの話を聞きながら、どうするのかということを抜本的に考えないと、日本にある文化、伝統というのが大変なことになるということで、貸金業法についてもう一度現政権で、亀井大臣中心の、貸金業はいかにあるべきかということをぜひやっていただきたいというのがお願いなんですね。

 とにかく、必ず大義名分、この場合は多重債務というのが出てくるんですけれども、何かいつも大義名分を出して、そして本当のものが消えていく。

 思い返せば、不良債権処理というのは、大臣、この言葉でどれだけ日本の金融がやられたか。あのときも不良債権を処理する、国民が見ると、悪いことを処理するならいいと。しかし、あのときは大臣、デフレ下で簿価主義を時価主義に変えたわけでしょう。十億の土地が一億にされちゃって、そして九億貸し過ぎているからはがせと、まさに金融庁が言ったんですよ。大臣が金融大臣だったら、何を言っているんだ、おまえ、そんなの急にはがすことはできないじゃないかと一言言って終わったのを、本当にみんな実行したわけですから。それで、十億借りていた人たちが、悪いことも何もしていないのに、土地が一億になったから九億返せと貸しはがされて、それを美しい言葉で当時の金融担当大臣は、竹中さんは、不良債権処理と。何が不良債権だ、おまえが処理された方がいい、そういうのでやっていたわけでしょう。それでアメリカに呼ばれて行くと、不良債権処理だと。処理したのはだれが、日本人がもうかったらまだしも、全部外資がまとめ買いして、大臣、全部持っていったじゃないですか。そんなばかな不良債権処理なんか見たことない。それで今日のこの結果でしょう。

 だから大臣、金融問題について、最後の私のお願いですから、とにかく、日本のこれまで誤ってきた金融行政、この間はっきり言われた、小泉・竹中金融行政は日本を間違えたと。ですから、亀井金融行政が日本を再生させるという思いで、大臣、頑張っていただきたい。最後に御決意を伺いたい。

亀井国務大臣 議員の、現在の金融の状況、まさにまともな形で金が流れていっていない、特にその中で中小零細、商店、そういうところが大変困っておられるということは、私もそのように考えております。

 金融とは何のために存在しておるのかという、やはりその原点を見詰めながら金融庁は金融行政をやっていかなければならない、このように考えておるわけであります。

 議員のおっしゃることに同感な点が多々あるわけでございますが、議員御指摘の六月施行については、現在予定どおりに実施をすることにしておりますが、それに伴って、議員が特に指摘されましたように、個人事業者のそうした当面の金繰りについて、運用面においていろいろな矛盾が生じる危険性があるということで、今大塚副大臣のもとで、もちろん民主党の皆さん方から非常に貴重な意見をいただいたということも私はよく承知をいたしております。そういうことを踏まえて、そういうことが起きないような運用についての一つの方向を出していきたい、このように考えております。

 要は、議員御承知のように、今の金融システムの中で零細な方々のそうした金がちゃんと調達されていっていないという、さっき大塚副大臣から話がありましたけれども、日本においてはそうした銀行が銀行法に基づいて、金融庁が対応しておる、そういうことの中で、零細な事業、しかも喫緊な事業、それに対応できていないということがこの貸金業のいろいろな問題をやはり生んでおることだと私は思いますので、これは政府系金融機関を含めて、現在の金融機関がそういう現にあるニーズにどう対応していくか、こういうことを真剣にやらなければ、根源的にこれがやはり解決できない。また、ある意味では福祉の面ともつながってくる面も私はあると思いますが、議員のおっしゃったことはしっかりと拳々服膺しながら、今後の対策に生かしていきたい、このように思っています。

小林(興)委員 時間ですので終わりますが、最後に大臣、運用面だけでうまくいくのかどうか、大銀行も世界の銀行と同じことしかしない、銀行に零細な企業なんかに貸すようなものは世界じゅうどこにもないんだ、日本独特のやはり小さな金融機関が必要ではないかということの御検討をお願い申し上げまして、終わります。ありがとうございました。

玄葉委員長 次に、福嶋健一郎君。

福嶋(健)委員 民主党の福嶋健一郎でございます。

 まず、きょうの報告のタイトルですね、破綻金融機関の処理、これを見まして、改めて私も特別な思いがございます。

 というのは、私は銀行におりまして、ちょうど平成五年、会社に入って三年目だったんですが、そこから約五年間、五年半ぐらいでしょうか、まさに破綻金融機関の処理というセクションにおりました。

 当時は、信用組合、東京協和、安全信用組合、そういうところから始まって、信用組合そして生保、あるいは第二地銀、いろいろな金融機関が非常に厳しい経営状況にあって、当時はまずは業界で奉加帳方式でどうにかしよう。でも、それもだんだん難しくなってきて、そして、きょうここにおられるたくさんの先輩の議員の皆様がいろいろな法律の枠組みをつくられて、そして現在に至るというふうなことだと思います。この報告を伺いながら、いろいろな思いがよぎったわけでございます。

 まず、この報告について幾つか御質問させていただきたいと思います。

 今回、二回のFRC報告がされておるんですけれども、旧長銀の件につきまして、これを投資組合に譲渡する際に、新生銀行に対して損失補てんということで、この二回で百六十二億円の補てん、支払いが発生したということでございますが、そもそも、もう一度ここで確認をしておきたいんですが、旧長銀に対して投入された公的資金支援の実施額、そしてそれがどれぐらい回収されてきたのか。立場を変えると、では、その旧長銀を譲り受けた投資組合は一体幾らで取得をして、そして株を幾らの売り出し価格で売り出したのかということについて、数字を確認させていただきたいと思います。お願いいたします。

大塚副大臣 福嶋委員にお答えを申し上げます。

 まず長銀につきましては、金銭の贈与とか資産の買い取りとか資本増強その他を政府は行ったわけでございますが、これらは性質の違うものでございますので、単純に合算するというのは実は必ずしも適切ではないんですが、あえて合計いたしますと、平成二十一年九月までに預金保険機構が旧長銀の破綻処理に関連して投入した資金は十一兆七千百五十五億円でございます。このうち昨年の九月末までに回収した金額は六兆九千二百七十八億円であります。

 それから、売り出し価格についても御下問がございましたが、旧長銀を取得した取得者の、そのときの譲渡価格は千二百十億円、再上場時の合計二回の売り出し総額は五千五百五十三億円でございます。

福嶋(健)委員 今御答弁いただきましたとおり、公的支援の、単純に足し込んでいいかどうかは別として、結果的に差額として回収ができていないのが約四・八兆円、そして投資組合の株の話も、取得費用と売り出し総額の差というのが四千三百億円あるということでございます。

 これは言いかえるならば、何度も国会の場で議論はされていることと思いますけれども、結局、この旧長銀のスキームにおいては、国民の負担はふえる、投資組合の利益はふえるということで、非常にこれが如実にあらわれている例だと思います。

 一方で、これまたずっと議論されてきたと思いますけれども、いわゆる瑕疵担保条項、こういったものを行使することによって、本来経営を続けていくべき旧長銀のメーン先というか、こういったものが要するに倒産をしてしまう。こういうふうな、契約社会であっても、やはりそのときの我々日本の金融あるいは政治の中では、ここまできちっと切り込んで契約することができずに、こういう状況が起こってしまったということではないかなと思います。

 そういう意味では、足利銀行以来現在に至るまで、そういった金融破綻支援の事案というものはないんですが、こういう国民負担だけがふえていく、そういうふうなスキームということはもう二度と構築してはならぬというふうに考えているところでございます。

 一方で、金融機関も、破綻をするしないにかかわらず、常にやはりマネーゲームの対象にされている、この認識はきちっと持っていかなければいけないのではないかというふうに思っています。

 そういう意味におきましても、今郵政民営化の見直しが議論されておりますが、これはユニバーサルサービスの担保というのもありますけれども、郵貯しかり、簡保しかり、莫大な国民資産をお預かりして、それを結局、運用という形を通じて最終的にはやはり国の経済に寄与しているわけですから、こういったものも外資及び第三者のところにさらされていいのかというと、そういうことはないわけでございまして、この郵政民営化見直しというのは非常に大きな意味があるんだというふうに私は感じておるところでございます。

 本報告におきましては、金融機能強化法に基づいて、報告期間中に七金融機関に対して二千三百六十億円の資本参加あるいは信託受益権の買い取りを実行したとされていますけれども、ここでお伺いしたいんですが、現在までに公的資金によって資本増強を実施した銀行の数及びその金額について御答弁をいただきたいと思います。

大塚副大臣 平成十年以降、現在までに三十四の金融機関に対して約十二・七兆円を実施しております。

福嶋(健)委員 これだけの金額が公的資金ということで金融機関に入っているわけでございます。これはどういう目的かといいますと、当然経営を安定させる。しかし、この経営を安定させるというのは実は目的ではなくて、経営を安定させて、それによってお客様にきちっと金融を回していくというのが目的です。ここの最終目的を我々はやはりきちっと認識していかなければいけないというふうに思います。

 そのためにも、資本増強のいろいろなお申し出があったときに各金融機関が提出をされます、例えば、早期健全化法においては経営健全化計画、あるいは金融機能強化法では経営強化計画というものが出されまして、これについてはきちんと精査をして、精査をするだけではなくて、ちゃんとそれに沿って経営が行われているんだろうかということについてもモニタリングをしていく、当たり前の話でございます。

 ここでまたお伺いをしたいんですが、いわゆる経営健全化計画、経営強化計画において、さまざまな大きな柱、項立てがあると思うんですけれども、具体的にはどのような項立て、柱があるのかということについて教えていただきたいと思います。

大塚副大臣 御下問の経営健全化計画あるいは経営強化計画、この中身には、例えば、収益性、効率性が向上するための経営改善のための方策、あるいはガバナンスをより健全にするための方策、あるいは中小企業等に対する信用供与の円滑化に資するための方策等を盛り込むこととしております。もっとも、等ということでありますので、その他のことを盛り込んでいただいても構いません。

 それと同時に、委員にもひとつ御理解いただきたいのは、私どもは昨年の九月までは野党であったわけでありますが、野党時代の最後の局面でリーマン・ショックが発生し、そして、金融行政当局というのは金融システムの安定化のためには必要に応じて、決して金融機関を締めつけるという意味で公的資金を投入するのではなくて、使っていただくべきときには使っていただくという思いで金融機能強化法を改正すべきだということを野党時代の私どもが提案申し上げまして、今日の改正金融機能強化法が施行され、そのもとでこうした計画が今遂行されているという点を御理解賜りたいと思います。

福嶋(健)委員 今のお話で、またさらに大塚副大臣にお尋ねをしたいのです。

 先ほど申し上げましたように、金融機関の経営安定化というのは、最終的にそれを通じた金融の円滑化にある。特に、地銀、地方金融機関が多いわけですから、やはり地方の企業、なかんずく中小企業の金融を円滑化させていくということがこの資本増強によるきちっとしたモニタリングの大きな柱であるかなと思うんですが、実際に実績として、数字がどうこうということではなくて、こういった経営健全化計画が行われている地域金融機関、これは今、それによって中小企業の金融というのは、定性的にで結構なんですが、円滑化しているかどうかということについて御認識を伺いたいと思います。

大塚副大臣 ここは、評価がなかなか難しい面はあります。

 特に、定性的にということであれば、円滑化しているというふうに言い切ると、そうではないという御意見、御感触の方もあろうかとは思いますが、少なくとも、この計画に基づいて公的資金を受け入れた金融機関は、先ほど御質問のあった計画に計上した目標額を上回る実績を上げていることは事実でございます。

福嶋(健)委員 ありがとうございました。この報告は適宜御報告いただくので、またそこでいろいろな議論はさせていただきたいと思います。

 亀井大臣にお伺いしたいんですが、中小企業金融円滑化法、もう施行されて四カ月になっていると思います。正式な各行からの数字の発表とかというのはまだだと思うんですが、四カ月を経過して、どのような評価、効果、御感想かという御所見を伺いたいと思います。

亀井国務大臣 当初、私自身が懸念をしておりましたのは、返済猶予の相談をすると、そういうところは危ないということで新規の貸し出しをちゅうちょするんじゃないかというふうに借り手がおもんぱかって、返済猶予の相談をされないのではないかということを当初危惧したわけでありますけれども、金融機関がコンサルタント的な役割を果たしておるかどうかも金融庁の検査の重要な眼目だということで、これは十二月に検査マニュアルの中にも入れたわけでございまして、そういうことでやっておるということがある程度浸透もし、また、そうした中小企業者等に対してこの法律の趣旨等についての理解が浸透していくような努力も、金融機関自体が相当やってくれました。そういう結果、私も当時予想した以上に、困っている方々に対して、金繰り上、大変効果が上がっている。

 ただ、私も地方の信金、信組の幹部等と意見交換をしまして、異口同音に聞くことは、問題は、新規の事業展開をするための資金需要、新たな投資のための資金、そういうことの相談がほとんどなくなってしまっていると。そういう意味では、新規のそういう貸し出しについての意欲が極めて減退をしているということに大変な危惧を抱いておられるということを大勢の方から聞きまして、私は、中小零細企業の皆さん方が置かれている、金繰りだけじゃなくて、深刻な状況、これを解決しなければ基本的な解決にならないということを今痛感しておりまして、総理にも、また菅副総理等にも、そういう対策をこの政権はきっちりとやっていかなければ、金繰りを楽にしてあげるというようなことだけではどうにもならない状況に来ているんですよということを申し上げてもおる。

 ちょっと長くなりましたが、そういう感じでございます。

福嶋(健)委員 ありがとうございました。

 実はきょうのテーマなんですけれども、中小企業の立場からいうと、例えば、この法案の趣旨で、中小企業にとっては借り入れ、金融機関にとっては貸し出しというのがほとんどの形であると思うんですが、中小企業の資金調達というのは実は多岐にわたっておりまして、例えば、中小企業ならでは、私募債を発行するとか、あるいは仕組み物、東京都のCLOだとか、あと広域自治体が連携してやるCBOだとかというのがたくさんあるんですね。ただ、いずれの形をとっても、中小企業にとってみれば資金調達であるということには全く変わりがないというふうに思っています。

 ここでまた数字の確認をさせていただきたいんですが、直近五年ぐらいを見た場合で結構ですけれども、いわゆる私募債の引受額、そしてまたその私募債の特徴等々について、概観を教えていただきたいと思います。

大塚副大臣 まず金額でございますが、直近五年間という御下問でございますので、二〇〇五年から二〇〇九年度の日本証券業協会の銀行等の会員が引き受けた私募債の累計は、約三・六兆円でございます。

 そして、私募債の定義でございますが、これは、勧誘対象先が金融機関を除いたベースで五十人未満であること、社債の発行総額が社債の一口額面の五十倍未満であること等の一定の要件を満たした社債であると認識しております。

福嶋(健)委員 今お尋ねをしたとおり、三兆円の発行、引き受け実績がある。なぜ五年かというと、私募債というのは大体三年から長くて五年なので、逆に言うと、これからどんどん償還期日がやってくるということでございます。

 この私募債であっても資金調達、さっきから何回も申し上げていますけれども、資金調達という意味においては借り入れと変わらないわけですね。当時、私も経験があるんですけれども、お客様と金融機関との話において、例えば、私募債は直接調達への第一歩、お客様のニーズもあるし、あるいはお客様の方が、手前でキャッシュフローが大きくて、いろいろな手数料を払っても私募債の方がリーズナブルということであれば、そういった選択もされたわけです。いずれにしても、資金調達という側面があります。

 そして一方で、最近、その私募債のほとんどを占める銀行保証つき私募債、これは結局、私募債を発行して、その私募債に銀行が保証をつけて、それをまた銀行が引き受けるという、一言で言うと銀行がそのまま信用供与していると私は思っているんですが、このいわゆる銀行保証つき私募債というのは、中小企業金融円滑化法の第四条にある事業資金の貸し付け、この定義に該当するかどうかということについて確認をしたいと思います。

大塚副大臣 専門家でもあられる福嶋委員から大変示唆に富む御質問をいただいておりますことに感謝を申し上げますが、御下問の第四条の貸し付けには、この私募債は含まれません。

 御質問を先取りするようで恐縮でございますが、その一方で、第三条における信用供与には含まれるという定義で法案をつくらせていただきました。

福嶋(健)委員 ここでまた大臣にお尋ねをしたいんですが、今、大塚副大臣の御答弁にもございましたとおり、四条の定義には当てはまらないけれども、一方で、第三条の信用の供与には該当をする。こういう中で、そもそもこの法律ができた根本の発想は、先ほど大臣がおっしゃったように、第一条の目的に尽きると思うんですね。とにかく中小企業の立場に立って金融を円滑化していく。

 こういうふうな発想を踏まえれば、例えば期日に社債償還が難しいという御相談があったときに、金融機関として、例えば、今の円滑化法に入っていませんよみたいな感じでぱあんと断るのではなくて、まずその状況について、借り入れと同様に相談に乗ってあげて、何か道筋をつけてあげることが非常に大事だというふうに私は考えるんですけれども、大臣はどのようにお考えでしょうか。

亀井国務大臣 委員御指摘のとおりでございまして、現在、金融庁としては、そういうように対応するように各金融機関に対してお願いをいたしておるところでございます。

福嶋(健)委員 今は私募債についてのお話なんですが、例えば、メガバンクとか地銀の大手なんかでは、実際にもうこういった償還についての御相談とかお申し出を受けているのか、あるいは、それらの場合の対応についてマニュアルをつくったりしているのかということについて、実際、現場ではどのような状況が行われているのでしょうか。

大塚副大臣 委員の御質問もありましたことから、金融機関に対してヒアリングをしたところ、そういう、私募債等の償還に伴うその後の継続的な資金供与についての一定のマニュアル等はあるようでございます。

 少し付言をさせていただいて恐縮なんですが、私も福嶋委員の御質問の問題意識と全く同じでございまして、私募債であれ、短期の手形の三カ月ごとの繰り回しであれ、実質的に、長期の資金供与を、手法を多様化することによって、これがいざというときに金融機関が資金を引き揚げるための方便に使われてはならないというふうに思っております。

 実質的には短期の手形の回しであれ、あるいは私募債、それをCLOやCBOにして分散していくことにせよ、これは、金融機関がクライアントである企業を支えるためにしっかり資金供与をする手段として活用されるべきであって、いざというときに撤退しやすくするというような発想で使われては本末転倒だというふうに思っております。

福嶋(健)委員 今御答弁にもございましたけれども、この私募債のほかにも、CBOとかCLOとかというのは、最終的には投資家がいるわけだし、例えば銀行も、いろいろな管理業務を負ったりして、善管注意義務だとか公平誠実義務だとか、いろいろなものを負っているわけでございます。ただ、それは、中小企業の皆さんの資金調達という意味においては、関係ないとは言いませんけれども、やはり第一番目に見るのはそこだと思うんですね。

 最後に、亀井大臣にお伺いしたいんですけれども、やはり今までの金融行政というのは、ややもすると、中小企業、その上に金融機関、そして金融庁と、私も少なからず経験をしましたけれども、縦で進んできたわけでございます。ただ、今からのいろいろなことを考えると、一緒になって知恵を出していこう、まさにそういう意味では、金融庁、金融機関、そしてお客様の三位一体だ、これで乗り切っていくというふうに私は思います。

 最後に、大臣の御所見を伺いたいと思います。

亀井国務大臣 委員のお考えに全く同感でございます。

 今、金融庁としては、三位一体といいますか、中小企業者に対して金融機関がコンサルタント的な立場で仕事をしている。金融庁もまた、そうした金融機関に対してコンサルタント的な立場で、単なる怖い検査という、監督という立場じゃなくて、やるようにということを強く指示しております。

福嶋(健)委員 ありがとうございました。

 質問を終わります。

玄葉委員長 次に、竹下亘君。

竹下委員 自民党の竹下亘でございます。

 経済全般、金融全般、そして財政も含めて、いろいろ議論をさせていただきたいと思う次第であります。

 けさの新聞、日経新聞でございましたが、デフレをめぐって、総理、副総理と日銀の総裁、副総裁がきょう会談をなさるという記事が出ておりました。私は、かなり遅きに失したとはいえ、いいことをされるなと。というより、今やっていらっしゃるかどうか僕は知りませんが、かつては、日銀総裁と財務大臣が朝七時とかそういう時間からないしょで、マスコミや国会にばれないようにいろいろな協議を重ねていた時期がかなり長い間、しかもかなり頻繁にあった時代もあります。最近はどうもそういうにおいが余りしないという不満を持っておりましただけに、きょうの新聞を見ている中で、あ、動き始めたなと。

 デフレに対して、政府はデフレ状況にあるという宣言をする。日本銀行はそこまで宣言はしておりませんが、しかし、デフレ対策というものに本腰を入れ始めようという一つの意欲のあらわれであるかなと、期待感を持って見詰めさせていただいておるところでございます。

 そこで、まずお伺いをいたします。

 いつどこで会議をされるか、そのメンバーがどうなるか、それはどちらでもいい話でありまして、問題は中身であります。金融、財政、経済政策、一本になって立ち向かわなければならないほど、デフレという問題は非常に深刻な問題でありますし、今の日本にとりまして、これをどう克服していくかというのは非常に大きな問題であります。

 そこで、まず菅大臣に、このデフレの問題、きょうの会談も含めて、どういう方向感、あるいはどういう方策を持って乗り切ろうとしておられるのか。あるいは、まだ、正直言って、デフレを克服する、こうこうこうすればできます、半年でできます、一年でできますというロードマップがあるわけではありません。これはなかなかできないんです。ロードマップをつくることはできないんですが、しかし、何らかの方向性というものをお持ちでしたら、まずそこのことからお伺いをさせていただきたいと思います。

菅国務大臣 きょう昼、官邸で、総理そして日銀総裁、私も同席して、そうした意見交換の場を設けることになりました。

 この間も、十二月の二日に同じような会を行いましたし、また、見える見えないというのはもちろん御承知のようにいろいろありますが、私や、多分総理もだと思いますが、いろいろな形で意見交換は適宜進めてきたところです。

 このデフレの問題も、昨年十一月に、デフレ宣言といった形で表現されましたが、私がデフレ状態にあるということを申し上げた後、日銀も基本的には同じ認識に立っていただきまして、十二月一日に、あのときはドバイ・ショックの直後でしたが、緊急の政策決定会議を開いていただいて、いわゆる三カ月物の金利を下げるとか、その後の対応もいろいろと連動してとっていただきました。

 そういう意味では、先日、二、三日前は特に変更はありませんでしたが、そのもう一つ前のときには、十兆円規模から二十兆円規模へのそうした資金というものが増大されるということも含めて、私は、政府と日銀との政策協調は現時点ではかなりうまくいっている、このように思っております。

 ただ、おっしゃるとおり、デフレ解消ということについてはなかなかまだ、この時期までに必ずこうできるといったような意味での確たるところまでは来ておりません。これは御承知のように、二〇〇一年のころから、ある時期デフレ状況と言われたり、あるいは、そういった表現はされませんでしたが、脱却ができていないという意味ではもう十年近い年月がたっております。

 もちろん、この問題では金融の役割が極めて大きいわけですけれども、一方で、私、いろいろな議論をいろいろな方としておりまして、デフレのもう一つの見方は、お金の循環が非常に悪いと。言ってみれば、血液の循環が悪ければどうしても体調が悪くなる。私の母親も、一時不整脈がありましたが、ペースメーカーを入れたら非常に元気になりました。

 そういう意味で考えますと、お金の循環ということを考えると、やはりお金を税でいただいて、そのお金を積極的に必要なところに財政出動していく。つまり、自然のマーケット、個人や企業の設備投資がどんどん回っているときはそれでお任せしておけばいいんですが、どうも今の状況は、物を買うよりも投資をするよりもお金のままで持っておりたい、そういう気分が、それにももちろんいろいろな原因があるんだと思いますが、多いわけで、場合によってはお金をじゃぶじゃぶ流してさえ、これは亀井金融大臣の担当のところでもよくお聞きするんですが、最近は貸し渋りじゃなくて借り渋りなんという言葉さえ出てきたように、お金が回っていかない。

 そうすると、ある意味で、強制的という言葉はちょっと言葉が強過ぎますけれども、積極的にお金を回すためには、場合によっては、税をいただいて、それで成長の分野にどんどんお金を投じていく、そういうことも考えなければならないのではないか。こういうことも含めて、これからの経済財政運営の一つの考え方として検討していきたい。

 きょう、そういう議論までするかどうかわかりません、特に議題を決めての会議ではありませんので。しかし、意見交換はしっかりしておきたい、このように思っております。

竹下委員 さまざまな対応、金融政策それから財政政策、さらには、おっしゃいましたように成長分野、つまり経済政策、経済対策、あるいは需給ギャップの解消といったような問題も含めて、手を総動員していかなければ乗り越えることはできない問題であると思います。

 そしてもう一つ、先ほど菅大臣も、亀井大臣の協力も得てというお話をされましたが、日本の金融の問題の一つは預貸率の低さであります。私は先般、韓国の幾つかの銀行と議論をいたしましたが、預貸率を聞いてみて、一二六%前後、つまり、預金よりも貸し出しの方が多い、それをコールマネーをとって出しておるという状況にありました。日本の場合、全部入れますと六割台かせいぜい七割台の預貸率、つまり、預金のうちの六割から七割は貸し出しをしているけれども、三割ぐらいは、端的に言うと国債を買っている、債券、国債を中心にでありますが、そういう運用になっておる。

 もう一つの問題は、普通は家庭が資金の出し手でありまして、家庭が、個人が貯蓄をする、そしてそれを企業が借りて設備投資をするというのが、これまで日本が高度成長を続けてきた間の経済の仕組みのいわば原型であったわけでありますが、今起きております現象は、本来資金を借りるべき企業がお金の出し手になっている、企業が設備投資じゃなくて、利益を、お金を出して銀行に預けて運用してほしいという状況になっておるというのが、これはもう本当に一番深刻な問題でありまして、その意味で、金融を回すというだけではなくて、需要をつくっていく、成長戦略に突っ込んでいくという部分はどうしても避けられない分野だ、このように思うわけであります。

 ただ、預貸率を引き上げろと口で言うことは簡単でありますが、各金融機関に、ではあなたのところは八五%まで預貸率を上げなさい、そういう命令をすることはなかなかできませんし、できることといえば、目標を持ちなさいと。各銀行、自主的な目標を持ちなさいということを金融庁あるいは亀井大臣がおっしゃって、ただ、法律ではありませんので強制力はない。しかし、何かしなければ、企業がお金の出し手である経済というのは動かないと残念ながら思わざるを得ませんので、そのあたり、亀井大臣、何か秘策はありませんか。

亀井国務大臣 私は、竹下議員の御意見に全く同感であります。現状認識も全く同じであります。

 今のデフレというのは非常に深刻な状態になってきておって、鳩山政権は全力を挙げてここから脱出しようとする努力をしておるわけでありますが、私は、菅大臣がそばにおるから持ち上げるわけではございませんが、日銀との関係においても、日銀と財政が車の両輪として、これはある意味で、思い切って大胆に車が回っていかなければ、とてもじゃないけれども脱出できないと思います。

 そういう中で、昨年から菅大臣が、どちらかといいますと日銀をリードするような形で、日銀に刺激を与えるような、そういう形で発言をしておられること、またいろいろな形で行動しておられることは非常にありがたい、このように私は思っております。

 議員が御指摘のように、今、預貸率というのは、中小金融機関でいえば五割いくかいかないかという状況になっておるわけでありまして、これを、借りたくないというのに借りてくれというわけにはいかぬわけでありまして、日銀が幾らそうして資金をどんどん市場に供給したところで、しかし、じゃぶじゃぶと外国にばかり行ってしまうという現在の状況というのはアブノーマルだ、このように私は考えています。

 やはりそうした金がちゃんと産業資金に回っていく状況をつくるにはどうするかということでありますが、これは、金を貸してやるから事業を起こせと言ってみたところで、そういくものではありません。民間の中から実際にそうした実需が生まれてくるように、これは規制緩和もそうでありましょうし、いろいろな経営指導もそうでありましょうが、そういうことがやはりなかなか難しい状況においてはほかに方法がないんですね。

 これはいいことではないかもしれませんけれども、政府の支出そのものによって、財政出動そのものによって政府みずからが需要を創出する、そういうことを思い切って大胆にやらない限りは、この今の、もうスパイラルと言ってもいい状況になっているデフレから脱出することはなかなかできないだろう、私はこのように考えております。

 そういう意味で、まさに今、私は、鳩山政権は正念場に立たされておる。十年間続いたこうした状況が続いていけば、これは私は、日本経済にとって深刻な、世界の中でまさに取り残されると。世界でそういう不景気な、百年に一度のアメリカ発の状況が世界を覆っておりますけれども、デフレスパイラルというのは日本だけの現象になっておる。そういう中で、日本自体が世界の中から今度取り残されて、どんどん経済が低下していくというように、委員と同じように認識をしている。

 私は総理にも申し上げておりますし、菅大臣にも申しておる。ここは、議事堂の上から目薬を差すようなことをやっておってはだめだと私は言っている。やはりアメリカでさえ、議員御承知のように、あんな、日本から二百兆のお金を借り、中国から百兆近く借りる、財政が大変な状況にあるにもかかわらず七十兆の緊急財政出動をして、私は別にだめな公共事業をやれと言っているわけじゃありません、そのうちの七割は公共事業ですね。中国も六十数兆の緊急出動、これはほとんど公共事業です。

 そういうことも、今のマスコミ、世間の間違ったそうした風潮に引きずられることなく大胆な手を打たなければならないときに来ておる、これは与野党も何もない、このように私は認識をしております。

竹下委員 亀井大臣のお話を伺っておりますと、端的に言えば、大胆な補正予算を打って景気刺激策あるいは需要創造策をとれというふうに政府部内で今主張していらっしゃるというふうに感じました。

 ところが、先ほど大臣はマスコミの間違った風潮と言われましたが、間違っているのは鳩山総理じゃないですか。鳩山総理がコンクリートから人へという言葉を使い、これはある意味で菅大臣も同罪であるかもしれませんが、公共事業はあたかも悪であるかのような印象を植えつけたのは鳩山内閣であって、それに振り回されているのがマスコミであると言わざるを得ない状況にある。

 ですから、その意味で、閣内でこの経済状況の認識、そしてそれに対する処方せんという部分の意識が本当に統一されているのか、あるいは依然としてばらばらなのか。ばらばらなら至急統一をして、内閣としては、この日本経済の現状にこうやって立ち向かうんだという方向をぜひとも出していただきたい。

 その際、私は憶病者ですから、やはり財政が気になるんです。赤字国債あるいは建設国債の発行というものを物すごく、憶病なほど気にしながらやらなければならないと考えておる一人でありまして、そういう観点も含めまして、今亀井大臣の意見はお伺いをいたしましたが、菅大臣はこの景気の現状、閣内のこれからそれに立ち向かう姿勢、どんなことを考えていらっしゃるか、まずお伺いをさせていただきたいと思います。

菅国務大臣 亀井大臣とは公私ともによく話をしておりまして、もちろん、一〇〇%最初から意見がいつも合うわけではありませんが、大きな方向としては私も、いつもこの席でも申し上げているように、今の日本の経済を見たときに、財政がシュリンクしていいとは思っていない。ですから、今年度の予算も、規模としては前年度とそう変わらない規模をつくったわけであります。

 また、使い道についても、確かにコンクリートから人へという表現が、いい面でも、場合によったら悪い面でも、かなり一つのイメージをつくっておりますけれども、私は、政府支出の中で何が本当に成長に役に立つものかという観点から見るべきだと思います。

 公共事業がいいとか悪いではなくて、例えば選択と集中ということを国交大臣よく言っております。つまり、同じ公共事業でも、ハブ空港なりハブ港湾については集中的にお金を使うけれども、残念ながらそうでないところは場合によっては抑えるとか、あるいは今介護とか保育の分野は、潜在的な需要があるけれども人手がいない。給料が安い、人手がいない、場合によったら施設が足らなくて、潜在的需要はあるけれども供給がないためにその潜在需要が眠ったままになっている。こういう分野には思い切って財政出動をして、仕事をつくり、雇用をつくり、結果において、潜在需要があるわけですから需要を顕在化させていく、その中に成長の分野を見出していく、こういうことが必要ではないかと思っております。

 その中で、これは竹下議員がおっしゃったように、それではそのお金をどういう形で生み出していくのか。ぎりぎり、国債あるいは税外収入で今年度の予算をつくらせていただきましたけれども、この問題もいろいろ、国債の信認等を含めていろいろな見方が国際的にもあるわけであります。

 そういう意味で、私は、多少言い過ぎになるかどうかわかりませんが、先ほどペースメーカーと申し上げたのは、何らかの形で動かないお金を動かすには、借金で動かすという形もあるし、場合によっては税という形でいただくものをいただくけれども、しかし、それはため込んだり単に借金返しだけに使うというのではなくて、逆にそれでもって、今申し上げたような成長分野に思い切って選択と集中で投じていく。

 場合によっては、これは国際的な分野でも、今韓国の例を引かれましたけれども、せっかくのインフラの技術などを日本がたくさん持っているにもかかわらず、従来はODAで、例えば中国などは、日本が支援する中で、その仕事の相当部分を日本が引き受けていたわけですが、ODAが中国については終わった中で、必ずしもそういう戦略的なファイナンスができる体制がこの間できていなかったのかなと先日中国に行って思ったんですけれども、今JBICの見直し等を手がけておりますが、そうした国内的な問題だけではなくて国際的にも、そういう分野に対してやるべき資金は、民間がリスクが高くて出せないというのであれば、場合によっては政府系金融がもう一度そういう役割を果たすことも必要なのかなと。

 そういう点で、あらゆる点を通して、まさに景気に対してあるいはデフレに対して立ち向かっていきたい、こう思っております。

    〔委員長退席、鈴木(克)委員長代理着席〕

竹下委員 きょうは、日本銀行の中曽理事にもおいでをいただいております。

 日本銀行として、特にデフレに対してどういう対応をこれまでしてこられたか、そしてこれからどういうことを考えておられるか。現状維持、低い金利でじゃぶじゃぶに資金を供給するという状況を維持するというだけでいいのかな、もっと何かないかなと。正直言って、私に、こうしろというアイデアがあるわけじゃないんです。アイデアがあるわけじゃないんですが、金融のまさに専門家である日本銀行の皆さん方にあらゆる知恵を絞っていただきたい。

 私は、中央銀行である日本銀行は、まさにラストリソースでありますので、インフレに対しては憶病で憶病で憶病であっていいと思うんです。しかし、デフレに対しては大胆に、三歩も四歩も、一歩じゃだめです、三歩も四歩も踏み出すという覚悟でやっていただくのが中央銀行たるものの務めである、このように考えておりますので、そうしたことも含めて日本銀行の考え方をお話しいただきたいと思います。

中曽参考人 お答え申し上げます。

 まず申し上げておきたい点は、デフレからの脱却、これは大変重要な課題だと思っています。物価安定のもとで持続的な経済成長に一刻も早く復帰させる、これが重要な課題であるというのは我々も全く同じ認識をしてございます。そのために、我々としても粘り強く貢献していきたいというふうに思っています。

 それを申し上げた上で、これまで何をやってきたかという御質問でございますが、私ども、デフレ対策として具体的には二つの、大きく分けて二つの取り組みをしてございます。

 一つは、デフレの根本的な原因であります需要の不足を持続的な形で解消していく、そういうことに役立つ政策でございます。

 まず、この点につきましては、日本銀行では政策金利を実質ゼロ金利まで引き下げておりますほか、長目の短期金利の一段の低下を促す措置を講じてございます。具体的には、昨年の十二月に、政策金利と同じ〇・一%と極めて低い一律の固定の金利で、三カ月物というやや長目の資金を十分潤沢かつ安定的に供給してきてございます。このオペによる資金供給額は、最初は十兆円だったんですが、この三月にはさらに十兆円引き上げまして、総額で二十兆円に拡充してございます。これが一つでございます。

 もう一つは、人々の物価の安定に対する見方が下振れをしないように、こういうふうにすることでございます。この点につきまして何をやったかということでございますが、私ども、中長期的な物価安定の理解という形で、消費者物価の前年比がプラスの状態を実現することが大事である、こういう姿勢を示しまして、デフレ克服への決意を改めて明確にしてございます。

 こういうことが具体的にこれまでやってきた措置でございますけれども、どういう効果を上げているかという点、まず若干触れさせていただきますと、これまでのところ、新型オペ、固定金利の二十兆円を供給していくというオペにつきましては、いわゆる短期国債レート、あるいはレポレートと言っているターム物の金利がかなり下がってきておりまして、政策金利と遜色のない〇・一%くらいの水準まで低下をしております。

 それから、企業にとっては大変重要な金利だと思うんですけれども、貸し出しの金利ですとかCP、社債発行金利、こういった企業の資金調達コストも低下をしてきてございますので、この点について言えば、我が国の金融環境、もちろん厳しさは残っているんですけれども、緩和方向の動きが強まってきているというふうに思っております。

 また、一連の緩和措置なんですけれども、企業マインドの下振れを回避する、こういう点でも一定の効果があったのではないかと思っています。

 さらに、今何をやるべきかというような御質問だったと思うんですけれども、今、我が国の景気は、このところ持ち直しの持続傾向がより明らかになってきております。そういうふうに見ております。先行きについては、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に次第に波及をしていくのではないかというふうに思っております。したがいまして、日本の成長率も徐々に高まってくるというふうに見ております。

 また、物価という点につきましても、今非常にマクロの需給が緩和状態にありますのでなお下落しておりますが、その幅はだんだん縮小傾向を続けてきております。先行きも、マクロ的な需給バランスが徐々に改善していくと見ておりますので、物価の下落幅は縮小していくのではないかと思っております。

 今のような動きが持続すれば、我が国経済は、物価安定のもとでの持続的成長経路へ復帰していく展望が開けていくのではないかと思ってございます。したがいまして、私どもといたしましては、現在の超低金利を維持するとともに、潤沢な資金供給を通じまして、極めて緩和的な金融環境を今後とも維持していきたいというふうに考えてございます。

竹下委員 引き続き、本当に車の両輪のごとく、このデフレに立ち向かう努力というものを継続していただきたい。その一つの方策が、先ほど亀井大臣が御示唆になりました、補正予算というか大胆な経済対策といった方向にもなっていくのではないかなと思います。

 私も、こういう経済情勢で、何らかの補正予算あるいは補完的な経済対策というのは必要であると考えておる一人であります。具体的に、閣内でこの補正予算の議論というのは出始めているのか、あるいは煮詰まりつつあるのか、あるいはまだにおい程度なのか、その辺は、菅大臣、亀井大臣、どのようにお考えになっているか、まずそこをお聞かせいただきたいと思います。

亀井国務大臣 私が今言っているのは寝言ぐらいにしか聞こえないかもしれませんけれども、力がありませんから。しかし、私は連立を組んでおる立場もございます。この政権が今の状況から脱するために何をやるべきかということについて、私は今までも、総理に対しても菅大臣に対してもずっと申し上げてきたつもりでもあります。

 ただ、私はよく世間的に、菅大臣と意見が違うんじゃないかと、あえてそういう仲を裂くような発言もあるわけで、私は、菅大臣と話しておりましても、方向というのはほぼ一致をしておる。問題は、具体的に何をやるかということであって、私は、こんなことを言ってはあれですけれども、この政権が脱財務省をやれるかどうかがポイントだ、脱官僚じゃなくて脱財務省をやれば、私はいろいろな問題がきっちりと、これは何も財務省の役人を、菅大臣の部下を敵視して言うんじゃありません。優秀なマシンでありますから、それをこの政権がまさに政治主導できっちりと使っていけばいい。幸い、菅大臣というすばらしいリーダーシップのある大臣がおられるわけでありますから、大いに期待をしておるわけであります。(発言する者あり)それを聞いたの。(竹下委員「はい」と呼ぶ)

 私は、閣僚の一員でありますから、私から今の段階でどうした規模のどうした対策が必要であるかということをこういう場で申し上げるのはまだ早いと思いますが、国民新党としては、現在、党として政府に対してどうすべきかということを今まとめておる最中であります。その結果が補正予算を組むべしということになるか、なると思いますけれども、中身についてきっちりと決めておる段階ではありません。

菅国務大臣 今亀井大臣からもお話がありましたように、国民新党という立場では提案を出していただいて、先日もその中身を副大臣が聞き、私も資料をいただいております。

 御承知のように、今年度予算の中には経済活性化のための一兆円の予備費が積んであります。いろいろな党から、例えば学校の耐震化などは、夏休みの間に工事をしようと思えば、それを早く使えるようにというような指摘もあって、今そういうことも可能にするように手当てを準備しております。

 そういう意味で、まだ、予算執行が始まった、新年度が始まったばかりですが、少なくとも、経済活性化の一兆円の予備費については少し、そういったいろいろな御意見も含めて作業にかかっておりますが、補正予算そのものの議論は、今のお話のように、国民新党の皆さんからいただいておりますので、議論としては何らかの形で始めなければと思っておりますが、現時点でいえば、一兆円の経済活性化というものの予備費を活用することをまずは具体化していきたい、こう思っております。

竹下委員 一兆円の経済活性化に対する予備費プラス、普通の予備費ももうこの際思い切って活用してしまうという、踏み込んでやっていただかないと多分間に合わないぐらい、あるいはそれだけでは足りなくて、先ほど亀井大臣がお話しになりましたように、党としてお考えの補正予算に対する方向性というものも、何らかのものを出していかなければならないのではないかなと私自身は感じておる次第でございます。

 そこで、もう一つ先の来年度予算というものも当然視野に入れて考えていかなければならない。鳩山政権が九月に発足をいたしまして、予算編成を十二月までにやられた。三カ月足らずの間に本当にいろいろなことが忙しかったと思います。予算編成というのは一カ月二カ月で楽にできるものではありませんので、それをまさに実感された、政権発足のいわば混乱も含めた緊張感であったろうなとは思います。

 ただ、来年度予算は違います。来年度予算は十分な時間があって、概算要求をやる、シーリングをやる、あるいは中期財政見通しを出す、そういった手順をしっかり踏んでやっていく。時間がなかったから借金ばかりになっちゃいました、時間がなかったからシーリングはこうなりましたという言いわけはもう通用しないという新たなステージに鳩山政権は入っておるわけでありまして、そういう中で、では、どういう方向で来年度の予算編成をにらんでいくのか、手順を踏んでいくのか。

 まず第一は、中期財政見通し。菅大臣が予算成立のときに出されたコメントの中で、政府税調で所得税、法人税、消費税の積極的議論を進めます、中期財政フレームと整合性のとれた財政健全化法の今国会提出を検討します、成長戦略の具体化、番号制度の検討、新年金制度の検討を急ぎます等々のコメントを今年度予算の成立のときに発表していらっしゃいます。まず、その中期財政見通し、五月あるいは六月に出されるというふうに伺っておりますが、これについては、一つは中期フレームと、もう少しタームの長い財政の見通しというものもあわせて出されるのか、その点についてまずお伺いをさせていただきたい。

菅国務大臣 おっしゃるとおり、これは国家戦略室が中心になっていただいていますが、六月をめどにしておりますが、約三年間ぐらいの展望の中期財政フレームと、十年間程度を見通した財政運営戦略を六月ごろにまとめて、国民の皆さんにきちっと提示をしたい、そういう段取りを進めております。

    〔鈴木(克)委員長代理退席、委員長着席〕

竹下委員 三年ぐらいだったら、いろいろある意味ごまかしがきくかもしれませんが、十年というタームで考えた場合、税の議論を抜きに財政の絵をかいても架空の絵になってしまう、単なる絵になってしまうという可能性は非常に高いと危惧をしておる一人でございます。しっかりしたものをぜひ出していただきたい。出てきた段階で、本当にまた改めて議論をしていきたい。国民に対してどれだけ本当の責任を持ってやっているかということをはかる尺度が、将来へ財政の足元を固める絵図である、このように認識をしているからでございます。

 さらには、シーリングの状況、それから概算要求の状況。シーリングについてどうされるのか。

 今まで我々が政権を持っていたときは、概算要求は大体八月いっぱいで各省庁締め切って、個別の議論の積み上げからやっていって、十二月に政府原案をたたき上げるというのがこれまでの手順であったわけであります。今年度予算については、政権交代ということがあって、その時間が大きく制限をされたことはございます。しかも、もう一つ違いましたのは、政務三役が中心になってやるという方向性を強く出されたことによって、下からの積み上げというよりも、むしろトップダウン方式ということをやられた。さらには、シーリングというものをかけない中での予算編成ということで、財政規律に大きな大きな影を落とし続けておるということも一方で事実であろう、こう思います。

 でありますので、この概算要求とシーリングのあり方について、今大臣はどのようにお考えになっているか、伺わせていただきたいと思います。

菅国務大臣 先ほどのことでちょっと先に申し添えますと、御存じのように税のことも、今年度に入る、あるいは三月の時点から専門家委員会というのを今回設けまして、そこでは、まず所得税、そして法人税、さらには消費税の議論の活発化を既にお願いして、今鋭意議論を進めていただいております。また一方では、まさにパイを大きくする先ほど来の成長戦略についても、具体的な肉づけの作業を六月ごろまでに進めることにいたしております。また、税を考える上で必要な番号制度の検討も始めております。さらには、社会保障の中でも最も、負担といいましょうか大きなお金の問題がある年金制度についても検討を始めております。

 そういった意味で、中期財政フレームないしは財政運営戦略というものは、そういう要素をすべて、歩調をうまく合わせながら中身を具体化していって、それを一つの財政という目で表現するのを、今のようなフレームなり戦略の中で打ち出していこうと思っております。

 それで、シーリングについては、個人的には確かに若干の反省もあります。昨年は、一たん前の政権が出された概算要求をとめて見直しをした中で、政治主導といいましょうか、まさにコンクリートから人へという中身の変更を大きくやろうと思ったものですから、従来シーリングというと、幅をある程度小さくして、そうすると、ふやす方も減す方も余り大きな幅で行うことが難しいというような認識がありましたので、その手法はとらなかったわけであります。

 しかし、ことしといいましょうか来年度の予算に向けてどうするのか。私は、一つは、やはり成長戦略との関係で、選択と集中ということはぜひやるべきだと思っています。ですから、選択と集中という大きな方向性でこの次の予算のイメージをまず共有化しながら、さらに一方では無駄の削減を行政刷新会議で進め、さらに場合によってはシーリングということも、部分的なところでは、手法としては検討していいのかなと。

 ただ、これはまだ決めているわけではなくて、昨年度の反省も含めてそういうことを考えておりますが、今申し上げたように、従来を一〇〇%知っているわけじゃありませんが、単に、ある幅で役所に任せてシーリングをさせるという考えとは若干違って、選択と集中という面はしっかりと政治主導というのか、成長戦略の中で戦略を立てた中でやっていく、しかし、それからさらに具体的なところについては、場合によったらそういった手法もあわせて考えていいのではないか、このように考えております。

竹下委員 シーリングについて、考え方、ある部分について入れるという方向というのは、方法として一つの方法かなという思いはいたします。

 ただ、その際に一番心配になるのは、財源の当てのないマニフェストをまたやるのか、もっと踏み込んでやるのかという部分に対して財務大臣が、いや、それはやらぬという大胆な思いをぜひとも持っていただきたい。これは、今ばらまいて、ポピュリズムに陥ってやることは、さまざまな政権の評価にあるいはつながるかもしれない。しかし、将来の日本にとって大変な重荷になるということは避けて通れない道であります。

 残念ながら、前年度、国債の発行の方が税収よりも大きいという状況にもう既になっております。今年度は当初予算からそうなっておりますが、大きな違いが一つあります。景気対策あるいは補正予算で出す赤字国債は、ある意味でこれは一年ないし二年の時限的な対策でありまして、恒久的な政策ではありません。しかし、本予算に組み込む財源を伴う政策というのは、基本的に恒久政策であり、これはできる限り恒久財源の手当てをしていかなければならない性格のものでありまして、結果として補正を含めて税収よりも借金の方が大きくなったことよりも、私は、当初の予算から税収よりも借金の方が多い予算を組む姿勢、このことをもっともっと深く考えていただきたい。

 それは、この経済状況の中で税収の方が上回るようにしろと言っても、それはなかなか難しいことはわかります。難しいことはわかりますが、なおかつ財源のないマニフェストを、当てのない恒久政策を打ち続ける、このことには深く反省をしてほしい、そういう思いを持っております。

 でありますので、マニフェストについて、まだこれからつくるのかどうかも含めて、自民党としては今つくっておりますが、民主党はどうするのかというのはまだわかっていないところもありますので、この点についてはまた改めてお伺いをさせていただきたいと思います。

 もう一つは、予算を組む際に、いわゆる特別会計から税外収という形で予算に計上していくということがあります。ところが、大臣も御存じのとおり、特別会計に残っております大きな塊というのはかなり限られてきております。百兆円を超えるものは年金基金、年金特別会計にあります。まさか、幾らお金が足りないといっても、将来国民に払うことを約束したこの年金特別会計から一時的に借りるといったような、これは奇策中の奇策というよりも、まさに私は禁じ手だと思うんですが、まさかそんなことはお考えにならないでしょうねという確認をまずさせていただきたいと思います。

菅国務大臣 先ほど、まず先に言われましたマニフェストといいましょうか、定常的な政策について、先日といいましょうか一昨日、国家戦略室の方で中期財政フレームの専門家の皆さんの意見の中間取りまとめを発表いたしました。その中では、ペイ・アズ・ユー・ゴーという、自民党でも出された財政健全化責任法の中にもある考え方を専門家の皆さんが提示されておりまして、そういう意見も十分念頭に置いて、今現在マニフェストの総点検という形をとらせていただいております。

 それから、特別会計についていろいろなこれまでの努力や工夫もあります。今おっしゃった年金基金について、たしか、かつてそういういろいろな手だてをとられたことも、かつての政権でもあったのではないかと承知をいたしております。

 基本的には、年金というのは、もちろん掛けた皆さんに対する支払いのためのお金でありますから、そういった形、本来の趣旨に沿って運営されるべきだというふうに思っております。

 ただ、あえて言えば、これもよくよくおわかりの上で言われていると思うんですけれども、例えば、自民党が出された百四条というような問題でも、ある段階までに来れば、例えば景気がよくなれば消費税を引き上げるから、その間についてはこの程度のお金を何とかならないかみたいな考え方も、かつての政権でもいろいろ議論されたと思っておりまして、そういった意味で、全部のことをトータルでやはり考えていきたい。

 つまり、ここはこうします、ここはこうします、ここはこうしますと言うと、また後になって、いや、言ったのにできなかったじゃないかということになりますので、年金基金の持っている性格は性格として十分によくわかった上で、しかし、あえて言えば、税制の問題から成長の問題からそういう特別会計の見直しからすべて含めて、時間を追ってだんだん煮詰めていきたい、このように考えております。

竹下委員 まだまだ聞きたいことはたくさんございますが、時間になりましたので、きょうはこれで終わります。どうもありがとうございました。

玄葉委員長 次に、竹内譲君。

竹内委員 おはようございます。公明党の竹内譲でございます。

 前回、私どもの石井理事が日本郵政のこの問題につきまして御質問させていただきました。今回、若干重なるところもあるかもわかりませんが、引き続き私からもその問題を中心に質問させていただきたいと思います。

 今回は亀井大臣が、この問題につきましては、郵貯、簡保の預け入れ限度額引き上げ問題につきましては、たぐいまれなる政治力を発揮されまして、一応の決着を見ておるわけでございますけれども、しかし、依然としてさまざまな疑念や懸念もあるというふうに思っております。

 そこで、資料をお配りしておるんですが、資料の二ページ目に「郵政民営化見直し」ということで、四月四日の朝日新聞に出ておりました、国民の皆さんの率直な声が出ておりましたので、私、ちょっと引用させていただきました。

 右の方からいきますと、「限度額アップなど必要ない」という会社員の藤森さんという方で、名古屋市名東区です。この方は、郵便局の窓口で貯金の仕事をしているというふうにおっしゃっておられます。二段目からちょっと読ませていただきますと、

  「小泉改革」により郵政事業が分社化され、三事業一体で効率的に行われていた全国一律サービスが後退した。ネットワークを再構築する見直しは当然だと思う。しかし、限度額の引き上げはまったく別問題だ。

  年金振込日に訪れ、細かく千円札に両替していくお年寄り。銀行では両替手数料がかかる場合があるため、郵便局で釣り銭を替える自営業者。子どものお年玉をきちょうめんに貯金するお母さん。ほとんどが現状の限度額で十分なお客様で、ゆうちょ銀行は気軽に利用できる庶民の財布の役割を果たしている。

  選挙で示された民営化見直しの声は、三事業がばらばらにされた分社化の問題、地方の簡易郵便局の閉鎖への不満などで、限度額の見直しなどなかった。必要なのは、安心で使い勝手のいい、庶民の郵便局の再生だと思う。

私は率直なお声だと思うんですね。

 さらに左の方に、今度は佐藤さんという相模原市の方のお声で、「国民に無責任な「首相一任」」ということで、二段目から読ませていただきますが、

  私は、閣僚懇談会というのは各閣僚が自由闊達に意見を述べて首相が集約する場だと思っていた。その結果が「首相一任」では、「閣内不一致」に対する批判逃れ、事なかれ主義のように思える。

  今回の「首相一任」の実態は、閣内が統一されているように取り繕うことさえできれば政策の中身は問わない、ということではないのか。これでは国民に対して無責任だ。普天間問題でこのような「首相一任」がないことを祈るばかりだ。

というお声があるわけでございます。

 私、過去の議事録も読ませていただきまして、亀井大臣の御主張はよくよく理解しておりますので、きょうはあえて菅大臣に、まず、このお二人の率直な国民の御意見に対してどのようにお考えか、承りたいと思います。

菅国務大臣 昨年の衆議院の選挙のかなり以前から、国民新党と民主党の間で、特に郵政の問題を含めていろいろ御議論をいたしまして、民営化の見直しを含む幾つかの合意事項をまとめ、それを選挙の公約、民主党としてもその中に入れる中で選挙戦を戦ったということは御承知のとおりであります。

 そういう中で、具体的な郵政民営化の見直しの議論が始まった中で、いろいろな制度設計等もありますし、いろいろなことがあるわけでありますが、この投書のそれぞれの方の主張は主張として、あり得る主張かもしれません。ただ、内閣として言えば、最終的に改めて全閣僚が集まったところで議論をした上で最終的な判断を総理に一任するというのは、私は、内閣のあるべき姿としてはそれが一番民主的なやり方であろう、このように思っております。

竹内委員 この国民の声は、菅大臣を初め、どういう疑問や懸念を出されたのかという中身を多分聞きたかったんだろうと私は思うんですね。

 それでは、一つ一つお伺いしていきたいというふうに思います。

 最初は亀井大臣にお伺いするんですけれども、今回の引き上げのねらいというのは、郵便局のネットワークについては現状維持を基本として、そのための維持費用を郵貯、簡保の収益で賄うというものであると思います。

 しかし、きょう配付しております資料の二ページ目、これはもう亀井大臣の頭の中にはすべて入っている数字であると思いますが、郵便物数の推移を見てみますと、平成十三年度以降、電子メールとか、最近ではツイッターとか、情報通信技術の発展などによって、郵便物の利用というのは平均すると年率三%前後の割合でずっと減少してきておるわけであります。ですから、今後も信書の利用量がインターネットなどに押されて減少していくと、今は事実上の独占というのが行われておるわけですが、そこから得られる利益も減少していくのではないかというふうに思うわけでございます。

 このような状況下では、郵便事業そのものをどう立て直すかということがまず最初に議論されなければならないのではないか。どういう効率化あるいは収益改善策があるのか、こういうことをまずよく考え直す必要がある。これは構造問題だと思うんですね。こういう構造問題に対して、単にそれを郵貯、簡保の収益で賄おうというのは、やはりちょっと考え方の筋としてはおかしいんじゃないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

亀井国務大臣 議員御指摘のとおりだと私は思います。

 郵便事業だけで郵政事業全体を、税金を投入しないで維持していくということがなかなか難しいというのは現実ではありますけれども、しかし私は、今例えば民間がやっておりますいろいろな小包とかいろいろなものの配達を見ましても、極めて便利に、丁寧なそういうことをやっておられるために、郵貯のそれが押されているというような状況もあります。まさに、郵便事業そのものをもっと効率化し、また利用者のニーズに合った形で、その面からも収益を上げていくということはできる、私はこのように思います。

 しかし、問題は、一般の金融機関が負わされていない、山間部にまでそうした郵便貯金、簡保のそういうネットワークを敷設して維持していけという国からの要請、まさにユニバーサルサービスを郵政事業に課していくということ。小泉・竹中路線というのは、もうそれは場合によっては結構なんだ、そういう形で郵便局が事実上減っていったって構わない、経済効率、経営効率の観点からやっていっていいんだという方向に進んでおった結果、今、御承知のように、山間部あるいは島嶼部を初め、そういうことについて大変な不便な状況が生まれておるわけであります。

 そういう面では、御承知のように、預金の限度額は、一般の金融機関は青天井であります。それを、郵貯、簡保だけ手足を現状縛っておいて、かつそうした責任を果たしていけということは、これはやはり無理だ、私はこのように考えておりますが、別に、郵貯、簡保の利益で郵政事業全体を埋めていくんだ、そういう考え方ではございません。

竹内委員 非常に大事なところに入ってくるわけでございます。このユニバーサルサービスということがそもそもどういうことであったかということを正確にまず認識する必要があると思うんですね。

 もともと、ユニバーサルサービスというのは、採算に乗らない過疎地でのサービスコストを独占利潤で賄ってサービスの供給を継続することだ、こういうふうに一般的には定義されているわけでございます。明治以来、特に信書、郵便というものについては、大臣がおっしゃっているように、過疎地、山間、離島があるので、これは独占的に支配させることによってそこから利益が上がる、だからそういう山間地域などの赤字をそれで埋めていく、こういうことであったわけですよね。ですから、郵便事業につきましてはユニバーサルサービスの必要性があったということは歴史的にも当然のことでございます。

 今回は、ここが大事なところだと思うんですが、金融についてユニバーサルサービスを適用しよう、こういう新しい段階に踏み込むということだと思うんですね、亀井大臣のお考えは。だから、新しい事態に入っておるということをまず国民の多くの方々が正確に認識する必要がある。では、金融についてユニバーサルサービスが必要なのかどうかということがまず議論されなければならないわけであります。

 しかし、これはまず、今、情報技術が進展して、民間金融機関もあちこちに実際に店舗を出しております。もう亀井大臣の頭の中に入っているとおりでございますが、全国千七百七十八市町村のうち、民間金融機関のない市町村の数は十六町村だけでございます。そういう意味では、金融についてはほぼユニバーサルサービスは行き届いているんじゃないのか、こういうふうに思うんです。しかも最近はコンビニエンスストアというのがあって、そこでもATMなどが設置されまして、以前と比べれば随分と金融のユニバーサルサービスというのは行き届いておるというふうに思えるんですが、この点につきましては、大臣、いかがでしょうか。

亀井国務大臣 私の故郷が議員のところに比べて大変な田舎であるかもしれませんけれども、例えば私の田舎では、では銀行、信金、信組の店舗が全域について展開をされてそのニーズにちゃんとこたえているかというと、残念ながらそういう状況ではございません。私のところでいいますと、大阪府に匹敵するぐらいの地域でも、銀行といえば一店舗程度の話であります。そこに行くとなると、野を越え山越えとは言いませんけれども、車を使ったって三十分も四十分も、それ以上時間がかかるところに住まいしている人が、私のような田舎でもまだまだ、減ってはおりますけれども、相当いらっしゃるわけであります。それは市町村に一個ぐらいあるからとおっしゃいましても、東京や大阪と違いまして地域の単位が大変広いわけでありまして、そういう意味で、町村に信金、信組、銀行の支店が一個ずつあるからもう十分だろうとおっしゃられましても、私はこれは、実態には全然合っているとは思えません。

竹内委員 いろいろな偏差というか、そういうものはあると思います、偏りとか、個別論でいけば面積とか比率とか、そういうことであれば。それは私も認めるところでございますけれども。

 次に申し上げたいのは、金融のユニバーサルサービスという必要性があるとお考えであれば、これまでは、金融につきましては、独占事業ではなくて一応自由競争が行われてきたわけですよね。私も京都全域でありますから、丹後半島の先から三重県の近くまで物すごいところを動くわけでございますけれども、海あり山あり谷あり川ありですけれども、その辺はよくわかっておるんです。

 しかし、そこには農協もあれば漁協もある、信金、信組なども重なってサービスを提供しているところも多いことも事実でございます。ユニバーサルサービスをいうのであれば、まず郵貯だけに負わせるというのではなくて、そういう方々にもユニバーサルサービスに協力する意思があるのかどうかというのをやはりヒアリングするというようなことがあってしかるべきではないかと私は思うんですが、その点はいかがでしょうか。

亀井国務大臣 私はやはり、民間金融機関というのは店舗の設置を含めて採算ベースでやっておるのが実態であり、それを山間僻地まで支所を出してくれ、支店を出してくれということを強制することはできないと私は思います。

 であるがゆえに、やはり明治以来のそうした、もう今は本当に、そういうネットというのは郵便局しかありません。農協もどんどん合併をして、そういう支所もなくなっているのが実態であります。そういう中で、やはり郵便局だけはそういうネットを維持していただこうと。

 私は、密集地に生活しておられる方も日本人、日本人じゃなくても結構ですけれども、人間です。そうした僻地に住んでおられる方もやはり生活を営んでおられるわけでありますから、金の出し入れ、また保険の加入等を含めて、やはりきっちりとしたサービスが受けられるということにするのが国家の責任である、このように思っております。

竹内委員 それでは、次の論点に移ります。

 資料の一ページ目をごらんいただきたいんですが、過去の郵貯限度額引き上げにおける金融機関の個人預金の残高がどう動いたかというのを一応データで集めてみました。

 これを見ると、非常におもしろいことが実はわかりまして、過去、六十三年と平成二年と平成三年に上がっておるんですが、六十三年のときは三百万から五百万円、それから、平成二年のときは五百万から七百万、平成三年十一月に七百万から一千万と上げられておるわけでございます。この六十三年と平成二年のときは、郵貯の方も残高はふえました。しかし、都市銀行以下、地方銀行、第二地銀、信金、信組に至るまで、それなりに上がっておるんですね。だから、平成三年まではそんなに問題ないように思えるんです。

 ただ、平成三年に七百万から一千万になると、今度は郵貯が約二十兆円、一気にふえまして、そして次の平成五年にはさらに十五兆円ふえまして、二年間で三十五兆円ふえております。一方、都市銀行は、ぱたっと伸びがとまりまして、平成五年には落ち込み始めている。地方銀行は横ばい程度。影響が大きかったと思われるのは、はっきりしているのは信金、信組でございまして、平成四年のときに、預金でいきますと、それまで伸び率が大体一〇%以上あったんですよね。ところが、一気に三・三%まで落ちました。それから、貸出金の方もそれまで一〇%以上、前年は一二%の伸びを示していたのが、三・七%まで落ちました。それから、信用組合につきましても、預金が前年までは一一・九%伸びていたのが、一%の伸び。貸出金についても一八・五%も伸ばしていたのがわずか〇・四%ということで、はっきり出ているわけでございます。

 そういう意味でいうと、今後恐らく、一千万から二千万にぐっと大きく、過去にない大幅な引き上げでございますから、一つは、都市部の富裕層が動く可能性はあるんだろうなと。都市銀行は、まずメガバンクは影響があるんだろうなというふうに私は思うんです。それから、やはりこれだけの大きな引き上げになると、それなりに地方銀行、第二地銀も今回は動く可能性があると思います。最も大きいのは、やはりこのデータから見てもわかるように、信金、信組は少なからぬというか、かなりの打撃をこうむるのではないかというふうに思います。

 そうすると、信金、信組はまさに地域の中小中堅、個人などを相手にしておりますから、本当に、資金が不足する、運用先がないということで、信金、信組だけではなくて、その周りにある会社や個人もかなり厳しい状況になるんじゃないかなというふうに思うんですが、大臣、この点はいかがでしょうか。

亀井国務大臣 委員御指摘のように、過去においても、限度額を上げたことによってメガバンクあるいは中小の金融機関もそれなりの影響を受けておることは事実であろうと私は思います。一千万を二千万に引き上げたからといって、預金が一挙に郵便貯金の方に倍にふえていくという性格のものでもまたないであろうと私は思います。

 信金、信組という、その地域に密着しておる、金の預け入れを受けてまたそういうところに融資をしていくというような、相互の関係の中で生きている中小の金融機関、それは、郵便局についての限度額が一千万から二千万に上がったということだけで、それでそういうお客さんが全部逃げてしまうということにはなっていかないと私は思います。限度額というものが影響を与えることは事実でありますけれども、そのことだけで信金、信組のそうした営業について影響を与えていくものではない。

 念のために申し上げますと、今、信金、信組の預貸率というのは、低いのは四〇%のもありますけれども、五〇%、六〇%の預貸率で今、残念ながら推移をしておるわけであります。だからもう預金がそれでいいんだと私は言っておるわけではありません。今、ある意味では、信金、信組が預かったお金を地域のそうした中小零細企業、お客さんに対して貸し出しをしないで、国債を買うとかあるいは手数料収入とか、そういう形に融資マターが流れていっているという残念な状況もあると私は思います。

 これがメガバンクになるともっとそういう傾向が強いわけでございますけれども、やはり一つは、私は、委員も賛成だろうとは思いますが、そうした今の金融機関が、自分たちの社会的責任を金融機関として果たしていくという中で、国民の方々からの信頼をきっちりと得ていく、または一般の中小零細企業、商店の皆様方からそうした信頼を常に得ているという、そういう状況をつくらなければ、郵貯の限度額が上がったから、自分たちの競争相手が強くなったから大変だという悲鳴だけ上げていってはならない、私はこのように考えております。

竹内委員 いろいろ聞きたいことはあるんですが、時間がどんどんたってまいりましたので。

 今後の日本郵政グループの経営の問題は、大臣お一人で決める問題ではないと私は思うんですよね。やはり何といっても会社の経営者である齋藤社長のリーダーシップが大事だろう、そしてまた、その意向というのも大事なんじゃないかなと思っておるんです。

 今回の預金限度額引き上げというのは、齋藤社長の意向はどうだったんでしょうか、むしろ、経営者としての齋藤社長の意向が強かったんでしょうか、その点はいかがでしょうか。

亀井国務大臣 ここで申し上げていいかどうかわかりませんけれども、日本郵政サイドとしては、一般の金融機関が青天井だから、できることであれば、そうした大きな責務を課せられるのであれば、青天井にしてもらいたい、少なくとも五千万とかその程度にしてもらわなければ我々としては大変だという非常に強い要望があったことは事実であります。

竹内委員 これは非常に大事な点だと思うんです。

 だから、一般論としては、民営化するのであれば、政府の関与が低くなるのであれば、五千万であろうが青天井にしようが、それはいいと思うんですけれども、政府の関与が強いままどんどん上げていくと、これは大変、競争条件は公平ではない場面が生じるだろうというふうに一般的には思います。

 それともう一つ大事な点は、私、大臣が非常にいいことをおっしゃっていたと思うのは、非正規雇用の方々を正規雇用にしていくんだ、十万人ぐらいそういうふうにしていくんだと。これは、できれば本当にすばらしいことだと私どもも思いますし、そういう立派な経営をやっていただきたいと思うわけでございますけれども、ただ、その財源は三千億とか四千億とか言われておりまして、その財源を生み出そうとすると、どうやってやるのかと。

 今、定額貯金とかの利率を見てみますと非常に低くて〇・一とか〇・二ですけれども、仮にこれを国債なんかで運用すれば、確かに利ざやは一%ぐらい出ると。そうすれば、三十兆円とか四十兆円を集めれば、三千億、四千億は出てくる。しかし、それを国債で運用したら、逆に、菅大臣が所管されている、この財政破綻を意味するような、財政再建には大変な問題になるわけでございますし、さらにまた、原口大臣や前原大臣がおっしゃっているように、国内、国外の公共事業などへ投融資するといっても、そのような巨大な融資はそうそうあるわけではありませんし、また、利ざやを稼げるそういうリターンの多い投融資というのは一般に、焦げつきの可能性も非常に高いですよね。

 では、百兆円を仮に集めたとして、しかし、運用先が国債もなかなか、菅大臣に手足を縛られているとか、それから海外もなかなかうまくいかないということであれば、百兆円を集めても、逆に、経費倒れで収益が悪化してしまうんじゃないかと。そうすると、意外に、日本郵政にとっては限度額引き上げというのは、一見よさそうに見えるんですが、しかし、よくよくその先を考えてみると、非常に危険性もはらんでいるんじゃないかな、このように思うのでございます。

 もう時間がほぼありませんので、この点につきまして、ちょっと今回は先に菅大臣の御意見をお伺いして、それから亀井大臣の御意見を伺いたいと思います。

菅国務大臣 ちょっとお答えするのがなかなか難しい質問だなと聞いておりました。

 つまりは、郵貯がふえたときに、それを国債で運用されたら、国債の償還が難しくなる、ならないというのは、これは必ずしも直接的な問題ではなくて、国債そのものが、まさに今GDPの一八一%にとうとうなろうとしている、その問題はありますけれども、それは、他の民間機関が買っていただいても、郵貯が買われても、それはそれぞれの経営者の判断でしょうから、そのこと自体での差があるというふうには、そういう意味だけでいえば、必ずしも同じことではないか。

 郵貯の性格云々についてはまた別でしょうが、国債を発行するという立場からすれば、いろいろなところが自主的な判断で買っていただくということは同じ条件だと思っています。

亀井国務大臣 まず私は、今郵政で働いている方々が四十二、三万人いらっしゃいますが、残念ながら、その半分以上、二十万を超えた方が非正規社員で働いておられます。中にはパートでなければならない仕事もありますが、正社員で働きたいという気持ちを持ちながら、しかし、同じ仕事をしていて給料が三分の一だというような、そういう実態は私は絶対に変えます。人間が人間として尊重をされる、これは原価であります。今、日本全体の社会の風潮が、人間を安く使って利益を上げればいいんだと、大企業もそうでありますが、私は、それが今の日本をだめにしていっておると思います。その結果、三千億あるいは四千億、人件費が上がったって、これは原価である、私はそのように考えております。

 また、国債の問題でありますが、私は、国債を買うから悪いというのは本末転倒の話だと思います。

 これは、国債を出さざるを得ない国家財政の状況、これを改善しなければならないわけであって、今百三十兆ぐらい引き受けておりますけれども、それでは、政府が発行した国債を安定的に引き受けるところがなければ、メガバンク等だけでこれが消化していかない場合、長期金利が上がっていくという状態も起きます。何も引き受けている郵政が悪いわけじゃございません。そういう状態をつくっておる今の日本経済、日本財政の状況が悪いのであって、そういう点、今そういう議論がよくされますけれども、私は、郵政サイドが何も好きこのんで国債を引き受けるために貯金をどんどんこうしておるというわけではないということは、議員も御承知のとおりであると思います。

竹内委員 最後に一言だけ申し上げて終わりますが、亀井大臣がおっしゃった、人間が人間として尊重される社会をつくる、そういう会社にしていくという点につきましては、私どもも大いに賛同をして、その賛意を表明して、質問を終わります。

 ありがとうございました。

玄葉委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 まず初めに、役員報酬開示問題についてお聞きをしたいと思います。

 今度、上場企業を対象に、一億円以上の報酬を受け取る役員についての開示が義務づけられることになりました。このような措置をとった理由についてまず説明をしていただきたいのと、諸外国の現状というのはどのような状況になっているのか、説明をしていただきたいと思います。

亀井国務大臣 会社の存在というのは、株主のためだけでもなければ、ただ単に従業員のためだけでもない、ある意味では、それは国民全体、人類全体のための存在という性格があると私は思います。そうした場合、公務員の給与も公表をされておる、我々国会議員のこれも公開されておるわけであります。私企業でありましても、やはり一億円以上を得ておられる方々について、私は、そういう意味では公表をしても差し支えないと。

 私はよく、亀井けしからぬと言われるんですけれども、一億円であろうと二億円であろうと、ちゃんと社会的責任を果たし、従業員に対しても下請、孫請に対しても株主に対してもちゃんとした責任を果たしておる、そういうことであれば、胸を張っておられればいい話であって、それが公表されたら困るとおっしゃるのは、どうも私には理解しがたいわけでありますけれども、そういう御意見をいただいていることも事実であります。

佐々木(憲)委員 諸外国の現状がどうかという点について、監督局長、実態だけ言ってください。

畑中政府参考人 お答えをいたします。

 海外におきます役員報酬の個別開示につきましては、米国、英国のみならず、フランス、ドイツ、ベルギー、アイルランド、イタリア、オランダ、ノルウェー、デンマーク、フィンランド、スウェーデン、スイス、オーストリア等々、多くの国で実施されていると承知をいたしております。

佐々木(憲)委員 これは、大きな会社になればなるほど中身が見えなくなるというのでは困るわけでございまして、開示をするというのは当然のことであると私は思っております。

 このところ、非正規雇用というのがずっと広がって、その低賃金を利用して利益を拡大するというやり方が規制緩和の中でずっと続いてきたんです。その利益が、一部は株主配当としてどんと、この数年間でも四倍、五倍にふえる、役員報酬は二倍にふえる、こういう状況があるわけで、それが格差を拡大していく非常に大きな要因になっているわけです。

 その点で、一体大きな会社の社長あるいは経営者、経営陣がどの程度の報酬を得ているかというのは非常に重要な国民的な関心事でもあり、やはりそれを開示するということが今後の日本の将来の経済発展の上でも重要なことであると私は思います。

 この点について、亀井大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

    〔委員長退席、鈴木(克)委員長代理着席〕

亀井国務大臣 私は、企業が得た果実というのは、やはりこれは下請、孫請、従業員、また株主に配当され、かつ経営者として苦労している経営者にも配分されていく、これが適正でなければならない。

 残念ながら、自民党の方は嫌がるかもしれませんが、私もおったんですけれども、小泉改革なるものによって、そうした社会的責任を果たすんじゃなくて、人件費をどんどん切り詰めていく、また、下請、孫請に対して、もうかりそうでない値段でぎりぎり仕事をやらせる、それをやっても構わないんだ、市場原理至上主義が極端な形でこの十年間日本じゅうに蔓延して、ある意味で常識になってしまいました。本当に私はそう思います。それが常識になったことをこのまま続けて、日本という国が本当に幸せな国になっていくのかということに対して、私は大変な危惧を持っております。

 かつての日本は、みんなで苦労してみんなで楽しむ、果実はみんながこれを分け合う、そういう社会であったと思いますので、そういう方向を鳩山政権は目指しておる、このように確信をいたします。であればこそ、国民新党は連立を組んでいるんです。

佐々木(憲)委員 次に、ゆうちょ銀行の預金保険料の問題についてお聞きをしたいと思います。

 ゆうちょ銀行が預金保険料を支払うようになったのは、これはいつからそうなったのか。なぜ支払うようになったのか。このことについて、監督局長から事実関係だけ報告をいただきたい。

畑中政府参考人 お答えいたします。

 ゆうちょ銀行が預金保険料を支払うようになりましたのは、ゆうちょ銀行が平成十九年十月に民営化されまして、銀行法上の銀行になったということによるものでございます。

佐々木(憲)委員 民営化する前は払っていなかったんですよ。何も負担はなかったんです。それでちゃんと回っていたんです。

 預金保険制度の仕組みは、金融機関が破綻した場合に資金援助を行う、そういう仕組みで、その業務に必要な費用、これは預金保険機構が金融機関から預金保険料を徴収して賄っているわけです。この預金保険料を積み上げ、預金保険機構にプールさせているのが、責任準備金というものであります。この預金保険機構の責任準備金は、二〇〇九年三月末でマイナス約九千百十億円であります。これも、減ってこうなったんですね。一番大きい欠損のあったときは四兆円に達しておりましたが、このような欠損金が発生した理由をまず確認したい。

 それから、今の保険料の保険料率ですね。これは平成八年に決められたものでありますが、それまで〇・〇一二%だったのが〇・〇八四%、七倍に引き上げられたわけであります。この引き上げの理由、これはどういうものであったか、これを確認したいと思います。

畑中政府参考人 お答え申し上げます。

 まず第一点目の、欠損金が生じた事由でございますが、御案内のように、預金保険機構の一般勘定の責任準備金につきましては、これまでに実施をされました破綻処理に伴う資金援助に係る費用支出等によりまして、御指摘のように、平成二十年度末時点で九千百五億円の欠損になっているところでございます。

 第二点目の、平成八年、一九九六年に保険料率を〇・〇一二%から〇・〇八四%に引き上げた理由ということでございますが、まず法律上は、預金保険法五十一条の第二項によりまして、この保険料率につきましては、保険金の支払い、資金援助その他の機構の業務に要する費用の予想額に照らし、長期的に機構の財政が均衡するように、かつ、特定の金融機関に対し差別的な取り扱いをしないように定めなければならないと規定されております。

 この平成八年当時、〇・〇一二から、特別保険料を合わせまして〇・〇八四%に引き上げられた理由につきましては、当時の金融制度調査会の答申にもございますように、預金保険が発動されるようになったこの四年間と同程度の破綻が生じた場合にも対処し得るよう、この間の破綻処理コスト合計額である二兆円ないし二兆五千億を今後五年間で引き直し、それをカバーし得る料率として算定されたものと承知をいたしております。

 なお、一般保険料のみとなる平成十四年度以降におきましても、借入金の早期返済と将来に備えた一定規模の責任準備金の確保が必要との観点から、現在まで実効料率としては〇・〇八四%が維持されているところでございます。

 以上でございます。

佐々木(憲)委員 要するに、民間の金融機関が破綻をする、現に破綻をしたわけでありました、その金融機関を資金援助する、支援をする、それは、民間の銀行同士がお互いに保険料を出し合って預金保険機構をつくって、そこで賄う、これが筋でありました。それで今まで破綻処理を行い、また、それを一定の保険料引き上げで穴埋めしてきた。

 ところが、ゆうちょ銀行というのは、この民間の銀行破綻に関係ないんですよ。保険料も払っていなかった。払っていなかったにもかかわらず、ある時点で民営化だということになって、民営化なんだから払うんだと。こうなると、過去の銀行の欠損金を関係のない郵便貯金の利用者が穴埋めしてあげる、こういう構図になっているわけなんですね。

 この間、例えば、〇八年度保険料収入総額が六千百十七億円、そのうちゆうちょ銀行は五百四十八億円。ゆうちょ銀行が預金保険制度に加入してから払った保険料の総額は、千百七十億円にも達するわけです。一体、こういう必要があるのかどうかという問題になるわけであります。

 ゆうちょ銀行というのは、金融機関の破綻を支援する理由は私は別にないと思うんですね。今、亀井大臣は、このゆうちょ銀行のあり方を全体として見直す、つまり、公的なものとして国の一定の関与を保持して、それで運営をしていくということにしたわけですね。したにもかかわらず、ここだけが民営のまま、そういう発想というのは、どうも私は納得がいかないわけであります。

 三月二十四日に亀井大臣と原口総務大臣が公表しました郵政改革に関する諸事項等についてによると、親会社に対する政府出資比率は三分の一を超え、親会社から子会社への出資比率は三分の一を超えるとなる。実質的に、ゆうちょ銀行の経営に対する国の責任は継続される。そして、亀井大臣も御答弁になっておりますように、ゆうちょには暗黙の政府保証がついているのと同じだ、こういうふうにおっしゃっているわけです。

 したがって、まずお聞きをしたいのは、ゆうちょ銀行が破綻する、そういうリスクが一体あるのか、まずここを確認しておきたいと思います。

    〔鈴木(克)委員長代理退席、委員長着席〕

亀井国務大臣 破綻するようなことがあったらこれは大変な話でありますし、そういうことは私はないと思います。

 今議員御指摘の点でありますが、そういう面から見ますと、メガバンク、かつて大きな銀行もつぶれたわけでありますけれども、私は、破綻をする可能性があるかないか、そういう物差しを持って負担を決めていくというわけにはいかない、銀行法上の銀行である以上は、やはり同じように負担をしていただくということでおるわけでございます。

佐々木(憲)委員 どうも亀井さんとしては、すっきりした方向に行っているなと思ったら、ここだけどうもあいまいなんですね。

 四月二日の当委員会で亀井大臣は、「私どもは中小の金融機関に対して、信用力においてメガバンクのようにつぶれる心配がないということもない、一方、ゆうちょは暗黙の政府保証といいますか、まさかゆうちょがつぶれることはない、」こう答弁されまして、違いを強調されているわけですね。

 リスクのある民間金融機関が業界でペイオフのため保険料を拠出し合うのは当然だと私は思うんですが、つぶれることのないゆうちょ銀行が預金限度額をふやす見返りに保険料を引き下げるということになるのは、どうもおかしいのではないか。ゆうちょ銀行が、つぶれることはないにもかかわらず保険料を負担しながら、民間銀行も含めて預金保険料を引き下げる、これは何かバーターのような感じでおかしいんじゃないか。

 本来こういうものは、民間銀行ですから、銀行は銀行、銀行同士のお互いの、いわば互助会のようなものでお互いに助け合う支援の体制をつくればいいわけでありまして、民営化をやめたゆうちょ銀行は、本来の筋に戻って、そういう余分な負担はせず、そういう資金があれば、労働者の非正規雇用を正規雇用にかえるときの費用として回すとか、そういう経営の改善、ユニバーサルサービスの改善のために利用する、そのために使うというのが本来の公共的、公的な機関の役割ではないのかと私は思うんですが、それでもまだ亀井大臣は筋の通らないことをおっしゃるんでしょうか。

亀井国務大臣 筋が通らないと御指摘を受けて恐縮しておりますけれども、私が中小金融機関に対して、あなた方はメガバンクのような、信用力が劣るということで、営業上、預金者との関係で困るということであれば、一千万のペイオフの限度額を上げるという措置も検討してもいいですよということを私は申し上げておるわけでありまして、ゆうちょ銀行も一応銀行法の適用を受けております以上は、何もおつき合いというわけではございませんけれども、やはり一般法の中で生きておる以上は、三菱にせよ三井住友にせよ、つぶれる心配はないと思うわけでありますが、そこもちゃんと負担しておるわけでもありますから、やはりそうした負担はしていただくという今考え方でおるわけでございます。

佐々木(憲)委員 筋が通らないのは通らないというふうにずっと私も言い続けていきたいと思いますが、本来ゆうちょ銀行は、郵便貯金は、こういう負担がなくてやっていたんです。この間、三、四年、そういうことを負担するようになった、その金額が一千億円以上、こういう状況なんですから、見直すというならもうちょっとしっかり、しゃきっと見直すということを要望して、質問を終わりたいと思います。

玄葉委員長 次回は、来る十四日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十八分散会


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